半導体工学 基 礎 か らデバ イ ス まで 監 修
深海 登世司
東京電機大学 出版局
本 書 の全 部 また は一 部 を無 断 で複 写 複 製(コ ピー)す る こ とは,著 作 権 法 上 での 例 外 を除 き,禁 じ...
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半導体工学 基 礎 か らデバ イ ス まで 監 修
深海 登世司
東京電機大学 出版局
本 書 の全 部 また は一 部 を無 断 で複 写 複 製(コ ピー)す る こ とは,著 作 権 法 上 での 例 外 を除 き,禁 じ られ て い ます.小 局 は,著 者 か ら複 写 に係 る 権 利 の管 理 に つ き委 託 を受 けて い ます の で,本 書 か らの複 写 を希 望 さ れ る場 合 は,必 ず小 局(03‐5280‐3422)宛 ご連 絡 くだ さ い.
ま
え
が
き
現今 の 華 や か な 科学 技 術 革 新 の 一 翼 を 担 っ て い る半 導体 工 学 は,そ の 取 り扱 う分 野 に お い て も極 め て 広 い範 囲 に及 ん で い る。 そ の た め,こ れ を学 ぶ 者 に対 して は,深
い基 礎 学 力 と多 岐 に わ た る専 門 的 な知 識 を もつ こ とが 要 求 され る。
この こ と は,初 学 者 に と り極 め て 困 難 な こ とで あ る。 大 学 の 半 導 体 工 学,お
よ び これ に関 連 す る授 業 担 当 者 は,日 頃 の授 業 を通 し
て これ を痛 切 に感 じ,初 学 者 の た め の適 当 な教 科 書 また は 参 考 書 の 出版 され る こ と を切 望 して い た。 幸 い に も,こ の度,本
学 出版 局 に お い て,上 記 の 目的 に合 う教 科 書 出版 の 企
画 が な され る こ とに な り,早 速,上
述 の授 業 担 当者 等 は,執 筆 委 員 会 を作 り,
そ の 取 り上 げ る べ き内 容 の 主 項 目 と解 説 の 基 礎 水 準 に関 し慎 重 な 審 議 を行 っ た。 本 書 は,学 部 学 生 が,週1回90分
の講 義 時 間 で30週
の期 間 に これ を学 習 で
き る よ う に計 画 され た。 この 限 られ た 制 約 を 満 た す た め に は,あ に と らわ れ,そ
ま り枝 葉 末 節
の根 幹 を見 失 う こ との な い よ う執 筆 内容 が整 理 され,そ
の解 説
に対 す る 記 述 は な る べ く平 易 に,ま た 参 照 図 は,見 や す さを 考慮 して比 較 的 大 き く,2色
刷 に した 。
委 員 会 で は,さ
らに執 筆 分 担 者 を 前 記 の よ うに 定 め る と共 に,監 修 者 を決 め
て 執 筆 分 担 者 相 互 間 に お け る,講 述 内容 の良 好 な 脈絡 と,解 説 水 準 の 統 一 を計 った 。 読 者 は,こ の よ う に して著 作 され た本 書 に よ り,半 導体 工 学 の 概 要 を理 解 し, さ ら に高 度 の 専 門 書 へ 進 む 足掛 りが 得 られ る な らば,著 者 等 に と って 無 上 の 喜 び とす る と こ ろで あ る。 な お,本
書 の 出 版 に 当た り,東 京 電 機 大 学 出版 局,お
よ び特 に編 集 担 当 の 岩
下 行 徳 氏 の ご尽 力 に対 し,深 い感 謝 の 意 を表 し筆 を置 く。 1986年11月
深
第2版
海
登世 司
にあ た って
本 書 を刊 行 し て か ら17年 の 歳 月 が 流 れ た 。 この 間,半
導 体 関 連 技 術 の発 展
に は 目覚 ま し い もの が あ り,理 工 系 大 学 の カ リキ ュ ラ ム で 対 応 す べ き範 囲 も拡 大 して き た。 本 書 に お い て は 重 版 の 度 に見 直 し と若 干 の 手 直 し を行 っ て きた が,今
回,近 年 の技 術 の 発 展 に 対 応 し た 内容 とす るた め に大 幅 な修 正 と加 筆 を
行 い,第2版 第2版
とす る こ と と した 。
に あ た っ て は,初 版 を監 修 さ れ た深 海 登 世 司 先 生 の 方 針 に 従 い な が
ら,主 に下 記 の 点 に つ い て 修 正 加 筆 を行 っ た。
① 素 子 や 応 用 技 術 に 関 し て発 展 の 著 し い太 陽 電 池 につ い て,第6章
に大 き く
加 筆 した 。 ② 新 た にパ ワー デバ イ ス を取 り上 げ,第7章
と した 。
③ 初 版 で は 「そ の 他 の 半 導 体 デバ イ ス」 と して ま とめ て い た 章 を,「 セ ン サ 関連 デ バ イ ス」 と 「そ の他 の デバ イ ス 」 に分 け,撮 像 デ バ イ ス な ど新 しい素 子 に 関 す る加 筆 を行 い,第8章,第9章
とした 。
④ 全 体 とし て,デ ー タ を最 新 の もの に 修 正 す る と と も に,必 要 な デ ー タ を加 筆 した 。
半 導 体 工 学 の 基 礎 的 な 内容 と デバ イ ス に 関 す る解 説 を網 羅 す る こ とを意 図 し た こ とで大 部 の 書 籍 と な っ た が,広
く学 習 者 に活 用 い た だ けれ ば 幸 い で あ る。
2004年6月
著者 一 同
目
第1章
緒
次
論
1・1 半 導 体 と は
1
1・2 半 導 体 デ バ イ ス の 歴 史
第2章
2
半導体の基礎的性質
2・1 結 晶 構 造
2・2 エ ネル ギ ー帯 構 造
14
2・3 真 性 半 導 体 と外 因 性 半 導 体
21
2・4 キ ャ リア 密 度
26
2・5 キ ャ リア の 運 動 と電 気伝 導
33
2・6 キ ャ リア の 生 成 と再 結 合
42
2・7 連 続 の 方程 式
演 習 問 題 〔2〕
第3章
1
49 58
ダ イ オ ー ド とバ イ ポ ー ラ
トラ ン ジ ス タ
3・1 pn接 合
61
3・2 金 属-半 導 体(MS)接
3・3 異 種 の半 導 体 に よ る接 合
3・4 バ イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ
3・5 シ リコ ン制 御 整 流 器(SCR)
演 習 問 題 〔3〕
合
80 93 97 116 121
第4章
第5章
第6章
第7章
電 界 効 果 トラ ン ジ ス タ 4・1
電 界 効 果 トラ ン ジス タの 基 礎 概 念
4・2
接 合 形 電 界 効 果 ト ラ ン ジ ス タ(JFET)
4・3
MOS形
4・4
MOSFETの
演
問
習
題
電 界 効 果 トラ ン ジ ス タ(MOSFET)の 特性
123 128 基礎
138 154
〔4〕
164
集積 回 路 5・1
集 積 回路 の 基 礎 概 念
168
5・2
バ イポ ー ラ集 積 回路
5・3
MOS集
5・4
メモ リ集 積 回 路
184
演
問
189
習
題
光 電 素 子(オ
積 回路
172 178
〔5〕
プ トエ レ ク ト ロ ニ ッ ク デ バ イ ス)
6・1
半 導体 の 光 吸 収 と発 光
6・2
受光 デバ イス
196
6・3
発 光 デ バ イス
203
6・4
太陽 電池
215
演
問
習
題
190
〔6〕
236
パ ワー デバ イス 7・1
パ ワー デ バ イス の 種 類 と用途
7・2
短 絡 エ ミ ッ ク構 造
7・3
GTO(Gate
7・4
パ ワ ー バ イポー
7・5
パ ワ ーMOSFET
7・6
絶 縁 ゲ ー トバ イ ポ ー ラ ト ラ ン ジ ス タ
Turn
237 238
Off)サ
イリスタ
ラ トラ ン ジ ス タ
240 242 243 245
演 習 問 題
第8章
〔7〕
247
セ ンサ と関 連 デ バ イ ス
8・1 温 度 セ ンサ と熱 電 変 換 デバ イ ス
8・2 磁 気 効 果 デ バ イス
261
8・3 歪 効 果 デ バ イ ス
267
8・4 ガ ス セ ンサ,イ
275
演 習 問 題
第9章
オ ン セ ンサ
〔8〕
248
280
各 種 半 導 体 デバ イ ス
9・1 マ イ ク ロ 波 デ バ イ ス
281
9・2 撮 像 ・表 示 デ バ イ ス
291
9・3 その 他 の デ バ イ ス
演 習 問 題 〔9〕
第10章
298 308
半 導 体 材 料 と素 子 製 造 技 術
10・1 半 導 体 材 料 の 高純 度 化
309
10・2 半 導 体 材 料 の 単 結 晶 化
312
10・3 不 純 物 お よ び構 造 欠 陥 の 制 御 技 術
320
10・4 微 細 加 工 技 術
10・5 集 積 化 技 術
338
10・6 半 導 体 材 料 の評 価 法
347
演 習 問 題 〔10〕
330
355
演 習 問 題 の 解 答
357
索
369
引
第1章 緒 論
1・1
半 導 体 とは
固 体 物 質 は,そ
の 導 電 率 に よ っ て,導
体,半
導 体,絶
縁 体 に 大 別 す る こ とが
で きる。 図1・1に
示 す よ う に,導
material),10-8S/m以
電 率 が,お
よ そ105S/m以
下 の 物 質 を 絶 縁 体(insulating
そ の 中 間 に 位 置 す る物 質 が 半 導 体(semiconductor)で の 厳 密 な 定 義 は,こ
上 の 物 質 を 導 体(conducting
の よ う に,簡
material)と
い い,
あ る 。 も ち ろ ん,半
導体
単 に導 電 率 だ けで 行 う こ と は で きな い 。
図1・1 固体 物 質 の 導電 率
正 し くは,物 質 構 造 か ら物 性 論 的 に,第2章
にお い て 詳 細 に述 べ られ る の で,
こ こで は,半 導 体 の もつ顕 著 な性 質 に つ い て 説 明 し,逆 に,そ の 特 徴 を もつ 物 質 と して,半
導 体 を定 義 して お こ う。 次 に,そ
の 主 な特 性 を 述 べ る。
① 温 度 に よ っ て導 電 率 が 著 し く変 化 す る。 不 純 物 を含 ま な い純 粋 な 半 導 体 の 導 電 率 σは,そ
の 絶 対 温 度Tが
高 く
な る と,顕
著 に 増 大 し,そ
の 間 に,お
よ そ,式(1・1)に
示 す よ うな 関 係 が 成
立 す る。 (1・1) こ こ で,A,Bは,物
質 に よ り定 ま る 定 数 で あ る 。
② 光 照 射 に よ り導電 率 が 増 加 す る。 ③ 微 量 不 純 物 の添 加 量 に,ほ
ぼ比 例 して,導 電 率 が増 加 す る。
④ 金 属 な ど と接 触 させ る と,整 流 作 用 が あ る。 ⑤ ホ ー ル 効 果 が 大 きい 。 な どで あ るが,こ れ らの 個 々 の事 柄 に 関 して は,第2章 表1・1は,主
で説明す る。
な半 導体 物 質 を示 す。 表1・1 主 な半 導 体物 質 の例
1・2 半 導 体 デ バ イ ス の 歴 史 (1) 整 流 作 用 と整 流 器
セ レ ンや 亜 酸 化 銅 な どの 半 導 体 を金 属 と接 触 さ
せ た と き整 流 作 用 を示 す が,こ の 現 象 が 発 見 さ れ た の は,そ れ ぞ れ,1876年 よび1878年
お
の こ とで あ る 。整 流 作 用 が発 見 され た 当初 は,何 故,こ の よ うな 現
象 が 現 れ るの か,そ
の 理 由 が 全 くわ か らな か った 。 従 っ て,こ
の現 象 を利 用 し
て実 際 に 整 流 器 を作 製 す る に して も,何 等,科 学 的 な指 針 に 基 ず く もの で は な く,た だ,経 験 的 に試 行 錯 誤 を繰 り返 しつ つ 進 め られ た の で あ る。 しか し,研 究 が 進 む に つ れ て,整 流 作 用 は,半 導 体 と金 属 の 接 触 部 で 起 こ る
こ とが 明 らか に さ れ,整 流 現 象 の 理 論 的解 明 が進 展 した 。 この よ う な こ とで,半 導 体 を利 用 した整 流 器 の 実 用 化 に は,か な り長 い年 月 を要 し,亜 酸 化 銅 整 流 器 は1920年,セ
レ ン整 流 器 は1928年
に な り,始 め て,
商 品 と して 市 販 され る よ う に な っ た 。 これ とは 別 に,方 鉛 鉱 や 黄 銅 鉱 な どの 鉱 石 に金 属 針 を立 て た もの の 整 流 作 用 を利 用 した,鉱 石 検 波 器 の 研 究 が1920年 こ の鉱 石 と して,シ
リ コ ンや,ゲ
を や や過 ぎた こ ろ か ら始 め られ た 。
ル マ ニ ウ ム が 取 り上 げ られ,特
に,第 二 次
大 戦 中 に は マ イ ク ロ波 レ ー ダ 用 検 波 器 を 目的 と し て,米 国 を 中 心 に活 発 な 研 究 が 行 わ れ た。 この研 究 は,後 の トラ ン ジス タ発 明 の た め の基 礎 を 形 造 る こ と に な った 。 (2)
トラ ン ジ ス タ の 誕 生 と成 長
トラ ン ジス タ が 生 まれ る以 前 は,高 周
波 の 増 幅 や 発 振 は,三 極 管 を主 体 とす る真 空 管 に よ って行 わ れ て い た 。 真 空 管 は,真 空 容 器 内 で,ヒ
ー タ に よ り加 熱 され た陰 極 が放 出 す る電 子 を 用
い る た め,ヒ ー タの 断線 や 真 空 の 劣 化 な どに よ り,寿 命 に も限界 が あ り,さ
ら
に,真 空 管 内 で の 消 費 電 力 も大 き く,ま た,そ の 形 状 もあ ま り小 さ くす る こ と が で きな い 欠 点 が あ る。 米 国 のベ ル研 究 所 で は,真 空 管 に代 わ る新 素 子 の 実 現 を 目的 に,半 導 体 の 性 質 に関 す る理 論 と実 験 の 両 面 か ら,そ の 基礎 研 究 を組 織 的 に行 い,ト
ラ ンジス
タ作 用 を発 見 す る に 至 った。 この研 究 の 中心 とな ったShockley,
Bardeen,
Brattainの3名
が,1965年
に
ノー ベ ル物 理 学 賞 を授 与 され た こ と は良 く知 られ て い る こ とで あ る。 最 初 に開 発 され た トラ ン ジ ス タ は 点 接 触 形 トラ ン ジ ス タ と呼 ば れ,図1・2に 示 す よ うに,ゲ ル マ ニ ウ ム 結 晶 の 表 面 に,2本
の 先 の 尖 っ た針 を,極
めて接近
さ せ て 立 て た構 造 の もの で あ った 。 しか し,初 期 の トラ ン ジ ス タ は,信 頼 性,安 定 性 に お い て 劣 り,製 品 の歩 留 ま り も極 め て悪 か った。 そ の た め,こ
れ の 使 用 範 囲 は,動 作 周 波 数,動
と もに低 い もの に限 られ て い た 。 その 後,幾
作電 力
多 の 研 究 開発 が 急 速 に行 わ れ,結
晶 材 料 の 主 力 はゲ ル マ ニ ウ ム か ら シ リコ ンへ,素
子 の 構 造 は 点 接 触 形 か らpn
図1・2 点 接 触 トラ ン ジ ス タ
接 合 形 へ 置 き 換 わ り,先 に 挙 げ た 問 題 点 は ほ と ん ど解 決 さ れ 現 在 に 至 っ て い る 。 ま た,こ )ト
の 間 に,電
界 効 果 トラ ン ジ ス タ,特
にMOS(metal
ラ ン ジ ス タ の 発 展 に は 顕 著 な も の が あ り,材
oxide
料 面 で は,ガ
semiconductor リ ウム ひ
素 な ど の 導 入 も相 当 進 ん で い る 。 以 上 の よ う に,ト
ラ ン ジ ス タ の 発 明 は,真
空 管 に代 わ る新 しい 素 子 を 生 み 出
し た と い う こ と だ け で も十 分 に 革 命 的 な 事 柄 で あ る が,こ
れ の発 展 過 程 を通 し
て 半 導 体 工 学 と い う 学 問 体 系 が 確 立 さ れ,ま
た 工 業 の 分 野 に半 導 体 工 業 とい う
大 き な 新 分 野 が 築 か れ た こ と を 考 え る と,こ
れ の与 え る影 響 の極 め て大 きい こ
とが 知 れ る。 (3)
半 導体集積 回路
形 化,高
信 頼 化 は 達 成 さ れ た が,大
を 高 め る た め に は,電
ト ラ ン ジ ス タ の 発 明 に よ り,素
子 の レベ ル で の 小
規 模 な 電 子 装 置 を 小 形 化 し,か
つ,信
頼 性
子 部 品 を 接 続 して 電 子 回路 を構 成 す る う えで 抜 本 的 な 手
段 が 必 要 と され た。 こ れ を 半 導 体 技 術 の レ ベ ル で 実 現 し た の が,半 導 体 集 積 回 路(IC;integrated circuit)で
あ る 。 集 積 回 路 の 概 念 は,1952年
れ た が,こ
れ が や や 具 体 化 さ れ た の は,1959年Texas
ゆ るKilby特
許 で あ る。
に 英 国 のDummerに
よ っ て述 べ ら
Instruments社
の,い
わ
こ の 特 許 で は,ト 造 り込 み,こ
ラ ン ジ ス タ,抵
抗,コ
ンデ ンサ な ど を シ リ コ ン半 導 体 中 に
れ ら を リ ー ド に よ っ て 結 線 し,回
路 を構 成 させ る 方 法 が 述 べ られ
て い る。 こ れ と ほ と ん ど 同 じ 時 期 に,Fairchild社 上 に 金 属 を 蒸 着 し,こ に よ っ て,半 ICの
のNoiceに
よ り,シ リ コ ン 酸 化 膜 の
れ に よ り配 線 を行 う方式 の 特 許 が 提 出 さ れ た 。 この こ と
導体 集 積 回路 に関 す る基 本 的 な構 成 思 想 が 固 ま っ て きた 。
商 品 化 は,こ
の 基 本 思 想 を 実 現 す る た め,半
導 体 工 学 上 の 多 くの 技 術 が
総 合 さ せ て 始 め て 可 能 に な っ た も の で あ る 。 半 導 体 技 術 の 流 れ と し て は,ト
ラ
ン ジス タ の発 明 に 伴 う必 然 的 帰 結 と考 え られ る。 集 積 回 路 の 技 術 的 メ リ ッ ト は,電 低 価 格 化 に あ る が,こ
子 回 路 の,小
形 軽 量,高
信 頼 性,高
性 能,
れ らの 長 所 を 生 か す た め に は,歩 留 ま り さ え 許 す な ら ば,
1つ の チ ッ プ の 上 に 造 られ る 素 子 の 数 が 多 け れ ば 多 い ほ ど 良 い の は 当 然 な こ と で あ る。 従 っ て,ICも
SSI(small
integration),
LSI(large
integration)へ
と,発
こ れ に 伴 っ て,集
scale scale
integration)か
integration)を
経 て,
ら MSI(medium VLSI(very
scale large scale
展の道 をた どっている。
積 回 路 で 実 現 さ れ る 対 象 も,当 初 の 小 規 模 な 電 子 回 路 か ら,
現 在 で は マ イ コ ン で 代 表 さ れ る シ ス テ ム に 移 行 し て き た 。 こ う し て,半
導体 は
デ バ イ ス か ら シス テ ム に 至 る現 代 電 子 工 業 の 中核 を荷 う よ うに な っ て い る。
第2章 半 導体 の基礎的性 質
本 章 は,次
章 以 降 で述 べ る 各 種 半 導 体 デ バ イ ス を 理 解 す る た め に必 要 な
半 導体 物 理 の 基 礎 知 識 の 整 理 と,こ れ ら の デバ イ ス の 特 性 解 析 に 用 い る基 本 式 の 誘 導 と を 行 う。 内 容 の 理 解 を 深 め る た め,代
表 的 な 例 題 を本 文 中 で
取 り上 げ て 解 説 す る。
2・1
結晶構造
〔1〕 原 子 構 造 (1)ボ
ーアの模型
物 質 を構 成 す る原 子 は,原 子 核 とそれ を取 りま く電
子 とか ら成 り立 っ て お り,そ れ ぞれ の総 電 荷 量 が 原 子 の種 類 を定 め て い る。 こ の 原 子 の 基 本 的 な 構 造 は,ボ ー ア の 原 子 模 型(Bohr
atomic
model)に
よって
説 明 す る こ とが で き る。 図2・1の よ うに,電 荷-q,質
量m電
子 が,電 荷Zq(Zは
原 子 番 号)の 原
子 核 の まわ りを速 度υ で半 径r の 円軌 道 上 を運 動 して い る もの とす る。この と
図2・1
ボー ア の原 子模 型
き 電 子 の も つ 全 エ ネ ル ギ ーEは,電 ネ ル ギ ーEkの
子 の ポ テ ン シ ャ ル エ ネ ル ギ ーUと
運動 エ
和 と し て 表 さ れ,
(2・1)
と な る 。 こ こ で,ε0は
真 空 の誘 電 率 で あ る。
電 子 に 作 用 す る ク ー ロ ン カ(Coulomb's
force)と
遠 心 力 と が つ り合 っ て お り,
(2・2)
が 成 立 す る。 ま た,電 子 の 角 運 動 量 に関 す る ボ ー アの 量 子 条 件 は, (2・3) で 与 え ら れ る 。 こ こ で,hは 2)と
式(2・3)を
式(2・1)に
プ ラ ン ク 定 数(Planck's
代 入 す る と,電
子 の取
constant)で
あ る 。 式(2・
り 得 る エ ネ ル ギ ーEnは,
(2・4) と な り,飛
び 飛 び の エ ネ ル ギ ー が 許 さ れ る こ とが わ か る 。 こ の 許 さ れ た エ ネ ル
ギ ー を エ ネ ル ギ ー 準 位(energy
level)と
い う。 水 素 原 子 の 場 合 に は,通
=1の 状 態 に の み 電 子 が 存 在 し て い る の で,こ と い い,そ
れ よ り高 い エ ネ ル ギ ー 状 態 を 励 起 状 態(excited
底 状 態 に あ る 電 子 をn=∞
状 態(自
ー を イ オ ン 化 エ ネ ル ギ ー(ionization 合 で は,式(2・4)で,Z=1,n=1で (2)量
の 状 態 を基 底 状 態(ground
子状態 の数
由 電 子 の 状 態)に energy)と
い う
state)と
い う。 基
。 例 え ば,水
素 原 子 の場
な る。
ボ ー ア の 原 子 模 型 で は 説 明 で き な か っ た,よ ・ブ ロ イ 波(de
Broglie
state)
移 す に 要 す るエ ネ ル ギ
あ る か ら,13.6eVと
な 電 子 の エ ネ ル ギ ー 状 態 は,ド
常n
wave)の
導 び か れ た シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ー の 波 動 方 程 式(Schrodinger's
り詳 細
概 念 を用 い て wave
equation)
に よ っ て 明 確 に され た 。 時 間 を 含 ま な い シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ー の 波 動 方 程 式 は
,
(2・5)
で 与 え ら れ,こ Eは
れ を 解 け ば,定
電 子 の 全 エ ネ ル ギ ー,Uは
常 状 態 に お け る 電 子 の 状 態 が 求 ま る 。 こ こ で, ポ テ ン シ ャル エ ネ ル ギ ー で あ る。 ψ は 電 子 を
波 動 と して 考 え た と きの 振 幅 を 表 す 波 動 関 数 で あ り,│ψ│2は 電 子 の 存 在 確 率 を 与 え る もの で あ る。 この 波 動 方 程 式 は,Uが
与 え られ た と き,Eが
特定 の値 を とるときにのみ解
が 存 在 す る。 この こ と は,電 子 の エ ネ ル ギ ー 準 位 が 飛 び 飛 び の 離 散 的 な値 を と る こ とを 意 味 して い る。
〔 例 題 〕2・1
図2・2の
ル エ ネ ル ギ ーUが0,そ
よ う に,0<x<Lの
領 域 で,電 子 に 対 す る ポ テ ン シ ャ
の 他 の 領 域 で は 十 分 に 大 き な 値 を もつ 井 戸 形 ポ テ ン シ
図2・2 一 次 元 の 井 戸 形 ポ テ ン シ ャ ル
ャ ル 中 に あ る 電 子 に つ い て,そ
れ の 取 り得 る エ ネ ル ギ ーEお
よび波動 関 数 ψ
を求 め よ。 〔 解 答 〕 一 次 元 の シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ー の 波 動 方 程 式 は,0<x<Lの
領 域 で, (2・6)
で 与 え ら れ る 。 こ の 式 の 一 般 解 は,A,Bを
積 分 定 数 と し て,次 式 で 与 え られ る 。 (2・7)
こ こ で,右
辺 第1項
は 電 子 を ド ・ブ ロ イ 波 と し て 考 え る と き,+xの
搬 す る 波 の 振 幅 を 表 し,第2項
は−xの
で,kは
位 長 さ 当 た りの 波 の 数 の2π 倍 で,波
ド ・ブ ロ イ 波 の 波 数(単
す れ ば,k=2π/λ)を
ほ うへ 伝
ほ う へ 進 む 波 の 振 幅 を 示 す 。 そ し て,
表 す 。 電 子 の 運 動 量 をPと
す れ ば,ド
長 を λと
・ブ ロ イ 波 長 λ=
h/pを 用 い て, (2・8) と な る 。 こ こ で,h=h/(2π)で
あ る 。 さ ら に,Pとkの
間 に は,
(2・9) の 関 係 が あ る。 さ て,式(2・7)の
解 に お い て,x=0お
な け れば な ら な い。す
な わ ち,電
よ びx=Lで
子 は,井
テ ン シ ャ ル 壁 で 反 射 さ れ る た め,次
は,波
動 関 数 ψ(x)は0で
戸 形 ポ テ ン シ ャ ル 中 に 束 縛 さ れ,ポ
に 示 す2つ
の 境 界 条件 が 満 た さ れ な けれ ば
な らない。
従 っ て,ま
ず,第1の
と な る 。 さ ら に,第2の
条 件 か ら,B=−Aが
と な り,こ
得 ら れ, C=2jAと
お け ば,
条 件 か ら,
れ を 満 足 さ せ るkの
値 と し て,
の み が 許 さ れ る 。 こ の 値 を 式(2・8)に 代 入 す れ ば,電 子 が 取 る こ と を 許 さ れ る エ ネ ル ギ ー の 値Enと
し て, (2・10)
の 飛 び 飛 び の 値(エ ネ ル ギー 準 位)が 許 容 され,ま
た 波 動 関 数 ψ(x)と し て は, (2・11)
が 得 ら れ る 。 こ れ は,x=0お
よ びx=Lに
波 動 関 数 と エ ネ ル ギ ー 準 位 の 概 略 を,そ 原 子 内 の 電 子 の 場 合 に は,表2・1の4つ 程 式 が 解 を も つ 。 す な わ ち,許
節 を も つ 定 在 波 を 意 味 し,こ れ ぞ れ,図2・3(a),(b)に
れ らの
示 す。
の 量 子 数 が 定 ま る こ と に よ り波 動 方
さ れ る 電 子 状 態(量
子 状 態)は,ボ
ー ア模 型 に
図2・3 許 さ れ る波 動 関 数 と エ ネ ル ギ ー準 位
お い て 導 入 さ れ た 主 量 子 数n以
外 に,量 子 数l,m,ms,が
加 わ っ た 計4個
の量 子
数 の 組 み 合 わ せ に よ っ て 定 ま る こ と を 示 し て い る。 主 量 子 数 に よ っ て 定 ま る 軌 道 を 殼(shell)と
い い,内
側 の 殼 か ら順 番 に,n=1,2,3,4,… 表2・1
量子数
… の 状 態 に対 応 す
る 殻 を そ れ ぞ れ,K,L,M,N,… 量 子 状 態 を,そ
… 殼 とい う 。 さ ら に,l=0,1,2,3,4,5,…
れ ぞ れs,p,d,f,q,h,…
量 子 状 態 は,以 上 の4つ
… 状 態 と い う。
の 量 子 数 の 組 み 合 わ せ に よ っ て 定 ま る が,そ
電 子 は パ ウリ の 排 他 律(Pauli's ギ ー が 最 低 に な る よ う に,低
exclusion
shell)と
principle)に
従 っ て,原
の と き,
子 のエ ネル
い エ ネ ル ギ ー 準 位 か ら順 に埋 め られ る。 この と き
の 量 子 状 態 と 電 子 数 と の 関 係 を 表2・2に 数 は2n2個
…の
示 す 。n番
目 の 殼 に 入 り得 る電 子 の
で あ る 。殼 が 許 容 さ れ た 数 の 電 子 で 満 さ れ て い る 場 合 を 閉 殼(closed い う 。 最 外 殼 の 電 子 数 は,原
て い る 。 こ の 電 子 を 価 電 子(valence
子 の 化 学 的 性 質 を決 め る重 要 な役 割 を し electron)と
い う。
表2・2 量 子状 態 と電 子数
Si結 晶 を 構 成 す るSi原 K,L殼
は 閉 殼,M殼
の 電 子 数 は14個
子 の 場 合,原
は,3s23p2の4個
子 番 号Z=14で
あ り,図2・4の
よ う に,
の電 子 が価 電 子 とな っ て い る。殼 全 体
で あ る。
図2・4 シ リ コ ン原 子 の 電 子
〔2〕
半導体 結晶
(1)
結 晶 と非 晶 質
を 結 晶(crystal)と crystal)と
図2・5(a)の
い い,固
よ う に,原
体 全 体 が1つ
子 が 規 則 的 に配 列 し た 固体
の 結 晶 で あ る 場 合 を 単 結 晶(single
い う 。半 導 体 デ バ イ ス の 製 作 に 用 い ら れ るSiやGeの
単 結 晶 で あ る 。 ま た,固 晶(poly
crystal)と
結 晶 は,通
常,
体 が 多 く の 小 さ な 結 晶 か ら構 成 さ れ て い る 場 合 を 多 結
い う 。 一 方,図2・5(b)の
て い る 固 体 を 非 晶 質(amorphous),ま
よ う に,原
子 が 不 規 則 に配 列 し
た は 無 定 形 と い う 。 非 晶 質 状 態 のSiや
カ ル コ ゲ ン 化 合 物(chalcogenide;Ⅵ
族 とO,S,Se,Teな
半 導 体 的 性 質 を もつ こ と か ら,最
近,注
ど の 化 合 物)は,
目 され て い る 。
図2・5 結晶 と非 晶質
原 子 が 固 体 を 構 成 す る 場 合,原 方 に は,共 有 結 合(covalent
子 間 に は結 合 力 が 働 い て い る。 この 結 合 の 仕
bond),イ
オ ン 結 合(ionic
フ ァ ン デ ル ワ ー ル ス 力 結 合(wan (hydrogen
bond)な
der waals
ど が あ る が,重 要 なSiやGeな
bond),金
属 結 合(metalicbond),
force bond),水
素 結 合
ど の 半 導 体 結 晶 に お い て は,
共 有 結 合 に よ っ て 結 晶 が 構 成 さ れ て い る。 共 有 結 合 は,隣
接 す る 原 子 間 で 価 電 子 を 共 有 す る 結 合 方 式 で あ る 。C,Si,Ge
な ど のⅣ 族 の 元 素 の 結 晶 に お い て は,各 元 素 に お け る 価 電 子 が4個 隣 接 す る4個 も い う)を
の 原 子 が 価 電 子 を1個
作 り,ダ
子 は,図2・6で
ず つ 供 出 し 合 っ て 共 有 結 合(電
で あ る た め, 子対結合 と
イ ヤ モ ン ド形 の 結 晶 構 造 を 形 成 し て い る 。 こ の 場 合,各
示 す よ う に,隣
接 す る4個
原
の 原 子 で 囲 まれ た正 四 面 体 の 重 心 に
図2・6 正 四面体 構 造
位 置 す る。 図2・7は,ダ
イ ヤ モ ン ド 結 晶 の 単 位 胞 を 示 し て お り,面
8×(1/8)+6×(1/2)=4個
と,立 方 体 中 の4個
心立方 に並んだ原子
の 原 子 の 合 計8個
の 原 子 か ら成 り
立 っ て い る。
図2・7
GaAs,InSbな
ダイ ヤ モ ン ド構 造
どのⅢ-Ⅴ 族 の 元 素 か らな る化 合 物 半 導 体 結 晶 は,せ ん 亜 鉛 鉱
構 造 をな す 。 また,CdS,ZnOな
どⅡ-Ⅵ 族 の 元 素 か ら な る 化 合 物 半 導 体 結 晶 の
場 合 は ウル ツ鉱 構 造 を な す 。 これ ら の結 晶構 造 も,ダ イ ヤ モ ン ド結 晶構 造 と並 ん で,半 導 体 材 料 に お い て重 要 な位 置 を 占 め て い る。 結 晶 は,結 晶 軸 の 方 向 に よ って,そ
の物 理 的性 質 が 異 な る(異 方 性)た
め,
それ らの 方 向 を表 示 す る こ とが 必 要 で あ る 。 ダ イ ヤ モ ン ド結 晶 の よ う な立 方 晶 系 を例 に とる と,次 の よ うに な る。図2・8の よ う に,単 位 胞 をx,y,z座
標軸 上
に置 き,着 目 す る面 が 各 座 標 軸 と交 差 す る 点 と原 点 との 距 離 の逆 数 を求 め る。 これ らの3個
の 逆 数 の値 が整 数 と な る公 約 数 を求 め,こ れ で 結 晶面 を表 す 。 こ
図2・8 立 方 晶 系 の ミ ラ ー 指 数
の1組
の 数 を ミ ラ ー 指 数(Miller
indices)と
い う 。 例 え ば,図2・8(a)で
着 目 す る 面 が 座 標 軸 と 交 差 す る 座 標 は(a,∞,∞)で て か ら整 数 に 直 し,(100)面
と な る 。 一 方,結
あ る か ら,そ 晶 軸 の 方 向 は,ミ
決 ま る 面 に 対 す る 垂 直 方 向 で 表 す 。 例 え ば,図2・8(a)で,(100)面 方 向 は,<100> は<
後,結
晶 面 は(
の逆 数 を とっ ラー 指 数 で に垂 直 な ),結
晶軸
> で 区 別 す る。
2・2エ
〔1〕 (1)ー ーは
方 向 と し て 表 す 。 な お,以
は,
,飛
ネ ル ギ ー帯 構 造
エ ネルギー帯 次 元結晶のエネ ルギー帯
孤 立 原 子 中 で電 子 が 取 り得 る エ ネ ル ギ
び 飛 び の 値 と な る こ と を2・1節
準 位 の 様 子 は,図2・9(a)の
〔1〕で 述 べ て き た が,そ
のエ ネルギー
よ う に な る 。 こ の よ う な 原 子 を 多 数 接 近 させ て,等
図2・9 ポ テ ン シ ャ ル エ ネ ル ギ ー と電 子 の エ ネ ル ギ ー 準 位
間 隔 で 一 次 元 的 に 配 列 した 場 合 の 仮 想 的 な 結 晶 に お け る ポ テ ン シ ャ ル エ ネ ル ギ ー と エ ネ ル ギ ー 準 位 は 図2・9(b)の 各 ポ テ ン シ ャ ル エ ネ ル ギ ー は,隣 ギ ー は,図(b)の は,原
よ う に な る 。 こ の 一 次 元 結 晶 に お い て は,
接 原 子 ど う し で 合 成 さ れ る た め,そ
の エネル
よ う に 下 が っ て くる 。 各 原 子 に お け る 電 子 の エ ネ ル ギ ー 準 位
子 間 の 相 互 作 用 の た め 同 一 の エ ネ ル ギ ー 値 を取 ら ず,結
晶内の原子数 の
数 に 分 離 す る。 こ れ らの 分 離 して 幅 を も った エ ネ ル ギ ー 準 位 の 集 ま りをエ ネ ル ギ ー 帯(energy
band)と
い う 。 エ ネ ル ギ ー の 高 い 電 子,す
電 子 ほ ど 隣 接 原 子 の 影 響 を 受 け や す く,エ 図2・10は,N個
なわち外側の軌道 の
ネ ル ギ ー の 広 が り方 が 大 き く な る 。
の 原 子 か ら な る ダ イ ヤ モ ン ド構 造 の 結 晶 に お い て,原 子 間 隔
を 変 え た と き の エ ネ ル ギ ー 準 位 の 変 化 の 様 子 を 示 し て い る 。 図2・9の 様 に,各
原 子 が,孤
p準 位 の6N状
立 原 子 の 位 置 か ら互 に 接 近 す る と,2s準
態 が 広 が っ て 帯 状 の エ ネ ル ギ ー 状 態,す
な る 。 原 子 間 隔 が さ ら に 接 近 す る と,2s準 ル ギ ー 帯 は 互 に 重 な り合 っ た の ち,別
位 の2N状
あ る 。各 エ
原 子 を実 際 の原 子 間 隔 まで接 近 させ た と きの
値 で あ る 。 こ れ ら の エ ネ ル ギ ー 帯 は,電 で あ る こ と か ら許 容 帯(allowed
位 のエ ネ
の エ ネ ル ギ ー帯 に分 離 す る 。 この
分 離 し て で き た 各 エ ネ ル ギ ー 帯 に お け る 量 子 状 態 の 数 は,共 に4Nで ネ ル ギ ー 帯 の エ ネ ル ギ ー 幅 は,各
態 と2
な わ ち エ ネ ル ギ ー帯 と
位 の エ ネ ル ギ ー 帯 と2p準
の2つ
説 明 と同
band)と
電 子 が 存 在 で き な い エ ネ ル ギ ー 領 域(Egの
子 の 存 在 が 許 され る帯 状 の エ ネ ル ギ ー い う。 ま た,2つ 範 囲)を
の 許 容 帯 の 間 で,
禁 制 帯(forbidden
band)
図2・10 原 子 間 隔 を変 えた時 の エ ネル ギ ー準 位 (ダ イヤ モ ン ド構造 の場 合)
とい う。実 際 の 結 晶 に お け る原 子 数 は,1cm3当
た りお お よ そ1023個 程 度 で あ る
た め,許 容 帯 内 の エ ネ ル ギ ー 準 位 間 の エ ネ ル ギ ー 差 は非 常 に小 さ く,こ の 許 容 帯 内 で は,電 子 は連 続 的 な エ ネ ル ギ ー が 許 さ れ る と考 えて よ い。
〔2〕 導 体,半
導 体,半 導 体,絶
導 体,絶
縁体 のエネ ルギー帯
縁 体 の エ ネ ル ギ ー 帯 を 図2・11に
示 す 。 図(a)の
図2・11 導体・ 半 導体・ 絶縁 体 の エ ネル ギ ー帯
よ う に,許
容 帯 が 部 分 的 に 電 子 に よ っ て 占 め ら れ て い る 場 合 に は,電 が 直 ぐ上 の 空 の 準 位 に 入 る こ と が で き る の で,電 は,導
界作 用に よって電子
気 伝 導 が 容 易 に起 こ る
。 これ
体 の 場 合 で あ る。
図(b),(c)は,絶
対 零 度 に お い て,あ
る 許 容 帯 が 完 全 に 電 子 で 満 さ れ,そ
の 直 ぐ上 の 許 容 帯 が 完 全 に 空 の 準 位 と な る 場 合 で あ る 。 こ の 場 合,電 て 完 全 に 満 さ れ て い る 許 容 帯 は,価 帯(valence
band)ま
上 が る と,価
電 子 帯 中 の 電 子 は,熱
電 子 に よ って 占 め られ て い るの で
た は 充 満 帯(filled
band)と
の 存 在 す る 許 容 帯 を 伝 導 帯(conduction
,価
電子
い う。 温 度 が絶 対 零 度 よ り
エ ネ ル ギ ー を 得 て ,そ
り電 気 伝 導 に 寄 与 す る 伝 導 電 子(conduction
子 によっ
electron)と band)と
の 上 の 許 容 帯 に上 が な る。 この 伝 導 電 子
い う。
価 電 子 帯 か ら 電 子 が 伝 導 帯 に 励 起 さ れ る と,電 子 の 抜 け 穴 が で き る 。 こ れ は, 正 電 荷+qを
も つ 荷 電 粒 子 と し て ふ る ま い,伝
す る 。 こ の 荷 電 粒 子 を 正 孔(hole)と て,キ
ャ リ ア(carrier)と
い う。 ま た,こ
の 伝 導 電 子 と正 孔 を総 称 し
い う。
禁 制 帯 の エ ネ ル ギ ー 幅,す 差Egを
導 電 子 と同様 に 電 気 伝 導 に寄 与
な わ ち 伝 導 帯 の 底 と価 電 子 帯 の 頂 上 の エ ネ ル ギ ー
エ ネ ル ギ ー ギ ャ ッ プ(energy
gap)あ
と い う。 ダ イ ヤ モ ン ド結 晶 の よ う に,こ
る い は バ ン ドギ ャ ッ プ(band gap) のEgが
数eV以
上 の 結 晶 で は,
室 温 に お い て 価 電 子 帯 か ら伝 導 帯 に 励 起 さ れ る 電 子 の 数 が 非 常 に 少 く,抵 が 高 い 。 こ れ は,図(c)の 度 の 場 合 に は,室 く な り,導
絶 縁 体 の 場 合 で あ る 。Si結
温 に お い て,価
晶 の よ う にEgが1eV程
電 子 帯 か ら伝 導 帯 に励 起 され る電 子 の 数 が 多
体 と絶 縁 体 の 中 間 の 抵 抗 率 を も つ。 こ れ は,図(b)の
で あ る 。 す な わ ち,絶
縁 体 と 半 導 体 の 違 い は,Egの
お お ざ っ ぱ に 区 別 す る と,Eg=0.1∼3eVの が 絶 縁 体 で あ る 。表2・3に,室
半導体 の場 合
大 小 に よ り決 ま る 。
場 合 が 半 導 体,Eg>3eVの
温 に お け る 半 導 体 と絶 縁 体 のEgと
表2・3 Eg厚
抗率
と真 性 抵 抗 率 の 例(300K)
場合
抵 抗率 の一例
を示す。
〔3〕
エ ネ ル ギ ー 波 数 図 と有 効 質 量
結 晶 内 の 電 子 状 態 を 表 す 場 合,エ に よ り,さ
ネ ル ギ ー だ け で な く運 動 量 も考 慮 す る こ と
ら に 進 ん だ 議 論 が 展 開 で き る 。 こ れ に は,電
子 を 波 動 と して 扱 う こ
とが 基 礎 とな って い る 。 一 次 元 結 晶 の ポ テ ン シ ャ ル エ ネ ル ギ ー の 形 は,図2・9(b)で 期 的 ポ テ ン シ ャ ル に な る が,簡
単 化 の た め,こ
示 した よ うな 周
の 周 期 的 ポ テ ン シ ャ ル を 図2・12
の よ う な 矩 形 ポ テ ン シ ャ ル で 近 似 す る 。 さ ら に,結
晶 が 環 状 に な り,周
図2・12
期的 ポ
周期的ポテ
ン シ ャル
テ ン シ ャ ル が 両 端 で 接 続 さ れ て い る と仮 定 し た 場 合,電 ー は
,図2・13に
じ,許
お け る 緑 色 の 曲 線 と な る 。 そ の 結 果,エ
子 が許 され るエネル ギ ネル ギーの不連続 が生
容 帯 と 禁 制 帯 が で き る。 こ の よ う な 周 期 的 ポ テ ン シ ャ ル の 近 似 法 は,ク
ロー ニ ッ ヒ ・ ペ ニ ー の モ デ ル(Kronig‐Penney さ て,電
model)と
子 を 波 動 と し て 考 え た 場 合 の 質 量 は,エ
を 用 い る こ と に よ り,次 電 子 波 の 群 速 度(電
いわ れ て い る。
ネ ル ギ ー 波 数 図(E-k曲
の よ う に して求 め られ る。
線)
子 の 速 度)υ
は, (2・12)
で 与 え ら れ る 。 こ こ で,ω
は角 周 波 数 で あ る。
図2・13
エ ネ ルギ ー波 数 図
電 子 に外 力 が 加 え られ た と き の加 速 度 α は, (2・13) と な る 。 こ こ で,dP/dtは 式 を,古
運 動 量 の 時 間 的 変 化 率 で あ る か ら,外 力 で あ る 。 こ の
典 的 な ニ ュ ー トン の 運 動 方 程 式F=mα(F:力,m:質
る こ と に よ り,波
量)と
比較 す
動 と し て 見 た 電 子 の 質 量m*は, (2・14)
と な る 。E‐k曲
線 の 形 か ら 決 ま る こ の 質 量 を,電 子 の 有 効 質 量(effective
mass)
と い う 。 この 有 効 質 量 の 大 き さ は,静 止 質 量 の 大 き さ と は 大 幅 に 異 な っ て く る 。 こ の 有 効 質 量 を 用 い れ ば,電
子 の 運 動 の 取 り 扱 い は,古
典的 な運動 方程式 で間
に合 う こ とに な る。 図2・13よ
り,1つ
の 許 容 帯 のE‐k曲
線 は,図2・14(a)で な る 。E-k曲
あ り,こ
式(2・14)に 従 っ てm*を
求 め る と図(b)と
い エ ネ ル ギ ー で はm*は
正,変 曲 点 よ り高 い エ ネ ル ギ ー で はm*は
れ か ら,
線 の 変 曲 点c,c'よ
り低
負 と な る 。変
図2・14 E‐k曲 線 と有効 質 量
曲 点c,c'に
お い て はm*=±∞
とな り,電 子 は 非 常 に重 い粒 子 の よ う に ふ る ま
う。 許 容 帯 の 底 付 近 の エ ネ ル ギ ー に お い て は,電 子 は 正 の 質 量 と負 の 電 荷 を もつ 粒 子 と し てふ る ま うが,頂 上 付 近 の エ ネ ル ギ ー で は 負 の 質 量 と負 の 電 荷 を もつ 粒 子 と して ふ る ま う こ とに な る。 後 者 の場 合,負
の 質 量 は考 え難 い 。 そ こ で,
これ の質 量 と電 荷 を 共 に正 と して も,電 界 お よ び磁 界 中 で の古 典 的 な 運 動 方 程 式 は,符 号 を変 え ず に そ の まま成 立 す る の で,正 質 量 と正 電 荷 を もつ粒 子 で あ る と し た ほ うが 扱 い や す い 。 これ が,価
電 子 帯 頂 上 付 近 に 正 孔 が 存 在 す る とい
う こ との概 念 で あ る。正 孔 の運 動 を扱 う場 合 も電 子 と同 様 に有 効 質 量 を用 い る。 実 際 の 半 導 体 で は,E‐k曲 も これ に よ っ て 異 な るが,そ
線 が 結 晶 軸 方 向 に よ っ て 異 な り,従 って,有 効 質 量 れ らの 平 均 値 の 一 例 を,表2・4に
示す。
表2・4 有効 質 量 の 例
2・3 真 性 半 導 体 と外 因性 半 導 体
〔1〕 半 導 体 の 分類 半 導 体 は,そ
れ に含 まれ る不 純 物 の 存 否,お
よ び そ の種 類 に よ っ て次 の よ う
に 分 類 で き る。 真性半導 体(i形 半 導体) (固有 半導体)
半 導体
n形 半導 体
外 因性半 導体
p形 半導 体
(不純物半 導体) こ こ で,真
性 半 導 体(intrinsic
semiconductor)は
結 晶 で あ り,固 有 半 導 体 と も い わ れ る 。 ま た,外 )は,キ
ャ リ ア 密 度 と 抵 抗 率 が,そ
づ け ら れ た 半 導 体 で あ り,不 れ る。 そ の 中 で,電
不 純 物 を含 ま な い純 粋 な
因 性 半 導 体(extrinsic
semiconductor
の 中 に含 まれ る不 純 物 に よっ て 特 徴
純 物 半 導 体(impurity
semiconductor)と
もい わ
子 密 度 を正 孔 密 度 よ り大 き くさせ る よ う な不 純 物 を含 む 半
導 体 をn形(n‐type)半
導 体 と い い,こ
の 逆 の 場 合 をp形(p‐type)半
導体 と
い う。
〔2〕 SiやGeな
真性 半導体 ど 半 導 体 結 晶 に お い て は,原 子 が 共 有 結 合 に よ っ て 結 ば れ,立 体 的
な 結 晶 を 構 成 し て い る こ と を2・1節 い の 説 明 に 際 し て は,こ
〔2〕で 述 べ た 。 し か し,キ
ャ リ アの ふ る ま
の 結 晶 を 平 面 的 に 表 示 し た ほ う が 便 利 で あ る 。 図2・15
図2・15 真性 半 導 体 の平 面的 表 示
は,真 性 半 導体 結 晶 を平 面 的 に表 示 し た もの で あ り,結 晶 に お け る原 子 間 の 結 合 関 係 が 失 わ れ な い よ うに 表 示 して あ る。 図2・15の よ う に,共 有 結 合 に あ ず か る価 電 子 に,そ の 結 合 力 よ り大 きな 光 エ ネ ル ギ ー や 熱 エ ネ ル ギ ー が 与 え られ る と,価 電 子 は共 有 結 合 を破 っ て 自 由 電 子 とな り,結 晶 内 を 動 き回 る よ う に な る。そ の とき の電 子 の 抜 け穴 が 正 孔 で あ り, これ はSi-Si結
合 をぬ っ て移 動 す る。図2・15を 用 い た これ らの 説 明 は,図2・16
の エ ネ ル ギ ー帯 を 用 い た電 子 と正 孔 の生 成 過 程 の 説 明 に対 応 す る もの で あ る。 図2・16で 示 す よ う に,電 子 と正 孔 が 対 に な っ て生 成 され る過 程 を電 子 と正 孔 の 対 生 成(production
of a hole‐electron pair)と
い う。 真 性 半 導 体 で は,キ
ャ
リア生 成 は対 生 成 の み に よ っ て 行 わ れ るた め,電 子 密 度 と正 孔 密 度 が 相 等 し く, これ が 真 性 半 導 体 の特 徴 で あ る 。 伝 導 帯 の電 子 と価 電 子帯 の 正 孔 は,共
図2・16
に外 部
真性 半導 体 の エ ネ ル
ギ ー帯
か らの 電 界 作 用 に よ っ て移 動 し,電 気 伝 導 に 寄 与 す る。
〔3〕 外 因性 半 導 体 半 導 体 中へ の適 当 な 不 純 物 の 添 加 に よ っ て,キ
ャ リア密 度 を 大 幅 に制 御 す る
こ とが で き る。 これ は,半 導 体 の有 す る重 要 な性 質 の1つ で あ る。Si結 晶 やGe 結 晶 に お け る代 表 的 な 不 純 物 はⅢ 族 のB,
Al, Ga,
In元 素 とⅤ 族 のP,
As,
Sb
元 素 で あ る。 (1)n形
半導体
れ が,図2・17の
Si結 晶 中 に,不 純 物 と してⅤ 族 のP原
子 を添 加 し,こ
よ う に,Si原 子 と置 き換 わ っ て い る場 合 を考 え る。P原 子 の5
図2・17 n形Si結
個 の 価 電 子 の う ち,4個
晶 の平 面 的 表 示
は 隣 接 の4個 のSi原
1個 の 電 子 が 余 る。この電 子 は,P原
子 との 共有 結 合 に使 わ れ,残 りの
子 に弱 く束 縛 され て い る た め,室 温 程 度 の
わ ず か な 熱 エ ネ ル ギ ー を得 た だ け でP原
子 との 結 合 を離 れ て 自 由 に な り,結 晶
中 を動 き回 れ る伝 導電 子 に な る。 一 方,電 子 を失 っ たP原
子 は 陽 イ オ ン とな る
が,こ れ は結 晶 格 子 に 固 定 され て い る の で電 気 伝 導 に は寄 与 しな い 。 こ のP原 子 の よ うに,結 晶 中 に電 子 を与 え る不 純 物 を ドナ ー(donor)と
い う。 ドナ ー を
含 む 半 導 体 に お け る伝 導 電 子 の 密 度 は,ド ナ ー か ら供 給 さ れ た 電 子 と,対 生 成 に よ って 生 じた 電 子 との 和 で あ るた め,対 生 成 の み に よ っ て発 生 し て い る正 孔 の密 度 に比 べ て大 き くな る。 これ が,n形
半 導 体 で あ る。 ドナ ー は ,わ ず か な エ
ネ ル ギ ー を 得 て 電 子 を 放 出 し,そ れ 自 身 が 陽 イ オ ン と な る こ と か ら,図2・18の よ う に,伝
導 帯 の 底 近 く に ドナ ー 準 位(donor level)を
配 置 さ せ る 。n形
体 中 の ドナ ー 密 度 が 後 述 の 有 効 状 態 密 度 に 比 べ て 小 さ い 場 合(非 (non‐degenerate semiconductor)と
い う),ド
半導
縮 退半導 体
ナ ー 準 位 は 局 在 し た 準 位 で あ り,
図2・18 n形 半 導 体 の エ ネ ル ギー帯
そ こで の電 気 伝 導 は生 じな い。 (2)p形
半 導 体
Si結 晶 中 に,不 純 物 と してⅢ 族 のB原
子 を 添 加 し,こ
れ が 図2・19の よ う に,Si原 子 と置 き換 わ っ て い る場 合 を考 え る。B原 子 の 価 電 子 は3個 で あ るの で,隣 接 の4個
のSi原 子 との共 有 結 合 に 際 し て電 子 が1個 不
足 す る。Si-Si結 合 に い た 電 子 は,わ ず か な エ ネ ル ギ ー を得 る と,こ の 電 子 の 不
図2・19 p形Si結
晶 の 平 面的 表 示
足 し て い たB‐Si結
合 に 移 る こ と が で き る 。Si‐Si結 合 か ら電 子 が 抜 け た 穴 は 正
孔 と な り,Si‐Si結 な る が,こ
合 を ぬ っ て 動 き 回 る 。電 子 を 受 け 入 れ たB原
れ は,ド
与 し な い 。 こ のB原
子 は陰 イオ ン と
ナ ー の 場 合 と 同 様 に 固 定 さ れ て い る の で,電 子 の よ う に,電
気 伝導 には寄
子 を 受 け 入 れ る 不 純 物 を ア ク セ プ タ(acceptor)
と い う 。 こ の ア ク セ プ タ を 含 む 半 導 体 に お け る 正 孔 密 度 は,ア よ り 作 ら れ た 正 孔 と,対
生 成 に よ り生 じ た 正 孔 と の 和 で あ り,こ
の み に よ っ て 決 ま る 電 子 密 度 に 比 べ て 多 く な る 。 こ れ が,p形
クセ プタに
れ は,対
生 成
半 導 体 で あ る。 こ
の 半 導 体 の エ ネ ル ギ ー 帯 に お け る ア ク セ プ タ 準 位(acceptor level)は,図2・20 の よ う に,価
電 子 帯 の 頂 上 近 傍 に配 置 さ せ る 。 こ れ は,ア
な エ ネ ル ギ ー を 得 たSi‐Si結 化 す る と と も に,Si‐Si結 セ プ タ 準 位 は,ド
合 の 価 電 子 を 受 け 入 れ て,そ
ク セ プ タ が,わ
ず か
れ 自身は負 に イオ ン
合 に 正 孔 を 生 成 さ せ る こ と に 対 応 し て い る 。 この ア ク
ナ ー 準 位 と同 様 に 局 在 し た 準 位 で あ り,こ
こで の 電 気 伝 導 は
行 わ な い。
図2・20
p形 半 導 体 の
エ ネ ル ギ ー帯
一 般,に carrier),少
半 導 体 中 で,密
い ほ う の キ ャ リ ア を 少 数 キ ャ リ ア(minority
半 導 体 の 場 合,多 場 合 は,多
度 が 多 い ほ う の キ ャ リ ア を 多 数 キ ャ リ ア(majority
数 キ ャ リ ア が 電 子,少
数 キ ャ リ ア が 正 孔,少
carrier)と
数 キ ャ リ ア が 正 孔 で あ り,p形
数 キ ャ リアが 電 子 で あ る。
い う 。n形 半 導体 の
2・4 キ ャ リア 密 度
〔1〕
状態密 度
伝 導 帯 の エ ネ ル ギ ー 準 位 は,エ
ネ ル ギ ー 的 に あ る 分 布 を な し て い る が,そ
の
単 位 エ ネ ル ギ ー 差 当 た り に 含 ま れ る 単 位 体 積 中 の エ ネ ル ギ ー 準 位 の 数gn(E) を 状 態 密 度(density
of states)と
ー 準 位 を 占 め る 数Nn(E)dEは,こ gn(E)dEと,そ
い う 。 電 子 がEとE+dEの
間 のエネルギ
の エ ネ ル ギ ー 差dEに
の エ ネ ル ギ ー を 電 子 が 占 め る 確 率fn(E)と
お け る状 態 の 数 の 積 と し て 表 さ れ, (2・15)
と な る 。 こ こ で,fn(E)は function)で 従 っ て,伝 (ECt)ま
フ ェ ル ミ ・デ ィ ラ ッ ク の 分 布 関 数(Fermi‐Dirac
distribution
あ る。
導 帯 内 の 電 子 密 度nは,式(2・15)を
で 積 分 し,次
伝 導 帯 の 底(EC)か
ら頂 上
の よ う に求 め られ る。 (2・16)
同 様 に,価 電 子 帯 内 の 正 孔 密 度pは,価 gp(E)と,正
孔 が エ ネ ル ギ ーEを
電 子 帯 内 の 正 孔 に 対 す る状 態 密 度
占 め る確 率fp(E)と
を用 い て,次 式 と な る。 (2・17)
こ こで,EVbは
価 電 子 帯 の 底 の エ ネ ル ギ ー で あ る。
通 常,電 子 と正 孔 は,そ れ ぞ れ 伝 導 帯 の底(EC)付 上(EV)付
近,お
よび価 電 子 帯 の頂
近 に存 在 す る た め,そ の 近 傍 の 状 態 密 度 が わ か れ ば よい 。 これ らの
状 態 密 度 は, (伝 導 帯 の 底 付 近) (2・18)
(価 電 子帯 の 頂 上 付 近) (2・19)
で 与 え ら れ る 。 こ こ で,mn*お
よ びmp*は,そ
れ ぞ れ 伝 導 帯 の 底 付 近 の電 子 お
よ び 価 電 子 帯 の 頂 上 付 近 の 正 孔 の有 効 質 量 で あ る 。 図2・21は,図(a)の と か ら 図(b)の
エ ネ ル ギ ー 帯 に お け る 状 態 密 度 が,式(2・18)と
よ う に な り,こ
れ ら と 図(c)の
数 と の 積 を 作 る こ と に よ っ て,図(d)の
図2・21
式(2・19)
フ ェ ル ミ ・デ ィ ラ ッ ク の 分 布 関
よ う な,キ
ャ リア密 度 の エ ネル ギ ー に
状 態 密 度 と フ ェ ル ミ・デ ィ ラ ッ ク の 分 布 関 数 か ら の キ ャ リ ア 密 度 の 算 出
対 す る 分 布 が 得 られ る こ とを示 して い る。
〔2〕
フ ェ ル ミ ・デ ィ ラ ッ ク の 統 計
気 体 放 電 に お け る ガ ス な ど は 比 較 的 希 薄 で あ り,古 ル ツ マ ン 統 計(Maxwell‐Boltzmann リア は 密 度 が 高 く,量 statistics)に
典 的 な マ ク ス ウ ェ ル ・ボ
statistics) に 従 う が,固
体結 晶内の キャ
子 力 学 的 な フ ェ ル ミ ・デ ィ ラ ッ ク の 統 計(Fermi‐Dirac
従 う。 こ の フ ェ ル ミ ・デ ィ ラ ッ クの 統 計 は,1つ
1個 の 粒 子 し か 入 る こ と が 許 さ れ ず(パ ウ リ の 排 他 律),し
の量子状 態には
か も,各
粒子 は互 に
区 別 で きな い と い う こ と を基 本 と して い る。 熱 平 衡 状 態(theral
equilibrium
state)(系
が 熱 的 に 平 衡 し て い る 状 態)に
あ る 半 導 体 結 晶 の 伝 導 帯 内 の 電 子 に 対 す る フ ェ ル ミ ・デ ィ ラ ッ ク の 分 布 関 数 fn(E)は,
(2・20)
で 与 え られ る。 こ れ は,エ あ り,kは
ネ ル ギ ーEの
ボ ル ツ マ ン 定 数,Tは
状 態 が1個
絶 対 温 度,
あ る い は フ ェ ル ミ エ ネ ル ギ ー(Fermi
energy)と
き の エ ネ ル ギ ー の 値 で あ る 。 こ のfn(E)の 非 縮 退 状 態 のSiやGeの kT≫1と な る の で,分
Efは
の 電 子 で 占 め られ る確 率 で フ ェ ル ミ 準 位(Fermi
level)
い わ れ,fn(E)=1/2と
形 は,図2・21(c)の
な る と
よ うに な る。
伝 導 帯 中 の 電 子 に 対 し て は,式(2・20)は,(E-Ef)/ 母 の1が
無 視 で き,
(2・21)
の よ う に 近 似 で き る 。 こ れ は,マ
ク ス ウ ェ ル ・ボ ル ツ マ ン の 分 布 関 数 と 同 形 で
あ る。 一 方,価
電 子 帯 内 の エ ネ ル ギ ーEを
正 孔 が 占 め る確 率fp(E)は,電
子 が空で
あ る 確 率 と等 し い か ら,
(2・22)
と な る 。 非 縮 退 状 態 のSiやGeの
正 孔 に 対 し て は,(Ef-E)/kT≫1で
あ るか
ら,式(2・22)は, (2・23) と な り,価 電 子 帯 内 の 正 孔 の 場 合 も,伝 導 帯 内 の 電 子 と 同 様 に,マ
ク ス ウ ェル ・
ボ ル ツ マ ン の 分布 関 数 で近 似 で きる 。
〔3〕
キ ャ リア 密 度
状 態 密 度 と,そ
の エ ネ ル ギ ー を キ ャ リ ア が 占 め る確 率 とが わ か っ た の で,式
(2・16)お よ び 式(2・17)を お よ びfp(E)と
して は,非
解 い て 電 子 密 度nと 縮 退 状 態 を 考 え,そ
正 孔 密 度pが
求 め ら れ る 。fn(E)
れ ぞ れ 式(2・21)お
よ び 式(2・23)
の 近 似 式 を 使 用 す れ ば よ い 。 ま た,式(2・16)と ECt→+∞
,EVb→−∞
fp(E)が,そ
式(2・17)の
積 分 範 囲 と し て,
と し て も結 果 は ほ と ん ど 変 わ ら な い 。 こ れ は,fn(E)と
れ ぞ れE>Efお
よ びE<Efの
エ ネ ル ギ ー に対 して 指 数 関 数 的 に
減 少 す る か ら で あ る 。 こ れ ら の 点 を 考 慮 し て 得 ら れ る 電 子 密 度nと は,そ
正 孔 密 度p
れ ぞ れ,
(2・24)
(2・25) と な る。
こ こ で,
(伝導帯 の有効状態密 度)
(2・26)
(価 電 子 帯 の 有 効 状 態 密 度) と お く と,式(2・24)お
よ び 式(2・25)は,そ
(2・27)
れ ぞ れ,
(2・28)
(2・29) で 表 せ る 。 こ の 結 果 は,以
下 の こ と を 意 味 し て い る 。 す な わ ち,熱
お け る 伝 導 帯 中 の 電 子 密 度nを の エ ネ ル ギ ーECに
集 中 さ せ た 状 態 密 度NCと,ECに
ッ ク の 分 布 関 数fn(EC)と 電 子 帯 の 正 孔 密 度pを NV とfp(EV)の
求 め る場 合 に は,図2・22の
平衡状 態 に
よ う に,伝 導 帯 の 底
お け る フ ェ ル ミ ・デ ィ ラ
の 積 と し て 簡 単 に 求 め ら れ る こ と を 意 味 し て い る 。価 求 め る 場 合 も,こ
れ と 同 様 に,エ
ネ ル ギ ーEVで
積 と し て 簡 単 に 求 め ら れ る 。 こ れ ら のNCとNVを,そ
伝 導 帯 お よ び 価 電 子 帯 の 有 効 状 態 密 度(effective
density of
真 性 半 導 体 に お け る キ ャ リ ア 密 度ni=n=p=(np)1/2を,真
states)と
考 え た れ ぞ れ, い う。
性 キ ャ リア 密 度
図2・22 有効 状 態 密 度 の 概念
(intrinsic
carrier
density)と
い い,式(2・28)と
式(2・29)と
か ら,
(2・30) と な る 。 こ こ で,Eg=EC−EVは,禁 n とpの
制 帯 の エ ネ ル ギ ー ギ ャ ップ で あ る。
積 を,式(2・28)と,式(2・29)と
か ら作 る と, (2・31)
と な る 。 こ のn・p積
は,半
導 体 の 種 類 と 温 度 の み に よ っ て 決 ま り,そ
れ る 不 純 物 濃 度 に は 依 存 し な い 。 こ の 関 係 は,熱 の で あ り,化
れ に含 ま
平衡状態 において成立 す る も
学 反 応 に お け る 質 量 作 用 の 法 則(law
of mass
action)と
類 似 し
て い る。
〔 例 題 〕2・2不
純 物 密 度 と 少 数 キ ャ リア 密 度 の 関 係 に つ い て 説 明 せ よ 。
〔 解 答 〕n形
半 導 体 に お け る ド ナ ー 密 度 をND,p形
タ 密 度 をNAと
す る 。 室 温 に お い て は,n≒ND,p≒NAで
半導体 にお け るア クセ プ あ る 。 従 っ て,
(n形 半 導体 中 の 正 孔)
(2・32)
(p形 半 導 体 中 の 電 子)
(2・33)
とな り,多 数 キ ャ リア 密 度 は 不 純 物 密 度 に比 例 して増 加 す るが,少
数 キ ャリア
密 度 は,不 純 物 密 度 に反 比 例 し て減 少 す る。
〔4〕
フ ェル ミ準 位
(1) 真 性 半 導 体 中 の フ ェ ル ミ準 位
式(2・28)と 式(2・29)よ り,フ ェル ミ
準 位Efは, (2・34)
(2・35) と な る 。 真 性 半 導 体 で はn=pで
あ る か ら,Efは, (2・36)
ヒな る。mn*=mp*の
場 合,Ef=(EC+EV)/2と
な り,フ ェル ミ準 位 は 禁 制 帯 の
中央 に位 置 す る。 (2) 外 因性 半 導 体 の フ ェル ミ準 位
不 純 物 が 均 一 に 分布 され て い る半 導体
で は,空 間 電荷 の 中性 条 件 が 満 足 され て お り,次 式 が 成 立 す る。 (2・37)
こ れ は,図2・23の
よ う に,ド
ナ ー とア ク セ プ タ の 両 方 が 含 ま れ る 場 合 の 一 般
図2・23 イ オ ン 化 し た ド ナ ー と ア ク セ プ タ準 位
的 な 式 で あ る 。 こ こ で,nDとnAは,そ
れ ぞ れ イ オ ン化 して い な い ドナ ー お よ
び ア ク セ プ タ の 密 度 で あ り, (2・38) (2・39) と し て 求 め ら れ る 。 フ ェ ル ミ 準 位Efは,式(2・37)に 38),式(2・39)を
代 入 し て 求 め られ る 。
〔 例 題〕2・3
n形 半 導 体 お よ びp形
〔 解 答〕
式(2・37)に
導 体 の 場 合,ND,nD,nが
お い て,n形
式(2・28),式(2・29),式(2・
半 導 体 のEfの
温 度 依 存 性 を求 め よ。
半 導 体 の 場 合,NA,nA,pが
無 視 で き る の で,そ
無 視 で き,p形
半
れ ぞ れ, (2・40)
(2・41)
とな る。それ ぞ れ の 場 合 に つ い て,等 式 を満 足 す るEfを と,図2・24の
各温度 について求 める
よ う に な る 。Efは 温 度 増 加 と と も に禁 制 帯 の 中央 に近 づ き,高
図2・24
フ ェ ル ミ準 位 の
温 度 依 存 性(Si結
晶)
温 で は 真 性 半 導 体 とな る。
〔5〕
キ ャ リア 密 度 の 温 度 依 存 性
n形 半 導体 の電 子 密 度nの
温 度 依 存 性 を,図2・25に
示 す。(A)は,比
較的低
温 で あ り,ド ナ ー か ら伝 導 帯 へ の電 子 の励 起 が 支 配 的 とな る領 域 で あ る 。(B) は,ド
ナ ー準 位 の 電 子 が 出 払 って,ほ
とん ど空 とな る領 域 で あ る。 また,(C)
は,高 温 で,対 生 成 に よ る キ ャ リア発 生 が 支 配 的 とな る領 域 で あ り,真 性 状 態 とな る。p形 半 導 体 の 正 孔 密 度 の温 度 依 存 性 も図2・25と 同様 な特 性 を示 す。
図2・25 n形 半 導体 のnの 温 度 依 存性
2・5 キ ャ リア の 運 動 と電 気 伝 導
〔1〕 移 動 度 (1) キ ャ リア の ラ ン ダ ム運 動 と ドリフ ト現 象
半 導 体 結 晶 を 構 成 す る原
子 の 配 列 が,完 全 に 周 期 的 とな っ て い る場合 に は,キ
ャ リア は 何 ら衝 突,あ
る
い は散 乱 を受 け ず に 結 晶 内 を動 くこ とが で きる。 しか し,実 際 の結 晶 にお い て
は,格 子 の 熱 振 動 や 不 純 物 原 子 の 存 在 な ど に よ り,原 子 の 配 列 が 不 規 則 と な り, そ の た め キ ャ リ ア は,こ
れ ら と衝 突 を 繰 り返 し な が ら,ラ
っ て い る 。 こ の と き の キ ャ リ ア の 熱 速 度(thermal ー の 等 配 則 に よ り ,υth=√3kT/m*と τの 平 均 値 を < τ> と す る と,平
ンダ ム な 熱 運 動 を行
velocity)υthは,エ
ネル ギ
な る 。 ま た,衝 突 か ら次 の 衝 突 ま で の 時 間 均 自 由 行 程(mean
free path)はl=υth<
τ>
で 与 え られ る。 こ の 不 規 則 な 熱 運 動 を し て い る キ ャ リ ア に 電 界 を 作 用 さ せ る と,図2・26の う に,ラ
ン ダ ム な 運 動 を し な が ら も,電
界 に よ る 力 を 受 け て,そ
よ
す る 。 こ の と き の キ ャ リ ア の 平 均 の 流 動 速 度 を ド リ フ ト速 度(drift
の 方 向 に移 動 velocity)
図2・26 半 導体 中の電 子 の 運動
と い う 。電 荷q,有 a=qE/m*で
効 質 量m*の
キ ャ リア が,電
界Eに
よ っ て 受 け る 加 速 度 は,
あ り,衝 突 間 に キ ャ リ ア が 電 界 方 向 に 移 動 す る 平 均 距 離 は,S=a
< τ2>/2で あ る 。 従 っ て,ド
リ フ ト速 度υdは,Sを
< τ> で 割 っ て, (2・42)
と な り,電
界Eに
比 例 す る 。 こ こ で, (2・43)
(2・44) とお い て あ り,μ は 電 界 が そ れ ほ ど大 き く な い 場 合,ほ μ を 移 動 度(mobility)と
い い,単
ぼ 一 定 の値 を もつ 。この
位 電 界 中 で の キ ャ リア の速 さ を表 し て い る。
そ の 単 位 は 〔m2/V・s〕で あ る。 ま た,τdは,キ
ャ リ アの 運 動 量 に 関 す る緩 和 時 間
の 平 均 値 で あ る。 電 子 と正 孔 の 移 動 度 を そ れ ぞ れ μn,μp,ま た ド リ フ ト速 度 を そ れ ぞ れυdn,υ dpと お く と, (2・45)
(2・46)
で 表 せ る 。 こ こ で,τdnとτdpは
そ れ ぞ れ 電 子 と 正 孔 の 緩 和 時 間 で あ り,添 字n,
pは 電 子 お よ び 正 孔 を 表 す 。 表2・5は,半
導 体 の 移 動 度 の一 例 で あ る。
表2・5 半 導 体 の移 動 度 の 例(300K)
(2) 移 動 度 の 温 度 依 存 性
移 動 度 は,熱 振 動 して い る格 子 お よ び イ オ ン
化 し た不 純 物 原 子 との キ ャ リア の衝 突 や 散 乱 に よ っ て決 まる の で,そ の 温 度 依 存 性 は,キ
ャ リアの 衝 突 回 数 の 温 度 依 存 性 に 関係 し て い る。 格 子 振 動 は,温 度
が 高 くな る に つ れ て 激 し くな る の で,格 子 との衝 突 は温 度 の高 い と こ ろ で支 配 的 と な る。 格 子 振 動 の 量 子 化 に よ っ て 導 入 さ れ た エ ネ ル ギ ー量 子,す ォノ ン(phonon)と
の衝 突 を考 え た場 合 の 移 動 度 μLは,理
なわ ち フ
論 的 に μL∝T-(3/2)
とな る こ とが知 られ て い る。 一 方,不 純 物 イ オ ンに よ る散 乱 は,ク ー ロ ン力 に よ り,キ
ャ リア の軌 道 が 曲 げ られ る こ とに 関 係 して い るの で,キ
ャ リア 速 度 が
小 さ い ほ どそ の度 合 が 大 き く,低 温 で支 配 的 とな る。 さ ら に,不 純 物 イ オ ン の 密 度NIが
多 くな る と,散 乱 回数 が 比 例 的 に 増 え る。不 純 物 イ オ ン に よ る散 乱 を
考 え た 場 合 の 移 動 度 μIは,理 論 的 に μI∝T3/2NIで 動 度 の 温 度 依 存 性 は,図2・27の
与 え られ て い る。結 局,移
よ う に,あ る温 度 で 極 大 を もつ形 とな る。 これ
ら の 両 散 乱 機 構 が 存 在 す る場合 の移 動 度 μ は,近 似 的 に, (2・47)
図2・27 移 動 度 の 温度 依 存 性
で表 され る。 (3) 移 動 度 の 電 界 依 存 性
図2・28の よ う に,半 導体 に加 え る電 界 が 弱 い
場 合 に は,ド リフ ト速 度υdと,電
界Eの
間 に比 例 関 係 が 成 立 す るが,電 界 が 強
くな る と,非 直 線 と な り,さ ら に高 電 界 にお い て は,飽 和 特 性 を示 す よ う に な る。 この 現 象 の発 生 は,移 動 度 が 電 界 に よっ て 変 わ る こ と に起 因 し て い る。 す
図2・28
ド リ フ
ト速 度 の 電 界 依 存 性
(C.Carali,
et
al. J. Phys.
Chem.
Solids
32(1971)1707.より)
な わ ち,加
え る電 界 が 強 く な る と,電 子 が 電 界 か ら 得 た エ ネ ル ギ ー の す べ て は,
格 子 系 に 放 出 さ れ ず,格
子 系 よ り も電 子 系 の 温 度 が 高 くな る 。 こ の よ う な 電 子
を ホ ッ ト エ レ ク ト ロ ン(hot
electron)(熱
ク ト ロ ン の 状 態 に な る と,格
子 と の 衝 突 回 数 が 増 加 す る た め,移
る 。 こ れ が,ド
リ フ ト速 度υdが
電 界Eに
的 に は,〓
い 電 子)と
い う。 電 子 が ホ ッ ト エ レ 動 度 が減 少 す
対 し て 非 直 線 と な る 原 因 で あ る 。理 論
で 与 え ら れ る 。 飽 和 特 性 に 対 し て は,電
子 に
よる フ ォ ノ ン の誘 導 放 射 に 基 づ い た 説 明 が 試 み られ て い る。 そ れ 以 上 の 高 電 界 が 加 わ る と,キ
ャ リア の 雪 崩 増 倍(avalanche
増 現 象 が 発 生 し,破
〔2〕 (1)
よ る電 流 の 急
壊 に 至 る。
ド リ フ ト電 流 と導 電 率 ド リ フ ト電 流
キ ャ リ ア に 電 界 を 加 え る と 移 動 し,電
こ れ を ド リ フ ト電 流(drift 電 界Eを
multiplication)に
current)と
い う。 図2・29の
流 が 流 れ る。
よ う に, p形
半導体 に
加 え た 場 合 に つ い て 考 え る 。 電 界 方 向 に 対 し て 垂 直 な 断 面Sを
時 間 に 通 過 す る 電 荷 の 量 は,こ
単位
の 断 面 を 流 れ る 電 流 の 値 に 等 し い 。 す な わ ち,
図2・29 電 荷 の 移 動 と 電 流
正 孔 密 度 をp,ド 孔 の 数 は,断
リ フ ト速 度 をυdpと
面 積S,長
い 。従 っ て,断 面 積Sに 正 孔 の 電 荷 をqと
さυdpの
す る と,断 面 積Sを
単 位 時 間 に通 過 す る正
円 筒 の 中 に 入 っ て い る 正 孔 の 数pυdpSに
流 れ る ド リ フ ト電 流Ipお
よ び 電 流 密 度Jpは,そ
等 し れ ぞ れ,
し て, (2・48)
(2・49) と な る 。 同 様 に し て,電 荷 を−qと
子 電 流 密 度Jnは,電
子 密 度 をn,移
動 度 を μn,電 子 電
お い て, (2・50)
とな る。 電 子 は,電 界 作 用 に対 して正 孔 と逆 方 向 に移 動 す るが,電 荷 が 負 で あ るた め,電 流 の 向 きは 正 孔 と同 じで あ る。 従 って,電 子 と正 孔 に よ る ド リフ ト 電 流 密 度 を 合 計 し た電 流 密 度Jは, (2・51) とな る。 こ れ よ り,電
導 率 σ と抵 抗 率 ρ は, (2・52)
と な る 。 真 性 半 導 体 で はn=p=niで
あ る か ら, (2・53)
と な る 。 こ こ で,σiを
真 性 導 電 率(intrinsic
conductivity),ρiを
真 性 抵 抗 率 と
い う。
〔例 題 〕2・4電
子 と 正 孔 の 移 動 度 が そ れ ぞ れ μn=0.32〔m2/V・s〕,μp=0.18
〔m2/V・S〕 で,抵 抗 率 が0.5Ω
・mの 真 性 半 導 体 が あ る 。こ の 半 導 体 の キ ャ リ ヤ 密
度 は い く ら か 。 電 子 の 電 荷 を−1.6x10-19Cと 〔解 答 〕
式(2・53)に
す る。
各 数 値 を 代 入 して,
〔3〕 拡 散 電 流 (1)拡
散電流 密度
気 体 分 子 の拡 散 現 象 と同様 に,半 導 体 中 の キ ャ リ ア
の 場 合 も,密
度 の 高 い と こ ろ か ら低 い と こ ろ に,拡
す る 。 図2・30の を 流 入(こ
よ う に,n形
半 導 体 のx=0面
れ を 注 入(injection)と
散 に よ っ て キ ャ リア が移 動
か ら,少
い う)さ せ る と,こ
数 キ ャ リア で あ る正 孔
の半導体 中の正孔密度 は
熱 平 衝 状 態 の 正 孔 密 度 よ り増 加 す る 。 こ の 正 孔 密 度 の 増 加 分Δpを
過剰 正孔密
度 と い う。 こ の と き正 孔 は 密 度 の 低 い 対 電 極 方 向 に 拡 散 に よ っ て 流 れ,電
図2・30
流 を
キ ャ リア の 拡 散 と電 流
生 ず る 。 こ の 電 流 を 拡 散 電 流(diffusion 距 離 と と も に 減 少 す る 原 因 は,正
current)と
い う。 図 の よ う に,正
孔 が
孔 が 再 結 合 に よ っ て消 滅 す る こ と に よ る。 正
孔 が 単 位 時 間 に 単 位 断 面 を 通 過 す る 数Npは,キ
ャ リ ア の 密 度 勾 配 に 比 例 し, (2・54)
で 与 え ら れ る 。 こ こ で,Dpを 負 符 号 の 理 由 は,正
正 孔 の 拡 散 係 数(diffusion
coeffcient)と
い う。
孔 が 濃 度 勾 配 の 負 の 方 向 に 拡 散 す る こ と に よ る 。 従 っ て,
正 孔 の 拡 散 電 流 密 度Jpは,
(2・55)
で 表 さ れ る。同様 に して,電 子 の拡 散 電 流 密 度Jnは,電
子 が 負 電 荷 を もつ の で,
(2・56)
とな る。 従 って,電 子 と正 孔 に よ る 拡 散 電 流 を 合 成 し た電 流 密 度Jは,
(2・57)
とな る。
〔4〕
ドリフ トと拡 散 に よ る電 流 の 式
半 導 体 中 の電 流 密 度 は,ド
リフ ト電 流 密 度 と拡 散 電 流 密 度 の和 で あ り,次 式
で表 され る。 (電 子 電 流 密 度)
(2・58)
(正孔 電 流 密 度)
(2・59)
(全 雷流密度) (2・60) 以 上 は,一
次 元 の 式 で あ る が,ベ
ク トル を 用 い て 三 次 元 で 表 し た 場 合 に は,
次 式 とな る。
(2・61)
〔5〕 ア イ ン シ ュ タ イ ン の 関 係 図2・31の よ う に,ド ナー 不 純 物 が 場 所 的 に あ る分 布 を もっ て添 加 され,電 子 密 度 が 場 所 的 に変 化 して い る熱 平 衝 状 態 のn形 半 導 体 につ い て考 え る。 熱 平 衡 状 態 のn形
半 導 体 にお い て,電 子 密 度nと
内 部 電 界Eは,
図2・31 傾 斜 分布 の ドナ ー を もつ n形 半 導 体 の バ ン ド図 と電 子密 度 分布
(2・62)
(2・63)
(2・64)
で与 え られ る。 熱 平 衡 状 態 に お い て は,電 子 電 流 密 度Jnは, (2・65)
で あ る 。 この 式 に 上 で 求 め たn,dn/dx,Eを
代 入 す れ ば, (2・66)
(2・67)
の 関 係 が 成 立 す る。 こ れ は,拡 り,ア
散 係 数 と移 動 度 を 結 び つ け る 重 要 な 関 係 式 で あ
イ ン シ ュ タ イ ン の 関 係(Einstein
relation)と
い う。 正 孔 に 対 し て も,同
様 に, (2・68)
の 関 係 が 成 立 す る。
2・6 キ ャ リア の 生 成 と再 結 合
〔1〕
キ ャ リ ア の 生 成 ・再 結 合 過 程
価 電 子 が 熱,光,X線
な ど の 外 部 エ ネ ル ギ ー を 得 て,価
電 子 帯 か ら伝 導帯 に
励 起 さ れ て 伝 導 電 子 と な り,正 孔 が 価 電 子 帯 に 作 ら れ る 過 程 は,す で 述 べ た キ ャ リ ア の 生 成(generation の 過 程 と は 逆 に,図2・32の
of carrier)(対
生 成)で
あ る 。 ま た,こ
よ う に,電 子 と正 孔 とが 一 緒 に な っ て 消 滅 す る 過 程
を再 結 合(recombination)と
い う 。 こ の 再 結 合 は,キ
ャ リア の 寿 命 を 決 定 す る
重 要 な機 構 で あ る 。 熱 平 衡 状 態 の 半 導 体 に お い て は,キ 結 合 割 合 と が 等 し く,そ
で に,2・3節
ャ リ ア の 生 成 割 合 と再
の 条 件 で決 ま る キ ャ リア密 度 が保 持 され て い る 。
図2・32
キ ャ リア
生 成 と再 結合
再 結 合 の 仕 方 を 大 別 す る と,直 合(indirect
recombination)お
接 再 結 合(direct
recombination),間
よ び 表 面 再 結 合(surface
接再結
recombination)の
3つ に分 け られ る。 直 接 再 結 合 は,図2・32の
よ う に,伝 導帯 の 電 子 と価 電 子 帯 の 正 孔 とが 直 接 に
再 結 合 す る過 程 を い う。 この過 程 で は,少
く と も,エ ネ ル ギ ー ギ ャ ップEgに
相 当 した エ ネ ル ギ ー を放 出 しな けれ ば な らな い。 それ に は,エ
ネ ル ギ ー を光 子
の形 で放 出 す る場 合 や フ ォ ノ ンの 形 で放 出 す る場 合 もあ るが,こ は第6章
れ ら に 関 して
で 説 明 す る。
実 際 の 半 導 体 に お い て は,ド
ナ ー や ア クセ プ タ以 外 に,あ
子 欠 陥 な ど(再 結 合 中心)が 原 因 とな り,図2・33の
る種 の 不 純 物 や 格
よ うに,禁 制 帯 の 中央 付 近
に局 在 準 位 が 形 成 さ れ る場 合 が 多 い 。 この 準 位 を 深 い 不 純 物 準 位(deep
impurity
level)と い う。 この 深 い 不 純 物 準 位 を介 し て行 わ れ る キ ャ リ アの 再 結 合
図2・33 再 結合 中心(深 い 不純 物 な ど に よる準 位)を 介 した再 結 合
が 間 接 再 結 合 で あ り,直
接 再 結 合 に 比 べ て 再 結 合 割 合 が 大 き く,キ
命 を決 め る 主 役 と な っ て い る 。 こ の よ う な 準 位 は,単 合 も あ れ ば,ま
ャ リ アの 寿
一 のエ ネルギー準位 の場
た 多 重 の 準 位 が 形 成 さ れ て い る 場 合 も あ る 。 さ ら に,こ
の準位
は,電
子 を 受 け 入 れ て 負 に 帯 電 す る ア ク セ プ タ 形 の 準 位(acceptor‐type
level)
と,電
子 を 放 出 し て 正 に 帯 電 す る ドナ ー 形 の 準 位(donor‐type
分 け ら
れ る。 た と え ば,図2・33の
局 在 準 位 が ア ク セ プ タ 形 で,n形
て い る と す る と,再 結 合 は,次 が 電 子 で あ る た め,こ
の 過 程 で 起 る 。 まず,n形
の 局 在 準 位 は,電
level)に
半 導 体 に形 成 され
で あ り,多 数 キ ャ リ ア
子 を 捕 獲 し て 負 に帯 電 し て い る 。 注 入
さ れ た 正 孔 は,こ
の 負 に 帯 電 し た 準 位 に 捕 獲 さ れ て 中 性 の 準 位 に 変 わ る 。次 に,
中 性 の 準 位 に 電 子 が 捕 獲 さ れ て 再 結 合 が 完 了 す る 。 こ の よ う な 準 位 は,再 の 場 と な る の で 再 結 合 中 心(recombination し か し,も
center)とい
結合
う。
し こ こで 中 性 の 準 位 に 電 子 が 捕 獲 さ れ る 確 率 が,負
に帯 電 した 準
位 に 正 孔 が 捕 獲 さ れ る 確 率 に 比 べ て 十 分 に 小 さ け れ ば,一 度 捕 獲 さ れ た 正 孔 は, 再 結 合 す る 前 に 熱 励 起 に よ っ て 再 放 出 さ れ る こ と に な る 。 こ の 場 合,こ は,正
の準位
孔 を 一 時 的 に 捕 獲 す る だ け の 場 と な る こ と か ら捕 獲 中 心(trapping (正 孔 トラ ッ プ(hole
trap))と
在 準 位 が 存 在 す る 場 合 に は,こ (electron
trap)と
あ る 場 合 に は,再
い う 。 同 様 に,p形
の 準 位 は,再
して 働 く。 す な わ ち,電 結 合 中 心 と な り,そ
center)
半 導 体 に ドナ ー 形 の 局
結 合 中 心 あ る い は 電 子 トラ ップ
子 と正 孔 を捕 獲 す る確 率 が 同程 度 で
れ ら の 確 率 が 大 き く 異 な る 場 合 に は,捕
獲 中心 とな る。 半 導 体 の 表 面 は,結
晶 を 構 成 し て い る 規 則 的 な 原 子 配 列 の 終 端 と な る た め,
多 量 の 不 飽 和 結 合(dangling
bond)が
で き,こ
れ が 原 因 と な っ て,表
の 局 在 準 位 が 形 成 さ れ る 。 こ の 局 在 準 位 を 表 面 エ ネ ル ギ ー 準 位(surface level)と
い い,そ
2・34の よ う に,こ ン ド は,上
の 密 度 は,表
面 に多 く energy
面 の粗 さや 酸 素 の 吸 着 状 態 な ど に依 存 す る。 図
の 表 面 準 位 は,内
部 の 電 子 を 捕 獲 し て 負 に 帯 電 す る た め,バ
方 向 へ 曲 が る 。 この 表 面 準 位 を 介 し て 行 わ れ る 再 結 合 が,表
図2・34
面 再結
表 面再 結 合
合 で あ る。 一 般 に,表 面 準 位 密度 が 大 き いた め,そ
こ に お け る 再 結 合 割 合 は,
内 部 に お け る再 結 合 割 合 よ り大 きい 。
〔2〕
キ ャ リア の遷 移 法 則
(1)一
般 的 な法 則
2つ の エ ネ ル ギ ー 準 位 間 を,単
子 の 数 を 遷 移 速 度(transition 1<E2)の
rate)と い う。 一 般 に,エ
間 の 遷 移 速 度Rは,次
E1→E2遷
移 の 場 合(高
位 時 間 に遷 移 す る電
ネ ル ギ ー 準 位E1,E2(E
式 で 与 え られ る。
い エ ネ ル ギ ー 準 位 へ の 遷 移) (2・69)
E2→E1遷
移 の場 合(低
い エ ネ ル ギ ー 準 位 へ の遷 移) (2・70)
こ こで,nE1,nE2は,そ 密 度,NE1,NE2は,電
れ ぞ れ エ ネ ル ギ ーE1,E2に
お い て,遷
子 の 受 け 入 れ 可 能 な 状 態 密 度,ま
定 数 で あ る。 式(2・69)に
お け る 指 数 関 数 の 項 は,格
移 可 能 な電 子
たKupとKdnは,比
例
子 振 動 との相 互 作 用 に よ っ
て 熱 エ ネ ル ギ ー を 得 た 電 子 が 格 子 か ら 離 れ る 確 率 で あ る。 伝 導 帯 お よ び 価 電 子 帯 に お け るnEとNEは,そ
(2)熱
平衡 状 態の遷 移
れ ぞ れ,次
の よ う に な る。
(伝導 帯)
(2・71)
(価電 子 帯)
(2・72)
図2・35のn形
半 導 体 の 場 合 に つ い て考 え る。
熱 平 衡 状 態 で は,上 向 き と下 向 きの遷 移 速 度 が 互 に 等 し く,Rup=Rdnで まず,図 中 の遷 移(A)に
お い て は,E2を
電 子 帯 の 頂 上 の エ ネ ル ギ ーEVに
あ る。
伝 導体 の 底 の エ ネ ル ギ ーEC,E1を
対 応 させ る と,
(2・73) と な り,こ
れ は,式(2・31)よ
り,
価
図2・35
キ ャ リアの遷 移
(2・74) で あ る 。 ま た, (2・75)
が 得 られ る。 熱 平衝 状 態 で あ る か ら,両 者 を等 しい とお け ば, (2・76) こ こで,
(2・77)
で あ る こ とが わ か る。
〔 例 題 〕2・5n形 計 算 し,検 〔 解答 〕
半 導 体 の 場 合,図2・35に
お け る(B)と(C)の
遷移 速度 を
討 せ よ。 ドナ ー 密 度 をNDと
し,そ の 内 で イ オ ン 化 し て い な い 密 度 をnDと
す
る。 (1)(B)の
遷 移 式(2・69)お
よ び 式(2・70)よ
り, (2・78)
(2・79) と な る。 こ こ で,n≪NC,exp{(EC−ED)/kT}≒1(室 て,式(2・79)に
お い て,nD≪NDと
な る の で,室
温 の 場 合)で 温 に お い て は,ド
あ る。 従 っ ナーの大部 分
が イ オ ン化 し て い る こ と を 示 し て い る 。 (2)
(C)の
遷 移 式(2・69)お
よ び 式(2・70)よ
り, (2・80)
とな る 。 こ の 式 を 式(2・76)と も,p≪n,nD≪(ND−nD)で 度 は,伝
比 較 す る と,同 一 試 料 で あ る か らK=K'で,し
か
あ る か ら,価 電 子 帯 と ドナ ー 準 位 間 の 電 子 の 遷 移 速
導 帯 と価 電 子 帯 間 の 電 子 の 遷 移 速 度 に 比 べ て 非 常 に 小 さ い こ と が わ か
る。
〔3〕
過 剰 キ ャ リア の 寿 命
半 導 体 中 の キ ャ リ ア 密 度 を,熱
平 衡 状 態 の 値 よ り増 加 さ せ た 場 合,そ
し た キ ャ リ ア を 過 剰 キ ャり ア(excess carrier)と 光 やX線
の 照 射,あ
い う 。 こ の 過 剰 キ ャ リ ア は,
る い は 電 極 か ら の キ ャ リア 注 入 な ど に よ っ て作 る こ とが で
き る 。 こ の 過 剰 キ ャ リ ア は,そ よ っ て 消 滅 し,時
の増 加
れ を 作 る 原 因 を 取 り除 く こ と に よ り,再
間 と と も に 減 少 す る 。 す な わ ち,全
結 合 に
体 の キ ャ リア 密 度 は,元
の 熱 平 衡 状 態 の 値 に も どる 。 次 に,図2・36の
よ う に,n形
半 導 体 に 光 を照 射 して 一 様 に過 剰 キ ャ リア を生
図2・36 少 数 キ ャ リ ア の 減 衰
成 さ せ た の ち,光
照 射 を 止 め た 場 合 の 過 剰 キ ャ リ ア の 減 衰 過 程 を 解 析 す る。 熱
平 衡 状 態 の 電 子 密 度 と正 孔 密 度 を そ れ ぞ れn0,p0,過 度 を,そ
れ ぞ れΔn,Δpと
す る と,n=n0+Δn,p=p0+Δpで
キ ャ リア の 注 入 量 が 少 く,n0≫Δp,Δnで 69)と 式(2・70)を
剰 電 子 密 度 と過 剰 正 孔 密
用 い て,次
あ る 。 こ こ で は,
あ る 場 合 を 考 え る 。遷 移 速 度 は,式(2・
式 とな る。 (2・81) (2・82)
従 って,正 味 の 再 結 合 速 度Rは,K=Kup=Kdnを
考 慮 し て, (2・83)
とな る 。 す な わ ち, (2・84) で あ る 。 こ の 微 分 方 程 式 を,t=0で,Δp=Δp(0)の
初 期 条 件 の も と に 解 い て, (2・85)
が 得 られ る。 こ れ よ り,n形
半 導 体 中 の 正 孔 密 度Δpは,指
こ とが わ か る 。 こ こ で,τp=1/Kn0を に お い て,x=0に 一 般 に,非
正 孔 の 寿 命(life
数 関 数 的 に減 衰 す る time)と
い う。 図2・36
お け る 接 線 と 時 間 軸 と の 交 点 が 寿 命 のτpと なる。
熱 平 衡 状 態 か ら熱 平 衡 状 態 に も ど る時 の 過 渡 状 態 に お け る 少 数 キ
ャ リ ア の 時 間 的 変 化 率 は, (2・86)
(2・87) で 与 え ら れ る 。 こ こ で,τp,τnは 図2・35に
お い て,禁
それ ぞれ 正 孔 お よび 電 子 の 寿 命 で あ る。
制 帯 内 に単 一 エ ネ ル ギ ー レベ ル の 再 結 合 中 心 が 存 在 す
る場 合 の 再 結 合 過 程 は,Shockley‐Read,Hallら
に よ っ て,詳
い る。 そ の 結 果 に よ る と,再 結 合 中 心 が エ ネ ル ギ ーEtに 再 結 合 速 度Rは,Kを1と
す る よ う に,そ
細 に解 析 され て
存 在 す る 場 合,正
の 単 位 を選 べ ば,
味 の
(2・88)
で 与 え ら れ る 。 こ こ で,
(2・89)
(2・90)
(2.91)
(2・92)
で あ る 。υ とSは,そ section)で
れ ぞ れ キ ャ リ ア の 熱 速 度 と捕 獲 断 面 積(capture
cross
あ る。
正 孔 の 寿 命τpは,式(2・88)を
用 い て, (2・93)
と して 求 め ら れ る 。
2・7 連 続 の 方 程 式
〔1〕
キ ャ リア の 連 続 の 方 程 式
キ ャ リ ア の 連 続 の 方 程 式(continuity フ トお よ び 再 結 合 を1つ
equation)は,キ
の 式 で 結 び つ け た も の で あ り,半
を 解 析 す る た め の 基 本 式 で あ る 。 こ れ を 導 くた め,図2・37の
ャ リ ア の 拡 散,ド
リ
導 体 の電 気 伝 導 現 象 よ う に,n形
半 導
体 に お け る正 孔 電 流 の 一 次 元 の 流 れ を考 え る。 図2・37に
お い て,xとx+dxの
正 孔 の 時 間 的 変 化 率 ∂p/∂tは,次
平 面 で 囲 まれ た領 域 内 の 単 位 体 積 当 た りの 式 で表 され る。
図2・37
正孔 の時 間的 変化 率〓
再結 合 に よる 正孔 の 消滅 割 合Rp
熱 以外 の エネ ルギ ー を 原 因 とす る正 孔 の 生 成 割 合Gp
電流 に よ り搬 入 され る単 位時 間 当た りの 正味 の正 孔数Qp
(b)
(a)
電 流 の 流 入 と流 出
(c) (2・94)
こ こ で,(a)は,正
味 の 再 結 合 速 度 で あ り,式(2・86)と
同 じ く, (2・95)
で 表 さ れ る。(b)は,熱
エ ネル ギ ー以 外 の エ ネ ル ギ ー刺 激 を原 因 と した キ ャ リ
ア生 成 で あ り,光 やX線
な ど を照 射 した 時 の 単 位 時 間,単 位 体 積 当 た りの キ ャ
リア生 成 の 数 で あ る。 また,(c)は,ド
リ フ ト電 流 お よ び拡 散 電 流 に よ って,幅dxの
領域 内の単位
体 積 当 た りに単 位 時 間 内 に運 び込 まれ る正 味 の 正 孔 の 数 で あ り,
(2・96) とな る。 以 上 の 関 係 を 式(2・94)に 代 入 し て,一
次 元 の キ ャ リ アの 連 続 の 方 程 式 と して
次 式 が 得 られ る。 (n形 半 導 体 中 の正 孔) (2・97) 同 様 に し て,
(n形 半 導体 中 の 電 子) (2・98) と な る 。こ こ で,Gnは
熱 以 外 の エ ネ ル ギ ー を 原 因 と し た 電 子 の 生 成 割 合 で あ る。
キ ャ リ ア 生 成 が 対 生 成 の み に よ り起 こ る 場 合,Gn=Gpで ま た,p形
半 導 体 中 の 電 子 と 正 孔 に 対 し て も,そ
あ る。
れ ぞ れ 式(2・97)お
よ び 式(2・
98)と 同 様 な 式 が 導 け る 。
〔2〕
両極 性 方 程 式
2・5節 〔4〕で 求 め た 正 孔 電 流 密 度 と,電 97)お
よ び 式(2・98)に
代 入 し て,次
子 電 流 密 度 の 式 を,そ
れ ぞ れ,式(2・
式 を得 る。
(2・99)
(2・100)
外 因性 半 導 体 に お い て は,通 常,次 の 仮 定 が成 立 す る。 ま ず,半 導 体 中へ の 少 数 キ ャ リア の注 入 に際 し て は,キ
ャ リアの 電 気 的 中性 条 件 が ほ ぼ成 立 す る の
で, (電気 的 中性 条 件) とな る。 再 結 合 に お い て は,電 子 と正 孔 が結 合 して消 滅 す る の で,そ
(2・101)
れ らの 単
位 時 間 に消 滅 す る数 は互 に 等 し く, (粒子 保 存)
(2・102)
が 成 立 す る。 深 い 不 純 物 準 位 が 高 密 度 で 存 在 す る よ うな特 別 の場 合 を除 け ば, キ ャ リア生 成 過 程 の う ち,対 生 成 が 支 配 的 とな る の で,
(対生 成)
(2・103)
とな る。 以 上 の 仮 定 を 式(2・99)と
式(2・100)に
代 入 し,そ
れ ら の 式 か ら ∂E/∂xの 項 を
消 去 す る こ と に よ り,正 孔 と電 子 の 連 続 の 方 程 式 を 結 び つ け た 次 式 が 得 ら れ る 。 (2・104) こ の 式 を 両 極 性 方 程 式(ambipolar
equation)と
い う 。 こ こ で, (2・105)
(2・106)
で あ り,μ*を (ambipolar り,半
両 極 性 移 動 度(ambipolar diffusion
constant)と
mobility),D*を
両 極 性 拡 散係 数
い う。 この 両 極 性 方 程 式 を用 い る こ とに よ
導 体 中 に キ ャ リ ア 注 入 を 行 っ た 時 の,キ
ャ リア輸 送 とキ ャ リア 分 布 が 求
め られ る。
〔 例 題 〕2・7 〔解 答 〕
式(2・104)を
式(2・99)×
誘 導 せ よ。
μn+式(2・100)×
μpを
作 り,∂E/∂xの
項 を 消 去 す る
と,
(2・107) が 得 ら れ る 。 こ こ で,n=n0+Δn,p=p0+Δpと 定 を 用 い て あ る 。 上 式 で,両
し,式(2・101)∼
式(2・103)の
極 性 移 動 度 の 項 は, (2・108)
で あ る 。 ま た,両
極 性 拡 散 係 数 の 項 は,ア
=Dp/μpを 用 い て,次
の よ う に 導 け る。
イ ン シ ュ タ イ ン の 関 係kT/q=Dn/μn
仮
(2・109) n形 半 導 体 で,過
剰 キ ャ リア密 度 が 多 数 キ ャ リア密 度 に比 べ て 十 分 に 小 さ い
場 合 に は,n≫pと
な る の で,式(2・105)
と式(2・106)は,次
式 とな る。 (2・110)
ま た,p形
半 導 体 で,p≫nの
場 合 に は,次
式 とな る。 (2・111)
結 局,式(2・104)の
両 極 性 方 程 式 を 用 い て キ ャ リ ア 密 度 分 布 を 解 析 す る 場 合,
キ ャ リ ア と し て は,少 一 方,真
数 キ ャ リ ア に 着 目 す れ ば よ い こ と に な る。
性 半 導 体 の 場 合 に は,p0=n0,Δn=Δpで
あ る の で, (2・112)
と な る 。 こ こ で,μ*=0の が,電
意 味 は,電
子 と 正 孔 は,個
々 に は移 動 度 を も っ て い る
子 と正 孔 と か ら な る 過 剰 キ ャ リア の 集 団 の 移 動 度 は,零
る。 す な わ ち,過 な い が,拡
〔3〕
剰 キ ャ リ ア の 集 団 は,電
とい う こ とで あ
界 作 用 に よ る ド リ フ トで は 移 動 で き
散 に よ って の み移 動 で き る こ とを意 味 し て い る。
拡散方程 式
後 述 の 半 導 体 ダ イ オ ー ド や トラ ン ジ ス タ 等 に お い て は,キ を 利 用 し て い る 。 こ の 現 象 の 解 析 に 当 っ て は,両 項 を 無 視 し た 式 が 用 い ら れ る 。 式(2・104)に
ャ リ アの 拡 散 現 象
極 性 方 程 式 に お け る ド リフ ト
お い て,E=0と
お い て, (2・113)
が 得 ら れ る 。 こ の 式 を 拡 散 方 程 式(diffusion
equation)とい
〔例 題 〕2・8 図2・38の よ う に,半 無 限 長 のn形
う。
半 導 体 のx=0の
面 か ら正
孔 が 注 入 され て い る。 正 孔 が 拡 散 の み に よ っ て,定 常 的 に 流 れ て い る場 合 の 正 孔 密 度 分 布 を求 め よ。 また,x=0に
お け る正 孔 の 拡 散 電 流 密 度 を 求 め よ。 た だ
図2・38 拡 散 に よ る正孔 密度 分布
し,x=0に
お け る正 孔 密 度 をΔp=Δp(0)(≪n0),正
ぞ れDp,τpと
し,正
孔 の 拡 散 係 数 と寿 命 を そ れ
孔 の 流 れ は一 次 元 を仮 定 せ よ。
〔 解 答 〕G=0,D*=Dpで,か
つ,定
常 状 態 で あ る の で,式(2・113)は, (2・114)
とな る。 この微 分 方 程 式 の 一 般 解 は, (2・115) で あ る 。 こ こ で,A,Bは (diffusion
length)で,拡
Δp=Δp (0),x=∞
任 意 定 数 で あ り,Lp=√Dpτpは
正 孔 の 拡 散 距 離
散 に よ っ て 正 孔 が 移 動 す る 平 均 距 離 で あ る 。x=0で
で Δp=0の
境 界 条 件 を,式(2・115)に
代 入 し,正
孔密度 分布
は, (2・116)
とな る。正 孔 密 度 分 布 は,距 離 と と も に指 数 関 数 的 に減 衰 す るの で,図2・38の
よ う に,x=0に
お け る 接 線 とx軸
との 交 点 が,拡
正 孔 の 拡 散 電 流 密 度Jpは,式(2・116)を と し て,次
散 距 離Lpと
な る。
式(2・55)に 代 入 し,x=0に
お け る値
式 が 得 られ る。
(2.117)
〔4〕 半 導 体 内 の 空 間 電 荷 (1) キ ャ リア注 入 に よ る空 間電 荷
n形 半 導 体 に 少 数 キ ャ リア,ま
たは
多 数 キ ャ リア を注 入 す る それ ぞ れ の 場 合 につ い て考 え る。 まず,少 数 キ ャ リア で あ る正 孔 をn形
半 導 体 の あ る部 分 に注 入 す る と,そ の 正 孔 に よ っ て電 界 が 生
ず るた め,図2・39(a)の
(a)少
(b)多
よ うに,母 材 中 の 多 数 キ ャ リア で あ る電 子 が これ に集
数 キ ャ リア の 注 入
数 キ ャ リの 注 入
図2・39 キ ャ リア注 入 に よる空 間 電 荷
ま っ て きて 電 荷 の 中和 が 起 こる。Δp≪n0の 場 合 は,ほ ぼ完 全 に 電 気 的 中性 が 満 され てΔp=Δnと
な るが,Δp>n0の
荷Q=q(Δp−Δn)が
場 合 に は,完 全 な 中和 に は 至 らず,空 間 電
残 る。
一 方,多 数 キ ャ リア で あ る電 子 を注 入 した 場 合 に は,母 材 の 正 孔 密度 が 非 常 に少 い た め,少 数 キ ャ リア の 注 入 の 場 合 の よ う な電 荷 の 中 和 は起 こ らな い。 注 入 さ れ た 電 子 は,そ
れ 自身 の 電 荷 に よ っ て 生 じ た 電 界 の 作 用 に よ り,図2・
39(b)の
よ う に,半 導 体 の 内部 か ら表 面 に移 る。 これ は,導 体 に与 え た電 荷 が
全 部,そ
の 表 面 に集 ま る現 象 と同 じで あ る。
結 局,外
因 性 半 導体 中 へ,注 入 源 を もつ 電 極 か ら少 数 キ ャ リア を注 入 す る 場
合 に は ほ とん ど空 間 電 荷 を生 じな い た め,加
え る電 圧 は比 較 的低 く,容 易 に 注
入 を行 う こ とが で き る。 一 方,多 数 キ ャ リア を注 入 す る場 合 に は,空 間 電 荷 に 打 ち勝 つ だ け の高 電 圧 を加 え る必 要 が あ る 。 さ らに,半 絶 縁 物 状 態 の 高 抵 抗 率 半 導 体 中 へ 電 極 を通 し て,キ
ャ リア の 高 レベ ル 注 入 を行 う場 合 に は,高 密 度 の
空 間 電 荷 が 形 成 さ れ るの で,空 間電 荷 制 限電 流(space
charge limited current)
が 流 れ る。 (2) 誘 電 緩 和 時 間 と少 数 キ ャ リア寿 命 前項(1)で
述 べ た よ う に,半 導
体 に 多 数 キ ャ リア を瞬 間 的 に注 入 す る と,そ の 電 荷 に よ っ て発 生 した 電 界 に よ りキ ャ リアが 表 面 に移 動 し,あ る時 間 の後 に定 常 状 態 に落 ち着 く。 この 定 常 状 態 に達 す る際 の時 定 数 を誘 電 緩 和 時 間(dielectric
relaxation
time)と
い う。
少 数 キ ャ リア の注 入 を行 っ た場 合 に は,注 入 の 瞬 間 に,一 時 的 に空 間電 荷 が 形 成 され る が,誘 電 緩 和 時 間 の間 に 多 数 キ ャ リア が,こ れ に 集 ま っ て きて電 気 的 中 性 が 保 た れ る。 そ の後 は,再 結 合 に よ り少 数 キ ャ リア の 寿命 で 決 まる キ ャ リ ア の 減 衰 が起 こ る。 〔 例 題 〕2・9 n形 半 導 体 に電 子 を注 入 した 時 の,誘 電 緩 和 時 間 を求 め よ。 ま た,100Ω
・cmのn形Si結
晶 に お け る誘 電 緩 和 時 間 は い くらか 。 た だ し,比 誘
電 率 を εr=12と す る。 〔 解 答 〕 多 数 キ ャ リア が 注 入 さ れ る場 合 で あ るか ら,Δp≒0で あ る。従 っ て,
Δp/τp=Δn /τn=0で
あ り,キ
そ の 結 果,式(2・98)の
ャ リア の 再 結 合 と 拡 散 は 起 こ ら な い と仮 定 で き る 。
連 続 の 方 程 式 は,電
子 に よ る 空 間 電 荷 をQ=-qnと
お
き,
(2.118) と な る 。 オ ー ム の 法 則 お よ びポ ア ソ ン の 方 程 式 は, (オ ー ム の 法 則)
(2・119)
(ポ ア ソ ン の 方 程 式) で あ る 。 こ こ で,σ
は 導 電 率,ε0は
119)と 式(2・120)を
式(2・118)に
真 空 の 誘 電 率,εrは
(2・120) 比 誘 電 率 で あ る 。 式(2・
代 入 し て,
(2.121) と な る 。 こ の 式 の 誘 導 に 際 し,σ
は 一 様 で あ る と 考 え ら れ る の で,∂ σ/∂x=0を
仮 定 し て あ る 。 式(2・121)を,t=0でQ=Q(0)の
初 期 条 件 の も と で 解 い て,
(2.122) とな り,空 間電 荷 は,指 数 関 数 的 に減 衰 す る。 こ こで,τrは 誘 電 緩 和 時 間 で あ り, (2.123) で あ る。 100Ω ・cmのn形Si結
晶 の 場 合,1/σ=ρ=1〔
Ω ・m〕で あ る か ら,そ
の誘電緩
和 時 間 は,
とな り,電 子 の 注 入 に よ っ て生 じた 内 部 の空 間 電 荷 は,瞬 時 に減 衰 し,表 面 に 移 る と考 え て よ い。
演 〔問 題 〕1.
習
問
題
〔2〕
一 次 元 結 晶 に お け る電 子 が,〔例 題 〕2・1で示 し た よ う な 底 が 一 定 で,ポ
テ ン シ ャル 壁 が 非 常 に 高 い 井 戸 形 ポ テ ン シ ャル 中 で 運 動 す る(ゾ の 金 属 模 型)と 考 え,さ
ら に,Lが
ンマー フェル ト
十 分 に 大 きい と仮 定 す れ ば,電
子 の 取 りうる
エ ネ ル ギ ー は 近 似 的 に連 続 な 値 を 取 る もの と考 え られ る。 こ の と き の 電 子 の 有 効 質 量 を 求 め よ。
〔 問 題 〕2.
Si結 晶 中 のSi原
子 をP原
位 と の エ ネ ル ギ ー 差ΔE=Ec-EDは 量 をmn*=0.32m,Si結
〔問 題 〕3.
子 で 置 換 し た 場 合,伝
答(m)
導 帯 の 底 と ドナー準
い く らか 。た だ し,Si結 晶 中 の 電 子 の 有 効 質
晶 の 比 誘 電 率 をεr=12と
す る。
答(0.03eV)
フ ェ ル ミ ・デ ィ ラ ッ ク の 分 布 関 数 を,-0.2eV<(E-Ef)<0.2eVの
範 囲 に つ い て,そ
れ ぞ れT=0〔K〕,300〔K〕,600〔K〕
の 場 合 に つ い て 計 算 し,
図 示 せ よ。 〔 問 題 〕4.
あ るn形
半 導 体 に お い て,300Kで
ドナ ー 準 位 の80%が
い る場 合 の フ ェル ミ準 位 の 位 置 を求 め よ。
〔問題 〕5. n形Si中
の 電 子 の移 動 度 は,室
V・s〕で あ る。mn*=0.32mと
温(300K)に
イ オ ン化 し て 答(0.036eV)
お い て,μn=0.15〔m2/
し た 場 合,平 均 自 由 行 程 と衝 突 間 の 平 均 時 間 と を 求
め よ。 た だ し,衝 突 間 の 時 間 は す べ て 等 し く τで あ る と仮 定 す る。 答(0.113μm,5.46×10-13s)
〔問 題 〕6.
100gのSi中
た 材 料 で,p形Si結
に ア ク セ プ タ 不 純 物 と してB元
晶 を製 作 し た 。この 結 晶 の(i)不
お け る抵 抗 率 と を 求 め よ。 た だ し,B元
とす る。
子 量 を28.1,B元
融 させ
素 に よ る ア ク セ プ タ 準 位 は300Kで
に イ オ ン 化 して い る もの と し,μp=500〔cm2/V・s〕 33g/cm3,原
素 を2×10-7g溶
純 物 密 度 と,(ⅱ)300Kに
とす る。 ま た,Siの
素 の 原 子 量 を10.8,ア
完全
密 度 を2.
ボ ガ ドロ 数N0=6.02×1023
答((i)2.59×1014cm-3,(ⅱ)48.3Ω
・cm)
〔問 題 〕7.
室 温(300K)に
お け るGe結
と を 求 め よ 。 た だ し,Ge結 Eg=0.72〔eV〕,Si結 =1
.12〔eV〕
晶 とSi結
晶 の 真 性 キ ャ リ ア密 度 と抵 抗 率
晶 に お い て,μn=0.36〔m2/V・s〕,μp=0.18〔m2/V・s〕,
と し,計
晶 に お い て,μn=0.15〔m2/V・s〕,μp=0.05〔m2/V・s〕,Eg 算 を 簡 単 に す る た め,mn*=mp*=mと
Ge結
答
Si結
仮 定 す る。
晶 の 場 合;ni=2.5×1019〔m-3〕,ρi=51〔
Ω ・cm〕
晶 の 場 合;ni=1×1016〔m-3〕,ρi=3.12〔
Ω ・cm〕
〔問 題 〕8. 一 般 に,半 導 体 に お い て は,μn〓 μpで あ る た め,真 性 半 導 体 の 抵 抗 率 は最 大 値 で は な い。 抵 抗 率 が 最 大 と な る と き の キ ャ リ ア密 度 を求 め よ。 ま た,そ の と き の 抵 抗 率 は,真 性 半 導 体 の 抵 抗 率 の 何 倍 で あ る か 。 答(ρmax/ρi=(μn+μp)/2√μnμp)
〔問 題 〕9.
図2・40の
よ う に,n形
半 導 体 に お け る正 孔 の 移 動 度 を 測 定 す る 実 験
(へ イ ン ズ ・シ ョ ッ ク レ イ の 実 験)に で あ り,エ
ミ ッ タEか
お い て,V0=10〔V〕,l=1〔cm〕,d=0.7〔cm〕
ら 正 孔 の パ ル ス を 注 入 し た と こ ろ,注
ク タ C に 到 達 し た。 正 孔 の 移 動 度 は い く らか 。
入 後,47μsで
コ レ
答(1.49×103cm2/V・s)
図2・40
へ イ ン ズ ・シ ョ ッ ク
レイ の実験
〔問 題 〕10.
導 電 率 σ=0.6〔s/m〕,電
=5×10-2〔m2/V・s〕 求 め よ 。 た だ し,真
のn形
子 移 動 度 μn=0.15〔m2/V・s〕,正
孔 移 動 度 μp
半 導 体 が あ る。 こ の 半 導 体 の 電 子 密 度 と正 孔 密 度 と を
性 キ ャ リ ア 密 度 をni=2×1016〔m-3〕
とす る 。
答(n=2.5×1019〔m-3〕,p=1.6×1013〔m-3〕)
〔 問 題 〕11.
熱 平 衡 状 態 のp形
半 導 体 に,一 定 照 度 の 光 を 急 激 に 照 射 して キ ャ リア
の 対 生 成 を 行 っ た 。光 を 照 射 した と きの 時 刻 をt=0と
し,過 渡 状 態 に お け る 電 子
密 度 を 求 め よ。た だ し,電 子 の 寿 命 をτn,光 に よ っ て 生 成 す る電 子-正 孔 対 生成 の 割 合 をGと
す る 。 半 導 体 に は 電 流 を流 さ な い も の と す る。
答
〔 問 題 〕12.
半 無 限 長 の 一 次 元 構 造 のn形
そ の 片 面x=0か
半 導 体 に 一 定 電 界Eが
加 わ っ て お り,
ら正 孔 が 注 入 され て い る 。 正 孔 が ド リ フ トの み に よ っ て 移 動 す
る場 合 の 定 常 状 態 に お け る正 孔 密 度 分 布 を 求 め よ。 た だ し,熱 平 衡 状 態 の 電 子 密 度 をn0,正
孔 密 度 をp0,正
孔 の 寿 命 をτpと し,x=0で
に保 た れ て い る と す る。 また,正
孔 は低 レベ ル 注 入 で あ り,Δp(0)≪n0と
答〓
〔問 題 〕13.
は 過 剰 正 孔 密 度 がΔp(0)
一 次元 の両極 性 方程式
を無 次 元 の 形 で表 せ 。
答〓
す る。
第3章
ダ イ オ ー ド とバ イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ
1つ の 半 導 体 単 結 晶 の 中 で,p形 い わ ゆ るpn接
の 領 域 とn形
の 領 域 が 接 して 存 在 す る
合 は,整 流 特 性 な どの 特 異 な性 質 を示 し,半 導 体 デ バ イ ス の
最 も基 本 的 な 構 成 要 素 で あ る。 ダ イ オ ー ド は,こ transistor;こ
のpn接
合 の1層,バ
イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ(bipolar
の 命 名 の 理 由 に つ い て は 第4章
(Silicon Controlled
Rectifier;シ
で 述 べ る)は2層,SCR
リ コ ン制 御 整 流 器)は3層
か ら構 成 さ れ
て い る。 こ の 章 で は,こ の よ う に,半 導 体 デ バ イ ス の 基 本 的 構 造 と も い うべ きpn 接 合 の もつ 種 々 の 性 質 に つ き,そ の物 理 的 意 味 を調 べ,さ
ら に,pn接
合 と
同 様 な 整 流 特 性 を 示 す 金 属 と半 導 体 の 接 触 部 分 に 起 こ る 物 理 現 象 に つ い て 解 説 す る。 そ し て,こ や,SCRな
3・1 pn接 pn接
合(pn
れ ら の理 論 を基 礎 と し て,バ
イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ
どの 半 導 体 デバ イ ス に つ い て,そ の 構 造 や 動 作 原 理 を 説 明 す る。
合 junction)は,p形
半 導 体 とn形 半 導 体 を単 に 機 械 的 に接 触 させ
て も作 る こ と はで きな い 。 す な わ ち,半 導 体 単 結 晶 と して の,原 子 的配 列 を損 な う こ とな く接 合 させ な けれ ば な らな い。 そ の た め の 製 造 方 法 につ い て は,第 8章 で述 べ る の で,こ
こで は触 れ ず 主 と して,そ の構 造 と理 論 につ い て 述 べ よ
う。
〔1〕 接 合部 分 のエ ネ ル ギ ー 帯 の 構 造 前 章 で 学 ん だ よ う に,常 温 で は,p形 半 導 体 内 の ア クセ プ タ原 子 は 価 電 子帯 か らの 熱励 起 に よ る電 子 を受 け入 れ 負 に イ オ ン化 し,価 電 子 帯 に正 孔 を作 る。 ま
た,n形 半 導体 内 の ドナ ー原 子 は熱 励 起 に よ り正 イ オ ン とな り,伝 導 帯 に電 子 を 作 る。 この と き作 られ る キ ャ リア は イ オ ン化 した 原 子 の 近 傍 に い る の で(エ ネ ル ギ ー 帯 図 の上 で は,大
き くその 位 置 を 変 え る が,こ れ とは 異 な り,結 晶 内 の 空 間
的位 置 は,ク ー ロ ン力 の た め,あ ま り大 き くそ の 位 置 を変 え る こ とは な い),半 導 体 内 の電 気 的 中 性 条 件 は依 然 と し て,そ (b)に,そ
れ ぞ れp形
(a)p形
の ま ま保 た れ て い る。 図3・1(a),
お よ びn形 半 導体 の エ ネ ル ギー 帯 の構 造 を示 す。
半導体 のエ ネル ギー 帯
(b)n形
半 導体 のエ ネル ギー帯
図3・1 p形 お よ びn形 半 導体 の エネ ル ギー帯
さて,こ の よ うなp形 くのn形
お よ びn形 半 導体 が,pn接
合 を形 成 す る と,接 合 面 近
半 導 体 領 域 内 の 多 数 キ ャ リア で あ る電 子 は,そ の濃 度 差 の た め,接 合
面 を 通 過 し てp形 半 導体 領 域 内 に拡 散 し,あ
とに正 に イオ ン化 した ドナ ー 原 子
を残 す 。 また,p領 域 に拡 散 した 電 子 は,も と も と そ こに あ る正 孔 と再 結合 して 消滅 す るが,あ
とに 負 に イ オ ン化 した ア ク セ プ タ 原 子 を残 す 。
全 く同様 の 理 由 に よ っ て,接 合 面 近 くのp形 し,p形
領 域 の 正 孔 はn形 領 域 に 拡 散
領 域 に 負 に イ オ ン化 した ア ク セ プ タ原 子 を 残 す 。
この よ う な拡 散 現 象 が あ る程 度 進 行 す る と,pn接
合 の境 界 面 の 近 傍 に は,イ
オ ン化 した ア ク セ プ タ や ドナ ー 原 子 の 作 る 空 間 電 荷 に よ る電 界 が 強 ま り,新 し
(a)p形 お よびn形 半 導体 の 不 純物密 度分 布
(b)イ オ ン 化 し た 不 純 物 キ ャ リア の 分 布
(c)空
間電 荷分 布
(d)電
界分 布
(e)電
位 分 布*
(f)pn接
図3・2 熱平 衡 状態 にお け るpn接 *電
位 分布 の形 は
化 の た め,以
,式(3・8)に
後,直
合 の形 成 とエ ネ ル ギー帯 構 造
示 す よ う に,x=0を
線 で 示 す こ とに す る。
合 のエ ネル ギー帯
境 に し て2つ
の 二 次 曲 線 に な る が,簡
単
い キ ャ リ ア の 拡 散 を 阻 止 す る よ う に な る 。 そ し て,新 図3・2(a)はpn接
し い 平 衡 状 態 に 落 ち 着 く。
合 に お け る 不 純 物 濃 度 の 分 布 を 示 し,図(b)は
イ オ ン化
した 不 純 物 原 子 や キ ャ リ ア の 分 布 の 模 様 を モ デ ル 化 し て 表 し た も の で あ る 。 イ オ ン 化 し た 原 子 は,接
合 境 界 面 の 近 傍 に反 対 符 号 の 電 荷 を もつ キ ャ リアが
な い た め 電 気 的 中 性 条 件 を 満 せ ず,空 (図(d))を ま た,こ
生 じ,こ
の よ う な 電 界 は,p,n両
れ を 電 位 障 壁(potential
ギ ー 帯 の 形 状(図(f))を
(depletion
potential)
ど と も呼 ぶ 。
領 域 の キ ャ リア に対 す る ポ テ ン シ ャ ル エ ネ ル ギ ー
領 域 の フ ェ ル ミ レ ベ ル が 一 致 す る よ う に,そ
のエネ ル
変 え る。
呼 ば れ る 。 こ の 領 域 は,ほ
layer)と
作 る。 この 電
た は 接 触 電 位 差(contact
の よ う な 空 間 電 荷 が 形 成 さ れ て い る 領 域 は,空
region)と
こ に電 界
数 キ ャ リ ア の 移 動 に 対 し て 障 壁 と な る の で,こ
barrier)な
こ の 拡 散 電 位 差 は,p,n両 を そ れ ぞ れ 変 化 さ せ,両
領 域 間 に 電 位 差(図(e))を
potential)ま
とい う 。 こ の 拡 散 電 位 差 は,多
charge
形 成 し,そ
の 電 界 が 無 制 限 な 多数 キ ャ リア の拡 散 を阻 止 す る。
位 差 を 拡 散 電 位 差(diffusion
な お,こ
間 電 荷(図(c))を
も 呼 ば れ る(厳
ャ リア の 濃 度 が 増 し,最
密 に は,空
終 的 に は,そ
とん どキ ャ リ アが な い た め 空 乏 層 乏 層 の 末 端 で は,次
第 に 多数 キ
の 熱 平 衡 濃 度 に な っ て い る 。)。
拡 散 電 位 差 の 大 き さ や 空 乏 層 領 域 の 長 さ は,pお よ び ドナ ー の 濃 度 に よ っ て 定 ま る が,次
間 電 荷 領 域(space
に,こ
よ びn領
域 の ア クセ プタお
れ らの もの の 算 出 を 試 み る こ と
に し よ う。
〔2〕 拡 散 電 位 差 と空 乏 層 の厚 さ まず,拡 散電 位 差V0を
求 め よ う。そ の た め,次 の よ う に諸 量 の 記 号 を 定 め る。
p形 領 域 の ア ク セ プ タ濃 度
NA
n形 領 域 の ドナ ー 濃 度
ND
真 性 キ ャ リア密 度
ni
電 子 の電 荷 電 子 の移 動 度
-q μn
電 子 の拡 散 係 数
Dn
正 孔 の 移 動 度
μp
正 孔 の拡 散 係 数
Dp
接 合 面 か ら十 分 離 れ たp形
領 域 に お い て,
正 孔 の 熱 平 衡 密 度 は,近 似 的 に
電子 の熱平衡密 度 は,近 似的 に
pp≒NA
np≒ni2/N A
伝 導帯 の 底 の エ ネ ル ギ ー 準 位
ECp
価 電 子帯 の 頂 上 の エ ネ ル ギ ー 準 位
EVp
空 乏 層 の 端
x=-xp
接 合 面 か ら十 分 離 れ たn形 額 域 に お い て, 正 孔 の 熱 平衡密 度 は,近 似 的 に
電 子 の 熱 平 衡 密 度 は,近 似 的 に
nn≒NDD
伝 導帯 の 底 の エ ネ ル ギ ー 準 位
ECn
価 電 子 の 頂 上 の エ ネ ル ギ ー 準 位
EVn
空 乏 層 の 端
x=xn
フ ェ ル ミ準 位
Ef
pn接 合 の 位 置
x=0
拡 散 電 位 差 空 乏 層 領 域 の位 置xに
V0 お け る,
電 界
E
電 位
V
とす る(こ れ らの記 号 は,以 後,こ 熱 平 衡 状 態 で,p,n両
pn≒ni2/ND
の 章 の す べ て に適 用 す る)。
領 域 の フ ェ ル ミ準位 は一 致 す る。 こ の こ とは,両 領 域
にお け る,伝 導 帯 のECpレ
ベ ル 以 上 の電 子 密 度,お
よび 価電 子 帯 のEVnレ
ベル
以下 の 正 孔 密 度 が 等 し くな り,キ ャ リア の 移 動 が な くな る こ と を意 味 す る。 す な わ ち,n領 域 のECp以 なる の で,
上 の電 子 密 度 は,p領 域 の 電 子 熱 平 衡 密 度 に 等 し く
(3・1)
同様 に,p領 域 のEVn以
下 の 正 孔 密 度 は,n領 域 の正 孔 熱 平 衡 密 度 に等 し くな
る の で, (3・2)
と な る 。 こ こ に,qV0は,2つ
の領 域 に お け る伝 導 帯 お よび 価 電 子 帯 間 の エ ネ ル
ギー 差 (3・3)
で あ る 。 さ ら に,式(3・1),ま
た は(3・2)の い ず れ か に,次
の 関 係,
を用 い る と,拡 散 電 位 差 は, (3・4)
と求 ま る 。 この 式 か ら,拡 散 電 位 差 は 両領 域 の不 純 物 濃 度 に依 存 す る こ とが わ か る。 次 に,空 乏 層 の厚 さ を求 め よ う。 半 導 体 の誘 電 率 を ε と して,ポ ア ッ ソ ンの 式 は(空 乏 層 内 の 電 荷 は,す べ て ア ク セ プ タ イ オ ン また は ドナ ー イ オ ンの み に よ る とす る空 乏近 似 を用 い る), -xp ≦x≦0の 範 囲 で (3・5)
0≦x≦xnの ま た,x=-xpお
範囲 で
よ び.x=xnで,E=0の
-xp≦x≦0の
境 界 条 件 を 入 れ て,上
式 を 積 分 し,
範囲 で (3・6)
0≦x≦xnの
範囲で
で あ る。 し か る に,x=0で
電 界 の 値 は 等 し く な け れ ば な ら な い の で,
(3・7)
の 関 係 が 常 に 成 立 す る 。 こ の 式 か ら,空
乏 層 は,不
純 物 濃 度 の 小 さ い 領 域 に,
よ り 多 く広 が る こ と を 知 る 。 さ ら に,x=0でV=0の
境 界 条 件 で,式(3・6)を
-xp ≦x≦0の
積 分 す れ ば,
範 囲で (3・8)
0≦x≦xnの とな る。 それ 故,空
範囲 で
乏 層 の 両端 の 電 位 は,そ れ ぞ れ,
(3・9)
で あ る。 従 っ て,空 乏 層 の 両 端 間 の電 位 差 す なわ ち拡 散 電 位 差 は,上 式 か ら, (3・10)
と な り,式(3・7)の
関 係 を 式(3・10)に
代 入 し て,xpお
よ びxnを
求 め る と,
(3・11)
とな る。 従 っ て,全
空 乏 層 の 厚 さLは, (3・12)
で あ る。 な お,上
式 中 のV0の
入 す れ ば よ い が,式
値 は,す
で に 式(3・4)で 求 め ら れ て い る か ら,こ
が 複 雑 に な る の で,そ
の 記 述 は省 略 す る。
れを代
〔3〕 電 流-電 圧 特 性 熱 平 衡 状 態 に あ るpn接
合 に は,式(3・4)に 示 す 拡 散 電 位 差V0が
作 られ,こ れ
が 障 壁 に な っ て キ ャ リア の 移 動 が 阻 止 さ れ 平衡 が 保 た れ て い る。 しか し,外 部 か ら電 圧Vが
印加 され れ ば電 位 障 壁 の 高 さは,加 え られ る電 圧
の 極 性 や 大 きさ に 応 じ て,図3・3の
よ う に変 化 す る。 この 図 に お い て,接 合 部
付 近 の フ ェ ル ミ準 位 を示 す 曲 線(…
…)は,注
(a)順
(b)逆
入 され た キ ャ リア に対 す る見 掛
方向バ イア ス
方 向バ イ ア ス
図3・3 印 加電 圧 に対 す るpn接
合 の エ ネル ギ ー帯構 造
け の フ ェ ル ミ 準 位 で,こ
れ を擬 フ ェ ル ミ準 位(quasi-Fermi
以 後 の バ ン ド図 で は,複
雑 に な る の で,こ
外 部 電 圧(絶
対 値V)が,接
う に 印 加 さ れ る 場 合,障
合 のp領
level)と
の 部 分 の 図 示 は省 略 す る。 域 を 正 電 位,n領
壁 電 位 差 は,V0-Vに
域 を負 電 位 にす る よ
低 下 し,多 数 キ ャ リ ア の 移 動 が
可 能 に な り,電 流 が 流 れ る 。 こ の よ う な 状 態 に あ る と き,pn接 ア ス(forward
bias)に
こ れ と は 逆 に,外
呼 ぶ が,
合 は順 方 向 バ イ
な っ て い る と い う。
部 電 圧(絶 対 値V)の
極 性 が,p領
域 を 負,n領
位 に す る よ う に 与 え ら れ て い る と き は,障 壁 電 位 差 はV0+Vに ャ リ ア の 移 動 は 不 可 能 に な り,そ
域 を正 の電
増 加 し,多 数 キ
れ に代 わ って 少 数 キ ャ リア の 移 動 に よ る極 め
て わ ず か な 電 流 の み が 流 れ る 。 こ の と き,接 合 は 逆 方 向 バ イ ア ス(reverse
bias)
に な っ て い る とい う。 上 述 の よ う に,あ
る 素 子(devise)に
お い て,そ
れ に印 加 され る電 圧 の 極 性 に
よ り,電 流 の 流 れ や す さ が 変 わ る よ う な 性 質 を 整 流 特 性 と い う 。 そ し て,pn接 合 の も つ 整 流 特 性 を 巧 み に 利 用 し た デ バ イ ス がpnダ 次 に,pn接
合 に バ イ ア ス 電 圧V(順
と す る)を 印 加 し た と き の,p領 の 場 合,p領
バ イ ア ス の と き 正,逆
域 お よ びn領
域 中 で 電 位 障 壁V0-Vを
イ オ ー ドで あ る 。 バ イ ア ス の と き負
域 の キ ャ リア密 度 を求 め よ う。 こ
越 え 得 る正 孔 の 密 度pp'は, (3・13a)
同 様 に,n領
域 中 で電 位 障 壁 を 越 え得 る電 子 の密 度nn'は, (3・13b)
で あ る 。 す な わ ち,接
合 に 順 バ イ ア ス を 加 え る と,p,n両
は 電 位 障 壁 を 越 え て,そ
れ ぞ れ 相 対 す る 領 域 へ,そ
領 域 の 多 数 キ ャ リア
の 領 域 の 少 数 キ ャ リ ア とな
っ て 拡 散 す る 。 こ の よ う な 現 象 を キ ャ リ ア の 注 入(injection)と
い う 。 こ の と き,
注 入 す る キ ャ リア の 密 度 は,相 手 側 の 少 数 キ ャ リ ア 密 度 のexp{qV/(kT)}倍 な っ て い る こ と が,式(3・13)か 以 上 の こ と か ら,pn接
らわ か る。
合 の 電 流-電 圧 特 性 を 求 め よ う 。 そ の た め に,ま
p領 域 か ら 空 乏 層 を 通 り,n領
に
ず,
域 に注 入 され る正 孔 の拡 散 現 象 を解 析 す る 。
空 乏 層 を通 過 した 正 孔 は,そ の 密 度 勾 配 に よ り,n領
域 中 を拡 散 して ゆ くが,
この と き,こ の領 域 の 多数 キ ャ リア で あ る電 子 と再 結 合 を し つ つ,次 第 に消 滅 して ゆ く。 正 孔 と共 に再 結 合 に よ っ て 消 滅 した 電 子 の後 に は,新
しい 電 子 が 送 り込 まれ
る。 す な わ ち,正 孔 電 流 は電 子 電 流 に肩 代 わ り して,電 流 の 連 続 性 が 維 持 さ れ る。 こ こで,正 孔 が 空 乏 層 を抜 け 出 た 直 後 の 位 置 をx=0と お け る正 孔 の 密 度 をpと
で あ る 。 こ こ に,Lpはn領 p =pp'=pnexp(qV/kT),お
し,そ こか ら距 離xに
す れ ば,拡 散 方 程 式 は,式(2・114)で
述 べ た よ う に,
域 中 の 正 孔 拡 散 距 離 で あ る 。 こ の 式 を, x=0で, よ びx→
∞ で ,p=pnの
境 界 条 件 で 解 け ば, (3・14)
と な る 。従 っ て,x=0に
お け る 正 孔 電 流 密 度 の 大 き さJp=-qDp(dp/dx)x=0は, (3・15)
とな る。 全 く同様 に,p領
域 へ 注 入 され る電 子 に対 し て,x=0に
お け る電 子 電 流 密 度
Jnは, (3・16)
で あ る。 こ こ に,Lnはp領
域 に お け る電 子 の拡 散距 離 で あ る。
それ ゆ え,全 電 流 密 度Jは,次
式 で与 え られ る。
こ こ に,
も し,バ
イ ア ス 電 圧Vの
(3・17)
値 が,正
で 大 き け れ ば,上 式 は,次
式 で近 似 で きる。
(3・18)
さ て,こ
こ で,再
度,式(3・13)に
も ど り,式
中 のVに,負
の 大 き な値 を代 入
し て み よ う。 こ の こ と は,逆
バ イ ア ス 電 圧 を 印 加 す る こ と に 対 応 す る が,こ
の 場 合 は,
(3・19)
とな り,障 壁 を越 え る多 数 キ ャ リア は ほ とん ど存 在 せ ず,逆 ャ リア で あ る電 子,お
にp領 域 の 少 数 キ
よ びn領 域 の少 数 キ ャ リア で あ る正 孔 が,そ
れぞれ相 手
の領 域 に 拡 散 す る こ とに な る 。 しか し,少 数 キ ャ リア 密 度 は 多 数 キ ャ リア密 度 に比 し,極 め て 小 さ い の で,そ の 量 は非 常 に小 さい 。な お,こ の場 合 の電 流 は, 式(3・17)に お い て,Vを
負 で,絶 対 値 の大 きな値 にす れ ば 求 め る こ とが で き, (3・20)
こ れ は,一 定 値 に な る 。そ れ 故,こ のJsを current
density)と
な お,実
saturation
い う。
際 の ダ イ オ ー ド を 逆 バ イ ア ス す る と き,流
で 示 さ れ る もの の ほ か に,pn接 る の で,逆
逆 飽 和 電 流 密 度(reverse
れ る 電 流 に は,式(3・20)
合 の不 完 全 さ の た め に 流 れ る漏 れ 電 流 が 加 わ
電 圧 の 増 加 に 伴 っ て,電
流 は 飽 和 せ ず 漸 増 す る こ とが 多 い 。
図3・4 pn接 I- V特
合 の 性
図3・4に,pn接
〔4〕
合 ダ イ オ ー ドの 図 記 号 と典 型 的 な電 流-電 圧 特 性 を示 す 。
トン ネ ル効 果
p形 半 導 体 やn形 半 導体 に含 ま れ る不 純 物 の 濃 度 が 極 度 に大 き くな る と,不 純 物 準 位 が 広 が り,価 電 子 帯 や 伝 導 帯 と重 な り,キ ャ リア は縮 退 状 態 に な る。 す な わ ち,フ ェル ミ準 位 は,p形
半 導 体 で は価 電 子 帯 中 に,n形
半導体 では伝導
帯 中 に位 置 す る よ うに な る。 この よ う な半 導 体 を,そ れ ぞ れp+お れ た接 合 をp+n+接
よ びn+半
合 とい い,図3・5(a)に,そ
導体 と記 し,こ れ らで 形 成 さ
れ の熱 平衡 状 態 に お け る帯 構 造
を示 す 。 p+n+接 合 の空 乏 層 の 厚 さLは,か
な り小 さ くな る。 この こ とは,式(3・12)を
次 の よ うに 変 形 して み れ ば 明 白で あ ろ う。 (3.21) 空 乏 層 の 厚 さ が 小 さ く な る と,式(3・17)に
示 す 拡 散 電 流 が 未 だ 十 分 な大 き さ
で 流 れ ら れ な い よ う な,小
さ な 正 の バ イ ア ス 電 圧 で もn+領
は,ト
effect)に
ン ネ ル 効 果(tunnel
よ りp+領
域 の 価 電 子 帯 に 入 り込 み,そ
に よ る 電 流 を 流 す こ とが で き る 。 こ れ を 図(b)に し か し,さ 導 帯 とp+領
域 の 伝 導帯 の 電 子 れ
示す。
ら に 正 バ イ ア ス 電 圧 が 増 す と,図(c)に
示 す よ う に,n+領
域 の伝
域 の 価 電 子 帯 と の エ ネ ル ギ ー 差 が 大 き くな り,従 っ て,電 子 は こ の
間 の 遷 移 を 起 こ し 難 く,電
流 は 減 少 す る 。 こ の と き は,電
流 の 減 少 が 起 こ る の で,負
性 抵 抗(negative
圧 の増 加 に対 して 電
resistance)特
性 を示 す こ とに な
る。 さ ら に,正
バ イ ア ス が 増 加 す れ ば,図(d)の
よ う に,通
常の拡散 電流が流 れ
る。 ま た,こ
の 接 合 に 負 の バ イ ア ス 電 圧 を 印 加 す れ ば,図(e)の
中 の 価 電 子 帯 に い る 電 子 は 逆 方 向 の ト ン ネ ル 効 果 に よ りn+領 流 を流 す 。
よ う に,p+領
域
域 に 移 り,逆
電
(a)熱
平衡 状態 に おけ る 帯構 造
(b)ト
ン ネ ル 効 果(増)
(c)ト
ン ネ ル 効 果(減)
(d)順 方 向拡 散電 流
(e)逆
図3・5 p+n+接
方 向 トン ネ ル 効 果
合 の エ ネル ギ ー帯 構 造
この よ う な特 性 を もつ ダ イ オ ー ドを トンネ ル ダ イ オ ー ド,ま た は この 特 性 の 発 見 者 の名 前 を と って エ サ キ ダ イ オ ー ドと呼 ん で い る。 図3・6は,ト
ン ネ ル ダ イ オ ー ドの電 流-電 圧 特 性 を,図3・5の
それ ぞ れ の場 合
に対 応 させ て示 して あ る。
図3・6
トン ネ ル ダ イ オ ー ドの I-V特 性
〔5〕 接 合 部 に現 れ る等 価 静 電 容 量 pn接
合 の 空 乏 層 に は イ オ ン化 した ア ク セ プ タ,お
よ び ドナ ー 原 子 が 空 間 電
荷 と して 電 気 二 重 層 を形 成 して い る。 そ して,熱 平 衡 状 態 に お い て-xp<x <0の 範 囲 に あ る電 荷 の 総 量Qpは,
で あ り,0<x<xnの
範 囲 に あ る電 荷 の 総 量Qnは,
で あ る 。 こ こ で,式(3・11)のxpお
よ びxnを,上
の2式
に 代 入 す れ ば, (3・22)
で あ る。
こ こ で,pn接
合 に バ イ ア ス 電 圧Vを
で き る 空 間 電 荷 の 量Q,お V0をV0-Vに
印 加 し た と す れ ば,そ
れ ぞれの領域 に
よ び 空 乏 層 の 厚 さLは,式(3・22),お
よ び(3・12)の
置 き か え て,
(3・23)
(3・24)
と な る 。 こ れ ら の 式 を 見 れ ば,Qお バ イ ア ス の と き は 小 さ く,負
よ びLの
の とき
,す
値 は,Vが
正 の と き,す
な わ ち順
な わ ち逆 バ イ ア スの と き は大 き くな る
こ とが わ か る。
絶 対 値 がVの
逆 バ イ ア ス電 圧 が 印 加 され,V≫V0の
と き,上 の2式
はそれ ぞ
れ,
(3・25)
(3・26)
で 近 似 で きる。 さ て,逆
バ イ ア ス さ れ たpn接
合 は,ほ
と ん ど電 流 は 流 れ ず,し
か も,空 間 電
荷 を そ の 空 乏 層 に 蓄 え て い る の で,静 電 容 量 と類 似 の 機 能 を も つ と 考 え ら れ る 。 そ こ で,こ (depletion
の 静 電 容 量 を 障 壁 容 量(barrier layer capacitance)と
capacitance),ま
呼 ぶ 。 そ し て,そ
たは空乏層容量
の 値C'は,式(3・25)か
ら,
単 位 面 積 当 た り,
(3・27)
で あ る 。 こ れ に 式(3・26)を
代 入 す れ ば,次
式 が 得 られ る 。
(3・28)
また,単 位 面 積 当 た りの 微 小 信 号 電 圧 に対 す る静電 容 量Cは,式(3・25)か
ら,
(3・29)
以 上 の こ と か ら,C'お
よ びCの
値 は,い ず れ も逆 バ イ ア ス 電 圧 の1/2乗
に反
比 例 し て変 化 す る こ とが わ か る。 な お,式(3・29)に,式(3・26)を
代 入 す れ ば, (3・30)
とな り,こ の値 は,ち ょ う ど誘 電 率 が εで,電 極 板 間 隔 がLの
平 行 板 コ ンデ ン
サ の 静 電 容 量 に等 しい こ とが わ か る。 そ して,こ
の 静 電 容 量 は 印 加 さ れ る バ イ ア ス 電 圧 に よ って 制 御 で きる 可 変 容
量 で あ る。
〔6〕 階 段 形 接 合 と線 形 接 合 い ま まで 述 べ て きたpn接
合 は,そ の 不 純 物 濃 度NAお
よ びNDの
分布 が図
3・5(a)に 示 す よ う に,そ の 接 合 面 で 急 激 に変 化 す る階 段 形 接 合(step junction) の もの で あ っ た 。 しか し,も し,ア ク セ プ タお よ び ドナ ー の 濃 度 分 布 が 接 合 面 付 近 で,図3・7の
図3・7 線形 接 合 の不 純 物 分布
よ う に 直線 的 に変 化 す る よ うな場 合 に は,こ の接 合 を線 形接 合(graded
junction)
とい う。
〔 例 題 〕3・1単
位 面 積 の線 形 接 合 ダ イ オ ー ドに,大 きな値 の 逆 バ イ ア ス電 圧
を 印 加 し た と き,こ
の ダ イ オ ー ドの 微 小 信 号 電 圧 に 対 す る 等 価 静 電 容 量 を 求 め
よ。 た だ し,不 〔 解答 〕
純 物 濃 度 は,NA(x)=a│x│,ND(x)=axで こ の 場 合,ポ
ア ッ ソ ン の 式 は,下
-xp ≦x≦0の
0≦x≦xnの
与 え ら れ る もの と す る 。 式 で与 え られ る。
範 囲 で,
範 囲 で,
電 界 の 式 は,x=-xpお
よ びx=xnでE=0の
-xp ≦x≦0の
0≦x≦xnの
境 界 条 件 で,上 式 を 積 分 し て,
範 囲 で,
範 囲 で,
で あ る 。 こ こ で,x=0で
上 の2式
は 等 し い 値 を 取 ら な け れ ば な ら な い か ら,
x p=xn
で あ る。 ま た,空 乏 層 内の 正,負
両 空 間 電 荷 の大 き さQは
等 し く, (3・31)
で あ る 。 こ こ に,Lは 次 に,電
空 乏 層 の 厚 さ でL=2xp=2xnで
位 の 式 は,x=0でV=0の -xp≦x≦0の
0≦x≦xnの
条 件 で,電
あ る。 界 の 式 を 積 分 し て,
範 囲 で,
範 囲 で,
また,空 乏 層 両 端 の電 位 差V0は,仮
定 か ら熱平 衡 時 の拡 散 電 位 差 が 無 視 で き
る の で, (3・32)
と な る 。 そ れ ゆ え,空
乏 層 の 厚 さLは,
(3・33)
と な り,こ 最 後 に,微
れ は,逆
バ イ ア ス 電 圧 の(1/3)乗
に正 比 例 して 変 化 す る。
小 信 号 電 圧 に 対 す る 等 価 静 電 容 量Cを,式(3・31)お
ら 求 め,式(3・33)を
代 入 す れ ば,次
よ び(3・32)か
式 を得 る 。 (3・34)
式(3・34)の 結 果 は,階 段 接 合 の と き と同様 に,誘 電 率 が ε,極 板 間 隔 がLの 平 行 板 コ ン デ ン サ の 静電 容 量 に 一 致 す る 。 しか し,静 電 容 量 の 電 圧 依 存 性 は, 階 段 接 合 の 場 合 の(-1/2)乗 イ ア ス電 圧 の(1/3)乗 そ れ 故,pn接
に 対 し,線 形 接 合 の 場 合 は,空 乏 層 の 厚 さが 逆 バ
に比 例 す る た め,(-1/3)乗
に比 例 す る。
合 の 等 価 静 電 容 量 の 電 圧 依 存 性 を測 定 す る こ と に よ り,ア クセ
プ タ や ドナ ー の 濃 度 分 布 が どの よ う に な って い る か を推 定 す る こ とが 可 能 に な る。 な お,実 際 の ダ イ オ ー ドの 等 価 回路 と して は,上 述 の 等 価 静電 容 量Cの に,図3・8の
ほか
よ う に,接 合 の順 方 向 バ イ ア ス時 に お け る抵 抗 を表 す 直 列 抵 抗r,
図3・8 実 際 の ダ イ オ ー ドの 等価 回 路
お よ び接 合 の 不 完 全性 に起 因 す る漏 洩 抵 抗Rを
も含 め て 示 され る こ とが 多 い。
〔7〕 降 伏 電 圧 逆 バ イ ア ス され たpn接
合 に は,少 数 キ ャ リアの 移 動 に よ る逆 飽 和 電 流 や,接
合 の 不 完 全 性 に よ る漏 れ 電 流 が 流 れ る こ と は既 に述 べ た。 この 逆 バ イ ア ス の 電 圧 を増 大 させ て い く と,空 乏層 内 の 電 界 の 強 さ も増 加 す る。 従 っ て,こ の 領 域 を通 過 す る キ ャ リア は,こ の強 い電 界 に よ り加 速 され,
そ の 運 動 エ ネ ル ギ ー が 大 き くな り,つ い に 価 電 子 帯 の 電 子 を 励 起 し 新 た な 電 子 ・ 正 孔 の 対 を 作 る 。 こ れ ら は ま た,強
い電 界 で 加 速 され 新 し い キ ャ リ ア を生 み 出
す 。 こ の よ う な こ と を繰 り返 し な が ら キ ャ リ ア は,"な
だ れ"の
よ う に 増 大 し,
大 きな 電 流 が 流 れ る よ う に な る。 こ の よ う な 現 象 をpn接
合 の な だ れ 降 伏(avalanche
breakdown)と
い い,
この 現 象 を生 じさせ る電 圧 を ア バ ラ ン シ ェ電 圧 とい う。 pn接
合 の 降 伏 現 象 に は,こ
の ほ か に ツ ェ ナ ー 降 伏(Zener
breakdown)が
あ
る。 こ れ は,p+n+の
階 段 接 合 の よ う な 空 乏 層 の 薄 い ダ イ オ ー ド に,逆 バ イ ア ス を
し た と き に 起 こ る 降 伏 現 象 で,p領 よ り,n領
域 の 価 電 子 帯 に あ る 電 子 が,ト
ンネ ル 効 果 に
域 の 伝 導 帯 を 通 り抜 け る こ と に よ り電 流 を 流 す も の で あ る 。 そ し て,
こ の 現 象 を起 こ す 電 圧 を ツ ェ ナ ー 電 圧 と い う 。 図3・9(a)は,こ
れ ら の 降 伏 現 象 の 発 生 機 構 を 示 し,図(b)は,そ
の ときの電
流-電 圧 特 性 を 示 す 。
図3・9 な だれ 降伏 現 象 と ツ ェナ ー降 伏現 象お よびI-V特
な お,ア バ ラ ン シ ェ降 伏 で も,ツ
性
ェナ ー 降 伏 で も,そ の 降 伏 時 に 流 れ る電 流
が極 度 に大 き くな る と,接 合 部 の 温 度 が上 昇 し,熱 励 起 に よ る キ ャ リア の発 生
が 増 大 し,つ い に,熱 的 な 降 伏 現 象 が 起 こ る。 これ を,熱 降 伏(thermal
breakdown)
とい い,こ れ が 激 しい とき に は,ダ イ オ ー ドは 熱 的 に破 壊 され て し ま う。
〔8〕 光 電 現 象 pn接
合 の 光 電 現 象 に つ い て は,第6章
3・2 金 属-半 導 体(MS)接
で 説 明 す る の で,こ
こで は 省 略 す る。
合
金 属 と半 導 体 を接 触 さ せ る と,pn接
合 と同様 な 整 流 特 性 が 認 め られ るが,実
は,こ の 現 象 の ほ うが 先 に発 見 され て い る の で あ る。 この場 合 の 接 触 面 にお け る物 理 現 象 に つ い て 説 明 し よ う。
〔1〕 エ ネ ル ギ ー 帯 の 構 造 金 属 や,半
導体 の フ ェ ル ミ準位 に あ る電 子 を真 空 中 に 取 り出 す た め に必 要 な
エ ネ ル ギ ー を,そ れ らの 仕 事 関数 とい う。 以 後,金 それ ぞ れφm,φsで
属 と半 導 体 の仕 事 関 数 を,
表 す こ と にす る。
また,半 導 体 の伝 導 帯 の 底 に あ る電 子 を真 空 中 に 取 り出 す た め に 必 要 なエ ネ ル ギ ー を電 子 親 和 力 とい い,こ れ をχ で 表 す こ と にす る。 これ ら,仕 事 関 数 や 電 子 親 和 力 の値 は物 質 の 種 類 に よ り異 な っ て い る。 さ て,金 属 と半 導体 を熱 平 衡 状 態 で 接 触 させ る と,そ の帯 構 造 は,pn接 とき と同様 に,そ
合の
れ ぞ れ の フ ェル ミ準 位 が 一 致 す る よ う に な っ て平 衡 す るが,
この 場 合,仕 事 関 数 φmと φsの大 小 関 係 に よ っ て,そ の 平 衡 状 態 に お け る帯 構 造 は 異 な っ て くる。 (1) 金 属 とn形 半 導 体 の 接 合 帯 構 造 が,図3・10に 図(b)は
い ま,金 属 お よ びn形
半 導 体 それ ぞ れ の
示 す よ う な もの で あ る と す る。図(a)はφm>
φm< φsの場 合 を示 す。図 中Efmよ
びEfsは,金
φsの場 合,
属 お よび 半 導 体 の フ
ェル ミ準 位 を表 す 。 (a) φm> φsの場 合 この とき は,n形 半 導体 の フ ェル ミ準 位 が 金 属 の そ れ
(a)
図3・10 接 触 前 の 金属 と n形 半 導 体 の エ ネ
(b)
ル ギ ー帯
よ り も上 に あ る の で,半 導 体 中 の 電 子 は接 触 面 を通 過 し,金 属 表 面 に移 動 す る。 そ して,同 時 に,接 合 面 近 傍 の 半 導 体 中 に は,正 の ドナ ー イ オ ン を残 す 。 この有 様 を,図3・11(a)に 図(b)の
示 す 。 この と き,接 合 近 傍 に 現 れ る空 間 電 荷 は,
よ う な拡 散 電 位 差V0,お
よび 障 壁 の 高 さ φm-xを
形 成 し,こ れ に よ り
新 しい平 衡 状 態 に落 ち 着 く。 この と きの 拡 散 電 位 差V0に
対 応 す るエ ネ ル ギ ー の 値 は, (3・35)
で あ り,qV0の
値 は,障 壁 の 高 さφm-xの
値 とは,異 な る こ とに 注 意 しな けれ
ば な ら な い。 次 に,n形
半 導 体 中 の 空 間 電荷 領 域 の幅xnの
値 を求 め よ う。
n形 半 導体 の 空 間 電 荷 領 域 内 に お い て,ポ ア ッソ ン の式 は,
(a)接 合 面 近 くの空 間電荷 分 布
図3・11 φm>φsの場 合 の 金 属 ・n形 半 導体 接 合
(b)熱 平衡状態 のエ ネル ギー 帯構 造
(3・36)
で あ る 。 こ の 式 を, x=0でV=0,ま
た,x=xnでE=-dV/dx=0の
境 界 条 件 で 解 け ば, (3・37)
と な る 。 こ こ で,x=xnに
お い て,V=V0の
条 件 を 代 入 す れ ば, (3・38)
とな り,空 間 電 荷 領 域 の 幅 は,ド ナ ー 濃 度 の 大 き い ほ ど薄 くな る。 (b)φm<
φsの場 合 この 場 合 は,金
り も上 に あ る ので,接
属 の フ ェル ミ準 位 が 半 導 体 の そ れ よ
合 面 を通 して 金 属 側 か ら半 導 体 側 に電 子 が 移 動 す る。 そ
の た め,金 属 表 面 に は正 の 表 面 電 荷 が 残 り,半 導 体 表 面 に は 負 の 表 面 電 荷 が 形
成 さ れ,こ
れ に よ る拡 散 電 位 差 が 平 衡 状 態 を作 る。
この 際,n形 半 導体 に移 動 して きた 電 子 は,こ の領 域 中 で は 多 数 キ ャ リア で あ る た め ドナ ー をイ オ ン化 して,そ れ に よ る空 間 電 荷 を形 成 させ る よ う な こ と を しな い 。 この 有 様 を,図3・12(a)に
示 し,図(b)に,そ
の と きの帯 構 造 を示 す 。
(a)接 合面 の表 面電荷
(b)熱
(2)金
平 衡 状 態 の エ ネ ル ギー 帯 構 造
属 とp形 半 導 体 の 接 合
図3・12 φm<φsの場 合 の金 属 ・n形 半 導 体接 合
金 属 とp形 半 導 体 の 接 合 に お い て も,そ
れ らの 仕 事 関 数 の大 小 に よ り,熱 平 衡 状 態 に お け る帯 構 造 は異 な った もの に な る。 (a)φm<
φsの場 合 この 場 合 は,金
属 の フ ェル ミ準 位 がp形
半導体 の そ
れ よ り も上 に あ る の で,接 合 が作 られ る と,p形 半 導 体 側 か ら金 属 側 に正 孔 が 移 動 し,金 属 表 面 に は正 の表 面 電 荷 が 形 成 され,半 導 体 中 に は負 の ア クセ プ タ ・イ オ ン に よ る空 間 電 荷 が残 る。 これ らの電 荷 は,拡 散 電位 差 を形 成 して 新 た な 正 孔 の拡 散 を阻 止 し,新 平 衡 状 態 を作 る。 この と きの 帯 構 造 を 図3・13(a)に (b)φm>
φsの場 合
この と きは,p形
しい
示 す。
半 導 体 側 か ら金 属 側 へ 電 子 が 移 動
(a)
図3・13 金 属 ・p形 半 導体 接 合 の 熱平 衡 状 態 に お け るエ ネ ル
(b)
ギー 帯 構造
し,そ れ ぞれ の境 界 面 に表 面 電 荷 を形 成 し,平 衡 状 態 に な る。 この とき の帯 構 造 を 同 図(b)に
示 す。
〔2〕 電 流-電 圧 特性 金 属 と半 導 体 の接 合 に外 部 電 圧 を印 加 した ときの 電 流-電 圧 特 性 を調 べ よ う。 この現 象 を説 明 す る理 論 と して は,こ れ を二 極 真 空 管 の 熱 電 子 放 射 と類 似 の 現 象 と考 えて 解 析 す る二 極 管 理 論 と,pn接
合 の 場 合 と同 じ よ う に,半 導 体 中 に
お け る キ ャ リア の拡 散 現 象 で 説 明 す る拡 散 理 論 とが あ る。 金 属 とn形 半 導 体 の 接 合 で,φm>
φsの場 合 を 考 えて み よ う。
熱 平 衡 状 態 にお い て は,図3・11に
示 した よ うに,接 合 部 に 拡 散 電 位 差 が形 成
され,そ
れ が 障 壁 とな っ て,電 子 の 移 動 は 阻 止 され て い る。 し か し,外 部 電 圧
が 印 加 さ れ れ ば,pn接
合 の と き と同様 に障 壁 の 高 さが 変 化 す る。
も し,金 属 側 が 正 に,n形
半 導 体 側 が 負 に な る よ うな 極 性 で,電 圧Vが
され れ ば,障 壁 電 位 差 はV0-Vに
低 下 す る。 この とき は,電 子 の 移 動 が 可 能 と
な り,電 流 が 流 れ る。 こ れ とは 逆 に,金 属 側 が 負 に,n形 うな 極 性 で電 圧Vが
半 導体 側 が 正 に な る よ
印 加 さ れ れ ば,障 壁 の高 さ はV0+Vに
動 す る こ とが で きず,電
印加
増 大 し,電 子 は 移
流 は流 れ な い 。 従 っ て,こ の よ う な場 合 の 接 触 の仕 方
は 整 流 性 が あ るの で,整 流 性 接 触(rectifiing
contact)と
い う。
この 整 流 特 性 は,金 属 に接 す る 半 導 体 の不 純 物 濃 度 に よ っ て 若 干 異 な っ た も の に な る の で,こ の こ と につ い て 次 に述 べ よ う。 (1)二
極管理 論
半 導 体 の不 純 物 濃 度 が 高 い と き に は,金 属 に 接 す る 半
導体 の 接 合 面 近 傍 にで き る空 乏 層 は 薄 くな り,電 子 の もつ 自 由 行 程 よ り小 さ く な る。 こ の と きの 電 流-電 圧 特 性 は二 極 管 理 論 に よ り説 明 され る。 図3・11で 示 した よ う な,金 属-n形 半 導体 の 接 合 に順 方 向 バ イ ア ス電 圧Vが 印加 され る と,伝 導 帯 の電 子 に対 す る電 位 障 壁 は低 くな り,こ れ を越 え得 る電 子 の もつ べ き最 低 の エ ネ ル ギ ー 値E'は,バ 差 をV0と
イ ア ス電 圧 が0の
ときの拡散 電位
し, (3・39)
で あ る。 もち ろん,こ のE'は
伝 導 帯 の底 を 基 準(す な わ ち0)と
さ て,伝 導 帯 内 の電 子 は,そ の有 効 質 量msを
した 値 で あ る。
もち,エ ネ ル ギ ーE(伝
導帯 の
底 を 基 準 とし た)に 対 応 す る速 度υ を も っ て運 動 して い る と考 え られ る が,こ れ らの電 子 に対 して は,近
似 的 に マ ッ ク ス ウ エ ルーボル ツ マ ン統 計 が で き る。
す な わ ち,こ れ ら の電 子 の うち,接 合 面 に垂 直 方 向 の 速 度 がυ とυ+dυ の 間 に あ る確 率Fは,マ
ッ ク ス ウエ ル-ボ ル ツ マ ンの 速 度 分 布 則 に よれ ば, (3・40)
で あ る。従 って,υ ∼υ+dυ の 速 度 を もつ 電 子 数 は,伝 導帯 に あ る 電 子 の 総 数 を nsと す れ ば,nsFで
あ る。
そ れ故 ,単 位 時 間 に 接 合 面 の 単 位 面 積 を半 導 体 側 か ら金属 側 へ 移 動 す る電 子 数dnは,
(3・41)
で あ る。 も ち ろ ん,こ
の と き の 電 子 は,障
壁q(V0-V)=E'を
も っ て い な け れ ば な ら な い 。 す な わ ち,電
越 え得 る エ ネ ル ギ ー を
子 の 運 動 エ ネ ル ギ ーEは, (3・42)
で あ る。 以 上 の こ とか ら,障 壁 を越 え て 単 位 時 間 に,単 位 接 合 面 を通 過 す る電 子 の 総 数n1は,近
似 的(伝 導 帯 の電 子 の 取 り得 る エ ネ ル ギー に は 限 界 が あ る か ら,当
然 そ の速 度 に も上 限 が あ る が,こ の 限 界 を無 視 し て も大 きい 誤 差 に な らな い) に, (3・43)
で あ る。 こ こ で,変
数 を 速 度υ か ら,エ
ネ ル ギ ーEに
変 え れ ば,上
お よび の 関 係 を 代 入 し,V0に
対 応 す るE'を
式 は, (3・44)
用 い,
(3・45)
とな る。 そ れ ゆ え,こ の電 子 の 移 動 に よ る電 流 密 度J1は, (3・46)
とな る。 こ の 式 か ら,バ
イ ア ス 電 圧Vが0の
と き,す
な わ ち,こ
の 接 合 に 全 く外 部 電
圧 が 印 加 さ れ て い な い と き で も, (3・47)
が流 れ る こ とに な る。
この 結 果 は 一 見 奇 妙 に 思 え る。 しか し,こ れ は,金 属 側 か ら半 導 体 へ 移 動 す る電 子 の 存 在 を考 慮 して い な い か らで あ る。 次 に,こ の こ と を調 べ よ う。 さ て,金 属 側 か ら見 た 障 壁 の 高 さ は,図3・11に
示 した よ う に,バ イ ア ス 電 圧
に は無 関 係 で,常 に一 定 値 φm-χ で あ る。従 っ て,こ の 障 壁 を越 え得 る金 属 中 の 電 子 の 移 動 に起 因 す る電 流 密 度J2は,J1と
同 様 の 計 算 に よ り,一 定 値 (3・48)
と な る 。 こ こ に,nMお そ し て,こ
よ びmMは
のJ2がJ10と
金 属 中 の 自 由 電 子 の 数 と有 効 質 量 で あ る 。
つ り合 っ て い る の で,バ
に は 電 流 が 流 れ な い と 考 え れ ば よ い 。 す な わ ち,0バ
イ ア ス 電 圧 が0の
移 動 が 互 い に 打 ち 消 し 合 っ て0に
と き,素 子
イ ア ス時 に は 正 味 の 電 子
な って い る。
以 上 の こ とか ら,バ イ ア ス 電 圧Vが
印 加 さ れ て い る と きの 正 味 の 電 流 密 度J
は,
(3・49)
とな り,pn接
合 と同 様 な整 流 特 性 を示 す式 が 得 ら れ る 。
こ こ に,Jsは
接 合 に十 分 に 大 き な逆 バ イ ア ス電 圧 を 印 加 した と き,流 れ る逆
飽 和 電 流 で,そ
の 値 は,
(3・50)
で あ る。 (2) 拡 散 理 論
次 に,金 属 に接 す る 半 導 体 中 の不 純 物 濃 度 が 上 述 の場 合
よ り も小 さい と き を考 え る。 この 場 合 に は,空 乏 層 が 厚 くな り,二 極 管 理 論 が 適 用 で きず,以 下 に 述 べ る拡 散 理 論 を用 い る。 図3・14は,こ
の と きの,接 合 部 に お け るエ ネ ル ギ ー 帯 構 造 を示 す。
拡 散 理 論 に よ る電 流-電 圧 特 性 を求 め るた め,接 合 に順 方 向 バ イ ア スVを
印
加 した と き,n形 半 導 体 の 空 間 電 荷 領 域 内 にお け る電 子 の 挙 動 を考 察 しよ う。い
(a)順 方 向バ イア ス半 導体 側 負電 圧(V>0)
図3・14 バ イ アス 時 に お け る 金 属 ・n形 (b)逆方向 バ イ ア ス半 導体 側正 電 圧(V<0)
ま,接 合 面 か ら距 離xに
お け る 電 子 電 流 密 度Jnは,そ
半 導 体
(φm>φs)接 合 の エ ネ ルギ ー帯 構 造
この 電 子 密 度 をn,電
位
をυ とす れ ば, (3・51)
で表 され る。 こ こに,μnとDnは,そ
れ ぞ れ電 子 の 移 動 度 と拡 散 係 数 で あ る。
ア イ ン シ ュ タ イ ン の 関 係 を代 入 す れ ば,上 式 は, (3・52)
と な る。 こ の 式 の 両 辺 にexp〓
を 掛ければ ,
と な る 。 こ の 式 の 右 辺 の{}内
は,ち
ょ う ど,nexp(-qυ/kT)のxに
関 す る微
係 数 に相 当 す る。 そ れ ゆ え,上
式 は
(3・53)
と 書 け る 。 こ こ で,境
界 条 件 と し て,
を 考 慮 し て,式(3・53)を
全 空 間 電 荷 領 域0≦x≦xnに
わ た っ て 積 分 す れ ば,
(3・54)
と な る 。他 方,左
辺 に お い て,電
流 の 連 続 性 を 考 慮 す れ ば,Jn=数
た,空 間 電 荷 領 域 の 電 位 や,そ の 幅 は,式(3・37)お
で あ り,ま
よ び(3・38)のV0をV0-Vに
変 え て,
(3・55)
で あ るか ら,こ れ ら を代 入 し積 分 す れ ば 良 いわ け で あ るが,こ
の積 分 は簡 単 に
は行 う こ とが で きな い 。 す な わ ち,電 位υ の 微 係 数 か ら得 られ る
の代 わ りに,そ の 近 似 と して,x=0に
を用 い れ ば,式(3・54)の
左 辺 は,次
お け る電 位 勾 配 か ら得 られ る
の よ う に な る。
これ を(A)と
す る。 こ の 式 に お い て,υ=V0-Vを
値 は 小 さ い の で,こ
れ を 省 略 し,xnに
代 入 し た と き,expの
式(3・55)を 代 入 す れ ば,結
部分 の
局,
(3・56)
を得 る 。 従 っ て,式(3・54)か
ら,電
流‐電 圧 特 性 を 示 す 式 と し て,
(3・57)
が得 られ る。 こ の式 は,pn接
合 の 電 流-電 圧 特 性 を表 す 式 と同 じ形 で,整 流 特
性 を示 して い る。 こ こ に,Jsは
逆 バイ ア ス 時 の 飽 和 電 流 で,
(3・58)
で あ り,σsはn形
半 導 体 の 伝 導 率 で,σs=qNDμn=q2DnND/kTで
あ る。
な お,こ
の よ う な 整 流 性 を 示 す 金 属 と半 導 体 の 接 合 を シ ョ ッ トキ ー 接 合
(Schottky
junction)と
い い,金
属 とp形
半 導 体 の 接 合 で は,φm<
φsの場 合 が
シ ョ ッ トキ ー接 合 に な る 。 金 属 と 半 導 体 の 接 合 に は,上
述 の よ う な 整 流 性 を も た な い 場 合 も あ る が,こ
の こ と に 関 し て は 既 に 前 の 項 で 述 べ た よ う に,金 て は,φs> φmの と き で あ り,ま た 金 属 とp形 の と き非 整 流 性 接 触(オ 3・15は,整
属 とn形
半導体 の接合 におい
半 導 体 の 接 合 に お い て は,φs<φm
ー ミ ッ ク 接 触(ohmic
contact)と
も い う)に
な る。 図
流 性 接 触 お よ び 非 整 流 性 接 触 の 場 合 の 電 流-電 圧 特 性 を 示 す 。
図3・16(a)は,金
属 とn形
半 導 体 の 非 整 流 性 接 触 に お い て,金
圧 を 加 え た と き の エ ネ ル ギ ー 帯 構 造 を 示 し,同
図(b)は,こ
属 側 を正 に電
の接触 の金属側 を
図3・15 金属 ・n形 半 導体 接 合 の整 流 特 性(実 線),非 整 流 特 性(破 線)
(a)
図3・16
バ イ アス時 にお け る金
属 ・n形 半 導 体(φm<
(b)
φs)
接合 のエ ネル ギ ー帯 構 造
負 に電 圧 を 印加 し た場 合 の 帯 構 造 を示 す 。 以 上 の こ とか ら,半 導 体 デバ イ ス に非 整 流 性 接 触 で 金 属 電 極 を取 り付 け る に は,そ れ ぞ れ の 仕 事 関 数 の 値 に,適 当 な もの を選 択 し な け れ ば な らな い こ とが
わ か る。 な お,ド ナ ー や ア ク セ プ タ を多 量 に含 むn+やp+半 て も,非 整 流 性 接 触 が 得 られ るが,そ
の 理 由 は,た
導 体 と金 属 の 接触 に お い と え接 合 部 に 障 壁 が で き る
よ う な場 合 で も,不 純 物 濃 度 が 高 い と空 間 電 荷 領 域 が 狭 くな り(障 壁 の 幅 が 薄
図3・17 トンネ ル現 象 に よる 非整 流接 合
くな り),キ ャ リアが トンネ ル効 果 に よ って 自 由 に 通過 で き る よ う にな るか らで あ る(図3・17参
照)。
〔3〕 障 壁 容 量 シ ョ ッ トキー 接 合 に お い て も,pn接 合 と同様 に障 壁 容 量 が 現 れ る。す なわ ち, 式(3・55)で 示 され る空 乏 層 内 の 空 間 電 荷 の 総 量Qは,
で あ る か ら,微 少 信 号 電圧 に対 す る 等価 静 電 容 量Cは,次
式 で 与 え られ る。
(3・59)
3・3 異 種 の 半 導 体 に よ る 接 合 3・1節 で 述 べ た よ う な同 種 の 半 導 体 で 作 られ た接 合 を 同種 接 合 また は ホ モ 接 合(homo
junction)と
い う。 これ に 対 して,異 種 の 半 導 体 間 で 作 られ る接 合 を
異 種 接 合 また はへ テ ロ接 合(hetero
junction)と
呼 ぶ。
へ テ ロ 接 合 は,禁 制 帯 幅 の異 な る半 導 体 間 の 接 合 で あ るた め,当 然 そ の エ ネ ル ギ ー帯 構 造 は既 に述 べ た 同種 接 合 の そ れ とは 異 な っ た もの にな る。 従 っ て,そ
の電 気 的 性 質 や光 学 的 性 質 な ど も独 特 な もの を も ち,特 別 な 応 用
面 が 開 発 され て い るが,そ れ らに 関 して は,第8章
で 述 べ る。
〔1〕 エ ネ ル ギ ー帯 構 造 へ テ ロ接 合 は,ど の よ う な材 料 を 用 い て も作 れ る とは 限 らな い 。 組 み合 わ せ の 可 能 な 材 料 は,互 い に,そ の 結 晶構 造 や 格 子 定 数 が 似 た もの で な け れ ば な ら な い が,こ
の 他 に も熱膨 張 係 数 も同程 度 で あ る こ とが 必 要 で あ る。
表3・1に は,組 み 合 わ せ が 可 能 な一 例 と して,GaAsとGeの す。 表3・1
GaAs,Geの
物 理 定数
物 理定 数 を示
p形 のGaAsと,n形
のGeでpn接
合 を 形 成 させ た とす る(製 法 は第8章
参
照)。 図3・18(a)は,そ
れ ぞ れ が 接 合 を作 る以 前 の エ ネ ル ギ ー 帯 構 造 を示 す 。
これ ら を接 合 させ る と,Geの で,電 子 はGe側
フ ェル ミ準 位 がGaAsの
か ら,正 孔 はGaAs側
そ れ よ り上 に あ る の
か ら,そ れ ぞ れ 相 手 側 の領 域 へ移 動 す る。
そ の た め,接 合 面 近 傍 の そ れ ぞ れ の 領 域 内 に は イ オ ン化 した ドナ ー や ア クセ プ タ に よ る空 間電 荷 が 形 成 さ れ,両 者 の フ ェル ミ準 位 が 一 致 し て平 衡 す る。
(a)接
合前
図3・18 熱 平 衡状 態 に お け る ヘ テ ロ接 合 の エ ネル ギ ー (b)接
合後
この と きの 熱 平 衡 状 態 に お け る,エ ネ ル ギ ー 帯 構 造 を 同 図(b)に
帯構 造
示 す。
接 合 に伴 う空 間 電 荷 に よ る真 空 準 位 の変 位 は,両 半 導 体 の 仕 事 関 数 の 差 (3・60)
で 与 え られ る。 さ ら に,こ の 接 合 に お い て は,図 で 見 られ る よ う に,伝 導帯 に は両 者 の 電 子 親 和 力 の 差 に相 当 す る,大
き さが (3・61)
の エ ネ ル ギ ー の不 連 続 的 な変 化 が 現 れ る。 価 電 子 帯 に は,エ ネ ル ギ ー ス パ イ ク と呼 ばれ る大 き さが, (3・62)
の 突 起 が で き る。 そ し て,こ
と な り,ち
のΔECとΔEVの
ょ う ど,両
半 導体 の 禁 制 帯 幅 の 差 に等 しい 。
な お,上 例 の よ う な,p形 接 合,お hetero
よ び 共 にp形 junction)と
和 は,
とn形
で あ る 異 種 接 合 は,ア
呼 ば れ,こ
(a)nnへ
の 異 種 接 合 と は 異 な り,共 にn形
で あ る異 種
イ ソ タ イ プ へ テ ロ接 合(iso
れ の 熱 平 衡 状 態 に お け る,エ
type
ネ ルギー帯構造 の
テ ロ接 合
図3・19 熱 平衡 状 態 に お け るア (b)ppへ
テ ロ接 合
イソ タイ プ へ テロ接 合 のエ ネ ル ギー 帯 構 造
一 例 を 図3・19に
示 す
。
〔2〕 電 流-電 圧 特 性 図3・18に,そ
の エ ネ ル ギー 帯 構 造 を示 し たpnへ
と正 孔 に対 して,そ
テ ロ接 合 に お い て は,電 子
れ ぞ れ の 接 合 面 に お け る障 壁 の 高 さが 異 な る。 この 図 か ら
もわ か る よ う に,正 孔 に対 す る障 壁 は,電 子 に対 す る障 壁 よ り も小 さ い の で, 正 孔 は 電 子 よ り も動 きや す い はず で あ る 。 す なわ ち,こ の 接 合 に,順 方 向 にバ イ ア ス 電 圧 を印 加 す るな ら ば,障 壁 が 低 くな るの で,も ち ろん,n形Ge(n-Ge と記 す)内 の 電 子 はp形GaAs(p-GaAsと が,そ れ よ り も む し ろ,p-GaAs内
記 す)領 域 に拡 散 し電 子 電 流 を流 す
の 正 孔 がn-Ge領
域 に 多量 に拡 散 し,大 きな
正 孔 電 流 を流 す はず で あ る。そ して,そ の 電 流 は 同種pn接 と同 じ よ う に,A,Bを
合 の 場 合 の式(3・18)
定 数 と して
の 形 に な る こ とが 予 想 さ れ る 。 しか し,実 際 の 接 合 に お い て は,図3・18(b)に
も示 さ れ て い る が,価 電 子 帯
に は スパ イ クが 存 在 し,こ れ が大 きい と,正 孔 の 流 れ が 阻 害 さ れ,上 述 の よ う な拡 散 正 孔 電 流 を流 す こ とが で きな くな る。 そ して,む よ う に,空 間 電 荷 領 域 内 で停 滞 して い る正 孔 は,そ
(a)再
し ろ図3・20(a)に
示す
こに 注 入 さ れ て きた 電 子 と
結 合,ト ン ネル 効 果 に よ る 電 流 順 方 向 バ イア ス (b)ト ン ネ ル 効 果 に よ る 電流 逆 方 向バ イア ス
図3・20
ヘ テ ロ接 合
にお け る電流
再 結 合 し,い
わ ゆ る再 結 合 電 流 と な る か,ま
ク を 通 過 す る ト ン ネ ル 電 流 と な り,従
た は トンネ ル 効 果 に よ っ て スパ イ
っ て,式(3・52)か
ら外 れ た 特 性 を示 す よ
うに な る。
また,逆 方 向 バ イ ア ス 時 に は,図3・20(b)に
示 す よ うに,p領
域 の価電子帯
に あ る電 子 が,ト ン ネ ル 効 果 に よ って,n領 域 の 伝 導 帯 に通 過 す る こ とに よ る ト ン ネ ル電 流 が 主 体 にな り,従 っ て,逆 飽 和 特 性 を見 る こ とは で き な い。 な お,ア イ ソ タ イ プ の へ テ ロ接 合 の場 合 は,次 ① nn接 合 の 場 合
図3・19(a)に
の ようになる。
示 す よ う に,正 孔 に 対 す る 価 電 子 帯 の 障
壁 が 大 きい の で,こ の 場 合 は主 と し て伝 導帯 の 電 子 電 流 を考 えれ ば よ い。 ② pp接 合 の 場 合 が大 き い の で,こ
図3・19(b)に
示 す よ うに,電
子 に対 す る伝 導 帯 の 障 壁
の場 合 は 主 と して 価 電 子 帯 の 正 孔 電 流 を考 え れ ば よ い。
しか し,こ れ らの 接 合 の電 流-電 圧特 性 は,い ず れ の 場 合 に して も,ホ モpn 接 合 の場 合 と は異 な り,多 数 キ ャ リア の移 動 が,そ
の 特 性 を支 配 して い る こ と
に注 目 す べ きで あ ろ う。
3・4 バ イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ
〔1〕pnpト
ラ ン ジ ス タ とnpnト
バ イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ は,2個
ランジス タ のpn接
合 が 相 互 に作 用 し合 う程 度 に近 接
して 配 置 さ れ た 構 造 を もつ デ バ イ ス で,現 在 使 用 され て い る半 導体 デバ イ ス の 中 で は,最
も重 要 な もの と い え る。
これ に は,図3・21(a),(b)に
示 す よ う に,pnp形
とnpn形
の2種 類 が あ
る。 接 合 ト ラ ン ジ ス タ を 動 作 さ せ る た め に は,一 ス し,他
方 のpn接
例 え ば,pnpト こ の と き,左
方 のpn接
合 は順 方 向 にバ イ ア
合 は 逆 バ イ ア スす る。 ラ ン ジ ス タ の 場 合 に は,同
側 のp領
域 は,中
図(a)の
よ うに バ イ ア ス す る。
間 のn領 域 へ 正 孔 を 注 入 す る 役 目 が あ る の で,
(a)pnpト
ラ ン ジ ス タ
(b)npnト
ラ ン ジ ス タ
図3・21
エ ミ ッ タ(emitter)と
い う 。 ま た,右
を 抽 出 す る 役 目 を 果 た す の で,コ 域 は べ ー ス(base)と npnト
トラ ン ジ ス タ の
構造
側 のp領
域 は,n領
レ ク タ(collector)と
域 に 注 入 され た正 孔
呼 ば れ,ま
た 中 央 のn領
呼 ばれ る。
ラ ン ジ ス タ の,エ
ミ ッ タ,べ
ー ス,コ
レ ク タ は,同
図(b)の
よ うにな
る。 エ ミ ッ タ,べ
ー ス,コ
が 取 り付 け ら れ,こ
レ ク タ の 各 領 域 に は,オ
れ ら が,ト
ー ム 性 の 接 触 に よ り金 属 電 極
ラ ン ジ ス タ の 端 子 とな っ て 外 部 回 路 に 接 続 さ れ
る。 図3・22は,pnpお
よ びnpnト
ラ ン ジス タの 電 気 回路 図 記 号 で あ る。
こ の 図 に お い て,エ
ミ ッ タ 部 に 付 い て い る 矢 印 は,エ
ミ ッタ か らべ ー スへ 注
入 さ れ る キ ャ リ ア に 起 因 す る 電 流 の 向 き を 表 し て い る 。 従 っ て,こ き を 見 る だ け で,そ
の トラ ン ジ ス タ が,pnp形
見 分 け る こ とが で き る 。
か ま た はnpn形
の矢 印 の 向 か, を 簡 単 に
図3・22 電 子 回 路 に使 われ る トラ ン ジス タ図 記号 な お,図3・23は,ト
ラ ン ジ ス タ を 用 い る と き の 基 本 的 回 路 を 示 し,図(a)は
べー ス 接 地 回 路,図(b)は
(a)べ
エ ミ ッ タ 接 地 回 路,図(c)は
ー ス接 地(b)エ
ミ ッ タ接 地(c)コ
図3・23 pnp形
ば れ る が,こ
〔2〕
コ レ クタ接 地 回 路 と呼
レ ク タ接 地
トラ ン ジス タの 接地 形 式
れ ら に関 して は後 述 す る。
エ ネル ギ ー 帯構 造
べ ー ス を 接 地 し たpnpお し な い と き,す
よ びnpnト
ラ ン ジ ス タ に,バ
イ ア ス電 圧 を印 加
な わ ち 熱 平 衡 状 態 に あ る と き の エ ネ ル ギ ー 帯 構 造 を,図3・24の
中 で 実 線 に よ っ て 示 す 。 こ の と き,す
べ て の 領 域 の フ ェ ル ミ準 位 は1点
鎖線 の
よ う に 一 致 す る。 エ ミ ッ タ お よ び コ レ ク タ に バ イ ア ス 電 圧 を 与 え る と,各 領 域 の フ ェ ル ミ準 位 は, 印 加 バ イ ア ス に 応 じ て 変 化 し,そ 線 の よ う に 変 わ る 。す な わ ち,順
れ に 対 応 し て,伝
導 帯 や 価 電 子 帯 の 準 位 も破
バ イ ア ス が 与 え られ て い る エ ミ ッ タ-べ ー ス 間
図3・24 トラ ンジ ス タのエ ネ ル ギー 帯構 造 (実線 は熱 平衡 状 態,破 線 はバ イ ア ス印 加状 態)
の 接 合(以 後,簡 単 に エ ミ ッ タ接 合 と呼 び,こ れ をJEBと 記 す)は 障 壁 が 低 くな り,逆 バ イ ア スが 与 え られ て い るべ ー ス-コ レ ク タ 間 の 接 合(簡 単 に コ レ ク タ接 合 と呼 び,JBCと
記 す)の 障 壁 は 高 くな る。
この よ うな エ ネ ル ギ ー 帯 構 造 の状 態 で,ト ラ ン ジ ス タ は そ の 機 能 を発 揮 す る。
〔3〕
トラ ン ジ ス タの 動 作 原 理
図3・24は,べ
ー ス 接 地 回路 で,べ ー ス に対 し,エ ミッ タ に は 正,コ
は負 の バ イ ア ス を与 え たpnp形 の と き,エ
レクタに
トラ ン ジ ス タ の エ ネ ル ギ ー 帯 構 造 を示 す 。 こ
ミ ッタ 接 合 は順 バ イ ア ス され て い るの で,エ
ミ ッタ領 域 か らべ ー ス
領 域 へ正 孔 が 注 入 され,ま たべ ー ス領 域 か ら エ ミ ッタ 領 域 へ は 電 子 が 注 入 さ れ, これ らが エ ミ ッタ端 子 を エ ミッ タ電 流 と して 流 れ る。 べ ー ス領 域 へ 注 入 され た正 孔 の 一 部 分 は,こ の 領 域 中 の 電 子 と再 結 合 して 消 滅 す るが,こ
の 再 結 合 を で き る限 り抑 え る よ うに す れ ば,正 孔 の大 部 分 を コ レ
ク タ接 合 に 到 達 させ る こ とが で き る。 コ レ ク タ接 合 部 に 到 達 した 正 孔 は,そ 電 界 に よ り コ レ ク タ領 域 に送 り込 まれ,コ
こに作 られ て い る空 間 電 荷 に よ る強 い レ ク タ電 流 とな る。 な お,厳 密 なこ
と を い う な ら ば,コ か に,そ
レ ク タ 端 子 を 流 れ る コ レ ク タ 電 流 は,上
の 値 は 非 常 に 小 さ い が,逆
述 の正 孔 電 流 の ほ
バ イアスされた コレクタ接合 の逆飽和電 流
も付 加 さ れ て い る 。 以 上 が,ト
ラ ン ジ ス タ の 基 本 的 な 動 作 で あ る が,こ
ン ジ ス タ の 機 能 を 果 す 主 役 は,エ
ミ ッ タ か らべ ー ス 領 域 へ 注 入 さ れ,さ
コ レ ク タ で 集 め ら れ た キ ャ リ ア で あ る"と そ れ ゆ え,ト
ラ ン ジ ス タ を 設 計 す る と き に は,次
十 分 大 き くす る 。 こ の こ と に よ っ て,べ に,無
ラ
ら に,
い う こ とで あ る。
① エ ミ ッ タ 領 域 の ア ク セ プ タ 濃 度 を,べ
を 高 め,逆
こ で 重 要 な こ と は,"ト
の 事 柄 に 注 意 さ れ る。
ー ス 領 域 の ドナ ー 濃 度 に 比 較 し, ー ス領 域 へ 注 入 され る正 孔 の濃 度
駄 な エ ミ ッ タ 領 域 へ の 電 子 の 注 入 を 減 ら す こ とが で き る 。
② べ ー ス 領 域 の 幅 は,こ
こ に注 入 され た正 孔 の 再 結 合 に よ る 消滅 を で き る
限 り防 ぐ た め,正 孔 の 拡 散 距 離Lp=(Dpτp)1/2よ
り も小 さ く し な け れ ば な ら
ない。 ③ し か し,べ
ー ス 幅 を 極 度 に 小 さ くす る こ と は で き な い 。 そ の 理 由 は,エ
ミ ッ タ 接 合 と コ レ ク タ 接 合 が べ ー ス領 域 中 に 作 る 空 間 電 荷 領 域 幅 の 和 (XEB+XBC)が,べー
ス 幅 よ り大 き い と,エ
3領 域 が 短 絡 さ れ た よ う な 状 態 と な り,ト こ の よ う な 現 象 を パ ン チ ス ル ー(punch 図3・25は,エ
ミ ッ タ,べ
レクタの
ラ ン ジ ス タ の機 能 が 失 わ れ る。 through)と
ミ ッ タ-べ ー ス 間 の 電 圧VEBを
い う。
パ ラ メ ー タ と し て,コ
流 と べ ー ス 幅 の 関 係 を 示 す 。 エ ミ ッ タ 電 流 をIE,コ こ れ ら の 差IBは,べ
ー ス,コ
レ ク タ 電 流 をIcと
レ ク タ電 す れ ば,
ー ス 端 子 を 流 れ る 電 流 に な る 。す な わ ち,べ ー ス 電 流IBは, (3・63)
で あ る 。 また,コ
レ ク タ 電 流 の エ ミ ッ タ 電 流 に 対 す る比 を α0と す れ ば,
(3・64)
で,実 際 の トラ ン ジ ス タ に お け る α0の 値 は,コ 電 圧VBCが,あ 図3・26は,エ
る 程 度 大 き け れ ば,0.95∼0.99で,ほ
レク タ接 合 に掛 か る逆 バ イ ア ス と ん ど1に
近 い 値 で あ る。
ミ ッ タ 接 地 に お け る べ ー ス 電 流 を パ ラ メ ー タ と し て の,pnpト
図3・25
VEBを パ ラ メ ー タ と し た べ ース 幅Wに
図3・26 pnpト
対 す るIc特
性
ラ ン ジス タの電 流
-電 圧 特 性
ラ ン ジ ス タの 電 流-電 圧 特 性 曲 線 の 一 例 を示 す 。 この 図 か ら,コ レ ク タ に印 加 さ れ る電 圧 が あ る程 度 以 上 の 値 な らば コ レ ク タ電 流 は ほ ぼ飽 和 す る。 この こ と は, トラ ン ジ ス タが 定 電 流形 の 電圧 増 幅 素 子 と して 動 作 し得 る こ と を意 味 す る 。 な お,式(3・64)の い る の で,べ
α0は,エ
ミ ッタ電 流 を 入 力,コ レ ク タ電 流 を 出力 と考 え て
ー ス接 地 の電 流 増 幅 率 と呼 ば れ,そ の 値 は,ほ
とん ど1で あ るか
ら,こ
の 場 合 に は,電
流 の 増 幅 作 用 は 全 く な い 。 これ に対 し,エ
お け る 電 流 増 幅 率 は,べ の 値 は 式(3・63)お
ー ス 電 流 を 入 力,コ
よ び 式(3・64)か
ミ ッ タ接 地 に
レ ク タ 電 流 を 出 力 と す る の で,そ
ら,
(3・65)
で あ る 。 こ こ で,α0を0.99と 99と
す れ ば,エ
な る 。 こ の こ と か ら,エ
ミ ッ タ 接 地 の 電 流 増 幅 率 は,上 式 か ら
ミ ッタ接 地 の場 合 に は大 き な電 流 増 幅 作 用 が 得 ら
れ る。 し か し,べ
ー ス 接 地 の 場 合 は,図3・27の
よ う に,エ
ミッ タ お よ び コ レ ク タ の
図3・27
べ ー ス接地 の 場
合 の 外 部 抵 抗 RE,RCの
外 部 回路 にREお
よ びRCの
抵 抗 を接 続 した と き,出 力 電 圧 の 入 力 電 圧 に対 す
る比 は コ レ ク タ電 流 が 飽 和 し て い る領 域 内 に あ る 限 り,RC中 無 関 係 に,ほ
の電圧 降下 に は
ぼ
電 圧増幅度 と な る 。 通 常,RC≫REに な お,こ
接続法
(3・66)
選 ば れ る の で,大
の と き の 電 力 増 幅 度 も,お
電 力増 幅度 で 与 え られ る。
き い電 圧 増 幅 度 が得 られ る。
よ そ,
(3・67)
〔4〕 直 流 特 性 上 述 した 電 流 増 幅 率 α0の も つ物 理 的 な 意 味 に つ い て,さ
ら に詳 細 に調 べ て
み よ う。 図3・28は,pnpト
ラ ン ジス タの 熱 平 衡 状 態 に お け る,各 領 域 内 の キ ャ リア 密
図3・28
pnpト
ラ ン ジ
ス タの 熱 平 衡状 態 に お け るキ ャ リア 密 度 分布
度 分 布 を示 す 。こ こで,n領
域 の 多 数 キ ャ リア で あ る電 子 密 度 が,他 の領 域 に お
け る多 数 キ ャ リア 密 度 に比 べ 小 さ い の は,既 に述 べ た よ う に,べ ー ス領 域 か ら エ ミッ タ領 域 へ電 子 が 拡 散 す る こ と に よ る エ ミ ッタ効 率 の 低 下 を防 ぐた めで あ る。 次 に,べ ー ス に 対 す る エ ミ ッタ の電 位VEBを 電 位VCBを
正,べ ー ス に対 す る コ レ ク タ の
負 に した とき の,各 領 域 に お け る キ ャ リア密 度 を求 め て み よ う。
す で に,3・1節 〔2〕で 述 べ た よ うに,べ ー ス領 域 の左 端(厳 密 に は,エ 接 合 部 空 乏 層 右 端 で あ るが,以
後 簡 単 に この よ う に表 現 し,こ
ミッ タ
こ をx=0と
る)の 正 孔 密 度 をpB(0)で 表 せ ば,べ ー ス領 域 の 正 孔 の 熱 平 衡 密 度 をpB0と て, (3・68)
す し
で あ る。同 様 に,エ
ミ ッ タ 領 域 の 右 端 の 電 子 密 度nE(0)は,エ
衡 電 子 密 度 をnE0と
す れ ば,下
ミ ッタ 領 域 の 熱 平
式 で 与 え られ る 。
(3・69)
他 方,べ
ー ス 領 域 の 右 端(x=w)に
お け る正 孔 密 度pB(w)は,
(3・70)
で あ り,コ レ ク タ領 域 左 端 の 電 子 密 度nC(w)は,コ 度 をnC0と
レ ク タ領 域 の 熱 平 衡 電 子 密
して, (3・71)
で あ る。 さ て,次
に,各
接 合 面 を 流 れ る 電 流 を 求 め よ う。
エ ミ ッ タ ・べ ー ス 接 合,お よ び べ ー ス ・コ レ ク タ 接 合 を 流 れ る 正 孔 電 流 密 度 を, 図3・29の
よ う に,そ
エ ミ ッ タ 電 流 密 度,お
れ ぞ れJpE,JpCと
し,電
子 電 流 密 度 をJnE,JnCと
よ び コ レ ク タ 電 流 密 度JE
,JCは,そ
す れ ば,
れ ぞ れ, (3・72)
で あ る 。 こ こ で,電
子 電 流 密 度 は,pn接
合 の と き の 式(3・15),(3・16)と
同 様 に,
(3・73)
図3・29 単 位 断 面 積 αpnpの トラ ン ジ ス タ に 流 れ る電 流
で あ る。こ こ に,DnE,DnCは,エ 散 係 数,LnE,LnCは,そ また,べ 入 が,あ
ミ ッタ お よ び コ レ ク タ領 域 の 電 子 に対 す る拡
の 拡 散 距 離 で あ る。
ー ス領 域 中 の電 界 は 弱 い もの とす れ ば(こ の 仮 定 は,キ
ャ リア の 注
ま り多 くな い場 合 や,べ ー ス領 域 中 の 不 純 物 濃 度 に勾 配 な どを付 け て
い な い場 合 に は,正 当 で あ る),こ の 領 域 を 流 れ る正 孔 電 流 の大 部 分 は,拡 散 電 流 だ け と考 え て よ い 。 そ こで,べ ー ス領 域 中 の 任 意 の位 置xに
お け る,正 孔 密 度pB(x)に
その 熱 平 衡 密 度 をpB0,拡
す れ ば,拡 散 方 程 式
散 距 離 をLpBと
関 して は,
(3・74)
が 成 立 つ。 こ の 式 を,式(3・68)お
よ び 式(3・70)の
境 界 条 件 の 下 に 解 け ば,
(3・75)
と な る。〓
を0.1,1,2,3に
こ こ で,x=0お と,そ
よ びx=wに
した時 の 式(3・75)の 計 算結果
を 図3・30に
お け る 正 孔 電 流 密 度 を,JpEお
示 す。
よ びJpCと
する
れ ら は, (3・76)
で あ る 。 これ に,式(3・75)を
代 入 す る と,次
式 を得 る。
図3・30 〓
をパ ラ メ ー タ
と し た と き のpnp トラ ン ジ ス タ の べ ー ス中の正孔密 度分 布
(3・77)
こ こ で,VCB≪0な
,ま たw≪LpBな
ら,exp〓
と 近 似 で き る し,さ
らtanh〓
ら に, (3・78)
と 置 け ば,式(3・77)は,
(3・79)
とな る。 な お,コ
レ ク タ 電 流 の エ ミ ッ タ電 流 に 対 す る 比,す
増 幅 率 α0を,式(3・80)の
な わ ちべ ー ス 接 地 の電 流
よ う に分 解 す る。 (3・80)
こ こ で,式(3・72)を
用 い れ ば,
(3・81)
で あ る。 この (transport α0*の
α0*を
factor),γ0を
コ レ ク タ 係 数(collector
値 は,上
factor),β0を
エ ミ ッ タ の 注 入 係 数(injection
式 か ら も わ か る よ う に,1よ
キ ャ リア の到 達 率 efficiency)と
り 大 き い 。 し か し,JnCの
い う。 値 は,
極 度 に 大 き な 逆 バ イ ア ス を 加 え て,な し な い 限 り,非
常 に 小 さ い の で,α0*の
ま た,式(3・81)の さ ら に,β'≒1を
だ れ 破 壊 な ど を起 こ させ る よ う な こ とを
γ0のJnEお
値 は ほ と ん ど1で
よ びJpEに,式(3・73)お
あ る。
よ び 式(3・79)を
代 入 し,
考 慮 す れ ば, (3・82)
が 得 られ る。 エ ミ ッ タ お よ び べ ー ス 各 領 域 の 導 電 率 を,そ そ れ ら は,多
れ ぞ れ σEお よ び σBと す れ ば,
数 キ ャ リ ア に よ る 導 電 が 主 で あ る と考 え ら れ る の で,近
で あ る 。 こ こ に,μpE,μnBは,エ
似 的 に,
ミ ッ タ お よ び べ ー ス 領 域 に お け る,正
電 子 に 対 す る 移 動 度 で あ る 。 従 っ て,両
孔 お よび
領 域 に お け る 導 電 率 の 比 は,ア
ュ タ イ ン の 関 係 式 と,pE0nE0=pB0nB0=ni2の
関 係 を 用 い,さ
イ ンシ
らに キ ャ リア の 拡
散 係 数 が エ ミ ッ タ お よ び べ ー ス 領 域 中 で 大 き く異 な ら な い の で,
と近 似 で き る 。 こ れ を,式(3・82)に
代 入 す れ ば,式(3・83)が
得 ら れ る, (3・83)
さ ら に,式(3・79)に
お い て,β'≒1を
用 い て,JpCとJpEの
比 を 求 め る と,
と な る 。 こ の 近 似 を 用 い れ ば,式(3・81)は,
(3・84)
と な る 。 こ の 式 か ら も わ か る よ う に,ト に は,W≪LpB,か
つ,σE≫
ラ ン ジ ス タの 電 流 増 幅 率 を大 き くす る
σBと す る こ と で あ る 。
〔5〕
交流 特 性
適 当 な 値 の 直 流 バ イ ア スVEB,VCBを
与 え た,pnp形
トラ ン ジ ス タ を微 少 交
流 信 号 で 動 作 さ せ る 場 合 の 特 性 を 調 べ よ う。 解 析 に 当 た っ て 用 い る,記 標 な ど は,直
流 特 性 解 析 の と き と 同 じ に 取 り,エ
波 電 圧 はυeejωtと す る 。 こ こ に,ω こ の と き,エ
号,座
ミ ッタ に加 え られ る信 号 正 弦
は信 号 電 圧 の 角 周 波 数 で あ る。
ミ ッ タ か らべ ー ス 領 域 に 注 入 さ れ る正 孔 密 度pB(0)は,バ
イア ス
VEBに 交 流 電 圧υeejωtが 重 畳 さ れ て い る の で, (3・85)
とな る 。 こ こ で,υeが
微 小 電 圧 で あ る か ら,
の 近 似 を 用 い る こ とが で き る の で,式(3・85)は, (3・86) に な る 。 こ こ に,
(3・87)
で あ る 。 こ のp(0)は,直
流 バ イ ア ス に よ る 一 定 の 注 入 で あ り,p'(0)は
に よ っ て 正 弦 波 的 に 変 化 す る 注 入 で あ る 。 こ れ を,図3・31に こ の よ う に し て 注 入 さ れ た 正 孔 は,コ て ゆ くが,最
交流電 圧
示す。
レ ク タ に 向 か っ てべ ー ス領 域 を拡 散 し
後 の コ レ ク タ 部 位 に お け る 正 孔 密 度pB(w)は,VCB≪0で
あ る こと
か ら,
す な わ ち,そ
の 直 流 成 分p(w)お
よ び 交 流 成 分p'(w)は,共
に, (3・88)
とな る。 こ の と き,べ
ー ス 領 域 に 注 入 さ れ た 正 孔 密 度pB(x,t)の
分 布 の 様 子 は,式(3・
図3・31 入 力 交流 信 号 に よるべー ス領 域 に お け る正 孔 密 度 分布 の変 化
89)に 示 す 時 間 を含 む 拡 散 方程 式 に よ り求 め る こ とが で き る。 (3・89)
こ こ に,τpBは
べー ス 領 域 に 注 入 さ れ た 正 孔 の ラ イ フ タ イ ム で あ る 。
こ の 式 を 解 く に は,式(3・87)の 流 的 成 分p'(x)・ejωtに
と し,こ
結 果 か ら,pB(x,t)を
直 流 的 成 分p(x)と,交
分 け れ ば 良 い こ と が わ か る 。 す な わ ち,
れ を 式(3・89)に
代 入 す れ ば,下
式 の よ う にな る。
この式 は,直 流 成 分 と交 流 成 分 に 分 け る こ とが で き,直 流 成 分 に 関 し て は式 (3・74)と全 く同 形 に な るが,交
流 成 分 に関 す る式 は, (3・90)
と な る 。 こ の 式 を,式(3・74)に
比 べ て み れ ば,交
離 は 直 流 成 分 に 対 す る 拡 散 距 離 の1/(1+jωτpB)1/2倍
流成 分 に 対 す る正 孔 の 拡 散 距 に な っ て い る こ とが わ か る 。
さ て,式(3・90)を,式(3・87)お
よ び 式(3・88)の 境 界 条 件 で 解 け ば,
(3.91) と な る 。 こ こ に,η 従 っ て,エ は,そ
p=(1+jωτpB)1/2で
あ る。
ミ ッ タ お よ び コ レ ク タ 部 位 の 交 流 成 分 正 孔 電 流 密 度ipeお
れ ぞ れ,ipe=−qDpB・(dp'/dx)x=0,ipc=−qDpB・(dp'/dx)x=ω
を 代 入 し て,式(3・92)の
よ びiPc
へ,式(3・91)
よ うに 求 ま る。
(3・92)
同 じ よ うな 論 議 に よ って,エ
ミ ッタ領 域 へ 注 入 され た 電 子 に よ る,交 流 成 分
ineは,
(3・93) と な る 。 こ こ に,ηn=(1+jωτnE)1/2で,τnEは の ラ イ フ タ イ ム で あ る 。 な お,図3・32は,各
エ ミッ タ領 域 中 へ 注 入 され た 電 子 接 合 の 交 流 成 分 電 流 を示 す。
[注]ie,ib,icは,接
合 の単
位 面 積 当 た りの 電 流 で あ る。
図3・32
pnp形
トラ ンジ ス
タの 交 流電 流 の 流 れ
次 に,直 流 特 性 で述 べ た と き と同 様 に,交 流 信 号 に対 す る電 流 増 幅 率 α を, 式(3・94)の よ うに 分 解 して 表 そ う。 (3・94) こ こ で,α*は,交
流 成 分 に 対 す る コ レ ク タ 係 数 で,直
流 の 場 合 と 同 様 に,ほ
ぼ1で
あ る。 また,β は交 流 成 分 に 対 す るキ ャ リア の 到 達 率,γ は交 流 成 分 に対
す るエ ミ ッタ の 注 入 係 数 で あ る。 β の 値 は,式(3・92)を
用 い て,
と な る 。 こ の 式 は,ω=0と
す る と,直
流 の 場 合 のβ0と な る 。 そ れ ゆ え,
(3・95) と表 せ る 。 な お,こ が,そ
の ωα/2π を α 遮 断 周 波 数(α-cut-off
frequency)と
呼 ぶ
の 理 由 に つ い て は後 に述 べ る。
次 に,γ=ipe/ieを
求 め よ う。
エ ミ ッ タ 接 合 を 流 れ る 交 流 電 流 密 度ie=ipe+ineは,式(3・92)お を 用 い て,式(3・83)と
よ び 式(3・93)
同 様 に,
(3・96) で あ る 。 し か し,一
般 に,σE≫
σBで あ る か ら,γ ≒1と
し て よ い 。 そ れ ゆ え,交
流 信 号 に 対 す る 電 流 増 幅 率 α は, (3・97) と な る 。 そ し て,こ
れ は ω と共 に 変 化 す る 複 素 数 で,図3・33に
特 性 が 示 さ れ て い る 。 な お,上
式 で,も
し,ω=ωα
で あ れ ば,α
は,α
の周波数
の 絶対 値 は
で あ る。 従 って,α 遮 断周 波 数 と は,電 流 増 幅 率 の 絶 対 値 が 直 流 の と き の値 の 1/√2,位
相 遅 れ が45° に な る,交 流 信 号 の周 波 数 で あ る と い え る。 そ して,こ
の 周 波 数 以 上 の 信 号 に対 して は,ト ラ ン ジ ス タ 作 用 が ほ とん ど行 わ れ な い こ と が わ か る。
図3・33 α の 周波 数特 性 こ の こ と は,し
か も,エ
ミ ッ タ とべー ス の 間 に,コ
る か の よ う に 振 舞 う の で,後 を 考 慮 し て い る 。 このCDを
ン デ ン サCDが
介 在 して い
に述 べ る 高 周 波 信 号 に 対 す る 等 価 回 路 で は,こ
れ
拡 散 容 量 と い い,べ ー ス 領 域 内 に 蓄 積 さ れ る 少 数 キ
ャ リ ア に 基 づ く静 電 容 量 で あ る 。 な お,α
遮 断 周 波 数fα は,式(3・95)か
ら, (3・98)
と な る 。 全 く同 様 に,npnト
ラ ン ジ ス タ の 場 合 に は,次
の よ う に な る。
(3・99) す な わ ち,高 た め に は,べ
い 周 波 数 の 信 号 電 圧 に も,忠 ー ス 領 域 の 幅 は 狭 く,そ
き い こ と が 必 要 で あ る 。 この こ と は,エ ー ス領 域 を通 過 し
,コ
実 に 動 作 す る トラ ン ジ ス タ を 作 る
こに 注 入 され る キ ャ リア の拡 散 係 数 は大 ミ ッ タ か ら 注 入 さ れ た キ ャ リア が,べ
レ ク タ に 到 達 す る ま で の 時 間 遅 れ を 短 く す る た め に,望
ま し い こ とで あ る。 一 般 に,Dn>Dpで
あ る か ら,pnpよ
り もnpn形
ト ラ ン ジ ス タ の ほ う が,高
周波 用 と して 適 し て い る とい え る。 上 に 述 べ た よ う に,ト 減 衰 し,位
ラ ン ジ ス タ の 出 力 信 号 は 入 力 信 号 よ り も,そ
相 が 遅 れ る 。 し か し,こ
る 遅 れ の ほ か に,3・1節
で 述 べ た,エ
の振幅 が
の よ う な こ と は,キ
ャ リア の拡 散 時 間 に よ
ミ ッ タ 接 合 や,コ
レ ク タ接 合 部 に お け る
空 乏 層容 量 な ど も,同 特 に,エ
じ よ う な作 用 を もつ 。
量CEは,コ
ミ ッタ接 合 は順 バ イ ア ス され て い るの で空 乏 層 は狭 く,そ の 接 合 容 レ ク タ部 の 接 合 容 量CCよ
りも大 き い。
また,空 乏 層 幅 は 接 合 に 印 加 さ れ る電 圧 に よ り変 化 す る か ら,当 然,重 畳 さ れ て い る交 流 電 圧 に よ っ て も そ の影 響 を受 け る。 実際 の トラ ン ジ ス タ 回 路 に お い て は,外 部 回路 に負 荷 抵 抗 が 接 続 され て い る の で,こ の 中 で の 交 流 成 分 電 流 に よ る電 圧 降 下 は,コ
レ ク タ の 電 位 を交 流 成 分 に変 化 させ る。
そ の た め,コ レ ク タ 接 合 のべ ー ス領 域 中 の 空 乏 層 の 幅 も交 流 成 分 的 に変 化 し, 従 っ て キ ャ リア の 拡 散 す べ きべ ー ス領 域 中 の 幅 も交 流 成 分 的 に 変 わ る 。これ を, ベ ー ス 幅 変 調(base
width modulation)と
い い,こ れ は電 流 増 幅 率 を 変 化 させ
る効 果 が あ る。 この 効 果 を ア ー リー 効 果(Early
〔6〕
effect)と い う。 。
等価回路
pnpト
ラ ン ジ ス タ を 例 に し て,こ
最 も簡 単 な 等 価 回 路 を 図3・34に
れ に,直
流 バ イ ア ス の み を 与 え た と き の,
示 す 。 こ の 図 は,2つ
の ダ イ オ ー ド と1つ
図3・34pnp
の電
トラ ン ジ ス タ の
等価回路
流源
α0IEか
ら成
り 立 ち,IE,IB,ICの
の 関 係 が 満 た さ れ て い る 。な お,上
間 に は,
の2式
を 変 形 し てIC=αE0IBの
形 に す れ ば, (3・100)
とな る。このαE0を エ ミ ッ タ接 地 回 路 の電 流 増 幅 率 と呼 び,こ れ は,ト ラ ン ジス タ をエ ミ ッタ接 地 回 路 で 使 用 す る と き,す な わ ちIBを 入 力,ICを
出 力 とす る と
きの 電 流 増 幅 率 で あ る。 図3・35は 高 周 波 信 号 に対 す るpnpト
ラ ン ジ ス タ の等 価 回 路 を 示 す 。 この 図
図3・35
高周 波 で の
べ ー ス接 地 の トラ ン ジ ス タ 等価 回 路
に お い て は,先
に 述 べ た キ ャ リ ア の 拡 散 時 間 に 起 因 す る 拡 散 容 量CD,お
ミ ッ タ 部 と コ レ ク タ 部 の 接 合 容 量CE, 抗re,エ
CCの
ほ か に,エ
ミ ッ タ の 端 子 か ら 接 合 ま で の 抵 抗ree,コ
ク タ端 子 か ら接 合 ま で の 抵 抗rcc,べ ま れ て い る 。 な お,こ
ミ ッ タ 電 流 の 一 部 がCEに
圧 源ibrmを
レ ク タ 接 合 部 の 抵 抗rc,コ
ー ス 端 子 か ら 接 合 ま で の 抵 抗rbbな
レ
どが 含
流 増 幅 率 α0が 高 周 波 信 号 に 対 す る α に 変 わ り,ま た エ 分 流 し,接
合 に 流 れ る 電 流 はie'に
な る。
周 波 信 号 に 対 す る エ ミ ッ タ 接 地 の 場 合 の,電 流 源 αeibま た は 電
も つ 等 価 回 路 を 示 す 。 こ こ で,αeは
に 対 す る 電 流 増 幅 率 で,〔5〕 rmはrm=αrcで
ミ ッタ 接 合 部 の 等 価 抵
の 回 路 に お け る 電 流 源 は 前 図 の そ れ と は 異 な り,αie'に な
っ て い る 。す な わ ち,電
図3・36は,低
よびエ
エ ミ ッタ接 地 の 場 合 の 交 流 信 号
で 述 べ た α を 用 いαe=α/(1−
あ る 。 ま た,図
中ie,ib,icは,そ
α)に
よ り表 さ れ,
れ ぞ れ エ ミ ッ タ,べ
ー ス,
コ レ ク タ を 流 れ る 信 号 電 流,υbe,υceは べ ー ス-エ ミ ッ タ 間,お よ び コ レ ク タ-エ ミ ッ タ 間 の 信 号 電 圧 で あ る 。 低 周 波 信 号 に 対 す る 等 価 回 路 を 考 え る と き に は,静 電 容 量 が 省 略 で き る の で 簡 単 に な り,reeはreに
含 め ら れ,rccはrcに
比べ小 さ
図3・36
エ ミッ タ接地 の 等価 回路
い の で 無 視 で き る 。 こ の 回 路 に お け る 各 定 数 の 値 は,reは は 数MΩ,rbは
3・5
数100Ω
数10Ω,rcお
よ びrm
程 度 で あ る。
シ リ コ ン 制 御 整 流 器(SCR)
図3・37に たp1n1p2n2構
示 す デ バ イ ス は,3対
のpn接
造 を も っ て い る 。 そ し て,こ
合 を相 互 に作 用 し合 う よ う に配 置 し の 素 子 のp1側
の 一 端 に は ア ノー ド
図3・37
サ イ リス タ の
構造
と 呼 ぶ オ ー ミ ッ ク 電 極 が,n2側 ま たp2領
の 一 端 に は カ ソ ー ド と呼 ぶ オ ー ミ ッ ク 電 極 が,
域 に は,ゲ ー ト と呼 ぶ オ ー ミ ッ ク 電 極 が 取 り付 け ら れ て い る 。そ し て,
ア ノ ー ド は,カ
ソ ー ド に 対 し,正
子 構 造 の 素 子 を 制 御 整 流 器,ま
電 位 に バ イ ア ス さ れ て い る 。 こ の よ う な3端 た は サ イ リス タ(thyristor)と
い う 。 特 に,素
子 母 材 に シ リ コ ン が 用 い ら れ て い る も の は シ リ コ ン 制 御 整 流 器(silicon controlled
rectifier;SCR)と
い い,電
力 制 御 用 デ バ イ ス と し て 広 く用 い ら れ て
じ よ う なpnpn構
造 で も,ゲ ー ト電 極 を も た な い2端
い る。 ま た,同 は,pnpnス
〔1〕pnpnス pnpnス
イ ッ チ とか 四 層 ダ イ オ ー ド な ど と 呼 ば れ る 。
イ ッチ イ ッ チ 素 子 の ア ノ ー ド を カ ソ ー ドに 対 し,比 較 的 低 い 正 電 位 に 保 っ
た と き の エ ネ ル ギ ー 帯 構 造 を 図3・38(a)に n1,n1p2,p2n2間
子構 造 の 素 子
示 す 。 図 に お い て,J1,J2,J3は,p1
の接 合 を表 す も の とす る。
図3・38
pnpnス
帯 構造
イ ッチの エ ネ ルギ ー
この と き,接 合J1お
よ びJ3は,順
方 向 バ イ ア ス に,ま
た 接 合J2は,逆
方向バ
イ ア ス に な って い る。 さ て,こ
のpnpn素
子 は,図3・39の
反 対 に 向 き 合 っ た,2つ
よ う に,p1n1p2とn2p2n1と
の ト ラ ン ジ ス タ(Tr1,Tr2)が
考 え る こ と が で き る 。 実 際 に,エ
の,互
組 み 合 わ され た もの と
ミ ッ タ 領 域 に 対 応 す る,p1とn2領
領 域 に 比 べ 不 純 物 濃 度 を 大 き く し て,エ
い に
域 は,他
ミ ッタ と して の 効 率 を 高 め て あ る。
図3・39
pnpnデ
バイス
の等価 回路
こ こ で,接
合J2を
ま ず,p1n1p2で
流 れ る電 流 を求 め よ う。
構 成 さ れ るTr1に
お い て,接
ら 注 入 さ れ て こ こ に 到 達 し た α1Iと,こ
合J2を
流 れ る 電 流IC1は,p1か
の 接 合 部 に お け る 逆 飽 和 電 流IC01の
和,
で あ り,ま
た,べ
同 様 に,n2p2n1で
ー ス 電 流IB1は,
構 成 さ れ るTr2に
お い て,接
か ら 注 入 さ れ て こ こ に 到 達 し た α2Iと,こ 和,
で あ り,ま
た べ ー ス 電 流IB2は,
の
合J2を
流 れ る 電 流IC2は,n2
の 接 合 部 に お け る 逆 飽 和 電 流IC02の
で あ る 。 し か る に,図3・39か
で あ る か ら,こ
ら も わ か る よ う に,
れ ら の 式 か らIC1,IC2,IB1,IB2を
消 去 し て,
(3・101) と な る 。 こ の 式 の 分 母 の(α1+α2)の
値 は,素
子 の 印 加 電 圧 が 低 い と き は1よ
小 さ く な る よ う に 作 ら れ て い る。す な わ ち,pnpn素
子 のp2お
よ びnl領
を 通 常 の ト ラ ン ジ ス タ の べ ー ス 幅 よ り も大 き く し て,図3・25か に,そ
り
域 の幅
ら もわ か る よ う
の電 流 増 幅 率 を小 さ く して あ る。
従 っ て,こ の 状 態 で の 素 子 電 流Iの
値 は,例 え ば(α1+α2)値
が0.99で
し て も,た か だ か 逆 飽 和 電 流 の100倍
程 度 の 極 め て 小 さ な 値 で あ る 。 す な わ ち,
素 子 に は 電 流 が 流 れ 難 い 状 態 に あ る 。 こ の 状 態 を オ フ(off)状
しか し,pnpn素
あ る と
態 と い う。
子 の 印加 電 圧 を次 第 に増 加 して ゆ くと,そ の電 圧 の 大 部 分
は逆 バ イ ア ス され て い る 接 合J2に か か り,従 って,そ の空 乏 層 幅 を拡 げ,実 効 的 な べー ス幅 を減 少 させ る。 さ ら に,空 乏 層 中 の 電 界 が 強 ま る た め,キ
ャ リア
は価 電 子 との 衝 突 電 離 に よ り増 倍 され る。 これ らの 効 果 は,共 に(α1+α2)の 値 を増 大 さ せ る。 つ い に,あ
る値 の 電 圧VB(ブ
達 す る と(α1+α2)=1と い っ た ん,こ
な り,電
レ ー ク オ ー バ ー 電 圧(break
over
voltage))に
流 は 急 増 す る。
の よ う な 状 態 が 起 こ る と,多 量 に 注 入 さ れ た キ ャ リ ア に よ っ て,
接 合J2部
に あ る,イ オ ン 化 し た ド ナ ー や ア ク セ プ タ に よ る 空 間 電 荷 は 中 和 消 滅
さ れ,従
っ て,高
い 逆 バ イ ア ス の 状 態 は な くな る 。 こ の と き の エ ネ ル ギ ー 帯 構
造 は,図3・38(b)に
示 す よ う な,順
そ の た め,pnpn素
バ イ ア ス 状 態 の,そ
子 の 端 子 電 圧 は 激 減 し,素
子 を流 れ る電 流 は外 部 回 路 に
よ っ て 支 配 さ れ る よ う に な る 。 こ の 状 態 を オ ン(on)状 い っ た ん,オ
ン 状 態 に な っ た 素 子 は,そ
れ にな る。
態 と い う。
の 電 流 が ほ と ん ど0に
な る ま で,オ
ン状 態 を 持 続 す る 。 以 上 の 説 明 か ら,こ
の 素 子 は,ス
イ ッチ と し ての 機 能 を も っ て い る こ とが わ
か る。
図3・40は,こ
のpnpnス
イ ッ チ 素 子 の 電 流-電 圧 特 性 を 示 す 。
図3・40 pnpnデ
バ イ ス の 電 流-電 圧
特性
〔2〕
サ イ リス タ
次 に,pnpn素
子 に ゲ ー トを 付 け た 構 造 の サ イ リ ス タ に つ き,そ
明 し よ う 。 そ の た め,再
び 図3・36に
も ど る 。 こ の 図 の よ う に,接
バ イ ア ス を 与 え た 場 合 を 考 え よ う。 こ の こ と は,ち 子 のTr2に
お け る エ ミ ッ タ か ら,電
こ の 電 子 の 大 部 分 は,接
合J2部
の 動 作 を説
合J3に
順方 向
ょ う ど,図3・39のpnpn素
子 の 注 入 を増 加 させ る こ とに相 当 す る。 に 拡 散 し て 行 き,そ
こ に あ る空 間 電 荷 を中 和
し,素 子 を イ オ ン 状 態 に 転 換 さ せ る 。 こ の こ と を タ ー ン ・オ ン(turn-on)と
図3・41
い う。
サ イ リス タ の
電 流-電 圧 特 性
そ し て,こ
の 夕 ー ン ・オ ン は,エ
換 言 す れ ば,ゲ 示 す(こ
ー ト電 流Igが
の 図 中 に は,サ
大 き い ほ ど,起
れ を 行 う に は,通
た は 負 に し て,電
こ りや す く な る 。 こ れ を 図3・41に
イ リ ス タ の 記 号 も表 示 し て あ る 。)。
オ ン 状 態 に あ る 素 子 を,オ う が,こ
ミ ッ タ か ら 注 入 さ れ る キ ャ リ ア が 多 い ほ ど,
フ状 態 に す る こ と を ター ン ・オ フ(turn-off)と
常 の サ イ リ ス タ で は,素
流 を 一 度0に
子 に 印 加 す る 電 圧 を0,ま
して や ら な けれ ば な ら な い。
素 子 が タ ー ン ・オ ン お よ び タ ー ン ・オ フ を 行 う に は,あ こ の 時 間 を,そ
い
れ ぞ れ,タ
ー ン ・オ ン 時 間,お
る 時 間 が 必 要 で あ る。
よ び タ ー ン ・オ フ 時 間 と 呼 ぶ 。
な お,ゲ ー ト電 流 の 代 わ り に 光 の 照 射 に よ っ て,タ ー ン ・オ ン さ せ る ホ ト サ イ リ ス タ(photo‐thyristor)も が 比 較 的 短 か く,ま た め,こ
開 発 さ れ て い る が,こ
の 素 子 は,タ
ー ン ・オ ン 時 間
た電 気 的 に絶 縁 され た 状 態 で ス イ ッチ の 開 閉 制 御 が 可 能 な
の利 点 を活 か した 用 途 が 広 が って きて い る。
演 〔問 題 〕1.
シ リ コ ンpn接
〔 問 題 〕2.
題
〔3〕
域 の 多 数 キ ャ リ ア 密 度 は2.98×1020,少
あ る 。 ま た,n領
数 キ ャ リ ア 密 度 は7.6×1011で
位V0〔eV〕
問
合 が あ る 。p領
数 キ ャ リ ア 密 度 は7.6×1011で 1020,少
習
域 の 多 数 キ ャ リ ア 密 度 は2.98×
あ る 。 熱 平 衡 状 態(300K)に
お け る拡 散 電
を 求 め よ 。
答(0.51eV)
階 段 接 合 の シ リ コ ンpn接
合 が あ る。 そ の 拡 散 電 位 が0.60eVで
と き,空 間 電 荷 領 域 の 幅 を求 め よ。た だ し,pお れ も8.8×1020〔m-3〕 と し,シ
よ びn領
リ コ ンの 比 誘 電 率 は11.6と
ある
域 の 不 純 物 濃 度 は,い ず す る。 答(1.32×10-6m)
〔問 題 〕3.
〔 問 題 〕2.のpn接
合 にお い て,空
乏 層 中 に で き る 最 大 電 界 強 度 を求 め
よ。
〔問 題 〕4.
答(9×105V/m)
〔問 題 〕2.のpn接
合 に,順
方 向 に0.3Vの
バ イア ス電 圧 を印 加 した と
き,空
乏 層 の 厚 さ を 求 め よ 。 ま た,逆
方 向 に0.3Vを
を 求 め よ 。
〔問 題 〕5.〔
答(0.93×10-6m,1.62×10-6m)
問 題 〕4.のバ イ ア ス 時 に お い て,空
め よ。
〔問 題 〕6.〔
与 えた ときの空乏 層 の厚 さ
乏 層 中 に で き る最 大 電 界 強 度 を 求 答(6.4×105V/m,1.1×105V/m)
問 題 〕4.にお け る,pn接
合 の微 小 信 号電 圧 に対 す る静 電容 量 を求 め
よ。
答(110μF/m2,63μF/m2)
〔問 題 〕7.金 て,そ
属 と,ド
ナ ー 濃 度 が1021m-3のn形
の 障 壁 電 位 差 が0.6Vに
シ リ コ ン半 導 体 の 接 触 に お い
なった。
i) 空 間 電 荷 領 域 幅 を求 め よ。ⅱ ) 微 小 信 号 電 圧 に対 す る静 電 容 量 を求 め よ。ⅲ ) 空 間 電 荷 に よ っ て 作 られ る,最 大 電 界 強 度 を 求 め よ。 答(i)0.88μm,ⅱ)117μF/m2,ⅲ)1.4×106V/m)
〔 問 題 〕8.Geお
よ びSi接
合 形 トラ ン ジ ス タ の べ ー ス 幅 が10-5mで
あ る と き,α
遮 断 周 波 数 〔MHz〕 を求 め よ。 た だ し,移 動 度 〔m2/V・s〕 を 次 表 に 示 す 。
第4章
第3章
電 界 効 果 トラ ン ジス タ
に お い て 扱 わ れ た 半 導 体 素 子 は,pn接
る構 造 の も の で あ っ た。 これ らの 素 子 は,注 れ が 電 気 的 中 性 条 件 を 満 た す た め,そ
入 さ れ た少 数 キ ャ リ ア と,そ
の近傍 に呼 び寄 せ られた 多数 キ ャ リ
ア に よ っ て動 作 して い る。 す な わ ち,電 リア が,そ
合 や,そ の 組 み合 わ せ に よ
子 と正 孔 の 両 極 性(bipolar)キ
ャ
の 動 作 に密 接 に か か わ っ て い る。 こ の こ とか ら,前 章 で 学 ん だ
接 合 形 トラ ン ジ ス タ は,バ
イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ と呼 ば れ た 。
しか し,こ の 章 で 学 ぶ 電 界 効 果 トラ ン ジ ス タ の動 作 に は,本 質 的 に,た だ1種
の キ ャ リア だ け が,こ
ラ ン ジ ス タ は,ユ
れ に か か わ っ て い る。 そ の た め,電 界 効 果 ト
ニ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ(unipolar
transistor)と
呼 ばれ
る。 従 っ て,電
界 効 果 トラ ン ジ ス タ の 構 造 や,動
作 原 理,特
ま で に 述 べ て きた 素 子 と非 常 に 異 な っ て い る の で,ま
性 な どは,い
ず,こ
ま
れ の基礎 的 な
概 念 か ら説 明 を 始 め よ う。
4・1 電 界 効 果 トラ ン ジ ス タ の 基 礎 概 念 少 数 キ ャ リア を使 わ ず に,図4・1の
よ うな,棒 状 素 子 の 抵 抗 値 に着 目 し て,
これ に流 れ る電 流 を制 御 し て電 気 信 号 の 増 幅 を行 う固 体 素 子 を考 え よ う。 電 極 か らの キ ャ リア 注 入 は な い もの とすれ ば,素 子 両端 間 の 抵 抗 値Rは,棒 母 材 の 抵 抗 率 を ρ,断 面 積 をS,長
さ をLと
して,第2章2・5節
〔2〕か ら, (4・1)
で あ る 。 こ こで,qは 式(4・1)で,Rの
電 子 電 荷,nは 値 はL,S,nの
母 材 の キ ャ リ ア 密 度,μ
は移 動 度 で あ る 。
い ず れ か が 変 化 し て も 変 わ る 。 従 っ て,外
部
図4・1 抵 抗素 子 の形状 と 抵抗値
か ら の 制 御 信 号 に よ り,こ り,素
れ ら の い ず れ か を 変 化 さ せ れ ば,棒
の抵抗値 が変わ
子 電 流 を 制 御 す る こ とが 可 能 で あ る 。 す な わ ち,
① 制 御 信 号 の 入 力 増 に よ っ て 断 面 積Sが Rは
大 き く な り,素
本 来 の 値 よ り減 少 す る な ら,抵 抗
子 電 流 は 減 少 す る。
② 制 御 信 号 の 入 力 増 に よ っ て キ ャ リ ア 密 度nが ら,抵 抗Rは
本 来 の 値 よ り増 加 す る な
小 さ く な り,素 子 電 流 は 増 加 す る 。 こ の 場 合,母
衡 キ ャ リ ア 密 度 に 対 し,増
材 中の熱平
加 分 が 大 き い ほ ど電 流 変 化 も著 し い 。 他 方,増
加 さ せ 得 る キ ャ リ ア 密 度 に は 限 界 が あ る の で,母 材 の 抵 抗 率 は 大 き い ほ ど, す な わ ち 絶 縁 物 に 近 い ほ ど高 い 効 率 が 期 待 で き る。 電 界 効 果 ト ラ ン ジ ス タ(FET:field
effect
transistor)は,上
記 の ①,②
を
基 礎 に して 多 種 類 の もの が 作 られ て い る。 図4・2は,1952年 こ のFETは (source)お
にShockleyが
発 表 し たFETの
入 力 電 圧 を 印 加 す る ゲ ー ト(gate),出 よ び ド レ イ ン(drain)の3つ
素 子 母 材 がn形
で あ れ ば,多
込 み 口 の ド レ イ ン へ 移 動 し,ド
図4・2の
ャ ネ ル,正
素 子 で は,n形
力 回路 に つ な が る ソ ー ス
の 電 極 を もつ。
数 キ ャ リア の 電 子 は,湧
出 し 口 の ソー ス か ら吸
レ イ ン か ら ソ ー ス に 電 流IDが
リ ア の 通 り路 を チ ャ ネ ル(channel)と が 電 子 な らnチ
原 理 的 な構 造 を示 す。
呼 び,チ
孔 な ら ばpチ
ャ ネ ル は,そ
流 れ る。こ の キ ャ こを通 る キ ャ リア
ャネ ル と区 別 して 呼 ば れ る。
半 導 体 棒 の 両 側 面 の 一 部 がp形
ゲ ー トに な っ て い て,
図4・2 接 合 形 電界 効 果 ト ランジ ス タ (JFET)
ゲ ー トは ソ ー ス に 対 し て 逆 バ イ ア ス の ゲ ー ト電 圧VGが そ の た め,ゲ ー トpn接 す で に 述 べ た と お り,ほ
合 部 に は,図
加 え ら れ て い る。
の よ う な 空 乏 層 が 形 成 さ れ る 。空 乏 層 は
と ん ど 絶 縁 層 で あ り,ま
た,そ
の 厚 さ は ゲ ー ト電 圧 に
よ り制 御 で き る。 す な わ ち,逆 バ イ ア ス の ゲ ー ト電 圧 の 絶 対 値|VG| を 増 せ ば チ ャ ネ ル の 断 面 積 は 減 り,素
子 を 流 れ る 電 流IDは
減 少 す る 。 従 っ て, VGに
よ り,IDが
制 御 で き
る。 こ の 動 作 原 理 は,上 こ のFETの
述 の ① に 属 す る。
ゲ ー トは,逆
バ イ ア ス さ れ たpn接
合 で 構 成 さ れ る か ら,ゲ ー ト
回 路 に は 極 め て わ ず か な 電 流 し か 流 れ な い 。 そ の た め,こ 入 力 抵 抗 を も つ の で,入
の 素 子 は非 常 に 高 い
力 部 に お け る電 力 消 費 が ほ と ん ど な く,バ
イ ポーラ
ト
ラ ン ジ ス タ とは 異 な る特 長 を もっ て い る 。 電 界 効 果 トラ ン ジ ス タ に は,上
に 述 べ たpn接
形 電 界 効 果 トラ ン ジ ス タ(JFET:junction field
合 で ゲ ー トを構 成 さ せ た 接 合 effect transistor)の
そ の 動 作 原 理 が ② に 属 す る 構 造 の も の も あ る 。 これ に つ い て,次 図4・3は,1960年
にKahngとAtallaに
ほ か に,
よ っ て 発 表 さ れ たFETで,こ
に述 べ よ う。 の素子
図4・3 nチ
の ゲ ー ト部 は,金 metal
oxide
ャ ネ ルMOSFET
属 ・酸 化 膜 ・半 導 体 の 順 に 積 み 重 ね ら れ た モ ス(MOS:
semiconductor)構
造 に な っ て い る の で, MOSFETと
図 の 素 子 は,弱
いp形
のSi基
さ せ て 厚 さ0.1ミ
ク ロ ン 程 度 のSiO2膜
こ か ら ドナ ー を 拡 散 し て2つ
のn+領
レ イ ン 電 極 と し て あ る 。 ま た,チ な 金 属 を 蒸 着 し,こ
板(サ
呼 ば れ る。
ブ ス ト レ ー ト:substrate)の を作 り,こ の 膜 の2箇 域 を 形 成 さ せ,そ
表 面 を酸 化
所 に穴 を あ け,そ
れ らをソー スお よび ド
ャ ネル 部 の 酸化 膜 上 に は ア ル ミニ ウム の よ う
れ を ゲ ー ト電 極 に し て い る 。
い ま,こ
の 素 子 の ゲ ー ト に,ソ
ー ス に 対 し て 正 の バ イ ア ス 電 圧 を 印 加 し,そ
の 値VGを
次 第 に 増 加 し て ゆ く と, p形Si基
板 表 面 のMOS部
に,次
の ような
変 化 が 起 こ る。 ま ず,薄
い 酸 化 膜 を 隔 て て ゲ ー トに 近 接 し て い る 弱 いp領
払 わ れ,空
乏 層(絶
さ ら に,ゲ し,電
縁 層)が
域 中 の正 孔 は 追 い
形 成 さ れ る。
ー ト電 位 を 高 め れ ば,空
乏 層 の 酸 化 膜 に接 す る部 分 の電 位 が 上 昇
子 に 対 す る ポ テ ン シ ャ ル エ ネ ル ギ ー が 低 下 す る の で,そ
り反 転 層 が で き,こ
れ がnチ
板 か ら 絶 縁 さ れ て お り,チ る の で,ド
こ に電 子 が 集 ま
ャネ ル とな る。 こ の チ ャ ネ ル は 空 乏 層 に よ って 基 ャ ネ ル 中 の 電 子 密 度 は ゲ ー ト電 圧 に よ っ て 制 御 さ れ
レ イ ン-ソ ー ス 間 を 流 れ る 電 流IDは,ゲ
ー ト電 圧VGに
よ っ て制 御 で
き る。 こ の 形 の 素 子 は,正 り,VGが
の ゲ ー ト電 圧VGを
印 加 さ れ な い と き に は,nチ
増 す ほ ど チ ャ ネ ル キ ャ リ ア は 多 くな
ャ ネ ル が 形 成 さ れ ず,ド
レ イ ン 電 流IDは
流 れ な い 。 こ の よ う な 特 性 の 素 子 を エ ン ハ ン ス メ ン ト(enhancement)形
とい
う。 こ れ に 対 し て,ゲ にnチ
ー ト部 の 基 板 表 面 部 に ド ナ ー を 導 入 し て,あ
らか じ め そ こ
ャ ネ ル を 形 成 さ せ て あ る 形 の 素 子 も あ り,こ れ を デ プ レ ッ シ ョ ン(depletion 形 と い う 。 こ の 形 のMOSFETはVG=0の
に チ ャ ネ ル が 形 成 さ れ て い る の で,ゲ 作 し,VG<0な
らJFETと
同 様 にVGの
ゲ ー ト バ イ ア ス 時 で も,す
で
ー ト バ イ ア ス が 正 負 い ず れ の 場 合 で も動 増 加 で 電 流 は 減 少 し,VG>0で
は,エ
ン ハ ン ス メ ン ト形 と似 る 。 な お,基 板 にn形
半 導 体 を 使 用 す れ ば,同
じ よ う な 原 理 で,pチ
ャネ ル を形 成
させ る こ とが で き る。 そ れ ゆ え,MOSFETに
は,合 計4と
を 適 宜 に 組 み 合 わ せ て 使 用 す れ ば,効
お りの 動 作 形 態 の 素 子 が 作 ら れ,こ 率 の 良 い 回 路 設 計 が 可 能 に な る。
MOSFETの
特 徴 は,ゲ
て い る の で,入
力 抵 抗 が ほ と ん ど無 限 大 で あ り,ま
ー ト電 極 が 絶 縁 膜 で ド レ イ ン や ソ ー ス か ら 絶 縁 さ れ
ラ ン ジ ス タ が 基 板 か ら絶 縁 さ れ て い る た め,二
た,そ
に デ ィ ジ タ ル 回 路 に,広
さ ら に,MOSFETの
の 構 造 が 単 純 で,ト
次 元 平 面 上 に微 小 な素 子 を作 る
こ と が 容 易 で あ る 。 こ れ ら の こ と か ら,MOSFETは,集 て,特
れ ら
積 回路 の 構 成 要 素 と し
く用 い ら れ て い る 。
動 作 を発 展 さ せ,絶 縁 膜 中 に 半 永 久 的 に 電 荷 を 蓄 え る よ
うに した 不 揮 発 性 機 能 を もつ 記 憶 素 子 も実 用 され て い る。 次 に,各 述 べ よ う。
種 の 電 界 効 果 ト ラ ン ジ ス タ の 動 作 に つ い て,そ
の 原 理,特
性 な どを
4・2 接 合 形電 界 効 果 トラ ン ジス タ(JFET)
〔1〕
直流 特 性
図4・4は,nチ は,p+基
ャ ン ネ ル 接 合 形 電 界 効 果 トラ ン ジ ス タ の 一 例 を 示 す 。 こ の 素 子
板 上 に チ ャ ネ ル と な るn層
で 成 長 さ せ,そ
を エ ピ タ キ シ ャ ル 法(第8章
の 上 に ゲ ー ト部 の た め のp+領
域,お
で 説 明 す る)
よ び ソ ー ス,ド
図4・4 nチ
レ イ ン部 の
ャネル 接 合形 電
界 効 果 トラ ン ジ ス タ (JFET)
た め のn+領
域 を,そ れ ぞ れ 拡 散 法 に よ っ て形 成 さ せ た もの で あ る。
な お,上 述 の 素 子 でpとnの
関 係 を,そ っ く り入 れ 替 え た構 造 に して もpチ
ャネ ル 接 合 形 電 界 効 果 トラ ン ジ ス タ が作 られ る。 た だ し,こ の と きの キ ャ リア は正 孔 で あ るか ら,一 般 に,そ の 移 動 度 は電 子 の そ れ よ り小 さ く,従 っ て,そ の動 作 速 度 は 遅 くな る 。 さ て,上 に述 べ た 素 子 構 造 は,接 合 形 トラ ン ジ ス タ を製 作 す る工 程 と比 べ て, 特 に異 な った 処 理 を必 要 と しな い。 その た め,接 合 形 トラ ン ジ ス タ と接 合 形 電 界 効 果 トラ ン ジス タが 混 在 す る集 積 回 路 を製 作 す る こ とは容 易 で あ る。 再 度,図4・4に
も ど るが,こ の 素 子 と回 路 に お い て,ゲ ー ト部pn接
合 の逆 バ
イ ア ス 電 圧 の 絶 対 値│VG│を
パ ラ メ ー タ と し て,ド
流IDの
示 す。
関 係 を 図4・5(b)に
こ の 図(b)に
お い て,特
フ 曲 線(pinch
off curve)と
レ イ ン電 圧VDと
性 曲 線 は 破 線 で 示 さ れ た 曲 線(こ い う)を
境 界 に し て,2つ
ド レ イ ン電
の 曲 線 を ピ ンチ オ
の 特 徴 を もつ 領 域 に 分
け られ る。
図4・5 nチ
ャ ネ ルJFETのID-VG,ID-VD特
破 線 よ り左 側 の ド レ イ ン電 圧 の 低 い 領 域 は,線 ば れ,IDはVDの
性
形 領 域(linear
region)と
呼
増 加 と と も に 増 す 。 破 線 よ り右 側 の ド レ イ ン電 圧 の 高 い 領 域
は,IDがVDに
関 係 な く ほ ぼ 一 定 値 の 飽 和 領 域(saturation
こ の 領 域 で は,ド
レ イ ン 電 圧 の 増 加 は,さ
region)で
ら に チ ャ ネ ル を 絞 り込 みIDを
あ る。 飽和 さ
せ る。 こ れ ら の 特 性 を 理 解 す る た め に,図4・6に,VG=0と
し た と き,VDが
空乏層
や チ ャネ ル に どの よ うな 影 響 を与 え る か を示 す 。 図(a)は,VD=0の ま ま維 持 さ れ,図 図(b)は,線
と き で,も
ち ろ んID=0で
あ り,空
乏層 は熱平衝状 態の
の よ う に上 下 平 行 に な って い る。 形 領 域 に 対 応 す る 場 合 で,空
乏 層 は ドレイ ン側 に近 い ほ どゲ ー
図4・6 VG=0に
卜に 対 し て,そ
し て,VDを
増 大 した ときの チ ャ ネル の変 化
こ の 逆 バ イ ア ス が 深 くな る こ と か ら,そ
の厚 み を増 して い る こ
とが 示 さ れ て い る 。 す な わ ち,IDが 図 中x1,x2,x3の
流 れ る こ と に よ り,チ
ャ ネ ル 内 の 抵 抗 中 に 電 圧 降 下 を 生 じ,
各 点 の 電 位 はVx1>Vx2>Vx3に
に深 くな り,空
乏 層 が 厚 く な る 。 そ の た め,チ
な り,そ の 逆 バ イ ア ス は こ の 順 ャ ネ ル は ドレ イ ン側 に近 い ほ ど
細 い。 こ の 効 果 は,IDが 図(c)は,VDが 部 の 点Pの オ フ(pinch
増 す ほ ど 大 き く な り,チ さ ら に 増 大 し,そ
ャネ ル は ます ます 細 ま る。
れ に 伴 っ てIDも
増 し,つ
い に,ド
レイ ン
位 置 で チ ャ ネ ルが 閉 ざ され た 状 態 で あ る。 これ を チ ャネ ル が ピ ン チ off)し
た 状 態 と い う 。 そ し て,こ
の と き の ド レ イ ン 電 圧VDを
ピ
ンチ オ フ電 圧(pinch
off voltage)と
図(d)は,VD>VPの
呼 び, Vpで 表 す こ と にす る。
場 合 を示 す。 この と き,も し,ド レイ ン電 圧 を増 し て ド
レイ ン電 流 を 図(c)の
値 よ り増 加 させ よ う と して も,チ
ャネ ル の 抵 抗 に よ り生
じる電 圧 降 下 で制 限 さ れ,電 流 は ほ とん ど増 加 で きず 飽 和 特 性 を示 す。 この と き,ピ ンチ オ フ電 圧 以 上 の 電 圧 は,す べ て ドレ イ ン部 近 傍 の空 乏 屠 の拡 大 に使 わ れ,図
中 の点Pの
スか ら点Pま
位 置 は,ほ
とん ど移 動 しな い。 こ の状 態 の 電 子 流 は,ソ ー
で,チ ャ ネ ル を電 界 で ドリフ トし,点Pか
ら は空 乏 層 内 の 強 い電
界 に引 か れ て ドレ イ ン に達 して い る。 この場 合 の 空 乏 層 は,接 合 形 トラ ン ジ ス タ の べ ー スーコ レ クタ 間 の 空 乏 層 と同 じ役 割 を し て い る 。 以 上 に述 べ たID-VD特 電 圧VG(VG<0)が いVDで
性 は,VG=0の
場 合 で あ っ た が,ゲ ー トに逆 バ イ ア ス
加 え られ れ ば,そ れ に応 じて 空 乏 層 は 広 が り,│VG│だ
け低
ピ ンチ オ フ を生 ず る。
こ こで,図4・7を
モ デ ル に して,JFETの
線 形 領 域 に お け るID-VD特
性 を理
論 的 に導 い て み よ う。
図4・7 JFETに
流れる
電 流 を計 算 す る た め の チ ャネ ル部 モ デル
図 の よ う に,x-y座
標 を と り,チ
n領 域 中 の 空 乏 層 の 厚 さ をW(x)と
ャ ネ ル の 長 さ をL,チ し,ま
た,ソ
こ の モ デ ル で は,解 析 を 容 易 に す る た め,L>2aと
ャ ネ ル の 厚 さ を2a,
ー ス 電 極 の 電 位 を0と
す る。
す る 。 こ の 仮 定 に よ っ て,
元 来,2次
元 的 に 考 慮 す べ き チ ャ ネ ル 中 の 電 位,V(x,y)は,一
次 元 的 にV(x)
で 近 似 で き る。 従 っ て,位
置xに
お け るn領
域 中 の 空 乏 層 の 厚 さW(x)は,そ
的 バ イ ア ス の 大 き さ がV(x)−VGに
な る こ と と,NA≫NDを
の位置 の実効 考 慮 し,式(3・24)
か ら, (4・2)
と な る。 こ こで,qは 率,V0は
電 子 電 荷,NDはn領
域 の ドナ ー濃 度,ε は半 導 体 の誘 電
素 子 に な ん らか の電 圧 も印加 し な い と きの 熱 平 衡 状 態 にお け る拡 散 電
位 差 で あ る。 チ ャ ネ ル 中 の キ ャ リア密 度 は,ほ ぼNDに よ り+x方 をZと
等 し く,こ れ が 電 界 のx成
向 に移 動 す る。従 って,ド レイ ン電 流 の 大 き さIDは,チ
す れ ば,チ
ャネ ル断 面 積 は2(a−W)Zと
分Exに
ャネルの幅
な り, (4・3)
と な る 。 こ こ に,μnは 式(4・3)は,IDが い,変
電 子 の 移 動 度 で あ る。
チ ャ ネ ル 中 の ど こ で も一 定(電
数 を 分 離 し,xに
関 し て0か
らLま
で,Vに
流 の 連 続 性)で
あ る こ と を用
関 し て は,0か
らVDま
で,
積 分 す れ ば, (4・4) と な る 。 こ の 積 分 を 計 算 し て,式(4・5)の
よ う に 線 形 領 域 のID-VD特
性 が求 ま
る 。
(4・5) こ こ で,gm0は,
(4・6) で あ る 。gm0は
空 乏 層 が 全 く存 在 し な い と き の チ ャ ネ ル の コ ン ダ ク タ ン ス を 表
し,こ
れ の 逆 数1/gm0が
抵 抗Rが,ド
, 式(4・1)の
抵 抗Rに
相 当 す る 。 す な わ ち,式(4・5)は,
レ イ ン電 圧 お よ び ゲ ー ト電 圧 に よ り制 御 さ れ る 様 子 を 表 し て い
る。 次 に,ゲ
ー ト電 圧 を一 定 に し て お き,ド
レ イ ン電 圧 を 変 化 さ せ て ピ ン チ オ フ
状 態 を起 こ させ る条 件 を 調 べ る。 こ の モ デ ル に お け る ピ ン チ オ フ は,x=Lの り,そ 2乗
の と き の ド レ イ ン 電 圧VD,す し,左
辺 をa2,右
所 で,W(L)=aと
な って始 ま
な わ ち ピ ン チ オ フ 電 圧VPは,式(4・2)を
辺 のV(x)をVPと
し て, (4・7)
と な る 。 こ の 式 か ら,ゲ フ 電 圧VPは,VG=0の
ー トが 逆 バ イ ア スVG(VG<0)さ と き よ り も│VG│だ
れ た と きの ピ ンチ オ
け 低 く な り,図4・5(b)に
示 す特性 に
な る こ とが わ か る。 ま た,VD>VPの
場 合 に は,ピ
わ ず か 移 動 す る 。 そ の た め,チ 間,電
ン チ オ フ 点 は,ド
レ イ ン端Lか
らソース側 に
ャネ ル が 消 失 した 位 置 か ら ドレ イ ン電 極 まで の
流 は 非 常 に 大 き な 電 気 抵 抗 を も つ 空 乏 層 領 域 を 通 過 し な け れ ば な ら ず,
従 っ て,こ
の 間 の 電 圧 降 下 は 極 め て 大 き く な り,ド
レ イ ン電 圧 は 極 め て 大 き な
値 で な け れ ば な らな い。 以 上 の こ とか ら,VD≧VPに
お い て,ド
レ イ ン 電 流IDはVD=VPの
飽 和 す る こ とが わ か る。 こ の 飽 和 領 域 のID-VD特 VPと
し,さ
ら に,式(4・7)を
電 流値 に
性 は,式(4・5)の
右 辺 でVDを
代 入 し て 得 ら れ, (4・8)
と な る 。 こ こ で,
で あ る 。式(4・8)は,ゲ
ー ト電 圧VGに
様 子 を 表 す 。 図4・5(a)は,こ
よ り,飽 和 ド レ イ ン電 流IDが
の 入 力 信 号VGと
出 力 信 号IDと
制 御 され る
の 間 の伝 達 特 性
を示 す 。 な お,式(4・8)の
近 似 と し て,若
干 誤 差 は 大 き い が,次
の 式(4・9)も 用 い られ
て い る。 (4・9)
さ て,再 度,図4・5(b)に それ が あ る値VBに
もど る。この 図 は,ド レイ ン電 圧 を非 常 に大 き く し,
達 し た と き,ド レイ ン電 流 が 急増 す る現 象(降 伏 現 象)を 示
して い る。 これ は,高 い ドレイ ン電 圧 に よ り,ピ ンチ オ フ点Pか
ら ドレ イ ン電
極 まで の 領 域 にで き る空 乏 層 部 分 の電 界 が 強 ま り,そ の た め,こ
の 間 を通 過 す
るキ ャ リアが 極 度 に加 速 され,運 動 エ ネ ル ギ ーが 大 き くな り,価 電 子 を衝 突 で 電 離 させ,つ
い に,な だ れ 降 伏 を起 こ させ る こ とに起 因 す る。
な お,こ の 降 伏 電 圧VBは るが,こ
逆 バ イ ア ス 電 圧 の大 き さ|VG|の増 加 に よ り低 下 す
れ は ピ ン チ オ フ 電 圧 が│VG│の
増 加 に よ り低 下 す る こ とか ら当 然 の 帰
結 である。
〔2〕
小信 号等価 回路
図4・8は,JFETを 8(a),(b)は,そ
用 い た 信 号 増 幅 基 本 回 路(ソ ー ス 接 地 回 路)で あ る 。 図4・ れ ぞ れnチ
ャ ネ ル お よ びpチ
ャ ネ ル のJFETの
記 号 と電 圧 の
極 性 を示 す。
図4・8 JFET信
号 増幅 基 本 回路(ソ ー ス接 地 回路)
こ こで,信 号 増 幅 素 子 と して のJFETの して お こ う。
基 本 動 作 と,そ の 特 徴 を整 理 し列 挙
① ゲ ー トと ソー ス 間 に は,信 号 電 圧 の 絶 対 値|υG| に比 較 して,大 値│VG│の
き い絶 対
直 流 逆 バ イ ア ス電 圧 が与 え られ て い る た め,信 号 電 圧 に 対 す る 入
力 抵 抗 は非 常 に大 き く,ゲ ー トを通 して信 号 電 流 の直 流 分 は ほ とん ど流 れ な い。 ② JFETのID-VD特
性 は,5極
特 性 を もつ の で,電
管 や 接 合 形 トラ ン ジ ス タ の そ れ と類 似 した
流,電 圧,電
力 の増 幅 に 利 用 で きる効 率 の良 い 素 子 で
あ る。 ③ 図4・8で,負
荷 抵 抗 側 回路 は,JFETと
ー 源(電 源)に ④ ID-VD特
負荷 抵 抗 が 直 列 と な り,エ ネ ル ギ
接 続 され て い る。
性 の 飽 和 領 域 で 動作 させ られ るた め,回 路 電 流 は ゲ ー ト電 圧 の
み に よ り定 ま り,従 っ て,負 荷 抵 抗 両 端 の電 圧(出 力 電 圧)も
ゲ ー ト電 圧
に よ り決 ま る。 以上 の こ とか ら,JFETの
飽 和 領 域 にお け る等 価 回 路 は,図4・9に
示すよう
図4・9 飽 和 領 域 にお け るJFETの 小信 号 等 価 回路
に,電
流 源gmυGを
図 中,υGは 対 す るJFETの
用 い て 表 さ れ る。
ゲ ー ト に 加 え ら れ る 入 力 小 信 号 電 圧 で あ り,gmは 相 互 コ ン ダ ク タ ン ス で,そ
れ は 式(4・8)をVGで
小 信号電 圧 に 微 分 し, (4・10)
と し て 得 ら れ る 。図4・5(a)と,こ
の 式 か ら も明 ら か な よ う に,ゲ
れ る逆 バ イ ア ス 電 圧 の 絶 対 値│VG│が と が わ か る 。 な お,図4・9中 ー トード レ イ ン間
,お
大 き く な る ほ ど,gmの
のCGDお
よ びCGsは,ゲ
ー トに加 え ら
値 は 小 さ くな る こ
ー ト部 の 静 電 容 量 を,ゲ
よ び ゲ ー トーソ ー ス 間 の 等 価 静 電 容 量 で 代 表 さ せ た も の で
あ る。 次 に,JFETの
動 作 周 波 数 限 界 を 調 べ よ う。 こ の 素 子 に 与 え ら れ る 入 力 信 号
の 周 波 数 が 高 くな る と,つ
い に,チ
ャ ネ ル 幅 の 変 化,従
変 化 が 信 号 に 応 答 し き れ な くな る 。 そ こ で,こ ー ス ード レ イ ン間 を短 絡 し た と き に ち,増
幅 作 用 が な く な る)周
,入
波 数,す
fTを 定 義 す れ ば,CG=CGS+CGDと
っ て,ド
レイ ン電 流 の
の 動 作 限 界 の 周 波 数 と し て,ソ
力 電 流 と 出 力 電 流 が 等 し く な る(す な わ な わ ち 遮 断 周 波 数(cut
off frequency)
お い て, (4・11)
か ら,高 域 遮 断 周 波fTは, (4・12) と な る 。 従 っ て,fTの
最 大 値 は,gmの
最 大 値gm0お
よ っ て 見 積 る こ と が で き る 。 こ こ に,CGminは,ピ 層 の 平 均 の 厚 さa/2を
電 極 板 間 隔 と し,誘
ン デ ン サ の 静 電 容 量 と し て,次
よ びCGの
最 小 値CGminに
ンチ オ フ状 態 に お け る空 乏
電 率 が ε,面 積 がZ・Lの,平
行板 コ
式 の よ う に計 算 さ れ る。 (4・13)
従 っ て,こ
の 式(4・13)と
式(4・6)か
ら, (4・14)
が 得 ら れ る 。 こ の 式(4・14)か が 大 き いnチ
ャ ネ ル 形 を採 用 し,ま
と を 知 る 。 な お,シ で あ る。
ら,遮
リ コ ンJFETで
断 周 波 数 を 高 め る に は,キ た,チ
ャ リア の 移 動 度
ャ ネ ル長 は 短 い ほ うが 有 利 で あ る こ
得 ら れ るfTの
最 高 周 波 数 は,数GHz程
度
〔3〕 シ ョ ッ トキ ー バ リア形FET 前 述 の よ うに,高 域 遮 断 周 波 数 の 高 いFETを
実 現 す る に は,シ リ コ ン よ り も
移 動 度 が 大 きい半 導 体 材 料 が 必 要 とな る。n形 の ガ リ ウ ム ひ素(GaAs)に る電 子 の 移 動 度 は,シ
リコ ンの そ れ よ り も,約6倍
用 の 基 板 と して優 れ て い る。 図4・10は,そ
大 きい の で,高 速 動 作 素 子
れ を示す。
図4・10
こ の 素 子 の ゲ ー トは,pn接
合 の 代 わ り に,金
ト キ ー バ リ ア を 利 用 し て お り,金 semiconductor
FET;MESFET),ま
属-半
おけ
GaAs
MESFET
属-半 導 体 接 触 に よ る,シ
ョッ
導 体 電 界 効 果 ト ラ ン ジ ス タ(metal
た は シ ョ ッ トキ ー バ リ ア 形FETと
呼 ば
れ て い る。 こ の 素 子 は,高
抵 抗 の 真 性GaAs基
8章 で 説 明 す る)成
長 さ せ,こ
板 上 に,n形GaAsを
エ ピ タ キ シ ャ ル(第
の 上 に ゲ ー トの シ ョ ッ ト キ ー バ リ ア と,ソ
ース
お よ び ドレ イ ンの た めの オ ー ム電 極 を形 成 さ せ て あ る。 この よ うな単 純 な構 造 は,ゲ
ー ト部 の 面 積 を 小 さ く作 る こ と が で き,ま
よ っ て,浮
遊 容 量 を 減 ら し,不
こ と に よ り,こ 能 と な り,ま
の 素 子 は20GHz程
た高 抵 抗 基 板 を用 い る こ とに
安 定 な 動 作 を す る こ と を防 い で い る。 これ らの 度 の マ イ ク ロ波 帯 信 号増 幅 を行 う こ とが 可
た 高 速 コ ン ピ ュ ー タ 用 素 子 と して も研 究 され て い る。
4・3 MOS形
〔1〕MOSダ
MOS形
電 界 効 果 トラ ン ジ ス タ(MOSFET)の
基礎
イ オー ド
電 界 効 果 トラ ン ジ ス タ の 動 作 を 解 析 す る 前 に,ま
よ う な,金
属-絶 縁 物(シ
リ コ ン 酸 化 膜SiO2)-半
ず,図4・11に
導 体(p形Si)の3層
示す
か ら構 成
図4・11
MOSダ
イオ ー ド
素 子構 造
され たMOS構
造 の ダ イ オ ー ドに つ い て,そ の 特 性 を調 べ て お こ う。
図4・12は,理 想 化 したMOSダ
イ オ ー ドの エ ネ ル ギ ー 帯 構 造 を示 す 。こ こで,
特 に 理 想 化 と限 定 した 理 由 は,次 の 条件 が 満 た さ れ る こ とを仮 定 し て い るか ら で あ る。 ① 酸 化 膜 内,お
よ び酸 化 膜 と半 導体 の 境 界 面 に は 空 間 電 荷 は 存 在 しな い。
② 金 属 の フ ェ ル ミ準 位Efmと
半 導 体 の フ ェル ミ準 位Efsは,同
じエ ネ ル ギ
ー値 を もっ て い る とす る。す な わ ち,両 者 の仕 事 関 数 φmと φsは 等 し い と す る。 これ らの 仮 定 に よ り,こ の 理 想 化 モ デ ル の 帯 構 造 は,3者 曲 が る こ と な く,平 ら な ま まの フ ラ ッ トバ ン ド(flat band)の
の接触 によ って も 状 態 とな る 。 こ
の モ デ ル を用 いれ ば,金 属-酸 化 膜-半 導体 の 接触 に よ っ て起 こる物 理 現 象 の 解 析 が 容 易 に な る。
図4・12
理 想 化 し たMOS
ダ イ オ ー ドの エ ネ ル ギ ー帯 構 造 (フ ラ ッ トバ ン ド)
な お,図4・12中
のχsは 半 導 体 の 電 子 親 和 力,χ0xは 酸 化 膜 の 電 子 親 和 力 で
あ る。 酸 化 膜 とそ の 両 側 の 物 質 との 間 に お け る,電 子 お よび 正 孔 に対 す るエ ネ ル ギ ー障壁の高 さが ,室 温Tに お け るkTに 比 べ て非 常 に 大 き な値 で あ れ ば,こ の 障壁 を越 え て移 動 で き る キ ャ リア は な い 。 また,酸 化 膜 の 厚 さt0xが,ト
ンネル
効果 で キ ャ リア が 浸透 で きる長 さ よ り十 分 に大 き い な らば,酸 化 膜 を 透 過 し得 るキ ャ リア は な い。従 っ て,p形 無 に か か わ らず),常
半 導 体 部 は,い か な る場 合 で も(印 加 電 圧 の 有
に 熱 平 衡 状 態 が 保 た れ て い る。 従 って,p形
平 衡 状 態 の 電 子 密 度nや
正 孔 密 度pは,そ
れ ぞ れ,式(2・28)お
半導体 部の熱 よび 式(2・29)を
変 形 し,
(4・15) 同 様 に,
(4.16) で 与 え られ る。 こ こで,Eiは,こ 位 で あ り,niは
の 半 導 体 が,真 性 半 導体 で あ る と考 え た と きの フ ェ ル ミ準 真性 キ ャ リア密 度 で,ni=Ncexp{(E−Ec)/(kT)}で
この 理 想 化MOSダ 子 はMOS容 で,VGに
イ オ ー ドに電 圧VGを
あ る。
印 加 し た場 合 を 考 え よ う。 この 素
量 と も呼 ば れ,絶 縁 体 を 中央 に挟 ん だ 一 種 の コ ンデ ン サ で あ る の よ っ て 金 属 と半 導 体 中 に は,そ れ ぞ れ 等 量 で 符 号 の異 な る電 荷 が誘 起
され る。 この と き,金 属 側 の電 荷 は酸 化 膜 に接 す る 金 属 電 極 表 面 に現 れ,半
導
体 中 で は,誘 導 電 荷 を生 じる だ け の エ ネ ル ギ ー 帯 の 曲 が りが 酸 化 膜 に接 す る部 位 に起 こ る。こ れ らの電 荷 は バ イ ア ス電 圧VGの
極 性 や 大 き さ に よ り,特 徴 を も
っ た 現 れ 方 を す る。次 に,こ れ ら を説 明 し よ う。 なお,以 下 の 論 議 に お い て は, MOSダ
イ オ ー ドは 単 位 面 積 を もつ もの と し,記 号Qは
そ の添 字 に 関 係 な くす
べ て,単 位 面 積 当 た りの 電 気 量 を表 す こ とに す る。 (1) 金 属 側 を 負(VG<0)に
した場 合 … 蓄 積 状 態 この 場 合VGは,金
属
側 に 負 の 表 面 電 荷 密 度−Qs(Sは
表 面(surface)を 意 味 す る)を 誘 起 す る と と も
に,p形
正 孔 を誘 起 し,本 来 のp形
半 導 体 表 面 部 に,+Qsの
孔 密 度(≒NA)を
超 えて,多 数 キ ャ リア(正 孔)を
(accumulation)状
半 導 体 中 に あ る正
誘 起 す る。 この 状 態 を蓄 積
態 とい う。
こ の蓄 積 正 孔 は,電 気 的 中性 条 件 を破 り,正 の 空 間 電 荷 を形 成 す る。 そ して, この 正 電 荷 か ら出 る電 束 は,す べ て金 属 電 極 上 の 負 電 荷 に 終 わ るか ら,酸 化 膜 に接 す る 半 導 体 表 面部 の 電 界 の 向 きは ど こで も金 属 電 極 の ほ う を向 い て い る。 そ の た め,半
導体 表 面 近 傍 の 電 位 は,半 導 体 内 部 の 電 位 よ り低 くな る 。 この
こ とは,半 導 体 表 面 近 傍 の 電 子 に対 す るポ テ ン シ ャル エ ネ ル ギ ー を 高 め る(正 孔 に対 して は逆 に低 め る)。 その 結 果,Ec,Ei,Evの 13(a)に
エ ネ ル ギ ー 準 位 は,図4・
示 す よ うに,半 導 体 表 面 近 傍 で上 方 に湾 曲 して い る 。
この よ うな,Eiの 上 方湾 曲 が,半 導 体 表 面 部 のEi−Efの
値 を大 き く し,式(4・
16)か ら も明 らか な よ う に,半 導 体 表 面 部 位 の 正 孔 密 度 を指 数 関 数 的 に 増 大 さ
図4・13 金 属電 極 に与 えるバ イ ア ス電 圧VGの 変化 に よ るエ ネ ルギ ー帯 の 様 子
せ,多 量 の正 孔 蓄 積 を 可 能 に して い る。 な お,こ の 正 孔 の蓄 積 現 象 は,半 導 体 表 面 部 の 多 数 キ ャ リア密 度,す 電 気 伝 導 度 をVGで
制 御 す る こ と に な る の で,こ れ をMOSFETの
なわ ち
動作 原 理 と
して利 用 で き そ う に思 え る。 しか し,蓄 積 現 象 に よ る電 気 伝 導 度 の 変 化 量 は, も と も と基 板 の も つ伝 導度 に比 べ て,あ
ま り大 き い値 に は な らな い た め 実 用 さ
れ な い。 (2) 金 属 側 が 正(VG>0)で,VGが 金 属 側 に は+Qsの
小 さい 場 合 …空 乏状 態
表 面 電 荷 密 度 が 誘 導 され,他 方,p形
に接 す る領 域 の 正 孔 が 追 い 払 わ れ,空 乏(depletion)状
この とき は,
半 導 体 中 で は,酸 化膜 態 に な る。 その た め,
そ こに イ オ ン化 し た ア ク セ プ タ が,接 触 面 の 単 位 面 積 当 た りQB(Bは
固体 内
図4.14 空 乏 状態 に お け る空 間電 荷 ρ,電界E,電 位Vの 分 布
(bulk)を
意 味 す る)の 負 の 空 間 電 荷 を 形 成 す る 。 こ の と き の 素 子 中 の 電 荷 分 布,
お よ び エ ネ ル ギ ー 帯 の 構 造 を,図4・13(b)に
示 す が,こ
の状 態 に つ い て 解 析 し
よ う。 ま ず,こ
の 空 乏 層 に お け る 電 荷 分 布,電
そ の た め,図4・14(a)に
示 す よ う に,金
り,金 属 と 酸 化 膜 の 境 界 をy=−tox,酸 末 端 をy=yDと
位 分布 を調 べ る 。
属 か ら 半 導 体 の 方 向 に+y軸
化 膜 と 半 導 体 の 境 界 をy=0,空
を と 乏層 の
す る 。 ま た,酸 化 膜 の 誘 電 率 を ε0x,半 導 体 の 誘 電 率 を εs,ア ク
セ プ タ 濃 度 をNAと 乏 近 似)も
界 分 布,電
し,空
乏 層 に は 電 子,正
孔 の い ず れ も全 く存 在 し な い(空
の とす れ ば, (4・17)
で あ り,半 導 体 中 の位 置yに
お け る電 位Vsや,電
界Esは,ポ
ア ッ ソ ンの 方程
式
を 積 分 し て 求 め られ る 。 こ の と き,境 用 い れ ば,Es,Vsは
界 条 件 と し てy=yDで,Es=0,Vs=0を
それ ぞ れ 次 式 とな る。
(4・18)
ここ で, (4・19)
で あ り,Vs0は
半 導 体 表 面 の 電 位Vs(0)を
表 し て い る。
次 に,酸 化 膜 中 を調 べ よ う。 酸 化 膜 中 に は 空 間 電 荷 が存 在 し な い の で,こ 領 域 中 の電 界Eoxお
よ び 電 位Voxは,ポ
の
ア ッ ソ ンの式 が,
とな る こ とか ら,こ れ を積 分 し て求 め られ る。 境 界 条 件 と して,金 属 表 面 電 荷 密 度Qsか
ら,酸 化 膜 中 の 電 界Eoxが
定 ま り,ま た電 位 に 関 して はy=0で,酸
化 膜 上 と半 導 体 上 の 電 位 が 同 じ値, (4・20)
で な け れ ば な ら な い こ と か ら,
(4・21)
と な る 。 こ こ で,酸 のMOSダ
化 膜 の 厚 さ をtoxと
し た の で,y=−toxの
電 位,す
なわ ち こ
イ オ ー ドに 印 加 し た 電 圧VGは, (4・22)
と な る 。 こ こ で,
(4・23)
で あ り,Coxは
単 位 面 積 当 た りの酸 化 膜 静電 容 量 で あ る。
以 上 の こ と か ら,こ
の 素 子 内 部 に お け る,電
荷 分 布,電
位 分 布 を 図4・14に
示
す。 この よ う に して 得 られ た ポ テ ン シ ャ ル エ ネ ル ギ ー を考 慮 した 空 乏 状 態 の エ ネ ル ギ ー 帯 図 が 図4・13(b)で (こ の 場 合 は 空 乏 層)の
あ っ た 。 この 図 に お い て,qVFは,空
外 側,す
な わ ちy≧yDの
間 電荷 領 域
基 板 バ ル ク 中 のEiとEfの
エ
ネ ル ギ ー の差 (4・24) と し て あ り,qVFは 次 に,半
一 定 値 で あ る。
導 体 中 の 電 子 に 対 す る エ ネ ル ギ ー 諸 値 に つ い て 調 べ,キ
ャ リア 密 度
の 式 を 整 理 す る。 ま ず,VFの
値 は,式(4・16)に
お い て,p≒NAを
用 い れ ば次 式 と な る。 (4・25)
しか し,空 乏 層 内 の 位 置yに
お け る電 子 に対 す る ポ テ ン シ ャル エ ネ ル ギ ー
は,そ の位 置 の 電 位 がVs(y)で
あ る こ とか ら,電 位 が0で
テ ン シ ャル エ ネ ル ギ ー よ り,qVs(y)だ
ある空乏層外側 の ポ
け低 くな りエ ネ ル ギ ー 帯 は 曲 が っ た 状
態 に な る 。 従 っ て,空 Ei(y)で
乏 層 内 のEiも,そ
の 位 置 に よ っ て 変 化 す る の で,こ
れ を
表 す 。 す な わ ち, (4・26)
で あ る 。 従 っ て,位 置 き換 え,上
置yに
お け る 電 子 密 度n(y)は,式(4・15)のEiをEi(y)に
式 とqVF=Ei−Efを
代 入 す れ ば,
同 様 に,
(4・27)
とな る。 以 上 の こ と か ら,y=0の
酸 化 膜 に 接 す る 半 導 体 の 表 面 電 子 密 度nsお
面 正 孔 密 度psは,式(4・27)に
お い て,yが0の
と きVs(0)=Vs0で
よび表
あ る こ とを 用
い,
(4・28)
とな る。 次 に,nsが
バ イ ア ス 電 圧VGに
ま ず,VGを0か
ら増 し て ゆ け ば,Vs0も
と き 表 面 電 子 密 度nsは,最 ら,わ
増 し,つ
初 のVG=0,Vs0=0に
ず か な が ら 増 加 し てns=ps=ni,す
状 態 ま で を,上 (3)
な る。 そ の
お け るns=ni2/NAの
値 か
述 にお い て は 空 乏 状 態 と して き た。
増 し て ゆ け ば,つ
お い てEiがEfと
域 で はEf>Eiで 領 域 は,本
い にVs0=VFと
な わ ち真 性 半 導 体 密 度 に な る。 こ の
金 属 側 が 正 で 大 き いVG≫0(Vs0>VF)の
ら さ ら に,VGを (c)に
よ っ て ど の よ う に 変 化 す る か を 考 察 し よ う。
来 のp形
い に,Vs0>VFと
交 わ る 位 置yIの
あ り,電
(2)か
な る 。 こ の 状 態 は,図4・13
左 側 の領 域 で 示 され て い る。 この 領
子 密 度 は,式(4・28)か
か らn形
場 合 … 反 転 状 態
に 反 転(inversion)し
ら,ns>ni>psと た状 態 に な る 。
な り,こ
の
な お,Vs0が2VF>Vs0>VFの
範 囲 内 に あ る と き のnsは,あ
は な い の で,こ
の 状 態 は 弱 い 反 転(weak
さ ら に,VGを
増 し,Vs0=2VFに
達 す る と,式(4・28)で
25)の 関 係 を 代 入 し て,ns=NAと nsは
基 板 バ ル ク のp形
強 い 反 転(strong ア ス 電 圧VGを 子 密 度 は,バ そ れ ゆ え,こ
inversion)と
ま り大 き い 値 で
呼 ば れ る。 示 さ れ たnsは,式(4・
な る こ とが わ か る。 す な わ ち,こ
の 条 件 で,
半 導 体 が も っ て い た 多 数 キ ャ リ ア 密 度 と 同 じ 値 に な り,
inversion)状
態 に な る 。 も ち ろ ん,こ
印 加 す れ ば,nsは
れ よ りさ ら に高 い バ イ
イ ア ス 電 圧VGに
さ ら に 増 加 す る 。 す な わ ち,半
導体の表 面電
よ り制 御 可 能 で あ る 。
の 強 い 反 転 状 態 で 生 じ た キ ャ リ ア をFETの
用 す る こ と が で き る 。 し か も,こ
チ ャネル として利
の よ う に し て 得 られ た チ ャ ネ ル は,空
よ り基 板 か ら 絶 縁 さ れ て い る の で,大
変 都 合 が 良 い 。MOSFETは,こ
乏層 に の強い反
転 現 象 を用 い て作 られ て い る。 さ て,次 に,図4・13(c)に
示 し た 反 転 層 中 の 電 位 と誘 導 電 荷 の 関 係 を 導 こ う 。
金 属 電 極 上 の 電 荷Qsは,半
導 体 表 面 か ら 空 乏 層 の 末 端yDま
ア ク セ プ タ イ オ ン に よ る 電 荷QBと,yIま 子 に よ る 電 荷QIと
の 和 に,符
での空乏 層中の
で に含 まれ る反 転 層 中 の伝 導 帯 の 電
号 は 異 な る が 大 き さ が 等 し い 。 す な わ ち, (4・29)
で あ る 。 こ こ に,QI,QBは,と
も に 半 導 体 表 面 の 電 位Vs0の
値 によって変化 す
る。 反 転 が 起 こ ら な い 程 度 の 低 い バ イ ア ス 電 圧 の 場 合,QIは ま たQBは
式(4・20)か
ら 得 ら れ るyD,す
ほ と ん ど0で
あ り,
な わ ち,
を 用 い て, (4・30)
で あ る。 しか し,素 子 の バ イ ア ス 電 圧 を高 め,Vs0>2VFの 導体 表 面 部 の 電 子 密 度nsは,バ
強 い 反 転 状 態 に す る と,半
イ ア ス電 圧 の 増 加 に よ るVs0の
わず かな増加
に よ って も指 数 関 数 的 に急 激 な増 加 をす る。 この こ とは,強 い 反 転 状 態 で は(半 導 体 部 に2VF程 QIが,十
度 の電 圧 が 加 わ れ ば)反 転 層 に蓄 え られ る伝 導 電 子 の 総 電 荷 量
分 に大 きな値 に な り得 る。 そ れ ゆ え,Vs0>2VF状
態 で は,バ イ ア ス
電 圧 を さ らに増 加 した とし て も,空 乏 層 の ご く微 小 な 伸 長 に よ り,半 導体 内 に 誘 起 され る電 荷 を 反 転 層 内 の電 子増 加 で 賄 う こ とが で き る。 従 って,強 い 反 転 状 態 に お け る空 乏 層 の 厚 さ は,ほ ぼ 一 定 値yDmaxに の 値 は,式(4・20)のVs0を2VFと
な り,そ
お い て求 め られ, (4・31)
と な る 。 ま た,そ
の と き のQBは, (4・32)
で あ る 。 図4・15は,上
述 し たVs0に
対 す るQS,QB,QIの
関係 を示す。
図4・15 半 導 体 表 面 電 位Vs0と 電 荷QS,QB,QIと
の関
係
ま た,強 い 反 転 状 態 を 生 ず るバ イ ア ス 電 圧VG乙 が 印 加 さ れ て い る場 合,酸 化 膜 部 に加 わ って い る電 圧 は,ほ ぼVG−2VFで
あ り,図4・16は,こ
の とき の素 子
内 にお け る電 圧 配 分 の様 子 を示 して い る 。 この 場 合,金
属 電 極 上 の電 荷QSは
酸 化 膜 部 の静 電 容 量Coxを
用 い て,
図4・16 反 転状 態 にお け る電 荷 分布 と各 部 の電 圧
(4・33)
と な り,こ
れ か らQIを
求 め れ ば, (4・34)
で あ る 。 こ こ で,VTは
次 式 で 与 え られ る 。
(4・35)
こ の 電 圧VTは,反 圧(threshold
転 を生 ず る 臨 界 の バ イ ア ス 電 圧 を 表 し,こ れ を し き い 値 電
voltage)と
呼 ぶ 。 図4・17は
バ イ ア ス 電 圧VGの
大 き さに 対 す る
図4・17 バ イア ス 電圧VGと 荷QIの
関係
反転電
反 転 層 内 の キ ャ リ ア の 総 電 荷 量QIの は 反 転 が 起 こ ら な い の でQI=0,ま
変 化 の 様 子 を 示 す 。 図 に は,"VG<VTで
QIは,ほ
ぼVGに
たVG≧VTで
比 例 し て 誘 起 さ れ る"こ
〔2〕 小 信 号 電 圧 に対 す るMOSダ MOSダ
は チ ャ ネ ル の キ ャ リア に な る
とが 示 さ れ て い る 。
イ オ ー ドの 静 電 容 量
イ オ ー ドの小 信 号 電 圧 に対 す る静電 容 量Cは,素
バ イ ア ス 電 圧VGの
極 性 や 大 き さに よ っ て変 化 す るが,こ
子 に 印 加 す る直 流 の こ と に関 し て 考 察
しよ う。 素 子 はp形
半 導 体 を 基板 と して作 られ たMOS構
(1) VG<0の
蓄積 状 態 の 場 合
MOSダ
造 の もの で あ る とす る。
イ オ ー ドの 金 属 電 極 に 負 の バ イ
ア ス電 圧 を印 加 す る と,酸 化 膜 に接 す る 半 導 体 表 面 に は正 孔 が 蓄 積 さ れ るが, この と き半 導 体 表 面 と その 内部 の 電 位 差 が ご く小 さ くて も,十 分 大 き な量 の 正 孔 を蓄 積 す る こ とが で き る。 従 って,こ
の場 合,半 導 体 は ほ とん ど導 体 の よ う
に振 る舞 う。 そ れ ゆ え,こ の 場 合 の 素 子 の静 電 容 量Cは
酸 化 膜 部 の 静 電 容 量Coxの
みと
考 え て良 く,そ の 値 は,単 位 面 積 当 た り, (4・36)
で あ る。 こ こで,εoxお (2)
VG>0で,強
よびtoxは,酸
化 膜 の誘 電 率 お よび 厚 さで あ る。
い反 転 状 態 の 場 合
こ の場 合 に は,前 節 で 述 べ た よ う
に,半 導 体 表 面 の 空 乏 層 の 厚 さ は一 定値yDmaxで
あ る。 それ ゆ え,こ の 状 態 に
あ る素 子 の 小 信 号 電 圧 に 対 す る静 電 容 量 は,誘 電 率 が εoxで 厚 さ がtoxの 絶 縁 物(酸
化 膜 部)と,誘
電 率 がεsで 厚 さがyDmaxの
絶 縁 物(空
乏 層 部)2枚
が,
電 極 間 に重 ね て そ う入 され た コ ンデ ンサ の 静 電 容 量 に相 当 す る。 そ の 値 は,ち 量Csと
ょ う ど,酸 化 膜 部 の 静 電 容 量Coxと,半
導体 空 乏 層 部 の 静 電 容
が 直 列 に接 続 さ れ た もの と等 価 に な る。
しか る に,空 乏 層 部 の 静 電 容 量Csは,単
位 面 積 当 た り, (4・37)
で あ る。こ
の 全 静 電 容 量 をCminと
す る と,Cminは,式(4・36)お
よ び 式(4・37)を
用 い て, (4・38)
とな る。 (3) VG>0で,弱 印 加 電 圧Vに
い 反 転 状 態 の 場 合
よ り変 化 す る 。 い ま,空
こ の 場 合 に は,空 乏 層 の 厚 さyDは
乏 層 の 厚 さ がyDで
あ る と き,空
の ア ク セ プ タ イ オ ン に よ る 空 間 電 荷 の 総 量│QB│=│Qs│は,式(4・17)で る 。 こ の 式 か らyDを
求 め,そ
乏 層中
与 え られ
れ を,酸 化 膜 と空 乏 層 の 境 界 の 電 位Vs0を
表 す式
(4・20)に 代 入 す れ ぼ , (4・39) と な る 。 こ れ を さ ら に,式(4・22)に
代 入 す れ ば,素
子 に 印 加 し た 電 圧VGは,
(4・40)
と な る 。 こ の 式 か らQsを
求 め る と, (4・41)
で あ る。 従 って,素 子 の 小 信 号 電 圧 に 対 す る静 電 容 量Cは,
図4・18 MOSダ
イ オ ー ドの
静 電 容量 とバ イア ス電 圧VGと 度
の周波数依存
(4・42)
と な り,こ
の 値 は,バ
イ ア ス 電 圧VGに
以 上,(1),(2),(3)の
依 存 す る。
結 論 を ま とめ て,C-VG特
性 を図4・18の 緑 色 の 実
線 で示す。 しか し,実 際 に この 静 電 容 量Cの る と,高 周 波(10kHz以 周波(10Hz程
バ イ ア ス 電 圧VGに
上)信 号 に対 して は,お
対 す る 依 存 性 を測 定 す
よそ 実 線 の よ う に な る が,低
度)信 号 に対 して は,緑 色 の破 線 の よ う に な り,強 い 反 転 状 態 で
著 しい 差 異 が 認 め られ る。 そ の 理 由 は,次 の よ うに考 え られ る。す な わ ち,低 周 波 信 号 電 圧 に対 して は, そ の電 圧 変 化 に応 じて,反 転 層 内 の 電 子 密 度 の 変 化 が 追 従 で き るか らで あ る 。 す な わ ち,反 転 層 や そ れ に 接 す る空 乏 層 内 にお け る キ ャ リア の 熱 生 成 お よび再 結 合 に よ る消 滅 と,そ れ の 移 動 時 間 に よ る遅 れ が 信 号 の 変 化 に 対 し て無 視 で き る よ う に な り,こ れ が 反転 層 の キ ャ リア密 度 を信 号 に 応 じ て変 化 させ る こ とに な る。 そ の た め,半 導体 部 は導 体 と同様 に考 え られ,静 電 容 量 はCoxの
みにな
る。 な お,こ のC-VG特
性 を信 号 周 波 数 を変 えて 実 測 した 曲 線 か ら,反 転 層 内 の
キ ャ リア 密 度 の 変 化 に お け る 時 定 数 は,約1/10秒
程 度 で あ る こ とが 知 られ て い
る。 従 っ て,こ の 時 間 内 な ら,素 子 は電 荷 の 一 時 的 な 蓄 積 機 能 を も って い る。 ダ イ ナ ミ ック形 メモ リ素 子(DRAM;dynamic や,電 荷 結 合 素 子(CCD;charge-coupled
random device)は,こ
access memory) の よ うな 電 荷 の一 時
的 な蓄 積 機 能 を用 い て作 られ て い る。 この ほ か,C-VG特
性 は, MOS素
子 の い くつ か の 特 性 を評 価 す るた め に も利
用 さ れ る。
〔3〕
フ ラ ッ トバ ン ド電 圧
い ま ま で の 素 子 は,バ イ ア ス 電 圧VG=0で,フ
ラ ッ ト バ ン ドに な って い る理
想 化 したMOS構
造 の もの を仮 定 して きた 。しか し,実 際 の素 子 に お い て は,下
記 の よ うな 原 因 に よ り理 想 化 した もの と違 い が 生 ず る。 ① ゲ ー ト電 極 に使 わ れ る金 属 の 仕 事 関 数φmと,基 仕 事 関 数 φsの 間 に 差φms=φm− ② 酸 化 膜 中の 空 間 電荷 の 存 在,お
板 に使 わ れ る半 導 体 の
φsが あ る。 よ び酸 化 膜 に接 す る半 導体 表 面 の 界 面 準
位 に電 荷 が 捕 獲 さ れ て い る。 こ の よ うな 場 合 に は,た
とえ,素 子 を外 部 回路 で 短絡 し て も(0バ
して も)素 子 の エ ネ ル ギ ー帯 図 は,図4・12に
イア スに
示 した よ うな フ ラ ッ ト バ ン ドに は
な ら な い。 そ こで,こ まず,①
れ ら の影 響 を調 べ る た め,① の場 合 に は,図4・19(a)の
図4・19
と ② の原 因 を分 離 し て考 え よ う。
よ うに,酸 化 膜 部 お よ び酸 化 膜 に接 す る
金 属 と半 導 体 間 に 仕 事 関 数 差 φms<0が
あ る場合 の
フ ラ ッ トバ ン ド電 圧VFB
半 導体 の 空 乏 層 部 の 電 子 に対 す る ポ テ ン シ ャル エ ネ ル ギ ー は位 置 に よ っ て 変 わ り,フ
ラ ッ ト バ ン ドに は な ら な い 。 し か し,こ
に 適 当 な バ イ ア ス 電 圧VFBを ー帯 図 は平 ら にな り
,理
加 え れ ば,図(b)の
想 化MOS構
こ とが で き る 。 こ れ に 要 す る 電 圧VFBを )と
呼 び,そ
の 大 き さ は,
の よ う な 素 子 で も,金 よ う に,半
造 の 素 子 と 同 様,フ
属電極
導 体 内 の エ ネル ギ
ラ ッ ト バ ン ドにす る
フ ラ ッ ト バ ン ド電 圧(flat
band
voltage
(4.43) で あ る。 次 に,②
の場 合 を考 察 し よ う。 い ま,酸 化膜 中 に は単 位 面 積 当 た りQ0xの
正
電 荷 が 均 一 に分 布 し,ま た,界 面 準 位 に は単 位 面 積 当 た りQssの 電 荷 が,図4・ 20の よ う に存 在 し て い る とす る。 この 素 子 の金 属 電 極 に適 当 な バ イ ア ス電 圧
図4・20 酸 化膜 中電 荷Q0x,界 電 荷QSSが
面 準位
あ る場 合 の フ ラ ッ
トバ ン ド電 圧VFB
VFB(こ
の 場 合 に は 負 電 圧 が 必 要)を
印 加 し て,正
部 の 電 束 を 金 属 電 極 に 終 わ ら せ る よ う に す れ ば,こ 内 部 に は,全
く,そ
電 荷(Qox+Qss)か
ら出 る全
れ らの 電 荷 の存 在 は 半 導 体
の 影 響 を 与 え る こ と は な い 。 従 っ て,そ
の エ ネ ル ギ ー帯 図
は フ ラ ッ ト バ ン ドに な る 。 こ の と き に 要 す る 電 圧,す
な わ ち フ ラ ッ ト バ ン ド電 圧VFBは,式(4・44)で
与
え られ る。 (4・44) そ れ ゆ え,①,②
の 影 響 を ま と め,一
般 のMOS構
造 の フ ラ ッ ト バ ン ド電 圧
VFBは, (4・45)
とな る。 以 上 の こ と か ら,一 般 の 場 合 のMOS素 帯 を 平 担 に す る た め に 必 要 な 電 圧VFBを 式(4・46)と
子 の し き い 値 電 圧VTは,エ 考 慮 し て,式(4・35)を
ネルギ ー
書 き 替 え る と,
な る。 (4・46)
な お,VFBに
よ る影 響 はC-VG特
VFBは 負 に 向 か う の で,図4・18の
性 上 に も現 れ,Qox+Qssが
正 電 荷 で あれ ば
曲線 は左 に シ フ トし て 観 測 さ れ る。 この よ
う に,C-VG特
性 は,素 子 内 部 の 状 況 を推 定 す る う えで 有 効 な 手 段 で あ る。
VTがVFB分
影 響 を受 け る こ と を知 っ た が,積 極 的 に 解 釈 す る と,式(4・46)
は 反 転 電 荷 を生 じ るに 要 す る し きい 値 電 圧VTの
値 を,式
の 右 辺 を操 作 して 希
望 の 値 に調 整 す る こ とが 可 能 で あ る こ とを示 して い る。
4・4 MOSFETの MOSFETの
特性
構 造 は,す で に図4・3に 示 した 。この 素 子 は前 述 のMOSダ
ー ドの 金 属 電 極 を ゲ ー ト電 極 と し,こ れ に印 加 した ゲ ー ト電 圧VG(前 るバ イ ア ス電 圧)に
よ って 半 導 体 表 面 部 に現 れ る 反 転 層 をnチ
イオ
節 におけ
ャネ ル に利 用 し
て い る 。 チ ャネ ル の 両端 部 に は ドナ ー を高 い濃 度 で 拡 散 したn+領
域 が作 られ,
これ ら を ソ ー ス 電 極 と ドレイ ン電 極 に して い る。 この よ う な構 造 にす る こ と よ り,信 号 電 圧 に応 じて チ ャ ネ ル 内 の キ ャ リア密 度 を変 化 させ る た め に行 わ れ る キ ャ リア の授 受 は,n+領
域 を通 して 敏 速 に行 わ
れ る。 そ れ ゆ え,こ の構 造 のMOSFETは,MOSダ
イ オ ー ドに 見 られ る よ うな,反
転 層 の 形 成 や 消 滅 の た め の 時 間 遅 れ が な く,従 っ て,高 周 波 で の 動 作 が 可 能 に な る。
〔1〕
直 流 特性
MOSFETのID-VD特
性 は,JFETの
そ れ と 同 様,VDの
に 始 ま り,さ
増 加 に つ れ,チ
ャ ネ ル に ピ ン チ オ フ が 起 こ り,つ
ら にVDの
小 さい 時 の 線 形 領 域 い に
飽 和 領 域 とな る。 図4・21は,図4・3に
示 し たMOSFETの
図 を 用 い てID-VD特
性 を説 明 し よ う。
半 導 体 表 面 の ソ ー ス 右 端 を 原 点 と し,x軸
チ ャ ネ ル 部 を 拡 大 し た もの で,こ
は 表 面 上 右 向 き に,y軸
の
は 基板 に垂
図4・21
nチ
ャ
MOSFETに
ネ
ル
流 れ
る電 流 を計 算 す る た め の チ ャネ ル部 モデル
直 下 向 き に と る 。 ソ ー ス か ら ド レ イ ン ま で の チ ャ ネ ル 長 をL,チ Zと
し,ソ
な お,解
ー ス お よ び 基 板 の 電 位 を0と
み の 関 数V(x)と
ゲ ー ト電 圧VGを,MOSダ し て,チ V(x)を
す る。
析 を 容 易 に す る た め,JFETの
お け る 電 位Vはxの
ャ ネ ル の幅 を
と き と 同 様,チ
ャ ネ ル 内 の 位 置xに
す る。
イ オ ー ドで 説 明 し た し き い 値 電 圧VTよ
ャ ネ ル を 形 成 さ せ ド レ イ ン 電 流 を 流 す と,チ
り大 き く
ャネ ル内 に は電圧降 下
生 じ る。
そ の た め,チ
ャ ネ ル 内 の 位 置xに
お け る ゲ ー ト に 対 す る 電 位 差 は 減 少 し,そ
の 位 置 に お け る 反 転 電 荷 を 減 少 さ せ る 。こ の こ と を 考 慮 す れ ば,xに 電 荷 量(QIは,式(4・34)か
お け る反 転
ら, (4・47)
とな る。 ま た,ド
レ イ ン電 流IDは,主
と し て,チ
の ド リ フ トに よ る も の と 考 え て 良 い の で,こ
ャ ネ ル 内 の キ ャ リ ア,す
な わ ち電 子
の 電 子 の 表 面 部 に お け る移 動 度 を
μnと す れ ば, (4・48) で あ る 。 従 っ て,式(4・47)お
よ び 式(4・48)か
ら,
(4・49)
が 得 られ る 。 こ の 式 で,IDは 左 辺 をx=0か
らLま
電 流 の 連 続 性 か ら場 所 に よ ら ず 一 定 値 で あ る か ら,
で,右 辺 をV(0)=0か
らV(L)=VDま
で 積 分 す れ ば,ID
は,
(4.50) と な る 。 こ こ で,VTはVに
よ らず一 定 値 で あ る と した 。
こ の 式 は,VD<(VG−VT)の −V T)でIDは (VG−VT)で
と き,IDはVDの
増 加 に 伴 っ て 増 加 し, VD=(VG
最 大 に な る 線 形 領 域 の 特 性 式 で あ る 。 と こ ろ が,式 は,IDはVDの
増 加 に伴 っ て減 少 す る こ と に な る。この こ と を吟
味 し て お こ う。 す な わ ち,電 ル 内 の ど こ か で,も
の う え で はVD>
流IDの
し,QI(x)→0の
連 続 性 を 考 え る と,式(4・48)か よ う な こ とが 起 こ れ ば,そ
∞に な ら な け れ ば な ら な い 。 そ れ ゆ え,式(4・49)の
積 分 は,こ
ら,チ
ャネ
こ で(dV/dx)→ の よ うな こ とが
起 こ ら な い 範 囲 で 行 わ れ な け れ ば な ら な い 。 従 っ て,式(4・50)に,VD>(VG −V T)の 場 合 を 適 用 す る こ と は 許 さ れ な い 。 以 上 の 論 議 か ら,VDを0か
ら 増 し て(VG−VT)に
の 反 転 電 荷 量QI(L)は,式(4・47)か
近 ず け る と き,ド
ら 明 らか な よ う に, QI(L)→0に
レ イ ン 部 で チ ャ ネ ル は 消 滅 し ピ ン チ オ フ 状 態 に 近 ず き,そ に な る 。 そ れ ゆ え,も
し,VDを
オ フ 部 に 印 加 さ れ,IDを
さ ら に 増 加 し て も,そ
(pinch
off voltage)
VPと
な り,ド
こ で(dV/dx)→∞
の増 加 分 はす べ て ピ ンチ
変 化 さ せ る こ と に は 使 わ な い 。 す な わ ち,ド
流 は 飽 和 す る 。 こ の と き の ド レ イ ン 電 圧VDをMOSFETの
レ イ ン部
レ イ ン電
ピ ン チ オ フ電 圧
い い, (4・51)
で あ る 。従 っ て,飽 和 電 流IDmaxは れ,飽
式(4・50)に,上
に述 べ た 関 係 を導 入 して 得 ら
和 領 域 に お け る ド レ イ ン電 流IDは,
(4・52)
とな る。この 式 は入 力 信 号VGと し,IDは,お
お よ そVGの2次
出 力 信 号IDの
飽 和 領 域 に お け る伝 達 特 性 を表
関 数 の 形 で変 化 す る。
こ れ ら の 論 議 を も と に,VGを
パ ラ メ タ に し て,nチ
-電 流 特 性 を 描 い た も の が 図4・22で
あ る
電 流 の 飽 和 す る 各 点 を 結 ん だ 曲 線(破 チ オ フ 曲 線(pinch 態,つ
ま り,チ
off curve)と
ャ ネ ルMOSFETの
。 こ の 図 に お い て,各
線)は,式(4・52)を
電圧
曲線 の ドレ イ ン
描 い た も の で,ピ
ン
呼 ば れ る 。 図 中 の 遮 断 領 域 と は,VG<VT状
ャ ネ ル が 形 成 さ れ ず,電
流 が 流 れ な い領 域 で あ る。
図4・22
nチ ャ ネ ル エ ン
ハ ン ス メ ン ト形 MOSFETのID -VD特 性
〔2〕 小 信 号 等価 回 路 nチ ャネ ル とpチ ャネ ルのMOSFETの
記 号,お
よ び それ らを増 幅 動 作 させ
るた め に印 加 す る電 圧 とそ の極 性 を 図4・23に 示 す 。図 中 に 米 国 で 使 用 さ れ て い
図4・23 MOSFETの
図記 号
る も の も示 す 。 MOSFETも,JFETと
同 様,飽
対 す る 等 価 回 路 は,図4・24の
和 領 域 で 使 用 さ れ る の で,小
よ う に,電
よ び ゲ ー トーソ ー ス 間 の 静 電 容 量CGD,お
流 源gmυGsと,ゲ よ びCGsを
gmは 素 子 の 相 互 コ ン ダ ク タ ン ス で,式(4・52)か
信 号 電 圧υGsに
ー トード レ イ ン 間,お
用 い て 表 さ れ る 。 こ こ に,
ら, (4・53)
と な る。 こ の 等 価 回 路 か ら,MOSFETの
遮 断 周 波fTは,JFETと
同 様 に, (4・54)
と し て, (4・55)
と な る 。 こ の 式 にCG=CoxLZと,式(4・53)を
代 入 し て, (4・56)
を 得 る 。 こ の 場 合 も,JFETと く,Lが
同 様 に,高
周 波 特 性 を 良 くす る に は,μnが
短 い こ と を 要 す る 。 し か し,MOSFETの
の 薄 さ で,し
か も,そ
チ ャ ネ ル の 厚 さ が100A程
の 片 面 は 酸 化 膜 に 接 し て い る た め,キ
に お い て も 散 乱 さ れ る の で,チ 値 の 半 分 程 度 に減 少 す る。
大 き 度
ャ リア は そ の 界 面
ャ ネ ル 中 の キ ャ リ ア の 移 動 度μnは,バ
ル ク中の
〔3〕
エ ン ハ ン ス メ ン ト形 と デ プ レ ッ シ ョ ン 形MOSFET
前 項 に 述 べ たnチ に 示 す 。 図(a)の
ャ ネ ルMOSFETのID-VG特 素 子 は,VGを
性(伝 達 特 性)を
図4・25(a)
印 加 す る こ とに よ りチ ャ ネ ル が 形 成 さ れ る の
図4・25
各 種MOSFET
のID-VG特
で,エ
ン ハ ン ス メ ン ト(enhancement)形
常 は(VG=0の フ(normally
と き)offで,VGが off)形
す る こ とか ら,デ
態 に な る ノ ー マ リー オ
態 に お け る 抵 抗 は 理 想 に 近 く大 き く,on状
態 に お け る 素 子 内 部 の 抵 抗(on抵 習 問 題 〔4〕問 題6.参
で あ る 。 こ れ の ス イ ッ チ 動 作 は ,通
与 え ら れ る と,on状
で あ り,off状
性
抗)は,オ
照)。 こ の よ う に,こ
ー ム 性 の 小 さ い 値 で あ る(章
末演
の 素 子 は大 変 良 好 な ス イ ッ チ動 作 を
ィ ジ タ ル 信 号 は も と よ り,ア
ナ ログ 信 号 用 ス イ ッチ と して も
広 く用 い られ て い る。 次 に,図4・26(a)に た め,あ
示 す よ う に,p形
ら か じ めn形
不 純 物 の ド ナ ー を,第8章
テ ー シ ョ ン(ion implantation)に る正 電 荷 に よ っ てVTが た め,そ
のID-VD特
半 導体 表 面 部 に チ ャ ネ ル を形 成 させ る で 後述 す る イ オ ン イ ン プ ラ ン
よ り ド ー プ し たMOSFETで
減 りVG=0で
性 は,図4・26(b)の
も,す
で にnチ
は,ド
ナー によ
ャ ネ ル が 形 成 され て い る
よ うに な る。
図4・26
nチ
ャ ネ ル デ プ レ ッ シ ョ ン形MOSFETの
こ の よ う な 素 子 を デ プ レ ッ シ ョ ン(depletion)形,あ ン(normally
on)形
とい い,そ
のID-VG特
プ レ ッ シ ョ ン形 の もの と な り,JFETと こ の 素 子 は,増
る い は,ノ
ー マ リー オ
性 は,図4・25(b)のnチ
ャネ ル デ
類 似 して い る。
幅 素 子 と し て は も ち ろ ん,集
も使 用 さ れ て い る 。 特 に,集
構 造 と特 性
積 回 路 中 の 負 荷 抵 抗 素 子 と して
積 回 路 の 抵 抗 素 子 と し て は,母
用 す る 抵 抗 素 子 よ り も 小 型 に 作 る こ と が で き,そ
材 本 来 の 抵 抗 を利
の 製 作 工 程 を 簡 略 化 し得 る 利
点 が あ る。 な お,図4・25(c),(d)は,pチ レ ッ シ ョ ン 形 のID-VG特
ャ ネ ル の エ ン ハ ン ス メ ン ト形,お
よび デ プ
性 を示 す。
〔4〕 そ の 他 の 事 項 (1) SiO2中 の 電 荷 お よび 半 導 体 表 面 電 荷 の生 成 原 因 とそ の 防 止 法 ① SiO2中 の 電 荷Qoxの
例 と して は,酸 化 工 程 中 に 入 った ナ ト リウ ム イ オ
ンが 良 く知 られ て い る 。 これ の 存 在 は,素 子 の動 作 中 に イ オ ンの 移 動 が起 こ り,特 性 を不 安 定 に す るの で,酸
化炉 の材 料 を吟 味 した り,第8章
で述
べ る電 子 ビー ム 蒸 着 法 の採 用 な どに よ り防 止 して い る。 ② 表 面 電 荷 は,大 別 して,2つ
の原 因 に よ り出現 す る と考 え られ て い る。
そ の1つ
は,SiO2膜
1個 に 対 しO原
がSi結
子 が2個
晶 と 接 す る 部 分 で の 化 学 量 論 的 な ず れ(Si原 結 合 し て い な い)に
イ オ ン と考 え ら れ て い る 。こ の 値 はSi結 (100)面
で 最 も小 さ く1011cm-2程
他 の1つ
は,Si結
結 合 手(dangling る が,お
で は,そ
れ の 約3倍
ほ
ス 中 で の 熱処 理 が 有 効 と され て い る。
bond)に
よ る も の で,こ
の 値 も 結 晶 面 の 方 向 に よ り異 な
ど で あ り,そ の 極 性 や 大 き さ は,表
準 位 の 値 に よ っ て も 異 な る 。 当 初,良
(2)
晶 の 結 晶 面 の 方 向 に よ り異 な り,
晶 の 表 面 原 子 の 結 合 す る 相 手 が い な い た め に生 ず る未
よ そ1011cm-2ほ
か っ た の は,こ
よ り生 じ た正 電 荷 の シ リコ ン
度 で,(111)面
ど で あ る 。 こ れ を 減 ら す に は,N2ガ
子
好 なnチ
面 の フ ェル ミ
ャ ネ ル のMOSFETが
得 難
れ の正 電 荷 が 原 因 で あ っ た。
そ の 他 のMOSFET
① デ プ レ ッ シ ョ ン 形 素 子 は,り 面 に 打 ち 込 む こ と に よ り,し
ん(P)あ
き い 値 電 圧VTを
ト と し て 金 属 を使 用 す る 代 わ り にSiを り,VTを
る い は,ほ
調 整 で き る 。 こ のSiゲ
う 素(B)イ
オ ン をSi表
制 御 し て 作 ら れ た が,ゲ
使 う と,仕 事 関 数 の 差φmsが
ー トは 気 相 反 応 法(第8章
ー
な くな
で 述 べ る)で,
多結 晶 ま た は非 結 晶 質 膜 と して 酸 化 膜 表 面 に付 着 形 成 され る。 ② MNOS素
子 は,ゲ
ー トの 金 属 とSiO2膜
薄 膜 を 導 入 し た も の で,特 電 率 に よ る 高 いgmが
の 間 に 窒 化 シ リ コ ン(Si3N4)の
性 の 安 定 化 が 得 ら れ,さ
得 ら れ る 。 な お,①
ら に,Si3N4の
大 き い誘
と ② を 組 み 合 わ せ る こ と も行
わ れ る。 ③ フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト素 子 は,ゲ 荷 を 蓄 え さ せ,チ
ー ト と し て 絶 縁 物 を 用 い,こ
ャ ネ ル 状 態 を 固 定 化 し た も の で,FAMOSは
に よ り絶 縁 物 中 に 電 子 を 注 入 し た も の で,こ
の 中 に電
電 子 なだれ
れ を消 去 す る に は 紫 外 線 を 照
射 し て 行 う 。 この 方 法 で 書 込 み 消 去 可 能 な 記 憶 素 子EPROM(electrically programmable
read
④ 電 力 増 幅 用MOSFET入
only
memory)が
作 られ て い る。
力 信 号 を 増 幅 し て,出
力 負 荷 に 大 きな 電 流 と
電 圧 を供 給 す る電 力増 幅 あ る い は電 力 ス イ ッチ 素 子 に つ い て 考 察 す る。 こ の 使 用 目 的 で,接
合 形 ト ラ ン ジ ス タ とFETの
動 作 を 比 較 し て み よ う。 接
合 形 トラ ン ジ ス タ は 少 数 キ ャ リア の 注 入 に その 基 本 動 作 を 置 い て い る の で,次 の2点
に 不 都 合 が あ る。
i) 少 数 キ ャ リア の蓄 積 は高 速 動作 を し に く くす る。ⅱ ) 温 度 に対 す る不 安 定 性 が あ り,コ レク タ電 流 通 路 中 の 一 経 路 が 温 度 上 昇 す る と,そ
こに電 流 が 集 中 し,こ れ が また そ この 温 度 を 高 め,つ い に素 子
破 壊 に つ な が る危 険 性 が あ る。
他 方,FETは
多 数 キ ャ リア の オ ー ミ ッ ク電 流 を利 用 して い る の で,上 記
の 欠 点 が な く優 れ て い る。 図4・27と 図4・28は,実 用FET素
用 され て い る電 力 増 幅
子 の構 造 を示 す 。
図4・27
静 電 誘 導 形 トラ ン ジ ス
タ(SIT)
図4・28 V-MOSFET
の
構造例 図4・27の
素 子 は,ゲ
ン ジ ス タ(SIT;static
ー ト部 を 狭 く し た 接 合 形FETで,静 induction
transistor)と
呼 ば れ,1個
電 誘 導 形 トラ で3kWの
高 周 波 電 力 を制 御 で き る よ うな もの も作 られ て い る。
MOSFETの
電 流 は,極 め て 断 面 積 の 小 さ い反 転 層 を流 れ る の で,素 子1
個 で制 御 で き る電 流 値 は小 さい 。 従 っ て,電 力 用 に は多 数 の 素 子 を同 一 基 板 上 に 集 積 させ,そ
れ ら を並 列 に接 続 す る。 さ ら に,ド
板 の添 加 不純 物 濃 度 を小 さ くして,そ
レイ ン部 近 傍 の 基
この空 乏 層 の 厚 さ を増 す こ と に よ り
電 界 強 度 を下 げ,ド レ イ ン部 の耐 電 圧 性 能 を上 げ て い る。図4・28は,上 述 べ た こ と を考 慮 して作 られ た 素 子 で,縦 形 あ る い はV-MOSFETと れ る。 チ ャネ ル は エ ッチ ン グ プ ロセ スで 作 っ た,V字 面 に沿 っ て作 られ,図
に 呼ば
溝(V-groove)の
斜
中 の 矢 印 の よ う に電 流 が 流 れ る。 チ ャネ ル と な るp
層 の 厚 さ は,そ の エ ピタ キ シ ャル成 長 時 に精 密 に調 整 で き る の で,素 子 の 特 性 を揃 え や す い 。
1つ の 基 板 上 に,ソ ー ス 部 を共 通 に もつ 多 数 の 素 子 は 並 列 に接 続 され, 1個 の 電 力 用MOSFETが よ りも,チ
作 られ る。 この 素 子 は,平 面 上 に作 られ た もの
ャネ ル の 有 効 断 面 積 を大 幅 に増 せ るた め,高 効 率 で あ りオ ー デ
ィオ ア ンプ等 に も実 用 され て い る。 ⑤ SOI-MOSFET Si基
板 の 厚 さ に注 目 し て み る と,MOSFETが
動作 す
る の に必 要 な 部 分 は 表 面 の極 め て 薄 い と ころ の み で あ る。 従 っ て,こ の 必 要 な 部 分 だ け を別 の絶 縁 物 の 上(SOI;silicon FETを
on insulator)に 設 け,MOS
作 る こ とが で き る。 この 素 子 の構 造 を 図4・29に 示 す 。 これ に よ り,
Si材 料 を大 幅 に 節 約 す る こ とが で き るば か りで な く,基 板 と ソー ス お よ び ドレ イ ン間 の 静 電 容 量 を小 さ くす る こ とが で き,動 作 速 度 を 増 す こ とが で
図4・29
SOI-MOSFET
き る。 な お,最 近,3次
元 集 積 回路 技 術 が 注 目 され,こ のSOI-MOSFET
と絶 縁 物 とを 交 互 に積 み重 ね る 方 法 が 研 究 され て い る。
演 〔問 題 〕1.JFETの
習
問
題
〔4〕
線 形 領 域 に お け る チ ャ ネ ル コ ン ダ ク タ ン スgD1=∂ID/∂VDお
よ び 相 互 コ ン ダ ク タ ン スgm1=∂ID/∂VGを,式(4・5)か 10)のgmに
ら 求 め よ 。 な お,gD1は
式(4・
等 し くな る。 答(gD1=gm0{1-√(V0-VG)/Vp0},gm1=gm0VD/{2√VP0(V0-VG)})
〔 問 題 〕2.JFETの
トラ ン ジ ス タ作 用 は チ ャ ネ ル 部 で 生 じ る が,精 密 に調 べ る と,
ソー ス 部 と ド レ イ ン部 との 間 に,そ
れ ぞ れ 直 列 抵 抗Rs,RDが
存 在 す る(図4・30
図4・30
参 照)。 これ ら を考 慮 す る と,図4・8と
図4・9の 等 価 回 路 に お い て,Rsに
圧 降 下 は チ ャ ネ ル の ゲ ー トに対 す る バ イ ア ス 電 圧 を変 化(負
帰 還 作 用)さ
こ の 効 果 を 考 え た と き の 実 効 的 な 相 互 コ ン ダ ク タ ン ス を 求 め,gmよ こ と を 示 せ 。
〔問 題 〕3.下
記 に 示 す パ ラ メ ー タ を も つ シ リ コ ンnチ
V0,VP0,Vp(VG=0),gm0,ID(VG=0),gm(VG=−1.5〔V〕),fTを
よ る電 せ る。
り減 少 す る
答(gm/(1+gmRs))
ャ ネ ルJFETに
つ い て,
計 算 せ よ。
答 〔問 題 〕4.JFETのIDは,素
子 の 温 度 上 昇 に よ り,ど の よ う に 変 化 す る か 。 接 合
形 トラ ン ジ ス タ のIcの
〔問題 〕5.大
場 合 と比 較 し て 述 べ よ。
き な電 力 を負 荷 に 供 給 す る た め の 回 路 方 式 と して,多
ス タ の 並 列 接 続 が 行 わ れ る。 この 場 合,各
数 の トラ ンジ
トラ ン ジ ス タ の 特 性 が 一 致 し て い な い
と,全 体 の 動 作 安 定 性 に影 響 を 与 え る。 多 数 の トラ ン ジ ス タ を並 列 接 続 して 使 用 す る場 合,1個
の トラ ン ジ ス タ の 温 度 上 昇 が 他 の トラ ン ジ ス タ に 分 配 さ れ る電 流
値 を どの よ う に変 え,ま 果 を考 慮 し て,バ
〔 問 題 〕6.nチ
た 回 路 全 体 の 安 定 性 に どの よ うに か か わ る か 。 前 問 の 結
イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ とFETを
ャ ネ ルMOSFETのID-VD特
性 の 線 形 領 域 を示 す 式(4・50)か ら,
チ ャ ネ ル コ ンダ ク タ ン スgD1=∂ID/∂VDの 分 小 さ い と こ ろ のgDl-VG曲
線 をVG軸
比 較 して 述 べ よ。
式 を 求 め よ 。 この 式 に お い て,VDが
に外 挿 して,gDl=0のVG値
がVT値
十
と見 積
られ る こ と を 示 せ 。
〔問 題 〕7.エ
ン ハ ン ス メ ン ト 形nチ
い る 場 合,on状
態 に お け るon抵
ャ ネ ルMOSFETを
抗Ronは,〔
スイ ッチ素 子 と して用
問 題 〕6.のgD1を
用 い て,Ron=1/gD1
で 表 さ れ る 。 そ の 理 由 を述 べ よ 。
〔問 題 〕8.図4・31に -VD特
お い て,MOSFETの
性 は どの よ う に な る か
ゲ ー トと ド レ イ ン を 接 続 した と きのID
。 図4・22を
も と に し て 考 察 し,式
で そ の結 果 を示
せ。
〔問題 〕9.図4・20に
お い て,酸 化 膜 中 の 正 電 荷 密 度 分 布 が ρ(y)で あ る と き,こ れ
に よ る フ ラ ッ ト バ ン ド電 圧VFBが,次
式 で示 され る理由 を述 べ よ。
図4・31
〔 問 題 〕10.Al-SiO2-p形Siのnチ を 用 い て,次
ャ ネ ルMOSFETの
諸 定 数 を下 に 示 す 。 こ れ
の 各 値 を求 め よ。
(ⅰ) (ⅱ)
答
〔 問 題 〕11.実
際 に得 られ るJFET,MOSFETのID-VD特
性 は完 全 な飽 和 特 性 で
は な く,図4・32に
示 す よ う に,VDに
対 しIDは
傾 斜 を もつ 。 そ の 理 由 と して,VD
の 増 加 に伴 っ て ピ ンチ オ フ点 が ソ ー ス側 に わ ず か に移 り,チ ャ ネ ル 抵 抗 が 減 少 す る こ と(チ ャ ネ ル 長 変 調 効 果),さ
ら にMOSFETで
は ド レ イ ン電 圧 が ゲ ー ト部 に
影 響 を 与 え,反
転 を 進 め る等 が あ る 。
図 中 の 点Pで
素 子 を動 作 させ る と し た と き,小 信 号 等 価 回 路 を 示 せ 。
図4・32
第5章 集 積 回 路
集 積 回 路 が 現 在 の 情 報 社 会 に 及 ぼ し た 影 響 は 測 り知 れ な い ほ ど大 きい 。 集 積 回 路 の ほ と ん ど を 占 め る 半 導 体 集 積 回 路 は,ト ド等 の 能 動 素 子 と半 導 体 で 形 成 さ れ た 抵 抗,コ
ラ ン ジ ス タ,ダ
イオ ー
ン デ ンサ を同 一 の 工 程 で 半
導 体 の 薄 片 上 に つ く り,こ れ を 金 属 薄 膜 で 結 線 し て電 子 回 路 機 能 を実 現 し た もの で あ る 。 半 導 体 集 積 回 路 の 実 現 は半 導 体 工 学 の 知 識 が 結 集 され た 結 果 とい え る が,も
ち ろ ん 集 積 回路 の 基 礎 とな る学 問 分 野 は 半 導 体 だ け で な
く,電 子 回路,論 理 回路,情
報 シ ス テ ム 等 多 方 面 の 学 問 が 包 含 され て い る 。
し か し,本 章 で は 半 導 体 デ バ イ ス,半 導 体 材 料 等 の 面 か ら み た 集 積 回 路 の 概 要 に つ い て 話 を 進 め る こ と とす る。
5・1 集 積 回 路 の基 礎 概 念
〔1〕 集 積 回路 の 出 現 と発 展 技 術 の 発 展 に は,こ れ に先 立 っ て社 会 的 な ニ ー ズの 存 在 が 契 機 とな る。 第 二 次 大戦 の 戦 中 か ら戦 後 にか け て,電 子 装 置 が 航 空 機 や ミサ イ ル 等 に搭 載 され る よ うに な り,こ の た め の 電 子 回路 の 小 形 軽 量 化 が 急務 とな っ た。電 子 管 や抵 抗 ・ コ ンデ ンサ 等 の 部 品 の 小 形 化 は 当 然 研 究 さ れ た が,こ れ と と もに 電 子 装 置 組 立 の最 小 単 位 を あ る レベ ル の 電 子 回路 にす る モ ジ ュー ル 化 の 概 念 が 生 まれ た 。 図 5・1は コー ドウ ッ ド モ ジ ュ ー ル(cordwood
module)と
呼 ばれ る もの で,2枚
の 絶 縁 体 の板 の 間 に各 種 の 部 品 を並 べ,こ れ を接 続 した もの で あ る。 この 考 え 方 は,さ
らに標 準 化 され た 小 形 基 板 上 に部 品 を組 立 て,こ れ を積 み 重 ね て 接 続
す るマ イ ク ロ モ ジ ュー ル(micro
module)に
結 実 した 。
図5・1
コー ドウ ッ ド モ ジ ュー ル
一 方,電 子 装 置 の規 模 が 大 き くな る に 従 っ て,部 品 間 の は ん だ付 け等 に よ る 接続 点 数 は著 る し く増 大 し,こ れ が 装 置 の 故 障 の相 当部 分 を 占 め る た め,装
置
の信 頼 度 を向 上 さ せ る に は,接 続 数 を極 力 減 らす こ とが必 要 で あ っ た 。 その た め に は,部 品 の 形 成 と接続 を一 体 化 し て実 現 す る技 術 が 望 まれ た 。 この よ うな 環 境 の な か で,第1章 あ らわ れ,1960年
に述 べ た よ うに,Kilby,Noyce等
の考察が
頃 まで に は半 導体 集 積 回 路 の 基礎 とな る概 念 が 出 そ ろ った 。
この経 過 を た ど っ て 開 発 され た の は バ イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ を 能 動 素 子 とす るバ イ ポ ー ラ 集積 回 路 で あ るが,1960年 素 子 とす るMOS集
代 中頃 に はMOSト
ラ ン ジ ス タ を構 成
積回路 が開発 された。
〔2〕 集 積 回路 の特 徴 集 積 回 路 の 定 義 は,日 本 工 業 規 格JISに
よ る と,「2つ また は それ 以 上 の 回路
素 子 の す べ てが 基 板 上 また は基 板 内 に集 積 され て い る 回路 で あ り,設 計 か ら製 造,試 験,運
用 に い た る まで 各 段 階 で1つ
の 単位 と し て取 り扱 う もの 」 とな っ
て い る 。 こ こで は,集 積 と い う概 念 を既 知 の もの と して 定 義 に用 い て い るが, IEC*の 定 義 で これ に相 当 す る部 分 を み る と,「inseparably associated and electrically connected」 とな っ て お り,要 は 設 計 か ら運 用 に い た る まで 電 気 的 に結 合 され た 分 離不 可 能 な 単 位 とな っ て い る こ とを意 味 して い る。 集 積 回路 の 開発 当 初 は軍 事 用 の 目的 が優 先 し た こ と もあ って,小 形 化 ・軽 量 化 と信頼 性 の 向上 が 最 大 の ね らい で あ っ た。 この 目標 は明 らか に満 足 され,そ *International
Electrotechnical
Commission:国
際 電 気 標 準 会 議
れ
は集 積 回 路 の 一 大 特 徴 とな って い る。 また,小 形 化 さ れ た こ とで 素 子 間 お よ び 素 子 と出 力端 子 間 の配 線 長 が 著 し く短 縮 され,信 号 の 伝 播 遅 延 が 小 さ くな り, さ ら に配 線 部 が 拾 い込 む雑 音 が 減 るた め動 作 性 能 が 向上 した 。 さ らに 重 要 な こ と と して,電 子 装 置 の 価 格 を低 下 させ る とい う 目的 も果 た す こ とが で きた 。 す なわ ち,集 積 回路 は同 一 の 工 程 で 多 数 の 素 子 を結 合 した 回路 を一 度 に製 作 す る た め,歩 留 ま り さ え よ けれ ば,個 別 部 品 に よ っ て組 み 立 て られ た 同一 回路 と比 較 し て格 段 に価 格 を低 減 し得 る。 この価 格 低 減 率 は,集 積 回路 上 に集 積 され る 素 子 数 が 多 けれ ば 多 い ほ ど有 効 に働 くの で あ る。
〔3〕 集 積 回 路 の分 類 集 積 回路 は 種 類 が極 め て 多 い た め,そ の 分 類 法 に もい ろ い ろあ る。 図5・2に そ の 主 要 な もの を示 す。
図5・2 集積 回路 の分 類
半 導体 集 積 回路 は,半 導 体(通
常 は シ リコ ン)結 晶 基 板 上 に各 種 素 子 を形 成
させ,こ れ をSiO2等 の酸 化 膜 で 覆 い,こ の 上 に蒸 着 され た 金 属 に よ り電 気 的 接 続 を行 った もの で あ る。 この半 導体 結 晶 基 板 をチ ップ(chip)と 呼 び,チ
ッ プ一
片 に1つ の 回路 機 能 を 完 結 させ,こ ノ リシ ッ ク集 積 回 路(monolithic
れ を1つ のパ ッケ ー ジ に収 容 し た もの をモ
integrated circuit)と い う。 モ ノ リシ ッ ク と
は1つ の 石 を 意 味 す る 。本 章 で は,モ して 記 述 す る が,こ
ノ リシ ック半 導体 集 積 回路 の み を対 象 と
れ は本 書 の 内容 が 半 導 体 に核 心 を置 く こ と と,か つ,通 常
の半 導 体 集 積 回路 は ほ とん ど モ ノ リ シ ッ ク構 成 に な って い る た め で あ る。 マ ル チ チ ップ(multi
chip)は,名
前 の とお りチ ップ数 片 を1つ のパ ッ ケ ー ジに 搭
載 し,こ れ を相 互 に接 続 して全 体 とし て1つ の 回路 機 能 を もた せ た もの で あ る。 一 方,膜 集 積 回 路 とは,絶 縁 物 の基 板 の上 に薄 膜 状 の 導 体,抵 材 料 を 付 着 させ て 抵 抗,コ
抗 体,誘 電 体
ン デ ン サ等 の 素 子 をつ く り,こ れ を 薄 膜 状 導 体 で接
続 して 回 路 を構 成 した もの で あ る。 この うち 薄 膜 集 積 回 路 は,蒸 着 ま た は ス パ ッタ に よ って 回路 を構 成 す る材 料 を付 着 さ せ た もの で あ り,厚 膜 集 積 回路 はペ ー ス ト状 の 材 料 を 印 刷 の手 法 に よ っ て基 板 上 に付 着 させ
,高 温 で焼 成 し た もの
で,い ず れ も膜 の 厚 味 に よ る分 類 で は な い 点 に注 意 さ れ た い 。 膜 集 積 回 路 の技 術 は受 動 素 子 を構 成 す る に は便 利 で あ るが,能
動 素 子 は現 在
の と こ ろ実 現 が 困 難 で あ る。 そ こで,絶 緑 物 基 板 上 に膜 技 術 に よ って 受 動 素 子 を構 成 し,別 に製 作 さ れ た 半 導 体 集 積 回路 また は半 導 体 固 別 部 品 を基 板 上 に搭 載 し,こ れ ら を接 続 して 回 路 を構 成 した もの を混 成 集 積 回 路(hybrid circuit)と い い,高 周 波 用,大
integrated
電 力 用 等 に しば し ば使 わ れ る。 本 章 で は,膜 集
積 回路 と混 成 集 積 回 路 に つ い て は,こ れ 以 上 は ふ れ な い こ と とす る。 半 導 体 集 積 回 路 で トラ ン ジ ス タ が バ イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ で あ る もの をバ イポ ー ラ集 積 回 路,MOSト
ラ ン ジ ス タ で あ る もの をMOS集
る。同 一 チ ッ プ上 に バ イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ とMOSト 載 した もの をバ イMOS集
積 回 路(bi‐MOSFET)と
積 回 路 と区 別 す
ラ ン ジ ス タ の双 方 を混
呼 ぶ が,こ
れ は最 近 実 用 に
供 され る よ うに な っ て きた 。 回路 機 能 的 に は ア ナ ログ 集 積 回路 とデ ィジ タ ル集 積 回 路 が あ り,前 者 は ア ナ ロ グ信 号 を取 り扱 い,後 者 は デ ィ ジ タル 信 号 を扱 か う。 後 者 に は論 理 演 算 を行 う論 理 集 積 回路 と,情 報 を記 憶 す る メモ リ集 積 回路 が あ る。 ア ナ ロ グ,デ タル 双 方 の信 号 を扱 う場 合 は,イ ン タ フ ェー ス集 積 回 路 と呼 ん で い る。
ィジ
5・2 バ イ ポ ー ラ 集 積 回 路
〔1〕 構 成 素 子 バ イ ポ ー ラ集 積 回路 を構 成 す る回 路 要 素 は,バ イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ,ダ イ オ ー ド,抵 抗,コ
ンデ ンサ で,こ
の す べ て が 半 導 体 で構 成 され る。 イ ン ダ ク タ
ン ス は通 常 使 用 され な い。 (1)バ
イポ ー ラ トラ ン ジ ス タ
集 積 回 路 に 組 み込 まれ る バ イ ポ ー ラ ト
ラ ンジ ス タ の 基 本 部 分 の構 造 と して は,図5・3に
示 す 通 常 の プ レー ナ構 造 の 個
図5・3
プ レ ー ナ構 造 バ イ ポ ー ラ
トラ ンジ ス タの断 面 図
別 部 品 の 場 合 と同 じで あ る が,た だ 異 な る と こ ろは,①pn接 の 素 子 と切 り離 され て い る こ と。②
合 分 離 に よ り他
① の た め,通 常 の トラ ン ジス タの よ う に
コ レ ク タ端 子 を チ ッ プの 下 側 か ら取 る こ とが で きず,上 面 か ら取 っ て い る こ と, で あ る。 図5・4に つ い て これ を説 明 す る と,図 内 のnpnト ら絶 縁 す る た め,基 板 のp層 タ のn層
と分離 のp層
と分 離 拡 散 のp層
ラ ン ジ ス タ を他 の 素 子 か
で トラ ンジ ス タ を囲 み,コ
レク
の 間 に逆 バ イ ア ス を加 え て あ る。 コ レ ク タの 端 子 を上 面
か ら と る こ とに よ る コ レ ク タ直 列 抵 抗 の増 加 を防 ぐた め,コ
レ ク タ の 下 に埋 込
み拡 散 と呼 ぶn+層 を設 け て コ レ クタ 直 列 抵 抗 の 低 下 を は か っ て い る。
図5・4 集 積 回路 中の バ イ ポ ー ラ トラ ン ジス タの 断面 図
集積 回路中のバ イポーラ れ て い る 。 し か し,場
ト ラ ン ジ ス タ に は,npnト
合 に よ っ て は,pnpト
ラ ン ジ ス タ が 広 く使 わ
ラ ン ジ ス タ を混 在 させ る と 回路 的
に 便 利 な こ とが あ る 。 npnト
ラ ン ジ ス タ を 搭 載 し て い るp形
せ る に は,通 (a)
常,次
の2と
領 域 中 に,近
ラ ン ジ ス タ を混 在 さ
お りの方 法 が 用 い られ る。
ラ テ ラ ルpnpト
られ たn形
基 板 にpnpト
ランジス タ 接 す る2つ
タ,お よ び エ ミ ッ タ と し,n形
図5・5の
のp形
よ う に,p形
基板 の上 につ く
領 域 を 形 成 さ せ,そ
れ ぞれ をコレ ク
領 域 を べー ス と す る こ と でpnpト
ラ ンジ ス タ を構
成 す る。
図5・5
ラ テ ラ ルpnpト
ラン
ジ スタ
(b)
バ ー チ カ ルpnpト
タ と し,こ れ たp形
ランジス タ
の 上 に 形 成 さ れ たn形
図5・6の
領 域 を べ ー ス に,さ
領 域 を エ ミ ッ タ と す る こ と でpnpト
よ う に,p形 ら にn形
基 板 を コ レク 領 域 内 に形 成 さ
ラ ン ジ ス タ を構 成 す る 。 こ の 方
図5・6
バ ー チ カルpnpト
ラン
ジス タ
式 は,コ
レ ク タ電 位 が 基 板 電 位 と同 一 に な る こ とを許 す 回 路 に しか 適 用 で きな
い の が 欠 点 で あ る。 (2) ダ イ オ ー ド
集 積 回 路 中 の ダ イ オ ー ドは,ト
合 を適 当 に接 続 して 構 成 す る。 構 成 の しか た は,図5・7に
ラ ン ジ ス タ 中 のpn接 示 す5種
の場合が あ
図5・7 集積 回 路 用 ダ イオ ー ドの接 続 図
り,そ れ ぞ れ 特 徴 が あ る。 現 在 一 番 よ く用 い られ る の は,図(a)の
コ レ ク タベ
ース短 絡 ダ イ オ ー ドで あ る。この 接 続 で は,エ ミッ タ-べ ー ス接 合 が 使 用 され て お り,べ ー ス とコ レク タが 短 絡 され て い る。 この た め,コ
レ クタ 接 合 に順 方 向
電 圧 が か か っ て キ ャ リアが 注 入 蓄 積 され る こ とが な く,従 っ て ス イ ッ チ ング 時 間 が 早 いの が特 長 で あ る。 (3) 抵 抗
集 積 回路 で は,抵 抗 は トラ ン ジ ス タ,ダ
イ オ ー ドの 製 作 と同
時 に拡 散 で形 成 され る 半 導 体 層 の抵 抗 を利 用 す る。 この場 合,べー
ス層 を用 い
る場 合 と エ ミ ッタ 層 を 用 い る場 合 が あ り,通 常 は 前 者 を 用 い,低 抵 抗 を実 現 し た い場 合 に は後 者 を用 い る 。
図5・8は べ ー ス 層 に よ る抵 抗 を図 示 した もの で,こ
の抵 抗 値 は次 式 で与 え ら
れ る。
(5・1)
Rsは べー ス 層 の 表 面 層 の 抵 抗 率 で,お
よそ
図5・8 べ ー ス拡 散 層 抵 抗
Rs=50∼300Ω/□ の 範 囲 に あ る。Rsは 縦 横 が 等 しい 正 方 形 板 に つ い て縦 横 の 寸 法 に無 関 係 に同 一 の 値 を もつ の で,面
積 当 た りの 抵 抗 とい う意 味 で,単 位 は Ω/□ と書 か れ る。
集 積 回路 の 設 計 に 当 た っ て 問題 に な るの は抵 抗 値 の 精 度 で あ る。 抵 抗 値 の 誤 差 要 因 は上 式 か らわ か る よ うに,表 面 層 抵 抗 率 と寸 法 の 誤 差 の 総 和 で あ るが, 総 合 精 度 は通 常10∼30%と 比 の 誤 差 はせ い ぜ い3∼5%ぐ
か な り大 きい。た だ し,同 一 チ ップ上 に あ る 抵 抗 の らい で か な り精 度 が よ い。 従 っ て,集 積 回路 で
は 回 路 の 特 性 が 抵 抗 比 で 定 ま る よ うな 回路 形 式 が 適 して い る。 (4) コ ンデ ン サ
集 積 回 路 で コ ン デ ンサ を構 成 す る に は,pn接
乏 層 に お け る接 合 容 量 を利 用 す る。pn接
合 に逆 バ イ ア ス電 圧Vを
接 合 容 量 の 単 位 面 積 当 た りの 大 き さCは,階
合 の空
か け た とき,
段 接合 で は,式(3・29)か
ら, (5・2)
で あ る。 こ こに,Nは 率 で あ る。
不 純 物 濃 度 の 低 い ほ うの不 純 物 濃 度,ε は シ リ コ ンの 誘 電
実 際 は,接 合 が理 想 的 に階 段 状 で は な く,ま た不 純 物 濃 度 が 深 さ方 向 に分 布 を も つた め,必 ず し も上 式 の とお りに は な らな い。何 れ に して も,こ のCの はpF程
度 の もの で,あ
値
ま り大 きな容 量 は つ く りに くい。
〔2〕 バ イ ポ ー ラ集 積 回 路 の 構 成 前 項 に述 べ た各 種 素 子 を半 導 体 チ ッ プ 中 に形 成 させ た と き,各 素 子 は 互 い に 電 気 的 に隔 離 され て い な けれ ば な らな い。 この た め の手 法 を分離(isolation)と い う。分 離 に は,さ ま ざ ま な手 法 が 考 え られ て い る が,通 常 はpn接
合分離 が用
い られ る。 図5・9に そ の 一 例 を示 す 。
図5・9 pn接 合分離
p形 基 板 上 に エ ピタ キ シ ャル 成 長 技 術 に よっ て n層 を成 長 させ,こ きたSiO2膜
にホ ト リソ グ ラ フ ィ技 術(8・3節
の上 にで
で説 明 す る)に よ っ て 窓 あ け を行
い,こ こか ら選 択 拡 散 技 術 に よ って p形 の 分 離 拡 散 を p形 基 板 と接 触 す る と こ ろ まで 入 れ る 。 これ に よ っ て,図 の よ うに n形 の 島 状 の 領 域 が で き る。 この よ うな 構 造 の素 子 の 基板 に,す べ て の n形領 域 電 位 よ り低 い電 位 を与 えれ ば,各 pn接 合 は 逆 バ イ ア ス さ れ,従
っ て n形 領 域 は す べ て そ れ ぞ れ の 間 が 絶 縁 状 態
に な る。この状 態 で,n 形 領 域 に各 素 子 を つ く り,必 要 な 電 極 間 の み を 金 属 蒸着 膜 で 結 合 し,集 積 回路 を構 成 す る。 図5・10は,バ
イ ポ ー ラ集 積 回路 の 断 面 構 造 の 例 を示 した もの で,左 側 にnp
nト ラ ン ジス タ,右 側 の ア イ ソ レ ー シ ョン領 域 中 に は抵 抗 が 形 成 され,相 互 に接 続 され て い る状 態 を示 して い る。
図5・10 バ イ ポ ー ラ集積 回路 の 断面 構 造
〔3〕 製 作 手 順 半 導 体 集 積 回 路 の製 作 の 中 心 は ウエ ーハ プ ロセ ス(wafer
process)で
あ る。
図5・11は バ イ ポ ー ラ集 積 回路 の ウ エ ー ハ プ ロ セ ス の フ ロ ー チ ャー トで あ る。 この よ う な 工 程 を経 て ウエ ーハ と呼 ば れ る 円形 の 半 導 体 結 晶 基 板 上 に多 数 の 同 一 の 回 路 が形 成 され る。 これ をチ ッ プ に切 り離 し,良 品 の チ ップ の み を ケ ー ス
図5・11
バ イ ポー ラ集 積 回路 の ウエ ー ハ プ ロセ ス
に搭 載 し,チ ッ プ上 の電 極 とケ ー ス の 電極 を金 線 も し くは アル ミニ ウ ム線 で 接 続 し,ケ ー ス に 蓋 を か ぶ せ,気 密 封 入 し,さ ら に検 査 を行 っ て全 工 程 を終 了 す る。 図5・12に は ウ ェー ハ プ ロセ スの 各 工 程 時 に 半 導 体 中 の 断 面 構 造 が ど の よ う に な っ て い るか を図 示 した 。
図5・12 バ イポー ラ集 積 回路 の製 造 プ ロセ ス中 の各 工 程時 の断 面
5・3 MOS集
〔1〕
積 回路
構成 素子
MOSFETを に よ っ てnチ
用 い た 集 積 回 路 をMOS集 ャ ネ ルMOSとpチ
つ い て ゲ ー ト電 圧 が0Vの
積 回 路 と い う 。MOSFETは,導
ャ ネ ルMOSの2種
類 あ り,そ
電 形
の それ ぞれ に
時 に ド レ イ ン 電 流 が 流 せ る デ プ レ ッ シ ョ ン 形 と,ド
レ イ ン 電 流 が 流 せ な い エ ン ハ ン ス メ ン ト形 が あ る こ と は,す で に 前 章 で 述 べ た 。
開発 当初 のMOS製
造 技 術 で は,ゲ ー ト酸 化膜 中 にNaイ
オ ン,Siイ
オ ン等
の正 電 荷 が 入 り込 み,こ の た め 酸 化 膜 の下 の シ リコ ン基 板 の 表 面 は電 子 が 蓄 積 さ れ てn形 化 す る 。そ の た め,こ の場 合 実 現 し得 るMOSFETは,nチ プ レ ッ シ ョン形 も し くはpチ 回路 と して 考 え る と,nチ
ャネ ル デ
ャネ ル エ ンハ ンス メ ン ト形 で あ る。 しか し,集 積
ャネ ル デ プ レ ッ シ ョ ン形 で は,す で に半 導体 表 面 に
導 電 性 の 層 が 形 成 され て い るの で,隣 接 素 子 間 に漏 れ 電 流 が 流 れ る可 能 性 が あ る た め,分 離 技 術 が 必 要 に な る。 一 方,エ
ンハ ン ス メ ン ト形 で は,ゲ ー ト電 圧 が 印 加 され た と き,そ の ゲ ー ト
電 極 の下 部 に の み チ ャネ ル が形 成 さ れ る の で,素 子 間 に は通 常 の 状 態 で は導 通 が な く,従 っ て 素 子間 の 分 離 の た め特 別 な構 造 を必 要 と しな い 。 上 記 の理 由 か ら,始 め られ た。 しか し,pチ
めの 頃 は も っ ぱ らpチ ャ ネ ルMOS集
ャ ネ ル は,す で に前 節 で述 べ た よ う に,キ ャ リア が 正 孔
で あ る た め,移 動 度 が 電 子 の1/2程 た め,nチ
ャ ネ ルMOSの
最 近 で は,プ
積 回路 の 開 発 が 進
度 で 小 さ く,応 答 が 遅 い 欠 点 が あ る。 そ の
開 発 が 強 く望 まれ た 。
ロ セ ス の進 歩 に よ る酸 化 膜 中 の正 電荷 の 除 去 法 が 開 発 され,ま
た イ オ ン打 込 み 技 術 に よ る チ ャネ ル の 不純 物 濃 度 制 御 技 術 が 発 達 し た た め,n チ ャ ネ ルMOSFETの MOSFETの MOS集 抗,コ
製 作 も可 能 に な り,現 在 で は,始
め に 述 べ た4種
類の
す べ て が 自 由 に 用 い られ る よ う にな って い る。 積 回路 の 場 合 は,ト
ラ ン ジス タ は も ち ろ んMOSFETで
ンデ ンサ が 必 要 な 場 合 に は,MOSの
チ ャネ ル 抵 抗,MOS容
あ る が,抵 量 が使 用 で
き る。 MOSFETの
ソー ス-ド レ イ ン間 は,ド
レ イ ン電 圧-ド レ イ ン電 流 特 性 か ら求
め られ る非 線 形 抵 抗 を有 し,こ れ を抵 抗 と し て用 い る こ とが で き る。 この 抵 抗 値 はゲ ー ト電 圧 に よ っ て変 化 す るの で,可 変 抵 抗 と し て利 用 す る こ と もで き る。 また,MOS構
造 は,酸 化 膜 を 間 に は さ んで 金 属 電 極 と半 導 体 層 が 向 か い 合 っ
て い る の で,酸 化 膜 を誘 電 体 とす る 静 電 容 量 と して働 く。 以 上 か らわ か る よ う に,MOS集
積 回路 はMOSFETの
み で構 成 さ れ る。
〔2〕MOS集
積回路の構成
(1) イ ンバ ー タ 回 路
MOS論
理 集 積 回 路 の 基 本 に な る の は,否 定 論 理
演 算 を行 うイ ンバ ー タ(inverter)回
路 で あ る。 この 回 路 の 一 例 を図5・13に 示
図5・13
す 。 こ の 回 路 で は,nチ れ,入
ンバー タ回路
ャ ネ ル エ ン ハ ン ス メ ン ト形 のMOSFET(T1)が
力 電 圧 が 低 電 位 の と き はT1が
入 力 電 圧 が 高 電 位 の と き はT1が 図5・14のMOS集
MOSイ
オ フ とな り,出
オ ン と な り,出
用 い ら
力 は 高 電 位 と な る 。 ま た,
力 は 低 電 位 とな る。
積 回 路 で は,負 荷 抵 抗 と し てMOSト
ル 抵 抗 を 用 い て い る 。こ の よ う に,負 荷 抵 抗 をMOSで
ラ ン ジス タの チ ャネ 置 き換 え た もの が 通 常 の
図5・14
E/E形M
OSイ タ回路
ンバ ー
MOSイ
ン バ ー タ で あ る 。 こ の 図 に お い て,下
MOSを
負 荷MOSと
呼 ぶ 。 負 荷MOSを
構 成 が 考 え ら れ る が,こ E形MOSイ
駆 動MOS,上
ど の 形 に す る か に よ っ て,い
の 例 で は,負 荷MOSも
側 の ろ い ろな
エ ン ハ ン ス メ ン ト形 に し たE/
ン バ ー タ で あ り,こ の 形 式 が イ ン バ ー タ の 基 本 形 式 で あ る 。図 で 負
荷MOSの
ゲ ー ト と ド レ イ ン は 接 続 さ れ て い る か ら,負
ト電 圧VG2と
負 荷MOSの
で,負
側 のMOSを
荷MOSに
おけ るゲー
ド レ イ ン 電 圧VD2は,
し き い 値 電 圧 をVT2,ピ
荷MOSは
す る と,
飽 和 領 域 で 動 作 し て い る 。 よ っ て,式(4・52)か
と な る 。 よ っ て,動 作 曲 線 は 図5・15の と 出 力 低 電 圧VLの
ン チ オ フ 電 圧 をVP2と
差,す
よ う に な り,E/E形
ら,
で は,出 力 高 電 圧VH
なわ ち論 理 振 幅 が あ ま り大 き く とれ な い こ と が わ か
る。
図5・15
E/E形MOSイ
ンバ ー タ
の動作 特 性
(2)
E/D形MOSイ
5・16の よ う に,負
ンバ ー タ 荷MOSを
ン バ ー タ と い う 。 負 荷MOSゲ
E/E形
の 上 記 の 欠 点 を 防 ぐ た め に,図
デ プ レ ッ シ ョ ン 形 に し た も の をE/D形MOSイ ー ト電 圧VG2は0で
あ る が,デ
プ レ ッシ ョ ン形
図5・16
E/D形MOSイ
ン
バ ー タ 回路
で あ る た め,電
流 が 流 れ る 。従 っ て,動
作 特 性 は,図5・17に
示 す よ う に,VHと
図5・17 E/D形MOSイ ー タの動 作 特 性
ンバ
VLの 差 が 十 分 大 き く と れ る 。 (3)
CMOSイ
て は,駆 動MOSが る 。図5・18に
ンバ ー タ
E/E形,E/D形MOSイ
オ ン の 状 態 で 負 荷MOSに
示 す よ う に,負 荷 をpチ
も の を 相 補 形MOS(complementary 欠 点 を 克 服 し て い る 。CMOSで と き に は,nチ
直 流 電 流 が 流 れ,電
力 が 消 費 され
ャ ネ ル エ ン ハ ン ス メ ン ト形MOSに MOS)略
は,図5・18に
ャ ネ ル の 駆 動MOSは
ンバ ー タ 回 路 に お い
オ ン,pチ
し て 通 常CMOSと 示 す よ う に,入
した
呼 び,こ
の
力電圧 が高電位 の
ャ ネ ル の 負 荷MOSは
オ フ とな
図5・18
CMOSイ
ン バー タ
回路
り,ま た 入 力 電 圧 が 低 電 位 の と き は,nチ が オ ンで,い
ャネ ルMOSが
オ フ,pチ
ャ ネ ルMOS
ず れ の 場 合 も安 定 点 で は 電 流 が 流 れ ず,電 流 が 流 れ るの は1つ の
安 定 状 態 か ら他 の 安 定 状 態 へ遷 移 す る と き だ け で あ る。 従 っ て,消 費 電 力 は 極 めて 少 な く,ま た 論 理 振 幅 も電 源 電 圧 い っ ぱ い に取 れ る利 点 が あ る。 CMOSの
構 造 は,図5・19に
示 す よ う に,通 常,n形 基 板 中 にpチ
図5・19
をつ く り,nチ
ャ ネ ルMOSはn形
基 板 中 に つ く られ たp形
られ る。 従 っ て,製 作 法 が や や 複 雑 で,ま
ャ ネ ルMOS
CMOSの
構造
の島領 域 中 につ く
た所 要 面 積 が 大 き くな る欠 点 は あ る
が,消 費 電 力 が 少 な い とい う特 長 の た め,時 計 用,電 卓 用 等 に盛 ん に利 用 され てい る。
〔4〕MOS集 MOS集
積 回 路 とバ イ ポ ー ラ集 積 回路 の 比 較
積 回路 とバ イ ポ ー ラ 集 積 回路 を対 比 した 場 合,そ
の は構 成 と製 作 工 程 で あ る。 まず,バ の 分 離 が 必 要 で あ る の に対 し,MOS集
の差異 の大 きな も
イ ポ ー ラ集 積 回 路 で は必 ず 個 々 の素 子 間 積 回 路 で は エ ンハ ン ス メ ン ト形 式 を と
る限 り分 離 を必 要 とし な い。従 っ て,MOSで
は分 離 の た め エ ピタ キ シ ャ ル成 長
や 分 離 拡 散 が 不 要 とな り,ま た素 子 当 た りの必 要 面 積 が 小 さ くな る。また,MOS 素 子 の作 成 は,ソ ー ス と ドレイ ン を併 せ て1回
の拡 散 工 程 で形 成 させ 得 るた め,
簡 単 で あ る。 バ イ ポ ー ラで は埋 込 み 拡 散,分 離 拡 散,べ 散 の4回
ー ス拡 散,エ
の 拡 散 工 程 を必 要 とす る。 この 違 い は,当 然,ホ
ミッ タ拡
トエ ッチ ング 工 程 の
回 数 に も関 係 し,ホ トマ ス クの 枚 数 に も影 響 す る。そ の た め,MOSの
ほ うが 製
造 コ ス トが 安 くな る。 また,素 子 当 た りの 所 要 面 積 も小 さ くて す む の で,チ
ッ
プ 当 た りの 素 子 数 が 大 きな 集 積 回 路 を製 作 す る の に適 して い る。 他 方,性 能 面 か ら比 較 す れ ば,動 作 速 度 の点 で は,バ イ ポ ー ラ トラ ンジ ス タ の ほ うが 速 く,ま た 電 流 駆 動 能 力 も大 き い 。 従 っ て,一 般 的 に は高 速 また は 大 電 力 の 集 積 回路 に はバ イ ポ ー ラ集 積 回 路 が 適 して い る が,こ
の こ と は,同 時 に
消 費 電 力 が 大 き くな る とい う短 所 に もな っ て い る。
5・4 メ モ リ集 積 回 路
〔1〕
メ モ リ集 積 回 路 の 種 類
集 積 回 路 を 回 路 機 能 の う え か ら 分 類 す る と,図5・2の(3)に こ の う ち,メ
モ リ集 積 回 路 は,1ビ
示 す よ う に な る。
ッ トの 記 憶 内 容 を 蓄 わ え る セ ル(cell)と
ば れ る単 位 回 路 を マ ト リ ッ ク ス 状 に 配 置 し,そ
の 周 辺 に 書 込 み,読
出 し,番
呼 地
選 択 を行 う周 辺 回 路 を置 く こ とで構 成 され て い る。 この 回 路 構 成 は比 較 的 単 純 な た め 集 積 回 路,特 に 最 も適 し て い る 。
に 大 規 模 集 積 回 路(large
scale
integrated
circuit;LSI)
メ モ リ集 積 回路 に は,機 能,使 用 素 子,回 路 形 式 等 に よ って 多 くの 区 分 が 考 え ら れ る が,一 番 基 本 的 な分 類 は,ア もの で,表5・1の
クセ ス形 式 と書 込 み,読
出 し方式 に よ る
よ う に な る。 表5・1
メ モ リ集 積 回 路 の 分 類
メ モ リ集 積 回 路 は任 意 番 地 を 自 由 に 指 定 で き る ラ ン ダ ム ア ク セ ス メ モ リ (random
access
memory)と,番
ア ク セ ス メ モ リ(sequential
地 を順 次 に し か 指 定 で き な い シ ー ケ ン シ ャ ル access
ス メ モ リで 記 憶 情 報 の 書 込 み,読 ラ イ ト メ モ リ(read/write 称 で あ るRAMは,通 る 。 一 方,原
RAMは RAM(static (dynamic
区分 され る。 ラ ン ダ ム ア ク セ
出 しが 双 方 と も 自 由 に 行 え る も の を リ ー ド/
memory)と
呼 ぶ 。 ラ ン ダ ム ア ク セ ス メ モ リの 略
常,リ ー ド/ラ イ ト メ モ リ の み を 指 す 名 称 と し て 用 い ら れ
則 と し て,固
リー メ モ リ(read
memory)に
only
定 情 報 の 読 出 し専 用 に 用 い ら れ る も の を リー ド オ ン memory)と
呼ぶ。
また セ ル が フ リ ップ フ ロ ッ プ 回 路 で 構 成 され て い る ス タ テ ィ ッ ク RAM;SRAM)と,MOS容 RAM;DRAM)に
込 ま れ る マ ス クROM(mask
量 で 記 憶 す る ダ イ ナ ミ ッ クRAM 分 か れ る 。ROMに ROM)と,メ
は,製
ー カ ー か ら出 荷 後 ユ ー ザ ー が情 報
を 書 き 込 む こ と が で き る プ ロ グ ラ マ ブ ルROM(programmable ROM)が
ROM;P‐
ある。
シ ー ケ ン シ ャ ル ア ク セ ス メ モ リ と し て は,フ し て,こ
造 工 程 中 に情 報 が 書 き
れ の 繰 り返 し で 構 成 さ れ,ク
リ ッ プ フ ロ ッ プ 回路 を基 本 と
ロ ッ ク 信 号 に よ っ て 情 報 を 次 々 と転 送 す
る シ フ ト レ ジ ス タ と,同 様 な 機 能 を 特 殊 な デ バ イ ス構 成 で 実現 した 電 荷 転 送 デ バ イ スが あ る。 後 者 に つ い て は第7章
〔2〕 (1)
で 詳 述 す る。
ランダム アクセス メモ リ RAM
ス タ テ ィ ッ クRAMは,通
ロ ッ プ 回 路 を用 い,2つ
常,メ モ リセ ル と し て フ リ ッ プ フ
の 安 定 状 態 の う ち 一 方 を1,他
ビ ッ トを 記 憶 す る も の で あ る 。 図5・20は
方 を0に
対 応 さ せ て1
バ イ ポ ー ラ ス タ テ ィ ッ クRAMの
セ
ル の 一 例 で あ る 。 図 の ト ラ ン ジ ス タ は マ ル チ エ ミ ッ タ ト ラ ン ジ ス タ(multi
図5・20
バ イ ポー ラ ス
タ テ ィ ッ クRAM
emittertransistor)と れ て お り,回
呼 ば れ,べ
ー ス 領 域 中 に2つ
路 的 に は コ レ ク タ と べー ス が 共 通 な2つ
の エ ミ ッタ が拡 散 で 構 成 さ の トラ ン ジ ス タ と 等 価 で
あ る 。 通 常 の 記 憶 の 保 持 状 態 で は ア ド レ ス 線 に つ な が る エ ミ ッ タ は0レ な っ て い て,オ
ンの 側 の トラ ン ジ ス タの コ レ クタ電 流 は ア ド レス線 に流 入 し て
い る 。 い ま記 憶 内 容 を 読 出 す と き は,選 か ら"1"に
す る と,オ
択 さ れ た セ ル の ア ド レ ス 線 の 電 位 を0
ン の 側 の トラ ン ジ ス タ の 電 流 は デ ー タ 線 に つ な が る エ ミ
ッ タ を 通 し て デ ー タ 線 に 流 入 す る か ら,デ 器 で,こ
ベル に
ー タ線 の端 に接 続 さ れ た セ ン ス 増 幅
の 電 流 を検 出 し て 記 憶 内 容 を 知 る。 書 込 み の と き は,書
ル の ア ド レ ス 線 の 電 位 を あ げ,デ
ー タ 線 の 入 力 の 一 方 を1,他
1が 入 っ た 側 の ト ラ ン ジ ス タ が オ フ,反
対 側 が オ ン に な り,記
き込 む べ き セ
方 を0に
す る と,
憶 が 書 き込 まれ
る 。
これ と同 等 な 回 路 をMOSト
ラ ン ジス タ で構 成 した もの がス タテ ィ ッ ク
MOSRAMと
示 す。
呼 ばれ,図5・21に
図5・21
スタ テ ィ ッ ク
MOSRAM
これ に対 し,MOSの MOSRAMで
一 時 記 憶 回 路 を メ モ リセ ル に し た もの が ダ イ ナ ミ ッ ク
あ る。ダ イ ナ ミ ックRAMで
は,あ る 時 間 を経 過 す る と記 憶 内 容
が消 滅 す るの で,消 滅 す る前 に 同 一 記 憶 内 容 の 再 書 込 み を行 う必 要 が あ り,こ れ を リフ レ ッ シ ュ(refresh)と ダ イ ナ ミッ クMOSRAMの りMOSト
呼ぶ。 セ ル の 形 式 は大 別 す る と3種 類 あ り,1セ ル 当 た
ラ ン ジ ス タ4個 で 形 成 す る方 式,ト ラ ンジ ス タ3個
で形 成 す る方 式,
トラ ン ジ ス タ1個 の み で形 成 す る方 式 に区 分 さ れ る。図5・22は,1ト
図5・22
1ト ラ ン ジ ス タ 形MOSダ
ッ クRAMの
セル
ラ ンジス
イナ ミ
タ 形 セ ル の 回 路 形 式 で あ る 。図 で コ ン デ ン サC1を ス タT1を
ス イ ッ チ 回 路 と す る 。 い ま,T1を
ワ ー ド線 で オ ン に し,デ
C1に 電 荷 を 蓄 積 す る か し な い か に よ っ て,1,0を や は りT1を
オ ン に し,C1の
一 時 記 憶 素 子 と し,ト ラ ン ジ
記 憶 させ る 。読 出 す と きは
電 荷 の 有 無 を検 出 す る 。 こ の 形 式 は,ト
を ス イ ッ チ ン グ 用 と し て の み に 用 い,増
ー タ線 か ら
ラ ンジ ス タ
幅 用 に 用 い て い な い た め,読
め て 高 感 度 の セ ン ス 増 幅 器 を 必 要 と す る が,素
出 しに 極
子 数 が 少 な くて す む た め大 規 模
集 積 化 に 適 して い る。 (2)
ROM
マ ス クROMは,製
造時 にすで にきめ られた プ ログ ラムに
従 っ て 配 線 が 完 了 し て お り,従 っ て 書 込 む 情 報 は 製 造 前 に す で に 定 ま っ て お り, あ と か ら 変 更 は で き な い 。 一 番 普 通 の 形 式 は,ワ
ー ド線 と ビ ッ ト線 で 構 成 す る
マ ト リ ッ ク ス の 交 点 に ト ラ ン ジ ス タ ま た は ダ イ オ ー ドが 配 置 さ れ て お れ ば1, な い と き は0が
記 憶 さ れ て い る とす る も の で あ る 。図5・23に
ダ イ オ ー ドを 用 い
た例 を示 す。
図5・23
PROMは,マ
トリ ッ ク ス交 点 に トラ ン ジ ス タ また は ダ イ オ ー ド と直列 に ヒ ュ
ー ズ を入 れ て お き
,ユ
あ る。
ダ イ オ ー ドROM
ー ザ ーが プ ロ グ ラム に従 っ て ヒ ュー ズ を溶 断 す る もの で
演 〔問 題 〕1.
MOS集
習
問
題
〔5〕
積 回 路 で は,ゲ ー ト電 極 の 下 の 酸 化 膜 は,通 常 の 酸 化 膜 を 除 去
し て 後,再 酸 化 を行 い,良 質 の 酸 化 膜 を付 け る。MOS集
積 回 路 の ウ ェー ハ プ ロ セ
ス を 図5・11に な ら っ て 書 け。
〔 問 題 〕2.MOS集
積 回 路 の 製 造 プ ロ セ ス 中 の 各 工 程 時 の 断 面 図 を 図5・12に
な
ら っ て 書 け。
〔問 題 〕3.表 幅 を10μmと
〔 問 題 〕4.ド
面 層 抵 抗 率 が100Ω/□
の べー ス 拡 散 で2kΩ
の 抵抗 を実 現 したい。
す る と長 さ は い く ら あれ ば よ い か 。
ナ ー 濃 度 が2×1023のn形
領 域 で 構 成 さ れ るpn接 め よ。 こ こで,Siの
合 に20Vの
比 誘 電 率 は12,接
領 域 と,ア
答(200μm)
ク セ プ タ濃 度 が8×1021のp形
逆 バ イ ア ス 電 圧 を か け た 時 の 接 合 容 量 を求 合 の 断 面 積 は100μm×100μmと
す る。 答(0.58pF)
第6章
光 電 素 子
(オ プ ト エ レ ク トロ ニ ッ ク デ バ イ ス)
この 章 で は,半
導 体 中 に起 こ る光 の 吸 収 や 発 光 現 象 に つ い て,そ
こ る 原 因 を 解 明 し,こ (LED;light
emitting
の 光 電 特 性 を利 用 し た 光 検 出 器,発 diode),半
(opto‐electronic device)に
れ の起
光 ダ イオ ー ド
導 体 レー ザ,太 陽 電 池 な ど の 光 電 素 子
つ い て 説 明 し よ う。
6・1 半 導体 の光 吸収 と発 光
〔1〕 光 の 吸 収 過程 図6・1の よ うに,物 体 にあ る波 長 の 強 さIiの 単 色 光 を照 射 す る と,光 の 一 部 は物 体 表 面 で 反 射 さ れ(反 射 係 数R),他 け る 透 過 光 の 強 さ は(1−R)Iiで
は透 過 して い く。 この と き,表 面 に お
あ る。
図6・1 物 体 の 光 の反 射,吸 収,透 過
さ ら に,物
質 中 を,強
さIの
光 が 距 離dx進
質 の 光 に 対 す る 吸 収 係 数(absorption α の 値 は,照
む 間 に 減 衰 す る 量dIは,そ
coefficient)を
α と し て(こ
の物
の吸 収 係 数
射 光 の 波 長 に よ っ て 変 化 す る), dI=−αIdx
(6・1)
で 与 え ら れ る 。 こ の 式 をx=0で,I=(1−R)Iiと 距 離xに
い う 条 件 で 解 け ば ,表 面 か ら
お け る 光 の 強 さ は, I
=(1−R)Iiexp(−αx)
(6・2)
で あ る 。光 が こ の 物 質 を 抜 け 出 る と き に も,終 端 面 で 同 率 の 反 射 が 起 こ る の で こ れ を 考 慮 す る と,射
出 光 の 強 さIoは,こ
の 物 体 の 厚 さ をlと
して
,
, (6・3)
に な る 。 従 っ て,こ
の 物 体 の,こ
の 照 射 し た 単 色 光 に 対 す る 透 過 率Tは
, (6・4)
で あ る 。 そ れ ゆ え,こ
の 物 体 の こ の 単 色 光 に 対 す る 吸 収 率Aは
,A=1−Tで
あ る。 こ の よ う な 光 の 吸 収 現 象 は 半 導 体 で も起 こ り,そ こ と が 知 られ て い る が,そ
れ ら は,半
の 原 因 と し て,い
う な 振 動 数 を も つ 光 に 対 し て 起 こ る 。 す な わ ち,こ
の よ う な 共 振 現 象 に よ り,
電 子 や 格 子 は 光 か ら エ ネ ル ギ ー を も ら い(光 を 吸 収 す る),そ 変 え る(遷
移 す る)。 こ の 吸 収 過 程 を 図6・2に
図 中(a),(b)は,価 示 し,こ (d)は
い)さ
の エ ネ ル ギ ー値 を
示す。
電 子 帯 の 電 子 が 光 を 吸 収 し て 伝 導 帯 へ 遷 移 す る過 程 を
の よ う な 吸 収 を 基 礎 吸 収(fundamental
absorption)と
い い,(c),
同 じ バ ン ド 内 で の 遷 移 に よ る 吸 収 過 程 を 示 す 。 ま た,(e)の
射 に よ っ て 生 じ た(正 れ て で き る)1種
す る 吸 収 で,こ に,(f)は
くつ か の
導 体 中 の 電 子 や格 子 の 振 動 に共 振 す る よ
孔 と電 子 が ク ー ロ ン 力 に よ っ て 弱 く結 合(再 の 電 気 的 に 中 性 な 複 合 粒 子(励
れ はエ キ シ トン 吸 収(excitonic
吸 収 は光 照 結合 ではな
起 子(exciton))に
absorption)と
起 因
呼 ば れ る。 さ ら
半 導 体 中 の 不 純 物 に よる 吸 収 を示 す 。
格 子 振 動 の 量 子 化 に よ っ て 生 じ る エ ネ ル ギ ー 量 子(フ
ォ ノ ン(phonon))が,
光 量 子 と共 に 電 子 の 励 起 に 関 与 す る 基 礎 吸 収 過 程 は 間 接 遷 移 と 呼 ば れ(b),フ
図6・2 半導 体 に お ける光 吸 収
ォノ ンの 関 与 が な い 基 礎 吸収 は直 接 遷 移 と呼 ば れ る(a)。
な お,直 接 遷 移 にお
い て は,遷 移 の前 後 に お い て 電 子 の もつ運 動 量 は 変 化 しな い が,間
接遷 移で は
変 化 す る。 従 っ て,電 子 の運 動 量 が 変 わ らな い遷 移 が 直 接 遷 移 で あ る とい う こ と もで き る。 直 接 遷 移 に よ る 吸 収 係 数 αDは,与 え られ た光 の振 動 数ν や,半 導 体 の 禁制 帯 幅Egに
よ って 変 化 し,Aを
定 数 と して,hν
に関 す る(1/2)乗 式, (6・5)
で 表 され る。 この 式 か ら も明 らか な よ う に,基 礎 吸 収 は,Egで 数 以 上(つ
ま り,あ る波 長 以 下)で
定 ま る あ る振 動
起 こ り,こ の 波 長 を基 礎 吸 収 端 とい う。
ま た,間 接 遷 移 の 吸 収 率 αindは,フ ォノ ンの 吸収 や 放 出 を伴 うの で,複 雑 に な り, ( 6・6)
の よ う なhν
に 関 す る 二 次 関 数 とな る 。 こ こ で,Epは
フ ォ ノ ンの エ ネ ル ギ ー 。
従 っ て,こ の α と hνの 関 係 を 測 定 す る こ と に よ っ て,そ の 光 吸 収 が 直 接 遷 移
に よ る もの か , 間 接 遷 移 に よ る もの か を見 分 け る こ とが で きる 。 な お,フ ンの 助 け を借 りて(吸
収 し て)遷 移 す る確 率 は小 さい の で,こ
ォノ
れ に起 因 す る吸
収 率 は小 さ い 。 図6・3は,半
導 体 に見 られ る,光 吸 収 に関 す る 波長 特 性 の 一 般 的 な もの を示
図6・3 半 導体 の 光 の 吸 収特 性 し,図6・4お
よ び 図6・5は,各
種 半 導 体 の 吸収 特 性 を示 した 。
〔2〕 発 光 過 程 半 導体 に光 あ る い は 他 の 形 で エ ネ ル ギー を与 え る と,価 電 子 帯 や 不 純 物 準 位 に あ る電 子 は その エ ネ ル ギ ー を 吸 収 し て,伝 導帯 や よ り高 い準 位 に励 起 され, あ とに正 孔 を残 す 。 これ らの 励 起 され た電 子 は,あ
る程 度 の 時 間,励 起 状 態 に
留 ま っ て い るが,や が て エ ネ ル ギ ー の 低 い状 態 に遷 移 す る。 す な わ ち,励 起 に よ っ て作 られ た 正 孔 と再 結 合 して励 起 前 の 状 態 に も どっ て い く。 この と き,余 分 の エ ネ ル ギ ー を光 の形 で 放 出 す る過 程 を放 射 再 結 合(radiation tion)と い い,熱 (Auger
の 形 で 放 出 す る場 合 を非 放 射 再 結 合(ま た は,オ
recombination)と
い う。
recombina ー ジ ェ再 結 合
図6・4 各 種 半 導体 の 吸収 特性(そ の1)
図6・5
各種 半導 体 の吸 収
特 性(そ
の2)
(Molchior,Laser book
Vol.1,
Holland
Hand‐ North‐
1972)
再 結 合 は,図6・2に 遷 移,間
接 遷 移,あ
さ れ るが,実
示 した励 起 過 程 と逆 の 過 程 で行 わ れ る。 す な わ ち,直 接 る い は エ キ シ トンや 不 純 物 を仲 介 と した遷 移 な ど に よ りな
際 に は これ らの遷 移 が すべ て 同 時 に起 き る とは 限 らず,む
しろ材
料 の種 類 や 励 起 の 状 態 に よ って 特 定 の再 結 合 過 程 が 選 択 的 に起 き る。 直 接 遷 移 形 半 導 体 と して は,ガ
リウ ム ひ素(GaAs)が
代 表 的 な もの で,こ
の放 射 再 結 合 過 程 にお け る振 動 数ν の 発 光 ス ペ ク トル 強 度Lは,吸 様ν の 関 数 とな り,Bを
れ
収 過 程 と同
定 数 と して励 起 の と き と同 様 に,式(6・7)で 与 え ら れ
る。 (6・7)
間接 遷 移 形 半 導 体 と して は,シ
リコ ン(Si)が 代 表 的 な もの で,こ れ の 遷 移 過
程 で は フ ォノ ンの 吸 収 や 放 出(ど
ち らか とい え ば,放 出 の ほ うが確 率 が 高 い)
を伴 うの で,こ
の 再 結 合 過 程 に お け る発 光 ス ペ ク トル強 度L は, (6・8)
で与 え られ,吸 収 過 程 の 場 合 と同様,ほ
ぼhν の2乗
に比 例 す る。
しか し,こ の 間 接遷 移 形 の もの の 中 に は特 殊 な もの が あ る。 例 え ば,ガ ム りん(GaP)に Nは
窒 素(N)を
同 じ5族 の 元 素 で あ る が,Pの
た め,結 晶 中 のP原
子 がN原
す る。 そ の た め,N原
リウ
添 加 した化 合物 半 導 体 が それ で あ る。 元 来,Pと 核 外 電 子 数 は15個,Nの
子 で 置換 され る と,N原
それ は7個 で あ る
子 の 周 辺 に は電 子 が 不 足
子 の 周辺 に は 電 子 を補 足 し よ う とす る状 態(補 足 中 心)
が で きる 。 これ を ア イ ソエ レク トロニ ッ ク トラ ップ(isoelectronic
trap)と
い
う。 この とき,窒 素 の 添 加 量 が か な り多 い と,こ れ が 禁 制 帯 中 に,あ た か も許 容 帯 の よ うな エ ネ ル ギ ー 準 位 の集 合 を形 成 す る。 そ し て,こ
こ に励 起 され た 電
子 は価 電 子 帯 の 正 孔 と,あ たか も直 接 遷 移 形 の半 導 体 の よ う に再 結 合 し,強 い 発 光 が 観 測 され る。 この よ うな遷 移 過 程 を擬 間 接 遷 移 と呼 ぶ 。 擬 間 接 遷 移 は,GaPに 素 りん(GaAs1-xPx) にNを
亜 鉛(Zn)と にNを,ま
た,イ
酸 素(O)を
加 え た もの や,ガ
リ ウム ひ
ン ジ ウ ム ガ リ ウム りん(InGa1-xPx)
加 え た化 合 物 半 導 体 な どに も見 られ,こ れ らの 材 料 は発 光 ダ イ オ ー ド と
して 利 用 され て い る。
発 光 素 子 を作 る材 料 に は,発 光 効 率 の 高 い 直 接 遷 移 形 の 半 導 体 が 良 いが,さ ま ざ まな色 の 発 光 を得 る に は,禁 制 帯 幅Egの
大 きい こ とが 必 要 で あ る。 さ ら
に,不 純 物 準 位 や 捕 足 中 心 準 位 を遷 移 に利 用 す る場 合 に は,か
な り大 き な値 の
Egを 必 要 とす る 。
6・2 受 光 デ バ イ ス
〔1〕 光 導 電 デ バ イ ス 半 導体 に適 当 な 波長 の 光 を 当 て る と,光 吸 収 が 起 こる こ と は既 に 前 節 で述 べ た。 そ こで,図6・6の
よ う に,真 性 半 導体 の 両 端 に オ ー ム性 電 極 を つ け た 素 子
を考 え る。
図6・6 光 導 電 デ バ イ スの 構造 こ の 素 子 に 用 い ら れ た 材 料 の 暗 導 電 率 σ(光 照 射 を 与 え な い と き の 導 電 率 (dark
conductivity))は,式(2・52)に
示 し た よ う に,キ
ャ リ ア の 熱 平 衡 密 度 をn0
,p0,移 動 度 を μn,μpと し,
(6.9) で あ る。
次 に,図6・7の
よ うに,半 導 体 の 禁 制 帯 幅 よ り も大 きな エ ネ ル ギ ー を もつ光
(量 子)を 一 定 の 照 度 で,照
射 し続 けれ ば,価 電 子 帯 の電 子 は 光 を吸 収 し伝 導 帯
図6・7
光 導電 デバ イ スの エ ネ ルギ ー 図
へ励 起 され,価 電 子 帯 に 正 孔 を残 す 。 この と き生 ず る過 剰 キ ャ リア 密 度Δn(= Δ p)は,半
導 体 の 導 電 率 を増 加 す る。 そ の とき の導 電 率 の増 加 分Δ σ は, (6・10)
で あ る。 素 子 に時 刻t=0か 剰 キ ャ リア密 度Δnは,光 対 生 成 率 をG,キ
ら,一
定 照 度 の 光 照 射 が 与 え られ て い る と き,過
照 射 に よ る単 位 体 積,単
位 時 間 当 た りの キ ャ リア の
で あ る こ と か ら,時
ャ リア の ラ イ フ タ イ ム を τ とす れ ば,
刻t に お け るΔnは, (6・11)
で あ る。 それ ゆ え,十 分 な時 間 の 経 過 後 の 過 剰 キ ャ リア 密 度 はGτ に な る。 式(6・11)の 関 係 を 式(6・10)に 代 入 す れ ば,光 照射 を 始 め て か らt秒 後 の 導 電 率 の増 加 分Δσ は, (6・12)
とな る。 この 式 か ら も明 らか な よ う に,Gは
照 射 され る光 の 照 度 に ほ ぼ比 例 す
るの で,Δσ は 光 の 照 度 に よ っ て変 化 し,そ の 結 果,光 電 流 出 力 を光 入 力 信 号 に よ って 制 御 す る こ とが で き る。 ま た,τ の 大 きい 材 料 ほ ど高 い感 度 が 得 られ る
こ と もわ か る。 し か し,照 射 さ れ る光 の 強 さが 急 速 に 変 化 す る と き の素 子 電 流(光 電 流)の 応答 を考 え る場 合 に は,τ の 大 き い こ とは都 合 が 悪 い 。す な わ ち,式(6・12)か ら も明 らか な よ う に,光 の 照 度 変 化 に対 応 す る導 電 率 の 変 化 に は時 定 数 τが 必 要 で あ る。つ ま り,こ の素 子 は,応 答 に τ程 度 の 時 間 遅 れ を もつ た め,τ よ り短 い 周 期 で 変 化 す る光 入 力 信 号 に対 して は 出 力 が 激 減 す る欠 点 が あ る。 以 上 の こ とか ら,こ の素 子 は 高 い 感 度 を望 む と高 い 周 波 数 で の応 答 が悪 くな り,逆 に高 い 応 答 周 波 数 を望 む と高 い感 度 が 得 ら れ な くな る性 質 を もっ て い る。 従 っ て,こ
の種 の光 検 出 器 は,街 路 灯 の 自動 点 滅 器 や カ メ ラの 露 出計 な どの
よ う に,比 較 的 応 答 速 度 を問 題 に しな い 場 合 に広 く用 い られ て い る。 光 導 電 素子(ホ
ト コ ン ダ ク タ(photo
ム(CdS;0.5μm付
して は,硫 化 カ ド ミウ
近 で感 度 が 高 い)や セ レ ン化 カ ド ミウ ム(CdSe;0
付 近 で 感 度 が 高 い)な
.7μm
どの粉 末 を,成 形 ・焼 成 し て作 られ た もの が 多 く,ま た
赤 外 光 用 と して は 硫 化 鉛(PbS),硫
図6・8
conductor))と
化 セ レ ン,あ る い は,金
各 種光 導 電 デバ イ ス の感 度 の波 長 特 性 (SZE,
Physics of
Semiconductor
Devices,Wiley)
を ドー プ した ゲ ル
マ ニ ウ ム(Ge:Au)や,水
銀 ・カ ド ミ ウ ム ・テ ル ル(Hg1-xCdxTe)な
わ れ て い る 。 な お,図6・8は,各
どが 使
種 の 光 導 電 デ バ イ ス 材 料 の 光 量 子 効 率(1個
の 光 量 子 を 吸 収 し て 何 個 の 電 子 が 励 起 さ れ る か を 百 分 率(%)で
示 し た も の)が,
照 射 光 の 波 長 に よ り どの よ う に変 化 す るか を示 して あ る。
〔2〕 ホ ト ダ イオ ー ド pn接
合 ダ イ オ ー ドを逆 バ イ ア スVRに
す る と,極 め て わ ず か な逆 飽和 電 流 が
流 れ る こ とは 既 に述 べ た。 この ダ イ オ ー ドの接 合 部 近 傍(空
乏 層 と その 両 側 拡
散 距 離 程 度 の領 域)に 光 を照 射 す る と しよ う。 空 乏 層 内 で 作 られ た キ ャ リア は 逆 バ イ ア ス に よ って で きて い る空 乏 層 内 の強 い 電 界 に よ り分 離 され,電
子 はn
領 域 へ,正 孔 はp領 域 へ 入 る。 ま た,空 乏 層 の 両 側 拡 散 距 離 程 度 の領 域 に生 じ た キ ャ リア は,拡 散 に よ り空 乏 層 中へ 入 り,空 乏 層 の電 界 で 分 離 され,そ れ ぞ れn,p領
域 へ 導 か れ る。
この と き生 ず る キ ャ リア の 数 は,ほ ぼ照 度 に比 例 す るの で,ダ
イ オ ー ドに流
れ る逆 電 流(光 電 流)Iphの 大 き さ は,ほ ぼ光 の 強 さ に比 例 す る。 この よ うな受 光 素 子 をホ ト ダ イ オ ー ド(photo
diode)と
い う。
ホ ト ダ イ オ ー ドの 応 答 は,光 導 電 素 子 に比 べ て キ ャ リア の ラ イ フ タイ ム に起 因 す る時 間遅 れ が な い た め早 いが,な
お,そ の 動 作 に キ ャ リア の拡 散 現 象 が 関
与 し て い る た め 適 用 し得 る光 信 号 の周 波 数 は 数10kHz程 また,ホ
度 で あ る。
ト ダ イ オ ー ドは光 導 電 素 子 の よ う に,光 照 射 の 継 続 で キ ャ リアが 累
積 され 感 度 を 高 め る効 果 が な い た め,そ れ だ け感 度 が 低 くな る。 そ こで,こ
の 低 い感 度 を改 善 し,さ らに応 答 周 波 数 を高 め る た め,次
に述 べ
る2つ の 素 子 が 作 られ て い る。 1つ は,図6・9に
示 す よ う に,pn接
合 の 間 に適 当 な 厚 さのi層 を挿 入 し,逆
バ イ ア ス した と き に作 られ る空 乏 層 の幅 を広 げ,高
い逆 バ イ ア ス電 圧 で の使 用
を可 能 に した 素 子 で あ る 。 この 素 子 に お い て は,図6・10の
よ う に,広 い 空 乏 層
の た め受 光 領 域 が 広 が り高 い 光 感 度 が 得 られ,ま た 空 乏 層 内の 高電 界 の た め キ ャ リア は迅 速 に移 動 し,高 周 波(数GHz)で
の 使 用 を可 能 にす る。 さ ら に,i層
図6・9
pinホ
ト
ダイ オ ー ド の 構造
図6・10
pinホ
ト
ダ イ オー ド の動 作
の 挿 入 は,暗 電 流 と雑 音 を少 な くす る効 果 もあ る 。 この 素 子 で使 用 が 可 能 な光 の 波 長 範 囲 は,Si素 素 子 で は0.6∼1.7μmで 他 の1つ
に は,よ
子 の場 合0.4∼1.1μm,Ge
あ る。
り感 度 を高 め るた め,入 射 光 で 生 成 した 正 孔 と電 子 が 空 乏
層 を通 過 す る際,そ
この 強 い電 界 に よ る ア バ ラ ンシ増 倍作 用 を用 い て 光 電 流 を
増 幅 す る ア バ ラ ン シ ホ ト ダ イ オ ー ド(APD;avalanche
photo diode)が
あ る。
そ の構 造 を図6・11に 示 す。こ の素 子 は前 述 の 素 子 に お け るi層 の 代 わ りに ア ク セ プ タ 濃 度 の 低 いp-層
を用 い て い る。 その 素 子 は ア バ ラ ン シ倍 増 を させ る た
め,高 い 逆 バ イ ア ス電 圧 を印 加 して 使 用 す る。 そ の た め,空 乏 層 が形 成 さ れ る p-層 の,特 に周 辺 部 分 で の 接 合 が絶 縁 破 壊 しや す い の で,こ れ を防 ぐた めn+領
図6・11
ア バ ラ ン シ ホ ト ダ イ オ ー ド(APD)の
域 を 張 り出 し(こ れ をガ ー ド リ ン グ(gard
ring)と い う),破 壊 しや す い部 分 の
電 界 を弱 め る よ う に工 夫 して あ る。 な お,こ また 数GHz程
構造
の素 子 は 微 弱 な光 で感 度 が 高 く,
度 の 周 波 数 に応 答 す る利 点 を もつ が,入 射 光 照 度 と光 電 流 は 比
例 せ ず,雑 音 が 多 く,温 度 の影 響 を受 けや す い 欠 点 が あ る。 この 他,MOS構
造 の ホ ト ダ イオ ー ド(MOSホ
ト ダ イ オ ー ド)も 利 用 され て
い る。
〔3〕
ホ ト トラ ン ジス タ
ホ ト ダ イ オ ー ドの 低 い 感 度 を 補 う た め に,光 電 流 を トラ ン ジ ス タ の 増 幅 作 用 を 用 い て 増 幅 す る 素 子 と し て ホ ト トラ ン ジ ス タ(photo
transistor)が
あ る。 す
な わ ち,図6・12(a)に
示 す よ う に,こ
を 一 体 化 し た 構 造 を も ち,そ
の 素 子 は ホ ト ダ イ オ ー ド と トラ ン ジ ス タ
の 等 価 回 路 は 同 図(b)に
示 さ れ る。 ホ ト トラ ン ジ
ス タ に お い て 光 照 射 は べー ス-コ レ ク タ 間 の 空 乏 層 と そ の 近 傍 に 与 え ら れ る 。こ こ で 発 生 し た 光 電 流 は ト ラ ン ジ ス タ の べー ス 電 流 と な り,こ の 増 幅 率 β に よ っ て100∼500倍
の 大 き さ に 増 幅 さ れ る 。 し か し,べ
ク タ 間 の 光 電 流 は キ ャ リア の 拡 散 に よ っ て 流 れ る た め,そ こ の 部 位 の 拡 散 容 量(Cd)は
(b) ホ ト
の 速 度 は 遅 く,ま た,
度 で あ る。
ト トラ ン ジ ス タ
トラ ン ジ ス タの
等 価 回路
(c) ホ ト
ダ ー リ ン トン
トラ ン ジ ス タ
(d) ホ ト ダ ー リ ン トン トラ ン ジ ス タ の 等 価 回 路
図6・12
ー ス-コ レ
光 電 流 中 の 高 い 周 波 数 成 分 を 短 絡 し て し ま う の で,
そ の 応 答 周 波 数 は 数10kHz程
(a) ホ
れ が トラ ン ジ ス タ
ホ ト ト ラ ン ジ ス タ の 構 造 と等 価 回 路
次 に,図(a)の
素 子 よ り も,さ
ト トラ ン ジ ス タ(PhTr1)の ス(B2)に
ら に 高 い 感 度 を 得 る た め,図(c)の
エ ミ ッ タ(E1)を
増 幅 用 の トラ ン ジ ス タ(Tr2)の
接 続 し た ダ ー リ ン トン 回 路(darlington
circuit,そ
べ ー
の 増 幅 率 は,お
そ 個 々 の ト ラ ン ジ ス タ の 増 幅 率 の 積 β1×β2倍 に な る)を,1つ 構 成 させ た 素 子 が あ る が,こ
よ うに ホ
よ
の チ ップ の上 に
れ は 微 弱 光 を検 出 す る た め の 素 子 と し て 作 ら れ て
い る 。 図(d)は
そ の 等 価 回路 を示 す。
表6・1は,上
述 し た 各 種 の 光 検 出 器 の 利 得 お よ び 応 答 周 波 数 〔Hz〕 を 示 す 。
表6・1 光 検 出 器 の特 性
* 利 得 は,光 電 流 の増 倍 率 を 意味 す る
6・3
発 光 デバ イス
〔1〕
エ レ ク トロ ル ミネ ッセ ンス
固 体 に 外 部 か ら電 界 を か け て エ ネ ル ギ ー を 与 え た と き発 光 現 象 が あ れ ば,こ れ を 電 界 発 光(エ
レ ク ト ロ ル ミネ ッ セ ン ス(EL;electro
luminescence))と
い
う。電 界 発 光 は,真 性 エ レ ク ト ロ ル ミ ネ ッ セ ン ス と注 入 形 エ レ ク ト ロ ル ミ ネ ッ セ ン ス に 分 類 さ れ る が,こ べ,注
こ で は 真 性 エ レ ク トロ ル ミネ ッセ ン ス に つ い て 述
入 形 エ レ ク トロ ル ミ ネ ッ セ ン ス に 関 し て は,次
の 〔2〕「発 光 ダ イ オ ー ド」
の項 で 説 明 し よ う。 真 性 エ レ ク ト ロ ル ミ ネ ッ セ ン ス を 利 用 す る 素 子 と し て は,硫
化 亜 鉛(ZnS)
や 硫 化 カ ド ミウ ム(CdS)な
どの 蛍 光 物 質 中 に,発 光 に寄 与 す る活 性 体,す
ち発 光 中 心(luminescence
center)を
形 成 す るCu, Ag, Mnや,稀
なわ
土類 元素
の フ ッ化 物 な ど を添 加 した 材 料 で作 られ た もの が 広 く実 用 され て い る。 この 発 光 素 子 の 構 造 の一 例 を 図6・13に 示 す 。この 素 子 は ガ ラ ス板 表 面 に酸 化 錫(SnO2)や
酸 化 イ ン ジ ウム(In2O3)な
ど を付 け た 透 明 電 極 上 に,上 述 の発 光 材
料 薄 膜 を塗 布 また は蒸 着 に よ っ て付 け,さ
らに そ の 上 に金 属 電 極 を付 け た,一
種 の シ ョ ッ トキ ー 接 合 と して 形 成 さ れ て い る。
図6・13 真性EL素
子 の構造
この 素子 を発 光 させ る に は,外 部 か らか な り大 きな値 の 交 流 ま た は パ ル ス電 圧 を印 加 す る こ とが必 要 で あ る。 この 際,発 あ るが,完
光 体 の抵 抗 は か な り大 きな 値 で は
全 な絶 縁 物 で は な い た め 導 電 電 流 が 流 れ,そ れ に よ る素 子 内 で の ジ
ュー ル熱 は 素 子 の 寿 命 を縮 め て し ま う。 そ こで これ を改 善 す るた め,酸 化 イ ッ トリウ ム(Y2O3)な
どの 透 明 で抵 抗 の 非 常 に大 きい被 膜 を発 光 体 の 両 面 に 付 け
導 電 電 流 が 流 れ な い よ うに す る場 合 もあ る。 次 に,こ の 素 子 に交 流 電 圧 が 印 加 され る と きの発 光 原 理 を,図6・14の
エ ネル
ギ ー 帯 図 に よ り説 明 し よ う。 まず,金 属 電 極 に対 して,発 光 体 側 が 正 電 位 に あ る と き,す な わ ち図6・14の 場 合 に は,発 光 体 中 の ドナ ー 準 位 や価 電 子 帯 か ら熱 励 起 さ れ た電 子 や,金
属側
か ら障 壁 を越 えて き た電 子 は発 光 体 部 に お け る強 い電 界 に よ り加 速 さ れ て 正 電
図6・14 真 性ELの
発 光 原理
極 側 に走 る。 この 大 き な エ ネ ル ギ ー を も った 電 子 は発 光 中 心 の電 子 を衝 突 電 離 させ,電 子 を伝 導 帯 に励 起 す る。 この と き,発 光 中 心 は正 イ オ ンに な る。 さて,こ
の よ うに して 生 成 され た 電 子 は 正 電 極 側 に 走 っ て行 くが,ま
もな く
印加 電 圧 の極 性 が 変 わ り,従 って 電 子 の進 行 方 向 も逆 にな り,再 び速 度 を増 し た電 子 は イ オ ン化 した 発 光 中心 と出 合 い再 結 合 す る。 この 再 結 合 の 際 に放 出 さ れ る エ ネ ル ギ ーが 光 とな り放 射 され る。 EL素
子 の発 光 色 は,母 材 の 禁 制 帯 幅 や 禁 制 帯 中 に で き る発 光 中心 の 準 位 の
位 置 に よ っ て 異 な る 。 図6・15に,マ (ZnS:Mn)薄 EL素 る壁)と
膜 を用 い たEL素
ン ガ ン を発 光 中心 と して加 え た硫 化 亜 鉛
子 の発 光 特 性 を 示 す 。
子 は,そ れ が発 表 され た 当初,消 費 電 力 の小 さい 平 面 形 の 発 光 素 子(光 して 注 目 され たが,輝
度 が 弱 く,寿 命 も短 い 欠 点 が あ った 。 しか し,
現 在 で は,こ れ らの 短 所 が か な り改 善 され,各 種 の 表 示 器 や ブ ラ ウ ン管 に代 わ る もの と して 用 い られ る よ うに な って きて い る。
図6・15 ZnS:Mn薄
膜
EL素 子 の 発 光特 性
〔2〕 発 光 ダ イ オ ー ド 例 え ば,図6・16の
よ う に,ガ
リウム ひ 素(GaAs)で
作 られ たpn接
合 に,順
方 向電 流 を流 しキ ャ リア の 注 入 を行 う と,空 乏 層 と それ に 隣 接 す る キ ャ リア拡 散 領 域 で,注 入 され た 少 数 キ ャ リア は,直 接 また は,不 純 物 準 位 な ど を仲 介 し て 多数 キ ャ リア と再 結 合 す る。 この とき,開 放 され た エ ネ ル ギ ー が光 と して放 射 さ れ るが,こ
の 原 理 を利 用 し て作 られ た発 光 素 子 が 発 光 ダ イ オ ー ド(LED;
light emitting diode)で
ある。
発 光 の最 短 波 長 λcは,母 材 の 禁 制 帯 の幅 Eg〔eV〕で,お
よそ 決 ま り,
λc= 1.24/Eg〔μm〕(6・13) で あ る が,発 光 中心 な どの 準 位 を介 して 再 結 合 が 行 わ れ る場 合 に は,当 然 そ の と きの 発 光 波長 は これ よ り も長 くな る。 効 率 の良 いLEDを
作 製 す る に は,伝 導 帯 の 電 子 と価 電 子 帯 の 正 孔 が 直 接 遷
移 に よ り再 結 合 す る よ うな,直 接 遷 移 形 半 導 体 が 高 い効 率 が 得 られ る た め 用 い
図6・16
図6・17 各 種LEDの (SZE,Physics
GaAs
pn接
合LEDの
発光
発光 特 性 of Semiconductor
Devices, Wiley)
られ る。 これ に対 し て,間 接 遷 移 形 半 導 体 を使 用 す る場 合 に は,先 とお り,再 結 合 は フ ォ ノ ンを介 し て行 わ れ る た め,そ
に も述 べ た
の遷 移 確 率 は 低 くな り,
一 般 に発 光 効 率 が 悪 くな る。しか し,6・1節 〔2〕で 述 べ た ア イ ソエ レ ク トロニ ッ ク トラ ップ の よ う な捕 足 中 心 が あれ ば,こ れ に よ る擬 直 接 遷 移 で 強 い発 光 素 子 が 作 られ る。 GaAs(Eg〓1.4〔eV〕)を
用 い た 素 子 は,波 長 が 約0.88μmの
る。 この ほ か,可 視 光 を出 すLEDと GaP,黄
色 の もの にGaInP,緑
して は,赤 色 の もの にGaAlAs,
色 に はGaPな
と蛍 光 体 を用 い て,赤,緑,青
の光 の3原
最 近 で は,青 色 を発 光 す るLEDに
赤外 光 を放 射 す GaAsP,
どが使 わ れ て い る。さ ら に,GaAs 色 を発 光 させ る素 子 も作 られ,ま
対 す る研 究 も盛 ん で,SiCやZnSeな
た
どを 用
い た 素 子 が 試 作 さ れ て い る。 図6・17は 各 種 のLED用 ま た,LEDか そ の1つ
材 料 の発 光 特 性 を示 す。
らの光 を有 効 に取 り出 す た め に も種 々 の 工 夫 が な さ れ て い る。
の 方 法 は,接 合 付 近 か らの発 光 を効 率 良 く外 へ 取 り出 す こ とで あ る。
これ に は,使 用 され る半 導 体 の種 類 や,そ れ がp形
で あ るかn形
って その 方 策 が 異 な る が,一 般 に は光 の 吸 収 率 の小 さいn形
であるか に よ
半導体 中を光が抜
け 出 る よ うな構 造 に し て い る。 放 射 光 が 半 導体 か ら外 へ 出 る際,表 面 で の 反 射 に よ る効 率 の 低 下 を防 ぐた め, 表 面 に1/4波 長 に相 当 す る 厚 さの 反 射 防 止 膜 を コー テ ィ ング した り,放 射 光 を 一 方 向 に揃 え るた め高 屈 折 率 を もつ プ ラス チ ッ ク レ ン ズ を 付 け た りし て い る 。 図6・18お よ び図6・19に 各 種 のLEDの また,図6・20は,発
構 造 を示 す。
光 ダ イオ ー ドを 受 光 素 子 と組 合 せ,ホ
ト カ プ ラー(photo
coupler)を 構 成 し,光 信 号 を仲 介 に して電 気 信 号 の ア イ ソ レー シ ョ ン を行 う一 例 を示 して い る。
〔3〕
半 導 体 レーザ
励 起 状 態 に あ る 電 子 が 定 常 状 態 に も ど る と き,開 し て 放 射 す る 場 合 に は,自
然 放 射(spontaneous
放 され た エ ネ ル ギ ー を光 と
emission)と
誘 導 放 射(induced
図6・18 LEDの
図6・19
LEDの
輝 度 を改 善 す る ため の 方法
構 造 と レン ズの 応用
図6・20
ホ トカプ ラー の一 例
emission)の
二 過 程 が あ る 。 半 導 体 に お い て も,伝
電 子 帯 の 正 孔 と放 射 再 結 合 す る と き,同
様 の こ とが い え る。 自然 放 射 を用 い た
半 導 体 素 子 の 一 例 と し て は,前 項 で 述 べ たLEDな 程 は,外
導 帯 に励 起 さ れ た 電 子 が 価
どが あ る。この 素 子 の 発 光 過
界 か ら 何 等 の 刺 激 を 与 え ら れ な く と も,自
子 と正 孔 が 放 射 再 結 合 す る 。 従 っ て,放 な っ て お り,短 これ に 対 し,誘
然 に(バ
射 さ れ る 光 も,そ
ラ バ ラ 勝 手 に)電 の位 相 は バ ラバ ラ に
く切 断 さ れ た 波 の 集 合 に す ぎ な い 。 導 放 射 は 光 の 刺 激(光
量 子 を 吸 収 す る と い う こ と で は な い)
に よ り放 射 再 結 合 が 起 こ る 過 程 で あ り,そ 射 再 結 合 を 誘 起 さ せ る の で,多 強 い 発 光 が 得 ら れ る 。 そ こ で,こ 巧 み に 利 用 す れ ば,光 を レ ー ザ(LASER;light
の 際 生 じ た 放 射 光 は,再
び,次
の放
量 の 励 起 状 態 に あ る電 子 が 存 在 す る 限 り極 め て の よ うな 一 種 の 正 帰 還 作 用 を もつ 誘 導放 射 を
の 増 幅 器 や 発 振 器 を作 る こ とが で き る 。 こ の よ う な 装 置 amplification
と い う 。 半 導 体 の 場 合 で も,そ
by stimulated
の 発 光 領 域(活
emission
性 層;activation
of radiation) layer)中
に励
起 状 態 に あ る 多量 の 電 子 と正 孔 が与 え られ,ま 時 刻 に,上
た,そ の 活 性 層 の 適 当 な位 置 と
に述 べ た よ う な誘 導 放 射 が 整 然 と起 こる よ うな 工 夫(例
え ば,放 射
光 が活 性 層 内 で 定 在 波 を作 る よ うな 工夫)を す れ ば半 導 体 レー ザ(semiconduc tor LASER)を
作 る こ とが で き る。
この よ う に し て得 られ る発 光 は,LEDな
どで 得 られ る 自然 放 射 に よ る発 光 と
は異 な り,そ の 強 度 が 大 き い ば か りで な く,振 動 数 や 位 相 が キ チ ン と揃 っ た 一 連 の 波 に な る。 こ の よ うな 光 は コ ヒー レ ン ト光(coherent め て直 進 性 や 干 渉 性 が 高 い の で,広 半 導 体 レー ザ は,当 初GaAsのpn接
light)と 呼 ば れ,極
い分 野 で 利 用 され て い る 。 合 で 作 られ た。この 素 子 に順 方 向 電 流 を
流 せ ば,接 合 部 近 傍 の 活性 層 に お け る伝 導帯 と価 電 子 帯 に は,そ れ ぞ れ 電 子 と 正 孔 が 注 入 され,そ れ らは 放 射 再 結 合 す る。 この 際,励 起 状 態 に あ る 電 子 と正 孔 の 量 が あ る 限 界 を超 す と,す な わ ち 素 子 電 流 が,あ
る し き い 値(threshold
current)を 超 す と,そ の再 結 合 過 程 は 自然 放 射 か ら誘 導 放 射 に 移 行 し,極 め て 強 い発 光 が 得 られ る。 しか し,こ の 素 子 に は大 きな 難 点 が あ った 。 そ れ は,誘 導 放 射 を起 こす 程 度 の大 き な電 流 で は,そ の 発 熱 の た め 素 子 温 度 が 上 昇 し,ま
図6・21
DHレ
ー ザ の キ ャ リ ア と光 の 閉 込 め
もな く誘 導 放 射 が 起
図6・22
AlGaAsレ
図6・23
ー ザ の 特 性(300K)
DFBレ
ー ザ の構 造
こ らな くな る。 そ こで,素 子 の温 度 上 昇 を避 け るた め,特 別 の 冷 却 装 置 を付加 した り,ま た は,パ ル ス動 作 で使 用 せ ざ る を得 な か った 。 そ の後,発
光 領 域 で あ るGaAsの
活 性 層 の両 側 を,光 の屈 折 率 が5%ほ
ど低
く,し か も活 性 層 に 注 入 さ れ た電 子 や 正 孔 を活 性 層 中 か ら流 出 させ な い よ うな 電 位 障 壁 を作 る,異 種 類 の 半 導体(例
えば,AlGaAs)で
挟 ん だ 素 子(図6・21)
が 考 案 され た 。 この素 子 にお い て は,活 性 層 の 屈 折 率 が そ の 両 側 の 層 よ り も高 い た め,活 性 層 で 発 生 した 光 は全 反 射 の 効 果 に よ り活 性 層 内 を それ と平 行 に進 行 す る もの だ け とな り,さ らに 活 性 層 の 一 方 向 で 対 向 す る両 端 面 は,結 晶 の へ き開 面(cleavage surface)を 利 用 して 平 行 な鏡 面 に作 られ て い るた め,光 反 射 され,活
は これ らの 鏡 面 で
性 層 内 に定 在 波 を形 成 す る。
ま た,活 性 層 とそ の 両 側 の 層 との 間 に は,禁 制 帯 幅 の違 い に よ り電 位 障 壁 が 形 成 され て お り,こ の 障 壁 は活 性 層 内 に注 入 され た 励 起 状 態 の 電 子 や 正 孔 が, さ ら に他 の領 域 に流 れ 出 る こ とを 防 ぎ,こ の領 域 に閉 じ込 め る働 き をす る。 これ らの効 果 に よ り,誘 導 放 射 を起 こす し きい値 電 流 は著 し く低 下 す る。 そ の た め,常 温 で 連 続 的 に使 用 す る こ とが で きる 半 導 体 レー ザ を作 る こ とが 可 能 にな っ た。 な お,こ の素 子 は ダ ブ ル ヘ テ ロ レー ザ(DHLASER;double と も呼 ば れ,広 く実 用 され て い る。図6・22は,こ
hetero LASER)
の レー ザ ダ イ オ ー ドの 発 光 特
性 を示 す。 レ ー ザ発 光 を行 うに は,上 述 の よ う に活 性 層 内 に光 の定 在 波 を作 らな けれ ば な ら な い が,そ
の た め 図6・23の よ うに,光 の伝 搬 部(光 導 波 層)の 厚 さ を周 期
的 に変 え る こ とに よ って 作 られ た,一 種 の 回折 格 子 に よ り特 定 の波 長 の 光 に対 して 定 在 波 が 形 成 され る よ うに した 素 子 もあ る。 この 素 子 は 分 布 帰 還 形 レー ザ (DFB LASER;distributed は第8章
で 述 べ るICの
feedback
LASER)と
呼 ばれ,回
折 格 子 を作 る に
微 細 加 工 技 術 と レー ザ 光 に よ る 干 渉 縞 を利 用 し て い
る。 この 素 子 は,DH 光IC素
LASERの
よ う に,結 晶 の へ き開 面 を利 用 して い な い の で,
子 を作 製 す る とき,基 盤 の どの よ うな 箇 所 に で も,そ れ を形 成 させ る こ
とが 可 能 で都 合 良 い。 さ ら に,DH
LASERで
は,両
へ き開 面 間 の距 離 が 発 光 波 長 に比 べ て 非 常 に
大 き い た め,こ
の 間 隔 に 乗 り得 る 定 在 波 の 波 長 は1つ
と は 限 ら ず,従
素 子 で の 発 光 波 長 に は 多 数 の も の が 包 含 さ れ や す い 。 す な わ ち,マ (multi
mode)の
DFB
場 合 も,光 の 定 在 波 は 伝 搬 路 に 分 布 し た 格 子 間 隔 で 定 ま る 多
数 の 波 長 の 光 で 起 こ り得 る が,そ ン グ ル モ ー ド(single
の 中 で も特 に 基 本 波 で の 発 光 が 強 く起 こ る の
mode)で
の発 光 が 得 られ や す い 利 点 が あ る。
半 導 体 レ ー ザ 素 子 と し て 現 在 実 用 さ れ て い る も の に は,光 し てAlGaAsを 1.5μm)な 78μm)が
ル チ モー ド
発 光 を しや す い。
LASERの
で,シ
って この
用 い た も の(波 長0.8μm),InGaAsPを
フ ァ イバ 通 信 用 と
用 い た も の(波 長1
ど が あ り,ま た 半 導 体 レ ー ザ を 用 い たCDプ
レ イ ヤ に はAlGaAs(0
使 わ れ て い る 。 赤 外 分 光 器 用 と し て は,PbTe‐PbxSn1-xTe(0
μm,77K),PbSe(7.5‐22μm,77K)な
.3, .
.3‐30
ど の レ ー ザ ダ イ オ ー ドが 光 源 と し て 用
い られ て い る。
〔4〕 青 色 レー ザ ダ イ オ ー ド 最 近,GaN系
半 導体 を 用 い た 青 色 半 導 体 レー ザ が 開 発 さ れ,実
用化 され つ
つ あ る。 そ の断 面 構 造 の一 例 を 図6・24に 示 す 。 波 長0.4∼0.5μm帯
の青 色 レ
ー ザ の 実 現 は,多 方 面 へ の応 用 の上 で 大 きな イ ンパ ク トと な る と考 え られ る。 例 え ば,青 色 レー ザ は波 長 が 短 い た め に従 来 の 赤 色 レー ザ光 よ り も集 光 性 に優 れ て い る。 す な わ ち,レ
ン ズ に よ る ビー ム ス ポ ッ ト径rは,
(Aは 定 数,Nは
レ ン ズ の 開 口径)
で 与 え られ るの で,青 色 レ ー ザ 光 で は 一 層 小 さ な ビ ー ム ス ポ ッ ト径 が 得 られ る。 従 っ て,高 密 度 の 光 磁 気 デ ィ ス ク に 対 応 で き るの で,DVDプ どで は欠 か せ な い存 在 とな っ て い る。 そ の 他,青 が 高 くな る た め,レ 待 で き,さ 析,診
レイヤ ー な
色 レー ザ光 は光 子 エ ネ ル ギ ー
ー ザ プ リ ン タな どの光 導 電 体 を利 用 した 機 器 の 高 速 化 が期
らに 光 計 測,光
化 学,生
物 学,医
療 な どで の 計 測,反
断 とい っ た 多 方 面 で の 応 用 が 期 待 され て い る。
応,評
価,分
図6・24 InGaN多
重 量 子井 戸
(MQW)構
造 レー ザ ー
ダ イ オ ー ドの 構 造
6・4 太 陽 電 池
〔1〕 太 陽 光 の 放 射 エ ネ ル ギ ー 太 陽 で は水 素 が ヘ リウ ム に変 換(す 量 が 電 磁 波 と し て放 射 さ れ,そ
な わ ち,核 融 合)す
る と き,失 わ れ る質
れ が 地 球 上 に波 長0.2∼3μmの
光 エ ネル ギ ー
と し て到 達 して い る。 太 陽 と地 球 の 平 均 距 離 に お け る 到 達 光 の エ ネ ル ギ ー は 1353W/m2で,こ
れ が 地 表 に 達 す る と き は,さ
らに 大 気 で の 吸 収(例
オ ゾ ンは 紫 外,水 蒸 気 は赤 外 領 域 を 吸 収 す る)や,霧,塵
え ば,
な どで の 散 乱 吸 収 を
受 け減 衰 す る。 この減 衰 効 果 は光 が 大 気 中 を通 過 す る距 離 が 長 い ほ ど大 き い 。 従 っ て,減 衰 程 度 を表 す 値(こ
れ をエ ア マ ス(AM;Air
太 陽 が 地 平 線 と な す 角 度 θ に 関 係 す る。 図6・25は,太
Mass)と
い う)は,
陽 光 の スペ ク トル 強 度
を示 す 。 こ の 図 に お い て,AM0の は,ほ
とん ど5800Kの
曲 線 は 地 球 大 気 圏 外 の ス ペ ク トル で あ り,こ れ
黒 体 放 射 に等 し く,人 工 衛 星 や ス ペ ー ス シ ャ トル な ど
で 太 陽放 射 の影 響 な どを考 察 す る 際 に重 要 で あ る 。AM1は とき海 抜0の
太 陽が天頂 にあ る
快 晴 時 の スペ ク トル を標 準 化 した エ ネ ル ギ ー で,そ
ギ ー 値 は925W/m2,AM2は
θが30° の と き で691W/m2で
の放射 エネル
あ る。 これ は地
上 で 太 陽 光 の 利 用 を考 え る と き,そ の平 均 値 と して 用 い られ る。
図6・25
太 陽 光 ス ペ ク トル の 各 種 (Thekaekara,
Suppl.Proc.20th
Annu,Meet,Inst,Environ,Sci,1974)
〔2〕 太 陽 電 池 の 発 電 原 理 太 陽 電 池 は,光 の 作 用 に よ っ て生 成 し た電 子 と正 孔 が 場 所 的 に分 離 され る こ とに よ っ て 起 電 力 を発 生 す る。 電 子 と正 孔 の 分 離 機 構 の 点 か ら,太 陽 電 池 は pn接 合 太 陽 電 池 と有 機 太 陽 電 池 に 大 別 す る こ とが で き る。 (1) pn接 合 太 陽 電 池 制 帯 幅Egよ
pn接 合 ダ イ オ ー ドに,そ れ に 用 い た 半 導 体 の 禁
り大 き な エ ネ ル ギ ー を もつ光 量 子 を 当 て る と,光 量 子 は 吸 収 され
て 電 流 に 変 換 され る。 この 際,Eg以 の 温 度 を上 昇 させ る。 なお,Egに
上 の 余 分 な エ ネ ル ギ ー は熱 とな っ て 素 子 満 た な い光 は電 流 を生 じ な い。 図6・26(a)
は太 陽 電 池 の構 造 を 示 す 。 pn接 合 部 付 近 に光 を照 射 す る と,価 電 子 帯 の 電 子 は励 起 され,電
子 ・正 孔
の対 生 成 が 起 こ る。 これ ら の電 子 お よ び正 孔 は接 合 部 に 形 成 され て い る拡 散 電 位 差 に起 因 す る電 界 の た め,電 子 はn領 域 へ,正
孔 はp領
域 へ分 離 して送 り
(a)
(b)
図6・26
出 さ れ,素
Si太 陽 電 池の 構 造
子 外 部 に 負 荷 が 接 続 さ れ て い れ ば,光
給 す る 。 図6・26(b)に
電 流 と な っ て 負 荷 に 電 力 を供
これ を示 す 。
電 源 と し て の 太 陽 電 池 の 良 否 は,図6・27に
示 す 電 流-電 圧 特 性 で 決 ま る が,
こ の 曲 線 は 光 照 射 が 強 い ほ ど 下 方 へ 移 動 す る 。 図 に お い て,Vocは
開放 電 圧
(open
短絡 電流
(short
circuit voltage)と circuit
current)と
い い,無 い い,素
負 荷 時 の 電 圧 で あ る 。 ま た,Iscは
子 を短 絡 した とき に 流 れ る 電 流 で あ る。
図6・27 太陽 電 池 の 特性
図6・28は,こ
の素 子 の 等 価 回路 を示 す 。 電 流 源ILは
光照射 に よって生 じる
もの で あ り,こ こで 発 生 した電 流 は ダ イ オ ー ド(素 子 自 身)と 外 部 回 路 に 分 流 す る。 ダ イ オ ー ドの 逆 飽 和 電 流 をIs,端 電 流Iは,式(6・14)で
子 電 圧 をVと
す れ ば,外 部 に取 り出 せ る
与 え られ る。 (6・14)
こ の 上(6・14)で,I=0と
お く と,開
放 電 圧Vocが
次 の よ うに 求 め られ る。
(6・15) ま た,短 る。
絡 電 流Iscは,式(6・14)でV=0と
お い て,式(6・16)の
よ うに 求 ま
図6・28 太 陽電 池 の 等価 回路
(6・16) さ ら に,こ の 電 池 か ら取 り出 し得 る最 大 電 力 は,I‐V特 PがV軸
とI軸 で 囲 む面 積(図
性 曲線 上 の動作 点
で は 斜 線 を施 し て あ る)が 最 大 に な る よ うな
負 荷 の と き 得 られ る。 従 っ て,太
陽 電 池 のI‐V特
を通 る曲 線 が 右 下 方 にふ く らん だ 形 状,つ 電 池 か ら取 り出 し得 る最 大 電 力Pmの
性 は,な
る べ くVocとIsc
ま り四 角 形 に近 い もの が 好 ま し く,
値 は,〓
とす る と,
(6・17) で 与 え ら れ る 。 こ こ に,FFは こ の 値 は1に たPmaxの
フ ィ ル フ ァ ク タ(FF;Fill
近 い ほ ど 好 ま し い 。 も ち ろ ん,太
大 き い こ と,す
な わ ちIscお
Factor)と
呼 ば れ,
陽 電 池 と し て は 式(6・17)に
よ びVocの
示 し
大 き い こ とが 先 決 問 題 で あ
る。 Iscを 大 き く す る に は,で
き る だ け利 用 し得 る光 量 子 の 数 を増 や す こ とが 必
要 で,そ
の 小 さ い 材 料 が 良 い 。 図6・29は,pn接
の た め に は,Eg値
してSi,GaAs,a‐Si(ア 項 で 述 べ る 。)に つ い て,そ
モ ル フ ァ ス ・シ リ コ ン の こ と で,こ
合材 料 と
れ に 関 して は次
れ ら が 太 陽 光 ス ペ ク トル の 中 か ら 光 電 流 に 変 換 し
得 る波 長 範 囲 を 示 す 。 し か し,逆
に,VocはEg値
が 大 き い ほ ど 大 き く な る 。 そ の 理 由 は,E
大 き い ほ ど 拡 散 電 位 差 が 大 き くな り,ま
た 拡 散 電 位 差 が 大 き い ほ ど,Vocが
gが 大
図6・29 太 陽光 に対 す る各 種 光 電 池 の スペ ク トル特 性
き くな る か らで あ る。 従 っ て,大
き なPmaxを
得 る に は,太 陽 光 の ス ペ ク トル 分 布 に適 合 したEg
値 を もつ半 導 体 を 太 陽 電 池 用 の材 料 と して 選 ば な けれ ば な らな い。 各 種 半 導 体 のEgと る効 率)に
変 換 効 率(太
つ い て は,多
陽 光 エ ネ ル ギ ー を電 気 エ ネ ル ギ ー に 変 換 す
くの 半 導 体 材 料 につ い て研 究 さ れ て お り,そ れ らの 結
果 の 主 な もの は図6・30に 示 さ れ る。 なお,図 さ き に述 べ たAM値 た め(Eg=hν 線 は,同 は,レ
が1.5の
中,太 陽 光 強 度C=1の
曲線 は,
太 陽 光 エ ネ ル ギ ー の ス ペ ク トル 分 布 を,参 考 の
の 関 係 を用 い て)Egに
換 算 して 表 した もの で,C=1000の
じ光 を レ ン ズ を 用 い て 集 光 し,1000倍
曲
に した 場 合 を示 す 。 この 曲 線
ンズ の 透 過 率 の 関 係 で短 波 長 側 の光 が よ り多 く吸 収 さ れ るた め,比 較 的
長 波長 側 で エ ネ ル ギ ー の 分 布 が 高 くな っ て い る。 (2) 有 機 太 陽 電 池 大 別 され る。 そ の1つ
有 機 化 合 物 を用 い た 有 機 太 陽 電 池 は,以 下 の2つ
に
は,二 酸 化 チ タ ン な どの 無 機 半 導 体 表 面 に増 感 剤 と して
有 機 色 素 を コ ー テ ィ ン グ し,電 解 質 溶 液 を 用 い て 発 電 す る 湿 式 の 光 電 池 で あ
図6・30
る。 もう1つ
理 想 太 陽 電 池 の 効 率 に 影 響 す るEg( SZE,Physics of Semiconductor Devices,
は,無 機 半 導 体 のpn接
Wiley)
合 を 用 い た 太 陽 電 池 の 動 作 原 理 を模 倣 し
て 発 電 す る有 機 薄 膜 系 の 乾 式 の 光 電 池 で あ る。 これ ら の有 機 太 陽 電 池 の 光 電 変 換 プ ロセ ス は,Siを
用 い た通 常 のpn接
合太
陽 電 池 とは異 な り,光 照 射 に よ る有 機 物 質 中 の励 起 子 の生 成 と移 動 とい っ た 分 子 レベ ル の メ カ ニ ズ ム を考 え る必 要 が あ る。 す な わ ち,光 照 射 に よ る有 機 物 質 中 で の,① 光 吸収 と励 起 子 の生 成,② 励 起 子 の拡 散 と移 動,③ 起 子 に よ る電 子,正
孔 の 対 生 成,④
内部 電 界 に よ る電 子,正
界 面 にお け る励
孔 の分 離,⑤ 起 電
力 の 発 生,と
い う過 程 を経 て発 電 す る機 構 に な っ て い る。 この 考 え 方 は,植 物
の 光 合 成 にお い て 葉 緑 素(ク
ロ ロ フ ィル)な
どの色 素 が 太 陽 光 を吸 収 し,そ の
励 起 エ ネ ル ギ ー に よ っ て電 子 と正 孔 が 発 生 し,移 動 す る とい う 自然 現 象 か ら学 び 取 っ た もの で あ る。 こ れ を 発 電 に利 用 した の が 有 機 太 陽 電 池 で あ る。 これ らの 有 機 太 陽 電 池 の構 造 と動 作 原理 に つ い て は,次 項 〔3〕(3)に
おい
て 述 べ る。
〔3〕 各 種 太 陽 電 池 の 構 造 太 陽 電 池 の 種 類 は,そ れ に使 用 す る材 料 の 点 か ら図6・31に 示 す よ う に,シ リコ ン系 太 陽 電 池,化 合 物 系 太 陽 電 池,お れ る。 前 者 の2つ
は無 機 物 質 を用 い たpn接
よ び 有 機 系 太 陽 電 池 の3つ 合 にお け る電 子,正
に よ っ て 発 電 す る機 構 の太 陽 電 池 で あ り,後 者 の1つ
に分 類 さ
孔 の分 離 作 用
は 有 機 化 合 物 を用 い て,
光 合 成 の 原 理 を応 用 して発 電 す る構 造 の 太 陽 電 池 で あ る。 以 下 に,各 太 陽 電 池 の 構 造 と特 徴 につ い て説 明 す る。
図6・31 太 陽電 池 の 種類
図6・32 単 結 晶Si太 陽電 池 の 基 本構 造
(1)
シ リ コ ン 系太 陽 電 池
■ 単 結 晶Si太
陽 電池
単 結 晶Si太
て あ り,抵 抗 率 約1Ωcm,厚
陽 電 池 の基 本 的 な 構 造 を図6・32に 示 し
さ約0.5mmのp形Siウ
ナ ー を高 濃 度 で 添 加 させ たn層)を
ェ ハ ー 上 にn+層(ド
形 成 させ たn+p接
合 構 造 を 成 し て い る。
n+層 表 面 上 に は,入 射 光 の 反 射 を防 止 す る た め の 反 射 防 止 膜 を形 成 して あ り, p層 裏 面 に は 全 面 に電 極 を 形 成 さ せ て あ る。n+層
は,光
が この 層 を通 過 し て
n+p接 合 界 面 に達 し,有 効 に キ ャ リア 生 成 を起 こ させ る よ う に,0.2∼0.5μm 程 度 の 薄 い 厚 さ に な っ て い る。n+層
はp層
との 接 合 に よ っ て 電 子 と正 孔 を分
離 させ る 役 割 以 外 に,光 生 成 キ ャ リア を収 集 させ る た め の 電 極 と して の 役 割 を 担 っ て い る。 従 っ て,n+p接 を薄 く し過 ぎ る と,n+層
合 領 域 へ の 光 の 透 過 率 を大 き くす る た め にn+層
の 表 面 抵 抗 が 高 くな り,光 生 成 キ ャ リア の 収 集 効 率
が 低 下 し て変 換 効 率 が 低 く な る。 そ の た め,n+層 ー 電 極 とバ ス バ ー 電 極)を
表 面 に 金 属 電 極(フ
ィ ンガ
設 け,光 生 成 キ ャ リア を効 果 的 に収 集 させ る構 造 に
作 られ て い る。 太 陽 電 池 に 光 照 射 を行 う と,n+p接 はn+p接
合 お よび そ の近 傍 で生 成 した 電 子 と正 孔
合 の 強 い 内 部 電 界 に よ っ て分 離 され て,電
へ 移 動 す る。 そ の 結 果,n+層
が 負,p層
子 はn+層
変 換 効 率 は,単 接 合 の 基 本 的 構 造 の もの で 約15∼16%程 を 図 った 太 陽 電 池 に お い て は,24%程
へ,正 孔 はp層
が 正 とな る よ う に起 電 力 を発 生 す る。 度 で あ るが,最
適化
度 の 高 い 変 換 効 率 の もの が 得 ら れ て い
図6・33 高 効 率 化 した 多 結 晶Si太
陽
電 池 の構 造
る。 ■ 多 結 晶Si太 陽 電 池
単 結 晶Si太
陽 電 池 は高 い 変 換 効 率 が 得 ら れ る が,母
材 とな る単 結 晶Siの 製 造 コ ス トが 高 い こ とが 難 点 で あ る。 そ の た め に,低 ス ト化 を 目指 した 多 結 晶Si太
コ
陽 電 池 が 開 発 さ れ て い る。 そ の 発 電 原 理 は単 結
晶Siの 場 合 と 同 じで あ るが,キ
ャ リア の 寿 命 や 移 動 度 が 劣 る た め に,単 結 晶
Si太 陽 電 池 に比 べ て 変 換 効 率 が 低 くな る傾 向 に あ る 。 変 換 効 率 を 向 上 させ る た め に,種 々 の 改 善 策 が 試 み られ て い る。 図6・33は,変 した 多 結 晶Si太
陽 電 池 の一 例 で あ り,p形
(テ ク ス チ ャー構 造)に
し,そ の 上 にn層
換 効 率 の 改 善 策 を施
の 多 結 晶Si基 板 の 表 面 を 凹 凸 構 造 お よびSiN層(反
射 防 止 膜)を
形成
させ た構 造 を成 して い る。 表 面 の テ ク ス チ ャー 構 造 は,光 の 閉 じ込 め と,表 面 反 射 の低 減,お
よ び キ ャ リア 収 集 効 率 の 向上 な どの 機 能 を 有 して お り,こ れ ら
の効 果 に よ っ て変 換 効 率 を 大 幅 に 向 上 させ る こ とが で き る。 この構 造 の 太 陽 電 池 に お い て,約17%の
変 換 効 率 が 得 られ て い る。
■ ア モ ル フ ァ スSi太 陽 電 池
ア モ ル フ ァ スSiは 結 晶Siに
比 べ て抵 抗 率 が
高 く,キ ャ リア の寿 命 と移 動 度 が 小 さ い。 しか し,直 接 遷 移 形 の光 吸 収 特 性 を 有 す る こ とか ら,光 吸 収 係 数 は 図6・34に 示 す よ う に 単 結 晶Siに く,厚 さ約0.5μm程
度 の 薄膜 に よ る太 陽 電 池 の 製 作 が 可 能 で あ る。 そ の 光 学
バ ン ドギ ャ ッ プ は約1.7∼1 また,光
比 べ て大 き
.8〔eV〕 で 結 晶Siの1.1〔eV〕
に 比 べ て 大 き く,
に対 す る分 光 感 度 は 図6・29に 示 す よ うに 太 陽 光 の 放 射 ス ペ ク トル の
図6・34 代 表的な太陽電池用半導体材料の光吸収特性
ピ ー ク波 長(約0.5μm)に で,か
近 い 値 を有 し て い る。 さ ら に 製 造 コ ス トが 安 価
つ 大 面 積 化 が 容 易 で あ り,太 陽 電 池 材 料 と して 優 れ た 条 件 を備 え て い
る。 また,ヘ
テ ロ接 合 の 形 成 に際 して,界 面 にお け る原 子 結 合 の不 整 合 が 起 き
に くい こ とか ら,多 層 構 造 に よ る変 換 効 率 の 向 上 を 図 る上 にお い て も有 利 で あ る。 ア モ ル フ ァ スSi太 陽 電 池 の構 造 は,単 結 晶Si太 異 な り,i層
をp層
とn層 で サ ン ド イ ッ チ したpin接
層 を挿 入 す る理 由 は,ア 多 い た め に,pn接
陽 電 池 のpn接
モ ル フ ァ スSiのp層
合構 造 とは
合 構 造 を な し て い る。i
お よびn層
での欠 陥準位 密 度 が
合 に お い て は再 結 合 電 流 や トン ネ ル 電 流 が 支 配 的 と な り,
良 質 の 整 流 特 性 が 得 られ な い た め で あ る。 単 結 晶Si太 た 電 子 と正 孔 をpn接
陽 電 池 で は,光 生 成 し
合 部 分 で 分 離 して い る の に 対 し て,ア
陽 電 池 で はi領 域 で 分 離 し て い る。 す な わ ち,ア
モ ル フ ァ スSi太
モ ル フ ァ スSi太 陽 電 池 に お
い て は,光 生 成 し た電 子 と正 孔 が 空 乏 層 のi領 域 に お け る強 い 内 部 電 界 に よ っ て,電
子 はn領 域 へ,ま
た 正 孔 はp領 域 へ 分 離 さ れ,発
電 す る機 構 に な っ て
い る。 ア モ ル フ ァ スSi太
陽 電 池 の 基 本 構 造 は,図6・35(a)(b)に
(a)透 光 性 基板 を用 い た 太陽 電 池 構 造
(b)非 透 光 性 基板 を用 い た 太陽 電 池構 造
図6・35 ア モル フ ァス シ リコ ン太 陽 電 池 の基 本 構 造
示 す よ う に,大
き く2種 類 に分 け られ る。1つ は,図(a)の
透光 性基 板 を用 いた太 陽電 池構造
で あ り,ガ ラ ス 基 板 上 に 透 明 導 電 性 膜(TCO),a‐Si:H(pin) 極 の順 に形 成 さ せ,ガ て い る。 も う1つ
層,裏
面電
ラ ス基 板 側 か らの 光 入 射 に よ っ て 発 電 させ る構 造 に な っ
は,図(b)の
非 透 光 性 基 板 を 用 い た 太 陽 電 池構 造 で あ り,金
属 や樹 脂 等 の 基 板 上 に裏 面 電 極,a‐Si:H(nip) 極 の順 に 形 成 させ,TCO側
層,TCO,金
属 グ リ ッ ド電
か らの 光 入 射 に よ っ て発 電 させ る構 造 と な って い
る。 い ず れ の構 造 に お い て もp層 側 か ら光 が 入 射 され る た め,p層
側 の透 明 導
電 性 膜 電 極 は,透 光 性 と導 電 性 を有 し た酸 化 す ず な どが 用 い られ る。 入 射 光 の 内,一 部 はpin層
内 で 吸 収 され な い で裏 面電 極 に達 す る。 この 光 を有 効 に 発 電
に利 用 す る た め に,裏
面 電 極 の 表 面 で 反 射 させ てpin層
せ る構 造 に な っ て い る。 そ の 他,変 造,窓
内 に 戻 し,再 度 吸 収 さ
換 効 率 を 高 め る た め に,テ
効 果 を もた せ た ヘ テ ロ接 合 構 造 を は じ め と し,図6・36の
ク スチ ャー構 よ う に 広 い波
長 範 囲 の 太 陽 光 ス ペ ク トル を電 気 エ ネル ギ ー に 変 換 す るた め にバ ン ドギ ャ ップ の異 な る太 陽 電 池 をⅠ,Ⅱ,Ⅲ
層 を積 層 した タ ン デ ム構 造,な
開 発 さ れ て い る。 変 換 効 率 と して は,現 在,約12%の しか し,ア モ ル フ ァスSi太
陽 電 池 の 場 合,強
下 す る 光 劣 化 現 象(SW:Staebler‐Wronski効 が,今
どの太 陽 電 池 が
もの が 得 ら れ て い る。
い光 照 射 に よ っ て 変 換 効 率 が 低 果)が
起 こ る。 こ の 特 性 改 善
後 の 課 題 と な っ て い る。
■ハ イ ブ リッ ト構 造 太 陽 電 池
太 陽 電 池 の 変 換 効 率 の さ ら な る改 善 の た め に
単 結 晶Si基 板 に ア モ ル フ ァスSi層
を積 層 させ,表
と裏 の両 面 で 発 電 させ る構
造 に し た ハ イ ブ リ ッ ト型 太 陽 電 池(HIT;Heterojunction Thin‐layer)が
開 発 さ れ て い る。 この 太 陽 電 池 で は,ア
合 とin接 合 がn形
の 単 結 晶Siを
ス ト化 の た め に,キ る 方 法)に
の 反 面,製
モ ル フ ァ スSiのpi接
に至 っ て い る。
リコ ン系 太 陽 電 池 に お い て は,単 結 晶Siを
効 率 が 得 られ るが,そ
Intrinsic
サ ン ドイ ッチ した 構 造 を成 し て い る 。 こ の構
造 の太 陽 電 池 の 変 換 効 率 は,約17%台 以 上,シ
with
用 いた場 合 に高 い変換
造 コ ス トが 高 くな る こ とが 難 点 で あ る。 低 コ
ャ ス ト法(Siの
塊 を溶 融 した 後 に 冷 却 し て 多 結 晶Siを 作
よ っ て作 製 した 多 結 晶Siや,モ
ノ シ ラ ン(SiH4)の
グ ロー放電 分
(a)タ
ンデ ム型 太 陽電 池 の構 造 例
(b)太 陽 光 ス ペ ク トルの 有効 利 用 の概 念図
図6・36 太 陽 光 スペ ク トル を有 効 利 用 す るた めの タン デ ム型太 陽 電 池 の構 造
解 に よ っ て 作 製 した ア モ ル フ ァ スSi薄 膜 な ど を用 い た 太 陽 電 池 が 多 く使 用 さ れ て い る。 (2) 化 合 物 系 太 陽 電 池 る こ とに よ って,太
化 合 物 半 導 体 で は,化 合 物 元 素 の 種 類 を選 択 す
陽 光 の 放 射 スペ ク トル に整 合 した 光 学 バ ン ドギ ャ ッ プ材 料
の 開 発 が 可 能 で あ る。Ⅱ―Ⅵ 族 化 合 物 系 の 代 表 的 な もの に,CdSやCdTe太
図6・37 GaAs系
陽 電 池,Ⅲ―V族
化 合 物 系 にGaAsやInP太
合 物 系 にCuInSe2太
陽 電 池,さ
太 陽 電 池 の基 本 構 造
ら にⅠ―Ⅲ―Ⅵ
陽 電 池 な どが あ る。Cu(InGa)Se2(CIGSと
族化
略 記 す る)
系 太 陽 電 池 は,薄 膜 太 陽電 池 の 中 で 最 も変 換 効 率 が 高 く,長 期 信 頼 性 も実 証 さ れ て い る こ とか ら,次 世 代 太 陽 電 池 の 有 力 な 候 補 の 一 つ とな っ て い る。 図6・ 37は,一
例 と し て,GaAs系
基 板 上 にp形
のGaAs層
太 陽 電 池 の 基 本 構 造 で あ り,n形
効 果 層)が
効 率 と し て は,約25%の
結晶
を 形 成 させ た 構 造 を成 し て い る。 表 面 に は,光 生 成
キ ャ リ ア の 表 面 再 結 合 を 阻 止 す る た に,GaAsよ Ga1_xAlxAs(窓
のGaAs単
りバ ン ドギ ャ ッ プ の 広 い
形 成 され て い る。 単 接 合 のGaAs太
陽 電池 の変 換
高 い値 の もの が 得 られ て い る。
以 上 の 化 合 物 系 太 陽 電 池 に お い て は,材 料 の 光 学 ギ ャ ップ と太 陽 光 ス ペ ク ト ル の整 合 性 が とれ る こ とか ら,シ
リコ ン系 太 陽 電 池 に 比 べ て優 れ た 性 能 が 期 待
で き る。 しか し,製 造 コス トや,資
源 的 お よび 環 境 汚 染 な どの 点 に お い て 問 題
が 残 って い る 。 (3) 有 機 系太 陽 電 池 式)と
有 機 薄 膜 型(乾
■ 色 素 増 感 型(湿
有 機 系 太 陽 電 池 は,前 述 の よ うに色 素 増 感 型(湿
式)の2つ
式)太 陽 電 池
に 大 別 され る。 代 表 的 な グ レ ッツ エ ル セ ル型 有 機 太 陽 電 池
の原 理 図 を図6・38に 示 す。 これ は,電 極 と して 透 明 導 電 性 ガ ラ ス基 板 上 に チ タ ニ ア(二 酸 化 チ タ ン;TiO2)の
微 粒 子 を 焼 結 させ た 多 孔 質 層 を 形 成 させ,
そ の上 に光 増 感 剤 と し て ル テ ニ ウ ム 錯 体(Ru色
素)を
コー テ ィ ン グ させ た 電
極 と,透 明 導 電 性 ガ ラ ス 基 板 上 に 白 金(Pt)を
ス パ ッ タ リ ン グ で形 成 さ せ た
図6・38 グ レ ッツ ェル セ ル型 有 機 太陽 電 池 の構 造(色 素増 感 型)
対 電 極 を用 い て い る。 これ らの2つ の 電 極 間 に 電 解 質 溶 液 を満 た し,色 素へ の 光 照 射 に よ っ て発 電 す る構 造 に な っ て い る。 こ こで,光 増 感 剤 で あ る色 素 は可 視 光 吸収 に よ る励 起 電 子 の 生 成 を増 加 させ,ま
た,チ
タ ニ ア層 の 多 孔 質 化 は反
応 面 積 を増 加 さ せ るた め の もの で あ る。 この 色 素 増 感 型 太 陽 電 池 の 発 電 原 理 は,次
の よ う に 説 明 され る。 図6・38に
お い て,① 色 素 へ の 光 照 射 に よ っ て電 子 が 励 起 さ れ,② ア層 に注 入 され,③
この励 起 電 子 は チ タニ
その 中 の 内 部 電 界 に 沿 って チ タ ニ ア層 内部 に移 動 す る。 そ
の 結 果,励 起 電 子 が 正 孔(色
素 酸 化 体:電
子 を失 っ た 色 素)と
空 間 的 に分 離 さ
れ,起 電 力 ④ を 発 生 す る。 ⑤ 電 解 質 は,色 素 酸 化 体 を還 元 し,失 っ た 分 の 電 子 を対 電 極 の 白金 か ら受 け取 り,外 部 回 路 に電 流 が 流 れ る。 この構 造 の有 機 太 陽 電 池 にお い て,10.9%の
変 換 効 率 が 得 られ て い る。 実 用 化 に際 し て は,色 素 や
電 極 の 劣 化 を は じめ 液 漏 れ 等 に対 す る対 策 が必 要 で あ る。 ■有 機 薄 膜 型(乾
式)太
陽電池
この 太 陽 電 池 は,金 属 電 極 と有 機 化 合 物 を
組 み 合 わ せ た シ ョ ッ トキ ー 接 合 型,お
よび 有機 化 合 物 と無 機 系 半 導 体 を組 み 合
わ せ た ヘ テ ロ接 合 型 の 太 陽 電 池 構 造 を成 して い る。 この 太 陽 電 池 は,乾 式 で 液 漏 れ の 問 題 を生 じな い こ とか ら期 待 され て い るが,現 在 の段 階 で は変 換 効 率 が 数%程 度 で あ り,特 性 改 善 が 求 め られ て い る。 有 機 系 太 陽 電 池 は以 上 の よ う に,構 造 が 簡 単 で材 料 が 安 価 で あ る こ とか ら, 低 コ ス ト化 の点 で 大 き く期 待 で き る が,現 時 点 で は 変換 効 率 や 安 定 性 の 点 で 問 題 が あ り,基 礎 研 究 の段 階 に あ る。 以 上 で 述 べ て きた 各 種 太 陽 電 池 を総 合 的 にみ て,安 定 した 性 能 を有 し,資 源 的 な優 位 性 の 点 か ら,現 在 で は 実 用 的 な シ リコ ン系 太 陽 電 池 が 主 流 とな っ て い る。 最 近 で は,こ れ ら以 外 に,微 細 な ナ ノ粒 子 を用 いた 新 し い構 造 の太 陽 電 池 の 開 発 も試 み られ て い る。
〔4〕 太 陽 電 池 の 変 換 効 率 (1) 代 表 的 な 太 陽 電 池 の 特 性 比 較
一 般 に太 陽電 池 の性 能 は,使 用 す る
図6・39 各種 太 陽 電 池 の特 性比 較
材 料 の 種 類 と性 質,お
よ び太 陽 電 池 の 構 造 に強 く依 存 す る 。 モ ジ ュ ー ル 化 した
大 面 積 の 市 販 の 太 陽電 池 の 性 能 に比 べ て,実 験 室 レベ ル で の 小 面 積 の 太 陽 電 池 の性 能 の 方 が 高 い。 図6・39は,代 較 で あ る。 単 結 晶Si太
表 的 な 太 陽 電 池 の実 験 室 レベ ル で の性 能 比
陽 電 池 で は24.7%,単
結 晶GaAs太
陽 電 池 で は25.1%
の高 い 変 換 効 率 の もの が 得 られ て い る。 また,化 合 物 系 のCIGS系 池 で は,19%の
薄膜 太陽電
変 換 効 果 が 得 られ て い る。 太 陽 電 池 の 性 能 は,年 々 向上 して お
り,市 販 の モ ジ ュ ー ル化 した もの も,近 い 将 来 に これ らの 実験 室 レベ ル の 値 に 近 づ くこ とが 予 想 さ れ る。 (2) 変 換 効 率 の 年 次 推 移 と高 効 率 化 技 術
シ リコ ン 系太 陽 電 池 と化 合 物
系 太 陽 電 池 の 変 換 効 率 の 年 次 推 移 お よ び 今 後 の予 想 を 図6・40に 示 し て あ り, 年 次 と と もに 変 換 効 率 の 改 善 が 大 幅 に進 ん で い る。 これ らの変 換 効 率 の 向 上 に 際 して は,以 下 の 技 術 開 発 が 重 要 な ポ イ ン ト とな っ て い る。 ■ 太 陽 電 池 用 材 料 の 物 性 に 関 す る改 善 策 ・太 陽 電 池 の 母 材 お よび 接 合 界 面 の 高 品 質 化 技 術 の 開 発 ・太 陽 光 スペ ク トル に整 合 した バ ン ドギ ャ ッ プ材 料 の 開 発 ・グ レー デ ッ ドバ ン ドギ ャ ッ プ材 料 の 開 発
図6・40 代 表 的 な太 陽電 池 の変 換 効 率 の年 次 推 移 と将 来 予測
・そ の他 ■ 太 陽 電 池 構 造 に 関 す る改 善 策 ・表 面 お よ び裏 面 電 極 に テ ク スチ ャ ー構 造(凹
凸 形 状 表 面)を 採 用 し,光 の 閉
じ込 め と反 射 防 止 効 果 を活 用 。 ・バ ン ドギ ャ ップ の 異 な る材 料 を積 層 させ た タ ン デ ム構 造 に よ り,広 い 波 長 領 域 の太 陽 光 ス ペ ク トル を吸 収 。 ・表 面 お よ び裏 面 に お け る反 射 防 止 膜 の 形 成 ・窓 効 果 を利 用 した キ ャ リア 生 成 効 率 の 改 善 ・ヘ テ ロ接 合 に よ る表 面 再 結 合 の 低 減 ・太 陽 電 池 の受 光 面 積 の増 加 ・光 生 成 キ ャ リア の 収 集 効 率 を高 め る た め の 電 極 構 造 ・変 換 効 率 の最 適 化 を図 る た めの 太 陽 電 池 構 造 の 理 論 設 計 ・そ の他
〔5〕 太 陽 電 池 モ ジ ュー ル と応 用 (1) 太 陽 電 池 モ ジ ュ ー ル cm2),25℃
Si太 陽 電 池1枚
のAM1.5G(100mW/
に お け る 発 電 起 電 力 は,約0.6∼0.8〔V〕,短
絡 電 流 は20∼40
〔mA/cm2〕 程 度 の 小 さ な 値 で あ る。 この よ うな 太 陽 電 池 を 多 数 直 列 お よ び 並 列 に接 続 し,環 境 に耐 え る よ う に外 囲 器 に 封 入 し,か つ外 部 端 子 を備 えて 規 定 の 出 力 を もた せ た 最 小 単 位 の 発 電 ユニ ッ トを太 陽 電 池 モ ジ ュー ル とい う。 この 太 陽 電 池 モ ジ ュ ー ル は,0.5〔W〕
∼300〔W〕 の もの が 標 準 的 な 単 位 と な っ て い
る。 大 電 力 を必 要 とす る場 合 に は,こ れ らの モ ジ ュー ル を必 要 枚 数 だ け組 み合 わ せ て接 続 で き る構 造 に な っ て い る。 (2) 太 陽 電 池 の 応 用 コ ス ト,安 定 性,お
現 在,最
も多 く使 用 され て い る太 陽 電 池 は,製 造
よび 資 源 的 な 点 か ら,シ
リコ ン系 太 陽 電 池 で あ る 。 そ の応
用 例 と して は,砂 漠 に設 置 され た 大 規 模 な 電 力 用 の 太 陽 光 発 電 シ ス テ ム や,住 宅 の 屋 根 に 設 置 させ た 太 陽光 発 電 シ ス テ ム,さ
らに 電 卓 や 時 計 な どの 民 生 用 の
小 型 な電 源 用 に至 る まで の広 範 囲 にわ た っ て い る。
電 力 用 太 陽 電 池 と して は,一 般 に,結 晶Siや 多 結 晶Si太 結 晶Siと
陽 電 池,さ
ら に,
ア モ ル フ ァ スSiを 組 み 合 わ せ た ハ イ ブ リ ッ ト構 造 な どが 使 用 さ れ て
い る。 一 方,ア モ ル フ ァ スSi太
陽電 池 は,分 光感 度 が 結 晶Si系
の 太 陽 電 池 の もの
に比 べ て 低 波 長 側 に シ フ トし て お り,蛍 光 灯下 で の 発 電 起 電 力 が 大 きい とい う 特 長 が あ る。 そ の た め,室 内 で使 用 す る電 卓,ラ し て 広 く応 用 さ れ て い る。 ま た,ア て い る こ とか ら,直 径1mm程
ジ オ,腕 時 計 な どの 電 源 用 と
モ ル フ ァスSi太 陽 電 池 は薄 膜 で 製 作 さ れ
度 の 小 さ な 穴 を空 け,光 が 通 過 す る構 造 に し
た シ ー ス ル ー 太 陽 電 池 が 開 発 さ れ て い る。 この 太 陽 電 池 は,ビ
ルや一般 住宅 の
窓 ガ ラ ス に 設 置 し,太 陽 電 池 と し ての 発 電 と,こ れ を通 し て外 の 景 色 を見 る 窓 と し て の 両機 能 を備 え て い る。 直 接 遷 移 型 の 化 合 物 半 導 体 を使 用 す るGaAs系
太 陽 電 池 は,高
い変 換効 率
を もつ と と も に宇 宙 線 に対 す る特 性 劣 化 が 少 な い こ とか ら,宇 宙 用 の太 陽 電 池 と し て応 用 され て い る。 (3) 太 陽 光 発 電 シ ス テ ム 陽 電 池 モ ジ ュー ル,パ
太 陽 光 発 電 シ ス テ ム の 主 要 機 器 と して は,太
ワ ー コ ン デ ィ シ ョナ ー(直
ンバ ー タ や 制 御 装 置 等 か ら構 成),接
続 箱,分
流 を交 流 に 変 換 す る た め の イ
電 盤 お よ び 蓄 電 池 等 か ら構 成 さ
れ て い る。 太 陽 光 発 電 シ ス テ ム は,商 用 電 源(系 統 と い う)に 接 続 して発 電 し た 電 力 の 内,余 剰 電 力 を逆 流(逆 潮 流 とい う)さ せ て 売 電 した り,ま た 発 電 電 力 が 不 足 の 場 合 に 系 統 か ら 買 電 した りす る 方 式 の 「系 統 連 系 型 シ ス テ ム(図 6・41(a))」
と,系 統 に 連 系 し な い で独 自 の 負 荷 に の み 発 電 電 力 を 供 給 して 使
用 す る方 式 の 「独 立 型 シ ス テ ム(図6・41(b))」 系 統 連 系 型 シ ス テ ム に お い て は,図6・41(a)の
の2つ
に大 別 され る。
よ う に太 陽 電 池 で 発 電 した
電 力 が 負 荷 の消 費 電 力 よ り多 い 場 合 に,余 剰 な電 力 を系 統 に 逆 潮 流 させ て 売 電 し,逆 に発 電 電 力 が 負 荷 の 消 費 電 力 よ り少 な い 場 合 に 系 統 か ら買 電 す る方 式 で あ る。 一 般 に,住 宅 用 の 太 陽 光 発 電 シ ス テ ム で は この 方 式 が 広 く利 用 さ れ て い る。 また,太 陽 光 発 電 の 電 力 が 常 に負 荷 の 消費 電 力 に比 べ て 少 な い場 合 に は, 逆 潮 流 な しの 方 式 が 用 い られ る 。 さ ら に,系 統 が 停 電 した 場 合 に,系 統 か ら 自
(a)系
(b)独
統 連 系 型 システ ム
図6・41
立 型 シス テ ム
太 陽光 発 電 シ ステ ム
動 的 に切 り離 し て特 定 の 負 荷 に発 電 電 力 を供 給 す る機 構 を も っ た 防 災 型 シ ス テ ム もあ り,こ の 場 合 に は蓄 電 池 が 併 用 され る。 さ ら に 図6・41(b)の ス テ ム で は,系 統 とは連 系 し な い の で,太
独 立型 シ
陽 電 池 で 発 電 した電 力 を 独 自 の 負 荷
に の み供 給 して使 用 す る 方 式 で あ る。 この 方 式 で は雨 天 や 曇 り空 の と き の よ う な,発 電 電 力 が不 足 す る場 合 に対 処 す る た め に蓄 電 池 を併 用 し,負 荷 へ の 安 定
し た電 力 供 給 を行 っ て い る。
演 〔問 題 〕1.半
習
問
題
〔6〕
導 体 の 吸 収 ス ペ ク トル を 計 測 す る こ と に よ り直 接 遷 移 形 か , ま た は
間 接 遷 移 形 で あ るか を 判 別 す る こ とが で き る 。 そ の 理 由 を述 べ よ 。
〔 問 題 〕2.pinホ
〔 問 題 〕3.3原
トダ イ オ ー ドが 高 速 の 光 信 号 を検 出 で き る理 由 を述 べ よ。
色 のLEDを
製 作 す る と き に は,ど
の よ うな半 導 体材 料 が各 色 に
必 要 か を 述 べ よ。
〔 問 題 〕4.DHレ 理 を述 べ よ。
ー ザ とは,ど
の よ うな特色 を もつ レーザ か。 その構 造 や動 作 原
第7章
パ ワー デバ イ ス
パ ワ ー デ バ イ ス は,電 力 系 統 の 制 御,電
動 機 制 御,産
業機 器や 家電 製 品
の 制 御 等 に 幅 広 く用 い られ て い る。 電 動 機 の 特 性 や 負 荷 に あ わ せ て 回転 数 や トル ク を 電 子 デ バ イ ス で制 御 で き れ ば,エ
ネ ル ギ ー 消 費 を 少 な くす る こ
とが で き る 。 パ ワ ー デ バ イ ス の基 本 的 な動 作 原 理 は,前 章 ま で に 述 べ て き た デ バ イ ス と 同様 で あ るが,高
耐 圧 で 大 電 流 を扱 う必 要 が あ り,放 熱 に も
注 意 を 払 う 必 要 が あ る。
7・1
パ ワー デ バ イ ス の 種 類 と用途
電 動 機 等 の 制 御 で は,ス
イ ッチ ン グ素 子 が 重 要 な役 割 を持 つ 。 た と え ば産 業
用 に 広 く利 用 さ れ て い る誘 導 電 動 機 で は,回 る 。 こ の た め,誘
転 数 は 印加 電 圧 の 周 波 数 で 制 御 す
導 電 動 機 の 速 度 制 御 に は,パ
ワー デバ イ ス をス イ ッチ ン グ素
子 と し た イ ン バ ー タ を 用 い る 。 イ ン バ ー タ は,電 ン グ(オ
ン ・オ フ)し
て,電
流 を適 当 な周 波 数 で ス イ ッ チ
動 機 に 可 変 周 波 数 の 交 流 電 力 を供 給 す る もの で あ
る 。 ス イ ッ チ ン グ 用 と し て 使 わ れ る パ ワ ー デ バ イ ス の 電 圧― 電 流 特 性 で は,図 7・1に 示 す よ う に,オ
ン 状 態 でVonが
い こ と が 望 ま し い 。 一 方,オ 電 流Ioffが
で き る 限 り低 く,Ionが
フ 状 態 で は,耐
で き る 限 り 小 さ い こ と が 望 ま れ る 。 ま た,パ
チ ン グ 周 波 数 は,図7・2に
Turn
イ ッ チ ン グ 分 野 で は パ ワ ーMOSFETが,中 Bipolar
こ とが 多 い。
Transistor;絶
で き る 限 り 高 く,漏
Off)サ
れ
ワ ー デバ イ ス の ス イ ッ
示 す よ う に デ バ イ ス の 種 類 に よ っ て 異 な り,大
分 野 で は サ イ リ ス タ やGTO(Gate
Gate
圧Voffが
で き る 限 り大 き
イ リ ス タ が 使 わ れ,高
容量 速 ス
間 分 野 で はIGBT(Insulated
縁 ゲ ー トバ イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ)が
使 わ れ る
図7・1 パ ワ ー デバ イ ス に要 求 さ れ る電 圧― 電 流特 性
図7・2 パ ワー デ バ イ ス に要 求 され る 電 圧― 電 流 特性
7・2 短 絡 エ ミ ッ タ構 造
サ イ リス タで は,順 方 向 阻 止 状 態 で ア ノ ー ド電 圧 が タ ー ンオ ン電 圧 以 下 で あ っ て も,ア
ノー ド電 圧 が 急 激 に変 動 す る とタ ー ンオ ンす る こ とが あ る。 これ
は,急 激 な 電 圧 変 動 で,逆
方 向 バ イ ア ス状 態 に あ る接 合J2の 空 乏 層 容 量 を充
(b)等 価 回路 (a)短
絡 エ ミ ッタ構 造
図7・3
サ イ リス タ の 短 絡 エ ミ ッ タ構 造(a)と
電 す る た め の 電 流 が 増 大 し,こ
等 価 回 路(b)
れ に よ りn1p2n2ト
ラ ン ジ ス タ が オ ン状 態 に な
る た め で あ る。 こ れ を 防 ぐ た め に,図7・3(a)に 価 回 路 は,同
図(b)に
示 す よ うな 短 絡 エ ミ ッ タ構 造 を用 い る。 等
示 す よ う に,接
合J3に
抵 抗Rを
並 列 に接 続 した 形 と な
る 。 短 絡 エ ミ ッ タ構 造 で は,順
方 向 の オ フ状 態 で は サ イ リ ス タ を 流 れ る 電 流 が
微 少 で あ り,電
り抵 抗 の 低 いRを
流 は 接 合J3よ
流 れ る 。 こ れ に よ りn1p2n2
ト ラ ン ジ ス タ が オ ン 状 態 に な る こ と を 抑 制 し て い る 。 ゲ ー ト電 流Igが と,電
流 が 大 き い の で,電
リス タ は タ ー ン オ ンす る。
流 は 抵 抗Rよ
り接 合J3を
流 れ る
流 れ る よ う に な り,サ
イ
7・3
GTO(Gate
Turn
Off)サ
イ リス タ
ゲ ー トに逆 方 向 電 流 を 流 して タ ー ン オ フ で き る よ う に し た サ イ リス タ を GTOサ
イ リ ス タ と い う。 図7・4にGTOの
タ ー ン オ フ動 作 時 の 原 理 を 示 す。
ゲ ー ト ・カ ソ ー ド間 に 負 の 電 圧 を 印 加 す る と,p2層 一 方
,ゲ
ー ト ・カ ソ ー ド 間 のJ3は
の 電 子 の 供 給 が 停 止 し,残
か ら正 孔 が 吸 い 出 さ れ る 。
逆 方 向 バ イ ア ス さ れ る の で,カ
さ れ た 電 子 ・正 孔 対 は 寿 命 に よ っ て 消 滅 し,タ
オ フ状 態 と な る 。 こ の と き,ゲ
の 横 方 向 抵 抗 を 小 さ く す る 必 要 が あ る 。 そ の た め,カ
を狭 く し,カ
ソ ー ドの 周 り を ゲ ー トで 取 り 囲 む よ う な 構 造 と す る 。
き く2種
微 細 な 単 位GTOの
集 合 体 に な っ て お り,そ
類 に 区 別 さ れ る 。 図7・5にGTOの
図7・4 GTOの
ー ン
ー ト電 極 か ら 遠 い 位 置 の 正 孔 は 引 き 抜 か れ に く
い の で,p2層
GTOは
ソー ドか ら
ソ ー ド幅
の使 用用途 に よっ て大
種 類 と構 造 を 示 す 。
ター ンオ フ時 の キ ャ リア の動 き
(a)ア
ノ ー ド短 絡 型GTO
図7・5 GTOの
(b)逆 阻止 型GTO
種 類 と構 造
図7・6 回 路 記 号 と保 護 回路
(1) 短 絡 エ ミ ッ タ(短 絡 ア ノー ド)型GTO
オ フ時 の ス イ ッチ ング を
速 く し,高 い ス イ ッチ ン グ周 波 数 で使 用 で き る構 造 と して い る。 逆 阻 止 電 圧 が 低 く,電 圧 型 イ ンバ ー タ に広 く使 用 され て い る。 (2) 逆 阻 止 型GTO
通 常 のpnpn4層
構 造 で,逆 阻 止 電 圧 が 順 阻 止 電 圧
ほぼ 同 一 で あ る。 電 流 型 イ ンバ ー タ に使 用 され て い る。 ま た,タ ー ン オ フ時 に印 加 さ れ る過 渡 的 な電 圧 とそ の増 大 率 を抑 制 す る た め に,電 流 をGTOか
ら ス ナバ 回 路 と呼 ばれ る ダ イ オ ー ドと コ ン デ ン サ で 構 成 さ
れ る保 護 回路 に急 激 に 流 れ 込 ませ る。(図7・6)
7・4 パ ワ ー バ イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ
バ イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ をパ ワ ー 用 途 に 用 い る た め に は,耐 圧 の 向 上,電 容 量 の 増 加,な
流
ら び に放 熱 特 性 の 向 上 が 必 要 とな る 。 パ ワー 用 の バ イ ポ ー ラ ト
ラ ン ジス タ の典 型 的 な構 造 を図7・7(a)に
示 す。
トラ ン ジ ス タ の 耐 圧 は,動 作 時 に 逆 方 向 バ イ ア ス され る コ レ ク タ 接 合 の耐 圧 で決 ま る。 第3章
で 述 べ た よ う に,pn接
合 の 耐 圧 は,p領
不 純 物 密 度 の 低 い 方 に よ っ て 決 ま る が,コ
域 また はn領
域の
レ ク タ領 域 の 不純 物 密 度 を低 くす る
と,耐 圧 は 向 上 す る が 直 列 抵 抗 成 分 が 増 加 す る こ と と な る。 こ れ を 防 ぐた め に,コ
レ ク タ領 域 内 で 空 乏 層 の 形 成 と関 係 しな い コ レク タ電 極 近 傍 の 不 純 物 密
度 を高 くし てn+層 るn-層
を形 成 し,直 列 抵 抗 成 分 の 低 抵 抗 化 を 図 る。 空 乏 層 が 伸 び
の 厚 さ は,必 要 とす る耐 圧 を 満 た す 最 小 限 と して い る。
パ ワ ー バ イ ポー ラ トラ ン ジ ス タで は,駆 動 電 流 を減 ら し,大 電 流 を 流 せ る よ う に図7・7(b)の し,エ
よ うな ダ ー リ ン トン接 続 を 用 い る。 ま た,べ ー ス抵 抗 を低 減
ミ ッタ で の 電 流 集 中 を防 ぐた め に,エ
ミ ッ タの 面 積 に比 べ て周 辺 部 の割
合 を大 き くす る よ うに 「く し形 」 電 極 を 用 い る。 さ ら にバ イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ の タ ー ンオ フ時 間 は べ ー ス領 域 に蓄 積 して い る小 数 キ ャ リア の 引 き抜 き に 要 す る時 間 に よ って 決 ま るた め,タ ー ン オ フ時 にべ ー ス に逆 方 向 バ イ ア ス を印 加
(a)構
図7・7
し,小
造
(b)等
パ ワ ー バ イ ポ ー ラ ト ラ ン ジ ス タ の 構 造 と等 価 回 路(ダ
数 キ ャ リ ア を 強 制 的 に 引 き 抜 い て,高
バ イ ポ ー ラ ト ラ ン ジ ス タ は,温 る た め,Icが Icが 増 え,最 に は,パ
価 回路
ー リ ン トン 接 続)
速 化 を図 る。
度 上 昇 と 共 にVBEが
負 の温度 係 数 で低下 す
高 く な る と 発 熱 が 大 き く な っ て 温 度 が 上 が り,そ
れ によ りさらに
終 的 に破 壊 に 至 る。 この 現 象 を熱 暴 走 とい う。 熱 暴 走 を防 ぐた め
ワ ー バ イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ の 温 度 に 追 随 して バ イ ア ス 電 圧 を下 げ る
必 要 が あ る。
7・5
パ ワ ーMOSFET
MOSFETは
熱 的 に 安 定 で あ り,容
力 動 作 で あ る 。MOSFETを 要 が あ る 。 パ ワ ーMOSFETに 形 の 溝 を 作 り,チ MOSFET)と,同
易 に 大 面 積 化 で き る た め,大
大 電 流 化 す る た め に は,チ は,図7・8(a)に
電
ャネ ル長 を短 くす る必
示 す よ う に,Si基
ャ ネ ル を 並 列 に 接 続 し たVMOSFET(V-shaped 図(b)に
電 流,大
板 にV字 grooved
示 す よ う に不 純 物 拡 散 技 術 を 利 用 して チ ャ ネ ル を
形 成 す る 二 重 拡 散(double-diffused)MOSFET(DMOSFET)が
あ る。
(a)VMOSFET
(c)VDMOSFET
(b)DMOSFET
図7・8 パ ワ ーMOSFET
VMOSFETで し,DMOSFETで
は チ ャ ネ ル とな るp層
の厚 さを利 用 して短 いチ ャネ ル を実 現
は 不 純 物 の 分 布 位 置 が 異 な る よ う に ドナ ー とア ク セ プ タ を
分 布 さ せ て い る。 ま た,図7・8(c)に VDMOSFETも
示 す よ う に,電
流 を縦 方 向 に流 す
広 く用 い られ て い る。 この 構 造 で は,ド
レ イ ン を基 板 裏 面 に
配 置 す る こ とで ドレ イ ン電 流 が 基 板 全 体 に 流 れ る よ うに な り,大 電 流 化 が 容 易 に な る。 VDMOSFETで るn+層
は,n型
基 板 内 にpウ
を形 成 す る。 基 板 裏 面 をn+と
ェ ル を形 成 し,そ の 中 に ソ ー ス と な
し,ソ ー ス ・ ドレ イ ン 間 のn-層
とp領
域 を チ ャ ネ ル と し て 用 い て い る。n-層 に 空 乏 層 が 広 が る こ とに よ っ て 高 耐 圧 化 が 実 現 で き る。 ゲ ー ト電 圧 に し き い値 以 上 の電 圧 を 印加 す る と,ゲ ー ト酸 化 膜 直 下 のp領 域 が 反 転 し,ド
レ イ ン電 流 が 流 れ る。
7・6
絶 縁 ゲ ー トバ イ ポ ー ラ ト ラ ン ジ ス タ
絶 縁 ゲ ー トバ イ ポ ー ラ ト ラ ン ジ ス タ(IGBT)は,VDMOSFETと 構 造 で,MOSFETよ
り ス イ ッ チ ン グ 速 度 は 劣 る が,パ
ジ ス タ に 比 べ て 高 速 に 動 作 す る 。IGBTの VDMOSFETの あ り,等
ド レ イ ンn+層 価 回 路 は 同 図(b)で
る と,p2+(n3+n2-)p1で
類 似 の ワ ー バ イ ポ ー ラ トラ ン
構 造 は 図7・9(a)に
と ド レ イ ン 電 極 の間 にp+層 示 さ れ る 。nチ
示 す よ う に,
を 挿 入 し た もの で
ャ ネ ルMOSFETが
オ ン状 態 に な
構 成 さ れ る バ イ ポ ー ラ ト ラ ン ジ ス タ が オ ン状 態 に な
る。 これ に よ りチ ャネ ル を 経 由 して エ ミ ッタ か ら コ レク タに 流 れ る電 子 だ け で な く,コ
レ ク タ か ら エ ミ ッ タ に 流 れ る 正 孔 も電 流 に 寄 与 す る こ と に な り,オ
状 態 の 抵 抗 がVDMOSFETよ p1 (n2-n3+)p2+で
り小 さ く,大
電 力 化 が 可 能 に な る 。 一 方,n1+
寄 生 サ イ リ ス タ が 構 成 さ れ る が,不
純 物 密 度 等 を制 御 して サ
イ リス タ動 作 を抑 制 す る必 要 が あ る。
(a)構 造 と 回路 記 号
(b)等価 回路
図7・9 IGBT
ン
図7・10
IGBTは,主
にSi基
板 表 面 に 形 成 さ れ るMOSFETを
っ て 進 歩 し て き た が,MOSFETを と に な る 。 そ の た め,最 い 溝(ト IGBTが
レ ン チ)を
開 発 さ れ て い る。
微細 化 す る こ とに よ
微 細 化 す る と逆 に オ ン 電 圧 を 上 昇 さ せ る こ
近 で は 図7・10に
形 成 し,そ
ト レ ン チIGBT
示 す よ う に,Si基
の 側 壁 にMOSFETを
板 の 表 面 に 狭 く深 形 成 す る トレ ン チ
演
習
〔 問 題 〕1.サ
イ リス タ に お い て,短
〔 問 題 〕2.パ
ワ ーMOSFETの
短 絡 さ れ て い る 理 由 を述 べ よ 。
問
題
〔7〕
絡 エ ミ ッ タ構 造 を 採 用 す る 理 由 を 述 べ よ。
ソ ー ス 領 域 に お い て,n領
域 とp領
域が電極 で
第8章
この 章 で は,半
や,熱
セ ンサ と関連 デバ イ ス
導 体 の 導 電 率 温 度 依 存 性 と そ れ を利 用 し た 温 度 セ ン サ
電 効 果 とそ れ を用 い た 熱 電 デ バ イ ス,磁
種 磁 気 セ ン サ,お
気 効 果 と そ れ を 利 用 した 各
よ び 半 導 体 の歪 効 果 とそ れ を 用 い た デ バ イ ス,ま
たガス
セ ンサ や イ オ ン セ ンサ に つ い て 解 説 し よ う。
8・1
温 度 セ ンサ と熱電 変 換 デ バ イ ス
〔1〕
半 導 体 を用 い た 温 度 セ ンサ
半 導 体 中 の キ ャ リ ア 密 度 は,第2章 に,温
度Tの
の 式(2・24)お
関 数 と し て 与 え ら れ る 。 下 に,こ
よ び 式(2・25)に
示 した よ う
れ らの 式 を再 度 示 す 。
(8・1)
(8・2)
これ らの 式 か ら,半 導 体 の キ ャ リア 密 度 の 温 度 依 存 性 が 次 の よ う に わ か る。 ① 許 容 帯 の 有 効 状 態 密 度NcやNυ
の 値 は,Tの3/2乗
に比 例 して変 わ
る。 ② 分布 関 数 はTの
指 数 関 数 的 な変 化 をす る。
こ こで 注 意 しな けれ ば な ら な い こ と は,分 布 関 数 の変 化 は式 中 に直 接 示 さ れ て い るTだ
け で は な く,フ ェル ミ準 位Efが
24で 示 した よ う に禁 制 帯 内 で,そ た だ し,こ のEfの
半 導 体 の温 度 に 依 存 し て,図2・
の 位 置 を変 え る こ とで あ る。
位 置 変 化 が 無 視 で きる よ う な温 度 範 囲 で 考 察 す る もの と
す れ ば,キ
ャ リア密 度 の 温 度 依 存 性 に 関 係 す る原 因 の 中 で,最
頃 は,式(8・1)お
よ び 式(8・2)中 のexp項
の()内
も強 く影 響 す る
で 直 接 示 さ れ て い るTで
あ
る。 半 導 体 の導 電 率 は,式(2・52)に るが,キ
示 した よ う に,キ
ャ リア密 度 に大 き く依 存 す
ャ リア移 動 度 が 温 度 に よ っ て 変 化 す る こ と も無 視 で き な い 場 合 もあ
る。 しか し,こ
こで は,解 析 を容 易 に す る た め,半
そ の ドナ ー 準 位 は伝 導 帯 の 底Ecよ き,kTに
く らべ て)低
導 体 はn形
で あ る と し,
り も十 分 に(考 察 す る 温 度 をTと
い 位 置 に あ り,ま た,フ
す ると
ェ ル ミ準 位 はEcと
ドナ ー 準
位 の 中程 に位 置 し,そ の 禁 制 帯 内 で の 相 対 的位 置 は温 度 に よ っ て変 わ らな い と しよ う。 この よ うな仮 定 の下 で は,キ
ャ リア の ほ とん どは ドナ ー準 位 か ら の 熱 励 起 に
よ る 電 子 だ け で あ る と考 え て よ い(こ
の 状 態 は,第2章
(A)の 温 度 領 域 に 相 当 す る)。 そ し て,そ 述 の こ とか ら,近 似 的 に式(8・1)中 のNcお
の 図2・25に お け る
の 電 子 密 度 を計 算 す る場 合 に は,上 よ び(Ec−Ef)/kは
定 数 と考 えて 良
い 。
また,電
子 移 動 度 μnの 温 度 に よ る 変 化 も比 較 的 小 さ い の で,こ
し,温 度Tと
温 度T0に
お け る電 子 密 度 を そ れ ぞ れn,n0と
れ も無 視
す れ ば,そ
れ ぞれ
の 温 度 に お け る半 導 体 の 抵 抗 率 の 比 ρ/ρ0は,式(8・3)で 与 え られ る。 (8・3)
こ こ で,Bは(Ec−Ef)/kで 度 な ど で 定 ま り,活
あ り,半
導体 や ドナ ー の 種 類 お よ び ドナ ー の 濃
性 化 エ ネ ル ギ ー(activation
energy)と
呼 ば れ る(単
位
はK)*。 そ れ ゆ え,温 を 用 い て,近
度Tに
お け る 半 導 体 の 抵 抗Rは,温
度T0の
と き の 抵 抗R0
似 的 に 次 の よ う に与 え られ る。
* 活 性 化 エ ネ ル ギ ー と して は
,上 記 の他 に,Ec-Ef=Ea(単
場 合 が あ る。
位 はeV)と
して 表 記 す る
(8・4)
電 気 抵 抗 の 温 度 係 数 α は,式(8・4)か
ら, (8・5)
と な り,温
度 に よ っ て 大 き く変 化 す る 負 の 値 を も つ 。
こ の よ う な,半
導 体 の抵 抗 率 に お け る大 きい 温 度 依 存 性 を利 用 した デバ イ ス
の 一 例 と し て,サ
ー ミ ス タ(thermally
タ は マ ン ガ ン(Mn),コ
sensitive
バ ル ト(Co),ニ
ッ ケ ル(Ni)な
な ど の 粉 末 を 酸 素 気 流 中 で 焼 結 し,こ 物 半 導 体 温 度 検 出 素 子(セ 係 数 は,近 dR/dTの
値 は,そ
し か し,サ は,そ
あ る。 サ ー ミ ス
ど の酸 化 物 や 炭 酸 塩
れ に オ ー ミ ッ ク 電 極 を 取 り付 け た,酸
ン サ;sensor)で
似 的 に 式(8・4)お
resistor)が
あ り,そ
の電気抵抗 や抵抗 の温度
よ び 式(8・5)で 与 え ら れ,常
の と き の 抵 抗 値 の お よ そ 数%の
ー ミ ス タ に は 種 類 も 多 く,そ
化
温(300K)付
近 で の
値 を もっ て い る。
の 導 電 機 構 に も種 々 あ り,一
般 的 に
れ ら 多 数 の 導 電 機 構 が 組 み 合 わ さ っ て い る も の と考 え ら れ て い る 。 す な
わ ち,サ
ー ミ ス タ は,上
述 の よ う な,単
一 の 導 電 機 構 だ け で 説 明 で きる もの で
はない。 サ ー ミ ス タ は そ の 抵 抗 値 か ら温 度 を 検 出 す る 素 子 で あ る の で,当
然,抵
抗 測
定 の た め に 多 少 な り と も 素 子 に 電 流 を 流 さ な け れ ば な ら な い 。 こ の と き,サ ミ ス タ は ジ ュ ー ル 熱 を 発 生 し,温 )と
子 温 度 は 周 囲 温 度 よ り も 高 く な り,こ
の 誤 差 に な る 。 い ま,サ
ー ミ ス タ の 熱 容 量 をC,熱
constant)をD〔W/K〕,抵
抗 をRと
ら 流 し 始 め た と す れ ば,時
は,熱
度 が 上 昇 す る 。 こ の 現 象 を 自 己 加 熱(selfheating
い う。
自 己 加 熱 の た め,素
0か
ー
平 衡 方 程 式,
で 表 さ れ る 。 こ れ を解 く と,
刻tに
す る 。 一 定 値Iの
れが温度測定 の際
放 散 係 数(dissipation 測 定 電 流 を,時
刻t=
お け る素 子 の 自己 加 熱 に よ る 温 度 上 昇 θ
(8・6)
とな る。 こ こ で,τ=C/Dは の 時 間,つ
素 子 の 時 定 数 で,こ の 値 は測 定 値 が 落 ち つ く まで
ま り式(8・6)の 過 渡 項 の 消 滅 す る速 さ の 目安 に な る。 また,こ
定 数 は 自 己加 熱 現 象 に 限 らず,周
の時
囲温 度 の 変 化 に素 子 温 度 が 応 答 す る場 合 の時
定 数 で もあ る。 この こ と は,式(8・6)を,自
己加 熱I2Rの
代 わ りに,周
囲か ら
の 熱供 給 に よ る素 子 温 度 の 応 答 式 で あ る,と 理 解 す れ ば 明 白 な こ とで あ る。 従 っ て,τ の 値 は 小 さ い ほ ど良 い。 さ て,Dの す るが,で
値 は,サ ー ミ ス タ の形 や 大 き さ,お
よ び 周 囲 環 境 に よ っ て変 化
き る限 り この 値 を大 き くす る こ と と,測 定 電 流 を小 さ くす る こ と
が,自 己 加 熱 に よ る 誤 差 を 小 さ くす る こ とに な る。 また,Dの る こ とは,Cの
値 を大 き くす
値 を 小 さ くす る こ と と と も に,素 子 の 時 定 数 を 短 くす る こ と
になる。 Cの 値 を小 さ くす るた め,小 そ の時 定 数 が1秒
さ な ビー ズ状 に作 製 され た サ ー ミス タ もあ り,
以 下 の もの も市販 され て い る。
式(8・4)お よ び式(8・6)でt→ ∞ の と き の 温 度 上 昇 の 最 終 値 θをT−T0と くと,T/T0を
媒 介 変 数 に して,電 流Iと
抵 抗Rが
置
次 の よ う に求 め られ る。 (8・7)
(8・8)
これ か らV=IRの
関 係 を用 い れ ば,周 囲 温 度T0が
一 定 の 条 件 の 下 で,自
己加 熱 に起 因 す る 素 子 の 抵 抗 変 化 を考 慮 し た サ ー ミス タ の 電 圧-電 流 特 性 が 求 め られ る。 図8・1は,T0=300〔K〕,R0=1〔kΩ ネ ル ギ ーBの
〕,D=1/100〔W/K〕
と し て,活
性化エ
値 を種 々 変 えた と きの電 圧-電 流 特 性 を示 す 。
この 図 か ら も明 らか な よ うに,適
当 な活 性 化 エ ネ ル ギ ー を も つ 素 子 は,素 子
電 流 が あ る程 度 変 化 して も,そ の端 子 電 圧 は,ほ
ぼ一 定 値 に保 た れ る。
それ ゆ え,サ ー ミス タ は温 度 セ ンサ と して 用 い る ほ か,上 述 の 定 電 圧 特 性 を
図8・1 サ ー ミス タ のV-I特
性
利 用 して 簡 単 な定 電 圧 装 置 を作 る こ とに も利 用 で き る。
〔2〕
熱 電 効 果 デバ イ ス
(1) 熱 電 効 果 (a) ゼ ー ベ ック 効 果 禁 制 帯 幅Egの て,そ
比 較 的大 きな外 因性 半 導体 にお い
の キ ャ リア の大 部 分 が 不 純 物 準 位 か らの 励 起 に よっ て 作 られ る温 度 領 域
で は,キ
ャ リア密 度 は温 度 上 昇 に よ っ て 増 加 す る。 そ の理 由 と して は,分 布 関
数 の 値 が 温 度 上 昇 に よ り増 大 す る こ とが 主 原 因 で あ るが,許
容帯 の有効状 態密
度 が 温 度 の上 昇 と と もに 増 加 す る こ と も こ れ に つ け加 わ っ て い る。 こ の こ とは 既 に 前 節 で述 べ た 。 い ま,図8・2(a)のn形
半 導 体 の 棒 状 素 子 に お い て,左
0と し,そ の 温 度 はTL,右 は非 平 衡 で あ るが,時
端(高
温 端)をx=l,そ
端(低
温 端)をx=
の 温 度 はTHで,熱
的に
間 的 に は変 化 しな い 定 常 状 態 を考 え る。
解 析 を容 易 に す るた め,前 節 と同様 に,ド
ナ ー濃 度 は大 き く,伝 導 帯 の電 子
は ほ とん ど ドナ ー か ら供 給 され て い る とす る。 す な わ ち,n形 幅 は大 き く,ド ナ ー 準 位EDは
伝 導 帯 の 底Ecか
にお け る フ ェ ル ミ準 位EfはEcとEDの
半導体 の禁 制帯
ら十 分 に離 れ て お り,温 度T
間 に あ り,し か もEc−Ef≫kTで
あ
る とす る。 こ の よ う な条 件 下 で は,高 温 部(右 の 電 子 密 度nLよ
端)の
電 子 密 度nHは,低
温 部(左
端)
り も大 き くな り,高 温 部 の 電 子 は 低 温 部 へ 拡 散 す る。 低 温 部
へ 拡 散 した 電 子 は低 温 部 の 電 位 を低 め,逆
に高 温 部 に残 され た ドナ ー の 正 イ オ
ンは 高 温 部 の 電 位 を高 め る。 この 電 位 の 変 化 は,高 温 部 の フ ェル ミ準 位 を低 温 部 の フ ェル ミ準 位 よ り低 く し,そ れ に伴 って 伝 導 帯 の 底 の準 位 も下 が る。 そ の 結 果,高
温 部 の伝 導 帯 電 子 は,低 温 部 へ 流 出 し よ う とす る傾 向 を 弱 め,
(a)n形
(b)エ
半導 体 の棒
ネル ギー帯 図
図8・2 n形 半 導体 の熱 電 効 果 を説 明 す る図
拡 散 は平 衡(熱
平 衡 の 意 味 で は な い)す
を,図8・2(b)に
る。 この よ うな エ ネ ル ギ ー 準 位 の 変 化
示 す。
こ こで 注 意 す る こ と は,Ecの
傾 斜 と フ ェ ル ミ準 位Efの
り,こ れ は先 に も述 べ た よ う に,(Ec−Ef)の
値 が 温 度 に よ っ て 変 わ る か らで
あ る。 棒 の 両 端 間 の フ ェ ル ミ準 位 の 差qVsは,外 電 位 差Vsと
傾 斜 は異 な っ て お
部 か ら も半 導 体 棒 両 端 間 の
し て直 接,電 圧 計 で 測 定 す る こ とが で き る。
こ の 電 圧Vsを
熱 起 電 力(thermoelectromotive
force)と
な熱 起 電 力 を 生 ず る現 象 をゼ ー ベ ッ ク効 果(Seebeck 熱 平 衡 状 態 でpn接
呼 び,こ
effect)と
の よう
い う。
合 の伝 導 帯 や価 電 子 帯 に形 成 さ れ る拡 散 電 位 差 は,p,n
両 領 域 の フ ェ ル ミ準 位 が 一 致 して い る た め,外 部 か ら測 定 で き な い が,熱 起 電 力 は フ ェル ミ準 位 の差 に起 因 す るの で,そ の 電 圧 は外 部 か ら直 接 測 定 で き る の で あ る。 次 に,こ
の 熱 起 電 力 の 大 き さ に つ い て 調 べ て み よ う。 こ の棒 状n形
の 位 置xに
お け る 温 度 をT,伝
の と き,位 置xの 位 置xの
導 帯 の 電 子 の 密 度 をn,電
電 子 密 度 勾 配 はdn/dx,温
伝 導 帯 底 の 準 位 は,低 温 部(x=0)の
位 をVと
半 導体
度 勾 配 はdT/dxで
す る。 こ
あ る。 また,
フ ェル ミ準 位 に対 し て, (8・9)
で あ り,こ の 傾 斜 が 伝 導 帯 の 電 子 に対 す る ドリ フ ト電 界 ξ を作 る。
(8・10)
で あ る 。 し か し,こ kT/2を
れ まで は,電
子 が そ の 位 置 の温 度 に み あ う運 動 エ ネ ル ギ ー
も っ て い る こ と を 考 え に 入 れ て い な か っ た 。 そ こ で,こ
と,式(8・9)は(kT/2)が
付 け 加 え ら れ,従
っ て 式(8・10)は,Tで
れ を考慮 す る の微 分 を仲
介 と し て, (8・11)
とな る。 さ て,位 置xに
お け る電 子 の 移 動 は 式(8・11)の 電 界 に よ る ド リ フ ト
電 流 が 温 度 差 に よ る拡 散 電 流 と等 し くな っ た状 態 で 平 衡 す る。
(8・12)
こ こ で,dn/dxはdn/dTとdT/dxの 子 密 度nは,式(8・1)で
積 で あ り,ま
与 え ら れ て い る の で,こ
た,温
れ のTに
度Tに
お け る電
つ いて の微 係 数 か
ら,
(8・13)
で あ る 。 こ の 式 と 式(8・11)を
と な る 。 こ こ で,上
式(8・12)に
代 入 す れ ば,
式 に ア イ ン シ ュ タ イ ン の 関 係 式 を 用 い て 整 理 す れ ば,
(8・14)
が 得 ら れ る 。 こ のEsは の 右 端 を 正 極,左
フ ェ ル ミ 準 位 の 勾 配 に よ っ て 作 ら れ た 電 界 で あ り,棒
端 を 負 極 と す る 熱 起 電 力 を 作 り 出 し て お り,こ
ク 電 界(Seebeck's
electric
field)と
れ をゼ ー ベ ッ
い う 。 ま た, (8・15)
と置 く と,式(7・14)は,
(8・16)
と な る 。 こ の α(T)はn形 の,ゼ
半 導 体 と,こ
ー ベ ッ ク 係 数(Seebeck
式(8・14)をxに
関 し て0か
れ とオ ー ム性 接 触 し て い る金 属 との 間
coefficient)で らlま
あ る。
で 積 分 す れ ば,熱
起 電 力Vsが
求 ま り,
(8・17)
とな る。 以 上 の 計 算 は,n形 ら,p形
半 導 体 に つ い て な さ れ た が,全
半 導体 の ゼ ー ベ ック 係 数 は,
く同 様 の 考 察 と計 算 か
(8・18)
と して 求 め ら れ る。 数 式 が 繁 雑 に な る の で,以
後,数
式 中 に お い て は,α(T)
は 単 に α と記 す。 (b) ペ ル チ エ効 果 再 度,図8・2(a)の こ の棒 に,+xの
向 き に 電 流Iを
よ う なn形 半 導 体 の 棒 を 考 え る。
流 す と し よ う。 この と き,電 子 は右 端 の 金
属 電 極 か ら半 導 体 中 に入 り,左 端 の金 属 電 極 へ 通 り抜 け る。 電 子 は こ の よ う な 移 動 に伴 っ て,同
図(b)か
ら もわ か る よ う に,そ
の エ ネ ル ギ ー 値 を次 の よ う に
変 え る。 電 子 は右 の 金 属 電 極 中 に い る と き,そ の 平 均 エ ネル ギ ー は その フ ェル ミ準 位 (A)に
あ る が,こ れ が 半 導 体 中 に 送 り込 まれ る と,そ の エ ネ ル ギ ー は 高 く(B)
に な ら な け れ ば な らな い 。 そ の た め 電 子 は周 囲 に あ る原 子 か ら,必 要 とす る エ ネ ル ギ ー を熱 の 形 で 吸 収 す る。 電 子 が 半 導体(エ 極(エ
ネル ギ ーD)へ
ネ ル ギ ーC)か
ら左 の 金 属 電
抜 け出 す と き に は,今 度 は 逆 に,そ の過 剰 な エ ネ ル ギ ー
を熱 と して放 出 し な け れ ば な ら な い 。 この よ う に,異 な っ た2種 き,ジ
の 金 属 や 半 導 体 の 接 触 部 に,電
流Iが
流れ ると
ュー ル熱 以 外 に熱 を発 生 した り,ま た は,吸 収 した りす る現 象 をペ ル チ
エ 効 果(Peltier この と き,1秒
effect)と
い う。
間 当 た りに 発 生 す る熱 量Q〔J/s〕(1J/s=1W)は,流
した電
流I〔A〕 に 比 例 し, (8・19)
で あ る。 こ こで,Π
はペ ル チ エ 係 数(peltier
coefficient)で,そ
の 種 類 や 接 触 箇 所 の 温 度 に よ り定 ま る。 そ し て,式(8・19)か で あ る こ と,お よ び そ の 値 は1〔A・s〕(1A・s=1C)の
の値 は物 質
らそ の 単 位 は 〔V〕
電 荷 や接 触 面 を通 過 す る
と き の発 熱 また は 吸 熱 量 に相 当 し て い る こ とが わ か る 。 そ れ ゆ え,電 子 が 接 触 面 を通 過 す る際 の発 熱 また は 吸 熱 量 はqΠ で あ る こ と も直 ち に理 解 で き る。 な お,Π
が 負 の と き は吸 熱 を意 味 す る。
ペ ル チ エ 効 果 は可 逆 的 で,電
子 の 向 き を 逆 にす れ ば,発 熱 と吸 熱 が 逆 に な
る。 こ の こ と を利 用 して,半 導 体 を使 っ た 熱 電 冷 却 デ バ イ ス が 作 られ て い る。
な お,証
明 は 略 す が 熱 力 学 の 第1法
ク 係 数 α(T)と
ペ ル チ エ 係 数Π
て い る 。 従 っ て,n形
則 お よ び 第2法
則 か ら,一
の 間 に はΠ=αTの
般 にゼーベ ッ
関 係 が あ る こ とが 導 か れ
半 導 体 に 関 し て は,式(8・15)か
ら,式(8・20)が
得 られ
る。 (8・20)
次 に,こ
の 式 を,図8・2(b)の
ま,図8・2(a)のn形
エ ネ ル ギ ー 帯 図 に関 連 させ て 説 明 し よ う。 い
半 導 体 棒 に+xの
の ペ ル チ エ 係 数ΠHの
向 き に 電 流 を 流 し た と き,棒
値 は,式(8・20)のTをTHに,(Ec−Ef)は
お け る 伝 導 帯 の 底 と フ ェ ル ミ準 位 の 差(Ec−Ef)Hに
の右端 で 温 度THに
置 き換 え て,
(吸熱) と な る 。 こ れ は 図8・2(b)で
は,電
子 のAか
らBへ
(8・21)
の 遷 移 と し て 示 され て い
る。 ま た 左 端 で は,電
流 が 金 属 か ら 半 導 体 へ 流 れ る の で,ΠLは
に な り,TをTLに,(Ec−Ef)を(Ec−EF)Lに
符 号 がΠHと
置 き 変 え て, (発 熱)
とな る。 これ は図8・2(b)の (c)
逆
中 で,Cか
らDへ
トム ソ ン効 果 温 度 勾 配dT/dxが
(8・22)
の 遷 移 と して示 され て い る。
存 在 す る金 属 や 半 導 体 の棒 に 電 流
Iが 流 れ る と き,棒 の 中 に は,ジ ュ ー ル 熱 以 外 の 発 熱 ま た は 吸 熱 が 起 こ る。 こ の 現 象 を トム ソ ン効 果(Thomson
effect)と
部 か ら低 温 部 へ 流 れ て い る と き,長 さdxの 単 位 時 間 当 た りの発 熱 量 をdQ〔W〕
い う。 い ま,電 流I〔A〕 が 高 温
部 分 で 発 熱 す る場 合 を正 と し て,
とす れ ば, (8・23)
で あ る 。 こ こ で,τ efficient)と 1Cの
は 物 質 に よ り定 ま る 係 数 で,ト
呼 ば れ,そ
ム ソ ン 係 数(Thomson
co
の 単 位 は 〔V/K〕 で あ る 。 こ れ は 温 度 差 が1Kの
電 荷 が 高 温 部 か ら低 温 部 へ 移 動 す る と き の 発 熱 量 を 意 味 し,こ
所 を
れが負 の
と き は吸 熱 を表 す 。 上 式 をxに
関 し て0か
らlま
で 積 分 し た と き の 熱 量 を,エ
ネ ル ギ ー保 存 則
か ら 導 い て み よ う 。 い ま,電
子 をA→B→C→Dと
遷 移 さ せ る と,電
子 のエ ネ
ル ギ ー の 変 化 か ら, (8・24)
が 成 立 す る 。 こ の 式 に,式(8・21)お
よ び 式(8・22)を 代 入 し,整
理 す れ ば,
(8・25)
と な る 。 こ こ で,VDは, (8・26)
で あ り,こ れ は棒 の 両 端 に お け る伝 導 帯 底 の エ ネル ギ ー差,つ
ま り拡 散 電 位 差
で あ る。 (2) 熱 電 変 換 デ バ イ ス
半 導 体 を用 い た 熱 電 変 換 デ バ イ ス と して は,ゼ
ー ベ ック効 果 を利 用 し た熱 電 発 電 素 子 や ,ペ ル チ エ 効 果 を利 用 した 熱 電 冷 却 素 子 な どが あ るが,素 あ るが)は
子 の基 本 的 な構 成 や 動 作(エ
同 じ な の で,前
この 素 子 は,図8・3の
ネ ル ギ ー 変 換 の 向 きは逆 で は
者 に つ い て 説 明 しよ う。
よ う に,p形
半 導 体 とn形 半 導 体 の棒 の 両 端 を オ ー ム
性 接 触 をす る 金 属 を用 い てΠ 字 形 に接 続 し た もの1対
を基 本 構 成 とす る。 こ
図8・3 熱電 発 電 デバイス
れ をサ ブ モ ジ ュ ー ル(submodule)と
い い,こ れ らの 数 対 ∼ 十 数 対 を直 列 接 続
した もの を モ ジ ュ ー ル とい う。 実 際 に は,負 荷 に応 じて,こ らに適 当 な数 だ け直 並 列 接 続 して 使 用 す るが,こ に つ い て,そ
のモ ジュール を さ
こで は1対 の サ ブ モ ジ ュ ー ル
の 熱 電 変 換 効 率 を 求 め て み よ う。
ゼ ー ベ ッ ク係 数 を α,電 気 抵 抗 率 を ρ,熱 伝 導 率 をκ,棒 積 をSと
し,p形
半 導 体 に つ い て は下 添 字pを,n形
す こ とに す る。 この と き,素 子 対 の 電 気 抵 抗R,お
の 長 さ をl,断
面
半 導 体 で はnを 付 けて 表 よ び 熱 コ ン ダ ク タ ン スK
は,そ れ ぞ れ, (8・27)
で,高
・低 温 度 差TH−TL=ΔTに
対 して 発 生 す る 熱 起 電 力Vは,ゼ
ーベ ッ
ク係 数 を近 似 的 に定 数 と考 え て, (8・28)
で あ る 。 負 荷 抵 抗 をRLと
し,RL/R=mと
す れ ば,負
荷 に 流 れ る 電 流Iは, (8・29)
で,負 荷 に取 り出せ る電 力Pは, (8・30)
とな る。 高 温 接 点 で 単 位 時 間 当 た り に失 わ れ る熱 量Qは,ペ
ル チエ効 果 に よ る吸熱
ΠIと 素 子 内 の 熱 伝 導 に よ り低 温 接 点 へ 移 動 す る 熱 量KΔTの 内 で 発 生 す る ジ ュ ー ル 熱 の 半 分(残 の に な る。 こ こ で,Π
和 か ら,素 子
り は低 温 接 点 側 に行 く)I2R/2を
引 いた も
の値 は, (8・31)
で あ る こ と,お
よ び 式(8・29)か
ら,Qは,
(8・32)
と な る 。 従 っ て,効
率 η と し て,式(8・32)と
式(8・30)か
ら,
(8・33)
を 得 る 。 こ こ で,Z=(αp− を,そ
αn)2/(KP)で
の 熱 電 性 能 指 数(thermoelectric
〔K-1〕 で あ る が,こ 式(8・33)に
あ る 。 な お,単 figure
の 命 名 の 理 由 に つ い て は,次
お い て,最
一 素 子 のz=α2/(ρκ)
of merit)と
位 は
に説 明 す る。
大 効 率 を 与 え る 負 荷 抵 抗 はdη/dm=0か
の と き の 最 大 効 率 ηmax,お
呼 び,単
よ び 負 荷 抵 抗RLopt=mopt・Rに
ら 求 ま り,そ
お け るmoptの
値 は,
(8・34)
と な る 。 式(8・34)に ciency)に
お け る(TH−TL)/THは
相 当 す る が,熱
カ ル ノ ー 効 率(Carnot
effi
電 発 電 素 子 は 一 種 の 熱 機 関 と 考 え ら れ る か ら,カ
ル
ノ ー効 率 で そ の 最 大 効 率 が 制 限 を受 け るの は 当然 で あ る。 式(8・34)か
ら,moptの
値 は 指 数Zに
よ り 変 化 し,Zの
値 が 大 き い ほ ど,
図8・4 熱電 物 質 のzの 温 度依存性
moptの 値 は大 き くな り,従 っ て 効 率 も大 き くな る。 そ れ ゆ え,Zの
値 は素子
の性 能 に重 要 な 関 係 が あ る の で,こ れ を性 能 指 数 と呼 ぶ 。 しか し,カ ル ノ ー効 率 は,TLの
値 が 定 ま っ て い る(普 通 は 常 温)の
い。 従 っ て,性 ら,zTを
で,THの
値 は大 き い ほ ど 良
能 指 数 も高 温 で 大 きな 値 を も つ材 料 が 好 ま しい 。 こ の こ とか
性 能 指 数 と して 使 う場 合 も あ る。
図8・4は,代
表 的 な熱 電 物 質 のzの 温 度 依 存 性 を示 す 。
8・2 磁 気 効 果 デ バ イ ス
〔1〕
ホ ー ル 効 果 と その 応 用 デ バ イ ス
金 属 や 半 導 体 に 電 流 を 流 し,こ れ と直 角 方 向 か ら磁 界 を作 用 させ る と,電 流 と磁 界 の 方 向 を 含 む 面 に 対 し垂 直 な 方 向 に 起 電 力 を 発 生 す る。 この 現 象 は, 1879年 に ホ ー ル(E.H.Hall)に
よ っ て発 見 され た もの で,ホ
ー ル 効 果(Hall
effect)と 呼 ばれ る。 ホ ー ル 効 果 は,材 料 物 性 の研 究 手 段 と して 重 要 で あ る ば か りで な く,感 磁 性
(a)
(b)
図8・5 果
ホー ル効
素 子 な どへ の 広 い応 用 面 が あ る。 次 に,p形
半 導 体 を例 に して ホ ー ル 効 果 に よ る起 電 力(ホ
求 め よ う。 図8・5(a)の
よ う に,電
子 に,一 定 の 強 さ の磁 界Bzを
ー ル 電 圧)VHを
流Ixが 流 れ て い る 長 方 形 のp形
半導体素
印 加 した と き の過 渡状 態 を考 え よ う。
磁 界 が 加 え られ た 初 期 に お い て,速 度υxで ド リフ トし て い る正 孔 は,磁 界 に よ る力qυxBzを 受 けて そ の 進 路 が−yの 積 さ れ る。 こ の と き,反 対 側 のH面 れ る。 そ の 結 果,こ の 向 き に電 界(ホ +yの
れ らGお
向 き にqEyの
前 のG面
に蓄
に は イ オ ン化 した ア ク セ プ タ が 取 り残 さ
よ びH面
ー ル 電 界)Eyを
方 向 に 曲 げ られ,手
に現 れ た 正 負 の 電 荷 は,素
子 内 で+y
生 ず る。 こ の ホ ー ル 電 界 は 正 孔 に 対 し て
静 電 力 を及 ぼ す 。 そ し て,こ の 静 電 力 と磁 界 に よ る力 が
つ りあ っ た と き定 常 状 態 に な り,正 孔 は直 進 す る よ うに な る。 す な わ ち,定 常 状 態 で は キ ャ リア に働 くロー レ ン ツ 力(Lorentz's
force)が
0と な り, (8・35)
に な る 。 ま た,素
子 電 流Ixは,素
子 の 幅 をb,厚
さ をt,正
孔 密 度 をpと
す
れ ば, (8・36)
で あ る 。 従 っ て,G面 式(8・35)お
を 基 準 に し たH面
よ び 式(8・36)を
の 電 位,す
な わ ち ホ ー ル 電 圧VHは,
用 い て, (8・37)
と な る 。 こ こ で,RHは, (8・38)
で,こ
れ をp形
ル 電 圧VHと
半 導 体 の ホ ー ル 係 数(Hall
ホ ー ル 係数RHの
単 位 は,他
〔T〕,b〔m〕,t〔m〕,q〔C〕,p〔m-3〕
coefficient)と
い う 。 な お,ホ
の 量 の 単 位 を そ れ ぞ れ,Ix〔A〕,Bz
と す る と き,VHは
〔V〕,RHは
C〕 で あ る。 ま た,n形
半 導 体 の ホ ー ル 係 数 も,上
ー
に 述 べ た と同 様 な 計 算 か ら,
〔m3/
(8・39)
とな る。 上 式 の 負 符 号 は,電 子 が 負 電 荷 を もつ た め で あ り,ホ ー ル 電 圧 の 極 性 がp形
半 導体 と は逆 に な る こ と を意 味 し て い る。
こ れ らの 式(8・38)お よ び 式(8・39)は,い う な,明 確 なpま
た はn形
ず れ も少 数 キ ャ リア が無 視 で き る よ
半 導 体 の 場 合 の ホ ー ル 係 数 で あ るが,真
性 半導 体
に近 い半 導体 の場 合 に は,正 孔 と電 子 の 両 者 を考 慮 しな け れ ば な らな い。 こ の と きの ホ ー ル 係 数 は, (8・40)
と な り,単
純 にRHの
次 に,素
子 外 部 か ら 印 加 さ れ た 電 圧 に よ っ て 素 子 内 に 作 ら れ て い る 電 界Ex
と ホ ー ル 電 界Eyと angle)と
正 負 に よ っ て,p形
か,n形
い う)を
の 合 成 電 界Eが,Exと 求 め よ う。 通 常,こ
か を判 定 で き な い 。
な す 角 θ(こ れ を ホ ー ル 角(Hall の 角 度 は あ ま り 大 き く な い の で,キ
リ ア の 移 動 度 を μ と す れ ば,υx=μExの
関 係 と式(8・35)か
ャ
ら, (8・41)
が 得 ら れ る 。 図8・5(b)にp形 い ま ま で の 説 明 で は,キ が,実
際 に は,キ
ャ リア は す べ て 同 じ速 度 で動 くこ とを仮 定 し て きた
ャ リ ア の 速 度 分 布 は 一 様 で は な い 。 そ の た め,式(8・38)∼
(8・40)の ホ ー ル 係 数RHに す な わ ち,室
半 導 体 の ホ ー ル 角 を示 す 。
式
は補 正 係 数 γを掛 け る こ とが必 要 で あ る 。
温 付 近 の 温 度 で は,SiやGeに
お け る キ ャ リ ア の 速 度 分 布 は,
格 子 原 子 の 熱 運 動 に よ る 散 乱 を 受 け て ボ ル ツ マ ン 分 布 を し て い る と考 え られ, こ の と き は γ=3π/8で あ る場 合 に は,む =315π/512に
あ る こ と が 導 か れ て い る 。 ま た,半
導体 結 晶 が低 温 で
し ろ 不 純 物 イ オ ン に よ る 散 乱 が 主 に な る の で,こ
な る
の ときは γ
。
p形 半 導 体 の 導 電 率 σpは,
で あ る か ら,こ
の 式 を 式(8・38)を
補 正 し た 式 に か け れ ば, (8・42)
と な り,こ
の μHpを,正
孔 の ホ ー ル 移 動 度(Hall
n形 半 導 体 に つ い て,電
mobility)と
呼 ぶ 。 同 様 に,
子 の ホ ー ル 移 動 度 μHnは, (8・43)
とな る。 (1) 上 で 述 べ た ホー ル効 果 は,次 の よ うな 各 種 の 特 性 測 定 に応 用 され る。 ① 半 導 体 材 料 のpn判
定VHの
半 導 体 に 近 い 場 合 はVHの
極 性 に よ っ て 行 う。 た だ し,材 料 が 真 性
値 は 小 さ く,そ の 極 性 も式(8・40)に よ る の で
pn判 定 が 面 倒 で あ る。 ② キ ャ リア密 度 の 測 定Ix,Bz,t,VHを
測 定 し,pま
た はnを
知 る。
③ キ ャ リア の 移 動 度 の 測 定 σ,RHの 測 定 に よ り,ホ ー ル 移 動 度 が わ か る。 (2) ホ ー ル 効 果 を利 用 した デバ イ ス を 作 る半 導 体 材 料 と して は,GeやSi の ほ か に,ホ
ー ル 係 数 が 大 きい イ ン ジ ウ ム ア ン チ モ ン(InSb)や,イ
ム ひ素(InAs)な (3)
ン ジウ
どの化 合 物 半 導 体 が 広 く使 わ れ て い る。
ホー ル効 果 デ バ イ ス と して は,VHがIxあ
を利 用 した 電 流 計,磁
束 計,角
変 位 計,そ
子 な どが あ り,ま たVHがIxとBzの 相 計,乗 算 器,そ
る い はBzに
比例 す る こと
の他 ブ ラ シ レス モ ー タ 用 の ホ ー ル 素
積 に比 例 す る こ と を用 い て,電 力 計,位
の 他 直 流 信 号 を交 流 信 号 に変 え る た め の チ ョ ッパ ー 用 の素 子
な どが 作 られ て い る。
〔2〕 磁 気 抵 抗 効 果 と その 応 用 デ バ イス (1) 磁 気 抵 抗 効 果
半 導 体 に磁 界 を作 用 させ る と電 気 抵 抗 が 変 化 す る現
象 を磁 気 抵 抗 効 果(magnetoresistance)と
い い,こ
れ には縦磁 気抵 抗効果 と
横 磁 気 抵 抗 効 果 が あ る。 通 常,横 磁 気 抵 抗効 果 の ほ うが 著 し く現 れ る。 横 磁 気 抵 抗 効 果 の 原 因 は,キ
ャ リア が す べ て 同 じ速 度 で移 動 して い る の で は
な く,あ る速 度 分 布 を もっ て い る こ とに よ る。 す な わ ち,平 均 速 度 を もつ キ ャ リア に対 して ロー レ ン ツ力 は釣 り合 っ て い るが,平 均 速 度 以 外 の キ ャ リアで は 釣 り合 わ ず,従
っ て 電 流 通 路 が 曲 げ られ て 長 くな り電 気 抵 抗 が 増 加 す る。 ま
た,微 視 的 に 見 る と き,キ
ャ リア の熱 運 動 に お け る道 筋 が磁 界 に よ り曲 げ ら れ
て格 子 原 子 との 衝 突 確 率 が 増 す こ と も,電 気 抵 抗 の増 加 原 因 とな っ て い る。 磁 界Bが
作 用 し て い る と きの 素 子 の 抵 抗 をR,磁
の 抵 抗 をR0と
界 が 作 用 して い な い と き
す る と き,磁 界 に よ る 抵 抗 の 変 化 率Mは,R−R0=ΔRと
し
て, (8・44)
で あ る 。横 磁 気 抵 抗 効 果 の場 合 のMを
求 め る た め,再 度,図8・5の
素子 につ
い て 説 明 し よ う。 磁 界 が 印 加 され て い る 半 導 体 中 の キ ャ リ ア は,磁 界 に よ る力 とホ ー ル 電 界 Eyに
よ る静 電 力 が 釣 り合 っ て,電 流 の 通 路 を曲 が ら ず 直 進 す る こ と は既 に 述
べ た。 しか し,も
し何 等 か の 方 法 で ホ ー ル 電 界 を消 滅 さ せ た な らば,そ
の とき
は磁 界 に よ る力 は電 流 の 通 路 を傾 け る こ と に な る。 そ の 傾 き角 θ の 大 き さ は, 式(8・41)で 示 した ホ ー ル 角 に等 し い。 も し,こ の よ う に電 流 通 路 が 傾 け ば,電 極 間 の 実 効 的 な 距 離 も伸 び,そ の 結 果 抵 抗 は増 加 す る。 磁 界 が 印 加 され て い な い と き の 電 流 通 路 の 長 さ をL0,磁 界Bが
印 加 さ れ て い る と きの 電 流 通 路 の 実効 的 な長 さ をLと
す れ ば, (8・45)
とな る。 実 際 の 素 子 に お け るMの 抗 係 数 ξ を 用 い て,式(8・46)の
値 は,素 子 の 形 状 そ の 他 を考 慮 して 磁 気 抵
よ うに表 され る。 (8・46)
一 方,縦
磁 気 抵 抗 効 果 は,結
晶軸 の 方 向 に よ っ て異 方性 を強 く示 す 半 導 体 結
晶 に現 れ る こ とが知 ら れ て い る。 (2) 磁 気 抵 抗 効 果 デ バ イ ス わ る。 図8・6の(a)→(b)→(c)の に対 す る抵 抗 の 変 化 率Mの
磁 気 抵 抗 効 果 は素 子 の 形 状 に よ り大 き く変 よ う に,電 極 の 間 隔 が狭 くな る順 に,磁 界
値 が 大 き くな る。 これ は,電 極 に よ りそ の 付 近 の
ホ ー ル 電 界 が 短 絡 さ れ て 弱 ま る領 域 が 増 加 す る こ とに起 因 す る。 ホ ー ル 電 界 が 小 さ くな れ ば,磁 界 に よ る電 流 通 路 の 曲 が りが 現 れ,従
っ て抵 抗 は増 加 す る。
(a)
(b)
(c)
図8・6 磁 気 抵 抗効 果素子
図8・7
また,図8・7の
コル ビ ノ円板
よ う に,円 板 の 中心 か ら 円 周 に向 か っ て放 射 状 に電 流 が 流 れ る
構 造 を もつ コ ル ビ ノ円 板(Corbino
disk)素
子 で は,ホ ー ル 電 界 が で き な い た
め,電 流 通 路 が磁 界 に よ っ て 大 き く曲 げ られ,高
い感 度 の 磁 気 抵 抗 効 果 素 子 に
なる。 磁 気 抵 抗 効 果 素 子 は,4端
子 素 子 で あ る ホ ー ル 効 果 素 子 と は異 な り,2端
子
素 子 で あ る。 そ の た め,回 路 構 成 が 容 易 で あ り,し か も磁 界 に対 す る感 度 も高 い。 しか し,磁 気 抵 抗 効 果 素 子 は,磁 界 が0の
と きで もあ る値 の抵 抗 を も ち,
また 式(8・46)で 示 した よ う に,磁 界 に対 して2乗 特 性 を も つ こ と を特 徴 と し て い る。 磁 気 抵 抗 効 果 素 子 を 作 る 半 導 体 材 料 と し て は,ホ InSb,InAsの
ー ル 効 果 素 子 と同 様,
よ う な移 動 度 の 大 き な もの が使 わ れ る。 磁 気 抵 抗 効 果 素 子 の 応
用面 と して は,磁 界 で 制 御 す る無 接 触 形 の可 変 抵 抗 器 や 無 接 点 ス イ ッ チ な どが あ る。
8・3 歪 効 果 デ バ イ ス
応 力,歪,変
位 な どの 力 学 的 な 量 を起 電 力 や 電 気 抵 抗 に変 換 す るた め に,従
来 か ら種 々 の 応 力 セ ンサ が 使 わ れ て きた 。 近 年,こ れ らの 量 に対 す る計 測 技 術 の電 子 化 や 高 精 度 な制 御 方 式 の 要 求,機 械 的 ス イ ッチ の電 子 化,さ
らに,機 械
系 と電 子 系 を 一 体 化 した ロ ボ ッ トな ど様 々 な分 野 へ の 利 用 の た め,各 種 の 圧 力 セ ン サ が 開 発 され て い る 。 こ こで も,半 導 体 素 子 は,高 感 度,小
型,集 積 化,
高 速 応 答 とい う特 長 を生 か して 用 い られ て い る。 この 節 で は主 と し て,半 導 体 を用 い た 歪 効 果 デ バ イ ス に つ い て 述 べ る。
〔1〕 圧 電 半 導 体 反 転 対 称 性 を もた な い 結 晶 に,特 定 方 向 の 応 力 を与 え る と電 気 分 極 を起 こ し,結 晶 の表 裏 面 に分 極 電 荷 が 現 れ る。 この よ うな 現 象 を,一 般 に,圧 電 効 果 (ピ エ ゾ 効 果;piezo InSb,ZnSな
electric effect)と
い う。 半 導 体 の 中 に も,CdS,CdTe,
どの よ う に,圧 電 効 果 を 示 す もの が あ り,こ れ ら を圧 電 半 導 体
(piezoelectric semiconductor)と
い う。 圧 電 効 果 は,主
と し て,応 力 に よ る
結 晶 の 歪 み が,結 晶 中 の 正 負 イ オ ン の相 対 的 な位 置 を変 化 させ る こ とに よ り発 現 す る。 圧 電 半 導 体 は 導 電 性 を もつ た め,圧 電 効 果 に よ っ て 生 ず る電 界 に よ る キ ャ リ ア の移 動 現 象 は,強 誘 電 体 物 質 とは異 な っ た 性 質 を 示 す 。
〔2〕
ピエ ゾ 抵 抗 効 果 と その 応 用 デ バ イ ス
一 般 に,金 属 や 半 導体 の 線 や棒 状 素 子 に張 力 を与 え る と,そ の 長 さ は伸 び, 断 面 積 は減 少 す る。 この よ うな変 形 は,そ の 電 気 抵 抗 を変 化 させ る。 この 抵 抗
表8・1 各種 の抵 抗 歪 ゲ ー ジ
値 の 変 化 か ら,加 え られ た 応 力 を検 出 す る 素 子 を歪 ゲ ー ジ(ス ジ;strain
gage)と
トレ イ ンゲ ー
い う。
応 力 を検 出 す る抵 抗 歪 ゲ ー ジ と して,現 在 広 く使 用 され て い る もの を表8・1 に 分 類 して 掲 げ た 。 表 中 の 金 属 抵 抗 線 ゲ ー ジ は,主
し てCuとNiの
合 金 で作
られ た 抵 抗 温 度 係 数 の極 め て小 さ い素 子 で,応 力 セ ンサ と して 広 く使 用 さ れ て い るが,こ
こで は半 導 体 ピ エ ゾ抵 抗 歪 ゲ ー ジ につ い て述 べ る。
これ ら歪 ゲ ー ジ の感 度 は,ゲ ー ジ 率(gage で,ま
factor)Kを
用 い て表 され るの
ず これ に つ い て 説 明 す る。
い ま,素 子 の 長 さ をL,断
面 積 をS,抵
る変 化 分 を,そ れ ぞ れdL,dS,dρ
抗 率 を ρ と し,こ れ ら の 応 力 に よ
とす れ ば,応 力 に よ る素 子 の 抵 抗Rの
変化
率dR/Rは, (8・47)
で あ る 。 応 力 に よ る 伸 びdLと す る と,(dS/S)=−2ν
断 面 積 の 縮 少dSの
・(dL/L)の
間 に は,ポ
関 係 が あ る の で,こ
ア ソ ン 比 をν と
れ を 式(8・47)に
代 入 す
れ ば, (8・48)
とな る。 この 式 か ら抵 抗 の変 化 率dR/Rの ゲ ー ジ率Kは,次
歪 み 率dL/Lに
対 す る比,す
なわち
式 で 与 え られ る。 (8・49)
この 式 の最 右 辺 の第1項
は,応 力 に よ る抵 抗 率 変 化 の 効 果 を表 し,第2項
と
第3項
は,応 力 に よ る形 状 の 変 化 に起 因 す る効 果 を示 す。
この 第1項
の,応 力 に よ る 抵 抗 率 変 化 に よ っ て 電 気 抵 抗 が 変 化 す る現 象 を,
ピエ ゾ 抵 抗 効 果(piezoresistance
effect)と
数(piezoresistance
coefficient)と
こ こ で,Π
力Pに
は,応
呼 ばれ る。
対 す る 抵 抗 率 ρの 変 化 率dρ/ρ,す な わ ちΠ=
(dρ/ρ)/Pで あ る。 ま た,Yは る比Y=P/(dL/L)の
い い,式 中 のΠ は ピエ ゾ 抵 抗 係
ヤ ン グ 率 で あ り,応 力Pの
伸 び 率dL/Lに
対す
関 係 に あ る。
通 常,金 属 抵 抗 体 で は 第2項
と第3項
の 効 果 が 主 で あ り,K=2程
が,半 導 体 に お い て は,第1項
の 効 果 が 著 し く大 き く,Kは
度である
金 属 よ り数10倍
大 きな値 を もつ 。 半 導体 の 抵 抗 率 が 応 力 に よ り顕 著 に 変化 す る理 由 と して は,応 力 に よ る格 子 定 数 の 変 化 に伴 う禁 制 帯 幅Egな ア密 度 の 変 化,あ
どの,エ
ネ ル ギ ー帯 構 造 の 変 化 に よ る キ ャ リ
る い は移 動 度 の 変 化 が 考 え られ る。
Egが 大 き くな れ ば,キ
ャ リア 密 度 は減 少 し電 気 抵 抗 は高 くな る。 例 え ば,
Geや 金 属 間 化 合 物 に,静 水 圧 の よ う な等 方 性 圧 力 を加 え る とEgの め られ,抵 抗 率 は増 大 す る。 し か し,Siの
増加が認
場合 には逆 に減 少 す る ことが知 ら
れ て い る。 半 導体 ス トレ イ ンゲ ー ジ の ゲ ー ジ率 は,ほ る が,そ
の 値 は,半
不 純 物 濃 度,お
とん ど,ピ エ ゾ抵 抗 係 数 に起 因 す
導 体 の 種 類 は も ち ろ ん,そ れ がp形
かn形
か,ま
たその
よ び 温 度 に よ っ て も変 化 す る。
さ らに,応 力 が 等 方 性 圧 力 で な く,一 方 向 か ら加 わ る一 軸 性 圧 力 で あ る場 合 に は,そ れ の 加 わ る 方 向 が 結 晶 に対 し て,ど の よ う な角 度 に な っ て い るか が 重 要 な こ とで あ る。 表8・2は,Siお Π,ゲ ー ジ率K,ヤ
よ びGeに
つ い て,結
ング 率Yを
晶軸 の3方
示す。
こ の 表 か ら もわ か る よ う に,Siのp形 で は逆 に 減 少 す る。Geで n<100>の
向 に対 す る ピエ ゾ抵 抗 係 数
で は歪 の 増 加 で 抵 抗 も増 す が,n形
は,n<111>,p<111>,Siで
結 晶 方 向が 高 感 度 で あ る。
は, p<111>,
表8・2
Ge,Siの
ピエ ゾ抵 抗 係数 な ど
(a)
(b)
図8・8
(c)
シ リコ ン
ダイヤフラ ム形 ゲー ジ 素子例
ゲ ー ジ率 は温 度 の上 昇 に伴 い減 少 す る が,不 純 物 濃 度 を上 げ る と温 度 依 存 性 を小 さ くす る こ とが で き るの で,抵 抗 率 が0.01Ω ・cm程 度 のp形Siが 近 で の 使 用 に適 した 材 料 と され て い る。
常 温付
半 導 体 ゲ ー ジ素 子 の構 造 に は,半 導 体 を 薄 く細 長 い 棒 状 に加 工 した もの,あ る い は,n形
基 板 の 上 にp層
を拡 散 し,こ の拡 散p層
をゲー ジの素子部 とした
もの 等 が あ る。 最 近 で は,図8・8の 図(a)は
よ う な シ リ コ ン ダ イ ヤ フ ラ ム形 素 子 が作 られ て い るが,
そ の上 面,図(b)は
を数10μmの
断 面 を示 す 。 シ リ コ ン ダ イ ヤ フ ラ ム は シ リコ ン板
厚 さ にエ ッチ ン グ し て薄 く した もの で,こ
の部分 が気 体 や液体
か ら受 圧 し変 形 す る。 圧 力 を 受 け て い る とき の ダ イヤ フラ ム部 の 応 力 分 布 は 図(c)と と周 辺 部 で は応 力 の 符 号 は反 対 に な る の で,こ
な り,中 央 部
れ ら4つ の 抵 抗 を 図(d)の
よう
な ブ リ ッ ジ回 路 構 成 に接 続 して,高 感 度 の 圧 力 セ ンサ を得 て い る。
〔3〕 半 導 体 接 合 形 歪 セ ンサ 各 種 の ダ イ オ ー ドや トラ ン ジ ス タ に流 れ る電 流 に は感 圧 効 果 が あ り,そ の 感 圧 機 構 に 対 して は様 々 な こ とが 知 られ て い る。 す な わ ち,そ れ ぞれ の 素 子 の感 圧 効 果 は,そ の 素 子 が 本 来 も って い る電 導 機 構 の 圧 力 依 存 性 の ほか に,圧 力 が 加 え られ た こ と に よ っ て,新 流 に起 因 す る場 合 が あ る。 そ して,そ の感 圧 効 果 は,与 圧 の よ うな 等 方 向性 の もの な の か,あ
た に発 生 す る 電
え られ る応 力 が,静
水
るい は,一 方 向 か らの 一 軸 性 応 力 か,さ
らに は針 で加 圧 した場 合 の 異 方 性 応 力 な の か に よ っ て,著
し く異 な った もの に
なる。 (1) pn接 合 ダ イ オ ー ドの 感 圧 効 果
図8・9の 電 流-電 圧 特 性 が 示 す よ う
に,順 方 向,逆 方 向 と も に素 子 電 流 は圧 力 に よ り増 加 す る。 この 図 は,順 方 向 電 流 が 圧 力 に よ っ て,logI対Vの 加 に よ って,そ
勾 配 が 一 定 の ま ま増 す 領 域 と,圧 力 の 増
の 勾 配 が 次 第 に減 少 す る(低 い 素 子 電 圧 の と きに 見 られ る)領
域 の あ る こ とを示 して い る。 勾 配 が 一 定 の 領 域 の 電 流Iは,禁 き る。 す な わ ち,
制 帯 幅Egの
圧 力Pに
よる変化 で説 明 で
図8・9 Sipn接
合 ダ イオ ー ド
の感 圧 効果
(8・50)
で あ る。 これ に対 して,勾
配 が 減 少 す る領 域 は,圧 力 に よ っ て キ ャ リア の 生
成-再 結 合 電 流 が 生 ず るた め と され,こ に顕 著 に現 れ る。 そ して,逆
の 効 果 は特 に異 方 性 応 力 を 与 え た 場 合
方 向 電 流 の 圧 力 依 存 性 の 原 因 も,こ の効 果 に よ る
もの と考 え られ て い る。 (2)
トン ネ ル ダ イ オ ー ドの 感 圧 効 果
図3・6で 示 した よ う に,ト
ンネル
ダ イ オ ー ドに 流 れ る逆 方 向 電 流 お よ び,順 方 向 バ イ ア ス電 圧 の 小 さ い と き の電 流 は,主
と し て トン ネ ル 効 果 に よ っ て 流 れ(ト
ン ネ ル 電 流),順
バ イアス電圧
が 大 き くな る と,通 常 の拡 散 電 流 が 主 に な る。 キ ャ リア が トン ネル 現 象 を生 ず る確 率 は 禁 制 帯 幅Egの
値 に よ っ て 大 き く左 右 さ れ,Egが
大 き い ほ ど トン ネ
ル 電 流 は小 さ くな る こ とが知 られ て い る。 そ れ ゆ え,前 述 の よ う に圧 力 に よ り 禁 制 帯 幅 が 変 化 す れ ば トンネ ル 電 流 も変 化 す る。 Geや 多 くの 化 合 物 半 導 体 に お い て,等 方 向 性 圧 力 を与 えた と き,ト
ンネル
電 流 は,dEg/dPが
負で あ
正 で あ るた め減 少 す る。 しか し,Siで
るた め,加 圧 下 で トンネ ル 電 流 は増 加 す る。
はdEg/dPが
た だ し,ト ン ネ ル ダ イ オ ー ドで も拡 散 電 流 成 分 は,前 項 で 述 べ た よ うに,通 常 のpn接
合 と同 様,等
方 向 性 圧 力 が 加 え ら れ る と増 加 す る。 また, Geの
ト
ンネ ル ダ イ オ ー ドの 場 合 に お い て も,一 軸 性 圧 力 が 与 え られ た と き,そ の 方 向 に よ り,ト ン ネ ル 電 流 が 増 加 す る こ と もあ る。 トンネ ル ダ イ オ ー ドの感 圧 特 性 を利 用 した 微 小 な 素 子 は,血 管 中 に そ う入 さ れ,そ
の圧 力 測 定 に 実 用 さ れ て い る。
(3) シ ョ ッ トキ ー 障 壁 形 ダ イ オ ー ドの 感 圧 効 果
金 属 と半 導 体 との 接 触
面 に 垂 直 に圧 力 を与 え る と,順 逆 両 方 向 と もに 電 流 が 増 す 。 特 に,障 壁 部 の 半 導体 中 にCuな
ど を多 量 添 加 す る と,そ の感 度 が 高 くな る こ と が 知 られ て お
り,こ の よ う な感 圧 素 子 も市 販 され て い る。 図8・10に,こ
の 素 子 の構 造 と特
性 を示 す 。 シ ョ ッ トキ ー 障 壁 形 ダ イ オ ー ドの感 圧 効 果 の 研 究 は,か
な り古 くか らな さ れ
て お り,加 圧 下 で の電 流 増 加 は,障 壁 高 さ の圧 力 に よ る低 下 と考 え られ て い る が,ま だ 十 分 明 確 に され て い な い。 筆 者 は,二 極 管 理 論 で そ の 電 流-電 圧 特 性 が 大体 説 明 で き る銀(Ag)とn形Siで ドに つ い て,そ
作 られ た シ ョッ トキ ー 障 壁 形 ダ イ オ ー
れ の 一 軸 性 応 力 下 の感 圧 効 果 を測 定 し検 討 した 。 図8・11は そ
の電 流-電 圧 特 性 を示 す。 図 か ら もわ か る よ う に,順 逆 両 方 向 に感 圧 電 流 が 現 れ,特 和 特 性 を示 さず,ま
に逆 方 向 特 性 が 飽
た,加 圧 下 で の逆 方 向 電 流 の 温 度 依 存 性 と圧 力 依 存 性 を調
図8・10 感 圧 ダイ オ ー ドの 構 造 と特 性
図8・11
Ag-n形Siシ
ョ ッ
トキー ダ イ オ ー ドの 感 圧効果
べ る と,単 に 加 圧 下 で の 電 流 増 加 が 障 壁 高 さの 低 下 や 禁 制 帯 幅 の変 化 だ け で は 説 明 で き な い 。 これ らの こ とか ら,筆 者 は 障壁 上 部 に 外 部 応 力 下 で キ ャ リア の 通 過 を許 す領 域 が あ り,そ の 厚 さが 応 力 に よ っ て変 化 す る もの と考 え た*。 (4)
トラ ンジ ス タ の 感 圧 効 果
近 に 異 方 性 応 力 を与 え る と,コ
トラ ン ジ ス タ の エ ミ ッ タ ・べ ー ス 接 合 付
レ ク タ電 流 は 図8・12の よ うに,加 圧 下 で 大 幅
に減 少 す る。 この 現 象 は,加 圧 に よ りエ ミ ッタ の 注 入効 率 が低 下 し電 流 増 幅 率 hfeが 減 少 す る た め と考 え られ て い る 。 以 上,半
導 体 素 子 の 応 力 に 対 す る特 性 と それ を利 用 した デバ イ ス に つ い て簡
単 に説 明 した が,半
導 体 の 特 徴 を生 か した 高 性 能 な エ レ ク トロ ニ ク ス部 品 の 今
後 に お け る開 発 は,ま
す ます 大 き くな る もの と期 待 さ れ て い る。
*電 子通信学会論文誌 Vol61-C,No.5,p
294,1978.
図8・12
8・4 ガ ス セ ン サ,イ
トラ ンジ ス タの応 力 下 特性
オ ン セ ンサ
この 節 で は,ガ ス を検 知 し電 気 信 号 に変 換 す るガ ス セ ンサ と,水 溶 液 中 の イ オ ン を検 知 し,そ の 種 類 と量 を測 定 す る イ オ ンセ ンサ に つ い て 述 べ る。
〔1〕 ガ ス セ ンサ ガ ス セ ンサ(gas
sensor)と
は,各 種 ガ ス を検 知 す る と と も に,そ れ を電 気
的 な 出力 に変 換 す る デバ イ ス で,対 象 とす る ガ ス の種 類,要 度 に よ り各 種 の もの が あ る。1968年
求 され る 精 度 や 感
に は 半 導 体 ガ ス セ ン サ が 実 用 化 され た が,
その 小 型 で 高 感 度 とい っ た 特 徴 が 注 目 さ れ,次 第 に利 用 さ れ る機 会 が 増 え て き た。 そ の 構 造 の 一 例 を 図8・13に 示 す 。 この デバ イ ス は,磁 製 絶 縁 チ ュ ー ブ の 外 側 に 多 孔 質 焼 結体 か らな る半 導体 が 塗 布 され,電 極 と して2本 り付 け られ て い る。 また,磁
の リー ド線 が取
製 絶 縁 チ ュ ー ブ の 内 側 に は,素 子 を加 熱 す る た め
の ヒー タ が 組 み 込 ま れ て い る。 塗 布 さ れ る 多 孔 質 半 導 体 と し て は,高 的,化
学 的 に安 定 なSnO2な
SnO2は,格
ど,主 と して 金 属 酸 化 物 が 用 い られ る。
子 酸 素 の 空 孔 と割 込 みSn原
な っ て い るが,こ
温で 熱
の 表 面 に,例
子 の た め,通 常,n形
の半 導 体 と
え ば水 素 ガ ス の よ う な 還 元 性 ガ ス が 吸 着 す る
図8・13 半 導 体 ガ ス セ ンサ の 構造
図8・14 半 導体 ガス セ ン サのガス 感 応特 性
と,吸 着 水 素 か ら電 子 が 出 て これ が 半 導体 に移 る か,あ
る い は す で に吸 着 して
い た 酸 素 が 吸 着 水 素 と反 応 し,酸 素 が 捉 えて い た電 子 を放 出 して これが 半 導 体 に移 る か,の
ど ち らか が 起 こ る。
そ の結 果,半 導 体 内 の 電 子 密度 が 増 加 し て電 気 抵 抗 は減 少 す る。 この 抵 抗 変 化 か ら,還 元 性 ガ ス の 濃 度 を知 る こ とが で き る。
各 種 ガ ス の濃 度 に 対 す る 電 気 抵 抗 の 変 化 を 図8・14に 示 す 。 こ の 図 か ら もわ か る よ う に,半 導 体 ガ ス セ ン サ はガ ス の 識 別 能 力 の 点 で は 十 分 な もの とは い え な い。 そ こで,こ
れ を改 良 す るた め に,動 作 温 度 の選 定 や 触 媒 を利 用 して識 別 能 力
を高 め た り,多 孔 質 体 の 結 晶 粒 子 の ナ ノ サ イ ズ化,薄
膜 化,さ
ら に ガ ス識 別 能
力 の 異 な る い くつ か の材 料 を集 積 化 し,そ れ らの 応 答 か らガ ス を識 別 す る方 法 な ど,い ろ い ろ研 究 さ れ て い る 。 図8・15に 多 孔 質SnO2ガ 抗 の結 晶 粒 子 サ イ ズ依 存 性 を示 す 。 図 中(a)に
図8・15SnO2ガ * 清水 康 博
,他,応
スセ ンサ の電 気抵
お い て,水 素 ガ ス 雰 囲 気 中 で の
ス セ ンサ の 抵抗 お よび ガ ス感 度 の 結 晶粒 子 サ イ ズ依 存 性* 用 物 理,第70巻,第4号,pp.423-427,2001年
図8・16 半 導体 薄 膜 ガス セ ンサ
セ ン サ の抵 抗Rgお 6nm付
よ び 比 較 の た め の 空 気 中 で の セ ンサ 抵 抗Raは,と
近 で 最 小 値 を も ち,そ
の 前 後 で 増 加 し て い る。 特 に6nm以
も に約 下 にお い
て 抵 抗 値 は 急 増 し,ガ ス セ ンサ の感 度 が 粒 子 サ イ ズ に非 常 に敏 感 で あ る こ とを 示 し て い る。 また,図(b)に
示 す よ う に,RaとRgの
比 で 示 され る ガ ス 感 度
は,粒 子 サ イ ズ の減 少 と と も に増 加 す る こ とか ら,現 在,ナ
ノサイズ ガスセ ン
サ の 開 発 が行 わ れ て い る。 また,ガ
ス セ ンサ の 小 型 化,集 積 化 を 目指 して,薄 膜 を 用 い た セ ン サ が 開 発
さ れ て い る。 図8・16に ガ ス 感 応 膜 と して 半 導 体 を 用 い た ガ ス セ ンサ の構 造 を 示 す 。 この よ う な素 子 を用 い,現 在 の微 細 加 工 技 術 を用 い る こ とに よ っ て,い くつ か の機 能 を持 た せ た 新 機 能 デバ イ ス の 開 発 が 可能 とな る。 しか し,粒 子 の ナ ノ サ イ ズ化,薄
膜 化 に は,と
もに デバ イ ス 特 性 の経 時 変 化 を引 き起 こ しや す
い とい う問 題 点 も存 在 す る の で,注 意 が必 要 で あ る。 ガ ス セ ン サ の 用 途 と し て は,可 燃 性 ガ ス や 毒 性 ガ ス の 漏 洩検 知,排 の 未 燃 成 分 検 知,そ
の 他,医
療,産
業,空 調,調
気 ガス中
理 な どの広範 に わ た って い
る。 〔2〕 イ オ ン セ ンサ イ オ ンセ ンサ とは,水 溶 液 中 の 特 定 の イ オ ン濃 度 を イ オ ン感 応 膜 を 用 い て検 知 す る セ ンサ を 示 す 。 この 中 で,こ
の イ オ ン感 応 膜 をFETの
ゲ ー ト部 に 取 り
付 け た 半 導 体 セ ン サ を イ オ ン感 応 性 電 界 効 果 ト ラ ン ジ ス タ(ISFET;Ion Sensitive Field Effect Transistor)と 造 を 示 す 。FETの
呼 ぶ 。 図8・17に 代 表 的 なISFETの
構
ゲ ー ト上 部 に,検 出 対 象 とす る イ オ ン に敏 感 な 感 応 膜 を付
け る。 比 較 電 極 と感 応 膜 を溶 液 中 に 入 れ る こ と に よ り,ゲ ー ト(感 応 膜)に
電
位 が 発 生 し,ゲ ー ト下 に形 成 され るチ ャ ネ ル が 変 化 す る。 この チ ャ ネ ル の 形 状
図8・17 ISFETセ
図8・18
pHセ
ン サ の構 造
ンサ の特 性
が 溶 液 中 の イ オ ン 濃 度 に 対 応 す る こ と か ら,濃 出 せ る 。 例 え ば,Hイ
オ ン を 検 出 し て 測 定 さ れ るpHセ
感 応 膜 と し て はSi3N4やAl2O3が 圧 とpHと Naイ
サ は,半
用 い ら れ る 。 図8・18に
の 関 係 の 一 例 を 示 す 。 ま た,イ
オ ン やKイ
度 に応 じた ドレ イ ン電 流 を取 り ン サ の 場 合,イ
オ ン
ゲ ー トに 発 生 す る 電
オ ン 感 応 膜 を 代 え る こ と に よ り,
オ ンな どの金 属 イオ ンに も対 応 す る こ とが で き る。 この セ ン
導 体 の 微 細 加 工 技 術 と あ い ま っ て,今
後,小
型 化,集
積 化,多
機能化
が ま す ま す 進 ん で い く も の と思 わ れ る 。
演 〔問 題 〕1.
習
問
題
〔8〕
ゼ ー ベ ッ ク 係 数 α を 温 度 を 変 え て 測 定 し,逆 温 度1/Tに
ッ トす る と,そ
の 勾 配 は(Ec−Ef)/qと
す る エ ネ ル ギ ー 的 位 置 が わ か る が,さ
対 して プ ロ
近 似 し て よ い 。 これ か らEfのEcに
対
ら に こ の デ ー タ か ら伝 導 体 の 有 効 状 態 密
度 を求 め,式(2・26)か
ら電 子 の 有 効 質 量mn*を
密 度 は ドナ ー 濃 度NDと
等 し い もの とす る。
求 め よ。 た だ し,伝
導 帯 の電 子
答
〔 問 題 〕2.
正 孔 と電 子 の 両 方 を考 慮 した 場 合 の ホ ー ル 係 数 は,式(8・40)で
る ことを導 け。
示 され
第9章 各種 半導体 デバ イス
この 章 で は,通 信 等 に 用 い られ る マ イ ク ロ波 デ バ イ ス や,撮 示 デ バ イ ス を取 り上 げ る 。 さ ら に,そ ラ ン ジ ス タ や 光 集 積 回 路,静 い デ バ イ ス と して,ナ
9・1
像 お よび 表
の 他 の デ バ イ ス と し て,静
電 容 量 型 半 導 体 セ ン サ,そ
し て,最
電誘 導 ト 後 に新 し
ノ デ バ イ ス に つ い て解 説 し よ う。
マ イ ク ロ波 デ バ イ ス
こ の 節 で は,マ
イ ク ロ波 帯 で 動 作 す る 半 導 体 デ バ イ ス に つ い て 述 べ る 。 マ イ
ク ロ 波 と は,通
常,1GHz(109Hz)か
ら3000GHzま
特 に30GHzか
ら300GHzま
る こ と か ら,ミ
リ 波 と 呼 ん で 区 別 し,ま
で を,真
で の 電 磁 波 を い う が,
空 中 で の 波 長 が1mmか た300GHzか
ら10mmに
ら3000GHzま
な で を準
ミ リ波 と 呼 ぶ こ と も あ る。 こ れ ら の 周 波 数 帯 で,増 あ る,速
幅 ・発 振 を 行 う デ バ イ ス と し て は,電
度 変 調 管(klystron),進
(magnetron),後 し,1970年
行 波 管(traveling‐wave
進 波 管(backward‐wave
以 降,半
tube),磁
電 管
tube)等
が 用 い られ て きた 。 しか
率,雑
音 等 の面 で優 れ た も の が
導 体 デ バ イ ス で 出 力,効
開 発 さ れ て き た こ と か ら,次
子 管 の仲 間 で
第 に これ が マ イ ク ロ波 デバ イ ス の主 流 を 占 め る よ
う に な っ て きて い る。 以 下 に,マ
イ ク ロ波 半 導 体 デ バ イ ス の う ち で も代 表 的 な ガ ン ダ イ オ ー ド
(Gunn
diode),イ
ン パ ッ ト ダ イ オ ー ド(INPATT
(super
lattice)構
造 を も つ マ イ ク ロ 波 素 子 に つ い て,そ
造,特
性 を 解 説 し よ う。
diode),お
よ び,超
格子
れ ら の 動 作 原 理,構
〔1〕 ガ ン ダ イ オ ー ド ガ イ ダ イ オ ー ドの名 称 は,1963年
にJ.B.Gunnが,n形
のGaAsやInPに,
あ る値 以 上 の 電 界 を与 え た と き,発 振 現 象 が 起 こ る こ とを発 見 した こ とに 由 来 す る が,こ (TED)等
の 素 子 は ま た,ガ
ン 効 果 素 子,あ
る い は電 子 遷 移 効 果 素 子
と呼 ばれ る こ と もあ る。
後 に な って,こ
の 発 振 現 象 は,伝 導 帯 の 電 子 が 電 界 か らあ る程 度 以 上 の エ ネ
ル ギ ー を 得 た と き,い ま まで の 有 効 質 量 が 小 さ く移 動 度 の大 き い状 態 か ら,有 効 質 量 が 大 き く移 動 度 の 小 さ い 別 の 状 態 へ 遷 移 す る効 果 に よ っ て 生 ず る こ と が,明
らか に され た 。
図9・1は,電 Eが
子 の ド リ フ ト速 度 と電 界 との 関 係 を 示 す 。 この 特 性 は,電
強 くな る と,ド
リ フ ト速 度υdnが 減 少 す る領 域(Aか
らBの
領 域)を
界 も
っ て い る。 この領 域 で,微 分 移 動 度 μdiffを次 式 の よ うに 定 義 す る と, (9・1)
そ の値 は負 に な る。 そ こで,こ 図9・2の よ うな,直
の領 域 を 負性 微 分 移 動 度 の 領 域 と い う。
方 体 のn形GaAsの
設 け た 素 子 に電 圧 を印 加 す る。 も し も,n形
両 端 にn+層
と金 属 か ら な る電 極 を
領 域 が 全 く均 一 で あ る とす れ ば,
そ の 領 域 内 の 電 界 は 印 加 電 圧 に比 例 す る。 素 子 内 の 電 流Iは,ほ
と ん ど電 子
図9・1 GaAsとInPに
お
け る電 子 の ド リフ ト 速 度 ・電 界 特 性
図9・2 ガ ンダ イ オー ド の基 本 的 構 造
の ド リ フ ト電 流 に よ る もの で あ る か ら,素 子 の 断 面 積 をS,電
子 密 度 をnと
す れ ば,
で あ り,Iはυdnに は,図9・1と
比 例 す る。 そ れ ゆ え,こ
の 素 子 の電 流-電 圧 特 性 曲 線 の 形
同 形 に な る。 そ れ を 図9・3の 縁 色 の 曲 線 で 示 す 。
い ま,こ の 素 子 に直 流 バ イ ア ス電 圧 の ほ か に,高 周 波 電 圧 を図 の よ う に 重 畳 す る と,電 流 の 高 周 波 成 分 は電 圧 よ り位 相 が180° 遅 れ た 波 形 に な る。 す な わ
図9・3 電 流-電 圧 特 性 と交流 信 号 に対 す る動 作
ち,電 圧 を基 準 に とれ ば,電 流 の(基 準 と)同 相 成 分 は 負 の 値 に な る。 それ ゆ え,素 子 の 高 周 波 電 圧 に対 す る抵 抗 は 負値 に な る 。 これ を 負 性 抵 抗(negative resistance)と
い う。 正 の 抵 抗 は電 力 を消 費 す るが,負
る。 この こ とを利 用 して,ガ
性 抵 抗 は電 力 を 発 生 す
ン ダ イ オ ー ドに,マ イ ク ロ波 の 電 力 増 幅 や 発 振 を
させ る こ とが で き る。 し か し,実 際 の 素 子 内 で は,不 純 物 濃 度 や 温 度 分 布 な どの 不 均 一 さの た め, 上 に述 べ た よ うな,均 一 な電 界 や キ ャ リ ア密 度 分 布 は得 られ な い。 そ こ で,図 9・4(a)の よ う に,電 界 分 布 の 不 均 一 な 箇 所 を もつ 素 子 に つ い て 考 察 し よ う。 この 場 合,電 の 結 果,こ 逆 に,こ
界 の 大 きい 箇所 の電 子 の 移 動 度 は,前 述 の よ う に小 さ くな る。 そ の領 域 の 陰 極 側 に は電 子 が 滞 り蓄 積 し,負 の 空 間 電 荷 を形 成 す る。
の領 域 の 陽 極 側 で は,電 子 密 度 は希 薄 と な り,ド ナ ー イ オ ン に よ る 正
の空 間 電 荷 が 現 れ る。 これ ら正 負 の 空 間 電 荷 は,同 図(b)に
示 す よ う な電 気 二 重 層 を形 成 す る。
この 電 気 二 重 層 の 作 る局 部 電 界 は,そ の 領 域(ド
図9・4 高 電 界 ドメ イ ンの電 界 分 布(a)と
メ イ ン;domain)の
キ ャ リア密 度 分 布(b)
電界
と同 一 方 向 にで き るた め,ま す ま す,そ の ドメ イ ンの 電 界 を強 め,他 電 界 を弱 め,結 局,素
子 電 流 を減 少 させ る。
この よ う な局 部 電 界 の 形 成 は,そ させ,電
の場 所 の
この キ ャ リア の ド リフ ト速 度 を さ ら に減 少
子 密 度 の 不 均 一 さ を助 長 す る。 この 正 帰 還 過 程 の 繰 り返 しは,電 気 二
重 層 の作 る局 部 的 な高 電 界 の ドメ イ ン を成 長 させ る。 そ して,こ
の 高 電 界 ドメ イ ン は(そ
こ に形 成 し て い る蓄 積 電 子 が,外 部 か ら
印加 され て い る電 界 に よ る 静 電 力 を受 け るた め)陽 極 に 向 か っ て走 行 し,陽 極 に 到 達 して 吸 収 さ れ る。 この よ う に,高 電 界 ドメ イ ンが 陽 極 に吸 収 され る と, 素子 内 の 電 界 が 再 度 上 昇 し,新 しい 高 電 界 ドメ イ ンが 形 成 さ れ,成 長,移 吸収,…
動,
が 繰 り返 さ れ る。
な お,高 電 界 ドメ イ ンが 消 滅 し,新 し く高 電 界 ドメ イ ンが 成 長 す る まで の 期 間 は,素 子 内 の 電界 が 高 くな る た め,素 子 電 流 は 大 き くな る。 この と きの 発振 電 流 波 形 を 図9・5に 示 す。 こ こ で使 用 した 素 子 の 長 さ は100μm,不 は3×1015cm-3の
もの で あ る*。
ガ ン ダ イ オ ー ドの 特 徴 の1つ
は,低 雑 音 で あ る こ とで,600Wの
出 力 に お け る雑 音 電 力 は わ ず か2W程 発 振 周 波 数100GHz程
連 続発 振
度 で あ る。 ま た,電 力 効 率10%,最
高
度 の 素 子 も作 られ て お り,マ イ ク ロ波 の 送 信 機 や 小 形
図9・5 ガ ンダ イオ ー ドの発 振 波形(高 電界 ドメ イ ン走行 モ ー ド) *H
純 物濃度
.Fukui,Proc.IEEE,Vol.54(1966年)
レ ー ダ の 発 振 器,ま
〔2〕
た は 受 信 機 の 局 部 発 信 器 な ど と し て 広 く利 用 さ れ て い る 。
イ ンパ ッ ドダ イ オ ー ド
イ ン パ ッ トダ イ オ ー ドの 名 は,Impact 略 し て 付 け た も の で あ る 。 こ の 素 子 は,そ キ ャ リ ア を 発 生 さ せ る と共 に,後 波 帯 で 負 性 抵 抗 を 得 て,増
濃 度 の 分 布 を 同 図(b)に
の 名 の と お り,電
図9・6
省
子 なだれ によっ て
述 す る そ れ の 走 行 時 間 効 果 に よ り,マ
にW.T.Readが
提 案 し た,図9・6の
。 こ の 素 子 は,p+nin+の4層
イ クロ
よ う な,リ
構 造 を も ち,そ
の不 純物
示 す。
素 子 に 直 流 の 逆 バ イ ア ス 電 圧 を 印 加 す る と,空 領 域 に 広 が り,素
and Transit Timeを
幅 ・発 振 を 行 わ せ る デ バ イ ス で あ る 。
こ の 素 子 の 原 形 は,1958年 ー ドダ イ オ ー ドで あ る
Avalanche
乏 層 は 主 と し てn領
子 内 の 各 部 に お け る 電 界 は 図(c)に
リ ー ド ダ イ オ ー ドの 構 造(a),不
純 物 分 布(b),お
域 か らi
示 す よ うに な る。 こ の と
よ び 電 界 分 布(c)
き の 逆 バ イ ア ス 電 圧 は,p+n接 値"よ
合 部 の 電 界 が,電
子 な だ れ を 起 こ す"し
きい
り わ ず か 低 い 状 態 に な る よ う に 印 加 さ れ る 。 こ の 直 流 逆 バ イ ア ス に,図
9・7(a)の 2π∼3π,…
よ う な,高
周 波 電 圧υ
を 重 畳 す る と,そ
の 間 で 電 子 な だ れ 増 倍 が 起 こ り,キ
の 位 相 が 同 図(b)の0∼
π,
ャ リ ア 密 度 は 同 図(c)の
よ う
孔 はp-側
へ移
に指 数 関 数 的 に 増 加 す る。 こ の キ ャ リ ア は 素 子 内 の 強 い 電 界 に よ り,正
へ 電 子 はn+側
動 す る。 こ の う ち,正
孔 は 直 ち にp+層
の 位 相 が π∼2π,3π 素 子 端 子 間 に は,同 わ か る よ う に,電
∼4π,… 図(d)の
内 に 吸 収 さ れ て し ま う が,電 の 間,n領
子 は周 波 数 電 圧
域 とi領 域 を 走 行 す る 。 そ の 結 果,
よ う な 誘 導 電 流 が 流 れ る 。 こ の 電 流 は,図
圧 の 位 相 に 対 し180° ず れ て い る 。 す な わ ち,こ
価 的 に負 性 抵 抗 を もつ 。
か らも
の素 子 は等
従 っ て,イ
ン パ ッ トダ イ オ ー ドは,ガ
ン タ イ オ ー ド と同 様 に,高 周 波 の 増
幅 ・発 振 が 可 能 で あ る。 現 在 の と こ ろ,10GHzで,パ W,電
力 効 率40%の
ル ス 発 振 出 力 が40
素 子 が 得 られ て お り,ま た 最 高 発 振 周 波 数 も400GHz程
度 まで 可 能 で あ る。 この よ う に,イ
ンパ ッ トダ イ オ ー ドの 出力 と効 率 は,他 の マ イ ク ロ波 半 導 体
デ バ イ ス に 比 較 して優 れ て い るが,電
子 な だ れ 増 倍 を利 用 し て い るた め雑 音 が
若 干 多 い の で が 欠点 で あ る。 イ ンパ ッ トダ イ オ ー ドの 用 途 と して は,レ ー ダ の発 振 用,送 信 機 の 電 力 増 幅 用 な どが あ る。
〔3〕 超 格 子 デバ イ ス 超 格 子(super
lattice)と は,異
な る材 料 を交 互 に成 層 して,本 来 の 結 晶 格
子 よ り も大 きい 間 隔 の周 期性 を もつ 構 造 を作 り出 した もの を い う。 図9・8(a)に,GaAsと
AlxGa1-xAsを
交 互 に成 層 した,超 格 子 デ バ イ ス の
エ ネ ル ギー 帯 構 造 を示 す 。AlxGa1-xAsに
お け るxを0.3に
制 帯 幅 は1.72eVと
禁 制 帯 幅 は1.42eVで
AlxGa1-xAs層
な る。 また,GaAsの の み にSiを
ー帯 構 造 は,図(b)の
した 場 合,そ
の禁
あ る。
ドナ ー 不 純 物 と し て 添 加 す る と,そ の エ ネ ル ギ
よ う に変 形 す る。 この よ うな超 格 子 を変 調 ドー プ 形 超 格
子 とい い,マ イ ク ロ波 デ バ イ ス へ の 応 用 に とっ て 重 要 で あ る 。 図9・8(b)に
お い て,GaAsの
り下 に あ る の で,ド わ ち,キ
伝 導 帯 の 下 端 はAlxGa1-xAsの
ナ ー か ら励 起 し た 電 子 の 大 部 分 はGaAs層
ャ リア の ほ とん ど は,GaAs層
に あ る。 そ こで,こ
に平 行 に(図 で は,紙 面 に垂 直 に)電 界 を印 加 して,そ リフ トさせ る場 合,通
ドナ ー 準 位 よ に 移 る。 す な
の素子 の 多層構 造
の 方 向 に キ ャ リア を ド
常 の 不 純 物 半 導体 で 起 こ る中 性 ま た は イオ ン化 し た 添 加
不 純 物 に よ る散 乱 を 受 け な い。 それ ゆ え,こ の素 子 を,さ ば,キ
ら に フ ォ ノ ン散 乱 が 減 少 す る低 温 で 使 用 す るな ら
ャ リア の移 動 度 は極 め て 大 き くな り,マ イ ク ロ波 帯 で 動 作 す る高 速 デ バ
イ ス とな る。
(a)
(b) 図9・8 非 ドー プ形超 格 子 の エ ネ ル ギ ー帯 図(a)と 変 調 ドー プ形超 格 子 の エ ネル ギ ー帯 図(b)
図9・9は,バ
ル クGaAsと
変 調 ド ー プ 形 超 格 子 に お け る,キ
ャ リア移 動 度
の 温 度 依 存 性 を示 す 。 超 格 子 デ バ イ ス の 一 例 と し て,図9・10の FETを
作 り,こ
れ を 液 体 窒 素 温 度(77K)で
ョ ッ トキ ー 障 壁 形 のFETの (High
Electron
超 格 子 は1周 場 合 もあ る。
よ う な,シ
Mobility
約4倍
ョ ッ トキ ー 障 壁 形 の
動 作 さ せ る と,通
常 のGaAsシ
の 動 作 速 度 が 得 ら れ る 。 こ れ をHEMT
Transistor)と
い う。 な お,こ
期 だ け で 繰 り返 し が な い た め,本
の 素 子 に お い て は,
来 の 超 格 子 構 造 とは 区別 さ れ る
図9・9 バ ル クGaAs と変 調 ドー プ形 超 格 子 の 移 動度 の温 度依存性
図9・10 変調 ドー プ 形超 格 子 を用 いた シ ョ ッ トキ ー バ リア形FET(HEMT) の構 造
超 格 子 デ バ イ ス は マ イ ク ロ波 デバ イ ス の ほ か,半 トダイ オ ー ドに も用 い られ る。
導体 レーザや電 子 なだれホ
9・2 撮
像 ・表 示 デ バ イ ス
こ の 節 で は,電 ス,さ
荷 転 送 デ バ イ ス(CCD)やMOSFETを
ら に,LEDやELを
〔1〕撮
用 い た撮 像 デ バ イ
用 い た表 示 デ バ イ ス に つ い て 解 説 す る。
像 デバ イス
光 と し て と ら え た 像 を 電 気 信 号 に 変 換 す る デ バ イ ス を撮 像 デ バ イ ス あ る い は イ メ ー ジ セ ン サ と 呼 ぶ 。 従 来,よ 管 が あ げ ら れ る 。 これ は,タ
く用 い ら れ て い る も の に 真 空 管 を 用 い た撮 像
ー ゲ ッ トに 光 が 照 射 す る と き に 生 じ る 光 電 変 換 を
利 用 し 電 気 ビ ー ム で 像 を 引 き 出 す 方 式 で あ る 。 こ の 方 法 に 対 し,固 は,半
導 体 受 光 素 子 を 平 面 に 配 置 し,各
こ と で撮 像 す る 。 こ の と きCCDあ 素 子 をCCDイ に,バ
素 子 か ら 得 られ た 二 次 元 像 を 取 り出 す
る い はMOSFETが
メ ー ジ セ ン サ あ る い はMOSイ
ケ ッ トブ リ ケ ー ド素 子(BBD;Backet
は,MOSFETと
体撮 像 素 子
用 い ら れ,そ
れ ぞれ の
メー ジセ ンサ と呼 ぶ。 この他 Brigade
Device)が
あ る。 これ
静 電 容 量 を 詰 め て つ ら ね た 構 造 と な っ て お り,ア
ナ ロ グ,デ
ジ タ ル 用 シ フ ト レ ジ ス タ 用 デ バ イ ス と し て 用 い ら れ て い る 。 こ の 節 で は, CCDお (1)
よ びMOSイ CCDイ
メー ジ セ ンサ に つ い て 述 べ る。 メ ー ジ セ ン サ
Device)は,1つ MOSダ
電 荷 結 合 デ バ イ ス(CCD;Charge
の 基 板 の 上 に 多 数 のMOS構
Coupled
造 ダ イ オ ー ド を 並 べ,個
々の
イ オ ー ドの保 持 す る電 荷 を順 に転 送 す る デバ イ ス で あ る。 転 送 に は 時
間 が か か る の で,そ
の 時 間 遅 れ を利 用 し て 遅 延 素 子 と し て 使 わ れ る ほ か,デ
ジ タ ル 信 号 の 記 憶 素 子 や,光
セ ン サ と 結 合 し て 画 像 の セ ン サ,撮
ィ
像デバ イス な
どに使 用 され て い る。 こ の 素 子 の 基 本 で あ るMOSダ 素 子 はp形Siの の で,SiO2膜 第4章4・3節
表 面 にSiO2膜
イ オ ー ドの 構 造 を 図9・11(a)に を 作 り,さ
の 厚 さ は,0.1μm以 で 述 べ た よ う に,こ
ら に,そ
示 す。 この
の 上 に金 属 電 極 を付 け た も
下 の 極 め て薄 い もの で あ る。 の 素 子 の 金 属 電 極 に大 き な正 電 圧 を印 加 す
(a)
(b)
(c) 図9・11 MOSダ
る と,SiO2膜
イオ ー ドの構 造 と空乏 層,反 転 層 の発 生 に よ る井 戸 の様 子
に 接 した 半 導体 の 表 面 で は,電 界 の た め エ ネ ル ギ ー 帯 構 造 に 曲
り を生 じ る。 バ イ ア ス電 圧 が 加 え られ た 直 後,半 れ,そ
の エ ネル ギ ー 帯 は 同 図(b)の
テ ン シ ャ ル の 井 戸(potential 加 さ れ た ま まで あ れ ば,こ れ),そ
よ う に な り,電 子 に対 し同 図 右 の よ うな ポ
well)が
で き る。 バ イ ア ス 電 圧 が 引 き続 い て 印
の 井 戸 に は 次 第 に 電 子 が 集 ま り(反 転 層 が 形 成 さ
の エ ネ ル ギ ー 帯 構 造 は図(c)の
そ こで,こ
導 体 表 面 部 に空 乏 層 が 形 成 さ
の 蓄 積 して い る電 子 を,別
よ うに な っ て落 着 く。 のMOSダ
考 え る。 そ の た め,電 荷 を 蓄 積 して い るMOSダ
イ オ ー ドに転 送 す る こ と を イ オ ー ドの バ イ ア ス 電 圧 を低
め る と同 時 に,隣 接 す る ダ イ オ ー ドの 金 属 電 極 の バ イ ア ス 電 圧 を 高 め れ ば,そ
の電 極 の 下 の 半 導 体 部 の エ ネ ル ギ ー 帯 構 造 は 図(b)の 井 戸 に は電 子 が な い た め,隣 このMOSダ
よ うに な り,ま た,そ
の井 戸 か ら電 子 が 流 れ込 んで くる 。 そ こで 再 び,
イ オ ー ドのバ イ ア ス電 圧 を低 め て,隣
の ダ イ オ ー ドの バ イ ア ス 電
圧 を 高 め る。 この よ うな こ と を ク ロ ッ クパ ル ス を 用 い,図9・12(a)の 各MOS金
の
よ う に,
属 電 極 に電 圧 を 次 々 と繰 り返 し印加 す れ ば,電 荷 は 図(b)の
よ うに
転 送 され る。 この 図 に お い て,IDは こで 入 力 端 のMOSに
信 号(電 荷)を
入 力 さ せ る た め の ダ イ オ ー ドで,こ
注 ぎ込 む べ き電 子 を用 意 す る。 ま た,ODは
出 す ダ イ オ ー ドで あ る。 また,IGは
入 力 端MOSの
ゲ ー トで,こ
出 力 を取 り の電 圧 に よ
り信 号 の 転 送 を行 う か 否 か を 決 定 す る。 さ ら に,1,2,3,1,2,3の
電極 は
転 送 の 向 き を規 制 す るた め の 案 内 用 の 電極 で あ り,同 番 号 の 案 内電 極 は 並 列 に 接 続 され,そ
れ ぞ れ,120° ず つ位 相 の 遅 れ た 電 圧 φ1,φ2,φ3が 印 加 さ れ る。
(a) 図9・12 三 相CCDの
(b) ク ロ ック波 形 と出力 波 形 お よび電 荷 の転 送 の模 式 図
この 場 合 の ク ロ ッ ク電 圧 を三 相 ク ロ ック と呼 ぶ。 な お,こ の ク ロ ッ ク電 圧 の 波 形 は立 ち下 が り時 間 が 長 くな っ て い るが,そ 理 由 は次 相 の 電 圧 が 立 ち上 が った 後,電
の
荷 が そ の ダ イ オ ー ドに移 動 を完 了 す る
まで に時 間 を要 す る か らで あ る。 ■ フ レ ー ム 転 送CCD
図9・13に フ レー ム 転 送CCDの
構 成 を示 す。 ま ず,
イ メ ー ジ 部 の各 画 素 に お い て 一 定 時 間 内 に 光 照 射 に よ っ て 生 成 した キ ャ リア は,1フ
レー ム分 ま とめ て 蓄 積 部 に デ ー タ転 送 され る。 次 に,こ の 蓄 積 部 に保
存 さ れ た デ ー タ は,イ メ ー ジ部 の 各 画 素 ご との デ ー タ と し て水 平 転 送 部 を経 由 して外 部 へ 取 り出 され る。 この よ う に し て,フ メー ジ部,デ
ー タ 蓄 積 部,デ
レー ム 転 送 方 式 に お い て は,イ
ー タ転 送 部 が そ れ ぞ れ 分 離 して い る た め,構 造 が
簡 単 で あ り,光 に対 し高 感 度 で,高 解 像 度 を得 や す い が,一
方,チ
ッ プ が大 き
図9・13 フ レ ー ム 転 送CCDイ ー ジ セ ンサ の構 成
メ
図9・14
イ ン タ ラ イ ン転 送
CCDイ
メ ー ジ セ ン
サ の 構成
くな りや す い とい う特 徴 を も つ。 ■ イ ン タ ラ イ ンCCD 徴 と して,1画
図9・14に イ ン タ ラ イ ン転 送CCDの
素 ご と に デ ー タ転 送 用CCDが
構成 を示 す。特
付 い て い る こ とが あ げ られ る。
光 照 射 に よ り1画 素 で 生 成 した キ ャ リア は,す
ぐに 垂 直 転 送 用CCDに
る。 そ の 後,1走
送 られ,外 部 に 出 力 され る。
査 線 ご とに 水 平 転 送 用CCDに
フ レー ム転 送 方 式 に比 べ,素 優 位 で あ る 。 また,カ
送 られ
子 内部 に デ ー タ蓄 積 部 を持 た な い た め,小 型 化 に
ラ ー用 と して 用 い る場 合 に必 要 とな る カ ラ ー フ ィル タの
取 り付 け に 際 し て も,構 造 上 優 位 とな る。 し か し,構 造 が 複 雑 に な るた め,よ り高 度 な微 細 加 工 技 術 が 要 求 され る。 (2) MOSイ 示 す 。 撮 像 は,マ
メ ー ジ セ ン サ
図9・15にMOSイ
メー ジ セ ンサ の 構 成 を
トリ ッ ク ス状 に 配 置 さ れ た フ ォ トダ イ オ ー ドに よ っ て 行 わ
れ,こ れ に よっ て 光 か ら キ ャ リ ア に変 換 され る。 この キ ャ リア を,水 平 お よび 垂 直 レ ジ ス タ を 用 い,各MOSト
ラ ン ジ ス タ を ス イ ッチ ン グ さ せ る こ とに よ っ
て,各 画 素 ご との デ ー タ と して 外 部 に取 り出 され る。 このMOS型
デバ イ ス に
お い て は,信 号 出 力 線 を 立 体 的 に 配 置 で き る こ とか ら多機 能 デ バ イ ス に な る可
図9・15
MOSイ
メー ジセ ンサ の構 成
能 性 を もっ て い る。
〔2〕 表 示 デ バ イ ス 表 示 デ バ イ ス は,そ
の動 作 原 理 か ら 自発 光 型 と非 発 光 型 に 分 類 さ れ る(表
9・1)。 自発 光 型 と して は,発 光 ダ イ オ ー ド(LED),エ トパ ネ ル(ELP)お
よ び プ ラ ズ マ 表 示 パ ネ ル(PDP)な
に は液 晶 表 示(LCD),エ LEDデ
レ ク トロ ル ミネ ッ セ ン どが あ り,非 発 光 型
ィ ス プ レ イ は,そ
レ ク トロ ク ロ ミ ッ ク(ECD)な
どが あ る 。
の視 認 性 に 優 れ た 特 徴 を 活 か し て,ビ
ル屋上 の大
型 広 告 塔 や 高 速 道 路 の 情 報 板 等 の 屋 外 デ ィス プ レ イで さか ん に使 用 され は じめ て い る 。 近 年 開 発 され たGaN系 て,こ
よっ
の用 途 の 広 が りは さ らに加 速 され る と思 わ れ る。 最 近 で は,交 通 信 号 機
の三 原 色 電 球 の 代 わ りにLEDが ELデ
か ら な る高 輝 度 の 青 色 や 緑 色 のLEDに
バ イ ス に はACお
使 わ れ つ つ あ る。
よびDC動
作 が あ るが,薄
ス表 示 も可 能 な 最 も開発 が 進 ん だ型 で,メ
膜ACELは
大 型 マ ト リク
モ リ特 性 を持 た せ る こ と も可 能 で あ
表9・1 表示 デバ イ ス の分 類 と動作 原 理
表9・2 主 なEL発
る。ELPに
光物質
使 わ れ る代 表 的 な 物 質 と発 光 色 を表9・2に 示 す 。
有 機 物 を 外 部 か ら電 界 で励 起 し て発 光 させ る 自 発 光 型 デバ イ ス と し て 有 機 ELデ
バ イ ス が 開 発 され,新
機ELは
真 性ELと
しい 表 示 デ バ イ ス と し て 注 目 さ れ て い る 。 この 有
は 異 な り,図9・16に
示 す よ う に,電 子 輸 送 層,発 光 層,
正 孔輸 送 層 か らな り,直 流 電 流 で 動 作 す るの で,有 機 発 光 ダ イ オ ー ドと呼 ば れ る場 合 もあ る。 一 般 に,電 子 輸 送 層 に はAlq3(キ 孔 輸 送 層 に はTPD(ジ
ア ミン誘 電 体)が
ノ リ ノー ル アル ミ錯 体),正
使 わ れ て お り, Alq3層 が 発 光 層 を か
ね る場 合 もあ る。 発 光 層 の材 料 を変 え る こ とに よ り三 原 色 の 発 光 が 実 現 で き る の で,フ
ル カ ラ ー デ ィ ス プ レイ へ の 応 用 が 可 能 で あ る。 現 在,有
機ELデ
バイ
ス の さ らな る高 効 率 化,低 駆 動 電 力 化 が 要 求 さ れ て お り,新 し い有 機 材 料 の 開 発 が 進 め られ て い る。
図9・16 有 機ELデ 構 造 の 一例
9・3
バ イス の
そ の他 の デバ イ ス
こ の 節 で は,静
電 誘 導 トラ ン ジ ス タ,光
磁 気 効 果 デ バ イ ス,光
音 波 増 幅 素 子,静
電 容 量 型 半 導 体 セ ン サ(指
紋 セ ン サ),お
集 積 回 路,超
よ び,半
導 体 ナ ノ
デ バ イ ス に つ い て 述 べ る。
〔1〕
静 電 誘 導 トラ ン ジ ス タ
静 電 誘 導 トラ ン ジ ス タ(SIT;Static
Induction
Transistor)に
既 に 第4章4・4節
こ で は,類
似 の デ バ イ ス と共 に,説
で 簡 単 に 述 べ た が,こ
関 し て は, 明
を付 け加 えて お こ う。 図4・27に
静 電 誘 導 形 トラ ン ジ ス タ の 構 造 を 示 し た が,こ
ン ウ エ ー ハ に 垂 直 に ド レ イ ン 電 流 が 流 れ る よ う に し た,接
の 素 子 は,シ
リコ
合 形 電 界 効 果 トラ ン
ジ ス タ と考 え る こ とが で き る。 p形 ゲ ー トは,格
子 状 にn形
領 域 に 埋 め 込 ま れ て お り,こ
圧 に よ り チ ャ ネ ル 幅 が 変 わ り,電
流 が 制 御 され る。
そ の 電 流-電 圧 特 性 の 一 例 を 図9・17に よ う な,ド
れ に印加 された電
示 す 。 こ の 特 性 に は,通
レ イ ン 電 流 の 飽 和 特 性 が 見 ら れ な い 。 こ の こ と は,入
ら れ る ゲ ー ト電 圧 だ け で な く,ド
常 のFETの 力 と して与 え
レ イ ン 電 圧 か ら の 静 電 誘 導 に よ っ て も,電
流
が 制 御 され る こ と を示 す 。 こ こ に,そ
の 名 の 由 来 が あ る 。 こ の 素 子 の 特 徴 は,ゲ
を 短 くす る と共 に,ゲ
ー トー ソ ー ス 間 の 距 離
ー トの チ ャ ネ ル 方 向 の 長 さ を 短 く し た こ と に あ る 。 そ の
図9・17 静 電 誘 導 形 トラ ンジスタ の電 流― 電 圧 特性
図9・18 静 電誘 導形サイ リス タ の 構造
た め,こ の 素 子 は チ ャネ ル 抵 抗 が 小 さ く,ま た,チ
ャ ネ ル の 幅 を広 げ ず,格
子
の 数 を増 加 す る こ とに よ っ て電 流 を大 き く して い るた め,大 電 力 用 素 子 と して の使 用 に適 して い る。 な お,こ の 素 子 は チ ャネ ル の 抵 抗 とゲ ー ト容 量 が 小 さ い た め,時 定 数 が 短 く,そ の た め 高 周 波 用 トラ ン ジ ス タ と して も適 して い る。 さ ら に,図9・18の
よ う な構 造 の 静 電 誘 導 形 サ イ リス タ とす る と,従 来 の サ
イ リス タ よ り も高 速 の動 作 が 得 られ る が,導 通 時 の オ ン抵 抗 が 若 干 大 きい のが 欠 点 で あ る。
〔2〕
光 磁気効 果デバ イス
磁 性 体 が 光 を 照 射 さ れ た と き,そ (photo‐magnetism)と
い い,光
磁 性 を 示 す 半 導 体 の 典 型 的 な も の に,イ
リ ウ ム 鉄 ガ ー ネ ッ ト(YIG;Yttrium 例 え ば,こ 10)面
のYIGに
の 磁 気 的 性 質 が 変 化 す る 性 質 を光 磁 性
Iron
少 量 のSiを
Garnet)が
を 図9・19の
よ う に,垂
こ の と き,YIG素
ある。
ドー プ し たY3Fe1.96Si0.04O12の
に 平 行 な 平 板 素 子 に 作 る 。 こ の 素 子 に,波
ッ ト
長1.15μmの
結 晶 を,(1 直線偏 向の 光
直 に 照射 す る。
子 の 磁 化 の 方 向 は,照
射 し た 光 の 偏 光 方 向 に 応 じ て,任
意 に変 え る こ とが で き る。 こ の 効 果 を 利 用 し て,現
在,YIGな
ど の 希 土 類 鉄 ガ ー ネ ッ ト は,光
ス イ ッ
チ や 光 ア イ ソ レ ー タ な ど の 光 通 信 デ バ イ ス に も 用 い ら れ て い る 。 ま た,磁 導 体 に 情 報 を 書 き 込 み,記 報 を 読 み 出 す に は,フ ー効 果 とは
,直
憶 さ せ る こ と も可 能 で あ る 。 逆 に,書
ァ ラ デ ー 効 果(Faraday
線 偏 光 が 磁 場 の 作 用 に よ り,そ
effect)を
性 半
き込 まれ た情
利 用 す る。 フ ァラ デ
の 偏 向面 の 角 が 回転 す る現 象 の
こ とで あ る。 す な わ ち,情
報 が 書 き 込 ま れ た 磁 性 半 導 体 に 直 線 偏 光 を 入 射 し,そ
の 偏 向 角 を 検 光 子 と受 光 デ バ イ ス に よ り検 出 す れ ば,書
の 出射 光
き込 まれ た 情 報 を読 み
出 す こ と が で き る 。 コ ン ピ ュ ー タ の 記 憶 装 置 と し て の 光 磁 気 デ ィ ス ク(MO;
図9・19 YIG結
晶へ の光照 射 に よ る磁 化 方 向 の 制御
Magnetic
Optical Disk)に
い られ て い るが,安
は,現 在,主
にTbFeCo系
ア モ ル フ ァス 薄 膜 が 用
定 性 な どの点 で は酸 化 物 で あ る希 土 類 ガ ー ネ ッ トの 方 が 優
れ て お り,こ の 半 導 体 を用 い たMOの
実 用 化 が 期 待 され る。
〔3〕 光 集 積 回 路 光 通 信 用 の 装 置 に は,発 光 素 子,受 れ るが,こ
光 素 子,変
調 器 等,各
種 の 素 子 が使 用 さ
れ ら の 素 子 相 互 間 を光 フ ァイ バ ー で 接 続 す るの は,接 続 点 で の 損 失
が避 け られ な い こ と と,装 置 全 体 が 大 き くな る た め 好 ま しい こ とで は な い 。 そ こで,こ
れ らの 素 子 と光 の 通 路(導 波 路;waveguide)を1つ
集 積 化 して 小 型 化 と高 効 率 化 を 実 現 し よ う と す る の が,光 optical integrated 通 常,基 GaAs基
の基板上 に 集 積 回 路(光IC;
circuit)で あ る 。
板 に はGaAsを
用 い,光 導 波 路 と し て は 光 フ ァ イ バ ー の代 わ りに
板 上 に平 板 状 また は帯 状 に形 成 し たGa1-xAlxAsを
Asの 光 の 屈 折 率 は,空 気 や 基 板 よ り も大 きい た め,こ
用 い る。Ga1-xAlx
の 中に導 かれ た光 は全
反射 に よ り,こ の 層 内 に閉 じ込 め る こ とが で き る。 光IC用 るが,こ
の発 光 デ バ イ ス と して は,第6章 こ で は光 共 振 器 と して,ブ
で述 べ た 半 導体 レ ー ザ が 使 用 さ れ
ラ ッグ 反射 を利 用 した 分 布 帰 還 形 レー ザ を
図9・20に 示 す 。
図9.20 光IC用
分 布帰 還 形 半 導体 レー ザ の構 造
こ の 素 子 を 使 用 す る こ と に よ り,若
干 エ ネ ル ギ ー 損 失 は 増 え る が,電
力や温
度 の 変 化 に よ る 発 光 周 波 数 の 変 化 を 小 さ くす る こ と が で き る 。 ま た,光
信 号 の 位 相 を 変 え る デ バ イ ス,す
は ポ ッ ケ ル ズ 効 果(Pockels
effect)が
な わ ち 移 相 器(phase
利 用 さ れ る。
ポ ッ ケ ル ズ 効 果 は 電 気 光 学 効 果(electro‐optic
effect)の
率 が 電 界 に 比 例 し て 変 化 す る 効 果 を い う。 な お,電 る効 果 は カ ー 効 果(Kerr
effect)と
shifter)に
界 の2乗
一 種 で,光
に比 例 し て変 化 す
呼 ば れ る。
ポ ッ ケ ル ズ 効 果 を 用 い た 半 導 体 移 相 器 を 図9・21に
示 す。光導波 路 の両側 に
は 電 界 を 与 え る た め の 電 極 が 配 置 さ れ て い る 。 ま た,図9・22は,こ を 用 い た,干
渉 計 形 の 光 変 調 器(light
こ の 変 調 器 の 光 導 波 路 は2つ
の屈折
modulator)の
に 分 岐 し て お り,一
移 相 器 の 電 極 に 電 圧 が 印 加 さ れ な い と き は,分
の移 相 器
構成 を示す。 方が移相器 になって いる。
か れ た 光 は 同位 相 で 結 合 し 出 力
図9・21 ポ ッケ ル ズ効 果 を用 い た移 相 器
図9・22 干 渉 計 形光変調 器
され る。 しか し,移 相 器 に 電 界 が 印加 され る と,そ の 導 波 路 内 の屈 折 率 が増 加 し,伝 搬 速 度 が低 下 して位 相 が 遅 れ る 。 も し,こ の位 相 遅 れ が ち ょう ど,π に なれ ば,結 合 点 で2つ
の光 は 逆 位 相 と な り,反 射 さ れ て 出 て こ な い 。 つ ま り,
この 変 調 器 を 用 い て,光 チ 速 度 は 数100psの
を オ ン ・オ フす る こ とが で き る。 そ し て,そ の ス イ ッ
高 速 動 作 が 可 能 で あ る。
〔4〕 超 音 波 増 幅 素 子 水 晶,ニ
オ ブ酸 リチ ウム(LiNbO3),酸
化 亜 鉛(ZnO)等
の圧 電性 結 晶 の 表
面 に,櫛 形 の 電 極 を設 け,高 周 波 電 圧 を印 加 す る と,結 晶 の 表 面 に沿 っ て 伝 搬 す る超 音 波 が 得 られ る。 櫛 形 電 極 を対 に し て,超 音 波 用 の,フ
ィル タ,ス
イッ
チ,結 合 器,増 幅 器 等 を構 成 させ る こ とが で き る。 図9・23は,パ
ラ メ トリ ッ ク 増 幅(parametric
音 波 増 幅 素 子 の 一 例 で あ る。 こ こで,パ
amplifier)方
式 を用 いた 超
ラ メ トリ ッ ク増 幅 に つ い て 簡 単 に説 明
して お く。 パ ラ メ トリ ッ ク増 幅 とは,Lと つ 要 素(リ
かCの
ア ク タ ン ス 要 素)の 値(パ
よ う な エ ネ ル ギ ー を 蓄 え る能 力 を も
ラ メ ー タ)を,信
号 周 波 数 の2倍
の周 波
数 で変 化 す る こ とに よ っ て,信 号 増 幅 を行 う方 法 で あ る。 例 え ば,電 極 間 隔 を
図9・23 パ ラ メ トリ ック 増 幅 を用 い た超 音 波 増 幅素 子
変 え る こ との で き る可 変 容 量 コ ン デ ン サ に,周 波 数fの て い る とす る。 ち ょ う ど,コ の電 極 間 隔 を 急 に広 げCの 電 荷Qは
信 号 電 荷 が 与 え られ
ンデ ンサ の 電 荷 が 最 大 に な った と き,コ 値 を小 さ く した とす る。 この と き,コ
急 に は変 化 で き な い た め,電 圧VはV=Q/Cの
ンデ ンサ
ンデ ンサ の
関 係 か ら上 昇 す る。
次 に,電 荷Qが0に
な っ た と き電 極 間 隔 を元 に も どす 。 この よ う な こ と を繰
り返 す な ら ば,コ
ン デ ンサ の 電 圧 の 増 幅 を行 う こ とが で き,こ れ に伴 い,電 荷
の変 化 量 も増 幅 され る。 コ ン デ ンサ の 電 荷 の 大 き さが 最 大 にな るの は,信 号 の1周 期 間 に正 負2度 る た め,電 極 間 隔 を広 げ る周 期 は 信 号 周 期 の2分
あ
の1に す る必 要 が あ る。 な
お,電 極 間 隔 を広 げ る に は,電 極 間 に働 く静 電 引 力 に 逆 ら って な され る た め, エ ネ ル ギ ー が 必 要 で あ る。 す なわ ち,信 号 周 波 数 の2倍
の周波数 でエ ネルギー
を補 給 しな けれ ば な ら な い。 これ をポ ン ピ ング(pumping)と コ ン デ ンサ で ポ ン ピ ン グ を行 う に は,上 化 させ る の で な く,半 導 体 のpn接 ア ス電 圧 に信 号 周 波 数 の2倍
い う。 実 際 に,
に述 べ た よ う な機 械 的 に電 極 間 隔 を変
合 容 量 を利 用 し,そ の 容 量 の 変 化 は 逆 バ イ
の 電 圧 を 重 畳 す る こ と に よ り行 わ れ る こ とが 多
い 。
パ ラ メ ト リッ ク増 幅 は,以 上 の よ うな電 気 的 な現 象 に限 らず 利 用 され る。 例 えば,ブ
ラ ン コ を こ ぐ と き,振 れ に合 わせ て 身 体 を屈 伸 させ(重
下 させ る動 作 が ポ ン ピ ン グ に な る),そ
心 の位 置 を上
の 振 幅 を大 き くす る こ とな ど も一 種 の
パ ラ メ ト リ ック 増 幅 で あ る。 さ て,再 び 図9・23の 素 子 に も ど る が,超 音 波 を発 生 し伝 搬 させ る媒 質 と し て はZnO膜
を 用 い,入 力 信 号 が 与 え られ る左 側 の 櫛 形 電 極 は電 歪 効 果 に よ り
超 音 波 振 動 をZnO膜
に 発 生 させ る。 こ の と き,素 子 お よ び櫛 形 電 極 は 電 極 間
隔 を 半 波 長 とす る超 音 波 の 表 面 波 をZnO膜
に生 じ る よ う な 構 造 に作 ら れ て い
る。 この 表 面 波 は右 側 の櫛 形 電 極 まで 伝 搬 し,圧 電 効 果 に よ り入 力 信 号 と同 じ 周 波 数 の 出 力 電 圧 を誘 起 させ る。 ZnO膜
中 の 超 音 波 の 表 面 波 は,膜 中 の 各 部 位 に そ の 歪 み に ほ ぼ 比 例 す る電
気 分 極 に よ る分 極 電 荷 を生 じ させ る。
そ こで,左 右 両 電 極 間 の 超 音 波伝 搬 途 中 に パ メ トリ ッ ク増 幅 を 行 うた め の電 極 を配 置 し,こ の電 極 に 印 加 す る 逆 バ イ ア ス電 圧 を増 加 して,Al/ZnO/SiO2/ n-n+Siか ZnO膜
らな るMIS構
造 の静 電 容 量 を減 少 させ る。 す る と,そ の 電 極 下 部 の
中 の 分 極 電 荷 の 絶 対 値 が 最 大 に な っ て い る部 位 で は,先
デ ン サ の例 と同 様 に,膜
に述 べ た コ ン
中 の 分 極 電 荷 はパ ラ メ ト リ ック増 幅 に よ り増 大 させ ら
れ る。 しか し,そ の 他 の部 位 で は,静 電 容 量 の変 化 が 分 極 電 荷 に与 え る影 響 は 少 ない。 こ こで,信 号 の半 周 期 後 に 再 び静 電 容 量 を減 少 させ れ ば,先
と同一 の部 位 に
お い て は,そ の 符 号 は 逆 で あ る が,分 極 電 荷 の 絶 対 値 は最 大 に な っ て い る の で,パ
ラ メ ト リ ック増 幅 が行 わ れ る 。
この よ うな こ とが 繰 り返 され て,分 極 電荷 は増 大 し,そ れ に 付 随 す る超 音 波 の 伝 搬 方 向 の電 界 は強 ま り,そ れ に伴 っ て超 音 波 も増 幅 され る。 以 上 の こ と は,パ
ラ メ トリ ッ ク増 幅 を行 うた め の電 極 に,信 号 周 波 数 の2倍
の 周 波 数 の ポ ン ピ ン グ を す る こ とに よっ て,超 音 波 の増 幅 が行 わ れ る こ と を示 す。 な お,こ
の デ バ イ ス は,出
力 の 一 部 を入 力 側 に も どす こ とに よ り,発 振 器 に
す る こ とが で き る。 しか し,こ の と きの発 振 周 波 数 の安 定 性 は 水 晶 発 振 器 に比 較 して や や 劣 る が,水
晶 振 動 子 で は困 難 な 高 い 周 波 数 で の 発 振 が 可 能 で あ る。
〔5〕 静 電 容 量 型 半 導 体 セ ンサ(指 コ ン デ ンサ は,そ
紋 セ ンサ)
の 形 状 が 変 化 す る こ とで 静 電 容 量 が 変 化 す る が,こ
のと
き,生 じ る電 流 変 化 を半 導 体 集 積 回 路 で検 出 す る。 この原 理 を応 用 し た デ バ イ ス が静 電 容 量 型 半 導体 セ ンサ と呼 ば れ,指 紋 セ ンサ と して 用 い られ て い る。 図9・24に 指 紋 セ ン サ の 原 理 図 を示 す。 セ ン サ の 表 面 に 指 を触 れ る こ と に よ り,半 導 体 チ ップ上 に形 成 され た そ れ ぞれ の コ ンデ ンサ の形 状 が 指 紋 の 凹 凸 に 従 っ て変 化 す る。 この と き,コ
ンデ ンサ か ら電 流 の 流 れ 出 しが 生 じ る。 この 電
流 の 変 化 を コ ン デ ンサ の 下 部 に形 成 され た 半 導 体 集 積 回 路 で検 出 し,指 紋 の 形 状 を認 識 す る。 一 般 に,指 紋 の 凹 凸 の 間 隔 は200μm以
上 で あ り,こ れ を認 識
図9・24 静 電 容 量 型半 導 体 セ ンサ(指 紋 セ ンサ)
す る た め に は,コ
ン デ ンサ の 大 き さ を50μm角
程 度 に す る必 要 が あ る。 指 紋
セ ンサ と して は,半 導 体 を 用 い る方 法 の 他 に光 学 式 が よ く用 い られ て い る。 し か し,こ の方 法 に比 べ,半
導 体 セ ンサ は小 型 化 が 可 能 で あ り,ま た,他
の機 能
を持 た せ た集 積 回 路 と組 み 合 わ せ る こ とが 容 易 な こ とか ら,多 機 能 デバ イ ス と して期 待 さ れ て い る。
〔6〕 半 導 体 ナ ノデ バ イ ス 半 導 体 を 用 いた 電 子 デ バ イ ス の 高 性 能 化,多
機 能 化 が 進 む に 従 っ て,デ バ イ
ス の 高 集 積 化,微 細 化 が 必 要 とな って きて い る。 この 微 細 加 工 技 術 に つ い て は 第10章
で 詳 し く述 べ る が,材
nm)化
す る こ とで,バ
料 が 微 細 に な り,ナ ノ サ イ ズ(数nm∼
数十
ル ク材 料 で は得 られ な い特 性 が 現 れ る。 こ の 特 性 を生
か し た新 機 能 デバ イ ス の 開 発 が 多 方 面 で行 わ れ て い る。 この 中 で,特
に半導体
性 質 を もつ 材 料 を 用 い て 作 製 され る デバ イ ス を半 導 体 ナ ノ デ バ イ ス と呼 ぶ 。 現 在 の と こ ろ,ト
ラ ン ジ ス タ,CCD,レ
ー ザ,コ
ン ピ ュ ー タ,発 光 素 子,メ
モ
リ等 の各 デ バ イ ス が研 究 開 発 中 で あ る。 以 下 に い くつ か の デ バ イ ス に つ い て説 明 す る。 ■ 単 電 子 デ バ イ ス
こ の デ バ イ ス は,動 作 の制 御 を1つ の 電 子 で行 う もの で
あ る。 動 く もの が 電 子1つ
で あ る こ とか ら,消 費 電 力 が 限 りな く小 さ く,現 在
の数 万 分 の 一 に な る と も考 え ら れ て い る。 し か し,実 現 に 向 け て 必 要 な こ と は,量 子 効 果 が 現 れ るナ ノオ ー ダ ー の 微 細 加 工 技 術 を可 能 に す る こ とで あ る。 この デ バ イ ス の 応 用 と し て は,単 電 子 トラ ン ジ ス タ,単 電 子CCDな
どが あ
り,さ ら に,こ れ らデバ イ ス を用 い た 量 子 ドッ トレー ザ,量 子 コ ン ピ ュ ー タ, 量 子 ドッ トメ モ リな どが 考 え られ て い る。 ■ 量 子 ドッ ト(Quantum
Dots)
サ イ ズ が お よ そ10∼100nm程
度 の粒 子
で,こ の 粒 子 の 中 に電 子 や ホ ー ル を閉 じ込 め る こ とが 可 能 な もの 。 この サ イ ズ に な る と,閉
じ込 め られ た 電 子 は量 子 化 さ れ た 運 動 を す る よ う に な り,量 子 効
果 デ バ イ ス と して 用 い る こ とが可 能 と な る。 これ を量 子 ビ ッ トと呼 ぶ 。 この 量 子 ビ ッ トを用 い て作 製 され た 量 子 コ ン ピ ュ ー タ は,処 理 速 度 が 現 在 の1016倍 程 度 に な る と見 込 ま れ て お り,ま た,消 費 エ ネ ル ギ ー お よ び発 熱 が 小 さ い とい う特 長 を有 す る。 ま た,他 の 応 用 例 と し て は,量 子 レー ザ が 考 え られ て い る。 これ は,従 来 の レー ザ に 比 べ 光 の発 生 効 率 が大 幅 に増 大 す る こ とか ら,高 速 光 通 信 デ バ イ ス な どへ 応 用 で き る もの と期 待 さ れ て い る 。 ■ 有 機 半 導 体 デ バ イ ス
低 分 子 あ る い は高 分 子 有 機 物 か らな る半 導 体 を有 機
半 導 体 と呼 び,こ の 半 導体 を用 い た デ バ イ ス を有 機 半 導体 デバ イ ス と呼 ぶ。 こ の半 導体 は,従 来 の 結 晶 半 導 体 に比 べ 加 工 性 に 優 れ,低
コ ス トで の 作 製 が可 能
とさ れ て い る。 現 在 の と こ ろ,カ ー ボ ン ナ ノ チ ュ ー ブ,C60,導
電性 高 分子 な
どの材 料 開 発 が 進 め られ て い る。 さ ら に応 用 デ バ イ ス と し て,太 陽 電 池,有 レ ー ザ,表 示 デ バ イ ス,電 子 ペ ー パ ー 等 が 考 え られ て い る。
機
演
習
問
題
〔9〕
〔 問 題 〕1.
ガ ン ダ イ オ ー ド とイ ン パ ッ トダ イ オ ー ド と を比 較 せ よ 。
〔 問 題 〕2.
CCDに
用 い ら れ る 電 荷 転 送 の 原 理 に つ い て 述 べ よ。
第10章 半 導体材料 と素子製造技術
本 章 で は,半 導体 材 料 の 精 製 と単結 晶 化 を中 心 と した 作 製 方 法 を説 明 し,次 にpn接 合 を利 用 した 素子 の 製造 技 術 を具体 的 に記述 し,最 後 に半 導 体材 料 の特性 評 価 法の概 要 を述 べ る。
10・1 半 導 体 材 料 の 高 純 度 化
半 導 体 素 子 の 作 製 法 は 目 的 に 応 じ種 々 開 発 され て い る が,基 本 的 な 方 法 と し て は,ま ず始 め に,可 能 な か ぎ り不 純 物 の少 な い 材 料 を作 製 し,こ れ に素 子 作 製 に必 要 な不 純 物 を必 要 な量 だ け 添 加 す る 手 順 を と る。Si単 結 晶 を 例 に この 方 法 を説 明 す る。
〔1〕 化 学 的 な精 製 Siは,天 く,多
然 に は約28%も
くは 酸 化 物(け
存 在 す る元 素 で あ るが,単 体 で 存 在 す る こ と は な
い 石,SiO2が
主 成 分)や
け い 酸 塩 と し て 存 在 す る。 け
い 石 を コー ク ス と共 に ア ー ク炉 に 入 れ て 還 元 す る と,金 属 級Siと 度98%程
呼 ば れ る純
度 のSiの 塊 が 得 られ る。 この 塊 は,粉 砕 され 塩 酸 と反 応 させ る と三
塩 化 シ ラ ン(ト −126.5℃,沸
リ ク ロ ロ シ ラ ン;SiHCl3)と
点31.8℃
の無 色 の 液体 で あ る。 作 られ た ま まの 三 塩 化 シ ラ ン は
多 くの 不 純 物 が 含 まれ て い るた め,こ
れ を蒸 留 に よ っ て 精 製 し高 純 度 中 間 化 合
物 とす る。 精 製 さ れ た 三 塩 化 シ ラ ン 中 に は,ほ (As)の 量 は 数ppbに
な る。 三 塩 化 シ ラ ン は 融 点
う素(B),り
ん(P),ひ
素
まで 減 少 して い る。 最 後 に,電 気 炉 中 で 加 熱 し て 気 相 に
し,高 純 度 水 素 ガ ス で 還 元 して 高 純 度 多 結 晶Siを 得 る 。 こ の よ う に 気 相 か ら 反 応 を 介 し て 固 相 を 得 る 方 法 をCVD(Chemical
図10・1 半 導 体 級 多結 晶Siの 製 作 過 程例
表10・1 高 純 度 多結 晶Si中 の 不純 物
〔単 位:ppb(part
per billion)atom;Si
1原 子 当 た り10-9個
Vapor
Deposition)法
の 不 純 物 濃 度〕
とい う。 図10・1に 高 純 度 多 結 晶Siの
製 造過 程 を ブロ
ッ ク図 で 示 し た。 中 間 化 合 物 と して は,こ の ほ か に 四 塩 化 け い 素(SiCl4)や が 使 用 さ れ る こ と も あ る。 ま た,こ (epitaxy)に フ ァ スSi膜
シ ラ ン(SiH4)
れ らの中 間化 合物 はエ ピタキ シー
よ る単 結 晶 層 の 原 料(第10章10・2節
参 照)と
して,ま
たアモル
の 原 料 と して 用 い られ て い る。
高 純 度 多 結 晶Siの
純 度 を 表10・1に 示 し た 。 炭 素 はSiと
以 な 性 能 を多 く も っ て い る の で,最
同 じ4族 元 素 で類
も除 外 し に くい 不 純 物 と な っ て い る。Si
の場 合 に は上 記 の 化 学 的 な精 製 で 十 分 な純 度 が 得 られ る の で,今
日で は行 わ れ
な くな っ た が この ほ か に物 理 的 な 精 製 法 が あ る。 化 合 物 半 導 体 材 料 の精 製 に際 して重 要 で あ るの で,こ の 方 法 の 原 理 に つ い て 以 下 に説 明 す る。
〔2〕 物 理 的 な精 製 この 方 法 で は,偏 析 とい う現 象 を利 用 す る。 図10・2は,成 類 の 不 純 物Bが
分 元 素Aに1種
少 量 含 ま れ て い る領 域 の状 態 図 を模 式 的 に 示 し て い る。 図 中
の 液相 線 と固相 線 で 分 け られ た3種 任 意 の 液相 が,固相
の領 域 が 存 在 す る。 液相 線 以 上 の 領 域 で は
線 以 下 の 領 域 で は任 意 の 固相(結
の領 域 で は 液相 と固相 の2相
晶)が
存 在 で き る。 中 間
が 共 存 し,そ れ らの組 成 は,そ れ らの 温 度 の高 さ
で 引 い た水 平 な 線 が 液相 線 お よ び固相 線 と交 わ っ た 点 の組 成 に限 定 され る。 い ま不 純 物BをN0の が,こ
濃 度 で 含 む液 体 を冷 却 す る と,温 度T1ま
の温 度 で 不 純 物 をN1(N1<N0)だ
偏 析(segregation)と
け含 む結 晶 が 析 出 し は じ め る 。 これ を
い う。 さ らに 温 度 が 下 が る と固相 線 に 沿 っ た 組 成 を も
つ 結 晶 が 析 出 す る 。 固相 と液相 中 の 不 純 物 の 比(例 (segregation
で は液相 を 保 つ
coefficient)と
え ば,N1/N0)を
い う。 この 図 の よ う に,固相
偏析 係数
線 と液相 線 が 直 線
とみ な せ る領 域 で は,偏 析 係 数 は温 度 に よ ら な い定 数 で あ る。
図10・2 不 純物 の偏 析 に よ る 精製
図10・3 ゾ ー ン精 製 法 の説 明 図
図10・2を 用 いた 上 記 の 偏析 の 説 明 で はす べ て 熱平 衡 状 態 で の 説 明 で あ る が, 実 際 の 冷 却 で は偏析 物 の 移 動 が 十 分 で な い た め に,偏析 係 数 は熱 平 衝 時 の そ れ に比 べ 少 し1に 近 づ く。 しか し偏析 係 数 が1よ
り小 さ け れ ば,液 体 よ り純 粋 な
結 晶 を析 出 す る の で,こ れ を 数 回 繰 り返 す こ とで 前 記 の化 学 的 な精 製 と同時 に 高 純 度 の 半 導 体 材 料 を作 る こ とが で き る。 図10・2で は 偏析 係 数 が1よ
り小 さい 場 合 を示 し た が,偏析
係 数 は1よ
り大
きな 場 合 もあ る。 この と き は 固相 よ り液 相 の ほ うが 純 度 が 高 い 。 偏析 に よ り材 料 の 精 製 を行 う に は,始 め に原 料 の す べ て を とか し,こ れ を一 端 か ら凝 固 さ せ て も よ い が,よ
り効 果 的 に これ を行 うた め に,図10・3に
示 す よ う に,棒 状 の
材 料 の 一 部 分 の み を とか し,融 解 領 域 を棒 の 一 端 か ら他 端 へ 向 けて 移 動 させ る ゾ ー ン精 製(zone
refining)と
い う方 法 が と られ る。
10・2 半 導 体 材 料 の 単 結 晶 化
半 導 体 材 料 は単 結 晶 の 状 態 で 用 い られ る こ とが圧 倒 的 に 多 い 。 この 節 で は,
まず 単 結 晶 イ ン ゴ ッ トの 育 成 法 の 原 理 につ い て 述 べ,次
に エ ピ タ キ シー とい う
技 術 を 用 い た 層 状 単 結 晶 の作 製 法 の 原 理 に つ い て 説 明 す る。
〔1〕 引 き上 げ 法(pulling
method)
この 方 法 は,創 始 者(Czockralski)の
名 を と り,チ ョ ク ラ ル ス キ ー(CZ)
法 と も よ ばれ る。 図10・4にCZ法
でSi単 結 晶 イ ン ゴ ッ トを作 る様 子 を模 式 的 に示 す 。
石 英 る つ ぼ 中 の 高 純 度Siは,高
周 波 誘 導 加 熱 に よ っ て 融 点 よ りわ ず か に 高
い 温 度 に保 た れ て い る。 上 部 の 回 転 シ ャ フ トに 取 り付 け た種 結 晶 と呼 ば れ る Siの 単 結 晶 を液 面 に 接 触 させ 毎 秒20μm程 と,Siの
度 の 速 さで シ ャ フ トを引 き上 げ る
融 液 は種 結 晶 の 結 晶 方 位 に 配 列 し な が ら徐 々 に 引 き上 げ られ る。 引
き上 げ ら れ た 結 晶 中 に転 位 と呼 ば れ る原 子 配 列 の乱 れ を取 り除 く(ま た は減 少 させ る)目 的 で,結 晶 成 長 の 初 期 段 階 で 一 担 結 晶 を細 くし ぼ る こ とが 一 般 に 行 わ れ て い る。
図10・4 引 上 げ法 に よる Si単 結晶 の育 成
CZ法
で はSi融
液 を 石 英(SiO2)る
つ ぼ に入 れ る た め,酸 素 原 子 がSi単
晶 中 に取 り込 まれ る。 か つ て この こ と はCZ法
の 欠 点 と考 え られ て い た が,こ
の不 純 物 酸 素 原 子 の性 質 を た くみ に 利 用 し て,ウ エ ー ハ(wafer)の
表 面 に近
い 層 に存 在 す る結 晶 欠 陥 を 内 部 にす い 込 むゲ ッ タ リ ン グ(gettering)技 見 い 出 され,現
在 で は,IC, LSI基 板 用 の ウエ ーハ はCZ法
もの が 多 い 。 大 き さ は,直 径 が30cm,長 る。Siの ほ か にGaAsを
結
さ1mのSi単
術が
に よ っ て 作 られ た
結 晶 が 生 産 され て い
始 め とす る化 合 物 半 導 体 に も一 部CZ法
が活 用 され
つ つ あ る。
〔2〕 浮融 帯 法(float‐zone この 方 法 で は,図10・5に
method,FZ法)
示 す よ うに,多 結 晶Siの
一 部 分 の み を融 解 し,特
に る つ ぼ の よ うな 容 器 を用 い な い で,表 面 張 力 と高 周 波 電 磁 場 に よ り融 液 を保 持 しな が ら単 結 晶 の 育 成 が 行 わ れ る。 従 っ て,FZ法 の混 入 が 少 な い 。 特 に,酸 素 原 子 につ い て はCZ法
で は育 成 中 に不 純 物 原 子 に比 べ1/100程
度 にお さえ
る こ とが で き る。 FZ法
に よ り育 成 され た 結 晶 は純 度 が 高 い の で 高 耐 圧 のpn接
合 の形 成 に適
図10・5 浮融 帯 法 に よ るSi単 結 晶 の育 成
して い るた め,電 力 用 トラ ン ジ ス タや サ イ リス タ等 の材 料 と し て用 い られ て い る。 しか し,ウ エ ーハ 内 の 抵 抗 率 分 布 の不 均 一 性 や デ バ イ ス形 成 時 の 熱 処 理 に よ る ウ エ ーハ 面 の変 形(そ し,こ の た めIC, LSI用 そ5%以
り)がCZ法
に よ る ウ エ ーハ に比 べ 大 き い 欠 点 を有
の 基 板 と し て は 用 い ら れ な い。 製 産 量 は 全 体 の お よ
下 で あ る。
〔3〕 エ ピ タ キ シ ー に よ る単 結 晶 層 の製 作 あ らか じ め作 られ て い る単 結 晶 の 表 面 に,そ
の結 晶 と結 晶 方 位 を そ ろ え て新
た な結 晶 層 を形 成 す る技 術 をエ ピ タキ シ ャル 成 長(epitaxial う。 一 般 に,エ
growth)法
とい
ピタ キ シ ー に よ る結 晶 成 長 は,バ ル ク単 結 晶 よ りも低 い 温 度 で
行 う こ とが で き る た め に不 純 物 の混 入 も少 な く,ま た 結 晶 の 完 全 性 もバ ル ク の 単 結 晶 に 比 べ て よ くす る こ とが で き る。Siバ イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ,化 合 物 半 導体 を用 い た 半 導 体 レー ザ,高 周 波FET等 て い る。 通 常,均
の デ バ イ ス 作 製 過 程 で 用 い られ
一 性 の 良 い0.5∼ 数 μmの 薄 い 層 が 製 作 で き る。
エ ピ タ キ シ ー の 方 法 は,液 相 エ ピ タ キ シ ー,気 相 エ ピ タキ シ ー,分 タキ シ ー の3種
に 分 類 で き るが,材
子 線 エピ
料 の面 か ら は基 板 材 料 と同一 化 学 組 成 を も
つ 層 を形 成 させ るホ モ ・エ ピ タ キ シ ー と基 板 材 料 と は異 な る化 学 組 成 を もつ 層 を形 成 させ るへ テ ロ ・エ ピ タ キ シ ー に分 類 で き る。 (1) 液 相 エ ピ タ キ シ ー
この 方 法 で は,エ
ピ タ キ シ ー 層 の 原 料(溶
質)
を一 担 溶 媒 に とか し,溶 液 の温 度 を下 げ 過飽 和 状 態 と し,溶 液 を基 板 と接 触 さ せ 溶 質 を結 晶 と して 析 出 させ る 。 液 相 エ ピ タ キ シー は極 め て 熱 平 衡 に近 い状 態 で 結 晶 成 長 が 行 わ れ る と い う特 徴 が あ り,こ の た め 他 の 方 法 に よ るエ ピ タ キ シ ア ル 層 よ り結 晶 の 完 全 性 が よ い 。 液 相 エ ピ タ キ シー に は,傾 斜 法,デイ が あ り,こ
れ ら を 図10・6に
Ga1-xInxAs等Ⅲ-V族 度 の 低 いGa金
ッ プ法 ,ス ラ イ ドボ ー ド法 等 の 方 法
模 式 的 に 示 し た 。GaAs,Al1
-xGaxAs,
化 合 物 半 導 体 に用 い られ て い る 。 溶 媒 と して は 融 解 温
属 が 用 い ら れ,結
この 方 法 は用 い られ て い な い。
晶 成 長 温 度 は700∼800℃
で あ る。Siで は,
(a) 傾 斜 法(b)
デ ィ ップ 法(c)
図10・6
図10・7
(2) 気 相 エ ピタ キ シ ー 混 合 され た 原 料(気 相)が
液 相 エ ピ タキ シー の方 法
GaAsの
気 相 エ ピタ キ シ ー
この 方 法 で は,キ
供 給 さ れCVDに
の場 合,原 料 と して はSiCl4(こ
ス ラ イ ドボ ート法法
の場 合,水
ャ リア ガ ス(一 般 に 水 素)と
よ り基 板 上 に 結 晶 成 長 させ る 。Si 素 は還 元 剤)やSiH4(熱
用 い られ る 。 ドー ピ ング 用 の 不 純 物 源 と して はPCl5,PH3,BCl3,B2H6等 原 料 と混 合 し て送 られ る。 結 晶 成 長 時 の 基 板 温 度 は1000∼1200℃,数
分 解)が が μm/
minの
速 度 で 結 晶 が 成 長 す る。GaAsの
蒸 気,As源
場 合,Ga源
と し て は3塩 化 ひ 素(AsCl3)が
長 さ せ る。GaAsの
と し て は 金 属Gaの
用 い られ,基
加熱
板 温 度 ∼750℃ で 成
気 相 エ ピ タ キ シ ー を 図10・7に 模 式 的 に示 す 。 この ほ か に
蒸 気 圧 が 適 当 で あ り,か つ,加 熱 に よ り分 解 しや す い とい う理 由 で,ト ル ひ 素,ト
リ メ チ ルGa等
(MOCVDと
呼 ば れ る)。
リメ チ
の 有 機 金 属 の 蒸 気 も原 料 と し て 用 い られ る
(3) 分 子 線 エ ピ タキ シ ー
大 気 圧 で は気 体 分 子 の運 動 方 向 は 分 子 同 志 の
衝 突 に よ り刻 々 と変 化 す るが 圧 力 を低 くす る と衝 突 回 数 が 少 な くな り,始 め に 気 体 分 子 の 運 動 方 向 を そ ろ え て お く と方 向 の そ ろ っ た 流 れ を作 る こ と が で き る。 これ を分 子 線(molecular
beam)と
法 が 分 子 線 エ ピ タキ シ ー(molecular 子 線 エ ピタ キ シ ー は10-8Pa程
い い,こ れ を 原 料 の 供 給 源 とす る 方 beam
epitaxy)で
あ る。 この た め,分
度 の超 高 真 空 中 に基 板 を お い て行 わ れ る 。 こ の
方 法 の 特 徴 は,予 期 しな い不 純 物 の 混 入 を 少 な くす る こ とが で きる と と も に, 成 長 し つ つ あ る結 晶 の 特 性 を その 場 で 測 定 で き,必 要 で あ れ ば そ の信 号 を用 い て結 晶 成 長 条 件 を 自動 制 御 す る こ とが 可 能 な点 に あ る。 この た め電 子 線 回 折,
図10・8 分 子 線 エ ピ タ キ シー 装 置 の構 成
オ ー ジ エ 電 子 分 光,X線
マ イ ク ロ ア ナ ラ イ ザ 等 の 分 析 手 段(表10・7参
照)が
用 い られ て い る。 分 子 線 エ ピタ キ シ ー で 作 っ た 層 の 特 徴 は,前 記 の2つ の エ ピ タ キ シ ー で 作 っ た層 に比 べ,層
の 表 面 を 原 子 サ イ ズ で平 坦 に す る こ とが で き る こ とで あ り,他
の 方 法 で は,製 作 困 難 な 急 峻 な接 合 の形 成 が 容 易 で あ る。 こ の 特 徴 を 生 か して 半 導 体 レー ザ や 光 導 波 路 の 形 成 に応 用 さ れ て い る。 図10・8に,装
置の模 式 図
を示 した 。 (4) へ テ ロ ・エ ピ タ キ シ ー エ ピ タ キ シー の際 立 っ た 特 徴 の1つ 述 べ たへ テ ロ ・エ ピ タキ シ ー(異 種 単 結 晶 層 の形 成)が
に先 に
あ る。 そ の 際,基 板 と
す る結 晶 と そ の上 に 形 成 させ る結 晶 の 組 合 せ に は制 限 が あ る。 この 制 限 は,エ ピ タ キ シー で は基 板 結 晶 の 原 子 配 列 の 特 徴 を受 けつ い て,そ の 上 に 結 晶 が 成 長 す る こ とに 原 因 して い る。 一 般 に へ テ ロ ・エ ピ タ キ シー が 可 能 な 条 件 と して, ① 基 板 とす る結 晶 の 格 子 定 数 とそ の 上 に成 長 させ る結 晶 の そ れ が 近 い値 を と る こ と。 ② 両 者 の 熱 膨 張 係 数 の差 が 小 さ い こ と。 が あ げ られ る。 こ の よ う な 条 件 を 満 た す 材 料 の 組 合 せ 例 を 表8・2に 示 す。 も し,上 記 の 条 件 か らは ず れ る と,作
られ た 結 晶 層 に は 格 子 欠 陥 と呼 ば れ る原 子
配 列 の 不 完 全 な 箇 所 が 多 くで きた り,は な は だ しい場 合 に は単 結 晶 層 を保 つ こ とが で き ず 多 結 晶 と な る 。 へ テ ロ ・エ ピ タ キ シ ー の 有 望 な 応 用 分 野 の1つ
と して,数 十 ∼ 数 百 原 子 層 ず
つ異 種 材 料 を 交互 に結 晶 成 長 させ た 多 層 膜 構 造 の 超 格 子 半 導 体 材 料 が あ る(第
表10・2
へ テ ロ ・エ ピ タ キ シ ー が で き る 材 料 の 組 合 せ 例
9章 参 照)。 へ テ ロ ・エ ピ タ キ シ ー の 変 形 と して,石 英 ガ ラ ス の よ う に 原 子 が 周 期 的 に 配 列 して い な い基 板 上 に も基 板 表 面 に細 密 な規 則 的 凹 凸 を つ け て お く と,そ の 上 に単 結 晶 層 を形 成 す る こ と が で き る グ ラホ ・エ ピ タ キ シ ー(grapho -epitaxy)法
や
,同
じ く原 子 配 列 の 不 規 則 な ガ ラ ス 基 板 上 に一 担 多 結 晶 層
を形 成 して お き,こ れ を レ ー ザ 光 を走 査 しア ニ ー ル を行 う と結 晶 方 向 が 走 査 方 向 に そ ろ う こ と を利 用 した 方 法 等 が 開発 され て い る。
表10・3 そ の他 の 半 導体 材 料 の作 製 法
図10・9 シ リコン に対 す る不 純物の固溶 度
エ ー ハ 作 製 後 に極 力 少 な くす る た め,ウ エ ーハ の 裏 面 な ど に微 少 欠 陥 と汚 染 物 質 を集 め て 素 子 形 成 部 分(活 (gettering)が
性 領 域)の
純 度 と品質 を高 め るた め ゲ ッ タ リ ング
用 い られ る。
Siウ エ ーハ に対 す る ゲ ッ タ リ ン グ の 方 法 と し て は,ウ エ ー ハ の 裏 面 に機 械 的研 磨 に よ る 歪 を つ けた り,ア モル ハ スSiを 付 着 させ た り し た の ち,900℃
で
30分 間 程 度 の 加 熱 処 理 す る 方 法 と,酸 素 の 析 出 に よ る欠 陥 を 利 用 す る 方 法 と が あ る。 前 者 で は,ウ エ ー ハ の 裏 面 の 歪 に欠 陥 や 汚 染 物 質(Naな
ど)を 集 め
て,活 性 領 域 と して 用 い る表 面 部 分 の純 度 と品 質 を 高 め て い る。 後 者 で は,Si 中 の酸 素 濃 度 を0.85∼1.2×10-3に
設 定 し て結 晶 を作 製 し て お き,こ れ を ウ エ
ーハ に した の ち に窒 素 雰 囲 気 中 で1100℃
で3時
間程 度 の 加 熱 処 理 を行 い ウ エ
ー ハ 表 面 か ら酸 素 を析 出 さ せ て 欠 陥 を形 成 させ ,次 処 理 の の ち,1000℃
で16時
に650℃ で16時
間 の加熱
間 の加 熱 処 理 を行 っ て酸 素 の 析 出 欠 陥 に汚 染 物 質
や 微 少 欠 陥 を 吸 い と らせ て い る。 こ の 処 理 に よ っ て ウ エ ー ハ の 表 面 か ら24
μm程 度 の 深 さ まで の 部 分 を欠 陥 等 の な い 層 にす る こ とが で き る の で,こ
の高
品 質 化 さ れ た 深 さ は素 子 を形 成 す る活 性 化 領 域 と し て は十 分 で あ る。 こ の手 法 は,高 密 度 のLSIの
作 製 法 と して 用 い られ て い る。
〔2〕 不 純 物 導 入 技 術 半 導 体 基 板 の表 面 か ら不 純 物 を導 入 させ,基
板 の 内部 と異 な る不 純 物 分 布 層
を形 成 さ せ る主 な 形 成 法 をSiを 例 に して 述 べ る。 そ の 方 法 の1つ
と し て,不
純 物 の原 子 に熱 エ ネ ル ギ ー を与 え,表 面 の 不 純 物 濃 度 と内部 の 濃 度 との 差 に よ って 熱 的 に拡 散 さ せ て 不 純 物 を表 面 か ら導 入 す る熱 拡 散 法 は最 もよ く用 い られ る方 法 で あ る。 近 年,素 子 を微 細 な構 造 に形 成 し な け れ ば な ら な い と き に,不
図10・10 シ リコ ン基 板 の抵 抗 率 と用 途 の 関係
純 物 原 子 を イ オ ン化 して 電 界 を用 い て 加 速 し ウエ ー ハ に浸 透 させ るイ オ ン打 込 み 法(ion
implantation)が
シ リ コ ン を りん(P)に (1) 熱 拡 散 技 術
用 い られ て い る。 この ほ か に,中 性 子 を 照 射 し て
変 え て不 純 物 と して 作 用 させ る方 法 な ど もあ る。 半 導 体 素 子 の 用 途 に よ っ て 基 板 のSiの 抵 抗 率 は 大 幅
に調 整 し な け れ ば な らな い の で,そ てpn接 Asな
合 を形 成 す る に は,取
の 関 係 を 図10・10に 示 す 。 この 基 板 に対 し
り扱 い が 容 易 で あ る3属 のB,5属
のPま
たは
どを 熱 拡 散 法 で 浸 透 さ せ る方 法 が 多 く用 い られ て い る。 これ ら の 不 純 物
元 素 の 素 材 と して は,室 温 で 気 体 の 化 合 物 で あ る ジ ボ ラ ン(B2H6),ホ ン(PH3),ア
ル シ ン(AsH3),液
体 の化 合 物 のBBr3,PCl3が
スフィ
多 く使 用 さ れ る。
これ らの 化 合 物 を分 解 し て不 純 物 原 子 と し て作 用 させ て い る。 こ れ らの 元 素 の Siへ の 拡 散 係 数 は,図10・11に
示 す よ う に,加
熱 温 度 が 高 い ほ ど拡 散 の 速 度
は指 数 関 数 的 に増 加 す る が,通 常 の 熱 処 理 温 度 は1100∼1250℃ 図10・11よ
りわ か る よ う に,BとPと
で 行 わ れ る。
は そ の 拡 散 係 数 が ほ ぼ 等 しい が,Asは
図10・11 シ リコ ン に対 す る不 純物の抵抗 係数
そ の1/10と
小 さ い 値 で あ る の でAsの
拡 散 を 後 か ら 行 っ て も,Asの
浸 透 を 始 め に し て お く と,BやPの
分 布 は ほ と ん ど 変 化 し な い 利 点 が あ る 。 ま た,
Pの 拡 散 の 様 子 は そ の 濃 度 や 雰 囲 気 に よ っ て 変 わ る し,BはSiO2に す い た め,SiO2の い ま,0.4Ω
近 傍 で はBの ・cmのn形Si基
純 物 分 布 を も つnpn型 度NDは,図10・10よ 面 か ら ま ずBを
熱
な じみ や
濃 度 が 薄 くな る の で 留 意 し な け れ ば な ら な い 。 板 に 熱 拡 散 法 を 用 い て,図10・12の
の ト ラ ン ジ ス を 形 成 さ せ て み よ う。Si基 り1016cm-3で
熱 拡 散 さ せ てP形
板 の ドナ ー 濃
あ る こ と が わ か る 。 こ のn形Si基 層 を 形 成 し,深
面 を 形 成 さ せ た い 。 こ の た め,BのSi表
さ3μmの
面 で の 濃 度N0を
持 さ せ て お く 方 法 を 用 い る こ と に す る と,こ
図10・12 npn形
よ うな不
の 表 面 のBの
トラ ンジ ス タの不 純 物 分 布
板 の表
と こ ろ にpn接 常 に1018cm-3に 濃 度(1018cm-3)
合 保
を 熱 処 理 に よ っ て 深 部 に 浸 透 さ せ て 表 面 よ り3μmの 基 板の
ドナ ー 濃 度NDの1016cm-3と
る 。 この た め,1200℃ sで
り わ か る よ う に,Bの
合 部の 濃 度 は1016cm-3で
濃 度NAを
同 じ に す れ ば その 位 置 がpn接
で 熱 処 理 す る と,Bの
あ る 。 図10・12よ
位 置 でのBの
あ るの で,濃
合面 にで き
拡 散 係 数の 値 は2.2×10-12cm2/ 濃 度 分 布 は 表 面 が1018cm-3で
度 は10-2だ
接
け 薄 く な っ て い る 。 この 条
件 での 熱 処 理 で は 濃 度 分 布 は 誤 差 関 数 形 に な るの で,図10・13に
示す誤差 関数
の 係 数 を 用 い て10-2の
求 め てみ る と
u≒1.8が
濃 度 差の
と きのu値(x/2√Dtの
得 ら れ る 。 こ れ よ りxが3μm(10-6m)の
値 に 図10・11か
らの2.2×10-12cm2/sの
め る と3156秒(52.6分)が
値)を と き で,1200℃
値 を 用 い て,熱
でのDの
処 理 時 間t〔 秒 〕 を 求
求 め ら れ る 。 こ れ らの 計 算 よ りBの
表 面濃 度 を
x:距 離 〔cm〕 D:拡
散 係 数〔cm2/s〕
t:時 間〔s〕
図10・13 熱 拡 散 に よる濃 度 分布
1018cm-3と
し て1200℃
Siの 表 面 よ り3μmの 次 に,Bを μmま
で 約39分 深 さ にpn接
ア ク セ プ タ と し て 拡 散 さ せ て 表 面 よ り2
層 に し よ う 。 深 さ2μmの
に な っ て い る の で,PのSi表
と こ ろ のBの
面 の 濃 度 は1021cm-3と
濃 度を1017cm-3と
濃 度 は ほ ぼ1017cm-3
濃 く保 持 し て2μmの
し よ う 。 こ の と き のPの な り,u=x/2√Dtの
濃 度 差 は10-4に
て い る の で,uの
値 は 約2.8と
間 が き ま る 。Pの
拡 散 係 数 は 濃 度 に よ っ て 変 わ る の で,1200℃
の 値を4.2×10-12cm2/sと
こ れ よ りBの 1200℃
で5分
深 な っ
関 係 よ りt〔 秒 〕 の 加 熱 時
し よ う 。 こ の 値 よ りxを2μmと
を 求 め る と約300秒(5分)と
・cmのn形
合を 形 成 で き る 。
拡 散 さ せ た 部 分 にPを
でをn形
さ で のPの
間 の 加 熱 処 理を す れ ば,0.4Ω
での拡 散係 数 し てt〔 秒 〕 の 値
な る。
熱 処 理 は1200℃ 間 行 う と,図10・12の
で(39分)−(5分)=34分
行 い,Pの
熱処理 は
よ う な 不 純 物 分 布を 得 る こ と が で き る*。
図10・14
イ オ ン打 込 み 装 置 (加 速 電 圧10∼5000keV)
* Pの SiO2の
熱 処理時 間の間に
,Bは 中 に も 吸 い 込 まれ てBの
り濃 く し て お く必 要 が あ る。
外 部 よ り の 補 充 な し に 深 部 に 拡 散 す る し,Siの 表面 の 濃 度 が 下 が る の で,始 め のBの 表 面 濃 度を1018cm-3よ
これ に よ っ て で きる 表 面 よ り2μmま
で のn形
ッタ部 との 中 間 の1μmの
層 を ペ ー ス と し,基 板 のn形
タ と して 用 い る とnpn形
部 分 のp形
層 を エ ミ ッタ と し,基 板 とエ ミ 部 を コレク
の バ イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ を形 成 で き る。
(2) イ オ ン 打 込 み 技 術
イ オ ン 打 込 み 技 術 と は,図10・14に
示す よう
に,イ オ ン ソー ス部 で プ ラ ズ マ に よ っ て イ オ ン化 され た 元 素 の 質 量 を選 別 し, 所 要 の イ オ ンの み を加 速 した の ち,ビ ー ム走 査 系 か ら ウエ ー ハ 移 動 さ せ て ウエ ー ハ の全 面 に不 純 物 イ オ ン を打 込 み ,不 純 物 ドー プ 層 を形 成 す る こ とで あ る。 この 技 術 で は,イ る の で,加
オ ンの 数 を制 御 で き る し,不 純 物 分 布 は ガ ウス 分 布 で表 され
速 電 圧 の 大 き さ と ドー ズ(does)量(打
ち込 み し た 量)を
決める
と,不 純 物 分 布 を制 御 で き る特 長 を も って い る。 前 述 の 熱 拡 散 技 術 で,pn接 合 を形 成 さ せ る と2∼3μmの
深 さが 限 度 で,こ れ よ り浅 い と こ ろ に接 合 面 を
形 成 さ せ る こ と は極 め て むず か しい 。 しか し,イ オ ン打 込 み技 術 を用 い る と, 0.1∼0.6μmの LSIな
深 さ にpn接
合 面 を形 成 で き る の で,集 積 密 度 の 高 いMOS型
どを形 成 す る に は,イ オ ン打 込 み技 術 は不 可 欠 の 技 術 とな っ て い る。
図10・15 シ リコ ンに対 す る加 速 電 圧 に よる打 込み 深 さ(縦 軸 ば ガ ヴ ズ分布 の 極 大 値)
この 技 術 で打 ち込 まれ た イ オ ンの 不 純 物 分 布 の ピー ク値 の 深 さ は,加 速 電 圧 と元 素 の 種 類 に よ っ て変 化 す る の で,こ りわ か る よ うに,イ 加 速 電 圧Vを
れ らの関 係 を図10・15に 示 す 。 これ よ
オ ン半 径 が 小 さ く質 量 の 軽 い元 素 は 深 く打 込 みや す い し,
高 くす る と不 純 物 分 布 の ピー ク値 はV0.5∼1に 比 例 して 深 くす る
こ とが で き る。 また,不 純 物 分 布 の 広 が り は ドー ズ量 が 多 くな れ ば大 き くな る し,ウ エ ー ハ に対 す る打 込 み 角 度 に も依 存 す る の で,直 角 の 打 込 み 方 向 よ り も 8度 程 度 傾 き を つ け て 打 込 む と正 確 な 分 布 に不 純 物 を 浸 透 させ る こ とが で き る といわ れ て い る。 しか し,打 ち込 ん だ イ オ ン に よ っ て発 生 し た結 晶 欠 陥 を除 去 した り,そ の イ オ ン元 素 に 不 純 物 作 用 を さ せ る た め に は,1000℃ 度 の 加 熱 処 理 が 必 要 で あ る 。 こ の た め,打
で20分
間程
ち 込 まれ た元 素 の 分 布 は,熱 拡 散 に
よ っ て そ の 密 度 分 布 の ピ ー ク値 が 低 下 し,分 布 の 広 が り も増 大 す る。B,As,
(b) Siに 対 す るPイ
(a) Siに
対 す るB,Asイ
図10・16
オ ン打 込 み
ォ ン打 込 み
Siに 対 す るB,As,Pイ
オ ンの打 込 み に よ る不純 物 分 布
PのSiに
対 す る 打 込 み 後 熱 処 理 に よ っ て 得 られ た 分 布 を 図10・16(a),(b)
に示 す 。 Siに よ るMOSト
ラ ン ジ ス の ソ ー ス や ドレ イ ン領 域 を 形 成 す る に は,ド
ズ量1015∼1016cm-2の
ー
高 い 濃 度 で イ オ ン を打 込 む こ とが 必 要 で あ り,CMOS
の ウ エ ル 領 域 の 形 成 の と き で も1015∼1016cm-2の
高 い濃 度 で イ オ ン を打 ち 込
む こ とが必 要 で あ る。 イ オ ン打 込 み技 術 で は,イ オ ン濃 度 を高 くす る に は イ オ ン ソー ス を 大 き く しな けれ ば な ら な い の で 装 置 が 大 型 化 す る 。 しか し,チ ル領 域 は1010∼1012cm-2と で,し
き い値 電 圧Vthを
ャネ
濃 度 の 低 い ドー ズ 量 で 不 純 物 分 布 を制 御 で き る の
調 整 し,整 合 さ せ る に は この イオ ン打 込 み 技 術 は不 可
欠 に な って い る 。 また,イ
オ ン の打 込 み 時 に は横 方 向 に もイ オ ン の分 布 が 起 こる。 この 横 方 向
に対 す る分 布 ず れ は深 さの 半 分 程 度 しか ず れ な い の で,イ 0.2∼0.5μmの
と こ ろ に接 合 面 を 形 成 す る と き は,横
オ ン打 込 み で 深 さ
方 向 に は0 .1∼0.2μm
だ け し か不 純 物 分 布 が は み 出 さな い。 そ の た め,精 度 の 高 い2μm以 の デ ザ イ ン ル ー ル で 設 計 さ れ たpn接
合 を形 成 す る に は,こ
下 の寸 法
の イ オ ン打 込 み技
術 は極 め て主 要 な 技 術 とい え る。 (3)
その 他 の技 術
不 純 物 を熱 拡 散 技 術 で 導 入 させ る と きに も,気 体 状
態 の 不 純 物 元 素 を 表 面 か ら浸 透 さ せ るだ け で はな く,不 純 物 元 素 を 酸 化 物 な ど の 固 体 の 化 合 物 と し てSi表 面 に付 着 さ せ て か ら,内 部 に そ の 不 純 物 元 素 の み を拡 散 させ る こ と も行 わ れ る。 また,CVD法 プ さ れ た 多 結 晶SiをSiの
を 用 い て 不 純 物 元 素 を多 く ドー
ウ エ ー ハ の 表 面 に 析 出 さ せ ,そ の 多 結 晶Siか
ら不
純 物 を ウ エ ー ハ 内 部 に拡 散 させ る 方 法 も用 い られ て い る。 そ の ほ か に,Siに
中 性 子 を 照 射 して30Siを31Pに
変 換 さ せ て ドナ ー 不 純 物
と して 作 用 さ せ る こ と もで き る。 こ の30Siは 通 常Siの て い るの で,相
中 に は約3%含
有 され
当 濃 い ドナ ー を形 成 させ る こ とが で き る。 中 性 子 はSiの
容 易 に透 過 す るた め,30Siを 一 様 にPに
変 換 させ て し ま うの で,ウ
の ドナ ー量 を一様 に増 加 させ る 方 法 に適 し て い るが,ウ
中を
エーハ 全体
エーハの表面 の みに不
純 物 を導 入 させ る方 法 に は 適 用 で き な い。 この 中性 子 線 照 射 に よ る不 純 物 導 入
法 で もSiウ エ ーハ に 結 晶 欠 陥 を つ くる の で,照 射 後 に は十 分 な 加 熱 処 理 が 必 要 で あ るが,申
性 子 の 照 射 量 を検 出 してPの
密 度 を精 度 よ く規 定 で き る の で,
ウ エ ーハ の 導 電 率 を一 様 に精 度 よ く変 換 させ る に は 有 効 な 技 術 で あ る。
10・4 微 細 加 工 技 術
〔1〕 結 晶 の 機 械 的 加 工 半 導 体 素 子 に用 い る結 晶 は 大 き い ほ ど加 工 手 数 が はぶ け る の で,結 晶 は ます ます大 き く育 成 さ れ る よ う に な り,始 めSi結 晶 も1イ cm程
ン チ の 直 径 で 長 さ約10
度 の 大 き さ で あ っ た が,現 在 で は, Si結 晶 に お い て は,12イ
30cm)の
直 径 で 長 さ1m程
の 円 筒 形 結 晶 を厚 み0.5mm程
ン チ(約
度 の 大 き さの もの が 用 い られ る よ う に な った 。 こ 度 に 輪 切 に し て ウ エ ーハ を 作 製 す る。 この 工
程 で の 切 り し ろ を 少 な くす るた め に極 め て 薄 い 刃 の ダ イ ヤ モ ン ドカ ッタ を用 い て切 断 し て い る。 この ウ エ ーハ を細 か い粉 の研 磨 材 で研 磨 し平 滑 な 面 に仕 上 げ る 。 この と きに ウ エ ーハ の厚 み を整 え,片 面 を鏡 面 に仕 上 げ る。 鏡 面 研 磨 材 と して は,良 質 の 微 細 な ア ル ミ ナ,酸 化 シ リコ ン や ダ イ ヤ モ ン ド粉 の ペ ー ス トが よ く用 い ら れ る。 この 仕 上 げ られ た ウ エ ーハ に多 くの 素 子 を形 成 した の ち 単 独 の 素 子(ペ
レ
ッ ト)に 分 割 す る。 分 割 に 際 して は,鋭 い 先 端 を も った ダ イ ヤ モ ン ドに よ っ て ガ ラ ス切 りの 手 法 で 傷 を 入 れ,裏 面 か ら圧 力 を加 え て 分 割 して い る。 通 常 の 0.2mmの
厚 さ の ウ エ ーハ で あ れ ば,0.5×0.5mmの
寸法 まで の 小 さいペ レ
ッ トに 作 製 で き る。
〔2〕 表 面 処 理 とエ ッチ ング 技術 ウ エ ーハ に 半 導 体 素 子 を形 成 す る と きに は,そ
の 表 面 の汚 染 を極 力 さ け る た
め に表 面 を 良 く洗 浄 し な け れ ば な らな い。 油 系 の 汚 染 の 洗 浄 に は ト リク ロ ー ル エ チ レ ンや エ チ ル ア ル コー ル また はア セト ンが よ く用 い られ る。 さ ら に,洗 浄
効 果 を高 め る に は超 音 波 洗 浄 法 を 用 い る。 しか し,最 終 的 洗 浄 に は必 ず超純 水 が 用 い られ る。 超純 水 は,通 常 の水 か ら不純 物 イ オ ン を イ オ ン交 換 樹 脂 に よ っ て 除 去 し,抵 抗 率 を10MΩ
・cm以 上 に 高 め た 水 を,さ
ら に 紫 外 線 で 殺 菌 し,
フ ィル タ で微 細 な物 質 や 菌 の 元 骸 な ど を取 り除 い て 作 られ る。 しか し,ウ エ ー ハ の 汚 染 が ひ ど い と き に は,ま 酸 処 理(5分),加
ず 希 塩 酸 処 理(5分),希
熱 重 ク ロ ム 硫 酸(2分),20%KOH水
が よ く用 い られ,Siの
硫
溶液 の 加 熱 洗浄 な ど
と き に は ふ っ酸 系 の 薬 品 も用 い ら れ る。 半 導 体 や 酸 化
物 あ る い は金 属 な ど を酸 や ア ル カ リで 化学 的 に腐 蝕 す る こ と,ま た は放 電 現 象 な ど を利 用 して 部 分 的 に 取 り除 くこ と をエ ッ チ ング(etching)と として,Siに
対 す る エ ッチ ン グ剤 を表10・4に 示 す 。 こ の 表 に は,Siを
LSIの 形 成 に必 要 な素 材 で あ るSiO2,Si3N4,Alな い ま,Si表
い う。 一 例
面 に形 成 され たSiO2膜
用 いた
ど をつ け加 えて お く。
に四 角 な穴 を あ け よ う とす る と き,穴 の
大 き さ が 数 μm角 の 寸 法 で あ れ ば,上 記 の 薬 品 に よ る 化 学 的 エ ッ チ ン グ で 穴 表10・4
化 学 的 エ ッチ ング 剤
を あ け る こ とが で き る。 しか し,3μm角 μm角 の 穴 が あ く し,2μm角
の 寸 法 の 穴 に な る と2倍
に 近 い7
以 下 の 寸 法 に な る と穴 の か どの 近 傍 は エ ッ チ ン
グ で きな くな る。 この た め2μm角
以 下 の 寸 法 で加 工 精 度 よ くエ ッ チ ン グ す る
に は,薬 品 に よ るウ ェ ッ ト ・エ ッ チ ン グ(wet‐etching)方
式 では むずか し く
な り,気 体 の 放 電 現 象 を 用 い て エ ッ チ ン グ す る ドラ イ ・エ ッ チ ン グ(dry‐ etching)方
式 を用 い な けれ ば な らな い。 この 方 式 に は,イ オ ン の 化 学 反 応 を
用 い る プ ラ ズ マ ・エ ッ チ ン グ(plasma‐etching)方 グ(spatter‐etching)方
式,ス
パ ッ タ ・エ ッチ ン
式 お よ び イ オ ン ・エ ッ チ ン グ(ion‐etching)方
式
が あ る が,こ れ に つ い て は次 節 で 述 べ る 。
〔3〕
リ ソグ ラ フ ィ技 術
(1) 原 理
リ ソ グ ラ フ ィ(lithography)は,も
と も と石 版 画 を 意 味 す
る フ ラ ンス語 か らき た 言 葉 で あ る。 半 導 体 で は,そ の 素 子 形 成 にサ ブ ミク ロ ン 程 度 の 加 工 精 度 が 必 要 に な る の で,写 直 技 術 で 原 板 を作 り,こ れ をマ ス ク と し て 有 機 感 光 剤 を露 光 さ せ,感 光 剤 に よ る微 細 なパ タ ン を形 成 す る。 こ れ を リソ グ ラ フ ィ技 術 と呼 ん で い る。 この リ ソ グ ラ フ ィ技 術 と微 細 エ ッチ ン グ技 術 は, 現 在 のLSI作
製 に際 して は10数
回 繰 返 し使 用 す る主 要 技 術 で あ り,こ れ らの
技 術 の精 度,位 置 合 せ精 度 お よ び 不 純 物 導 入 精 度 がLSIの
集積 度 を きめ て い
る とい え る。 そ の リソ グ ラ フ ィ技 術 の 原 理 的手 法 を図10・17に 示 す。 図10・17で の基 板 とは,エ
ッチ ング し よ う とす る材 料 の こ とで あ る。 リ ソ グ
ラ フ ィ に際 して は,ま ず そ の 基 板 を 良 く洗 浄 し汚 染 物 を 除 去 す る。 特 に,SiO2 を エ ッ チ ン グ し よ う とす る と き に は窒 素 中 で700∼800℃ 後 に洗 浄 し乾 燥 させ る。 次 に,感 光 性 有 機 高 分 子(ホ し,基 板 を 数1000rpmの 85℃ で約10分
速 さ で 回 転 さ せ,約1μmの
間加 熱 す る(図(a))。
の あ る ホ トマ ス ク(写 直 の 原 液)を し,ホ
で 加 熱 処 理 を行 っ た
トレ ジ ス ト)溶 液 を滴 下 膜 厚 に す る。 さ ら に
この ホ トレ ジス ト膜 に透 明 部 と不 透 明 部 あ て,こ
れ を通 し て紫 外 線 を 数 秒 間 照 射
トレ ジ ス トに光 化 学 反 応 を起 こ させ る(図(b))。
ホ トレ ジ ス トに は,
紫 外 線 を 照射 させ る と光 化 学 反 応 が 起 こっ て 感 光 部 が 不 溶 化 す るネ ガ 型 ホ トレ
*
(a)
( b)
図10・17
ジ ス ト*1と,光
(c)
(d)
リ ソグ ラ フ ィの原 理
化 学 反 応 で 高 分 子 を分 解 し て ア ル カ リ水 溶 液 に可 溶 化 す るポ
ジ 型 ホ トレ ジ ス ト*2と が あ る。 こ の 不 溶 化 した 部 分 を 残 し,可 溶 化 し た 部 分 を現 像 液*3で 取 り除 き,次
に シ ン ス 液*3で 定 着 さ せ る 。 こ の 残 っ た ホ トレ ジ
ス トを 固化 させ るた め135℃ で約30分 とポ ジ型 とで は,図(c)の
間 の 加 熱 処 理 を行 う(図(c))。
ネガ型
よ うに 残 留 さ れ る レジ ス トの位 置 が 逆 転 して い る こ
とに 注 意 さ れ た い。 この 残 留 した レ ジ ス トをホ トレジ ス ト ・パ ター ン とい い, これ を マ ス ク と して 基板 を エ ッチ ン グす る。 エ ッチ ン グ の後 に ホ トレジ ス トを 除去 剤(シ
ンナ ー系)で
取 り除 く。 この ホ トレ ジ ス ト ・パ タ ー ン形 成 まで の 工
程 が リソ グ ラ フ ィ技 術 で あ る。 (2) 性 能 お よび 精 度
リ ソグ ラ フ ィの 精 度 は,ホ
光 す る光 の 波 長 お よ び そ の 方 式 に よ っ て き ま る。1978年 め た16Kビ
ッ トの ダ イ オ ミ ッ クDAM(DRAM)のSiに
1 環 化 イ ソプ レン ゴム と感 光 剤 ビス ア ジス トの混 合 物* 2 フエ ノー ル ボ ラ ッ ク樹 脂 と ジア ジ ト化 合 物 の混 合 物 *3 現 像 液,リ ン ス液 は ホ トレ ジス トに指 定 され て い る。
トレ ジス トの材 料,露 ごろに量産 され は じ よ るLSIは,4∼5
μmの
値 を安 定 に確 保 す る加 工 技術 を基 準 に し て形 成 さ れ て い る。 この と き の
ホ トレ ジ ス ト に は ネ ガ 型 の 環 化 イ ソ プ レ ン ゴ ム 系 の レ ジ ス ト を 用 い,露 マ ス ク を 密 着 さ せ る 装 置 を 用 い て 露 光 し,薬 用 い ら れ た 。 そ の 後,マ 寿 命 が 延 び,露
品 に よ る ウ ェ ッ ト ・エ ッ チ ン グ が
ス ク材 料 が 高 分 子 材 料 か ら金 属 ク ロ ム に 替 りマ ス ク の
光 装 置 も自 動 化 しマ ス ク合 せ 精 度 が 向 上 した 。
こ の ネ ガ 型 ホ ト レ ジ ス タ は,ポ 強 く,エ
光 には
ジ 型 よ り感 度 も よ くSiO2に
ッ チ ン グ 薬 品 に 対 す る 耐 蝕 性 も 強 い 。 し か し,ネ
解 像 度 は 約 μmが
安 全 寸 法 で あ り,2∼3μm角
る こ と は で き な い 。64Kビ
対 す る密着性 も
ガ 型 ホ ト レ ジ ス トの
の 穴 を精 度 よ くエ ッ チ ン グ す
ッ ト のDRAmのLSIの
製 作 に は3μm以
工 精 度 を 安 全 に 確 保 し な け れ ば な ら な い の で,1981年
以 降 のLSIに
下 の加 は ホ トレ
ジ ス トを ネ ガ 型 よ り解 像 度 の よ い ポ ジ 型 に か え ら れ た 。 こ の ポ ジ 型 の ホ ト レ ジ ス ト は,SiO2に
対 す る 密 着 性 が 悪 く,機
械 的 衝 撃 に も ろ い 欠 点 が あ る た め,
露 光 装 置 は ウ エ ー ハ に マ ス ク を直 接 接 触 させ な い投 影 露 光 装 置 が 用 い られ て い る 。1984年
ご ろ よ り の256Kビ
ッ トDRAMのLSIの
の よ い 微 細 加 工 が 必 要 と な り,露
製 造 に は,さ
らに精度
光 装 置 は 自動 マ ス ク合 せ 機 構 を もつ 縮 小 投 影
露 光 装 置(1/2∼1/4倍)を
用 い る こ と に よ っ て,1.25μm幅
μmで
線 幅 の パ タ ー ン の線 画 き が で き る よ う に な った 。
形 成 で き,0.8μmの
そ の た め,2μmを
安 全 な 精 度 と し てLSIを
そ の 後,2000年
に は,DRAMは256Mビ
に な っ た 。 図10・18に
を 精 度 ±0.25
形 成 で き る よ う に な っ て きた 。 ッ ト に な り,加
工 線 幅 は165nm
加 工 線 幅 の 年 次 推 移 を示 す 。 年 に対 し指 数 関 数 的 に微 細
化 し て い る こ と が わ か る 。 現 在 の と こ ろ,こ
の 微 細 化 に は,バ
ル ク か らパ タ ー
ン を 加 工 し て い く ト ッ プ ダ ウ ン 法 が 用 い ら れ て い る 。 し か し,こ 加 工 線 幅 の 限 界 は,50nm程
度 と も い わ れ て い る 。 一 方,原
子,分
の 方 法 で は, 子 か らナ ノ
構 造 を 組 み 立 て る ボ トム ア ッ プ 法 は ナ ノ オ ー ダ ー の 加 工 が 可 能 な こ と か ら,ト ッ プ ダ ウ ン 法 に か わ る ナ ノ テ ク ノ ロ ジ ー と し て 期 待 さ れ て い る 。 第9章
で述べ
た 半 導 体 ナ ノ デ バ イ ス の 作 製 に は こ の ボ トム ア ッ プ 法 が よ く用 い ら れ て い る 。 表10・5に
は,露
光 シ ス テ ム 光 源,マ
の 精 度 な ど を示 し て あ る。
ス ク 材 料,レ
ジ ス ト材 料 に 分 類 し,各
々
図10・18 加 工 線 幅 の年 変 化*
(3) 微 細 エ ッ チ ン グ 技 術
リ ソ グ ラ フ ィ技 術 で,2μm以
下 の線幅 を精
度 良 く作 成 す る よ う に要 求 され る と,液 体 薬 品 に よ る ウ ェ ッ ト ・エ ッチ ン グ 法 はエ ッチ ン グ精 度 が 不 足 し,特 に 多 結 晶Siに 対 す る精 度 が 悪 く好 ま し くな る。 この た め グ ロー 放 電 に よ っ て励 起 され た 分 子 また は原 子 の重 合 化 学 反 応 に よ る プ ラズ マ ・エ ッチ ング 技 術 が必 要 とな る。 この プ ラ ズ マ ・エ ッチ ン グ 方 式 の ほ か に スパ ッタ 方 式 とイ オ ン ・ビー ム 方 式 とが知 られ て い るが,後 者 の2つ
の 方 式 は選 択 性 が 悪 い う え に エ ッ チ ン グ速 度
が 遅 く,エ ッ チ ン グ さ れ た 原 子 が 再 び 元 の位 置 の近 傍 に 付 着 す る の で ,1μm 以 下 の精 度 よ い加 工 法 に は プ ラ ズ マ ・エ ッチ ング 方 式 が 多 く用 い られ る。 こ の 放 電 に 用 い る分 子 に は,化 学 的 に 活 性 化 しや す い ガ ス のCF4,CCl4,BCl3な どが 用 い られ る。 放 電 に よ っ て励 起 さ れ た これ らの 分 子 に よ る化 学 反 応 を利 用 して エ ッ チ ング す る と,加 工 材 料 は揮 発 性 の 分 子 とな っ て除 去 で き る の で ,再 付 着 が起 こ りに く く加 工 速 度 も早 い 。 そ の た め,プ
ラ ズ マ ・エ ッチ ン グ は微 細
な加 工 に 適 した 方 式 とい え る。 この 方 式 でSiO2に
穴 を あ け る と き に は1μm
* 米 国
,半
導 体 工 業 会(SIA)「
国 際 半 導 体 微 細 加 工 ロ ー ドマ ッ プ2001版
」
表10・5
露光 シス テム
*研 究段 階 の方 式
以 下 の 誤 差 精 度 で 穴 を 形 成 で き る 。 ま た,Siや ど)も1μm以 る 。 ま た,こ 11〉
下 の 精 度 で 加 工 で き る の で,超
け い 素 化 物(MoSi2, WSi2な 微 細 加 工 に は 不 可 欠 な技 術 で あ
の エ ッ チ ン グ 方 式 に よ れ ば,Siの〈100〉
結 晶 面 よ り も 数 倍 速 くエ ッ チ ン グ で き る の で,Siの
結 晶 面 の ほ う が〈1 表 面 にV形
の 溝 を形
成 さ せ る こ と もで き る 。 こ の プ ラ ズ マ に よ る エ ッ チ ン グ は そ の 速 度 が 一 般 に 早 く,い 用 い て200Wの
高 周 波 で 放 電 さ せ る と, SiやSi3N4に
の 深 さ に エ ッ チ ン グ す る こ と が で き る 。 し か し,SiO2に
まCF4ガ
対 し て 約1分
ス を
で0.1μm
対 して はエ ッチ ング
速 度 が 極 め て 遅 く,1分
間 で0.001μm程
度 しか エ ッチ ング で き な い こ とは 注
意 す べ きで あ る。 (4) 配 線 形 成 技 術
こ こ で は 集 積 回 路,特
にSiモ
ノ リシ ッ ク集 積 回 路
に お け る配 線 の 形 成 法 につ い て 述 べ る。 配 線 用 の 材 料 に は,一 般 にAl系 金 が 用 い られ る が,近 年 はMOSト はMoやTaな
の合
ラ ン ジス タ の ゲ ー トに 接 す る 部 分 の 配 線 に
どの け い 素 化 物 が 用 い られ る こ とが あ る 。
Alは 抵 抗 率(10-6Ω ・cm)が 低 い うえ にSiO2に 着 法 で 丈 夫 で 薄 い(約1μm)膜
対 す る付 着 力 も強 く,真 空 蒸
を容 易 に形 成 で き る し,精 度 の よ い エ ッ チ ン
グ が しや す い 。Al薄 膜 の純 度 を よ く形 成 す る に は,Alを て 蒸 発 させ る 電 子 ビー ム 蒸 着 法 が 用 い られ る が,近 Al膜 の 断 線 を少 な くす る た め に,プ
電 子 ビー ム で加 熱 し
年,段
差 のあ る部分 での
ラ ズ マ 放 電 を利 用 して 蒸 着 させ る ス パ ッ
タ 法 が 用 い られ て い る。 線 幅 が5μm程
度 の 集 積 回 路 の 配 線 を形 成 す る と き に は,純 度 の 良 いAlを
真 空 蒸 着 して リソ グ ラ フ ィ技 術 で配 線 部 分 の み を残 して エ ッチ ン グ した の ち, 密 着 性 な どを 良 くす るた め450℃ で30分
間 の 熱 処 理 を行 う。 し か し,集 積 回
路 の 集 積 密 度 を高 め る の に微 細 化 を さ らに 進 め る に は,pn接 1μm以
合 面 を表 面 か ら
下 の 浅 い 深 さ に形 成 す る よ う に な る。 接 合 面 が こ の よ う に 浅 くな る
と,配 線 用 のAlがSiと
部 分 的 に合 金 化 して そ れ が 接 合 面 に 達 す る現 象 が 起
き や す く,接 合 の 破 壊 を起 こ す 原 因 とな る。 この た め,pn接 る 最 近 のMOSト
ラ ン ジ ス タ に よ るLSIで
材 と して 用 い て,こ
含 むAlを
配線
の破 壊 現 象 を さ けて い る。
接 合 の 深 さ が さ ら に 浅 く0.3μm以 Siの 間 にSiと
は,1∼2%のSiを
合 が 浅 く作 られ
下 の 深 さ に 形 成 さ せ る と き に は,Alと
合 金 化 し に くいW,Cr,Tiな
とされ て い る。 また,集
どの 膜 を介 在 さ せ る 必 要 が あ る
積 回 路 の線 幅 が 狭 くな る と,配 線 中 を 流 れ る電 流 密 度
が 高 くな り,配 線 の 温 度 が 上 昇 し,配 線 の構 成 原 子 の移 動 現 象(マ
イ グ レー シ
ョン現 象)を 生 じて 断 線 を生 じや す くな る。 この マ イ グ レ ー シ ョ ン現 象 や ア ロ イ ・ビ ッ ト現 象 に よ る 劣 化 を さ け る た め に,配
線 材 料 と し て 抵 抗 率 が3∼4μ
Ω・cmと 高 い に も か か わ ら ず,Al
+Si(1%)+Cu(0.25∼0.5%)の
合 金 や,SiとTiを
含 むAl合
金 が配 線 材 料 と
し て使 用 され る。 ま た,MOS形
ト ラ ン ジ ス タ の ゲ ー ト電 極 に は,CVD法
抵 抗30∼40Ω/□
の 多 結 晶Siが
よ く 用 い ら れ て い る 。 こ の ゲ ー ト電 極 の 抵 抗
に よ る 回 路 の 遅 延 時 間 を 短 くす る た め,最 シ リ コ ン との2層(ポ
TiSi2(20μ
Ω ・cm)を
近 は耐 熱 性 金 属 け い素 化 物 と多結 晶
リサ イ ド;polyside)構
と し て はMoSi2(40μ
で 形 成 さ れ る面 積
造 が使 わ れ て い る 。 け い 素 化 物
Ω ・cm),WSi2(30μ 用 い て,多
Ω ・cm),TaSi2(50μ
結 晶Siゲ
Ω ・cm),
ー トの 構 造 の 抵 抗 値 を1/10∼1/30
に低 減 して い る。 な お,配
線 と し て の 金 属 薄 膜 やSiO2薄
り ん ガ ラ ス(PSG)を450℃ る 手 法 がSi集
10・5
膜 を 保 護 す る た め に,こ
の 低 温CVD法
で0.5μm程
度 の 厚 み に 形 成 させ
積 回 路 で は よ く用 い ら れ る 。
集積 化技 術
近 年 の エ レ ク ト ロ ニ ク ス 部 品 は ま す ま す 小 型 化 さ れ,内 回 路 は 高 密 度 化 を 要 求 さ れ て い る 。Siを 1970年
に は1チ
年 に は25万
個 に な り,2000年
の 法 則 に よ る と,集
に は,1チ
き る よ う に な る の で,あ
で あ っ た の に 対 し,1980
ッ プ 当 り4000万
示 す 。 こ れ は,ム
積 密 度 は18∼24ヶ
品 は 集 積 化 さ れ る と性 能 が 高 くな り,信
部 に使 用 さ れ る電 子
用 い た 集 積 回 路 は 極 め て 発 達 し,
ッ プ 当 り ト ラ ン ジ ス タ の 数 が2000個
な っ た 。 こ の 関 係 を 図10・19に り,こ
れ らの 上 に
個 を越 える よ う に
ー ア の 法 則 と して 知 られ て お
月 で2倍
に な る と い う。 電 子 部
頼 性 も高 ま る う え に低 価 格 に て 製 作 で
らゆ る電 子 部 品 は ます ます 集 積 化 の 傾 向 を 強 め て い
る 。 こ の よ う に 数 多 く の 固 体 回 路 素 子 を一 体 に 構 成 し 機 能 化 す る こ と を 一 般 的 に 集 積 化 技 術 と い う 。 こ の 集 積 化 の う ち 特 に 発 達 の 著 し いSi半 積 化 を具 体 例 を用 い て説 明 す る。
導体 に よる集
図10・19
集 積 密 度(1チ
ッ
プ 当 り の トラ ン ジ ス タ の 数)の
(a)原
(c)最 近 の接 合分 離
理
(b)pn接
図10・20
年 変 化*
合 分離
集 積 回 路 の 分 離 法(ア
イ ソ レ ー シ ョ ン)
〔1〕 半 導 体 集 積 化 の 原 理 と基 礎 技 術 半 導体 素 子 を 集 積 化 す る に は,同 一 基 板 上 に 多 くの 構 成 素 子 を 形 成 し,か つ,絶 縁 して あ る構 造 に しな け れ ば な ら な い 。 そ の た め に は,図10・20(a)の * 米 国,半 導 体 工業 会(SIA)「
国 際 半 導体 微 細 加 工 ロ ー ドマ ップ2001版 」
よ う に,絶 縁 物 の 中 に 半 導 体 を埋 め 込 ん で お き,そ の半 導 体 に 素 子 を形 成 す れ ば 集 積 化 で き る。 し か し,Siを
基 板 に 用 い る集 積 回 路 で は,Si基
ハ)を 絶 縁 物 に近 い 導 電 率 に は形 成 で き な い 。 そ こで,図(b)の 合 を形 成 し,そ れ に 逆 バ イ アス 電 圧 を加 えれ ば,n形 導 通 させ な い の で,相
エー
よ う にpn接
部 分 は 相 互 間 で は電 流 を
互 に独 立 した 半 導 体 と見 な し う る。 こ の独 立 した 部 分 を
ア イ ラ ン ド(island)と 離(ア
板(ウ
呼 び,こ
こ に 素 子 を形 成 す る。 こ の 方 法 をpn接
イ ソ レ ー シ ョ ン;isolation)と
合分
い い,半 導 体 を用 いた 集 積 化 に は この 方
法 が 多 く用 い られ て い る。 これ らの こ とは す で に第5章
で 述 べ た こ とで あ る。
しか し,集 積 密 度 が 高 くな る と短 い距 離 で ア イ ラ ン ドの 相 互 の独 立 性 を高 く保 つ た め,ア イ ラ ン ド間 に 絶 縁 物 を形 成 し,さ ら に そ の 下 部 にp+層 分 離 を良 くす る構 造 に す る(図(c))。
図10・21
Si表 面 に 形 成 さ れ るSiO2の
(1000℃ 加 熱 ・ドライ… ウ ェ ッ ト…
成表
乾 燥酸 素1気 圧 水 蒸 気1気 圧)
を形 成 し,
(a)選
択 熱拡 散
(b)選
択 イオ ン打 込 み
図10・22 選 択 的不 純 物 導入 法
この よ う に部 分 的 に ア イ ラ ン ドを形 成 す る に は,ま ずSiの
表 面 にSiO2を
くる必 要 が あ る。Siを 酸 素 や水 蒸 気 中 で加 熱 す る と表 面 は酸 化 さ れ,薄 丈 夫 なSiO2膜 度1000℃
に な る。 乾 燥 し た酸 素1気 圧 中 お よ び水 蒸 気1気
で処 理 し た と き に形 成 され るSiO2の
つ くて
圧 中 で加熱 温
膜 厚 と時 間 の 関 係 を図10・21に
示す。 Si表 面 にSiO2の
膜 を厚 く形 成 す る と き は水 蒸 気(ウ
ェ ッ ト)を 用 い る が,
通 常,選 択 的 に不 純 物 を熱 拡 散 し よ う とす る とき に は,乾 燥 し た酸 素 雰 囲気 で 加 熱 して で き る厚 み0.1∼0.5μmのSiO2膜
を マ ス ク と し て 用 い る。 この マ ス
ク材 のSiO2は
リ ソ グ ラ フ ィ技 術 で 図10・22(a)の
よ う に 窓 を あ け る。 不 純 物
元 素 がSiO2を
熱 的 に 拡 散 す る 速 さ はSiに 対 す る速 さ よ り極 め て 遅 い の で,
SiO2の あ る部 分 に は不 純 物 は 浸 透 し な い と み な さ れ る 。 従 っ て,窓
の部 分 の
み に不 純 物 元 素 が 浸 透 し,pn接
オ ン打 込
合 分 離 部 分 を形 成 で き る。 な お,イ
み法 で 選 択 的 に不 純 物 を 浸 透 させ る と きの マ ス ク と して は厚 め の ホ トレ ジ ス ト を用 い な けれ ば な ら な い 。 図10・20(c)に
示 す 分 離 を行 うに は選 択 的 に 酸 化 す る技 術 が 必 要 で あ る。 こ
の酸 化 層 分 離 の 工 程 を 図10・23に 示 す 。 ま ず,Siの にSi3N4膜
を 形 成 さ せ る(図(a))。
(図(b))。
酸 素 雰 囲 気 で 加 熱 処 理 を行 う と,SiN4の
表 面 を酸 化 さ せ,そ
の上
これ に リ ソ グ ラ フ ィ を 用 い て 窓 を あ け あ る と こ ろ は酸 素 が 透 過
(a)
(c)酸
(b)ホ
トエ ッ チ ン グ
図10・23
(d)Si3N4と
Si3N4膜
Oxidation
のSiO2部
of
Silicon
の 相 互 間 は 数 μmの
間 隔 が あ り,そ
厚 さで あ
の 部 分 に トラ ン ジ ス タ を oxidation
of
とい う。
〔2〕Si集 (1)
その の ち
残 さ れ た 酸 化 層 は 約1μmの
形 成 す る 。 こ の 選 択 酸 化 法 に よ る 分 離 をロ コ ス(Locos;local silicon)法
去
の 部 分 の み 深 く酸 化 さ せ る こ と が で き る(図(c))。
の 部 分 を 除 去 す る(図(d))。
り,こ
薄 いSiO2除
選 択 酸 化 法(Locos) (Local
し な い の で,窓
化工 程
積回路 の形成法
バ イ ポー ラ トラ ン ジ ス タ を 用 い た 集 積 回 路
く用 い ら れ るnpnバ
代 表 例 と して 非 常 に 多
イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ を 用 い た 集 積 回 路 の 形 成 工 程 を 図
10・24に 示 す 。 ダ イ オ ー ド は エ ミ ッ タ とべ ー ス ま た は べ ー ス と コ レ ク タ を 使 用 し,抵
抗 素 子 と し て は 面 積 抵 抗 が200Ω/□
の べ ー ス 部 を所 用 の 形 状 に 形 成 し
て 用 い られ る。 い ま,電
源 と し て 電 圧24Vの
よ う 。 ま ず,24Vよ
電 池 を使 用 す る集 積 回 路 を構 成 す る こ とに し
り高 い 降 伏 電 圧 を も つ ア イ ラ ン ド部 を 形 成 す る こ と が 必
要 で あ る 。 こ の た め,Si基
板 に は10Ω
・cmのp形Siを
用 い,そ
の 上 に0.5
Ω・cmのn形
層 を約20μm積
のnonpは
約50Vの
らせ た,nonpと
い う ウエ ーハ を使 用 す る。 こ
降伏 電 圧 を もつ の で,こ
れ に24Vの
逆 方向電 圧 をアイ
ソ レ ー シ ョン の た め加 え て 使 用 す る こ とが 可 能 で あ る。 こ のnonpの
ウ エ ーハ のn形 層 の表 面 に約0.5μmの
る(図10・24(a))。
形成 す
層 を形 成 す る 部 分 のSiO2を
リソグラ フ
ィで 取 り除 き,p形
不 純 物 元 素 を 熱拡 散 技 術 で 導 入 さ せ 基 板 のp形
部 まで 浸 透
させ る(図(b))。
このp形
(a)npのSi基
分 離 の た め のp形
厚 み のSdO2を
層 と基 板 のp形 部 で 囲 ま れ たn形
板 の表 面 酸 化
n:0.5Ω・cmエ
(d)n+形
ピ タキシ ャ ル
部分 が分 離 され
をべー ス 層 に つ く り,
エ ミッ タ に す る。
p:10Ω ・cm基 板
コ レ ク タ部 にn+層
を つ く り,
端 子 とす る(2μm)。
(b)SiO2を
ホ トエ ッ チ ン グ で 窓
を あ け,分 離 用 のp形
層 をつ
くる。
(e)エ
ミ ッ タ,べ ー ス,コ レ ク タに 端 子 用 窓 を あ け,Alを て 電 極 用 配 線 とす る。
(c)コ
レ ク タ 層 にp形
を 熱 拡 散 し,
べ ー ス と す る(3μm)。
図10・24 バ イ ポー ラ トラ ンジ ス タ に よ る集 積 回 路 の 形成 法 (基板nonpのSi)
蒸着 し
てア イ ラ ン ドに な る 。 こ の ア イ ラ ン ド部 が コ レ ク タ 部と して 動 作 す る 。 こ の ア イ ラ ン ド のn形
部にp形
散 し,約3μmの
深 さに 浸 透 さ せ る(図(c))。
る 。 こ の べース μmの
不 純 物 を ア イ ラ ン ド形 成と 同 じ よ うに 選 択 的に 熱 拡
部に 同 じ 方 法 でn形
厚 みに 形 成 し(図(d)),エ
層に つ く ら れ た2μmのn形
こ れ が べース
部と
して 動 作 す
不 純 物 を 濃 く選 択 拡 散 さ せてn+層 ミ ッ タ 部と す る 。 べース
層 の 残 り の1μmの
を2
部は3μmのp形
厚 み の 部 分 が べース
部と して
機 能 す る。 次に,配 SiO2に
線Al膜
を エ ミ ッ タ,べース,コ
窓 を あ け た の ち 約1μmの
配 線 部 の み 残 す 。 そ の う ち450℃ SiO2と
レ ク タ の 各 部に 接 続 さ せ る た めに
厚 みにAl膜 で30分
を 蒸 着 し,リ
ソ グ ラ フ ィ技 術 で
間 加 熱 処 理 を 行 い,Al層
を 焼 結 して
も 良 くな じ ま せ る(図(e))。
さ らに,Al層
の 配 線 を 保 護 す る た め り ん ガ ラ ス(PSG)の
面に 形 成 し,ボ
ン デ ン グ パ ッ トと 呼 ば れ るAl配
膜 をウエ ー ハ全
線 の 端 子 部 の みはAl膜
を露
出 さ せて お く。 こ の ウ エ ー ハ を 分 割 して ペ レ ッ トに 形 成 し,こ
れ を ケ ー スに マ
ウ ン ト し,ケ
を 用 いて ボ ン デ
ー ス の 端 子と ボ ン デ ィ ン グ パ ッ トと を 細 いAl線
ィ ン グ して 接 続 す る 。 (2)MOSト
ラ ン ジ ス タに よ るLSIの
形成 法
MOSト
ラ ン ジ ス タは デ
ィ ジ ル タ ル 信 号に よ る ス イ ッ チ ン グ 動 作 を さ せ る のに 適 して お り,バ トラ ン ジ ス タ よ り もは る かに 小 面 積に 形 成 で き る の で,デ メ モ リ 回 路 の 大 規 模 集 積 回 路LSIを
よ る ゲ ー ト電 極 でnチ
説 明 す る 。 こ の 構 造は,64Kお
ィ ジ タ ル 論 理 回 路,
形 成 す る のに 適 して い る 。MOSト
ス タ の 構 造には 多 くの 種 類 が あ る が,最 多 結 晶Siに
近 多 く用 い ら れ る 酸 化 物に
ャ ネ ル 形 のMOSト よ び256Kビ
基 板には,結
抗 率10Ω
を 行 う た め 表 面 を 酸 化 し た の ち,そ ラ ン ドと して 用 い る 部 分 の みSi3N4を そ のSi3N4の
よ る 分 離,
ッ トのDRAMのLSIに
そ の 形 成 法 の概 略 を示 す 。
〈100〉,抵
ラン ジ
ラ ン ジ ス タ を 例に
れて い る も の で あ り,図10・25に 晶軸
イ ポー ラ
・cmのp形Siを
の 上にSi3N4を
用 い,酸
形 成 す る(図(a))。
残 して エ ッ チ ン グ してSi3N4を
上に の み 厚 い ホ ト レ ジ ス トを 付 着 さ せ,こ
して
用 い ら
化 層分離 ア イ 除 去 し,
れ を イ オ ン打 込 み の マ
(a) 基 板 <100>10Ω
・cmp形
SiO2(0.05μm)形
域
Si3N4(0.15μm)形
域
(e)ポ
リシ リコ ン膜 成 長(ゲ
ー ト)
(b) Si3N4を ホ トエ ッチ ン グ(プ ラ ズマ)レ ジ ス トをマ ス クに して, Bイ
オ ン打 込 み(分
(f)ポ
離 補 助 用)
リ シ リコ ン をマ ス ク と して ソ ー ス と ドレ ィ ン 部 形 成 PSG膜 形 成(0.5μm) リー ド線 用 窓 あ け
(c)選
択 酸 化 ホ
ト レ ジ ス ト,Si3N4,SiO2
除 去
(g)Alの
配 線(1.5μm)
保 護 膜PSG(0.8μm)端
子用
窓 あけ (d)ゲ
ー ト酸 化(0.07μm) チ ャ ネ ル 制 御,り ん イ オ ン 打 込 み
図10・25
nチ
ャ ン ネ ル シ リ コ ン ゲ ー トMOS
LISの
形成法
(酸 化 層 分 離 法)
ス ク と し て 使 用 す る 。 次 に,100keVに
加 速 し たBイ
オ ン を2×1013 cm-2の
量 だ け 全 面 に 打 込 む 。 加 速 さ れ た イ オ ン は ホ ト レ ジ ス ト を 透 過 し え な い が, SiO2は をp+層
容 易 に 透 過 す る の で,SiO2の に す る 。 こ のp+層
部 分 は イ オ ン が 透 過 し,基
が 分 離 の 補 助 と し て 役 立 つ 。(図(b))。
板 のSiの
表 面
次 に,ウ
ェ ッ ト な 酸 素 雰 囲 気 中 で1000℃
と こ ろ の み に 約1μmの
厚 み のSiO2を
ト レ ジ ス ト,Si3N4,SiO2を
割 合)雰 厚 み の 丈 夫 なSiO2膜
ト レ ジ ス トで 覆 い,100keVの ー ト の し き い 値 電 圧Vthを (d))。
形 成 し た の ち,ア
除 去 す る(図(c))。
+O2+HCl(2:1:0.1の い,0.07μmの
の 加 熱 処 理 を 行 っ てSi3N4の
Si基 板 に 浸 透 さ せn+層 に,SiO2な
り ん イ オ ン を5×1011cm-2の 制 御 し,nチ
で20分
のCVD法
形 成 す る(図
で0.4μmの
間 の 加 熱 処 理 を 行 い,薄
厚 み に形
滑 化 を 行 っ て 薄 いSiO2の は2%のSiを
ー ス,ド
厚 さ に 形 成 し,ボ
透 して
厚 み に 付 着 さ せ,90℃
レ イ ン お よ び ゲ ー トの 配 線 接 続 ら に1050℃
で30分
間 の加 熱 処 理
保 護 膜 を 形 成 す る(図(f))。
含 ん だAlを
用 い て1.5μmの
エ ッ チ ン グ で 配 線 部 分 の み 残 し た の ち,450℃ を 焼 結 さ せ る 。 さ ら に,配
いSiO2を
れ ら を ソー ス と ドレ イ ン に す る。 次
ん ガ ラ ス を0.5μmの
間 の 加 熱 処 理 を 行 っ た 後,ソ
配 線 用Alに
Al膜
量 だ け 打 込 み,ゲ
ャ ネ ル 層(p-層)を
を 形 成 さ せ て,こ
ど の 保 護 の た め,り
を 行 い,平
μmの
間 の加 熱処 理 を行
を 形 成 す る 。 こ の ア イ ラ ン ド部 以 外 を ホ
に 用 い る 部 分 の み り ん ガ ラ ス に 窓 を お け,さ
Al層
で12分
ソ グ ラ フ ィ技 術 で ゲ ー ト部 の み 残 す 。 ソ ー ス 部 と ド レ イ ン 部 に の み り
ん 化 合 物 を 付 着 さ せ,950℃
で30分
イ ラ ン ド部 に あ る ホ
ゲ ー ト部 形 成 の た め に はH2
囲 気 中 で950℃
ゲ ー ト電 極 に す る 多 結 晶Siを640℃
成 し,リ
な い
線 のAl膜
で30分
厚 み の 膜 を 形 成 し, 間 の 加 熱 処 理 を 行 い,
を 保 護 す る た め,り
ん ガ ラ ス を0.8
ン デ ィ グ パ ッ ト部 な ど 所 用 の 部 分 の み エ ッ チ ン グ し て
を 露 出 さ せ て お く(図(g))。
初 期 のMOS形 た が,微 SIの
集 積 回 路 の 製 法 は 初 期 の バ イ ポ ー ラ 集 積 回 路 よ り単 純 で あ っ
細 化 に 伴 っ て 次 第 に そ の 工 程 を 増 加 し た た め,以
上 の よ う にMOSL‐
近 年 の 工 程 は極 めて 複 雑 にな っ た の で あ る。
(3)
GaAsに
よ る集 積 回 路 の 形 成 法
GaAsに
よ る 集 積 回 路 は,Siに
る 集 積 回 路 ほ ど 集 積 密 度 を 高 く す る こ と は で き な い 。 し か し,移 がSiよ
り大 き い の で,高
よ
動 度 の大 き さ
周 波 特 性 が 良 く高 速 ス イ ッ チ 動 作 が 可 能 で あ る た め,
マ イ ク ロ 波 領 域 で の 特 殊 な 分 野 で 使 用 さ れ て い る。 ま た,GaAsの の 表 面 の よ う に 酸 素 中 で 加 熱 処 理 し,丈
表 面 はSi
夫 な酸 化 物 を形 成 さ せ る こ とが で き な
図10・26
GaAsのIC用FET素
子
(シ ョ ッ トキ ー 形 パ ン チ ス ル ー 防 止 用p層
形 成(B+の
打込み
ゲ ー ト長 は0.6μm)
い 。 この た め,MOS形 10・26の よ うに,ゲ
の トラ ジ ス タ を 形 成 さ せ る こ と は で き な い の で,図 ー ト部 は表 面 障 壁 型(シ
る。 集 積 に必 要 な絶 縁 物 はCVD法
ョ ッ トキ ー 形 障 壁)に
で形 成 させ る しか な い の で,Siの
して 形 成 す よ うに 集
積 密 度 を高 め る こ とが で きな い の が 現 状 で あ る。 しか し,今 後 の光 信 号 を対 称 とす る光 電 子 集 積 回 路 に は,こ
のGaAsを
用 い た 集 積 回 路 の 技 術 は 大 きな 貢
献 を す る もの と思 わ れ る。
10・6 半 導 体 材 料 の 評 価 法
この 節 で は,半 導 体 材 料 の基 本 的 な特 性 を求 め る 測 定 方 法 の 概 要 につ い て述 べ る。
〔1〕 抵 抗 率 図10.27(a)に
示 した よ うな 断 面 積Sの
試 料 を 作 り,両 端 に 電 流 を 流 す た
め の オ ー ミ ッ ク電 極 を つ け,側 面 に 間 隔lで2本 降 下Vを
測 定 す る 。 試 料 に流 れ る 電 流 をIと
の 探 針 を立 て,こ の 間 の 電 圧 す る と,こ の 材 料 の 抵 抗 率 ρ
(a)
(b)
(c)
(d)
(e) 図10・27 固有 抵 抗 の 測定 法
は,次
式 か ら求 め られ る。 (10・1)
抵 抗 率 の 温 度 依 存 性 を測 定 す る場 合 な ど,電 圧 測 定 用 の2探 針 を よ り安 定 な もの とす る に は,図10・27(b)に
示 す 形 の試 料 に電 圧,電
流端 子 ともに合金型
の 電 極 を つ けた もの を 用 い れ ば よ い。 一 般 に,抵 抗 率 とホ ー ル 係 数 の 測 定 は,同 く,こ の た め に は 同 図(c)の
じ試 料 を用 い て 行 わ れ る こ とが 多
形 に整 形*し た 試 料 が 用 い ら れ る。 図10・27(d)
に 示 した4探 針 を用 い る方 法 は,半 導 体 ウエ ー ハ を特 に加 工 す る こ とな く測 定 で き る特 徴 を もち,ウ エ ー ハ 内 の抵 抗 率 の 分 布 の測 定 等 に利 用 され て い る。 こ の 方 法 で は,先 端 を細 く(∼0.5mmφ)加 等)を
工 し た 金 属 線(タ
ングス テ ン
ウ エ ー ハ に押 しつ け測 定 す る。 各探 針 の 間 隔lに 比 べ 試 料 の 寸 法 が十 分
に 大 き い と き,抵 抗 率 は次 式 で与 え られ る。 (10・2)
一般 に
,半
導 体 ウ エ ー ハ の 厚 みdは,そ
れ ほ ど 厚 く は な い の で,こ
の 場 合 は, (10・3)
こ こで,補 正 因 子F(d/l)は,図10・27(d)に
示 した値 を と る。
試 料 内 の 抵 抗 率 の 分 布 を4探 針 法 よ り細 か く測 定 で き る方 法 に 広 が り抵 抗 法 が あ る。 この 方 法 で は,試 料 の 裏 面 全 体 に電 極 をつ け,表 面 に1つ の探 針 を圧 着 して 測 定 す る(図10・27(e))。 探 針 の 先 端 の形 状 が,図
に 示 し た よ う に,平 た い 円状 か 半 球 状 か に よ り,抵
抗 率 は 次 式 で 求 め られ る。 記 号 は同 図 を参 照 。 (平 た い 円 状) (半 球 状)
(10・4) (10・5)
以 上 の抵 抗 率 の測 定 で 電 極 の つ け方 は 特 に重 要 で あ る。 電 極 は オ ー ム性 接 触 * 一 般 に超 音 波 加工 が用 い られ る
。
をす る こ とが 好 ま し く,整 流 性 が あ る と少 数 キ ャ リア の 注 入*な
ど に よ り抵 抗
率 が 見 掛 上 変 化 す る 。 一 般 に,適 当 な 金 属 を 用 い た 合 金 型 の電 極 に よ り整 流性 は か な り小 さ くな る。 この と き電 極 材 料 と して 選 ばれ る金 属 と し て は,試 料 が n形 で あれ ば ドナー 準 位 を作 る金 属,p形
な らア クセ プ タ準 位 を作 る金 属 が 良 い。
〔2〕 キ ャ リア の 濃 度 と移 動 度 と寿 命 第8章
で述 べ た ホ ー ル 効 果 の実 験 が 半 導 体 材 料 の 特 性 づ け の た め に よ く行 わ
れ る。 ホ ー ル 電 圧 の 符 号 か ら試 料 の 伝 導 形(p形,n形)の リア が1種
類 の と き は,ホ ー ル 係 数RHは
キ ャ リア密 度nに
こ の 関 係 か ら キ ャ リア 密 度 を 知 る こ とが で き る。 ま た,先
判 断 が で き,キ
ャ
反 比 例 す る の で, に示 した抵抗 率 ρ
の値 と組 み 合 せ る こ とに よ り,キ ャ リアの 移 動 度 μ(=1/(qnρ))の 値 が わ か る。 この 方 法 で 求 め た 移 動 度 は,次 に述 べ る電 気 伝 導 か ら求 め た移 動 度 と は少 し異 な る の で,ホ ー ル 移 動 度 と呼 ば れ るが,こ
の こ と につ い て は す で に第8章
で述
べた。 図10・28に お い て,n形
半 導 体 に立 て た フ ィ ラ メ ン ト電 極Eか
少 数 キ ャ リア を注 入 す る と,キ
ャ リ ア は右 側 に移 動 し て行 き電 極Cに
図10・28 キ ャ リア の移 動度 と寿 命 の測 定 * 第3章2・7節
参照
らパ ル ス 的 に 達 す る。
この とき オ シ ロ ス コー プ に は,図 が電 極Eで
に示 した よ うな 波 形 が観 測 さ れ る。 キ ャ リア
注 入 さ れ て か ら電 極Cに
達 す る ま で にt2-t1の
時 間 が か か る の で,
これ をl/(μE)と お き,移 動 度 μ を求 め る こ とが で きる。 た だ し,Eは
試料 中
の電 界 で あ る。 この よ うに し て求 め た 移 動 度 は伝 導 度 移 動 度 で あ る。 また,パ ル ス が 切 ら れ(t3)て か ら,正 孔 はp=p0exp(-t/τhで れ が 電 極Cに
減 衰 す る と す れ ば,そ
到 達 す る時 刻t4以 後 の 波 形 か ら正 孔 の 寿 命τhを 知 る こ とが で き
る。 この ほ か に キ ャ リア の 寿 命 を求 め る方 法 と して は,試 料 全 体 に パ ル ス 光 を照 射 し光 電 流 の減 衰 か ら求 め る方 法,試
料 の 一 部 で 光 励 起 した キ ャ リア の 拡 散 に
よ る濃 度 分 布 を試 料 表 面 に立 て た コ レ ク タ電 極 の 電 位 で測 定 し,こ れ か ら拡 散 長Lを
求 め,L=√Dτ(Dは
合 を利 用 す る 方 法,赤
〔3〕 禁 止 帯 幅,不
拡 散 係 数)よ
り寿 命 を求 め る方 法,そ
の 他pn接
外 光 の 吸 収 に よ る方 法 等 が 知 られ て い る。
純 物 準 位,フ
ェ ル ミ準 位
一 般 に,伝 導帯 や 価 電 子 帯 の キ ャ リア 密 度nの
温 度Tに
対 す る依 存 性 は,
図10・29 キ ャ リア 密 度 の 温度 依 存 性
n0exp(-E/kT)の
形 と な る(第2章
参 照)。 従 っ て,ホ
ー ル 効 果 か ら求 め た
キ ャ リア 密 度 の 温 度 依 存 性 を 図10・29の よ う な グ ラ フ で 表 せ ば,そ -E /kと な る。 真 性 半 導 体 の 場 合,EはEg/2(Eg:禁 た,p形
お よ びn形
半 導 体 の 場 合,Eは
止 帯 幅)に
そ れ ぞ れEc-Efお
の傾 きは
等 しい。 ま
よ びEf-Evに
等 し く,十 分 に低 い 温 度 で は,こ れ ら は(EC-ED)/2,(EA-EV)/2に
等 しい
(第2章 参 照)。 移 動 度 の温 度 依 存 性 は キ ャ リア 密 度 の 温 度 依 存 性 に比 べ 小 さい の で,伝
導 率 σの 温 度 依 存 性 の 測 定 か ら,上 記 の エ ネ ル ギ ー を求 め る こ と も し
ば しば 行 わ れ る。 第8章
で 示 した ゼ ー ベ ッ ク 係 数Sは,フ
を反 映 した 量 で あ るの で,ゼ
ェ ル ミエ ネ ル ギ ー
ー ベ ック係 数 の温 度 依 存 性 か ら も これ らの エ ネ ル
ギ ー 準 位 を求 め る こ とが で き る。 ま た,禁 止 帯 幅 は第6章
で 示 した よ う に,試
料 の 吸 収 ス ペ ク トル の 呼 収 端 か ら も求 め られ る。
〔4〕 結 晶 性 の 評 価 (1) 結 晶 方 位 の 決 定 知 る た め に,X線
育 成 され た 単 結 晶 の 方位(第2章2・1節
参 照)を
ま た は 電 子 線 に よ る 回 折 法 が 行 わ れ る。 す な わ ち,結 晶 の
図10・30 光 像法 に よ る結 晶 方位 の決 定
格 子 間 隔 をd,照
射 光 の 波 長 を λ,結 晶 面 に対 す る照 射 角 を θ とす れ ば,ブ
ッ グ の 反射 式2dsinθ=nλ
か ら回 折 す るX線
ラ
ま た は電 子 線 を測 定 し て,結 晶
方 位 が 求 め られ る。 方 位 決 定 の 他 の 方 法 と し て,結 晶 表 面 を化 学 的 に エ ッ チ ング す る と,エ ッチ 速 度 が 結 晶 面 に よ っ て 異 な る た め,結 晶 表 面 に特 有 の 凹 凸 が 現 れ る こ と を利 用 す る方 法 が あ る。 簡 便 に は この 表 面 を光 学 顕 微 鏡 で 観 察 して もよ いが,図10・30 に示 した 光 像 法 を用 い れ ば,精 度 ±0.5° ぐ らい で 容 易 に 方 位 決 定 が で き る。 (2) 格 子 欠 陥 の 種 類 と観 察
十 分 に 注 意 して育 成 した単 結 晶 に も原 子 配
列 の不 完 全 な 部 分 が 含 まれ て い る。 これ を格 子 欠 陥(lattice 格 子 欠 陥 の 存 在 は トラ ッ プ準 位(第2章
defect)と
い う。
参 照)を 作 っ た り して,半 導 体 素 子 の
動 作 不 良 の 原 因 と な る。 特 に,多 数 の 微 少 化 した 素 子 が 集 積 さ れ て い るLSI に お い て は,こ れ の存 在 は極 め て 重 要 な 問題 で あ る。 格 子 欠 陥 の種 類 は,表10・6に
示 し た よ う に 大 別 さ れ る。 点 欠 陥 の 存 在 は,
一 般 に は電 子 顕 微 鏡 で 直 接 に観 測 す る こ と は むづ か しい 。 これ らの欠 陥 は単 独 に も存 在 し う るが,密
度 が 増 す と これ らの複 合 体 と して も存 在 し,状 況 に よ っ
て は さ らに大 き な線 欠 陥 や 面 欠 陥 の 原 因 とな り うる。 線 欠 陥 の 代 表 的 な も の は 転 位(デ
ィ ス ロ ケ ー シ ョ ン;dislocation)と
呼 ば れ る も の で,図10・31に
そ
の形 を模 式 的 に示 す 。 結 晶 に外 力 が 加 わ る と格 子 面 の す べ り を誘 起 す る が,転 位 は2つ の す べ り面 の 交線 で 次 々 と増 殖 され(フ
ラ ン ク ・リー ド源;Frank-Read
表10・6 格 子 欠 陥 の分 類
source),転
位
刃状 転 位
らせ ん転 位
図10・31 転 移 構 造 の模 式 図
で の原 子 配 列 の ず れ は大 き くな る。 こ の よ う な転 位 が 結 晶 表 面 と交 わ った 所 で は,化 学 的 な エ ッチ ン グ に よ っ て 表 面 に 凹 み(ピ
ッ ト;pit)を
ピ ッ トは光 学 顕 微 鏡 に よ っ て 観 察 す る こ とが で き る。 一 般 に,結
生 じ る。 こ の 晶表面 の単位
面 積 当 た りの ピ ッ ト数 で 転 位 の 数 の 評 価 が 行 わ れ て い る 。LSI用Si基 この 転 位 密 度 が0の 単 結 晶 ウ エ ー ハ が 用 い られ て い る が,IC用 で は ∼104cm-2の
板 に は,
のGaAs基
板
転 位 密 度 が 含 まれ て い る。 この こ と は,化 合 物 半 導 体 単 結 晶
育 成 の む ず か し さ を示 して い る。 この ほ か に転 移 を観 察 す る方 法 と し て,電 子 線,X線
の 透 過 像 を み る 方 法,
金 属 不 純 物 を転 位 に 析 出 させ 赤 外 線 の 透 過 像 を用 い る 方 法 等 が あ る。 積 層 欠 陥 は,正 常 な 原 子 配 列 か ら格 子 面 が 一 枚 抜 け た状 態 ま た は 一 枚 加 わ っ た 状 態 で あ る。 前 記 の 転 位 と共 存 す る こ とが 多 い が,転 位 の 全 く存 在 し な い Si単 結 晶 中 に も不 純 物 原 子 に よ る点 欠 陥 が 原 因 とな り,微 小 な 積 層 欠 陥 が 存 在 す る こ とが電 子 顕 微 鏡 に よ り確 認 さ れ て い る。
演 〔 問 題 〕 1. 半 導 体ICは,ど
習
問
題
〔10〕
う して シ リ コ ン単 結 晶 を用 い て 作 られ る か 。
〔 問 題 〕 2. シ リ コ ン に りん(P)が1ppm導 る抵 抗 率 は い く らか 。 た だ し,シ
入 さ れ て い る。300Kの
リ コ ン 単 結 晶1cm3中
に は,約5×1022個
原 子 が あ る。
のSi
答(0.2Ω・cm)
〔 問 題 〕 3. ICに 用 い る抵 抗 が1kΩ
と10kΩ
Ω/□ で あ る と き,抵 抗 の 形 状 は,幅
で あ る。 面 積 抵 抗 は べ ー ス 層 が200
を5μmと 答(l=25〔
〔 問 題 〕 4. 不 純 物 濃 度5×1015cm-3のn形 拡 散 さ せ た と き,pn接 ×1019cm-3で
温度 にお け
す る と長 さ は い く ら に な る か 。 μm〕…1kΩ,250μm…10kΩ)
シ リ コ ン にBを1250℃
合 面 の 深 さ を 求 め よ 。 た だ し,BのSiの
一 定 で あ り,1250℃
で30分
間熱
表 面 の 濃 度 は2
で の 拡 散 係 数Dは8×10-12cm2/sと
す る。 答(6μm)
〔問 題 〕 5. 図10・32の
よ う に,長
さL,断
画 積1の
融 体 に 不 純 物 が 濃 度C0で
一
様 に 入 っ て い る。 こ の 融 体 を 底 部 よ り ゆ っ く り結 晶 化 し た と き,結 晶 中 の 不 純 物 濃 度C3は
場 所 に よ り ど の よ う に 変 化 す る か 。 た だ し,こ の 液 体 中 で の 不 純 物
の 偏 析 係 数 をkと
す る。
答(Cs=kC0(1-x)k-1)
図10・32
〔 問 題 〕 6. 図10・33の
よ う に,長
さL,断
面 積1の
結 晶 に 不 純 物 が 濃 度C0で
様 に 入 っ て い る。 こ の 結 晶 の 左 端 か ら長 さl(l<L)の 領 域 を 右 に ゆ っ く り移 動 させ,帯
領 域 の み を 融 解 し,こ
一 の
域 精 製 を行 っ た 。 精 製 後 の 不 純 物 分 布 を 与 え
る 式 を 求 め よ 。 た だ し,不 純 物 の 偏 析 係 数 をkと
す る。
答(Cs=C0{1-(1-k)e-(k/l)x)
図10・33
演
第2章
習
問
題
の
解
半 導 体 の 基 礎 的 性 質
答
演 習 問題 〔2〕(p.58)
〔 問題 〕 1. 式(2・8)にお い て得 られ たE=(h2/2m)k2を
有効 質 量 を求 め る式(2・14)
に代 入 して,次 の結 果が 得 られ る。 (自由空間 にお け る電子 の質量) 〔問 題 〕 2.ボ
ー ア の 水 素 原 子 モ デ ル に お い て 比 誘 電 率 εrの 媒 質 を 考 え た 場 合,電 子
の エ ネ ル ギ ーEnは,
イ オ ン化 エ ネ ル ギ ー はn=1(基
底 状 態)と
お い て得 られ,計
算 に よ り,
〔 問 題 〕3.
解 図1.
の時
〔問 題 〕4.
〔問 題 〕5.
平 均 自由行 程lは,
衝 突 間 の 時 間 τは,
〔問 題 〕6. (ⅰ)
100gのSiの
体 積 は100/2.33=42.9〔cm3〕,2×10-7gのBの
×10-7/10.8)×6.02×1023=1.11×1016で
あ る か ら,Bを
原 子 数 は(2
溶 触 さ せ たSi結
晶 中 のB
の 密 度 は,
(ⅱ)
抵 抗 率=1/(qpμp)=1/(1.6×10-19×2.59×1014×500)=48.3〔
Ω ・cm〕
〔問 題 〕7.
h=6.62×10-34〔J・s〕,k=1.38×10-23〔J/K〕,m=9.1×10-31〔kg〕
(ⅰ) Ge結
晶 の 場 合 niの 式 に,T,k,Egを
を 代 入
代 入 し て計 算 し,
し て,
(ⅱ) Si結 晶 の 場 合 Geの
〔問 題 〕8.
ρ=1/q(n
場 合 と同 様 な計 算 に よ り,
μn+pμp)とpn=ni2か
ら,
の 条 件 か ら,
従 っ て,抵
〔問 題 〕9.
抗 率 の 最 大 値 ρmaxは,こ
E0=V0/l,υd=μpE0,正
れ ら の η とpを
孔 の 到 達 時 間τt=d/υd
従 っ て,
〔問 題 〕10.
こ こ で,μnn≫
μppで
あ る こ と を 考 慮 し て,
〔問 題 〕11.
こ の 解 は,
t =0でΔnで
あ る か ら,K=-Gτn
ρ の 式 に 代 入 し て,
〔 問 題 〕12.
両 極 性 方 程 式 に お い て,定 常 状 態 で あ る か ら,∂p/∂t=0,拡
で き るの で,D*(∂2Δp/∂x2)=0,低
レ ベ ル注 入 で あ る か ら,μ*=μp,熱
と す る キ ャ リア 生 成 が な い の で,G=0,な
この 微 分 方 程 式 を,x=0でΔp=Δp(0)の
こ こ で,Ldp=μpτpEを 〔 問 題 〕13.
散 項 を無 視 以 外 を原 因
ど の 条 件 を考 慮 す る こ と に よ り,
条 件 の も とで 解 い て,
正 孔 の ドリ フ ト距 離 と い う。
無 次 元 化 を行 う た め の 変 数 とパ ラ メ ー タ を 次 の よ う に置 く。
これ らを 用 い て 両 極 性 方 程 式 の 無 次 元 化 を行 う と,次 式 が 得 ら れ る。
こ こ で,Lp=√Dpτpは,正
第3章
孔 の 拡 散 距 離 で あ る。
ダ イ オ ー ド とバ イ ポ ー ラ
ト ラ ン ジ ス タ … 演 習 問 題 〔3〕(p.121)
n領 域 の 多 数 キ ャ リ ア密 度 p領 域 の 少 数 キ ャ リ ア密 度=
p領 域 の多数 キ ャ リア密 度 =exp qV0/k n領 域 の 少 数 キ ャ リ ア密 度 T
〔問 題 〕1.
な る関 係 か ら, n領 域 の 多 数 キ ャ リ ア密 度
p領 域 の 少数 キ ャ リア密 度
よ っ て,上
式 は,
〔 問題 〕2. 階段 接合 の空 間電 荷領 域 の幅dは,
で 表 さ れ る 。 こ の 式 で,NA=NDと
〔問 題 〕3.
Poissonの
す る と,
方 程 式 に よ り,
〓の条件 で積 分 すれ ば,
これ を空 乏 層 の 一 端x=0で
空 乏層幅dの
中 央(接合 面)が 最 大電界 強 度Emaxと
な る ので,x=d/2を
上式に
代 入 す る と,
〔問 題 〕4.
バ イ ア ス電 圧Vを
V0 をV0+Vに
同 様 に,V=−0.3で
〔問 題 〕5.
印 加 し た と きの 空 乏 層 の厚 さ は,〔問 題 〕2.の拡 散 電 位
置 き換 え れ ば よ い 。 す な わ ち,V=0.3で
〔問 題 〕3.の
は,
は,
空 乏 層 幅dに
〔問 題 〕4.の
答 を 使 う 。 す な わ ち,
順 方 向 バ イ ア ス の と き は,d=0.93×10-6〔m〕
で あ る か ら,
逆 方 向 バ イ ア ス の と き は,d=1.62×10-6〔m〕
で あ る か ら,同
様 に し て,
〔 問 題 〕6.
単 位 面 積 当 た りの 静 電 容 量 はε/dで 表 さ れ る の で,〔 問 題 〕4.の 空 乏 層 幅
dを 使 っ て, 順 方 向 バ イ ア ス の と き,
逆 方 向 バ イ ア ス の と き,d=1.62×10-6〔m〕 ×10-6〔F/m2〕 〔問 題 〕7.
で あ る か ら,同
を得 る。
(ⅰ)
(ⅱ) 単 位面積 当 た りの静電 容 量 はε/dで あ る 。(i)の
(ⅲ) 接 合 面 が 最 大 電 界 強 度Emaxと
〔 問 題 〕8.
様 に し て,ε/d=63
ア イ ン シ ュ タ イ ンの 関 係
とな る。 遮 断 周 波 数
なる。
〓よ り,室
温(300K)で
〓よ り求 め る 。 す な わ ち,
上 式 の μ に 表 の 値 を 代 入 す れ ば,次
答 を使 っ て,
表 の よ う に な る。
はD〓0.026μ
第4章
電 界 効 果 トラ ン ジ ス タ
演 習 問 題 〔4〕(p.164)
〔問 題 〕1.
〔問 題 〕2.
実 効 相 互 コ ン ダ ク タ ンス=gm/(1+gmRs)
〔 問 題 〕3.
〔問 題 〕4.
∂ID/∂T<0で
〔 問 題 〕5.
バ イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ で は,温 度 上 昇 し た トラ ン ジ ス タ の 電 流 増 加 は,
ま
あ る が,∂Ic/∂T>0で
あ る。
すます,温 度 の 上 昇 と電 流 の 集 中 を起 こ し,最 悪 の場 合 は 素 子 破 壊 を 生 じ,そ
の 結 果 別 の 素 子 の 電 流 増 とな っ て,熱 破 壊 は 並 列 素 子 全 体 に お よ ぶ こ と が あ る 。 従 っ て,こ 一 方
の 点 を 考 慮 し た 回 路 補 償 法 が 使 用 さ れ る。
,FETの
場 合 に は,温 度 上 昇 し た トラ ン ジ ス タ の 電 流 は減 り,他 の トラ ン
ジ ス タ に分 配 さ れ る 。 そ の た め,電 流 の 集 中 は 起 こ ら ず,熱 破 壊 を防 ぐ方 向 へ 動 作 す る の で,全 体 の 安 定 性 が 保 た れ る。 この こ とか ら,FETは
並 列 接 続 に適 し て
い る と い え る。 〓に お い て,VD≒0,gD1=0と
〔問 題 〕6.
〔 問 題 〕7.
お け ば,VT≒
on状 態 の 動 作 点 は線 形 領 域 内 に あ る 。
〔問 題 〕8.
〔 問 題 〕9.
フ ラ ッ ト バ ン ド状 態 で は,電 荷 か ら の 電 束 は す べ て 金 属 電 極 に 入 る こ と
を 考 慮 してポ ア ッ ソ ンの 方 程 式 を解 け ば よ い。 〔問 題 〕10.
(i)
(ⅱ)
〔 問 題 〕11.
で,こ
解 図2に
小 信 号 等 価 回 路 を 示 す。 図 中 のrDは,
のrDをFETの
内 部 抵 抗 と い う。
解 図2.
第5章
集
〔問 題 〕1.
積
回
路
演 習 問 題 〔5〕(p.189)
解 図3.
解 図3. 〔問 題 〕2.
解 図4.
〔問 題 〕3.
式(5・1)にR=2×103〔
〔問 題 〕4.
式(5・2)のCに
Ω 〕,Rs=100〔
断 面 積Sを
Ω 〕/□,W=10〔
か け た も の が 解 で あ る 。S=100〔
〔μm〕=10-8〔m2〕,q=1.6×10-19〔C〕,ε=εrε0=12×8.854×10-12〔F/m〕,N=8× 1021〔 個/m3〕,V=20〔V〕
μm〕 を 代 入 す る と,
を 代 入 す る と,
μm〕 ×100
(4) コ ン タ ク ト窓 あ け
(1) 酸 化
(2) ソー ス,ド
レイ ン拡 散
(5) 電 極 蒸 着,ホ
トリ ソ グ ラ フ ィ
(3) ゲ ー ト部 再 酸 化
解 図4.
第6章
光 電 素 子(オ
プ ト エ レ ク トロ ニ ク ス デ バ イ ス) 演 習 問 題 〔6〕(p.236)
〔 問題 〕1. 直接遷 移 形 の半 導体 の吸収 係数 は,
間接遷 移形 の半導体 は,
これ か ら,直 接 遷移 形 の半 導体 の吸収 係 数 はhν の ほ ぼ1/2乗 に比例 し,間 接 遷 移 の半 導体 はhν の ほぼ2乗 に比 例 す るの で,吸 収係 数 の 波 長依 存性 を測定 す れ ば よい。 〔 問題 〕2. i層(高 抵 抗 層)をpn接
合 の 中 間 に入 れ る こ とで,外 部 か ら加 え逆 電
圧 の ほ と ん どがi層
に か か り,こ
こで は高 電 界 にな っ て い る。 こ こに光 が 当 た
り,電 子 と正 孔 は 高 電 界 の た め 速 に分 離 さ れ 電 極 に 電 流 の 変 化 と して 現 れ る 。 〔 問 題 〕3.
発 光 ダ イ オ ー ドの 項 参 照 の こ と。 直 接 遷 移,間
〔 問 題 〕4.
半 導 体 レ ー ザ の 項 参 照 の こ と。
第7章
パ ワ ー デ バ イ ス
〔 問 題 〕1.
接 遷 移 か も検 討 せ よ 。
演 習 問 題 〔7〕(p.247)
順 方 向 阻 止 状 態 で ア ノ ー ド電 圧 が タ ー ンオ ン電 圧 以 下 で あ っ て も,ア
ー ド電 圧 が 急 激 に 変 動 す る と 逆 方 向 バ イ ア ス状 態 に あ る 接 合J2の 充 電 す るた め の 電 流 が 増 大 し,n1p2n2ト
ノ
空乏 層 容 量 を
ラ ン ジ ス タ が オ ン状 態 に な る こ と を 防 ぐ
た め に短 絡 エ ミ ッ タ構 造 を採 用 す る。 〔 問 題 〕2.
ド レ イ ン電 圧 が 加 わ っ た と き,空 乏 層 は ド レ イ ン(n-)側
ン ネ ル(p)側 ず(パ
第8章
ンチ ス ル ー を 発 生 せ ず),高
セ ン サ と 関 連 デ バ イ ス
〔 問 題 〕1.
他 方,
に ほ とん ど延 び な い た め,短
式(8・15)か ら
に延 び て チ ャ
い チ ャ ネ ル で あ っ て も,耐 圧 は 低 下 せ
耐 圧化 が実 現 で きる。
演 習 問 題 〔8〕(p.280)
〔問 題 〕2. は,正
図8・5に お い て,正 孔 電 流 密 度Jypと,電
孔 と電 子 両 者 の 動 き を考 え る 。y方 島 の 電 流 密 度Jy 子 電 流 密 度Jynと
の 和 で あ り,
磁 界 に よ る電 流 ホ ー ル電 界 に よ る電 流
定 常 状 態 で は,Jy=Jyp+Jyn=0で
第9章
あ るか ら,上
各 種 半 導 体 デ バ イ ス 省略
〔 問 題 〕2.
電 荷 転 送 デ バ イ ス の 項 参 照 の こ と。
半 導 体 材 料 と素 子 製 造 技 術
〔 問 題 〕1.
か ら,
演 習 問 題 〔9〕(p.308)
〔 問 題 〕1.
第10章
の2式
pn接 合 が 作 り や す い。Si表
演 習 問 題 〔10〕(p.355)
面 にSiO2が
作 り や す い。Icoが 少 な い 。 選
択 熱 拡 散 が で き る。 表 面 保 護 層 が で き る。MOS形
とバ イ ポー ラ形 の両 方 の トラ
ン ジ ス タ が 形 成 で き る。100℃ 〔問 題 〕2.
Siは5×1022cm-3の
〔cm-3〕,図10・10か
ら,0.2Ω
ま で 動 作 で き る。 原 子 濃 度,Pの
濃 度=5×1022×10-6=5×1016
・cm。 ま た は,抵
抗 率=1/{eμ(移
動 度)×(Pの
濃
度)} 〔問題 〕3.
〔問 題4〕4. N/N0=2.5×10-4で
あ る か ら,図10・13か
ら,x/2√Dt=2.6を
得 る。
〔問 題 〕 5. 〔問 題 〕 6.
索
引 イン バ ータ 回 路
ア 行 イン パ ット α遮 断 周 波 数 I GBT ISFET アー リー 効 果
イソタ
ラ ッ プ
イ プヘ テ ロ 接 合
アイ ランド インシ ュタ イン の 関 係
アク セ プタ 準 位
移 相 器
279
一 次 元 結 晶 の エ ネ ルギ ー 帯
93 302
移 動 度
195ア
14 33,34 35
― の電 界 依 存 性
36
95
―の 温 度 依 存 性
ェ電 圧 ホト
40
ウ エ ー ハ プ ロ セス
177
25
ウ ェ ット ・エ ッ チン グ 方 式
332
171
FZ法
314
79
HEMT
289
25,43
アナ ロ グ 集 積 回 路
アバ ランシ
異 種 接 合
245
180 281,286
340ア
アク セ プタ
アバ ランシ
112
114
ア イソ エ レ クト ロ ニ ッ クト
ダ イ オ ード
ダ イ オ ード
201
nチ
224
9形 半 導 体
青 色 レ ー ザ ダ イ オ ード
214
npnト
圧電 効 果
267
圧電 半 導 体
267
S OI‐MOSFET
163
暗 導電 率
196
エア マス
215
アモ ルフ ァスSi太
陽電 池
ャ ネ ル
ラン ジスタ
Si集 積 回 路 の 形 成 法
エキシトン E/D形MOSイン E/E形MOSイン イ オン
バ ータ バ ータ
イン プ ラン テ ーシ ョン
吸 収
181
エサキ
181
エ ッ チン グ
159
エ ネ ルギ ーギ ャ ッ プ
327
エ ネ ルギ ー 準 位
イ オン 打 込 を 法
323
エ ネ ルギ ー 帯
イ オン
332
エ ネ ルギ ー 帯 構 造
イ オン 化 エ ネ ルギ ー イ オン 結 合
7
97 342
191
ダ イ オ ード
イ オン 打 込 み 技 術
・エ ッ チン グ 方 式
124 21,23
エ ネ ルギ ー 波 数 図
74 331 17 7 15 80,93,99 18
12
エ ピタキシ
ー
310
イ オン センサ
278
エ ピタキシ
ャ ル 成 長 法
315
インタフ
171
エ ミ ッタ
295
エ レ クト ロ ル ミ ネ ッ センス
インタ
ェ ース 集 積 回 路 ラ インCCD
98 203
エン ハン ス メン ト形
127,159
キ ャ リ ア
液 相 エ ピ タ キ シ ー
315
オ ー ジ ェ 再 結 合
193
オ ー ミ ッ ク接 触
90
17
キ ャ リア
ガ ス
キ ャ リ ア 注 入 に よ る空 間 電 荷 キ ャ リ アの 移 動 度の 測 定 キ ャ リ ア
315 55 264
キ ャ リ アの 生 成
42
オ フ(off)状
態
119
キ ャ リ アの 遷 移 法 則
45
オン(on)状
態
119
キ ャ リ アの 連 続の 方 程 式
49
キ ャ リ ア 密 度 カ
行
カ ー 効 果 ガス
セン サ
カル コ ゲン 化 合 物
264
302
基 礎 吸 収
191
275
基 礎 吸 収 端
192
12
基 底 状 態
カル ノ ー 効 率
260
擬 間 接 遷 移
ガン 効 果 素 子
282
擬 フ ェ ミル 準 位
ガン ダ イ オ ード
282
気 相 エ ピ タ キ シ ー
外 因 性 半 導 体 ─の フ ェル ミ準 位 開 放 電 圧 殻 化 合 物 系 太 陽 電 池
28
キ ャ リア 密 度の 測 定
21,23 31
逆 方 向 バ イ ア ス 逆 飽 和 電 流 密 度
7 195 69 315 69 71
217
吸 収 低 数
191
10
共 有 結 合
12
許 容 帯
15
228
過 剰 キ ャ リ ア
47
禁 止 帯 幅
─の寿 命
47
禁 制 帯
価 電 子
11
金 属 結 合
価 電 子 帯
17
金 属‐半 導 体 電 界 効 果 トラン ジ ス タ
活 性 化 エ ネル ギ ー
249
活 性 層
210
ク ー ロン 力
351 15 12 137
7
階 段 形 接 合
76
ラ ボ ・エ ピ タ キ シ
拡散 距 離
54
ク ロ ー ニ ッ ヒ ・ペ ニ ーの モ デル
18
拡散 係 数
39
空 間 電 荷 制 限 電 流
56
拡散 電 位 差
64
空 間 電 荷 領 域
拡散 電 流
38,39
空 乏 状 態
319
64 142
拡散 電 流 密 度
38
空 乏 層
64
拡散 方 程 式
53
空 乏 層 容 量
75
拡散 理 論 拡散
87
乾 式 太 陽 電 池
230
間 接 再 結 合 間 接 遷 移
42 191
ゲ ー ジ 率
268
ゲ ー ト
124
ゲ ッ タ リン グ
314
傾 斜 法 結
315
晶
12
シ ュ レー デ ィン ガー の波 動 方程 式 ショッ トキー 障 壁 形 ダ イ オー ド
7 273
結 晶 性 の 評 価
352
ショッ トキー 接 合
結 晶 の 機 械 的 加 工
330
ショッ トキー バリア 形FET
90
結 晶 方 位 の 決 定
352
シリ コン 制 御 整 流器
117
シン グル モー ド
214
し きい値 電 圧
148
137
原 子 構 造
6
検 出 素 子
250
し きい値 電 流
213
コー ド ウッ ド モ ジ ュー ル
168
色 素 増 感 型 太 陽電 池
229
コ ヒー レン ト光
211
磁 気 抵 抗 効 果
264
コ ル ビ ノ 円 板
266
磁 気 抵 抗効 果 デバ イス
265
98
自己 加 熱
250
コ レ ク タ 係 数
107
仕 事 関 数
80
コン デン サ
175
自然 放射
208
格 子 欠 陥
353
湿 式 太 陽電 池
229
光 磁 気 効 果 デ バ イ ス
300
質 量 作 用 の法 則
コ レ ク タ
磁 電 管
降 伏 電 圧
78
後 進 波 管
281
指 絞 セン サ
光 電 素 子
190
集 積 回路
交 流 特 性
109
固 有 半 導 体 混 成 集 積 回 路 サ サー
集 積 化技 術
338
種 結 晶
313
171
充 満帯
17
寿
48
命
順 方 向バ イア ス 250
サ イリ ス タ
117,120
サ ブ モ ジ ュー ル
305 168,169,170
21
行
ミス タ
30 281
259
準 ミリ波 小 信 号 等 価 回路 少数 キ ャリア
69 281 134,157 25,356
再 結 合
42
状 態 密 度
26
再 結 合 中 心
44
障 壁 容 量
75,92
撮 像 デ バ イ ス
291
シリ コン 系太 陽 電 池
223
三 相 ク ロッ ク
294
進 行 波 管
281
CCDイ CMOSイン
メー ジ セン サ バー タ
CVD法 GTOサ
イリ ス タ
シー ケン シ ャ ルア
真 性 キ ャリア 密 度
29
291
真 性 抵 抗率
38
182
真 性 導 電率
38
309
真 性 半 導体
21
240 クセ ス
メ モリ
185
ス タテ ィッ クMOSRAM
187
スタ テ ィックRAM
185
ダイ ナ ミックRAM
185
ス トレイン
268
ダイ ナ ミック 形 メ モ リ素 子
151
315
ダ ー リン トン 回 路
203
ゲ ージ
ス ライ ドボ ー ド法 ス パッタ
・エッ チング
方 式
タ ーン ・オン
332
水 素 結 合
12
ダ ブル
へテロ
120 レ ー ザ
大 規 模 集 積 回 路
213 184
ゼ ーベック
係 数
255
対 生 成
ゼ ーベック
効 果
252
太 陽 光 発電 シス テ ム
234
ゼ ーベック電
界
22
255
太 陽電 池 の 応 用
233
センサ
250
太 陽電 池 モジ ュ ー ル
233
制 御 整 流 器
117
多 結 晶
整
形
349
多 結 晶Si太
正
孔
17
多 数 キ ャ リア
25
44
単 結 晶
12
正 孔 トラップ 静電 誘導 形サイ 静電 誘導
リスタ
トランジスタ
299 162,298
静電 容 量 型 半導 体 センサ
305
整 流 性 接 触
85
整 流 特 性
69
積 層 欠 陥
354
絶 縁 体
1
12
単 結 晶Si太
陽電 池
陽電 池
224
223
単電 子 デ バイス
306
短 絡 エ ミッタ 構 造
238
短 絡電 流
217
チップ
170
チ ャ ネ ル
124
絶 縁 ゲ ー トバイ ポ ー ラ ト ランジスタ
245
チ ョク ラ ルス キ ー 法
313
接 合 形電 界 効 果 トランジスタ
125
蓄 積 状 態
140
接 触電 位 差
64
注
入
遷 移 速 度
45
注 入 係 数
線 形 接 合
76
超 音 波 増 幅 素 子
線 形 領 域
129
超 格 子
線 欠 陥
353
超 格 子 デ バイス
288
超 格 子 半導 体 材 料
318
ソ ース
124
直 接 再 結 合
ゾ ーン 精 製
312
直 接 遷 移
相 補 形MOS
182
速 度 変 調 管
281
39 107 303 281,288
42 192
ツ ェ ナ ー 降 伏
79
ツ ェ ナ ー電 圧
79
タ 行 ダイ オ ー ド
174
デ ィジタ ル 集 積 回 路
171
ダイ ナ ミックMOSRAM
187
デ ィップ 法
315
デ プ レッ シ ョン 形
127,160
導 体
1
抵 抗 率
347
到 達 率
107
転
位
353
導波 路
301
点 欠 陥
353
電 位 障 壁
ナ
行
64
電 界 効 果ト ランジスタ
124
な だ れ 降 伏
79
電 界 発 光
203
雪 崩 増 倍
37
二 極 管 理 論
85
電 荷 結 合 素 子
151
電 荷 結 合 デ バイス
291
電 気 光 学 効 果
302
電 子 親 和 力 電 子 遷 移 効 果 素 子
80 282
ネ ガ 型 ホト
レジスト
332
熱 拡 散 技 術
323 254
電 子 対 結 合
12
熱 起 電 力
電 子ト ラッ プ
44
熱 降 伏
80
17
熱 速 度
34
17
熱 電 効 果
252
熱 電 交 換 デ バイス
258
伝導 帯 伝導 電 子 伝導 度 移 動 度 電 流‐電 圧 特 性 電 力 増 幅 用MOSFET
351 68,84,96
熱 電 性 能 指 数
161
260
熱 平 衡 状 態
27,45
熱 放 散 係 数 ド ーズ 量
250
327
ドナ ー
23
ノ ー マ リ ー オフ 形
159
ドナ ー 形 の 準 位
43
ノ ー マ リ ー オン 形
160
ドナ ー 準 位
24ド
ノ リ シッ ク 集 積 回 路
171
・ブ ロイ 波
7 ハ
行
トム ソン 係 数
257
トン ソン 効 果
257ド
バイMOS集
284
ハイ ブ リッド 構 造 太 陽 電 池
332ト
バイ ポ ー ラ 集 積 回 路
メイン ド ライ ・エッ チン グ 方 式 ランジスタ リフト 速 度 リフト 電 流 レイン
3,100,274ド
トン ネル 等 価 回 路
ダイ オ ード
同 種 接 合
バイ ポ ー ラト
ランジスタ
34ド
パ ウ リ の 排 他 率
37ド
バ ー チ カルpnpト
124
トン ネル 効 果
積 回 路
72 74,272 114 93
171 227 171,176 61 ,172,342 11
ランジスタ
173
パ ラ メト リッ ク増 幅
303
パ ワ ーMOSFET
243
パ ワ ー バイ ポ ー ラト ランジスタ
242
パン チスル ー
101
バンド
ギ ャッ プ
17
配 線 形 成 技 術
337
表 示 デ バ イス
発 光 過 程
193
表 面 エ ネ ル ギ ー 準 位
44
発 光 ダ イ オ ード
206
表 面 再 結 合
42
発 光 デ バ イス
203
発 光 中 心
204
フ ァ ラ デ ー 効 果
反 転 状 態
145
フ ァン デ ル ワ ー ルス 力 結 合
半 導 体
1
半 導 体 結 晶
12
半 導 体 集 積 回 路 半 導 体 接 合 形 歪 センサ 半 導 体 レーザ
4 271 208,211
296
302
219
フ ェ ル ミ エ ネ ル ギ ー フ ェ ル ミ準 位
合
pnpnス
イッチ
pnpト
72
ラン ジス タ
フ ェ ル ミ ・デ ィ ラッ ク の 統 計
97
フ ラット バンド電
69
プ ラン ク定 数
イ オ ード 合 ダ イ オ ード の 感 圧 効 果
271
pn接
合 太 陽電 池
pn接
合 分 離
pチャ ネ ル p形 半 導 体
138 圧
7
プ ロ グ ラ マ ブ ルROM
185
176
不 純 物 準 位
351
124
不 純 物 導 入 技 術
322
不 純 物 半 導 体 負 性 抵 抗
ピエゾ 抵 抗 係 数
269
負 性 抵 抗 特 性
ピエゾ 抵 抗 効 果
269
浮 融 帯 法
188
不 飽 和 結 合
129,157
分 子 線
ピンチ オ フ電 圧
131
分 子 線 エ ピ タ キ シ ー
光 集 積 回 路
300
分 布 帰 還 形 レ ーザ
光 導電 デ バ イス
196
分
光 変 調 器
302
引 き上 げ 法
313
非 晶 質
152
216
267
非 縮 退 半 導 体
332
294
21,24
ピンチ オ フ 曲 線
グ 方 式
フ レ ー ム 転 送CCD
ピエゾ 効 果
ピット 線
26 35,191
プ ラ ズ マ ・エッチン フ ラット バンド
pn接
27
フ ェ ル ミ ・デ ィ ラッ ク の 分 布 関 数
117
pnダ
28 28,31,351
フ ォ ノン P+n+接
12
フ ィ ル フ ァ ク タ
離
p Hセンサ
24
へ テ ロ ・ピ エ キ シ ー
12
へ テ ロ 結 合
21 284 72 314 44 317 315,317 213 176,340
280 315 ,318 93
335
べ ース
歪 ゲ ー ジ
268
べ ース 幅 変 調
114
非 放 射 再 結 合
193
ペ ルチ エ 効 果
256
282
ペ ルチ エ 係 数
256
微 細 エッチン
微 分 移 動 度
グ 技 術
98
ペ レット
330
へ き開 面
213
閉
析
ミ ラ ー 指 数
34
ミ リ波
281
14
無 定 形
12
311
偏 析 係 数
311
変 調 ドー プ 形 超 格 子
288
ポッ ケル ズ効 果
302
ホット
171
11
殻
平 均 自 由 行 程 偏
膜 集 積 回 路
エ レ クト ロ ン
メ モ リ集 積 回 路 の 種 類
184
面 欠 陥
353
37
ポ テ ン シ ャル の 井 戸
292
MOSイ
メ ー ジ セ ン サ
ホト
カ プ ラ ー
208
MOS集
積 回 路
ホト
ダ イ オ ー ド
ホトト ホト
199
ラ ン ジ ス タ レ ジ スト ・パ タ ー ン
ポ ジ 型 ホト
レ ジ スト
295 171,178
―の 構 成
180
201
MOSダ
333
モ ス
126
333
モ ジ ュ ール
259
ボ ー ア の 原 子 模 型
イ オ ー ド
138
6
ホ ール 移 動 度
ヤ 264,350
行
ホ ール 角
263
ユ ニ ポ ー ラト
ホ ール 係 数
262
有 機 薄 膜 型 太 陽 電 池
230
ホ ール 効 果
261
有 機 系 太 陽 電 池
229
ホ モ ・エ ピ タ キ シ ー
315
有 機 太 陽 電 池
220
有 機 半 導 体 デ バ イ ス
307
ホ モ 結 合
93
ラ ン ジ ス タ
123
ポ ン ピ ン グ
304
有 効 質 量
19
放 射 再 結 合
193
有 効 状 態 密 度
29
飽 和 領 域
129
誘 電 緩 和 時 間
捕 獲 断 面 積
49
捕 獲 中 心
44
56
誘 導 放 射
208 ラ
マ
行 RAM
186
マ イ ク ロ 波
281
ラ テ ラルpnpト
マ イ ク ロ モ ジ ュ ール
168
パ ンダ ム
マ ク ス ウ ェル ・ボル ツ マ ン 統 計 マ ス クROM
行
ラ ン ジ ス タ
ア ク セル
メ モ リ
173 185 ,186
27 185
リ ソ グ ラ フ ィ
332
186
リ ソ グ ラ フ ィ技 術
332
マル チ チッ プ
171
リ フ レッ シ ュ
187
マル チ モ ー ド
214
リー ド オ ン リ ー
マル チ エ ミッ タト
ラ ン ジ ス タ
メ モ リ
185
リー ド ダ イ オ ー ド
286
励 起 子
リー ド/ラ イト メ モ リ
185
励 起 状 態
123
連 続 の 方 程 式
両 極 性 両 極 性 移 動 度 両 極 性 拡 散 係 数 両 極 性 方 程 式 量 子 状 態 の 数 最 子 ド ット
191 7 49
52 52 51,52 7
ROM
188
ロ コ ス 法
342
ロ ー レ ン ツ力
262
307 ワ 行
レ ー ザ
210
ワ ー ド線
188
―執 筆 者― 青 野 朋 義 (第8章,第9章) 木 下 彬 (第10章) 小 林 保 正 (第4章,第8章,第9章) 高 井 裕 司 (第7章) 中 野 朝 安 (第10章) 原 和 裕 (第8章,第9章) 樋 口政 明 (第1章,第5章) 深 海登世 司 藤 中 正 治 (第3章) 本 間 和 明 (第2章,第6章,第8章,第9章) 町 好 雄 (第6章,第8章,第9章) 六 倉 信 喜 (第6章,第9章) 本 橋 光 也 (第8章,第9章,第10章)
半 導 体 工 学 第2版 ―基礎 からデバイスまで― 1987年11月20日 2003年3月20日
第1版1刷 第1版17刷
発行 発行
2004年7月10日
第2版1刷
発行
編 者 東京電機大学
発 行 者 学 校 法 人 東 京 電 機 大 学 代 表 者 加
藤
康
太
郎
発 行 所 東 京 電 機 大 学 出 版 局 〒101-8457 東 京 都 千 代 田 区 神 田 錦 町2-2 振 替 口座 00160-5-71715 電 話 (03)5280-3433(営 (03)5280-3422(編
印 刷 三 美印 刷 ㈱ 〓
東 京 電 機 大学2004
製 本 渡 辺 製 本 ㈱Printed
in Japan
*無 断 で 転 載 す る こ と を 禁 じ ます 。 *落 丁 ・乱 丁 本 は お 取 替 え い た し ます 。 ISBN4-501-32360-4
C3055
業) 集)
物理化学関係図書 理工学講座 改訂 物理 学
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G.N.ス テ フ ァノポ ー ラ ス 他 著 清 水 浩/塩 谷 捨 明 訳 B5判 578頁
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