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応 用 化 学 シリーズ
機能性セラミックス化学 掛川 山村 守吉 門間 植松 松田 …
一幸 博 佑介 英毅 敬三 元秀
…[著]
朝倉書店
応 用化 学 シ リーズ代 表 佐 々 木 義 典 千葉大学名誉教授
...
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5
応 用 化 学 シリーズ
機能性セラミックス化学 掛川 山村 守吉 門間 植松 松田 …
一幸 博 佑介 英毅 敬三 元秀
…[著]
朝倉書店
応 用化 学 シ リーズ代 表 佐 々 木 義 典 千葉大学名誉教授
第5巻 執筆 者 掛
川
一
幸 千葉大学工学部共生応用化学科教授
山
村
守
吉
佑
介 法政大学工学部物質化学科教授
門
間
英
毅 工学院大学工学部マテリアル科学科教授
植
松
敬
三 長岡技術科学大学工学部化学系材料開発工学科教授
松
田
元
秀 岡山大学環境理工学部環境物質工学科助教授
博 神奈川大学工学部応用化学科教授
『応 用 化 学 シ リー ズ 』 発刊 にあたって こ の 応 用 化 学 シ リー ズ は,大 学 理 工 系 学 部2年
・3年 次 学 生 を対 象 に,
専 門 課 程 の 教 科 書 ・参 考 書 と して 企 画 さ れ た. 教 育 改 革 の 大 綱 化 を受 け,大 学 の 学 科 再 編 成 が全 国 規 模 で行 わ れ て い る. 大 学 独 自 の 方 針 に よ っ て,応 用 化 学 科 を そ の ま ま 存 続 させ て い る大 学 も あ れ ば,応
用 化 学 科 と,た
とえ ば 応 用 物 理 系 学 科 を 合 併 し,新
し く物 質 工 学
科 と し て 発 足 させ た 大 学 もあ る.応 用 化 学 と応 用 物 理 を融 合 させ 境 界 領 域 を究 明 す る効 果 をね ら っ た も の で,こ
れ か らの 理 工 系 の 流 れ を象 徴 す る も
の の よ うで もあ る.し か し,応 用 化 学 と い う分 野 は,学
科 の 名 称 が どの よ
う に 変 わ ろ う と も,そ の 重 要 性 は 変 わ ら な い の で あ る.そ し い 特 性 を もっ た化 合 物 や 材 料 が 創 製 さ れ,ま
れ ど こ ろ か,新
す ます 期 待 され る分 野 に な
りつ つ あ る. 学 生 諸 君 は,そ
れ ぞ れ の 専 攻 す る分 野 を 究 め る た め に,そ
の土 台で あ る
学 問 の 本 質 と,こ れ を基 盤 に 開 発 さ れ た 技術 な らび に そ の背 景 を理 解 す る こ とが 肝 要 で あ る.目
ま ぐ る し く変 遷 す る 時 代 で は あ るが,ど
の よ う な場
合 で も最 善 を つ く し,可 能 な 限 り専 門 を確 か な もの と し,そ の 上 に理 工 学 的 セ ン ス を 身 に つ け る こ とが 大 切 で あ る. 本 シ リー ズ は,こ
の よ うな 理 念 に 立 脚 して 編 纂,ま
執 筆 者 は教 育 経 験 が 豊 富 で,か
とめ られ た.各 巻 の
つ 研 究 者 と して 第 一 線 で 活 躍 して お られ る
専 門 家 で あ る.高 度 な 内容 を わ か りや す く解 説 し,系 統 的 に 把 握 で き る よ う に 幾 度 と な く討 論 を重 ね,こ
こに 刊 行 す るに 至 っ た.
本 シ リー ズ が 専 門 課 程 修 得 の役 割 を 果 た し,学 生 一 人 ひ と りが 志 を高 く も っ て 進 まれ る こ と を希 望 す る もの で あ る. 本 シ リー ズ刊 行 に 際 し,朝 倉 書 店 編 集 部 の ご尽 力 に 謝 意 を表 す る 次 第 で あ る. 2000年9月
シ リーズ代表 佐 々 木 義 典
は じ め に
本 書 は応 用 化 学 シ リー ズ全8巻
中 の1冊
で,応 用 化 学 系,工
業 化 学 系,物 質 化
学 系 の 大 学2, 3年 生 を対 象 に,機 能 性 セ ラ ミッ ク ス 化 学 とそ の 応 用 に関 す る知 識 と考 え方 を理 解 す る こ とを 目的 とし て編 纂 さ れ た.こ
の種 の 書 物 に お い て は,
とか く単 な る表 面 的 な 説 明 とな りが ちで あ る が,本 書 の執 筆 方 針 と して,原 理, 原 則 まで 踏 み 込 ん で 説 明 す る よ う心 が けた.ま
た,原 理 や理 論 に入 る前 に,全 体
像 をつ か む た め,ま ず 概 略 の理 解 か ら入 る よ うな構 成 と した. 材 料 の3大
柱 と して,金 属,セ
ラ ミッ ク ス,プ ラ ス チ ッ クス が 挙 げ られ る.セ
ラ ミッ ク ス は,建 築 用 の 材 料 か ら電 子 機 器 の部 品 に 至 る まで 幅 広 い使 わ れ 方 が さ れ て い る.材 料 に 関 わ る人 々 に は,何 らか の形 で セ ラ ミ ッ クス に 関 わ る こ と にな る た め,そ
の 知 識 と理 解 が 必 要 とな る.
第1章
で は,セ ラ ミ ック ス を学 ぶ に あた っ て の 導 入 部 分 と して,そ
定 義,歴
史 な ど を解 説 す る.図 表 を多 用 し,親
しみ が 湧 く よ う心 が け た.セ
ック ス は,結 晶 構 造 とその 欠 陥,結 晶 子,結 晶 粒 と粒 界,焼 層 が 存 在 す るが,粉
は,セ
結 体 な ど,多
ラミ くの 階
末,粉 体 お よび焼 結 体 の微 構 造 と密 接 に 関 係 さ せ て考 え る こ
とに よ り,全 体 像 を 明 解 に理 解 す る こ とが で き る.第2章 微 構 造,研
の具 体 例,
磨 ・エ ッ チ ン グ,気 孔,密
度,粗
で は,セ ラ ミ ッ クス の
大 傷 の 評 価 な ど を 扱 う.第3章
で
ラ ミ ッ ク ス の合 成 方 法 に 関 し,定 性 的 な面 か ら解 説 す る.そ の理 論 に つ い
て は 第4章
に まわ し,セ ラ ミ ック ス の 合 成 は どの よ う に行 うの か,合 成 プ ロ セ ス
の全 体 を現 象 的 に と ら え理 解 す る.そ の 後,第4章
の プ ロ セ ス の 理 論 に進 む こ と
に よ り,ス ム ー ズ な理 解 の 流 れ を も くろ んだ.第3章 成 と して,CVD法,PVD法
に お い て は,気 相 か らの 合
を,液 相 か らの 合 成 法 と し て,沈 殿 反 応,ゾ
ル ・ゲ
ル 法,ア
ル コキ シ ド加 水 分 解 法 な ど を解 説 す る.第4章
で 扱 う項 目 は,結 晶相 の
制 御,表
面 と界 面,成
結 の メ カニ ズ ム で あ る.
第5章
で は,セ
料,光
学 材 料,構
形 とレオ ロ ジー,欠 陥 と拡 散,焼
ラ ミ ッ ク ス の 実 際 の 応 用 と し て,誘 電 材 料,導 造 材 料,表
面 利 用 材 料,生
と,そ れ に関 す る理 論 を 述 べ る.
電 材 料,磁
性材
体 材 料 な どを と りあ げ,実 際 の応 用
本 書 で 扱 った セ ラ ミ ッ ク ス に 関 す る知 識 や考 え方 は,セ ラ ミ ッ ク ス に 限 らず, 広 く材 料 科 学 の 分 野 に通 用 す る もの で あ る.本 書 は"わ か りや す く"を 重 点 にお い て執 筆 され て い る.本 書 を通 じて,セ
ラ ミ ッ ク ス に関 して学 ぶ と と もに,材 料
科 学 全 般 の 考 え方 の基 本 を培 っ て い た だ きた い. 2004年10月
執筆 者 を代 表 して 掛 川 一 幸
目
次
1. セ ラ ミ ッ ク ス の 概 要
〔松 田 元 秀 〕 1
1.1 セ ラ ミ ッ ク ス の 定 義
1
1.2 セ ラ ミ ッ ク ス の 特 徴
2
1.3 セ ラ ミ ッ ク ス の 歴 史 的 変 遷
4
1.4 フ ァ イ ン セ ラ ミ ッ ク ス の 種 類 と そ の 用 途
7
1.5 フ ァ イ ン セ ラ ミ ッ ク ス を 理 解 す る に は
2. セ ラ ミ ッ ク ス の 構 造
〔 植 松 敬 三 〕 8
2.1 種 々 の 製 品 の 構 造 2.2 微
構
7
8
造
10
2.1.1
微 構 造 の 要 素
11
2.2.2
微 構 造 と特 性 の 関係
2.3 微 構 造 の評 価 法
15
19
2.3.1
研 磨 面 の 観 察
19
2.3.2
エ ッ チ ン グ 面 の 観 察
20
2.4 気 孔,気
孔 率 お よ び 密 度
21
2.4.1
気 孔 径 と分 布
21
2.4.2
密 度 と 気 孔 率
22
2.5 粗 大 傷 の 評 価
23
3. セ ラ ミッ ク ス の合 成 プ ロ セ ス技 術 3.1 粉 末 の 合 成
〔門 間 英 毅 〕 24 24
3.1.1
液 相(溶
3.1.2
気 相 か ら の合 成
29
3.1.3
固相 か ら の合 成
31
3.2 単
結
晶
3.3 膜
合
成
液)か
ら の 合 成
24
36 36
3.3.1
液
相
法
36
3.3.2
気
相
法
37
3.4 繊 3.5
維
45
ウ ィス カ ー
3.6 成
46
形
48
3.6.1
成 形 の基 礎
3.6.2
成
3.7
形
焼
48
法
49
結
52
3.8 焼 結 体 の 加 工
53
4. セ ラ ミ ッ ク ス プ ロ セ ス の 理 論
4.1 結 晶 相 の制 御
55
〔 掛 川 一 幸 〕 55
4.1.1 変 位 型 転 移 と再 編 成 型 転 移 4.1.2
固
4.1.3 4.1.4
溶
55
体
58
共
晶
63
包
晶
66
4.1.5
ス ピノーダル分解
68
4.1.6
3成
70
分
系
4.2 表 面 と界 面
〔 松 田 元 秀 〕 72
4.2.1
表 面 張 力 お よび 界 面 張 力
4.2.2
曲面 に よ る圧 力差
77
濡
象
79
4.2.4 多 結 晶体 組 織 の幾 何 学 的 形 状
81
4.2.3
れ
現
4.3 成 形 と レ オ ロ ジ ー 4.3.1
73
〔 植 松 敬 三 〕 83
粉 体 の構 造
83
4.3.2
溶 媒 中 の粒 子
4.3.3
粒 子 間 の相 互 作 用
4.3.4
粒 子 の分 散
4.3.5
ス ラ リー の 流 動 特 性
89
4.3.6
成 形 とス ラ リー 特 性
91
4.3.7
粉
85
88
砕
4.4 格 子 欠 陥 と拡 散
87
〔山 村
92
博 〕 93
4.4.1
格 子 欠 陥 の 種 類 と濃 度
93
4.4.2 拡 散 現 象 の 巨 視 的 な取 扱 い
99
4.4.3
拡 散 の 原 子 論 的 な取 扱 い
102
4.4.4
拡 散 機 構
4.4.5
拡散 係数の種類
4.4.6
拡 散 現 象 の具 体 例
107
4.4.7
粒 界 拡 散
109
4.4.8
拡 散 に関 わ る現 象
109
105
4.5 焼 結 の メ カ ニ ズ ム 4.5.1
〔 守 吉 佑 介 〕 112
焼 結の駆動力 期
焼
103
113
4.5.2
初
結
114
4.5.3
高 密 度 焼 結 体 の製 造
117
4.5.4
液 相 焼 結
121
5. セ ラ ミ ッ ク ス の 理 論 と 応 用 5.1 誘 電 材 料
126
〔 掛 川 一 幸 〕 126
5.1.1
コ ンデ ンサ ー
5.1.2
分
5.1.3
コ ンデ ンサ ー の材 料
5.1.4
コ ンデ ンサ ー の特 性 と物 性
5.1.5
圧
電
体
137
5.1.6
焦
電
体
140
極
126
5.2 導 電 材 料
129
131 133
〔山 村
博 〕 141
5.2.1
電 子 伝 導 性 と エ ネ ル ギ ー バ ン ド構 造
5.2.2
絶
縁
性
143
5.2.3
半
導
性
144
5.2.4
セ ラ ミ ック ス の電 子 伝 導 とそ の 応 用
5.2.5
イ オ ン伝 導 体
5.2.6
イ オ ン伝 導 体 の応 用
5.3 磁 性 材 料 5.3.1
磁 性の起源
5.3.2
磁 気 モ ー メ ン トの 配 列 に よ る 磁 性 体 の 種 類
141
147
150
155 156 156
159
5.3.3
応 用 に お け る 磁 気 特 性
5.3.4
セ ラ ミ ッ ク磁 性 材 料 と そ の 特 性
165 167
5.4 光 学 材 料 5.4.1
屈
折
〔掛 川 一 幸 〕 170 率 171
5.4.2 電 気 光 学 効 果 5.4.3
光 の 減 衰
5.4.4
光 フ ァ イバ ー
5.4.5
ル ミネ ッ セ ン ス
5.4.6
レ ー ザ ー
5.4.7
SHG
174
175 176 178 181 182
5.5 構 造 材 料
〔 守 吉 佑 介 ・門 間 英 毅 〕 184
5.5.1
高靭 性材料
5.5.2
超塑性 材料
5.5.3
曲げ強度材料
187
5.5.4
ク リー プ 材 料
190
5.6 表 面 利 用 材 料
184 186
〔 松 田 元 秀 〕 193
5.6.1
吸 着 現 象
194
5.6.2
吸着 等温線
5.6.3
吸
材
198
5.6.4
触 媒 反 応
200
5.6.5
固体触媒 材料
202
5.6.6
光
着
触
媒
5.7 生 体 材 料
195
203 〔 門 間 英 毅 〕 205
5.7.1
生体材料 の歴史
205
5.7.2
バ イオ セ ラ ミ ック ス に必 要 とされ る一 般 的 性 質
206
5.7.3
腐 食 と崩 壊
5.7.4
骨欠損部 の治癒過程
5.7.5
バ イ オ セ ラ ミッ ク ス の評 価 法
5.7.6
代 表 的 な バ イ オ セ ラ ミ ッ ク ス
付
表
索
引
207 207 208 211
215 217
1 セ ラ ミ ッ ク ス の概 要
セ ラ ミ ッ ク ス とい う とま ず 思 い 浮 か べ る の は,茶 碗,皿,タ
イル や〓 瓦 とい っ
た と こ ろで あ ろ うか.こ れ らは い ず れ も古 くか ら私 た ち の 生 活 の 中 で重 宝 され て きた セ ラ ミ ッ ク ス で あ る.一 方20世
紀 に な る と,フ
ァイ ン セ ラ ミ ッ ク ス と呼 ば
れ る高 度 な 機 能 を 有 した,付 加 価 値 の 高 い セ ラ ミッ ク ス が 多 数 誕 生 した.茶 碗 や 皿 の よ うな 伝 統 的 な セ ラ ミ ック ス に対 し,フ ァイ ン セ ラ ミ ッ ク ス は電 子 材 料 や 光 学 材 料 な ど,先 端 技 術 分 野 を 中 心 に現 在 様 々 な分 野 で幅 広 く利 用 され て い る.セ ラ ミ ッ クス は い まや 金 属 や有 機 高 分 子 材 料(プ
ラ ス チ ッ ク)と
と も に,現 代 社 会
の 発 展 に と っ て な くて は な らな い 基 本 材 料 で あ る.本 書 で は そ の フ ァイ ン セ ラ ミ ック ス につ い て の 基 礎 と応 用 が 述 べ られ て お り,本 章 で はセ ラ ミ ッ クス の 一 般 的 な特 徴 や そ の歴 史 的 変 遷 な ど につ い て概 説 す る. 1.1 セ ラ ミ ッ ク ス の 定 義 セ ラ ミッ ク ス(ceramics)と
は,「 人 為 的 な熱 処 理 に よ っ て 製 造 され た 非 金 属
の無 機 質 固 体 材 料 」 を総 じて 表 す 言 葉 で,言 葉 の 語 源 は ギ リ シ ャ 語 のkeramos に 由 来 す る.こ
こで,"人
為 的 な熱 処 理 に よ っ て"と
い う言 葉 は,火 山活 動 の よ
うな 自然 現 象 の 中 で 形 成 され た 火 山岩 や天 然 石 な どは そ の ま まで はセ ラ ミ ック ス に属 さな い こ と を意 味 す る. "ceramics"に よ う に,セ
相 当 す る 日本 語 は 「窯 業 」 で あ り,そ の言 葉 の 意 味 か らわ か る
ラ ミ ッ ク ス は通 常 高 い温 度 で 製 造 さ れ る.で
必 要 か と問 わ れ る と,正 確 な 答 え は な い が600∼700℃
は,何 ℃ 以 上 の 温 度 が 以 上 と考 え て よ い.そ の
よ うな 高 い温 度 を 経 ず に 製 造 され る場 合 もあ る.「 水 熱 」 と い う特 殊 な 反 応 条 件 を使 う と,150℃
程 度 の温 度 で もセ ラ ミ ッ クス をつ くる こ とは で き る.
金 属 や 有 機 高 分 子 材 料 と違 っ て,セ
ラ ミ ック ス の構 成 元 素 は 多 様 で あ る.鉄 や
表1.1
様 々 な セ ラ ミッ ク ス材 料
銅 を は じめ とす る金 属 材 料 は,一 般 に 単 一 元 素 で構 成 され て い る もの が 多 く,多 成 分 系 の合 金 に至 っ て も酸 素 や 硫 黄 な どが 構 成 元 素 と し て含 まれ る こ とは な い. 有 機 高 分 子 材 料 は炭 素 と水 素 を主 成 分 と し,そ の他 酸 素,窒 素,フ
ッ素 な どが含
まれ る場 合 もあ るが,一 般 に 数 少 な い種 類 の 元 素 で構 成 され る.こ れ に対 して セ ラ ミ ック ス は,金 属 元 素,半
金 属 元 素,非
金 属 元 素 の 中 の 少 な く と も2つ の元 素
グ ル ー プ の 間 で 形 成 され る化 合 物 か らな る.代 表 的 な セ ラ ミッ ク ス を 表1 .1に あ げ る.酸 化 物,窒
化 物,炭 化 物 な どそ の種 類 は豊 富 で あ る.こ の た め,発 現 す る
物 性 も他 の 材 料 に比 べ て多 様 と な り,用 途 の 多 様 さ に つ な が っ て い る. 1.2 セ ラ ミ ッ ク ス の 特 徴 セ ラ ミッ ク ス の大 きな 特 徴 は,硬
くて,酸 化 し に く く,熱 に強 い こ とで あ る.
硬 さ に 関 し て い え ば,地 球 上 で 最 も硬 い物 質 は ダ イ ヤ モ ン ドで あ る.ダ イ ヤ モ ン ドの硬 度 を10と
す る と,立 方 晶 窒 化 ホ ウ素(c-BN),窒
化 ケ イ素(SiC),炭
化 タ ン グ ス テ ン(WC),ア
化 ケ イ 素(Si3N4),炭
ル ミナ(Al2O3)と
いった セラ ミ
ッ ク ス は硬 度9以 上 を 示 し,ダ イ ヤ モ ン ドに迫 る硬 さ を有 す る.高 硬 度 金 属 で 知 られ る タ ング ス テ ンや イ リ ジ ウ ム で さ え,硬 度 は7程 度 で あ る.こ の た め,セ
ラ
ミ ッ ク ス で つ くられ る切 削 ・研 削工 具 は,優 れ た 耐 磨 耗 性 を示 す.硬 度 が 高 い と い う こ とは,塑 性 変 形 が 起 こ りに くい こ とを意 味 す る.応 力 に よ る変 形 が 少 な く 熱 に よ る膨 張 も小 さ い の で,形 状 寸 法 の 安 定 性 が 高 い 製 品 をつ く り出 す こ とが で き る.一 方,硬
度 が 高 い こ と に よ り,金 属 や 有 機 高 分 子 材 料 に比 べ て 加 工 が 難 し
い とい う欠 点 が あ る.私 た ち の 身 の周 り をみ て も,複 雑 な 形 状 を した 製 品 の 多 く は金 属 や 有 機 高 分 子 材 料 で つ くられ て い る.し か し近 年,セ
ラ ミ ック ス の 成 形 加
工 技 術 は 目覚 ま し く進 歩 して お り,高 速 大 容 量 通 信 に使 わ れ る光 フ ァイ バ ー や 自 動 車 の排 ガ ス浄 化 用 触 媒 を担 持 す る た め に使 わ れ るハ ニ カ ム状 担 体(図1.1)な
図1.1
ハ ニ カ ム 状 セ ラ ミッ ク ス
ど,複 雑 な形 状 を有 す るセ ラ ミ ッ ク ス も製 造 可 能 とな っ て い る. セ ラ ミ ッ ク ス の優 れ た 耐 熱 性 は,そ の製 造 温 度 が 高 い こ とか ら容 易 に想 像 で き よ う.セ ラ ミ ック ス は 一 般 に,高 温 に至 る まで 分 解 した り溶 融 した り しな い.金 属 ア ル ミニ ウ ム は660℃ 2050℃ ま で 溶 け ず,1700℃
で 溶 け る が,ア
ル ミニ ウ ム の 酸 化 物 で あ るAl2O3は
付 近 まで の使 用 に耐 え う る材 料 で あ る.多
くの セ ラ
ミ ッ クス は金 属 の よ う に高 い伝 熱 性 を示 さ な いの で,一 度 暖 め られ た セ ラ ミ ック ス は 冷 え に く く,耐 熱 性 に加 え て 蓄 熱 性 に お い て も優 れ た性 質 を示 す. 鉄 が 錆 び る こ とは よ く知 られ て い る.こ れ は鉄 の酸 化 に よ る.一 般 に 金 属 は, そ の使 用 上 で酸 化 が し ば し ば 問題 とな る.有 機 高 分 子 材 料 にお い て も,酸 素 が 関 与 した 劣 化 反 応 が 問題 と な る.こ れ に対 して セ ラ ミ ッ クス は,高 温 で も酸 化 しに く く,表 面 近 傍 の構 造 や 化 学 組 成 は変 化 し な い.セ ラ ミッ ク ス は広 い 温 度 範 囲 に わ た っ て 長 期 間安 定 した 状 態 で使 用 で き る,唯 一 の不 変 材 料 で あ る. 一 方,セ
ラ ミ ック ス の 致 命 的 な 欠 点 は そ の 脆 さ に あ る.茶 碗 が 床 に落 ち る と簡
単 に割 れ て し ま う こ とか ら もわ か る よ うに,セ
ラ ミ ッ クス は硬 くて脆 い(脆 性)
材 料 で あ る.靭 性 強化 に関 す る最 近 の微 構 造 制 御 技 術 の 進 歩 に よ っ て,セ
ラ ミッ
ク ス の 靭 性 は大 き く向 上 し て い る.包 丁 や は さ み に使 わ れ る ジル コ ニ ア を主 成 分 と した セ ラ ミ ッ クス は,微 構 造 制 御 に よっ て靭 性 が 著 し く改 善 さ れ た代 表 的 な セ ラ ミ ッ ク ス材 料 で あ る.し か し,金 属 な み の靭 性 を示 す セ ラ ミ ック ス の 製 造 はい まだ 難 し い.こ れ は,金 属 とセ ラ ミ ック ス の 各 原 子 間 の 結 合 形 態 が 大 き く異 な る こ と に起 因 す る.セ ラ ミ ック ス の 場 合,外
力 が 加 わ る と,初 め は わ ず か に弾 性 変
表1.2
各種材料の特徴
形 が起 こ り,や が て 突 然 破 壊 す る.こ の破 壊 が い つ起 こ る か 予想 し に くい点 が セ ラ ミ ッ ク ス の 泣 き所 で あ る. 表1.2に,こ
れ らセ ラ ミッ ク ス の特 徴 を金 属 や 有 機 高 分 子 材 料 の 特 徴 と比 較 し
た 結 果 を示 す. 1.3 セ ラ ミ ッ ク ス の 歴 史 的 変 遷 セ ラ ミ ッ ク ス の 製 造 の歴 史 は古 い.わ が 国 にお け る セ ラ ミ ック ス の製 造 は,す で に縄 文 時 代 に始 ま っ て い る.遠 い 昔,人 類 は石 を単 に加 工 した石 器 を道 具 とし て 生 活 を 営 ん で い た.そ
の後 人 類 は火 を使 う こ と を知 り,あ る種 の土 を加 熱 す る
こ とに よ って 土 器 をつ くる こ とに 成 功 した .こ れ が セ ラ ミッ ク ス製 造 の始 ま りで あ る.そ の 後 時 代 の 流 れ と と もに セ ラ ミ ッ ク ス の 製 造 技 術 が 進 歩 し,や が て 陶 器,磁
器 へ と発 展 して い っ た.陶 器 は,多 孔 質 で 吸 湿 性 を 示 す 素 地 を本 体 と し,
そ の 表 面 に釉(ゆ
う)と 呼 ば れ る うわ ぐす りを塗 って つ くられ た もの で あ る.代
表 的 な 陶 器 製 器 具 に は,ト イ レ な どで使 わ れ て い る衛 生 設 備 が あ る.一 方,磁 器 とは,陶 器 よ りさ らに 高 い 温 度 で製 造 さ れ,素 地 自体 完 全 に 吸 湿 性 が な い状 態 に ま で焼 き固 め られ た もの を指 す.洋 食 器 を は じ め とす る多 くの 食 器 類 は,磁 器 に 属 す る.こ れ ら古 来 よ り伝 え られ て きた セ ラ ミ ック ス は天 然 鉱 物,例 ケ イ石 な どを原 料 と して 製 造 され る.主 な構 成 成 分 は 酸 素,ケ ム,鉄,カ
ル シ ウム,ナ
トリ ウム,カ
リウ ム,マ
え ば粘 土 や
イ 素,ア ル ミニ ウ
グ ネ シ ウ ム で あ る.天 然 原 料 を
用 い る と製 造 コ ス トは安 くす む が,同 種 の鉱 物 で も産 出 され る場 所 に よ って 化 学 組 成 や 原 料 粒 子 の 形 状 ・大 き さが 異 な り,製 造 され る セ ラ ミ ック ス の 品 質 に ば ら つ き が 生 じ る.そ の ば らつ き は,"雅"と 工 業 材 料 と し て の 応 用 を考 え た場 合,好
し て人 々 に喜 ば れ歓 迎 され て い るが, ま しい もの で は な い.
19世 紀 の 終 わ り頃 か ら,陶 磁 器 の優 れ た 電 気 絶 縁 性 と化 学 的 安 定 性 が 注 目 さ れ る よ う に な り,そ れ らの特 性 に基 づ く需 要 が 増 大 して い っ た.と 同 時 に,要 求 さ れ る条 件 は 年 々 厳 し くな り,既 存 材 料 で は 対 応 困 難 とな っ た.さ
らに20世 紀
中 頃 に な る と,エ レ ク トロ ニ ク ス 産 業 や 航 空機 産 業 な どの 発 展 に伴 って,あ
らゆ
る工 業 材 料 に対 し て高 い信 頼 性 が 求 め られ る よ うに な った.天 然 原 料 に頼 る セ ラ ミ ック ス の 製 造 で は 当然 の こ とな が らそ の よ う な 要 求 に応 え る こ と はで き ず,純 度 が 高 い 合 成 原 料 を用 い た 製造 へ の 転 換 が 余儀 な くな され た.用 組 成 か ら物 理 的 ・化 学 的 品 質 まで 厳 し く管 理 さ れ,さ
い る原 料 は化 学
ら に各 製 造 工 程 も高 度 に制
御 さ れ る よ うに な り,そ の 製 造 は古 来 よ り行 わ れ て きた もの と は大 き く異 な る も の とな っ た.そ
の 結 果,従
来 の 性 能 を は るか に上 回 るセ ラ ミ ッ クス や 新 しい機 能 表1.3
セ ラ ミ ック ス の 近 代 史
を発 現 す るセ ラ ミ ッ クス が 誕 生 し,さ
らに は 窒 化 物 や 炭 化 物 な ど,天 然 に は 存 在
しな い非 酸 化 物 系 の セ ラ ミ ック ス もつ く り出 され た.ダ
イ ヤ モ ン ドの よ うな 天 然
鉱 物 の人 工 合 成 も可 能 とな り,こ れ まで 以 上 に工 業 分 野 で の利 用 が 盛 ん に な って 今 日 に至 っ て い る.表1.3に
近 代 に お け るセ ラ ミ ッ ク ス発 展 の 変 遷 を示 す.今
表1.4 機 能 性 セ ラ ミ ック ス の 分類 と用途
日,こ れ ら高 純 度 な 合 成 原 料 か らつ く られ る セ ラ ミッ ク ス は フ ァ イ ン セ ラ ミッ ク ス や ニ ュー セ ラ ミ ッ ク ス,あ
るい は ア ドバ ンス トセ ラ ミ ック ス と呼 ばれ,電
子 ・
光 学 材 料 を は じめ と した 様 々 な 先 端 技 術 分 野 で利 用 され て い る. 1.4 フ ァ イ ン セ ラ ミ ッ ク ス の 種 類 と そ の 用 途 フ ァイ ンセ ラ ミ ッ クス を機 能 別 に分 類 す る と,次 の よ う な6つ の 種 類 に大 別 で き る. ① 電 磁 気 的 機 能 に優 れ た セ ラ ミ ッ クス ② 光 学 的機 能 に優 れ た セ ラ ミ ッ クス ③ 力 学 的機 能 に優 れ た セ ラ ミ ック ス ④ 熱 的機 能 に優 れ た セ ラ ミ ック ス ⑤ 化 学 的機 能 に優 れ た セ ラ ミ ッ クス ⑥ 生 体 関連 機 能 に優 れ た セ ラ ミ ック ス それ ぞ れ の セ ラ ミ ック ス が ど の よ うな と こ ろ に応 用 さ れ,ま た どの よ う な物 質 が そ の よ うな機 能 を示 す の か を表1.4に
示 す.用 途 の大 半 は,情 報 ・通 信 分 野,
環 境 ・エ ネ ル ギ ー 分 野 お よび バ イ オ分 野 に 関連 す る もの で あ る. 1.5 セ ラ ミ ッ ク ス を理 解 す る に は セ ラ ッ ミク ス は 扱 い に くい 材 料 で あ る と同 時 に,様 々 な性 質 を示 す 面 白 い 材 料 で もあ る.こ れ は セ ラ ミ ッ クス の 特 徴 で あ る構 造 の 多 様 性 に起 因 し て い る.こ の た め,セ た,セ
ラ ミ ック ス を理 解 す る上 で は構造 と物 性 に関 す る知 識 が 必 要 とな る.ま
ラ ミッ ク ス をつ く り出 す 製 造 プ ロ セ ス に対 す る理 解 も大 切 で あ る.製 造 プ
ロ セ ス は セ ラ ミ ッ ク ス の 構 造 を形 づ く り,物 性 発 現 と密 接 な 関 係 を もつ.つ
ま
り,製 造 プ ロセ ス を 学 ばず して所 望 の 機 能 を有 す るセ ラ ミ ック ス はつ くれ な い. した が っ て,セ
ラ ミ ッ ク ス に 関 す る理 解 を深 め る に は,そ れ ら三 者 の 相 互 関係 を
学 び研 究 す る こ とが 最 も効 果 的 な 勉 学 法 で あ る.
2 セ ラ ミック スの構 造
セ ラ ミッ ク ス の 用途 は非 常 に 広 く,必 要 な 特 性 は応 用分 野 ご とに異 な る.特 性 の 適 切 な 設 定 に は,材 質 の種 類 を適 切 に選 定 す る だ けで な く,構 造 を制 御 す る こ とが 非 常 に重 要 で あ る.こ
こで は まず,セ
ラ ミ ッ クス の代 表 的 な製 品 に お け る構
造 を説 明 し,次 に セ ラ ミ ック ス の 構 造 の詳 細 を説 明 す る.さ
らに そ れ らの 評 価 法
も記 す. 2.1 種 々 の 製 品 の 構 造 ア ル ミナ セ ラ ミッ ク ス は 多種 多 様 の用 途 に用 い られ て お り,そ の構 造 は用 途 ご と に適 切 に制 御 され る.こ
こで は,透 明 発 光 管,構 造 部 材 お よ び耐 火 断 熱 材 を例
に と り,そ れ らの構 造 を調 べ て み よ う. 図2.1は,発
光 管 用 透 明 ア ル ミナ セ ラ ミ ッ ク ス と,こ れ を 用 い た ラ ン プ で あ
る.こ の ラ ン プ は,ナ
トリウ ム 蒸 気 中 の放 電 で 黄 色 の光 を 出 す もの で,発 光 効 率
が 非 常 に高 く,高 速 道 路 や広 場 の 照 明 な ど に広 く用 い られ て い る.ア ル ミナ が使 わ れ るの は,高 温 に耐 え られ るの と,ナ
ト リウ ム蒸 気 と反 応 しな い こ とに よ る.
ア ル ミナ は,物 質 的 に は サ フ ァ イ ア と同 じで あ り無 色 透 明 で あ るが,こ
図2.1 透 明 アル ミナ管 とそ れ を用 い た ナ トリウ ム ラ ンプ
のセ ラ
図2.2
図2.3
ミ ッ クス は一 般 に は 白 く不 透 明 で 光 を ほ とん ど通 さ な い.不 透 明 の原 因 は,材 料 中 に 多 数 の微 細 な 気 孔 が 残 り,図2.2の る.つ
とお り,そ れ らが 光 を散 乱 す る こ とに あ
ま り気 孔 が 不 透 明 の原 因 と な る の は,泡 立 つ滝 壷 で は微 細 な空 気 の 泡 が 光
を散 乱 して 水 が 白 く不 透 明 に な るの と同 じ こ とで あ る.そ れ らの 気 孔 は 図2.3に 示 した とお り,製 造 プ ロセ ス に お い て,原 料 粉 体 を 固 め た 成 形 体 を高 温 で焼 成 し て 製 造 す る際 に,粉 体 粒 子 間 の 隙 間 が 取 り残 され て生 じた もの で あ る. 米 国GE社
のCobleは,不
透 明 性 が 材 料 中 の 多 数 の 気 孔 に起 因 す る点 に着 目
し,セ ラ ミッ ク ス で も気 孔 を極 力 排 除 す れ ば透 明 に な る と考 えた.こ
う して 開 発
され た セ ラ ミ ック ス が,透 光 性 ア ル ミナ で あ る*1.い まで は,構 造 中 の 気 孔 を排 除 す る こ と に よ り,種 々 の 材 料 が 透 明 化 で き る こ と は常 識 で あ る.レ ー ザ ー基 材 と して 使 用 可 能 な,非 常 に 透 明 性 の 高 い セ ラ ミ ッ クス さ え つ くられ て い る. 図2.4は,半
導 体 製 造 装 置 の 中 核 部 材 と して使 用 され る ア ル ミナ セ ラ ミ ッ ク ス
で あ る.一 般 に材 料 の強 度 は,質
中 に 小 さ な 気 孔 が 少 々(1体
積%程
い て も ほ とん ど低 下 しな い た め,高 強 度 構 造 用 材 料 の 製 造 で は,小 理 に す べ て除 去 す る必 要 は な い.む
度)残
って
さな 気 孔 を無
しろ 強 度 を高 め る上 で 最 も重 要 な の は,材 質
中 の粒 子 を細 か くす る こ と と,特 に後 で詳 し く説 明 す るが,粗 大 な気 孔 や 粒 子 を 含 ま な い こ とで あ る.一 方,気 *1 当 時(1950年
頃)は
,セ
孔 を完 全 に 除 去 し透 明性 を得 る に は,高 温 で 長 時
ラ ミ ック ス を透 明 化 す る こ とは 不 可 能 で あ る と考 え られ て い た.こ
識 を 本 文 中 の よ うな 科 学 的 考 察 に基 づ き打 破 し,セ こ とは,セ
の常
ラ ミ ッ ク ス で も科 学 が 非 常 に役 立 つ こ と を実 証 した
ラ ミ ック ス の 歴 史 に お け る画 期 的 な 業 績 で あ る.
図2.4 半 導体 製造 用 ア ル ミナ 部 材
間焼 成 す る必 要 が あ り,そ の間 に構 造 中 の 粒 子 が 粗 大 に成 長 して し ま う.し たが っ て,透 明 に は な っ て も,強 度 は最 高 と はな ら な い.高 強 度 ア ル ミナ セ ラ ミ ック ス で は気 孔 の 残 留 は若 干 犠 牲 に して,粗 大 粒 子 の な い細 か な粒 子 か らな る構 造 を 得 る こ とが 最 も重 要 な 点 で あ る.も ち ろん,こ
の材 料 は不 透 明 で あ る.
耐 火 断 熱 材 で は耐 熱 性 と と もに,熱 伝 導 性 を下 げ る こ とが 最 重 要 で あ る.ほ
と
ん どの 応 用 で は,強 度 は使 用 中 に材 料 が簡 単 に崩 れ な い 程 度 以 上 あ れ ば よ い.こ れ に は,気 孔 を 多 くし た 構 造 を つ く る.気 孔 は まず,熱
伝 導 を下 げ る 作 用 を も
つ.そ れ は,微 細 な気 孔 内 で は 内部 の気 体 は対 流 で きず,ま た 静 止 した 気 体 は一 般 に非 常 に低 い 熱 伝 導 しか もた な い か らで あ る.多 孔 材 料 で は,熱 が 気 孔 を通 過 す る に は,気 孔 の 一 方 の 面 か ら反 対 側 の面 へ の 輻 射,あ
るい は気 孔 の 周 囲 の 物 質
に お け る熱 伝 導 しか な い が,前 者 は非 常 な 高 温 以 外 は非 常 に低 い.こ れ に よ り, 多 孔 体 で は熱 伝 導 が 非 常 に低 い. た だ し,超 高 温 用 の 断熱 材 で は,ま た別 の構 造 が 必 要 で あ る.そ れ は 白 熱 す る 高 温 で は,熱
は輻 射 に よ り気 孔 の 一 方 の 面 か ら他 の 面 へ と非 常 に よ く伝 わ るの
で,気 孔 は熱 伝 達 に対 す る障 害 とな らな くな るた めで あ る.気 孔 の 断熱 性 能 は温 度 上 昇 と と もに 急 激 に低 下 す るた め,断 熱 性 を 得 る に は別 の 手 段 が 必 要 で あ る. セ ラ ミ ッ ク ス は 上 で 説 明 した 以 外 に,電 気 ・電 子 材 料,磁
性 材 料,生 体 材 料 な
ど,多 種 多様 な 用途 に用 い られ るが,そ れ らの 用 途 で も,適 切 な性 能 を得 る に は 材 料 の構 造 の制 御 が 非 常 に重 要 で あ る. 2.2 微
構
造
セ ラ ミ ッ ク ス に は す で に述 べ た微 細 な結 晶 粒 や 気 孔 以 外 に,ガ
ラ ス相,気
孔や
き裂 な どが 存 在 す る.こ れ ら構 成 要 素 が つ くる構 造 を,微 構 造 と呼 ぶ.す
でに図
2.3に 示 した とお り,微 構 造 はセ ラ ミ ック ス を製 造 す る 際 に,粉 体 粒 子 の 集 合 体 か ら な る成 形 体 を 高 温 で 焼 成 す る際 に形 成 され た もの で あ る.ま た,原 料 粉 体 と 製 造 プ ロ セ ス に よ り,広 範 囲 に変 化 し う る も の で あ る.し た が って 適切 な制 御 に よ り,望 ま しい もの とす る こ とが 可 能 で あ る.セ ラ ミッ ク ス の特 性 が構 造 と密 接 に 関 係 す る こ と は す で に説 明 した.ま た,特 性 を す べ て の 点 で 同 時 に最 高 とす る の は非 常 に難 し い こ と も述 べ た.あ
る特 性 を最 良 に す る に は,何 か別 の 特 性 を犠
牲 に しな くて は な らな い.材 料 開 発 の重 点 は,犠 牲 を 最 小 限 と して,必 要 な特 性 を 最 高 とす る こ とに あ る.こ れ に は,セ
ラ ミッ ク ス の構 造 を理 解 し,ま た 構 造 と
特 性 の 関 係 を正 確 に理 解 し な くて は な らな い. 2.2.1 微 構 造 の 要 素 図2.5に,セ
ラ ミ ッ クス の 微 構 造 を形 成 す る主 要 な構 成 要 素 を模 式 的 に示 す.
この 図 に は 多 くの 構 成 要 素 を ま とめ て記 して あ る が,1つ
の セ ラ ミッ ク ス 中 に こ
れ らの 構 造 が 必 ず 同 時 に 存 在 す る とは 限 らな い.図2.6は
微 構 造 の一 例 とし て,
固相 焼 結 で作 製 し た 高 密 度 ア ル ミナ セ ラ ミ ッ クス の 断 面 の 顕 微 鏡 写 真*2を 示 す. 多 角 形 の 領 域 が 個 々 の粒 子 で あ り,結 晶粒 と呼 ば れ る.こ の 微 構 造 で は,ガ ラ ス 相 や き裂 は認 め られ な い. 結 晶 粒 とは,1∼100μm程
度 の 大 き さ を もつ 結 晶 で あ る.そ れ ら の 内 部 に お
け る原 子 あ る い は イ オ ンの 充〓 状 態 は,そ の 物 質 の単 結 晶 の それ と同 じで あ る.
図2.5
微構造模式図
*2 セ ラ ミ ック ス の 断 面 を研 磨 した 後 に,腐 食 処 理(エ る.エ
図2.6
ア ル ミナ 微 構 造 写 真
ッ チ ング と い う)を 行 っ て か ら顕 微 鏡 観 察 す
ッ チ ン グ す る こ と に よ り,結 晶 粒 子 の境 界 が は っ き り と現 れ る(2.3.2項
参 照).
当 然 な が ら,結 晶 粒 の もつ 密 度,比
熱,格
子 定 数 な ど,他 の 多 くの 性 質 は単 結 晶
の そ れ と同 じ で あ る.結 晶 粒 の大 き さ お よ び そ の 分 布 は,そ れ ぞ れ 粒 径 お よび 粒 径 分 布 と呼 ばれ る.こ れ ら粒 子 は,図2.3に
示 し た と お り,原 料 粉 体 中 の 粒 子
が,焼 成 中 に そ の寸 法 や 形 状 を変 え て形 成 され た も の で あ る.な お,結 般 に双 晶 と呼 ばれ る もの が あ る の と同 様,結
晶 に は一
晶 子 も双 晶 か らな る こ とが あ る.双
晶 は2個 の 結 晶 が 特 定 の 角 度 関係 で 結 合 した もの で あ り,厳 密 に は単 結 晶 で は な い が,性 質 は結 晶 とほ ぼ 同 様 で あ るた め,以 後 特 別 の ケ ー ス以 外 に は単 結 晶 と同 様 に扱 う. 気 孔 は粉 末 成 形 に お い て 粉 体 粒 子 の 間 に存 在 した 空 間 が,焼
結 後 に残 され た も
の で あ る(図2.3).材
料 表 面 とつ な が っ て い る もの を 開 気 孔,外
れ た もの を閉 気 孔(孤
立 気 孔)と
した.ま
い う.図2.7に,閉
部 か ら隔 離 さ
気 孔 と開 気 孔 を模 式 的 に示
た,結 晶 子 の 間 に存 在 す る も の を粒 界 気 孔,結 晶 子 内部 に存 在 す る もの
を粒 内気 孔 と呼 ぶ.気
孔 の 形,量
非 常 に 大 きな 影 響 を及 ぼ す.フ
お よ び そ れ らの 分 布 は,セ ラ ミッ ク ス の特 性 に ィル タ ー,ガ
ス セ ンサ ー お よ び触 媒 坦 体 な どで
は,気 体 や 液体 が 材 料 内 部 に入 れ な くて は な らな いた め,特 性 は開 気 孔 と密 接 に 関 係 す る.ま た 気 孔 は 断 熱 性 能 を上 げ る が,材 料 の 強 度,電 気 絶 縁 耐 力 な ど多 く の 特 性 を下 げ る.し た が って,多
くの 応 用 で は,気 孔 は少 な い 方 が よ い.材 料 中
の 気 孔 の割 合 は,材 料 の 見 か け の 密 度 と密 接 に関 係 す る.し た が って,材 料 の 密 度 は特 性 を反 映 す る便 利 な 尺 度 で あ り,広 く測 定 され る もの で あ る.こ の点 につ い て は2.4.2項
で さ らに詳 し く説 明 す る.
粒 界 は結 晶粒 の 間 の 結 合 す る部 分 で あ り,そ の 代 表 は図2.5の る もので あ る.こ れ らの 線 は,2個
中 で 線 で表 され
の粒 子 の結 合 面 を観 察 面 で 切 断 した と きの 交
線 で あ る.実 際 に は これ ら は三 次 元 空 間 中 に 広 が る面 の一 部 で あ る.厳 密 に は二
図2.7
セ ラ ミ ッ クス の 気 孔
粒 子 粒 界 と呼 ば れ る.図 に は3個 の粒 子 が 出 会 う粒 界 もあ る.こ れ は三 粒 子 粒 界 で あ り,三 重 点 と も呼 ば れ る.三 粒 子 粒 界 は空 間 的 に は線 で あ る.4個
の粒 子 が
出 会 う粒 界 は 空 間 的 に は点 で あ り,四 粒 子 粒 界,あ
ばれ る もの
るい は四 重 点 と呼
で あ る.こ れ が 実 際 に認 識 され る こ と は まれ で あ る が,現 実 に は微 構 造 中 に は多 数 存 在 す る. これ ら粒 界 で の 原 子 配 列 は,図2.8に
示 す とお り結 晶 内 部 の もの と は異 な る.
した が っ て,粒 界 付 近 の原 子 間 結 合 や電 子 の エ ネル ギ ー状 態 な どは,結 晶 内 部 の もの とは異 な る と予 想 さ れ る.ま た,原 子 間 の 距 離 は局 所 的 に通 常 の 結 晶 内 の も の と は異 な り,し た が っ て 原 子 間 の空 隙 も大 小 様 々 で あ る.一 般 に セ ラ ミ ッ ク ス は 種 々 の不 純 物 を含 むが,そ
れ らの 中 で 寸 法 の大 きな 原 子 や イオ ンは,結 晶 内 に
入 る際 に は周 囲 の 原 子 を押 しや り,自 身 の 入 る空 間 を 広 め る必 要 が あ るた め,粒 界 の 大 き な 隙 間 に 入 る傾 向 が あ る.ま た,小
さ な もの は小 さ な隙 間 に 入 る.し た
が っ て,不 純 物 は通 常 の結 晶 格 子 内 に均 一 の 分 布 す る よ り,む しろ粒 界 に集 ま る 傾 向 が あ る.図2.9に
示 した とお り,粒 界 に は不 純 物 が濃 縮 され,粒
界 付 近 の化
学 組 成 は結 晶 内 と は し ば しば 異 な る. 粒 界 の もつ 種 々 の 性 質 は,し い.セ
た が っ て 結 晶 の そ れ と は 非 常 に異 な る 場 合 が 多
ラ ミ ック ス 全 体 の性 質 は し ば しば 粒 界 に よ り支 配 され,粒 界 の 影 響 が 特 に
大 き い とき に は,ほ
ぼ粒 界 だ け の性 質 で 決 ま る こ と もあ る.粒 界 の性 質 が 強 く現
れ る とき に は,5.2.4項
で紹 介 す るバ リス タ やPTCRな
どの よ う に,セ ラ ミ ッ ク
ス の 性 質 を結 晶 自体 の 性 質 だ けで は全 く説 明 で きな い こ と さ え あ る.双 晶 に お け
(a) 接合前
(b) 接 合後
図2.8 粒 界 の構 造
図2.9 粒 界 の不 純 物 偏 析
図2.10 FCC格 太 枠 が 単 位 胞.太
る結 晶 の 結 合 面 は図2.10に
子 の 双 晶粒 界
線 の 球 は紙 面 の上 下 に ずれ て い る.
示 した とお り,粒 界 の特 別 な もの で あ る.こ こで の 原
子 配 列 の 乱 れ は,一 般 の粒 界 の もの よ り少 な い.し
た が って,そ
の性 質 は通 常 の
粒 界 の もの とは 非 常 に異 な るた め,一 般 の粒 界 と同様 に は取 り扱 わ な い.す で に 説 明 した とお り,双 晶 は む し ろ1個 の 結 晶 子 と同 様 に取 り扱 わ れ る こ とが 多 い. マ ト リッ ク ス を構 成 す る,主 要 相 と は異 な る結 晶 相 や ガ ラス 相 の こ とを二 次相 と呼 ぶ.二
次 相 は,粒 子 内 お よ び粒 界 の いず れ に も認 め られ る.ガ ラ ス相 は酸 化
ケ イ 素 や 酸 化 ホ ウ 素 な ど,ガ ラ ス を形 成 す る傾 向 を もつ物 質 を含 む系 で は しば し ば認 め られ る.こ れ らの 物 質 の起 源 に は,焼 結 を容 易 に す るた め 意 図 的 に添 加 さ れ る焼 結 助 剤,不
純 物 と して 混 入 した もの,な
らび に窒 化 ケ イ 素 や 炭 化 ケ イ素 な
どの 非 酸 化 物 材 料 で は,粉 体 の 製 造,保 管 中 あ るい は製 造 時 に表 面 が 酸 化 して生 成 した 酸 化 物 が あ る.例
えば,耐 熱 材 料 の ガ ラ ス 層 が す べ て の粒 界 に フ ィル ム状
に存 在 す る と,高 温 で は そ の軟 化 の た め粒 子 が 滑 り,材 料 の強 度 が 低 下 す る.二 次 相 の形 態 や 分 布 は,特 性 と密 接 に関 係 す る.熱 伝 導 に及 ぼ す例 に つ い て は,後 述 す る. 界 面 とは,結 晶 粒 ど う しの 間,あ る.ま
る い は結 晶 粒 と二 次 相 との 間 の 結 合 面 で あ
た表 面 とは,結 晶 粒 や二 次相 と気 孔 との境 界 で あ る.界 面 や 表 面 は,不 純
物 が 濃 縮 さ れ る,あ
る い は排 除 さ れ る場 で あ る な ど,多
くの 面 で 粒 界 と同様 に特
異 な性 質 を もつ. 粒 界,表 面,界
面 に は それ ぞれ エ ネ ル ギ ー が 付 随 す る.身 近 な例 は表 面 エ ネ ル
ギ ー で あ る.表 面 エ ネ ル ギ ー とは,単 位 面 積 の表 面 を つ く るの に必 要 な エ ネ ル ギ
ー で あ る dEと
.す
な わ ち,新
す る と,表
た に 形 成 す る 表 面 の 面 積 をdA,必
要 なエ ネル ギ ー を
面 エ ネ ル ギ ー γ は 次 式 で 与 え られ る. γ=dE/dA
同 様 に,粒 界 お よび 界 面 の形 成 に はエ ネ ル ギ ー が 必 要 で あ り,そ れ ぞ れ粒 界 エ ネ ル ギ ー γGBお よび 界 面 エ ネ ル ギ ー γBが付 随 す る.多 結 晶 セ ラ ミ ッ ク ス の もつ 全 エ ネ ル ギ ー は表 面,粒 高 い.こ
界 お よび界 面 の エ ネ ル ギ ー の分 だ け,単 結 晶 の もの よ り
れ らエ ネ ル ギ ー は後 述 す る とお り,セ ラ ミ ック ス の焼 結 に お け る駆 動 力
とな る.つ
ま り,系 は そ れ らエ ネ ル ギ ー を下 げ る よ う変 化 す る.ま た,粒 界 や 表
面 に不 純 物 が 集 ま る の は,そ れ に よ りこれ ら領 域 の エ ネ ル ギ ー を下 げ られ る か ら で あ る.つ
ま り,不 純 物 は寸 法 や 電 荷 が 結 晶 内 の 正 規 の イ オ ン とは異 な る た め,
結 晶 内 に い る よ り,イ オ ン配 列 が 乱 れ た粒 界 や 表 面 に位 置 す る方 が 安 定 だ か らで あ る. マ ト リ ッ ク ス粒 子 に比 較 して 異 常 に大 き い結 晶 子 を異 常 成 長 粒 子,あ 大 粒 子 な ど と呼 ぶ.こ
るいは巨
れ らの 巨 大 粒 子 は,原 料 粉 体 中 の一 部 の粒 子 が粒 成 長 に よ
り製 造 過 程 中 に大 き く成 長 して 形 成 され た もの で あ る.そ れ ら は多 くの 特 性 に悪 影 響 を及 ぼ す た め,セ ラ ミッ ク スの 製 造 で は そ の形 成 を防 止 す る必 要 が あ る. そ の 他,微 構 造 中 に は,き 裂 が 存 在 す る こ と もあ る.き 裂 の 多 くは不 適 切 な製 造 操 作 で 生 じ る もの で,種 々 の 特 性 に非 常 に悪 い影 響 を及 ぼ す.し か し例 え ば チ タ ン酸 アル ミニ ウム な ど,結 晶 の 熱 膨 張 の 異 方 性 が きわ め て大 きい 特 別 の 物 質 で は,焼 成 温 度 か らの 冷 却 時 に 各粒 子 の 熱 収 縮 に よ り粒 界 に は大 きな 内 部 応 力 が 発 生 す るた め,良 品 で あ っ て も結 晶 子 間 に無 数 の 微 細 な き裂 を含 む こ と も あ る. 強 磁 性 体 や 強誘 電 体 で は,さ
ら に ドメ イ ン と呼 ば れ る構 造 が 存 在 す る.ド メ イ
ン 中 で は,磁 化 や 電 気 分 極 の 方 向 が そ ろ って い る.磁 性 体 中 の ドメ イ ン は,外 部 か ら印 可 され る磁 界 に よ り容 易 に 変 化 す る. 2.2.2 微 構 造 と特 性 の 関 係 セ ラ ミ ッ ク ス の 特 性 に は表2.1に
示 す とお り,微 構 造 に よ り非 常 に強 い 影 響 を
受 け る もの と,あ ま り受 け な い もの が あ る.前 者 を構 造 敏 感 な特 性,後
者 を構 造
鈍 感 な特 性 と呼 ぶ. a. 構 造 敏 感 な特 性
これ ら特 性 は,構 造 が 材 料 全 体 の 特 性 に対 して 決 定
的 な 影 響 を及 ぼ す もの で あ る.特 性 は電 気 伝 導性 の よ う に,微 構 造 の わ ず か な違 い で 何 億 倍 以 上 も変 化 す る こ と さえ あ る.構 造 敏 感 な 特 性 は構 成 要 素 の 平 均 値 で
表2.1 性 質 の分 類
決 ま らず,加 成 性 に従 わ な い もの で あ る.こ の強 い構 造 依 存 性 は,そ れ ら特 性 を 支 配 す る要 因 か ら理 解 で き る. ⅰ) 強 度 特 性:セ
ラ ミ ッ ク ス の 破 壊 は,材 料 中 に お け る原 子 間 結 合 の 切 断
に よ り生 じ る もの で あ り,強 度 は原 子 間 結 合 を切 る た め の 力 と密 接 に関 係 す る. セ ラ ミ ッ ク ス 中 の 原 子 は,イ オ ン性 や 共 有 性 の 強 い化 学 結 合 で 結 ば れ て い る た め,そ
の切 断 に は一 般 に 数 十GPa(1mm2当
た り数 万N)の
応 力 を必 要 とす る.
これ は,通 常 の 鉄 鋼 材 料 よ り数 十 倍 高 い 値 で あ る. 一 方,現 実 の セ ラ ミ ッ クス で は,上 の 値 の1%程
度 の応 力 で 壊 れ て し ま う.こ
れ は,セ ラ ミ ッ ク ス の破 壊 強 度 が 微 構 造 中 の 破 壊 源,具 体 的 に は材 料 中 の傷 の存 在 に非 常 に敏 感 な た め で あ る.例 え ば図2.11の
とお り,き 裂 を 含 む セ ラ ミ ック
ス に応 力 が か か る と き,そ の 先 端 に は 応 力 集 中 現 象 に よ り力 が 集 中 す る.材 料 に か か る平 均 の応 力 が 低 い と きで も,こ の 集 中 応 力 は物 質 中 の 化 学 結 合 を切 断 す る レベ ル に達 して し ま うの で あ る.言 い換 え る と,そ れ ら傷 の 先 端 に は,平 均 値 よ り100倍 程 度 高 い 応 力 が 容 易 に発 生 す る.身 近 な例 は,ガ
ラスを 「 切 る」 こ とで
あ る.傷 の な い ガ ラ ス管 は簡 単 に は割 れ な い が,表 面 に小 さ な傷 を 入 れ る と,容 易 に切 る こ とが で き る.応 力 集 中 の 原 因 に は,き 裂 以 外 に気 孔 や 粗 大粒 子,二
次
相 な ど,種 々 の 微 構 造 因 子 が あ る.一 般 に 応 力 集 中源 が 幾 何 学 的 に相 似 形 の と
図2.11
き裂 周 辺 の 応 力 分 布
き,応 力 集 中 の 程 度 は,そ の 応 力 集 中 源 の 寸 法 の1/2乗
に 比 例 す る.し た が っ
て,強 度 は き裂 な どの 寸 法 が 増 す ほ ど下 が る.こ れ は,微 構 造 中 の そ れ らの 応 力 集 中 要 因 の寸 法 を小 さ くす る と,セ ラ ミッ ク ス の強 度 が 増 す こ とを意 味 す る.も し応 力 集 中源 の 寸 法 を 原 子 と同 じ程 度 にで き る と,も はや 応 力 集 中 は起 こ らず, セ ラ ミッ ク ス の も つ本 来 の きわ め て高 い 強 度 が 実 現 で き る. な お 経 験 的 に,セ
ラ ミッ ク ス の強 度 は結 晶 粒 の寸 法,つ
ま り粒 径 が 小 さ くな る
ほ ど高 くな る こ とが 知 られ て い る.こ れ は最 近 の研 究 に よ る と,粒 径 を小 さ くす る と材 質 中 の 破 壊 源 の寸 法 も小 さ くな る傾 向 が あ る た め で あ る.こ の こ と に よ り,高 強 度 材 料 の 開 発 で は,粒 径 を で き るだ け細 か くす る努 力 が な され る. ⅱ) 電 気 伝 導 性:結
晶 自体 が 高 い 電 気 伝 導 性 を もつ 場 合 で も,材 料 全 体 と
して の 電 気 伝 導 性 が 高 い と は限 ら な い.図2.12に
示 す とお り,そ れ ら結 晶 子 が
薄 い 絶 縁 層 で 囲 まれ て し ま う と,材 料 は全 体 と し て は電 気 を 通 せ ず 絶 縁 体 とな る.そ れ ら絶 縁 体 が 孤 立 した 粒 子 と して材 料 中 に点 在 す る場 合 に は,電 気 伝 導体 とな る. 粒 界 は,そ
こ に特 に粒 界 層 が 認 め られ な い場 合 で も,し ば し ば電 気 伝 導 性 に非
常 に強 い 影 響 を 及 ぼ す.こ れ は,粒 界 の不 純 物 偏 析 や粒 界 の 電 子 的 エ ネル ギ ー順 位 と関 係 す る.こ れ らの 現 象 は,後 述 の バ リ ス タ ー,PTCRお
よ び粒 界 絶 縁 層
型 コ ンデ ン サ ー な ど に利 用 され て い る. 図2.13に
示 す とお り,導 電 性 の粒 子 と絶 縁 性 の粒 子 が 混 在 す る と き,材 料 全
体 の 電 気 伝 導 性 はパ ー コ レ ー シ ョ ン理 論 で 説 明 さ れ る.簡 単 の た め,図 の とお り,正 方 形 の 同 じ寸 法 の板 状 粒 子 が 二 次 元 的 に並 ぶ と き を考 え よ う.各 粒 子 は絶 縁 体,ま
た は導 電 体 で あ る.電 気 は粒 子 が 辺 で 接 す る と き に は そ れ ら の粒 子 間 を
流 れ られ るが,隅
で 接 す る と き に は流 れ られ な い とす る.こ
こで,各 粒 子 の位 置
に どち らの 粒 子 が 入 る か は,そ の 存 在 割 合 で 決 ま る.こ の場 合,絶
図2.12 粒 界の絶縁相 の分布 と電気伝導性
縁 粒 子 の量 が
図2.13 伝 導 相 と絶 縁 相 の 割 合 に よ る材 料 と しての 伝 導 の変 化 黒 の伝 導相 は,そ
の 割 合 が 増 す に従 い急 激 に連 続 した相 を形 成 す る.
多 い と,伝 導 粒 子 が連 結 で きず,材 値 に達 す る と(図 で は60%程
料 は絶 縁 体 で あ る.伝 導 粒 子 の量 が あ る臨 界
度),電
気 は伝 導 粒 子 を伝 わ り,一 方 の 端 か ら他 端
に到 達 可 能 とな る.伝 導粒 子 の量 が 臨 界 値 を超 え る と,粒 子 の量 と と も に そ れ ら が 互 い に連 結 す る確 率 は飛 躍 的 に 高 ま り,し た が って 材 料 全 体 と して の 伝 導 性 は 急 激 に増 す. ⅲ) 熱 伝 導 性:電
気 伝 導 性 と同 様 に,結 晶 子 自体 の 熱 伝 導 性 が 非 常 に高 く
て も,そ れ らが 熱 伝 導 性 の低 い二 次相 で 囲 ま れ て い る と,材 料 と して の 熱 伝 導 性 は非 常 に低 くな る.そ の た め,最 近 の 高 熱 伝 導 性 セ ラ ミッ ク ス の 開発 で は,微 構 造 の 設 計 が 非 常 に重 要 で あ る. 高 い 熱 伝 導 は,IC基
板 や パ ワー モ ジ ュ ー ル 基 板 な どの温 度 上 昇 を最 小 限 に抑
え る の に必 要 で あ る.一 般 に,多
くの セ ラ ミ ック ス は,金 属 よ り熱 伝 導性 が 低 い
が,窒 化 ア ル ミニ ウ ム セ ラ ミッ ク ス は,理 論 的 に は 金 属 ア ル ミニ ウ ム に 匹 敵 す る 高 い 熱 伝 導 性 と電 気 絶 縁 性 を もつ た め,こ の 用 途 に最 適 で あ る.図2.14の
模式
図 の とお り,窒 化 アル ミニ ウム 粉 体 に 含 まれ る微 量 の 酸 素 は熱 伝 導 を 阻 害 す る た め,そ
の ま まセ ラ ミ ック ス に し て も高 い 熱 伝 導 性 は得 られ な い.窒 化 ア ル ミニ ウ
ム セ ラ ミ ック ス で は それ を 除 去 す る た め,焼 結 助 剤 と して 酸 化 イ ッ トリ ウム を添 加 して あ る.酸 化 イ ッ トリ ウム は,焼 結 時 に粉 体 中 の 酸 素 と反 応 して ガ ー ネ ッ ト を形 成 し,そ の 結 晶 は窒 化 ア ル ミニ ウ ム粒 子 の粒 界 三 重 点 や 四 重 点,す
な わ ち3
個 あ る い は4個 の 粒 子 が 出会 う部 分 に析 出 し,粒 子 の 接触 面 す なわ ち二 粒 子 粒 界 に は析 出 し な い.そ
の た め,図2.14に
示 し た とお り,酸 素 を 除 去 さ れ た 高 熱 伝
導 性 の 窒 化 ア ル ミニ ウム 粒 子 が粒 界 を介 して 直 接 結 合 し,セ ラ ミッ ク ス全 体 と し て高 い 熱 伝 導 性 が 実 現 され る. b. 構 造 鈍 感 な性 質
構 造 鈍 感 な 性 質 に は,比 熱,比
重,熱
膨 張,弾
性率
図2.14
微 構 造 と熱 伝 導
な どが あ る.こ れ らは,材 料 全 体 の特 性 が,構 造 中 の 主 相 の特 性 で 支 配 され る も の で あ り,微 構 造 に よ る影 響 は ほ と ん どの もの で は 多 くて も10%程 10倍 に も変 化 す る こ とは な い.例
え ば,同 一 物 質 の 比 熱 は材 料 の 形 態 が 単 結 晶,
焼 結 体 あ る い は粉 体 の状 態 で あ っ て も,ほ い て,こ
度 で あ る.
とん ど影 響 され な い.材 料 の 応 用 に お
れ ら構 造 鈍 感 な特 性 だ けが 必 要 な 場 合 に は,微 構 造 の制 御 は あ ま り重 要
で は な い. 2.3 微 構 造 の 評 価 法 微 構 造 の 調 べ 方 に は い くつ か あ る.簡 単 に 調 べ る に は,セ ラ ミ ッ ク ス を 破 壊 し,そ の 破 面 を走 査 型 電 子 顕 微 鏡 な どで観 察 す る.構 造 を定 量 的 に調 べ る に は, 研 磨 面 や そ の エ ッチ ン グ面 を光 学 顕 微 鏡 や走 査 型 電 子 顕 微 鏡 で 観 察 す る が,こ
れ
はや や手 間 が か か る.微 構 造 を調 べ る の に,最 近 で は透 過 観 察 法 も利 用 され 始 め て い る. 2.3.1 研 磨 面 の 観 察 セ ラ ミッ ク ス は硬 い た め,小 さ な 試 料 を手 で 保 持 して 削 るの は難 しい.研 磨 で は試 料 を樹 脂 な どに埋 め 込 み,こ れ を ダ イ ヤ モ ン ド砥 粒 を 用 い,そ
の粒 径 を徐 々
に 細 か くし て削 る.最 終 的 に は鏡 面 が 得 られ る まで 研 磨 す る.こ の 際,高 材 料 は特 に硬 い た め,自 動 研 磨 器 が 望 ま しい が,多
温構造
くの電 子 材 料 用 セ ラ ミ ッ ク ス
は 硬 度 が 比 較 的 低 く,半 手 動 で も研 磨 可 能 で あ る. 得 られ た研 磨 面 を光 学 顕 微 鏡 で 観 察 す る と,気 孔 や 二 次 相 の存 在 が 認 め ら れ
図2.15
三 次 元 構 造 の 研 磨 面 に よ る観 察
三 次 元 構 造 を任 意 の 平 面 で 切 る と き,平 面 上 の 面積 割 合 は,そ 体 積 中 の体 積 分 率 に等 しい.こ えや す い.平
の構造 の
れ は立 体 を小 さ な ピ クセ ル に分 け る と考
面 で 切 り取 られ る ピ ク セ ル は,確
率的にその立体の全体積
に 占 め る ピ ク セル 割 合 に等 し い.
る.そ の 一 例 を図2.6に
示 して あ る.黒
くみ え る も の が 気 孔 で あ る.図2.15に
示 す とお り,材 料 中 に お け る そ れ ら各 相 の存 在 量 は画 像 の 解 析 で 定 量 的 に求 め ら れ る.つ
ま り,材 料 中 の そ れ らの 存 在 量(体 積 分 率)は 面 積 分 率,す
面 の 面 積 に 占 め る そ れ ら構 造 の面 積 で 与 え られ る.例 え ば,多 は約2%程
度 の気 孔 を含 む が,こ
の場 合 に は,研 磨 面 の2%を
なわち研磨
くの セ ラ ミッ ク ス 気孔部 分が 占め る
こ と とな る. 2.3.2 エ ッチ ン グ 面 の 観 察 こ の観 察 で は,各 結 晶 子 の形 状 が 明 瞭 とな り,そ れ らの 形 や 寸 法 を調 べ る こ と が で き る.エ
ッチ ン グ に は,化 学 的 方 法 と熱 的 方 法 が あ るが,後 者 が 一 般 的 で あ
る.標 準 的 な 処 理 条 件 は,焼 結 温 度 よ り50∼100℃ 例 を図2.6に
低 温 で1時 間 で あ る.す で に
示 した とお り,構 造 が 可 視 化 さ れ るの は,い ず れ も粒 界 や粒 子 の 性
図2.16
セ ラ ミ ック ス の研 磨 とエ ッチ ン グ に よ る粒 界 溝 の形 成
質 が そ の 方 位 に よ り変 化 す る こ とや,図2.16の
よ う に 粒 界 の もつ 特 異 な性 質 を
利 用 す る もの で あ る. 等 方 的 な構 造,す
な わ ち方 向依 存 性 の な い構 造 を もつ セ ラ ミ ック ス で は,平 均
粒 径 を次 の とお り求 め られ る.ま ず,得
られ た写 真 上 に 円 また は直 線 を 引 く.次
に,直 線 と粒 界 との 交 点 の 数 を数 え る.直 線 が3個 きに は,こ れ を1.5と を計 算 す る.こ
して 数 え る.次 に 交 点1個
の粒 子 の 交 わ った 点 を通 る と
当 た りの 弧 あ る い は直 線 の長 さ
の値 は 平 均 粒 径 で は な い.直 線 の長 さ は粒 子 の 直 径 よ り常 に小 さ
い か らで あ る.結 晶 粒 を球 形 を仮 定 す る と,平 均 粒 径 は この 長 さ の1.5倍
であ
る. 2.4 気 孔,気
孔 率 お よび 密度
セ ラ ミ ック ス で は,気 孔 の 量 や 寸 法 お よび それ らの 分 布 は特 性 に非 常 に大 きな 影 響 を 及 ぼ す.し
た が っ て,そ れ らを適 切 に評 価 す る必 要 が あ る.こ れ に は高 密
度 焼 結 体 で は微 構 造 観 察 も利 用 で き るが,多
孔 体 を含 む 一 般 的 な もの で は,気 孔
の 直 接 評 価 や 密 度 測 定 が一 般 的 で あ る. 2.4.1 気 孔 径 と分 布 気 孔 の 寸 法,量
お よ び そ の 分 布 を調 べ る に は,水 銀 圧 入 法 が 用 い られ る.こ の
方 法 は,水 銀 が セ ラ ミ ック ス に よ りは じか れ る性 質 を利 用 す る もの で あ る.す な わ ち,水 銀 を セ ラ ミッ ク ス気 孔 な どの 細 孔 中 に 押 し込 む に は,圧 力 を か け る必 要 が あ る.こ の 圧 力 は,細 孔 の寸 法 が 小 さ くな る ほ ど高 い.し た が っ て,細 孔 の 評 価 を行 うに は,試 料 を水 銀 の入 っ た 高 圧 容 器 に 入 れ,こ
れ に圧 力 を加 え る.こ の
と き の試 料 中 へ の水 銀 の浸 入 量 と圧 力 との関 係 を求 め,こ れ を解 析 して細 孔 の 寸
図2.17
気 孔 径 分 布(累
積 曲線 と微 分 曲 線)
法 とそ の量 を求 め る もの で あ る. デ ー タ は一 般 に 図2.17の
とお り,累 積 気 孔 径 分 布,あ
るい は微 分 気 孔 径 と し
て 図 示 され る.前 者 は,気 孔 径 を横 軸 に と り,縦 軸 に は そ の気 孔 よ り大 き な気 孔 の 量 を示 す もの で あ る.後 者 は,各 気 孔 の量 を気 孔 径 に対 して プ ロ ッ トした もの で あ る. 2.4.2 密 度 と気 孔 率 セ ラ ミッ ク ス に は 開 気 孔,閉 気 孔 が 含 まれ る.密 度 とは物 体 単 位 体 積 当 た りの 質 量 で あ るが,そ
の体 積 と して選 ぶ も の に よ り,真 密 度,見
か け密 度 お よ びか さ
密 度 が あ る. 真 密 度 と は,セ ラ ミッ ク ス の体 積 と して,図2.7の
固 体 の部 分 だ け を とる もの
で あ る.こ れ は固 体 部 分 に つ い て の 実 際 の 密 度 とな るた め,こ
う呼 ば れ る.当 然
な が ら真 密 度 は,微 構 造 に よ り影 響 され な い.見 か け密 度 と は,図2.7の
開気孔
を 除 く体 積 当 た りの 質 量 で あ る.か さ密 度 と は,図2.7の
す べ て の気 孔 を含 め た
物 体 の体 積 当 た りの 質 量 で あ る.こ の体 積 は 球,角 柱,板
な ど単 純 形 状 の物 体 で
は,そ の 外 形 寸 法 か ら求 め る もの と同 じで あ る.相 対 密 度 と は,見 か け密 度 や か さ 密度 と,真 密 度 との 比 で あ る.気 孔 を 含 ま な い 物 体 で は,相 対 密 度 は1,あ い は100%で
る
あ る.
全 気 孔 率 とは,す べ て の気 孔 を含 め た物 体 単 位 体 積 中 に 含 まれ る気 孔 の割 合 で あ る.見 か け気 孔 率 とは,開 気 孔 を除 く物 体 の 単 位 体 積 当 た りに含 まれ る 閉気 孔 の割 合 で あ る. 密度 や 気 孔 率 の測 定 は水 銀 圧 入 法 も使 わ れ るが,よ
り簡 単 に は空 気 中 や水 中 で
の重 量 測 定 に よ る方 法 が 用 い られ る.こ の 方 法 で は,ま ず 乾 燥 試 料 の質 量Wを 求 め る.次
に これ を水 中 で5時
W1を 求 め,さ
間 煮 沸 後,水
中 で 冷 却 す る.そ
の水 中 での質量
ら に試 料 表 面 の 水 を軽 く拭 った 後 の空 気 中 で の質 量W2を
これ らの 値 か ら,水 の比 重 を1,空 密 度 は次 の とお り求 ま る. み か け 密 度:W/(W−W1),
相 対 み か け密 度: み か け 気 孔 率:
求 め る.
気 の質 量 を無 視 し,真 密 度 を ρ とす る と,各
か さ 密 度:W/(W2−W1)
相 対 か さ密 度: 全 気 孔 率:
2.5 粗 大 傷 の 評 価 例 えば傷 つ い た ガ ラス が 非 常 に脆 弱 で あ る よ う に,セ ラ ミッ ク ス で は粗 大 な傷 が1個
で も存 在 す る と,他 の微 構 造 が 均 質 で きわ め て 優 れ た もの で も,そ の 強 度
は非 常 に低 い.し
た が っ て,セ ラ ミッ ク ス の強 度 特 性 を理 解 す るた め に,粗 大 な
傷 を調 べ る こ と は非 常 に重 要 で あ る.粗 大 な傷 は,き わ め て小 数 で あ る た め,そ れ をみ つ け るに は材 料 全 体 を調 べ る必 要 が あ る.こ れ に は,透 過 法 に よ る評 価 が 必 要 不 可 欠 で あ る. 透 過 法 に は,X線,超
音 波 お よ び 光 を 使 う方 法 が あ る.X線
を使 う 方 法 は,
医 学 の 分 野 で 普 及 した トモ グ ラ フ ィー 法 や レ ン トゲ ン写 真 法 と 同 様 な も の で あ り,し ば し ば製 品 の 最 終 検 査 に使 わ れ る.し か し,小 さ な傷 を発 見 す るの は難 し い,ま た 装 置 が 高 価 で あ る な どの 問 題 が あ る.超 音 波 を用 い る方 法 に は,い か の 手 法 が あ る.代 表 的 な もの は,レ
くつ
ー ダ ー の よ う に超 音 波 ビー ム を ス キ ャ ン
し,傷 か らの 反 射 波 を用 い て傷 の 映 像 を求 め る もの と,対 象 物 体 中 を通 る超 音 波 の 減 衰 に よ り傷 を調 べ る もの で あ る.い ず れ も分 解 能 は 低 く,装 置 は高 価 で あ る.光 を用 い る方 法 は,セ
ラ ミ ッ クス の 多 くが 透 明体 で あ る点 を活 用 す る もの で
あ り,最 近 使 わ れ 始 め た も の で あ る.こ の 方 法 で は,セ mm程
ラ ミ ッ ク ス か ら厚 さ0 .1
度 の 薄 片 試 料 を切 り出 し,こ れ を透 過 観 察 して 内部 構 造 を調 べ る も の で
あ る.従 来 の研 磨 面 観 察 で は傷 は ほ とん ど認 め られ な い と きで も,透 過 法 観 察 で は大 き な傷 が わ か る.こ の 方 法 は,破 壊 検 査 で あ るが,製 非 常 に大 き な力 を 発 揮 す る と期 待 さ れ て い る.
造 プロセスの開発 では
3 セ ラ ミックス の合成 プ ロセ ス技術
セ ラ ミッ ク ス は,一 般 に は 「粉 末 原 料 調 製 → 成 形 → 焼 結 → 加 工 」 の プ ロ セ ス に よ っ て つ く られ る.セ ラ ミ ック ス 特 有 の耐 熱 性,機 導 性,誘
電 性,化
学 的 安 定 性 とい った 性 質 は,セ
械 的 強 度,電 気 的 絶 縁 性 ・半 ラ ミ ッ クス の 微 視 か ら巨視 にわ
た る焼 結 微 構 造 に 強 く依 存 す る の で,微 構 造 の 設 計 ・制御 に粉 体 原 料 の粒 子 の 大 き さ,粒 度 分 布,形
態 な どの粒 子 性 状 の制 御 はた い へ ん 重 要 とな る.原 料 粉 末 の
合 成 法 は液 相 法,気 相 法,固 相 法 に大 別 され る. 3.1 粉 末 の 合 成 3.1.1 液 相(溶
液)か
らの 合 成
a. 沈 殿 反 応 の 熱 力 学
液 相 法 は,合 成 した い 物 質 の構 成 イ オ ン を溶 か し
た 溶 液 か ら析 出 させ る 方 法 で あ る.飽 和 溶 液 お よ び 溶 解 度 積 以 下 の溶 液 で は,均 一 核 生 成 ・成 長 に よ る沈 殿 は起 こ らな い(佐 々 木 義 典 ,他:結 化 学 シ リー ズ12),pp.80-90,朝 きな状 態(過 衡)に
飽 和 状 態)が
あ る状 態Aを
ΔC/Ceは
必 要 とな る.図3.1に
平 衡 温 度Teか
却 度ΔT=Te−Tお
倉 書 店,1999参
ら温 度Tに
照).そ
こで,溶 解 度 積 よ り大
お い て,溶 解 度 曲 線 上(溶 解 平 冷 や した 溶 液 状 態Bで
よ び 過 飽 和 量 ΔC=C−Ce(σ=C/Ceは
過 飽 和 度,の
よ うな 定 義 もあ るが,い
晶化 学 入 門(基 本
は,過 冷
過 飽 和 比,σ ′=
ず れ も過 飽 和 の 程 度 を表 す)の
状 態 に な る様 子 を模 式 的 に示 し た.平 衡 状 態 と過 飽 和 状 態 との 自 由エ ネ ル ギ ー 差 (ΔG)と
過 飽 和 の程 度 とは,熱 力 学 的 に ΔG=−RTln(σ)=−RTln(1+σ
の 関 係 が あ る.図 中 の 過 溶 解 度 曲 線 は,こ 度,す
′)<0
(3.1)
の 曲 線 を越 え る濃 度 に な る と過 飽 和
な わ ち ΔGが 大 き くな っ て 沈 殿 が 開 始 す る見 か けの 溶 解 度 曲 線 で あ り,
熱 力 学 的 な 意 味 は もた な い.
図3.1 溶 解 平 衡 温 度(Te)か
ら温 度(T)に
と き に発 生 す る過 飽 和 度(ΔC)の
b. 混 合 直接 沈 殿 法
冷却 した
模 式図
前 述 し た よ う に,水 溶 液 反 応 に よ っ て生 成 す る 反 応
生 成 物 に とっ て,過 飽 和 状 態 に あ れ ば,そ の 物 質 は沈 殿 す る.一 般 に,水 溶 液 中 の 金 属 イオ ン(Mn+)はpHを
上 げ る とM(OH)nの
形 で 沈 殿 す る.M(OH)nは
水 中で M(OH)n=Mn++nOH-
Ksp=[Mn+][OH-]n
(3.2)
H2O=H++OH- KW=[H+][OH-]=10−14
の 平 衡 関 係 に あ る.式(3.3)の[OH-]を 数 を と り,pX=−log[X]の
(3.3)
式(3.2)に
代 入 し て 整 理 し,両
関 係 を用 い る と pMn+=(pKsp−n・pKW)+n・pH
が 得 ら れ る.pMn+とpHに 中 の
は,図3.2の
は,pM3+=2([M3+]=10−2=0.01に
のpHで
で あ る か ら,99.9%の
のM3+の
例 で あ る.し
直 線 関 係 が あ る.図
金 属 イ オ ン溶 液 か ら金 属 た が っ て,こ
の 溶 液 をpH3
平 衡 濃 度 はpM3+=5([M3+]=10−5=0.00001) 体 形 成 能 の 高 い 金 属 イ オ ン は,
の よ う に オ キ ソ 酸 イ オ ン(金
生 成 し て 溶 解 す る の で,溶
現 象 は,ZnやAlで
よ う に 勾 配 がnの
金 属 イ オ ン は 沈 殿 す る.錯
強 い ア ル カ リ に す る と,次 ン)を
(3.4)
対 応)の
水 酸 化 物 が 沈 殿 生 成 を 開 始 す るpHの に す れ ば,そ
辺 の対
解 度 の 最 も低 く な るpHが
顕 著 に み ら れ る.そ
属 イ オ ン を含 む 陰 イ オ 生 じ る.こ
の よ うな
の平 衡 関 係 は
Zn(OH)2=HZnO2-+H+
(3.5)
Al(OH)3=H2AlO3-+H+
(3.6)
図3.3 Znの
図3.2 金 属 水 酸 化 物 の 溶 解 金 属 イ オ ン濃 度 (pMn+)とpHと
で 書 か れ る.p[Zn2+]お る.両
よ びp[HZnO2-]とpHと
方 の 直 線 の 交 点 のpH9が
は こ のpHが
水 酸 化 物 沈 殿 に お け るZn2+と
HZnO2-濃
の関係
最 も[Zn2+]が
最 も よ い こ と に な る.同
度 とpHと
の関 係
の 関 係 は,図3.3の
よ うにな
低 く な る と こ ろ で,沈
殿 生成 に
様 に し て,[Al3+]の
場 合 はpH5で
あ る こ
と が 予 想 で き る. 例 え ば,Ksp(Ca(OH)2)=5.5×10−6(pKsp=5.26)で moldm−3(pCa2+=2)]の Ca2+はCa(OH)2と
平 衡pHは12.4に
あ る か ら,[Ca2+=0.01 な り,こ
し て 沈 殿 し 始 め る.pH13に
×10−4moldm−3に
な る の で,Ca2+の94%が
5.5×10−6moldm−3と
な り,99.9%が
す れ ば,Ca2+の
に 応 じ てpHを
上 げ れ ば
平 衡 濃 度 は5.5
沈 殿 す る こ と に な る.pH14で 沈 殿 す る.Mg2+の
でMg(OH)2(Ksp=1.8×10−11,pKsp=10.7)と 同 様 に し て,次
れ 以 上 のpHに
場 合 は,pH11レ
は ベ ル
し て ほ と ん ど沈 殿 す る.
の 例 の よ う に 溶 解 度 の 高 い 反 応 系 の 化 合 物 の 各 水 溶 液 を,必
制 御 し な が ら,混
要
合 反 応 させ る こ とで反 応 物 よ り も溶 解 度 の 低 い
化 合 物 を 沈 殿 さ せ る こ とが で き る. CaCl2+Na2SO4→CaSO4・2H2O↓+2NaCl
(3.7)
CaCl2+Na2CO3→CaCO3↓+2NaCl
(3.8)
Ca(OH)2+H3PO4→CaHPO4・2H2O↓
(pH=4)
(3.9)
10Ca(OH)2+6H3PO4→Ca10(PO4)6(OH)2↓+18H2O (pH=10)
多 成 分 系 の複 合 酸 化 物 を合 成 す る場 合,そ
(3.10)
れ ぞれ の 金 属 イ オ ン を含 む水 溶 液 に
沈 殿 剤 と し て ア ル カ リを添 加 し て,そ れ ぞ れ の水 酸 化 物,あ
るい は複 塩 を沈殿 さ
せ る 同 時 沈 殿 法 が あ る.そ れ ぞ れ の水 酸 化 物 を別 に沈 殿 合 成 して か ら混 合 す る よ り も,均 質 な もの が 得 られ る.高 純 度 で焼 結 性 の よ い 混 合 超 微 粉 体 を得 る こ とが で き る.共 沈 法 と呼 ば れ る方 法 で は,そ の状 況 で は溶 解 度 が 高 くて本 来 沈 殿 しな い は ず の イ オ ン を,沈 殿 剤 に よ っ て沈 殿 す る溶 解 度 の低 い 主 沈 殿 と と もに,沈 殿 させ る.例 え ば,PbCO3は と(Pb,Ba)CO3と
同 時 に沈 殿 させ る
し て定 量 的 に沈 殿 す る.
c. 均 一 沈 殿 法 リや 炭 酸 塩,硫
比 較 的溶 解 度 が 高 い が,BaCO3と
直 接 沈殿 法 や 共 沈 法 で は,外 部 か ら沈 殿 剤 と して の アル カ
酸 塩 の水 溶 液 を加 え る の に対 し て,こ の 方 法 で は あ らか じめ沈 殿
剤 と して の 作 用 を徐 々 に発 現 す る反 応 溶 液 を加 え て お く.そ の結 果,局 所 的 な不 均 一 性 を生 じ な い で 沈 殿 させ る こ とが で き る.高 純 度 で 体 積 の小 さい ろ過性 の よ い粉 体 が 得 られ る.こ
の よ う な沈 殿 剤 と して,尿
素,エ
ス テ ル 類 が よ く使 わ れ
る.そ れ ぞ れ の加 水 分 解 は次 の よ うに表 せ る. (NH2)2CO+3H2O→2NH4OH+CO2 (70℃ 以 上,特
に90℃
(3.11)
以 上 で 進 行)
RCOOR′+H2O→RCOOH+R′OH
(3.12)
(酸 や ア ル カ リの 存 在 で 進 行)
尿 素 加 水 分 解 法 で は,各 種 の 水 酸 化 物,塩
基 性 塩,リ
ン酸 塩,硫
酸 塩,炭 酸 塩
な ど塩 基 性 で 溶 解 度 の低 くな る物 質 を均 一 沈殿 させ る こ とが で き る.エ ス テ ル加 水 分 解 法 で は,シ ュ ウ酸 塩,ギ 一 沈 殿 させ る こ とが で き る. d. ゾル ・ゲ ル 法 て い る溶 液 で,こ
酸 塩,酢
酸 塩,コ ハ ク 酸 塩 な どの 各 種 金 属 塩 を均
ゾ ル と は コ ロ イ ド粒 子(直
径1∼100nm)が
分散懸濁 し
の ゾ ル か ら溶 媒 蒸 発 に よ る濃 縮 や 重 合 反 応 な ど に よ っ て粒 子 間
架 橋 構 造 が 生 じ,こ の網 目構 造 中 に溶 媒 を保 持 した ま ま流 動 性 を失 っ て寒 天 状 に な っ た状 態 を ゲ ル と呼 ぶ.ゲ
ル か ら溶 媒 を蒸 発 させ て収 縮 生 成 す る多 孔 体 を,キ
セ ロ ゲ ル とい う.乾 燥 剤 の シ リカ ゲ ル もキ セ ロゲ ル で あ る.こ れ を加 熱 焼 結 す る こ とで,目 的 の金 属 酸 化 物 等 を得 る.ゾ ル をゲ ル 化 す る方 法 に は,以 下 の よ うな も の が あ る. ① ゾ ル か ら溶 媒 を除 去 し,コ ロ イ ド粒 子 間 の 相 互 作 用 を強 くす る. ② ゲ ル 化 促 進 剤 を添 加 し,コ ロ イ ド粒 子 間 を結 合 させ 網 目構 造 化 す る. ③ 時 間,温 度 な ど の条 件 を選 択 す る こ とで コ ロ イ ド粒 子 間 の 反 応 を促 進 させ 網 目檮 造 を形 成 さ せ る.
図3.4
表3.1
M:金 R:ア
属(Li,
Ca,
Sr,
Ba,
SiO2・nH2Oの
ゾ ル ・ゲ ル 変 化
ゾ ル ・ゲ ル 法 に お け る山 発 物 質
Al,
Si,
Pb,
Ti,
Zr,ほ
か),n:Mイ
オ ン の 酸 化 数,
ル キ ル 基.
場 合 に よ っ て は,こ れ らの うち2つ 以 上 を同 時 に進 行 させ る もの もあ る.同
じ
出発 原料 を使 用 して も,反 応 条 件 や ゾ ル液 の 組 成 に よっ て一 次 元 の鎖 状 分 子 とな る もの や,三
次 元 の粒 子 状 分 子 と な る もの もあ る(図3.4).ゾ
い られ る出 発 原 料 に は 表3.1の
よ う な もの が あ る.
e. ア ル コ キ シ ド加 水 分 解 法 シ ドM(OR)n(M:金
ル ・ゲ ル 法 で 用
一 般 に ア ル コ ー ル に可 溶 で あ る金 属 ア ル コ キ
属 イ オ ン,R:ア
容 易 に加 水 分 解 して,水 酸 化 物,あ
ル キ ル 基)は,水
によって次 式 の ように
る い は 酸 水 酸 化 物 を沈 殿 させ る.
M(OR)n+nH2O→M(OH)n↓+nROH
(3.13)
触 媒 に は,HClやHNO3が
よ く使 わ れ る.加 水 分 解 の 条 件 を選 択 す る こ とで,
粒 径 が 数nmか
組 成 均 一 の 単 純 酸 化 物,複
ら数 十nmの
合 酸 化 物 の1μm以
下の
凝 集 粒 子 とな っ た 高純 度 微 粉 体 が 得 られ る.こ の よ う な反 応 プ ロセ ス で,非 晶 質 単 分 散 微 粒 子 が 生 成 す る. f. その 他 に乾 燥(噴
金 属 塩 溶 液 を ノ ズ ル か ら小 さ な液 滴 と して 噴 霧 し,こ れ を 急 速
霧 乾 燥),凍
結(凍
結 乾 燥),あ
るい は熱 分 解(噴 霧 熱 分 解)す
る方 法
で は,一 般 に球 状 で 流 動性 の よ い均 一 性 の あ る微 粉 体 が 得 られ る.金 属 塩 溶 液 と して は,ゾ ル ・ゲ ル法 に お け る 出発 物 質 の水 溶 液,あ い られ る.2種
る い は ア ル コー ル 溶 液 が 用
以 上 の金 属 塩 溶 液 を混 合 す れ ば,均 一 性 の よ い混 合 酸 化 物 粉 体,
あ る い は複 合 酸 化 物 粉 体 が 得 られ る.脱 脂 粉 乳,食 こ の方 法 で 粉 末 化 して い る.凍 結 乾 燥 法 は,も
品,薬 品,フ
ェ ラ イ トな ど は
と も とは生 物 学 の 分 野 で の試 料 の
低 温 保 存 を 目的 と して発 達 し て きた が,薬 品 や 食 品 の保 存,あ
るい は微 細 化,さ
ら に無 機 材 料 の 微 粉 体 の 合 成 に も応 用 され て い る.実 際 に は,金 属 塩 水 溶 液 を低 温 の冷 凍 室 中,あ
る い は低 温 有 機 液 体(ヘ
キ サ ンが よ く用 い られ る)中
し,液 滴 を急 速 凍 結 して微 細 な結 晶 を析 出 させ,次 せ る.数 十nm程 優 れ,ボ る.得
に噴 霧
に減 圧 ・昇 温 して 氷 を昇 華 さ
度 の 微 粉 体 の 生 成 が 可 能 で あ る.ま た,添 加 物 の均 一 混 合 性 に
ー ル ミル な どの機 械 的 混 合 に比 べ て不 純 物 の 汚 染 が な い な どの 利 点 が あ られ る粉 体 は,多 孔性 で 表 面 積 が 大 き く,組 成 均 一 性,反 応 性,焼
結性 が
高 い. 3.1.2 気 相 か らの合 成 フ ァイ ンセ ラ ミ ック ス 用微 粉 体 に対 す る超 高 純 度,超 微 粒 子 化 へ の 要 望 が 高 ま る と と もに,気 相 反 応 を利 用 した 方 法 が 注 目 され る よ う に な っ た.気 相 反 応 法 で は,金 属 化 合 物 を気 化 ・反 応 させ る の で,高 純 度 化 しや す く,ま た,0.1μm以
下
の 分 散 性 の よい超 微 粒 子 が 容 易 に得 られ る.酸 化 物 だ けで な く,窒 化 物 や 炭 化 物 の よ う な非 酸 化 物 超 微 粒 子 も合 成 で き る.気 化 させ る方 法 に は,抵 抗 加 熱,レ ザ ー,真 空 加 熱,ス パ ッタ リ ン グ,イ オ ン ビー ム,プ a. 気 相 反 応 の 熱 力 学
ー
ラズ マ 加 熱 な どが あ る.
気 相 反 応 系 で は,均 一 反 応 系 と し て の 熱 力 学 的 検
討 が 有 効 で あ る.例 え ば mA(g)+nB(g)→pC(s)+qD(g)
の反 応 に お け る反 応 の 自 由 エ ネ ル ギ ー 変 化(ΔG)は,生 合 計(ΣG生
成系)か ら反 応 系 の 自由 エ ネ ル ギ ー合 計(ΣG反
(3.14)
成 系の 自由エ ネル ギー 応系)を 引 い た もの で,
ΔG=(ΣG生
成系− ΣG反 応系)=ΔG゜+RTln[(ac)p(aD)q/(aA)m(aB)n]
で 与 え ら れ る.こ Tは
こ で,ΔG゜
は 反 応 の 標 準 自 由 エ ネ ル ギ ー 変 化,Rは
考 え て い る 反 応 の 絶 対 温 度,aAな
平 衡 で はΔG=0で
(3.15)
あ る か ら,平
ど は 成 分Aな
気 体 定 数,
ど の 活 量 で あ る.
衡 時 の 各 成 分 の 活 量 を 用 い て 平 衡 定 数(Kp)
お よ び ΔG゜ は Kp=(aC)p(aD)q/(aA)m(aB)n
(3.16)
ΔG゜=−RTln[(aC)p(aD)q/(aA)m(aB)n]=−RTlnKp
(3.17)
の よ う に与 え られ る.ΔG゜ が 負 で あ れ ば反 応 は進 行 す る.例
え ば,次 の 反 応 で,
500℃ で の 各 成 分 の 標 準 生 成 自 由 エ ネ ル ギ ー は既 知 で あ る の で,そ
れ ら を使 っ
て, TiCl4+O2→TiO2+2Cl2
ΔG゜=−134kJmol−1
(3.18)
の よ う に計 算 で き,反 応 は進 行 す る. b. CVD法(3.3節
参 照)
気体分子 間の反応
A(g)+B(g)→C(s)+D(g)
(3.19)
あ る い は気 体 の熱 分 解 A(g)→B(s)+C(g)
(3.20)
を利 用 して 目的 とす る固 体 物 質 を合 成 す る.金 属 の 蒸 気 圧 の高 い ハ ロゲ ン化 物, 硫 化 物,水
素 化 物,有
の 酸 化 物,窒
化 物,炭
機 化 合 物 な どの蒸 気 と反 応 ガ ス とを高 温 で 反 応 させ,金 属 化 物 な どの微 粒 子 を合 成 す る方 法 で あ る.高 純 度 化 した気
体 原 料 を 用 い る の で,高 純 度 の微 粒 子 を合 成 で き る.熱 分 解 で は 目的 とす る物 質
表3.2
気 相 反 応 系 か らの セ ラ ミッ ク ス の生 成 反 応 の 平 衡 定 数(Kp)(工 業 調 査 会 編:フ ァ イ ンセ ラ ミ ッ ク ス技 術,p.172,工 業 調 査 会,1984)
の構 成 元 素 をす べ て含 む 気体 が 必 要 で あ る.ま た,粉 体 が 生 成 す るか ど うか は, 平 衡 定 数Kpの
大 き さ が1つ
の 目安 に な る(表3.2).log
Kpが
だ い た い4以 上
で は,気 相 中 で の 均 一 核 生 成 ・成 長 に よ って 微 粉 体 を生 成 す る. c. PVD法(3.3節
参 照)
加 熱 気 化 させ た 金 属,ま
た は非 金 属 気 体 を基 板
上 で凝 固 さ せ る方 法 で あ る.薄 膜 の作 製 に 使 わ れ る.蒸 発-凝 縮 法 と も呼 ば れ る. 全 体 と し て は 化 学 反 応 を含 ま な い.一 般 に,減 圧 下 で,高 温 加 熱 して 行 わ れ る. 原 料 中 の 不 純 物 も蒸 発 す るの で,高 純 度 化 に は高 純 度 原 料 が 必 要 で あ る.蒸 発 の さ せ 方 に よ っ て,抵 beam
抗 加 熱,電
epitaxy:MBE)に
子 ビ ー ム,分
子 線 エ ピ タ キ シ ー(molecular
分 類 さ れ る.
3.1.3 固 相 か らの 合 成 a. 固 相 反 応 の 熱 力 学
固相 内,あ
る い は 固 相 間 で 起 こ る化 学 反 応 を 固 相
反 応 とい う.反 応 系 と生 成 系 の 熱 力 学 的安 定 関 係 は,液 相 反 応 や 気相 反 応 と同 じ く,自 由 エ ネ ル ギ ー の差(ΔG)に
よ っ て 決 ま る.例 え ば
A(s)+B(s)→AB(s) の反 応 で,系 が 固 相(s)の
(3.21)
み で 成 立 し各 成 分 間 に 固 溶 性 の な い純 固 相 で あ る と
き,固 相 成 分A,B,ABの
各 活 量 は,熱 力 学 の 原 理 に よ り量 に無 関 係 に 常 に1で
あ る.し た が って ΔG=ΔG゜=ΔGf゜AB−(ΔGf゜A+ΔGf゜B)
と な る.ΔGf゜AB,ΔGf゜Aお
よ び ΔGf゜Bは 各 成 分 の あ る 温 度 で の 標 準 生 成 自 由 エ
ネ ル ギ ー で あ る.ΔG゜<0で 行 し,平 ΔS゜∼0と
(3.22)
あ れ ば,Aま
衡 状 態 は な い.ま
た,こ
た はBが
消 失 す る まで 反 応 は 右 へ 進
の よ う な 純 固 相 の み が 関 わ る 反 応 で は,一
般 に
近似 で きるので
ΔG=ΔG゜=ΔH−TΔS<0 か ら,反 応 は発 熱 的(ΔH<0)に
(3.23)
進 行 す る.固 溶 体 や 気 体 成 分 を 生 じ る場 合 に
は,各 成 分 の 活 量 が 固 溶 濃 度 や 分 圧 に よ っ て決 ま っ て くる.し た が っ て,例
え
ば,純 固 体 と気 体 を生 成 す る よ う な熱 分 解 反 応 CaCO3(s)→CaO(s)+CO2(g)
の 平 衡 定 数(Kp)は,固
相 の 活 量 は1で
(3.24)
あ る の で,CO2分
圧(PCO2)に
Kp=PCO2
関 して
(3.25)
の 関 係 に あ る.反 応 進 行 に よ っ てPCO2が 平 衡 圧 に 達 す る と,そ れ 以 上 反 応 は進 ま な い(平 衡 状 態).そ
の とき の平 衡 定 数,す
な わ ち平 衡 圧 は
Kp(298K)=1.18×10−23atm
(ΔG゜(298K)=130.8kJmol−1)
(3.26)
Kp(1163K)=1.0atm
(ΔG゜(1123K)=0.0kJmol−1)
(3.27)
と求 め られ る. 反 応 解 析 は,一 般 的 な速 度 式 dα/dt=k・f(α)
(3.28)
k=Aexp(−E/RT),
を 出 発 に して 進 め る.こ αの 関 数,Aは
現,Eお
こで,α
頻 度 因 子,Eは
度 で あ る.式(3.29)は よ びAを
lnk=lnA−E/RT
は反 応 率,tは
(3.29)
時 間,kは
活 性 化 エ ネ ル ギ ー,Rは
速 度 定 数,f(α)は
気 体 定 数,Tは
絶対 温
ア レ ニ ウ ス式 と呼 ばれ る.反 応 の解 析 で は,速 度 式 の 表
求 め る こ と に な る.
b. 固 相 反 応 法 ⅰ) 拡 散 過 程 を考 え た 解 析 方 法:反
応 は,反 応 生 成 物 層 内 で の 関 係 成 分 の
拡 散 移 動 と反 応 界 面 で の 化 学 反 応 に よ っ て 進 行 す る.一 般 に は,拡 散 過 程 が 全 体 の 反 応 速 度 を決 め る律 速 過 程 にな る場 合 が 多 い.図3.5の とBが
平 面 で 接 して,境
分 はAB層
界 面 にABが
内 を拡 散 してA成
分 とB成
よ う に,2つ
の 固 相A
生 成 して い く過 程 を 考 え て み る.反 応 成 分 が 出会 った と こ ろ で 反 応 し,AB層
を
発 達 さ せ る. こ こで,A成
分 の 一 方 拡 散 で あれ ば,A成
応 界 面 に 達 し,AB層 AB相
分 はAB層
を 形 成 す る.界 面 で の 反 応 速 度 が 速 い とす れ ば,反 応 は
内 を拡 散 す るA成
分 の拡 散 速 度 に よ っ て律 速 され,Bの dαB/dt∝dχ/dt=k″S/χ
で 表 され る.k″ はA成
内 を拡 散 してAB/B反
反 応 率(αB)は
分 の 拡 散 係 数 を 含 む 定 数,Sは
(3.30) 反 応 界 面 の 面 積 で あ る.
Sは 反 応 進 行 して も変 わ らな いか ら χ2=2k″St=k′t
(3.31)
(b) 進 行 状態
(a) 開始状態 図3.5
A(s)+B(s)→AB(s)系
(c) (χ)の時 間(t)変 化 の 模 式 図 固相 反 応
図3.6 粉 体 に お けるA(s)+B(s)→AB(s)固
相反応
の よ うに 放 物 線 式 で 表 さ れ,放 物 線 則 と呼 ば れ る(図3.5(c)).こ ど う し の反 応 に適 用 し て,速 度 式 と して ヤ ン ダ ー(Jander)の 仮 定 と して,図3.6に て 同 じ,B粒 階 でA成 はB粒
示 す よ う に,A成
子 は球 状,B粒
分 の一 方 拡 散,B粒
子 の周 囲 に はA粒
分 の表 面 拡 散 に よ っ てB粒
と な り,こ
る い はBの
子 上 に球 殻 状 にAB層
子 の 粒 径rBは
すべ
が 形 成 す る,AB層 分 量 に対 す るAB
減 少 率 で 表 さ れ るの で α=[rB3−(rB−
χ)3]/rB3
(3.32)
χ=rB[1−(1−
α)1/3]
(3.33)
れ よ り
とな る.こ れ を放 物 線 式 に代 入 す れ ば,ヤ {1−(1−
が 導 出 さ れ る.い
求 め られ る.マ
ンダ ー の 式
α)1/3}2=(k′/rB2)t=kt
くつ か の 異 な っ た 温 度Tで
ッ ト(ア レニ ウ ス プ ロ ッ ト,式(3.29)参
図3.7に
式 が 得 られ る.
子 が 十 分 に あ る,反 応 の 初 期 段
子 の 内 側 に 生 成 す る,と す る.反 応 率 αは 初 め のB成
生 成 率,あ
の 扱 い を粉 体
照)に
(3.34)
のkか
ら,logk対(1/T)プ
ロ
よ っ て,活 性 化 エ ネ ル ギ ーEが
グ ネ シ ウ ム フ ェ ラ イ ト(MgFe2O4)の
固相 反応 に適用 した例 を
示 す.
固体 内 の拡 散 は遅 い と思 わ れ が ち で あ るが,高 温 で あれ ば,比 較 的速 く反 応 は 完 結 す る こ とが わ か る.活 性 化 エ ネ ル ギ ー は490kJmol−1と
求 め ら れ て い る.
ヤ ンダ ー の式 は 最 も高 い 適 用 性 を もっ て い る が,こ の よ うな単 純 化 に した モ デル を精 密 化 した 種 々 の 改 良 式 が 提 案 され て い る.例
え ば,神 力-久 保 の 式 で は,反
応 進 行 に伴 っ て 拡 散 断 面 積 が 変 化 す る こ と を考 慮 して 次 式 が 導 出 さ れ て い る. (3/2){1−(1−
α)2/3}−α=kt
工 業 的 に利 用 され て い る粉 体 間 反 応 に は
(3.35)
図3.7
MgO+Fe2O3→MgFe2O4系 粉 体 反 応 過 程(D. S.
Dooling:
L. Fresh,
J.
70, 3198-3203,
J.
Phys. Chem., 1966)
CaO+SiO2→CaSiO3
1200℃
2CaO+SiO2→Ca2SiO4
1200℃
(3.37)
MgO+Al2O3→MgAl2O4
1500℃
(3.38)
MnO+Fe2O3→MnFe2O4
1500℃
(3.39)
BaCO3+TiO2→BaTiO3+CO2↑
な どが あ る.上2つ
>1100℃
はセ メ ン トク リン カ ー,次
(3.36)
(3.40)
い で ス ピネ ル 耐 火 物,磁
気ヘ ッド
用 の マ ン ガ ン フ ェ ラ イ ト,コ ンデ ンサ ー用 チ タ ン酸 バ リ ウム 強 誘 電 体 の 各 製 造 の 基 本 反 応 で あ る.固 体 と固 体 との 反 応 は,粒 子 間 の接 触 が な けれ ば進 まな い.し た が っ て これ らの 製 造 で 最 も肝 要 な こ と は,原 料 粉 末 の 均 一 混 合 で あ る. ⅱ) 一 般 的 な 解 析 方 法:f(α)に 種 々 提 出 され て い るの で,そ 解 析 が進 め られ る.f(α)の
関 し て,反
れ ら を適 用 して 実 験 デ ー タ との 適 合 性 を み る こ とで 一 般 表 現 形 と して
f(α)=αp(1−
が 与 え られ て い る.p,q,rは
α)q{−ln(1−
よ く解 析 に用 い られ る.f(α)の
α)}r
経 験 的 に定 ま る定 数 で あ る が,特
物 理 的意 味 は つ け られ な い.実 際 に は,r=0あ
い が,初
応 機構 に対 応 す る表 示 式 が
る い はp=r=0と
(3.41)
定 の値 以 外 は した 簡 略 式 が
表 現 式 が 未 知 の 場 合 で は,速 度 式 は 決 め られ な
速 度 法 や 一 定 反 応 率 法 で 活 性 化 エ ネ ル ギ ー な ど は求 め られ る.等 温 法 で
は,異
な る 温 度(T)で
初 速 度 法:反
の 反 応 率(α)∼
時 間(t)曲
線 を実 験 で 求 めて か ら
応 初 期 の反 応 速 度(dα/dt)の log(dα/dt)∼1/T
速 度 変 化 法:任
プロ ッ ト
意 の一 定 反 応 率 で の反 応 速 度(dα/dt)の log(dα/dt)∼1/T
反 応 時 間 法:任
プ ロ ッ ト
意 の 一 定 反 応 率 に要 す る時 間(t)の logt∼1/T
プ ロ ッ ト
な ど に よ っ て解 析 され る.昇 温 法(昇 温 速 度:φ=dT/dt)で
は,反 応 熱 や 質 量
な ど に よ っ て反 応 進 行 が 追 跡 で きれ ば,次 の 熱 分 解 法 が 適 用 で きる. c. 熱 分 解 法
水 酸 化 物,炭
酸 塩,シ
ュ ウ酸 塩,硫
酸 塩 な どを加 熱 分 解 して
酸 化 物 粉 体 を得 る.一 般 に は mA(s)→pB(s)+qC(g)
(3.42)
で 表 さ れ る.例 え ば 次 の よ う な もの で あ る. CaCO3→CaO+CO2↑
MgCO3→MgO+CO2↑
(3.43)
Ca(OH)2→CaO+H2O↑
(3.44)
これ らの場 合,ど
(3.45)
の よ うな 塩 を用 い るか に よ って 得 られ る酸 化 物 粉 末 の焼 結 性 が
左 右 され る.反 応 解 析 に は,重 量 変 化 や 熱 変 化 が 反 応 率 に 対 応 す るの で,TGDTAが
よ く使 わ れ る.昇 温 速 度 を φ=dT/dt,反
応 速 度 最 大 に な る温 度 をTm
として
表3.3 熱 分 解 反 応 の 解 析 例
a) N.
W.
Wikholm,
温 度 測 定 と 熱 分 析(熱 Carrol: J. 1706,
1957.
Phys.
Chem.,
R. A.
Beebe:
J. Phys.
Chem.,
測 定 研 究 会 編),pp.1-19,科 62, 394-397,
1958,
d) H.
79, 853-856,
1975,
学 技 術 社,1970,c) E. Kissinger:
b) 大 塚 良 平:熱 E.
Anal. Chem.,
S.
Freeman,
・ B.
29 (11), 1702-
キ ッ シ ン ジ ャ ー(Kissinger)の
式:
ln(φ/Tm2)=−E/RTm+ln(AR/E) (f(α)=(1−
α)の
(3.46)
場 合 の 式 で あ る が,q=1
以 外 で も近 似 的 に 成
り 立 つ の で 便 利 で あ る)
小 沢 の 式:logφ=−0.4567(E/RTα フ リ ー マ ン-キ
φ)+定
数
ャ ロ ル(Freeman-Carroll)の
(3.47)
式:
Δln(−dW/dt)=nΔlnW−(E/R)Δ(1/T)
な どが 適 用 さ れ る.表3.3に
(3.48)
解 析 例 を 示 す. 3.2
単
結
晶
単 結 晶 で は,粒 子 全 体 に構 成 原 子 が 規 則 正 し く配 列 した 状 態 に あ り,微 細 な結 晶粒 を焼 結 させ た 多 結 晶 セ ラ ミ ッ ク ス とは異 な る微 構 造,物
性,用 途 を もっ て い
る.単 結 晶 の 熱 力 学 的 に安 定 な外 形 は,体 積 が 同 じで あ れ ば全 自 由 エ ネ ル ギ ー最 小,す
な わ ち 全 表 面 自 由エ ネ ル ギ ー 最 小 とな る よ う に表 面 自由 エ ネ ル ギ ー の低 い
最 密 充 〓 面(一
般 に は低 指 数 の面)で
囲 ま れ た 多 面 体(平 衡 形)で
あ る.液 滴 が
表 面 積 最 小 と な る よ う に球 形 に な るの と同 じ理 屈 で あ る.最 密 充 〓 面 内 で の 結 合 の密 度 は密(逆
に面 間 の 結 合 手 の 密度 は粗)に
な るの で,粗 な 面 よ り も最 密 充 〓
面 の 方 の 表 面 自 由 エ ネ ル ギー 密 度 は小 さ くな る とい う直 感 と一 致 す る.最 稠 密 面 は,例
え ば,単 純 立 方 格 子 で は(100)面,体
方 格 子 で は(111)面
詳 し く記 述 され て い る.
3.3 膜 相
心立
で あ る.結 晶 成 長 の基 本 原 理 お よ び単 結 晶 育 成 法 は,前 掲
書 『 結 晶 化 学 入 門 』(pp.94-112)に
3.3.1 液
心 立 方 格 子 で は(110)面,面
合
成
法
a. ゾ ル ・ゲ ル 法(塗
布 熱 分 解 法)
液 相 に よ る成 膜 は,① 組 成 制 御 が 容
易,② 常 圧 で 大 面 積 大 基 板 上 に高 速 度 で成 膜 で きる,③ った 特 徴 が あ る.ゾ ル ・ゲ ル 法,あ
コ ス ト面 で の 有 利,と
い
るい は塗 布 熱 分 解 法 と呼 ば れ る.ア ル コキ シ
ドを原 料 とす る機 能 性 薄 膜 の 生 成 に広 く利 用 され て い る.一 般 に は,酸 化 物 セ ラ ミ ッ ク ス をつ く る場 合,原 料 として 表3.1の
よ う な 系 統 の 化 合 物 が 選 択 され る.
特 に,薄 膜 形 成 用 の 原 料 と して の アル コキ シ ドは,空 気 中 の水 分 に も鋭 敏 で,加 水 分 解 さ れ や す い が,ア
セ チ ル ア セ トン,乳 酸 な どの キ レー ト化 剤,高 級 脂 肪 酸
な どの 添 加 に よ っ て安 定 化 させ る こ とが で き る.一 般 に は,金 属 ア ル コ キ シ ドの ア ル コー ル 溶 液 を酸 や ア ル カ リを加 水 分 解 ・重 縮 合 触 媒 と して 適 切 な粘 度 の ゾル と し,こ れ を ガ ラ ス や フ ァイ ンセ ラ ミ ッ クス 基 板 上 にデ ッ ピ ング,ス ピ ン コー ト法 な ど で塗 布 した 後,乾 燥,仮 焼,本
プ レ ー,ス
焼 成 し て所 望 の 金 属 酸 化 物 層 と
し て成 膜 を得 る. b. 電 気 泳 動 法
粒 径 が サ ブ ミク ロ ン以 下 の セ ラ ミッ ク ス粒 子 を水 また は
非 水 系 溶 媒 中 に分 散 さ せ,帯 電 した 粒 子 を 電 界 に よ り電 極 基 材 上 に引 きつ け て堆 積 させ る.そ の た め に は,① 懸 濁 液 中 の粒 子 の 帯 電,② 電 粒 子 の 移 動(電
気 泳 動),③
が 必 要 で あ る.① で はpH,分
外 部 か らの 電 界 に よ る荷
泳 動 粒 子 の 電 極 基 材 上 へ の 堆 積,の
基 本 ス テ ップ
散 媒 の種 類,電 解 質 イ オ ン な ど に よ っ て粒 子 を帯
電 させ る.② で は粒 子 の移 動 速 度 に影 響 す る界 面 動 電 位(ζ 電 位)と 率,粒
溶媒 の誘電
子 サ イ ズ,溶 媒 の粘 性 抵 抗 な どが影 響 す る.③ で は電 極 上 に 達 した 荷 電 粒
子 が 表 面 電 荷 を放 電 して 中 性 と な っ て,粒 子 間 は弱 い フ ァ ン デ ル ワー ル ス力 で 凝 集 し て粉 体 層 を形 成 す る.こ の よ う に して作 製 した 薄 膜 あ る い は 厚膜 は,粒 子 間 結 合 お よび 基 板 と の接 着 強 度 と も低 い の で,焼 成 処 理 し て高 め る.電 極 基 板 は導 電 性 で あ る必 要 が あ る. 3.3.2 気
相
法
気 相 か ら析 出 さ せ る場 合(図3.8)は,基 ば,反 応 系,析
出 条 件 に よ って,薄 膜,ウ
板 上 で 不 均 一 核 生 成 ・成 長 さ せ れ ィス カー,結 晶 粒 の よ うな 形 態 が 生 成
す る.気 相 中 で均 一 核 生 成 ・成 長 させ れ ば微 粉 体 に な る.こ れ は,高 い 過 飽 和 状 態 を つ くって 多 数 の 核 を発 生 させ る こ とに な るか らで あ る.Kpの を用 い る の が 有 利 で あ る(表3.2参
照).Kpの
大 きい反応系
小 さ い反 応 系 で は,気 相 中 で の均
図3.8 気 相 法 に よる 固 体 物 質 の 生 成 形 態
一 核 生 成 は し に くい が
,基 板 上 へ の 不 均 一 核 生 成 は生 じ る.一 般 に は,log
が だ い た い4以 上 で は 気 相 中 で の 均 一 核 生 成 に よ る微 粉 体 が,以
下 では基板上で
の 薄 膜 や 繊 維 状 結 晶 を 生 成 す る.粉 体 が 生 成 す るか ど うか に,Kp大 条 件 とは な ら な いが,高 a. CVD薄
膜
温 で あ るの でKpは1つ
Kp
の みが十分
の 目安 に な る.
1種 また は それ 以 上 の化 合 物 を,熱 的 ま た は プ ラ ズ マ に よ
り電 気 的 に励 起 して,気 相 中 また は基 板 上 で化 学 反 応 させ る こ と に よ り,所 定 の 薄 膜 や 超 微 粒 子 を合 成 す る 方 法 で あ る.こ の 方 法 で は,種 々 の 材 料 や 組 成 の 薄 膜,超
微 粒 子 の 合 成 が 可 能 で あ り,単 体,酸 化 物,炭
化 物,窒 化 物 な どの ほ とん
ど あ らゆ る材 料 の 合 成 が 可 能 で あ る.そ の た め,多 種 多 様 な応 用 に用 い られ て い る. ⅰ) 熱CVD:古
くか ら用 い られ て い る 方 法 で,原 料 の熱 分 解 で 生 じた ガ ス
を基 板 の上 に膜 と して堆 積 させ る 方 法 で あ る.条 件 に よ っ て,還 元 反 応,酸 応,置
化反
換 反 応 な ど種 々 の 反 応 を行 う こ とが で き,経 済 的 に も安 価 な プ ロ セ ス で 工
業 的 に 多 用 され る プ ロ セ ス で あ る.例
え ば,還 元 反 応 で は水 素 とハ ロ ゲ ン化 物 を
原 料 に,ゲ ル マ ニ ウ ム や モ リブ デ ン な どが 膜 合 成 され て い る. 現 在 最 も多 用 され る プ ロセ ス は,多 結 晶 シ リ コ ン膜 の 合 成 で あ る.還 元 雰 囲 気 中 で シ ラ ンSiH4を
熱 分 解 し,所 定 の 温 度 に し調 整 した 基 板 上 に シ リ コ ン膜 を形
成 す る.不 純 物 を ドー プ しn型 やp型 同様 の水 素 化 物,例
え ばPH3やB2H6な
そ の ほ か,有 機 金 属 化 合 物 の 熱CVDに 成 され る.成 膜 の 速 度 過 程 は図3.9に 拡 散,格 子 形 成 の 順 で 進 む.し
の シ リ コ ン膜 を合 成 す る に は,シ
ランと
ど を原 料 ガ ス に混 合 し て膜 合 成 をす る. よ って,SiO2やAl2O3な
どの 絶 縁 膜 が 合
示 す よ うに,化 学 種 の吸 着,吸
着化 学種の
か しな が ら,こ れ らの う ち どの プ ロセ ス が律 速 過
程 に な る の か,反 応 に関 与 す る化 学 種 は何 か,格 子形 成 の 場 所 は転 位 線 な の か, あ る い は また キ ン ク な の か な ど必 ず し も明 確 に は な って い な い. ⅱ) プ ラズ マCVD:プ
ラ ズ マ は,正 負 の等 量 の 電 荷 が 気 体 中 に存 在 す る状
図3.9 成 膜 プ ロセ スの モ デル
態 で あ る.減 圧 した 管 内 に 少 量 の ガ ス,例
え ばア ル ゴ ンガ ス を入 れ,電
界 を 印加
す る. 陰 極 か ら飛 び 出 す 電 子 は電 界 で 加 速 さ れ ア ル ゴ ン に衝 突 し,イ オ ン化 す る(こ れ を放 電 とい う).電 界 が 低 い と きや パ ル ス状 の 高 電 界 が 印 加 され た 場 合 に は, 軽 い粒 子 の みが エ ネ ル ギ ー を得 て 加 速 され る.重 い イオ ン は 電 界 に よ っ て あ ま り 加 速 され ず,運 動 エ ネ ル ギ ー を ほ とん ど得 る こ と は な い低 い エ ネ ル ギ ー状 態 の ま まで あ る.こ の よ うな 状 態 で は,電 子 の みが 高 い エ ネ ル ギ ー を 有 し て お り,イ オ ン は相 対 的 に低 い エ ネ ル ギ ー状 態 にあ る の で,こ れ を非 平 衡 プ ラズ マ(低 ズ マ)と
い う.電 子 は きわ め て 高 い エ ネ ル ギ ー を有 して い る の で,そ
温 プラ
の衝 突 に よ
って 生 成 す る化 学 種 もイ オ ンや ラ ジ カ ル な ど きわ め て 活 性 で あ る.こ れ を種 々 の 反 応 に利 用 し成 膜 す る プ ロセ ス が,プ
ラ ズ マCVDで
あ る.そ れ に対 して 高 電 界
が 連 続 的 に 印加 され る場 合 に は,粒 子 だ けで な くイ オ ン も加 速 され る.両 者 は は ぼ 等 しい エ ネ ル ギ ー 状 態 に あ る.こ れ を平 衡 プ ラ ズ マ(高 温 プ ラ ズ マ ま た は 熱 プ ラ ズ マ)と
い う.熱 プ ラ ズ マ の 温 度 は10000∼15000℃
に も達 す る.熱
プ ラズマ
を 利 用 す る プ ロセ ス で は,こ れ を単 な る超 高 温 の熱 源 と して 物 理 的 に利 用 す るだ け で は な く,低 温 プ ラ ズ マCVDの
場 合 と同様 に,プ
ラズ マ 中 の 高 活 性 な 化 学 種
を 反 応 に活 用 す る.プ ラ ズ マ へ の エ ネ ル ギ ー の 流 れ は,図3.10の 低 温 プ ラ ズ マ は0.1∼10Torr程 す る.プ ラ ズ マCVDの
度 の 雰 囲 気 圧 で,マ
よ うで あ る.
イ クロ波や高 周波 で発生
特 筆 す べ き応 用 は,太 陽 電 池 や 液 晶 デ ィ ス プ レ ー 用 の ア
モ ル フ ァス シ リ コ ン の 膜 合 成 で あ る.こ の 膜 合 成 に は,原 料 ガ ス と して シ ラ ン SiH4と 水 素 が 用 い られ る.シ
リコン中の点欠 陥や転位 の不対電 子 を水素 が終端
し,無 欠 陥 の状 態 と同 じ性 状 にす る か らで あ る.シ ラ ンの代 わ りにSi2H6な 使 用 され る.
図3.10
プ ラズ マ 中 の エ ネ ル ギ ー の流 れ
ども
プ ラ ズ マ 中 の シ ラ ン は電 子 の 衝 突 解 離 で,SiH, ジ カ ル(遊
離 基,不
SiH3な
どの 種 々 の ラ
対 電 子 を もつ電 子 構 造 が 基 底 状 態 に あ る)に な る.こ れ らの
化 学 種 の う ちSiH3ラ
ジ カル が 反 応 種 に な る こ とが,分
デ ー タ な どか ら有 力 視 さ れ て い る.ま た,赤 SiH3ラ
SiH2,
ジ カ ル の 検 出 も行 わ れ て い る.そ
子 軌 道 法 の計 算 や 計 測 の
外半 導体 レーザ ー吸収 法 を用 いて
の ほ か,SiC,
SiO2,
TIN,
TiCな
ど
の セ ラ ミ ッ ク ス の薄 膜 合 成 が な され て い る. ダ イ ヤ モ ン ドの 膜 合 成 は,Deryaguinの Matsumotoら*1の
先 駆 的 な 研 究 に 始 ま り,1981年,
熱 フ ィ ラ メ ン ト法 に よ る成 功 に よ っ て研 究 開 発 さ れ た.CH4
と水 素 を 白 熱 し た タ ン グ ス テ ン フ ィ ラ メ ン トを通 過 させ て 励 起 し,700∼1100℃ に 設 定 した 基 板 上 に 堆 積 させ る 方 法 で あ る.そ の 後,マ
イ ク ロ波 プ ラ ズ マ,高 周
波 プ ラ ズ マ な どを 用 い る ダ イ ヤ モ ン ドの 膜 合 成 が 開 発 さ れ て た.現 在 で は,燃 焼 炎 を用 い る方 法 な ど種 々 の 方法 で ダ イ ヤ モ ン ドの 多 結 晶膜 が 容 易 に合 成 され る よ う に な っ て い る.今 後 の 解 決 す べ き問 題 の1つ
は,ダ イ ヤ モ ン ド膜 の成 膜 技 術 の
確 立 とn型 半 導 体 膜 の 成 膜 技 術 の確 立 で あ る.カ
ー ン(Cahn)の
理 論*2は,非
平 衡 物 質 合 成 の 指 針 とな る.ガ ス を十 分 高 温 で 励 起 し,そ れ を急 冷 す る と,非 平 衡 物 質 よ り も自 由 エ ネ ル ギ ー の 高 い 状 態 を現 出 す る こ とが で き る.そ
こか ら非 平
衡 物 質 の 自 由 エ ネ ル ギー まで下 げ れ ば,非 平 衡 物 質 が合 成 で き る こ と に な る(図 3.11参 照). 熱 プ ラ ズ マ の発 生 形 式 を分 類 す る と,図3.12よ が 高 く,10000∼15000℃ 精 練 ・溶 断 溶 接,プ
う に な る.こ の う ち電 流 密 度
の超 高 温 が 容 易 に 得 られ る プ ラ ズ マ ジ ェ ッ トは金 属 の
ラ ズ マ溶 射 な ど に応 用 され,他
方,高 純 度 物 質 の 合 成 に適 し
て い る 高 周 波 熱 プ ラ ズ マ(誘 導 結 合 型 プ ラ ズ マ)は,新
図3.11
*1
S
*2
J
Div.,
. Matsumoto, . W.
1980.
Cahn:
M. Rapid
Kamo,
Y.
Solidification
Sato,
素 材 の合 成 に好 ん で利 用
自由 エ ネ ル ギ ー と温 度 との 関 係
N.
Setaka:
Processing,
Jpn.
J. Appl.
Principles
Phys., and
42,
Technologies,
L
183,
1982. p. 24,
Claitor
Pub.
(a) プ ラ ズ マ ジ ェ ッ ト
(b) プ ラ ズ マ ア ー ク
(c) 高周 波 誘 導 プ ラ ズマ(高 図3.12
周 波 熱 プ ラズ マ)
熱 プラズマの発生形式
され る.プ ラ ズ マ ジ ェ ッ トに よ る プ ラ ズ マ 溶 射 は,金 属 や セ ラ ミ ッ クス の コ ー テ ィ ン グ法 と して 多 用 され る.固 体 原 料 を プ ラ ズ マ 中 で 溶 融 し素 地 材 料 に吹 き つ け,堆 積 す る技 術 で あ る.ア TiC,ZrCな
ル ミナ,安
定 化ZrO2,Cr2O3,TiO2,WC,W,
ど の溶 射 が 行 わ れ て い る.最 近 で は,難 分 解 性 の 毒 性 の 強 い廃 棄 物
(例 え ばPCB)や
オ ゾ ン ホ ー ル 生 成 の元 凶 と され る フ ロ ン の熱 分 解 反 応 に,プ ラ
ズ マ ジ ェ ッ トが 注 目 され て い る. 高 周 波 熱 プ ラ ズ マ に よ り4000∼10000℃ 製 す る 試 み は1960年
の 超 高 温 を 発 生 させ,種
代 に始 ま っ た.当 初 の研 究 で は,熱 プ ラズ マ の超 高 温 を物
理 的 に利 用 す る こ とが 主 で あ っ た が,近 年,物 られ,そ
々 の材 料 を創
理 的 化 学 的 の 側 面 か ら検 討 が 加 え
の優 れ た性 質 が 材 料 の合 成 プ ロ セ ス に利 用 さ れ る よ うに な っ た.高 周 波
熱 プ ラ ズ マ は次 の よ うな 優 れ た性 質 を有 して い る.① 無 電 極 のた め高 純 度 物 質 の
図3.13
PVDと
加 速 電 圧 との 関 係
合 成 に最 適 で あ る.② 酸 化,還 元 腐 食 性 な ど あ ら ゆ る反 応 ガ ス の利 用 が 可 能 で あ る.③ プ ラ ズ マ 中 の原 子,イ 利 用 す る こ とが で き る.④
オ ン,ラ ジ カ ル な ど高 エ ネ ル ギ ー の化 学 種 を反 応 に プ ラ ズ マ フ レー ム が 大 き く,熱 容 量 の大 き な熱 源 で あ
る.高 周 波 熱 プ ラ ズ マ を利 用 した興 味 あ る例 とし て,光 通 信 用 フ ァイ バ ー母 材 用 のSiO2ガ BNな
ラ ス の 製 造 が あ る.そ の ほ か,透 明 で 密 着 性 の 高 いSiC膜
やSi3N4,
ど の高 速 成 膜 もな され て い る.ダ イ ヤ モ ン ドや酸 化 物 超 伝 導 体 の 高 速 成 膜
も注 目 され る. b. PVD薄
膜
PVDに
は,原 料 を物 理 的 に 基 板 に 真 空 蒸 着 す る 方 法,イ
オ ン化 し て か ら加 速 電 圧 で 飛 翔 させ て 基板 に衝 突 堆 積 さ せ る方 法 が あ る.イ オ ン 注 入(ion グ(ion
implantation),ス plating)な
パ ッ タ リ ン グ(sputtering),イ
オ ン プ レー テ ィ ン
ど は後 者 の 方 法 で あ る.そ の 加 速 電 圧 との 関 係 を 図3.13に
示 した. ⅰ) 蒸 着 法:蒸
着 法 は,経 済 的 な プ ロ セ ス で あ り工 業 的 に 多 用 さ れ る.鉄
や コバ ル トを蒸 着 し た磁 気 記 録 媒 体 は,こ の プ ロ セ ス で つ く られ る.通 常 の塗 布 法 に比 べ 記 録 密 度 の 高 い薄 膜 が 得 ら れ る.図3.14の ど に金 属 を斜 め 蒸 着 す る こ とに よ っ て,溝
図3.14
よ う に,誘 電 体,圧
電体 な
ご とに分 離 され た 電 極 が 作 製 で き る.
斜 め蒸 着 に よ る分 離 金属 薄膜 の 作 製
蒸 発 源 の 加 熱 に は,電 子 ビー ム や レー ザ ー な どが 主 に利 用 され る.後 者 で は, 高 融 点 物 質 の 蒸 発,照
射 位 置 の 選 択,特 定 の物 質 の 選 択 的蒸 着 な ど を行 う こ とが
で き る.真 空 チ ャ ンバ ー の外 か ら窓 を通 して レー ザ ー 光 を 導 入 で き るの も利 点 で あ る.分 子 線 蒸 着 法 は,molecular 1969年,ベ
ル 研 で 行 わ れ たGaAs薄
(∼10−4Pa)チ た め,蒸
beam
epitaxyを
略 称 し てMBEと
い う.
膜 の 合 成 の 研 究 に 始 ま る.超 高 真 空
ャ ンバ ー 内 に蒸 発 源 が設 け られ る.蒸 発 分 子 は,超 高 真 空 で あ る
発 源 か ら基 板 に到 達 す る まで 他 の分 子 と衝 突 す る こ とが な い.蒸 発 源 で
制 御 さ れ た ま ま の エ ネ ル ギ ー で,基 板 に衝 突 して 堆 積 す る.チ
ャ ンバ ー 内 に は各
種 の 分 析 装 置 や 測 定 装 置 が組 み 込 まれ て お り,そ れ か ら得 られ る デ ー タ を フ ィー ドバ ック し なが ら膜 合 成 を制 御 す る.MBEの
応 用 で 最 も注 目 さ れ る もの は,数
原 子 層 程 度 の 薄 膜 を交 互 に積 み 重 ね た 超 格 子 の成 膜 で あ る.AlGaAsな 体 超 格 子 やFe-V多
層 膜,Fe-Mg多
どが 製 造 され る.最 近 で は,チ
層膜,Mn-Sb多
beam
assisted chemical
epitaxy:
ⅱ) イ オ ン注 入:10∼
層 膜 な どの磁 性 体 超 格 子 な
ャ ンバ ー 内 に熱 分 解 セ ル や 光 照 射 源 を組 み 込 ん だ
化 学 線 蒸 着 法(chemical beam
どの 半 導
epitaxy:
CBE)や
PCBE)が
数 百kVで
光 併 用 化 学 線 蒸 着 法(photo
行 わ れ る よ うに な った.
加 速 した 高 い エ ネ ル ギ ー の 原 子 や 分 子 の
イ オ ン を,固 体 物 質 に打 ち 込 む.こ れ は,半 導体 に不 純 物 を添 加 す る方 法 とし て 実 用 化 さ れ て い る.現 在 で は,金 属,セ
ラ ミ ッ ク ス,高 分 子 な どの 表 面 改 質 法 と
して 利 用 され る.こ
の方 法 の 特 徴 は,① 正 確 な 注 入 量 の制 御 が 可 能,②
ンの 選 択 が 可 能,③
注 入 深 さの 制 御 が 可 能,④
方,①
注 入 深 さ が 浅 い,②
注入 イオ
低 温 プ ロ セ ス で あ る な どだ が,他
高 真 空 を必 要 とす る,③ 装 置 が 高 価 な どの 欠 点 が あ
る. 機 械 的 性 質 の 改 質 を 目的 と し て,Al,B,C,Cr,Cu,Mo,N,Ni,Ti,V な どの 鉄 鋼 へ の 注 入 が 報 告 され て い る.鉄 にMoとSの 低 いMoS2膜
の形 成,窒
注 入 に よ る摩 擦 係 数 の
素 の 注 入 に よ る表 面 硬 さの 向 上,炭
素 の 注 入 に よ る耐 疲
労 性 の改 善 な どが な さ れ て い る. イ オ ン注 入 と他 の 方 法 を 併 用 し て,化 合 物 薄 膜 を堆 積 させ る こ と も可 能 で あ る.基 板 上 に ホ ウ 素 を蒸 着 し な が ら,窒 素 イ オ ン を注 入 し立 方 晶BNを
含 む膜
合 成 が 検 討 さ れ て い る.イ オ ン注 入 は,ま た局 所 的 な高 温 高 圧 条 件 を現 出 し,そ れ に よ る非 平 衡 物 質 の 合 成 の 可 能 性 が あ る. ⅲ) スパ ッ タ リ ング:1∼10kV程
度 に加 速 した イ オ ン(主
と して ア ル ゴ ン
イ オ ン)を
固 体(タ
ー ゲ ッ ト)に
衝 突 さ せ,タ
分 子 を た た き 出 し て 飛 散 さ せ,そ 合 金,種
れ を 基 板 上 に 堆 積 さ せ る 成 膜 法 で あ る.金
々 の 化 合 物 な ど が タ ー ゲ ッ ト材 と し て 利 用 さ れ る.ス
の 物 質 依 存 性 が 比 較 的 小 さ い の で,タ る.こ
ー ゲ ッ ト表 面 の 構 成 原 子 あ る い は 属,
パ ッ タ リン グ速 度
ー ゲ ッ ト材 料 を 自 由 に 選 択 す る こ と が で き
の 方 法 で,Al2O3,SiO2,Y2O3,In2O3,TiO2,TiN,Si3N4,CrN,
AlN,ZrN,TaC,SiC,TiC,ZrCな Si,Al,SiO2膜
ど の 薄 膜 層 を 形 成 さ せ る こ と が で き る.
な どICプ
ロ セ ス の 成 膜 技 術 と し て も 利 用 さ れ る.ま
Cr,Fe-Ni,Fe-Si-Al,Co-Fe-Si-B,Co-Zr,Fe-Tb,g-Fe2O3な
た,Coどの系 は
垂 直 磁 気 記 録 体 や フ ロ ッ ピー デ ィ ス ク の メ モ リ材 料 な どの 膜 合 成 に も利 用 さ れ る.最 PLZTセ
近 で は,Al2O3,SiC,Sl3N4,TIC,TiNな ラ ミ ッ ク ス 誘 電 体,圧
電 体,酸
ダ イ ヤ モ ン ド状 炭 素(diamond-like
化 物 超 電 導 体,デ
carbon),立
み ら れ て い る.成
膜 条 件 は,ア
kV,成
膜 速 度:数
十nms−1が
ⅳ)
イ オ ン プ レ ー テ ィ ン グ:通
で 部 分 的 に イ オ ン 化 さ せ,蒸
ど の セ ラ ミ ッ ク ス 膜,BaTiO3,
方 晶BNの
さ れ て い る.例
え ば,耐
パ ッ タ 電 圧:1∼7
一 般 的 で あ る. 常,1∼0.1Paの
真 空度 の放 電 プ ラズマ 中
発 源 に 対 し て 負 に バ イ ア ス(数kV以
成 膜 材 料 の 選 択 の 幅 が 大 き い,②
の 密 着 性 が 良 好 で あ る,な
膜 合 成 な どに も試
ル ゴ ン 圧 力:1∼10Pa,ス
上 に イ オ ン を 衝 突 堆 積 さ せ る 方 法 で あ る.図3.15に 法 の 特 徹 は,①
ィスクの保 護膜 用 の
ど で あ る.現
在,窒
下)し
た基板
装 置 の 一 例 を 示 す.こ
の方
高 純 度 膜 の 生 成 が で き る,③
膜
化 物 や炭 化 物 の 成 膜 法 と し て多 用
食 性 や 耐 磨 耗 性 の 改 善 を 目 的 に 各 種 金 型 上 へ の 成 膜,眼
鏡 フ レ ー ム や 包 丁 な ど へ の 成 膜 法 は 実 用 化 さ れ て い る.ま
図3.15
イ オ ンプ レー テ ィ ン グ装 置 の模 式図
た,透
明電極 や弾性表
面 波 フ ィ ル タ ー 用 のZnO膜 Alを
成 膜 す る と,耐
な ど へ の 応 用 も な さ れ て い る.合
水 素 脆 性 が 著 し く改 著 さ れ る ほ か,疲
金鋼母 材 の粒界 に
労 強 度 もせ ん 断 強 度
も 増 加 す る.
3.4
ア ス ベ ス ト,ガ
ラ ス 繊 維,ア
繊
維
ル ミ ナ 繊維,シ
リ カ ガ ラ ス 繊 維,炭
繊 維 は 複 合 強 化 の た め の 素 材 と し て 利 用 す る こ と が 多 い.単 の 断 熱 材,ア
reinforced
plastics:
い た ガ ラ ス 繊 維 強 化 複 合 体 で あ る.繊 FRM)は,金
FRP)は
属 マ ト リ ッ ク ス を 用 い て い る.複
弾 性 率,Ec)は,複
ラ ス繊 維
維 強 化 プ ラス
マ ト リ ッ クス に プ ラ ス チ ッ ク を 用
維 強 化 金 属(fiber
異 な っ た 強 度 特 性 を 得 る こ と が で き る.複
σf),ヤ
独 で は,ガ
ル ミ ナ や シ リ カ 繊 維 性 の 耐 熱 断 熱 材 が 使 用 さ れ る.繊
チ ッ ク(fiber
素 繊 維 な どの
reinforced
metals:
合 化 に よ っ て それ ぞ れ 単 独 と は
合 体 の 引 張 強 さ(σc),ヤ
ン グ 率(縦
合 し て い る マ ト リ ッ ク ス と 繊 維 各 素 材 自 体 の 引 張 強 さ(σm,
ン グ 率(Em,Ef)お
よ び 繊 維 の 体 積 割 合(Vf)に
関 し て,繊
維軸 方 向 の
複 合 材 料 に対 す る 一 方 向 繊 維 強 化 の 複 合 則 と し て 知 ら れ る 以 下 の よ う な 加 成 性 が あ る. σc=σfVf+σm(1−Vf) Ec=EfVf+Em(1−Vf)
し た が っ て,繊
維 に よ る 補 強 効 果 の た め に は,σf>σmで
に 各 種 繊 維 の 特 性 値 を 示 す. 表3.4 各 種 繊 維,ウ
ィ ス カー の特 性
組 み 合 わ せ る.表3.4
ガ ラ ス 繊 維 は,「 原 料 調 合 → 溶 融 → 繊 維 化 → 加 工 」 の工 程 で つ く られ る.短 繊 維 は,高 圧 の 水 蒸 気 で吹 き飛 ば した り,高 速 回 転 の ノ ズ ル か ら遠 心 力 で 吹 き飛 ば して つ くる.ガ
ラス ウ ー ル は 短 繊 維 の 集 合 体 で あ る.長 繊 維 の場 合 は,ポ
ッ ト内
の 融 解 ガ ラ ス を ポ ッ トの底 の 多 数 の ノ ズル か ら紡 糸 してハ ブ に巻 き取 っ て い く. 炭 素 繊 維 は,ポ
リア ク リ ロニ トリル(PAN)系
す る.長 繊 維 は,バ
や セ ル ロ ー ス 系 繊 維 を加 熱 炭 化
イ ン ダ ー で 糸 に撚 っ て布 や紐 に加 工 され る.SiC繊 有機 溶媒,Na
(CH3)2SiCl2
維は
400℃,1∼3atm
[Si(CH3)2−Si(CH3)2)]n
ジ メチルジ クロロ シラン
[SiH(CH3)−CH2]n
ジメチル ポ リシラン
ポ リカルボ シラ ン
に よ っ て 合 成 し た ポ リカ ル ボ シ ラ ン を 融 解 して 紡 糸,熱 処 理 し て骨 格 の-Si-Cだ け に して5∼10nm程
度 の β-SiC繊 維 とす る.ア ル ミナ 繊 維 は,塩 化 ア ル ミ
ニ ウ ム とポ リ ビ ニ ル ア ル コー ル(PVA)と
を混 合 して 得 られ る 粘 稠 液 を湿 式 紡
糸 した 後,酸 素 雰 囲 気 で焼 成 し て つ く られ る.セ ラ ミッ ク フ ァイ バ ー の場 合,融 解 物 の ブ ロ ー イ ン グ や 高速 回 転 の ロ ー タ ー を用 い る ス ピニ ング に よ って 繊 維 化 す る.ロ
ッ ク ウ ー ル は,高 炉 ス ラ グ を原 料 と した 融 解 物 を回 転 ノ ズ ル か ら遠 心 力 で
吹 き飛 ば し て繊 維 化 す る. 3.5 ウ ィ ス カ ー ウ ィ ス カ ー は英 語 で 「猫 の ひ げ 」 を意 味 し,ひ げ結 晶 と も呼 ばれ て い る.ウ ィ ス カ ー と繊 維 との 区別 は ア スペ ク ト比(長
さ/径 の 比)が10以
上100∼200以
の もの が ウ ィ ス カ ー,そ れ 以 上 が繊 維 と呼 ば れ て い る.し た が って,そ 近 の 針 状 の もの は両 方 で 呼 ばれ て い る こ とが 多 い.ウ
下
の境 界 付
相 や 気 相 の 中 で 過 飽 和 状 態(過 剰 に溶 け込 ん だ状 態)か
ィ ス カ ー は,結 晶 成 分 が 液 ら平 衡 状 態 に な ろ う と し
て析 出 ・成 長 した 単 結 晶 で あ る.一 般 に ウ ィ ス カ ー は,過 飽 和 度 の 高 い環 境 か ら 成 長 す る こ とが 多 い.表3.5に
主 要 な合 成 法 を分 類 して 示 した.ウ
ィ ス カー の強
度 は そ の 直 径 に大 き く依 存 す る. 図3.16は
ア ル ミナ(Al2O3)ウ
ィ ス カ ー の 例 で あ る.そ
の 強 度 は,直 径 が50
μm以 下 に な る と急 激 に増 大 し,数 μm径 に な る と通 常 の 多 結 晶 体 繊 維 の20倍 か ら100倍
に も達 す る.こ れ は,ウ
ィ ス カ ー が 単 結 晶 で あ り,径 が 小 さ くな る は
ど結 晶 の 中 の 格 子 欠 陥 や 格 子 不 整 合 な どが 少 な くな り,完 全 結 晶 に近 づ くた めで あ る.本 当 に 完 全 結 晶 で あ る な らば,そ の 強 度 は基 本 的 に 化 学 結 合 の強 さだ け に
表3.5
* 気 相(V)-液 え ば,シ
相(L)-固
ウィスカーの主要合成法
相(S)が
同 時 に関 与 す る成 長 機 構 の 略 記
リコ ン基 板 上 に金 粒 子が 存 在 す る と,合 金 融 液(Au-Si)の
が 生 成 され,液
.例 液滴
滴 の径 に近 い太 さ の ウ ィス カ ー が 成 長 す る.
図3.16
ア ル ミナ ウ ィス カ ー の 強 度 と直 径 の関係
依 存 す る とい う こ とに な る が,現 実 に は不 純 物 な ど も含 まれ るた め,簡 単 に は完 全 結 晶 の ウ ィ ス カ ー は得 られ な い. ウ ィ ス カ ー は,単 独 で 利 用 され る こ とは少 な く,高 強 度 性 を活 用 す る た め に各 種 の 複 合 材 料 の補 強 素 材 と して利 用 す る こ とが 多 い.セ
ラ ミッ ク ウ ィス カ ー は,
樹 脂 を は じ め,セ ラ ミッ ク ス や金 属 な ど との複 合 に広 く利 用 され て い る.ウ カ ー は,複 合 材 料 の 発 展 と と も に,材 料 の 高 強 度 化,多 て,将 来 ます ます 重 要 に な っ て い る.特
ィス
機 能 化 な どの 素 材 と し
に材 料 の複 合 化 で は,通 常 の 繊 維 に は な
い ウ ィス カ ー 独 自 の よ さが 認 め られ て い る.一 方,ア
スベ ス トの 代 替 材 料 と して
の期 待 も大 き い が,空
中 に 飛 散 し て肺 に 吸 引 され た 場 合 に は,鉱 物 化 学 組 成 に か
か わ らず 難 水 溶 性 の 繊 維 で あ る こ と自体 に有 害 要 因 が あ る との説 もあ り,取 扱 い に は注 意 が 必 要 で あ る. 3.6 成
形
3.6.1 成 形 の 基 礎 原 料 粉 末 の成 形 は,セ
ラ ミ ック ス プ ロセ ス の 中 で も最 も重 要 な もの の1つ で あ
る.セ ラ ミ ッ ク ス の製 造 を成 形 と焼 結 を別 個 の プ ロセ スで 行 う二 段 方 式 で も,ホ ッ トプ レ ス法 の よ うに粉 体 の成 形 と焼 結 を1つ の操 作 で 行 っ て し ま う一 段 方 式 で も,粉 末 あ るい は そ の ス ラ リー(細 か い粉 末 が液 体 中 に分 散 して い る濃 厚 な懸 濁 液)の 流 動 特 性(レ
オ ロ ジー 特 性)が
成 形 体,ひ
い て は焼 結 体 の 物 性 に 大 き く影
響 す る. 流 動 の基 本 パ タ ー ン に は ニ ュ ー トン流 と非 ニ ュー トン流 が あ り,後 者 に は ダ イ ラ タ ン ト流,ビ
ン ガ ム 塑 性 流,チ
た 種 類 が あ る.詳
し くは4.3節
キ ソ トロ ピ ー(揺 変 性),レ
オペ キ シー といっ
で 解 説 さ れ る.流 動 挙 動 は,粉 体 の粒 子 形 態,粒
子 サ イ ズ お よび 粒 度 分 布 に よっ て 変 化 す る の で,目 的 とす る焼 結 体 の構 造 あ る い は物 性 に 合 わ せ て,こ
の よ うな レオ ロ ジ ー 的 性質 を最 適 に調 整 して お か ね ば な ら
な い. そ の た め に成 形 助 剤 と して の 解 膠 剤 や結 合 剤 が 使 わ れ る.解 膠 剤 に は,炭 酸 ソ ー ダ,ケ イ 酸 ソ ー ダ な どの無 機 剤 や ポ リア ク リル 酸 塩 の よ う な高 分 子 系 の有 機 剤 が 数 多 くあ る.粉 末 を顆 粒 化 す るた め の結 合 剤 に は,以 下 の よ うな も の が あ る. ① わ ず か に軟 質 の 顆 粒 を つ くる:ポ
リ ビニ ル ア ル コ ー ル(PVA),メ
チ ルセル
ロ ー ス(MC) ② 比 較 的 硬 い顆 粒 を つ くる:デ キ ス トラ ン,澱 粉,リ ③ 柔 らか い顆 粒 をつ くる:ろ ④ そ の 他:ス
う,ワ ッ ク スエ マ ル ジ ョン,ゴ ム類
テ ア リン酸 塩,パ
ラ フ ィ ン油,滑 石 粉 末,ポ
(PVB),ポ
リ エ チ レ ン グ リ コ ー ル(PEG),カ
(CMC),エ
チ ル セ ル ロー ス(EC),ヒ
これ ら成 形 助 剤 に よ っ て,ス は 流 動 性,粒 子 間 結 合 性,可
グ リ ン,ア ク リル 酸 塩
ル ボキ シメ チル セ ル ロー ス
ドロ キ シ プ ロ ピル セ ル ロ ー ス(HPC)
ラ リー のpH,表
塑 性,離
リ ビニ ル ブ チ ラー ル
面 張 力,消
泡 性,分
散性 あ るい
型 性,成 形 体 強 さ な どの性 質 が コ ン トロ ー
ル され る.陶 磁 器 製 造 プ ロセ ス に お い て は,基 本 原 料 の 粘 土 自体 も可 塑 性,離 型
性,成 形 体 強 さ向 上 とい っ た役 割 を もっ て い る.一 方,フ
ァイ ンセ ラ ミ ッ クス で
は,有 機 質 の 成 形 助 剤 の 添 加 が 必 須 で あ る.添 加 量 は,一 般 に は0.5∼5%程
度
で あ る.焼 結 プ ロ セ ス で 成 形 助 剤 が 炭 化 す る と焼 結 体 が 黒 化 した り,焼 結 体 の性 質 が 変 化 した りす る の で,焼 結 前 の仮 焼 で完 全 に脱 炭 し な け れ ば な らな い.こ の 脱 炭 過 程 で しば し ば成 形 体 の 変 形 や破 損 が 生 じる の で,多 量 の成 形 助 剤 の使 用 は プ ロセ ス管 理 上 に も問 題 で あ る. 3.6.2 成
形
法
粒 度 調 製 した粉 末 を 目 的 とす る形 状 に成 形 す る方 法 を,原 料 状 態 と使 用 圧 力 で 分 類 して,表3.6に
示 す.
ⅰ) 泥 し ょ う鋳 込 成 形 法(流 込 成 形 法):多 う(ス
リッ プ)を 流 し込 み,セ
あ る.ス
孔 質 の セ ッ コ ウ型 に原 料 泥 し ょ
ッコ ウ型 に よ っ て脱 水,脱
リッ プ は 鋳 込 成 形 が で き る状 態 の ス ラ リー の こ とで あ る.粒 度 調 整 と適
当 な添 加 剤 を選 択 で きれ ば,こ の 方 法 が 適 用 で き る.ス 助 剤 と焼 結 助 剤 が 同 時 に加 え られ る.ス あ る.ア
型,乾 燥 させ る方 法 で
ル ミ ナ の 場 合,pH4.5の
3000mPas−1に
リ ップ の 調 製 に は,成 形
リ ップ の 性 質 に は,pHの
粘 度 は65mPas−1で
調 節 も重 要 で
あ る が,pH6.5で
は
大 き く変 化 す る.複 雑 形 状 の 製 品,大 型 製 品,試 作 品 な どに 適
した 方法 で あ る.排 出 鋳 込 み(排 泥 鋳 込 み)(図3.17),固 表3.6 成 形 方 法
図3.17
排泥鋳込成形
形 鋳 込 み(図3
.18),
図3.18
固 形鋳 込 成 形
真 空 鋳 込 み,遠 心 鋳 込 み,圧 力 鋳 込 み が あ る.排 出 鋳 込 み で は,セ リ ッ プ を 注 入 ・充 〓 した後,型 は,チ
キ ソ トロ ピ ー性(攪拌
わ る性 質,静
ッ コ ウ型 に ス
を逆 さ に し て泥 し ょ う を流 し出 す.固 形 鋳 込 み で
や 振 動 に よ っ て 固体 で あ る ゲ ル が 流動 性 の ゾ ル に 変
置 す る とゲ ル に戻 る)を
もた せ た 固 形 泥 し ょ う(は い 土)を 攪 拌 す
る こ とで 流 動 化 させ,鋳 型 に流 し込 み,放 置 して 固 化 させ,脱 型 す る.鋳 込 成 形 体 は,自 身 の 脱 水 収 縮 に よ って,型
か ら離 れ る.離 型 性 を よ くす るた め に型 内 面
に シ リコ ー ンや オ リー ブ 油,滑 石 な ど を離 型 剤 と し て塗 布 す る こ と も行 わ れ る. 成 形 体 は焼 成 過 程 に もっ て い く まで の取 扱 い に 耐 え る強 度 を もつ 必 要 が あ る.真 空 鋳 込 み で は,型 の外 面 を真 空 引 きす る もの で,鋳 込 速 度 や 着 肉 成 形 体 の均 質 性 が 改 善 さ れ る.遠 心 鋳 込 み で は,型
を回 転 さ せ る こ とに よ って,複 雑 形 状 の 型 に
泥 し ょ う を精 密 に充 〓 させ る方 法 で あ る.圧 力 鋳 込 み で は鋳 込速 度 が 増 大 す る. ⅱ) 押 出成 形 法:可
塑 性 の よ い 粘 土 系 の 陶 磁 器 練 土 や 有 機 質 助 剤 を添 加 し
た フ ァイ ンセ ラ ミ ック ス 系 練 土 を,真 空 脱 気 室 を通 して か ら,適 当 な 口型 か ら圧
図3.19
押出成形
力 をか け て押 し出 す(図3.19).棒
状 とか パ イ プ 状 の炉 心 菅,保
よ うな 長 い製 品 の 製 造,自 動 車 排 ガ ス制 御 の 蜂 の巣 状(ハ
護 菅,絶
ニ カ ム状)コ
縁菅 の
ー デ ィエ
ラ イ ト触 媒 担 体 で あ る焼 結 体 な ど の製 造 に利 用 さ れ て い る. ⅲ) 射 出 成 形 法:セ エ チ レ ン,ポ
ラ ミ ッ ク ス粉 体 を 熱 可 塑 性 樹 脂(ポ
リ塩 化 ビ ニ ル,ポ
あ る い は熱 硬 化 性 樹 脂(フ ル,ポ
リ ビニ ル ア ル コー ル,フ
ェ ノ ー ル 樹 脂,尿
素 樹 脂,メ
リス チ レ ン,ポ
リ
タル 酸 ジ ブ チ ル な ど), ラ ミン樹 脂,ポ
リエ ス テ
リ ビニ ル ブ チ ラー トな ど)お よ び ア セ トンや ア ル コー ル とい っ た溶 剤,適
当 な 可 塑 剤 や 助 剤 と混 合 し,加 熱 した シ リ ンダ ー 内 で加 熱 流 動 化 させ,プ
ランジ
ャー(金 型 の一 部 で 押棒 の こ と)ま た は ス ク リ ュー に よ っ て 金 型 中 に射 出 ・押 し 込 ん で 成 形 体 とす る.他 の 成 形 法 に比 較 して 多 量 の有 機 結 合 剤 を使 用 す る の で, 焼 成 の 前 に 熱 処 理 し て樹 脂 を 除 去 す る(脱 樹 脂 工 程).後
加 工 な しで 複 雑 形 状 が
容 易 に得 られ る の で,精 密形 状 と寸 法 が 要 求 さ れ る アル ミナ点 火 栓 碍 子 や 窒 化 ケ イ 素,炭 化 ケ イ 素,ジ
ル コニ ア(酸 化 ジ ル コ ニ ウ ム:ZrO2)と
い った非 酸化物
セ ラ ミ ック ス部 品 の製 造 に も利 用 さ れ て い る. ⅳ) 湿 式 加 圧 法:水
分10∼15%を
含 む顆 粒 を用 い る もの で,粘 土 系 素 地 に
用 い られ る.素 地 は,加 圧 中 に 塑 性 的 に 変 形 して,型 の 隅 々 ま で充 〓 され る.脱 型 した成 形 体 の周 囲 に はバ リ(縁 な どに はみ 出 した余 分 な 部 分)が
で き,取 扱 い
に注 意 しな い と変 形 す る.そ の た め,自 動 化 に は 向 か な い . ⅴ) 乾 式 加 圧 法:水
分0∼10%の
顆 粒 を プ レス 機 で 高 圧 成 形 す る.金 型 内
で 粉 末 を一 軸 方 向 に圧 縮 成 形 す る一 軸 加 圧(図3.20)と
ホ ッ トプ レ ス(HP),
全 方 向 か ら等 方 圧 をか け る コ ー ル ドア イ ソス タ テ ィ ック プ レス(冷 間 等 方圧 プ レ ス:CIP)お
よ び焼 結(3.7節
参 照)ま
図3.20
で 行 っ て し ま う ホ ッ トア イ ソ ス タ テ ィ ッ
乾式一軸加圧成 形
図3.21
ク プ レ ス(熱 間 静 水 圧:HIP)が
ド ク タ ー ブ レ ー ド成 形
あ る.CIPは
媒 体 に は ア ル ゴ ン ガ ス な どの 気 体,水 品,特
に絶 縁 体,磁 性 体,コ
ス部 品,壁
ラバ ー プ レ ス と も呼 ば れ る.圧 力
な どの 液 体 が 使 わ れ る.一 軸 加 圧 で は小 型
ン デ ンサ ー,電 気 用 基 板 な ど電 気 ・電 子 セ ラ ミ ック
タ イ ル な どの 多 量 生 産 型 の成 形 に広 く利 用 され て い る.透 光 性 セ ラ ミ
ッ クス や 高 強 度 フ ァイ ンセ ラ ミ ック ス の製 造 に は,HPやHIPが ⅵ) テ ー プ 成 形 法:泥 で あ る.ロ を,2つ
し ょ う鋳 込 成 形,あ
利 用 され る.
る い は塑 性 成 形 に類 似 した 方 法
ー ル 法 や ドク タ ー ブ レ ー ド法(図3.21)が
あ る.そ れ ぞ れ 泥 し ょ う
の ロ ー ラー の 間 隙 あ る い は ドク タ ー ブ レー ド と呼 ばれ る刃 先 で 肉 厚 を調
整 して,移
動 し て い るテ ー プ上 に展 開 ・乾 燥 させ て膜 状 と し,焼 結 す る前 に必 要
とす る寸 法 に切 断 また は打 ち抜 く.IC基
板,ICパ
ッ ケ ー ジ 多 層 基 板,積
層コン
デ ンサ ー な どの 厚 膜 お よび 薄 膜 の板 状 製 品 な どの製 造 に利 用 され て い る. 3.7 焼 焼 結(sintering)と
結
は,粉 体 を 融 点 以 下,あ
るい は粉体 間 に一部 液 相 を生 じ
る温 度 に加 熱 す る と,粉 体 間 が 結 合 して焼 き締 まっ て い く現 象 で あ る.前 者 は固 相 焼 結 で あ り,後 者 を液 相 焼 結 とい う.焼 結 は,粒 子 間 の接 触 点 で 結 合 が起 こ り ネ ッ ク が 形 成 され る初 期 段 階(ネ 段 階),ネ
ッ ク部 分 の 半 径 が 粒 径 の0∼0.3ま
で成長 す る
ック の 成 長 と と も に粒 子 間 の連 続 した 気 孔 が細 くな っ て い く中 期 段 階,
連 続 気 孔 が 切 断 さ れ て 孤 立 す る終 期 段 階(気 孔 率 で 約95%以
上)へ
と進 行 す る.
焼 結 の駆 動 力 は表 面 ・粒 界 自 由 エ ネ ル ギ ー の減 少 で あ る.粉 末 成 形 体 に外 応 力 を か けれ ば,こ れ も駆 動 力 とな る.ネ ッ ク成 長 に 関 わ る,物 質 移 動 が 生 じ る機構 は 4.5節 に解 説 され る の で,こ
こで は 省 略 す る.焼 結 法 を 分 類 す る と図3.22の
よ
う に な る. 無 加 圧 焼 結 で は,通 常,理
論 密 度 の70∼95%ま
で 緻 密 化 で き るが,そ
れ以 上
図3.22 焼 結 法 の分 類
の 孤 立 気 孔 の 消 滅 さ せ る焼 結 終 期 の 緻 密 化 は た い へ ん 難 しい.95%以
上 に緻密
化 す る た め に は,粉 末 お よび 粉 末 成 形 体 の調 製,焼 結 助 剤 の 選 択,焼
結雰囲気 の
制 御 が 重 要 で あ る.透 光 性Al2O3焼 0.25質 量%程
結 体 の 場 合 に は,高 純 度 の アル ミナ微 粉 末 に
度 の マ グ ネ シ ア を添 加 して 湿 式 混 合 ・乾 燥 ・バ イ ンダ ー 添 加 ・成
形 し,予 備 焼 成 し た 後,水
素 雰 囲 気,1800∼1900℃
で本 焼 結 す る.加 圧 焼 結 で
は,無 加 圧 焼 結 に比 べ て,塑 性 流動 や 物 質 拡 散 が 促 進 さ れ緻 密 化 が 容 易 に な り, 緻 密 化 温 度 の 低 温 化,焼 HP焼
結 時 間 の短 縮,均
棒)が
結 で は,Al2O3,SiC,WC,黒 使 わ れ る.HIP焼
質 微 構 造 とい っ た 利 点 が あ る.
鉛 な ど の セ ラ ミ ック 製 の型 とパ ン チ(押
結 で は,金 属 製(Fe,Co,Ni,Pt)や
に真 空 封 入 した 粉 末 成 形 体 を不 活 性 ガ ス(窒 素,ア 体 と して 焼 結 させ る(カ ば,直 接HIPが
プ セル 法).あ
ル ゴ ン,ヘ
らか じめ95%以
行 え る(カ プ セ ル フ リー 法).HIPの
潤 滑 性 を もつ 六 方 晶 窒 化 ホ ウ素(hBN)や,高 融 解 す る物 質(NaClな
ガ ラス製 カ プセル リ ウム)を 圧 力媒
上 に 予備 焼 結 させ て お け 圧 力 媒 体 と し て は,固 体
温加 圧下 で塑 性 流動 す る固体 や
ど)も 使 え る. 3.8 焼 結 体 の 加 工
セ ラ ミ ッ ク ス の 特 徴 は,金 属 材 料 に比 べ て,一 般 に 硬 くて 変 形 し に く く,脆 い.こ
の よ う な性 質 は,セ ラ ミッ ク ス の化 学 結 合 の イ オ ン性 と共 有 性 に よ る.金
属 の よ うに 方 向 性 の な い もの と違 って,一 般 に 結 合 に 方 向 性 が あ り,原 子 間 距 離 が大 き い の で 変 形 し に く く,金 属 材 料 の よ う に塑 性 変 形 を利 用 した加 工 はで き な い.従 来 は簡 単 な形 状 の ものが 多 か った た め,多 た後,焼
成 す れ ば よ か った.し
くは成 形 加 工 で 所 望 の形 状 に し
か し最 近 の よ う に 金 属 部 品 と組 み合 わ せ た りし て
機 械 部 品 と して 使 う と き に は,金 属 部 品 と同 程 度 の 厳 し い 加 工 精 度 が 要 求 さ れ る.こ の よ うな場 合 に は,本 焼 成 して か ら表 面 仕 上 げや 寸 法 ・形 状 な どの精 密 加 工 が 必 要 に な る.そ の よ う なセ ラ ミ ッ クス加 工 法 を物 質 の増 減 か ら大 別 す る と,
以 下 の よ う に分 け られ る. ① 除 去 加 工:表 面 研 磨,切 断,切
削,研
削 な ど材 料 の 破 壊 を主 体 と して実 質 部
の 除 去 ・分 離 す る. ② 変 形 加 工:加
熱切 削,超 塑 性 加 工 な ど材 料 の 変 形 を主 体 と して 成 形 す る.
③ 接 合 ・付 着 加 工:蒸 接 着 焼 結 接 合,拡
着,イ
オ ン プ レ ー テ ィ ン グ,ス パ ッタ,め
散 接 合 な ど材 料 の 結 合 を 主 体 と して 接 合 ・付 着 さ せ る(例
ば,圧 着 法 で は イ ン ジ ウ ム(In)の 着,拡
っ き,圧 着, え
よ う な軟 ら か い 金 属 を 接 合 面 に 挿 入 して 圧
散 接 合 法 で は界 面 部 に拡 散 層 あ る い は反 応 層 とい っ た 中 間 層 を形 成 させ
る). ① の除 去 加 工 法 を供 給 エ ネ ル ギ ー の与 え方 か ら分 類 す る と,力 学 的,化 光 化 学 的,電
気 化 学 的,電 気 的,光 学 的 に な るが,最
学 的,
も広 く用 い られ て い る の は
力 学 的 加 工 法 で あ る. 砥 石 に よ る研 削,ラ
ッ ピ ン グ お よび ポ リ シ ン グ が 多 く使 わ れ て い る.砥 粒 に
は,ダ イ ヤ モ ン ド,ア ル ミナ,炭 化 ケ イ 素,ボ ニ ア,チ
タニ ア(酸 化 チ タ ン,TiO2),シ
ロ ン カ ー バ イ ド(B4C),ジ
リ カ な どが 使 わ れ る.ラ
鋳 鉄 や ガ ラス な どか らな る ラ ップ と呼 ばれ る工 具(鋳 だ,ガ
ラ ス,木 材 な ど)に 加 工 液(ラ
物 に定 荷 重 をか け 回転 研 磨 す る.ポ 富 む ラ ップ(こ ん だ,竹,プ
ッ プ液)に
ッ ピングでは
鉄,軟 鋼,鉛,ス
ズ,は ん
分 散 した 砥 粒 を散 布 して,加 工
リシ ン グ で は,軟 質 の 弾 性 あ る い は粘 弾性 に
の場 合 はポ リシ ャ と呼 ぶ,皮 革,ク
ラ ス チ ッ ク,木 材,鋳
ルコ
鉄 な ど)と,さ
適 当 に低 い 荷 重 を か けて 平 滑 面 に仕 上 げ る.
ロス,ガ
ラ ス,銅,ス
ズ,は
ら に小 さ い微 粉 砥 粒 を 用 い て
4 セ ラ ミックス プ ロセ スの理 論
4.1 結 晶 相 の 制 御
4.1.1
変位 型 転 移 と再 編 成 型 転 移
酸 化 ケ イ 素SiO2は す る と573℃
で,高
常 温 で は,低
温 型 石 英 に 変 化 す る.ま
と ダ イ ヤ モ ン ド に 変 化 す る(そ 温 度 や 圧 力 の 変 化 に よ っ て,相 tion)と
温 型 石 英 の 結 晶 構 造 が 最 も 安 定 で あ る.昇 た,グ
ラ フ ァ イ ト に 超 高 圧 を加 え る
の 変 化 は 非 常 に ゆ っ く りで あ る).こ
の よ う な,
の 結 晶 構 造 が 変 わ る こ と を 転 移(transforma
呼 ぶ.
酸 化 ケ イ 素 を870℃
以 上 に 昇 温 す る と,酸
化 ケ イ 素 の 石 英 とは別 の 結 晶 の 形 で
あ る ト リ ジ マ イ ト と い う 結 晶 が 安 定 に な る.石 が か な り異 な っ て い る.石
英 と ト リ ジ マ イ トで は,結
英 か ら ト リ ジ マ イ ト に 転 移 す る に は,酸
晶構 造
素-ケ イ 素 間
の 結 合 が い っ た ん 切 れ て 新 た な 構 造 に な る よ う再 結 合 し な け れ ば な ら な い.そ た め,そ
の 転 移 は 非 常 に ゆ っ く り と し た も の に な る.こ
型 転 移(reconstructive
transformation)と
石 英 に 転 移 す る 場 合 に は,Si-Oの か に 変 化 す る だ け で あ る.こ る.こ
温
の よ う な 転 移 を,変
一 般 的 に,低
呼 ぶ.一
の よ う な 転 移 を,再 方,低
位 型 転 移(replacement
編成
温 型 石 英 か ら高 温 型
結 合 が 切 れ る 必 要 は な く,そ
の 変 化 は 容 易 に 起 こ る た め,転
の
の結合角 がわ ず
移 は瞬 時 に して 起 こ
transformation)と
温 相 の エ ン タ ル ピ ー は 高 温 相 の そ れ よ り低 い.系
呼 ぶ.
の自由エネル ギ
ー は G=H−TS で 与 え ら れ る.こ Sは
こ で,Gは
エ ン ト ロ ピ ー で あ る.温
(4.1)
自 由 エ ネ ル ギ ー,Hは 度 が 低 い と き,エ
エ ン タ ル ピ ー,Tは
温 度,
ン トロ ピ ー 項 は 無 視 で き る た め,
エ ン タ ル ピ ー の 低 い 相 の 方 が 自 由 エ ネ ル ギ ー が 低 く安 定 で あ る .高
温相 のエ ン ト
図4.1 相1と
相2の
自 由 エ ネ ル ギ ー の 関係
ロ ピー は低 温 相 の そ れ よ り大 き い.そ の た め,温 度 が 高 くな る と −TSに
よる 自
由 エ ネ ル ギ ー の 減 少 が エ ン トロ ピー の差 を 凌 駕 し,高 温 相 の 自 由 エ ネ ル ギー が 低 温 相 の そ れ よ り低 くな り,高 温 相 へ の転 移 が 生 じ る(図4.1). チ タ ン酸 鉛 は,常 温 で正 方 晶 系 を とる 結 晶 で あ る.正 方 晶 の状 態 にお い て は, 陽 イ オ ン と陰 イ オ ン の重 心 に ず れ が 生 じ自発 分 極 もつ.こ 場 で 反 転 させ る(向
きを変 え る)こ
とが で き るた め,チ
の 自発 分 極 は,外 部 電
タ ン酸 鉛 は強誘 電 体 で あ
る.対 称 性 の よ り高 い立 方 晶 で は,構 成 イ オ ン間 の静 電 エ ネル ギ ー は よ り高 い状 態 とな る.し た が っ て,低 温 で はエ ン タ ル ピー が 小 さい 正 方 晶 とな る.立 方 晶 は 対 称 性 が 高 い た め,エ る と,−TSの
ン トロ ピー も正 方 晶 よ り大 きい.そ
の た め,温 度 が 上 昇 す
項 の た め に 自 由エ ネ ル ギ ー の 大 小 関 係 が 逆 転 し,立 方 晶 に転 移 す
る.立 方 晶 で は,自 発 分 極 を もた な い た め,常 誘 電 相 で あ る.強 誘 電 相-常 誘 電 相 転 移 点 は キ ュ リー 温 度 と呼 ば れ る.強 誘 電 体 は一 般 に キ ュ リー温 度 で,誘 電 率 の ピ ー ク を示 す. 図4.2は
炭 素 の状 態 図 で あ る.グ ラ フ ァイ トか らダ イ ヤ モ ン ドへ の転 移 は再 編
成 型 転 移 で あ る.そ の た め,状 態 図 で ダ イ ヤ モ ン ドが安 定 な領 域 まで,グ
ラフ ァ
イ トの 圧 力 を上 昇 させ て も容 易 に は ダ イ ヤ モ ン ドに転 移 しな い.図 中 曲 線a−b は グ ラ フ ァイ トの 融 点 で あ る.こ の 曲線 を延 長 したb−cは,準 トの融 点 で あ る.グ
安 定 グ ラフ ァイ
ラ フ ァイ トをダ イ ヤ モ ン ドに直 接 転 移 させ る に は,こ の 付 近
の 高 圧 高 温 が 必 要 で あ る.こ の よ う な高 温 高 圧 は容 易 に実 現 で きな い の で,実 用
図4.2 炭 素 の状 態 図
的 に は触 媒 を用 い る.例
え ばNiを
用 い る と,高 温 高 圧 で 溶 融 し て い るNiに
ラ フ ァイ トの 炭 素 が 溶 解 し,ダ イ ヤ モ ン ドと して 析 出 させ る こ とが で き る.と ろで,微
グ こ
細 な ダ イ ヤ モ ン ドは,低 圧 で 有 機 物 の 分 解 に よ り製 造 す る こ と もで き
る.状 態 図 か らは考 え られ な い こ とで あ る が,次 の よ うに考 え る と納 得 で き る. 有 機 物 を分 解 した直 後 の 炭 素 は,非 常 にエ ネ ル ギ ー 状 態 の 高 い 状 態 で あ る.低 圧 で は,グ
ラ フ ァ イ トの状 態 が 最 もエ ネ ル ギ ー の低 い 状 態 で あ る.有 機 物 の分 解 直
後 の 炭 素 は,エ
ネル ギ ー の 低 い グ ラ フ ァ イ トに な ろ う とす る.ダ イ ヤ モ ン ドの エ
ネ ル ギ ー 状 態 は それ よ り高 いが,分 解 直 後 の炭 素 よ りず っ と安 定 で あ る.そ の た め,一 部 は ダ イ ヤ モ ン ドに転 移 す る こ とが で き る(3.3.2項 トへ の転 移 も同 時 に起 こ るの で,ダ
参 照).グ
ラ フ ァイ
イ ヤ モ ン ドだ け をい か に集 め るか が 重 要 な技
術 とな る. 酸 化 ケ イ素 の 蒸 気 圧 は低 い た め,酸 化 ケ イ 素 の気 相 を含 む状 態 図 をつ くる の は 難 しい.し
か し,常 圧 で の 挙 動 か ら酸 化 ケ イ 素 の 状 態 図 を推 測 す る こ とが で き
る.図4.3に
酸 化 ケ イ 素 の 状 態 図 の概 略 を示 す(縦 軸 は リニ ア ス ケ ー ル で は な
い).各
固 相 と気 相 との境 界 線 は,そ
れ ぞ れ の 蒸 気 圧 に相 当 す る .破 線 は そ の 延
長 線 で あ り.準 安 定 相 の 蒸 気 圧 で あ る.1気 上 げ る と,573℃ 易 で あ る.さ
圧 にお い て室 温 よ り α石 英 の温 度 を
で β石 英 へ と転 移 す る.こ の転 移 は,変 位 型 転 移 で あ る の で 容
ら に昇 温 す る と,870℃
か ら β-ト リジ マ イ トへ の 転 移 が 始 ま る.
この 転 移 は再 編 成 型 転 移 で あ る の で,非 常 に ゆ っ く り進 む.不 純 物 の存 在 な し に
図4.3 酸 化 ケ イ素 の 状 態 図(模
は,ほ
と ん ど転 移 し な い とい わ れ て い る.さ
式 図)
らに1470℃
の 転 移 も再 編 成 型 転 移
で あ る. 酸 化 ケ イ素 の 変 位 型 転 移 と再 編 成 型 転 移 の性 質 を う ま く利 用 す る と,次 の よ う な こ とが 可 能
あ る.α 石 英-β 石 英 間 の転 移 は,変 位 型 転 移 で あ る の で 非 常 に
速 い.ま た 体 積 変 化 を伴 うの で,こ る と破 壊 し や す い.こ
こで,い
の転 移 点 を横 切 る よ うな 温 度 変 化 に さ ら され
った ん トリ ジマ イ ト相 に転 移 させ て お くと トリジ
マ イ ト相 か ら石 英 へ の転 移 は遅 く,石 英 の α-β転 移 を避 け る こ とが で き る. 4.1.2 固 図4.4に,固
溶
体
相 に お い て も液 相 に お い て も,互 い に完 全 に溶 け合 う系 の典 型 的
な状 態 図 を示 す.「 固 相 に お い て 溶 け 合 う」 とは,固 溶 体(solid
図4.4
液 相 で も固 相 で も完 全 に溶 け合 う 系の状態図の例
solution)を
形
(b)
(a) 図4.5 A,Bが
完 全 に溶 け合 う 系(a)と
全 く溶 け合 わ な い系(b)
の 自由 エ ネ ル ギ ー と組 成 と の関 係
成 す る とい う こ とで あ る.ど の割 合 で も固 溶 体 を形 成 す る もの を,全 率 固 溶 体 と 呼 ぶ.Lで
示 した 領 域 は単 一 の 液 相,Sで
示 した 領 域 は単 一 の 固 相,L+Sで
した 領 域 は液 相 と固 相 が 共 存 す る領 域 で あ る.Lの を液 相 線(liquidus),L+Sの 成 分A,Bが
領 域 の境 界 線
領 域 とSの 領 域 の境 界 線 を 固相 線(solidus)と 呼 ぶ.
完 全 に 固溶 す る と き,自 由 エ ネ ル ギ ー と組 成 との関 係 は図4.5(a)
の 太 線 で 示 す よ う な 下 に 凸 の 曲線 とな る.CBの はGSと
領 域 とL+Sの
示
な る が,AとBの
組 成 の固溶体 の 自由エ ネルギー
共 存 状 態 で 全 体 の 組 成 がCBの
場 合 に は,A,Bの
自
由 エ ネル ギ ー の 重 み付 き平 均 GM=(1−CB)・GA+CB・GB
(4.2)
とな る.図 か らGS
あ る こ とが わ か る.し た が っ て,共 存 状 態 よ り単 一 の
固 溶 体 を形 成 した 方 が,自
由 エ ネ ル ギ ー が 低 く安 定 で あ る.逆
に自由エネルギー
曲線 が 図4.5(b)に
示 す よ うな上 に凸 の形 に な った 場 合 に は,単 一 の 固 溶 体 の 自
由 エ ネ ル ギ ーGSよ
り,A,B共
存 状 態 の 自 由 エ ネ ル ギ ーGMの
方 が 低 くな り,
固溶 体 は形 成 され な い. 図4.4のT1,T2,T3に
お け る 自 由 エ ネ ル ギ ー と組 成 と の 関 係 を 図4.6に
示 す.
液 相 状 態 で も固 相 状 態 で も下 に凸 な の は,上 述 の理 由 に よ る.低 温 に お い て は, 全 組 成 域 に わ た っ て 固相 の 自 由エ ネ ル ギ ー が 低 く,ど の 組 成 で も単 一 相 の 固溶 体 で あ る.一 般 に固 相 よ り液 相 のエ ン トロ ピー が 大 きい の で,温
度 が 上 昇 す る に従
っ て 固 相 に対 して 液 相 の 自 由 エ ネ ル ギ ー が 相 対 的 に低 下 す る(式(4.1)参
照).全
組 成 域 で,固 相 の 自 由 エ ネ ル ギ ーが 液 相 の 自 由エ ネ ル ギ ー よ り低 い 限 界 の温 度 が T1で あ る(図4.6(a)).そ
れ よ り高 温 で は,固 相 の 自 由 エ ネ ル ギ ー 曲 線 と液 相
図4.6
(c)
(b)
(a) 図4.4の
温 度T1,T2,T3に
お け る 自 由 エ ネ ル ギ ー と組 成 と の 関 係
の 自 由 エ ネ ル ギ ー 曲 線 が 交 差 す る.そ 図(b)).CS,CLは,共
の よ う な 温 度T2に
つ い て 考 え て み る(同
通 接 線 の 接 点 の 組 成 で あ る.CSよ
由 エ ネ ル ギ ー が 低 い た め 単 一 の 固 相 と な る.ま
相 の自
り 右 側 で は,液
相 の 自
間 で は,CSとCLの
共
た,CLよ
由 エ ネ ル ギ ー が 低 い た め 単 一 の 液 相 と な る.CSとCLの 存 と な っ た 場 合,自
り左 側 で は,固
由 エ ネ ル ギ ー はGS,GLの
重 み 付 き 平 均 と な り,単
ま た は 固 相 と な っ た 場 合 の 自 由 エ ネ ル ギ ー よ り低 く な る た め,液 状 態 が 最 も 安 定 な 状 態 と な る.こ る.温
度 がT3(図4.6(c))以
の よ う な 状 況 は,温
上 に な る と,全
固 相 の 自 由 エ ネ ル ギ ー よ り低 くな り,単 結 果 を 総 合 す る と,図4.4の こ こ で,図4.4の ゆ っ く りで,固
点aか
は,液
相 線 と が 交 差 す る組 成,固
る.液 lL,CXか
度 がT3ま
で の間 で起 こ
組 成域 で液相 の 自由エ ネルギーが
一 の 液 相 と な る.各
温度 について考 えた
状 態 図 が 理 解 さ れ る. ら 冷 却 す る 場 合 を 考 え る.ま
下 に 冷 却 さ れ る と,固
相 と固 相 が 共 存 す る.液
成 と な る.例
相 と固 相 の共 存
ず,冷
却 速度 が 十 分 に
相 内 の 拡 散 も十 分 に 行 わ れ る 場 合 に つ い て 考 え る.aに
単 一 の 融 液 で あ る.b以
え ば 点cで
相 の 存 在 量 をmL,固 らCSま
相 の 組 成 は,そ
相 の 組 成 は,水 は,CLの
おいて は
溶 体 が 析 出 し 始 め る.b−d間 の 温 度 で,水
平 に 引 い た 線 と,液
組 成 の 液 相 と,CSの
組 成 の固 相 の共 存 とな
組 成CXか
らCLま
で の距 離 を
す る と, mS・lS=mL・lL
(lever
rule)と
れ は,力
呼 ぶ.d以
で
平 に引 い た線 と固 相 線 とが 交 差 す る組
相 の 存 在 量 をmS,全
で の 距 離 をlSと
の 関 係 が あ る.こ
一 の液相
学 の て こ の 原 理 と 同 じ 形 の 式 で あ る の で,て 下 で は,単
一 の 固 相 と な る.
(4.3) この 規 則
図4.7
ケ イ素 板 上 に お い た ゲ ル マ ニ ウ ム を 融 解 後,冷
却 した もの の 断 面 の ケ イ
素 の分 布(EPMA像)
一 般 に,固 相 内 の 拡 散 は遅 い た め,現 実 に は上 の よ う に は な りに く く,次 の よ うに な る こ とが ほ と ん どで あ る.点bに る.そ れ に よ り,液 相 のBの て析 出 す る固 相 のB濃
お い て,最 初 にCbの
濃 度 は増 加 す る.そ
固 相 が 析 出 し始 め
の た め,温 度 が 下 が る に従 っ
度 は増 加 す る.平 衡 状 態 で は,最 初 に析 出 した 固 相 と,
後 か ら析 出 した 固相 とは,拡 散 に よ り混 じ り合 い,均 一 に な る と想 定 され るが, 実 際 に は,析 出 粒 子 の 内 部 でAが 多 い殻 構 造 とな りや す い.ケ
多 い 組 成 とな り,外 部 に近 づ くに つ れ てBが
イ素 とゲ ル マ ニ ウ ム の 系 は,固 体 状 態 で も液 体 状 態
で も完 全 に溶 解 し合 う.ケ イ 素 板 上 に ゲ ル マ ニ ウ ム をお い て加 熱 す る と,ゲ ル マ ニ ウ ム は融 解 して ケ イ素 板 状 で 水 滴 状 に な る.こ の と き,溶 融 ゲ ル マ ニ ウ ム はケ イ素 を溶 解 す る.飽 和 ま で溶 解 し た後 冷 却 す る と,上 述 の理 由 か ら まず ケ イ 素 濃 度 の 高 い固 溶 体 が 析 出 し,し だ い に ケ イ 素 濃 度 の低 い 固 溶 体 が析 出 して く る.図 4.7は,こ
の よ う に して 冷 却 した も の の 断 面 の ケ イ 素 の分 布 状 態 をEPMAに
よ
り測 定 した もの で あ る.明 る い と こ ろ ほ どケ イ 素 の 濃 度 が 高 い こ と を表 し て い る.下 の 明 る い部 分 が ケ イ 素 板,レ
ンズ状 の 部 分 が溶 け た ゲ ル マ ニ ウム の 部 分 で
あ る.ゲ ル マ ニ ウム は ケ イ 素 を溶 解 し,ケ イ素 板 を浸 食 し て い る.レ ン ズ状 の 部 分 に,ケ 図4.8に
イ素 の 濃 度 の 高 い部 分 か ら順 に 低 い部 分 へ と変 化 した状 態 が み られ る. 液 相 で 完 全 に溶 け合 い,固 相 で 部 分 的 に溶 け合 う系 の状 態 図 を示 す.
TE以 下 の 温 度 に お い て,成
分Aに
少 量 のBが
が 溶 け込 ん だ 固 溶 体 が 生 成 す る.反 対 に成 分Bに
加 わ る と,Aの 少 量 のAが
結 晶 構 造 中 にB 加 わ る と,Bの
結
図4.8 液 相 にお いて 完 全 に溶 け合 い,固 相 で は 部 分 的 に溶 け合 う系 の 典 型 的 な状 態 図
晶 構 造 中 にAが
溶 け込 ん だ 固 溶 体 が 生 成 す る.い ず れ も溶 解 す る限 界(固
界)が 存 在 し,溶 解 の限 界 を越 えた 内 側 で は,2つ 共 存(SS(A)+SS(B))と
溶限
の固溶 限界 の組成 の固溶体 の
な る.固 溶 限 界 は 温 度 が 上 昇 す る と と も に 増 え る た
め,固 溶 限 界 の 線 は 内側 に傾 い て い る.TEを
越 え る と,内 側 の組 成 で 液 相 が 現
れ る.温 度 が 上 昇 す る に従 い,単 一 相 の 固 溶 体 の領 域 は減 少 し,固 溶 体 と液 相 の 共 存 す る領 域,単 図4.8の
一 の 液 相 の領 域 が 図 の よ う な形 で 変 化 す る.
よ う な状 態 図 の形 は,そ れ ぞ れ の 相 の 自由 エ ネ ル ギ ー 曲 線 の 相 対 的 な
関 係 を 考 え る こ とで 理 解 す る こ とが で き る.図4.9に,温
度T1,T2,T3に
自由 エ ネ ル ギ ー の相 対 的 な 関 係 を 示 す.温 度T1(図4.9(a))に
お ける
お いては液相 の
自 由 エ ネ ル ギ ー が 高 く,図 中 に は現 れ て い な い.固 溶 体SS(A),SS(B)の エ ネ ル ギ ー は,と
も に下 に凸 の 曲線 と な る.Ca(T1),Cb(T1)は,2つ
ネ ル ギ ー 曲線 の 共 通 接 線 の 接 点 で あ る.こ の2つ 示 した の と同 様 に,Ca(T1),Cb(T1)の で,お
よ びCb(T1)か
らBま
らCa(T1)ま
で は そ れ ぞ れ 単 一 の 固 溶 体 とな り,図4.8のT= つ い て 考 え る と,Bの
固 溶 量 が 増 え る ほ ど乱
ン トロ ピー は増 大 す る.温 度 が 上 昇 す る と,自 由 エ ネル ギ
ー の エ ン トロ ピー 項 に よ り,Bが (図4.9(b)に
の 自由エ
の組 成 の 間 で は,図4.6(b)で
共 存 とな る.ま た,Aか
T1の 状 態 を説 明 で き る.SS(A)に 雑 さ が 増 え るの で,エ
自由
多 い ほ ど 自 由 エ ネ ル ギ ー の 減 少 は大 き くな る
下 向 き の 矢 印 で 示 した).Bに
同 様 で あ る.そ の 結 果,温 度 がT1よ
対 す るAの
り上 のT2で
固 溶 量 が 増 加 す る場 合 も
は,共 通 接 線 の 接 点 組 成 が 内
(a) 図4.9
(b)
(c)
液 相 で互 い に溶 け合 い,固 相 で部 分 的 に 溶 け合 う 系 の 自 由 エ ネ ル ギ ー と組 成 との 関 係
側 に 移 動 す る.こ れ は,温 度 が 上 昇 す るほ ど固 溶 量 が 増 大 す る こ との見 方 を変 え た 説 明 で あ る. 液 相 の エ ン トロ ピ ー は 大 きい の で,温 度 上 昇 に伴 っ て 急 速 に 減 少 す る.T= TEに お い て,液 相 の 自 由 エ ネ ル ギ ー はSS(A)とSS(B)の そ れ よ り高 い 温 度 で は そ の 下 に は み 出 す(図4.9(c)).液 共 通 接 線 か ら下 に は み 出 した 場 合(T>TEの ル ギ ー 曲 線 の 共 通 接 線l2とSS(B)と の 共 通 接 線l1よ
相 の 自由 エ ネ ル ギ ー が
と き),SS(A)と
間 で は 単 一 の 固 溶 体SS(A),Ca(T3)か
も安 定 な 状 態 は,Aか らCc(T3)の
の 共 存 状 態,Cb(T3)か
間 で はCd(T3)の らBま
らCa(T3)の
間 で はCa(T3)の
組 成 の 液 相 の共 存 状 態,Cc(T3)とCd(T3)の
液 相,Cd(T3)とCb(T3)の
液相 の自由エ ネ
液 相 の 共 通 接 線l3が,SS(A)とSS(B)
り下 に な る.そ の た め,最
固 溶 体 とCc(T3)の
共 通 接 線 に 接 し,
液 相 とCb(T3)の
で の 間 で は 単 一 の 固 溶 体SS(B)と
組成の
間 では単一 の 組 成 の固溶 体 な り,図4.8
のT=T3の
状 態 が説 明 され る.
T=TE以
上 の 温 度 で の 液 相 と固 溶 体 の 自 由 エ ネ ル ギ ー 曲 線 の 関 係 は 図4.6と
同様 で あ るた め,状 態 図 も図4.4と 4.1.3 共 図4.10は,固
同 様 の形 に な る.
晶 相 で は全 く溶 け合 わ ず,液 相 にお い て 完 全 に溶 け合 う系 の 状 態
図 の典 型 例 で あ る.こ で は,単 一 の液 相(融
こで,点aか 液)で
ら温 度 を下 げ て い っ た 場 合 を考 え る.点a
あ る.点bま
で 下 が った と き固 相 が 生 成 し始 め る.
純 粋 な成 分 の 凝 固 点 よ り低 い 温 度 まで 液 相 が存 在 す る の は,A,Bの
混 じっ た 液
図4.10
固相 で は 全 く溶 け合 わ ず,液
相で
完 全 に溶 け 合 う系 の 状 態 図
相 の乱 雑 さ に よ る 高 い エ ン トロ ピ ー項 に よ り系 の 自 由 エ ネ ル ギ ー が よ り低 くな る か らで あ る.A+Lの
領 域 で は,温 度 が 下 が る に 従 っ て 固 相Aの
割合 が増 加 す
る.量 的 関 係 は て この 規 則 に よ り,
lA・mA=lL・mL 割 合,mLは
(4.4)
が 成 り立 つ.こ
こで,mAはAの
液 相 の 割 合 で あ る.形 状 的 に は,
あ ち こ ち にAが
析 出 し,温 度 が 下 が る に 従 っ て 析 出 した 粒 子 は 成 長 す る.点d
の わ ず か 上 の温 度 で は 固 相Aと
液 相 の 共 存 で あ り,点dの
と固相Bの
おい て
共 存 で あ る.点dに
わ ず か 下 で は固 相A
L→n1A+n2B の反 応 が 進 行 す る.点dに る の で,式(4.5)の
お い て の み 固 相A,Bお
(4.5) よ び液 相 の 共 存 が 可 能 で あ
反 応 が 完 了 す る まで こ の 点 に と ど ま る.こ の 温 度 よ り下 が ろ
う とす る と,式(4.5)の
反 応 の 凝 固 熱 に よ り温 度 降 下 が 阻 止 され る と考 え る こ と
もで き る.こ の温 度 を共 融 点(eutectic
point)と
こ こ で,析 出 す る相 の 形 状 を考 え て み る.点aか の粒 子 が 析 出 す る.Aの
呼 ぶ. ら冷 却 し て い く と,ま ずA
粒 子 の 核 が あ ち こ ち で 発 生 す るた め,Aの
粒 子 が くっ
つ き合 っ た り,離 れ て存 在 し た りす る.さ
ら に 冷 却 し て い っ て 共 融 点 に達 し て
も,わ ず か の 間,す
粒 子(図4.11中
せ る よ う にAの
で に析 出 して い るAの
の 粒 子0)を
成長 さ
析 出 が 継 続 す る.こ れ に よ り,粒 子 付 近 の 液 相 の 組 成 は わ ず か
なが ら共 融 組 成 よ りB側
に移 動 す る こ とに な る.そ の た め 次 に はBだ
けの 析 出
図4.11
に変 わ る(図4.11中
共 融 点 を もつ 系 に お け る 固相 の析 出
の粒 子1).こ
の 後 しば ら くの 間,析
出 したBの
す る.こ れ に よ り,今 度 は この 付 近 の 液 相 の組 成 が わ ず か にA側 そ の た め,再 れ(図4.11中
びAの
析 出 が 起 こ る(図4.11中
の粒 子3∼5)微
る.結 局,Aの
の 粒 子2).こ
の 変 化 が 繰 り返 さ
粒 子 と帯 状 の構 造 の組 み合 わ さ っ た構 造 とな る.こ 呼 ぶ.共
で は,Bの
の よ うな 結
晶 組 成 で は,最 初 か ら帯 状 の 構 造 だ
けが 形 成 され 全 体 に わ た っ て帯 状 の構 造 とな る.図4.10に
お い て,共
晶組 成 よ
粒 子 と帯 状 の 構 造 とが 組 み 合 わ さ っ た 構 造 を 形 成 す る.図
4.12に,Al2O3-Gd2O3系 す.暗
に 移 動 す る.
細 な(顕 微 鏡 レベ ル で の)帯 状 の 構 造 が 形 成 さ れ
晶 を共 晶(共 析 晶:eutectoid)と
りB側
成長が継続
い部 分 がGdAlO3,明
の 共 晶組 成 の 溶 融 物 を冷 却 して 生 成 した 共 晶 構 造 を示 る い部 分 がGd2O3で
あ る.2つ
る構 造 が み られ る.
図4.12
Al2O3-Gd2O3系
の 共 晶
の相 が 入 り組 ん で い
4.1.4
包
晶
図4.13にA,B2成
分 系 に お い て,化
例 を 示 す.A−ABお 4.10と
よ びAB−Bの2つ
同 じ 形 を し て い る.こ
合 物ABを
の 部 分 に 分 け て み る と,そ
こ で,組
意 が 必 要 で あ る.例
あ る が,AとABの
存 在 割 合 は モ ル 比 でl2:l1と
た が っ て,c1で ABの
存 在 割 合 はl2:0.5l1と
存 在 割 合 はl2:l1と 図4.13の る.こ Bの
温 度T2に
は な ら な い.状
割 合 がl2:l1で
な る.な
お,組
共存状 態で 態 図 上 でAB
し て 考 え る べ き で あ る.し あ る と 考 え る べ き で,Aと
成 が 質 量 比 で 表 さ れ て い る場 合 の
お け る 自 由 エ ネ ル ギ ー 組 成 と の 関 係 は 図4.14の
間 でAB+L,L,L+Bの
間 でA+L,L,L+ABの
領 域 が 存 在 す る こ と が 理 解 さ れ る.こ
け に な る.温
ギ ー が 相 対 的 に 上 が り,Lの よ びAB,L,Bの
よ うに な
領 域 が 存 在 し,ABと
相 の 自 由 エ ネ ル ギ ー が 相 対 的 に 下 が り,Lの
後 に は 全 領 域 でLだ
な っ た と き,お
組 成 はAとABの
この 規
な る.
の 関 係 か ら,AとABの
が 高 く な る と,液
え ばc1の
あ る か ら,A0.5B0.5と
は,AとA0.5B0.5の
れ ぞ れが 図
成 を モ ル 分 率 で 表 す 場 合 に は,て
則 を 適 用 す る 際,注
の 位 置 はAが0.5,Bが0.5で
生 じ る場 合 の状 態 図 の典 型
れ よ り温 度
領 域 が 広 が り,最
度 が 低 く な っ た 場 合 に は,液
相 の 自由エ ネル
領 域 が 狭 ま っ て い く.A,L,ABの
共 通接線 が 重
共 通 接 線 が 重 な っ た と きが そ れ ぞ れ の 共 融 温
度 で あ る. 上 と 同 様 に 化 合 物ABを
つ く る 場 合 で,Aの
図4.13 2成 分 系で化合物 を生 じる系の 状態図
融 点 が 相 対 的 に か な り高 い 場 合
図4.14
図4.13の
温 度T2に
おける自
由 エ ネ ル ギー と組 成 との 関 係
(a) 図4.15 Aの
を 考 え て み る.図4.15に
(b)
融 点 が か な り高 い場 合 の 自 由 エ ネ ル ギ ー と組 成 との 関 係
そ の よ う な 場 合 の 自 由 エ ネ ル ギ ー 曲 線 を 示 す.Aの
点 が 高 い と い う こ と は,A(固 ら,Aの
相)が
ら,A−AB間
でA+AB,AB−B間
度 が 低 い と こ ろ で は 図
でAB+Bと
な る こ とが 理 解 さ れ
度 が 上 昇 す る と液 相 の 自 由 エ ネ ル ギ ー が 相 対 的 に 下 が る.液
ル ギ ー 曲 線 が 固 相ABとBの とLの
共 通 接 線 とLとBの
る.そ
の た め,AB−c1間
も安 定 な 状 態 に な る.こ 状 態 で あ る.さ
相 の 自由エネ
共 通 接 線 よ り 下 に は み 出 る(図4.15(b))と,AB 共 通 接 線 が と も に他 の 自 由 エ ネ ル ギ ー よ り低 くな で はAB+L,c1−c2間 れ が,図4.16に
ら に 温 度 が 上 昇 し,液
で はL,c2−B間
包 晶 を形 成 す る系 の 状 態 図
で はL+Bが
示 し た こ の 系 の 状 態 図 のT2に 相 の 自 由 エ ネ ル ギ ー 曲 線 がAとABの
通 接 線 の 延 長 線 よ り下 に は み 出 る(図4.15(c))と
図4.16
融
相 対 的 に 安 定 で あ る とい う こ と で あ る か
自 由 エ ネ ル ギ ー が 相 対 的 に 低 く な る.温
4.15(a)か る.温
(c)
状 況 は変 わ る.AとLの
図4.17 包 晶 の生 成
最 お ける 共 共通
接 線 がA−c3間 +Lと
で,最
な る.ま
のT3の
も 低 い 自 由 エ ネ ル ギ ー と な る.そ
た,c3−c4間
状 態 で あ る.以
こ こ で,図4.16の
で はL,c4−B間
上 に よ り,こ
点Xか
液 相 で あ る.点pでAが
変 化 し,消
粒 子Aの
で はL+Bと
な る.こ
の 系 の 状 態 図4.16が
でAの
液 相 の 共 存 で あ る.Aは
滅 す る こ と と な る.し
周 り に で き たABの
か し,こ
固 相 を 通 し てBが
れ が 図4.16
で は,単
析 出 が 続 く.点qよ
の 変 化 は 図4.17に
拡 散 し な け れ ば な ら ず,通
っ て,点qに
達 し た と き 残 さ れ た 液 相sか
粒 子Aの
応 と な る.す
な わ ち,粒
れ を包 晶 と呼 び,包 rに 達 す る と,共
らABが
却 して い
包 み 込 ん だ よ う な 組 織 に な る.こ ら に冷 却 さ れ て 点
晶 の 析 出 反 応 が 起 こ る. 加 熱 す る と,そ
に 分 解 す る,分
解 溶 融(incongruent
の ま ま の 組 成 で 溶 融 す る の で は な く,Aと melting)が
融液
起 こ る.
ス ピノーダル分解
液 相 に お い て,2つ
の 成 分 が 互 い に 溶 解 し 合 う と き,そ
エ ン ト ロ ピ ー が 増 大 す る .同 増 加 す る.エ
時 に,他
の 乱 雑 さ が 増 す た め,
の成 分 との 相 互 作 用 に よ りエ ン タル ピ ー も
ン ト ロ ピ ー の 増 加 は 自 由 エ ネ ル ギ ー を 低 下 さ せ る よ う に働 き,エ
タ ル ピ ー の 増 加 は 自 由 エ ネ ル ギ ー を 増 加 さ せ る よ う に 働 く.両 り,図4.18に
示 す よ う に,端
成 分 付 近 で 凹 型,内
側 の 組 成 部 分 で 凸 型 の 曲線 に
の 曲 線 の 共 通 接 線 の 接 点 の 組 成 で あ る.こ
c1か
一 の 液 相 状 態 の 自 由 エ ネ ル ギ ー よ り,c1とc2の
らc2の
組 成 範 囲 で は,単
相 の 共 存 と な っ た 方 が,自 い て,単
由 エ ネ ル ギ ー は 低 く安 定 に な る.例
一 の 液 相 の 自 由 エ ネ ル ギ ー(Gsngl)よ
りc1の
組 成 の 自 由 エ ネ ル ギ ー(G2)の
重 み 付 き(存
(G1)とc2の 平 均(Gmix)の
方 が 低 く な る.そ
こ の よ う な 系 で は,内
の た め,2つ
の た め,温
曲 線 の 凸 部 分 は 少 な く な っ て い き,つ
の 液 相 の 共 存 状 態 は な く な る.状
液 お
組 成 の 自由 エ ネ ル ギー 在 比 を 重 み と す る)
の 液 相(c1,c2)の
共 存 と な る.
度 上 昇 に 伴 っ て,自
い に は,全
の 場 合,
え ば 組 成cxに
側 の 組 成 ほ ど エ ン トロ ピ ー は 大 き く,温
エ ン ト ロ ピ ー の 効 果 は 増 加 す る .そ
ン
者 の兼 ね 合 い に よ
な る こ と が あ る.c1,c2は,こ
り,2つ
常 の
周 り に析 出 す る反
晶 の 生 成 し 始 め る 温 度 を 包 晶 点 と 呼 ぶ.さ
化 合 物ABを
4.1.5
反応 し
示 す よ う に,
と ん ど の 反 応 は,冷
周 り をABが
一 の り下 の
液 相 中 の 成 分Bと
冷 却 速 度 で は 反 応 が 完 全 に 進 む こ と は で き な い.ほ
子Aの
で は,A
理 解 さ れ る.
ら温 度 を 下 げ た 場 合 を 考 え る.点pま
析 出 し 始 め,点qま
温 度 で の 平 衡 状 態 はABと ABに
の た め,A−c3間
度 上 昇 と と もに 由 エ ネ ル ギー
体 にわ た って凹型 の 曲線 にな
態 図 は 図4.19(図
中の点線 につ いては
図4.18
不 混 和 域 を生 じ る系 の 自由 エ ネ
図4.19 不 混 和 域 を もつ 系 の状 態 図
ル ギ ー と組 成 との 関係
後 で 述 べ る)に
示 し た よ う に な る.こ
の2つ
(miscibility
gap)と
図4.20に
示 し た 自 由 エ ネ ル ギ ー 曲 線 中,凸
範 囲)の
す る(図
の 相 に 分 離 す る.例
値 と な る.こ で は,見
型 の 部 分 の 組 成(図
温 で 単 一 の 液 相 と し て お き,こ
度 に 冷 却 さ れ た 直 後 は,単 点Aの
混和域
呼 ば れ る.
も の を,高
特 の 様 式 で2つ
の 液 相 の 共 存 す る 部 分 は,不
こ で,わ
の 温 度 ま で 冷 却 した と き,独
え ば,図4.20のcAの
一 の 液 相 で あ る か ら,そ
中 の水 平 矢 印
組 成 を 考 え る.こ
の 自由 エ ネ ル ギ ー は曲 線 上 の
ず か な 組 成 の 偏 り が 生 じ,cA1とcA2に
分 かれた と
や す い よ う に 大 き な 組 成 の 偏 り で 描 か れ て い る).そ
図4.20
自 由 エ ネ ル ギ ー 曲線
凸 型 の部 分 で は,相 が 分 離 す る に つ れ 自由 エ ネ ル ギ ー は減 少 す る.
の温
の2つ
の
図4.21
ス ピノ ー ダ ル分 解 に よ り生 じた 微 構 造
3.25Na2O・3.25Li2O・33.5B2O3・60.0SiO2ガ 間 熱 処 理 後,Na-Li-Bの
ラ ス を700℃,1時
濃 度 の 高 い 部 分 を 水 で 溶 出.
混 合 状 態 の 自 由 エ ネ ル ギ ー はA′ とな って,単 一 の 組 成 の 状 態 で 存 在 す る場 合 よ り 自 由エ ネ ル ギ ー は低 くな る.す
なわ ち,こ の 方 が 安 定 な の で あ る.分 離 し た組
成 の 差 が 開 くほ ど,自 由エ ネ ル ギ ー は減 少 す る.そ の た め,つ い に は組 成 は 自 由 エ ネ ル ギ ー 曲線 の 凸 型 の 範 囲 の 両 端 に分 か れ る.こ の現 象 は試 料 全 体 の どの 部 分 で も起 こ る の で,試 料 全 体 に あ るわ ず か な組 成 の 揺 らぎ が どん どん と増 幅 され る こ と に な る.そ の 結 果,2つ
の組 成 が 入 り組 ん だ 組 織 とな る.こ の よ う な分 解 を
ス ピ ノ ー ダ ル 分 解 と呼 ぶ.ス (図4.19点
線)を
ス ピ ノー ダ ル と呼 ぶ.こ
あ る限 界 の組 成 で あ る.ス 示 す.こ
ピ ノ ー ダ ル 分 解 の 起 こ る範 囲 を示 す 状 態 図 上 の 線 の線 は,自 由 エ ネ ル ギ ー 曲線 が 凸 型 で
ピ ノ ー ダ ル 分 解 に よ り生 じた 微 構 造 の 例 を図4.21に
こ で は,一 方 の 成 分 が溶 出 され,残
4.1.6 3成
され た 骨 格 構 造 が み られ る.
分 系
3成 分 系 状 態 図 は,三 角 図 で 表 す.正 三 角 形 中 の あ る一 点 か ら各 辺 に 下 ろ した 垂 線 の長 さ の和 は,正 三 角 形 の 高 さ に等 しい とい う性 質 を利 用 して い る.正 三 角 形 の各 頂 点 を各 成 分 に割 り当 て る.正 三 角 形 中 の 座 標 は組 成 を表 す.そ
の点か ら
各 辺 に垂 線 を下 ろ し,各 成 分 の対 辺 へ の 垂 線 の長 さ を正 三 角形 の 高 さで 割 った 値 を そ の 成 分 の モ ル 分 率 とす る.こ に示 す 点 の 座 標 はAの
の 方 法 を ギ ブ ス の 方 法 と い う.例 え ば 図4.22
モ ル 分 率 がa/h,Bの
モ ル 分 率 がb/h,Cの
モル 分率 が
c/hと
な る組 成 を表 す.正 三 角 形 の 性 質 か ら これ ら の和 は1と な り,全 成 分 の 和
が1で
あ る こ と と合 致 して い る.な お,こ
れ ら を質 量 比 で表 す こ と もあ る.
図4.22
3成 分 系 の 組 成 の 表 し方(ギ
図4.23
SiO2-Y2O3-Al2O3系
ブ ス の方 法)
状 態 図
3成 分 系 状 態 図 で の 温 度 軸 は,紙 面 に垂 直 に と る こ と に な る.し か し,紙 上 に 立 体 を正 確 に描 き表 す こ と はで き な い.そ す る等 温 線 を 用 い て 表 す こ と に な る.こ
こで,地
図 で 用 い られ る等 高線 に相 当
こで は,そ の よ う な等 温 線 図 か ら,あ る
特 定 の 温 度 で の状 態 図 を求 め る方 法 を示 す. 図4.23は,SiO2-Y2O3-Al2O3の3成
分 系 等 温 線 断 面 図 で あ る.こ
1700℃ で の 状 態 図 を考 え る.ま ず,1700℃
の 等 温 線 を な ぞ る.そ れ よ り温 度 の
低 い 等 温 線 の あ る側 は液 相 で あ る(図4.24のLで 線 を,図4.23の
の系 の
示 さ れ た 領 域).次
に,液 相
太 い 線 で 囲 ま れ た 領 域 ご とに 区 切 っ て 考 え る.そ れ ぞ れ の 領 域
に つ い て,液 相 線 と,領 域 に記 され た 化 合 物(領 域 内 に化 合物 名 が 記 さ れ て い な い 場 合 は,そ の 領 域 に入 っ て い る化 合 物)と
を一 定 間 隔 で 直 線 を描 く(図4.24
図4.24
の 扇 形 の部 分).こ の 両 端 の 組 成(液
SiO2-Y2O3-Al2O3系
で の状 態 図
れ ら の線 は連 結 線 で あ り,連 結 線 が 描 か れ て い る領 域 は 直 線 相 と化 合 物)の
4.24の 灰 色 で 示 され た領 域)は,そ で あ る.な
の1700℃
お,La+Lbと
共 存 領 域 で あ る.残
され た 三 角 形 の 領 域)図
れ ぞ れ の 三 角 形 の頂 点 の3組 成 の共 存 領 域
書 か れ た 領 域 は,水
と油 の よ う に,2つ
の液 相 が別々
の相 と して 存 在 して い る領 域 で あ る.こ の部 分 の 連 結 線 は 図4.23か きな いが,お
お よ そ 図4.24に
ら は決 定 で
示 した よ うに な る. 4.2 表 面 と界 面
2つ の 相 が 接 す る境 界 を界 面 とい い,そ の1つ
の 相 が 気 相 の 場 合,こ
の境 界 は
表 面 と呼 ば れ る.固 相 で あ るセ ラ ミ ッ ク ス は,単 独 で 存 在 す る こ とは な い.そ の た め,気 相 との 境 界 に は表 面 が,液 相 や 別 の 固相 との 境 界 に は界 面 が 必 ず 存 在 す る.粒 子 間 に存 在 す る粒 界 も界 面 の1つ で あ る. 一 般 に,表 面 や 界 面 は内 部 とは異 な る性 質 を 示 す.セ
ラ ミッ ク ス で は,表 面 や
界 面 の 性 質 は微 構 造 形 成 過 程 や 特 性 発 現 の 中 で し ば しば重 要 な役 割 を演 じ る.そ の 一 例 に,後 述 す る セ ラ ミッ ク ス粉 体 の焼 結 現 象 が あ る.焼 結 は表 面 お よび 界 面 に存 在 す る 過 剰 な エ ネ ル ギ ー を駆 動 力 と し て進 行 し,多 結 晶 体 構 造 を形 づ くる現
象 で あ る. 表 面 お よ び 界 面 の理 解 は液 相 を 中心 と して 進 ん で い る.こ れ は,液 相 で は平 衡 が 得 や す く,そ の 取 扱 い が 容 易 なた め で あ る.本 節 で は,液 相 を例 に と りな が ら 表 面 お よ び界 面 に つ い て説 明 し,同 時 に セ ラ ミ ック ス の 表 面 お よび 界 面 の 性 質 を 概 説 す る こ と にす る. 4.2.1 表 面 張 力 お よび 界 面 張 力 表 面 張 力 お よび 界 面 張 力 は,表 面 や 界 面 に存 在 す る 張 力 を指 す.水 道 の 蛇 口 か ら落 ち る液 滴 が丸 くな る こ とは よ く知 られ て お り,こ れ は液 相 で あ る水 の 表 面 に 存 在 す る 「表 面 張 力 」 の作 用 に よっ て 誘 起 さ れ る現 象 で あ る.こ
こで は まず,表
面 張 力 と は何 か を簡 単 に説 明 す る. 図4.25は,液
体 の 断 面 を概 略 的 に示 した もの で あ る.表 面 も内部 も同 種 の 分
子 か らな るが,各 分 子 を取 り巻 く状 況 は表 面 と内部 で は 大 き く異 な る.内 部 の 分 子 は 同 種 の分 子 に三 次 元 的 に囲 まれ て い るが,表 面 に存 在 す る分 子 は そ の周 囲 の 一 部 に分 子 が 存 在 しな い 状 態 が あ る
.こ の た め,表 面 と内部 で は熱 力 学 的 な性 質
が 異 な り,表 面 は 内部 に 比 ベ エ ネル ギ ー 的 に高 い状 態 とな る.こ れ が 表 面 張 力 の 起 源 で あ り,液 滴 が そ の 表 面 積 をで きる だ け小 さ くし よ う とす る現 象 を もた らす 源 で あ る. い ま,図4.26に
示 す よ う な針 金 上 に つ く られ た 石 け ん膜 の 挙 動 を考 え て み る
こ とに す る.外 力 が な い と きの 膜 は フ ラ ッ トな状 態(a)で に 適 当 な強 さ で 息 を 吹 きか け る と,(b)に で き る.息
あ る.こ の膜 の 片 面
示 す よ う に膜 表 面 は広 が り半 球 体 が
の 吹 きか け を 止 め る と,膜 は フ ラ ッ トな状 態(c)に
戻 る.つ
ま り,
膜 は常 に収 縮 し よ う とし て お り,膜 表 面 に は収 縮 力 が 働 い て い る こ とに な る.こ の 力 に 打 ち勝 ち膜 の表 面 積 をdAだ
け広 げ よ う とす る と き に 必 要 と さ れ る 仕 事
(エ ネ ル ギ ー)dwは
図4.25 液 体 の 断 面 構 造
(a) 図4.26
(b)
(c)
針 金 の 輪 につ く られ た石 け ん膜 の挙 動
dw=γdA
と な る.そ
の 比 例 係 数 γが 表 面 張 力(surface
あ る の で,表 つ.一
(4.6)
tension)で
あ る.γ=dw/dAで
面 張 力 は 単 位 面 積 当 た り の エ ネ ル ギ ー で あ り,Jm−2の
方,幅lの
膜 をdxだ
単位 を も
け広 げ る の に 必 要 な 仕 事 は dw=γdA=γldx
(4.7)
で あ る か ら,
(4.8) と な る.あ dw/dxは (Nm−1)で
る 物 体 を動 か す た め に 要 す る 仕 事dwを 力 で あ る か ら,表 面 張 力 γ は,膜
そ の移 動 距 離 で微 分 した
の単 位 長 さ 当 た りに か か る張 力
もあ る.
こ こで,熱 力 学 的観 点 か ら表 面 につ い て 少 し考 えて み た い.前 記 した よ う に, 表 面 の面 積 を可 逆 的 にdAだ え られ るの で,そ
け 変 化 させ る た め に要 され る 仕 事dwは
γdAで 与
の 仕 事 に よ る系 の 内部 エ ネ ル ギ ー 変 化dUは,
(4.9) と な る.こ
の 変 化 過 程 で 起 こ る エ ン タ ル ピ ー 変 化dHは dH=dU+PdV+VdP
で あ り,系
(4.10)
の ギ ブ ス の 表 面 自 由 エ ネ ル ギ ー 変 化dG(=dH−Tds−sdT)は,
(4.11) で 表 さ れ る.し
た が っ て, γ=(∂G/∂A)T,P,ni
こ れ よ り,γ,つ
ま り表 面 張 力 は 温 度,圧
力,組
(4.12) 成 が 一定 の も と で の 単 位 面 積 当
た りの ギ ブ ス の 表 面 自 由 エ ネ ル ギ ー に相 当 す る こ とが わ か る.こ の表 面 自由 エ ネ ル ギ ー γは,単 位 面 積 当 た りの表 面 エ ネ ル ギ ー εsと次 の 関 係 に あ る. εs=γ
−Tdγ/dT
液 滴 が そ の表 面 積 を最 小 に し よ う とす るの は,表 面 自 由 エ ネ ル ギ ー をで き る だ け低 下 させ よ う とす る効 果 の 現 れ で あ る.後 述 す るセ ラ ミ ッ ク ス の焼 結 は,こ の 表 面 自由 エ ネ ル ギ ー を駆 動 力 として 進 行 す る. 表 面 張 力 γの 値 は表 面 拡 張 の し や す さ を示 す もの で あ る が,固 相 の場 合 そ の 測 定 はか な り難 しい.代 表 的 な 測 定 法 と して,単 結 晶 試 料 をへ き開 し新 た な 表 面 を形 成 させ る ま で に必 要 とな る変 形 の弾 性 エ ネ ル ギ ー か ら表 面 張 力 を見 積 も るへ き開法 や,融 点 付 近 の 高 温 下 で 試 料 に荷 重 を か け,そ の と き に生 じ る拡 散 ク リー プ の速 度 と応 力 の 関 係 か ら表 面 張 力 を求 め るゼ ロ ク リー プ 法 な どが あ る が,そ れ らの測 定 に は様 々 な 制 約 が あ る.こ れ に対 し,固 相 表 面 を新 た に形 成 す る際 の そ の 形 成 の しや す さ は,固 相 の表 面 エ ネ ル ギ ー を見 積 も る こ と に よ っ て あ る程 度 推 測 可 能 で あ る.い
ま,表 面 を新 た に形 成 す る際 に格 子 ひず み や 原 子 の再 配 列 が 起
こ らな い と仮 定 す る と,単 位 面 積 当 た りの表 面 エ ネ ル ギ ー εsは εs=Eb×Ns
とな る.こ
こで,EbとNsは
(4.13)
それ ぞ れ,結 晶 内 部 の1つ
の 結 合 にお け る結 合 エ ネ
ル ギ ー と,表 面 で切 断 され て い る結 合 の 数 を単 位 面 積 当 た りの 数 と して求 め た 値 で あ る.こ れ か らわ か る よ うに,大
き な結 合 エ ネ ル ギ ー を もつ 結 晶 や 切 断 され た
結 合 数 が 多 い 結 晶 面 か らつ く られ た 表 面 は,高 い表 面 エ ネ ル ギ ー を もつ こ とが わ か る.こ の こ とを代 表 的 な セ ラ ミッ ク スで あ るMgOを 図4.27は,MgOの 列 を 示 す.MgOは
結 晶 構 造 と(100)お
岩 塩 型 構 造 で あ り,(100)お
原 子 の不 飽 和 な結 合 数 は そ れ ぞ れ1本 場 合,(100)結
晶 面 上 で は面 積a2当
の 原 子 が 存 在 す る の で,Nsの
る こ とを示 し,(100)結
晶面 にお ける各
子 が2個,O原
な る.(110)結
と な る.Ebの
晶 面 は(110)結
よ び(110)結
た り4個(Mg原
晶 面 の 表 面 エ ネ ル ギ ー は(100)結
これ は,(100)結
結晶 面 にお け る原子 配
お よ び2本 で あ る.格 子 定 数 をaと
値 は(4/a2)と
同 様 に 見 積 も る と, (110)結
よ び(110)各
例 に と っ て み て み よ う.
した
子 が2個)
晶 面 に お け るNsを
値 が 同 じ で あ る こ と か ら,
晶 面 の そ れ よ り高 い こ とが わ か る.
晶 面 よ りエ ネ ル ギ ー 的 に よ り安 定 な状 態 に あ
晶 面 か らな る表 面 の方 が 形 成 され や す い こ とが わ か る.
表 面 エ ネ ル ギ ー が 結 晶 面 に よ っ て 異 な る こ とか ら も想 像 で き る よ う に,固 相 の
(b)
(a)
(c) 図4.27
MgOの
結 晶 構 造(a)と(100)結
び(110)結
表4.1
晶 面(c)の
晶 面(b)お
よ
原子配列
い くつ か の セ ラ ミッ ク ス の表 面 自 由 エ ネ ル ギ ー
表 面 自 由 エ ネ ル ギ ー は結 晶 方 位 依 存 性 を示 す.し た が っ て,固 相 の 表 面 張 力 を定 義 す る場 合,新
た に形 成 され る表 面 は現 存 す る表 面 と結 晶 学 的 に同 じ方 位 で あ る
こ とが 条 件 と な る.こ の こ と は界 面 張 力(interfacial に お い て も同 様 で あ る.表4.1に,い ー の 値 を示 す .最
tension)を
定 義 す る場 合
くつ か の セ ラ ミ ック ス の 表 面 自 由 エ ネ ル ギ
も低 い 表 面 自 由 エ ネル ギ ー を有 す る表 面 は,粒 子 が 最 密 充 〓 さ
れ た 表 面 で あ る. 表 面 張 力 や 界 面 張 力 の 存 在 は,構 成 成 分 の 分 布 状 態 に影 響 を及 ぼ す.2成
分以
上 か らな る系 の 表 面 あ るい は界 面 で は,表 面 自由 エ ネ ル ギ ー あ るい は界 面 自由 エ ネ ル ギ ー が最 小 に な る よ う に構 成 成 分 は分 布 す る傾 向 に あ る.大
き な表 面 張 力 を
図4.28
もつ 成 分Aに
小 さ な 表 面 張 力 を もつ 成 分Bを
が濃 縮 され,表 た場 合,表
2成 分 系 に お け る 表 面 張 力 の 変 化
少 量 加 え る と,表 面 層 に は成 分B
面 自 由 エ ネ ル ギ ー を低 下 させ る.一 方,成
面 層 で の成 分Aの
濃 縮 は起 こ らず,成 分Aの
ネ ル ギ ー の 大 き な変 化 は観 測 さ れ な い.図4.28は,そ
分Bに
成 分Aを
加え
添 加 に よ る表 面 自 由 エ の 変 化 の様 子 を 示 した も
の で あ る. 4.2.2 曲 面 に よ る圧 力差 表 面(あ
る い は界 面)が
平 面 の場 合,そ
の両 側 で の 圧 力 は 等 しい.し
か し表 面
が 曲 面 に な る と,表 面 張 力 の 影 響 で 曲 率 中 心 に 向 か う内 向 きの 力 が 生 じる.し た が っ て 曲面 に対 して 外 向 き の力 と内 向 きの 力 が 釣 り合 った 状 態 で は,図4.29に 示 す よ う に 曲 面 の 内 部 の圧 力P2は
外 側 の圧 力P1よ
りも高 い こ と に な る.
曲 面 に よ る そ の 圧 力 変 化 を液 滴 を例 に と っ て 説 明 して み よ う.半 径rの の大 き さ を 可 逆 的 にdrだ
け変 化 させ る と,そ の 表 面 積 は
dA=4π(r+dr)2−4πr2=8πrdr だ け 変 化 す る.こ こ で,dr2の の 式(4.6)よ とな る.力
液滴
(4.14)
項 は無 視 で き る ほ ど小 さい の で 省 略 で き る.前 出
り,表 面 積 がdAだ
け広 げ られ た と き に 要 す る仕 事dwは8π
×距 離 が 仕 事 で あ るの で,液
図4.29
滴 の 半 径 がdrだ
曲 面 に よ る圧 力 変 化
γrdr
け伸 張 す る こ と に対 す
図4.30
液 滴 に お け る内 向 き と 外 向 きの 力 の 釣 合 い
る 力 は8π γrと な る.こ
の 力 を 液 滴 の 表 面 積 で 除 す る と,単
位 面 積 当 た り の 力,
す な わ ち 表 面 張 力 に よ っ て 液 滴 内 の 物 質 が 受 け る余 分 な 圧 力 ΔPが
求 ま る.
ΔP=2γ/r
(4.15)
釣 合 い が と れ た 状 態 で は, Pi=Po+ΔP が 成 り立 つ.PiとPoは 4.30に
(4.16)
そ れ ぞ れ 内 圧 と外 圧 で あ る.こ
示 す よ う に 外 圧 よ り2γ/rだ
け 高 い こ とが わ か る.ΔPは
さ くな る に つ れ 増 大 す る.表4.2に,液 球 形 で な い 場 合 に は,主
れ よ り,液
滴 の 内 圧 は図
液 滴 の 半 径 が小
滴 半 径 と圧 力 差 と の 関 係 を 示 す.液
曲 率 半 径 をr1とr2と
し た 次 式 が 適 用 さ れ る.
ΔP=γ(1/r1+1/r2) 表 面 や 界 面 が 凹 型 に な っ て い る と,曲 な る.こ
れ は,凹
(4.17)
率 半 径 の 値 は 負 に な る の で,ΔPは
型 表 面 で は 内 圧 は 外 圧 に 比 べ 低 い こ と を 意 味 す る.水
容 器 に ガ ラ ス の 毛 細 管 を 入 れ る と,水
滴が
は 図4.31に
負 と
が入 った
示 す よ う に あ る高 さ まで 上 昇
す る こ と は よ く知 ら れ る が,こ
れ は毛 細 管 内 の メ ニ ス カ ス 直 下 の圧 力 が 大 気 圧 に
比 べ2γcosθ/rだ
水 圧 が そ の 圧 力 差 と 平 衡 に な る 高 さ2γcosθ/
(ρgr)ま
け 低 く,静
で 押 し 上 げ ら れ た 結 果 の 現 れ で あ る.ρ
とgは
表4.2 液 滴 径 に 対 す る圧 力 差 の 変 化
水 の 表 面 張 力(25℃):0.072Nm−1.
そ れ ぞ れ 密 度 と重 力 の
図4.31
毛管現 象
加 速 度 を表 す. 曲面 で の圧 力 差 は蒸 気 圧 に変 化 を もた らす.液 体 の蒸 気 圧 は液 体 にか か る圧 力 に依 存 す る の で,液 滴 表 面 にお け る蒸 気 圧 は液 滴 の半 径 をrと
す る と, (4.18)
に従 っ て 変 化 す る.こ 質 量(同
こで,P0は
表 面 が 平 面 の 場 合 の蒸 気 圧,Mは
位 体 組 成 が 天 然 組 成 で あ る場 合 は,分 子 量 に等 し い),dは
ガ ス定 数,Tは
液体 のモ ル 密 度,Rは
温 度 で あ る.こ れ は ケ ル ビ ン の 式 と して 知 られ て い る.液 滴 が
小 さ くな る と蒸 気 圧 は高 くな り,蒸 発 しや す くな る.こ れ に対 して,表 面 が 凹 型 の と こ ろで は負 の 曲 率 に よっ て 蒸 気 圧 は低 くな る.凹 型 お よ び 凸型 表 面 に対 す る 曲 率 半 径 と蒸 気 圧 の 関 係 を表4.3に
示 す.こ
れ ら の効 果 は,液 滴 径 が 小 さ くな る
こ とに よ って 顕 著 に な る. 以 上,液
相 を例 に とっ て 曲 面 に よ る圧 力 変 化 を説 明 した が,同 様 な こ と は 固相
で あ る セ ラ ミ ック ス に も適 用 で き る.セ ラ ミ ッ クス 粒 子 が 微 粒 化 す る と,蒸 気 圧 は ケ ル ビ ンの 式 に従 い 増 加 す る.ま た,表 面 の 凹 凸 に よ って も蒸 気 圧 に差 が 生 じ る.そ
の 影 響 で,物
質 は 図4.32に
示 す よ う に 凸 面 部 で 蒸 発 し,凹 面 部 に移 動 し
て そ こで凝 縮 す る.こ の 物 質 移 動 は,蒸 発-凝 縮 に よ る粒 子 の焼 結 を導 く.曲 面 に よ る圧 力 変 化 は,後 述 す る粒 子 の 成 長 や 焼 結 機 構 に深 く関 係 す る. 4.2.3 濡 れ 現 象 固 体 表 面 に 滴 下 され た 液 滴 が 図4.33に
示 す よ う に 固 相 と気 相 に 接 し,3相
共 存 し て平 衡 に あ る と き は 次 の よ うな 釣 合 いが 成 り立 つ.
が
表4.3
凹型 お よ び 凸型 表 面 にお け る25℃ で の 曲率 半 径 と蒸 気 圧 の 関 係
図4.32
固 体 表 面 上 で の物 質 移 動
γSG=γSL+γLGcosθ
こ れ は ヤ ン グ の 式 と呼 ば れ る.こ
(4.19)
こで,γSG,γSLお よ び γLGはそ れ ぞ れ 固 相-
気 相 の表 面 自由 エ ネル ギ ー,固 相-液 相 の 界 面 自 由 エ ネ ル ギ ー お よ び 液 相-気 相 の 表 面 自 由 エ ネ ル ギ ー で あ る.ヤ
ング の 式 の θは 接 触 角 と呼 ば れ,固 相 表 面 に 対
す る液 相 の 濡 れ や す さ の程 度 を表 す 重 要 な量 で あ る. 接 触 角 θは0≦ θ≦180°の 値 を と る.固 体 表 面 に お か れ た 液 体 の 形 態 は,接 触 角 θ に よ っ て分 け られ る. ① θ=0 液 体 は 固体 表 面 全 体 に 広 が り,表 面 を濡 らす. ②0<θ<90° 液 体 は 限 られ た 領 域 の 中 で 広 が り,あ る程 度 表 面 を濡 らす. ③ θ>90° 液 体 は 固 体 表 面 上 で 広 が らず,図4.34に
示 す よ う に,で
き る だ け接 触 面 積 を
減 らす よ うに 小 さ な球 に な る傾 向 を 示 す. これ らは,全 界 面 エ ネ ル ギ ー が 最 小 に な る よ うに 平 衡 状 態 が つ く られ た 結 果 の 現 れ で あ る.式(4.19)か
ら,
図4.33
固 体 表 面 上 で の液 滴
(a)
(b) 図4.34
接 触 角 の違 い に よ る液 滴 の形 状 変 化
cosθ=(γSG−
を得 る.式(4.20)か
(c)
γSL)/γLG
(4.20)
らわ か る よ う に,固 相-気 相 の表 面 自由 エ ネル ギ ー よ り固 相-
液 相 の 界 面 自 由エ ネ ル ギ ー の方 が 小 さ い場 合 に は,接 触 角 は90° よ り小 さ な値 と な る.こ の 場 合,液 体 は固 体 を濡 らす 方 向 に落 ち着 く.身 近 な例 で は,清 浄 な ガ ラ ス上 に お か れ た 水 滴 が これ に相 当 す る.こ れ とは逆 に,固 相-液 相 の 界 面 自 由 エ ネ ル ギ ー の 方 が 大 きい場 合 は,接 触 角 は90° よ り大 きな 値 とな る.液 相 が 水 の 場 合,固
体 表 面 の 濡 れ の 程 度 は 親 水 性(hydrophilicity)あ
(hydrophobicity)と
る い は疎 水 性
い う言 葉 で し ば しば 表 現 され る.親 水 性 は 表 面 が 水 で 濡 れ
や す い こ と を指 し,疎 水 性 は表 面 が濡 れ に くい こ と を意 味 す る.セ お け る濡 れ 現 象 は,水,溶
融 金 属,溶
ラ ミッ ク ス に
融 酸 化 物,溶 融 ス ラ グ な ど との 間 で 重 要 と
な る.ま た,液 相 存 在 下 で 進 行 す る液 相 焼 結 で は,液 相 に よ る個 々 の 粒 子 の濡 れ の 度 合 い が微 構 造 形 成 に影 響 を及 ぼ す. 4.2.4 多 結 晶 体 組 織 の 幾 何 学 的 形 状 濡 れ 現 象 が 表 面 お よ び界 面 自 由エ ネ ル ギ ー に よ っ て支 配 され て い る よ う に,多 結 晶体 の平 衡組 織 も それ らの エ ネル ギ ー の 平 衡 関 係 に依 存 す る. 多 結 晶 体 の表 面 を平 滑 に した 後,物 質 移 動 が 起 こ り う る温 度 で 十 分 な 時 間 処 理 す る と,表 面 に は 図4.35に
示 す よ うな 溝 が で きる.平 衡 で は, γSS=2γSVcos(φ/2)
(4.21)
が 成 り立 ち,溝 の形 状 は界 面 自由 エ ネ ル ギ ー と表 面 自 由 エ ネ ル ギ ー の大 小 に よ っ て決 め られ る. 同様 な考 え は,多 結 晶 体 の 内部 に も適 用 で き る.母 相 粒 子 が 気 孔 や 異 相 と平 衡 に あ る場 合, γSS=2γSVcos(φ/2)
(4.22)
γSS=2γSLcos(φ/2)
(4.23)
γSSi=2γSSicos(φ/2)
の 関 係 が 成 り立 つ.こ
こ で,φ
は 二 面 角(dihedral
(4.24)
angle)と
呼 ば れ,界
面 自由
図4.35
熱 処 理 に よ る表 面 形 状 の 変 化
図4.36
多 結 晶 体 内部 で の 二 面 角
エ ネ ル ギ ー と表 面 自 由エ ネ ル ギ ー の 大 小 に よ って 決 ま る値 で あ る.固 相 の表 面 お よ び界 面 自 由 エ ネ ル ギ ー に は 異 方 性 が あ る の で,二
面 角 φ は場 所 に よ っ て 異 な
る.異 相 が 存 在 しな い 多 結 晶体 で,界 面 自 由 エ ネ ル ギ ー が 等 方 的 で あ る と した場 合,二
面 角 は120° と な る.こ れ は,多 結 晶 体 に お け る理 想 的 な 二 次 元 粒 子 配 列
は,六 角 格 子 のハ ニ カム 形 状 で あ る こ とを意 味 す る. 二 面 角 は,物 質 が 決 ま る と,そ れ らの 界 面 自 由エ ネ ル ギ ー や 表 面 自 由 エ ネ ル ギ ー か ら求 ま る値 で あ る.い
ま,あ る多 結 晶 体 に 内在 す る気 孔 と粒 子 の交 点 で の 二
面 角 を108° と した 場 合,気
孔 は5個 の 粒 子 で 囲 ま れ た と き に安 定 とな る.こ の
場 合,粒
子 の 表 面 は平 面 とな る.気 孔 を取 り囲 む粒 子 が5個
粒 子 表 面 は図4.37に
よ り少 な くな る と,
示 す よ う に凹 面 とな る.表 面 が 曲面 に な る と圧 力 差 が 生 じ,
そ の 影 響 で この場 合 に は気 孔 を小 さ くす る方 向 に力 が作 用 す る.一 方,気 孔 を取 り囲 む粒 子 が5個
よ り多 い場 合 に は,粒 子 表 面 の形 状 は凸 面 に な り,気 孔 は広 が
る傾 向 に あ る.二 面 角 が例 え ば135° で は,気 孔 は8個 の 粒 子 に よ っ て 囲 まれ た と きが 安 定 とな る.こ の よ うに,二 面 角 の値 が 大 き くな る に つ れ,気 孔 は よ り多 くの 粒 子 に よ っ て 囲 まれ た 方 が安 定 とな る. 少 量 の 液 相 が 多 結 晶 体 内 に存 在 す る場 合,存
在 す る液 相 の種 類 に よ って 形 成 さ
れ る微 構造 は 大 き く変 化 す る.例 え ば,液 相 と固 相 間 の 界 面 自 由 エ ネ ル ギ ー γSL が 固 相-固 相 の 界 面 自 由 エ ネ ル ギ ー γSSの半 分 以 下 の 場 合 は,液 相 は 個 々 の粒 子
図4.37
二 面 角 を108° と した場 合 の 粒 子 数 と気 孔 形 状 の 関係
表 面 を 覆 う よ う に 分 布 す る.一 方,γSLが
γSSより大 き い場 合 に は,液 相 は個 々
の 粒 子 が 交 差 す る点 で 孤 立 化 す る. こ の よ う に,多 結 晶 体 の平 衡 組 織 は表 面 自 由 エ ネ ル ギ ー や 界 面 自 由 エ ネ ル ギ ー に 大 き く規 定 さ れ て い る.実 際 これ らの 関 係 は,セ
ラ ミ ッ クス の 焼 成 時 に重 要 と
な る. 4.3 成 形 と レ オ ロ ジ ー セ ラ ミ ッ ク ス の成 形 法 に は,3.6節
で 説 明 した とお り様 々 な もの が あ り,そ れ
ぞ れ の 特 徴 を もつ.そ れ らの成 形 法 で は,原 料 粉 体 は ほ ぼ共 通 的 に前 処 理 と して 溶 媒 中 で種 々 の処 理 を受 け る.そ の 間 に生 じ る種 々 の現 象 は,最 終 製 品 の特 性 に 著 しい 影 響 を及 ぼ す.適 切 な成 形 を行 う に は,そ れ ら現 象 の 内 容 を理 解 す る必 要 が あ る. 4.3.1 粉 体 の構 造 セ ラ ミ ッ ク ス の 原 料 粉 体 は,図4.38に 示 す と お り0.1∼ 数 μm程 度 の 微 細 な 一 次 粒 子 か ら な る .こ れ ら一 次 粒 子 は単 一,あ る い は小 数 の 結 晶 か らな る.一 次 粒 子 の 寸 法 を一 次 粒 子 径 とい うが,し
ア グ ロ メ レー ト
図4.38
ば しば簡 単 に粒 径 と呼 ぶ こ と もあ る.粉 体
ア グ リゲ ー ト 粉 体 の構 造
中 の粒 径 は分 布 を も ち,対 数 正 規 分 布 や ロ ジ ン-ラ ム ラ ー(Rosin-Rammler)分 布 則 に従 う こ とが 多 い.こ
の対 数 正 規 分 布 と は,図4.39に
示 す とお り,粒 径 を
対 数 で プ ロ ッ トす る とき,分 布 曲 線 が 正 規 分 布 の 形 に な る もの で あ る.平 均 粒 径 を単 に粒 径 とい う場 合 もあ る. 一 次 粒 子 は集 合 体 を形 成 す る傾 向 が あ る.一 次 粒 子 の 集 合 体 を二 次 粒 子 と呼 ぶ.ま
た その 大 き さ を二 次 粒 子 径 と呼 ぶ.二
次粒 子 は凝 集 体 と も呼 ば れ る.凝 集
体 に は,一 次 粒 子 が フ ァ ン デ ル ワ ー ル ス 力 な どで 弱 く結 合 し た ア グ ロ メ レ ー ト (agglomerate)と,強
く結 合 した ア グ リゲ ー ト(aggregate)が
あ る.こ の粒 子
間 の 強 い 結 合 は化 学 結 合 に よ り生 じた もの で あ り,そ の 具 体 的 な例 は,粒 子 が焼 結 に よ り融 着 した もの で あ る.ア
グ ロ メ レ ー トは後 で 説 明 す る適 切 な分 散 操 作 に
よ り容 易 に一 次 粒 子 に分 離 す るた め,セ ラ ミ ック ス の 製 造 に深 刻 な影 響 は 及 ぼ さ な い.し か し ア グ リゲ ー トは粉 砕 操 作 に よ っ て も,容 易 に は一 次 粒 子 に分 解 しな い.ま た,た
とえ わ ず か に存 在 して も,焼 結 の 阻 害 や 破 壊 源 の形 成 な どの 原 因 と
な る.し た が っ て,そ の 存 在 は セ ラ ミ ック ス の 製造 に お い て きわ め て好 ま し くな い もの で あ る. 多 くの粉 体 で は,表 面 の化 学 組 成 はバ ル ク(内 部)と
は異 な る.こ れ は,表 面
で は物 質 内部 の 化 学 結 合 が 切 断 され て い る こ とか ら生 じ る もの で あ る.酸 化 ケ イ 素,ア
ル ミナ,酸 化 チ タ ン,酸 化 亜 鉛 な どの イ オ ン結 晶 で は,結 晶 全 体 お よび 表
面 を電 気 的 に 中 性 に保 つ た め,表 面 に は水 酸 基 が存 在 す る.こ の 表 面 水 酸 基 は, 高 い反 応 性 を もつ.例
え ば微 粉 末 の 酸 化 亜 鉛 や 酸 化 ケ イ 素 は ゴ ム の 添 加 剤 と して
用 い られ る が,こ れ は ゴム の分 子 と この 水 酸 基 とが 強 い 相 互 作 用 を もつ か らで あ る.こ の表 面 の 高 い反 応 性 は,表 面 へ の 物 質 の 吸着 を起 こす 原 因 と な り,ま た粒
図4.39 粒 径正 規 分布
図4.40
ゼ ー タ電 位 の 変 化
子 の溶 媒 中 で の 振 る 舞 い を支 配 す る も の と もな る. 4.3.2 溶 媒 中 の 粒 子 図4.41に
模 式 的 に 示 した とお り,空 気 中 で は酸 化 物 粒 子 の表 面 は水 酸 基 で 覆
わ れ て い る.粒 子 が 水 中 に あ る と き,こ の表 面 水 酸 基 は周 囲 の 水 素 イ オ ン,あ る い は水 酸 化 イ オ ン との 相 互 作 用 に よ りイ オ ン化 す る.こ れ に よ り,表 面 は帯 電 す る.表 面 の電 荷 はpHが
低 い と き,つ ま り酸 性 側 で は正 で あ るが,pHが
に 従 い 徐 々 に減 少 して ゼ ロ に な り,さ ら にpHを ゼ ロ に な るpHを
増 す と負 と な る.表 面 の 帯 電 が
等 電 点 と呼 ぶ.代 表 的 な物 質 の 等 電 点 を 表4.4に
表 面 は水 中 の イ オ ンの 吸 着 に よっ て も帯 電 す る.例 溶 液 中 のAg+イ
上がる
え ば,ヨ
示 す.
ウ 化 銀AgIで
は,
オ ン濃 度 が 高 い と,こ れ が 粒 子 表 面 に 吸 着 して 表 面 は 正 に,ま
たI− イ オ ン濃 度 が 高 い と,こ れ が 吸 着 して 負 に帯 電 す る.さ
図4.41
ア ル ミナ 表 面 の構 造
表4.4 代 表 的 な物 質 の等 電 点
ら に,粒 子 は格 子
図4.42
電 気 的二 重 層 の構 造
欠 陥 の存 在 に よ っ て も帯 電 す る. 図4.42の
と お り,帯 電 した 粒 子 の 表 面 付 近 に は電 場 が 生 じ,こ れ は 周 囲 に さ
ら な る変 化 を生 じさ せ る.表 面 は水 中 の イ オ ン を引 きつ け,そ れ ら イオ ンの 一 部 は表 面 に 強 く吸 着 して 固 定 され る.こ の 粒 子 表 面 に固 定 さ れ た イ オ ン の層 をス タ ー ン層 とい う.ス タ ー ン層 の 外 表 面 にお け る電 位 は,吸 着 した イ オ ン の量 と と も に変 化 し,イ オ ンの 量 が 少 な い と き に は粒 子 自体 の 電 荷 と同 じ符 号 で あ る が,多 い と きに は逆 符 号 とな る こ と もあ る.電 気 的 に は,ス タ ー ン層 は異 な る電 荷 を も つ イ オ ンが 対 向 して 存 在 す る もの で あ り,電 気 的 二 重 層 で あ る. ス タ ー ン層 に よっ て も,粒 子 の表 面 電 荷 は 完 全 に は打 ち 消 され な い た め,そ の 外 側 で も一 般 に電 場 は存 在 す る.こ の 電 場 は水 中 の イ オ ン を引 きつ け,あ
るい は
排 斥 す るた め,粒 子 の 周 囲 に は イ オ ンが 雲 の よ う に分 布 す る.こ れ は拡 散 電 気 二 重 層 を 形 成 す る.拡 散 電 気 二 重 層 で は,ス タ ー ン層 と粒 子 自体 の もつ電 荷 と反 対 の 符 号 を もつ イ オ ン は粒 子 に引 きつ け られ る.し か しイ オ ン は,そ れ らの 間 に電 気 的 反 発 力 が 存 在 す るた め,表 面 付 近 に密 集 して 存 在 す る こ と はで き な い.し た が っ て そ の 濃 度 は,粒 子 か らの距 離 と と もに 変 化 す る.粒 子 に引 き つ け られ る種 類 の イ オ ンで は,濃 度 は表 面 付 近 で 高 く,そ こ か ら離 れ る に従 い 徐 々 に低 くな る.そ れ ら と反 対 の 符 号 の 電 荷 を もつ イ オ ンで は,表 面 付 近 の 濃 度 は低 くな り, そ こか ら離 れ る に従 い 徐 々 に高 くな る. 拡 散 電 気 二 重 層 の 広 が りは,溶 媒 中 の イ オ ン強 度 と関係 す る.イ オ ン濃 度 が 高 い と,多 量 の イ オ ンが 表 面 に集 ま るた め,広 が りは狭 くな る.こ の広 が りの 程 度
は デ バ イパ ラ メー タ(Debye [m]で
parameter)χ
定 義 さ れ る.イ オ ン の価 数 をz,濃
を 用 い る.電 気 二 重 層 の厚 さ は1/χ 度 をC[mmol
m−3(10−3mol
m−3)]
で 表 す と,ほ ぼ 次 式 とな る. 1/χ=3×10−10C−1/2/z
(4.25)
粒 子 自体 が もつ 見 か け の電 位 は,ゼ ー タ 電 位 で は か られ る.ゼ ー タ 電 位 に 関係 す る の は,粒 子 自体 の もつ電 荷 以 外 に,ス タ ー ン層 お よび 拡 散 電 気 二 重 層 に含 ま れ る電 荷 の 一 部 で あ る.こ は,例
こで,拡 散 電 気 二 重 層 の す べ て の 電 荷 が 関係 し な い の
え ば粒 子 が溶 媒 中 を移 動 す る際,拡 散 層 中 の電 荷 中 で粒 子 か ら遠 い 部 分 の
もの は,粒 子 と と も に動 か ず 取 り残 され る た め で あ る.す な わ ち,拡 散 電 気 二 重 層 の あ る場 所 で滑 りが 生 じ る.こ の 滑 り面 で の電 位 が ゼ ー タ(ζ)電 この ゼ ー タ 電 位 は,粒 子 に電 場 を加 え る際 の運 動,あ
位 で あ る.
る い は粒 子 を外 力 で運 動 さ
せ る際 に生 じ る電 場 な ど を測 定 して 求 め られ る もの で あ る. 4.3.3 粒 子 間 の 相 互 作 用 粒 子 間 に は引 力 と斥 力 が作 用 す る.ま ず フ ァ ンデ ル ワー ル ス力 はす べ て の粒 子 間 に 常 に働 く.こ れ は引 力 で あ り,こ れ に よ る粒 子 間 の ポ テ ン シ ャル エ ネル ギ ー は距 離 の −2乗 に従 い 変 化 す る.こ の 力 は,大
き な物 体 で は 重 力 に比 べ て 非 常 に
小 さ く 目立 た な い もの で あ る が,微 細 な粒 子 で は無 視 で き な い.例 程 度 の 寸 法 の微 粒 子 で は,フ きい.そ
え ば,1μm
ァ ン デル ワ ー ル ス 力 は重 力 が 粒 子 に及 ぼ す 力 よ り大
の た め,粒 子 は互 い に付 着 し て容 易 に は流 動 しな い.
空 気 中 に あ る粒 子 間 に は,さ
ら に粒 子 間 の 隙 間 に凝 縮 した 液 体 に よ る毛 管 力 に
よ る引 力 も働 く. 一 方,適
当 な条 件 で は粒 子 間 に は反 発 力 が存 在 す る.粒 子 表 面 の イ オ ン雲 の 重
な りに よ り反 発 力 が 生 じ る.こ れ に よ りポ テ ン シ ャル エ ネ ル ギ ー は距 離 と と も に 指 数 関 数 的 に増 加 す る.反 発 力 は,粒 子 表 面 に 吸 着 した 高 分 子 に よ るエ ン トロ ピ ー 効 果 で も生 じ る.粒 子 は,こ れ ら引力 と反 発 力 の 両 方 の力 を受 け,そ の結 果, 凝 集 あ る い は分 散 す る. 粒 子 に働 く フ ァ ン デル ワ ー ル ス 力 と,粒 子 表 面 の 電 気 的 二 重 層 を 考 慮 して粒 子 の 分 散 や 凝 集 を論 ず る のがDLVO理
論 で あ る.図4.43の
とお り,粒 子 間 の ポ テ
ン シ ャ ル エ ネ ル ギ ー は それ らの和 で 与 え られ る.こ の和 は,粒 子 間 に十 分 な反 発 力 が あ り,か つ 粒 子 間 の 距 離 が あ る程 度 以 上 の と き に2カ 所 で 正 と な る.つ り,遠 距 離 に あ る粒 子 は互 い に 引 き合 うが,あ
ま
る程 度 の距 離 まで 近 づ くと,そ れ
図4.43 粒 子 間 に働 く力
らの 間 に は反 発 力 が 生 じ る.こ れ に よ り粒 子 は分 散 す る.一 方,反 発 力 が 不 十 分 な と きに は,粒 子 間 に は極 近 距 離 の 場 合 を除 い て す べ て の距 離 で 引 力 が 働 く.こ れ に よ り粒 子 は凝 集 す る. 4.3.4 粒 子 の 分 散 粒 子 間 に 十 分 な 反 発 力 を与 え る と,粒 子 は あ る 程 度 の距 離 以 下 に は接 近 で き ず,分 散 す る.反 発 力 を つ くる に は,pH制
御 に よ る 方 法 と分 散 剤 に よ る方 法 が
知 られ て い る. pH制
御 に よ る方 法 で は,粒 子 の もつ ゼ ー タ 電 位 を 高 め,粒 子 相 互 に反 発 力 を
つ くる.こ れ に は,溶 液 のpHを
等 電 点 か ら離 れ た値 とす る.ま た,電 気 的 二 重
層 が 空 間 的 に十 分 に広 が る よ う にす る.こ れ に は,溶 液 中 の イオ ン強 度 を低 くす る必 要 が あ り,カ ル シ ウ ム,マ グ ネ シ ウ ム,鉄,硫
酸 な どの 多 価 イ オ ンの 濃 度 を
極 力 低 くす る こ とが 必 要 で あ る. 多 くの 分 散 剤 は,中 性 あ るい は イオ ン性 の 高 分 子 や あ る程 度 大 きな 分 子 量 を も つ イ オ ン で あ る.そ
の分 散 作 用 は次 の と お り生 じ る.図4.44の
ポ リア ク リル 酸
は,酢 酸 と同 じ基 本 構 造 か らな る高 分 子 の ア ンモ ニ ア塩 で あ る.こ れ は,水 中 で は解 離 して 高 分 子 の 陰 イ オ ン とな る.こ れ ら高 分 子 イ オ ン は粉 体 粒 子 の表 面 に 吸 着 し,各 粒 子 を 強 く負 に帯 電 させ る.こ の電 荷 に よ り上 で す で に説 明 した の と同
図4.44
ポ リア ク リル酸 ア ン モ ニ ウム の 構 造 とイ オ ン化
様 に,粒 子 間 に は ク ー ロ ン斥 力 が 生 じ,こ れ が 粒 子 の凝 集 を防 ぐ.ま た 一般 に, 粉 体 表 面 に吸 着 した 高 分 子 の 間 に は,エ
ン トロ ピ ー効 果 に よ る反 発 力 も働 く.こ
の 効 果 は,一 般 に 自然 は大 きな 自 由度 を好 み,吸 着 高 分 子 ど う しが 込 み 合 う状 態 を嫌 う効 果 で あ る.こ れ は,高 分 子 が 電 気 的 に 中 性 で あ っ て も作 用 す るた め,一 部 の 高 分 子 は電 気 的 に 中性 で あ って も分 散 剤 と して 働 く. 4.3.5 ス ラ リーの 流 動 特 性 ス ラ リー 中 の 粉 体 粒 子 の相 互 作 用 を知 る こ と は,セ ラ ミ ッ クス の製 造 に と り非 常 に重 要 で あ る.こ れ に は,粒 子 間 に働 く力 を直 接 調 べ る こ とが 理 想 的 で あ る が,そ
れ を調 べ る方 法 は い ま で も十 分 に確 立 さ れ て い な い.し た が っ て,相 互 作
用 を間 接 的 に 調 べ る必 要 が あ る.こ れ に は,流 動 特 性 を調 べ る の が 最 も便 利 で あ る. 流 動 特 性 は,ス
ラ リー に外 部 か らせ ん 断 応 力 を加 え る とき のせ ん 断速 度 を調 べ
る もの で あ る.こ れ は,ス
ラ リー 中 の粒 子 の 状 況 を知 る上 で は間 接 的 な 尺 度 で は
あ る が,測 定 は 容 易 で あ り,ま た 製 造 工 程 の 管 理 上 で も便 利 で あ る.ま た,ス
ラ
リー に加 え た せ ん 断 力 σ とせ ん 断 速 度 τと の 関 係 か ら は,各 せ ん 断 速 度 τで の 見 か け粘 度 ηが 求 ま る.工 業 的 に は,こ の 尺 度 も便 利 に 用 い られ る. η=σ/τ 図4.45に,ス
ラ リー に お け る種 々 の 流 動 特 性 を 示 す.ニ
(4.26) ュ ー トン 流 動 は,せ
ん 断 速 度 とせ ん断 応 力 の 間 に比 例 関係 が あ る もの で あ り,粒 子 間 に相 互 作 用 が な い場 合 に認 め られ る もの で あ る.こ の とき,粘 度 はせ ん 断 速 度 に よ らず 一 定 で あ る.粘 度 は,溶 媒 中 の粒 子 濃 度 が 増 す と増 加 す る.こ れ は,実 際 の 流 動 に関 係 す る の は粒 子 間 の 隙 間 で あ り,こ れ が 粒 子 濃 度 の増 加 と と もに減 るか らで あ る.粒 子 濃 度 の 極 限 値 と して粒 子相 互 が 接 触 す る と,流 動 は 不 可 能 とな り,見 か け粘 度 は非 常 に高 くな る.固 体 濃度 が 一 定 の場 合 に は,粒 子 が 細 か い ほ ど粒 子 間 の 隙 間 は狭 くな り,粘 性 は高 くな る. セ ラ ミッ ク ス の ス ラ リー は し ば しばニ ュー トン流 動 を 示 さず,非 動 性 で あ る.非 ニ ュー トン 流動 に は多 数 の種 類 が あ る が,セ 関係 す る もの は,ビ
ン ガ ム流 動,準
ニ ュー トン流
ラ ミ ック ス の 製 造 に
粘 性 流 動 お よ び ダ イ ラタ ン ト流 動 で あ る.
ビ ン ガ ム 流 動 と準 粘 性 流 動 は,降 伏 応 力 を もつ 流 動 で あ る.こ れ は,ス
ラ リー
中 の 粉 体 粒 子 間 に 引 力 が 働 き,粒 子 が ネ ッ トワー ク な どあ る種 の 構 造 を形 成 す る た め に起 こ る.降 伏 応 力 は,そ の構 造 を壊 す た め の 力 で あ る.応 力 を増 し,い っ
図4.45
流動曲線
た ん そ の構 造 を壊 し た後 は,流 動 は ニ ュー トン流 体 と似 て お り,せ ん 断 応 力 の 増 加 と と もに せ ん 断 速 度 が増 加 す る. 非 ニ ュ ー トン流 動 で は,ネ 定 時 の状 況 で,異
ッ トワー ク構 造 を破 壊 し流 動 状 態 に した 後 で も,測
な る結 果 が 得 られ る こ とが あ る.こ れ は,壊 れ た 構 造 が 再 生 す
る に は,時 間 を要 す る た めで あ る.例
え ば攪 拌 を継 続 した 状 態 で は,ネ
ク構 造 は壊 れ た ま まで あ り粘 度 は低 い が,し
ば ら く静 置 す る と構 造 が 再 生 され
る.攪 拌 を始 め る に は 降 伏 応 力 を加 え る必 要 が あ り,見 か け上,粘 い もの とな る.ま た 同 じ理 由 で,図4.46の
ッ トワー
度 は 非 常 に高
とお り粘 度 の 測 定 を,せ ん 断 応 力 を
増 しな が ら測 る場 合 と,下 げ な らが 測 る場 合 で は同 じせ ん 断速 度 で の粘 度 が 異 な る場 合 が あ る.こ の よ う に,粘 度 が 応 力 の履 歴 に依 存 す る こ と を チ ク ソ トロ ピー と呼 ぶ.一 般 にせ ん 断 に よ り破 壊 され た構 造 の 回 復 に は時 間 が か か るた め,粘 度 はせ ん 断 速 度 を増 しな が らは か る とき よ り,下 げ なが らは か る と きの 方 が 低 い. ダ イ ラ タ ン ト流 動 は,せ ん 断 速 度 の増 加 と と もに粘 性 が増 す もの で あ る.こ れ は粒 子 の 濃 度 が 高 く,そ れ らが 規 則 的 な構 造 をつ くる と き にみ られ る珍 し い流 動
図4.46
チ ク ソ トロ ピー を示 す 流 動 曲 線
で あ る.こ の 現 象 が 生 じ る の は,せ ん 断 に よ り,そ の構 造 が 壊 さ れ,粒 子 間 の 隙 間 が 広 が る と と もに,粒 子 間 を満 た す 液 体 が 不 足 気 味 とな る,し た が っ て,粒 子 相 互 が移 動 し に く くな る た め で あ る. 4.3.6 成 形 とス ラ リー特 性 ス ラ リー の 構 造 は,成 形 体 中 の粒 子 充 〓 構 造 と密 接 に関 係 す る.鋳 込 成 形 や ド ク タ ー ブ レー ド成 形 な ど の湿 式 成形 で は,ス ラ リー構 造 は直 接 的 に成 形 体 構 造 に 影 響 を 及 ぼ す た め,そ
の制 御 は 非 常 に重 要 で あ る.例
え ば,鋳 込 成 形 法 で は,セ
ッコ ウ 製 な どの 吸 水 性 の型 中 に ス ラ リー を流 し込 み,型 表 面 に密 な 粉 体 層 を形 成 させ る.あ る時 間 後,余
分 な ス ラ リー を排 出 し,乾 燥 させ る こ とに よ り,中 空 の
成 形 体 が 得 られ る.こ の 方 法 で は,ス
ラ リー を追 加 しつ つ 成 形 を行 う と,中 実 の
成 形 体 を得 る こ と もで き る.こ の と き,粉 体 粒 子 の分 散 が よす ぎ る と,粒 子 中 の 大 き な もの が 沈 降 す るた め,構 造 に不 均 質 が 生 じる.し た が っ て,粒 子 間 に あ る 程 度 の 引 力 が 残 る よ う ス ラ リー を設計 す る.こ の場 合,ス
ラ リー の粘 度 は や や 高
くな る. 乾 式 成 形 で も,ス ラ リー と成 形 体 の構 造 の間 に は深 い 関 係 が あ る.乾 式 加 圧 成 形 で は,ス
ラ リー を ス プ レ ー ドラ イ で 乾 燥 させ て 図4.47に
示 す顆 粒 状 とす る.
顆 粒 は球 に 近 い 形 状 を も ち,容 易 に流 動 す る た め金 型 や ゴム 型 の 中 に均 一 に 充 〓 可 能 で あ る.こ の 優 れ た 流 動 性 は,自 動 成 形 機 で高 効 率 の 成 形 を行 う際 に は絶 対 に必 要 で あ る.顆 粒 化 を省 略 す る と,乾 燥 体 の形 状 は不 規 則 とな り流 動 性 の よい も の とな らず,粉 体 を型 内 に均 一 に 充 〓 す る の は きわ め て 難 し くな る.充 〓 の 不
図4.47
セ ラ ミ ック ス 粉 体 の 顆 粒
図4.48
新 しい 観 察 法 で 調 べ た成 形 体 の 構 造
これ は,従 来 の観 察 法 で は きわ め て 均 一 な 構 造 とみ えて し ま う もの で あ る.
均 一 性 は,セ
ラ ミ ック ス 中 の傷 を生 成 して そ の 品 質 を著 し く低 下 させ る.
ス プ レ ー ドラ イ の 際,生 産 性 や 乾 燥 エ ネ ル ギ ー 消 費 の 観 点 で は,液 体 の量 は最 小 とす る必 要 が あ る.一 方,液 体 を減 らす とス ラ リー の 粘 度 は増 す.粘 度 が 高 す ぎ る と ス ラ リー を液 滴 に で きな い.し
た が っ て,製 造 上 の 観 点 か ら,ス プ レ ー ド
ラ イ で は粘 度 を あ る 限度 以 下 に抑 え る必 要 が あ る.こ れ に は,工 業 生 産 に お け る ス ラ リー 調 製 で は,分 散 剤 を添 加 して そ の 粘 性 を抑 制 して い る.一 方,品 質 の観 点 で は,液 体 量 を最 小 とす るの が 最 善 で はな い場 合 が あ る.工 業 生産 で は コ ス ト や 品 質 も考 慮 して ス ラ リー特 性 を制 御 す る こ とが 必 要 で あ る. もち ろ ん現 在 の 技 術 で も,粉 体 を顆 粒 化 し て成 形 体 の 均 一 性 を上 げ よ う と最 大 の 努 力 を払 っ て い る.し か し現 実 に は,ま だ 完 壁 に均 一 な構 造 を もつ 成 形 体 は得 られ て い な い.成 形 体 中 に は種 々 の 要 因 で 生 じた 不 均 質 が 存 在 し,焼 結 体 の 構 造,し
た が っ て そ の 特 性 に悪 影 響 を及 ぼ して い る.そ の 一 例 を 図4.48に
示 す.
均 一 な 成 形 体 を実 現 す る の は 今 後 の 課 題 で あ る. 4.3.7 粉
砕
粉 砕 は原 料 粉 体 の 粒 径 を さ ら に細 か くす るた め,ま た ア グ リゲ ー トを破 砕 す る た め に行 わ れ る.時
に は,さ
らに 混 合 も同 時 に行 うの に も用 い られ る.現 在 生 産
され る粉 体 は ア グ リゲ ー トを含 む た め,そ れ ら を必 ず 除 去 す る必 要 が あ る.ア グ リゲ ー トを含 む 粉 体 を そ の成 形 に 用 い る と,成 形 体 の構 造 中 に は そ の 周 囲 に大 き な 傷 が 生 じ る. 粉 砕 に は種 々 の 装 置 が 用 い られ る.セ ラ ミッ ク ス の 製 造 で は,原 料 粉 体 はす で に か な り微 粒 で あ る た め,微 粉 砕 機 が 用 い ら れ る.代 表 的 な 微 粉 砕 機 は,図 4.49に 示 す ボ ー ル ミル で あ る.こ の 粉 砕 機 で は,原 料 粉 体 を ボ ー ル や 溶 媒 な ど と と も に 円 筒 状 の 容 器 に入 れ 回 転 させ る.粉 体 粒 子 は落 下 す る ボ ー ル の 衝 撃 力 や,ボ
ー ル 間 の せ ん 断 力 な どに よ り粉 砕 さ れ る.工 業 的 に用 い られ る ミル に は,
長 さ10m,直 た め,摩
径5m程
度 の 巨 大 な もの が あ る.省 ス ペ ー ス や 粒 径 分 布 の制 御 の
擦 ミル も用 い られ る.こ の 装 置 で は,ボ ー ル と粉 体 お よび溶 媒 な どを容
器 中 に入 れ,そ
の 中 で 腕 木 を 回転 させ て粉 砕 を行 う.
粉 砕 で は,工 業 的 に は溶 媒 中 の粒 子 を な るべ く多 くした い.し
か し この とき に
は,粒 子 は連 続 して つ なが りネ ッ トワー ク を形 成 す る傾 向 が あ る.ア グ ロ メ レ ー トや ネ ッ トワ ー ク が 生 じ る と,粉 体 に は衝 撃 力 が 加 わ りに く くな り,粉 砕 効 率 が 下 が る.ま た 時 に は ス ラ リー の粘 性 が 高 くな りす ぎ て,粉 砕 機 の運 転 が 困 難 に な
図4.49
る.し た が っ て工 業 的 な製 造 で は,pH制
ボ ー ル ミル
御 や 分 散 剤 な どの 添 加 に よ り,そ れ ら
構 造 の形 成 を防 ぐ必 要 が あ る.
以 上,説
明 した とお り,成 形 で は,ス
ラ リー の 特 性 が 重 要 で あ る.ま た,成 形
体 の 構 造 が 最 終 製 品 の 構 造 に支 配 的 な 影 響 を 及 ぼ し,し た が っ て そ の特 性 に決 定 的 な影 響 を及 ぼ す こ と を考 え る と,ス ラ リー特 性 の制 御 は セ ラ ミ ック ス 製 造 に お け る最 も重 要 な ポ イ ン ト と もい え る.ス ラ リー 特 性 は,粉 体 の 表 面 特 性,粒
子の
形 状 や 寸 法,分 散 媒 や 添 加 物 な どに よ り影 響 を受 け る.ま た 粉 体 は複 雑 な 構 造 を も ち,成 形 で は そ の 制 御 も重 要 で あ る. 4.4 格 子 欠 陥 と拡 散 固 体 は静 的 で あ る と考 え て い る人 が 多 い と思 うが,実
際 は熱 エ ネ ル ギ ー に よ っ
て 原 子 や イ オ ン は そ の 格 子 点 を 中心 に激 し く振 動 し,常 に隣 の 位 置 に ジ ャ ン プ し た り,ま た 原 子 ど う し が 入 れ 替 わ っ た り し て い る.こ sion)と
の 動 き を 拡 散(diffu
呼 び,電 気 伝 導 と と も に セ ラ ミッ ク の 最 も重 要 な 特 性 の1つ で あ る.例
え ば,原 子 や イオ ンの 拡 散 は粉 末 の 焼 結(緻
密 化),ク
リー プ変 形,粒
成 長,イ
オ ン伝 導 お よ び 固体 間 反 応 な ど と密 接 に関 係 し て い る. 化 学 ポ テ ン シ ャ ル や 電 気 化 学 ポ テ ン シ ャ ル の 勾 配 が存 在 し,し か も拡 散 種 の移 動 が 可 能 な とき,拡 散 に よ る物 質 移 動 が 生 じ る.こ の移 動 は また,存 在 す る格 子 欠 陥 の 種 類 と濃 度 に よ って 支 配 さ れ て い る. 4.4.1 格 子 欠 陥 の 種 類 と濃度 格 子 欠 陥(lattice
defect)は,結
か ら の ず れ と定 義 され,原 子(イ
晶 に お い て 理 想 的 な 原 子(イ オ ン)の 欠 損,置
換 原 子(イ
オ ン)の 配 列
オ ン),格 子 間 原
子(イ
オ ン),さ
ら に は 電 子 欠 陥 な ど が あ る.ま
欠 陥 と な り,二 こ こ で は,拡
た 一 次 元 的 に 連 な っ た もの は 線
次 元 的 に 広 が る と 面 状 の 欠 陥 と な り,積
散 に 密 接 に 関 係 す る 原 子(イ
オ ン)欠
層 欠 陥 が そ の 例 で あ る.
陥(点
欠 陥)に
つ い て触 れ る
こ と に す る. 結 晶 の 点 欠 陥 に は,熱 defect)と,不 あ る.内
の エ ン ト ロ ピ ー 効 果 か ら 生 じ た 内 因 性 欠 陥(intrinsic
純 物 の 添 加 な ど に よ っ て 生 じ た 外 因 性 欠 陥(extrinsic
因 性 欠 陥 に は,構
defect)が
造 的 見 地 か ら シ ョ ッ トキ ー 欠 陥(Schottky
と フ レ ン ケ ル 欠 陥(Frenkel
defect)が
存 在 す る.
イ オ ン 結 晶 の フ レ ン ケ ル 欠 陥 は 図4.50(a)に 置 か ら 格 子 間 位 置 に 変 位 し,欠 化 学 組 成 も変 化 し な い し,格
defect)
示 す よ う に,イ
オ ンが正規 の位
損 と格 子 間 イ オ ン の 対 で 生 じ て い る.こ
子 サ イ ズ の 変 化 が 無 視 で き る 場 合,密
の 場 合,
度 も変 化 し な
い.
一 方,シ
ョ ッ トキ ー 欠 陥 は 図4.50(b)に
示 す よ う に,陽
イ オ ン と陰 イ オ ンが
同 時 に欠 損 して い る.電 気 的 中 性 が保 た れ る よ う,例 え ば組 成 式MXの 結 晶 で は 陽 イ オ ン と陰 イ オ ン の 同 数 の 空 孔 が 生 じ る.ま た,MX2で
イオ ン
は陽 イオ ン
は陰 イ オ ン の2倍 の 電 荷 を もつ た め,各 陽 イ オ ン空 孔 当 た り2個 の 陰 イ オ ン空 孔 が 生 じ る.そ れ ゆ え,化 学 組 成 は変 わ らず,密 度 は減 少 す るが,厳
密 に は,格 子
サ イ ズ の 変 化 との兼 ね 合 い にな る. これ らの 内 因 性 欠 陥 は,結 晶 の 種 類 に関 わ りな く必 ず 存 在 す るが,そ 周 囲 の温 度 や 結 晶 の 結 合 エ ネ ル ギ ー に よ っ て決 ま る.す な わ ち,欠 はエ ネ ル ギ ー を必 要 とす る が,逆 ネ ル ギ ー(defect
formation
陥 を生 じ る に
にエ ン トロ ピー が 大 き くな る.こ の 欠 陥 生 成 エ
energy)と
エ ン トロ ピー か らの エ ネ ル ギ ー が 釣 り
合 っ て,欠 陥 の 濃 度 が 決 まる.
(a) 図4.50
の濃度 は
(b) フ レ ン ケ ル 欠 陥(a)と
シ ョ ッ トキ ー 欠 陥(b)
固 体 の場 合,系
の 体 積 変 化 は無 視 で きる の で,ヘ
ル ム ホ ル ツ(Helmholtz)の
自 由 エ ネ ル ギ ー 変 化 ΔAは 内 部 エ ネ ル ギ ー ΔUと
エ ン トロ ピー 変 化 ΔSを 用 い
て 以 下 の よ うに表 せ る. ΔA=ΔU−TΔS こ こ で,完
全 結 晶 で あ るMXの
を 考 え る.さ
ら に,1対
gsと す る と,ns個
(4.27)
イ オ ン ペ ア が 単 位 体 積 当 た りN個
存 在 す る場 合
の シ ョ ッ トキ ー 欠 陥 を 生 成 す る の に 要 す る エ ネ ル ギ ー を
の 欠 陥 対 を 生 成 す る た め の エ ネ ル ギ ー はnsgsと
な り,こ
れ は
内 部 エ ネ ル ギ ー の 増 加 に 相 当 す る. ΔU=nsgs 一 方
,エ
(4.28)
ン ト ロ ピ ー の 増 加 は ボ ル ツ マ ン(Boltzmann)の
原 理 か ら,欠
陥 の分
布 確 率 Ω と 次 式 の よ う に 関 係 し て い る. ΔS=k こ こ で,kは
ボ ル ツ マ ン 定 数 で あ る.ns個
個 の 陽 イ オ ン で 占 め ら れ た サ イ トが,N個
lnΩ
(4.29)
の 陽 イ オ ン 欠 陥 サ イ ト と(N−ns) の サ イ ト に 分 布 す る 確 率(ωc)は
次
式 で 表 せ る.
(4.30) 同 様 な 議 論 は,陰
イ オ ン 欠 陥 に も適 用 で き る.陰
とす る と,ωc=ωa=ω
で あ り,結
イ オ ン 欠 陥 の 分 布 の 仕 方 を ωa
果 と し て Ω=ω2と
な る.し
た が っ て エ ン トロ
ピー 変 化 は
(4.31) と な る.こ
こ で の 対 数 の 真 数 は 非 常 に 大 き い の で,ス
式ln
ln x−xが
x!=x
適 用 で き る.
ΔS=2k{N 式(4.27),(4.28)お
ln N−(N−ns)ln(N−ns)−ns
よ び(4.32)か
ΔA=nsgs−2kT{N こ こ で,平
タ ー リ ン グ(Stirling)の
衡 状 態 で は(∂
ln ns}
(4.32)
ら ln N−(N−ns)ln(N−ns)−ns
ΔA/∂ns)T,V=0が
ln ns}
成 り 立 つ と 仮 定 し て,こ
れ を 計 算 す
る と 次 式 が 得 ら れ る.
(4.33)
こ れ を 書 き直 す と
(4.34) が 得 ら れ る.こ ns≪Nで
陥 量 は 格 子 サ イ ト に 比 較 し て 十 分 少 な い,す
あ り,N−ns≒Nと
が 得 ら れ る.し 4.51に
こ で,欠
近 似 さ れ る の で,
た が っ て,1/Tに
対 し て 欠 陥 濃 度 の 対 数 を プ ロ ッ ト す る と,図
示 し た よ う に 直 線 関 係 が 得 ら れ,そ
NaClの
場 合gsが188kJ
り,欠
陥 濃 度 は30ppm程
一 方,フ
なわ ち
mol−1で
の 勾 配 か らgsが
あ る か ら,1073Kで
求 ま る.例
え ば,
はns/N=3×10−5と
な
度 で あ る.
レ ン ケ ル 欠 陥 数 も 同 様 の 取 扱 い に よ り,
(4.35) が 得 られ る.こ
こで,Nお
位 置 数 で あ り,gfは
よ びN*は
それ ぞれ正 規 の格子 位置 数 お よび格 子間
フ レ ンケ ル 欠 陥 の 生 成 エ ネ ル ギ ー で あ る.
一 般 に,セ ラ ミ ッ クス の よ う に耐 熱 性 の結 晶 は,欠 陥生 成 エ ネ ル ギ ー が 非 常 に 大 きい た め,欠 陥濃 度 は きわ め て 小 さ い.し か し,原 子 価 の 異 な る元 素 や 不 純 物 の添 加,あ
る い は雰 囲 気 制 御 に よ る混 合 原 子 価 の 存 在 な ど に よ り,多 量 の 格 子 欠
陥 が 容 易 に生 じ る.こ の よ うな 外 因 性 欠 陥 は 化 学 組 成 が整 数比 か らず れ た,い わ ゆ る不 定 比(非
化 学 量 論)化
合 物(nonstoichiometric
compound)と
化 合 物 を生 じる.不 定 比 化 合 物 と し て は,置 換 型,格 子 間型,欠 知 られ て い るが,こ
呼 ばれ る
損 型 の3種 類 が
こで は拡 散 現 象 と密 接 に 関 係 す る,格 子 間 型 と欠 損 型 に つ い
図4.51
格子欠陥濃度 の温度依存性
て 簡 単 に 説 明 す る. 格 子 間 型 欠 陥 は,余 て い る が,格
分 の イ オ ン が 格 子 間 に 入 っ た も の で,フ
レ ン ケ ル 欠 陥 と似
子 欠 損 と ペ ア に な っ て い な い 点 で 異 な っ て い る.こ
の 代 表 例 と し てZnOが
あ り,過 剰 のZn2+イ
の タイプの欠陥
オ ン が 格 子 間 に 入 り,組 成 はZn1+χO
と書 か れ る. 欠 損 型 欠 陥 に は,陽
イ オ ン 欠 損 と 陰 イ オ ン欠 損 型 が あ る.陽
はFe1− χOが 知 ら れ,Feの やCu2Oな
一 部 がFe3+と
ど も こ の 種 類 の 欠 陥 を 有 し て い る.さ
代 表 さ れ る ブ ロ ン ズ 構 造 はA1− χBO3で 構 造(perovskite-type 解 さ れ る.こ た れ て い る.こ
表 さ れ,図4.52で
一 部 がB6+に
δ, SrMnO3−
δ, (Ba,La)InO3−
石 構 造(fluorite-type
structure)に
示 した ペ ロ ブ ス カ イ ト
変 化 す る こ と に よ り,電 KχWO3な
お い て も,比
固 溶 し たZrO2が
損 量 に よ り単 斜 晶,正
方 晶,立
方 晶 と変 化 す る.こ
図4.52
これ に 該 当
れ は 組 成 がZr1− χYχO2−χ/2で表 記
溶 量 に 対 応 し た 酸 素 欠 損 が 生 成 し,結
呼 ば れ,酸
ら に,蛍
較 的 多 量 の 酸 化 物 イ オ ン の欠
さ れ る よ う に,Y3+固
zirconia)と
ど が 知 られ て い る.
δな ど 多 くの 化 合 物 例 が あ る.さ
イ オ ン 欠 損 を 含 む 代 表 的 な 例 で あ る.こ
コ ニ ア(stabilized
気的 中性が保
化 物 イ オ ン が 欠 損 し や す い 構 造 で あ り,
損 を 生 じ や す い 構 造 と し て 知 ら れ て い る.Y2O3を し,陰
ング ス テ ン ブ ロ ン ズ で
イ トが 一 部 欠 損 し た 構 造 と理
の 種 の 化 合 物 と し て,NaχWO3,
ペ ロ ブ ス カ イ ト 構 造 は ま た,酸 SrFeO3−
ら に,タ
structure)ABO3のAサ
の 場 合,B5+の
イ オ ン欠 損 の例 に
な っ て 電 気 的 中 性 を 保 っ て い る.NiO
晶 の 対 称 性 も酸 素 欠
の ジ ル コニ ア系 は安 定 化 ジル
化 物 イ オ ン 伝 導 体 と し て よ く知 ら れ,
ペ ロ ブ ス カ イ ト構 造
酸 素 セ ン サ ー と し て 実 用 化 さ れ て い る.さ (solid oxide
fuel cell: SOFC)用
以 上 の よ う に,格
え ば,酸
子 欠 陥 を 多 量 に 含 む こ とが で き る 構 造 の 特 徴 と し て,格
(pyrochlore-type
連 し た 安 定 相 が 存 在 す る と い う共 通 点 が み ら れ
structure)A2B2O5,蛍
石 構 造 に お け るパ イ ロ ク ロ ア構 造
structure)A2B2O7な
晶 構 造 に関 し て の 詳 細 は 倉 書 店,1999)を
ど が そ の 例 で あ る.な
お,格
『結 晶 化 学 入 門 』(佐 々 木 義 典,他,基
子 欠 陥 と結
本 化 学 シ リー ズ
合 わ せ て 参 考 に さ れ た い.
以 上 の よ う な 欠 陥 の 生 成 を 伴 う反 応 を化 学 反 応 の よ う に 表 す た め,し 用 さ れ るKroger-Vink記 はVで
表 し,空
(interstitial)位
号 に つ い て 説 明 す る.欠
置 に あ る と き はiの
な ら ば(×)(何
添 え 字 を つ け る.さ
そ の 位 置 に 入 る イ オ ン の もつ 電 荷 と,実 例 え ば,MgO中
のMg2+の
(0)−(+2)=−2と
な る た め,−2価
子 間 に 存 在 す るZn2+の
た,あ
ら に,欠
肩 付 き で 表 す.有
陥 の有効 電荷
効 電 荷 と は,本
来
の サ イ トの 有 効 電 荷 は
に 帯 電 し て い る と 考 え て,VMg"と
表 す.格
子 間位 置 に は も と も と イ オ ンが 存 在 し な い位
置 で あ り,本
来 の 電 荷 が ゼ ロ の と こ ろ に+2価
示 さ れ る.こ
れ ら を 用 い て 欠 陥 反 応 式 を考 え る 場 合,結
は サ イ ト比 を 厳 密 に 保 存 す る と と も に,左 を 等 し く し な け れ ば な ら な い.以
効電荷 が ゼロ
際 に 入 っ た イ オ ン の 電 荷 と の 差 で あ る.
位 置 が 欠 損 し た 場 合,そ
場 合 は,格
とき
る イ オ ンが 格 子 間
イ ナ ス な ら プ ラ イ ム 記 号(′),有
も つ け な い 場 合 も あ る)を
ば しば使
陥 が 空 孔(vacancy)の
孔 の あ る 格 子 位 置 を 添 え 字 と す る.ま
が プ ラ ス な ら ば ド ッ ト(・),マ
MgOで
子欠
素 欠 損 し た ペ ロ ブ ス カ イ ト構 造 に お け る ブ ラ ウ ン ミ ラ ラ イ ト構 造
(brownmillerite-type
12,朝
体 電 解 質 型 燃 料 電 池
電 解 質 と し て の 応 用 も期 待 さ れ て い る.
陥 が 増 加 す る そ の 延 長 上 に,関 る.例
ら に は,固
下,い
の 電 荷 が 入 っ た と考 え てZni・ ・と 晶 中 の サ イ ト数,あ
辺 の 電 荷 の 合 計 と,右
るい
辺 の 電 荷 の合 計
くつ か の 例 に つ い て 具 体 的 に 示 す.
シ ョ ッ トキ ー 欠 陥 が 生 じ た 場 合 は 以 下 の よ う に 書 か れ る.
(4.36) こ こ で,nullと
は 「無 」 の こ とで あ り,結
晶 中 に 何 の 欠 陥 も存 在 し な い と こ ろ に
新 た な 欠 陥 サ イ トが 形 成 さ れ る こ と を意 味 し て い る. AgClは,Ag+の
一 部 が も と の 格 子 位 置 を 離 れ て 格 子 間 位 置 に 移 動 し,フ
ケ ル 欠 陥 を 生 じ て い る.こ
れ は,以
レン
下 の よ う に 記 述 で き る.
(4.37) 前 述 のY3+を
固 溶 し たZrO2の
場合 は
Y2O3→2Yzr′+Vo‥+3Oo×
(4.38)
の よ う に 書 け る. 4.4.2
拡 散 現 象 の 巨 視 的 な取 扱 い
セ ラ ミ ッ ク ス に お け る 拡 散 現 象 は,前
項 で 触 れ た 格 子 欠 陥 を 介 し て,非
平 衡状
態 か ら平 衡 状 態 に 向 か う プ ロ セ ス と 理 解 さ れ る. し た が っ て,拡
散 の 巨 視 的 な 取 扱 い は,熱
ィ ッ ク(Fick)の
第 一 法 則(Fick's
law)が
の 移 動 と 同 じ 考 え 方 を 採 用 し て,フ
first law)お
よ び 第 二 法 則(Fick's
second
適 用 さ れ て い る.
ま ず,フ
ィ ック の 第 一 法 則 は定 常状 態 で
(4.39) と 書 か れ る.す
な わ ち,単
ラ ッ ク スJは,濃 は,拡
度 勾 配dC/dχ
位 面 積 当 た りに移 動 す る粒 子 の数 で あ る フ
に 比 例 す る.式(4.39)に
お け るマ イ ナ ス の記 号
散 物 質 が 高 濃 度 か ら低 濃 度 に 向 け て 流 れ 出 る こ と を 示 し て い る.ま
例 定 数 で あ るDは,拡 Jの
位 時 間,単
単 位 はmol
位 はSI単
散 係 数(diffusion
m−2s−1で,濃
位 系 で はm2s−1と
coefficient)と
度 勾 配 は(mol
呼 ば れ る.定
m−3)(m−1)で
た,比
義 か ら,
あ る か ら,Dの
単
な る.
原 子 や イ オ ン の 拡 散 係 数 は,結
晶格 子 中 に お け る原 子 や イ オ ンの ジ ャ ンプ の し
や す さ と ジ ャ ン プ 回 数 の 目 安 と な る.実
験 的 に は,Dは
温 度 の 関 数 と して 以 下
の 式 で 表 さ れ る.
(4.40) こ こ で,D。 energy),kは
は 頻 度 因 子,Qは
拡 散 の た め の 活 性 化 エ ネ ル ギ ー(activation
ボル ツ マ ン定 数 で あ る.す な わ ち,原 子 が 結 晶 格 子 位 置 を ジ ャ ン
プ して 拡 散 す る た め に は,原 子 は そ の 隣 接 原 子 との 間 に存 在 す るポ テ ン シ ャル エ ネ ル ギ ー の 山 を乗 り越 え な けれ ば な らな い こ と を意 味 す る. 実 際 の拡 散 現 象 で は,濃 度Cは 間tの 関 数 とな る.そ
こでDが
時 間 と と もに 変 化 す る の で,Cは
場 所 χ と時
濃 度 に依 存 しな い と仮 定 す る と,次 式 の よ うな
フ ィ ッ ク の第 二 法 則 が 適 用 され る.
(4.41)
この偏 微 分 方 程 式 は,実 験 で の 初 期 条 件 お よび境 界 条 件 を設 定 す れ ば解 くこ とが で き る.い ろ い ろな モ デ ル に つ い て 解 が 求 め られ て い るが,例
え ば ア イ ソ トー プ
の よ うな 拡 散 源 を 拡 散 試 料 の 表 面 に薄 膜 状 に塗 布 し,加 熱 す る こ とに よ って 拡 散 実 験 を行 っ た と きの 濃 度 変 化 は,式(4.41)に C=0と
お い て 初 期 条 件 をt=0,χ>0で
して 解 く と,次 式 が 得 られ る.
(4.42) こ こ で,Mは
単 位 断 面 積 当 た り の 拡 散 種 の 初 期 量 で あ る.し
log C(χ,t)を
χ2に 対 し て プ ロ ッ ト し て 得 ら れ た 直 線 の 勾 配 か ら1/(4Dt)が
め られ,さ 一 方,2種
ら に 時 間tが
与 え ら れ れ ば,Dが
類 の 金 属 を 接 触 さ せ,加
た が っ て, 求
計 算 さ れ る こ と に な る.
熱 し た と き の よ う に,t=0で
試 料 の表 面 濃
度 に 拡 散 種 を 含 ま ず,t>0で
表 面 濃 度 が 常 に 初 期 濃 度C。
に 保 た れ る 場 合,濃
度
プ ロ フ ァ イ ル の 解 析 に は,次
式 の よ う な 誤 差 関 数(error
function)
用
erf(z)を
い て 解 析 で き る.
(4.43) ここで,
とす る と, (4.44)
で あ る.式(4.44)は,式(4.42)の さ れ た い.ま
た,こ
指 数 関 数 を積 分 した形 に な っ て い る こ とに注 意
の 誤 差 関 数 は 次 式 の よ う に 級 数 展 開 が で き る*2.
(4.45) そ こ で,式(4.45)を
用 い て,具
体 的 に 誤 差 関 数 を 計 算 し,uに
を プ ロ ッ ト し た 結 果 を 図4.53に
示 す.た
だ し,uが2を
計 算 が 必 要 と な る こ と に 注 意 す べ き で あ る.ま 同 時 に プ ロ ッ ト し た.こ 明 ら か な よ う に,式(4.42)の こ こ ま で は,濃
の 場 合,uの
対 し て1−erf(u)
超 え る と,10≦nで
た 比 較 の た め,式(4.42)の
定 義 か ら,exp(−u2)で
示 し た.図
の 変化 も か ら
濃 度 変 化 は ガ ウ ス 分 布 と な る.
度 勾 配 が 拡 散 の 駆 動 力 と し て 働 く場 合 に つ い て 述 べ て き た が,
結 晶 中 に お け る イ オ ン や 原 子 の 拡 散 は,電
界 や 応 力 な ど と も密 接 に関 係 す る場 合
*1 書物 によっては ,こ の式 に を掛 けた式 を誤差 関数 とする場 合 もあ る. *2 森 口繁一 ,宇 田川銈 久,一 松 信:数 学公式Ⅲ,p.24,岩 波書店,1987.
図4.53
が 多 い.そ
こ で,拡
exp(−u2)とerf(u)の
違 い
散 の 議 論 を よ り普 遍 的 に す る た め,ポ
テ ン シ ャル の 勾 配 を拡
散 の 駆 動 力 と す る 考 え 方 を 導 入 す る. 原 子 を 輸 送 さ せ る た め の 最 も 一 般 的 な 駆 動 力(driving る 原 子 や イ オ ン に 直 接 働 く力 で あ り,そ
force)Fiは,拡
れ は 化 学 ポ テ ン シ ャ ル,ま
ル ギ ー の 勾 配 と し て 表 せ る こ と を ア イ ン シ ュ タ イ ン(Einstein)は る.こ
散す
た は 自由 エ ネ 指 摘 して い
れ は
(4.46) と し て 表 せ る.こ
こ で,μiは
ア ボ ガ ド ロ 定 数 で あ る.そ
化 学 種iの
れ ゆ え,Fiは1個
化 学 ポ テ ン シ ャ ル(Jmol−1)で,NAは の 移 動 す る 化 学 種(particle)に
か
か る 力 で あ る. 次 に,拡 (mobility)
散 種 と移 動 度 の 関 係 に つ い て 検 討 す る.移 Miは,駆
動 力Fi当
動 す る 化 学 種iの
移動 度
た り の 速 度 υiと 定 義 さ れ る の で,
(4.47) と記 述 さ れ る.こ の駆 動 力 に は化 学 ポ テ ン シ ャル 勾 配,電
気 ポ テ ン シ ャ ル勾 配,
界 面 エ ネ ル ギ ー ポ テ ン シ ャル 勾 配,弾 性 歪 み エ ネ ル ギ ー勾 配 な ど,様 々 な プ ロ セ ス にお け るエ ネル ギ ー勾 配 が 対 応 して くる.そ れ ゆ え,原 子,電
子,転 位,粒 界
な どの 移 動 物 質 に対 して それ ぞれ の移 動 度 を適 用 す る こ とが 可 能 とな る. 移 動 度 と拡 散 係 数 の 関係 を得 る に は,ま ず フ ラ ッ ク ス を よ り普 遍 的 な形 で あ る
濃 度 と速 度 の 積 と し て 表 し,こ
れ に 式(4.47)を
適 用 す る と次 式 が 得 ら れ る.
Ji=ciυi=ciMiFi さ ら に,Fiに
対 し て 式(4.46)を
(4.48)
代 入 す る と,
(4.49) が 得 ら れ る.こ
こ で,理
想 系 に 対 す る 化 学 ポ テ ン シ ャ ル は,活
の で,μi=μi°+RTlnciと
表 記 さ れ,化
量 係 数 は1で
あ る
学 ポ テ ン シ ャル の 変 化 は
(4.50) で 与 え ら れ る.し
た が っ て,化
学 ポ テ ン シ ャ ル の勾 配 は
(4.51) で あ る.す れ,結
な わ ち,化
学 ポ テ ン シ ャ ル の勾 配 は 実 質 的 に 濃 度 勾 配 と関 係 づ け ら
果 と し て フ ィ ッ ク の 第 一 法 則 と結 び つ く こ と を 意 味 す る.得
を 式(4.49)に
ら れ たdμi/dx
代入 す る と
(4.52) が 得 ら れ る.こ と,ボ
こ で,式(4.52)を
フ ィ ッ ク の 第 一 法 則 で あ る 式(4.39)と
ル ツ マ ン 定 数kはk=R/NAと
関 係 づ け ら れ る の で,
Di=kTMi と な り,拡 4.4.3
比較 す る
[m2s−1]
(4.53)
散 係 数 は 原 子 の 移 動 度 に 直 接 比 例 す る こ と が わ か る. 拡 散 の原 子 論 的 な 取 扱 い
ラ ン ダ ム ウ ォ ー ク 理 論 に よ る と,拡 2乗 変 位x2で
表 さ れ,こ
散 粒 子 が 時 間tの
れ は 拡 散 係 数Dと
間 に 動 い た 距 離 は,平
次 式 の よ う に 関 係 づ け ら れ る.
x2∝Dt 一方
,い
ま あ る 粒 子 がn回
2乗 変 位x2を
用 い て,次
均
(4.54)
の ラ ン ダ ム ジ ャ ン プ に よ り 到 達 す る 距 離xは,平
均
式 で 表 す こ とが で き る.
(4.55) こ こ で,λ
は ジ ャ ン プ 距 離 で あ る.し
た が っ て,式(4.54),
(4.55)か
ら,
D∝nλ2/t の 関 係 が 得 ら れ る.こ
こ で,毎
比 例 定 数 を α と す る と,
秒 当 た り の ジ ャ ン プ 頻 度(Γ)を
Γ=n/tと
し,
D=α
が 得 られ る.こ
(4.56)
λ2Γ
こ で,α は結 晶 構 造 に 依 存 す る比 例 定 数 で あ る.例
中 を あ る原 子 が ジ ャ ン プ す る と き,隣 接 す る サ イ ト数,す ら ば,あ
る 方 向 へ の 拡 散 は1/Nと
位 数 が6の
な り,α=1/Nで
え ば立 方格 子
な わ ち配 位 数 がNな
与 え られ る.そ れ ゆ え,配
と き,
(4.57)
D=(1/6)λ2Γ と な る.ま
た,ジ
ャ ン プ 距 離 λ は 拡 散 す る 原 子(イ
オ ン)の
結 晶 サ イ ト間 の 距
離 と考 え て よ い. こ こ ま で は,隣
接 す る す べ て の サ イ トに 拡 散 す る こ と が 可 能 で あ る と仮 定 し た
た め,欠
陥 濃 度 の 影 響 は 考 慮 し な か っ た こ と に 注 意 し な け れ ば な ら な い.実
は,Dは
欠 陥 の 濃 度 に 比 例 し,欠
知 ら れ て い る.し
陥 濃 度 は また 温 度 に 依 存 して 変 化 す る こ とが
た が っ て,式(4.40)で
の エ ン タ ル ピ ー ΔHmに
加 え て,欠
際 に
示 し た 実 験 式 中 のQに
は,移
動 のた め
陥 生 成 エ ネル ギ ー や 会 合 エ ネ ル ギ ー の よ う な
他 の エ ネ ル ギ ー が 加 わ る こ と が あ る. 4.4.4
拡 散 機 構
原 子 や イ オ ン の 拡 散 に は,主 4.54).第
と し て3つ
一 の も の は 空 孔 機 構(vacancy
の メ カ ニ ズ ム が 知 ら れ て い る(図
mechanism)で,原
子 や イオ ンが 正 規
の 格 子 位 置 か ら 隣 の 空 孔 位 置 ヘ ジ ャ ン プ す る メ カ ニ ズ ム で あ る(図4 第 二 の 機 構 は 格 子 間 機 構(interstitial る 原 子 や イ オ ン が,別
mechanism)と
子 間位 置 にあ
の 格 子 間 位 置 に 移 動 す る メ カ ニ ズ ム で あ る(同
第 三 の メ カ ニ ズ ム は 準 格 子 間 機 構(interstitialcy る 原 子 が,正
呼 ば れ,格
.54(a)).
mechanism)で,格
図(b)). 子 間 にあ
規 の 格 子 位 置 の 原 子 を 格 子 間 位 置 に 押 し 出 す メ カ ニ ズ ム で あ る(同
図(c)).
(a) 空 孔 機 構
(b) 格 子 間 機 構 図4.54
種 々 の拡 散 機 構
(c) 準 格 子 間機 構
原 子 が 化 学 的 ポ テ ン シ ャル 勾 配(Δ μ)の 存 在 下 で,あ
る格 子 位 置 か ら別 の 格
子 位 置 に移 る と き,も との 位 置 で の 結 合 を切 り,隣 接 した 原 子 の 間 をか い くぐ ら な けれ ば な ら な い.す
な わ ち この プ ロ セ ス は,エ
な け れ ば な ら な い こ と を 意 味 す る.こ ΔGmよ
ネ ル ギ ー 障壁 ΔGmを 乗 り越 え
の様 子 を 図4.55に
示 す.あ
る 温 度 で,
り高 い エ ネ ル ギ ー を有 す る 原 子 の 割 合 は どの く らい な の か を考 え る.い
ま原 子 の振 動 数 が νの と き,そ の う ち実 際 に ΔGmを 越 え て ジ ャ ンプ す る頻 度 Γ は,ボ ル ツマ ン分 布 則(Boltzmann
distribution law)を
用 い て 次 式 の よ う に与
え られ る.
(4.58) こ こ で,ΔGmは
ΔHm−TΔSmで
あ り,ΔHmは
移 動 の エ ン タ ル ピ ー 変 化,ΔSm
は 移 動 プ ロ セ ス に 伴 う エ ン トロ ピ ー 変 化 で あ る.し
た が っ て,式(4.56)の
拡散係
数 は
(4.59)
(a)
図4.55
(b)
(c)
ポ テ ン シ ャル エ ネ ル ギ ー を越 えて 拡 散 す る原 子
とな る.ま た式(4.40)と の比 較 に よ り,Q=ΔHmと
仮 定 す る と,
D。=α λ2νexp(ΔSm/k) と関 係 づ け ら れ る.こ ΔSm/kが
こで,近
(4.60)
似 的 に α=0.1,λ=0.2nm,ν=1013s−1と
し,
ご く小 さ い値 で あ る と仮 定 す る と,D。 は10−7か ら10−3m2s−1の 範 囲
とな る. 4.4.5 拡 散 係 数 の 種 類 異 な っ た 拡 散 種,ま た め,こ
た は異 な っ た 実 験 手 法 で 求 め られ る拡 散 係 数 を明 確 に す る
こで い くつ か の 用 語 を 明確 に し て お く必 要 が あ る.
拡 散 現 象 に関 わ る もの と し て, ・格 子 欠 陥 の 種 類 …格 子 空 孔,格
子間原子 な ど
・拡 散 種 … 格 子 イ オ ン,不 純 物 イ オ ン ・拡 散 経 路 … 格 子 拡 散,表
面 拡 散,粒
・拡 散 プ ロ セ ス … 自己 拡 散,化
界拡散
学 拡 散,相 互 拡 散
な どが あ げ られ る. 例 え ば,イ
ンキ が 水 溶 液 内 を広 が る よ う に,濃 度 勾 配 に よ っ て拡 散 す る現 象 を
相 互 拡 散(inter
diffusion),あ
る い は 化 学 拡 散(chemical
diffusion)と
い い,
結 晶 中 の イ オ ンな どが 格 子 欠 陥 を介 して,熱 エ ネ ル ギ ー,電 場 勾 配 や 表 面 エ ネ ル ギ ー に よ っ て成 分 元 素 自体 が 拡 散 す る現 象 を 自己 拡 散(self
diffusion)と
呼 んで
い る.本 項 で は この 自己 拡 散 を中 心 に議 論 す る. 格 子 欠 陥 の拡 散 は特 定 の点 欠 陥,例
え ば 空 孔 また は格 子 間 原 子,不 純 物-空 孔
ペ ア な どの 拡 散 に対 応 して い る.欠 陥 ど う しが 相 互 作 用 しな い よ う な低 欠 陥 濃 度 領 域 で は,欠 陥 の拡 散 は一 般 に欠 陥濃 度 に依 存 し な い.欠 陥 の 拡 散 が 濃 度 に依 存 し な い の は,空 孔 の移 動 は原 子 との 交 換 で あ っ て,空 孔 との 交換 で は な い か ら で あ る.空 孔 と原 子 の交 換 に よ っ て,原 子 が 移 動 す る方 向 は空 孔 の 移 動 す る 方 向 と は 逆 向 きに な る.空 孔 の濃 度 が 薄 い と き,隣 の格 子 位 置 は常 に 原 子 に よ っ て 占 め られ て い る の で,隣
の原 子 と交 換 で き る確 率 は1に 近 い.結 果 と して,各
々の空
孔 は 他 の空 孔 と相 互 作 用 な し に移 動 で き る. 逆 に格 子 イ オ ンの 拡 散(ホ
ス トイ オ ン,不 純 物,放
射 性 同 位 元 素,安
定 同位 元
素 を含 む)は,欠
陥 の 濃 度 に強 く依 存 す る.自 己 拡 散 係 数(self-diffusion
efficient)は,ホ
ス ト格 子 イ オ ンの 移 動 で あ り,例 え ばMgO中
はOの
のMg,あ
co るい
拡 散 係 数 を意 味 す る.こ の 自 己 拡 散 係 数 は,焼 結 や 拡 散 ク リー プ を含 む
プ ロ セ ス で 重 要 な 役 割 を果 た して い る.あ 配 は,陽
る方 向 に お け る陽 イ オ ン空 孔 の濃 度 勾
イ オ ンの 濃 度 勾 配 と逆 に な る.す な わ ち,濃 度 勾 配 が低 下 す る方 向へ 流
れ る 空 孔 の 移 動 量(フ
ラ ッ クス)は,逆
方 向 へ 移 動 す る陽 イ オ ンの フ ラ ック ス と
同 じで あ る.こ の 陽 イ オ ン の フ ラ ッ ク ス は,自 れ る.も (Dv)と
己 拡 散 係 数(Ds)で
特徴 づ け ら
し この 拡 散 が空 孔 機 構 で 起 こ るな ら ば,自 己 拡 散 係 数 は空 孔 の拡 散 係 数 空 孔 濃 度[V]の
積 で 与 え られ る. Ds=[V]Dv
こ こで,濃 度[V]項
(4.61)
は,隣 の サ イ トに空 孔 が存 在 す る こ と に よ っ て,イ オ ンの
交 換 が 可 能 に な る確 率 を示 す と考 え て よい. また,イ
オ ンの 格 子 間 拡 散(interstitial
数 は格 子 間 拡 散 係 数(Di)と
diffusion)が
速 い と き,自 己 拡 散 係
格 子 間 イ オ ン濃 度[Mi]の
積 で与 え られ る.
Ds=[Mi]Di
(4.62)
自 己 拡 散 係 数 は そ れ ゆ え,格 子 の欠 陥構 造,雰 囲 気,温
度 に 強 く依 存 す る こ とに
な る. また 自己 拡 散 係 数 を直 接 測 定 す る こ と は難 し く,通 常 ホ ス トの 化 学 的 性 質 が ほ ぼ 同 じで,し
か も容 易 に分 析 が 可 能 で あ る放 射 性 同位 元 素 や 安 定 同 位 元 素 を トレ
ー サ ー と して使 用 す る場 合 が 多 い.こ の 実 験 手 法 で 求 め られ た 拡 散 係 数 は トレー サ ー 拡 散 係 数(tracer
diffusion coefficient) Dtr.と 呼 ば れ,自 己 拡 散 係 数 に近
い値 で あ る が,厳 密 に 同 じで は な い.こ の 理 由 は,空 孔 メ カ ニ ズ ム で 自己拡 散 す る 陽 イ オ ン の場 合,拡
散 す る イ オ ン は区 別 で きな いが,ト
レー サ ー は た と え同位
体 で あ っ て も,異 種 イ オ ン と判 定 され るか らで あ る.例 え ば,あ イ オ ンが 置 換 す る と き,ホ ス トイ オ ンだ け の場 合 は,周 も区 別 で き な い が(そ 個 存 在 し て,そ
の た め確 率 は高 い が),ホ
りの どの イ オ ンが 入 って
ス トイ オ ン 中 に トレ ー サ ー が1
の トレー サ ーが 欠 陥 サ イ トと置 換 す る確 率 は,ホ ス トイ オ ンだ け
の場 合 と比 較 し て 当 然 低 くな る.こ の た め,ト 関係 数fで
る欠 陥 サ イ トに
レー サ ー 拡 散 係 数Dtr.はDsと
相
次 式 の よ う に関 係 づ け られ る. Dtr.=f・Ds
(4.63)
相 関 係 数 は,空 孔 が格 子 イ オ ンお よび トレ ー サ ー と交 換 す る頻 度 と結 晶 の 立 体 配 置 や 原 子 配 位 に依 存 して い る.同 位 体 元 素 を用 い た と きの よ うに ジ ャ ン プ頻 度 が 同 じ場 合,相
関 係 数 は原 子 の立 体 配 位 に の み依 存 す る こ と に な る.空 孔 メ カニ ズ
ム に お い て,fは
面 心 立 方 格 子(FCC),六
方 格 子(HCP),体
心立 方格 子
(BCC)お
よ び 単 純 格 子 に対 し て,そ れ ぞ れ0.781,
0.781,
0.721お
よ び0.655
と求 め られ て い る.一 方,格 子 間 メ カ ニ ズ ム に よ る拡 散 の場 合 に は,格 子 間 イ オ ンが 隣 の位 置 に移 動 す る確 率 に差 は な い の で,相 この ほか,自
関 係 数 は1に
な る.
己 拡 散 係 数 の 測 定 に は,電 場 勾 配 や 表 面 エ ネ ル ギ ー に起 因 す る格
子 欠 陥 の濃 度 勾 配 の 存 在 に よ り,イ オ ンの 拡 散 が 生 じ る が,こ れ を 自己 拡 散 と認 識 し,自 己 拡 散 係 数 を求 め る手 法 が あ る.具 体 的 な 取 扱 い に つ い て は,4.4.8項 で 触 れ る. 不 純 物 拡 散 は,不 純 物 の イオ ン サ イ ズ や 原 子 価 が ホ ス トイ オ ン の それ と異 な る た め,拡 散 の 活 性 化 エ ネ ル ギ ーが 異 な る こ とか ら,自 己 拡 散 や トレ ーサ ー拡 散 と は異 な っ て い る.ま た,不 純 物 と格 子 空 孔 の会 合 が 生 じた場 合 も,著 し く拡 散 現 象 は 変 化 す る はず で あ る. 4.4.6 拡 散 現 象 の 具 体 例 い まNaClに
つ い て,Na+の
自己 拡 散 を検 討 す る.純 粋 なNaClの
場 合,Na+
が 空 孔 メ カ ニ ズ ム で拡 散 す る と仮 定 して,具 体 的 に拡 散 係 数 を求 め て み よ う.式 (4.61)か ら DNa=[VNa]Dv で あ る か ら,ま ず,Dvか
ら考 え る.空 孔 の濃 度 が 低 い とき,空 孔 が ジ ャ ン プ で
き る す べ て の サ イ トは常 に原 子 に よっ て 占 め られ て い る の で,空 孔 の周 りの 配 位 数Nが
大 きい ほ ど,ジ ャ ン プ す る確 率 が 高 くな る.そ れ ゆ え,式(4.59)のDと
はDv=NDの
関 係 が 成 り立 つ.さ
ら に,式(4.59)の
ΔSmは 無 視 で き る ほ ど小 さ い と仮 定 して,1mol当
移 動 の エ ン トロ ピー 変 化 た りで考 え る と,
(4.64) が 得 ら れ る.こ 陥 が 生 じ,そ
こ で,不
純 物 が な い と き で も,熱
的 に 生 じ た シ ョ ッ トキ ー 型 の 欠
の 欠 陥 濃 度[VNa]は
(4.65) で 与 え られ る.こ
こ で,ΔHsお
よ び ΔSsは
そ れ ぞ れ シ ョ ッ トキー 欠 陥 の生 成 エ ン
タ ル ピ ー 変 化 お よ び エ ン ト ロ ピ ー 変 化 で あ る.式(4.65)を
式(4.64)に
代入 す る と
(4.66)
と な る.こ
こ で,
αN=1
λ(ジ ャ ン プ距 離) ν(格 子 振 動 数)=1013s−1 ΔHm(移
動 の エ ン タ ル ピ ー 変 化)=77kJmol−1
ΔHs(シ
ョ ッ トキ ー 欠 陥 生 成 エ ン タ ル ピ ー 変 化)=240kJmol−1
ΔSs(シ
ョ ッ トキ ー 欠 陥 生 成 エ ン ト ロ ピ ー 変 化)=14RJK−1mol−1
と す る と, DNa=1.75×10−3exp(−197kJ/RT)m2s−1 と計 算 さ れ る.こ
れ は,熱
数 で あ る.図4.56中 一 方,NaClに Kroger-Vinkの
的 に 生 じ た 欠 陥 を 介 し て 拡 散 す るNaイ
のAは,こ
のDNaを
例 え ば0.01mol%のCaCl2を 表 記 法 に 従 う と,以
オ ン の拡 散 係
ア レ ニ ウ ス プ ロ ッ ト し た も の で あ る. 添 加 した と きの欠 陥 平衡 式 を
下 の よ う に 示 さ れ る.
CaCl2=CaNa・+VNa′+2ClCl× Naの
(4.67)
欠 陥 濃 度 は 次 式 に 示 す よ う に,不
純 物 のCaの
(4.68)
濃 度 で 決 ま り,温
度 には無
関 係 で あ る. [V]=[VNa′]=0.0001 こ の 濃 度 を 式(4.64)に mol%のCaCl2を
代 入 し,他
の 項 の 数 字 は 変 化 し な い と仮 定 す る と,0.01
添 加 し た と き,Naイ
オ ンの 拡 散 係 数 は
DNa=1.6×10−10exp(−77kJ/RT)m2s−1 と な る.こ
の 拡 散 係 数 は 図4.56中
のBで
示 し て あ る.ま
図4.56 A:純
た,図
中 のA+Bは2
拡 散 係 数 の ア レニ ウ ス プ ロ ッ ト
粋 なNaCl中
mol%のCaCl2を の拡 散.
(4.69)
のNa+の
拡 散,B:0.01
添 加 したNaCl中
のNa+
種 類 の 拡 散 係 数 を 合 計 し た も の で あ る.こ 不 純 物 に よ る 拡 散 係 数 が 高 い が,高 数 の 方 が 高 く な る.こ ネ ル ギ ー は ΔHの
の 図 か ら も わ か る よ う に,低
温 側 で は 純 粋 なNaClに
の 低 温 領 域 を 不 純 物(extrinsic)領
み を 含 む が,固
お け るNaの
拡散 係
域 と い い,活
性 化 エ
有 ま た は 真 性(intrinsic)領
領 域 の 活 性 化 エ ネ ル ギ ー は,ΔHm+ΔHs/2を
含 む.し
温側 で は
域 と呼 ば れ る 高 温
た が っ て,こ
の 差 か ら欠
陥 生 成 エ ネ ル ギ ー が 求 め ら れ る. 4.4.7
粒 界 拡 散
結 晶 格 子 内 の 拡 散 現 象 に,点 て き た が,実
欠 陥 が 重 要 な役 割 を演 じて い る こ とは す で に 述 べ
際 の 結 晶 に は 点 欠 陥 以 外 に 転 位 や 積 層 欠 陥 な ど が 存 在 し,さ
結 体 の よ う な 多 結 晶 で は 粒 界 が 存 在 す る た め,こ は 容 易 に 予 想 さ れ る.特 陥 が 多 数 存 在 す る.そ (lattice
diffusion),結
,格
れ ゆ え,た
界 拡 散<表
diffusion)と
呼 ば れ,そ
面 拡 散 の 関 係 が あ る.例
面 拡 散 係 数 は 約10−9m2s−1(500∼650K),粒
10−12m2s−1(700∼900K),格
子欠
と え 自 己 拡 散 係 数 で も格 子 内 の 拡 散 は 格 子 拡 散
晶 粒 界 の 場 合 は 粒 界 拡 散(grain-boundary
子 拡 散<粒
に お い て,表
れ らが 拡 散 に影 響 を及 ぼ す こ と
に 粒 界 は 粒 内 に 比 べ て 原 子 の 配 列 は 乱 れ て お り,格
粒 子 表 面 の 場 合 は 表 面 拡 散(surface 一般 的に
ら に焼
diffusion), れ ら の 大 き さ は, え ば,銀
の 自己 拡 散
界 拡 散 係 数 は約
子 拡 散 係 数 は 約10−15∼10−13m2s−1(1000∼1200K)
で あ る. い ま,格 る.す
子 拡 散 をDlと
し,拡
散 距 離 が 粒 径dよ
り非 常 に 大 き い 場 合 を考 え
なわち
の と き,実 験 か ら得 ら れ る 見 か け の 拡 散 係 数Dapは,Dgbを
粒 界 拡 散 係 数 とす る と
Dap=(1−f)Dl+fDgb と 関 係 づ け ら れ る.fは
(4.70)
全 体 の 体 積 に 対 す る 粒 界 の 体 積 率 で あ り,近
似 的 に次 式
で 与 え ら れ る.
(4.71) こ こで,δ は粒 界 の 厚 さ で,約1nm程 依 存 す るが,粒 径 の 大 き さが1μm以
度 で あ る.そ れ ゆ え,Dgbの 下 に な る と,Dgbの
大 きさ に も
影 響 が 現 れ る.
4.4.8 拡 散 に関 わ る現 象 拡 散 現 象 は直 接 測 定 さ れ る場 合 もあ る が,種 々 の反 応 や物 性 測 定 の 中 で イ オ ン
の 拡 散 が 影 響 を 及 ぼ す 場 合 の 方 が 多 く知 られ て い る.以 下 に,種 々 の現 象 が 拡 散 との 関係 で メ カ ニ ズ ム が 説 明 で き る例 を取 り上 げ る. a. 金 属 の 酸 化 反 応
固 相 反 応 の う ち で も最 も よ く研 究 され て い る金 属 の
酸 化 反 応 は,金 属 原 子 が 界 面 で イ オ ン化 す るプ ロ セ ス と,そ の イオ ンが 酸 化 被 膜 内 を拡 散 す る2つ の プ ロセ ス か らな る.反 応 の 律 速 段 階 は酸 化 被 膜 内 の拡 散 で あ り,被 膜 の厚 さ をX,時
間 をtと す る と,被 膜 の 成 長 速 度 は フ ィ ッ ク の 第 一 法
則か ら
(4.72) とな る.こ
こで,ΔCは
この 式 を積 分 し,t=0の
両 界 面 間 で の濃 度 差,Dは とき,X=0と
拡 散 係 数,Aは
定 数 で あ る.
すると
X2=2ADΔCt
(4.73)
とな る. しか し,実 際 の反 応 で はXを
直 接 測 定 す る こ とが難 しい の で,反 応 率 αか ら
速 度 式 を求 め る 手 法 が利 用 さ れ る.例
え ば,過 剰 な拡 散 成 分AがB粒
に あ り,両 者 の 接 触 は完 全 で 反 応 は表 面 よ り進 行 す る.ま
た,B粒
子 の周囲 子 の 粒 径rB
は す べ て 等 しい とし,生 成 物 層 の 濃 度 勾 配 は直 線 的 で あ る と仮 定 す る.反 応 率 α は過 小 成 分Bを
基 準 と す れ ば,式(4.74)に
な り,こ れ を変 形 す れ ば 式(4.75)が
得 られ る.
(4.74) X=rB{1−(1−
こ の 式(4.75)を
式(4.74)に
(4.75)
α)1/3}
代 入 す る と,式(4.76)が
得 られ る.
(4.76) これ が い わ ゆ る ヤ ンダ ー(Jander)の b. ク リー プ現 象 と拡 散
式 と して 知 ら れ て い る(3 .1.3項 を参 照).
ク リー プ は あ る応 力(σ)下
で 時 間 の経 過 に応 じ
て変 形 す る 現 象 で あ り,歪 み速 度 が 時 間 に関 して 一 定 で あ る領 域 を定 常 ク リー プ とい う.こ の 領 域 で の変 形 速 度dε/dtは
(4.77) と書 か れ る.た
だ し,D*=Dl+(π/d)δDgbで
あ る.こ
こ で,Ω
は 原 子 の 体 積,
D1は 格 子 拡 散 係 数,Dgbは
粒 界 拡 散 係 数,δ
は粒 界 有 効 幅,D*は
見か けの拡散
係 数 で あ る. D1≫(π/d)δDgbの
とき,格 子 拡 散 が 支 配 的 に な り,
(4.78) と な り,こ
れ は ナ バ ロ-ハ ー リ ン グ(Nabarro-Herring)の
て 知 ら れ て い る.式(4.78)か 径 の 自 乗 に 反 比 例 す る.ま
ら わ か る よ う に,ク た,1/Tに
ク リー プ 速 度 式 と し
リ ー プ 速 度 は 応 力 に 比 例 し,粒
対 し てln(Tdε/dt)を
プ ロ ッ ト す る と,
そ の 勾 配 は ク リ ー プ の た め の 活 性 化 エ ネ ル ギ ー が 求 ま る. 一 方,粒
界 拡 散 が 優 勢 な 場 合,D*=(π/d)δDgbと
な るの で
(4.79) が 得 ら れ,こ
れ は コ ー ブ ル(Coble)の
ク リ ー プ 速 度 式 と呼 ば れ て い る.ナ
ハ ー リ ン グ の ク リ ー プ 速 度 式 と 異 な り,ク
リ ー プ 速 度 は 粒 径 の3乗
バ ロ-
に反 比 例 す
る. c. イ オ ン 伝 導 と 拡 散 性 で あ る.拡
イ オ ン伝 導 は,拡
散 現 象 と最 も 直 接 的 に 関 係 す る 特
散 係 数 と イ オ ン 伝 導 度 を 関 係 づ け る 理 論 と し て,ネ
ン シ ュ タ イ ン(Nernst-Einstein)の
式 が 知 ら れ て い る .以
ル ン ス ト-ア イ
下 これ に つ い て 説 明
す る. 電 気 的 な 力 に よ る移 動 を 議 論 す る と き は,移 配 で は な く,電 て,駆
動 の 駆 動 力 は化 学 ポ テ ン シ ャ ル勾
気 的 ポ テ ン シ ャ ル φ の 勾 配 で 考 え な け れ ば な ら な い.し
たが っ
動 力Fiは
(4.80) と表 さ れ る.こ 動 度Miに
こ で,qiは
対 し て,式(4.53)を
粒 子 の 電 荷(C
particle−1)で
あ る.フ
変 形 し たMi=Di/kTと,式(4.48)か
ラ ッ ク ス は移 ら,次
式 が
得 ら れ る.
(4.81) ま た,Ji=ciυiか
ら
(4.82)
の 関 係 が 得 ら れ る.通 常,化 学 ポ テ ン シ ャル が μ で 表 され るた め,こ 動 度 にMを
れ まで移
用 い て き た が,電 気 伝 導 に 関 す る議 論 に お い て は,移 動 度 の記 号 に
μ が 用 い られ て い る.そ
こで,改
め て移 動 度 の 記 号 を μ とす る と,μi=υi/Eの
関係 が 知 られ て い る.す な わ ち,qiの
電 荷 を もつ 粒 子iが 電 界 の た め に力 を受
け る と,そ の 方 向 に移 動 し電 流 とな る.こ の と きの 粒 子 の 平 均 移 動 速 度 υiは, 電 界 の 強 さEに
比 例 す る.こ の比 例 定 数 が 移 動 度 μiであ る.そ れ ゆ え,
(4.83) が 得 られ る.こ
れ が,ネ
ル ン ス ト-ア イ ン シ ュ タ イ ン の 式 と し て 知 られ て い る
(イオ ン伝 導 につ い て は5.2節
を参 照).
4.5 焼 結 の メ カ ニ ズ ム セ ラ ミッ ク ス は一 般 に 高 融 点 で あ る.そ れ を溶 融 して所 望 の形 に す るの は,技 術 的 に も問 題 が あ り,経 済 的 に もた いへ ん不 利 な 方 法 で あ る.そ の物 質 の 融 点 以 下 の 温 度 で 成 形 体 を焼 き固 め る こ と(焼 結)で
も,十 分 に高 い強 度 と優 れ た 性 質
を有 す る焼 結 体 を得 る こ とが で き る.し か も,溶 融 して つ くる よ りも は るか に簡 便 で あ る. 難 焼 結 性 の物 質 で は,加 圧 下 や 液 相 存 在 下 で 緻 密 な焼 結 体 を製 造 す る方 法 が 採 用 され る.加 圧 焼 結 や 液 相 焼 結 とい わ れ る方 法 が これ で,高 融 点 で 難 焼 結 性 の, 例 え ば,炭 化 物 や ホ ウ化 物 の 焼 結 な どに 利 用 され る.特 に,実 際 に多 用 され る ケ ー ス で は,低 純 度 や 多 成 分 の 物 質 が使 用 され る こ とが 多 い の で,部 分 的 に液 相 が 生 成 し液 相 焼 結 に な る場 合 が 多 い. 常 圧 に お け る固 相 焼 結 に比 べ,加 圧 焼 結 や 液 相 焼 結 は緻 密 化 が はや く理 論 的 な 取 扱 い が 難 しい.そ
の た め,理 論 よ りもむ し ろ経 験 的 に理 解 さ れ て い る部 分 が多
い.し か しな が ら,い か な る焼 結 プ ロセ ス で も,そ の基 本 に な る因 子 は ほ ぼ 同一 と考 えて よ い.し た が って,焼 結 プ ロ セ ス の う ち の1つ
を理 解 す れ ば,焼 結 全 体
の キ ー ポ イ ン トを大 雑 把 に把 握 す る こ とが で き る. この よ う な こ とか ら,本 節 で は,最
も よ く研 究 さ れ て い る固 相 焼 結 を 取 り上
げ,焼 結 を支 配 す る基 本 的 諸 因 子 に つ い て まず 述 べ る.次 い で,工 業 的 に 多 用 さ れ る液 相 焼 結 につ い て その ポ イ ン トを述 べ る.
4.5.1 焼 結 の 駆 動 力 焼 結 の駆 動 力 は,表 面 張 力(表 で 述 べ た)で
面 エ ネ ル ギ ー とほ ぼ 等 価 で あ る こ とは4.2.1項
あ る.粒 子 の表 面 が 凸 面 の とき に圧 縮 応 力 で,逆
張 応 力 と な る.図4.57の
に凹 面 の時 に は 引
よ う に亜 鈴 形 の ネ ッ ク部 分 で は,凹 面 と凸 面 の 曲 率 が
あ る.凹 面 の 曲 率 が 負,凸 面 の 曲率 が 正 で あ るか ら,凹 面 に は 引 張 応 力,凸 面 に は圧 縮 応 力 が それ ぞ れ働 く.こ の場 合 の 表 面 応 力 は 次 式 の よ う にな る. (4.84) こ こで,ρ は ネ ッ ク部 分 の 凹 面 の 曲 率 で あ る.ネ 方 が は る か に小 さ い の で,相
ッ ク の 部 分 で はxよ
り も ρの
対 的 に ρに よ る 寄 与 が 大 き く な り,負 の 引 張 応 力
が ネ ッ ク で は優 位 とな る.こ の 応 力 は ρが 小 さ くな れ ば な る ほ ど大 き くな る. この応 力 に誘 起 され て,ネ
ッ ク直 下 に点 欠 陥 の 過 剰 濃 度 が 導 入 さ れ る.
ネ ック 部 分 の単 位 体 積 当 た りの 過 剰 の点 欠 陥 濃 度 Δnは,シ
ョ ッ トキ ー 欠 陥 を
仮 定 した場 合,簡 単 な計 算 か ら次 式 の よ うに な る.
(4.85) こ こで,Ω
は 原 子 の 体 積,kは
当 た りの 原 子 数 で あ る.n0は
ボ ル ツ マ ン定 数,Tは
絶 対 温 度,Nは
単 位体 積
平 面 下 の 単 位 体 積 当 た りの 平 衡 の 点 欠 陥 濃 度 で,
次 式 の よ う にな る.
(4.86) ε は1個
の 点 欠 陥 の 生 成 エ ネ ル ギ ー で あ る.式(4.85)か
図4.57
等 方体 を仮 定 した 等 大 球 の焼 結 モ デル
ネ ック 部 分 が 点 接 触 か ら面 接 触 へ 成 長 す る.ネ P=γ/x− x2/2aと
ら わ か る よ う に,ネ
ッ ク 部 分 で は応 力
γ/ρ≒ − γ/ρが 作 用 して お り,幾 何 学 的 近 似 か ら,ρ= して,ク
チ ンス キー は速 度 式 を導 出 し た.
ック
部 分 の 点 欠 陥濃 度 は,そ れ 以 外 の 部 分 と比 べ て 高 くな る.粒 子 が 小 さ けれ ば小 さ い ほ ど,ネ
ッ クの 半 径 も小 さ くな る の で,ネ
例 して 大 き くな る.そ の結 果,ネ
ッ ク部 分 の点 欠 陥 濃 度 もそ れ に反 比
ッ ク の点 欠 陥 濃 度 の高 い部 分 とそ うで な い 部 分
との 間 に点 欠 陥 の 濃 度 勾 配 が で き る.温 度 が 十 分 高 くな る と,点 欠 陥 は そ の 濃 度 勾 配 を低 減 す る方 向 に拡 散 す る.点 欠 陥 の拡 散 す る方 向 はイ オ ンの 拡 散 す る方 向 の逆 で あ る か ら,イ オ ン の拡 散 に よ っ て,ネ とに な る.す な わ ち,焼 結 が進 む.こ て,体 積 拡 散,粒
ッ ク部 は だ ん だ ん と成 長 して い く こ
の プ ロ セ ス は,イ オ ンの 拡 散 の経 路 に よ っ
界 拡 散,表 面 拡 散 に 区別 され る.
平 面 状 の物 質 の 蒸 気 圧 と,半 径aの ル ビ ンの 式(式(4.18)参
照)か
球 状 の 同 一 物 質 の蒸 気 圧 の差,ΔPは,ケ
ら次 の よ うに 近 似 され る. (4.87)
こ こ で,Mは (4.87)か
分 子 量,dは
密 度,Rは
気 体 定 数,Tは
絶 対 温 度 で あ る.式
らわ か る よ うに,蒸 気 圧 は 曲 率 に依 存 す る.こ の場 合,凸 面 で は平 ら
な 面 上 の蒸 気 圧 よ り ΔPだ くな る.そ の結 果,蒸
け蒸 気 圧 が 高 く,凹 面 で は逆 に ΔPだ け 蒸 気 圧 が 低
気 が 十 分 速 く起 こ る 高 温 にお い て は,蒸 発凝 縮 が進 み,物
質 移 動 が 進 む こ と に な る. 図4.57の
よ う な球 状 粒 子 の ネ ッ ク部 分 の蒸 気 圧 は,ネ
ッ ク以 外 の部 分 よ り も
小 さ い の で,蒸 気 圧 の 高 い と こ ろ か ら低 い と こ ろへ 蒸 発-凝 縮 に よ る物 質 移 動 が 進 み,ネ
ッ ク部 分 はだ ん だ ん に埋 め られ て い く.小 さ な粒 子 が た くさ ん接 触 し合
っ て い る成 形 体 の ネ ッ ク部 分 の 蒸 気 圧 は,他 の場 所 よ り小 さい の で,ネ を物 質 が 埋 め る よ う に物 質 移 動 プ ロセ スが 進 む.そ
の結 果,粒
ッ ク部 分
子の接合面 が増加
し,成 形 体 の強 度 は増 加 す る こ と にな る.こ の よ うな プ ロ セ ス に よ る焼 結 が,蒸 発-凝 縮 とい わ れ る.蒸 気 圧 の 高 い物 質,例
え ば,塩 化 ナ トリ ウ ム,酸 化 ル テ ニ
ウ ム な どで この よ うな 蒸 発-凝 縮 機 構 が知 られ て い る. 4.5.2 初 期 焼 結 焼 結 過 程 は 便 宜 上,初 期,中 子 が,図4.57に
期,終 期 焼 結 に 分 け て 考 え られ る.粒 径aの
示 す よ うな モ デ ル に お い て,ネ
る過 程 を初 期,接 触 面 の ネ ッ クが0.3aか 中 期,孤
ッ ク が0か
ら0.3aま
粒
で 成長 す
ら粒 子 間 に孤 立 気 孔 が 生 成 す る まで を
立 気 孔 が 消滅 し緻 密 な焼 結 体 が で き る まで を終 期 焼 結 とい う.い ず れ の
焼 結 過 程 も焼 結 に 関 わ る主 要 因 子 は同 一 で あ る の で,3つ
の過 程 の1つ だ け を理
解 して お け ば,焼 結 の 主 要 因 子 の 理 解 に は 十 分 で あ る.こ こで は,最 され て い る初 期 焼 結 の う ち ク チ ン ス キ ー(Kuczynski)の
もよ く研 究
式 を例 に,そ
の導出 と
主 要 因 子 につ い て考 え る.ク チ ン ス キ ー の 式 は等 大 球 の 間 の ネ ッ ク の成 長 を取 り 扱 っ た もの で,粗
い近 似 を用 い て い るが,焼
結 式 の導 出 と焼 結 の基 本 因 子 の理 解
に は た い へ ん便 利 で あ る. 等 大 球 の ネ ック 部 分 に働 く応 力 γ/ρに よ っ て ネ ッ ク面 直 下 に 点 欠 陥 の 濃 度 勾 配 Δn/ρ が存 在 す る と考 え る.点 欠 陥 の 拡 散 係 数 をDυ とお け ば,ネ 出 す る点 欠 陥 の体 積 の 時 間 変 化dV/dtは
ッ ク か ら流
フ ィ ックの第 一 法 則 か ら次 式 の よ う にな
る.
(4.88) こ こ で,A′
は ネ ッ ク の 面 積,Ω
拡 散 す る 原 子 の 数(流 V=πx2ρ
束)で
は 原 子 の 体 積,Jは あ る.式(4.88)に
を 近 似 し て,式(4.88)に
積 拡 散 係 数)と
Ω=1/Nを
単 位 時 間 単 位 面 積 当 た りを
お い て,ρ=x2/2a,A=2πxρ,
代 入 し て 積 分 し,nDυ=ND(Dは
原 子 の体
考 慮 す る と次 式 が 得 ら れ る.
(4.89) 収 縮 率 ΔL/L。
は 近 似 的 に ρ/a=x2/2a2と
お け る の で,式(4.89)は
次 式 の ように
な る.
(4.90) 一 般 的 に は 次 式 の よ うに な る
.
(4.91) こ こ で,Hは 0.3∼0.5で
定 数,lとmは
焼 結 機 構 に よ り 決 ま る 定 数 で,l=3∼4,m=
あ る.
式(4.91)か らわ か る よ う に,焼 結 の 収 縮 率(緻 間 で,粒 径aと
拡 散 係 数Dに
依 存 す る こ とに な る.そ
い ほ ど緻 密 化 が 進 む こ とが わ か る.セ 1つ は,こ
密 化)は,一
定 温度一定焼 結時
して,前 者 の 粒 径 が 小 さ
ラ ミ ック ス の超 微 粒 子 が 注 目 され る理 由 の
の緻 密 化 しや す い こ とに あ る.岩 石 や 鉱 物 の粉 砕 で 得 られ る試 料 の 粒
径 は0.5μm程 もの は0.1μm程
度 まで で あ るが,金
属 塩 の熱 分 解 反 応 や そ の 他 の 方 法 で 得 られ る
度 で あ る.粒 子 が 小 さ い ほ ど緻 密 化 に は好 ま し い.
し か し,0.1μm前
後 の微 粒 子 は,そ れ が 単 独 の 一 次 粒 子 と して 存 在 す る こ と
は まず な く,凝 集 し て二 次 粒 子 を形 成 し て い る.微 細 に な れ ば な る ほ ど,粒 子 間 の 付 着 力 が 相 対 的 に大 き くな り,二 次 粒 子 を形 成 しや す くな る.二 次 粒 子 そ れ 自 身 は非 常 に よ く焼 結 し て,短 時 間 の う ち に1つ の 大 き な粒 子 に な っ て し ま う.二 次 粒 子 は大 き な粒 子 と同 じよ うに挙 動 す る.一 次粒 子 が どん な に小 さ くと も,二 次 粒 子 を形 成 して い る粒 子 は,結 果 的 に大 き な粒 子 と同 じ こ とに な り,高 密 度 の 焼 結 体 の 製 造 に は不 向 きで あ る. 例 え ば,図4.58に
示 す よ う に,イ
ッ トリ ウ ム安 定 化 ジル コ ニ ア の緻 密 化 と二
次 粒 子 の 関 係 で は,一 次 粒 子 の み か らな る成 形 体 は1100℃,1時 99.5%ま
間 で理 論 密度 の
で 緻 密 化 す る.そ れ に対 して 二 次 粒 子 か ら な る成 形 体 は,同 一 温 度 で
は理 論 密 度 の 約70%,1500℃ る成 形 体 の1100℃,1時
で も95%ま
で しか緻 密 化 しな い.一 次 粒 子 か らな
間 の焼 結 に は と う て い及 ば な い.し た が っ て,緻 密化 す
る に は,一 次 粒 子 か ら な る試 料,な
い し は二 次 粒 子 が 成 形 プ ロ セ ス で容 易 に壊 れ
て一 次 粒 子 に な る試 料 を用 い る こ とが ポ イ ン トに な る.易 焼 結 性 の粉 末 は,こ の よ う な二 次粒 子 が 壊 れ や す い性 質 を も って い る. 拡 散 係 数 の 頻 度 因 子 は,次 式 の よ うに 点 欠 陥 の濃 度 項nを
含 ん で い る.
(4.92) こ こ で,D0は
頻 度 因 子,Eは
拡 散 の活 性 化 エ ネ ル ギ ー で あ る.頻 度 因 子D0は
図4.58
イ ッ ト リウ ム安 定 化 ジ ル コニ ア の 焼 結 に お け る 二 次粒 子 の 影響
Anνl2で あ る.ま た,Aは
定 数,nは
点 欠 陥濃 度,ν は 格 子 の振 動 数,lは
接 の格 子 間 距 離 で あ る.こ の よ う に,Dの
頻 度 因 子D0に
て い る の で,不 純 物 の添 加 や焼 結 の 雰 囲 気,例 っ て点 欠 陥 濃 度 を増 や せ ば,拡 散係 数Dが 図4.59に
は,セ
最近
は 点 欠 陥 濃 度 が 含 まれ
え ば酸 素 分 圧 を調 整 す る こ と に よ
大 き くな り緻 密 化 が進 む こ と に な る.
ラ ミ ック ス の 主 な拡 散 係 数 の値 を示 した.拡
散係 数の小 さなセ
ラ ミ ック ス の 焼 結 に は,高 温 が 必 要 な こ とが わ か る. 4.5.3 高密 度 焼 結 体 の 製 造 前 項 で,焼 結 に お け る粒 径 と拡 散 係 数 の 重 要 性 に つ い て述 べ た が,理 論 密 度 に まで 緻 密 化 させ る に は,粒 成 長 の制 御 も大 切 で あ る.
図4.59
種 々 の セ ラ ミ ック ス の 拡 散 係 数
セ ラ ミ ッ ク ス に お け る拡 散 係 数 の活 性 化 エ ネ ル ギ ーEは,直
線
の ス ロー プ お よび 図 中 に与 え られ た 傾 き か ら 求 め られ る.例
え
ば,Ca0.14Zr0.86O1.86に つ い て は
焼 結 の初 期 段 階 で は,気 孔 は粒 子 間 の ネ ック部 分 に付 着 して い る.緻 密 化 が 進 む に つ れ て,気 孔 は粒 界 に存 在 す る よ う に な る.こ の よ う な気 孔 を消 滅 させ緻 密 化 す る に は,粒 成 長 速 度 の 制 御 が必 要 で あ る.粒 界 を拡 散 す るイ オ ン の粒 界 拡 散 は,固 相 の 中 を拡 散 す るイ オ ンの体 積 拡 散 よ り も速 い こ とを利 用 す る.こ の 特性 を利 用 して,粒 界 に 気 孔 を付 着 させ てお け ば,気 孔 の 中 の ガ ス は粒 界 拡 散 に よ っ て焼 結 体 の 外 に拡 散 して 消 滅 す る.こ の た め に は,粒 成 長 を遅 くす る こ とが 高 密 度 焼 結 体 の 製 造 に は必 要 で あ る. 図4.60に
示 す よ う に,粒 成 長 は粒 界 に 垂 直 な 方 向 の物 質 移 動 現 象 で あ る.も
し粒 成 長 速 度 が 非 常 に 速 い と,粒 界 は気 孔 を置 き去 りに し て 移 動 す る.そ の 結 果,気
孔 は粒 子 の 内 部 に取 り残 され る.こ の よ うな 気 孔 の 中 に存 在 す るガ ス が焼
結 体 の 外 に拡 散 し消 失 す るた め に は,ガ ス を体 積 拡 散 に よ っ て 外 に 出 さな けれ ば な らな い.し か しな が ら,体 積 拡 散 は粒 界 拡 散 に比 べ て 非 常 に 遅 く,粒 内 に取 り 残 さ れ た 気 孔 中 の ガ ス の 消 滅 は事 実 上 困難 に な り,理 論 密 度 の焼 結 体 は 得 られ な い.し た が っ て,緻 密 化 す る に は粒 界 の移 動 速 度 の 制 御 が 不 可 欠 で あ る.粒 界 の 移 動 速 度 の 制 御 は微 量 添 加 物 に よ っ て可 能 で あ る. ル カ ロ ッ ク ス と い う透 明 焼 結 体 は,0.25%以 ア ル ミナ で あ る.添 加 したMgOは
下 のMgOを
ア ル ミナ の 粒 界 に ス ピ ネ ル と して 存 在 し,粒
界 の移 動 速 度 を遅 延 させ る.ア ル ミナ に対 す るMgOの も高 融 点 の 添 加 物 が 粒 界 の速 度,す
添 加 して 焼 結 した
よ うに,一 般 に母 相 よ り
な わ ち粒 成 長 速 度 を遅 延 させ る効 果 が あ る.
微 量 添 加 物 に よ っ て 粒 界 の移 動 速 度 を遅 延 す る機 構 につ い て は,こ れ まで 種 々 の
図4.60
粒 成 長 と気 孔 の 関 係
速 い 粒 成 長 で は,気 孔 が粒 内 に 取 り込 まれ,気
孔 は 消 滅 しな い.遅
い粒 成 長 で は,気 孔 内 の ガ ス は 粒 界 を 通 っ て 系 外 へ 拡 散 消 失 す る.
理 論 的考 察 が な さ れ て い る. 粒 界 の添 加 物 は,粒 界 の間 に対 称 的 な 形 を保 持 しつ つ 安 定 に 存 在 して い る.こ の 析 出 物 が 不 動 の ま ま粒 界 だ け が移 動 した とす る と,析 出 物 は非 対 称 的 に粒 界 に 分 布 す る.そ の 結 果,析
出 物 は不 安 定 に な り,析 出物 は粒 界 を も との 安 定 な位 置
に 引 き戻 そ う とす る.析 出 物 は粒 界 の移 動 に対 して抵 抗 と な る.こ れ は析 出物 阻 害 とい わ れ る.粒 界 に不 純 物 が 固 溶 して い る場 合 に も析 出物 阻 害 と同様 の 作 用 が 働 き,粒 界 の 移 動 を阻 害 す る.こ れ を 固溶 阻 害 とい う.不 純 物 イ オ ンの 拡 散 が 母 相 を構 成 す るイ オ ンの 拡 散 よ り遅 けれ ば,不 純 物 イ オ ン の拡 散 が 粒 界 の移 動 速 度 を律 速 す る こ とに な る. 粒 界 の移 動 速 度Mは,単
位 粒 径 の粒 界 エ ネ ル ギ ー の 粒 成 長 速 度 と して 次 式 の
よ う に定 義 さ れ る.
(4.93) 粒 成 長 がGn−G0n=KGで
あ る 場 合 に は,式(4.93)は
次 の よ うに な る.
(4.94) こ こで,KGは
粒 成 長 の 速 度 係 数,G0とGは
粒 界 エ ネル ギ ー,nは
高 純 度 の 試 料 で は2,不
初 期 お よ びt時
間 後 の 粒 径 ,γbは
純 物 の 多 い 試 料 で は3が 一 般 的 で
あ る. 図4.61に
は,酸 化 物 の 移 動 度 の デ ー タ を示 す.図
ナ やMgOの
移 動 度 は,微 量 の不 純 物 の 添 加 に よ っ て 著 し く小 さ くな る.KClに
か らわ か る よ う に,ア ル ミ
対 す るSrCl2の 添 加 に よ る移 動 度 の低 下 は,固 溶 阻 害 で あ る.ま た,PLZTの
移
動 度 が 著 し く小 さ い の は,拡 散 種 を 受 容 す る サ イ トが な い た め と考 え られ て い る.こ の よ う に,微 量 添 加 物 に よ って 粒 界 の移 動 度 を抑 制 す る こ とが で き る.し か し例 外 的 な ケ ー ス と し て,Y2O3にZrO2やTiO2を
添 加 した と きの よ うに,逆
に移 動 度 が 大 き くな る場 合 もあ る. 加 圧焼 結 に は,ホ
ッ トプ レ ス(hot
tatic pressing: HIP)の2つ
pressing:
HP)と
静 水 圧 焼 結(hot
isos
が あ る.い ず れ の 場 合 も外 部 か ら圧 力 を加 え る こ と
に よ って,焼 結 の駆 動 力 を増 加 させ る 方 法 で あ る.加 圧 焼 結 の利 点 は,炭 化 ケ イ 素,窒 化 ケ イ 素,窒
化 ホ ウ素 の よ う な難 焼 結性 の セ ラ ミ ッ ク ス を比 較 的 低 温 で か
つ 短 時 間 で緻 密 化 し う る こ と に あ る.し か しな が ら,連 続 的 な 焼 結 が 難 しい こ
と,金 型 で焼 結 体 の形 が 制 約 され る こ と,雰 囲気 の 種 類 や 圧 力 の 調 整 に 限界 が あ る こ とな どの 欠 点 もあ る. HPの
金 型 に は,黒 鉛,ア
ル ミナ,炭 化 ケ イ素 な どが 用 い られ る.こ の うち誘
導加 熱 が 可 能 な こ と と,対 象 とな る被 焼 結 材 料 が 主 と して炭 化 ケ イ素 や 窒 化 ケ イ 素 で あ る こ とか ら,黒 鉛 の 金 型 が 最 も利 用 され る.黒 鉛 は,高 温 ほ ど高 強 度 で, 摩 擦 係 数 が 小 さ く機 械 加 工 が 容 易 で あ る こ とな ど の優 れ た性 質 を有 し て い る.し か し,雰 囲 気 が 還 元 また は中 性 雰 囲 気 に限 られ る欠 点 が あ る.実 際 の使 用 に は, 黒 鉛 の 金 型 に窒 化 ホ ウ素 粉 を塗 付 して 型 離 れ を よ くす る な ど の 方 法 が 講 じ られ る. HPは
一 軸 加 圧 で あ る の に対 して,HIPは
的 な加 圧 焼 結 で あ る.ガ ラ ス,金 属,ゴ を入 れ,脱
ガ ス や 液 体 と圧 力 媒 体 とす る等 方
ム な ど の カ プ セ ル の 中 に セ ラ ミ ッ ク ス粉
気 後 カ プ セ ル を封 じて か ら加 圧 し なが ら焼 結 す る.圧 力 媒 体 に は アル
ゴ ン ガ ス や 水 が 主 に 用 い られ る.こ の 方 法 は難 焼 結 性 セ ラ ミッ ク ス の焼 結 や 種 々 の セ ラ ミッ ク ス の成 形 な ど に用 い られ る.
図4.61
酸 化 物 の 粒 界 の 移 動 度(L. Criado,
Tmは
融 点.
C. Real:
J. Am.
Ceram.
A. P. Maqueda,
J. M.
Soc., 85, 763, 2002)
4.5.4 液 相 焼 結 多 成 分 系 の焼 結 に お い て,1つ い う.現 在,工
また は複 数 の成 分 が 液 相 と し て 関 与 す る焼 結 を
業 的 に は,耐 火 物,研 磨 剤,各 種 の 電 子 材 料 な ど きわ め て多 種 多
様 な材 料 が 液 相 焼 結 で つ く られ る. 液 相 焼 結 の利 点 は,速 い 緻 密 化 に あ る.液 相 焼 結 に は粒 子 再 配 列 や溶 解-析 出 な どの 固 相 焼 結 に はな い 特 異 な プ ロセ ス が 進 行 す る.こ の2つ
のプロセスが遅滞
な く進 行 す るた め に は,後 述 す る よ う に,液 相 が 固 相 を 濡 らす こ と,必 要 十 分 な 液 相 が 存 在 す る こ と,固 相 が 液 相 へ 溶 解 す る こ とが 必 要 な 条 件 に な る. a. 粒 子 再 配 列
粒 子 再 配 列 は,液 相 焼 結 の 特 徴 的 な現 象 で あ る.こ れ は,
表 面 張 力 を駆 動 力 と して,図4.62の
よ う に進 行 す る.表 面 張 力 に 由来 す る毛 管
力 の ア ンバ ラ ンス に よ っ て粒 子 が 再 配 列 し,粉 末 の成 形 体 が 密 に 充〓 し て い く現 象 で あ る.粒 子再 配 列 に よ る緻 密 化 は,液 相 の量 と と も に増 加 す る.液 相 量 を増 や して い け ば粒 子 再 配 列 の み で 完 全 に緻 密 化 す る こ と も可 能 で あ る .し か しな が ら,必 要 以 上 の液 相 量 は焼 結 体 の 機 械 的性 質 を低 下 させ るの で,粒
子再配列 だ け
で緻 密 化 させ る こ とは な い. 再 配 列 が 終 了 す る と,固 相 の 溶 解-析 出 プ ロセ ス で,さ
ら に緻 密 化 が 進 む.液
相 中 の イ オ ン の拡 散 は 固相 中 の そ れ よ り も速 い.こ れ は液 相 焼 結 の特 徴 で も あ り 欠 点 で もあ る.速 い緻 密 化 は局 所 的 な不 均 一 性 をつ く り出 し,し ば しば焼 結 体 を 変 形 させ る.こ れ は液 相 焼 結 の 理 論 的 取 扱 い を難 し く し,収 縮 率 と時 間 の 関 係 な ど の焼 結 プ ロ セ ス の 予 測 を 困難 にす る. 粒 子 再 配 列 と溶 解-析 出 に よ る緻 密 化 の た め に は,① 固相 の液 相 に よ る濡 れ, ② 十 分 な 液 相 の存 在,③
固 相 の液 相 へ の溶 解 が 必 要 で あ る.
固 相 と液 相 が 反 応 す る組 合 せ ほ ど両 者 の濡 れ 性 は よい.例
え ば,ダ イ ヤ モ ン ド
と金 属 の濡 れ 性 は,両 者 の 反 応 性 が 高 い組 合 せ ほ どよ くな る.通 常,チ ル コニ ウ ム,ク
ロム,マ
た さ れ て い な い 金 属)は
ン ガ ン,バ ナ ジ ウ ム,ニ
オ ブ な ど(d軌
よ い 濡 れ 性 を 示 す .他 方,銅,銀,金
図4.62
粒 子 再 配 列 に よ る緻 密 化
タ ン,ジ
道 とf軌 道 が 満 な どの貨 幣金 属
(閉 殻 を もつ 金 属)は 濡 れ 性 が 悪 い.ま た,化
合 物 をつ く ら な い よ う な安 定 な酸
化 物 も濡 れ 性 が 悪 い.し た が っ て,状 態 図 か ら物 質 の濡 れ 性 に 関 す る大 雑 把 な手 が か りが 得 られ る. 液 相 焼 結 は まず,液 相 の 生 成 直 後 の濡 れ か ら始 ま る.次 い で粒 子再 配 列 が 起 こ り,最 後 に溶 解-析 出 プ ロセ ス で 緻 密 化 す る.粒 子 再 配 列 が 起 こ るた め に は次 の 5つ の 要 件 が 必 要 で あ る. ① 液 相 へ の 固相 の 溶 解 度 が 大 き い こ と. ② 粒 子 間 の接 触 角 が 小 さい こ と. ③ 二 面 角 が 小 さい こ と. ④ 固相 粒 子 間 の 結 合 が 少 な い こ と. ⑤ 粒 子 の 充〓 度 が 低 い こ と. これ らの 要 件 を満 た す 度 合 い が 高 い ほ ど再 配 列 が 進 み,低
い ほ ど少 な くな る.
粒 子 再 配 列 に は,一 次 再 配 列 と二 次 再 配 列 が あ る.一 次 再 配 列 は個 々 の 一 次 粒 子 の 間 の 再 配 列 で あ る.二 次 再 配 列 は 一 次 再 配 列 の 終 了 後 に起 こ り,二 次 粒 子 (形骸 粒 子 と い う場 合 が あ る)自 身 の再 配 列 で あ る.こ の プ ロ セ ス は,二 次 粒 子 の 粒 界 に液 相 が 浸 入 す る こ とに よ り,二 次 粒 子 自身 が 充〓 状 況 を変 え て 再 配 列 す る プ ロ セ ス で あ る. 再 配 列 に よ る収 縮 率 ΔL/L。 と時 間 の 関 係 は 次 式 の よ うで あ る.
(4.95) こ こで,tは
時 間,aは
粒 径 で あ る.yは
ゼ ロ に近 い 値 で あ る.し た が っ て,実
質 的 に収 縮 率 は時 間tに 比 例 す る. 再 配 列 で は,液 相 の 体 積 分 率 が重 要 で あ る.し か し,粒 子 の 形 状 が 不 規 則 で 粒 径 が 不 均 一 の場 合 に は,粒 子 間 の摩 擦 が 大 き くな るの で,同
じ液 相 量 で あ って も
再 配 列 に よ る緻 密 化 は小 さ い.再 配 列 は粒 径 に よ っ て 著 し く変 わ る.図4.63に は,粒 径 と緻 密 化 の 関 係 を示 す.33μmの られ な い の に対 して,3μmの
粗 い 粒 子 で は再 配 列 は ほ とん ど認 め
微 粒 子 で は ほ と ん ど の緻 密 化 が 再 配 列 で 進 む.式
(4.95)か らわ か る よ う に,再 配 列 に よ る収 縮 率 は 時 間 に比 例 し,粒 径 に 逆 比 例 す る. 焼 結 は速 度 論 で あ る か ら,平 衡 論 を厳 密 に は適 用 す る こ と は で き な い.し か し,平 衡 論 か ら得 られ る情 報 が 緻 密 化 の 予 測 に た い へ ん役 立 つ 場 合 が あ る.平 衡
図4.63
粒 子 再 配 列 に お け る粒 径 の 影 響
状 態 図 か ら液 相 焼 結 の 緻 密 化 を予 測 す る の が そ れ で あ り,予 測 の結 果 は実 験 結 果 と きわ め て よ く一 致 す る. 共 晶 系 の2成 分 系 状 態 図 を例 に,そ
の 関 係 を 図4.64で
説 明 す る.一 般 的 に液
相 焼 結 の焼 結 温 度 は,融 点 の直 上 が 用 い られ る.そ の温 度 まで 昇 温 す る過 程 にお い て,固 相 の 液 相 へ の 溶 解 度 は状 態 図 か らわ か る よ う に増 加 す る.こ の よ う に, 固相 の 溶 解 度 が 増 加 す る場 合 に は緻 密 化 す る.逆
に,温 度 の 上 昇 と と も に溶 解 度
が減 少 す る場 合 に は 緻 密 化 せ ず に 逆 に膨 潤 す る.す
な わ ち,状 態 図 の示 す溶 解 度
か ら緻 密 化 す る か,膨 潤 す る か を あ らか じ め予 測 す る こ とが で き る. b. 溶 解-析 出
粒 子 再 配 列 を 主 体 とす る緻 密 化 プ ロ セ ス が 終 了 す る と,固
相 の イ オ ンの溶 解-析 出 に よ る緻 密 化 プ ロ セ ス が 支 配 的 に な る.焼 結 体 の 物 性 を 高 め るた め に は,必 要 最 小 限 の液 相 量 が 用 い られ るの で,再 配 列 後 の焼 結 体 に は た くさん の 気 孔 が 残 留 して い る.こ れ らの 気 孔 を 消 滅 させ る に は,粒 子 の形 状 変 化,微
細 粒 子 の溶 解-析 出,粒 子 の 合 体,粒 成 長 な ど の プ ロ セ ス が 必 要 で あ り,
これ ら は溶 解-析 出 で 進 行 す る. ケ ル ビ ン の式 か ら推 定 され る よ うに,粒 子 の ネ ッ ク部 分 で は 引 張 応 力 が 作 用 し て い る.そ
の た め,固 相 の 溶 解 度 は そ の他 の 面 よ り も低 い.他 方,圧 縮 応 力 の作
用 して い る接 触 点 で は溶 解 度 は高 い.そ の 結 果,接 触 点 で の溶 解 とネ ッ ク部 分 で の 析 出 が 起 こ り,接 触 面 の 平 滑 化 が 進 む.同 様 の理 由 か ら,微 細 粒 子 の 溶 解 度 は 粗 大 粒 子 の そ れ よ り も高 い.そ の た め,微 細 粒 子 の溶 解 と粗 大 粒 子 の 成 長 が 進 む.こ
れ らの 緻 密 化 過 程 を模 式 的 に図4.65に
示 した.
図4.64 状 態 図 と焼 結 の 挙 動 固 相 の 液 相 へ の 溶 解 度 が 大 き くな る と き に緻 密 化 し,逆 B:固
Kingeryは
で膨 潤 す る.A:液
相,
相.
イ オ ン の溶 液 中 の 拡 散 が 律 速 の場 合,接 触 面 の溶 解-析 出 プ ロ セ ス
の収 縮 率 を 次 式 で 表 した.
(4.96) こ こ で,δ は粒 子 間 の 液 相 の 厚 さ,Ω は 固 相 の液 相 中 の 拡 散 係 数,Cは ツ マ ン定 数,Tは
は 原 子 の 体 積,γ は 表 面 エ ネ ル ギ ー,D
液 相 中 の 固 相 の濃 度,tは
焼 結 時 間,kは
ボル
絶 対 温 度 で あ る.
開 気 孔 が 閉 じ込 め られ 閉 気 孔 に な る終 期 過 程 で は,粒 成 長 が 主 流 と な る.粒 成 長 は,界 面 エ ネ ル ギ ー を減 少 す る物 質 移 動 プ ロ セ ス で あ る.ケ ル ビ ンの 式 か らわ か る よ う に,固 体 の 溶 解 度 は曲 率 に依 存 す る.曲 率 の 小 さ い小 粒 子 は大 粒 子 よ り 溶 解 度 が 大 き く,溶 解 しや す い.そ
の 結 果,小 粒 子 が 溶 解 し大 粒 子 上 に析 出 す る
プ ロセ スが 進 行 して 粒 成 長 す る.大 粒 子 は小 粒 子 を 同 化 す る よ うに粒 成 長 す る. 両 者 の 粒 径 に差 が あ れ ば あ る ほ ど,粒 成 長 は速 くな る. 粒 成 長 と時 間 の 関 係 式 は一 般 に次 式 で 表 され る. Gn−G0n=Klt
(4.97)
(a) 接 触 面 の 平 滑 化
(b) 微 粒 子 の溶 解-析 出
図4.65
こ こ で,Gは 場 合 は3,界
平 均 粒 径,Klは
(c) 固 相 の 拡 散
溶 解-折 出 に よ る緻 密 化
速 度 定 数,tは
焼 結 時 間,nは
面 反 応 律 速 の場 合 は2が 報 告 され て い る.
定 数 で拡散 律速 の
5 セ ラ ミ ッ ク ス の理 論 と応 用
5.1 誘 電 材 料 電 子 機 器 中 の 部 品 の半 数 は,コ ン デ ン サ ー か らな っ て い る とい って も過 言 で な い ほ ど,電 子 機 器 で は コ ンデ ンサ ー が 重 要 で あ る.コ
ン デ ン サ ー の 小 型 化,大 容
量 化 に必 要 な材 料 が 誘 電 体 で あ る.ま た,誘 電 体 の 中 に は,圧 力 を加 え る と電 圧 が 発 生 した り,電 圧 を加 え る と変位 が 生 じた りす る圧 電 性 を示 す もの や,温 度 変 化 に よ り電 流 の 流 れ る焦 電 性 を示 す もの が あ り,種 々 の 目的 に使 わ れ て い る.こ こで は,誘 電 体,圧
電 体,焦 電 体 に関 し て扱 う.
5.1.1 コ ンデ ン サ ー コ ン デ ン サ ー(キ
ャパ シ ター と も呼 ぶ,英
語 で はcapacitor)は,加
えた電圧
に比 例 して 電 荷 を蓄 え る素 子 の こ とで あ る.用 途 に よ っ て い ろ い ろ な 呼 び 名 の コ ン デ ンサ ー が あ る が,基 本 的 な 作 用 はす べ て,「 電 圧 に比 例 し て電 荷 を蓄 え る」 とい う こ とで,違 用 途 の1つ 場 合,ダ
い は な い.
に,平 滑 コ ンデ ンサ ー と呼 ば れ る も のが あ る.交 流 か ら直 流 を得 る
イ オ ー ドで 交 流 を一 方 向 の 電 流 に 変 換 す るが,こ
れ は波 状 の電 圧 と な
る.こ の 波 を平 滑 す るの が 平 滑 コ ンデ ンサ ー で あ る.こ れ はた め池 に た と え られ る.た
め池 は,降 雨 時 とそ うで な い と きの 川 の 流 量 の変 動 の 影 響 を平 均 化 す る.
同 様 な 用 途 と し て,バ イ パ ス コ ンデ ンサ ー と呼 ばれ る もの が あ る.こ れ は,半 導 体 素 子 の す ぐ付 近 に お か れ,素 子 の 急 激 な電 流 変 化 に対 して,電 圧 を保 持 させ る 役 割 をす る.ビ ル デ ィ ン グ の屋 上 の給 水 タ ン ク にた とえ られ る.ま た,ト
ランジ
ス タ ー な どの増 幅 素 子 で 増 幅 す る と,直 流 成 分 が 交 流 の信 号 に重 な る.コ ン デ ン サ ー に は交 流 を通 し,直 流 を通 さ な い と い う性 質 が あ り,こ の 性 質 を利 用 す る こ とに よ り,交 流 増 幅 回 路(例
え ば音 響 機 器)に
お け る直 流成 分 を取 り除 くこ とが
図5.1
金 属 板 を向 か い合 わ せ た コ ン デ ンサ ー
で き る(直
流 成 分 が 含 ま れ た ま ま 増 幅 す る と,直
範 囲 を は み 出 し て し ま う).こ ー と呼 ば れ る
.抵
と が で き る.こ
流 成 分 も 増 幅 さ れ,扱
え る電 圧
の 目的 の コ ン デ ンサ ー はカ ップ リン グ コ ン デ ンサ
抗 器 と コ ン デ ン サ ー を 組 み 合 わ せ る と,交
れ を 利 用 し て,発
流 の位 相 を ず らす こ
信 器 や 音 質 調 節 器 な ど に も コ ン デ ン サ ー が使 わ
れ る. コ ン デ ン サ ー の 基 本 的 な 構 造 は 簡 単 で あ る.図5.1の 平 行 に 対 面 さ せ,電
ce)と
の金属板 を
圧 を 加 え る と相 向 き合 っ た 金 属 内 の プ ラ ス と マ イ ナ ス が 引 き
合 う よ う に し て 電 荷 が た ま る.こ れ る.た
よ う に,2つ
ま る 電 荷 は,加
の 場 合 の 金 属 板 は,電
え る 電 圧 に 比 例 す る.比
極(electorode)と
呼 ば
例 定 数 は 電 気 容 量(capacitan
呼 ば れ る. Q=CV
電 荷 の 単 位 はC し い.電
(Coulomb)で
圧 の 単 位 はV
あ る.1Cは1Aの
(Volt),電
た ま る電 荷 は 電 極 の 面 積Sに
(5.1) 電 流 が1秒
気 容 量 の 単 位 はF
比 例 し,電
極 間 の 距 離dに
間流 れた電荷 に等
(Farad)と
な る.ま
反 比 例 す る.し
た,
た が っ て,
(5.2) と な る.ε
は 比 例 定 数 で,誘
と 呼 ば れ る.後 dielectric
電 率(dielectric
constantま
た は,permittivity)
で 述 べ る 比 誘 電 率 と 区 別 す る た め に は,絶
constant)と
呼 ぶ.電
極 間 が 真 空 の と き の 誘 電 率 は ε0で 表 さ れ,真
の 誘 電 率 と 呼 ば れ る.ε0=8.854×10−12Fm−1と 金 属 間 に 絶 縁 体 を 入 れ る と,電
対 誘 電 率(absolute
な る.
気 容 量 が 増 加 す る.す
なわ ち
空
図5.2
セ ラ ミ ック コ ンデ ンサ ー の 構 造
(5.3) εsは比 誘 電 率(relative と 呼 ば れ る.比 多 い.コ
dielectric
constantま
た はspecific
誘 電 率 は 単 に 誘 電 率 と呼 ば れ る こ と が 多 く,単
constant)
に εで 表 す こ と も
ン デ ン サ ー の 容 量 を 増 加 さ せ る 目 的 で 使 わ れ る 絶 縁 体 を,誘 電 体 と 呼 ぶ.
セ ラ ミ ッ ク ス コ ン デ ン サ ー の 基 本 的 な 構 造 は,図5.2に る.板
dielectirc
状 セ ラ ミ ッ ク ス 誘 電 体 の 両 面 に 電 極 が つ け ら れ,そ
出 さ れ て 絶 縁 と保 護 を 兼 ね た 外 被 で 覆 わ れ て い る.図 す た め,外
被 が 透 か せ て 描 か れ て い る.右
ン サ ー は 式(5.3)か な る.し
か し,誘
ら わ か る よ う に,誘
示 す よ う な もの で あ こか ら リ ー ド線 が 引 き
の 左 側 で は電 極 の 構 造 を示
が 実 際 の コ ン デ ン サ ー で あ る.コ
ンデ
電 体 の 厚 さが 薄 い ほ ど電 気 容 量 が 大 き く
電 体 の 厚 さ を 薄 く す る に は 限 度 が あ る.こ
れ を 解 決 す る の に,
セ ラ ミ ッ ク ス が 結 晶 粒 の 集 合 体 で あ る こ と を 利 用 し た う ま い 方 法 が あ る.セ ッ ク ス を 半 導 体 化 さ せ た 後,結 な コ ン デ ン サ ー はboundary と 呼 ば れ る.図5.3に で き,誘 ま た,コ
晶 粒 界 の み 絶 縁 体 化 さ せ る 方 法 で あ る.こ layer(粒
界 層)の
そ の 構 造 を 示 す.半
頭 文 字 を と り,BLコ
ラ ミ の よう
ン デ ンサ ー
導 体 部 分 は電 極 の 一 部 と考 え る こ とが
電 体 の 実 質 的 な 厚 さ を 減 ら し た の と 同 等 の 効 果 が 得 られ る. ン デ ン サ ー は 電 極 の 面 積 が 大 き い ほ ど電 気 容 量 を 大 き く と れ る.大
な 電 気 容 量 を も つ 小 型 の コ ン デ ン サ ー を つ く る た め,図5.4の
図5.3 BLコ
ンデ ンサ ー の 構 造
き
よ うな 構 造 の コ ン
図5.4 積 層 型 コ ンデ ンサ ー の 構 造(左)と 基 板 へ の 実 装 例(右)
デ ンサ ー が 多 く用 い られ て い る.図 は 内 部 電 極 が み え る よ う断 面 を示 した もの で あ る.内 部 電 極 が 互 い違 い に入 っ て い て,小 型 で あ りな が ら電 極 面 積 が 広 く と ら れ る よ う な構 造 とな っ て い る.ま た,誘 電 体 の厚 さ も非 常 に薄 く,そ れ に よ って も電 気 容 量 が 高 く とれ る.多 板 に 実 装 さ れ る.1mm以 5.1.2 分
くの場 合,リ ー ド線 を もた ず,こ
の ま まプ リン ト基
下 の サ イ ズ の も のが 多 く使 わ れ て い る.
極
金 属 の あ い対 す る平 行 板 の 間 に絶 縁体 を入 れ る と,電 気 容 量 が 増 加 す る こ とは 前 節 で 述 べ た.式(5.1)と
式(5.3)よ り
(5.4) な る関 係 が あ り,変 形 す る と
(5.5) と な る.こ
こ で,Q/Sを
電 気 変 位 と呼 び,記
に た ま っ て い る 電 気 量 と い え る.ま
た,V/dは
号Dで
表 す.Dは
電 界Eで
単位 面積 当た り
あ る.し
た が っ て,
D=εs・ε0・E=ε・E
(5.6)
とな る.真 空 中 にお か れ た 平 行 板 コ ンデ ン サ ー に た ま る電 荷 は,自 由電 荷 と呼 ば れ る.こ
こ に誘 電 体 を挟 む と,加 え られ た 電 界 に よ り誘 電 体 に 分 極 が 誘 起 され
る.こ の 分 極 に 対 応 した 分 の電 荷 は,束 縛 電 荷 と呼 ば れ る.図5.5に,誘 挟 ん だ 平 行 板 コ ン デ ンサ ー の 電 荷 の た ま る様 子 を模 式 的 に示 した.四 示 した 電 荷 が 自由 電 荷,円
電体 を 角で囲んで
で 囲 ん で 示 した 電 荷 が束 縛 電 荷 で あ る.楕 円 で 示 され
た もの が 分 極 で あ る.し た が っ て,電 気 変 位 は以 下 の よ うに表 す こ とが で き る. D=ε0・E+P こ こで,Pは
誘 電 体 の分 極 で あ る.Pは
る.し た が っ て,
(5.7)
低 い電 界 の 範 囲 で 電 界 の 強 さ に比 例 す
図5.5 束 縛 電 荷 と自 由 電荷
(a) 電 子 分 極
:束 縛 電 荷,
(b) イ オ ン分 極
:自 由 電 荷.
(c) 配 向 分 極
(d) 空 間 電 荷 分 極
図5.6 分 極 の 種 類
P=ε0・ χe・E
(5.8)
とな る.χeは 透 電 率 と呼 ば れ る. 誘 電 体 内 で生 じ る分 極 を 図5.6に 極,双 極 子 分 極,空
示 す.分 極 の 種 類 に は,電 子 分 極,イ
オ ン分
間 電 荷 分 極 な どが あ る.電 子 分 極 は,外 部 電 界 に よ り原 子 核
の 周 りに あ る電 子 雲 に偏 りが 生 じ る 分 極 で あ る.(a)に オ ン分 極 は(b)に 示 す よ う に,プ
そ の模 式 図 を示 した.イ
ラ ス とマ イ ナ ス に偏 りの あ る 分 子 の偏 りの 度 合
い が 外 部 電 界 に よ り変 化 す る こ と に起 因 す る分 極 で あ る.プ
ラ ス とマ イ ナ ス に偏
りを も った 永 久 双 極 子 は,熱 運 動 に よ りラ ンダ ム な方 向 を 向 い て い る.こ
こ に電
界 が 加 わ る と,電 界 の 大 き さ に比 例 し て電 界 の 方 向 に配 向 す る度 合 いが 増 す(c). こ の よ う に し て全 体 に 現 れ る分 極 を,配 向分 極 と呼 ぶ.誘 電 体 に あ る程 度 の 導 電 性 が あ り,電 極 と誘 電 体 との 間 で 電 荷 の や り と りに何 らか の バ リア が あ る場 合 や,セ 場 合,界
ラ ミ ック ス の 結 晶 粒 が あ る程 度 の導 電 性 を持 ち,結 晶粒 界 の 導 電 性 が 低 い 面 に電 荷 が 蓄 積 され る(d).こ
れ に よ る分 極 は,空 間 電 荷 分 極 と呼 ばれ
る. 誘 電 体 に交 番 電 界 が加 え られ た と き,そ れ ぞ れ の 分 極 は,あ
る周 波 数 以 上 で,
そ の 電 界 に追 従 で きな くな る.こ の た め,そ の 周 波 数 以 上 で は そ の 分 極 が誘 電 挙
図5.7 誘電体 の誘 電率の周波数依存性
動 に 関 わ ら な くな る.そ 階 的 に 減 少 す る.分 5.1.3
の 結 果 と し て,誘
極 が 追 従 で き な くな る 辺 り の 挙 動 は5.1.4項
示 す よ う に段 で 述 べ る.
コ ン デ ンサ ー の 材 料
セ ラ ミ ッ ク 系 の コ ン デ ン サ ー 材 料 に は,酸 物 が 多 く 用 い ら れ る.ペ BaTiO3,
電 体 の 誘 電 率 は 図5.7に
PbTiO3,
Pb(Mg1/3Nb2/3)O3,
あ る い は,そ
ロ ブ ス カ イ ト 系 化 合 物 は 一 般 式ABO3で
SrTiO3な
ど 多
Pb(Yb1/2Nb1/2)O3,
の 結 晶 構 造 の 中 でBが
化 チ タ ン や ペ ロ ブ ス カ イ ト系 の 化 合
入 る 場 所)の
く の 化 合 物 が 知
ら れ て い る.ま
Pb(Zn1/3Ta2/3)O3な
ど,B位
イ オ ン の 価 数 が 平 均 し て4価
れ ら の 固 溶 体 は誘 電 率 が 高 く,温
表 さ れ, た,
置(ABO3 に な る 化 合 物,
度 依 存 性 が 少 な い の で 特 に 多 く用
い ら れ て い る. チ タ ン 酸 バ リ ウ ム は,図5.8(a)に
示 す よ う な ペ ロ ブ ス カ イ ト型 構 造 を も つ.
実 際 の 各 イ オ ン の 大 き さ は 互 い に 接 す る よ う な 大 き さ で あ る が,中 う 小 さ く描 か れ て い る.室
温 で は 正 方 晶(a=b≠c,α=β=γ=90°)で,c軸
が わ ず か に 長 い(c/a=1.010).Ti4+が る.(b)に
相 対 的 に 体 心 位 置 よ り上 か 下 に ず れ て い
体 心 の 位 置 を 通 る 断 面 図 を 示 し た.こ
き さ で 示 さ れ て い る.こ
まで み え る よ
れ に よ り,陽
こ で は,実
際 に近 い イ オ ン の大
イ オ ン の 重 心 と陰 イ オ ン の 重 心 と に ず れ が
図5.8 チ タ ン酸 バ リウム の単 位 胞(a) と そ の断 面(b)
(a)
(b)
黒:バ
リ ウ ム,白:チ
タ ン,灰:酸
素.
生 じ,分 極 が起 こ る.こ の分 極 は式(5.8)の 分 極 と異 な り,電 界 が 加 わ っ て い な い と きに も存 在 し,自 発 分 極(spontaneous ッ ク ス に お い て は,あ が そ ろ っ て い る.そ
poralization)と
呼 ば れ る.セ ラ ミ
る ま と まっ た 微 細 な領 域 で,同 一 の 方 向 に 自発 分 極 の 向 き の領 域 を分 域(domain)と
呼 ぶ.焼
結 した だ けの チ タ ン酸
バ リウ ム は,そ れ ぞ れ の分 域 が で た ら め の方 向 を向 い て い て,全 体 と して分 極 の 効 果 は現 れ な い.チ が 変 わ り う る.Ti4+の
タ ン酸 バ リ ウム に 高 い電 界 を加 え る と,Ti4+の
ず れ る方 向
ず れ が 上 下 逆 方 向 に変 化 す る と,分 極 の 方 向 は180° 変 化
す る.こ れ に よ る分 域 の 変 化 は180° 分 域 反 転 と呼 ば れ る.Ti4+の 向 に変 わ る と,そ の 方 向 が 新 た なc軸
ず れ がa軸
方
方 向 とな り,分 極 も そ の 向 き に 変 わ る.
この 分 域 の 向 きの 変 化 は90° 分 域 反転 と呼 ば れ る.高 い電 界 を加 え,分 域 の 向 き を そ ろ え る 操 作 を,分 極 処 理(polling)と
呼 ぶ.分
極 処 理 に よ り,焼 結 体 全 体
と して 分 極 の 効 果 が 現 れ る.チ タ ン酸 バ リ ウ ム の よ う に,自 発 分 極 を も っ て い て,外 部 電 界 に よ りそ の 向 き を 変 え う る 物 質 を強 誘 電 体(ferroelectrics)と
呼
ぶ. 誘 電 体 に 交 流 を加 え,電 気 変 位(D)と
電 界(E)と
の 関 係(D-E曲
表 す と,常 誘 電 体 で は通 常,直 線 関 係 を示 す.強 誘 電 体 で は図5.9の
線)を よ うな形 に
な る.こ の 曲 線 の 変 化 は,矢 印 の 方 向 で あ る.正 の 電 界 が 高 くな る に つ れ,分 極 が そ ろ い 始 め十 分 に高 い電 界 で は飽 和 す る.そ れ 以 上 の電 気 変 位 の変 化 は,常 誘 電 性 分 に よ る もの で あ る.こ の部 分 の 傾 き を電 界 ゼ ロ に 内 挿(破 線)し 常 誘 電 成 分 を差 し 引 い た 自発 分 極Psの
た値 は,
値 で あ る.加 え られ る電 界 が 最 大 値 を 過
ぎ減 少 し始 め る と,自 発 分 極 の 向 き は少 しず つ 崩 れ 始 め電 気 変 位 は減 少 す る.し か し,電
界 が ゼ ロ に な っ て も あ る 程 度 残 存 す る.こ
図5.9 強誘 電 体 のD-E曲
線
の 値 は 残 留 分 極Pr
(remanent
polarization)で
あ る.電
る 値 −Ecに
な っ た と き 初 め て 分 極 が ゼ ロ と な る.Ecを
チ タ ン 酸 バ リ ウ ム は120℃ る.ど
界 が ゼ ロ に な っ た 後,電
抗 電 界 と呼 ぶ.
以 上 に な る と立 方 晶 に 転 移 し,自
の よ う な 強 誘 電 体 に も こ の よ う な 温 度 が 存 在 し,キ
temperature)と
界 が 負 に転 じて あ
呼 ば れ る.誘
発 分極 が 消失 す
ュ リ ー 温 度(Curie
電 率 は キ ュ リ ー 温 度 で ピ ー ク を 示 し,そ
れ よ り温
度 が高 い ところでは
(5.9) の 式 に 従 う.こ
の よ う な 式 に 従 っ て 電 気 容 量 が 変 化 す る こ と を,キ
ス の 法 則(Curie-Weiss 5.1.4
law)と
呼 ぶ.Kは
キ ュ リー 定 数 で あ る.
コ ンデ ンサ ーの 特 性 と物 性
コ ン デ ン サ ー に 加 え る 電 圧 を 変 化 さ せ る と,そ の で,電
ュ リ ー-ワ イ
荷 の 出 入 りが 生 じ る.電
る とい う こ と で あ る.交
の 時 々 の た ま る電 荷 が 変 化 す る
荷 の 出 入 り が 生 じ る と い う こ と は,電
流 で は,電
流が流 れ
圧 は 常 に 変 化 し て い る の で,「 コ ン デ ン サ ー
は 交 流 を 流 す 」 と い う こ と に な る.電
気 量 の 変 化 が 電 流 で あ る で あ る か ら,式
(5.1)を 用 い て,
(5.10) と な る.こ
こ で,iは
正 弦 波(sin-wave)で
交 流 電 流(時
間 の 関 数),υ
あ る と き,す
は加 え る 交 流 電 圧 で あ る.υ
なわ ち
υ=V0sin(ωt) の と き(V0は
電 圧 の 最 大 値,tは
が
時 刻,ω
は 角 速 度=2πf,fは
(5.11) 周 波 数),コ
ン
デ ンサ ー に は
(5.12) の 電 流 が 流 れ る.加
え た 交 流 電 圧 に対 し て 電 流 は,90°(π/2)だ
け位 相 が 進 む
こ とが わ か る. こ こで,複 素 数 を用 いた 交 流 の 表 し方 に つ い て 述 べ て お く.こ の 方法 を用 い る と,交 流 の 取 扱 い が 簡 便 に な る.横 軸 が 実 数 軸,縦 軸 が 虚 数 軸 の複 素 空 間 に お い て,始
点 が 原 点 に あ り,長 さ がAの
転 し て い る状 態 を考 え る.図5.10に
ベ ク トル が 始 点 を中 心 に2πfの 角 速 度 で 回 示 す よ う に,虚 数 軸 方 向 の大 き さ を 時 間 に
図5.10
交 流 の複 素 表 現
図5.11
関 し て 描 く と 正 弦 波 に な る.図5.11に く,回
波の合成
示 す よ う に,波1よ
転 も 少 し 先 に 進 ん で い る よ う な 波2は,そ
つ の 波 の 合 成 は,2つ
り大 き さ が 少 し 大 き
の 右 側 に 示 し た よ う に な る.2
の ベ ク トル が 足 さ れ た も の3で
示 さ れ る.こ
れ らの 波 は
υ=V0{cos(ωt+φ)+jsin(ωt+φ)} と 表 す こ と が で き る.な
お,j2=−1で
あ る.こ
(5.13)
こ で,コ
ンデ ンサ ー に加 え る電
圧 を υ=V0{cos(ωt)+jsin(ωt)} と す る と,流
れ る 電 流 は 式(5.12)を
(5.14)
参 照 して
(5.15) と な る.オ
ー ム の 法則
(5.16) (Iは 電 流,Eは
電 圧,Rは
抵 抗)を
交 流 に拡 張 す る と,
(5.17) と な る.こ Zも
こ で,Zは
複 素 数 で あ る.イ
イ ン ピ ー ダ ン ス で あ る.i,υ
が 複 素 数 で 表 さ れ る の で,
ン ピ ー ダ ン ス は実 数 成 分 と虚 数 成 分 に 分 け て
Z=R+jX と表 す こ とが で き る.こ
こで,Rは
(5.18)
抵 抗 成 分,Xは
ピ ー ダ ンス の逆 数 は ア ド ミ ッ タ ンス と呼 ばれ,Yの
リ ア ク タ ン ス で あ る.イ 記 号 が 使 わ れ る.ア
ン
ドミッ
タ ンス も次 式 の よ う に実 数 成 分 と虚 数 成 分 とに 分 けて 表 す こ とが で きる.
(5.19) こ こ で,Gは
コ ン ダ ク タ ン ス(単
位S,ジ
ー メ ン ス),Bは
サ セ プ タ ンス と呼 ば
れ る. コ ン デ ン サ ー の 場 合,式(5.14),
(5.15)の
υ,iを
式(5.17)に
代 入 す る こ とに
よ り,
(5.20) の イ ン ピ ー ダ ン ス を も つ こ と が わ か る.ま は,こ
た,コ
ン デ ン サ ー の ア ド ミ ッタ ン ス
の逆 数 で あ る か ら
Y=jωC と な る.こ
の 式 に 式(5.3)のCの
(5.21)
値 を代 入 す る と,
(5.22) とな る. 理 想 的 な誘 電 体 を用 い た コ ン デ ン サ ー の ア ド ミッ タ ン ス は 虚 数 成 分 の み で あ る が,現 実 の 誘 電 体 を用 い た 場 合 の コ ン デ ンサ ー は,図5.12に
示 す よ う に,理 想
的 な コ ン デ ン サ ー と抵 抗 成 分 が 並 列 に な っ た もの と等 価 で あ る.並 列 回路 の 合 成 ア ド ミッ タ ン ス は,そ れ ぞ れ の ア ド ミ ッタ ンス の 和 で 表 さ れ る.
(5.23) この よ う に,現 実 の コ ン デ ンサ ー で は,ア
ド ミッ タ ン ス に 実 数 成 分 が 含 まれ る よ
うに な る.そ の よ う な材 料 に 関 し て も式(5.22)の 形 の 式 が 有 効 で あ る た め に は, 誘 電 率 を複 素 数 で 表 す 必 要 が あ る.
(5.24) こ こで,ε
は複 素 誘 電 率 で あ る.複 素 誘 電 率 に関 し て も実 数 成 分 と虚 数 成 分 と
に分 け て表 す こ とが で き る.
図5.12
現 実 の コ ン デ ンサ ー の等価回路
ε=ε ′ −jε″ 式(5.23)∼(5.25)か
(5.25)
ら
(5.26) (5.27) と な る. 先 に 述 べ た よ う に,コ
ン デ ン サ ー に 流 れ る 交 流 電 流 は,加
対 し て 位 相 が90° 進 む.現 を 示 す.電
等 価 回 路 と同 じ挙 動
流 の 位 相 の 進 み は,電 圧 に 対 し て90° よ り小 さ く な る(90° − δ).tanδ
は 誘 電 損 率 と呼 ば れ,そ はQと
実 の コ ン デ ン サ ー は,図5.12の
え られ た 交 流 電 圧 に
呼 ば れ,コ
の 値 が 小 さ い ほ ど優 れ た 材 料 と い え る.ま
ン デ ン サ ー の 品 質 を 表 す 指 数 と し て 用 い ら れ る.Qは
ほ ど優 れ た 材 料 で あ る.コ とす る と,式(5.23)と
た,こ
ン デ ン サ ー に 加 え る 交 流 を υ と し,流
の逆数 大 きい
れ る 電 流 をi
オ ームの法則か ら
(5.28) と な る.し
た が っ て,電
流 と 電 圧 と の 関 係 は 図5.13に
示 し た よ う に な る.こ
れ
よ り
(5.29) な る 関 係 が あ る.式(5.29),
(5.26),
(5.27)か
ら,
(5.30) と な る. 5.1.2項 で,誘 電 体 中 の 分極 は あ る周 波 数 以 上 で 追 従 で き な くな る こ とを 述 べ
図5.13 現 実 の コ ンデ ンサ ー の 電 流 と
図5.14
コ ー ル-コ
ー ル プ ロ ッ ト
電 圧 の位 相 関 係
た.そ
の周波数付近 での複素誘電 率 は (5.31)
の 式 で 表 され る よ うな変 化 をす る.こ
こで,τ0は 緩 和 時 間(1/τ0を 緩 和 周 波 数 と
呼 ぶ),ε ∞は緩 和 周 波 数 よ り十 分 に 高 い周 波 数 で の誘 電 率,ε0は 十 分 低 い 周 波 数 で の誘 電 率 で あ る.こ の よ うな 現 象 を誘 電 緩 和 と呼 ぶ .縦 軸 に ε″を,横 軸 に ε′ を と り,周 波 数 を変 え て プ ロ ッ トす る と図5.14の な プ ロ ッ トは,コ
ー ル-コ ー ル(Cole-Cole)プ
よ うな 半 円 を 示 す.こ
のよう
ロ ッ ト と呼 ば れ,誘 電 緩 和 現 象
の 解 析 に 用 い られ る.誘 電 緩 和 の 周 波 数 に 分 布 が あ る と,円 心 は ε′軸 よ り下 に 位 置 す る. 5.1.5 圧
電
体
物 質 に応 力(単 位 面 積 当 た りに加 わ る力.[Nm−2])を
加 えた と き,あ る 種 の
物 質 は 電 圧 が 発 生 し た り,電 流 が 生 じた りす る.こ の よ うな 性 質 を 圧 電 性 と呼 び,圧 電 性 を示 す 物 質 を圧 電 体 と呼 ぶ.圧 電 体 に電 圧 を加 え る と変 位 が 生 じ る. 強 誘 電 体 は す べ て圧 電 体 で もあ る.焼 結 直 後 の セ ラ ミ ック ス で は,個 々 の 分域 が ラ ンダ ム な 方 向 を向 い て い るた め,打 ち 消 し合 い に よ り全 体 と して圧 電 的 性 質 は 示 さ な い.分 極 処 理 を す る こ と に よ り,初 め て 全 体 と し て の 圧 電 性 が 観 察 さ れ る.チ タ ン酸 ジ ル コ ン酸 鉛 は,図5.8に っ て い て,Pb2+が
示 した チ タ ン酸 バ リウ ム と同 じ構 造 を も
チ タ ン酸 バ リ ウ ム のBa2+の
位 置 に入 り,Ti4+とZr4+がTi4+
の 位 置 に ラ ン ダ ム に入 っ て い る結 晶 で あ る.酸 化 鉛,酸
化 チ タ ン,酸 化 ジル コ ニ
ウム の混 合 物 を焼 成 す る と PbO+xZrO2+(1−x)TiO2→Pb(ZrxTi1−x)O3
(5.32)
(a) 電 界 を加 えたときの 電 気 変位
(b) 応 力 を加え たときの 電 気 変 位
図5.15 圧 電 体 の 電 気 変位 と電 界,応
力 との関 係
の 反 応 に よ り生 成 す る.焼 結 体 を分 極 処 理 した もの は,圧 電 性 を示 す(チ タ ン酸 バ リウ ム も圧 電 性 を 示 す).チ 頭 文 字 を と っ てPZTと
タ ン酸 ジ ル コ ン酸 鉛 は,構 成 陽 イ オ ンの 化 学 式 の
呼 ばれ,圧 電 体 と し て最 も優 れ た 系 で あ る.
平 行 板 コ ン デ ンサ ー の 電 極 に現 れ る電 荷 を,電 極 面 積 で 割 っ た 値 が 電 気 変 位 Dで
あ る こ と は前 に述 べ た.電 気 変 位 は,加 え る電 界 に比 例 す るが(式(5.6),
図5.15(a)参
照),圧
5.15(b)参 照).し
電 体 に お い て は,応 力T[Nm−2]を
加 え て も生 じ る(図
た が って,圧 電 体 の 電 気 変 位 は D=εT・E+d・T
で 表 さ れ る.こ
こで,dは
圧 電 定 数(d定
数),εTは
(5.33) 応 力 一 定 の と きの 誘 電 率 で
あ る.圧 電 体 の誘 電 率 は,電 界 を加 え て も変 位 が 生 じな い よ う に(歪 み が 生 じ な い よ うに す る の と同 意)固 定 して あ る場 合(図5.16(a))と,自 る よ う に して あ る場 合(同
図(b))と
由 に変 位 が 起 こ
で は異 な る.応 力 一 定 とい う こ とは,歪 み
は 自 由 に 変 化 し う る状 態 で あ る とい う こ とを意 味 す る.変 位 が 固定 され た 状 態 で の 誘 電 率 は,εSで 表 され る. 一 方,応 力 を加 え る と それ に 比 例 して 歪 みS(単
(a) 図5.16
束 縛 され て い る と き(a)と
位 長 さ 当 た りの 変 位.m/m
(b) 束 縛 の な い とき(b)の
誘電率
とな る の で無 次 元 で あ る)が 生 じる の に加 え,圧 電 体 に お い て は電 界 を加 え る こ とに よ っ て も歪 み が 生 じ る.こ の こ と は, S=d・E+sE・T の式 で 表 さ れ る.sは 例 定 数 で あ る.こ
(5.34)
弾 性 コ ン プ ラ イ ア ン ス と呼 ばれ,応
こで,sの
肩 付 き のEは,加
力 と歪 み との 関 係 の比
え る電 界 が 一 定 で あ る こ と を意
味 す る.電 極 間 を シ ョー トさせ る か,一 定 の 電 圧 が加 わ っ て い る とき,応 力 の変 化 に よ り生 じ る電 荷 は回 路 を通 っ て変 化 す る の で,電 気 変 位 は そ れ に応 じて変 化 す る.こ の よ う な状 態 で の 弾 性 コ ンプ ラ イ ア ンス がsEで
あ る.一 方,電 極 間 を
解 放 し て あ る とき は 異 な った 弾 性 コ ンプ ラ イ ア ン ス の 値 を示 す.こ の と き電 荷 の 変 化 は起 こ ら な い の で,電 気 変 位 は一 定 で あ る.こ の場 合 の弾 性 コ ン プ ラ イ ア ン ス は,電 気 変 位 一 定 の と きの 値 とい う意 味 でsDで 異 な る の で,異
条件 が
な っ た 値 とな る.
式(5.33)と 式(5.34)はd定 E,T,Sな
表 され る.sEとsDは
数 を使 っ た 関 係 式 な の でd形
式 と 呼 ば れ る.D,
どの 値 の どれ を独 立 変 数 と し,ど れ を 従 属 変 数 とす るか に よ っ て,圧
電 特 性 は,d形
式 の ほ か に,e形
式,g形
式,h形
式 に よ っ て も表 す こ とが あ る.
圧 電 体 に交 流 電 圧 を加 え る と振 動 す る.物 体 は そ の 形 状 に よ り,種 々 の機 械 的 共 振 を もつ.共 振 周 波 数 付 近 の交 流 を加 えた と き,圧 電 体 は 強 く共 振 し,そ の影 響 は 電 気 的 特 性 に は ね 返 っ て 現 れ る.図5.17は と きの,イ
圧 電 体 に加 え る周 波 数 を変 え た
ン ピー ダ ンス の 絶 対 値 と周 波 数 との関 係 を示 した もの で あ る.共 振 周
波 数 付 近 で イ ン ピ ー ダ ンス が い っ た ん 急 激 に減 少 し,次 に急 激 に上 昇 す る.さ
ら
に周 波 数 が 増 加 す る と,通 常 の誘 電 体 の 周 波 数 依 存 性 と 同 じ変 化 に戻 る.物 体 の 形 状 に よ り種 々 の共 振 モ ー ドが あ る た め,そ れ ぞ れ の 共 振 点 付 近 で 同 様 の変 化 が 観 察 され る.圧 電 体 の機 械 的 共 振 が 電 気 的 特 性 に反 映 され る こ と を利 用 して,圧
図5.17
圧電体の周波数特性
電 体 を周 波 数 フ ィル タ ー や,発 振 素 子 とす る こ とが 可 能 で あ る. 圧 電 体 の 各 振 動 モ ー ドで の 共 振 周 波 数 は,そ の モ ー ドで の 音 波 の 伝 播 方 向 の 寸 法 に反 比 例 す る.そ の比 例 定 数 を周 波 数 定 数 と呼 ぶ. 5.1.6 焦
電
体
自発 分 極 を も って い て,温 度 に よ りそ の 大 き さ が変 わ る物 質 を 焦 電 体 と呼 ぶ. 両 面 に電 極 を施 した 焦 電 体 の 自発 分 極 の 大 き さ が変 化 す る と,そ れ と釣 り合 うた め の 電 極 の電 気 量 が 変 化 す る.電 極 間 を導 線 で結 ん で お く と,電 流 が 生 じ る(図 5.18).こ
れ が 焦 電 流 で あ る.焦 電 体 を薄 片 に して 両 面 に 電 極 を つ け,赤 外 線 を
吸収 しや す い よ う に黒 色 の塗 料 を塗 る と,赤 外 セ ンサ ー とす る こ とが で き る.図 5.19の
よ う な構 成 で セ ン サ ー の前 を人 が 横 切 る と,セ ンサ ー の 温 度 が わ ず か に
変 化 し,焦 電 流 が 発 生 す る.こ の電 流 を引 き金 と して,警 報 機 を作 動 させ た り, 自動 ドア を動 作 させ た りす る電 気 回路 に 接 続 され る.実 際 の 使 用 で は,鏡
と組 み
合 わ せ て方 向性 や 感 度 を改 善 し て い る. 焦 電 体 に お い て は,自 発 分 極 の 温 度 依 存 性 が 大 きい ほ ど,同
じ温 度 変 化 に対 し
て大 き な電 流 が生 じ る.単 位 温 度 変 化 当 た りの 自発 分 極 の 変 化 は焦 電 係 数 と呼 ば れ,次
式 で定 義 され る.
こ こで,dTは
微 小 温 度 変 化,dPs[Cm−2]は
それ に伴 う 自発 分 極 の 変 化 分 で あ
る.焦 電 体 の温 度 を一 定 速 度 で 変 化 さ せ る と,焦 電 流 が 発生 す る.電 流Iは,
(5.35) で あ る.た
だ し,Qは
度 をU[℃s−1]と
生 じ る 電 気 量,tは
時 間,Aは
電 極 面 積 で あ る.昇
温速
お く と,
(5.36)
図5.18
焦電 流
焦 電 体 の 温 度 を変 え た と き電 流 が 流 れ る.
図5.19
焦 電 型 赤 外 線 セ ンサ ー
こ れ よ り,
(5.37) した が っ て 焦 電 係 数 は
(5.38) に よ り求 め られ る.焦 電 係 数 の単 位 は[C
m−2K−1]で
あ る.
電 極 を施 した 薄 板 焦 電 体 に赤 外 線 が 当 た っ た瞬 間,微 小 な 温 度 変 化 が 生 じ,電 極 間 に電 圧 が生 じ る.発 生 す る電 圧 を照 射 赤 外 線 強 度 で 除 い た値 は,感 度Rvで あ る. 5.2 導 電 材 料 セ ラ ミ ック ス は,歴 史 的 に は主 と して 絶 縁 材 料 と して使 用 され て きた.し 近 年,各
種 セ ン サ ー,サ
かし
ー ミス タ ー,透 明 電 極,燃 料 電 池 な どに お い て 電 気 伝 導
性 を応 用 した セ ラ ミ ック ス材 料 が 多 く用 い られ て い る.本 章 で は電 気 伝 導 の メ カ ニ ズ ム を明 らか に す る と と も に,そ の応 用 につ い て も触 れ た い. 5.2.1 電 子 伝 導 性 とエ ネ ル ギ ーバ ン ド構 造 Li原 子 の電 子 配 置 は(1s)2(2s)1で 軌 道 と反 結 合 軌 道 に分 か れ,パ る.3つ
のLi原
のLiが
ウ リの 原 理 に従 い,結
子 の場 合 は 結 合 軌 道,非
道 が で き,電 子 は結 合 軌 道 に2個,非 え ばn個
あ り,2つ
のLi原 子 が 集 ま る とn個
結 合 軌 道,反
近 づ く と2s軌 道 は結 合 合 軌 道 に2つ
の電 子 が 入
結 合 軌 道 の3つ
の分 子軌
結 合 軌 道 に1個 入 る.多 数 のLi原 の 分 子 軌 道 が で き るが,も
子,例
はや 個 々 の 分 子 軌
道 は 区 別 で き ず,帯
状 に な り,そ
の 様 子 を 図5.20に
示 し た.こ
band)と
い う.し
の 半 分 が 電 子 で 満 た さ れ て い る状 態 に な る.こ
の よ う な 軌 道 の 帯 を エ ネ ル ギ ー バ ン ド(energy
か も 半 分 は 空 で あ る か ら,温
動 き 回 る こ と が で き る の で,電
度 が 低 い と き で も電 子 は 自 由 に
気 伝 導 性 に 優 れ る.温
ギ ー に よ り 電 子 の 運 動 が 激 し く な り,電
度 が 高 くな る と,熱
エネル
子 ど う しの 衝 突 の た め伝 導 度 が 下 が る こ
と に な る. 一 方,共
有 結 合 か ら な るSiの
混 成 軌 道 を 形 成 し て い る.こ 合 軌 道 を 生 じ,結 ま で あ る.Si原
価 電 子 は(3s)2(3p)2と
れ が2原
合 軌 道 は8個
子 集 ま る と,4つ
band)と
呼 ん で い る.金
道 と 反 結 合 軌 道 の バ ン ドの 間 に は,電 bidden
band)と
106kJ
mol−1,Geで64.6kJ
体 で あ る が,温
gap)と
band),反
もつ よ う 結 合 軌道 幅
属 の 場 合 と異 な る の は,結
呼 ば れ る.こ
mol−1で
あ る.こ
の エ ネ ル ギ ー ギ ャ ップ
の バ ン ド ギ ャ ッ プ は,Siで
れ ら は,低
温 で は ほ とん ど絶 縁
度 が 上 昇 す る と電 子 が 価 電 子 帯 か ら伝 導 帯 に 励 起 さ れ,電
図5.20
金 属Liに
合軌
子 が と ど ま る こ と が で き な い 禁 制 帯(for
呼 ば れ る 領 域 が 存 在 す る こ と で あ る.こ
は バ ン ド ギ ャ ッ プ(band
の反 結
結 合 軌 道 は空 の ま
れ ぞ れ の 軌 道 は あ る 幅(帯)を
の 結 合 軌 道 幅 を 価 電 子 帯(valence
を 伝 導 帯(conduction
のsp3
の 結 合 軌 道 と4つ
の 電 子 で 満 た さ れ て い る が,反
子 が 多 数 に な る と,そ
に な る(図5.21).こ
な っ て お り,4つ
お け る分 子 軌 道 か ら のバ ン ド形成 過 程
気伝 導
図5.21
(a) 金
(b) 半 導 体
属
図5.22
性 が 現 れ る.こ n型,p型
シ リコ ン の分 子 軌 道 か らの バ ン ド形 成 過 程
バ ン ド構造 に よ る金 属,半
れ を 真 性 半 導 体(intrinsic
導 体,絶
縁体 の 分 類
semiconductor)と
呼 び,後
に触 れ る
半 導 体 と 区 別 し て い る.
イ オ ン 結 晶 で は,陽
イ オ ン,陰
配 置 を 担 っ て い る た め,両 NaClの
(c) 絶 縁 体
場 合 で878kJ
イ オ ン が 電 子 を や り と り し て,と
者 の エ ネ ル ギ ー ギ ャ ッ プ は 非 常 に 大 き く,例
mol−1と,Siの
以 上 述 べ た 金 属,半
も に閉 殻 電 子
導 体,イ
約10倍
えば
と な っ て い る.
オ ン 結 晶 の エ ネ ル ギ ー バ ン ド の 特 徴 を 図5.22に
ま と め て 示 し た. 5.2.2
絶
縁
性
電 気 伝 導 材 料 と い う と,当
然 半 導 体 の よ う な 材 料 が 脚 光 を浴 び る こ と に な る
が,そ れ らの機 能 を十 分 に果 た す に は,絶 縁 材 料 の存 在 が 不 可 欠 で あ る.絶 縁 性 セ ラ ミッ ク ス は そ う い っ た 意 味 で,古
くは絶 縁 碍 子,点
火 プ ラ グ,近 年 で は 回路
基 板 な ど に不 可 欠 な材 料 で あ る. 通 常,電 気 抵 抗 が108Ωcm以 誘 電 率,耐 電 圧,熱
上 の も の を 絶 縁 材 料 とい うが,用
膨 張 な ど も考 慮 す る 必 要 が あ る.特
途 によって は
に通 信 用 に使 用 され る
IC回 路 基 板 に は,高 周 波 特 性 が 重 要 に な る.こ れ は,高 周 波 電 界 の も とで 容 量 性 抵 抗 が 下 が る た め,絶 縁 性 能 が 保 て な くな るか らで あ る.そ れ ゆ え,高 周 波 用 絶 縁 材 料 に は,比 誘 電 率 が小 さい,誘 電 損 失 が 小 さ い,直 流 抵 抗 が大 きい な どの 性 能 が 要 求 され る. 絶 縁 材 料 と し て は,ア ル ミナ(Al2O3)-ム タ イ ト(MgO・SiO2)-フ
ラ イ ト(3Al2O3・2SiO2)系,ス
ォ ル ス テ ラ イ ト(2MgO・SiO2)系
る.回 路 基 板 と してAl2O3が
使 用 され て き たが,LSIの
に対 応 す る材 料 と し て,Al2O3よ
テア
な どが使用 され て い 高 集 積 化,高
り熱 伝 導 性 に 優 れ るAlNが
密度化 な ど
注 目 さ れ て い る.
ま た,最 近 で は 銅 に 近 い 熱 伝 導 性 を備 え た 高 熱 伝 導 ・電 気 絶 縁 性SiCセ ク基 板 が 開 発 され て い る.通 常,SiCは102∼105Ωcmの に1wt%のBeOを
添 加 し,ホ
5.2.3 半
導
比 抵 抗 を 示 す が,こ
ッ トプ レ ス 法 に よ り焼 結 す る と,1010Ωcm以
の 比 抵 抗 と な り,熱 伝 導 性 もAlの Al2O3基 板 の 約20倍
ラ ミッ
とな る.表5.1に
値(239W
m−1K−1)を
上
上 回 り,IC用92%
代 表 的 な 回路 基 板 の 特 性 を比 較 した.
性
真 性 半 導 体 に つ い て は 前 項 で 説 明 した が,高 純 度 のSiに 微 量 のPやBの 物 を添加 す る こ と に よ り,n型 合,Siよ
れ
半 導 体 やp型
半 導 体 が 得 られ る.n型
半 導 体 の場
り1個 余 分 の 電 子 は電 子 で 満 た さ れ た 価 電 子 帯 に 入 れ ず,伝 表5.1 各種基板材料の主 な特性
不純
導帯 よ り
や や 低 い と こ ろ の エ ネ ル ギ ー 準 位 に存 在 す る と考 え る.こ の 順 位 は ドナ ー 準 位 (donor level)と 呼 ば れ,こ の 準 位 に あ る電 子 は,伝 導 帯 に容 易 に励 起 され る. 一 方,価 電 子 が1個
少 な いBを
添 加 した 場 合,隣
接 す る4個 のSiと 共 有 結 合
す る に は,最 外 殻 電 子 が1つ 不 足 す る.こ の 電 子 が不 足 した 状 態 の準 位 は,ア セ プ ター 準 位(acceptor
ク
level)と 呼 ば れ,価 電 子 帯 よ りわ ず か に 高 い と こ ろ に
位 置 す る.価 電 子 帯 に あ る電 子 が ア ク セ プ ター 準 位 に励 起 す る と,価 電 子 帯 に正 孔 が 形 成 さ れ る.こ の正 孔 が 電 気 伝 導 の キ ャ リア とな る半 導 体 を,p型 い う.n型
半 導 体 と,p型
と図5.23の
半 導体 と
半 導体 の エ ネ ル ギ ー 準 位 を バ ン ド構 造 に 基 づ い て 示 す
よ うに な る.
一 般 に,電 気 伝 導 度 σ は σ=nμe
で表 され,nは
キ ャ リア 濃 度,μ
は移 動 度,eは
(5.39)
キ ャ リア の 電 荷 で あ る.ま ず,
半 導 体 の 電 気 伝 導 を 担 う キ ャ リア 濃 度 を検 討 して み よ う.絶 対 温 度OKに
おい
て,真 性 半 導 体 で は電 子 はパ ウ リの排 他 則 に従 っ て あ る エ ネ ル ギ ー準 位 まで つ ま っ て い く.こ の エ ネ ル ギ ー準 位 を,フ が 上 昇 す る に つ れ て 電 子 は励 起 され,あ 準 位 に分 布 す る.い fe(E)は,フ
ェル ミ準 位(Fermi
level)と
い う.温 度
る割 合 で フ ェ ル ミ準 位 以 上 の エ ネル ギ ー
ま,半 導 体 の 電 子 が あ る エ ネ ル ギ ー 準 位Eに
存 在 す る確 率
ェ ル ミの 分 布 関 数 に よ っ て表 され る.
(5.40) こ こ で,EFは
フ ェ ル ミ準 位,kは
図5.23
ボ ル ツ マ ン 定 数 で あ る.こ
不 純 物 半 導 体 に お け る 不純 物 準 位
こ で,室
温付近 で
(a) T=0
図5.24
は(E−EF)/kT≫1で
(b) T>0
自 由電 子 の 密 度 分 布 と温度 の 関 係
あ る か ら,fe(E)≒exp{−(E−EF)/kT}と
近 似 で き,
ボ ル ツ マ ン 分 布 と 同 じ に な る. 一 方,金
属 の 自 由 電 子 近 似 理 論 か ら,単
の エ ネ ル ギ ー 準 位 密 度 を状 態 密 度(density
位 体 積 当 た り,単 of states)と
位 エネル ギー当た り
い う が,伝
導帯 中の状
態 密 度gc(E)は
(5.41) で 与 え ら れ る.こ
こ で,me*は
電 子 の 有 効 質 量,hは
プ ラ ン ク 定 数,Ecは
帯 の 下 端 の エ ネ ル ギ ー で あ る.図5.24にfe(E)とgc(E)の 具 体 的 に 伝 導 帯 中 の 電 子 の 濃 度neを
伝 導
関 係 を 示 し た.
求 め る に は,fe(E)とgc(E)の
積 をEc
か ら ∞ ま で 積 分 す れ ば よ い.
(5.42) 上式で
と した が,こ
のNcは
伝導 帯 中の有効 状 態 密度
と呼 ば れ る.正 孔 に つ い て も同 様 に計 算 で き る.正 孔 の 占有 確 率fh(E)は fh(E)=1−fe(E) で 与 え られ る.し た が っ て,価 価 電 子 帯 の 状 態 密 度gv(E)の
電 子 帯 中 の 正 孔 の 濃 度nhは
(5.43) 占有 確 率fh(E)と
積 を,− ∞ か ら価 電 子 帯 の 上 端 の エ ネ ル ギ ーEv
まで 積 分 す れ ば よ い.
(5.44) Nvは 価 電 子 帯 の有 効状 態 密 度 で, mh*は 正孔 の有効 質量で あ る.そ れゆ え,
で あ る.こ こで,
nenh=NcNv
と得 ら れ る.こ ャ ッ プEgで
こ で,真
exp{−(Ec−Ev)/kT}
性 半 導 体 はne=nhで
(5.45)
あ り,ま
た(Ec−Ev)は
バ ン ドギ
あ る か ら, ne=nh=(NcNv)1/2exp(−Eg/2kT)
と な る.ま
た,式(5.42)と
(5.46)
式(5.44)にne=nhの
条 件 を 当 て は め る と,式(5.47)
が 得 ら れ る.
(5.47) こ れ は,真
性 半 導 体 の フ ェ ル ミ準 位 が,禁
制 帯 の ほ ぼ 中 央 に位 置 す る こ とを意 味
し て い る. n型
半 導 体 の フ ェ ル ミ 準 位 は 式(5.47)で,Ev,Nvを
ナ ー の 有 効 状 態 密 度Ndに
ドナ ー 準 位Edお
よ び ド
置 き 換 え れ ば よ い.
(5.48) この とき の電 子 の キ ャ リア濃 度 は ne=(NcNd)1/2exp{−(Ec−Ed)/2kT} ま た,p型
半 導 体 の フ ェ ル ミ準 位 は,Ec,Ncを
ア ク セ プ タ ー の 有 効 状 態 密 度Naに
(5.49)
そ れ ぞ れ ア ク セ プ タ ー 準 位Ea,
置 き換 え て
(5.50) が 得 ら れ る.同
様 に,正
孔 の キ ャ リア 濃 度 は
nh=(NvNa)1/2exp{−(Ea−Ev)/2kT}
(5.51)
と な る. 実 際 の 伝 導 度 は σ=nμeで 5.25に
示 し た よ う に2つ
は 式(5.49)の(Ec−Ed)に
あ る か ら,こ
れ を1/Tに
の 領 域 か ら な る.す 相 当 し,こ
5.2.4
温 領域 で
線 の勾 配 は真性 半 導 体 と して
対 応 し て い る.
セ ラ ミッ ク スの 電 子 伝 導 とそ の 応 用
セ ラ ミ ッ ク の 電 子 伝 導 は,不 多 い.
温 領 域 で の直 線 の 勾 配
の 領 域 を 不 純 物 領 域 と い う.高
は 電 子 は 価 電 子 帯 か ら伝 導 帯 に 励 起 さ れ る た め,直 の バ ン ドギ ャ ッ プEgに
対 し て プ ロ ッ トす る と 図
な わ ち,低
純 物 や 格 子 欠 陥 な ど の 存 在 に よ っ て 生 じ る場 合 が
図5.25
n型 半 導 体 に お け る キ ャ リア 濃 度 の 温度変化
代 表 的 な 格 子 欠 陥 に よ る 電 気 伝 導 を 検 討 す る.Mn1−xO,Fe1−xO,Co1−xOな どM1−xOで
表 記 さ れ る 例 で,陽
酸 化 さ れ て い る.こ
イ オ ン 欠 損 を 生 成 す る と と も に,M2+がM3+に
の 反 応 はKroger-Vink記
号 を 用 い る と,以
下 の ように書 け
る. (1/2)O2(g)→Oo×+VM×
こ こで,2つ ろ で,こ
の正 孔hが
陽 イ オ ン空 孔 に トラ ップ され た 状 態 と考 え て い る.と
VM′
と書 け る.こ
と な る.こ
す る と,質
(5.52b)
→VM″+h
こ で,式(5.52a)∼(5.52c)の
(5.52c)
平 衡 定 数 をK1,K2,K3と
し,酸
素分圧
量 作 用 の法 則 に よ り
こ で,[V],[h]は
そ こ で 主 欠 陥 がVM′
[VM×]=K1p(O2)1/2
(5.53a)
[VM′][h]=K2[VM×]
(5.53b)
[VM″][h]=K3[VM′]
(5.53c)
そ れ ぞ れ 欠 陥 の 濃 度,正
の と き,[h]=[VM′]と
孔 の 濃 度 を 表 し て い る.
近 似 で き る か ら,
[h]=(K1K2)1/2p(O2)1/4
と な り,正 孔 に よ る伝 導 度 は 酸 素 分 圧 の1/4に す る と,
こ
の正 孔 が 局 在 化 しな い場 合 を考 慮 す る と VM→VM′+h
をp(O2)と
(5.52a)
(5.54)
比 例 す る.ま
た 主 欠 陥 をVM″ と
[h]=2[VM″]=(2K1K2K3)1/3p(O2)1/6
が 得 ら れ,hはp(O2)の1/6に よ う にCo1−xOに
(5.55)
比 例 す る こ と が わ か る.例
お い て,主
欠 陥 は 高 酸 素 分 圧 側 でVM′,低
え ば,図5.26で
示す
酸 素 分 圧 側 でVM″
で
あ る こ と が 知 られ て い る. 一 方,陰
イ オ ン 欠 損 を 有 す る 酸 化 物MO1−xの
子 の トラ ッ プ の 状 態 に よ り以 下 の3通
場 合 を 検 討 す る.こ
りが 考 え ら れ る.
Oo×
→(1/2)O2+Vo×
Vo×
→Vo・+e
(5.56a) (5.56b)
Vo・=Vo‥+e
(5.56c)
上 記 の 反 応 の 平 衡 定 数 を そ れ ぞ れK1′,K2′,K3′ と し,質 主 欠 陥 がVo・
と な り,欠
子 の キ ャ リ ア 濃 度[e]は
比 例 し て 変 化 す る.陰
,NTCサ
ー ミス タ な ど,い
ろ い ろ な 用 途 に 応 用 さ れ て い る.
な どが 知 ら れ て い る.例
え ば,強
添 加 す る こ と に よ り,室
温 でn型
強 誘 電 相 − 常 誘 電 相 転 移 温 度(キ の 現 象 は,PTCR
効 果 と し て 知 ら れ て い る.こ
図5.26
酸 素 分 圧 の −1/4,
れ らの電 子 伝 導 を利 用 し て各 種 セ ンサ
セ ラ ミ ッ ク ス の 特 殊 な 電 気 伝 導 特 性 の 例 と し て,バ
5.27).こ
(5.58)
イ オ ン 欠 損 を 伴 う こ の ケ ー ス は,TiO2−x
や 遷 移 金 属 酸 化 物 で し ば し ば み ら れ る.こ ー
(5.57)
の と き,[e]=2[Vo‥]=(2K1′K2′K3′)1/3p(O2)−1/6
陥 の 解 離 状 態 に よ り,電
あ る い は −1/6に
量 作 用 を 適 用 す る と,
の と き,[e]=[Vo・]=(K1′K2′)1/2p(O2)−1/4
主 欠 陥 がVo‥
の と き,電
リ ス タ 特 性,PTCR特
誘 電 体 と し て 知 ら れ るBaTiO3に 半 導 体 に な る.し ュ リ ー 点)付
(positive
か も,温
性
希土類元素 を
度 を上 げ て い く と
近 で 急 激 に 抵 抗 が 高 く な る(図
temperature
coefficient
の 現 象 を 説 明 す る の に,Heywangは,粒
Co1−xOの 電 気 伝 導 度 の 酸 素 分 圧 依 存 性
of resistance) 界 の ポテ
図5.27
種 々 のPTCRサ
ー ミス タ の 抵 抗 の 温 度 特 性
ン シ ャ ル(φ)は
(5.59) で 表 せ る と し た.こ る.抵
こ で,Ndは
ドナ ー の 濃 度,ε
は 比 誘 電 率,lは
障 壁 の幅 で あ
抗 率 ρは
(5.60) で 表 せ る か ら,キ ュ リー点 で 急 激 に比 誘 電 率 が 減 少 す る と,φ は増 加 し,抵 抗 は 増 加 す る.こ の 特 異 な現 象 を利 用 して,自 己 制 御 型 ヒー タや 保 温 器 に応 用 さ れ て い る.一 方,Bi2O3を
添 加 したZnO焼
結 体 は 結 晶 粒 界(結
晶 粒 子 間 の境 界)に
電 子 伝 導 に対 す るバ リア が 存 在 し,あ る電 圧 以 下 で は絶 縁 体 と して振 る舞 い,そ れ 以 上 で は急 激 に 電 流 を流 す 性 質 を も って い る.こ れ は バ リス タ素 子 と して知 ら れ,回 路 保 護 素 子 な ど と して 使 用 され て い る.こ れ らは い ず れ も焼 結体 の粒 界 の 存 在 が 重 要 な働 き を し て い る例 で あ る. 5.2.5 イ オ ン伝 導 体 電 気 伝 導 の電 荷 担 体 が 電 子 で は な くイ オ ン の と きの伝 導は,イ れ,特
オ ン伝 導 と呼 ば
に酸 化 物 イ オ ンが 電 荷 担 体 で あ る場 合,酸 化 物 イ オ ン伝 導 体(oxide
conductor)と
ion
い う.酸 化 物 イ オ ン 伝 導 体 は,固 体 電 解 質 型 燃 料 電 池(solid
oxide fuel cell: SOFC),酸 メ ン ブ レ ン(膜)な
素 セ ンサ ー を は じめ とす る各 種 セ ン サ ー,化 学 反 応
ど多 くの応 用 が 期 待 さ れ るた め,活 発 な研 究 が 行 わ れ て い る.
a. 理 論 的 背 景
電 気 伝 導 度 に 関 す る式(5.39)を,イ
オ ン伝 導 体 の 電 気 伝
導 度 σiに 適 用 す る と σi=niqiμi と 書 か れ る.こ
こ で,ni,qi,μiは
動 度 で あ り,添
え 字 のiは
す る 移 動 度 が,結
(5.61)
そ れ ぞ れ 伝 導 キ ャ リ ア の 濃 度,電
伝 導 イ オ ン 種 を 表 し て い る.ま
晶 中 の 自 己 拡 散 係 数Dと
の 式 で 関 係 づ け ら れ る こ と は4.4.8項
た,イ
荷 お よび 移
オ ン伝 導 を支 配
次 式 の ネ ル ン ス ト-ア イ ン シ ュ タ イ ン
で す で に 述 べ た.す
な わ ち,
(5.62) で あ る.そ れ ゆ え,電 気 伝 導 度 と拡 散 係 数 は
(5.63) と関 係 づ け られ る.一 方,拡 散 係 数 は
(5.64) で 与 え ら れ る.こ
こ で,ΔGmは
移 動 に 際 し て の 自 由 エ ネ ル ギ ー 変 化 で, ΔGm=ΔHm−TΔSm
で あ る.式(5.64)と
式(5.65)を
式(5.63)に
(5.65)
代 入 す る と,最
終的 に
(5.66) が 得 ら れ る.式(5.66)に がC個
あ り,可
お い て,ΔHm=Eaと
動 イ オ ン の 占 有 率nc=ci/Cが
し,エ
ネ ル ギ ー 的 に等 価 な サ イ ト
温 度 に依 存 し な い と す る と,ATは
(5.67) と な る.式(5.67)を
よ り詳 細 に検 討 す る た め に,D。
の 内 容 の 検 討 を 試 み る.
2つ の 原 子 が 同 じ サ イ ト を 占 め る こ と が で き な い こ と か ら,0
隣 の 等 価 サ イ トが 空 で あ る 確 率,zは
は ジ ャ ン プ パ ス に 関 係 し た 幾 何 学 的 因 子 を 示 す.ま
たあ
与 え ら れ る.
隣 の 等 価 サ イ ト数,f た,ジ
ャ ン プ の 振 動 数
ν(E)は
(5.68) で 表 さ れ,ν。 は 可 動 イ オ ン の 光 学 モ ー ド振 動 数 で,1012∼1013Hzの
範 囲 に あ る.
電 界Eの
存 在 に よ り,電
(ΔHm−qElx/2)は,反 り低 い.こ
界 方 向 に イ オ ンが ジ ャ ン プ す る と きの エ ン タ ル ピ ー
対 方 向 へ の ジ ャ ン プ の エ ン タ ル ピ ー(ΔHm+qElx/2)よ
こ で,lxは
隣 の 等 価 サ イ ト 間 の ジ ャ ン プ 距 離lのx成
テ ン シ ャ ル エ ネ ル ギ ー 障 壁 はlx/2で υxは,lx/2と,電
最 大 に な る.電
分 で あ り,ポ
界 方 向への正 味 の移動速 度
界 方 向 と反 対 方 向 へ の ジ ャ ン プ確 率 の 差 との 積 で 表 され る の
で
(5.69) こ こ で,qElx/2≪kTの
と き,exp(qElx/2kT)≒qElx/2kTと
近 似 で き る の で,
次 式 が 得 ら れ る.
(5.70) 立 方 晶 で はlx2=ly2=lz2で か ら,次
あ る か ら,lx2/2はl2/6と
な り,μi=υx/E=qD/kT
式 が 得 ら れ る.
(5.71) 結 局,式(5.67)は
(5.72)
と な る.し
た が っ て,σ を大 き くす る に は,
① 活 性 化 エ ネ ル ギ ーEaを ②nc(1−nc)を
小 さ くす る
大 き くす る:高 キ ャ リア濃 度
③ 等 価 サ イ ト間 の ジ ャ ン プ距 離(l)を
大 き くす る
こ とな どが 有 効 で あ る. b. 代 表 的 な イ オ ン伝 導 体
セ ラ ミ ック ス の イ オ ン伝 導 体 の 種 類 と し て は,
酸 化 物 イ オ ン,陽 イ オ ン,プ ロ トン伝 導 体 な どが 知 られ,そ の イ オ ン伝 導 度 は結 晶構 造 と密 接 に 関係 して い る. ⅰ) 酸 化 物 イ オ ン伝 導 体: 通 常,酸 化 物 は 酸 化 物 イ オ ンが 最 密 充〓 した 隙 間 に陽 イ オ ンが 入 っ た 構 造 で あ る た め,酸 化 物 イオ ン が 移 動 す る に は,欠 損 した 酸 化 物 イ オ ン サ イ トの 存 在 が 不 可 欠 で あ る.こ の 欠 損 サ イ トを介 して イ オ ンが ジ
ャ ン プ す る 場 合,こ
れ を 空 孔 機 構(vacancy
mechanism)と
い う.
酸 化 物 イ オ ン 伝 導 体 の 代 表 例 と し て,ZrO2に8mol%のY2O3を 安 定 化 ジ ル コ ニ ア(YSZ)が 酸 素 欠 損 が 生 じ る.す
有 名 で あ る.こ
の 場 合,2原
固溶 させ た 子 のY当
た り,1個
の
なわち
(5.73) と書 け る. 図5.28に,ジ
ル コ ニ ア にCaOやY2O3な
イ オ ン伝 導 度 変 化 を 示 す.添 度 が 増 加 し て い る.し
ど の 低 原 子 価 元 素 を 添 加 し た 系 の,
加 量 の 少 な い 領 域 で は,添
か し,添
加 量 と と もに イ オ ン伝 導
加 量 が あ る 程 度 以 上 に な る と,酸
す る に も か か わ ら ず,逆
に 伝 導 度 が 低 下 す る 傾 向 が あ る.
こ の 原 因 と し て は,有
効 電 荷 が 正 のVo‥
と負 のCaやYの
Yzr′ 間 に 生 じ る ク ー ロ ン 力 に よ っ て,(Cazr″-Vo‥)タ 荷 担 体 で あ るVo‥ し か し,仮 る が,低
素欠損量 が増加
置 換 イ オ ンCazr″, イ プ の 会 合 が 起 こ り,電
が 特 定 の 位 置 に 固 定 さ れ た た め と 一 般 的 に 考 え ら れ て い る.
に(Cazr″-Vo‥)の
会 合 が 生 じ た と し て も,伝
下 す る と は 考 え に くい.一
系 な ど で 認 め ら れ た よ う に,ZrO2相
方,伝
導 度 の増 加 率 は 減 少 す
導 度 の 低 下 の 原 因 と し て,ZrO2-CaO
とCaZr2O5相
の 間 に 存 在 す るCaZr4O9相
な
ど が 微 少 領 域 で 析 出 し た た め と い う議 論 も あ る. 酸 化 物 イ オ ン伝 導 体 と し て,ジ イ ト構 造 を 有 す る(La, ⅱ)
Sr)(Ga,
陽 イ オ ン伝 導 体:
ル コ ニ ア 以 外 にCe1-xSmxO2-δ Mg)O3-δ
系やペ ロ ブスカ
系 な どが 知 ら れ て い る.
室 温 で ウ ル ツ 鉱 型 β 相 で あ るAgIは,147℃
以上 の
図5.28 種々の酸化物 イオ ン伝導体 の 酸素欠陥 と伝導度特性
温 度 で 立 方 晶 の α相 に 転 移 し,Ag+の α-AgIは,体
心 立 方 を 形 成 し て い るI− の 周 り にAg+が
トが 単 位 格 子 中 に42個 とが で き る た め,高 は,室
あ り,Ag+が
β-Al2O3は
い 伝 導 度 を 示 す.こ
層 状 構 造 か ら な り,組
内 で は4個
占 め る こ とが で き る サ イ
加 え て 安 定 化 さ せ たRbAg4I5
示 す.
れ は,AlとOで
の 酸 素 中3個
つ く る ス ピネ ル ブ ロ ック の
の 層 内 がR+イ
が 欠 け て お り,そ
た が っ て,β-Al2O3は
オ ンの高 速伝 導パ ス
の 欠 損 位 置 の 半 分 にNa+
面 に平 行 方 向 で 高 い伝 導 性 を
直 方 向 で は 伝 導 度 が 数 桁 小 さ く な る.
一 方,Na3Zr2Si2PO12で
表 せ るNASICON(ナ
目 状 に ト ン ネ ル が 走 っ て い る た め,Na+の S cm−1に
の
成 式 がR2O・11Al2O3(R=Na,K,Ag,Li)で
層 が 挟 ま れ た 構 造 で あ り,こ
が 入 っ て い る(図5.29).し 示 す が,垂
れ にRbIを
cm−1)を
表 さ れ る 陽 イ オ ン伝 導 体 で あ る.こ
と な る.層
以 上 高 く な る.こ
そ の サ イ トの 中 を液 体 の よ う に動 き 回 る こ
温 で も 高 い 伝 導 度(∼0.12S
間 にRとOの
イ オ ン 伝 導 度 が3桁
シ コ ン)の
結 晶 中 に は三 次 元 網
伝 導 度 は 非 常 に 高 く,室
温 で ∼0.3
も な る.
プ ロ ト ン 伝 導 体 は 当 初,HU2PO4・4H2O,H3(PMo12O40)・nH2Oお H3(PW12O40)・29H2Oな
ど,熱
の 伝 導 度 は 室 温 で10−1∼10−4S 交 換 に よ りH3O+,あ
よ び
的 に 不 安 定 な 水 和 物 に お い て 見 出 さ れ て お り,そ cm−1で
る い はNH4+で
あ る.一
方,β-Al2O3中
置 換 す る と,比
近 に な り,ペ
でH2OやNH3を
ロ ブ ス カ イ ト型 構 造 を 有 す る
SrCe0.95Yb0.05O3− δは 水 蒸 気 が 存 在 す る と
図5.29
イオ ン
較 的 高 い伝 導 度 を示 す プ ロ
ト ン イ オ ン 伝 導 体 に な る こ と も知 ら れ て い る が,200∼400℃ 失 っ て 分 解 す る 欠 点 が あ る.最
のNa+を
β-ア ル ミナ の イ オ ン配 列
H2O+2h→2H++(1/2)O2 の 反 応 に よ り,高
い プ ロ トン 伝 導 度(∼10−2S
(5.74) cm−1)を
示 す こ とが 報 告 され て い
る. 5.2.6
イ オ ン伝 導 体 の応 用
イ オ ン伝 導 体 は 高 い 温 度 で 種 々 の 機 能 を 発 揮 す る た め,高
温度の ガスセンサー
や 電 池 な ど に 応 用 さ れ て い る. a. 二 次 電 池 る.β-Al2O3を
挟 み,負
で 作 動 さ せ る.こ
で 示 さ れ る.外
二 次 電 池 へ の 応 用 の1つ
に,ナ
極 に 金 属 ナ ト リ ウ ム,正
ト リ ウ ム-イ
オ ウ電 池 が あ
極 に イ オ ウ を 用 い,300∼350℃
の とき の放 電 反 応 は (正 極) Na++(x/2)S+e→(1/2)Na2Sx
(5.75a)
(負 極) Na→Na++e
(5.75b)
部 か ら 逆 向 き に 電 流 を 流 せ ば,逆
反 応 に よ り充 電 さ れ る.こ
ト リ ウ ム-イ オ ウ 電 池 は 単 位 重 量 当 た り の 発 電 量 が 大 き く,従 倍 の 値 に 相 当 す る100∼200W
h kg−1の 発 電 量 を 示 す た め,エ
のナ
来 の鉛 蓄 電 池 の 数 ネル ギー貯蔵 用電
池 と し て 期 待 さ れ て い る. b. ガ ス セ ン サ ー
安 定 化 ジ ル コ ニ ア を 用 い た 酸 素 ガ ス セ ン サ ー は,自
車 の 排 気 ガ ス 中 の 酸 素 濃 度 を検 出 し,エ
動
ン ジ ン に 供 給 す る燃 料 と空 気 の 割 合 を 制
御 す る の に 使 用 さ れ て い る. この と き の電 極 反 応 は (正 極) O2+4e→2O2−
(5.76a)
(負 極) 2O2− →O2+4e で 表 さ れ,電
子 伝 導 が 存 在 し な い(酸
(5.76b)
素 イ オ ン輸 率=1)と
き,ネ
ル ン ス トの 式
か ら 次 式 の 起 電 力 を 生 じ る.
測定極側 参照極側 こ こ で,Rは
気 体 定 数,Fは
フ ァ ラ デ ー 定 数,Tは
参 照 極 側 は 大 気 で あ る の で,Po2′=0.21atmで c. 燃 料 電 池
燃 料 電 池(fuel
cell)は,一
絶 対 温 度 で あ る.一
(5.77) 般 に,
あ る. 方 の 極 に 酸 素 ガ ス,も
う一 方 の
極 に 水 素 や メ タ ノ ー ル な ど の 燃 料 を 送 り込 む と,次
式 の よ う な反 応 が 連 続 的 に起
こ り 発 電 さ れ る と い う 原 理 で あ る.図5.30に,燃
料 電 池 の 原 理 を模 式 的 に 示 し
た.
図5.30 固体電解質型燃料電池 の原理
(正 極)
(1/2)O2+2e→O2−
(負 極) H2+O2−
(5.78a)
→H2O+2e
(5.78b)
燃料電 池の起電力 は E=− で 与 え られ る.こ
こで,ΔGは
ΔG/nF
(5.79)
あ る.具 体 的 に は,ΔG=−228.6kJ
全 反 応 の 自 由 エ ネ ル ギ ー 変 化,nは mol−1,n=2で
反応 電子 数で
あ るか ら,E=1.1Vと
な る.
電 解 質 に酸 化 物 イ オ ン伝 導 体 の よ う な固 体 を 用 い た 燃 料 電 池 は,固 体 電 解 質 型 燃 料 電 池 と呼 ばれ,通 力 発 電 の20∼30%と
常1000℃
付 近 の 温 度 で 作 動 す る.発 電 効 率 は,通 常 の 火
比 較 し て50∼60%と
小 型 化 が 可 能 な た め,オ
高 く,有 害 ガ ス を ほ とん ど排 出 せ ず,
ンサ イ トで の 発 電 が 可 能 で あ る こ と,ま た 発 熱 す る熱 も
同 時 に利 用 で き る こ とか ら,コ ジ ェ ネ レー シ ョ ン(1つ
の エ ネ ル ギ ー か ら複 数 の
エ ネ ル ギ ー を 同 時 に取 り出 す こ と.こ の場 合,電 気 と熱)用
と して も期 待 さ れ て
い る. 5.3 磁 性 材 料 人 類 が 初 め て磁 気 的 性 質 を利 用 し始 め た の は,15世 れ は,マ
グネ タ イ ト(Fe3O4)と
で あ る.そ の後,磁
紀 中 頃 か ら で あ っ た.そ
呼 ばれ るセ ラ ミックスの方位磁 石 としての使用
性 材 料 の 利 用 は 通 信 機 器 の 発 達 に 伴 っ て 急 速 に 増 大 して い
る.本 節 で は磁 性 の起 源 か ら,そ の 特 性 に つ い て 解 説 す る. 5.3.1 磁 性 の起 源 原 子 内 の 電 子 は原 子 核 の 周 りを 回 転 す る と同 時 に,自 転(ス
ピ ン)し て い る.
物 質 の 磁 気 的 性 質 の 起 源 は,電
子 の 回 転 と 自 転 に 密 接 に 関 係 し て い る.原
子核 の
周 り を 回 転 は 円 電 流 に た と え ら れ る. a. 軌 道 磁 気 モ ー メ ン ト
−qと+qの
磁 極 が 距 離dだ
け離 れ て 存 在 す る
と き の ベ ク トル M=qd が 磁 気 モ ー メ ン ト(magnetic ン トの 単 位 は[Wb
m]と
moment)と
定 義 さ れ る.し
な る.Wb(ウ
ェ ー バ ー)は
磁 極 の 単 位 で あ り,電
の ク ー ロ ン[C]に
相 当 す る単 位 で あ る.し
の で,む
用 い て 磁 気 を 論 ず る 方 が 現 実 的 で あ る.単
し ろMを
気 モ ー メ ン トの 大 き さ を 磁 化 の 強 さ,あ ぶ こ と か ら も,磁 一 般 にi[A]の
か し,実
たが って磁気 モー メ
際 に は 磁 極qは
荷
存 在 しな い
位 体 積 当 た りの 磁
る い は 単 に 磁 化(magnetization)と
呼
気 モ ー メ ン ト と は 磁 石 の 強 さ の 尺 度 と理 解 で き る. 電 流 が 面 積S[m2]の
周 り を 回 る と き,そ M=μ
の 磁 気 モ ー メ ン ト(M)を
の円電流 は
。iS
も つ こ と が 知 ら れ て い る(図5.31(a)).こ
は 真 空 中 の 透 磁 率 で,4π
×10−7Wb
電 子 が 角 速 度 ω で 半 径rの 合 の 円 電 流 はeω/2π[A]に
A−1m−1(=Hm−1)*で
こ で,μ
あ る.い
ま,1個
円 周 上 を 等 速 円 運 動 し て い る 場 合 を 考 え る.こ 相 当 す る か ら,軌
。 の
の場
道 運 動 に よ る 磁 気 モ ー メ ン トM
は M=− と な る.式(5.80)の
μ。(eω/2π)πr2=−
マ イ ナ ス 符 号 は,回
μ。eωr2/2
(5.80)
転 す る 粒 子 が 負 の 電 荷 を も つ 場 合,角
動 量 と磁 気 モ ー メ ン トの 方 向 が 逆 に な る こ と を 示 し て い る.一
方,電
子 の質 量 を
* [透 磁 率 μ の 単 位] あ る 場 所 に磁 界H[A (Tは
m−1]を
テ ス ラ と読 む)に
加 え た と き,磁
な っ た と す る と,B/Hが
束 密 度 がB[Wb
m−2=T]
透 磁 率 μ で あ る か ら,
μ の単 位 一方
,自
己 イ ン ダ ク タ ン スL[H](Hは
の 電 流 を 流 し た と き,生
じ る 磁 束(Wb)に [Wb]=[H][A]
ゆ え に,μ
の 単 位=H
m−1と
な る.
ヘ ン リー と 読 む)は 等 し い こ と か ら,
運
コ イ ル に1A
(a)
(b)
図5.31 電 子 の軌 道 運 動 に よ る磁 気 モ ー メ ン ト(a)と
ス ピン
に よ る磁 気 モ ー メ ン ト(b)
meと
す る と,軌
道 角 運 動 量(P。)の
大 きさは P。=meωr2
で あ る か ら,角
運 動 量 を 用 い て 式(5.80)を M=−(μ
と な る.こ 数)lを
こ で,量
子 力 学 の 結 果 を 用 い る と,軌
な い.ま
(5.82)
道 角 運 動 量 量 子 数(方
位 量 子
とび とび の 値 を と る こ とが 知 られ
子 の 磁 気 モ ー メ ン トは Ml=(μ
と な る.こ
気 モ ー メ ン トは
。e/2me)P。
も つ 電 子 の 角 運 動 量P。 はl(h/2π)の
て い る か ら,電
(5.81)
書 き 直 す と,磁
こ で,l=0(s軌
た(μ 。eh/4πme)を
道)の
。eh/4πme)l
と き はMl=0と
(5.83) な り,磁
ボ ー ア 磁 子(Bohr
気 モ ー メ ン トを も た
magneton)(μB)と
呼 び,磁
気
モ ー メ ン トの 最 小 単 位 に相 当 し μB=μ 。eh/4πme=1.165×10−29Wb で あ る.そ
m
(5.84)
れ ゆ え,式(5.83)は Ml=μBl
と 書 け る.厳
密 な 量 子 力 学 的 議 論 に よ る と,角
な く て,
(5.85) 運 動 量 は 単 にh/2π
の整 数 倍 で は
に 比 例 し て い る の で,式(5.85)は
(5.86) と な る. b. ス ピ ン 磁 気 モ ー メ ン ト ー メ ン ト(Ms)が
伴 う .こ
一 方,電
子 自 身 の 回 転(ス
ピ ン)に
よ る磁 気 モ
れ は Ms=−
μ。ePs/me
(5.87)
で 与 え ら れ る(図5.31(b)).Psは る.し
ス ピ ン 角 運 動 量 で あ り,h/2π
た が っ て 軌 道 の 磁 気 モ ー メ ン ト と 同 様 に,ス
の整数 倍 とな
ピ ン に よ る 磁 気 モ ー メ ン トは
Ms=2μBs と な る.こ
こ で,sは
ー ア磁 子 で あ る
.し
(5.88)
ス ピ ン 量 子 数 で あ り,1/2で か し,こ
あ る の で,1電
れ も 量 子 力 学 的 議 論 よ り,厳
子 のMsは1ボ
密 に は 次 式 で 表 せ る.
(5.89) 以 上 の 議 論 か ら,全
磁 気 モ ー メ ン トは M=g(μ
と ま と め ら れ る.こ れ,ス
こ で,gは
。eh/4πme)(l+s)
ラ ン デ の 因 子(Lande
ピ ン の み の 場 合 はg=2で,軌
(5.90) splitting
道 運 動 の 場 合 はg=1で
道 角 運 動 量,全
般 に,原
呼 ば
あ る.
c. 多 電 子 の 原 子 ま た は イ オ ン に お け る全 磁 気 モ ー メ ン ト の 電 子 に つ い て 説 明 し て き た が,一
factor)と
こ れ ま で は1個
子 は 多 電 子 を 含 ん で い る の で,全
軌
ス ピ ン 角 運 動 量 は個 々 の 電 子 の ベ ク トル 和 と な り,
(5.91) と な る.し
た が っ て 全 角 運 動 量 も 全 軌 道 角 運 動 量,全
ス ピ ン 角 運 動 量 の ベ ク トル
和 と な り, J=L+S で 表 さ れ る.こ
れ は,ラ
(5.92)
ッ セ ル-サ ン ダ ー 結 合(Russell-Saunders
し て 知 ら れ て い る.と
こ ろ で 実 際 に は,鉄
族 遷 移 金 属 イ オ ン の3d軌
側 に 存 在 す る た め,結
晶 場 の 影 響 を 強 く 受 け てLとSの
な り,イ
オ ン の 磁 気 モ ー メ ン ト(Mion)は
道 は最 も外
ベ ク トル 結 合 が 破 れ,
磁 気 モ ー メ ン ト に 対 す る 軌 道 運 動 の 影 響 は ほ と ん ど 消 失 し,L=0と ゆ えJ=Sと
coupling)と
な る.そ
れ
単 に
(5.93) で 与 え られ る.表5.2に,3d遷
移 金 属 イ オ ン の磁 気 モ ー メ ン トの計 算 値 と実 測
値 を ま とめ て 示 し た. 一 方,4f軌
道 は ず っ と内側 に あ るた め結 晶 場 の 影 響 は受 け に く く,し か もLS
結 合 が 強 い た め,実 測 の 磁 気 モ ー メ ン トは軌 道 の磁 気 モ ー メ ン トを考 慮 した計 算 値 と一 致 す る. 5.3.2 磁 気 モ ー メ ン トの 配 列 に よ る磁 性 体 の 種 類 前 項 で 説 明 した よ う に,イ オ ンが磁 気 モ ー メ ン トを有 す る とき,室 温 に お け る 磁 気 モ ー メ ン トの 配 列 の 仕 方 に よ り,常 磁 性(paramagnetism),強
磁 性(fer
表5.2 3d遷 移 元 素 イ オ ンの 磁 気 モ ー メ ン ト
romagnetism),反
強 磁 性(antiferromagnetism),フ
rimagnetism)な
ど の 違 い が 生 じ る.こ
び 方 の 違 い を,図5.32に
れ ら の 磁 気 的 性 質 と磁 気 モ ー メ ン トの 並
模 式 的 に 示 し た.常
トが 勝 手 な 方 向 を 向 い て い て,規 き に 並 ん だ も の が 強 磁 性(同
図(b))で,多
あ る.フ
磁 性(同
則 配 列 は な い.磁
図(a))は
磁 気 モー メ ン
気 モ ー メ ン トが す べ て 同 じ 向
くの 金 属 磁 性 体 は こ れ に 属 す る.
磁 気 モ ー メ ン トが 交 互 に 逆 向 き に 並 び,全 強 磁 性(図5.32(c))で
ェ リ 磁 性(fer
体 と して 自発 磁 化 が 現 れ な い の が反
ェ リ磁 性(同
図(d))は
基 本 的 に は反 強 磁 性 で
あ る が,逆
向 き の 磁 気 モ ー メ ン トが 完 全 に キ ャ ン セ ル さ れ な い と き,そ
に 現 れ,見
か け 上 強 磁 性 と な る.ス
の差 が外
ピ ネ ル 型 酸 化 物 や ガ ー ネ ッ ト型 酸 化 物 な ど,
多 くの セ ラ ミ ッ ク ス 磁 性 体 は こ れ に 属 し て い る. 一 方,磁
気 モ ー メ ン ト を も た な い 場 合 は 反 磁 性(diamagnetism)と
反 磁 性 は,不
対 電 子 を も た な い 閉 殻 構 造 の イ オ ン に 外 部 か ら 磁 場 を か け る と,そ
の 磁 束 変 化 を 妨 げ る 方 向 に 誘 導 電 流 が 流 れ,外 法 則:Lenz's
呼 ば れ る.
law)と
部 磁 場 を 打 ち 消 す 効 果(レ
し て 現 れ た も の で あ る.そ
磁 場 よ り小 さ く な る.反
の た め,物
ンツ の
質 内部 の磁 場 は外 部
磁 性 は 実 用 上 あ ま り重 要 で は な い の で,こ
れ 以 上 は触 れ
な い で お く. こ こ で,磁 お く.磁
場(あ
場 は 電 流 に よ っ て 生 じ る.例
が 流 れ る と き,そ Am−1と
る い は 磁 界)(H)と
な る.そ
磁 束 密 度(B)の え ば 半 径r[m]の
の 中 心 の 磁 場 はi/2rで こ で こ の 磁 場 に よ り,空
与 え ら れ る.そ
関 係 を 明 らか に して 円 の 周 囲 を 電 流i[A] れ ゆ え,磁
間 に 磁 束 密 度Bが
場 の単位 は
生 じ た と 考 え る.
(a) 常 磁 性 体
(b) 強 磁 性 体
(c) 反強 磁 性 体
(d) フ ェ リ磁 性 体
図5.32 磁 性 体 の磁 気 モ ー メ ン ト
空 間 が 真 空 の と き,BとHは
次 式 の 関 係 に あ る. B=μ
こ こ で,μ 。は 真 空 中 の 透 磁 率 で,4π の 単 位 はWb
m−2(=V
。H
(5.94)
×10−7Wb
A−1m−1で
あ る.そ
sm−2=T(tesla)=104G(gauss))と
れ ゆ え,B
な る.
空 間 に 固 体 が 存 在 す る と き, B=μ と な る.こ
こ で,Iは
。H+I
(5.95)
固 体 の 磁 化(magnetization)で,次
式 の よ うに単位体 積
当 た り の 磁 気 モ ー メ ン ト と定 義 さ れ る. I=Mion/V Iの 単 位 はWb
m−2で,Bと
(5.96)
同 じ 単 位 で あ る.Hは
か れ た 永 久 磁 石 に よ っ て も 生 ず る が,Iは
電 流 や,そ
の物質 の外 に お
試 料 固 体 の 内部 の ス ピ ン や 軌 道 角 運 動
量 に よ っ て 生 じ る 点 が 異 な る. 真 空 で な い と き,BはHに
関 し て 直 線 的 に 変 化 す る. B=μH
こ こ で,μ
は 固 体 の 透 磁 率(permeability)で
体 の と き はBとHは 化 す る.ま
(5.97) あ る.固
直 線 的 な 関 係 で な く な り,し
た 試 料 固 体 の 磁 化 率(magnetic
体 が 強 磁 性 や フ ェ リ磁 性
た が っ て μ はHと
susceptibility)は
χ=I/H で 定 義 さ れ る.さ
ら に 式(5.95),
(5.97), (5.98)か
μr,χ/μ 。=χrを そ れ ぞ れ 比 透 磁 率(relative (relative
susceptibility)と
す る と,μrと
(5.98) ら,μ=μ。+χ
が 得 ら れ,μ/μ 。=
permeability)お
よ び比 磁 化 率
χrは 次 式 の よ う に 関 係 づ け ら れ る.
μr=χr+1 a. 磁 化 率 の 温 度 変 化
と も に変
(5.99)
各 種 の 磁 性 体 が 存 在 す る こ と は す で に 触 れ た が,
そ れ ら を 区別 す る に は,磁 化 率 の 温 度 変 化 を調 べ る こ とが 有 効 で あ る. 常 磁 性 の場 合,磁
化 率(χ)は
温 度 と と も に減 少 し,そ の 関 係 は 次 式 の よ う に
与 え られ る. χ=C/T
(5.100)
こ の 関 係 は キ ュ リ ー の 法 則 と し て 知 られ て お り,Cは stant)と
呼 ば れ る.図5.33に
こ こ で,Cの
キ ュ リ ー 定 数(Curie
χ の 温 度 変 化 を模 式 的 に 示 し た.
もつ 意 味 に つ い て 検 討 す る.常
磁 性 の 固 体 は,磁
場 の な い と き,
そ の 磁 気 モ ー メ ン トは 熱 振 動 に よ り あ ら ゆ る 方 向 を 向 い て い る が,磁 こ と に よ り,あ
場 をか け る
る 程 度 磁 気 モ ー メ ン トが 磁 場 の 方 向 に そ ろ う よ う に な る.こ
き の 磁 化(I)は,ラ
ン ジ ュ ヴ ァ ン(Langevinn)の
(5.98)を
こ で,Nは
の と
取 扱 い に よ り,
I=NMion2H/3kT
で 表 せ る.こ
con
単 位 体 積 当 た り の 磁 気 イ オ ン の 数 で あ る.そ
(5.101)
こ で,式
適 用す る と χ=NMion2/3kT
(5.102)
C=NMion2/3k
(5.103)
と な り,
が 求 ま る.す 一 方,強 temperature,
な わ ち,磁
化 率 の 温 度 変 化 か ら 磁 気 モ ー メ ン トが 計 算 さ れ る.
磁 性 や フ ェ リ磁 性 の 場 合,磁 Tc)以
化 率 の 温 度 変 化 は キ ュ リ ー 温 度(Curie
上 で χ=C/(T−Tc)
の 関 係 が 成 り 立 ち,こ
れ は キ ュ リー-ワ イ ス の 法 則 と呼 ば れ て い る.Tc以
図5.33
常 磁 性 体 の 磁 化 率 の 温度 変 化
(5.104)
下 で強
(a) 図5.34
(b)
強 磁性 体 の 磁 化 率 の 温 度 変 化(a)と
磁 性 や フ ェ リ磁 性 が 現 れ る.図5.34(a)に た.ま
自発磁 化 の 温 度 変 化(b)
強 磁 性 の χの 温 度 変 化 を模 式 的 に 示 し
た 同 図(b)に は,フ ェ リ磁 性 領 域 の あ る温 度 で の磁 化IとT=0Kで
化I。 の 比 をT/Tcに
対 し て プ ロ ッ トした 結 果 を示 す.ワ
の磁
イ ス の分 子 磁 界 の 理 論
によれば (5.105) とい う関 係 が 成 り立 つ の で,こ
の 曲 線 を解 析 す れ ばJが 算 出 さ れ る.
さ ら に,反 強 磁 性 の 磁 化 率 の温 度 変 化 は χ=C/(T+Tc)
と な り,Tcは TN)で
負 の 値 に な る.ま
最 大 値 を 示 し,そ
た,磁
に,MnOの
化 率 は ネ ー ル 温 度(Neel
temperature,
の 温 度 以 上 で キ ュ リ ー-ワ イ ス の 法 則 に 従 う.TN以
で 磁 気 モ ー メ ン トが 配 列 し て い る.反 NiO,CoO,FeOな
(5.106)
下
強 磁 性 はMnF2,MnO,FeF2,CoF2,
ど のMn,Fe,Coの
酸 化 物 や フ ッ 化 物 で み ら れ る.図5.35
磁 気 モ ー メ ン トの 配 列 お よ び そ の 温 度 変 化 を 模 式 的 に 示 し た.
b. 超 交 換 相 互 作 用
こ の よ う な 種 々 の 磁 気 的 性 質 の 違 い は,結
在 す る 磁 気 モ ー メ ン トの 配 列 の 違 い で あ る こ と は す で に 述 べ た が,そ
晶 中 に存 れ で は この
配 列 の 違 い は ど こ か ら く る の で あ ろ う か. 量 子 力 学 的 議 論 か ら,一
般 的 に ス ピ ンS1とS2が
存 在 す る と き,そ
の間 に
(5.107)
(a) 図5.35
(b) 反 強磁 性 体 の 磁 気 構 造(a)と
で 示 さ れ る エ ネ ル ギ ー が 存 在 す る.こ (exchange
energy)と
呼 び,ス
Jeは 交 換 積 分 と呼 ば れ,1つ
磁 化 率 の温 度 変 化(b)
のエ ネ ル ギ ー を交 換 エ ネ ル ギ ー
ピ ン間 の作 用 を交 換 作 用 と呼 ん で い る.こ
の軌 道 に 電 子1と 電 子2が
で生 じ るエ ネ ル ギ ー で あ る.2つ
こで,
互 い に 交 換 して 入 る こ と
の ス ピ ンが平 行 の 場 合 と反 平 行 の 場 合 で エ ネル
ギ ー が 異 な り,そ の差 は E(↑
とな り,Jeの
↑)−E(↑
↓)=ΔE=−2Je
符 号 に よ っ て,平 行 と反 平 行 の ど ち ら が 安 定 か が 決 ま る こ とに な
る.定 性 的 に は,核 間 距 離 と電 子 軌 道 の広 が り との 兼 ね合 い で 決 ま り,核 間 距 離 に対 し て電 子 軌 道 が 小 さ い と き,Jeは
正 と な り,ス
ピ ン は平 行 な 方 が 安 定 に な
る.こ れ がCo,
Ni,
Feの ス ピ ンが 平 行 に配 列 し,強 磁 性 を 示 す 根 拠 で あ る.
と ころ が,Mn,
Cr,
Vな
き い た め,Jeは
負 とな り,反 平 行 の 方 が 安 定 に な る.そ
磁 性 を示 す.ち
な み に,水 素 分 子 の よ う な場 合 も核 間 距 離 に対 し て電 子 軌 道 の 広
が りが 大 きい た め,Jeは
どの金 属 は逆 に,核 間 距 離 に 対 して 軌 道 の 広 が りが 大 の 結 果 磁 気 的 に は反 強
負 とな り,反 平 行 の 方 が 安 定 に な る.
と こ ろ で,実 際 に は酸 化 物 の よ うな イオ ン結 晶 で は,磁 気 モ ー メ ン トを もつ イ オ ンの 間 に 非 磁 性 の 陰 イ オ ン が存 在 す るた め,直 接 の 交 換 作 用 は起 こ りえ な い は ず で あ る.こ れ を理 解 す る た め に,陰 イ オ ン を介 して 磁 性 イ オ ン に交 換 作 用 が働 く と考 え る の が 超 交 換 作 用(superexchange 塩 構 造 を 有 す るMnOのMn2+は3d5で 電 子 で 満 た さ れ,磁
interaction)で
あ る.例
あ る.ま たO2− は2p6でp軌
気 モ ー メ ン トは0で あ る.Mn-O-Mnは
え ば,岩
道 は6個 の
直 線 的 に結 合 して
図5.36 MnOに
お り,し
た が っ て,直
が で き る.そ
こ で,O2−
線 をz方
る と,結
向 と す る と,Mnの
か ら1個
は磁 性 イ オ ン と な り,Mn2+と
示 し た.こ
の 電 子 がMn2+に
ψz2とOの
ψpzが 重 な る こ と
移 っ た 場 合 を 考 え る と,酸
の 間 に 交 換 作 用 が 働 く.こ
果 的 に はMn2+-Mn2+の
を 図5.36に
お け る超 交 換 相 互 作 用
素
の 交 換 作 用Jを
負 とす
間 に 負 の 交 換 作 用 が 働 く こ と に な る.こ
の様 子
の 相 互 作 用 は,M-O-Mが
直 線 の と き 最 も 大 き く,直
角
の と き は 弱 く な る. 5.3.3
応 用 に お け る磁 気 特 性
強 磁 性 体 中 で は 磁 気 モ ー メ ン ト は そ ろ っ て い る が,通 (magnetic
domain)と
呼 ば れ る 微 少 領 域(∼10−5m)に
で は 磁 気 モ ー メ ン ト は 一 定 の 方 向 を 向 い て い る が,磁 り,全
常 磁 界 が な い と き は磁 区
体 と し て 磁 化 が0に
分 か れ て お り,磁
区 間 で は そ の 向 き は異 な
な る よ う に 配 列 し て い る(図5.37).
い ま こ れ に 外 部 か ら磁 界 が か け ら れ た 場 合 を 考 え る.磁 て,磁
界 の 方 向 に 近 い 磁 区 は し だ い に 広 が る た め,磁
る.磁
界 が さ ら に 高 く な る と,磁
方 向 に そ ろ う.こ 呼 ぶ.そ 数Nと
れ ゆ え,飽
区内
界 が 高 くな る に つ れ
界 方 向 の 磁 化 が 大 き くな
区 内 の 磁 気 モ ー メ ン トが 回 転 し て 完 全 に 磁 界 の
の と き の 磁 化 を 飽 和 磁 化(saturation
magnetization, Is)と
和 磁 化 は イ オ ン の 磁 気 モ ー メ ン ト と単 位 体 積 当 た り の イ オ ン
の 積 で 表 せ る.
Is=NMion 逆 に 磁 界 を 下 げ て い く と,磁 っ た と き,残
化 は も と の 曲 線 を た ど ら ず 低 下 す る.磁
っ て い る 磁 化 を 残 留 磁 化(remnant
magnetization, Ir)と
界 が0に
な
呼 ぶ.
図5.37
こ の 残 留 磁 化 を 完 全 に0に (coercive り,I-H曲 る.縦
magnetic
磁化過程
す る の に 必 要 な 逆 向 き の 磁 界 を抗 磁 界,ま
field, Hc)と
呼 ぶ.図5.38は
選 ん だ 場 合(B-H曲
線),Iに
curve)と
μ。Hが 加 わ る た め,ヒ
ス 曲 線 の 形 状 が 変 わ る た め 注 意 す べ き で あ る.ヒ は,磁
こ の様 子 を 表 し た もの で あ
線 あ る い は 磁 化 の ヒ ス テ リ シ ス 曲 線(hysteresis
軸 にBを
た は保 磁 力
呼んで い ス テ リシ
ス テ リ シス 曲線 で 囲 まれ た 面 積
気 エ ネ ル ギ ー が 熱 エ ネ ル ギ ー と し て 消 費 した エ ネ ル ギ ー に 相 当 し,こ
ヒ ス テ リ シ ス 損 失 と い い,特 作 製 後,磁
に 高 周 波 領 域 で の 使 用 す る と き 重 要 に な る.ま
界 を か け て い な い 試 料 のB-H曲
線 に お い て,磁
図5.38 磁 化 ヒス テ リシ ス 曲 線
れ を た,
界 が 小 さ い領 域 で の
(a) ハ ー ド磁 性 材 料
(b) ソ フ ト磁 性 材 料 図5.39
ヒ ス テ リシ ス 曲線
磁 束 密 度 の 増 加 率 を初 透 磁 率(μi)と ま る.初 期 の比 透 磁 率(μri)は
呼 び,実 験 的 に は μi=(B/H)initialよ り求
μi/μ 。か ら得 られ る.初 透 磁 率 は,高 周 波 用 変 圧
器 な どで 重 要 な特 性 で あ る. この ヒ ス テ リシ ス 曲線 の 形 状 に よ っ て,磁 気 材 料 は ソ フ トとハ ー ド材 料 に分 類 さ れ る.こ の 違 い を図5.39に
示 す.ソ
フ ト磁 気 材 料 は残 留 磁 化 が 大 き く,保 磁
力 が 小 さ い.こ れ に相 当 す る材 料 と し て,ス イ ト,Ni-Znフ
ピネ ル 化 合 物 で あ るMn-Znフ
ェラ
ェ ラ イ トな ど の 酸 化 物 が 知 られ,電 気 抵 抗 が 高 く,渦 電 流 に よ
る損 失 が 少 な いた め高 周 波 トラ ンス,ブ
ラ ウ ン管 の偏 向 ヨー ク,磁 気 シー ル ドな
どの磁 心 とし て用 い られ て い る. また,ハ ー ド磁 性 材 料 は高 い飽 和 磁 化 を有 し,保 磁 力 が 大 き い た め,永 久 磁 石 と し て 用 い られ て い る.永 久 磁 石 の 性 能 を 示 す の に 最 大 エ ネ ル ギ ー 積 で あ る (BH)maxが Sr)で
用 い られ て い る.セ
ラ ミ ック ス材 料 と し て は,MO-6Fe2O3(M=Ba,
代 表 され るマ グ ネ トプ ラ ンバ イ ト構 造 が 知 られ て い る.
一 方,磁
気 テ ー プや 磁 気 デ ィス ク は記 録 しや す く(ソ フ ト),し か も記 録 した も
の を残 す(ハ ー ド)必 要 が あ る た め,ソ
フ トとハ ー ドの 中 間 的性 質 が 必 要 で あ る.
5.3.4 セ ラ ミ ック ス 磁 性 材 料 と その 特 性 ス ピ ネ ル 型 酸 化 物 の構 造 を 図5.40に
示 す.こ
の酸 化 物 は ス ピ ネ ル 型 フ ェ ラ イ
ト と呼 ば れ,磁 気 材 料 と して 多 くの化 合 物 が 知 られ て い る. 磁 気 的 に 重 要 な ス ピ ネ ル は,逆 ス ピ ネ ル 構造(B)[AB]O4で A,
B2種
あ る.そ
こで は,
類 の 陽 イ オ ン は 酸 素 を 介 し て 比 較 的 直 線 に 近 い 配 列(125°9′ お よ び
154°34′)にな っ て い る た め,5.3.2項
で 述 べ た よ う に 強 い 超 交 換 作 用 が 働 く.
図5.40
ス ピネ ル 型 酸 化 物 の構 造
そ れ に 比 較 し てA-O-Aは79°38′,B-O-B結 作 用 はA-O-B結
合 は90° と125°2′ で あ り,超
合 に比 べ て 弱 い と考 え ら れ る.そ
イ トの 磁 性 は,A-B間
こ で,第
交換
一 近 似 と して フ ェ ラ
の 反 強 磁 性 的 相 互 作 用 の み を 考 慮 す る.例
え ば,Niフ
ェ
ラ イ トで は
* こ の値 は式(5.93)か
ら求 め た値 と一 致 しな いが,強
や 反 強 磁 性 体 の場 合,1つ
磁性
の不 対 電 子 の 磁 気 モ ー メ ン トを
1ボ ー ア磁 子 と して 議 論 す る.す
な わ ち,n個
の不対電子
を持 つ イ オ ン の磁 気 モ ー メ ン トはnμBと な る.
と な り,1分
子 当 た り2μBの
ー メ ン ト の 大 き さ を 示 す)
磁 気 モ ー メ ン トを も つ こ と に な る*(矢
.ス
ピ ネ ル 型 酸 化 物 に 属 す る 磁 性 材 料 と し て,人
知 っ た 最 初 の 磁 石 で あ る マ グ ネ タ イ ト(Fe3O4),磁 γ-Fe2O3,Liフ
印 は磁 気 モ
ェ ラ イ ト,Cuフ
気 テ ー プ に 用 い られ る
ェ ラ イ トな ど が 知 ら れ て お り,表5.3に
代 表 的
な デ ー タ を 示 す. ガ ー ネ ッ ト型 フ ェ ラ イ トの 一 般 式 は,R3+3Fe3+5O12(ま 表5.3
ス ピネ ル 型 酸 化 物 の磁 気 特 性
類 が
た は3R2O3-5Fe2O3)と
図5.41
ガ ー ネ ッ ト型 酸 化 物 の構 造
(B)
(A) 図5.42
ガ ー ネ ッ ト型 酸 化 物 の 磁 気 特 性
(A) 構 成 イ オ ン の磁 気 モ ー メ ン トの 温 度 変 化,(B) ー メ ン トの 温 度 変 化 .
書 か れ,RはY,お
よ び3価
ガ ー ネ ッ ト型 酸 化 物 と して の磁 気 モ
の 希 土 類 イ オ ン で あ る.ガ
子 が8つ
の 化 学 組 成 よ り な っ て い る た め,合
計160個
あ る.金
属 イ オ ン の 入 る 格 子 位 置 にc,
dの3種
そ れ ぞ れ3,
2,
3カ 所 と な っ て い る.c位
a,
ー ネ ッ ト構 造 は 単 位 格
の イ オ ン を含 ん だ 立 方 晶 で 類 あ り,化
学 組 成 当 た り,
置 は 酸 素 の 十 二 面 体 配 位,a位
置 は八
面 体 配 位,d位
置 は 四 面 体 配 位 で あ る.こ
れ ら の サ イ ト を 区 別 す る た め に,例
ばY3Fe5O12の
場 合,{Y3}[Fe2]Fe3O12と
表 す.こ
ピ ン は 逆 向 き に な る た め,式 ×5.92=5.9μBと
な り,こ
の 場 合,a位
置 とd位
量 あ た り の 磁 気 モ ー メ ン ト は0Kで,3×5
れ は 実 測 値4 .96μBと
ほ ぼ 一 致 し て い る.c位
え
置 の ス .92−2 置 に希
図5.43
土 類 イ オ ン が 入 る と,ス 5.41に
マ グ ネ トプ ラ ンバ イ ト型 酸 化 物 の 磁 気 配 列
ピ ン はa位
置 と 平 行 で,d位
ガ ー ネ ッ トの 構 造,図5.42に
置 と 逆 方 向 に な る.図
磁 気 モ ー メ ン ト の 温 度 変 化 を 示 す.こ
のガ
ー ネ ッ ト型 酸 化 物 で 特 徴 的 な の は 温 度 変 化 と と も に 磁 気 モ ー メ ン トが 一 度 消 滅 し,再
び 現 れ る こ と で あ る.
永 久 磁 石 と し て 用 い ら れ て い る の は,マ bite)と Sr,
呼 ば れ る 結 晶 で あ る.こ
Ca,
とRブ
Pbな
のB位
の 一 般 式 はMO・6Fe2O3と
純 化 し た 構 造 は 図5.43に
ロ ッ ク に 分 け ら れ る.Sブ
位 置 と4つ はBaが
ど で あ る.単
置 を 含 み,ス
のB位
逆 向 き に な る.両
書 か れ,MはBa, 示 す よ う に,Sブ
ロ ッ ク は ス ピ ネ ル 構 造 と 同 じ 部 分 で,2つ ピ ン は そ れ ぞ れ 逆 向 き で あ る.ま
入 っ た 立 方 晶 型 の 部 分 で,5つ
ン の 向 き は5つ
グ ネ トプ ラ ン バ イ ト(magnetoplum
置 の う ち3つ
のB位
がH位
置 と1つ
のH位
たRブ
ロ ック のA ロ ック
置 が あ る.ス
置 の ス ピ ン と平 行 で,残
ピ
り の2個
は
量 の 情 報 を の せ た 光 を 遠 距 離 ま で 伝 え る こ とが で き,情
報
ブ ロ ッ ク は 平 行 な の で, [(4−2)+(1+3−2)]5.9μB=23.9μB
と計 算 さ れ,実
測 値 の20μBと
ほ ぼ 一 致 し て い る.
5.4
光 フ ァ イ バ ー は,多
光 学 材 料
社 会 に と っ て 重 要 な 役 割 を 担 っ て い る.蛍
光 材 料 と そ の 実 装 技 術 の 発 展 に よ り,
薄 く大 型 の プ ラ ズ マ デ ィ ス プ レ ー が 開 発 され て い る.高 密 度 記 録 が 可 能 なDVD ドラ イ ブ に は,青 色 レ ー ザ ー が 必 要 とな る.赤 外 レ ー ザ ー か らSHGに レー ザ ー に変 換 す る 方 法 が 実 用 化 さ れ て い る.こ を解 説 し,さ
よ り青 色
こで は,ま ず光 の 基 本 的 な 特 性
ら に これ らの 材 料 の具 体 例 につ い て述 べ る.
5.4.1 屈
折
率
物 質 の屈 折 率nは,物 連 して い る.さ
質 内 を 伝 播(で
ん ぱ)す
る電 磁 波 で あ る光 の 速 度 に 関
ら に,電 磁 波 の 伝 播 速 度 は物 質 の 誘 電 率 εに よ っ て 決 め られ る.
(5.108) こ こで,cは
真 空 中 で の 光 の速 度,υ
は物 質 中 の光 の 速 度 で あ る.一 般 に物 質 は
方 向 に よ り誘 電 率 が 異 な る.し たが っ て,光
の波 の 電 界 の振 動 方 向 に よ り屈 折 率
が 決 定 さ れ る(光 の 進 む 方 向 で は な い).こ
の よ う な,波 の 振 幅 の 方 向 に よ り異
な る屈 折 率 は 図5.44に 図5.44(a)は,ど
示 す よ う な,屈 折 率 楕 円 体 に よ り表 さ れ る.
の 振 動 方 向 に対 し て も同 じ屈 折 率 を もつ(等 方 性)物
い て の 屈 折 率 楕 円 体 で あ る.こ の場 合 に は球 とな る.同 図(b)はx,y方
質 につ 向の屈折
率 とz方 向 の 屈 折 率 が 異 な る.回 転 楕 円 体 の原 点 を通 る 断 面 が 真 円 とな る面 の 法 線 を,光 軸 と呼 ぶ.(b)の
場 合,光
軸 は1本 で あ る の で,一
軸 性 と呼 ぶ.z軸
方 向 に電 界 を加 えた 透 明 焼 結 体 は一 軸 性 で あ る.同 図(c)の 場 合,x,y,z方
向と
も屈 折 率 が 異 な る もの で,光 軸 は2本 存 在 す る. こ こで,z方
向 に 光 軸 を もつ 一 軸 性 の 物 質 に,光 軸 と45° の 振 動 面 を もつ 偏 光
が 入 射 し た場 合 を考 え る(図5.45).光 x成 分 の速 度 が 異 な る.z成 の速 度 がy成
が こ の物 質 中 に入 る と,偏 光 のy成
分 の屈 折 率 がy成
分 の 屈 折 率 よ り低 い 場 合,z成
分 の 速 度 よ り速 くな り(υ=c/n),両
(a) 図5.44
(c)
屈 折 率 楕 円体 一 軸 性,(c)
分
成 分 間 で 位 相 の差 が 生 じ る.
(b)
(a) 等 方 性,(b)
分と
二 軸 性.
図5.45
図5.46
一軸 性物 質 に入 射 した 偏 光 の進 み方
直 行 す る成 分 に 位 相 差 が あ る と き の波
こ の ず れ を 距 離 で 表 し た も の を レ タ ー デ ー シ ョ ン(retardation)と
呼 ぶ.光
の
両 成 分 の 通 過 時 間 の 差 Δtは Δt=l/υz−l/υy
で あ る.こ
の 時 間 差 に よ り,両 Γ=c・
と な る.こ
成 分 の 真 空 中 で の 差(レ
Δt=l・(c/υz−c/υy)=l・(nz−ny)=l・
こ で,nz,nyは
(5.109)
そ れ ぞ れz方
タ ー デ ー シ ョ ン Γ)は Δn
向,y方
向 の 屈 折 率,Δnは
(5.110)
屈 折率 の差
で あ る. こ の よ う に 直 交 す る2つ る.図5.45の
の 波 の 成 分 に 位 相 差 が あ る と き の 波 は,楕
物 質 を 通 過 し たy成
分 とz成
円偏 光 とな
分 の 合 成 を 考 え る(図5.46).1か
ら8の 数 字 は時 刻 を表 して い る.時 刻1の に 波 が 立 ち 上 が る瞬 間 で あ る.y成
と き,z成
分 は ち ょ う ど0か
らプ ラス
分 は位 相 が 少 し進 ん で い る た め,す で に プ ラ
ス の あ る値 を も っ て い る.合 成 さ れ た 各 時 刻 で の変 位 を左 下 に示 して あ る.こ で の ベ ク トル は複 素 平 面 で は な く,上 方 向 がy方 空 間 で の ベ ク トル で あ る.時 刻 が1,2,3,… 向 は,大
向,左
方 向 がz方
こ
向 を表 す実
と進 む に つ れ て 合 成 され た 変 位 の 方
き さ を変 え な が ら左 回 転 を す る(こ の 場 合).ベ
ク トル の 終 点 の 軌 跡 は
楕 円 で あ る.こ の よ うな偏 光 を楕 円偏 光 と呼 ぶ. 図5.45に 板(検
示 した よ うに,物 質 の先 に入 射 と直 交 す る 向 き に偏 光 面 を もつ偏 光
光 子)を
お く と,両 成 分 の 検 光 子 を通 る成 分(図5.47)が
レ ター デ ー シ ョンが な い場 合 に は,図5.48(a)の る.す な わ ち,光
合 成 さ れ る.
よ う に両 成 分 の 合 計 は ゼ ロ と な
は通 過 し な い.レ タ ー デー シ ョ ンが ゼ ロ で な い場 合 は,波 の 合
成 が あ る値 を もつ.位 相 の 異 な っ た 波 の 合 成 は,複 素 数 を 用 い た 方 法(5.1節 照)が
使 え る.図5.48(b)は
の 波 の 和 で,細
い実 線(合
図5.47に
参
例 示 した レ タ ー デ ー シ ョ ンが あ っ た 場 合
成 さ れ た 波)で 示 した よ う な振 動 の光 が 通 過 す る.一
定 の レ タ ー デ ー シ ョン に対 し て,波 長 に よ り,位 相 の ず れ は異 な る.そ の た め, あ る レ タ ー デ ー シ ョ ン に対 し て,あ
る 波 長 は強 め合 い,ま た あ る波 長 は 弱 め 合
う.こ れ に よ り,透 過 す る光 に は色 が つ い て み え る.偏 光 顕 微 鏡 は,試 料 の 前 後
(a) y成 分 の う ち,検 光 子 を通 る 成 分
(b) z成 分 の うち,検 図5.47
光 子 を通 る成 分
一 軸 性 物 質 を 通 過 した 光 の 成 分 中,検 光 子 を通 過 す る成 分
(a) レ タ ー デ ー シ ョ ン が ゼ ロ の 場 合
(b) レ タ ー デ ー シ ョン が あ る 場 合 図5.48
図5.49
検 光 子 に よ る光 の 波 の合 成
ア ル ミナ の偏 光 顕 微 鏡 写 真(こ こで は モ ノ ク ロ の た め 赤 を明 る く表 示)
に偏 光 板 が 入 っ て い て,こ
の よ う な現 象 を利 用 し て い る.セ ラ ミ ッ クス や 岩 石 の
薄 片 を偏 光 顕 微 鏡 で 観 察 した と き,組 織 に色 が つ い て み え るの は この よ う な原 理 に よ る(図5.49). 5.4.2 電 気 光 学 効 果 PLZTは,電
界 を加 え る こ とに よ り屈 折 率 が 変 化 す る.PLZTを
軸 性 物 質 の 位 置 に お き,y方
図5.45の
一
向 に電 圧 を加 え る と,電 圧 に よ りレ タ ー デ ー シ ョ ン
を変 化 させ る こ とが で き,そ れ に よ り透 過 光 量 を コ ン トロ ー ル で き る.図 で はみ や す い よ うにlを 長 く描 い て い るが,実
際 に は1mm以
下 で 十 分 で あ る.
電 界 に よ る屈 折 率 変 化 は,一 般 に次 式 で 表 され る. n=n0+α
こ こ で,n0は
・E+β
・E2+…
(5.111)
電 界 を加 え て い な い と きの 屈 折 率 で あ る.立 方 晶PLZTで
負 の電 界 に対 して 屈 折 率 は対 称 的 で あ る か らEの
は,正
一 次 の 項 は な い.ま
た,三 次
以 降 の 項 は無 視 で き る.し た が っ て透 過 光 量 は電 圧 に 対 し て放 物 線 状 に 変 化 す る.こ の よ う な特 性 を示 す電 気 光 学 効 果 は カ ー 効 果(Kerr 一 方 ,分 極 処 理 され た正 方 晶PLZTを
effect)と 呼 ばれ る.
用 い た 場 合 に は,電 界 ゼ ロ の 状 態 か ら あ
る 程 度 の光 の 透 過 が あ り,分 極 の 方 向 と同 じ方 向 に電 界 を加 え る こ とに よ り透 過 光 量 は増 加 し,反 対 方 向 の電 界 で 透 過 光 量 は減 少 す る.こ の 場 合 に は,二 次 以 降 の 項 は無 視 で き,透 過 光 量 は 印加 電 圧 に対 して 直 線 的 に 変 化 す る.こ の よ う な効 果 は ポ ッケ ル ス効 果(Pockels
effect)と 呼 ば れ る.
強 誘 電 性 の 多 結 晶 体 で は,分 極 の 方 向 が そ ろ っ て い な い 場 合,分 域 間 で 屈 折 率 の 違 い に よ る光 の 反 射 が 起 こ る.こ れ は全 体 的 に み る と,光 が 散 乱 され る と い う こ とで あ る.外 部 よ り高 電 圧 を加 え る と分 極 の 方 向 が そ ろい,散 乱 が 減 少 し光 の 透 過 率 は増 加 す る.こ
こか ら逆 向 きの 電 界 を適 度 加 え る と,そ ろ っ た 分 極 は再 び
ラ ン ダ ム と な り,光 の透 過 率 が 減 少 す る.こ れ ら の状 態 は,電 界 を取 り去 っ て も 持 続 す る た め メ モ リ機 能 を もつ. 5.4.3 光 の 減 衰 物 質 中 を光 が あ る距 離 だ け進 ん だ とき,光 の 強 度 が 半 分 に な っ た とす る と,こ の 倍 の距 離 を進 む とそ の強 度 は さ ら に1/2,ト
ー タ ル で1/4に
な る こ とが感 覚 的
に 理 解 さ れ る で あ ろ う.そ の よ う な光 の減 衰 は I=I0exp(−
の 式 で表 され る.こ 吸 収 係 数(absorption
こで,I0は
μ ・x)
入 射 光 の強 度,Iは
coefficient)で
(5.112)
距 離x進
ん だ 後 の強 度,μ
は
あ る.吸 光 係 数 と も呼 ば れ る.μ は物 質 自
体 に よ る光 の 減 衰 と,散 乱 に よ る光 の減 衰 との 和 で あ る. 光 は,屈 折 率 の 異 な る媒 質 を横 切 る と き,一 部 が 反 射 され る.反 射 の 強 さ は屈 折 率 が 異 な る ほ ど大 き くな る.光 が 境 界 を垂 直 に横 切 る とき の反 射 率 は (n−1)2/(n+1)2
で 与 え られ る.こ
こで,nは
(5.113)
屈 折 率 の 異 な る媒 質 を横 切 る と き の屈 折 率 で あ る.
真 空 か ら物 質 に光 が 入 射 す る と き に は,物 質 そ の もの の 屈 折 率 とな る.反 射 の分 だ け透 過 光 は減 衰 す る.
5.4.4
光 フ ァイ バ ー
電 波 に 信 号 を の せ て 伝 達 し よ う と す る と き,単 る わ け で は な い.信
号 を の せ た 電 波 の 形 は,サ
一 の周 波 数 の電 波 で 信 号 が送 れ イ ン 波 が 歪 ん だ 形 と な る.歪
んだ
く の 周 波 数 が 含 ま れ る.逆
にそ
サ イ ン 波 を フ ー リ エ 展 開 す る と わ か る よ う に,多 れ ら の 周 波 数 が な い と,信 ン 放 送 の 場 合,1チ
号 が の っ た 電 波 は 再 現 で き な い の で あ る.テ
ャ ン ネ ル に つ き6MHzの
用 に 割 り 当 て ら れ たVHF帯 (実 際 に は,3チ る).高 1.1GHzの 1THzか
に12チ
ャ ン ネ ル と4チ
周 波 数 の 幅 を 要 す る.テ
ら1.1THzの
ャ ン ネ ル の 間 に別 の 使 用 目的 の 周 波 数 帯 が あ
レ ビ放 送 が(0.1×109)/(6×106)=16個
え ば,1GHzか
の 周 波 数 は 非 常 に 高 い の で,大
ら
し か の ら な い が,
間 に は(0.1×1012)/(6×106)=16000以
る こ と が で き る.光
レ ビ放 送
ャ ン ネ ル しか お け な い の は この た め で あ る
い 周 波 数 ほ ど 多 く の 信 号 を の せ る こ と が で き る.例 間 に は,テ
レ ビジ ョ
上 の放 送 をのせ
容 量 の信 号 を送 る に は光 通 信
が 有 用 で あ る. 光 フ ァ イ バ ー は,光
を 電 線 と 同 じ よ う に 引 き 回 す こ とが で き る た め,光
重 要 な 役 割 を 担 っ て い る.光 の は,そ
フ ァ イ バ ー が 曲 げ ら れ て も光 を 伝 え る こ と が で き る
の 構 造 に よ る.図5.50に
光 フ ァ イ バ ー の 断 面 図 を 示 す.(a)で
ア と呼 ば れ る 屈 折 率 の 高 い 部 分 と,屈
折 率 の 低 い ク ラ ッ ド か ら な る.入
に フ ァ イ バ ー と 平 行 で あ る と は 限 ら ず,直 た る.こ
こ で は,屈
は,コ
は,コ 力 光 は常
進 し て コ ア と ク ラ ッ ドの 境 界 部 分 に あ
折 率 の 差 に よ り 全 反 射 さ れ コ ア の 内 側 へ と反 射 さ れ る.フ
イ バ ー が 多 少 曲 げ られ て も,こ 図(b)で
通信 の
の 反 射 を 繰 り返 し,光
ア と ク ラ ッ ド の 境 界 が ぼ や け て い る.光
は 前 方 へ と伝 え ら れ る.同 フ ァ イバ ー の外 に 向 か う
光 は 屈 折 率 の 勾 配 に よ り フ ァ イ バ ー の 内 側 へ と 曲 げ ら れ る.(a)と イ バ ー が 多 少 曲 げ ら れ て も,光
は 前 方 へ と伝 え ら れ る.い
(a) ス テ ッ プ 型 光 フ ァ イ バ ー
(b) 勾 配 型 光 フ ァ イ バ ー 図5.50
光 フ ァ イバ ー の 断 面
ァ
同 様 に,フ
ァ
ず れ の 場 合 で も,こ
の
外 側 に保 護 層 が つ け られ る.ま た,い
くつ か の フ ァ イバ ー が ま とめ られ た り,電
線 と組 み 合 わ さ れ た り して使 わ れ る こ と も多 い. 一 見 透 明 な窓 ガ ラ スで も,側 面 か らみ る と暗 い緑 色 に み え る.こ れ は,ガ ラ ス の 中 を光 が1m程 kmも
度 伝 わ っ た だ け で も吸 収 が 結 構 大 きい とい う こ とで あ る.何
伝 送 す る必 要 の あ る光 フ ァ イバ ー に は 向 か な い.こ れ に対 して,純 粋 な シ
リカ ガ ラス は透 明 度 が 非 常 に高 い.し か し,わ ず か な不 純 物 が 存 在 して も光 の吸 収 は顕 著 に起 こ る.光
フ ァイバ ー の た め の シ リカガ ラ ス は,塩 化 ケ イ素,水
素,
酸 素 ガ ス を次 の よ うな 反 応 に よ り生 成 さ せ る. SiCl4+2H2+O2→SiO2+4HCl こ の 反 応 は 燃 焼 反 応 で あ り,SiO2が
す す 状 に 生 じ る.図5.51に
の す す 状 の 生 成 物 を 回 転 し て い る ロ ッ ドに 析 出 さ せ る.コ の 調 整 の た め に,原 取 り 除 い た 後,フ
料 にGeCl4を
ア と ク ラ ッ ドの 屈 折 率
の ロ ッ ド を 加 熱 し,気
泡 を
ァ イ バ ー 状 に 引 き 延 ば す.
光 フ ァ イ バ ー の 光 伝 達 や,電 い う 単 位 を使 う と便 利 で あ る.こ ギ ー 量I1がI2に
適 宜 混 合 す る.こ
示 す よ う に,こ
増 幅(ま
気 信 号 増 幅 の 際 の 信 号 の 増 減 を 表 す の に,dBと こ で,こ
た は 減 衰)さ
の 表 し 方 に つ い て 述 べ る.あ
れ た と き,増
幅 率(ま
るエ ネル
た は 減 衰 割 合)は
I2/I1
(5.114)
とな る.こ の 値 は何 々 倍 とい う言葉 に対 応 す る.一 方,増 幅 率 や 減 衰 の割 合 に は 10log(I2/I1)
(5.115)
で 表 さ れ る値 が 多 く用 い られ る(こ れ は エ ネ ル ギ ー の 比 率 に対 して の式 で あ る.
図5.51
光 フ ァイ バ ー 用 シ リ カ ガラスの製造法
図5.52
増 幅,減
衰 のdB表
記
図5.53 光 フ ァイ バ ー の 減 衰 の計 算
電 圧 や 変 位 の 比 率 に 対 し て は20log(比 ル)と
率)と
い う単 位 が 与 え ら れ て い る.例
て,0.1倍
さ れ,さ
×100=10000倍
ら に100倍
と な る.一
え ば 図5.52の
さ れ た と き,全
方,dBで
な る).こ
の 値 に はdB(デ
シベ
よ う に あ る 量 が1000倍
され
体 で は そ の 積 と し て,1000×0
表 し た 場 合 は,対
数 の 性 質 か ら,倍
.1
率 を和
の 形 で 表 す こ と が で き る. 10log(1000×0.1×100) =10log1000+10log0
.1+10log100
=30−10+20=40[dB]
電 送 線 や 光 フ ァ イ バ ー の 場 合,距
(5
離 に よ る 信 号 の 減 衰 は 式(5.112)か
I2/I1=exp(−
で 表 さ れ る.一
方,dBで
表 す と,こ
衰 が 簡 単 に 割 り出 せ る(図5.53).よ はdBkm−1の 5.4.5
μ ・x)
・xlog(e)
表 し た 減 衰 は 距 離 に 比 例 す る こ と に な る.し
た り の 減 衰 量 をdBで
ら
表 す と 10log(I2/I1)=−10μ
と な り,dBで
.116)
(5.117)
た が っ て,1km当
こ に 距 離 を 掛 け る こ と に よ り,任 っ て,一
意 の 長 さ の減
般 的 に光 フ ァイ バ ー の 減 衰 の 割 合
単 位 で 表 さ れ る. ル ミネ ッ セ ン ス
物 質 が 吸 収 し た エ ネ ル ギ ー の 一 部 が 光 と し て 放 出 さ れ る 現 象 を,ル
ミネ ッセ ン
ス(luminescence)と
い う.こ
短 い 時 間(10−8秒
以 下)に
の 発 光 が,エ
ネル ギー を吸収 してか らきわ め て
起 こ る 場 合 を 蛍 光(fluorescence)と
呼 び,エ
ー 照 射 の 中 止 後 も 発 光 を 持 続 す る も の を 燐 光(phosphorescence),ま (afterglow)と
呼 ぶ.与
え る エ ネ ル ギ ー は,電
子 線 や 放 射 線,波
ネルギ た は残 光
長 の短 い光 な ど
で あ る. 物 質 に エ ネ ル ギ ー が 与 え ら れ,高 も と の エ ネ ル ギ ー 状 態(基 光 が 放 出 さ れ る が,実 に 変 わ り,光
い エ ネ ル ギ ー 状 態 へ と 移 っ た 場 合,そ
底 状 態)へ
と戻 る と き,受
た,ル
放 出 さ れ る.こ
図5.54は,イ
基 底 状 態,l2は
い に 遅 い か ら,電
い エ ネ ル ギ ー の 光(長
け取 波長 の
近 接 イ オ ン と の距 離 の 関 係 と して 示 し
励 起 状 態 の エ ネ ル ギ ー で あ る.ま
ッ セ ン ス を 生 じ な い 場 合 を 考 え る(A).aに が 与 え られ る と,bの
エネルギー
れ ら の エ ネ ル ギ ー の 変 化 に つ い て 考 え て み る.
オ ン の エ ネ ル ギ ー を,最
た も の で あ る.l1は
くの 場 合,熱
ミ ネ ッ セ ン ス が 起 こ る 場 合 に は,受
っ た エ ネ ル ギ ー の 一 部 は 熱 エ ネ ル ギ ー に 変 わ り,低 光)が
け取 っ た エ ネ ル ギ ー と同 じ
際 に は そ う で な い 場 合 が 多 い.多
は放 出 さ れ な い.ま
の ま ま
ク ‐コ ン ド ン(Frank-Condon)の
ミネ
あ る電 子 に紫 外 線 な どの エ ネ ル ギ ー
状 態 へ と励 起 さ れ る.電
子 が 励 起 さ れ て も,原
ず,ル
子 の 変 化 に比 べ て格 子 振 動 は桁 違
子 核 の 距 離 は 変 化 し な い.こ
原 理 と い う.bの
れ をフラ ン
状 態 の イ オ ン は,熱
として
エ ネ ル ギ ー を 発 散 し な が ら 低 い エ ネ ル ギ ー 状 態 へ と 下 が っ て い く.l1とl2が な っ て い る と こ ろ で エ ネ ル ギ ー はl1側
に 移 り,さ
状 態 へ と 戻 り,ル
ら に熱 と して エ ネ ル ギ ー を発
散 し つ つ,最
終 的 にaの
の よ う に,エ
ネ ル ギ ー が 散 逸 す る よ う な ル ー トが な い と き は,ル
生 じ る.pか
らqに
励 起 さ れ た 後,熱
ミ ネ ッ セ ン ス は 生 じ な い.一
(A)
(B)
図5.54 物 質 に与 え られ た エ ネル ギ ー の変 化 ル ミネ ッセ ン ス を発 す る場 合.
方(B)
ミネ ッセ ンス を
と し て エ ネ ル ギ ー を 発 散 し てl2の
(A) 熱 へ と変 化 す る場 合,(B)
重
最 もエ
ネ ル ギ ー の 低 い 状 態rに
至 る.l1に
ー が 上 昇 す る必 要 が あ り ,実
エ ネ ル ギ ー が 移 る に はtの
際 に は起 こ ら な い.tよ
ギ ー を 散 逸 す る ル ー トは な い の で,こ にsへ
と 変 化 す る.そ
の 後 は,再
状 態 まで エ ネ ル ギ
り下 に は,熱
としてエネル
こ か ら光 と し て エ ネ ル ギ ー を 放 出 し て 一 気
び 熱 エ ネ ル ギ ー を 散 逸 し つ つ 最 初 の 状 態pへ
と
戻 る. ル ミ ネ ッ セ ン ス は,母 を加 え た と き 生 じ る.付
結 晶(host)に
あ る 種 の イ オ ン(付
活 剤 を 多 く加 え す ぎ る と ル ミ ネ ッ セ ン ス 強 度 は 減 じ る.
こ れ を 濃 度 消 光(concentration
quenching)と
熱 し て も ル ミ ネ ッ セ ン ス 強 度 は 減 少 す る.こ ing)と
活 剤:activator)
呼 ぶ.ま
た,あ
る温 度 以 上 に加
れ を 温 度 消 光(thermal
quench
い う.
多 くの 場 合,与
え ら れ た エ ネ ル ギ ー の 一 部 が 熱 に 変 わ り,残
さ れ る の で,一
般 に,与
る.し
っ た ん あ る励 起 状 態 に 移 っ た 後,さ
か し,い
りが 光 と し て 放 出
え ら れ た エ ネ ル ギ ー よ り低 い エ ネ ル ギ ー の 光 を 放 出 す ら に エ ネ ル ギ ー を 吸 収 し,よ
り高 い エ ネ ル ギ ー 状 態 に な っ た 後 に 光 を 放 出 す る よ う な も の も あ り,こ は,与
の場 合 に
え ら れ た エ ネ ル ギ ー よ り高 い エ ネ ル ギ ー の 光 を 放 出 す る.図5.55に
よ う な 機 構 を 示 す.Yb3+に 起 状 態 に す る(4I11/2).さ
与 え ら れ た エ ネ ル ギ ー はEr3+に ら に,別
にYb3+に
励 起 状 態 を さ ら に 上 の 励 起 状 態(4F3/2)へ
移 動 し,Er3+を
励
与 え ら れ た エ ネ ル ギ ー が,Er3+の と ポ ン ピ ン グ す る.こ
の 状 態 か ら は,
熱 と し て エ ネ ル ギ ー を 放 出 し て 少 し エ ネ ル ギ ー の 低 い 状 態(4S3/2)に 光 を 放 出 し て 基 底 状 態 へ と戻 る.こ
その
れ に よ り,励
な っ た 後,
起 し た 光 の エ ネ ル ギ ー よ り高 い
エ ネ ル ギ ー の 光 を 放 出 す る. ま た,可
視 光 に よ り励 起 さ れ た エ ネ ル ギ ー 状 態 が そ れ よ りわ ず か に 低 い エ ネ ル
図5.55 励 起 エ ネ ル ギ ー よ り高 い エ ネ ル ギ ー の 蛍 光 を発 す る機 構
図5.56
ギ ー 状 態 に 移 り,そ
こ か ら は さ ら に 低 い 状 態 へ と移 れ な い 状 態 に あ る 場 合(ト
ッ プ さ れ る と い う),低
い エ ネ ル ギ ー の 光(赤
の 励 起 状 態 に 戻 り,そ た め 込 み,赤
プ ラ ズ マ デ ィス プ レー の 構 造
外 線)を
あ て る こ と に よ り,も
こ か ら 基 底 状 態 に 戻 る と き 光 を 発 す る.こ
れ は,可
こ の よ う な 作 用 が 実 現 さ れ て い る.赤
よ り可 視 光 を 発 す る の で,赤
視光 を
外 線 を あ て る こ とに
外 線 検 知 器 と し て 用 い ら れ る.
カ ラ ー テ レ ビ の ブ ラ ウ ン管 の 蛍 光 体 と し て は,YVO4やY2O3の
母 結 晶 にEu3+
の 付 活 剤 を 加 え た も の(赤,YVO4:Eu3+,Y2O3:Eu3+と
表 示),ZnSにCu,
ど の 付 活 剤 を 加 え た も の(緑,ZnS:Cu,Au,Al),ZnSにAgを
活 剤 を 加 え た も の(青,ZnS:Ag)な
回 る よ う に な っ た.プ
型 表 示 用 の デ ィ ス プ レ ー と し て 多 く市 場 に 出
ラ ズマ デ ィスプ レー には種々 の改 良型 が考 案 され てい る
の 基 本 的 構 造 は 図5.56の
閉 じ 込 め ら れ た 空 間 にNe−Xeあ の プ ラ ズ マ 放 電 は,そ
付
ど が 用 い ら れ て い る.
最 近 プ ラ ズ マ デ ィ ス プ レ ー が,大
が,そ
と
外 線 を 照 射 す る こ と に よ り そ れ を 取 り 出 す 材 料 と い う こ と に な る.
CaS:Eu3+,Sm3+で
Au,Alな
ラ
よ う な も の で あ る.上 る い はHe−Xeが
下 の 構 造 は 一 体 と な り,
封 入 さ れ て い る.放
電電極 で
れ と直 角 に配 置 さ れ た ア ド レ ス 電 極 に よ り制 御 さ れ る.こ
の 放 電 に よ り生 じ た 紫 外 線 が 蛍 光 体 に 照 射 さ れ,赤,緑,青
の 光 を発 す る.蛍
光
体 と し て は,Y2O3:Eu3+,(Y,Gd)BO3:Eu3+(赤),Zn2SiO4:Mn,BaAl12O19: Mn(緑),BaMgAl14O23:Eu3+(青)な MgOの
保 護 層,誘
電 体 層,全
通 る こ と に な る の で,放 5.4.6
ど が 使 わ れ る.こ
の 光 は,上
面 ガ ラ ス を 通 し て 表 示 さ れ る.光
電 電 極 は 透 明 なITO膜
部 の薄 い
は放 電 電 極 側 を
が 使 わ れ る.
レ ー ザ ー
レ ー ザ ー 発 振 器 も ル ミネ ッ セ ン ス を 利 用 し た デ バ イ ス で あ る.固
体 レー ザ ー は
図5.57
図5.57に れ,も
レー ザ ー 発 振 器 の 原 理
示 す よ う な 構 造 を し て い る.付
活 剤 を含 む 物 質 の 一 端 に ミラ ー が 施 さ
う 一 端 に は ハ ー フ ミ ラ ー が 施 さ れ て い る.こ
保 た れ て い る.物
質 の 側 面 か ら は 強 い 光 が 照 射 さ れ,物
起 さ れ た 状 態 の 物 質 中 に 光 が 通 過 す る と,そ 出 さ れ る.そ な る.物
れ に よ り,通
過 す る 光 の 振 幅 が 大 き く な り,光
相 の 光 が 誘 導放
が増 幅 され た こ と に
だ い に 強 度 を 増 す.こ
の
ー フ ミ ラ ー を 通 し て 外 部 に 送 り 出 さ れ る.
レ ー ザ ー 材 料 の 例 と し て は,ル て い て,そ
質 は 励 起 さ れ て い る.励
の 光 と 同 じ 波 長,位
質 の 両 端 の 平 行 な ミ ラ ー に よ り光 は 往 復 し,し
う ち の 一 部 は,ハ
(yttrium
の 対 の ミラ ー は精 巧 に平 行 が
ビ ー(コ
ラ ン ダ ムAl2O3結
れ が 付 活 剤 と な る,694nm)や aluminium
garnet,
Y3Al5O12,
原 理 的 に は 単 結 晶 で あ る 必 要 は な く,ガ
晶 にCr3+が
固溶 し
ネ オ ジ ウ ム を ド ー プ し たYAG 1064nm)な
ど の 単 結 晶 が あ げ ら れ る.
ラ ス や 多 結 晶 体 を 用 い た レ ー ザ ー も検 討
さ れ て い る. 5.4.7
SHG
非 対 称 性 の 結 晶 に レ ー ザ ー 光 な ど の 強 い 光 を 照 射 す る と,そ 2倍 の 振 動 数(半
分 の 波 長)の
調 波 と呼 び,2倍
の 周 波 数 を 第 二 高 調 波 と 呼 ぶ.2倍
現 象 を 第 二 高 調 波 発 生(second ー 発 振 器 と組 み 合 わ せ て
,レ
光 に 変 換 さ れ る.も
harmonic
との 周 波 数 の 整 数 倍 の 波 を高 の 周 波 数 の 光 に変 換 され る
generation:
SHG)と
呼 ぶ.レ
ー ザ
ー ザ ー発 振 器 が 苦 手 な 波 長 の レ ーザ ー光 をつ く るの
に 利 用 さ れ て い る(図5.58).
図5.58
の光 の 一 部 は そ の
レー ザ ー発 振 器 とSHG結
晶 を 組 み合 わ せ て
1/2の 波 長 の レー ザ ー 光 を 得 る方 法
(A)
(B)
図5.59
擬似位相整合
(A) 擬 似位 相 整 合 が な い場 合,(B)
擬 似 位 相整 合 が 行 わ れ た 場 合.
ニ オ ブ 酸 リ チ ウ ム(KNbO3),KTP(KTiOPO4),KDP(KH2PO4),DKDP (KD2PO4),BBO(β-BaB2O4)な る.KDP,DKDP,BBOな
ど の 結 晶 が,SHG材 ど は,第
一 般 に 結 晶 中 で の 光 の 速 度 は,光 SHG変
り,そ
三 高 調 波 発 生 に も用 い ら れ る. の 周 波 数 に 依 存 し て 異 な る.こ
換 効 率 に 重 大 な 問 題 を も た ら す.図5.59
左 よ り入 射 し た 光 に よ りSHGが
発 生 す る.進
の 場 所 ま で 積 算 さ れ たSHGと,そ
り発 生 す るSHGの (点b)か
ら は,発
近 い 点pで ロ と な る.そ
の こ と が,
こ の 問 題 を 考 え て み る.
行 す る に 従 っ て,光
速 の差 に よ
の 位 相 差 が90° を 超 え た と こ ろ
積 算 さ れ たSHGを
は ほ ぼ180° の 位 相 差 が あ り,点cに れ よ り 先 で は,新
(A)で
の場 所 まで 伝 わ っ て きた も との光 に よ
間 で 位 相 が ず れ て く る.そ 生 し たSHGが
料 と して 用 い られ て い
弱 め る よ う に 働 く.点cに お い て,積
た に 発 生 し たSHGが
SHGは
再 び 積 算 さ れ 強 度 を 増 す(c−d間).点dを
SHGと
発 生 す るSHGと
算 さ れ たSHGは
ゼ
加 算 さ れ て い く の で,
超 え る と,新
の 位 相 関 係 が 再 び90° を 超 え,伝
た に積 算 され た
わ っ て き たSHGを
再
び 弱 め る よ う に 働 く(d−e間).点eで,積 点aと
同 じ 状 態 に な る.し
伝 わ っ て い くSHGの 強 いSHGを
た が っ て,そ
の 先 はa−e間
の 繰 返 し と な る.結
強 度 は 山 形 の 繰 返 し で あ り,SHG素
わ っ て い くSHGと,そ
合 う 関 係 に な っ た と こ ろ で,発
生 す るSHGの
の 位 相 と が,弱
れ に よ り,伝
晶 中 の 通 過 距 離 が 長 くな る に 従 っ てSHGが
強 誘 電 体 材 料 を 用 い,そ DVDは
増 大 す る よ う に で き る.p′,
短 い 青 色 レ ー ザ ー が 必 要 と な る.直
matching:
QPM)と
呼 ぶ.
の 読 み 書 き に 用 い る レ ー ザ ー 光 に は,波
外 レー ザ ー の 出 力 を ニ オ ブ酸 リチ ウ ム 導
色 レ ー ザ ー に 変 換 す る こ と が で き る.擬
い た ニ オ ブ 酸 タ ン タ ル は,さ
長 の
接 青 色 を 出 力 す る レー ザ ー も開 発 さ れ て い る
導 体 レ ー ザ ー)が,赤
波 路 に 入 れ る こ と で,青
の よ うな 手 法 に よ る
の 分 極 の 方 向 を 周 期 的 に 変 え る こ と に よ り実 現 さ れ る.
記 録 密 度 が 高 い た め,そ
(例 え ばGaN半
発
最 下 段 に示 し た よ う
q′,g′,s′ は そ れ ぞ れ の 点 に お け る 位 相 関 係 の 例 で あ る.こ 似 位 相 整 合(quasi-phase
(B)のb′-
わ っ て い くSHGと
が 常 に 強 め 合 う 関 係 に す る こ と が で き,図
子 の 改 良 を,擬
め
正 負 が 反 転 す る よ うな 構 造 を つ く
め 合 う 関 係 を 強 め 合 う 関 係 に 転 じ る こ と が で き る.図5.59
生 す るSHGと
SHG素
局,
子 の 厚 さ を 増 し て も,
の 場 で 発 生 す るSHGと
d′,f′-h′間 は そ の よ う に し た 部 分 で あ る.そ
に,結
強 度 は ゼ ロ と な り,
得 る こ と は で き な い.
こ こ で,伝
る と,弱
算 さ れ たSHGの
似位相整合 を用
ら に 高 効 率 の 変 換 を 可 能 に し て い る.
5.5 構 造 材 料 機 械 的 性質 は,材 料 を利 用 す る場 合 の 最 も重 要 な性 質 の1つ で あ る.例 え ば, アル ミナ が 絶 縁 材 料 と して 賞 用 さ れ る の は,そ れ が 絶 縁 性 に優 れ て い る とい う こ とよ りも,高 強 度 で割 れ に く く機 械 的性 質 にお い て優 れ て い る た め で あ る.絶 縁 性 で は,ア
ル ミナ よ り も優 れ た 無 機 材 料 は 多 々 存 在 す が,そ
れ らが 機 械 的 に問 題
が あ るた め に,特 殊 な用 途 以 外 に は ほ とん ど利 用 さ れ る こ とは な い. 本 節 で は,無 機 材 料 の うち 高 靭 性,超 塑 性,曲 げ,そ
げ 強 度,ク
リー プ 材 料 を取 り上
の 基 本 的 内 容 に つ い て 述 べ る.
5.5.1 高 靭 性 材 料 単 位 面 積 当 た りの力 を応 力 と呼 ぶ.応 位 が 用 い られ る.1MPaは1Nmm−2(1ニ kgfcm−2の
応 力 で あ る.
力 に はMPa(メ
ガ パ ス カ ル)と
い う単
ュ ー トン/平 方 ミ リ)で あ り,10.2
材 料 の 破 壊 は,2つ
の表 面 を生 成 させ る プ ロ セ ス で あ る.単 位 面 積 当 た りの原
子 面 を 分 離 す るた め の仕 事 は,2つ
の 表 面 を生 成 さ せ る と きの 表 面 エ ネ ル ギ ー の
増 加 に 等 し い.こ の よ うな考 え に加 え て,原 子 面 間 の凝 集 力 が サ イ ン曲 線 で 近 似 で き る と い う仮 定 を導 入 す る こ と に よ っ て,理 論 強 度(σt)の
次式が 導 出 され
る.
(5.118) こ こで,E,γ,aは
そ れ ぞ れ ヤ ン グ率,表
σtは ほ ぼE/10の
オ ー ダ ー で あ る が,実
面 エ ネ ル ギ ー,原 子 間 距 離 で あ る. 際 の 材 料 の 強 度 は そ の1/100か
ら1/
1000で あ り,は るか に小 さい. Inglisは,理
論 強 度 と実 際 の 材 料 の 強 度 の差 を,材 料 の表 面 や 内部 に存 在 す る
微 細 な き裂(長
さ2cの
傷)に
関係 づ け,そ
この 考 え で は,材 料 に 引 張 応 力(σ)が
こ に発 生 す る 集 中 応 力 を考 察 した.
加 わ る と,き 裂 の 先 端(半
径 ρ)に 大 き
な 応 力 集 中 が 生 じ,き 裂 が 進 展 す る こ とに な る.そ の と きの き裂 の先 端 の 集 中 応 力(σm)は
次 式 の よ う に な る.
(5.119) 式(5.119)に tor)と
お い て,次
式 を 導 入 し,応
力 拡 大 係 数KI
(stress
intensity
fac
し て 定 義 す る.
(5.120) こ こ で,Yは 速 度(V)と
無 次 元 の 定 数 で あ る.こ
の よ う に 定 義 し たKIに
密 接 な 関 係 が あ り,図5.60に
か な よ う に,VはKIの
は,き
裂 の進 展
示 す よ う な 関 係 が あ る.図
か ら明 ら
増 大 と と も に 速 く な る.Aの
図5.60
応 力 拡 大 係 数(KI),臨 数(KIc),き
範 囲 で は,VはKIに
界 応 力拡 大係
裂進展速 度の関係
比 例
表5.4
主 な 無 機 材 料 と金 属 のKIcの
値(佐
フ ァイ ン セ ラ ミ ッ ク工 学,p.84,朝
多 敏 之: 倉 書 店,
1990)
して 増 大 す る.Bで の 後,KIの
は一 定 値(こ
の 一 定 値 の理 由 は明 確 で は な い)を 示 す が,そ
増 大 と と もに き裂 の進 展 速 度 は急 速 に 増 大 す る.そ
し て,KIが
臨界
値 に達 す る と,き 裂 の進 展 速 度 は無 限 大 とな り,破 壊 に至 る. KIの 臨 界 値 を臨 界 応 力 拡 大 係 数(KIc,破 ば大 きい ほ ど,材 料 は靭 性(ね っ て,KIcは
壊 靭 性 値)と
い う.KIcが
ば り)に 富 み,破 壊 し に くい こ とに な る.し た が
材 料 の割 れ に くさ の 尺 度 と な る.高 靭 性 材 料 と は,KIcの
料 をい う.表5.4に
大 き けれ
大 きな 材
は,主 な 無 機 材 料 のKIcの 値 を示 した.
表 か ら明 か な よ う に,無 機 材 料 のKIcは 金 属 の そ れ よ り1桁 ほ ど小 さ く,靭 性 が 低 く脆 い こ とが わ か る.無 機 材 料 の 中 で も ジル コ ニ ア-イ ッ ト リア 系 の い わ ゆ る 部 分 安 定 化 ジ ル コニ ア 系 材 料 のKIcが
高 い.こ れ らの 材 料 が 高 靭 性 で あ る の
は,ジ ル コニ ア 中 に分 散 して い る微 細 な正 方 晶 の ジル コニ ア粒 子 が,応
力 の もと
で単 斜 晶 の ジル コニ ア粒 子 に相 転 移 し,そ の と きの 体 積 膨 張 が 周 囲 に圧 縮 応 力 を 生 じて,き 裂 の進 展 を阻 止 す るた め と推 定 され る. KIcは,所
定 の き裂 を導 入 し た 材 料 に応 力 を 加 え,き 裂 の 進 展 速 度 を計 測 す る
こ とに よ っ て求 め られ る. 5.5.2 超 塑 性 材 料 超 塑 性 は現 象 論 的 な概 念 で,脆 性 材 料 で あ る多 結 晶 セ ラ ミッ ク ス が,高 温 下 で の 引 張 応 力 で だ い た い100%以 200∼300%以
上 の 伸 び を 示 す 場 合,延
性 材 料 で あ る金 属 で は
上 の場 合 に そ う呼 ばれ る.超 塑 性 の 機 構 に は,内 部 応 力 超 塑 性 と微
細 結 晶粒 超 塑 性 の2種 類 が あ る.高 速 超 塑 性 合 金 は航 空 ・自 動 車 機 械 部 品 の精 密
(a) Ashby-Verrall個
別 粒 子 間 粒 界 滑 り
(b) 協 調 粒 界 滑 りの座 金 モ デ ル 図5.61 超 塑 性 変 形 にお け る粒 界 滑 り(武 藤 浩行,逆 〓:引
井 基 次:セ
ラ ミ ッ ク ス,38,128,2003)
張 応 力.
加 工 に実 用 化 され て い る. 内 部 応 力 超 塑 性 と は,あ る温 度 で 相 転 移 す る 多結 晶 体(ジ マ ス な ど),異 方 的 な 熱 膨 張 係 数 を もつ 多 結 晶 体,熱
ル コニ ア,酸 化 ビス
膨 張 係 数 の 異 な る第 二 相 を
分 散 さ せ た コ ン ポ ジ ッ トに,温 度 サ イ クル を加 え た とき に生 じ る 内部 応 力 に 促 進 され て変 形 が 進 行 す る タ イ プ で あ り,粒 径 の大 きな 場 合 で も生 じ る. 微 細 結 晶 粒 超 塑 性 で は,粒 径 が1μm程 て お り,図5.61に
度 以 下 の セ ラ ミ ッ ク ス で 多 く観 察 され
示 す 粒 界 滑 り に よ る 変 形 機 構 の モ デ ル が 提 案 され て い る.個
別 粒 子 間粒 界 滑 りで は,外 力 に よ って 粒 子 間 は 引 き離 され よ う とす る が,高 温 で は粒 界 や粒 内 で の局 所 で の応 力 勾 配 に よ っ て拡 散 が 生 じ,粒 界 に損 傷 を 生 じ な い よ うに個 々 の 粒 子 はわ ず か に形 を変 え な が ら滑 り,相 互 の位 置 を入 れ換 え る.協 調 粒 界 滑 りで は,座 金 最 密 充 〓 二 次 元 多 結 晶体 モ デ ル で 説 明 す る と,正 三 角 形 の 粒 子 グ ル ー プが 形 成 され て,そ の 界 面 で の粒 界 滑 りに よ る変 形 で あ る.粒 子 グル ー プ は ,そ の うち で の 粒 界 滑 りは起 こ らず,剛 体 と して挙 動 す る. 超 塑 性 の 特 性 を示 した セ ラ ミ ック ス に は,表5.5お
よび 図5.62に
示す ような
例 が あ る. 5.5.3 曲 げ 強 度 材 料 材 料 に応 力 を加 え,そ れ を増 加 して い くと,弾 性 変 形,塑
性変形 を経て破壊 に
至 る.破 壊 す る と き の応 力 が,材 料 の破 壊 強 度 で あ る.破 壊 強 度 は,単
に強 度 な
表5.5 高 速 超 塑 性 を 示 す セ ラ ミ ッ ク ス(平 賀 啓 二 郎,目
義 雄:セ
ラ ミッ
ク ス,38,118,2003)
図5.62
い し強 さ と呼 ば れ る.強 度 はMPaの 材 料 の 強 度 は,図5.63に
引 張 ク リー プ速 度
単 位 で表 され る.
示 す よ う に 引 張 り,圧 縮,曲
げ の3つ の 方 法 で 主 に
測 定 され る.こ れ らの 測 定 法 に応 じた 破 壊 強 度 が 引 張 強 度,圧
縮 強 度,曲
げ強度
で あ る. 引 張 強 度 は,材 料 表 面 の 欠 陥 に た い へ ん敏 感 で あ る.無 機 材 料 の 場 合,表 面 の 欠 陥 の 濃 度 を一 定 に す る の はた いへ ん難 し く,試 験 片 ご とに表 面 の 欠 陥 の 濃 度 は 異 な っ て い る.そ の 結 果,あ
ま り再 現 性 の よ い 測 定 結 果 は 得 られ な い.そ の た
め,引 張 試 験 に よ る強 度 の測 定 は あ ま り行 わ れ な い.ま た,圧 縮 試 験 に よ る強 度 は セ メ ン トに代 表 され る建 材 な どの よ う に,比 較 的 大 き な試 験 片 に そ の 測 定 の対 象 が 限 られ る.そ の た め,必 ず し も一 般 的 に広 く行 わ れ て い る強 度 測 定 法 とは い い 難 い.こ
の よ うな こ とか ら,無 機 材 料 に広 く用 い られ る強 度 の測 定 法 と強 度 の
評 価 法 は,曲
げ強 度 が 主 体 で あ る.こ の 測 定 の た め の 試料 の 作 成 法,荷 重 の か け
方 な ど はJISに
よ り規 格 化 さ れ て い る.表5.6に
度 の 測 定 値 を示 した.
は,種 々 の 無 機 材 料 の 曲 げ 強
図5.63
表5.6 無 機 材 料 の常 温 の 曲げ 強 度(MPa)(佐
P:気
孔 率,PSZ:部
式(5.119)か
材料の強度試験
多 敏 之:フ
分 安 定 化 ジル コニ ア,RB:反
ァインセ ラミック工 学,p.84,朝
倉 書 店,1990)
応 焼 結.
ら わ か る よ う に,無 機 材 料 の 破 壊 は き裂 か ら始 ま る.き 裂 の濃 度
は,同 一 の 材 料 で も試 料 ご とに異 な る の で,材 料 の破 壊 強 度 は統 計 的 な意 味 合 い が 強 い.す な わ ち,破 壊 は き裂 の 存 在 確 率 に依 存 す る とい って よ い.材 料 の強 度 が そ の面 積 と体 積 に よ って 変 わ るの は そ の た めで あ る. ワ イ ブ ル(Weibull)は,こ こ と注 目 し,破 壊 の 危 険 率Rを
の よ う な無 機 材 料 の 強 度 が 統 計 的 な特 性 を 有 す る 導 入 し て,破 壊 の 確 率f(σ)と
体 積Vの
関数 と
し て そ れ を表 した.
(5.121) f(σ)と
し て は 次 式 を提 案 し た.
(5.122) 式(5.122)に mは
お い て,σ0は
破 壊 強 度 で あ り,σ
は 材 料 に 加 え ら れ る 応 力 で あ る.
ワ イ ブ ル 係 数 と い わ れ る 定 数 で あ る.
式(5.122)に
お い て,mが
非 常 に 大 き け れ ば,σ0>σ
に ゼ ロ で あ る.f(σ)が1に 応 力 で あ れ ば,破 逆 に,mが
で 破 壊 の 確 率f(σ)は
な る の は σ0=σ の と き だ け で あ る .破
壊 の 心 配 は 全 く な い.安
壊強度 以下 の
心 し て 材 料 を使 用 す る こ と が で き る .
非 常 に 小 さ く ゼ ロ に近 い 値 で あ れ ば,f(σ)は1に
近 い 値 に な る.こ
の 場 合 は,い
か な る σ に 対 し て も 材 料 の 破 壊 の 可 能 性 が 存 在 す る .こ
材 料 で は,破
壊 の 可 能 性 が 常 に 存 在 し,安
が っ て,構
の よ うな
心 し て 利 用 す る こ と は で き な い.し
造 材 料 と し て 材 料 を選 択 す る 場 合 に は,ワ
料 を 使 用 す る こ と が 肝 要 で あ る.こ
常
の よ う に,ワ
イ ブ ル 係数mの
た
大 きな材
イ ブ ル 係 数 は材 料 の利 用 に お い
て 重 要 で あ る. 多 結 晶 の 場 合,き さ くな る ほ ど,材
裂 の 大 き さ は 結 晶 粒 子 の 大 き さ で 制 限 さ れ る.結 料 の 強 度 は 増 加 す る.こ
れ は 次 のOrowanの
σf=k2d1/2 と し て 知 ら れ て い る.こ
こ で,σfは
破 壊 強 度,k2は
晶 粒 子 が小
式 (5.123)
定 数,dは
結 晶粒 子 の大 き
さ で 粒 径 で あ る. 【参 考 文 献 】 1) W.D.キ 訳:セ 5.5.4
ン ガ リー,他
著,小
松 和 蔵,佐
多 敏 之,守
ラ ミ ッ ク ス 材 料 科 学 入 門,p.754,内
吉 佑 介,北
澤 宏 一 ,植 松 敬 三 共
田 老 鶴 圃,1980.
ク リー プ材 料
セ ラ ミ ッ ク ス を 強 度 材 料,特 き な 物 性 に 変 形 が あ る.変
に 高 温 構 造 材 料 と して 用 い る場 合 に関 わ る最 も大
形 の 種 類 を 大 別 す る と, 弾性変形 変形
塑性 変形 ク リー プ 変 形
粘 性流動変形
図5.64
の よ う に な る.図5.64に
応 力(σ)-歪 み(ε)曲 線 の模 式 図
示 す 応 力(σ)-歪 み(ε)曲線 に お い て,セ
よ う な 脆 性 材 料 で も金 属 の よ う な延 性 材 料 で も,σ=Eε
ラ ミックスの
の比例 関係 で弾 性変 形
す る領 域 が あ り,応 力 を除 け ば ε=0と な っ て も との 状 態 に戻 る.比 例 定 数Eは 弾 性 率 で あ る.フ
ァ イ ン セ ラ ミ ッ ク ス で は,E=100∼400GPa,引
の縦 の伸 び 歪 み に対 す る横 方 向 の 縮 み歪 み の割 合(ポ
張応力 方 向
ア ソ ン比,ν)は0.2前
後
で あ る.塑 性 変 形 領 域 は,弾 性 変形 領 域 か ら降 伏 点 を越 え た領 域 で あ り,応 力 を 除 い て も も とに戻 らず 永 久 変 形 を残 す.降 伏 点 は,硬 は っ き り しな い よ う な セ ラ ミ ッ ク ス で は,し
い金 属 で は明 瞭 で あ る が,
ば し ば,0.05%の
永 久 変 形 を生 じ
る応 力 の点 を とる.弾 性 変 形 領 域 で の 破 断 で は,降 伏 点 は な い.弾 性 領 域 の あ る と こ ろ の一 定 応 力 の も とで 長 期 間保 持 す る と,徐 々 に歪 み変 形 が 進 む.こ れ が ク リー プ変 形 で,歪
み(ε)-時 間(t)曲 線 が ク リー プ 曲 線 で あ る.ク
度 や 応 力 の 増 加 に よ っ て 図5.65の の と し て粒 径,気
孔 率,相
リー プ 曲 線 は 温
よ うに 変 わ っ て くる.変 形 に は.巨 視 的 な も
の分 布 な どが,微 視 的 に は結 晶 構 造,点
格 子 空 孔 な どが 関 わ る複 雑 な も の で あ る.ク
欠 陥,転 位,
リー プ の 性 状 は,耐 火 物 や エ ネ ル
ギ ー 変 換 装 置 にお け る高 温 で使 用 す るセ ラ ミ ック ス にお い て 重 要 な だ け で な く, HP,HIP,焼
結 とい った セ ラ ミ ック ス の 製 造 プ ロ セ ス に お い て も重 要 で あ る.
ク リー プ変 形 の 機 構 に は,変 形 の担 体 が 粒 内 の転 位 で あ る転 位 ク リー プ と,点 欠 陥(空
格 子 点)で
あ る拡 散 ク リー プ が あ る.
転 位 ク リー プ で は,転 位 の滑 り と上 昇 が 関 与 し,粒 径 依 存 性 は な く,歪 み速 度 は σの べ き に比 例 す る(累 乗 則 ク リー プ).巨
視 的 に は,滑
りの 起 こ る特 定 の面
図5.65
ク リー プ曲 線(ひ
ず み(ε)-時 間(t)曲 線)
に対 す る温 度 と応 力 の 影 響
や 方 向 は 結 晶 学 的 に 考 察 で き る.例
え ば,NaCl構
と い っ た イ オ ン 結 晶 で は,(110)面
で<110>方
やAlN(hcp)で リ ー プ で は,転
は,(0001)面
と<1120>方
位 滑 りが 基 本 で あ る が,多
の 障 害 と し て 作 用 す る.ま
表5.7
た,結
造 のNaCl(fcc)やMgO(fcc) 向 に 滑 り や す い.Al2O3(hcp)
向 が 基 本 滑 り 系 で あ る.単
結 晶 セ ラ ミ ッ クス で は粒 界 は転 位 滑 り
晶粒 は応 力 軸 に対 して 一 般 に は配 向 し て い な い
酸 化 物 セ ラ ミ ック ス の 高 温 低 応 力 下 で の ね じれ ク リー プ速 度
結 晶 のク
図5.66
種 々 の 酸 化 物 セ ラ ミッ ク ス の ク リー プ速 度
の で,粒 界 は粒 子 の 滑 りに 対 して 障 害 と な り,全 体 と して は延 性 を示 さ な い. 拡 散 ク リー プ で は,粒 界 に圧 縮 応 力 の 作 用 す る粒 界 と引 張 応 力 の 作 用 す る粒 界 が 生 じ,こ れ らの 間 で の空 格 子 点 の 濃 度 差 を推 進 力 と して 拡 散 が 生 じ る(応 力 誘 起 拡 散).変
形 に は粒 界 の 移 動 を伴 う.高 温 で は,結 晶 粒 間 の 滑 り運 動(粒 界 滑
り)に よ る ク リー プ も現 れ る(5.5.2項 表5.7お
よび 図5.66に,一
参 照).
定 応 力 下 で の 種 々 の セ ラ ミ ッ ク ス の ク リー プ 速 度
を示 す.結 晶 質 よ り非 晶 質 の ガ ラ ス の 方 が,粒 径 が小 さ くな る ほ ど,ま た 高 温 に な る ほ ど,そ れ ぞ れ ク リー プ 速 度 は著 し く大 き くな る. 5.6 表 面 利 用 材 料 固体 の 表 面 で は,原 子 の連 続 的 な結 合 が 切 断 さ れ て お り,表 面 原 子 の 結 合 は不 飽 和 な状 態 で あ る.そ
の うえ構 造 的 欠 陥 も存 在 し,表 面 は固 体 内部 に比 ベ エ ネ ル
ギ ー 的 に不 均 質 か つ 高 い状 態 に あ る.そ の た め,固 体 表 面 で の活 性 は高 く,固 体 内 部 で はみ る こ とが で き な い 表 面 特 有 の性 質 が 生 ま れ る. 表 面 を機 能 発 現 の 場 とす る 材 料 の 代 表 的 な もの に は,吸 着 材 や 触 媒 な ど が あ る.吸 着 材 や 触 媒 は,で
き る だ け表 面 積 をか せ ぐ目 的 で通 常 多 孔 体 と し て使 わ れ
図5.67 表面利用材料 として使 われる材料の概 略 的な構造図
る.多 孔 体 は図5.67に
示 す よ う に様 々 な細 孔 を有 し,表 面 特 性 は細 孔 の 大 き さ
や 分 布 に 大 き く支 配 され る. こ こで は,典 型 的 な表 面 現 象 で あ る気 体 分 子 の 吸 着 お よび 触 媒 反 応 を概 観 し な が ら,そ れ らの応 用 に関 して 実 用 材 料 を交 え な が ら説 明 す る.ま た,吸 着 現 象 を 応 用 して 多 孔 体 構 造 を評 価 す る技 法 につ い て も触 れ る こ と にす る. 5.6.1 吸 着 現 象 固 体 表 面 で は,表 面 の 過 剰 な エ ネ ル ギ ー を下 げ るた め に分 子 や イ オ ン の 吸 着 が 起 こ る.つ
ま り,吸 着 とは表 面 が あ れ ば必 ず 起 こ る現 象 で あ る.こ の た め,吸 着
に よ る ギ ブ ス の 自 由 エ ネル ギ ー変 化 ΔGは, ΔG=dH−TdS<0
(5.124)
とな る.分 子 や イ オ ンが 固 体 表 面 上 に 吸 着 す る とい う こ とは,分 子 や イ オ ンの 自 由 度 が 減 少 す る こ とを 意 味 す る.し た が っ て,dSは は 負 で あ る必 要 が あ り,か つ│dH│は│TdS│よ
負 と な る.こ の た め,dH
り大 き い こ とが 条 件 とな る.こ れ
よ り,吸 着 は発 熱 を伴 った 反 応 で あ る こ とが わ か る. 固 体 表 面 へ の 気 体 分 子 の 吸 着 は複 雑 な 現 象 で あ る が,吸 「化 学 吸 着(chemisorption)」
化 学 吸 着 とは,吸 着 され る物 質(吸 着 質:adsorbate)と 着 材:adsorbent)と を指 す.こ
着 力 の 性 質 に応 じて
と 「物 理 吸 着(physisorption)」
に 大 別 さ れ る.
吸 着 す る側 の物 質(吸
の 間 で電 子 移 行 が 起 こ り,化 学 的 な 結 合 が 形 成 さ れ る吸 着
れ に対 して物 理 吸 着 で は,吸 着 分 子 は フ ァ ン デル ワー ル ス 結 合 な どの
弱 い結 合 力 に よ って 吸 着 材 表 面 に吸 着 す る.化 学 吸 着 は単 分 子 吸 着 で あ るが,物 理 吸 着 で は単 分 子 吸 着 も多分 子 吸 着 も起 こ りう る.表5.8に,化
学 吸 着 と物 理 吸
表5.8 化 学 吸 着 と物 理 吸 着 の比 較
着 の 特 徴 を比 較 す る. 5.6.2 吸 着 等 温 線 気 体 分 子 が 固 体 表 面 に 吸 着 す る挙 動 は,吸 着 等 温 線(adsorption
isotherm)
を調 べ る こ と に よ っ て知 る こ とが で き る.吸 着 等 温 線 は,温 度 一 定 の も とで 吸着 材 単 位 質 量 当 た りに吸 着 した 気 体 分 子 の量 を縦 軸 に,平 衡 圧 を横 軸 と し て描 か れ る.横 軸 に 関 して は,測 定 温 度 にお け る気 体 分 子 の飽 和 蒸 気 圧 を用 い て 相 対 圧 と して 表 す 場 合 も あ る. 吸 着 等 温 線 は,実 験 か ら得 られ る もの で あ る.固 体 と吸 着 分 子 との組 合 せ に よ っ て 様 々 な 吸 着 等 温 線 が 得 られ る が,通 常 図5.68に
示 す6つ
の タ イ プ の どれ か
に分 類 され る.吸 着 等 温 線 の タ イ プが わ か る と,固 体 表 面 の幾 何 学 的 な様 子 や 吸 着 分 子 の 状 態 な ど を知 る こ とが で きる.吸 着 等 温 線 を調 べ る こ と は,吸 着 を理 論 的 側 面 か ら検 討 す る場 合 に も,実 用 的 側 面 か ら検 討 す る場 合 に も,き わ め て重 要 で あ る. 一 般 に,窒 素 を吸 着 質 と して 用 い る とⅡ 型 の 吸着 等 温 線 が 得 られ る.そ の窒 素 の 吸 着 等 温 線 か ら,固 体 の表 面 積 を知 る こ とが で き る.そ の手 順 は,最 初 に各 相 対 圧 で の 吸 着 分 子 量 をBrunauer, BET式(式(5.125))に
Emmett,
Tellerに よ り理 論 的 に 導 か れ た
適 用 し,単 分 子 層 吸 着 量 を 求 め る.単 分 子 層 吸 着 量 と
は,固 体 表 面 に単 分 子 層 を形 成 させ る た め に必 要 とな る気 体 分 子 の 量 で あ る.
(5.125) こ こ で,Pは
平 衡 圧,P0は
は 定 数 で あ る.単 し たBETプ
飽 和 蒸 気 圧,υ
分 子 層 吸 着 量 υmは,P/P0を
ロ ッ ト(図5.69)の
は 吸 着 量,υmは
単 分 子 層 吸 着 量,C
横 軸 に,P/υ(P0−P)を
切 片 と傾 き か ら 得 ら れ る.た
だ し,BETプ
縦 軸 と ロ
図5.68 Ⅰ型:吸
様 々 な タ イ プ の 吸 着 等 温 線(P:平
着 分 子 は単 分 子 層 の み を形 成 す る.た
衡 圧,P0:飽
和 蒸 気 圧)
だ し,吸 着 材 に 多 数 の ミ ク ロ孔 が 存 在 す る
場 合 に も観 測 され る. Ⅱ 型:吸
着 は多 分 子 層 吸 着 で あ る.飽 和 蒸 気 圧 で の 吸 着 量 は無 限 大 を意 味 す る.
Ⅲ 型:吸
着 はⅡ 型 同様 に 多 分 子 層 吸 着 で あ るが,Ⅱ型
と違 っ て,吸
質分子の吸着力が弱 い
場 合 に得 られ る. Ⅳ 型:メ
ソ孔 の 存 在 を意 味 す る.等 温 線 の 高 圧 部 で み られ る履 歴(圧
で 違 う値 を とる こ と)が Ⅴ 型:Ⅳ型
力 増 加 時 と,減 少 時
メ ソ孔 へ の 吸 着 ・ 脱 着 に よ る.吸 着 は多 分 子 層 吸着 で あ る.
同 様 に メ ソ孔 の 存 在 に よ っ て履 歴 が 現 れ る.Ⅳ型
との違 い は,吸 質 分 子 の 吸 着
力 が 弱 い こ とで あ る. Ⅵ 型:吸
着 分 子 の再 配 列 を 伴 っ た 吸 着 相 の 相 転 移 な どが 起 こ る場 合 に 観 測 され る.
図5.69
BETプ
ロ ッ ト
ッ トが 成 立 す る 相 対 圧 は お お よ そ0.05∼0.35の トか ら 求 ま る υmを 次 式 に 代 入 す る と,固 量 υmの 単 位 がg/gで
あ れ ば,Sは
と き で あ る.こ
体 の 表 面 積Sが
のBETプ
求 ま る.単
ロ ッ
分 子層 吸着
(5.126) とな る.こ
こで,Mは
窒 素 の分 子 量,sは
の 分 子 が 固体 表 面 で 占 め る面 積),Nは
窒 素 分 子1個
の 分 子 占有 断 面 積(1個
ア ボ ガ ドロ 定 数 で あ る.こ
体 の 表 面 積 は,単 位 質 量 当 た りの表 面 積 で,比 表 面 積(specific
こ で求 ま る 固
surface
area)
と呼 ばれ る. この ほか に,吸 着 等 温 線 か ら多 孔 体 の細 孔 径 や 細 孔 径 分 布 の見 積 も り も可 能 で あ る.評 価 法 は細 孔 の 大 き さ に よっ て異 な る.一 例 と して,Ⅳ型
の吸着等温線か
ら メ ソ孔 の 細 孔 径 と細 孔 径 分 布 を求 め る 方 法 を概 説 す る.Ⅳ型
で み られ る履 歴
は,吸 着 分 子 が メ ソ孔 内 で 毛 細 管 凝 縮 に よ って 液 化 した 結 果 現 れ る.こ の 履 歴 部 分 に,毛 細 管 内 の 液 体 の状 態 を表 す ケ ル ビ ンの 式 (5.127) を 適 用 す る.こ の 半 径,θ
こ で,γ は液 体 の 表 面 張 力,Vは
は接 触 角,Rは
吸 着 等 温 線 が,測
気 体 定 数,Tは
温 度 で あ る.い
定 温 度77K(−196℃)で
た もの とす る と,式(5.127)は
液 体 の モ ル 体 積,rは
毛細 管
ま,検 討 対 象 とす る
窒 素 を 用 い た 吸 着 実 験 か ら求 め られ
次 の よ う に整 理 さ れ る.
(5.128) こ こ で 求 ま るrは,あ あ る 相 対 圧(P1/P0)か
る 相 対 圧 の も と で 毛 細 管 凝 縮 が 起 こ る 細 孔 半 径 を 示 す. ら 求 ま るrをriと
毛 細 管 凝 縮 が 起 こ る が,半 吸 着 と な る.一
方,凝
径riよ
す る と,半
径riよ
り小 さ な 細 孔 で は
り大 き な 細 孔 で は 窒 素 分 子 の 吸 着 は 多 分 子 層
縮 が 起 こ る 前 を 考 え て み る と,窒
内 表 面 に 吸 着 し て い た は ず で あ る.そ
素 分 子 は あ る厚 さで 細 孔
の 吸 着 層 の 厚 さ をtと
す る と,実
際の細孔
半径 は rP=r+t と な る.窒
(5.129)
素 吸 着 に よ っ て つ く ら れ る 単 分 子 層 の 厚 さ は0.354nmで
あ る の で,
そ の 厚 さtは t=0.354(υ/υm) で 求 ま る.こ
こ で,υ
[nm]
は 各 相 対 圧 で の 吸 着 量,υmは
り実 際 的 に は,式(5.130)はFrenkel-Halsey-Hillの
(5.130) 単 分 子 層 吸 着 量 で あ る.よ 吸 着 理 論 に よ っ て次 の よ う
図5.70
メ ソ孔 を もつ 多 孔 質 シ リカ ガ ラ ス に 対 す る窒 素 吸 脱 着 等 温 線 と細 孔径 分 布 曲 線
に 整 理 さ れ る.
(5.131) こ れ に よ っ て メ ソ 孔 の 細 孔 半 径rpは,式(5.128),(5.129)お
よ び 式(5.131)か
ら
相 対 圧 の 関 数 と し て 表 さ れ る.
(5.132) 図5.70に,メ
ソ孔 を もつ 多 孔 質 シ リ カ ガ ラ ス に対 す る窒 素 吸 脱 着 等 温 線 を 示
す.履 歴 が 現 れ て い る相 対 圧0.5∼0.8に 2.20∼5.48nmと て い るが,円
な る(表5.9).細
対 応 す る細 孔 半 径 は,式(5.132)よ
り
孔 径分 布 の算 出 には様々 な方法 が提 案 され
筒 形 細 孔 モ デ ル を仮 定 したDollimore-Healの
着 等 温 線 か ら細 孔 径 分 布 を見 積 も る と,図5.70に
方 法*1に よ っ て,脱
示 す よ うな 細 孔 径 分 布 曲 線 が
得 られ る. 5.6.3 吸
着
材
吸 着 現 象 は,私 た ち の 生 活 や 産 業 界 で 広 く応 用 さ れ て い る.身 近 な と こ ろ で は,脱 臭 材,除 湿 材,乾
燥 材 な どが あ る.工 業 的 に は,特 定 成 分 の 回収,分
離,
精 製 な ど とい っ た 単位 操 作 で も多 用 され て い る.近 年,環 境 浄 化 の 分 野 へ の応 用 *1
D
. Dollimore,
G.
R.
Heal: J.
Appl.
Chem.,
14,109,1964.
表5.9 種 々 の相 対 圧 に お け る毛 管 凝 縮 半 径(r),吸
着 層 の 厚 み(t),細
孔半 径(rp)
表5.10
代 表 的 な セ ラ ミ ッ ク ス系 吸 着 材 とそ の主 な用 途
も盛 ん で あ る. す べ て の 物 質 は もの を吸 着 す る能 力 を もつ が,実 用 に供 され る吸 着 材 の 条 件 と し て は,① 被 吸 着 質 の 濃 度 が 低 くて も吸 着 量 が 大 き い こ と,② 吸 着 質 に対 す る選 択 性 が 高 い こ と,③ 長 期 間 の使 用 に耐 え う る こ と,④ 吸 脱 着 が 容 易 に行 え る こ と,⑤ 物 理 的 ・化 学 的 に安 定 な こ と な どが あ げ られ る.代 表 的 な セ ラ ミ ッ ク ス系 吸 着 材 に は活 性 炭,シ 途 を 表5.10に
リカ ゲ ル,ゼ
オ ラ イ トな どが あ る.そ れ らの 特 徴 と主 な用
示 す.活 性 炭 は炭 素 を主 成 分 と し,数%程
度 の酸 素 を含 む 材 料 で
あ る.製 造 は木 材 や 石 炭 な ど様 々 な 炭 素 質 物 質 を原 料 と し,そ れ ら を賦 活(ふ つ)と
呼 ば れ る細 孔 構 造 形 成 処 理 を介 し て行 わ れ る.シ
定 型 シ リカ(SiO2)の
集 合 体 で,一
れ る ヒ ド ロ ゲ ル(Si(OH)4)の る.シ
か
リカ ゲ ル は コ ロ イ ド状 無
般 に ケ イ酸 ナ ト リウ ム と硫 酸 の 反 応 か ら得 ら
脱 水 縮 合 反 応 を制 御 す る こ とに よ っ て 製 造 さ れ
リカ ゲ ル は多 様 な多 孔 構 造 を も ち,安 定 性 が 高 い とい う特 徴 を もつ.ゼ オ
図5.71
ゼ オ ライ トの 構 造 (A型
表5.11
ラ イ ト は,ア
ゼオ ラ イ ト)
市 販 ゼ オ ラ イ ト と吸 着 分 子
ル ミ ノ ケ イ 酸 塩 化 合 物(Mx/n〔(AlO2)x(SiO2)y〕
は 価 数nの
陽 イ オ ン)で
あ る.そ
の 製 造 は,構
成 元 素 成 分 を含 む ゲ ル を ア ル カ
リ条 件 下 で 水 熱 処 理 す る こ と に よ っ て 行 わ れ る.ゼ 性 炭 や シ リ カ ゲ ル と違 っ て,結 を も つ こ と で あ る.こ 別名 す.細
AlO2比
オ ラ イ トの 大 き な 特 徴 は,活
晶 構 造 に 由来 す る分 子 オ ー ダ ー サ イ ズ の 均 一 細 孔
の た め,ゼ
オ ラ イ トは き わ め て 優 れ た 吸 着 選 択 性 を 示 し,
「分 子 ふ る い 」 と も 呼 ば れ る.図5.71に,代
表 的 な ゼ オ ラ イ トの 構 造 を 示
孔 の 大 き さ や 性 質 は 製 造 条 件 やSiO2/AlO2比
5.11に,い
・mH2O,y≧x,M
な ど に よ っ て 異 な る.表
くつ か の 市 販 ゼ オ ラ イ トの 細 孔 径 と 吸 着 分 子 を 示 す.一 が 小 さ い ゼ オ ラ イ トは 親 水 性 を 示 し,そ
般 に,SiO2/
の 比 が 大 き く な る と,性
質 は疎
水 性 と な る. 5.6.4
触 媒 反 応
反 応 物R1とR2か
ら生 成 物Pが
得 ら れ る 場 合,そ
の化 学 反 応 式 は
R1+R2→P と な る.こ
の 系 に あ る 物 質Cを
で 速 や か に 進 行 す る.
少 量 加 え る と,そ
の反応 は次 の一連 の式 の もと
R1+C→I I+R2→P+C Iは 反 応 物R1と 物 質Cは
物 質Cか
ら生 成 す る反 応 中 間 体 で あ る.こ
消 費 と再 生 を繰 り返 しな が ら,R1+R2→Pの
の一 連 の 反 応 で は,
反 応 を進 行 させ る.こ の
よ う な 形 式 で 進 行 す る反 応 を触 媒 反 応 とい い,触 媒 反 応 を もた らす 物 質 を触 媒 (catalyst)と
呼 ぶ.こ
の場 合 で は,物 質Cが
性 化 エ ネ ル ギ ー を低 下 させ,反
触 媒 に あ た る.触 媒 は,反 応 の 活
応 速 度 を高 め る働 き を す る.
固 体 表 面 で 起 こ る触 媒 反 応 は,反 応 物 質 が 固 体 表 面 に 吸 着 し,活 性 な状 態 に移 行 す る こ と に よ っ て 反 応 が 進 行 す る.2種 は,次
の2つ
の反 応 機構 が 考 え られ る.1つ
類 の反応 分 子 に よる固体 触媒 反応 で は,反 応 物 質 が互 い に 固体 表 面 上 に
吸 着 し,吸 着 質 ど う し の反 応 に よ って 生 成 物 を 与 え る機 構 で あ る.も どち ら か一 方 の反 応 物 質 が 選 択 的 に吸 着 し,残
う1つ は,
りの 反 応 物 は そ の 吸着 質 と反 応 す
る こ と に よ っ て 生 成 物 を 与 え る 機 構 で あ る.そ れ ら の 機 構 は そ れ ぞ れ,Lang muir-Hinshelwood機
構 とEley-Rideal機
構 と呼 ばれ て い る.
セ ラ ミ ッ ク ス の触 媒 反 応 の 多 く は,固 体 表 面 の 化 学 的 性 質,特
に酸 ・塩 基 の 影
響 を強 く受 け る.反 応 物 質 に プ ロ トン を供 与 した り(ブ レ ンス テ ッ ド酸),あ い は 反 応 物 質 か ら電 子 対 を受 容 す る(ル イ ス酸)と
る
い っ た 「酸 」 の性 質 を示 す 物
質 を固 体 酸 と呼 び,反 応 物 質 か らプ ロ トン を受 容 した り(ブ レ ン ス テ ッ ド塩 基), あ るい は反 応 物 質 へ電 子 対 を供 与 す る(ル イ ス塩 基)物 質 を固 体 塩 基 と呼 ぶ.一 般 に,金 属 酸 化 物 の表 面 は水 酸 基 で 覆 わ れ て い る.金 属 イ オ ンの 電 気 陰 性 度 が 大 き け れ ば,化 学 結 合 した 表 面 水 酸 基 の 酸 素 原 子 中 の 電 子 対 は 金 属 イ オ ン側 に 強 く 引 きつ け られ る.こ す くな り,酸
の 結 果,O-H間
の 結 合 が 弱 め ら れ,H+の
解 離 が 起 こ りや
と して作 用 す る.こ れ に対 して 金 属 イ オ ン の電 気 陰 性度 が 小 さい場
合 に は,金 属 イ オ ンに よ る酸 素 原 子 の電 子 対 の 引 きつ け力 が 弱 い た め,表 面 水 酸 基 はOH-と して解 離 し,塩 基 と し て作 用 す る.こ れ ら の様 子 を 図5.72に 示 す. 一 方 ,逆 反 応 で は,[Ⅰ]のO-は 塩 基 点 と して,[Ⅱ]の 表 面 金 属 イオ ン は酸 点 と し て作 用 す る.固 体 触 媒 反 応 で は そ れ らの 部 位 が 反 応 活 性 サ イ ト とし て有 効 に働 く.例 え ば,キ
シ レ ン の 異 性 化 反 応 は ブ レ ン ス テ ッ ド酸 点 上 で 図5.73に
う に進 行 す る.固 体 酸 お よび 固 体 塩 基 の性 質 は酸 ・塩 基 点 の強 度,数,そ プ に よ っ て 特 徴 づ け られ る.
示すよ のタイ
[Ⅱ]
[Ⅰ]
図5.72
金属 酸 化 物 表 面 の性 質
図5.73
キ シ レ ン の異 性 化 反 応
5.6.5 固体 触 媒 材 料 セ ラ ミ ック ス に お け る触 媒 に は酸 化 物 系,硫 化 物 系,塩 化 物 系 な どが あ る.実 用 に は酸 化 物 系 が 最 も多 い.表5.12に
代 表 的 な 酸 化 物 系 固体 触 媒 とそ の 用 途 を
示 す. 固体 触 媒 の 中 で も固 体 酸 は,炭 化 水 素 の ク ラ ッキ ング,重 合,異 性 化,ア
ルキ
ル 化 な ど,化 学 工 業 に お い て き わ め て 有 用 な触 媒 材 料 で あ る.代 表 的 な固 体 酸 触 媒 は,分 子 ふ る い と し て知 られ るゼ オ ラ イ トやSiO2-Al2O3の あ る.ゼ オ ラ イ トは,1960年
複 合 酸 化 物 な どで
代 に石 油 精 製 プ ロ セ ス で 用 い られ て以 来,工
業的
に広 く利 用 さ れ て い る. 固体 触 媒 に お い て 重 要 な 機 能 は,高 触 媒 活 性 の ほ か に,高 選 択 性 が あ げ られ 表5.12
い くつ か の セ ラ ミ ッ ク ス系 固 体 触 媒 とそ の主 な 用途
[Ⅰ]
[Ⅲ]
[Ⅱ] 図5.74
ゼ オ ラ イ ト の 形 状 選 択 性(S.
M.
Csicsery:
Zeolites,
4,202,1984)
る.前 出 の ゼ オ ラ イ トは,細 孔 構 造 に 由 来 し て高 い選 択 性 を示 す.ゼ オ ラ イ トの 選 択 性 は形 状 選 択 性(shape 5.74に 示 す よ う に[Ⅰ]反
selectivity)と 呼 ば れ,発
応 物 選 択 性,[Ⅱ]生
現 機 構 の 違 い か ら,図
成 物 選 択 性,[Ⅲ]遷
移状 態選択
性 に分 け られ る.反 応 物 選 択 性 は,複 数 の 分 子 が 存 在 して も,細 孔径 よ り小 さな 分 子 だ け で反 応 が 進 行 す る こ とに よっ て 起 こ る.反 応 物 選 択 性 の典 型 例 に は,ヘ プ タ ン と3-メ チ ル ヘ キ サ ン混 合 系 に お け るZSM-5型
ゼ オ ラ イ トを 用 い た ヘ プ
タ ン の選 択 的 ク ラ ッキ ン グが あ る.生 成 物 選 択 性 は,細 孔 内 で 生 成 した 分 子 の 大 き さや 形 状 な どの 違 い か ら生 じる,生 成 物 の細 孔 内 で の 拡 散 挙 動 の相 違 に よっ て 発 現 す る.メ タ ノー ル と トル エ ン をZSM-5型 と,p-キ
ゼ オ ラ イ トの細 孔 内 で 反 応 させ る
シ レ ンが 選 択 的 に 生 成 す る現 象 は,こ の 生 成 物 選 択 性 に よ る.遷 移 状
態 選 択 性 は,反 応 の 遷 移 状 態 時 に細 孔 よ り大 き な空 間 を 必 要 とす る反 応 は立 体 障 害 に よ っ て抑 制 され,よ
り小 さ な遷 移 状 態 を経 る反 応 が起 こ る こ と に よ っ て 得 ら
れ る選 択 性 で あ る.ZSM-5型
ゼ オ ラ イ トを 用 い た メ タ ノ ー ル の炭 化 水 素 へ の転
化 反 応 で は,遷 移 状 態 選 択 性 の影 響 でC5∼C10の
脂肪 族や芳香 族炭 化水 素が 主 に
生 成 す る. 5.6.6 光
触
媒
光 を 受 け る と 触 媒 作 用 を 示 す 物 質 が あ る.そ (photocatalyst)と TiO2を
の よ う な物 質 は光触 媒
呼 ば れ る.
は じ め とす る半 導 体 物 質 は,バ
ン ドギ ャ ップ 以 上 の エ ネ ル ギ ー を もつ
光 を吸 収 す る と,価 電 子 帯 の 電 子 が 伝 導 帯 に励 起 さ れ る.こ の光 励 起 の結 果,伝 導 帯 に電 子 が,価
電 子 帯 に正 孔 が 生 じ る.こ の光 励 起 に よ っ て生 成 した 電 子 と正
孔 は,半 導 体 表 面 で 液 相 や 気 相 中 の成 分 を それ ぞ れ還 元 お よ び酸 化 し,反 応 を進 行 させ る.こ の 全 体 の 反 応 で は,図5.75に
示 す よ う に,液 相 あ る い は気 相 中 の
図5.75 Red:
光 触 媒 の反 応 機 構
reductant,
Ox:
oxidant.
あ る成 分 に渡 され た電 子 は正 孔 と反 応 す る他 の成 分 か ら供 給 され た こ とに な り, 反 応 前 後 で半 導 体 自身 は全 く変 化 しな い. 光 触 媒 の 用 途 に は,水 の 完 全 分 解,抗
菌,防
汚,脱 臭,NOxやSOxの
除去 な
どが あ る.な か で も水 の 分 解 は,次 世 代 燃 料 で あ る水 素 が 水 か ら製 造 で き る とい う点 か ら現 在 注 目 さ れ て い る.エ ネ ル ギ ー ギ ャ ップ が 水 の理 論 分 解 電 圧(1.23 V)よ
り も大 き く,さ ら に伝 導 帯 の 下 端 が 水 か らの 水 素 発 生 電 位 よ りマ イ ナ ス側
に,価 電 子 帯 の 上 端 は酸 素 発 生 電 位 よ りプ ラ ス側 に 位 置 す る半 導体 にエ ネ ル ギ ー ギ ャ ッ プ以 上 の エ ネ ル ギ ー を もつ 光 を 照 射 す る と,酸 素 と水 素 を発 生 させ る こ と が で き る.図5.76に,水
の 酸 化 還 元 電 位 に 対 す る種 々 の 半 導 体 の 伝 導 帯 お よ び
価 電 子 帯 の 位 置 を示 す.そ CdS,CdSeな
れ ら の 条 件 を満 足 す る物 質 に は,TiO2,SrTiO3,
どが あ る.現 在 地 球 環 境 保 全 の立 場 か ら,光 触 媒 の 研 究 開 発 は 非
常 に盛 ん で あ る.
図5.76
水 の酸 化 還 元 電 位 と種 々 の 半 導 体 の エ ネ ル ギ ー ギ ャ ップ の 関 係(pH=0)
5.7
5.7.1
材 料
生体 材料の歴 史
歯 骨 用 の 生 体 材 料 と し て,良 1930年
生 体
好 な 耐 食 性 を も ち 力 学 的 に も優 れ た 材 料 と し て,
前 後 か ら オ ー ス テ ナ イ ト系 ス テ ン レ ス(SUS
リ ウ ム(Co-Cr-Mo合
金)と
316,SUS
い っ た 金 属 が 使 わ れ 始 め,1940年
で の 人 工 関 節 や 骨 折 の 内 固 定 材 と し て 普 及 し た.1946年 ー ト(PMMA)骨 HDP
(High
頭
,1951年
Density
にPMMA骨
ソ ケ ッ ト(骨
生 体 内 吸 収 型 バ イ オ セ ラ ミ ッ ク ス と し て1965年
ル ミ ナ(Al2O3)製 た.1971年
に はCharnleyの
頭 受 け 皿)/金
属 骨 頭/金 属
の セ ッ コ ウ プ ラ ス タ ー(CaSO4・
骨 補 〓 材 と し て の 応 用 が 始 ま り,組
本 格 的 な 出 現 は1970年
代 に は整 形 外 科
セ メ ン トで 固 定 す る 方 式 が 開 発 さ れ た.一
ラ ミ ッ ク ス に お い て は,1892年
0.5H2O)の
イ タ
に は ポ リメ チ ル メ タ レ
セ メ ン ト,1963年
Polyethylene)製
ス テ ム か ら な る 人 工 関 節 をPMMA骨 方,セ
316 L),バ
頃 か ら で あ る.1969年
織 反 応 を 起 こ さ な い こ と か ら, 頃 ま で 盛 ん に 利 用 さ れ て き た が, カ ー ボ ン(C)製
ス ク リ ュ ー 型 人 工 歯 根,1970年
のCaO-Na2O-SiO2-P2O5系
人工弁 お よび ア
ア ル ミナ人 工 関 節 が 開 発 され
ガ ラ ス(Henchの
「バ イ オ ガ ラ ス 」)は
そ の 後 の バ イ オ セ ラ ミ ッ ク ス 研 究 に お け る 画 期 的 な 成 果 で あ っ た.図5.77は, そ の 生 体 内 で の 界 面 構 造 の モ デ ル で あ る.特 カ リ ッ チ 層 を 生 成 し,Ca2+とPO43+の 表 面 に 生 成 す る.1972年 ミ ッ ク ス(西
図5.77
ドイ ツ)と
定 の 成 分 の溶 出 に よ っ て安 定 な シ リ
溶 出 反 応 を 含 み,新
β-リ ン 酸 三 カ ル シ ウ ム(β-Ca3(PO4)2,β-TCP)セ
ラ
ハ イ ド ロ キ シ ア パ タ イ ト(Ca10(PO4)6(OH)2),HAp)
骨 と バ イ オ ガ ラ ス(Na2O-CaO-SiO2-P2O5ガ の 構 造 モ デ ル(L. Ceramics,
生骨 をイ ンプ ラ ン ト
L.
Hench:
p. 279, Plenum,
Surface New
York,
ラ ス)と and 1974)
Interface
の 接 合 界 面 付 近 of
Glass
and
セ ラ ミ ック ス(米
国,日 本)の
開 発,1976年CaO-Na2O-SiO2-P2O5-CaF2系
晶 化 ガ ラ ス(Ceravital),1977年
ア ル ミナ人 工 歯 根(西
CaO-MgO-P2O5-SiO2-CaF2系 HAp人
工 歯 根(日
ドイ ツ,日 本),1982年
結 晶 化 ガ ラ ス(A-W結
本),そ
して1983∼1985年
結
晶 化 ガ ラ ス),1983年
アパ タ イ トセ メ ン ト(日 本,米
国)
と い った 材 料 開 発 が 進 ん で 現 在 に 至 っ て い る. 5.7.2 バ イ オ セ ラ ミ ック ス に必 要 と され る一 般 的 性 質 生 体 は い か な る異 物(抗
原)に 対 して も,細 胞 レベ ル あ る い は抗 原 抗 体 レベ ル
の 異 物 反 応 を起 こ す の で,バ れ る.応 用 部 位 は,図5.78に
イオ セ ラ ミッ ク ス に は 生 体 適 合 性 の よ い素 材 が選 ば 示 す よ うに,硬 組 織 修 復 が大 部 分 で あ る.
生 体 内 とい う厳 し い化 学 的 腐 食 環 境 で 主 に は骨 格 系 の 機 能 を支 援 した り代 替 あ る い は代 行 さ せ よ う とす るた め に は,繰 返 し負 荷 の も とで も十 分 な 強 度 を保 ち, 化 学 的 耐 久 性 あ る い は成 分 イ オ ン の溶 出 が あ っ て も,化 学 的 安 全 性 の 高 い材 料 で あ る必 要 が あ る.そ
の要 素 は次 の よ うに ま と め られ る.
① 生 化 学 的 安 全 性:発
が ん 性,細 胞 毒 性,刺
② 生 体 組 織 親 和 性:異
物 膜(異
激,溶 血 とい っ た害 が な い.
物 周 囲 に生 じ る繊 維 性 タ ンパ ク質 の膜)が
薄い
あ る い は 生 じ な い,生 体 組 織 とな じみ が よい. ③ 生 体 力 学 的 調 和 性:生 体 組 織 と生 体 材 料 との 間 に力 学 的 な 不 整 合 性 が な い.
図5.78
バ イオセラ ミックス の応 用 部 位
④ 生 体 不 活 性:激
しい化 学 的 腐 食 環 境 で あ る生 体 内 にお い て化 学 的 に安 定 で,
イ オ ン溶 出 や 強 度 低 下 を起 こ さ な い. ⑤ 生 体 活 性:生
体 組 織 と直 接 結 合 す る.生 体 内 で の新 生 骨 増 生 あ る い は アパ タ
イ ト析 出 を促 進 す る. ⑥ 生 体 内 崩 壊 性:生 体 内 で 溶 解 性 あ るい は崩 壊 性 を有 す る.イ
ン プ ラ ン トさ れ
た周 囲 に新 生 骨 が 生 成 しや す い 状 況 をつ くる. こ こで,④
と⑤ お よ び⑥ とは相 反 す る性 質 で あ る が,応 用 部 位 に応 じ て使 い分
け られ る.①,②,③ 困 難 で あ り,い
は 同 時 に具 備 され るべ きで あ る が,単 一 素 材 で は一 般 に は
くつ か の 素 材 を複 合 化 させ る.現 段 階 で は,修 復 す る生 体 部 位 に
応 じて 優 先 す べ き性 質 を 考 え,数 多 くあ る セ ラ ミ ッ ク ス の 中 か ら最 適 の単 一 材 料,あ
る い は複 合 材 料 を 選 択 して い る.人 工 心臓 弁 に は炭 素 が,骨
格系支持構造
体 で あ る歯 骨 の 治 療 に は ア ル ミナ とアパ タイ トお よ び 結 晶 化 ガ ラ ス が,お
のおの
主 た るバ イ オ セ ラ ミ ック ス で あ る.ア ル ミナ は生 体 不 活 性 素 材 で あ り,生 体 組 織 と結 合 す る必 要 の な い 関 節 骨 頭 な ど に向 い て い る.一 方,生 体 組 織 と直 接 結 合 が 望 まれ る骨 充 〓 な どに は,生 体 活 性 素 材 で あ る リ ン酸 カ ル シ ウム 質,特
に アパ タ
イ トが 多 用 さ れ る. 5.7.3 腐 食 と崩 壊 イ ンプ ラ ン トされ た生 体 材 料 表 面 に は,直 ち に血 清 タ ンバ ク質(ア ル ブ ミ ン, フ ィ ブ リ ノ ー ゲ ン や γ-グロ ブ リン な ど)の 吸 着 が 生 じ る.そ
の後,生
体材 料 は
種 々 の 陰 イ オ ン,陽 イ オ ン,生 体 高 分 子 に よ っ て きわ め て厳 しい 化 学 的 腐 食 環 境 に さ らさ れ る.生 体 金 属 の 腐 食 は よ く知 られ て い る.化 学 的 に 安 定 な 金 とか 白 金,TiやCrで
あ っ て も不 働 態 層 を通 して,ゆ
っ く り溶 出 して 周 辺 組 織 中 に 累積
して 有 意 な量 を検 出 す る.腐 食 に よ って機 械 的 破 断 も生 じる.生 体 ポ リマ ー材 料 は,腐 食 に対 して は金 属 よ り有 利 な面 も あ るが,い 化(劣
化)に
ろ い ろ な機 構 で 生 じる低 分 子
よ る強 度 低 下 の 問 題 が あ る.セ ラ ミ ッ クス や ガ ラス お よ び ガ ラ ス セ
ラ ミ ッ ク ス の場 合 は,ア ル ミナ(Al2O3)で イ オ ガ ラ ス やHApで
代 表 され る 生 体 不 活 性,Henchの
代 表 さ れ る生 体 活 性 材 料,β-TCPの
バ
よ う な溶 解 性 ま た は
崩 壊 性 を もつ 材 料 の よ う に幅 広 い スペ ク トル を もつ. 5.7.4 骨 欠 損 部 の 治 癒 過 程 図5.79に
骨 欠 損 部 の 治 癒 過 程 を 示 す.骨 欠 損 が 小 さ い場 合 に は,(a)の
に骨 欠 損 部 内 に血 液 充 満,好
中 球,赤 血 球,フ
よう
ィ ブ リ ン ネ ッ ト形 成 で 血 〓 化 し
(a) 自然 治 癒 図5.79
(b) ブ ロ ッ ク を補 〓
骨 欠 損 部 の 治 癒 過 程(D.
F. Williams:
(c) 顆 粒 を補 〓
J. Mater.
Sci., 2,3421-3445,1987)
て,新 生 骨 が 発 生 し て 自然 に治 癒 す る.自 然 治 癒 が不 可 能 な ほ ど骨 欠 損 部 が 大 き い場 合 に は骨 補 〓 材 を使 用 し,(b),(c)の ンプ ラ ン ト表 面 に沿 っ て の 新 生 骨 生 成(骨
よ う な過 程 で骨 再 生 して 治 癒 す る.イ 誘 導),あ
長 因 子 で あ る骨 芽 細 胞 の 出 現 と新 生 骨 の 生 成(骨
る い は 離 れ た と こ ろ か ら成
伝 導),コ
ラ ー ゲ ン膜 に よ っ て
い わ ゆ る カ プ セ リン グ状 態 で 治 癒 す る. 5.7.5 バ イ オ セ ラ ミ ッ クス の 評 価 法 a. 物 理 化 学 的 試 験 ⅰ) 機 械 的性 質: 表5.13に,生
体 材 料 に用 い られ る各 種 セ ラ ミ ッ クス の 機
械 的 強 度 を示 す.生 体 材 料 と生 体 骨 との機 械 的 性 質 は互 い に調 和 させ る必 要 が あ り,一 方 が 強 す ぎて も弱 す ぎ て も,生 体 材 料 と し て の機 能 が 果 た せ な い(生 体 力 学 的 調 和 性).強
度 で は生 体 骨 の3倍 程 度,ヤ
ン グ 率 で は 同 じ程 度 が 望 ま しい と
い わ れ て い るが,単 一 材 料 で そ の よ う な力 学 的 性 能 を得 るの は難 し い.炭 素 材 料 の 場 合 は(5.7.6-g項
参 照),熱
分 解 炭 素,ガ
ラ ス状 炭 素,繊 維 状 炭 素 な ど の 素
材 が あ り,こ れ らを複 合 し て 幅 広 い 物 性 の 複 合 体(C/Cコ
ン ポ ジ ッ ト)が つ く
られ て い る.な お,炭 素 材 料 表 面 は疎 水 性 で あ り,こ れ は親 水 性 表 面 を もつ 酸 化 物 系 バ イ オ セ ラ ミ ック ス とは異 質 で あ り,心 臓 弁 の よ うな抗 血 栓性 を必 要 とす る 応 用 部 位 に向 い て い る. ⅱ) 溶 解 性:
バ イ オ セ ラ ミ ッ ク ス に対 す る 溶 解 性 の 規 定 は な い が,一 般 に
は,生 体 温 度 の37℃ に お け る溶 液 に 浸 漬 し,一 定 時 間 後 の 重 量 変 化 や 溶 出 成 分
表5.13
バ イ オ セ ラ ミッ ク ス の圧 縮 強 度 と破 壊 靭性 値
の 濃 度 か ら,溶 解 性 を評 価 す る.溶 液 と し て は,生 理 食 塩 水(0.9%),緩 液,生
体 無 機 成 分 を模 擬 した 擬 似 体 液,血
ⅲ) 擬 似 体 液 試 験:
衝溶
清 な どが 用 い られ る.
生 体 材 料 が体 内 に イ ンプ ラ ン トされ る と,そ の 表 面 は
前 述 した よ うに 生体 成 分 ・組 織 か らい ろい ろ な作 用 を受 け る.骨 組 織 を修 復 す る 材 料 に お い て は,異 物 反 応 を起 こ さず に新 生 骨 が生 体 材 料 表 面 に異 物 膜 な し に接 して 生 成 さ れ る性 質 が 望 まれ る.特 に,積 極 的 に新 生 骨 の 生 成 を促 す 骨 伝 導 性 を もつ 生 体 活 性 が 望 まれ る.生 体 活 性 を生 体 外 で評 価 す る方 法 と して,Kokuboら の 方 法 が 普 及 して い る.そ れ は,体 液 中 の 無 機 成 分 だ け を試 薬 を用 い て調 合 した 擬 似 体 液 中 に お け る表 面 ア パ タ イ トの 形 成 能 で評 価 す る もの で あ る.擬 似 体 液 と 血 漿 の 無 機 イ オ ン濃 度 を表5.14に
示 す.pHは36.5℃
で,7.25あ
る い は7.4に
緩 衝 液 で調 整 され る.ア パ タ イ トに 関 し て過 飽 和 溶 液 に な っ て い る.生 体 活 性 材 料 で は,1週
間以 内 に骨 類 似 組 成 の ア パ タ イ ト層 で 覆 わ れ る.生 体 不 活 性 で は ア
パ タ イ ト層 は 生 成 し な い . ⅳ) 耐 摩 耗 性 試 験:
人 工 関 節 の 骨 頭 で は,ソ ケ ッ トと の耐 摩 擦 摩 耗 性 能 が
要 求 さ れ る.摩 擦 摩 耗 は荷 重,摺 動,表
面 平 滑性,温
度,周
囲 の媒 体 組 成 な ど多
くの 因 子 が か ら む.材 料 の 摩 擦 摩 耗 試 験 に は 多 くの 方 法 が あ るが,単 純 で 小 型 低 コス トで あ る こ とか ら,pin-on-diskお
よびpin-on-plate方
所 定 サ イ ズ の 一 方 の テ ス トピ ー ス を他 方 の 円盤,あ ー ス上 に荷 重 をか け て,回 転 摺 動,あ
式 が 一 般 的 で あ る.
る い は プ レー ト状 の テ ス トピ
る い は 往 復 摺 動 させ て 重 量 減 少 を評 価 す
る.潤 滑 液 と して は,水 や 生 理 的食 塩 水 が よ く使 わ れ る が,牛 血 清 の 方 が よ い デ
表5.14
擬 似 体 液 と ヒ ト血 漿 の無 機 イ オ ン成 分 濃 度(molm-3)
*C . Ohtsuki, T. Kokubo, tsuka, T. Yamamuro:
K. Taka
J. Ceram. Soc.
Japan, 99,1-6,1991.
ー タ を与 え る の で 推 奨 され る. ⅴ) 骨 セ メ ン トの硬 化 時 間: PMMA系
骨 セ メ ン トの 硬 化 時 間 は,規 格 化
さ れ て い る.硬 化 時 間 は,熱 電 対 で初 期 温 度 と最 高 到 達 温 度 の 差 を2で 割 った 温 度 に 達 した 時 間 を硬 化 時 間 と して い る.歯 科 用 セ メ ン トで は,強 度 の面 か ら測 定 さ れ る.練 和 し た セ メ ン トペ ー ス トを所 定 の条 件 下 に保 持 し,一 定 の時 間 ご と に ペ ー ス ト表 面 に針 を静 か に落 と し,針 跡 が つ か な くな っ た 時 間 を硬 化 時 間 とす る.ア パ タ イ トセ メ ン トにつ い て は,特
に規 定 され て い な い の で,歯 科 用 セ メ ン
トの硬 化 時 間測 定 法 に 準 拠 して い る. ⅵ) 骨 セ メ ン トの 崩 壊 性:
経 時 的 に崩 壊 す る と,虫 歯 発 生,補 綴 物 の 脱 離
や 炎 症 反 応 に つ なが る.セ メ ン ト硬 化 体 を所 定 の 温 度 浸 漬 条 件 で 蒸 留 水 の入 っ た 容 器 中 に 吊 る した の ち,容 器 中 の水 を蒸 発 乾 固 して 残 っ た残 留 物 の 質 量 か ら崩 壊 率 を求 め る.ア パ タ イ ト系 セ メ ン トに つ い て は,特
に規 定 さ れ て い な いが,一 般
に は,崩 れ ず に硬 化 した 質 量 か ら崩 壊 率 を求 め て い る. b. 生 物 学 的 試 験
生 体 材 料,す
なわ ち生体 に とって は異物 が 生体 に入 る
と,細 胞 レベ ル お よ び抗 原 ・抗 体 レベ ル で の様 々 な生 体 防 御 反 応 が 起 こる.細 胞 や 実 験 動 物 を 用 い た 生 物 学 的 安 全 試 験 項 目 を 表5.15に
示 す.最 終 的 に は ヒ トで
の 臨 床 評 価 が な され るが,実 験 動 物 に よ る前 臨 床 試 験 に よ る安 全 性 の評 価 が 必 要 で あ る.安 全 性 評 価 の体 系 は 一般 毒 性 試 験(a)∼(c)と 本 と し て い る.
特 殊 毒 性 試 験(d)∼(l)を 基
表5.15 生物学 的安全性試験項 目
5.7.6 代 表 的 な バ イ オ セ ラ ミッ クス a. ハ イ ドロキ シア パ タ イ ト(HAp)
HApは,生
体 骨 歯 の70∼98%を
占
め る無 機 質 に きわ め て近 い.生 体 組 織 に対 し て害 はな く,硬 組 織 代 替 材 料 の 中 で は最 も優 れ た 生 体 活 性 を示 す材 料 の代 表 で あ る.HApセ
ラ ミ ッ ク ス は骨 組 織 内
に埋 入 され る と,直 ち に アル ブ ミ ンや血 液 細 胞 等 の 吸 着 ・皮 膜 が 形 成 され る.極 性 表 面 を もつ ア ル ミナ の よ うな 不 活 性 材 料 で も同 様 と考 え られ るが,HApの 合 は比 較 的 短 期 間 に 新 生 骨 に覆 わ れ,新 生 骨 と直 接 に 結 合 す る.HApは との 親 和 性 も良 好 で あ る.図5.80は
場 軟組 織
焼 結 体 の微 構 造 で あ る.多 孔 質 焼 結 体 は,
新 生 組 織 が侵 入 しや す い の で 望 まれ る形 態 で あ る. b. リ ン酸 三 カ ル シ ウ ム(TCP)
1180℃ 以 下 で の 安 定 相 で あ る β-TCPセ
ラ ミッ ク ス は,生 体 内 崩 壊 型 の生 体 活 性 材 料 で あ る.α-TCPは1180℃
以上 で の
安 定 相 を 急 冷 し て得 られ る材 料 で あ り,こ れ は水 和 反 応 に よ って 容 易 に アパ タ イ トに転 化 す るの で,バ イ オ セ メ ン ト粉 材 と して利 用 さ れ る. c. ケ イ 酸 リン酸 カ ル シ ウ ム系 ガ ラ ス お よ び ガ ラ ス セ ラ ミッ ク ス ガ ラス と して 登 場 し たCaO-Na2O-P2O5-SiO2系 度 が 十 分 で な い の で(曲
げ強度 ∼100MPa,破
HAp緻 密質焼結体 図5.80
ガ ラ ス(バ
イ オ ガ ラ ス)は,強
壊 靭 性 値(KIC)=0.5MPam1/2),
HAp多 孔 質焼結体 HApセ
生体 活 性
ラ ミ ッ ク ス の微 構 造
金 属 芯 材 に 被 覆 して生 体 活 性 表 面 に した 人 工 歯 根 と し て利 用 され る.そ の 後,高 強 度 と生 体 活 性 を兼 ね 備 え た 種 々 の 結 晶 化 ガ ラ ス が 多 数 開 発 さ れ て い る.CaOMgO-P2O5-SiO2-CaF2系 (A)と
結 晶 化 ガ ラ ス(A-W結
針 状 の ワ ラ ス トナ イ ト(W)が
晶 化 ガ ラ ス)は,ア
分 散 複 合 した 構 造 体 で あ る.こ れ の 骨 と
の 結 合 性 は ア ル ミナ の6∼7倍,HApの1.2倍
ほ ど を示 し,長 骨 な ど高 負荷 に耐
え られ る人 工 骨 と して期 待 され て い る.β-Ca(PO3)2系 ガ ラ ス転 移 温 度(T9∼500℃)付 さ ら に この 表 層 をHAp化
パタイ ト
近 で β-Ca(PO3)2繊
結 晶 化 ガ ラ ス の 場 合 は, 維 を一 方 向 結 晶 化 させ る.
処 理 す る こ とで,骨 結 合 性 は よ くな る.そ の 他,Na2
O(K2O)-MgO-Al2O3-SiO2-CaO-P2O5系
ガ ラ スか らの 雲 母-ア パ タ イ ト結 晶 化 ガ
ラ ス,人 工 関 節 骨 頭 用 の ア ル ミノ ケ イ 酸 塩(MgO-TiO2-Al22O3-SiO2-CaF2)系 結 晶 化 ガ ラ スが 開 発 され て い る. d. アパ タ イ ト系 複 合 材 料
HAp単
一 相 の焼 結 体 で は強 度 が 十 分 に 得 ら れ
な い こ とか ら,種 々 の 複 合 強 化 が 試 み られ て い る.分 散 複 合 強 化 で は,CaOP2O5成 分 系 で のHAp-TCP複
合 に よ る1.3∼1.5倍
ト複 合 に よ る 曲 げ 強 度200MPa,HApの HAp-TCP複
合 焼 結 体 が あ る.高 強 度 セ ラ ミ ッ ク ス 粉 末,あ
る い は繊 維 に よ る
維 な どの効 果 が 検 討 さ れ て い る.
水 和 活 性 を利 用 す れ ば,α-TCP焼
結 体 表 面 にHAp層
合 材 料 が 作 製 で き る.こ の 複 合 体 は,HAp単 生 骨 増 生 作 用 に優 れ た 生 体 活 性 を示 す.キ
リッ
一 部 を分解 させ て 複 合 焼 結 させ る
分 散 複 合 で は,Al2O3,ZrO,Si3N4,SiC,C繊 α-TCPの
強 度 増,CaO/P2O5フ
を形 成 さ せ た 複
一 相 の セ ラ ミ ッ ク ス と 同様 に,新 チ ンや 乳 酸 ポ リマ ー とい っ た,生 体 安
全 性 の高 い ポ リマ ー との 複 合 材 料 も開 発 さ れ て い る. 生 体 不 活 性 の 高 強 度 芯 材 に,リ
ン酸 カル シ ウ ム を被 覆 して生 体 活 性 に す る表 面
改 質 複 合 化 が 高 い 関 心 を集 め て い る.主 にHApの
優 れ た生 体 組 織 親 和 性 に 着 目
して,こ れ を機 械 的 性 質 に優 れ た金 属 お よ び セ ラ ミッ ク ス表 面 ヘ コ ー テ ィ ン グす る もの で あ る.コ ー テ ィ ン グ 法 に は,プ 動,電
ラ ズ マ 溶 射,ス
パ ッ タ リ ン グ,電 気 泳
解 液 中 で の スパ ー ク放 電,溶 液 か ら の 自然 沈 着,塗 布 熱 分 解,噴 霧 熱 分 解
な どが 適 用 さ れ て い る.最 5000∼20000℃
も研 究 が 進 ん で い る の は プ ラ ズ マ 溶 射 法 で あ る が,
の 高 い温 度 に さ ら され る た め,HApの
分 解や ガ ラス化が 一部 生
じ,生 体 適 合 性 の低 下 が 指 摘 され て い る. e. ア ル ミナ(Al2O3)
溶 融 法 に よ る単 結 晶 体(サ
フ ァイ ヤ)と 多 結 晶焼 結
体 が あ る.化 学 的 安 定 性 の 高 い 親 水 性 表 面 を もつ生 体 不 活 性 材 料 の代 表 で あ る.
工 業 材 料 と して 広 く利 用 さ れ,材 料 技 術 的 に 確 立 した 材 料 で あ る.機 械 的 強 度 お よ び耐 摩 耗 性 に優 れ,生 体 内 で 溶 解 した り反 応 した り しな い.生 体 組 織 との直 接 結 合 は しな い が 生 体 組 織 親 和 性 に優 れ,硬 組 織 代 替 材 料 と して 実 用 化 され て い る もの の 中 で は,最
も長 期 の実 績 を有 す る.
f. ジル コニ ア(ZrO2) 性 質 を示 す.バ
高 強 度,高
靭 性 で あ り,機 械 的性 質 で は突 出 し た
イ オ セ ラ ミ ッ ク ス と して の 実 用 性 の 詳 しい評 価 は十 分 で は な い よ
うで あ るが,生 体 不 活 性 で,ア ル ミナ 同様 の 高 い 生 体 親 和 性 が 期 待 され て い る. 人 工 歯 根,骨
頭 ボ ー ル お よび骨 補 〓 材 と して 使 用 され る.バ
し て検 討 され て い る もの の多 くは,Y2O3を3∼4mol%添 化ZrO2で,微
イ オ セ ラ ミ ック ス と
加 固溶 させ た部 分 安 定
細 な正 方 晶 系 の 粒 子 か らな る焼 結 体 で あ る.こ れ は,セ ラ ミ ッ ク
ス 中 で は最 も高 い破 壊 靭 性 値 を示 す.そ の 理 由 は,主 に,「 正 方 晶 系 → 単 斜 晶 系 」 へ の応 力 転 移 に よ る破 壊 エ ネ ル ギ ー の 吸収 にあ る.人 工 歯 根,人 工 関 節 骨 頭 と し て の研 究 が 進 ん で い る.ア ル ミナ 同様 の 高 い 生 体 親 和 性 が 期 待 さ れ て い る が,多 くの研 究 者 に よ っ て 水 分 に よ る劣 化 が 指 摘 され て い る. g. カ ー ボ ン(C)
カ ー ボ ン は疎 水 性 表 面 を もつ 生 体 不 活 性 材 料 で あ り,
生 体 内 で 反 応 も溶 解 もせ ず,生 体 親 和 性 は良 好 で あ る.抗 血 栓 性,耐 滑 性 に も優 れ,人
工 心 臓 弁,人
工 歯 根,人
れ て い る.機 械 的性 質 の制 御 技 術 は,セ 素(C)に
工 靭 帯 な どが 開 発 さ
ラ ミッ ク ス の 中 で は最 も進 ん で い る.炭
は種 々 の 種 類 が あ るが,生 体 材 料 と し て利 用 さ れ て い る の は ガ ラ ス 状
炭 素(GC),炭 る.熱
工 骨,人 工 腱,人
摩 耗 性,潤
素 繊 維(CF),熱
分 解 炭 素(PC)お
分 解 炭 素 に は,700∼1500℃
1500∼2000℃ 黒 鉛(PG)の3種
よ びC/Cコ
で 析 出 させ る熱 分 解 炭 素(PC),2000℃ が あ る.特
ン ポ ジ ッ トで あ
で 析 出 さ せ る 低 温 熱 分 解 炭 素(LTPC), 以 上 で 析 出 させ る熱 分 解
に組 織 が 等 方 的 な低 温 等 方 性 熱 分 解 炭 素(LTIカ
ー ボ ン)は ,人 工 心 臓 弁 と し て実 績 を上 げ て い る. h. リン酸 力 ル シ ウ ム セ メ ン ト(CPセ 料(バ
メ ン ト)
セ メ ン トタ イ プ の 生 体 材
イ オ セ メ ン ト)と して は,従 来 か ら整 形 外 科 分 野 で 人 工 関 節 の生 体 へ の 固
定 用 に,い
わ ゆ る骨 セ メ ン トが 多 用 され て い る.こ の 骨 セ メ ン トは,ポ
リメチ ル
メ タ ク レー トと メ チ ル メ タ ク レー トモ ノ マ ー との 混 合 物 を 重 合 硬 化 さ せ る も の で,使 用 実 績 も長 く,優 れ た 材 料 で あ る.し か し,重 合 時 の 発 熱(60∼100℃) に よ る生 体 組 織 へ の ダ メ ー ジ,残 留 モ ノマ ー の毒 性,長
期 間 使 用 に お け るル ー ズ
ニ ン グ な ど の 問 題 が 指 摘 され て い る.歯 科 用 セ メ ン トに お い て も,ZnOや
アル
ミ ノ ケ イ 酸 塩 ガ ラ ス を 粉 材 と し た も の が 使 わ れ て い る が,よ
り生 体 に 害 の 少 な い
生 体 類 似 成 分 か ら な る セ メ ン ト の 開 発 が 要 望 さ れ て き た.CPセ し て,①
水 で も酸 で も 硬 化 す る リ ン 酸 カ ル シ ウ ム(CaO-P2O5)系
形 態 で あ る,②
に 分 類 さ れ る,な
り さ ら に 生 物 ア パ タ イ トに 近 い,④
ど が あ げ ら れ る.代
み 合 わ さ れ て い る.CPセ
が あ り,そ
メ ン ト は,骨
生 体 活 性 骨 セ メ ン ト,歯 科 治 療 材,骨
あ る が,そ
期 の2週
の 後,一
と リン
れ ら に種 々 の 副 成 分 が 組
補 〓 材 と し て の ア パ タ イ ト多 孔 体 作 製, 粗 し ょ う症 用 骨 内 充 〓 ペ ー ス ト,薬
ラ ッ ク デ リ バ リ ー シ ス テ ム(DDS)担
メ ン トは,初
その
生 体 内崩 壊 性
表 的 セ メ ン ト組 成 に は,α-TCP系
酸 四 カ ル シ ウ ム(Ca4(PO4)2O,TeCP)系
CPセ
の 新 しい 材 料
生 体 活 性 で あ る ア パ タ イ ト を 主 に 生 じ て 凝 結 ・硬 化 す る,③
組 成 は こ れ ま で の 焼 結HApよ
担 体(ド
メ ン トの特 徴 と
体)な
剤徐放
ど と し て の 利 用 が あ る.
間 くら い まで は 炎 症 性 細 胞 の 浸 潤 の み られ る場 合 も
般 に は,ゆ
っ く り 吸 収 さ れ る と と も に 新 生 骨 が 生 じ,半
ら い で 骨 組 織 に よ っ て 置 き換 え ら れ る.生
体 親 和 性 は 良 好 で,炎
反 応 は ほ と ん ど な い と い う報 告 が 多 い.吸
収 性 の ほ とん ど な い 焼 結HApと
年 く
症 性 お よ び異 物 の大
き な 違 い で あ る. 【 参 考文 献 】 1) 金 澤 孝 文,門
間 英 毅:資
源 と素 材,110(4),199-204,1995.
2) 日本 セ ラ ミ ッ ク ス協 会 編:セ 技 報 堂 出版,2002.
ラ ミ ッ ク ス ハ ン ドブ ッ ク[応 用 編],pp.1489-1498,
付
表
表1 基礎物理 定数
( )の 中 は標 準 誤 差 で,例
えば(13)の 場 合,数
値 の 最 後 の2桁
が ±13の 範 囲 にあ る こ と を意 味 す る.
表2 10の 整 数倍 を表す接頭語
表3 単位換算 [長 さ]
[質 量]
[圧 力]
[エ ネ ル ギ ー]
索
欧
A-W結
文
B-H曲
エ ネル ギ ー バ ン ド 142
圧電 性 126,137 圧電 体 137
エ ル ンス ト-ア イ ン シ ュ タ イ ン
195
圧電 定 数 138 圧力 鋳込 成 形 法 50
遠 心 鋳 込 成 形 法 50 エ ン タ ル ピ ー 103
ア ドミ ッタ ンス 135
エ ン タル ピ ー変 化 104
ア パ タ イ ト系複 合材 料 212
エ ン トロ ピ ー 94
アパ タ イ トセ メ ン ト 206,210
エ ン トロ ピ ー効 果 87 エ ン トロ ピ ー変 化 95
ン デ ン サ ー 128
C/Cコ
ン ポ ジ ッ ト 208
CIP
液 相 法 36 エ ッチ ン グ面 19
ア ス ベ ス ト 47
線 166
BLコ
ア グ ロ メ レー ト 84 ア ス ペ ク ト比 46
晶 化 ガ ラ ス 206,209, 212
BET式
引
51
の式 112
CVD法
30
ア ボ ガ ドロ定 数 101
CVD法
薄 膜 37
ア ル コ キ シ ド 36
D-E曲
線 132
ア ル コ キ シ ド加 水分 解 法 28 α石 英 57
凹 型 表 面 79
ア ル ミナ 209
応 力 集 中 16
ア ル ミナ ウ ィス カ ー 47
応 力-歪 み 曲 線 191
ア ル ミナ人 工 歯 根 206 ア レ ニ ウ ス式 32
小 沢 の式 36
ア レニ ウス プ ロ ッ ト 33
温 度 消 光 180
DLVO理
論 87
extrinsic領 FRM
域 109
45
FRP
45
HAp
207,209,211
HIP
52,53,119
HP
51,53,119
IC基
安 定化 ジ ル コニ ア 97,153 カ
域 109
Kroger-Vink記 MBE
号 98,148
31,43 半 導 体 144
NASICON p型
押 出 成 形 法 50
板 18
intrinsic領
n型
応 力 16
154
PLZT PTC PTCR
イ オ ン注 入 42 イ オ ン伝 導 111
加 圧 焼 結 53,112 外 因 性 欠 陥 94
イ オ ン プ レー テ ィン グ 42,44
解 膠 剤 48
イ オ ン分 極 130
界 面 14 界 面 エ ネル ギ ー 15
鋳 込 成 形 法 49,91
半 導 体 145
異常 成 長 粒 子 15 一軸 性 171
174 13
一 次 再配 列 122
149
PVD薄
膜 42
PVD法
31
一 次粒 子 83
界 面 張 力 73,76 界 面 動 電 位(ζ 電 位) 37 回 路 基 板 144 ガ ウ ス分 布 100
,115 一 次 粒 子 径 83
化 学 拡 散 105
PZT
138
移動 度 101,112,119
化 学 吸 着 194
SHG
171,182
イ ン ピー ダ ンス 134
化学的機能 7
TCP
207,209,211
化 学 ポ テ ン シ ャ ル 102 ウ ィス カ ー 37,46
ア
行
イ オ ン強 度 86
拡 散 99 拡 散 ク リー プ 193
行
永 久磁 石 167 ア イ ソ ト ー プ 100
永 久 変形 191
ア ク セ プ タ ー 準 位 145
液相 焼 結 52,112,121,123
ア グ リ ゲ ー ト 84
液相 線 59
拡 散 係 数 99,101,118 ― の頻 度 因 子 116 拡 散 電 気 二 重 層 86 カ ー効 果 175
か さ密 度 22
凝 集 体 84
光 学 的機 能 7
加 水 分 解 28
共 晶 63
交換 エ ネ ル ギ ー 164
ガ スセ ンサ ー 155
共 振 モ ー ド 139
交換 積 分 164
加 成 性 45
共 析 晶 65
格 子 拡 散 109
活 性 化 エ ネ ル ギ ー 99
協 調 粒 界 滑 り 187
格 子 拡 散 係 数 109
活 性 炭 199 カ ップ リング コ ンデ ンサ ー
共 沈 法 27
格 子 間拡 散 係 数 106
共 融 点 64
格 子 間型 欠 陥 97
強 誘 電 相 56
格 子 間機 構 103
価 電 子 帯 142 ガ ー ネ ッ ト型 フ ェ ラ イ ト 168
強 誘 電 体 56,132 曲 面 77
格 子 欠 陥 93
ガ ー ネ ッ ト構 造 169
巨 大 粒 子 15
抗 磁 界 166 高周 波 熱 プ ラ ズ マ 40,41
過 飽 和 状 態 24,37
き裂 11
高 周 波 プ ラ ズ マ 40
ガ ラ ス セ ラ ミ ック ス 207,211
均 一 核 生 成 38
ガ ラ ス繊 維 45
均 一 沈 殿 法 27
高靭 性 材 料 184 構 造 材 料 184
ガ ラ ス相 10,11
禁 制 帯 142
構 造 鈍 感 な特 性 15
顆 粒 91
金 属 の 酸 化 反 応 110
構 造 敏 感 な特 性 15
127
乾 式 加 圧 成 形 法 51,91
構 造 部 材 8
乾 式 成 形 法 91
空 間 電 荷 分 極 130
抗 電 界 133
感 度 141 カ ー ンの 理 論 40
空 孔 98
硬度 2 高 熱 伝 導性 セ ラ ミ ッ ク ス 18
緩 和 時 間 137
空 孔 機 構 103,153 クチ ンス キー の 式 115
緩 和 周 波 数 137
屈 折 率 171
高 密 度 焼 結 体 117
屈 折 率 楕 円 体 171
固形 鋳 込 成 形 法 49
駆 動 力 101 クラ ッ ド 176
固形 泥 し ょ う 50 誤 差 関 数 100
気 孔 9,10,10 気 孔 率 21 擬 似 位 相 整 合 185
降 伏 応 力 89
グ ラ フ ァイ ト 55
固相 焼 結 52
擬 似 体 液 209
ク リー プ 曲 線 191
固相 線 59
擬似 体 液 試 験 209
ク リー プ 現 象 110
固相 反 応 31
傷 16
ク リー プ 材 料 190
固相 反 応 法 32
キ セ ロゲ ル 27
ク リー プ 速 度 188,192
固体 塩 基 201
気相 反 応 29
ク リー プ 変 形 190
固体 酸 201
気 相 法 37
固体 酸 触 媒 202
キ ッ シ ン ジ ャー の 式 36
蛍 光 179
軌 道 角 運 動 量 157
形 状 選 択 性 203
固体 電 解 質 型 燃 料 電 池 98, 150,156
軌 道 角 運 動 量 量 子 数 157 ギ ブ ス の 表 面 自 由エ ネル ギー
欠 陥 生 成 エ ネ ル ギー 94
コ ー デ ィ エ ラ イ ト触 媒 担 体 51
欠 陥 濃 度 96
コ ー ブ ル の ク リー プ 速 度 式
欠 陥 の 分 布 確 率 95
111
ギ ブ ス の 方 法 70
結 合 軌 道 141
固溶 限 界 62
キ ャパ シ ター 126
結 合 剤 48
固溶 阻 害 119
キ ャ リア 濃 度 147
結 晶 化 ガ ラス 206,212
吸光 係 数 175
固溶 体 58 コ ール-コ ー ル プ ロ ッ ト 137
吸収 係 数 175
結 晶粒 10,11 欠損 型 欠 陥 97
吸着 194
ケ ル ビ ンの 式 79,114,197
吸着 等温 線 195
原 子 間結 合 16
混 合 直 接 沈 殿 法 25 コ ン ダ ク タ ン ス 135
キ ュ リー 温 度 56,133,162
研 磨 面 19,20
コ ン デ ンサ ー 126
キ ュ リー 定 数 162
原 料 粉体 83
75
キ ュ リー の 法 則 162 キ ュ リ ー-ワ イ ス の 法 則 133, 162 強 磁 性 体 159,162
コ ロ イ ド粒 子 27
サ
行
コ ア 176 高 温 型 石 英 55
細 孔 径 分 布 198
光 学 材 料 170
再 編 成 型 転 移 55
錯 体 形 成 能 25 サ セ プ タ ン ス 135
焦 電 流 140
生 体 内 崩壊 性 207
蒸 発-凝 縮 機 構 114
生 体 不 活性 207
酸 化 ケ イ素 55
蒸 発-凝 縮 法 31
生体 ポ リマ ー 材 料 207
酸 化 チ タ ン 131
常 誘 電 相 56
生体 力 学 的 調 和 性 206
酸 化 物 イ オ ン伝 導 体 152
初 期 焼 結 114
生物 学 的 安 全 性 試 験 212
残 光 179
除 去 加 工 54
ゼ オ ラ イ ト 199,202
3成 分 系 70
触 媒 201
石 英 55
酸 素 ガ ス セ ンサ ー 155
触 媒 反 応 201
赤 外 セ ンサ ー 140
酸 素 分 圧 148
初 速 度 法 34 シ ョ ッ トキ ー欠 陥 94,98,108
析 出 物 阻 害 119
初 透 磁 率 167 シ リカ ゲ ル 199
ζ電 位(界
残 留 磁 化 165 残 留 分 極 132
積 層 型 コ ン デ ン サ ー 129 面 動 電 位) 37,87
絶 縁 材 料 144
磁 化 157,161 ― の ヒス テ リ シス 曲 線
ジ ル コ ニ ア 153
絶 縁 性 セ ラ ミッ ク ス 144
真 空 鋳 込 成 形 法 50
接 合 ・付 着 加 工 54
真 空 蒸 着 42
接 触 角 80
磁 化 率 161 ― の 温 度 変 化 163
真 空 中 の透 磁 率 157 真 空 の誘 電 率 127
絶 対 誘 電 率 127 セ ラ ミッ ク ス加 工 法 53
磁器 4
人 工 関 節 205
セ ラ ミッ ク フ ァ イ バ ー 46
磁 気 モ ー メ ン ト 157
親 水 性 81
繊 維 45
磁 区 165
真 性 半 導体 143
自 己 拡 散 105
真 性 領 域 109
繊 維 強 化 金 属 45 繊 維 強 化 複 合 体 45
自 己 拡 散 係 数 105,151
真 密 度 22
繊 維 プ ラ ス チ ック 45
自 己 制 御 型 ヒー タ 150
神 力-久 保 の式 33
全 気 孔 率 22 せ ん断 応 力 89
湿 式 加 圧 法 51
水 銀 圧 入 法 21
せ ん断 速 度 89
湿 式 成 形 法 91
ス タ ー リ ン グの 式 95
全 率 固溶 体 59
自 発 分 極 56,132
ス タ ー ン層 86 ス パ ッ タ リン グ 42
双 極 子 分 極 130
166
磁 束 密 度 160
射 出 成 形 法 51 ジ ャ ンプ 頻 度 102
相 互 拡 散 105
自 由 エ ネ ル ギ ー差 24
ス ピネ ル 型 フ ェ ラ イ ト 167 ス ピ ノー ダル 70
自 由 エ ネ ル ギー 変 化 29
ス ピ ノー ダル 分 解 68
相 対 密 度 22
自由 電 荷 129 周 波 数 定 数 140
ス ピ ン角 運 動 量 159
速 度 変 化 法 35
ス ピ ン磁 気 モ ー メ ン ト 158
束 縛 電 荷 129
準 格 子 間 機 構 103
滑 り系 192
準 粘 性 流 動 89 常 圧 焼 結 53
疎 水 性 81 塑 性 変形 190
生 化 学 的 安 全 性 206
ソ フ ト磁 気 材 料 167
蒸 気 圧 79
成 形 48,83
ゾ ル ・ゲ ル 法 27,36
焼 結 52 ― の 駆 動 力 52 ,113
成 形 助 剤 48
―
の メ カ ニ ズ ム 112
焼 結 助 剤 14
成 形 体 構 造 91 正 孔 145 ― の キ ャ リア濃 度 147
双 晶 12
タ
行
耐火断熱材 8 対 数 正 規 分 布 84
焼 結 法 53
静 水 圧 焼 結 119 脆性 3
常 磁 性 体 159
生 体 活 性 207
第 二 高 調 波 発 生 182
状 態 図 56
生体関連機能 7
耐 熱 性 3,10
状 態 密 度 146
生 体 金 属 207
耐磨耗性 2
蒸 着 法 42
生 体 骨 209
耐 摩 耗 性 試 験 209
焦 電 係 数 140
生 体 材 料 205
ダ イヤ モ ン ド 40,55
焦 電 性 126
生 体 組 織 親 和 性 206
焦 電 体 141
生 体 適 合 性 206
ダ イヤ モ ン ド状 炭 素 44 ダ イ ラ タ ン ト流 動 48,89
焼 結 体 の加 工 53
体 積 分 率 20
楕 円偏 光 172 ター ゲ ッ ト 44
等 温 線 断 面 図 71
ネー ル 温 度 163
陶器 4
ネ ル ンス ト-ア イ ン シュ タイ ン の
多 孔 体 193 単 結 晶 36
凍 結 乾 燥 29 透 光 性 アル ミナ 9
粘 性 流 動 変 形 190
弾 性 コ ン プ ラ イ ア ンス 139 弾 性 変 形 190
透 磁 率 158,161
粘 度 89
等 電 点 85
燃 料 電 池 155
弾 性 率 19
透 電 率 130
炭 素 繊 維 46
透 明 焼 結 体 118
濃 度 勾 配 99
断 熱 性 10
透明性 9
濃 度 消光 180
単 分 散 微 粒 子 29
透 明 発光 管 8 ドク タ ー ブ レー ド成 形 法 52,
単 分 子 層 吸 着 量 195
式 111
ハ
行
91 チ キ ソ トロ ピー 48
凸型 表面 79
チ ク ソ トロ ピー 90
ドナ ー準 位 145
蓄熱性 3 チ タ ン酸 鉛 56
塗 布 熱 分 解 法 36 ドメ イ ン 15
配 位 数 103 バ イ オ ガ ラ ス 205 ,207,211 バ イ オ セ メ ン ト 213
チ タ ン酸 ジ ル コ ン酸 鉛 137
トモ グ ラ フ ィ ー法 23
バ イ オ セ ラ ミ ック ス 205 ,211 ― の 評 価 法 208
超 高 圧 焼 結 53
トラ ッ プ 181
配 向 分 極 130
超 交 換 作 用 164
トリ ジマ イ ト 55
排 出 鋳 込 成 形 法 49,50
超 交 換 相 互 作 用 163
トレー サ ー 拡 散 係 数 106
排 泥 鋳 込 成 形 法 49 はい 土 50 ハ イ ドロキ シ アパ タイ ト 205 , 209,211 バ イ パ ス コ ンデ ンサ ー 126
超 塑 性 186 超 微 粒 子 29
ナ
行
沈 殿 生 成 26 沈 殿 反 応 24
内 因性 欠 陥 94
粒 成 長 15,117,124
流 込 成 形 法 49 ナ シ コン 154
低 温 型 石 英 55 抵 抗 成 分 135
パ イ ロ ク ロ ア構 造 98
ナ ト リウ ム-イ オ ウ電 池 155
破 壊 強度 16,187 破 壊 源 16
ナバ ロ-ハ ー リ ン グ の ク リー プ
破 壊 靭 性 値 186,211
速 度 式 111
薄 膜 37 パ ー コ レ ー シ ョン理 論 17
泥 し ょ う鋳 込 成 形 法 49 て この 規 則 60
二 次 再 配 列 122
ハ ー ド磁 性 材 料 167
デ シベ ル 178
二 次 相 14
バ リス タ 13
デ バ イ パ ラ メ ー タ 87
二 次 電 池 155
バ リ ス タ素 子 150
テ ー プ 成 形 法 52
二 次 粒 子 84,116
パ ワー モ ジ ュー ル 基 板 18
転 移 55
二 面 角 81
反 強磁 性体 160
転 位 滑 り 192
ニ ュ ー トン流動 48,89
反 結 合 軌 道 141
電 界 129
反 磁 性 160
電 気 泳 動 法 37
濡 れ 80,121
電 気 光 学 効 果 174
濡 れ現 象 79
電 気 的 二 重 層 86
反 射 率 177 バ ン ドギ ャ ップ 142 反 応 解 析 32
電 気 変 位 129
熱 間 静 水 圧 52,53
反 応 時 間法 35
電 気 容 量 127
ネ ッ ク成 長 52
電 極 127
熱CVD法
反 応 焼 結 53 反 発 力 87
点 欠 陥 濃 度 113
熱的機能 7
電磁 気的機能 7 電 子 の キ ャ リア 濃 度 147
熱 伝 導 性 10 ネ ッ トワー ク構 造 90
光 軸 171 光 触 媒 203
電 子 分 極 130
熱 プ ラ ズ マ 39
光 の 減 衰 175
伝 導 帯 142
熱分 解 反 応 35 熱分 解 法 35
光 フ ァイ バ ー 170,176
等 温 線 71
熱 膨 張 19
微 構 造 10
38
非 結 合 軌 道 141
―
の評 価 法 19
ブ レ ンス テ ッ ド酸 201
―
の 崩 壊 性 210
微 構 造 観 察 21 非 酸 化 物 超 微 粒 子 29
プ ロ トン伝 導 体 154
ポ リア ク リル 酸 88
ブ ロ ンズ 構 造 97
ポ リ シ ング 54
比 重 19 ヒ ス テ リ シス 曲線 166
分 域 132
ボ ル ツマ ン定 数 102
雰 囲 気 焼 結 53
ボ ル ツマ ンの 原 理 95
比 透 磁 率 161
分 域 反 転 132
非 ニ ュ ー トン流 動 48,89
分 解 溶 融 68
ボ ル ツマ ン分 布 則 104 ボ ー ル ミル 92
比 熱 19
分 極 129
比 表 面 積 197
分 極 処 理 132
微 分 気 孔 径 22
粉 砕 92
微 粉砕 機 92 非 平 衡 物 質 40
粉 砕 効 率 92 分 散 剤 88
膜 合 成 36 マ グ ネ シ ウ ム フ ェ ラ イ ト 33
非 平 衡 プ ラズ マ 39
分 散 作 用 88
マ グ ネ タ イ ト 156
比 誘 電 率 128
分 子 線 蒸 着 法 43
マ グ ネ トプ ラ ンバ イ ト 170
標 準 自由 エ ネ ル ギ ー 変 化 30
分 子 ふ る い 200
マ グ ネ トプ ラ ンバ イ ト構 造
表 面 14 表 面 応 力 113
粉 体 間 反 応 33
167 マ ク ロ孔 194
表 面 拡 散 109 表 面 拡 散 係 数 109
噴 霧 熱 分 解 29
曲 げ強 度 材 料 187
表 面 自 由エ ネ ル ギ ー 36,75
平 滑 コ ン デ ン サ ー 126
摩 擦 ミル 92 マ ト リ ック ス 14
表 面 水 酸 基 84
閉 気 孔 12
表 面 張 力 73,74 ビ ン ガ ム流 動 48,89
平 均2乗
平 均 粒 径 21
見 か け粘 度 89
頻 度 因 子 99
平 衡 状 態 31 平 衡 組 織 81
見 か け 密度 12,22
フ ァ ン デ ル ワー ル スカ 84
平 衡 定 数 30,31
フ ィ ック の第 一 法 則 99
平 衡 濃 度 25,26
フ ィ ック の第 二 法 則 99 フ ェ ラ イ ト 167
β石 英 57 ペ ロ ブ ス カ イ ト 131
メ ソ孔 194
フ ェ リ磁 性 体 160,162
ペ ロ ブ ス カ イ ト構 造 97
面 積 分 率 20
フ ェ ル ミ準 位 145
変 位 型 転 移 55
フ ェ ル ミの 分 布 関 数 145
変 形 加 工 54
毛 管 現 象 79
付 活 剤 180
偏 光 顕微 鏡 173
毛 管 力 87
噴 霧 乾 燥 29
変 位 102
マ
行
見 か け気 孔率 22
ミク ロ 孔 194 無 機 材 料 186
複 合 酸 化 物 26 複 合 則 45 複 素 誘 電 率 135
ボ ー ア 磁 子 157
不 混 和 域 69
方 位 量 子 数 157
ヤ ン グの 式 80
不 純 物 13
包 晶 66
ヤ ン グ率 45
不 純 物 領 域 109,147
包 晶 点 68
ヤ ン ダー の 式 33,110
物 理 吸 着 194
放 物 線 則 33
不 定 比 化 合 物 96
飽 和 磁 化 165
有 効 状 態 密 度 146
ブ ラ ウ ン ミ ラ ラ イ ト構 造 98 プ ラ ズ マCVD法 38
保 温 器 150
有 効 電 荷 98 誘 電 緩 和 137
プ ラ ズ マ デ ィ ス プ レー 181
補 強 素 材 47 蛍 石 構 造 97
プ ラ ズ マ 溶 射 法 212
ポ ッ ケル ス効 果 175
誘 電 損 率 136
フ ラ ッ ク ス 99
ホ ッ トプ レ ス 51,53,119
誘 電 体 128
フラ ン ク-コ ン ドン の原 理 179
ポ テ ン シ ャ ル エ ネ ル ギ ー 87
誘 電 率 127
フ リー マ ン-キ ャ ロ ル の式 36
骨 欠 損 部 の治 癒 過 程 209
誘 導結 合 型 プ ラ ズ マ 40
フ レ ン ケル 欠 陥 94,98
骨 セ メ ン ト 205,210,213 ― の硬 化 時 間 210
陽 イ オ ン伝 導体 153
ブ レ ン ス テ ッ ド塩 基 201
ヤ
行
ポ ア ソ ン比 191
誘 電 材 料 126
―
の ポ テ ン シ ャル 149
溶 解-析 出 プ ロセ ス 121,123 溶 解 度 曲線 24
粒 界 エ ネ ル ギ ー 15
ル イ ス酸 201
ル イ ス塩 基 201
溶 解 平 衡 24
粒 界 拡 散 109
揺 変 性 流 動 48
粒 界 拡 散 係 数 109
累 積 気 孔径 分 布 22 ル ミネ ッセ ンス 178
粒 界 滑 り 187 ラ
行
ラ ッセ ル-サ ンダ ー 結 合 159 ラ ッ ピ ング 54 ラ ンダ ム ウ ォー ク理 論 102 ラ ンデ の 因 子 159
粒 界 層 17 粒 径 12
冷 間 等 方 圧 プ レス 51 レオ ペ キ シ ー 48
粒 径 分 布 12
レオ ロ ジ ー 83
粒 子 再 配 列 121 流 動 特 性 89
レー ザ ー 181
理 論 強 度 185
連 結 線 72 レ ン トゲ ン写 真 法 23
臨 界 応 力 拡 大 係 数 186 リア ク タ ンス 135
レ ター デー シ ョン 172
燐 光 179
力 学 的機 能 7
リ ン酸 カル シウム セ メ ン ト 213
ロ ジ ン-ラ ム ラ ー 分 布 84
粒 界 12
リ ン酸 三 カル シ ウ ム 205,209, 211
ロ ー ル 法 52
― の 移 動速 度 119
著者 略歴
掛 川一 幸
山村
1948年 長野 県 に生 まれ る 1973年 千葉 大学 大学 院工学 研究科 修士課程 修了 現 在 千葉 大学 工学部 共生 応用化 学科教授 工学 博 士
1942年 石川 県に生 まれ る 1971年 大阪大 学大学 院理 学研究 科博 士課程 修 了 現 在 神奈 川大学工 学部 応用化 学科教授 理学博 士
博
守吉 佑介
門間英 毅
1937年 東京 都 に生 まれ る 1965年 東京 工 業大学大 学院 理工学 研究科修 士課 程修了 現 在 法 政大 学工学部 物質 化学科 教授 工 学博 士
1942年 神奈 川県 に生 まれる 1967年 東京 都立大 学工学 部工業 化学科卒 業 現 在 工学 院大学 工学部 マ テ リアル科 学科教授 工学 博士
植松 敬三
松 田元 秀
1947年 東 京都 に生 まれ る 1962年 兵庫 県 に生 まれ る 1991年 長 岡技術科 学大学 大学院 工学研 究科 1976年 マサチ ュー セ ッツ工 科大学 大学 院工学研 究科 博士 課程修 了 博 士課程 修了 現 在 長 岡技術 科学 大学 工学部 化学系 材料開 発工学 科教授 現 在 岡 山大学環 境理工 学部環 境物 質工学科助 教授 工学 博士 Ph. D.
応用化学 シ リーズ5 機 能 性 セ ラ ミ ック ス 化 学 2004年12月5日 2008年9月25日
定価 はカバ ーに表示
初 版 第1刷
第4刷
著
者 掛
川
山
村 吉
佑
介
門
間
英
毅
植
松
敬
三
松
田
元
秀
発 行 者 朝
倉
邦
造
倉
書
店
新 日本 印刷 ・渡辺 製本
無 断 複 写 ・転 載 を 禁 ず 〉 978-4-254-25585-0
博
東 京都 新宿 区新小 川町 6-29 郵 便 番 号 162-8707 電 話 03(3260)0141 FAX 03(3260)0180 http://www.asakura.co.jp
〈 検 印省略 〉
ISBN
幸
守
発 行 所 株式会社 朝
C2004〈
一
C3358
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in Japan