編集
荒船次郎 大学評価 ・ 学位授与機構教授
江沢 洋 学習院大学名誉教授
中村孔一 明治大学教授
米沢富美子 慶應義塾大学名誉教授
序
原 子 核 は た か だ か 二 百 数 十 個 の核 子 が 核 力 で 強 く結 合 した,孤 立 し た体 系 で あ る.そ の 中で は核 子 が お の お の 一 粒 子 軌 道 上 を運 動 しつ つ 他 の 核 子 と相 互作 用 し,あ る い は 集 団 運動 に よ って 核 表 面 の 振 動 や 核 全 体 の 回 転 を起 こ し,あ る い は 幾 つ かず つ 塊 に な り,核 の 分 子 的構 造 を 形 作 る.そ の よ う な原 子 核 に他 の 粒 子 が 衝 突 す る と さ まざ まな 反 応 が 起 こ る. 核 反 応 の研 究 の歴 史 は 長 く,1909∼1911年
のRutherfordら
が α 粒 子 の 金,
白 金 に よ る 散 乱 の研 究 に よっ て 原 子 核 そ の も の を発 見 し た 時 点 に まで 遡 れ る. 1932年
に は α 粒 子 とBe原
子 核 の衝 突 で 中 性 子 が 発 生 す る こ とが 発 見 され た.
こ の 発 見 は,原 子 核 が 陽子 と中 性 子 か ら な る とい う原子 核 物 理 学 の 基 礎 の確 立 に導 い た.し か し,核 反応 の機 構 に対 す る本 格 的研 究 はFermiら
が1934∼1935
年 に 発 表 し た 中性 子 を 入射 粒 子 とす る 反 応 の 系 統 的研 究が そ の 始 ま りで あ る と 言 え よ う.そ の 後 間 も な く粒 子 加 速 器 を 用 い た 実 験 が 行 わ れ る よ うに な り,加 速 器 ・粒 子 検 出 器 そ の 他 の 実 験 技 術 の進 歩 の 結 果,非 常 に 広 い範 囲の 衝 突 粒 子, 入 射 エ ネ ル ギ ー の 核 反 応 に対 し て,非 常 に 多 様 な 観 測が で き る よ うに な っ た. 最 近 で は,不
安 定 核 を入 射 粒 子 とす る 反 応,相 対 論 的高 エ ネ ル ギ ーの 重 イオ ン
同士 の衝 突,ハ
イパ ー核 の生 成 反 応 な ど の 新 しい 分 野 の 実 験 的 研 究 が 進 展 し て
い る. 一 方,核 反 応 理 論 の本 格 的 な 第 一 歩 は,前 述 のFermiら に よる 説 明 で あ った.以 後,複
合 核 模 型,光
の実験の複合核模型
学 模 型,各 種 の 直 接 過 程 論,前 平
衡 過 程 の 理 論 な ど に よ っ て さ まざ ま な反 応 機 構 が 解 明 さ れ た.現 在,核 反 応 研 究 の 最 先 端 で は 理 論 と実 験 の両 面 か ら さ ら に 新 しい 反 応 の機 構 に つ い て 盛 ん な 研 究 が 行 わ れ て い る. そ の よ うな 中で 本 書 を書 くに あ た り筆 者 ら は,核 反 応 論 の 網 羅 的記 述 よ り も, す で に あ る程 度 確 立 した と思 われ る部 分 の 集 中 的 記 述 の 方が 核 反 応 論 の 正 確 な 理 解 の 上 で も,ま た 今 後 新 し い 核 反 応 論 を 築 く基 礎 と して も役 立 つ で あ ろ う,
また 他 分 野 へ の新 た な 応 用 へ の 道 を拓 くか も知 れ な い,と を核 子 お よび 原 子 核同 士 の 数 百MeVま
考 え た.そ
こ で,的
で の 衝 突 に よ る反 応 に 絞 り,そ れ に 対
す る前 記 の基 礎 的 な 理 論 の 考 え 方,模 型 の導 出,定 式 化,物
理的解釈 などを体
系 的 に 説 明す る こ と に 努 め,個 別 的 な反 応 の記 述,実 験 との 比 較 な ど に つ い て は それ に 必 要 な 範 囲 に 止 め た.ま た,電 磁 的 相 互 作 用 に よ る反 応,ス
ピ ン偏 極,
相 対 論 的 エ ネ ルギ ー で の 核 反 応 は,い ず れ も非 常 に 重 要 で あ るが,割
愛 し他の
書 物 に 譲 る こ とに し た. 第1章
か ら 第5章
ま って 光 学 模 型,多
まで は 核 反 応 論 の 基 本 的 な 事 柄 の 記 述 と 理 論 的 準 備 に 始 重 散 乱 理 論,直 接 反応 の 現 象 論 的 理 論 まで を取 り扱 う.こ
の 部 分 は 河 合 が 担 当 し た.第6章
か らは複 合 核 過 程 の 共 鳴 理 論,統 計 理論,前
平 衡 過 程 につ い て の 詳 論 で あ る.こ の 部 分 は吉 田が 担 当 し た.全 書 を通 じ て 量 子 力 学 の 基 礎 的知 識 を 前提 と して い るが,核 反 応 論 に と っ て必 要 な 散 乱 理 論 は 第2章 で 説 明 して あ る か ら,そ れ につ い て の特 別 な 予 備 知 識 は 不 要 で あ る.し か し,原 子 核 の構 造 に つ い て の 初 歩 的 な 知 識 は あ る こ とが 望 まし い.し た が っ て,本 書 は 核 反 応 理 論 を 初 め て 学 ぶ 人,核 反 応 理 論 に 興 味 を もつ 他 分 野 の研 究 者,こ
の 分 野 の 研 究 者 で も う一 度 基 礎 を振 り返 っ て 見 た い と思 う人 な ど を読 者
と し て念 頭 に 置 い て い る. 本 書 を 書 くにあ た っ て は,多 ズ の 編 集 委 員 で あ る 江 沢 洋 氏,九
くの 方 々の お 世 話 に な った.中
で も この シ リー
州 大 学 の 大 坪 真 一 氏,緒 方 一 介 氏,河 野 俊 彦
氏 に は原 稿 を精 読 し て 多 くの貴 重 な助 言 して 頂 い た.こ れ ら の 方 々に 厚 く御 礼 申 し上 げ る. 最 後 に長 い 間辛 抱 強 く付 き合 って 下 さ り,大 変 お世 話 に な った 朝 倉 書 店 の 方 々 に 心 か ら感 謝 す る. 2002年9月
河
合
光 路
吉
田
思 郎
目
1 序
次
論
1
1.1 核 反 応 の 研 究 の 沿 革
1
1.2 基 礎 的 な 事 柄
4
4
1.2.1 核 反 応 の 種 類 1.2.2
チ ャ ネ ル
1.2.3
断
1.2.4
反 応 を記 述 す る座 標 系
8
1.2.5
実 験 室 系 と重 心 系
9
(a) 運 動 量,運
10
面
5
積
6
動 エ ネル ギ ー
(b) 二 粒 子 系 の 相 対 運 動 量
(c) し き い 値 (d) 散
12.6
11
Jacobi座
乱
12
角
12
標系
13
1.3 核 反 応 機 構 の 概 観
13
1.4 反 応 機 構 と エ ネ ル ギ ー 平 均
18
2 核 反 応 の 量 子 力 学 的 記 述
25
2.1 状 態 ベ ク ト ル,Schrodinger方
程 式,実
験 条 件
2.2 ハ ミ ル トニ ア ン
25 26
2.2.1
ハ ミ ル ト ニ ア ン の 形
26
2.2.2
重 心 運 動 の 分 離,内
27
2.2.3
ハ ミ ル ト ニ ア ン の 対 称 性,不
2.2.4
ハ ミル トニ ア ンの座 標 表 示
30
2.2.5
二 粒 子 チ ャ ネ ル の ハ ミ ル トニ ア ン
33
部 ハ ミ ル ト ニ ア ン 変 性,運
動 の恒 量
2.3 定 常 状 態 の 波 動 関 数 2.3.1
配 位 空 間,内
部 ・外 部 領 域,チ
29
34 ャネル領 域
34
2.3.2
自 由 運 動,平
2.3.3
Schrodinger方
面波
34
程 式 の 独 立 解
35
2.3.4 重 心 運 動 の 分 離
37
2.3.5 二 粒 子 チ ャ ネ ル で の 波 動 関 数
38
2.3.6
40
内部 波 動 関 数
2.3.7 境 界 条 件 2.4
42
Lippmann-Schwinger方
程式
44
2.4.1
Lippmann-Schwinger方
程式
2.4.2
{Ψ(+)γ(Eγ)}の 規 格 直 交 性
2.4.3 Ψ(+)αの 漸 近 形 と 境 界 条 件,T行 2.4.4 時 間 依 存 の 理 論 形 式,断 2.5
波 動 行 列,T行
列 お よ びS行
波 動 行 列
2.5.2
T行
列 お よ びS行
47
2.5.3
S行
列 の ユ ニ タ リ テ ィ,T行
列
49
列
53 53
列
54
2.6 角 運 動 量 表 示
列 の 和 則,光
学 定 理,相
反定理
56 59
2.6.1
基 底 関 数
2.6.2
T行
列,S行
Coulomb相
46 列
熱 的 ス イ ッ チ ン グ,S行
2.5.1
2.7
44
60 列,散
乱振幅
互作用
61 63
2.7.1
Coulomb波
2.7.2
球面波展 開
65
2.7.3
Green関
66
2.7.4
散乱 振幅,T行
2.8 断
面
動 関数
63
数 列
67
積
69
2.8.1
断面積 の一般形
69
2.8.2
二粒 子 放 出 チ ャ ネル の 断 面 積
74
2.8.3
三粒 子 放 出 チ ャネ ル の 断 面 積
75
2.8.4
遠 心 力 ・Coulomb障
76
2.8.5
断面積の角 運動量表示
2.9 反 対 称 化
壁
78 79
3 光 学 模 型
83
3.1 光 学 模 型 の 沿 革
83
3.2 光 学 模 型 と実 測 量
85
3.3 光 学 ポ テ ン シ ャ ル の概 観
87
3.4 光 学 ポ テ ン シ ャ ル の探 索
90
(a) 核 (b) 重
陽
子
91
子
98
(c) t, 3He (d) α
粒
99 子
100
(e) 重 イ オ ン
101
3.5 非 局所 ポ テ ン シ ャル と等 価 局 所 ポ テ ン シ ャル
102
3.6 光 学 模 型 の 理 論 的 基 礎 付 け
106
3.6.1
Feshbach理
論 に よ る光 学 模 型 の 導 出
3.6.2 光 学 ポ テ ン シ ャ ル の 実 部 と虚 部 の 分 散 関係
107 110
4 多 重 散 乱 理 論
115
4.1
115
Watsonの
方 程 式
4.2 有 効 相 互 作 用
119
4.2.1 イ ンパ ル ス 近 似
119
4.2.2 最 適 運 動 量 近 似
122
4.2.3
124
G行 列 近 似
4.2.4 有 効 相 互 作 用 の 近 似 の 誤 差
125
4.2.5 有効 相 互 作 用 の 具 体 的 表 示
126
(a) 運 動 量 表 示
126
(b) 座 標 表 示
129
4.3 光 学 模 型 の 多 重 散 乱 理 論 に よる 導 出
132
4.3.1 光 学 模 型 の 導 出
133
4.3.2 光 学 ポ テ ン シ ャル
135
4.4 歪 曲波 イ ン パ ル ス 近 似(DWIA)
140
5 直 接 過 程
149
5.1 直 接 過 程 の 一 般 論
150
5.1.1
直 接 過 程 を 記 述 す る 波 動 関 数 と 有 効 ハ ミル トニ ア ン
150
5.1.2
近
155
似
法
5.2 歪 曲 波Born近 5.2.1
似(DWBA)
157
形 状 因 子 の 一 般 形
163
(a) 移 行 角 運 動 量 表 示
164
(b) 選 択 規 則
166
5.2.2
断 面 積 の 一 般 形
167
5.2.3
非 弾 性 散 乱 に よ る 集 団 運 動 の 励 起
171
5.2.4
組 み 替 え 反 応
175
5.2.5
strippingお
5.2.6
一 核 子stripping,
pick
up反 up反
応
177
応
181
(a)
(b) lxb≠0の
(c) 有 限 レ ン ジ の 補 正
189
(d) 反 対 称 化
190
(e) 分 光 学 的 解 析
190
(f) 天 体 核 物 理 学 へ の 応 用
196
(g) ク ラ ス タ ー 移 行 反 応
196
5.2.7
lxb=0の
よ びpick
場 合
185
場 合
188
二 核 子 移 行stripping,
pick
up反
応
197
(a) 形 状 因 子
197
(b) 殻 模 型 の 描 像 に よ る 計 算
202
二 段 階 過 程
205
5.3 チ ャ ネ ル 結 合 法
206
5.2.8
(a) チ ャ ネ ル 結 合 方 程 式
206
(b) チ ャ ネ ル 結 合 方 程 式 の 解 法
208
5.3.1
非 弾 性 散 乱 に よ る 集 団 運 動 状 態 の 励 起
209
5.3.2
組 み 替 え チ ャ ネ ル 結 合 法(CRC)
212
5.3.3
離 散 化 連 続 チ ャ ネ ル 結 合 法(CDCC)
5.4 連 続 状 態 へ の 遷 移 5.4.1
多 段 階 直 接 過 程 のDWBA展
214 216
開
217
(a) 多 段 階 直 接 過 程 の 断 面 積
218
(b) 準 弾 性 散 乱
219
(c) 角 分 布 の 特 徴
220
(d) 半 古 典 歪 曲 波 近 似(SCDW)
221
多 粒 子 放 出 の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン
223
(a) 核 内 カ ス ケ ー ド 模 型
223
(b) 分 子 動 力 学 的 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン
225
5.4.2
5.5
Glauber近
似
6 複 合 核 過 程Ⅰ― 6.1
R行列
6.2
Feshbachの
227
共 鳴 理 論
235
理 論
237 理 論 に 基 づ く分 散 公 式
6.3 光 学 模 型 6.3.1
247 253
一 様 ポ テ ン シ ャ ル の 場 合 の 光 学 模 型
6.4 戸 口 状 態
258 261
6.4.1
強 度 関 数
263
6.4.2
巨 大 共 鳴
267
6.4.3
ア イ ソ バ リ ッ ク ・ア ナ ロ グ 状 態(IAS)
270
6.5 核 反 応 の 時 間 的 記 述
274
6.6 共 鳴 と エ コ ー
281
7 複 合 核 過 程Ⅱ―
287
7.1状
統 計 理 論
態 密 度
7.1.1
287
一 粒 子 の 準 位 密 度
294
7.2 共 鳴 準 位 の 統 計 的 性 質 と ラ ン ダ ム 行 列
296
7.3 準 位 密 度:相
301
互 作 用 の あ る 場 合
7.4 複 合 核 反 応 の 統 計 理 論:現
象 論
308
7.4.1
終 状 態 が 離 散 状 態 の 場 合
308
7.4.2
終 状 態 が 連 続 状 態 の 場 合
311
7.4.3
多 粒 子 放 出 過 程
315
7.4.4
直 接 過 程 の あ る と き の 複 合 核 反 応
316
7.5 複 合 核 の 統 計 理 論:ラ 7.6
Ericsonの
ゆ ら ぎ
7.7 カ オ ス と複 合 核
ン ダ ム 行 列 理 論
317 323 325
8 前 平 衡 過 程
333
8.1 部 分 準 位 密 度
334
8.1.1
独 立 粒 子 模 型
334
8.1.2
ラ ン ダ ム 相 互 作 用
336
8.2 マ ス タ ー 方 程 式 とFokker-Planck方
339
8.2.1
巨 視 的 古 典 論
340
8.2.2
マ ス タ ー 方 程 式
342
8.2.3
Fokker-Planck方
程 式
8.3 統 計 的 多 段 階 過 程
343 345
8.3.1
エ キ シ ト ン 模 型
345
8.3.2
拡 張 さ れ た エ キ シ ト ン 模 型
349
8.3.3
MSDとMSC
351
8.4 多 段 階 直 接 過 程
352
8.4.1
DWBA
352
8.4.2
終 状 態 に つ い て の 統 計
353
8.4.3
中 間 状 態 の 統 計
355
8.4.4
瞬 間 近 似
356
8.4.5
断 熱 近 似
358
8.5 線 形 応 答 関 数
程 式
8.5.1
DWBAと
360 の 関 係
363
8.5.2
近 似 計 算,RPA
364
8.5.3
Fermiガ
ス 模 型
367
8.5.4
有
核
371
限
8.6 多 段 階 複 合 核 過 程
371
8.7
375
TDHF,
8.7.1
Vlasov方 Vlasov方
程 式
程 式
377
参 考 図 書
383
索
385
引
1 序
論
1.1 核 反 応 の研 究 の沿 革
核 反 応 は 原 子 核 に 何 か が 衝 突 し て 起 こ る 現 象 の 総 称 で あ る.核 反 応 の 研 究 の 歴 史 は 原 子 核 そ の も の の 発 見 の と き に 遡 る.1909年 Rutherfordら
か ら1911年
が 行 っ た 実験 とそ の 解 析が そ れ で あ る.彼 ら はPoの
にかけ て 自然 放 射 能
で 出 る α 粒 子 を 金,白 金 の 薄 膜 に 当 て る と大 きな 角 度 で 散 乱 され る確 率 が 非 常 に 大 きい こ と,そ れ が 原 子 の 中心 に あ る非 常 に 小 さ くて 重 い 荷 電 粒 子,す ち 原 子 核,と
α 粒 子 の 荷 電 の 間のCoulomb斥
こ と を発 見 し た[1].そ
なわ
力 に よ る散 乱 に よ る もので あ る
の後,核 反 応 に よ る 中性 子 の発 見,原
子 核 変 換 の発 見 な
ど に よ っ て 今 日の 原 子 核 物 理 学 の基 礎 が 築 か れ た の で あ る. しか し,核 反 応 機 構 の本 格 的 な研 究 に先 鞭 を付 け た の はRoma大 らが 行 った 一 連 の実 験[2]だ っ た.彼 ら は放 射 性Poが
学 でE. Fermi
出 す α 粒 子 をBeに
し て,そ れ か ら出 る 中 性 子 を水 素 か らウ ラ ニ ウ ム に至 る36種
照射
の原子核に当てて
起 こ る反 応 を系 統 的 に 観 測 した.そ の 結 果,次 の 二 つ の 重 要 な こ とを発 見 した. (1)核 が 中 性 子 を 捕 獲 してγ 線 を 出 す 反 応 の確 率 が 非 常 に 大 きい. (2)0エ
ネ ル ギ ー 近 くで の 反応 の確 率 は 標 的核 の 種 類 に よ って 著 し く違 う.
電 磁 相 互 作 用 は 弱 い か ら,(1)は
原 子 核 が 反 応 の 途 中 で γ線 を 出す こ とが で
きる 高 い 励 起 状 態 に 長 時 間留 ま っ て い る こ と を示 す,彼 の 確 率 か ら,そ の 時 間 を10-16sec程
度 と評 価 し た,(2)は
らは,観 測 され た 反 応 共 鳴(resonance)に
よる もの で あ る こ とが 間 もな く明 らか に な った.こ れ は,確 率 が 核 種 ご とに 異 な る特 定 の 入 射 エ ネ ル ギ ー で 非 常 に大 き くな る現 象 で あ る.入 射 エ ネ ル ギ ー が そ れ に ち ょ うど 重 な るか ど うか で,核 Fermiら
の 観 察 を 説 明 す る た め にN.
種 に よ っ て 大 き な違 いが 出 たの で あ る.
は 複 合 核(compound
nucleus)模
Bohrお
よ びG.
型 を 提 唱 した[3].こ
BreitとE.P.
Wigner
の模 型 に よれ ば,核 反
応 で は す べ て入 射 粒 子 と標 的 核 の 強 い 相 互 作 用 に よっ て 入 射 粒 子 の エ ネ ル ギ ー が た ち ま ち核 内 に分 配 され,全 系 が 混 然 一 体 と な っ た,寿 命 の 長 い 複 合 核 状 態 が で き る.反 応 はす べ て この 状 態 を経 過 して 起 こ る.複 合 核 状 態 の エ ネ ルギ ー 固有 値 は 離 散 的で,入 射 エ ネ ル ギ ーが そ れ に合 っ た と きだ け そ の 状 態 が 形 成 さ れ,反 応 の確 率 が 大 き くな る.こ れが 共 鳴 で あ る.そ の共 鳴 の 幅 は 状 態 の 寿命 と 不 確 定 性 関 係 で 結 ば れ て い る.Fermiら
が 中性 子 の 捕 獲 反応 か ら評 価 し た寿 命
で は共 鳴 の 幅 はΓ λ∼10eVと
なり,Γ λの 実 測 値 と一 致 す る.エ
ネ ル ギ ーが 高 くな る と,共 鳴 は 密 接 し,重 な り合 い,見 え な くな る.こ の 場 合, 複 合 核 状 態 か らの 放 出 粒 子 の 角 度 分 布 は重 心 系(1.2.5項)で90°
対 称 で,エ ネ
ル ギ ー スペ ク トル は,熱 せ られ た液 滴 か らの 蒸 発 と 同 じ く,い わ ゆ るMaxwell 型 で あ る こ とが 理 論 的 に予 言 され,多
くの 実験 に よ って 検 証 され た.か
くし て
しば ら くの 間,こ の 複 合 核 過 程 が 核 反 応 の 唯 一 の 機 構 で あ る と思 わ れ た. しか し,1940年 て90MeVの
代 の 後 半 にBerkeleyで90イ
中性 子,200MeVの
ンチ の サ イ ク ロ トロ ン を 使 っ
重 陽 子 に よ る い ろい ろ な 反 応 が 観 測 され た
結 果,放 出粒 子 の 中に は複 合 核 模 型 で予 言 され る よ りは るか に高 い エ ネ ルギ ーで, 前 方 に 集 中 し て放 出 され る も のが あ る こ とが わか っ た.こ れ に 対 して,Serber は 次 の よ う な反 応 機 構 を提 唱 した[4].こ
の よ うな 高 エ ネ ル ギ ーで は,入
射粒
子 と核 内 核 子 との 衝 突 時 間 は 短 いか ら,そ の 間 に核 内 核子 同 士 が 相 互 作 用 して い る 暇が な い.し た が っ て,反 応 は 入 射 粒 子 と1個 の 核 内 核 子 との 衝 突 で 始 ま る と考 え て よい.高 エ ネ ル ギ ー で は,核 子-核 子 衝 突 の 確 率 は 小 さい か ら,入 射 粒 子 また は 衝 突 され た 核 子 が 複 合核 を作 らず,直 が か な りあ る.時
と し て,そ
ち に核 外 に 飛 び 出 す 可 能 性
れ らの 核 子 が 放 出 され る 前 に核 内 で 何 回 か 別 の
核 子 と衝 突 した り,何 個 か の 核 子 の 塊 と衝 突 した りして そ れ らを 叩 き 出す こ と もあ る.い ず れ にせ よ,1回
の衝 突 で 失 うエ ネル ギ ー は 比 較 的 小 さい か ら,こ
の よ う に し て 出 て くる核 子 は 高 い エ ネ ルギ ー を も って 前 方 に放 出 され る.こ れ が,Serberが
考 え た 直 接 過 程 の 描 像 で あ る.こ のSerberの
描 像 を基 礎 に,い
ろ い ろ な反 応 に対 して,具 体 的 な 直 接 過 程 の 機 構が 提 唱 され,実 験 の 説 明 に成 功 した. Serberの 描 像 の提 唱 後 間 もな く,10数MeVの (p)ま た は 中性 子(n)が
重 陽子(d)に
よ る反 応 で 陽子
放 出 され,残 留 核 の 離 散 的状 態 へ 遷 移 す る場 合,放
粒 子 が 前 方 に強 く放 出 され る こ とが 見 い だ され た.pが
放 出 され る場 合,そ
角 度 分 布 が 干 渉 縞 に似 た 極 め て特 徴 的 な 模 様 を示 す こ とが わか っ た.Butlerは
出 の
それが
の よ う に,nがAに 入 り,pはAの
よ ってdか
ら は ぎ と られ て そ の 周 りの 殻 模 型 軌 道 の 一 つ に
外 を相 互 作 用 せ ず に 通 過 す る,と い う"stripping"の
明 で き る こ と を示 し た[5].そ の 逆 過 程 で あ るpick
の 後,こ
機構 で説
の 干 渉 縞 様 の 角 分 布 は,strippingと
そ
up反 応 ば か りで な く,α 粒 子,陽 子 な ど の 非 弾 性 散 乱 を
初 め と し て い ろ い ろ な反 応 に よ る残 留 核 の 離 散 低 励 起 状 態 へ の 遷 移 に お い て 観 測 され,そ れ が 標 的 核 の表 面付 近 で 主 と して 起 こ る こ とに 由 来 す る も の で あ る こ とが わか っ た[6]. しか し,非 複 合 核 過 程 の 普 遍性 を 決 定 的 に 示 した の は1952年
のBarschallの
実 験 で あ っ た[7].彼
中性 子 を 質 量 数
Aの
は 入 射 エ ネ ル ギ ーEn=0か
ら3MeVの
全 領 域 の 標 的核 に 当 て,そ れ に よ る ビ ー ム 強度 の 減 衰,す
(1.2.3項)σtを 数 百keVの
測 定 した.入 射 ビ ー ム は い わ ゆ る低 分 解 能(bad
エ ネ ルギ ー 幅 ΔEnを
structure)と
resolution)で,
もって い たか ら,測 られ た の は σtの ΔEnに
わ た る平 均 値 〈 σt〉 で あ る.ΔEnは 〈σt(En,A)〉 はEn,Aの
な わ ち全 断 面 積
共 鳴 の平 均 間 隔Dよ
りは るか に 大 きい か ら,
ゆ っ く り変 化 す る 関 数 で あ る.そ れ は 粗 い 構 造(gross
呼 ば れ る,山 谷 を もつ 関数 で あ っ た.し か し,複 合 核 模 型 は 単 調
な 〈 σt(En,A)〉 を予 言 す る! Feshbach,
PorterとWeisskopfは,粗
い 構 造 の 原 因 は,入 射 し たnが
複合
核 にす べ て 吸 収 され て し ま うので は な く,入 射 波 の ほか に 核 に瞬 間 的 に 散 乱 さ れ て 出 て くる波 もあ り,そ れ らが 干 渉 す る こ とで あ る,と 考 え た.こ の 瞬 間 的 な散 乱 はnに Vはnが
働 く複 素 一 体 ポ テ ン シ ャルU=V+iWで
表 され る もの と した.
核 か ら受 け る平 均 場 の ポ テ ン シ ャ ル で あ り,Wは
複 合核過程 に流束
の 一 部 が 吸 収 され る こ とに 対 応 す る.こ の模 型 を光 学 模 型(optical model),
U
を光 学 ポ テ ン シ ャル(optical potential)と い う[8]. そ の 後,光 学 模 型 は 核 子 か ら重 イオ ン まで の すべ て の 入 射 粒 子,標
的核,入
射 エ ネ ル ギ ー に対 し て 普 遍 的 に 成 り立 つ こ とが わ か り,現 在 で は核 反 応 論 の基 礎 的概 念 の 一 つ に な って い る. か くして,現 代 の 核 反 応 論 は複 合 核 模 型,Serberの 低 エ ネ ルギ ー直 接 過 程 の 模 型,光
直 接 過 程 の 描 像,各 種 の
学 模 型 な ど を基 礎 に し て研 究 が 進 ん で い る.
そ れ ら の 現 象 論 的 模 型 の 理 論 的 基 礎 付 け もか な りの 程 度 行 わ れ て い る.ま
た,
こ れ ら さ ま ざ まな 反 応 過 程 を統 一 的 に説 明す る枠 組 み も,あ る程 度 で きて い る. しか し,す べ て の 多 彩 な核 反 応 を 統 一 的 に記 述 す る 理 論 は まだ な い.
1.2 基 礎 的 な 事 柄
1.2.1 核 反 応 の 種 類 核 反 応 は,普 通,一 つ の入 射 粒 子 が 一 つ の 標 的 核 に 衝 突 し て起 こ る.(星 の 中 で は 二 つ の 入 射 粒 子が 同 時 に 標 的核 に衝 突 す る 反 応 が 重 要 な こ と もあ る.)反 応 の結 果,い
くつ か の 放 出 粒 子 が 放 出 され,後
に 残 留 核 が 残 る.核 反 応 を観 測
す る に は,普
通,標 的 核 を 含 む 標 的 を実 験 室 に 固 定 し,入 射 粒 子 を一 方 向か ら
平 行 な 束(ビ
ー ム)と
し て 照 射 す る.入 射 粒 子 の 運 動 エ ネ ル ギ ー を入 射 エ ネル
ギ ー とい う.放 出粒 子 の 種 類,放
出 方 向,エ
ネ ルギ ー,強 度 な ど が 各 種 の測 定
装 置 を使 っ て測 定 され る. 標 的 核A,入
射 粒 子aで
始 ま り,残 留 核B,放
出 粒 子b1,b2,…,bnで
終 わる
反応 を
(1.1a) また は
(1.1b) で 表 す.も 表 す.も
し,入 射,放 出 粒 子 だ け に着 目す る と きは(a,b1b2…bn)の
し,b1=b2=bの
と きはb1b2の
代 わ りに2bと
よ うに
か い て も よい.普 通,
b1,b2,…,bnの
順 番 は 問 題 に しな い.し か し,特 に粒 子 の 放 出 の順 番 を 問 題 に
す る と き は,早
く放 出 され る もの を左 に 書 く.以 後,入 射 粒 子,標
粒 子,残
的核,放
出
留 核 を 一 括 し て反 応 粒 子 と呼 ぶ こ とに す る.各 反 応 粒 子 は素 粒 子 また
は い くつ か の粒 子 か ら な る複 合粒 子 で あ る.入 射 粒 子 に は 核 子,原 子 核,π,K 中 間子 な ど の ハ ド ロ ン,電 子,ミ
ュ ー オ ン な ど の 軽 粒 子,光
子 な ど,い ろ い ろ
の もの が あ る.本 書 で 取 り扱 うの は 主 と し て核 子 また は原 子 核 を入 射 粒 子 とす る 反 応 で あ る.し か し,一 般 に ハ ド ロ ン に よる 反 応 は そ れ と共 通 点 が 多 く,理 論 的 に は そ れ に準 じた 方 法 で 取 り扱 う こ とが で き る.以 後 簡 単 の た め に,特 に 断 らな い 限 り,軽 粒 子 と光 子 を除 く粒 子 を単 に粒 子,そ を複 合 粒 子 と呼 ぶ こ と にす る.
の い くつ か の 束 縛 状 態
核 反 応 の 中 で 最 も 簡 単 な の は 弾 性 散 乱(elastic こ の 反 応 で は,そ
方 ま た は 双 方 が 励 起 さ れ る.そ
ず,運
弾 性 散 乱(inelastic
性 散 乱 と 同 じ く,反 応 粒 子 の 種 類 は 変 化 せ ず,入
よ びA(a,a*)A*で
A(a,a)Aで
あ る.
の 前 後 で 反 応 粒 子 の 種 類 も 内 部 状 態 も 変 わ ら な い.
弾 性 散 乱 以 外 の 過 程 が 狭 義 の 反 応 で あ る.非 で は,弾
scattering)
scattering)
射 粒 子 と標 的 核 の 一
れ ら は 普 通 そ れ ぞ れA(a,a')A*とA(a,a*)Aお
表 さ れ る."*"は
励 起 状 態 を,a'はaの
内部状態 は変化せ
動 エ ネ ル ギ ー の 一 部 が 失 わ れ た こ と を 表 す.A(a,a*)A*は
相 互 励 起 と呼
ば れ る. 変 換 反 応(transmutation)で
は,反
そ れ は 組 み 替 え(rearrangement)反 構 も 多 様 で あ る.放
応 の 前 後 で 反 応 粒 子 の 種 類 が 変 わ る:A≠B. 応 と も呼 ば れ る.そ
出 粒 子 が 一 つ で あ るA(a,b)B型
の 種 類 は 多 く,そ
の機
の 反 応 は 特 に 詳 し く研 究 さ
れ て い る.
1.2.2
チ
ャ
ネ
ル
2反 応 粒 子 の 衝 突 に よ る 反 応 で は 一 般 に
(1.2)
の よ うに,い ろい ろな残 留 核 と放 出 粒 子 の 組が そ れぞ れ あ る確 率 で 発 生 す る.始 お よび 終 状 態 で の それ らの 組 の そ れ ぞ れ をチ ャ ネ ル とい う.(1.2)の
左 辺 の α ≡{A,a}を
辺 の
入 射 チ ャ ネル,右 の それ ぞ れ を 放
出 チ ャ ネ ル とい う.一 つ の 反 応 は 入 射 チ ャ ネ ル か ら放 出 チ ャネ ル の 一 つ へ の 遷 移 と見 る こ とが で き る. 一 般 にM個 の 反 応 粒 子 か らな るチ ャネ ル をM粒
子 チ ャネ ル と呼 ぶ こ とに す
る.正 確 な 議 論 の た め に は チ ャ ネル を反 応 粒 子 の 種 類 だ け で な くそ の状 態 まで 指 定 す るの が 便 利 で あ る.(1.2)で 乱)チ
ャ ネ ル{A*,a'}を
弾 性(散
乱)チ
ャ ネ ル{A,a}と
区 別 した の は そ の例 で あ る.時
また は 放 出 粒 子 の 名 前 だ け で 呼 ぶ こ とが あ る.た
非 弾 性(散
と して チ ャ ネ ル を 入 射
とえ ば1個
の 中 性 子(n)が
入
射,放
出 す るチ ャ ネ ル を 中性 子(n)チ
るチ ャ ネ ル を2pチ
ャ ネ ル,2個
の 陽 子(p)が
入 射,放
出す
ャ ネル と呼 ぶ な ど で あ る.
系 に複 数 の 同 種 の粒 子が 含 まれ て い る 場 合,量 子 力 学 的 に は それ ら を区 別 で きない.し
か し,議 論 を 進 め る上 か らは,あ た か もすべ て の 粒 子 が 区 別 で きる
か の よ うに取 り扱 い,こ の 区 別 不 可 能性 は 計 算 が 終 わ っ て か ら,た
と えば 波 動
関 数 の 同種 粒 子 の 交 換 に 対 す る対 称 また は 反 対 称 化 な ど に よ っ て,別 途 考 慮 す るの が 便 利 な こ とが 多 い.そ
こで,以
下,特
に 断 らな い 限 り,す べ て の 粒 子 に
番 号 をつ け て 番 号 が 異 な る粒 子 が 区 別 で き る とい う取 り扱 い を す る. 一 つ の チ ャ ネル を 構 成 す る粒 子 の 静 止 エ ネル ギ ー の和 をそ の チ ャ ネル の 内部 エ ネル ギ ー とい う.こ れ と粒 子 の 運 動 エ ネ ル ギ ー の和 が 系 の 全 エ ネ ル ギ ーで あ る.全 エ ネ ル ギ ー は 運 動 の 恒 量 で あ るか ら,反 応 の 前 後 で 変 化 しな い.反 応 前 後 の 内 部 エ ネ ル ギ ー の 差 を そ の 反 応 のQ値
とい う.反 応(1.1a)の
部 エ ネ ルギ ー を εに 粒 子 の 名 を付 け て表 せ ば,そ のQ値
各粒 子の 内
は
(1.3) で あ る.Qβ α>0の
反 応 を 発 熱 反 応,Qβ α<0の
反 応 を吸 熱 反 応 と い う.粒
子 の 運動 エ ネ ルギ ー の 総 和 はQβ αだ け 変 化 す る.吸 熱 反 応 が 起 こ る た め には, 入 射 エ ネ ルギ ー は そ の 反 応 の│Qβ α│よ り大 き くなけ れ ば な らな い.一 つ の 反 応 が 起 こ る た め に必 要 な最 小 の 入射 エ ネ ルギ ー を そ の 反 応 の し きい 値(threshold) とい う.入 射 エ ネ ルギ ーが 一 つ の放 出 チ ャ ネ ル の し きい 値 よ り大 きい と き,そ の 放 出 チ ャ ネル は そ の 入 射 エ ネ ル ギ ー で 開 い て い る とい い,そ じて い る とい う.入 射 エ ネル ギ ーが 上が る に従 っ て,多
1.2.3 断 核 反応 で,い
面
うで な い と き閉
くの チ ャ ネル が 開 く.
積
ろ い ろな 事 象 が 起 こ る確 率 は 断 面 積 で 表 され る.断 面 積 は 単 位
流 束 の 入 射 ビ ー ムが 単 位 時 間 に そ の 事 象 を起 こ す 回 数 で 定 義 され,面 積 の 次 元 を もつ.ビ
ー ム の 流 束 は そ れ に 垂 直 な 単 位 面 積 を 単 位 時 間 に 通 過 す る粒 子 の 数
で 定 義 す る.核 反 応 論 で は 断面 積 の 基 本 単 位 と して バ ー ン(barn,記
号b)が
用 い られ る.
で あ る.こ る.補
れ は 中 くらい の重 さの 原 子 核 の 幾 何 学 的 な断 面 積 程 度 の大 き さで あ
助 単 位 と し て,キ
ロ(k,103),ミ
リ(m,10-3),マ
イ ク ロ(μ,10-6),
ナ ノ(n,10-9)バ
ー ン な どが 用 い られ る.
一 つ の 入 射 チ ャ ネル か ら何 らか の 反応 が 起 こ る 断面 積 を 全 断 面 積(total cross section)と い う.全 断 面 積 は そ の チ ャ ネ ル を入 射 チ ャ ネ ル とす る個 別 的 な反 応 の 断 面 積 の 総 和 で,弾 性 散 乱 の 全 断 面 積,全 弾 性 散 乱 断 面 積,と 断 面 積 の 総 和,全
反 応 断 面 積(total reaction cross section),の
狭義の反応 の 和 で あ る*1.
個 々の 反 応 の 断 面 積 は 放 出 粒 子 の 放 出方 向 とエ ネ ル ギ ー との 関 数 で あ る.そ れ を放 出粒 子 の 方 向 の 関 数 と して み た ものが 角 分 布 で あ る.そ れ は 注 目す る方 向 の 周 りの 微 小 立 体 角 中 に 放 出 され る断 面 積 の単 位 立 体 角 当 た りの 値 で あ る微 分 断 面積 に よっ て表 され る.そ の基 本 単 位 はb/sr(srはsteradian(立 略)で あ る.時
体 角)の
と し て,そ の 絶 対 値 は 問題 にせ ず,角 度 依 存 性 だ け に注 目す る
場 合 もあ る.同 様 に し て,断 面 積 を放 出粒 子 のエ ネ ル ギ ー の 関 数 と して み た も の をエ ネル ギ ー ・スペ ク トル とい う.そ れ は,エ 積 で 表 され る.そ の 基 本 単 位 はb/MeVで
ネ ル ギ ー に つ い て の 微 分 断面
あ る.非 弾 性 散 乱 で 核 の 離 散 的励 起
状 態 を 励 起 す る場 合 の よ うに,放 出粒 子 のエ ネ ルギ ーが 決 ま って い る場 合 に は, そ れ に 対 応 す る エ ネル ギ ー ・ス ペ ク トル は δ関 数 に 比 例 す る.そ れ を線 スペ ク トル とい う.方 向 とエ ネ ルギ ー の 双 方 の 関 数 とし て み た 場 合,す
な わ ち あ る角
度 で の エ ネル ギ ー ・スペ ク トル また は あ るエ ネ ルギ ー の 放 出粒 子 の 角 分 布 は 角 度 とエ ネル ギ ー の 両 方 に つ い て の 微 分 断 面 積 で 表 され る.そ れ を 二 重 微 分 断 面 積 とい う.基 本 単 位 はb/sr・MeVで
あ る.複 数 個 の 粒 子 が 放 出 され る場 合 に は
そ れ ぞ れ の 放 出粒 子 に対 して 上 記 の 微 分 断面 積 が 定 義 され る.そ れ ら を 同時 に 観 測 した もの は 多 重 微 分 断 面 積 に よ って 表 され る.放
出 され る粒 子 の 一 部 しか
観 測 しな い 場 合 の 断 面 積 に は,観 測 され な い粒 子 に 対 して 起 こ る す べ て の事 象 の確 率 の 和 が 含 まれ る こ とに な る.こ の よ うな 断面 積 を包 括 的(inclusive)断 面 積 とい う.こ れ に対 し て,個
々の 事 象 に 対 す る 断 面 積 を個 別 的(exclusive)
断 面 積 とい う. 一 つ の 断 面 積 を入 射 エ ネ ル ギ ーの 関数 とし て見 た もの を そ の 断 面 積 の 励 起 関 数(excitation
function)と
い う.
一般 に ス ピ ン を もつ 粒 子 の ビ ー ム の ス ピ ンの 方 向が 一 様 で ない 場 合,そ の ビ ー ム は偏 極(polarize)し
て い る とい う.核 子,重
陽 子 な ど の偏 極 し た 入 射 ビ ー
ム に よ る反 応 の研 究が 盛 ん に 行 わ れ て い る.標 的 中 の 標 的 核 の ス ピ ンの 偏 極 も *1 入 射粒 子 が 電 荷 を持 つ 場 合 に は弾 性散 乱 の 微 分 断面 積 は放 出 角0° で 無 限大 で も無 限大 で あ る.し た が っ て,弾 性散 乱 の 全 断面 積 も無 限 大で あ る.
,そ の積 分
考 え られ るが,実
際 に は ご く限 られ た 場 合 に しか 実 験 され て い な い.放
出粒 子
の ビ ー ム も一 般 に 偏 極 して い る.ま た,入 射 ビ ー ム が 偏 極 し て い る と放 出粒 子 の 角 分 布 は 入 射 ビ ー ム に 関 して 一般 に 軸 対 称 で は な い.偏 極 の 度 合 い は"密 度 行 列"を 用 い て 定 義 され,空
間 の 回 転 に 対 して 球 面 テ ン ソル の よ うに 変 換 す る
い ろ い ろ な偏 極(polarization)と
呼 ば れ る 量 に よ って 表 され る .ま た,前 期 の
放 出粒 子 強 度 の 軸 対 称 か らの ず れ は 分 解 能(analyzing
power)と
呼ばれ る量で
表 され る. 偏 極 量 に つ い て は精 緻 な 理 論 的定 式 化 が 完 成 して お り,そ れ に 沿 っ た 実 験 的 観 測 と理 論 的 解 析 が 盛 ん に 行 わ れ て い る.し か し,本 書 で は 偏 極 量 に つ い て の 議 論 は行 わ ず,巻 末 の 参 考 書 に そ れ を ゆ だ ね る.
1.2.4 反 応 を記 述 す る座 標 系 反 応 を定 量 的 に 記 述 す る に は 座 標 枠 を 決 め ね ば な らな い.実 験 結 果 を直 接 記 述す るの に便利 な のは 実 験 室 に 固定 した 実 験 室 系(laboratory
frame)で
あ る.こ
れ に 対 して,系 全 体 の 重 心 と同 じ速 度 で 運 動 す る もの を 重 心 系(center-of-mass frame)と
い う.系 全 体 の 並 進 運 動 は 反 応 とは 無 関 係 なの で,重 心 系 は反 応 の物
理 的 記 述 に便 利 で あ る.こ れ ら の ほ か に,標
的核 に 固定 し た系,核
内の一つ の
核 子 に 固 定 し た系 な ど の よ うに理 論 的 考 察 に有 用 な 座 標 枠 もあ る.こ れ ら の座 標 枠 の 中 に 原 点 と座 標 軸 を設 定 し て座 標 系(coordinate
system)を
決 め,そ れ
に よ っ て 粒 子 の運 動 を記 述 す る. 一 つ の 座 標 系Oか る と,物 理 量Qの
らそ れ に対 し て 等 速 度 で 平 行 移 動 す る座 標 系O'へ 値 がQか
らQ'に
に 変 化 す る か を 見 よ う.質 量miの で そ れ ぞ れri, viお
よびpiで
乗 り移
変 わ る.次 に い くつ か の 基本 的 な 量 が い か 一 つ の 粒 子iの
あ る とす る.O'がOに
移 動 し て い る とす る と,そ れ ら のO'系
座 標 と速 度,運 動 量 がO系 対 して 等 速 度Vで
平行
での値 は
(1.4) に 変 化 す る.た 間 で あ る.こ
だ し,tは
れ をGalilei変
両 座 標 系 の 原 点 間 がaだ
けず れ て い た と きか らの 時
換 と い う.(相 対 論 で こ れ に 対 応 す る も の はLorentz
変 換 で あ る.) 系 が 複 数 個 の 粒 子 か ら な る 場 合,任
意 の 二 つ の 粒 子1と2の
わ ち 相 対 座 標 は 不 変 で あ る:r'1-r'2=r1-r2.
座 標 の 差,す
な
運動 量の差 は
と 変 換 さ れ る.m1=m2な
ら,p'1-p'2=p1-p2で
い 粒 子 の 運 動 量 の 差 はGalilei変 一 つ の 粒 子iの は 粒 子iの,こ た が っ て,移
あ る か ら,質
換 に 対 し て 不 変 で あ る.同
反 応 の 前 後 の 運 動 量 の 差 の 反 応 で の 移 行 運 動 量(momentum 行 運 動 量 はGalilei変
こ れ に 対 し て,運
量 が等 し
じ こ とは系 の 中の
に つ い て もい え る transfer)と
.qi
呼 ば れ る.し
換 に 対 し て 不 変 で あ る.
動 量 の 総 和 Σipiは
(1.5) と変 化 す る.た だ し,
は 全 系 の 質 量 で あ る.
は系全体
の 重 心 の 運 動 量 で あ る か ら,(1.5)を
(1.6) と 書 く こ と も で き る.ま
た,運
動 エ ネ ル ギ ー の 変換 は
(1.7) で あ る.ま
た,そ
の総和 は
(1.8) と 変 換 す る.た
だ し,
で あ る.
1.2.5 実 験 室 系 と重 心 系 以 上 を特 に重 要 な実 験 室 系 か ら重 心 系 へ の 変換 に 適 用 し よ う.こ の項 に 限 り, 実 験 室 系(重 心 系)の 値 に は 添 え字lab(cm)を で の重心の速度 は
で あ る.
つ け る こ とに す る.実 験 室 系
(a) 運 動 量,運 質 量miの
動 エネルギー
粒 子iの 座 標,速
度,運 動 量 は それ ぞ れ
(1.9) と変 換 す る.前 項 に よ り,質 量 が 等 しい 二 つ の 粒 子 の 運 動 量 の 差,一 つ の 粒 子 の 反 応 に よ る移 行 運 動 量 は 両 系 で 変 わ ら な い. 運 動 量 の 総 量,す
な わ ち重 心 の 運 動 量 は
(1.10) と変 換 す る.こ れ は 重 心 系 の定 義 か ら当 然 で あ る.(1.10)を
(1.11) と 変 形 す る と,そ れ は 系 の全 運 動 量 が 重 心 の 運 動 量Plabと の 総 和
重 心 系 で の 運動 量
に分 離 す る こ とが で きる こ と を表 す.
運 動 エ ネ ルギ ー は
(1.12) その総和 は
(1.13) と 変 換 す る.(1.13)を,(1.11)と
同 様 に,
(1.14) と変 形 す る と,そ れ は 全 系 の 運 動 エ ネ ルギ ーが 重 心 の 運 動 エ ネ ル ギ ー と重 心 系 で の 運 動 エ ネ ル ギ ー に 分 離 で き る こ とを 示 す.た
だ し,Kicmの
各項 の運動量
picmは す べ てが 独 立 で は な く,常 に(1.10)を 満 た し て い な け れ ば な らな い.ま た,重 心 運 動 の 分 離 は,い ま仮 定 して い る,非 相 対 論 的 近 似 の範 囲 内 の こ とで, 相 対 論 で は こ の よ うな 分 離 は で きな い こ と に注 意が 必 要 で あ る.
(b) 二 粒 子 系 の 相 対 運 動 量 核 反 応 で は 系 が 二 つ の 反 応 粒 子 か ら な る場 合 が 特 に重 要 で あ る.た
とえ ば,
反 応 の 始状 態 で は 系 は 入 射 粒 子 と標 的 核 の 二 粒 子 か ら な る.こ の 場 合 に は(1.9) よ り,
(1.15) と な る.こ れ ら に対 して 前 記 の結 論 が 成 り立 つ こ とは も ち ろ ん で あ る.そ の ほ か に 二粒 子 間 の 相 対 運 動 が 重 要 で あ る.相 対 速 度 はGalilei変 換 に対 し て 不 変 で あ るか ら
(1.16) 右 辺 に(1.15)を
代入 する と
(1.17) こ こ に,μ
≡m1m2/(m1+m2)は
こ の 系 の 換 算 質 量 で あ る.よ
って
(1.18) で 相 対 運 動 量(relative
momentum)を
定 義 す る の が 合 理 的 で あ る.運
動 エネ
ル ギ ーが
(1.19) と書 け る こ と は 見 や す い.こ れ は, ギ ー で あ る こ とを示 す.(1.18)か
が 二 粒 子 の相 対 運 動 の 運 動 エ ネル
ら明 らか に,相 対 運 動 量 は 重 心 系 へ のGalilei
変 換 に対 し て不 変 で あ る:
(1.20) (1.13)と(1.19)か
ら
(1.21) とな る.重 心 系 で は重 心 の 運 動 エ ネル ギ ー は0で
あ る か ら,こ れ は 当 然 で あ る.
(c) し き い 値 さて,反
応(1.1a)が
で あ る.(1.14)に
吸 熱 反 応 で あ る と き そ の し き い 値 は,重
よれ ば,実
心系で は
験 室 系 で は入 射 エ ネ ルギ ーの 一 部 が 重 心 の 運 動 エ ネ
ル ギ ー に な っ て し ま う か ら,し
き い 値EthはEthcmよ
り重 心 の 運 動 エ ネ ル ギ ー
(1.22) だ け 大 き い.よ
って
(1.23) で あ る.た
(d) 散
だ し,ma(mA)は
乱
入 射 粒 子a(標
的 核A)の
質 量 で あ る.
角
散 乱 角 も両 座 標 系 で 異 な る.入 射 方 向 にz軸,散
乱 平 面 内 で そ れ に垂 直 な 方
向 にx軸
れぞ れθlabお よび θcmは
を とれ ば 実 験 室 系 と重 心 系 で の 散 乱 角,そ
で 与 え ら れ る.し
で あ るか ら
か る に,
(1.24) で あ る.
重心の座標 は
(1.25) で 定 義 さ れ る.粒 子iの 重 心 系 で の 空 間座 標ricmは 原 点OGか
重 心 系 に 固 定 され た座 標
ら測 っ たiの 位 置 ベ ク トル で あ る.そ れ らは
(1.26) を 満 た す.し た が っ て,す べ てが 独 立 で は な い. 古 典 力 学 で は,重 心 の 運 動 量が0で
あ れ ば,重
心 は 静 止 し て い る.し
たが っ
て 重 心 の 位 置 は 一 定 で あ る.し か し量 子 力 学 的 に は,重 心 の 運 動 量 が0,す
な
わ ち 一 定 な ら,そ の 位 置 は まっ た く不 確 定 で あ る.す な わ ち,量 子 力 学 的 に は 重 心 系 は 重 心 の位 置 に 固 定 し た 座 標 系 で は な い.こ れ を明 確 に す る た め に,重 心 系 を運 動 量 中心 系(barycentric
system)と
呼 ぶ こ とが あ る.
1.2.6 Jacobi座
標 系
座 標 系 にはJacobi座 2個,た
標 系 と よば れ る もの が あ る.N個
と えば1と2,の
で,1,2系
相 対座標 を
の重 心 座 標 を
で 定 義 す る.次 に 別 の 粒 子,た
と1,2,3系
と えば3,とy1と
重 心yN-2と
をN-1番
の相 対 座 標
の重心
を 定 義 す る.以 下 同 様 に し て,最 後 の粒 子Nと
をN番
の粒子 の中の任意 の
そ れ 以 外 のN-1個
の粒子 の
の相 対 座 標
目の 座 標 と し,最 後 に全 系 の 重 心 座 標
目 の 座 標 と す る の で あ る.Jacobi座
義 さ れ る.ど
標 系 は(x1,x2,…,xN-1,R)で
の 粒 子 の 座 標 を 組 み 合 わ せ てxiを
定
定 義 す る か は 任 意 で あ る.
1.3 核 反 応機 構 の 概 観
核 反 応 は 非 常 に 多 様 で あ る.そ の す べ て を 統 一 的 に 理 解 す る こ とは 難 しい. し か し,入 射 粒 子 が 核 子 ま た は 原 子 核 で,中
間子 の 生 成 を伴 わ な い 程 度 の比 較
的低 い 入 射 エ ネル ギ ー の 場 合 に つ い て は,あ る程 度 一 般 的 な描 像 が 確 立 し て い る とい って よい.以
下,そ れ を 説 明 す る.こ の描 像 は ほ か の種 類 の 反 応 に対 し
て も考 察 の 基 礎 と して 重 要 で あ る.
反 応 の 最 初 の段 階 で は,入 射 粒 子aも
標 的核Aも
内部 状 態 は まだ まっ た く励
起 され な い.原 子 核 同士 の衝 突 で は,互 い の 正 電 荷 の 間 にCoulombの
斥 力が 働
く.入 射 エ ネル ギ ーが 低 い と,反 応 粒 子 は 古 典 力 学 的 に は このCoulombの
ポテ
ン シ ャル の 障 壁,Coulomb障
壁(Coulomb
運 動 エ ネ ル ギ ーがCoulombポ
テ ン シ ャル に等 し くな る"最 近 接 距 離(distance
of closest approach)"ま
barrier),に 阻 まれ て,相 対 運動 の
で しか 近 づ け な い.こ の 場 合 には,ほ とん どCoulomb
力 の み に よ る 散 乱 だ けが 起 こ る.(Rutherfordら こ の散 乱 に よる もの で あ る.)し
が 原 子 核 を発 見 した の は 正 に
か し,核 力 に よ る反 応が まっ た く起 こ ら な いわ
け で は な い.そ れ は量 子 力 学 的 トン ネ ル 効 果 に よっ て,反 応 粒 子 が 互 い の核 力 の レ ン ジ 内 に しみ こ むか らで あ る.そ の確 率 は非 常 に小 さい が,恒 星 内 の核 反 応 な どで 非 常 に 重 要 な 役 割 を演 じ る.言 う まで もな く,中 性 子 に対 し て はCoulomb 障 壁 は 存 在 し な い.こ れ が 中性 子 に よ る反 応 の 非 常 に 大 きな 特 徴 で あ る. 入 射 エ ネル ギ ーが 上 が る につ れ て最 近 接 距 離 は小 さ くな る.そ れ が2つ 応 粒 子 の 半径 の和Ra+RA程
の反
度 よ り小 さ くな る と,そ れ らは 互 い に 重 な り,核
力 に よ る反 応 が 起 こ る.核 力 はCoulomb力
よ りは るか に 強 い の で,そ れ 以 上
の エ ネ ル ギ ーで は核 力 に よ る核 反 応 が 主 に な る.こ の 境 目の 入 射 エ ネ ルギ ー は ほぼ
(1.27) で あ る.BCα
をCoulomb障
壁 高(Coulomb
値 を計 算 す る に はe2=1.440MeV・fmを Coulomb障
barrier height)と い う.そ の 数
使 う と便 利 で あ る.*2
壁 を 超 え た 反 応 粒 子 が まず 感 じ るの は光 学 ポ テ ン シ ャル(optical
potential)で あ る.そ れ は 反 応 粒 子 間 の 相 対 運 動 だ け に働 き,内 部 状 態 を 変 え る こ と は な い.入 射 波 の か な りの 部 分 は こ の ポ テ ン シ ャル に よ っ て散 乱 さ れ て 弾 性 散 乱 を 起 こす.光 学 ポ テ ン シ ャル に よ る 散 乱 は瞬 間 的 に 終 わ る.こ の段 階 で 放 出 され る粒 子 の 角 分布 に は,ポ テ ン シ ャル 散 乱 に特 有 な 回折 模 様 が 現 れ る. 光 学 ポ テ ン シ ャル 中 を運 動 す る う ち に 反応 粒 子 間 の相 互 作 用 に よ っ て それ ら の 内 部 状 態 が 段 階 的 に 励 起 され る.最 由度,た
初 の 段 階 で は ご く少 数 の 内 部 運 動 の 自
と え ば 標 的 核 内 の 一 つ の 核 子 の 運 動,だ
続 くに つ れ て,よ
け が 励 起 され る.相 互 作 用 が
り多 くの 内 部 運 動 自 由度 が 次 々 と励 起 され,最 後 に はエ ネ ル
ギ ー 的 に 許 さ れ る全 て の 自由度 が 励 起 され た 状 態 に な る.こ れ が 先 に 述 べ た複 *2 1fm(フ
ェ ム ト メ ー タ ー ま た は フ ェ ル ミ) =10-13cm.原
子 核 の 半 径 は 数fmで
あ る.
合 核(compound
nucleus)状 態 で あ る.
この よ うな 反 応 の 各段 階で,あ る確 率 で 粒 子 の 放 出が 起 こ り,そ こで 反 応 が 終 わ る.少 数 の 内部 自由度 が 励 起 され た だ け の段 階で 短 時 間 で 終 わ る 反応 を直 接 反 応(direct
reaction),そ
の 機構 を 直接 過 程(direct process)と い う.直 接 過 程 で
は,内 部状 態 の励 起 に使 われ るエ ネルギ ーや 移 行 され る運 動 量 は それ ほ ど大 き く な い.し たが って 放 出粒 子 は比 較 的 高 いエ ネルギ ーで 前 方 に放 出 され る.直 接 過 程 に対 して 複 合核 状 態 を経 過 す る もの を複 合 核 過 程(compound とい い,両 い う.い
nucleus process)
者 の 中 間 で 終 わ る もの を 前 平 衡 過 程(pre-equilibrium
process)と
う まで も な く,そ れ と直接 過 程 の境 界 は 曖 昧で あ る.
反 応 粒 子 の 内 部 状 態 が 励 起 す る と,そ れ ら の 相 対 運 動 の エ ネ ル ギ ー は そ の 励 起 エ ネ ル ギ ー の分 だ け 減 る.場 合 に よ って は,そ れ が 負 に な り系 は 一 種 の 束 縛 状 態 に な る.た だ し,系 の 全 エ ネ ル ギ ー は正 で あ るか ら,真 の 束 縛 状 態 の よ う に そ の 状 態 が 永 久 に 続 くこ と は な い.こ の よ うな 準 束 縛 状 態 は 一般 に連 続 状 態 に 埋 ま っ た 束 縛 状 態(bound
state enbedded
in the continuum)と
呼ばれ
る.そ れ は 束 縛 状 態 と 同様 に離 散 的 な エ ネル ギ ー 固 有 値 を もつ.核 反 応 で は そ の 状 態 は 入 射 エ ネ ル ギ ー が そ のエ ネ ル ギ ー 固有 値 と合 致 す る と きに だ け 形 成 さ れ,時
と して 共 鳴 と して 観 測 され る.複 合 核 状 態 は 正 に そ の よ うな 状 態 の 一 つ
で あ る. しか し,核 反応 で で き る準 束 縛 状 態 は 複 合 核 状 態 に 限 らな い.励 起 自 由度 が そ れ よ りは るか に 少 な い 反 応 の段 階 で そ れ が で き る可 能性 が あ る.実 際,入
射
エ ネ ル ギ ーが 低 け れ ば,入 射 粒 子 の エ ネル ギ ー は 反 応 粒 子 の 少 数 個 の 内部 運 動 自 由度 が 励 起 した だ け で 負 に な り うる.図1.1は
低 エ ネ ルギ ー の 核 子 が 殻 模 型
の 閉 殻 核 に入 射 した 場 合 に準 束 縛 状 態 が 形 成 され る 様 子 を模 式 的 に 示 す. 最 初 に で き る の は 標 的 核 の 一 核 子 の 励 起 に よ る 準 束 縛 状 態 で,戸 (doorway
口状 態
state)と 呼 ば れ て い る.'戸 口'と は さ ら に 複 雑 な 構 造 の 状 態 に 入
る 入 り口 と い う意 味 で あ る.実
際,エ
ネ ル ギ ー 的 に 許 さ れ れ ば,あ
る確率 で
さ ら に 一 つ の核 子 が 励 起 し て標 的 核 の 二 核 子 励 起 状 態 を伴 う廊 下 状 態(hallway state)に 遷 移 す る 等 々で あ る. 戸 口 状 態 の あ る も の は 実 際 に 共 鳴 とし て 観 測 され て い る.そ の例 は負 エ ネ ル ギ ー に な った 入 射 粒 子 と標 的核 の,一 核 子励 起状 態 の 重 ね 合 わせ で あ る,集 団 運 動(表 面 振 動,回 転 な ど)の 一 量 子状 態 とか らな る状 態 で あ る.戸 口状 態 に よる共 鳴 は複 合 核 形 成 以 前 の段 階の 準 束 縛 状 態 に よ って 起 こ る中 間 共 鳴(intermediate
○ は 核 子,縦
の 矢 印 は 衝突 に よる 遷 移,×
印 は そ れ に よ って 生 じ る 空孔 を 表 す .
図1.1 核子が入射す る反応での 中間共鳴状態 の形成
resonance)の
一 つで,戸 口状 態 共鳴(doorway
state resonance)と
呼 ば れ て い る.
戸 口状 態 共 鳴 は 入 射 エ ネ ル ギ ーが あ る程 度 以 下 で な けれ ば 起 こ らな い.し か し 反応 の 残 留 核 が 戸 口状 態 とな り,そ こか ら前 記 の よ うな 内 部 運 動 励 起 の 連 鎖 が 始 ま る こ とは しば しば 起 こ る.非 弾 性 散 乱 で励 起 され た 巨大 共 鳴状 態,(p,n) 反 応 で 励 起 され た ア イソバ リ ッ ク ・アナ ログ 状 態 な ど は そ の 典 型 的 な例 で あ る. さ て,一 つ の 準 束 縛 状 態 の寿 命 をTと
す る と,不 確 定 性 関 係 に よ り,そ の エ
ネル ギ ー に は
(1.28) の 幅 が 生 じ る.Tをsecで,Γ
をeVで
表せば
(1.29) で あ る.Γ/hは
単 位 時 間 当 た りの 崩 壊 確 率 で あ る.準 束 縛 状 態 の 崩 壊 は 何 らか
の 粒 子 を放 出 す るか,別
の 構 造 を もつ 準 束 縛 状 態 へ さ ら に 移 行 す る こ と に よ っ
て起 こ る.前 者 の 単 位 時 間 当 た りの確 率 を Γ↑/h,後 者 の そ れ を Γ↓/hと書 く と
で あ る.Γ ↓をspreading
width(分
散 幅),Γ ↑をescaping
と い う.準 束 縛 状 態 の 状 態 密 度 は 励 起 され る 自由 度 の 数fと
width(脱
出幅),
と もに非 常 に 急 速
に増 す.し たが って 統 計 的 に見 て,中 間 共 鳴 状 態 の 分散 幅 Γ↓に対 して はfが
よ
り大 きい準 束 縛 状 態 の 方 向へ の 遷 移 の 寄 与 が 圧 倒 的 に大 きい と考 え られ る.た
だ し,複 合 核 状 態 に 対 して は そ れ よ りfが 大 きい 状 態 は存 在 しな い か ら こ の 限 りで な い.こ の 場 合 に は,Γ ↓は 非 常 に小 さ い. 一つ の準 束 縛 状 態 が 中 間共 鳴 とし て観 測 され るた め に は,そ の 寿 命Tが 状 態 の運 動 周 期Tよ 隔 をDと
り長 くな くて は な ら な い.Tは,そ
す る と,ほ ぼ
その
の 状 態 の 平 均 の準 位 間
で あ るか ら,そ の 状 態 が 準 定 常 状 態 と し て存
在 で きる た め の 条 件 は
(1.30) で あ る.こ の 条 件 が 成 り立 た な け れ ば,そ の 状 態 は 形 成 され る や 否 や 崩 壊 し て し ま うか ら,反 応 過 程 の 中で 特 別 な役 割 を果 た さな い.す で に述 べ た よ うに,D は 励 起 運 動 自 由度 のfと
共 に 急 速 に小 さ くな るが,Γ
化 し な い と思 わ れ るか ら,(1.30)の と予 想 され る.実 際,今 戸 口状 態 だ け で,ほ
条 件 はfが
は そ れ ほ ど 急 速 に は変
増 す と急 速 に 成 り立 た な くな る
まで の とこ ろ 中 間共 鳴 と して 広 く観 測 され て い る の は
か に は例 外 的 に廊 下 状 態が 観 測 され て い る にす ぎ な い.
しか し,複 合 核 状 態 で は す で に 述 べ た よ うに Γ↓は 小 さい.ま
た,い
ったん
多 数 の 内 部 自 由度 に 散 っ た エ ネ ル ギ ー が 少 数 個 の核 子 に集 中 し,そ れ が 放 出 さ れ る確 率 は小 さい か ら,Γ ↑も小 さい.し たが って,Γ は小 さ く,そ の寿 命 は 非 常 に長 い. 低 い 入 射 エ ネ ルギ ーで は,こ の よ うな Γ に比 べ て 準 位 間 隔Dは
まだ 大 き く,
各 準 位 は孤 立 し た 共 鳴 と し て観 測 され る.こ のエ ネ ル ギ ー領 域 を共 鳴 領 域 とい う.エ ネ ル ギ ーが 上が る に し たが っ て,Dは
急 速 に減 り,や が てΓ よ り小 さ く
な り,準 位 は 互 い に重 な り合 っ て し まい,孤 立 し た 共 鳴 は 見 え な くな る.こ の エ ネ ルギ ー 領 域 を連 続 領 域 と呼 ぶ.こ の 領 域 で は 形 成 され る状 態 は 非 常 に複 雑 で,互
い に 相 関 を持 た な い 多 くの 準 位 が 重 な り合 った 状 態 で あ る.そ れ は 熱 平
衡 状 態 に似 て い る.実 際,そ
の 状 態 か らの 粒 子 の放 出 は熱 し た 液 滴 か らの 気 体
分 子 の蒸 発 に 似 て い る. 以 上 が 核 子 系 に よ る 反 応 の 概 観 で あ る.図1.2は
軽 い 核 子 系(軽
よ る反 応 の 機 構 を模 式 的 に 示 した もの で あ る.重 い 核(重
イ オ ン)に
イオ ン)に
で は こ の よ うな段 階 分 け は 段 階 数 が 増 す と急 速 に意 味 を 失 う(第8章
よる 反 応 参 照).
上 の 記 述 か ら もわ か る よ うに,反 応 の 各 段 階 の 区 別 は 多 分 に 定 性 的 で あ る. ま た,あ る段 階 に 系が 滞 在 す る 確 率 が 非 常 に小 さけ れ ば,そ
の段 階を区別す る
こ と は あ ま り意 味 が な い.各 段 階 か ら発 生 す る放 出 波 は 互 い に 干 渉 し,そ の 結
図1.2
果 が 実 験 的 に 観 測 され る.個
核 反 応 機 構 の概 略
々の 反 応 で 実 際 に,ど の段 階が ど の よ うな 役 割 を
果 た し て い る か は,そ れ らを個 別 的 に詳 細 に 研 究 す る こ とに よ って 始 め て 明 ら か にす る こ とが で きる.上 に 述 べ た の は 反 応 の全 体 的 な 枠 組 み で あ る.
1.4 反 応 機 構 と エ ネ ル ギ ー 平 均
前 節 で 述 べ た 核 反 応 の い ろ い ろ な 機 構 は 量 子 力 学 的 に は すべ て 一 つ の 波 動 関 数 で 記 述 され る.そ れ らの 寄 与 は 互 い に干 渉 す る.実 験 的 に そ れ を 直 接 分 離 す る こ とは で きな い.個 せ ねば な ら な い.さ
々の 反 応 機 構 の 寄 与 を 知 るに は 観 測 結 果 を 理 論 的 に解 析
らに,実 験 的観 測 は1個
の 入 射 粒 子 で は な く,多 くの 粒 子
か らな る ビ ー ム を使 っ て な され る こ とに も注 意 せ ね ば な ら な い.こ
の 節 で は,
こ の よ うな 状 況 下 で 個 々の 反 応 過 程 の 寄 与 を 知 る に は ど うし た ら よい か,と
い
う問題 を考 え て み よ う. そ の た め に,前 節 で 述べ た 異 な る 反 応 過 程 の 断 面 積 の エ ネル ギ ー依 存 性 が 互 い に著 し く異 な る こ とに 注 目す る.実 際,光 学 ポ テ ン シ ャル に よ る散 乱 と直 接 過 程 の 断 面 積 は エ ネ ル ギ ー と と もに ゆ っ く り変 化 す る.そ の 変 化 は ポ テ ン シ ャ ル 散 乱 の共 鳴 な ど に よ る もの で あ る.そ の 共 鳴 の 間隔D0,幅
Γ0はMeV単
位
の 大 き さを もつ.こ れ に対 して,一 核 子 の 励 起 で で き る,戸 口状 態 の準 位 間隔 D1,幅Γ1は100keV単
位 で あ る.複 合 核 共 鳴 の 準 位 間隔DNはeV単
位以下
に な り うる.そ れ ゆ え共 鳴領 域 で これ らの 状 態 の 断 面 積 は 非 常 に異 な っ た エ ネ ル ギ ー 依 存 性 を持 つ.そ れ を利 用 し て こ れ ら の 反応 機 構 の 寄 与 を理 論 的 に 分 離 す る こ とを 考 え よ う. 次 章 で 詳 し く述 べ る よ うに,あ とす る と,そ の 断 面 積 は
る反 応 の エ ネ ルギ ーEで
の 散 乱 振 幅 をf(E)
(1.31) で 与 え られ る.た だ し,CはEと
と もにゆ っ く り変 わ る係 数 で あ る.こ の 反 応
に対 す る,光 学 ポ テ ン シ ャ ル に よる 散 乱 お よび 直 接 過 程 の 寄 与 をf0と 状 態 の 中 間共 鳴 を経 過 す る反 応 機 構 の 寄 与 をf1,複
し,戸 口
合核 過程 の 寄 与 をfNと
し
よ う.f(E)は
(1.32) で 与 え られ る. これ らの 散 乱振 幅 のエ ネ ルギ ー平 均 を考 えて み よ う.エ ネ ルギ ー に つ い て,E を 中心 と す る幅2Iの
区 間 に わ た る平 均 を 〈・ 〉Iで表 す と こ と にす る.(1.32)に
よれ ば
(1.33) で あ る.過
程n=0,1ま
た はNに
対 し て,も
しI≫Dnで
あ れ ばfn(E)はI
の 中 で 多 くの 振 動 を す る か ら
(1.34) と な る で あ ろ う.も
し 逆 に,I≪Γnで
あ れ ばfn(E)はIの
中 で ほ とん ど 変化
しな い か ら
(1.35) で あ る.し たが って,散 乱 振 幅 を 適 当 なIに に よ って,過 程nの
わ たってエネルギー平均す るこ と
寄 与 を消 去 した りそ の ま ま残 した りす る こ とが で きる こ と
が わ か る.平 均 の 幅 をI=I0
(1.36) の よ うに とれ ば,f0(E)は
そ の ま ま,そ れ 以 外 は すべ て0に
な るか ら
(1.37) と な る.I=I1を
(1.38) の よ うに とれ ば
(1.39)
(1.37)と(1.39)と
か ら
(1.40) こ の よ うに して 直 接 過 程,戸 見 る に はI=IN≪DN,す
口共 鳴 の 寄 与 が 分 離 で きる.複 合 核 仮 定 の 寄 与 を な わ ち 高 分 解 の ビ ー ム を 使 わ な くて は な ら な い.
中 間 共 鳴 に 廊 下 状 態 の 共 鳴 が 観 測 され る と き に は,そ Γ2,D2≫I2≫DNと 以 上 は,各 鳴nの
れ に 応 じ た 平 均 幅I2を
な る よ うに 選 ん だ 平 均 も し な けれ ば な ら な い.
共 鳴 が 孤 立 して い る場 合 で あ っ た.入 射 エ ネ ルギ ーが 高 くな り共
連 続 領 域 に な る と,fn(E)の
変 化 は な だ らか でDnよ
り大 きい 幅 で 平均
し て も0に は な ら な い か ら,上 の 議 論 は成 り立 た な い.た
とえ ば,直 接 過 程 と
複 合 核 過 程 だ け が あ る場 合,後 者 の連 続 領域 で,fN(E)が
直 接 過 程 と同程 度 の
変 動 しか し な け れ ば
(1.41) と な る.
fn(E)の 平均 値か らのず れ tion)の 散 乱振幅 とい う.し たが って
をゆ らぎ(fluctua
(1.42) で あ る.(1.34),(1.42)に
よれ ば
(1.43) な ど で あ る.上 記 の連 続 領 域 の 例 で は,(1.41)に
よ り直 接 過 程 の振 幅 の ゆ ら ぎ
は0であ る. さて,実 験 で 直 接 観 測 され る量 は,散 乱 振 幅 で は な く,(1.31)で 断 面 積 σ(E)な ど の よ うな,散 乱 振 幅 に つ い て2次
与 え られ る
の 量 で あ る.し た が っ て,
そ のエ ネ ル ギ ー 平 均 は散 乱 振 幅 の エ ネル ギ ー平 均 だ け で 書 き表 す こ とはで きな い(た だ し,全 断 面 積 だ け は 散 乱 振 幅 の1次 照).実
際,た
は,(1.42)か
とえ ば σ(E)のInに
の 量 で あ る.第2お
よび3章
を参
わ たるエネルギ ー平均
ら
(1.44)
で あ る.た
だ し,
(1.45) (1.46) で あ る.す な わ ち,断 面 積 の エ ネ ル ギ ー平 均 は,平 均 の 散 乱 振 幅 に よる 断 面 積 σn(E)と ゆ ら ぎ の 散 乱振 幅 に よ る 断面 積 σfln(E)の和 に な る.σn(E)は0か
ら
nま で の 過 程 に よ る 断 面 積 で,そ れ らの 過 程 の 間 の 干 渉 を 含 ん で い る.ま た, σfln(E)はnよ
り励 起 核 子 の 多 い 中 間 共 鳴 か ら複 合 核 共 鳴 に 至 る過 程 の 寄 与 に よ
る.こ の よ うに し て,断 面積 を エ ネル ギ ー に つ い て 平 均 す れ ば,平 均 の 幅Iに 応 じ て,あ る 程 度 以 上 簡単 な 過程 に よる 断 面 積 と,そ れ よ り複 雑 な 過 程 に よ る, ゆ ら ぎ の 断 面 積 の和 に な る こ とが わか った. 一 般 的 に は,実 験 的 に これ ら二 つ の 断 面 積 を分 け る こ とは で き ない.し か し, 場 合 に よって は,ど ち らか 一 方 の 断 面積 が 無視 で きる ほ ど小 さい こ とが あ る.た と えば,高
エ ネル ギ ーで の弾 性 散 乱 や 残 留 核 の 離 散 的 な準 位 へ の 遷 移 な ど で は,
光 学 ポ テ ン シ ャル に よ る散 乱 や 直 接 過 程 な ど の 簡 単 な 機 構 の寄 与が 圧 倒 的 に な る.実 際,高
エ ネ ル ギ ー で は,ほ
ぎ の振 幅 は ほ とん ど0に
とん ど す べ て の 共 鳴 が 連 続 領 域 に な り,ゆ ら
な る.ま た,非 常 に 多 くの チ ャ ネ ルが 開 くの で,複 雑
な過 程 を経 る 間 に そ れ ら を通 じ て多 くの 放 出が 起 こ り,個 々 の チ ャネ ル に 到 達 す る 確 率 は 小 さ い.し 過 程n=0の
たが って σfl0は 無 視 で きる.こ
の よ うな 場 合 に は,直 接
寄 与 を直 接 実験 的 に 測 り,理 論 と比 較 す る こ とが で きる.
さて,散 乱 振 幅 の エ ネ ルギ ー 平均 〈f(E)〉Iは,い のエ ネルギ ー平均 〈 ψ〉Iに付 随 し て い る.し
う まで もな く,波 動 関 数 ψ
た が っ て 上 に 述 べ た 意 味 で,Iに
対 応す る反応 機構 は 〈 ψ〉Iに よ っ て記 述 され る.た
と えば,光
学 ポ テ ン シ ャル
に よ る散 乱 は ψ の 弾 性 チ ャ ネ ル の 成 分 ψelの 最 も大 きな エ ネ ル ギ ー平 均 幅I0 (D1≪I0<Γ0)に
わ た る平 均 の 波 動 関 数 〈ψel〉I0で記 述 され る.し た が って,
そ れ はSchrodinger方
程式
(1.47) を 満 た す.た
だ し,U=V+iWは
μ は 換 算 質 量 で あ る.同 に よ っ て 記 述 さ れ る.
様 に,直
光 学 ポ テ ン シ ャ ル,Eは 接 過 程 の 散 乱 振 幅 は 始,終
入 射 エ ネ ル ギ ー, チ ャ ネル で の 〈 ψ〉I0
次 に,エ ネ ル ギ ー 平 均 を 理 論 的 に計 算 す る の に 便 利 な公 式 を導 い て お く.一 般 に,Eの
周 りの 区 間2Iに
わ た る,あ る 重 み ρ(E′,E)付 きの 平 均 を
(1.48) で 定 義 し よ う.重
み の 関 数 に は,い
ろ い ろ な も の が 考 え ら れ る.た
と えば
の と き そ の ほ か の と き と と れ ば,(1.48)は
(1.49)
単 純 な相 加 平 均
(1.50) に な る. し か し,理
論 的 な 計 算 に は,む
し ろLorentz型
(1.51) が 便 利 で あ る.こ の 場 合 に は
(1.52) で あ る.こ の積 分 の 計 算 に は複 素 積 分 の 方 法 が 使 え る.そ れ に はf(E)の E平
複素
面 上 の振 る舞 いが 重 要 で あ る."散 乱 波 は入 射 波が 核 に 到達 した 後 で 発 生 す
る",と
い う因果 律 を 用 い る と,f(E)は
とが 証 明 で きる.し た が っ て,(1.52)の に極 を持 つ 関 数 で あ る.ま
複 素E平
面 の上 半 面 で 解 析 的 で あ る こ
被 積 分 関 数 はそ の 領 域 でE′=E+iI
た,f(E)はE→
±∞ で たか だ か 有 限 だ か ら,被
積 分 関 数 はE′ → ±∞ の と き│E′│-2に 比 例 し て0に
な る.そ こ で,実 軸 に 沿
う積 分路 を 実 軸 と,そ の 両 端 を結 ぶ 上 半 面 にあ る無 限 遠 の 半 円Cか 路 に 変 形 す る.Cに
つ い て の 積 分 は0で
ら な る積 分
あ る か ら,留 数 の 定 理 に よ っ て,
(1.53) と な る.す な わ ち,平 均 値 は 単 にEをE+iIで 変 便 利 な 結 果 が 得 られ た.こ 上 半 分 で 正 則 で,│E│→
の 結 果 は,f(E)に
置 き換 え れ ば よい,と 限 らず,一 般 に 複 素E平
い う大 面の
∞ で 有 限で あ る よ う な任 意 の 関 数 に 対 し て 成 立 す る.
次 に,反 応 の 過程 の 時 間 的 な 違 い を見 てみ よ う.光 学 ポ テ ン シ ャル に よる散 乱 と直接 過程 は瞬 間 的で,そ れ らは入 射 粒 子が 核 を通 過 す る程 度 の 時 間内 に終 わ っ て し ま う.た とえ ば,10MeVの その時 間は
核 子 が 中 ぐ らい の 大 き さの 核 に 入 射 す る場 合,
で あ る.こ れ に 対 して,前 記 の 幅 か ら(1.28)に
よっ
て 各 過 程 の 時 間 を推 定 す れ ば,そ れ ぞ れ ポ テ ン シ ャル 共 鳴 過 程
戸 口状 態の共鳴過程 共鳴領域の複合核過 程
(1.54) とな る. 反 応 時 間 に これ だ け の差 が あ る の で,も し 反応 に 要 す る 時 間が 測 定 で きれ ば, これ らの 反 応 過程 を分 け て観 測 で きるか も しれ な い.し か し多 くの 場 合,そ れ は 困 難 で あ る.た
と え ば 上 記 の10-22secの
今 の と こ ろ な い.も わ け で は な い.た
よ うに 短 い 時 間 を直 接 測 る方 法 は
っ と も,反 応 時 間 を測 定 す る こ とが ま っ た く不 可 能 と い う
と えば,標
的核 が 結 晶 格 子 を な して い る 場合,反
応 の 放 出粒
子 を結 晶面 に平 行 な 方 向か ら観 測 す る と,反 応 が 始 ま った 直 後 に 放 出 され る粒 子 は 隣 の 格 子 点 に 邪 魔 され て観 測 器 に 到 達 で きな い.し た が っ て,残 留 核 が 反 跳 に よ って 動 きだ し,結 晶面 か ら十 分 離 脱 してか ら後 で 放 出 され る 粒 子 だ け が 観 測 され る.こ れ を利 用 す る と,た と えば∼10-19sec程 る粒 子 だ け を観 測 す る こ とが で きる.こ の 方 法 で,実 位 の寿 命 が 測 られ て い る[9].こ れ
度 の 時 間後 に放 出 され 際 にい くつ か の 複 合 核 準
外 に もい くつ か の 方 法 で 同 様 な 時 間測 定 が
成 功 して い る.し か し,こ れ らの 実 験 は 限 られ た場 合 に つ い て だ け 有 効 で,核 反 応 一 般 に使 え る わ け で は な い.大 多 数 の 実 験 で は,時 わ れ な い.し は,果
たが っ て,さ
間的 観 測 は ま っ た く行
まざ まな 反 応 過 程 を含 ん だ ものが 観 測 され る.問 題
して そ れ か ら個 々 の 過 程 の 寄 与 を取 り出 す こ とが で きる か で あ る.
最 後 に,個
々の 入 射 粒 子 は,厳 密 に い う と,有 限 の 時 間Tだ
な って 核 に入 射 す る,と い うこ とを 注 意 し て お く.Tは れ る 状 況,作
け 続 く波 束 と
波 束 が イオ ン源 で 作 ら
られ て か ら標 的核 に 照 射 され る まで の 過 程 に よ る の で,そ の 正 確
な値 を見 積 も る こ とは 難 し い.し か しい ず れ にせ よ,核 物 理 の ス ケ ー ル で は ほ とん ど 無 限 大 と見 な して よ い.反 応 は そ の 無 限大 の 時 間 の 中の あ る 時 刻 に起 こ
り,あ
る 時 刻 に 終 わ る.し
た が っ て,い
ろい ろ な 反 応 機 構 か ら の 放 出 波 へ の 寄
与 は す べ て 干 渉 す る.一
方,断
ム に よ っ て 測 ら れ る.ビ
ー ム の エ ネ ル ギ ー 幅 は,核
大 き さ を 持 つ.先 あ る.個
文
面 積 は た く さん の そ の よ うな 波 束 か らな る ビ ー 物 理 の ス ケ ー ル で,有
限 の
に 述 べ たエ ネ ルギ ー 平 均 は こ の エ ネル ギ ー 幅 に対 す る もの で
々 の 入 射 波 束 の エ ネ ル ギ ー 幅 に 対 す る も の で は な い.
献
[1] H.Geiger,J.Harling
and
E.Marsden,Proc.Roy.Soc.A82
E.Rutherford,Phil.Mag.,ser.6
21
495(1909);
669(1911)
[2] E.Fermi,E.Amaldi,O.D'Agostino,F.Rasetti Soc.A146
and
E.Segre,Proc.Roy.
483(1934);
E.Amaldi,O.D'Agostino,E.Fermi,B.Pontecorvo,F.Rasetti Proc.Roy.Soc.A149 [3] N.Bohr,Nature,29 G.Breit
E.P.Wigner,Phys.Rev.49
[4] R.Serber,Phys.Rev.72
519,642(1936)
1114(1947)
[5] S.T.Butler,Proc.Roy.Soc.A208 and
559(1951)
S.Yoshida,Proc.Phys.Soc.(London)A68
Prog.Theor.Phys.14
994(1955)
[7] H.H.Barshall,Phys.Rev.86 [8] H.Feshbach,C.E.Porter
D.V.Morgan,John
656(1955);
1(1955);
D.Brink,Proc.Phys.Soc.(London)A68
[9] W.M.Gibson
E.Segre,
344(1936);
and
[6] S.Hayakawa
and
522(1935)
and
431(1952) and
V.F.Weisskopf,Phys.Rev.96
M.Maruyama,Channeling Wiley,New
York(1973)
Theory
448(1954) and
Application,ed.
2 核反応の量子力学的記述
2.1 状 態 ベ ク トル,Schrodinger方
程 式,実
験条件
核 反応 は,微 視 的体 系 の 現 象 で あ る か ら,量 子 力 学 に よ って 記 述 され る.粒 子 の 生 成 消 滅 を伴 わ ず,関 与 す る粒 子 の速 さvと 光 の 速 さcの 比v/cが1に
比
べ て 十 分 小 さ い場 合 に は,波 動 関 数 に よ る非 相 対 論 的 と り扱 い が 許 され る.v/c が1に
近 づ くと相 対 論 的 補 正 が 必 要 に な る.粒 子 の 生 成 消 滅 が 起 こ る場 合 に は,
場 の 理 論 の 助 け が 必 要 に な る.本 書 で は,粒 子 の 生 成 消 滅 を伴 わ ない,非 相 対 論 的 量 子 力 学 的 記 述 に つ い て 述 べ,相 対 論 的 場 合 に つ い て は,そ れ に対 す る 補 正 を論 じ る. この 近 似 の も とで は,全 系 の 運 動 はSchrodinger方
程式
(2.1) を 満 た す 状 態 ベ ク ト ル Ψ(t)に で あ る.(2.1)の
よ っ て 記 述 さ れ る.Hは
全 系 の ハ ミ ル トニ ア ン
解 と して
(2.2) を と れ ば,そ
れ は エ ネ ル ギ ーEの
間 を 含 ま な いSchrodinger方
定 常 状 態 の 状 態 ベ ク トル で あ る.Ψ(E)は
時
程式
(2.3) を満 た す.反 応 で 問 題 にす る の は 散 乱 状 態 で あ るか ら,Eは
正の連続固有値で
あ る.状 態 ベ ク トル の 座 標 表 示 が 波 動 関 数 で あ る.核 反 応 の 記 述 に は 波 動 関 数 を用 い るの が 便 利 で あ る.以 下,特 を 区別 しな い.
に 断 ら な い 限 り,状 態 ベ ク トル と波 動 関数
多 くの 実 験 で は,外 か ら電 磁 場 な ど の外 場 が 掛 か っ て い な い 実 験 室 で,固 定 した 標 的 に 入 射 粒 子 の 平 行 ビ ー ム を照 射 し,標 的 か ら放 射 状 に 放 出 され る粒 子 を観 測 す る.こ の 実 験 で 起 こ る核 反 応 を記 述 す る 系 全 体 の波 動 関 数 は,標 的核 と入 射 粒 子 が 十 分 離 れ て い る状 態 で は,入 射 粒 子 と標 的核 そ れ ぞ れ の 波 動 関 数 の 直 積 で 与 え られ る.厳 密 に い う と,そ れ らは 波 束 で あ る.そ れ らの 波 束 は標 的 の 状 態(固 体 か 気 体 か な ど),入
射 粒 子 が ど の よ う に し て 作 られ た か,標
的
核 まで ど の よ うに飛 ん で 行 くか な ど に よ っ て 異 な る.し か し,実 験 装 置 の大 き さは 原 子 核 の ス ケ ー ル で は ほ とん ど無 限 大 と見 な し て よ く,ま た,標
的核 の標
的 に 対 す る 電 子 的 結 合 エ ネ ル ギ ー の 不 確 定 や 入 射粒 子 の エ ネ ル ギ ー の 不 確 定 な ど は,特 別 の 場 合 を 除 い て,原 子 核 の エ ネ ル ギ ー ・ス ケ ー ル で は 非 常 に小 さい. した が っ て 非 常 に よ い 近似 で,系 全 体 が エ ネ ルギ ー の 固 有 状 態 で 反 応 が 始 まる と見 な せ る.全 系 の エ ネ ル ギ ー は 保 存 され るか ら,反 応 の全 過 程 を通 じ て系 は エ ネ ル ギ ー の 固 有 状 態,す
な わ ち定 常 状 態,に
あ り,反 応 は そ の 状 態 ベ ク トル
Ψ(E)で 記 述 で き る と し て よい.し か し微 視 的 な ス ケ ー ル で は,入 射 ・散 乱 粒 子 の 運動 が 波 束 で 記 述 され る,と い う こ とは 重 要 で あ る.Ψ(E)は(2.3)の,上 に 述べ た 実 験 条 件 に よ っ て 決 ま る境 界 条 件 の も とで の 解 で あ る.以 下 に それ を 詳 し く検 討 し よ う.
2.2 ハ ミ ル トニ ア ン
2.2.1 ハ ミル トニ ア ンの 形 系 の 運 動 を支 配 す るハ ミル トニ ア ンHは を構 成 す る粒 子 間 の 相 互作 用Vtotに
系 の全 運 動 エ ネ ルギ ーKtotと,系
よって
(2.4) で 与 え ら れ る.Ktotは
系 の す べ て の 粒 子i=1∼Nの
運 動 エ ネ ル ギ ー の和
(2.5) で あ る.た だ し,mi,
pi, Kiは そ れ ぞ れ粒 子iの 質 量,運
動 量 お よび 運 動 エ
ネル ギ ー で あ る. Vtotは 系 内 の す べ て の 粒 子 間 の 相 互 作 用 の ポ テ ン シ ャル で あ る.相 互 作 用 は 主 とし て 二 粒 子 間 の そ れ で あ る.厳 密 にい うと,多 体,す
な わ ち 三 つ 以 上 の粒
子 の 同 時 の 相 互 作 用 もあ るが,多
くの 場 合 そ れ を無 視 し て よい.こ の 近 似 の も
とで は,
(2.6) で あ る.た
だ し,Vijは
粒 子i,j間
の 相 互 作 用 の ポ テ ン シ ャ ル で あ る.(2.5),
(2.6)を 使 え ば
(2.7) を 得 る. 系 が 複 合 粒 子 の 組 γ=1γ,2γ,…,Nγ
に 分 か れ て い る 場 合 に は,(2.7)を
(2.8) の よ う に書 き直 す のが 便 利 で あ る.た だ し,
(2.9) は複 合 粒 子nの
自 由 ハ ミル トニ ア ン,
(2.10) は γ 中 の 異 な る複 合粒 子nとm間
の相 互 作 用 で あ る.
2.2.2 重 心 運 動 の 分 離,内 部 ハ ミル トニ ア ン 複 合 粒 子nの
重 心 の 質 量,運 動 量,運 動 エ ネ ルギ ー を そ れ ぞ れ
(2.11) と し,Hnを
(2.12) と書 くと
(2.13)
はnの
自 由 運 動 の ハ ミル トニ ア ン か ら そ の 重 心 運 動 の 運 動 エ ネ ル ギ ー を 差 し 引
い た も の,す
な わ ち 内 部 運 動 の ハ ミル ト ニ ア ン で あ る.こ
ア ン と い う.(2.12)を(2.8)に
れ を 内部 ハ ミル トニ
代 入 す る と,
(2.14) と 書 け る.た
だ し,
(2.15) は そ れ ぞ れ チ ャ ネ ル γ の 運 動 エ ネ ル ギ ー,相 ハ ミ ル トニ ア ン で あ る.Hは
互 作 用 ポ テ ン シ ャ ル,お
よび 内 部
また
(2.16) と書 くこ と もで きる.Hγ
をチ ャネ ル γ の 自由 ハ ミル トニ ア ン とい う.Kγ
の
中 か ら さ ら に全 系 の重 心 の 運 動 エ ネ ル ギ ー を,各 複 合 粒 子 の 重 心 の 運 動 エ ネル ギ ー を 抜 き 出 し た の と同様 に し て,抜
き 出す こ とが で き る.全 系 の 重 心 の 運 動
量 と運 動 エ ネ ルギ ー は そ れ ぞ れ お よび
で あ る.た
だ し,M=Σnmnは
全 系 の 質 量 で あ る.(2.16)を
使 え ば,Hは
(2.17) と な る.た
だ し
(2.18) で あ る.(2.17)が
全 系 の重 心 運 動 を 分 離 し たハ ミル トニ ア ン の形,Hγcmが
心 系 で 見 た チ ャ ネル γ の 自 由ハ ミル トニ ア ン,Kγcmが
重
同 じ く運 動 エ ネ ル ギ ー
で あ る. す べ て の 粒 子 が ば らば らに な っ た系 の 状 態 は,上 記 の各 複 合 粒 子 が1個
の粒
子 で あ る 場 合 と考 え る こ とが で きる.し た が っ て,複 合 粒 子 系 につ い て の 上 記 の 考 察 は す べ て この 状 態 に対 し て も成 立 す る.
2.2.3 Hは
ハ ミル トニ ア ン の対 称 性,不
変性,運
動の恒量
す べ て の 同種 粒 子 に対 して 対 称 だ か ら,同 種 粒 子 の番 号 の 付 け 替 え に対
し て 不 変 で あ る.ま た,座
標 系 の平 行 移 動(translation),回
転(rotation)に 対
し て 不 変 で あ る.こ れ ら に対 して,KiもVtotも
不 変 だか らで あ る.鏡 映 変 換
(右 手 系 か ら左 手 系 へ,ま
間 反 転 に対 す る 不 変 性 は 非 常
た は そ の 逆 の 変 換),時
に 厳 密 に は 成 り立 た な い が,少
な く と も これ か ら 問 題 に す る 相 互 作 用 の 種 類,
精 度 の 範 囲 内 で,不 変 で あ る とみ な し て差 し支 え な い. 量 子 力 学 に よれ ば,こ れ ら の 不 変 性 に 由来 す る運 動 の 恒 量 が 存 在 す る.す な わ ち,平 行 移 動 不 変 性 か ら は全 系 の 運 動 量P=Σipiが,回 全 系 の 角 運動 量J=Σi(li+si)の2乗J2とz成
転不変性 か らは
変 性 か ら は全 系 の パ リテ ィ変換 πが,Hと
分Jzが,ま
た鏡 映 変 換 不
可換
(2.19) で あ る こ とが 導 か れ る.た だ し,pi,li,siは 角 運 動 量,ス
それ ぞ れ 粒 子iの 運動 量,軌
道
ピ ン角 運 動 量 の 演 算 子 で あ る.
時 間反 転 不 変 性 は,Hが
一 つ の 運 動 が 許 す な らそ の 時 間 を反 転 し た運 動 も許
す,と い う意 味 で あ る.運 動 の恒 量 を導 くわ け で は な い.時 間 を 反転 す る と,す べ て の 運 動 量 と ス ピ ン の 向 きが 逆 に な る.そ の演 算 子 をTと
す る と,時 間 反 転
不 変性 は
(2.20) で 表 され る.Tは
波 動 関 数 に対 す る演 算 子 と して は
(2.21) の 形 を し て い る.た だ し,Cは る働 き を もつ.Uは
複 素 共 役 を と る こ と を意 味 し,運 動 量 を 反 転 す
ス ピ ンの 向 きを 反 転 す るユ ニ タ リ ー演 算 子 で あ る.
以 上 の こ とは チ ャ ネル を構 成 す る各 複 合粒 子 のハ ミル トニ ア ン に対 して もい え るか ら次 式 が 成 り立 つ.
(2.22) お よび
(2.23)
が 成 り立 つ.た だ し,Inは
粒 子nの
内部 運 動 の 角 運 動 量 で あ る.反 応 で は,各
粒 子 は ほか の 粒 子 と相 互 作 用 す るか ら,こ れ らの 量 は 保 存 され な い.そ の 変 化 を 追 求 す る のが 反 応 論 で あ る,と
もい え よ う.
2.2.4 ハ ミル トニ ア ンの 座 標 表 示 核 反 応 の記 述 で は 多 くの 場 合,座 標 表 示 が 使 わ れ る.座 標 表 示 で は,
(2.24) また
(2.25) (2.26) で あ る.piは
粒 子iの 座 標 を無 限 小 ベ ク トルsだ け 動 か す 変 換
(2.27) に対 応 す る演 算 子 で あ る.し た が ってpnはnに 座 標{γi,i∈n}を
属 す るNn個
の粒子すべ ての
一斉 に 無 限 小 ベ ク トルsだ け 動 か す 変 換
(2.28) に 対 応 す る.こ
は γn→
γn+sと
の 変 換 に よっ てnの
変 換 す る.い
重心座標
ま,γnと,そ
れ に 独 立 で,こ
の 変 換 に対 し て
不 変 な ベ ク トル
か ら な る 座 標 系{γn,xn={xj,j=1,2,…,Nn-1}}を
導 入 し,座
標変換
(2.29)
を 行 う と,座
標 系{rn,xn}に
対 しては
(2.30) と 書 く こ とが で き る.た 分 で あ る.こ
だ し,∇rnはxnを
固 定 し た と き のrnに
ついての微
の 操 作 を 各 複 合 粒 子 に 対 し て 行 え ば,
(2.31) と書 くこ とが で きる.同 様 に し て,Pは
全系の重 心
(2.32) の 無 限小 変 換R→R+sに
対 応 し,
(2.33) と書 くこ とが で きる.た だ し,∇RはRを
独 立 変 数 の 一 つ とす る 座 標 系 で,R
だ け を 変 化 させ た と きの 微 分 を意 味 す る.Rと きRに
独 立 な 変 数 をす べ て 固定 し た と
つ い て の 微 分 とい って も よ い.
粒 子iの 運 動 エ ネ ル ギ ー の 座 標 表 示 は
で あ る.よ
って
(2.34) で あ る.複 合 粒 子 の 組 γか らな るチ ャ ネ ルで は,(2.34)を(2.8)の が 便 利 で あ る.複 合 粒 子nの
形 に書 くの
自由 ハ ミル トニ ア ン の座 標 表 示 は
(2.35) で あ る.た だ し,ζi(ζj)は
粒 子i(j)の
内 部 自 由度(た
と えば ス ピ ン)に 働
く演 算 子 を 表 す. 次 に,Hnを
複 合 粒 子nの
重 心 の 座 標rnと
か ら な る 座 標 系{rn,ξn}で
それ に独 立 な空 間座 標 の組
表 示 す る こ とを 考 え る.こ の 座 標 系 を
(2.36)
を満 た す よ うに と る こ とが で き る.こ こ に,Kint(ξn)は 粒 子nの
こ の 式 で 定 義 され る,
内部 運 動 の 運 動 エ ネル ギ ーで,ξnだ け に 依 存 す る.こ の 条 件 をみ た す
ξnを 粒 子nの
内部 座 標 とい う.実 際,た
系
と えば1.2節
で 述 べ たJacobiの
座標
を使 えば
(2.37) と書 け る こ と は容 易 に 証 明 され る.た だ し,
はl+1粒
子 系 の 換 算 質 量 で あ る.こ
は 変 換(2.28)に
こに,
で あ る.(2.35)の
対 して 不 変 で あ る か ら,rnに
Jacobi座 標 が そ うで あ る よ うに,(2.29)の
は よ ら な い.
一意 的な逆変換
(2.38) が 存 在 す れ ば,
(2.39) と 書 け る.た だ し,
は 粒 子n内
算 子 の 組 で あ る.(2.36)と(2.39)を(2.35)に
の 核 子 の 内 部 自 由 度 に働 く演
代 入すれば
(2.40) と な る.た
だ し,
(2.41) は 粒 子nの rnに る.そ
内 部 ハ ミ ル トニ ア ン で あ る.hnは,p
よ ら な い.以
後,座
れ で も な お,そ
(2.8)に(2.40)を
標 系{rn,ξn}と
nと 可 換 で あ る ば か りで な く,
し て(2.36)を
満 た す もの だ け を考 え
の と り方 は 必 ず し も 一 意 的 で な い.
代 入すれ ば
(2.42) と な る.た
だ し,hγ
とVγ は(2.15)で
与 え ら れ る.
(2.42)の
右 辺 か ら,全
に は,(2.18)の 心 の 座 標Rを
系 の 重 心 運 動 の エ ネ ル ギ ー を(2.17)の
座 標 表 示 を と れ ば よ い.あ 含 むJacobi座
る い は,例
標 を 使 っ てRと
え ば,再
よ うに 分 離 す る び{rn}か
ら重
それ に 直交 す る座 標 に 変 換 す れ ば
よ い.
2.2.5 二 粒 子 チ ャネ ル の ハ ミル トニ ア ン 二 粒 子 か らな るチ ャ ネ ル は,入 射 チ ャ ネル を始 め とし て,核 反 応 の研 究 で 特 に 重 要 で あ る の で,上 記 の 考 察 を こ の場 合 に適 用 して み る.粒 子 を1,
2と 名
付 け る こ とに す る.こ
標で あ
の場 合 に は,粒 子1,
る重 心 座 標 と相 対 座 標,そ
2に つ い て さ ら にJacobi座
れぞれ
を導入すると,換算質量を
として,
と な る こ と は よ く知 ら れ て い る 通 りで あ る.し
たが って
(2.43) と な る.右
辺 第1項
は 重 心 の 運 動 エ ネ ル ギ ー,第2,
3項
の エ ネ ル ギ ー,第4項
は 内 部 ハ ミ ル トニ ア ン で あ る.
同 じ結 論 は(2.18)の
右 辺 のKγcmを
は1-2間
の相対運動
(2.44) と変 形 して も得 る こ とが で き る.pγ は(1.18)で らな い.pγ
に 共 役 な 座 標 は,
が 簡 単 に 示 せ る か ら,rγ
で あ る こ とが わ か る.
で あ る.し
た が って
定 義 した 相 対 運 動 量 に ほ か な
2.3 定常 状 態 の 波 動 関数
2.3.1
配 位 空 間,内
Schrodinger方 r2,…,rN)と
部 ・外 部 領 域,チ
程 式(2.3)の
ャ ネル 領 域
解 Ψ(E)は,系
全 体 の 粒 子 の 座 標 をZ=(r1,
す ると
(2.45) で あ る.た だ し,ζ は スピ ンお よび ア イソ ス ピ ン座 標 な ど,空 間座 標 以外 の,そ れ と可 換 な 座 標 を 表 す.Zを space)と
座 標 とす る3N次
い う.系 のす べ て の粒 子 の 位 置,す
元 の 空 間 を 配位 空 間(configuration な わ ち系 の 配 位 は配 位 空 間 中 の 一
点 で 表 さ れ る. 配 位 空 間 の 中 に は,系 の すべ て の 粒 子 が 一 塊 りに な っ て 相 互 作 用 して い る配 位 に 対 応 す る 内 部 領 域 と,そ れ 以 外 の 外 部 領 域 が あ る.外 部 領 域 の 中 に は,系 が い くつ か の,そ れ ぞ れ が 束 縛 状 態 に あ る複 合 粒 子 に分 か れ,そ れ らが 電 荷 に よ るCoulomb相
互 作 用 以 外 の相 互 作 用 を しな い 相 対 距 離 に あ る 配位 に 対 応 す
る チ ャ ネル 領 域 が あ る.実 験 的 観 測 が 行 われ る の は す べ て チ ャ ネル 領 域 にお い て で あ る.異 な る複 合 粒 子 の 組 は 配 位 空 間 の 異 な る領 域 に対 応 す る.複 合 粒 子 の 組 γ=1γ,2γ,…,Nγ
に対 応 す る 領 域 を γ チ ャネ ル の 領 域 と よぶ.全 チ ャ ネ
ル 領 域 は そ れ らの 和 で あ る.外 部 領 域 に は こ の ほ か,複 い,い
合粒 子 の,全 部 で は な
くつ か が 相 互 作 用 して い る配 位 に対 応 す る領 域が あ る.
2.3.2
自 由運 動,平
面波
考 え うる 最 も単 純 な 運動 は 一つ の粒 子 の,力 を まっ た く受 け ない,自 由 な運 動 で あ る.そ
の状 態 で は,運 動 量pは
一 定 で あ る.し たが って そ の 波 動 関数 は平
面波
(2.46) で あ る.そ れ は 運 動 量p=-ih∇,し
た が っ て 運 動 エ ネ ルギ ーK=p2/2mの
固有 関 数 で あ る:
(2.47)
関 数 系{φ(k,r)}は
完 全 規 格 直 交 系 を な す:
(2.48)
(2.49) (2.48)を
規 格 直 交 性,(2.49)をclosure
2.3.3
Schrodinger方
系 がNγ
個 の 複 合 粒 子n=1,2,…,Nγ
propertyと
い う.
程式 の独立解 に 分 か れ て い る 配 位 γ で は,Hは
(2.8)の 形 に 書 け る か ら,Schrodinger方
程式 は
(2.50) と な る.こ の 配 位 の チ ャ ネル 領 域 で は,荷 電 粒 子 間 のCoulomb相 視 す れ ばVγ=0で
互 作 用 を無
あ る か ら,Ψ(E)は
(2.51) を 満 た す.(2.50)の Coulomb相 (2.51)の
独 立 解 は(2.51)の
独 立 解 の 重 ね 合 わ せ で 表 す こ とが で き る.
互 作 用 が あ る 場 合 に つ い て は2.7節 独 立 解 は,Hnの
で 論 じ る.
固 有 関 数 の 積 で,(2.40)を
参照すれば 直ちに
(2.52) で あ る こ と が わ か る.た ネ ル ギ ーKnGお
だ し,φ(kn,rn)は
よ び 運 動 量pnの
前 記 の 平 面 波 で,粒
子nの
運動 エ
固 有 関 数 で あ る:
(2.53) ま た,φnνn(ζn)は
粒 子nの
内 部 波 動 関 数 で,そ
の 内 部 ハ ミ ル ト ニ ア ンhn(ζn)
の 固 有 関 数 で あ る;
(2.54)
そ れ は,複 合 粒 子 の 定 義 に よ り,束 縛 状 態 εnνn<0で
あ る.添 え 字 νnは そ の
状 態 の 量 子 数(一 般 に は 複 数 個)を 表 す.関 数 系
は直交系で
(2.55) で 規 格 化 さ れ て い る も の と す る*1.
(2.56a) はチャネル γの 内部波動 関数である.添 え字 νは組
を表す.
それ は
(2.56b) を満 たす.
がチ ャネル γの内部エネルギ ーであ る.
が(2.51)の 解 であ るためには
(2.57) で なければ ならない.た だ し, であ る.
はチ ャネル γの内部エ ネルギ ー
はチ ャネル γで の 自由運動 の波動 関数で,系 の全運
動量Pの 固有 関数で あ る:
(2.58) 関数系 わ ち,
は チャネル γ内で完全規格 直交系 をなす.す な
(2.59)
すべてのチャネルでの関数系 は全配位空間で完全規格直交系をなす:
の集合
(2.60) *1 粒 子nの
非束 縛 状 態で は
,nが さ らに,そ れぞ れが 束 縛状 態 に あ る,い くつ かの 粒 子 に分 か れて い る.し たが って,そ の よ うな状 態 は,一 つ の 粒子nの 非 束 縛状 態 と見 る よ りも, そ れ ら分 かれ た粒 子 の 組 の あ る状 態 と考 え た方 が 議論 が 簡単 に な る こ とが 多 い.
なぜ な ら,φ α と φβは 内 部 領 域 を 除 い て 配位 空 間 の違 う領 域 で の み値 が あ り, 内部 領 域 は 全 配 位 空 間 に 比 べ て 無 限小 だ か らで あ る.一 方,α=β
な ら(2.60)
が 成 り立 つ.
2.3.4 重 心 運 動 の 分 離 一般 に,Pの
固 有 値hKに
属 す る 固 有 関 数f(P,Z)は
と書 くこ とが で き る.た だ し,Rは
で あ る.実 際,(2.26)に
し か る に,(2.33)に
よれ ば,Pは
全 系 の 重 心 の 座 標,ま
座 標 表 示 で1次
た
の 微 分 演 算 子 で あ るか ら
よれ ば
で あ る か ら,Pf(P,Z)=0で
な け れ ば な ら な い.f(P,Z)は
で与えられる. 以上を
に適用すれば (2.61)
(2.62)
である.ただし,
である.よって
(2.63) を 得 る.
Schrodinger方 をf(P,Z)に
程 式 の 一 般 解 の 中,Pの
固 有 値 がhKで
あ る も の Ψ(E;K)
とれ ば
(2.64)
と 書 く こ とが で き る.Ψ(E;K)は
(2.65) で 与 え られ る.Ψ(E;K)は 心 系 で はK=0で
重 心 運 動 を分 離 し た波 動 関数 とい う意味 を持 つ.重
あ るか ら(2.64)は
(2.66) となる.ゆ えに,Ψ(E;0)は 重心系 での系の波動 関数に比例す る.
は Ψ(E)に 対 して完全 規格 直交系 をなすか ら,
なす.
は{Ψ(E;K)}に
対 す る完全規 格直 交系 を
2.3.5 二 粒 子 チ ャ ネ ル で の 波 動 関 数 2個の 粒 子 か ら な る チ ャ ネ ル で は,(2.63)は
しか る に
で あ る か ら,
とお くと
(2.67) と な る.rγ
は1と2の
運 動 量 で あ る.rγ
相 対 座 標 で あ り,hkγ は 前 記 のx1に
は(2.44)で
相 当 す る.こ
定 義 され た相 対 運 動 の
の 場 合 に は,(R,rγ)がJacobi
座 標 そ の もの で あ る.
と φγが,そ れ ぞ れ 相 対 運 動 の 自由運 動 お よび
内 部 運 動 の ハ ミル トニ ア ン の 固 有 関数
(2.68) で,
で あ る.
一 般 解 Ψ(E;K)は{Φ
γ}に よ っ て 展 開で きる か ら,
(2.69)
の形をしているはずである.
は
の,
の も と で の 重 ね 合 わ せ で あ る. 以 下,本
書 で は 特 に 断 ら な い 限 り,重
関 数 と し て は,重 る か ら,そ
の 値0と
ニ ア ン 使 うが,そ
心 系 で 議 論 を 進 め る こ と に す る.波
心 の 運 動 を 分 離 し た Ψ を 用 い る.し 記 号^も
省 く.ま
の 添 え 字cmを
た,ハ
省 く.し
か し,Kは
常 に0で
動 あ
ミ ル トニ ア ン も 重 心 系 の ハ ミ ル ト た が っ て,(2.69)は
(2.70) と な る.
が 重 心 系 に お け る相 対 運 動 の 波 動 関 数 で あ る.こ の 定 義 に
よ る Ψ(E)は,付
加 条 件 と して
(2.71) を満 た さね ば な らな い. 重 心 系 で 座 標 表 示 に よ る二 つ の 波 動 関 数 Ψ1と Ψ2の 間 の 演 算 子 の 行 列 要 素 M12を
計 算 す る 必 要 が しば しば 起 こ る.Pと
算 す る に は,座 標 系{ri}をRと N-1}か 分 は{yi}だ
可 換 な 演 算 子Oの
そ れ に独 立 なN-1個
ら な る座 標 に 変 換 す る.Ψ1,Ψ2お
よびOはRに
行 列 要 素 を計
の 座 標{yi,i=1∼ よ らな いか ら,積
け に つ い て 行 えば よ い:
(2.72) {yi}を 一 つ の チ ャ ネ ル γで 見 る と,粒 子 の 重 心 の 座 標 部 座 標 ξγ の 中 の 空 間座 標 の 関 数 で あ る.Jacobi座 結 合 に とる こ とが で き る.
標 を 使 えば,そ
と内 れ らの 一 次
も し,Ψ1,Ψ2お
よ びOの
表 式 が 座 標 系{ri}で
与 え ら れ て い る と き は,(2.72)
を
と書 くと,右 辺は
と書 ける.こ れは全座標 についての積
分で あ るか ら,積 分変 数 を元 の座 標{ri}に 戻 す ことが で きる.そ の ときはR も
に変数変換 する.ゆ え に
(2.73) と 書 く こ と も で き る.実
際 に は,(2.72)と(2.73)の
ど ち らが 便 利 か は 場 合 に
よ る.
2.3.6 粒 子nの で あ る.し
内 部 波 動 関 数 内 部 運 動 の ハ ミル ト ニ ア ンhnは た が っ て,内
部 運 動 はhnと
空 間 回 転,空
パ リ テ ィπnの 同 時 の 固 有 状 態 で あ り う る.そ の 固 有 値 をMnと
し て,
間 反 転 に対 して 不 変
角 運 動 量 の 大 き さInと
そ のz成
分In z,
の よ う な 状 態 の 波 動 関 数 を,In
と 書 く こ と に す る.そ
z
れ は
(2.74) を み た す.エ ネ ル ギ ー 固有 値 εnはMnに
対 して縮 重 して い る.そ れ 以 外 の量 子
数 に 対 し て も縮 重 して い る場 合 に は,必 要 に 応 じ て そ れ ら の 量 子 数 を の 記号 に 付 加 す る. 対 称 化,同
はnに
含 まれ る 同種 の フ ェ ル ミオ ン に対 して は 反
種 ボ ゾ ン に対 して は 対 称 化 され て い る もの とす る.
hnは 時 間 反 転Tに
対 し て も不 変 で あ る.
量 と ス ピ ン の 向 きが 反 転 す る.し たが って, 化 す る.そ の 定 数 は 任 意 で あ るが,こ
にTを は
施 す と軌 道 角 運 動 の 定 数 倍 に変
こで は
(2.75) で ある と規約 す る.(2.75)を 満 たす二つの 関数 合成 した
の角運動 量 を
は 再 び(2.75)を あ る.波
満 た す.た
だ し(I1M1I2M2│IM)はClebsch-Gordan係
動 関 数 の 空 間 部 分 に 対 し て は,Tは
軌 道 角 運 動 量 の 固 有 関 数 は 球 面 調 和 関 数Ylmの (2.75)を満
数 で
複 素 共 役 を と る 演 算 子Cで 定 数 倍ClYlmで
あ る.
あ る.そ
れが
たすため には
(2.76) で な け れ ば な ら な い.YlmはCondon-Shortleyの を 満 た す も の と す る と,cl=ilで す の はilYlmで
位 相 関 係Y*lm=(-1)mYl-m
な け れ ば な ら な い.す
な わ ち(2.75)を
満 た
あ る.
の エ ネ ル ギ ー 固 有 値 εnはMnに
対 し て 縮 重 し て い る か ら,そ れ を 使 っ て
(2.56a)で
与 え ら れ る φγ の エ ネ ル ギ ー 固 有 値 εγ は そ れ に 対 応 し た 縮 重 を 持 つ.
(2.56b)の
一 般 解 は そ れ ら の 縮 重 し た 解 の 一 次 結 合 で あ る.そ
の 反 応 粒 子 の ス ピ ン を 合 成 し た チ ャ ネ ル ス ピ ン 角 運 動 量Iγ
の 中 で,す と そ のz成
べ て 分Mγ
の 固有 関 数
(2.77) は 特 に 重 要 で,γ
チ ャ ネ ル の ス ピ ン 関 数 と 呼 ば れ る こ と が あ る.た
だ し,
で あ る. 核 反 応 論 で は,す べ て の複 合 粒 子 の 波動 関数 はそ の 粒 子 の構 造 論 的 研 究 に よっ て す で に 知 られ て い る と仮 定 す る.反 応 論 の 課 題 は そ れ を仮 定 した 上 で 複 合 粒 子 間 で 運 動 量,エ
ネ ル ギ ー,構 成粒 子 の 一 部 な どが 移行 され る機 構 を 明 らか に
す る こ とで あ る.反 応 機 構 は複 合 粒 子 の 構 造 に密 接 に 関 係 し て い る か ら,と
き
に は 逆 に 反 応 の 研 究 か ら複 合 粒 子 の 構 造 に つ い て 情 報 を得 る こ と もで き る.実 際,そ れ は構 造 論 的研 究 の有 力 な 手 段 に な っ て い る. 以 上 の こ とか らわ か る よ うに,チ ャネル を,そ れ を構 成 す る複 合粒 子 の種 類 だ け で な く,そ れ ぞ れ の粒 子 の 内部 状 態,す な わ ちエ ネ ルギ ー と量 子 数 の 組
に よっ て も区 別 す る のが 便 利 で あ る.と
ル ス ピ ン の よ うに,量
きに は,チ ャ ネ
子 数 の 組 の 一 部 の 組 み 合 わ せ も指 定 す る のが 便 利 な こ と
もあ る.以 下 特 に 断 らな い 限 り,チ ャ ネル の指 定 は 状 態 の 指 定 を含 む も の と し, 記 号 γαγ を単 に γ と書 く こ と に す る.と た とえ ば 運 動 量,角
き と し て,そ
運 動 量 な ど,を 含 め る こ と もあ る.
の 中 に 相 対 運 動 の 情 報,
2.3.7 境 Ψ(E)を
界
条
件
決 め るた め に は,(2.3)を
境 界 条 件 は,各
一定 の 境 界 条 件 の 下 で 解 か ね ば な ら な い.
チ ャ ネ ル γ の 無 限 遠rn→
近 形(asymptotic
form)が
∞(n=1γ
∼Nγ)で の Ψ(E)の 漸
実 験 条 件 に 適 合 す る,と い う形 で 課 せ られ る.2.1
節 で 述 べ た 実 験 条 件 に 適 合 す る漸 近 形 は,次
の 条件 を 満 た さ ねば な ら な い.
1. す べ て の 開 い たチ ャ ネ ル に は原 点 か ら外 向 きに 広 が る波 が あ る. 2. 入 射 チ ャ ネル だ け に 入 射 平 面 波 が あ る. 3. 入 射 平 面 波 以 外 に 内 向 きの 波 は な い. 4. 閉 じ た チ ャ ネル で は0で Ψ(E)が
あ る.
この 形 を持 つ 領 域 を漸 近 領 域 と い う.
チ ャ ネル α か ら波 数kα の 入 射 波 が 入 る こ と に よ っ て起 こ る 反 応 を記 述 す る 全 系 の 波 動 関 数 Ψ(+)α(E)を考 え よ う.Ψ(+)αの境 界 条 件1∼4を 図2.1の
模式 的に表す と
よ うに な る.
まず 入 射 チ ャネ ル α で の 入 射 平 面 波 は,(2.67)に
よ り,
(2.78) で あ る.放 出 チ ャ ネ ル β ≠ α の 中,二 粒 子 チ ャ ネ ル で はΨ(+)αの,相 対 座 標 rβ → ∞ で の 漸 近 形 は,二 粒 子 間 のCoulomb相
互 作 用 を無 視 すれ ば
(2.79) で な け れ ば な ら な い.こ
図2.1
こ に,fβ
α(Ωβ)は 散 乱 振 幅(scattering
amplitude)と
チ ャ ネル α か ら始 ま る 反 応 の 波 動 関 数 Ψ(+)αの 境 界 条 件 波 矢 印(〓)は
進 行 波 の 向 き を 表す.
呼 ば れ,rβ
の 方 向 Ωβ の 関 数 で あ る.kα
とkβ は エ ネ ル ギ ー 保 存 則
に よ っ て結 ば れ て い る.μ は 換 算 質 量 で あ る. 3個 以 上 の粒 子 か ら な る チ ャネ ル で の 波 動 関 数 の 漸 近 形 を(2.79)の
よ うに 書
き下 す こ と は 困 難 で あ る.こ の 場 合 に は,二 粒 子 チ ャ ネ ル と違 って,漸
近領域
を 単 一 の 相 対 座 標 に よ っ て表 現 す る こ とは で き な い.相 対 座 標 の と り方 は 一 意 的 で す ら ない.チ
ャネ ル 領 域 は複 合 粒 子 間 の 相 対 距 離 に よ って 定 義 され る か ら,
漸 近 形 は 相対 座 標 の と り方 に依 存 す る こ と に な る.こ こで は,三 粒 子 以 上 のチ ャ ネ ル の 波 動 関 数 をひ っ くる め て ψ(+)scで表 す こ と に す る. 以 上 を ま とめ る と,荷 電 反 応 粒 子 間 のCoulomb相
互 作 用 を 無 視 す れ ば,入
射 チ ャ ネル を α とす る波 動 関 数 Ψ(+)α の 漸 近 形 は,
(2.80) で あ る.(2.80)を
散 乱 状 態 の 境 界 条 件 と呼 ぶ こ と に す る.散 乱 振 幅fβ α(Ωβ)
はSchrodinger方
程 式 を解 い て 初 め て 決 ま る.二 粒 子 チ ャ ネ ル βへ の散 乱 の微
分 断 面 積 な ど 実 測 で きる 量 は す べ て この 散 乱 振 幅 か ら計 算 す る こ とが で き る. Coulomb相
互 作 用 を 考 慮 し た 場 合 に つ い て は2.7節
で 論 じ る.ま
た,.上 記 の
Ψ(+)α で は 同種 粒 子 が 区別 で きな い こ とを 考 慮 して い な い.そ れ を考 慮 す る こ と に つ い て は2.9節
で 論 じ る.
散 乱 状 態 の境 界 条 件 の 下 に(2.3)を 正 確 に解 くこ とは,二 粒 子 系 の 場 合 を 除 い て 一般 に 非 常 に 困 難 で あ る.現 在 まで,た か だ か4個 の核 子 か ら な る系 に つ い て 数 値 的 に厳 密 解 が 得 られ て い る にす ぎ な い.し か し,反 応 の 実 験 で 観 測 さ れ る量 に 直 接 関係 す る の は チ ャネ ル 領 域 で の 波 動 関 数 の 振 る舞 い で あ る.波 動 関数 を 配 位 空 間 の全 領 域 に わ た っ て 正 確 に 知 る こ とは 必 ず し も必 要 で な い.そ れ よ り も む し ろ,チ ャ ネ ル 領 域 で の 波 動 関 数 の 一 般 的 な 性 質 を知 る こ とが 重 要 で あ る.
2.4
2.4.1
Lippmann-Schwinger方
Lippmann-Schwinger方
一 般 に,チ
程 式
程 式
ャ ネル α で 始 まる反 応 を記 述 す る波 動 関 数 Ψ(+)α(Eα)を求 め る に
はSchrodinger方
程式
(2.81) を(2.80)で
指 定 され る 漸 近 形 を境 界 条 件 とし て 解 け ば よい.し か し,3個
以上
の 粒 子 か ら な る チ ャ ネ ル に対 して 漸 近 形 を一 般 的 に 書 き下 す の は 困 難 で あ る. この 問題 を解 決 す る に は,(2.81)を
積 分 方 程 式 に 書 き換 え,そ の 解 が 境 界 条 件
を 自動 的 に 満 た す よ うに す る,と い う方 法 が あ る. (2.16)に よ る と,H=Hα+Vα
で あ る か ら,(2.81)は
(2.82) と 書 け る.(2.82)の
一 般 解 は 右 辺 を0と
し た斉 次 方 程 式
(2.83) の 一 般 解 と,(2.82)の は Φ を(2.78)の
特 解 の 和 で 表 さ れ る.そ
入 射 平 面 波 Φα(Eα)と
し,特
の 中 で,境
界 条 件 を満 たす もの
解 を散 乱 波
(2.84) と す る 解,
(2.85) で あ る.た だ し,η>0は,右
辺 がEα
の実 数 値 に対 し て特 異 点 を持 た な い よ
う にす る た め に導 入 し た微 小 量 で,計 算 が 終 わ っ た後 で0の す る.η →0の
極 限で,Ψ(+)scは(2.82)の
極 限 を とる もの と
特 解 で あ る.後 で 示 す よ うに,η>0
は Ψ(+)scが外 向 き 散 乱 波 で あ る こ とを保 証 す る.そ れ ゆ え,Ψ(+)α は 境 界 条 件 (2.80)を 自動 的 に満 た して い る.η の物 理 的 な 意 味 に つ い て は 後 で 時 間依 存 の 理 論 形 式 の 中で 明 らか に す る.
(2.85)は 略 す)と
Ψ(+)αに 対 す るLippmann-Schwinger方 呼 ば れ る.Hα
子,(2.85)は 呼 ぶ.以
下LS方
は 微 分 演 算 子 だ か ら,(Eα-Hα+iη)-1は
積 分 方 程 式 で あ る.そ
下,記
程 式(以
程式 と 積分演 算
の 核(Eα-Hα+iη)-1をGreen関
数 と
号 を 簡 単 に す るた め に
(2.86) と 書 く.(2.85)の
形 式的な解 は
(2.87) (2.88) で あ る. [証 明] (2.85)の
右 辺 第2項
を左 辺 に 移 項 し,左
か らe(+)α(E)を
これ か ら直 ちに(2.87)を 得 る.ま た, ら(2.88)が
か ける と
で あるか
得 られ る.
(証 明 終 わ り)
こ れ ら の 解 は,分 Schrodinger方
母 にHを
含 ん で い る の で,正
確 に計 算 す るの は 元 の
程 式 を解 くの と 同 じ程 度 に 困 難 で あ る.形 式 解 と呼 ば れ る の
は そ の た め で あ る.そ れ に も 関 わ らず,(2.87),(2.88)は
理 論 の 展 開 に極 め て
有 用 な 式 で あ る. Gell-Mann-Goldbergerの
恒等式
(2.89) を使 うと,任 意 の チ ャ ネル β に対 して
(2.90) で あ る か ら,(2.88)を
次 の よ う に 変 形 す る こ と が で き る.
(2.91) 特 に β=α な ら, は(2.85)に 帰 着 す る.β ≠ α で あ れ ば,η →0の
で あ るか ら,(2.91) と き(2.91)の 右 辺 第1項 は
0に な る か ら,
(2.92) と 書 く こ とが で き る*2. Ψ(+)α(Eα)に 対 し て,
(2.94) を 導 入 す る.Ψ(-)α は Ψ(+)αと 同 じSchrodinger方 散 乱 波 を 持 つ 解 に な る.散 保 証 す る.内
乱 波 が 内 向 き で あ る こ と は,第2項
く と(2.87),
(2.88),
以 上 の 議 論 で は,Φ
か し,理
の 分 母 の-iη
(2.91)で
η を-η
に 断 ら な い 限 り,こ
2.4.2
の解は 解
で 置 き換 え た 方 程 式 が 得 ら れ る.
α(Eα)は 二 粒 子 チ ャ ネ ル の 平 面 波(2.78)で
程 式(2.85)∼(2.94)は
が
論 的 に は 非 常 に 有 用 で あ る.(2.94)を
明 ら か に Φα(Eα)が
Ψ(±)α(Eα)が そ れ に 対 応 す る(2.81)の 下,特
出チ ャネル に 内 向 き
向 き散 乱 波 と い う も の は 観 測 す る こ と は で き な い か ら,こ
実 験 条 件 に は 対 応 し な い.し
し か し,方
程 式 の,放
あ る と し た.
一 般 の 平 面 波(2.52),
解 で あ る と し て も 成 り 立 つ.そ
こで 以
の 一 般 的 な 場 合 を 想 定 し て 議 論 を 進 め る.
の規格直交性
固有関数系
*2 エ ネ ル ギーE
α に お い て,チ
は規格直交系をなす:
ャ ネ ル β ≠ α に 入 射 平 面 波 が あ る 場 合 の(2.85)方
程式は
(2.93) で あ る.(2.92)と(2.93)を
見 比 べ る と,(2.93)の
解 に(2.92)の
解 の 任 意 の 定 数倍 を加
え て も や は り(2.93)の 解 に な る こ と が わ か る.し た が っ て,こ の 極 限 で は(2.93)の 一 意 的 で な い .こ れ をLippmann-Schwinger (LS)方 程 式 の 解 の 非 一 意 性 と い う.こ η →0の
極 限 を 不 用 意 に と っ て は な ら な い こ と を 示 す.し
式 は 成 り立 っ て い る の で あ る か ら,LS方
か し,い
ず れ に せ よ,LS方
解は れは 程
程 式 か ら 演 繹 さ れ る す べ て の 方 程 式 は 成 り立 つ.
(2.95) [証明]
に(2.87)を 使い,得られた式の第1項
の Ψ(+)β(Eβ)に(2.92)で
α と β を交 換 し た もの を 使 えば
(2.96)
こ こ で, で あ る か ら,(2.96)の
第2項
と 第3項
は 相 殺 す る.
よって
ゆ え に,(2.60)に
よ り(2.95)が
成 り立 つ.
同様にして,
が証明 できる. (証 明終 わ り)
関数系
は 一般 には完 全系で はない.Hに
場 合 に は,そ の 波 動 関 数{ΨB}は
束縛状 態が存 在 す る
散 乱 状 態 の 波 動 関 数 と直 交 す るか らで あ る.
は{ΨB}を 付 け加 えては じめて完全系 にな る:
(2.97)
2.4.3 Ψ(+)αの 漸 近 形 と境 界 条 件,T行
列
次 に,α が 二 粒 子 チ ャネ ルで あ る場 合 Ψ(+)α が 境 界 条 件(2.80)を
ことを確か めよう.チ ャネル βにおいて,
満 た して い る
の漸近形は次の ように
して求まる.Ψ(+)α(Eα)に(2.92)を 代入 し, を使 えば
(2.98)
ただ し
(2.99) とな る.た だ し,
は βチ ャネルでの相対 運動 のエ ネルギ ーで
あ る. まず,β が 二粒 子 チ ャネル であ る場合 を考 え よ う.Green関
数の座 標表 示
は二体 の散 乱問題で よ く知 られ てい
る よ う に,
(2.100) で あ る.た だ し,μ β,kβ は そ れ ぞ れ β チ ャ ネル で の 相 対 運 動 の 換 算 質 量 お よ び 運 動 エ ネ ル ギ ーEfに
対 応 す る波 数 で あ る.G(+)(rβ, r)のrβ≫rで
の漸近
形は
(2.101) で あ る.た
だ し,
で あ る.(2.101)を(2.99)に
代 入すれ ば ,
Ψscβ の 漸 近 形 は
(2.102) と な る.こ
こに
(2.103) で 与 え ら れ る.た
だ し,
(2.104) で あ る.よ
っ て,(2.98)に
よ り,
の 漸 近 形 は,
(2.105) と な る.(2.105)は ら な い.よ
確 か に(2.80)の
っ て,Ψ(+)α は,二
形 を し て い る.fβ α(Ωβ)は 散 乱 振 幅 に ほ か な
粒 子 放 出 チ ャ ネ ル に 関 す る 限 り,境
界 条 件(2.80)
を 満 た す. 行 列(Tβ α)を 反 応 α → β の 遷 移 行 列(transition と い う.T行
列 要 素 はVβ
matrix,略
し てT行
列)
の レ ン ジ 内で の 波 動 関 数 の値 に よ って 決 まっ て し ま
う.し たが って,(2.103)お
よび(2.104)は
も と も と波 動 関 数 の 漸 近 形 に よっ て
定 義 され て い た 散 乱 振 幅 を,Vβ の レ ンジ 内 の 情 報 だ け で 計 算 で きる こ とを意 味 す る.多
くの 場 合,波
動 関数 を無 限 遠 まで 正 確 に 求 め る こ とは 困 難 だ か ら,こ
れ は 実 際 上,非 常 に 有 用 で あ る. 次 に,β が3個 以 上 の 粒 子 か らな る チ ャ ネル で あ る場 合 を考 え よ う.す で に述 べ た よ うに,こ の場 合 に は Ψscβの漸 近 形 を一 般 的 に書 き下す こ とは 困 難 で あ る. しか し,ど れ か 一 つ の 粒 子,た と えば1,が ほ か の粒 子 全 体 の 重 心R'か
そ れ ぞ れ 決 ま った エ ネ ルギ ー を持 つ
ら無 限 に離 れ た場 合 の 漸 近 形 の1の 座 標 に 関 す る部
分 は,二 粒 子 チ ャネ ル の 場 合 と同 様 に して 求 め る こ とが で きる.こ の 場 合 に は,
ほか の粒 子全体Cを 質量M'=M-m1,エ
ネルギ ー
を 持 つ 一 つ の 粒 子 で あ る と考 え れ ば,系 は1とCと て,相 対 距 離
の 二 体 系 で あ る.し たが っ
で は,Ψscβ は,(2.102)と
同 じ く,
(Ψscβ の 漸 近 形)
と な る こ と は 明 らか で あ る.た だ し, で あ る.ゆ え に,粒 子1は
ほ か の粒 子 に対 して 外 向 き球 面 波 と な っ
て 伝 搬 し て い く.こ れ は任 意 の粒 子 に対 して い え るか ら,Ψscβ は境 界 条 件 を満 た す こ とが わか る. 以 上 を 総 合 す る と,Ψ(+)αの 漸 近 形 は
(2.106) が 得 ら れ る.た れ は(2.80)と
だ し,ψ(+)scは 三 粒 子 以 上 の チ ャ ネ ル の 外 向 き 放 出 波 を 表 す.こ 一 致 す る.す
な わ ち,Ψ(+)α は 境 界 条 件 を 満 た し て い る.
2.4.4 時 間依 存 の理 論 形 式,断 熱 的 ス イ ッ チ ン グ,S行 LS方 程 式 のGreen関 波 を導 くGreen関
数 に は常 に η→0+が
列
入 っ て い る.こ れ は外 向 き散 乱
数 の 特 異 点 の 処 理 の た め 数 学 的 に 導 入 され た.し か し,実 は
そ れ に は 物 理 的 な 意 味 が あ る こ と を,以 下 に 時 間依 存 の 理 論 形 式 を使 っ て 説 明 し よ う[1].
Schrodinger描
像 で は,系
の 状 態 ベ ク トル Ψ(t)は
(2.107) に よ って 変 化 す る.あ る一 つ の チ ャ ネル α に注 目す る と,Ψ(t)の 変 化 の う ち相 互 作 用 ポ テ ン シ ャルVα だ け に よ る もの を取 り出 す に はユ ニ タ リー 変 換
(2.108) を 行 っ て 相 互 作 用 描 像(interaction と な る 任 意 の 時 刻 で あ る が,以 と(2.108)に
picture)に
移 れ ば よ い.〓
後 簡 単 の た め に
は
と す る.ΨIα(t)は,(2.107)
よ り,
(2.109) を み た す.た
だ し,
(2.110) で あ る.も
し,Vα=0な
ら,ΨIα(t)はtに
よ ら な い.す
な わ ち,自
由運動の
相 互 作 用 描 像 の 波 動 関 数 は 時 間 的 に 変 化 し な い. 二 つ の 描 像 で 時 間 を 移 す ユ ニ タ リ ー 演 算 子U(t,t0)とUIα(t,t0)を
で 定 義 す る と,(2.107)か
(2.108)か
ら 有 限 のt,
それぞれ
t0に 対 し て
ら
(2.111) で あ る.(2.111)か
ら有 限 のt,
t0に 対 し て 直 ち に
(2.112)
(2.113)
(2.114) が 得 られ る. 実 際 の 反 応 で は,各
反応 粒 子 は 空 間 的 に 局 在 す る波 束 を な し,そ れ らが 接 触
す る短 い 時 間だ け 相 互 作 用 し,そ の前 後 で は 相 互 作 用 しな い.し か し,そ の 取 り 扱 い は 面 倒 な の で,相
互 作 用 を時 間 的 に 変 化 す る もの で 置 き換 え る こ とに よ っ
て シ ミュ レー トす る.す な わ ち,衝 突 が 時 刻t=0を
中心 に起 こ る場 合,各 チ ャ
ネ ルγ で の 相 互 作 用Vγ を
(2.115) で 置 き換 え る.こ の 相 互 作 用 は│t│が 大 きい と き,す な わ ち反 応 の 前,後 で は0 に な り,衝 突 が 起 こ るt=0付
近 で は元 のVγ に ほ ぼ 等 し い.η が 小 さけ れ ば
時 間 的 に ゆ っ く り変 化 し,η →0の
極 限 で は す べ て の 時 刻 でVγ に な る.し た
が って こ の 極 限 で は,Vγη に よる 反 応 は元 のVγ に よる そ れ と同 じで あ る,と 考 え られ る.実 際,こ
の よ うな方 法 を使 って 計 算 し た 断 面 積 が 波 束 を使 っ た計
算 の 答 え と一 致 す る こ とが 証 明 され て い る(た
とえば[2]).(2.115)に
換 え を相 互 作 用 の 断 熱 的 ス イ ッチ イ ン グ(adiabatic switching)と 合,断
よ る置 き
い う.こ の 場
熱 的 とは 「ゆ っ く り変 化 す る 」 とい う意 味 で あ る.
さて,入 射 チ ャ ネ ル α の平 面 波か ら始 ま る反 応 で は,遠 い過 去 の 時刻t0で
は
(2.116) で あ る.ゆ
え に,ΨIα(t)と
で あ る.こ
れ に 対 して
Ψ(t)が 一 致 す る 時 刻t=0で
は
(2.117) が 成 り立 つ.た
だ し,Ψ(+)α(Eα)はLS方
程 式(2.85)の
解 で あ る.
[証 明] t〓0と (2.114)に
す る.ま
ず,あ
るt0
ΨIα(t0)=Φ
α(Eα)で
あ る と し よ う.
よ り
(2.118)
よ っ て,(2.110),(2.111),(2.115)お
よ び
を 使
う と
こ こ で,t0→-∞
特 に,t=0で
の 極 限 を と る と,分
子 の 下 限 は0に
な るか ら,
は
(2.119) (2.119)と(2.85)を か る.よ
比 べ れば,
で あ る こ とが わ
って
(証 明 終 わ り) (2.117)と
同様 に して
(2.120) が 証 明 され る.(2.117),(2.120)は,巨 平 面 波
視 的 時 間で あ る,無 限 の過 去(未 来)で
で あ る 波 動 関 数 は,反 応 が 起 こ る時 刻t=0で
は
で あ る こ と を示 す. か くして,LS方
程 式 に 現 れ る ηは 断 熱 ス イ ッチ ング のパ ラ メ ターで あ り,そ
れ は 衝 突 粒 子 の 二 つ の 波 束 が 重 な る速 さに 対 応 す る こ とが わ か った.そ れ は ま た,対 応 す る 波 束 が ど の くらい 空 間 的 に広 が っ て い るか に依 存 す る.η=0は 無 限 に 広 が っ た 波 に対 応 す る. さて,t=∞
で の 放 出 チ ャ ネ ル β で の 波 動 関 数 の 振 る 舞 い を知 る に は,そ
の チ ャ ネ ル に つ い て の相 互 作 用 描 像 ΨIβ(t)を見 る のが 便 利 で あ る.(2.117)に より
とな る.ゆ え に,t=∞
で この 状 態 に平 面 波 Φβ(Eβ)が 見 出 され る確 率 振 幅 は
(2.121) で あ る.た
だ し,(2.112)と(2.120)を
(scattering
matrix,略
上 記 の 導 出 で はt0→ こ と に 注 意 せ よ.そ 有 限 のt,t0に
し てS行
使 っ た.(Sβα)は 列)と
この遷 移の散 乱行 列
呼 ば れ る.
±∞ の 極 限 を す べ て の 計 算 が 終 わ っ て か ら と っ て い る
れ は(2.111),し
た が っ て そ れ か ら 導 か れ る(2.112)な
対 し て 与 え ら れ て い る か ら で あ る.も
どが
し(2.117)を
(2.122) と書 くと,UIα(0,-∞)は 波 に 変 え る.し
す べ て の 平 面 波,し
た が っ てUIα(0,-∞)は
非 完 全 系 に 変 え て し ま う.し
波
(2.88)か
動
行
波 動 関 数 の 完 全 系 を,束
た が っ て,UIα(0,-∞)は
2.5 波 動 行 列,T行
2.5.1
た が っ て 任 意 の 波 動 関 数,を
列 お よ びS行
散乱
縛 状 態 が な い,
ユ ニ タ リ ー で は な い.
列
列
ら,
(2.123) と お く と,
(2.124) で あ る こ とが わ か る.ゆ る 演 算 子 で,Mφllerの の 恒 等 式(2.89)を
え に,Ω(±)(E)は
平 面 波 Φα(E)をLS方
程 式 の解 に変 え
波 動 行 列 と 呼 ば れ る.(2.123)にGell-Mann-Goldberger
使 えば容易 に
(2.125) が 導 け る.こ
れ を Φγ(E)に
作 用 さ せ る と,
で ある
か ら,
(2.126)
ただ し
(2.127) で あ る.こ
れ はLS方
程 式(2.85)に
対 応 す る.(2.127)を
解 け ば
の形
式解
(2.128) が 得 られ る.こ れ は(2.87)に
対 応 す る.
はγ チ ャ ネル に お け る波 動 行
列 で あ る. 波動 行 列 は 任 意 の波 動 関 数 を散 乱 状 態 の波 動 関数 にす る.ゆ え に,(2.122)で 定 義 したUIγ(0,-∞)と
2.5.2 T行
同 じ く,ユ ニ タ リーで は な い.
列 お よ びS行
列
波 動 行 列 を使 う と,エ ネ ル ギ ーEに
お け るT行
列要素 は
(2.129) と書 け る.す
な わ ち,Tβα は演 算 子
(2.130) の 平 面 波 間 の 行 列 要 素 で あ る.(2.126)を
使 え ば,Φ
α(E)に
作 用 す る こ と を前
提 に して
(2.131) と 書 く こ と も で き る.
Tβα は 次 の よ う に も 書 く こ とが で き る.
(2.132) [証明]
しか る に
よって
しか る に
ゆえ に
(証 明終 わ り) 前 項で 導 入 したS行
列 要素
も波 動 行列 を使 って
(2.133) と 書 く こ と が で き る.た
だ し,
(2.134) で あ る. S(β,α)は
次 の よ う に 変 形 で き る.
(2.135) で あ る か ら,
ゆえに
ここ で,
を 使っ た.ゆ えに, およ び (2.136)
に 注 意 す れ ば,
(2.137) と な る.こ
れは
(2.138) で あ る こと を 意 味 す る.た
だ し,こ
の 式 の 右 側 に は Φα(Eα)が左
側 に は Φβ(Eβ)
が あ る こ と を 前 提 に し て い る.
2.5.3 S行
S行
列 の ユ ニ タ リ テ ィ,T行
列 の 和 則,光
学 定 理,相
反 定理
列 は ユ ニ タ リ ー で あ る:
(2.139) [証明]
し か る に,
は散 乱 状 態 の波 動 関 数 空 間 内 で 完 全 系 を な す か ら,
同 様 に し て,SS†=1.
(証 明 終 わ り) Tを
(2.140) で 定 義 す る と,(2.137)に
よ り
(2.141)
で あ る こ と が わ か る.Sの
ユ ニ タ リテ ィ と(2.141)か
ら直 ち に
(2.142) を 得 る.(2.142)の
βα 要 素 を と り,(2.140)を
使 う と,T行
列 に 対 す る和 則
(2.143) が 得 ら れ る.特
に,β=α
とす る と
(2.144) で あ る.α は,(2.103)に
が 入 射 二 粒 子 チ ャ ネ ル の 波 数kα よ り,チ
ャ ネ ル α で のkα
の 振 幅fαα(0゜)で あ る.ま
た,後
の 平 面 波 に 対 応 す る と す る と,Tα
方 向 へ の 弾 性 散 乱,す
に(2.226)で
な わ ち前 方 散 乱
示 す よ う に,(2.144)の左
チャネルから始まる反応の全断面積
α
辺 は α
倍である.よ って (2.145)
と な る.(2.145)は
光 学 定 理(optical
theorem)と
呼 ば れ る.こ
れ がS行
列の
ユ ニ タ リ テ ィ の 結 果 で あ る こ と に 注 意 せ よ. S行
列 に 対 し て,相
反 定 理(reciprocity
theorem)
(2.146) が 成 り立 つ.た だ し,-α(-β)は し た時 間 反 転T=CU(運
チ ャ ネル α(β)の 波 動 関数 に2.2.3項 で 定 義
動 量 と ス ピ ンの 向 き を逆 にす る演 算 子)を
ほど こし
た チ ャ ネ ル を表 す. [証明] (2.87)を 使 う と
ゆ えに
(証 明 終 わ り)
相 反 定 理 はT行
列 に 対 し て も成 り立 つ:
(2.147) 相 反 定 理 は,Sお
よびTの,一
つ の 遷 移 と そ の逆 の 遷 移 に 対 す る行 列 要 素 が
等 しい こ と を示 す.こ れ は い うまで もな く時 間反 転 不 変 性 の結 果 で あ る. 次 に,チ
ャ ネ ル α,βが と もに二 粒 子 チ ャ ネ ルで あ る 場 合 を考 え る.そ れ ぞ れ
の チ ャ ネ ル の 換 算 質 量 をそ れ ぞ れ μα,μβ と して,
(2.148) でSβ α か ら δ(Eβ-Eα)を
除 い た,Eβ=Eα
を 前 提 と す るSβ α を 定 義 す る.
この とき
(2.149) お よ び,(2.103)に
よ り,
(2.150) が 成 り立 つ*3. [証明] (2.148)を(2.137)に
代入す る と
(2.151) し か る に,
(2.152) で あ る か ら,こ
れ を(2.151)に
て 解 き,(2.103)に
代 入 す れ ば(2.149)を
代 入 し,kβ=kβrβ/rβ
得 る.そ
れ をTβα に つ い
で あ る こ と に 注 意 す れ ば(2.150)を
得 る. *3 た だ し
,一 般 にaは
で あ る.ゆ
え に,
ベ ク ト ルaの
方 向 を表 す.極
座 標 で
な ら で あ る.
(証 明 終 わ り) 入 射 エ ネ ル ギ ーが 低 い 場 合 に は,二 粒 子 か ら な る チ ャ ネル だ けが 開い て い る こ とが 多 い.こ
の 場 合 に は,
(2.153) が 成 り立 つ. [証 明] S行
列 の ユ ニ タ リー 性 の 式(2.139)の
両 辺 の Φα,Φ β 間 の 行 列 要 素 に(2.148)
を代 入 す れ ば
この式 の
左 辺 しか る に
で あるか ら
左 辺 で あ る.一
方,右
辺 は(2.152)で
与 え ら れ る.ゆ
え に(2.153)が
成 り立 つ. (証 明 終 わ り)
2.6 角 運 動 量 表 示
核 反 応 の 理 論 で は,し ば しば 角 運 動 量 表 示 を と る と便 利 で あ る.基 本 とな る の は球 面 調 和 関 数 系{Ylm(r)}で
あ る.本 書 で は,Ylm(r)が
と な る よ うに 位 相 を と る こ と は す で に述 べ た.{Ylm(r)}は な す:
完全規 格直交系 を
(2.154) (2.155)
2.6.1 基
底
関
数
Ylm(r)にrの 任 意 の 関 数flm(r)を 掛 け た も の はYlm(r)と 同 じ 固有 値 を持 つ 角 運 動 量 の 固有 関 数 で あ るか ら,角 運 動 量 表 示 の 基 底 と して を とる こ とが で きる.以 下,こ
こで は 平 面 波φ(k,r)の
よ く知 られ た球 面 波 展
開 の公 式
(2.156) か ら導 か れ る
(2.157) を基 底 に と る.jl(kr)は
球 面Bessel関
数 で,第1種
お よ び 第2種 球 面Hankel
関数
と と も に 反応 論 に しば しば 登場 す る.こ れ らの 関 数 の
位 相 は しば しば 著 者 に よ って 異 な る.こ こで は 漸 近 形 が
(2.158) と な る も の と 定 義 し て お く. (2.156)お
よ び(2.157)に
よ り
(2.159) で あ る.関 数系{φ(k,r)}の
規格 直交性 と
(2.160) お よ び(2.154)か
ら直ちに
(2.161)
が 導 か れ る*4.
2.6.2 T行
列,S行
列,散
二 粒 子 チ ャ ネ ル 間 のT行
乱振 幅
列要素
の 角 運 動 量 表 示 を求 め よ う.
はそれぞれ
で あ るか ら,Tβ α のkα ,β依 存 性 を陽 に表 す た め に そ れ を
と 書 く こ と に す る.こ
の 式 に(2.159)を
代 入 すれ ば
(2.162) を 得 る.た
だ し
(2.163)
である.ここで,
に対して
を使 う と
(2.164) *4 三 粒子 以 上の チ ャネ ルで の 自由運 動 の 波動 関数 の球 面波 に よる表 示 は ,た とえ ば[ゾ ン マー フェ ル ト理 論 物理 学 講 座6,物 理 数 学偏 微 分 方 程 式論,増 田秀 行 訳(講 談 社)]に 与 え られ て い る.
と 書 く こ と も で き る.
(2.165) が 行 列 要 素 の 角 運 動 量 表 示 で あ る. 散 乱 振 幅 は(2.103)に(2.162)を
代 入すれば
(2.166) と な る.た
だ し
(2.167) で あ る.(2.166)が
散 乱 振 幅 の 球 面 波 展 開 で あ る.
S行 列 の 角 運 動 量 表 示 を,T行
列 にな らって
(2.168) で 定 義 す る.Sβ
α は(2.148)で
列 で あ る.(2.153)の
定 義 さ れ た,Sβ
α か ら δ(Eβ-Eα)を
除 い た行
両 辺 を(2.168)と
(2.169) を使 って球面 波展 開すれ ば
(2.170) が 得 ら れ る.す
な わ ち,(Sβlβmβ,αlαmα)は ユ ニ タ リ ー 行 列 で あ る.(2.149)の
両 辺 の 角 運 動 量 表 示 を とれ ば
(2.171) を 得 る.ま
た,(2.168)と(2.171)を(2.150)に
代 入 すれ ば
(2.172)
を 得 る.こ
れ を(2.166)と
比 較 す れ ば 次 式 を 得 る.
(2.173)
2.7
Coulomb相
互作 用
今 まで は,荷 電 粒 子 間 に働 くCoulomb力
を無 視 し,粒 子 間の 相 互 作 用 は す
べ て 短 距 離 力 で あ る と し た.し か し入 射 粒 子 が 荷 電 を持 つ 場 合 に は,荷 電 粒 子 間 にCoulomb力
が 働 き,そ れ は無 限 の レ ン ジ を持 つ.し
た が っ て,入 射 波 は
平 面 波 で は あ り得 な い.
2.7.1 Coulomb波 二 つ の 粒 子1と2の
動関数 間 にCoulombポ
テ ンシャル
だ け が 働 い て い る 場 合 の 相 対 運 動 のSchrodinger方
の 解 で,無
限 遠 で 「波 数 ベ ク トル がkで
程 式
あ る入 射 波 と外 向 き散 乱 波 の 和 」 とい
う漸 近 形 を 持 つ もの は 解 析 的 に知 られ て い る[3],[4].そ れ は
(2.174) で 与 え ら れ る.た
だ し,
(2.175) で あ る.η
はSommerfeldパ
ラ メ タ ー と 呼 ば れ る.
は
(2.176) で 定 義 され る合 流 型 超 幾 何 関 数 で あ る.
のr→
∞ で の漸近形は
(2.177)
で あ る.第1項
(2.178) はCoulomb場
の 中 で の 入 射 波 で あ る.第2項
る 散 乱 波 で あ る.た
だ し,Ω=(θ,φ)はkか
はCoulombポ ら 見 たr方
テン シャルに よ 向で
(2.179) はCoulomb散 あ る.ま
乱 振 幅 ま た はRutherford散
乱 振 幅 と 呼 ば れ る.θ が 散 乱 角 で
た,
は 軌 道 角 運 動 量0に
対 す るCoulomb位
相 に はln(kr-kr)に
比 例 し た 項 が 入 っ て い る か ら,そ
に は な ら な い.し は で き な い.こ
相 差 と 呼 ば れ る.入
た が っ て,φC(+)(k,r)を れ はCoulombポ
に 由 来 す る.
「平 面 波+散
射 波(2.178)の
位
れ は 無 限 遠 で も平 面 波 乱 波 」 の 形 に 書 くこ と
テ ン シ ャル が 無 限 の レ ンジ を 持 って い る こ と
に 対 して
(2.180) を 定 義 して お くと便 利 で あ る.こ れ は"入 射 波 と 内 向 き散 乱 波"の 境 界 条 件 を 満 た す解 で あ る.
は η=0の
関 数 系
は,{φ(k,r)}と
と き平 面 波 に な る:
同 様 に,直
交性
(2.181) を 持 つ.し か し,UCが
束 縛 状 態 を持 つ 場 合 に は,そ れ を付 け 加 え て 初 め て 完
全 系 に な る:
た だ し,{bν(r)}は
束 縛 状 態 の 固有 関 数 系 で あ る.
2.7.2 球 面 波 展 開 の 球 面 波 展 開 は
(2.182) で 与 え られ る[4].た
だし
(2.183) で,角
運 動 量lのCoulomb位
相 差 と よば れ る.
は方程式
(2.184) のr=0で
正 則 な 解 で,漸 近 形
(2.185) を持 つ もの で あ る.こ の 解 も合 流 型 超 幾 何 関数 に よ って
(2.186) で 与 え られ る. Coulombポ
テ ン シ ャ ル 下 で の 球 面 波 の 基 底 関数 は
(2.187) で あ る.こ れ に よ る
の球面波 展開は
(2.188) で あ る. 散 乱 波 は,漸 近 形 が 進 行 波
(2.189)
で あ る(2.184)と
同 形 の微 分 方 程 式 の 解 で 記 述 され る.
と
の関係は
(2.190) で あ る.こ
のほかに
(2.191) を定 義 し て お くと便利 な こ とが あ る.
と
はr=0で
非 正則
で あ る. の 直 交 性 か ら 直 ち に
(2.192) した が っ て
の直交性
(2.193) が 導 か れ る.ま た,UCが
束 縛 状 態 を持 つ 場 合 に は,そ の 波 動 関 数 を付 け 加 え
れ ば 完 全 系 に な る:
(2.194) 2.7.3 Green関 Coulombポ
数
テ ン シ ャ ル 下 で のGreen関
数の座標表 示
(2.195) の球 面波展 開は
(2.196) で あ る.た
だ し,
で あ る.ま
を さ け る た め に エ ネ ル ギ ー 分 母 で 従 来 の η を ε と 書 い た[5].
た記 号 の 混 同
式(2.196)は
η=0の
と き,よ
く知 ら れ た
に帰 着 す る.
で あ る が,右
での漸近形 は
辺 に(2.180)と(2.182)を
使 うと
(2.197) が 得 ら れ る.た
だ し,k=kr/rで
2.7.4 散 乱 振 幅,T行
あ る.
列
以 上 の 準 備 の も とに,Coulomb相
互 作 用が あ る二 粒 子 チ ャ ネル 間の 反 応 の 散
乱 振 幅 を計 算 し よ う.以 下,入 射 チ ャ ネ ル α,放 出 チ ャ ネ ル β の それ ぞ れ に 対 応 す る量 を 添 え字γ=α
また は β で 表 す こ とに す る.
まず,相 互 作 用 の 中か らCoulolnbポ
と し,ハ
テ ン シ ャ ル を抜 き出 し て
ミル トニ ア ン を
と変 形 す る.こ れ に 応 じ て,反 応 を 記 述 す る 波 動 関 数
方程式
に 対 す るSchrodinger
を (2.198)
と 変 形 す る.(2.198)の
一般解 は斉次方程式
(2.199) の 一 般 解 と(2.198)の
特 解 の和 で あ る.そ の 中 で,漸 近 形が α チ ャ ネル か らの
波 数kα の 入 射 波 と,開 い たチ ャ ネ ル で の外 向 き散 乱 波 の 和 で あ る,と い う境 界 条 件 を 満 たす 解 は
(2.200)
で あ る.た だ し
(2.201) で あ り,ま
た
で あ る.た
だ し 簡 単 の た め に,
を 掛 け,
のEを
省 い た.(2.200)の
を 左 辺 に移項 し,
左 か ら に注意 す る と
(2.202) が 得 ら れ る.右
辺 第1項
に な る.ゆ
は,
で あ る か ら,ε →0の
とき
え に βが 二 粒 子 チ ャ ネ ル で あ れ ば
ただ し
は 先 に(2.195)で
定 義 し たGreen関
の 漸 近 形 は,(2.177)お
よ び(2.197)に
数 の 座 標 表 示 で あ る.よ
っ て ,
よ り
(2.203) と な る.散
乱 振 幅fβ α(Ωβ)は
(2.204) で 与 え られ る.fβα(Ωβ)は 有 限 レ ン ジ の ポ テ ンシ ャルVβ に よ るT行
列要素
(2.205) に よ って
(2.206) で 与 え られ る.た だ し, ポ テ ン シ ヤ ルUCβ の 効 果 は
で あ る.
で は,Coulomb
の 中 に繰り 込 まれ て い る.(2.204)
の 第1項
はCoulombポ
テ ン シ ャ ル だ け に よ る 散 乱 振 幅 で,弾
性 散 乱 だ け に存
在 す る. (2.200)の
形式解 は
(2.207) (2.208) で 与 え ら れ る.(2.207), (2.92)の
Φ α を
(2.208), で,
(2.202)は
を
れ ぞ れ 置 き 換 え た も の に な っ て い る.し
そ れ ぞ れ(2.87),
で,Vγ
をVγ(γ=α
た が っ て,前
加 え れ ば,そ
性 散 乱 の 振 幅 に はCoulomb散
の ま ま 成 り立 つ.す
な わ ち,あ
レ ン ジ を 持 つ か の よ う に 議 論 を 進 め,最 が わ か る.以
断
ま た は β)で
そ
互 作用が ある場合 に 乱 の 振 幅 をつ け
たか もすべ て の 相 互 作 用が 有 限 の
後 に上 記 の 置 き換 え をす れ ば よい こ と
下 の 章 で は 特 に 断 ら な い 限 り,こ
2.8
よび
節 まで に有 限 レ ン ジ の相
互 作 用 に 対 し て 導 出 され た す べ て の 方 程 式 はCoulomb相 も こ の よ う な 置 き 換 え を し,弾
(2.88)お
の 了 解 の も と に 議 論 を 進 め る.
面
積
2.8.1 断 面 積 の 一 般 形 以 上 の 準 備 の も とで,反 応 の 断 面 積 を計 算 し よ う. 断 面 積 の 定 義 は,1.2.3項
で 述べ た よ うに,考
え て い る事 象 が 単 位 流 束 の 入
射 粒 子 に よ って 起 こ る単 位 時 間 当 た りの 回 数 で あ る.計 算 上 は これ を(a)条 件 を満 た す 放 出 粒 子 が 単 位 時 間 当 た りに 放 出 され る 数 を 入 射 粒 子 の流 束 で 割 っ た も の,ま た は(b)そ
の 事 象 が 起 こ る単 位 時 間 当 た りの確 率 を入 射 粒 子 の 流 束 で
割 った もの,と 表 現 し て お く と便利 で あ る.入 射 チ ャ ネル α は 二 粒 子 か らな り, 入 射 波 は 先 に定 義 し た平 面 波 Φαで あ る とす る と,入 射 流 束 は(2π)-3vα で あ る.た だ しvα は 入 射 チ ャ ネ ル で の 二 粒 子 間 の 相 対 速 度 の 大 き さで あ る. 二 粒 子 チ ャ ネ ル β へ の 放 出 の場 合 は,(2.102)に
よれ ば,β チ ャ ネ ル の 放 出
波の漸近 形は
(2.209) で あ る か ら,観 測 点(rβ, Ωβ)で 微 少 立 体 角dΩ β中 に 単 位 時 間 当 た り放 出 され
る数 は
で あ る.た だ しυβは β チ ャ ネル の 二 粒 子 間 の 相 対 速 度 の 大 き さで あ る.ゆ え に,微
分 断 面 積 は 定 義(a)に
より
(2.210) で 与 え ら れ る.ま
た(2.103)に
よ る と,散
乱 振 幅fβ α(Ωβ)は 遷 移 行 列
(2.211) に よ り
(2.212) で 与 え られ る. 放 出 粒 子 の数 が3個
以 上 で あ る場 合 に は,散 乱 振 幅 の 一 般 形 を 書 き下 す こ と
が 困難 な の で,定 義(b)に
よ って 計 算 す る.そ れ に は,2.4.4項
で 述 べ た 時 間依
存 の 定 式 を用 い る のが 便利 で あ る.こ の計 算 を厳 密 に 行 うに は,LS方 入 し た 微 少 量 η →0の
との 兼 ね 合 い に つ い て細 か い 注 意 が 必 要 で あ る.こ こ で は,そ 概 略 を 説 明 す る に止 め る.詳 衝 突 は 時刻t=0の 時 刻t=-∞
程式で導
極 限 の と り方 と波 動 関 数 の 広 が りが 無 限 大 で あ る こ と
し くは,た
と えば,[2]を
の点 に つ い て は
参 照 され た い.
付 近 で 起 こ る もの とす る.α チ ャ ネル の相 互 作 用 描 像 で,
で 平 面 波 Φα(Eα)で あ った 状 態 ベ ク トルが,時
刻tで
β チ ャネ
ル 相 互 作 用 描 像 で 自由 運 動 の 平 面 波 Φβ(Eβ)に 見 い だ され る確 率 は
(2.213) で あ る.P(t)の
時 間 的増 加 率
(2.214) が 単 位 時 間 当 た りの 遷 移 確 率 で あ る.よ っ て(2.113)を
使 えば
(2.215) と な る.
2.4.4項 で 示 し た よ うに,こ の 状 態 ベ ク トル はt=0で で あ る.さ
ら に,t=0で
一致 するか ら
,
こ れ を(2.215)に
は
は α チ ャ ネル の 相 互 作 用 描 像 と β チ ャ ネル の それ は で あ る.よ
っ て
で あ る.
代 入 し,
と
を 使 え ば,(2.215)は
(2.216) と 書 け る.(2.91)を
こ れ を(2.216)に
使 うと
代入 し
を使 うと
(2.217) を 得 る.た
だ し
(2.218) で あ る.こ れ は 二粒 子 チ ャ ネル に対 して(2.104)で
定 義 したT行
列 を 一般 化 し
た もの で あ る. さて,ω βαか ら 断面 積 を計 算す る に は,そ の物 理 的 な 意 味 を正 確 に 知 る必 要 が あ る.そ れ に は,巨 視 的 な大 き さの 体 積 Ω の 立 方 体 の 箱 の 中で,入 射 チ ャ ネ ル α の 一 対 の 反 応 粒 子 が 衝 突 す る場 合 を考 え る.断 面 積 は反 応 の 結 果,同 の 中 で,放
出 チ ャ ネル β の,与
じ箱
え られ た 条 件 を満 た すNβ 個 の 反 応 粒 子 が 各1
個 放 出 され る,と い う事 象 が 起 こ る単 位 時 間 当 た りの確 率 を入 射 チ ャネ ル の 流 束 で 割 った もの で あ る.そ の 値 は Ω → ∞ の極 限で は Ω に よ ら ない は ず で あ る. 始 状 態 の,体
積 Ω 中の 一 対 の 反応 粒 子 の 自 由な 相対 運 動 の波 動 関数 は
で あ る.ま
た,終
状 態 で 箱 の 中 に あ る1個
で あ る.ゆ
え に,こ
の 粒 子nの
それ は
の場合 の α チ ャネル と β チ ャネルの波動 関
数 はそれぞれ お よび で 与 え られ る.状 態
(2.219)
か ら Φβへ の 単位 時 間当 た りの 遷 移確 率ωβαは(2.218)
で 波 動 関 数 を それぞ れ
お よびΦ βで 置 き換 え た もの で 与 え られ るか ら
(2.220) で あ る.各 放 出粒 子 の 運 動 量 が 幅
(2.221) の 中 に あ り,内 部 状 態 もそ の 幅 に対 応 す るあ る 範 囲
の
中 に あ る 状 態 の ど れ かへ の 単 位 時 間 当 た りの 遷 移 確 率 ωβα は,ωβ α に こ の 範 囲 に あ る状 態 数 を掛 け た もの で あ る.よ
く知 られ て い る よ う に,上 記 の 箱 の 壁
で 周 期 的 境 界 条 件 を 満 た す 波 動 関 数 に 対 して は kの 幅Δk中 の 平 面 波 の 状 態 数 で あ る.ゆ
え に,
中の相対運動の状態数
で あ る.し か し,重 心 系 で は
を満 た して い な け れ ば な らな いか ら,
の すべ て は 独 立 で は な い.こ の 制 限 は
入 す れ ば 取 り除 くこ とが で き, で き る.よ っ て,求
を挿
を独 立 に 取 り扱 う こ とが
め る 断 面 積Δ σβα はωβα に こ れ ら を掛 け,{Δ βn}の 範 囲
の 中に あ る内 部 状 態 につ い て加 え,そ れ を 入射 波
の入 射 流 束υα/Ωで 割 っ
た もの で あ る.よ っ て,
(2.222)
た だ し,Σ (2.217)を
βintは 内 部 状 態 の 範 囲{Δ βn}に
わ た る 和 を 表す.こ
れ に(2.220),
使 うと
(2.223) を得 る.(2.223)が
任 意 の 放 出粒 子数Nβ
微 分 断 面 積 は(2.223)でΔknを
に対す る 断 面 積 の 一般 的 表 式 で あ る.
無 限小 に した もの,
(2.224) で あ る.内 部 状 態 の 与 え られ た範 囲{Δ βn}に対 して
(2.225) が0に
な ら な い範 囲 の
は 位 相 体 積(phase
volume)と
呼 ば れ る.
α チ ャ ネ ル か ら 始 ま る反 応 の 全 断 面 積 は
(2.226) で あ る.
観 測 され る の が, のす べ て で は な く,そ の 中 の い くつ か だ け で あ る 場 合 に は,観 測 され な いknの 幅Δknを 全 領 域 にす る.一 つ の 例 と し て,Nβ
番 目の 粒 子 が 残 留 核Bで,そ
れ は 観 測 され な い 場 合 を考 え よ う.こ の
と き,重 心 系 で の 微 分 断 面 積 は,(2.224)か
と な る が,こ
の 積 分 は,
き 換 え る こ と を 意 味 す る.し
ら,
が あ る か ら,kNβ た が っ て,
を
で置
と な る.よ
って
(2.227) と な る.rn-rBは よ う に し て,粒
2.8.2
粒 子nの,残 子Bに
留 核Bか
ら 測 っ た 位 置 ベ ク トル で あ る.こ
の
つ い て の 量 を 消 去 す る こ と が で き る.
二 粒 子 放 出 チ ャネ ル の 断 面 積
例 と し て,(2.223)を 計 算 し て み よ う.こ
二 粒 子1と2か
ら な る チ ャ ネ ル に 適 用 し て,断
面積 を
の 場 合 に は,
で あ る.(2.224)は
(2.228) と な る.
で あ る か ら,
(2.229) と な る.
と 置 く と,
お よ び
だか ら
(2.230) た だ し,
は 移 行 エ ネ ル ギ ー で あ る.ま
た,
(2.231)
で あ る.た だ し,
は β チ ャ ネ ル の 相対 速 度 で あ る.ま た,Ω β=Ωkβ
は 放 出 方 向 で あ る.(2.230)と(2.231)を(2.229)に 積(double
differential
代 入 す る と,二
重微分断面
cross section)
(2.232) が 得 ら れ る.特
に 核 の 終 状 態 が 離 散 状 態 の 一 つ で あ る と き は,β
つ い て の 和 は な く, た(2.210),
(2.212)と
の内部状態 に
に 注 意 す れ ば,(2.232)は
先に得
一 致 し て い る こ とが わ か る.
2.8.3 三 粒 子 放 出 チ ャ ネル の 断 面 積 次 に,放
出 粒 子 が 残 留 核 も含 め て3個
1, 2,残 留 核Bを3と
し て,Bを
で あ る 場 合 を考 え よ う.放 出 粒 子 を
観 測 しな い場 合 の,重 心 系 で の 微 分 断 面 積
(2.227)は
(2.233) こ こに
で あ る.粒
子nの
運 動 エ ネ ルギ ー は
で あ る か ら,(2.231)と
同 様 に し て,
(2.234) で あ る.こ
れ を(2.233)に
代入すれ ば
(2.235) と な る.
で あ るが,
で あ る か ら,k1とk2の
間 の 角 を θ12と す る と
(2.236) で あ る.し E1と
た が っ て,E1,
E2,
θ12が 決 ま る と,E2が
θ12の う ち 二 つ だ け が 独 立 で あ る.た
決 ま る.こ
と え ば,
の 場 合,
で あ るか ら
よ って,粒
子1が
運 動 エ ネ ルギ ーE1で
れ と角 度 θ12の微 小 立 体 角dΩk2の
微 小 立 体 角dΩk1の
中 に,粒 子2が
そ
中 に 放 出 され る 三 重 微 分 断 面 積 は
(2.237) で 与 え ら れ る.
2.8.4 遠 心 力 ・Coulomb障
壁
さ て,入 射 波 を2.6節,2.7節
で 述 べ た 方 法 で 球 面 波 展 開 し て 考 え よ う.(以
下,簡 単 の た め に 添 え字 α を省 く.)入 射 粒 子 が 中性 子 で あ る場 合,そ の 波 数 kの入 射 平 面 波 の 中 の 軌 道 角 運 動 量lの 部 分 波 の 動 径 関 数 は あ るか ら,そ れ が 核 力 に よる 相 互 作 用 の レ ンジRNま
で 到 達 す る確 率 は
で
で あ る.kRN≪1の
と き は,
で あ る か ら,
Pl(k; RN)は
(2.238) で あ り,lが 高 い と急 速 に小 さ くな る.物 理 的 には,こ れ は そ の部 分 波 が 遠 心 力 の 障 壁
に よ って 内 部 に入 る こ と を 阻 まれ る こ と に よ る.し
たが っ て,非 常 に低 い エ ネ ルギ ー で はl=0の
部 分 波 だ け が 反 応 に寄 与 す る.
入 射 粒 子 に正 電 荷 が あ る場 合 に は,標 的 核 の 正 電 荷 との 間のCoulomb力
がも
う一 つ の 障 壁 に な る.こ の場 合 の角 運 動 量lの 部 分 波が そ れ を貫 通 してr=RN に 到 達 す る 確 率 は(2.186)で
与 え られ る動 径 関数
を使 って
で 与 え られ る. エ ネ ルギ ーが 非 常 に低 くな る と η≫1に
な る.こ の 場 合,1/η
のべ き級 数展
開の最低 次の近似 で
と な る こ と が 知 ら れ て い る.J2l+1(ζ)はBessel関 で,こ し た が っ て,こ
数 で あ り, れ はkに
よ ら な い[3].
の場合 には
(2.239) で あ る.
で あ れ ば
し たが っ て
で あ る か ら,
はlと 共 に 急 速 に小 さ くな る.し たが っ て,小 さい
lの 部 分 波 だ け が 反応 に寄 与 す る. 一 般 に η≫1の
場 合 に はWKB近
を正 確 に 求 め る に は数 値 計 算 が 必 要 で あ る.し か し, 似 で 解析 的 に計 算 す る こ とが で きる[3].そ の結 果 は
(2.240)
お よ び
で あ る.た
だ し,
で あ る. η≫1か
つx, y≪1で
あ る 場 合 に は(2.240)の
右 辺 をx,
yの べ き級 数 の
最低次 の項で近似すれ ば
(2.241) と な る. 以 上 い ず れ の 場 合 に も,最 も 重 要 な の はexp(-2π η)の 因 子 で あ る.そ れ はGamow因 子 と呼 ば れ て い る.E→0の と き η →∞ と な る か ら,こ の 因 子,し
たが って 断 面 積 は 非 常 に小 さ くな る.天 体 の 中 で 起 こ る核 反 応 は ほ と
ん ど こ の種 の 反 応 なの で,断
と書 き,S(Eα)を factor)と
2.8.5
面積 を
使 う の が 便 利 で あ る.S(Eα)は
天 体 核 物 理 因 子(astrophysical
呼 ば れ る.
断面 積 の 角 運 動 量 表 示
二 粒 子 放 出 チ ャ ネ ル に対 す る 微 分 断 面 積 の 角 運 動 量 表 示 は,(2.210)に(2.166), (2.167),
(2.172)を
使 え ば 得 ら れ る.す
なわ ち
(2.242)
(2.243)
で あ る. 以 上 議 論 し た 断 面 積 は す べ て 入 射 ・放 出 チ ャネ ル の す べ て の 反 応 粒 子 の 内 部 状 態,特
に ス ピ ン のz成
分 の 大 き さ(向
き),を 指 定 し た 場 合 に対 す る もの で
あ る.実 際 に は,そ れ の す べ てが 測 られ る こ とは ほ と ん ど な い.ス
ピンの向 き
を まっ た く測 らな い場 合 も多 い.こ の 場 合 の 断 面積 は,も し入 射 ビ ー ム と標 的 中 の 入 射 粒 子 お よび 標 的 核 の ス ピ ン の 向 きが す べ て の方 向 に 等 確 率 で あ れ ば,上 で 求 め た 断面 積 を 入 射 チ ャ ネル の 反応 粒 子 の ス ピ ン の方 向 に対 し て平 均 し,放 出 チ ャ ネ ル の そ れ につ い て 和 を と った も ので あ る.放 出チ ャ ネ ル が 二 粒 子 チ ャ ネ ル で あ る 場 合,入 射(放
出)チ
ャ ネ ル の粒 子aとA(bとB)の
ス ピ ン のz
成 分 を μa,μA(μb,μB)の よ う に 陽 に 書 くと,そ れ は
(2.244)
で あ る.こ の 断面 積 は 入 射 方 向 に対 して 軸対 称 で あ る.aお
よび(ま た は)bの
ス ピ ンの 向 きに偏 りが あ る場 合 に は,対 応 す る断 面 積 は μαに つ い て の 平 均 お よび(ま
た は)μbに つ い て の 和 を と ら な い.そ の場 合 に は 断 面 積 は 軸対 称 で は
な い.粒 子 の ス ピ ンのz成
分 の か た よ りは偏 極,断 面 積対 称 性 か らの ず れ は 分
解 能 とい う量 で そ れ ぞ れ 表 され る.そ れ に つ い て は別 書 に 譲 る.
2.9 反
対
称
化
波 動 関 数 は 同種 核 子 の 交 換 に 対 して 反対 称 で な け れ ば な らな い.以
下 しば ら
くの 間,陽 子 と中性 子 は 核 子 の ア イ ソ ス ピ ンの 異 な る状 態 と考 え て,こ
の交換
を 単 に 核 子 の交 換 とい うこ とに す る.こ れ まで は,波 動 関 数 は 各 複 合 粒 子 の 内 部 波 動 関 数 だ けが 反対 称 化 され て い る と して きた.全 波 動 関 数 を反対 称 化 す る に は,そ れ を異 な る複 合 粒 子 に 属 す る核 子 の 交 換 に対 し て さ ら に反 対 称 化 す れ ば よい.こ れ を 実 行 す る に は,す べ て の 粒 子 に番 号 を 付 け,異 な る複 合 粒 子 に 属 す る 核子 の番 号 を置 換 し,そ の 置 換 の 偶,奇 に 従 って符 合 を付 け れ ば よい.た とえ ば 入 射 チ ャネ ル α=a+Aに
対 し て は,そ れ は 演 算 子
で 表 され る.こ
こ に,Pα
はPα が 偶 置 換 な ら1,奇 わ た る.Nα
はa中 の 核 子 とA中 置 換 な ら-1で
の それ との 置 換 を表 し,(-1)Pα
あ る.和 は こ の よ うな すべ て の 置換 に
は そ の よ うな 置 換 の 総 数 で あ る.
め の 係 数 で あ る.系 がN個
の核 子 か ら な り,aが
は波 動 関 数 の 規 格 化 の た α個,AがA=N-α
個の
核 子 か ら な る と きは
(2.245) で あ る.入 射 平 面 波 Φαを反 対 称 化 すれ ば,そ れ に対 応 す る全 波 動 関 数 Ψ(+)αも 反 対 称 化 され る.実 際,
に お い て,e(+)は
す べ て の 核 子 に 対 し て 対 称,よ
っ てAα
と 可 換 だ か ら,
(2.246) を得 る.し た が っ て,反 対 称 性 は 反 応 の あ い だ保 存 され る. 各 複 合 粒 子 の 中 の核 子 の 番 号 の 組 を"割 り振 り"と 呼 ぶ こ と に し よ う.一 般 に,チ ャ ネ ルγ に お い て 複 合 粒 子nの 組
中 の核 子 が(1n,2n,…,Nn)で
あ る 場 合,
が 一 つ の 割 り振 りで あ る.従 来 は 異 な る割 り振 り
は 異 な るチ ャ ネ ル と見 な して い た.実
際,そ れ らは 配位 空 間の 異 な る チ ャネ ル
領 域 に対 応 し て い る. 反 対 称 化 され た波 動 関 数 で も,異 な る割 り振 りに対 応 す る成 分 は,観 測 が 行 わ れ る 配位 空 間の 漸 近 領 域 で は,異 な るチ ャネ ル領 域 で だ け値 が あ る.し たが って そ こ で は,異 な る割 り振 りに 対 応 す る が分 の 間 の干 渉 は な い.波 動 関数 で 記 述 され る反 応 の終 状 態 で,系 が チ ャネ ル β の あ る 一 つ の 割 り振 りに な っ て い る 確 率 は,そ
の 割 り振 りに対 応 す る Φβ とVβ に対 応 す るT行
列要素
(2.247) か ら前 項 まで と 同様 に して計 算 され る.そ の 断 面 積 の 値 は割 り振 りに よ らな い. ま た,実 験 的 に は 異 な る 割 り振 りの 断 面 積 を区 別 で きな い.し
たが って,実 験
で 測 定 され る の は 一 つ の 割 り振 りに 対 す る 断 面 積 に 割 り振 りの数Nβ もの で あ る.
を掛 け た
一方
,入 射 流 束 に つ い て も,
中の入射 波
の各 項は独 立 に入射 流束
に寄与 をす るが,そ れ らを実験 的に区別す る
こ とはで きないか ら,入 射流束 は
で ある.し たが って,観
測 され る断面積 は
(2.248) と な る.た
だ し
(2.249) は 反 対 称 化 さ れ たT行 し,別
列 要 素 で あ る.も し,陽 子 と中 性 子 を別 種 の 粒 子 と み な
々 に反 対 称 化 し た場 合 に は
(2.250) で あ る.こ
こ に,
(2.251) で あ る.た
だ し,PαpとPαnは
そ れ ぞ れ 入 射 粒 子aとAの
間で陽子同士お よ
び 中性 子 同 士 を 交 換 す る演 算 子 で あ る. 特 に β が 二 粒 子 チ ャ ネ ル で あ る場 合 に は,(2.248)を
次 の よ うに 変 形 す る こ
と もで き る.
(2.252) ただ し
(2.253) [証明] 制 限 を 付 け な い 核 子 の 置換 をPと
す る と,明
らか に
で あ る.よ
って
(証 明終 わ り) か く し て,反 T行
対 称 化 を 考 慮 し て 断 面 積 な ど を 計 算 す る に は,反
列 要 素 を 計 算 し,そ
を 計 算 し,そ
対 称 化 され た
れ を使 っ て 反 対 称 化 し な い場 合 と同 じ手 続 きで 断 面 積
れ に 入 射 ・放 出 チ ャ ネ ル の 割 り振 りに 数 の 比 を 掛 け れ ば よ い こ と
が わ か っ た.た
だ し 反 対 称 化 さ れ たT行
列 要 素 の 中 に は核 反 応 の機 構 と して 区
別 さ れ る べ き も の が 混 ざ っ て お り,そ れ らが 干 渉 す る こ と は 注 意 す べ きで あ る.
文
献
[1] B.A.Lippmann
and
[2] M.L.Goldberger
J.Schwinger,Phys.Rev.79
and
K.M.Watson,Collision
48(1950) Theory,John
Wiley
& Sons,
Inc.N.Y(1964),Chap.5 [3] モ ッ ト,マ ッセ イ 著,高
柳 和 夫,市
吉 岡 書 店(1975),上・Ⅰ,第Ⅲ [4] 笹 川 辰 弥 著,"散
村〓
共 訳,"新
版 衝 突 の 理 論",
乱 理 論"裳 華 房(1991),第10章
[5] G.R.Satchler,Direct (1983),p.284
川 行 和,島
章
Nuclear
Reactions,Oxford
University
Press,Oxford
3 光
学
模
型
3.1 光 学 模 型 の 沿 革
核 反 応 の 第 一段 階 は光 学 ポ テ ン シ ャル に よ る散 乱 で あ る.1940年 Berkeley(ア 100MeV中 R. Serberお
メ リ カ)で 行 われ た 実 験で,広 い 範 囲 の質 量 数Aの
標 的 核 に対 して
性 子 の 衝 突 全 断 面 積 σtが 測 られ た.こ れ に対 し て,S. よびT. B. Taylor [1]は σtのA依
代 の 後 半,
Fernbach,
存 性が複合 核過程で は説明不可
能 で あ り,む し ろ,標 的 核 が 入 射 粒 子 に対 し て あ た か も屈 折 率 と吸 収 率 を持 っ た 光 学 的 媒 質 の よ うに 振 る舞 う,と 仮 定 す れ ば 説 明で きる こ と を見 出 した.こ の 模 型 は光 学 模 型(optical は,標
model)と
呼 ば れ た.量 子 力 学 的 に は,こ
の模型
的核 と入 射 粒 子 との 相 互 作 用が 複 素 一 体 ポ テ ン シ ャル で 表 され る,と 仮
定 す る こ と に相 当 す る.そ の 実 数 部 分 は 入 射粒 子 に対 す る 核 の 平 均 ポ テ ン シ ャ ル を,虚 数 部 分 は弾 性 チ ャ ネ ル の 流 束 の 一 部 が 入射 粒 子 と標 的核 内 の 核 子 と の 衝 突 で 失 われ る こ と を 表 す.実 ポ テ ン シ ャ ル の 深 さ と して 核 内核 子 のFermiエ ネル ギ ー に 核 子 の 分 離 エ ネル ギ ー を加 え た もの を,ま た 虚 数 ポ テ ンシ ャル の 深 さ とし て 入射 粒 子 と核 内核 子 との 二 体 衝 突 断 面 積 か ら評 価 し た値 を 用 い る と σt のA依
存 性 が 良 く再 現 され た.そ れ と同 時 に,上 記 二 体 衝 突 の 確 率 は 比 較 的小
さ く,入 射 粒 子 が 吸 収 され ず に平 均 ポ テ ン シ ャル の作 用 を 受 け た だ け で 核 外 に 放 出 され る確 率 が か な りあ る こ と もわ か っ た.こ れ は複 合 核 が 形 成 され ない 確 率 が 大 きい こ と を 意 味 す る. つ い で,1950年
代 の 初 め にH. H. Barschall [2]は 同様 な 実 験 を,入 射 エ ネ ル
ギ ーEが0∼3MeVの 幅 が あ った の で,そ に な る.多
中 性 子 に対 し て行 っ た.こ の実 験 で はEに の エ ネル ギ ー 幅2Iで
くの 核 で,こ
数 百keVの
の σtの 平均 値 〈 σt〉Iが測 られ た こ と
の エ ネ ル ギ ー 領 域 に は 多 数 の複 合 核 共 鳴 に よる σtの
激 し い変 動 が あ る.し か しそ れ ら は エ ネ ルギ ー平 均 に よ って な ら され て し ま う.
そ の 結 果,〈 σt〉Iに はEとAと
と も に な だ ら か に 変 化 す る 山 谷 が 観 測 さ れ た.
こ れ を 粗 い 構 造(gross
structure)と
い エ ネ ル ギ ー 変 化,す
な わ ち 微 細 構 造(fine
H.Feshbach,
C.E.
Porterお
性 子 の 複 素 一 体 ポ テ ン シ ャ ル,す
い う.こ
よびV.
れ は個 々の 複 合 核 共 鳴 に よ る細 か structure)に
F. Weisskopf
対 す る 呼 称 で あ る.
[3]は,こ
な わ ち 光 学 ポ テ ン シ ャ ル,に
面 積 と し て よ く再 現 で き る こ と を 見 い だ し た.彼
の粗い構造が 中 よ る散 乱 の 全 断
らが 仮 定 し た 光 学 ポ テ ン シ ャ
ル は 簡 単 な 井 戸 型 中 心 力 ポ テ ン シ ャ ル で,
半 径:R=1.45A1/3fm,
深 さ:U=-42(1+0.03i)MeV
(3.1)
で あ っ た.こ れ らの 数 値 は,計 算 結 果が 実 験 値 を 最 も よ く再 現 す る よ うに 決 め た も の で あ る.図3.1にBarschallの
実 験,図3.2に
彼 らの 計 算 値 を示 す.
こ こ で も,ポ テ ン シ ャ ル の 虚 部 が 実 部 の わず か3%に
す ぎない ことは注 目に
値 す る.こ れ は,光 学 ポ テ ン シ ャル に よ る散 乱 だ け で 反 応 を終 わ る確 率 が 大 き い こ とを 示 す. そ の 後,光 学 模 型 は 中性 子 だ け で な く,す べ て の 入 射 粒 子,標 的 核,入 射 エ ネ ル ギ ー に対 して 成 り立 つ こ とが わ か っ た.そ の 意 味 で,光 学 模 型 は極 め て 普 遍 的 で あ る.光 学 ポ テ ン シ ャル は 核 反 応 論 に お い て 最 も基 本 的 な量 の一 つ で あ る.
図3.1
Barschallに A=標
よ る低 エ ネル ギ ー 中 性子(n)の
的 核 の 質 量 数,
文 献[3]に
よ る.
平均 全 断面 積 の 〈 σt〉の 測定 値. の 波 数.
図3.2
図3.1に
対 応 す る光 学模 型 に よ る計 算 値
光 学 ポ テ ン シ ャ ル は本 文 中 の(3.1).文
献[3]に
よ る.
3.2 光 学 模 型 と 実 測 量
第1章
で 述 べ た よ うに,光 学 模 型 は 弾 性 散 乱 の 散 乱 振 幅fの
〈f〉Iを記 述 す る.エ ネ ル ギ ー平 均 の 幅2Iは
エ ネル ギ ー平 均
複 合 核 準 位 の 間 隔 よ りは るか に大
き く,ポ テ ン シ ャル 散 乱 の 幅 よ りは 小 さい. fは
〈f〉Iとゆ らぎ の 振 幅,
の 和 で あ る.弾 性 散 乱 の 断 面 積 の エ ネ ル ギ ー平 均 〈σel(Ω)〉Iは〈f〉Iによ る 断 面積
(3.2) とfflに
よる 断 面 積
(3.3) の和
(3.4) で 与 え ら れ る.σse(Ω)は 合 弾 性 散 乱(compound
形 の 弾 性 散 乱(shape elastic scattering)の
elastic scattering),σce(Ω)は 断 面 積 と 呼 ば れ て い る.光
複
学模 型
で 計 算 で きる の は σse(Ω)だ け で あ る.σce(Ω)は,1.4節
で述べ た光学ポテ ン
シ ャル に よ る散 乱 か らの ゆ ら ぎの 散 乱 の 断面 積 に ほか な らな い.σce(Ω)は 系 が い っ た ん,複 合 核 を 含 む,複 雑 な 状 態 に 移 っ た の ち弾 性 チ ャ ネ ル に 戻 って くる 過 程 に対 応 す る.高 エ ネル ギ ー で は,弾 性 散 乱 チ ャ ネ ル は 多 くの 開 い た チ ャ ネ ル の 中 の 一 つ に過 ぎ な い か ら,そ の 確 率 は 非 常 に小 さい.実 際,軽 場 合 で も,入 射 エ ネ ルギ ーが 十 数MeVよ
い標的核の
り高 け れ ば,そ れ は σse(Ω)に比 べ て
無 視 で きる ほ ど 小 さい. か くし て,あ
る程 度 以 上 の エ ネ ル ギ ーで は
で あ る こ とが わ か る.し た が って,σel(Ω)の 実 測 値 と光 学 模 型 で 計 算 され る 断 面 積 を直 接 比 較 す る こ とが で き る.こ れ は 光 学 ポ テ ン シ ャ ル を精 密 に決 定 す る 上 で 極 め て重 要 で,そ
の 最 も有 力 な 手 段 に な って い る.
低 エ ネ ルギ ー で,σce(Ω)が 無 視 で きな い 場 合 に は そ れ を 別 に 計 算 して お き, そ れ と σse(Ω)と の 和 を実 験 と比 較 す る.複 合 核 統 計 模 型 に よれ ば,σce(Ω)も また 光 学 ポ テ ン シ ャル を使 って 近 似 的 に計 算 で きる か ら,こ の 場 合 に も光 学 ポ テ ンシ ャル が わ か れ ば 弾 性 散 乱 の 断 面 積 が 計 算 で き る こ とに な る.光 学 ポ テ ン シ ャル の 決 定 に は,こ
の よ うな 手 続 きを とる こ とに な る.
一 方,光 学 定 理(2.145)に
よれ ば,全 断 面 積 σtは弾 性 散 乱 の 前 方 散 乱 の振 幅
f(0)に よ っ て
で 与 え られ る.kは
入 射 波 の 波 数 で あ る.こ の 式 の 両 辺 を エ ネ ルギ ー 平均 すれ ば
(3.5) と な る.す な わ ち,〈 σt〉Iは平 均 散 乱 振 幅 〈f(0)〉Iだけ の 関 数 で あ る.し たが っ て,そ れ は 光 学 模 型 に よっ て 計 算 で きる.こ れ がFeshbachら 断 面 積 の エ ネ ル ギ ー 平均 値 を再 現 した 根 拠 で あ っ た. 全 反 応 断 面 積 σrの エ ネ ル ギ ー平 均
が光学模 型で全
は 〈f〉Iだ け で 書 く こ と は で き な い.し
か し,(3.4)を
使 えば
で あ る か ら,
(3.6) は 光 学 模 型 で 計 算 で きる.こ の 式 の最 右 辺 は,光 学 ポ テ ン シ ャル に よる 形 の 弾 性 散 乱 以 外 の 反 応 の 全 断 面 積 に等 し い.も
し,そ の 反 応 が す べ て 複 合 核 過程 に
よ る もの で あ れ ば,σcは 複 合 核 を 形 成 す る断 面 積 に ほ か な ら な い.そ こで,σc は 複 合 核 形成 断 面 積(compound
nucleus formation
cross section)と
呼ばれ
る.複 合 核 模 型 に よれ ば,低 エ ネ ル ギ ーの 共 鳴 領 域 で,軌 道 角 運 動 量l=0の 中性 子 に対 す る σcは
(3.7) で 与 え ら れ る(6.3節).た
だ し,sは
Γelの 比 の 平 均 値 〈 Γel/D〉Iに
複 合 核 の 準 位 間 隔Dと
弾性散乱 の部分幅
よって
(3.8) で与 え られ,強 度 関 数(strength function)と 呼ば れ る.共 鳴 領 域 で はDと したが って 強 度 関数 は 直接 観 測 で きる.し た が って,(3.7)に
よっ て,σcを 通 じ
て光 学模 型 の 計 算 値 と比 較 す る こ とが で き る.Feshbachら[3]は0エ の 中性 子 に対 す る強 度 関 数 のA依 A∼100の
Γel,
ネ ルギ ー
存 性が 先 に 述べ た 光 学 ポ テ ン シ ャル を用 い て
辺 りを 除 い て よ く再 現 で き る こ と を示 した.A∼100の
辺 りの不 一致
は標 的核 の 殻 構 造 と 関係 す る 特 殊 事 情 に よる もの で あ る.
3.3 光 学 ポ テ ン シ ャ ル の 概 観
光学 ポテ ンシャル
(3.9) は 核 力 に よ る実 ポ テ ン シ ャルV,虚 ルVCか
ら な る.Vの
ポ テ ン シ ャルiWとCoulombポ
主 な部 分 はaの
の ポ テ ン シ ャル の,aとAの
中 の 核 子 とAの
テ ンシャ
中 の 核 子 と の相 互 作 用
基 底 状 態 に 対 す る 期 待 値 で あ る.こ れ は 畳 み 込
み(folding)ポ テ ン シ ャル と呼 ば れ る.入 射粒 子 はVの
中 を運 動 し て い る 間 に
各 点 で あ る確 率 で 標 的核 を励 起 し,そ の分 だ け 弾 性 散 乱 チ ャネ ル の 流 束 が 減 少 す る.そ れ は あ た か も入射 波 が 核 内 の 各 点 で 核 媒 質 に よっ て 吸 収 され る よ うに 見 え る.iWは
こ の"吸 収"に 対 応 す る.
実 際,光 学 模 型 の 波 動 関数 を ψ とす る と,そ れ に対 応 す るSchrodinger方
程
式は
で あ る.こ
れ か ら 空 間 の 各 点 で の 流 束F=-(ih/2μ)(ψ*∇
ψ-ψ
∇ ψ*)に 対
して
が 直 ち に 導 け る.ゆ え にW<0な
ら,右 辺 は 負 だ か ら,流 束 は そ こで 吸 収 さ
れ る. Uは 入 射 粒 子aと 標 的核Aの 相 対 座 標r,運
動 量p,軌
種 類 お よび 入射 エ ネルギ ー の 関数 で,aとAの
道 角 運 動 量l,そ
れ ぞ れ の ス ピ ンsa,sAな
どの演
算 子 か らな る.そ れ ら の 量 を ど の よ うな 形 で 含 むか は,光 学 ポ テ ン シ ャ ルが 空 間 の 回転,反
転,時
間 の 反 転 な ど に対 し て 不 変 で あ る とい う条 件 に よ っ て 制 約
され る.そ れ ら の 条件 を 満 た す 組 み 合 わ せ の例 は
な ど で あ る.実 際 に は,こ れ らの 中 の 少 数 の も の だ けが あ る こ とが 多 い.た え ば,ス ピ ンsa=0の sa=1/2の
入 射 粒 子 に対 し て はsaに
粒 子 に 対 して はsaに
つ い て2次
と
依 存 す る演 算 子 は な い.ま た,
の 演 算 子 は な い.
例 と して,核 子 に対 す る 光 学 ポ テ ン シ ャル と し て 最 も広 く使 わ れ て い る もの の 形 を 示 す と,
(3.10) の よ う に な っ て い る.そ も の が 多 い.(3.10)に
の ほ か の 入 射 粒 子 に対 す る もの もこの 形 に準 じて い る お い て,rは
相 対 軌 道 角 運 動 量 σ=2saで
入 射 粒 子 と 標 的 核 の 重 心 の 相 対 座 標,lは
あ る.(3.10)の
2項 は 虚 数 部 分 で あ る.図3.3はV(r)+VC(r)とW(r)の
第1項
は 中 心 力 の 実 数 部 分,第 概 念 図 で あ る.
図3.3
図3.3に
低 エ ネル ギ ー陽 子 に対 す る 光 学 ポ テ ン シ ャル の 概 念 図
見 ら れ る よ う に,光
そ の 外 側 に はVC(r)に (3.10)の
第3項
学 ポ テ ン シ ャ ル の 表 面 の 内 側 はV(r)に
よ る 斥 力 の 壁 が あ る.こ
は ス ピ ン 軌 道 結 合 力 で,ス
最 も 重 要 な も の で あ る.こ
よ る 引 力,
の 壁 がCoulomb障
壁 で あ る.
ピ ン に 依 存 す る ポ テ ン シ ャル の 中 で
の 力 は ポ テ ン シ ャ ル の 表 面 付 近 に 局 在 し て い る.l・sA
に 比 例 す る 項 は 普 通 無 視 す る.(h/mπC)は し た が っ て,
パ イ オ ン のCompton波
で あ る.こ
長〓1.4fm,
の 係 数 はVso,Wsoが
エ ネル ギ ー
の 次 元 を 持 つ よ う に す る た め に 便 宜 的 に 付 け た パ ラ メ タ ー で あ る.こ 軌 道 結 合 力 の ほ か に,弱 比 例 す る,い 子(た
的 核 の ス ピ ン に 依 存 す るsa・sAに
わ ゆ る ス ピ ン ・ス ピ ン 力 の 存 在 も 知 ら れ て い る.ス
と え ば 重 陽 子)に
在 し,偏
い 力 で は あ る が,標
対 し て は,ス
極 量 に 重 要 な 影 響 を 与 え る.α
のス ピン
ピ ン の2次
の,い
粒 子 の よ う な,ス
ピ ン が1の
粒
わ ゆ るテ ン ソル 力 も存 ピ ン0の
粒 子 に対 し
の 中 で の 波 数 は 複 素 数k=k0+ik1で
あ る.
て は 無 論 こ の 項 は な い. 虚 数 ポ テ ン シ ャ ル が あ る と,そ 運 動 エ ネ ル ギ ー はh2k2/2mだ
か ら,
で あ る.簡 単 の た め に ス ピ ン軌 道 結 合 力 を 無 視 して
と
お く と,
(3.11)
が 得 られ る.こ れ が 吸 収 に よる振 幅 の 減 少 率 を与 え る.そ れ は
に比 例 し て
大 き くな るか ら,重 い 入 射粒 子 ほ ど 強 く吸 収 され る. 理 論 的 に は,光 学 ポ テ ン シ ャル は 空 間座 標 に 関 して 非 局 所 的,す な わ ち波 動 関 数 ψ に働 く積 分 演 算 子
(3.12) で あ る こ とが 予 想 され る.し か し実 際 に は ほ とん ど の 場 合,そ やlの2次
れ をた か だ かp
のべ き を含 む局 所 ポ テ ン シ ャル で 代 用 す る こ とが で きる.こ れ を等
価 局 所(equivalent
local)ポ テ ン シ ャル とい う.上 記 の 核 子 に対 す る光 学 ポ テ
ン シ ャル は 何 らか の 非 局 所 ポ テ ン シ ャル の等 価 局 所 ポ テ ン シ ャル で あ ろ う と考 え られ る.
3.4 光 学 ポ テ ン シ ャル の 探 索
光 学 ポ テ ン シ ャル は 入 射 粒 子 と標 的核 の種 類 に よっ て異 な り,入 射 エ ネル ギ ー に よ って 変 化 す る.実 験 的観 測 か ら光 学 ポ テ ン シ ャル を決 め るに は 次 の よ うに す る.ま ず,物 理 的 お よび 理 論 的 考 察 に 基づ いて,光 学 ポ テ ン シ ャル の 各 成 分 に 対 し て い くつ か の 調 節 可 能 な パ ラ メタ ー を 含 む 関 数 形 を仮 定 す る.パ ラ メ ター の値 は,実 験 で 観 測 され る い ろい ろ な物 理 量 に 理 論 的 計 算 値 が 最 も 良 く合 う よ うに 決 め る.実 験 と理 論 の 一 致 の 程 度 は
(3.13) の 大 き さで 表 され る.こ
こ にxi,i=1∼NはN個
分 断 面 積 の 値 な ど),Δxiは
そ の 実 験 誤 差,yiは
の 実 験 値(各
散 乱 角 で の微
そ れ に対 応 す る理 論 値 で あ る.
xiは 実 測 値 そ の もの で な くて も,理 論 と比 較 で きる値 な ら何 で も よい.た ば,荷
電 入 射 粒 子 に対 して は微 分 断 面 積 の 実 測 値 とRutherford散
と の比(Rutherford比
とえ
乱 の 断面 積
と呼 ば れ る)を 使 う のが 普 通 で あ る.微 分 断 面 積 は 散
乱 角 が 大 きい と非 常 に小 さ くな るの で 取 扱 い に不 便 だ か らで あ る.そ の いず れ にせ よ,x2が
小 さい ほ ど,実 験 誤 差 の 範 囲 内で,一 致 は よ い と判 断 され る.光
学 ポ テ ン シ ャ ル の パ ラ メ タ ー はx2を
最 小 にす る とい う条 件 で 探 索 され る.こ
の パ ラ メ タ ー探 しは 計 算 機 に 自動 的 に行 わせ る のが 普 通 で あ る.こ れ は 自動探
索(automatic
search)と 呼 ば れ て い る.自 動 探 索 に よ っ て 到 達 し たx2の
値が
期 待 し た ほ ど小 さ くな い場 合 に は,仮 定 し た ポ テ ン シ ャル の 形 が 不 適 当 で あ っ た と判 断 し,ポ テ ン シ ャル の形 を 変 え て 再 び 自動 探 索 を行 い,最 べ きx2の
終 的 に満 足 す
値 が 得 られ る まで こ の操 作 を繰 り返 す.こ の よ うに し て,光 学 ポ テ
ン シ ャル の 形 とパ ラ メ ター の 値が 決 ま る. 時 と して,自 動 探 索 の 結 果 が 一 意 的 で な い こ とが あ る.こ れ に は2種 類 の場 合 が あ る.一 つ は,い
くつ か の パ ラ メ ター の組 が 一 定 の 条 件 を 満 た す 限 り,x2
が そ の組 の 中の 個 々 の パ ラ メ ター の 値 に よ ら な い場 合 で あ る.た テ ン シ ャル の 深 さVと V,Rに
そ の 半 径Rのn乗
の積
と えば,実
ポ
が 一 定 だ と,x2は
は よ らな い 場 合 が あ る.ま た 吸 収が 強 い 場 合,ポ テ ン シ ャル の 内部 が
ど うで あ って も結 果 に ほ とん ど影 響 を与 え な い こ とが あ る.こ の よ う な不 定 性 は 連 続 的 不 定 性 と 呼 ば れ て い る.も と えば2倍
う一 つ は,深
さの パ ラ メ ターが 非 常 に(た
程 度 も)違 う い くつ か の 値 に対 し て,x2が
ほ ぼ 等 しい 場 合 で あ る.
これ を離 散 的 不 定 性 とい う.こ れ らの不 定 性 を 除 くに は,散 乱 角 の 領 域 を広 げ る な ど し て 実 験 デ ー タ を増 や す こ とが 必 要 で あ る. ポ テ ン シ ャル の 選 定 に は,単 に機 械 的 にx2を
最 小 に す るの で は な く,物 理 的
に 合 理 的 な もの を選 ば ね ば な らな い.む
し ろ場 合 に よ って は,こ の 条 件 の 方 が
重 要 で あ る とす ら い え る.た
つ の 入 射 粒 子 に 対 す る光 学 ポ テ ン シ ャ
ル は 入 射 エ ネ ルギ ーE,標 な 変 化 は 別 と して,緩
とえ ば,一
的核 の 陽子 数Z,中
性 子 数Nと
共 に,局 所 的 な小 さ
や か に変 化 す る と考 え る のが 合 理 的で あ る.そ
入 射 粒 子 につ き,E,Z,Nの
こで,各
一 定 の 範 囲 内で 実 験 値 を,個 々の 場 合 にx2を
に 最 小 に し な い に せ よ,全 体 的 に 最 も良 く再 現 し,パ
真
ラ メ タ ーがE,Z,Nの
緩 や か な 関 数 で あ る よ う な ポ テ ン シ ャルが 求 め られ る.そ れ が 広 域 光 学 ポ テ ン シ ャル(global optical potential)で あ る. 以 下 に,入 射 粒 子 が 核 子,重 あ る場 合 に つ い て,実
(a) 核
陽 子,t,3He,α
粒 子,6Li以
上 の 重 イ オ ンで
際 の光 学 ポ テ ン シ ャ ル を概 説 す る.
子
陽 子 と 中性 子 に対 す る光 学 ポ テ ン シ ャル は最 も広 範 に 詳 し く研 究 され て お り, い くつ か の広 域 光 学 ポ テ ン シ ャル も知 られ て い る. E<200MeVで
は
(3.14) の 形 を し て い る.た
だ し
(3.15) (3.16) (3.17) で あ る.f(x)はWoods-Saxon型,g(x)はWoods-Saxonの れ る.Riを
半 径,aiを
微 分 型 と呼 ば
デ ィ フ ユ ー ズ ネ ス ・パ ラ メ タ ー(diffuseness
と い う.虚 数 部 分 は 体 積 全 体 に 分 布 す るWoods-Saxon型 す る 表 面 に 局 在 す る 部 分 か ら な る.VC(r)は ポ テ ン シ ャ ル で あ る.そ
parameter)
の 部 分 と,g(x)に
比例
入 射 粒 子 と 標 的 核 の 間 のCoulomb
れ は 入 射 中 性 子 に 対 し て は0,陽
子 に 対 し て は 普 通,一
様 に帯 電 した 球 に よる
(3.18)
を 仮 定 す る.RCはCoulomb半 V(r)の
深 さ はEが
径 と 呼 ば れ る.ま
で あ る.
増 す と と も に 単 調 に 減 る.
型 の ポ テ ン シ ャ ル に 近 く,E<0に た だ し,束
た
縛 状 態 のFermiエ
で は,V(r)は
殻 模
外 挿 す る と ほ ぼ 連 続 的 に そ れ に つ な が る.
ネ ル ギ ー の 近 傍 でEに
対 して 非 単 調 的 な変 化 を
す る. E>200MeVで くな る.rが ン シ ャ ル,た
は,V(r)がWoods-Saxon型 小 さ い と こ ろ で 浅 く な っ た,い
で は もは や 実 験 を再 現 で きな わ ゆ る 酒 瓶(wine
bottle)型
のポテ
とえ ば
が 必 要 で あ る.斥 力 部 分 はEと 表 面 で は 引 力 に な る.
と もに 増 大 し,や が てV(r)は
中 心 部 が 斥 力,
W(r)は
低 エ ネ ル ギ ー で は 表 面 部 分 が 圧 倒 的 で あ る が,エ
に 従 っ て 表 面 部 分 が 減 り,つ 以 下 に,い で は,エ
(A)核
く つ か の 場 合 に つ い て の 広 域 ポ テ ン シ ャ ル の 具 体 例 を 示 す.以
ネ ル ギ ー の 単 位 はMeV,長
に 限 り,特
ネル ギ ー が 上 が る
い に は 体 積 型 に な る.
に 断 ら な い 限 りEは
さ の 単 位 はfmで
た,以
下 の公 式
実 験 室 系 で の エ ネ ル ギ ー を 表 す.
子,40
形 は(3.14).パ
あ る.ま
場 合[4].
ラ メ タ ー の 値 は 次 の 通 りで あ る.
た だ し,RC=1.238A1/3+0.116.ま
た,陽
子(中
=0),ε=(N-Z)/A(ε=-(N-Z)/A)で
性 子)に
あ る.ま
対 し てz=1(z
た,
ただ し (陽 子) (中 性 子)
で あ る.図3.4に,こ (B)陽
子,1p殻
た だ し,こ
の ポ テ ン シ ャ ル に よ る 実 験 値 の 再 現 の 一 例 を 示 す. 核(6Liか
の 項 で はEは
形 は(3.14)でasorをrsoA1/3に
ら16Oま
で),
の 場 合.
重 心 系 の エ ネ ル ギ ー を 表 す[5]. 換 え た も の.パ
ラ メ ター の 値 は
下
図3.4
65MeVで
の(p,p)の
微 分 断 面 積 の 実 測 値 と広 域 光 学 ポ テ ン
シ ャ ル に よ る 計 算 値 と の 比 較.文 [実 測 値 はH. T.
Noro,
Phys.
Sakaguchi,
Rev.
F. Ohtani, C
26
M. H.
944
Nakamura,
Sakamoto, (1982)に
H. よ る]
献[4]に K. Ogawa
よ る.
Hatanaka, and
A.
Goto,
S. Kobayashi,
(C)核
子,A>53,10<E<80の
形 は(3.14).パ
ΔVCは
場 合[6].
ラ メ ター の値 は
中 性 子 に 対 して は0,陽
子に対 しては
と0の 大 き い 方 た だ し,ΔWC=0(中
ΔVC,ΔWCは Coulomb斥
性 子)ま
た は-1.30(陽
陽 子 に 対 す るCoulomb補
子)
正 項 と よば れ る.そ
れ は,核
の
力 に よ り陽子 の核 内 で の運 動 エ ネ ルギ ー が 減 少 し,そ れ に よっ て ポ
テ ン シ ャ ル の 深 さが 変 化 す る こ とに対 す る 補 正 で あ る.実 ポ テ ン シ ャ ル の深 さ は エ ネ ルギ ーが 減 る と増 え るか らΔVC>0で 逆 で あ る か らΔWC<0で
あ る.
あ り,虚 ポ テ ン シ ャル の 深 さ は
(D)陽 子,80<E<180の
場 合[7] .
(
た だ しCaに
対 し て は180)
(E>130)
(E)非 局 所 型 ポ テ ン シ ャ ル (3.12)の
よ う な,非
局 所 型 の 大 局 的 光 学 ポ テ ン シ ャ ル が,1∼25MeVの
子 に 対 し て 与 え ら れ て い る[8].そ
中性
れ は
(3.19)
の 形 を し て い る.β UN(r)の
で あ る.こ
は 非 局 所 性 の レ ン ジ と 呼 ば れ,β=0.85が
用 い ら れ て い る.
パ ラメターは
の ほ か に(3.14)の
そ の パ ラ メ ター は
形 の 局 所 型 の ス ピ ン 軌 道 結 合 ポ テ ン シ ャ ル が あ る.
で あ る.こ の ポ テ ン シ ャル は上 記 の エ ネル ギ ー 範 囲 でEに テ ン シ ャル は次 式 を満 た す 局 所 ポ テ ン シ ャルUL(r)で
依 存 しな い.こ の ポ
中心 力 部 分 を 置 き換 え た
もの と 同 じ散 乱 振 幅 を与 え る こ とが 証 明 で きる.
(3.20) UL(r)がUN(r)の
等 価 局 所 ポ テ ン シ ャ ル で あ る.
(F)相 対 論 的 光 学 ポ テ ン シ ャ ル[9] こ の 模 型 で は,核
子 はDirac方
程式
(3.21) を 満 た す と仮 定 す る.た 列,pは
運 動 量,USは
だ し,α=(α1,α2,α3),
β はDiracの4行4列
一 体 の ス カ ラ ー ポ テ ン シ ャ ル,U0は
テ ン シ ャ ル の 時 間 成 分 で あ る.xは4成
の行
同 じ くベ ク ト ル ポ
分 を持 つ 波 動 関数
お よび
で,正
エ ネ ル ギ ーE>0に
(3.21)か
らxLを
対 し て は,xU(xL)が
大 きい(小
さ い)成
分 で あ る.
消 去 し,
と お く と,φ
は 次 のSchrodinger型
を 満 た す.た
だ し,
の方程式
(3.22)
S. Hamaら
の 探 索[10]で
は,Us,U0に
は 次 の 形 を 仮 定 し た:i=sま
た は0
に対 して
た だ し,fSWS(r,R,a)は
で あ る.i=s,0に
対 称Woods-Saxon型
関数
対 す るV(i),W(i)v,W(i)s,RiR,Riv,Ris,aiR,aiv,aisと
ぞ れ ぞ れ がA1/3と1/Eの
多 項 式 な ど で あ る と仮 定 し て,そ の 係 数 を 含 む42
個 の パ ラ メ タ ーが 探 索 され た.そ あ り,そ れ らのE依
λの
の結 果 は,Usが
強 い 引 力,U0が
強い斥力で
存 性 は 弱 い,と い う こ と を示 す.ま た,そ れ らか ら導 か れ
る 等 価Schrodinger方 程 式 の ポ テ ン シ ャルVeffに は 二 つ の 大 き な特 徴 が あ る. 一 つ は 実 験 の偏 極 量 な ど を説 明 す るの に ち ょ うど よ い ス ピ ン軌 道 結 合 力 が 自動 的 に 現 れ る こ とで あ る.ス ピ ン軌 道 結 合 力 を 特 に付 け加 え る必 要 は な い.も う 一 つ はV effが か な り強 い エ ネル ギ ー 依 存 性 を持 ち,先 に 述 べ た非 相 対 論 的光 学 ポ テ ン シ ャル のWoods-Saxon型
か ら酒 瓶 型 な い し 中心 斥 力 型 へ の 移 行 が 自動
的 に 再 現 され る こ とで あ る.相 対 論 的 光 学 模 型 は 数 百MeVの
核子散乱 におい
て,非 相 対 論 的 模 型 に 比 べ て 簡 単 に偏 極 量 の 記 述 に 成 功 し て い る とい え る.
(b) 重
陽
子
重 陽 子 の 光 学 ポ テ ン シ ャル は核 子 と同 型 で あ る.実 ポ テ ン シ ャル の 深 さVは 核 子 の 場 合 の2倍 弱 で あ る.重 陽 子 の ス ピ ンが1な ほ か に,テ
必 要 で あ る こ とが 知 られ て い る.そ れ に は 次 の3種
た だ し,r,p,lは
そ れ ぞ れ 座 標,運
広 域 ポ テ ン シ ャ ル は [11].
の で,ス
ピ ン軌 道 結 合 力 の
ン ソル 型 の ス ピ ン依 存 力 が あ り,あ る 種 の 偏 極 量 の 再 現 には そ れ が 類 が あ る.
動 量 お よ び 角 運 動 量 ベ ク トル で あ る. に対 し て 知 られ て い る
そ れ は(3.14)と
同 じ形 を し て い る.た だ し,σ を重 陽子 の ス ピ ンSで 置 き換
え ね ば な ら な い.テ の 場 合 の み)は
ン ソ ル力 は 含 まな い.パ
次 の通 りで あ る.Eは
ラ メ タ ー の値(非
相 対 論 的運 動 学
実 験 室 系 の エ ネ ル ギ ーで あ る.
た だ し,
で,Miは
魔 法 数(8, 20, 28, 50, 82, 126)で
あ る.Vの
大 き さ は 核 子 の 場 合 の 約2
倍 で あ る こ と が わ か る. 重 陽 子 は 陽 子 と 中 性 子 が 非 常 に 弱 く結 合 し た 粒 子 な の で,散 に 状 態 を 変 え る(5.3.3項
参 照).上
乱 の 途 中で 容 易
記 の ポ テ ン シ ャル に は この 効 果 も組 み 込 ま
れ て い る と 考 え ね ば な ら な い.
(c) t, 3He こ れ ら の 入 射 粒 子 に 対 し て は 広 域 ポ テ ン シ ャ ル は 知 られ て い な い.し な く と も数 十MeVま
で は(3.14)と
は 核 子 の 場 合 の 約3倍
弱(∼110MeV)で
が あ る.ま
た,標
的 核 のAと
同 形 で 十 分 で あ る.実
シ ャ ルW(r)は
共 に わ ず か に 増 え る.こ
値 も 同 様 で あ る.し
い.ま
た,積
分
の 形 は(3.14)と
れ は 対 称 ポ テ ン シ ャル
子 の 場 合 と 同 じ く,RR=rRA1/3
か しaRは
表 面 型 で あ る と され て い る.特
ン シ ャ ル で あ る.そ
ポ テ ン シ ャ ル の 深 さV
弱 い エ ネ ル ギ ー 依 存 性 ∼(1-0.0015E)
∼15ε の た め と解 釈 さ れ て い る .半 径 は,核 で 与 え ら れ,rRの
か し,少
大 き い 傾 向 が あ る.虚
ポテ ン
徴 的 な の は ス ピ ン軌 道 結 合 ポ テ
同 じ で よ い が,asoが〓0.2と 異 常 に 大 き い[12].
極端に小 さ
(d) α
粒
子
α 粒 子 が 標 的 核 の 内部 に 入 る と さ まざ まな 非 弾 性 過 程 に よ っ て 弾 性 チ ャネ ル の 波動 関 数 は 強 く吸 収 され る.し た が っ て,核 内 部 で の 光 学 ポ テ ン シ ャル の詳 し い様 子 を知 る こ と は 難 しい.そ
の た め,ポ
下 の 入 射 エ ネル ギ ー で は,連 続 的 不 定 性,と
テ ン シ ャル の 内 部 は ∼40MeV以 きに は 離 散 的不 定 性 が あ る.
核 の 内部 を通 過 す る粒 子 は 強 く吸 収 され るか ら,そ の よ うな粒 子が 主 と して寄 与 す る大 きな 散 乱 角 の 散 乱微 分 断 面 積 はRutherford散
乱 よ りは るか に小 さ くな
るのが 普通 で あ る.し か し,と き とし て散 乱 角が180° で もRutherford散
乱 と同
じ程 度 に 強 く散 乱 され る,と い う特 異 な現 象 が あ り,異 常 大 角 散 乱(anomalous large angle scattering)と
呼 ば れ て い る.た
とえば,
で の40Ca
に よ る散 乱 で そ れ が 見 られ る.こ れ は,核 表 面 付 近 で 反 射 され る波 と核 の 内 部 まで 進 入 して か ら反 射 され る波 の 干 渉 と し て理 解 され て い る[13].こ
れが 起 こ
るた め に は 小 角 運 動 量 の 部 分 波 の 比 較 的 弱 い吸 収 と,Woods-Saxonの2乗
型
の 実 ポ テ ン シ ャル を仮 定 す れ ば よい こ とが 知 られ て い る. 80MeV以
上 で は,大
きな 散 乱 角 の 精 密 な実 験 デ ー タの 解 析 に よ っ て 離 散 的
不 定 性 は取 り除 か れ,(3.14)と 知 られ て い る[14].そ
同 様 なWoods-Saxon型
の広 域 ポ テ ン シ ャルが
の パ ラ メ ター の 値 は 次 の 通 りで あ る.E>80MeVは
実
験 室 系 の エ ネ ル ギ ーで あ る.
V中のZ/A1/3に す るΔVCと
比 例 す る 項 は,核 子 の 広 域 ポ テ ン シ ャル(C)の
同 様 なCoulomb補
正 項 で あ る.Vは,核
る.虚 ポ テ ン シ ャル は 体 積 型 で,そ
の 深 さWvは
さ ら に α粒 子 の 質 量 は核 子 の そ れ の4倍
陽 子 に対
子 の 場 合 の4倍
弱で あ
核 子 の 場 合 の 約4倍
で あ る.
で あ る.し たが っ て,(3.11)に
ついて
述 べ た理 由 で,α 粒 子 は 核 子 に比 べ て は るか に 強 く吸 収 され る こ と に な る.
(e)重
イ オ ン
重 イオ ン同 士 の衝 突 で は,ポ テ ン シ ャル 内部 で の吸 収 は α粒 子 の 場 合 よ りさ ら に 強 い.そ
の散 乱 の 角 分 布 は 黒 い 円盤 に よ る 光 の 回折 像 と似 た 特 徴 を示 す.
しか し,Coulomb力
に よる斥 力 と核 力 に よる 引 力 の 作 用 は 重 要 で あ るか ら,単
な る 黒 色 円盤 に よる 回 折 とは 異 な り,そ れ ら の ポ テ ン シ ャル の作 用 に よ る 干 渉 模 様 も観 測 され て い る. 広 域 ポ テ ン シ ャル は 知 られ て い な いが,前 節 で 述 べ た(二 重)畳 み 込 み ポ テ ン シ ャル(double-folding る[15].こ
potential)が
の 模 型 で は,核1と2の
で 与 え ら れ る,と
す る.こ
広 い範 囲で 有 効 で あ る こ とが 知 られ て い
散 乱 に対 す る光 学 ポ テ ンシ ャル の 実 数 部 が
こ に,ρi(ri),i=1,2,は
で 規 格 化 され て い る.Niは
衝 突 す る核 の 密 度 で
核i中 の核 子 数 で あ る.r12=r+r1-r2は1と
2の 重 心 の 相 対 座 標 がrで あ る と きの,そ れ ぞ れ の 中 に あ る 二 核 子 の 相 対 座 標 で あ る.υ(r12)は
そ の と きの二 核 子 間 の相 互作 用 ポ テ ン シ ャル で あ る.
二 核 子 間 の 相 互 作 用 は,そ れ らが 置 か れ て い る状 況 に 依 存 す る と思 わ れ る. υ(r12)は 二 核 子 が そ れ ぞ れ の核 内 に 束 縛 され て い る と きの 相 互 作 用 で あ る.そ れ に つ い て は,次 章 で 詳 し く述 べ る.実 際 の畳 み込 み ポ テ ンシ ャル の 計 算 で は, M3Y
G行 列 と呼ば れ る有 効 相 互 作 用[16]が 使 わ れ た(4.2.5項).さ
テ ン シ ャ ル-Jδ(r12))を 入 れ られ た.Jは
ら に,擬 ポ
付 け 加 え る こ とに よ って 二核 子 間 の 交 換 の 効 果 を 取 り
二 核 子 系 の ス ピ ン,ア イ ソ ス ピ ン に 依 存 し,エ
弱 く依 存 す る定 数 で あ る.重
ネル ギ ー に も
イオ ン 間の 光 学 ポ テ ンシ ャル に は こ の よ うに して
計 算 され たV(r)に,Woods-Saxon型
の 虚 数 ポ テ ン シ ャルW(r)を
そ の 深 さを 実 験 に合 う よ うに 決 め た.か
付 け 加 え,
くし て 求 ま った 光 学 ポ テ ン シ ャ ル は 広
い 範 囲 の 重 イ オ ン散 乱 の 記 述 に 成 功 し た. 顕 著 な例 外 は6.7Liと9Beで,実
ポ テ ン シ ャル の 計 算 値 は2倍
ほ ど 深 す ぎ る.
これ は,そ れ らの 原 子 核 が 非 常 に弱 く束縛 され て い る こ とに よる(5.3.3項).こ の た め,散 乱 の 途 中 で 核 がvirtualに み 込 み ポ テ ン シ ャ ル で は 表 せ な い.
分 解 す る過 程 が 重 要 で,そ れ は 簡 単 な 畳
3.5 非 局 所 ポ テ ン シ ャ ル と 等 価 局 所 ポ テ ン シ ャ ル
光 学 ポ テ ン シ ャル は,次 節 で 述 べ る よ うに,本
で,Schrodinger方
来 非 局 所 ポ テ ン シ ャル
程 式
(3.23) は 微 積 分 方 程 式 で あ る.し か し,実 際 に よ く使 わ れ るの は現 象 論 的 に 決 め られ た 局 所 ポ テ ン シ ャ ルUL(r)で,(3.23)は
(3.24) で 置 き 換 え ら れ る.ψL(r)は は 等 価 局 所(equivalent
ψ(r)と
local)ポ
与 え ら れ たUNLに
同 じ く弾 性 散 乱 を 正 し く記 述 す る.UL(r)
テ ン シ ャ ル と 呼 ば れ る.
対 し て,UL(r)は
一 意 的 で は な い.最
も簡単 な の は
(3.25) で あ る.こ
れ が(3.24)を
満 た す こ と は(3.23)か
ル は 自 明 に 等 価 な(trivially れ は 分 母 の ψ(r)の
equivalent)非
ら 明 白 で あ る.こ
のポテ ンシャ
局 所 ポ テ ン シ ャ ル と 呼 ば れ る が,そ
変 動 に よ っ て 不 規 則 的 に 変 動 し,現
象 論 的 に 求 め られ た滑
ら か な ポ テ ン シ ャ ル と は 程 遠 い. 近 似 的 で は あ る が,よ ギ ー 近 似(local
energy
り現 実 的 なUL(r)を approximation,
の 非 局 所 性 が 小 さ い こ と,す け0で
な い こ と,を
ル(3.19)の U(r,r')の
LEA)が
な わ ちU(r,r')は
基 礎 に し て い る.実
求 め る 方 法 の 一 つ に局 所 エ ネル
際,前
非 局 所 性 の レ ン ジ β=0.85fmは 非 局 所 性 が 小 さ い と き,
た だ し
あ る[17].そ
れ は,U(r,r') が 小 さ い と きにだ
述 のPerey-Buckの
ポテ ンシャ
核 半 径 に 比 べ て は る か に 小 さ い.
と お く と,U(r,s)のsに
つ い てFourier変
換 は
(3.26) で あ る.な
ぜ な ら,eiksを
ン ジ 内 で はj0(ks)に
比 べ て は る か に 小 さ い か らで あ る.j0(ks)はksの
か ら,(3.26)はG(r,k)が を 意 味 す る.そ
球 面 波 展 開 し た と き,l>0のjl(ks)はU(r,s)の
ほ ぼk2だ
レ 偶 関数 だ
け の 関 数 で あ る こ と,
こ で,G(r,k)をk2に
つ い てk2=κ2の
周 りに 展 開 し,
(3.27) で 近 似 す る.た だ し, あ る.κ
で
は後 で 最 も都 合 よ くな る よ うに 決 め る.以 後,簡 単 の ため に し ば ら く
と書 くこ とに す る と,(3.26)の
逆変換 は
(3.28) と な る.し
か る に,
で
あ る か ら,
(3.29) こ の 式 か ら 明 らか な よ う に,も
しb(r)=0な
局 所 ポ テ ン シ ャ ル に な っ て し ま う.さ
らU(r,s),す
ら に,a(r),
な わ ちU(r,r')は
b(r)はU(r,r')と
同様 な レ
ン ジ を 持 つ. (3.29)を
使 え ば,Schrodinger方
程式 は
(3.30) と な る.こ
の 方 程 式 は∇ ψ を 含 む の で,通
常 のSchrodinger方
程 式 の形 に す る
ため に
(3.31)
(3.32) と お く.Cは
定 数 で あ る.(3.31)を(3.30)に
入れ ると
(3.33) と な る.た
だ し,
(3.34) で あ る.b(r)はrと
と も にU(r,s)と
同 程 度 に ゆ っ く り変 化 す る か ら, お よ び ΔF(r)/F(r)を
a(r)に
比 べ て無 視 す る と
であ る.
として,κ2を
(3.35) と選 ぶ と
こ れ を(3.33)に
代 入すれば
(3.36) を 得 る.た
だ し
(3.37) で あ る.UL(r)はU(r,r')と
同 程 度 の レ ン ジ を もつ.(3.31)と(3.32)に
よれ ば
(3.38) で あ る か ら,ψL(r)の は ψ(r)と
漸 近 形 は ψ(r)の
同 じ 散 乱 振 幅 を 与 え る.そ
し た が っ て,そ
れ を 与 え るUL(r)は
そ れ に 比 例 す る.し
の 意 味 で,ψL(r)は
た が っ て,ψL(r) ψ(r)と
等 価 局 所 ポ テ ン シ ャ ル で あ る.
等 価 で あ る.
(3.36)の
近 似 の 誤 差 は(∇b)2お
で 与 え ら れ るF(r)を はPerey
factorと
違 い をPerey効
よ び ∇bの
程 度 で あ る.こ
の 精 度 は(3.32)
導 入 す る こ と に よ っ て 得 ら れ た こ と に 注 意 せ よ.F(r) 呼 ば れ,そ
果 と い う.特
れ が ψ(r)と
ψL(r)の
振 幅 の 違 い を 表 す.こ
に,Perey-Buck型(3.19)の
の
非 局 所 ポ テ ン シ ャル
に対 して は
(3.39) (3.40) と な る.(3.40)の
右 辺 のCを
き<1と
乱 状 態 に 対 し て は ψL(r)は
な る.散
除 く因 子 は,UL(r)が<0,す
ら な い か ら,(3.38)に
よ りC=1で
ψ(r)の 方 が ψL(r)よ
り小 さ い.ま
で あ る か らC>1で
(3.37)か
た,束
体 と し て1に
と
漸 近 領 域 で ψ(r)と
一 致せ ね ば な
た が っ て,U(r)の
レンジ内では
縛 状 態 に 対 し て は,
な け れ ば な ら な い.し
状 態 の そ れ に 比 べ て,全 UL(r)のk2(r)依
あ る.し
な わ ち 引 力,の
た が っ て,束
縛 状 態 のF(r)は
散乱
近 い.
存 性 を 陽 にUL(r,k2(r))と
書 く こ と に す る と,(3.35)と
ら
(3.41) を得 る.右 辺 は 点rに
お け る 運 動 エ ネ ル ギ ーで あ る.こ れ が こ の近 似 を 局 所 エ
ネ ル ギ ー 近 似 と呼 ぶ 理 由 で あ る.κ=k(r)は な 波 数 で あ る.(3.41)はEとk(r)の
そ れ に対 応 す る そ の 点 で の 局 所 的
関係,分 をk2(r)=0の
れ ば,元
と な る.こ
の記 号b(r)=b(r,k2)に
れ を(3.41)に
散 関 係,を
与 え る.
周 りに展 開 し,1次
の項 で止め
戻 って,
代入 す ると
(3.42) を 得 る.た
だ し
(3.43) で,こ
れ を 有 効 質 量(effective
mass)と
い う.こ
の 近 似 で は,局
所運 動エ ネル
ギ ー は そ の 点 で の 有 効 質 量 と 局 所 波 数 に よ っ て 与 え られ る こ と に な る.
ポ テ ン シ ャ ル の 非 局 所 性 を 書 き 下 す も う 一 つ の 方 法 は,有 Schrodinger方
効 質 量 μ*(r)を
程 式 に 導 入 す る こ と で あ る.(3.30)は
と お く と 次 の よ う に 書 く こ と も で き る.
(3.44) この式で ∇b(r)の以下のオーダーである 無視すると
の項を
(3.45) と な る.κ2と
し て 最 も 簡 単 な も の と し て よ く使 わ れ る の は κ2=0で
の と き μ(r)=μ*(r)で
あ る.こ
あ る か ら(3.45)は
(3.46) と書 け る.こ れ がSchrodinger方
程 式 に 有 効 質 量 を導 入 し た方 程 式 で あ る.そ
れ が ∇b(r)を 無 視 す る近 似 を し て い る こ と に注 意 せ よ.(3.46)はSchrodinger 方 程 式 と似 た 形 を して い るが,μ*(r)にr依
存 性 が あ る限 り実 際 に は 異 な る.
ちな み に,κ2と して 局 所 エ ネ ルギ ー近 似 に 当 た る を と る と(3.45)か
ら直 ち に
(3.47) を 得 る.(3.47)に 現 れ ず,等
は,Perey
factor近
似 の と き の(3.36)と
価 局 所 ポ テ ン シ ャ ル はa(r,κ2)で
こ の 違 い は 近 似 と し て,(3.36)の に 対 し て,今
回 は ∇b(r,κ2)を
あ る.し
同 じ く,有
か し,F(r)=1で
場 合 は
効質量は あ る.
を 無 視 した の
無 視 し た こ と に 起 因 す る.
3.6 光 学 模 型 の 理 論 的 基 礎 付 け
光 学 模 型 を 量 子 力 学 的 に基 礎 づ け る こ とは い ろ い ろ な 観 点 か ら な され た.初 期 の 理 論 は,S 行 列 の 分 散 公 式 に 基 づ い て い る.そ れ を 多 くの 複 合 核 準 位 を含
むエ ネ ル ギ ー 幅 にわ た って 平 均 す る こ とに よ って 光 学 模 型 を導 出 し た.し か し, そ れ らは 核 反 応 が 直 接 過 程 と複 合 核 過 程 だ けか らな って い るの で,前
述の核反
応 の 実 態 と は 合 って い な い.つ い で 多 重 散 乱 理 論 に よ る基 礎 付 け が な され た. そ れ に つ い て は次 章 で 詳 し く述 べ る.
3.6.1 Feshbach理
論 に よ る光 学 模 型 の 導 出
前 章 で 述 べ た核 反応 の全 体 像 に基 づ い て光 学 模 型 を基 礎 づ け た のがFeshbach の 射 影 演 算 子 に よる 理 論 で あ る[18].こ
の 理 論 は光 学 模 型 の 根 拠 を 明 らか に す
る と と も に,光 学 ポ テ ン シ ャル の 一般 的 な表 式 を与 え るの に成功 した.以 下,そ れ を概 説 す る.こ こ で は 今 まで どお り入 射 粒 子 と標 的核 の 間 の 波 動 関数 の 反 対 称 化 を無 視 す る.反 対 称 化 を取 り入 れ る方 法 に つ い て は[19]を 参 照 され た い. 簡 単 の た め に,核 子 の 散 乱 の 場 合 を考 え よ う.光 学 模 型 は系 の波 動 関 数 Ψ の 弾 性 散 乱 チ ャ ネル で の 成 分PΨ
の 振 る 舞 い に 関 す る もの で あ る.た だ し,
は標 的 核 の 基 底 状 態│0〉,す な わ ち弾 性 チ ャ ネル へ の 射 影 演 算 子 で あ る.そ れ 以 外 のチ ャネルへの射 影演算子 を
と す る.P,Qは
(3.48) を 満 た す.以
後,P,Qが
Schrodinger方
射 影 す る 関 数 空 間 を そ れ ぞ れP空
程 式HΨ=EΨ
は,P+Q=1で
と書 け る.こ の 式 の 両 辺 に左 か らPお
よびQを
間,Q空
間 と 呼 ぶ.
あ る か ら,
掛 け る と,
(3.49) (3.50) (3.50)をQΨ
に つ い て 解 く と,QΨ
は 入 射 波 を 持 た な い か ら,
(3.51)
た だ し,
で あ る.(3.51)を(3.49)に
代入す る と
(3.52) を 得 る.こ
こに
(3.53) で あ る.(3.52)がP空
間 で の 有 効Schrodinger方
る 有 効 ハ ミ ル トニ ア ン で あ る.次 ハ ミ ル トニ ア ンHは
にH(P)の
程 式,H(P)が
具 体 的 な 形 を 求 め よ う.
重心系で
の 形 を し て い る(2.2.1項).た
だ し,hは
弾 性 チ ャ ネ ル の 内 部 ハ ミル ト ニ ア ン,
す な わ ち 入 射 粒 子 と 標 的 核 の 内 部 運 動 の ハ ミル トニ ア ン の 和,Kは 対 運 動 の 運 動 エ ネ ル ギ ー,Vは KはPと
そ れ に対 応 す
可 換 だ か ら,(3.48)に
そ れ ら の相
そ れ ら の 相 互 作 用 の ポ テ ン シ ャ ル で あ る.hと よ り,
(3.54) (3.55) で あ る.(3.54),
(3.55)を(3.53)に
代 入 す れ ば
(3.56) を 得 る.た
だ し
(3.57) で あ る.(3.52)は
(3.58) と な る.(3.58)と
〈0│の 内 積 を と る と
(3.59) と な る.た
だ し,
(3.60)
(3.61) で あ り,│0〉 の エ ネ ル ギ ー 固 有 値 を ε0と す る と
(3.62) で あ る.ψ
は 弾 性 チ ャ ネ ル の 相 対 運 動 の 波 動 関 数,E0は
る か ら,(3.59)はUが UをFeshbachの
そのエ ネルギ ーであ
ψ を 正 確 に 与 え る 一 体 ポ テ ン シ ャ ル で あ る こ と を 示 す. 一 般 化 光 学 ポ テ ン シ ャ ル(generalized
optical
potential)と
い う. 光 学 模 型 は ψ の エ ネ ル ギ ー 平 均 を 記 述 す る.以 Lorentz型
の 重 み(1.51)を
す る.ψ(E)は (1.53)に
複 素E平
下,エ
使 っ て 取 る こ と に し,そ
ネ ル ギ ー 平 均 を 幅Iの
れ を 〈… 〉Iで 表 す こ と に
面 の上半面で 正則で かつ
の と き0に
な る.
よ り
が 光 学 模 型 で 記 述 され るべ き波 動 関 数 で あ る. 一 方,(3.61)に
よれ ばU(E)も
ψ(E)の 上 記 の 解 析 性 と 同 じ解 析 性 を もつ.
した が っ て,U(E)ψ(E)も
そ うで あ る.ゆ え に,
と な る.ゆ
両 辺 の エ ネル ギ ー平 均 を と る と
え に,(3.59)の
(3.63) を 得 る.た
だ し,
(3.64) また,E0の
平均 値 は 元 と変 わ らな い と し た.(3.63)に
を記 述 す る ポ テ ン シ ャ ル,す に よれ ば,そ
よれ ば,UOPTが
〈 ψ〉I
な わ ち 光 学 ポ テ ン シ ャル に ほ か な らな い.(3.64)
れ は 一 般 に非 局 所 的 で エ ネ ル ギ ー に依 存 す る複 素 ポ テ ン シ ャ ル で
あ る. か くし て,弾 性 散 乱 チ ャ ネ ル の 波 動 関 数 の エ ネ ルギ ー 平 均 を 記 述 す る 一体 の ポ テ ン シ ャ ル,す な わ ち光 学 ポ テ ン シ ャルが 存 在 し,そ れ が(3.64)で
与 え られ
る こ とが わ か り,光 学 模 型 が 基 礎 付 け られ た.光 学模 型 の 基 礎 付 け は,こ れ と は ま っ た く違 う多 重 散 乱 理 論 に よ っ て も行 うこ とが で き る.そ れ に つ い て は次 章 で 詳 説 す る.
3.6.2 光 学 ポ テ ン シ ャル の 実 部 と虚 部 の 分 散 関 係 さて,上
で 導 か れ た光 学 ポ テ ン シ ャル の構 造 を調 べ よ う.(3.61)を (3.65)
と書 く と,〈0│V│0〉 は入 射 粒 子 に対 す る標 的核 に よる 畳 み 込 み ポ テ ンシ ャル で あ る.第2項ΔUは QVPに
弾 性 チ ャ ネ ル とそ れ 以 外 の チ ャ ネ ル の 結 合 を 表 す.系 は
よって い った んQ空
に よっ て 伝 搬 し た後,PVQに
間 に移 り,Q空
間内 をGreen関
よ って 再 びP空
に 強 く依 存 す る.実 際,そ れ はEの
数(E+-QHQ)-1
間 に戻 る.ΔUは
関 数 と し てQHQの
エ ネ ル ギ ーE
離散 固有値 の ところ
に 極 を もつ. 同 様 に し て(3.64)を,
(3.66) と書 くと,第1項
は畳 み 込 み ポ テ ン シ ャ ル で あ る.第2項
は 動 的 偏 極 ポ テ ン シ ャ ル(dynamical
polarization
ΔUOPTは
エ ネ ル ギ ー に 依 存 し,非
さ て,一
般 化 光 学 ポ テ ン シ ャ ル に お い て,ΔUのGreen関
をQHQの
potential)と
呼 ば れ る.
局 所 複 素 ポ テ ン シ ャ ル で あ る.
固 有 関数 系
数
で 展開す る と
(3.67) と な る.た す る:
だ し,Φnは
離 散,Φ(E)は
連 続 エ ネ ルギ ー 固有 値 に そ れ ぞ れ 対 応
Ethは
弾性 散 乱 以 外 の 連 続 状 態が 始 まる'し きい 値'で あ る.QHQは
弾性チ ャ
ネ ル との 結 合 が な い か ら,離 散 固 有 値 は正 で もあ り うる こ とに 注 意 せ よ.こ の 状 態 は1.3節 で 述べ た"連 続 状 態 に埋 ま った 束 縛 状 態"で あ る.(3.67)を(3.65) に代 入 す る と
(3.68) とな る.上 式 の 右 辺 の 第2項
を 使 う.た
に 対 して 公 式
だ し,PはCauchyの
を 得 る.右
辺 を 実,虚
主 値 を と る こ と を 意 味 す る.す
数 部 に 分 け る と,Vが
る と
実 数 で あ れ ば
は 実 数 で あ る か ら,
(3.69) (3.70) と な る.(3.70)を(3.69)に
代 入す ると
(3.71) (3.71)は
ΔU(E)の
実 部 と 虚 部 の 関 係 を 表 し,分
散 関 係(dispersion
relation)
と よ ば れ る. (3.70)と(3.71)の
両 辺 の エ ネル ギ ー 平 均 を とる と
(3.72)
が 成 り立 つ.(3.72)の
右 辺 の 第2項
は
で あ る.上 式 右 辺 の 被 積 分 関 数 がE'の
実 軸 と直 線Im
域 で 正 則 で,ImΔU(E')が
E'=-Iで
囲 まれ た 領
で 十 分 速 く0にな れ ば,積
分は実軸
上 で行 って よ い.そ の 結 果 の 式 を(3.66)に 使 うと,畳 み 込 み ポ テ ン シ ャル は 実 数 で あ るか ら,
(3.73) を得 る.こ れ が 光 学 ポ テ ン シ ャル に対 す る分 散 関 係 で あ る.特 にQHQに
束縛
状 態 が 存 在 しな い場 合 に は
(3.74) が 成 り立 つ.実
際 に は,QHQに
束 縛 状 態 が あ る 場 合 で も,し ば しば これ を 近
似 式 と して 使 う.
文
献 [1] S.Fernbach,R.Serber
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297
4 多重散 乱理論
4.1
序 論 で 述 べ たR.
Serberの
的 に 定 式 化 され た.こ
Watsonの
方 程 式
直接 過 程 の 描 像 は 多 重 散 乱 理 論 に よ っ て 量 子 力 学
の 章 で は,核 子 の 核 に よ る弾 性 ・非 弾 性 散 乱 を例 と して
そ れ を 説 明 す る. 第2章
に よれ ば,反 応 の確 率 振 幅 は 遷 移 行 列Tの
始,終 チ ャネ ル で の 自 由運
動 状 態 間 の行 列 要 素 を 計 算 す る こ とに よ っ て得 られ る.(2.130)に 性 ・非 弾 性 散 乱 のT行
よれ ば,弾
列は
(4.1) で 与 え られ る.こ こ にVは入
射 粒 子 と核 との 相 互 作 用 ポ テ ン シ ャ ル,Ω(+)は
波 動 行 列 で あ る.そ れ は(2.127)を 運 動 のGreen関
満 た す か ら,入 射 粒 子0と 標 的核Aの
自由
数を
(4.2) と書 くと
(4.3) が 成 り立 つ.(4.2)で,Eは
全 系 の エ ネ ル ギ ー,Hα
は 入 射 核 子0と
標 的核A
の 自由 運 動 の ハ ミル トニ ア ンで あ る.非 弾 性 散 乱 で は 粒 子 の 組 み 替 え は 起 こ ら な いか ら,チ ャ ネ ル の 添 え字 を省 い た.
Vは二 体 相 互 作 用 ポ テ ン シ ャル の 和
(4.4) で あ る と仮 定 す る.こ
こ にυjは 入 射 粒 子0とj番
の ポ テ ン シ ャル で あ る.
目の 核 内核 子 と の相 互 作 用
さて,Tに
対 す る個 々の核 内核 子 の 寄 与 を見 る た め に,入 射 粒 子 とj番 目の
核 子 よ る散 乱 の 遷 移 行 列 を
(4.5) で 定 義 し よ う. は 入 射 粒 子 の 核 子jに にHAが
よ る1回 の 散 乱 に対 応 す るが,Gの
入 っ て い るか ら,そ れ は 多体 の演 算 子 で,自
中
由 空 間 中で の二 体 散 乱 の
遷 移 行 列 と は 違 う. 入 射 粒 子 は 標 的核 内 で 多 くの 核 子 との 散 乱 を 繰 り返 す.し に入 射 す る 波 に は ほ か の核 子k≠jに のTへ
よ っ て 散 乱 さ れ た 波 も含 まれ て い る.j
の 寄 与 に は この よ うな"多 重 散 乱"の 後 にjか
て い る は ず で あ る.そ こ で,jか
たが って,粒 子j
らTへ
ら放 出 され る波 も含 まれ
の寄与 として
(4.6) を定 義 し よ う.右 辺 の 第2項 が 多 重 散 乱 の 効 果 を表 す.(4.6)は に 対 す る 連 立 方 程 式 で あ る.そ れ をWatsonの
方 程 式 と呼 ぼ う.Tは
(4.7) で 与 え ら れ る[1].
[証明]
(4.8) と お く と,(4.6)は
次 の よ う に 書 き 直 せ る.
(4.9) これ を(4.6)に 代 入 して そ れ をTjに
と こ ろ が,(4.5)をυjに
つ いて解けば
つ い て解 け ば
(4.10) よ っ て,
(4.11)
こ の 両 辺 のjに
つ い て の 和 を と り,(4.4)を
使 えば
(4.12) と な る.こ
の 方 程 式 は(4.3)と
同 じ で あ る.よ
っ てΘ=Tで
あ る.
(証 明 終 わ り) か くして,核
に よ る散 乱 のT行
和 の 形 に 書 け た.た だ し,Tjの 複 数 回 の 散 乱,す
列が 個 々 の核 内 核 子 に よ る散 乱 の それTjの 中 に は ほ か の核 子,ひ い て は 粒 子j自
な わ ち多 重 散 乱,の
が 十 分 大 き く,Watson方
身 に よる
効 果 が 正 確 に取 り入 れ られ て い る.核A
程 式 の 多 重 散 乱 の 項 にj自
身 の 項 を付 け 加 えて もほ
と ん ど 差 が な い よ うな場 合 に は,そ れ は
(4.13) と な り,し
たが って
(4.14) と な る.す な わ ち,
を核 力Vの
代 わ りに使 う こ とが で き る.〓 を有 効 相
互 作 用(effective interaction)と い う.Vは
強 く,し か も堅 い 斥 力 芯 な ど の特
異 性 を もっ て お り,摂 動 論 的取 り扱 い に は適 し な い.し か し〓 は,(4.5)で
与え
られ る 散 乱 の 遷 移 行 列 で あ る か ら,そ の よ うな こ と は な い.し た が っ て,有 効 相 互 作 用 は 散 乱 問 題 を取 り扱 う際 に きわ め て 有 用 で あ る. さ て,今 れ は,ア
まで は 核 の波 動 関 数 に つ い て は何 も仮 定 し な か った.実 際 に は,そ イ ソ ス ピ ン まで 考 慮 に 入 れ れ ば,核
子 の 交 換 に対 し て 反 対 称 で あ る.
こ の こ と を考 慮 す る と,多 重 散 乱 の 方 程 式 を 次 の に よ うに 簡 単 化 す る こ とが で き,(4.14)に Ojの,反
相 当す る厳 密 な 式 を導 くこ とが で き る.核 内 核 子 に 関す る演 算 子
対 称 化 され た 核 波 動 関 数 の 間の 行 列 要 素(核 行 列 要 素)は 核 子 の番 号
jに は よ ら な い:
こ の 理 解 の も と に 記 号 を簡 単 化 し,核 子 の番 号 を演 算 子 か ら省 くこ とに す る と,(4.4)は
(4.15) (4.7)と(4.11)を
組 み 合 わ せ た もの は
(4.16)
(4.5)は
(4.17) と な る.ま
た,Watsonの
方 程 式 は,Tjを
θと書 くと
(4.18) と な る.(4.7)は
(4.19) と な る.
さ て,こ
こで
(4.20) を定義す ると
(4.21) と な る.
(4.22) と お く と,(4.21)は
(4.23) と な る.(4.21)は(4.16)に て い る.ま で,Vの
た,同
対 応 し,A,υ
の 代 わ りに そ れ ぞ れA-1,〓
じ こ とで あ る が,(4.23)はTに っ て い る.し
対 応 す る もの
た が っ て,T'はA-1の
核 子 か らな る
核 の 各 核 子 と 入 射 粒 子 と の 相 互 作 用 が〓 で あ る と き のT行
列 の 形 を し て い る.
T'が
代 わ り にUが入
対 す る(4.3)に
が入 っ
わ か れ ば,Tは(4.19)と(4.20)か
ら
(4.24) で 与 え られ る. か くし て,弾 性 ・非 弾 性 散 乱 の 遷 移 行 列 は 入 射 粒 子 と個 々 の 核 内 核 子 との 有 効 相 互 作 用〓 に よっ て 与 え られ る こ とが わ か っ た.こ の こ とは い ろい ろ な 近 似 や 模 型 の基 礎 と して き わ め て 重 要で あ る.
4.2 有 効 相 互 作 用
多 重 散 乱 理 論 に従 っ て 弾 性 ・非 弾 性 散 乱 のT行
列 要 素 を 計 算 す る に は,ま ず
核 力υ か ら出発 して 有 効 相 互 作 用〓 を 計 算 し,次 に そ れ を使 ってWatsonの
方
程 式 を正 確 に解 か ね ば な ら な い.し か し,そ れ を 正 確 に行 うこ とは 困 難 で あ る か ら,何 らか の 近似 をせ ざ る を得 ない. 核 力 υは 強 く,し か も堅 い 斥 力 芯 の よ うな特 異 性 を持 つ か ら,そ れ につ い て 摂 動 論 を使 うこ とは で きな い.よ
を適 当 なGkで
り現 実 的 な 方 法 はGreen関
数
近 似 し,そ れ に対 す る解
(4.25) で〓 を近 似 す る こ とで あ る.Gkの
と り方 に よっ て い ろ い ろ な 近 似 が あ る.以
下 に そ の 中で 最 も広 く用 い られ る三 つ の近 似 に つ い て 述 べ よ う.
4.2.1
イ ンパ ル ス 近 似
入 射 粒 子0と 衝 突 す る核 内核 子1は 核 の そ れ 以外 の 部 分cに ポ テ ン シ ャルV1c で 束 縛 され て い る.し か し 入 射 エ ネ ル ギ ー が 十 分 高 け れ ば,そ は 無 視 し て よ いで あ ろ う.し たが っ て,0と1と 子 間 の 衝 突 で あ り,cは
れ に比 べ てV1c
の 衝 突 は ほ とん ど"自 由な"粒
た だ"傍 観"し て い る と考 え,そ の 仮 定 の も とでGの
近 似 を計 算 す る. 0と1の 標 的 核Aに
二 体 衝 突 を 取 り扱 うに は,0-A系 固 定 したOA系
と 変 形 す る.た
に 移 る.そ れ に は,Eα-Hα
だ し,EαAはOA系
った ん
を
で の エ ネ ル ギ ー で あ る.K1(Kc)は1(c)
の こ の 系 で の 運 動 エ ネ ル ギ ー 演 算 子 で あ る.ま 量 を
の 重 心 系 は不 便 な の で,い
と す る と,
た 始 状 態 で の 核 子0(1)の
運動
で あ る.た
だ し,ε0はAの
基 底 状 態 の エ ネ ル ギ ー で あ る.Gは
この 変 形 に よ って
(4.26) と な る. 上 述 の 近 似 で は,(4.26)で ずAは
まずV1cを
無 視 す る.次
止 ま っ て い る と した か ら,
れ ば そ れ をK1に
に,cの
運動量は変化せ
で あ る.Aが
十 分 大 きけ
対 して 無 視 して よ い で あ ろ う.こ れ らの 近 似 で
(4.27) と な る.G0は
入 射 粒 子0と
よ っ て,(4.25)よ
核 子1の
自 由 な 運 動 のGreen関
数 に ほ か な ら な い.
り
(4.28) と な る.tは
入 射 粒 子0と"自
由な"核
の 近 似 を イ ン パ ル ス 近 似(impulse 入 射 粒 子 の,衝 k1(k'1)と
突 前(後)の
す る と,cの
変 で あ る.よ
子1と
の 二 体 散 乱 のT行
approximation)と 波 数 をk0(k'0),衝
運 動 量 が 不 変 と し た か ら,二
列 で あ る.こ
い う. 突 され る核 内 核 子 の それ を 体 の 重 心 運 動 の 運 動 量 は不
って
(4.29) と い う形 に 書 け る.た
だ し,
お よび
(4.30) (4.31) で あ る.hk(hk')は
始(終)状
態 で の 相 対 運 動 量,E2rel(k)は
動 の 運 動 エ ネ ル ギ ー で あ る.こ の 散 乱 の 運 動 量 移 行 をhqと
二核 子 の 相 対 運 す る と,K=K'
で あ るか ら
(4.32) とな る.
は こ の 散 乱 に対 応 す る 二体 の 重 心 系 で のT行
列
(4.33) の行 列 要 素,
で あ る:
た だ し,
pは0と1の
か くし て,イ
相 対 運 動 量 で あ る.
ンパ ル ス 近 似 で の 有 効 相 互 作 用 の 行 列 要 素 は (4.34)
と な る. k'はE2relと
独 立 だ か ら,自
由空 間 中 で の 散 乱 の 場 合 の よ うに
(4.35) を 満 た す と は 限 ら な い.特 energy
shell,略
(off the energy
し てon shell,略
に(4.35)が shell)に
成 り立 つ 場 合,エ
あ る と い い,そ
し てoff shell)に
般 に,(4.35)の
て い る 場 合 は 半 殻 外(half off
shell)で
列 要 素 は,一
*1 相 対 論 的 に は
般 にhalf
the
れ 以外 の 場 合 エ ネ ル ギ ー 殻 外
あ る と い う.今
初 の 等 号 は 成 り立 っ て い る.一
れ るt行
ネ ル ギ ー 殻 上(on
の 場 合,(4.35)の
最
ど ち らか 一 方 の 等 号 が 成 り立 っ
あ る と い う.反
応 の 全 体 のT行
列に現
off shellの 行 列 要 素 で あ る*1.
,実 験 室 系 で の 入 射(衝
突 され る 核 内)核
子 の 運 動 量 はhk0 (hk1),そ
のエ
ネ ル ギ ー は
二体
系 の 重 心 の 運 動 量 は 心 の 速 度 は
全 エ ネ ル ギ ー は で あ る.二
系 か ら 二 体 の 重 心 系 へ のLorentz変
二体 の重
体 の 重 心 系 で の 入 射 粒 子 の 運 動 量hkは,実
換 に よ っ て,
験室
とお くと (4.36)
と な る.核
内 核 子 の そ れ は-hk,二
体 の 相 対 運 動 量 はhkで
あ る.t行
列 はLorentz不
変
で は な く, (4.37) で 与 え ら れ る.こ
こ に,
(4.38) で,η
はMoller因
子 と呼 ば れ る.た
非 相 対 論 の 近 似 で は(4.36)は(4.30)に
だ し,(4.37)で 帰 着 し,η=1で
は,ス
ピ ン の 変 換 は 無 視 し て あ る.
あ る.
さて,実 際 の 核 反 応 で は,衝 突 され る核 内核 子 の始,終 状 態 の 波 数k1, k'1は い ろい ろ な値 を持 って い る.そ れ に応 じて,k, k',し たが って は 変 化 す る.反 応 のT行
列 要 素 を 計 算 す る に は,そ の よ うなk, k'に つ い て の
和 お よび 平 均 が 必 要 で あ る.こ の 計 算 は 実 際 に は 容 易 で な く,何 らか の近 似 を す る必 要 が あ る. 入射 粒 子0の
エ ネ ル ギ ーが 核 内 核 子1の
そ れ に 比 べ て十 分 大 きい 場 合,最
も
簡単 な近似は
と し てk1を
無 視 す る こ と で あ る.こ
し て よ い で あ ろ う.よ
の 近 似 で は,
と
っ て,
(4.39) と な る.た
だ し,
(4.40) で あ る.(4.39)か
ら 明 ら か な よ う に,
off shellの 行 列 要 素 で あ る.こ
はk1に
よ ら な いhalf
の 近 似 で は 有効 相 互 作 用 の 行 列 要 素 は
(4.41) と な る.
は 二 核 子 散 乱 のt行 列 で は あ るが,一 般 にoff shell行 列 要
素 で あ るか ら直 接 実 験 で 観 測 す る こ とはで きな い,核 力 の ポ テ ン シ ャルvを
知
り,そ れ を使 って(4.33)を 解 か ね ば な ら ない.し か し,実 際 の はq=│k'-k│に
最 も強 く依 存 し,E2relな
較 的 弱 い の で,そ れ をqが 等 しいon が よ く行 わ れ る.on
ど そ れ 以 外 の 変 数へ の 依 存 性 は比
shellの 行 列 要 素 で 代 用 す る,と い う近 似
shellの 行 列 要 素 は 自由空 間 中で の二 核 子 散 乱 の 実 験 で 観
測 す る こ とが で き るか ら,そ れ に は 核 力 ポ テ ン シ ャル の 情 報 は不 用 で あ る.
4.2.2 最 適 運 動 量 近 似 は,k1を
をk1に
よ らず しか もon
shellの 行 列 要 素 で 置 き換 え る に
無 視 す る の で は な く,
(4.42)
に 固 定 し て も よ い.た
だ し,
で あ る.こ
うす る と
で あ るか ら (4.43) が 成 り立 つ.こ れ ら に対 応 す る二 体 系 の 重心 運 動 と相 対 運動 の運 動 量 はそ れ ぞ れ
(4.44) お よび
(4.45) のh倍
と な る.た
だ し,
で あ る.ま
た,こ
れ に 対 応 す るE2rel
は
(4.46) で あ る.qQ=-Δ/2だ
か ら,(4.45)か
ら
(4.47) を 得 る.し
た が っ て,kopt'はon
に 対 応 す るt行
shellで
あ る こ と が わ か る.ゆ
え に,こ
れ ら
列要 素
(4.48) はk1に
よ らず,し
か もon
shellに
な る.こ
の 近 似 で は,有
効相互作 用は
(4.49) で 与 え ら れ る.こ
の 近 似 は,(4.26)の
分母で
と した こ と に相 当 す る.そ の 結 果,Gは
(4.50)
と な る.こ
の と き,(4.49)の
さ れ て い る[2].そ
誤 差 は
の 意 味 で,こ
の2次
以 上 で あ る こ とが 証 明
の 近 似 は イ ン パ ル ス 近 似 よ り進 ん だ 近 似 で あ り,
最 適 運 動 量 近 似(optimal momentum
approximation)と
よ ば れ て い る.
重心系 への変換 こ こ まで の計 算 は核Aに
固 定 し た実 験 室系 に つ い て 行 っ て きた.元 の0-A系
の 重 心 系 に 戻 る と ど うな るか. 関 数 で あ るか ら,0-Aの
は 二核 子 の 相 対 運 動 量 だ け の
重 心 系 に移 っ て も値 は 変 わ ら ない.(相 対 論 で はMoller
因 子 だ け 異 な る.)変 わ る の は 入 射(放 との 関係 で あ る.0-Aの
出)波
の 波 数 と近 似 で 使 わ れ るk(k')
重 心 系 で の 相 対 運 動 の 始 状 態 で の 波 数 ベ ク トル をkα
とす る と
(4.51) こ れ ら を 使 え ば,(4.41), qは
(4.49)をkα
を 使 っ て 書 く こ とが で き る.移
行 運動量
重 心 系 へ の 変 換 で 変 わ ら な い.
4.2.3
G行
列 近 似
上 記 二 つ の近 似 で は核 内で の 二体 衝 突 は 自 由空 間 中 の それ と同 じ と考 え たが, 実 際 は 違 う.こ の 違 い を媒 質 効 果 とい う.媒 質 効 果 の うち重 要 な もの の 一 つ は Pauli原 理 で あ る.す な わ ち,核 内 で 衝突 す る核 子 は い か な る瞬 間に もほ か の核 子 に よ っ て 占 め られ て い る状 態 に 入 る こ とは で き な い.も
う一 つ の 違 い は衝 突
す る 二 核 子 の そ れ ぞ れ が ほか の核 子 が 作 る ポ テ ン シ ャ ル 内 を 運 動 して い る,と い う こ とで あ る.こ れ ら を考 慮 してG行
列 近 似 で は,核 子0,
1間 の 有 効 相 互
作用 として
(4.52) を とる.こ
こ に,Qは
衝突 粒 子0,
1が 他 の核 子 が 占 め て い る状 態 に 入 る こ と
を禁 ず る射 影 演 算 子,Gは
(4.53) で,0,
1に 核 内 で 働 く 一 体 ポ テ ン シ ャ ル,そ
由 運 動 のGreen関
れ ぞ れU0お
数 で あ る.(4.53)はBethe-Goldstoneの
行 列 と よ ば れ る[3].Uiは
核 子iと
よ びU1,の
中の 自
方 程 式,g(E)はG
そ れ 以 外 の 核 子 と の 間 のG行
列 の,後
者 に
つ い て の 和 の期 待 値 で あ る.核 が 一 様 密 度 ρの 核 物 質で あ る場 合 に は,エ ギ ーE,波
数 ベ ク トルkの
ネル
核 子 に 対 して
(4.54) で あ る.こ こ にAはk, Fermi運
動 量kF以
a二 粒 子 に対 す る 反 対 称 化 を表 し,和 は ρ に対 応 す る
下 の 運 動 量a,エ
る.aとea, kとEの
ネ ルギ ーeaの
す べ て の 一 粒 子 準 位 にわ た
関数はそれぞれ
(4.55) で あ る.こ れ らの 自家 無 撞 着 連 立 方 程 式 を解 け ばg(E)が る.g(E,
ρ=0)は
ρの 関 数 と して 求 ま
イ ンパ ル ス近 似 のtに ほか な らな い.g(E,
共 に 弱 くな る.有 限 の 核 に対 して は,核 し(局 所 密 度(local density)近 似),そ
ρ)の引 力 は ρ と
を衝 突 点 で の 密 度 を 持 つ 核 物 質 で 近 似 の 密 度 に対 す るg(E)を
使 う[4].ま た,
4.2.5項 で 述 べ る よ うに,調 和 振動 子 ポ テ ン シ ャル 内 に 束 縛 され た 二核 子 間 のG 行 列 を座 標 表 示 で 表 し た もの も一 般 の有 限 核 に対 し て 使 わ れ て い る.
4.2.4
有 効 相 互 作 用 の 近 似 の誤 差
以 上 の よ うに し て 求 ま った 近 似 的有 効 相 互 作 用
の 誤 差Δ〓 は
(4.56) で 与 え ら れ る.た
だ し,ΔG=G-Gkで
あ る.
[証 明]
よ って
しか る に,(4.17)か
ら
こ れ か ら 直 ち に(4.56)を
よ っ て,
得 る. (証 明 終 わ り)
(4.56)の
右 辺 をΔGに
つ き展 開 す れ ば,そ
の1次
の項は
(4.57) で あ る. で あ る か ら,Δ
〓 のΔGの1次
の範囲で
(4.58) と し て よい.イ
ンパ ル ス 近 似 や 最 適 運 動 量 の 近 似 で は,G-1k-G-1は
容易 に
計 算 で きるか ら,こ の 表 式 が 便 利 で あ る.最 適 運 動 量 の 近 似 で は(4.58)の 右 辺 の 行 列 要 素 が0に
な る こ とは す で に述 べ た.
4.2.5 有 効 相 互 作 用 の 具 体 的 表 示 有 効 相 互 作 用 〓 を計 算 に 使 う には そ の具 体 的 な 表 式 と数 値 が 必 要 で あ る.正 確 な 〓 は多 体 の 演 算 子 で あ る か ら,そ の 一 般 的 な 表 式 を書 き下 す こ とは で きな い.し か し,前 記 の 実 用 的 な 近 似 で は,〓 は 二体 の 演 算 子 で あ るか ら,そ れ は 可 能 で あ る.そ の 具 体 的 な形 と数値 は,い
う まで もな く,表 示 の と り方 に 依 存
す る.以 下 に 運 動 量 表 示 と座 標 表 示 に つ い て それ を 述 べ る.
(a) 運 動 量 表 示 イ ンパ ル ス 近 似 と最 適 運 動 量 近 似 で は,有 効 相 互 作 用 の 計 算 に は 二 核 子 散 乱 のt行 列 要 素
が 計 算 で きれ ば よい.そ れ は 二 核 子 散 乱 の 振 幅
M(E2rel, k', k)と
(4.59) で 結 ば れ て い る.Mは
入 射 粒 子 と核 内 核 子 の ス ピ ン,そ れ ぞ れ σ0お よび σ1,
の演 算 子 で あ る.そ れ は空 間 の 反 転 と時 間 の 反 転 に 対 して 不 変 で あ る とす る と, 一 般 的 に次 の 形 に 書 く こ とが で きる こ とが 知 られ て い る.
(4.60) ただ し
(4.61) で あ る.ま
た,σ
の 添 え 字n,
qお
よ びpは
そ れ ぞ れ 単 位 ベ ク ト ル
方 向 の 成 分 を 表 す[4].係
数.A∼Fは
核 子0(1)の
ア
イソスピンを ら はE,
とす る と
q, q2+Q2お
よびqQの
な ど の形 を して い る.そ れ 関数 で あ り,特 にqに
強 く依 存 す る こ とが
知 ら れ て い る. Mのon
shell行 列 要 素 は 二 核 子 散 乱 の 実 験 で 測 定 す る こ とが で き る.し か
し,off shellの 行 列 要 素 は そ れ が で きな い.そ A∼Fを
同 じE2relとqに
とで あ る.た だ し,on
だ か ら,Mの
中 のDの
対 す るon
こで,し
shellのt行
ば しば 使 わ れ る近 似 は
列 要 素 のA∼Fで
代用す るこ
shellで は
項 は 存 在 し な い.し
た が っ て,
(4.62) で あ る.ま
た,on
shellで
はq⊥Qだ
か ら
(4.63) で あ る.こ の 近 似 で は,off shellで も(4.62)と(4.63)が
近 似 的 に 成 り立 つ,と
仮 定 す る必 要が あ る. A∼Fの
値 は核 子-核 子 散 乱 の 実 験 か ら求 め られ て お り,二 核 子 系 の ス ピ ン,
S=1ま
た は0,と
パ リテ ィ,π=偶
また は 奇,に よ って3E,
3O, 1E,
い う四つ に分 類 され た状 態 ご とに 与 え られ て い る.肩 つ き3(1)はS=1の 態(0の
一重 状 態)を 表 す.(4.62)は
1Oと 三重 状
また,
と
に 注 意 す る と,
(4.64) と 書 くこ と もで き る.(σ1・q)のに 比 例 す る 項 を ス ピ ン 縦 方 向(spin longitudinal), (σ1×q)に on
比 例 す る 項 を ス ピ ン 横 方 向(spin
shellのMは
transverse)で
あ る と い う.
また
(4.65) の よ う に 書 く こ と も で き る.た
だ し
(4.66)
また,PS(PT)は
ス ピ ン 一 重(三 重)状
態 へ の射 影 演 算 子
(4.67) で あ る.ま
た,S01(k)は
で あ る.さ
ら に,四
P(1O)を
通 常 の テ ン ソル 演 算 子
つ の 状 態 お の お の へ の 射 影 演 算 子P(3E),
使 え ば,M,し
た が っ てt2cmを
と 書 く こ と もで き る.Pauli原 3Eと1O(1Eと3O)の
と 書 け る.PtS,
理 に よ る と,ア
よ び
PtTは(4.67)の
P(1E),
一 括 して
状 態 の み が 許 され る
の 状 態 へ の 射 影 演 算 子 をPtS(PtT)と
P(3O),
イ ソ ス ピ ンT=0(1)に
.ゆ え に,ア
対 して は
イ ソ ス ピ ン がT=0(1)
す る と
σ0と σ1を そ れ ぞ れ ア イ ソ ス ピ ン 演 算 子
で 置 き換 え た も の で あ る.そ
れ ら を 陽 に 使 え ば,た
お
と えば 中心 力 部 分 は
(4.68) の よ うに表 す こ とが で きる.荷 電 交 換 反応 で 起 こ る 入 射 粒 子 と核 内核 子 の 電 荷 の 交 換 は(4.68)の
お よび(σ0σ1)
の 項 に よ って 引 き起 こ され る .
は ア イ ソ ス ピ ン の 昇 降 演 算 子 G行 列 近 似 で も,核 物 質 内 のG行
を含 むか らで あ る.
列 は二 体 の並 進 運動 に対 して 不 変 で あ るか
ら,そ の 重 心 運 動 の 運 動 量 に 対 して 対 角 型 で あ る.よ
の 形 に 書 け る.た
だ し,g(E)は
を 引 数 に 付 け 加 え た.kF=0な
核 物 質 のFermi運
って(4.29)と
動 量hkFに
同様 に
よ る か ら,そ
れ
ら 自 由 空 間 中 と 同 じ で あ る か ら, で あ る.
は 演 算 子 で あ り,同
じ 空 間,時
と 同 じ く ス ピ ン,ア
イ ソス ピ ン の
間 反 転 に 対 す る 不 変 性 を も つ か ら,上
と 同 様 な い ろ い ろ な 表 式 で 表 す こ とが で き る.
で述 べ た
(b) 座 標 表 示 〓 の 座 標 表 示 は,波 動 関 数が 座 標 表 示 で 与 え られ て い る の で,実 際 の 計 算 に 使 い や す い.そ れ は運 動 量 表 示 をFourier変 換 す れ ば 得 られ る.前 記 の 近 似 を 一 般 的 に と表 す こ と にす る と ,そ の 二 体 の 重 心 系 で の 運 動 量 表 示 は
(4.69) の 形 を し て い る.Fourier変 kに
換 を 四 つ の 波 数K,
k, K', k'に
つ い て 行 う.Kと
共 役 な 座 標 は そ れ ぞ れ 二 体 の 重 心 座 標
r=r0-r1で
あ る.同
R, r, R', r'へ
のFourier変
様 にK'とk'に
お よび相対座 標
対 す る そ れ ら はR'お
換 で は,K', Kの
よ びr'で
積 分 か ら は δ(R'-R)が
あ る. 出 て,
(4.70) と な る.こ
こに
(4.71) で あ る(4.70),
(4.71)が 近似 的 〓の 座 標 表示 の 一 般 形 で あ る.こ れ らの式 か ら
明 ら か な よ うに,
はRに対
し て は 局 所 的,rに
つ い て非 局所 型 で あ る.
非 局 所 型 ポ テ ンシ ャル は取 扱 いが 面 倒 な の で, ル で 近 似 して
を局 所 型 ポ テ ン シ ャ
(4.72) とす るのが 便利で あ る.そ のため に ときとして使 われ るのは, がqだ けに強 く依存す る,と す る近似:
であ る.こ の
近似 の もとで は
(4.73) と な り,
は 局 所 型 と な る.た だ し
(4.74) で あ る.実 際 に は, 成 分 はkとk'の
はqだ
け の 関 数 で は な い.特 に ス ピ ン に依 存 す る
方 向 に も依 存 す る か ら,ス ピ ン に依 存 す る量 を 問 題 に す る と
き は,こ の 近 似 は 不 十 分 で あ る. よ り合 理 的 に を 局所 型 の 演 算 子 で 表 す 方 法 は,
を(4.73)の 形 に仮 定 し,
〓r(r)い
くつ か の パ ラ メ ター を含 む既 知 関 数 の 組 合 わせ の 形 で 書 け る と し,そ
の パ ラ メ ター の 値 を の 行 列 要 素 を再 現 す る よ うに決 め る こ とで あ る.た と え ば イ ンパ ル ス近 似 の 場 合,〓r(r)を
二 核 子 系 の ス ピ ン,ア
イ ソ ス ピ ンの 各 状 態
に 対 して
(4.75) の 形 に 書 く.中 VC(r),
心 力,ス
VLS(r),
ピ ン 軌 道 結 合 力,テ
VT(r)を,た
ン ソ ル 力 の 動 径 関 数,そ
れぞ れ
と え ば,
(4.76) と 仮 定 す る.た
だ し,Y(x)=e-x/xで
素 数 で あ る.各
ポ テ ン シ ャ ル 成 分 の 深 さ と レ ン ジ の パ ラ メ タ ーRiは
ン シ ャ ル に よ る 二 体 散 乱 のt行
あ る.深
さ の パ ラ メ タ ーVC,LS,Tiは
複
このポテ
列
(4.77) が 実 験 的 に 決 め ら れ たon し,Pxはrを
shell t行 列 要 素 に 最 も よ く合 う よ う に 決 め る.た
反 転 す る演 算 子,Lは
軌 道 角 運 動 量 で,(-1)LPxで
関 数 の 反 対 称 性 を 取 り入 れ て あ る.LoveとFraney Ri=0.15, と り,各
0.25,
0.45,
0.55, 0.70fmを
成 分 ご と に入射エネ
シ ャ ル を 選 ん で 用 い た.そ 3O
, 1E,
1O状
図4.1は
二体の波動
[5]は 実 際 こ の よ う に し て,
ポテ ンシャルのすべ て の成分 に共通 に
ル ギ ー に 応 じ て こ の 中 か ら2∼5個 の 結 果,得
だ
のRiの
ポテ ン
ら れ た 深 さ の パ ラ メ タ ー は 二 体 系 の3E,
態 ご と に 表 示 さ れ て い る.
そ の よ う に し て 得 ら れ たt行
列 の 中 心 力 部 分 の 各 成 分 のq=0で
の
値 を エ ネ ル ギ ー の 関 数 と し て 示 し た も の で あ る. こ の パ ラ メ タ ー 化 で は,実
験 的 に 決 め られ たt行
行 列 要 素 し か 使 う こ と が で き な い.off す る に は,核 を使 え ば,t行
力 の 知 識 が 必 要 で あ る.す 列 のonお
よ びoff
ら を 含 め て 再 現 す る よ う に,有
shell行
列 要 素 を 使 う の で,on
shell
列 要 素 も含 め て パ ラ メ タ ー 化 を
で に 提 案 され て い る核 力 ポ テ ン シ ャル
shell行 列 要 素 を 計 算 す る こ と が で き る.そ
れ
効 相 互 作 用 ポ テ ン シ ャ ル の パ ラ メ ター を決 め る
こ とが で きる. G行 列 近 似 に よ る密 度 依 存 有 効 相 互 作 用 の 場 合 に も,上 と 同様 な 方 法 で 局 所 型化 す る こ とが で き る.核 物 質 近 似 で は,G行列
要 素 を密 度 ρの核 物 質 に 対 し
て 計 算 し,そ れ に 対 し て前 記 の 局 所 型 のパ ラ メ ター 化 をす る.実 際 に は(4.75) 型 の ポ テ ン シ ャ ル(場
合 に よ って はL2,(LS)2の
項 も付 け 加 え る)
を仮 定 し,そ の 各 成 分 に対 し て(4.76)型 個 のGauss型(テ
ン ソル 力 に 対 して は そ のr2倍)を
ジ と深 さ をポ テ ン シ ャル の行 列 要 素がG行列 に 決 め る.そ の 結 果 は,エ ネル ギ ーEお
また は 数
仮 定 し,そ れ ぞ れ の レ ン
要 素 列 もっ と も よ く再 現 す る よ う
よび ρに 対 応 す るFermi波
数kFの
値
に対 して 表 示 され る か,ま た は それ らの 簡 単 な 式 で 近 似 され る[6]. 数 十MeV以
下 の 入 射 核 子 に 対 して,エ ネ ルギ ー に も密 度 に も依 存 し ない 有 効
相 互 作 用 と して よ く知 られ て い る もの にM3Yと M3Yで
は 二 核 子 系 の 各 状 態 に 対 して(4.75)型
呼 ば れ て い る もの[7]が あ る. の ポ テ ン シ ャル を仮 定 し,中 心
力 とス ピ ン軌 道 力 に 対 して は(4.76)の
形 を仮 定 す る.レ ン ジ 数 は 最 大3で,そ
れ ぞ れR1=0.25fm,R2=0.4fmお
よびR3=1.414fmで
あ る.R3は1パ
イオ ン交 換 ポ テ ン シ ャル の レ ン ジで あ る.テ ン ソル 力 に対 し て はYukawa型 はな く
図4.1
二 核 子 有 効 相互 作 用tの Ep入
射 エ ネル ギ ー(MeV,実
中 心 部 分 の 各 成 分 のq=0で 験 室 系)(文 献[5]に
の 大 きさ よ る)
で
表4.1
M3Yポ
テ ン シ ャ ル の パ ラ メ ター(単 位:ViはMeV,Riはfm)
成 分 の 記 号:S=singlet, E=even,
T=triplet,
TN=tensor,
LS=spin-orbit;
O=odd.
核 力 の 記 号:G行 列 に 使 わ れ た 核 力(Reid1)ま た は 行 列 要 素(Elliott2). 1R . Reid, Ann. of Phys., 50 (1968) 411 2J .P. Elliot et al., Nucl. Phys., A121 (1968) 241 (文 献[7]に
よ る)
を とる とい う選 択 もあ る.こ の ポ テ ンシ ャルの 三次 元 調 和振 動 子(hω=14MeV) を基 底 とす る行 列 要 素が 同 じ基 底 上 のG行 タ ー を 決 め る.表4.1は 成 分 の 欄 のS,Tは
そ の よ うに して 決 め られ たパ ラ メ ター の 数値 例 で あ る.
そ れぞ れ ス ピ ン一 重 お よび 三 重 状 態,E,Oは
角 運 動 量 偶 お よび 奇 の 状 態,TNは 表 す.G行列
列 要 素 に 合 う よ う にす べ て の パ ラ メ
テ ン ソ ル,LSは
ス ピ ン ・軌 道 結 合 の 成 分 を
要 素 に は名 称 欄 に あ る 文 献 を使 っ て 求 め た.こ
ル の行列 要 素 とG行列
要 素 との 一 致 はTOを
それ ぞ れ 軌 道
の表 の ポ テ ン シ ャ
除 い て 良好 で あ る.
こ の ポ テ ン シ ャ ル は 実 数 で あ る か ら,実 際 の 計 算 で は現 象 論 的 な 虚 数 部 分 を 付 け加 え て 使 う場 合が あ る.そ れ には不 定 性 を伴 うこ とは 否 め ない. これ らのG行
列 近似 の有 効 相 互 作 用 は 光 学 ポ テ ン シ ャル の 計 算,非 弾 性 散 乱,
荷 電 交 換 反 応 の 記 述 に 使 わ れ,反
応 の 記 述 に 成 功 して い る.た だ し密 度 依 存 性
が な い こ とが 不 十 分 で あ る場 合 もあ る.
4.3 光 学 模 型 の 多 重 散 乱理 論 に よ る導 出
多 重 散 乱 理 論 で は,入 射 粒 子 と核 と の衝 突 を 個 々 の核 内核 子 との 衝 突 の 重 ね
合 わ せ と考 え る.一
方,光
学 模 型 で は そ れ を 入 射 粒 子 の 平 均 ポ テ ン シ ャ ル によ
る 散 乱 と 見 る.こ
れ ら 二 つ の 見 方 は 一 見 相 容 れ な い よ う に 見 え る.し
重 散 乱 理 論 は,正
確 な 理 論 で あ る か ら,光
Watsonら
は そ れ に 成 功 した[8].以
の 定 を 化[9]に 状 態 はn=0と
す る.ま
下,標
た 簡 単 の た め に,演
をOmnと
書 く こ と に す る.
4.3.1
光 学 模 型 の導 出
弾 性 散 乱 は 核 行 列 要 素T00に
学 模 型 も 導 け る は ず で あ る.実
下 に,Kerman,
従 っ て そ れ を 示 そ う.以
か し,多
McManusお
的 核Aの
よ びThaler
状 態 をnで
算 子Oの"核
よ っ て 記 述 さ れ る.4.1節
際,
表 し,基
底
行 列 要 素"〈m│O│n〉
に よ れ ば,そ
れ は
(4.78) で 与 え られ,T'は
方程式
(4.79) の 解 で あ る.た
だ し,Uは
有 効 相 互 作 用Tに
よって
(4.80) で 与 え ら れ る.ま
た,
(4.81) は 入 射 核 子 とAの
自 由 な相 対 運 動 のGreen関
数 で あ る.
弾 性 散 乱 チ ャ ネル へ の射 影 演 算 子
に よ っ がT'を
(4.82) の よ うに 分 け る と
(4.83) で あ る. U(0)を
(4.84) で 定 義 す る と,GはAの
状 態 に 対 して 対 角 型 で あ る か ら
(4.85)
と な る.こ
がT'00,し
こ で,
は 入 射 エ ネ ル ギ ー で あ る.(4.85)は
たが っ てT00を
正 確 に 与 え る ポ テ ン シ ャル で あ る こ と を示 す.
は 相 対 座 標 と反 応 粒 子 の ス ピ ン座 標 だ け の 関 数 で あ るか ら,こ の こ と は弾 性 散 乱 が 常 に そ の よ うな 一 体 ポ テ ンシ ャル に よ る散 乱 と して 記 述 で き る こ と を意 味 す る.こ れ が 光 学 模 型 の 主 張 に ほ か な らな い.
は 一 般 化 光 学 ポ テ ンシ ャル
で あ り,そ の エ ネ ル ギ ー 平 均
(4.86) が 〈T00〉Iを 与 え る 光 学 ポ テ ン シ ャ ル で あ る.実 平 均 を と る と,〈G00〉I=G00と
際,(4.85)の
両 辺 の エ ネ ルギ ー
み な し て よ い か ら,
(4.87) と な る.UOPTに
よる散 乱 の 波 動 行 列 を
(4.88) と す る と,(4.87)の
解 は
(4.89) と な り,(4.78)を
使 うと
(4.90) と な る.〈T00〉Iが3.2節 次 に,こ
で 定 義 し た"形
の 弾 性 散 乱"のT行
こ で 導 い た 光 学 ポ テ ン シ ャ ル と3.6節
列 で あ る.
で 述 べ たFeshbach理
論 に よ
る 光 学 ポ テ ン シ ャ ル と の 関 係 を 見 て み よ う.U(0)は
(4.91) の 形 に 書 く こ と が で き る. [証明] ま ずU(0)は(4.79)と(4.84)か
らT'を
消去すれば 直 ちに
(4.92) と 書 け る.し QU)-1QUで お よ び(4.81)を
か る に,(1-GQU)-1=1+(1-GQU)-1GQU=1+(G-1あ る.こ れ を(4.92)に 使 え ば(4.91)を
代 入 し,GとQが
得 る.
可 換 で あ る こ と とQ=Q2
(証 明 終 わ り) (4.91)か
ら
(4.93) を 得 る.こ の 式 か ら,PU(0)PはUか
らQ空
中 で のFeshbachの
ある こ とが わ か る.し た が って,
有効 相互作 用 で
はFeshbachの
間へ の 遷 移 を 消 去 し た,P空
一 般 化 光 学 ポ テ ン シ ャ ルで 相 互 作 用 をUと
間
した
もの に 相 当 す る こ とが わ か る.
4.3.2
光 学 ポ テ ン シ ャル
光 学 ポ テ ン シ ャル を 多 重 散 乱 理 論 に よっ て計 算 す る に は(4.80)を(4.91)に 代 入 し,U(0)をTの (4.91)の 第2項
関 数 と して 求 め る こ とが 必 要 で あ る.最
を無 視 す る こ とで あ る.そ
も簡 単 な 近 似 は
うす る と
(4.94) と な る.こ の 近 似 の 誤 差 はTの2次 効 相 互 作 用Tの は,そ
以 上 で あ る.こ こで は そ れ に ふれ な い.有
計 算 につ い て は 前 節 で 詳 述 し た.実
際 にUOPTを
計 算す るに
こで 述 べ た よ うな 近 似 的 なTkを 使 う.
UOPTの
座 標 表 示 を求 め る簡 単 な方 法 は,Tkの
を使 う こ とで あ る.標 核 内核 子1の で
的 核Aの
座 標 表 示 の 局 所 的 表 示(4.73)
重 心 か ら測 っ た 入 射 核 子0と
座 標 を そ れ ぞ れr0お
よびr1と
そ れ に衝突 す る
す る と,
あ る か ら,
(4.95) (4.96) と な る.た
だ し,Trが,(4.75)の
よ う に,核
ス ピ ン の 演 算 子 で あ る こ と を 示 す た め に,そ は,(4.96)をAの
子0と1の
ス ピ ン お よび ア イ ソ
れ ら を 陽 に 書 い た.実
際の計算 に
核 子 すべ て に 対 して 対 称 な形
(4.97) と書 いて お く方 が 便 利 で あ る.Tをt行列 AがLS結
で 計 算 す る近 似 で は,簡 単 の た め に
合 の 二 重 閉 核 で あ る とす る と,(4.75)の
形 を使 え ば 核 内核 子1の
ピ ン σ1お よび 軌 道 角 運動 量 一次 に比 例 す る項 の期 待 値 は0に
な る.VLS(s)の
ス
レ ン ジ は 短 い とす る と
(4.98) と な る.こ
こに
(4.99) お よび
(4.100) で あ る[10].た
は 点rで
だ し
の 核 の 一 核 子 密 度 で あ る.0-Aの
道 角 運 動 量Lα
は(4.51)に
重 心 系 で は 相 対 座 標 はrα=r0,軌
よ り
で あ る.よ
って光学ポ
テ ン シ ャル は
(4.101) である.た だ し
であ る.
G行 列近似 に よる密度依存 有効相互作 用 を使 う場合 は,(4.54)を 使 って
(4.102) を 計 算 す る[9]か,ま
た は パ ラ メ タ ー 化 し たG行
(4.2.5(b)項)の
列 の座 標 表 示
畳 み 込 み ポ テ ン シ ャル
(4.103) を,反 対 称 化 は 適 宜 考 慮 し て計 算 し[6], 0-Aの 重 心 系 に変 換 す れ ば(4.101)の 形 に 光 学 ポ テ ンシ ャル が 求 まる. 散 乱 の 計 算 は,運 動 量 表 示 の 光 学 ポ テ ン シ ャル
(4.104) を 使 っ て す る こ と も で き る.次 イ ソ ス ピ ン に つ い て の│0〉
に そ れ を 考 え よ う.Tの,核
に よ る 期 待 値 をT00と
と書 くこ とが で き る.│0〉 を核 子1の
子1の
ス ピ ン,ア
す る と
平 面 波 で 展 開 す る と,こ の式 の 右 辺 は
(4.105) と な る.T00は
運 動 量 を 保 存 す る か ら,(4.29)と
の 形 を し て い る.た だ し,k', に 使 い,そ
の 結 果 を(4.104)に
同 様 に,
kは 相 対 運 動 の 波 数(4.30)で
あ る.こ れ を(4.105)
代 入すれば
(4.106) と な る.こ
の 式 の 右 辺 は,例 え ば
に4.2節
で挙 げ た 有 効 相 互 作 用
を使 い,│0〉 に独 立 粒 子 殻 模 型 の よ う な 簡 単 な 近 似 を使 え ば 数 値 的 に 計 算 で き る.た だ し,積 分 の 計 算 は,k1ご
と に異 な る エ ネ ル ギ ー のT00を 使 わ ね ば な ら
な い か ら,や や 面 倒 で あ る. しか し,前 記 のt行 列 近 似 で は
のk1依
存 性 を無 視 す る.し
と 書 け る.た
だ し,k, k'は
最 適 運 動 量 近 似 で はk=koptお
たが っ て(4.106)は
イ ン パ ル ス 近 似 で はk=k0/2お よ びk'=kopt'で
あ る.上
よ びk'=k'0/2, 式 の 積 分 で 核 子1
の 座 標 表 示 を使 え ば
で あ るか ら
(4.107) とお く と
(4.108)
と な る.(4.108)は
し ば し ばtρ 近 似 と呼 ば れ て い る.ま
た,F00(q)は
弾性散乱
の 形 状 因 子 と 呼 ば れ る.
は イ ン パ ル ス 近 似 で はoff shell行 列 要
素 で あ る.し
shell行 列 要 素 で 近 似 す れ ば,二
か し,そ
れ を 同 じqのon
核子散
乱 の 実 験 値 で 置 き 換 え る こ と も で き る. こ の よ う に し て 求 ま っ た
を0-Aの
重 心 系 に 変 換 す れ ば,求
め る 光 学 ポ テ ン シ ャ ル の 運 動 量 表 示
を 得 る こ とが で き る.
か ら座 標 表 示 の 光 学 ポ テ ン シ ャ ル を 求 め る に は,そ k'0と 共 役 な 座 標r0, r'0に
二 重 のFourier変
局 所 ポ テ ン シ ャ ル に な る.し
換 を す れ ば よ い.結
か し,
め に 核Aの
ス ピ ン が0の
場 合 に つ き,イ
こ の 場 合 に は,(4.59)と(4.62)に
果 は 一 般 に非
がEとqだ
る とす る 近 似 で は 局 所 ポ テ ン シ ャ ル に な る.次
れ をk0,
けの関数で あ
に そ の 具 体 的 な 形 を,簡
単の た
ン パ ル ス 近 似 を 使 っ て 求 め よ う.
よ り
(4.109) と な る.こ
こ に
で あ る.σ1に
例 す る 項 は 寄 与 し な い.qがk0と
比
な す 角 を θ と す る と,
で あ る.
の 仮 定 の も とで
(4.110) と お く と, に 代 入 し 二 重Fourier変
と な る.こ 換 を 行 う.こ
の と き,k0,
i∇r'0で 置 き 換 え て よ い の で,積
分 変 数 の 変 換
つ い て の 積 分 か ら δ(r'0-r0)が
出 る.そ
れ を(4.108)
k'0を そ れ ぞ れi∇r0お
よび
を 行 う とk0に
の結 果
(4.111) と な り,局
所 ポ テ ン シ ャ ル が 得 ら れ る.F00(q)は,(4.107)か
ら 明 ら か に,大
き な 核 に 対 し て はq=0に のq依 のq積
集 中 し た 関 数 で あ る.そ
存 性 は 弱 い か ら,そ
分 は で き て し ま い,A00の
れ ら をq=0の
れ に 比 べ て
項 か ら は
値 で 近 似 す れ ば(4.111)
項からは
が 出 る.C00の
が出るが,ρ(r'0)が 球対称なら
で あ る か ら,
よって結局
(4.112) と な る.た
だ し
(4.113) お よび
(4.114) で あ る.こ れ か ら(4.101)を
得 た の と同 様 に し てUOPT(rα,σ0)を
得 る こ とが
で き る. 核 子 弾 性 散 乱 に 対 し てt行 列 を使 っ て 求 め た 光 学 ポ テ ン シ ャ ル を 使 って 計 算 され た 断 面 積,偏 極 量 は200MeV程
度 以 上 の 入 射 エ ネル ギ ー で の 実験 とか な
りよ く合 う.た だ し,入 射 エ ネ ル ギ ー500MeVの
辺 りで 偏 極 量 の 一 部 に 食 い
違 い が あ り,相 対 論 的 取 扱 い に よっ て そ れ が 除去 で き る と い わ れ て い る. t行 列 近 似 は 入 射 エ ネ ル ギ ーが 高 い こ とを 前 提 に して い る.よ ネ ル ギ ーで は,媒
り低 い 入 射 エ
質 効 果 が 重 要 に な るの で 近 似 が よ くな い.特 にPauli原
効 果 を無 視 して い るた め に吸 収 が 強 くな り過 ぎ る.こ れ に 代 わ るのがG行列
理の 近
似 に よ る光 学 ポ テ ン シ ャル で あ る.そ の 計 算 は い ろ い ろ な核 力,計 算 法 を用 い て 多 くの 人 に よ っ て な され,広
い範 囲 で よい 結 果 が 得 られ て い る.吸 収 の 強 さ
も経 験 値 と合 う[12]. 複 合 粒 子 に 対 す る 光 学 ポ テ ン シ ャ ル を 二 核 子 有 効 相 互 作 用 を使 って 計 算 す る に は そ れ を 入 射 核 と標 的 核 の 密 度 に対 して 二 重 に畳 み 込 む必 要が あ る.こ の 計 算 は 座 標 表 示 のG行
列 近 似 を使 って 行 われ て い る.
重 イオ ンが 入 射 す る場 合 に対 し て は,M3Y有 み 光 学 ポ テ ンシ ャル が,6,7Li, だ し,M3Yは
効 相 互 作 用 を使 っ た二 重 畳 み込
12Cな ど を例 外 として,実 験 を よ く説 明 す る.た
実 ポ テ ン シ ャル で あ るか ら光 学 ポ テ ン シ ャル の 虚 数 部 は現 象論 的
に付 け 加 えね ば な らな い.し か し,α 粒 子が 入 射 す る場 合 に対 し て はM3Yで 不 十 分 で,そ れ に 因 子 dependent
M3Y,
を掛 けた,密 度 依 存M3Y
DDM3Y)が
(density
有 効 で あ る こ とが 知 られ て い る.Cρ,
入 射 エ ネル ギ ー に 依 存 し,140MeVで
はCρ=0.28,
α=5.14,
は
α, β は
β=7.20で
あ る[13]. 重 陽子 や前 記 の6,7Li,
12Cの
よ うに束 縛 エ ネ ルギ ーが 小 さい 入 射 粒 子 に対 し
て は 二 重 畳 み 込 み 光 学 ポ テ ン シ ャル は 実 験 と合 わ な い.原 因 は それ らが 散 乱 の 途 次 容 易 にvirtualに 分 解 す る か らで あ る.こ れ につ い て は5.3.3項 で 論 じ る. 畳 み 込 み ポ テ ン シ ャル に よ る計 算 で は,衝 突 粒 子 間 の 核 子 の 交 換 を陽 に取 り 入 れ て い ない.核 子 入 射 の 場 合,イ
ンパ ル ス 近 似 でt行 列 の 実 験 値 を使 う場 合
に は 陰 に そ れ が 入 っ て い る[14].し
か し,そ れ 以 外 の 場 合 は もっ と も重 要 な 一
核 子 交 換 を近 似 的 に 取 り入 れ る た め に有 効 相 互作 用 に 現 象 論 的 に 修 正 す る こ と が 行 わ れ る[8](3.4節(e)項).複
合粒 子 入 射 の 場 合,交 換 の 効 果 を正 確 に取 り
入れ るに は 共 鳴 群 の方 法(resonating
group
method,略
してRGM)[3]が
用
い られ る.
4.4 歪 曲 波 イ ン パ ル ス 近 似(DWIA)
この 節 で は多 重 散 乱 理 論 を 核 子 の 広 義 の 非 弾 性 散 乱,す
な わ ち狭 義 の 非 弾 性
散 乱 と荷 電 交 換 反 応(p, p')と(p, n)な ど に 適 用 し よ う.核 子 の種 類 は ア イ ソス ピ ンの 状 態 に よ って 区 別 す る こ とに す る.標 的 核 の 基 底 状 態│0〉 か ら残 留 核 の 一 つ の 励 起 状 態│n〉 へ の 遷 移 を 考 え る.入 射,放 出 チ ャネ ル α, β で の 相 対 運 動 の 波 数 をそ れ ぞ れkα お よびkβ,入
射 核 子 の ス ピ ン ・ア イ ソス ピ ン 関 数 を
φα(s, t)および φβ(s,t)と す る.た だ し,s, ス ピ ン の座 標 で あ る.遷 移 α → β のT行
tは それ ぞ れ ス ピ ン お よび ア イ ソ
列要素 は
(4.115) で 与 え られ る.た だ し,
で あ る.
T行列 の計 算 に は多 重 散乱 理 論 を使 うこ とが で きる.最 も簡単 な近似 は
で,こ
の近似で は
(4.116) とな る.〓 は4.2節 で 論 じ た有 効 相 互 作 用 で あ る.〓 に イ ンパ ル ス 近似
,
ま た は 最 適 運 動 量 近 似 のt行 列 を使 え ば,(4.116)は
(4.117) とな る.こ れ は非 弾 性 散 乱 に対 す る 平面 波 イ ンパ ル ス 近似(plane approximation,略 る に はG行 PWIAで
し てPWIA)と
列 近 似
wave
impulse
呼 ば れ る.〓 に 対 す る媒 質 効 果 を 取 り入 れ
な ど を使 う こ とが で きる.
は入 射 ・放 出波 は 平 面 波 で あ る と され て い る.し か し,そ れ らは 核
物 質 中 を伝 搬 す る 間 に 核 の 平 均 ポ テ ン シ ャ ル の 影 響 を受 け るか ら,そ れ に よ っ て 平 面 波 か ら歪 め られ る は ず で あ る.そ れ ら の ポ テ ン シ ャル は 光 学 ポ テ ンシ ャ ル と 同様 な 強 さ を もつ 複 素 ポ テ ン シ ャル で あ ろ うか ら,そ の 効 果 は 大 きい と思 わ れ る.し た が ってTβα の 表 式 の 中で そ れ をあ らか じめ 入射 ・放 出波 の 中 に 繰 り込 ん で お け ば,よ
り正 確 な計 算 に役 立 つ と思 わ れ る.実 際,こ
の考 えに沿 っ
たTβα の 表 式 は 次 の よ うに して 多 重 散 乱 理 論 か ら導 くこ とが で きる[9]. 4.3節 に よれ ば,こ
の 反 応 のT行
列を
(4.118) と す る と,T'を
(4.119) と 書 く こ と が で き る.こ
こ にU(0)は
有 効 相 互 作 用〓 に よ っ てU=(A-1)〓
を
定義す る と
(4.120) で 与 え ら れ る.ま
た,(4.84)と(4.119)に
より
(4.121) で,こ
れ はPU(0)に
よる 散 乱 の 波 動 行 列 で あ る.
T'を 非 弾 性 散 乱 に 対 し て 便 利 な よ うに 書 き換 え る た め に,Uを
(4.122) の よ う に,核 UDの
の 状 態 に 対 し て 対 角 型 の 部 分UDと
方 がUNよ
非 対 角 型 の 部 分UNに
り大 き い と 考 え られ る の で,UDを
り扱 う.(4.122)を(4.120)に
正 確 に,UNを
分 け る. 摂動的に取
代 入す ると
(4.123) と な る.そ
こで
(4.124) を 定 義 し,(4.123)をUNの
べ き級 数 に 展 開 す る と
(4.125) と な る.(4.125)を(4.119)に
代 入すれば
(4.126) が 得 ら れ る.Ω(+)と
ω(+)は 射 影 演 算 子 の 働 きで
で あ る か ら
(4.127) と な る.(4.127)は
正 確 な式 で あ るか ら,右 辺 は 直 接 過 程 か ら複 合 核 過 程 に至
るす べ て の 反 応 機構 の 寄 与 を含 ん で い る.次 に そ の 中か ら 一段 階 直接 過 程 の 寄 与 を 引 き 出 そ う. 一 段 階 過 程 の 寄 与 は(4 .127)の 右 辺 でUNに
対 して1次
の 項 に 対 応 す る.
で あ るか ら,こ の近 似 で は
(4.128) と な る.(4.128)を(4.118)に
代 入 し,
を使 え ば
(4.129) を 得,そ
れ を(4.115)に
代 入 すれ ば
(4.130) を 得 る. 直 接 過 程 のT行 平 均 にLorenz型
列 要 素 はTβ α の エ ネ ル ギ ー 平 均 〈Tβ α〉Iで あ り,エ の 重 み を 使 え ば,平
れ ば 得 ら れ る(1.4節).こ
均 値 は エ ネ ル ギ ーEをE+iIで
の 方 法 で(4.130)の
ネ ルギ ー 置 き換 え
両 辺 の エ ネル ギ ー平 均 値 を とる と
(4.131) と な る.た
だ し,
以 外 の 因 子 の エ ネ ル ギ ー 依 存 性 は 弱 い か ら,そ
れ
を 無 視 し た.(4.131)は
(4.132) とお け ば
(4.133) と な る.た
だ し,
表 式 で あ る.そ
で あ る.(4.133)が
求 め るT行
列 要素 の
こ で は 入 射 ・放 出 波 に 対 す る 核 の 平 均 ポ テ ン シ ャ ル の 作 用 が 歪
曲 波(distorted
wave)
の 中 に く り 込 ま れ て い る. は そ れ ぞ れ 以 下 に 述 べ る 歪 曲 ポ テ ン シ ャ ル(distort
ing potential)Uα(Uβ)を
持 つSchrodinger方
程 式 の 外(内)向
き散 乱 波 を 持
お よび
を与 え るポ テ
つ 解 で あ る.
歪 曲ポ テ ン シ ャルUα,Uβ ン シ ャ ル で あ る.(4.121)に
は そ れ ぞ れ よれ ば
(4.134) で あ り,4.3節
に よ れ ば
は α チ ャ ネ ル の 光 学 ポ テ ン シ ャ ル
であ
る か ら,(4.134)は
(4.135) で あ る こ と を 意 味 す る.同
様 に し て,(4.124)か
ら
が 得 られ る か ら,
(4.136) で あ る こ と が わ か る.(4.120)に
よると
こ れ は 光 学 ポ テ ン シ ャ ル で は な い.た す い.し
だ し,1≫GQU(0)で
な わ ち 核 の 状 態 がnで た が っ て,
で あ る.一
あれば
あ る場 合 の 光 学 ポ テ ン シ ャル に近 般 に は,(4
.94)に
よる と
(4.137) で あ るか ら,Uβ
は 有 効 相 互 作 用 〓†を│n〉 に対 し て 畳 み 込 ん だ もの に よ って 与
え られ る. これ ら の と は有 効 相 互 作 用 〓 と核Aの 波 動 関 数 に よっ て 与 え られ るか ら,原 理 的 に は核 力 と核 構 造 の 知 識 が あれ ば 計 算 で きる. し か し,実 際 に は それ は 容 易 で は な い ので,し ポ テ ン シ ャ ル,た
ば しば そ れ ら を適 当 な現 象論 的
とえ ば3.4節 で 述 べ た 現 象 論 的 光 学 ポ テ ンシ ャル,で 近 似 す
る.こ の 近 似 は 放 出 チ ャ ネル に対 して
と し,
は
エ ネ ル ギ ーがEβ で の ,核 の 基 底 状 態 に 対 す る光 学 ポ テ ン シ ャル に ほ ぼ 等 し い こ とを 仮 定 して い る. 〓 に つ い て は 先 に 述 べ た い ろ い ろ な近 似 が 使 わ れ る.し ば し ば 用 い られ る の は
の近似
(4.138) で,(4.138)は
歪 曲 波 イ ンパ ル ス 近 似(distorted
略 し てDWIA)と 似
呼 ば れ る.核
が よ く使 わ れ る.こ
wave
impulse
approximation,
物 質 の 媒 質 効 果 を 取 り入 れ る た め に はG行 の 近 似 は 媒 質 効 果 を 入 れ たDWIAと
列近
呼ばれ るこ
と が 多 い. 核 の 一 つ の 離 散 的 終 状 態nへ
の 遷 移 の 微 分 断 面 積 は(2.210),(2.212)に
よ り
(4.139) で 与 え ら れ る.た
だ し,
で あ る.
実 際 の 計 算 に は4.2.5項 で 挙 げ た い ろい ろ な 〓の 座 標 表 示 を使 うこ とが で き る.使
う表 示 が 作 用 す る波 動 関数 の 反対 称 化 を前 提 に し て い る場 合 に は,始 状
態 の 波 動 関 数 を 入 射 核 子 と核 内核 子 の 交 換 に 対 し て 反 対 称 化 し て お か ね ば な ら な い.G行
列 近 似 の 場 合 に は,4.2.3項
度 依 存 型 の 座 標 表 示 やM3Y近 に は,歪
で 述 べ た 局 所Fermiガ
ス模 型 に よ る密
似 が よ く使 わ れ る.〓 の運 動 量 表 示 を使 う場 合
曲 波 は運 動 量 の 固 有 関数 で は な い の で,計 算 に は二 つ の 歪 曲 波 の 運 動
量 に 関 す る 積 分 が 必 要 に な る.実 際 上 そ れ は 困難 な の で,た
とえ ば,入 射,放
出 波 の平 面 波 部 分 の 運 動 量 で それ を近 似 す る. DWIAは
入 射 エ ネ ル ギ ーが 数 十MeV以
散 的励 起 状 態 へ の 遷 移 の 断 面 積,偏 そ れ らのDWIAに
上 で の 非 弾 性 散 乱 に よ る残 留 核 の 離
極 量 の 測 定 値 を よ く記 述 す る.ま た 逆 に,
よ る 解 析 に よ っ て 関 与 す る 核 の状 態 の 構 造 に つ い て の 情 報
を 得 る こ とが で き る. 前 節 で 述 べ た よ うに,G行
列 理論 で はG行
列 は 一体 ポ テ ン シ ャルU=〈0│g│0〉
の 中 に あ る 二核 子 間 に つ い て 計 算 され る.し た が ってgとUは 計 算 され,有
効 相 互 作 用gと
歪 曲 ポ テ ン シ ャルUが
自己 無 撞 着 的 に
同時 に 求 ま る こ と に な る.
そ れ ら を 同 時 に使 うの が 首 尾 一 貫 し た 近 似 で あ る.こ の よ うな計 算 は 実 際 に 行 わ れ て い て,弾 性 ・非 弾 性 散 乱 の実 験 との 比 較 に よ って 計 算 され たG行
列の良
否 が 議 論 され て い る. 終 状 態nが
連 続状 態 で あ る場 合,角 度 とエ ネ ル ギ ー に対 す る 二 重 微 分 断 面 積
は(2.232)に
よ り,
(4.140) で 与 え られ る.離 散 的 状 態 へ の 遷 移 の 場 合 と逆 に,ま
ず 歪 曲波 に つ い て の 行 列
要素
(4.141) を 計 算 し,次
に核 の 波 動 関数 に つ い て 行 列 要 素 を と る と,(4.140)は
(4.142) とな る.
の 絶対値2乗
を開 き,
と置 き換え るかわ りにnの 和 にn=0を
を使 い,Oを 含めて完全系 に対
す る和 とす る と
とな る.こ の 式 で 右 辺 の座 標 表 示 を とる こ と を考 え る.δOは 内 核 子1の
座 標r1の
と 書 け る.た
それ が 作 用 す る核
関 数 δO(r1)で あ るが,│0〉 は 全 反 対 称 化 され て い る か ら
だ し,
は 密 度 行 列(density
matrix)の
座 標
表 示 で あ る.ゆ え に
(4.143) と 書 く こ と が で き る.こ
こに
(4.144) は 応 答 関 数(response
function)と
呼 ば れ,核
刺 激 が 加 わ っ た 場 合,点rにδO(r)の る.公
の 点r'にδO(r')の
単位振 幅の
単 位 振 幅 の応 答 が 発 生 す る確 率 を 与 え
式
を使 う と
(4.145) ただ し
(4.146) と 書 く こ と が で き る.Π(r,r';ω)は
偏 極 伝 搬 関 数(polarization
propagator)
と 呼 ば れ る. 4.2節
で 示 し た よ う に,入
射 核 子0と
核 内 核 子1の
間 の 〓 は一 般 に
(4.147)
の 形 を 持 っ て い る.た
だ し,a≡(ab)で
あ る.こ
の各 成 分 に 対 応 して
(4.148) を 定 義 す る.た 向((4.61)の
だ し,添 下),の
え 字 μ,ν は 一 つ の 直 交 座 標 系,た
成 分 で あ る.こ
れ ら に 対 応 し て,部
と え ばq,n,p方
分 的 な 応 答 関 数,偏
極
伝搬 関数 を
(4.149) (4.150) で 定 義 す る と,断 面 積 は そ れ に 対 応 す る部 分 的 断 面 積 の和
(4.151) の 形 に 書 く こ とが で き る.た
だ し,
で
あ る.
か くし て,DWIAの
断 面 積 は,入 射 粒 子 に よ っ て 与 え ら れ る刺 激O(r)と
応 答 関 数R(r,r';ω),よ
り詳 し くは 部 分 的刺 激Oα μν(r)と対 応 す る 応 答 関 数
に よ っ て 決 ま る こ とが わ か っ た.
は
αμν型 の 単 位 刺 激 を受 け た核 が い か に α'μ'ν'型 の 応 答 を す る か を 記 述 す る. R(r,r';ω)も
も も っぱ ら核 の ハ ミル トニ ア ン と波 動 関 数
に よ っ て決 定 され る.逆 にOα μν(r)が 既 知 の 実 験で 観 測 され る断 面 積 や 偏 極量 の解 析 か ら,R(r,r';ω)さ
ら に は
に つ い て の 情 報 を得 る
こ とが で き る.こ れ は,外 部 か らの 刺 激 に対 す る核 の 動 的 な性 質 を 知 る上 で 重 要 で あ る. 偏 極 伝 搬 関 数 の 理 論 的 計 算 に は,い 均 場 近 似,RPA近
ろい ろ な核 模 型 が 使 わ れ る.第8章
似 を用 い た計 算 につ い て述 べ る.
で平
文
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A.Budzanowski,
5 直
接
過
程
核 反 応 の 第2の 段 階 は 直 接 過 程 で あ る.そ れ は 次 の よ うに し て起 こ る.光 学 ポ テ ン シ ャル 中 を 運 動 し て い る 入 射 粒 子 は 核 内核 子 と相 互 作 用 す る.1回
の相
互 作 用 で 標 的 核 また は 入 射 粒 子 ま た は それ らの 両 方 が 励 起 した り,分 解 し た り, 入 射 粒 子 と標 的 核 との 間 で 何 個 か の核 子 が 移 行 し た りす る.そ の段 階 で 反 応 が 終 わ るの が 一段 階 直接 過 程 で あ る.反 応が さ ら に進 んで,2回,3回 作 用 が 起 こ った 後 で 反 応 が 止 む場 合 もあ る.一 般 にn回 わ る もの をn段
階 直 接 過 程 とい い,n>1の
い う.時 と して,n=∞
の場 合 が あ る.た
… と相 互
の相 互作 用 で 反 応 が 終
場 合 を一 括 し て 多段 階 直接 過 程 と とえ ば,集 団 運 動 の 励 起 の 場 合,集
団 運 動 状 態 間の 遷 移 の 確 率 が 強 い の で,そ れ ら の 間 を無 限 回遷 移 し た の ち反 応 が 終 わ る のが 普 通 で あ る.い ず れ の 場 合 も,全 過 程 に 要 す る時 間 は非 常 に短 く, 励 起 され る系 の 自由 度 は 非 常 に 少 な い.た
とえ ば,n段
階 過 程 で 励 起 され る 自
由度 は,入 射 粒 子 と核 の 双 方が 励 起 す る こ とを 考慮 して も,た か だ か2n個
であ
り,集 団 状 態 間 の 遷 移 の 無 限 回 の 遷 移 の 場 合 で も,少 数個 の集 団 運動 状 態 間 を 遷 移 す る に す ぎ な い.し たが って,こ の段 階 で 複 合 核 が 形 成 され る こ とは な い. 直 接 過 程 の散 乱 振 幅 は,そ の 所 用 時 間がΔtで 2I=h/ΔEに
あ る とす る と,散 乱 振 幅 を 幅
わ た って エ ネル ギ ー平 均 した もの で 与 え られ る.2Iは
光学模型
で の 平 均 の エ ネ ルギ ー 幅 と同程 度 で あ る. 直 接 過 程 は 非 常 に 多 彩 で あ る.一 つ の 反 応 に 二 つ 以 上 の機 構 の 直 接 過 程 が 寄 与 して い る場 合 もあ る.そ の 研 究 は核 反 応 論 の 中 心 的 課 題 の 一 つ で あ る.多 数 の 個 別 的 な 直 接 過 程 の 反 応 機 構 が 詳 細 に 研 究 され,そ れ を記 述 す る た め に い ろ い ろ な模 型 が 提 出 され,大 第4章
きな 成 功 を収 め て い る.
で,そ の 一 つ で あ る広 義 の 非 弾 性 散 乱 の 一 段 階過 程 に対 す るDWIAを
論 じ,そ れ が 多 重 散 乱 理 論 に よ っ て 二 体 の 核 力 か ら組 み 立 て る こ とが で きる こ と を示 した.し か し,こ の よ うな 第 一 原 理 的取 扱 い を 一般 の 反 応 に 拡 張 す る の
は 困 難 で あ る.そ れ ゆ え,多
くの 現 象 論 的 な 理 論 が 提 出 され 成 功 し て い る.こ
の 章 で は,ま ず そ れ らの 理 論 の 一 般 論 を 述べ,つ
い で それ に 基 づ い て個 別 的 な
反 応 機 構 に つ い て詳 論 す る.
5.1 直 接 過 程 の一 般 論
5.1.1 直 接 過 程 を記 述 す る波 動 関 数 と有 効 ハ ミル トニ ア ン 直 接 過 程 で は 系 の 少 数 の 自 由度 が 励 起 され るか ら,そ れ に 直 接 関与 す る 系 の 内 部 状 態 γ は 入 射 ・放 出 チ ャネ ル α お よび β の そ れ と た か だ か 少 数 の 自由 度 の 状 態 だ け が 異 な る.波 動 関 数 のHilbert空
間 中 に,そ の よ うな 内 部 状 態 γ の
波 動 関 数 φγの 系{φ γ}が 張 る 関 数 空 間 をP,そ 入 射 ・放 出 チ ャ ネル の波 動 関 数 は,当 然,P空
れ 以 外 をQと
呼 ぶ こ と にす る.
間に 含 まれ て い る.φ γは 連 続 状
態 で あ る場 合 もあ る か ら,φ γの 個 数 は必 ず し も少 数 で は な い.直 接 過 程 で は, 系 は α チ ャ ネ ル か らP空
間 中 の 何 個 か の 内 部 状 態 を 経 由 し て β チ ャ ネ ルヘ 遷
移 す る.直 接 過 程 の 理 論 はP空
間 中 で の 波 動 関数 の振 る舞 い を 取 り扱 う.
P空 間へ の 射 影 演 算 子 をPと
す る と,系 の 波 動 関 数 Ψ のP空
舞 い はPΨ
に よ って 記 述 され る.PΨ
に 対 す るSchrodinger方
間 中で の振 る 程 式は
(5.1) で あ る.こ ば,そ
こ に,H(P)はP空
れ はFeshbachの
間 内 で の 有 効 ハ ミル トニ ア ン で,3.6節
に よれ
公式
(5.2) で 与 え られ る.た だ し のP空
,ま たQ=1-Pで
あ る.H(P)
間 内 の チ ャ ネ ル γ に対 す る具 体 的 な形 は
(5.3) で あ る.た
だ し,hγ
は 内 部 運 動 の ハ ミル ト ニ ア ン,Kγ
は相 対 運 動 の 運 動 エ ネ
ル ギ ー,
(5.4) は チ ャ ネ ル γ で の 有 効 相 互 作 用 で あ る.
求 め るPΨ
は(5.1)の 解 で,チ ャネ ル α に 入射 波 が あ り,開 い た チ ャネル に 外
向 き散 乱 波 が あ る,と い う漸 近 形 を もつ もの で あ る.そ れ を 接 過 程 を記 述 す る 波 動 関 数 は 節 で 述 べ た よ うに,
とす る.直
の エ ネ ル ギ ー 平 均
で あ る.1.4
に対 す る 方程 式 は(5.1)の 両 辺 を エ ネ ルギ ー 平均
した
(5.5) で あ り,〈H(P)〉IはH(P)の
中 のEをE+iIで
置 き換 え れ ば 求 まる:
(5.6) こ れ に よ ってVγ(E)は に な る.〈Vγ(E)〉Iは 複 素 数 で,エ ネ ル ギ ー に 依 存 し,非 局 所 型 の 複 雑 な演 算 子 で,そ れ を正 確 に計 算 す る こ とは 多 くの場 合 不 可 能 で あ る.そ
こで 直 接 過 程 の現 象 論 で は,物 理 的 な考 察
に よって,そ れ ら を比 較 的 簡 単 な演 算 子 で 近 似 す る.具 体 的 に は,各 チ ャ ネル γ に対 して 〈Vγ 〉Iを 簡 単 な 現 象 論 的 ポ テ ン シ ャルVγ で 置 き換 え る の で あ る.こ れ に よ って,〈H(P)(γ)〉Iは
現 象 論 的 な 有 効 ハ ミル トニ ア ン
(5.7) で 置 き換 わ る.こ に は,γ
の 置 き 換 え は 任 意 で は な く,H(γ)(P)は,少
な くと も近 似 的
に よ ら な い:
(5.8) と い う条 件 を 満 たす もの と す る.逆 ル に対 す る 表 式 で あ る.H(P)に
に い う と,H(γ)(P)はH(P)の
対 応 す る 波 動 関 数 を
γチ ャネ とす る と,
(5.9) と な る.H(P)と
が それ ぞ れ 直接 過 程 の現 象 論 的 ハ ミル トニ ア ン お よ
び 波 動 関数 で あ る. Vγ をど う選 ぶ か は個 々の場 合 につ い て検 討 せ ね ば な らな い.最 は,Vγ=Vγ
とす る こ とで あ る.こ れ はVγ に 対 す るQ空
も単 純 な 仮 定
間 か らの 寄 与 を 無視
す る近 似 で あ る.こ の 場 合Vγ は 核 力 の 知 識が あ れ ば 既 知 で あ る.し か し,そ れ は 特 異 性 を 持 つ か な り複 雑 な もの で あ るか ら,簡 単 な 現 象 論 的 な ポ テ ン シ ャ ル で代 用 され る こ とが 多 い.
はP空
間 を張 る 内 部 波 動 関 数 の 組{φ γ}に よ っ て
(5.10) と展 開 で き る.た だ し,Xγ は 内 部 状 態 φγに対 応 す る 相 対 運 動 の 波 動 関数 で あ る.{φγ}は 離 散 的状 態 と連 続 状 態 を 含 む.そ れ ら のす べ てが 直接 観 測 可 能 とは 限 らな い.ま た,{φγ}は 必 ず し も直 交系 で は な い.Sγ は 離 散 的状 態 に対 す る和 と連 続 状 態 に対 す る積 分 を表 す. 直 接 過 程 の 現 象 論 で は,{φγ}は 既 知 と し て,Xγ 漸 近 形 が 反 応 α → β の,こ べ て の γ ∈Pに
を 計 算 す る.そ の 解Xβ の
の 直接 過 程 に よ る 散 乱 振 幅 を与 え る.(5.9)か
らす
対 して 得 られ る
(5.11) の 左 辺 に(5.8)と(5.7)を
使 えば
(5.12) が 得 ら れ る.た
だ し
(5.13) (5.14) お よび
で あ る.(5.12)が
基 礎 方 程 式 で あ る.左 辺 の ポ テ
ン シ ャルUγ は相 対 運 動 だ け に働 くポ テ ン シ ャ ルで,内
部 状 態 を 変 え ない.そ
れ は 歪 曲 ポ テ ン シ ャル(distorting potential)と 呼 ば れ る.右 辺 のUγγ'が 二 つ の状 態 φγと φγ'を結 合 す るポ テ ン シ ャ ルで あ る. Xγ に 対 す る境 界 条 件 は 「漸 近 形 が,(1)γ=α (2)Eγ>0な
ら外 向 き散 乱 波 が あ る.(3)Eγ<0な
だ け に 入 射 平 面 波 が あ る. ら0に な る.」で あ る.こ の境
界 条件 の 下 にXβ の散 乱波 を求 めれ ば,そ の振 幅が 反 応 α → βの散 乱 振 幅 で あ る. Xγ に対 す る解 は
(5.15) た だ し, に よ っ て"歪
で あ る.ま め ら れ た"入
た,
はUα
射波で
(5.16)
を 満 た し,Uα
に よ る散 乱 のLS方
程式
(5.17) の 解 で あ る.こ
れ に 対 応 し て,
を
(5.18) と 定 義 し て お く と 便 利 で あ る.た る.ポ
テ ン シ ャ ル がUβ
(5.15)を(5.10)に
だ し,
であ
の 複 素 共 役 で あ る こ と に 注 意 せ よ.
代入 すれば
(5.19) を得 る. 考 え て い る 直接 過 程 α → β のT行
列 要素は
(5.20) で 与 え られ る.こ れ は ま た,逆 過 程 β → α に対 応 す る 内 向 き散 乱 波 の 解 を とす る と
(5.21) と 書 く こ と も で き る.(5.20)をT行 formと
い う.post
(prior)と
列 要 素 のpost
は 相 互 作 用Vβ(Vα)が
form,
(5.21)をprior
反 応 の 終(始)状
態 の それ
で あ る こ と を 意 味 す る. (5.20)の 起 は"残
右 辺 のVβ の 中 で,Uβ
は 内 部 状 態 を 励 起 し な い か ら,内
部 状 態 の励
留 相 互 作 用"
(5.22) に よ っ て 引 き 起 こ さ れ る.実
際,(5.20),(5.21)を
(5.23) (5.24)
と 変 形 す る こ とが で き る.た
だ し
(5.25) で あ る.(5.23)の
右 辺 第1項
(5.26) は ポ テ ン シ ャルUα に よ る弾 性 散 乱 のT行
列 要 素 で あ る.
[証明] (a) (5.9)を
(5.27) と 書 き 換 え る.た
だ し 一 般 に
で あ る.そ
の(5.19)に
対応
す る解 は 明 らか に
(5.28) で あ る. 同様 に して
で あ る. (b) (5.28)は,LS方
程 式 か ら(2.91)を
得 た の と 同 様 に し て,次
の よ うに変
形 す る こ と が で き る.
(5.29) そ こ で,
の 最 右 辺 に(5.29)を
使 う と,
(5.30) 同様 に し て
(5.31) が 証 明 され る. (証 明 終 わ り) α,β が 二 粒 子 チ ャネ ル で あ る場 合 には,Uα,Uβ が 与 え られ れ ば の計 算 は 容 易 で あ る.実 際 上 の 問題 は む し ろUα,Uβ を正 確 に計 算 す る こ とが 困難 な こ とで あ る.し たが って,現 象 論 的 に 決 め ざ る を 得 な い のが 普通 で あ る. 物 理 的 な観 点 か ら合 理 的 で 簡 単 な 形 の 局 所 型 の 複 素 一 体 ポ テ ンシ ャルが 使 われ, 特 に 光 学 ポ テ ン シ ャ ルが 最 も よ く使 われ る.幸 い に し て,上 の 証 明か ら明 らか な よ うに,(5.23),(5.24)は な わ ち,正 確 なT行
歪 曲 ポ テ ンシ ャルUα,Uβ
に よ らず が 立 す る.す
列 要 素 は そ れ ら の と り方 に よ ら な い.
βが3個 以 上 の粒 子 か ら な る場 合 に は,Φ(-)βは 三 体 問題 の解 とな るか ら簡 単 に は計 算 で き な い,何 らか の 簡 単 な 近 似 をす るの が 普 通 で あ る.
5.1.2 近
似
法
(5.12)を 解 く方 法 と して,Uγγ'に対す る摂 動 論 的 近 似 が あ る.そ の2次 の近似 は 第0近
似:
よ っ て(5.19)に
第1近
よ って
似:
よ り
まで
で あ る. Tdirβ α のpost
第0近
formのn次
近 似 はVβ とUγ γ'合わ せ てn次
の 近 似 で あ る.よ
って
似:
(5.32) 第1近
似:
(5.33) 第2近 似:
(5.34) で あ る.T行 て 第n次
列 のprior
formに
つ い て も 同 様 な 近 似 が 得 ら れ る.以
下 同様 に し
近似は
(5.35) で あ る.た
だ し,kmはk段
曲 波Born近 開 と い う.
階 目 のm番
似(distorted-waves がn段
Born
目 の 中 間 状 態 を 表 す.こ approximation,略
階 過 程 に 対 応 す る.現
て い る の は せ い ぜ い 三 段 階 過 程 ま で で あ る.そ
の展 開を歪
し てDWBA)展
実 的 に 重 要 で,計
算が行 われ
れ 以 上 に つ い て は 摂 動 論 は使 わ
れ て い な い. P空
間 内 の 状 態 の 結 合 が 強 い 場 合 に は,摂
式 の ま ま 解 か ね ば な ら な い,こ り,(5.12)が
動 論 は 使 え ず,(5.12)を
の 場 合 に は,P空
実 際 に 解 け な け れ ば な ら な い.よ
間 の{φ γ}が よ くわ か っ て お く使 わ れ る の は,{φ γ}の す べ て
が 観 測 可 能 な 二 粒 子 チ ャ ネ ル の 内 部 波 動 関 数 か ら な る,と れ は チ ャ ネ ル 結 合 法(method
of coupled
以 下 の 節 で こ れ ら の 近 似 法 と,そ い て 述 べ る.
連 立方程
channels)と
仮 定 す る 近 似 で,そ
呼 ば れ て い る.
れ ら の 重 要 な い くつ か の 反 応 へ の 応 用 に つ
5.2 歪 曲 波Born近
DWBA展
開 の1次
似(DWBA)
の近 似 は 一 段 階過 程 を記 述 す る.単 にDWBAと
いえば
こ の 近 似 を 指 す.一 段 階 過 程 は 多 くの 直 接 過 程 の 主 要 な 反 応 機 構 で あ る か ら, DWBAは
直 接 過 程 の 研 究 の 上 で 非 常 に 重 要 で あ る.
遷 移 α → β ≠ α に対 す るDWBAのT行 よ り,post
列 要 素 は,(5.33)お
よび(5.25)に
form
(5.36) ま た は,prior
form
(5.37) で 与 え られ る.こ
れ ら 二 つ の 表 式 が 同 等 で あ る こ と,す
な わ ち"prior-post
iden
tity"は
(5.38) が 成 り立 ち,ど ち らの 表 式 も
(5.39) に 等 し い こ と を 根 拠 に し て い る.(5.38)は 成 り立 つ.し
か し,そ
う と は い え な い.し
正 確 なVα
とVβ に 対 し て は も ち ろ ん
れ ら を独 立 に 現 象 論 的 な もの で 置 き換 え る と必 ず し もそ
か し 以 下 で は,そ
れ らが(5.38)が
成 り立 つ よ う に と ら れ て
い る も の と し て 議 論 を 進 め る. (5.36),(5.37)の
右 辺 の 積 分 変 数 は チ ャ ネ ル の 座 標 の 完 全 系(rα,ξ α)ま た は
(rβ,ξβ)で あ る.チ
ャ ネ ル α と β で 粒 子 の 組 み 替 え が 起 こ る 場 合 に は,こ
れ ら
二 つ の 座 標 系 は 一 致 し な い. 例 と し て 組 み 替 え 反 応 す.aの
内 部 座 標 は
あ る.同 様 に し て,
に 対 す る 座 標 系 を 図5.1に だ か ら で あ る.し たが って,
は α,β 両 チ ャ ネ ル に 共 通 な 内 部 座 標 で あ る.一 とrβ
の 一 次 結 合 で あ る.
示 で
方,rxbとrxAは
相 対 座 標rα
図5.1
そ こ で,積
反 応
の座 標 の 組
分 変 数 を 両 方 の チ ャ ネ ル に 平 等 な
分 変 数 の 変 換
に 変 換 す る.積
の ヤ コ ビ ア ン,ま の ヤ コ ビ ア ン をJα β と す れ ば,T行
formは
γ=β(α)と
た は そ れ と等 しい 列 のpost
(prior)
して
(5.40) と書 け る.た だ し 〈 〉の 添 え 字 は積 分 変 数 を表 す.こ こ に
(5.41) は こ の 反 応 の 形 状 因子(form 最 も重 要な因 子 で あ る.
factor)と 呼ば れ,系
の 内 部状 態 の 変 化 を記 述 す る
の 非 局 所性 の レ ン ジ は一般 に 小 さ く,次
項 以 下 で 見 る よ うに,し ば しば 局 所 近 似
(5.42) で 十 分 で あ る.た
だ し,fβ α(rα)とcβ α は そ れ ぞ れ 反 応 α → β ご と に 異 な る
関 数 お よ び 定 数 で あ る.こ
の 近 似 をzero-range近
似 と い う.zero-range近
似
の も とで は
(5.43) と な る. さ て,DWBAが な い.Vγ
よい 近 似 で あ る ため に は,相 互 作 用Vγ が 弱 くな け れ ば な ら
はVγ か ら主 要部 分 で あ るUγ を除 い た も ので あ る か ら,Vγ に 比べ て
は るか に 弱 い.し
たが っ て,DWBAは,Vγに
つ い て の摂 動論 よ りは るか に よ
い 近 似 で あ る と考 え られ る. DWBAの
も う一 つ の成 立 条 件 は
が 摂 動 論 の 高 次 の項 に くらべ て は
るか に 大 き い こ とで あ る.こ の 条 件 に と っ て重 要 な の が 運 動 量 お よび 角 運動 量 の 整 合(matching)で
あ る.そ れ を(5.43)に
よ って 見 て み よ う.
fβα(rα)は核 の波 動 関 数 の広 が りの 範 囲 に値 を持 つ,rα の な だ らか な 関 数 で あ る.歪 曲波 がCoulomb障 え ば,そ
と 壁 以 上 で あれ ば,振
し,kα
とkβ が 非 常 に 違
れ らの 積 も ま た 振 動 す る 関 数 に な る か ら,そ れ とfβα(γ α)の 積 の 積
分 は 小 さ くな る.ゆ DWBAに
はそ の 領 域 で,入 射エ ネル ギ ー
動 関 数 で あ る.も
え に,移 行 運動 量q=kα-kβ
が あ ま り大 き くな い 方が
とっ て 有 利 で あ る.
高 エ ネル ギ ー 核 子 の 散 乱 の場 合 の よ うに,歪 曲 ポ テ ンシ ャル の 影 響が それ ほ ど 大 き くな い場 合,歪
曲波 を平 面 波 で 近 似 す れ ば
はfβ α(rα)のFourier
変換
に 比 例 す る.こ れ が 大 きな値 を持 つ よ うなqをqmと
の と き,DWBAは
すると
有 利 に な る.こ れ らが 運 動 量 の 整 合 の例 で あ る.
次 に,角 運 動 量 の 整 合 に つ い て 考 え よ う.残 留 核 の 離 散 状 態へ の 遷 移 で は一 段 階 過 程 は しば しば 表 面 反 応 で あ る.そ の 一 つ の 理 由 はfβα(rα)が表 面 付 近 に 集 中 し て い る こ とで あ る.仮 にfβ α(rα)が半 径Rの す る と,半 古 典 的 に考 え て,衝 突 径 数が
と こ ろ に 局 在 して い る と
の 入 射 粒 子 だ け が 反応 に寄 与 す
る.入 射 ・放 出粒 子 の 歪 曲 ポ テ ンシ ャル に よ る吸 収 を考 え る と,そ れ ら の 中で 最 も大 きな 寄 与 を 与 え る の は,b=Rの
入 射 粒 子 で あ る.そ れ が 起 こす 反応 で
は 入 射 ・放 出粒 子 の軌 道 角 運 動 量 の 間 に は
(5.44) の差 が あ る.そ れ が 核 に 移行 す るか ら,標 的核 と残 留 核 の ス ピ ン に はlmよ
り大
きな差 が な け れ ば な らな い.こ れ が 角 運 動 量 の 整 合 の 条 件 で あ る.も ち ろ ん 実 際 には,fβ α(rα)の局 在 も歪 曲波 の振 る舞 い も この よ うに単 純 で は な いが,(5.44)
は 一 段 階 過程 の 強 さ を知 る 目安 と し て役 に 立 つ.以 上 の よ うな 運 動 量 と角 運 動 量 の 整 合 が 成 り立 つ こ とが,一
段 階 過 程 が 強 い こ と,し たが っ てDWBAが
よ
い た め の 条 件 で あ る. (5.39)は 衝 突 粒 子 間 の核 子 の 交 換 に 対 す る波 動 関 数 の 反 対 称性 を無 視 した 場 合 のT行
列 要素 で あ る.そ れ を 考 慮 に 入 れ た 行 列 要 素 は,(2.249)と(2.253)に
よ り,
(5.45) た だ し,Pγ(γ=α,β)は 子,(-1)Pγ DWBAに
チ ャ ネル γ の 粒 子cとCの
はPγ が 偶 置 換 な ら1,奇
置 換 な ら-1で
間の核子 の交換の演算 あ る.
よる物 理 量 の 実 際 の 計 算 には 角 運 動 量 表 示 を使 う と便 利 で あ る.反
応 の 始 お よび 終状 態 で 粒 子a,Aお
よびb,Bが
そ れ ぞ れ ス ピ ン のz成
分 の固
有 状 態 で あ る場 合:
(5.46) を考 え よ う.こ の 場 合 の歪 曲波 は
(5.47) で あ る.Uγ は 一 般 に は す べ て の 反 応 粒 子 の ス ピ ンに依 存 す る.し か し,実 際 に は,ス
ピ ン依 存 ポ テ ン シ ャル は 入 射 ・放 出 粒 子aとbだ
け に働 く と考 え る場 合
が 非 常 に 多 い の で,以 下 そ の 場 合 を 考 え る.こ の場 合 に は,相 対 運 動 の 軌 道 角 運 動 量,粒 子 の ス ピ ン をそ れ ぞ れLγ お よびIc(γ=α, c=b)と
c=α
また は γ=β,
す る と,そ れ らの 和
はUγ に よ って 保 存 され る.普 通,Icの 力 が あ る と,Lγ
大 きさIcも 保 存 され る.も しテ ン ソル
は 保 存 され な い.そ れ ら を考 慮 して 一 般 的 に
を次の よう
に展開する.記 号
を使うと
あるいは,
を展開して (5.48)
と な る.こ
こ に,
(5.49) で あ る.同
様 に して
(5.50) と な る.こ
こに
(5.51)
となる.
は,
が連立方程式
(5.52) の 解 で,境 界 条 件
(5.53) を 満 た す も の で あ る.た
だ し,
ま た,δ γL'LJは 位 相 差 で あ る.(5.53)を 与 え られ る
満 た す解 に よ って(5.48)((5.50))で
の漸 近 形が 平 面波
と外 向 き(内 向 き)散 乱 波 の和 に な る こ と は容 易 に確 か め られ る. もし,Uγ に テ ン ソル 力が なけ れ ば,
で あ る.
さ らに,ス ピ ン軌 道結 合 もなけれ ば,す なわ ちUγ が 中心 力 で あれ ば,uγLLJ(k,r) はJに
よ ら な い.こ
の 場 合 に は,
(5.54) とな る.た だ し, さて,(5.39)に(5.48),(5.50)を
で あ る. 代入す る と
(5.55) とな る.こ の 場 合 も形状 因 子
(5.56) を導入 して
(5.57) と 書 くこ と が で き る. (5.57)に
対 応 す る,反
対 称 化 さ れ たpost
formのT行
列 要素は
(5.58) で 与 え ら れ る.ま
た,prior
formは
(5.59) で あ る.た
だ し,
で あ る.こ こ に,Pγξ βαはPγξα とPγξAに 共 通 な 内部 座 標 で あ る. 次 に,形 状 因 子 に つ い て 詳 し く見 て み よ う.ま ず 一 般 論 を,つ い で 典 型 的 な 反 応 に つ い て 個 別 的 に論 じ る.
5.2.1 形 状 因子 の 一 般 形 この項で は形状 因子
(5.60) の 一 般 的 な 性 質 を 検 討 し よ う.と
き と し てVγ
は
の よ うに,お の お のが 反 応 粒 子 の 異 な る部 分 に働 くVγiの 和 に な っ て い る.こ の場 合 に は,形 状 因子 は そ れ ぞ れ に 対 応 す る部 分 の和 に な るが,各
部分は異 な
る 反応 機 構 を 記 述 す る と考 え る こ とが で き る.異 な る反 応 機 構 の 寄 与 はT行
列
に 干 渉 的 に 寄 与 す る.し か し,そ れ ぞ れ の 反 応 機構 で 放 出 粒 子 の 角 分 布,エ
ネ
ルギ ー 分 布,反 応 の励 起 関数 な ど に 大 き な違 いが あれ ば,そ れ ら を 実 験 的 に ほ ぼ 区 別 す る こ とが で き る.以 下 の議 論 は そ の よ うな,一 つ の 反 応 機 構 の 形 状 因 子 に つ い て で あ るが,こ
の項 で は 簡 単 の た め に 相 互 作 用 を単 にVγ と書 く.
(a) 移 行 角 運 動 量 表 示 反応A+a→B+bのDWBAのT行
列 要 素 の計 算 に は,歪 曲 波 の 角 運 動 量
表 示 が 使 わ れ る か ら,形 状 因 子 も角運 動 量 表 示 を して お くのが 便 利 で あ る.し か し,反 応 には い ろ い ろ な 角 運 動 量 が 関 与 す るか ら,そ の 表 示 は 一 意 的 で は な い. 実 際 上 最 も便 利 な の は 反 応 に 際 し て起 こ る移 行 角 運 動 量(angular
momentum
transfer)
(5.61) に よ る 表 示 で あ る.た だ し,Inは が 起 こ る 直 前(後),す 後(受
粒 子nの
ス ピ ン角 運 動 量,Lα(Lβ)は
な わ ち歪 曲 ポ テ ン シ ャ ルUα(Uβ)に
遷移
よ る変 化 を 受 け た
け る前)の 軌 道 角 運 動 量 で あ る.角 運 動 量 の 保 存 則 は
で 表 され る.よ
って
(5.62) で あ る.sとjは
内 部 運 動 の 角 運 動 量 移行 で あ るか ら,(5.62)は
動 の角 運 動 量 移 行lに *1 (5 .61)は
られ る.
よ って 供 給 され る こ とを 表 す*1.
標 的・ 残 留 核 と 入 射 ・放 出 粒 子 に 対 し て 対 称 で あ る.軽
に は,s=Ia-Ibで
そ れが 相 対 運
定 義 す る こ と も あ る.こ
粒 子 反応 だ け を扱 う場 合
の と き は,(5.62)はl+s=jで
置 き換 え
の移行角運動量表示はそれの空間の回転に対する変換性を考え
れ ば,次 の よ うに して 求 ま る.簡 単 の た め に,二 つ の 量UとVが もつ こ と をU⇔Vで
表 す こ とに す る.(5.60)の
カラー である から,
同 じ変 換 性 を
右辺の
はス
で あ る.
と
を考慮すると, はそれぞれ次のようにして球面テンソ
ル の 一 次 結 合 で表 せ る.
は さ らに あ る球 面 テ ン ソルOlmの
一次結合
で 表 せ るか ら,結 局
Clebsch-Gordan係 のmsとmの
と 書 け る.た
数 の 対 称 性 を使 って 角 運 動 量 の 合 成 の順 番 を変 え,和
符 合 を 変 え た うえ でms+μ=mを
だ し,一
般 にx=(2x+1)1/2で
の中
使 うと
あ る.ゆ
えに
(5.63)
と 書 くこ とに す る と, は
と 同 じ 変 換 性 を もつ.(5.63)のClebsch-Gordan係 (5.61)と(5.62)で
す な わちY*l m 数 か ら 明 らか にj,
定 義 し た移行 角運動 量 で あ る.ゆえ
s, lは
に,
が
の移行角運動量表 示にほか な らない.そ れ は逆変換
(5.64)
によって
から計算 できる. を考慮して,
を次の
よ うに球 面 波 展 開 す る.
た だ し(-1)lは
(5.65)
後 の 便 宜 の た め に つ け た.
は(5.65)の 逆変換
(5.66) で与 え られ る
の動径部 分で,ス カ ラー量で ある.
(b) 選 択 規 則 角 運 動 量 移 行j,
sは(5.61)を,ま
たlは(5.62)を
満 た さ ね ば な ら な い.こ
れ らを陽に書けば
(5.67) (5.68)
(5.69) で あ る.反
応 で は こ れ ら を 満 た す 角 運 動 量 移 行 だ け が 許 さ れ る.こ
則(selection
rule)と
い う.
パ リ テ ィ に つ い て は,反 πcと す る と,系
応 前 後 の 粒 子c=a,b,A,Bの
状 態 の パ リテ ィ を
の 内 部 運 動 の パ リ テ ィ変 化 は,
と同 じであ る.
のパ リテ ィは これ と等 しいはずで ある.し か し,
それは必ず し も(-1)lで はない.
が二つ の独立なベ ク トルの関数
だか らであ る.rα とrβが等しいかまたは平行rα=rβ はYl-m(rα)に
比 例 す る こ と に な る か ら,そ
と き は,(-1)l=Δ 合 は 正 確 にrβ=rα
π が パ リ テ ィ に よ るlの で あ る.組
(5.57)に
ならば,
の パ リ テ ィは(-1)lで 選 択 規 則 に な る.非
み 替 え 反 応 で は,後
や 無 反 挑 近 似 を し た 形 状 因 子 で は,rα=rβ
5.2.2
れ を選択規
あ る.そ
の
弾性散 乱の場
で 述 べ るzero-range近
似
が 成 り立 つ.
断 面 積 の一 般 形 形 状 因 子 の 表 式(5.63)を
使 う と,遷
移
(5.70) に対す るT行 列要素 の表式 は
(5.71) と な る.た
だ し
(5.72) で あ る.こ
こ で,後
(5.51)と(5.65)を
の便 利 の た め に 因子 使 うと
お よび
を 付 け た.(5.49),
(5.73) と な る.た
だ し,
(5.74) で ある.こ こに, 部 分 で あ る.(5.73)の
は(5.66)で 定義 された 右 辺 最 後 のM'a,
M'bに つ い て の 和 は9j係
に比 例 す る もの で 置 き換 え る こ とが で きる.そ の 結 果 にCG係 えば,M'α,
M'βに つ い て の和,続
い てms,
mに
の動径 数 を使 って
数 の 直 交 性 を使
つ い て の和 が とれ,結
局
(5.75) が 得 られ る.こ れ が,aとbに の
だ け テ ン ソル 力,ス
の一 般 形 で あ る.(5.75)を(5.71)に
ピ ン 軌 道 結 合 力が あ る場 合
使 えば,こ の 場 合 のT行
列 要素
が 求 ま る. も しa,
bの 歪 曲 ポ テ ン シ ャ ル に テ ン ソ ル 力 が な け れ ば
(5.76) ス ピ ン軌 道 結 合 力 も な けれ ば
(5.77)
で あ る.(5.77)の
場 合 に は,(5.75)か
ら,ま
た は(5.73)か
ら直 ち に
(5.78) が 得 ら れ る.
(5.71)で与 え られ るT行 列要素 を改めて
と書 くことにす る
と,そ れ に対 応 す る微 分 断面 積 は
(5.79) で 与 え られ る.入 射 チ ャ ネ ル に ス ピ ン の偏 極 が な く,放 出 チ ャ ネ ル の ス ピ ン を 測 定 しな い 無 偏 極 微 分 断 面 積 は
(5.80) で あ る.(5.73)を
使 うと
と な る.し た が っ て,無 偏 極 微 分 断 面 積 で は 異 な るjの 寄 与 は 干 渉 しな い.さ ら に歪 曲 ポ テ ン シ ャ ル に ス ピ ン 依 存 性 が な い 場 合 には,(5.77)に
で あ る.し
た が っ て,
より
(5.81) と お くと
(5.82) が 得 ら れ る.し
たが って,歪
曲 ポ テ ン シ ャル に ス ピ ン依 存 性 が ない 場 合 に は,
j, s, lの す べ て が 非 干 渉 で あ る. 波 動 関 数 の 反 対 称 化 を考 慮 し た場 合,微 分 断 面 積 は(2.248)に
よっ て,
(5.83) で 与 え ら れ る.た だ し,
は(5.45)で
与 え られ,ま
(5.84)
よ っ て
で あ る.陽
た
子 と 中 性 子 を 別 々 に 反 対 称 化 し た 場 合 に は(2.250)に
よ り,
(5.85) た だ し,
(5.86) で あ る.ま た,
な どで あ る.た だ し,an(An)は
中の 中性 子 の 数 で あ る.(5.83)に
粒 子a(A)
対応す る無偏極 の微分断面積 は
(5.87) で あ り,(5.85)に
つ い て も 同 様 で あ る.
以 上 の 考 察 は,い 立 つ.
う ま で も な く,prior
formのT行
列 要 素 に対 して も成 り
5.2.3 非 弾 性 散 乱 に よ る集 団運 動 の励 起 あ る 種 の 原 子 核 に は 圧 縮 振 動,表 面 振 動,回
転 な ど の 集 団 運 動 状 態 が あ る.
そ の よ う な集 団 運 動 は非 弾 性 散 乱:
(5.88) に よ っ て 強 く励 起 され る.時 と し て 入 射粒 子aも
集 団 励 起 す る こ と もあ る.こ
の 場 合 は 相 互 集 団励 起 と呼 ば れ る.こ の 項 で は こ の 反 応 に 対 す るDWBAの
形
状 因 子 を 計 算 し よ う.す で に 述 べ た よ うに,集 団 励 起 は 一 段 過 程 で 記 述 され な い 場 合 もあ るが,そ
れ につ い て は 次 節 で 詳 し く述べ る.
集 団 運 動 の励 起 を簡 単 に記 述 す る に は,"巨 視 的"模 型 が よ く使 わ れ る.こ の 模 型 で は 集 団 運 動 は"集 団座 標"に よっ て記 述 され る.集 団運 動 は 量 子化 され て お り,集 団 座 標 の 関 数 で あ る 波 動 関 数 で 記 述 され る.個
々の 核 子 の 運 動 は,最
も簡 単 な 近似(断 熱 近 似)で は,集 団 運 動 とは 分 離 し てお り,集 団励 起 が 起 こっ て も変 化 は な い と仮 定 され る. 反 応(5.88)で
は相 対 座 標,内
因子 は 相 対 座 標
部座 標 に 変 化 は 起 こ らな い.し たが って,形 状 だ け の 関数:
(5.89)
になる.ただし, もrだ
である.したがって
け の 関 数 に な る:
(5.90) 巨 視 的模 型 で の相 互 作 用Vγ は粒 子aとAの 間 の 光 学 ポ テ ン シ ャル に 由 来 す る.厳 密 に い う と,光 学 ポ テ ンシ ャル は 粒 子 の 状 態 に よ るか ら,チ ャ ネル α と α'で は違 う.し か し,そ の 差 は小 さい と思 わ れ るの で 無 視 され る.集 団 運 動 の 光 学 ポ テ ン シ ャ ルへ の 影 響 が 半 径 の 変 化 だ け で あ る とす れ ば,
で 与 え られ る.た だ し,R0とRは
は
そ れ ぞ れ 集 団 運 動 に よ る変 形 が な い 場 合 と
あ る 場 合 の ポ テ ン シ ャル の 半 径 で あ る.ま た,簡 単 の た め に ス ピ ン依 存性 を 無 視 した.Rはrの
方 向 Ω に 依 存 し,一 般 に
(5.91)
で 表 され る.た だ し,lは 集 団 運動 に よ る変 形 の 多 重 度,{αlm}は き さで あ る.行 列{alm}はl階
その変形の大
の 球 面 テ ン ソ ル で,
は スカ
ラ ーで あ る. 表 面 振 動 の 励 起 を 考 え よ う.表 面 振 動 は微 少 振 動 で あ るか ら,αlmは あ る.ゆ え に,αlmの1次
微少で
の近似で
(5.92) とな る.こ れ が 表 面 振 動 を励 起 す る 相 互 作 用 の ポ テ ン シ ャル で あ る.αlmは フ ォ ノ ンの 生 成,消
滅 演 算 子
に よ って
(5.93) で 与 え ら れ る.βlは よ っ て 標 的 核Aは
変 形 の 大 き さ を 表 す パ ラ メ タ ー で あ る.相 状 態 φAIAMAか
フ ォ ノ ン 数 を そ れ ぞ れNAお
ら φA*IA*MA*に
よ びNA*と
移 る.そ
互 作 用(5.92)に れ らの状態で の
する と
(5.94) で あ る.し た が っ て,一 段 階 過 程 で は 一 つ の フ ォ ノ ン の 励 起 しか で き な い.(5.93), (5.94)を(5.92)に
代 入 す れ ば,基
底 状 態 で はNA=0で
あ る か ら,(5.89)か
ら
(5.95) を 得 る.こ
れ は,(5.63)でs=0,
j=lと
し た 形 を し て お り,
で あ る.た だ し,肩 つ き 「'」は 不 要 だ か ら省 い た.こ ノ ン の多 重 極 で あ り,
は す べ て0で
に 強 く依 存 す る干 渉 縞 様 の 角 分 布 を示 す.
こでlは 励 起 され る フ ォ
あ る.そ の 結 果,断 面 積 はl は 核 表 面 付 近で
大 きい か ら,形 状 因 子 は そ こ に 集 中 して い る.表 面 振 動 が そ こ で 起 こ る こ とを 考 え る と,こ れ は 自然 で あ る.大 き さは,Uの に ス ピ ン軌 道 結 合
深 さ と βlR0の 積 に比 例 す る.U
が あ る 場 合 に は,Gjsl 次 に,軸
,m(r)に
はs=1,j=l-1,l,l+1の
成 分 が あ る.
対 称 変 形 核 の 回 転 運 動 の 励 起 を 考 え よ う.(5.91)に
て 核 の 対 称 軸 の 方 向 にz'軸
を も つ,核
に 固 定 し た 座 標 系O'で
お い て,Ω
とし
測 っ たrの
方 向
を Ω'を と る こ と に す る と,
(5.96) で あ る.こ
の 場 合 に は,αl0は
は 適 当 で は な い.し
微 小 で は な い の で,U(r,R)を
αl0で 展 開 す る の
か し こ の 場 合 に も,U(r,R)はYl0(Ω')に
よ って
(5.97) の よ うに正 確 に 展 開で きる.座 標 系 を 空 間 に 固定 し た座 標 系Oに
と な る.た
だ し,
D関
はO'のOに
数,Θ
は,座
標軸 の回転
対 す る 回 転 のEuler角
移す と
対 す る3次 で あ る*2.よ
元 回転の
って
(5.98) とな る.核 の 回 転 運 動 の 集 団座 標 はΘ で,角 運動 量Iの 集 団運 動 の 波 動 関数 は
で あ る.た だ し,MはIのz成
分,Kは
対 称 軸 方 向 の 成 分 で あ る.
偶 偶 核 の 基 底 状 態 か ら,そ の 上 に 立 つ 角 運 動 量Iの
回転 準 位 へ の励 起 の 場 合 に
は,IA=0,IA*=I,K=0で
あ るか ら
と な る*3.
*2 こ のD関
数 の 定 義 は 核物 理で よ く使 わ れ る もの で
,多 くの 定義 の エ ル ミー ト共役 に な っ
て い る. *3 こ こ で た[1].
,
を 使 っ
よ って
(5.99) で あ る. 以 上 が 巨視 的 模 型 に よ る集 団 運 動 励 起 の形 状 因 子 で あ る.中 高エ ネ ル ギ ー反 応 の 非 弾 性 散 乱 に よ る巨 大 共 鳴 な ど の 集 団 運動 状 態 の 励 起 の 一段 階 遷 移 は,残 留 核 が 戸 口状 態 で あ る こ と を 除 けば,上 に 同 じで あ る.な お,U(r,R)の
記 の 離 散 状 態 へ の 遷 移 の場 合 と本 質 的
変 形 に よ る変 化 は,上 記 の 定 義 の ほ か に,等
ポ テ ン シ ャ ル 面 の 変 形 に よる,と す る考 え もあ る こ とを つ け 加 え て お く. 微 視 的 理 論 で は,集 団 運 動 は 個 々の 核 子 の 集 団 的 な 運 動 と して 記 述 され る. た と えば,1フ
ォ ノ ン状 態 は1粒
子1空
孔(1p-1h)状
態 の 重 ね 合 わせ で あ る.
し たが って,そ れ の 励 起 の 形 状 因子 は 多 くの 一 核 子 励 起 の 形 状 因子 の 重 ね 合 わ せ に な る.一 核 子 励 起 の 形 状 因子 は 励 起 され る 核 子 が 始 ・終 状 態 で 占 め る 一 粒 子 準 位 に よ る.集 団運 動 に寄 与 す る の は 主 と して 比 較 的Fermi準 で あ る.し
位 に近い準位
たが っ て,形 状 因子 は そ れ らの 準 位 の 波 動 関数 の 振 幅 が 大 きい 核 表
面 付 近 で 大 きい.こ れ は 先 に述 べ た 巨 視 的模 型 と一 致 し てい る.関 与 す る 一 粒 子 準 位 は 個 々の 核 に よ って 異 な るか ら,厳 密 に い う と,形 状 因 子 も同様 で あ る. しか し実 際 に は 多 くの 場 合,関 与 す る一 粒 子 準 位 の 数 が 多 く,し か も形 状 因 子 の 細 か い 形 はT行
列 に そ れ ほ ど 影 響 し な い の で,断 面 積 の 角 分 布 の様 子 は 核 の
個 性 に 強 く依 存 す る こ とは な い. 以 上 の議 論 で は,T行
列 の 反 対 称 化 を無 視 して きた.巨 視 的模 型 で は,こ れ は
や む を得 ない.し か し微 視 的模 型 で は,入 射 粒 子 と核 内核 子 との 交換 を考 慮 す る こ とが で き る.こ の過 程 は,放 出 粒 子 と入 射 粒 子 は 構 成 核 子が 異 な るか ら,次 節 で 述 べ る 組 み 替 え 反 応 の 一 種 と見 な す こ とが で きる.形 状 因子 は もはや(5.89), (5.90)の よ う な一 つ のベ ク トル の 関 数 で は な く,二 つ の ベ ク トル の 関 数 で あ る. 実 際 は,交 換 過 程 は 集 団 励 起 に対 して は 重 要 で は な く,普 通 無 視 され る.し か し,た
とえ ば 単 一粒 子 の 励 起 で 角 運 動 量 移 行 が 大 きい 場 合 に は,そ れ が 重 要 で
あ る こ とが 知 られ て い る. 粒 子 の 組 み 替 え を伴 わ な い 反 応 に は 非 弾 性 散 乱 の ほ か に荷 電 交 換 と ス ト レ ン ジ ネ ス交 換 反 応 が あ る.こ 応 とは(p,n),
(n,p), (3He,t)な
こで い う電 荷 交 換(charge
ど で,ア
exchange)反
イ ソ ス ピ ン に依 存 す る相 互 作 用
に よっ て,入 射 粒 子 と標 的核 が,核 子 を交 換 せ ず,荷 電 だ け を 交換 す る過 程 で あ る.ま
た(π ±,K±)に よ るハ イパ ー 核 の 生 成 で は,入 射 πが 核 内 核 子 の 一 つ と
ス トレ ンジ ネ ス を交 換 して それ をハ イペ ロ ン に変 え,自 らはKに で は,こ
な る.DWBA
れ ら の過 程 の 入 射 粒 子 と放 出 粒 子 は 同 じ粒 子 の ア イソ ス ピ ンな い し ス
トレ ン ジ ネ ス の異 な る状 態 と考 え,こ の 過 程 を 核 子 交 換 の な い 非 弾 性 散 乱 と同 様 に取 り扱 う.も ち ろ ん,こ れ ら の 反 応 に は 粒 子 の 移 行 を伴 う機 構 も寄 与 し う るか ら,荷 電,ス
トレ ンジ ネ ス移 行 過 程 を 同 定 す る に は実 験 的観 測 の 理 論 的 解
析 が 必 要 で あ る.
5.2.4 組 み 替 え 反 応 組 み 替 え(rearrangement)反
応の一般形 は
(5.100) で あ る.こ
こ で,た
と い う意 味 で あ る.こ あ る.cとCは
と え ば,a(c+x)は こ に,x,
yが
そ れ ぞ れaお
移 行 し な い 部 分 で,"芯"と
複 数 個 の ば ら ば ら な 核 子,ま で あ る.時
粒 子aが
と し て,x,
し て 移 行 す る 場 合,あ
二 つ の 部 分cとxか よ びAか
た は 複 数 個 の 核 子 の 塊(ク
る い はAが
ら移 行 す る部 分 で
呼 ば れ て い る.x,
yの 一 方 だ け し か な い 場 合,逆
ら な る,
yは1個
また は
ラ ス タ ー)の にcが
束縛状態
な く,aが
全体 と
全 体 と し て 移 行 す る 場 合 も あ る.
反 応 を 引 き 起 こ す 相 互 作 用 の 現 象 論 的 ポ テ ン シ ャ ルVα
ま た はVβ
は(5.100)
の左 辺 ま た は 右 辺 の 各 粒 子 間の それ の 和
(5.101a) (5.101b) で あ る と 仮 定 す る.(5.101a)がprior
form,
(5.101b)がpost
formで
右 辺 の 各 ポ テ ン シ ャ ル は 現 象 論 的 に 決 め ら れ る が 任 意 で は な い.た Vα 中 のVcyはb(c+y)の け れ ば な ら な い.bの
中 でcとyを
が 多 い.そ
際 に は,φbも
の 場 合 に は,Vcyも
と え ば,
結 合 させ て い るポ テ ンシ ャ ル と 同 じ で な
内 部 波 動 関 数 φbは 既 知 と し た か ら,こ
す る 厳 し い 条 件 に な る.実
あ る.
の 条 件 はVcyに
対
現 象 論 的 な模 型 の 波 動 関 数 で あ る こ と
そ れ に 応 じ た ポ テ ン シ ャ ル で な くて は な ら な い.
ほ か の ポ テ ン シ ャ ル に つ い て も,同
様 で あ る.こ
の よ うな状 況 下 で 決 め られ た
各 ポ テ ン シ ャ ル が(5.100)に 了 解 の も と に,各Vに
付 け た"―"記
反 応 の 機 構 はx, て も 異 な る.個
よ びVfと
満 た さ な い か ら,一
が 存 在 す る わ け で は な い.両 次 に,(5.100)型
後,こ
の
号 を 省 く こ と に す る.
yの 種 類 だ け で な く,そ
々 の 反 応 機 構 はVα
そ れ ら を そ れ ぞ れViお identityを
対 す る 現 象 論 で 使 わ れ る こ と に な る.以
の 移 行 を 引 き起 こ す 相 互 作 用 に よ っ
ま た はVβ の 一 部 に よ っ て 引 き 起 こ さ れ る. 呼 ぶ こ と に す る.そ
れ ら は 一 般 にprior-post
つ の 反 応 機 構 に 対 し て,1:1対
応 す るViとVf
方 が 存 在 す る と も 限 ら な い.
の 典 型 的 な 反 応 機 構 を 列 挙 し て み よ う.
(1) ス ト リ ッ ピ ン グ(stripping)と
ピ ッ ク ・ア ッ プ(pick
up)
(5.102) 矢 印 の 右 向 きがstripping,左 子aの
中 のxが
る.pick
upで
は ぎ と ら れ て(stripさ は,入
射 粒 子bが
aと な っ て 出 て い く.相 upの Vf,
upに
対 し て はViで
(2) ノ ッ ク ・オ ン(knock
aがA中
のbを
作 用 はVabで,こ
らxを
れ はstripping対
upし
作 て) pick
して は
あ る. on)
れ はViで
も 同 じ で あ る.
もVfで
れ と 入 れ 替 わ る 反 応 で あ る.相
particle
入 れ 替 え た もの で あ る.Aがaに
よ ってstripさ れB
onと 粒 子 移 行 の 仕 方 は 同 じ で あ るが,相
の ポ テ ン シ ャルUaAの
互
stripping)
あ る こ とが 異 な る.こ の 相 互 作 用 にはaは
互 作 用 な し でa-A間
合 体 し 残 留 核Bを
で 述 べ る 理 由 で,stripping,
on),そ
を作 る.こ の 反 応 はknock
は入射粒
つ ま み 上 げ て(pick
叩 き 出 し(knock
これ は(1)でaとAを
ルUaCの
あ る.strippingで
と る の が 普 通 で あ る.こ
(3) 重 粒 子 ス ト リ ッ ピ ン グ(heavy
Vf=VbCで
upで
れ て)標 的 核Aと
標 的 核Bか
互 作 用 と し て は,後
ど ち ら に 対 し て もVxbを pick
向 き がpick
関 与 しな い か ら,aは
連 続 状 態 か らa-C間
束 縛 状 態 に遷 移 せ ねば な らな い.C≫bの
互 作 用が
場 合 に は,
相
のポ テ ンシャ で
あ るか ら,そ れ らの 状 態 は ほぼ 直 交 し て い る.し た が っ て,そ の よ うな 遷 移が 起 こ る確 率 は 非 常 に 小 さい.す な わ ち,重 粒 子 ス トリ ッ ピ ン グ は 標 的核 が 移 行 粒 子 に比 べ て 大 きい と きに は 起 こ りに くい.
(4) 弾性 ・非 弾 性 散 乱 の 交 換 反 応
た だ し,xとyと
は 同 種 粒 子 で あ る.し
粒 子(標
的 核)と
あ る.こ
れ は 同 時 に 二 つ の 粒 子xとyが
放 出 粒 子(残
留 核)の
た が っ て,xとyが
種 類 は 変 化 し な い.相
交 換 して も入 射 互 作 用 はVxyで
移 行 す る 過 程 の 例 で あ る.
こ れ ら の 中 で 最 も 簡 単 で か つ 重 要 な の は,strippingとpick
up反
応 で あ る.
以 下 で は そ れ ら に つ い て 詳 論 す る こ と に す る.
5.2.5
strippingお
よ びpick up反
up反
strippingお
よ びpick
標 系 は 図5.1に
示 し た と お りで あ る.
xは 核 子 の ほ か,d,t,α
応
を 記 述 す る座
な ど の よ う な 複 合 粒 子 の 場 合 も あ る し,バ
な 複 数 個 の 粒 子 の 場 合 も あ る.こ た だ し
応
,で
ラバ ラ
の 場 合,
あ る.図5.1か
ら明 らか に
(5.103) で あ る か ら,変換
のヤ コビアンは
で あ る. stripping反
応 は(5.102)の
し た が っ て,そ
う ち,相
互 作 用 がVf=Vbxで
あ る も の で あ る.
の 形 状 因子 は
(5.104) で あ る.
は 反 応(5.102)の
全 形状 因 子
(5.105) の 一 部 で あ る.
で あ る か ら,
(5.106)
と書 け る.strippingで
はAは
ほ とん ど励 起 され な い と考 え る と,
で あ るか ら,
(5.107) である.も しA≫xな
ら,
だか ら,(5.107)
の右辺は小さい.し たがって(5.106)から わ ちstrippingが
反 応(5.102)の
すな
主 要 部 分 で あ る こ と が わ か る.Vxbはpick
反 応 の 相 互 作 用 と し て 直 感 的 に 極 め て わ か り や す い.strippingに 使 う こ と は,そ
のT行
え て も よ い.ち
な み に,も
列 の 計 算 を,わ
up
対 して そ れ を
か りや す い 逆 過 程 の そ れ で 代 行 す る と 考
し,(5.102)のprior
formの
相 互作 用
を使 う と,右 辺 の ど の 項 も同程 度 の 大 き さな の で,post
formを
使 っ た場 合 の
上 記 の よ うな 議 論 は で きな い. (5.105)に 対 応 す る 反 対 称 化 され た 形 状 因子 は
(5.108) で あ る.Pα
はaとAの
間 の 同 種 核 子 の 交 換 を 表 す.strippingで
て,放
出 さ れ るbはaの
がaの
中 に あ る 項,す
に 対 応 す る.φBは で あ る か ら,そ
中 に な け れ ば な ら な い.し な わ ちPα
がAとxの
は,定
た が っ て,交
義 に よっ
換 項 の 中 でb
間 だ け の 交 換 で あ る 項 がstripping
反 対 称 化 さ れ て お り,VbB-Uβ
はB内
の 核 子 に つ い て対 称
の 条 件 を 満 た す 各 項 の 行 列 要 素 は す べ て 等 し い.そ
の項 数 は
(5.109) で あ る.た だ し,Bp,Bn(xp,xn)は の 数 で あ る.ま
た,
それ ぞ れ 粒 子B(x)内 よ って,反
の 陽 子 お よび 中性 子
対 称 化 され たstripping
の形状 因子 は
(5.110) で 与 え られ る.形 状 因 子 の 移 行 角 運 動 量 表 示 につ い て も
(5.111)
で あ る. さ て,(5.104)に 図5.1に
お い て,反
示 す 座 標 の 関 数 で,角
(c=a,A,b,B)の
応 粒 子a,
A,
b,
運 動 量(ス
Bの
ピ ン)の
内部 波動 関数 はそ れ ぞ れ の 大 き さIcと
そ のz成
分Mc
固 有 関 数 で あ る:
(5.112) (5.113) それ ら は1に 規 格 化 され て い る.Vxbは
ξAに よ らな い か ら,
を
(5.114) と書 く こ とが で き る.た
だ し,
(5.115) (5.116) で あ る.φABは
標 的 ・残 留 核 だ け に,ま
たDbaは
入 射 ・放 出 粒 子 だ け に 関 係 す
る 量 で あ る. φBIBMBは
(5.117) と 書 く こ とが で き る.右 辺 第1項 分,φ'BIBMBはAが φAIAMA(ξA)に
はAが
基 底 状 態 φAIAMA(ξA)に
励 起 状 態 に あ る 成 分 で あ る. あ るAの
はxが
周 りを 全 角 運 動 量 の 大 き さ とz成
の 固 有 状 態 で 運 動 して い る状 態 を 表 す.そ
状態
分 の 固 有 値(j,μ)
れ は 規 格 化 され て お らず,ノ
は そ の状 態 が φBIBMB内
に よ らな い.(5.117)を(5.115)に
あ る成
ルム
に現 れ る確 率 に 比 例 す る.そ れ は μ
代 入す ると
(5.118) と な る.
に 対 して も,(5.118)と
あ るか ら, た が って,そ れ を
同様 な展 開が で きる.Vxbは
は 回転 に対 して
ス カ ラ ーで
と 同 じ変 換 性 を持 つ.し
(5.119) と 展 開 で き る は ず で あ る. ン ソ ル のms成
は こ の 式 で 定 義 さ れ るs階
の球面テ
分 で あ る.
(5.118)と(5.119)を(5.114)に
代入す る と
(5.120) と な る.こ
れ を(5.64)に
代入 する と
(5.121) を 得 る.(5.120)と(5.121)か
ら 明 ら か に,j,
s, lが
先 に 定 義 し た反 応 の移 行
角 運 動 量 で あ る.
を 実 際 に 計 算 す る に は,右 辺 の 変 数(rxA,rxb)を,(5.103) を使 っ て,(rβ,rα)の 関 数 に変 換 せ ねば な らな い.こ の変 換 の 中,球 面 調 和 関 数 に 関 す る部 分 に 対 し て は,z=ax+byに
対 して 成 り立 つ 公 式
を使 うのが 便 利 で あ る.動 径 変 数 の 変換 は,一 般 に は,数 値 的 に行 うほか な い. しか し, 値 を持 つ.そ
はrxbの
関 数 と してVxbの
短 い レ ンジ の 範 囲 内 で だ け
こ で,
(5.122) と 近 似 す る.dsms(ξx)は
こ の 式 で 定 義 さ れ る.rxbは(5.103)で
与 え られ るか ら
(5.123) で あ り,rxb=0な
ら
(5.124)
で あ る.(5.122)を(5.121)に
代 入 し,(5.123),
(5.124)を
使 う と
(5.125) と な る.こ れ が こ の 場 合 の(5.42)に
対 応 す るzero-range近
似 で あ る.
は
(5.126) で あ る.(5.122)の
近 似 で は,δ(rxb)はrxbに
つ い て ス カ ラ ー で あ る か ら,
のそうでない成分は無視されており,
逆 に い え ば,そ
の よ う な 成 分 に 対 し て はzero-range近
重 イ オ ン 間 のstripping,
に寄与しない.
似 は 使 え な い.
pick up,
でx≪a,
A
の 場 合 に は,
の 右 辺 の 大 き さ は,b≫Bで は よ い 近 似 で あ る.こ
な い か ぎ り,≪rxbで
れ は,
あ る.し
で あ る か ら
す な わ ち,xの
行 に よ っ て 核 が ほ と ん ど 反 挑 を 受 け な い こ と を 意 味 す る.そ 反 挑(no
recoil)近
れ に は,各
の 場 合 に つ い て(5.118)の
を 求 め,(5.120)と(5.121)を
5.2.6 一 核 子stripping, stripping,
移
こ で この 近 似 は 無
似 と も呼 ば れ る.
以 上 の 一 般 論 を 次 に い くつ か の 典 型 的 なstripping, て み よ う.そ
た が っ て(5.125)
pick
up反
pick
up過
程 に適用 し と(5.119)の
計 算 す れ ば よ い.
応
pick up反 応 の 中 で 重 要 で か つ 最 も簡 単 な の は 一 つ の 核 子 が 移行
す る 反 応 で あ る.す で に 述べ た よ うに,そ
もそ も低 エ ネ ルギ ー 直 接 過 程 の存 在
が 発 見 され た の は(d, p)お よび(d, n)反 応 にお い て で あ った.そ の後,こ の種 の 直 接 過 程 が ほ とん ど すべ て の 入 射 粒 子 と標 的 核 で も起 こ る こ とが 明 らか に な っ た.そ れ らの 断 面 積 の様 相 は 反 応 に 関与 す る核 の 状 態 の構 造 に 強 く依 存 す る の で,そ
の 研 究 が 核 の 低 エ ネ ル ギ ー 準 位 の 構 造 を 調 べ る の に 非 常 に よ く使 わ れ て
きた. 一 核 子stripping反
応
に 対 す る形 状 因 子 の
図5.2
一 核 子 移 行 反 応 を記 述 す る座 標 の 組 とそ れ に 付 随 す る角 運 動 量(括
移行角運動量表示
を前 節 の一 般 論 に 従 って計 算 し よ う.反 応 を
記 述 す る座 標 とそ れ に付 随 す る角 運 動 量 を 図5.2に この 反 応 のDWBA形
で あ る.5.2.5項
弧 内)
示 す.
状 因子は
の 一般 論 に 従 っ て こ れ を
(5.127) と 書 く.た
だ し
お よび
(5.128) で あ る.こ の 式 か ら
が 満 た すSchrodinger方
程式
(5.129) を 使 っ てVbxを
消 去 す る の が 便 利 で あ る.た
運 動 エ ネ ル ギ ー,εbaはbのaか
だ し,Kxbはx-b間
の 相 対 運動 の
ら の 分 離 エ ネ ル ギ ー で あ る.(εba-Kxb)は
ξbに よ ら な い か ら,
(5.130)
と な る.φBIBMBと
φaIaMaを
そ れ ぞ れAお
よびbの
固 有 関数 系 で
(5.131) (5.132) と 展 開 す る.{ψjμ}と{φsms}は,こ
れ ら の 式 で 定 義 さ れ る.φ'B (φ'a)は
の と(5.132)か
を 含 ま な い 成 分 で あ る.(5.131)
ら
(5.133)
し たが って
(5.134) が得られる.た だし,
で あ る か ら,明
である.図5.2か ら
ら か に ψjμ と φsmsを
さ らに
(5.135) の よ うに展 開 で きる.た だ し, で 定 義 さ れ,核 子xがB(a)の
は(5.135)
中 で 状 態
わ りを軌 道 角 運 動 量 の 大 き さlxA (lxb),全
に あ るA(b)の 角 運 動 量j(s)で
運 動 す る 状 態 を記
述 す る.ど ち ら の 関数 も規 格 化 され て い な い こ とに注 意 せ よ.(5.134),
に対応して,
は
ま
(5.135)
(5.136) と展 開 で きる.た だ し,
で あ る.ψlxAjμと
φlxbsmsをさ らに空 間部分 と内部運動部分 に
(5.137) (5.138) と分解 す る.
はlxA (lxb)の 固有関数,ψIx(ξx)
はxの 内部波動 関数,実 際はxが 核 子なので で あ る.よ
のスピ ン関数
って
(5.139) と な る.た
だ し,
(5.140) で あ る.(5.137)と(5.139)を(5.136)に
代 入 す れ ば,ξxに
対 す る積 分 は 直 ち に
で きて
と な る.右 辺 に 対 す る 若 干 の角 運 動 量 代 数 の 計 算 の 後,一
核 子strippingの
形
状 因子 と して
(5.141)
を 得 る.こ
れ を(5.63)と
比較すれば
(5.142) が 得 られ る.た だ し,
はRacah係
数,ま
た
(5.143) で あ る.
の 肩 つ き記 号 「st」は省 略 した.
(5.141)のClebsch-Gordan係
数 か ら明 らか に,
で あ るか ら,こ れ らが 先 に定 義 した反 応 の 移 行 角 運 動 量 で あ る.j,
s
とlは
(5.144) (5.145) (5.146) と(5.143)のCG係
数 か ら 導 か れ る パ リテ ィ の 保 存 則
(5.147) と で 制 限 さ れ る.(5.141),
(5.142)か
ら 明 ら か な よ う に,形
状 因子 は上記の選
択 規 則 で 許 さ れ る す べ て の 遷 移 の 形 状 因 子 の 和 で あ る.
(a) lxb=0の
場 合
入 射 粒 子 が4He以 lxb=0 う ちlxb=0
(S状
下 の 軽 イ オ ン で あ る 場 合 に は,そ
態)で,lxb=2 (S状
態)の
(D状
態)が
成 分 に 対 して は
確 率 数%程
の内部状 態の主成 分は 度 混 ざ っ て い る.こ
の
で あ る か ら,
(5.148) お よび
(5.149) と な る. xがBの
殻 模 型 ポ テ ン シ ャ ル の 中 で 一 体 運 動 を して い る場 合 を想 像 す れ ば 容
易 に わか る よ うに,(5.148),
(5.149)中 の
く依 存 す る.し たが っ て,一 核 子strippingの
はlとj,特
形状 因子 はlに 強 く依 存 す る.そ
れ が(d, p)反 応 の 角 分 布 の 強 いl依 存 性 を 説 明 す る.形 状 因 子 のj依 依 存 性 ほ ど 強 くない.し
にlに 強
存 性 はl
か し,そ の 影 響 は 断 面 積 の 角 分 布 の 一 部 と偏 極 重 陽子
に よ る反 応 の 分解 能 に顕 著 に 現 れ る こ とが 見 出 され て い る.こ の こ とか ら逆 に, 反 応 の 実 験 的 観 測 を解 析 す る こ とに よ っ てl, jを 決 定 す る こ とが 可 能 に な る. lxb=0の
成分 に 対 して は
(5.150) に よ っ てzero-range近
似 を す る こ とが で き る.D0は
で あ る.(5.150)を(5.148)に
代 入 す る と,(5.103)に
こ の式 で 定 義 され る定 数 よ り,
(5.151) と な る.た
だ し,
(5.152) で あ る.ま
た(5.150)を(5.149)に
代 入す ると
(5.153)
と な る.た
だ し,
(5.154) で あ る.ψxAjl
m(rα)を
(5.155) とす る と
(5.156) ただ し
(5.157) で あ る.
の,(5.66)で
定 義 し た,球
面 波 展 開 の 動径 部分
は簡単に計算できて
(5.158) と な る.
zero-range近
似 の 定 数D0は
次 の よ う に し て 求 ま る.(5.140)を(5.150)に
代
入す る と
これ を
につ いて解 くと
(5.159) で あ る.こ れ が 正確 な 正確 な を1に
の漸 近 形 と一致 す るため に は,右 辺 の振 幅 が
の それ と一 致 し な けれ ば な らな い.後 者 は,
中の
規 格 化 し た と きの 無 限遠 で 漸 近 振 幅(asymptotic の振 幅cxb(1/2,0)の
積 で あ る.よ
amplitude) Nxbと
φd
って
(5.160)
が 得 ら れ る. (d,p)反
応 に 対 し て は,核
で あ る.た はn-p系
だ し,dの
range理
論 に よれ ば
結 合 エ ネ ル ギ ー を εdと し て
の ス ピ ン 三 重s状
rt=1.73fmを
力 のeffective
態 のeffective
rangeで
使 う とNnp=0.877fm-1が
状 態 の 確 率 で,0.942が
ま たrt
あ る[2].εd=2.225MeV,
求 ま る.ま
よ く使 わ れ る.こ
た,cxb(0,1/2)2はS
れ ら を使 う と
(5.161) が 得 られ る. (d,p)以 外 の 反 応 につ い て は,D0は 論 的パ ラ メ ター とし て,DWBAの
何 らか の 方 法 で 計 算 す るか,ま た は 現 象 計 算 結 果 が 実 験 と合 う よ う に決 め る.経 験
的 に,次 の よ うな 値 が よ い と され て い る[3].
(5.162)
(b) lxb≠0の
場合
(1) 軽 イ オ ン 反 応 4He以
下 の 軽 イ オ ン の 基 底 状 態 は ほ と ん どS(lxb=0)状
D(lxb=2)状
態 が わ ず か に 混 ざ っ て い る.形
し て は,
がrxbに
似(5.150)は で は0で
成 り 立 た な い.し
の 断 面 積 へ の 影 響 は,入
か し,
はVxbの
短 い レ ン ジ の外
非 局 所 性 は 小 さ い.
成 分 は ス ピ ン 偏 極 量 に 影 響 を 与 え る.し 射 エ ネ ル ギ ー が 低 け れ ば 小 さ い.た
応 の 場 合,Id-Ip=sとs=In+lnpがId=1, 両 立 す る た め に はs=3/2し し か な い.歪
成 分に対
つ い て ス カ ラ ー で は な い か ら,zero-range近
あ る か ら,Fjsl,m(rβ,rα)の
Fjsl,m(rβ,rα)のlxb=2の
態 で あ る が,
状 因 子 のlxb=2の
は 断 面 積 の 中 で 干 渉 し な い.し
と え ば,(d,
Ip=In=1/2に か 許 さ れ な い.一
方,lxb=0の
曲 ポ テ ン シ ャ ル に ス ピ ン 依 存 性 が な け れ ばsが た が っ て,lxb=2の
か し,そ p)反 対 して
場 合 はs=1/2 異 な るT行
列要素
成 分 は 小 さ い か ら,そ
れの
断 面 積 へ の 寄 与 も小 さ い.歪 は 弱 い か ら,こ し か し,入
p)の
れ
の 結 論 は あ ま り 変 わ ら な い. 射 エ ネ ル ギ ー が 高 く な る と,歪
Gjsl,m(rβ,rα)の な る.(d,
曲 ポ テ ン シ ャ ル に ス ピ ン 依 存 性 が あ っ て も,そ
中 で 変 化 が 大 き いlxb=2の 場 合,入
曲 波 の 振 動 が 激 し く な り, 成 分 の 寄 与 が 相 対 的 に大 き く
射 エ ネ ル ギ ー が 数 百MeVに
な る と,lxb=2の
成分 の
寄 与 が 主 に な る こ とが 知 られ て い る. (2) 重 イ オ ン 反 応 重 イ オ ン 反 応 で は,lxb≠0が 成 り立 た な い.し
か し,入
む し ろ 普 通 で あ る.こ
の 場 合 に は,(5.150)は
射 ・放 出 粒 子 の 質 量 が 核 子 の そ れ に 比 べ て は る か に
大 き い の で,
で あ る か ら,
(5.163) が 成 り立 つ.こ
れ を 無 反 跳(no-recoil)の
近 似 と 呼 ぶ こ と は す で に 述 べ た.
(c) 有 限 レ ン ジ の 補 正 zero-range近
似 の
に 対 す る 有 限 レ ン ジ の 補 正 は,Dsms(rxb,ξx)の
レ ンジ が 小 さい こ と を 利 用 す れ ば 非 局 所 光 学 ポ テ ン シ ャル に対 して使 った 局 所 エ ネ ル ギ ー 近 似(3.5節)と は,
同様 な 近 似 を使 っ て 行 う こ とが で き る.そ の 結 果
が ポ テ ン シ ャルUxA(rxA)内
定 す れ ば,zero-range近
の 一 体 運 動 で 近 似 で き る と仮
似 の 形状 因 子 に
(5.164) と い う 因 子 を 掛 け れ ば よ い,と
状 因子 Bxbはa内
い う こ と に な る.た
だ し,ρ
はzero-rangeの
形
の 平 均2乗 半 径,Uα, Uβ は歪 曲 ポ テ ン シ ャル(の 中心 力 部 分), のxとbの
結 合 エ ネ ル ギ ー,す
な わ ちxの
分 離 エ ネ ル ギ ー(正)で
あ る[4]. 重 イ オ ン の 場 合 の 有 限 レ ン ジ の 補 正 は 軽 イ オ ン の 場 合 と 異 な るが,や range近
は りzero
似 の 形 状 因 子 に 一 定 の 因 子 を掛 け る こ と に よ っ て 行 う こ とが で き る[5].
(d) 反 対 称 化 5.2.5項 に よれば反対 称化 され たstrippingの 形状 因子 で計算 した反対 称化 を考慮 しないそれ
倍 で あ る.た
だ し,Bc(xc)はB(x)に
子 移 行 反 応 で はxpとxnの
は上
の
含 ま れ る核 子c=p,nの
一 方 が1,他
方 が0だ
数 で あ る.一
か らNx=Bxで
あ る.よ
核
っ て,
(5.165) で あ る.
反 対 称 化 を考 慮 した 断 面 積 は,(5.85)に
よ り,
で 計 算 され た
断面積 の
倍 で あ る.一 核 子 移 行 反 応 の 場 合,こ の 値 はax/Bxで
あ る.よ っ て,反 対 称 化
を考 慮 し た と きに 断 面 積 は そ うし な い と きの
(5.166) 倍 で あ る. 以 上,も
っ ぱ らstrippingに
で あ る か ら,T行 DWBAに
つ い て 論 じ て き た が,pick
列 要 素 はstrippingに
よ る 取 扱 い はstrippingと
up反
応 は そ の 逆 過程
対 す る そ れ を 時 間 反 転 し た も の で あ る. ま っ た く 同 じ で あ る.そ
れ はstrippingと
ま っ た く 同 様 に 広 く研 究 さ れ て い る.
(e) 分 光 学 的 解 析 核A,
Bの
波 動 関 数 の 重 な り φAB(rxA,ξx)は,原
理 的 に は,φAと
か っ て い れ ば そ れ ら の 重 な り と し て 計 算 で き る.し 核 表 面 付 近 で 十 分 な 精 度 を も つ φA,
φBは,わ
φBは 次 のSchrodinger方
程 式 を 満 た す.
わ
応 の 計 算 に肝 要 な
か っ て い な い 場 合 が 多 い.エ
ル ギ ー を は じ め 構 造 論 の 対 象 と な る 多 くの 量 は,核 け で 決 ま っ て し ま うか ら で あ る.
か し,反
φBが
ネ
内部 で の 波 動 関 数 の様 子 だ
た だ しhAはAの ル ギ ー,VxAは
内 部 ハ ミ ル ト ニ ア ン,KxAはx-A間
の相対運動 の運動エ ネ
相 互 作 用 の ポ テ ン シ ャ ル で あ る.
こ れ と φAと の 内 積 を と る と,
と して
(5.167) と な る.こ れ が φAB(rxA,ξx)が も し,φBが
満 た す べ き方 程 式 で あ る.
一粒 子 模 型 で よ く記 述 で き,一 粒 子 ポ テ ン シ ャ ルが 中 心 力+ス
ピ ン軌 道 結 合 ポ テ ン シ ャ ル で あ れ ば
(5.168) と書 け る.nは
一粒 子 軌 道 の 主 量 子 数 で あ る.
は1に
れ て い る とす る.φ'Bは 一粒 子 模 型 で は書 け な い部 分で あ る.φBは
規格化 さ
反対称 化 さ
れ て い る か ら,も し 一粒 子 模 型 が 完 全 に正 し けれ ば,
(5.169) で あ る.そ
う で な け れ ば,φ'Bが
あ る分 だ け こ の 値 よ り小 さ い.(5.168)を(5.167)
に 代 入 し,
と お け ば,
は近似
的 に 次 の 方 程 式 を 満 た す.
(5.170) (5.170)の 規 格 化 され た解
を使 えば
(5.171) と な る.実
際 に は,UxA(rxA,ξx)は
計 算 せ ず,物
理 的 に適 当 と思 わ れ る形 を も
つ 中 心 力 と ス ピ ン 軌 道 結 合 力 と を 仮 定 し,そ
れ らの 深 さ をエ ネ ルギ ー 固有 値 が
εBAの
方,cxA(n,l,j)は
実 測 値 に 等 し くな る よ う に 決 め る.一
の 計 算 に よ っ て 求 め て お き,そ と す る.こ
れ を
の 方 法 は 分 離 エ ネ ル ギ ー の 方 法(separation
れ,最
も広 く使 わ れ て い る.こ
が1に
近 くな く て は な ら な い.そ
で あ る.し
か し,実
際 に は,こ
た とえば 殻 模 型
に 掛 け て energy
method)と
よば
の 方 法 が よ い 近 似 で あ る た め に は,cxA(n,l,j) う で な け れ ば,(5.171)が
の 近 似 がcxA(n,l,j)の
成 り立 た な い か ら
小 さい と きに も しば しば
使 われ て い る.こ の場 合 に は,εBAが
単 一 粒 子 模 型 で 与 え られ るエ ネル ギ ー と
は 大 き く違 って い るか ら,そ れ に合 わせ る よ うに 決 め た 的 に意 味 が は っ き りしな い.た
は物理
とえば 殻 模 型 の 一 体 ポ テ ン シ ャル とは 非 常 に違
う もの で あ ろ う. よ り現 実 的 な 方 法 は,(5.167)を
(5.172) の よ う に 変 形 し,右 る.こ
の 場 合,φAと
域 で に,正
辺 の 行 列 要 素 を φA, φBがVxAの を,絶
φBの 知 識 を 使 っ て 計 算 す る こ と で あ
レ ン ジ 内 で よ い 近 似 な らrxAの
対 値 も 含 め て,よ
し い 漸 近 形 はGreen関
数
殻 模 型 の ポ テ ン シ ャ ルUshellが
すべ ての領
い 近 似 で 求 め る こ とが で き る.特 に よ っ て 保 証 され る.
知 られ て い る と き は,そ
れ を分 母 に 入 れ て
(5.173) と お い て も よい[6]. が
は角 運 動 量 表 示 で 計 算 され る.そ の 部 分 波
で あ る.こ れ らの 方 法 は 実 際 の 計 算 に使 わ れ て よ い 結 果 を
収 め た[7]. 核A, Bの 波 動 関 数 の 重 な り の 成 分 Bの 中 で の 移 行 核 子 の 運 動 を記 述 す る.ノ ル ム に 状 態
は残留核 は φBの 中
が 存 在 す る 確 率 に 比 例 す る.そ れ は μ に よ らな い.B
中の 核 子xの
数 をBxと
す るとき
(5.174) を 分 光 学 的 因 子(spectroscopic
factor)と
呼 ぶ.そ
φBの 構造 に深 く関 係 す る量 で あ る.一 方,(5.136)に
れ は 反 応 に 関 与 す る φA, よ る と形 状 因子 の(lxAj)
成 分 は ψlxAjμの 振 幅 に比 例 す る.ゆ え に こ の 成 分 だ け か ら な る反 応 の 断 面 積 は はBxに
に 比 例 す る.さ ら に(5.166)に よ る と,反 対 称 化 を 考 慮 した 断面 積 比 例 す る.し た が っ て,SxAB(l, j)が 核 の 内 部 構 造 と断 面 積 を繋 ぐ量
で あ る.分 光 学 的 因子 は核 構 造 論 的 に 重 要 な 量 で,多 て い る.一 方,そ
くの 理 論 的 研 究 が な され
れ は 実 験 的 に観 測 され た 断面 積 をDWBAで
再現す るとい う
条 件 か ら決 定 す る こ とが で き る.そ れ を φA, φBの 構 造 に 関す る理 論 の 理 論 値 と比 較 す れ ば,そ
の 良 否 につ い て情 報 を引 き出 す こ とが で き る.こ の よ うな手
法 は 非 常 に 広 い 範 囲 で 成 功 し て い る.た だ し,大 多 数 の 解 析 は形 状 因 子 の 計 算 に 分 離 エ ネ ルギ ー 法 を用 い て い る.す で に述 べ た よ う,SxAB(l, 合 に は,こ
j)が 小 さい 場
の 近似 が よ い保 証 は な い こ と に注 意 す べ きで あ る.
分 光 学 的 因 子 を理 論 的 に計 算 す る に は, 対 す る模 型 が 必 要 で あ る.φBに
もし くは φA, φBに
対 して 一 粒 子 模 型 が よけ れ ば,分 離 エ ネル ギ ー
法 も よい 近 似 で,分 光 学 的 因子 は,(5.168)に
より
(5.175) で 与 え ら れ る.一 る.そ
粒 子 模 型 が 正 確 な ら,(5.169)に
う で な け れ ば,SxAB(l,j)<1で
あ る.先
よ り,SxAB(l,j)=1に
な
に 注 意 し た よ う に,SxAB(l,j)
が 小 さ い 場 合 に は 分 離 エ ネ ル ギ ー 法 自 体 の 精 度 も 問 題 で あ る. よ り一 般 的 に,φAと SxAB(l,j)は,第
φBに 対 し て 殻 模 型 を 基 礎 と す る 近 似 が よ い 場 合 に は,
二 量 子 化 の 方 法 を 用 い る と 見 通 し よ く計 算 す る こ とが で き る.
殻 模 型 一 粒 子 準 位 γ=(n,l,j,μ)の
状 態
にxを1個
生 成 す る演 算
子 をc+γ と す る と
で あ る.こ ら,右
れ と φBIBMBと
の 内 積 を と る と,φBIBMBは
辺 の 各 項 は 同 じ 寄 与 を 与 え,そ
と な る.そ
の 項 数 はBxで
反対 称 化 され てい るか あるか ら
こで
(5.176) と お く と,
一方,
と直交性を使うと容易に
(5.177)
と 書 く こ と が で き る.ゆ
え に
の近 似 で
(5.178) で あ る.以
下 に,(5.178)を
い く つ か の 場 合 に 適 用 し て み よ う.
(1)
が そ れ ぞ れ 配 位(γ)nAお
と す る.た
だ し,αA,
で あ る か ら,こ
αBは(IA,
MA),
よ び(γ)nA+1を
(IB, MB)以
持 つ 場 合.
外 の 量 子 数 で あ る.
の 場 合 γ 軌 道 へ の 遷 移 の 分 光 学 的 因 子 は,(5.178)に
よ り,
(5.179) こ こ に,
は(γ)nA+1か
を 抜 き 出 すc. (1.1)
IA=0,
f.p. (coefficient αA=セ
of fractional ニ ョ リ テ ィvA=0,
parentage)で
あ る.特
IB=j,
ら1個
の核 子
に,
αB=vB=1で
あ る
場 合 は
と な る.右 Aが
辺 は 軌 道 γ が 空 い て い る 確 率 に 等 し い.特
閉 殻 状 態 φA00,し
SxA(γ)=1で
あ る.も
た が っ てφBIBMBが し,Aの
に,nA=0,す
純 粋 の 一 粒 子 状 態(γ)1の
励 起 状 態 の 成 分 φ'BIBMBが
こ の と きは 明 らか に
に な る. (1.2)
IA=j,
vA=1,
IB=0,
vB=0で
あ る場 合 は
な わち 場合 は
混 じ っ て い る場 合 は
で あ る.特 (γ)-1の
に,nB=2j+1,す
な わ ちBが
閉 殻 状 態 φB00,Aが
一空孔状態
場合 は
で あ る. (2) AがBCSの
基 底 状 態,Bが
一準 粒 子 状 態 に あ る と き は
で あ る.た だ し,u2γ は 一準 粒 子が 軌 道 γ を 占め て い る確 率 で あ る.逆 に,Bが BCSの
基 底 状 態,Aが
と な る.た
だ し,v2γ は 一 準 粒 子 が 軌 道 γ を 占 め て い な い 確 率 で あ る.
(3) 和 則(sum 残 留 核Bに ら を(nB,
一 準 粒 子 空 孔 状 態 で あ る と きは
rule) は 同 じ 角 運 動 量IBと
IB, πB)で
パ リ テ ィπBの 状 態 が た く さ ん あ る.そ
表 す こ と に す る.nBは"主
核 子 移 行 に よ っ て そ の 状 態 が で き る 場 合,そ
と す る.πBは
し か る に,(5.176)とCG係
πAとlxAで
量 子 数"で
あ る.軌
れ
道 γへ の
の 遷 移 に対 す る 分 光 学 的 因 子 を
一 意 的 に 決 ま る.(5.178)か
ら直 ち に
数の規格直交性 に よ り
よ っ て,
(5.180) 右辺 の
は 状 態 φAIAMAで μ とMAに
一方
一 粒 子 状 態 γ ≡(n,l,j,μ)が
つ い て の 平 均 値 をV(γ)2と
,(5.180)の
左 辺 の 各 項 はMAに
空 い て い る 確 率 で あ る.v2γ の
お くと
よ ら な い.よ
って
(5.181) た だ し,IBは
選 択 則 に よっ て 許 され る も の だ け で あ る.(5.181)が
こ の場 合 の
和 則 で あ る.
(f) 天 体 核 物 理 学 へ の 応 用 最 近,天 体 核 物 理 学 で 重 要 な超 低 エ ネ ルギ ー で の の 断 面 積 を,低 エ ネ ル ギ ー で の 陽 子 移 行 反 応 安 定 核7Beの
,不
ビ ー ム を使 った
な どの断面
積 を測 って 求 め る,と い う方 法 が 提 唱 され た[8].超 低 エ ネ ルギ ー で の捕 獲 反 応 の 断 面 積 は 非 常 に 小 さ く,測 定が きわ め て 困難 で あ るが,こ の 方 法 を使 えば,そ れ を回 避 す る こ とが で き る.た と えば16O(3He,d)17Fの が 低 け れ ば,3Heは16Oに で16Oに
近 づ け な い か ら,陽 子 は16Oか
移行 し,17Fを
のDWBA解
る 陽 子 の16Oか
ら遠 く離 れ た場 所
作 る.こ の状 況 は超 低 エ ネル ギ ーの 陽 子 が16Oに
され る と き と同 じで あ る.し たが っ て,16O(3He,d)17Fの ば,そ
場 合,入 射 エ ネ ルギ ー
析 に よ って,問 題 の16O(p,γ)17Fの
捕獲
断 面 積 を正 確 に 測れ 計 算 に必 要 な捕 獲 され
ら非 常 に遠 い点 で の波 動 関 数 に つ い て の定 量 的 な情 報 が 得 られ
る.こ の 方 法 が 有 効 で あ る た め に は,DWBAが 核 の 周 辺(periphery)で
よい 近 似 で あ る こ と,反 応 が
お こ る こ と,歪 曲 ポ テ ン シ ャル が よ くわ か って い る こ
とが 必 要 で あ る.こ れ らは,個
々の 反 応 に つ い て確 か め ね ば な らな い.
(g) ク ラ ス タ ー移 行反 応 2個 以 上 の 核 子 が 移 行 す る 反 応 で も,そ れ らが 塊(ク
ラ ス ター)に な って 一
つ の粒 子 と してstripま た はpick upさ れ る,と 考 え て よ い場 合 が あ る.こ の反 応 の形 状 因子 の計 算 法 は,ク ラ ス ター の 質 量,ス た 一 核 子strippingの
場 合 と 同様 で あ る.こ
ピ ン な ど を 除 い て,上 に 述 べ
の 近 似 の 精 度 は 場 合 に よる が,反
応 を 定 性 的 に 理 解 す る た め の 現 象 論 と し て 役 に 立 つ.計
算 に は,zero-range近
似 を 使 う の が 普 通 で あ る.
5.2.7
二 核 子 移 行stripping,
次 に,二
核 子 が 同 時 に,し
pick
up反
応
か し バ ラ バ ラ に,strippingま
た はpick
upさ
れる
反応
を 考 え よ う.1, た と え ば,(t, な ど,が
2は そ れ ぞ れ 中 性 子 ま た は 陽 子 で あ る.こ p),
(3He, n),
よ く知 ら れ て い る.実
で き な い 場 合 が あ る.た る.し
(3He, p),
か し 軽 イ オ ン 反 応 で は,特
こ と に 変 わ り は な い.こ
は,こ
と え ば,(p,
(α,d)と
の 種 の 反 応 と し て は,
そ の 逆 過 程 で あ るpick
up
(p, t)
れ らの 反 応 に は 二 段 階 反応 の 寄 与 が 無 視 t)に お け る(p, d)(d, t)反 応 な ど が そ れ で あ
別 な 場 合 を 除 い て,一
れ に 対 し て,重
段 階過 程 が 重 要 で あ る
イ オ ン 反 応 で は,む
しろ二段階過程が
主 で あ る こ とが あ る.
(a) 形 状 因 子 こ の 系 を 記 述 す る 座 標 系 と そ れ に 付 随 す る 角 運 動 量 を 図5.3に 二 核 子 系x=1+2の
示 す.
内部 座 標 に 相 当 す る もの は
(5.182) で あ る.
図5.3 二核子移行反応 を記述す る座標の組 とそれに付随す る角運動量(括 弧 内)
この反応の形状 因子は
で 与 え ら れ る.こ
れ を5.2.5項
の 一 般 論 に従 っ て
(5.183) と 書 く.た
だ し,
(5.184a) お よび
(5.184b) で あ る.φBIBMBと
φaIaMaを
そ れ ぞ れAお
よ びbの
固 有 関 数 系 で 展 開す る と
(5.185a)
(5.185b) の 形 に な る.
と の
は こ れ らの 式 で 定 義 され る.ま
た φ'B(φ'a)は
を含 ま な い 成 分 で あ る.ゆ え に
(5.186) ま た,簡
単 の た め にV1b+V2bが
ξbに よ ら な い と す る と
(5.187)
ただ し
(5.188) で あ る.
と
を さ ら に軌 道 角 運 動 量 と ス ピ ン角 運 動 量 の 固有 状 態 の 成
分 に分 解 す る.そ れ に は,一 核 子 移 行 の と き と違 って,LS結
合
(5.189a) (5.189b) を使 うのが 便 利 で あ る.こ れ に 対 応 して
(5.190a)
(5.190b) と な る.(5.190a),
(5.190b),
(5.186),
(5.187)を(5.183)に
使 う と
(5.191) が 得 ら れ る.こ
こに
(5.192) で あ る.一
核 子strippingの
と き と同様 に
(5.193) を 定 義 す れ ば,一
核 子strippingの
と き と ま っ た く 同 じ計 算 で
(5.194) お よび
(5.195) を 得 る. 反 対 称 化 さ れ た 形 状 因 子 は,(5.110),
(5.111)お
よ び(5.109)に
よ り,
(5.196) で あ る.こ
こ に,
(5.197) はx=nn,
pp,
npに
対 して そ れ ぞ れ
お よび
(5.198)
で あ る. さて,具 体 的 に
と
粒子 の 内部 波 動 関 数 の知 識が 必 要 で あ る.aが4体
を計 算 す る には 反応 系 以 下 の比 較 的小 さい系 で あ る
場 合 に は,波 動 関 数 の精 密 な研 究 が 行 わ れ て い る.こ こで は, の 計 算 の例 と し て,φaI aMaと
し て最 も簡 単 なlxb=0お
よびl12=0の
近似 固
有関数
(5.199)
を 仮 定 し よ う. こ こ に
は 空 間 部 分 でlα=lxb=l12=0の
固 有 関 数,
は ス ピ ン 部 分 の 角 運 動 量 の 固 有 関 数 で,と
て い る.
はbの
もに 規 格 化 さ れ
固 有 関数φbIbMbで
(5.200) の よ う に 展 開 で き る.X'aは{φbIbMb}を を(5.190b)に
含 ま な い 成 分 で あ る.(5.199),
使 え ば,
(5.200)
よ って
(5.201) を 得 る.た
だ し
(5.202) で あ る.(5.201)を(5.193)に
と な る.ま (5.195)に
代 入すれば
た,
で あ る.こ
れ らを
代 入す る と
(5.203) を 得 る.こ
れ が 波 動 関 数(5.199)の
も と で の
(5.203)を
使 っ て 有 限 レ ン ジ のDWBAの
zero-range近
似 が し ば し ば 使 わ れ る.す
て の 広 が り は 粒 子aの
の 表 式 で あ る.
計 算 を す る の は 複 雑 で あ る か ら, な わ ち,D00(rxb,r21)の,r21に
大 き さ の 程 度 で あ り,そ
つい
の 中 で はVxb(rxb,r21)はrxbに
つ い て 短 い レ ン ジ を も つ か ら,
(5.204) と 近 似 し て よ い で あ ろ う.よ
っ て,(5.153)に
対 応 し て,
(5.205)
と な る.こ
こに
(5.206) ただし
(5.207) で あ る.Ijslm(rα)はYlm(rα)*と
と 置 く と,(5.158)に
同 じ変 換 性 を もっ て い るか ら
対応 して
(5.208) と な る. さ て,φaは
同 種 核 子 の 交 換 に対 し て 反 対 称 化 され て い る.1と2の
に 対 し て,φaの
空 間 部 分 は 対 称 で あ る か ら,も
し1と2が
は 反 対 称 で な け れ ば な ら な い.し の成 分 だ け を もつ.し
たが って こ の場 合 には,1と2は
ピ ン も0と い う状 態 で 移 行 す る.こ れ はBCSの 状 態 で あ るか ら,反 応 の 断 面積 は,核AとBが あ る場 合 に 大 き くな る こ とが 予 想 され[9],実 こ の種 の 反 応 の 最 も重 要 な 例 で あ る.1と2が
交換
同種 核 子 な ら
たが って,そ
れ はSα=0
軌 道 角 運 動 量 も合 成 ス
対 相 関準 粒 子 と同 じ角 運 動 量 そ の よ うな対 相 関 を もつ状 態 に 験 的 に検 証 され て い る.(p,t)は 異 種 核 子,す
な わ ちpとn,な
らばSα に は対 称 性 に よ る制 限 は な い.し か し実 際 の 軽 イオ ン 反 応 で は,pとn は主 と し てSα=1の α とdの
状 態 で 移 行 す る場 合 が 多 い.実 際,た
ス ピ ン は そ れ ぞ れ0と1だ
か ら,Sα=1し
と えば(α,d)で は,
か 許 され な い.
(b) 殻 模 型 の 描 像 に よ る計 算 A. 分 光 学 的 因 子 核A,Bに はB中
対 し て 殻 模 型 の 描 像 が よい 場 合 を考 え よ う.移 行 し た 核 子1と2
で そ れ ぞ れ 一 核 子 準 位 γ1≡(n1l1j1)お
よ び γ2≡(n1l2j2)の
どれか を
あ る確 率 振 幅 で 占め る.γiの 波 動 関 数 をφγi(riA,ξi)とし,γ1γ2の 組 γか らな り,合 成 角 運 動 量jの
固 有 値 が(j,μ)で あ る二 核 子 対 の,1に
規 格 化 され た 波
動 関数を
(5.209)
と す る.A12は はppの
粒 子1,2に
つ い て の 反 対 称 化 演 算 子 で,そ
と き,
npの
と き1で
あ る.Bの
れ ら が 同 種nnま
た
波動 関数は
(5.210) で 与 え られ る.φ'BIBMBはAの
励 起 状 態 か らな る.AとBの
波動 関数 の重な
りのjμ 成 分 は
(5.211) で 与 え ら れ る.(5.211)は, 和 か ら な る こ と を 示 す.こ
が い ろい ろ な 配 位 γ の 寄 与 の 干 渉 的 れ は,一
核 子strippingの
特 徴 で あ る.
各 配 位(γ,j)の
分光 学的振 幅を
核 子strippingの
と き に は 見 ら れ な い,二
(5.212) で 定 義 す る.Nxは(5.197)で strippingの
定 義 され た 数 で あ る.θAB(γ,j)の
と き と 同 様 に,第
二 中 性 子 移 行 反 応 の 場 合,1個 成 す る 演 算 子 を
計 算 に は,一
二 量 子 化 の 方 法 を 使 うの が 便 利 で あ る.た のnを
核子
と え ば,
一 核 子 状 態
に生
と す る と,
(5.213) はnを
γ1,γ2に1個
ず つ 生 成 して 合 成 角 運 動 量 をj,μ
れ た 対 を 作 る演 算 子 で あ る.移 行 す る のがnとpの
に 組 み,反 対 称 化 さ
対 で あ る と きは,そ
れぞ
れ の 生 成 演 算 子 の 積 でA+γjμに対 応 す る二 核 子 の生 成 演 算 子 を 定 義 す れ ば よい. A+γjμに よ って
(5.214) を 定 義 す る と,(5.210)か
ら直 ち に
(5.215) が 得 られ る.ゆ え に
(5.216)
で あ る. 例 と し てBCSの
基 底 状 態(準
粒 子 数0の
号 を 簡 単 に す る た め に,(γ,μ)を
状 態)間
の 遷 移 を 考 え て み よ う.記
λ,(γ,-μ)を-λ
と 書 く こ と に し,準
粒 子の
λ へ の 生 成 ・消 滅 演 算 子 を そ れ ぞ れ α+λお よ び αλ とす る と
た だ し,sλ=(-1)j-μ
で あ る.仮
定 に よ り,
だ か ら,
で 生 き残 るの は
λ2=-λ1で,
の 項 だ け で あ る.IA=IB=
0だ か らj=0で,結
局
(5.217) と な る.た る.し
だ し,γ1=γ2=γ
た が っ て,異
か ら,こ
れ は常 に 正 で あ
な る γ の 寄 与 は す べ て 建 設 的 に 寄 与 し,結
果 と して 反 応 の
断 面 積 は 大 き く な る.こ
と書 い た.uγυ γ>0だ
れ が,前
述 し た,対
相 関 に よる 断 面 積 の 高 揚 に ほ か な
ら な い. B. 形 状 因 子 の 標 準 形 (5.209)の
右 辺 を 計 算 す る に は 座 標 変 換(r1A,r2A)→(rxA,r21)を
し,そ
れ
に 伴 う 角 運 動 量 の 組 み 替 え,
から へ
をせ ね ば な ら な い.座 標 変 換 は,一 般 に は,直 接 解 析 的 に 実 行 す る こ とは で き な い.し か し,一 核 子 波 動 関 数 が 調 和 振 動 子(H.O.)型
であ る場合
には
(5.218) の 展 開 が 成 り立 つ.こ
こ に,
波 動 関 数 系 で あ る. ば れ る も の で あ る.そ
は そ れ ぞ れH.O.型 は 既 知 の,Moshinsky-Talmi係
れ は
の
数 と呼
の と き に 限 っ て0で
な い.一
般 の
に 対 し て も,そ
の 波 動 関 数 系 で 展 開 す れ ば,
れ をH.O.型
は 二 つ のH.O.型
関 数 の 積 の 和 の 形 に 書 け る.
5.2.8
二 段
時 と し て,直 態 群{γ}を
階
過 程
接 反 応 α → β に は 一 段 階 過 程 の ほ か に,α,β
経 過 す る 二 段 階 過 程 α →{γ}→
た と え ば,集
とは 別 の 内 部 状
β が 重 要 で あ る 場 合 が あ る.
団 運 動 の 二 フ ォ ノ ン状 態 を 一 段 階 で は 励 起 で き な い が,一
状 態 を 経 由 す れ ば 二 段 階 で 励 起 す る こ とが で き る.一 段 階 の(p,d)反 の1粒
子2空
孔(1p-2h)状
フ ォノン
応 で 閉殻 核
態 を 励 起 す る こ と は で き な い が,(p,t)(t,d)反
応 では
可 能 で あ る.(16O,15C)は
一 段 階 で は 不 可 能 で あ るが(16O,17O)(17O,15C)ま
は(16O,14C)(14C,15C)な
ら可 能 で あ る.(3He,t)で
は 一 段 階 過 程 は,運
角 運 動 量 移 行が 大 きい と き
動 量 の 不 整 合 の た め に 著 し く弱 く,代 わ っ て(3He,α)(α,t)が
主 な 機 構 に な る[10].二 で あ る[11].(p,t)反 (p,t)反
た
核 子 移 行 反 応(18O,16O)は 応 に お い て す ら,継
主 に(18O,17O)(17O,16O)
続 移 行 反 応(p,d)(d,t)が
一段 階の
応 と 少 な く と も 同 程 度 の 強 さ で 寄 与 す る こ と が 知 ら れ て い る[12].
二 段 階 過 程 のT行
で 与 え ら れ る.こ
列 要 素 はDWBA展
開 の 第2近
似 で,(5.34)に
れ は,
よ り
で あ る か ら,
(5.219) と書 く こ と も で き る.こ H(P)は
れ を 二 次 のDWBA
(second
order
一 般 に チ ャ ネ ル δで
の う ち ど れ を と る か,そ
に 対 し て
い う.
の 形 を と る.α
γ → β が 組 み 替 え 反 応 で あ る場 合 に は(5.219)の δ と し て α,γ,β
DWBA)と
右 辺 の 二 つ のH(P)に
→ γ, 対 して
れ ぞ れ 二 通 り の 選 択 が あ る.α
→ γ
と とれ ば
(5.220) と な る. し遷 移 α → range近
はDWBAのprior γがpick
upな
ら,そ
formの
形 状 因 子 で あ る.し
れ はDWBAの
似 な ど を 使 っ て 計 算 す る こ とが で き る.し
た が っ て,も
計 算 で よ く知 ら れ て い るzeroか し,α
→ γがstrippingで
あ る と そ れ は で き な い.strippingに
適 合 す る の はpost
form,
の 方 で あ る が,
(5.221) であ る.
がDWBAのstrippingの
の 右 辺 に は 第2項
形 状 因子 で あ る.し か し,(5.221)
が あ る.そ れ は
に等 しい こ とか
ら もわか る よ うに,チ ャ ネ ル α と γ の非 直交 性 に 由 来 す る.非 直 交 項 と呼 ば れ る.同 様 に して 第2段
階 γ→ β で は,そ れ がstrippingな
子 の 計 算 だ け で す み,pick
らDWBAの
形状 因
upで あ れ ば 非 直 交 項 も計 算 せ ね ば な らな い.非 直
交 項 は微 分 演 算 子 を含 むか ら計 算 が 面 倒 で あ る.し か し実 際 に は,そ の 寄 与 は 比 較 的小 さ い と して,そ れ を無 視 し た計 算 が 行 わ れ る こ と も多 い.
5.3 チ ャ ネ ル 結 合 法
DWBA展
開 で は,系
し か し,実
の 異 な る 内 部 状 態 間 の 結 合 が 弱 く,摂 動 論 が よ い と し た.
際 に 起 こ る 反 応 の 中 に は,チ
な い ほ ど 強 い 場 合 が あ る.こ of coupled
channels以
の 場 合 に 有 効 な 現 象 論 が チ ャ ネ ル 結 合 法(method
下 略 し てCCと
は 前 か ら 使 わ れ て き た が,核 24Mg(p
,p')24Mg*(第1励
ャ ネ ル 間 の 結 合 が 摂 動 論 で は 取 り扱 え
呼 ぶ)で
あ る.こ
の 方 法 は原 子 物 理 で
反 応 論 に そ れ が 導 入 さ れ た の はYoshidaに 起.2+,一
フ ォ ノ ン 状 態)の
よる
計 算 におい てであ る
[13].
(a) チ ャ ネ ル 結 合 方 程 式 CCは5.1節
の 一般 論 でP空
の近 似 下 で の
間が 二粒 子 チ ャネ ルか らな る場 合 を取 り扱 う.CC
を ΨCCと 書 くこ と にす る と,そ の 座 標 表 示 は,た
とえば
(5.222) の形 を して い る.{φ γ}は 二粒 子 系 の 内 部 波動 関 数 を表 す.右 辺 は 第1項 か らそ れ ぞ れ,入
射 チ ャ ネル,非
弾 性 チ ャ ネ ル,組 み 替 え チ ャ ネ ル,入 射 粒 子 が 二 つ
の破 片 に 分 解 した チ ャ ネル に対 応 す る.分 解 チ ャ ネル の 項 のkは 片 間 の 相 対 運 動 の 運 動 量 で あ る.CCで
分 解 した2破
は,{φ γ}を 既 知 と して 未 知 関 数{χγ}
を計算す る. ΨCCに
対 す る方 程 式 は(5.11)よ
り
(5.223) 相対 運 動 の 波 動 関 数{χγ}に 対 す る 方 程 式 は,(5.12)よ
り
(5.224) で あ る.境 界 条 件 は,漸
近 形が 開い た チ ャネ ル に 対 し て は
(5.225) 閉じたチ ャネルに対 しては
(5.226) で あ る.た だ し,cγ は 定 数, 実 際 の 計 算 で は,歪
で あ る.
曲ポ テ ン シ ャル{Uγ}は
ル で 置 き換 え られ る.そ れ を 用 い たCC計
しば し ば 現 象 論 的 な ポ テ ン シ ャ
算 が 実 験 結 果 を説 明 で きる よ うに,
そ れ に含 まれ るパ ラ メ タ ー を調 節 す る こ と も あ る.い ず れ に せ よ,Uγ
は,そ
れ だ け で は 弾 性 チ ャ ネ ル の 散 乱 を 記 述 しな い か ら,光 学 ポ テ ン シ ャルで は な い. そ れ は,チ
ャ ネ ル 結 合 が な い と きの ポ テ ン シ ャル,と
ポ テ ン シ ャル"と 呼 ば れ る.し か し,Uγ
い う意 味 で"裸 の(bare)
と し て は 光 学 ポ テ ン シ ャ ル と似 た 複
素 中 心 力 と,ス ピ ン軌 道 結 合 力 な ど を持 つ ポ テ ン シ ャ ル を 仮 定 す る のが 普 通 で あ る. Uγ γ'は チ ャ ネ ル γと γ'が 同 じ粒 子 構 成 で あ れ ば 局 所 ポ テ ン シ ャ ル で あ る. した が っ て,{γ}が 弾 性 ・非 弾 性 散 乱 チ ャネ ル だ けか らな り,結 合 す る チ ャ ネ ル が 核 の 有 限個 の 離 散 状 態 の そ れ で あ れ ば,(5.224)は 程 式 に な り,比 較 的 容 易 に解 け る.し か し,(5.222)の 連 続 状 態 を含 む 場 合 に は,結 合 す る チ ャ ネル の 数,し
有限次元 の連立微 分方 よ うに非 弾 性 チ ャ ネル が たが っ て(5.224)の
次 元,
は 連 続 無 限 に な る.こ の 場 合 の 処 理 に は 特 別 な工 夫 が 必 要 で,そ れ に つ い て は 5.3.3項 で 詳 論 す る. γ と γ'が組 み 替 え チ ャネル で あ る と,φ γ と φγ'は直 交 せ ず,そ の結 果Uγ γ'
は 非 局 所 型 に な る.し
た が っ て,{γ}が
は 連 立 微 積 分 方 程 式 に な る.こ
(b)チ
組 み 替 え チ ャ ネ ル を 含 む場 合 は,(5.224)
の 場 合 に つ い て は5.3.2項
で 論 じ る.
ャ ネル 結 合 方 程 式 の 解 法
連 立 方 程 式 を 実 際 に 解 くた め に さ まざ まな 方 法が 使 わ れ て い る.例
と して,
そ の 中 の い くつ か の 原 理 を 簡 単 に 説 明 す れ ば 次 の通 りで あ る. (1)逐 次 近 似 法 はDWBA展 算 す る に は,第(n-1)次
開 そ の もの で あ る.Xγ
の 第n次
近似X(n)γ を計
近 似 まで を既 知 と して
(5.227) をX(n)γに対 す る 非 斉 次 の微 分 方 程 式 と して 境 界 条件(5.225)ま
た は(5.226)の
下 に 解 け ば よい.こ れ を解 が 数 値 的 に収 束 す る まで 繰 り返 す.た だ し,収 束 は 保 証 され な い.も
し,入 射 チ ャ ネル α と の結 合 の 強 さの 順 に γ を並 べ る こ とが
で きれ ば,そ の 順 に(5.227)型
の 方 程 式 の 右 辺 の γ'の中 で す で にX(n)γ'が求 ま っ
て い る もの に対 して はX(n-1)γ'をX(n)γ'で 置 き換 え れ ば 収 束 が 速 い[14]. (2)連 立 方 程 式 を 直 接 解 くに は,ΨCCを
全 角 運動 量Jの
固 有 関 数 ΨJMで
(5.228) と展 開 す る のが 便 利 で あ る.(J,M)は
運 動 の 恒 量で あ るか ら,(5.223)は 各 ΨJM
に対 す る 方程 式 に な り,異 な る ΨJMが
混 ざ る こ とは な い.ΨJMを
各 チ ャ ネル
で の 角 運 動 量 の 固 有 関数 に展 開 して
(5.229) の 形 に書 く.た だ し, 性 の ゆ え に,動 径 関数 は は 等 しいJの
で あ る.回 転 対 称 はMに
よ らな い.こ の 表示 を使 うと,(5.223)
の連 立 方 程 式 に な る.そ れ を解 く実 際 的 方 法 に は 次
の よ うな もの が あ る. (a)rγ の座 標 軸 を 適 当 な 大 き さの 区 間(メ
ッシ ュ)に 分 け,各 分 点rγiで の
を未 知 数 と し,数 値 微 分,数 値 積 分 の公 式 を使 って
す る 連 立 一 次 斉 次 方 程 式 を導 く.
に対
に 対 し て 一 組 の境 界 条 件 を 課 せ
ば,一 組 の 独 立 解 が 得 られ る.こ の よ うに し て,
の数 に等 しい 数 の 独
立 解 を 求 め て お く.
は そ の よ うに し てす べ て のJの
す べ て の連 立 方 程 式
に 対 して 求 め た独 立 解 の 一 次 結 合 で あ る.一 次 結 合 の 係 数 は,そ れ が 境 界 条 件 (5.225)お
よび(5.226)を
満 た す,と い う条 件 で 決 ま る.
(b)連 立 方 程 式 を 直接 解 く代 わ りに,次
の よ う な逐 次 近 似 で 解 く方 法が あ る
[15].弾 性 ・非 弾 性 散 乱 チ ャ ネル だ けが 結 合 す る場 合,
に対
して
とお く.
は チ ャネル 結 合 が な い とし た と きの 方 程 式 の 解 で,そ
れ ぞ れ 振 幅1のr=0で
正 則 な 解 お よび 無 限 遠 で 外 向 き進 行 波 の 漸 近 形 を持
つ 解 で あ る.
はrに 緩 や か に依 存 す る 関 数 で,一 階 の 連 立 微
分 方 程 式 をみ たす.そ れ らに 境 界 条件: を 課 し,逐 次 近 似 で 解 く.第0近 ∞ か らr=0ま
似 で は す べ て の
で 積 分 して
の 第1近
と して,r=
似 を得 る.た
だ し,cJMLは
とな る係 数 で あ る.そ れ を使 って,r=0
か ら ∞ まで 積 分 す る こ とに よって
の 第1近 似 を得 る,等 々で あ る.
こ の 方 法 で は 数 値 微 分 は 不 用 で あ り,数 値 積 分 は容 易 で あ る. (c) を適 当 な基 底 関 数 系 で展 開 し,そ の 展 開 係 数 を 未 知 数 と し て そ れ に対 す る 連 立 方 程 式 を 解 く,と い う方 法 が あ る. gγi(rγ)を,た とえ ば レ ンジが 等 比 数 列 を な すGauss関
数 な ど,適 当 に と って 置
く と,よ い 精 度 の計 算 が か な りの 部 分 解 析 的 に で きる,と い う長 所が あ る[16]. 以 下 に,い
5.3.1 CCは
くつ か の典 型 的 な場 合 に対 す るCCの
応 用 例 を見 て み よ う.
非 弾 性 散 乱 に よ る集 団運 動 状 態 の 励 起
まず,p,α
な どの 軽 イ オ ン非 弾性 散 乱 に よ る集 団運 動 状 態 の励 起 の 記
述 に 大 き な成 功 を納 め た.同
じバ ン ドに属 す る集 団 運 動(振 動,回 転)状
チ ャ ネ ル の 間 に は 強 い 結 合 が あ る.し たが って,集
団運 動 の 励 起 状 態 へ の遷 移
の 記 述 に は,そ れ と強 く結 合 す るチ ャ ネル を取 り込 ん だCC計 こ の 場 合 に は,P空
算 が 必 要 で あ る.
間 の す べ て の チ ャ ネル の 内 部 座 標 ξ,相 対 座 標r,お
び ハ ミル トニ ア ンH(P)は
態の
よ
共 通 で あ る.ま た,異 な るチ ャ ネル は 同 じ核 の 異 な
る 固 有 状 態 に対 応 す るか ら,そ れ らの 内 部 波 動 関 数 は 直 交 す る.し
たが って,
(5.230) と な る.Vγ(r,ξ)は 集 団運 動 の 励 起 を引 き起 こす 現 象 論 的相 互作 用 で,DWBA で 使 わ れ て い るポ テ ン シ ャル と同 じで あ る.遷 移が フ ォ ノ ンの励 起 に よる もの で あれ ば(5.92)お
よび(5.93)で,ま
た 回転 運 動 状 態 間 の 遷 移 で あ る場 合 は(5.98)
で 与 え られ る.Uγγ'は これ ら のVγ を相 互作 用 とす るDWBAの
形 状 因 子 とま っ
た く同形 で あ る.た だ し,γ も γ'も一 般 に は励 起 状 態 で あ るか ら,遷 移 には 励 起 と脱 励 起 とが あ る. 以上 の よ うに し て,集 団 運動 励 起 の チ ャ ネル 結 合 の ポ テ ンシ ャル が 与 え られ る と,前 記 の 一 般 論 に従 っ て(5.224)を CCは
解 い て 散 乱 振 幅 を計 算 す る こ とが で き る.
多 くの(p,p'),(d,d'),(α,α')な
ど に よ る 球 形 核 表 面 振 動 の 励 起,歪
ん だ核 の 回 転 状 態 の 励 起 に 適用 され,実 験 の説 明 に大 きな成 功 を収 め た.図5.4 は50MeVで
の154Sm(α,α')154Sm*に
分 断 面 積 のCCに
よ る 回転 準 位2+,
4+,
よる計 算 と実 験 との 比 較 の 例 を示 す.CC計
状 態 と基 底 状 態 お よび8+の
6+の 励 起 の微 算 で は これ らの
回転 準 位 が 結 合 され て い る.
集 団 運 動 の 中 で,回 転 状 態 の 準 位 は 一般 に数 が 多 く,相 互 の 結 合 は 強 い.し た が って,そ れ らの 励 起 をCCで
扱 うに は 多 次 元 の 連 立 微 分 方 程 式 を解 か ねば な
らな い場 合が あ る.し か し,回 転準 位 間の 間隔 は 入 射 エ ネ ルギ ー に比 べ て は るか に小 さい の で,近 似 的 にそ れ を無 視 し,す べ て の 回 転準 位 が 縮 退 し て い る とす る こ とが で き る.こ の 近 似 は 物 理 的 に は,回 転 運 動 が 反 応 粒 子 間 の相 対 運 動 に 比 べ て 非 常 に遅 い と仮 定 す る こ と を意 味 し,断 熱 近 似(adiabatic
approximation)
と呼 ば れ て い る.こ の近 似 の も とで は,核 の 内 部 ハ ミル トニ ア ンhAはP空 中の す べ て の状 態 に 対 して 同 じ 固有 値 ε0を もつ こ とに な るか ら,H(P)の hAを
ε0で 置 き換 え る こ とが で きる.そ
うす る と,H(P)は
動 関数 に対 す る演 算 子 で は な くな る.H(P)は で 与 え られ る相 互 作 用 ポ テ ン シ ャルV(r,Θ)を 過 ぎ な い.ゆ
間 中で
もは や 核 の 内 部 波
回 転 運 動 の集 団座 標Θ を(5.98) 通 じて パ ラ メ タ ー と して 含 む に
え に,(5.223)は
(5.231) とな る.Θ は 歪 ん だ 核 の 対 称 軸 の 空 間 固 定 軸 か らの 方 向 のEuler角 たが って,V(r,Θ)は
で あ る.し
そ の 方 向 に 固 定 され た歪 ん だ核 が 入 射 粒 子 に お よぼ す 力
の ポ テ ンシ ャル で あ る.(5.231)は
単 な る常 微 分 方程 式 で あ るか ら,連 立微 分 方
図5.4
50MeVの(α,α')に 実 験 値(黒 β2,β4,β6は (D.L.Hendrie
程 式 で あ る(5.224)に
よ る154Smの
丸)と
計 算 値(実
線)の
そ れ ぞ れ2+,4+お et
al,Phys.Lett.26B
回転 準 位 の励 起 の 微 分 断 面 積 の 比 較
よ び6+状
態 の 変 形 度 を 表 す. 127
(1968)に
よ る.)
比 べ て は るか に 簡単 で あ る.境 界 条 件 は 漸 近 形
(5.232) で 与 え られ る.f(Ω,Θ)は
核 の 対 称 軸 の 方 向がΘ で あ る と きの 散 乱 振 幅 で あ る.
全 体 の散 乱 振 幅 は
(5.233) で 与 え られ る.た だ し,φ α(Θ),φβ(Θ)は核 の 波 動 関数 の 回転 座 標 部 分 で あ る. 粒 子 座 標 の 部 分 は 変 化 を 受 け な い の で,そ の 重 な りは 規 格 化 積 分 に な り,1を 与 え る. 断 熱 近 似 で は,核 は 準 位 間 隔 をDと
の 回 転 準 位 が すべ て 縮 退 して い る と した.回 転 運 動 の 周 期 す る とお よそ ん/Dの 程 度 で あ るか ら,こ れ は 回転 運 動 が 入
射 粒 子 の 運 動 に くらべ て 非 常 に 遅 い と仮 定 し た こ と を 意 味 す る.し た が っ て, 散 乱 が 起 こ る 間 そ の核 の 方 向Θ が 変 化 し な い こ とに な る.(5.231)は
正 にその
描 像 に符 合 し て い る. か くして,CCは
軽 イオ ン の非 弾 性 散 乱 に よる 集 団運 動 励 起 に対 す る標 準 的 な
理 論 に な っ た[17].ま -16Oな
た 重 イ オ ン 反 応 で も,低
エ ネ ル ギ ー で の12C-12C,12C
ど の 比 較 的軽 い重 イ オ ン 同士 の散 乱 に 現 れ るい わ ゆ る分 子 共 鳴 の 説 明 に
大 き な 寄 与 を す る[18]な 時 に は,DWBAで
ど 成 果 を 挙 げ て い る.
始 −終 チ ャ ネ ル の 一 方 ま た は 両 方 が そ れ ぞ れ 別 の チ ャ ネ ル
と 強 く結 合 し て い る 場 合 が あ る.た
と え ば,(d,p)反
が 集 団 励 起 状 態 で あ る 場 合 が そ れ で あ る.こ
ャネルの残留核
の よ う な 場 合 に は,歪
結 合 を 取 り入 れ たCCの
解 を 使 う必 要 が あ る.こ
近 似(coupled
Born
channels
応 のpチ
曲波 に そ の
の 近 似 を チ ャ ネ ル 結 合Born
approximation,略
し てCCBA)と
い う.
5.3.2 組 み 替 え チ ャ ネ ル 結 合 法(CRC)
P空
間が 組 み 替 えチ ャ ネ ル を含 む場 合 に は,組
み 替 えチ ャ ネ ル 間 の 結 合
(5.234) が 現 れ る.右
辺 の 計 算 に はH(P)の
で の そ れH(P)(γ'),を の 経 験 に よ る と,遷
使 う.右
チ ャ ネ ルγ で の 表 式H(P)(γ),ま
辺 はDWBA展
移 γ → γ'がpick
up
た は γ'
開 に 現 れ た 表 式 で あ る.そ (stripping)の
を 使 う の が 便 利 で あ る.た
と え ば γ→
と き はH(P)と γ'がpick
upの
こで して 場 合,
と す る と
(5.235) と な る.た
だ し,
(5.236) (5.237) で あ る.Vγγ'をUγ γ'の相 互 作 用 項,Nγ γ'を非 直 交 項 とい う.Nγγ'は 組 み 替 え 反 応 に特 有 な 項 で φγ と φγ'の非 直 交 性 に 由 来 す る.実 際,も
し γとγ'が 同
じ反 応 粒 子 の異 な る 内部 状 態 に対 応 す る場 合 は,φ γとφγ'は同 じ 内部 座 標 を持 ち互 い に 直 交 す るか ら,Nγ γ'=0で DWBAの
あ る.
場 合 と同様 に,ξ γ をチ ャネ ル γ と γ'に共 通 な 内 部 座 標 ξγγ'と γ
を構 成 す る 二粒 子cとCの
相 対 座 標rcCに
分 け,ξ γ'につ い て も 同様 にす る と,
(5.238)
と な る.rcC,
rc'C'はrγ
とrγ'の
一 次 結 合
(5.239) で あ る.そ
こ で,(5.236)の
積 分 を ま ず ξγγ'に 対 し て 行 い,次
に 変 数rcCを
t'rγ'に 換 え て 行 う と,
(5.240)
(5.241) と な る.γ → γ'がstrippingの
場 合 に も同 様 な 変 形 が で きる.た だ し,こ の場
合 はNγ γ'の中 にKγ'が 現 れ,そ れ は未 知 関 数χγ'に 作 用 す るの で,そ れ を 避 け るた め にGreenの 要 が あ る[19].非
定 理 を使 って 部 分 積 分 し,そ 直 交 項 は,演 算 子Kγ-Eγ
うな らな い よ うに変 形 す る必
が 無 限 の レ ン ジ を も って い る の
で,非 常 に 長 い レ ン ジ を 持 つ[20]. この よ うなUγ γ'を含 む(5.12)は 連 立微 積 分 方程 式 で,そ れ を使 った計 算 法 は 組 み替 えチ ャネル 結 合(coupled channels,略
し てCRC)法
reaction channelsま
た はcoupled
と呼 ば れ て い る[21].CRCの
rearrangement
計 算 は 非 弾 性 チ ャネ
ル だ けが 結 合 す る場 合 に 比べ て,非 直 交 項 の 処 理 が 面 倒 で あ る.た だ し,こ の 項 の 効 果 の 大 き さ は 反応 に よ って 異 な り,無 視 して よい場 合 もあ る.数 値 計 算 に は,5.3節(b)項 CRCは
で あ げ た よ うな い ろ い ろ な 方 法 が 使 われ る.
比 較 的軽 い重 イ オ ン(C,Oな
ど)間 の 反 応 の解 析 に精 力 的 に使 われ,
成 果 を あげ て い る.二 つ の核 の 間 で 核 子 が 繰 り返 しや りと りされ る機 構 が 重 要 で あ る こ との 発 見 は そ の 一 例 で あ る[22].複 を 取 り入 れ てCCに
合粒 子 間 の衝 突 で 同 種 核 子 の交 換
よ る計 算 をす る 方 法 に は,波 動 関 数 の 反 対 称 化 を正 確 に取
り入 れ た,共 鳴 群 の 方 法(resonating
group
method,
RGM)が
あ る.こ の場
合 に は,核 子 の 交 換 に よって 反 応 粒 子 間 に 粒 子 の 組 み 替 えが 起 こ る か ら,CRC に よ る計 算 が 必 要 で あ る.こ の 方 法 に よる計 算 が 比 較 的軽 い 核 同 士 の 散 乱 に 対 し て 行 われ,い
ろい ろ な 近似 法 も 開発 され て い る[23].
5.3.3 離 散 化 連 続 チ ャネル 結 合 法(CDCC) 入 射 粒 子aが
重 陽 子,
の よ うに,弱
く結 合 した 二 つ の 破 片 か らな る場 合 に は,aは
反 応 の 途 次,標
的核 との 相 互 作
用 に よ って 容 易 に 変 形 し た り,分 解 し た りす る.そ の よ うな 状 態 はaの 連 続 励 起 状 態 の 重 ね 合 わ せ で あ る. こ の よ う な過 程 をCCで
取 り扱 うた め の 現 象 論 的 ハ ミル トニ ア ンH(P)は
の 形 を して い る.A,1,2の
内 部 状 態 は 反 応 を通 じ て不 変 で あ る と し て,そ れ
ら の 内 部 ハ ミル トニ ア ン は省 い た.V1AとV2Aは の 相 互 作 用 の 現 象論 的 ポ テ ン シ ャル で あ る.た
そ れ ぞ れ1-Aお とえ ば,1-A間
よび2-A間
お よび2-A間
の
光 学 ポ テ ン シ ャ ル や 相 互 作 用 の 畳 み 込 み ポ テ ン シ ャル に適 当 な 虚 数 部 を付 け た もの な ど で あ る. 座 標 系 と して は,a-A間
の相 対 座 標rと1-2間
使 う.説 明 の 簡単 の た め に ス ピ ンを 無 視 し,aの をそ れぞ れ
お よび
の それr21の
型を
基 底 状 態 と連 続 状 態 の 波 動 関 数
とす る.
の相 対 運 動 の 運 動 量
い わ ゆ るT字
はa内 で の 二破 片
軌 道 角 運動 量
の 固 有 関数 で あ る.ΨCCJMは
(5.242) と展 開 され る.
は
動 関 数 で,hP(k)とhLは
に対 応 す る,a-A間
の 相 対 運 動 の波
そ れ ぞ れ 運 動 量 お よび 軌 道 角 運 動 量 で あ る .
は
(5.243) を 満 た す.(5.242)に (5.242)の そ こ で,P空
ス ピ ン の 自 由 度 を 取 り入 れ る こ と は 容 易 で あ る.
右 辺 は 連 続 無 限 個 の 未 知 関 数 間 を 離 散 化 し て,連
続 無 限個 の未 知 関 数 を有 限個 の そ れ で 近 似 す
る の が 離 散 化 連 続 チ ャ ネ ル 結 合 法(coupled た はcontinuum
discretized
離 散 化 の 方 法 は,(a)lを
を 含 む.
coupled
discretized
channels,略
continuum し てCDCC)で
有 限 値 λ ま で に 制 限 す る:
channelsま あ る[24]. (b)各lに
対 し
て,連 続 無 限 個 の
を有 限Nl個
で近
似 す る.し た が っ て(5.242)は
(5.244) で 近似 され る.ΨCDCCJMがCDCCの 近似 内部波 動 関 数,
の と りか た は一 意 的 で な い.最 も よ く使 われ るの は, を等 しい 大 きさ
に分 け,i番
の小 区 間
目の 区 間 内 の
と して は 小 区 間 内 の
のkに
で の 当 なNlm個
のCCの
とす る.か 一 般 のkに
の 基 底
間点
に よ っ てhaを
対
とす る,と い う,"pseudo-state"
くし て得 られ た 有 限 個 の 離 散 化 され た チ ャ ネ ル に 対 し て通 常 を解 く.そ れ ぞ れ の
値kiを 対 応 させ,(5.243)に
に 対 して,適 当
よ って そ れ に対 応 す るP(ki)を
決め
く して,離 散 的 なP(ki)に 対 す る 短χlLが 求 まる.そ れ を内 挿 す れ ば 対 し て が 求 まる.
以 上 の 方 法 はaだ
け で な く,標 的核Aも
拡 張 す る こ とが で き る.CDCCはd,
連 続 状 態 に励 起 す る 場 合 に も容 易 に
6,7Li, 12Cな ど の 弾 性 散 乱,弾 性 分 解 反
応 な ど に適 用 され て,実 験 と よい 一 致 を示 し た.図5.5に CDCCに
た は,中
な ど を とる こ とが で き る.運 動 量 ビ ン の 方 法
手 法 を使 って
な方 法 でkの
とす
bin)の 方 法 と い う.
つ い て の 平 均,ま
角 化 し,そ のi番 目の 固 有 関数 を の 方 法 もあ る.か
を代 表 す る適 当 な 関数 を
る方 法 で あ る.こ れ を運 動 量 ビ ン(momentum
の ほ か に,適
はi番 目の
はそれ に対応 す る相 対 運動 の未 知 の波 動 関数 で あ る.
離散 化 の基 底 区 間
波 動 関 数で あ る.
先 だ っ て,弱
く結 合 した2破 片 か らな る 入射 粒 子 に よ る反 応 を取 り
扱 う方 法 と し て 断 熱 近 似 が 導 入 され た[25].こ あ る程 度 以 上 高 け れ ば,結
そ の 実 例 を 示 す.
の 近 似 で は,入 射 エ ネ ル ギ ー が
合 エ ネル ギ ーが 小 さな 粒 子 の 内 部 状 態 の準 位 間 隔 は
それ に 比 べ て小 さ く,ほ とん ど 縮 退 し て い る と見 な して よい,と 仮 定 す る.こ の仮 定 は 内 部 運 動 が 非 常 に ゆ っ く りし てい る とい う近 似 で,5.3.1項
で述べた 回
転 準 位 の励 起 に 対 す る 断 熱 近似 と本 質 的 に 同 じで あ る.こ の 近 似 は 重 陽子, の弾 性 散 乱 に適 用 され,成
功 を 収 め た.同
じ近 似 で,
図5.5
56MeV58Ni(d,d)58Niの
実 験 値(o)[N.Matsuoka とCDCCに
微 分 断 面 積 のRutherford比 et
よ る 理 論 値(実
al.Nuc.Phys.A455 線),dの
413
の (1986)]
変 形 を 無 視 し た 計 算 値(破
線)
and
M.
と の 比 較. (M.Yahiro,Y.Iseri,H.Kameyama,M.Kamimura Kawai,Prog.Theor.Suppl.No.89
32(1968)に
よ る.)
(d,p)のzero-range DWBAは 歪 曲ポ テ ン シ ャル をpとnの 光 学 ポ テ ンシ ャル の 和Up+Unと した もの に な る.こ の 場 合 も,実 験 との 一 致 は,弾 性 散 乱 ほ ど で は な い が,改 善 され る.断 熱 近 似 は,CDCCで
入射 粒 子 の すべ て の 内 部 状 態
が エ ネル ギ ー 的 に縮 退 して い る,と い う近 似 を し た もの と数学 的 に等 価 で あ る. した が っ て,そ
の 近 似 の 良 否はCDCCに
して,CDCCは CDCCを
よ って 評 価 す る こ とが で き る.か
弱 く結 合 した 粒 子 を 含 む反 応 の 標 準 的 現 象 論 の 一 つ に な っ た. 組 み 替 え チ ャ ネ ルが 結 合 す る 場 合 に拡 張 す る こ と も行 わ れ て い る.
計 算 を実 行 す るの は必 ず し も容 易 で は な い.組 で使 ったT字
く
み 替 え チ ャ ネル に対 し て は,上
型 の 座 標 系 が 不 適 当 だ か らで あ る.こ の場 合 に 対 して は,変 分 法
な ど に よ る 近 似 的 な計 算 法 も研 究 され て い る[26].
5.4 連 続 状 態 へ の 遷 移
前 節 まで は 残 留 核 の 離 散 的 準 位 へ の 遷 移 を取 り扱 った.し か し,入 射 エ ネル ギ ー が 十 数MeV以
上 の 核 反 応 で は,残 留 核 の 連 続 状 態 へ の 直 接 過 程 に よ る遷
図5.6
非 弾 性散 乱 の 放 出 粒 子 の エ ネル ギ ー ・スペ ク トル
移 も重 要 で あ る.実 際,放
出粒 子 の エ ネル ギ ー ・ス ペ ク トル を は 図5.6の
よう
に な って い て,残 留 核 の 離 散 的状 態 の 励 起 に対 応 す る線 スペ ク トル と複 合 核 か ら の 蒸 発 に よ るMaxwell型
の 山(第7章
参 照)の間
に 広 い 平 坦 な領 域 が あ る.
こ の 領 域 で は,放 出 粒 子 の角 度 分 布 は前 方 に 強 く,明 らか に直 接 過程 が 重 要 な 寄 与 を し て い る.入 射 エ ネ ル ギ ーが 数 十MeV以
上 に な る と,こ の平 坦 な スペ
ク トル を背 景 に して 巨 大 共 鳴 な ど の 山が 現 れ る こ と も あ る.こ の平 坦 領 域 は 直 接 過 程 と前 平 衡 過 程(1.3節)に 体 に つ い て は第8章 い て,DWBA展
5.4.1
よ る もの と考 え られ て い る.前 平 衡 過 程 の 全
で 詳 し く述べ る.こ の節 で は そ の 中 の 多段 階 直接 過 程 につ
開 に よ る解 釈 と,反 応 の シ ミュ レー シ ョ ンに つ い て 論 じ る.
多 段 階 直 接 過 程 のDWBA展
開
残 留 核 の連 続 状 態へ の 遷 移 は 原 理 的 に はDWBA展
開 の 方 法 で 取 り扱 え るが,
組 み 替 え 過 程 を伴 う多段 階 過 程 の計 算 は 非 常 に複 雑 で あ る.実 際 上,取
り扱 え
るの は広 義 の 非 弾 性 散 乱 で あ る.ま た,こ の 種 の 反 応 で は 複 数 個 の粒 子 が 放 出 され るが,そ
れ ら に つ い て の 個 別 的 断 面 積 を扱 うの は 二 核 子 放 出 の場 合 を除 き
困 難 で あ る.最
も簡 単 で,実 験 デ ー タが 多 い の は1個
括 断 面 積(inclusive
の 放 出粒 子 に注 目 した 包
cross section)お よ び そ れ に伴 う ス ピ ン偏 極 量 で あ る.多
数 の 粒 子 に つ い て個 別 断 面 積 の 計 算 に は,次 節 で 述 べ る シ ミュ レ ー シ ョ ンに よ る 記 述 が 必 要 に な る. 例 と して 核 子 の 非 弾 性 散 乱A(N,N')A*の め に,核 子 の ス ピ ン を無 視 し,入 射 核 子0は
包 括 断 面 積 を 考 え よ う.簡 単 の た 常 に 核 内核 子i=1∼Aと
区別で
き,そ れ が 終 状 態 で 観 測 され る もの とす る.以 下 の議 論 に は これ ら の制 限 は 本
質 的 で は な い.実
際 の 計 算 は それ らの 制 限 な し で 行 わ れ て い る.
(a) 多 段 階 直 接 過 程 の 断 面 積 この 場 合 の 包 括 断 面 積 は 核 子0の
エ ネル ギ ー と放 出 方 向 に つ い て の 二 重 微 分
断面積
(5.245) で 与 え られ る.た だ し,εA(εA*)は
核 の 始(終)状
態 の 内部 エ ネ ルギ ーで あ る.
この 節 で は 相 対 運 動 の始 状 態 をi,終 状 態 をfで 表 す こ とにす る.多 段 階過 程 に は 中 間状 態 が 現 れ る の で,そ れ と の 区別 を 明確 に す るた め で あ る.こ の 記 号 で, は 反 応 の移 行 エ ネル ギ ー で あ る.ま た, で あ る.こ の 包 括 断 面 積 は,系
の0以 外 の部 分 に 起 こ る すべ て の 事 象 の 断 面 積
を含 ん で い る. DWBA展
開で は,Tα'α は
(5.246) で 与 え られ る.
はn段
階 過 程 のT行
列要 素で
(5.247) で 与 え られ る.た だ し,φA(φA*)は
核 の 始(終)状
はk段
中で の 核 子0と 標 的 核 の 相対 運動 のGreen
階 後 の 歪 曲ポ テ ンシ ャルUkの
関数 で あ る.反 応 を 引 き起 こす 相 互 作 用Vは
で あ る と仮 定 す る.υ(r0-ri)は 用(4.2節)で され て い る.歪
態 の 波 動 関数 で あ る.ま た
二体力 の和
入 射 核 子 と標 的 核 内 の 核 子iと の 有 効 相 互 作
あ る.そ れ に は 相 互 作 用 の 核 物 質 の 媒 質 効 果 に よ る 変 化 も考 慮 曲波 展 開 で は座 標 表 示 を使 うのが 便 利 で あ る.
(5.247)か ら明 らか な よ うに,断 面 積 は移 行 運 動 量q=ki-kfと
移行エ ネ
ル ギ ー ω の 関 数 で あ る:
(5.248) (5.245)に(5.246)を し,そ
代 入 す れ ば,nが
れ ら は 一 般 に 大 き くな く,ま
か ら,各n段
異 な る
た
の(q, ω)依
の 干 渉 項 が 現 れ る.し 存 性 はnに
か
よ っ て違 う
階過程 の断面積
(5.249) を議 論 す る こ と は物 理 的 に 意 味が あ る こ とで あ る.次 に,そ れ らの 定 性 的 な性 質 を見 よ う.
(b) 準 弾 性 散 乱 入 射 ・放 出粒 子 の エ ネ ル ギ ーが 高 く,そ れ に く らべ て歪 曲 ポ テ ンシ ャル も,衝 突 され る核 子1の て 入 射 粒 子0と
核 に よ る束 縛 エ ネ ルギ ー も小 さけ れ ば,衝 突 は大 ざ っぱ に い っ 自 由空 間 中 の核 子1と
階 過程 前 後 の 核 子1の
の衝 突 に ほ ぼ 等 し い.し た が って,一 段
運 動 量 は そ れ ぞ れk1お
よびk1+qで
あ り,反 応 の移 行
エ ネ ル ギー は
で あ る.こ 大 で,反
の 値 はk1の
大 き さ がFermi運
平 行 の と き 最 小 で あ る.よ
動 量kFで,qと
平 行 で あ る と き最
って
(5.250) で な け れ ば な らな い.も
し上 記 の仮 定 が 厳 密 に 成 り立 つ な ら,
は
(5.250)が 成 り立 つ 場 合 に だ け 値 が あ る で あ ろ う.こ の 条 件 を満 た す 散 乱 を準 弾 性 散 乱(quasi-elastic scattering)と い う.実 際 に は,核 子1は
核 内に束縛 さ
れ て 運 動 して お り,歪 曲 ポ テ ン シ ャル は 入 射 ・放 出粒 子 の 運 動 量 を変 え るか ら, 準 弾 性 散 乱 で な い 散 乱 も起 こ る.し か し, る 山が あ り,
に は 準 弾 性 散 乱 に対 応 す
は そ の 周 りに広 が る,と い う形 を 示 す で あ ろ う と予 想
され る.こ の 予 想 は 実 験 事 実 と合 っ て い る.
(c) 角 分 布 の 特 徴 次 に,一 定 の ω に対 す る
の 角 分 布 につ い て 考 察 し よ う.
(5.251) ここで
を使 い,絶 対 値2乗
を開けば
(5.252) と な る.こ
こ に,
(5.253) ただし
(5.254) で あ る.K(r1,r'1)は4.4節
で 導 入 した 応 答 関 数 と本 質 的 に 同 じ もの で あ る.
は遷 移 密 度(transition さて,(5.252)の はr0とr'0で
density)と呼
ば れ る.
右 辺 で,被 積 分 関 数 の最 初 の 因子
発 生 し た放 出 波 の 干 渉 を示 す.も し,互 い に 干 渉 を 起 こすr0と
r'0の 領 域 が あ る程 度 以 上 広 けれ ば,そ
の 干 渉が 断 面 積 の 角 分 布 に 干 渉 縞 模 様 と
な っ て 現 れ る.し か し,も し そ の 領 域 が 非 常 に狭 け れ ば,断 面 積 は ほ と ん ど 各 点 で の 断 面 積 の和 に な るか ら,実 質 上 干 渉 は な い に等 し く,干 渉縞 模 様 は現 れ な い.こ
の干 渉 領 域 を決 定 す るの はK(r1,r'1)で
は 短 い か ら, は 値 を持 た な い か らで あ る.
あ る.な ぜ な ら,υ の レ ン ジ の と き しか ほ と ん ど
残 留 核 の 一 つ の 離 散 的状 態 へ の 遷 移 で は,
(5.255) で あ る か ら,K(r1,r'1)は│r'1-r1│に
よ ら な い.し
が 値 を 持 つ,核
た が って,干
渉は
の 大 き さ程 度 の 広 さの 領 域 に わ た る.こ
れ が 断 面 積 に 干 渉 縞 模 様 が 現 れ る原 因 で あ る. これ に 反 し て 連 続 状 態 へ の 遷 移 の 場 合 に は,(5.253)の K(r1,r'1)は
右 辺 が 示 す よ うに,
非 常 に多 くの 縮 退 し た φA*に つ い て の 和 か らな って い る.φA*の
位 相 が 乱 雑 で あ れ ば,そ れ ば 非 常 に小 さい.し
の 各 項 も 同様 で あ るか ら,そ の和 はr1〓r'1で
た が っ て 先 に述 べ た理 由で
なけ
の角分布 は干 渉
縞 模 様 が な い,な だ らか な もの に な る で あ ろ う.こ れ は 実 験 的観 測 と符 合 し て い る.た と えば 巨 大 共 鳴 は 位 相 が 揃 った φA*の 成 分 を持 つ か ら,上 記 の 乱 雑 位 相 の 議 論 は 成 り立 た ず,む
し ろ離 散 的 状 態 へ の 遷 移 と同 様 に な る.し た が っ て
の この部分 は干 渉縞模様が現れ る.し か し,そ の背景 とな る平坦 な
部 分 は 前 記 の な だ らか な角 分 布 を持 つ と予 想 され る.こ れ も実 験 結 果 と一 致 し て い る.
(d)半
古 典 歪 曲 波 近 似(SCDW)
の具 体 的 な 表 式 を 求 め る に は遷 移 密 度 ρA*A(r1)が 必 要 で あ る.核
の 波 動 関 数 に 独 立 粒 子 模 型 を 使 えば,
で あ る.た だ し,
は核 の 始(終)状
核 子 状 態 の 波 動 関 数 で あ る.し
態 で 核 子1が
占 め る単 一
たが っ て
(5.256) と な る.た
だ し,FはFermi準
状 態 で あ る こ と,衝
位 で あ る.h,
突 の 際Pauli原
が 完 全 系 を な す か らclosure
pに 対 す る 制 限 は,始
理 が 満 た さ れ て い る こ と を 表 す.
propertyを
も つ.し
た が っ て,(5.256)の
の と き に だ け 値 を 持 つ こ とが 予 想 さ れ る.実 型 を 使 っ て 評 価 す る と,核 程 度 で,核
状 態が 基 底
際,右
辺 をFermiガ
の 平 均 的 な 密 度 に 対 し てK(r1,r'1)の
半 径 に く らべ て は る か に 小 さ い.
右辺 は ス模
レ ン ジ は2fm
│r'0-r0│がこの程度の大きさであれば,歪 曲波 に 対 し て 局 所 半 古 典 近 似(semi-classical
distorted
waves
approximation,
SCDW)
(5.257) が使える.た だし,
の局所波数,Kf(r0)は
(5.257)を 使 う と 度Fermiガ
は点r0で の のそれである.(5.256)と
に 対 す る 閉 じ た 形 の 簡 単 な 表 式 が 導 け る.局 所 密
ス 模 型 を使 った 場 合 の それ は
(5.258) で あ る.こ
こで
(5.259) は 点rで
の 二 核 子 衝 突 の 平 均 断面 積 で あ る.hF(r)は
の 大 き さ,ρ(r)は
点rで
のFermi運
動量
核 の 粒 子 数 密 度 で あ る.
(5.260) は 核 物 質 内 で の,有 効相 互 作 用 に よ る二核 子 散 乱 微 分 断 面 積 で あ る.
が そ の 際 の 移 行 運 動 量 で あ る.
(5.258)は 非 常 に 簡 単 な直 感 的解 釈 を許 す. 出)粒 子 が 点rに
到 達 す る(rか
の
は 入 射(放
ら無 限遠 に 到 達 す る)確 率 で あ る.局 所 平均
断 面 積 に粒 子 密 度 を 掛 け た もの は,そ の 点 で 衝 突 が 起 こ る断 面 積 で あ る.求 め る 断 面 積 は そ の 局 所 平 均 断 面 積 と前 記 の到 達 ・放 出確 率 の積 の和 で 与 え られ る. (5.258)で は,異
な る 点 で 発 生 した 放 出 波 の 干 渉 は 核 の 終 状 態 に 対 す る和 を と
る こ とで 消 え て し まっ た.し た が って,「衝 突 点 」 とい う概 念 が 意 味 を 持 つ.こ の こ とは 次 節 で 述 べ る カ ス ケ ー ド模 型 の 基 礎 を 与 え る.
Ⅱ. 多 段 階 過 程 多 段 階過 程 は 複 雑 で あ るか ら,そ の 断 面 積 の 特 徴 に つ い て 一 段 階 過 程 と 同様 な 議 論 をす るの は 困 難 で あ る.し か し大 ざ っぱ に い って,衝 突 が 起 こ る度 に累 積 移 行 運 動 量 ・移 行 エ ネル ギ ーが 変 化 す る か ら,衝 突 回 数 が 多 い ほ ど 反 応 の 移 行 運 動 量 も移 行 エ ネル ギ ー も大 き くな り うる.し た が って,n段 積
はnが
増 え る ほ どqと
依 存 性 は な だ らか に な る.
階 過 程 の 断面
ω の広 い 範 囲 に広 が り,そ れ ら に対 す る の平 均 的 な 大 き さは,摂 動 論 の 常 と して,
nと と もに小 さ くな るが,q,ω
の 値 に よ っ て はnの
大 きな 過 程 の 寄 与 の方 が
大 き くな る場 合 も あ る. 多 段 階過 程 の にGreen関
に対 す る(5.258)に
数 に 対 す るEikonal近
対 応 す る表 式 は,近 似(5.257)の
ほか
似
(5.261) を使 えば 求 ま る.Km(r)は
点
で の 局 所 波 数 で あ る.
体 的 な式 は 省 略 す るが,(5.258)と
の具
同様 な,直 感 的 に 非 常 に わ か りや す い 解 釈 が
で き,次 項 で 述べ る核 内 カ ス ケ ー ド模 型 の基 礎 付 け を 与 え る.そ の
を使 っ
て 三 段 階過 程 まで の 数 値 計 算 が 行 わ れ,実 験 と よい 一 致 が 得 られ て い る[27].
5.4.2 多 粒 子 放 出の シ ミュ レー シ ョン 連 続 領 域 へ の遷 移 の 多 段 階 直接 過 程 で は 一 般 に 反 応 の 各段 階 で 粒 子 が 放 出 さ れ る.そ の 全 体 像 を と ら え る に は,そ れ らの 放 出粒 子 の 各 々 に つ い て 運 動 量 分 布 な ど を 知 らね ば な ら な い.そ れ を 記 述 す る に は,前 項 ま で の よ うな理 論 は現 象 が 複 雑 す ぎ て 手 に 負 え な い.そ
こで,威 力 を発 揮 す る のが シ ミュ レ ー シ ョ ン
で あ る.こ の 項 で は 最 も成 功 して い る二 つ の 方 法 に つ い て 解 説 す る.
(a)核 内 カ ス ケ ー ド模 型 直 接 過 程 の 模 型 と して 最 初 に 導 入 され,現 核 内 カ ス ケ ー ド(intra-nuclear
在 で も盛 ん に使 わ れ て い るの が,
cascade, INC)模
型 で あ る.こ
初 の計 算 は 入 射 中 性 子 に よる 反応 に 対 してGoldbergerに
の模 型 に よ る最
よ って 行 わ れ た[28].
こ の模 型 で は 反 応 を次 の よ うに見 る.そ れ は 入 射 中性 子 と標 的核 内 の 一 つ の 核 子 の 二 体 衝 突 に よっ て 始 ま る.衝 突 後 の 二 核 子 は そ の ま ま核 外 に 放 出 され るか, ま た は ほ か の 核 内核 子 と衝 突 す る.こ の 繰 り返 し に よ って 核 内 核 子 は次 々 と励
起 され る.こ れ が 核 内 カ ス ケ ー ドで あ る.こ の 過 程 で 放 出 され る 核 子 が 直 接 過 程 に よ る もの と して観 測 され る.新
た な核 子 が 励 起 され る た び に 個 々 の核 子 の
平 均 エ ネル ギ ー は 下が り,核 外 に 出 られ な くな る粒 子が 増 え,や が て 複 合 核 が 形 成 され る. 計 算 の 概 略 は 次 の 通 りで あ った.入 射 ・励 起 核 子 の 運 動 は古 典的 に 記 述 す る. 計 算 で は,ま ず 入 射 粒 子 が 核 内 に 入 る点 を 偶 然 事 象 を使 っ て 確 率 的 に 決 め る. 核 に 入 った 核 子 は 距 離xだ の 平 均 自 由行 程(mean
け 動 く と流 束がe-x/λ だ け 減 る.た だ し,λ は核 内
free path,略
してm. f.p. )で あ る.そ れ は ほ か の 核 内
核 子 との 衝 突 に よ る もの で,核
内で の衝 突 の 平 均 全 断 面 積 を 〈 σt〉,核の 核 子 密
度 を ρ とす る と,
で あ る.入 射 粒 子 の最 初 の 衝 突 が 入 射 方 向 の直
線 上 の 重さ の
等 確 率 に 分 け られ た細 区 間 の どれ の 中 で 起 こ るか を偶 然 事
象 に よ っ て決 め る.標 的 核 にFermiガ
ス 模 型 を 仮 定 す る と,エ ネ ル ギ ーEの
入射 粒 子 に対 し て 〈 σt〉は
(5.262)
で 与 え られ る.た だ し,EFはFermiエ
ネ ルギ ーで あ る[29].同
じ くFermiガ
ス模 型 の 仮 定 の 下 に,衝 突 され る 核 内 核 子 の 種 類 と運 動 量,衝 突 後 の 両 核 子 の 運 動 量 を,二 核 子 散 乱 の 断 面 積 を 重 み と しPauli原 れ 等 確 率 な 領 域 に 分 け,そ
理 を 考 慮 に 入れ て,そ れ ぞ
の どれ が 生 起 す る か を偶 然 事 象 に よ っ て 決 定 す る.
こ の操 作 を直 接 過 程 が 終 わ る まで 入 射 お よび 励 起 され た 核 子 の す べ て に つ い て 繰 り返 し,最 終 的 に放 出 され る 核 子 の 運 動 量 分 布 を生 起 す る頻 度 に よ って 測 る. こ の よ うな 計 算 法 はMonte こ の計 算 はINC計
Carlo法
と呼 ば れ て い る.
算 の 原 型 で,電 子 計 算 機 の 到 来 に よ って この 手 法 に よ る大
規 模 計 算 が 可 能 と な り[30][31],計
算 機 の発 達 と と もに 著 し く発 展 し て 今 日に
至 っ て い る[32]. こ の模 型 で 重 要 な点 は,粒 子 の 運 動 を古 典 的 に取 り扱 う こ と の ほ か に,衝 突 点 と い う概 念 を使 うこ とで あ る.量 子 力 学 的 に は,核 内 の 異 な る点 で 発 生 し た 散 乱 波 は 互 い に 干 渉 す る か ら,古 典 的 な 意 味 で の衝 突 点 とい う概 念 に は 意 味 が
な い.し た が って,こ
の衝 突 点 と い う概 念 の 正 当性 は量 子 力 学 的 に 検 証 す る必
要 が あ る.前 項 で 述 べ たSCDW模 る.SCDWは
型 は そ れ に対 す る肯 定 的 な答 え を与 え て い
また,量 子 力 学 的歪 曲波 を使 うので,歪
子 軌 道 の 曲が り,流 速 の 吸 収 の ほ か,古
曲ポ テ ン シ ャル に よ る粒
典 的 に 到 達 で きな い 場 所 で の 衝 突 も含
ん で い る こ と を付 け加 え て お く.
(b)分
子 動 力 学 的 シ ミュ レー シ ョン
前 平 衡 過 程 の シ ミュ レ ー シ ョン とし て 近 年 非 常 に成 果 を挙 げ て い る のが 量 子 分 子 動 力 学(quantum
molecular
力 学(anti-symmetrized
molecular
個 々 の 核 子 の 波 動 関 数 はGauss波
dynamics,
QMD)[33]お
dynamics,
AMD)[34]で
よび 反 対 称 化 分 子 動 あ る.両
者 と も,
束
(5.263) で あ る と仮 定 す る.
(5.264) が 位 相 空 間 中 の 波 束 の 中心 で あ る.波 束 の 幅υ は 定 数 で あ る.系 の 波 動 関 数 は QMDで
は
(5.265) AMDで
は,Slater行
列式
(5.266) と仮 定 す る.た だ し,Nは
全 系 の核 子 数 で あ る.
応 じて 複 数 のSlater行 列 式 を 仮 定 す る.パ
で は,必
要に
リテ ィの 固有 関数 を作 る に は,そ れ
は 必 須 で あ る.
または
は時間依存変分法 (5.267)
の 試 行 関 数 で あ る.{Zj}を
変 分 の パ ラ メ ター と して(5.267)を
解 け ば,{Zj}
に 対 す る 運 動 方 程 式 が 得 られ る.そ れ が 平均 場 の 中で の 各粒 子 の 中心 の 運 動 を
決 め る.QMDの の 場 合 は,よ
場 合 は,運 動 方程 式 は 古 典 的Hamilton方
程 式 に な る.AMD
り複 雑 で あ る.後 に述 べ る 初 期 条 件 を与 え て それ を解 けば,{Zj}
が 時 間 の 関数 と して 求 ま る.そ れ は 各 核 子 の,自
らの 運 動 に伴 って 時 間 的 に 変
化 す る 平 均 場 の 中の 運 動 を表 す. Pauli原 理 をAMDは
自動 的 に 満 た す.QMDは
そ うで は ない の で,同 種 の2
個 の 核 子 が 空 間 の 同 じ場 所 を 占 め るの を妨 げ る よ う なad
hocな
ポテ ンシャル
をハ ミル トニ ア ン に付 け 加 え て お く.そ の ポ テ ン シ ャル は 一 意 的で は な い. 核 子-核 子衝 突 は,二 つ の核 子 波 束 の 中 心が あ る 距離 よ り近 づ い た と き起 こ る, と仮 定 す る.衝 突 後 の両 者 の運 動 量 はMonte
Carlo法 で 確 率 的 に決 め,そ れ を初
期 条 件 と して 再 び 運動 方 程 式 を解 く.QMDで
は,衝 突 は
に よ って 記 述 され る.し か し,AMDで
子 の 物 理 的 中 心{Wj}は{Zj}
で は な く,衝 突 はWjに
は,粒
よ って 記 述 され る.{Zj}と{Wj}は
線 形 変換 に よっ
て 結 ば れ て い る.衝 突 後 の 運 動 の 計 算 を続 け る に は,{Wj}を{Zj}に す る必 要 が あ る が,そ れ が 不 可 能 な 場 合 が あ る.こ れ は,そ
逆 変換
の衝 突 がPauli原
理 で 禁 止 され て い る こ と を示 す,と 解 釈 す る. 衝 突 す る各 粒 子 は衝 突 前 に は そ れ ぞ れ の 基 底 状 態 に あ る.そ を 極 小 に す る{Zj}(複 結 合 を使 う場 合 に は それ ぞ れ の 中の{Zj}と に は,任 意 の{Zj}を
の波動 関数 は
数 のSlater行 列 式 の 一 次
一 次 結 合 の係 数)を 決 め る.そ れ
初 期 値 と して"摩 擦 冷 却 方 程 式"
(5.268) を解 く.た だ し,λ は任 意 の,ま た μ は μ 〓0の 実 定 数 で あ る.そ の 解 に 対 応 す るE({Zj})は
を満 た す か ら,E({Zj})はtと の{Zj}が
と もに 減 少 し,や が て 極 小 値 に な る.そ の と き
基 底 状 態 の 波 動 関 数 Φ({zj})AMDを
与 え る.
こ の よ うに して 得 られ た 入 射 お よび 標 的 核が,互
い に 遠 く離 れ た い ろ い ろ な
衝 突 係 数 の位 置 か ら与 え られ た 相 対 速 度 で 動 き出す,と る.そ れ 以 後 の{Zj}の,運
い うの が 初 期 条 件 で あ
動 方 程 式 と 上 記 のstochasticな
二 体 散 乱 に よ る,
時 間 変 化 を追 跡 す る.十 分 時 間が 経 つ と,各 核 子 はば らば ら に,あ る い は い く つ か ず つ が ク ラ ス ター(塊)に
な って 核 外 に 飛 び 出 し,ま た は核 内 に と らわ れ
る.こ の よ うに し てで きた 始 原 的 な ク ラ ス ター は 統 計 的 平 衡 状 態 に あ り,そ こ か ら 粒 子(核
子 ま た は原 子 核)が 蒸 発 され る とす る.こ の 操 作 を十 分 多 くの 場
合 に つ い て 繰 り返 し,起 以 上 がQMD,
AMDの
こ る頻 度 に よ っ て 注 目す る 事 象 の 断 面 積 を計 算 す る. 概 略 で あ る.両 者 は さ まざ ま な改 良が 加 え られ,そ
れ ぞ れ 発 展 を続 け て い る.そ の適 用 範 囲 は軽 イオ ン反 応 か ら重 イ オ ン反 応 まで, 中 エ ネ ル ギ ー か ら高 エ ネ ルギ ー まで 非 常 に 広 い.ま た,重
イオ ン衝 突 で の α粒
子 の よ うな ク ラ ス ター の 放 出,放
動 量 の 流 れ の記 述 な
出粒 子 の 質 量 数 分 布,運
ど,ほ か の 方 法 で は取 り扱 え な い 事 柄 の定 量 的 記 述 に も成 功 し て い る.量 子 力 学 的 に 見 て,AMDはQMDよ
り優 れ て い る こ とは 明 らか で あ る.特 に原 子 核
の 束 縛 状 態 の 構 造 に つ い て は 波 動 関 数 の 反 対 称 化 は 重 要 で あ る.そ の か わ り, シ ミュ レ ー シ ョン に 要 す る計 算 時 間 はQMDの
5.5
Glauber近
方 が は るか に少 な い.
似
高 エ ネル ギ ー 入 射粒 子 に よ る反応 に使 われ る有 力 な 近 似 法 の 一 つ にGlauber 近 似[35]が あ る.入 射 チ ャ ネ ル αか ら始 ま る広 義 の非 弾 性 散 乱 を考 え よ う.反 応 を記 述 す る波 動 関 数 Ψ(+)α が 満 た すSchrodinger方
程式 は
(5.269) で あ る.Glauber近
似 の 第 一 の 仮 定 は,入
射 エ ネ ル ギ ー,し
た が っ てE,が
の 反 応 に よ る 内 部 状 態 の 励 起 エ ネ ル ギ ー よ り は る か に 大 き い,と る.こ
の 仮 定 は,断
熱 近 似(5.3.1項)の
動 に く ら べ て 非 常 速 い,と い てhα
そ れ と 同 じ く,系
い っ て も よ い.い
こ
い うこ とで あ
の相 対 運 動 が 内 部 運
ず れ に せ よ,そ
れ は(5.269)に
を 入 射 チ ャ ネ ル で の 値 εα で 置 き 換 え て よ い こ と を 意 味 す る.ゆ
お え に,
とす る と
(5.270) と な る.い
ま,入
射 波 の 波 数 ベ ク トル を κα と し
(5.271) と置 く と,(5.270)は
(5.272)
と な る.こ
れ は ξα を パ ラ メ タ ー と し て 含 む 方 程 式 で あ る.
Glauber近
似 の 第 二 の 仮 定 は,Eα
入 射 波 の1波
長 内 で のVα
が│Vα│に
比 べ て は る か に 大 き く,か
の 変 化 が 無 視 で き る ほ ど 小 さ け れ ば,す
つ,
なわ ち
か つ な ら ば,f(rα,ξ
α)はrα
の 激 し く変 動 す る 関 数 で あ る
り と変 化 す る,と
す る こ と で あ る.た
し(5.270)でVα
を 無 視 す れ ば Ψ(+)αは 平 面 波 に な り,f(rα,ξ
た く よ ら な くな る.し
か し,Vα
で 急 激 に 変 化 す る と,入
だ し,aはVα
に比べ てゆ っ く
が 小 さ くて も,も
の レ ン ジ で あ る.実
しVα が1波
射 波 は そ こ で 反 射 さ れ,f(rα,ξ
そ の よ う な こ とが 起 こ ら な い た め に は, の 条 件 が 満 た さ れ て い れ ば,(5.272)左
際,も
α)はrα
に まっ
長 よ り狭 い 範 囲
α)も 急 激 に 変 化 す る.
の 条 件 が 必 要 で あ る.こ
辺 のΔ αfの 項 は 無 視 で き る.こ
れ ら
の近似
の 下 に(5.272)は
(5.273) と な る.こ (z,b,φ)を
こ で,rα=0を 定 義 す る.bは
原 点 と し,κ α をz方
向 と す る 円 筒 座 標 系rα=
入 射 粒 子 の 衝 突 係 数 とい う物 理 的 意 味 を持 つ.κ α∇rα=
κα∂/∂zで あ る か ら,(5.273)は
(5.274) と な り,そ
の 解 は,
と し て,
(5.275) で あ る.た あ る.今
だ し,ψ(b,φ)とg(ξ の 場 合,ψ(b,φ)とg(ξ
α)は そ れ ぞ れbと α)は,Ψ(+)α
φ お よ び ξα の 任 意 の 関 数 で
が
で入射平面波
(5.276) に な る,と い う物 理 的 条 件 で 決 め られ る.そ の た め に は
(5.277) で な け れ ば な ら な い.こ
れ を(5.275)に
代 入する と
(5.278)
とな る.こ の 関 数 はzが した が っ て,も
しd
程 度 の 距 離 動 くと 目立 っ た 変 化 を す る. ら,先 の 条 件
は 十 分 で は な く,καd≫1
で 置 き換 えね ば な らな い. 弾 性 散 乱,広
義 の 非 弾 性 散 乱 α → α'に 対 す るT行
列要素 は
(5.279) で あ る.(5.274)を
使 えば
で あ る か ら,
(5.280) と な る.た
だ し,
で あ る.散
乱 角 θが 非 常 に 小 さ け れ ば さ ら に 簡
単 化 で き る.κ α を κα 方 向 の 単 位 ベ ク トル,bをrα る と,
の κα に 垂 直 な 成 分 と す
だ か ら,
(5.281) で あ る.し
か るに
(5.282) で あ るが,(5.280)の
積 分 に 寄 与 す るzの 最 大 値 をdと
す る と,θ が
(5.283) を満 た す ほ ど小 さ け れ ば,(5.282)の 部 状 態 の 励 起 エ ネ ル ギ ー をΔEα
最 後 の 辺 の 第1項 は 無 視 で きる.ま た,内
とす る と,仮 定 に よ り
(5.284) だ か ら,第2項
も無 視 で き る.よ
っ て,
す なわち
で あ る.し
た が っ て,
を使えば
(5.285) で あ る.zに
つ い て の 積 分 は 直 ち に で き て,fの
表 式(5.278)を
使 うと
(5.286) と な る.こ
こに
(5.287) ただ し
(5.288) と な る.(5.286)が (5.287),
こ の 反 応 のGlauber近
(5.288)か
似 に よ るT行
ら 明 ら か な よ う に,Tα'α
の 寄 与 ま で 入 っ て い る.こ
れ は,DWBA展
列 要 素 で あ る.(5.286),
に は
の無限次のべ き
開 の 言 葉 で い う と無 限 の 多 段 階 過
程 が 取 り入 れ ら れ て い る こ と に な る. Γ(b, ξα)を こ の 反 応 のprofile関 い う.χ(b,
ξα)は,入
さ れ た ま ま,衝
射 粒 子aと
突 係 数bで
数,χ(b,
ξα)を 位 相 差(phase
標 的 核Aが
shift)関 数 と
内 部 座 標 を ξα={ξaξA}に
固定
衝 突 す る と き の 波 動 関 数 の 位 相 の ず れ に 相 当 す る. は 内 部 波 動 関 数 に よ る 行 列 要 素 で,χ(b,
ξα),
で 固 定 さ れ て い た 内 部 座 標 に つ い て の 積 分 に な っ て い る. Vα がz軸
に 関 し て 軸 対 称
で あ る 場 合 に は,
(5.289) は φ に よ ら な い か ら,qb=qbcosφ
に注 意 し
を使 うと
(5.290)
とな る.た だ し,前 記 の 近 似 (5.286)に よ っ てT行
を使 っ た.
列 を計 算 す る に は,一 般 に 多 体 系 の 波 動 関数 に よる行
列 要素
(5.291) を計 算 せ ね ば な らな い.チ 和
ャネ ル α=a+Aの
相 互 作 用Vα が 二 体 相 互作 用 の
で あれ ば,χ(b,ξ α)は
(5.292) で与 え られ る.た だ し,ζκは粒 子κ の,空 間座 標 以 外 の座 標 で あ る.粒 子a(A) の 重 心ra(rA)か
ら の 核 子i(j)の
とす る と
で あ る.た
相 対位置 を だか ら
だ し,
ξiのκα に 垂 直 な 成 分 で あ る.よ
で あ り,siとsjは
そ れ ぞ れ ξiお よ び
って
(5.293) とお く と
(5.294) と な る.こ
れ に 対 応 す るprofile関
数 の行 列 要 素 は
(5.295) で あ る.そ
こで
(5.296) と お く と,χ(b)は
(5.297)
で 与 え ら れ る.(5.297)の 開 し た も の をcumulant展
右 辺 を
の べ き級 数 に展
開 と い う.そ
の最低次の近似 は
(5.298) で,こ れ はoptical
limitと 呼 ば れ て い る.こ の近 似 で もT行
列 要 素 に は多 段
階 過 程 の 寄 与 が 取 り入 れ られ て い る. Glauber近
似 は弾 性 散 乱,広
義 の 非 弾 性 散 乱 に適 用 で き るだ け で な く,入 射
粒 子 また は 標 的核 の 分 解 に対 して も成 り立 つ.分 解 状 態 は連 続 励 起 状 態 と考 え る こ とが で き るか らで あ る.た
とえ ば(d, pn)反 応 はdのp-n系
ら連 続 励 起 状 態 へ の 遷 移 で あ る.こ れ に 限 らず,弱
の基底状態 か
く結 合 し た 入 射 核 が 標 的核
との 衝 突 で そ の 一 部 を失 う反 応 も 同様 に考 えれ ば この 近 似 で 取 り扱 うこ とが で き る.最 近,不 安 定 核 を入 射 粒 子 とす る 反応 の研 究が 行 わ れ,反 応 の 前 断面 積, 弾 性 散 乱 の 微 分 断 面 積,中 性 子が 失 わ れ る 断面 積 な ど い ろ い ろ な 断 面 積 が 測 ら れ て い る.特 に,核 表 面 の 外 側 に非 常 に弱 く束縛 され た 中 性 子 の 暈(halo)を
持
つ 原 子 核 の 散 乱 が よ く研 究 され て い る.こ の よ うな反 応 の解 析 に,Glauber近 似 が 有 効 に使 われ て い る[36].
文
献
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Y.Suzuki,Prog.Theor.Phys.Suppl.
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6 複合核過程Ⅰ― 共鳴理論
低 エ ネル ギ ー の 中 性 子 を原 子 核 に 衝 突 させ る と,そ の 総 断面 積 は 入 射 エ ネル ギ ー に よ っ て激 し く変 化 し,ま た そ の ピ ー クの 断 面 積 は非 常 に 大 きい(図6.1). この よ う な 中性 子 の 共 鳴 散 乱 を 説 明 す る た め にN. Bohr 核(compound
[1]ら は1936年,複
nucleus)模 型 を提 案 した[2].入 射 核 子が 核 内 に 入 る と,ま ず 標
的 核 に よ って 作 られ る一 体 の平 均 ポ テ ンシ ャル の なか をFermiエ もは る か に 高 い エ ネ ル ギ ーで 動 き回 る.そ させ,自
合
ネル ギ ー よ り
し て核 内 核 子 と衝 突 して それ を励 起
らの エ ネル ギ ー と運動 量 の一 部 を失 う.入 射 核 子 は この よ うな衝 突 を繰
り返 し,核 は 複 雑 な励 起 状 態 と な る.こ の 状 態 は準 安 定 状 態 で 固有 エ ネ ルギ ー (共 鳴 エ ネ ル ギ ー)と 共 鳴 幅 を持 つ.し か し衝 突 を繰 り返 す う ち に た ま た ま1 個 の 核 子 に エ ネ ルギ ー と運 動 量 が 集 中 す る と,核 外 に 放 出 され,励 起 状 態 は 崩 壊 す る.こ の よ うな 励 起 状 態 はBohrに
図6.1
232Thに
よ り複 合 核 状 態 と呼 ば れ た.低 エ ネ ル
よ る 中 性 子 の 散 乱 総 断面 積
縦 軸 は 総 断 面 積(単 位10-24cm2)を,横 ギ ー(eV)を 示 す[3].
軸 は入射 中性子の エネル
ギ ー の 複 合 核 で は核 子 の 放 出 が 起 こ りに くい の で,そ
の寿 命 も核 子 が 核 を横 断
す る 時 間 に 比 べ て,は るか に長 くな る.こ れ に 対 応 し,共 鳴 幅 は 狭 く,meV(ミ リeV)に
な る こ と もあ る.こ の よ うな過 程 は 複 合 核 過 程 と 呼 ば れ,入 射 エ ネル
ギ ーが 低 い と き,あ る い は 高 くて も低 い エ ネ ル ギ ーで 出 て くる と き,あ るい は 後 方 に 出 る と き に起 こ り,放 出 粒 子 は入 射 粒 子 の 記 憶 を ほ とん ど留 め ない. 複 合 核 と複 合 核 反 応 が こ の 章 の 主 題 で あ る.複 合 核 共 鳴 の 定 式 化 はBreitと Wignerら[4]に
よ る摂 動 論 に よる 共 鳴公 式 の 導 出 を 最 初 とす る.こ の 共 鳴 公 式
はBreit-Wignerの
公 式 と呼 ば れ て お り,パ ラ メ ター を適 当 に 選 ぶ こ と に よ っ
て 実 験 デ ー タを 再 現 す る こ とが で きる.し か しな が ら核 子 間の 相 互 作 用 は 摂 動 論 が使 え る ほ ど弱 い もの とは考 え られ ない.し たが ってBreit-Wignerの
公式は
実 験 事 実 を よ く記 述 す る 現 象 論 的公 式 で は あ るが,量 子 力 学 的 な根 拠 は 薄 い と い え る.次 に複 合 核 の 内部 構 造 に立 ち入 らな い で,核 表 面 の波 動 関数 の境 界 値 問 題 と して 扱 うR行
列 理 論 が6.1節
を 導 出 し た の はKapur-Peierls
で概 説 され る.初 め て 量 子 力 学 的 に 共 鳴 公 式
[5]で,つ
いでWigner,
Eisenbud,
Teichmann
ら[6, 7]が もっ と一 般 的 な定 式 化 を 行 った.こ れ らの 人 々 は,複 合 核 は 二 つ の 粒 子 が 近 づ い て 相 互 作 用 を行 う よ うな 状 態 で あ る と定 義 し た.6.1節 方 法 で 共 鳴 公 式 が 導 出 され る.そ の後Feshbachは
で は この
射 影 演 算 子 の 方 法 を提 案 し,
複 合 核 に適 用 し た.こ れ は6.2節
で 説 明 す る.こ れ ら二 つ の 方 法 は核 反 応 を記
述 す る こ とで は 同等 で あ るが,一
長 一 短 が あ り,ま た 両 者 の 複 合 核 状 態 は 完 全
に は 同 じで は な い. 複 合 核 反 応 理 論 は は じめ は 低 エ ネ ルギ ー の 中性 子 の 共 鳴 散 乱 を説 明 す るた め の もの で あ っ た が,弾 性 散 乱 断 面 積 をエ ネ ル ギ ー 平 均 し た もの は 一 体 の 複 素 ポ テ ンシ ャル に よ る散 乱 の 計 算 結 果 に よ く合 うこ とが わ か っ た.こ れ が3章 り上 げ られ た 光 学 模 型 で,広 い 範 囲 の エ ネ ル ギ ー,粒 子 の 種 類,核
で取
種に適用 さ
れ た.光 学 ポ テ ン シ ャ ル の 虚 数 部 は共 鳴状 態 に よ る吸 収 に 対 応 す る の で,複 合 核 反 応 理 論 は 光 学 模 型 の 基 礎 を 与 え る こ と は 明 らか で あ る.本 章 の6.3節
で議
論 され る光 学 模 型 は広 義 の 光 学 模 型 で,弾 性 散 乱 の み な らず,一 般 の 反 応 に適 用 され,核 反 応 理 論 の 基 礎 を 与 え る.次 に1回 衝 突 し た だ け で 入 射 粒 子 が 放 出 され る 直 接 過 程 は5章
で 詳 し く述 べ られ た.こ の 場 合,放
出粒 子 は 入 射 粒 子 の
記 憶 を 強 く持 って い て エ ネル ギ ー と 運 動 量 の 損 失 は小 さ く,角 分 布 は 前 方 が 多 くな る. 複 合 核 過 程 と直 接 過 程 の 中 間 の ものが あ る.入 射 粒 子 が 最 初 の 衝 突 で 作 る状
態 は複 合 核 反 応へ の 入 り口 で あ る ので,戸 口状 態 と呼 ば れ て い る.こ こで 直 ち に 粒 子 が 出て 行 く場 合 もあ る し,ま た 先 に 進 む場 合 もあ.こ の 戸 口状 態 は6.4節 で 説 明 され,そ の例 として,巨 大 共 鳴 とア イ ソバ リ ック ・アナ ロ グ状 態(IAS)が
取り
上 げ られ る.戸 口状 態 を通 り越 し さ らに衝 突 を繰 り返 すが,平 衡 状 態 に 至 らな い で 粒 子 放 出が 起 こ るの が 前 平 衡 過 程(pre-equilibrium process)で,こ
れ は8章
process, pre-compound
で 論 ぜ られ る.な お6.5節 に は 時 間 に依 存 す る定 式 化
で 波 束 を使 い,核 反 応 の 時 間 的 側 面 が 明 らか に さ れ る.6.6節 り共 鳴状 態 を調 べ,ま
では古 典論 に よ
た そ れ と関 連 し た現 象 の エ コ ー につ い て も触 れ る.
エ ネ ル ギ ーが 高 くな る に 従 っ て 共 鳴 準 位 間 隔 は 狭 く共 鳴 幅 は 広 くな る の で, 共 鳴 は重 な り統 計 的取 り扱 いが 必 要 に な る が,こ れ は次 の7章 で 詳 し く論 じ ら れ る.こ の 統 計 的 性 質 か らカ オ ス との 関連 が つ き,7.7節
で 簡 単 で あ るが それ
ら の発 展 に 触 れ る.
6.1 R行列理
複 合 核 の共 鳴 の 理 論 と し て はR行
論
列 理 論 が 最 も古 く,総 合 報 告[8]や 書 籍[9]
が 出 て い る.こ
こで は あ ま り詳 しい 紹 介 は で きな い の で,上 の 文 献 を参 照 され
た い.以 後,重
心 運 動 は 分 離 し て あ る と して,相 対 運 動 の み を考 え る.系 の ハ
ミル トニ ア ン と して は2章
に 示 され た よ う な運 動 エ ネ ル ギ ー と二 体 の 相 互 作 用
の和
(6.1) を使 う.i,jは で あ る.そ
核 子 の番 号,μ は核 子 の 換 算 質量,Vijは
して2.2.3項
核 子i,j問
に示 され た 対 称 性 を持 つ と す る.ま た5章
の 固有 関 数(波 動 関 数)は
運 動 量 表 示 を とっ て きた が,こ
除 き角 運 動 量 表 示(2.6節)に
の相互作用 まで は,そ
れ か ら は8.5.1項
を
よ り,そ の 規 格 化 に は(6.17)に 示 す よ う にエ ネ ル
ギ ー表 示 に よ り行 う こ と にす る. 入 射 粒 子 と原 子 核 か ら な る系 を 記 述 す る配 位 空 間 を二 つ の部 分 に分 け,核 と 粒 子 の 距 離rが
一 定 の 距 離aよ
り大 きい か,小
さい か に よ り,外 部 領 域 と 内部
領 域 に分 け る.外 部 領 域 で は核 と粒 子 の 間に 核 力 は効 かず 遠 心 力 が,荷 同 士 で あれ ば さ らにCoulomb相
電粒 子
互 作 用 も作 用 す る.し た が っ て そ の 波 動 関 数 は
簡 単 に求 め る こ とが で き る.内 部 領 域 は 核 力 が 働 き,複 雑 な 衝 突 が お こ る と こ
ろで,R行
列 理 論 が 形 成 され た1940-50年
代 には,ま
と もに波 動 関 数 を求 め る
こ とが で きな い と考 え られ た.一 般 の 場 合 を 具 体 的 に 定 式 化 す る の は 煩 雑 な の で,ま ず 一体 の 平 均 ポ テ ン シ ャル に よる弾 性 散 乱 の 場 合 を例 に と って 説 明 す る. こ の チ ャ ネル をcと
し,そ の エ ネ ル ギ ー をE,波
数 を
量 をlと して お く.動 径 波 動 関 数 は次 のSchrodinger方
,角 運 動 程式
(6.2) を 満 た す.U(r),UC(r)は あ る.内
一 体 の 核 の ポ テ ン シ ャ ル とCoulombポ
テ ン シ ャル で
部 領 域 の 解 は 原 点 で 正 則 の 条 件 の 下 で 解 く.外 部 領 域 で は 一 体 の ポ テ
ン シ ャ ルU(r)は
働 か な い と す る の で,次
の よ う に 書 け る.
(6.3) 波 動 関数 は 内 向 波Il(κ,r)と 外 向 波Ol(κ,r)よ
りな り,後 者 の 振 幅 がS行
あ る.外 向 波 と 内 向波 は外 部 領 域 で のSchrodinger方
程 式(U(r)=0)の
列で 解 で,
次 の 漸 近 形 を もつ:
(6.4) こ こ で η はSommerfeldパ 差(位
相 の ず れ と もい う)で
(2.7.2項
参 照),外
め に は,両
ラ メ タ ー,σlはCoulombポ
テ ン シ ャル に よ る位 相
あ る.Fl(κ,r)とGl(κ,r)はCoulomb波
動 関数 で
部 の 波 動 関 数 が 内部 の 波動 関 数 と境 界 で 滑 らか につ なが る た
者 の 波 動 関 数 の 対 数 微 分 が 等 し くな け れ ば な ら な い.内
部の対数微
分 を
(6.5) と 書 く と,こ
れ は エ ネ ル ギ ー の 関 数 で あ る.u'(r)はrに
外 側 の 対 数 微 分 は(6.3)で Sccで
書 か れ,次
つ い て の 微 分 で あ る.
わ か る よ う に 既 知 の 量Il(κ,r),Ol(κ,r)と
未知 の量
の 式 が 成 り立 つ.
(6.6) で,外
向波 の 対 数 微 分 は
(6.7)
と 表 し,実
数 部Δcは
と 呼 ば れ,Coulomb波
エ ネ ル ギ ー の ず れ,虚 動 関 数 の チ ャ ネ ルcの
数 部Pcは
貫 通 因 子(penetrability)
境 界 面 で の 値Fc,Gcに
より
(6.8) で 与 え られ る. 次 にOlとIlと
の 絶 対 値 は等 しい の で,
(6.9) と 表 す.(6.6)をSccに
つ い て 解 き,(6.7)と(6.4)に
よ りS行
列要素 は
(6.10) と な る.内 部 波 動 関 数 の 境 界 面 で の対 数 微 分 が 知 られ て い れ ば,あ 外 部 波 動 関 数 に よっ て 表 され る こ とが わ か る.(6.10)よ
とは 既 知 の
り弾 性 散 乱 の 断 面 積 を
計 算 す る と,
(6.11) に比 例 す る.こ の 右 辺 第1項
は 剛体 球 散 乱 項 と呼 ば れ,半 径r=aの
よ る 散 乱 の振 幅 と 同 じ で あ る.第2項
の 絶 対 値 はfc=Δcの
剛体球 に
と き極 大 に な る.
これ は 共 鳴 に 関 す る項 で,内 部 波 動 関 数 の 対 数微 分 の 実 数 部 が 外 向 波 の そ れ と 同 じ に な る と きに 対 応 す る.ポ
テ ン シ ャ ル 散 乱 の 場 合 に はfcは
容易 に計算 で
き,そ の エ ネ ルギ ー 変 化 を調 べ る こ とが で き る.も っ と多 くの 自由 度 が 関与 す る散 乱,反 応 に お い て は,内 部 波 動 関数 が 必 要 に な るが,こ こで は,R行
列 理論
に し た が っ て,具 体 的 に解 くこ と を避 け,境 界 条 件 を課 す こ とに よ り完 全 系 を 導 入 す る と い う方 法 を と る.内 部 領 域 でSchrodinger方 ネ ルcの 境 界rc=acに い 実 数 値Bcを
お け る法 線n方
程 式 を 満 た し,各 チ ャ
向へ の 対 数 微 分 が エ ネ ル ギ ー に よ らな
もつ と い う条 件 をつ け る と,固 有 値 と固 有 関数 が 決 まる.
(6.12) (6.13)
固有 値Eλ は 実 数 で 離 散 的 な 値 を と る.χcは チ ャ ネ ル波 動 関 数 で,∫dSは 界 面 で の 積 分 を表 す.こ 考 え な い.Xλ
境
こで はチ ャ ネ ル は 核 子 散 乱 の み で,複 合 粒 子 の もの は
は 内部 領 域Iで
完 全 系 をつ く り正 規 直 交 条件
(6.14) を 満 た す.チ
ャ ネ ルaに
入 射 波 が あ る 波 動 関 数 ΨaはSchrodinger方
程式
(6.15) を満 た し,境 界 面 上 と外 部 領 域 に お い て,
(6.16) の よ うに チ ャ ネ ル で 展 開 し て お く.動 径 波 動 関 数 は
(6.17) で,規
格 化 定 数 に つ い て は6.2節
定 数 がυc-1/2に
で 説 明 す る((6.63)参
比 例 す る こ と を 指 摘 し て お く.υcは
間 の 相 対 速 度 で あ る.つ
ぎ に し ば し ば 使 うGreenの
照).こ
チ ャ ネ ルcに
こ で は,こ
の
お け る二 粒 子
定 理 を 述 べ て お く.Ψ1,Ψ2
は
(6.18) を満 た す とす る と,
(6.19) が 成 り立 つ.次
に 波 動 関 数 Ψaの チ ャ ネ ルcの 境 界 面 上 の 値Vcaと,そ
の微分
値Dcaを
(6.20) (6.21)
に よ り定 義 し,ま
たXλ
と 境 界 条 件Bcと
で,
の そ れ ら を 換 算 幅 振 幅(reduced
width
amplitude)
gλc
(6.22) (6.23) と表 す. 波 動 関数 Ψaは 内 部 領 域 で はXλ で 展 開 で きて,展
開式 は
(6.24) と な る.境
界 面 上 で は Ψaと 等 し い が,そ
の 微 分 に は ギ ャ ッ プ が 出 る.と
は 境 界 の 内 側 で は 波 動 関 数 の 微 分 は(6.13)に り決 ま る か ら で あ る.厳
よ り決 ま り,外
側 で は(6.17)よ
密 に は こ れ を 補 正 す る 項 を 付 け 加 え る が,そ
さ く と る こ とが で き る[5].
Greenの
定 理(6.19)を
Ψ1=Ψaと
い うの
の 値 を小
Ψ2=X*λ
に適
用す ると
(6.25) を 得 る.正
規 直 交 条 件(6.14)を
使 って
(6.26) の 関 係 を 得 る.境
界 面 上 で Ψaと 展 開 式(6.24)の
値 が 等 し い こ と か ら,
(6.27) を 得 る が,こ
れ に(6.26)を
代 入 す る と,VcaとDcaの
関係 式
(6.28)
が 求 まる.上 式 の右 辺 の
(6.29) はR行
列 で あ る.関
係(6.28)を
チ ャ ネ ル に つ い て の 行 列 で 書 く と,
(6.30) と 簡 単 に な る.(6.16)と(6.17),
(6.20)か
ら 波 動 関 数 の 値 の 行 列Vは
(6.31) と 表 せ る.IとOは(6.4)で ρc=κcacで
あ る.波
与 え られ る 内 向 波 と 外 向 波 の 境 界 面 上 で の 値 で, 動 関 数 の 微 分 値 の 行 列Dは(6.16),
(6.17)と(6.21)か
ら
(6.32) を 得 る.こ
れ ら を(6.30)に
代 入 し,Sに
つ い て 解 く と,
(6.33) を 得 る.次
に(6.4),
(6.8), (6.9)か
ら 導 か れ る 関 係 式
を使 っ て
(6.34) が 得 ら れ る.こ
の 式 の 評 価 に は 逆 行 列 の 計 算 を 行 わ な け れ ば な ら ず,そ
ギ ー 依 存 性 も 明 確 で は な い.こ
れ を 明 ら か に す る に は,近
を 計 算 す る と,Breit-Wignerの Teichmann
式 が 求 め ら れ る.こ
[6, 7]た ち の 仕 事 で あ る.こ
い.こ
似 を し た 上 で,逆
れ ら はWigner,
算 は 比 較 的 簡 単 だ が,一
行列
Eisenbud,
こ で は そ の よ う な 面 倒 を 避 け,境
件 を 逆 行 列 を な くす よ う に 選 ぶKapur-Peierls 歴 史 的 に は 一 番 早 く,計
のエネル
[5]の 方 法 を 述 べ る.こ
界 条
の方 法 は
方 代 償 を 払 わ な け れ ば な らな
れ に つ い て は こ の 節 の 終 わ り に 述 べ る.
Kapur-Peierlsは
固 有 状 態 λ の 境 界 面 で の 対 数 微 分 は エ ネ ル ギ ーEの
の そ れ と 同 じ と し た.す
外 向波
なわ ち
(6.35)
で,エ
ネ ル ギ ー 固有 値 も複 素 数
(6.36) と な る.固 幅gλcも
有 値,固
有 関 数 と も に エ ネ ル ギ ーEに
よ っ て 変 わ る.ま
複 素 数 で 弱 い エ ネ ル ギ ー 依 存 性 を 持 つ.さ
と は な ら な い の で,双 い.(6.12)を
直 交 基 底(bi-orthogonal
満 た す 固 有 関 数Xλ
ら に 固 有 関 数Xλ
basis)を
た換算幅振 は直交系
導 入 し な けれ ば な ら な
のチ ャネル展開 を
(6.37) とす る.次 の よ うな 関 数
(6.38) を 考 え る.こ
の 系 の 角 運 動 量 と そ のz成
子 と す る と,
分 をJ,
Mと
し,Tを
時 間反 転 の 演 算
で あ る か ら,[H,T]=0よ
り
(6.39) を 満 た す こ と が わ か る.Greenの
定 理(6.19)を
と し て適
用 す る と,
(6.40) とな り,λ ≠ λ'に対 して,直 交 す る こ とが わ か る.規 格 化 条 件 を付 け 加 え
(6.41) と す る.こ
の 規 格 化 条 件 はKapur-Peierls
[5]と は 異 な る が,次
格 化 と 一 致 す る よ う に 便 宜 的 に 選 ん だ.Greenの に 対 し て 適 用 す る と,前 だ し,R行
節 に お け る規
定 理(6.19)を と 同 じ く(6.30)を
得 る.た
列 は
(6.42) で,換
算 幅 振 幅gλcの
に な る.S行 の た め,逆
定 義 は 前 と 同 じ く(6.22)で
列 も 前 と 同 じ く(6.34)で
与 え ら れ る と す る が,複
与 え ら れ る が,境
素数
界 条 件Bc=Δc+iPc
行 列 の 項 は消 え
(6.43)
と な る.こ
こ で,
(6.44) は 部 分 幅 振 幅 で,部
分幅 は
(6.45) で 与 え ら れ る.次 す る と,全
に
に 対 しGreenの
定 理(6.19)を
適用
幅は
(6.46) と な る.こ
こ で,
(6.47) で,部 分 幅 の 総 和 は全 幅 に等 し いか 大 きい.し か し,幅 が 狭 い場 合 は 近 似 的 に 等 しい. (6.43)は 一 般 の 共 鳴 公 式 で あ り,多 くの 準 位 λの 和 を含 ん で い る.し か し共 鳴 幅 が 準 位 間 隔 に比 べ て 十 分 に小 さい と きに は,共
鳴 エ ネ ル ギ ー ελの 近 くで
は,こ の λ の 一 項 だ け で 十 分 で あ る.反 応 断 面 積(c≠c')は
(6.48) で 与 え られ る.Jは
複 合 核 状 態 λの ス ピ ンでIc1とIc2と
ス ピ ン で あ る.式(6.48)はBreit-Wignerの 呼 ば れ て い る.Breit-Wigner
は 入 射粒 子 と標 的核 の
一 準位 共 鳴公 式 あ る い は分 散 公式 と
[4]は摂 動 論 を使 って 導 い たが,Kapur-Peierls
[5]
は 使 わ ず に 導 くこ とが で きた. これ まで,波
動 関数 の 反 対 称 化 につ い て は 触 れ な か っ たが,R行
列理論で は
内 部 領 域 の 波 動 関数 の 具 体 的 な形 は使 わ ない が,殻 模 型 と 同 じ で,反 対 称 化 さ れ て い る とす る.外 部 領 域 の波 動 関 数 は 反 対 称 化 しな け れ ば な らな い が,す べ て の チ ャ ネ ル の 波 動 関 数 は 外 部 領 域 の 定 義 か ら互 い に 直 交 す る の で,2.9節 述 べ られ た よ うに各 チ ャ ネ ル の振 幅 に 係 数 をか けれ ば よい.弾 散 乱 で は こ の 係 数 は1で,反
に
性 散 乱 と非 弾 性
対 称 化 の 影 響 は見 ら れ な い.
こ こで 低 エ ネル ギ ー 中性 子 吸 収 反 応 を考 え て み よ う.中 性 子 の 場 合 は貫 通 因 子 は 球Bessel関 η=0,ρ=κa≪lな
数 とNeumann関
数 で 簡 単 に 計 算 で き る.低 エ ネ ル ギ ーで は
の で,
(6.49)
(6.50) に よ り,
(6.51) と な る.す 例 し,吸
な わ ち κ2l+1に 比 例 す る.し 収 断 面 積 は1/κ
て 粒 子 が 遠 心 力 やCoulomb障
た が っ てl=0に
に 比 例 し1/υ 壁 に よ り,核
あ る こ と が 述 べ られ て い るが,こ
対 し て はГ λcはκ に 比
則 が 成 り立 つ.2.8.4項
におい
内 に 到 達 す る 確 率 がPl(κ;RN)で
の 確 率 とυlと は ρ≪lの
極 限 で は 一 致 し,一
般 に は 近 似 的 に 一 致 す る. 換 算 幅│gλc│2に
つ い て はTeichmann-Wigner
[7]の 総 和 則
(6.52) が 知 られ て い る.最 後 の値 は 内部 波 動 関 数 の動 径 部 分 は 内 部 領 域 で 定 数 とい う近 似 を使 っ た.こ の和 則 は 独 立粒 子模 型 を と った と きの核 子 の換 算 幅 の大 き さ*1に な るの で,換
算 幅 を 総 和 則 で 割 っ た数 値 は,そ の 共 鳴 の 性 質 を示 す 指 標 と して
用 い られ て きた. Kapur-Peierlsは
摂 動 論 に よ らず にBreit-Wignerの
た.こ れ は 共 鳴 準 位 が 孤 立 し て い る と きに は よ いが,一
式 を導 くこ と に 成 功 し 般 にはこの理論には次
の よ うな都 合 の 悪 い 点 が あ る. (1) 共 鳴 パ ラ メ タ ーEλ,Γ λ,gλcは境 界 を決 め る パ ラ メ ターacに
よっ て 変 わ
る.境 界 は 核 と粒 子 の 間 に働 く核 力 の 影 響が 無 視 で きる よ うに とれ ば よい は ず で あ るが,共 鳴 パ ラ メ ターがacに
よ って 変 わ る と,複 合 核 状 態 も変 わ る こ と に
な り不 合 理 で あ る. (2) 共 鳴 パ ラ メ ター が 入 射 エ ネ ルギ ー に よ っ て 変 わ る. す な わ ち ち ょ う ど エ ネ ル ギ ーEが
共 鳴 エ ネ ル ギ ー の 一 つEλ
と一致す ると
きに は 状 態 λ は複 合 核 状 態 に な り,直 観 的 な複 合 核 の 像 と 一致 す る.し か しエ ネ ル ギ ーEに
対 し て ほ か の 状 態 μ ≠ λ も決 ま っ て し ま う.こ の状 態 は 完 全 系
を つ くる の に は 必 要 で あ るが,直 観 的 な 共 鳴 状 態 に は 対 応 し な い.エ
ネル ギ ー
を 変 え る と これ らの 状 態 は 変 わ っ て くる.エ ネル ギ ー に 依 存 し な い 直 観 的 な複 *1 l=0の
中性 子 に井 戸 型 ポ テ ン シ ャル を仮 定 し
h2/μca2cと
な る.
,境
界 条 件 をBc=0と
選 ぶ と,│gλc│2=
合 核 に対 応 す る状 態 を作 る とい う試 み はHumblet-Rosenfeld[10]に
よっ て な さ
れ た. (3) 共 鳴 エ ネル ギ −Eλ,振 幅gλcが 複 素 数 で,固 有 関 数Xλ は 直 交 系 を つ く らな い. これ は 境 界 条 件が 複 素 数 で 与 え られ て い る た め で あ る. (4) 与 え られ た ハ ミル トニ ア ンHの
も とで 固有 関 数Xλ を 具 体 的 に 求 め る こ
とは 可 能 で あ るが,次 節 に 述 べ るFeshbachの
射 影 演 算 子 法 に よ る とXλ は 通
常 の 殻 模 型 の波 動 関 数 と な る.現 象 論 と し て はXλ いが,微
を具 体 的 に 求 め る必 要 は な
視 的 理論 に お い て は必 要 と な っ て くる.
(2),(3)の 欠 点 を 改 良 し よ う と い うの がWignerら Wignerは
のR行
列 理 論 で あ る.
境 界 条 件 と して エ ネ ルギ ー に依 存 す る複 素 数 で 与 え られ る条 件(6.35)
の代 わ りに,内 部 波 動 関数 の 対 数 微 分 がrc=acに な い,実 数 の値Bcに
お い て エ ネ ルギ ー に依 存 し
等 し くな る とい う条 件(6.13)に
置 き換 え た.す
ると共鳴
パ ラ メ タ ー は すべ て エ ネ ルギ ー に 依 存 し な い 実 数 とな る. しか し なが らR行
列 理 論 で は 一 度R行
列 に よ って 波 動 関 数 を 内部 領 域 と外
部 領 域 で 連 続 に つ な ぎ,そ れ を物 理 的 な条 件 に対 応 す る漸 近 形 を もつ よ うに 変 換 す るの で,計 算 が 複 雑 で あ って,得 が,そ
られ たS行
列 は(6.43)の
よ うな形 に な る
こ に 出 て くるEλ,Г λ,gλcはエ ネル ギ ー 依 存 性 を も ち,ま たgλcは 複 素
数 と な る. (1) に 対 して はTeichmannとWignerに
よ って,Bcを
存 性 を小 さ くで き る こ とが 示 され て い る.固 有 関 数Xλ
適 当 に 選 ぶ とac依 は直 交 系 をつ くる よ う
に な る 一 方,複 合 核 とい う像 か ら一 般 に は 離 れ た もの に な って し ま う. R行 列 理 論 か らS行
列 を導 くの に は 逆 行 列 計 算 を含 む面 倒 な手 続 きが 必 要 で
あ るが,全
部 のR行
列 理 論 の 共 鳴 を取 り入 れ れ ばKapur-PeierlsのS行
得 られ,さ
らに 各 項 ご と の対 応 が つ くこ とはKawai-Nagasaki[11]に
列が よ り示 さ
れ た. Kapur-Peierls理
論,R行
列 理 論 は 枠 組 み と して は 完 全 な もの で,多
験 デ ー タ の 解 析 に 用 い られ,共
くの 実
鳴 パ ラ メ ター が 蓄 積 され て,そ の 統 計 的性 質 が
明 らか に な って,統 計 理 論 の発 展 を うなが し,カ オ ス との 接 点 も見 出 され た.ま た 光 学 模 型 や 直 接 相 互 作 用 模 型 の基 礎 づ け に も用 い られ た.ア ア ナ ログ 共 鳴(IAS)が りIASの
発 見 され る や1965年D.
定 式 化 を行 っ た の は有 名 で あ る.R行
Robson[12]がR行
イ ソバ リ ッ ク ・ 列 理論に よ
列 理 論 は 運 動 学 に も応 用 さ れ,
し き い値 エ ネ ル ギ ー の 近 くの 断 面 積 の予 言 に も使 わ れ た[8].ま
たR行
列 理論
は 原 子 核 の み な らず 原 子 分 子 の 反 応 の 取 扱 い に も応 用 され て い る[13].し
かし
なが ら 内部 波 動 関 数 は 境 界 値 で 規 定 され て い る の で,微 視 的 な 殻模 型 を応 用 す る に は不 便 で あ る.
6.2 Feshbachの
Feshbach[14,
理 論 に 基 づ く分 散 公 式
15]は 状 態 空 間 を 二 分 す る の に 幾 何 学 的 な 境 界 を設 け る代 わ り
に,射 影 演 算 子 を用 い て,外 部 領 域 に 対 応 す るP空
間 と 内部 領 域 に対 応 す るQ
空 間 を 定 め た.す な わ ち系 の状 態 を基 準 とした.こ の 空 間の 選 び 方 は 問 題 に よっ て異 な る.た とえば 普 通 の 光 学 模 型 の と きに はP空
間 と して 弾 性 散 乱 に対 応 す
る チ ャネ ル を と る(3.6節 参 照).非 弾 性 散 乱 の 場 合 に は 開い た チ ャ ネ ル をP空 間 と し,閉 じた チ ャネ ル をQ空
間 と し た.こ の場 合 に は 空 間 の 分 け 方 は エ ネ ル
ギ ー に よ っ て 変 わ る.ま た 射 影 演 算 子 は 反対 称 化 を考 慮 す る と複 雑 に な り,特 に複 合粒 子 の 関 与 す る組 み 替 え反 応 で は 簡 単 で は な い[15, 16].詳 細 は そ れ ら の 文 献 を 参 照 され た い. こ こ で は 複 合 核 反 応 を 考 え るの でMahaux-Weidenmuller[17]に よ うな選 び 方 をす る.初 め に独 立 粒 子 ポ テ ン シ ャ ルUを 型 で 使 わ れ る もの で よい.あ
る い はHartree-Fockポ
従 って 次 の
導 入 す る.こ れ は 殻 模 テ ン シ ャ ル で も よい.こ
れ に よ り一 粒 子 の波 動 関 数 が
(6.53) に よ り決 まる.Kは
運 動 エ ネ ルギ ー 演 算 子,εiは 固 有 値 で,負 の エ ネ ル ギ ーで
は 離 散 的 固 有 値 を もち,束 縛 状 態 とな る.正 の エ ネ ル ギ ー で は 連 続 スペ ク トル を もち,散 乱 状 態 と な る.全 系 の 波 動 関 数 は 一 粒 子 波 動 関 数 をベ ー ス に して 組 み 立 て る.そ の 中で 束 縛 状 態 の み か ら構 成 され た 関数 空 間 の部 分 をQ空 ぶ.こ れ は 殻 模 型 の波 動 関 数 と考 えれ ば よい.少 あ る よ うな 関 数 空 間 をP空
間とよ
な く と も一 粒 子 が 連 続 状 態 に
間 と よぶ.こ れ らの空 間 に対 応 す る射 影 演 算 子P, Q
につ いては
(6.54) の 関 係 が 成 り立 つ.こ
の 方 法 で は 射 影 演 算 子 は エ ネ ル ギ ー 依 存 性 は な いが,独
立 粒 子 ポ テ ン シ ャル に よ って 変 わ る.ま た 空 間 は 全 系 の ス ピ ン ・パ リテ ィJπ に よ りさ ら に 部 分 空 間 に分 か れ る.こ れ か ら は 特 に指 示 が な い か ぎ り一 定 のJπ の空 間 の 中で 考 え る. い ま 導 入 し た 射 影 演 算 子 に よ っ て,全
系 のSchrodinger方
程式
(6.55) を分 け て 書 く と,連 立 方程 式
(6.56a) (6.56b) (6.57) を得 る.(6.56b)の 無 視 したQ空
右 辺 を0に
した もの,す
な わ ちP空
間 との 間の 相 互 作 用 を
間の方程式
(6.58) に よ って 複 合 核 状 態 の 固有 値 と 固有 関数 を定 義 す る.Xλ
は 束 縛 状 態 の 一体 波 動
関 数 の 積 の 一 次 結 合 な の で,全 体 と して 束 縛 状 態 で,離 散 的 固 有 値 を もつ.た だ し エ ネル ギ ー は正 に もな りうる の で,こ 態 で あ る.(相 互 作 用HPQを
の と きは 連 続 状 態 に 埋 もれ た束 縛 状
導 入 す れ ば 連 続 状 態 に な る.)し たが っ てXλ は も
と の ハ ミル トニ ア ン の 固 有 関 数 で は ない.こ
の よ うに し て作 られ た 複 合 核 の波
動 関 数 は 殻 模 型 の もの と同 じで あ るの で 直 観 的 に わ か りや す い.幾 何 学 的 な境 界 を 導 入 し ない の で,前 に述 べ たR行
列 の 欠 点(1), (2),(3),(4)は な い.た だ し
共 鳴 振 幅 γλcは複 素 数 に な るが,位 相 と して く く り出 す こ とが で き る(6.73). 共 鳴 公 式 を 求 め る に は連 立 方程 式(6.56a), れ ば な ら な い.ま ず(6.56b)を
使 っ てQΨ
(6.56b)をPΨ
をPΨ
につ い て 解 か な け
に よっ て 表 し
(6.59) (6.56a)に
代 入 す る とPΨ
の方程式
(6.60) (6.61) を得 る.Q空
間 との結 合 の な い と きの 解
(6.62)
を 基 底 と し て 用 い る.チ
ャ ネ ル 指 標aは
角 運 動 量 表 示 で,Jπ,
E, l, s,標
的核
の 状 態 α を 指 定 す る.ψ+aは
(6.63) に よ り 規 格 化 し て お く(具 体 的 な 形 は(6.69), HPPは
エ ル ミ ー トで,
に な る.(6.60)の
(6.70a),
(6.70b)参
照).こ
こで
は正 規 直 交 関 係 を満 た す か ら形 式 的 取 扱 い は 簡 単
解 を 求 め る た め,ま
ず 両 辺 に
を か け る.こ
こで
(6.64) と す る.
は 外 向 波Green関
数 に ほ か な ら な い.す
る と
(6.65) を う る.こ (6.56b)か
のPΨ らPΨ
に つ い て の 積 分 方 程 式 は2.4.1項 を 消 去 し た と き のQ空
に 従 っ て,Q空
間の方程式
間 の 有 効 ハ ミ ル トニ ア ン
(6.66) に よ り
(6.67) とな るが,こ
れ が 求 め る 解 とな る*2.上 記 の方 程 式 でE+をE-に
向 き散 乱 波 の 解
が 得 られ る.こ れ か らS行
代 えれば内
列 を 求 め る には,S行
列 の 定 義 に従 い
(6.68) を 計 算 す れ ば よ い.(6.68)の
計 算 に は(6.67)のPΨ
と(6.59)で
与 え ら れ るQΨ
の 両 方 を 用 い な け れ ば な ら な い.こ
の 計 算 は 少 し 面 倒 な の で,(6.67)の
か ら 求 め る 方 法 を こ こ で は 示 す.ま
ず
漸近形
を 各 チ ャ ネ ル 成 分 に 分 け て 書 く.
(6.69) *2 (2 .87)か
ら
か れ る 関 係 式 より(6.67)が
と な るが,代
数計算で導 得 られ る.
こ こでaは
入 射 チ ャ ネ ルが αslで あ る こ と を示 し,sは
チ ャ ネ ル ・ス ピ ンす な
わ ち標 的核 の ス ピ ン と粒 子 の ス ピ ンの ベ ク トル 和 で あ る.こ
こで 動 径 波 動 関 数
の漸近 形は
(6.70a) (6.70b) で与 え られ る.
はP空
間 の 散 乱 に対 す るS行
列で
(6.71) に よ り定 義 され る. 波動 関数
は(6.62)を 満 た すが,チ ャネ ル 間 の結 合が 無 視 で き る と きに は,
(6.72) と 表 せ る.た
だ し δ(0)aは実 数.す
る と(6.70a)よ
り,
(6.73) で あ る こ とが わ か る.し Green関
た が っ て 共 鳴 振 幅 γλcも 位 相 を く く り出 す こ と が で き る.
数 の チ ャ ネ ル α で の 漸 近 形 は(2.7.3項
参 照)
(6.74) と な る.こ
こ でr>とr<はrとr'の
大 き い 方 と 小 さ い 方 で,(6.67)の
漸近形
か ら
(6.75) が 容 易 に 求 め られ る. 上 に 述 べ たS行
列 は ユ ニ タ リー 関 係
(6.76) を 満 た す こ と は 直 接(6.75)を
使 っ て 証 明 で き る.S0abに
つ いて もユ ニ タ リー 関係
(6.77)
を満 た す.ま たS行 い,す
列 は 入 る チ ャ ネ ル と出 るチ ャ ネル を取 り替 え て も変 わ ら な
な わ ち対 称 性
(6.78) を 満 た す.た
だ しtは
転 置 行 列 を 表 す.(6.70a),(6.70b)よ
運 動 量 を 対 角 化 す る 表 示 を と る た め で あ る.一 れ る 相 反 定 理(reciprocity 次 にS行
theorem)が
列 の 式(6.75)か
空 間 に 完 全 直 交 系│μ 〉を 導 入 す る.こ
般 に は 時 間 反 転 対 称 性 か ら導 か
成 り立 つ(2.5.3項
らBreit-Wignerの れ はHQQの
り明 ら か な よ う に 角
参 照).
分 散 式 を 求 め る.そ
れ に はQ
固 有 関 数 で あ る 必 要 は な い.
そ して崩壊振幅
(6.79) を 定 義 す る.上
の 式 で 最 後 の 等 式 は(6.69),(6.70a),(6.70b)よ
り明 ら か で あ る.
す る と(6.75)は
(6.80) と 書 け る.ま
た,
(6.81) は エ ネ ルギ ー 分 母 で,行
列要素 は
(6.82) で 与 え られ,WQは
(6.83) で あ る.行 列 要 素 は
(6.84) と書 け,右 辺 第1項 は 主 値 を表 し,こ れ をΔ μνと書 く.第2項
は 崩壊 振 幅 で 書
け る.
(6.85) こ こで Δμνと
は実 数 の対 称 行 列 で あ る こ と を注 意 して お く.
S行 列 を分 散 式 の 形 にす る に はエ ネ ルギ ー 分 母Dす
なわ ちHQQを
な け れ ば な ら な い.HQQは
な行 列 な の で,複 素 直 交
複 素 対 称
変 換 で 対 角 化 され る.こ の 行 列 をTと
対角化 し
す ると
(6.86) を満 た す.HQQは
(6.87) とな る.こ の 虚 数 部 は 共 鳴 の 幅 で
(6.88) で 与 え られ る.h/Γ λは 複 合 核 の 寿 命 で あ る.HQQは
エ ル ミー トで な い か ら共
鳴 状 態 に対 応 す る 固 有 状 態│λ〉は正 規 直 交 系 を作 らな い.す な わ ち
(6.89) とな り,さ らに 計 算 を 進 め るに は6.1節 る.す
な わ ち
で 導 入 した 双 直 交 基 底 を使 うこ とに な
な ら
で あ る.初 め に 次 の 量
(6.90) を 考 え る.こ
こ でNλ
はSchwarzの
不等式 よ り
(6.91) を 得 る(こ
のNλ
が(6.47)と
対 応).両
辺 の 虚 数 部 を と る と,
(6.92) もし 部 分 幅 を
(6.93) で 定 義 す る と,
(6.94)
が 求 ま る.す
な わ ち 前 節 と 同 じ く全 幅 は 部 分 幅 の 総 和 よ り大 き くな い.(6.80),
(6.81),(6.87)か
らS行
列 の共鳴公式
(6.95) が 求 ま る.こ
れ は(6.43)のKapur-Peierlsの
式 の 形 を し て い る.い
公 式 と 同 じ くBreit-Wignerの
公
ま 説 明 し た よ う に ミ ク ロ な 模 型 か ら パ ラ メ タ ー ελ,γλa,Γλ
な ど を 計 算 す る こ とが で き る.前
と 同 じ く準 位 間 隔 が 幅 に 比 べ て 大 き い と き は
最 寄 り の 共 鳴 の 寄 与 は 大 き く,一 準 位 公 式 が 成 り立 つ.
6.3 光
光 学 模 型 は3章 め る.6.2節
学
で 取 り上 げ られ たが,こ
模
型
こで は複 合 核 反 応 に即 し て議 論 を進
の 初 め に述 べ た よ うに 射影 演 算 子Qは
ネル(3.6節),反
束 縛 状 態 に対 応 し,弾 性 チ ャ
応 に 関 与 す るチ ャ ネ ル(5.1.1項)をP状
態 に選 ん だ の とは 異
な る.し たが って 本 節 の 光 学 模 型 は弾 性 散 乱 だ け で な くす べ て の 反応 の エ ネ ル ギ ー 平 均 を 与 え る広 義 の 光 学 模 型 で あ る.こ の応 用 の 一 つが8.4節
の多 段 階 直
接 過 程 で あ る.こ れ まで は 個 々 の共 鳴状 態 を 考 え て きた が,エ
ネ ルギ ーが 上 昇
す る と 共 鳴 状 態 の 間 隔 は 狭 ま り,ま た そ の 幅 は 広 くな って,個
々の共鳴は観測
で き な くな る.あ
る い は 観 測 で きて もそ の 平均 的 振 る 舞 い の 方 が 物 理 的 に 意 義
が あ る場 合 も多 い.こ の よ うな場 合 に は,個
々の 断面 積 を考 え な い で,そ の エ
ネ ル ギ ー平 均 を 計 算 し た 方が よい.エ ネ ル ギ ー 平 均 はLorentz型 節)を 使 う.P空
間 の 有 効 ハ ミル トニ ア ン(6.61)を
幅2Iで
重 み 関数(1.4
エ ネル ギ ー 平均 す
る と光 学 模 型 の ハ ミル トニ ア ン
(6.96) を 得 る.こ
こ で 〈WP〉 は 動 的 偏 極 ポ テ ン シ ャ ル(dynamical
tial)と 呼 ば れ て い る.光
学 模 型 の 波 動 関 数
polarization
poten
は方 程 式
(6.97)
を 満 た す.こ
の 方 程 式 は(6.65)と
同 じ よ う に 解 く こ とが で き る;
(6.98) S行 列 は
(6.99) と 求 め ら れ る.こ
の 結 果 を(6.75)と
比べ る と
(6.100) す な わ ちS行
列 も エ ネ ル ギ ー 平 均 と な る.
こ の 光 学 模 型 の 波 動 関 数(6.98)を
使 っ てKawai-Kerman-McVoy[18]はS行
列 を 計 算 し た.
(6.101) こ こで
(6.102) (6.103) で あ るが,(6.101)の
右 辺 第2項
の エ ネ ル ギ ー平 均 は0に
な る こ とが 証 明 で き
る[18]. こ こでhQQを
対 角 化 す る直 交 変 換 を行 い,対 角 要 素 を
と書 く.
ま た 共 鳴振 幅 を
(6.104) に よ り定 義 す る と,(6.101)は
(6.105) と な り,(6.95)と ネ ル ギ ー 平 均 は0と
似 た 形 に な る.し
か し な が ら 内 容 は 異 な り,右
い う性 質 を も つ.
辺 第2項
のエ
S行 列 が 求 まれ ば 断 面 積 の 計 算 が で きる(2.8.5項).こ
れ まで のJπ が 指 定
され た 波 動 関 数 を重 ね 合 わせ て 入 射 波 の 部 分 が 平 面 波 に 一 致 す る よ うに す る. (6.69),(6.70a)と
平 面 波 の 部 分 波 展 開 の 公 式(2.156)を
使 うと
(6.106) が 得 られ る.こ の場 合,入 射 チ ャネ ル aは 運 動 量 表 示 sは チ ャ ネ ル ・ス ピ ン で あ る.kをz軸
方 向 に と って,外
αsmskEで
指 定 され,
向波 と平 面 波 の 部 分
の 流 束 を計 算 し,そ の比 を と る と次 の微 分 断面 積
(6.107) とな る.終 状 態 の チ ャ ネ ル は α's'であ る.こ の 公 式 は 荷 電 粒 子 に対 して も使 え る が,弾 性 散 乱 の場 合 に はCoulomb散
乱 の 部 分 だ け を まず 取 り出 し,残
りは
部 分 波 の 和 と した 方 が よい.(6.107)は
(6.108) と な る.Coulomb散
乱振幅 は
で あ る(2.7.1項
の 式(2.179)参
(6.109) 光 学 模 型 はS行
照).
列 の エ ネル ギ ー平 均 を 与 え る の で,こ れ か ら平 均 の 断面 積 を
計 算 す る こ とが で き る.こ れ は 直 接 反応 の 断 面 積 で あ り
(6.110)
で 与 え られ る.も
う一 つ の 断面 積 へ の 寄 与 は ゆ ら ぎ の 断面 積 で
(6.111) こ こで
(6.112) はS行
列 の ゆ ら ぎ の部 分 で あ る.エ ネ ルギ ー 平 均 し た 総 断 面 積 は
(6.113) こ れ ら の 断 面 積 は 立 体 角 で 積 分 し た も の で,弾
性 散 乱 の場 合 に は 中 性 粒 子 を仮
定 し た. S行 Q空
列 は ユ ニ タ リ ー 関 係(6.76)を
満 た す が,エ
間 へ の 吸 収 過 程 が 含 ま れ て い る た め,ユ
満 た さ な い 度 合 は ユ ニ タ リ ー 欠 損 と よ ば れ,透
ネ ル ギ ー 平 均 し たS行
列 は,
ニ タ リ ー 関 係 は 満 た さ な い.こ 過 行 列(transmission
の
matrix)
(6.114) で 表 され る.透 過 行 列 は チ ャ ネ ル 間 の 直 接 結 合 の な い と き は 〈S〉は対 角 型 な の で,Tも
対 角 形 に な り透 過 係 数 と呼 ば れ る.現 象 論 的 解 析(7.4節)で
れ が 使 わ れ る.(6.111)の
は主にこ
α's'に つ い て の和 は チ ャ ネ ル αsか らの 複 合 核 形 成
断面積で
(6.115) と な る.(6.99)で る と,
与 え ら れ る 平 均S行
列 の 式 を 使 っ て 〈S〉・〈S†〉の 計 算 を す
こ こ で 関 係(6.71),(6.77)を
使 っ た.透
過行列 は
(6.117) で,(6.98)を
使 うと
(6.118) が 得 られ る[19].こ
こ で 〈WP>は(6.96)に
現 れ る動 的偏 極 ポ テ ンシ ャル で あ る.
こ こ で 得 られ た 透 過 行 列 の式 は 正確 で あ るが,複 導 い て お こ う.そ れ に は 準 位 行 列(6.99)を
合 核 共 鳴 の 幅 で 表 した 式 を
チ ャ ネ ル行 列
(6.119) を 使 っ て 書 き直 す.す な わ ち(6.99)の 主 要 項 と し,残
りの 項 をQ空
第2項
の 分 母 を
間 の 行 列 と して,べ
を
き展 開 し,次 にQ空
間の行
列 と し て和 を と る と
(6.120) から
(6.121) が 求 め られ る.エ ネ ル ギ ーがEで
あ るチ ャ ネ ル だ けが0で
ない行列要素
(6.122) を 使 う と,(6.121)は
(6.123) と な る.さ
ら にXの
虚 数 部 を無 視 す る近 似 を と る と
(6.124)
と な る.ρ
λは
(6.125) で 定 義 さ れ る 準 位 λ の 密 度 で あ る.(6.114),(6.123)か
ら透 過 行 列
(6.126) が 求 め られ る.チ ャネ ル 間 の直 接 結 合 の影 響 を無 視 す る とX(E)は
対角形にな り
(6.127a) (6.127b) が 求 まる.(6.127b)は
の と き成 り立 つ[20].
透 過 係 数 に 関 係 した 観 測 量 は 強 度 関 数 で,弾 性 散 乱 に 対 す る 平 均 の 共 鳴 幅 (6.93)と 平 均 準 位 間 隔
の比
(6.128) は,3.2節
に お い て 定 義 さ れ た 強 度 関 数(3.8)で
て は る か に 小 さ い エ ネ ル ギ ー 領 域 で は,1に 係 数(6.127b)に
あ る.共
鳴幅が準位 間隔に比べ
比 べ て は る か に 小 さ い 量 で,透
過
よ り
(6.129) と表 され る.こ の 式 に よ り光 学 ポ テ ンシ ャル が 与 え られれ ば 計 算 で きる.強 度 関 数 は低 エ ネ ルギ ー の 中性 子 散 乱 の実 験 デ ー タか ら求 め られ るが,s波 p波 まで で あ る.
は 貫 通 因 子 に比 例 し(6.44),(6.45),貫
か せ いぜ い
通 因子 は(6.51)
で 与 え られ る た め,強 度 関 数 は エ ネル ギ ー に依 存 す る 量 で,理 論 と比 べ る と き に はs波 の 場 合 に はs波 強度 関 数
(6.130) が 用 い られ る.E0と
し て は 適 当 なエ ネ ルギ ー(た と えば1eV)を
選 べ ば よい.
6.3.1 一様 ポ テ ン シ ャル の 場 合 の光 学 模 型 光 学 模 型 の波 動 関 数,透 過 係 数 な ど を最 も簡 単 な系,一 様 な複 素 ポ テ ン シ ャ ル を例 に とっ て 計 算 す る.時
間 に依 存 す るSchrodinger方
程式 は
(6.131)
で あ る.Vは
実 数 部,Wは
虚 数 部 の 光 学 ポ テ ン シ ャル で あ る.こ れ か ら次 の連
続 の方 程 式
(6.132) が 導 か れ る[20].こ
こ で,密
度 ρ(r,t)と 流 束j(r,t)は
(6.133) で 与 え られ る.こ
こ で ξ はr以
外 の 積 分 変 数 で,(6.132)の
は虚 数 ポ テ ン シ ャ ルWに
右辺 に現 れ る
よ る吸 収 の 割 合 で あ る.
こ れ を 最 も簡 単 な1次 元 の 一 様 な ポ テ ン シ ャル に 適 用 し て み る.ま ず 時 間 に 依 存 しな い 方 程 式
(6.134) のエ ネ ル ギ ーが 実 数 の 定 常 解 は
(6.135) と な るが,波
数は
(6.136) (6.137) で,全
波動関数 は
(6.138) で 与 え られ る.こ れ か ら密 度 を計 算 す る と,
と な り,x=0と
x=Lの
区 間 を考 え て み る と,密 度 は 吸 収 の た め,x=0に
x=Lに
お い て
で あ るか ら,x=0に
お い て ρ=1か
ら,
に減 少 す る.一 方,流 れ は お い て に 減 少 す る.そ
か ら,x=Lに
おける
の差が ち ょうどこの 区 間で吸収 さ
れ る る 流 れ か ら,出 る 流 れ を差 し引 い た もの で,そ れ は
に等 し い.透 過 係 数 は 入 で与
え られ る.こ れ が 普 通 使 わ れ て い る 時 間 に独 立 な 光 学 模 型 の 波 動 関 数 に 対 応 す る(3.3節 参 照).
も う一 つ の 簡 単 な 解 は 波 数 が 実 数,エ
ネ ルギ ー が 複 素 数 の 場 合 で
(6.139) で 与 え ら れ る.こ
こで
(6.140) で あ る.す
な わ ち 密 度 は 座 標xに で 位 置xに
Wに
は よ ら な い, よ ら ず,密
と な る.流
れ は
度 と流れ は と もに 吸 収 ポ テ ン シ ャ ル
よ り一 様 に 時 間 と と も に 減 衰 す る.
境 界 条 件 が 課 せ ら れ るR行 テ ン シ ャ ル で は 作 れ な い.い Rosenfeld[10]の
列 理 論 の 波 動 関 数 は,以 まKapur-Peierls[5]と
固 有 関 数 を 考 え て み る.一
ま で 広 が り
の 境 界 条 件 を 課 す.波
は
の 関 係 が あ る.す
x=Lで
は
で あ る.
と も に 指 数 関 数 的 に 減 少 す る が,こ
る と,x=0に
kR,kIは
れ は ポ テ ン シ ャ ルWに
分 はxと
の で,kI<0と
の 場 合,内
部 領 域 の 波 数Kも の 場 合x>Lの
に よ り打 ち 消 さ れ る[10].具
体 的 にx>Lの
波 と な る.
方,エ
ネ ル ギ ー の 虚部 は負 で な け れ
な る.し
と も に 指 数 関 数 的 に 増 大 す る.し
エ ネル
よ る 吸 収 とx=L
と 書 く とエ ネ ル ギ ー は 固 有 値 方 程 式 を 解 い て 求 め る.一
数kと
お け る 流 束 は0で,
素 数 の エ ネ ル ギ ー 固 有 値 は 離 散 的 で あ る.こ
ば な ら な い か ら,kR>0な
らx=L
の 密 度 ρ(x,t)は 時 間 と
に お け る 流 失 の 二 つ に よ っ て 引 き起 こ さ れ る.こ
数 を
は 少 し 異 な るHumblet-
様 ポ テ ン シ ャ ル がx=0か
ギ ーEに
複 素 数 で,複
上 の よ うな一様 な ポ
たが って波 動 関数 の 空 間部
か し こ の 増 大 は 時 間 部 分 の 振 幅 を 書 く と,
(6.141) と な る.こ
こ で 波 束(6.5節
参 照)を
に あ る とす る と,波 束 は速 度 波 束 の 位 置 はx=L+υtで
考 え,そ の 中心 がt=0に でx=Lか
与 え ら れ るの で,上
束 で 見 て い れ ば 差 し引 き0と な る.
お い てx=L
ら遠 ざ か る.こ の と きの の 式 の 右 辺 指 数 の 実 数 部 は波
6.4 戸
前 の2節
口
状
態
で 複 合 核 を取 り扱 う理論 の 枠 組 み を 説 明 した が,こ れ か ら そ の 内 容
に 立 ち 入 る.複 合核 に 至 る まで に は複 雑 な 経 路 を た ど るが,そ 戸 口状 態が こ の節 で 導 入 され,そ
の第一歩であ る
の性 質が 調 べ られ る.入 射 核 子 が 核 内 に 入 る
と,核 に よる平 均 ポ テ ン シ ャル を感 じ,そ のエ ネル ギ ー はFermiエ
ネルギー よ
りは る か に 高 い.入 射 核 子 が 核 内核 子 と衝 突 す る と,そ れ にエ ネ ルギ ー と運 動 量 を与 え,Fermiエ ち1粒
子 と1空
2p-1h状
ネ ル ギ ー よ り低 い状 態 か ら高 い状 態 に押 し上 げ る.す な わ 孔(1p-1h)の
対 が で き る.も
し標 的 核 が0p-0h状
態で あれば
態 に な る.入 射 核 子が また 核 内核 子 に 衝 突 す る と,新 た な1p-1hの
が で き,3p-2h状
態 に な る.こ の粒 子 と空 孔 の 数 の 和m=p+hは
さ を示 す 指 標 に な る の で,エ キ シ トン(exciton)数
にΔm=±2,0で
状 態の複雑
と呼 ば れ て い る.こ れ は 固
体 物 理 の エ キ シ トンか ら とっ た と思 わ れ る.核 子 の 衝突 で,エ だ け 増 え る と言 っ たが,反
対
キ シ トン 数 は2
対 に減 る こ と もあ り,変 わ らな い こ と もあ る.一 般
あ る.こ れ は 有 効 相 互 作 用 を 二 体 力 と仮 定 し た 結 果 で あ る.
反 応 の 初 期 で はエ キ シ トン 数が 大 きい ほ ど状 態 数 が 大 き くな るの で,Δm=2 が お こ りや す いが,だ
んだ んmが
大 き くな る と状 態 数 は ピ ー ク に達 し,そ れ か
らは 減 少 に 転 ず る(8.1.1項 参 照).し
たが っ てmも
あ る と こ ろ まで 達 す る とそ
の あ た りで 停 滞 し 一 種 の 定 常 状 態 に な る.こ れ が 複 合 核 で あ る. 粒 子 の 状 態 と して は 束縛 状 態 と散 乱(連 続)状 態 が あ る.全 部 束 縛 状 態 か らな る エ キ シ トンmの
状 態 は6.2節 で 述べ た よ うにQ空
上 の 粒 子 が 散 乱 状 態 に あ れ ばP空
間 に属 す る.も し 一 つ 以
間 に 属 す こ と に な るが,二
つ以 上の連続 状
態 の 粒 子 は 今 後 考 え な い こ とに す る.核 反 応 の 初 め の 状 態 はP空 1回 の 衝 突 後 の 状 態 はQ空 に 落 ち る と,P空
間 の こ と もあ りP空
間 で あ るが,
間 の こ と もあ る.一 度Q空
間
間 に戻 る の は最 後 の粒 子 放 出 の と き に な る こ とが 多 い.こ の
よ うな 様 子 は 図6.2に 示 され て い る.最 初 の 衝 突 で で きたQ空
間 の エ キ シ トン
3の 状 態 の うち,励 起 され や す く重 要 な役 割 を果 た す 状 態 は複 合 核 状 態 へ の 入 り口 で あ る とい う こ とか ら,戸 口状 態(doorway 核 の エ キ シ ト ン数 がm0な の 次 の エ キ シ トン5のQ空 (hallway
state)と
state)と 呼ば れ て い る.(標 的
ら戸 口状 態 で はm=m0+3).つ
いでに戸 口状態
間 に属 す る励 起 され や す い 重 要 な 状 態 は 廊 下 状 態
呼 ば れ て い る.
図6.2
エ キ シ ト ン数mに
入 射 核 子 が 平 均 場 で 散 乱 され て,m=3の
よ り示 す 核 反 応 の 進 行
状 態へ い く割 合 が あ ま り大 き くな
い と き は,こ の散 乱 は 光 学 模 型 で よ く記 述 され る.m=3ま 上 にい く割 合 が 大 き くな けれ ば,m=3の
で は い くが そ れ 以
戸 口状 態 が 重 要 な 役 割 を果 た す.こ
の と きの 断 面 積 の エ ネ ル ギ ー変 化 は 一 体 の 共 鳴 と複 合 核 共 鳴 と の 中 間 で,核 反 応 の 中 間 構 造 と し てMITの S行 列 の 一 般 式(6.75)に
グ ル ープ[21,22]に 現 れ るQ空
態 な の で,こ れ を特 別 扱 い し てdと と し,Q=d+qと HPQ=HPdと
よっ て 発 展 させ られ た.
間 の 状 態 の 中 で 一 番 重 要 な の は 戸 口状
し,廊 下 状 態 を含 め た そ の ほか の 状 態 をq
書 く.す る と入 射 チ ャネ ル とqの 結 合 は な い と仮 定 す る と なって
(6.142) と な る.そ
こで
(6.143) とq空 間 を前 と 同 じ や り方 で 消 去 す る こ とが で き る.こ こでHQQか
ら の寄 与
の一つは
(6.144) で あ り,Γ ↓は 分 散 幅(spreading
width)と
呼 ば れ,戸
口 状 態 が も っ と複 雑 な 状
態qへ
崩壊 す る幅 で あ る.も
う一 つ の 寄 与 は
(6.145) で,Γ ↑は 脱 出幅(escape
width)と 呼 ば れ 連続 状 態 へ の 崩壊 に対 応 す る.Γ ↓+Γ ↑
は 戸 口状 態 の 幅 で,一 粒 子 幅 よ り小 さ く,複 合 核 の 幅 よ りは 大 きい. 戸 口状 態 は い ま述 べ た 核 子 散 乱 の 場 合 の2p-1h状 1p-1h状 態 で あ る巨 大 共 鳴 状 態,ま 移 行 反 応 の 場 合 の1p状
た(d,p)あ
態 あ るい は1h状
態 の ほ か,光 反 応 の場 合 の
る い は(p,d)反
応 の よ うな核 子
態 な どが あ る.以 下,戸
口状 態が も っ
と複 雑 な状 態 に 崩 壊 す る様 子 を強 度 関 数 を 使 って 調 べ る.そ の あ と,巨 大 共 鳴 と ア イ ソバ リ ッ ク ・ア ナ ログ 状 態 を 例 に と り,戸 口状 態 の崩 壊 を議 論 す る.
6.4.1
強
度
関
数
強 度 関 数 の 歴 史 は 古 い が,Lane-Thomas-Wigner
[23]は 低 エ ネ ル ギ ー 中性
子 散 乱 に現 れ る 巨 大 共 鳴 現 象 は 光 学 ポ テ ン シ ャ ル の 実 部 に よ る 共 鳴が 残 留 相 互 作 用 に よ り多 くの 複 合 核 状 態 に 分 散 さ れ た もの と い う解 釈 を 示 し た.そ 後Bohr-Mottelson Breit-Wigner型
の
[20]は 簡 単 な 模 型 を使 って,強 度 関 数 は 一 定 の 条 件 の 下 で に な る こ と を示 した.最 近Lauritzenら[24]は
もっ と一 般 的 な
条件 の 下 で,こ れ を 定 式 化 し,ま た大 規模 殻模 型 の シ ミュ レ ー シ ョ ン[25]と 比 べ た.以 下[24]に 従 っ てQ空
間 内で,戸
口状 態 が 残 留 相 互 作 用 に よ り,も っ と
複 雑 な状 態 に拡 散 して い く有様 を 強度 関数 を使 って調 べ る.す な わ ちQ=d+q 空 間 内 で 計 算 を 行 う.戸 口状 態 は独 立粒 子 ハ ミル トニ ア ンH0の 定 す る.(H0の
固 有 状 態 と仮
定 義 を 少 し変 えれ ば,巨 大 共 鳴 も扱 うこ と も可 能 で あ る.)戸 口
状 態 μ は,
(6.146) を 満 た す.次 H0+Vと
に 残 留 相 互 作 用Vを
し,そ
考 え,Q空
間 で の ハ ミ ル ト ニ ア ン をH=
の 固 有 値 ・固 有 関 数 を εα,│α〉と す る と,
(6.147) を満 た す.こ れ ら の 二 つ の 状 態 は
(6.148)
で 結 ば れ,そ
の 展 開係 数 には
(6.149) の 関 係 が 成 り立 つ.戸
口 状 態 μ の 強 度 関 数(strength
function)を
(6.150) で 定 義 す る[20].
(6.149)よ
り
(6.151) を 満 た す の で,こ
の 強 度 関 数 は 規 格 化 され て い る.(6.128)の
す る た め 規 格 化 され た 強 度 関 数 と呼 ぶ こ とに す る.d空
強 度 関 数 と区 別
間 の 有 効 相 互 作 用 を用
い る と,規 格 化 され た 強 度 関 数(6.150)は
(6.152) とな る.戸
口状 態 μ は ほか の 戸 口状 態 と相 互 作 用 が な い とす る と,
(6.153) と 書 け る.Σ
μ(ε)は
(6.154) で 与 え られ る.固 有 関 数│λ〉は
(6.155) を 満 た す が,一
般 に状 態│λ〉を具 体 的 に 求 め る こ とは 難 し い.
しか し次 に説 明 す る弱 結 合 の 条 件 が 満 た され る と きに は Σμ(ε)のエ ネ ル ギ ー 平 均 Σμ(ε)は,戸 口 状 態 μ と そ の つ ぎ に複 雑 な 廊 下状 態 ν との 行 列 要 素Hμ ν と準 位 密 度 ρν(ε)によ り
(6.156)
で 与 え られ,容 易 に 計 算 す る こ とが で き る.弱 結 合 は 戸 口状 態 μ と(6.155)の 固 有 状 態 λ との 行 列 要 素Hμ λの 分 布 関 数
(6.157) の 広 が りΔ εが 弱 結 合 で 計 算 し た分 散 幅Γ μ(ε)よりは るか に大 きい と き成 り立 つ[25].こ
の と き規 格 化 され た 強 度 関 数 は
(6.158) のBreit-Wigner型
に な る.
初 め の 状 態 が1粒 で,幅
子 か1空
は エ キ シ ト ン 数3の
比 例 す る こ と に な る(8.1節 高 く な る と,ず ル ギ ー の2乗
準 位 密 度 に 比 例 し,そ 参 照).励
で は な く1乗
に
起 エ ネ ル ギ ー が 低 い 場 合 は よ い が,少
し
[26,27]に
よ る と,励
起エ ネ
に 比 例 す る ほ うが 大 局 的 に 合 う と い う.図6.3に のEが
空 孔 の 場 合 に 対 応 し,正
子 の 結 合 エ ネ ル ギ ー よ り 高 く な る と,散
い が 必 要 と な る.図
態なの
の 励 起 エ ネ ル ギ ー ε の2乗
れ が 生 ず る.EsbensenとBertsch
の 実 験 値 と の 比 較 を 示 す.負 応 す る.核
孔 の 場 合 は 戸 口 状 態 は2p-1hか1p-2h状
核
の場合は粒子に対
乱 状 態 に な り,別
の 取 り扱
を 見 る と,
(6.159)
図6.3
エ ネル ギ ーE-εFで
エ ネ ル ギ ーが 負 は 空 孔,正
プ ロ ッ トし た 核 子 の 分 散 幅Γ ↓
は 粒 子 に 対 応.曲
せ た カー プ で,V字 型 点線 は(6.159)に デ ー タか ら と った[28].
線 は 実 験 デ ー タに 合 わ
対 応.中
空円は弾性散乱の
が 全 般 的 に よ い 近 似 に な って い る こ とが わ か る.次 て か ら,残 留 相 互 作 用 に よ り,廊 下 状 態,さ
に戸 口状 態 が 核 反 応 で で き
らに 複 雑 な状 態 が 混 じ っ て戸 口 状
態が 崩 壊 す る 有 様 を 時 間 を追 っ て 調 べ て み る.状 態│μ〉はt=0に
生 成 され た
とす る と,こ の と きに は 状 態│α 〉の 位 相 が コ ヒー レ ン トに な り,戸 口状 態 を形 成 し て い る(6.148).時
刻tに
お い て は
に な るの で,状 態
│α〉の位 相 に 乱 れ が 生 じ,初 め の状 態 が 残 っ て い る確 率 振 幅 は
(6.160) と な る が,こ
れ は 規 格 化 さ れ た 強 度 関 数(6.150)のFourier変
換
(6.161) に な っ て い る.弱 ら,こ
結 合 の 場 合 は 強 度 関 数Fμ(ε)は(6.158)で
与 え られ て い るか
れ を 代 入 す る と,
(6.162) と な り,生
存 確 率(survival
probability)は
(6.163) と な る.す
な わ ち,戸
口 状 態 の 生 存 確 率 は 指 数 関 数 的 に 時 間 と と も 減 少 し,そ
の 寿 命 はh/Γ↓μ で 与 え ら れ る.し
か し こ れ は 弱 結 合 の 場 合 で,一
般の場合 には
指 数 関 数 的 に 減 少 す る と は 限 ら な い. こ こ で 強 度 関 数(6.128)と る.(6.79),(6.93),(6.150)よ
規 格 化 さ れ た 強 度 関 数(6.150)の
関係 を調 べ て み
り
(6.164) を得 る.こ こで Γμαは 戸 口状 態 μの残 留核 が 基 底 状 態の 脱 出 幅 で あ る*3.(6.150) よ り 〈Dλ〉を複 合 核 状 態 λの 平 均 状 態 間 隔 とす る と,
(6.165) *3 この 戸 口状 態 μ は1粒 子 の 共鳴 状 態が 重 要 なの で ,6.2節 算 子Qに
のFeshbach理
論 で は,射 影演
よ り結 合 状 態 に限 られ,共 鳴 状態 は取 り扱 うこ とはで きな い.Q空
変 えるか,R行
列 理論 に拠 らざ る をえ な い.
間 の定義 を
な の で,強
度 関 数(6.128)は
(6.166) とな る.す な わ ち強 度 関 数 は 規 格化 され た強 度 関 数 に 比 例 し,弱 結 合 の と きに は Breit -Wigner型
6.4.2
巨
に な り,エ ネ ルギ ー で 積 分 す れ ば 一 核 子 状 態 の 脱 出幅 とな る.
大
共
鳴
戸 口 状 態 の 一 例 と し て,巨
大 共 鳴(giant
れ に つ い て は 文 献[30]の3.6節 論 す る.γ 線,電
子,核
子,軽
resonance,
GR)を
に 論 じ ら れ て い る の で,こ イ オ ン,重
イ オ ン,π
な ど に よ る散 乱 な ど に よっ
て い ろ い ろ の ス ピ ン ・パ リ テ ィ の 巨 大 共 鳴 が 観 察 さ れ る が,そ 古 くか ら 知 ら れ,ま を 考 え る.こ 双 極 子(ED)モ
た 顕 著 な,巨
大 双 極 共 鳴(giant
れ は ア イ ソ ス ピ ン1,ス
取 り 上 げ る.こ
こ で は 崩 壊 を主 に議
dipole
ピ ン ・パ リ テ ィ1-の
の 中 で,も resonance,
っ とも GDR)
量 子 数 を 持 つ,電
気
ー メン ト
(6.167) に よ り励 起 さ れ る.tzは
ア イ ソ ス ピ ン のz成
え ば 核 の 基 底 状 態 に 作 用 さ せ る と,ス 起 の1次
分 で あ る.こ
ピ ン1-,ア
の 演 算 子Mを
たと
イ ソ ス ピ ン1の1p-1hの
励
結合
(6.168) の波 動 関 数 を持 った 状 態が 生 成 され る.も し核 に調 和振 動 子 模 型 を用 い れば,励 起 エ ネル ギ ー は1hω0で あ る.こ の 時 の 各成 分 の振 幅Cμ,phは 行 列 要素 に比 例 す る の で,基 底 状 態 か らこ の状 態 へ の 電 気 双 極 子 モ ー メン トMの 素 を計 算 す る と,各 成 分 は み な 同 じ符 号 で,遷 て こ の 状 態 は 集 団 励 起 状 態 で,ま 現 実 の核 で は 各ph励 ので,ハ
行列要
移 確 率 は増 強 され る.し た が っ
た 戸 口状 態 で あ る.
起 の エ ネル ギ ー も一 定 で は な く,残 留 相 互 作 用 もあ る
ミル トニ ア ン を対 角 化 す る と,成 分 の 数 だ け の エ ネル ギ ー を 持 つ 状 態
が 得 られ る.μ は そ れ ら を 区別 す る.そ の 中 で,一 番 エ ネ ル ギ ー の 高 い の が 実 験 値 態 に よ く似 て い る.こ
に近 く,そ の波 動 関 数 は い ま述 べ た 戸 口状 の エ ネル ギ ー以 下 に 現 れ る状 態 は 大 体 は集 合 励 起 状 態 で
は な く,遷 移 確 率 も大 体 一 粒 子 励 起 の 大 き さで あ る.
(a)
(b)
図6.4
巨 大 共 鳴 の 幅 へ の 粒 子 と 空 孔か らの 寄 与
上 向 き矢 印 は粒 子 を,下
こ の 戸 口状 態 に は6.4.1項
向 き矢 印 は 空孔 を表 す.
で 説 明 し た 強 度 関 数 の 計 算 で 弱 結 合 が 適 用 され る
と期 待 され る ので,(6.156)式 る.す
(d)
(c)
で,戸
口状 態 μ を 巨 大 双極 共 鳴(GDR)状
態 とす
る と,
(6.169) とな り,廊 下 状 態 νは2p-2h状 子pと
空 孔hの
態 で あ る.巨 大 共 鳴 の幅 は独 立 粒 子 模 型 で は 粒
幅 の 和 と な るが,(6.159)を
用い る と
(6.170) とな る.次 に 残 留 相 互 作 用 を 考 え る.巨 大 共 鳴 μ は 多 くのphの あ るが,初 pがphの 態phに
め そ の 一 つ のphか 組qを
つ く り,そ れがpと
戻 る 場 合(a),同
ら もphに きはhと
ら 出 発 す る と考 え る.図6.4に 相 互 作 用 し てphの
じ く空 孔hが
つ き対 角 型 で あ る.次
示 す よ う に粒 子
組qが 消 え,も と の状
相 互 作 用 を す る場 合(b)が
に(a)と
同 じ にpが 組qを
相 互 作 用 を して,終 状 態 がp'h'に
ら 同 じ終 状 態p'h'に 進 む 場 合(d)の4つ
重 ね合わせで
あ るが,ど
作 るが,消
な る場 合(c)と,(b)の
ち
える と
中 間状 態か
の 場 合 が 考 え られ る.非 対 角 型(c)を
式 で 書 くと,
(6.171) と な る.こ
の 干 渉 効 果 の た め,対
角 型 の み を と っ た 計 算 よ り,一 般 に 小 さ く な る.
図6.5に 独 立 粒 子 模 型 の 場 合 の 幅(6.170)を
点 線 で 示 し,そ れ を 巨大 双 極 共
鳴 の 実 験 値 と比 較 して あ る.次 に 脱 出 幅 を考 え る.核 子 の 放 出 は 陽子 ・中性 子
図6.5
巨 大 双 極 共 鳴 の 幅[27]
カ ー ブ は 実 験 値 で,点 表6.1
208Pbの
線 は 理論 値.
中 性 子 幅Гn(keV)[31]
Jπ は 中 性 子 放 出 後 の 残 留 核 の ス ピ ン ・パ リテ ィ
と もに 可 能 だが,陽 は(6.145)を の 粒 子pが
子 の方 がCoulomb障
用 い て行 うが,そ
壁 の た め 抑 圧 され る.脱
こ に現 れ る 相 互 作 用Hpdの
そ の ま ま連 続 状 態 で 出 て 行 く場 合 と,1回
出幅の計算
た め,GDRの
衝 突 し てphを
なか 作 って 出
て 行 く場 合 が 考 え られ るが,後 者 は エ ネ ルギ ー 的 に不 利 で あ る. こ こ で208Pbを
例 に と り,巨 大 双 曲 共 鳴(GDR)の
鳴 エ ネ ル ギ ー はEGDR=13.4MeV,全 幅Гnの 計 算 値 を 表6.1に
ら最 大500keVぐ
らい まで で,全
比 べ て小 さい.中 性 子 脱 出 幅 の 実 験 値 は測 定 が 困難 の た め,個 々
に は 正 確 に 測 定 され て い な い が[29],そ で,直 比 は3%く
あ る.中 性 子
示 す.残 留 相 互 作 用 の と りか た に よ って 大 きな 変 動
が あ るが,総 計 は 表6.1に 示 し た120keVか 幅 の4MeVに
実 験 値 を示 して お く.共
幅 は ΓGDR=4.0MeVで
の 断 面 積 の 全 吸 収 断 面 積 に対 す る比 は
接 の 中 性 子 崩 壊 の 割 合 は小 さ い.計 算 値 の 幅 の
ら い で 大 体 合 って い る.し た が っ てγ 吸 収 でGRが
ま ま 中性 子 が 放 出 され る よ り,1p-1h状
態 か ら,2p-2h,3p-3hと
で きる と,そ の 複 雑 な 状 態 へ,
さ ら に複 合 核 に進 み,そ れ が 崩 壊 す る よ うな 過 程 が 主 要 な もの に な る. 以 上 は 巨 大 双 極 共 鳴 の 例 で あ っ たが,ス いl=2,3の
ピ ン ・ア イ ソ ス ピ ン の励 起 を伴 わ な
場 合 も同 様 で あ る.し か し ス ピ ン ・ア イ ソス ピ ンの 励 起 が あ る場
合 に は 事 情 が 変 わ り,干 渉 の結 果,幅 が 増 大 す る場 合 が あ る こ とが 期 待 され る [32,33].光
反 応 な ど で 励 起 され る これ らの 戸 口状 態 は 集 団 状 態 で,そ の励 起 関
数 は 強 め られ,顕
著 な 山 と して 認 め られ る.し か し,反 応 と して は大 部 分 は複
合 核 を 作 っ て か ら崩 壊 す る.巨 大 共 鳴 状 態 は核 の 基 底 状 態 上 につ くられ る とは 限 らず,高
い 励 起 状 態 の上 に あ った り,ま た 二 つ の 巨 大 共 鳴が 重 な っ て つ くら
れ る場 合 もあ る.こ れ らに つ い て は[34]を み よ.
6.4.3
ア イ ソ バ リ ッ ク ・ア ナ ロ グ 状 態(IAS)
戸 口 状 態 の も う 一 つ の 例 と し て,ア analog
state, IAS)を
取 り上 げ る[35].ア
は 古 くか ら 知 ら れ て い た が,一 性(charge
イ ソ バ リ ッ ク ・ア ナ ロ グ 状 態(isobaric
independence)を
イ ソ ス ピ ンが よい 量 子 数 で あ る こ と
方Coulomb相
互 作 用 が あ り,こ
破 る こ と も 明 ら か で,Zが
れが荷 電独立
大 き い 重 い核 で は ア イ
ソ ス ピ ン は も は や よ い 量 子 数 と は 見 な さ れ な か っ た. こ れ を 打 ち 破 っ た の が(p,n)反 応 に よ るIASの 40Ar(p ,n)40K反 応 を 考 え る[36].40ArはZ=18,N=22だ 状 態 はT=Tz=2で あ る の で,一
あ る.40Kの
発 見 で あ る.例
と し て,
か ら,基
底
基 底 状 態 の ア イ ソ ス ピ ン はT=Tz=1で
番 起 き や す い 荷 電 交 換 反 応 は 過 剰 中 性 子(excess
neutron)f7/2の
軌 道 を ま っ た く変 え ず に た だ 荷 電 状 態 を 中 性 子 か ら 陽 子 に 変 え る 反 応 で あ る. こ の と き 入 射 陽 子 も 軌 道 を 変 え ず に 荷 電 状 態 だ け を 変 え て 出 て 行 く.こ な 反 応 はLaneポ
テ ン シ ャ ル[37]と
の よう
呼ばれ る光学ポ テ ンシャル
(6.172) に よ り記 述 され る.こ こ で,Tは
標 的 核 の ア イソ ス ピ ン演 算 子 で,tは
子 の ア イソ ス ピ ン演 算 子 で,U0,U1は で は 標 的 核 の 状 態│TT〉 にT_が
入射核
一体 ポ テ ンシ ャル で あ る.荷 電 交 換 反 応
作 用 し,IAS
(6.173) が で き る.こ
の 状 態 の 荷 電 状 態 以 外 は 親 の 状 態 と ほ と ん ど 変 わ ら ず,そ
ネ ル ギ ー は 過 剰 中 性 子 のCoulomb置 energy)と IASが
非 常 に よ く 一 致 す る.ま
換 エ ネ ル ギ ー(Coulomb
displacement
た 実 験 か ら 求 め られ たQ値
戸 口 状 態 と し て 現 れ る の は(p,p)反
を 考 え る[39].208PbはT=Tz=22で,陽
応 で あ る[38].例
のエ
と も 一 致 す る. と し て208Pb(p,p)
子 はT=1/2,Tz=-1/2な
の
図6.6
208Pbの
209Pbの
過剰 中性 子 の軌 道 とIAS
図6.7 209BiのIASの 実 験[39] 陽子 に よ る弾 性 散 乱 の微 分 断 面 積 を 入射 エ ネル ギ ー で プ ロ ッ
トし た.
で,こ
の 二 つ の 合 成 系 は209Biで
態 はT=43/2で,IASはT=45/2に で あ る.209Pbの T_を
属 す.こ
基 底 状 態 は208Pbに
作 用 させ る と,図6.6に
は な く,6つ
ク が い くつ か 見 え る.最
付 い た も の で あ る.こ
れ に
中 性 子 か ら陽 子 に 変 わ るだ け で
の 軌 道 の 過 剰 中 性 子 が 陽 子 に 変 わ る.こ
陽 子 散 乱 の 共 鳴 状 態 と し て 現 れ る.実
底状
の 親 は
中 性 子g9/2が
示 す よ うにg9/2が
で あ る.基
の よ う に し て で き たIASが
験 デ ー タ を 図6.7に
低 の ピ ー ク は209Pb基
示 す が,幅
底 状 態 のIASで
の狭 い ピ ー
あ る が,そ
れ よ
り上 の ピ ー ク は 励 起 状 態 で,g9/2の 付 い た の に 対 応 し て い る.最 な の で,209Bi 一方
IASの208Pbを
,親 核209Pbの
代 わ り にi11/2,j15/2,d5/2な
低 のIASの
ど が208Pbに
陽 子 の 入 射 エ ネ ル ギ ー は14.828MeV
基 準 に し た エ ネ ル ギ ー も14.828
基 底 状 態 の エ ネ ル ギ ー は-3.94MeVな
の エ ネ ル ギ ー の 差 は18.768MeVと
な り,Coulomb置
MeVで
あ る.
の で,IASと
親核
換 エ ネ ル ギ ー18.69MeV
と 一 致 す る. IASは
陽 子 散 乱 に 対 す る 戸 口 状 態 で あ る.IASの
状 態│π 〉にT_を ら な い.そ
定 義 と し て,親
核 の 固有
掛 け た もの を と っ て もそ の 波 動 関 数 は 正 確 な 固 有 状 態 に は な
れ は ア イ ソ ス ピ ン 対 称 性 を 破 る 相 互 作 用 が あ る か ら で,そ
要 な の はCoulomb相 Coulombポ
互 作 用 で あ る.し
た が っ てIASは
幅 を 持 ち,そ
テ ン シ ャ ル が か か わ っ て い る こ とが 予 想 され る.IASの
出 幅 は(6.144)と(6.145)か IASのAと
ら 求 め ら れ る が,全
そ れ 以 外 の 状 態qに
の 最 も重
空 間 をP+Qに,さ
れ には
分 散 幅 と脱 ら にQを
分 け る とQ=A+qで,Aq=0が
成 り立 つ.
分散幅 は
(6.174) で 与 え られ る.こ
こ に現 れ る 行 列 要 素
(6.175) の 計 算 か ら は じめ る.複 合 核 状 態qとIAS
Aと
は 直 交 す る の で,
(6.176) が 成 り立 ち,
(6.177) とな る.交 換 子[H,T_]に
は 核 の ハ ミル トニ ア ンの ア イ ソ ス カ ラ ー の 部 分 の 寄
与 は な く,ア イ ソ ス ピ ン対 称 を破 る 部 分 か ら の 寄 与 の み で,そ な の はCoulomb相 子 は 一 様 な 半 径Rcの 用VC(r)
の 中 で 最 も重 要
互 作 用 で あ る.こ の 相 互 作 用 は 二 体 力 で あ るが,一
方 の陽
球 に 分 布 し て い る と近 似 し た,一 体 のCoulomb相
互作
(3.18)を 使 う.交 換 子 は
(6.178) と な る.
表6.2
脱 出 幅 はq空
209BiのIASの
幅
間 を消 去 した と きのA+P空
間 の有 効 相 互 作 用
(6.179) を使 い
(6.180) とな る.こ こでHPPは(6.179)か Hの
ら求 め られ たP空
行 列 要 素 の 計 算 は 分 散 幅 の 場 合 と ま っ た く同 じで,や
作 用が 主 要 な役 割 を果 たす.状 態Pと が,中
間の 有 効 相 互作 用 で あ る. は りCoulomb相
し て は,陽 子 を放 出 す る過 程 は 寄 与 す る
性 子 か ら は ほ とん ど寄 与 し な い.そ の 理 由 は[H,T_]が
変 え るの で,中
互
中性 子 を 陽子 に
性 子 は 出 て こ な い か らで あ る.も っ と複 雑 な過 程 か ら くる寄 与
は 小 さ い の で,無
視 す る こ とに す る.さ てP状
態 の 波 動 関 数 はIASの
直 交 し な け れ ば な らな い と い う条件 が あ る.IASの
それ と
崩 壊 で は,親 核 の 中性 子 が
ア イ ソ ス ピ ン 以外 の 量 子 数 を変 えず に,陽 子 に変 わ っ て 出 て い くの で あ るか ら, 残 留 核 は過 剰 中性 子 に 一 つ 穴 が 空 い た 状 態 で あ る.散 乱 状 態 の 陽 子 の 波 動 関 数 は 普 通,基 底 状 態 の 残 留 核 に対 す る 光 学 模 型 の 解 を使 うの で,IASと な い.し
は 直交 し
たが っ て 陽 子 の 波 動 関 数 は直 交 化 しな け れ ば な らな い[35].
208Pb(p,p)の
例 を 表6.2に
デ ー タか ら求 め た.脱
示 す[39].全
幅 Γ,弾 性 散 乱 の 脱 出 幅 Γ↑cは 実験
出 幅 に は 非 弾 性 散 乱 に対 応 す る もの が あ るが,こ れ は 過
剰 中性 子 が 陽 子 に 変 わ っ た もの の 脱 出 に対 応 す る もの で,実 験 が 難 し く一部 の デ ー タ しか 得 られ て い な い.そ れ で,207Pb(p,p)の208Bi0+で の 基 底 状 態 のIASに
ち ょ うど208Pb
対 応 す る非 弾 性 散 乱 のデ ー タか ら と った 非 弾 性 脱 出幅 をそ
の ま ま持 っ て き て,そ れ を208Pb(p,p')の
脱 出 幅 とす る.こ の よ うに して 求 め
た 弾 性 ・非 弾 性 の 脱 出 幅 の 和 Γ↑を 全 幅 Γ か ら 引 い た もの を 分 散 幅 Γ↓ と し
て 表6.2に
載 せ て あ る.こ れ を見 て わ か る こ と は分 散 幅 は 全 幅 に比 べ 小 さ い こ
とで あ る.こ れ は 巨 大 共 鳴 とは異 な り,IASは で,そ
戸 口 状 態 で 崩 壊 す る のが 大 部 分
れ よ り先 に 進 むの は比 較 的 少 な い こ と を示 して い る.
分散 幅 の計 算 は(6.174)を 使 って,qと
して 陽子 の 独 立粒 子 状 態 を とる と,実 験
値 よ りは るか に大 きい値 にな る.こ れ を説 明 した の はMekjian
[40]で,Coulomb
相 互 作 用 で 転 移 す るの は 個 々の 状 態 へ で は な く,集 団 状 態 で あ る ア イ ソベ ク ト ル 単 極 子(IVM)状
態 で あ る と した.こ
れ はIVM演
算子
(6.181) に よ って 生 成 され る 集 団 状 態 で あ る.こ のIVM演 作 用(3.18)のr
場 合 の 第2項
成 され る 集 団 状 態 はCoulomb場 え られ る.IVMは
算 子 は 一 体 のCoulomb相
互
に比 例 す る の で,こ の演 算 子 に よっ て生
に よ る遷 移 振 幅 を コ ヒ ー レ ン トに足 し た と考
実 験 で は 直 接 に は 観 測 され て い な い状 態 で あ るが,2hω0か
それ よ り高 い エ ネ ル ギ ー で,幅
は大 体IVM状
態 の エ ネル ギ ー に お い て8MeV
ぐ ら い と考 え られ て い る.分 散 幅 の 値 は 大 体 実 験 値 と合 わ せ る こ とが で き る. 一方 ,脱 出 幅 の 方 は(6.180)のHの 部 分 か らの 寄 与 は 分 散 幅 と 同 じ よ うに計 算 で き,大 体 実 験 値 とあ う答 えが 求 め られ る.し か し(6.180)のqを 計 算 は 難 し く近 似 計 算 しか 行 わ れ て い な いが,そ
通 る寄 与 の
れ に よる と,実 験 値 よ り数 倍
大 き くな っ て し ま う[41].
6.5 核 反 応 の 時 間 的 記述
核 反 応 は 定 常状 態 の 波 動 関 数 を使 って 取 り扱 われ て い るが,こ れ は 断 熱 近似 に 基 づ い て い る(2.4.4項).も
し現 実 に近 い 記 述 の 方 法 を とろ う とす る と,入 射
粒 子 を波 束 と して 表 し,時 間 に 依 存 す るSchrodinger方
程 式 を解 くこ とに な る.
す る と時 間 の 遅 れ(time delay)の よ うな 概 念 が 導 入 され,共
鳴状態 を よりよ く
理 解 す る こ とが で き る[42]. は じめ に 加 速 器 か ら 出 て くる粒 子 ビ ー ム を考 え て み よ う.各 粒 子 は大 体 一 定 の エ ネル ギ ー を もつ が,ば
らつ きが あ り,そ れ が 入 射 ビ ー ム の エ ネル ギ ー 幅 で
あ る.各 粒 子 の 波 動 関 数 の位 相 は ラ ン ダ ム で あ って 非 干 渉(incoherent)と られ る.1個
の粒 子 に つ い て は,そ
考え
の波動 関数は運動量の一 定な平面波 ではな
く,空 間 的 な 広が りを もって い る.す な わ ち波 束 を作 って い る.エ ネル ギ ーの 幅
は ビ ー ムの エ ネ ルギ ー 幅 に くらべ て,は 構 か ら推 論 し た1個
るか に小 さい と考 え られ る.加 速 の 機
の 粒 子 に対 応 す る波 束 の エ ネ ル ギ ー分 散 はeVの
オーダ ー
よ りは るか に小 さい[43]. 一粒 子 の波 束 は 平 面 波 を 重 ね 合 わ せ た もの で,次
の 式 で 与 え られ る.
(6.182) 分 布 関数a(κ)は 波 数が κ で あ る確 率 振 幅 で
(6.183) に よ り規 格 化 され て お り,普 通 は κだ け の 関数(球 対 称)で を κ と して お く.│G(r)│2は
あ る.こ の 広 が り
粒 子 の 位 置 の 分 布 を表 し,そ の 幅 は1/κ で あ り,
(6.184) を満 た す.以 下,分 布 関 数 は 球 対 称 と仮 定 す る.そ 絶 対 値 に な る.最
も よ く使 わ れ るGauss型
うす る と変 数 は ベ ク トル の
波 束 の 場 合 は,
(6.185) と な る.入 射 粒 子 は 平 均 波 数 ベ ク トル κ0の 平 面 波 とす る と,初 期 の 波 動 関 数 はt→-∞
に お い て,
(6.186) で 与 え られ る.こ れ が 標 的 核 と相 互 作 用 をす るが,時 間 に依 存 す るSchrodinger 方程 式
(6.187) を満 たす 波 動 関数 で記 述 され る.こ の方 程 式 の解 は時 間に依 存 し ないSchrodinger 方程 式
(6.188) の解 に よ り
(6.189)
で 与 え ら れ る[44].Ψ(t)はt→-∞ う.い ま弾 性 散 乱 に 限 り,(6.106)で
で は(6.186)の
よ うな 波 束 と して 振 る舞
与 え られ る時 間 に依 存 しな い 波動 関 数 を相
互 作 用 の 働 か な い 領 域 で 平 面 波 を含 む 部 分 と外 向 波 の 部 分 に分 け て
(6.190) と書 く.初 め に 平 面 波 に対 応 す る もの の 寄 与 を調 べ て み る.波 数 ベ ク トル κ を
(6.191) と平 均 の 部 分 とそ れ か らのず れ との 和 と書 き,運 動 エ ネ ル ギ ー を計 算 す る と
(6.192) と な る.
と仮 定 し た.ま た 平 均 の 速 度 をυ0と す る と
(6.193) と な り,こ
れ ら を 波 束 の 式(6.189)に
代入す る と
(6.194) を 得 る.す t=0で
な わ ち入 射 平 面 波 に対 応 す る 波 束 の 中心 は 一 定 速 度υ0で 運 動 し,
原 点 に 到 達 し,波 束 の 形 に 変 化 は な い.こ れ は(6.192)で
た 結 果 で,も
ρ2を 無 視 し
し 入 れ て お く とtが 大 き くな る と き波 束 の 形 は 崩 れ て くる.し か
しこ の よ うな 波 束 の 変 形 は 通 常 の 場 合 に は 考 え な くて も よ い. 次 に 直 接 相 互 作 用 に よ って 出て くる 波
(6.195) を考 え る.簡 単 の た め ポ テ ン シ ャル 散 乱 の 場 合 を仮 定 す るが,一 扱 い は 同 様 に行 う こ とが で き る.S行
般 の場 合 も取
列 は対 角 型 で
(6.196) と書 くと,δ(E)は
位 相 差 で あ る.δ(E)の
エ ネ ル ギ ー依 存 性 は 弱 く,波 束 の エ
ネ ルギ ー の 幅 の な か で は
(6.197)
図6.8
と表 せ る とす る.こ
入 射 波 束(左)と,散
乱 後 の 散 乱 球 面 波 と 入射 波 束(右)
こで 時 間 の 遅 れ を (6.198)
に よ り 定 義 す る.ま
た κ を(6.192)と
同 じ近 似 で 計 算 す る と
(6.199) と な る の で,(6.195)は
(6.200) とな る.分 布 関数Gは の
関 数 で あ る.す な わ ち 出 て くる粒 子
は 標 的 核 か ら球 面 波 とな って 広 が っ て い く.球 面 波 の 厚 さ は 入 射 波 の 波 束 の大 き さ と同 じで あ るが,球 面 波 な ので 密 度 は半 径 の2乗 に 反 比 例 し て小 さ くな る. また 球 面 波 は 時 間 の 遅 れΔt(6.198)だ
け 遅 れ て広 が って い く(図6.8).
次 に幅 の狭 い 共 鳴 に よ る散 乱 を考 え よ う.前 と同 じ く弾 性 散 乱 を考 え る.共 鳴 幅 Γ は波 束 の エ ネ ルギ ー 分 散 幅 ωEよ りは るか に小 さい とす る;
(6.201) 共 鳴 よ り 出 て く る 波 は(6.195)にS行
列
(6.202) を代 入 す る.上 (6.79),(6.80)を
の 式 は チ ャ ネ ル 間 の 直 接 結 合 が 無 視 で き る と し(6.72),(6.73), 使 っ て 求 め た.ポ
さ い と し て 無 視 し,丸
括 弧 内 第2項
テ ン シ ャ ル 散 乱 のS0の
エ ネル ギ ー変 化 は 小
を 計 算 す る た め(6.195)の
κの積分 を
(6.203)
と し,分 布 関 数 の立 体 角 積 分
(6.204) を定 義 し,さ ら に近 似
(6.205) を使 う と
(6.206) を得 る.エ か らRま
ネル ギ ー の 積 分 は 図6.9に
で と し,次 に 複 素 エ ネ ル ギ ー 平 面 を考 え,上 半 面 か 下 半 面 の 半 円 で
積 分 路 を 閉 じ る.t-r/υ0<0に R→∞
示 す よ うに まず 積 分 領 域 を延 長 して-R
で0と
対 して は 上 半 円 を と る と そ こ か らの 寄 与 は
な り,t-r/υ0>0で
は 下 半 円 を と る と0に
な るの で
(6.207)
図6.9 t-r/υ0が 列 の 極.
複 素 エ ネ ルギ ー平 面 に お け る 積 分 路
負 の と きは 左,正
の と きは 右 の 半 円 を とる.×
印はS行
図6.10
幅 の 狭 い 共 鳴 に よ る散 乱 に よ り放 出 され た 粒 子 の 時 間ス ペ ク トル t=r/υ0は
とな る.t=r/υ0ま
で は0,そ
入 射粒 子が 点rに
到 着 し た 時 刻.
れ 以 後 は急 激 に 上 昇 し てす ぐ に指 数 関 数 的 に 減
少 す る崩 壊 曲線 が 得 られ る(図6.10). この 結 果 はS行
列 の 極が エ ネ ル ギ ー 平 面 の 下 半 面 に あ る こ と に よ り得 られ た.
放 出 粒 子 は 入 射 粒 子 が 標 的核 に 到 達 し て か ら現 れ る.こ れ は 因 果 律 に 従 っ て い る.こ れ に 反 して,も 般 にS行
し極 が 上 半 面 に あれ ば,因 果 律 に 反 す る 結 果 と な る.一
列 の 極 が 下 半 面 に あ れ ば 因 果 律 を満 た す とい う こ とが で きる.
共 鳴 の場 合 の 時 間 の 遅 れ を計 算 し て み る.
(6.208) に よ り θ を 定 義 す る と,S行
列 の 式(6.202)を
用 いて
(6.209) で あ る こ とが わ か る.し た が っ て 時 間 の 遅 れ は Γ≫ ωEを 仮 定 し,
(6.210) と な る.右
辺 第1項
でdδ/dEは
は ポ テ ン シ ャ ル 散 乱 の 項 で 小 さ い と し て 無 視 す る と,E=E0
最 大 の 値2/Γ
に お い て は(6.208)よ
に な り,時
間 の 遅 れ は4h/Γ
で あ る.共
鳴エネルギー
り
(6.211) と な る.nは
整 数.位
相 差 が エ ネ ル ギ ー の 増 加 関 数 の 場 合(6.211)を
dδ/dEは 正 で あ るが,ポ
満 たす
テ ンシ ャル 散 乱 の 場 合 に は負 に な る こ とが あ る.こ の
と きは 時 間 の進 み(time advance)で,入
射 粒 子 が 散 乱 中心 に到 達 す る前 に 散 乱
波 に 対 応 す る 球 面 波 が 出 て くる.し か し 入 射粒 子 が 核 また は ポ テ ン シ ャル の 縁 に 到 達 す る前 に 散 乱 波 が 出 て くる と,因 果律 に 矛 盾 す る こ と に な る.こ れ か ら 時 間 の 進 み に 上 限が あ る こ とが わか る.す な わ ち
(6.212) で,Wignerの
上 限[45]と よば れ る.Rは
核 半 径 で あ る.共 鳴 は 入射 粒 子 が 核 内
核 子 と何 回 も衝突 して起 こ る と考 え られ るので,時 間の 進 み を伴 うとは 考 え難 い. し たが って(6.211)が
成 り立 ち,dδ/dE>0の
の場 合 をエ コ ー(echo)と
場 合 を 共 鳴 と呼 び,dδ/dE<0
呼 ぶ こ と に して い る[46].
最 後 に多 くの 共 鳴 準 位 が 寄 与 す る複 合 核 反 応 を 考 え る.こ れ は7章
で詳 し く
議 論 す るが,多
与 え られ
くの 準 位 は重 な り合 い,ゆ
ら ぎの 断 面 積 は(6.111)で
て い る.時 間 に対 し
(6.213) を仮 定 す る.ωTは
波 束 の 通 過 す る 時 間で あ る.S行
列 の ゆ ら ぎの 部 分 に 対 応
する反応振 幅は
(6.214) で あ る.こ の 振 幅 か ら流 束 を計 算 す る た め 絶 対 値 の2乗
をつ くる と,
(6.215) と な る.
に 現 れ る エ ネ ル ギ ー 積 分 の 変 数 をE,E'と
し,Eと
ε は そ の 平 均 と 差 を 表 す.
(6.216) に よ りF(E)を
定義す る と
(6.217)
で,F(E)の
エ ネ ル ギ ー の 広 が り はwEの
オ ー ダ ー で あ る.こ
の分布 関数につ
い て の平 均 を
(6.218) で定義 す ると
(6.219) が 求 ま る.す
な わ ち 時 間 に 依 存 し な い 定 式 化 か ら 依 存 す る もの に 移 る た め に は
SflとSfl*と
の エ ネ ル ギ ー 差 を ε に し て お い て,そ
のFourier変
換 をす れ ば よ
い こ と が わ か る.
6.6
共 鳴 と エ コ ー
共 鳴 と エ コ ー(echo)は 古 典 近 似 を用 い る と理 解 しや す い の で,陽 子 の ポ テ ン シ ャル 散 乱 を例 に と り説 明 す る[47].図6.11に 核 表 面 近 くに 高 さBの
示 す よ うに,ポ テ ンシ ャル に は
ポ テ ン シ ャ ル 障壁 が あ る.は じめ にE>Bの
場合 を考
え る.古 典 論 に よ る 位 相 差 は
(6.220) で 定 義 さ れ る.こ
こ でk(r)は
局 所 波 数(local
wave
number)で
(6.221) で 与 え られ る.Veff(r)は
有 効 ポ テ ン シ ャル で,角 運 動 量 をlと す る と半 古 典 論
に従 い
(6.222) で 与 え ら れ る.U(r)は
核 の ポ テ ン シ ャル(nuclear
Coulomb相
互 作 用 に よ る ポ テ ン シ ャ ル,最
Coulomb相
互 作 用 に よ る 波 数 で,(6.222)でU(r)=0と
に 代 入 し て 得 ら れ る.r0とrcは
potential)で,UC(r)は
後 の 項 は 遠 心 力 で あ る.kC(r)は し た も の を(6.221)
図6.11
f7/2陽
子 の208Pbに
対 す る 有 効 ポ テ ン シ ャ ルVeff(r)と,
そ の 束 縛 状 態 な ら び に 共 鳴,エ 核 の ポ テ ン シ ャ ルU(r)に は[20]よ
コ ー の エ ネル ギ ー
はWoods-Saxon型
を と り,パ
ラ メ タ ー
り と っ た.
(6.223) か ら 決 ま るrの
値 で,r>r0が
ル の な い と き に はr>rcが 視 で き る も の と す る.す
古 典 的 に 許 され る 範 囲 で あ る.核 許 さ れ る 範 囲 で あ る.ま
たr>Rで
の ポ テ ンシ ャ はU(r)は
無
なわ ち
(6.224) が 成 り立 つ.さ
て 位 相 差(6.220)を
使 っ て 時 間 の 遅 れ を 計 算 す る と,
(6.225) と な る.rは
粒 子 の 速 さで,rcはU(r)が
が って(6.225)の
右 辺 の 第1項
引 き返 す 時 間 の 半 分 で,第2項
な い と きの粒 子 の 速 さで あ る.し た
は 粒 子 がRか はCoulomb力
らr0ま で 行 き,そ れ か らRま
で
と遠 心 力 だ けが あ る場 合 の 対 応
す る 量 で あ る.し た が っ て(6.225)の
右辺 の括弧は時 間の遅れの半 分に対応 す
る こ とが わか る. エ ネル ギ ーが0<E
場 合 を考 え る.こ の と きは 入 射 粒 子 は 障 壁 で 遮
られ るの で,古 典 的 に は ポ テ ンシ ャル の 中 に は 進 入 で き な い.し か し量 子 論 で は トン ネル 効 果 で 滲 み 通 り,も し ポ テ ン シ ャ ル 内 に 束 縛 状 態 が あれ ば,共
鳴を
起 こす で あ ろ う.束 縛 状 態 に対 して は 作 用 積 分Sは
(6.226) の 条 件 を 満 た す.こ れ はBohrの
量 子 条 件 で あ る(k(r1)=0).も
し入射粒子
の エ ネル ギ ー 近 くに 束 縛 状 態 が あ れ ば,こ れ と相 互 作 用 し て散 乱 振 幅 が 増 大 す る.こ れ ら は半 古 典 近 似 で,ポ
テ ン シ ャル の 内部,障 壁 の 中,外 の3つ
の波 を
つ な げ る こ と に よ り,位 相 差 を 求 め る こ とが で き る. 一 例 と して 陽 子 の208Pbに
よ る ポ テ ン シ ャ ル散 乱 な らび に束 縛 状 態 を 図6.12
に 示 す.古 典 論 に従 い ポ テ ン シ ャル 障壁 の 高 さB以 対 して は作 用 積 分 を,
下 の エ ネル ギ ー
に
に 対 し て は古 典 的位 相 差 を,エ ネル ギ ー を横 軸 に
と って 点 線 で 示 し た.0<E
束 縛 状 態 と考 え た.E=Bで
は作 用 積 分
と古 典 的 位 相 差 の 値 は,非 常 に よ く一 致 した. 一 方,量 子 力 学 に よ りE<0に 低 の状 態 をn=0と
対 し結 合状 態 の エ ネ ル ギ ーEnを
して順 に 番 号 をつ け,Enと
図6.12
208Pb+p系
のs1/2の
点 線 は 古 典 論 に よ る値,実 詳 細 は 本 文 参照.
縦 軸
束 縛 状 態 と散 乱 の位 相 差
線 は 量 子 論 に よ る値 を表 す.
計 算 し,最 の 点 を+
で 示 し た.す
る と この 点 は 古 典 論 で 計 算 し た作 用 積 分 の カ ーブ に きわ め て よ く
乗 っ て い る.
に 対 し て は 位 相 差 を 量 子 力 学 で 計 算 し て 実 線 で 示 し た.た
だ し,E=0に
対 し て はLevinsonの
定 理*4[48,49]に
る と 量 子 力 学 の カ ー ブ は8MeVぐ か ら 急 上 昇 し て δ=3.5π い 位 置 に あ る.そ を 続 け る.こ δ=3.5π
従 い δ=3π
ら い ま で は δ=3π
に 達 す る.こ
の 水 平 線 で あ る が,そ
れ が 共 鳴 点 で あ る が,古
れ か ら も 上 昇 を 続 け,E=Bの
の カ ー ブ はE>14MeVで
と し た.す こ
典 論 の そ れ と近
近 くで 頂 点 に 達 し,後
は降下
は 古 典 論 の も の と 大 体 重 な っ て い る.
は エ コ ー に 対 応 す る.
この 例 で は 共 鳴 とエ コー は δ=3.5π
に現 れ て い る.一 般 に エ コ ー は 少 な く
と も束 縛 状 態 の 数 と共 鳴 の 数 の 和 だ け現 れ る.ま た 位 相 差 は エ ネ ルギ ー の 高 い 極 限 で は0に
な る.こ の よ うな状 況 は ポ テ ン シ ャ ル 散 乱 の 場 合 で あ っ て,多 体
の 共 鳴 の場 合 は多 くの 共 鳴 が 現 れ,位
相 差 は ど ん ど ん 増 大 す る.
古 典 論 の 議 論 か ら共 鳴 とエ コ ー の物 理 的描 像 が 明 らか に な っ た と思 う.中 性 子 の 原 子 核 で の 散 乱 の 総 断 面 積 をEとAと は3.1節
で3次
元 的 に プ ロ ッ トし た 図3.1
に示 し て あ る.こ の よ うな大 局 的構 造 は 光 学模 型 の 予 言(図3.2)と
よ
く合 って い る.こ こ に現 れ た 山 は 巨 大 共 鳴 と呼 ば れ て い るが,は
たして共鳴で
あ ろ うか.Peterson
小 さい山を除
[50],McVoy
[46]に よ る と2d5/2と3p3/2の
くと共 鳴 と は考 え られ な い.共 鳴 な らば 山 の 位 置 はAの
増 大 に伴 い 低 い エ ネ ル
ギ ー に 移 る は ず で あ るが 反 対 の 挙 動 を示 す.こ の 現 象 はnuclear
Ramsauer効
果 と解 釈 で き る.核 内 を 通 った 波 と外 側 を通 っ た 波 との 干 渉 に よ る もの で,多 くの 部 分 波 の 協 力 現 象 で あ り,こ の 部 分 波 が エ コ ー あ る い は そ れ に近 い位 相 差 に対 応 し て い る.共 鳴 は 吸 収 ポ テ ン シ ャル を入 れ る と 急 に 消 えて し ま うの に 反 し,エ
文
コ ーで は そ れ ほ ど 影 響 を受 け な い こ とが 知 られ て い る.
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Co
7 複合核過程Ⅱ―
統計理論
エ ネ ルギ ーが 少 し高 くな る と多 くの準 位 が 重 な り合 い,そ の た め 複 合 核 反 応 に統 計 理 論 が 適 用 可 能 とな る.入 射 粒 子が 核 内 核 子 と衝 突 して 多 くの複 合 核 状 態 が 励 起 され,平 衡 状 態 に 到 達 す る場 合 を こ の章 で 取 り扱 う.こ の平 衡 状 態 は 長 い寿 命 を もつ が,や が て 崩 壊 す る.い 過 程 と独 立 な の で,断
ろい ろ なモ ー ドに 崩 壊 す る確 率 は 生 成
面 積 の計 算 は 容 易 に な る.
こ の よ うな核 反 応 理論 で 重 要 な の は 準位 密 度(level density)で,7.1節
におい
て伝 統 的 に 独 立 粒 子 模 型 に 基づ き,統 計 力 学 を使 っ て 状 態 密 度(state density) を計 算 す る.準 位 密 度 を ス ピ ン とそ のz成 分 で和 を とっ た のが 状 態 密 度 で あ る. 7.2節 で は準 位 間 隔 の 統 計 的 分 布 関 数 を ラ ン ダ ム行 列 理 論 を使 って 導 く.7.3節 で は 相 互 作 用 の あ る 場 合 を考 え るが,非 常 に 簡 単 な 仮 定 の も とで 計 算 を行 うの で,実 験 デ ー タ と比 較 で きる よ う な現 実 的 な もの で は ない.も 算 は8.1節
で 述 べ る.7.3節
っ と現 実 的 な 計
の 目的 は新 し い 方 法 を 簡 単 な例 で 説 明 す る こ とで
あ る.現 象 論 的 な 複 合 核 の 統 計 理 論 は7.4節
で 説 明 す る.7.5節
は7.3節
明 し た ラ ン ダ ム行 列 理 論 に 基 づ く複 合 核 の 統 計 理 論 に 当 て られ る.7.6節 Ericsonの
で説 では
ゆ ら ぎ を 説 明 す る.こ れ ら全 般 に わ た っ た教 科 書 とし て,[1,2]を
挙
げ て お く.
7.1 状
状 態 密 度 は1936年,Bethe
態
[3]がFermiガ
密
度
ス模 型 に基 づ き統 計 力 学 を使 っ て
求 め て 以 來,数 多 くの 研 究 が 行 わ れ た[2].粒 子 数Nか ギ ー準 位 をEλ(N)と
らな る原 子 核 の エ ネ ル
す る と,状 態 密 度 は
(7.1)
で 定 義 され る.こ れ は エ ネ ルギ ー ・ス ペ ク トル そ の もの で,こ の核 の全 部 の状 態 を解 か な け れ ば 求 め られ な い.こ れ は 実 行 不 可 能 で,ま
た た とえ 求 め られ て も
実 用 に は便利 で は な い.あ る エ ネ ル ギ ー 幅 で の 平 均 状 態 密 度 は 有 用 で あ り,ま た 種 々の 近 似 の も とで計 算 す る こ とが 可 能 に な るの で,以 下,平 均 状 態 密 度 を取 り扱 う.核 子 間 の 残 留 相 互 作 用 を入 れ た計 算 は後 回 しに して,独 立 粒 子 模 型 に よ る状 態 密 度 を本 節 で は 求 め る.独 立 粒 子 の エ ネ ル ギ ー 準 位 を εiとし,こ の 準 位iが 核 子 に よ り占 め られ てい る確 率 をnλ(i)と す る と,状 態 λの エ ネ ルギ ーは
(7.2) で 与 え られ,核
子の総数 は
(7.3) とな る.独 立 粒 子 模 型 を とっ て い るた め,nλ(i)の れ る こ と を注 意 し て お く.(7.3)の
と り うる値 は0か1に
条件 の も とで(7.2)を(7.1)に
限ら
代 入 す る と独
立 粒 子 模 型 の準 位 密 度 の 式が 得 られ る.こ の 計 算 は計 算 機 を使 えば 難 し くな く, また 便 利 な漸 化 公 式 も知 られ て い る[4].こ こで は伝 統 的 な統 計 力 学 を使 う方 法 をBohr-Mottelson
[2]に 従 っ て 説 明 す る.そ の 理 由は 高 いエ ネ ルギ ー の核 反 応
の 解 析 に は 温 度 や エ ン トロピ ー な ど統 計 力 学 に 由来 す る概 念 が よ く使 われ,ま た 統 計 力 学 を使 っ て得 られ た 結 果 は 簡 単 な式 で 表 され る の で,現 象 論 的 に合 わ せ た パ ラ メタ ーで,実 験 デ ー タを解 析 す る こ とが 多 く行 わ れ て い るか らで あ る. こ こで は 統 計 力 学 的 な 考 え方 を説 明す るた め,1種
類 の核 子 か らな る 簡単 な場
合 を 取 り扱 う.も っ と一 般 的 な場 合 は 結 果 を示 す だ け に止 め る.こ の と き は大 正 準 集 団(grand 粒 子 数Aと
canonical ensemble)を
エ ネ ル ギ ーEの
使 うのが 都 合 が よい の で,状 態 密 度 も
関 数 と して
(7.4) と書 い て お く. 統 計 力 学 の 大 正 準 集 団 の考 え に従 って,原 子 核 は 巨 大 な熱 浴 と接 触 して 平 衡 状 態 に あ る とす る.こ の 熱 浴 は原 子 核 とエ ネル ギ ー ば か りで な く核 子 もや りと りして お り,そ の 温 度 をT,化 と粒 子 数 は ゆ らぐが,そ
学 ポ テ ンシ ャル を μ とす る.原 子 核 のエ ネル ギ ー
れ ぞ れ がEとAで
あ る確 率 は 次 の 正 準 分 布
(7.5)
で 与 え ら れ る.
で,kはBoltzmann定
数,分
配 関数は
(7.6) で 与 え られ る.λ に つ い て の和 は すべ て の 状 態 に つ い て とるが,状 態 密 度(7.4) を用 い て 積 分 の 形 に書 くこ とが で き る.
(7.7) この 式 をLaplace逆
変 換 に よ り状 態 密 度 に つ い て 解 くと
(7.8) す な わ ち 分 配 関 数 か ら状 態 密 度 は 求 め られ る. 分 配 関 数 の 計 算 は,エ
ネ ルギ ー は 独 立 粒 子 模 型 で 与 え られ て い る こ と を使 っ
て 次 の よ う に行 う.(7.2),
(7.3)を(7.6)に
代入す る と
(7.9) と な る.Fermi統
計 な の で,nλ(i)の
値 は0と1に
限 られ る こ と を 使 っ た.さ
ら に 計 算 を 進 め る た め 対 数 を と り,
(7.10) こ こでg(ε)は 独 立 粒 子 の 状 態 密 度 で
(7.11) に よ り定 義 さ れ て い る. 対 数 関 数ln(1+eα-β
ε)は ε<α/β
eα-βε で 近 似 さ れ る の で,積 算 を す る と,結
で はα-βε
で 近 似 さ れ,ε>α/β
分 範 囲 を[0,α/β]と[α/β,∞]と
では
に分 け て 近 似 計
果 は
(7.12)
とな る[2].こ
の 展 開 はg(ε)が εの ゆ る や か な 関 数 で あ れ ば よい 近 似 と な る.
こ の状 態 密 度 に古 典 近 似 を用 い れ ば,そ れ は 滑 らか な εの 関数 な の で,エ ギ ー 平均 の 必 要 は な い(7.1.1項
ネル
参 照).
積 分(7.8)を 計 算 す る に は 鞍 点 法(saddle
point method)を
用 い るが,ま ず
被 積 分 関 数 を指 数 関 数 の 形 に 書 くと,指 数部 は
(7.13) と な る.そ
の 停 留 値 α0β0は
(7.14)
(7.15) で 決 定 さ れ る.(7.12)の
右 辺 第2項
ま で と る と,停
留 値 α0,β0は
(7.16) (7.17) か ら求 め られ る.た だ しg(ε)の 微 分 は無 視 し た.(7.16)は
基 底 状 態 に対 して も
励 起 状 態 に対 し て も成 り立 つ ので,
(7.18) こ こ で εFは 基 底 状 態 のFermiエ
ネ ル ギ ー で あ る.(7.17)に
対 しては
(7.19) で あ る の で,(7.17)と(7.19)か
ら励 起 エ ネル ギ ー は
(7.20) と 表 され る.停 と な る.(7.13)は
留 値 は(7.20)よ
り
,(7.18)よ
り α0=εFβ0
(7.21) と展 開 で き る.た
だ し
(7.22a) (7.22b) (7.22c)
(7.22d) こ こ でg0=g(εF)で,積
分(7.8)は
複 素 数 α,β に つ い て の2次
始 点 と終 点 は 与 え ら れ て い る が 経 路 は 自 由 に 決 め ら れ る.ま 項(α-α0)(β-β0)が
元 の 積 分 で あ り,
ず(7.21)に
現れ る
消 え る よ う に 停 留 点 α0,β0を 通 る 経 路 を 選 ぶ.(7.21)
の 最 後 の 式 に 現 れ る 行 列 の 固 有 値 λ+,λ-は
(7.23) の 解 で あ る.し
たが って
(7.24) と な り,新 u=reiθ りGauss積
し い 変 数uとυ と し て θ=π/2と
で 積 分 は 分 離 さ れ る.uに 選 ぶ と
で あ る の で,峠
つ いて の積分 の経路 は 道 はy軸
に平行 にな
分 にな るので
(7.25) が 得 られ る.た だ し
(7.26)
を使 った.(7.25)は Uと
す べ て の 量 子 数 に対 す る状 態 密 度(state density)で,Aと
に対 す る依 存 性 は ゆ るや か で あ る.こ の 状 態 密 度 は 広 範 囲 のUとAに
い て 平 均 した もの で,等
つ
間 隔 な 独 立 粒 子 スペ ク トル に対 応 す る こ と はg′(ε)を
無 視 し た こ とか ら も明 らか で あ る.し たが って 核 の 殻構 造 な ど の 特 性 は 含 ん で い な い. こ こで 少 し熱 力 学 に触 れ て お こ う.熱 力 学 的 温 度 は(7.20)よ
り
(7.27) と な る.一
方,熱
力 学 的 エ ン トロ ピ ー は
(7.28) で 求 め られ,温
度 とは次 の 関 係
(7.29) に よ り結 ば れ て い る.(7.27)は
小 さな項 を無 視 すれ ば 上 の 温 度 に一 致 す る こ と
は 明 らか で あ る. こ の状 態 密 度 の 式 は 中性 子 と陽 子 の 区 別 もな い し,角 運 動 量 な ど の 量 子 数 も 考 慮 し て い な い.こ れ らの 影 響 を取 り入 れ る に は 分 配 関 数 を計 算 す る と き 中性 子 数,陽 子 数,角 運 動 量 のz成 分 も指 定 し な け れ ば な ら ない.中 性 子 と陽 子 と の 区 別 の 影 響 は 小 さ くな いが,取
扱 い は 同 じ な の で,ほ か の 本 に譲 る こ とに し
て,角 運 動 量 の 場 合 を 次 に 示 す[2].
(7.30) こ こでIrigは 核 を 剛体 と考 え た と きの慣 性 能率 で,核 子 の 角 運 動 量 のz成 分m の2乗
の 平 均 値 か らFermiガ
ス模 型 を使 い
(7.31) の よ う に 計 算 さ れ る.
式(7.30)の え な いが,エ
状 態 密 度 は
の極限では発散す るので使
ネルギ ー依 存 性 は主 に指 数 部 か ら くるの で,そ れ 以外 は定 数 と した
(7.32) で 状 態 密 度 の エ ネ ル ギ ー 依 存 性 が 示 され る.(7.30)に
よれ ば
(7.33) で あ る.Fermiガ
ス模 型 を とれ ば
と な り(7.1.1項 参 照),
また 調 和 振 動 子 ポ テ ン シ ャル を用 い れ ば
とな る.こ れ らの
値 は 遅 い 中 性 子 の 共 鳴 の 間 隔 か ら得 た 乱 か ら の値
や中性子の非 弾性散
と比 較 され る[2].
以 上 の 状 態 密 度 の 計 算 に はFermiガ
ス 模 型 に基 づ き核 構 造 の 影 響 は 入 って い
な い.こ の 中 には 対 相 関(pairing),振
動 状 態 や核 変 形 な どが あ るが,対
よ りN,Zが
相関 に
偶 数 か 奇 数 に よ り状 態 密 度 が 変 わ っ て くる.偶 偶 核 で は 基 底 状 態
の 核 を励 起 させ る に は核 子 対 を壊 さ な け れ ば な ら な い の で 余 分 の エ ネ ル ギ ーが 必 要 とな る.こ の 影 響 を入 れ る た め,励
起 エ ネ ル ギ ー がΔ だ けず れ た と考 え
る.こ の よ うな 影 響 を 入れ た 核 デ ー タの 解 析 で よ く用 い られ る状 態 密 度 を 次 に 示 す[5].
(7.34) こ こ で 温 度tはLang-Le
Couteur
[6]に 従 い
(7.35) と と り,ス
ピ ン ・カ ッ ト オ フ
を1.25A1/3fmと
・パ ラ メ タ ー(spin
cut-off
parameter)は
核 半 径
す る と,
(7.36) と な る.こ な い.上
れ ら の 式(7.34),(7.35)の の 式 でa,Δ
導 出 は 本 節 で 述 べ た よ うな 簡 明 な もの で は
は い ま 考 慮 に 入 れ て い な い い ろ い ろ の 影 響 を 入 れ る た め,
現 象 論 的 パ ラ メ タ ー と 考 え る.aを40
低 エネルギーの実験 デ ー
図7.1
タ,低
現 象 論 的 に 決 め た パ ラ メ ターaの
値 を 質 量 数Aで
プ ロ ッ トした[5]
エ ネ ル ギ ー の 中 性 子 の 散 乱 実 験 に 合 う よ う に 選 ぶ と,図7.1の
る[5].そ
の と き のΔ
よ うに な
の値 は
(7.37)
と し た.上
の2つ
の 場 合 は 対 エ ネ ル ギ ー か ら 求 め た.Δ
奇 偶 性 に は ほ と ん ど よ ら な い が,A=90,140,208に
補 正 後 のaの
値は核の
谷 が 見 ら れ る.こ
れ らは
に 対 応 す る.最 核 デ ー タ と の 比 較 に つ い て は[7]を
近の
見 よ.
7.1.1 一 粒 子 の 準 位 密 度 古 典 論 に よ り一 粒 子 の 準 位 密 度 を 考 え る.ス ピ ン ・ア イ ソ ス ピ ン は 考 え な い の で,中
性 子 か 陽 子 の 場 合 に は こ こ で 得 られ た 式 は2倍
し な け れ ば な ら な い.
軌 道 角 運 動 量 をlと した と きエ ネ ルギ ー εまで の準 位 の 数 は,(6.226)よ
り
(7.38) で 与 え ら れ る.kl(r)はE=ε,角 の π 倍 は 作 用 積 分 で あ る.kl(r)は
運 動 量lに
対 す る 局 所 波 数(6.221)で,n(ε,l) で 正 で,両
端 で0に
な る とす
る.(7.38)の
エ ネ ル ギ ー 微 分 は 準 位 密 度 で,
(7.39) 散 乱 の 場 合 に は こ の 積 分 が 時 間の 遅 れ に 関係 して くる.角 運 動 につ い て の 和 を と る と,一 粒 子 の 状 態 密 度 が え られ る.
(7.40) こ こ でx=(l+1/2)2,g(ε,x)の
が 正 の 値 を と る 上 限 のxをxmaxと
す る と,積
分 は容 易 にで き
(7.41) と な る.こ
こで
(7.42) この 状 態 密 度 を εで 積 分 す る と,エ ネ ル ギ ー ε まで の す べ て の 一 粒 子 状 態 数が 求 め られ る.
(7.43) 図7.2に
エ ネ ル ギ ー ε ま で の 独 立 粒 子 状 態 数 を 古 典 近 似(7.43)で
と 量 子 力 学 に よ る も の と 比 較 し た.量 典 近 似 と よ く一 致 し,古
計 算 し た結 果
子 力 学 の 計 算 結 果 のエ ネ ル ギ ー平 均 は古
典 状 態 密 度 の エ ネ ル ギ ー 依 存 性 は 極 め て 弱 い こ とが わ
か る. こ こ で 得 ら れ た 古 典 論 の 式 をFermiガ r0A1/3の
球 に 閉 じ 込 め ら れ,
Rで,kはrに Fermi波
ス に 応 用 し て み る.核 と す る.す
よ ら な い.(7.43)よ 数
りA=(8/9π)k3FR3と さ ら にFermiエ
と な る.(7.41)よ
りFermiエ
を 得 る が,εFを
子 は 半 径R= る と,rmax= な る.こ
れか ら
ネ ル ギ ー
ネ ル ギ ー に お け る 状 態 密 度 使 っ てg(εF)=(3/2)(A/εF)と
な る.
こ れ ら の 結 果 は 当 然 な が ら 球 の 代 わ り に 立 方 体 を 使 っ た 計 算 と 一 致 す る([2]). r0=1.1fmと
す る と,
と な る.
図7.2 独 立 粒 子 状 態 密 度 関 数 に よ るエ ネル ギ ー ε まで の状 態 数 208Pbの 中 性 子 に対 す る ポ テ ン シ ャル をWoods-Saxon型 と して , パ ラ メ タ ーは[2]よ り採 った.滑 らか な カー ブ は(7.43)よ り計 算 し, 階 段状 の も の は 量子 力 学 の 計 算 結 果.点 状 態密 度で 単 位 はMeV-1.い
線 は(7.41)に
よ り計 算 した
ず れ もス ピ ンを 考 慮 に 入 れ2倍
し た.
7.2 共 鳴 準位 の統 計 的性 質 とラ ン ダ ム行 列
1950年 頃 か ら遅 い 中性 子 の 共 鳴 の デ ー タが 集 積 され,Breit-Wignerの 公 式 で 解 析 され,そ の 統 計 的性 質 もわ か って きた[8,9].遅 主 にs波 で あ る か ら,標 的核 の ス ピ ンが0な
共鳴
い中性子 の共鳴 は
ら,複 合 核 の ス ピ ン は1/2で
あ る.
共 鳴準 位 は 殻 模 型 の複 雑 な 励 起 状 態 に 対 応 す る 束 縛 状 態 で あ るか ら,そ の 固有 値 は ラ ン ダ ム に 分 布 して い る と考 え られ る.そ の と きは,準 位 間 隔 の 分 布 は0 次 のPoisson分
布
(7.44) と な る.こ
こ でxは
こ のPoisson分
準 位 間 隔sを
平 均 準 位 間 隔d=〈s〉
布 は 次 の よ う に し て 導 く.x=0に
ま で に な い 確 率 をp0(x)と
す る.0とx+Δxの
で 割 っ た も の で あ る.
準 位 が あ り,次
の 準 位 がx
間 に準 位 の ない 確 率 は
(7.45)
で あ る.xの はΔxで
単 位 区 間 内 に 準 位 は平 均1個
あ るか ら,Δxに
あ る の で,Δxに
準 位 の な い確 立 は1-Δxと
準 位 の 現 れ る確 率
な る.(7.45)よ
り微 分
方程 式
(7.46) が 得 られ,そ
の解は
(7.47) で 求 め る.準 位 間 隔 の 分 布 は
(7.48) と な る. 実 験 デ ー タ を 整 理 し て 同 じ ス ピ ン ・パ リ テ ィ の 共 鳴 の 準 位 の 間 隔 を プ ロ ッ ト し て み る と,そ
の 分 布 はPoisson型
と は な ら ず,x=0に
に な る よ う な 分 布 で あ る こ と が わ か っ た.こ な 推 測 を 行 っ た.同 率 は0で
あ る と,そ
と な る の で,二
の2次
あ る 確 率 はsに
E1-E2とy=2H12を で あ る か ら,xとyと
次 の よう
つ の 準 位E1,E2間
な る確
に相 互 作 用 の 行
の 永 年 方 程 式 の 二 つ の根 は
つ の エ ネ ル ギ ー の 間 隔sは
小 さ い と き 間 隔 がsで
れ に 対 しWigner[10]は
じ ス ピ ン ・パ リ テ ィの 準 位 は 互 い に 退 け 合 っ て,重
あ る こ と は よ く知 ら れ て い る.二
列 要 素H12が
近 づ く と 減 少 し て0
と な る.sが
比 例 す る こ と は 次 の 考 察 か ら わ か る.x=
座 標 と す る 点 を 極 座 標 でs,θ
と 表 す とdxdy=sdsdθ
の 分 布 が 一 様 で あ れ ば 間 隔 がsで
あ る 確 率 はsで
あ る.
す る と(7.46)は
(7.49) と な り,解
は
(7.50) と 求 ま る.間
隔 がxで
あ る 確 率 は(7.48)に
ならい
(7.51) とな る.こ れ がWignerの
最 近 接 準位 間 隔 分 布 とい われ る もの で,実 験 値 と非
常 に よ く合 う こ とが わか っ て い る.
Wignerは
さ ら に 現 在GOEと
る だ ろ う と 示 唆 し た.ハ と す る と,そ
呼 ば れ て い る 分 布 関 数 か ら 上 の 結 果 が 得 られ
ミル トニ ア ン は エ ル ミ ー トで 回 転 不 変,時
の 行 列 要 素 は 実 数 で 対 称 で あ る.こ
さ ら に 次 の 仮 定 を 置 く.Bohr-Mottelson[2]に
間 反転 不 変
れ は ラ ン ダ ム 変 数 で あ る と し, 従 っ て2次
元 の 場 合 を例 と して
考 え, (ⅰ)行 列 要 素H11,H22,H12の
分 布 関 数 は 互 い に 相 関 は な く,独 立 で あ る.
(7.52) (ⅱ)上 の 分 布P(H)は
基 底 のユ ニ タ リー 変 換 に 対 し て不 変 で あ る.
この 仮 定 をす る と,
(7.53) と な る.す Gauss直
な わ ちGauss分
布 で こ れ をGOE(Gaussian
交 集 団)と い う.一
般 のN次
orthogonal
ensemble,
元の場 合は
(7.54) と な る. 再 び2次
元 に 戻 る と,2×2の
実 対 称 行 列 は 簡 単 に 対 角 化 す る こ とが で き る.
基 底│1〉,│2〉 を 角 度 θ だ け 回 転 し た も の を│α 〉,│β〉と す る と,
(7.55) (7.56) 対 角 化 され た エ ネ ル ギ ー をEα,Eβ H211+H222+2H212を Eα,Eβ,θ
使 っ てEα
へ の 変 数 変 換 のJacobi行
とす る と,式(7.52)の とEβ
で 表 せ る.残
指 数 部 はE2α+E2β= り はH11,H22,H12か
列 式 を 計 算 し て,(7.52)は
ら
新 しい表示では
(7.57)
と な る.こ
こ でEα-Eβ=sと
し,θ
に つ い て 積 分 す る と,
(7.58) を 得 る. 一 般 の 場 合 の 最 近 接 準 位 間 隔 分 布 の 計 算 は そ れ ほ ど 簡 単 で は な い が,そ 果 はN→∞
の 極 限 で はWigner分
接 準 位 間 隔 分 布 の 実 験 デ ー タ は 主 に 低 い エ ネ ル ギ ー のs波 鳴 準 位 か ら 集 め ら れ る が,同
じ ス ピ ン だ け を 選 び,し
近
の 中性 子 の散 乱 の 共
か も極 め て 小 さ い 準 位 間
隔 も 落 と さ な い よ う に し な け れ ば な ら な い.Bohigasら[11]は デ ー タ を 集 め て,Wigner分
の結
布 と 驚 く ほ ど よ く 一 致 し て い る[9].最
布 と 比 較 し た と こ ろ,図7.3に
こ の よ うに して 示 す よ う に,非
常
に よ く 一 致 す る こ と が わ か っ た. 準 位 間 隔 分 布 に 加 え て ス ペ ク トル の ゆ ら ぎ に 関 す る 重 要 な 量 と し てDysonMehtaの
ス ペ ク ト ル の 剛 性(spectral
rigidity)が
あ る[9].そ
れは
(7.59) で 定 義 され て い る.こ
こでN(ε)は
エ ネ ル ギ ー が εまで の 状 態 の 数 で,エ
ネル
ギ ー の 関 数 と して 階段 状 を して い る.こ の エ ネ ル ギ ー平 均 は状 態 密 度 の エ ネ ル ギ ー 積 分 を ε まで 行 っ た もの で あ る.こ の エ ネル ギ ー の 関 数N(ε)を
図7.3
最 近 接 準 位 間 隔 分 布[11]
ヒ ス トグ ラ ム は 多 くの 核 の 準位 か ら適 当な 補 正 を して 集 め た1726の 準 位 間 隔 の 分 布 で,実 す.横
線 はGOEに
軸 の 単位 は 平均 準位 間 隔.
よ る もの と,Poisson分
布を示
区 間Lに
図7.4
スペ ク トル の 剛 性 を間 隔Lで Lは
プ ロ ッ トした[12]
平 均 準 位 間 隔 を単 位 と した.
お い て,直 線 で 近 似 した と き の最 小 二 乗 法 で 計 算 し たず れ を 区 間 の 位 置xで 均 し た もの で あ る.こ れ はGOEで
平
与 え られ た 準 位 の 場 合 と ま った くラ ンダ ム
なPoissonの
場 合 とで 計 算 値 が 異 な り,実 験値 はGOEに
が,図7.4に
示 され て い る.こ れ らの 統 計 量 は 系 の 対 称 性 に よ って 異 な った 値
を持 つ.図7.4に
はGUEの
値 も示 され て い る(7.7節 参 照).
共 鳴準 位 の統 計 的性 質 には 今 まで 述 べ た もの 以外 に,共 るが,こ
よ く合 っ て い る こ と
れ はPorter-Thomas分
鳴 幅 の分 布 関 数 が あ
布[13]と 呼 ば れ,次 のχ2分 布
(7.60) の 自由 度ν=1に
対 応 す る
こ の 分 布 はGOEか
ら容 易 に 導 くこ とが で き,ま た低 エ ネル ギ ー 中性 子 幅 の 実 験 デ ー タは この 分 布 に よ く合 う こ とが 知 られ て い る.エ ネ ルギ ーが 少 し高 くな る と 共 鳴 幅 やγ 幅 は 多 くの チ ャ ネル か ら の寄 与 の 和 と な る.も
しν 個 の 寄 与 が 同 じ大 き さで あ る と
す る と,そ の和 の 分 布 関 数 は ち ょ うど(7.60)で 1/ν とな る.
与 え られ る.す な わ ち ゆ らぎ は
7.3 準 位 密 度:相
互 作 用 の あ る場 合
前 節 の 状 態 密 度 の 計 算 に は 残 留 相 互 作 用 の 影 響 が 入 っ て い な い が,本 節 で は 相 互 作 用 を考 え る.し か し独 立 粒 子 の 準 位 は 縮 退 し相 互 作 用 の 行 列 要 素 は ラ ン ダ ム変 数 でGauss分
布 を し て い る と仮 定 す る.こ の 条 件 の も とで は7.2節 に 示
した よ うに 準 位 間 隔分 布 はWigner型
に な り,準 位 密 度 は半 円 形 に な る こ とは
知 られ て い る.こ の 半 円形 の 分 布 は 実 験 デ ー タ と比 較 で きる よ うな 現 実 的 な も の で な い こ と は明 らか で あ る.こ こで は 後 で使 う必 要上,母 関 数 とGrassmann 積 分 を使 う超 対 称 の 方 法 を述 べ る[15, 16].す な わ ち簡 単 な場 合 を例 に と り新 し い 計 算 法 を説 明 し,い ろ い ろ な概 念 を導 入 す る.し か し本 節 な らび に7.5節
の
証 明 の 部 分 を飛 ば して読 ん で もそ れ 以 降 の理 解 には 支 障 は な い.最 後 にWigner 自身 に よる 準 位 密 度 の 導 出 を簡 単 に 紹 介 す る. まず 準 位 密 度 は ス ピ ン ・パ リテ ィを 指 定 し
(7.61) と書 く.こ れ は δ関 数 の 集 ま りで あ る.前 の 取 扱 い で は,近 似 を使 った た め 自 然 に 滑 らか に な っ たが,今 (7.54)を 掛 け てHの る.直 接(7.61)に
度 は 平 均 を しな け れ ば な ら な い.GOEの
分布 関数
行 列 要 素 に つ い て 積 分 す る とア ンサ ン ブ ル 平 均 が な され つ い て 平 均 を行 う の は 難 し い の で,母
関数
(7.62) を導 入 す るが,そ
の 中 に は状 態 μ の 数Nだ
け の積 分
(7.63) が 含 まれ る.エ ネ ル ギ ー分 母 の 行 列 要 素 は
(7.64) で 与 え ら れ る.φ μ に つ い て の 積 分 はGauss積 証 す る た め の も の で あ る.(7.64)のHμν 数 δは 収 束 因 子 の 役 目 を は た す.Jは
分 で,虚
数iは
積 分 の 収 束 を保
の 符 号 は 正 と は 限 ら な い の で,正 ソ ー ス 関 数 で,(7.61)に
現 れ るGreen関
の
数 を 生 成 す る.Gauss積
分 を実 行 す る と
(7.65) と な る.多
次 元Gauss積
分の公式
(7.66) を 使 っ た が,こ
れ は よ く知 られ たGauss積
分(Aが
純 虚 数 の と き はFresnel積
分 と し て 知 ら れ て い る)
(7.67) の 拡 張 で,実
数 対 称 行 列Aを
対 角 化 す る こ と に よ り容 易 に証 明 で きる.次
の
公式
(7.68) も役 に立 つ 公 式 で,同
じ く行 列 を対 角 化 す る こ とに よ り証 明で きる.こ れ ら の
関 係 を使 う と容 易 にGreen関
数 が 計 算 で きる.
(7.69) 平 均 準 位 密 度 を 計 算 す る に はlnZの ら な い が,こ
れ は 簡 単 で は な い.一
て い る レ プ リ カ ・ ト リ ッ ク(replica
ア ンサ ンブ ル 平 均 を 計 算 し な け れ ば な つ の 方 法 は ス ピ ン ・グ ラ ス の 研 究 に 使 わ れ trick)で,Znの
解 析 的 な 計 算 が 可 能 な ら,
よ り求 め る こ と が で き る が,適 [14].も
う 一 つ の 方 法 はGrassmann積
ま ず 初 め にGrassmann数 変 わ る,す
用 に一 般 性 を欠 く
分 を 使 う超 対 称 の 方 法 で あ る[15,
は 普 通 の 数 と 同 じ だ が,積
16].
の順 序 を 変 え る と符号 が
な わ ち 反可 換
(7.70) と い う性 質 を持 つ とす る.次 にXに
共 役 な 数 をX*に
よ り定 義 し,2回
共役 を
と る と符 号 が 変 わ る とす る.
(7.71)
下 の 添 え 字iは ベ ク トル の 成 分 を示 す もの と し た.次
に超 ベ ク トル を可 換 な 成
分 と反 可 換 な 成 分 を もつ ベ ク トル
(7.72) に よ り定 義 す る.ψ μα は α=1,2,3,4に
が 対 応 す る.超
行 列は
(7.73) で 定 義 し,小 行 列aとbの
成 分 は 可換 で σ と ρと の成 分 は 反 可 換 で あ る.超
ト
レースは
(7.74) で 与 え られ,超
行 列式は
(7.75) で 定 義 され る.(こ
こ でgを
を 意 味 す る.)Grassmann積
つ け た の はgradedの
意 味 で,超superと
同じこと
分は
(7.76) (7.77) で 定 義 す る.(7.77)の (7.62)の
定 数 は ど ん な 数 で も よ い が,こ
積 分 の 値 がJ=0で
常 に1に
の よ うに と る と便 利 で あ る.
な る よ う に す る た め,(7.62)に
現れた
普 通 の 可 換 な 変 数 に つ い て の積 分
(7.78) に反 可 換 の 変 数 に つ い て の積 分
(7.79) を加 え る.超 行 列M
(7.80)
に 対 し次 の 関係 は 容 易 に 証 明 で きる;
(7.81) こ こ で(7.72)に
対 応 し
(7.82) と 書 く こ と に す る. 母 関 数(7.62)の
積 分 をGrassmann積
分 に 改 め る;
(7.83) (7.64)を
拡張 し
(7.84) と し,ソ
ー ス関数は
(7.85) で 定 義 す る.ま た
(7.86) は(7.81)よ
り 明 ら か で あ る.し
た が っ てGreen関
数 は
(7.87) に よ り計 算 で き る. 母 関 数(7.83)に
ラ ン ダ ム変 数Hμν の分 布 関 数(7.54)を
掛 けて積分 する と
(7.88) と な る.λ
は
(7.89)
に よ りハ ミル トニ ア ンHの2次 は 規 格 化 定 数 で あ る.す
モ ー メ ン トの 大 き さ を 表 す パ ラ メ ター で,C
る とラ ンダ ム 変 数 の 積 分 は で きて
(7.90) と な る.行 列Aは
(7.91) で 定 義 され て い る.(7.90)の
ψ に つ い て の 積 分 は 指 数 部 に そ の4乗
る ので,簡 単 に は で きな い の でHubbard-Stratonovitch変 ψ の2乗
の項が あ
換 を使 って,A2を
の 積 分 と し て 表 す.そ の た め 積 分 変 数 σ を 導 入 す る.こ の 方 法 は 二
体 の相 互 作 用 を一 種 の平 均 場 σ を導 入 して,一 体 の 相 互 作 用 で 表 す ト リ ッ クで Monte
Carlo大 規 模 殻 模 型 の 計 算 な ど広 く使 わ れ て い るが,そ
あ る.σ は4×4の
超 行 列 で,そ の 添 え字 はAと
の 一例 は[17]で
同 じ く αβ で あ る.す る と次
の 関係 式
(7.92) は 容 易 に 証 明 で きる.こ
の積 分 変 数 を
だ け ず ら して も変 わ らな い こ と
から
(7.93) が 導 か れ る.こ
れ を 利 用 し て(7.90)か
らA2を
消 す と,ψ
に つ い て の積 分 は 直
ち に で き て,
(7.94) とな り,最 後 の σ に つ い て の積 分 は鞍 点 法 で 行 う.(7.94)の
指 数 部 のJを0と
し て,σ の 停 留 値 の 方 程 式 を求 め る と
(7.95) と な るが,こ
れ を 解 く と,
(7.96)
を 得 る.σ
の 積 分 は 指 数 部 を σ0Dを 中 心 と し,2次
に よ りZ(E,0)=1と
ま で の 展 開 を 行 う が,(7.81)
な る.(7.94)は
(7.97) と な り,準
位 密 度 は(7.61),
(7.87)よ
り
(7.98) で 与 え ら れ る.こ
れ は(7.96)に
す こ と が わ か る.1個 でN→
よ りE=0を
中 心 と し,半
の 準 位 当 り の 準 位 密 度 は
∞ の 極 限 を と っ て も 変 わ ら な い が,こ
径 が2λ の 半 円 を 表 と な り,Nに
れ は(7.89)の
は独立
パ ラ メ ター の と
り方 の た め で あ る. 以 上 の 計 算 の 準 備 は 長 か っ た が,一 で も あ っ た.こ
つ に は 超 対 称 の 方 法 を 紹 介 す る た め の もの
の 半 円 の 準 位 密 度 はWignerに
以 下 そ の 計 算 の 大 筋 を 書 く と,ま
よ り 初 め て 求 め ら れ た[18,
ず 状 態 密 度 のFourier変
19].
換 を 考 え て,
(7.99) Hの
固 有 値 をEα
と 書 き,準
位 密 度(7.61)に
よ り,
(7.100) と な る.tr(Hn)のGOEに
よ る 平 均 はN→
∞の 極 限 で
(7.101) で あ る こ と をWignerは よ り
示 し た.こ
の 証 明 は 長 い の で[18,
19]参 照 の こ と.(7.89)
で あ る か ら,
(7.102) が 求 ま る.Bessel関
数 の べ き 展 開,
(7.103)
と積 分表示
(7.104) を 組 み 合 わせ,
(7.105) z=2tλ
で,積
分 変 数 を
に よ りEに
変え ると
(7.106) とな り,さ らに(7.99)と この 最 後 の2節 べ た.そ
比 較 し,半
で はGOEを
円 の準 位 密 度(7.98)を
得 る.
使 っ て ス ペ ク トル の 統 計 的 性 質 と準 位 密 度 を調
して 前 者 で は 実験 と よ く合 う結 果 が 得 られ たが,後
か った.そ
者で はそ うならな
の 理 由 は あ ま りに簡 単 な 仮 定 に よる もの と思 われ る.(一 つ は 縮 退 し
た 独 立 粒 子 エ ネ ルギ ー ・ス ペ ク トル で,も
う一 つ はGOEで
あ る.)GOEは
果
た して 現 実 的 な残 留 相 互 作 用 に対 応 す るか を 考 え て み よ う.原 子 核 内 の 核 子 間 に 働 く核 力 は 二 体 力 が 主 で,弱 る.と
こ ろが,GOEに
い 三体 力 が 含 まれ て い る こ とが よ く知 られ て い
対 応 す る核 力 は 一 体 力 か ら核 子 数 をNと
力 まで が 含 まれ て い る.現 実 的 残 留 相 互 作 用 を使 う と多 くの0の れ る.も
す る と,N体 行列要素が 現
し ラ ン ダ ム な 二 体 力 を使 った ら ど の よ うな 結 果 に な るか は,以 前 か ら
調 べ られ て お り[19],最 近接 準 位 間 隔分 布 はGOEと 準 位 密 度 分 布 はWignerの
半 円で は な くGauss分
この よ う な制 限 の あ るGOEはEGOE
(embedded
同 じWigner型
で あ るが,
布 に な る こ とが わか って い る. GOE)と
呼 ば れ,最 近 の研
究 も盛 ん で あ る[20, 21]. GOEよ
りも現 実 的 な 核 力 を 使 っ た状 態 密 度 の 計 算 は い くつ か 行 わ れ て い る
が([22]と そ この 引用 文 献),殻 模 型 に 二 体 の 相 互 作 用 を入 れ た系 で 分 配 関 数 を Monte
Carlo法 で 計 算 して,そ れ か ら状 態 密 度 を 求 め て い る.7.1節
で 述 べ た ペ ア リ ング や ほ か の 影 響 を取 り込 む こ とが で き る.
の終 わ り
7.4 複 合核 反 応 の統 計 理 論:現 象論
7.4.1 終 状 態 が 離 散 状 態 の 場 合 前 章 で は 個 々 の 共 鳴 準 位 に対 す る 複 合 核 反 応 の分 散 公 式 を導 い た.し か し少 し入 射 エ ネ ル ギ ーが 高 くな る と準 位 間 隔が 準 位 幅 よ り狭 くな り多 くの準 位 が 励 起 され る の で,こ れ ら を統 計 的 に取 り扱 う必 要 が あ る.こ の 節 で は現 象論 的 な 方 法 を述 べ る[1].初 め は直 接 相 互 作 用 は な い と仮 定 す る の で,透 過行 列 は 対 角 な 透 過 係 数Tcと
な る.Bohrの
複 合 核 模 型 に よる と,二 つ の 粒 子 が 衝 突 す る と
複 合 核 と呼 ぶ 長 い 寿 命 を もつ 状 態 が 作 られ る.こ の 複 合 核 は ど の よ うな 過程 で 生 成 され たか とい う記 憶 は 忘 れ,一 定 の確 率 で粒 子 ま た は 放 射 線 を放 出 して 崩 壊 す る.多
くの 準 位 が 同 時 に 励 起 され る とそ れ らの 寄 与 の 位 相 は 乱 雑 で,干
渉
項 は 消 え る.ま た 各 部 分 波 の 寄 与 も同 じ理 由 で 干 渉 し な い.こ の よ うな仮 定 の も とでWolfenstein
[23]とHauser-Feshbach
式 を 求 め た.こ れ がHauser-Feshbach理
[24]は 断 面 積 や 角 分 布 を計 算 す る 論 と よば れ て い る.統 計 理論 で 求 め ら
れ る の は ゆ らぎ の 断 面 積(6.111)
(7.107) で あ る.複 合 核 形 成 の 断 面 積 は 透 過 係 数Tと(6.115)に
より
(7.108) で 与 え ら れ る.こ 積 は(7.108)に
の 複 合 核 が 崩 壊 し て チ ャ ネ ル α's'l'に 粒 子 が 放 出 さ れ る 断 面
崩 壊 確 率Gα's'を
掛 け れ ば よ い.こ
対 し て 成 り立 つ か ら,(7.107)と(7.108)を
れ は(7.107)の
各Jの
項 に
比 較 し て,
(7.109) 一方
,
で あ る か ら(7.107)に
よ り
(7.110) よ って
(7.111)
こ れ が(7.109)の
各Jll'の
項 に 対 し て 成 り立 つ か ら
(7.112) は チ ャ ネ ル に よ ら な い.GJαsは
確 率 だ か ら,
ゆ え に,
(7.113) が 求 め られ る.し
た が っ てaよ
りa'へ
崩 壊 す る確 率 は
(7.114) と な る.た
だ しa, a', cは す べ て 共 通 のJπ を もつ とす る.角 分 布 の 計 算 は(6.107)
に お い てS-1をSflで
置 き換 え れ ば よ い.Hauser-Feshbachの
て の 干 渉 項 は な い の で,
公 式 で はす べ
と 置 く.す
る と
(7.115) が 求 ま る.上
の 式 はCG係
数(l'0L0│l'0)を
含 む の で,Lは
偶 数 に 限 ら れ,角
分
布 は90° 対 称 に な る. い まHauser-Feshbachの
公 式 は 詳 細 釣 合 の 原 理 か ら 求 め た が,S行
ら 直 接 求 め る こ とが で き る.こ
の た め に はKawai-Kerman-McVoy
列 が 便 利 な の で(6.105)を
使 用 す る.6.5節
7.6節
ゆ ら ぎ に 使 う た め 二 つ のS行
に 述 べ るEricsonの
て お く.す
列の式か [25]のS行
で 述 べ た 時 間 に 依 存 す る定 式 化 と 列 の エ ネ ル ギー を 違 え
る と
(7.116) が 得 られ る.λ ≠ μ の 項 は 共 鳴 振 幅 γの 符 号 が 乱 雑 なた め λ=μ か らの 寄 与 に 較 べ て小 さ く,無 視 で き る とす る.エ ネ ルギ ー平 均 はΔEの 7.5に 示 す よ うな複 素 平 面 で の 積 分 を考 え る と,Iを
範 囲 で 行 うが,図
十 分 大 き く とる と,虚 数 部
図7.5
がiIで
エ ネル ギ ー平 均 の た め の複 素 平 面 で の 積 分路 ×はS*の 極 を 示 す.
あ る 実 軸 に 平 行 な線 分 か らの 寄 与 は 小 さ く,ま た虚 軸 に平 行 な2辺 か ら
の 寄 与 は よい 近 似 で打 ち消 され る.留 数 の 計 算 よ り
(7.117) を 得 る.準
位 密 度 ρλ を使 っ て(7.117)は
(7.118) と な る.〈〉 し て〈〉
は 共 鳴 状 態Eλ
の 外 に 出 す(7.2節
に つ い て の 平 均 で あ る.Γ λ の ゆ ら ぎ は 小 さ い と 参 照).γ
λ aとγλbは独 立 で 相 関 が な い と す る と
(7.119) と な り,透
過 係 数 を 強 度 関 数 で 表 し た 式(6.127)を
合Hauser-Feshbachの
公 式(7.114)が
近 似 的 に 使 う と ε=0の
得 ら れ る.し
場
か しγλaは ラ ン ダ ム 変 数
で,GOEに
従 っ て 分 布 し て い る(こ の 仮 定 は7.5節
で 述 べ る理 論 で は採 用 され
な い)と
す る と 異 な っ た 結 果 が 得 ら れ る.Γ λρλ≪1の
場 合 に はγ λaは ほ と ん
ど 実 数 と 考 え ら れ*1,
(7.120) が 成 り立 つ の で,弾
性 散 乱 で は ゆ ら ぎ の 断 面 積 はHauser-Feshbachの
倍 に な る.Γ λρλ≫1の え ら れ る.Re(γ
場 合,γ λaは 複 素 数 で
λa)とIm(γ
λa)が 互 い に 独 立 にGOEに
公 式 の3 と考
従 っ て分 布 す る と
(7.121) *1
xがGauss分
布 し て い る と き〈x2〉=a2な
ら ば〈x4〉=3a4で
あ る
.
が 成 り 立 つ こ と は 容 易 に 証 明 さ れ る.こ
の 場 合2倍
に な る.Hauser-Feshbach
の 理 論 は 多 く の 実 験 デ ー タ の 解 析 に 応 用 さ れ て 成 功 を 収 め て い る.し
か し こ
の 理 論 は 常 に 正 し い 結 果 を 与 え る か ど うか は1970年
代 の 問 題[26]で
1980年
れ に つ い て は7.6節
べ る.後
代 に な っ て ラ ン ダ ム 行 列 理 論 で 解 決 さ れ た.こ の 便 宜 上Γ λρλ≫1の
たHauser-Feshbachの
場 合,(7.114),
(7.118)に
あ っ て,
補 正(7.121)を
で述 入れ
公 式 を 書 い て お く.
(7.122) 7.4.2 終 状 態 が 連 続 状 態 の 場 合 入 射 エ ネ ル ギ ーが よ り高 くな る と,残 留 核 の励 起 エ ネ ルギ ー も高 くな り,個 々 の準 位 に つ い て 断 面 積 を計 算 し て も無 意 義 とな る.こ の と きは 終 状 態 につ い て も統 計 的 に 取 り扱 い,終 状 態 の エ ネ ル ギ ー εβ に つ き平 均 を す る.複 合 核 の エ ネ ル ギ ー をEbと
した と き εβ と放 出 粒 子 の エ ネ ル ギ ーeβ の 間 に は 関係
(7.123) が あ る.Bは
放 出 粒 子 の 結 合 エ ネ ル ギ ー,εmaxはeβ
ル ギ ー 値 で あ る.す
る と 透 過 係 数Tb(eβ)は
あ る い は εβ の 最 大 の エ ネ
εβ の 連 続 関 数 と な り,β で εβ=ε
を 満 た す 和 を と る と き に は 準 位 密 度 ρβ(ε β)を 掛 け て 積 分 し
(7.124) と な る. こ の 場 合 の 角 分 布 は(7.115)に(7.122)で 態 の 準 位 密 度
を か け てI'に
与 え ら れ る
を 代 入 し,終
状
つ き和 を と れ ば,
(7.125)
で,(7.115)と
同 じ く90° 対 称 で あ る.次 に 特 別 な 仮 定 の も とで,こ
の 角分 布 は等
方 に な る こ と を 示 そ う.ま ず(ⅰ)残 留 核 の 準 位 密 度 の 角 運 動 量 依 存 性 が(2I'1+1) に 比 例 す る と す る.こ
れ は(7.30)に
お い てIrigが
に(ⅱ)TJαslが チ ャ ネ ル ・ス ピ ンsとJに 解 析 で 仮 定 し て い る.す 粒 子 の ス ピ ンI'2と
大 き い 極 限 と考 え ら れ る.次
依 存 し な い と す る.こ
る と チ ャ ネ ル ・ス ピ ンs'は
の ベ ク ト ル 和 で あ る か ら,s'とI'2を
れ は現 象 論 的 な
残 留 核 の ス ピ ンI'1と 放 出 固 定 す る と,
(7.126)
で,(7.125)のClebsch-Gordan係
数 と組 み 合 わ せ
(7.127) と な り,m'に
依 存 しな くな る の で
(7.128) よ り角 分 布 は 等 方 とな る.
立体角 で積分 した断面積 は
(7.129) と な る.さ
ら に仮 定(ⅱ)を 使 い 透 過 係 数 をTαlと 書 くと,Jの
和 が で きて
(7.130)
と な る.こ
こ で 吸 収 断 面 積(7.108)を
使 って
(7.131) と吸 収 の 断 面 積 で 書 くこ とが で きる.こ れ ら の結 果 は 現 象 論 的 解 析 に よ く用 い られ るが,二
つ の 仮 定(ⅰ),(ⅱ)に基 づ くこ と を忘 れ て は な らな い.
吸 収 の 断 面 積 は 簡 単 な古 典 模 型 で 大 体 の 大 き さ を推 定 す る こ とが で きる.透 過 係 数 は 入 射 粒 子 が 核 半 径Rの
標 的核 に 当 た れ ば1,そ
る.中 性 子 の 場 合 は 衝 突 径 数 をbと す る と,b
うで な け れ ば0と
す
ら吸 収 され る.角 運 動 量
か ら,
(7.132) が 成 り立 つ.た
だ し
(7.133) で あ る.荷 電 粒 子 の 場 合 はCoulomb力 と最 近 接 距 離Rと
に よ り軌 道 が 曲げ られ て,衝 突 径 数b
の 間に
(7.134) の 関 係 が あ る.Coulomb散 る.kは
波 数,bは
乱 の 散 乱 角 は 古 典 力 学 に よ り
衝 突 係 数 で あ る.散
で 与 え ら れ る の で,D=Rと ZZ'e2/RはCoulomb障
とな
乱 の 最 近 接 距 離 は お く と 関 係(7.134)が
壁 の 高 さ で,ε
求 め られ る.BC=
は 粒 子 の エ ネ ル ギ ー で あ る.こ
れ より
(7.135) を 得 る(角 く,
運 動 量l=0の
場 合 に は 吸 収 さ れ る 粒 子 の エ ネ ル ギ ー はBCに と な る.1.3節
参 照).吸
収 断 面 積 は(7.108)よ
等 し り
(7.136) とな り
図7.6
61.7MeV陽
子 の54Feに
実 線 は 実 験 デ ー タで,ヒ
よる 散 乱 の60°
にお け るエ ネ ルギ ー ・ス ペ ク トル
ス トグ ラ ム と点 は 核 内 カス ケ ー ド模 型(5.4.2(a)
項 参 照)に よ る 理論 値[27].
(7.137)
が 得 られ る.中 性 子 の 吸 収 断面 積 は幾 何 学 的 断面 積 に等 し く,陽 子 の はCoulomb 障 壁 に よ り削 りと られ る. 放 出粒 子 の エ ネ ルギ ー ・ス ペ ク トル は(7.124)で
与 え られ るが,透 過 係 数T(e)
と準 位 密 度 ρ(ε)によ り決 め られ る.す な わ ちT(e)はeと
と も に増 加 して1に
近 づ く.準 位 密 度 ρ(ε)はε と と も に指 数 関 数 的 に増 大 す る.そ す よ うな 形 と な る.荷 電 粒 子 の 場 合 はCoulomb障
して 図7.6に 示
壁 の ため εの 小 さい 部 分 は
切 り取 られ る.ε の 大 きい 部 分 は準 位 密 度 に よ って 支 配 され るが,そ た め 状 態 密 度 の式(7.32)は
れ を見 る
準 位 密 度 に比 例 す る と し,そ の 指 数 部 を放 出粒 子 の
エ ネ ルギ ー εで 展 開 す る と,
(7.138) とな っ て,eに で,εmaxは
つ い て 指 数 関 数 的 に 減 少 す る.(7.27)と(7.33)よ 残 留 核 の 最 高 の 励 起 エ ネ ル ギ ー に 等 し い の で,減
の 温 度 の 逆 数 と な る.こ
り 少 の 割 合 は残 留 核
れ に よ りエ ネ ル ギ ー ・ス ペ ク トル の 対 数 の 傾 斜 か ら 残
留 核 の 温 度 を 知 る こ と が で き る.
7.4.3 多 粒子 放 出 過 程 入 射 エ ネ ル ギ ー が さ ら に高 くな る と,残 留 核 か ら も粒 子 放 出 が 可 能 に な る. またγ 崩 壊 も加 わ り,何 世 代 もの 連 鎖 崩 壊 が お こ る[28].複 核 のNZ,ス
ピ ン ・パ リテ ィJπ,励起 エ ネル ギ ーEに
状 態 を 簡単 にaで,核 e,ス
種NZを
合 核 の状 態 は そ の
よ って 指 定 され る.こ の
α で 記 す こ とに す る.複 合 核aは
ピ ン ・パ リテ ィjπ を もっ た粒 子xを
放 出 して 複 合 核bに
の 崩 壊 確 率 は 透過 係 数 と準 位 密 度 に よ り((7.112)参
エ ネル ギ ー
な る とす る.こ
照).
(7.139) で 与 え られ る.γ 崩壊 の 場 合 に は
(7.140) で 与 え られ る.lは
放 射 線 の 多 重 度 で,Clは
そ れ に よ っ て 決 ま る定 数 で あ る.
粒 子 放 出 の 場 合 に は核 種 は 変 わ り,γ 崩 壊 で は 変 わ らな い こ と を注 意 し て お く. 時刻tに お い て 核が 状 態aに あ る確 率 をPa(t)と す る と,そ の増 加 す る割 合 は
(7.141) の マ ス ター 方 程 式 で 与 え られ る.右 辺 第1項 は 状 態bか 第2項
はaか
らの 遷 移 に よ る増 加 で,
らの 崩 壊 に よ る減 少 で あ る.
γ 崩 壊 や 角 運 動 量 を 考 え に 入れ る と,計 算 は複 雑 に な り,Monte
Carlo法
な
ど も用 い られ る.特 に重 イ オ ン反応 で は,作 られ た複 合核 のエ ネルギ ー も角 運動 量 も大 きい.複
合核 は まず 中 性 子 を何 個 か 出 して エ ネル ギ ー の 放 出 を行 う.中
性 子 はl=0で
出 る の が 大 部 分 で あ る の で,残 留 核 の 角 運 動 量 は あ ま り減 っ て
い な い.次
に γ 線 を出 し て,角 運 動 量 の 放 出 を行 う.初 め はE1が
ラ ス ト線*2ま で 降 りる と,そ
こか ら集 団 的 なE2の
主 だ が,イ
放 射 線 を出 し て イ ラス ト線
に沿 っ て 下 る.こ の と きの γ線 の エ ネ ル ギ ー ・ス ペ ク トル か ら回転 状 態 の 構 造 を知 る こ とが で きる.こ あ る.図7.7に ン の2次
の実 験 を初 め て 行 っ た の がMorinaga-Gugelot
はHI(40Ar,4n)反
応 に続 く γ− 崩 壊 の 様 子 をエ ネ ルギ ー と ス ピ
元 の 図 で 示 す[30].
*2 イ ラ ス ト(yrast)状
[29]で
態 は 与 え ら れ た ス ピ ン を もつ エ ネ ル ギ ー 最 低 の 状 態 .
図7.7
7.4.4
重 イオ ン反 応(40Ar,
4n)で
中性 子 放 出 後 の γ崩壊(複
合 核A∼160)[30].
直 接 過 程 の あ る と きの 複 合 核 反 応
今 まで は 直 接 過 程 が な い と仮 定 し た の で,透 過 行 列Tと 平 均 のS行 列 〈S〉 は対 角 型 で あ っ た.直 接 過 程 が あ る と これ らの 行 列 に は非 対 角 要 素 が 出 て くる が,Tは
エ ル ミー トで あ るか らユ ニ タ リー 変 換 に よ っ て対 角 化 す る こ とが で き
る[31, 26, 32].
(7.142) チ ル ダ(tilde)を つ け た の は対 角 化 さ れ た 表 示 を 示 す.こ の ユ ニ タ リー 変 換 は 〈S〉も 同 時 に 対 角 化 す る.
(7.143) ゆ ら ぎ の 断 面 積 に 比 例 す る量
を対 角 化 され た表 示 に 変 換
す る と,
(7.144) と な る.対
角 化 され た表 示 の ゆ ら ぎ の 断 面 積 は 直 接 過 程 の な い と きの もの で あ
る か ら,Γ λρλ≫1のHauser-Feshbachの
公 式(7.122)
(7.145)
を(7.144)に
代 入 す る と,
(7.146) を 得 る.こ
こ でtr(T)=tr(UTU†)=tr(T)を
使 っ た.上
同 じ 形 を し て い る が(Tac=δa,cTaa),表
の 結 果 は(7.145)と
示 が 異 な っ て お り,透 過 係 数 が 透 過 行
列 に な っ て い る.
7.5 複 合 核 の統 計 理 論:ラ ン ダ ム 行列 理 論
ゆ ら ぎ の 断 面 積 を現 象 論 的 に 準 位 統 計 の 効 果 を入 れ て 計 算 し よ う とい う試 み はMoldauerを づ き,HQQの
は じめ 多 くの 人 々に よ り行 わ れ た が[26],ハ
ミル トニ ア ン に 基
行 列 要 素 は ラ ン ダ ム変 数 で あ る と仮 定 し,統 一 的 に計 算 を行 った
の はWeidenmullerの
グ ル ー プ[15]で あ った.断 面 積 のエ ネ ルギ ー平 均 を ア ン
サ ンブ ル 平 均 で 置 き換 え て計 算 をす る根 拠 は エ ル ゴ ー ド(ergodic)性 に広 い 範 囲 で の エ ネ ル ギ ー(あ
るい は ほか の 変 数)で
均 に 等 しい こ とは 証 明 され て い る[20].彼
で,無
限
の 平 均 は ア ンサ ン ブ ル 平
らは 母 関 数 と超 対 称 の 方 法 を使 って,
ゆ ら ぎの 断 面 積 の ア ン サ ンブ ル 平 均 を準 位 の 数 が 無 限 大 の 極 限で 正確 な計 算 を 行 っ た.こ
れ に よ り複 合 核 の 問 題 は 解 決 した と い え る.数 学 的 に 複 雑 で,長 い
説 明 を要 す るの で,こ
こ で は 概 略 を説 明 す る に止 め,途
中 の計 算 は 原論 文 を参
照 され た い. わ れ われ の 出発 点 は ハ ミル トニ ア ン(6.80), (6.82),(6.85)で あ る.
(7.147) (7.148) (7.149) 最 後 の 式 のsμν は エ ネ ル ギ ー の ず れ で,(6.85)で る.S行
列 の 式 の な か で,ラ
はΔ μνと書 か れ た もの で あ
ン ダ ム な 変 数 はエ ネ ル ギ ー分 母 に 現 れ る行 列 要 素
(HQQ)μν で あ る.μν は あ らか じめ設 定 され た 基 底 で,(HQQ)μν ム 分 布 を して い る と す る.こ れ に 反 してγμaやsμν はHPQを
の値 が ラ ン ダ 含 み,μνaを 決
め れ ば 原 理 的 に計 算 で きる は ず の もの で あ る か ら ラ ン ダ ム 変 数 で は な い.Sab の 構 造 は 準 位 密 度 の 場 合 と同 じで,ア
ンサ ン ブ ル 平 均 も前 と同 じ分 布 関数 で 計
算 で きる.Sを
計 算 す るた め の 母 関 数 は 前 と 同 じ よ うに 計 算 され
(7.150) で 与 え ら れ る.便 宜 上,有 効 ラ グ ラ ンジ ア ン と呼 ぶ 関 数 は
(7.151) で 定 義 され て い る.σ
に つ い て の 積 分 は 前 と 同 じ に 鞍 点 法 に よ る.P空
結 合 項 と 源 の 項Jを0と
お い てLeffの
が 得 ら れ,解
同 じ く
も(7.96)と
停 留 値 を と る と,(7.95)と
間 との
同じ方程式
(7.152) と な る.変
数 σは
(7.153) と書 け る.指 数 部Leffを
鞍 点 σ0Dの 周 りに δσ の2次
まで 展 開す る と
(7.154) を得 る.δ σ に つ い て の 積 分 は実 行 で きて,母
関数は
(7.155) と な る.式(7.147)を
使 っ て ア ン サ ン ブ ル 平 均 を し たS行
列 は
(7.156) と な る.こ れ か ら透 過 行 列 は
(7.157) と 求 め ら れ る.
前 に述 べ た よ うに ゆ ら ぎの 断 面 積 を計 算 す るに はS*Sを
求 め な けれ ば な らな
い.そ の た め に母 関 数 に 含 まれ る超 ベ ク トル Ψ の積 分 の次 元 を2倍 に す る.す なわ ち
(7.158) で あ る.こ
の 各 成 分 を 指 標 α=1,…,8で
対 応 し α=5,…,8は る 指 標 をpと
反 可 換 数 に 対 応 す る.ま
し,p=1とp=2と
そ れ ぞ れE(1)とE(2)と で,p=2に の で,虚
指 定 す る.α=1,…,4は たS行
列 のSとS*と
を そ れ ぞ れ に 対 応 さ せ,そ し て お く.p=1に
はs(2)X(2)で
を区別す
のエ ネルギー を
対 応 す る ベ ク トル 成 分 はs(1)X(1)
あ る.p=1とp=2と
数 部 の 符 号 が 反 対 で あ る.こ
可 換数に
で は 複 素 共 役 に な って い る
れ を 記 述 す る た め,次
の 計 量(metric)
(7.159) を 導 入 す る.源 の項 と し て は 前 と同 じで,次 元 が2倍
の
(7.160) を 使 う.平
均 と差 の エ ネ ルギ ー
(7.161) Q空
間 の ハ ミル ト ニ ア ンH={δ
αβHQQμν}とP-Q空
間との結合項
(7.162) を使 っ て エ ネ ル ギ ー 分 母 は
(7.163) と表 せ る.母
関数は
(7.164)
で 与 え ら れ る.こ
こで
(7.165) S行
列 に 現 れ るD-1な
ら び にD-1D*-1は
次 の 式 で 求 め ら れ る.
(7.166)
(7.167) 母 関 数 は 前 と 同 じ よ う に ア ンサ ン ブ ル 平 均 を し て,次 に ψ に つ い て の 積 分 は Hubbard-Stratonovitch変
換 に よ り σ積 分 で 表 す が,こ れ は 鞍 点 法 に よ り計 算
を す る.停 留 値 を 決 め る 方 程 式 は
(7.168) で,Sの
場 合 と 同 じ よ うに見 え る が,ψ
の次 元 も2倍 の8×8と
の 次 元 が2倍
になったのに対応 して σ
な っ て い る.し か し対 角 形 の 解 は 前 と 同 じ く(7.152)
(7.169) の 形 と な る.し
か し 一 般 解 を 求 め る こ と は,は
(7.168)はp=1,2の
二 つ の 成 分 が あ る た め,こ
る か に 複 雑 で あ る.鞍
点方程式
の 二 つ を 混 ぜ る よ う な 変 換(回
転)に
対 し て 不 変 で あ る こ と を 示 す こ とが で き る.た
と7に
つ い て の 回転
と え ば α=1と3,α=5
(7.170) に よ り σ を
に 変 換 して も方 程 式(7.168)を
満
た す こ と は 明 らか で あ る.す な わ ち鞍 点 は 単 な る点 で は な く,β を変 化 させ て 得 られ る多 様 体 で あ る.し たが って 鞍 点 多 様 体 に つ き積 分 を しな けれ ば な らな い.さ
ら に鞍 点 多様 体 の 鞍 点 か ら峠 道 と 直 角 の 方 向へ の積 分が あ る ので ,全 部
で32次
元 積 分 に な るが,次
に示 す よ うな3次
元 を残 して 解 析 的 に行 う こ とが
で き る[32].
(7.171) こ こ に得 られ た 結 果 はN→
∞ の 極 限で 正 確 で あ る.ま た 直接 相 互作 用 の 影 響
も取 り入れ て あ る.も し これ を無 視 す れ ば,TやSは
チ ャネ ル に つ き対 角 型 と
な る.こ の 場 合 で も複 雑 で あ るが,数 値 計 算 も行 われ て い る[33].(tr(T)+1)-1 に つ い て 展 開 し,2次
の 項 まで 書 くと
(7.172) と な る.再
び 直 接 相 互 作 用 の な い 場 合 を 考 え る と と な り,tr(T)≫1の
お く と(1+δab)を
と き の 主 要 項 す な わ ち 右 辺 の 第1項
除 い てHauser-Feshbachの
は ε=0と
結 果 と一 致 す る.こ れ は(7.122)に
示 し た も の と 同 じ で あ る.一
般 に 弾 性 散 乱 の ゆ ら ぎ の 断 面 積 をHauser-Feshbach
の 理 論 値 で 割 っ た も の を 増 強 因 子(enhancement と な る.(7.171)に 明 で き る[34].こ る こ と は(7.171)の
お い てtr(T)≪1の れ は(7.120)に
factor)と
呼 び,こ
場 合 に は 増 強 因 子 が3に
対 応 す る.一
な る こ と も証
般 に 増 強 因 子 が2と3の
数 値 計 算 か ら わ か っ て い る.増
の 場 合 は2
間にあ
強 因子 を 実験 か ら求 め る こ と
は弾 性 散 乱 の 断 面 積 の 大 部 分 を 占 め る 平均 ポ テ ン シ ャル か らの 寄 与 か らゆ らぎ の 部 分 を 分 離 し な くて は な ら な い の で 難 し く,偏 は 見 あ た ら な い.図7.8に Feshbachの
ゆ ら ぎ の 微 分 断 面 積 と カ ー ブaで
理 論 値 と の 比 較 を 示 す.カ
も の で あ る が,角
極 ビ ー ム を使 っ た もの 以 外 に
ー ブbは
示 さ れ たHauser-
増 強 因 子 を2.09と
した と きの
分 布 は よ く合 っ て い る[35].
た くさん の複 合 核 状 態が 励 起 され て平 衡 に な った 中間状 態 の寿 命 は公 式(6.219) に(7.122)を
代 入 す れ ば よい.ε につ い て の積 分 に現 れ る極 は
で あ るか ら
の 因子 が 得 ら れ る の で,寿 命 は
(7.173) と な る.
図7.8
30Si(→p,p)30Siか らの 陽子 の弾 性 散 乱 の ゆ らぎ の 微 分 断 面 積[35] 陽 子 エ ネ ルギ ー は 約10MeV.
7.6
Ericsonの
ゆ ら ぎ
重 イオ ンの 弾 性 散 乱 で は吸 収 が 強 い の で,そ
の 角 分 布 は 見 事 な 回 折 模 様 を示
す こ と は よ く知 られ て い る.こ れ は入 射 粒 子 が 標 的 核 に よ り吸 収 され る た め, 入 射 粒 子 の波 が 干 渉 し て お こ る.Ericson
[36, 37]は 複 合 核 の よ うな非 常 に複 雑
で 不 規 則 な 運 動 を して い る系 で も 回折 現 象 が 起 こ るの で は な い か と考 えた.エ ネル ギ ーが 十 分 に 高 く,複 合 核 の 共 鳴 状 態 の 幅Γ が 準 位 間 隔Dに い 場 合 を 考 え る.す
くらべ て大 き
る と個 々の 共 鳴 状 態 は見 え な い が,励 起 関 数 に は 非 常 に不
規 則 な 凸 凹 が 現 れ る.こ れ は複 合 核 の い ろ い ろ な 部 分 か ら くる 波 が 干 渉 して で き る 回折 像 と考 え る.複 合 核 は不 規 則 な運 動 を して い る の で,回 折 像 も不 規 則 で あ る.こ の 不 規 則 な振 る 舞 い の な か の 規則 性 を 示 す 量が 相 関 関数 で,Ericson は い くつ か の 相 関 関 数 を考 え た.そ の 中で 一 番 重 要 な の は エ ネ ル ギ ー に関 す る 自己 相 関 関 数(autocorrelation
function)で,反
応断面積 に よ り
(7.174) で 表 され る.す な わ ち反 応 断面 積 をエ ネル ギ ー εだ け ず らせ た もの の ゆ ら ぎ を εの 関 数 と し て 表 し た もの で あ る.こ の 自己 相 関 関 数 は εと と もに 減 少 し,そ の 半 減 す るエ ネル ギ ー を相 関 エ ネル ギ ーΓcorrと 呼 ん で い る.図7.9に
その様
子 が 示 して あ る.エ
ネル ギ ー の 自己 相 関 関数 の ほ か に 角度 相 関 関 数,す
なわ ち
角 度 をず らせ た 断 面 積 の積 の 平均 の ゆ ら ぎ,そ の 他 い ろ い ろ あ るが,こ
こで は
エ ネル ギ ー の 自己 相 関 関 数 を以 下 に議 論 す る こ と にす る.
図7.9
37Cl(p,α0)反
実 線 は 自 己 相 関 関 数 で,点
応 のEricsonの
線 はLorentz曲
ゆ ら ぎ[38]
線 で,Γ=13keVと
し た.
エ ネ ル ギ ー の 自己 相 関 関 数 をS行 Stephens
[39]で,彼
列 の 相 関 関 数 に 帰 着 させ た の はBrink-
ら に従 っ て三 つ の 仮 定 を置 くと,前 節 の 結 果 か ら直 ち に 求
め られ る こ と を示 す.断 面 積 をS行
列 を使 っ て
(7.175) と 書 く. (ⅰ) AabはClebsch-Gordan係 存 性 を も つ が,こ (7.174)の
数 や 球 面 調 和 関 数 を 含 み,弱
い エ ネ ル ギ ー依
れ は 無 視 す る こ と に す る.
断 面 積 の 積 を 計 算 す る と,
(7.176) とな るが,こ
こで 右 辺 に現 れ る 四 つ のS行
列 要 素 を そ れぞ れS1S*2S3S*4と
書く
こ とに す る. (ⅱ) S行 列 の 行 列 要 素 は 平均 が0のGauss分
布 を し て い る.す
ると
(7.177) が 成 り立 つ. (ⅲ) S行 列 の 二 つ の 行 列 要 素 の 積 の平 均 は
(7.178) (7.179) を 満 た す.た ま る.す
だ し 近 似Γ λ=Γ
を 用 い た.(7.178)は(7.118),
(7.121)に
よ り求
る と
(7.180) と な り,相
関 関 数 が 求 ま っ た.
(7.181)
で,Γ は(6.127b)か Ericsonの
ら 求 め られ(7.173)と
ゆ ら ぎ の 計 算 はS行
一 致 す る.h/Γ
は 複 合 核 の 寿 命 で あ る.
列 要 素 が 正 規(Gauss)分
布 を す る と い う仮
定 に 基 づ い て い る が,こ
れ を 直 接 支 持 す る 実 験 事 実 は な い.し
の 極 限 で 関 係(7.177)が
成 り立 つ こ と は[40]に
た すS行
列 は 一 般 に(7.179)を
程 度 よ く成 り 立 つ か は3点 で 難 し い.し
果律 を 満
満 た す こ と が 証 明 さ れ て い る.(7.177)が
関 数 と4点
か しDavisとBoose
か しtr(T)≫1
よ っ て 証 明 さ れ た.因
どの
関 数 を正 確 に評 価 しな け れ ば な ら な い の
[41]は
こ の 計 算 を 行 い,tr(T)∼10-20で
も 正 規 分 布 か ら の ず れ が 相 当 あ る こ とが わ か っ た.ま
た 自 己 相 関 関 数 も計 算 で
き る こ とが 示 さ れ た.
7.7 カ オ ス と 複 合 核
複 合 核 に つ い て は6.3節 でFeshbachの
射 影 演 算 子 に よ る方 法 で,Q空
間の
有 効 ハ ミル トニ ア ン を対 角 化 した 殻 模 型 の状 態 と して 定 義 され た.複 合 核 の 幅 はP空
間へ の 崩 壊 に対 応 す る脱 出 幅 で あ る.な
お6.2節
のR行
列 理 論 で もほ
ぼ 同 じ複 合 核 が 定 義 され て い る.低 エ ネ ルギ ー で は 複 合 核 の 幅 は そ の 間 隔 に 比 べ て 小 さ く個 々の 準 位 が 観 測 され そ の統 計 的 性 質 が 明 らか に な り,準 位 間 隔 分 布 関 数 や スペ ク トル の 剛 性Δ3はGOEの
予 言 に 合 う こ とが7.2節
で 示 され た.
エ ネル ギ ーが 高 くな る と準 位 の 幅 が そ の 間隔 よ り大 き くな り,核 反 応 で は 多 くの 複 合 核 が 同 時 に 集 団 的 に励 起 され 非 常 に 複 雑 な混 沌 と し た状 態 に な る.こ の よ うな状 態 に は 統 計 理 論 が 適 用 され 反 応 断 面 積 が 計 算 され た.ま た こ の 混 沌 の 中の 秩 序 と し てEricsonの Breit Wigner型
ゆ ら ぎ,エ
ネ ル ギ ー の 自 己 相 関 関 数 が 見 出 され,
で あ る こ とが 最 後 の 節 で 示 され た.そ し て多 くの複 合核 の 励 起
され た 集 団 励 起 状 態 の 寿 命 は個 々 の複 合 核 の 寿命 の 平均 で あ る こ とが わか っ た. こ れ らの 現 象 を 少 し違 っ た 角 度 か ら眺 め る のが カ オ スで,こ れ はN. Bohrの か ら言 わ れ て きたが,こ
昔
れ が は っ き り して きた の は比 較 的 最 近 の こ とで あ る.
まず 古 典 カ オ ス か ら議 論 を 始 め よ う.古 典 力 学 で は 初 期 条 件 が 与 え られ れ ば そ れ か らの 系 の挙 動 は 完 全 に 決 定 され る こ とが 知 られ て い る.し か し これ は 可 積 分 系*3で は 問題 な い が,一
方 初 期 条 件 を ご くわ ず か 変 え た だ けで,そ
の振 る
舞 いが 敏 感 に変 わ り,時 間 と と もに そ の 軌 道 の差 が 指 数 関 数 的 に増 大 す る系 の *3 エ ネルギ ーに 加 えて 運 動 の恒 量 が 存在 す る力学 系
,詳 し くは[42].
存 在 が 知 られ て い る.三 体 問題 は そ の 一 例 で あ る. 可 積 分 系 の例 と し て,図7.10(a)に
示 す よ うな 円形 の 玉 突 き台 の 上 で,質 点
の 運 動 を 考 え る.こ の 系 は 自 由度2の
系 で,エ
ネ ル ギ ー と角 運 動 量 の 二 つ の運
動 の 恒 量 が あ る の で,可 積 分 系 で あ る.次 に カオ ス 系 の例 と して,図(b)に す よ うな,正
方 形 の 中 央 か ら 円 を くり抜 い たSinaiの
の 系 で は 質 点 は 非 常 に複 雑 な 運 動 を し,ご
示
玉 突 きを取 り上 げ る.こ
くわず か の 初 期 条 件 の 違 い が 非 常 に
大 きな 軌 道 の 違 い を 引 き起 こ す.Bohigasら[43]はSinaiの
玉 突 き台 を 同 じ形
の 膜 の 振 動 と考 え,量 子 力 学 の 固有 値 問題
(7.182) を 解 い た.た だ し 境 界 線 上 で は振 幅0(ψn=0)のDirichletの
境 界 条 件 を採 用
す る.す る とエ ネ ル ギ ー・ス ペ ク トルk2nが 求 め られ る.準 位 の 縮 退 の 煩 雑 を 避 け る た め 境 界 線 は 図 に 点線 で 示 した1/8の
部 分 に 変 え た.こ の エ ネ ル ギ ー ・ス
ペ ク トル の 統 計 的 性 質 を調 べ るた め,準 位 間隔 分 布 関数 とス ペ ク トル の 剛性Δ3 を 計 算 し た と こ ろ,図7.11に た.Sinaiの
示 す よ うにGOEの
玉 突 き は 自 由度2の
系 の スペ ク トル はGOEの
図7.11
Sinaiの
古 典 系 の カ オ スで あ るが,そ
の対 応 す る 量 子
そ れ と一 致 す る.こ の結 果 か らBohigasら
(a) 図7.10
予 測 と一 致 す る こ とが わ か っ
は次の よ
(b)
円 形 の 玉 突 き台(a)とSinaiの
玉 突 き(b)
玉 突 きの 場 合 に 計 算 され た 準 位 間隔 分 布 関 数 とス ペ ク トル の 剛 性Δ3[43]
うな推 測 を提 起 した."時 系*4で あれ ばGOEの
間反 転不 変 の系 の スペ ク トル で,そ の 古 典 の対 応 がK
予 測 と 同 じ ゆ ら ぎの 性 質 を 示 す."こ の 推 測 はBohigasの
推 測 と普 通 呼 ば れ,ま
だ完 全 に は 証 明 され て い な い が,正
い る.こ れ に よ りGOEの
しい もの と思 われ て
予 測 と同 じゆ ら ぎ の性 質 を示 す 量 子 力 学 系 を量 子 カ
オ ス と定 義 す る こ とは も っ と もで あ る. 一 方,現
実 的 な 殻 模 型 の 数値 計 算 に よ っ て カ オ ス を 見 出 そ う とい う試 みが 行
わ れ て い るが,そ
の 一 例 と して6.4.1項 で触 れ たZelevinskyら[44]の
介 す る.彼 ら は28Siに 対 してsd殻 ぐ らい の行 列 の 対 角 化 をJπ=0+か
にWildenthal相 ら10+ま
互 作 用 を 採 用 し,103次
で 行 った.得
スペ ク トル か ら計 算 され た 最 近 接 準 位 間 隔 分 布 やΔ3統 体 一 致 して い る.準 位 密 度 は 半 円 とGauss分
計算 を紹 元
られ た エ ネル ギ ー ・
計 はGOEの
そ れ と大
布 の 中 間 ぐ ら い の分 布 を示 す.
次 に励 起 エ ネ ル ギ ー に よる ス ペ ク トル の 性 質 の 遷 移 を見 る た め に 情 報 エ ン ト ロピー
(7.183) を 計 算 した.こ
こ で,Wα μ は 状 態 α に含 まれ る 非 摂 動 状 態 μ の確 率 で(6.148)
の 展 開係 数Cα μの2乗
で あ る.行 列 要 素 の 統 計 がGOEで
あると
(7.184) と な る.図7.12に0+の
場 合 を 示 す が,中
次 に 熱 力 学 的 エ ン ト ロ ピ ー を 考 え る.こ
央 部 で はGOEに れ は 既 出 の(7.28)と
近 い こ と が わ か る. 同 じで
(7.185) で あ る.Ω(E)は とる が,エ
エ ネル ギ ー 幅 δEに 含 まれ る 準 位 の 数 で,δEは
適 当な値 を
ン トロ ピ ー の付 加 定 数 に対 応 す る.こ の エ ン トロ ピ ー か ら温 度 を計
算 す る こ とが で きる.
(7.186) 状 態 αの独 立粒子 状態ljmを 占拠 する核子数(陽 子 と中性子 の平均)確 率
(7.187) *4 最 も カ オ ス 的 な 古 典 系
.厳
密 な 定 義 に つ い て は[42]を
見 よ.
図7.12
0+の
固有 状 態 の 情 報 エ ン トロ ピー 強 度eSα
準 位 番 号 の は 右 図,〈GOE〉
図7.13
28Siの 独 立 粒 子 状 態ljmの プ ロ ッ トし た もの
は(7.184)に
占拠 確 率 を 固 有 状態0+,2+,9+に
点 の 集 ま りは 下 か ら順 にs1/2,d3/2,d5/2に
を 計 算 し た も の を 図7.13に
をエ ネ ルギ ーで プ ロ ッ トした の が 左,
よ る値[44].
示 す.こ
対 し準 位 番 号 で
対 応 し,横 軸 は 準 位 番 号 で あ る[44].
れ はFermi分
布
(7.188) と よ く合 っ て い る こ と が わ か る.こ で あ る.図 s1/2で
を 見 る と,d5/2のnljは
は ほ と ん ど 変 わ ら な い.こ
こ でe'lj-μ
は 一 体 状 態ljの
有 効 エ ネ ルギ ー
エ ネ ル ギ ー と 共 に 減 少 し,d3/2で れ は(7.188)に
お い て,e'lj-μ
は 増 大,
が 負,正,0
で 温 度Tαljは 励 起 エ ネ ル ギ ー と 共 に 増 大 す る こ と に よ る. 以 上 の 例 で 殻 模 型 で 励 起 エ ネ ル ギ ー が あ る 程 度 以 上 高 く な れ ば,そ 複 合 核 で あ る こ とが わ か っ た.す 互 作 用 に よ り混 ざ り,混
な わ ち,非
の状態 は
常 に複 雑 に独 立 粒 子 状 態 が 残 留 相
沌 と し た カ オ ス に な っ て い る.そ
してその各独 立粒子
状 態 の位 相 は 乱 雑 で,互
い に干 渉 し な い(こ の 定 量 的 評価 は まだ な され て い な
い よ うで あ る).し か しそ れ らが 混 ざ った 固 有 状 態 の統 計 的 性 質 は 同 じ よ うで, 単 一 粒 子 占 拠 確 率 は 温 度 で 指 定 され るFermi分
布 に よ く合 う.
散 乱 と カオ ス の 関 係 に つ い て は,BlumelとSmilansky ら はSinaiの
[45]の 仕 事 が あ る.彼
玉 突 きの散 乱 の 場 合 に 対 応 す る古 典 模 型 と し て,到 達 距 離 が 有 限
な 同 じポ テ ン シ ャル を一 直 線 上 に 等 間 隔 で 並 べ 粒 子 を散 乱 させ る模 型 を考 え た. この 場 合 初 期 条 件 に よ り,簡 単 な 一 体 ポ テ ンシ ャル に よ る散 乱 か ら,多 テ ン シ ャ ル に よ る複 雑 な 多 重 散 乱 まで,い
ろい ろの 散 乱 が 起 こ る.カ オ ス も起
こ る系 で あ る.こ の 問 題 を古 典 的 に解 き,S行 を再 現 した.彼
ら は これ でBohigasの
くの ポ
列 を計 算 し,Ericsonの
ゆ らぎ
推 測が 散 乱 の 問 題 に 拡 張 で きた とい って
い るが,詳 細 は[45, 46]を 参 照 され た い. い ま ま で,原
子 核 の ハ ミル トニ ア ン は 空 間 回 転 と 時 間 反 転 に 不 変 で パ リ
テ ィが 保 存 され る と し て,GOEを はGUE
(Gaussian
考 え て きた.こ
unitary ensemble), GSE
が あ るが,こ れ らはGOEと
の ほ か の 対 称 性 に対 し て
(Gaussian
異 な る 準 位 間 隔 分 布,Δ3を
symplectic
ensemble)
与 え る こ とが 知 られ て
い る.一 方,核 子 間相 互作 用 は 電磁 相 互 作 用 や 弱 い 相 互作 用 が 含 まれ,そ の た め 荷 電 独 立 の破 れ や 弱 いパ リテ ィ非 保 存,時 間反 転 不 変 の破 れ などが 起 こって い る. 荷 電 独 立 に対 して は6.4.3項 で アナ ログ 状 態 の議 論 を したが,熱 外(epithermal) の偏 極 中性 子 の散 乱 実 験で パ リテ ィ非 保 存 が 拡 大 され て 観 測 され る こ と は,核 反応 の 統 計 理 論 に よ り証 明 され た[20, 47].
文
献
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8 前 平 衡 過 程
直接 過程 と平衡 過 程 の 中 間 に あ るの が 非平 衡 過 程 で あ る.こ れ は比 較 的新 し く 発 展 し た分 野 で,核 子 や 軽 イオ ン と重 イ オ ンの場 合 で は現 象 も少 し異 な り,し た が っ て取 扱 い も同 じで な い.軽 compound)過
イオ ン の場 合 に は前 平 衡(pre-equilibrium,
pre-
程 と呼 ば れ,入 射 粒 子 の エ ネ ルギ ー損 失,反 応 の持 続 時 間,衝 突
回 数 な どが 両過 程 の 中 間 で あ る.ま た角 分 布 は前 方 ピ ー ク を示 す.入 射粒 子(核 子)が 核 内 核 子 と何 回 か 衝 突 し て起 こ る もの で,Feshbachら[1]に 統 計 過程(multistep
よ り多段 階
statistical process)と 呼 ば れ て い る.残 留 核 の 励 起 エ ネル
ギ ーが 高 い の で 多 くの準 位が 関与 し,統 計 的 に取 り扱 う.Feshbachら の過 程 を二 分 し て,Q空 MSC)過
程,P空
呼 ん だ.軽
間 を経 由す るの を多 段 階 複 合 核(multistep
間 を経 由す るの を多 段 階 直接(multistep
本 章 の8.2節
compound,
direct,MSD)過
イオ ン反 応 とい って も実 際 に は簡 単 の た め 第7章
合 を例 に と る.重
は さら に こ
程と
と 同 じ く核子 の 場
イオ ン の 非 平 衡 過 程 は 通 常 は 前 平 衡 過 程 と は 呼 ば れ な い が,
と8.7節 で ふ れ る.
こ れ らの 取 扱 い の 上 で 重 要 な役 割 を果 た す の が 複 合 核 反 応 の 場 合 と同 じ く状 態密 度 で,8.1節
にお い て エ キ シ トン数 が 指 定 され た状 態 密 度 が 計 算 され る.非
平 衡 過 程 を 取 り扱 う理 論 の 枠 組 み とし て は7.4.3項
で 出 て きた マ ス ター 方程 式
が あ る.こ れ は統 計 的輸 送 方 程 式 で,状 態 の 時 間 的変 化 が 示 され る.8.2節 まず 重 イ オ ン に 適 用 さ れ るが,そ に マ ス タ ー方 程 式 が8.2.2項 が 導 か れ,残
で
の前 に 巨視 的 古 典 論 が 簡 単 に述 べ られ る.次
で 導 入 され るが,そ れ か らFokker-Planck方
程式
留 核 の 荷 電 分 布 に応 用 され る.
軽 イオ ン につ い て は8.3.1項 でエ キ シ トン模 型 に マ ス ター方 程 式が,ま ずMSC に対 して,8.3.2項 してDWBAに
に お い てMSDに
対 し て適 用 され る.8.4節
基 づ く微 視 的理 論 が 説 明 され る.次 の8.5節
射 粒 子 に 注 目 して そ の 挙 動 を追 っ て い たが,今
で はMSDに で は,今
対
まで は入
度は残留核 の励起状 態につい て
詳 し く線 形 応 答 理 論 に よ り調 べ る.RPAに
つ いて も述 べ るが,一 段 階 過 程 に限
られ て い る の で,非 平 衡 過 程 とは 言 い 難 い.最 後 の2節 は 再 び 重 イオ ン に戻 り, 一 体 近 似 に 基 づ く微 視 的 理 論TDHFと そ の 古 典 近 似 を説 明 して 終 わ り とす る.
8.1 部 分 準 位 密 度
8.1.1 独 立 粒 子 模 型 7.1節 に お け る 状 態 密 度 は独 立 粒 子 模 型 の も ので,7.3節
の はGOEに
対応す
る もの で あ っ た.前 者 は 実 験 デ ー タの 解 析 に広 く使 わ れ て い るが,残
留相互作
用 が 入 っ て い な い.後 者 は 相 互 作 用 と し て ハ ミル トニ ア ンの 行 列 要 素 がGOE で あ る と仮 定 し,独 立 粒 子 スペ ク トル は す べ て 縮 退 して い る と して い る の で, 現 実 的 で な い.一 方 これ か ら の主 題 で あ る前 平 衡 過 程 で は エ キ シ ト ン数 が 指 定 され た 部 分 準 位 密 度(partial
level density)が 必 要 に な る.準 位 密 度 に 残 留 相
互 作 用 を 考 慮 す るに は エ キ シ トン数(8.3.1項
参 照)を 指 定 す る と都 合 が よ い の
で,こ の 節 で は まず 独 立 粒 子 模 型 に よ る部 分 状 態 密 度 の話 か らは じめ る. エ キ シ トン 数mす
な わ ち励 起 され た粒 子 の 数pと
れ た 状 態 密 度 はEricson
[2],Williams
空 孔 の 数hの
和が 指定 さ
[3]ら に よ って 求 め られ た[4]. Ericson
の 公 式 と呼 ば れ て い るの は
(8.1) で,等 間 隔 な単 一粒 子 ス ペ ク トル を 仮 定 し,そ の状 態 密 度 をgと 起 エ ネ ル ギ ー に 制 限 を設 け る こ とな し に 求 め られ た.証
して,そ
の励
明 は粒 子 の 部 分 状 態 密
度 か ら始 め る.漸 化 式
(8.2) が 成 り立 つ.p-1個
の 粒 子 の 状 態 と1粒
状 態 を 組 み 立 て る と,同 p=1の
ω(1,0,E)=gか
じ も の がp個
子 の 状 態 を 組 み 合 わ せp個 で き る の でpで
の粒子 の
割 っ て お く.(8.2)を
ら 順 次 計 算 す る と,
(8.3) が 得 られ る.空 孔 の 場 合 も同 様 に求 め,
(8.4) か ら(8.1)が
求 ま る.Ericsonの
い な い こ と は 漸 化 式(8.2)の 次 にOblozinsky ル の 下 限(最 Pauliの
公 式(8.1)は
厳 密 に はPauliの
原 理 を満 た して
使 用 か ら 明 ら か で あ る.
[5]は 等 間 隔 の 独 立 粒 子 ス ペ ク トル で あ る が,空
低 準 位)と
孔 スペ ク ト
結 合 状 態 に あ る 粒 子 ス ペ ク トル の 上 限 を 設 け,さ
原 理 を 取 り 入 れ た 状 態 密 度 の 公 式 をDarwin-Fowlerの
そ の 結 果 はm=p+hと
らに
方 法 で 求 め た.
し
(8.5) で 与 え られ て い る.準
位 間 隔d=1/gを
ら0,1,2,…F/d-1と Fermi準
単 位 と し て 空 孔 の 準 位 はFermi準
等 間 隔 に 励 起 エ ネ ル ギ ー の 上 限Fま
位 か ら1,2,…B/dと
い る と す る.gはFermi準
位か
で 分 布 し,粒
等 間 隔 に 励 起 エ ネ ル ギ ー の 上 限Bま
子 は
で 分 布 して
位 に お け る 独 立 粒 子 状 態 密 度 で,
(8.6) (8.7) はPauli原 で は1の
理 に よ る 補 正 項 を 表 す.Θ(E)は
階 段 関 数 で,E<0で
Ericsonの
E〓0
値 を と る.
粒 子 と 空 孔 の エ ネ ル ギ ー の 上 限 を 除 く と,す iとjと
は0,
の 値 は0に
限 ら れ る か ら,(8.5)の
公 式(8.1)と
な る.ス
な わ ちB=F=∞
右 辺 はi=j=0の
と す る と, 項 の み と な り,
ピ ン ・パ リ テ ィが 指 定 さ れ た 部 分 準 位 密 度 は 次
の ス ピ ン分 布 関数
(8.8) を(8.5)に
掛 け る こ と に よ り近 似 的 に 求 め ら れ る.経
フ ・パ ラ メ タ ー(spin
cut-off parameter)は
独 立 粒 子 模 型 に よ るEricson, 指 定 し な か っ た が,一
験 的 な ス ピ ン ・カ ッ ト オ
Oblozinskyの
で 与 え ら れ る[6]. 公 式 はEとm以
体 の ス ペ ク ト ル が 与 え ら れ れ ばJπ
外 の量子 数は
を指 定 し て 正 確 に 計
算 で き る.そ
の た め の 漸 化 式 も知 ら れ て い る[7].計
を 順 に,与
算 機 を使 っ て エ キ シ トン 数
え ら れ た ス ピ ン ・パ リ テ ィの 部 分 準 位 密 度 を 計 算 す る こ と は 困 難 で
は な い. 励 起 エ ネ ル ギ ーEが Gauss型
与 え ら れ た と き,状
で よ く近 似 で き る[8].
態 密 度 は エ キ シ トン 数 の 関数 と し て
p=h=nと
し,一
番 簡 単 な(8.1)か
ら,
(8.9) を 得 る.右 辺 最 後 の 式 は 階 乗 にStirlingの 公 式 を使 い 近 似 した.状 態 密 度 が 最 大 に な るnの
値 は(8.9)の 右 辺 の 対 数 の 微 分 か ら
(8.10) と な る.こ
の エ キ シ トン 数 に お け る状 態 密 度 の対 数 の2次
微 分 は
とな
る の で,状 態 密 度 は
(8.11) と あ ら わ せ る.こ
の 式 は 温 度TのFermi分
数
と の 一 致 は 悪 く な い(文
(2-52)).ま 要 なE依
8.1.2
布 の 式 か ら求 め た 励 起 した 粒 子 の
た(8.11)をnで 存 性 も(7.25)と
積 分 す る と,す
献[9]の
べ て の 状 態 密 度 と な る が,そ
式 の主
同 じ よ う に 一 致 す る.
ランダム相互作用
次 に 残 留 相 互 作 用 を 入 れ る.こ れ を殻 模 型 に 基 づ き正 確 に計 算 す る こ とは エ キ シ トン数 が 大 き くな る と大 き な次 元 の行 列 の 対 角 化 の 計 算 が 必 要 で 難 し くな る し,ま た 正確 に 計 算 す る こ とは 無 意義 で あ る.Monte 節 で も触 れ た.こ ンJ,パ
Carlo計 算 の こ とは7.3
こで は 統 計 的 に取 り扱 う方 法 を 説 明 す る[10, 11].ま ず ス ピ
リテ ィπ は 保 存 され る か ら顕 に は 書 か な い こ とに す る .残 留 相 互 作 用
を ラ ン ダ ム で あ る と し て,GOEよ
りも現 実 的 な も の を使 う.GOEで
の 行 列 要素 が た だ 一 つ の2次 モ ー メ ン トで 決 ま るGauss分
は すべ て
布 を仮 定 す るが,全
空 間 を い くつ か の ク ラ ス に分 け,各
ク ラ ス 内,ク
2次 モ ー メ ン トに対 応 す るGauss分
布 を 仮 定 す る方 が よ り正 確 に相 互 作 用 を 記
述 で きる.ク
ラス 問 の行 列 要 素 は異 な った
ラ ス を 指 定 す る に は これ か ら 説 明 す るエ キ シ トン数 に 限 らず,そ
の 問 題 に 適 し た量 子 数 を使 うほ うが よい[12].こ
の ク ラス 分 け が 有 効 で あ る た
め に は 核 子-核 子 散 乱 の と き同 じ ク ラ ス に 留 ま る 確 率 が 他 の ク ラス に 移 る確 率 よ り大 き くな けれ ば な ら な い.こ の 点 に つ い て は 後 に議 論 す る. 原 子 核 の ハ ミル トニ ア ン に は次 の 形 を仮 定 す る.
(8.12) こ こでH0は
独 立 粒 子 模 型 の もの で,Vは
とす る の は よい 近 似 と考 え られ て い る.す
残 留 相 互 作 用 で あ る.こ れ を 二 体 力
数 は 変 化 が な い か,2だ
る と核 子-核 子 散 乱 で は エ キ シ ト ン
け違 って い るか で あ る.エ キ シ トン 数mに
よ ってQ空
間 を ク ラ ス 分 け す る.
(8.13) 次 にQm空
間の 基 底 を
(8.14) に よ り導 入 す る.μ はJπm以 0,±2の
外 の 量子 数 とす る.す る と残 留 相 互作 用 はΔm=
と き にか ぎ り0で な い.
残 留 相 互 作 用 の行 列 要 素 を統 計 的 に取 り扱 うた め の分 布 関数 は次 の よ うに す る[10].同
一 ク ラ ス 内で はGauss分
布 で,そ の 平 均 値 は0で,ク
ラ スに よ って
決 まる広 が りを もつ もの とす る.異 な った ク ラ ス の 間の 行 列 要 素 の分 布 もGauss 型 と し,そ の 平 均 値 は0で,広
が りの 大 き さ も ク ラス に よ っ て 決 まる.状 態 を
指 定 す る の にエ キ シ ト ン数mと 分 布 関数 は 次 の2次
そ の ほか の 量 子 数 μ を使 用 す る.行 列 要 素 の
モ ー メ ン トに よ り決 め られ る.
(8.15) こ の2次
モ ー メ ン トを計 算 す る に は まず 適 当 な範 囲(た
ル ギ ー)の
ク ラ スnのNn個
を 計 算 し,そ
の2乗
と して は 図8.1に
の 状 態 とNm個
の平 均 値 を使 い(8.15)か
示 す よ うに,(a)粒
空孔 散 乱 が あ り,Δm=2に
の ク ラ スmの
状 態 間で 行 列 要 素
ら求 め る.Δm=0の
子 粒 子 散 乱,(b)粒
対 し て は,(d)粒
と えば 一 定 範 囲 の エ ネ
行列 要素
子 空 孔 散 乱,(c)空
孔
子 に よ る粒 子 空孔 対 の創 成,(e)
空 孔 に よ る 粒 子 空 孔 対 の 創 成 の過 程 を 計 算 す れ ば よい. 部分準位 密度 は
(8.16)
(a) 図8.1
(c)
(b)
(d)
(e)
2次 モ ー メ ン トの 計 算 に必 要 な核 子-核 子 相 互 作 用 の 型
よ り計 算 され る.こ の 部 分 準 位 密 度 はm以
外 のJπ が 指 定 され て い るの で,
と あ らわ に書 くと,全 状 熊 密 度 は
(8.17) と な る.ア
ン サ ン ブ ル 平 均 し た部 分 準 位 密 度 の計 算 はGrassmann数
を使 っ た
超 対 称 理 論 に よ り前 に や っ た もの と 同 じ よ うに計 算 され る.そ の 詳 細 は省 くこ とに し,結 果 だ け を 書 く と,
(8.18) と な る.σmはHubbard-Stratonovitch変
数 の 鞍 点 の 値 で,連
立方程式
(8.19) を 満 た す.σ は残 留 相 互 作 用 に よ る独 立 粒 子 エ ネ ル ギ ー に対 す る 補 正 と考 え ら れ,複
素 数 でmとEに
ギ ー の ず れ で,低
依 存 す る.こ の σmの 実 数 部 は ク ラ ス の 状 態 の エ ネ ル
い エ ネル ギ ー で 負,高
れ て い る.虚 数 部 は ク ラスmの
い エ ネ ル ギ ーで は 正 とな る結 果が 得 ら
状 態 の ひ ろ が りを 与 え る もの で,負 の 値 を と る.
こ れ らの 様 子 は 図8.2に 見 る こ とが で きる.こ れ は208Pbに の で,m=2,
4の 実 数 部,虚 数 部 が エ ネル ギ ー の 関 数 と して 示 され て い る[13].
この や り方 で 計 算 した208Pbの 互 作 用 の な い 場 合,(b)は
部 分 状 態 密 度 を 図8.3に
互 作 用 の 影 響 で3p-3h,
ル ギ ーで 強 め られ るの が は っ き りと見 え る.[11]の ク ラ ス 間の2次
な って い るが,遷
示 す[13].
(a)は 相
相 互 作 用 の あ る場 合 で,エ キ シ トン数m=2,4,6,8
まで 入 れ た 計 算 を行 っ た.相
Δm=2の
対 し て計 算 した も
4p-4hの
準位 が低 いエ ネ
計 算 に よ る と,ク
ラス 内 と
モ ー メン トを 比べ る と,前 者 の 方 が 後 者 よ り大 き く
移 確 率 は 状 態 密 度 も関 与 す るの で,こ
の節 の冒頭で述べ た ク
ラ ス分 け の 有 効 性 につ い て は お の お の の 場 合 を調 べ な い と わ か ら な い.
図8.2
208Pbの
鞍点 値 σmのm=2,4の
実 数 部 と 虚数 部[13]
横 軸 は エ ネ ルギ ーE.
(b)
(a) 図8.3
208Pbのm=2,4,6,8に
対 す る部 分 状 態 密 度 の計 算値[13]
(a)は 独 立 粒 子 模 型 に よ る,(b)は
8.2
残 留 相 互 作 用 を 入れ た.
マ ス タ ー 方 程 式 とFokker-Planck方
程 式
衝 突 径 数 が 大 きい 重 イオ ン反 応 で は,互 い に表 面 を掠 る程 度 だ と,励 起 され る 自 由度 の低 い 直 接 過 程 に よる非 弾 性 散 乱 や 核 子 移行 反 応 な どが 起 こ る.衝 突 径 数 が 小 さ くな る に 従 って 接 触 時 間が 長 くな り,核 子 衝 突 や 核 子 移行 に よ る重 イ オ ン の 内部 励 起 が 起 こ る.生 成 重 イ オ ンが 入 射 重 イオ ン と それ ほ ど 違 っ て い な い が,十 分 大 き な エ ネ ル ギ ーが 相 対 運 動 か ら 内 部 運 動 に 転 換 し た と き深 非 弾 性 散 乱(deep
inelastic scattering)と 呼 ぶ.接 触 時 間が 極 め て 長 く複 合 核 を作
る よ うな 反 応 を完 全 融 合 反応 とい う[14, 15, 16].こ れ らの様 子 は 図8.4に 示 す.
図8.4
重 イオ ン 反 応 の 種 類 とそ の と き の 角 運動 量[16]
G. Cは か す り散 乱,DICは
深 非 弾 性散 乱,Sym.
Fissionは
対称核分
裂,E. R.は 完 全 融 合 反 応 で で き た複 合 核が 崩 壊 して 蒸 発 残 留 核が 残 る反 応 を 示 す.縦 軸 は 角 運 動 量 を 決 め た と きの 反 応 断 面 積.
8.2.1
巨 視 的 古 典 論
これ らの 重 イ オ ン 反 応 を最 も簡 単 に 説 明す る に は マ ク ロ な古 典 論 が 用 い られ る.重
イオ ン反 応 で は イオ ンの 質 量 が 大 き い の で,相 対 運 動 の波 長 は す ぐ に核
半 径 よ りは るか に小 さ くな り,古 典 論 が よい 近 似 に な る.二 つ の重 イオ ンの 相 対 運 動 の 動 径 座 標rに
つ い てNewton方
程 式 を 立 て る と,
(8.20) とな る.μ は 二 つ の 重 イ オ ンの 換 算 質 量,Lは
相 対 運 動 の 角 運 動 量 で,Uは
重
イオ ン 間 に働 く保 存 力 の ポ テ ン シ ャ ル で あ る.Ffricは 摩擦 力 で,相 対 運 動 エ ネ ル ギ ーが 内 部 励 起 に転 換 す る の を古 典 的 に マ ク ロ に 見 て 摩 擦 力 が 働 い て い る と す る.こ れ に は い ろ い ろ な 形が あ るが,普 通 は 動 径 方 向 の 速 度rに 比 例 す る動 径 摩 擦 力 で,そ の 一 例 は
(8.21) で 与 え られ る.ρ0は 重 イ オ ンの 平均 密 度,Vは
二 つ の 重 イオ ンが 重 な った 部 分
の体 積 で,κ は 摩 擦 係 数で あ る.方 程 式(8.20)を 解 くと重 イオ ン の運 動 は決 ま る.図8.5に
与 え られ た 衝 突 径 数 の も とで
示 す よ うに,摩 擦 係 数 が 小 さい 場 合 に
は エ ネ ル ギ ー損 失 は小 さ く,散 乱 とな る.摩 擦 係 数 が 大 きい 場 合 もエ ネ ルギ ー 損 失 は大 き くな るが,こ れ もま た散 乱 に な る.摩 擦 係 数 が 中 ぐ らい だ と,ポ テ ン シ ャ ル の 谷 に と らわ れ 完 全 融 合 反 応 とな る[17].相
対 運 動 を解 くに はrだ
けで
な く角 変 数 θ も考 え な け れ ば な ら な い.角 運 動 量 が 保 存 す る と き は簡 単 で あ る
図8.5
摩 擦 力 の 強 さ に よ り変 わ る重 イオ ン 反 応[17]
有 効 ポ テ ン シ ャルVeffを 座 標rで プ ロ ッ ト し,ま た 重 イ オ ン の運 動 エ ネ ル ギ ー をrの 関 数 と して,三 つ の 場 合 につ き示 した.
図8.6 232Th(40Ar
,K)反
Wilczynskiプ
応 でElab=388MeV,横
ロ ッ ト[18] 軸 は 散 乱 角,縦
軸 はK
の エ ネ ル ギ ー.
が,角
運 動 量 の散 逸 が あ る と き に は 角 運 動 に 関 す る 摩 擦 力 を考 え に 入 れ な け れ
ば な らな い.い ず れ に し ろ連 立 方 程 式 を解 く と相対 運 動 は 完 全 に 決 ま る.衝 突 径 数 を変 え て 計 算 を 繰 り返 せ ば,角 Kを
θの 関数 と して 重 イ オ ン の 運動 エ ネ ル ギ ー
決 め る こ とが で き る.
重 イオ ン実験 のデ ー タか ら散 乱 角 θ と粒 子 エ ネ ルギ ー の2変 数 をXY座 て 反 応 断 面 積 の 等 高線 を書 くと,図8.6に プ ロ ッ ト とい う[18].右 上 の θ=35°
標 とし
示 す よ うに な る.こ れ をWilczynski
ぐ らい の 山 はす れ すれ 角(grazing
入 射 に対 応 し準 弾 性 散 乱 で あ る.峰 づ た い に左 の 方 に 降 りて θ=0で 折 り返 す.こ の あ た りが 深 非 弾 性 散 乱 に 対 応 す る.Wilczynskiは
angle)
右の方 に
折 り返 し た先
図8.7
Wilczynskiプ
反 応 は 前 の 図 と 同 じで,散
の 部 分 は 負 の 角 と考 え,図8.7に
ロ ッ トの 解 釈[18] 乱 角 を負 まで,広
げ た.
示 す よ うに 散 乱 され た とす る と,長 時 間 イオ
ン の 接 触 が あ り,深 非 弾 性 散 乱 に対 応 す る こ とが 理 解 で きる.実 際 古 典 論 で計 算 した 結 果 はWilczynskiの
考 え を 支持 して い る.し か し古 典 論 が 与 え る の は
幅 の な い 線 で あ る.そ の 周 りの ゆ ら ぎ は次 に示 す よ うに統 計 力 学 に よ り計 算 さ れ る.
8.2.2 マ ス ター 方 程 式 前 平 衡 過 程 や 重 イオ ンの 深 非 弾 性 散 乱 な ど で 使 わ れ る マ ス ター 方 程 式 の 現 象 論 か ら説 明 を 始 め る.微 視 的 量 子 力 学 的 な基 礎 づ け は前 平 衡 過 程 の場 合 ラ ンダ ム行 列 理 論 に よ り8.6節 で 行 う.マ ス ター方 程 式 で は状 態 間 の遷 移 を 問題 に す る が,統 計 的 に 取 り扱 うた め,個 々の状 態で は な く,い くつ か の 状 態 を ま とめ て グ ル ー プ と して,そ れ らの 間 の 遷 移 を調 べ る.す な わ ち粗 視 化(coarse を行 う.状 態 の グ ル ープ をm,n,…
で表 す.時 刻tに お い て 系 が グ ル ー プmの
ど れ か 一 つ の 状 態 に あ る確 率 をPm(t)と 項 に示 した ように
graining)
す る と,こ れ が 増 加 す る 割 合 は7.4.3
(8.22) で 与 え られ る.右 辺 の 第1項 らnへ
は グ ル ー プnか
の 流 出 を 表 す.Wn←mは
グ ル ー プmの
らmへ
の 流 入 を,第2項
一 つ の 状 態 か らグ ル ー プnの
ど れ か の 状 態 へ の 遷 移 確 率 を表 す.し た が っ て wmn=wnmは
グ ル ープmの
移 確 率 で,Nmは 時 刻tに
はmか
と書 け る.
一 つ の 状 態 か らグ ル ープnの
一状態へ の平均遷
中 の状 態 数 で あ る.(8.22)を
見 て わか る よ うに
グ ル ー プmの
お け る変 化 の 割 合 は そ の と きの 状 態 に よ って 決 ま り,そ れ よ り前 の 経
過 に は よ ら な い とす るMarkoff過 重 イオ ン反 応 の 場 合,状
程 を仮 定 し て い る.
態 を 指 定 す る指 標 と して た と えば 重 イオ ンの 相 対 運
動 の エ ネル ギ ー,相 対 座 標,荷
電 数 な ど を と る.す
る とそ れ 以 外 の 量 子 数 につ
い て は 和 を と る こ とに な る.マ ス タ ー方 程 式(8.22)の こ の ま ま解 くこ と も可 能 で あ るが,こ
形 は(7.141)と
こ で はFokker-Planck方
同 じで,
程 式 を導 き簡 単
な解 の 例 を示 す.
8.2.3
Fokker-Planck方
程 式
マ ス タ ー 方 程 式 の 状 態 を 示 す 指 標 を 連 続 変 数 と 考 え,積 ら に 微 分 方 程 式 に 直 す こ とが で き る[15,
19, 20].状
分 方 程 式 に 直 し,さ
態 を 示 す 連 続 変 数 をxと
書 く と,(8.22)は
(8.23) と な り,ρ(x)は
状 態xの
密 度 で あ る.さ
ら にw(x,x')はx=x'に
鋭 い 山が あ
る とし
(8.24) と 書 き 直 し,Pと
ρ を ξ の2次
ま で 展 開 し,(8.23)に
代 入 す る と,
(8.25) と な る.
(8.26)
を2次
モ ー メ ン ト と し,さ
らに
(8.27) (8.28) と す る と,最
後 に
(8.29) を 得 る.-c1は
ド リ フ ト速 度(drift
Fokker-Planck方
velocity),
c2は 拡 散 係 数 と 呼 ば れ て い る.
程 式 は 重 イ オ ン 反 応 の 解 析 に よ く応 用 さ れ た.い
ちば ん 簡
単 な 場 合 は ド リ フ ト速 度 と 拡 散 係 数 を 定 数 と 置 い た と き で あ る.
(8.30) と置 く と,解 は 直 ち に 求 め られ
(8.31) と な る.た
だ し 初 期 条 件 をP(x,0)=δ(x)と
簡 単 な 計 算 で,xの
し た.
平均 値は
(8.32) で,そ
の ゆ ら ぎは
(8.33)
図8.8
重 イ オ ン深 非 弾 性 衝 突 の 際 の 荷電 数 分布[19]
と な る こ と は 示 せ る.Γ
はGauss分
布 の 半 値 幅 で あ る.一
験 か ら 求 め ら れ た 一 つ の 重 イ オ ン の 荷 電 数Zの て 示 し た[19, で あ る.横
20].反
応 は232Th+40Arで,エ
例 と し て 図8.8に
実
ゆ ら ぎ Γ2zを 散 乱 角 を 横 軸 と し ネ ル ギ ー は297MeVと388MeV
軸 の 散 乱 角 は 接 触 時 間 と み な す こ と が で き,幅
の2乗Γ2zは(8.33)
に 示 す よ う に 接 触 時 間 に 比 例 し て い る.
8.3 統 計 的 多 段 階 過程
軽 イ オ ン,こ こで は具 体 的 に は 簡単 の た め 核 子 を考 え るが,核
と衝 突 す る と,
入 射 エ ネ ル ギ ーが 高 くな る に 従 っ て平 衡 状 態 に 達 す る前 に 粒 子 放 出が 起 こ る確 率 が 高 くな る.こ れ を前 平 衡 過 程 と呼 ん で い るが,こ
の よ うな過 程 は 実 験 で も
よ く観 察 さ れ,ま た 理 論 的研 究 も盛 ん に な った. この よ うな反 応 の模 型 と して は 初 め にFermiガ な らび に そ の 後 の 発 展 に つ い て は す で に5.4節 は 繰 り返 す こ とを や め,直
ス 模 型が 使 わ れ た.こ の模 型 に 述べ られ て い る の で,こ
こで
ちに 本 論 に 入 る.
8.3.1 エ キ シ トン模 型 も っ と詳 し く反 応 の 様 子 を 知 るた め に は,入 射 核 子 と核 内 核 子 との 多 重 衝 突 を考 え な くて は い け な い.1回
の 衝 突 ご とに 入 射 核 子 は そ の エ ネ ルギ ー,運
動
量,角 運 動 量 の 一 部 を核 内核 子 に 与 え て核 を励 起 す る.こ の よ うな 過 程 を考 え る と き に都 合 の よい 指 標 と してGriffin [21, 22]は エ キ シ トン 数 す な わ ち粒 子 数 と空 孔 数 の 和 を導 入 した.二 体 の核 力 を仮 定 す る とエ キ シ トン数 は1回 で2だ
け 増 減 す るか,ま
あ る が,エ
た は不 変 で あ る.2p-2hを
の衝突
一 度 に つ くる こ と も可 能 で
ネ ルギ ーが 保 存 し な い の で 実 際 に は起 こ らな い.一 定 の エ キ シ トン
数 を も っ た状 態 の 中 で は平 衡 が 成 り立 つ と仮 定 す る. 時 刻t=0に お い て 系 は確 率Pm0μ0でm0μ0に る確 率 につ い て の マ ス タ ー方 程 式 は
い る とす る.状 態mμ
にい
(8.34)
方 程 式(8.34)で
は 必 要 なす べ て の量 子 数が 指 定 され て い るが,エ
エ ネ ル ギ ー だ け で グ ル ー プ 分 け を して,そ エ キ シ トン模 型 で あ る.Jπ (8.34)に
Eを
の 間 の 遷 移 を考 え るの がGriffinの
も指 定 し た 方 が よ いが い ま は考 え な い こ と にす る.
お い て,
チ ャ ネ ルaへ
は 状 態mμ
の 粒 子 放 出 の 確 率 で あ る.一
か らnν
へ の 遷 移 確 率,
つ の 状 態mμ
中 心 エ ネ ル ギ ー と し て エ ネ ル ギ ー 平 均 す る と,状
し た が っ てPmμ(t)はPmE(t)と え て い る の で,省
キ シ トン数 と
な る.今
略 し てPm(t)と
は
の 占 拠 確 率Pmμ(t)を 態 はmEで
指 定 され る.
は エ ネ ル ギ ーが 保 存 され る 過 程 を考
書 く こ と に す る.(8.34)は
(8.35) とな る. まず エ キ シ トン 状 態 間 の 遷 移 行 列 要 素 は2次 モ ー メ ン トMmnを
使 って
(8.36) と書 け る.こ れ は 内 部 遷 移 に対 応 す る もの で,遷 移 行 列Tintmn
(8.37) に よ り 表 せ る.さ
ら に(6.144)の
分散幅は
(8.38) と な る. チ ャ ネ ルaへ
の 遷 移 に つ い て は(7.112)よ
り
(8.39) で あ る が,こ
れ は 透 過 係 数Tmaに
よ り表 せ る.複
合 核 反 応 の と き の(6.118)の
透 過 行 列 は,
(8.40) で あ るが,
はm状
態の光学ポ テ ンシャルで
(8.41)
と な る の で,透
過係数は
(8.42) で 与 え られ,脱
出 幅Γ ↑mは
(8.43) と な る.こ
れ ら に よ り,(8.35)は
(8.44) 次 にFourier変
換 を 行 う.
(8.45) Πmm0は
初 期 状 態m0か
(8.44)に
代 入す る と
ら 状 態mへ
の 遷 移 確 率 に 関 す る 量 で あ る.(8.45)を
(8.46) を 得 る.最
後 の 項 は δ(t)のFourier表
示
(8.47) を 用 い た.(8.46)は
行 列の形で
(8.48) と書 け,確 率 平 衡 方 程 式 と呼 ば れ る.チ で,状 態mか
らnへ
で 記 述 され る ので,ゆ
の 遷 移 は Πmnで,状
ャ ネ ルaか 態nか
ら状 態mへ
の 吸 収 はTma
ら チ ャ ネ ルbへ の 崩壊 はTnb
らぎの断面積は
(8.49) か ら 求 め ら れ る.
こ の 前 平 衡 過 程 の 断 面 積 は,平
衡 過程 の と きの よ うに は 現 象 論 的 に 光 学 ポ テ
ン シ ャ ル の み か ら 求 め る こ と が で き な い.光 は(6.118)で
与 え られ る 透 過 係 数 で あ っ て 個 々 のTmaで
移 に 関 す る 量 も 同 様 で,付 算 で き な い.そ
加 的 な 仮 定 を し た り,簡
れ ら はWilliams
さ れ た が,こ 明 す る.透
学 ポ テ ンシ ャル か ら 求 め られ るの
[3], Blann
過 係 数(8.40)は
初 め の チ ャ ネ ルaの
差 が2,0,-2で
が 考 え ら れ る.(a)の
に 占 め ら れ て い れ ば,Pauli効
ど に よ りな
[24]に 最 も 近 い や り 方 を 説 エ キ シ ト ン数maと
あ る に 従 っ て 図8.9に
場 合 は 入 射 核 子 がp-hの
の他内部遷
単 な模 型 を用 い な け れ ば 計
[23], Feshbachら[1]な
こ で はHerman-Reffo-Weidenmuller
エ キ シ ト ン数nの
は な い.そ
状 態nの
示 す よ う に4つ
対 を つ く る が,こ
の過程
の状 態 が す で
果 に よ り禁 止 さ れ る.し
か し こ の効 果 は 標 的核
の エ キ シ ト ン 数 が あ ま り 大 き くな け れ ば 無 視 で き る.す
る と こ の 透 過 係 数 は標
的 核 が 基 底 状 態 で も,エ
キ シ トン状 態 で も 同 じで
(8.50) と な る.eaは
入 射 粒 子 のエ ネ ルギ ー す な わ ち運 動 エ ネル ギ ー と標 的核 へ の 結 合
エ ネル ギ ー の 和 で,Eは 透 過 係 数 で,現 Δm=0の
状 態nの
エ ネ ルギ ー,tは
標 的核 が 基 底 状 態 の と きの
象 論 の 光 学 ポ テ ンシ ャル を使 っ て 求 め る.
場 合 は(b)と(c)の2つ
が あ るが,ほ
とん ど 同 じで,(b)の
場合は
(8.51)
(a)
(b)
(c)
図8.9 連続状態の核子の吸収過程 連続状 態の核 子は二重線で 示す.
(d)
で,t2
,0(ea,ε)は エ ネ ル ギ ーeaの
粒 子 が 核 内 核 子 と衝 突 し て エ ネ ル ギ ー εの2p
状 態 に な る 透 過 係 数 で, ギ ー がE-eaのp-1,hの
はエ ネル 標 的 核 が エ ネ ル ギ ー ε-eaの1,0と
の 状 態 に 分 か れ る 割 合 で あ る.(c)の
場 合は
(8.52) で 与 え ら れ る t1,1(ea,ε)は エ ネ ル ギ ーeaの ε の1p-1h状
態 に な る 透 過 行 列 で,Δ=-2の
核 子 が 粒 子 に 衝 突 し てエ ネ ルギ ー 場合は
(8.53) で 与 え ら れ る.透 な ら な い が,近
過 係数t2 似 と し て3つ
正 に つ い て は[8]を
,0,t1,1,t1,2→0,1は 微 視 的 模 型 に よ り計 算 し な け れ ば と も等 し い と し て も よ い[24].こ
れ ら に対 す る補
見 よ.
内 部 遷 移 に つ い て は2次
モ ー メ ン ト を 使 っ て(8.37)か
らTintmnを,(8.38)か
ら 分 散 幅 を 計 算 す る.
8.3.2 拡 張 さ れ た エ キ シ トン模 型 こ れ まで 述 べ たエ キ シ トン模 型 で は エ ネル ギ ー ・スペ ク トル は 計 算 で きるが, 角 分 布 は 出せ な い.角 ら 始 ま った.今
分 布 を出 そ う とい う試 み はMantzouranisら[25,26]か
まで は 系 の 状 態 は エ キ シ ト ン数 だ けが 指 定 され て い たが,そ れ
に エ ネ ル ギ ー の最 も高 い 核 子 の運 動 量 の 方 向κ を 加 え る.い は1個
ま連 続 状 態 の核 子
と仮 定 して い る の で,こ の 方 向がκ で あ る.核 子-核 子 衝 突 に よ り,κ は
自由 核 子 の 散 乱 微 分 断 面 積 に 従 って 変 わ る もの とす る.入 射 核 子 が 核 内核 子 と 衝 突 す る と,そ の エ ネ ルギ ー と運 動 量 の 一 部 を核 内 核 子 に 与 え て,連 続 状 態 の 核 子 の エ ネ ル ギ ー は減 り,そ の 運 動 量 の分 布 は前 方 に鋭 い 山 の あ る もの に な る. 衝 突 を 繰 り返 す と連 続 状 態 の 核 子 の エ ネ ルギ ーは 減 り続 け,角 分 布 の 前 方 の 山 は な だ らか に な り,ほ か の核 子 と区 別 が つ か な くな る. 以 上 を マ ス タ ー方 程 式 で 表 す と,時 刻tに お け る系 が エ キ シ トン数nを 連 続 状 態 の 核 子 の 方 向がκ で あ る確 率 をPn(t,κ)と
書いて
もち,
(8.54) とな る.W↑nは シ トン状 態nか
状 態nか
ら核 子 が 放 出 され る確 率 で,
らmへ,方
はエ キ
向κ か らκ'へ 遷移 す る確 率 で
(8.55) の よ う に大 き さ を表 す 因子 と角 分 布 との 積 で 書 く.前 者 は前 の エ キ シ トン模 型 の もの を と り,後 者 は
(8.56) と規 格 化 され て い る.こ の角 分 布 関 数 は 自由 な 核 子 散 乱 の微 分 断 面 積 に比 例 す る とし
(8.57) が 成 り立 つ.衝
突 前 の 核 子 の 方 向κ は Ω(θφ)で,衝
突 後 の方 向κ'は Ω'(θ'φ')
で,κ か ら測 っ たκ'の 方 向 を Ω0(θ0φ0)と記 す こ と に す る. 核 子-核 子 散 乱 の 角 分 布 は 重 心 系 で 等 方 に近 い の で,そ の よ うに 仮 定 す る と, 実験 室系 の角分布 は
(8.58) で 与 え られ る.σ0は 立 体 角 で 積 分 した 断 面 積 で あ る.し たが っ て角 分 布 関 数 は
(8.59) と な る. 次 にG(κ'←κ)はcosθ0の
関 数 な の で,次
の よ う にPl(cosθ0)で
展 開 で き る.
(8.60) で あ る.展
開 係 数 は
で 表 さ れ,l=0,…,6
の 値 は
で 与 え ら れ る.θ0はκ
る の で,Pl(cosθ0)はκ Ylm(Ω')と
とκ'の な す 角 で あ
を 変 数 とす る 球 面 調 和 関 数Ylm(Ω)とκ'を
の 積 で 展 開 で き,
変数にす る
(8.61) ま たPn(κ,t)もLegendreの
多項式で展 開す ると
(8.62) と な り,マ
ス ター 方 程 式 は
(8.63) と 普 通 の マ ス タ ー 方 程 式 の 形 に な る.た
だ し μ0=1を
使 っ た.
8.3.3 MSDとMSC 今 まで 前 平 衡 過 程 を 説 明 し て きた が,現 た.そ
象 論 的 な マ ス ター方 程 式 を用 い て き
し て角 分 布 は90° 対 称 に,ま た 拡 張 され た 模 型 で は前 方 ピ ー ク に もな っ
た.し か し理 論 の 基 礎 づ け を確 立 す るた め に はS行
列 か ら出 発 し な け れ ば な ら
な い.こ れ は 以 前Weidenmullerら[27]に
よ って もな され たが,P空
間 と を使 って,多 段 階 直 接 反 応(MSD)と
多段 階 複 合 核 反 応(MSC)と
を 導 入 し た の はFeshbach-Kerman-Koonin
[1]が 最 初 で あ る.
間 とQ空 い う概 念
入 射 核 子 の エ ネル ギ ーが 高 い と き に は,入 射 核 子 は 核 子−核 子 衝 突 で だ ん だ ん エ ネル ギ ー を失 うがP空
間 に留 ま り,そ の ま ま核 外 に 放 出 され る.こ の よ うに
P空 間 の 中 を 遷 移 す る反 応 をMSDと
よび,角 分 布 は 前 方 ピ ー ク とな る.エ ネ
ル ギ ーが 低 い と きに は 入 射 核 子 が 核 子−核 子衝 突 でQ空
間 に 落 ち,何 回 かQ空
間 で 衝 突 を 繰 り返 し,し か も複 合 核 を 作 る こ とな く核 外 に 出 る こ と もあ る.こ の よ うな 反 応 の 角 分 布 は90° 対 称 でMSCと
よば れ る.MSCとMSDと
然 別 の過 程 で は な く,は じ め の 数 回の 衝 突 はP空 こで,Q空
間 に 落 ち また 何 回か の衝 突 をQ空
外 に 出 る こ とが 起 こ りや す い.P空 で あ るが,実
間 とQ空
程 を経 るが,そ
間 で 繰 り返 すMSD過
程 を経 て核
間 を行 き来 す る よ うな こ とは 可 能
際 に は 起 こ りに くい.
前 節 の 拡 張 され た エ キ シ トン模 型 はMSCよ (8.55)に 現 れ る λm←nはP空 られ る.
間でMSD過
は全
り もMSDに
分 類 され るべ きで,
間 に お け る核 子−核 子 散 乱 の行 列 要素 と関 係づ け
8.4 多段 階 直 接 過 程
多段 階 直 接 過 程(MSD)は 多 段 階 複 合 過 程(MSC)に 比べ て,入 射 エ ネル ギ ー が 高 い 場 合 起 こ り,何 回か の衝 突 の 後,い ちば ん エ ネ ル ギ ー の 高 い粒 子 が 束 縛 状 態 に 落 ちれ ば,MSCに
移行 す る.MSD過
程は連続状態 にある粒子の運動の
方 が 核 内核 子 の 運 動 よ り早 い とす る瞬 間 近 似(sudden の 反 対 の 仮 定 の 断 熱 近 似(adiabatic
approximation)の
性 が あ る.前 者 は[28]に よ り,後 者 は[1]や[29]に の 中 間 に あ る と思 われ るが,こ
approximation)と,そ 二 つ の近 似 を と る 可 能
よ り採 用 され た.現 実 は こ
の 取 り扱 い は 極 め て難 し く,計 算 は行 われ て い
な い.
8.4.1 DWBA MSDはP空
間 を経 由 す る 過 程 で あ るか ら,一 般 化 され た 光 学 模 型 の方 程 式
(6.97)を 近 似 的 に 解 くこ とに 帰 す る.方 程 式 は
(8.64) で,光
学 模 型 の ハ ミル ト ニ ア ン は エ ネ ル ギ ー 平 均 の 幅 を2Iと
す る と,
(8.65) で,こ
の チ ャ ネル に つ い て の 対 角 部 と非 対 角 部 を そ れ ぞ れ
(8.66) (8.67) と す る.こ
こ で,チ
算 子 で あ る.方
ャ ネ ルaは
αslJで
指 定 さ れ,Paは
チ ャ ネ ルaへ
の射影演
程 式(8.64)は
(8.68) と な る.
(8.69
を 満 た し,そ
の 漸 近 形 が(6.69),
置 き 換 え る)光
(6.70a)で
与 え ら れ る(
学 波 動 関 数 φ(+)aを 導 入 し て,方
程 式(8.68)を
は
で
積分方程式
(8.70) の 形 に書 く.こ れ よ りS行 列 を計 算 す る と,
(8.71) と な る.右
辺 第1項
は 対 角 のHoptaか
で あ る.そ
の 微 分 断 面 積 は(6.108)で
ら の 寄 与 で,そ 与 え ら れ る.反
れ 以 外 はMSDか
ら の寄 与
応 断 面 積 は(6.110)よ
り
(8.72) と な る.以 上,入 い 多 段 階DWBAの
射 エ ネ ルギ ー で 平均 の み を行 い,ま だ 統 計 平 均 は 行 って い な 断 面 積 で あ る.こ の 多段 階DWBAは5.4.1項
波 動 関 数 の 規 格 化 の ほか に 射 影 演 算 子P, Qの
のそれ とは
定 義 に 違 い の あ る こ と を注 意 し
て お く.
8.4.2 終 状 態 に つ い て の 統 計 終 状 態 は ど の 過 程 に も現 れ るの で,い
ちば ん 簡 単 な 一段 階 過 程 を考 え る.そ
の遷 移確率 は
(8.73) で 与 え られ る.こ 次 の よ う に3部
れ を 詳 し く調 べ る た め,P空
間 の ハ ミ ル トニ ア ン の 対 角 部 を,
に 分 け る.
(8.74) す な わ ちH0は
連 続 状 態 の粒 子(leading
particle)に 対 応 し,運 動 エ ネ ルギ ー
と 光 学 ポ テ ン シ ャル よ りな る.標 的 核 の ハ ミル トニ ア ン は独 立 粒 子 のh0と
残
留 相 互作 用 のυ よ りな る.光 学 波 動 関 数 も2部 分 に 分 け(反 対 称 化 は 必 要 だが, 具 体 的 に は 書 か な い)
(8.75)
とす る.こ こで チ ャ ネル 指 標aを
二 つ に分 け,連 続 状 態 に 関 す るaと 標 的核 の
α とに す る.連 続 状 態 の 粒 子 の 部 分 は
(8.76) を 満 た し,標
的 核 の 部 分 はuα
≡│α>で
(8.77) を満 た す(6.147).殻 数 をumμ
模 型 の エ キ シ ト ンがmの
μで 指 定 され る 状 態 の 波 動 関
≡│μ>で
(8.78) を 満 た す の で(6.146),こ
れ ら2つ
の基 底 の 間 に は
(8.79) の 関 係(6.148)が
あ る.ま
た 展 開 係 数 の 間 に は 関 係(6.149)が
成 り立 つ.遷
移
確率 は
(8.80) と な り,さ
ら に(8.79)に
よ り 展 開 し,終
状 態 の エ ネル ギ ー につ い て の 平 均 を行
う と,
(8.81) と な る.標
的 核 は 簡 単 の た め0p-0h状
る 状 態 は1p-1h状
態 のphで
と き の 重 み の 関 数 で,Iは (6.150)を
あ る.こ
態 と し た の で,νoptに
よ って 励 起 され
こ で δI(ε-ε β)は エ ネ ル ギ ー 平 均 を す る
そ の 幅 で,I→0で
δI(ε)は δ 関 数 に な る.す
る と
拡張 した
(8.82) を 使 っ て,(8.81)は
(8.83)
と な る.終 状 態 で粒 子bが
観 測 され るの は残 留 核 にphが
和 時 間,こ こで は(6.170)か
ら求 め られ るph状
で きて か ら,核 の 緩
態 の 寿 命,に 比 べ て 長 い 時 間が
経 っ た後 で あ る.そ の 間 に残 留 核 は 平 衡 状 態 に な っ て い る. 一つ のph状 で,IをΓ
態 は 分 散 幅Γ ↓の エ ネル ギ ー範 囲 に分 布 し て い る と考 え られ るの
↓よ り大 き くとれ ば,違
うph状
態 の干 渉 は 消 え て
(8.84) が 成 り立 ち,遷 移 確 率 は
(8.85) と な る.上
の 式 に は 部 分 準 位 密 度 ρph(ε)を 含 む が,こ
れ は 強 度 関 数(6.150)と
同 じ で あ る.
8.4.3 中 間 状 態 の 統 計 中 間状 態が 現 れ るの は,二 段 階過 程 以 上 な の で,二 段 階 の 遷 移 確 率 を書 くと,
(8.86) とな る.こ の 中 間 状 態 を ど の よ う に取 り扱 うか を 考 え る.そ れ に は 連 続 状 態 の 粒 子 が 核 に衝 突 す る 平 均 時 間 とで きたphの 近 似 を使 う こ とが で きる.そ phに
つ い て は6.4.1項
の た め6.4.1項
の(6.159)で
寿 命 に 大 差 が あ れ ば,断
熱や 瞬間
で 導 入 し た 生 存 確 率 を評 価 す る.
与 え られ る よ うに,分 散 幅 は
(8.87) とな る.集 団 状 態 の 場 合 は6.4.2項 で 述べ た よ うに 一般 に は これ よ り小 さ くな る. 次 に 連 続 状 態 の 粒 子 の 場 合 は,核 物 質 を考 え る と,光 学 ポ テ ン シ ャ ルUの
虚
数 部 の 絶対 値 の2倍 が 幅Γcに な る.有 限 の核 で は,特 に 表 面 吸 収 型 の 場 合 の 評 価 は 難 しいが,等
価 な体 積 吸 収 型 に 直 して,そ の2倍
を近 似 的 な分 散 幅 とす る.
(8.88) さて 二 段 階 過 程 の最 初 の衝 突 でphを
作 った 時 刻 をt=0と
続 状 態 の粒 子 の 衝 突 が 起 こ る時 刻tに お い て,こ
のph状
して,2回
目の 連
態 と連 続 状 態 の 粒 子
が 生 存 して い る確 率 は,生 存 確 率 の積 の 衝 突 を 連 続 状 態 の粒 子がdtの
に よ り与 え られ る.2回
間 に 起 こす 確 率 はΓcdt/hで
目
あ るか ら
(8.89) とな るが,こ れ を 瞬 間 指 標 と呼 ぶ こ と にす る.Γcは,吸
収 も含 む の で,非 弾 性
散 乱 の 幅 に 置 き換 え た ほ うが よ り正確 に な る.
8.4.4
瞬
間
ま ずPs〓1す
近
似
な わ ちΓc≫Γ↓phの
場 合 を 考 え る.式(8.86)に
現 れ るT行
列
要素 は
(8.90) で あ る.最 初 の 衝突 で はphが Green関
で き るの で,状
態
数 を時 間発 展 演 算 子 で 書 く と,
(8.91) 最 後 の 式 に現 れ る 指 数 関 数 の 連 続 状 態 の 粒 子 に 対 応 す る 部 分 の 時 間依 存 性 は (8.88)に よ り近似 的 に
(8.92) と な る.こ こ でecは
連 続 状 態 の 粒 子 の エ ネ ル ギ ーで,(8.92)は
の
寄 与 は 無 視 で きる ほ ど 小 さい こ と を 示 して い る.指 数 関 数 の 標 的核 に対 応 す る 部 分 を2項 の 積
(8.93) の 形 に 書 く.大 部 分 の γに 対 し,│εγ-εph│は の 場 合,時
間 積 分 の 寄 与 は
分 散 幅Γphよ
か ら が 大 きい か ら,
り小 さ い.Γc≫Γ↓ph が
成 り立 ち,第2項
は 無 視 で きる.す
る とT行
列は
(8.94) と な る.第2回
目 のνoptの
作 用 で,p'h'が
生 成 され た と し,uβ
を非 摂 動 状 態
で展 開す ると
(8.95) と な るが,さ
らに2回
目の 衝 突 で はphを
傍 観 者 と し て無 視 す る と,二 段 階 過
程 の 平均 遷 移 確 率 は
(8.96) と な る.こ
こで,Σexはpをp'で,hをh'で
交 換 して 得 られ る 四 つ の 場 合 に
つ い て の 和 を 表 し,こ れ らの 干 渉 項 は 残 る.こ れ ら は 図8.10に な お,式(8.96)は(8.86)に
お い て,核
説 明 して あ る.
の 残 留 相 互 作 用υ を 無 視 す る こ と に よ
り,簡 単 に 求 め る こ とが で き る. 瞬 間近 似 が よい ため には 瞬 間指 標 が1に 近 け れ ば よい.図6.3に 幅 はエ ネ ルギ ー の増 加 関数 なの で,1回
よる と,分 散
目の 衝突 に よるエ ネル ギ ー損 失が 非常 に
大 きい と きを 除 い て,瞬
間近 似 は よい で あ ろ う こ とが わか る.特 に 巨 大 共 鳴 に
つ い て は,分 散 幅 はphの
それ よ り小 さ くな って い るの で,瞬 間近 似 は さ ら に よ
くな る.瞬 間 近 似 は 数 値 計 算 が 困 難 の た め,ご
く最 近 に な る まで 行 わ れ て お ら
ず,実 験 との比 較 もな され て い な い.最 近 の 計 算 に よれば 干渉 の 影 響 は 顕 著 に 認 め られ る が,多
くの 部 分 波 の寄 与 を足 し合 わ せ る とあ ま り 目立 た な くな る[13].
(a)
(b) 図8.10
瞬 間 近 似MSDの
(c)
(d)
二 段 階 過程 へ の 寄 与
連 続 状 態 の 核 子 は 二 重 線 で 示 す.
8.4.5
断
熱
近
似
この 節 で は,瞬 間 近似 と正 反 対 の 断熱 近 似 を議 論 す る.こ の 近 似 はFeshbachKerman-Koonin
[1]やTamura-Udagawa-Lenske
数 値 計 算 が 行 われ,実
[29]に よ り採 用 され,多
くの
験 デ ー タ と比 較 も され た.前 に 述 べ た よ う にMSD反
応
で は 限 られ た 場 合 に,断 熱 的 な状 況が 起 こ る こ とが あ る.最 初 の衝 突 で の エ ネ ル ギ ー損 失 が 大 き く,連 続 状 態 の 粒 子 は辛 うじ て2回 よ うな 場 合 を 想 定 す る.式(8.92)のΓcはΓ↓phに
目の 衝 突 で 吸 収 を 免 れ る
比 べ て 小 さい の で,連
続状
態 の 粒 子 の 減 衰 効 果 は無 視 で きる.し たが って 標 的核 の 時 間発 展(8.93)の
右辺
の 第2項
は 瞬 間 近 似 の と きの よ うに 無 視 す る こ と は で き ない.こ
の位 相 角 は 状
態γ の エ ネ ル ギ ー に よ り,ま た〓 の 変 化 に よ り,大 幅 に変 わ る の で,状 態γ の 位 相 は ラ ン ダ ム に な る.こ の こ と を確 認 した 後,(8.91)を
そ の ま ま評 価 す る と,
(8.90)は
(8.97) と な る.2回 の で,基
目 の 衝 突 の 行 列 要 素 の 計 算 は 励 起 し た 状態uγ
底 状 態 の 上 に 作 る の と 違 うが,Tamura-Udagawa-Lenske
の 上 にp'h'を
作 る
[29]は こ の
差 を 無 視 し,
(8.98)
と展 開 され る と し
(8.99) が 成 り立 つ と仮 定 し た.さ
らに 傍 観 者 近 似 に よ り,
(8.100) を仮 定 す る.す
ると
(8.101) と な る.こ
のT行
列 の 絶 対 値 の2乗
振 幅 の ラ ン ダ ム 符 号 の た め,ph, γ, よ る 計 算 は 多 く 行 わ れ て お り,そ
を計 算 す る と き 核 は 平 衡 状 態 に な っ て お り, p'h'の の1例
最 後 にFeshbach-Kerman-Koonin T行
列 の 式(8.101)に
はGreen関
う にr表
示 を と り,原
る が,も
う一 つ の 方 法 と し て,固
干 渉 項 は 消 え る.TULの を 図8.11に
示 す.
[1]理 論 に 触 れ て お く.断 数 が 現 れ る が,こ
断熱 近 似 に
れ は2.7.3項
熱 近 似 の2段
階
に 示 され た よ
点 で 正 則 な 解 と外 向 波 とな る解 の 二 つ の 積 と して 計 算 す 有 関数 展 開
(8.102) を 用 い る.こ
こ で,
で 置 き 換 え,さ
ら にon
shell近 似 を し て
(8.103) とす る と,二 段 階 振 幅 は 一段 階DWBAの
断面 積 の 積 に書 き換 え られ 計 算 が 簡
単 に な る.こ れ に 対 し早 くか ら批 判 の 声 が 上 が っ て い たが,計 算 の 容 易 さ と,こ の 方 が 実 験 結 果 に よ く合 う場 合 もあ り,ま た こ の 変 則 的 な境 界 条 件 の 固有 関 数 展 開 は 近似 と して 認 め られ る とい う よ うな 議 論 もあ り,な か なか 決 着が つ か ず, 多 くの 数 値 計 算 がFKK近
似 と し て な され て きた.し
か し,1998年Trentoで
行 われ た 共 同研 究 会 で,変 則 的境 界 条 件 の使 用 は退 け られ た[30].
図8.11 27Alと209Biに
断熱 近 似MSDに よ る62MeV陽
よ る計 算 と実 験 との 比 較[29] 子 の非弾性散乱で ,出 て くる 陽 子 の エ ネル ギ ー を三 つ に 分 け,角 分 布 を示 した.黒 丸 は実 験 値,計 算 値 は実 線 で 二 段 階 まで の 寄 与,点
線 で 一段 階 の み の 寄 与 を示 し た.
8.5 線 形 応 答 関 数
前 節 で はMSD過
程 を入 射 粒 子 の 側 か ら調べ たが,こ
眺 め て み よ う,6.4.1項 化 す るか を調 べ た が,こ
こで は 標 的核 の 側 か ら
で は 一 定 のエ ネ ルギ ー の戸 口状 態が 時 間 と と もに ど う変 こ で は 入 射 粒 子が 核 に与 え る衝 撃 を 変 化 させ て 核 の 反
応 を詳 し く調 べ る. 例 と し て核 子 か 電 子 の 非弾 性 散 乱 を 考 え る.入 射 粒 子 の 運 動 量 と エ ネ ル ギ ー をそ れぞ れhpaとEa,出 と,
て くる粒 子 の 運動 量 とエ ネ ルギ ーはhpbとEbと
する
が 標 的核 に移 行 した 運 動 量 とエ ネル ギ ーで
あ る.散 乱 断 面 積 をhq, hω の 関 数 と し て 測 定 す る と,核 が 外 部 か ら のhq, hω の 刺 激 に対 して の 応 答 が わ か る.こ の 遷 移 確 率 を 応 答 関 数 と い う.さ らに 入 射
粒 子 と核 の 相 互 作 用が 弱 く,1次
の 摂 動 で 近 似 で きる場 合 に は 応 答 は 刺 激 の 強
さに 比 例 す る か ら,線 形 応 答 関 数 とな る[31, 32, 33]. 原 子 核 の ハ ミル トニ ア ン をHと
し,そ れ に 時 間 に 依 存 す る摂 動 が 加 わ った
とす る.具 体 的 な 簡 単 な例 を示 す と次 の よ うに な る.荷 電粒 子 が 核 を励 起 す る 非 弾 性 散 乱 を考 え る.励 起 エ ネル ギ ーが 入 射 エ ネル ギ ー に 較 べ て 小 さ く荷 電 粒 子 の エ ネル ギ ー 損 失 は無 視 で き る とす る.さ らに 古 典 近 似 が 成 り立 つ とす る と, 荷 電 粒 子 はCoulomb力
と核 力 の 相 互 作 用 を受 け 一 定 の軌 道 を 動 くこ と に な る.
した が っ て荷 電 粒 子 の 位 置 ベ ク トル は 時 間 の 関 数 と してr(t)の
よ うに 決 ま る.
核 内 核 子iの
れが 時 間に依
受 け る 相 互 作 用 はV(ri-r(t))と
表 さ れ る が,こ
存 す る摂 動 で あ る.こ れ は 一 般 に は ω に つ い て のFourier積
分 で 表 せ るが,異
な る ω の 振 幅 は干 渉 しな い と考 え られ るか ら,一 つ のFourier成
分 だ け を含 む
摂動
(8.104) を考 え れ ば よい.ρqは
運 動 量 移 行hqに
対 応 す る原 子 核 の 核 子 の 一 体 の 密 度 行
列 で あ る(そ の 対 角 成 分 は 普 通 の 密 度 で あ る).運 動 量 表 示 の 核 子 生 成 消 滅演 算 子 を使 って
(8.105) と表 せ る.ス
ピ ン 変 数 をsで
的 ス イ ッチ ング でt=-∞
表 し て あ る.こ の 摂 動 は2.2.4項 で 使 わ れ た 断熱
か ら断 熱 的 に加 わ る もの と し,η>0は
きわ め て小
さ な 数 とす る.原 子 核 の 方 程 式 は
(8.106) と な る.こ れ を1次 の 摂 動 と し て解 く.原 子 核 の 状 態 をν で 表 し,方 程 式
(8.107) を満 たす もの とす る.t=-∞
で 基 底 状 態ν=0に
あ るとし
(8.108) と 展 開 す る.(8.108)を(8.106)に
代 入 し,H'(t)に
つ い て1次
の項 をとる と
(8.109)
を 得 る が,こ
れ を-∞
か らtま
で 積 分 し て,
(8.110) と な る.波
動 関 数 は(8.108)よ
り
(8.111) で 与 え られ る. 摂 動 に よ り核 の 状 態 が(8.111)の
よ う に変 わ っ た.こ れ に 伴 っ て密 度 行 列 の
期待値 は
(8.112) と な る.こ の 計 算 で
の よ うな 項 が 現 れ るが,運 動 量 保 存 則 が
満 た され な い の で 落 と し て あ る.
のFourier変
換は
(8.113) とな る.こ こ で 単 位 刺 激 に 対 す る応 答
(8.114) を 偏 極 伝 搬 関 数(polarization 義 す る.こ
の 式 は1956年Kubo
propagator),そ [34]に
の 虚 数 部 分 を線 形 応 答 関 数 と定
よ っ て 最 初 に 求 め ら れ た.
応 答 関 数 を 一 般 の 場 合 に 計 算 す る に は,摂
動(8.104)を
一 般 化 して
(8.115)
と書 く.そ し て 密 度 行 列 の期 待 値 を 計 算 す る と
(8.116) とな る.偏 極 伝 搬 関数 は
(8.117) で 与 え られ る.密 度 は
(8.118) と 表 され る.ρ(0)は
基 底 状 態 の 密 度 で あ る.
8.5.1 DWBAと
の関係
これ で 線 形 応 答 関 数が 求 ま った が,こ て お く.こ こ で は2∼5章
れ と従 来 の 核 反応 理 論 との 関係 を 述べ
と同 じ く運 動 量 表 示 で,波
使 う.し た が っ て チ ャネ ル 指 標aは
数 に よ る規 格 化(2.59)を
αsκ を示 す.DWBAに
よ る と核 に対 す る
摂動は
(8.119) とな る.Vは
入射 粒 子 と核 内核 子 の相 互 作 用 で,ξ は核 内核 子 の 座 標 で,(8.119)
は 一 体 の 演 算 子 を表 し て い る.こ れ が(8.104)の
摂 動 に 対 応 す る.DWBAの
断面積 は
(8.120) と 書 け る((2.232)参
照).遷
移行 列 要 素
(8.121) の δ関 数 を 書 き直 す と
(8.122)
とな る.Oを
生 成 消 滅 演 算 子 を使 っ て 表 す と
(8.123) と な る.(8.123)の は な い が,こ
右 辺 を(8.117)の
右 辺 と 比 較 す る と,(8.117)の
右 辺 第2項
れ は 通 常 寄 与 は な い.
8.5.2 近 似 計 算,RPA 以 上 の 計 算 は核 の 状 態 は 正 確 に わか って い る と し たが,そ
の よ うな場 合 は 少
な く,一 般 に は近 似 の 波 動 関 数 を使 う.原 子 核 の 波動 関 数 は平 均 場 近 似 を用 い, Slater行 列 式 で 表 され る とす る.各 軌 道 は 核 子 が 占 拠 して い るか,空
で あ るか
の いず れ か で あ る の で,密 度 行 列 は
(8.124) を 満 た す.密
度 行 列(8.116),
(8.118)の
運 動 方 程 式 を 求 め る と,Φ(t)は(8.106)
を 満 た す の で,
(8.125) を得 る.平 均 場 近 似 の も とで 計 算 す る と(8.125)は
(8.126) と な る[32].f(t)は
行 列(fkl)のFourier変
換 で あ る.摂
動fの1次
の近似で
(8.127) で あ る.h0は
摂 動 の な い と き の 平 均 場 の ハ ミ ル トニ ア ン で あ る.ま
でf(t)=0と
す る と,TDHFの
密 度 行 列 ρ は(8.118)の
方 程 式 と な る(8.7節
た(8.126)
参 照).
よ う に 書 け る の で,δ ρ に つ い て1次
の 項 を と る と,
(8.128)
を得 る.平 均 場 近 似 に よ り
(8.129) と な る.こ
こ でFermi準
位 よ り 上 の 準 位 をp,下
の をhと
記 し た.ρ(1)に
つい
ては
(8.130) が 成 り立 つ.ま
た
(8.131) で あ る.こ
れ ら を 使 っ て(8.128)のhp,
phの
行 列 要 素 を と る と,
(8.132) と な る が,こ
こで
(8.133) で,
(8.134) は 有 効 相 互 作 用 の 行 列 要 素 で,残 留 相 互 作 用 の 密 度 依 存 性 を 無 視 す れ ば 二 体 相 互 作 用 の 行 列 要 素 に な る.方 似(random
phase
右 辺 でf=1と
approximation,
程 式(8.132)で RPA)の
置 くと ρ(1)はRPAのGreen関
た と きの 線 形 応 答 関 数 はRPAに
右 辺 を0と
置 く と乱 雑 位 相 近
方 程 式 に ほか な ら な い[32].ま
た
数 で あ る.平 均 場 近 似 を使 っ
対 応 す る.こ れ ら を 次 に具 体 的 な 式 を用 い て
示 そ う. RPAの
方程式 は
(8.135) と 書 け る.こ
こで
(8.136)
で
(8.137) で あ る.
も(8.135)の
解 で,そ
の 固 有 値 は-ん Ωνで あ る の で,二
つの
解 を行 列
(8.138) の 形 で 書 く.固 有 値 も
(8.139) と 表 せ る.(8.135)の
左辺 の行列 を
(8.140) と 書 く と,(8.135)は
(8.141) とな る. RPAの
固有 関 数 に つ い て は,直 交 関係 が 成 り立 ち,規 格 化 条 件 と と も に
(8.142) と な る.RPAのGreen関
数Gの
満 た す 方 程 式 は(8.132)の
右 辺 を-1と
お き
(8.143) と 表 さ れ る.Green関
数 の 固 有 関数 展 開
(8.144) を(8.143)に
代入 する と
(8.145) と な り,Green関
数 は
(8.146) で 与 え ら れ る.こ
れ は(8.117)の
偏 極 伝 搬 関 数 に 対 応 す る.
次 にGreen関
数 の 別 の 形 の 方 程 式 を 求 め よ う.(8.140)のSを
独 立粒子模型
の 部 分 と相 互 作 用 の 部 分 に分 け る.
(8.147) S(0)は(8.133)の る.こ
行 列Aminjの
れ を(8.143)に
右 辺 第1項
の み か ら な る も の で,ν
は 残 りで あ
代 入す ると
(8.148) を 得 る.次
にν=0の
数 をG(0)と
す ると
場 合 のGreen関
数,す
な わ ち 独 立 粒 子 模 型 のGreen関
(8.149) を 満 た す.(8.148)と(8.149)か
ら方 程 式
(8.150) が 求 め ら れ る.Green関
数 が(8.150)を
解 い て 求 ま れ ば,(8.132)よ
り,密 度 行
列は
(8.151) と な る.
8.5.3 Fermiガ
ス模型
線 形 応 答 関 数 の 最 も簡 単 な場 合 と し て,平 面 波Born近 た核 子 のFermiガ
似(PWBA)を
用い
ス に よる 散 乱 に応 用 す る.入 射 核 子 と核 内 核 子 との 相 互 作 用
は 二 体 の ポ テ ン シ ャル の 和
(8.152) と し,中
心力
(8.153) を 仮 定 す る.a0,
a1は
定 数 で あ るが ア イ ソ ス ピ ン に よ っ て も よ い.ス
し な い 部 分 を 摂 動 と す れ ば ス カ ラ ー 応 答(scalar
response)が
ピ ン に依 存
得 ら れ,ス
ピンの
部 分 を とれ ば ス ピ ン 応 答(spin
response)を
得 る.さ
ら に 後 者 は 運 動 量 移 行hq
につ き
(8.154) の よ う に ス ピ ン 縦(spin
longitudinal)と
ス ピ ン 横(spin
transverse)の2成
分
に 分 け ら れ る. 入 射 ・散 乱 粒 子a,
bの ス ピ ン ・ア イ ソ ス ピ ン 量 子 数 をa, bと 書 く と,核
摂 動(8.119)はPWBAに
へ の
よ り
(8.155) と な る.ξ
は 核 内 核 子 の ス ピ ン ・ア イ ソ ス ピ ン 変 数.例
と して ス カ ラ ー 応 答 を
考 える と
(8.156) と な る.hqは
運 動 量 移 行 で あ る.υ(q)はυ(r)のFourier変
換 で
(8.157) で 与 え ら れ る.密
度 のFourier変
換 を 使 っ て,摂
動は
(8.158) と な る. 偏 極 伝 搬 関 数(8.114)は
(8.l59) で あ る.密
度 のFourier変
換(8.105)は
(8.160) と 書 け る.こ
こで 中 間 状 態 を
(8.161)
と す る と,(8.159)の
右 辺 第1項
の分子 は
(8.162) と な る の で,κh=κ
と 書 く.第2項
も 同 様 に 計 算 し,κp=κ
と す る と,
(8.163) とな る. 線 形 応 答 関 数 す な わ ち 偏 極 伝 搬 関 数 の 虚 数 部 だ け を 考 えれ ば,(8.163)の 辺 の 第2項
は0と
右
な る.し た が っ て
(8.164) と な る が,
(8.165) こ こ でκ
とqと
の な す 角 を θ と し た.(8.164)の
積分は
(8.166) と な る.こ
こ でν
は 核 の 体 積 で あ る.
こ こ で 非 相 対 論 的 ス ケ ー リ ン グ 因 子(non-relativistic
scaling
factor) [35]
(8.167) を 導 入 す る と,
(8.168) と な る.す
る と,
(8.169)
した が っ てκ2の 積 分 範 囲 は
(8.170) に よ り決 ま る.上 の 式 の 左 辺 の2量 の 大 小 は
(8.171) の 正 負 で 決 ま り,
な の で,
(8.172) の 場 合 は 上 の 式 は
とス
ケ ー リ ン グ 因 子 の み の 関 数 と な る. 運 動 量 κFで あ ら わ す と 関 数 の グ ラ フ を 示 す.相
と し て,核
と な る.図8.12に(8.172)の
互 作 用 の な いFermiガ
相 互 作 用 の あ る 場 合 は(8.150)を
図8.12 横 軸 は と して 示 し た.た
の 体 積 をFermi
Fermiガ
ス の 偏 極 伝 搬 関 数 が 求 まれ ば,
使 っ て 求 め る こ とが で き る.
ス模 型 に よる 線 形 応 答 関 数[37]
を,縦 軸 は だ しq=q/κF.
応答
を
を単 位
8.5.4
有
限
核
有 限核に対 する応答 関数は独 立粒子模型 の偏極 伝搬 関数
(8.173) に(8.150)に
従 い 相 互 作 用 を 導 入 す れ ば 求 め られ る.pとhは
態 を 表 す.巨 大 共 鳴 の 励 起 に 対 す るRPA応 多 い[36].こ
答 関 数 はr表
粒 子 と空孔 の 状 示 で 行 われ た もの が
の 表 示 で は 式(8.173)は
(8.174) と 書 け る.φ0k(r)は
軌 道kの
互 作 用 を 使 う と,(8.144)の
波 動 関 数,相 計 算 はrの
互 作 用 と し て δ関 数 形 のSkyrme相 各 点 を足 に もつ 行 列 の 簡 単 な計 算 に帰
着 す る. ス ピ ン ・ア イ ソ ス ピ ン 応 答 関 数 は π 中 間 子 凝 縮(pion 係 が あ り,多
condensation)に
も関
く の 人 々 に よ り研 究 さ れ て い る[38].
8.6 多 段 階複 合 核 過 程
多 段 階 複 合 核(MSC)過 結 果 は(8.48),(8,49)に
程 は す で に8.3節 示 さ れ て い る.本
で マ ス タ ー 方 程 式 に よ り取 り扱 わ れ, 節 で は 複 合 核 に 対 し,7.5節
よ う に ラ ン ダ ム 行 列 理 論 に よ る 基 礎 付 け を し て,8.3.1項 す る こ と を 示 す[39].出
発 点 は7.5節
部 分 状 態 密 度 の と き の よ う に,ク
の結 果 は 弱結 合 に相 当 あ る が,8.1.2項
ラ ス 分 け に エ キ シ ト ン 数 を 使 う.相
行 列 要 素 は ラ ン ダ ム 行 列 と し,Gauss分 で あ る.S行
の(7.147)-(7.149)で
布 を 仮 定 し,2次
で行 った
の
互作用 の
モ ー メ ン トは(8.15)
列 の ア ン サ ン ブ ル 平 均 は チ ャ ネ ル 間 の 直 接 結 合 を 入 れ な い の で,
対 角 型 の み で,準
位 密 度 の 場 合 と 同 じ に 計 算 で き て,
(8.175) と な る.σ0はHubbard-Stratonovitch変 添 え 字 が つ く対 角 行 列 で あ る.h0は
数 の 鞍 点 に お け る 値 で,ク ハ ミル トニ ア ンHの
ラ スmの
独 立 粒 子 部 分,Wは
脱 出 幅 で,(7.149)の
指 標 μ をmμ
に 変 え る と得 られ るが,エ
ネルギーのず れ
を以 下 無 視 す るの で,
(8.176) で あ る.こ れ よ り透 過 行 列 を計 算 す る と
(8.177) を 得 る.Δmは(7.96)に
対 応 し,σmの
虚 数 部 で 準 位 密 度 に 比 例 す る.
(8.178) こ こで
は エ キ シ トン数mの
チ ャ ネ ル につ い て 対 角 行 列 で ク ラ スmのQ空
状 態 数 で あ る.透 過 行 列 は
間へ の 吸 収 に対 応 す る.
S行 列 の ア ンサ ン ブ ル 平 均 の 計 算 は 簡 単 で あ るが,2点 の ア ンサ ンブ ル 平 均)の
関数(2個
のSの
積
方 は 複 合 核 の 場 合 よ り クラ ス 分 け が あ るだ け 複 雑 で あ
る と考 え られ る.事 実,同
じ精 度 の 計 算 はで きな い.し か し前 平 衡 過 程 で は多
くの チ ャ ネル が 開 い て い る の で,脱 な り,か え って 簡 単 に な る.2点
出 幅が 大 き く,そ の た め 摂 動 計 算 が 可 能 に
関 数 の 式 は σmを 含 むが,被
積分 関数はすべ
て の σmに よ り,ま た σmは 互 い に 交 換 し な い.そ れ で 平 衡 過 程 の場 合 の よ う に 鞍 点 の 多 様 体 に つ い て 正 確 に 積 分 す る こ とは で きな い.指 数 の 中 の 対 数 項 は 結 合Wを
含 むが,そ
れ は チ ャ ネ ル に つ い て の 和 を 含 み,そ
い て は 非 常 に大 きい.し
の 数 はMSCに
お
たが って 対 数 項 は σmの 対 角 部 を 中心 に して,べ
き展
開が で き る.最 終 結 果 は
(8.179) とな る.右 辺 のΠ は エ キ シ トン 数 に つ い て の 行 列 で,次 の確 率 平 衡 方 程 式 を満 た す.
(8.180) (8.179)のTabは TextmnはP空
透 過 行 列(8.177)で,実 間 を 経 由 し て 状 態mか
際 の 計 算 は(8.40)を らnへ
の遷移確率 で
使 っ た 方 が よ い.
(8.181) で 与 え られ る.Eと
εは それ ぞ れE(1)とE(2)の
平 均 と差 で あ る
.P空 間 に
関 す る幅 は
(8.182) で 与 え ら れ る.
一 方
,内 部 遷 移 の 方 は
(8.183) で,分 散 幅 は
(8.184) と な る.(8.183)に でMSC過
現 れ るgmnは2次
程 の 断 面 積 が 求 め ら れ る が,強
れ に 反 し て8.3.1項 Mantzouranis る が,こ
モ ー メ ン トMmnの
結 合 近 似 を 仮 定 し た も の で あ る.こ
で 現 象 論 か ら 求 め た もの,あ
[27]が
逆 行 列 で あ る .こ れ
る い はAgassi-Weidenmuller-
ラ ンダ ム行 列 を使 い 求 め た もの は 弱 結 合 近 似 の 仮 定 で あ
こ で 求 め た 強 結 合 の 結 果 か ら 形 式 的 に 導 く こ とが で き る.残
用 が 弱 い と 部 分 準 位 密 度 は 独 立 粒 子 模 型 の ρ(0)に 変 わ る.内
留 相互作
部 遷移の確率 は
(8.185) と な る.こ れ は8.3.1項 で 求 め た(8.37)と
同 じで あ る.
前 平 衡 過 程 の 断 面 積 は 弱 結 合 ・強 結 合 と もに 同 じ形(8.180)の 確 率 伝 搬 関数 Π(ε)によ り記 述 され る こ とが わ か った.こ れ らの議 論 の詳 細 は[10]に 譲 りMSC とMSDの
関 係 に つ い て 触 れ て お く.こ こで 説 明 し たMSCで
ら す ぐ にQm空
間 に 入 る よ うに な っ て い るが,8.3.3項
ル ギ ーが 高 い と き に はチ ャ ネ ルaか
らP空
間 をMSDで
は チ ャネ ルaか
で 触 れ た よ うに,エ
ネ
経 過 し て か らMSC過
程 に 入 る方 が 起 こ りや す い.こ の と きは 透 過 行 列(8.177)にMSDに
お け る遷
移 を組 み 込 まな け れ ば な ら な い.こ れ は[40]で 行 わ れ,簡 単 な場 合 の 数 値 計 算 は[41]で な され て い る. こ こで 時 間 に 依 存 す る 定 式 化 に 移 り,平 衡が 成 り立 つ 条 件 な ど を求 め て み よ
う[27].(8.180)に
お い て ε=0と
し た も の か らQ行
列
(8.186) を定 義 す る.こ れ は2π ρで 割 っ て い る の で エ ネ ル ギ ー の次 元 を 持 ちエ ネ ルギ ー 幅 に 関係 し て くる.行 列Qは
実 数 で 対 称 行 列 で あ る か ら,直 交 変 換 に よ り対 角
化 され る.こ れ をqと す る と,
(8.187) す ると確 率伝搬 関数は
(8.188) と 書 く こ と が で き る.こ
れ を(8.179)に
代 入 し,そ
のFourier変
換 を行 う と
(8.189) と な る.す qjは
な わ ち 前 平 衡 過 程 は い ろ い ろ な 幅qjの
最 も寿 命 の 長 い モ ー ドで,平
少 し 調 べ る.和
モ ー ド に 分 解 さ れ る.最
衡 過 程 に 最 も 近 い.次
公 式(8.182)と(8.184)を
使 っ て(8.186)を
にQの
小の
固有 値 を も う
書 き直 す と
(8.190) と な る の で,(8.187)を
使 うと
(8.191) と 変 形 さ れ る.も
しtr(Tm)が
小 さ く無 視 で き る と す る と,変
換
(8.192)
は 最 低 の 固 有 値q1=0を で は(8.10)に
よ り,エ
近 似 され る.tr(Tm)を
与 え,寿
命 無 限 大 で 平 衡 過 程 に 対 応 す る.平
キ シ ト ン 数 は
を ピ ー ク と し たGauss分
小 さ な 摂 動 と 考 え,(8.192)を(8.191)に
衡 状態 布で
代 入 す る と,
(8.193) を得 る.こ れ が 複 合 核 の 幅 で,透 過 係 数 の チ ャ ネ ル 和 の 平均 に比 例 し,分 散 幅 は 寄 与 しな い. 複 合核 は6,7章 Q空
で 論 じ られ,7.7節
に お い て 要 約 し た よ う に統 計 は 考 えず に
間 の 有 効 ハ ミル トニ ア ン の対 角 化 あ る い は 大 規 模 殻 模 型 の 計 算 に よ り求 め
られ,GOEの
よ うな統 計 的 計 算 と合 う結 果 を得 て い た.こ
こで は 初 め か ら統
計 を仮 定 しマ ス タ ー 方程 式 を解 い た結 果,一 番 長 寿 命 の モ ー ド と し て得 られ た の が 複 合 核 で あ っ た.そ れ は す べ て のエ キ シ トン状 態が 状 態 数 に従 い統 計 的 に 分 布 し(8.192),そ
の 寿 命h/q1は
8.7
殻 模 型 の 結 果(7.173)と
TDHF,
重 イオ ン反 応 につ い て は 現 象 論,輸
Vlasov方
一致 した.
程 式
送 方 程 式 に よ る もの,そ れ と本 節 に 述 べ
る 微 視 的 な もの が あ る.現 象 論 は8.2節 で 簡 単 に説 明 し た.輸 送 方 程 式 に よ る もの に は い ろい ろ あ る が,前 節 のMSDと 重 イ オ ン に 応 用 し た もの で,こ
れ をTDHFか
ら始 め る.エ ネ ルギ ーが 高 くな る と
古 典 版 で あ るVlasov方
程 式 が 使 わ れ るが,そ
ら導 く.高 エ ネ ル ギ ー で は 核 子-核 子 衝 突 が 重 要 とな る の で,そ
れ を取 り入 れ,さ
ら に エ ネ ル ギ ー が 高 くな る と方 程 式 を ま と もに 数 値 的 に 解 く
こ とは 困 難 に な り,Monte
Carloの 方 法 を使 う.核 子 を 点で は な く波 束 で 表 し,
量 子 効 果 の 一 部 を い れ た のがQMDで,こ TDHFの
方法を
こで は省 略 す る.本 節 で は,低 エ ネル ギ ー で 適
用 され る,平 均 場 を 基 礎 とす るTDHFか 古 典 近 似 が よ くな り,TDHFの
ラ ン ダ ム 行 列 に よるMSCの
歴 史 は 古 くDiracに
時 に 一 体 のHartree-Fockポ
れ も最 後 に 簡 単 に 触 れ る.
は じ ま る[42].こ れ を重 イオ ン衝 突 に 応 用 した
テ ン シ ャルが 時 間 的 に ど う変 わ っ て い くか を 初 め
に 描 い て み よ う.初 期 状 態 で は 二 つ の 一 体 ポ テ ン シ ャ ル は 形 を変 えず そ の 二 つ の 重 心 は近 づ い て い く.二 つ の ポ テ ン シ ャ ルが 接 触 を は じ め る と,初 め の 二 つ の 球 に近 い 形 か ら一 つ の 球 形 に 近 い 形 に段 々 と変 化 す る.し ば ら くす る と また 2部 分 に 分 か れ て 飛 び 去 る.し か し 各 々の イ オ ンに 対 す る ポ テ ン シ ャ ル の 形 は
一 般 に は静 止 し て い な い で ,振 動 す る こ と もあ る.こ の と き の波 動 関 数 は 時 間 に よ り変 化 す る 一 つ のSlater行
列 式 で 表 され,
(8.194) 独 立 粒 子 波 動 関 数 φα(r,t)は 時 間 に依 存 す る と し,こ れ を 自己 無 撞 着 に決 め る の がTDHFで
あ る.そ の 方 程 式 は 次 の 量
(8.195) の 変 分 原 理 か ら求 め られ る.ハ ミル トニ ア ンHのSlater行
列 式 に よる 期待 値 は
(8.196) で あ る の で,Iの
φ*α に つ い て の 変 分 の 停 留 値 を求 め る と
(8.197) の 方 程 式 を 得 る.Hartreeポ
テ ンシャルは
(8.198) で,Fockポ
テ ン シ ャル は
(8.199) で 与 え ら れ て い る.こ の 中で 密 度 行 列 は
(8.200) に よ り表 さ れ て い る.TDHFの 共 役 に φα を か け,辺
方 程 式 は(8.197)に
φ*αを 掛 け,(8.197)の
複素
辺 引 き 算 を し た も の を α に つ き和 を と り,
(8.201)
と い う密 度 行 列 の 方 程 式 に書 き換 え られ る.こ
こでUはHartreeとFockポ
テ
ン シ ャル の 和 で あ る. TDHFの
方 程 式 を解 くに は初 期 の 波 動 関数 を与 え な け れ ば な らな い.こ れ に
は まず 衝 突 前 の 二 つ の 核 の 波 動 関 数 を 静 的Hartree-Fockの
近 似 で 求 め,次
に
二 つ の 核 の 距 離 を十 分 離 し,一 定 の 速 度 で 互 い に 近 づ く よ うな 波 動 関数 を つ く る.こ の と きの衝 突 径 数 か ら相 互 運 動 の 角 運 動 量 が 決 ま る.こ の 初 期 条 件 の 下 で 方 程 式 を解 い て い く と,二 つ の 核 が 近 づ き,接 触 し,一 つ の 塊 に な る.こ れ が そ の状 態 を 保 ち な が ら振 動 回 転 をあ る時 間 た とえ ば2,3回
転 ぐ らい 続 け れば
核 融 合 反 応 が 起 こ っ た とみ な す.も し 二 つ の 核 に す ぐ離 れ れ ば 深 非 弾 性 衝突 が 起 こ っ た と考 え る.こ の と き二 つ の 核 は 通 常 励 起 状 態 に あ る.二 つ の 核 の運 動 方 向 か ら角 分 布 を,ま た そ の 相 対 運 動 の エ ネ ル ギ ーか ら エ ネ ル ギ ー 損 失 が,ま た 二 つ の 核 の お の お の の 質 量,荷 電 量 か ら 質量,荷
電 分 布 が 求 め られ る.し か
し初 期 条 件 を決 め る と それ に 対 応 した 一 定 の 反 応 が 起 こ る の で,量 子 力 学 を全 面 的 に 使 った と きの 波 動 関 数が い ろ い ろの 型 の 反 応 の振 幅 の和 に な っ て い る の と異 な る.そ れ でTDHFは TDHFの 積,深
古 典 近 似 とみ な され る.
計 算 は 比 較 的低 エ ネ ル ギ ー10MeV/A以
下 で 行 われ,核
非 弾 性 衝 突 の 断面 積 な ど 実 験 と合 う結 果 が 得 られ て い る.ま
融 合 断面 た生 成 核 の
平 均 質 量 や 荷 電 数 も よ く合 っ て い る.し か し 質 量 や 荷 電 の分 布 の 広 が りにつ い て は過 小 評 価 して い る.TDHFは 結 果 を 与 え るが,分
布 幅 の よ うな 二 体 以 上 の 演 算 子 の 期 待 値 に は よい 結 果 が 得
られ て い な い.TDHFの
8.7.1
Vlasov方
平均 場 近似 な の で 一 体 演 算 子 の期 待 値 は よ い
計 算 の 一 例 を 図8.13に
示 す.
程 式
エ ネ ル ギ ーが 高 くな る とTDHFの
計 算 は 難 し くな る 一 方,古 典 近 似 が よ く
な る.古 典 論 の 方 程 式 はVlasov方
程 式 と よば れ,TDHFの
う に し て 導 くこ とが で きる[44].密
度 行 列 のWigner変
方 程 式 か ら次 の よ 換
(8.202) を使 ってTDHFの
方 程 式(8.201)のWigner変
換 を行 うが,右 辺 の 第1項[K,ρ]
の 計 算 に は 運 動 量 表 示 の 方が 容 易 で あ る.そ れ で 運 動 量 表 示 の 密 度 行 列 は
(8.203)
図8.13
84Kr+209Bi重
イオ ン 衝 突 のTDHFに
よ る計 算 結 果(Elab=600MeV,l=140)
計 算 は2次 元 空 間(軸 対 称 を仮 定 し,回 転 の 影響 は コ リオ リ力 の 形 で 入 れ た) で 行 い,時 間 の 単 位 は10-21s[43].
で 表 せ るの で,Wigner変
換 した密度行列 は
(8.204) と表 す こ とが で き る.こ れ を使 う と
(8.205) と な る が,k=p+q/2,k'=p-q/2と
変 数 をpとqに
変 換 す る と,
(8.206) と な る.(8.204)を
使 うと
(8.207) を 得 る.次
に(8.201)右
辺 第2項
のWigner変
換は
(8.208) と な る.一
体 ポ テ ン シ ャ ル と し て 局 所 的 な
を と る と,
(8.209) とな る.一 体 ポ テ ン シ ャ ル のrに
よ る 変化 は小 さい と し て1次
近似
(8.210) を使 う と
(8.211) が 得 られ る.し た が ってTDHF方
程 式(8.201)は
(8.212) と な る.こ れ がVlasov方
程 式 で あ る.こ れ はTDHF方
程 式 の古 典 近似 で あ っ
て,核 子-核 子 の 衝 突 の 影 響 は 入 っ て い な い. 一 方
,Boltzmann方
程 式 は
(8.213) で 与 え られ る.右 辺 は 衝 突 項 で,次 の2項 し,そ れ が も う一 つ の 核 子2と
か ら な る.核 子1の
衝 突 し て1'と2'に
衝 突 に よ り減 少 す る.こ れ と反 対 に1'と2'が 増 加 す る.こ のfの
密 度 行 列 をfと
な っ た とす る と,fは
衝 突 し て1と2に
この
な る と,fは
増 減 を 散 乱 断 面 積dσ/dΩ を使 って 書 くと
(8.214) こ こ でυ12は
衝 突 す る 二 核 子 の 相 対 速 度 で あ る.(8.214)で
グ 効 果 が 入 っ て い る が,も
と のBoltzmann方
の 右 辺 の 終 状 態 に 対 す る1-fを1で
はPauliブ
ロ ッキ ン
程 式 で は 入 っ て い な い.(8.214)
置 き 換 え る と,Boltzmannの
衝突項が
得 ら れ る. 平 均 場 と 衝 突 項 を 入 れ た 輸 送 方 程 式(8.214)はBoltzmann-UehlingUhlenbeck
(BUU)方
式 と 呼 ば れ て い る.こ
程 式 あ る い はVlasov-Uehling-Uhlenbeck
(VUU)方
程
れ ら の 方 程 式 を 解 い て 重 イ オ ン 衝 突 が 研 究 さ れ て い る.
そ の 中 で い ちば ん 簡 単 なの は カ ス ケ ー ド模 型 で,平 均 場 を無 視 し た 古 典 模 型 で あ る.初 期 条 件 と して 重 イオ ン を表 す 二 つ の 球 の 中 に核 子 を ラ ン ダ ム に 分 布 さ せ る.与 え られ た 衝突 径 数 で 衝 突 す る よ うに 二 つ の イオ ン に 速 度 を与 え て,こ の 系 の 時 間 的 変 化 を み る.二 つ の イ オ ンが 接 近 す る と核 子-核 子 相 互 作 用 が 働 き,二 核 子 は 散 乱 す る.こ の散 乱 を純 古 典 的 に解 く と核 子 の 散 乱 方 向 は確 定 す る.Pauliブ
ロ ッキ ング 効 果 は 入 らず,散 乱 も古 典 的 で あ る.
カ ス ケ ー ド模 型 に平 均 場 の 影 響 を 入れ た の が 分 子動 力 学 模 型 で,さ
らに 量 子
効 果 を 近 似 的 に入 れ る と量 子 動 力 学 模 型 と な る.こ れ らの 模 型 に つ い て は す で に5.4.2項 に 述 べ られ て い る.
文
献
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参
考
図
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Theory",John
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Oxford
University
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Press,1965;高
版 衝 突 の 理 論"(上
柳 和 夫,市
・Ⅰ),(上 ・Ⅱ),(下
砂 川 重 信:"散
乱 の 量 子 論",岩
笹 川 辰 弥:"散
乱 理 論",物
of Atomic
理 学 選 書20,裳
川 行 和,島
・Ⅰ),(下
波 全 書298,岩
Collisions",3rd.ed., 村 勳 共 訳:"新
・Ⅱ),吉
岡 書 店,1975.
波 書 店,1977. 華 房,1991.
原子 核の構造 A.Bohr
&
B.R.Mottelson:"Nuclear
1969,1975;A.ボ 国 晴 共 訳:"原 矢 崎 紘 一,大
高 田 健 次 郎,池
ー ア,B.R.モ 子 核 構 造1",講 西 直 樹 共 訳:"原
野 上 茂 吉 郎:"原
Structure",vol,Ⅰ,Ⅱ,W.A.Benjamin,
子 核"基
ッ テ ル ソ ン 著,有 談 社,1979;有
馬 朗 人,寺
子 核 構 造2",講
談 社,1980.
礎 物 理 学 選 書13,第6版,裳
田 清 美:"原
馬 朗 人,市
子 核 構 造 論",朝
村 宗 武,久
澤 徳 雄,市
保寺
村 宗 武,
華 房,1980.
倉 物 理 学 大 系18,朝
倉 書 店,2002.
核反応 一般 河 合 光 路:"原
子 核 論"第
Ⅲ部,高
学 の 基 礎 」(第2版)第9巻,岩 H.Feshbach:"Theoretical Wiley
&
市 村 宗 武,坂 第9巻,第 な お,導
木 修 二,丸
森 寿 夫 編,岩
波 講 座 「現 代 物 理
波書 店,1978. Nuclear
Physics-Nuclear
Reactions",John
Sons,1992. 田 文 彦,松 Ⅲ部,岩
柳 研 一:"原
子 核 の 理 論",岩
波 書 店,1993.
入 的 な 著 書 と し て 次 の も の を 挙 げ て お く.
波 講 座 「現 代 の 物 理 学 」
G.R.Satchler:Introduction
to
Nuclear
Reactions,2nd.ed.,MacMillan
Education,1990. 河 合 光 路:"核
反 応",パ
リ テ ィ 物 理 学 コ ー ス,丸
善,1995.
直 接 反 応 G.R.Satchler:"Direct N.Austern:"Direct
Nuclear Nuclear
高 エ ネ ル ギ ー の 直 接 反 応,光 野 上 茂 吉 郎 編:新
Reactions",Oxford Reaction
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University Wiley
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核 反 応 に つ い て は 次 の も の が あ る.
編 物 理 学 選 集25「
高 エ ネ ル ギ ー 核 反 応 」,日
本 物 理 学 会,1960.
索
Barschallの BCS状
実 験 3,84
G行 列
態 204
Bohigasの
124,125,131,140,145
Gamow因
推 測 326
Boltzmann方
引
程 式 379 程 式 379
公 式
Butlerのstripping理
換 8,9
Gell-Mann-Goldbergerの
Boltzmann-Uehling-Uhlenbeck方 Breit-Wignerの
子 78
Galiei変
236,244,251 論 2
Glauber近
位 相 差(phase
214
shift)関
cumulant展 optical
CDCC
Grassmann
位 相 差 64,238
数
散 乱 振 幅 64,255
積 分 301,303
302,338
Green関
数 45,66,192,218,223,250,301,
304,365
置 換 エ ネ ル ギ ー 270
Greenの
波 動 関 数 63-65,238
CRC
232
数 230
Coulomb
Sommerfeldパ
定 理 240
ラ メ タ ー 63,238 Hartreeポ
212,213
テ ン シ ャ ル 376
Hauser-Feshbachの DWBA
Hubbard-Stratonovitch
断 面 積 167
変 換 305,320
展 開 156,217
prior
form
DWIA
140,
Eikonal近
156,163 identity
二 次 の ―
変 数 338,371
156,163
form
post-prior
理 論 307
公 式 309,316
156,352,363
post
数 230
開 232 limit
profile関
障 壁 14,76-78,89,269,314
恒 等 式 45
似 227
157
IAS
ア イ ソ バ リ ッ ク ・ア ナ ロ グ 状 態 を 見 よ.
205 Jacobi座
144
似 223
標 系 座 標 系 を 見 よ.
Laneポ
テ ン シ ヤ ル 270
Ericson
Levinsonの
の 公 式 334
Lippmann-Schwinger方
定 理 284
の ゆ ら ぎ 323
Lorentz型
重 み 関 数 22,253
Lorentz変
換 8,121
程 式 44,45
Feshbach 射 影 演 算 子 107,150,247
M3Y
有 効 ハ ミ ル ト ニ ア ン 108,150,249
Markoff過
Fermiガ
ス 模 型 145,367
Moller因
Fermi分
布 328
Monte
fm
101,131,132,145 程 343 子 121 Carlo法
224,305,315,336,375
14
Fokker-Planck方
程 式 339,343,344
nuclear
Ramsauer効
果 284
Perey効 Perey
果 105 factor
Poisson分
ア
105
布
行
296
Porter-Thomas分
ア イ ソ バ リ ッ ク ・ア ナ ロ グ 状 態(IAS)
布 300
246,270-273 Q値
ア イ ソ ベ ク トル 単 極 子 274
6
粗 い 構 造 3,84 R行
ア ン サ ン ブ ル 平 均 371
列 理 論 237,238
Rutherford散 RPA
鞍 点 338,371
乱 64
鞍 点 法 290,305,318,320
365
SCDW
移 行
225
運 動 量 9,159,219,222,360
Schrodinger 描 像
エ ネ ル ギ ー 74,218,219,223,360 50 角 運 動 量 166
方 程 式 25,35
位 相 体 積 73 一 段 階 過 程 157
Serberの
描 像 2
Sinaiの
玉 突 き 326
Sommerfeldパ S行 列
因 果 律 22,279
ラ メ タ ー 63,238
イ ン パ ル ス 近 似 119,120,136,140
53,55,238,239,250,262
角 運 動 量 表 示 62 共 鳴 公 式 253
平 面 波―
141
歪 曲 波―
140,144
相 反 性 57,251 運 動 の 恒 量 29
対 称 性 251 ユ ニ タ リ ー 欠 損 256
運 動 量 中 心 系 座 標 系 を 見 よ.
ユ ニ タ リ
運 動 量 の 整 合
TDHF T行
ー 性 56,57,59,62,250
エ キ シ トン 334,364,375,379 数 261,334,336,345
列 48,54,61,68
模 型 345,346,349
角 運 動 量 表 示 62
エ コ ー 280,281,284 相 互 性 58 反 対 称 比
エ ネ ルギ ー 160,163
和 則 57 post prior
form
153,156,163
form
Vlasov方
identity
殻 外(off
energy
shell)
121
殻 上(on
energy
shell)
121
半 殻 外(half
153,156,163
post-prior
159
157 平 均
18-22,109,151
内 部― 程 式 375,377,379
Vlasov-Uehling-Uhlenbeck方
off shell)
の ず れ 239
6,36
エ ル ゴ ー ド性 程 式 379
317
遠 心 力 障 壁 76 エ ン ト ロ ピ ー 288,292,327 Watsonの Wigner変
方 程 式 換
情 報―
ロ ッ ト 341
Woods-Saxon型
ポ テ ン シ ャ ル 92,282,296 98
応 答 関 数 146,147,360 ス カ ラ ー― ス ピ ン― 線 形― zero-range近
327
378
Wilczynskiプ
対 称―
116
似
158,186,201
367 368
333,360,362,365
温 度 288,292,314,327
121
16,237,
双 極 267
カ
行
中 性 子 幅 269
回 転 29
組 み 替 え 5
運 動 の 励 起 173
チ ャ ネ ル 結 合 法(CRC)
外 部 領 域 34,237 カ オ ス 325,328 量 子 カ オ ス 326
K系
CRCを
見 よ.
反 応 175
形 状 因 子
138,158
326
化 学 ポ テ ン シ ャ ル 288
光 学 定 理 57,86
角運動量
光 学 ポ テ ン シ ャ ル 3,14,134,346
移 行 164 の 整 合 159
運 動 量 表 示 136,138 概 念 図 89
角 運 動 量 表 示 59,61,237,249 散 乱 振 幅 の―
自 動 探 索 90
62
不 定 性 91 一 般 化―
断 面 積 の― 78 S行
列 の―
62
T行
列 の―
61
広 域―
109
,134,135
91,101
光 学 模 型 3,83,236,253
拡 散 係 数 344
古 典 近 似
281,294,325
核 内 カス ケ ー ド模 型 223,314 核 の ポ テ ン シ ャ ル 281
サ
行
角 分 布 7,172,186,220,311 確 率 伝 搬 関数 374
最 近 接 距 離
確 率 平 衡 方 程 式 372
最 適 運 動 量 近 似
過 剰 中性 子 270
酒 瓶 型 ポ テ ン シ ャ ル 92
可 積 分 系 325
座 標
荷 電 交 換 反 応 140,174,270
122-124,136
回 転 変 換 29
荷 電 独 立 性 270
鏡 映 変 換 29
換算幅 振 幅 241,243
13,313
内 部 32
Galilei変
換 8,9
総 和 則 245
Lorentz変
慣 性 能 率 292
座 標 系 8
完 全 融 合 反 応 339
運 動 量 中 心 系 12
貫 通 因 子 239,244,258
実 験 室 系 8,9-12
換 8,121
重 心 系 8,9-12,38,39
吸 熱 反 応 6
Jacobi座
球 面 波 展 開 60,62,65
作 用 積 分 283
標 系 12
鏡 映 変 換 29
散 乱
強 結 合 近 似 373
位 相 差 276,281,282
強 度 関 数 87,258,263,264,355
境 界 条 件 43
239,250,262
行 列 53
規 格 化 され た 264,266 境 界 条 件 42,43,64,152,241,326
剛 体 球 239
共 鳴 1,281
時 間 の 遅 れ 274,277,279,282
共 鳴 幅 分 布 関 数 300
時 間 の 進 み 279
共 鳴 領 域 17
振 幅 21,42,48,61,62,68
局 所 エ ネ ルギ ー 近似 102 局 所 波 数 281
Wignerの
上 限(時
局 所 密 度 近似 125,144 巨 大 共 鳴 16,267
間 の 進 み)
残 留 相 互 作 用 153,307,314,328,334,337
時 間 反 転 29,243,251
280
時 間 を 移 す ユ ニ タ リ ー 演 算 子 50
相 関 エ ネ ルギ ー 323
し き い 値 6,12
相 関 関 数 324
自 己 相 関 関 数 323
増 強 因子 322
実 験 室 系 座 標 系 を 見 よ.
相 互 作 用描 像 50
射 影 演 算 子
相 対 運動 量 11,33
107,133,150,247,253
P空
間 247
相 対 論 的光 学 ポ テ ン シ ャル 97
Q空
間 247
双 直 交基 底 243,252
弱 結 合 近 似 373
相 反 定理 57,58
自由
粗 視 化 342
運 動 34
タ
行 程 224
行
ハ ミ ル トニ ア ン 28
大 正 準 集 団 288
重 心 運 動 の 分 離 27,28,33,37,38 系 座 標 系 を 見 よ. 集 団 励 起
多重 微 分 断 面 積 7 畳 み 込 み ポ テ ンシ ャル 87,101,136 多段 階
171-173,209
重 粒 子 ス ト リ ッ ピ ン グ 176 準 位 間 隔 分 布 297,299,326
過 程 223,345 直 接 過 程 149,217,333,351,352 統 計 過 程 333
準 位 密 度 287,301,306 一 粒 子 294
複 合核 過 程 333,371 複 合核 反 応 351
瞬 間 近 似 352,356
DWBA
準 弾 性 散 乱 219,341
353
脱 出 幅 16,263,268,272,273,347
状 態 密 度 287-290
弾 性 散 乱 5
衝 突 係 数 228
形 の―
衝 突 点 222,224 深 非 弾 性 散 乱 339,341,342
準―
85,134 219
複 合―
85
断 熱 近似 210,215,274,352,358 ス カ ラ ー 応 答 367
断 熱 的 ス イ ッチ ング 51
ス ト リ ッ ピ ン グ 5,176,177,181,197 一 核 子―
181
二 核 子―
197
三 重微 分―
ス ピ ン 応 答 368
76
三 粒 子 チ ャ ネル の―
ス ピ ン ・ カ ッ ト オ フ ・パ ラ メ タ ー 293,335 ス ペ ク トル の 剛 性
断 面 積 6,69 一 般 形 73
299,326
全―
全 弾性 散 乱― 全 反応―
正 準 分 布 288
7
7
生 存 確 率 266,356
多 重微 分― 二 重微 分―
遷 移
二 粒 子 チ ャネ ル の―
確 率 70,346,350,353,354
微 分―
7,78,169,171
行 列 T行
包 括―
217
列 を 見 よ.
75
7
7 7,75 74
密 度 220
チ ャ ネ ル 5,42
漸 近
ス ピ ン 41,255
形 48,49,67 振 幅 187
内 部 エ ネ ル ギ ー 36 波 動 関 数 240
領 域 42 選 択 規 則
166
前 平 衡 過 程
15,217,225,333,342,345,373
前 方 散 乱 57,86
領 域 34 チ ャ ネ ル結 合Born近
似 212
チ ャ ネ ル 結 合 法 156,206
ノ ッ ク ・オ ン 176
方 程 式 解 法 206,208,209 組 替 え―
212,213
離 散 化 連 続― 中 間 共 鳴
ハ
218
行
15
超 対 称
配 位 34
行 列 303
配 位 空 間 34
行 列 式 303
媒 質 効 果 124 パ イ 中 間子 凝 縮 371
ト レ ー ス 303 ベ ク トル 303,319
波 束 26,51,274
理 論 301,302,338
裸 の(bare)ポ
直 接 過 程 2,15,149,236,316,333
発 熱 反 応 6
角 分 布 2,172,186,220
波 動 行 列 53,142 ハ ミル トニ ア ン
対 相 関 293
座 標 表 示 30
テ ン シ ャ ル 207
対 称 性 29 不 変 性 29
停 留 値 290,305,320,376 天 体 核 物 理
自 由―
196
28,31
内 部 運動―
因 子 78
27,32
複 合 粒 子 の― 有 効―
透 過
反 対 称 化 79,81,82,130,131,160,163,170, 178,190
行 列 256,316,318,346,372 係 数 256,259,308 等 価 局 所 ポ テ ン シ ャ ル 97,102,104 動 的 偏 極 ポ テ ン シ ャ ル 110,253,257 戸 口 状 態
32
108,150,249
15,236,261,263,265,267,272
バ ー ン 6 パ リテ ィ 29,167 反対 称 化 分 子 動 力 学(AMD)
225
反 応 粒 子 4
共 鳴 16
半 古 典 歪 曲 波 近 似(SCDW)
ド リ フ ト速 度 344
221
ト ン ネ ル 効 果 14
非 干 渉 274 ナ
行
非 局 所 型 ポ テ ン シ ャル 90,96,102 微 細 構 造 84
内部
非 相 対 論 的 ス ケ ー リ ング 因 子 369
運 動 28 エ ネ ル ギ ー 6,36
非 弾 性 散 乱 5,171,209 ピ ッ ク ・ア ップ 176,177,181,197
座 標 32,157
核 子―
波 動 関 数 35,40
二 核 子―
ハ ミ ル ト ニ ア ン 27,32,35
非平 衡 過 程 333
領 域 34,237
標 的 核 4
181 197
表面 振 動 励 起 172 二 次 のDWBA 2次
203
モ ー メ ン ト 305,337
複 合 核 325,375
二 重 畳 み 込 み ポ テ ン シ ャ ル 101
過 程 2,15,235,325
二 重 微 分 断 面 積 7,75
共 鳴 237
二 段 階 過 程
形 成 断 面 積 87
2点
205
関 数 372
寿 命 236,252,322,325,375
入 射 エ ネ ル ギ ー 4
状 態 15
入 射 チ ャ ネ ル 5
模 型 1,235,308
熱 浴
複 合 弾 性 散 乱 85 複 合 粒 子 4
288
複 素 直 交 変 換 252 部 分 準 位 密 度 334,337
有 効 質 量 105
部 分 幅 244
運 動 量 表 示 126
振 幅 244
近 似 の 誤 差 125
分 解 能 8
座 標 表 示 128 ス ピ ン縦 ・横 方 向成 分 127
有 効 相 互 作 用 101,117,261
分光学的
G行 列―
因 子 192-195,202
125,128,140,144
Love-Franeyの―
解 析 190
分 散 関係 105,111
M3Y―
130
131,132,144
分散 幅 16,262,265,272,346,356,373
有 効 ハ ミル トニ ア ン 110,150
分 配 関 数 289
有 効 ポ テ ン シ ャル 281 ゆ らぎ 20
分 離 エ ネ ル ギ ー の 方 法 191
ラ
平行 移動 29
行
平 衡 過程 333,375 乱 雑 位 相 近 似 365
平 面 波 34 平 面 波 イ ン パ ル ス 近 似 141 平 面 波Born近
似 367
ラ ン ダ ム 行 列 296,317,342 EGOE 307 GOE
変換 反応 5
298,300,301,312,325-327,329,
334
偏 極 7, 8 偏 極 伝搬 関 数 147,362,366,368
GSE GUE
329 329
ラ ンダ ム 変 数 304,317
崩壊 曲 線 279 振 幅 251
離 散 化 連 続 チ ャ ン ネル 結 合 法(CDCC)
崩壊 確 率 308,315
流 束 6,69,81,259
放 出 粒子 4
量 子 分 子 動 力 学(QMD)
母 関 数 301,318 ポ テ ン シ ャル 障 壁 281
励 起 関 数 7
225
連 続 状 態 へ の 遷 移 145,216 マ
行
連 続 状 態 に 埋 ま っ た束 縛 状 態 15 連 続 方 程 式 259
摩擦
連 続 領 域 17
力 340 冷 却 法 226 マ ス ター 方 程 式 315,339,342,351
廊 下 状 態 15,261,264 ワ
密 度 259 密度 行列 146,362-364,376
行
歪 曲波 143 歪 曲 波 イ ンパ ル ス 近 似 140,144 歪 曲 波 ボ ル ン近 似 156
無 反 挑 近似 181
歪 曲ポ テ ン シ ャル 143,152 ヤ 有 限 レ ン ジ の 補 正 189
行
214
著者 略歴 河
合 光
1930年 1953年 1976年 現 在
路
吉
東 京都 に生 まれ る 東 京大学 理学部 卒業 九 州大学教 授 九 州大学 名誉教授 理 学博士
田 思 郎
1923年 東 京都 に生 まれ る 1949年 東 京大 学理学 部卒業 1974年 東 北大 学教 授 現 在 東 北大学 名誉教授 理 学博 士
朝倉物理学大系19 原子核反応論 2002年11月25日
定価 は カバー に表示 初 版 第1刷
2005年3月25日
第2刷
著
者 河
合
光
路
吉
田
思
郎
発 行 者 朝
倉
発 行 所
ISBN
無 断 複 写 ・転 載 を 禁 ず 〉 4-254-13689-7
邦 倉
造 書
店
東 京 都新 宿 区新 小 川町6-29 郵 便 番 号 162-8707 電 話 03(3260)0141 FAX 03(3260)0180 http://www.asakura.co.jp
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C
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