片 桐 重 延 監修 片桐重延 ・ 室 岡和 彦 共著
R〈 日本 複 写 権 セ ン ター 委託 出版 物 〉 本 書 の全 部 また は一 部 を無 断 で複 写 複 製(コ ピー)す る こ とは,・著 作 権 法上 で の例 外 を除 き,禁 じ られ て い ます 。 本 書 か らの複 写 を希望 さ れ る場 合 は,日 本 複 写権 セ ン ター(03-3401-2382)に ご達 絡 くだ さい。
序
文
平 成6年
度 よ り実 施 され た新 しい 高校 数 学 で は,コ
ン ピュ ー タ に関 す る取 扱 い
が い ま ま で 以 上 に重 視 され て い る。 そ れ は,こ れ か ら コ ンピ ュー タに つ い て,ま た,コ
ン ピ ュー タに 関連 す る 「数 学 」 に つ い て学 ぼ う とす る人 々 に と って学 びが
いの あ る もの で あ る。 元 来,日 本 の数 学 教 育 は,戦 後 長 い 間大学 進 学者 の ため の, あ る い は,将 来 特 に数 学 を必 要 とす る人 々 の た め の もの で あ った。 しか し,数 学 が情 報 化,高
度 技 術 社 会 の た め に さ ま ざ ま なか た ち で関 与 して き た現在 ,も
単 に,将 来,数
はや
学 を特 に必要 とす る人 々 や,理 工 系 を志 す 人 々 の ため の もの で は
な くな り,よ り広 い意 味 で の知 的 ユ ー ザ ー と いわ れ る人 々が 数学 を学 習 す る時 代 が きた の で あ る。 この こ と は,「 中 等 教 育(中 学 ・高 校)に
お ける数 学 的 リテ ラー
シ ー は,情 報 化,高 度 技 術 社 会 に お け る一 般 的 知 識 人 が もつ べ き標 準 的 な教 養 を 目指 す こ とに な る」(数 学教 育 の会)の 指 摘 に も端 的 に示 され て い る。 ま さ に, コ ン ピュ ー タ関 連 の数 学 は,こ れ か らの 生涯 学 習 の基盤 と して の数学 で あ るとい っ て も過 言 で は な い。 本 シ リー ズ(全10巻)は,コ
ン ピュー タ関 連 の 数 学 を 次 の 各 分 野 に分 け て 企
画 した。 そ れ は既 刊 の 「数 学 と コ ンピ ュー タ シ リー ズ(全8巻)」 現 代 向 け に発 展 させ,新
の思 想 を よ り
しい 中等 数 学 の考 え を取 り入 れ た もの で あ る。
第 一 は,
● コ ン ピ ュー タ言 語 と処 理
●BASICに
●BASICに
の 内容 で,コ 数 学A,数
よ る数 学 の 問題 解 法 よ る高 校 数 学 ン ピュ ー タ関 連 の 数 学 を 学 ぶ た め の 基 盤 と新 しい数 学 ,特 に高 校 の
学Bの 内 容 に準 拠 した もの で あ る。BASIC言
語 は,こ
れ らの 教 科 書
の ほ とん どで 使 用 され て い る言語 で あ り,こ れ か ら も数 学 教 育 用 言 語 の主 流 と し て 導 入 さ れ るで あ ろ う。
第二 は ●行 列 と線 形 計 算 ● 数 値計 算 ●確 率 統 計 に そ の特 徴 が見 られ る よ う に,こ れ か らの高 校 数 学,あ
る い は,大 学 初 年 度 の数
学 に取 り入 れ られ るで あ ろ う,行 列,線 形 計 算,数 値 計 算,確 率 統 計 の基 礎 を 目 ざ した。 主 題 の性 格 上,や
や難 解 な 問題 も含 ま れ るが,全 体 を とお して 読 め ば 高
校 生 に も理 解 で き る よ う に心 が け たつ も りで あ る。 い うまで もな く,高 校 現 場 で 数 学Cを 中 心 に これ か らコ ン ピュ ー タ関 連 の数 学 を教 え よ う とす る先 生 方 や,大 学 で これ らの数 学 を平 易 に学 習 しよ う とい う人 々 に と って も有 効 に利 用 で き るで あ ろ う。 第 三 は,
●数 学 ソ フ トに よ る曲線 と図形 処 理
● 数学 ソ フ トに よ る数 式 処 理 と関数
に お いて取 り上 げ た数 学 ソ フ トウ ェ ア に よ る数 学 の展 開 で あ る。 数 学 ソ フ トは い まや ます ます 発 展 し,こ れ か らの数 学 で欠 く こ とので きな い分野 にな りつつ あ る。 図 形処 理 や数 式 処 理,関 数 と グ ラ フの扱 い に つ い て は,単 に中 等 数 学 の み な らず 数 学 教育 や数 学 の研 究 にお いて も有効 な手 段 にな る。 こ こで は,代 表 的 な数 学 ソ フ トにつ い て取 り上 げ,問 題 の解 法 を試 み た。 他 に
● コ ン ピ ュー タ に よ る グ ラ フ ィ ック ス
は,コ ン ピ ュー タ グ ラ フ ィ ッ ク スを そ の基 盤 か ら誰 にで もわ か る よ うにや さ し く 解 説 した もの で あ り,
● コ ン ピ ュー タ に よ る成 績 処 理
は,主 と して 小 学 校,中 学 校,高 等 学 校 に お け る教 科 担 任,学 年 担 任 の 先 生 方 の 学 期 ご との,ま た,学 年 末 の成 績 処 理 とそ の省 力 化 等 につ いて,誰 きる よ うに解説 した 。 また,こ も示 した。
にで も利 用 で
こで は ソフ トウ ェア を利 用 した処 理 方 法 に つ い て
以 上,こ れ か らコ ン ピュ ー タを学 習 す る人,コ
ン ピュ ー タに関 連 す る数 学 を 学
習 し,教 育 しよ うとす る人,数 値 計 算 に習 熟 し数 学 の社 会 に お け る有 効 な活 用 を 図 る人,さ
らに,数 学 の ソ フ トウ ェア を有 効 に利 用 しよ うとす る人 々 に と って,
この 全10巻 の 書 が 座 右 の銘 の ご と く,有 効 に活 用 され る こ とを願 って や ま な い。 な お,多 忙 な 中 を この シ リー ズの執 筆 に あ た られ た 白石 和 夫,高 橋 公,飯 田 健 三,室 岡 和 彦,佐 藤 公 作,志 賀 清 一,山 路 進,金 子 伸 一 の各 氏 に お礼 を 申 し上 げ る と と もに,本
シ リー ズの 出 版 を 企 画 ・推 進 して くだ さ った東 京電 機大学 出版 局,
お よ び終 始 ご助 言 くだ さ った 同編 集 課 長 朝 武 清 実 氏 に深 甚 の 感 謝 を捧 げ た い。 1995年3月
監修 片桐 重延
は じめ に 本 書 で は,行 列 と線 形 計 算 を取 り扱 う。 行 列 と線 形 計 算 は,高 校 数 学 科 に新 た に設 け られ た 「数 学C」 の う ちで,最
も重 要 視 さ れて い る項 目の 一 つ で あ る。 い
まや,高 校 まで の多 くの 人 々が,十 分 に数 学 的 リテ ラ シーを もて る数 学 教 育 の 必 要 性 が 叫 ばれ て い る。 なか で もベ ク トル,行 列 を 中心 に した 数 理 的 な 手 法 は,自 然 科 学 の み な らず,社 会 科 学 や人 文 科 学 の分 野 に も導 入 され,コ
ン ピュ ー タの 普
及 と も相 ま って ます ます そ の必 要 性 を増 して きた。 第1章,第2章
で は,具 体 的 で身 近 な例 を も とに して,行 列 に 表 現 す る こ との簡
潔 さ,抽 象 化 す る こ との優 れ た点 につ い て述 べ る と と もに,そ の 基 本 的 な演 算 法 則 を示 した。 特 に,第2章
で は具 体 的 な現 象 を離 れ て行 列 の演 算 を 一 般 的 なか た
ちで 定 義 し,基 本 的 な数 値 を取 り上 げ て そ の数 学 的 な意 味 を紹介 す るよ うに した。 第3章 で は,連 立 方 程 式 の解 法 に主 眼 を お い て,連 立 方 程 式 の 行 列 表 現,ガ
ウ
ス の掃 き出 し法,最 小2乗 法 と連 立 方 程 式 の近 似 解 につ い て調 べ る。第4章 で は, 行 列 の応 用 と して,ベ
ク トル と行 列 の 問題,1次
変 換 につ い て 取 り上 げ,第5章
で は線 形 計 画 法 につ いて 基 本 的 な問 題 と問題 解 決 の方 法 につ いて 述 べ た。 ま た,全 体 を とお して い くつ か の問 題 につ い て は,具 体 的 に プ ロ グ ラム を組 ん で 実 際 に コ ン ピ ュー タで 問 題 を解 決 す る方 法 を示 した。 なか に は,や や難 解 な問 題 が含 ま れ て い るか も しれ な い が,基 本 的 に は,高 校 数 学,あ
るい は大 学 初 年 度 の数 学 に ね ら いを お いて書 い た もので あ る。 難 しい と
思 わ れ る箇 所 は読 み飛 ば して もよ い か ら,全 体 を とお して そ の意 味 をつ か む よ う に して い た だ きた い。 本 書 が,将 来,数 学 を特 に必 要 とす る人 は も ち ろん の こ と,将 来 の知 的社 会 生 活 に お い て,数 学 的 手 法 を身 に つ け た い と考 え る多 くの人 々 に活 用 され る こ とを 願 って や ま な い。 1995年5月 著 者 し るす
目
次
第1章 行列による表現 1.1 成 績 表 と 行 列 [1]
行 列 の 和,差,実
1
数倍
[2] 行 列 の演 算 法 則(和,差,実 [3]
コ ン ピュ ー タ の利 用
1
数 倍)
4 5
1.2 行 列 の 積 の 表 現 [1]
あ み だ く じと行 列
10 10
[2] あ み だ く じと行 列 の積
11
[3] 逆 引 き あみ だ く じと逆 行 列
12
[4] グ ラフ と推 移 行 列
14
[5]
コ ン ピュ ー タの 利 用
18
1.3 数,式 の 行 列 表 現
21
[1] 数 の 行 列 表 現
21
[2] 複 素 数 の 行 列 表 現
23
[3] 整 式 の 行 列 表 現
24
練習問題
29
第2章 行列と行列式 2.1 行列 の基 本 法 則
31
[1] 行 列 の表 し方
31
[2] 対 称 行 列,交 代 行 列
32
[3] 行 列 の演 算 法 則
33
2.2 い ろ い ろ な 行 列 [1]
い ろ い ろ な行 列
36 36
[2] 行 列 の 多項 式 [3]
38
小行列
39
[4] 零 因 子 とべ キ零 行 列
41
[5] 単 位 行列Eの
43
累乗 根 とべ キ 等 行 列
[6] 群 の構 造
49
2.3 基本変形と行列式
46
2次 の 行 列 式
[1]
[2]
46 48
3次 以上 の 行 列 式
[3] 行 列 式 の 基 本 的 な 性 質
53
[4] 基 本 変形
55
[5]
57
階
数
練習問題
59
第3章 連立方程式の解 3.1 連 立 方程 式の 行 列 表 現 [1]
61
2点 を通 る関数
61
[2] 連 立方 程 式 の表 現;1次
関数
63
[3] 連 立 方程 式 の 表 現;2次
関数
65
[4] 基 本解 と特 殊 解
71
3.2 ガ ウス の掃 き 出 し法
74
[1] 掃 き出 し法 の 意 味
79
[2] 掃 き出 し法 の手 順
76
[3]
78
掃 き 出 し法 の プ ロ グ ラ ム
[4] 掃 き出 し法 の工 夫
80
[5] 掃 き出 し法 の適 用
84
3.3 解 の 近 似 計 算 [1]
最小2乗 法
[2] 誤 差 の処 理
88 88 93
[3] 特 別 な 場 合 の近 似 法
98
練習問題
103
第4章 行列の応用 4.1 ベ ク トル と 行 列 [1]
4.2
104
数 ベ ク トル の 意 味
104 106
[2]
ベ ク トル の 演 算
[3]
ベ ク トル の1次
[4]
1次 結 合 と行 列 式
結 合
108 111
1次 変 換
112
[1]
1次 変 換
[2]
基 本 ベ ク トル の 利 用
113
[3] 回転 の1次 変 換 [4] 道 路 の反 射 板 [5]
フ ラ ク タ ル
4.3 行列 のLU分
116 118 121 123
解
126
[1] 基 本 変 形
127
[2] 軸 の移 動
128
[3]
LU分
[4] LU分
解
129
解 の数 値 計 算
131
134
4.4 固 有 値 ・固 有 ベ ク トル [1]
不 動 点,不
動 ベ ク トル
134
[2]
固 有 値,固
有 べ ク ドル
136
[3] 固 有 値 の 数 値 計 算
140
[4]
142
プログラム
[5] 再 帰 関 係 と固 有 値 練 習問題
142 148
第1章 行列 による表現 線 形 代 数 は,日 常 的 に は多 数 の デ ー タを 一 度 に扱 う とき,移 り変 わ り を 表 す と き に使 わ れ る。 こ の章 で は,日 常 的 な 場 面 で 発 生 した 表 や デ ー タ,移 り変 わ りを 行 列 で 表 して,も と の デ ー タの もつ意 味 や 特 性 を探 り,現 象 を 行 列 に モ デ ル化 す る こ とに 焦 点 をあ て る。
1.1 成 績 表 と 行列 成 績 表 の デ ー タは数 だ けを 取 り出 し行 列 と して表 現 され る。 そ の デ ー タを も と に行 列 の和,差,実 [1]
数 倍 を 求 め る計 算 を 行 い,基 本 的 な性 質 を 調 べ て み よ う。
行 列 の 和,差,実
数倍
あ る高 校 で は,各 学 期 の 評 価 を10段 階 で 行 う。 あ る ク ラ ス の 生 徒 全 員 の 成 績 一 覧 表 は,数 が 生 徒 の 人 数 分 の 行,評 価 した科 目数 分 の列 が 並 ん で い る。例 えば, 表1.1 一 学 期 の 成績
表1.2 二 学 期 の成 績
A,B,C,D,E君
と い う5人
の 生 徒 の,国
成 績 が そ れ ぞ れ 表1.1,表1.2の
と い う 。 ま た 例 え ば,行 成 分 と い う 。 下 の5×3行
理,数
学Ⅰ の一 学 期,二
学 期 の
よ うで あ っ た と い う。
こ の 表 で わ く を 取 り去 り,数 り が で き る 。 こ れ を5×3型
語Ⅰ,地
だ け 取 り 出 せ ば 下 の よ う に5行3列
の 行 列 ま た は5×3行
列 の 第2行3列 列 で,第1,1成
列 と い い,各
目 の 成 分 の こ と を,そ 分 は と も に8で
の数 の ま と ま 数 の こと を成 分 の 行 列 の 第2,3
あ る。 行 列 の 中 の 成
分 の 位 置 が こ の よ う に して 指 定 さ れ る。
コ ン ピ ュー タ処 理 で デ ー タを処 理 す る と き,い
くつ か の 数 量 を 行 列 や数 ベ ク ト
ル の形 で 同 時 に取 り扱 う こと が多 いが,こ の よ うな 量 の こ とを 多 変 量 とい う。 上 の行 列 で 一,二 学 期 の平 均 を計 算 す る と きの 基 本 的 な 性 質 を 調 べ て み よ う。 (1) 和 の計 算 行 列 の和 は,次 の よ うに同 じ位 置 の成 分 ど う しの 加 法 で 得 られ る。
(2) 実 数 倍 の計 算 成 績 の平 均 は,前 で求 め た 和 の 行 列 に0.5を か け る計 算 で,そ
れ は各成 分 に
0.5を か け て得 られ る。 これ を行 列 の 実 数 倍 と い う。
(3) 行 列 の差 と零 行 列 行 列 の差 は,行 列Bが をA+(−B)と
特 に,同
あ っ た と き−B=(−1)×Bと
し,行 列 の差A−B
考 え れ ば,行 列 の差 は各 成 分 ど う しの差 に な る。
じ行 列AとAの
差 はす べ て の成 分 が0に な り,こ れ を 零 行 列 と い う。
零行列
・行 列 と行 列 の和 は,各 成 分 ど う しの数 の加 法 で 得 られ る。 ・行 列 の和 は,型 が 一 致 して い る必 要 が あ る。 ・行 列 の実 数 倍 は,各 成 分 を 実 数 倍 して 得 られ る。 ・行 列 と行 列 の差 は,各 成 分 ど う しの数 の減 法 で 得 られ る。 この計 算 例 か らわか る よ うに,行 列 は多 くの デ ー タを 一 度 に 扱 う と きに 使 わ れ る。 次 の問 題 も行 列 の計 算 で,一 度 に多 くの 数 値 を 調 べ て い る。
問1 米 国 の1965年 (1)
と1985年
に お け る未 成 年 の 犯 罪 件 数 が 表1.3で 示 され て い る。
この 表 を もと に行 列 の 計 算 を 行 い,1965年
何 で あ るか を 答 え よ。
か ら1985年
の20年
間 に減 少 し た 犯 罪 が
(単 位1000件)
表1.3
(2)20年
[2]
間 に,ど の 年 齢 層 の どの犯 罪 が最 も増 加 して い る か を調 べ よ。
行 列 の 演 算 法 則(和,差,実
A,B,C,D,Eと
数 倍)
い う5人 の 生 徒 の,国 語Ⅰ,地
理,数 学Ⅰ の 三 学 期 の 成 績 が 表
1.4の よ うで あ った とい う。 表1.4 三学 期 の成 績
一
,二,三
学 期 の 平 均 を 行 列 を 用 い て 行 う と,次
こ こ で 用 い ら れ て い る三 つ の 行 列 の 和 は,数
の よ う に な る。
の結 合 法 則
(a+b)+c=a+(b+c)=a+b+c
と 同 じ法 則 を 用 い て い る。 こ の よ う に,行 算 の 基 本 的 な 法 則 に 基 づ い て 行 っ て い る。
列 で3項
の 演 算 を 行 う と き,2項
の演
行 列 の 基 本 的 な 性 質(和,差,実
数 倍)
交 換法則 A+B=B+A 結合 法則1 A+(B+C)=(A+B)+C 分 配 法則1 k(A+B)=kA+kB 分 配 法 則2 結 合 法 則2
(j+k)A=jA+kA (jk)A=j(kA)
零 行 列 A+O=O+A=A た だ しA,B,Cは [3]コ
同 じ型 の 行 列,Oは
零 行 列,j,kは
実 数 とす る。
ン ピュータの利用
行 列 の 和,差,実
数 倍 の計 算 を 行 う問 題 を コ ン ピュ ー タで 求 め よ う。 あ る人 の
肥 満 度 は,次 の 式 で 計 算 す る。 a=0.9(身
長−100)−(体
そ して,a<0の
と き肥 満 傾 向 が あ る と しよ う。 日本 の 中学 ・高校 の 生 徒 の身
長 と体 重 は,表1.5の
重)
よ うで あ っ た。 表 1.5身
長 と体 重
(平成5年 度 学校保 健統 計調 査速報) こ の 表 を も と に コ ン ピ ュ ー タ で 行 列 計 算 を 行 っ て,肥
満 傾 向が 出 て くる年 齢 を
調 べ て み よ う。 (1)
ス プ レ ッ ドシ ー ト
ス プ レ ッ ド シ ー トと は,表1.5の
よ う な 表 を 計 算 し,棒
グ ラ フや 円 グ ラ フに 表
す 既 成 ソ フ ト ウ エ ア で あ る 。 ス プ レ ッ ド シ ー ト の1つ (Lotus
1‐2‐3)で
は,こ
行 列 で は,第i行j列 2,3…
の 表 計 算 を 次 の よ う に 行 う。 の 成 分 の よ う に成 分 の 位 置 を 決 め た が,こ
の 代 わ り に ア ル フ ァ ベ ッ トでA,B,Cの
3列 をC4と
で あ る ロ ー タ ス1‐2‐3
こで は 列 を1,
よ う に 表 す 。 例 え ば,第4行
表 す。 表1.6
(a)
年次の入力
・ワ ー ク シ ー トを 起 動 し,↓ キ ー で セ ル ポ イ ン タをA2に ・「ち ゅ う」 と入 力 し,漢 第2行1列
に 「中1」
字 に変 換 す る。 次 に1を
(b)
身 長,体
重,肥
移 動 し,「 中2」
位 置 に 「高3」
以 下 同 様 に し て,身
を 入 力 す る。
を 入 力 す る。
長(女),体
移 し,身 重(男),体
(女)をC1,D1,E1,F1,G1に
長(男)と
入 力 す る。
重(女),肥
満 値(男),肥
満値
入 力 す る。
デ ー タ の入 力
・ ↓と ← キ ー で セ ル ポ イ ン タ をB2に 以 下 同 様 に し て,中1か (d)
列 の
満 値 の入 力
・→ と ↑キ ー で セ ル ポ イ ン タ をB1に
(c)
入 力 す る 。 こ れ で,行
と い う名 前 が 入 った。
・ ↓キ ー で セ ル ポ イ ン タ をA3に 以 下 同 様 に し て,A7の
移 動 す る。
ら 高3ま
移 して151
.8と 入 力 す る 。
で の 身 長 と体 重 を す べ て 入 力 す る 。
肥 満 値 の計 算
・→ キ ー でF2に
セ ル ポ イ ンタを移 す。
・+(B2−100)*0 ・/ ,C(複
写),F2(優
.9−D2と
入 力 す る 。2.62がF2に
先 元),F3(優
先 先)と
入 る。
押 し,Fの
他 の行 につ いて同
様 の 計 算 を 行 う。 ・G2に
セ ル ポ イ ンタを 移 し ,肥
こ の 計 算 の 結 果,肥
満 値(女)の
満 値 が 表1 .7の
計 算 も 同 様 に 行 う。
よ う に 計 算 さ れ る。 表1.7
初 め の 式 か ら,肥
満 傾 向 は男 子 に は な い が,肥
れ る こ と が わ か る 。 た だ し,本 る た め に は,統 (2)
満 傾 向 は 高1の
女 子 に な って現
当 に そ の 傾 向 が あ る か ど う か を こ の デ ー タ か ら知
計 的 な 処 理 を し て 有 意 差 検 定 を 行 う必 要 が あ る 。
構 造 化Basicプ
ログ ラ ム
構 造 化Basic(Basic)プ
ロ グ ラ ム はN88‐Basicを,よ
り構 造 的 に し た プ ロ グ ラ
ミ ン グ ソ フ トで あ る。 こ の プ ロ グ ラ ム で は 行 列 を 配 列 と し て 扱 う。 例 え ば6×4行
列 は,プ
ロ グ ラ ム で は 図1.1の
図1.1
プ ロ グ ラ ム1.1で
はdim
列 の 位 置 の 数 をA(i,j)と
A(6,4)と 表 す が,こ
よ う に24個
の 配 列 と 考 え る。
行 列 と配 列
い う命 令 で 配 列 を 作 成 し,配 れ は,上
の 行 列 の 第i,j成
列 の 第i行 分aと
j
同 じ位
置 に あ る 数 で あ る。 デ ー タ の 入 力 に は,こ る場 合 と,input文
の プ ロ グ ラ ム の よ うにdata文
で プロ グラムの中 に入 れ
で キ ー ボ ー ドか ら入 力 す る 場 合 が あ る 。 こ こ で は 行 列 の 見 や
す さ の 都 合 か らdata文
で デ ー タ の入 力 を 行 っ た 。
プ ロ グ ラ ム1.1
結果
図1.2 流 れ 図1 (注1) 左 図 は,iにつ i=1∼nま
い て で 処 理 を
繰 り返 す こ と を 示 す 。
(3) 情 報 処 理 ふつ う,コ ン ピュ ー タ で デー タ を計 算 した後,デ
ー タに 吟 味 が 加 え られ て,は
じめ て デ ー タ は情 報 に な っ て意 味 を もつ。情 報 化社 会 が進展 す る につれ,そ の デー タ の意 味 を調 べ る こ とが,人 間 の情 報 処 理 の中 心 に な る と いわ れ る。 上 の処 理 の 結 果 得 られ た デ ー タで は,例 え ば 男 子 は中 学2,3年
で 最 もや せ て
お り,そ の後,肥 満 値 が 減 少 して肥 満 傾 向 に な る。 それ に対 して 女 子 は中 学1年
か ら減 少 す る の み で,高 校1年 で はマ イ ナ ス,つ ま り肥 満 傾 向 が 明確 に な る こ と が わ か る。 こ の こ とか ら,男 子 も身 長 の伸 びが 止 ま る18才 以 降 に は,女
子 と同
様 な肥 満 傾 向 が 現 れ る と予想 され る。 この よ うに,あ
る現 象 の性 質 を把 握 し,そ れ を仮 定 して予 測 を た て た り,新 た
な性 質 を探 る こ とが,情 報 処 理 の基 本 的 な活 動 で あ る とい え る。 問2
表1.3で,1965年
い,そ
の20年
の 列 を10倍
間 で 犯 罪 増 加 率 が10倍
して1985年
の 列 か ら 引 く計 算 を プ ロ グ ラ ム1 .2で
行
以 上 に な った項 目を求 め よ。
プ ログラム1.2
図1.3
流 れ 図2
注 意;図1.4の
記号 につ いて は図
1.19を 参 照 の こ と。
図1.4
1.2 行 列 の 積 の 表 現 行列 の積 を表 す 問題 場 面 と して,あ み だ く じや い くつ か の 点 か ら他 の点 へ の 移 動 の 状 態 な どが あ る。 具 体 的 な 問題 場 面 を行 列 の積 で 表 す 過 程 に つ い て調 べ,行 列 の 積 の 意 味 を考 え よ う。 [1]
あ み だ く じ と行 列
A,B,Cと
い う3人 が あ み だ く じを 引 い た と ころ,図1.5の
図1.5
あ み だ く じ
こ の 結 果,A→C',B→A',C→B'に で 示 す と表1.8の
よ うに な った。
な る が,こ
の こ と を 出 発,到
達 の対応
よ うに な る。 そ して数 字 だ け を取 り出す と行 列 にな る。 表1.8
推移行列
こ の よ う に して 作 られ る 行 列 の こ と を 推 移 行 列 と い う。 有 限 個 の も の が 互 い に 移 り変 わ る状 態 は,あ
み だ く じ の よ う に 行 列 で 表 現 さ れ る。
こ こ で 上 の 推 移 行 列 を よ く見 る と,次 ・各 行 に 数 字1が1個
こ れ はA,B,Cが
・各 列 に も数 字1が1つ
こ れ はA,B,Cに
あ り,残
の こ とが わ か る 。
り は す べ て0で
移 る先 が1と
あ る。
お りで あ る こ と を 示 して い る 。
しか な い。 対 し てA',B',C'が1つ
ず つ対 応 す る こと を示 す 。
こ の よ う に 行 列 に は,対 問3 次 の図1.6の
応 の特 性 を調 べ られ る よ さが あ る。
あみ だ く じを行 列 で表 現 せ よ。
図1.6
[2] あみだ くじと行列の積 縦 線 が何 本 も あ る あみ だ く じは,縦 線1本
の あ み だ く じが示 す 行 列 の積 に な っ
て い る こ とを示 そ う。 上 の あ み だ く じは,次 の図1.7の
よ うな 移 り変 わ りが続 け
て行 われ た と考 え られ る。
図1.7
あ み だ く じの 継 続
これ らの あ み だ く じに対 応 す る推 移 行 列 は,そ れ ぞ れ 次 の よ うにな る。
こ こ でA→A',A'→A"の 択 可 能 性 は0×1と る と,次
選 択 は そ れ ぞ れ0,1だ
計 算 で き る。 同 様 にA→A"と
か ら, A→A'→A"の
な る選 択 可 能 性 を す べ て あ げ
の よ う に な る。 移 り変 わ り
こ こ でA→A"の
選 択 を,そ
選
可能性
れ ぞ れ の 場 合 の 可 能 性 の 和 と み な せ ば,A→A"
の可 能 性 は次 の よ うに計 算 さ れ る。
移 り変 わ り
同 様 な 方 法 でA,B,Cか
可能性
らA",B",C"へ
の 推 移 行 列 は次 の 表1.9よ
う に表 さ れ
る。 表1.9推
移 の表
推移行列
この計 算 で 行 列 の 積 を表 す こ とに す る。 は じめ に取 り上 げ た あ み だ く じは,次 の行 列 の積 と して 表 され る。 各 行 列 は 図1.7の
こ の よ う に,多
よ うな縦 線1本
数 の 縦 線 の あ る あ み だ く じ は,縦
線1本
の く じを 表 す 。
の あ み だ く じの 示 す 行
列 の 積 と して 表 され る。
問4 図1.8の
あ み だ く じを2回 繰 り返 す と ど うな るか 。 推 移 行 列 を 用 いて調 べ よ。
(a)
(b) 図1.8
[3]逆
引 き あ み だ く じと 逆 行 列
は じめ に取 り上 げ た あみ だ く じを3回 繰 り返 す と,図1.9の BはBに,CはCに
な り何 も変 わ らな い。
よ うにAはAに,
図1.9
これ を推 移 行 列 で表 現 して み よ う。
(1.1)
こ こで,行
列
は 何 も変 え な い こ と を 表 す 行 列 で 単 位 行 列 と い い,ふつ は,数
の1に
あ た り,あ
み だ く じ の 行 列Aに
うEと
表 す 。 単 位 行 列E
つ いて 次 の 等式 が成 り立 つ。
AE=EA=A
ま た,上
の 行 列Aに
と 表 さ れ,式(1.1)か と こ ろ で,数
で はaの
つ い てA×A=Bと
らBA=Eと
す れば
な る。
逆 数a'はa×a'=1と
な るa'と
し て 示 さ れ る が,行
列
で はA×A'=A'×A=Eと
な るA'をAの
逆 行 列 と い い,A-1と
表す。
A×A-1=A-1×A=E 式(1.1)で
は,か
っ こ{}の
と り方 に よ っ て,AB=BA=Eと
な る か ら,
と な る。 こ れ は,は
じめ の あ み だ く じ の 「逆 引 き」 あ み だ く じ を 表 し て い る 。 も と の あ み だ く じ
逆 引 き あ み だ く じ
図1.10
よ って,Aの
逆 行 列A-1 は 「逆 引 き」 あ み だ く じの推 移 行 列 とい う意 味を もつ。
あ み だ く じは有 限 個 の もの を,そ れ 自身 の 中 で 移 し変 え る こ と を表 して い る。 こ の よ うな 移 しか え の こ とを置 換 とい う。 問5 図1.11の
あみ だ く じの推 移 行 列 と,そ の逆 行 列 を求 め よ。
図1.11
[4]
グラ フと推移 行列
鉄 道 の路 線 図,飛 行 機 の航 路 な ど の具 体 場 面 を 行 列 で 表 し,逆 に行 列 を 用 いて 具 体 場 面 を ふ り返 っ て み よ う。 (1) 無 向 グ ラ フ と行 列 高尾 山 付 近 の 概 念 図 が 図1.12の
よ うに描 か れ て い る。 点 は休 憩 地 点,線
(ケ ー ブ ル等 を含 む)を 表 して い る。
は道
図1.12
図1.12の
よ う に,点(頂
点)と
ル ー ト図
線(辺)か
ら な る も の を グ ラ フ と い う。 グ ラ
フ は そ の ま ま で は コ ン ピ ュ ー タ で 扱 う こ と は 困 難 で あ る 。 そ こ で 表1.10の な 表 を 用 い て,各 る 道(ル
休 憩 地 点 か ら行 き方 の 個 数 を 示 す 。 た だ し,そ
ー プ)は,時
計 ま わ り と反 時 計 ま わ り が で き る の で2個
よ う
の地 点 自身 に戻 と数 え る。
表1.10
推移行列
休 憩 地 点 の名 前 や記 号A,B,C,Dを 表1.10は
省 略 し,第 何 行 第 何 列 か に注 意 す る ことで,
推 移 行 列 と して 表 現 され る。 例 え ば,2行4列
駅 か らD;高
尾 山 口 に行 く経 路 が3通
の 成 分3はB;高
尾山
り あ る こ と を示 して い る。 この よ う に推 移
行列 か ら,も との 経 路 に関 す る特 性 を 知 る こ とが で き る。 問6 上 の 推移 行 列 につ い て,次 の 各 問 に答 え よ。 (1)第1列
の成 分 の 和 を 求 め よ。 ま た,こ の 数 の もつ意 味 を調 べ よ。
(2)第2行
の成 分 の 和 を 求 め よ。 ま た,こ の 数 の もつ意 味 を調 べ よ。
(3) 対 角 成 分 の特 徴 を述 べ よ(対 角 成 分 につ い て は31ペ ー ジを参 照 の こ と)。 (2)
有 向 グ ラ フ と行 列
あ る 年 の 夏 は 異 常 に 雨 が 多 く,土 で 弱 い も の を 一 方 通 行 に し,下 A;高
尾 山 頂 とD;高
ま た,B;高
尾 山 口 の2本
尾 山 駅 とD;高
壌 侵 食 を 防 止 す る た め に 図1.12の
の 図1.13の
の 経 路 はAか
らDへ
尾 山 口 を 結 ぶ 経 路 の 中 で,ロ
往 復 の 通 行 可 能 で あ る が,歩
道 はBか
図1.13有
経 路 の中
よ う に 変 更 す る こ と に し た。 例 え ば,
らDへ
下 る一 方 通 行 と し た。 ー プ ウ ェ ー と リフ トは
の 一 方 通 行 と した 。
向 グ ラ フ
こ の グ ラ フ は経 路 に 向 き がつ い て い る の で 有 向 グ ラ フ と い い,そ 移 行 列 を 有 向 推 移 行 列 と い う。 な お 図1.12の
れ に 対 す る推
グ ラ フ の こ と を 無 向 グ ラ フ と い う。
表1.11
有向推移行列
表1.11の (a)
推 移 行 列 を 調 べ て も と の グ ラ フ の 意 味 を 考 え て み よ う。
行 成 分 の和
第1行
頂 か ら出 発 す る 経 路 は4本
の 成 分 の 和1+1+0+2=4か
あ る。
ら,A;高
尾 山
(b)
列成分の和
第1列
の 成 分 の 和1+1+0+0=2か
る 経 路 が2本
あ る。
(c) ij成
分 とji成 分 の 比 較
2で あ る こ と か ら,B←
→Dと
う一 方 向 通 行 可 能 な 経 路 が1本
第2,4成
分 が3で
ら,Aに
到着す
あ る こ と,第4,2成
分 が
い う 両 方 向 通 行 可 能 な 経 路 が2本,B→Dと あ る 。 こ の よ う に,グ
い
ラ フ を 行 列 で 表 現 す る と,
経 路 の 個 数 が わ か る。 次 に,有
向 推 移 行 列 の 積 の 意 味 に つ い て 考 え る 。 有 向 推 移 行 列 の 積 は,次
の よ
う に な る。
例 え ば,積
の 第2,4成
分 は
1×2+0×3+1×1+3×2=9
で あ る 。 そ れ は 図1.13に ど ってBか
らDに
お い てB→A→D,B→C→Dな
行 列 を2回
の ル ー トを た
至 る 経 路 の 本 数 を 意 味 して い る 。
図1.14
図1.14か
ど2つ
ら,B→
→Dと
Bか
らDへ
い う 経 路 が9本
か け た 積 の 行 列 に つ い て,そ
の ル ー ト
あ る こ と が わ か る 。 一 般 に,推
の 各 成 分 は2つ
移
の道 を経 る経 路 の本 数 を
意 味 して い る。
問7 上 に あげ た2つ の 推 移 行列 につ い て,次 の 各 問 に 答 え よ。
無向推移行列
有向推移行列
(1) 有 向推 移 行列 の 第4行 の成 分 の和4は,何
を意 味 して い るか 。
(2) 各 推 移 行 列 の成 分 の総 和 を求 め よ。 そ の数 字 は何 を意 味 して い るか 。 (3) 有 向推 移 行列 と無 向推 移 行 列 は,対 角 成 分 につ いて どん な特 徴 が あ るか。 問8 次 の推 移 行 列 の積 を計 算 し,第1,1成
(1)
分 の意 味 を 書 け。
積
(2) 意 味
図 1.15
[5] コ ン ピ ュ ー タ の 利 用 あ る 経 路 の グ ラ フ を 推 移 行 列 で 表 し,さ 乗 を 計 算 し,そ い ま,2地
らに コ ン ピ ュー タを利 用 して行 列 の累
れ を 活 用 して み よ う。
点a,bが
あ る。aか
bか
らaへ
の 経 路 が1つ
aか
らaに
戻 る経 路 が1つ
らb,
ず つ あ り,さ ら に あ る とす る。
こ の 経 路 の グ ラ フ は 図1.16で,ま そ の推 移 行 列 は次 の よ うに表 され る。
た
図 1.16 表 1.12
こ の グ ラ フ で,aか
らaに
戻 る 経 路 の 本 数 を 数 え る と次 の よ う に な る 。
0個 の 辺;aか
ら動 か な い 経 路1つ
1個 の 辺;a→aと
2個 の 辺;a→a→a,a→b→aと
3個 の 辺;a→a→a→a,a→a→b→a,a→b→a→a
い う経 路1つ い う経 路2つ
と い う経 路3つ こ こ で,例
え ば2個
の 辺 の個 数 は行 列Aの
図1.17
同 様 に,3個
の 辺 は 行 列A2とAの
グ ラ フ,行
積 で 表 さ れ る。
列の積
積 の 第1,1成
分 に な っ て い る。
こ こ で, A×A=A2,A2×A=A3,
A3×A=A4,…,
と 表 し た.An(n=2,3,4,…)の 行 列Anの
第2,1成
An=An-1A
こ と を 行 列 の 累 乗 と い う。 分 をanと
し て コ ン ピ ュ ー タ で 計 算 す れ ば,
a1=1,a2=1,a3=2,a4=3,a5=5,a6=8,… と な る。 こ の数 列 の こ と を フ ィボ ナ ッ チ 数 列 と い う。 フ ィ ボ ナ ッ チ 数 列{an}の
特 徴 は,前2つ
の 数 の 和 が,そ
の 後 の 数 に な る こ と
で あ る。 これ を
an+an+1=an+2, a1=a2=1 の よ う に 表 し,こ
れ を 再 帰 関 係 式 ま た は 漸 化 式 と い う。
こ の 行 列 の 積 を コ ン ピ ュ ー タ で 行 っ て み よ う。 た だ し,プ 行 列 の 積 を 行 え る よ う に(l×m行
列)×(m×n行
列)の
ロ グ ラ ム は一 般 的 な 計 算 を 行 う。
プ ロ グ ラ ム1.3
サ
ブ ル
ー
チ
ンmatread,matprint
は
プ
グ
ラ
ム1.1と
使
う 。
ロ
結 果1.行
結 果2.行
同
列BをAと
列BをA2と
一
の
も の
を
したとき
し た とき
図 1.18
プ ロ グ ラ ム1.3で で,結
果1,2の
最 後 の2つ
のdata文
にA, A2, A3,…
よ う に行 列 の 累 乗 が 得 られ,そ
の 第2,1成
の成分 をお くこと 分 が フ ィボ ナ ッチ 数
列 にな って い る。 (注3)図1.18の
流 れ 図 に お い て,2重
ル ー プ を 意 味 す る 記 号(図1.19)は,
図1.19
を 表 す(図1.20)。
図1.20
まとめ
・行 列 は グ ラ フ とい う具 体 的 な事 象 を推 移 行 列 と して モ デ ル化 して 得 られ る。 ・行 列 の積ABの
第i ,j成 分 は,行 列Aのi行
の成 分 と行 列Bのj列
の成分 の
積 の和 と して計 算 す る。 ・行 列 の 積 は,そ の型 に よ って は定 義 さ れ な い こ とが あ る。 (k×l行
列)×(m×n行
列)でl=mの
と き積 が 計 算 で き る 。
一致 (k×l行
1.3 数,式
列)×(l×n行
列)は(k×n)型
の 行 列 に な る。
の行列表 現
行 列 に四 則 演 算 が あ る こ とか ら実 数 や 複素 数,さ
ら に は多項 式 を行 列 で表 現 す
る こ とを こ こで 試 み る。 そ れ に よ って別 々 の もの が 行 列 の 概 念 で ま とめ られ,行 列 の 表 現 を 借 りて これ らの 原 理 を 探 った り,他 の 概 念 に発 展 させ る ことが で き る。 [1]
数の 行列表現
数 を行 列 で 表 現 しよ うとす る と き,数 の 和 や 積 につ いて 似 た性 質 を もつ 行列 を 探 して そ れ を手 が か りにす る。 その ため に は数 や式 の演 算,お
よ び行 列 の基 本 的
な性 質 を比 較 す る必 要 が あ る。 こ こで は い くつ か の探 求 例 を あ げて 行 列 の 表 現 を 事 例 的 に示 そ う。 行 列 の和 と積 は,次 の よ うに計 算 され た。
・和
・積
一 方 ,数 の加 法 お よ び乗 法 の演 算 につ いて の基 本 的 な性 質 は,次 の とお りで あ る。 ・交 換 法 則 を 満 た す;a+b=b+a,ab=ba ・結 合 法 則 を 満 た す;(a+b)+c=a+(b+c)
(ab)c=a(bc)
・分 配 法 則 を 満 た す;a(b+c)=ab+ac ・単 位 元0,1を
もつ;0+a=a+0=a,1a=a1=a
・aの 逆 元−a,a-1を 正 方 行 列 につ い て,数 (1)
2×2行
もつ;(−a)+a=0,a-1a=1 と 行 列 と の 類 似 性 を 探 って み よ う。
列 の場 合
・加 法 の 単 位 元0に
は 零 行 列 が ,乗
零行列 ・数aをa×1と
法 の 単 位 元1に
は 単 位 行 列Eが
対 応 す る。
単位行列 考 え る と,aは
次 の よ うな対 角 行 列 が 対 応 す る。
対角行列 ・数a ,bの
和a+bと
積abは,行
対 角 行 列 に 対 す る加 法,乗 (後 者 はa≠0)で
列(a+b)E,abEに
法 につ い て のaの
あ る 。 よ っ て 数aは
行 列aEに
逆 元 は,そ 対 応 す る。
対 応 す る。
れ ぞ れ−aE,a-1E
(2)
3×3行
3×3行
列の場合
列 で は,加 法 の単 位 元 は零 行 列O,乗
応 し,数aは
法 の単 位 元 は単 位 行 列Eに
対
や は りaEと 表 され る。
零行列
単位行列
ゆ え に,数aは
問9 2×2行
対角行列
で 表 され る。
列 につ いて 次 の各 性 質 が 成 り立つ こ とを 確認 し,こ れ を 用 い て 対 角 行 列 の
乗 法 につ い て の 交 換 法 則 を 導 け。 た だ し,a≠0と
す る。
[2] 複 素数 の行列 表現 複 素 数 は実 数a,bと
虚 数 単位iを 用 い てa+biの
数 単 位iは 方 程 式x2=−1の
解 を表 現 す る た め の記 号 で√−1と
実 際 に計 算 す る と きの特 性 はi2=−1だ こ こで 虚 数 単 位iを2×2行 数−1は
行列
と す れ ばI2=−Eに
形 に 表 され る。 こ こに,虚
けで あ る。
列 で 表 現 す る こ と を考 え る。 で 表 さ れ た の で,例
な る。
え ば,
同 じで あ る。
したが って 複素 数a+biは,
(1.2)
と表 され る。 ふつ う,実 数 が現 実 の数 で虚 数 が 本 来 存 在 しな い特 別 な 数 の よ うな 印 象 を受 け るが,行 列 で複 素 数 を 表 現 す れ ば
実数aは
虚数a+biは
の 形 を した 行 列 に な る。
問10 式(1.2)で r,sを 求 め,iに
は天 下 り的 に虚 数 単 位iを 行列Iで お いた 。 次 の 条 件 を満 たす実 数p,q, 相 当 す る他 の 行列 を調 べ よ。
[3] 整式 の行列 表現 整 式 に は,ax+byの
よ う な 同 時 一 次 式,ax2+bx+cの
よ うな 多 項 式 が あ る。
こ れ ら を 行 列 の 積 で 表 現 す る こ と を 考 え る 。 こ こ で 次 の よ う な1×3行 1行 列 の こ と を そ れ ぞ れ3次
行 ベ ク トル (x
(1)
y
の 行 ベ ク トル,2次
z)
列,2×
の 列 ベ ク トル と い う。
列 ベ ク トル
1次 同 次 式 の 行 列 表 現
2x+3yは
変 数x,yに
つ い て1次
式 の こ と を1次
の 同 次 式 ま た は1次
ax+byは,次
の よ う に1×2行
の 積 と して 表 さ れ る 。
だ け の単 項 式 か ら成 って い る。 こ の よ う な 同 次 式 と い う。xとyに
列(行
ベ ク トル)と2×1行
つ い て の1次 列(列
同次式
ベ ク トル)
同 様 に して,2つ 2×1行
同 次 式ax+byとcx+dyは
はx,yの
列 と
(ab),
係 数 を 取 り 出 し た 行 列 で あ る か ら,こ
う と,こ
れ を 係 数 行 列 と い う。 行 列 を 使
の よ う に 係 数 と変 数 を 分 離 して 表 現 で き る と い う よ さ が あ る 。 例 え ば, つ いて の連 立 方 程 式 は右 の よ う に行 列 で 表 され る。
問11 次 の 行 列 をx,y,zを
(2)
次 の よ う に2×2行
列 の 積 と して 一 度 に 表 現 さ れ る 。
行列
x,yに
の1次
成 分 とす る列 ベ ク トル と係 数 行 列 の積 で 表 せ。
2次 式 の 行 列 表 現
行列 の 左 か ら行 列(x
y)を
こ う し て,x,yに
こ こ で,2つ
か け る と,
つ い て2次
の ベ ク ト ル(x
の よ う に 表 す 。 同 様 に,2×2行
だ け の 式 が 得 られ る。
y),
列
を 行 列 と して 考 え,
で は 第1,2成
分 と第2,1成
分 を 交 換 し た も の に な っ て い る 。 こ の と きBはAの
転 置 行 列 と い い,B=Atと
表 す。
ax2+2bxy+cy2 は 転 置 行 列 を 用 い て,次
の よ う に 表 さ れ る 。 な お,こ
(3)
形 式 と い う。
を計 算 せ よ。
問12 (1) 行 列 (2) xの2次
の 式 を2次
式ax2+2bx+cを,行
列 の積 で 表現 せ よ。
多項 式 の 導 関数 お よ び積 の 行 列 表 現
い ま,3次
と2次
の 多項 式
(1.3) が あ っ た と す る 。 こ れ を 次 の よ う に 次 数 が そ れ ぞ れ4,3の
行 ベ ク トル で 表 現 す
る。
定 数 項 の位 置 xの 位 置 x2の 位 置 x3の 位 置
同 様 に してn次
多 項 式 は,n+1次
の 列 ベ ク トル で も 表 現 さ れ る 。
定 数 項 の位 置 xの 位 置 x 2位置 x3 位 置 (a) 導 関 数 式1,x,x2,x3,x4,…
…
式0,1,2x,3x2,4x3,…
に 対
し て,
…
を そ れ ぞ れ の 式 の 導 関 数 と い い,
(1)'=0,(x2)'=2x,(x3)'=4x2,…
の よ う に 表 す 。 さ ら に,a,b,cを
… 定 数 と し て,
(a+bx+cx2+dx3)'=0+b+2cx+3dx2
が 成 り 立つ。 多 項 式(1.3)の
関 数 の 導 関 数,そ
の 行 ベ ク ト ル は 表1.13の
よ うに表 され る。
表 1.13
関 数 か ら導 関 数 へ の 移 り変 わ り
を 行 列 で 表 す と,次
こ こ に 表 さ れ た,関 D3が 零 行 列0に
の よ うにな る。
数 の ベ ク トル を 導 関 数 の ベ ク トル に 直 す 行 列Dは,累
な り,べ
き零 行 列 と呼 ば れ る。
乗
(b) 多 項 式 の 積 の 表 現
次 に,多 項 式 の 積f(x)g(x)の
展 開式 を行列 の
積 で 表 現 して み よ う。
と 展 開 さ れ る か ら,
f(x);(a,b,c,d)
と い う 表 現 を 生 か す と き,多
項 式 の 積 は 次 の よ う にg(x)の
係 数 を逆 に して 表 さ
れ る。
例 え ば,(x+1)2=x2+2x+1は,次
の よ う に行 列 の 積 で 表 現 さ れ る。
多 項 式 を ベ ク トル で表 し,多 項 式 を行 列 の積 で表 現 す る考 え方 は,離 散 数 学 の 母 関 数,有 理 論,特
限体 な ど で用 い られ る。 な お,多 項 式 の積 の行 列 表 現 は第6章
に サ イ ク リック コー ドを作 る と きの理 論 に用 い られ る。
の符 号
練習問題 1.3つ
の食 物 に お け る蛋 白質,脂 肪,炭 水 化 物 の100g中
の含 有 量 が 次 の 表1.14の
よう
に な って い る と い う。 表1.14
A君
が あ る昼 食 に カ レー を食 べ た と し,そ の カ レー に 肉80g,じ
ま ね ぎ90gが
含 まれ て いた とす る。 この と きA君
ゃが い も150g,た
が この 昼 食 で摂 取 した 蛋 白 質,脂
肪,
炭 水 化 物 の 量 を,行 列 を 用 いて 計 算 せ よ。 2.図1.21の
あみ だ く じを推 移 行 列 で 表 せ 。3回 これ を繰 り返す と何 も変 わ らな い こ と を
用 い て,こ の推 移 行 列 の逆 行 列 を求 め よ。
図1.21
3.図1.22の
経 路 を推 移 行 列 で 表 現 し,1行
の成 分 の和 の 意 味 を いえ 。 ただ し,矢
印の
な い辺 は両 方 向 に行 け る もの とす る。 ま た, 2回 の 経 路 を経 る推 移 行 列 を 求 めよ 。 4.xn,ynの 〓と
図1.22
漸 化 式 が次 の よ うに与 え られ て い ると き, 〓の 関 係 を 行 列 を 用 い て 表 現 し,x4,y4の
値 を求 め よ。
5.多
項式
を ベ ク トル で次 の よ うに表 す と き,積f(x)g(x)を
行 列 で 表現 せ よ。
第2章 行列 と行列式 具 体 的 な 現 象 か ら離 れ て行 列 の 演算 を 一 般 的 な形 で 定義 し,基 本的 な性 質 を あ げ て,そ の 数 学 的 な 意 味 を紹 介 す る。 次 に,第3章
以 降 で 使 わ れ る こ とが 多 い特 別 な 形 の 行 列 を と
り あ げて,そ の 性 質 を 探 る。
2.1 行列の基本法則 行 列 の演 算 を定 義 し,そ の基 本 的 な性 質 を ま と めて み よ う。 [1]
行 列 の 表 し方
行 列 の演 算 を定 義 す る前 に,行 列 そ の もの を一 般 的 な形 で示 して お こ う。 ・型;m行n列
の行 列 をm×n型
の 行 列,n×n型
の行 列 を正 方 行 列 と い う。
正方行列
・成 分;m×n行
列Aはmn個
の 数 か ら成 る が,こ
分 あ る い は 要 素 と い う。第i行j列 aij と 表 す 。特 に 第1,1成 ・ベ ク トル;1×n行
分,第2,2成
ひ とつ の こ と を 成
の 成 分 の こ と を 第i,j成 分,…
列 の こ と を 行 ベ ク トル,m×1行
と い う。
の1つ
分 と い い,
の こ と を 対 角 成 分 と い う。 列 の こ と を 列 ベ ク トル
行 ベ ク トル(a1a2…an)
列 ベ ク トル
2つ の 行 列A,Bが
あ っ た と き,そ
い と き に,AとBは 例 え ば,次
の 型 が 一 致 し,か
等 し い と い い,A=Bと
つ そ の成 分 が す べ て 等 し
表す。
の 行 列 が 等 し い と き,a=b=1,c=3,x=5,y=7に
な る。
ま た,
の よ う にaij=bjiに
な っ て い る と き,AをBの
転 置 行 列 と い い ,A=Btと
表 す。
特 に,
で あ る。
[2] 対 称 行 列,交 行 列AがA=Atを と な る行 列Aを
代 行列 満 た す と き,行 列Aを
対 称 行 列 と い う。 ま た,A=−At
交 代 行 列 と い う。 交 代行 列 で はaii=−aiiだ
分 は0で あ る。
対称行列 の例
か ら,そ の 対 角 成
交代行列 の例
の と き,対 称 行 列B=0.5(A+At),お
問1
C=0.5(A−At)を
よ び,交
代行列
求 め よ。
[3] 行 列 の 演 算 法 則 行 列 の和,差,実
数 倍,積 に つ い て の基 本 的 な性 質 を ま とめ て お こ う。
(1) 演 算 法 則 1.3節(第1章3節,以
下 同 じ)で 述 べ た よ うに,m×n行
あ った と き,そ の 和,差,数kの 列(bij)の
実 数 倍 が,ま たl×m行
列(aij),(bij)が 列(aij),とm×n行
積 が,次 の よ うに定 義 され る。
行 列 の計 算 法 則 は数 の 計算 法 則 に依 存 し,数 と同 じよ うな演 算 法 則 が あ る。 ・和;(aij)+(bij)=(aij+bij) ・差;(aij)−(bij)=(aij−bij) ・実 数 倍;k(aij)=(kaij) ・積;(aij)(bij)=(ai1b1j+ai2b2j+…+aimbmj)
こ こで,行 列Aの て い る。 行 列Bに
第ij成 分aijを 行 列Aの
代 表 と見 て 行 列Aを(aij)と
つ い て も同様 で あ る。
(2) 行 列 の 積 の 交 換 法 則 次 の よ うな2×3型
行 列A,Bの
の行 列Aと3×2型
積AB,BAを
計 算 し,交
の行 列Bが
あ った とす る。
換 法 則 に つ い て 考 え て み よ う。
表 し
と な っ て,成
分 が 一 致 し な い だ け で な く,型
ま で 異 な っ た 行 列 と な る。
行 列 の 型 を 調 べ る と,
A×Bで
は,(2×3行
B×Aで
は,(3×2行
列)×(3×2行
列)=(2×2行
列)
列)×(2×3行
列)=(3×3行
列)
に な っ て い る。 一 般 に,l×m行
列Aとm'×n行
と き に だ け 積ABが
果 はl×n行
定 義 さ れ,結
l×m行
列)×(m×n行
列Bが
あ る と き,m=m'の
列 にな る。
列)=(l×n行
列)
一致
(3) 積 の 法 則 数 の積 に つ い て の 基 本 的 な 法 則 は,次 の よ うに ま とめ られ る。 ① 積 につ いて 閉 じて い る(積 の結 果,abも ② 交 換 法 則;ab=baが
成 り立つ。
③ 結 合 法 則;a(bc)=(ab)cが ④ 単 位 元1;a1=1a=aと ⑤ 逆 元;a≠0の
数 に な る)。
成 り立つ。 な る1が あ る。
と きaの 逆 数a-1が あ り,aa-1=a-1a=1と
これ らの 法則 は群 の 公 理 と よ ばれ,①
な る。
③ ④ ⑤ の法 則 を満 た す集 合 の こ とを 群
と い う。 さ ら に ② も満 た す 集 合 の こ とを可 換 群 と い う。 行 列 の積 の基 本 法 則 を,数 の基 本 的 な法 則 を も とに して 考 え る。 正 方 行 列A, B,Cの
場 合,次
①AB,BCな
の法 則 が成 り立つ。 ど は,ま た 正 方 行列 に な るか ら積 に つ い て 閉 じて い る。
② 結 合 法 則A(BC)=(AB)Cが ③ 数 の0,1に
成 り立つ。
相 当 す る行 列 はそ れ ぞ れ零 行 列O,単
位 行 列Eで
あ る。
につ い て,数
な お,数
と同様 の法 則 が成 り立つ。
で はab=0な
ら ば,a=0ま
た はb=0が
成 り 立 ち,こ
れを簡 約法
則と い う。 一 方,行
列 に は 次 の 性 質をもつA,Bが A≠O,B≠Oで
あ り,こ
れ を 零 因 子 と い う。
あ る がAB=O
例 え ば,
と す る と,
に な る。 零 因 子 で は 簡 約 法 則 は 成 立 しな い か ら,行
列 で は 簡 約 法 則 は成 り立 た な い 。 し
た が っ て,
A(B−C)=0
A2=0
な ら ばA=0
ま た は B=C
な ら ばA=0
と い った 推 論 を行 うこ と はで きな い。 (4)
逆行列
数aの あ れ ば,そ 数aの
逆 数 の 法 則 と 同 様 に,行 のBをAの
列Aに
逆 行 列 と いい,A-1と
逆 数aがa≠0の
つ い てAB=BA=Eと
な る 行 列Bが
表 す。
条 件 つ き で 存 在 す る よ う に,行
列Aの
逆 行 列 も条 件
つ き で 存 在 す る 。 逆 行 列 を もつ 行 列 の こ と を 正 則 行 列 と い う。 正 則 行 列 全 体 の 集 合 は 群 と な る が,可
換 群 で は な い 。 逆 行 列 の 計 算 に つ い て は2.3節
で述べ ること
に す る。 行 列 の和 と積 につ いて の基 本 法 則 を ま とめ て お こ う。 表2.1
こ こに あ げ た和 と積 の演 算 法 則 を もつ集 合 の こ とを 体 とい う。 さ ら に,積 の 逆 元A-1を
もた な い が,残
列 は群,環,体
りの基 本 法 則 を満 たす よ うな 集 合 の こ とを 環 とい う。行
な ど,演 算 の構 造 を調 べ る の に適 した対 象 で あ る。
問2 次 の各 問 に答 え よ。 〓が 零 因 子 で あ る よ う に,数a,b,cの
(1)
(2)
2.2
〓でC2,C3を
求 め よ。
い ろ いろ な 行 列
行 列 の 中 に は,あ 用 され る2×2行 [1]
計 算 し て 逆 行 列C-1を
値 を定 め よ。
る条 件 を満 た す とお も しろ い特 性 を示 す こ とが あ る。 よ く利
列 を 中心 に,そ の よ うな特 性 を あ げ て み よ う。
いろい ろな行列
零 行 列Oや
単 位 行 列Eは
何 乗 して も同 じO,Eで
あ る。 こ の よ うに,行
列で
は,和 や積 に つ い て 規 則 性 を もつ もの が あ る。 その規則 性 や形 の変 わ らない とい っ た 性 質 を うま く利 用 して 見 通 しを た て た り,固 有 値 な ど の理 論 を組 み立 て る こと が 行 列 で はよ く行 わ れ る。 こ こで は,正 方 行列 の規 則 性 に つ い て調 べ る。
(1) 対 角 行 列 対 角行 列 ど う しの和,実 数 倍,積 は や は り対 角 行 列 にな る。
した が って,対 角 行 列 は和 や積 に つ い て 閉 じて い る。 ま た,対 角 行 列 で は積 の 交 換 法 則 が成 り立つ。
(2) 三 角 行 列 対 角成 分 よ り下 の成 分 が す べ て0で あ る行 列 を右 上 三 角 行 列,対 角成 分 よ り上 の成 分 が す べ て0で あ る行 列 を左 下 三 角 行 列 と い い,両 者 を三 角 行 列 と い う。
右上 三角行列
左下三 角行列
三 角 行 列 ど う しの和,実 数 倍,積
もま た三 角 行 列 に な り積 につ いて 閉 じて いる。
次 に,対 角 成 分 が1の 三 角行 列 を考 え る。
と す る と,
(2.1) ・A=Bと
す れ ばa=b
した が っ て,
次 に,B=A2と
以 下,同
して
様 に し てnが0以
上 の 整 数 の と き,次
の こ と が 成 り立 つ 。
次 の項 にお いて これ を 多 項 式 で 考 え よ う。行 列 を 多項 式 で見 直 す と解 決 に見通 しが立 ち,ベ キ零 行 列 に関 連 づ け る こと もで き る。
[2] 行列 の多項式 正 方 行 列A,Bに て,次
つ い て,交
換 法 則AB=BAは
一 般 に成 り立 た な い 。 した が っ
の 等 式;
は 一 般の 行 列A,B,Xに しか し,交
つ い て は 成 り立 た な い 。
換 法 則 が 成 り立つ よ う な 行 列A,B,Xに
つ い て は,こ
れ らの 式 は
文 字 式 と 同 じ よ う に 成 り立 つ 。 例 え ば,正
方 行 列Aと
単 位 行 列Eは
交 換 可 能;AE=EA=Aだ
か ら,次
等 式 が 成 り立 つ 。
の
〓だ か ら,こ
れ らの等 式 は さ らに簡 単 にで き る。
式(2.1)の
三 角 行 列Aを
多 項 式 で 表 して み よ う。
と お け ば,
と表 さ れ る 。
ここ で
だ か ら,n≧2の
とき
ゆ え に,〓
一 般 に
,
が 成 り 立つ(n=0,1,2,…
〓を,単 位 行 列
問3 三 角行列
和A=E+Pと
[3]
…)。
考 え て,A4を
〓と行 列
求 め よ。
小 行 列
対 角成 分 を 境 に して 長 方 形 状 に0が 並 ん で い る行 列 の 積 を と って,そ 調 べ て み よ う。 行 列 は,行 や 列 につ いて 分割 して計 算 で き るが,0以
の特 性 を
外 の成分 が
長 方 形 に 並 ぶ よ うな行 列 につ いて も,次 の 例 の よ うな 規 則 性 が 見 られ る。
こ こ に,
した が っ て,
と お け ば,0t=[000]で
こ こ で,0t0=[0],a0t=0tB=[0
上 の3×3行
列 の 積 は,行
こ の と き の0,0t,A,Bの
あ っ て,次
の式 が 成 り立つ。
0 0]
列 の 成 分 の 計 算 と 同 様 に して,次
行 列 の こ と を,も
の よ う に 書 け る。
と の 行 列 の 小 行 列 と い う。
問4 小 行 列 の計 算 を 利 用 して,次 の 行 列 の 積 を 求 め よ。
零 因 子 とべ キ 零 行 列
A≠O,B≠Oで
あ る が,AB=Oで
次 の よ うな場 合,2つ
あ る行 列A,Bを
零 因 子 と い う。例 えば,
の行列 を と も に零 因子 とい う。
ど の よ う な 行 列 が 零 因 子 に な る の か,2×2行
列 の場 合 につ いて調 べ てみ よ
う。
〔 例 題1〕2×2行
列 の 零 因 子 は,す
べて
の 形 で あ る こ と を示 せ 。
に な っ た と す る 。 た だ し,各
成 分 の 数 は0で
す れ ば,
こ こ でb=ma,d=ncと
お く と,
し た が って,m=nでb=na,d=nc,p=
ゆ え に,行
列
こ の 例 題 か ら,2×2行
と
列 の零 因子 は
q=−ns
はの 形 を して い る 。
ない
と
〔 解 〕
と,〓
−nr,
[4]
の 形 に な る こ と が わ か る。 次 に,こ き,各
の2つ
の 行 列 が 同 一 で あ る特 別 な 場 合 を 調 べ て み よ う 。A=Bと
お
成 分 を 比 べ て み る と, b=c,a=−d,a=−ct,d=bt
a,c,dをbで
表 して 行 列Aが
こ の と き,A2を
だ か ら,確
得 られ る 。
計 算 す る と,
か にA≠Oで
あ っ て も 等 式A2=Oが
成 り立 っ て い る。 こ こで 数 と 行
列 の 違 いが 明 確 にな る。 ・数aで
はan=0の
と き必 ずa=0で
・正 方 行 列 で はAn=Oを 特 に,An=Oと
満 た すAで
あ る 。 つ ま り0の
累 乗 根 は0し
か な い。
零 行 列 で な い も の が 存 在 す る。
な る 行 列 を ベ キ 零 行 列 と い い,一
般 にn≧2の
と き,零
以 外 に も ベ キ 零 行 列 が 無 数 に あ る こ と が 上 の こ と か らわ か る 。 べ キ零 行 列 の例
べ き零 行 列 は,後 述 す る よ うに固 有 値 が0だ け と い う特 性 を もつ 。
行 列
〔 例 題2〕 ベ キ 零 行 列Aに
つ い て,A−Eは
〔 解〕 あ る 自 然数n≧2に
つ い て,
一 方
,An−E=O−E=−Eだ
逆 行 列 を もつ こ と を 示 せ 。
か ら,A−Eの
−(An-1+An-2+…+A+E)
逆行列 は
,n=1の
と き は明 らか 。
問5 次 の行 列 はべ キ零 行 列 で あ る こ と を示 せ 。
(1)
(2)
[5] 単 位行列Eの
累乗 根 とべ キ等行 列
数 の虚 数 単 位iを 行 列 で表 現 す る と,〓 つ い て は,i2=−1,i3=−i,i4=1が
〓 =−E
成
,I4=Eが
Iに 似 た 行 列 に つ い て,そ
行列A=〓
を2乗
して み る と,次
A2=〓
ゆ え に,A2=abE,ま 辺 を そ れ ぞ れab,b2=acで b=√acで
で あ った 。 虚 数 単 位iに り立 つ 。
推 定 さ れ る が,計
こ れ か
ら類 推
し てI2=
算 す る と 実 際 そ の よ う に な る。
の 性 質 を 探 っ て み よ う。
,B=〓
の よ うにな る。
, B2=〓
たb2=acと
(2.2)
す れ ば,B2=b2Eに
割 れ ば 右 辺 はEに
割 る こ と と 同 じ で あ る。 そ の 結 果,
な る。 式(2.2)の
な る 。 こ れ はAを√ab,Bを
両
で はA2=E,B2=Eと
な る か ら,と
列 で あ る。 ま た,こ
れ ら にA,Bを
な お,A2=Aと
も に 単 位 行 列Eの か け れ ばA3=A,B3=Bと
な る。
な る行 列 の こ と を ベ キ 等 行 列 と い う。 こ の 行 列 は 固 有 値 の 問
題 や 標 準 形 の 計 算 で 主 要 な 役 割 を 果 た し,ベ
問6 A2=Eと
「平 方 根 」 と い う べ き 行
キ 零 行 列 と密 接 な 関 連 性 が あ る 。
な る 行 列 は逆 行 列 を もつが,単 位 行 列 以 外 でA2=Aと
な る行 列 は,逆 行
列 を もた な い こ と を示 せ。
[6]群
の構造
正 則 行 列 な ど,あ
る種 の行 列 につ いて はそ の 積 につ いて,次 の こ とが成 り立 ち,
積 の 基 本 的 な法 則 と い う。 ・閉 じて い る こと;積 の結 果 が 再 び も との 形 に な って い る。 ・結 合 法 則;積 ・単 位 元;積
の結 合 法 則 が 成 り立 つ;A(BC)=(AB)C
の単 位 元 は単 位 行 列Eで
・逆 元;正 則 行 列Aに
〔 例 題3〕
あ る。
つ いて は,積 の 逆 元 左A-1がた だ 一 つ 存 在 す る。
〓の形 の行 列 は積 につ いて 閉 じて い る こ とを 示 せ。
〔 解〕
結 果 は ま た右 上 三 角行 列 に な る か ら,こ の行 列 は積 につ い て閉 じて い る。 〔例題4〕3×3型
〔解〕
の 対 角行 列 は交 換 法 則 を満 た す こ とを示 せ。
〓 と お く。
一 般 に,対 角 行 列Aは
積 につ いて 閉 じて お り,交 換 法 則,結 合 法 則 を 満 た す 。
ま た,す べ て の対 角 成 分 が0で
な い対 角 行 列Aで
は,
〓の逆 行 列 が〓
とな る こ とか らわ か るよ うに,逆 行 列A-1が 列 全体 の集 合 Mは
存 在 す る。 したが って,次 の 対 角 行
可 換群 に な る。
また,要 素 の 個 数 がn個 で あ る群 を 位 数nの 群 とい う。
〔 例 題5〕
行列
〔 解 〕
ゆ え にA,A-1の
〓は,積
に つ い て 位 数2の
〓と な る 。 し た が っ て,Aの
累 乗 全 体 の集 合 は{A,E}と
群 に な る こ と を示 せ 。
逆 行 列A-1はAと
な り,Aは
な る。
積 に つ い て 位 数2の
群 に な る。 積 に つ い て交 換 法 則 が成 り立つ 行 列 に は ど の よ うな もの が あ り,そ の 意 味 は何 か とい う問題 は,行 列 の計 算 と と もに問 題 の状 況 を考 察 す る必 要 が あ り,発 見 的
な探 求 が で き る。 例 え ば,1.3節
で は複素 数a+biに
全 体 の 集 合Mは,複
対 応 す る行 列
素 数 が 交 換 可能 で逆 数 を もつ の と 同様 に,交
換可能 な群 に
な る。 あ る特 殊 な 行 列 は,こ の よ うに積 に関 して群 を なす こ とが あ る。
問7
〓の形 の行 列 の 集 合 は,可 換 群 で あ る こ とを 示 せ。 た だ しa≠0
ま た はb≠0と
し,逆
行 列 は 式(2.6)を
利用 せ よ。
2.3 基本 変形 と行列式 行 列 式 は,ク ラ ー メ ル の公 式 が示 す よ うに,も と も と連 立 方 程 式 の解 を う ま く 表 現 す る工 夫 か ら始 ま った。 こ こで は行 列 式 を 簡 単 な連 立 方 程式 につ いて定義 し, 同 じ考 え方 で 一 般 的 な場 合 に広 げ,基 本 変 形 を 用 いて 行 列 式 の 値 を 求 め る方 法 に つ いて 考 察 しよ う。
[1] 2次 の 行列 式 2元1次
連 立 方 程 式 を 解 く こ と は,数
学 の 問 題 を 解 く場 面 で よ く登 場 し,計
ミス の 非 常 に 多 い と こ ろ で もあ る。 そ こ で,問 つ い て は,そ
算
題 に登 場 す る個 々 の連 立 方 程 式 に
れ ぞ れ の 工 夫 で 最 も よ い 解 き 方 を し た りす る 。
こ こ で は,コ
ン ピ ュ ー タ を 使 っ て で き る よ う に,一
般 的 な2元1次
連 立 方 程式
の 解 の 表 し方 に つ い て 考 え る 。 い ま,次
の よ う にx,yを
変 数 とす る2元1次
の 連 立 方 程 式 が あ っ た と す る。
(2.3) こ の 連 立 方 程 式 の 解 き 方 は,ふつ (1式)×5−(2式)×3と
して,
う 次 の よ う に す る。
(1式)×4−(2式)×2と
し て,
一 方 ,こ の連 立 方 程 式 を行 列 で 表 せ ば, (2.4) 連 立 方 程 式(2.3)の
解 の 分 母2×5−3×4を,式(2.4)の
行 列 と結 び つ け
て 次 の よ う に表 現 す る。
この と きの表 現 2×2型
〓の こ と を,行
の正 方 行 列Aの
列
〓の 行 列 式 と い う。
行 列 式 を2次 の行 列 式 とい い,│A│と
表 す。
例 え ば,〓
変 数x,yの
解 の分 子 に現 れ た数 も,行 列 式 で 次 の よ うに表 現 さ れ る。
行 列 式 を 使 っ て 式(2.4)の
解 を 表 す と 次 の よ う に な り,こ
れ を クラーメ ルの
公 式 と い う。
(2.5)
〔 例 題6〕
行列
〔 解 〕Aの
逆行 列を
〓の 逆 行 列 を,ク
〓と お く と,逆
ラー メ ル の公 式 で 求 め よ。
行 列 の 条 件 はAB=BA=Eだ
っ
た か ら,
を連 立 方 程 式 で解 く。
を行 列 で 表 して,
よ っ て,次
の 式 が 成 り立つ。
(2.6)
問8 次 の行 列A,Bの
[2]
逆 行 列 を求 め よ。
3次 以 上 の 行 列 式
2元 連立 方 程 式 の考 え方 を もと に,3元1次
の連 立 方 程 式 を 考 え る。 こ こで は
個 々 の 解 を 求 め る の で は な く,2元,3元,…
の1次
現 した い 。 後 の 議 論 の た め に定 数 項 を 文 字 でp,q,rと
連 立 方 程 式 を 同 じよ う に表 表す。
(2.7)
連 立 方 程 式(2.7)か
らzを 消 去 す る。
ク ラ ー メ ル の 公 式(2.5)を
適 用 してx,yを
求 め る と,次
式 の よ う に な る。
(2.8)
式(2.8)の
分 母 の 行 列 式 をDと
し,①
こ の か っ こ の 中 の 式 を 次 の よ う に表 し,3次
の 係 数1,4,7で
ま と め て み よ う。
の 行 列 式 とす る。
(2.9)
式(2.9)で,成
分1,4,7と,そ
の小 行 列 式 の 位 置 関 係 は次 の よ うに な る。
3次 の行 列 式 は,2次
の 小行 列 式 を 次 の よ うに組 み合 わ せ て得 られ る。
式(2.8)に
お い て,xの
式(2.8)に
お け るyの
分 子 を 係 数p,4,7で
解 の 分 子 も同 様 に して
〓 と な る か ら,式(2.7)の
こ こで 文 字p,q,rが
ま と め る と,
解 は,
分 子 の 行 列 式 に 縦 に き ち ん と並 ん で い る 。 こ の 式 か ら4
元 連 立1次
方 程 式 の 場 合 も予 想 で き る 。 これ が,関
孝和 や ク ラー メ ル の発 見 した
規 則 で あ った。
問9 次 の連 立 方 程 式 の解 を求 め よ。
3次 の行 列 式 は次 の よ う に2次 の行 列 式 で 表 され,こ れ を もと に展 開 式 が 求 め られ る。
こ の 最 後 の 式 の 符 号+−
は,図2.1で〓
方 向 の と き に+,〓
方 向の と きに
-を つ け る と い う規 則 性 が あ る。
図2.1 3次 の行 列 式
4次 の 行 列 式 の 計 算 も,3次
の小 行 列 式 を用 いて 同 様 に定 義 され る。 小 行 列 式
の先 頭 に く る係 数 は行 列 式 の1行 目の 成 分a1,b1,c1と 2行 目の 行 の 成 分a2,b2,c2な
い う選 び方 だ け で な く,
ど他 の行 の成 分 で も よ い し,列
の成分 で あ って
もよ い。 た だ しそ の場 合 に は,先 頭 の数 が 成 分aijの と き符 号 を(−1)i+jと 続 く小 行 列 式 を第i行 と第j列 を除 い た小 行 列 式 とす る。 例 え ば,
し,
次 に,行 列 式 を用 いて 逆 行列 を 表 そ う。 式(2.6)か
ら行 列
〓の 逆 行 列 は,次
の よ う に 表 さ れ る。
同様 に,次 の3つ の連 立1次 方 程 式(右 辺 はそ れ ぞ れ の列 ベ ク トル,左 辺 は 同 じ)
(2.10)
に ク ラ ー メ ル の 式 を 適 用 し,式(2.10)に
なお,コ
お け る行 列Aの
逆 行 列 が 得 ら れ る。
ン ピュ ー タを用 い た別 の方 法 で逆 行 列 が簡 単 に求 め られ る。 こ こ にあ
げ た計算 は多 くの計 算 量 を必 要 と し,す で に過 去 の方 法 な ので 詳 しい説 明 は省 略
す る 。 あ え て や っ て み た い 向 き が あ れ ば,次
の問10,問11を
試 み られ た い。
問10 次 の 行列 式 の 値 を 求 め よ。
(1)
(2)
(3)
問11 次 の行 列 の逆 行 列 を求 め よ。
(1)
(2)
[3] 行 列 式 の 基 本 的 な 性 質 3次 の行 列 式 を用 いて行 列 式 の基 本 的 な性 質 を あ げ て お こ う。 その意 味 を例 で, ま たそ の使 い方 を例 題 で示 す。
とす る と,次
の こ とが 成 り立つ。
① あ る 行(列)が
他 の 行(列)のk倍
② あ る 行(列)の
成 分 にkを
③ あ る2つ
の 行(列)ど
④ あ る 行(列)に ⑤ │AB│=│A││B│で
① の 例〓
の と き│A│=0に
か け る と,行
列 式 の 値 はk│A│に
う し を 交 換 す る と−│A│に
他 の 行(列)をk倍 あ る。
な る。 な る。
な る。
して 加 え て も 行 列 式 の 値 は 変 わ らな い 。
② の例
④ の例
行 列 式 の 値 を 求 め る と き,次 の よ うに性 質 を 利 用 し,0の 成 分 を作 り出 す。 〔 例 題7〕
次 の 行 列 式 の 値 を 求 め よ。
〔解 〕
〓 1列 で 小行 列 式 に展 開
な お,2番
目 の 行 列 式 で,第2行
と第3行
が 同 じ だ か ら結 果 が0に
な るなど と
して もよ い。
問12 次 の 行 列 式 の 値 を求 め よ。
(1)
(2)
[4] 基 本変形 行列 式 の計 算 は,上 の基 本 的 な性 質 を使 って簡 単 な 形 に して い く。 特 に ①, ② の操 作 を基 本 変 形 とい う。 この よ うな操 作 を簡 単 な2×2行
列 で 示 し,3×3
行 列 や一 般 の行 列 に対 す る基 本 変 形 を類 推 す る。
行列〓
に つ い て,基 本 変 形 を行 う行 列 を 求 め て み よ う。
(1) 行 お よ び列 をk倍 す る行 列
だか ら対 角 行 列
〓を左 か らか け る と,Aの1行
な り,右 か らこの 行 列 を か け る とAの1列 (2) 行 また は 列 を 交 換 す る 行 列
目 をk倍
す る基 本 変 形 に
目をk倍 す る基 本 変 形 に な る。
だ か ら,行
列
〓を左,右
か ら か け る と,そ
れ ぞ れ 行,列
を交 換 す る。
(3) 行 ま た は 列 を 実 数 倍 して加 え る 行列
(2.11) だ か ら,行
列
〓を 左 か ら か け る と,2行+1行
×k→2行
に な り,
〓を 右 か ら か け る と,2列+1列
×k→2列
の 操 作 と 同 じ に な る。
〔 例 題8〕3×3行 〔解 〕1行
列 で,(2列)×3+3列
→3列
は 何 も 変 化 しな い か ら,求
め る行 列 は
の 操 作 を 行 う行 列 を 求 め よ 。
〓の 形 を し て い る。
式(2.11)か
ら(2列)×3+3列
の 変 形 を 行 う行 列 に つ い て,
は〓の 形 を し て い る。
こ う して3×3行 〔 例 題8〕
列 の基 本 変 形 の行 列 が2×2行
の 結 果 と基 本 的 な 性 質 ⑤;│AB│=│A│×│B│か
列 か らの 類 推 で 求 め られ る。 ら,
〓
ゆ え に,行 列 の基 本 的 な性 質 ④ は3次 の行 列 式 で も成 り立 つ。
問13 (1)行
列〓
を,あ
る行 列 の右 か らか け た と きの 基 本変 形 を 示 せ。
(2) ま た,こ の 基 本 変 形 と同 じ機 能 を果 たす3×3行
問14
列 を示 せ。
〓を 基 本 変 形 で示 せ 。
[5] 階 数 行 列Aに 列,左
対 し て 基 本 変 形 を 行 っ て い く と,次
の よ う に 左 上 にr×r型
下 お よ び 右 下 に 零 行 列 が く る よ う に で き る。 数rは
よ ら ず 一 意 的 に 決 ま る 。 こ の と き のrをAの
例 え ば,Oを
零 行 列,Eをn×n型
階 数 の 特 性 と して,次
基 本 変 形 の や りか た に
階 数 と い い,r(A)と
の 単 位 行 列 と す る と,
r(O)=0,r(E)=n の こ と が あ げ ら れ る。
の 単位 行
表 す。
・n×n行 列Aで
Aの
r(A)=nな
らAは
逆 行 列 を も ち,正
r(A)<nな
らAは
逆 行 列 を もた な い。
行 ベ ク トル は,n−r(A)〔
個 〕の も の で,残
則 で あ る。
り のr(A)〔
が 表 せ る。 列 ベ ク トル に つ い て も 同 様 で あ る 。 こ の と き,Aに トル がn−r(A)〔 次 に,行
個 〕あ る,ま
た は 自 由 度 がn−r(A)で
列 の 階 数 の 計 算 を 行 い,階
列 の 階 数 の 計 算 は,次
個 〕の 行 ベ ク トル は一 次 独 立 な ベ ク
あ る と い う。
数 と連 立 方 程 式 の 関 係 を 調 べ て み よ う。 行
の よ う に し て 行 う。
行列〓
は,基
本 変 形;2行−(1行)×4→2行,お
さ ら に 基 本 変 形3行−(2行)×2→3行
こ こ で,2次
小行 列Bの 行 列Aを
よ び3行−(1行)×7→3行
で,
に よ って
の小 行 列 式
階 数 は2だ か ら,行 列Aの
階数 はr(A)=2と
な る。
係 数 行 列 とす る連 立 方 程 式 を 解 いて み よ う。
(2.12)
2行−(1行)×4→2行,3行−(1行)×7→3行
と い う基 本 変 形 に よ っ て,
3行−(2行)×2→3行
に よ っ て3式
の 式 が 未 知 数 を 決 定 す る 。 そ こ でzを
が0=0と
な っ て 消 え る か ら,上
の2つ
定 数 と し て,
(2.13) か ら解 は,zを
任 意 の 数 と し て,次
の よ う に表 さ れ る。
(2.14)
こ の よ う に,3次
の 連 立 方 程 式 で 係 数 行 列Aの
連 立 方 程 式(2.12)の
階 数 がr(A)=2で
あ る と き,
解 は,
3−r(A)=3−2=1個
式(2.14)の
よ う に,1個
の ベ ク トル で 表 す こ と が で き,自
由 度1と
な る。
練習問題 1 . と お く。
(1) 交 換 法 則AB=BAが (2) ab≠0の (3) A,Bの
成 り立つ こ と を示 せ 。
と き,Aの
逆 行 列 を 求 めよ 。
形 の行 列 は加 法,乗 法 に つ いて 閉 じて い る こ とを 示 せ 。
* (1),(2),(3)お
よ びA≠0,B≠0の
と き,逆 行 列 を もつ こ とか ら こ の形
の 行列 全 体 の 集 合 は体 を なす こ とが わ か る。 2. 次 の 行列 を あ る3×3行 るか。
列Pの
右 か らか け る と,列 あ る い は行 はPの
そ れ と ど う変 わ
(1)
(2)
3. う ま く工 夫 す る こ とに よ って 次 の 行 列 の 計 算 を せ よ。
(1)
(2)
4. 行 列 式
5. 次 の行 列Aの
〓の値 を利 用 して,次 の連 立 方 程 式 を 解 け。
階 数 を 求 め よ。
第3章 連立方程式の解 最 小2乗 法 な ど,多
くの デ ー タか ら新 しい情 報 を得 る た めに,未 知 数 の 個 数 が5個
など
の 多元 連 立 方 程 式 を解 く こ とが あ る。 ま た,問 題 に よ って は,与 え られ た 連 立 方 程 式 に対 して一 定 の精 度 で近 似 解 を求 め る こ とが要 求 され る こ とが あ り,そ れ に応 じて い くつ か の 解 法 が あ る。 この章 で は,連 立 方程 式 の解 に つ い て の理 論 と解 法 の い く つ か に つ い て 探 る こ とに す る。
3.1 連立 方程式の行列表 現 連立 方 程 式 に は,解 が1通
り に決 ま る場 合 と,そ うで な い場 合 が あ る。 それ ぞ
れ の連 立 方 程 式 を行 列 とベ ク トル で表 現 す る しか た と,そ の利 用 方 法 につ いて, 具 体例 を も とに 考 え て み よ う。
[1] 2点 を通 る関数 い ま,次
の よ う な1次
関 数 と2次
関 数 が あ っ て,2点(1,2),(2,3)を
通 る こ
と が わ か っ て い る と し よ う。 1次 関 数;f(x)=mx+n 2次 関 数;g(x)=px2+qx+r
1次 関数f(x)の
と き,次 の 連立 方程 式 を た て て係 数m,nの
値 を求 め る。
(3.1) こ の 式 を 解 い てm=1,n=1が り に 決 ま る 。 しか し,2次
得 ら れ,2点 関 数g(x)の
を 通 る 直 線 はy=x+1と1通
場 合 は 多 くの 関 数 が で き る 。 こ の 関 数 群
を 方 程 式 で う ま く表 した い 。 そ れ に は ど うす れ ば よ い か 。
図3.1
図3.2
2次 関 数g(x)にx=1,2を
代 入 して,連
立 方程 式
(3.2) が 得 られ,rを
定 数 と み てp,qを
こ こでr=2tと 各tに 数tで
得 る。
お け ば,y=(t−0.5)x2−(3t−2.5)x+2t
つ い て2次
関 数g(x)の
グ ラ フ は,図3.2の
よ う に な る 。 こ の 式 は,変
決 っ て し ま う と い う 点 で 表 現 の よ さ が あ る。
こ の よ うな 表 し方 を,行
列 と ベ ク トル で 考 え て み よ う。
[2] 連 立方程式 の表現;1次 連 立 方 程 式(3.1)は,行
関数
列 と 数 ベ ク トル で 次 の よ う に 表 さ れ る 。
この 表 現 を も とに して,連 立 方 程 式(3.1)を
い くつ か の 方 法 で 表 して み よ う。
(1) 行 列 に よ る表 現
と お け ば,連 第2章
Ax=yの
立 方 程 式(3.1)はAx=yと
で は,2×2行
両 辺 にA-1を
列 の 逆 行 列 を,次
表 され る。 の よ うに して求 め た。
か け て,A-1Ax=A-1yと
な る 。 し た が っ て,
こ の 表 現 か ら,連 ば,x=A-1yと
立 方 程 式Ax=yの
解xは,も
し行 列Aに
一 意 的 に 決 ま る こ と が わ か る 。 こ の よ う に,行
に は,解 を一 次方 程式ax=bの
逆 行 列A-1が
あれ
列 の表 現
よ うに簡 潔 に表 す とい う表 現 の よ さが あ る。
(2) 列 ベ ク トル によ る表 現 連 立 方 程 式(3.1)は,列
ベ ク トル で
〓とす れ ば,上 の等 式 は
と 表 さ れ る。 そ こ で,
と 表 さ れ る。 こ の よ う に,ある をa,bの1次 な お,連
ベ ク トル を ベ ク トルa,bの1次
式 に 表 した もの
結 合 と い う。 立 方 程 式 の 解 はm=1,n=1と
面 上 で 示 せ ば 図3.4の
一 通 り に 決 ま っ た が,こ
れ を座 標 平
よ う に な る。
図3.3 図3.4
この よ う に1次 結 合 の 表 現 で は,解 の有 無 が ベ ク トル で洞 察で きるよ さが ある。 (3) 行 ベ ク トル によ る 表現 連 立 方 程 式(3.1)は
行 ベ ク トル で,
(3.3)
と表 され る。 し た が っ て,行
列Aの
行 ベ ク トル をa1=(1,1),a2=(2,1),
〓と お け ば,
ま た,
と表 され る。 これ ら の 式 は,m+n=2,2m+n=3と
同 じ で,点(m,n)全
体 は,
2直 線 x+y=2,2x+y=3 の 交 点 と な る 。 つ ま り,式(3.3)は2直
線 を 表 す 。 こ の よ う に,行
ベ ク トル で
の 表 現 は 図 形 の 方 程 式 を 表 す と い う 「よ さ 」 が あ る。
問1
1次 関 数y=mx+nが2点(−1,0),(1,2)を
通 る と き,数
ベ ク トル
〓を 次 の しか た で表 せ。
〓を用いた表現
(1) 行 列
(2) 行 列Aの
列 ベ ク トル
(3) 行 列Aの
行 ベ ク トル
〓を 用 い た表 現 〓と,ベ
ク トルyの
成 分0,2を
用
い た表 現
[3] 連 立 方 程 式 の 表 現;2次 2点 を通 る2次 関 数g(x)=px2+qx+rは 合 に つ い て も,1次
関数 一 通 り に は決 ま らな い 。 そ の 場
関 数 と同様 な表 現 が で き るか試 み よ う。
2次 関数 の連 立 方 程 式 は,次 の よ うに表 され た。
(3.2) (1) 行 列 に よ る表 現 連 立 方 程 式(3.2)は,行
列 で表 せ ば
こ こ で,
と お け ば,Ax=yと Aは い が,次 (2)
表 され る。
正 方 行 列 で は な く,Aに
逆 行 列 は な い の でx=A-1yと
の工 夫 に よ って解 が表 され る。 列 ベ ク トル に よ る 表 現
連 立 方 程 式(3.2)は,列
ベ ク トル で
と 表 さ れ る 。 そ こ で,
とお けば 連 立 方 程 式(3.2)は,
と表 さ れ る。 こ こ で,rを
定 数 と み な し た こ と を 思 い だ し て,
と し,行 列 を 使 って 表 現 す れ ば,
逆 行 列 を か け れ ば,
い う表 現 は で き な
(3.4)
この関 係 を利 用 して ベ ク トル
〓をrで
表 し て み よ う。
だ か ら,
右 辺 のrを 変数tで お きか え れ ば,連 立 方 程 式
(3.5)
の解xは,次
の式 で表 現 さ れ る。
(3.6)
こ う して,連
立 方 程 式 の 解 が 無 数 に あ る と き,ベ
簡 潔 に 表 現 さ れ る。 こ こ で,式(3.4)の
ク トル の1次
右 辺 でy=0と
結 合 で そ の解 が
お い た 式 を 考 え る。 い ま,
と す れ ば,
と な る 。x0は
右 辺 が0だ
け の 連 立 方 程 式(3.7)の
解(p,q,r)を
表 す。
(3.7)
式(3.7)の
よ う に,左 辺 が0で あ る連 立 方 程式 を斉 次 方 程 式 と い い,そ
の解
とな る ベ ク トル を あ るベ ク トル の1次 結 合 で 表 した もの を基 本 解 とい う。
この場 合 の基 本 解 は,
〓で あ る。 一 般 解xは
式(3.6)で
表 さ れ る が,
それ は こ の 基 本 解
〓の 和 でx=x0+x1と
x1を 連 立 方 程 式(3.5)の
表 さ れ て い る。
特 殊解 とい う。 こ う して,連 立 方 程 式 の不 定 解 の 構
造 が列 ベ ク トル で 簡 潔 に表 現 され る。 図3.5か
ら,点(p,q)は
特 殊 解 の ベ ク トル
基 本 解 の ベ ク トル
〓に 平 行 な直 線 を なす こ とが わ か る。
図3.5
(3)
〓の 終点 を通 り,
図3.6
行 ベ ク トル に よ る 表 現
連 立 方 程 式(3.2)は,行
ベ ク トル で 次 の よ う に 表 さ れ る。
(3.8)
した が っ て,行
列Aの
行 ベ ク トル を
a1 =(1 ,1,1),a2=(4,2,1)
〓と お け ば,
ま た,
と表 され る。 これ らの 式 は連 立 方 程 式
と な る が,そ
の 解(p,q,r)全
体 は 図3.6の
よ う に,座
標 空 間 上 の平 面
の 交 わ りの直 線 に な る。 一般 に,連 立 方 程 式(3.2)の
形 で表 さ れ る図 形 は,座 標 平 面 で は直 線,座
標
空 間 に あ って は平 面 とい うよ うに,座 標 の 次元 よ り も1だ け少 な い次 元 の 「超 平 面 」 にな る。 この よ う に,行 ベ ク トル に よ る表 現 に は図 形 的 な考 察 が で き る 「よ さ」 が あ る。 問2
2次 関 数y=px2+qx+rの
グ ラ フ が2点(−1,0),(1,1)を
通 る と き,数
ベ ク
トル
を用 いて 次 の問 い に答 え よ。 〓を用 い て表 現 せ よ。
(1) 行 列
(2) 行 列Aの
列 ベ ク トル
(3) 行 列Aの
行 ベ ク トル
〓を 用 いて 表 現 せ よ。 〓と,ベ
ク トルyの
2を 用 いて 表 現 せ よ。 (4) p,q,rに
つ いて の連 立 方 程 式 の基 本 解,特 殊 解,一 般 解 を 求 め よ。
成 分0,
[4] 基本解 と特 殊解 連 立 方 程 式 の解 を基 本 解 と特 殊 解 で 表 す 方 法 を,さ
らに多 くの未 知 数 につ いて
行 い,そ の表 し方 に つ い て考 え る。 (1) 基 本 解,一 般 解 こ こで は,解 が 無数 に あ る場 合 の連 立 方 程 式 につ い て調 べ よ う。 〔 例 題1〕
次 の連 立方 程 式 の基 本 解,特 殊 解,一 般 解 を求 め よ。
〔 解 〕xの
係 数 を 消去 す るた め に行 の計 算 を 行 う。
2式
−(1式)×2
3式 −1式 4式
−(1式)×3
これ か ら,4つ
の 方 程 式 は次 の2つ の方 程 式 と同 じに な る。
上 式 の1式+(2式)×2か
ら,4個
の 変 数 の う ちx,yが
の よ う に 表 さ れ る 。 した が っ て 一 般 解 は,
残 り の 変 数z,uで,
こ こ で,基
〓特殊 解 は
本解 は
と な る。
(2) 行 列式 の 階数 と基 本 解 行 列 式 と未 知数,基 本 解 の個 数 の 関係 に つ い て調 べ てみ よ う。 〔例 題1〕
の係
数 行 列 につ いて,行 列 式,小 行 列 の 値 を 計算 す る。
の 行 列 式│A│の
値 は,2行
変 化 し な い の で,次
−(1行)×2→2行
とい うよ うな行 の操 作 に よ っ て
の よ う に 等 号 が 成 り立 つ 。
2行−(1行)×2→2行,3行
−1行→1行,4行
う と,
3行
−2行→3行,4行
−2行→4行
を 行 う と,
−(1行)×3→4行
を行
した が って│A│=0で 数 は,r(A)=2と
あ る が,2次
の 連 立 方 程 式 は,事
か ら成 っ て お り,4個
の 変 数 の2つ,例
と 表 さ れ,し
た が っ て,基
実 上2つ
え ばx,yが
本 解 と し て2つ
,r(A)=r<nの
が残 りの(n−r)個
と き,n個
の 方 程 式,
残 り の変z,uで,
の ベ ク トル が と れ る こ と か ら わ か る。
の 変 数 の う ちr個,例
え ば次 の解
の変数
の1次 式 と して 表 され る と き,基 本解 の ベ ク トル の個 数 は(n−r)個 さ らに,あ る連 立 方 程 式 の係 数 行 列Aが,│A│≠0な るが,│A│=0の
と き は解 が無 数 に あ る か,ま
とな る。
らば解 は た だ一 通 り決 ま
た は 解 が 存 在 しな い か ど ち らか
にな る。 特 に,│A│=0の
はx=0以
階
な る。
ゆ え に,〔 例 題1〕
一般 に
〓だ か ら,Aの
の 小 行 列式
と き,斉
外 の 解 を も ち,そ
次方程式
れ を基 本 解 で 表 す こ とが で き る。
問3 次 の連 立 方 程 式 の 基 本 解,特 殊解,一 般 解 を求 め よ。
ま とめ;こ の 連 立 方 程 式 に は次 の表 し方 が あ って,そ れ ぞ れ の よ さが あ る。 ・行 列 に よ る 表 現;Ax=b ・列 ベ ク トル に よ る 表 現;a1x1+a2x2+…+anxn=b ・行 ベ ク トル に よ る 表 現;ajtx=〔bj〕
,j=1,2,…,n
こ こ に,ajtは
列 ベ ク トルajの
特 に 上 の2行
目 で は,解
転置 行 列 を と っ た も の とす る。
が 無 数 に あ る場 合 に つ い て は,基
本 解,特
殊 解,一
般
解 と い う ベ ク トル で そ の 解 が す べ て 表 さ れ る。
3.2 ガ ウスの掃 き出 し法 連 立1次 方 程 式 を解 く基 本 的 な 方 法 に,ガ ウ スの 掃 き出 し法 が あ る。 この掃 き 出 し法 の意 味,手 順 お よ び応 用 場 面 につ いて 探 る こ とに しよ う。
[1] 掃 き出 し法 の意味 前 節 で取 り上 げ た,2点(1,2),(2,3)を
通 る1次 関数y=mx+nに
つ いて の
連 立 方 程 式 を,係 数 を消 去 す る方 法 で 解 き,そ れ に対 応 す る行 列 の変 形 を行 う。
① 手 続 き1;mを
消 去 す る た め に2行
② 手 続 き2;2行×(−1)−1行
こ う してm=1,n=1が
−(1行)×2を
行 う。
を 行 う。
得 られ る。
この よ うに,連 立1次 方程 式 の加 減 法 の 操作 を シ ス テ ム的 に行 う手 順 を ガ ウ ス の 掃 き出 し法 と い い,各 行計 算 の こ とを 掃 き出 し計 算 と い う。 また,掃 の う ち,右 上 三 角 行 列 を 作 る① の 操 作 を 順 行 演 算 と い い,右 位 行 列 を作 る② の操 作 を 逆 行 演 算 と い う。 〔 例 題2〕
次 の連 立 方 程 式 の 解 を,掃
き 出 し法 で 求 め よ。
き出 し法
上三 角 行 列 か ら単
〔解〕 行 列 に よ る操 作 と方 程 式 に よ る操 作 を 対 応 させ て,そ の 手 順 を 示 す 。
① 手 続 き1;2行
−(1行)×2→2行,3行
−1行→3行
② 手続 き2;3行+(2行)/3→3行
以 上①,②
が 順 行 演 算 で あ る。 続 け て逆 行 演 算 を行 う。
③ 手 続 き3;3行×3/5→3行
④ 手 続 き4;2行
−(3行)×2→2行,1行
⑤ 手続 き5;(2行)/3→2行
−(3行)×2→1行
⑥ 手続 き6;1行+2行→1行
こ う し て,解x=−1,y=−2,z=1を
得 る。
この よ う に,順 行演 算 で行 列 の対 角成 分(枢 軸)よ り,逆 行 演 算 の③,⑤
で対 角成 分 を1に
した後,④,⑥
り下 の成 分 が す べ て0に な で この 対 角 成 分 以 外 の
列 成 分 を0に す るよ う行操 作 を行 う。 掃 き 出 し計 算 で は,① ②で2行2列 の よ うに,掃
で1行1列
の 成分 を枢 軸 と し,そ れ よ り も下 の 行 の 成 分 を0に
の成 分 を,
して い く。 こ
き出 し計 算 は枢 軸 を 「か な め」 の よ う に扱 う。
問4 次 の連 立方 程 式 の解 を掃 き出 し法 で求 め よ。
[2] 掃 き出 し法 の手順 〔 例 題2〕 で順 行 演 算 の手 順 か ら,原 理 を探 って み よ う。 (1) 順 行 演 算 順 行 演 算 は,2行
お よ び3行 か ら1行 を実 数 倍 した もの を 引 くこ とで始 ま る。
① 2行 −(1行)×2→2行,3行−1行→3行
この操 作 で 行 列 の1列 目の 掃 き出 し計 算 が 終 わ る。 次 に,2行2列
の成 分3を
−3で 割 っ た後,①
と 同様 な操 作 を第2列
目 につ い
①
て 行 う。
② 3行−2行/(−3)→3行
,②
の 操 作 で は,あ
て 枢 軸a11,a22よ
な お,多
る 行 を 実 数 倍 し て 他 の 行 に 加 え た り,他
り も下 の 成 分 を0に
の行 か ら引 い
す る。
くの文 献 が そ うで あ る よ うに,本 書 で も順 行 演 算 で は対 角 成 分aiiを
1に まで 直 さず に お き,逆 行 演 算 で1に す る操 作 を 行 って い る。 しか し,対 角 成 分 を1に 直 す操 作 は,手 順 の順 序 につ い て交 換 法 則 が 成 り立 つ の で,い つ それ を 行 うか は あ ま り問 題 で はな い。 ま た,順 行 演 算 と い う用 語 は英 語 のdownsweep に あ た り,前 進 消 去 過 程,右 上 三 角 化 過 程 と い う場 合 もあ る。 (2) 逆 行 演 算 〔例題1〕
で は順 行 演 算 に よ って 次 の 式 が 得 られ た。 これ を も と に 逆 行 演 算 を
詳 し く調 べ て み よ う。
③ 3行×3/5→3行
こ こ で は3行3列
の 成 分 を 枢 軸 に と り,z=1を
④ 2行 −(3行)×2→2行,1行
−(3行)×2→1行
得 て い る。
こ の 方 程 式 で は1,2行
のzを
消 去 して い る 。
⑤ (2行)/3→2行
こ こ で は2行2列
の 対 角 成 分 を1に
す る た め,2行
を3で
割 って い る。
⑥ 1行+2行→1行
この逆 行 演 算 の③ で は3行3列
の対 角 成 分 を1に
分 を0に す る操 作 を 行 う。⑤,⑥
も同様 な操 作 で あ る 。 こ う して 行 列 の 表 現 で
は,左 辺 に単 位 行 列 が で きてx,y,zの
し,④
は第3列
の残 りの 成
解 が 得 られ る。
問5 次 の三 角 行 列 か らな る連 立 方 程 式 の解 を,掃
き出 し法 の 逆 行 演 算 で 求 め よ。
[3] 掃 き出 し法の プ ログ ラム 順 行 演 算 と逆 行 演 算 の 手 順 で 掃 き出 し法 を行 う,流 れ図 とプ ログ ラムを次 のペ ー ジ に示 そ う。 た だ し,誤 差 に対 す る配 慮 や枢 軸 が0の 場 合 の処 置 は して い な い。 プ ロ グ ラム3.1は 次 の連 立 方 程 式 を 右 の3×4行
列 で 表 し,こ れ に ガ ウ スの 掃
き出 し法 を行 って解 を計 算 して い る。 この3×4行
列 を拡 大 行 列 とい う。
プ ロ グ ラ ム 3.1
図3.7
問6
プ ログ ラム3.1を 用 い て,次 の連 立 方 程 式 の 解 を 求 め よ 。
[4] 掃き 出 し法 の工夫 掃 き出 し法 の 計 算 を コ ン ピュ ー タで 行 う とエ ラー を起 こす こ とが あ る。 そ の原 因 を 探 る と,次 の よ うな連 立 方 程 式 の 場合 で あ る こ とに気 づ くで あ ろ う。 ① 2文 字 が 消 え る。
(3.9)
② 行 が消 え る。
(3.10)
③ 定 数 だ けが 残 る。
(3.11)
い ず れ の場 合 も,上 記 の 掃 き出 し法 を そ の ま ま適 用 す る と対 角成 分が0に な り, 0で 割 り算 を行 う こ とか ら,コ ン ピュ ータ で 計 算 の 続 行 が 不 可 能 に な る。 それ ぞれ の場 合 に つ い て,掃
き出 し法 の操 作 を 変 更 し,う ま くい くよ う に工 夫
しよ う。 (1)
2個 以 上 の変 数 が 同 時 に消 え る場 合
この 場 合,行
の交 換 を行 ってみ る。 例 え ば,上 の連 立1次 方 程 式(3.9)に
き出 し法 を 行 って み よ う。 ただ し便 宜 上,拡 大 行 列 を考 え る こ とに す る。
掃
・1列 の 掃 き 出 し;2行−1行→2行
この 掃 き出 しで,2行2列
,3行
−(1行)/2→3行
の対 角 成 分 が0に な り,そ の ま まで は掃 き出 しが 続
行 で き な い。 しか し,3行2列
の成 分 は −5/2で0は
交 換 す る。 これ は,連 立 方 程 式 の2行
な い。 そ こで2行
と3行 を
と3行 を交 換 す る こ とを意 味 す る ので,ふ
つ う,行 列 は行 の交 換 は不 可 能 で あ るが,連 立方 程 式 の行 列 はか ま わ な い。
この 場 合,2行
と3行 を交 換 した と ころで 右 上 三 角 行 列 が で き順 行 演 算 が 終 了
す る。 ・続 いて 逆 行 演 算 を行 い,3行
を3で 割 って 対 角 成 分 を1に
し,次 に3列
の成
分 で 対 角 成 分 以 外 を0に す る。 ・この 操 作 を 続 けて 行 けば,最 終 的 に左 に単 位 行 列 が で き て計 算 が終 了 す る。
(2) あ る 行 が す べ て0に な る場 合 連 立1次 方 程 式(3.10)に
つ い て掃 き 出 し法 を行 って み よ う。
便 宜 上,こ
こで も拡 大 行 列 を 用 い る こ とにす る。
・この 拡 大 行 列 に 対 して2行
−(1行)×3→2行,3行
−(1行)×2→3行
と す れ ば,
3行
−2行→3行
と す れ ば,3行
この場 合,事 実 上2つ ・そこ で,2行
は す べ て0に
な る。
の方 程 式 だ けが 条 件 で あ る。
か ら逆 行 演 算 を 行 う。
2行×(−1)→2行
1行−2行→1行
と す れ ば,
よ っ て,
(3.12)
ゆ え に,連
立 方 程 式(3.11)の
解 は,
x=−2z こ の 解 を,前
に式(3.12)を
,y=z+2,zは
任 意 の実 数
節 の 基 本 解,特
殊 解,一
般 解 の を ベ ク トル で 表 現 し て み よ う。
変 形 し て 代 入 す る と,
〓特殊解 は
ゆ え に,基 本 解 は
一 般 解 は
〓と な り,
〓tは任 意 の実 数 にな る。
(3) あ る 行 の 成 分 が 定 数 を 除 いて0に な る場 合 式(3.11)に
あ げ た例 につ いて,拡 大行 列 で 掃 き出 し法 を 行 って み る。
2行
−(1行)×3→2行,3行
3行
−2行→3行
と す れ ば,
−(1行)×2→3行
と す れ ば,
3行 は定 数 の成 分 以 外 す べ て0に な る。 そ こで,前 節 で 取 り上 げ た行 成 分 の表 現 を 行 い,3行
の意 味 を考 え る。
(1)
は,0x+0y+0z=1 だ か ら,こ
の 方 程 式 を 満 た すx,y,zは
存 在 し な い 。 こ の よ う に,掃
途 中 で,あ
る 行 が 定 数 項 を 除 い て す べ て0に
な っ て し ま っ た と き,こ
き 出 し法 の の連 立 方 程
式 の 解 は 存 在 しな い 。
問7 次 の連 立 方 程 式 の解 を 掃 き出 し法 で求 め よ。 そ の際,行 の 交 換 な ど の工 夫 をせ よ。
(1)
(2)
(3)
[5] 掃 き出 し法 の適用 掃 き出 し法 は,単 に連 立 方 程 式 の解 を 計 算 す るだ けで な く,行 列 式 の値 を求 め た り,逆 行 列 を 計 算 す る こ と もで き る。 こ こで は,掃 き出 し法 を適 用 す る問題 場 面 を取 り上 げ,基 本 的 な性 質 と の関 わ りを 探 って み よ う。 (1) 行 列式 の 値 〔 例 題1〕
の連 立 方 程 式 に対 して,順 行 演 算 の掃 き出 しを次 の よ う に行 っ た。
こ こで,対 角 成 分 の積
〓が
行 列式
の 値 に な る。 そ の理 由 は,4.3節 行列 式 の 値 は,掃
のLU分
解 の と ころ で明 らか に な る。
き出 し法 を用 いて 容 易 に求 め る こ とが で き る。 プ ロ グ ラ ム
3.1で 逆 行 演 算 の 行 の 直前 に次 の プ ログ ラム を追 加 す る と,行 列 式 の 値 がdで 計 算 され る。
〓行列式 の値〓 (2) 一 度 に解 を求 め る 次 の よ う な問 題 が生 じた場 合,拡 大 行 列 を さ らに 拡 大 して 一 度 に解 を求 め る こ とが で き る。
〔 例 題3〕
次 の3つ の連 立 方 程 式 を同 時 に解 け。
〔 解 〕 次 の拡 大 行 列 に対 して掃 き出 し法 を 行 う。
順項演算
逆項演算
列 ベ ク トル
が そ れ ぞ れ の解 で あ る。 この解 は,実 は 〔 例 題1〕
の連 立 方 程 式 で,2つ
の方 程 式
(3.13) の拡 大 行 列 に対 して 掃 き出 し法 を行 った行 列
の 列 ベ ク トル に な っ て い る 。
な ぜ な ら,
と お け ば,連
立 方 程 式(3.13)は
と 表 さ れ る 。 こ の 等 式 の 両 辺 に 逆 行 列A-1を
か け て,
こ の こ と か ら,
な ど に よ っ て,3つ
の連 立 方 程 式 のそ れ ぞ れ の解 と な る こ とが わ か る。
(3) 逆 行 列 の計 算 第2章
で は連 立 方 程 式 を ク ラー メ ル の公 式 で 求 め,そ れ を利 用 して逆 行 列 を求
め た。 こ こで は 同 じ連 立 方 程 式 を取 り上 げ,掃
き 出 し法 で 次 の 行 列Aの
逆 行列
A-1を
求 め る。
前 項(2)で
は連 立 方 程 式 の解 を 同時 に求 め た。 こ こ で は,行
列 とす る3つ の連 立 方 程 式 の解 を同 時 に解 く。 す なわ ち,
と した解 を同 時 に求 め て み よ う。
に掃 き出 しを行 い,
拡大行列
し た が っ て,
そ の理 由 は,3つ
両 辺 にA-1を
の連 立 方 程 式 を行 列 で表 せ ば,
か け れ ば,
列Aを
係数 行
とな るか らで あ る。 掃 き出 し法 を用 いて 行 列Aの
逆 行列 を計 算 す る に は,Aの
右 に単位 行列 を置
い た拡 大 行 列 につ いて 掃 き出 し法 を 行 え ば よ い こ とが わ か る。 問8 次 の 行 列 の 逆 行 列 を 掃 き出 し法 で 求 め よ 。
な お,前 節 〔4〕 の プ ロ グ ラ ム に入 力 す る 方 法 は右 の よ うにdata文
で 行 う。
3.3 解の近 似計算 連 立 方 程 式 の 解 を 近 似 す る問題 は,掃
き出 し法 が うま く使 え な い特 殊 な行 列 な
ど に 対 す る工 夫 と して 発展 して きた。 そ の 源 は,ガ
ウス の誤 差 の研 究 に あ る と い
わ れ,近 似 と い う考 え 方 は特 異 な 発想 を必 要 とす る。 こ こで は,ガ ウ ス が用 い た 最 小2乗
法 を 用 いて,近 似 の考 え 方 を導 入 し,連 立方 程式 の近 似 解 に つ い て調 べ
よ う。
[1] 最小2乗 法 第1節
で は,2点(1,2),(2,3)を
通 る 直 線 を 求 め,そ
れが ただ 一 つ
で あ る こと を知 った。 こ こ で は5つ
の 点(1,2),(2,3),(2,1),(3,2),(4,0)を
た い 。 しか し,2点(2,3),(2,1)は,直
通 る直 線 を 求 め
線x=2上
を 通 る 直 線 は 存 在 し な い 。 「次 善 の も の と し て,条
に あ る の で,5点
のす べて
件 に 最 も近 い 直 線 は何 か 」。 こ
の よ う な 問 題 が 近 似 の 考 え 方 の 背 景 に な っ て い る。
図3.8
(1) 近似 の考 え方 直 線 で近 似 す る と きの,近 似 の考 え方 は次 の2つ で あ る。 ・5点 か ら最 も 「近 い 」 直 線 を 考 え,そ ・5つ の 各 点 で 直 線 とy座
一 方 ,2次
れ をy=px+qと
す る。
標 の 差 の 平 方 和 を と り 「距 離 」 をdと
す る。
式 の最 小 値 に つ い て の性 質 が,次 の よ うに して 探 求 的 に求 め られ る。
①
(a1x+b1)2の
最 小 値 は,a1x+b1=0の
②
(a1x+b1)2+(a2x+b2)2の
と きで あ る 。
最 小 値 は,
の と き で あ る。 実 際,展
開 式(a12+a22)x2+2(a1b1+a2b2)x+(b12+b22)に①
す る と,(a12+a22)x+(a1b1+a2b2)=0と ③
を適 用 な る。
(a1x+b1)2+…+(anx+bn)2の
最 小 値 は,
の と き で あ る。 こ の 性 質 は,偏
微 分 の 概 念 を 用 い て も導 く こ と も で き る。 しか し,
こ の よ う な ア プ ロ ー チ の 方 が 発 見 的 な お も し ろ さ が あ る。 さ て,上
の 問 題 のdに③
の性 質 を 適 用 しよ う。
・dをpの
式 と み た と き;
・dをqの
式 と み た と き;
これ か ら,次 の連 立方 程 式 が で き る。
これ を 解 い て,
こ う して 近 似 的 な直 線 が,次 式 の よ う に求 め られ る。
(3.14) 一 般 に,n個
の 点(ak,bk),k=1,2,…,nが
与 え ら れ た と き,こ
近 い と こ ろ を 通 る 近 似 的 な 直 線 をy=px+qと
す れ ば,平
れ らの 点 に
方 和;
を最 小 にす る条 件 か ら,次 の連 立 方 程 式 が得 られ る。
(3.15) こ こ で,a1+a2+…+anを 2+a
Σak a1
22+…+an2を
b1+b2+…+bnを a 1b1+a2b2+…+anbnを
Σak2 Σbk Σakbk
とす る。 p ,qを
変 数 とす る連 立 方 程 式 を 解 け ば,近 似 的 な直 線y=px+qが
求 め られ
る。 こ の よ う に して,い
くつ か の ペ ア に な っ た 数 の 組(a,b)を
に 関 数 を 求 め る 方 法 を 最 小2乗 (2)
も と に,近
似 的
法 と い う。
コ ン ピュ ー タの 利 用
コ ン ピ ュ ー タ を 利 用 して,最 使 う こ と を 考 え て,次
の よ う な3×n行
Aと そ の 転 置行 列Atの
こ の 行 列 の1行,2行
小2乗
積AAtを
の 行 列 は,上
る 。 そ こで こ の 拡 大 行 列 の2行 最 小2乗
法 を 行 っ て み よ う。 コ ン ピ ュー タ の 配 列 を 列Aを
と って み る と,次 の対 称 行 列 に な る。
の 連 立 方 程 式(3.15)の
y=px2+qx+rを,同
拡大行列 に な ってい
ま で 掃 き 出 し法 を 行 え ば,解p,qが
法 の 流 れ 図 と プ ロ グ ラ ム は,図3.9と
こ の プ ロ グ ラ ム はm=1の
作 る。
プ ロ グ ラ ム3.2の
と き 直 線y=px+qを,m=2の 様 に3次
2次 関 数 の 近 似 の と き は,行
得 られ る 。 よ う に な る。 と き2次
関数
以 上 の 関 数 で も近 似 で き る よ う に 作 っ て あ る 。
列Aを
と し,AAtの
第3行
まで を 拡 大 行 列 とす る 連 立 方 程 式 を掃 き 出 し法 で 計 算 し て
係 数p,q,rを
求 め る。 こ の連 立 方 程 式 を正 規 方 程 式 と い う。
プ ロ グ ラ ム3.2
図3.9
プ ロ グ ラ ム を 実 行 す る と き,入 と し てdata文 最 小2乗
力 デ ー タ をm個
で 上 の プ ロ グ ラ ム3.2の
法 の 利 用 例 と して,第1章
る 中 ・高 男 子 生 徒 の 身 長xと
体 重yの
の 組(ak,bk),k=1,2,…,n
よ う に 入 力 し て 使 う。 の 肥 満 値 の 計 算 方 法 が あ る。 表1.5に デ ー タ を,
data
data
151.8,159.4,165.0,168.4,170.0,170.7
6,1
data
44.0,49.3,54.7,59.7,61.5,62.8
と して 入 力 す る と,近 似 直線 は
お け
y
=1
.0024x−109.279
と な る。 これ は,い わ ゆ る肥 満 度 と して身 長 か ら110を 引 く と標 準 的 な体 重 が 求 め られ る こ とを示 して い る。 この よ うに,最 小2乗 法 を 用 いて近 似 の考 え方 を適 用 す る 問題 場 面 は社 会 現 象 や 自然 現 象 の多 方 面 にわ た り,あ る変 数 を も とに予 測 す る こ とに利 用 され る。 問9
5点(1,2),(2,3),(2,1),(3,2),(4,0)を
通 る2次
関 数 の 近 似 的 な 関 数 は,次
の式 に な る こ と を示 せ 。
[2] 誤 差の処 理 連 立 方 程 式 に対 して掃 き出 し法 を コ ン ピ ュー タで 行 うと き,連 立 方 程 式 によ っ て は丸 め誤 差 や桁 落 ち誤 差 が発 生 し,未 知 数 が多 い場 合 に はそ の 累積 に よ って信 頼 性 が 期 待 で きな い こと もあ る。 そ こで,誤 差 を少 な くす る工 夫 を して み よ う。 (1)
5点 の移 動 と近 似 直 線
掃 き 出 し法 で 連 立 方 程 式 を解 く場 合,3.2節
で み た よ うに,拡 大 行 列 の枢 軸 で
他 の成 分 を割 る計 算 を順 に行 って い く。 この と き,枢 軸 の値 が0に 近 い と き桁 落 ち が発 生 し,誤 差 が大 き くな る。 例 え ば,こ の節 の は じめ に取 り上 げ た図3.8の5つ に縮 小 し,次 にx軸 方 向 に1,y軸 て み よ う(図3.10で
〔例 題4〕
最 小2乗
(1.4,2.0)を
方 向 に2だ け平行 移 動 した5点
方 向 に0.1倍 につ いて考 え
は前 者 の5点 を× で,後 者 の5点 を・ で 示 した)。
法 で,5点(1.1,2.2),(1.2,2.3),(1.2,2.1),(1.3,2.2),
通 る近 似 的 な 直 線 を 求 め よ 。
〔 解 〕 近 似 直 線y=ax+bの 列 と して,掃
の 点 を,x軸
係 数 は,次 の行 列 の積 か ら得 られ る行 列 を 拡 大 行
き 出 し法 で 解 く ことが で き る。
と して 上 の プ ロ グ ラ ムを実 行 す る と
AAtを
掃 き出 し法 で 変形 した行 列Cは,
直 線 の 方 程 式 は,y=−0.61545x+2.92310と 一致す る
な っ て 方 程 式(3.14)と
ほぼ
。
図3.10
(2) 誤 差 の原 因 も と の5点(1,2),(2,3),(2,1),(3,2),(4,0)を
通 る 近 似 直 線 は,
(3.16) で あ る。
一方, この5点 をx軸 お よ びy軸 方 向 に1/10ず つ縮 小 し,そ の後,x軸 1,y軸
方 向 に2だ け平 行 移 動 した ものが 〔 例題4〕
の5個 の点 だ か ら,〔例題4〕
の直 線 の方 程 式 も式 の 上 で 同 じだ け縮 小,平 行 移 動 して,よ うに得 られ る。
方向に
り正 確 な式 が次 の よ
(3.17) 式(3.16)と
式(3.17)を
比 べ る と,定
こ の 誤 差 の 原 因 を 探 る た め,計
数 項 に 誤 差0.0766が
発 生 して い る。
算 過 程 を み る と次 の よ うに な って い る。
行列;(AAtの1,2行) に対 して,順 行演 算 で2行2列
の成 分 を計 算 す る とき,
と桁 落 ち が発 生 して い る。 そ して順 行 演 算 の結 果 は,次 の よ うに な る。
ゆ え に,〔 例 題4〕 の デー タの よ うに違 い が あ ま りな い と き,掃 き 出 し法 を 行 う 過 程 で桁 落 ち が 生 じ,枢 軸aiiの 値 が0に 近 くな って 誤 差 が 発生 す る ことがわ か っ た。 (3) 枢 軸 選 び 掃 き 出 し法 の 操 作 を 工 夫 して 誤 差 が 少 な く な る よ う に し よ う。 順 行 演 算 を(k− 1)回 行 っ た と き,第k回 を 避 け る た め,第k列
目の 枢 軸 を akkに と る。 こ こ でakkが0に でk行
以 下 の 成 分aik,(j=k,k+1,…,m)の
が最 大 と な るlを 選 び,次 にl行 とk行 を交 換 して か らalkを 枢 軸 と し て 掃 き 出 しを行 う。 プ ロ グ ラ ム は,順 行 演 算 で 枢 軸 を 選 ぶ
の 前 に あ る2つ
のfor∼next文
の 間 に,次
の 操 作 を 追 加 す る。
近 くな る こ と 中 で,│aik│
w
=0 for
第k列 i=k
if
m
の 成 分 の 絶 対 値 の 最
大 値 をw,そ
abs(w)
next if
to
then w=c(i,k)
の 行 をi1と
す る 。
:i1=i
i abs(w)>0.0001 for
j=k swap
next
then
す べ て0な
ら,次
の 枢 軸 へ
ton c(k,j),c(i1,j)
k行
とi1行
を 交 換
j
else end
(4)枢
if
軸 選 び の効 果
〔 例 題4〕
で 用 い た5点;
(1.1,2.2), (1.2,2.3), (1.2,2.1), (1.3,2.2), (1.4,2.0)
を 通 る 近 似 的 な2次 次 の3つ
関 数 に つ い て,こ
の 方 法 で 方 程 式 を 求 め,そ
① 正 確 な 方 程 式 を,問9の
の 行 交 換 の 効 果 を 調 べ て み よ う。 そ の た め れ らの 係 数 を 比 較 し て 誤 差 を 調 べ る。
グ ラ フ を 縮 小,平
行 移 動 し て 求 め る。
② 最 小2乗
法 で,枢
軸 選 びを 行 わ ず に係 数 を求 め る。
③ 最 小2乗
法 で,枢
軸 選 びを 行 って係 数 を求 め る。
(a)正
確 な 方 程 式
を 通 る2次
関 数 の 方 程 式 は,
問9か
y=−0.45162x2+1.6774x+0.6451
こ の 関 数 の グ ラ フ をx軸,y軸 に+1,y軸
方 向 に+2だ
と な り,こ (b) 大 行 列Aか
ら,5点(1,2),(2,3),(2,1),(3,2),(4,0)
方 向 に0.1倍
ず つ 縮 小 し,さ
ら に そ れ をx軸
方 向
け 平 行 移 動 す れ ば,
れ が 最 も正 確 な 方 程 式 で あ る 。
近 似 解 らAAtの
の 誤 差 はな い。
近 似 解 は,求 第1,2,3行
め る2次
関 数 をy=px2+qx+rと
お き,拡
が 次 の よ う に 計 算 さ れ る。 こ こ ま で は 桁 落 ち
図3.11
に つ い て,
AAtの1,2,3行
① 枢 軸 選 び を行 わず に係 数 を求 め る。
順行演算 の結果
逆行演算 の結果
近 似 関数 は,
と な る 。 た だ し,例
え ば1.92881E−4=0.000192881と
② 枢 軸 選 び を 行 っ て 係 数 を 求 め る 。
1回 目の 掃 き出 し計 算 で,次 の行 列 に な る。
す る。
2行2列
と2行3列
の成 分 を比 較 す る。
0.051804<0.082954だ
か ら2行
と3行
を 交 換 し,さ ら に 掃 き 出 し 計 算 を 行 う。
逆行演算 の結果
近 似 関 数 は,
2つ の近 似 解 を正 確 な値 と比 較 し,相
表3.1(単
位1E−2)
対 誤 差 を求 め る と次 の よ うに な る。 表3.1か
ら,行 の交 換 で相 対 誤 差 が わ
ず か に減 少 して い る こと がわ か る。 これ らの計 算 は単 精 度 で 行 っ たが,倍 精 度 で 求 め る と,ほ ぼ 正 しい値 に な る。
[3] 特殊 な場合 の近似法 拡 大 行 列 が 左 下 三 角 行 列 の場 合,ま た そ の対 角成 分 の絶 対 値 が他 の 成分 の絶 対 値 よ り も大 き い と い う特 殊 な 場 合 の行 列 につ い て,解 の近 似 法 を 考 え よ う。 これ は,再 帰 的 な考 え を 使 う と こ ろ に特色 が あ る。 (1) 三角 行 列 次 の左下 三 角 行列 の 連 立 方 程 式 を考 え る。
こ の と き,1.2節
の フ ィ ボ ナ ッ チ 数 の 定 義 と似 た 次 の 再 帰 関 係 が 成 り立 つ 。
(3.18)
各 対 角 成 分 が0で
な い と き,xkはk=1,2,…
右 上 三 角 行 列 の 場 合 で も,式(3.18)に
の 順 に 求 め ら れ る。 似 た 再 帰 関 係 の 式 を も と に して 解 が 求
め られ る 。
プ ロ グ ラ ム3.3
・ サ ブ ル ー チ ンmatreadは 3.1を
結果
図3.12
参 照 の こ と
プ ロ グ ラ ム
(2) ヤ コ ビの反 復法 ヤ コ ビの方 法 は,三 角行 列 の ア ル ゴ リズ ム を もと に して い る。 つ ま り,右 上 の 0の 成 分 が 相対 的 に0に 近 い と き,あ る い は対 角 成 分 の 絶 対 値│akk│が 分 の絶 対 値 よ り も大 きい よ うな特 殊 な場 合,式(3.18)の
他 の成
再 帰 関 係 と よ く似 た 次
の関 係 式 で 近似 す る。
・第1回
目は
,こ
の 式 でx1=x2=x3=…=xn=0と
し て 新 し いx1,x2,…,
xnを 求 め る 。 ・第2回
目 は ,こ
のxk,k=1,2,…,nを
上 の 式 に 代 入 し て 新 し いxkを
計 算
す る。 ・ これを 反 復 し
,上
の 条 件 を 満 た す 行 列 に つ い てxnを
あ る 値 に 近 づ け る。
こ う して 近 似 解 を 得 る方 法 を ヤ コ ビ の 反 復 法 と い う 。
例 えば,連 立方程式
の 近 似 解 を 求 め る 関 係 式 は,次
こ こ で,n×(n+1)の
の よ う に な る 。 た だ し,x0=y0=z0=0と
拡大行列
す る。
プ ロ グ ラ ム3.4
ガ ゥ ス ・ザ イ デ ル 法 で は プ ロ グ ラ ム g・zで
は
・ ・ の4箇
所 を 修 正 す る 。
結果
図3.13 サ ブ ル ー チ ンmatreadは 3.1を
参 照 の こ と
プ ロ グ ラ ム
に つ い て ヤ コ ビの反 復 法 を適 用 し,近 似 解 を求 め る流 れ 図 と プ ロ グ ラ ムを 作 って み よ う。 な お,連 立 方 程 式 の定 数 の ベ ク トルbは 拡 大 行 列 の 第n+1列 また,プ
ロ グ ラム3.4の 注 釈 に あ るg・zは
にお く。
ガ ウ ス ・ザイデル 法 の 場 合 に 修 正 変
更 す る こ とを 示 す。 こ の手 順 の 中 でxk+1を 計 算 す る際 に,直 前 に計 算 して きたx1,x2,…,xkを 利 用 す る方 法 の こ とを ガ ウ ス ・ザイデル 法 とい う。 ガ ウ ス ・ザイデル 法 は,上 の プ ロ グ ラ ムで 指定 され た4箇 所 を修 正 あ る い は削 除 す れ ば よ く,こ の 方 法 で は配 列y(n)も
不 要 にな る。 さ らに,上 の実 行 結 果 が
示 す よ うに,ガ ウ ス ・ザイデル 法 は反 復 回 数 が 少 な い とい う利 点 が あ る。 な お,反 復 回 数 な どの 側 面 か ら,計 算 手順 を比 較 す る こ とを ア ル ゴ リズ ム の効 率 の問 題 とい う。 図3.14は2つ
の 方 法 に よ る解 の近 似 を,回
数 ご と に 比 較 した
もの で あ る。 この図 か ら,ほ ん の少 しの工 夫 が ア ル ゴ リズ ムの効 率 に大 き く結 び つ く こ とが わ か る。 この図 で は,ヤ
コ ビ法 の途 中 数 箇 所 で 誤 差 が大 き くな る現 象
が み られ,新 た な 問題 が生 じて い る。
図3.14
練習問題 1. 次 の 連 立 方 程 式 を掃 き 出 し法,ヤ
2. 行 列Aと
コ ビ法,ガ
ベ ク トル を次 の よ うに定 め る。
ま た,A-1の
列 ベ ク トル をu1,u2,u3と
し,A-1=〔u1,u2,u3〕
(1) e1,e2,e3をA,u1,u2,u3を (2) u1,u2,u3を (3) A-1を 3. 図3.15の
ウ ス ・ザイデル 法 の 各 方 法 で 解 け。
と す る 。 こ の と き,
用 いて 表 せ。
求 め よ 。(注 意:u1は
上 の 問 題1の
答 え で あ る。)
求 め よ。 よ う な 回 路 が あ り,各
流 をx1,x2,x3,x4,x5と ,x2,x3をx4,x5で
辺 の電
す る 。 こ の と き,x1 表 し,こ
の回路 の電
流 のす べ て を決 定 せ よ。
図3.15
第4章 行列の応用 行 列 の基 本 的 な 計 算 法 則 は具体 例 に あ て は め る と,い ろ い ろ な意 味 を もつ 。 この 章 で は, ベ ク トル と行 列 の 関 係 に つ い て考 察 し,次 に具 体 的 な事 例 に行 列 を適 用 す る。
4.1
ベ ク トル と行 列
こ こ で は,ベ
ク トル の 意 味,特
に 座 標 平 面 上 の ベ ク トル と,空
間座標上の ベク
トル の 意 味 に つ い て 考 え る こ と に し よ う。
[1] 数 ベ ク トルの意 味 数 ベ ク トル(a,b)や(a,b,c)は,そ と 大 き さ と い う意 味 を もつ の で,そ
れ ぞ れ 座 標 平 面 と空 間 座 標 上 で,向
き
の 計 算 に も意 味 が つ け 加 わ る 。 こ の よ う な 数
ベ ク トル と 行 列 の 関 連 を 探 ろ う 。
数 ベ ク トル〓
を座 標 平 面 上 にお け る原 点O(0,0)か ま り,こ の ベ ク トル はx軸 方 向 にa,y軸
ら点A(a,b)へ
表 す とす る。
の 平 行 移 動 と考 え る。 つ
方 向 にbだ け平 面 全 体 を 移 動 す る量 を
(1) 矢 線 ベ ク トル 平 面 上 の あ る点Aか
らあ る点Bへ
が あ る とす る。 こ の量 をAを
の移 動 の よ うに,向
始 点,Bを
き と大 き さ を も っ た 量
終 点 とす る矢線 ベ ク トルABで
表す。
(2) 座 標 平 面 上 の ベ ク トル 数 ベ ク トル〓
は,座
標 平 面 上 で 始 点 を 原 点O(0,0),終
も表 せ る。 こ こで,原
点O(0,0)と
点A(a,b)と
点A(a,b)の
し た 矢 線 ベ ク ト ルOAで
距 離 をaの
大 き さ と い い,│a│
と表 す 。 す な わ ち,
(3) 座 標 空 間 上 のベ ク トル
数 ベ ク トル〓
は,原
点O(0,0,0)を
始 点 と し,終
点 をB(a,b,c)と
ク トル と も考 え る こ と が で き る 。 こ の と きbの
(a)矢
線 ベ ク トル(b)座
成 分 の 個 数 が2個,3個
き さ が0の
標 空 間 上 の ベ ク トル
ベ ク トル の 意 味
の 数 ベ ク トル は,こ
座 標 上 に お け る平 行 移 動 で あ っ て,そ こ こ で,大
大 き さを 次 の 式 で 表 す 。
標 平 面 上 の ベ ク トル(c)座 図4.1
す る座 標 空 間 上 の 矢 線 ベ
の よ う に そ れ ぞ れ 座 標 平 面,空
れ ぞ れ大 き さ と 向 き を もって い る。
ベ ク トル の こ と を 零 ベ ク トル と い い,0と
書 く。
間
座標 平面で は
ベ ク トルaが
〓,座標空間で は〓
あ っ た と き,大
き さ が 同 じ で 向 き が 逆 の ベ ク トル を 逆 ベ ク トル と
い い,−aと
表 す 。 さ ら に,ベ
ク トルaと
の こ と をaと
平 行 な ベ ク トル と い う。
向 き が 同 じか,ま
た は逆 の ベ ク トルb
[2] ベ ク トルの 演算 数 ベ ク トル の 和,差,実 る い は,座
数 倍 の 計 算 は,行
列 の 計 算 と 同 じで あ る。 座 標 平 面 あ
標 空 間 上 の ベ ク トル の 演 算 の 図 形 的 な 意 味 に つ い て 考 え よ う。
ベ ク トルa,bが
あ り,等
さ が 同 じ で あ る 。 ま た,数
号a=bが
成 り立 つと き,a,bは
移動 の 向 き と大 き
ベ ク トル で は,
〓は,a=c,b=d
〓は,a=d,b=e,c=f 図4,2
と 同 じ で あ る。
数 ベ ク トル
〓 実 数kに
つ い て,そ
の 和,差,実
数倍
が 行 列 の場 合 と同 様 に定義 され る。
ベ ク トルa,bの こ こで,図
ク トル
和,差,実
数 倍 は 図4 .3の
よ う な 図 形 的 な 意 味 を もつ。
形 的 な 特 性 を も つも の と し て,実
数 倍 の ベ ク トル 全 体 を 考 え る。 べ
〓の実 数 倍 の ベ ク トル と して
〓を 作 り,kを 実 数 全 体
に わ た っ て 動 か す と き,ベ
ク トルkaの
終 点 は 常 に 原 点O(0,0)と
点A(a,b)を
(d
(a) 実 数 倍ka
(b)
) 差a−b
(e) 実 数 倍ka 図4.3 ベ ク トル の 演 算 の 意 味(座
結 ぶ 直 線OA上
(c) 和a+b
標 平 面)
に あ る。
した が っ て,ベ
ク トルaとkaは
平 行 に な る。 こ こ で,零
ベ ク トル に平 行 で あ る と し て お け ば ,ベ
ク トルa,bが
ベ ク トル は す べ て の
平 行 で あ る と き,a=kb
とな る。
3個 の成 分 か らな る数 ベ ク トル
a+b,差a−b,実
特 に,ベ
ク トル
数 倍kaも
〓 実kに
つ い て,和
同 様 に定 義 さ れ,空 間座 標 上 で 同 様 な意 味 を もつ。
〓が平 行 で あ る と き,
a= kbと
な る 実 数k≠0が
あ り,
が成 り立 つ。
問1
〓が平 行 で あ る と きp,qの
ベ ク トル
値 を求 め よ。 ま た,
そ の大 き さを 求 め よ。
[3] ベ ク トル の1次 結合 こ こで は,ベ ク トル を基 本 的 なベ ク トル で表 す 可 能性 につ いて 探 り,行 列 との 関 連 を 考 え よ う。 ベ ク トル
〓と
〓は,座
ル で あ る 。e1,e2を
基 本 ベ ク トル と い う。
任 意 の ベ ク トル
〓は,次
う にe1,e2を
ベ ク ト
のよ
用 い て 表 す こ と が で き る。
こ の と き,pをe1,e2に 次 に,あ
標 平 面 上 で 大 き さ が と も に1の
分 解 す る と い う。
る ベ ク ト ルpをe1,e2以
の ベ ク トルa,b(a≠0,b≠0)で
外 分解
図4.4
ベ ク トル の分 解
す る こ と を 考 え る 。 ベ ク トルpが
と 表 さ れ た と き,pはa,bに
分 解 さ れ た,あ
る い はpはa,bの1次
結合 で 表 さ
れ た と い う。 こ こ で,1次
結 合 の し か た は 一 通 り な の か,基
べ て 表 せ る か,1個 る。
本 ベ ク トル2個
の 基 本 ベ ク トル で は 無 理 か,と
で ベ ク トル が す
い う問題 に答 え る ことにす
(1)
1次 独 立
例 え ば,基
本 ベ ク トルe1をe2だ
1=0,m=0で
矛 盾 が 生 じ る。 ま た,me1=ne2と
だ か ら,m=n=0と をe1だ
け で 表 す こ と を 考 え る 。e1=me2と
な る。 ゆ え にe1をe2だ
けで 表 す こ と も で き な い 。e1,e2以
況 に あ る と き,す
す れ ば,
け で 表 す こ と は で き な い 。 逆 にe2
外 の ベ ク トルa,bに
つ いて も同 じ状
なわち
m a+nb=0な
ら ばm=n=0
と な る ベ ク トルa,bを1次 同 様 に,ベ
す れ ば,
独 立 とい う。
ク トルa1,a2,a3,…,anが
零 ベ ク トル で な い と き,
な らば,
と な る ベ ク トルa1,a2,a3,…,anを1次 ベ ク トル に つ い て の 性 質 に は ,次 (a)
独 立 な ベ ク トル と い う 。1次
独 立 な
の よ う な 特 性 が あ る。
1次 独 立 な ベ ク トルa1,a2,a3,…,anは,互
い に 他 の ベ ク トル の1
次 結 合 で表 す こ とは で きな い。 (b)
座 標 平 面 上 の1次 pは1次
独 立 な ベ ク トルa,bと
結 合p=ma+nbの
〓と し,
こ こ でa,bが
す れ ば
つ い て,
形 で 一 意 的 に 表 す こ とが で き る 。
(証 明) p=ma+nbと
任 意 の ベ ク ト ルpに
〓と す る 。
,
平 行 で あ れ ばa=kbで,こ
の と きad−bc=0と
な る。
しか しa,bが
平 行 で な い の でad−bc≠0。
お け ば,Aは
し た が っ て,
〓と
逆 行 列 を も ち,│A│≠0。
の両 辺 に,こ の 逆行 列A-1を 左 側 か らか けて,
こ れは,m,nが
一 意 的 に 決 ま る こ と を 示 して い る 。
(b') 座 標 空 間 上 の1次 pは,1次
結 合p=ka+lb+mcの
(b) でa,bの b,cが
任 意 の ベ ク トルpに
つ いて
形 で 一 意 的 に 表 す こ と が で き る。
こ と を ベ ク トル の 集 合pの
基 底 と い う。 同 様 に(b')で
は,a,
座 標 空 間 上 の ベ ク トル の 基 底 と し て 選 ぶ こ と が で き る 。
こ う し て,平
面 上 の ベ ク トル は2個
上 の ベ ク トル は3個 (2)
独 立 な ベ ク トルa,b,cと
の1次
の1次
独 立 な ベ ク トル で,同
様 に座 標 空 間
独 立 な ベ ク トル で 一 意 的 に 表 さ れ る こ と が わ か る。
1次 従 属
座 標 平 面 上 の ベ ク トル
〓で は2a+3b=0が
成 り立
つ 。 ま た,
では
(4.1) が 成 り 立 つ。 後 述 す る よ う に,こ
問2 合 と してp=ma+nbの
の よ う な ベ ク トル を1次
〓は1次 独 立 で あ る こ とを示 し, 形で表せ。
従 属 と い う。
〓をa,bの1次
結
[4] 1次 結 合 と行列式 ベ ク トル の1次 結 合 を行 列 で 表 して み よ う。
〓の1次
座 標 平 面 上 の ベ ク トル
結 合p=ma+nbは,
(4.2) の よ うに行 列 で表 現 され る。 こ こ で,行
列
〓はa,b2つ
を 並 べ た 行 列[a,b]に
な っ て い る。
座 標 空 間上 の1次 結 合 も同様 に行 列 の積 と して表 さ れ る。
こ こ で,上
の1次
列A=[a,b]の
独 立 の 証 明 の 式(4.2)に 行 列 式 が│A│=0に
お い て,a,bが1次
な り,ま た,a,bが1次
従 属 な ら ば,行 独 立 な ら│A│≠0
で あ る こ とが 示 され た。 1次 結 合 式(4.1)の
関 係 は,1次
独 立 性 を 否 定 す る も の で,次
の形 で 示 さ れ
な る と き,a1,…,anを1次
従 属な ベ ク ト
る。
に お い て,2つ
以 上 のkiでki≠0と
ル と い う 。 こ の と き,1次
従 属 な ベ ク トルa1,…,anの
な す 行 列 式 は,
とな る。 この 特 性 は多 方 面 で 使 わ れ る。
〔 例 題1〕 合 で表 せ 。
次 の ベ ク トルa,b,cは1次
従 属 で あ る こ と を 示 し,cをa,bの1次
結
〔 解 〕 行 列式
3列
〓に基 本 変 形 を行 う。
−(1列)×2→3列;
3列−2列
→3列
し た が って,a,b,cは1次 り,c=2a+bと
〔 例題1〕
か ら
従 属 で あ り,列
の 計 算 か らc−2a−b=0,つ
ま
表 さ れ る。
の よ うに,い
くつ か の ベ ク トル が あ っ た と き,そ れ が1次
従 属 か1
次 独 立 か を 判 定 し,1次 結 合 の係 数 を計 算 す る の に行列 式 が 使 わ れ る。
問3 ベ ク トル
r=kp+lqの
ま た,
4.2
〓が あ っ た と き,rをp,qの
一 結 合 で,
形 に表 す こ とが で き るか
。
〓で は ど う か 。
1次 変 換
行 列 の 応 用 の 重 要 な柱 の1つ と して1次 変 換 が あ げ られ る。1次 変 換 は,行 列 を変 換 作 用 とす る ア イ デ ア に基 づ いて お り,LU分
解 や固 有 値 の 問 題 解 決 の基 本
とな る。1次 変 換 の具 体 場 面 と して座 標 平 面 や,座 標 空 間 上 の 点 や ベ ク トル を取
り 上 げ,そ
の 特 性 を 探 る こ と に し よ う。
[1] 1次 変 換 1次 変 換 は,行 い ま,カ 白 質,脂
列 と 数 ベ ク トル を 利 用 して そ の 全 体 像 を ま と め る こ とが で き る。
レ ー の 材 料 で あ る豚 肉,じ
肪,炭
水 化 物 の 量 が 表4.1で
ゃ が い も,た
ま ね ぎ,米
レ ー の 材 料 と して 豚 肉p,じ
〔g〕使 わ れ,蛋
白 質 がx,脂
肪 がy,炭
の蛋
表 さ れ て い る とす る 。 表4.1
こ こ で,カ
の 各100g中
(単 位g)
ゃ が い もq,た
ま ね ぎr,米s(×100)
水 化 物 がz〔g〕 あ る と す れ ば,
とい う式 が成 り立 つ。 こ こ で 成 分x,y,zは
定 数 項 の な いp,q,r,sの1次
関 数 に な っ て お り,行
列 と数
ベ ク トル を 用 い て 次 の よ う に 表 現 さ れ る。
行 列 と数 ベ ク トルを 用 いて,こ の よ うな形 で表 現 さ れ る よ うな対 応 関 係 の こと を1次 変 換 と い う。 座 標 平 面上 の点 の移 動 で1次 変 換 に な る例 を あ げ て お こ う。 〔 例 題2〕
座 標 平 面 上 の点A(x,y)が,直
線y=2xに
関 して対 称 に 移 動 す る1
次 変 換 を求 め よ。 〔 解〕
点(x,y)が
対 称 移 動 で(x',y')に
移 った とす る。
と な る が,こ れ をx',y'に
つ い て 解 け ば,
図4.5
と な る。 こ の 対 称 移 動 に よ る 点 の 対 応(x,y)→(x',y')は,次
の1次
変 換で 示
さ れ る。
(1) 1次 変 換 の 定 義 と表現 座 標 平 面 上 の点 の移 動(x,y)→(x',y')が
(4.3) 行列 で (4.4) と い う関 係 で 行 わ れ る と き,x,yか
1次 変 換 の 式(4.3)は
らx',y'へ
式(4.4)の
の 対 応 関 係 は1次
行 列 で 表 さ れ る の で,1次
変 換 にな る。
変換
い うい い か た をす る。 座 標 空 間 上 の 点(x,y,z)が か らx',y',z'へ
次 の 関 係 で 点(x',y',z')に
の 対 応 関 係 も1次
変 換 に な る。
移 動 す る と き,x,y,z
〓と
行列 で
た だ し,点(p,q)に
関 す る対 称 移 動 の よ うに,1次
変 換 の 移 動 と平 行 移 動 を
あわ せ た 移 動 に よ る対 応 関 係 は ア フ ィ ン変 換 とい い,次 の よ う に表 され る。
〓行列 で〓 (2) 1次 変 換 の合 成,逆 変 換 点(x,y)を(x′,y′)に 次 に,こ
移 動 す る1次
の 点(x′,y′)を(x″,y″)に
変 換 をfと
し,そ
移 動 す る1次
の 行 列 をAと
変 換 をg,そ
し よ う。
の 行 列 をBと
す る。
f,gを
続 け て,点(x,y)を(x″,y″)に
と い い,そ
移 動 す る1次
の 行 列 は次 の よ う に 行 列 の 積BAと
し た が っ て,1次
変 換A,Bを
特 に,合
成 変 換f,gを
す れ ば,こ
の1次
変 換 をfとgの
して求 め られ る。
こ の 順 に 行 う 合 成 変 換 は,1次
行 っ た と き,点(x,y)が
な り,B=A-1と
変 換BAに
再 び(x,y)に
変 換 は 移 動 を 行 わ な い こ と に な り,そ
〓と な る 。 こ の と きBA=Eと
合 成変 換
な る。 な った と
の 行 列 は単 位 行 列
表 せ る 。gをfの
逆
変 換 と い う。
・1次 変 換 は行 列 で 表 され ,行 列Aの1次 ・1次 変 換A ,Bを ・1次 変 換Aの
変換 を 「1次 変換A」
この 順 に合 成 した1次 変 換 は行 列 の積BAに
とい う。 な る。
逆 変 換 はA-1に な る。
問4 座標平面上 で,y軸 に関す る対称移動 の1次 変換 を行列 で表 せ。 座 標空 間上 でy軸
に 関 す る対 称 移 動 は ど うな るか 。
図4.6 図4.7
[2] 基本 ベク トル の利用 一 般 の 点(x,y)の
移 動 で 決 定 が 困 難 な1次 変 換 も,基 本 ベ ク トル の 移 動 で 簡
単 に決 ま る。 この 考 え方 で 回転 移 動 の1次 変 換 を調 べ てみ よ う。 (1) 線 形性 の原 理 ベ ク トル
に対 して1次 変 換
こ の と き,実
1次 変 換 をfと
〓を 行 う とp,qは,
数m,nに
し,ベ
つ い て,1次
ク トルpの
結 合mp+nqの1次
移 動 をf(p)で
変 換 を 考 え る と,
表 現 す れ ば,こ
の性 質 は
とな る。 この性 質 を線 形 性 の原 理 と い う。 特 に,基
〓が,あ
本 ベ ク トル
に移 った と き,こ の1次 変 換 の 行 列Aは
る1次 変 換fで
ど うな るか 考 え て み よ う。 線 形 性 の原
理 か ら,
し た が っ て,
〓つ ま りAは
次 の よ う に 一 通 り に 決 ま る。
(4.5) 同 様 に,座 標 空 間 にお いて も,あ る1次 変換fで3つ
の基 本 ベ ク トル
が,
に 移 る と き,fは
行 列
〓 で 表 さ れ る。 つ ま り,
(4.6) よ って1次 変 換 の行 列 は,基 本 ベ ク トル を1次 変 換 で 移 動 した ベ ク トルで 作 ら
れる 。
(2)
応
用
1次 変 換 を 利 用 して,座 標 平 面 上 で の 光 の 入 射 と反 射 の 問 題 を解 決 して み よ う。 座 標 平 面 の第1象 限 に光 が 入 射 し,x軸 ど うな るか,ベ
に反 射 して か らy軸 に反 射 して 戻 る と
ク トル と1次 変 換 で 探 る こ と にす る。 〓とす る。x軸,y軸
入 射 の光 線 を ベ ク トル
に 関 す る対 称 移 動 の 行 列
A,Bは,
光 がx軸,y軸
の順 に 反 射 す るか ら,
そ れ ぞ れx軸,y軸
に関 す る対 称 移 動 を
行 い,合 成 変 換 を 行 う とベ ク トルaは, 次 の よ うに 逆 ベ ク トル−aに
し た が っ て,入
変 わ る。
射 し た 光 線 は,反
射 で
図4.8 光 の 反 射(平
面)
は 逆 向 き に な る こ とが示 さ れ た。
問5 光 線 がy軸,x軸
の順 に反 射 した場 合 で もaは
−aに 移 る こ とを示 せ。
[3] 回転の1次 変 換 基 本 ベ ク トル の 考 え 方 を 用 い て 原点 の ま わ りの 回 転 移 動 の 行列 を求 め,そ れ を 用 い て三 角 関数 の 基 本 的 な性 質 を ま とめ よ う。 (1) 回転 の 行 列 基 本 ベ ク トルe1,e2を
原 点 の ま わ り に θ回 転 す る と,次
の よ う に な る。
原 点 を 中心 に して θ回転 す る1次 変 換 は,式(4.5)か
ら次 の 行 列Aで
表
さ れ る。 図4.9 回 転 移 動
(2) 三 角 関 数 の 基 本 的 な 性 質 回 転 の行 列 に1次 変 換 の 合 成,逆 変 換 の考 え を組 み 合 わ せ る と三 角 関 数 の基 本 的 な性 質 が 次 の よ う に ま とめ らる。 こ の性 質 は,後 の 節 で利 用 す る。 (a) 加 法 定 理
原点 のまわ りに角α,続 けて β回 転 す る と角α+β
の回 転 に
な る。角α,続 けて β回転 す る移 動 は角α,角β の合 成 の1次 変 換 で 表 され るか ら,
したが って,三 角 関 数 の 加 法 定 理 が 次 の よ う に導 か れ る。
(b) 倍 角 公 式 加 法 定 理 で,β=α
角α,続
けて α回 転 す る と角α+α=2α
とお け ば倍 角 公 式 が 導 か れ る。
(c) 負 の角
行列
〓の逆 行 列 は,〓
Aの 逆 変 換 は角 − θの回 転 移 動 だ か ら,
の 回転 に な る。
し た が っ て,負
の 角 の 公 式 が 成 り立 つ 。
・cos(−
θ)=cosθ
・sin(−
θ)=−sinθ
(d)
補 角 の公 式
原 点 を 中 心 に90° 回 転 し て か ら− θ 回 転 す る と,補
角
90° − θの 回 転 に な る。
これ が
に な る か ら補 角 の 公 式 が 成 り立 っ。 ・cos(90°−
θ)=sinθ
・sin(90°−
θ)=cosθ
〔 例 題3〕
直 線y=mxに
関 す る 対 称 移 動 の1次
〔 解 〕m=tanθ
と す れ ば,こ
こ の 対 称 移 動fで
基 本 ベ ク トルe1,e2は
式(4.2)か
の 直 線 とx軸
変 換 を 表 す 行列 を求 め よ。
の 正 の 方 向 と の な す 角 は θ に な る。
次 の ベ ク トル に移 る。
ら,直 線y=(tanθ)xに
関 す る対 称 移 動 を 表 す 行 列 は, 図4.10
特 に,〔 例 題2〕
のy=2xに
関 す る 対 称 移 動 で はtanθ=2と
な る。 こ こ で 三
角 関 数 の 基 本 的 性 質 か ら,
倍 角 公 式 か ら,
こ う し て,〔 例 題2〕
の式 が導 か れ る。
問6 原 点 の ま わ りに60° 回転 す る1次 変 換 の行 列Aを 称 移 動 す る1次 変 換 の行 列Bを
[4]
求 め,直 線y=√3xに
関 して対
求 め よ。
道路 の反射板
夜 に道 路 を車 で走 る と,自 分 の ヘ ッ ドライ トが 常 に反 射 す る反 射 板 が あ る。 こ れ は,座
標 空 間 で 原 点 と(1,0,0),
(0,1,0),(0,0,1)で 形 の,小
作 る四面 体 と同 じ
さ な四 面 体 の 内側 を反 射板 に し
て 無 数 埋 め 込 ん だ も の で あ る。 そ の 原 理 は,任
意 の 方 向 か ら 入 射 し た 光 がyz平
面 に 反 射 し,次 後 にxz平
にxy平
面 に 反 射 し,最
面 に 反 射 す る と き,こ
の光 の
方 向 と始 め に 入 射 し た 光 の 方 向 が 逆 に な る こ と に あ る。 図4.11
座標空間 での反射
図4.12
基 本 ベ ク トルe1,e2,e3を,そ 称 移 動 す る と表4.2の
道路の反射板
れ ぞ れyz平
面,zx平
面,xy平
面 に 関 して 対
よ うに な る。
yz平 面 の 対 称 移 動 で は基 本 ベ ク トルe1=
〓を〓 に移 す が,他 の 基 本
表4.2
ベ ク ト ルe1=〓
らな い。
は変 わ
とe2=〓
し た が っ て,そ
の1次
変換 は
と表 され る。
同様 に,zx平 よ う に な る。
面,xy平
面 に関 す る対 称 移 動 に対 応 す る行 列Azx,Axyは,次
の
Ayz,Azx,Axyは
対 角 行 列 だ か ら,ど
と な る 。 こ れ はyz平
面,zx平
で あ る 。 こ の 合 成 変 換 で,任 え に,入
面,xy平
の 積 も交 換 可 能 で あ り,3つ
の 積 は,
面 に つ い て の対 称 移 動 の合 成 変 換 の行 列
意 の ベ ク トルpは
必 ず 逆 ベ ク トル −pに
移 る。 ゆ
射 した光 は必 ず 逆 方 向 に向 か う こ とに な る。
問7 座 標 空 間 上 で,ベ
最 後 にzx平
[5]
の2つ
ク トルp=〓
面 に 反 射 す る と き,ベ ク トルpは
と同 方 向 で 入 射 した光 が,xy平
面,yz平
面,
どの よ う に変 わ って い くか 。
フ ラクタル
座 標 平 面 上 の点(x,y)を
次 の規 則 で(x',y')に
移 す 移 動 の こ とを ア フ ィ ン変
換 とい う。
行列 で 一 方,あ
る図 形 は,そ れ と相 似 な形 が いく ら縮 小 して も現 れ る こ とが あ る。 そ
の よ う な形 の こ とを 自 己相 似 形 ま た は フ ラ ク タ ル とい う。 フ ラ ク タル を ア フ ィ ン 変 換 の 合 成 で 分 析 す る と,次 の操 作 に分 類 で き る。
・拡 大 縮 小:図
形 の 縮 尺 を変 え る。
・平 行 移動:点
を 一 定 の方 向 に一 定 の 距離 だ け移動 す る。
・回転 移動:回
転 の 中 心 の ま わ りに一 定 の 角 だ け回転 す る。
例 え ば,図4.13(a)の
折 れ 線ADB,BECの
形は,破
線 の 図 形ABCを1/2に
縮
小 した形 にな って い る。 図(b)の 左 半 分,右 半 分 につ いて も同 じこ とが い え る。 図4.13(a)の 変 換 の構 成 要 素 を調 べ る と,次 の ①,② ① △ABCを
△ADBで
の 変 換 が導 か れ る。
お きか え る;△ABCを
原 点 の まわ り に−45° 回 転 し,
お きか え る;△ABCを
〓に縮 小 して,原 点 の ま わ
〓に縮 小 す る。
② △ABCを り に−135°
△CEBで
回 転 し,x軸
方 向 に2だ
こ う して で き た △ADB,△CEBに
け平 行 移 動 す る。
対 して再 び ①,②
を 行 う。 た だ し,②
行 移 動 の 大 き さ は三 角 形 の大 きさ に比 例 させ,例 えば △ADBは 大 きさだ か ら1だ け右 に移 動 す る。 な お ①,②
の変 換 のn回
の平
△ABCの1/2の 目 の 反 復 で は,対
(a) 合 成1
(b) 合 成2
(c) 竜 の フ ラ ク タ ル
図4.13
象 と な る 三 角 形 は2n-1個 そ こ で,全
竜 の フ ラ ク タ ル
に な る。
部 の 三 角 形 で は な く,各
ん で 変 換 す る と,図4.13(c)の
回 で2つ
の う ち の1つ
竜 の フ ラ ク タ ル が で き る 。 図(c)は
直 角 二 等 辺 三 角 形 に 対 し て ア フ ィ ン変 換 の 合 成(縮 得 られ る 。
だ け,で
小,回
た らめ に選
図(a)の 破 線 の
転)を8000回
行 って
プ ロ グ ラム4.1
図4.14
4.3 行列のLU分
解
1次 変 換 は行 列 を 用 い て 表 現 され た。 こ こで は,あ る行 列 に対 して掃 き出 し法 の手 順 を行 列 で表 して逆 行 列 を求 め,そ の幾 何 的 な意 味 を調 べ て み よ う。
[1] 基本変 形 第3章
の掃 き出 し法 で は,行 列 の行 や列 を変 形 す る と き に基 本 変 形 を用 い た。
基 本 変 形 の行 列 を1次 変 換 と して みた と きの特 徴 を 考 え て み よ う。 掃 き 出 し法 を用 い て連 立 方 程 式 を解 く場 合,次 の 基本 変 形 を用 い る。 ① あ る行 を実 数 倍 す る。 ② あ る行 に他 の行 をk倍
して 加 え る。
③ 行 の代 わ りに列 に つ い て ①,②
と同 様 な 操 作 を 行 う。
これ らの基 本 変 形 は,行 列 の積 と して 表 現 で き る。 に対 す る基 本 変 形 に対 す る行 列 は,次 の よ うに な る。
例 え ば,A=〓
(a) 第1行
をm倍,第2行
をn倍 す る 行 列
(b) 第1行
をk倍
して第2行
に加 え る 行列
(c) 第2行 をk倍
して第1行
に加 え る 行列
他 の 行 列 に対 す る基 本 変 形 も これ か ら類 推 され る。例 え ば,次 の3×3行
だ か ら,3行−(1行)×3→3行
を 行 う基 本 変 形 は,次
列 では
の 三 角 行 列 で あ る。
問8 行列A=〓
の1列 をk倍
し,2列
に加 え る基 本 変 形 の行 列 を求 め よ。
[2] 軸 の 移 動 1次 変 換 は,点 や ベ ク トル を移 す だ けで な くx軸,y軸 例 え ば,1次
変 換A=
〓で,基
に 移 る か ら,x軸,y軸
本 ベ ク トル の 実 数 倍ke1,ke2は
は そ れ ぞ れ 直 線cy=ax,dy=bxに
変換
は 変 わ らな い が,x軸
る(図4.16)。
で は,x軸 x=kyに
移 る(図4
図4.16
図4.15
例 え ば,1次
も移 す と考 えて み よ う。
で は,y軸 は 直 線y=kxに
ま た,1次
移
変 換
は 変 わ ら な い が,y軸
は直線
移 る(図4.17)。 図4.17
問9
1次 変 換A=
〓でx軸,y軸
は ど の よ うな 直線 に移 るか 。
そ れ ぞ れ,
.15)。
[3] LU分
解
に つ い て掃 き出 しを行 っ て行 列Aを
行 列A=〓
対 角 行 列 に直 し,
そ の 意 味 を 考 え よ う。 (1)
LU分
解
①2行+1行
×2→2行
②1行+2行
×(−3)→1行
よ っ て,
(4.7) 一 方 ,こ れ ら基 本 変 形 の三 角 行 列 の逆 行 列 は,
だ か ら,行
列Aは
列 を と っ た と き,成
次 の よ う に 三 角 行 列 と 対 角 行 列 で 表 さ れ る 。 こ こ で は,逆 分 の 符 号 が−3→3,2→−2と
変 化 す る こ と に 注 意 しよ う。
こ の よ うに,行 列 を三 角 行 列 と対 角 行 列 の 積 に直 す こ と をLU分 LU分
行
解 と い う。
解 を す る と行 列 式 の値 が求 め られ,ま た 逆 行列 も計 算 で き る。 ふ つ う逆 行
列 の計 算 は多 くの計 算 量 を必 要 とす るが,い
ま まで の と こ ろで はLU分
解 は最 も
効 率 的 な アル ゴ リズ ムで あ る こ とが 知 られ て い る。 逆行 列A-1は,式(4.7)か ら次 の 式 にな る。
問10 行 列A=〓
をLU分
(2) 正 則 で な い 行 列 のLU分
解 せ よ。
解
逆 行 列 のな い場 合 のLU分
解 を 同 じよ うに行 って み よ う。
例 え ば,A=
〓に2行+(1行)×2の
基 本 変 形 を 行 う と,次
の よ
うに 分 解 され る。
これ に 列 の基 本 変 形;2列+1列
×(−2)を
行 う。
ゆ え に,
よ っ て,
逆 行 列 を もた な い行 列 をLU分 ら0の 対 角 行 列B,お 3×3行
列 のLU分
問11 行 列A=〓
解 す る と,左 下 三 角 行 列A,対
よ び右 上 三 角 行 列Cの
積ABCに
な る。 逆 行 列 を もた な い
解 も,こ の手 順 か ら類 推 す る こ とが で き る。
をLU分
解 せ よ。
角成 分 が途 中 か
[4] LU分
LU分
解 の数値 計算
解 は基 本 変 形 を用 い て計 算 で き,そ れ はガ ウス の掃 き出 し法 と 密 接 な関
連 性 が あ る。 そ の原 理 を探 り,LU分 (1) 原
解 の手 順 を プ ロ グ ラム化 して み よ う。
理
次 の連 立 方 程 式 に掃 き 出 し法 を行 い,そ れ に対 応 す る基 本変 形 を行 って み よ う。
左 辺 の係 数 の行 列 に つ い て基 本 変 形 を行 う。
と す れ ば, ① 2行+1行
3行+1行
② 3行+2行
よ っ て,
×(−2)→2行 ×1→3行
に よ って,Aは
次 の よ う に 変 わ る。
×(−1)→3行
に よ っ て,さ
ら に 次 の よ う に 変 わ る。
こ こ で,
〓と な る 。
この 逆 行 列 の証 明 は省 くが,対 角 成 分 よ り も左 下 の 成 分 は基 本 変 形 ①,② 数 の 符 号 を変 え た数 に な る。 す なわ ち,3.2節
の ガ ウ スの掃 き出 し法の手順 を使 っ
て,
の よ う に,Aが
左 下 行 列Bと
の 積A=BCと
してLU分
右 上 行 列C
解 され る。
(2) 数 値 計 算 ガ ウ ス の掃 き 出 し法 は,順 行 演 算 と逆 行 演 算 か らな る。 こ こで は,(1)の 法 で 順 行 演 算 で0に
方
した成 分 の 箇所 に基
本変 形 の 係 数 を入 れ てLU分
解を表現 す
る。 上 の 行 列Aに
の係
掃 き出 し と新 た な 計 算
を行 って み よ う。
図4.18
プ ログ ラ ム4.2
サ ブ ル ー チ ンmatreadとmatprintは 3.2節 と 同 じ も の を 用 い て い
る
。
結果
① 2行−1行 3行−1行
② 3行−2行
こ こで,②
×2→2行 ×(−1)→3行
×1→3行
の 行列 は掃 き出 し計 算 で0と な る成 分 の 代 わ り に基 本 変 形 の 係 数
(網 部 分)を 入 れて い る。 こ うす る と,② 追 加 した行 列 を 左下 三 角 行 列B,② 角 行列Cと
してLU分
解 され る。
の行 列 の網 目 の部 分 に対 角 成 分 の1を
の 対 角 行 列 か ら右 上 の成 分 の 行 列 を右 上 三
(3)
流 れ 図 と プ ロ グ ラム
LU分 4.2に
解 を 計 算 す る 流 れ 図 と構 造 化Basicプ 示 す 。 こ の プ ロ グ ラ ム で はdで
4.4
固 有 値,固
行 列Aの
表 す1次
ロ グ ラ ム を,図4.18と
行 列 式 の 値 も計 算 し て い る 。
有 ベ ク トル
変 換 に よ って変 わ らな い点 や ベ ク トル を 探 る こ と に よ って
固 有 値,固 有 ベ ク トル の概 念 を 明 か に し,そ れを 用 い てAの [1]
不 動 点,不
2×2行
で ベ ク トルp=
累 乗Anの 計 算 を行 う。
動 ベ ク トル
列A=
に 移 る。
〓は,Ap〓=
こ こでpがAの1次
変 換 で 移 動 しなか った とす れ ば,Ap=pが
こ で,
〓を 解 い てa=0,bは
こ の こ と は,図4.18のy軸
上 の任 意
の 点(0,b)が1次
動 か ない
変 換Aで
ク トルP=〓
も この1次
変 換 で動 か な い 。 こ の よ う に,あ 点,ベ
る1次
変換で動かない
ク トル の こ と を 不 動 点,不
動ベ ク
成 り立つ。そ
任 意 の 実 数 を 得 る。
こ とを示 す。
ま た,ベ
プ ロ グ ラム
図4.19
トル と い う。 一般 に,行 列Bと
零 ベ ク トル0に つ い てB0=0と
な るか ら,零
ベ
ク トル0は 不 動 ベ ク トル,原 点 は不 動 点 に な る。 不 動 点 の個 数 は,行 列 に よ って 異 な り,原 点 だ けが 不 動 点 で あ る よ うな 行 列, あ る 直線 上 の点 す べて が 不 動 点 で あ る よ う な行 列 な どが あ る。
〔 例 題4〕
対 角 行 列A=〓
の 不 動 ベ ク トル を 求 め よ 。
〔 解 〕〓
だ か ら,ベ ク トルp=〓
が不 動 ベ ク トル と す る
と,
Ap=Pか
し た が っ て,零 次 に,3×3行
ら,2a=a,3b=b ベ ク トル0だ 列 の1次
行 列A=〓
の 不 動 ベ ク トル をp=〓
〓か ら,c=0で,a,bは
ベ ク トル〓
点 が 不 動 点 に な る。
変 換 の 不 動 点 に つ い て も調 べ て み よ う。
Ap
=ae1+be2と
け が 不 動 ベ ク トル,原
は,a〓
と す れ ば,
任 意 の 実 数 とな る。
+b〓
表 せ る。
し た が っ て,不
動 点(a,b,0)はxy
平 面 上 の 任 意 の 点 に な る。
問12 行 列A=〓 ク トル を 求 め よ 。
の不 動 点,不 動 べ
図4.20
[2] 固有値,固 有ベ ク トル 不 動 ベ ク トル の 条 件 を ゆ る め て,1次
変 換 後 の ベ ク トル が,も
との ベ ク トル と
平 行 に な る場 合 を考 え て み よ う。 例 え ば,行 列A=〓 1次 変 換 で,pと
が あ っ た と し,あ
平 行 な ベ ク トルkpに
る ベ ク トルP=〓
≠0がAの
移 っ た と し よ う 。 こ の と き,
か ら,
(4.8)
こ こ でp≠0だ
か ら,行
列式
と な る。(2−k)(1−k)=0か
らk=1,2が
し て, k=1の
k
=2の
と き,a+2b=0か
と き
,b=0か
ら
ら
(s,tは
し た が っ て,
実 数)
求 ま る 。 こ れ を 式(4.8)に
代 入
〓
(4.9)
(4.10)
こ こ で,
と す れ ば,Ap1=p1,Ap2=2P2だ
か ら,p1,p2は1次
に そ れ ぞ れk1=1倍,k2=2倍 こ のk1,k2を 固 有 値,固 で き,そ
行 列Aの
平 行
さ れ る。 固 有 値,p1,p2を
固 有 値k1,k2の
有 ベ ク トル が もつ 特 性 を 利 用 して,行 れ を 用 い て 行 列Aの
こ こで,固
変 換Aでp1,p2と
累 乗Anの
有 ベ ク トルp1,p2の1次
列Aを
固 有 ベ ク トル と い う。 対角 行列 に直す ことが
計 算 を 行 っ て み よ う。 結 合 で 作 られ る ベ ク トル
を 考 え る。
(4.11)
(4.12)
式(4.11)に1次
変 換Aを
行 う と,
図4.21
(4.13)
式(4.12)にA2の1次
変 換 を 行 え ば,
(4.14)
式(4.13)と
ゆ え に,
式(4.14)を
比 べ て,
と す れ ば,〓
こ こ で,〓
両辺 を そ れ ぞ れ か けて,
よ っ て,
こ う してAnが 行 列Aの
〔 例 題5〕
固 有 値 と固 有 ベ ク トル を用 い て 計算 で き る。 な お,次
の変形 を
対 角 化 と い い,固 有 値 の数 値 計 算 な どに 利 用 され る。
の 固 有 値 と 固 有 ベ ク トル,お
行 列A〓
〔 解 〕 行 列Aの
固 有 値 をk,そ
よ びAnを 求 め よ 。
と す る。
の 固 有 ベ ク トル をp=〓
か ら次 の 連 立 方 程 式 が で き る。
(4.15) a =b=0は
自 明 な解 だ か ら
,p≠0と
し て み る と,行
列 式
か ら,−(2−k)(1+k)−4=0 2次
方 程 式k2−k−6=0を
式(4.15)にkを
代 入 し て,
解 い て,k=−2,3が
求 ま る。
k =−2の
k =3の
と き,pは4a+b=0を
とき
,pはa−b=0を
満 たす か ら
(s,tは
ゆ え に,固
有 値k1,k2と
満 たす か ら
実 数)
そ れ に 対 応 す る 固 有 ベ ク トルp1,p2は
と お け ば,
よ っ て,
の 固 有 値 と,固
問13 行列A=〓
[3]
有 ベ ク トル,Anを
求 め よ。
固有 値 の 数 値 計 算
対 称行 列 に つ い て,そ の 固有 値,固 有 ベ ク トル の数 値 計 算 を 行 う原 理 と して, 回転 移動 の1次 変 換 を 用 い る方 法 につ い て考 え て み よ う。 (1)
2×2行
列 の場 合 と,原 点 の ま わ り に45° 回 転 す る1次 変
対 角成分 が等 しい行列A=〓 換 の 行列Pを
考 え る。
(4.16) で あ る。 ま た,行
列AはPに
よ っ て,
(4.17) と 対 角 化 さ れ る 。 こ こ で,Aの
固 有 値k1,k2は,
か ら,
k2−2ak+a2−b2=0
こ れ を 解 い て,k1=a+b,k2=a−bが
求 ま る。
こ れ は 対 角 化 し た 行 列 の 対 角 成 分 で あ る 。 こ の よ う に,対 あ る 角 で の 回 転 の 行 列Pを とす る対 角 行 列 式(4.17)が (2)
3×3行
2×2行
計 算 す る と 固 有 値k1,k2を
対 し て, 対角成 分
得 られ る。
列
列 の 場 合 か ら類 推 し,次
対称行列A=〓
P-1は2.3節
と り,P-1APを
称 行 列Aに
の 対 称 行 列Aに
対 して 行 列Pを
に,行 列P=〓
の 逆 行 列 の 計 算 で 求 め られ る 。 こ の と き,
探す。
を と れ ば,
と な っ て,P-1APも な お,計 4.2節
ま た対 称 行 列 に な る。
算 過 程 で 倍 角 公 式sin2θ=2sinθcosθ,cos2θ=cost2θ-sin2θ
か ら 得 て い る 。 こ こ で,P-1APの
第3,1成
を
分
-0.5(a−c)sin2θ+hcos2θ を0と
す れ ば,tan2θ=2h/(a−c)と
と な り,2個
な る か ら,こ
の θ でP-1APは,
の成 分 を0に す る こ とが で き る。 行列Aに
つ い て,対 角成 分 以 外 の
成 分 を0に す る操 作 を繰 り返 し行 え ば,最 後 に は対 角 成 分 だ けが 残 り,結 局,行 列Aは
対 角 化 さ れ る。 そ して,そ の 対 角 成 分 の 値 が 固 有 値 にな る。
な お,行 列 式(4.16)の
よ う に,転 置 行列Ptが
行 列 と い う。 次 の プ ロ グ ラ ムで は,直 交 行 列Pに ・Aの 固 有 値 とP-1APの
な る行 列 を 直 交
関 す る次 の性 質 を利 用 す る。
固有 値 は 同 じで あ る。
・対 称 行列 と直 交行 列Pに ・P1,P2が
逆 行 列P-1と
よ ってP-1APを
直交 行 列 の と き,積P1P2も
対 角 行 列 に で き る。
直交 行 列 に な る。
[4] プログ ラム 対 称 行 列Aに り,P-1APの
つ い て,上 の固 有 値 の 数 値 計 算 の 手 順 に 従 って 直 交 行 列Pを 成 分 を2つ ず つ0に
作
して い き,対 角成 分以 外 の 成 分 が10-5未 満 に
な った と き に計 算 を 終 了 す る。 この手 順で 固有 値 を 求 め る方 法 をヤ コ ビ法 とい う。
[5]
再 帰 関 数 と 固 有 値
数 列a1,a2,a3,…,an,an+1,an+2,… にanをnの し,自
が あ る と し よ う 。 例 え ば,an=n2の
式 で 表 す こ と が で き れ ば,そ
よ う
の数 列 は全 部 わ か っ た と い え る。 しか
然 現 象 や 社 会 現 象 か ら数 列 を 導 く と き 多 く の 場 合,
図4.22
と い っ た 再 帰 関 係 の 形 で 表 さ れ る 。 こ こ で は,再 表 し,固
有 値,固
用 紙 の た て,よ
有 ベ ク トル を 使 っ て,an=n2の
縦;p1=840
よ う な 形 に 直 し て み よ う。
こ の長 さ と い う 国 際 的 な 規 格 にA判
例 え ば,図4.23のA1判
帰 関係 で表 され た数 列 を行 列 で
の 縦,横
の 長 さ は,
が あ る。
プ ロ グ ラ ム4.3
サ ブ ル ー チ ンmatread,matprintは, プ ロ グ ラ ム1.1を
結果
参 照 の こ と 。
横;q1=594(単
A2判
は,こ
A2判
の 縦,横
位mm)
の 用 紙 を 半 分 に して 作 る 。 の 長 さp2,q2は
縦;p2=594=q1
横;q2=420=0.5p1
実 際 に は,用
紙 の 規 格 はmm未
満 の丸
め 誤 差 を 避 け る た め に 切 り捨 て が 行 わ れ る 。 こ こ で は,簡
単 の た め に丸 め は行 わ
な い も の と し よ う。 そ う す る と,次
の再 帰 関係 の式 が成 り
図4.23
立つ。
こ こ でxn=〓
xn+1とxnの
と す れ ば,ベ
再 帰 関 係 は,次
こ こ で,A=〓
ク トル の 列x1=〓
の よ う に 行 列 で 表 さ れ る。
と お け ば,
,x2,…,が
で
き て,
こ こ で,Aの
固 有 値k1,k2と
そ れ に 対 応 した 固 有 ベ ク トルp1,p2を
〓と な るkと,ベ
y=kx,0.5x=ky,つ
求 め る。
が あ った とす る。
ク トル〓
ま り
(4.18) を行 列 で 次 の よ う に表 す 。
この連 立 方 程 式 はx=y=0以
外 の解 を もつか ら,係 数 行 列 の行 列 式 は,
〓だ か ら,固 有 値〓
固有値〓
した が っ て,〓
固有 値〓
と して よ い。
に つ い て,式(4.18)の2式
な る か ら,
と して よ い 。
に つ い て,式(4.18)は
て,
(s,tは
し た が っ て,
は と も にx=√yと
実 数)
〓と して よ い 。
と も に〓
とな る。 よ っ
と お け ば,
(4.19)
n =1の
と き,
n =2の
と き
,
と な って,式(4.19)の
正 し い こ と が わ か る。
練習問題 1. 直 線y=3x−5の
上 の 点 を(x,y)と
お よ びxを 用 い て表 現 せ よ 。
〓を,
2. 2×2行
3.
をLU分
列〓
解 せ よ。
数 直 線 上 にa1=0,a2=1,an+2をan+1とanの
き,数
す る。
列a1,a2,a3,…,an,…
(1) an+2をan+1とanの
固有 値,固 有 ベ ク トル を利 用 してAnを
(4) anをnの
と
式 で 表 せ 。
と 置 く と き,Pn+2=Apn+1糞
(2)
(3) Aの
中 点 に と る 。n=1,2,… が で き る 。
式 で表 せ 。
満 た す 行 列Aを
求 め よ。
求 め よ。
し た
第5章 線形計画 線 形 計 画 と は,あ る要 素 を 組 み合 わ せ て値 を い ろ い ろ と った と きの,最 適 値 を 決 定 す る 方 法 で あ る。 この 方 法 は条件 式 を1次 不 等 式 や1次 関数 で表 現 し,最 も適 し た要 素 の組 み 合 わ せ方 を調 べ,こ の 関 数 に対 して上 記 の不 等 式 を あ て は め,吟 味 して,可
能 な解 の 中 か
ら最 適 解 を見 つ け 出 す とい う手 順 を と る。 こ こで は,そ の方 法 を会 社 の 業 績 や 輸 送 コ ス ト な ど,い ろ い ろ な要 素 が 交錯 す る現 代 社 会 の状 態 を分 析 し,予 測 す る の に利 用 す る。 そ の と き コ ン ピュ ー タが有 効 な道 具 と して 使 わ れ るの を み るで あ ろ う。
5.1 線形計 画の問題 この 方 法 を と って 解 決 で き る問 題 場 面 は,現 代 社 会 で 多 方 面 にわ た ってい るが, この 問題 解 決 の 方 法 は,オ ペ レー シ ョンズ リサ ー チ(OR)と
呼 ば れ て い る。
[1] 基本 的な 問題 線 形 計 画 の 問 題 は,1940年
代 に大 戦 の た め の企 画,予
想 とい う目的で行 わ れ
た。 線 形 計 画 が 発 見 され た の は1945年 以 降 で あ る が,そ の 発 端 と な った もの と 類 似 の問 題 場 面 を い くつ か あ げ て み よ う。 〔 例 題1〕
食 品 の 摂 取 量 の 問題
あ る家 庭 で は,食 パ ン とベ ー コ ンで最 低 の栄 養 を まず 確 保 して い る と い う。 表
表5.1 食 品 の 成 分
5.1で
は,食
はmg単
パ ン と ベ ー コ ン の100gあ
位,カ
は1斤240円
ロ リー はkcal単
タ ミ ンA,ビ
タ ミ ンB1
段 は 円 で 示 さ れ て い る。 な お,こ
のパ ン
で あ る。
平 均 的 な 成 人 は1日 以 上,2000カ
位,値
た り の 成 分 を,ビ
あ た り ビ タ ミ ンAは0.3mg以
上,ビ
タ ミ ンB1は2.4mg
ロ リ ー 以 上 の 摂 取 が 必 要 で あ る と い う 。 こ の と き,各
準 を 満 た し,かつ1日
の 費 用 が 最 小 に な る よ う に,1人
栄 養素 の基
が 食 べ る食 パ ン と ベ ー コ
ンの 量 を 定 め よ。 〔 解 〕 食 パ ン100x〔g〕,ベ
ー コ ン100y〔g〕
・ ビ タ ミ ンAの
条 件;0.08x+0.04y≧0.3
・ ビ タ ミ ンB1の
条 件;0.30x+0.60y≧2.4
とす る と,
・カ ロ リー の 条 件;300x+400y≧2000
簡 単 な係 数 に直 す と,
(5.1)
こ の 条 件 で,食
パ ン100x〔g〕
と ベ ー コ ン100y〔g〕
の合 計 の 値 段
(5.2) が 最 も小 さ く な る よ う なx,yを 式(5.1)の3式
が満 た す領 域
求 め る。 内D内 の 点P(x,y)のx,yで60x+90yの
調 べ る。
とお けば,こ れ は互 い に平 行 な直 線 群
値 を
図5.1
を 表 して い る 。 kの 値 を 動 か す と き,領 kの 値 は 図5.1か
域Dと
共 通 部 分 を もつ よ う な(x,y)の
中 で,最
小 の
ら,
(5.3) の 交 点x=4,y=2で
と る 。 式(5.2)に
代 入 し て,
が 最 小 値 と な る。
(終 わ り)
この 問 題 で は,条 件 が式(5.1)の さ らに,最 小 値 を求 め た い式(5.2)も
よ うに変 数x,yの1次
題 の こ と を線 形 計 画 の 問題 と い う。 線 形 計 画 の 問 題 で,最 (5.2)の
不 等 式 で 与 え られ,
そ の変 数 の1次 関 数 で あ る。 こ の 形 の 問 小 値 を 問 題 に した式
こ と を 目 的関 数 とい う。
〔 例 題1〕
の 方法 で,線 形 計 画 の 問題 を解 く手 順 は次 の2つ に ま とめ られ る。
(a)条
件 を不 等 式 と領 域 で表 現 す る。
要 素 が2つ
の変 数x,yだ
か ら,条 件 が座 標平 面 上 の領 域 で 表 せ る。
(b) 目的 関 数 を直 線 で 表 現 す る。 最 小 値 を求 め た い式 をkと
お き,平 行 な直 線 で 表 して 最 小 値 を と る。
線 形 計 画 の問 題 は,1945年
ア メ リカ の軍 隊 で兵 員 の 食 料 の 問 題 と して は じめ
て 公 的 に用 い られ た。 こ の問 題 は基 本 的 な栄 養 素 の最 低 量 を満 た し,し か も使 う 原 料 の費 用 を最 小 にす る よ う な,1日
の 食 事 の 問題 で あ った。 しか し,こ の 種 の
問 題 は1940年 代,経 済 学 者G.T.Stiglerに
よ っ て最 初 に定 式化 され て い た。
と こ ろ で,彼 は食 パ ンや ベ ー コ ンの よ うな材 料77種 リー につ い て吟 味 し,そ の 解 と して 小 麦 粉,引 ピ ー ナ ッツバ タ ー,ラ ー ド,牛 の レバ ー,キ
に対 して,栄
養素 とカ ロ
き割 りと う も ろ こ し,無 糖 練 乳, ャベ ツ,じ ゃが い も,ほ うれ ん 草 が
最 低 費 用 で で き る食 べ 物 で あ る と した。 しか し,こ れ らの材 料 か ら作 られ る食 品 は あ ま りお い し くな さそ うで あ るの は 明 か で あ る。 彼 は その 後,お
い しさ の要 素 も配 慮 した材 料 を あ らた め て作 成 し直
した と い う。 こ の よ う に,線 形 計 画 か ら解 を得 た と して も,実 際 に 実行 可 能 な解 とす る まで に は,多 方 面 か らの 慎 重 な吟 味 が 必 要 に な る。 問1〔
例 題1〕 で ベ ー コ ンの 値 段 が100円
数60x+100yをkと
お け ば,直 線
とな り,kが
最 小 に な る(x,y)は,上
〔 例 題2〕
工 業 製 品 の 利益 の 問 題
あ る 工 場 で は,ビ
の 場 合 と異 な る こ と に注 意 せ よ。
デ オ と ワ ー プ ロ を 作 っ て い て,1台
利 益 が あ る と い う。 しか し,20機 ワ ー プ ロ1台
に つ い て1機
ー プ ロ1台
に は3人
あ た り7万
あ る 製 造 機 の う ち ビ デ オ1台
が 必 要 で あ る 。 ま た,こ
作 る の に 割 り 当 て ら れ る人 は最 大15人 る が,ワ
にな っ た と き の最 小 値 を 求 め よ。 な お,目 的 関
で あ り,ビ
に つ い て4機,
デ オ1台
に は1人
合 計7台
だ けで足 り
デ オ と ワ ー プ ロ1
分 以下 の電 力 しか使 え な
い と い う。 ビ デ オ と ワ ー プ ロ を1日
円の
の 工 場 で ビデ オ と ワ ー プ ロ を
が 必 要 で あ る と い う 。 さ ら に,ビ
台 作 る の に 消 費 す る電 力 は 同 じで あ る が,1日
円,12万
に 何 台 ず つ 作 る と 利 益 が 最 も大 き く な る か 。
表5.2
〔 解〕
ビ デ オ をx〔 台 〕,ワ ー プ ロ をy〔 台 〕作 る と す れ ば,次
の 条 件 式 が 得 られ る。
(5.4)
こ の 条 件 の も と で7x+12yの 〔例 題1〕
最大 値 を求 め る。
で 用 い た(a),(b)の
こ の式 か ら直線〓
方 法 を 使 う。 目 的 関 数 をkと
を 得 る。kにい ろ い ろ な数 値 を 入 れ て 直 線 を
引 い て み る と,図5.2か
ら,x=3,y=4の
と き,こ
の 直 線 は最 も上 に 行 くか
ら,
利 益kは
お け ば,
最 大 値;k=7×3+12×4=69〔
図5.2
万 円〕
と な る。 この 問題 で も,〔 例 題1〕 で 用 い た次 の 方 法(a),(b)で
解 決 す る ことがで
き る。 (a) 条件 を不 等 式 と領 域 で表 現 す る。 (b)
目的 関数 を 直 線 で 表現 す る。
これ は,要 素 がx,yと 素 の個 数 がx,y,zな
い う2つ の 変 数 の場 合 に だ け 使 う こ と が で き る が,要
ど3個 以 上 の場 合 に は この方 法 は使 え な い。〔 例 題2〕 の形 の
問 題 で変 数 が 多 い場 合 に は,次 の項 で述 べ る方 法;シ
ンプ レ ック ス法 を 用 い る。
な お,こ の解 が得 られ た と して も,実 際 に適 用 した場 合,さ
ま ざ まな 不都 合 が
予 想 され る。 例 え ば,ビ デ オ の製 造 に従 事 す る人 は,ワ ー プ ロの製 造 に 従 事 す る 人 に比 べ て少 な す ぎ,疎 外 感 が前 者 に生 じて ビデ オ を製 造 す る人 の 生 産 性 が 劣 る よ うに な る こ と も考 え られ る。 この よ うに,線 形 計 画 で得 た解 を実 行 可 能 な もの に す る に は,慎 重 な 吟 味 が必 要 で あ る。 旧 ソ連 の経 済 政 策 で は線 形 計 画 が使 わ れて い たが,経 済 的 に破 綻 した 原 因 の1つ は入 念 な吟 味 の不 足 に あ った とい われ て い る。
[2] 問題 解決 の方法 線 形 計 画 は,オ ペ レー シ ョ ンズ リサ ー チ(OR)と
い う応 用 数 学 の 一 分 野 で あ
る。 こ の分 野 は,工 場 や組 織 の運 営 につ いて 数 学 を応 用 し,ま た あ る決 定 を下 す よ うな 問 題 に対 して,科 学 的 な 方 法 を用 い る こと に そ の特 徴 が あ る。 オ ペ レー シ ョ ンズ リサ ー チ に特 有 な方 法 は,次 の よ うな段 階 を経 て行 わ れ る。 (1) 問 題 の 定 式 化 「対象 と な る問 題 を は っ き り させ る」 こ とで 問 題分 析 と も い う。 例 え ば,次 の 項 目を 洗 い出 す 段 階 で あ る。 ・何 が 条 件 か 。 ・入 手 で き る情 報 は何 か 。 ・何 を 行 うか(そ の 目的,本 質 的 な要 素 を 明 確 にす る)。 線 形 計 画 で は 目的 関 数 を設 け る こ と,要 素 とな る変 数 を 決 め る こ とが この段 階
に相 当 す る。 (2) 数 学 的 モデ ルの 作 成 入 力 す る情 報,そ
の処 理 方 法,出 力 す る情 報 を 明 確 にす る。 線 形 計 画 の 問 題 で
は,要 素 とな る変 数 を決 め る こ と,目 的関 数 を設 け る こと,制 約 条 件 を 不 等 式 で 表 す こ とが この段 階 で あ る。 (3) 解 の計 算 入 手 した情 報 を用 い て実 際 に情 報 処 理 を行 い,必 要 な情 報 を 出 力 す る。 線 形 計 画 で は,条 件 式 と 目的 関 数 か ら解 を計 算 す る ことで あ る。 そ れ に は,上 の例 の よ うに 図形 を使 う方 法,後 述 す る よ うに,シ
ンプ レ ック ス
法 を使 う方 法 が あ る。 (4) 解 の吟 味 得 られ た解 の値 が何 を意 味 す るの か,現 実 的 な状 態 に照 ら し合 わ せて 吟味 す る。 必 要 な場 合 に は(1)に (5) 予
戻 って や り直す 。
測
問題 の状 況 が将 来 ど の よ うに変 化 す るか を予 想 し,そ れ に対 応 して変 数 や 係 数 を変 化 させ る な ど の処 置 を講 じて お く。 (6) 実
行
解 を実 際 の運 営 に取 り入 れ る。 この よ うな経 過 を問 題 解 決 とい う。 数 学 を 学 ぶ こ と は,解 〔 例 題1〕
の計算 だけで な く
の よ う に現 実 的 な問 題 か ら数 学 モデ ル を作 成 した り,解
を吟 味す るこ
と,す で に あ る数 学 モ デ ル を適 用 す る こ とな ど幅 の広 い内 容 を 含 ん で い る。 しか も,こ の よ うな問 題 解 決 を す る こ とで,さ ま ざ ま な数 学 を複 合 的 に利 用 す る だ け で な く,数 学 そ の もの に新 た な視 点 が生 じて く る。 これが 数 学 の有 用 性,創 造 性 の特 性 で あ る。
5.2 シ ン プ レ ック ス法 前 項 の線 形 計 画 の 問題 で は条 件 を 不等 式 で表 して解 を求 め た。 これ を行 列 で表
現 し,掃
き 出 し法 を 用 い て 解 決 し よ う 。 こ の 方 法 は,変 数 の 個 数 が3個
て も よ い し,コ
以 上で あ っ
ン ピ ュ ー タ を 使 っ て 計 算 す る こ と も で き る と い う利 点 を も っ て い
る。
[1]
シ ン プ レ ック ス法
前 節 で 取 り上 げ た ビデ オ と ワ ー プ ロの生 産 の 問題 を,行 列 で表 し,掃 き 出 し法 を 用 いて 解 決 しよ う。 〔 例 題3〕
工 業 製 品 の 利 益 の 問題
あ る工場 で は,ビ デ オ と ワー プ ロを作 って い て,1台 利 益 が あ る と い う。 こ こで,20機
あた り7万 円,12万
あ る汎 用 製 造 機 の う ち ビ デ オ は4機,ワ
ロは1機 だ け必 要 で あ る。 人 員 は,ビ デ オ1台 に は1人,ワ が必 要 で あ るが 最 大15人 で あ るが,1日
円の ープ
ー プ ロ1台 に は3人
しか使 え な い。 消 費 電 力 は ビデ オ,ワ
ー プ ロ と も同 じ
合 計7台 分以 下 の電 力 しか使 え な い と い う。
ビデ オ と ワ ー プ ロを1日
に何 台 ず つ作 る と利 益 が最 も大 き くな る か。 表5.3
〔 解 〕 ビ デ オ をx〔 台 〕,ワ ー プ ロ をy〔 台 〕作 る と す れ ば,次
の 条 件 式 が 得 られ
る。
(5.5)
こ の 条 件 の も と で 目 的 関 数7x+12yをkと k=7x+12y
お き,
の最 大 値 を求 め る。 (1) 不 等 式 を 等 式 に 直 す
変 数p≧0,q≧0,r≧0
を使 え ば,上 の不 等 式 は次 の よ うな 方 程式 に 直 す こ とが で きる。
(5.6) (5.7) (5.8) こ の と き,目
的関数 は
(5.9) と表 さ れ る 。 (2)
シ ン プ レ ッ ク ス 法,第1段
式(5.9)を
見 て,最
す な わ ち,3つ
階
も大 き い 係 数 で あ る 変 数yの
最 大 値 を 考 え る。
の 等 式(5.6),(5.7),(5.8)をy=…
の 形 で 表 し,yの
共通
範 囲 を求 め る。
(5.10) (5.11) (5.12)
だ か ら,式(5.10)か し た が っ て,yだ
ら式(5.12)の3式
でyの
共 通 範 囲 を と っ てy≦5。
け を 動 か し た と き の 目 的 関 数 式(5.9)の
最 大 値 は,
(5.13) こ こ でxの (3)
値 を 大 き くす れ ば,kの
シ ン プ レ ッ ク ス 法,第2段
式(5.11)を
式(5.6),(5.8)に
値 は ま だ 大 き くな る の で,次
階 代 入 す る。
の 手 順 を 行 う。
(5.14)
な お,定 数 を左 辺 に移 項 した次 の式 は,後 述 す る シ ンプ レ ック ス表 で使 う。
(5.15) (5.16) (5.17) 次 に,こ
れ ら をx=…
の 式 で 表 し,xの
共 通 範 囲 を 求 め る。
(5.18)
(5.19) こ れ ら の 式 か ら,p=q=r=0の
と き にx≦3が
目 的 関 数kの
目 的 関 数 の 式(5.13)に
値 は,式(5.18)を
共 通 範 囲 とな る。 代 入 して
(5.20) (4)シ
ン プ レ ッ ク ス 法,第3段
目 的 関 数 式(5.20)はx,yを の と き,kは
最 大 値69を
階 含 ま ず,し
か もq≧0,r≧0だ
と る 。 こ の と きx=3と
式(5.11)か
か らq=r=0 ら
,y=4と
な
こ の問 題 は,目 的 関 数 に対 して最 も効 果 が あ る変 数yの 範 囲 を求め,yを
他の
る。
等 式 と 目的 関 数 に代 入 して変 数yを 消 去 す る。 続 け て,他 の変 数xに つ いて,こ
の操 作 を行 い 目的 変 数 の 範 囲 を 求 め る。 この 手 続 きの こ とを シン プ レ ック ス法 と い う。 シ ンプ レ ック ス法 の手 続 き は,次 の シ ンプ レ ック ス表 と呼 ば れ る表 につ い て,掃 き 出 し法 で代 入 計 算 を して,表
[2]
を完 成 す る こ と に よ って行 わ れ る。
シンプ レックス表
シ ンプ レッ クス表 を使 う とシ ンプ レ ック ス法 を シス テ ム的 に行 う こ とが で き, コ ン ピ ュー タで も扱 え るよ うに な る。 そ の原 理 は,第1項 〔 例 題2〕
で 行 った とお りで あ る。
の問 題 につ いて シ ンプ レ ック ス表 を使 って み よ う。
(1) 基 本 的 な 表 変 数p,q,rを
付 け加 え て等 式 に した3つ の条 件 と目 的 関数
か ら係 数 を 取 り 出 して,次
の シ ン プ レ ッ ク ス 表 を 作 成 す る。 表5.4 基 本 的 な表
こ こ に,各
行 に は次 の よ うな意 味 が あ る。
1行 目 の 数 は,pを
変 数 に 加 え て,20=4x+y+p
2行 目 の 数 は,qを
変 数 に 加 え て,5=x+3y+q
3行 目 の 数 は,rを
変 数 に 加 え て,7=x+y+r
4行 目 の 数 は,目 (2)
表 の 変 形 第1段
表5.5の
計 算 は,次
的 関 数 をkの
項 と み て,k−7x−12y=0
階 の手 順 で 行 って い る。
① 目 的 関 数 の 行(第4行)で,最
も 小 さ い 負 の 数−12に
印*を
つ け る。
表5.5
② sの 列(第1列)の
各 成 分 を*印 の列(第3列)の
で 割 っ た値 をaの 列 に入 れ,最 小 の成 分 に 印*を (2行)の
ま りyの 係 数
つ け る。 そ して ,こ
の行
左 端 にyを 書 き入 れ る。
③ 2つ の*の 行 と列 が 交 差 す る成 分3に**を ④ **のつ
成 分,つ
つ け る。
いた 成 分 を枢 軸 に して掃 き出 し法 を行 う。 表5.6
表5.6の1か
ら3行
は,158ペ
ー ジの 等式
(5.15) (5.16) (5.17) を意 味 して い る。 第4行
は,目
的 関 数k=7x+12yに
つ い て,
を変 形 した次 の 式 を意 味 して い る。
(5.13)
(3)表
の 変 形 第2段 階
第1段
階 の表5.6に
つ いて,第1段
① 目的 関数 の行(4行)で,最 ② sの 列 の 各 成分 を−3の に,最
も小 さい 負 の数−3に 列(第2列)の
小 の 数3=2×〓
に 印*を
③ 2つ の*が 交 差 す る成 分 ④ 上 の**の 表5.8の
階 と同様 の手 順 を行 う。 印*を つ け る。
成 分 で 割 ってaの 列 に入 れ る。 次
つ け る。
〓に**を
つ け る。
つ い た成 分 を枢 軸 に掃 き 出 し法 を適 用 す る。
第4行
〓を変 形 した式
は,
を意 味 して い る。 表5.7
表5.8
こ こ で,目
的 関 数 のx,yの
3,y=4の
と き最 大 値k=69が
シ ン プ レ ッ ク ス法 で は,図 も 多 い 場 合 で も,同
問2〔
例 題2〕
係 数 が0だ
か ら,繰
り返 し を 終 了 し,表
か ら,x=
得 られ る 。 形 的 な 問 題 解 決 と 異 な り,変
数 の 個 数 がx,yよ
り
じ よ う に 掃 き 出 し法 を 繰 り返 して 解 決 す る こ と が で き る。
で ビ デ オ12万
円,ワ
ー プ ロ9万
円 と し た と き の 問 題 を,シ
ンブ レ ッ ク ス
表 を用 いて 解 決 せ よ。
[3] 行 列 表 現 〔 例 題3〕
の ビデ オ とワ ー プ ロ の問 題 を行 列 で表 して み よ う。 こ の こ とで 線 形
計 画 の 問題 を行 列 で 表現 す る こ とに な り,後 述 す る双 対 問 題 に発 展 す る基 礎 と な る。 (1) 行 列 表 現 上 に あ げ た シ ンプ レ ッ クス表 は変 数 をx,yと
す る156ペ ー ジの条 件 で あ った。
(5.5)
条 件(5.5)を
行 列 を 用 い て,次
の よ う に 表 す こ と に す る。
そ こで,係 数 行 列 をA=〓
とす れ ば,ビ
デ オ と ワ ー プ ロ の 問 題 は,次
の よ うに行 列 を用 い て表 現 され る。
と い う条 件 の も と で,[10
12]
〓の最 大 値 を求 め よ。
問3 この節 の始 めにあげた栄養素 の問題 を,行 列を用いて表現せよ。 [4]
プ ログラム
次 の拡 大行 列Aを
用 いて,シ
ンプ レ ック ス法 の 基本 的 な操 作 を行 う。
① Aの 最 下 行 の成 分 の最 小 値−12の ② 第1列
の第1行
あ る第3列 に 着 目す る。
か ら4行 まで の成 分 を,第3列
の 同 じ行 の成 分 で 割 り,そ
の商 を計 算 す る。 ③ ② の商 が最 小 に な る行 を探 す 。 こ の場 合,第2行 ④ 第2行3列
に着 目す る。
そ の 結 果,次
を枢 軸 に して掃 き出 しを行 う。 の行 列Bに
な る。
この行 列 に つ い て も上 と同 じ手 順 で計 算 を行 う。 ① 最 下 行 の最 も小 さ い値 の成 分 を もつ 列 は第2列 ② 第1列
の各 行 の成 分 を第2列
③ 最 も小 さ い値 は,3行2列 ④ 第3行2列
の−3で あ る。
の同 じ行 の成 分 で 割 る。
の
〓で あ る。
を 軸 に 掃 き出 しを行 う。
そ の 結 果,行 列Cが
で き,最 下 行 の 成分 に負 の 数 が な いの で計 算 を終 了 す る。
し た が っ て,線
形 計 画 の 問 題 を 解 決 す る プ ロ グ ラ ム は,基
本 的 に は行 列 の 掃 き
出 し法 と 同 じ に な る 。 プ ロ グ ラ ム5.1は,デ
ー タ を 行 列Aの
デ ー タ は プ ロ グ ラ ム の 最 後 にdata文
形 に そ ろ え た段 階 か ら開 始 す る。 そ の
で お き,プ
ロ グ ラ ム は 次 の 手1順で 行 う。
プ ロ グ ラ ム5.1
結果
サ ブ ル ー チ ンmatread,matprintは プ ロ グ ラ ム3.1
を 参 照
図5.3
① 行 列Aの 列,成
最 も 下 の 行(m行)の 分a(m,υ)をminと
② min≧0の
と き,プ
④ 第u行
も小 さ い 成 分 を 探 し,そ
の 列 をυ
す る。
ロ グ ラ ム を 終 了 す る。
③ 第υ 列 でa(i,1)/a(i,υ)が た だ し,a(i,υ)≠0と
中 で,最
最 も小 さ い 成 分 を 探 し,そ
の 行 をu行
とす る。
す る。
第υ 列 を 枢 軸 と して 掃 き 出 しを 行 う。
⑤ ① に戻 る。 問4
あ る線 形 計 画 で,変 数x,y,zを
の条 件 の もとで,30x+25y+48zの
選 ん だ と き,次 の よ う な条 件 が 出 て き た と い う。 こ 最 大 値 を求 め た い。
シ ン プ レ ッ ク ス 表 を 作 成 し て,こ に 係 数 を 入 れ,実
の 問 題 を 解 決 せ よ 。 ま た,プ
ロ グ ラ ム5.1のdata文
行 し て そ の 結 果 を 求め よ 。
5.3 双 対 問題 シ ンプ レ ック ス法 を用 いて 基 本 的 な 問題 を解 決 したが,そ
の問 題 を 見 直 して 双
対 問 題 を作 成 し,そ れ を解 決 して み よ う。 双 対 問題 は,形 式 的 な構 造 の組 み替 え で あ るが,現 実 に あ て はめ る と き,逆 の側 面 か ら問題 を見 る と い う利 点 が あ る。
[1] 問題 場面 前 節 で 取 り上 げ た ビデ オ と ワ ー プ ロの 生 産 の 問題 を,再 び考 え て み よ う。 そ の 問 題 で は,次 の よ うな場 面 が設 定 され て い る。 ・あ る 工 場 は ,ビ ・そ れ ぞ れ1台 ・製 造 機20台 ・人 員15人
デ オ と ワ ー プ ロ を 汎 用 製 造 機20台
あ た り7万 中 ,ビ
中 ,ビ
デ オ は1台 デ オ1台
・消 費 電 力 は ビ デ オ ,ワ ・ ビ デ オ ,ワ
円,12万
で 制 作 して い る。
円 の利 益 が あ る。
に4機,ワ
につ き1人,ワ
ー プ ロ に は1機 ー プ ロ1台
ー プ ロ と も同 じで1日
合 計7台
が必 要 で あ る。
に3人
分 以 下 で あ る。
ー プ ロ を 何 台 ずつ 作 る と利 益 が 最 大 に な る か 。
表5.9
が 必 要 で あ る。
問 題 解 決 に あ た っ て ビ デ オ をx〔 台 〕,ワ ー プ ロ をy〔 台 〕作 る と して 次 の 条 件
式 を得 た。
こ れ ら の 条 件 の も と で7x+12yの そ の 結 果,ビ
デ オx=3〔
た 。 こ の と き,逆
最 大 値 を 求 め る。
台 〕,ワ ー プ ロy=4〔
の 側 面 か ら み る と,機
15〔 人 〕,電 力 はx+y=7だ
械 は4x+y=16〔
か ら製 造 機 械 は4台
こ う し た 経 理 の 立 場 に た っ て,製
台 〕 の と き最 大 値69が
造 機,人
数,電
得 られ
台 〕,人 はx+3y=
遊 んで い る こ とに な る。 力 を う ま く配 置 し て 損 を 最 小
に す る 目的 で 問 題 を解 決 す る こ とが考 え られ る。 線 形 計 画 に は,あ
る問 題 に対 して逆 の側 面 か らの ア プ ロー チが 必 ず 存 在 す る。
逆 の ア プ ロ ー チ に 沿 っ た 解 き 方 を,も
と の 問 題 の 双 対 問 題 と い う。
[2] 双対問題 経 理 の立 場 か ら上 の問 題 の双 対 問題 を さ らに詳 し く考 えて み よ う。 は じめ に あ げ た問 題 で は,ビ デ オ,ワ ー プ ロを売 る立 場1台 造 機 の コ ス ト,例 え ば償 却 費,人
あ た りにか か る売 値 の 中 に,製
の コ ス トつ ま り人 件 費,電 力 消費 な どの コ ス ト,
お よ び利 益 が 含 まれ て い る。 表5.10
そ こ で,製
造 機1台
あ た り の コ ス ト,人 数1人
り の 電 力 の コ ス トを そ れ ぞ れx,y,zと
す れ ば,制
あ た り の コ ス ト,製
品1台
あた
約 条 件 は 次 の 式 で 表 さ れ る。
こ こ で,20台 な い と き,コ 費15y,電
あ る 機 械 が 遊 ん で い た り,15人
い る人 の 誰 か が 仕 事 に つ い て い
ス トは 上 が る こ と に な る。 そ こ で,機
力 消 費7zに
械20台
の コ ス ト20x,人
つ い て の 総 コ ス ト;20x+15y+7zを
件
で き る だ け小 さ
くお さ え る こ と が 問 題 に な る 。 す な わ ち,目
的 関 数 は,
こ の 問 題 を シ ン プ レ ッ ク ス 法 で 解 く と 表5.11の た だ し,①
は 基 本 的 な 表,②
は 第1段
よ うに な る。
階 の 表,③
は 第2段
階 の 表,④
は 第3
段 階 の 表 で あ る。 表5.11 双 対 問題 の シ ンプ レ ック ス表
表5.11に
お い て ④ の 行 とsの 列 か ら,
が最 適値 に な って,も
の とき と の問 題 と結 果 が 一 致 す る。
この よ う に,双 対 問 題 は もと の問 題 で は見 え に くい部 分 を表 面 化 させ る役 割 を も って お り,形 式 的 な双 対 関 係 が 問 題 の裏 側 を さ ぐ って,問 題 の新 しい 解 釈 を生 み 出 す と い う効 用 が あ る。
問5 前 の 問題 の工 場 が1日
に ビデ オ をx〔 台 〕,ワ ー プ ロをy〔 台 〕 製 造 す る と して,条
件 式 が次 の よ う に表 され て い る と い う。
製造機械
… …4x+y≦20
人
員
… …x+3y≦15
電
力
… …x+y≦7
こ の条 件 で,10x+12yの
最 大 値 を求 め る問題 に対 して,そ
の双 対 問 題 の式 を作 れ 。
[3] 行 列表 現 上 で取 り上 げ た問 題 と双 対 問題 を行 列 で比 較 して み よ う。 この こ とで も との 問 題 と双 対 問題 の違 い が数 学 的 に明 らか に な る。 (1) も と の問 題 の 行 列 表 現
係数行列 を〓
と す れ ば,も
と の 問 題 は,次
と い う条 件 の も と で,
の 最大 値 を 求 め よ。
この問 題 の双 対 問 題 は,次 の よ うに行 列 で 表 され る。
と す れ ば,
と い う条 件 の も と で,
の よ うに表 され た。
の最 小 値 を求 め よ。
こ の2つ
の 行 列 表 現 を 比 べ る と,次
・行 列BはAの
転 置 行 列(Bt=A)で
・ も と の 問 題 の 要 素 は2次 トルy=(x,y,z)で
の こ とが わ か る。 あ る。
の ベ ク トルx=(x
表 さ れ,そ
の 次 数 はAの
,y),双
対 問 題 の 要 素 は3次
の ベ ク
列 お よ び 行 の 個 数 で あ る。
・も と の 問 題 の 条 件 式
〓の ベ ク トルa=〓
は,双 対 問 題 の 目的 関 数 に
と して使 わ れ て い る。 ・も との 問 題 の 目的 関 数 を
と す れ ば,ベ
ク トルbt=[7
12]は,双
対 問 題 の 条 件 式 に,次
の よ う に使 わ れ
て い る。
〓つ ま り〓
数 学 的 な構 造 と い う観 点 か らみ る と,行 列 とそ の 転 置 行 列,ベ
ク トル の 不等 式
が 逆 に な る こ と,双 対 問 題 の また そ の双 対 問題 は も との 問 題 にな るな どの特 徴 の あ る こ とが 明 らか に な っ た。
一 般 に,Aをm×n行 と し,x,yを
列,x,bをn次
の ベ ク トル,y,aをm次
要 素 の 変 数 ベ ク トル と して,線
の ベ ク トル
形計画 の問題 が次 の よ うに表 され
た と し よ う。 ・条 件 式Aty≧bの
も と でatyの
こ の 問 題 の 双 対 問 題 は,次 ・条 件 式Ax≦aの ま た,も
最 小 値 を求 め よ。
も と でbtxの
最 大 値 を求 め よ。
と の 問 題 が 最 小 値 を 求 め る問 題 の と き,双
題 に な る。 結 局,線
(5.21)
の形 で 表 さ れ る。 (5.22) 対 問 題 は最 大 値 を求 め る問
形 計 画 の 問 題 は 最 大 値 を 求 め る 式(5.22)の
問 題 に 帰 結 さ れ,
こ れ を 標 準 最 小 値 問 題 と い う。 こ う して 最 小 値 の 問 題 も シ ン プ レ ッ ク ス法 で 解 け る。
問6
〔 例 題1〕
の栄 養 素 の問 題 か らそ の双 対 問 題 を作 り,行 列 で 表 現 せ よ。
5.4 ゲ ー ム の 理 論 線 形 計 画 法 を モ デ ル と して 利 用 す る問 題 場 面 に ゲ ー ム の理 論 が あ る。 ここで は, 2人 で行 う簡 単 な ゲ ー ム を考 え,線 形 計 画 法 を適 用 して み よ う。 そ の際,相 手 の 立 場 の戦 略 が ち ょ うど双 対 問 題 に な って い る こ とを知 る こと に な る。 [1] 単 純 な ゲ ー ム 将 棋 は2人 が8種 類 の もち駒 を使 って お互 い の手 を見 なが ら,あ る と き は用 心 深 く,あ る と き は果 敢 に 自分 の手 を打つ こ とで 進 行 す る。 こ こで は,A,Bの2 人 が行 う2人 ゲ ー ム を考 え る。 両 者 は い くつ か の手(戦 略)を
も って いて,相 手
の手 を見 な が ら最 も大 きい利 得 を得 るよ うな手 を打つ もの と しよ う。 その際,A, Bそ れ ぞ れ の打 つ手 に対 して 利 得 が あ らか じめ わ か って い る もの とす る。 (1) 循 環 す る場 合 表5.12で 利 得 が3,Bの
は,例 え ばAがⅠ 損 失 が−3と
とい う手 を,BがⅡ
とい う手 を打 った と き にAの
して示 され る。 こ の ゲ ー ム で はA,Bと
もこの表 を
も とに 自分 の打 つ手 を決 め る とす る。 この形 式 の表 を利得 表 といい,利 得 表 のゲ ー ム で は,一 方 の利 得 分 が相 手 の損 失 に な るの で,こ れ を ゼ ロ和 ゲ ーム とい う。
表5.12
表5.12の
利 得 表 を も と に し た ゲ ー ム は,次 の よ う に 進 行 す る 。AがBのⅠ
ら ゲ ー ム を 始 め る と し,Aが が−1の
損 失 に な る 。 した が っ て,最
① AがⅡ
も しⅠ の 手 を う っ た と き は,BもⅠ
の 手 を 打 ち,Bは
A,Bの
初AはⅡ
Aは+2を
③ Aが
得,Bは−2を
の手 を打 つ。 得 る。
得,Bは+1を
の手 を打 つ 。
得 る。
④ Bが 打 っ たⅠ の 手 を 見 て,AはⅡ
Aは+1を
⑤ Aが
得,Bは−1を
の 手 を 打つ。 得 る。
打 っ たⅡ の 手 を 見 て,BはⅢ
A,Bの
の 手 を 打 つ は ず で あ る。
利 得 は と も に ±0
打 っ たⅠ の 手 を 見 て,BはⅠ
Aは−1を
の 手 を 打 ちA
そ れ を 見 てⅢ の 手 を 打 つ 。
② Bが 打 っ たⅢ の 手 を 見 て,AはⅠ
列か
の手 を打 つ 。
利 得 は と も に ±0
⑤ は ① と 同 じ で あ り,こ
の ゲ ー ム は 以 下 同 じ 組 み 合 わ せ を 循 環 し,表5.13
の よ う にな る。 表5.13
ゲ ー ムの 打つ 手 を調 べ る と,Aは
表5.12の 利 得 表 を 見 てBのⅠ,Ⅱ,Ⅲ
そ れ ぞ れ で 最 大 の成 分 を探 す 。 一 方,Bの
方 は同 じ表 を 見 てAの
行 の そ れ ぞ れ で 最 小 の成 分 を探 して い る こ とが わ か る(表5.14)。
の列 の
打 つ 手Ⅰ,Ⅱ の
表5.14
(2)
1つ の手 に集 中 す る 場 合
表5.15の
よ うな利 得 表 が 与 え られ た と き,A,Bは
ど の よ うな手 を 打 つ で あ ろ
うか 。BのⅠ 列 を 開始 の初 期 条 件 と して 実 際 にゲ ー ムを や って み よ う。 表5.15
Aを
先 手 と す る と き,Aは
① AがⅠ
利 得 を よ り多 く得 る た め にⅠ の 手 を 打つ で あ ろ う。
の 手 を 打 っ た と き,Bは
Aが+1を
得,Bは−1を
得 る。
② Bの 打 っ たⅡ の 手 を 見 て,Bは Aが+1を
得,Bは−1を
以 下AがⅠ,BがⅡ こ の と き のA,B戦 ・Aは,Bの
表5.16で 値3,1,4の
は,行
再 びⅠ の 手 を 打 つ 。 得 る。
の 手 を 打 ち 続 け る で あ ろ う。 略 を 調 べ る と,(1)と
打 つ 手Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ
・Bは,Aの打つ
そ れ を 見 てⅡ の 手 を 打 つ 。
手Ⅰ,Ⅱ
の列 そ れ ぞ れ の 中 で最 大 の成 分 を探 す 。
の行 それ ぞ れ の中 で 最 小 の成 分 を探 す。
の 最 小 値1,−3の
中 の 最 大 値 は1で
中 で 最 小 の 数 もや は り1で
(行 の 最 小 値 の 最 大 値)=(列 で あ る と き にA,Bは と を 鞍 点 と い う。
同 じ よ う に な っ て い る 。 す な わ ち,
あ る 。 一 方,列
の最 大
あ る 。 こ の よ う に 利 得 表 で,
の 最 大 値 の 最 小 値)
同 じ手 を 打 ち 続 け る よ う に な る こ と が わ か る 。 こ の 手 の こ
表5.16
一 方,循 環 す るゲ ー ム にな る場 合,表5.2の 値 の最 小 値,行
利 得 表 は図5.4の
よ うに列 の 最 大
の最 小 値 の最 大 値 を求 め てみ る と,列 の最 大 値 の最 小 値 は1,行
の最 小 値 の最 大 値 は0で,
(行 の 最 小 値 の 最 大 値)<(列
の最 大 値 の最 小 値)
と な って い る。
図5.4
ゲ ー ム が循 環 す るか,同
じ手 に集 中 す るよ うに な る か は,利 得 表 か ら
・(行 の最 小 値 の最 大 値)<(列
の最 大 値 の最 小 値)な ら循 環
・(行の 最 小 値 の最 大 値)=(列
の 最 大 値 の最 小 値)な ら集 中
とい う手 順 で判 断 す る こ とが で き る。 ま た,両 方 の問 題 と も,利 得 表 の行 と列 の利 用 につ いて,次
の こ とが いえ る。
・Aは 各 列 の最 大 値 を探 す。
(5.23)
・Bは 各 行 の最 小 値 を探 す。 こ れ ま で に あ げ た2人 る も の で あ り,そ
ず れ も最 も適 した 手 が 一 方 に 決 定 で き
の 意 味 で これ ら の ゲ ー ム の こ と を 決 定 的 な ゲ ー ム と い う。
問7 利 得 表 が 表5.17で (1)
ゲ ー ム の 例 は,い
与 え られ て い る2人 ゲ ー ム が あ る とい う。
この表 に 従 うゲ ー ム に鞍 点 は あ るか 。 ま た,循 環 す る か を い え。
(2) 利 得 表 でⅠ,Ⅰ の 成 分 が1で
はな く,5の
と き は ど うか。
表5.17
[2] 混 合 戦 略 決 定 的 な ゲ ー ム に対 して,打 つ 手 が 確 率 的 に定 め られ る場 合 が あ る。 この よ う な ゲ ー ム の こ とを確 率 的 なゲ ーム と い う。 その 場 合,打つ
べ き手 に確 率 が あ る が
相 手 に そ れ が わ か らな い ので,ど ん な 手 を どん な割 合(確 率)で 打 つ か が問 題 に な る。 そ の意 味 で,確 率 的 な ゲ ー ムの と きの手 を 混 合 戦 略 と い う。 それ に対 して, 決 定 的 な ゲ ー ム の と きの手 の こ と を単 純 戦 略 と い う。 い ま,表5.18で
与 え られ た利 得 表 が あ って,そ れ ぞ れ の 手 を 打 て る確 率 が わ
か らな い もの とす る。 この利 得 表 はAに
有 利 にみ え る が,問
題 を簡単 にす るた
め にそ う して あ る。 しか し,ほ ん の 少 しの 変 形 で,例 え ば問7の
よ うに,よ
り公
平 な も の に な る。 表5.18
こ こで は,AがⅠ,Ⅱ
の手 を ど ん な確 率 で打 った と きに最 も利 得 が大 き い か を
考 察 す る。 式(5.23)の
方 略 か ら次 の 式 が た て られ る。
(1) 確 率 を用 い た表 現 Aが 手Ⅰ,Ⅱ を 打つ 確 率 を そ れ ぞ れp,qと
ま た,Bの
手Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ
BのⅠ
す る と,次 の 条 件 を 満 た して い る。
に 対 す る利 得 は,表5.18の
に 対 して;p+4q
列 を 見 て,
BのⅡ に対 して;2p+q
BのⅢ に対 して;p+2q
ここで,こ れ ら3つ の 式 の最 大値 の 中 の最 小 値mが か ら,最 小値mを
「底 上 げ 」 で き れ ば よ い
最 大 に す る よ うに戦 略 を考 え る。
この と き,次 の不 等 式 と等 式 が成 り立 つ 。
(5.24)
(2) 線 形 計 画 法 との 関 連 式(5.24)の
全 体 をmで
わ る。 こ こ で はm>0と
と お け ば,mが
で目的関数
して お く。〓
最 大 の と きkは 最 小 に な り,条 件 が
〓を最 小 にす る,と
い う 問 題 に な る。 こ れ は線 形 計
画 の問 題 その もの で,行 列 で は次 の よ うに 表 さ れ る。
の 条 件 で, (5.25)
を最 小 にす る。
不 等 式 あ る い は シ ン プ レ ッ ク ス 法 で 解 決 す る と,こ
〓の と き,最
小 値〓
の 問 題 の 解 は,
と な る。 こ の と き,
利 得 は 最 大m=1.5,確
率 はp=mx=0.5,q=my=0.5
に な る。 こ の と き, 確 率(p,q)=(0.5,0.5)の 最 大 利 得m=1.5の
こ とを最 適 混 合 戦 略 こ とを 最適 期待 利 得
とい う。 つ ま り,Aと
し て は 同 じ割 合 に な る よ う にⅠ,Ⅱ
大 き い 利 得1.5が (3)
も
得 られ る こ とに な る。
双 対 問 題 と の 関連
今 度 はBの る が,そ
の 手 を 打 っ て い く と き,最
立 場 か ら表5.18の
利 得 表 を 利 用 し て み よ う 。Bは
常 に 損 を して い
の 損 を で き る だ け 少 な く す る よ う に 戦 略 を た て る こ と に な る。
Bが 手Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ
を 打つ 確 率 を そ れ ぞ れp,q,rと
を 満 た して い る 。 ま た,Aの
手Ⅰ,Ⅱ
AのⅠ
に 対 し て;p+2q+r
AのⅡ
に 対 し て;4p+q+2r
式(5.23)か
ら,Bは2つ
相 対 的 な 損 失)mが
す る と,
に 対 す る 利 得 は,表
の 式 の 最 小 値 を 見 て,そ
の 行 を 見 て,
の 中 の 最 大 値(こ
最 も小 さ く な る よ う に 戦 略 を た て る 。 そ こ で,最
最 も小 さ くす る よ う に 式 を た て る。 よ っ て,次
の 等 式,不
と お け ば,
の 場 合 は, 大 値mを
等 式 が 成 り立 つ 。
でx+y+z=kを
最 大 に す る と い う 問 題 に な る 。 こ れ は 行 列 で,次
の ように表
現 され る。
の 条 件 で,
(5.26) を 最 大 にす る。
A,Bの
そ れ ぞ れ か ら み た 線 形 計 画 の 問 題 式(5.25),(5.26)は,5.3節
た よ う に,互
い に 双 対 問 題 に な っ て い る 。 こ の よ う に,2人
い て ゼ ロ和 ゲ ー ム を 行 っ た と き,そ
で示 し
ゲ ー ムで 利 得 表 を 用
の 戦 略 は 互 い に 双 対 問 題 の 関 係 に な り,は
か
らず も 同 じ と こ ろ を め ざ す こ と が わ か る 。
問8 あ る町 にA,B2つ
の ス ーパ ー マ ー ケ ッ トが あ り,い ろん な企 画 を 月 間 キ ャ ンペ ー ン
と して行 い,客 を集 めて い る。 そ の町 の人 はA,Bの 総 売 り上 げ は毎 月 同 じで1億 こ こで,Aが
円で あ る と い う。
企 画Ⅰ,Ⅱ を,Bが
さ れ る とい う。Aは
どち らか に 買 い物 に行 く の でA,Bの
企 画Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ
を たて た と き の売 り上 げ が 表5.19で
表
どの よ うな戦 略 を たて る と最 も利 益 が 得 られ るか。 最 適 混 合 戦 略(p,
q)と 最 適 期 待 利 得 を 求 め よ。 な お,こ の表 は,例 え ばA,Bと
もⅡ の 戦 略 の と き,Aが6000万
売 り上 げ と な る こ とを 示 す 。 表5.19
円,Bが4000万
円の
練習問題 1.あ
る 食 品 工 場 で は,じ
ゃ が い も,に
ん じん,た
の レ トル ト食 品 を 作 っ て い る 。 カ レ ー,ハ 件 と 目 的 関 数 をx,yで ・カ レ ー は1袋 し,ハ
ヤ シ
ヤ シ の 生 産 量 をx〔 個 〕,y〔 個 〕 と し て 制 約 条
表せ。
あ た り じ ゃ が い も,に
ヤ シ は1個
ま ね ぎ を 主 原 料 と し て カ レ ー,ハ
あ た り2,6,1単
ん じん,た
ま ね ぎ を そ れ ぞ れ1,5,2単
位 ずつ使 用
位 ず つ 使 用 す る と い う。 た だ し,100gを1単
位 と
す る。 ・原 料 の じ ゃ が い も,に
ん じん,た
ま ね ぎ は,そ
れ ぞ れ80,250,90kgず
つ の ス トック
が あ る と い う。 ・カ レ ー,ハ
こ の と き,カ
ヤ シ の 値 段 は,そ
れ ぞ れ300円,400円
で あ る と い う。
レー とハ ヤ シ を どれ だ け作 れ ば利 益 が最 大 に な る か。
2.上
の 問 題 を,x,y
の 不 等 式 と 目 的 関 数 で 表 し,シ
3.上
の 問 題 の 双 対 問 題 は,次
ンプ レ ック ス法 を用 い て解 決 せ よ。
の よ う に な る。 こ れ を 解 釈 せ よ 。
目的 関 数k=80x+250y+90z
第6章 いろ いろな問題 近 年,行 列 を活 用 した問 題 は離 散 数 学 の1つ の 分 野 と して 位 置 づ け られ る よ うに な っ た。 離 散 数 学 の特 徴 と して,コ
ン ピュ ー タや 情 報 処 理 だ けで な く 日常 生活 と密 接 な 関 わ りが あ
る こ と,再 帰 や 反 復 と い う特 有 な 問 題 解 決 手 順 が あ る こ とな どが あ げ られ る。 情 報 化 の 進 展 と と もに,専 門 家 に限 られ て い た 知 識 が 具 体 性 を もつ よ うに な り,社 会 現 象 や 自然 現 象 を 行 列 で 表 現 して 数 学 モデ ル を 作 り,行 列 で 考 察 す る探 求 方 法 が 最近 注 目 され て きて い る。 こ う した背 景 を考 慮 し,新 鮮 な 問 題 を 取 り上 げ,こ の 方 法 で 問 題 を展 開 した。
6.1 行列 と学校数学 公 理 体 系 に沿 って 行列 の定 義 や定 理 を学 ぶ の で はな く,具 体 的 な現 象 を行 列 で 表 現 し,数 学 モ デル を作 り,そ れ を も とに行 列 を体 系 的 に学 ぶ方 法 は,学 校 数 学 に お い て も学 習 者 が興 味 ・関心 を もち主 体 的 な学 び方 が で き,数 学 を 「作 る」 と い う点 で教 育 的 な重 要 性 が増 して い る。 この立 場 か ら行 列 を概 観 して お こ う。 図6.1は 正 確 な もので はな い し,時 代 に よ って 変 化 す る もの で もあ る。 しか し, あ る数 学 的 な 内容 を学 ぶ とい う立 場 か ら系 統 づ け る こ とは不 可 欠 な こ とで あ り, これ を避 け て学 ぶ こ とを議 論 す る こと は で きな い。 こ こで は,行 列 につ い て の 問 題 を次 の よ うな相 に分 け て考 え る。 ・具 体 的 な現 象 を行 列 で表 現 す る問 題(数 学 モ デ ル化) ・行 列 の基 礎 ・基 本 を理 解,習 熟 す る問 題(理 解,練 習)
図6.1
・行列 を ゲ ー ム の 理 論 な ど に応 用 す る問題(応
用)
・あ る行 列 の演 算 法 則 な どの 構 造 につ いて 分析 す る問題(発 展,分 析) この よ うな 問題 の そ れ ぞ れ につ いて展 開 と教 育 的 な意 味 を考 え る。 特 に,表 現 や分 析 で は,学 習 者 ど う しの コ ミュニ ケ ー シ ョンが可 能 に な る。
[1] 表 現,理
解,発
展 の問題場 面
行 列 につ い て全 く知 らな い学 習 者 は,行 列 につ い て ど の よ うに学 ん で行 くの か。 この問 題 に対 す る一 般 的 な解 答 は,認 知 心 理 学 で そ の お お まか な ものが 得 られて い る。 ピア ジ ェ に よれ ば,行 列 の も とに な る原 イ メ ー ジが ビル デ ィ ング の骨 組 み の よ うに あ り,そ れ に整 合 し,都 合 の よ い よ うに行 列 の知 識 を くっつ けて い くと い う。 ち ょう ど,ビ ル の骨 組 み に壁 をつ け,窓 を取 りつ けて い くよ うに。 こ こで は,行 列 の もと に な る原 初 的 な イ メ ー ジを 明 確 化 し,行 列 の 概 念 に まで 結 びつ け る よ うな 問 題 を取 り上 げ る。 これ は数 学 を 「聞 く」,あ る い は 「理 解 す る」 だ けで な く,数 学 を 「作 る」こ と に もつ なが る。 学 校 数 学 で は,こ の よ うな ア プ ロー チの こ とをDoMathと
い う こ とが あ る。
(1) 経 路 の行 列表 現 現 代 の世 の 中 は交 通 手 段 が 発 達 し,列 車,飛 行機,長 距 離 バ ス な ど多様 な 行 き
方 が あ る。 こ こでA,B,Cの3市
が あ っ た と き,他
図6.2の
グ ラ フ,図6.3の
か らB市
に 行 く方 法 は2通
の 市 に 行 く方 法 に つ い て 調 べ た 結 果,
対 応 図 で 表 現 さ れ た と い う。 図6.2で,例 り,A市
か らC市
に 行 く方 法 は3と
え ば,A市
お り で あ る(こ
の よ う に 具 体 場 面 を 図 な ど で 表 す こ と の 教 育 的 な 価 値 が 見 直 さ れ て い る)。
図6.2
グ ラ フ 図6.3
経 路 の 本 数 は ま た,表 で 表 す こ と もで き る 。 表6.1で 数,2行
と3行 はB市,C市
に到 着 す る経 路 数,2列,3列
対
は1行
応
はAの
出発経 路
か らの出 発 経 路 数 に な っ て い る。 ま た1列 目 はA市 はB市,C市
に 到 着 す る経 路 の個 数 で あ る。
表6.1
こ の 表 で は,行
と 列 の 位 置 が わ か っ て い れ ば 枠 は 不 要 で あ る 。 位 置 が わ か る数
の 集 ま り は,Pの
よ う に 縦 横 の 長 方 形 に な り,こ
列 で 表 現 し た と き,次
の ことが で き る。
・出 発 ・到 着 の 個 数 が,A,B,Cと ・2回 で 到 着 す る 経 路,3回 (2)
れ を 行 列 と い う。 上 の 問 題 を 行
い う項 目 別 に 表 さ れ る 。
で到 着 す る経路 な どが 行 列 の積 で表 現 さ れ る。
行 列 の 積 の理 解
2回 でAか
らAに
戻 る,A→(A,B,C)→Aと
い う経 路 の 個 数 は,図6.4か
ら計 算 で き る 。 こ れ を 用 い て 行 列 の 積 を 定 義 し て み よ う。
図6.4
2回 続 く経 路 の 個 数 は,上
の 図6.4か
ら次 の よ う に して 求 め ら れ る。
・経 路A→
→Aの
個 数 は,0×0+2×1+3×2=8
(6.1)
・経 路A→
→Bの
個 数 は,0×2+2×0+3×2=6
(6.2)
・経 路A→
→Cの
個 数 は,0×3+2×4+3×0=4
(6.3)
こ こ で3つ
の 式 の 計 算 パ タ ー ンを 探 り,行
3つ の 式 で,積
× の 前 に あ る の は0,2,3で
行 目 の 行 ベ ク トル で あ る 。 ま た,積 (6.2)で
は2,0,2,式(6.3)で
列Pの
行 と列 で 表 す こ と を 考 え る 。
同 じ数 で あ る が,こ
れ は 行 列Pの1
× の 後 ろ の 数 は,式(6.1)で
は3,4,0で
あ る 。 こ れ は 行 列Pの
は0,1,2,式 列 ベ ク トル に
あ た って い る 。
そ こで,2回
続 け て行 った経 路 を行 列 の積 で 表 す こ と にす れ ば,第1行1列
前 の 行 列 の行 の成 分 と後 ろの 列 の 成 分 を か けて 加 え た もの に な る。
は,
この積 で,第1行
は計 算 で きた が,第2行,第3行
対 応 を作 り,式(6.1)か
ら式(6.3)と
に つ い て も図6.3と 同様 な
同 じよ うな規 則 性 を導 い て 同様 に計 算 で
き る。 この 問 題 解 決 で,学 習 者 は行列 の積 を 自 力 で定 義 で き るよ うに な る。 (3) 行 列 の 積 の 発 展 上 の 経路 を3回 続 け,途 中 に2市 を経 由 して 行 っ た と き の 個 数,例 B→C→Aと
え ばA→
い うよ うな経 路 の 個 数 を ま とめ て 表現 し,行 列 の累乗 を定 義 しよ う。
の 意 味 を 考 え てA,B,C市
か ら 出 発 して2回
の 経 路 を た ど っ てA,B,Cの
各 市 に
至 る 経 路 の 個 数 を 数 え る。 そ う す る と,次
の よ う な 推 移 の 表 が で き る。 表6.2
し た が って,3市
を 経 由 して 行 く と き の 経 路 の 個 数 は,次
の よ うに な る。
こ の よ うに,具 体 的 な場 面 や現 象 を行 列 で 表 現 し,次 に行 列 の積 を学 習 者 が 自 力 で 作 れ る よ うに す る こ とが,ア プ ロー チ と して 重 要 に な る。 この こと を,ア メ リカ の学 習 指 導 基 準 で は,離 散 数 学 を重 視 す る実 際 場 面 の 中で あ げ て い る。 ・グ ラ フ,行 列 の よ うな,離 散 構 造 を用 い た問 題 場 面 を用 意 す る こと。 ・行 列 を用 い て グ ラ フを表 現 し,分 析 す る こと。 (4) 発 展,分 析 の 問題 場 面 行 列 の基 本 的 な性 質 を列 挙 した後,そ
れ を天 下 り的 に公 理 的 な解 釈 をす る こと
は専 門 的 に は よ いが,学 習 者 の 立 場 か らす れ ば,そ の 意 味 が わ か らな い ま まの 作 業 に終 始 す る こ とに な る可 能 性 が 大 き い。 そ こで,も
との 現 象 的 な 意 味 を保 った
次 の よ うな発 展,分 析 の 問 題 が 必 要 にな る。 問 題 例1. 移 動 の 行 列 正 三 角 形 の形 を した紙 片 が あ り,そ の頂 点 にA,B,Cと ABCと
す る。 この ラベ ルABCの
た い。 図6.5でeは
いうラベルをつ けて△
移 動 の しか た をす べ て あ げ,そ の 関連 性 を 調 べ
何 も移 動 せ ず,aは
120°回 転 してA→B,B→C,C→Aと
△ABCの
重 心 を 中 心 に時 計 ま わ り に
変 わ る変換 を表 し,pはBCの
分 線 に関 す る対 称 移 動 でB→C,C→Bと
垂 直2等
い う変 換 を表 す 。
図6.5
こ の と き,変
換aでA,B,Cの
移 動 の 表 と そ の 推 移 行 列 は 次 の よ う に な る。 表6.3
この と き,次 の問 題 を 解 決 す る こ とで 変 換 を行 列 で 表 現 す る こ と,行 列 の 積 の 理 解 か らは じま り,行 列 の積 か ら逆 行 列 へ 発 展 し,群 の構 造 を分 析 す る まで 自力 で 数 学 を作 る こ とに な る。 問1 移動pを 行列で表せ。 問2 図6.6の 移動 をaとpで
表せ。
問3 行列〓
の逆 行 列 は,そ れ 自身
で あ る こ とを,移 動pの
意 味 を利 用 して示 せ。
問4 120゜,240゜ の 回 転 移 動 をa,bと 線 分BC,CA,ABの
対 称 移 動 を そ れ ぞ れp,q,rと い,表6.4を
し,
垂 直2等 分 線 に関 す る
図6.6
す る。 各 積 を行
完 成 せ よ(こ の表 を乗 積 表,組
成 表 な ど と い う)。 表6.4 乗積表
この こ とか ら行 列e,a,b,p,q,rの
積 の交 換 可 能 性 を調 べ る こ とが で き る。
た だ し,左の 移 動 を 先 に行 う もの とす る。 これ らの 問題 を 実 際 にや って み る と,次 の ね らい が わ か る。 ・問1は,グ
ラ フか ら行 列 へ の 表 現 に 焦 点 を 当 て て い る。
・問2は,演
算 の 基 本 的 な 関 連 を 調 べ,乗 積 表 を 作 成 す る導 入 問 題 で あ る。
・問3は,移
動 の 合 成 を 題 材 と した 基本 法則 の理 解 を ね らい と して い る。
・問4は,移
動 の 合 成 の 構 造 につ い て分 析 し,表6.4で
移 動 の分 け方 な ど に つ
い て学 習 者 が議 論 しあ う こ とが ね らい で あ る。 こ の よ うに,具 体 的 な 場 面 や現 象 を行 列 で表 現 し,次 に 行 列 の 積 を 学 習 者 が 自 力 で作 る こと が で き る よ う にす る こ とが,重 要 な ア プ ロー チ に な る。 この ことを, ア メ リカ の学 習 指 導 基準 で も離散 数 学 を 重 視 す る学 習 法 の1つ る。
と して あ げ て い
[2] パ ズルを 用 いた分析 の問題 こ こで は,行 列 計 算 に パ ズル 的 な要 素 を取 り入 れ て,方 程 式 の不 定 解 と解 ベ ク トル の概 念 に つ い て探 求 し,高 度 な 内容 へ の動 機 づ け を与 え る。 や さ しい問 題 で 取 り上 げ る こ とで,学 習者 は行 列 の抽 象 的 な 内容 に入 って行 く こ とがで きる。 し か も,そ れ を主 体 的 に探 求 す る こと が重 要 な観 点 で あ る。 問 題 例2. 2×2行
列パ ズル
4個 の 数a,b,c,dが
与 え られ た と き,表6.5の
だ ろ うか(条 件 は式(6.4)の
規 則 を満 たす 数p,q,r,sは
ある
連 立 方 程 式 で表 され る)。 表6.5
(6.4)
例 え ば,a=2,b=3,c=4,d=5と p=r=1,q=2,s=3で
す れ ば1つ
の 解 は,表6.6の
よ う に
あ る。 表6.6
(6.5)
こ の 問 題 を 解 決 す る に あ た っ て,次 ・a,b,c,dに
の 問 題 点 を 明 確 に し て お く必 要 が あ る。
い ろ い ろ な 値 を 入 れ た と き にp,q,r,sの
値 は 一 通 り に 求 め ら れる
か。 ・一 通 り に 求 め る こ と が で き な け れ ば,sを
変 数 と み てp,q,rをsで
表 す こ と
が で き るか。 ・そ れ も で き な け れ ば,r,sの2つ
を 変 数 と み てp,qをr,sで
表 す ことがで き
るか 。 こ の パ ズ ル を い く つ か 解 い た 学 習 者 は,自
分 で 何 を 解 決 す れ ば よ い の か,そ
方 向 性 を 次 の 問 題 で 理 解 す る 。 そ して,p,q,r,sを
の
求 め る連 立 方 程 式 の解 法 を 一
般 性 の も と で 観 察 し,こ
の 問 題 を 明 らか に す る 。 さ ら に,特
に つ い て パ ズ ル を 解 く こ と に よ っ て,す
値
べ て の 解 が 示 さ れ る。
〔例 題1〕a=2,b=3,c=4,d=5と
し た と き の 解p,q,r,sを
が 一 通 り に 求 め られ な い と き,p,q,r,sの1つ 〔 解〕
別 なa,b,c,dの
求 め よ。 解
を 数 と考 え て す べ て の 解 を 表 せ 。
上 の パ ズ ル の 連 立 方 程 式 を 行 列 で 表 す と,次
の よ うに な る。
(6.6)
連 立 方 程 式 の行 に つ い て基 本 変 形 を行 う。 (1行)−(2行)−(3行)+(4行)→4行 (1行)−(3行)→3行 とす れ ば,
(6.7)
こ こ で,式(6.7)の
左 側 の 行 列 をAと
して連 立 方 程 式 の解 を探 る。 学 習 者 は
次 の こ と を 見 い だ す で あ ろ う。 ・式(6.6)の4つ そ れ は,事 が3つ
の 方 程 式 の4個
の 未 知 数 を み る と,2つ
実 上 の 条 件 式 の 個 数3<4,│A│=0,あ
以 上 の 解 が あ る。
る い はAの0で
な い行
あ る こ とか らわか る。
・式(6.7)の
第4行
を 展 開 して み る と,
0p+0q+0r+0s=a−b−c+d だ か ら,a−b−c+d≠0の
と き 式(6.6)の
解 は な い 。 こ の 条 件 は, (6.8)
と表 せ る。
こ こ で,未 知 数 の 個 数4に rank(A)と 中 の1つ
表 し,Aの
対 して 事 実 上 の 条 件 は3つ
階 数 と い う。 こ の と き,連
で あ る。 こ の 数3を
立 方 程 式 は 未 知 数p,q,r,sの
を パ ラ メ ー タ と して 選 ん で 解 を 表 現 す る こ と が で き る 。 こ の 数1は
数 の 個 数p,q,r,sの
個 数4か
自 由 度=(未
ら階 数 を 引 い た 数 で あ り,こ
れ を 自 由 度 と い う。
知 数 の 個 数)−rank(A)
こ の 場 合,4−3=1と
い う 自 由 度 を もつ か ら,1個
の 未 知 数,例
任 意 の パ ラ メ ー タ に と っ て パ ズ ル を 満 た す よ う にp,q,rをrで 式(6.5)の
未知
例(a=2,b=3,c=4,d=5)でrを
え ば,rを
表 す こ とが で き る。
特 定 し な い で お き, 表6.7
が 得 ら れ る。 表6.5のp,q,sに
こ れ を 代 入 す れ ば,表6.7に
rに つ い て も表6.7のp,q,sは 2,s=3は,r=1の 表6.7を,ベ
こ の と き,ベ
な る 。 し た が っ て,ど
んな実数
パ ズ ル の 条 件 を 満 た す 。 は じめ 例 の 値p=1,q=
場 合 で あ る。 ク トル で 表 現 す る と,次
ク ト ル〓
の よ う にな る。
を基 本 解,
〓を 特殊 解 と い う。
基 本 解,特 殊 解 の概 念 が こ う して 必 然 性 の も と に導 か れ,次 場 合 に利 用 さ れ る。
の問 題 で 一般 的 な
〔 例 題2〕 〔 解〕
表6.5の
式(6.7)で
と き の 解p,q,r,sを
基 本 解 と特 殊 解 で 表 せ 。
条 件;a+d=b+cを
満 た す と して 拡 大 行 列 を 作 る。
(6.9)
式(6.9)の
行 列 に基 本 変 形 を 行 う。
(6.10)
連 立 方 程 式 でsを
決 め な い で パ ラ メ ー タ と して お く と,
基本解 は
〓特殊解 は
このパ ズ ル は2×2行 3×3の
〓で あ る。
列 で 考 え たが,次
の問5の
よ うに小行列 で表 現 す る と
パ ズ ル に 自然 に発 展 す る。 そ の場 合 は,6×9行
列 か らな る連 立 方 程 式
の 解 を分 析 す る こ と に な る。 この 発 展 問 題 まで 調 べ る こ とが で きれ ば,連 立 方 程式 の解 空 間 と行 列 式 の 階数
rank(A)に
つ い て 数 学 的 に探 求 した こと に な る。
問5 (1) 式(6.6)の
左 辺 の行 列 を,次 の 行列 を用 い て 表 せ。
(2) 次 に,右 の パ ズ ル に つ い て式(6.4) と同 様 な方 程 式 を 作 り,式(6.6)に る行 列 をE,I,Oと
6.2
相 当す
類 似 な行 列 で表 せ 。
パ リテ ィチ ェ ック 行列
現 在,情
報 を 光 フ ァ イ バ や 電 波 な ど の 通 信 メ デ イ ア に の せ て 伝 送 す る に は,1
つ ひ と つ の 文 字 な ど を2進 に そ れ を モ デ ム で0,1の 伝 送 の 際,何
数 の コ ー ド ワ ー ド(符 号)に
か の 障 害 の た め に デ ー タ が 変 わ っ て し ま う こ と が あ る。 こ の と き, ェ ッ ク)し,で
必 要 に な っ て く る 。 エ ラ ー の 生 じ方,エ
[1]
きれ ば そ れ を修 復 す る こ とが
ラ ー を 検 査 す る方 法,エ
ラ ーを修 復 す る
よ び そ の 基 本 と し て の 行 列 の 解 空 間 の 概 念 を 紹 介 す る。
エ ラ ー の 生 じ 方
伝 送 途 中 の デ ー タ に エ ラ ー が 発 生 す る と,そ え ば,キ
ら
信 号 の 列 に して 伝 送 す る 方 法 が と ら れ て い る 。 し か し
エ ラ ー の 起 こ っ た デ ー タ を 検 査(チ
方 法,お
直 し て コ ー ド化 し,さ
の結 果 は ど うな るで あ ろ うか。 例
ー ボ ー ドか ら 「東 」 と い う文 字 を 入 力 した と す る 。 「東 」 と い う 文 字 は
コ ン ピ ュ ー タ の 中 で はJISの
規 格 で456C,2進
せ て,次
の よ う に コ ー ド化 さ れ,1つ
100,0101,110,1100
こ れ は モ デ ム で11001001101100に 害 が 起 こ る と,こ
数 で は7ビ
ッ ト を2個
組 み合 わ
の デ ー タ と し て 扱 わ れ る。
対 応 す る 信 号 の 列 と し て 送 ら れ,途
の よ う な デ ー タ の 中 の あ る0,1が
逆 の ビ ッ トに な る 。
中 で障
図6.7
図6.8
[2] エ ラ ー の 検 査 エ ラ ー に は 意 味 上 の エ ラ ー な ど い く つ か の 種 類 が あ り,そ
れ に従 って エ ラー を
検 出 す る や り方 が 異 な る。 (1)
意 味 上 の エ ラ ー と検 査 方 法
い ま,あ
る デ ー タ を 通 信 で 伝 送 して い る 間 に 「東 京 電 輝 大 学 」 と い う メ ッ セ ー
ジ が 受 信 さ れ た と し よ う。 文 字 列 の 意 味 か ら,多
分 これ は
「東 京 電 機 大 学 」 の
「機 」 が 変 化 した エ ラ ー と意 味 の 上 か ら推 測 さ れ る。 こ こで,伝 所 だ け で 起 こ っ た と して1ビ ・「輝 」 のJISコ
ッ トの 違 い の あ る コ ー ド ワ ー ドを す べ て 検 査 す る 。
ー ド
16進 数 で
3531
2進
011,0101,011,0001
数で
・「機 」 のJISコ
ー ド
16進 数 で
3521
2進
011,0101,010,0001
右 か ら5番 こ う し て,エ
送 エ ラ ー が1箇
数 で
目 の ビ ッ トが 異 な る コ ー ドと して ラ ー は機 が 輝 に 変 化 し た(化
「機 」 が あ る こ と が わ か る。
け た)も
の と,ほ
ぼ 間 違 い な く結 論
で き て,エ
ラ ー が 修 復 さ れ る。 そ の 理 由 は,エ
例 え ば0.001で
あ る と す れ ば,2箇
ラ ー が1箇
所 だ けで 起 こ る確 率 が
所 で 同 時 に 起 こ る 確 率 は0.0012と
な って 無 視
で き る程 度 に 小 さ く な る か ら で あ る。 しか し こ の よ う な エ ラ ー は,デ
ー タ の も と の 意 味 が わ か って い る と き に 限 られ
る 。 コ ンピ ュー タ で こ の よ う な 検 査 を 行 う に は,文 要 に な る が,完
法 の他 に人 工 知 能 の機 能 が必
全 な 実 現 化 は ま だ 困 難 で あ る。
問6 上 の メ ッセ ー ジ 「東 京 電 機 大 学 」 が 「東 京電 機 打楽 」 に変 化 した とす れ ば,ど 字 の どの ビ ッ トが 変 化 したか 。 こ こ に16進 数 のJISコ は3358,楽
は335Aで
ー ドで,大 は4267,打
の文
は4247,学
あ る。
(2) 機 械 的 な エ ラ ー 検 査 機 械 的 に エ ラ ー を 検 査 す る に は,2進
数 で 表 さ れ た コ ー ドワ ー ドを,あ
ク 数 で 計 算 し た 数 を つ け 加 え て 送 る 方 法 が と られ る 。 例 え ば,初 と い う文 字 のJISコ と き,次
ー ドa=456Cをb=11010(2)と
の よ う に し て 余 りc=11(2)を
め に あ げ た 「東 」
い うチ ェ ッ ク数 で 送 信 す る
計 算 し,24aにcを
加 え て 送 信 す る。
456C×1000(2)=100010111011000000(2)を,図6.9の り,余
るチ ェ ッ
よ う に11010(2)で
割
りc=11(2)
を 得 る 。 た だ し,こ
の 割 り 算 は 途 中 を 引 算 で は な く,各
和 を 得 る(0+0→0,0+1→1,1+1→0)。
図6.9
② 100010111011000011 を送 信 す る。
ビ ッ トの 排 他 的 論 理
③ 受 信 した 数 を11010で
余 り が0の
割 る。
と き に の み 正 し く受 信 さ れ た と す る 。
こ の 手 順 で チ ェ ッ ク を 行 う方 法 を 巡 回 冗 長 度 検 査(CRC)と 信 で ふ つ う に用 い ら れ て い る 。 こ の 方 法 で は,チ コ ー ド ワ ー ドに4ビ 一 般 に,kけ
い い,世
界 の通
ェ ック の た め に もと のデ ー タの
ッ トつ け 加 え ら れ る。
た の2進
数 を チ ェ ッ ク数 と す る と き,も
1個 の ビ ッ トを つ け加 え る こ と に な る。 し か し,こ コ ー ド ワ ー ドを 検 出 で き て も,そ な い 。 そ の た め に は,さ
と の コ ー ド ワ ー ドにk−
の方 法 で は エ ラー の起 こ った
れ を も と の コ ー ド ワ ー ドに 修 復 す る こ と は で き
ら に 多 く の ビ ッ トを 加 え,そ
の 中 か らあ る規 則 に従 って
コ ー ド体 系 を 作 る必 要 が あ る 。
[3] コ ー ド 系 「東 」 と い う文 字 は,JISの
規 格 で は10001011101100と
で コ ー ド化 さ れ た 。 こ の よ う な2進 14ビ
ッ トの2進
数 の 各 桁1つ
数 は 全 部 で214=16384だ
あ る ビ ッ ト数 の2進 し か し実 際 に は,検
い う14け
た の2進
数
ひ と つ の こ と を ビ ッ トと い う 。
け あ り得 る 。
数 の 集 合 の こ と を コ ー ド空 間 と い い,Vnの 査 な ど の た め に そ れ よ り も 少 な い 個 数 の2進
よ う に表 す 。 数 を,一
定 の規
則 で そ の 中 に 割 り当 て る。 こ の よ う に,あ
る 規 則 で 割 り 当 て ら れ た2進
数 の こ と を コ ー ド ワ ー ドと い い,
コ ー ド ワ ー ドの 集 ま りの こ と を コ ー ド系 あ る い は単 に コ ー ドと い う。 コ ー ド系C を 構 成 す る コ ー ドワ ー ドの 個 数 の こ と を,そ 表 す。
図6.10
の コー ド系 の 大 き さ と い い,│C│と
例 え ば,JIS規
格 の 「情 報 交 換 用 漢 字 符 号 系 」 と い う コ ー ド系 で は,コ
ドが6854個
あ る か ら,こ
ま た,2つ
の コ ー ド ワ ー ドa,bが
と 表 し,a,bの 例 え ば,コ
こ の2つ
の コ ー ド系Cの
大 き さ は│C│=6854で
あ っ た と き,異
ー ドワー
あ る。
な る ビ ッ トの 個 数 をd(a,b)
距 離 と い う。 ー ド ワ ー ド3521(16)(機)と3531(16)(輝)の
の コ ー ド ワ ー ドは1つ
距 離 は,
の ビ ッ トだ け 異 な って い る こ と が こ れ で わ か る 。
も し 「機 」 を 送 信 し た け れ ど も伝 送 エ ラ ー に よ って 「輝 」 を 受 信 した 場 合,上 の検 査 に よ って機 械 的 に エ ラー を検 査 す る こ とが で き る。
[4]
リ ニ ア コ ー ド
こ こ で は,「 輝 」 の コ ー ド ワ ー ドを 「機 」 の コ ー ド ワ ー ドに 修 復 で き る よ う な コ ー ド系 を 作 る こ と を 考 え る。 コ ー ド ワ ー ドの チ ェ ッ ク の 方 法 と,そ (1)
れ に 用 い る 行 列 を 決 め て お こ う。
リ ニ ア コー ド
こ こ で,コ
ー ドワ ー ドを 行 ベ ク トル と み な し,ま
を 考 え る 。 例 え ば,コ
ー ド ワ ー ドをx=1110と
と き の 転 置 行 列 は,列
ベ ク トル
で 表 さ れ る 。 一 方,こ
の4ビ
を と れ ば,次
た 成 分 が0ま
し,こ
た は1の
れ を1×4行
ッ トの コ ー ドワ ー ドxに 対 して2×4行
の よ う に し て 零 ベ ク トル が 得 られ る 。
行 列H
列 と考 えた
列
逆 に,行
列Hが
上 の 形 で 与 え ら れ た と き,ど
トル に な る か を 考 え て み よ う。 行 列Hと ドx,つ
の よ う な コ ー ド ワ ー ドが 零 ベ ク
の積 が零 行 列 に な る よ うな コ ー ドワ ー
ま り零 因 子 と な る行 ベ ク トル をx=[x1 x2 x3 x4]と
す る。
した が っ て,
(6.11) こ こ でx1,x2,x3,x4は0か1,足 −1=1(mod2)だ
し 算 は2の
か ら式(6.11)を2の
剰 余 類 が0と
い う 意 味 で あ り,
剰 余 類 で 考 え る と,
(6.12) こ の 式 の 解 はx3,x4を 図6.11に,そ
そ れ ぞ れ0,1と
お い た4通
り の 組 合 せ でx1,x2が
決 ま る。
れ らの解 のす べ て を示 す 。
図6.11
こ こ で,Cの
ど の2つ
の コ ー ドワ ー ドの排 他 的 論 理 和 を と っ て も,ま たCの
ドワ ー ドに な る。 例 え ば,
コー
1110+1001=0111(mod2)
こ の よ う な 特 性 を も つ コ ー ドの こ と を リ ニ ア コ ー ドと い う。 ま た,リ と の 積 が0に
な る行 列Hの
こ と を パ リテ ィ チ ェ ッ ク 行 列 と い う。
と こ ろ で 式(6.12)は,2元 個 で 解 の 集 合 は 自 由 度2で
ニ ア コー ド
連 立 方 程 式Hxt=0に
お い て,未
知 数 の 個 数 が4
あ る こ と を 示 し て い る。 しか も式(6.12)の
係 数 は排
他 的 論 理 和 が 行 わ れ る。 こ の よ う な 集 合 を ガ ロ ア 体 と い う。 (2)
エ ラ ー の 修復
次 に,上
の 計 算 で 求 め られ た コ ー ド系C
C={0000,1110,1001,0111}
の コ ー ド ワ ー ドの1つ
に エ ラ ー を 起 こ し,そ
〔例1〕
エ ラ ー コ ー ド0010を
0010と
d(0000,0010)=1
d(1110,0010)=2
d(1001,
d(0111,0010)=2
だ か ら,距
0010)=3
離 が 最 も小 さ い0000が
d(0000,0001)=1
d(1110,0001)=4
d(1001,0001)=1
d(0111,0001)=2 だ か ら,修
受 信 し た と き,
各 コ ー ドワ ー ドの 距 離 を 計 算 す る 。
〔 例2〕 エ ラ ー コ ー ド0001を
の 修 復 を 考 え て み よ う。
正 し い コ ー ド ワ ー ドと 考 え られ る 。
受 信 し た と き も距 離 を 計 算 す る 。
復 す る コ ー ドワ ー ドが0000か1001は
上 の 〔 例1〕,〔 例2〕 か ら,こ の コ ー ド系Cは
決 定 で き な い。
一 部 分 しか 修 復 で き な い こ とが わ か る。
[5] 八 ミ ン グ コ ー ド ここで は完 全 に修 復 で き る コ ー ド系 を作 る こ と を 考 え る。 な お,上 で は第1列,第2列
の 行 列H
に単 位 行列 を お いて あ るの で,こ の お き方 を利 用 す る。
(1)
パ リテ ィチ ェ ック 行 列 と ハ ミ ング コ ー ド
1か ら111ま
で の2進
テ ィ チ ェ ッ ク行 列Hを
数 の1と0を
は 行 ベ ク トルxに
列 ベ ク トル の 成 分 に して,3×7型
次 の よ う に作 る。 た だ し,Hの
左 側3列
のパ リ
は 単 位 行 列,xt
対 応 す る列 ベ ク トル とす る 。
こ の と き,Hxt=0と
な る よ う な コ ー ド ワ ー ドxの
全 体,つ
ま り リニ ア コー
ド
を 考 え る。 コ ー ドワ ー ドxを [x1
と す る と,次
2の x6,x7で
x2
x3
x4 x5 x6
x7],各xiは0ま
た は1
の 式 が 成 り立 つ 。
剰 余 類 で は−1=1だ
か ら,式(6.13)が
成 り 立 ち,x1,x2,x3がx4,x5,
表 せ る こと が わ か る。
(6.13)
x4,x5,x6,x7の
に 式(6.13)を
そ れ ぞ れ が0,1に
代 入 す る とx1,x2,x3の
な る 組 み 合 わ せ は16と
お り あ り,そ
れ ぞ れ
値 が 決 ま る 。 こ の 手 順 で で き た コ ー ド系
Cを ハ ミ ン グ コ ー ド と い い,そ
の 大 き さ は│C│=16で
図6.12に,作
ッ トの ハ ミ ン グ コ ー ドを 示 す 。
成 さ れ た7ビ
あ る。
図6.12
(2)
エ ラ ー の修 復
ハ ミ ン グ コ ー ドの 特 徴 は,エ る 。 例 え ば,エ
ラ ー が1個
の と きそ れ を 必 ず 修 復 で き る こ とで あ
ラ ー コ ー ドを 次 の よ う に と っ て み よ う 。
(6.14) こ の と き,パ
リテ ィ チ ェ ッ ク 行 列Hとaに
つ い て,
こ れ か らaが
ッ ク行 列Hの
エ ラ ー で あ る こ と が わ か る。 ま た ベ ク トル
第6列
〓は,パ
リテ ィチ ェ
目 に あ る。 そ こ で,式(6.14)のa=1011000の
第6番
目
を 交 換 し,
が 正 し い コ ー ド ワ ー ドに な る。 受 診 し た ハ ミ ン グ コ ー ドaの
エ ラ ー の 検 査 と 修 復 の 手 順 は,次
の と お りで あ る。
① エ ラ ー 検 査; 受 信 し た コ ー ドaと
パ リテ ィ チ ェ ッ ク 行 列Hで
積Hatを
・Hat=0の
と き ,エ
ラ ー が な か っ た と判 定 す る。
・Hat≠0の
と き,エ
ラ ー が あ っ た と 判 定 す る。
計 算 す る。
② エ ラー の 修 復;
Hat≠0の
と き,HatはHの
・HatがHの
ど れ か の 列 と一 致 す る 。 こ の と き,
第 何 番 目 の 列 と 同 じか を 見 つ け ,第k列
・エ ラ ー コ ー ドの 第k番
目 の0と1を
こ の 単 純 な ア ル ゴ リズ ム の 理 由 は,次 エ ラ ー コ ー ド をat+etと
とす る。
交 換 す る。
の よ う に して 示 さ れ る 。
す る 。 こ こ に,aは
ハ ミ ン グ コ ー ドの 中 の あ る コ ー
ド ワ ー ドeは,
つ ま り 第kビ ドだ か ら,次
一般 に
ッ トだ け が1で,残
り が0の
行 ベ ク トル と す る 。Cは
リニ ア コ ー
の 式 が 成 り立 つ 。
,m×n行
列 に 第k成
分 が1で,残
りが0の
列 ベ ク トル を か け る と,
した が っ て,HetはHの
第k列
に な る。 よ っ て ①,②
の 正 しさが示 さ れ た。
問7 次 の パ リテ ィ チ ェ ッ ク行 列Hで
定 め られ る リニ ア コー ドをCと
い ま,110110を
ッ トの エ ラ ー の あ る こ と が わ か っ て い る と す る。 こ
受 信 し た と し,1ビ
す る。
の と き 正 し い コ ー ド ワ ー ドを 修 復 せ よ 。
[6] サ イ ク リ ッ ク コ ー ド サ イ ク リ ッ ク コ ー ドを 作 り,エ (1)
ラ ー チ ェ ッ ク の 方 法 に つ い て 考 え て み よ う。
サ イ ク リ ック コー ド
例 え ば,Cを ドを1つ
コ ー ド空 間V7の
と れ ば,そ
れ は7ビ
リ ニ ア コ ー ド系 と す る 。 つ ま りCの
コ ー ドワ ー
ッ トで 次 の よ う に 表 せ る 。 (各aiは0ま
た は1)
こ の と き,
な ど が 再 びCの
コ ー ドワ ー ドに な っ て い る と き,Cを
ま た,a′
サ イ ク リ ッ ク シ フ トと い う 。 サ イ ク リ ッ ク コ ー ドの 特 徴 は,次
の2つ (a)
をaの
サ イ ク リ ッ ク コ ー ドと い う。
で あ る。 Cは
リ ニ ア コ ー ドで あ る。
2つ の コ ー ドワ ー ドの 足 し算+を,同
じ位 置 に あ る ビ ッ トの 排 他 的 論 理 和
で 行 う と き,表6.8の (b)
Cの
よ う に 計 算 結 果 が 再 びCの
コ ー ド ワ ー ドaの
サ イ ク リ ッ ク シ フ トは,Cの
例 え ば,a=011の
の よ う に サ イ ク リ ッ ク コ ー ドに な る。
Cの 特 徴(a)は,次
コ ー ドワ ー ドに な る 。 コ ー ド ワ ー ドで あ る。
サ イ ク リ ッ ク シ フ トと0は
の
「和 」 の 構 成 表 で 示 さ れ る。 表6.8 和 の構 成 表
(2)
サ イ ク リ ッ ク シ フ トと 多 項 式
上 の 特 徴(b)は,011の
一 般 に,サ
イ ク リ ック コー
実 際,Cの
コー ドワ ー ド
サ イ ク リ ッ ク シ フ トを 順 に 行 っ て み れ ば わ か る 。
ドは リニ ア コ ー ドの 一 種 で あ る 。
に 対 して
を 対 応 さ せ る。 こ の と き,多 項 式 で 行 う サ イ ク リ ッ ク シ フ トは ど う な るで あ ろ う か。 そ の手 順 を考 え よ う。 aの サ イ ク リ ッ ク シ フ ト〓
は多項式
に な る が,こ の式 を変 形 す れ ば
し た が っ て,aの x〔
サ イ ク リ ッ ク シ フ トを 作 る 手 順 は,多
倍 〕 してxn−1の
項 式 で は,
剰 余 類 を と る。
と い う手 順 に な る 。 こ の こ と は,aの
サ イ ク リ ッ ク シ フ トa′ は ま たCの
コー ド
ワ ー ドに な る こ と を 示 して い る。 (3)サ
イ ク リ ッ ク コ ー ドの 構 成
n=7と い ま6次
し,x7−1の
剰 余 類 を 考 え て,サ
イ ク リ ッ ク コ ー ドを 作 っ て み よ う 。
ま で の 多 項 式 を 考 え る 。 そ の と き,2の
多 項 式 の 計 算 を2の 例 え ば,次
剰 余 類 で あ る0,1を
係 数 と し,
剰 余 類 で 計 算 す る と し よ う。
の 式 は 同 じ と み な さ れ る。
x+2はxと,
x−1はx+1と,
x2+2x+1はx2+1と
同 じ で あ る。
こ の と き, (6.15) と 因 数 分 解 で き,x7−1の
こ こ で,各
約 数 か ら コ ー ド系Cを
例 え ば,g(x)=x3+x+1と の よ う にす る。
①
約 数 は次 式 の よ うにな る。
構成 す る こ とが で き る。 し て,g(x)か
ら コ ー ド系Cを
作 る 手 順 は,次
と考 え て
コ ー ド ワ ー ドa=1101000
を作 る。
② aの
サ イ ク リ ッ ク シ フ トを 順 に 行 っ て で き る コ ー ド ワ ー ド全 体;
が サ イ ク リ ッ ク コ ー ド系 に な る 。 こ こ で,0=0000000で
(4)
パ リテ ィ チ ェ ッ ク行 列 の 構 成
上 で は,g(x)=x3+x+1か こ の コ ー ド系Cに
ら サ イ ク リ ッ ク コ ー ド系Cを
対 す る パ リ テ ィ チ ェ ッ ク 行 列Hを
① g(x)=x3+x+1に
式(6.15)か
②
対 して,g(x)h(x)=x7−1と
作 っ た 。 こ こで は,
作 っ て み よ う。 な るh(x)を
求 め る。
ら,
こ れ をg(x)の
先 頭 が1の
あ る。
場 合 と は 逆 に,x4,x3,…,1,x6,x5の
コ ー ド ワ ー ドbを
順 に 対 応 さ せ て,
作 る。
す な わ ち,
③ bの サ イ ク リ ッ ク シ フ トを 作 り,3行
③ の 理 由 は,次
に 並 べ る と 求 め る 行 列Hが
で き る。
の よ う に して 示 さ れ る 。
と お け ば,g(x)h(x)=x7−1だ
か ら,
し た が っ て,g0h0+g3h4=0(mod2) g(x)h(x)を
展 開 す る と,xか
らx6ま
で の 項 の 係 数 は す べ て0だ
か ら,
xの
係 数;g0h1+g1h0=0
x2の
係 数;g0h2+g1h1+g2h0=0
x3の
係 数;g0h3+g1h2+g2h1+g3h0=0
x4の
係 数;g0h4+g1h3+g2h2+g3h1=0
x5の
係 数;g1h4+g2h3+g3h2=0
x6の
係 数;g2h4+g3h3=0
こ れ ら の 関 係 は,次
の 行 列 で一 度 に表 され る。
(6.16)
し た が っ て,式(6.16)の な る 。 例 え ば,a=1101000で
成 分hiで は,次
表 さ れ た行 列 は パ リ テ ィチ ェ ッ ク行 列 に の パ リテ ィ チ ェ ッ ク 行 列 が 得 ら れ る 。
な お,エ え ば,エ
ラ ー 修 復 の 方 法 は ハ ミ ン グ コ ー ド と 同 様 に して 行 う こ と が で き る。 例 ラ ー コ ー ドc=1101100を
こ こ で,列
あ る か ら,cの
ベ ク トルd=
第5ビ
受 信 した と き,Hと
〓は,パ
ッ トを1か
ら0に
リ テ ィ チ ェ ッ ク 行 列Hの
な お,上
次 の問8は,そ 行 列Hを
と 同 じで
ミ ン グ コ ー ドと 同 じや り か た で パ
用 い て エ ラ ー の修 復 が 行 わ れ る こ とが わ か る。
の 例 で はg(x)=x3+x+1と
と い っ た,x7−1の
第5列
変 更 す る。
こ う して サ イ ク リ ッ ク コ ー ドに つ い て も,ハ リテ ィ チ ェ ッ ク行 列Hを
の積 は次 の よ うに な る。
した が,
他 の 約 数 に つ い て も サ イ ク リ ッ ク コ ー ドを 作 る こ と が で き る。 の 中 の1つ
を 選 ん で サ イ ク リ ッ ク コ ー ド系 とパ リ テ ィ チ ェ ッ ク
作 る 問 題 と して あ げ た 。
問8
を も と に し て サ イ ク リ ッ ク コ ー ド系 と パ リ テ ィ チ ェ ッ ク 行 列Hを
構 成 せ よ。
6.3
マ ル コ フ過 程
天 気 の 晴 れ,曇
り,雨 の状 態,車
の 占有 状 況 な どを み る と,い
くつ か の 状 態 が
あ って,そ れ が時 間 の流 れ の 中 で一 定 の割 合 に落 ち着 くこ とが あ る。 この よ うな 問題 場面 で は,時 間 的 に遠 い将 来 どの場 面 に落 ち着 くか を 予 測 す る こ とが 問 題 に な る。 こ こで は グ ラ フを手 が か りに,問 題 場 面 を推 移 行 列 で 表 現 し,さ らに固 有 値 の 考 え方 を用 い て,こ の 問題 を数 学 的 に解 決 す る こ とを 考 え る。
[1] 問題の背 景 例 え ば,東 京 と大 阪 に住 ん で い る人 の移 動 を考 え る と しよ う。 そ の移 動 の しか た を 最 も単 純 な形 に直 し,毎 年 の移 動 が次 の よ うに な って い る とす る。 ・東 京 に住 ん で い る人 の半 分 が大 阪 に移 動 し,残 りは移 動 しな い。 ・大 阪 に住 ん で い る人 の40%が
東京 に移 動 し,残 りは移 動 しな い。
この 移 動 を人 口 の移 動 とみ た と き,そ の都 市 に住 ん で い る人 口 に よ って そ の年 の 移 動数 が変 わ る。 も し東 京 の 人 口が 大 阪 に比 べ て極 端 に少 な い ことがあ って も, 大 阪 か らそ れ だ け 多数 の人 が東 京 に移動 す るの で,ど ち らかが 無 住 の都 市 に な る こ と はな いで あ ろ う。 しか も,移 動 の 規 則 か ら して2都 市 の人 口 が毎 年 大 幅 に変 動 す る こ と はな く,一 定 の 割 合 に落 ち着 く こ とが考 え られ る。 (1) グ ラフ に よ る表 現 この 問 題 を グ ラ フで 表 す 方 法 に は二 通 りあ る。 図6.13は
地 理 的 な 変 化 を,図
6.14は 時 間 的 な推 移 を 表 現 して お り,後 者 の グ ラ フ を2部
グ ラ フ と もい う。 両
図6.13
有 向 グ ラ フ
図6.14
2部 グ ラ フ
者 は そ れ ぞ れ の 良 さ を 生 か して 問 題 場 面 の 理 解 や 問 題 の 発 展,分 (2)
析 に 利 用 で き る。
シ ミ ュ レー シ ョン
問 題 の 状 況 の 本 質 的 な 部 分 を で き る だ け忠 実 に 模 擬 実 験 す る こ と を シ ミ ュ レ ー シ ョ ン と い う。 コ ン ピ ュ ー タ の 繰 り返 し能 力 を 生 か し て,こ
の 問 題 の シ ミ ュ レー
シ ョ ン を 行 っ て み よ う。 条 件 を 整 理 す る と次 の よ う に な る 。
・あ る 年 の 東 京 の 人 口 がx〔 人 〕で あ る と す る。
東 京 の 人 は0.5の
確 率 で 大 阪 に 移 動 す る。
・あ る 年 の 大 阪 の 人 口 がy〔 人 〕で あ る と す る。
大 阪 の 人 は0.4の
確 率 で東 京 に移 動 す る。
シ ミ ュ レ ー シ ョ ン は,こ ① 東 京 の 住 人,一
の 条 件 を 忠 実 に 実 行 し て 行 う。
人 ひ と り に 対 し,乱
ず つ 用 意 す る 。 そ の 乱 数pが0.5よ
数(で
た ら め な 数)0<p<1を1つ
り も小 さ い と き,そ
の人 は大 阪 に移 動 す
る。 した が っ て,
・乱 数p>0.5の
と き,東
京 の 人口一 人 減 少,大
② 大 阪 の 住 人 各 人 に対 し,乱
乱 数q<0.6の
つ ま り,
・乱 数q>0.6の
③ 最 初 に 東 京,大 ①,②
阪 の人 口が 一 人 増加
数0<q<1を1つ
ず つ 用 意 す る。
と き,そ
の 人 は 移 動 せ ず,そ
と き,大
阪 の 人 口 が 一 人 減 少,東
阪 の 人 口 を と も に1000人
人 口 の 人 数 だ け 繰 り返 して,翌
うで な け れ ば 移 動 す る。
京 の 人 口 が一 人 増 加
とす る。
年 の人 口 とす る。
必 要 な 年 数 だ け こ れ を 繰 り返 す 。 こ の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を そ の ま ま コ ン ピ ュ ー タ で 行 う と,次 ロ グ ラ ム で は 東 京,大
阪 の は じめ の 人 口 をx(1),y(1)と
実 行 結 果 で は,東
京:大
実 験 結 果2で
じ め の 人 口 を 東 京1500人,大
ず4年
は,は
阪 の 人 口 比 率 が9:11程
後 に は 比 率 が ほ と ん ど9:11に
の よ うに な る。 プ
し,10年
繰 り返 す 。
度 で 落 ち 着 い て い る。 特 に, 阪500人
と した に もか か わ ら
な って し ま う。
シ ミュ レ ー シ ョ ンで は 現 象 を 細 か く観 察 し,一
人 ひ と りま で さ か の ぼ っ て 模
擬 実 験 を 行 う こ と が で き る 。 こ の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン で は,1年
あ た り4000回
の
プ ロ グ ラ ム6.1
結 果1
図6.15
図6.16
結 果2
判 断 を 繰 り返 し,10年
で は40000回
の大 小 判 断 を 行 っ て い る。 コ ン ピ ュ ー タ で
は,多 数 回 の繰 り返 しに よ って 複 雑 な 現 象 の シ ミュ レー シ ョ ンも可 能 に な る。 [2]
推移 行列 の利用
この 問 題 状 況 の シ ミュ レー シ ョ ンで,そ の 移 り変 わ りの よ うす が 追跡 で き,東 京 と大 阪 の 人 口 の比 率 が 約9:11に
落 ち着 くこ とが わ か った。 しか し,な
ぜ9:
11な の か は わか らな い。 そ こで 推 移行 列 を使 って そ の根 拠 を 探 る こ とにす る。 (1) 問 題 の 表 現 人 口 移 動 の 推 移 の表 と推 移 行 列 は,次 の よ うに 表 され る。 表6.9
こ こ で,n〔
年 〕後 の 東 京,大
阪 の 人 口 を そ れ ぞ れxn,ynと
す れ ば,こ
の問題
は推 移 行 列 と行 ベ ク トル を 用 い て次 式 の よ うに表 現 され る。
(6.17) し か し,こ
の 章 ま で1次
変 換 な ど は 行 ベ ク トル で は な く,列
き た の で,転
置 行 列 の 性 質(AB)t=BtAtを
用 い て,こ
ベ ク トル を 用 い て
の 式 の 転 置 行 列 を と り,
次 式 の よ うに表 現 し直 す こ とに す る。
(6.18) 今 後 は,今 ま で の推 移 行 列 の転 置 行 列 の こ とを 推 移 行 列 と呼 ぶ こと にす る。 こ の 推 移 行 列 を使 って計 算 を繰 り返 す と,xn ,ynが
行 列 の 累 乗 と して表 され る。
(2)
コ ン ピ ュー タ シ ミ ュ レー シ ョン
コ ン ピ ュ ー タ を 使 っ て こ の 問 題 を 解 決 し よ う 。 プ ロ グ ラ ム6.2は,式(6.18) をn=10回
繰 り返 す 。 プ ロ グ ラ ム6.2
結果2
結 果1
図6.17
図6.18
プ ロ グ ラ ム6.2の の 値 は,nが
結 果 が 示 す よ う に,式(6.18)で
大 き く な っ た と き,初
く。 一 般 に,そ
表 さ れ る 過 程 で は,xn,yn
期 値x0,y0に
無 関 係 に一 定 の 状 態 に 落 ち 着
の 成 分 が す べ て 正 の 値 で あ っ て,各
な 行 列 の こ と を 定 常 的 と い い,式(6.18)で フ 過 程 と い う 。 マ ル コ フ過 程 は,上 で 生 じ る と き,そ
列 の 成 分 の 和 が1で
あ るよ う
表 され るよ うな過 程 の こ とを マ ル コ
の 例 の よ う に,い
く つ か の 場 合 が,あ
る確 率
の 繰 り返 し の 現 象 と して 現 れ る。 マ ル コ フ過 程 の計 算 は コ ンピュ
ータ の シ ミュ レ ー シ ョ ン で も行 わ れ る が,究
極 的 な 状 態 に な る こ と の 確 認,お
よ
び 正 確 な 値 を 求 め る た め に 固 有 値 の 概 念 を 必 要 と す る。 (3)
固有値
上 の例 で,推 移 行 列A=〓
に よ っ て 東 京,大
阪 の 人 口x,yが
もは
や 変 化 しな くな った とす れ ば,次 の式 が 成 り立 つ。
(6.19)
(6.20) こ の 解 は と も に5x=4yだ
か ら,x:y=4:5で
あ る こ と を示 して い る。
〔 人〕 と す れ ば,x≒888.9,y≒1111.1と
な っ て,シ
ミュ レー シ ョ ン の 結 果 と よ く合
数 学 的 に こ の 問 題 を 考 え る た め に,式(6.19)を
見 直 し て み よ う。 マ ル コ フ 過
う。
程 が 成 り立 つ こ と は,式
② の よ う な 形 の 行 列 と,数
と と 同 じ で あ る 。 そ の よ う な 条 件 は,次
の 式 でk=1の
ベ ク トル〓
≠0で
あるこ
場 合 で あ る。
(6.21) 4.4節
か ら,こ
こ と か ら,マ
のkは
固 有 値,ベ
ク トル(x,y)は
ル コ フ 過 程 の 推 移 行 列 で は,そ
固 有 ベ ク トル で あ る 。 こ の
の 固 有 値 に 必 ず1が
あ る こ とが わ
か る。
問9 状 態x,yが
推 移 行 列A=〓
0<│p│<0.5と
す る。 この と き,次 の各 問 に答 え よ。
(1)
で 変化 す る現 象 が あ る。 た だ し,
この 現象 の 安定 した状 態 をpで 表 せ。
(2) Aの
固有 値 をpで 表 せ。
(3) pを い ろ い ろ変 化 さ せ た と き,そ の結 果 か らい え る こと を述 べ よ。
[3] マ ル コフ過程の適用 マ ル コ フ過 程 は時 間 的 な推 移 につ い て の現 象 で あ る。 マ ル コ フ過 程 の あ て は ま る よ う な 自然 現 象 や 社 会 現 象 で は,将 来 的 に安 定 す るで あ ろ う定 常 的 な 状 態 を 予 測 す る こ とが 多 い。 そ の よ うな問 題 に対 して,固 有 値 と固 有 ベ ク トル の 考 え 方 を 適 用 して 解 決 して み よ う。 (1)
マル コ フ過 程 の 問 題 例
マ ル コ フ過 程 はx,yだ
けで な く,3つ
あ る い はそ れ 以上 の場 合 に つ い て も適 用
で き る。 適 用 の た め にマ ル コ フ過 程 の例 を い くつ か あ げ て お こ う。 〔例 題3〕 市 場 占有 率 あ る種 の週 刊 誌 は大 手 のA,Bと い う。 あ る週 にA社 そ の ま まA社
い う2社 が 独 占 し,毎 週 占 有 率 が 変 化 す る と
の週 刊 誌 を買 った読 者 の20%が
の週 刊 誌 を翌 週 も買 う読 者 は80%で
刊 誌 は多 少 飽 き られ やす く,25%の ま まB社 の 週 刊 誌 を買 う読 者 は75%し
読 者 が 翌 週A社
翌 週B社
の週 刊 誌 を買 い,
あ る と い う。 一 方 ,B社 の週 刊 誌 に の り か え,そ
の週
か いな い と い う。A,B両
有 率 は最 終 的 に ど う な るか 。 表6.10
図6.19
の
社 の週 刊 誌 の 占
〔 解 〕 この マ ル コ フ過 程 の推 移 行 列 は,上 の対 応 表 の 行 列 の転 置 行 列 に な る。
推移 行列A=〓
連立 方程式〓 か ら0.2x=0.25y つ ま り,A社 〔 例 題3〕 題,2種
とB社
の割 合 は5:4に
と同 種 の 問 題 と して,国
な る。 と国 の 間 の人 口移 動,生
物 の住 み分 けの問
類 の 植物 が何 世 代 か後 に どの よ うな比 率 に な るか とい った 問題 が あ る。
ま た,次 の天 気 の推 移 の問 題 は推 移 行 列 が3×3行
列 にな る例 と して 典 型 的 な
もので あ る。 あ る 土 地 の 天 気 は非 常 に 変 わ り や す い 。 あ る 日 が 晴 れ の と き,翌 る こ と は2日
に1度
い う。 ま た,曇 0.5,0.25で
で あ り,曇
り と雨 に な る こ と は と も に4日
り の 日 の 翌 日 が 晴 れ,曇
り,雨
に1回
り雨 に な る確 率 は そ れ ぞ
あ る と い う。 この と きの推 移 行 列 を求 め よ。
表6.11
図6.20
推 移 行 列Aは,表6.11の
あると
に な る 確 率 は そ れ ぞ れ0.25,
あ る 。 さ ら に 雨 の 日 の 翌 日 が 晴 れ,曇
れ0.6,0.2,0.2で
日 も晴 れ
対 応表 の行 列 の転 置 行 列 と して表 さ れ る。
こ れ は,晴
れ,曇
程 の 例 で,こ
の 場 合,3×3の
はn×n行
り,雨
と い う3つ
の 場 合 を あ る 確 率 で 移 り変 わ る マ ル コ フ 過
行 列 に な る 。 一 般 に,n個
の 場 合 の マ ル コ フ過 程
列 で 表 現 さ れ る。
問10 ば らの 中 で,赤
と青 の色 の花 は親 か ら子 に な る と きに変 わ って しま う もの が あ る と
い う。 い ま,青 い 花 か ら と った種 の うち の60%が か らと った 種 か らは赤 が70%が
赤 で,30%が
青 に,40%が
赤 に な る。 ま た,赤
青 に な る と い う。 この2種
い花
類 の ば らを 何 世
代 に もわ た って 花 を 咲 か せ た と き,赤 と青 の 比 率 は究 極 的 に ど うな るか(推
移行 列 は次 の
よ うに な る)。
(2) 固 有 値,固 有 ベ ク トル の 適 用 上 の 天 気 の例 の推 移 行 列 に固有 値,固 有 ベ ク トル の考 え 方 を 適 用 して マ ル コ フ 過 程 にお け る各 年 の よ うす を 調 べ よ う。 そ こで,
に 対 し て,晴 べ て0と
れa,曇
りb,雨cの
比 が 変 わ ら な い と す る 。 こ の と きa,b,cは
い う こ と はな い と して よ い。 そ こで,
す
に 対 して,
(6.22)
と し,式(6.22)の
右 辺 を 左 辺 に 移 動 す れ ば,
(6.23)
これ をA,pと
単 位 行列E,零
一 方,式(6.23)を
ベ ク トル0で 表 せ ば,次 式 の よ う にな る。
連 立 方 程 式 と み れ ば,p≠0か
らa=0,b=0,c=0以
外 の 解 を もつ。 ゆ え に,行
列 式│A−kE│=0
と な る。 この 行 列 式 に2.3節 の基 本 変 形 で,あ る行 か ら他 の 行 の 実 数 倍 した も の を 引 くな ど して,行 列 式 の 値 を計 算 す る。 マ ル コ フ過 程 は,も との 行 列 で 各 列 の 成 分 の和 が常 に1で あ っ たか ら,行 列 式 の各 列 の 和 は1−kに
な る とい う特 徴 が あ る。 そ こで 次 の よ う に基 本変 形 を行 う。
1行+2行+3行
→1行 で
2行−1行
×0.25→2行,3行−1行
第1行1列
に つ いて の 小 行 列 式 を 取 り出 す。
×0.25→3行
ゆ え に,(k−1)(k−0.25)(k+0.05)=0 し た が っ て,こ
の 推 移 行 列Aの
固 有 値 は 次 の よ う に な る。
次 に,式(6.23)の
行 列 に掃 き出 し法 を行 って,各 固 有 値 に対 す る固 有 ベ ク ト
ル を求 め よ う。 こ こで,列 の交 換 を行 う とベ ク トル の成 分 も入 れ替 わ る こ と に注 意 す る。 ① k=1の
場合
2行−1行
×0.25→2行
1行+2行
×(−0.5)→1行
2行/(−0.375)→2行
連 立 方 程 式 に直 す 。
こ の連 立 方 程 式 を解 い て,a=28/15c,b=4/3c こ こ でs=15cと
す れ ば,
固 有 ベ ク トル はp=s〓
式(6.22)の
推 移 行 列 をAと
す れ ば,k=1だ
か ら
Ap=p
し た が って,A2p=Ap=p
n=2,3,4,…
と して
Anp=p こ れ は,pが
定 常 的 で あ る こ と を 示 す 。 し た が っ て 定 常 的 な 比 率 は,
a:b:c=28:20:15
と な る。
念 の た め に,他
② k=−0.05の
の 固 有 値 で は 定 常 的 に な らな い こ と を 示 す 。 場合
こ の 固 有 値 に 対 す る 固 有 ベ ク トル をpと
す れ ば,
Ap=−0.05p n=2,3,4,…
と して
Anp=(−0.05)np こ こ で 自然 数nを
大 き くす れ ば,(−0.05)nは0と
み な して よ い の で 定 常
状 態 で はな い。 ③ k=0.25の
場 合 も 同 様 に,
Anp=0.25np で0.25nは0と
問11 x,y,zの
み な して よい の で定 常 状 態 で は な い。
状 態 が あ り,マ ル コ フ過 程 が成 り立 ち,次 の推 移 行 列 で表 さ れ る 現 象 が あ
る とい う。
(1)定
常 的 な状 態 にお け るx:y:zの
比 を求 め よ。
(2)
この行 列 の 固 有 値 と,そ れ に対 す る 固有 ベ ク トル を求 め よ(こ
のよ うなマ ル コフ
過 程 は,遺 伝 の メ ンデ ル の 法則 に 現 れ る)。
[4] 行列 の対角 化 マ ル コ フ過 程 で は,固 有 値 の考 え方 で定 常 的 な状 態 を一 通 りに予 測 で き る。 し か し,マ ル コ フ過 程 で第n番
目 の状 態 を計 算 す る問 題 が 残 され て い る。
こ こで は,固 有 値 と固有 ベ ク トル を用 いて 問 題 を 解 決 す る こ と を考 え よ う。 この 節 の は じめ に取 り上 げ た人 口 の問 題 で,
のxn,ynを
自 然 数 の 各nに
固 有 値k=1とk=0.1の
こ の2つ
の 式 は,行
つ い て 正 確 に 計 算 して み よ う。 と き の 関 係 は,そ
列 で1つ
れ ぞ れ次 の よ うに な って い る。
に 表 す こ と が で き る。
(6.24) さ ら に2.3節
の,第2行
を0.1倍
す る基 本 変 形 で 次 の よ うに表 さ れ る。
こ こ で,
(6.25) と お け ば,式(6.25)は
次 式 の よ うに表 され る。
(6.26)
こ こ でst≠0と
す れ ば,
式(6.26)の
両 辺 に 右 側 か らP−1を
か け れ ば,
(6.27) こ れ を 行 列Aの
対 角 化 と い う。 式(6.27)の
両 辺 を 別 々 に か け て み る と,
(6.28)
式(6.28)で
こ こ で,対
は 隣 り あっ たP−1Pは
角 行 列 の 性 質 か ら,
ゆ え に,
P,P−1を
代 入 して計 算 す れ ば,
単 位 行 列Eに
な っ て 無 視 で き る か ら,一 般 に
(6.29)
(6.30)
こ う し て,人
口 の マ ル コ フ 過 程 の 問 題 に対 し,固
を 用 い て 任 意 の 繰 り返 しnに
25)の
行 列Pは
・ 自然数nを
は,任
有 ベ ク トル の 考 え 方
対 す る 人 口 を 予 測 す る こ と が で き る。
こ の 計 算 で 明 か に な っ た こ と は,次 ・式(6.29)で
有 値,固
の と お り で あ る。
意 の 定 数s,tは
適 当 にs,tを
約 分 さ れ て 消 え る 。 し た が っ て,式(6.
と って 次 の よ うにで き る。
限 り な く大 き く す る と,式(6.30)の
行 列 は,
とな り,列 ベ ク トルが 一 致 す る。 この こ とは,初 期 値 に無 関係 に安 定 状 態 が 起 こ る こ とを 示 して い る。
天 気 の 推 移 行 列 と い う3×3行
列Aの
例 で も,
に対 応 す る固 有 ベ ク トル を この順 に並 べ た行 列
を と れ ば,
か ら,
が 導 か れ る。 両 辺 をn乗
こ こ で,2.3節
の 逆 行 列 の 式,あ
か ら 任 意 の 自 然 数nに 一 方,nを
して,
る い は 掃 き 出 し法 を 用 い て
つ い てAnが
求 め ら れ る。
大 き く した と き,(−0.05)n,0.25nは
と も に0に
近 づ き,次
のよ う
に 安 定 し た 状 態 を 予 測 す る こ と が で き る。
問12 問11の 推 移 行列Aに
つ い てAnを
は初 期 値 に無 関係 で あ る こ とを示 せ 。
求 め よ。 そ し て,x+y+z=1な
ら定 常 状 態
参考文献 1.文
部省 大 臣官 房 調 査 統 計 企 画 課 編,「 平 成4年 度 学 校 保 健 統 計 調 査 速 報 」,東 文 書 院,
1992 2.矢
野一 郎 監 修,「 日本 国 勢 図会 」,国 勢 社,1993.6
3.全
国 高等 学 校 長 協 力 家 庭 部 会 編,「 四訂 食 品 成 分 表 」,教 育 図 書,1994.1
問お よび練習問題 の解答 (1) 問の解 答 第1章 問1
行 列 に よ る表 現 (1) と もに破 壊 行 為
(2) 18∼24歳
の 酒 酔 い 運 転 で約8.2倍
問2
〓薬 の乱 用,18歳
未 満 の酒 酔 い運 転
問3
問4
問5 〓か ら,〓
問6
(1) 5:Aに (3)
問7
4:ル
(1) D(高
到 着 す る道 の数
(2) 5:Bか
ー プ の 数 ×2倍
尾 山 口)に 到 着 す る道 の 数
(2) 無 向推 移 行 列:20,有
向 推 移 行 列:14,道
(3) 有 向推 移 行 列 は対 称 行 列(第i,j成
問8 (1)
ら出発 す る道 の 数
の本 数10,14
分 と第j,i成 分 の 値 が 同 じ)
(2) か ら,2×1+0+0+0=2
問9
問10 p+s=0,p2+qr+1=0
問11
問12 (1)
(2)
第2章 行列 と行列式 問1
問2
(1)
(2)
問3 問4
問6
A2=A×A=A×A=Eか 背 理 法:も
ら,A=A−1
しA−1が
あ る と す れ ばA2A−1=AA−1,A=Eで
矛盾
問7
な ど か ら,
問8 問9 問10 (1)
(2)
(3)
問11 (1)
(2)
(2)
問12 (1) 問13 (1) 1列+(2列)×k→1列
問14
2列+3列
(2)
→3列,2列−3列
→2列,3列
を分 け る。
第3章 連立方程式 の解 問1
(1)
(2)
(3)
問2
(1)
(2)
(3)
問3
基本解
,特 殊 解
一 般 解u
問4 問5 問6 問7 (1) (2)
(3)
問8
問9 と して デ ー タを入 力
第4章
行列の応用
問1 問2 逆 行列[a,b]−1が
あ る こ と を示 す 。m=25,n=−8
問3
か ら不可能,
=0か ら可能
問4
問5
問6
問7 の順
問8
を右 か らか け る。
問9 x軸
は 変 わ ら な い 。y軸
は 直線y=0.5xに
移 る。
問10
①y軸
方 向 に2倍,②x軸
方 向 にy,③y軸
方 向 に−6x「
問11 問12
不 動 点;x軸
上 の 点,不
動 ベ ク トル(a,0),a;任
問13
第5章 線形計画 問1
x=2,y=3.5の
と き 最 小 値470円
意 の実 数
横 すべ り」 移 動
問2
問3 の条 件 下 で,(60
〓の 最 小 値 を 求 め る。
90)
問4 解:x=37.8,y=5,z=12.5 の と き,最
問5
の も と で,20x+15y+7zの
大 値725
最 小 値 を求 め よ。
問6 の も と で,(7.5
問7 (1)循
環
(2) Ⅰ 行Ⅲ 列 が 鞍 点 とな る集 中
問8 最 適 混 合 戦 略(0.2,0.8),最
第6章
い ろ い ろ な 問題
問1
問2 paま
8 20)
た はap
問3 2回 の合 成ppでeに
な る。
適 期 待 利 得5600万
円
の最 小 値 を求 め よ。
−p
問4
問5
(1)
(2)
〓の9×6行
問6 大 と打;右
か ら6ビ ッ ト目 が1か
ら0に 変 化 した。
学 と楽;右 か ら2ビ ッ ト目 が0か
ら1に 変 化 した。
問7 Hと
の積 でHの2番
列
目 の列 ベ ク トル に な る。 正 しい コ ー ドは100110
問8
,サ イ ク リ ッ ク コ ー ド
H=〓
問9
〓の割合
(1)
(3) x,yはx+y=1の
(2) 固 有 値 1,
関 数 関 係 で 変 化 す る。
問10 赤:青 の比 が4:3 問11 (1)
(2)
固 有 値0,0.5,1固
有 ベ ク トル
問12
x+y+z=1の
と き,
か ら定常的 に
(2) 練習問題の解答 1
第1章 行列による表現
2 3 Bか
ら出 て い く道 の本 数,
4 5 1
第2章 行列と行 列式
2.
(1) 1列 と3列 を 交 換
3.
(1)
(2) 1列+(3列)×k→1列
(2)
4.
ク ラ ー メ ル の 公 式 を 使 う。
5.
3
第3章
連 立方 程 式 の解
1. 掃 き 出 し と ガ ウ ス ・ザ イ デ ル:(0.5625,0.625,0.75)
ヤ コ ビ 法 (0.5625002,0.625001,0.7500002)
2. (1) (2)
(3)
3 ,特 殊 解0, 一 般 解(s+t
. 基本解
,s+t,s,s,t)
s,tは
任意
1
第4章 行列の応用 〓か ら,
2 3 (1)
(2)
(3)
(4)
1
第5章 線形計画 〓の も とで,目 的 関 数3x+4yの
値 を最 大 に す る。
2 x=50,y=375の
と き,最 大 値16500円
3. じ ゃが い も,に ん じん,た ま ね ぎの原 料 費 を最 小 に す るに は仕 入 れ を ど う す れ ば よ い か。
索 拡大行列
あ 行 ア フ ィ ン変 換
確 率 的 な ゲ ーム
78 175
加法定理
119
ア ル ゴ リズ ム
100
環
36
鞍点
173
簡約法則
35
115,123
input文
位 数nの
7
群
45
基底
110
基本解
69
基 本 ベ ク トル
108 55
1次 結合
64
1次 従属
110
基本変形
1次 独立
109
逆行列
1次 変換
112
逆行演算
74
逆変換
115
逆 ベ ク トル
106
一般 解
m×n行
69
列
31
14,35
行列
2
LU分 解
129
行列 の対角化
LU分 解 の数値計算
131
行列 の和
エ ラ ー
191
行列式
47
行列式 の階数
72 31
219 2
OR
149
行 ベ ク トル
オ ペ レー シ ョ ンズ リサ ー チ
149
虚数
24
大 き さ(ベ
ク トル)
105
虚数単位
23
大 き さ(コ
ー ド)
194
距 離(コ
か 行 ガ ウ ス ・ザ イ デ ル 法
102
ガ ウス の 掃 き出 し法
74
ガ ロア体
197
階数
57
可換 群
34
ー ド)
195
近似 の考 え方
89
ク ラー メ ル の公 式
47
グ ラフ
15
群
34
群 の構造
44
引
ゲ ー ムの 理 論
171
係数行列
25
桁落 ち
93,95
シ ンプ レ ック ス法
156
実数倍
3,33
自由度
58,189
決定的なゲ ーム
174
コ ー
ド
194
コ ー ド空 間
194
小行列
39
コ ー ド系
194
小行列式
49
194
情報
乗積表
186
巡 回冗長度検査
コ ー
ド ワ ー
ド
構造化BASIC
7
交代行列
32
合成変換
115
固有値
136,215
固有値 の数値 計算
140 136,215
固 有 ベ ク トル
順行演算
5
推移行列
10,14
数学的 な構造
181
数学的表現
181
枢軸
混 合戦略
175
数 ベ ク トル
76 2,104
正規方程式
サ イ ク リ ック コー ド
201
正則行列
サ イ ク リ ック シフ ト
201
成分
再帰関係
8 74
ス プ レ ッ ドシ ー ト
効率
差
74
情報処理
102
さ 行
194
3,27 143
91 35 2,31
正方行列
31
積
12,33
再帰関係式
19
斉次方程式
69
漸化式
最小2乗 法
88
線形計画
151
最適期待利得
177
線形性の原理
116
最適混合戦略
177
三角行列
37
双対問題
166
3次 の行列式
ゼ ロ和 ゲ ー ム
48
171 19
た 行
シ ミ ュ レ ー シ ョ ン
208
体
シ ン プ レ ッ ク ス表
159
対角化
36 139
対角成分
31
対称行列
32
多変量
2
単位行列
13
単純戦略
175
フ ィボ ナ ッチ数 列
19
フ ラク タル
123
負 の角 の公式
120
不動点
134
不 動 ベ ク トル
複素数
8
分解
108
14
分析
181
平 行 な ベ ク トル
106
データ
置換 直交行列
142
定常的
212
転置行 列
134
7
data文
26,32
23
ベキ等行列
44
ベキ零行列 導関数
27
特殊解
69
補角 の公式
な 行 2次 形式
は 行
パ リテ ィー チ ェ ック行 列
212
16
無 向グラフ
111,197
倍 角公式 排他 的論理和
193
掃 き出 し法 の工夫
マ ル コ フ過 程
197
119
配列
120
ま 行 26
ハ ミン グ コー ド
27,42
目的関数
151
問題解決
155
や 行
7 80
ヤ コ ビの 反 復 法
100
掃 き出 しの手 順
76
ヤ コ ビ法
142
掃 き出 し法 の プ ロ グ ラム
78
矢 線 ベ ク トル
105
ビ ッ ト
等 しい(行 列)
表現 標準最小値問題
194
有向 グラフ
16
32
有向推移行列
16
要素
31
10,180 171
ら 行 乱数
零 因子 208
35,41
零行列
3
零 ベ ク トル
31
195
列 ベ ク トル
31
理解
180
連立 方程 式の表 現
63
利得表
171
ループ
15
累乗
19
リ ニ ア コ ー
ド
わ 行 和
2
〈著者紹介〉
片 桐 重 延 学 職
歴 歴
東京教育大学理学部卒業(1953) 東京都立八潮高等学校教諭 東京都立戸山高等学校教頭 東京都立墨 田川高等学校校長 文部省高等学校学 習指導要領(数 学)同 解説作成協力者 東京都高等学校数学教育研究会会長 日本数学教育学会常任理事 理学博士
室 岡和 彦 学 職
歴 歴
東京教育大学理学 部卒業(1969) 日本無線株式会社 東京都立井草 高等 学校教 諭 お茶 の水女子大 学附属 高等 学校教諭 教育学修士
新 ・数 学 と コ ン ピュ ー タ シ リー ズ4 行 列 と線 形 計 算
1995年8月10日
第1版1刷
発行
著
者
片 桐 重 延 室 岡 和 彦
発行者 学校法人 東 京 電 機 大 学 代 表 者 廣 川 利 男 発 行 所 東 京 電 機 〒101
大 学
出 版
局
東 京 都 千 代 田 区 神 田 錦 町2-2 振 替 口 座 00160-5-71715
印刷 三功印刷(株) 製本 (株)徳住 製本所 装丁 高橋壮一
〓
電 話 (03)5280-3433(営
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(03)5280-3422(編
集)
Katagiri
Shigenobu
Murooka
Kazuhiko
Printed
in Japan
*無 断 で 転 載 す る こ とを 禁 じま す 。 *落 丁 ・乱 丁 本 は お 取 替 え い た しま す 。 ISBN
4-501-52300-X
C3355
R〈日本 複 写 権 セ ンタ ー委 託 出版 物 〉
1995