編集 荒船次郎 東京大学名誉教授
江沢 洋 学習院大学名誉教授
中村孔一 明治大学教授
米沢富美子 慶應義塾大学名誉教授
ま え が き
本 書 は,前 著 『量 子 力 学 の数 学 的構 造Ⅰ,Ⅱ』(朝 倉 物 理 学 大 系 第7巻,8巻)の 続 編 で あ る.そ の 目的 とす る とこ ろ は,前 編 に お い て公 理 論 的 に定 式 化 され た, 量 子 力 学 の 基 本 原 理 に 基 づ い て,量 子 現 象 に関 わ る数 理 を 主 題 別 にや や 詳 し く み て い く こ と に あ る.こ
こ で は,九 つ の 主 題 を選 ん だ.各 章 に一 つ の主 題 を割
り当 て(目 次 を参 照),そ
れ ぞ れ の 章 は,ほ ぼ 独 立 に読 め る よ う に書 い た.し
た
が っ て,読 者 は,自 分 に興 味 の あ る主 題 が 扱 わ れ て い る章 か ら読 む こ と も可 能 で あ る.命 題 や 定 理 の 証 明 は,か
な り丁 寧 に書 い た つ も りで あ る.前 編 で論 じ
られ た 内容 や 数 学 的技 法 を 自 分 の もの と して い る読 者 に とっ て は,本 書 を読 む 上 で 特 に 困 難 は ない はず で あ る. 本 書 に は,邦 書 で は,お そ ら く初 め て 登 場 す る内 容 が 多 く盛 り込 まれ て い る. 特 に,ア ハ ラ ノ フ-ボ ー ム効 果 と照 応 す る,ゲ ー ジ理 論 にお け る正 準 交 換 関 係 の 非 同 値 表 現 の 構成 に 関 す る理 論,量
子 力 学 的 状 態 の 生 き残 り確 率 と関 わ り を も
つ 時 間 作 用 素 の 理 論(い ず れ も第3章),埋
蔵 固 有 値 の摂 動 問 題 の 基 本 的 な例 と
して の フ リー ドリ クス モ デ ル の 詳 しい解 析(第5章),超 章)は,そ
対 称 的 量 子 力 学(第9
れ ぞれ,著 者 自身 の 研 究 テ ーマ の 一部 をな す もの で もあ り,現 在 に お
い て も な お,量 子 力 学 や 量 子 場 の 理 論 の 数 学 的 ない し数 理 物 理 学 的研 究 の前 線 に通 じる もの で あ る.た だ し,本 書 の 性 格 上,そ
の 論 述 は入 門 的 な レ ヴ ェ ル に
と どめ た.ま た,物 理 量 の 自 己共 役 性 の 問題 を詳 し く論 じて い る の も本 書 の特 色 の 一 つ と い え る で あ ろ う(第2章).他
の 主 題 につ い て も,本 書 の 精 神― 座 標
か ら 自 由 な絶 対 的 相 か らの ア プ ロ ー チ― に の っ とっ て,原 理 的・ 普 遍 的 観 点 を 強 調 す る仕 方 で,叙 述 に工 夫 を凝 ら した つ も りで あ る.紙 数 の 都 合 上,量 子 場 の 理 論 に関 す る 章 を設 け る こ とが で き なか っ た の は心 残 りで あ る.こ の 側 面 に
つ い て は 拙 著 『フ ォ ッ ク空 間 と量 子 場 上 下 』(日 本 評 論 社,2000)を
参 照 して い
た だ け れ ば幸 い で あ る. 数 学 的 に厳 密 な 思 考 に よ っ て もた ら され る確 実 で 明晰 な認 識 は,理 念 と現 象 との 調 和 的 ・美 的 照 応 を よ り深 い 次 元 で 観 照 す る こ とを 可 能 に し,宇 宙 の原 像 と して の ロ ゴス,理 の 世 界 の 豊 饒 さ,妙(老
子 的 意 味 で の),繊 細 さ,美 し さ,そ
して,宇 宙 の果 て しな い 深 さ を垣 間 見 させ て くれ る.本 書 が 量 子 現 象 を支 え る 理 の 世 界 の よ り深 い 相,よ
り高 い次 元 へ と読 者 をい ざ な う よす が とな る こ とを
切 に願 う. 本 書 の原 稿 を通 読 され,貴 重 な コ メ ン トを寄 せ られ た 江 沢 洋 先 生 に心 か ら感 謝 した い.ま
た,本 書 の 出版 に際 して,い
ろ い ろ とお 世 話 に な っ た朝 倉 書 店 編
集 部 の 方 々 に も厚 く御 礼 申 し上 げ る.
2006年 新 春
札 幌 の寓居 に て
新
井 朝
雄
目
次
1 物 理 量 の 共 立 性 に関 わ る 数理
1
1.1 は じ め に
1
1.2 単 独 の 物 理 量 に 関 す る 測 定(Ⅰ)―純 点 ス ペ ク トル 的 な物 理 量 の場 合 3 1.3 単 独 の 物 理 量 に 関す る 測 定(Ⅱ)― 一 般 の 場 合
5
1.4 複 数 の 物 理 量 の 測 定 に よ る状 態 の 一 意 的 決 定(Ⅰ)― 純 点 ス ペ ク ト ル 的 な 物 理 量 の組 の 場 合 1.5 複 数 の 物 理 量 の測 定 に よる状 態 の 一 意 的 決 定(Ⅱ)―
16 一般 の 場 合 …21
1.6 代 数 的 な 特 徴 づ け 付 録A ノ
ー
第1章
可 分 な ヒル ベ ル ト空 間 の巡 回 ベ ク トル に よ る直 交 分 解 ト
演 習問題
28 32 35 36
関 連 図 書
37
2 物 理 量 の 自己 共 役 性
38
2.1 は じ め に
38
2.2 小 さ い 摂 動
42
2.3 加 藤-レ リ ッ ヒの 定 理 の 応 用― シ ュ レー デ ィ ン ガ ー 型 作 用 素 の 自 己 共 役 性,原 子 と物 質 の 弱 安 定 性 2.4 必 ず し も小 さ くな い摂 動
52 71
2.5 混 合 型 ポ テ ン シ ャ ル を もつ 場 合
78
2.6 交 換 子 定 理
79
2.7 解 析 ベ ク トル 定 理
85
2.8 準 双 線 形形 式 と 自己 共 役 作 用 素 2.9 形 式 に よ る摂動―KLMN定
理
89 108
2.10 デ ィ ラ ッ ク型作 用 素 の 本 質 的 自己 共 役 性
110
付 録B 作 用 素 の 和 が 閉 で あ る た め の 条件
116
付 録C
閉対 称 作 用 素 の基 本 的 性 質
117
付 録D
閉 対 称 作 用 素 が 自己 共 役 拡 大 を もつ 条 件
付 録E
交 換 子 に関 す る基 本 公 式
122
ト
123
演 習 問題
123
ノ
ー
第2章
119
関 連 図 書
127
3 正 準 交 換 関 係 の 表 現 と物 理
128
3.1 は じ め に
128
3.2 予 備 的 考 察
130
3.3 ヴ ァ イ ル 型 表 現
137
3.4 シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 表 現 の ヴ ァ イ ル 型 性 3.5 ヴ ァ イ ル 型 表 現 の 構 造― 3.6 CCRの
フ ォ ン ・ノ イ マ ン の 一 意 性 定 理
140 142
非 同 値 表 現 と ア ハ ラ ノ フ-ボ ー ム 効 果
154
3.7 弱 ヴ ァ イ ル 型 表 現 3.8 時 間 作 用 素 ノ
ー
第3章
ト
169 174 183
演習問題
関 連 図 書
4 量 子 力 学 に お け る対 称 性
184
185
188
4.1 は じめ に― 対 称 性 と は ど うい う もの か
188
4.2 群
189
4.3 量 子 力 学 に お け る対 称 性 の原 理 的 構 造
197
4.4 一 般 の表 現
213
4.5 物 理 量 の対 称 性
219
4.6 シ ュ レー ディ ン ガ ー型 作 用 素 の 対 称 性
224
4.7 対 称 性 と保 存 則
226
4.8 回転 対 称 性 と軌 道 角 運 動 量 作 用 素 の保 存 4.9 軌 道 角 運 動 量 の 固 有 空 間 に よ る直 和 分 解(Ⅰ)―2次 4.10 軌 道 角 運 動 量 の 固有 空 間 に よ る直 和 分 解(Ⅱ)―3次
227 元 空 間 の 場 合 229 元 空 間 の 場 合 235
4.11 リー代 数 的 構 造 と対 称 性
245
付 録F 位 相 空 間 ノ
ー
第4章
255
ト
257
演習 問題
258
関 連 図 書
259
5 物 理 量 の 摂 動 と固 有 値 の 安 定 性
261
5.1 は じ め に
261
5.2 複 素 変 数 の バ ナ ッハ 空 間値 関 数
263
5.3 閉作 用 素 と冪 等 作 用 素
270
5.4 物 理 量 の 摂 動 の 一 般 的 ク ラ ス― 解 析 的 摂動
279
5.5 応
用
5.6 埋 蔵 固 有 値 の摂 動,共
鳴 極,生
き残 り確 率
5.7 フ リー ドリ ク ス モ デ ル 付 録G
バ ナ ッハ 空 間 の双 対 空 間 とハ ー ン-バ ナ ッハ の定 理
付 録H
あ る2重 積 分 の 計 算
ノ
ー
第5章
ト 演 習問題
関 連 図 書
289
297 304 317 320 321 322 323
6 物 理 量 の ス ペ ク トル
324
6.1 は じ め に
324
6.2 離 散 スペ ク トル と真 性 ス ペ ク トル の特 徴 づ け 6.3 最 小-最 大 原 理
324 329
6.4 コ ン パ ク ト作 用 素 6.5 真 性 ス ペ ク トル の 安 定 性 6.6 シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 型 作 用 素 の 真 性 ス ペ ク トル 6.7 シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 型 ハ ミ ル トニ ア ン の 離 散 ス ペ ク トル ノ
ー
第6章
ト
343 352
354
361 367
演 習 問題
368
関 連 図 書
7 散 乱 理 論
369
370
7.1 は じめ に― 発 見 法 的議 論
370
7.2 数 学 的 準 備―
376
絶対 連 続 ス ペ ク トル と特 異 ス ペ ク トル
7.3 散 乱 理 論 の 一 般 的枠 組 み
390
7.4 波 動 作 用 素 の 存 在 に対 す る判 定 条 件
399
7.5 波 動 作 用 素 の 完 全 性 に対 す る判 定 条 件
402
7.6 散 乱 作 用 素 の 積 分 表 示 と漸 近 展 開
403
ノ
ト
406
演 習問題
406
ー
第7章
関 連 図 書
407
8 虚 数 時 間 と汎 関 数 積 分 の 方 法
409
8.1 は じめ に― 量 子 動 力 学 の 虚 数 時 間 へ の 拡 張
409
8.2 熱 半 群,ス ペ ク トル の 下 限,基 底 状 態
412
8.3 汎 関 数 積 分 お よび確 率 過 程 との接 続― 発 見 法 的議 論
418
8.4 確 率 過 程 の 存 在
430
8.5 ブ ラ ウ ン運 動
434
8.6 フ ァイ ンマ ン-カ ッツ の公 式
440
8.7 基 底 状 態 過 程
445
付 録I 確 率 論 の基 本事 項
450
付 録J
ガ ウ ス型 確 率 過 程
付 録K 確 率 過 程 の連 続 性 に対 す る 判 定 条 件
454 458
ノ
ー
第8章
ト
460
演 習問題
460
関連 図 書
462
9 超 対 称 的量 子 力 学
464
9.1 は じめ に― 超 対 称 性 とは ど うい う も の か
464
9.2 超 空 間,超 場 お よ び超 対 称 性 代 数
465
9.3 公 理 論 的超 対 称 的 量 子 力 学
476
9.4 超 対 称 性 と特 異 摂 動―
499
摂動法の破綻
9.5 ウ ィ ッテ ンモ デ ル
502
9.6 縮 退 した零 エ ネル ギ ー基 底 状 態 を もつ モ デ ル
510
付 録L
トレー ス型 作 用 素
513
付 録M
自己 共 役 作 用 素 の 強 レゾ ル ヴ ェ ン ト収 束
516
付 録N
簡 単 な超 関数 方 程 式 の 解
518
ノ
ト
519
ー
第9章
演習 問題
関 連 図 書 索
引
520 524 527
記 号
表
標準的記号 記号
意 味 自然数 全体 の集 合 整数全 体 の集合 実数全 体 の集 合 複 素 数全体 の集 合 Rのd個
の直 積集 合
Cのd個
の直積 集合
Rdに おけ るd次 元 ボ レル集 合体 Rdの 開集合 Ω 上 のm回
連 続 微分 可能 な 関数 で有界 な台 を
もつ もの の全 体 L2(IRd)上 の フ ー リエ 変換 ほ とん どいた る ところ
若干 の 論理 記号
記号
意 味 AをBで Pな
定義 す る
らばQ
PとQは
同値(Pで
PをQで
定義 す る
あ るため の必 要十分 条件 はQ)
Xの す べ ての元xに 対 して.P(④ が 成立 同上
ヒ ル ベ ル ト空 間 論 に関 わ る 記 号 Aは
ヒ ル ベ ル ト空 間H上
の 線 形 作 用 素 を表 す.DはHの
記号
部 分 集 合 とす る.
意 味 Hの 部分 集合Dの
直交 補空 間
Dの 閉包 Aの 定義 域 ま たは
Aの 値域 Aの レゾ ルヴ ェ ン ト集合 Aの スペ ク トル Aの 点 スペ ク トル(Aの
固有値 の全 体)
Aの 核 Aの 共役 作用 素(D(A)がHで Hの 部 分集 合Dか
稠密 の場合)
ら生成 され る部分 空 間
測度 空 間(X,μ)上 の2乗 可 積分 関数 か ら生成 される ヒルベ ル ト空 間 H全 体 を定義 域 とす る有 界線 形作 用 素全 体の 集合 H全 体 を定義 域 とす る,Hか
らヒルベ ル ト空 間Kへ
線形 作用 素 の全 体 ベ ク トル空 間V全 体 を定 義域 とす る,Vか Wへ
の有 界
らベ ク トル空 間
の線 形 作用 素 の全体
L(V,V) 代 数 的 テ ンソル積 テ ン ソル積 A(閉 作用 素)の 離散 スペ ク トル(Aの,多 有 値 の全体) Aの 真性 スペ ク トル 自己共役 作 用素Aの
ス ペ ク トル測度
重度 有限の孤 立 固
ス ク リプ ト(カ リ グ ラ フ 体)対 応 表 A
A
G
G
M
M
S
S
Y
Y
B
B
H
H
N
N
T
T
Z
Z
U
C
C
I
I
O
O
U
D
D
J
J
P
P
V
V
E
E
K
K
W
F
F
L
L
Q R
W X
X
Q R
ギ リシア文字 Α α
アル フ ァ
Ι ι
Β β
ベー タ
Κ κ
カ ッパ
Γ γ
ガ ンマ
Λ λ
Δ δ
デ ル タ
ラム ダ
Μ μ
ミュー
Ν ν
ニ ュー
Ε ε,ε
イプ シ ロ ン
Ζ ζ
ゼータ
Ξ ξ
Η η
イー タ
Ο ο
Θ θ,θ シ ー タ
イオ タ
グザ イ オ ミクロ ン
Π π,π パ イ
Ρ ρ,ρ ロ ー Σ σ,σ シ グ マ Τ τ Υ υ
タ ウ ウプ シ ロ ン
Φ φ,φ フ ァ イ Χ χ
カイ
Ψ ψ
プサ イ
Ω ω
オメ ガ
1 物 理量 の共立性 に関 わる数理
量 子 力 学 系 にお け る複 数 の物 理 量 の 組(A1,…,AN)は,そ の 中 の ど のAjの 観 測 も 他 の 物 理 量Ak(j≠k)の 観 測 に よ って擾 乱 され る こ とな くで きる場 合,共 立 的 に観 測(測 定)可 能 で あ る とい う.こ の 章 の 目的 は,複 数 の 物 理量 の共 立 的 観 測可 能 性 の根 底 にあ る数 学 的構 造 を見 極 め る こ とで あ る.複 数 の物 理 量 が共 立 的 に観 測 可 能 であ ると き,そ れ らの観 測 が 状 態 を"一 意 的 に"定 め る こ との 数学 的本 質 も明 らか にす る.
1.1
前 著[8]に
お い て,物
物 理 量 の 測 定 で は,量
定)に
252).こ
値 を も つ 状 態"で
あ る が,そ
関 す る 公 理 を 述 べ た 際 に,単
の 意 味 は,粗
い う こ とで あ る.た
くい え ば,物
の 直 後"の
と え ば,ス
は限 ら な 理 量Aの
状 態 は"物
理量
ピ ン を も つ 量 子 的 粒 子1個
子 の 位 置 だ け を測 定 し,あ
ピ ンの 在 り方 に つ い て は 不 明 の ま ま で あ る か ら,そ
状 態 の 重 ね 合 わ せ の 状 態 に あ る).こ
定 さ れ る)と
独の
の よ うな状 態 が た だ 一 つ か ど うか は 一 般
て は 状 態 は 一 意 的 に 指 定 さ れ て い な い(ス
れ ば,ス
に
い う値 が 得 ら れ た と き,"そ
か ら な る 量 子 系 に お い て,粒 も,ス
め
子 力 学 的 状 態 は 一 意 的 に 定 ま る(指
測 定 に よ っ て,a∈IRと
的 に は わ か ら な い,と
じ
理 量 の 観 測(測
い こ と を注 意 して お い た([8]のp.
Aがaの
は
る値 が 得 られ た と して の よ う な測 定 に よっ
ピ ン に つ い て は,異
の 場 合,状
な るス ピ ン固 有
態 を よ り詳 細 に 指 定 し よ う と す
ピ ン の 測 定 も 行 う 必 要 が あ る*1.
測 定 に よ る 状 態 の 一 意 的 決 定 性 の 条 件 を 理 論 的 に探 る こ と は,実
験 的 に は,初
期 状 態 を 設 定 す る こ と― こ れ を 状 態 の 準 備 と い う― ま た は 終 状 態 の 同 定 に と っ て 重 要 で あ る. *1 ス ピ ン に つ い て は ,[8]のp.
272の
脚 注 お よ びp. 424を
参 照.
い ま の例 か ら示 唆 され る よ うに,量 子 系 に関 して,測 定 に よ っ て状 態 を一 意 的 に定 め る た め に は,一 般 には,複 数 の物 理 量 の 組 の観 測 が 必 要 と さ れ る.こ で,"物
理 量A1,…,ANの
理 的 描 像 は,A1,…,ANの
こ
測 定 に よ り状 態 が 一 意 的 に定 ま る"と い う こ との 物 測 定 値 の組(a1,…,aN)(ajはAjの
可能な測定値
の 任 意 の 一 つ)の そ れ ぞ れ にた だ一 つ の状 態 Ψa1,…,aNが 対 応 し,A1,…,AN の 測 定 に よ り,こ れ らの 状 態 の うち の どれ か 一 つ が"選 び 出 され る"こ とで あ る*2.状 態 Ψa1,…,aNに お い て は,A1,A2,…,ANは
そ れ ぞ れ,a1,a2,…,aN
の 値 を もつ.し か し,量 子 力 学 系 にお い て は,物 理 量Aを が 得 られ た と して も,そ の 状 態 で 別 の物 理 量Bを
測 定 し,あ る 測 定 値
測 定 した な らば,Aの
ま っ た く消 えて し ま う とい う事 態 が 起 こ り うる.そ の よ う な場 合 に は,Aの
情 報は
Bの
値と
値 の 両 方 が と もに 定 まっ て い る状 態 は指 定 され え な い.し た が っ て,こ の
よ う な物 理 量 の 組(A, B)を 状 態 の 指 定 に使 う こ と は で きな い.い
ま言 及 した,
量 子 力 学 特 有 の 現 象 形式 を考慮 す る と き,状 態 を指 定 す るた め の 複 数 の物 理 量 の 観 測 が 意 味 を もち う るの は,こ れ らの 物 理 量 の観 測 にお い て,そ の 物 理 量 の 測 定 に よっ て得 られ た情 報 が そ の ま ま保 持 され,同
の 中 の任 意
じ組 に属 す る 他
の 任 意 の物 理 量 の測 定 が可 能 で あ る よ うな 場 合 に 限 られ る.こ の よ う な測 定 は 共 立 的 で あ る(compatible)と
い い,共 立 的 測 定 が で き る物 理 量 の 組 を共 立 的 な
物 理 量 ま た は共 立 的 な観 測 量 と呼 ぶ(例:量
子 的粒 子 の位 置 作 用 素 とス ピ ン作 用
素 の 一 つ の 成 分 の 組*3). と こ ろ で,非 可 換 な物 理 量 の 組 に 関 して は,一 般 化 され たハ イ ゼ ンベ ル クの 不 確 定 性 関 係([8]の 定 理3.5)が
適 用 され る の で,そ の よ う な物 理 量 の 組 は 共 立
的 で は あ りえ な い.し た が って,物 理 量 の 組 が 共 立 的 で あ る た め に は,そ れ が 可換 な物 理 量 の組 で あ る こ とが 必 要 で あ る.だ が,こ れ は 十 分 条件 で は な い*4. この 章 で は,ま ず,測 定 に よ る状 態 の 一 意 的 決 定 性 の 問 題 を単 独 の物 理 量 に
*2 ajの 少 な くと も一 つ がAjの
連 続 スペ ク トル に属す る場 合 に は ,こ の い い方 は 正確 で は
な い.だ が,さ しあ た り,こ の粗 い 物 理 的描 像 か ら出 発 す る こ とは物 理 的 には 自然 で あ る. *3 本 書 で は ,「 演 算子 」 とい うか わ りに 「 作 用 素 」 とい う呼 び方 をす る. *4 詳 し くは ,1.4.1項 の 定 理1.13を 参照.物 理 の教 科 書 で は,可 換 性 の 条 件 だけ で事 足 れ りと してい る ものが 多 くみ られ るが,こ れが 有 効 なの は 有界 な 自己 共役 作 用 素 で表 され る物 理 量 の 場 合 だ けで あ る.
つ い て 論 じ,そ
の 根 底 に あ る 数 学 的 構 造 を 明 ら か に す る.次
に複 数 の 物 理 量 の
組 の 共 立 性 と そ れ ら の 観 測 に よ る 状 態 の 一 意 的 決 定 性 の 問 題 を 考 察 す る.
1.2
単 独 の 物 理 量 に 関 す る 測 定(Ⅰ)―
単 独 の 物 理 量 の う ち で も,扱 "本 質 的 に"固
純 点 ス ペ ク トル 的 な 物 理 量 の 場 合
い や す い の は,い
う ま で も な く,ス
有 値 だ けか らな る 物 理 量 の 場 合 で あ る
.そ
こ で,ま
ペ ク トル が
ず,そ
の よう
な 自 己 共 役 作 用 素 の ク ラ ス を 定 義 す る:
定 義1.1
Tを
ヒ ル ベ ル ト空 間H上
ク トル か ら な る,Hの
の 自 己 共 役 作 用 素 と す る.Tが
完 全 正 規 直 交 系(CONS)を
も つ と き,Tは
そ の 固有 ベ 純 点 スペ ク ト
ル 的 で あ る と い う.
線 形 作 用 素Tの σ(T), σp(T)で
ス ペ ク トル と 点 ス ペ ク トル(Tの
命 題1.2
自 己 共 役 作 用 素Tが
証 明 dim
H<∞
を考 え る.σ(T)⊃ と し よ う.こ
固 有 値 の 全 体)を
純 点 ス ペ ク トル 的 な ら ば σ(T)=σp(T)で
の 場 合 に は,題 σp(T)は
意 は 自 明 で あ る.そ
こ で,dim
H=∞
の と き,単 位 ベ ク トル の 列
あ る.
の場 合
明 らか で あ る か ら,逆 の 包 含 関 係 を示 す.λ
と な る も の が 存 在 す る*5.仮
∈ σ(T)
で
定 に よ り,
で
と な る も の が あ る
で あ り, が 成 り立 つ.し し た が っ て,も
た が っ て, し,
な
ら ば,
だ が,こ
れ は(*)に λnk→
そ れ ぞ れ,
表 す.
矛 盾 す る.し
λ(k→∞)を
*5 [7]のp.
141
,定
た が っ て,C=0.こ
意 味 す る.ゆ
理2.40-(ⅳ).
え に,λ
れ は,部 ∈ σp(T).
分 列{λnk}kが
あ っ て, ■
注 意1.1
命 題1.2は,純
点 スペ ク トル 的 な 自己 共役 作 用 素 の スペ ク トル は,固
有 値 だ け で な く,固 有 値 の 集 合 の集 積 点― そ れ が存 在 す る な らば― も含 む こ と を語 る.こ の点 は 留 意 さ れ た い. Aを
ヒ ル ベ ル ト空 間H(状
(物理 量)と
態 空 間)上 の 純 点 ス ペ ク トル 的 な 自己 共 役 作 用 素
し
(1.1) とす る(m≠nな
ら ば λm≠
λnと す る).こ
の とき
(1.2) と直 和 分 解 で きる([7]の2章,2.9.5項 を 測 定 して,値λnを
を参 照).量
得 た とす れ ば,ker(A-λn)に
た こ と に な る([8]の3章,公
理QM3-(ⅲ)).こ
子 力 学 の公 理 に よれ ば,A 属 す る状態 が指定 され
れ が 一 意 的 で あ る た め に は,
dim ker(A-λn)=1で
な け れ ば な らな い.逆
に,す べ て のn∈INに
dim ker(A-λn)=1な
ら ば,明
任 意 の 測 定 は状 態 を一 意 的 に指
定 す る.こ
らか に,Aの
対 して,
う して,純 点 スペ ク トル 的 な物 理 量 の場 合 に は,そ の す べ て の 固 有
値 の 多 重 度 が1,す
な わ ち,単 純 で あ る こ と が,こ の物 理 量 の測 定 に よ っ て状 態
が 一 意 的 に 指 定 され る た めの 必 要 十 分 条 件 で あ る こ とが わ か る. こ の 条 件 が 連 続 ス ペ ク トル を もつ 物 理 量 の 場 合 に どの よ うな形 を と るか を探 る た め に,す べ て の 固有 値 が単 純 で あ る純 点 ス ペ ク トル 的 自己 共 役 作 用 素 の 特 徴 づ け を固 有 値 に 言 及 しな い仕 方 で行 う こ と を考 え る.一 般 に,自 己 共 役 作 用 素 の 特 性 は 同伴 す る ス ペ ク トル測 度 に よっ て決 定 され る こ と を想 起 す るな らば, ス ペ ク トル 測 度 を用 い て,そ の 特 徴 づ け を試 み る の は 自然 で あ る. Aを 純 点 ス ペ ク トル的 自己 共役 作 用 素 と し,そ の 点 ス ペ ク トル は(1.1)で 与 え られ る とす る.さ
ら に,固 有 値λnは す べ て 単 純 で あ る と し,そ の規 格 化 さ れ た
固 有 ベ ク トル の 一 つ を Ψnと す る: .EAに で は,
よ っ てAの
はHのCONSを
ス ペ ク トル測 度 を表 す.い な す か ら,任 意 の Ψ ∈Hは
まの仮 定 の も と
と 展 開 で き る.λn≠λk, 理3.12,
[7]のp.
171,命
n≠kよ
り, ([2]のp. 126
,定
題2.54). で
を満 た
す もの を任 意 に一 つ選 び
(1.3) と お く([7]の
補 題1.16に
よ っ て,右 辺 は 収 束 す る) .こ
の と き,
ゆ えに
と 表 さ れ る. IRの
区 間 全 体 の 集 合 をJ1と
記 す:
(1.4) こ れ を 用 い る と,上 に導 い た事 実 は
(1.5) を 意 味 す る.こ
こ で,ベ
れ る 部 分 空 間 を 表 し,部
1.3
ク ト ル の 集 合Dに 分 集 合F⊂Hに
対 し て,L(D)はDに 対 し て,FはFの
単 独 の 物 理 量 に 関 す る測 定(Ⅱ)―
よっ て 生 成 さ 閉包 を表 す .
一般 の場 合
1.3.1 単 純 ス ペ ク トル を もつ 自 己 共 役 作 用 素 前 節 の 予 備 的 考 察 に基 づ い て,あ ベ ル ト空 間 で あ る とす る . 定 義1.3
AをH上
る 数 学 的 概 念 を導 入 す る.以 下,Hは
の 自 己 共 役 作 用 素 とす る.零
ヒル
で な い ベ ク トル Ψ0が 存 在
して
(1.6)
が 成 り立 つ と き(す Aの
な わ ち,
がHで
ス ペ ク トル は 単 純 で あ る,あ
こ の 場 合,Ψ0をAに 例1.1
る い は,Aは
稠 密 で あ る と き),
単 純 ス ペ ク トル を も つ,と
関 す る 生 成 元(generating
element)と
い う.
い う*6.
前 節 の 議 論 に よ っ て,す べ て の 固 有 値 が 単 純 で あ る 純 点 ス ペ ク トル的 自己 共
役 作 用 素 は単 純 ス ペ ク トル を もつ. 上 の 定 義 は,Aが 点 が"縮
連 続 ス ペ ク トル を も つ 場 合 で も,Aの
退 し て い な い"こ
ス ペ ク トル の 任 意 の
と の 一 つ の 定 義 を 与 え る も の で あ る.だ
が,こ
の解釈
が 意 味 を も つ た め に は 次 の 事 実 を 確 認 して お か な け れ ば な ら な い*7.
命 題1.4
Aを
と仮 定 す る.こ な わ ち,aは
単 純 ス ペ ク トル を もつ,H上 の と き,Aの
の 自己 共 役 作 用 素 と し,σp(A)≠0
任 意 の 固 有 値a∈
σp(A)の
多 重 度 は1で
あ る(す
単 純 固 有 値).
証 明 Ψ0をAに
関 す る 生 成 元 と す る.Aの
ス ペ ク トル の 単 純 性 に よ り, はHで
を 思 い だ そ う([7]のp.
171,命
稠 密 で あ る.
題2.54-(ⅱ)).仮
に,aの
多重度が
2以 上 で あ る とす れ ば, で も の が あ る.
で あ る か ら,任
て, Dの
とな る
し た がっ て,φ 稠 密 性 に 矛 盾 す る.し
た が っ て,aの
意 のJ∈J1,
∈D⊥.
φ ≠0で
多 重 度 は1で
に対 し あ っ た か ら,こ
れは
な け れ ば な ら な い. ■
自 己 共 役 作 用 素 の ス ペ ク トル の 単 純 性 は ユ ニ タ リ 不 変 な 性 質 で あ る: 命 題1.5 AをH上
H, Kを
ヒ ル ベ ル ト空 間 と し,W:H→Kを
の 自 己 共 役 作 用 素 と し,そ
き,B:=WAW-1の
ユ ニ タ リ 変 換 と す る.
の ス ペ ク トル は 単 純 で あ る とす る.こ
ス ペ ク トル も単 純 で あ る.
証 明 作 用 素 解 析 に よ り,EB(J)=WEA(J)W-1, J∈B1(B1は1次 ル 集 合 体).し
の と
た が っ て,Aに
関 す る 生 成 元 を Ψ0と
元ボ レ し,Φ0=WΨ0と
お け ば,
*6 この よ うな元 は 一つ とは 限 らな い . *7 これ は ,自 己共 役 作 用 素Aの スペ ク トルが 固 有値 だけ か らな る場 合 に,例1.1の 逆,す な わち,Aが 単純 スペ ク トル を もつ な らば,固 有値 はすべ て単 純 で あ る,と い う事実 を 包 摂 す る命 題 で あ る.
Φ0はBに
関 す る 生 成 元 に な る(∵ ユ ニ タ リ変 換 は稠 密 な部 分 空 間 を稠 密 な 部
分 空 間 に う つ す).
■
以下,し ば しば,d次 元 座 標 空 間IRdの 一般 元(座 標 変 数)をx=(x1,…,xn)∈ IRdと
表 す と き,IRd=IRdxと
記 す.
次 の 定 理 は 基 本的 で あ る(B1は1次 定 理1.6 B1に
μ を 可 測 空 間(IR,
対 し て,
L2(IRλ,dμ)上 の と き,λ
元 ボ レ ル 集 合 体 を 表 す).
B1)上
の 測 度 で,任
意 の 有 界 な ボ レ ル 集 合B∈
を 満 た す も の とす る*8.座
標 変 数 λ ∈IRλ
に よ る,
の か け 算 作 用 素 を λ と す る(こ れ は 自 己 共 役 作 用 素 に な る*9).こ
の ス ペ ク トル は 単 純 で あ る.
証 明 証 明 を 通 して,単
にIRλ=IRと
記 す.自
己 共 役 作 用 素 λ の ス ペ ク トル
測度 は
(1.7) で 与 え ら れ る(右 辺 は,Jの に 対 し て,IR上
定 義 関 数xJに
よ る か け 算 作 用 素)*10.任
の 関 数 ψ0を ψ0(λ):=e-a2λ2,
λ ∈IRに
の 連 続 関 数 で 有 界 な 台 を も つ も の の 全 体C0(IR)はL2(IR, 所 有 界 な ボ レ ル 測 度 は 正 則 で あ る こ と を 使 う).任 fψ-10∈C0(IR)で の 階 段 関 数(リ れ と,ψ0の
味 で 近 似 で き る こ と が わ か る.ゆ
例1.2
よ っ て 定 義 す る.IR上 dμ)で 稠 密 で あ る(局
意 のf∈C0(IR)に
あ る か ら,fψ-10は ー マ ン近 似 和)に
っ て,λ
L2(IRx)上
対 し て, と い う形
よ っ てL2(IR,
有 界 性 を 使 え ば,fは
稠 密 で あ る.よ
意 のa>0
dμ)収 束 の 意 味 で 近 似 で き る.こ に よ っ てL2(IR, dμ)収
え に
束の意
はL2(IR, dμ)で
の ス ペ ク トル は 単 純 で あ る.
の 座 標 変 数x∈IRxに
■
よ る か け算 作 用 素x―
量 子 力 学 的 に は位 置
作 用 素― の ス ペ ク トル は 単 純 で あ る.
*8 こ の よ う な 測 度 をIR上 *9 [7]のp. *10 [2]の
136
の 局 所 有 界 な 測 度(locally
bounded
measure)と
いう
.
,例2.13.
p. 123,例3.6,[7]のp. ス ト ー ン の 公 式([8], p. 266)を
168,例2.18.μ 用 い れ ば,よ
が ル ベ ー グ 測 度dλ り容 易 に 証 明 で き る.
で な い 場 合 も 同 様.
例1.3
L2(IRx)上
作 用 素;h=1の
の 運 動 量 作 用 素p:=-iDx(Dxはxに
関 す る 一 般 化 さ れ た微 分
単 位 系)を 考 え る.F1:L2(IRx)→L2(IRk)を1次
換 とす れ ば,
が 成 り立 つ.し
元 の フ ー リエ 変
た が っ て,前 例 と命 題1.5に
よ っ て,pの
ス ペ ク トル は単 純 で あ る.
1.3.2 定 義1.3と 定 義1.7
巡 回 ベ ク トル 関 連 す る 概 念 を 導 入 し て お く. (ⅰ) H上
の 線 形 作 用 素Tに
対 して
(1.8) をTのC∞-定
義 域 と い う*11.
零 で な い ベ ク トル Ψ0∈C∞(T)に 稠 密 な と き,Ψ0をTの
つ い て,
巡 回 ベ ク トル(cyclic
がHで vector)と
い う.こ
の 場 合,Tは
巡 回 ベ ク トル を も つ と い う*12. (ⅱ) T:={Tα}α
∈Λ(Λ は 添 え 字 集 合)をH上
で な い ベ ク ト ル な と き,Φ0をTに Φ0を
の 線 形 作 用 素 の 集 合 と す る.零
が あ っ て,
がHで
対 す る 巡 回 ベ ク トル と い う.こ
の 場 合,Tは
稠密
巡 回 ベ ク トル
も つ と い う.
い ま 定 義 し た 概 念 を 用 い る と,自 こ と は,ス
己 共 役 作 用 素Aの
ス ペ ク トル が 単 純 で あ る
ペ ク トル 測 度 か ら つ く ら れ る 作 用 素 の 集 合
ベ ク トル を もつ こ とで あ る と言 い 換 え ら れ る.ま る 生 成 元 で あ る こ と と
た,あ
が巡 回 る ベ ク トル がAに
関す
に 対 す る 巡 回 ベ ク トル で あ る こ と は 同
じ こ と に な る.
1.3.3 単 純 ス ペ ク トル を も つ 自 己 共 役 作 用 素 の対 角化 ヒル ベ ル ト空 間H上 意 を 調 べ よ う.AをH上 *11 こ れ は
の 自 己 共 役 作 用 素 の スペ ク トル が 単 純 で あ る こ と の 含 の 自 己 共 役 作 用 素 とす る.任 意 の Ψ ∈Hに
,Tを 何 回 で も 作 用 で き る ベ ク トル の 集 合 で あ り,部 密 と は 限 ら な い(Tに 依 存 す る). *12 Tの 巡 回 ベ ク トル は 一 つ と は 限 ら な い .
分 空 間 で あ る.た
対 して, だ し,稠
μAΨ:B1→[0,∞)を
(1.9) に よ って 定 義 す れ ば,こ れ は可 測 空 間(IR, B1)上 の有 界 測 度 で あ る*13. 自己 共 役 作 用 素Aの
ス ペ ク トル が 単 純 で あ る場 合 には,次 の 定 理 の 意 味 でA
は 対 角 化 され る: 定 理1.8
AをH上
る.Ψ0をAに
の 自己 共 役 作 用 素 と し,Aの
スペ ク トル は単 純 で あ る とす
関 す る 生 成 元 とす る.こ の と き,次 の性 質 を もつ ユ ニ タ リ作 用
素
が 存 在 す る:
(ⅰ) UΨ0=1. (ⅱ) 作 用 素 の等 式
(1.10) が 成 り立 つ.た
だ し,右
辺 はL2(IR, dμAΨ0)に
お い て 座 標 変 数 λ ∈IRに
よ るか
け 算 作 用 素 を 表 す.
(ⅲ) 任 意 の Ψ ∈Hに
対 して,ボ
レル 可 測 関 数
がただ 一
つあ って
(1.11) と 表 さ れ る. (ⅳ) 任 意 の ボ レ ル 集 合J∈B1に
対 して
(1.12) 証 明 証 明 を 通 し て,μ:=μAΨ0と 素 解 析 に よ り,Ψ0∈D(f(A))で し た が っ て,写 Vは はHの
お く.任
意 のf∈L2(IR, dμ)に
あ り,
像V:L2(IR,
dμ)→HをVf:=f(A)Ψ0に
*13 [7]のp.
194∼p.
195を
意 のJ∈J1に
参照
.
用
が 成 り立 つ.
線 形 な 等 長 作 用 素 で あ る. 部 分 空 間 で あ る.任
対 し て,作
よ っ て 定 義 す れ ば, と お け ば,M
対 し て,xJ∈L2(IR,
dμ)で あ る か ら,
こ れ とAの で 稠 密 で あ る.部 H(n→∞)と
分 空 間Mが
し よ う.こ
在 す る.Vの
ス ペ ク ト ル の 単 純 性 に よ り,MはH
閉 で あ る こ と を 示 す た め に,Ψn∈M,
の と き,Ψn=fn(A)Ψ0と
基 本 列 で あ る.ゆ
と な るf∈L2(IR,dμ)が を 意 味 す る.し 上 か ら,M=Hが
で あ る.U:=V-1と
dμ)が 存
存 在 す る.こ
結 論 さ れ る.よ す れ ば,こ
閉であ ユニ タリ
れ が 求 め る も の で あ る こ と を 次 に 証 明 する.
対 して,
し た が っ て,作 あ り,Vλf=Af(A)Ψ0=AVfが
れ は λ ⊂V-1AVを
作 用 素 の 等 式 λ=V-1AVが
(ⅳ) (1.12)の
え にMは
っ て,V:L2(IR, dμ)→Hは
用 素 解 析 に よ り,Vf=f(A)Ψ0∈D(A)で
(ⅲ) 任 意 の Ψ ∈Hに
れ は
あ る か ら,UΨ0=1.
(ⅱ) 任 意 のf∈D(λ)に
成 り立 つ.こ
え に,
た が っ て,Ψ=f(A)Ψ0∈M.ゆ
(ⅰ) 明 ら か に,V1=Ψ0で
意 味 す る.両 得 ら れ る.こ
対 して,fΨ=UΨ
右 辺 の 集 合 をMJと
辺 と も に 自 己 共 役 で あ る か ら,
れ は(1.10)と
同 値 で あ る.
と す れ ば よ い.
す れ ば,任 意 のf∈MJに
で あ る か ら,
対 し てL,xJf=f
し た が っ て,f(A)Ψ0∈R(EA(J)).
ゆ え に,VMJ⊂R(EA(J)).逆
に,任
と書 け る(Φ
∈H).Φ=g(A)Ψ0(g∈L2(IR,
xJg∈MJで
あ る か ら,Ψ
(1.12)が
な るfn∈L2(IR,
意 の Ψ ∈R(EA(J))は,Ψ=EA(J)Φ dμ))と
∈VMJ.よ
す れ ば Ψ=V(xJg).
っ て,VMJ=R(EA(J)),す
な わ ち,
成 り立 つ.
1.3.4
Ψ ∈
等 長 性 に よ り,
し た が っ て,{fn}nはL2(IR,dμ)の
る.以
Ψn→
物 理 的 含 意―
定 理1.8と
定 理1.6に
■
測 定 に よ る状 態 の 一 意 的 指 定 よ っ て,ス
て 表 さ れ る 物 理 量 に つ い て は,Aの
ペ ク トル が 単 純 な 自 己 共 役 作 用 素Aに
測 定 に よ る 状 態 の 一 意的 指 定 に 関 す る 問 題
に 対 して,次
に 述 べ る 意 味 で 肯 定 的 な 答 が 得 ら れ る.Ψ0をAに
と し よ う.ヒ
ル ベ ル ト空 間
台suppμAΨ0は
σ(A)に
含 ま れ る)は,Aの
ス ペ ク トル の 測 定 と い う 描 像 と 結 び
こ で,測
空 間(spectral
れ と対 応 し て,任
呼 ぶ.こ
関す る生 成 元 (∵ 測 度 μAΨ0の
つ い た 状 態 空間 と 解 釈 さ れ る.そ space)と
よっ
度 空 間(IRλ, μAΨ0)をAの 意 の 状 態 Ψ ∈Hに
ス ペ ク トル 対 して 一
意 的 に定 ま る,ス ペ ク トル 空 間 上 の状 態 関 数fΨ は,状 態 Ψ にお い て 物 理 量A を測 定 した と き に得 られ る情 報 の(ス ペ ク トル空 間上 で の)担 い 手 で あ る と解 釈 され る.い ま の場 合,Aは 理2.27-(ⅰ)(p.127)に
か け算 作 用 素 λに ユ ニ タ リ同 値 で あ るの で,[7]の 定
よっ て
(1.13) が 成 り立 つ こ と に も 注 意 し よ う.
さて,物 理 量Aの
測 定 に よ っ て,Aの
測定値が区 間
(1.14) (ε>0は
十 分 小)の
中 に あ る こ と が 知 ら れ た と し よ う.た
す る.し
た が っ て,(1.13)に
だ し,λ0∈
σ(A)と
よ っ て,
(1.15) 観 測 の 公 理 に よ り,測 定 に よ っ て 指 定 さ れ た 状 態 はR(EA(〓 い ま,そ
の よ う な 元 の 任 意 の 一 つ を Φε ≠0と
トル 空 間 上 の 状 態 関 数 は 定 理1.8-(ⅲ)に る.さ
ら に,定
理1.8-(ⅳ)に
こ れ か ら,ε ↓0と
す る こ と は,ス
方,ε
よ っ てfΦ ε∈L2(IR,dμAΨ0)で
ペ ク
与 え られ
ペ ク トル 空 間 上 の 状 態 関 数 の 台 が ど ん ど ん 狭
態fΦ ε の 決 定 の 精 度 が あ が る こ と に 対 応 す る と
↓0と い う過 程 は,測
測 定 の 精 度 を あ げ る こ と に 対 応 す る.こ 一 意 的 に 指 定 す る と解 釈 さ れ る 特 殊 な 場 合 と し て,も
れ に 対 応 す る,ス
よ って
く な る と い う 意 味 に お い て,状 解 釈 さ れ る.他
し よ う.こ
ε))の 元 で 表 さ れ る.
定 の 観 点 か ら は,Aの
の 意 味 に お い て,Aの
ス ペ ク トル の 測 定 は,状
態 を
.
し,λ0がAの
固 有 値 で λ0の 十 分 小 さ い 近 傍 に は,λ0
以 外 にAの
ス ペ ク トル が な い と す れ ば― こ の よ う な 固 有 値 を 孤 立 固 有 値 と い
う*14―,十
分 小 さ な ε に対 し て,Φ ε は λ0の 固 有 ベ ク トル に な る.実
*14 一 般 に
際,い
,ヒ ル ベ ル ト空 間 上 の 線 形 作 用 素Tの 固 有 値 λ に つ い て,あ る δ>0が あっ て,σ(T)∩(λ-δ,λ+δ)={λ}が 成 り立 つ と き,λ はTの 孤 立 固 有 値(isolated
eigenvalue)で
あ る と い う.
ま の 条 件 の も と で は,十
分 小 さ な任 意 の ε>0に
対 し て,EA(〓
と な る か ら,
で あ り,最
に 属 す る 固 有 ベ ク トル で あ る([7]のp.171,命
題2.54-(ⅱ)).他
よ っ て,λ0の の 場 合,量
固 有 ベ ク トル は 定 数 倍 を 除 いて一意
子 力 学 的 状 態 が 一 意 的 に 定 ま る.こ
ペ ク トル 空 間 上 で の 状 態 関 数fΦ
ε)=EA({λ0})
右 辺 はAの
的 で あ る.し
固 有 値 λ0
方,命
題1.4に
た が っ て,い
ま
の 固 有 ベ ク トル に 対 応 す る,ス
ε(λ)は
(1.16) に よっ て 定 義 さ れ る 関 数 η0の 零 で な い定 数倍 で 与 え られ る*15. Aの ス ペ ク トル σ(A)の 点 λ0がAの
孤 立 固 有 値 とは 限 らな い 場 合 に も,上
述 の解 釈 を支 持 す る,も っ と精 密 な議 論 を展 開す る こ とが 可 能 で あ る(演 習 問題 2を 参 照). こ う して,量 子 力 学 にお い て は,単 純 スペ ク トル を もつ 自己 共 役 作 用 素 に よっ て表 され る 物 理 量 が よ り基 本 的 な 対 象 で あ る こ とが知 られ る.そ
こで,そ
のよ
う な物 理 量 に 名 前 を つ け て お く: 定 義1.9
量 子 力 学 の コ ン テ ク ス ト に お い て,ス
ペ ク トル が 単 純 で あ る 自 己 共
役 作 用 素 に よ っ て 表 さ れ る 物 理 量 を 極 大 観 測 量(maximal
observable)ま
たは
極 大 物 理 量 と 呼 ぶ.
以 下,量
子 力 学 の コ ン テ ク ス トで な い 場 合 で も,語
の 使 い 方 を拡 張 し て,極
大 観 測 量 ま た は 極 大 物 理 量 と い う 言 葉 を 使 う こ と に す る. 例1.4
例1.2に
よ っ て,L2(IRx)上
の 位 置 作 用 素xは
例1.5
例1.3に
よ っ て,L2(IRx)上
の 運 動 量 作 用 素pは
あ る 対 比 的 な 意 味 に お い て.極
極 大 観 測 量 で あ る. 極 大 観 測 量 で あ る.
大 観 測 量 に な ら な い 基 本 的 な物 理 量 の 一 般 的
ク ラ ス の 一 つ を あ げ て お こ う: *15 関 数 η 0は,も ち ろ ん,ル ベ ー グ 測 度 に 関 し て はa.e. L2(IR)の 元 と して は0で あ る.だ が,μAΨ0({λ0})≠0で に 関 し て はa.e.零 な い.
に は な ら な い.し
0で
あ る.し た が っ て,η0は あ る か ら,η0は,測 度 μAΨ0
た が っ て,L2(IR,dμAΨ0)の
元 と して は η0は0で
命 題1.10
H, Kを
可 分 な ヒ ル ベ ル ト空 間 と し,dim
の 共 役 子 と し,H上
K〓2と
す る.CをH上
の 自 己 共 役 作 用 素AはEA(J)C=CEA(J),∀J∈J1…(*)
を 満 た す も の と す る*16.こ
の と き,A
証 明 同 型 定 理([7,p.80,定
Iは 極 大 観 測 量 で は な い.
理1.41])に
よ り,K=CN(N<∞)ま
はK=l2と
し て 一 般 性 を 失 わ な い.K=CNの
る(K=l2の
場 合 に つ い て も 同 様).こ
た
場 合 につ い て の み 証 明 す
の 場 合,
で あ る.
同 型 対 応 は
であ る
((ej)Nj=1はCNの
標 準 基 底*17).こ
義 さ れ た 閉 作 用 素Tに
対 し て,T
の 同 型 の も と で,H上 Iは
素 の 直 和 に つ い て は,[8]の4章,4.3.2項 ま,仮
に,A
Iに
と す る.こ 空 間 は NHで
ユ ニ タ リ 同 値 で あ る(作
を 参 照),以
下,
関 す る 生 成 元 が あ っ た と して,こ
れ を
の と き,(EA(J)Ψ(j)0)Nj=1,J∈J1に 稠 密 で あ る.し
た が っ て,す
Ψ(j)0≠0.そ
こ で,べクト
る(N〓2で
あ る こ と が こ こ に き く):
N〓3の
NTと
の 任 意 の 稠 密 に定
考 え る.い
よ っ て 生 成 され る 部 分
べ て のj=1,…,Nに
ル
場 合 に は,Φ(j)0=0,j〓3と
NHで
用
対 し て,
を次 の よ う に定 義 す
す る.共
役 子 の 性 質 と(*)を
使 う
一 方,明
らか
と で あ る の で, に,Φ0≠0.ゆ に な り,こ
え に,
は NHで
れ は 矛 盾 で あ る.よ
こ の 命 題 は,そ ル 積 拡 大A
っ て,A
Iに 関 す る 生 成 元 は 存 在 し な い. ■
の ス ペ ク トル 測 度 が 共 役 子 と 可 換 な 物 理 量Aの
I(た
だ し,dim
得 な い こ と を 示 す.こ
K〓2と
稠 密 で ない こ と
す る)は,単
独 で は,極
自然 な テ ン ソ 大 観 測 量 にな り
れ は 多 体 系 の 物 理 量 を考 察 す る と き に 基 礎 と な る重 要 な
事 実 の ひ と つ で あ る. 例1.6
1次 元 空 間IRの
は,CCR(正
*16 共 役 子 に つ い て は *17 e j:=(0,…,0,
中 に存 在 す る,ス
ピ ン1/2の
粒 子 の 状 態 の ヒ ルベ ル ト空 間
準 交 換 関 係)の シ ュ レー デ ィン ガ ー 表 現 に お い て はL2(IRx) ,[8]の4章,4.4.1項
j 番目 1,0,…,0)∈CN.
を 参 照.
L2(IRx)=
L2(IRx;C2)に
とれ る.X=x
xと お く.こ の 作 用 素 は 自己 共 役 で あ り,物 理 的 に
は,こ の 系 に お け る粒 子 の 位 置 作 用 素 を表 す*18.CをL2(IRx)上
の 複 素 共 役 子 とす る:
で あ る か ら,CEx(J)=Ex(J)C.
し た が っ て,命
題1.10を
1.1節 の 冒 頭 で,単
応 用 す れ ば,Xは
極 大 観 測 量 で は な い こ とが 結 論 さ れ る.
独 の 物 理 量 だ け の 測 定 で は,状 態 を 一 意 的 に 定 め る こ とが で き な
い こ と を示 す 例 と して ス ピ ン系 に つ い て ふ れ た.い
まの 例 は その 数 学 的 構 造 を 明 ら か
に す る も の で あ る. 例1.7
d〓2と
す る.こ
の と き,L2(IRd)に
お け る,j番
目の 位 置 作 用 素xj(座
変 数xjに
よ る か け 算 作 用 素;j=1,…,d)お
変 数xjに
関 す る 一 般 化 さ れ た 偏 微 分 作 用 素)は 極 大 観 測 量 で は な い.
証 明 L2(IRd)はL2(IRxj) こ の 場 合,xjはxj
L2(IRd-1)と
同 一 視 で き る([8]の4章,4.1節
Iと 同 一 視 さ れ る.し
上 の 自 己 共 役 作 用 素xjは
た が っ て,命
題1.10に
が,こ
を 参 照).
よ っ て,L2(IRd)
極 大 観 測 量 で は な い.
Fd:L2(IRdx)→L2(IRdk)をd次 元 の フ ー リ エ 変 換 と す れ ば, た が っ て,も し,pjが 極 大 観 測 量 で あ れ ば,命 題1.5に よ り,kjも る.だ
標
よ び運 動 量 作 用 素pj:=-iDj(Djは
れ は 前 段 の 結 果 に矛 盾 す る.ゆ
え に,pjも
し 極大観 測 量 であ
極 大 観 測 量 で は な い.
■
1.3.5 極 大 観 測 量 の別 の 特 徴 づ け 定 理1.11
ヒル ベ ル ト空 間H上
の 必 要 十 分 条 件 は,Aが
証 明 (必 要 性)Aが
の 自 己共 役 作 用 素Aが
巡 回ベ ク トル を もつ こ とで あ る.
極 大 観 測 量 で あ れ ば,定 理1.8に
と ユ ニ タ リ 変 換U:H→L2(IR,dμ)が 1.6の 証 明 で み た よ う に,関 成 元 で あ る.μ
がL2(IR,dμ)で
の有 界 測 度 μ
が 成 り 立 つ.定
数 ψ0(λ)=e-a2λ2(a>0は
定 数)は
理
λに関する生
⊂∞(λ)で あ る こ と が わ か る.し
た
お け ば,
稠 密 で あ る こ と を示 そ う(こ の と き,
Hで 稠 密 に な る の で,Φ0はAの n∈{0}∪INに
よ っ て,IR上
あ っ て,UAU-1=λ
は 有 界 測 度 で あ る か ら,ψ0∈
が っ て,Φ0:=U-1ψ0と
極 大 観 測量 で あ るた め
巡 回 ベ ク トル で あ る).f∈D⊥
対 し て,
と し て,
*18 自 然 な 同 型L2(IRx;C2)〓L2(IRx)
は と す れ ば,任 意 の
し た が っ て,t∈IRを と お け ば,∫IRgNV(λ)ψ0(λ)f(λ)dμ(λ)=0.
C2に
おい て
,Xはx
Iに
対 応 す る.
任意
limN→
∞gN(λ)=eitλ,λ
(CtはN,λ
∈IRで
あ り
に 依 ら な い 定 数).μ
が 有 界 測 度 な の で│f│∈L1(IR,dμ)で
積 分 に 関 す る シ ュ ヴ ァ ル ツ の 不 等 式).し て
た が っ て,ル ベ ー グ の 優 収 束 定 理 に よ っ
が 導 か れ る.Imz<0を
に と り,両
辺 にe-itzを
序 交 換 に 対 し て,フ
か け,tに
あ る(∵
つ い て,0か
満 た すz∈Cを
任意
ら ∝ ま で 積 分 す る と(積 分 の 順
ビ ニ の 定 理 を 応 用 す る)
同 様 に,Imz>0に
対 し て は
z=x±iε(x∈IR,ε>0)と
が 得 ら れ る.
し て,xに
つ い て,aか
らbま
で 積 分 し(a
ε ↓0と す れ ば
が 得 ら れ る([8]のp.266∼p.267を
参 照).b→aと
す れ ば,ル
束 定 理 に よ り
よ っ て,す
対 し て f=0で
な け れ ば な ら な い.ゆ
え にDはL2(IR,dμ)で
巡 回 ベ ク トル Φ0を もつ と し よ う.こ はHで
稠 密 で あ る.一
稠 密 で あ る. の と き,
方,
(ベ ク トル
に 関 す る ス テ ィ ル チ ェ ス 型 積 分 の 強 収 束;[7]のp.210∼p.211の し た が っ て,
よ っ て,Aの
注 意 を 参 照).
こ れ は,
稠 密 で あ る こ と を 意 味 す る.す
な わ ち,Φ0はAに
関 す る 生 成 元 で あ る.
ス ペ ク トル は 単 純 で あ る.
■
例1.8
L2(IRdx)に
お け る 自 由 ハ ミル トニ ア ンH0=-Δ/2m(m>0は
定 数,Δ
は 一 般 化 さ れ た ラ プ ラ シ ア ン)は 極 大 観 測 量 で は な い.
証 明
質 量 を表 す
を フ ー リエ 変 換 と し,
す れ ば,FdH0F-1d=hが 1.5に よ っ て,hも 一 つ を ψ0∈C∝(h)と で あ る.し
べ て のJ∈J1に
は λ に 関 す る 生 成 元 で あ っ た か ら,
(十 分 性)Aは
がHで
ベー グの優収
成り 立 つ.仮 極 大 観 測 量 で あ る.し す る
.こ
に,H0が
と
極 大 観 測 量 で あ る と す れ ば,命 題
た が っ て,hは
巡 回 ベ ク トル を もつ.そ
の と き,
た が っ て,ψ0(k)≠0,a.e.k.ま
はL2(IRdk)で た,任
意 のN∈INに
対 し て,ベ
の
稠密 ク トル
ψ0,hψ0,…,hNψ0は の1.1.5項)に
線 形 独 立 で あ る.し
た が っ て,グ
よ り,
ラ ム-シ
とな る もの が 存 在 す る.し た が って,特 に,各 φnは│k│の で あ る か ら, NlでNl→
(S⊂IRdは,ル
関 数 で あ る.
と展 開 で きる(cn∈C).し
∞(l→
ュ ミ ッ ト の 直 交 化([7]
で
た が っ て,部
分列
∞)か つ
ベ ー グ測 度 に 関 す る,あ る零 集 合)を 満 た す もの が と れ る. とお く と,こ れ は 空 集 合 で は な い.上 の こ とか ら,任 意 のk∈
に 対 して, で あ る が,左
右 辺 は,変 辺 は 符 号 が 変 わ る.し
た が っ て,こ
数 変 換k→-kに
れ は矛 盾 で あ る.ゆ
Ω
対 して 不 変 え にH0は
極大
観 測 量 で は な い.
■
1.4 複 数 の物 理 量 の測 定 に よる状 態 の一 意 的 決 定(Ⅰ)― 純 点 スペ ク トル 的 な物 理 量 の 組 の場 合
次 に,2個
以 上 の 物 理 量A1,…,AN(N〓2)―
ヒルベ ル ト空 間Hで
働 くも
の とす る― の 共 立 的測 定 可 能性 と共 立 的 測 定 に よ る状 態 の 一 意 的 決 定性 の 問 題 を考 察 す る.た だ し,こ の 節 で は,簡 単 な場 合 だ け を取 り扱 う.す な わ ち,各 Ajが
純 点 ス ペ ク トル 的 で あ る場 合 で あ る.Ajの
点 スペ ク トル は次 の形 で 与 え
られ る とす る:
(1.17) こ こで,添 え字ljは 有 限集 合 ま た は可 算 無 限 集 合 を走 る.ま た,n≠mな
らば
λ(j)n≠λ(j)mとす る.解 析 に進 む前 に,複 数 の 自 己共 役 作 用 素 の 固 有 ベ ク トル に 関 す る 基 本 的 な 概 念 を定 義 して お く. 定 義1.12
T1,…,TN(N〓2)をH上
(ⅰ) ベ ク トル Ψ ∈HがT1,…,TNの
あ り,各jに
対 し て,Tjの
の 自己 共 役 作 用 素 とす る 同 時 固 有 ベ ク トル で あ る と は,Ψ ≠0で
固 有 値 λj∈ σp(Tj)が
あ っ てTjΨ=λjΨ,j=1,…,N
が 成 り立 つ と き をい う*19.こ の 場 合,固
有 値 の 組(λ1,…,λN)をT1,…,TN
の 同 時 固 有 値 とい う. あ る同 時 固有 値 を与 え る 同 時 固 有 ベ ク トル が定 数倍 を除 い て た だ一 つ しか存 在 しな い と き,そ の 同 時 固 有 値 は単 純 で あ る とい う. 同 一 の 同 時 固 有 値 を与 え る 同時 固有 ベ ク トルで 線 形 独 立 な もの が2個
以上 あ
る と き,そ の 同 時 固有 値 は 縮 退 して い る とい う. (ⅱ) T1,…,TNの 同 時 固 有 ベ ク トル の集 合 がHのCONS(完 全 正 規 直交 系) を なす と き,T1,…,TNは 同時 固有 ベ ク トル の 完 全 系 を も つ とい う. 物 理 量T1,…,TNが
同時 固有 ベ ク トル の 完 全 系 を もつ と し よ う.T1,…,TN
を測 定 す れ ば,同 時 固 有 値 の 一 つ λ=(λ1,…,λN)が
得 られ る(公 理).こ れ
に よ っ て状 態 が 一 意 的 に定 ま るた め に は,λ は単 純 で な け れ ば な らな い.逆 に, T1,…,TNの
任 意 の同 時 固 有値 が 単 純 で あ れ ば,こ れ らの 測 定 は 明 らか に状 態
を一 意 的 に定 め る.し たが っ て,同 時 固 有 ベ ク トル の完 全 系 をも つ物 理 量 の 組 の 測 定 が状 態 を一 意 的 に決 定 す る た め の必 要 十 分 条 件 は,そ の す べ ての 同 時 固 有 値 が 単 純 で あ る こ とが 結 論 され る.こ の 条 件 を満 た す物 理 量 の 組(T1,…,TN) ― す な わ ち ,そ の 同 時 固 有 ベ ク トル の 全 体 は完 全 系 を な し,か つ そ のす べ て の 同 時 固 有 値 が 単 純 で あ る よ うな物 理 量 の 組― は純 点 スペ ク トル 的 に極 大 で あ る (maximal)と
い う.こ
う して,純 点 スペ ク トル 的 な物 理 量 の 組 につ い て は,そ
の 測 定 に よ っ て状 態 が 一 意 的 に定 ま る よ うな ク ラス が 決 定 され る.そ
こ で,以
下 で は,物 理 量 の 組 が純 点 ス ペ ク トル 的 に極 大 で あ るた め の 条 件 を検 討 す る.
1.4.1 同 時 固 有 ベ ク トル が完 全 系 をな す ため の 条 件 次 の定 理 を証 明 す る: 定 理1.13
(1.17)を 仮 定 す る.こ の と き,A1,…,ANが
完 全 系 を もつ た め の 必 要 十 分 条件 はA1,…,ANが
同 時 固 有 ベ ク トルの
強 可 換 で あ る こ とで あ る.
この定 理 を証 明 す る ため に,あ る基本 的 な一般 的 事 実 を補 題 と して述 べ てお く: *19 い う ま で も な く な よ う に,Tjの
,こ の"同 時"は,時 間 的 に 同 時 と い う意 味 で は な い.定 う ち一 つ で も 固 有 値 を も た な い も の が あ れ ば,T1,…,TNの
ベ ク トル は 存 在 し な い .
義 か ら明 らか 同 時固 有
補 題1.14
TをH上
の 自 己 共 役 作 用 素 と し,MをHの
の 正 射 影 作 用 素 をPと
す る*20.も
不 変 に す る な ら ば(i.e.,Ψ
し,す
∈Mな
閉 部 分 空 間 と し,Mへ
べ て のt∈IRに
ら ばeitTΨ
対 し て,eitTがMを
∈M),
(1.18) が 成 り立 つ.特
に,TはMに
よ っ て 簡 約 さ れ る.
証 明 仮 定 に よ り, Pe-itT.左 (1.18)が
辺 は(*)に
よ っ て,e-itTPに
す る.(1.18)に
有 界 性 に よ り,左
t=0で
等 しい.t∈IRは
任 意 で あ る か ら,
得 ら れ る.
次 に Ψ ∈D(T)と Pの
こ の 式 で 共 役 を と る と,Pe-itTP=
よ り,
辺 はt=0で
強 微 分 可 能 で あ る.し
強 微 分 可 能 で あ る か ら,[8]の
PTΨ=TPΨ
が 成 り立 つ.す
と
定 理3.37に
た が っ て,右
よ っ て,PΨ
な わ ち,PT⊂TP.よ
辺 も
∈D(T)か
っ て,TはMに
つ
よって
簡 約 さ れ る.
定理1.13の
■
証 明 (必 要性)Ajの
固有 値 を重 複 を込 め て数 えた もの を μ(j)qjと する
(集 合 と して は,
の同
時固有ベクトルからなるCONSと する:すなわち, で あ り,{Ψq1,…,qN}q1,…,qNはHのCONSを
任意のt∈IRとj=1,…,Nに したが っ て,任
な す と す る.作
用 素 解 析 に よ り,
対して,
意 のs∈IRとk=1,…,Nに
対 して,
こ れ か ら, が 導 か れ る.任
意 のΨ
∈Hは{Ψq1,…,qN}q1,…,qNで
は 有 界 で あ る か ら,
展 開 で き,eisAk,eitAj が 得 ら れ る.し
ゆ え に,[8]の
定 理3.13に
た が っ て.
よ っ て,AjとAkた
は強
可 換 で あ る. (十 分 性)A1,…,ANは
強 可 換 で あ る と す る.
と お く と(l1,…,lN)≠(l'1,…,l'N)な
ら ばHl1,…
,lNとHl'1,…,l'Nは直
交
*20 [7]に お い て射 影演 算 子(直 交射 影)と 呼 んだ作 用 素 を ,本 書 で は,正 射 影作 用 素 と呼 ぶ.
す る.仮
定(1.17)に
Hl1,…,lNが
成
よ り,
で あ る の で,H=
り 立 つ.Ak,Aj(j≠k,j,k=1,…,N)の
強 可 換 性 に よ り,任
意 のs,t∈IRに
対 し て,
し た が っ て,任
ker(Ak-λ(k)lk)に
対 し て,
そ こ で,s=0で
分 を 考 察 す れ ばeitAjΦ
がker(Ak-λ(k)lk)を
∈D(Ak)か
で あ り,Hl1
(Ml1,…,lN〓
え に,補
た が っ て, 同 時 固 有 ベ ク トル で あ る:
同 時 固 有 ベ ク ト ル の 完 全 系 を も つ.
■
一 つ の物 理 量 で表 す こ と
も と で,A1,A2,…,ANは
強 可 換 で あ る とす る.こ
の と き,定
同 時 固 有 ベ ク トル か ら な る 完 全 正 規 直 交 系 が
ま,こ れ を{Ψm}∝m=1で
に 関 す る 固 有 ベ ク トル 方 程 式(固
表 し(dim
H=+∞
の 場 合 を 考 え る),Aj
有 値 方 程 式)を
と 書 く(し
合 と して, .
有 界 な 実 数 列 κ:={κm}∝m=1でm≠nな
ら ばκm≠κnを
の を 任 意 に と り,C:=supm〓>1│κm│<∝
と お く*21.任
満 たす も
意 の Ψ ∈Hは
と 展 開 で き る で あ る か ら,写
に よ っ て 定 義 で き る.こ が 成 り立 つ.さ
よ っ て,
はHのCONS
よ っ て,A1,…,ANの
た が っ て,集
の強 微
題1.14に
す れ ば,
A1,…,ANを
存 在 す る.い
∈
え に,Hl1,…,lNのCONSをΨ(m)l1,…,lN,m=1,…,Ml1,…,lN
っ て,A1,…,ANは
仮 定(1.17)の 理1.13に
よ っ て 簡 約 さ れ る.し
∞)と
に な る.よ
意 の Φ
こ れ は,eitAj
,…,lNの 任 意 の 元 Ψ ≠0はA1,…,ANの
AjΨ=λ(j)lj)Ψ.ゆ
1.4.2
つ
不 変 に す る こ と を 意 味 す る.ゆ
Ajはker(Ak-λ(k)lk)に
l1,…,lN
の と き,Aは
像A:H→Hを
有 界 な 自 己 共 役 作 用 素 で あ り,‖A‖〓C
らに
(1.19) *21 た とえば,κ
m:=1/ma(a>0).
Aの
各 固 有 値κmは
単 純 で あ る.し
各j=1,…,Nに
対 し て,IR上
に よっ て定 義 す る*22.Fjは
た が っ て,Aは
極 大 観 測 量 で あ る(例1.1).
の 関 数Fj:IR→IRを
連 続 関 数列 の各 点 極 限 と して 書 け る ので,ボ レル 可
測 で あ る.次 の定 理 を証 明 す る: 定 理1.15
仮 定(1.17)の
も と で,A1,A2,…,ANは
強 可 換 で あ る とす る.こ
の と き,Aj=Fj(A),j=1,…,N.
証明 作用素解析 によ り, とす れ ば,こ れ はHで
稠密 な部 分 空 間 で あ り,各AjはD上
で 本 質的 に 自己共 役 で あ る([7]の 命 題2.79の 証 明 と同様).(*)はAj│D⊂Fj(A) を意 味 す るか ら,両 辺 の 閉 包 を と る こ とに よ り,Aj⊂Fj(A)が 辺 とも に 自己 共 役 で あ る か ら,Aj=Fj(A)で 定 理1.15は,量
した が う.両
な け れ ば な らな い.
■
子 力 学 の コ ンテ ク ス トで は,次 の こ と を意 味 す る:強 可 換 な
純 点 ス ペ ク トル 的 物 理 量 の組 の各 要 素 は,あ る一 つ の 極 大 観 測 量(こ れ も純 点 ス ペ ク トル的)の 関 数 と して表 され る. 次 の 事 実 は,Aの 系1.16
定 理1.15の
定 義 と定 理1.15か
らた だ ち に導 か れ る:
仮 定 の も と で,物
理 量 の 組(A1,…
,AN,A)は
純点スペ
ク トル 的 に 極 大 で あ る.
こ う して,純
点 ス ペ ク トル 的 か つ 強 可 換 な物 理 量 の 組 に対 して は,こ れ に あ
る純 点 ス ペ ク トル 的 物 理 量 を付 け 加 え る こ と に よ り,常 に,純 点 スペ ク トル 的 に極 大 な 物 理 量 の 組 をつ くる こ とが で きる こ とが わ か る. 注 意1.2
作 用 素Aの
構 成 か ら わ か る よ う に,Aj=Fj(A)(j=1,…,N)と
な る よ う な 有 界 自 己 共 役 作 用 素Aと
*22 以 下 の 議 論 か ら わ か る の だ が
,実
は,κ
関 数Fjは
≠κmに
無 数 に 存 在 す る.
お け るFjの
値 は ど う定 め て も よ い.
1.5 複 数 の物 理 量 の 測 定 に よ る状 態の 一 意 的決 定(Ⅱ)―
一 般 の場 合
こ の節 で は,必 ず し も純 点 ス ペ ク トル 的 で な い 物 理 量 の 組 の 測 定 に よ る状 態 の 一 意 的 決 定 性 の 問 題 を考 え る.こ の 一 般 の場 合 は,当 然,前
節 の特 殊 な場 合
を含 まな けれ ば な ら な いか ら,対 象 と な る物 理 量 の 組 は強 可換 で な け れ ば な ら な い.こ の 点 は以 下 の議 論 にお い て 大 前 提 とな る も ので あ る.
1.5.1
可 換 な観 測 量 の 極 大 な組
A1,…,ANを
ヒ ル ベ ル ト空 間H上
の 強 可 換 な 物 理 量 の組 と し
(1.20) と お く.た
と え ば,A1が
る と,A1がaを
連 続 ス ペ ク トル を も ち,a∈
と る 状 態 はHの
σ(A1), a〓
σp(A1)と
中 に は 存 在 し な い の で(∵EA1({a})=0),前
節 の 場 合 と は 異 な り,A1,…,ANの
ス ペ ク トル の 点 の 組 を 用 い て 状 態 を 指 定 す
る こ と は で き な い.し
た が っ て,現
さ れ ね ば な ら な い.そ
の た め の 自 然 な ア イ デ ア の 一つ は,単
下 の 問 題 を解 く た め に は,別
の方 法 が探 索
独 の 物 理 量 の場 合
の 極 大 性 の 概 念 を 複 数 の 物 理 量 の 場 合 へ と拡 張 す る こ と で あ る.こ う に し て な さ れ る.仮 ペ ク トル 測 度EA トル 測 度EAが
定 に よ り,A1,…,ANは
1(・),…,EAN(・)は 定 義 さ れ る([7]の
ク トル 測 度 で あ り,す
す
強 可 換 で あ る か ら,そ
可 換 で あ る.し 定 理2.67).す
べ て のB1,…,BN∈B1に
れ は次 の よ
た が っ て,そ
な わ ち,EAはIRN上
れ らの ス
の直 積 ス ペ ク のスペ
対 して
(1.21) を満 たす もの で あ る.作 用 素 解 析 に よ り,ス ペ ク トル 測 度EAを
用い ると
(1.22) と表 示 され る こ とが わか る.EAの
台
(1.23)
をAの ANの
結 合 ス ペ ク トル(joint
呼 ぶ*23.こ
れ は,物 理 的 に は,A1,…,
測 定 値 の 組 全 体 の 集 合 を 表 す と 解 釈 さ れ る.
注 意1.3 一 が,等
spectrum)と
般 に,suppEA⊂
σ(A1)×
号 は 成 立 す る と は 限 ら な い(次
例1.9
P1,…,Pd(d∈IN)をH上
…
× σ(AN)で
あ る(演
習 問 題6).だ
の 例 を 参 照).
の 強 可 換 な 自己 共 役 作 用 素 の 組 とす る.m〓0
を定 数 と して,P0:=(P21+…+P2d+m2)1/2と で あ り,
お く.こ の と き,P0は が 成 り立 つ.ま
自己共役
た,P:=(P0,P1,…Pd)
は 強 可 換 で あ る. 次 の 事 実 が 成 立 す る:
とお くと
(1.24) 証 明 任意 の Ψ ∈∩dj=1D(P2j)に 対 して,Ψ ∈D(P20)で
あ り,
これ は
を意 味 す る.
した が っ て,
は稠 密 で あ るか ら,
が 得 られ る.ゆ V+mは,特
え に(1.24)が
殊 相 対 性 理 論 に お い て,質
素 の組Pは,相
成 り立 つ. 量mの
■
超 双 曲 面 と呼 ば れ る.自
対 論 的 場 の 量 子 論 の コ ン テ クス トにお い て は,質 量mの
の エ ネ ル ギ ー ・運 動 量 作 用 素 を 表 す.σ(Pj)=IR(通
己 共役作 用 量 子的粒 子
常 の 場 合)な ら ば,(1.24)は
を示 す. 定 義1.9の
多次 元 版 と して,次 の 定 義 は 自然 な もの で あ る:
定 義1.17 物 理 量 の 組Aに を もつ と き,Aは
とす る.強 可 換 な つ い て,作 用 素 の集 合{EA(B)│B∈JN}が 極 大 で あ る とい う.こ の場 合,Aを
*23 ス ペ ク トル 測 度 の 台 の 定 義 に つ い て は[7]のp.192を
参照
巡 回 ベ ク トル Ψ0 可 換 な観 測 量 の極 大 な組 .
(maximal
set of commuting
う*24.Ψ0をAに
observables)ま
た は可 換 な物 理 量 の極 大 な組 とい
関 す る 生 成 元 と い う.
こ の定 義 が 意 味 を もつ た め に は,そ れ が,純 点 ス ペ ク トル 的物 理 量 の 組 の極 大 性 の概 念 の 拡 張 に な って い る こ と を確 か め てお く必 要 が あ る.実 際,次
の事
実 が 成 立 す る: 命 題1.18
Aを
強 可 換 な純 点 ス ペ ク トル 的 物 理 量 の 組 とす る.こ の と き,A
が 純 点 ス ペ ク トル 的 に極 大 で あ る た め の 必 要 十 分 条 件 は,Aが(上
に 定 義 した
意 味 で)極 大 で あ る こ と で あ る. 証 明 (必 要 性)Aは
純 点 ス ペ ク トル 的 に 極 大 で あ る と し よ う.こ
の と き,Hの
CONS で と な る も の が あ る.正
の 数Cλ1,…,λNで
を 満 た す もの
に 対 し て,
は 収 束 す る.作
用 素解 析 に よ り
. これ か ら,L({EA(B)Ψ0│B∈ JN})がHで
稠 密 で あ る こ と が 導 か れ る.ゆ
巡 回 ベ ク トル で あ る の で,Aは (十 分 性)Aは
え に,Ψ0は{EA(B)│B∈JN}の
極 大 で あ る.
極 大 で あ る と し,Ψ0を{EA(B)│B∈JN}の
す る.定
理1.13に
に,Aが
純 点 ス ペ ク トル 的 に 極 大 で な い とす れ ば,A1,…,ANの
(λ1,…,λN)で
よ り,A1,…,ANは
巡 回 ベ ク トル と
単 純 で な い も の が あ る.し
の 次 元 は2以
上 で あ る.一
元 で あ る.し
た が っ て,η
に な る.こ
同 時 固 有 ベ ク トル の 完 全 系 を も つ.仮
方,η:=EA({λ1}×
の 極 大 性 に 反 す る.ゆ
た が っ て,M:=∩Nj=1ker(Aj-λj) …
×{λN})Ψ0≠0はMの
と 直 交 す る 零 で な い ベ ク トルxがMの
の 場 合,xは{EA(B)Ψ0│B∈JN}と え にAは
同時 固有値
中にある こと
直 交 す る こ と に な る の で,A
純 点 ス ペ ク トル 的 に 極 大 で な け れ ば な ら な い.
■
*24 前 者 の 呼 び方 のほ うが 標 準 的 と思 われ るの で本 書 で も以 下
,こ の 慣 習 に したが う.
1.5.2
同
時 対
角 化
可 換 な観 測 量 の 極 大 な組 に対 して,定 理1.8の
拡 張 とみ られ る定 理 が 成 立 す
る こ とを示 そ う. Aを 可 換 な観 測 量 の極 大 な 組 と し,Aに 関 す る生 成 元 の 一 つ を Ψ0と す る. B NをN次 元 の ボ レル集 合 体 とす る.こ の と き,可 測 空 間(IRN, BN)上 の 測 度 μAΨ0を
(1.25) に よ っ て定 義 で きる.こ れ は 有 界 な 測 度 で あ る. 定 理1.19
Aを
U:H→L2(IRN,
上 の も の と す る.こ
の とき,次
の 性 質 を も つ ユ ニ タ リ作 用 素
dμAΨ0)が 存 在 す る:
(ⅰ) UΨ0=1. (ⅱ) 作 用 素 の 等 式
(1.26) が 成 り立 つ.た
だ し,右 辺 はL2(IRN,
に よ る か け 算 作 用 素 を 表 す(IRNの (ⅲ) 任 意 の Ψ ∈Hに 一つ あって
対 し て,ボ
dμAΨ0)に お い て 第j番 点 を(λ1,…,λN)と レ ル 可 測 関 数fΨ
目 の 座 標 変 数 λj∈IR 記 す).
∈L2(IRN, dμAΨ0)が
た だ
(1.27) と 表 さ れ る.
(ⅳ) 任 意 の ボ レ ル集 合B∈BNに
対 して
(1.28) 証 明 定 理1.8の
証 明 と ま っ た く並 行 的 で あ る の で 省 略 す る(演 習 問 題7). ■
単 独 の極 大 観 測 量 の場 合 と同様 の考 察 に よ り,定 理1.19は,物 理 量.A1,…,ANの 釈 さ れ る.こ
理 的 には,物
組 の 測 定 が 状 態 を一 意 的 に定 め る こ とを意 味 す る もの と解
う して,1.1節
で提 起 され た 問題 に対 す る一 つ の解 答 が得 られ る.
1.5.3 基 本 的 な 構 造 可 換 な 観 測 量 の極 大 な組 を見 い だ す た め の基 本 と なる 構 造 につ い て述 べ て お こ う. 次 の命 題 は,可 換 な観 測 量 の極 大 性 はユ ニ タ リ不 変 な性 質 で あ る こ と を語 る: 命 題1.20
Kを ヒ ルベ ル ト空 間 と し,U:H→Kを
ユ ニ タ リ変 換 とす る.A
が 可 換 な 観 測 量 の 極 大 な組 な らば,(UA1U-1,…,UANU-1)も
可換 な 観 測 量
の 極 大 な 組 で あ る. 証 明 命 題1.5の 定 理1.21
証 明 と同 様.
H1,…,HNを
■
ヒ ルベ ル ト空 間 と し,AjをHj上
の極大観測量 と し
(1.29)
と す る.こ
の と き,(A1,…,AN)は Nj=1Hjに
お け る 可換 な観 測 量 の 極 大 な組
で あ る.
証 明 前 著[8]の4.2節 可 換 で あ る.さ
を 満 た す.し
で み た よ う に,Ajは
ら に,こ
自 己 共 役 で あ り,A1,…,ANは
れ ら の 直 積 ス ペ ク トル 測 度EAは
た が っ て,Ajに
関 す る 生 成 元 を ηjと し,Ψ0:=η1
お け ば, …
で あ る.ゆ
×JN)Ψ0と
稠 密 で あ る か ら,DはHで
L2(IRN)に
稠 密 で あ る.こ え に,題
リ同 値 で あ る([8],4.2節).定
NL2(IR)([8],4.1節)に 理1.21に
の 事 実 と命 題1.20と
部分 含 む. 関 ■
極 大 で あ る. お い て,xjはxjと
よ っ て,(x1,…xN)は
に よ っ て,題
れ は,Ψ0がAに
意 が 成 立 す る.
お け る位 置 作 用 素 の 組x1,…,xNは
証 明 自然 な 同 型L2(IRN)〓
な 組 で あ る.こ
え に,EA(J1×
代 数 的 テ ン ソ ル 積D:= Nj=1Djを
す る 生 成 元 で あ る こ と を 意 味 す る.ゆ 例1.10
… ηNと
い う 型 の ベ ク ト ル に よ っ て 生 成 さ れ る 部 分 空 間 は ,Hjの
空 間Dj:=L({EAj(J)ηj│J∈J1})の 各DjはHjで
強
ユニタ
可 換 な観 測 量 の 極 大
意 が し た が う.
■
例1.11
L2(IRN)に
お け る運 動 量 作 用 素 の 組p1,…,pNは
証 明 (k1,…,kN)は 例1.12
極 大 で あ る.
は フ ー リ エ 変 換).前 極 大 で あ る.こ
ス ピ ン1/2の
の事 実 と命 題1.20と
量 子 的 粒 子 がIR3に
お い て1個
の ヒ ル ベ ル ト空 間 はL2(IR3;C2)=L2(IR3)
C2に
をとる.s3の 重 度 は1で
あ る.し
た が っ て,s3はC2に
の 事 実 お よ び定 理1.21に
に よ っ て,題
例 に よ り,
意 が した が う. ■
存 在 す る 系 を 考 え る.状
と れ る.ス
固 有 値±1/2で
あ り,各固 有値 の 多
お け る極 大 観 測 量 で あ る.こ
れ と例1.10
よ り,位 置 作 用 素 と ス ピ ン作 用 素 の 組(x1,x2,x3,s3)は
大 で あ る こ とが わ か る.s3を
態
ピ ン作 用 素 と して,
ス ピ ンの 他 の 成 分 で置 き換 え て も 同様 で あ る.ゆ
極 え に,
考 察 下 の 系 に お い て は,位 置 とス ピ ンの 成 分 の 一 つ を 測 定 す る こ と に よ り,状 態 は一 意 的 に定 ま る.
1.5.4 可 換 な観 測 量 の 極 大 な組 の 別 の特 徴 づ け 単 独 の 観 測 量 の 極 大 性 の,巡 回ベ ク トル に よる特 徴 づ け(定 理1.11)は
可換 な
観 測 量 の極 大 な組 の 場 合 に も可 能 で あ る: 定 理1.22
強 可 換 な 物 理 量 の組A=(A1,…,AN)が
極 大で あるための必要
十 分 条 件 は,作 用 素 の集 合
が巡 回
ベ ク トル を もつ こ とで あ る. 証 明 (必 要性)定 理1.19が
成 立 す る の で,定 理1.11に
お け る 「必 要 性 」 の証
明 を多 次 元 の 場 合 に拡 張 す れ ば よい.こ れ は容 易 で あ るの で 演 習 問題 とす る(演 習 問題8). (十分 性)定 理1.11に
1.5.5
お け る 「十 分性 」 の証 明 と同 様(演 習 問題8).
■
可 換 な 観 測 量 の極 大 な組 を一 つ の 極 大 観 測 量 で 表 す こ と
A=(A1,…,AN)を が 成 立 す る.U,μAΨ0を
可 換 な 観 測 量 の 極 大 な 組 と し よ う.こ 定 理1.19の
も の と す る.ボ
の と き,定 理1.19
レ ル 可 測 関 数u:IRN→IR
で 単 射 で あ る も の を 任 意 に 一 つ と る*25.L2(IRN,dμAΨ0)に
お け る,関
数uに
よ
*25 この よ うな 関 数 の存 在― それ は全然 自明 で は な い― を示 す 一 つ の方 法 は ,IRか らIRN へ の 単 射 な写 像 φ で そ の 逆写 像 φ-1が ボ レル 可測 に なる よ うな もの をつ くる こ とであ
るか け算 作 用 素 をMuと
し(こ れ は 自己 共役 作 用 素)
(1.30) とす れ ば,AはH上
の 自 己 共 役 作 用 素 で あ る.各j=1,…,Nに
対 し て,関
数fj:IR→IRをfj(μ):=0,μ〓u(IRN);
に よ っ て 定 義 す る.こ の と き,作 用 素 解 析 に よ り,作 用 素 の等 式
が 成 立 す る.両 辺 をU-1で
ユ ニ タ リ変 換 す れ ば,作 用 素 の等 式
(1.31) が 得 ら れ る.さ 命 題1.23
ら に,次
上 のAは
の 事 実 が 成 立 す る: 極 大 観 測 量 で あ る.
証 明 Ψ0は{Aα11…AαNN│αj∈{0}∪IN,j=1,…,N}に ル と し て 一 般 性 を 失 わ な い.す
はHで
稠 密 で あ る.他
る と(1.31)に
対 す る巡 回 ベ ク ト よっ て
方,各fjを,L2(IRμ,d‖EA(μ)Ψ0‖2)の
収 束 の 意 味 で,
多 項 式近 似 す る こ と に よ り
が わ か る*26.し に 定 理1.11に
た が っ て,L({AnΨ0│n∈{0}∪IN})はHで よ り,Aは
稠 密 で あ る.ゆ
極 大 観 測 量 で あ る.
え ■
る(こ の と き,u:=φ-1が 求 め る関 数 の一 つ を与 える).た だ し,そ の よ う な写像 φ は "常識 的 描 像"か らい う とた いへ ん 特異 な もの に なる .φ をつ くる に は,た とえ ば,ペ ア ノ 曲線 をつ くる 方 法[高 木 貞 治 『 解 析 概 論 』(改 訂 第 三版,岩 波 書 店)の 附 録Ⅱ(p.468 ∼p.469)]を 応 用 す れ ば よ い. *26 多 項 式 近 似 は い っ き に行 う こ とは で きず
,次 の段 階(ⅰ)∼(ⅴ)を 踏 まね ば な ら ない.(ⅰ) ボ レル 可測 関数fjを,台 が 有 界 な ボ レル可 測 関数gnで 近 似 す る;(ⅱ) gnを 階段 関数 で 近似 す る;(ⅲ) (ⅱ)に 現 れ る階段 関数 を区 間 の定 義 関 数 の線 形 結 合 で表 され る階段 関 数 で 近似 す る;(ⅳ) 区 間 の定 義 関数 を連 続 関数 で 近 似 す る;(ⅴ) 区 間 に 制限 され た連 続 関 数 を ヴ ァイエ ル シ ュ トラス の多 項 式 近似 定 理 に よ り,多 項 式 で 近似 す る.
こ う して,可 換 な観 測 量 の 極 大 な組 は一 つ の極 大観 測 量Aに
集 約 され る.こ
れ は,可 換 な観 測 量 の 極 大 な組 の 測 定 に よ る状 態 の 一 意 的決 定性 が,実
は,一
つ の 極 大 観 測 量 の 測 定 に よ る一 意 的決 定 性 に帰 着 で きる こ と を意 味 す る.
1.6
代 数 的 な特 徴 づ け
強 可 換 な 自己 共 役 作 用 素 の組 が 極 大 で あ る こ と を代 数 的 に特 徴 づ け る こ と も で き る.そ の鍵 と な る ア イ デ ア の 一 つ は,互 い に異 な る強 可 換 な物 理 量 を よ り 多 く測 定 す れ ば,状 態 を よ り詳 細 に特 定 す る こ とが で き,し た が っ て,状 態 の 一 意 的 決 定 へ とよ り"近 づ く"こ とが 可 能 で あ ろ う とい う物 理 的推 測 で あ る(そ の 示 唆 は,す で に,系1.16に
現 れ て い る).こ の 推 測 は,強 可 換 な 物 理 量 の 集 合
の 代 数 的 構 造 を研 究 す る こ とへ と人 を導 く. Hを 複 素 ヒ ルベ ル ト空 間 と し,H全 素 の 全 体 をB(H)と
体 を定 義 域 とす る,H上
の有 界 線 形 作 用
す る([7],1章,1.2項).
1.6.1 可 換 子 代 数 定 義1.24
A⊂B(H)と
す る.Aの
元 と可 換 な有 界 作 用 素 の 全体 をA'で 表 す:
(1.32) A'をAの A'の
可 換 子 集 合(commutant)と
い う.明
ら か にI(恒
等 作 用 素)∈A'.
可換子集合
(1.33) をAの2重
可 換 子 集 合(double
commutant)と
い う. n個
以 下,同
様 に し て,Aのn重
(A(n-1))',n〓2に
A'がC上
可 換 子 集 合A'…'=A(n)が
帰 納 的 にA(n):=
よ っ て 定 義 さ れ る.
の 代 数 を なす こ とは 容 易 に わ か る*27.こ
の ゆ え に,可 換 子 集 合 を
可 換 子 代 数 と も い う. *27 C上
の 代 数― 複 素 代 数 と も い う― の 定 義 に つ い て は
,[7]のp.70を
参 照.
H上 の有 界 作 用 素 か ら な る2つ
の集 合A, Bに つ い て
(1.34) が 成 り立 つ(証 明 は容 易). 他 方,こ
れ も容 易 に わ か る こ とで あ る が
(1.35) し た が っ て,(1.34)よ A'⊂A'''.ゆ
り,A'''⊂A'.ま
た,(1.35)のAと
して,A'を
考 える と
えに
(1.36) Aを 複 素 ヒル ベ ル ト空 間H上 2つ の 元X,
Yが
の 有 界 作 用 素 か らな る集 合 とす る.Aの
可 換 で あ る と き,す な わ ち,XY=YXが
任意 の
成 り立 つ と き,A
は可 換 ま た は ア ー ベ リア ンで あ る とい う. 補 題1.25
任 意 の 可 換 な 集 合A⊂B(H)に
証 明 X∈Aを XY=YX.し
1.6.2 RをB(H)の
任 意 に と る.Aの
対 して,A⊂A'.
可 換 性 に よ り,任
意 のY∈Aに
対 し て,
た が っ て,X∈A'.
■
ス ペ ク トル 射 影 が 生 成 す る 代 数 部 分 代 数 と す る(i.e.,R⊂B(H)か
し て 代 数 に な っ て い る).こ
つRは
線形作 用素の積 に関
れ に 対 して
(1.37) に よ っ て 定 義 さ れ る 作 用 素 の 集 合 をRの
強 閉 包(strong
closure)と
い う.こ
れ
も 代 数 で あ り,強 収 束 の 位 相 で 閉 じて い る .
A⊂B(H)と (B(H)の)部
し,H上
の恒 等 作 用 素IとAの
元 の す べ て の 積 か ら生成 され る
分空間
(1.38)
はB(H)の
部 分 代 数 を なす.こ
閉包 をMs(A)と
れ をAか
ら生 成 され る代 数 とい う.P(A)の
強
記 す:
(1.39) Aが
可 換 で あ れ ば,Ms(A)も
可 換 で あ る.
A=(A1,…,AN)をH上
の 強 可 換 な 物 理 量 の 組 と し,A1,…,ANの
ク トル 射 影EAj(Jj)(Jj∈J1,j=1,…,N)か
スペ
ら 生 成 さ れ る代 数 の 強 閉 包
(1.40) を 考 え る.こ
れ をAに
同 伴 す る フ ォ ン ・ノ イ マ ン(J.
von
Neumann)代
数 と
呼 ぶ.
定 理1.26
ヒル ベ ル ト空 間Hは
可 分 で あ る とす る.こ の と き,Aが
可換 な 観
測 量 の 極 大 な組 で あ る た め の必 要 十 分 条 件 は
(1.41) が 成 立 す る こ とで あ る. 証 明 (必 要 性)Aは Uお
極 大 で あ る と し,Aに
よ び μ:=μAΨ0を
と す る.し
定 理1.19の
関 す る 生 成 元 の 一 つ を Ψ0と す る.
も の と す る.EA⊂E'Aは
明 ら か.T∈E'A
た が っ て,
TU:=UTU-1と
そ こ で,
す れ ば,
た だ し, とお け ば,
TUはL2(IRN,dμ)上
の 有 界 作 用 素 で あ る か ら,g∈L∝(IRN,dμ)で はL2(IRN,dμ)で
(*)は 任 意 のf∈L2(IRN,dμ)に る.し
た が っ て,TUはgに
対 し て,TUf=gfが
を 意 味 す る.し とEA(Bl),Bl∈JNと
稠 密 で あ る か ら,
え に,T=g(A).他
λ ∈IRNと
意 のf∈L2(IRN,dμ)に た が っ て,
あ る.
成 り立 つ こ と を 意 味 す
よ る か け 算 作 用 素 で あ る.ゆ
有 界 な 階 段 関 数 列gnで こ れ は,任
.
方,
な る も の が と れ る.
対 して は 恒 等 作 用 素I
い う 形 の 作 用 素 の 線 形 結 合 で 表 さ れ る.EA(Bl)は,
EA1(J1)…EAN(JN), る とT∈EAが
Jk∈J1と
い う 形 の 作 用 素 で あ る.以
上 の 事 実 を合 わ せ
結 論 さ れ る.
(十 分 性)(1.41)が をT=EAと
成 り立 つ と す る.Hは
可 分 で あ る の で,付
録Aの
し て 応 用 で き る.Hn:=HT(Ψn)=HEA(Ψn)を
の と し,N=∞ 選 ぶ.す
の 場 合 を 考 え る.
と な るcn>0を
る と ベ ク トル
が 定 義 さ れ る.こ
ル がε:={EA1(J1)…EAN(JN)│Jj∈J1,j=1,…,N}の
し て,番
と 書 け る.た
の 正 射 影 作 用 素 をPnと だ し,Φn:=PnΦ.任
号Nを
を考 え る と
方,PnEAj(J)=EAj(J)Pn(j=
あ る か ら,T(N)∈E'A.こ た が っ て,Φ
こ れ は Ψ0が
定 義 か ら,
を 満 た す もの が存 在 す
し た が っ て,limN→∞T(N)Ψ0=Φ.他
T(N)∈EA.し
対
い う形 の 作 用 素 の 線 形 結 合 で
用 素
1,…,N;J∈J1)で
意の
意 の ε>0に
表 さ れ る 作 用 素 列Qnで こ で,作
す る.任
と な る よ う に と る.Hnの
EA1(J1)…EAN(JN)(Jk∈J1,k=1,…,N)と
る.そ
のベ ク ト
巡 回 ベ ク トル
で あ る こ と を 示 せ ば 十 分 で あ る.Hnへ Φ ∈Hは
定 理A.3 そ こで の も
∈L({SΨ0│S∈
れ と 仮 定(1.41)に ε}).Φ
∈Hは
よ り,
任 意 で あ っ た か ら,
ε に 対 す る 巡 回 ベ ク トル で あ る こ と を 意 味 す る.よ
っ て,Aは
大 で あ る.
■
A1,…,ANに,こ
れ ら と強 可 換 な 自 己 共 役 作 用 素AN+1を
(A1,…,AN+1)に E'A.し
極
同 伴 す る フ ォ ン ・ノ イ マ ン 代 数EAを
た が っ て,条
は 変 わ ら な い.こ
件(1.41)が
の 意 味 で,条
条 件(1.41)は,強
考 え る と,EA⊂EA⊂
成 り立 つ 場 合 に は,EA=EAと 件(1.41)は
付 け 加 え て,A:=
物 理 量 の 組Aの
な っ て,EA 極 大 性 を 表 す.
可 換 な 物 理 量 の 集 合 の 濃 度 が 有 限 で な い 場 合 に も使 え る.
こ の こ と に 注 目 す る と,強
可換 な物 理 量 の極 大 性 に 関 す る 普 遍 的 な定 義 の 一 つ
に 到 達 す る:
定 義1.27
A={Aα}α
∈Λ(Λ は 添 え 字 集 合)を
強 可 換 な 自己 共 役 作 用 素 の 集
合 とし
(1.42) とお く.Aが
可 換 な観 測 量 の極 大 集 合 で あ る とは
(1.43) が 成 り立 つ と き を い う*28. 注 意1.4
B(H)の
の 条 件 は,Aの
可 換 な 部 分 代 数AがA=A'…(*)を
満 た す と し よ う.こ
す べ て の 元 と 可 換 な 有 界 作 用 素 をAに
は 何 も 変 化 し な い こ と を い っ て い る.そ
こ で,(*)を
加 え て も代 数 全 体 と して 満 た す 可 換 代 数Aを
極 大
ア ー ベ ル 代 数 と い う.
付 録A
可 分 な ヒ ル ベ ル ト空 間 の 巡 回 ベ ク トル に よ る 直 交 分 解
こ の付 録で は,ヒ ルベ ル ト空間 上 の解 析 に おけ る,巡 回ベ ク トルの概 念 の本 質 的重 要 性 を観 る ため に,ヒ ルベ ル ト空 間 の構造 と巡 回ベ ク トル との あ る普 遍 的 な関 わ りにつ いて 述べ て お く.
A.1 Hを
単 独 の 自 己共 役 作 用 素 に 同 伴 す る直 和 分 解 ヒ ル ベ ル ト空 間,AをH上
の 自 己 共 役 作 用 素,EAをAの
ス ペ ク トル 測 度 と
して
(A.1) を 定 義 す る*29.た 補 題A.1
だ し,線 形 作 用 素Tに
AをH上
稠 密 な 部 分 空 間 で あ る.
(ⅱ) 任 意 の Ψ ∈C∞0(A)に ∈D(Am)で
値 域 を表 す.
の 自己 共 役 作 用 素 とす る.こ の と き,次 の(ⅰ)∼(ⅲ)が 成 り立 つ.
(ⅰ) C∞0(A)はHで
て,Ψ
対 して,R(T)はTの
対 して,番
号nΨ
が あ っ て,す
べ て のm∈INに
対 し
あ り
(A.2) が 成 り立 つ.し
た が っ て,特
に
(A.3) (ⅲ) C∞(A)はHで *28 こ の 場 合 *29 Aが
稠 密 で あ る.
,Aを 可 換 な観 測 量 の 完 全 な 組 と 呼 ぶ 場 合 も あ る. 有 界 で あれ ば ,C∞0(A)=H.
証 明 (ⅰ) C∞0(A)が
部 分 空 間 で あ る こ と は,EA(J)EA(K)=EA(J∩K)(J,
K∈B1)
に注 意 す れ ば容 易 に示 され る.稠 密 性 は,任 意 の Ψ ∈Hに 対 して,Ψn=EA([-n, とお け ば,Ψn∈C∞0(A)で
あ り,‖Ψn-Ψ‖
(ⅱ) 任 意 の Ψ ∈C∞0(A)に EA([-n,
n])Φ と書 け る.し
した が っ て,Ψ
∈D(Am)で
(ⅲ) (ⅰ)と(A.3)か 定 理A.2
→0(n→∞)と
対 して,あ
る 番 号n=nΨ
た が っ て,任
意 のm∈INに
あ り,(A.2)が
n])Ψ
な る こ と か ら した が う. と Φ ∈Hが
あ っ て Ψ=
対 して
得 られ る.
ら した が う.
■
Hを 可 分 な ヒ ル ベ ル ト空 間,AをH上
の 任 意 の 自 己 共 役 作 用 素 とす る.
こ の と き,零 で な い ベ ク トル の 直 交 系{Ψn}Nn=1⊂C∞0(A)(Nは
有 限 また は可算無
限)が 存 在 し て
(A.4) が 成 り立 つ.さ 注 意A.1 ΨnはAnに
ら に,各HnはAを
各Hnに
お け るAの
簡 約 す る. 簡 約 部 分 をAnと
対 す る 巡 回 ベ ク トル で あ る*30.こ
す れ ば,
う し て,上
で あ り,
の 定 理 は次 の こ と を 意 味
す る:可 分 な ヒ ル ベ ル ト空 間 は,自 己 共 役 作 用 素 の 巡 回 ベ ク トル か ら つ く られ る 部 分 空 間 の 閉 包 の 直 和 に分 解 さ れ る. 証 明 Hが 無 限 次 元 の 場 合 に つ い て証 明 す る(有 限 次 元 の 場 合 に つ い て も,以 下 の 証 明 と 同様 で あ る が,収
束 性 に 関 す る 議 論 が い ら な い の で よ り簡 単 で あ る).
Hの 可 分性 とC∞0(A)の {Φn}∞n=1でHに
稠 密 性 に よ り,C∞0(A)の
お い て 稠 密 な もの が とれ る.Hの
構 成 す る.ま ず,Θ1:=Φ1と
す る.(A.3)に
間H1:=L({AkΘ1│k∈{0}∪IN})を 影 作 用 素 をP1と
す る.こ
よ り,Θ1∈C∞(A)で
つ くる こ と が で きる.こ
の と き,P1Φ2=limn→
あ る.Θ1∈R(EA([-n1, n1]))と
ベ ク トル Φnか ら な る可 算 無 限 集 合 ベ ク トル列{Θn}∞n=1を
∞Qn(A)Θ1と
な る多 項 式 列Qnが
n1]))が わ か る.こ
用 素 の 値 域 が 閉 で あ る こ と を使 え ば,P1Φ2∈R(EA([-n1,
*30 作 用 素 の 直 和 に つ い て は
の 閉部 分 空 間 へ の 正 射
す れ ば,EA(J)Qn(A)⊂Qn(A)EA(J),
に 注 意 す る こ と に よ り,Qn(A)Θ1∈R(EA([-n1,
,[8]の4章,4.3.2項
を 参 照.
次 の ように
あ る か ら,閉 部 分 空
∀J∈B1 れ と正 射 影 作
n1]))が 結 論 さ れ る.次
に
を定 義 す る.前
段 の 事 実 に よ り,Θ2∈C∞0(A)で
が 定 義 さ れ る(Φ2=0で とAの
あ る 場 合 に は,H2={0}で
自 己 共 役 性 を 用 い る と,H1とH2は
P1Φ2=Φ2,す
な わ ち,Θ2=0と
と考 え る.以
下,同
こ の と き,任
義 か ら,任 意 の Ψ ∈Hと
対 し てHn⊥Hm
Φ ∈KMに
と Φk∈KM(k=1,…,M)に
た が っ て,任
ら ば‖ Ψ-Φnk‖<ε.そ
への
Φnk=Ψ
の事 実
対 し て,番
を 意 味 す る.し
あ る.そ
と な る 部 分 列{Φnk}∞k=1が 号k0(ε
に 依 存 し う る)が あ っ
こ で,M〓nk0と
こ ろ で,Θn(n〓2)の
の 場 合 に はHn={0}で
対 して,
.正 射 影 の 定
対 し て,‖ Ψ-QMΨ‖〓‖Ψ-Φ‖.こ
意 の ε>0に
ε.こ れ はlimM→∞QMΨ=Ψ に, .と
.任 意 のM∈INに
す れ ばQM=ΣMn=1Pn
稠 密 性 に よ り,limk→∞
てk〓k0な
す れ ば‖ Ψ-QMΨ‖<
た が っ て, .ゆ
中 に は0に
こ で,Θ2,Θ3,…
番 号 の 小 さ い 順 に Ψ2,Ψ3,…,ΨN(N<∞
す れ ば,(A.4)が
い う場 合 もあ り う る が,こ
え
な る も の も あ り う る.そ
の う ち0で
ない もの を添 え字
ま た は 可 算 無 限)と
Hn:=L({AkΨn│k∈{0}∪IN})(n〓2)と n〓2と
閉 部 分 空 間Hn(Hn上
よっ て
存 在 す る.し
Θn=0,
お,
の 場 合 に は,H2={0}
す る)を 帰 納 的 に次 の よ う に 定 義 す る:
へ の 正 射 影 作 用 素 をQMと
他 方,{Φn}∞n=1の
あること
直 交 す る こ と が わ か る:H1⊥H2.な
ク トルΘn∈C∞0(A)と
意 のnとm(n≠m)に
あ る).Θ2∈H⊥1で
な る 場 合 も あ りう る が,こ
様 に して,ベ
正 射 影 作 用 素 をPnと
ある か ら閉部分 空 間
し,あ
成 り立 つ.も
の 場 合 はH=H1と
ら た め て, ち ろ ん,
な り,Ψ1がAの
巡
回 ベ ク トル で あ る こ と を意 味 す る. HnがAを
簡 約 す る こ と を示 す た め に,Ψ ∈D(A)を
liml→∞Ql(A)Ψnと R(EA([-q,
q])).し
な る 多 項 式 列Qlが た が っ て,PnΨ
liml→∞AQl(A)Ψn∈Hn.ゆ
あ る.あ
任 意 に と る.こ の と き,PnΨ= る番 号qが
あ っ て,Ql(A)Ψn∈
∈R(EA([-q, q]))⊂D(A)か
え に,PnAPnΨ=APnΨ
の 任 意 の ベ ク トル Φ との 内 積 を考 え る こ と に よ り,PnAPnΦ=PnAΦ れ と(*)に る.
よ り,APnΨ=PnAΨ
が 導 か れ る.よ
つAPnΨ=
…(*) .こ の 式 とD(A)
っ て,AはHnに
が わ か る.こ よって簡 約 され ■
A.2
強 可 換 な複 数 の 自 己共 役 作 用 素 に 同伴 す る直 和 分 解
T:={Tα}α
∈Λ(Λは添 え字 集 合)をH上
の 強可 換 な 自己共 役作 用 素 の集 合 族 と
し*31
(A.5) を 導 入 す る.ベ
ク トル Ψ ∈ ∩n∈IN∩
α1,…,αn∈Λ;l1,…,ln∈{0}∪IND(Tl1α1…Tlnαn)に
対
して
(A.6) と す る.定
理A.2の
定 理A.3
拡 張 と して 次 の 定 理 を証 明 す る こ と が で き る:
Hを 可 分 な ヒ ル ベ ル ト空 間,T={Tα}α
の 組 と し,C∞0(T)は
稠 密 で あ る と仮 定 す る.こ
{Ψn}Nn=1⊂C∞0(T)(Nは
∈Λ を 強 可 換 な 自己 共 役 作 用 素 の と き,零
で な い ベ ク トル の 直 交 系
有 限 ま た は 可 算 無 限)が 存 在 して
(A.7) が 成 り立 つ.さ
らに,各Hnは
証 明 定 理A.2の 注 意A.2 で,C∞0(T)は
各Tα
を簡 約 す る.
証 明 と ま っ た く並 行 的 で あ る の で,読
す べ て の α ∈Λ に 対 して,Tα 自 明 的 に 稠 密 で あ る.ま
∈B(H)な
た,Λ
者 の 演 習 とす る. ら ば,C∞0(T)=Hで
■ あ るの
が 有 限 集 合 の 場 合 に もC∞0(T)は
稠密
に な る.
ノ
ー
ト
単 独 の 極 大 観 測 量 の 理 論 は,純 数 学 的 に は,自 己 共 役 作 用 素 の スペ ク トル に 関 す る 重 複 度 理 論 の 一 部 を な す(さ
らに 詳 しい 理 論 展 開 に つ い て は,た
§86あ る い は[12]のp.231∼p.234を
参 照).単
可 換 な 物 理 量(観 測 量)に つ い て の 理 論 は,フ ノ イ マ ン 環 と呼 ば れ る,あ した 代 数EAは
ォ ン ・ノ イ マ ン代 数 あ る い は フ ォ ン ・
る 普 遍 的 な代 数 の 理 論 と 深 く関 わ っ て い る.1.6節
そ の 例 の 一 つ で あ る.物
マ ン環 の 詳 しい 理 論 につ い て は,作
で定 義
理 量 の 共 立 性 とそ の 測 定 に よ る状 態 の一 意 的
用 素 環 の 文 献,た
あ る.フ
と え ば,[9],
ォ ン ・ノ イ
[14]を 参 照 さ れ た
理 量 の 共 立 的 測 定 に 関 す る 物 理 的 な 議 論 に つ い て は,[13]のp.224∼p.232が
参 考 に な る で あ ろ う. *31 自 己 共 役 作 用 素 の 強 可 換 性 に つ い て は
§85,
独 の物 理 量 の 場 合 も含 め て,複 数 の 強
決 定 性 の 問 題 を こ の 観 点 か ら 詳 し く解 説 した 著 述 と して[10]が
い.物
とえ ば,[1]の
,[8]のp.262を
参 照.
第1章 演 習 問 題 Hは
ヒ ル ベ ル ト空 間 で あ る とす る.
1. dimH=N<∞
と し,H上
の 自 己 共 役 作 用 素Aの
て 単 純 で あ る と し,Aφj=λjφjと ベ ク トル).
(ⅰ) N個
の ベ ク トル φ0,Aφ0,…,AN-1φ0は
有 値 λjに 属 す るAの
固有
線 形 独 立 で あ る こ と を示 せ.
巡 回 ベ ク トル で あ る こ と を 示 せ.
ヒ ル ベ ル ト空 間H上
とす る.任
すべ
とお く.
(ⅱ) φ0はAの 2. Aを
す る(φjは,固
固 有 値 λ1,…,λNは
の 極 大 物 理 量 と し,Ψ0をAに
意 の λ0∈ σ(A)と 十 分 小 さい ε>0に
関す る生 成 元 の一つ
対 して,〓 ε を(1.14)に
よっ
て 定 義 す る.L2(〓 ε,dμAΨ0)の単 位 ベ ク トル の 集 合 をSε とお く:
ま た,各f∈L2(〓
ε,dμAΨ0)は,λ〓〓
ε な ら ばf(λ)=0と
し て,IR上
の 関数 に
拡 張 さ れ て い る と す る. (ⅰ) 任 意 のfε 全 体)に
∈Sε
とu∈C0(IR)(IR上
対 し てlimε
の 連 続 関 数 で 有 界 な 台 を もつ もの の
→0{〈fε,u〉L2(IR,dμAΨ0)-c(fε)*u(λ0)}=0を
示 せ.
た だ し,
(ⅱ) 任 意 のfε ∈Sε とu∈C0(IR)に を 示 せ.
3. 正 準 交 換 関係(CCR)の
対 して
シ ュ レ ー ディ ン ガ ー 表 現 に お け る1次
ハ ミ ル トニ ア ンHSos:=-(h2/2m)Δx+(K/2)x2(m p.370を
参 照)はL2(IRx)に
4. 任 意 のn∈INに
, Kは
元 調和 振動 子 の 正 の 定 数;[8]の
お け る 極 大 観 測 量 で あ る こ と を示 せ.
対 して,L2(IRx)に
お け る か け算 作 用 素x2nは
極大 観測 量 で
は な い こ と を示 せ. 5. AをHに
お け る 極 大 観 測 量 と し,MをHの
に よ っ て 簡 約 さ れ る な ら ば,AのMに
閉 部 分 空 間 とす る.も お け る部 分AM:=A│[M∩D(A)]はM
に お け る 極 大 観 測 量 で あ る こ と を証 明 せ よ*32. *32 作 用 素 の 簡 約 に つ い て は
,[7]のp.179,2.6.4項
を 参 照.
し,AがM
6. A:=(A1,…,AN)をH上
の 強 可 換 な 自 己 共 役 作 用 素 の 組 と し,EAを
積 ス ペ ク トル 測 度 とす る と き,suppEA⊂ ヒ ン ト:[3]の
命 題2-17を
σ(A1)×
… × σ(AN)を
その直 証 明せ よ.
参 照.
7. 定 理1.19の
証 明 せ よ.
8. 定 理1.22の
証 明 の 詳 細 を埋 め よ.
関 連 図 書
[1] ア ヒエ ゼ ル ・グ ラズ マ ン,『ヒルベ ル ト空 間論 上 下 』(千 葉 克 裕 訳),共 立 出版,1972, 1973. [2] 新 井 朝 雄,『
ヒ ル ベ ル ト空 間 と量 子 力 学 』,共 立 出 版,1997.
[3] 新 井 朝 雄,『
フ ォ ッ ク 空 間 と量 子 場 上 』,日 本 評 論 社,2000.
[4] 新 井 朝 雄,『
フ ォ ッ ク 空 間 と 量 子 場 下 』,日 本 評 論 社,2000.
[5] 新 井 朝 雄,『 物 理 現 象 の 数 学 的 諸 原 理 』,共 立 出 版,2003. [6] 新 井 朝 雄,『 現 代 物 理 数 学 ハ ン ドブ ッ ク 』,朝 倉 書 店,2005. [7] 新 井 朝 雄 ・江 沢 洋,『 量 子 力 学 の 数 学 的 構 造Ⅰ 』,朝 倉 書 店,1999. [8] 新 井 朝 雄 ・江 沢 洋,『 量 子 力 学 の 数 学 的 構 造Ⅱ 』,朝 倉 書 店,1999. [9] O.Bratteli tical
[10] 江 沢 洋,量 [11] J.v.ノ
and
Mechanics
Algebras
and
Quantum
Statis
子 力 学 の 構 造,[15]の
第16章
∼ 第18章.
イ マ ン,『 量 子 力 学 の 数 学 的 基 礎 』(井 上 健・ 広 重 徹 ・恒 藤 敏 彦 共 訳),み
房,1957.原
著"Mathematische
Springer)は1932年 [12] M.Reed tional
D.W.Robinson,Operator I,Springer,1979.
Grundlagen
der
すず 書
Quantenmechanik"(Berlin,
に 出 版.
and B.Simon,Methods Analysis,Academic
of Modern Press,1972.
[13] 朝 永 振 一 郎,『 量 子 力 学Ⅱ 』(第2版),み
Mathematical
Physics
I:Func
す ず 書 房,1952,1997.
[14] 梅 垣 壽 春 ・大 矢 雅 則 ・日 合 文 雄,『 作 用 素 代 数 入 門 』,共 立 出 版,1985,2003. [15] 湯 川 秀 樹 ・豊 田 利 幸 編,『 岩 波 講 座 書 店,1978.
現 代 物 理 学 の 基 礎[第2版]4量
子 力 学Ⅱ 』,岩 波
2 物理量 の自己共役性
具体的な量子系 にお ける物理量 と日され る作用素の自己共役性 あるいは本質的 自己共 役性 を証明するための一般的方法のい くつか を論述 し,シ ュ レーディ ンガー型作用素 と ディラ ック型作用素へ応用する.
2.1
は
じ
め
に
量 子 力 学 に お け る物 理 量 は状 態 の ヒ ルベ ル ト空 間 にお け る 自己 共 役 作 用 素 で 表 され る([6]の3章,3.1節
に お け る 公 理QM2).正
現 と して の 量 子 力 学 とい う観 点([6]の3章,3.3.7項)か ト空 間 はCCRの
準 交 換 関 係(CCR)の
らは,状 態 の ヒル ベ ル
表 現 空 間 に な っ て い な け れ ば な らな い.こ
量 子 系 に お け る物 理 量 はCCRの
表
の場 合,考
察下 の
表 現 を与 え る 自己 共 役作 用 素 か らつ くられ る.
対 象 とす る量 子 系 が 古典 的 対 応 物 を もつ 場 合 に は,対 応 す る古 典 力 学 系 の物 理 量 か ら,あ る種 の 形 式 的対 応 規 則 に よ り,量 子 力 学 的 物 理 量 と 目 され る作 用 素 が 定 義 され る([6]の3章,3.4節
を参 照).し
か し,そ の よ う に して 与 え ら れ る作
用 素 た ち が 本 当に 物 理 量 で あ るか ど う か,す な わ ち,(本 質 的 に)自 己 共 役 で あ る か ど うか は た だ ち には 明 ら か で は な く,さ しあ た り,状 態 の ヒル ベ ル ト空 間 全 体 で は定 義 され な い(非 有 界)対 称 作 用 素 で あ る こ と しか わ か らな い場 合 が 多 い.そ
こで,そ の よ う な対 称 作 用 素 が 実 際 に(本 質 的 に)自 己共 役 で あ る こ と を
証 明 す る必 要 が あ る*1.こ れ は,量 子 力 学 の 公 理 論 的 体 系 が 物 理 理 論 と して も 首 尾 一 貫 した もの で あ る こ とを 示 す た め に は避 け て 通 る こ との で きな い 重 要 な
*1 定 義域 が ヒルベ ル ト空 間 全 体 で あ る対 称 作 用 素 は自 動 的 に 自己 共役 で あ る ので 合 は 全 然問 題 にな らない.
,こ の 場
問 題 の 一 つ で あ る.実 際,物 理 量 の(本 質 的)自 己 共 役 性 が 証 明 され な け れ ば, ス ペ ク トル定 理 を適 用 す る わ け に は い か ない の で ,普 遍 的な 形での 確 率 解 釈 は で き ない.前 著[5, 6]で 提 示 した 公 理 論 的量 子 力 学 の 枠 組 み が 量 子 的 諸 現 象 を 支 え る,宇 宙 の 根 源 的 な 理 と して 真 の リ ア リテ ィ を獲 得 す る に は,諸 々 の具 体 的 な量 子 系 に お け る物 理 量 の(本 質 的)自 己 共 役 性 を確 立 す る こ とは 不 可 欠 なの で あ る.特
に,量 子 系 の 全 エ ネ ル ギ ー を表 す ハ ミル トニ ア ンの 自己 共 役 性 は,系
の 時 間 発 展 の 存 在 と一 意 性 を保 証 す る意 味 で も本 質 的 で あ る([6]のp 理3.39と
.337,定
そ のす ぐあ との叙 述 を参 照).物 理 量 の(本 質的)自 己共 役 性 の 問 題 は
単 な る 数 学 的 な問 題 に と ど ま る もの で は な く,量 子 力 学 的 世 界 観 の厳 密 な基 礎 づ け と深 く関 わ る の で あ る . 物 理 量 の候 補 とな る諸 々 の(非 有 界)対 称 作 用 素 の(本 質的)自 己 共 役 性 を証 明 す る問 題 は,純 数 学 的 に い え ば,対 称 作 用 素 の 種 々の 型 に応 じて,そ れ が(本 質 的 に)自 己共 役 で あ る た め の 判 定 条 件 を見 つ け る 問 題 と等 価 に な る. 量 子 的粒 子 の 運 動 量 作 用 素 や 自 由ハ ミル トニ ア ンあ る い は 自 由 な ス カ ラ ー量 子 場 の ハ ミル トニ ア ンが 自己 共役 作 用 素 と して実 現 され る こ とは前 著[6]で す で に み た.本 章 で は,他 の 諸 々 の 物 理 量 の 自己 共 役 性 を証 明 す る た め の判 定 条 件 を定 式 化 す る. こ こで の ア プ ロ ーチ の 基 本 的 な考 え方 を示 す ため に,た とえ ば,ハ ミル トニ ア ンの 自己共 役 性 を証 明 す る問 題 を考 え よ う.量 子 系 の ハ ミル トニ ア ンHは くの場 合,H=H0+HIと
い う形 で 与 え られ る.こ
た"自 己共 役 作 用 素 で あ り,HIは
対 称 作 用 素 で あ る*2.も
この よ うな 分 解 の 仕 方 は 一 意 的 で は な い が,そ 適 切 な意 味 にお い て,H0を
こで,H0は"よ
,多
くわ か っ
ちろ ん,Hに
対する
れ ぞ れ の コ ン テ ク ス トにお け る
無 摂 動 部 分(ま た は無 摂 動 作 用 素),HIをH0に
す る摂 動(ま た は摂 動 作 用 素)と 呼 ぶ こ とが 可 能 で あ る.HIを
対
相 互作用部分 と
い う場 合 もあ る.他 の 物 理 量 につ い て も同 様 で あ る.こ の 観 点 か らは ,物 理 量 の 自己 共 役 性 の 問題 は,抽 象 的 な 形 で は,次 の よ うに 定 式 化 され る: 問 題(S): Hを ヒルベ ル ト空 間,AをH上 用 素 と し,Aの *2 調 和 振 動 子([6]の3章
定 義 域D(A)とBの
の 自己 共役 作 用 素,BをH上 定 義域D(B)の
,3.8節)や[6]の4章,4.2.4項
の対 称 作
共 通部 分D(A)∩D(B) に お け る 例 を 参 照.
は稠 密 で あ る とす る(し た が っ て,A+Bは
対 称 作 用 素 で あ る).こ の と
き,ど の よ う な条 件 の も とで,A+Bは(本
質 的 に)自 己共 役 で あ るか?
量 子 系 の ハ ミル トニ ア ンに 関 して は,そ の(本 質 的)自 己 共 役 性 に加 えて,そ れ が 下 に有 界 で あ る か否 か を決 定 す る こ と も数 理 解 析 の 第 一段 階 と して重 要 な 問題 の 一 つ で あ る*3.こ れ は,物 理 的 に は,原 子 の 安 定 性,し 質 の 安 定 性(stability of matter)と
た が っ て ま た物
関 連 して い る.
周 知 の よ う に,古 典 物 理 学 の枠 組 み で は原 子 の 安 定 性 を示 す こ と はで き ない. 具 体 的 に い え ば,古 典 物 理 学 的描 像 で は,原 子 核 の ま わ りを運 動 す る電子 は,そ の 加 速 運 動 に よ り,電 磁 放 射 を 行 い,非 常 に 短 時 間 の う ち に(10-11秒
の オー
ダー),原 子 核 に落 ち込 む.こ れ は,原 子 が恒 常 的 に一 定 の ひ ろ が りを もっ て存 在 し得 な い こ と を意味 す る.す な わ ち,原 子 は安 定 で は な い*4.し 然,原
たが って,当
子 か ら構 成 さ れ る 巨視 的 物 質 も恒 常 的 に 存 在 す る こ とは 不 可 能 で あ る こ
と に な る.ゆ
え に,古 典 物 理 学 は巨 視 的物 質 が 安 定 に存 在 す る とい う基 本 的 な
経 験 的 事 実 を 説 明 しない. で は,量 子 力 学 の原 理 は物 質 の安 定性 を真に 保 証 す るで あ ろ うか.も こ の 場 合,安
定 性 の概 念 は,ア
ち ろん,
プ リオ リに与 え られ て い る わ け で は な く,む し
ろ,量 子 力 学 の 原 理 的解 釈 と整 合 的 に な る よ う な仕 方 で 見 い だ す べ き もの で あ る.そ
こ で,次 の よ うな発 見 的 考 察 を行 っ て み よ う.量 子 力 学 にお い て は,異
な る エ ネ ルギ ー を もつ状 態 間 の遷 移 が 確 率 的 に 可 能 で あ る.し た が って,も
し,
系 の ハ ミル トニ ア ンが 下 に有 界 で な い とす れ ば,任 意 の 有 限 エ ネ ル ギ ー を もつ 状 態 に あ っ た 系 は,自 律 的 に,あ る い は他 の 系 との 相 互 作 用 の も とで,い
くら
で も低 いエ ネ ル ギ ー に遷 移 す る こ とが 可 能 で あ ろ う.そ の 場 合 に は,系 は,エ ネ ル ギ ー を放 射 しつ つ,エ
ネル ギ ー の よ り低 い 状 態 へ と次 々 と遷 移 し,系 は あ
る 一 定 の状 態 に と ど まる こ と は ない と推 測 され る.こ の 意 味 で 系 は安 定 で は な い.し た が っ て,そ の よ う な"カ タス トロー フ"が 起 きな い た め に は,ハ ミル ト ニ ア ン は下 に有 界 で な け れ ば な ら な い で あ ろ う.こ *3 対 称 作 用 素Aに り立 つ と き,Aは 参 照). *4 詳 し く は
対 して
う して,ハ
ミル トニ ア ンの
,実 定 数γ が 存 在 し て,〈 Ψ,AΨ 〉〓γ‖ Ψ‖2,∀ Ψ ∈D(A)が 下 に 有 界 で あ る とい い,こ の こ と をA〓γ と記 す([5]のp.133を
,[18]のp.84∼p.86を
参 照.
成
下 界 性 は 系 の"安 定 性"の 必 要 条件 で あ る と考 え られ る.だ が,そ れ は量 子 力 学 系 の 安 定 性 の 一 つ の定 性 的 指 標 を表 す もの と も解 釈 され う る.そ こ で,系 の ハ ミル トニ ア ンが 下 に有 界 で あ る と き,系 は 第 一種 の 安 定性 ま た は弱 安 定 性 を も つ とい う. ハ ミル トニ ア ンHが
自己 共 役 か つ 下 に有 界 で,そ の 最 低 エ ネ ル ギ ー
(2.1) がHの
固 有 値 で あ る と き,こ
(ground
state)と
な ら ば,系
れ に 属 す るHの
固 有 ベ ク トル をHの
呼 ぶ こ と は す で に 述 べ た([6],
は,弱
p.339).系
が 基 底 状 態 を もつ
安 定 な 場 合 よ り も 安 定 で あ る と と解 釈 さ れ る.そ
下 に 有 界 で 基 底 状 態 を も つ と き,系
N個
の ハ ミ ル トニ ア ン をHNと
に よ ら な い 定 数C〓0が
あ っ て,HN〓-CN…(*)が
二 種 の 安 定 性 ま た はH安
定 性 を も つ と い う.
特 性(*)は,任
意 の 状 態 Ψ ∈D(HN),‖
れ は,物
理 的 に は,任
ギ ー(左 辺)が,Nに た が っ て,Nが
す る と き,N
成 り立 つ と き,系
Ψ ‖=1に
対 し て,〈Ψ,HNΨ
意 の 状 態 に お け る1粒
増 え て も減 っ て も,1粒
は第
〉/N〓-C
子 あ た りの 平 均 エ ネ ル
子 あ た りの 平 均 エ ネ ル ギ ー は 下 が る こ
は 粒 子 数 の 変 化 に つ い て も安 定 で あ る と解 釈 さ れ る*6.
*5 "弱 安 定 性"と"強
安 定 性"と
導 入 す る も の で あ る.Hの e-itH/hΨ0=e-itE0(H)/hΨ0で で 不 変 で あ る(i.e.,
い う術 語 は 標 準 的 な もの で は な く 基 底 状 態 の 一 つ を Ψ0と あ る の で,Ψ0は
e-iHt/hΨ0と
Ψ0は
元 で 表 さ れ る.い の と き,任
Ψ(t):=e-itH/hΨ 間発 展 に関 して安 *6 も し ,1粒 子 あた 対 して は,そ の利 こ れ ば,系 の粒 子
,筆 者 が こ こ で 試 み に す れ ば,任 意 のt∈IRに 対 し て, 系 の 時 間発 展 に対 して射 線 の意 味
同 じ状 態 を 表 す ベ ク トル).他
有 界 で あ る が,基 底 状 態 を も た な い 場 合 に は,そ 近 い 状 態 はR(EH([E0(H),E0(H)+ε]))(EHはHの と し よ う.こ
と え ば,
よ ら な い 一 定 の 数 で 下 か ら抑 え ら れ る こ と を 意 味 す る.し
と は な い の で,系
十 分 小)の
子 的 粒 子 の個
一 つ の パ ラ メ ー タ ー と す る 量 子 系 に お い て(た
の 非 相 対 論 的 粒 子 か ら な る 系),そ
を 導 く.こ
こ で,Hが
は 強 安 定 で あ る と い う*5.
弱 安 定 性 あ る い は 強 安 定 性 の ほ か に も 安 定 性 の 概 念 が あ る.量 数N(N=1,2,…)を
基底状 態
ま,Hは[E0(H),E0(H)+ε]の
定―,Ψ(t)は
下に
中 に 固有 値 を もた な い
意 の Ψ ∈R(EH([E0(H),E0(H)+ε])(Ψ
∈R(EH([E0(H),E0(H)+ε]))で
方,Hが
の エ ネ ル ギ ー の 期 待 値 がE0(H)に ス ペ ク トル 測 度,ε>0は ≠0)に
対 し て,
あ る が― こ の 意 味 で,Ψ
は時
Ψ と 同 じ状 態 を 表 さ な い.
りの 平 均 エ ネ ル ギ ー がNの 累 乗 で 急 激 に 下 が れ ば,十 分 大 き なNに 得 を 使 っ て,粒 子 が 生 成 す る こ と が 起 こ り う る.ひ と た び,そ れ が 起 数 が さ ら に 増 し,エ ネ ル ギ ー が 一 層 下 が る.し た が っ て,再 び 粒 子 の
ハ ミル トニ ア ンHが あ る 閉部 分 空 間Mが 約 部 分HMが
下 に有 界 で な い場 合 で も,状 態 の ヒ ルベ ル ト空 間 の 中 に, あ っ て,HがMに
よ っ て簡 約 され,HのMに
下 に 有 界 で あ れ ば,HMは
物 理 的 に意 味 を もつ場 合 が あ りう る*7.
た と え ば,デ ィラ ック作 用 素HD([6]の3章,3.4.3項)を す る系 は そ の よ う な例 の 一 つ で あ る.[6]の 定 理3.30で に有 界 で は な いが,HDは はHDの
お け る簡
ハ ミル トニ ア ン と 示 した よ う に,HDは
下
閉 部分 空 間H+:=EHD([0,∝))L2(IR3;C4)(EHD(・)
ス ペ ク トル 測度)―
これ は,物 理 的 には,非 負 エ ネ ルギ ーの 状 態 空 間 を
表 す― に よ って 簡 約 され,そ の 簡 約 部 分 をHD,+と は粒 子 の 静 止 質 量)が 成 り立 つ.し
た が ってHD
い ま の例 か ら もわ か る よ う に,ハ
す れ ばHD,+〓m(m〓0
,+は 下 に有 界 で あ る.
ミル トニ ア ンHが
下 に有 界 で な い か ら と
い っ て,そ れ が"物 理 的"で な い と判 断す る こ とは必 ず し も正 当 で あ る とは い え な い.重 要 な こ と は,Hか
ら"物 理 的"と 解 釈 さ れ うる 内 容 が 引 き出 せ る か 否
か で あ る.
2.2
前 節 で 提 起 した 問 題(S)で
小
は,BがAに
さ い 摂 動
対 す る 摂動 で あ り,Aが
素 で あ る.摂 動 とい う観 点 か らは,摂 動 作 用 素Bが Aに 対 して"小 さ い"な ら ば,A+Bも そ こ で,問 題(S)を
無摂動作用
適当な意味で無摂動作用素
ま た 自己 共 役 に な る こ とが予 想 され る.
考 察 す る に あ た っ て は,BがAに
関 して"小 さい"場 合 と
必 ず し もそ うで な い場 合 と に分 け る の が 自然 で あ る.ま ず,前 者 の場 合 か ら議 論 す る.こ の節 を通 して,Hは
複 素 ヒ ルベ ル ト空 間 で あ る とす る.
2.2.1 相 対 的 有 界 性 摂 動 作 用 素 の 無 摂 動 作 用 素 に関 す る相 対 的 な小 さ さ を測 る 一 つ の尺 度 を導 入 す る: 生 成 が 起 こ る.こ の よ うな過 程 が 際 限 な く繰 り返 され る こ と にな れ ば,系 は安 定 とみ な せ る状 態 で は存 続 で きな い.本 書 で は,残 念 なが ら,ハ ミル トニ ア ンのH安 定性― これ は種 々 の不 等 式 と関連 してい て 純数 学 的 に もたい へ ん お も しろ い主 題― につ い て 論 じる 紙 数 は とれ なか った.興 味 の あ る読 者 は,[7]や[17]を 参 照 され たい. *7 作 用 素 の簡 約 につ い て は ,[5]の2章,2.6.4項 を参 照.
定 義2.1
A, Bを
ヒ ル ベ ル ト空 間H上
と す る:(ⅰ) D(A)⊂D(B);(ⅱ)
の 作 用 素 で 次 の(ⅰ), (ⅱ)を 満 た す も の
定 数a〓0,
b〓0が
存 在 して
(2.2) こ の と き,BはAに
関 し て 相 対 的 に 有 界(relatively
界(A-bounded)で BのA-限
あ る と い い,aをBのA-限
bounded)あ
る い はA-有
界 と い う.
界 の下限
が成立 をAに
関 す る,Bの
r(A,B)=0の
相 対 限 界(relative 場 合,BはAに
記 号 的 にB≪Aと
例2.1 0.し
関 し て 無 限 小(infinitesimal)で
あ る と い い,
界 が 小 さ け れ ば 小 さ い ほ ど,BはAに
い う 観 点 に よ っ て,BのAに
Bが
呼 ぶ.
表 す.
上 の 定 義 は,BのA-限 小 さ い,と
bound)と
(2.3)
有 界 でD(A)⊂D(B)な
た が っ て,B≪Aで
あ る.だ
比 べ て,よ
り
対 す る 小 さ さ を 測 る も の で あ る. らば,a=0,
が,こ
b=‖B‖
に とれ るか ら,r(A,B)=
の 逆 は必 ず し も成 立 し な い(次 の 注 意 を
参 照).
注 意2.1 れ る:任
容 易 に わ か る よ う に,B≪Aで 意 の ε>0に
対 し て,定
あ る こ と は次 の よ う に言 い 換 え ら
数bε〓0が
あって
(2.4) が 成 り立 つ.
証 明 B≪Aな
ら ば,非 負 の 数 列{an}∞n=1,
{bn}∞n=1で 次 の 条 件(a),
す も の が 存 在 す る:(a) limn→ ∞an=0;
(b) ‖BΨ ‖〓an‖AΨ
D(A),n∈IN.(a)よ
対 し て,番
ら ば0〓an<ε 逆 に,任
り,任 意 の ε>0に が 成 り 立 つ.そ
意 の ε>0に
か で あ る.
こ でbε=bn0と
対 し て,(2.4)が
号n0が
(b)を 満 た
‖+bn‖ Ψ‖,Ψ ∈ あ っ て,n〓n0な
お け ば,(2.4)が
成 り立 つ な ら ば,r(A,B)=0は
成 り立 つ. 明 ら ■
命 題2.2
Nを
自 然 数 と し,A,
(ⅰ) B≪Aな
ら ば,任
B, Bj(j=1,…,N)をH上
意 の λ ∈C\{0}に
(ⅱ) Bj≪A(j=1,…,N)な 証 明 (ⅰ) こ れ は(2.4)と
の 作 用 素 と す る.
対 して λB≪A.
ら ば 「ε>0が
.
任 意 な ら ば,│λ│ε(λ
≠0)も
任意の正数 に
と れ る 」 と い う 事 実 か ら し た が う. (ⅱ) (2.4)に
お い て,B=Bjと
に つ い て1か
らNま
し て 得 ら れ る 不 等 式(bε をbj,ε とす る)をj
で加 えれ ば
3角 不 等 式 に よ り, ε>0が
ま た,ε'=Nε
任 意 な ら ば,ε'も 任 意 に とれ る.し
とお くと,
たが っ て,
■
相 対 的 に有 界 な作 用 素 に よ る摂 動 問 題 を考 察 す る 際 に頻 繁 に使 わ れ る こ とに な る基 本 的 事 実 を証 明 して お こ う. 補 題2.3 (Aの
A, Bを
定 義2.1の
も の とす る.さ
レ ゾ ル ヴ ェ ン ト集 合)≠0と
し て,B(A-z)-1∈B(H)で
ら に,Aは
仮 定 す る.こ
閉 作 用 素 で あ り,ρ(A)
の と き,任
意 のz∈
ρ(A)に 対
あ り
(2.5) が 成 り立 つ. も し,Aが
閉 対 称 作 用 素 な らば
(2.6) が 成 り 立 つ.こ 証 明 Aは
こ で,ε
は 括 弧 の 中 の 条 件 を 満 た す 任 意 の 正 の 定 数 で よ い.
閉 で あ る か ら,A-zは
任 意 の Ψ ∈Hに
対 して,(A-z)-1Ψ
全 単 射 で あ り,(A-z)-1∈B(H)で ∈D(A)で
あ る か ら,不
あ る. 等 式(2.2)に
よって
(2.7)
A(A-z)-1=1+z(A-z)-1で
あ る の で,A(A-z)-1∈B(H)で
あ り
(2.8) が 成 立 す る.不 下 で あ る.ゆ
等 式(2.7)の
右 辺 は(a‖A(A-z)-1‖+b‖(A-z)-1‖)‖
Ψ‖ 以
えに
(2.9) こ れ と(2.8)に 次 に,Aが
よ り,(2.5)が
得 ら れ る.
閉 対 称 作 用 素 の 場 合 を 考 え よ う.こ
の 場 合,任
意 の Ψ ∈D(A)に
対 して
シ ュ ヴ ァル ツの 不 等 式 に よ り
こ こ で ε>0は
任 意 で よ い.し
が 導 か れ る.こ
れ は,│x│<1/ε
を 意 味 す る.[5]の
(x,y∈IR)と
A, Bは
ら(2.6)が
補 題2.3と
な らば
の とき
補 題2.39(p.140)の(ⅰ)に
こ れ ら の 事 実 と(2.9)か
定 理2.4
た が っ て,│z│〓1/ε
よ っ て ‖(A-z)-1‖〓1/│Imz│.
し た が う.
■
同 じ条 件 に し た が う と し,z=x+iy∈
ρ(A)
す る.
(ⅰ) Ca,b,z:=a+(a│z│+b)‖(A-z)-1‖<1な
ら ば,z∈
ρ(A+B)で
あ り
(2.10)
さ ら に,‖B(A-z)-1‖〓Ca,b,z<1で
あ り
(2.11) と い う 評 価 が 成 り立 つ. (ⅱ) Aが ら ば,z∈
閉 対 称 で ρ(A+B)で
な あ り,(2.10)が
成 り立 つ.
証 明 次 の 作 用 素 等 式 に 注 意 す る:
(2.12) (ⅰ) 仮 定 の 条 件 の も と で は,(2.5)に [5]の 定 理1.34に
よ っ て,1+B(A-z)-1は
が 成 り立 つ.ゆ
え に(2.12)に
が 成 り立 つ.よ
っ て,z∈
す に は,(2.10)か
よ り,‖B(A-z)-1‖<1.し 全単射 であ り
よ り,A+B-zは
ρ(A+B)で
た が っ て,
全単射 であ り
あ り,(2.10)が
成 り立 つ.(2.11)を
示
ら導 か れ る式
の 両 辺 の作 用 素 ノ ル ム を と り,そ の右 辺 が
と抑 え ら れ る こ と に 注 意 す れ ば よ い. (ⅱ) (ⅰ)と 同 様.
■
補 題2.5
A, BをH上
で あ る と す る.こ
の 作 用 素 と し,BはA-有
の と き,す
界 で そ のA-限
べ て の Ψ ∈D(A)に
界aは1未
満
対 して
(2.13) (2.14) が 成 り立 つ.こ
こ で,bは(2.2)に
証 明 任 意 の Ψ ∈D(A)に 角 不 等 式 と(2.2)を
お け る 定 数 で あ る.
対 して,AΨ=(A+B)Ψ-BΨ
…(*)と
表 し,3
用 いる と
し た が っ て,(1-a)‖AΨ‖〓‖(A+B)Ψ‖+b‖BΨ‖.ゆ
え に(2.13)が
得 ら
れ る. (2.2)の
右 辺 の‖AΨ‖
(2.14)が
代 入 し,前
段 と 同 様 の 計 算 を 行 う こ と に よ り,
導 か れ る.
2.2.2 第5章
に(*)を
■
閉作用 素の摂動 へ の 準 備 も 兼 ね て,こ
こ で,閉
作 用 素 の 閉 性 の,摂
動 の も とで の 安 定 性
の 問 題― 摂 動 を加 え て 閉 性 が 保 存 さ れ る か 否 か と い う 問 題―
定 理2.6 そ のA限
AをH上 界aは1未
の 閉 作 用 素,BをH上 満(0〓a<1)で
に ふ れ て お く*8.
の 可 閉 作 用 素 と し,BはA-有 あ る とす る.こ
界で
の と き,A+Bは
閉作
用 素 で あ る.
証 明 点 列 Ψn∈D(A+B)=D(A)が H(n→
∞)を
Ψn-Ψmを て,η:=limn→
満 た す と し よ う.こ
Ψn→ の と き,不
考 え る と,{AΨn}nはHの ∞AΨnが
存 在 す る.Aは
Ψ ∈H,(A+B)Ψn→ 等 式(2.13)に
*8 有 界 な 作 用 素 に よ る 摂 動 の も と で の 閉 性 の 安 定 性 は み た.こ
こ で は,若
干 の 一 般 化 を行 う.
お け る Ψ と して
コ ー シ ー 列 で あ る こ と が わ か る.し 閉 で あ る か ら,Ψ
,す
Φ ∈
たが っ
∈D(A)=D(A+B)
で に[5]の
定 理2.5(p.103)で
か つ η=AΨ.BのA-有 る.し
界 性 に よ り,{BΨn}nも
た が っ て,X:=limn→
で な け れ ば な ら な い.ゆ A+Bは
∞BΨnが
コ ー シ ー列 で あ る こ とが わか
存 在 す る.Bは
可 閉 で あ る か ら,BΨ=X
え に,Φ=η+X=AΨ+BΨ=(A+B)Ψ.よ
っ て,
閉 で あ る.
2.2.3
■
加 藤― レ リ ッ ヒ の 定 理
摂 動Bが
無 摂 動 作 用 素Aに
関 し て 相 対 的 に 有 界 で あ る 場 合 の 作 用 素A+B
の 自 己 共 役 性 に 関 す る 基 本 的 な 定 理 の 一 つ を 証 明 す る. ヒ ル ベ ル ト空 間H上 す.H上
の 可 閉 作 用 素Cに
の 閉 作 用 素Tと
部 分 空 間D⊂D(T)に
が 可 閉 で あ り,T│D=Tが
定 理2.7
共 役 作 用 素,BをH上
よ っ て,Cの
つ い て,TのDへ
成 り 立 つ と き,DをTの
(加 藤― レ リ ッ ヒ(Rellich)の
し てa<1と
対 し て,Cに
芯(core)で
定 理)Aを
の 制 限T│D あ る と い う*9.
ヒ ル ベ ル ト空 間H上
の 対 称 作 用 素 と す る.BはA-有
な る も の が と れ る と 仮 定 す る.こ
閉包 を表
の 自己
界 で そ のA-限
の と き,次
界aと
の(ⅰ)∼(ⅲ)が
成 り
立 つ:
(ⅰ) A+Bは
自 己 共 役 で あ る.
(ⅱ) A+BはAの (ⅲ) Aが
任 意 の 芯 上 で 本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る.
下 に 有 界 でA〓
γ>-∞(γ:実
定 数)な
ら ば,A+Bも
下 に有 界
で あ り,
(2.15) た だ し,a,
bは(2.2)で
与 え ら れ る 定 数 で あ る(0〓a<1).
こ の 定 理 は 次 の 有 用 な 事 実 も含 ん で い る こ と に 注 意 し よ う.す Bが
定 理2.7の
仮 定 を 満 た す な ら ば,定 理2.7の
結 論 は,Bを
に 置 き換 え て も 成 り立 つ.な
ぜ な ら,任
意 の λ ∈[-1,1]に
仮 定 を 満 た す か ら で あ る.ち
な み に,こ
の 定 理 に 限 ら ず,与
こ の 種 の 含 意 を 読 み 取 る こ と は,抽 る 意 味 で も,重 *9
[5]の2章
λB(∀ λ ∈[-1,1]) 対 して,λBも
同 じ
え ら れ た 定 理 か ら,
象 的 な ア プ ロー チ の 強 力 さ の恩 恵 に あず か
要 な 思 考 作 業 の 一 つ で あ る.
,2.1.3項,2.3.7項.
な わ ち,作 用 素
定 理2.7を
証 明 す る 前 に,以
と し て 述 べ て お こ う.線
補 題2.8
Aを
∼(ⅳ)が
下 で 頻 繁 に使 う こ と にな る基 本 的 な事 実 を 補 題
形 作 用 素Tの
ヒ ル ベ ル ト空 間H上
値 域 をR(T)に
よ っ て 表 す.
の 対 称 作 用 素 と し よ う.こ
の と き,次 の(ⅰ)
成 り立 つ:
(ⅰ) あ る λ ∈IR\{0}に
対 し て,R(A±iλ)=Hな
ら ば,Aは
自 己共 役 で
あ る. (ⅱ) あ る λ ∈IR\{0}に
対 し てR(A±iλ)がHで
稠 密 な ら ば,Aは
本 質的
に 自 己 共 役 で あ る. (ⅲ) Aは
下 に 有 界 でA〓
γ(γ ∈IR)と
在 し て,R(A-γ+λ)=Hな (ⅳ) (ⅲ)と
ら ば,Aは
同 じ 条 件 の も と で,あ
稠 密 な ら ば,Aは
し よ う.こ
の と き,あ
る λ>0に
対 し てR(A-γ+λ)がHで
本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る.
自 己 共 役 性 の 一 般 的 判 定 条 件([5]の え にAも
意 味 す る.し
定 理2.41)に
稠 密 な ら ば,R(λ-1A±i)はHで
本 質 的 自 己 共 役 性 の 一 般 的 判 定 条 件([5]の 的 に 自 己 共 役 で あ る.し (ⅲ) A=A-γ
定 理2.20),十
れ はAの
*10 零 で な い 任 意 の 実 数kと 易;[5]の *11 λ-1Aの
共 役(証
よ っ て,λ-1Aは
本質
本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る*11. す る と,‖(A+λ)Ψ‖2〓 は 単 射 で あ る.し
は 全 単 射 に な る.ゆ
た が っ て,R(A+λ
共 役 で あ る.こ
ら,Aも *12 一 般 に
た が っ て,Aも
あ る か ら,A+λ
合 で あ っ た か ら([5]の で あ る.し
自己 共 役 で
稠 密 で あ る か ら,
定 理2.44)に
と お く と,A〓0.λ>0と
∈D(A)で
件 の も と で,A+λ
よ っ て,λ-1Aは
た が っ て,
自 己 共 役*10.
(ⅱ) R(A±iλ)がHで
λ2‖Ψ‖2,Ψ
存
自 己 共 役 で あ る.
証 明 (ⅰ) 条 件R(A±iλ)=HはR(λ-1A±i)=Hを
あ る.ゆ
る λ>0が
え に,-λ
∈ ρ(A).一
分 小 さ な δ>0に
±iδ)=H.ゆ
た が っ て,問 方,ρ(A)は
対 して,-λ
え に,(ⅰ)に
題の条 開集
±iδ ∈ ρ(A)
よ り,A+λ
は 自己
自 己 共 役 性 を 意 味 す る*12. 任 意 の 自 己 共 役 作 用 素Aに
命 題2.2-(ⅱ),(2.12)式 をB=kIと 閉 包 は λ-1Aで あ る こ と に 注 意(AはAの
対 して ,kAは
自 己 共 役(証
明 は容
し て 応 用 し て も よ い). 閉 包 を 表 す) .こ れ が 自 己 共 役 だ か
自 己 共 役 に な る. ,Tを
任 意 の 自 己 共 役 作 用 素 と す る と き,任
明 は 容 易;[5]の
命 題2.2-(ⅰ),
(2.10)式
意 の 実 数xに をB=xIと
対 して,T+xは
自己
して 応 用 し て も よ い).
(ⅳ) (ⅲ)と て,Aは
補 題2.9 ∼(ⅳ)が
同 様 に し て,A+λ
が 全 単 射 に な る.こ
本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る.ゆ
Aを
え にAは
ヒ ル ベ ル ト空 間H上
れ と(ⅲ)の
事 実 に よっ
本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る.
の 対 称 作 用 素 と し よ う.こ
■
の と き,次 の(ⅰ)
成 り立 つ:
(ⅰ) Aが
ば,Aは
閉 で あ り,あ
る λ ∈IR\{0}に
対 し て,ker(A*±iλ)={0}な
ら
自 己 共 役 で あ る.
(ⅱ) あ る λ ∈IR\{0}に
対 し てker(A*±iλ)={0}な
ら ば,Aは
本 質的に
自 己 共 役 で あ る. (ⅲ) Aは
閉 か つ 下 に 有 界 でA〓γ(γ
∈IR)と
が 存 在 してker(A*-γ+λ)={0}な (ⅳ) A〓
し よ う.こ
ら ば,Aは
γ か つ あ る λ>0に
の と き,あ る λ>0
自 己 共 役 で あ る.
対 し てker(A*-γ+λ)={0}な
ら ば,Aは
本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る.
証 明 A*は
閉 で あ る か ら,直
り立 つ([5]のp.138,補
交 分 解H=ker(A*±i)
題2.37).こ
こ で,閉
は 閉 集 合 で あ る こ と([5]のp.140,補
対 称 作 用 素Sに
題2.39)も
(ⅰ) こ の 問 題 の 条 件 と(*)はH=R(A〓i)を R(A〓i)に
等 しい.し
た が っ て,補
な わ ち,R(A〓i)はHで
よ っ て,Aは
定 理2.7の
つ い て は,直
よ っ て,Aは
自 己 共 役 で あ る.
よ りH=R(A〓i).右
辺 はR(A〓i)に
た が っ て,補
交 分 解H=ker(A*-γ+λ)
証 明 (ⅰ) 補 題2.8-(ⅰ)に
∈ ρ(A).し
題2.8-(ⅱ)に
R(A-γ+λ)を
∈ ρ(A+B).す
用 ■
よ り,あ る λ ∈IR\{0}に
た が っ て,A±iλ
∈IR\{0}と
す る.Aは
は 全 単 射 で あ る.定
ら ば ±iλ ∈ ρ(A+B)で
分 大 き い│λ│に 対 し て(*)が
て は,±iλ
閉 な らば,右 辺 は
(ⅱ)と 同 様 に論 じれ ば よ い.
て,a+(b/│λ│)<1…(*)な ば,十
意 味 す る.Aが
稠 密 で あ る.し
が 全 単 射 で あ る こ と を 示 せ ば よ い.λ ら,±iλ
つ い て はR(S±i)
本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る.
(ⅲ), (ⅳ)に い て,(ⅰ),
成
用 い た.
題2.8-(ⅰ)に
(ⅱ) 考 察 下 の 条 件 の も とで は,(*)に 等 し い.す
R(A〓i)…(*)が
成 り立 つ.し
な わ ち,A+B±iλ
対 し て,A+B±iλ 自己 共 役 で あ るか 理2.4-(ⅱ)に
あ る.他
た が っ て,そ
方,a<1な
よっ ら
の よ う な λ に対 し
は 全 単 射 で あ る.
(ⅱ) DをAの て,Ψn→
任 意 の 芯 と し よ う.任 Ψ, AΨn→AΨ(n→
の と き(2.2)に
よ っ て,{BΨn}nは
BΨn→BΨ(n→
∞).と
意 の Ψ ∈D(A+B)=D(A)に
∞)と
な る 点 列{Ψn}n⊂Dが
基 本 列 を な す.し
こ ろ が Ψ ∈D(A)で
が っ て,(A+B)Ψn→(A+B)Ψ.こ
た が っ て,Ψ
対 し あ る.こ ∈D(B),
あ っ た か ら,BΨ=BΨ.し
れ は,DがA+Bの
た
芯 で あ る こ と を意
味 す る. (ⅲ) s∈IR,
s<γ
と し よ う.こ
た が っ てR(A-s)=H.自
の と き,s∈〓(A)([5]の
己 共 役 作 用 素Aに
定 理2.40-(ⅱ)).し
同 伴 す る 単 位 の 分 解 をEと
す
れ ば
一 方
,
.し
同 様 に し て‖(A-s)-1‖〓1/(γ-s)が ら,も
れ ら の 不 等 式 と(2.9)か
し
な ら ば,‖B(A-s)-1‖<1と が っ て,(2.15)が
な る こ と が わ か る.ゆ
え にs∈〓(A+B).し
た
得 ら れ る.
■
例2.1に
述 べ た 事 実 と加 藤-レ
系2.10
AをH上
D(B)を
示 さ れ る.こ
た が っ て
リ ッ ヒ の 定 理 か ら,次
の 自己共 役作 用素,BをH上
の 系 が 得 ら れ る*13:
の 有 界 な対 称 作 用 素 でD(A)⊂
満 た す もの とす る.こ の と き,次 の(ⅰ)∼(ⅲ)が 成 り立 つ:
(ⅰ) A+Bは
自己 共 役 で あ る.
(ⅱ) A+BはAの (ⅲ) Aが
任 意 の芯 上 で 本 質 的 に 自己 共 役 で あ る.
下 に有 界 でA〓
γ>-∞(γ:実
定 数)な らば,A+Bも
で あ り,A+B〓γ-‖B‖.
*13 こ の 系 は[5]の
命 題2
.2-(ⅰ), (2.10)を
使 っ て も証 明 で き る.
下 に有 界
2.3
加 藤-レ
リ ッ ヒ の 定 理 の 応 用―
共 役 性,原
d, Nを
子 と物 質 の 弱 安 定 性
自 然 数 と し て,(IRd)N=IRdNの
IRd, j=1,…,Nと る,変
表 す.ヒ
数xj∈IRdに
数Fに
元 の 一 般 化 さ れ た ラ プ ラ シ ア ン をΔxjと
を 参 照).ま
た,以
よ る か け 算 作 用 素 を 単 にFと
[6]の3章,3.4節 L2(IRdN)に
点 をx=(x1,…,xN), xj∈
ル ベ ル ト空 間L2((IRd)N)=L2(IRdN)に
関 す るd次
([6]の3章,3.3節,3.4節 る,関
シ ュ レ ー デ ィ ン ガー 型 作 用 素 の 自 己
下 で はL2(IRν)
(ν ∈IN)に
記 す([6]のp.296∼p.297を
で す で に 述 べ た よ う に,シ
お け 記す お け 参 照).
ュ レーデ ィ ンガー型作用 素 は
お け る作 用 素 と して
(2.16) と い う形 で 与 え ら れ る.た 的 に は,hを
だ し,h>0,
パ ラ メ ー タ ー で あ り― 物 理
プ ラ ン ク の 定 数 と して,h=h/(2π), mjはj番
子 の 質 量 を 表 す―,V:IRdN→IRは る[上 の 規 約 に よ り,(2.16)に こ の 節 で は,あ
2.3.1
mj>0は
目 の量 子 力 学 的粒
ポ テ ン シ ャル を表 す ボ レル 可 測 関 数 で あ お け るVは
る ク ラ ス のVに
関 数Vに
対 し てHSが
よ る か け 算 作 用 素 を 表 す].
自 己 共 役 で あ る こ と を 証 明 す る.
ス ケ ー ル 変 換
作 用 素HSの
解 析 に お い て,係 数h2/(2mj)が
さ を軽 減 す る た め に,ま ず,HSに
あ る こ とに よ る計 算 上 の 煩 雑
あ る ユ ニ タ リ変 換 を施 し,そ の形 に関 して,
あ る種 の簡 潔 化 を行 う. 正 の 実 数 の 集 合IR+のν
個 の 直積
の 任 意 の 元aとIRν
上 の 関数fに
対 して,関 数Uafを
(2.17) に よ っ て 定 義 す る.た ク トルaに
だ し,a〓x:=(a1x1,…,aνxν).関
よ る 伸 張 変 換 ま た は ス ケ ー ル 変 換 と い う.
数Uafをfの
ベ
f∈L2(IRν)な はL2(IRν)上
ら ばUaf∈L2(IRν)で
あ り,写
像Ua:L2(IRν)∋f〓Uaf
の ユ ニ タ リ作 用 素 で あ る こ と が わ か る.ま
た
(2.18) 作 用 素Uaを(ベ
ク トルaに
よ る)伸 張 変 換(dilatation)ま
た は ス ケ ール 変 換 と
呼ぶ .
a-1:=(a-11,…,a-1ν)と
定 義 す れ ば,(2.18)よ
り
(2.19) と な る(Iは
恒 等 写 像).
変 数xj∈IRに
関 す る一 般 化 さ れ た偏 微 分 作 用 素 をDjと
p.283]を 参 照).偏 微 分 作 用 素Djや
記 す([6, p.280,
か け 算作 用 素 と伸 張 変 換 の 関 係 は次 の命 題
に ま とめ ら れ る. 命 題2.11
E(IRν)はC∞0(IRν)(IRν 上 の 有 界 な 台 を もつ 無 限 回 微 分 可 能 な関
数 の 全体)ま た はS(IRν)(IRν (ⅰ) 任 意 のa∈IRν+に
上 の 急 減 少 関 数 の 全 体)を 表 す とす る*14.
対 して,UaはE(IRν)か
らそ れ 自身 へ の 全 単 射 で
あ る. (ⅱ) 任 意 のa∈IRν+と
す べ て のm∈INに
対 して,作 用 素 の等 式
(2.20) が 成 り立 つ.
(ⅲ) 任 意 の ボ レル 可 測 関 数F:IRν
→Cと
任 意 のa∈IRν+に
対 して
(作 用 素 の 等 式).
(2.21)
た だ し,Fa(x):=F(a〓x).
証 明 (ⅰ)f∈E(IRν)と g∈E(IRν)に
す れ ば,Uaf∈E(IRν)は
対 し て,
*14 [5]ま た は[6]の
付 録B
明 ら か で あ ろ う.任 と す れ ばUaf=gで
, Cを
参 照.
意の あ
る か ら,Uaは,E(IRν)を
そ れ 自 身 の 上 へ 写 す.単
射 性 はUaの
ユ ニ タ リ性 に
よ る. (ⅱ) (2.20)はm=1の
場 合 を 示 せ ば 十 分 で あ る.直
f∈E(IRν), a∈IRν+に E(IRν)は-iDjの 補 題5.7)の
接 計 算 に よ り,任
対 し て,
が わ か る.
芯 で あ る か ら,[6]の3章,演
応 用 に よ り,作
意の
習 問 題10(ま
た は[1]の5章,
用 素 の 等 式
が した
が う. (ⅲ) a, b∈IRν+と
す る.f∈D(Fb)と
ゆ え に,Uaf∈D(Fa〓b).す
たが っ て
な わ ち,UaD(Fb)⊂D(Fa〓b)…(*).し
て,特
に,b=(1,…,1)と
とbの
役 割 を 交 換 す れ ば
す れ ば,UaD(F)⊂D(Fa)…(**).ま
D(Fa)⊂UaD(F).こ れ が 示 さ れ れ ば,任
す れ ば,Fbf∈L2(Rν).し
.そ
れ と(**)を
たが っ た,(*)でa
こ で,b=a-1と
あ わ せ れ ばUaD(F)=D(Fa)が
意 のf∈D(Fa)=UaD(F)に
場 合 を考 え,IRdの
をud=(1,…,1)∈IRdと
に よ っ て 定 義 す る.命
命 題2.12
し,こ
題2.11に
HSは(2.16)に
れ を 用 い て,IRdNの
ベ ク トルs0を
の と き,作 用 素 の 等 式
ヒ ル ベ ル ト空 間Hか ら ヒ ルベ ル ト空 間K ユ ニ タ リ作 用 素 と す る と き,作 用 素 の 等 が 成 り立 つ
を示 せ).
あ る もの
よ っ て 次 の 結 果 が 得 ら れ る*15:
1,…,ANを へ の 線 形 作 用 素 と し ,U:H→Kを 式
■
ベ ク トル で す べ て の 成 分 が1で
よ っ て 与 え られ る とす る.こ
*15 次 の 基 本 的 事 実 も使 う:A
出 る.こ
対 して,
が 成 り立 つ こ と を 示 す こ と は 単 純 な 計 算 で あ る.
さ て,ν=dNの
お けば
が 成 り立 つ.た
だ し,Vs0(x):=V(s0〓x),
上
の 一 般 化 さ れ た ラ プ ラ シ ア ン で あ る.し
た が っ て,特
に,次
の(ⅰ)∼(ⅲ)が
成立
す る:
(ⅰ) -Δ+Vs0が
稠 密 な 部 分 空 間D⊂D(Δ)∩D(Vs0)の
己 共 役 で あ る こ と とHSがU-1s0D上
上 で本 質 的 に 自
で 本 質 的 に 自己 共 役 で あ る こ と とは 同値 で
あ る. (ⅱ) -Δ+Vs0がE(IRdN)上
で 本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る こ と とHSがE(IRdN)
上 で本 質 的 に 自 己 共役 で あ る こ と とは 同値 で あ る. (ⅲ) -Δ+Vs0が
自己 共 役 で あ る こ と とHSが
自己共 役 で あ る こ と とは 同値
で あ る. 証 明 (ⅰ) [6]の3章,演
習 問 題10(ま
(ⅱ) こ れ は(ⅰ)と 命 題2.11-(ⅰ)に
た は[1]の5章,補
題5.7)の
応 用 に よ る.
よ る.
(ⅲ) 自 己 共 役 性 の ユ ニ タ リ 不 変 性 に よ る.
以 下 で み る よ うに,-Δ+Vの(本 性 はVが
■
質 的)自 己共 役 性 お よび その スペ ク トル特
どの よ う な関 数 空 間 に 属 す る か に依 存 す る.そ こで,次 の 概 念 を導 入
す る. 定 義2.13
VをIRν+上
の ボ レル 可 測 関 数 の集 合 とす る.任 意 のa∈IRν
して,F∈V⇒Fa∈Vが
成 り立 つ と き,Vは
に対
ス ケ ー ル 不 変 ま た は伸 張 対
称 で あ る とい う. 注 意2.2
Vが
ス ケ ー ル 不 変 で あ る こ と は,任 意 のa∈IRν+に
と い う こ と と 同 値 で あ る.Uaの は,UaV=Vと
可 逆 性 を使 え ば,Vが
対 して,UaV⊂V
ス ケ ール 不 変 で あ る こ と
同 値 で あ る こ と が わ か る.
誤 解 の お そ れ は な い と 思 う が,念 の た め に い っ て お け ば,上 の 定 義 は,関 数 空 間 の ス ケ ー ル 不 変 性 の 定 義 で あ っ て,個
別 的 な関 数 の ス ケ ー ル不 変 性 の そ れ で は
な い.
ス ケ ー ル 不 変 な関 数 空 間 に属 す る ポ テ ン シ ャ ルVを 型 作 用 素HSの(本
もつ シュ レー ディ ン ガー
質 的)自 己 共役 性 を証 明 す る問 題 は,ν を任 意 の 自然 数 と し
て(ν=dNで
あ る 必 要 は な い),L2(IRν)上
の よ り 簡 潔 な 形 の シ ュ レ ー ディ ン
ガ ー 型作 用 素
(2.22) の そ れ に 帰 着 さ れ る.た
だ し,U:IRν
→IRは
ス ケ ー ル不 変 な 関数 空 間 に属 す
る 関 数 で あ る. 例2.2
(ⅰ)IRν 上 のr回
はr=∞(可
連 続 微 分 可 能 な 関 数 の 全 体 をCr(IRν)で
算 無 限)].こ
(ⅱ) 任 意 のp(1〓p〓
表 す[r∈INま
た
の 関 数 空 間 は ス ケ ー ル 不 変 で あ る. ∞)に 対 して,Lploc(IRν)とLp(IRν)は
ス ケ ー ル不 変 で あ る
(積 分 の 変 数 変 換 を用 い れ ば よい)*16.
2.3.2
並
進
共
変
性
a∈IRν
とIRν 上 の 関 数fに
対 して,関
数fa:IRν
→Cを
(2.23) に よ っ て 定 義 す る.faを
関 数fの
ベ ク トルaに
よ る 並 進 ま た は平 行 移 動 と
い う. IRν 上 の ル ベ ー グ 測 度 の 並 進 不 変 性 に よ っ て,f∈L2(IRν)な で あ り,‖fa‖=‖f‖ た が っ て,写
ら ばfa∈L2(IRν)
が 成 り立 つ こ と が わ か る(‖・‖ はL2(IRν)の
ノ ル ム).し
像T(a):L2(IRν)→L2(IRν)を
(2.24) に よ っ て 定 義 で き る.直
接 計 算 に よ り,任
意 のa, b∈IRν
に 対 して
(2.25) が 成 り立 つ こ とが 簡 単 に わか る.こ れ とT(0)=Iに
注 意 す れ ば,T(a)は
全単
射であ り
(2.26) *16 関 数 空 間Lp(IRν)やLploc(IRν)に
つ いて は
,[5]ま
た は[6]の
付 録Cを
参 照.
が 成 り立 つ こ と が 示 さ れ る.よ る.ユ
っ てT(a)はL2(IRν)上
ニ タ リ作 用 素T(a)をL2(IRν)上
次 の 二 つ の 命 題 は,命
題2.11と
の(ベ 命 題2.12と
の ユ ニ タ リ作 用 素 で あ
ク トルaに
よ る)並 進 と い う.
同 様 に し て 証 明 さ れ る(演 習 問 題
1).
命 題2.14 (ⅰ) 任 意 のa∈IRν
に対 して,T(a)はE(IRν)か
ら そ れ 自身 へ の 全 単 射 で
あ る. (ⅱ) 任 意 のa∈IRν
とすべ て のm∈INに
対 して,作 用 素 の 等 式
(2.27) が 成 り立 つ. (ⅲ) 任 意 の ボ レル 可 測 関 数F:IRν→Cと
任 意 のa∈IRν
に対 して,作 用
素 の等 式
(2.28) が 成 り立 つ.
命 題2.15 HUは(2.22)に に 対 し て,作
よ っ て 与 え ら れ る とす る.こ
の と き,任 意 のa∈IRν+
用 素の等式
(2.29) が 成 り立 つ.し
た が っ て,特 に,次 の(ⅰ)∼(ⅲ)が 成 立 す る:
(ⅰ) -Δ+Uaが
稠 密 な部 分 空 間D⊂D(Δ)∩D(Ua)の
共 役 で あ る こ と とHUがT(a)-1D上
上 で本 質 的 に 自己
で 本 質 的 に 自己 共 役 で あ る こ と とは 同値
で あ る. (ⅱ) -Δ+UaがE(IRν)上
で 本 質 的 に 自己 共 役 で あ る こ と とHUがE(IRν)
上 で 本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る こ と とは 同値 で あ る. (ⅲ) -Δ+Uaが で あ る.
自己 共役 で あ る こ と とHUが
自己 共 役 で あ る こ と とは 同値
2.3.3
自 己共 役 性 に 関 す る定 理
ν を 任 意 の 自 然 数 と し,あ
ら た め てV:IRν
加 藤-レ
リ ッ ヒ の 定 理 を,A=-Δ,
(U=Vの
場 合 のHU)の
→IRと
B=Vと
す る.
し て,応 用 す る こ と に よ り,HV
自 己 共 役 性 に 関 す る 一 般 的 定 理 を確 立 す る に は,次
性 質 を も つ ポ テ ン シ ャ ルVの
ク ラ ス を 探 せ ば よ い:Vは-Δ-有
の 相 対 限 界 は1未
満 に と れ る.
そ の た め に,一
般 の 測 度 空 間 上 の 関 数 の ク ラ ス を 一 つ 導 入 し て お く:
定 義2.16
(M,μ)を
測 度 空 間 と し,1〓p, q,〓
∞
と す る.M上
f で,f=f1+f2(f1∈Lp(M,dμ), f2∈Lq(M,dμ))と の の 全 体 をLp(M,dμ)+Lq(M,dμ)と よ う なfの
の可 測 関 数
い う形 に表 され る も 記 す.こ
全 体 を
任 意 のp, q∈[1,∞]に
の
界 で あ り,そ
の 分 解 でf1, f2が
実数値で ある
と 記 す.
対 し て,
とLp(IRν)+Lq(IRν)
は ス ケ ー ル 不 変 で あ る(演 習 問 題2).
定 理2.17 ν〓3,
と す る.こ
の と き,次
の(ⅰ),
(ⅱ)が 成 り立 つ: (ⅰ) D(-Δ+V)=D(-Δ), -Δ+Vは (ⅱ) -Δ+Vは-Δ
自 己 共 役 で あ り,下
に 有 界 で あ る.
の 任 意 の 芯 上 で 本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る.特
に,-Δ+V
はC∞0(IRν)上
で 本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る.
定 理2.17を
証 明 す るた め に補 題 を い くつ か用 意 す る.記 号 の 簡略 化 の た め に
(2.30) と す る.ま L1(IRν)な
た,緩
増 加 超 関 数 φ に 対 す る フ ー リ エ 変 換 を φ と 記 す*17.φ
∈
らば
(2.31) で あ る.た
だ し,
*17 [5]ま た は[6]の
付 録B , Cを
参 照.
ν〓3の
とき
(2.32) は 有 限 で あ る.
補 題2.18 ν〓3と f∈L1(IRν)で
す る.f∈L2(IRν)か
つ
な ら ば,
あ り
(2.33) こ こ で,定
数 β ∈IRに
対 して
(2.34) 証明
と変 形 し,シ
ュ ヴ ァル ッの 不 等 式 を
使 う と
.
補 題2.19
L2(IRν)上
の 一 般 化 さ れ た ラ プ ラ シ ア ンΔ
■
に つ い て 次 が 成 り立 つ:
(2.35) (2.36) 証 明 [6]の 定 理3.28の
証 明(p.299)ま
た は[1]の
定 理5.9(p.166∼p.167)を
参
照.
■
補 題2.20 ν〓3と L1(IRν)で
あ る.さ
て の ψ ∈D(-Δ)に
す る.こ ら に,任
の と き,す
意 の ε>0に
べ て の ψ ∈D(-Δ)に 対 し て,定 数bε〓0が
対 し て,ψ 存 在 して
∈
,す べ
対 して
(2.37) が 成 り立 つ.
証 明 ψ ∈D(-Δ)な た が っ て,任 2.18の
ら ば,補
意 のr>0に
題2.19に
よ り,
.し
対 し て,f(k):=rνψ(rk)と
仮 定 を 満 た す.し
た が っ て,不
等 式(2.33)が
お け ば,fは 成 り立 つ.他 .し
.rが も 正 数 全 体 を 動 く.し
た が っ て,任
補題
方,
た が っ て,
正 数 全 体 を動 く と き,C(ν)r(ν-4)/2
意 の ε>0に
対 し,bε>0が
存在 し
(2.38) が 成 り立 つ*18.
であ るか ら
が 成 り立 つ([5]ま
た は[6]の
.こ
付 録B,定
れ と(2.38)お
理B.8を
よ び 補 題2.19に
補 題2.21 ν〓3,
参 照).し
た が っ て,
よ り(2.37)を
得 る.
な ら ばF≪-Δ.
証 明 仮 定 に よ り,F=F1+F2, ψ ∈D(-Δ)と
す れ ば,補
と書 け る.
題2.20に .し
D(F).さ
ら に,(2.37)を .ε>0は
定 理2.17の
■
よ り,ψ∈L∞(IRν)で た が っ て,ψ ∈D(F),す
あ り, な わ ち,D(-Δ)⊂
用 い る と い く らで も小 さ く と れ る か ら,F≪-Δ
証 明 補 題2.21に
よ っ て,A=-Δ,
B=Vと
ヒ の 定 理 を 応 用 で き る.
で あ る.
し て,加
■
藤-レ リ ッ ■
2.3.4 並 進 対 称 なポ テ ン シ ャル を もつ2体
系の構造
次 に,非 相 対 論 的 量 子 力 学 の モ デ ル の 基 礎 的 あ る い は標 準 的 な具 体 例 を取 り 上 げ,上 述 の 理 論 を応 用 す る こ と に よ り,そ の ハ ミル トニ ア ンの(本 質 的)自 己 共 役 性 を証 明 した い.だ が,そ *18 具 体 的 に は ,た
と え ば,
の 前 に,こ こ で,あ
る重 要 な 基 本 的 な事 実 に
ふ れ て お か ね ば な ら な い.そ 子 が,そ
れ は,水
素 原 子 の 場 合 の よ う に,2個
の 量 子 的粒
れ ら の 位 置 座 標 の 差 だ け で 決 ま る ポ テ ン シ ャ ル― 水 素 原 子 の 場 合 に は
-e2/│x1-x2│(e>0は
基 本 電 荷 ,x1,x2∈IR3は
置 座 標 を 表 す)―
そ れ ぞ れ,電
子,陽
子 の位
の 作 用 の も と に あ る 系 の ハ ミル トニ ア ン の 構 造 に 関 す る も の
で あ る.こ
の 系 は2体
合 に は,実
は,当
系 で あ る が,ポ
テ ン シ ャ ル が そ の よ う な形 を して い る場
該 の ハ ミ ル トニ ア ン の 解 析 は,本
ン の そ れ に 帰 着 で き る の で あ る.以
下,こ
質 的 に1体
の ハ ミ ル トニ ア
れ が ど の よ う に して 可 能 で あ る か を
み る. d次 元 ユ ー ク リ ッ ド空 間IRdに 系 を 考 え,そ
お い て,2個
の非相対論的量子的粒子か らなる
れ ぞ れ の 量 子 的 粒 子 の 質 量 をm1,m2>0と
ト空 間 と し て 座 標 表 示 で のL2空
間L2(IRd×IRd)を
の 点 を 一 般 に(x1,x2)(x1,x2∈IRd)で
す る.状
態 の ヒ ルベ ル
と り,(IRd)2=IRd×IRd
表 す.量
子 的 粒 子 の 間 に は,ル
ベー グ
測 度 に 関 し て ほ と ん ど い た る と こ ろ 有 限 な ボ レ ル 可 測 関 数V:IRd→IRか 定 ま る ポ テ ン シ ャ ルV(x1,x2):=V(x1-x2)が て,系
ら
働 い て い る と す る.し
たが っ
の ハ ミ ル トニ ア ン は
(2.39) で 与 え ら れ る.た
だ し,Δxは
変 数x∈IRdに
関 す る,一
般 化 さ れ たd次
元 ラ
プ ラ シ ア ン で あ る. 容 易 に 気 づ く よ う に,ポ a,x2-a)=V(x1,x2), 並 進,す
な わ ち,空
称 性 ま た はIRd-並 よ う に,Hの
テ ン シ ャ ルVは,任 ∀(x1,x2)∈(IRd)2を
意 のa∈IRdに 満 た す.す
間 並 進 に 対 し て 不 変 で あ る.こ 進 不 変 性 を も つ と い う*19.こ
解 析 は1体
対 し て,V(x1な わ ち,VはIRdの
の よ う な 関 数 はIRd-並
の 対 称 性 の お か げ で,次
進対 に示 す
の ハ ミ ル トニ ア ン の 解 析 へ と 帰 着 で き る の で あ る.
写 像u:(IRd)2→(IRd)2を
*19 一 般 に
上 の 関 数fが
a,…,xN-a))=f(x),∀x=(x1,…,xN)∈(IRd)Nを 並 進 対 称 ま た はIRd-並
進 不 変 で あ る と い う.
任 意 のa∈IRdに
対 して
,f(x1-
満 た す と き,fはIRd-
に よ っ て 定 義 す る.こ す るx1の とm2の
こ で,右
辺 に 現 れ た ベ ク トルx=x1-x2は
点x2に
対
易 に わ か る よ う に,uは
線
相 対 位 置 ベ ク トル で あ り,X=(m1x1+m2x2)/(m1+m2)はm1 重 心 ベ ク トル で あ る こ と に 注 意 し よ う.容
形 で あ り全 単 射 で あ る.(IRd)2の
に よ っ て 与 え ら れ る(1dはd次 detu=1.と
標 準 基 底 に 関 す るuの
の 単 位 行 列).し
計 算 さ れ る.こ
れ は,ま
行 列 表 示uは
た が っ て,そ
た,detu-1=1も
の 行 列 式detuは 意 味 す る.そ
こ で,
写 像U:L2((IRd)2)→L2((IRd)2)を
(2.40) に よ っ て 定 義 す れ ば,Uは
ユ ニ タ リで あ り
(2.41) が 成 り立 つ こ と が わ か る.こ
のUに
よ るHの
ユ ニ タ リ 変 換UHU-1を
求 め
よ う. xj=(xj1,…,xjd)∈IRdと
分 作 用 素 をDjlと
で 与 え られ る.こ
記 す.し
導 入 す る(Dylは
意 の φ∈C∞0((IRd)2)に
で あ り,(x,X)=u(x1,x2)と
を 得 る.同
様 に
数xjlに
算 の 便 宜 上,Py,l=-ihDyl, 変数ylに
対 して,(2.41)に
お け ば,合
関 す る一 般 化 され た偏 微
運 動 量 作 用 素 の 第l成 分 は
の と き,-h2Δxj=Σdl=1p2jl.計
y=(y1,…,yd)∈IRdを 作 用 素).任
書 く と き,変
た が っ て,粒 子mjの
関 す る一 般 化 され た偏 微 分 よ り,U-1φ∈C∞0((IRd)2)
成 関 数 の微 分 法 を用 い る こ とに よ り
した が っ て
こ れか ら
が 導 か れ る.た
だ し,μ:=m1m2/(m1+m2)は2体
系 の 換 算 質 量 を 表 す.作
用 素-(h2Δx/2μ)-(h2ΔX/2(m1+m2))はC∞0((IRd)2)上 共 役 で あ る か ら,上
の 式 よ り,作
で 本 質 的 に 自己
用 素の等式
(2.42) が 成 り立 つ こ と に な る.ハ
ミ ル トニ ア ンHの
中 の ポ テ ン シ ャ ル の 部 分Vに
い て は,V1:(IRd)2→IRをV1(x,X):=V(x),a.e.(x,X)に ば,作
つ
よ って 定 義 す れ
用 素 の等 式
が 示 され る.以 上 か ら(脚 注15も
参 照),作 用 素 の 等 式
(2.43) が 得 ら れ る. 自 然 な 同 型L2((IRd)2)=L2(IRd)
L2(IRd)を
用 いる と
(2.44) が 成 立 す る こ と に な る.た
だ し
で あ り,D(HV)=D(Δx)∩D(V)はL2(IRd)で が っ て,HVは
稠 密 で あ る と仮 定 す る(し た
対 称 で あ り,可 閉で あ るの で テ ンソ ル積 が 定 義 され る).[6]で す
で に論 じた よ うに,作 用 素HCは
質 量 がm1+m2の
ハ ミル トニ ア ンで あ る .他 方,HVは
自由 粒 子 の 運 動 を記 述 す る
質 量 μ の 非 相 対 論 的粒 子 が ポ テ ン シ ャ ル
Vの
作 用 の も と にあ る系 の ハ ミル トニ ア ンで あ る.こ
Hで
記 述 され る 系 は,独 立 した2個
う して,ハ
ミル トニ ア ン
の量 子 的粒 子 か ら な る系―一
方 は,も
と
の 系 の重 心 の 運 動 に対 応 す る 自由 粒 子 の運 動 で あ り,他 方 は ポ テ ンシ ャルVを もつ1粒
子 の運 動― と同値 にな る.ハ
で あ る の で,Hの
ミル トニ ア ンHCは
解 析 は,本 質 的 にHVの
が 本 質 的 に 自己 共 役 な らば,HV I+I (2.44)に よ り,Hの
よ くわ かっ た 作 用 素
解 析 に帰 着 さ れ る.た HCは
とえ ば,HV
本 質 的 に 自己 共役 で あ る の で,
本 質 的 自己 共 役 性 が した が う.
次 の 項 以 降 で,HVの
型 の ハ ミル トニ ア ンを取 り上 げ るが,2体
系 で あ っ て も,
こ の 型 の 作 用 素 で 表 され るハ ミル トニ ア ン― これ は1体 のハ ミル トニ ア ン― に 考 察 を限 定 して よい 理 由 は こ こ に あ る の で あ る.
2.3.5
基 本
的
な 例
a. 水 素 様 原 子 の ハ ミ ル トニ ア ン
e>0を
基 本 電 荷(電
気 素 量)を
表 す パ ラ メ ー タ ー と す る.Zeの
電荷で正 に
帯 電 さ れ て い る 原 子 核 が つ く る 場 の 中 で1個
の電子が運動 する系は水素様原子
(hydrogen-like
子 核 は3次
ル 空 間IR3の シ ャ ル はIR3の
atom)と
呼 ば れ る.い
ま,原
原 点 に 固 定 さ れ て い る と す る.こ
の と き,こ
元 ユ ー ク リ ッ ドベ ク ト の系 に お け る ポ テ ン
ク ー ロ ン型 ポ テ ン シ ャ ル
(2.45) に よっ て 与 え ら れ る.し
た が っ て,こ
の 系 の ハ ミ ル トニ ア ン は
(2.46)
で あ る.こ
こ で,m>0は
し,XRを[0,R]上
電 子 の 質 量 を 表 す パ ラ メ ー タ ー で あ る*20.R>0と
の 定 義 関 数 と す れ ば,
と 書 け る.容
易 に わ か る よ う に,
補 題2.21に
よっ て
し た が っ て,
(2.47) ゆ え に,加 藤-レ リ ッ ヒの 定 理 ま た は定 理2.17に
Hhyd(Z)は
定 義 域 をD(-Δ)と
あ り,C∞0(IR3)上
よっ て,次 の事 実 が 得 られ る:
す る,下 に有 界 な 自 己共 役 作 用 素 で
で本 質 的 に 自己 共 役 で あ る.
この 事 実 か ら,特 に,水 素 様 原 子 は弱 安 定 で あ る こ とが 結 論 され る. b. 多 体 系 の ハ ミル トニ ア ン 例aは一
体 問題 の ハ ミル トニ ア ンで あ っ た.で は,多 体 問 題 のハ ミル トニ ア ン
の場 合 は ど うで あ ろ うか.こ の 場 合 の一般 的定 理 の一 つ と して次 の 定 理 が あ る. 定 理2.22 IRdN上
d〓3,
と し,
の 関 数:x=(x1,…,xN)〓Vi(xi)に
用 素 をViで
表 す.同
に よ る(L2(IRdN)上
様 に,IRdN上 の)か
よ る(L2(IRdN)上
の)か
け算 作
の 関 数:x=(x1,…,xN)〓Vij(xi-xj)
け 算 作 用 素 をVijで
表 す.こ
の と き,
*20 原 子 核 が 固 定 し て お ら ず ら ば,mは meか
,前 項 の よ う に,水 素 様 原 子 を 真 の2体 系 と して考 え る な 電 子 の 質 量 で は な く,水 素 の 原 子 核 で あ る 陽 子 の 質 量mpと 電 子 の 質量
ら 決 ま る 換 算 質 量 μ=memp/(me+mp)で
の こ と も 考 慮 し て,理
論 的 に は,mを
9.11×10-31kg/1.67×10-27kg〓5.46×10-4≪1で も近 似 の 精 度 は か な り よ い.
あ る と し な け れ ば な ら な い.こ パ ラ メ ー タ ー と み る.ち
な み に,me/mp=
あ る の で μ 〓meと
して
はD(-Δ)上
で 下 に 有 界 な 自 己 共 役 作 用 素 で あ り,C∞0(IRdN)上
で本質的 に 自
己 共 役 で あ る. 証 明 補 題2.21に D(Δ).し
よ っ て,Vi≪-Δxi.ま
た が っ て,命
点xj∈IRdを
た,‖-Δxiψ‖〓‖-Δ
題2.2-(ⅱ)に
よ っ て,ΣNi=1Vi≪-Δ
が 成 り 立 つ.
任 意 に 固 定 し,u(xi)=Vij(xi-xj)(i≠j)と した が っ て,u≪-Δxiと
対 し てbε〓0が
あ っ て,任
意 の ψ∈D(-Δ)に
ψ‖,ψ∈
す れ ば, な る の で,任
意 の ε>0に
対 して
ゆ えに
こ れ はVij≪-Δxiを意味
す る.し
た が っ て,
ら,
以上 か
よ っ て,加
藤-レ
リッ ヒ の 定 理 に よ り,
題 意 が した が う.
■
例2.3
多 電 子 系 の ハ ミル トニ ア ン.原 子 番 号Zの
間IR3の
原 点 に 固 定 して い る もの と し,j番
で 表 す.電
原 子 系 を考 え る.原 子 核 は座 標 空
目の 電 子 の 座 標 をxj∈IR3(j=1,…,Z)
子 間 お よ び 電 子 と原 子 核 の 間 に 働 く万 有 引 力 に よ る 重 力 相 互 作 用 は 電 気 的
相 互 作 用 に 比 べ て 非 常 に 小 さい の で,こ だ け を考 慮 す る.こ
こで は,第 一 次 近 似 と して,電 気 的 相 互 作 用
の と き,系 の 非 相 対 論 的 ハ ミ ル トニ ア ンはL2(IR3Z)に
お け る作
用素
で 与 え られ る.こ ポ テ ン シ ャ ルVCを
例aで
こ で,Δ
は3Z次
元 の 一 般 化 さ れ た ラ プ ラ シ ア ン で あ る.ク
ーロン
用いると
示 した よ う に,
2.22の 作 用 素 の 定 数 倍 の 形 を し て い る.こ
で あ る か ら,H(Z)atomは,定 う して,次
の 事 実 へ と 到 達 す る.
理
H(Z)atomはD(-Δ)上
で 下 に有 界 な 自 己 共 役 作 用 素 で あ り,C∞0(IR3Z)上
で本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る. こ れ は,特 例2.4
に,多
電 子 系 が 弱 安 定 で あ る こ と を示 す.
荷 電 粒 子 の 多 体 系 の ハ ミ ル トニ ア ン.電 気 的 に 中 性 で あ る 巨 視 的 物 質 は量 子
力 学 的 に み れ ば,N個
の 電 子 とN個
の 陽 子 お よ びK個
ヴ ォ ガ ド ロ定 数 の オ ー ダ ー〓1023).中 用 を し な い.し
た が っ て,第
の 中 性 子 か ら な る(Nは
ア
性 子 は 電 荷 を もた な い の で 電 磁 気 的 な 相 互 作
一 近 似 と して,電 気 的 相 互 作 用 だ け を 考 慮 し た場 合 の 系
の 非 相 対 論 的 ハ ミル トニ ア ン は,ヒ
ル ベ ル ト空 間L2(IR3N×IR3N)で
働 く作 用 素 と
して
(2.48) に よ っ て与 え ら れ る.こ
こ で,M>0,
パ ラ メ ー タ ー で あ り,Ra∈IR3は
m>0は
陽 子 の 位 置 座 標 を 表 す.前
事 実 が 知 ら れ る(Δ はL2(IR3N×IR3N)に HNはD(-Δ)上
そ れ ぞ れ,陽
子,電
子 の 質 量 を表 す
例 と 同様 に し て,次
の
お け る 一 般 化 され た ラ プ ラ シ ア ン とす る).
で下 に 有 界 な 自 己共 役 作 用 素 で あ り,C∞0(IR3N×IR3N)
上 で本 質 的 に 自己共役 で あ る. ハ ミル トニ ア ンHNの
下界 性 は物 質の弱 安定 性 を意味 す る.
c. 電磁 場 中 を運 動 す る荷 電 粒 子 の ハ ミル トニ ア ン 質 量m>0,電
荷q∈IRの
荷 電 粒 子 が3次
電 磁 場 の 中 を運 動 す る系 を考 え よ う.よ トル ポ テ ン シ ャ ルA=(A1,A2,A3)と
元 空 間IR3に
ス カ ラ ー ポ テ ン シ ャ ルVに
され る.す な わ ち,こ れ らの 量 を用 い る と電 場Eと
に よ っ て 与 え ら れ る.こ
お い て,与 え られ た
く知 られ て い る よ う に,電 磁 場 は ベ ク よ っ て記 述
磁 場Bは
こで
(2.49)
は3次
元 の 一 般 化 され た 勾 配 作 用 素 を表 す.粒 子 の 運 動 量 をp,真
空 中の光速
をcと す れ ば,古 典 的ハ ミル トニ ア ンは
で あ る. こ の 古 典 力 学 系 の 正 準 量 子 化 をCCRの う に は,Hclに
シ ュ レー デ ィ ンガ ー 表 現 を用 い て 行
お い て形 式 的 な 置 き換 えp→-ih∇
をす れ ば よい.こ の 手 続 き
に よ り,考 察 下 の系 の量 子 力 学 的 ハ ミル トニ ア ンの 候 補 と して
(2.50) が 得 ら れ る.た
だ し,こ
の 段 階 に お い て は,Aj:IR3→IRが
可 能 で あ る と す る 必 要 は な い.作 (q/c)Ajと
通 常 の意 味 で微 分
用 素 の 積 と和 の 定 義 に よ っ て,Tj:=-ihDj-
す る と き,
(2.51) で あ る.
定 理2.23
次 の(ⅰ), (ⅱ), (ⅲ)を
仮 定 す る:
(ⅰ)
(ⅱ) 超 関 数 の意 味 で のAjの
偏 微 分DjAjは
関 数 と同 一 視 で き,
(ⅲ) こ の と き,C∞0(IR3)⊂D(H(A,V))で に 自 己 共 役 で あ る.さ
あ り,H(A,V)はC∞0(IR3)上
ら に,D(H(A,V))=D(-Δ)で
有 界 で あ る.
証 明 仮 定(ⅰ),
(ⅱ), (ⅲ)を
用 い ると
あ り,H(A,V)は
で本 質的 下に
が わ か る.し
た が っ て,D(H(A,V))は
に 対 して〈 ψ,H(A,V)ψ〉 使 え ば,容
稠 密 で あ る.す
が 実 数 で あ る こ と は,Tjが
易 に わ か る.し
任 意 の ψ∈C∞0(IR3)に
た が っ て,H(A,V)は
べ て の ψ∈D(H(A,V)) 対 称 作 用 素 で あ る こ とを
対 称 作 用 素 で あ る*21.
対 して
(2.52) (2.53) ただ し
(2.54) こ こ で,第 二 式 を得 るの に,超 関 数 微 分 に 関す る ラ イ プ ニ ッ ツ則
を 用 い た*22.
と お こ う.仮
定(ⅱ),(ⅲ)と
補 題2.21に
よ っ て,
が 成 り立つ. 次 にAjDj≪H0を
示 そ う.仮
Aj2∈L∞real(IR3)(j=1,2,3)と *21 [5]の 命 題2
.30(p.132)に *22 [5]ま た は[6]の 付 録C
定 に よ り,Aj=Aj1+Aj2, 書 け る.ψ∈C∞0(IR3)と
よ る. , C.3節
を参 照.
Aj1∈L4real(IR3), し よ う.は
じめ に シ ュ
ヴ ァ ルツ の不 等 式 を使 い,次 にハ ウス ドル フ-ヤ ング の不 等 式([5]ま た は[6]の 付 録Dを
参 照)を 援 用 す れ ば
任 意 の α>0に
対 して
と書 き,ヘ ル ダー の 不 等 式([5]ま た は[6]の 付 録Dを
そ こ で,α ∞.さ
を3/4<α<1と
い う 範 囲 に 限 定 す る.こ
ら に,任 意 のa>0に
が 成 り立 つ*23.し
を 得 る.こ
対 し,定
数ba〓0が
参 照)を 使 う と
の と き‖(1+│k│)-α
存 在 し,
た が って
れ とす で に 得 た 不 等 式 を あ わ せ れ ばAj1Dj≪-Δ
Aj2Djに
‖4<
関 し て は 次 の よ う に す れ ば よ い.ま
任 意 のa>0に
対 し
*23 │kj│〓│k│で
あるか ら
,(1+│k│)α│k│〓a│k│2+baを
[0,∞)上 の 関 数g(t):=at2-(1+t)αt(t〓0)が下 る.そ こ で,た と え ば,-ba:=inft〓0 g(t)と
を 得 る.
ず,
示 せ ば よ い.α<1の
と き,
に 有 界 で あ る こ とは容 易 にわ か す れ ば よ い.
した が っ て
よ っ て,Aj2Dj≪-Δ. 最 後 にA2j≪-Δ
と 仮 定(ⅰ)を る.す
を 示 そ う.等
用 い る と,
が わか
な わ ち, .し
た が っ て,A2j≪-Δ
以 上 の 事 実 と 加 藤-レ
式
.
リ ッ ヒ の 定 理 に よ っ て 次 の 結 果 を 得 る:
(ⅰ) D(H(A,V))=D(-Δ)で
あ り,H(A,V)は
自己 共 役 か つ 下 に 有 界 で
あ る. (ⅱ) H(A,V)はC∞0(IR3)上 (2.53)に
で 本 質的 に 自 己 共 役 で あ る.
よ っ て,H(A,V)│C∝0(IR3)⊂H(A,V).こ
てH(A,V)⊂H(A,V).自
れ とす ぐ上 の(ⅱ)に
よっ
己 共 役 作 用 素 は 非 自 明 な 対 称 拡 大 を もた な い か ら
([5]の 命 題2.34(p.137)),H(A,V)=H(A,V)で
な け れ ば な ら な い.よ
っ て,
題 意 が し た が う.
■
2.4
加 藤-レ
リ ッ ヒ の 定 理(定
役 作 用 素 の,摂 与 え る が,こ
必 ず しも 小 さ く な い 摂 動
理2.7)は,任
意 の ヒ ル ベ ル ト空 間 上 で 働 く 自 己 共
動 の も とで の 自 己 共 役性 に関 す る安 定 性 を保 証 す る 十 分 条 件 を の 場 合,摂
動 作 用 素 は,無
な け れ ば な ら な か っ た.し
か し,摂
い も の も た く さ ん あ る.た
と え ば ,1次
Vos(x)=Kx2, x∈IR(K>0:定
摂 動 作 用 素 に 対 し て 然 る べ く"小 さ く"
動 作 用 素 と し て,こ
う した クラ ス に入 ら な
元 の 調 和 振 動 子 の 場 合,ポ
数)と
い っ た 形 を も つ.だ
次 元 ラ プ ラ シ ア ン に 関 し て 相 対 的 に 有 界 で は な い(演 に 対 す る ポ テ ン シ ャ ル― 多 項 式 型 ポ テ ン シ ャ ル―
P(x)=anxn+an-1xn-1+…+a1x (n〓3,an≠0,aj∈IR,j=1,…,n)
テンシャルは
が ,こ
習 問 題4).非
のVは1
調和振 動子
の 場 合 も同様 で あ る(演 習 問 題5).こ 動 作 用 素Aに
対 し て摂 動 作 用 素Bが
の節 で は,い
まあ げ た例 の よ う に,無 摂
必 ず し も"小 さ くな い"場 合 にA+Bが
自己 共 役 と な る条 件 を考 察 す る. 定 義2.24 IRd上
の ボ レ ル 可 測 関 数fに
た す 定 数C∈IRが
存 在 す る と き,fは
対 して,f(x)〓C(a.e.x∈IRd)を
満
下 に 有 界 で あ る と い い,f〓Cと
記 す.
こ の 節 の 第 一 の 目 標 は 次 の 定 理 を 証 明 す る こ と で あ る.
定 理2.25 V∈L2loc(IRd)か
つVは
下 に有 界 で あ る とす る.こ の と き:
(ⅰ) L2(IRd)に お け る作 用 素-Δ+Vは あ り,-Δ+Vは
上 で 本 質的 に 自己 共 役 で
下 に 有 界 で あ る.
(ⅱ) も し,定
数C〓0が
あ って
(2.55) が 成 り立 つ な ら ば,-Δ+Vは
注 意2.3
V∈L2loc(IRd)な
ψ ∈C∞0(IRd)に
自 己 共 役 で あ る(-Δ+V=-Δ+V).
ら ばC∞0(IRd)⊂D(V)で
対 して,そ の 台 をKと
あ る.な
ぜ な ら,任
す れ ば,こ れ は 有 界 閉 集 合(コ
意の
ンパ ク ト)で
あ り, と な る か ら で あ る.
注 意2.4
定 理2.25の
仮 定 の も と で,-Δ+Vの
閉 包-Δ+Vは
あ る が,(2.55)が
成 立 しな い 場 合 に は,D(-Δ+V)はD(-Δ)∩D(V)に
く な い(付 録Bの
定 理B.1を
V∈L2Lloc(IRd)で
C∞(IR3)上
で 本 質的 に 自 己 共 役 で あ る と は 限 ら な い.
あ っ て も,Vが
下 に 有 界 で な け れ ば,-Δ+Vは
場 合 に つ い て 証 明 す れ ば 十 分 で あ る.な
Cを 実 定 数 と し て,V〓Cが -Δ+VがC∞0(IRd)上
等 し
参 照).
注 意2.5
定 理2.25はV〓0の
自己 共役 で
ぜ な ら,も
成 り 立 つ な ら ば,V:=V-C〓0で
で 本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る こ と と-Δ+VがC∞0(IRd)
し,
あ り,
上 で 本 質的 に 自己 共 役 で あ る こ と は 同値 だ か らで あ る.そ を 通 してV〓0と
こで,以 下,こ
の節
仮 定 す る.
証 明 の た め の基 本的 な 考 え方 は次 の通 りで あ る.ま ず
(-Δ+VのC∞0(IRd)へ が っ て,補
の 制 限)と
題2.8-(ⅳ)に
す れ ば,こ
よ っ て,R(H+1)の
れ は 非 負 対 称 作 用 素 で あ る.し
た
稠 密 性 を 示 せ ば よ い.R(H+1)
の稠 密 性 は
(2.56) を 満 た す ベ ク トル ψ ∈D(H*)が (2.56)は
零 ベ ク トル に 限 る こ と と 同 値 で あ る.他
方,
超 関 数 の意 味 で の 方 程 式
(2.57) と 同 値 で あ る*24.そ
れ ゆ え,こ
の 方 程 式 の 超 関 数 解 ψ で ψ ∈L2(IRd)と
も の は0し
か な い こ と を 示 せ ば よ い.し
要 す る.ま
ず,超
定 義2.26
D(IRd)をIRd上
φ ∈D(IRd)'(IRd上
上 の2つ
注 意2.6
補 題2.27
の た め に は い くつ か の 準 備 を
関 数 の 正 値 性 の 概 念 を 導 入 し よ う.
の 試 験 関 数 の 空 間 とす る*25.D(IRd)の
な も の の 全 体 をD+(IRd)と
φ(f)〓0を
か し,そ
の 超 関 数 の 空 間)が,す
容 易 に わ か る よ う に,非
f∈L2(IRd),f〓0か
べ て のf∈D+(IRd)に
は 非 負 で あ る と い い,記
の 超 関 数 φ,ψ に つ い て φ-ψ〓0が
対 し て,
号 的 に φ〓0と
成 り 立 つ と き,φ〓
,[5]ま 付 録Cを
書 く.IRd ψ と記 す.
負 超 関 数 は 非 負 値 関 数 の 一 般 化 で あ る.
つ 超 関 数 の 意 味 でΔf〓0な
ら ば,f=0で
あ る. *24 超 関 数 に つ い て は
元で非負
す る:
満 た す と き,φ
*25 [5]ま た は[6]の
なる
た は[6]の 付 録Cあ る い は[4]の17章 を 参 照. 参照 .単 な る 集 合 と し て は,D(IRd)=C∞0(IRd).
注 意2.7
Δf∈D(IRd)'は
関 数 と 同 一 視 で き る と は 限 ら な い.
証 明 次 の 性 質(ⅰ)∼(ⅲ)を │x│〓1な
もつ 関 数 ρ ∈C∞0(IRd)を
と る*26:(ⅰ)ρ〓0;(ⅱ)
ら ばρ(x)=0;(ⅲ)∫IRdρ(x)dx=1.任 と し,こ
([5]ま た は[6]の た は[6]の
付 録C,
付 録C,定
の 不 等 式([5]ま
れ とfと
C.7節
を 参 照).こ
理C.15-(ⅰ))で
た は[6]の
る こ と が わ か る.し
意 の ε>0に の 合 成 積 をfε
付 録Dを
の と き,fε
あ り,Δfε=(Δ 参 照)を
た が っ て,fε
れ とfε〓0を
応 用 す れ ば,Δfε
∈D(Δ).
は[6]の
付 録C,定
∈L2(IRd)で
あ
あ る か ら,Δfε〓0が
え に,〈fε,Δfε 〉=0で
な る.一
方,L2(IRd)上
な け れ ば な ら な い.こ
に フ ー リエ 変 換 を 応 用 す れ ば す な わ ち,fε=0を
辺 にヤ ング
とお く と
用 い る と,〈fε,Δfε 〉〓0と
の 作 用 素 と し て,Δ〓0.ゆ
∈C∞(IRd)(∵[5]ま ρε)*f.右
と 表 す こ と が で き,uε,x〓0で 導 か れ る.こ
対 し て,
とす る:fε:=ρε*f
を 得 る.こ
意 味 す る.
の式
れ は,fε=0,
で あ っ た か ら([5]ま
理C.16-(ⅱ)),f=0を
た
得 る.
■
次 の 定 理 は そ れ 自体 と して も興 味 あ る もの で あ る. 定 理2.28 L1loc(IRd)の
(加 藤 の 不 等 式)f∈L1loc(IRd)と 元 に な っ て い る とす る.関
し,超
数sgnfを
関 数 の 意 味 で のΔfも
また
次 の よ う に 定 義 す る: の とき の と き
(2.58)
こ の と き,超 関 数 の 意 味 で 次 の不 等 式 が 成 り立 つ:
(2.59) 注 意2.8
定 義2.26で
述 べ た よ う に,(2.59)の
意 味 は,す
べ て のu∈D+(IRd)
に対 して
*26 こ の よ う な 関 数 ρ の 存 在 を示 す に は でh〓0,
supp
は[6]の
付 録B,
よ い.
,た と え ば,次 の よ う に す れ ば よ い.関 数h∈C∞0(IR) hはhの 台 を 表 す)を 満 た す も の を と り([5]ま
h⊂[-1,1](supp B.1節
を 参 照),
た
とす れ ば
が 成 り立 つ とい う意 味 で あ る. 注 意2.9
定 理 の 仮 定 の も とで,
で あ る か ら,
した が って, 注 意2.10
f∈C2(IRd)(IRd上
0,x∈IRdな
ら ば,直
の2回 連 続 微 分 可能 な関数 の全 体)か つf(x)≠
接計 算 によ り
(2.60) が 示 さ れ る.こ の 不 等 式 を超 関 数 の レヴ ェ ル まで 普 遍 化 した もの が 加 藤 の不 等 式 で あ る.言 い換 えれ ば,加 藤 の不 等 式 は,(2.60)に 的 理 念 を捉 え た もの な の で あ る.だ が,こ
現 れ て い る究 極的 な普 遍
の 普 遍 化 の構 造 は,以 下 の 証 明 が 語
る よ う に,全 然 自明 で は な く,注 意 深 い重 層的 な極 限 解 析 が 必 要 と され る.一 挙 に 高 み に達 す る こ とは容 易 で は ない.し
か し,こ こ に 関数 解 析 学 の 醍 醐 味 の
ひ とつ の 側 面 を味 わ う こ とが で きる. 証 明 まず,
の 場 合 を考 え,ε>0と
し
(2.61) と す る.こ
の と き,
であ り
(2.62) が 成 り立 つ.(2.61)は ,を
意 味 す る.こ
の 事 実 と(2.62)か
ら
(2.63) が 得 られ る. (2.62)の 両 辺 にFε をか け,そ
う して 得 られ る式 の 両辺 の 発 散 を とれ ば
を 得 る.そ
こ で,(2.63)を
使 え ば
を 得 る.し
た が っ て,
た だ し, さ て,定
理 の 仮 定 の よ う に, かつ
と し,
と し よ う(ρ は 補 題2.27の の と き,
証 明 に お け る の と同 じ も の で あ る).こ
で あ る か ら,
と お き,前
半
の結 果 を用 い る と
(2.64) を 得 る.ε
を 固 定 し,δ
→0の
と し,Brの
極 限 を と る.r>0に
定 義 関 数 をXrと
対 し て,
す る.δ<δ0の
と き,
に注 意 す れ ば
と い う 評 価 を 得 る.
で あ る か ら,
と な る*27.し
た が っ て,
そ こ で,δ0→0と
す れ ば,右
辺 は0に
が 得 ら れ る.r>0は こ れ は
の 位 相 でfδ →f(δ
て,D(IRd)'の δ→0と
意 味 で もfδ →fと
→0)と な る([5]ま
収 束 す る の で,
任 意 で あ っ た か ら,
な る こ と を 意 味 す る.し た は[6]の
付 録C,定
たが っ 理C.4).
な る δの 部 分 列 に 移 行 す る こ と に よ り,fδ(x)→f(x)(a.e.x)と
一 般 性 を 失 わ な い*28 .こ ま た,Δfδ=(Δf)δ に,
の と き
と な る.
で あ り,
で あ る か ら,fδ
の 位 相 で
と な る.し
位 相 で,
と な る.ゆ
とす る こ と に よ り,超
関 数 の 意 味 で, か つ
位 相 で,
*27 [5]ま た は[6]の
付 録C
*28 [5]ま た は[6]の
付 録A
の 場 合 と 同様
た が っ て,D(IRd)'の え に(2.64)で
δ→0
を 得 る.ε
とす れ ば, ら,D(IRd)'の
して
→0
であるか ま た,
,定
理C.16-(ⅱ)の
,定
理A.16の
応 用. 応 用.
任 意 のu∈D(IRd)に対して,
な
ら ば,
で あ り, が 成 り 立 つ.
か ら,ル
で あ る
ベ ー グ の 優 収 束 定 理([5]ま
た は[6]の
付 録Aの
定 理A.6)に
よ り,
し た が っ て,
以上 に よ っ て,(2.59)が
定 理2.25の (2.57)が
証 明 ψ ∈D(H*)は(2.56)を
成 り立 つ.(2.57)はΔ
ψ=Vψ+ψ
か ら,こ の 式 の 右 辺 は
に は い る.し
得 ら れ る .
満 た す も の と し よ う.し
■
た が っ て,
と変 形 で き,
である
た が っ て .そ
こ で,
加 藤 の 不 等 式 を 適 用 す れ ば, ゆ え に .こ 定 理2.25の
れ と 補 題2.27か
後 半 の 主 張 に つ い て は,付 録Bの
て 応 用 す れ ば,条 件(2.55)の
も と で,-Δ+Vは
で あ る か ら,-Δ+V⊂-Δ+V.自 大 を も た な い か ら([5]のp.137,命
ら ψ=0が
結 論 さ れ る.
定 理B.1をA=-Δ,B=Vと
し
閉 で あ る. 己 共 役 作 用 素 は非 自明 な対 称 拡
題2.34),-Δ+V=-Δ+Vで
なければ
な ら な い.
■
定 理2.25の
系2.29
系 と して 次 を 得 る.
(下 に 有 界 な 多 項 式 型 ポ テ ン シ ャル を もつ シ ュ レー デ ィ ン ガ ー型 作 用
素)P(x)をx1,…xdに
関す る 実 係 数 の多 項 式 で 下 に有 界 な もの とす れ ば,
作 用 素-Δ+Pは 証 明 Pの
上 で本 質的 に 自己 共 役 で あ る.
連 続 性 を使 え ば,
2.25をV=Pと
して 応 用 で き る.
系2.30 nを
任 意 の 自 然 数 と し,
λ>0は
定 数,QはIRd上
数 α ∈[0,2n)が
あ って
は容 易 にわ か る.し たが っ て,定 理
の 実 数 値 ボ レ ル 可 測 関 数 で,非
■
と す る.た 負 定 数p ,q〓0と
だ し, 定
を 満 た す も の とす る.こ で あ り,下
の と き-Δ+Pは,
に 有 界 で あ る.ま
証 明 p2n(x):=λ│x│2n,x∈IRdと の ε>0に
上 で 自己 共役
た, は-Δ+Pの
芯 で あ る.
お く.0〓
α<2nで
あ る か ら,任
対 し て, x∈IRdを
定 数
が あ る.し
満 たす
た が っ て,任
意 の ψ ∈D(P2n)に
こ れ はQ≪P2nを 不 等 式 に よ り,Q≪-Δ+P2n.演 下 に 有 界 で あ る か ら,加
意 味 す る.こ
習 問 題6に
藤-レ
対 し て, れ と演 習 問 題6-(v)の
よ り,-Δ+P2nは
自己 共 役 で
リ ッ ヒ の 定 理 に よ り,-Δ+P2n+Q=-Δ+P
は 自 己 共 役 で あ り,下
に 有 界 で あ る こ と が 結 論 さ れ る.
例2.5
例 と し て は,た
系2.30のQの
意
と え ば,高
■
々(2n-1)次
の 実 多 項 式 が あ る.
2.5 混 合 型 ポ テ ン シ ャ ル を も つ 場 合
2.3節 と2.4節 の結 果 の応 用 と して,ポ テ ン シ ャ ルの 部 分 が ラ プ ラ シ ア ン に関 して相 対 的 に有 界 な部 分 とそ うで な い 部 分 か らな る場 合 に対 す る シ ュ レー デ ィ ン ガ ー 型作 用 素 の 自 己共 役 性 に つ い て の 基 本 的結 果 を証 明 しよ う. 定 理2.31
V,W:IRd→IRは
ボ レ ル 可 測 関 数 で,L2(IRd)に
おいて
(2.65) (2.66) を 満 た す も の と す る*29.た λ >0を
だ し,a,
定 数 と し,a+(a'/λ)<1と
L2(IRd)上
b, a', b'が 非 負 の 定 数,nは
自 然 数 で あ る.
い う 条 件 の も と で 考 え る.こ
の と き,
の対 称 作 用 素
(2.67) はD(-Δ)∩D(x2n)上 *29 以 下
,関
数│x│β(β
う に 記 す.
で 自 己 共 役 で あ り,下 ∈IRは
定 数)に
に 有 界 で あ る.
よ る か け 算 作 用 素│x│β
の 定 義 域 をD(│x│β)の
よ
証 明 系2.30に
よ っ て,
は 自 己 共 役 で あ り,
で 本 質的 に 自 己 共 役 で あ る.明 ε ∈(0,1)に
ら か に,K〓0.Hλ=K+V+Wと
不 等 式 と 条 件(2.65),(2.66)お
意 の ψ ∈D(K)に
リ ッ ヒ の 定 理 に よ り,題
例 に つ い て は,演
よ び 演 習 問 題6-(v)の
不等式 に よ
対 して
a, a',λ に 関 す る 仮 定 に よ り,ε>0を 加 藤-レ
書 け る.
対 して
と お く.3角 り,任
上
習 問 題9を
十 分 小 さ く と れ ばgλ,ε<1.し
た が っ て,
意 が し た が う.
■
参 照.
2.6
交 換 子 定 理
前 節 まで に議 論 した,自 己 共役 性 に 関す る諸 定 理 は主 に下 に有 界 な対 称 作 用 素 の 摂 動 に関 す る もの で あ っ た.し か し,量 子 力 学 にお い て 物 理量 を表 す 作 用 素 は 下 に有 界 な もの ばか りで は な い.た
とえ ば,角 運 動 量 とか 一様 な電 場 が か か っ
た 水 素 原 子 系 の ハ ミル トニ ア ンは下 に 有 界 で は な い(以 下 を参 照).そ
こで,こ
の 節 で は 必 ず し も下 に有 界 で は な い対 称 作 用 素 の 自己 共 役性 の問 題 を扱 う.ま ず,基 本 とな る 抽 象的 な定 理 か ら始 め よ う. 定 理2.32
(交 換 子 定 理(commutator
上 の 自 己共 役 作 用 素 でT〓1を あ る稠 密 な部 分 空 間Dを
theorem)*30).Tは
満 た す とす る.Aを
含 み,DはTの
ヒ ルベ ル ト空 間H
対称作用素でその定義域 は
芯 に な っ て い る とす る.さ
らに次 の 条
件(ⅰ),(ⅱ)が 満 た され る と し よ う. (ⅰ) あ る定数c>0が *30 グ リ ム-ジ 理 の"意
ャ
存在 して,す べ て の Ψ ∈Dに 対 して,
ッ フ ェーネ ル ソ ン(Glimm-Jaffe-Nelson)の
味"な
い し"こ
こ ろ"に
つ い て は,証
交 換 子 定 理 と も呼 ぶ.こ
明 の 後 の 部 分 で 簡 単 に ふ れ る.
の定
(ⅱ) あ る定 数b>0が
この と き,AはD上
存 在 して,す べ て の Ψ ∈Dに
対 して
で 本 質的 に 自己 共 役 で あ り,A│Dの
閉包 はTの
すべ て の
芯 上 で 本 質的 に 自 己 共 役 で あ る. 証 明 AD:=A│Dと
お く.DはTの
芯 で あ る か ら,任
て
意 の Ψ ∈D(T)に
と な る 点 列 Ψn∈Dが
(ⅰ)よ り{ADΨn}nは Ψ ∈D(AD)か 得 る.条
件(ⅱ)に
存 在 す る.条
コ ー シ ー 列 を な す こ とが わ か る.ADは
つADΨn→ADΨ(n→∞).ゆ お い て Ψ を Ψnで
対 し 件
可 閉 で あ る か ら,
え にD(T)⊂D(AD)…(*)を 置 き 換 え,n→∞
の極 限 を と る と
(**) を得 る.Φ
∈D(A*D),Ψ=T-1Φ
∈D(T)と
し よ う.こ
に 注 意 し,(**)を
が 得 ら れ る.こ
の 不 等 式 と〈Ψ,Φ 〉〓0で
の と き,
使 えば
あ る こ と(T-1〓0に
と,
を 得 る.そ
と す れ ば〈 Ψ,Φ 〉〓0.し 左 か らT1/2を
た が っ て〈Ψ,Φ〉=0.こ
作 用 さ せ れ ば Φ=0を
同 様 に
得 る.し
用いる
こ で,
れ か らT-1/2Φ=0が
出 る.
た が っ て
を 示 す こ と が で き る.し
性 に 関 す る 一 般 的 な 判 定 条 件(補 題2.9-(ⅱ))に
注 意)を
た が っ て,本
よ っ て,AはD上
質的 自 己 共 役 で本質的 に自
己 共 役 で あ る. DeをTの
任 意 の 芯 とす れ ば,(*)に
と し よ う.DはTの
芯 で あ る か ら,極
は 任 意 の Ψ ∈D(T)ま る.こ
う し て お け ば,前
よ りDe⊂D(AD).そ
こ でB=AD│De
限 操 作 を 用 い る こ と に よ り,条 件(ⅰ),(ⅱ)
で 拡 張 さ れ る.た 半 の 証 明 でAをBと
だ し,AはADで
置 き変 わ る こ と に な
み な し,DをDeと
み な せ ば,前
半 の 結 果 か ら,Bは はDe上
本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る こ と が 結 論 さ れ る.す
な わ ち,AD
で 本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る.
定 理2.32の
条 件 の"意 味"に
つ い て 簡 単 に ふ れ て お こ う.条
注 意 す る ま で も な く,AがTに 問 題 は 条 件(ⅱ)で AとTの
あ る.ま
ず,も
し,
た が っ て,条
い 意 味 で の 交 換 子"― れ が 定 理2.32の
ベ ク トル 空 間Vか
な ら ば 条 件(ⅱ)は,
件(ⅱ)はAとTの
に対 す る
,Tに
交換 子 の あ る種 の
関 す る"小
さ さ"の 表 現 と み
名 称 の 由 来 で あ る.
ら ベ ク トル 空 間Wへ
る)の
全 体 をL(V,W)で
Vを
複 素 ベ ク ト ル 空 間 とす れ ば,L(V)は
関 し てC上
えて
関 する条件
で あ る こ と に 注 意 し よ う.し
な せ る.こ
件(ⅰ)は,あ
つ い て 相 対 的 に 有 界 で あ る と い う こ と で あ る.
交 換 子[A,T]:=AT-TAに
一 般 化 ―"弱
■
の 線 形 作 用 素(定
表 し,L(V):=L(V,V)と
の 代 数 に な る.任
義 域 はV全
体 とす
お く. 作 用 素 の 積 と和 お よ び ス カ ラ ー 倍 に
意 のS∈L(V)に
対 し て,
を
(2.68) に よ っ て 定 義 す る.明
ら か に,δSは
線 形 で あ る.さ
ら に,δSは
ラ イ プ ニ ッツ則
(2.69) を満 たす.す
な わ ち,交 換 子 を とる 演 算 は,作 用 素 の 空 間 にお け る微 分 演 算 の
一 種 とみ られ る .そ こで,δSをL(V)に
お け る,S方
向 へ の 微 分(derivation)
と呼 ぶ. い ま指 摘 した 事 実 を考 慮 す る と,定 理2.32の 意 味 で,AのT方
条 件(11)は,よ
り一般 化 され た
向 へ の微 分 の小 さ さ を測 る もの と解 釈 す る こ とが で きる.こ
う して,定 理2.32の
仮 定 は,問 題 とな る対 称 作 用 素 お よ び そ の微 分 に 関 す る相
対 的 有 界 性 の 条 件 とみ る こ とが で き る. 定 理2.32の
条 件(ⅰ),(ⅱ)を 満 たす 自己 共 役 作 用 素TをAに
作 用 素 とい う*31.あ
対 す る 一 つ の優
る対 称 作 用 素 に対 す る優 作 用 素 は 一 つ とは 限 らな い.交 換
*31 この 命 名 は ,筆 者 が こ こで試 み に 導 入す る もの で あ り,標 準 的 な もので はな い.
子 定 理 は,「 優 作 用 素 を もつ対 称 作 用 素 は 本 質 的 に 自己 共役 で あ る」 と言 い 換 え られ る. 定 理2.33
(フ ァ リ ス-ラ ヴ ァ イ ン(Faris-Lavine)の
実 数 値 ボ レ ル 可 測 関 数 と し,Wに
つ い て は,あ
て,
定 理)V,
WをIRd上
る 定 数a>0,
b∈IRが
が 満 た さ れ る とす る.さ
の 存在 し
らに 次 の条件
(ⅰ),(ⅱ)が 成 立 す る と し よ う.
(ⅰ) 各j=1,…,dに
対 し,xj,Djの
作 用 の も とで不 変 な稠 密 な 部 分 空 間
が 存 在 し,
はD上
で本 質的
に 自 己 共 役 で あ る. (ⅱ) あ る α<1に
対 して,-α
Δ+VはD上
こ の と き,H:=-Δ+V+WはD上
証 明 に 入 る 前 に,そ
で 下 に 有 界 で あ る.
で 本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る.
れ 自 体 で 少 し 興 味 の あ る 作 用 素 不 等 式 を 補 題 と して 述 べ
て お く.
補 題2.34
任 意 の
に対 して
証明 自明な不等式 い て,右
(複号 同順)に お
辺 を 展 開 す れ ば よ い.
定 理2.33の
■
証明
と す る.D上
と書 け る か ら,定 数 γ を とWに
を 満 た す よ う に 選 べ ば,条
対 す る 仮 定 に よ り,
件(ⅱ)
が 成 り立 つ.条
(ⅰ)に よ りT0は
本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る.T0の
こ の と き,Tは
自 己 共 役 で あ り,T〓1.こ
こ と を 示 そ う.
で
閉 包 をTと
のTがHに
件
し よ う:T=T0.
対 す る優 作 用 素 で あ る
便 宜 上,Hの
か わ り にA:=H+γ
を 考 え る.し
ゆ え に,任
意 の ψ ∈Dに
DはDjの
作 用 の も と で 不 変 で あ る か ら,
対 して
(a.e.)で あ り,
同 様 に,
し た が っ て,
し た が っ て,特
に
こ で 次 の よ う に 計 算 を 進 め る(交 換 子[xj,A]の
公 式 と例E.1を
ま た,
で あ る か ら,
こ とが わ か る.そ 録Eの
た が っ て,
で ある 計 算 に は,付
用 い よ):
は実 数 で あ り,
で あるか ら
(2.70) を 得 る.条
件(ⅱ)と
に 有 界 で あ る.し
た が っ て,H+ax2はD上
に よ っ て, T〓1で xj, DjがDを
に よ り,-Δ+VはD上 で 下 に有 界 で あ る.こ
で下
の と き,(2.70)
あ る か ら,作 用 素 解 析 に よ り, し た が っ て,c:=1+4adと
不 変 に す る こ と と交 換 関 係
お け ば, を用 い る と
が 示 さ れ る.右 辺 に補 題2.34を
適用す れば
が 得 ら れ る.
と し,(*)に
し た が っ て,C=4a/δ 得 る.こ
注 意 す れ ば,D上
で
と お け ば,
れ と(**)に
よ っ て,交
を
換 子 定 理 が 応 用 で き る の で,AはD上
に 自 己 共 役 で あ る こ とが 結 論 さ れ る,し
た が っ て,HもD上
で本質的
で 本 質 的 に 自己 共
役 で あ る. 例2.6 る.そ
■
原 子 を 一 様 な 静 電 場E∈IR3の
中 に お く と,原 子 の エ ネ ル ギ ー準 位 は 変 化 す
の た め に,原 子 か ら放 射 され る 光 の 振 動 数 は ず れ る.こ
ち な ん で シ ュ タ ル ク(Stark)効
果 と呼 ば れ る.こ
シ ュ タ ル ク ・ハ ミル トニ ア ン― は,水
の現 象 はその発 見者 に
の 効 果 を説 明 す る ハ ミル トニ ア ン―
素様 原子 の場合
(2.71) と い う形 を と る(m>0,-e<0は Z∈INは
原 子 番 号).こ
そ れ ぞ れ,電 子 の 質 量 と電 荷 を 表 す パ ラ メ ー タ ー,
の ハ ミル トニ ア ン のC∞0(IR3)上
で の 本 質 的 自 己 共 役 性 は,
次 の よ り一 般 的 な 定 理 の 特 別 な 場 合 と して 得 ら れ る.
定 理2.35
λ ∈IR,α
∈IR3と
す る.こ
の とき
(2.72) はC∞0(IR3)上
で 本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る.さ
ら に,α ≠0な
ら ばHλ,α
は 上 に も下
に も有 界 で は な い. 証 明 関 数V,Wを
に よ っ て定 義 す れ ば,
と 書 け る.(2.47)に 定 理2.31が
適 用 さ れ る.し
よ っ て,
た が っ て,任
意 の ε>0に
で あ る か ら, 対 して
は,
上 で 自己 共 役 で あ り,
か に 任 意 の ε>0とa.e.x∈R3に
で あ る か ら,加
対 して,-α Δ+Vは
え て い るW,Vは
藤-レ リ ッ ヒ の 定 理 に よ り,任 意 の
自 己 共 役 で あ り,下
定 理2.33の
に 有 界 で あ る.以
仮 定 をす べ て 満 た す.し
上 で 本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る.Hλ
上 か ら,い
ま考
た が っ て,Hλ,aはC∞0(IR3)
,aが 上 に も下 に も有 界 で な い こ と を示 す こ と は演
習 問 題 とす る(演 習 問 題10).
注 意2.11
ら
を不 変 に す る.
対 して
す で に 述 べ た よ う に,V≪-Δ α>0に
上 で 本 質 的 に 自己 共 役 で あ る.明 で あ り,xj,Djは
■
こ こで は,残 念 なが ら,例 証 す る紙 数 が な いが,交 換 子 定 理 は量 子
場 の 理 論 に お い て も有 用 で あ る.
2.7
こ の節 で は,あ
解 析 ベ ク トル 定 理
る意 味 で 性 質 の よい 不 変 部 分 空 間 を もつ 対 称 作 用 素 の 本 質 的
自己 共 役 性 を証 明 す る. 定 義2.36
TをH上
の 線 形 作 用 素 とす る.
(ⅰ) ベ ク トル Ψ ∈C∞(T)(定
義1.7を
参 照)が
あ るt>0に
対 して
(2.73) を 満 た す と き,Ψ
をTの
解 析 ベ ク トル(analytic
ク トル の 全 体 をA∞(T)で (ⅱ) す べ て のt>0に 全 解 析 ベ ク トル(entire H∞(T)で
vector)と
呼 ぶ.Tの
解析ベ
表 す. 対 し て(2.73)を analytic
vector)と
満 た す ベ ク トル Ψ ∈C∞(T)をTの い う.Tの
全 解 析 ベ ク トル の 全 体 を
表 す.
容 易 に わ か る よ う に,H上
の 任 意 の 線 形 作 用 素Tに
対 して
(2.74) と い う包 含 関 係 が 成 り立 つ.
定 義2.37
Aを
対 称 作 用 素 と し,各
て 生 成 さ れ る 部 分 空 間 をDA(Ψ)と 空 間HA(Ψ)上
し,
の 線 形 作 用 素AΨ
の 作 用 素 と して)本
ベ ク トル(vector
of uniqueness)と
補 題2.39
と お く.ヒ
ルベ ル ト
質 的 に 自 己 共 役 な ら ば,Ψ
をAの
一意性
い う.
ヒ ル ベ ル ト空 間Hの
間L(D)がHで
に よっ
を 次 の よ う に 定 義 す る:
AΨ が(HA(Ψ)上
定 義2.38
に 対 し て,
部 分 集 合Dは,Dに
稠 密 で あ る と き,完
よ って 生 成 され る部 分 空
全 で あ る(total)と
[ヌス バ ウ ム(Nussbaum)]AはH上
い う.
の 対 称 作 用 素 で,D(A)がA
の 一 意 性 ベ ク トル か ら な る 完 全 な 集 合 を 含 む もの とす る.こ
の と き,Aは
本 質
的 に 自 己 共 役 で あ る. 証 明 条 件 に い う 完 全 集 合 をDと よ う.こ
の と き,Dの
す る.Ψ
∈Hと
性 質 に よ り,自 然 数Nと
ε>0は
任 意 に与 え られ た と し
複 素 定 数 αnお
で
よ びDの
ベ ク トル
を 満 た す も の が 存 在 す る.各
ΨnがAの
一 意 性 ベ ク トル で あ る こ と と,本 質 的 自 己 共 役 性 の 判 定 条 件([5]の
理2.44)に
よ り,
で
を 満 た す も の が 存 在 す る.そ あ り,
こ で,
と お け ば,Φ
が 成 り立 つ.こ
と を 意 味 す る.同
様 にR(A-i)もHで
題2.8-(ⅱ)に
よ っ て,Aは
補 題2.40
任 意 の 対 称 作 用 素Aに
れ はR(A+i)がHで
∈D(A)で
稠密であ るこ
稠 密 で あ る こ と が 示 さ れ る.ゆ
え に,補
本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る.
対 して,Aの
■
解 析 ベ ク トル は す べ てAの
意 性 ベ ク トル で あ る. 証 明 Ψ をAの 解 析 ベ ク トル とす る .写 を
定
像 :
一
に よ っ て 定 義 す る(N∈IN,αn∈C).こ 意 的 に拡 大 さ れ る.そ る.す
な わ ち,AΨ
の 拡 大 も 同 じ 記 号Jで
はJに
す る.IR上
も容 易 に わ か 参 照).し
は 自 己 共 役 拡 大 を も つ.そ
の 測 度 μ を
の ス ペ ク トル 測 度).ベ
の共役子 に一
表 す.
関 して 実 作 用 素 で あ る(付 録Dを
フ ォ ン ・ノ イ マ ン の 定 理 に よ り,AΨ Bと
の と き,JはHA(Ψ)上
の任 意 の 一 つ を
に よ っ て 定 義 す る(EBはB
ク トル Ψ はAの
解 析 ベ ク トル で あ る か ら,あ
に 対 して,
と し よ う.こ
た が っ て,
るt>0
の と き,任
意 の
に対 して
した が っ て,単 調 収 束 定 理 に よっ て
は 有 限 で あ る.ゆ
え に,
とす る と き,関
数:
は
で 正 則 な 関 数 n〓0に ら,│s│
へ 解 析 接 続 で き る.任
対 し て,
で あるか
対 して
し た が っ て,│s│
対 し て は,関 数
け か ら決 定 さ れ る.ゆ
え に,B'をAΨ
│s│
意 の 非 負整 数
と│s│
は 数 列
の 別 の 自己 共 役 拡 大 とす れ ば,
成 り立 つ.そ
こ で,
の 稠 密 性 お よ びeisB,eisB'の 対 し て,
分 を考 察 す る こ と に よ り,B=B'が
だ
示 さ れ る,ゆ
の任意性 と 有 界 性 を 用 い る と,す
べ ての
が 導 か れ る.s=0で
の強 微
え に,AΨ
は た だ一 つ の 自 己
共 役 拡 大 を も つ.よ
っ て,付
録Dの
系D.2に
よ っ て,AΨ
は 本 質 的 に 自己 共 役
で あ る.
■
定 理2.41 H上
(ネ ル ソ ン(E.
Nelson)の
の 対 称 作 用 素 で,D(A)がAの
と す る.こ
の と き,Aは
証 明 補 題2.40に む.こ
Sを
DはSの
本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る.
よ っ て,D(A)はAの
一 意性 ベ ク トルか らな る完全 集 合 を含 ら 題 意 が し た が う.
対 称 作 用 素 と し,DをD(S)に
と仮 定 す る(SD⊂D).こ
の と き,SはD上
不 変 に す る の で,Dに
析 ベ ク トル で あ る.し よ り,SのD上
注 意2.12
た が っ て,定
不変 にする
で 本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る.
含 ま れ る,Sの
解 析 ベ ク トル はS│Dの
理2.41をA=S│Dと
こ の 系 に お い て,DがSの 用 す る と き に は,注
意 さ れ た い.
ヒ ルベ ル ト空 間H上
の ボ ソ ン フ ォ ッ ク空 間
任 意 の 部 分 空 間Dに
対 して,Fs(H)の
を考 え
部 分 空 間Fs ,fm(D)を
こで,Ω は フ ォ ッ ク真 空 で あ り,A(f)*(f∈H)は
を参 照).容
で 稠 密 で あ る*32.シ
■
不 変 部 分 空 間 で あ る とい う条 件 は は ず
る.Hの
に よ っ て 定 義 す る.こ
解
して応 用 す る こ とに
例2.7
Fs ,fm(D)を
つSはDを
で の 本 質 的 自 己 共 役 性 が 導 か れ る.
す こ と が で き な い.応
す([6]の4.4節
■
含 ま れ る 稠 密 な 部 分 空 間 と す る.
解 析 ベ ク トル か ら な る 稠 密 な 集 合 を 含 み,か
証 明 SはDを
ヒ ル ベ ル ト空 間
解 析 ベ ク トル か ら な る 完 全 集 合 を 含 む も の
れ と ヌ ス バ ウ ム の 補 題2.39か
系2.42
解 析 ベ ク トル 定 理)Aは
易 に わ か る よ う に,DがHで
生 成 作 用 素 を表
稠 密 な らば,Fs,fm(D)はFs(H)
ー ガ ル の 場 の 作 用 素
が
不 変 に す る こ と は 明 ら か で あ ろ う.系2.42の
応 用 例 の 一 つ と して,次
の
定 理 を 証 明 で き る: 定 理2.43
Hで 稠 密 な 任 意 の 部 分 空 問Dに
対 し て,
はFs,fm(D)上
で 本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る. *32 Dの
n個
の 代 数 的 テ ン ソ ル 積
部 分 空 間Hns ,fmで
nDの
対 称 化.Sn(
稠 密 で あ る こ と に よ る.
nD)は[6]の(4.93)式
で定 義 した
証明
と し,ベ ク トル
で
満 た す も の を任 意 に と る.A(f)#に
よ っ て,A(f)ま
n〓1に
項の和
対 して,
に よ り,こ
を
た はA(f)*の
ど ち ら か を表 す. .Ψ
れ と[6]の
命 題4.33を
の 取 り方
用 いる と
以 下,同 様 の 評価 を繰 り返 せ ば
が 得 られ る.し
た が っ て,任
意 のt>0に
対 して
(右 辺 の 級 数 が 収 束 す る こ と は ダ ラ ンベ ー ル の 判 定 法 を使 え ば容 易 に わ か る.)ゆ え に, Ψ は ΦS(f)の
解 析 ベ ク トル で あ る.こ
ベ ク トル で あ る こ と を 意 味 す る.し
れ は,Fs,fm(D)の
た が っ て,系2
任 意 の元 が ΦS(f)の
解析
.42が 適 用 で き,結 論 を得 る. ■
2.8 準 双線 形形 式 と自己 共役 作 用 素
量 子 力 学 へ の 応 用 に お い て,状 与 え られ た と き,A+Bが
態 の ヒ ル ベ ル ト空 間 上 の 対 称 作 用 素A,Bが
た と え本 質 的 に 自己 共 役 で な くて も,そ れ が 適 切 な
自己 共 役 拡 大 を もつ な らば,そ の 自己 共 役 拡 大 に よっ て,A+Bが
表す物理 的
描 像 に 呼 応 す る物 理 量 を定 義 す る こ とが 可 能 で あ る.そ れ ゆ え,そ の よ う な 自 己 共 役 拡 大 を構 成 す る方 法 を探 求 す る こ と は数 学 的 に も物 理 的 に も意義 を もつ. これ が この 節 の 主 題 で あ る*33. *33 対 称 作 用 素 の 自己 共役 拡 大 に関す る一 般 論 につ い て は ,こ の 章の 付 録C,
Dで
論 じる.
2.8.1
準双線 形形式再訪
準 双 線 形 形 式 に つ い て は,す で に[5]の2.7.2項(p.198∼p.200)で こ で は,ま Hを
ず,準
双 線 形 形 式 の 重 要 な ク ラ ス の 一 つ を 導 入 す る.
複 素 ヒ ル ベ ル ト空 間,DをHの
は な い).写
定 義 域 と 呼 び,Q(s)で
部 分 空 間 で あ る と す る(稠 密 で あ る 必 要
像s:D×D→CをD×D上
よ う な 準 双 線 形 形 式sをHに
定 義2.44
ふ れ た.こ
の 準 双 線 形 形 式 と す る.以 お け る 準 双 線 形 形 式 と い う.こ
後,こ
の
の 場 合,Dをsの
表 す*34.
s1, s2を
ヒ ル ベ ル ト空 間Hに
お け る 二 つ の 準 双 線 形 形 式 と す る.
(ⅰ) (準 双 線 形 形 式 の 相 等)Q(s1)=Q(s2)か
て
つ 任 意 の
が 成 り 立 つ と き,s1とs2は
に対 し
等 しい と い い,s1=s2と
記 す.
(ⅱ) (準 双 線 形 形 式 の 和)準 双 線 形 形 式s1+s2を
次 の よ うに定 義 す る:
(2.75) (2.76) s1+s2をs1とs2の
和 と 呼 ぶ.同
準 双 線 形 形 式s1,…,sn(n〓3)に sl,…,snの
様 に,ヒ
ル ベ ル ト空 間Hに
対 し て,準
双 線 形 形 式
お け るn個 ―
の
これ を
和 と呼 ぶ ― が
(2.77) に よ って 帰 納 的 に 定 義 さ れ る. (ⅲ) (準双 線 形 形 式 の ス カ ラ ー倍)ヒ ルベ ル ト空 間Hに
お け る準 双 線 形 形 式
sの ス カ ラ ー倍 αs(α ∈C)は
(2.78) に よ っ て 定 義 さ れ る. *34 文 献 に よ (form)と
っ て は,準
双 線 形 形 式 の こ と を2次
呼 ぶ 場 合 が あ る.
形 式(quadratic
form)あ
るい は単 に形 式
あ る 定 数γ が あ っ て,す 成 り立 つ と き,sは と れ る 場 合,sは
べ て の Ψ ∈Q(s)に
対 し て,s(Ψ,Ψ)〓-γ‖
下 に 有 界 で あ る と い い い,s〓-γ
と 記 す.特
Ψ‖2が
に,γ=0に
非 負 で あ る と い う.
準 双 線 形 形 式sが
下 に有 界 の と き
(2.79) をsの
下 限 と 呼 ぶ.
部 分 空 間D⊂Q(s)が
準 双 線 形 形 式sの
芯(core)で
あ る と は,任 意 の Ψ ∈Q(s)
に 対 し て,
と な る Ψn∈Dが
存 在 す る と き を い う.
次 の 事 実 を 注 意 し て お こ う.
補 題2.45
任 意 の Ψ ∈Q(s)に
対 し て,
(2.80) が 実 数 な ら ば,sは
対 称,す
な わ ち,s(Ψ,Φ)*=s(Φ,Ψ),Ψ,Φ
∈Q(s)が
成 り
立 つ.
証 明 準 双 線 形 形 式 に関 す る偏 極 恒 等 式
(2.81) とs(αΨ)=│α│2s(Ψ)(Ψ∈Q(s),α∈C)を 例2.8
Aを
ヒ ル ベ ル ト空 間H上
用 い れ ば よ い.
■
の 自己 共 役 作 用 素 と し,そ の ス ペ ク トル 測 度 をEA
とす る.
(2.82) と し,sA:Q(A)×Q(A)→Cを
(2.83)
に よ っ て 定 義 す る.こ
の と き,sAはQ(A)上
に 同 伴 す る準 双 線 形 形 式 あ る い は 単 にAの 定 義 域(form
domain)と
呼 ぶ.作
の対 称 な準 双 線 形 形 式 で あ る.sAをA 形 式(form)と
い い,Q(A)をAの
形式 の
用 素解 析 に よ り
(2.84) で あ る こ と に 注 意 し よ う. 作 用 素 解 析 を用 い る と次 の こ とが わ か る:Aが が っ て,A+γ
下 に有 界 でA〓-γ(γ
∈IR)(し
た
は 非 負 の 自 己 共 役 作 用 素)な ら ば,sA〓-γ,Q(A)=D((A+γ)1/2)
で あ り,す べ て の Ψ,Φ ∈Q(A)に
対 して
(2.85) 次 の 事 実 に注 意 し よ う. 命 題2.46
二 つ の 自 己 共 役 作 用 素A,Bに
証 明 sA=sBと
す れ ば,任
つ い て,sA=sBな
意 の Ψ ∈Q(A)と
ら ばA=B.
Φ ∈D(A)に
∫IRλd〈Ψ,EB(λ)Φ〉.任 意 のn∈INに 対 して,x[-n,n](B)Ψ Ψ の か わ りにx[-n,n](B)Ψ を代 入 す れ ば
対 して,〈 Ψ,AΦ〉= ∈Q(B)で
あ る か ら,
容 易 にわか るよ うに
で あ る か ら, 補 題3.6を
が 導 か れ る([1]のp.115,
参 照).そ
した が っ て,Φ
こ で,n→
∈D(B).ゆ
意 味 す る.A,Bと
え に〈Ψ,AΦ〉=〈 Ψ,BΦ〉 が 導 か れ る.こ
芯 で あ る と き,DをAの
作 用 素 に 対 し て,閉
定 義2.47
とす れ ば,
も に 自 己 共 役 で あ る か ら,A=Bで
部 分 空 間DがsAの
よ う に,準
∞
れ はA⊂Bを
な け れ ば な ら な い.
形 式 芯(form
core)と
■
呼 ぶ(定 義).
作 用 素 とい う重 要 な作 用 素 の ク ラス の 一 つ が 定 義 さ れ た
双 線 形 形 式 に 対 し て も そ れ に 対 応 す る 概 念 が 定 義 さ れ る.
sを 準 双 線 形 形 式 と す る.Ψn∈Q(s),‖
Ψm)→0(n,m→
∞)な
ら ば,常
成 り立 つ と き,sは
閉 で あ る と い う.
Ψn-Ψ‖
に Ψ ∈Q(s),s(Ψn-Ψ)→0(n→
→0,s(Ψn∞)が
例2.9
Aを
下 に 有 界 な 自己 共 役 作 用 素 でA〓-γ
る 準 双 線 形 形 式sAは
証 明 Ψn∈Q(A)=D((A+γ)1/2),‖ ∞)と
し よ う.こ
が わ か る.し
Ψn-Ψ‖
の と き,(2.85)よ
た が っ て,あ
閉 で あ る か ら,Ψ
とす る.こ
の と き,Aに
同伴 す
閉 で あ る.
る Φ ∈Hが
導 く.ゆ
基 本列 で あ る こ と
あ っ て,(A+γ)1/2Ψn→
∈D((A+γ)1/2)=Q(A)か
者 はsA(Ψn-Ψ)→0を
→0,sA(Ψn-Ψm)→0(n,m→
り,{(A+γ)1/2Ψn}nはHの
Φ.(A+γ)1/2は
つ(A+γ)1/2Ψn→(A+γ)1/2Ψ.後 え にsAは
閉 で あ る.
■
閉で は な い 準 双 線 形 形 式 の例 もあ げ てお こ う. 例2.10
ヒ ル ベ ル ト空 間L2(IR)に
お い て,準 双 線 形 形 式sδ を次 の よ う に定 義 す る:
これ は対 称 な準 双 線 形 形 式 で あ り,非 負 で あ る.だ
が,そ れ は 閉 で は な い(演 習 問 題11).
こ の 例 の 準 双 線 形 形 式 は 超 関 数 論 の 記 法 を 使 え ば,sδ(u,υ)=∫ δ(u*υ)と 表 さ れ る.こ
こで,δ
は1次
下 に有 界 な準 双 線 形 形 式s〓-γ(γ
と お く と,〈 ・,・〉sはQ(s)の 積 空 間 をHsと
書 き,こ
∈IRは 定 数)に 対 して
内 積 で あ る.こ
れ をsに
δ(x)u(x)*υ(x)dx=
元 の デ ル タ超 関 数 で あ る.
の 内 積 をQ(s)に
付 与 して で き る内
同 伴 す る 内 積 空 間 と 呼 ぶ.次
の命 題 は 明 らか
で あ ろ う.
命 題2.48
下 に有 界 な準 双 線 形 形 式sが 閉 で あ る た め の 必 要 十 分 条 件 はHsが
ヒ ル ベ ル ト空 間 で あ る こ とで あ る.
2.8.2 定 義2.49
可 閉 な準 双 線 形 形 式 Hに
お け る 準 双 線 形 形 式s1,
意 の Ψ,Φ ∈Q(s1)に
Hに
が あ る と き,sは
つ い て,Q(s1)⊂Q(s2)か
対 し て,s1(Ψ,Φ)=s2(Ψ,Φ)が
の 拡 大 で あ る と い い,s1⊂s2と
定 義2.50
s2に
つ任
成 り立 つ と き,s2はs1
表 す.
お け る 準 双 線 形 形 式sに 可 閉 で あ る と い う.こ
対 し て,s⊂sと の 場 合,sをsの
な る 閉準 双 線 形 形 式 一 つ の 閉 拡 大 と い う.
命 題2.51
Hに お け る準 双 線 形 形 式sが
可 閉 な ら ば,次 が 成 り立 つ:
な らば 証 明 仮 定 に よ り,sの 0(n,m→
∞)と
に,sの
(2.86) 閉 拡 大sが
し よ う.し
あ る.Ψn∈Q(s),
Ψn→0,
s(Ψn-Ψm)→
た が っ て,s(Ψn-Ψm)→0(n,m→
閉 性 に よ り,s(Ψn)→0(n→
∞).す
∞).ゆ
な わ ち,s(Ψn)→0(n→
え ∞). ■
下 に 有 界 な 準 双 線 形 形 式sに た め に,補
Kを
内 積 空 間,DをKで
任 意 の 基 本 列 はKの
逆 も成 立 す る こ と を示 す
稠 密 な 部 分 空 間 と す る.Dの
中 に 極 限 を も つ と 仮 定 す る.こ
元か らなる
の と き,Kは
完 備,す
なわ
意 の ε>0に
対 して,番
ル ベ ル ト空 間 で あ る.
証 明 {Ψn}nをKの n0が
題2.51の
題 を 一 つ 用 意 す る.
補 題2.52
ち,ヒ
つ い て は,命
基 本 列 と す る.し
あ っ て,n,m〓n0な
り,各nに
た が っ て,任
ら ば‖ Ψn-Ψm‖<ε
対 し て,‖ Φn-Ψn‖<ε
が 成 り立 つ.Dの
と な る Φn∈Dが
元 か ら な る 基 本 列 で あ る.仮
が 存 在 す る.す
な わ ち,番
号n1が
が っ て,n〓max{n0,n1}な
ら ば‖ Ψn-Φ‖〓‖
ゆ え にlimn→
っ て,Kは
定 理2.53
∞ Ψn=Φ.よ
得 られ る.し
定 に よ り,Φ:=limn→
あ っ て,n〓n1な
稠密性 によ
あ る.
と表 し,3角 不 等 式 を 使 え ば‖ Φn-Φm‖<3ε(n,m〓n0)が て,{Φn}nはDの
号
たが っ
∞ Φn∈K
ら ば‖ Φn-Φ‖<ε.し Ψn-Φn‖+‖
た
Φn-Φ‖<2ε.
完 備 で あ る.
■
準 双 線 形 形 式sが 下 に 有 界 で あ り,(2.86)を
満 た す な らば,sは
可
閉 で あ る. 証 明 s〓0と
して 一般 性 を失 わ な い.条 件(2.86)が
成 り立 つ と し,部 分 集 合
Dsを 次 の よ う定 義 す る: 点列
で か つ
と な る も の が 存 在}.
明 ら か に,Q(s)⊂Ds.sはQ(s)に
(2.87)
半 正 定 値 内 積 を 与 え る か ら,シ
ュ ヴ ァル ツ
の不等式
(2.88) が 成 り立 つ.し
た が っ て,ま
た,3角
不等式
(2.89) が 成 り立 つ.こ
れ を 用 い る とDsが
に 対 し て,Ψn∈Q(s)で
Ψn→
を 満 た す も の が と れ る.い (2.88)に
部 分 空 間 で あ る こ と も容 易 に わ か る.Ψ Ψ(n→
∞)か
つlimm,n→
∞s(Ψm-Ψn)=0
ま,
と お く.
よって
した が っ て,│am-an│〓amn→0(m,n→
∞).ゆ
え に,limn→
る.さ
ら に,こ の 極 限 は Ψ を 上 の 意 味 に お い て 近 似 す る 列 Ψnの
い.実
際,別 に Ψ'n∈Q(s)で
0を
Ψ'n→
Ψ(n→
満 た す も の を と り,
∞)か
つlimm
と お け ば,上
∞)で
あ り,(2.89)に
した が っ て,仮 0(n→
∞).そ
定(2.86)に こ で,偏
∞anは
存在 す
選 び方 に よ らな
,n→ ∞s(Ψ'm-Ψ'n)= と 同 様 に して,不
が 導 か れ る.xn:=Ψn-Ψ'nと (n→
∈Ds
等式
お く と,xn→0
よ り
よ り,s(xn)→0(n→
∞).ゆ
極 恒 等 式 を 使 う こ と に よ り,Dsを
え に,│an-a'n│→ 定 義 域 とす る準 双 線
形 形 式sを
(2.90) に よ っ て 定 義 で き る.明
ら か にs〓0で
あ り,s⊂s.
sが 閉 で あ る こ と を示 そ う.そ れ に はsに 同伴 す る 内 積 空 間Hsが こ と を示 せ ば よ い.sの
構 成 の仕 方 か らわ か る よ う に,Q(s)はHsで
完備 である 稠密で あ
る.ま
た,Q(s)に
た が っ て,補
お け る(Hsの
題2.52に
位 相 で の)基 本 列 はHsの
よ っ て,Hsは
完 備 で あ る.ゆ
中 に 極 限 を も つ.し
え に 命 題2.48に
よ っ て,
sは 閉 で あ る.
■
以 上 か ら次 の定 義 が可 能 で あ る: 定 義2.54
可 閉 か つ 下 に有 界 な準 双 線 形 形 式sに
義 され る閉 な準 双 線 形 形 式sをsの 定 理2.55 sを
対 して,(2.90)に
よ っ て定
閉 包 と呼 ぶ.
可 閉 か つ 下 に 有 界 な 準 双 線 形 形 式 と す る.こ
の と き,次
の(ⅰ),
(ⅱ)が 成 り立 つ:
(ⅰ) sはsの
下 に 有 界 な 閉 拡 大 で 最 小 の も の で あ る.す
る 任 意 の 下 に 有 界 な 閉 準 双 線 形 形 式s'に
な わ ち,s⊂s'と
な
対 し て,s⊂s'.
(ⅱ) (下 限 の 等 式)ε0(s)=ε0(s). 証 明 (ⅰ)任意 の Ψ ∈Q(s)に と な る Ψn∈Q(s)が
あ る.こ
s'(Ψn-Ψm)→0(n,m→ Ψ)→0(n→
た す Ψn∈Q(s)が
あ る.s(Ψn)〓
が 得 ら れ る.し
た が っ て,ε0(s)〓
2.8.3
現
表
定 理2.56 形 式 と し,そ
定
∞ Ψn=Ψ,limn→
方,sの
っ て,題
た が っ て, つs'(Ψn-
っ て,s⊂s'.
構 成 の仕 方 に よ っ
∞s(Ψn)=s(Ψ)を
ε0(s)‖Ψn‖2で あ る か らs(Ψ)〓 ε0(s).よ
∞)
∞s'(Ψn)=s'(Ψ)
した が う.よ
ε0(s)は 明 らか.他
対 し て,limn→
∈Q(s')か
た,limn→
あ る か ら,s(Ψ)=s'(Ψ)が
あ る か ら,ε0(s)〓
意 の Ψ ∈Q(s)に
∞s(Ψn).し
閉 で あ る か ら,Ψ
た が っ て,Q(s)⊂Q(s').ま
で あ り,s'(Ψn)=s(Ψn)で
て,任
Ψ,s(Ψn-Ψm)→0(n,m→
の 場 合,s(Ψ)=limn→ ∞).s'は
∞).し
(ⅱ) s⊂sで
対 し て,Ψn→
満
ε0(s)‖Ψ‖2
意 が 成 立 す る.
■
理
(表 現 定 理)sを
ヒ ル ベ ル ト空 間Hに
の 定 義 域Q(s)はHで
お け る非 負 か つ 閉 な準 双 線 形
稠 密 で あ る と 仮 定 す る.こ
の と き,H上
の
非 負 自 己 共 役 作 用 素Aで
(2.91) を満 た す ものが た だ 一 つ 存 在 す る.
証 明 任 意 の Ψ, Φ ∈Q(s)に る.こ
対 し て,〈 Ψ,Φ〉+1:=s(Ψ,Φ)+〈
の と き,〈・,・〉+1はQ(s)上
の 内 積 で あ り,sの
積 に 関 して 完 備,す
な わ ち,ヒ
と 書 こ う.s〓0に
よ り,‖ Ψ‖〓‖ Ψ‖+1,Ψ Ψ,Φ〉,Ψ,Φ
て,H+1上
を 満 た す も の が た だ 一 つ 存 在 す る.(*)とq〓0に
べ て の Ψ ∈Q(s)に
対 して〈 Ψ
で な け れ ば な ら な い.し よ びBの
,Φ〉=0で
と お く と,CはH+1に
れ か ら,Φ
あ る.Q(s)は
ら,そ
た が っ て,CはH上
定 義 さ れ た 作 用 素 で あ り,H上
R(C±i)はHで 共 役 で あ る.そ
Aの
稠 密 で あ る.ゆ こ で,A:=C-1と
定 義 に よ り,任
(n→
∞)と
(n→
∞).他
方,s(Φn-Φm)→0(n,m→
, S2に ∈D(S2).
つ い て,
の 作 用 素 と して の の作 用 素 の 意 味 で
Φ,(C-1)Φn→AΦ
た が っ て,s(Ψ,Φn)→〈 ∞)で
質 的 に 自己
非負 の 自己共 役 作 用 素 で あ り
対 し て,Φn→
と れ る.し
定 義 に戻 れ ば
の 作 用 素 と し て,本
お け ば,Aは
意 の Φ ∈D(A)に
な る Φn∈D(C)が
*35 二 つ の 対 称 作 用 素S1 〈Ψ,S2Ψ〉,Ψ
こ で,C:=B-1
の 作 用 素 と して も稠 密 に
た が っ て,H上
え にCはH上
す れ ば,す
稠密で あるか
の 対 称 作 用 素 で あ る.H+1上
自 己 共 役 性 か ら,R(C±i)=H+1.し
∈H+1
れ と[5]の 補 題2.37お
お け る 自 己 共 役 作 用 素 で あ る.qとH+1の
も稠 密 で あ る.し
よっ
あ る*35.
∈ker Bと
稠 密 で あ る.そ
あ る).D(C)=R(B)はH+1で
Cの
理2.65)に
稠 密 で あ る か ら,Φ=0
が 得 ら れ た こ と に な る(C〓1で れ はHで
199,定
参 照).
Ψ,BΦ〉+1,Ψ,Φ
単 射 で あ る.こ
自 己 共 役 性 に よ り,R(B)はH+1で
199を
よ り,0〓B〓1で
∈H+1.こ
た が っ て,Bは
双線形形 式
よ っ て 定 義 す れ ば,
成 り 立 つ([5]のp.
の 有 界 な 自 己 共 役 作 用 素Bでq(Ψ,Φ)=〈
ゆ え に〈 Ψ,Φ〉=〈 Ψ,BΦ〉+1,Ψ,Φ
こ で,準
∈H+1に
界 な 対 称 形 式 に 関 す る 表 現 定 理([5]のp.
この 内
の ヒ ル ベ ル ト空 間 をH+1
∈H+1.そ
こ れ は 有 界 な 対 称 形 式 で あ り‖q‖〓1…(*)が した が っ て,有
閉 性 に よ り,Q(s)は
ル ベ ル ト空 間 に な る.こ
q:H+1×H+1→Cをq(Ψ,Φ):=〈
Ψ,Φ〉 を 定 義 す
あ る か ら,sの
Ψ,AΦ 〉 閉 性 に よ り,
か つ〈 Ψ,S1Ψ〉
〓
Φ ∈Q(s)か
つs(Φn-Φ)→0(n→
る か ら,シ
∞).sは
半 正 定 値 内 積 と み る こ とが で き
ュ ヴ ァ ル ツ の 不 等 式 が 成 り立 つ.し
よ っ て,D(A)⊂Q(s)か
つs(Ψ,Φ)=〈
たが って
Ψ,AΦ〉,Ψ
∈Q(s),Φ
∈D(A)が
成
り立 つ こ と に な る. D(C)はH+1で 0(n→ (n→
稠 密 で あ っ た か ら,任 意 の Ψ ∈Q(s)に
∞)と
な る Ψn∈D(C)が
∞)か
つs(Ψn-Ψm)→0(n,m→
0(n,m→∞)を
意 味 す る.し
な る η ∈Hが し た が う.よ Q(s),Φ
あ る.A1/2は
∞).後
た が っ て,‖Ψn-Ψ‖
閉 で あ る か ら,Ψ
∞)と
∈D(A1/2)か
∞)と
つ η=A1/2Ψ
が
つs(Ψ,Φ)=〈A1/2Ψ,A1/2Φ〉,Ψ
∈
対 し て,作 用 素 解 析 に よ り,A1/2Φn→A1/2Φ,Φn→
な る Φn∈D(A)が
と れ る(た
つs(Φn-Φ)→0(n→
か つs(Ψ,Φ)=〈A1/2Ψ,A1/2Φ〉,Ψ 上 か ら,(2.91)が 一 意 性:H上
と え ば,Φn=x[-n
の と き,上 の 式 よ り,s(Φn-Φm)→0(n,m→
よ り,Φ ∈Q(s)か
∞).し ∈Q(s),Φ
,n](A)Φ ∞).sの
とす
閉性 に
た が っ て,D(A1/2)⊂Q(s) ∈D(A1/2)が
成 り立 つ.以
得 ら れ る. の 非 負 自 己 共 役 作 用 素A'で
を 満 た す も の が あ っ た と す れ ば,D(A1/2)=D(A'1/2)か 〈A'1/2Ψ ,A'1/2Φ〉.Φ
∈D(A)と
れ が す べ て の Ψ ∈D(A'1/2)に ∈D(A')か
す れ ば,〈
応 用Ⅰ―
つ〈A1/2Ψ,A1/2Φ
Ψ,AΦ〉=〈A'1/2Ψ,A'1/2Φ
成 り立 つ わ け だ か ら,A'1/2Φ
つA'Φ=AΦ.し
た が っ て,A⊂A'.自
非 自 明 な 対 称 拡 大 を も た な い か ら,A=A'.
2.8.4
→0(n→
→
∈D(A).
れ ば よ い).こ
わ ち,Φ
→0
者 は‖A1/2Ψn-A1/2Ψm‖
た が っ て,‖A1/2Ψn-η‖
っ て,Q(s)⊂D(A1/2)か
任 意 の Φ ∈D(A1/2)に Φ(n→
存 在 す る.し
対 して,‖ Ψn-Ψ‖+1→
フ ォ ン ・ノイ マ ンの 定 理
次 の 定 理 は 基 本 的 か つ 重 要 な 定 理 の 一 つ で あ る:
∈D(A'1/2),す
〉= 〉.こ
な
己共役作用素 は ■
定 理2.57
(フ ォ ン ・ノ イ マ ン の 定 理)Tを
空 間Kへ
ヒ ル ベ ル ト空 間Hか
の 稠 密 に 定 義 さ れ た 閉 作 用 素 と す る.こ
ら ヒル ベ ル ト
の と き,T*TはH上
の非負
自 己 共 役 作 用 素 で あ る. 証 明 準 双 線 形 形 式s:D(T)×D(T)→Cをs(Ψ,Φ):=〈TΨ,TΦ〉K,Ψ,Φ Q(s):=D(T)に
よ っ て 定 義 す る.こ
た が っ て,定
理2.56に
よ り,非
の と き,s〓0か
TΦ
∈D(A)と
∈D(T*)か
∈D(T)と
す れ ば,〈TΨ,TΦ〉=〈 つT*TΦ=AΦ.こ
特 に,D(T*T)は
つsは
閉 で あ る.し
負 自 己 共 役 作 用 素Aで,D(A1/2)=D(T)か
つ〈TΨ,TΦ〉=〈A1/2Ψ,A1/2Φ〉,Ψ,Φ る.Φ
∈
な る も のが た だ一 つ 存 在 す
Ψ,AΦ〉,Ψ
れ は,A⊂T*Tを
稠 密 で あ る.ゆ
え に,T*TはAの
∈D(T).し
た が っ て,
意 味 す る.し
た が っ て,
対 称 拡 大 で あ る.し
自 己 共 役 作 用 素 は 非 自 明 な 対 称 拡 大 を も た な い か ら,A=T*Tで な い.ゆ
え に,T*Tは
自 己 共 役 で あ り,非
2.8.5 応 用Ⅱ― 定 理2.56の
か し,
なけ れ ば な ら
負 で あ る.
■
フ リー ドリク ス拡 大
重 要 な応 用 の 一 つ と して,下 に有 界 な対 称 作 用 素 の 自己 共役 拡 大
の 存 在 に関 す る定 理 を証 明 す る. 定 理2.58
Aを
ヒ ルベ ル ト空 間H上
の 下 に有 界 な対 称 作 用 素 でA〓γ
を満 た
す と し(γ ∈IRは 定 数) で
点列
か つ とな る もの が 存 在}
(2.92) と お く.こ
の と き,Aの
す も の が 存 在 す る.さ
自 己 共 役 拡 大AでA〓 ら に,次
の(ⅰ),(ⅱ)が
(ⅰ) 定 義 域 がQAに
含 ま れ る,Aの
己 共 役 作 用 素LがA⊂L,
D(L)⊂QAを
(ⅱ) infσ(A)=infΨ
か つQ(A)=QAを
満 た
成 り立 つ:
自 己 共 役 拡 大 はAに
限 る(す な わ ち,自
満 た す な ら ばL=A).
∈D(A),‖Ψ‖=1〈 Ψ,AΨ〉.
証 明 準 双 線 形 形 式s:D(A)×D(A)→Cをs(Ψ,Φ):=〈 D(A)に
γ
よ っ て 定 義 す る.こ
の と き,s〓0.sは
Ψ,(A-γ)Φ 条 件(2.86)を
〉,Ψ,Φ
満 たす こ とを示
∈
そ う.そ
の た め に,Ψn∈D(A),Ψn→0,s(Ψn-Ψm)→0(n,m→
す る.定
義 か ら,s(Ψn-Ψm)=s(Ψn)+s(Ψm)-s(Ψn,Ψm)-s(Ψm,Ψn).
し た が っ て,limn,m→ 方,定
理2.53の
さ れ る.ゆ
∞)と
∞{s(Ψn)+s(Ψm)-s(Ψn,Ψm)-s(Ψm,Ψn)}=0.他
証 明 と 同 様 に し て,a:=limn→
え にlimn
∞s(Ψn)が
存 在 す る こ とが 示
,m→ ∞{s(Ψn,Ψm)+s(Ψm,Ψn)}=2a.だ
が
左辺 し た が っ て,a=0.ゆ
え に,sは
条 件(2.86)を
考 え る とQ(s)=QAで
満 た す.
そ こ で,sの
閉 包sを
に 定 理2.56を
応 用 す れ ば,D(B1/2)=QA,s(Ψ,Φ)=〈B1/2Ψ,B1/2Φ〉
た す 非 負 自 己 共 役 作 用 素Bが
あ り,sは
Ψ,(A-γ)Φ〉
であるか ら
し た が っ て,B1/2Φ
∈D(B1/2),す
な わ ち,Φ ∈D(B)で
大 で あ りA〓
の 拡 大 で あ る.そ
こ でA:=B+γ
し,Φ ∈D(A)
あ り(A-γ)Φ=BΦ. と お け ば,AはAの
と き,任 意 の Ψ ∈D(L)と
満 た す も の が あ っ た と し よ う.こ
Φ ∈D(A)に
対 し て,〈Φ,LΨ〉=〈AΦ,Ψ〉
構 成 か ら明 ら か な よ う に,D(A)は(A-γ)1/2の
Φ ∈D((A-γ)1/2)に
対 し て,Φn→
と な る Φn∈D(A)が
と れ る.し
E0(A)〓a0が
を得 る.こ
つ(A-γ)1/2(A-γ)1/2Ψ=(L-γ)Ψ
∞) 置 き換 対 して
れ は,(A-γ)1/2Ψ
を 意 味 す る.し
∈
たがっ
え にL=A.
最 後 に(ⅱ)を と お く.最
お け る Φ を Φnで
べ て の Φ ∈D((A-γ)1/2)に
〈 Φ,(L-γ)Ψ〉=〈(A-γ)1/2Φ,(A-γ)1/2Ψ〉
て,L⊂A.ゆ
な わ ち,任 意 の
Φ,(A→γ)1/2Φn→(A-γ)1/2Φ(n→
∞ の 極 限 を と る こ と に よ り,す
D((A-γ)1/2)か
得 る.
芯 で あ る.す
た が っ て,(*)に
の
に 注 意 し,右
辺 を 変 形 す れ ば〈Φ,(L-γ)Ψ〉=〈(A-γ)1/2Φ,(A-γ)1/2Ψ〉…(*)を
え,n→
拡
γ が 成 り立 つ.
自 己 共 役 作 用 素LでA⊂L,D(L)⊂QAを
Aの
え を満
た だ 一 つ 存 在 す る こ とが わ か る.も
な ら ば,s(Ψ,Φ)=〈
ゆ え にBはA-γ
閉 で 非 負 で あ る.ゆ
示 そ う.E0(A):=infσ(A),a0:=infΨ
低 エ ネ ル ギ ー に 対 す る 変 分 原 理([6]のp. ま ず わ か る.他
方,Aの
∈D(A),‖Ψ‖=1〈Ψ,AΨ 〉 339,定
構 成 の 仕 方 に よ っ て,任
理3.40)に
よ り,
意 の Ψ ∈D(A)
⊂QAに
対 して,limn→
Ψn∈D(A)が
∞ Ψn=Ψ,
limn→ ∞〈Ψn,AΨn〉=〈
あ る.
が 得 ら れ る.再
び,最
で あ る か ら 低 エ ネ ル ギ ー に 対 す る 変 分 原 理 に よ り,E0(A)〓a0.以
上 か ら,E0(A)=a0が
定 理2.58に
Ψ,AΨ 〉 を 満 た す
導 か れ る.
■
い う 自 己 共 役 拡 大AをAの
フ リー ド リ ク ス(Friedrichs)拡
大 と
い う.
注 意2.13
対 称 作 用 素Aが
素 で あ る か ら,-Aの 拡 大 に な る.-Tを 例2.11
フ リ ー ド リ ク ス 拡 大 をTと い ま の 場 合 のAの
Ω をIRdの
体 をCr(Ω)(r∈INま ち,そ
上 に 有 界 な 場 合 に は,-Aは
す れ ば,-TはAの
開 集 合 と し,Ω
上 のr回
連 続 微 分 可 能 な 複 素 数値 関数 の全
算 無 限))で
表 す.そ
関 数 の 全 体 を表 す).
ΔDを 用 素)と
表 す.明
う
らか に,
Ω 上 の複素 数値連続
で稠 密 で あ る*36.L2(Ω)上
の作
次 の よ う に 定 義 す る:
部 分 積 分 を用 い て,-Δminは そ れ は,フ
の よ う な 関 数fの
有 界 で Ω に含 ま れ る も の の 全 体 をCr0(Ω)で (C(Ω)は
用 素-Δminを
自己共 役
フ リ ー ド リ ク ス 拡 大 と い う.
た はr=∞(可
の 台suppfが
下 に有 界 な対 称 作 用
非 負 の 対 称 作 用 素 で あ る こ とが 示 さ れ る.し
リ ー ド リ ク ス 拡 大 を もつ.-Δminの
た が っ て,
フ リー ドリ ク ス 拡 大 を-ΔDと
記 す.
Ω にお け る,一 般 化 さ れ た デ ィ リ ク レ境 界 条 件 つ き ラ プ ラ シ ア ン(ラ プ ラ ス作 い う.フ
リー ド リ ク ス 拡 大 の 定 義 に よ り,D((-ΔD)1/2)は
次 の 形 を とるこ
とが わ か る:
とfn∈C∞0(Ω)が 存在 し
注 意2.14
古 典 解 析 学 に お け る 意 味 で の デ ィ リ ク レ境 界 条 件 は,Ω
∂Ω を もつ と き,Ω ∪∂Ω 上 の 関 数uに *36 こ の 事 実 の 証 明 は こ こ で は 割 愛 す る
対 す る 「u(x)=0,∀x∈ .た
と え ば,[12]のp.119,定
が 滑 ら か な境 界
∂Ω」 と い う 条 件 の こ 理6.6を
参 照.
と で あ る.D(-ΔD)に
属 す る元 は,こ の 古 典 的 な意 味 で の デ ィ リ ク レ境 界 条 件 の あ る
種 の 一 般 化 を満 た す も の とみ る こ とが で き る.こ
れ が 「一 般 化 され た デ ィ リ ク レ境 界
条 件 付 き ラ プ ラ シ ア ン」 と い う名 称 の 意 で あ る.古 典 物 理 へ の 応 用 に お い て は,Ω が 有 界 な 連 結 開 集 合 の と き,-ΔDの
ス ペ ク トル は,た
と え ば,弦
の振 動の基 本振 動数
(d=1の 場 合),太 鼓(膜)の 振 動 数(d=2の 場 合)を 表 す.こ の 種 の 問 題 は,ヒ ル ベ ル ト空 間 論 の 枠 内 で 論 じ る こ と に よ り,た い へ ん 見 通 しが よ くな る.一 般 化 され た デ ィ リ ク レ境 界 条 件 付 き ラ プ ラ シ ア ンの 導 入 は,こ -ΔDの
詳 しい 解 析 に つ い て は ,た
をHと
書 い て い る).
2.8.6 定 理2.59
応 用Ⅲ―
と え ば,[8]を
の 観 点 か ら は 自然 な も の で あ る. 参 照 さ れ た い(こ の 本 で は,-ΔD
自己共 役 作 用 素 の 形 式 和
H, Kを
ヒ ル ベ ル ト空 間,Tj(j=1,…,N)をHか
らKへ
に 定 義 さ れ た 閉 作 用 素 と す る.Tjの
定 義 域 の 共 通 部 分
で あ る と仮 定 す る.こ
の 非 負 自 己 共 役 作 用 素AでD(A1/2)=D
の と き,H上
の稠密 は稠 密
かつ
を満 た す もの が た だ 一 つ 存 在 す る. 証 明 準 双 線 形 形 式s:D×D→Cを
に よ っ て 定 義 す れ ば,こ う.そ
れ は 非 負 準 双 線 形 形 式 で あ る.sが
の た め に,Ψn∈Dが
満 た し て い る と し よ う.こ
で あ る か ら,各kに が っ て,あ ら,Ψ
Ψ ∈H,
s(Ψn-Ψm)→0(n,m→
∞)を
の とき
対 して,{TkΨn}nはKに
る Φk∈Kが
∈D(Tk)か
Ψn→
閉 で あ る こ と を示 そ
存 在 し て,TkΨn→
つTkΨ=Φkが
お け る コ ー シ ー 列 を な す.し Φk(n→
結 論 さ れ る.し
∞).Tkは
た が っ て,Ψ
た
閉 で あ るか ∈Dで
あ り,
s(Ψn-Ψ)→0(n→ 理2.56を
∞)が 導 か れ る.ゆ え にsは
閉 で あ る.し た が っ て,定
定 理2.60
応 用 す る こ とが で き,求 め る結 果 が 得 られ る.
A1,…,ANを
ヒル ベ ル ト空 間Hに
■
お け る下 に有 界 な 自 己共 役 作 用
素 と し,そ れ ぞ れ に同伴 す る形 式 の 定 義域 の 共 通 部 分 とす る.こ の と き,H上
は稠 密 で あ る
の 自己 共 役 作 用 素Aで
かつ
(2.93) を 満 た す もの が た だ 一 つ 存 在 す る.さ
らに
(2.94) た だ し,下 に有 界 な 自己 共 役 作 用 素Sに
対 して
(2.95) 証 明 Aj-E0(Aj)〓0で
あ る か ら,定
理2.59をTj:=(Aj-E0(Aj))1/2と
して,応 用 す れ ば,非 負 自己 共 役 作 用 素Bで
を 満 た す も の が 存 在 す る.そ 己 共 役 で あ り,(2.93)が
こ で,
定 理2.60の
あ る い は 単 に 形 式 和(form
と お け ば,Aは
成 り立 つ.B〓0で
こ れ と変 分 原 理 に よ り,(2.94)が
定 義2.61
かつ
あ っ た か ら,
成 り立 つ.
自 己 共 役 作 用 素AをA1,…,ANの sum)と
呼 び,記
自
号 的 に
と書 く.作 用 素 の和 と は異 な る か ら注 意 され た い.
■
形 式 の 意 味 での 和
注 意2.15
(ⅰ)(2.93)で
と す れ ば,Φ
と な る こ と が わ か る.し
たが っ て,
し か し,定
が 稠 密 な ら ば,
う で な い 場 合 に は,単
理2.60は,
あ り, す な わ ち,Aは
の 自 己 共 役 拡 大 に な っ て い る( は 対 称 作 用 素 で あ る が,そ
∈D(A)で
に エ ル ミ ー トで あ る).
が 稠 密 で な い 場 合 で も,Ajた
ち の和 の意
味 を形 式 和 と して 拡 大 す る こ と に よ り,自 己 共 役 作 用 素 が 定 義 され る こ とを語 る.こ れ は,準 双 線 形 形 式 とい う概 念 の 有 用 な特 性 の 一 つ とみ る こ とが で きる. (ⅱ) 自己 共 役 作 用 素A1,…,ANが B:=A1+…+ANは A1+…+ANは
同 じ と は 限 ら な い.こ
が 本 質 的 に 自 己 共 役 な ら ば,そ 例2.12
定 理2.59の
ルVに Vの
か し,Bと
の 点 は 注 意 を 要 す る*37.も
形式和
ち ろ ん,B
れ ら は 一 致 す る. 書 か れ る.
下 に 有 界 な ボ レル 可 測 関 数 で
の と き,
を 満 た す とす
で あ る か ら,Q(-Δ)∩Q(V)はL2(IRd)
で 稠 密 で あ る.し
た が っ て,自
用 素-Δ+Vの
が 稠 密 な と きは, も つ.し
自 己 共 役 作 用 素Aは,A=T1*T1+…+TN*TNと
例2.13 V:IRd→IRは る.こ
下 に有 界 で
フ リ ー ド リ ク ス 拡 大Bを
己 共 役 作 用 素H:=-Δ+Vが
自 己 共 役 拡 大 で あ る.こ
対 して,自
定 義 さ れ る.こ
れは作
う し て,非 常 に 一般 的 な ク ラス の ポ テ ン シ ャ
己 共 役 な シュ レー デ ィン ガ ー 型 作 用 素 が 定 義 さ れ る.
具体例
V(x)=c│x│-α
と す る.た
V>0,V∈L1loc(IRd)で 定 義 され る.こ 例2.14
だ し,c>0,
あ る.し
α ∈(d/2,d)は
た が っ て,自
の 場 合,
定 数 で あ る.こ
の と き,
己 共 役 作 用 素Hα:=-Δ+c│x│-α
が
で あ る か ら,D(V)はC∞0(IRd)を
磁 場 を も つ シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 作 用 素.H(A,V)を(2.50)に
られ る 作 用 素 と し よ う.V,
Aに
Aが
よ っ て与 え
対 す る あ る 条 件 の も とで,H(A,V)がC∞0(IRd)上
で 本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る こ と はす で に 証 明 した(定 理2.23).準 を使 う と,V,
双 線 形形 式 の方法
も っ と一 般 的 な ク ラ ス に 属 す る 場 合 で もH(V,A)の
を定 義 す る こ とが 可 能 で あ る.
*37 反 例 に つ い て は
含 ま な い.
の 場 合 を考 え て み よ う.こ
の と き,作 用 素
,た
Example
と え ば,[10]のp.329,
2.19を
み よ.
自己共 役拡大
の定義 域 はC∞0(IRd)を し よ う.ま
含 み,DA,jは
た,V:IRd→IRは
対 称 作 用 素 に な る.DA,jの閉包
下 に 有 界 で
き, 密 で あ る.し
をDA,jと
を満 た す とす る.こ
で あ る か ら, た が っ て,定
理2.60を
応 用 す れ ば,形
A, BをH上
の 自己 共 役 作 用 素 でAは
り立 つ と き,BはAに Q(B)⊃Q(A).
自己共 役拡 大 で あ る.
形 式 の 意 味 での 相 対 的有 界 性
非 負 で あ る とす る.次 の(ⅰ), (ⅱ)が 成
関 して,形 式 の 意 味 で 相 対 的 に 有 界 で あ る とい う:(ⅰ)
(ⅱ)あ る 定 数a, b〓0が
こ の 場 合,定
は稠
式和
は 自己 共役 で 下 に有界 で あ る.こ れ は,H(A,V)の
2.8.7 作 用 素 の 意 味 での 相 対 的 有 界 性 ⇒
の と
数aを
存 在 して,
れ る と き,BはAに
形 式 の 意 味 でのA-限
界 とい う.定 数aが
任 意 に小 さ く と
関 して 形 式 の 意 味 で無 限 小 で あ る と い う.
次 の 定 理 は有 用 で あ る. 定 理2.62
A, Bを
自己 共 役 作 用 素,A〓0と
す る.こ の と き,次 の(ⅰ),(ⅱ)が
成 り立 つ: (ⅰ) BがA-有
界 で,定 数a, b〓0が
存 在 して
(2.96) と な っ て い る な ら ば,任
意 の ε>0に
対 して
(2.97) が 成 立 す る. (ⅱ) B≪Aな
らば,BはAに
関 して 形 式 の 意 味 で 無 限 小 で あ る.
この 定 理 を 証 明 す る た め に,補 題 を二 つ 用 意 す る.ま ず,自 累乗 に つ い て の基 本 的 性 質 を証 明 す る.
己共役作用素の
補 題2.63
Aを
自 己 共 役 作 用 素 と し,0<α<β
とす る.こ
の と き,次
の(ⅰ),
(ⅱ)が 成 り立 つ:
(ⅰ) D(│A│β)⊂D(│A│α)で
あ り,す
べ て の Ψ ∈D(│A│β)に
対 して
(2.98) (ⅱ) │A│βの 任 意 の 芯 は│A│α の 芯 で あ る. 証 明 (ⅰ) Aのス ペ ク トル 測 度 をEと
こ れ か ら,(ⅰ)の
主 張 が し た が う.
(ⅱ) Ψ ∈D(│A│α)と お け ば,ΨR→
す る.任 意 の Ψ ∈D(│A│β)に 対 して
す る.任
Ψ(R→
∞).ま
で あ る か ら,ΨR∈D(│A│β).さ
X(R,∞)(│λ│)λ2α〓
意 のR>0に
対 し て,ΨR=E([-R,R])Ψ
任 意 の ε>0に
λ2α と∫IR│λ│2αd‖E(λ)Ψ‖2<∞
た が っ て,‖│A│α
対 し て,R0>0が
Ψ‖2<∞
らに
積 分 に ル ベ ー グ の 優 収 束 定 理 を 応 用 で き,そ る こ とが わ か る.し
と
た,∫IR│λ│2βd‖E(λ)ΨR‖2〓R2β‖
に よ っ て,上
れ はR→
ΨR-│A│α
∞ の と き,0に
Ψ‖ →0(R→
あ っ て,R〓R0な
式 の右辺の
∞).以
収束す 上 か ら,
らば
(*). さ て,Dを│A│β
の 任 意 の 芯 と し よ う.し
た が っ て,任
意 の ε>0に
Φε ∈Dで
(**)
対 して,
を 満 た す も の が 存 在 す る.三
角 不 等 式 と(2.98)お
よ び(*),(**)を
用 い るこ と
に より
が 得 ら れ る.そ
こ で,n∈INに
Ψ,│A│α Ψn→│A│α
Ψ(n→
対 して,Ψn:=Φ1/n∈Dと ∞).し
お け ば,Ψn→
た が っ て,Dは│A│α
の 芯 で あ る.
■
次 の 補 題 は非 負 自己 共 役 作 用 素 に 同 伴 す る準 双 線 形 形 式 の 不 等 式 の拡 張 に関 す る も の で あ る.
補 題2.64 をA1/2の
A,Bを
ヒ ル ベ ル ト空 間Hに
芯 でD⊂D(B1/2)を
べ て の Ψ ∈Dに
お け る 非 負 の 自 己 共 役 作 用 素 と し,D
満 た す も の と す る.定
数a,b〓0が
あ っ て,す
対 して
(2.99) が 成 り 立 つ と す る.こ D(A1/2)に
の と き,D(A1/2)⊂D(B1/2)で
対 し て(2.99)が
∞)と
こ れ とB1/2の
対 し て,Ψn∈Dで
な る も の が と れ る.(2.99)に 閉 性 に よ り,Ψ
∈D(B1/2)か
Ψn→
∈D(A1/2)に
対 す る(2.99)が
定 理2.62の
証 明 (ⅰ)(2.97)の
そ こ で,2番
目 の 不 等 式 を 示 す.作
と お く.こ aε<1で
あ る か ら,加
∞).
Ψ と し て Ψnを
と り,n→
得 ら れ る.
∞ ■
用 素 解 析 に よ り‖BΦ‖=‖│B│Φ‖,Φ Ψ‖,Ψ ∈D(A)…(*)と
よ り,‖Bε Ψ‖〓aε‖AΨ‖+bε‖
藤-レ
基 本 列 で あ る.
つB1/2Ψn→B1/2Ψ(n→
任 意 に と り,Bε:=│B│/(a+ε),aε:=a/(a+ε), の と き,(*)に
→
最 初 の 不 等 式 は 作 用 素 解 析 か ら 容 易 に わ か る.
で あ る か ら,(2.96)は‖│B│Ψ‖〓a‖AΨ‖+b‖ る.ε>0を
Ψ,A1/2Ψn-A1/2Ψ
よ り,{B1/2Ψn}nは
した が っ て,特 に,D(A1/2)⊂D(B1/2).(2.99)の とす れ ば,Ψ
べ て の Ψ ∈
成 立 す る.
証 明 任 意 の Ψ ∈D(A1/2)に 0(n→
あ り,す
リ ッ ヒ の 定 理 に よ り,A-Bε
∈D(B) 同値 であ
bε:=b/(a+ε) Ψ‖,Ψ
∈D(A).
は 自己 共 役 で あ り
し た が っ て,(a+ε)A-│B│〓-(a+ε)b/ε.ゆ
え に
(2.100) 補 題2.63の
応 用 に よ り,D(A)はA1/2の
補 題2.64に
よ り,(2.97)の2番
(ⅱ)B≪Aな
ら ば,aは
芯 で あ る.こ の 事 実 と(2.100)お
目 の不 等 式 が 得 られ る.
い くらで も小 さ く とれ る か ら,(ⅰ)の 結 果 に よ り,題
意 が した が う.
■
2.9
自己 共 役 作 用 素Aに 形 式sA+β
よび
は,ど
形 式 に よ る 摂 動―KLMN定
理
対 して対 称 形 式 β に よ る摂 動 に よ って 得 られ る準 双 線 形
の よ うな 条 件 の も と に,あ る 自己 共 役 作 用 素 に 同伴 す る 準
双 線 形 形 式 とな る で あ ろ うか.こ
れ は,準 双 線 形 形 式 を用 い て 自 己 共役 作 用 素
(量子 力 学 の コ ンテ ク ス トで は物 理 量)を 定 義 す る方 法 を探 究 す る観 点 か らは 自 然 な 問 い で あ る.こ
の 問題 に関 す る基 本 的 な事 実 と応 用 を述 べ るの が こ の節 の
目 的 で あ る. 形 式 に 関す る摂 動 問 題 に関 して も,作 用 素 の 摂 動 問 題 に 関す る加 藤-レ リ ッ ヒ の 定 理 に呼 応 す る 定 理 が 存 在 す る.そ れが 次 の定 理 で あ る. 定 理2.65 役 作 用 素,β
(KLMN定
理*38).Hを
ヒルベ ル ト空 間,AをH上
の非 負 自 己共
を対 称 な準 双 線 形 形 式 で次 の 条 件 を満 たす もの とす る:
(ⅰ) Q(A)⊂Q(β). (ⅱ) 定 数0〓a<1,
b〓0が
存 在 して
(2.101) こ の と き,H上
の 自 己 共 役 作 用 素CでQ(C)=Q(A)か
つ
(2.102) を 満 た す も の が た だ 一 つ 存 在 す る.さ *38 T
. Kato,J.Lions,P.Lax,A.Milgram,E.Nelsonの
ら に 次 の(a),(b)が
成 り立 つ: 頭 文 字 .
(a) Cは
下 に 有 界 で,C〓-b.
(b) Aの
任 意 の 形 式 芯 はCの
形 式 芯 で あ る.
証 明 準 双 線 形 形 式γ を次 の よ う に定 義 す る:Q(γ):=Q(A), γ:=sA+β+bsI. こ の と き,仮
定か ら
した が っ て,γ は 非 負 で あ る.γ が 閉 で あ る こ と を 示 そ う.そ が Ψn→
Ψ ∈H, γ(Ψn-Ψm)→0(n,m→
と き,上
の 不 等 式 に よ り,{A1/2Ψn}nは
た が っ て,A1/2Ψn→
不 等 式 に よ り β(Ψn-Ψ)→0で
用 素Cの
(n→
∞)と
し た が っ て,DはCの
注 意2.16
理2.56に
お け ば,こ
任 意 の 形 式 芯 と し よ う.し
な る.
れ は(2.102)
存 在 す る.こ ∞)で
た が っ て,任
の と き,条
件(ⅱ)の
不等式 によっ
あ る か ら,結 局,sC(Ψn-Ψ)→0(n→
形 式 芯 で あ る.
し て,上
意 の
Ψ, sA(Ψn-Ψ)=‖A1/2(Ψn-Ψ)‖2→0
∞). ■
下 に 有 界 な 自 己 共 役 作 用 素A〓-M(M〓0は
は,A:=A+Mと
の と き,条
よ り,γ は あ る 非 負 自 己 共 役 作
こ で,C=C-bと
対 し て,Ψn→
な る{Ψn}n⊂Dが
て,β(Ψn-Ψ)→0(n→
と な る.こ
構 成 か ら 明 ら か.
(b) を 示 す た め に,DをAの Ψ ∈Q(C)=Q(A)に
の
閉 で あ る か ら,
あ る か ら,γ(Ψn-Ψ)→0と
え に,定
準 双 線 形 形 式 で あ る.そ
を 満 た す.(a)はCの
存 在 す る.A1/2は
つA1/2Ψn→A1/2Ψ
し た が っ て,γ は 閉 で あ る.ゆ
満 た す と し よ う.こ
コ ー シ ー 列 を な す こ とが わ か る.し
Φ と な る Φ ∈Hが
Ψ ∈D(A1/2)=Q(A)=Q(γ)か 件(ⅱ)の
∞)を
の た め に,Ψn∈Q(γ)
定 数)に
ついて
の 定 理 を 応 用 す れ ば よ い.
一 般 に,下 に 有 界 な 自己 共 役 作 用 素 に つ い て の 定 性的 性 質 を議 論 す る 場 合 に は,そ れ が 非 負 の 場 合 を考 えれ ば十 分 で あ る.以 下,こ
の 種 の注 意 は い ちい ち
しな い. KLMN定
理 の応 用 と して,次 の 結 果 を得 る.
定 理2.66
A, Bを
BはAに
ヒル ベ ル ト空 間H上
の 自己 共 役作 用 素 と し,A〓0と
す る.
関 して,形 式 の 意 味 で 相 対 的 に 有 界 で あ り,形 式 の 意味 で のA-限 界 は
1よ り小 さい とす る.こ の と き,下 に有 界 な 自己 共役 作 用 素CでQ(C)=Q(A) かつ
を満 たす もの が た だ一 つ 存 在 す る.さ
らにAの
任 意 の 形 式 芯 はCの
形式芯 で
あ る. こ こで,以 前 に定 義 した 形 式 和 の 概 念 を拡 張 して お く. 定 義2.67
一 般 に,ヒ
ル ベ ル ト空 間Hに
お け る 自己 共 役 作 用 素A1,…,AN
(下 に有 界 で あ る必 要 は な い)に つ い て, 自 己共 役 作 用 素Aで Aは,存
形 式 和Aを
い う記 号 で 表 す.こ
2.10
ス ピ ン1/2の
稠 密 で あ り,か つ
と な る もの が 存 在 す る と き(こ の よ う な
在 す る な らば,命 題2.46に
組(A1,…,AN)は
がHで
の場 合,Aを
よっ て一 意 的 に定 ま る),自 己 共 役 作 用 素 の
もつ とい い,こ れ をA=A1+A2+…+ANと 組(A1,…
,AN)に
同伴 す る 形 式 和 と もい う.
デ ィラ ック型 作用 素 の 本 質 的 自己共役 性
相 対 論 的 な 自 由粒 子 一 つ か ら な る量 子 系 の ハ ミル トニ ア ン を記
述 す る 自由 な デ ィラ ッ ク作 用 素 につ い て は,前 著[6]の3.4.3項
で 議 論 した.こ
の節 で は,自 出 なデ ィ ラ ック作 用素 の摂 動 か ら定 義 され る対 称 作 用 素― デ ィラ ッ ク型 作 用 素― の 本 質的 自己 共 役 性 につ い て 考 察 す る. αj(j=1,2,3),β
を4×4の
エ ル ミー ト行 列 で反 交 換 関係
(2.103) を 満 た す も の と す る.こ λ ∈Cに
対 し て,単
こ で,I4は4次
に λI4=λ
ヒ ル ベ ル ト空 間L2(IR3;C4)=
*39 αj
, β の 具 体 例 は[6]のp.302で
の 単 位 行 列 で あ り(以 下,し
と 記 す),{A,B}:=AB+BA(反 4L2(IR3)で
与 え た が,こ
の エ ル ミー ト行 列 で あ り さ え す れ ば,何
ば し ば,
交 換 子)*39
働 く 自 由 な デ ィ ラ ッ ク 作 用 素(自
こ で の αj, β は,(2.103)を
で も よ い.
満 た す4次
.
由 な デ ィ ラ ッ ク ・ハ ミル トニ ア ン)
(2.104) は 自 己 共 役 で あ り,D(HD)=∩3j=1D(Dj)が
成 り立 つ こ と は 前 著[6]の
定 理3.30
に お い て 証 明 さ れた*40. 行 列 αj,β に 関 し て,以 下 に お い て 暗 黙 の う ち に 使 う基 本 的 事 実 を 述 べ て お く. ま ず,L2(IR3; (2.103)の
C4)上
の 作 用 素 と し て,αj,β
第 一 式 か ら,α2j=I(j=1,2,3).し
上 の 自 己 共 役 な ユ ニ タ リ作 用 素 で あ る.同
2.10.1 4次
は 有 界 な 自 己 共 役 作 用 素 で あ る. た が っ て,αjはL2(IR3;
様 に,β
も そ う で あ る .し
C4) たが って
本 質 的 自 己 共 役 性Ⅰ― 局 所 的 特 異 性 の な い ポ テ ン シ ャ ル の 場 合
の エ ル ミ ー ト行 列 の 全 体 をH4(C)で
定 理2.68
V=(Vjl)j
IR3→CはL∞loc(IR3)に C∞0(IR3)4上
表 す.
,l=1,…,4: IR3→H4(C)と
し,そ
属 す る と す る(j,l=1,2,3,4).こ
の(j,l)成
分Vjl:
の と き,HD+Vは
で 本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る.
証 明 次 の 記 号 を 導 入 す る:
(2.105) こ こ で,D(IR3)'はIR3上 と お く.こ
の と き,一
示 せ ば よ い.ψ し て,〈
の 超 関 数 の 空 間 を 表 す*41 般 的 判 定 法(補
∈ker(H*+i)と
ψ,(H-i)u〉=0.こ
題2.9-(ⅱ))に
す る.こ
.
H:=(HD+V)│C∞0(IR3)4 よ り,kcr(H*±i)={0}を
の と き,任
れ は
*40 h =c(真 空 中 の 光 速)=1の 単 位 系 を用 い る. *41 [5]ま た は[6]の 付 録C .2を 参 照.
意 のu∈C∞0(IR3)4に
対
を 意 味 す る*42.関 関 数 の 意 味 で,す
数(-mβ-V+i)ψ*の な わ ち,D(IR3;
各 成 分 はL1loc(IR3)に
C4)'に
お け る 等 式 と し て,
が 成 り 立 つ こ と に な る.た 関 数 と 同 一 視 で き る と は 限 ら な い が,い は,右
辺 の 関 数(
さ て,関 に 選 び,関
属 す る の で*43,超
だ し,こ
の 段 階 で は,各Djψ
ま の 等 式 は,左
辺 全 体(∈D(IR3;
が C4)')
)と 同 一 視 で き る こ と を 示 す.
数f∈C∞0(IR3)で│x│〓1な
ら ばf(x)=1と
数 列fnをfn(x)=f(x/n), x∈IR3に
に,fn∈C∞0(IR3)で
あ り,limn→
な る も の を任 意
よ っ て 定 義 す る.明
∞fn(x)=1,
∀x∈IR3.
D(IR3)'の
C∞0(IR3)の
元 の 積 に 関 して は ラ イ プ ニ ッ ツ 則 が 成 り立 つ の で([5]ま
付 録C.3,
(C.27)を
参 照),超
らか 元 と
た は[6]の
関 数 の 意 味 で,Dj(fnψ)=(∂jfn)ψ+fnDjψ.
し た が っ て,
とお く と
を 得 る.
で あ る か ら, . し た が っ て,
.ゆ
え に,
とお け ば,
.
直 接 計 算 に よ り,
が わ か る.
一 方
で ある
.フ
で あ り,こ .ゆ
ー リ エ 解 析 に よ り, れ は 実 数 で あ る.し
え に,
と な る の で,
が 導 か れ る.
し た が っ て,limn→ ‖ψn‖=‖
∞‖ ψn‖=0.一
ψ‖ が 示 さ れ る.ゆ
ker(H*+i)={0}.同
*42 行 列Mに *43
一 般 に 等 式).
で あ るか ら
方,ル え に,‖
ベ ー グ の 優 収 束 定 理 を 使 え ば,limn→ ψ‖=0.す
様 に,ker(H*-i)={0}も
対 し てMはMの ,f,g∈L2loc(IRd)な
た がっ て,
複 素 共 役 を 表 す:(M) ら ばfg∈L1loc(IRd)(∵
な わ ち,ψ=0.よ 示 さ れ る.
∞
っ て, ■
jl:=Mjl=(Mjl)*. 積 分 に関 す る シュ ヴ ァ ル ツの 不
注 意2.17 で,局
定 理2.68に
お け るVは,
所 的 特 異 性 を も た な い.し
注 意 し よ う.こ に異 な る 点 の 例2.15
か し,Vは
下 に有 界 で あ る 必 要 は な い こ と に
れ は ラ プ ラ シ ア ン に 対 す る,ポ 一 つ で あ る(定 理2.25と
粒 子 が 電 荷qを
と(静 電)ス
と い う 条 件 に した が う の
テ ン シ ャ ル に よ る 摂 動 と本 質 的
比 較 せ よ).
も ち,ベ ク トル ポ テ ン シ ャルA=(A1,A2,A3):IR3→IR3
カ ラ ー ポ テ ン シ ャ ル φ:IR3→IRの
中 に 置 か れ て い る 場 合 のVは
で 与 え ら れ る.し た が っ て, は
な ら ば,
上 で 本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る.
具体 例 z軸 方 向 に 一 定 の 磁 場B=(0,0,B)(B∈IRは A=(B/2)(-x2,x1,0)と
定 数)が 存 在 す る 場 合,た
す れ ば,B=rotAと
な る の で,こ のAはBに
ク トル ポ テ ン シ ャ ル の 一 つ で あ る.こ のAの
2.10.2
本 質 的 自己 共 役性Ⅱ―
各 成 分 は
とえ ば
対 す るベ
に 属 す る.
局 所 的 特 異 性 の あ るポ テ ン シ ャル の場 合
次 に クー ロ ン型 ポ テ ンシ ャル の 場 合 の よ うに,局 所 的 な特 異性 が あ る場 合 の ポ テ ン シ ャ ル に よ る摂 動 を 考 察 す る.ま ず,そ
れ 自体 と して も興 味 の あ る事 実
を一 つ 証 明 す る.L2(IRd)に
関 す る一 般 化 され た偏 微 分 作 用
素 をDjで
お け る,変 数xjに
表し
(2.106) をd次
元 の 勾 配 作 用 素 と い う*44.
に 対 し て, とす る.
補 題2.69
(不確 定 性 原 理 の補 題)d〓3な
らば,す べ て の
に
対 して
(2.107)
*44 d
=3の
場 合 の 勾 配 作 用 素 と 同 じ記 号 を 使 う.
証 明 まず,任
意 のf∈C∞0(IRd)に
対 し て,(2.107)を
に と り,
とお く.明
任 意 のt>0に
証 明 す る.a>0を
任意
ら か にuj,a∈C∞(IRd).
対 し て 成 立 す る 自 明 な 不 等 式
にお
い て左 辺 を計 算 す る こ と に よ り
単 純 な計 算 に よ り
で あ るか ら
し た が っ て,
任 意 のx≠0に
が 得 ら れ る.た
対 し て,
で あ り,
が 成 り立 つ.い し た が っ て,ル
ま,d〓3で
あ る か ら,
.こ に よ り,(2.107)が
任 意 のf∈C∞0(IRd)に
前 段 の 結 果 と補 題2.64の に 対 して,(2.107)が
れ と
得 ら れ る.
対 し て,
の 芯 で あ る か ら,(-Δ)1/2の
注 意2.18
.
ベ ー グの 優 収 束 定 理 に よ り
ゆ え に,
は-Δ
だ し
が 成 り立 つ.C∞0(IRd) 芯 で も あ る(補 題2.63(ⅱ)の
応 用 に よ り,任
応 用).よ
意 の
導 か れ る.
不 等 式(2.107)は
ン テ ク ス トに お い て,上
っ て,
■
ハ ー デ ィ ー の 不 等 式 と も 呼 ば れ る.量
の 補 題 を"不 確 定 性 原 理 の 補 題"と
子力学の コ
呼 ぶ 理 由 は次 の 点 に
あ る.pj=-iDjと 単 位 系).証
お く と,こ
れ は 運 動 量 作 用 素 の 第j成
分 で あ る(h=1の
明 の 中 で 計 算 し た 交 換 関 係[Dj,uj,a]はi[pj,uj,a]と
の 場 合,uj,aは"力"x/(x2+a)の 非 可 換 で あ る の で,一 不 等 式(2.107)は
定 理 2.70
第j成
書 か れ る.こ
分 と み る こ と が で き る .pjとuj,aは
般 化 さ れ た 意 味 で の 不 確 定 性 関 係 が 導 か れ る.要
す るに
こ の 不 確 定 性 関 係 の 一 つ の 帰 結 な の で あ る.
V:IR3→H4(C)と
し,次
の 条 件 を 満 た す と す る:
(2.108) た だ し,‖V(x)‖
はV(x):C4→C4の
0〓a<1/2,b〓0を
作 用 素 ノ ル ム で あ り,a,bは
満 た す と す る.こ
の と き,HD+VはC∞0(IR3)4上
定数 で で本
質 的 に 自 己 共 役 で あ る.
証 明 条 件(2.108)と
不 確 定 性 原 理 の 補 題 を用 い る と任 意 の
に 対 し て,
と評 価 で き る.こ ([6]の 補 題3.29)を
が 得 ら れ る.仮 り,題
定 に よ り,0〓2a<1で
れ と
用 い る と, あ る か ら,加
藤-レ
リ ッ ヒの 定 理 に よ
意 が し た が う.
■
水 素様 原 子 を 相 対 論 的 に扱 う場 合 のハ ミル トニ ア ンは
(2.109) で 与 え ら れ る(Z>0,e>0は
そ れ ぞ れ,原
表 す パ ラ メ ー タ ー).V(x)=-Ze2/│x│と き,次
子 番 号,電
し て,定
気 素 量(基
理2.70を
本 電 荷)を
応 用 す る こ とが で
の 結 果 を 得 る.
系2.71
0
ら ばIDhyd(Z)はC∞0(IR3)4上
で 本 質 的 に 自 己共 役
で あ る.
注 意 2.19 味 す る.証
eに 物 理 的 な 数 値 を代 入 す る と,条 明 は 省 略 す る が,
件Ze2<1/2はZ〓68を な ら ば,IDhyd(Z)は
意 本質
的 に 自 己 共 役 で な い こ と が 知 られ て い る*45.こ ミル トニ ア ンHhyd(Z)の
れ ら の 事 実 は,非
相 対 論 的 なハ
本 質 的 自 己 共 役 性― こ れ に 関 して は,原
制 限 が つ か な い(2.3.5項a)―
子 番 号Zに
と の 対 比 に お い て 興 味 深 い.
付 録B 作 用 素 の和 が 閉 であ る た めの条 件 定 理B.1
A, Bを
の と き,A+Bが
ヒ ルベ ル ト空 間Hか
ら ヒ ル ベ ル ト空 間Kへ
の 閉作 用 素 とす る.こ
閉 で あ る た め の 必 要 十 分 条 件 は,定 数C〓0が
存 在 して
(B.1) が 成 り立 つ こ と で あ る. 証 明 (必 要性)A+Bは
閉 で あ る と し よ う.し
た が っ て,そ
の グ ラ フ は 閉 部 分 空 間 で あ る([5]
のp.104,命 こ で,写
題2.6).し
たが っ て,そ れ はH
Kの 内 積 で ヒ ル ベ ル ト空 間 で あ る.そ
像J:G(A+B)→Kを
に よ っ て 定 義 す る.Jは
閉 作 用 素 で あ る こ と を 示 そ う.Jの
線 形 性 は 容 易 に わ か る. に つ い て,limn→
Φ, limn→ η.Aは
∞JΦn=η
∈Kと
D(J)=G(A+B)で は 有 界.し
あ る か ら,閉 た が っ て,定
同 様 に,Bに
∞
Ψn=Ψ,
limn→ え にJは
グ ラ フ 定 理([5]のp.110,定
よ り,J
あ って
す れ ば,(B.1)が
∈Kを
∞AΨn= 閉 で あ る.
理2.15)に
成 り立 つ.
成 り 立 つ と す る.Ψn∈D(A+B)がlimn→
∞(A+B)Ψn=Φ
満 た し て い る と し よ う.こ
∞ Ψn=Ψ の と き,(B.1)に
*45 文 献 に つ い て は ,[16]のSection
Φn=
あ って
数C2〓0が
え に,C=C1+C2と
(十 分 性)(B.1)が
の と き,limn→
た が っ て,JΦ=η.ゆ
数C1〓0が
つ い て も,定
が 成 り 立 つ.ゆ
H, limn→
し よ う.こ
閉 で あ る か ら,AΨ=η.し
∞
4.3に
関 す る ノ ー ト(p.305∼p.306)を
参 照.
∈ よっ
て,{AΨn}n,
{BΨn}nは
ト ル η,x∈Kが Ψ ∈D(A)か
あ っ てlimn→ つAΨ=η.同
し た が っ て,Ψ A+Bは
い ず れ も基 本 列(コ ∞AΨn=η, 様 にBの
ー シ ー 列)を limn→
∞BΨn=x
閉 性 は Ψ ∈D(B)か
∈D(A)∩D(B)=D(A+B)か
な す .し .Aの
って, ■
M, NをHの
と き,M∩N⊥
閉対 称 作用 素 の基 本的 性 質
閉 部 分 空 間 と し,dim
に よ っ て定 義 す る.明
らか にTは
成 り立 つ と す る .こ の
し,写 像T:M→NをT(Ψ):=PNΨ,
す る.こ
PNΨ=0.し
∈N⊥.ゆ
た が っ て,Ψ M〓dim
と お く.次
Nが
有 界 線 形 で あ る.補
そ こ でM∩N⊥={0}と
定 理C.2
M>dim
複 素 ヒ ルベ ル ト空 間 で
≠{0}.
証 明 Nへ の 正 射 影 作 用 素 をPNと
の と き,Tは
Ψ ∈M
題 の主 張 の 対 偶 を証 明 し よ う.
単 射 で あ る(∵TΨ=0な
え に Ψ ∈M∩N⊥
Nを 意 味 す る.
AをH上
れ ■
の閉対 称作 用 素 と し
の(ⅰ)∼(ⅲ)が
(上 半 平 面),
(C.1)
(下半平面)
(C.2)
成 立 す る:
(ⅰ) dim
ker(A*-z)はⅡ+に
お い てz∈Ⅱ+に
よ ら ず 一 定 で あ る.
ker(A*-z)はⅡ-に
お い てz∈Ⅱ-に
よ らず
(ⅲ) Aの
らば
で あ る か ら,Ψ=0).こ
(ⅱ) dim
ス ペ ク トル σ(A)は
次 の4つ
(a) Ⅱ+.(b)Ⅱ-.(c)C.(d)IRの 証 明 (ⅰ)お よ び(ⅱ).z∈C\IRと 思 い 出 し て お く([5]のp.140,補 (2)R(A-z)は
意味 す る.
つ(A+B)Ψ=η+x=Φ.よ
こ の付 録 で は,閉 対 称 作 用 素 の基 本 的 な性 質 をみ て お く.以 下,Hは あ る とす る. 補 題C.1
ク
閉 性 に よ り,
つBΨ=xを
閉 で あ る.
付録C
は,dim
た が っ て,ベ
閉.(2)と[5]のp.138,補
一 定 で あ る.
の 集 合 の う ち ど れ か 一 つ で あ る. 閉 部 分 集 合.
し,z=x+iy(x,y∈IR)と
記 す.次
題2.39):(1) 題2.37に
の事 実 を ;
よって
(C.3)
が 成 り 立 つ. さ て,w∈Cを│w│<│y│を (w∈C\IR)と
満 た す 任 意 の 複 素 数 と し,Ψ
す る.し
Ψ ∈[ker(A*-z)]⊥ Ψ=(A-z*)Φ
た が っ て,Ψ
と し よ う.こ
∈D(A*)か
の と き,(C.3)よ
と な る Φ ∈D(A)が
あ る.し
∈ker(A*-z-w),Ψ
り,Ψ
た が っ て,Ψ〓[kcr(A*-z)]⊥.ゆ
ら ば,dim
あ る か ら,
が,こ
れ は矛 盾 で あ
たが って
dim
ker(A*-z)〓dim
ker(A*-z).同 ker(A*-z-w)が
こ れ は,dim
ker(A*-z)がC\IRに
れ は,Ⅱ+お
よ びⅡ-で
(z'∈Ⅱ-)は
様 に,│w│<│y│/2な
わ か る.ゆ
おいて局所 的 に
ら ば,
え に
一 定 で あ る こ と を 示 す.ゆ
え に,そ
そ れ ぞ れ 一 定 で あ る(dim(A*-z)(z∈Ⅱ+)とdim(A*-z')
と き,(1)に
は,(C.3)に
よ っ て,A-zは
単 射 で あ る.こ
よ っ て,ker(A*-z*)={0}の
るz0∈Ⅱ+が
ρ(A)に
て,kcr(A*-w)={0}.ゆ し た が っ て,あ が ρ(Λ)の
よ っ て,│w│
同 じ と は 限 ら な い).
(ⅲ)Imz≠0の
て,あ
え に 補 題C.1に
ker(A*-z-w)〓dim
に
∈R(A-z*)で
ゆ え に, .だ る.し
≠0
つ(A*-z-w)Ψ=0.仮
と き,か
属 す る な ら ば,(ⅱ)に え に,A-w*は
るz0∈Ⅱ+が
元 な ら ば,Ⅱ-⊂
ρ(A)の ρ(A).こ
よ っ て,任
全 単 射 で あ る.す
元 な ら ば,Ⅱ+⊂ の 事 実 と σ(A)が
れが 全射 に なる の
つ こ の と き に 限 る.し
ρ(A).同
な わ ち,w*∈
定 理C.2-(ⅲ)は
対 し ρ(A).
様 に あ るw0∈Ⅱ-
閉 で あ る こ と を考 慮 す る と題
意 に い う 場 合 分 け が で る.
注 意 C.1
たが っ
意 のw∈Ⅱ-に
■
次 の こ と を意 味 す る:閉 対 称 作 用 素Aが
な らば,σ(A)はⅡ+,Ⅱ-,Cの
う ち どれ か 一 つ に 等 しい.こ
自己共役 でな い
れ は たいへ ん興 味深
い 事 実 で あ る. 前 著[6]の
定 理2.42(p.143)で
分 条 件 は σ(A)⊂IRが
証 明 し た よ う に,Aが
成 り立 つ こ と で あ る.上
自 己共 役 で あ る た め の 必 要 十
の 定 理 で は,自
己共役 で ない 閉対称
作 用 素 の ス ペ ク トル の 構 造 が ど うな っ て い る か をみ た わ け で あ る. Aが
対 称 作 用 素 で あ る と き,A*=(A)*で
あ る か ら,定 理C.2-(ⅰ),(ⅱ)に
よ って,
非 負 整 数 の 組(n+(A),n-(A))を
(C.4) (C.5)
に よ っ て 定 義 で き る.こ
れ ら をAの
付録D 付 録Cで
ず,次
称 作 用 素Aが
一 般 に,ヒ
index)と
呼 ぶ.
閉 対 称作 用 素 が 自己共 役 拡 大 を もっ 条 件
導 入 し た 不 足 指 数 を 用 い て,対
と が で き る.ま に,対
不 足 指 数(deficiency
称 作 用 素 が 自 己 共 役 拡 大 を も つ 条 件 を特 徴 づ け る こ
の こ と を 想 起 し て お く.前
著[5]のp.144,定
理2.44で
証 明 した よう
本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る こ と とn+(A)=n-(A)=0は
ル ベ ル ト空 間Hか
ら ヒ ル ベ ル ト空 間Kへ
同 値 で あ る.
の ユ ニ タ リ変 換 の 全 体 をU(H,K)と
記 す.
定 理D.1
AをH上
の 対 称 作 用 素 と し,K+:=ker(A*-i),
と お く.n+(A)=n-(A)≠0と て,Aの
仮 定 す る.こ
自 己 共 役 拡 大AVでV1≠V2(V1,
K-:=ker(A*+i)
の と き,各V∈U(K+,K-)に
V2∈U(K+,K-))な
対 し
ら ばAV1≠AV2を
満 た す も の が 存 在 す る.
証 明 Aは
閉 と して 一 般 性 を失 わ な い,Aの
(C.3)に
よ り,
ら,H上
の ユ ニ タ リ 作 用 素UVをUV:=V わ か る.し
(I-UV)Φ
た が っ て,[5]の
対 し て,Ψ=(I-W)Φ で あ る か ら,Ψ
よ っ て 定 義 で き る.こ 定 理2.78(p.221)に
ら ば,[5]の
で あ る か ら,
対 し て,A(I-W)η=i(I+W)η
拡 大 で あ る. 定 理2.78(p.221)に
よ っ て,UV1=UV2.こ
れ はV1=V2
を 意 味 す る.
注 意D.1 で あ る.こ
■
逆 に,対
称 作 用 素Aが
れ は,n+(A),
V:=U│K+がU(K+,K-)の
注 意D.2
自 己 共 役 拡 大Aを
n-(A)≠0の
場 合,Aの
も つ な ら ば,n+(A)=n-(A) ケ ー リ ー 変 換 をUと
す れ ば,
元 で あ る こ と を 示 す こ と に よ っ て 証 明 さ れ る.
定 理D.1は
な い と し よ う.し
意 の
あ る.(I-W)Φ=
の と き,(I-UV)-1Ψ=Φ
意 の η ∈R(A+i)に
た が っ て,AVはAの
AV1=AV2な
あ る.こ
の と き,
よ り
あ る か ら,任
と な る Φ ∈R(A+i)が
∈D(AV)で
AVΨ=i(I+W)Φ=AΨ(任 に 注 意).し
Wに
れ は 自 己 共 役 作 用 素 で あ る.D(A)=R(I-W)で
Ψ ∈D(A)に
す る[5, p.220]:
で あ るか
ker(I-UV)={0}が
と す れ ば,こ
ケ ー リ ー 変 換 をWと
次 の こ と を意 味 す る.対
た が っ て,n+(A)≠0ま
称 作 用 素Aは
た はn-(A)≠0が
本 質 的 に 自己 共 役 で 成 り立 つ.も
し,
n+(A)=n-(A)な
らば,定 理D.1に
よ っ て,Aは
の 濃 度 は 非 可 算 無 限 で あ る の で,Aの う な例 の一 つ は,す 注 意 D.3
-)
自 己 共 役 拡 大 は非 可 算 無 限 個 存 在 す る .こ の よ
で に[5]の2章,2.3.8項
定 理D.1と
自 己 共 役 拡 大 を もつ が,U(K+,K
注 意D.1に
で 論 じ た.
よ っ て,n+(A)≠n-(A)と
な る 対 称 作 用 素Aは
自 己 共 役 拡 大 を も た な い. 系 D.2
対 称 作 用 素Aが
た だ一 つ の 自己 共 役 拡 大 を もつ な ら ば,Aは
本 質的 に 自己
共 役 で あ る. 証 明 対 偶 を示 そ う.そ こで,Aは 1ま た はn-(A)〓1.
本 質 的 に 自 己共 役 で ない とす る.こ の 場 合,n+(A)〓
n+(A)≠n-(A)な
共 役 拡 大 を も た な い.他
ら ば,上
方,n+(A)=n-(A)の
非 可 算 無 限 個 の 自 己 共 役 拡 大 を も つ.よ
の 注 意D.3に
場 合 に は,注 っ て,「Aは
よ っ て,Aは 意D.2に
自己
よ り,Aは
た だ 一 つ の 自 己 共 役 拡 大 を もつ 」
の 否 定 が 示 さ れ た こ と に な る. 例D.1
IR+:=(0,∞)と
に お い て,作
し,ヒ
■ ル ベ ル ト空 間
用 素pγ を次 の よ う に 定 義 す る:
こ の と き,pγ
は 対 称 作 用 素 で あ るが ,自 己 共 役 拡 大 を も た な い.
証 明 n+(pγ)=1,n-(pγ)=0を
証 明 す る(こ
し た が う).g∈ker(p*γ-i)と 〈g,-if'+if〉=0.し
し よ う.こ
ら に,u(γ)は
対 して,
た が っ て,gは
成 り立 つ.し
え に, .右 連 続 関 数 で あ る.す
る とgは
成 り立 つ こ と に な る.こ
う形 に 限 られ る(kは
定 数).ま
っ て,n+(pγ)=1.
た,こ
たが っ て,D(g-u)=0. 理6.20),g(γ)=u(γ)+cc 辺 はγ の 連 続 関 数 で あ る か
り,g'(γ)=-g(γ)が
か る.よ
は 有限 で あ
ルベ ー グ測 度 に つ い て ほ と ん ど い た る とこ ろ の γ
こ れ と一 般 化 され た 微 分 法 の 定 理 に よ り([12]のp.127,定
ら,し
張 が
対 し て, たが っ
に対 し て微 分 可 能 で あ り,Du(γ)=-g(γ)が
定 数).ゆ
よ っ て,主
⊂∞0(IR+)に
あ るか ら,積 分 に 関 す る シ ュ ヴ ァ ル ツ
の 不 等 式 を 用 い る こ と に よ り,各γ>0に
を得 る(cは
意D.3に
意 のf∈
た が っ て, .し
て,超 関 数 の 意 味 でDg=-g.g∈L2(IR+)で
る こ とが 示 さ れ る.さ
の と き,注
の と き,任
のgが
す べ て のγ>0で
微分 可 能 であ
の 微 分 方 程 式 の 解 はg(γ)=ke-γ 確 か にker(p*γ-i)の
とい
元 で あ る こ と もわ
次 にh∈ker(p*r+i)の h'(r)=h(r)が
とす れ ば,前 段 と同 様 の 議 論 に よ っ て,hは
わ か る.こ
れ はk=0の
の 微 分 方 程 式 の 解 はh(r)=kerに
と きの み,L2(IR+)の
元 で あ る.よ
微 分 可 能 で あ り,
限 られ る.し
か し,こ
っ て,n-(pr)=0.
■
次 に,対 称 作用 素 の不足 指数 が一 致す る(し たが って,自 己共役 拡大 の 存在 が保証 さ れ る)有 用 な 十 分 条 件 を 一 つ 定 式 化 し て お く. 定 義D.3
写 像J:H→Hを
任 意 の をJに
共 役 子([6],p.458),AをH上
に 対 し て,
関 す る 実 作 用 素(real
の 線 形 作 用 素 と す る.
で あ り,
operator)と
い う.こ
が 成 り立 つ と き,A の場 合,単
にAはJに
関 して実
で あ る と もい う. 注 意D.4 D(A)で
AがJに
関す る 実 作 用 素 な ら ば,容 易 に確 か め られ る よ う に,実 はJD(A)=
あ る.
補 題D.4 役 子Jに
稠 密 に 定 義 さ れ た 線 形 作 用 素Aが
共 役 子Jに
関 して 実 な ら ば,A*も
関 して 実 で あ る.
証 明 任 意 の と
に対 して, 最 初 と最 後 の 式 に よ っ て,
が し た が う.し
定 理D.5
たが っ て,A*はJに
かつ
関 して 実 で あ る.
(フ ォ ン ・ノ イ マ ン の 定 理)AをH上
関 して 実 作 用 素 で あ る とす る.こ はJに
共
■
の 対 称 作 用 素 と し,Aは
の と き,n+(A)=n-(A)が
共 役 子Jに
成 り立 つ.さ
ら に,A
関 して 実 の 自 己 共 役 拡 大 を もつ.
証 明 補 題D.4に
よ っ て,A*もJに
関 して 実 で あ る.こ
に 対 して,
らK〓
へ の 全 単 射 で あ る.こ
D.1に
よ っ て,各V∈U(K+,K-)に
CONS{en}nに
れ はn+(A)=n-(A)を
対 し て,
た す こ とが わ か る.こ
理
任意 の
満 た す も の が 存 在 し, 関 す る 実 性 を用 い る と,Aの が 成 り立 つ.こ
証 明 に お け る ユ ニ タ リ作 用 素UVはJUV=U*VJを
れ はAVのJに
か
た が っ て,定
自 己 共 役 拡 大AVでV1≠V2
でVen=Jenを た,AのJに
意の
た が っ て,JはK±
満 た す もの が 存 在 す る.K+の
つ い て も
事 実 を用 い る と,定 理D.1の
れ を 用 い る と,任
意 味 す る.し
対 して,Aの
な らばAV1≠AV2を
が 成 り立 つ.ま ケ ー リー 変 換Wに
が わ か る.し
関 す る 実 性 を 導 く.
れ らの 満 ■
付録E 交 換 子 に関 す る基 本 公 式
Hを
複 素 ヒ ル ベ ル ト空 間,A,B,C,S,TをH上
部 分 集 合
の 線 形 作 用 素 とす る.
が あ っ て,す
成 り立 つ と き,「D上
でS=Tが
べ て の Ψ ∈Dに
対 して,
が
成 り立 つ 」 とい い,こ の こ と を 「S=T(D上)」
と
い う ふ う に も記 す. 線 形 作 用 素 の 交 換 子[S,T]:=ST-TSに 易 で あ る(α,β ∈Cは
関 す る 以 下 の 関 係 式 を証 明す る の は 容
任 意). 上),
(E.1)
命 題E.1
上),
(E.2)
上),
(E.3)
上),
(E.4)
上),
(E.5)
とす る.こ
の
とき (Dn上)
(E.6)
が 成 り立 つ. 証 明 n=1の
と き は 明 ら か.n=m∈INの
の と き,Dm+1上
最 後 の 式 は,k=j+1と い こ とが わ か る.し
と き,(E.6)が
成 り立 つ と し よ う.こ
で
して,和
を書 き 直 せ ば,n=m+1の
た が っ て,(E.6)はn=m+1の
場 合 の(E.6)に
系E.2 c∈Cが
等 し
場 合 も成 立 す る.
■
とす る.定 あ っ て 上)と
す る.こ (Dn上)
が 成 り立 つ.
数
の とき (E.7)
証 明 (E.6)の 右 辺 の[A,B]にcIを 例E.1
L2(IRd)に
代 入 す れ ば よ い.
お い て,
■ な らば
(D上),j,k=1,…,d.
ノ
ー
ト
本章 の主 眼 は,量 子 力学 にお いて現 れ る(あ るい は現 れ る可 能性 のあ る)諸 々の物 理 量 の候 補 の(本 質 的)自 己共役 性 を証 明す る ための い くつか の基 本 的方法 お よ び準 双 線形 形式 による 自己共役 拡大 の構 成法 を論述 す る ことにあ った.自 己共役 性 の問題 につ いて は,本 章 で取 り上 げた事 実 の他 に も非常 に多 くの結果 が得 られ てい る.こ れ らにつ いて は,[14]のX章
や[15]等 を参 照 され たい.量 子力 学や 量子場 の理論 にお
いて,新 たなモ デ ル を考 察の対 象 と し,モ デ ルの有 す る物 理量 の候補 につい て,そ の (本質的)自 己共役性 を証 明す る際 に,従 来 の方 法が 適用 で きる場合 とそ うで ない場合 が あ りうる.後 者 の場合,本 質 的 に新 しい方法 が必 要 と され る.こ の よ うに して,自 己 共役 性 の問題 は,量 子 場 の理論 を含 む広範 な領 域 にお いて重要 な主題 の一 つ であ り 続 け てい る.
第2章 演 習 問 題
1. 命 題2.14を
証 明 せ よ.
2. V1,V2をIRν と お く.こ
上 の ボ レ ル 関 数 の 集 合 と し, の と き,V1,V2が
ス ケ ー ル 不 変 な ら ば,V1+V2も
ス ケール不 変で
あ る こ と を 示 せ.
3. p,q〓1な
ら ば,関 数 空 間
は そ れ ぞ れ,複
素 ベ ク トル 空 間,実
4. 関 数 (K>0:定 作 用 素Vは1次
ベ ク トル 空 間 で あ る こ と を 示 せ. 数)に
よ る(L2(IR)に
お け る)か け 算
元 ラ プ ラ シ ア ンΔ に関 して 相 対 的 に 有 界 で は な い こ と を 示 せ.
5. 多 項 式 型 ポ テ ン シ ャル
に よ る(L2(IR)に
お け る)か け 算 作 用 素Pは1次
元 ラ プ ラ シ ア ンΔ に 関 して
相 対 的 に有 界 で は な い こ と を 示 せ. 6. nを 任 意 の 自然 数,λ>0を
定 数 と し,
2.29に よ っ て,
は
下 の 手順 で,H2n=H2n,す
とお く.系 上 で 本 質 的 に 自己 共 役 で あ る.以
な わ ち,H2nは
上 で 自 己 共 役 で あ る こ と を証 明 せ よ.pj:=-iDjと (ⅰ) 任 意 のf∈C∞0(IRd)に
お く.
対 して
を示 せ. (ⅱ) (ⅰ)を用 い て,任
意 のf∈C∞0(IRd)に
対 して
を示 せ. (ⅲ) 任 意 の ε∈(0,1)に
対 して,定
数bε〓0が
が 成 り立 つ こ と を 示 せ.n=1の (ⅳ) (ⅱ),(ⅲ)か
存 在 して
と き は,bε=2dλ
に と れ る こ と を示 せ.
ら
を 示 せ.n=1の
と き は,ε=0,bε=2dλ
(ⅴ) (ⅳ)とC∞0(IRd)がH2nの
に と れ る こ と を 示 せ.
芯 で あ る こ と(系2.29)を
な ら ば,
か つ す べ て の
用 い て,ψ ∈D(H2n) に
対 して 不 等 式
が 成 り立 つ こ と を 証 明 せ よ. (ⅵ) (ⅴ)と 系2.29に
よ っ て,-Δ+P2nは
上 で 自己 共 役 で あ る こ と を証 明 せ よ.
7. ボ レ ル 可 測 関 数V:IRd→IRに 十 分 条 件 は 8. d〓3な
つ い て,
で あ るた めの必要
で あ る こ と を示 せ.
ら ば,L2(IRd)に
お い て,D(Δ)の
任 意 の元 は連 続 関数 と同一視 で き
る こ と を示 せ. 9. Vは
定 理2.31と
同 じ条 件 に した が う と す る.E∈IRdを
を 定 数 と し,W(x)=-qE・xと (ⅰ) 任 意 の ε>0に
定 ベ ク トル,q∈IR
す る*46.
対 し て,不 等 式
が 成 り立 つ こ と を 示 せ. (ⅱ) 任 意 の
に 対 して
を 示 せ.こ
こ で,ε>0は
任 意 の 正 の定 数 で よ い.
(ⅲ) 次 の 事 実 を 証 明 せ よ:0〓a<1な 任 意 の で あ り,下 に有 界 で あ る.ま
ら ば,
は
に対 して,
上 で 自己 共 役
た,そ
れ はC∞0(IRd)上
で本 質的 に 自己共役
で あ る. 10. 定 理2.35の
作 用 素Hλ ,a(a≠0)は
ヒ ン ト:次 の性 質 を もつ,IR上
上 に も下 に も有 界 で な い こ と を 示 せ.
の関 数 ρ を とる: 整数
の 組n=(n1,n2,n3)に を 導 入 す る.こ
対 して 関 数
の と き,
で あ る.適
を と れ ば,
当 な 部 分 列{n(k)}k
と な る こ と を 示 せ.Hλ,aが
上 に 有 界 で な い こ と も 同 様 に し て 証 明 さ れ る.
11. 例2.10の
準 双 線 形 形 式sδ は 閉 で は な い こ と を 証 明 せ よ.
12. L2(Ω)(Ω
はIRdの
開集 合)に お け る 一 般 化 され た デ ィ リ ク レ境 界 条 件 付 き ラ プ
ラ シ ア ンΔD(例2.11)に
つ い て,
[したが っ て,
]
を証 明 せ よ.
*46 d =3の 合,Wは を表 す.
場 合 に お け る,Eの 電苛qを
物 理 的 な例 の 一 つ は 空 間的 に 一 様 な電 場 で あ る.こ の場
もつ粒 子 に作 用素 す る電場Eに
よる ポテ ン シ ャル,す な わ ち,電 位
13. 定 数L>0を
任 意 に と り,有 限 開 区 間(-L/2
,L/2)に
お け る 一 般 化 され た デ ィ
リ ク レ境 界 条 件 つ き ラ プ ラ シ ア ン をΔ(L)Dと す る[枠 と な る ヒ ル ベ ル ト空 間 は ](例2.11で
の
場 合). か つ
(ⅰ)
を示 せ. (ⅱ)
が存在 と お く.こ
の と き,
か つ を示 せ.
(ⅲ) 関 数 φn(n∈IN)を次
の よ う に定 義 す る:
こ の と き,
か つ
を示
せ*47.
を証 明 せ よ.
(ⅳ) 14. L2(Ω)(Ω
はIRdの
開 集 合)に お い て 準 線 形 形 式sNを次
の よ う に定 義 す る:
(ⅰ) sNは 非 負 か つ 可 閉 で あ る こ と を 証 明 せ よ. sNの
閉 包sNに
同伴 す る 非 負 自 己 共 役 作 用 素 を-ΔNと
(ⅱ) -ΔNは-Δminの
自 己 共 役 拡 大 で あ る こ と を 示 せ.
(ⅲ) Ω が 有 界 の と き, 注:-ΔNを一 よっ て,Ω *47 {φn}n
す る.
を示 せ.
般化 され た ノイ マ ン境界 条 件 つ きラ プラ シ ア ン とい う.前 問 と(ⅲ)に が有 界 な らば,ΔD≠ΔNが
わ か る.
∈INは,発 見 法 的 に は,微 分 方 程 式 を満 たす 関 数fを 求 め る こ と に よ り,得 られ る.
お よ び条 件
15. d〓3の
と き,-Δ
は
上 で は本 質 的 に 自 己 共 役 で は な い こ と を
証 明 せ よ.
関 連 図 書
[1] 新 井 朝 雄,『 ヒル ベ ル ト空 間 と量 子 力 学』,共 立 出 版,1997. [2] 新 井 朝 雄,『 フ ォ ック空 間 と量 子 場 上』,日 本 評 論 社,2000. [3] 新 井 朝 雄,『 フ ォッ ク空 間 と量 子 場 下』,日 本 評 論 社,2000. [4] 新 井 朝 雄,『 現 代 物 理 数学 ハ ン ドブ ッ ク』,朝 倉書 店,2005. [5] 新 井 朝雄 ・江 沢 洋,『 量子 力 学 の 数 学 的構 造Ⅰ』,朝 倉 書 店,1999. [6] 新 井 朝雄 ・江 沢 洋,『 量子 力 学 の 数 学的 構 造Ⅱ 』,朝 倉 書店,1999. [7] 江 沢 洋,物 質 の安 定 性,江 沢 洋 ・恒 藤敏 彦(編)『
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of
Matter:From
ed.). す ず 書 房,1969.
Atoms
to
Stars,Selecta
3 正準交換 関係 の表現 と物理
量子 力 学 の根 本 原 理 の一 つ で あ る,代 数 的 構造 と しての 正準 交 換 関係(CCR)の
表現 論
の 初等 的 部 分 を,量 子物 理 との 関 連 を念 頭 に置 きつ つ,論 述 す る.ま た,CCRの
変形
か ら定 義 され る時 間作 用 素 の概念 につ い て もふ れ る.こ れ は,従 来曖 昧 に論 じられ て き た"時 間-エ ネル ギ ー の 不確 定 性 関 係"に 対す る一 つ の 明 晰 な形 を与 え る.さ らに,時 間作 用 素 と状 態 の 時 間発 展(生 き残 り確 率)と の 関 係 に つ い て議 論 す る.
3.1
は
じ
め
に
ハ イゼ ンベ ル ク の不 確 定 性 関 係 を考 慮 す る と,量 子 的粒 子 の粒 子 的描 像 にお け る位 置作 用 素 と運 動 量作 用 素 は正準 交 換 関係(canonical CCRと
relation;
略 す)に し たが う こ とが あ る意 味 で 自然 に導 か れ る こ と を前 著[14]の3
章,3.3節
で 発 見 法 的 に示 した.さ
も無 限 自 由度 の 場 合 も含 め て,外 CCRの
commutation
ら に進 ん で,量 子 力 学 は,有 限 自 由度 の 場 合 的 自由 度 に関 す る 限 り,代 数 的 構 造 と して の
ヒ ルベ ル ト空 間 表 現 と して,統 一 的 に捉 え られ る こ と も示 唆 した([14]
の3.3.7項 お よ び4.4節).こ
の 場 合,有 限 自 由度 の 量 子 力 学 と量 子 場 の 理 論 の
よ うな無 限 自 由度 の量 子 力 学 との違 い は,有 限 自由度 のCCRの 度 のCCRの
表 現 と無 限 自 由
表現 の それ と して把 握 さ れ る.代 数 的 構 造 そ の もの と して のCCR
を量 子 力 学 の根 本 原 理 の 一 つ と して立 て る と き,次 に行 うべ き仕 事 は 無 数 に存 在 す るCCRの
表 現 の 構 造 を解 析 す る こ とで あ る.こ れ は 量 子 現 象 の 現 出 の 仕
方 を根 本 で 支 配 す る数 学 的 構 造 の一 つ の 相 を そ の根 源 か ら明 晰 に認 識 す る こ と を可 能 にす る は ず で あ る.よ は,無 数 に あ るCCRの
り具 体 的 にい え ば,こ の仕 事 の 基 本 的 課 題 の 一 つ
表 現 た ち を本 質 的 に 異 な る もの とそ うで な い もの とに
分 類 し整 理 す る こ とで あ る.CCRの
表 現 の うち には,前
著[14]で す で にみ た
よ うに,外 見― 表 現 形 式― が 異 な って も物 理 的 に は ま っ た く同 じ内容 を記 述 す る もの が あ る(例:シ ン表 現).そ
ュ レ ー デ ィ ン ガー 表 現 とボ ル ン-ハ イ ゼ ンベ ル ク-ヨ ル ダ
の よ う な表 現 ど う しは物 理 的 に 同値 で あ る とい う.他 方,あ
る表 現
は別 の 表 現 と本 質 的 に異 な る 物 理 的 内容 を 内 蔵 して い る場 合 が あ る.こ の よ う な二 つ の表 現 は物 理 的 に非 同 値 で あ る とい う.CCRの
表 現 の 分 類 問 題 は,量 子
力 学 の コ ン テ クス トに お い て は,無 数 に存 在 す るCCRの
表 現 を物 理 的 に 同値
な もの とそ う で な い もの とに分 類 す る問 題 に ほ か な ら な い.こ れ が 本 章 の主 題 で あ る.だ が,こ Nを
こ で は,有 限 自 由度 のCCRの
自然 数 と し,自 由度Nの
表 現 の み を考 察 す る.
場 合 のCCRを
ここ で も う一 度 か き下 して お こ
う*1:
(3.1) (3.2) だ た し,[X,Y]:=XY-YX.
定 義3.1
Hを
CCRの
表 現 の 二 つ の 型 を 導 入 す る:
ヒル ベ ル ト空 間 とす る.Hで
作 用 素Qj,Pk(j,k=1,…,N)に
稠 密 な部 分 空 間DとH上
の対 称
ついて
(3.3) か つD上
で(3.1),(3.2)が
成 立 す る と き*2,
CCRの
対 称 表 現 と い う.こ
の 場 合,も
し,Qj,Pj(j=1,…,N)が
作 用 素 で あ る な ら ば, 現 と い う.い
を 自 由 度Nの
を 自 由 度NのCCRの
ず れ の 表 現 の 場 合 で もHをCCRの
注 意3.1 N=1の
自己 共役
場 合 のCCRの
表 現 の ヒ ル ベ ル ト空 間 と い う.
表 現 は{H,D,(Q,P)}の 各Qj,Pjの
自 己 共役 表
注 意3.2
上 の 定 義 に お い て,Dが
も あ る.こ
の 方 が 代 数 の 表 現 と い う 意 味 で は 自 然 で あ る.だ
よ う に 表 す*3.
不 変 部 分 空 間 で あ る とす る場 合 が,本
書 で は,作
用 素 論 の 観 点 か ら 論 じ た い の で 上 の よ う な 定 義 を採 用 す る. *1 h=1の *2 H上
単 位 系 を採 用す る の 線 形 作 用 素A
Ψ ∈Dに
対 し て,
*3 反交 換 関 係 の 記号{・
,Bに
. つ い て,部
分 空 間D⊂D(A)∩D(B)が
が 成 り立 つ と き,D上
,・}と の混 乱 を避 け る ため.
でA=Bが
あ っ て,任
意の
成 り立 つ と い う.
前 著[14]の3.3.4項 下,単
にCCRの
で 定 義 した の は,実 はCCRの
表 現 とい う と き に は,CCRの
現 を表 す もの とす る.任 意 のCCRの に つ い て,QjとPjの
自己共 役 表 現 で あ った.以 対 称 表 現 あ る い は 自己 共 役 表
表 現
にお い て,各j
少 な く と も一 方 は非 有 界 で あ る([14]の 定 理3.23,定
3.24).こ
の 特 性 をCCRの
CCRの
表現 論 を展 開 す る た め の方 法 に は大 き く分 け て2通
は,CCRの
表 現 の 非 有 界 性 と呼 ぶ. りあ る.そ の一 つ
表 現 の非 有 界 性 に まつ わ る困 難 を避 け る ため に,CCRを
見 法 的 に は 同 等 な― しか し,実 際 に は,あ 有 界 作 用 素 の 関係 式 に 翻 訳 して,後 CCRの
これ と発
る付 加 的 条 件 の も とで の み 有 効 な―
者 の 表 現 を論 じ る方 法 で あ る.も
表 現 を直 接 考 察 す る方 法 で あ る.こ
る.だ が,そ
理
う一 つ は
こで は,ま ず,前 者 の方 法 か ら論 じ
の 前 に,あ る予 備 的 考 察 を行 う.
3.2
この 節 で は,CCRの
予 備 的 考 察
表 現 を考 察 す る 上 で あ らか じめ把 握 して お くべ き基 礎 的
な事 柄 を論 述 す る.
3.2.1
ス ペ ク トル 特 性
ヒ ル ベ ル ト空 間H上 た はT│Dと
の 線 形 作 用 素Tの
部 分 空 間D⊂D(T)へ
の 制 限 をTDま
記 す([13]のp.65∼p.66).
命 題3.2
を 自 由 度NのCCRの
と き,各j=1,…,Nに
対 し て,Qj│D,Pj│Dは
対 称 表 現 とす る.こ
の
固 有 値 を も た な い:
(3.4) 証 明 λ を実 定 数 と して と き,CCRに 左 辺 は0と が っ て,Qjは
を満 た す Ψ ∈Dが
よ り, な る こ と が わ か る.し
あ っ た と し よ う.こ の の 対 称 性 に よ り,
た が っ て,‖Ψ‖2=0.ゆ
固 有 ベ ク トル を も た な い.Pjに
え に Ψ=0.し
つ い て も 同 様.
た ■
注 意3.3
命題3.2はQjま
た はPjが
る もの で は な い(i. e., Qj, Pjが
まっ た く固 有値 を もた な い こ とを 意 味 す
そ れ ぞ れ,D(Qj)\D,
ベ ク トル を もつ 可 能性 は排 除 で きな い).[14]の3章
D(Pj)\Dの 演 習 問題19を
中 に 固有 参 照.
3.2.2 表 現 の 既 約 性 CCRの
表現 を同値 な もの とそ うで な い もの と に分類 す る上 で,次 に述 べ る事
実 は あ ら か じめ心 に と どめ て お く必 要 が あ る. 自 由度NのCCRの と し て,そ
表 現 がM個(Mは
有 限 ま た は 可 算 無 限)与 え ら れ た
れ ら を
と
し よ う.こ の と き,直 和 ヒ ル ベ ル ト空 間 HM上
に お け る部 分 空 間
の場 合 は 代 数 的無 限 直 和 とす る)は 稠 密 で あ る*4. の 作 用 素Qj, Pj(j=1,…,N)を
に よっ て 定 義 す れ ば,
はCCRの
こ の場 合,各 表 現 πmを 表 現πMの Qj, PjはHmに 一般 に,CCRの 表 現(direct sum
第m成
表 現 で あ る.
分 と呼 ぶ.表 現 πMに お い て は,各
よっ て 簡約 され る こ とに 注 意 しよ う*5. 表現 が い ま述 べ た 型 の 表 現 と して表 され る と き,こ れ を直 和 representation)と
呼 ぶ.こ
の場 合,当 該 のCCRの
表 現 は直
和 分解 され る とい う.直 和 表 現 が 二 つ 以 上 の 成 分 を もつ と き,こ の 直和 表 現 は 非 自 明 で あ る とい う. CCRの
直 和 表 現 に お い て は,そ の 表 現 の 詳 細 な性 質 を調 べ る 問題 は,各 成 分
の そ れ を調 べ る 問題 に帰 着 さ れ る.そ れ ゆ え,CCRの て は,直 和 表 現 は度 外 視 して よ い.そ
こで,非
表 現 を分 類 す る に あ た っ
自明 な直 和 表 現 に分 解 され な い
表 現 を定 義 す る こ と を考 え る.そ の た め の 鍵 とな る概 念 が 次 に定 義 す る既 約 性 の概 念 で あ る. 定 義3.3
Xを
ヒル ベ ル ト空 間,MをX上
の線 形 作 用素(有 界線 形 作 用 素 で あ
る必 要 は な い)の 族 とす る. *4 ヒ ル ベ ル ト空 間 の 直 和 に つ い て は *5 作 用 素 の 簡 約 に つ い て は
,[13]の1.1.8項
,[13]の2.6.4項
を 参 照.
お よ び[14]の4.3.2項
を参 照.
(ⅰ) X上 の有 界 線 形 作 用素T∈B(X)が を満 たす と き,TとMは をM'と
すべ て のA∈Mに
可 換 で あ る とい う.Mと
記 し,こ れ を をMの
の 恒 等 作 用 素)な
ducible)で
あ る と い う.
定 義3.4
CCRの
る と き,こ
の 表 現 は 既 約 で あ る と い う.
表 現
際,上
可 換 な 有界 線 形 作 用 素 の全 体
可 換 子 集 合 とい う*6.
(ⅱ) M'={zI}=:CI(IはX上
こ の 定 義 が,実
対 してTA⊂AT
ら ば,Mは
に お い て
既 約(irre
が既 約 であ
述 の 目的 に か な う もの で あ る こ とは 次 の 命 題 に よ って
示 さ れ る:
命 題3.5
CCRの
表 現
が 既 約 な ら ば,そ
れ は非 自明 な直
和 表 現 に 分 解 さ れ な い.
証 明 仮 に,表
現
が 非 自 明 な 直 和 に 分 解 さ れ た と し,そ
の 成 分 を
と 書 こ う(非自明
よ り,M〓2).Пm:H→HmをHmへ Hmに
の 正 射 影 作 用 素 とす れ ば,Qj, Pjの
よ る 簡 約 可 能 性 に よ り,
か ら,Пm≠I(m=1,…,M).こ
性 に
しか し,M〓2で れ は
ある
の 既 約 性 に 反 す る. ■
作 用 素 の 集 合 の 既 約 性 を別 の視 点 か ら特 徴 づ け る概 念 を導 入 して お く. 定義3.6
Xを
T*∈Mで
あ る と き,Mは
注 意3.4
ヒ ル ベ ル ト空 間,M⊂B(X)と
す る.任 意 のT∈Mに
対 して,
自己 共 役 で あ る とい う.
この 定 義 は,有 界作 用 素 の 集 合 に関 す る 自己 共 役 性 の概 念 で あ る.作
用 素 の 自 己 共 役 性 の 概 念 と混 同 し な い よ う 注 意 さ れ た い. 例3.1 M}と
Xを
ヒル ベ ル ト空 間 とす る.任 意 のM⊂B(X)に
す れ ば,Mは
*6 第1章
自 己 共 役 で あ る((T*)*=Tに
対 して,M:=M∪{T*│T∈
で 導 入 した可 換 子 集 合 の一 つ の 一般 化 で あ る
注 意).
.
命 題 3.7
Xを
ヒ ル ベ ル ト空 間,M⊂B(X)を
次 の(ⅰ),(ⅱ)は (ⅰ) Mは
既 約.
(ⅱ) Xの
閉 部 分 空 間YでM-不
TY⊂Y)はXか{0}の
変 な も の(i.e.,任
既 約 で あ る と す る.A∈Mと
変 な も の と す る.任
<Φ,A*Ψ>=0(∵A*∈Mで もM-不
意 の Ψ ∈Xと
意 の Φ ∈Y⊥
変 で あ る.そ
が,Mの
よ っ て,(ⅱ)の
こ で,Yへ
対 し て,<AΦ
既 約 性 とPの
,Ψ>=
た が っ て ,AΦ
の 正 射 影 作 用 素 をPと
対 し て,PAΨ=APΨ
∈Y⊥.
す れ ば,任
が 成 り立 つ .ゆ
正 射 影 性 に よ り,P=Iま
仮 定 す る.T∈M'と
し て,TA=AT.し
す る.こ
え
た はP=0
.
の と き,任 意 のA∈Mに
た が っ て,A*T*=T*A*.Mは 意 味 す る.し
元 で あ る.こ
役 で あ る.T1の
ス ペ ク トル 測 度 をEと
対 し て,E(J)∈M'と 仮 定 に よ り,R(E(J))=Xま す れ ば,任
,T2:=(T-T*)/(2i)
の 場 合,T=T1+iT2と
な る.し
書 け,T1,T2は
す る と,任
変 で あ る.こ
た はR(E(J))={0}で
R(E([a-ε,a])=X.ε>0は
あ る.S=supp
対 して,E([a-ε,a])≠0
任 意 で あ っ た か ら,こ
味 す る.す
な わ ち,E({a})=I.ゆ
るb∈IRが
あ る.よ
れ と
Eと .し
し,
た が っ て,
れ はR(E({a}))=Xを
え にT1=aI.同
っ て,T=(a+ib)I.ゆ
自己 共
意 の ボ レ ル 集 合J∈B1に
た が っ て,R(E(J))はM-不
意 の ε>0に
対
自己 共 役 で あ る か ら ,こ れ
た が っ て,T1:=(T+T*)/2
の い ず れ もM'の
Sと
∈Y).し
閉部 分
主 張 が 出 る.
(ⅱ)⇒(ⅰ):(ⅱ)を
a:=sup
対 し て,
す る.YをXの
と Ψ ∈Yに
あ る か ら,A*Ψ
す べ て のA∈Mに
に,P∈M'.だ
はT*∈M'を
意 のT∈Mに
い ず れ か で あ る.
証 明 (ⅰ)⇒(ⅱ):Mは
ゆ え に,Y⊥
の と き,
同 値 で あ る.
空 間 でM-不
自 己 共 役 集 合 とす る.こ
意
様 に し て,T2=bIと
な
既 約 で あ る .
■
え にMは
次 の命 題 は,作 用 素 の 集 合 の 既 約 性 のユ ニ タ リ不 変 性 に関 す る もの で あ る. 命 題3.8
X,Yを
Xか
の 任 意 の ユ ニ タ リ 変 換 と し,MU:={UAU-1│A∈M}と
らYへ
の と き,Mが
証 明 S∈M'Uと
ヒ ル ベ ル ト空 間,MをX上
既 約 な ら ば,MUも
す れ ば,任
の 線 形 作 用 素 の 族 と す る.Uを
既約 である. 意 のA∈Mに
対 し て,SUAU-1⊂UAU-1S.
す る .こ
そ こ で,S':=U-1SUと Mの
お け ば,S'∈B(X)で
既 約 性 に よ り,あ
るz0∈Cが
あ り,S'A⊂AS'が
あ っ て,S'=z0I.こ
成 り立 つ.
れ はS=z0Iを
意味
す る.
■
強 可 換 性 の 概 念 を 若 干 拡 大 して お く:ヒ Aと
有 界 線 形 作 用 素T∈B(X)に
は 強 可 換(strongly CCRの
ル ベ ル ト空 間X上
つ い て,TA⊂ATが
commuting)で
の 自 己共 役 作 用 素
成 り立 つ と き,AとT
あ る と い う(定 義)*7.
自 己 共 役 表 現 に つ い て の 重 要 な 事 実 を 証 明 す る た め に,次
の 補 題 を証
明 す る. 補 題3.9
Aを
ヒ ル ベ ル ト空 間X上
形 作 用 素(T∈B(X))でAと
の 自 己 共 役 作 用 素 と し,TはX上
強 可 換 で あ る とす る.こ
に 対 し て,eitAとTは
の と き,す
の有界線 べ てのt∈IR
可 換 で あ る:
(3.5) 証 明 Ψ,Φ ∈D(A)を
任 意 に と る.こ
の と き,e-itAΨ
能 で あ り,de-itAΨ/dt=-iAe-itAΨ.Tは
はtに
つ い て 強微 分 可
有 界 で あ る か ら,Te-itAΨ
に つ い て 強 微 分 可 能 で あ り,dTe-itAΨ/dt=-iTAe-itAΨ
もt
が 成 立 す る.関
に よ っ て 定 義 す れ ば,こ
数
れ はtに
ついて微分可 能であ り
と計 算 さ れ る.e-itAΨ D(A).し
∈D(A)で
あ る か ら,TとAの
強 可 換性 に よ り,Te-itAΨ
た が っ て,右 辺 第 一 項 は,
て,
ゆ え に .こ
が 得 ら れ る.Tお
は 稠 密 で あ る か ら,拡 が 成 り立 つ.こ
に 等 しい.し れ とD(A)の よ びeitATe-itAは
大 定 理 の 一 意 性 に よ り,作
れ を 書 き換 え れ ば(3.5)が
∈
たが っ
稠 密 性 に よ り,
有 界 で あ り,D(A)
用 素 の 等 式eitATe-itA=T
導 か れ る.
■
次 の 補 題 も基 本 的 で あ る. *7 Tが自
己 共役 な らば ,い ま定義 した 意 味 で の 強可 換 性 は,自 己 共役 作 用 素 ど う しの 強 可 換性 の概 念 と一 致 す る(演 習 問題1).
補 題3.10
Xを
作 用 素 をPと
ヒ ル ベ ル ト空 間,NをXの
す る.X上
す る と す る.こ
閉 部 分 空 間 と し,N上
の 有 界 線 形 作 用 素T∈B(X)はNお
への正射 影
よ びN⊥
を不 変 に
の と き,PT=TP.
証 明 任 意 の Ψ ∈Xは
Ψ=PΨ+(1-P)Ψ 仮 定 に よ り,右
N⊥ の 元 で あ る か ら,PTΨ=TPΨ
と 表 さ れ る.し 辺 第 一 項 はNの
辺第二項 は ■
をCCRの
自 己共 役表 現 とす る.こ れ が 既 約
で あ るた め の必 要 十 分 条件 は
が既 約 で あ る こ とで あ る.
偶 を 証 明 す る.そ
こ で,
約 で な い と し よ う.Mは
自 己 共 役 で あ る.し
の 閉 部 分 空 間KでM-不
変 か つK≠Hか
れ と 補 題1.14に
元 で あ り,右
とな る
命 題3.11
証 明 (必 要 性)対
た が っ て,
よ っ て,各Qj,
は既 た が っ て,命
つK≠{0}と
PjはKに
題3.7に
よ っ て,H
な る も の が あ る.こ
よ っ て 簡 約 さ れ る.し
で あ り, (QjのKに
た が っ て,
お け る 簡 約 部 分), と す れ ば, (PはKへ
与 え る.ゆ
え に,
命 題3.5に
よ っ て,
定 数).し
3.2.3 N次
は 非 自 明 な 直 和 に 分 解 さ れ る.こ
れ は,
と す る.こ
た が っ て,補
T=cI(cは
表現 を
が 既 約 で な い こ と を 意 味 す る.
(十 分 性) で あ る.し
の 正 射 影 作 用 素)はCCRの
題3.9に
の と き,各Qj,
よ っ て,T∈M'.こ
た が っ て,
PjはTと
れ とMの
強可換
既 約 性 に よ り,
は 既 約 で あ る.
■
シ ュ レー デ ィ ン ガ ー表 現 の既 約 性
元 ユ ー ク リ ッ ドベ ク トル 空 間IRNの
ル ベ ル ト空 間L2(IRNx)に 用 素 をxjと 用 素 の 第j成
記 す.こ
お い て 作 用 す る,j番
れ は,量
分 を 表 す.運
元 をx=(x1,…,xN)と
表 し,ヒ
目 の 座 標 変 数xjに
子 力 学 の コ ン テ ク ス トで は,量
よる か け算 作
子 的 粒 子 の位 置作
動量作用 素 は
(3.6)
に よっ て定 義 され た(Dxjは
変 数xjに
よ る一般 化 され た偏 微 分作 用素).S(IRNx)
をIRNx上 の 急 減 少 関 数 の 空 間 とす る と き
(3.7) が 自 由 度NのCCRの
自 己 共 役 表 現 で あ る こ と は す で に 前 著[14]の3章,3.3
節 で み た([14]の
例3.3
た)*8.CCRの
(p. 283)で
は,xj=QSj,pj=PSjと
こ の 表 現 を 自 由 度Nの
い う 表 記 を用 い
シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 表 現 と呼 ぶ こ と も そ
こ で 言 及 し た.
定 理3.12
任 意 のN∈INに
対 し て,シ
ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 表 現 π(N)Sは 既 約 で
あ る.
この 定 理 を証 明 す る ため に,そ れ 自体 と して 興 味 の あ る重 要 な 事 実 を補 題 と して 掲 げ て お く: 補 題3.13
T∈B(L2(IRNx)は
に 有 界 な 関 数F∈L∞(IRNx)が
各xjと
強 可 換 で あ る とす る.こ
あ っ て,T=MF(Fに
の と き,本 質 的
よ る か け 算 作 用 素)が
成 り立 つ.
証 明 例1.10で
示 し た よ う に,x:=(x1,…,xN)は
に よ っ て,Ex=E'x…(*)が と お く と,T1,
T2は
極 大 で あ る の で,定 理1.26
成 り立 つ.T1:=(T+T*)/2,T2:=(T-T*)/(2i)
有 界 な 自 己 共 役 作 用 素 で あ り,T=T1+iT2が
成 り立 つ.
し か も 仮 定 に よ り,T1xj⊂xjT1,T2xj⊂xjT2(j=1,…,N)が し た が っ て,各Tk(k=1,2)とxjは 換 で あ る.ゆ 測 度).こ
自己 共役 作 用 素 の 強可 換 性 の 意 味 で 強 可
え に,TkExj(J)=Exj(J)Tk, J∈B1(Exjはxjの
れ はTk∈E'xを
意 味 す る.こ
方,(Exj(J)ψ)(x)=xJ(xj)ψ(x), 1.26の
あ っ て,Tk=MFkと
よ っ て,Tk∈Ex.他
ψ ∈L2(IRNx)で
あ る か ら,定
理
る 本 質 的 に有 界 な 関 数Fk∈L∝(IRN)が
表 さ れ る こ と が わ か る.そ
ば,T=MF.
ス ペ ク トル
の 事 実 と(*)に
x∈IRN,
必 要 性 の 証 明 と 同 様 に し て,あ
*8 [8]の 例6
導 か れ る.
こ で,F:=F1+iF2と
すれ ■
.2(p.
186)に
お い て も ふ れ た.
定 理3.12の
証 明
B(L2(IRNx))が
を 満 た すT∈
あ っ た と し よ う.こ
が あ っ て,T=MFと
の と き,補 題3.13に
書 け る(MFはFに
こ れ は,超
し た が っ て,F(x)=c(cは
よ っ て,あ るF∈L∞(IRNx)
よ る か け 算 作 用 素).し
た が っ て,
関 数 の 意 味 でDjF=0(j=1,…,N)を 定 数)と
な る.ゆ
え に,T=cIで
導 く. あ る か ら,題
が 成 立 す る.
定 理3.12と
系3.14
意 ■
命 題3.11に
よ っ て,次
の 事 実 が 見 い だ さ れ る.
ユ ニ タ リ作 用 素 の 集 合
は既 約 で
あ る.
3.2.4
表 現 の 同 値 性
二 つ のCCRの 表 現 る と は,ユ ニ タ リ変 換U:H→H'が (j=1,…,N)が
が 同値 で あ 存 在 して,
成 り立 つ 場 合 を い う.互 い に 同 値 で な い 表 現 ど う し は非 同
値 で あ る とい う. CCRの もCCRの
表 現
が 直 和 表 現 で あ り,π の どの成 分 πm
表 現 π'に 同 値 で あ る と き,π
3.3
は π'の 直 和 に 同 値 で あ る と い う.
ヴ ァ イル 型表 現
3.1節 の終 わ りで 予 告 した よ うに,CCRの
表 現 を有 界 作 用 素 の代 数 の表 現 と
して 書 き換 え る こ と を考 え る.
を 自 由度NのCCRの
自
己 共役 表現 と し よ う.求 め る関係 式 を見 い だ す た め に,発 見 法 的 議論 を行 う.交 換 関 係(3.1)を
繰 り返 し使 う と
が 得 ら れ る.そ
こ で,両
い て 和 を と る.こ
辺 をn!で
割 り,(it)n(t∈IRは
任 意)を
か け て,nに
つ
の と き,無 限 和 の 収 束 を 仮 定 す る な ら ば,
が 得 ら れ る.こ
れ は 発 見 法 的 に
を意 味
す る.も
し,こ
れ が 作 用 素 の 等 式 と して 成 立 す る な ら ば,作
任 意 の 実 数s∈IRに が 得 ら れ る.す
用 素 解 析 に よ り*9,
対 し て,
な わ ち,
(3.8) 同様 に して
(3.9) い ま行 っ た発 見 法 的議 論 は,Dに とは 可 能 で あ る.だ が,紙 も と も とのCCRの
適 当 な条 件 を課 す こ とに よ り,厳 密 化 す る こ
数 の 都 合 上,こ
こで は 省 略 す る.
自 己 共 役 表 現 の こ と は忘 れ て,関 係 式(3.8)と(3.9)そ
の もの を一 つ の 代 数 関係 式 と して捉 え 直 し,そ こか ら出発 す る. 定 義 3.15 (3.9)を
ヒ ル ベ ル ト空 間H上
の 自 己 共 役 作 用 素 の 組
満 た す と き,
を 自 由 度NのCCRの
型 表 現 と い う.(3.8),(3.9)を
が(3.8)と ヴ ァ イ ル(Weyl)
ヴ ァ イ ル 関 係 式 と い う.
が 既 約 で あ る と き,ヴ
ァイル型表現 は既
約 で あ る とい う.
注 意 3.5 (3.8)でj=kと
すれ ば
(3.10) し た が っ て,
な ら ばeisQjとeitPjは
注 意 3.6 (3.8)は,j≠kな
ら ば,QjとPkは
強 可 換 で あ る こ と を 意 味 す る.
ま た,(3.9)は,
が 強 可 換 で あ る こ と,お
る こ と を 意 味 す る([14]の
定 理3.13(p.269)の
*9 AをH上 る.こ
可 換 で は な い.
よ び{Pj}Nj=1が
強可換であ
応 用 に よ る).
の 自己 共 役 作 用 素 と し の と き,任
,UをHか ら ヒ ル ベ ル ト空間Kへ の ユ ニ タ リ 作 用 素 とす 意 の ボ レ ル 可 測 関 数IR→Cに 対 して,作 用 素 の 等 式Uf(A)U-1=
f(UAU-1)が 成 り立 つ([14]の 補 題3.27-(ⅱ)ま た は[8]のp.126,式(3.33)).以 こ の 性 質 を 作 用 素 解 析 の ユ ニ タ リ共 変 性 と し て 言 及 す る.
下,
命 題3.11の
十 分 性 の 証 明 に よ っ て,次
命 題3.16
の 事 実 が 得 ら れ る.
ヴ ァ イ ル型 表 現
が 既 約 な らば,
は
既 約 で あ る.
こ の 節 を終 え る にあ た っ て,ヴ
ァ イ ル型 表 現 はCCRの
表 現 で あ る こ と を示
そ う.そ の た め に,あ る一 般 的 な 事 実 を補 題 と して述 べ る. 補 題3.17
Hを
ヒ ル ベ ル ト空 間,S,
TをH上
IR→B(H);t〓F(t)∈B(H)をB(H)-値 ル Ψ ∈D(T)と
Φ ∈Hが
の 自 己 共 役 作 用 素 と す る.F:
の 強 微 分 可 能 な 関 数 と す る.ベ
ク ト
あ って
(3.11) が 成 り立 っ て い る と し よ う.こ
の と き,Φ
∈D(S)で
あ り,eitSΦ
はtに
ついて
強微 分 可 能 で あ り
(3.12) 特 に
(3.13) 証 明 [14]の 補 題3.51の eitSΦ はtに
証 明 と 同 様 に して(A(t)=F(t),B(t)=eitTと
す る),
つ い て 強 微 分 可 能 で あ り,
が 成 り立 つ(Ψ
∈D(T)が
き く).eitSΦ
お よ び(eitSΦ)'=iSeitSΦ=ieitSSΦ し た が っ て,第
のtに
関 す る 強 微 分 可 能 性 は Φ ∈D(S)
を 意 味 す る([14]の
一 の 主 張 が 出 る.(3.13)は(3.12)でt=0と
定 理3.37-(ⅱ),
(ⅲ)).
し た も の で あ る.
■ 命 題3.18 に 固 定 す る.こ
を ヴ ァ イ ル 型 表 現 と し,j,k=1,…,Nを
任意
の と き:
(ⅰ) 任 意 の Ψ ∈D(PkQj)∩D(Pk)に
対 し て,Ψ
∈D(QjPk)で
あ り
(3.14)
が 成 り立 つ. (ⅱ) 任 意 の Ψ ∈D(QkQj)∩D(Qk)に
対 し て,Ψ
∈D(QjQk)で
あ り
(3.15) が 成 り立 つ. (ⅲ) 任 意 の Ψ ∈D(PkPj)∩D(Pk)に
対 し て,Ψ
∈D(PjPk)で
あ り
(3.16) が 成 り立 つ. 証 明 (ⅰ)(3.8)よ か ら,補
り,
題3.17を ∈D(Qj)で
∈D(Pk),Ψ
∈D(Pk)で
し た が っ て,左 Qjの
辺 もtに
あ り, あ る か ら,右
命 題3.18は
つ い て 強 微 分 可 能 で あ る. と
であ り
す れ ば,(3.14)が
(ⅱ),(ⅲ):(ⅰ)の
辺 はtに
つ い て 強 微 分 可 能 で あ る.
閉 性 に よ り,
そ こ で,t=0と
あ る
と して 応 用 す る
こ と に よ りeitPkΨ QjΨ
Ψ ∈D(Qj)で
得 ら れ る.
証 明 と ま っ た く 同 様(も
次 の こ とを語 る:CCRの
■
っ と 簡 単).
ヴ ァ イ ル 型 表 現
に
お い て,
がHで
密 な ら ば,
はCCRの
ヴ ァ イ ル 型 表 現 は 確 か にCCRの
表 現 を 与 え る こ と が わ か る*10.
3.4
自 己 共 役 表 現 で あ る.こ
稠
の 意 味 で,
シ ュ レ ー デ ィ ン ガー 表 現 の ヴ ァ イ ル 型 性
シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 表 現 π(N)S(式(3.7))が
ヴ ァイ ル 型 で あ る こ と を証 明 し
よ う. *10 実 は 照).
,Hが可
分 な ら ば,Dが
実 際 に稠 密 で あ る こ と が 証 明 さ れ る(後
の 定 理3.30を
参
補 題3.19
任 意 のt∈IRとj=1,…,Nに
対 して
(3.17) た だ し,
は 数 ベ ク トル 空 間IRNの
標 準 基 底 で あ る*11.
証 明 フ ー リエ 変 換
のユ ニ タ リ性 と作 用素 解 析 のユ
ニ タ リ 共 変 性 に よ り, し の ψ ∈L2(IRN)に
た が っ て ,任 意
対 して, で あ り,右
補 題3.19は
次 の こ と を 語 る:ユ
標 軸 方 向 へ,-tだ
定 理3.20
辺 は ψ(・+tej)に
け 平 行 移 動(並
等 し い. ■
ニ タ リ作 用 素eitpjは,関 進)さ
数 ψ をj番
目 の座
せ る 働 き を も つ.
任 意 のs, t∈IRとj,k=1,…Nに
対 して
(3.18) (3.19) 証 明 (3.18)は
補 題3.19を
使 え ば 簡 単 に わ か る.(3.19)の ([14]の 補 題3 .26)を
の 第 二 式 は,(3.19)の
第 一 式 は,
使 え ば 容 易 に 示 さ れ る.(3.19)
第 一 式 の フ ー リ エ 変 換 か ら 得 ら れ る(ま
た は 補 題3.19を
用 い る 直 接 計 算).
■
後 の 論 述 へ の 準 備 も兼 ね て,こ
こ で,シ
ュ レー デ ィ ンガ ー 表 現 の基 本 的構 造
の 一 つ を 証 明 し て お こ う.
定 義3.21
ヒ ル ベ ル ト空 間H上
の 線 形 作 用 素 の 族A={Aα}α(α
字 集 合 を 動 く)が 与 え ら れ た と き,Hの あ る と は,K⊂ な わ ち,Ψ
∈Kな
こ の 場 合,KをAの
∩αD(Aα)で ら ば,す
あ り,任
部 分 空 間KがAの 意 のAα
∈AがKを
べ て の α に 対 し てAα Ψ ∈Kが
は 適 当 な添
作 用 の も とで不 変 で 不 変 に す る と き,す 成 り立 つ と き を い う.
不 変 部 分 空 間 と い う. j番 目
*11 ej:
=(0,…,0
,1,0,…0)∈IRN(j成
分 が1で
他 の 成 分 は0の
ベ ク トル).
定 理 3.22 る.こ
Ω(x)>0(a.e.x)と
の と き,L2(IRN)の
な る 関 数 Ω ∈L2(IRN)を
任 意 に一 つ 固 定 す
部分空 間
(3.20) は,L2(IRN)上
の有 界作 用 素 の 部 分 集 合
(3.21) の 不 変 部 分 空 間 で あ り,L2(IRN)で
証 明 DS(Ω)がWSの (3.19)に
稠 密 で あ る.
不 変 部 分 空 間 で あ る こ と は,ヴ
よ り容 易 に わ か る.DS(Ω)の
IR,j,k=1,…,N,に
稠 密 性 を い う に は,す
限 る こ と を 示 せ ば よ い.(*)でtk=0,k=
場 合 を 考 え る と,
s=(s1,…,sN).s∈IRNは て,f*Ω=0で
を 得 る.た 任 意 で あ る か ら,フ
だ し,
ー リエ 変 換 の単 射 性 に よ っ
な け れ ば な ら な い.Ω(x)>0(a.e.x)で
元 と し てf=0と
べ て のsj,tk∈
対 して,
を 満 た すf∈L2(IRN)はf=0に 1,…,Nの
ァ イ ル の 関 係 式(3.18),
あ る か ら,L2(IRN)の
な る.
■
注 意 3.7 上 の 証 明 は,稠 密 性 に 関 して い え ば,実 は,
が 稠 密 で あ る こ とを 示 した こ とに な る.定 理3.22は,Ω WSに
よ って 生 成 され る代 数 の巡 回ベ ク トル(第1章
3.5
が
を参 照)で あ る こ と を示 す.
ヴ ァ イ ル 型 表 現 の 構 造― フ ォ ン ・ノ イ マ ンの一 意 性 定 理
こ の節 で は,可 分 な ヒル ベ ル ト空 間 にお け る,有 限 自 由度 のCCRの
ヴァイ
ル型 表 現 の 構 造 を明 らか に し,同 一 の 自由 度 の 既 約 な ヴ ァ イル 型 表 現 ど う しは す べ てユ ニ タ リ 同値 で あ る こ と,し た が って,本
質 的 に 一つ しか な い こ と を証
明 す る.目 標 とす る定 理 は次 で あ る: 定 理 3.23 (フ ォ ン ・ノ イ マ ンの一 意性 定 理)Hを H上 の 自己 共 役 作 用 素 の 組{Qj,Pj}Nj=1をCCRの
可 分 な ヒルベ ル ト空 間 と し, ヴ ァ イ ル型 表 現 とす る.す
な わ ち,eitQj, eitPj(t∈IR,j=1,…,N)は し た が う と す る.こ
の と き,次
ヴ ァ イ ル 関 係 式(3.8),
の(ⅰ)∼(ⅲ)を
間Hm⊂H(m=1,…,M)(Mは
満 た す,互
(3.9)に
い に 直 交 す る閉 部 分 空
有 限 ま た は 可 算 無 限)が
存 在 す る:
(ⅰ) (ⅱ) (Qj, Pj(j=1,…,N)は (ⅲ) Qj, PjのHmに mに
対 し て,ユ
各Hmに
よ っ て 簡 約 さ れ る.
お け る簡約 部 分 をQ(m)j, P(m)jと
ニ タ リ 作 用 素Um:Hm→L2(IRN)が
し よ う.こ
の と き,各
存 在 し,各j=1,…,N
に 対 して
(3.22) が 成 り立 つ. この 定 理 は,可 分 な ヒ ルベ ル ト空 間 に お け る,CCRの
ヴ ァイ ル 型 表 現 は 同 じ
自由 度 の シュ レー デ ィ ン ガー の 直 和 表 現 に同 値 で あ る こ と を語 る.こ の意 味 で, 可 分 な ヒル ベ ル ト空 間 にお け る,CCRの 定 理3.23を 系3.24
ヴ ァ イル 型 表 現 は一 意 的 で あ る.
認 め れ ば,次 の 事 実 は容 易 に導 か れ る.
前 定 理 に お い て,{Qj,Pj}Nj=1が
既 約 な ら ば,{Qj,Pj}Nj=1は
シ ュ レー
ディ ン ガー 表 現 に 同値 で あ る. 証 明 命 題3.5を
応 用 す れ ば,定
理3.23に
お け るMは1で
な け れ ば な ら な い. ■
こ う し て,同
じ 自 由 度 の 既 約 な ヴ ァ イ ル 型 表 現 は す べ て,シ
表 現 に ユ ニ タ リ 同 値 で あ る こ と,し
た が っ て,そ
ュ レー デ ィ ンガ ー
れ らは 互 い にユ ニ タ リ 同値 で
あ る こ と が わ か る.
注 意3.8
ヴ ァ イ ル 型 で な いCCRの
マ ン の 一 意 性 定 理 と系3.24は た い.物
理 の 文 献 の 中 に は,有
自 己 共 役 表 現 に つ い て は,フ
一 般 に は 成 立 し な い.こ 限 自 由 度 のCCRの
の 点 は特 に強 調 して お き
表現 はすべ てシュ レーデ ィ
ン ガ ー 表 現 に ユ ニ タ リ 同 値 で あ る と 書 い て あ る も の が み ら れ る が,こ で あ る.実
際,シ
ォ ン ・ノ イ
ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 表 現 に 非 同 値 で,物
れ は誤 り
理 的 に も重 要 な例 が存
在 す る こ と を次 の節 で示 す(簡 単 な例 は,す で に,[14]の3章
演 習 問題19に
あ
げ て お い た). 定 理3.23の
証 明 は 簡単 で は な い.ま ず,自 由 度1の
ヴ ァ イル型 表 現 の場 合 を
証 明 す る.
3.5.1
自由 度1の
{Q,P}を
ヴ ァ イル 型 表 現 の 基 本 的性 質
可 分 な ヒ ルベ ル ト空 間H上
の 自己 共 役 作 用 素 の 組 と し,CCRの
ヴ ァ イル 型 表 現 で あ る とす る.し たが っ て
(3.23) とお け ば,こ
れ らは ヴ ァ イ ル の 関係 式
(3.24) を満 た す.こ
の表 現 の 構造 を調 べ る手 が か りの 一 つ はユ ニ タ リ作 用 素 の族
の 作 用 の も とで不 変 な部 分 空 間 の構 造 を調 べ る こ とで あ る.そ の た め には
(3.25) と い う作 用 素 を導 入 す る の が 自然 で あ る(係 数eist/2は 後 の 議 論 をみ こ して 選 ん で あ る).こ の と き,あ る部 分 空 間 がWの
作 用 の も とで 不 変 で あ る こ と とそ
れが作 用素の族
の 作 用 の も とで 不 変 で あ る こ と とは 同 値 で あ る.そ こ で,Wの
作 用 の も とで 不
変 な部 分 空 間 の構 造 を調 べ よ う. こ の た め に,ま ずW(s,t)の 用 素U(s),
基 本 的性 質 を明 らか に して お く必 要 が あ る.作
V(t)の ユ ニ タ リ性 は
(3.26)
を 導 く.す
な わ ち,W(s,t)も
ユ ニ タ リ で あ る.W(s,t)が(s,t)に
続 で あ る こ と も 容 易 に わ か る.さ
関 して 強 連
ら に,U(s)*=U(-s),V(t)*=V(-t)で
る こ と お よ び ヴ ァ イ ル の 関 係 式(3.24)を
あ
使 えば
(3.27) が得 られ る.同 様 に して
(3.28) が 成 立 す る こ とが わ か る. 閉部 分 空 間MがWの に対 して,Wの
作 用 の も とで不 変 で あ れ ば,IR2上
の 任 意 の 関数k(s,t)
元 の 有 限 一 次 結 合
不 変 にす る.Mは
もMを
閉 で あ る か ら,そ の 強 収 束 の 意 味 で の 極 限 も(存 在 す れ ば)M
を不 変 に す る.そ の 種 の 極 限 の 一 つ の 形 と して
とい う
作 用 素 が 考 え られ る(積 分 は 強 収 束 の 意 味 で 存 在 す る とす る).そ あ る ク ラ ス の 関 数k(s,t)に
こで,次
に,
対 して は,実 際,そ の よ うな作 用 素 が 定義 され る こ
と を示 し,そ の 性 質 を調 べ る. IR2上
の 連 続 関 数kでk∈L1(IR2)と
意 の Ψ ∈Hに
対 し て,k(s,t)W(s,t)Ψ
な る も の を 任 意 に 選 ぶ.こ は(s,t)に
の と き,任
関 して強 連 続 で あ り
で あ るか ら,強 収 束 の 意 味 で,有 界作 用 素Kが
に よ って 定 義 され
が 成 り立 つ.作
用 素Kを
積 分 核k(s,t)に
同 伴 す る 作 用 素 と呼 ぼ う.こ の 種 の
作 用 素 に 関 す る基 本 的事 実 は次 の 補 題 に ま とめ られ る. 補 題 3.25 関数kを
上 述 の もの とす る.
(ⅰ) 積 分 核k(-s,-t)*に
特 に,任
意 のs,t∈IRに
同 伴 す る 作 用 素 はK*で
あ る:
対 し て,k(s,t)=k(-s,-t)*な
ら ば,Kは
自己 共 役
で あ る. (ⅱ) k(s,t)〓0な
ら ば,K≠0.
証 明 (ⅰ) こ れ は 次 の 計 算 に よ る:任
(ⅱ) 対 偶 を証 明 す る.そ
意 の Ψ, Φ ∈Hに
こ で.K=0と
し よ う.こ
して,
対 し て,
の と き,任 意 の Ψ ∈Hに
し た が っ て,任 意 のu, υ ∈IRと
対 し て,
(3.28)を
に よ り,任 意 の Φ, Ψ ∈Hに が 導 か れ る.u, υ
∈IRは
の フ ー リエ 変 換 が0で
対
Φ ∈Hに 使 うこ と
対 して, 任 意 で あ っ た か ら,こ れ は,関
あ る こ と を 意 味 す る.し
0,
s,t∈IR.こ
れ は 任 意 の Ψ, Φ ∈Hに
0で
な け れ ば な ら な い.W(s,t)は
数k(s,t)〈
Ψ,W(s,t)Φ〉
た が っ て,k(s,t)〈 Ψ,W(s,t)Φ〉=
対 し て 成 立 す る か ら,k(s,t)W(s,t)=
ユ ニ タ リ で あ る か ら,k(s,t)=0,
∀(s,t)∈
IR2.
■
3.5.2
シ ュ レー デ ィ ン ガ ー表 現 の 場 合
定 理3.22に
お い て,シ
ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 表 現 の 構 造 の 一 つ を 明 ら か に し た.
こ の 定 理 に お け る 関 数 Ω は 正 のL2関 て,調
数 な ら何 で も よ い か ら,簡
単 な もの と し
和振 動 子 の基 底 状 態
(3.29) を選 ん で み よ う(い
ま,N=1の
場 合 を 考 え る).定
理3.22(N=1の
場 合)に
よ って
(3.30) は そ こ で,ベ
の 不 変 部 分 空 間 で あ り,L2(IR)で ク ト ル Ω0を,シ
稠 密 で あ る.
ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 表 現 か ら 定 義 さ れ る 作 用 素Kを
用 い て 特 徴 づ け る こ と を 考 え て み る.具 よ り,Ω0を
固 有 ベ ク トル と す るKを
自 由 度1の
体 的 に は,k(s,t)を
う ま く選 ぶ こ と に
見 い だ す こ と で あ る.
シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 表 現{L2(IR),S(IR),{x,p}}に
お け るW(s,t)
は
(3.31) で 与 え ら れ る.IR2上
の ガ ウス 型 関 数
(3.32) を積分核 とす る作 用素
(3.33) に つ い て 次 の 事 実 が 見 い だ さ れ る: 補 題3.26
σp(AS)\{0}={2π}か
証 明 補 題3.19に
つker(AS-2π)={cΩ0│c∈C}.
よっ て
(3.34) した が っ て, 任 意 のf∈L2(IR)に
対 して
で あ る か ら,
フ ビ ニ の 定 理 に よ っ て,上 式 の 右 辺 に お け る積 分 順 序 は任 意 で よ い .そ こでs に関 す る積 分 を最 初 に行 い,次
を 得 る.し
た が っ て,ASf=λf(λ
わ か る.こ
こ で,c≠0は
にtに 関 す る積 分 をす れ ば
≠0, f≠0)な
複 素 定 数 で あ る.一
満 た す こ と は 直 接 計 算 に よ り容 易 に わ か る.し ら ず,こ
れ を 固 有 値 とす る,ASの
ら ばf=cΩ0と
方,関
な る こ とが
数 Ω0がASΩ0=2π
た が っ て,λ=2π
Ω0を
で な けれ ば な
固 有 ベ ク トル は Ω0の 定 数 倍 に 限 ら れ る. ■
3.5.3
一 般 の ヴ ァ イル 型 表 現 の 場 合
CCRの
ヴ ァ イ ル 型 表 現U(s),V(t)の
て,こ
場 合 に 戻 ろ う.補
題3.26の
類推 によっ
の場 合 に は 自 己 共役 作 用 素
(3.35) の 固 有 値2π に属 す る 固有 ベ ク トル が(存 在 す る とす れ ば)Ω0の 役 割 を演 じる こ とが 期 待 され る.そ こで,ま ず,2π がAの
固 有値 とな って い る こ とを示 そ う.
補 題 3.27
(3.36) と し よ う.こ
の と き:
(ⅰ)
(3.37) (ⅱ) Ψ ∈Mと とW(u,υ)Φ
Φ ∈Mが
直 交 す れ ば,任 意 のs,t,u,υ
∈IRに
対 して,W(s,t)Ψ
も 直 交 す る.
証 明 (ⅰ)補 題3.25に
よ り,A≠0.関
係 式(3.28)を
用 い て,初
等 的 だが 少 し
長 い計 算 を実 行 す れ ば
(3.38) が 成 り 立 つ こ とが わ か る*12.そ
こ で,特
い る とA2=2πAを
得 る.こ
を 意 味 す る.し
た が っ て,R(A)⊂M.他
*12 任 意 の Ψ ,Φ
形 で き る.そ dt,dsに
∈Hに
こ で,積
方,M⊂R(A)は
分 の 変 数 変 換:s'→
α=s+u+s',t'→
用
明 ら か.し
たが っ
β=t+υ+t'を
と変 行 い,
分 の順 序 交 換 が で き る こ と に つ い て は,フ
で き る こ と を 確 認 せ よ).そ
と い う 形 の 積 分 に 帰 着 さ せ,公式 う.
し,W(0,0)=1を 対 し て,A(AΨ)=2π(AΨ)
対 し て,
関 す る 積 分 を 実 行 す れ ば よ い(積
ニ の 定 理 が適用
にu=υ=0と
れ は 任 意 の Ψ ∈Hに
の 際,指
ビ
数 関 数 の積 分 を を使
て,(3.37)の
第 一 の 等 号 が 成 り立 つ.ま
た,A≠0で
あ っ た か ら,R(A)≠{0}
で あ る. (ⅱ) Ψ, Φ ∈Mと
し よ う.(3.28),
Ψ=AΨ/(2π),
Φ=AΦ/(2π)お
よ びAが
自己 共 役 で あ る こ と を使 う と
そ こ で(3.38)を
用 い る と,す
べ て のs,
t, u, υ ∈IR,に
対 して
(3.39) が 得 ら れ る.こ
れ は,Ψ,
Φ ∈Mが
直 交 す れ ば,W(s,t)Ψ,
W(u,υ)Φ
も直 交 す
る こ と を 意 味 す る.
3.5.4 Hは も つ.そ
■
フ ォ ン ・ノ イ マ ン 定 理 の一 意 性 定 理 の 証 明―1自
可 分 で あ る か ら,Mも
可 分 で あ る.し
の 一 つ を{Ψm}Mm=1(Mは
由度の場合
た が っ て,Mは
完全正規直交系 を
有 限 ま た は 可 算 無 限)と
し
(3.40) と お く.こ
の と き,補
題3.27に
よ っ て,m≠nな
ら ばHmとHnは
直 交 す る.
さ ら に 次 の 事 実 が 成 り立 つ.
定 理3.28 U(t),
V(t)は(3.23)で
(ⅰ) す べ て のt∈IRに
(ⅱ) 各mに
対 し て,ユ
与 え ら れ る も の と す る.こ
対 し て,U(t), V(t)は
各Hmを
ニ タ リ 変 換Um:Hm→L2(IR)が
の と き:
不 変 に す る. 存 在 して
(3.41) が 成 り 立 つ.た 表 現 で あ る.
だ し,x, pはL2(IRx)に
お け る 自 由 度1の
シ ュ レー デ ィ ンガ ー
(ⅲ) HはHmの
直 和 に分 解 され る:
(3.42) 証 明 (ⅰ) は ヴ ァ イ ル の 関 係 式 か ら わ か る. (ⅱ) 各mに
対 し て,Dm:=L({W(s,t)Ψm│s,t∈IR})と
で 稠 密 で あ る.Dmの
す れ ば,こ
れ はHm
任意 の元 Ψ は
(3.43) と い う 形 に 表 さ れ る(αjk∈C, sj,tk∈IR, J,K∈IN).こ ベ ク トル WS(s,t)に
を 考 え る.(3.39)はW(s,t)を 置 き換 え て も 成 立 す る か ら(た だ し,MはA=ASの
‖ Ψ‖=‖ Ψ‖ …(*)が
成 り立 つ.そ
を用 い て,Ψ=Φ=Φ'と2通
え に,写
に よ っ て 定 義 で き る.(*)に で あ る.し
た が っ て,拡
こ で,Ψ が(3.43)の
よ っ て,UmはDmか
らDS(Ω0)上
大 定 理 に よ り,Umは,Hmか の 拡 大 もUmと
と ヴ ァ イ ル の 関 係 式 を 使 え ば,(3.41)が
と す る と き,K⊥={0}を
IRに
各Hmを
⊂ker
不 変 に す る.こ
も 不 変 に す る こ と が わ か る.一 A…(*).い
た こ と に よ り,任
意 のu,υ
Φ-Φ'‖.
へ の等長作用素
らL2(IR)へ 書 こ う.こ
のユニ タリ
の とき
成 り立 つ こ と が わ か る.
(ⅲ)
W(u,υ)はK⊥
Φ-Φ'‖=‖
像Um:Dm→L2(IR)を
作 用 素 に 一 意 的 に 拡 大 さ れ る.こ
対 し てW(u,υ)は
場 合 のM),
右 辺 の 型 の ベ ク トル Φ, Φ'
り に 表 さ れ た とす る と,0=‖
し た が っ て,Φ=Φ'.ゆ
ら,K⊥
れ に 対 応 さ せ て,
示 せ ば よ い.任
意 のu,υ
の 事 実 と(3.27)を 方,R(A)=M⊂Kで
ま,Ψ
∈K⊥
と し よ う.こ
∈IRに
対 し て,W(u,-υ)Ψ
あ るか
の と き,す ∈K⊥
∈
用 い る と,
で に注 意 し
で あ る.し
た
が っ て,(*)に
よ っ て,AW(u,-υ)Ψ=0.ゆ
え に,任
意 の Φ ∈Hに
対 し て,
これ は
を 意 味 す る.(3.28)に u,υ ∈IRは
よっ て,
任 意 で あ る か ら,フ ー リ エ 変 換 の 単 射 性 に よ り,
Φ ∈Hは
を 導 く.し
任 意 で あ っ た か ら ,W(s,t)Ψ=0.こ
れ は Ψ=0
た が っ てK⊥={0}.
定 理3.28か
■
ら 定 理3.23(N=1の
場 合)を
導 く に は,次
の 一 般 的 事 実 を利 用
す れ ば よ い. 補 題3.29
Xを
ヒ ル ベ ル ト空 間 と し,NをXの
の 自 己 共 役 作 用 素 と し,す と す る.こ
べ て のt∈IRに
対 し て,eitSはNを
不 変 に して い る
の と き:
(ⅰ) SはNに
(ⅱ) Kを
よ っ て 簡 約 さ れ る.
ヒ ル ベ ル ト空 間 と し,ユ
作 用 素Tが
ニ タ リ 変 換U:N→KとK上
の 自己 共 役
存 在 して
が 成 り立っ て い る と す る.た の と き,作
閉 部 分 空 間 と す る.SをX上
だ し,SNはSのNに
お け る 簡 約 部 分 で あ る.こ
用 素 の等 式
(3.44) が 成 り立 つ. 証 明 (ⅰ) こ れ は 補 題1.14に
よ る.
(ⅱ) 作 用 素 解 析 の ユ ニ タ リ共 変 性 を応 用 す れ ば よい.
■
3.5.5 一 般 の 自由 度 の 場 合 自 由 度Nの をCCRの
場 合 の 定 理3.23の
証 明 につ い て は概 略 だ け を述 べ る.
ヴ ァ イ ル 型 表 現 と す る.任
意 のt=(t1,…,tN)∈IRNに
対 して,
U(t),
V(t)を
(3.45) に よ っ て 定 義 す る.こ
の と き,ヴ
ァイ ル 関係 式 を用 い る こ と に よ り
(3.46) が 導 か れ る.次 にユ ニ タ リ作 用 素
(3.47) を導 入 す る.あ なお,シ
とは 自由 度1の
場 合 と ま っ た く並 行 的 に 考 察 を進 め れ ば よ い.
ュ レー デ ィ ンガ ー 表 現 に関 して は,次 の 置 き換 えが 必 要 で あ る:
詳 細 を埋 め る こ とは読 者 の演 習 とす る(演 習 問題3).
3.5.6
フ ォ ン ・ノ イマ ンの 一 意 性 定 理 か らの 一 つ の帰 結
次 の定 理 は,可 分 な ヒル ベ ル ト空 間 にお け る,有 限 自由 度 のCCRの ル 型 表 現 は 同 じ自 由度 のCCRの 定 理3.30 はCCRの
ヴァイ
表 現 で あ る こ と を示 す.
Hを 可 分 な ヒルベ ル ト空 間,H上
の 自己共 役作 用 素 の組
ヴ ァイ ル型 表 現 で あ る とす る.こ の と き,次 の(ⅰ)∼(ⅲ)が 成 り立 つ
よ う な稠 密 な 部 分 空 間D⊂Hが (ⅰ) 各Qj, PjはDを (ⅱ) (ⅲ) 各Qj, PjはD上
存 在 す る:
不 変 にす る:
はD上
でCCRを
かつ
満 た す.
で 本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る.
証 明 仮 定 に よ り,定 理3.23が はHmで
不 変 に し,C∞0(IRN)上
た が っ て,Q(m)j,P(m)jはDmを
不 変 に し,Dm上
と が わ か る.xj,pjはC∞0(IRN)上
P(m)jはDm上 下,二
と す れ ば,Dm
稠 密 で あ る.各xj,pjはC∞0(IRN)を
を 満 た す.し す.こ
成 り立 つ.
でCCR
でCCRを
満た
で 本 質 的 に自己 共 役 で あ る か ら,Q(m)j,
で 本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る([8]の
補 題5.7(P.165)の
応 用).以
つ の 場 合 に 分 け る.
(1)M<∞
の場 合
こ の 場 合,
と す れ ば,任
意 の Ψ=(Ψ1,…,ΨM)∈Dに
対
して
こ れ か ら,主 (ⅲ)を
張 の(ⅰ),(ⅱ)が
示 す た め に,任
で る.
意 の Ψ ∈Dに
対 し て
とな る
が あ っ た と し よ う.Ψ 外 は0の
も の を と れ ば,
はDm上
に 自 己 共 役 で あ っ た か ら,Φm=0と Φ=0を
意 味 す る.し
で本質的
任 意 で あ っ た か ら,こ 稠 密 で あ る.同
稠 密 で あ る こ と が 示 さ れ る.ゆ
質 的 に 自 己 共 役 で あ る.Pjに
え にQjはD上
れ は
様 に し で本
つ い て も 同 様 で あ る.
可 算無限の場合
こ の 場 合 は,Dと
を と り,同
な る.mは
た が っ て,R((Qj+i)│D)はHで
て,R((Qj-i)│D)もHで
(2)Mが
と し て Ψm以
して
様 の 議 論 を 行 え ば よ い.
定 理3.30に
よ っ て,各
自 由 度 ご と に,ヴ
■
ァ イ ル 型 表 現 の 全 体 は,CCRの
共 役 表 現 の 全 体 の 部 分 集 合 で あ る こ とが わ か る.だ よ う に,CCRの
が,注
意3.8で
自己
述べておい た
自 己 共 役 表 現 の 中 に は ヴ ァ イ ル 型 で な い も の も あ る(図3.1).
図3.1
3.6
CCRの
自 由度 を 固 定 した と きのCCRの
表現
非 同 値 表 現 と ア ハ ラ ノ フ-ボ ー ム 効 果
シ ュ レー デ ィン ガー 表現 また はそ の 直 和 にユ ニ タ リ同値 に な ら ないCCRの
表
現 を単 に非 同 値 表 現 と呼 ぶ こ とにす る.こ の 節 で は,特 異 性 の あ る磁 場 を もつ2 次 元 の量 子 系 にお い て,CCRの
非 同値 表現 が 実 際 に現 れ る こ と を示 す.こ
こで取
り上 げ る例 は,量 子 現 象 との 関連 にお いて は,い わ ゆ る ア ハ ラ ノ フ(Aharonov)ボ ー ム(Bohm)効
果 と関 連 して い て,物 理 的 に も興 味 が あ る もの で あ る.
3.6.1 磁 場 の あ る系 の 物 理 的 運 動 量 の本 質 的 自己 共 役 性 2次 元 平 面
の 中 に(粒 子 的描 像 か ら見 て)
1個 の荷 電 粒 子 が存 在 す る量 子 系 を考 え る.こ の粒 子 の 電 荷 をq∈IR\{0}と 記 す.い
ま,こ の 系 は,平 面IR2と
垂 直 な方 向 に古 典 的 な 磁 場 の作 用 を受 け て
い る もの と し よ う.数 学 的 な 一 般 性 を も たせ る た め に,磁 場 はN個
の孤 立 点
にお い て特 異性 を もっ て も よい と し,こ れ らの 点 を 除 い た 領 域
(3.48)
図3.2
平 面 に垂 直 な磁 場 の あ る 系
で は 連 続 で あ る と仮 定 す る. 古 典 電 磁 気 学 で 学 ぶ よ う に,磁 M→IR2に
場 は ベ ク ト ル ポ テ ン シ ャ ルA:=(A1,A2):
よ っ て 記 述 さ れ る.こ
可 能 で あ る とす る.い
こ で,A1,A2:M→IRはM上
ま の 仮 定 の も と で は,磁
で連続微分
場
(3.49) は超 関数 と考 え る ほ うが 自然 で あ り,こ の 節 で は この観 点 を採 用 す る.実 際,磁 場Bの
基 本 的 な例 と して 念 頭 にお い て い る の は,Bが
に デ ル タ超 関 数 的 に集 中 して い る よ うな場 合,し
点x=an,n=1,…,N
た が って,極
め て特 異 な場 合
で あ る.以 下 にお け る 考 察 の主 た る 対 象 は,ヒ ル ベ ル ト空 間L2(IR2)に
おい て
働 く作 用 素
(3.50) で あ る*13.作
用 素 の 和 の 定 義 に よ っ て,D(Pj)=D(pj)∩D(Aj)で
(P1,P2)を
物 理 的 運 動 量 と 呼 ぶ.こ
す れ ば,古
典 力 学 と の 対 応 か らみ て,考
の 命 名 は,荷
分 はPj/mと
解 釈 さ れ る こ と に よ る.ま
あ る.
電 粒 子 の 質 量 をm>0と
察 下 の 系 に お け る 速 度 作 用 素 の 第j成 ず,P1,
P2が
実 際 に量 子 力 学 的物 理 量
で あ る こ とす な わ ち,そ
れ ら が 本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る こ と を 証 明 し よ う.
補 題3.31
閉 集 合 と し,そ
FをIRdの
と す る(i. e., Fは
閉 零 集 合).こ
のd次
の と き,
元 ル ベ ー グ 測 度│F│は0で はL2(IRd)で
ある
稠 密 で あ る.
*13 p j:=-iDj(j=1,2)は2次 元 系 に お け る 自 由 な 粒 子 の 運 動 量 作 用 素.光 お よ びh=1で あ る よ う な 単 位 系 で 考 え る.
速c=1
証 明 IRd\Fは
開 集 合 で あ る か ら,
([22]の 定 理6.6の
応 用).だ
は
が,│F│=0で
で稠密で ある
あ る か ら,
と 自然 な 仕 方 で 同 一 視 で き る.
系3.32
(ⅰ) L∈INを
■
任 意 の 自 然 数 と し,c1,…,cL∈IRを
の と き,
はL2(IR)で
(ⅱ) C∞0(M)はL2(IR2)で
稠 密 で あ る.
定 点 と す る.こ
稠 密 で あ る.
証 明 (ⅰ) 前 補 題 をd=1,
と し て 応 用 す れ ば よ い.
(ⅱ) 前 補 題 をd=2,
と し て 応 用 す れ ば よ い.
X,Yを
g:Y→Cに
集 合 とす る と き,f:X→C,
■
対 してf×g:X×Y→C
を
に よっ て 定 義 す る.FをX上 す る と き,X×Y上
の 関 数 の 部 分 集 合,GをY上
の 関 数 の 部 分 集 合
の 関 数 の 部分 集 合 と
を
(3.51) に よっ て 定 義 す る.次
補 題3.33
の 一 般 的 事 実 が あ る.
(X,μ), (Y,ν)を 二 つ の 測 度 空 間 と し,
次 元 で 可 分 で あ る とす る.FをL2(X,dμ)で 稠 密 な 部 分 空 間 と す る.こ
証 明 FのL2(X,dμ)に (CONS)
は無 限
稠 密 な 部 分 空 間,GをL2(Y,dν)で
の と き,
は
で 稠 密 で あ る.
お け る 稠 密 性 に よ り,L2(X,dμ)の で ψn∈F(n∈IN)と
な る も の が と れ る.同
元 φnか
ら な る,L2(Y,dν)のCONS{φn}∞n=1が
理4.2に
よ っ て, で あ る か ら,こ
あ る こ と を 意 味 す る.
完全 正規 直 交系
存 在 す る.す
は れ は
のCONSで が
様 にGの
る と,[14]の
定
あ る. で稠密 で ■
便 宜 上,IRの
部分集合
(3.52) を 導 入 す る.補
題3.32と
補 題3.33に
よ っ て,L2(IR2)の
部分空間
(3.53) はL2(IR2)で
稠 密 で あ る.IR2の
部 分 集 合.M1,
M2を
次 の よ う に 定 義 す る.
(3.54) 容 易 に わ か る よ う に, C∞0(Mj)はL2(IR2)で
補 題3.34
し た が っ て,各
稠 密 で あ る.
各j=1,2に
対 して,Djはpjの
証 明 任 意 の
芯 で あ る.
に 対 し て,
を 満 た す φ ∈L2(IR2)が
あ っ た と し よ う*14.
と
フ ビ ニ の 定 理 に よ り,
した が っ て,積
分 に
関 す る シ ュ ヴ ァ ル ツ の 不 等 式 を使 え ば, が わ か る の で, 定 義 さ れ,u∈L2(IR)で はL2(IR)で
が
あ る.(*)と
フ ビニ の 定 理 に よ り,〈u,g〉=0.
稠 密 で あ る か ら(系3.32),u=0.し C∞0(IR)はp1の
が 結 論 さ れ る.こ
れ はL2(IR2)の
はL2(IR2)で 稠 密 で あ る こ とが わ か る.よ
っ て,本
よ り(補 題2.8-(ⅱ)),p1はD1上 p1の
芯 で あ る.p2に
注 意3.9
L2(IR)上
は な い.実
際,
*14 〈・ ,・ 〉はL2(IR2)の
た が っ て, 芯 で あ る か ら,
元 と し て φ=0を
稠 密 で あ る.同
C∞0(Ya)
意 味 す る.し
た が っ て,
様 に,もL2(IR2)で
質 的 自 己共 役 性 に 関 す る一 般 的判 定 法 に
で 本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る.す
つ い て も 同 様. の 作 用 素 と して のp1はC∞0(Xa)上
な わ ち,D1は ■
で は 本 質 的 に 自己 共 役 で に よ って定 義 され る 関数
内 積 を 表 す.
υ ≠0はL2(IRk)の
元 で あ り,そ の 逆 フ ー リエ 変 換υ は
に 入 る こ と が わ か る(フ
ー リエ 変 換 を 用 い て,
を 示 せ).
x0∈Xa,y0∈Yaを
任 意 に固 定 し
(3.55) (3.56) を定 義 す る.こ の と き,φ1はM1に
お い て連 続 か つx1に
つ い て 偏微 分 可 能 で
あり
(3.57) 同様 に φ2はM2に
お い て 連 続 か つx2に
つ い て偏 微 分 可 能 で あ り
(3.58) IR2\Mjの2次
元 ル ベ ー グ 測 度 は0で
と ん ど い た る と こ ろ(a.e.)有 る(た
数eiqφjに
ル ベ ー グ 測 度 に 関 して ほ
限 に定 義 され た実 数 値 可 測 関 数 とみ る こ とが で き
と え ば,
が っ て,関
あ る か ら,φjは
上 で は φj(x1,x2)=0と よ る か け 算 作 用 素 はL2(IR2)上
こ の ユ ニ タ リ作 用 素 をUjと
す れ ば よい).し
た
の ユ ニ タ リ作 用 素 に な る.
記 す:
(3.59) 以 上 の 準 備 の も とで,こ
の項 の基 本 定 理 の ひ とつ を証 明 で きる:
定 理 3.35 各j=1,2に
対 して,PjはUjDj上
で 本 質 的 に 自己 共 役 で あ り,
作用素 の等式
(3.60) が 成 り立 つ.
証 明 D1の
元 η で η=f×gと
い う 形 の も の を 任 意 に と る.こ
x∈IR2.右
偏 微 分 可 能 で あ り,x2に あ る.こ
辺 の 関 数 はx1に
つ い て は 連 続 で あ り,そ
つい て は
の 台 は 有 界 でM1の
の こ と か ら,
内部 に
か つ が わ か る.こ
し た が っ て,U1D1⊂D(P1)で
れ はP1U1η=U1p1η
あ り任 意 の ψ ∈D1に
が 成 り立 つ こ と に な る.補 る か ら,P1はU1D1上
の と き,
題3.34に
を 意 味 す る.
対 し て,
よ っ て,p1はD1上
で 本 質 的 に 自己 共役 であ
で 本 質 的 に 自 己 共 役 で あ り作 用 素 の 等 式
が 成 り立 つ*15.こ
れ は(3.60)でj=1の
場 合 と 同 値 で あ る.同
様 に し て,P2
に 関 す る 主 張 も 証 明 さ れ る.
3.6.2
物 理 的 運 動 量 が 生 成 す る 強 連 続1パ
定 理 3.35に 続1パ
■
よ っ てPjの
自 己 共 役 性 が 確 立 さ れ た の で,そ
ラ メ ー タ ー ユ ニ タ リ群
定 理 3.36
ラ メ ー タ ー ユ ニ タ リ群
す べ て のt∈IRと
れ が 生 成 す る強 連
を 考 え る の は 自然 で あ る.
ψ ∈L2(IR2)に
対 して
(3.61) た だ し,(e1,e2)はIR2の
証 明 (3.60)と
標 準 基 底 で あ る.
作 用 素 解 析 の ユ ニ タ リ 共 変 性 に よ り,す べ て のt∈IRに し た が っ て,Ujの
L2(IR2)と
よ っ て,任
意 の ψ ∈
に 対 し て,
と な る.右
注 意 3.10
辺 の 指 数 関 数 の 部 分 を 計 算 す れ ば(3.61)が
定 理3.35と
更 な し に,IRd上
(3.61)の
定 義 と補 題3.19に
対 して,
定 理3.36は,そ
得 ら れ る.
の 証 明 か ら わ か る よ う に,本
質 的 な変
の 理 論 に 拡 張 さ れ る(d〓2).
幾 何 学 的 意 味 に つ い て 簡 単 に 触 れ て お こ う.qAj=0の で あ る.す
*15 [8]の 補 題5
■
.7の
応 用.
で に み た よ う に,eitp1,eitp2は
場 合 は, 関数 ψ ∈
L2(IR2)を
そ れ ぞ れ,x1軸
qAj≠0の
方 向,x2軸
場 合 に は,(3.61)の
方 向 に-tだ
け 平 行 移 動 す る 働 き を も つ.
右 辺 は,こ
の 平 行 移 動 が 指 数 因 子
の"歪 み"を 受 け な が ら行 わ れ る こ と を意 味 す る.す
な わ ち,
eitPjは 磁 場 が 存 在 す る 状 況 の も と に お け る,関 数 の"自 然 な"並 進 を 定 義 す る も の と解 釈 さ れ る.そ
こ で,eitPjをj方
向 へ の 磁 気 的 並 進(magnetic
translation)
と 呼 ぶ.
3.6.3
ヴ ァ イル 型 の 交 換 関係
ベ ク トル ポ テ ン シ ャ ルAの
ジ ョ ル ダ ン 閉 曲 線C⊂Mに
沿 う線 積 分
(3.62) を 閉 曲 線Cの
内 部 を 貫 く磁 束 と 呼 ぶ.
x1, x2, s, t∈IRに
対 し て,点(x1,x2)を
始 点 と し, とい うふ うに一 巡 す る矩 形 閉 曲線 を
C(x1,x2;s,t)と
記 す(図3.3).
図3.3
各s, t∈IRに
対 し て,IRの
曲 線C(x1,x2;s,t)(s,t>0の
場 合)
部 分 集 合S(s)1, S(t)2とIR2の
部 分 集 合Ms,tを
次
の よ う に定 義 す る:
Ms
,t上 の 関 数 ΦAs,tを
(3.63)
に よ っ て 定 義 す る*16.こ く磁 束 を 表 す.集
理 的 に は,閉
合IR2\Ms,tの2次
ΦAs,t(x1,x2)は,IR2上 はL2(IR2)上
れ は,物
のa.e.有
曲 線C(x1,x2;s,t)の
元 ル ベ ー グ 測 度 は0で
内 部 を貫
あ る か ら,関
限 な 実 数 値 関 数 と み な せ る.し
数
た が っ て,ΦAs,t
の 自 己 共 役 な か け 算 作 用 素 を 一 意 的 に 定 義 す る.こ
の か け算 作 用
素 も 同 一 の 記 号 で 書 く こ と に す る. 考 察 下 の 量 子 的 粒 子 の 位 置 作 用 素 を そ れ ぞ れ,x1,x2で そ れ ぞ れ,座
標 変 数x1,x2に
定 理3.37
す べ て のs,t∈IRとj,k=1,2に
表 す(i.e.,x1,x2は
よ る か け 算 作 用 素).
対 して
(3.64) (3.65) 証 明 任 意 の ψ ∈C∞0(M)に と 定 理3.35に ゆ え に,作
よ っ て,作
対 し て,eisxjPke-isxjψ=(Pk-sδjk)ψ.こ
用 素 の 等 式eisxjPke-isxj=Pk-sδjkが
用 素 解 析 の ユ ニ タ リ 共 変 性 に よ り,(3.64)が
定 理3.36に
よ っ て,任
(eitP2eisP1ψ)(x)に
れ
意 の ψ ∈L2(IR2)に
つ い て も 同 様.こ
し た が う.
得 ら れ る.
対 して
れ を 用 い る と(3.65)が
成 立 す る こ とが 示
さ れ る.
3.6.4
■
CCRの
こ の 項 で は,あ
表 現 る ク ラ ス の ベ ク トル ポ テ ン シ ャ ルAに
物 理 的 運 動 量 の 組{xj,Pj}2j=1は
定 義3.38 *16 (x
M上
1,x2)∈Ms,tな 注 意.
でB=0の
自 由 度2のCCRの
と き,Aは
平 坦(flat)で
ら ば,C(x1,x2;s,t)は,点an,n=1,…,N,を
対 して,位
置作 用 素 と
表 現 に な る こ と を 示 す.
あ る と い う.
通 ら な い こ と に
注 意3.11
Mは
単 連 結 で は ない の で,A=(A1,A2)がM上
トル ポ テ ン シ ャ ル で あ っ て も,あ る実 数 値 関 数 φ ∈C1(M)が ∂1φ,A2=∂2φ
の平坦 なベ ク あ っ て,A1=
と表 され る とは限 らな い(以 下 に出 て くる例 を参 照).こ れ は 重
要 な点 で あ る.実 際,以 下 に提 示 され る理 論 の非 自明 性 に と っ て,Mの
非単連
結 性 は本 質 的 で あ る. 容 易 にわ か る よ う に,任 意 の ψ ∈C20(M)(M上 で,そ
の台 が 有 界 でMの
の2回 連 続 微 分 可 能 な 関 数
中 に含 ま れ る もの の 全 体)に 対 し て
(3.66) (3.67) が 成 り立 つ.し
補 題3.39
た が っ て,次
{L2(IR2),C20(M),{xj,Pj}2j=1}が
た め の 必 要 十 分 条 件 はAが Aが
の 補 題 を 得 る.
自 由 度2のCCRの
表 現で ある
平 坦 で あ る こ とで あ る.
平 坦 で あ る こ とは,超 関 数 と して の磁 場Bの
して い る こ と を意 味 す る.こ の 場 合,超
台 が{a1,…,aN}に
集中
関 数 の 一 般 論 に よ れ ば,そ の よ う な磁
場Bは
と い う 形 を も つ.こ 関 数 で あ り,kは 数 で あ る*17.こ
こ で,δ(x-an)は
質 量 を もつ2次
元 の デ ル タ超
非 負 の 整 数,λ(n)αβ(α,β=0,1,…,k,n=1,…,N)は れ を 磁 場 と し て 与 え る ベ ク トル ポ テ ン シ ャ ル と し て(ゲ
換 の 任 意 性 を 除 い て)次
*17 た と え ば
点anに
,[37]の4章
の も の が あ る:
§1,例
題5を
参 照.
実定 ー ジ変
こ れ は,公
式
を用 い れ ば,容 易 に確 か め られ る.こ の 種 のベ ク トル ポ テ ンシ ャル で 最 も簡 単 な 形 の もの は 次 で 与 え られ る:A(x)=(A1(x),A2(x)),
た だ し,λn(n=1,…,N)は
任 意 の 実 数 で あ る.こ
の 場 合 の 磁 場 をBと
す
れば
で あ る. こ う し て,{a1,…,aN}に て,CCRの(非
自 明 な)表
集 中 し た,特異
な 磁 場 を も つ2次
現 が 実 現 し て い る こ と が わ か る.そ
元 量 子 系 にお い こ で 次 の 問 題 は,
こ の 表 現 が シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 表 現 と 同 値 な もの で あ る か 否 か を 決 定 す る こ と で あ る. 例3.2
平 坦 な ベ ク トル ポ テ ンシ ャ ル の 一 般 的 な 例 は,次 の よ う に して,C上
数 を使 っ て 構 成 で きる.anに Mに
対 応 す るCの
対 応 す る,複 素 平 面 の 点 をanで
開 集 合 をMCで
表 す.fをa1,…,aNに
の有 理 型 関
表 す:an:=an1+ian2. 孤 立 特異 点 を も つ 有 理
型 関数 と し
と お く.こ
の と き,A:=(A1,A2)と
に よ り,AはM上
す れ ば,fに
で 平 坦 で あ る こ とが わ か る.ゆ
対 す る コ ー シ ー-リ ー マ ン方 程 式 え に,MC上
の任 意 の有理型 関数
に対 して,平 坦 な ベ ク トル ポ テ ン シ ャ ル が 同伴 して い る こ とが わ か る.そ
の よ う な有
理 型 関 数 は 無 数 に 存 在 す る か ら,平 坦 な ベ ク トル ポ テ ン シ ャ ル は 無 数 に存 在 す る こ と に な る.こ
の 構 成 法 は,孤 立 特異 点 の 数 が 可 算 無 限 個 の場 合 に も適 用 で き る の で,よ
り一 般 的 で あ る.
具 体 例 と して,f=A2+iA1と
3.6.5
すれ ば
表 現 の 同値 性 と非 同 値 性
こ の 項 で は,Aは
平 坦 で あ る と仮 定 す る.す
る と補 題3.39に
よ り,
(3.68) は 自 由 度2のCCRの
表 現 で あ る.表
表 現π(2)Sと 同 値 で あ る た め の(し
現 πAが
た が っ て,ま
自 由 度2の
シ ュ レー デ ィ ン ガ ー
た 非 同 値 で あ る た め の)必
要十
分 条 件 を 求 め よ う.
補 題3.40
πAは 既 約 で あ る.
証 明 T∈B(L2(IR2))がTxj⊂xjT,TPj⊂PjT(j=1,2)を と し よ う.こ
の と き,第
てT=MFと
満 た して い る
一 の 条 件 と補 題3.13か
ら,あ
るF∈L∞(IR2)が
表 さ れ る.F=F1+iF2(F1:=ReF,F2:=ImF)と
す れ ば,
第 二 の 条 件 か ら,MFkPj⊂PjMFk(j,k=1,2).MFkは こ れ は,任
意 のt∈IRに
係 と 定 理3.36を て,任 はFkが
自 己 共 役 で あ る か ら,
対 し て,eitPjMFke-itPj=MFkを
意 味 す る.こ
用 い る とFk(x)=Fk(x+tej)(a.e.x)が
意 の(t,s)∈IR2に
わ か る.し
対 してFk(x)=Fk(x+(t,s))(a.e.x)と
定 数 で あ る こ と を 意 味 す る.し
あっ
た が っ て,Fは
たが っ
な る.こ 定 数 で あ る の でTは
数 作 用 素 で あ る.
定 理3.37と す べ て のt,sに
の関
れ 定 ■
フ ォ ン ・ノ イ マ ン の 一 意 性 定 理 に 注 目 す る と次 の 定 義 に 導 か れ る. 対 し て,ΦAs,tが
(整数全体) の 中 に 値 を と る 関 数,す
な わ ち,Ms,t上
の2π〓/q-値
局 所 的 に 量 子 化 さ れ て い る と い う こ と に す る.こ
関 数 で あ る と き,磁
れ は,閉
曲 線C(x1,x2;s,t)を
束 は
貫 く磁 束 が 局 所 的 に定 数 で あ っ て,そ の 定 数 値 が2π/qの
整 数 倍 で あ る とい う
こ とで あ る. 定 理3.41
CCRの
表 現 πAが
自 由 度2の
シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 表 現π(2)Sに
同
値 で あ る ため の必 要 十 分 条 件 は,磁 束 が 局 所 的 に量 子 化 され て い る こ とで あ る. 証 明 (必 要 性)CCRの
表 現 πAがπ(2)Sに 同値 な らば,eisxj,eitPkは
の 関 係 式 を 満 た す.す
る と 定 理3.37に
で な け れ ば な ら な い.こ (十 分 性)磁
3.24に
よ っ て,e-iqΦAs,t=I,∀t,s∈IR…(*)
れ は磁 束 の 局所 的 量 子 化 を意 味 す る .
束 が 局 所 的 に 量 子 化 さ れ て い れ ば,(*)が
に よ り,eisxj,eitPkは
ヴ ァイ ル
成 り立 つ の で,定
ヴ ァ イ ル の 関 係 式 を満 た す こ とが わ か る.し
よ り,πAはπ(2)Sと
理3.37
た が っ て,系
同 値 な 表 現 で あ る.
■
次 に 磁 束 の 局 所 的 量 子 化 の 条 件 を も っ と み や す い も の に す る こ と を 考 え る. δ0:=min{│an-am││n≠m,n,m=1,…,N}と 中 心 がan,半
径 ε>0の
し,0<
ε< δ0に 対 して ,
円 周Cε(an)={x∈IR2:│x-an│=ε}(向
時 計 回 り)に 沿 っ て の,Aの
線 積 分 をγnと
きは 反
す る:
(3.69) D(x1,x2;s,t)を
閉 曲 線C(x1,x2;s,t)の
用 す る こ と に よ り,次
補 題3.42
内 部 領 域 と す る.グ
リー ンの 定 理 を応
の 事 実 を 証 明 で き る.
各γn(A)は
ε に よ ら な い 定 数 で あ り,す べ て のs,t∈IRとx∈Ms
,t
に対 して
(3.70) が 成 り立 つ.た D(x;s,t)に
だ し,sgn(t)は
符 号 関 数 で あ る*18.Σan∈D(x
含 ま れ る よ う な す べ て のnに
な い 場 合 に は,上
式 の 右 辺 は0で
つ い て の 和 を 表 す(そ
あ る と す る).
こ の 補 題 か ら た だ ち に 次 の 結 果 が 得 ら れ る. *18 t〓0な
ら ば sgn(t)=1,t<0な
ら ば,sgn(t)=-1.
;s,t)は,anが の よ う なnが
命 題3.43 1,…,Nに
磁 束 が 局 所 的 に 量 子 化 さ れ る た め の 必 要 十 分 条 件 は,す 対 し て,γn(A)∈2π〓/qと
定 理3.41と
定 理3.44
命 題3.43を
CCRの
べ て のn=
な る こ と で あ る.
合 わ せ れ ば,次
の 定 理 に 到 達 す る:
表 現 πAが 自由度2の シュ レーデ ィ ンガー表 現π(2)Sと同値 で
あ る た め の 必 要 十 分 条 件 は,す べ て のn=1,…,N,に
対 して,γn(A)∈2π〓/q
と な る こ と で あ る. こ の 定 理 は 次 の よ う に 読 み 換 え る こ と が で き る: 定 理3.45
CCRの
表 現 πAが
自 由 度2の
シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 表 現π(2)Sと 非
同 値 で あ る た め の 必 要 十 分 条 件 は,γn(A)〓2π〓/qと
な るnが
存在 する こと
で あ る. 注 意 3.12
CCRの
表 現 πAが
シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 表 現 に非 同 値 で あ る状 況 に
は 次 の 興 味 深 い 事 実 が 対 応 し て い る:C20(M)上 eisP1とeitP2が とP2が
で は,P1とP2は
可 換 に は な ら な いs,t∈IRが
存 在 す る.こ
強 可 換 で な い と い う こ と に ほ か な ら な い.こ
ネ ル ソ ン 現 象"と
呼 ば れ る([25],[30]の
作 用 素 に 対 し て は,形
式 的 な 計 算(た
§Ⅷ.5を と え ば,形
可 換 で あ る が, れ は,す
な わ ち,P1
の よ う な 数 理 的 現 象 は," 参 照).こ
の 現 象 は,非
有界
式 的冪 級 数 展 開 に よ る計 算)が
い か に 危 う い も の で あ り う る か を警 告 す る. 例 3.3 例3.2の
直 前 に 取 り上 げ た ベ ク トル ポ テ ン シ ャ ルAに
対 して は,直
接 計算
により
と計 算 さ れ る.し
た が っ て,λn〓2π〓/qと
な るnが
一 つ で も あ れ ば,πAは
シュ
レー デ ィ ン ガ ー 表 現 に 同 値 で な い. fをMC上 の 有 理 型 関 数 と し,Af:=(Imf,Ref)と トル ポ テ ン シ ャ ル で あ る こ と は す で に み た(例3.2).M内 線Cに
対 し て,
す れ ば,こ れ が 平 坦 な ベ ク の任 意 の ジ ョル ダン閉 曲
が 成 り立 つ こ と に注 意 し,留 数 定 理
を応用 す れ ば
が 得 られ る.た
だ し,Res(an,f)は
2π〓/qと な る よ う な,平
点anに
お け るfの
留 数 で あ る.こ
う して,γn(A)〓
坦 なベ ク トル ポ テ ン シ ャ ル は 無 数 に存 在 す る こ と が わ か る.
図3.4
3.6.6
AB効
果の模式 図
ア ハ ラ ノ フ-ボ ー ム効 果 との 照 応
ア ハ ラ ノ フ-ボ ー ム効 果―AB効 の流 れ が,磁
果 と略 す― は,図3.4に
示 す よ うに,電 子 線
場 の 存 在 す る領 域 の 外 側 の空 間 を通 る と き,そ れ が 空 間 的 に は磁
場 と相 互 作 用 を しな い に も関 わ らず,磁 場 を変 動 させ る と これ に応 じて 電子 線 の 回折 ・干 渉 パ タ ー ンが 変 化 す る 現 象 を指 す.古 現 象 は,1959年,ア 予 言 され た[1].他
典 物 理 学 的 に は不 可 解 な この
ハ ラ ノフ とボ ー ム に よ っ て,量 子 力 学 を用 い て,理 論 的 に 方,AB効
果 の 決 定 的 な実 験 的 検 証 が な さ れ た の は比 較 的最
近 の こ とで あ っ た*19. 量 子 力 学 に お い て は,物
質 と電 磁 場 の 相 互 作 用 を第 一 義 的 に決 め る の は,電
磁 場 そ の もの で は な く,そ れ を生 み 出 す 電 磁 ポ テ ン シ ャ ル で あ る.電 磁 ポ テ ン シ ャ ル は―3.6.4項 の 例 が 示 す よ うに― 磁 場 が 局 在 して い て も,磁 場 の 局 在 領 域 を超 え て 存 在 し うる の で,磁 場 を"通 過 し な い"電 子 と も相 互 作 用 を行 う こ とが 可 能 で あ る.こ れ がAB効
果 に対 す る定 性 的 描 像 で あ る.こ の 項 で は,磁
場 の 存 在 領 域 が 点 とみ なせ る よ う な理 想 的 な状 況 に お い て,πAが ン ガー 表 現 と非 同値 に な る場 合 とAB効
シュ レー デ ィ
果 の 生 起 が 見 事 に 照 応 して い る こ とを
見 る. ベ ク トル ポ テ ン シ ャルAが して い る の で,Mの
平 坦 で あ る と き,磁 場Bは
集中
中 を運 動 す る荷 電 粒 子 は,磁 場 とは直 接 相 互 作 用 を しない.
*19 [27]の6 ,7章,[35,36]を
点a1,…,aNに
参 照.
と こ ろ で,す
で に み た よ う に,CCRの
同 値 に な る の は,磁 き に 限 ら れ る.磁 る 点anが
表 現 πAが
シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 表 現 と非
束 が 局 所 的 に 量 子 化 さ れ て い な い 場 合 で あ り,し か も こ の と
束 が 局 所 的 に 量 子 化 さ れ て い な い と き,γn(A)〓2π〓/qと
少 な く と も一 つ あ る.い
と な る よ う にC(x1,x2;s,t)を
な
ま,{a1,…,aN}∩D(x1,x2;s,t)={an}
とれ ば
(3.71) が 成 り立 つ*20.し 可 換 で は な い.定
た が っ て,そ 理3.36の
の よ う なs,tに
対 し て は,e-isP1とe-itP2は
あ と に 述 べ た 幾 何 学 的 解 釈 に よ れ ば,こ
よ う に 解 釈 さ れ る.(x1,x2)か
ら(x1+s,x2+t)へ
到 る 二 つ 半 矩 形 曲 線C_:
(x1,x2)→(x1+s,x2)→(x1+s,x2+t)(図3.3の
斜 め 右 下 の 部 分)と
C+:(x1,x2)→(x1,x2+t)→(x1+s,x2+t)(図3.3の 逆 に た ど る 曲 線)を
考 え る.(3.71)の
進 を 表 し,(3.71)の を 表 す.そ
ず れ る こ と を示 す.こ (x1+s,x2+t)に
斜 め左 上 の部 分 を 左 辺 は,C+に
右 辺 の 因 子e-itP2e-isP1ψ
し て,(3.71)は
AB効
れ は 物 理 的 に は,(x1,x2)か
う し て,CCRの
注 意3.13
表 現 πAが
ら 出 発 し て,C_を
ミ ル トニ ア ン の 形)に
整 数 倍,し
れ は ま さ にAB効
化 と は 若 干 の 違 い が あ る.し
っ て,AB効
果であ ると
の 解 釈 で は,
の 場 合,磁
,s,tを−s,−tと
さ に,こ
束が量子化
束 の と り う る 値 は,h/2e(e
単 位 系 で は,π/eの
の 量 子 化 は,こ か し,ま
の
は 依 存 しな い こ と を 強 調 し て お こ う*21.
こ で 定 義 し た,磁
整 数倍 であ
束 の 局所 的量 子
の 違 い こ そ 重 要 で あ る.な
ぜ な
し た.
果 は 非 相 対 論 的 な 領 域 だ け で な く,相
る こ と が 予 想 さ れ る.
着
シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 表 現 と非 同 値 で
た が っ て,h=1の
れ か ら わ か る よ う に,こ
*20 次 に 述 べ る 解 釈 の 都 合 上
通 って
通 っ て(x1+s,x2+t)に
磁 場 が 超 伝 導 体 の 中 に 閉 じ こ め ら れ て い る 場 合 に は,磁
は 基 本 電 荷)の
*21 した が
の磁 気 的 並 進
粋 に 幾 何 学 的 で トポ ロ ジ カ ル な も の で あ っ て,系
さ れ る こ と は よ く知 ら れ て い る[36].こ
る.こ
沿 う,ψ
果 の 生 起 が 見 事 に 対 応 して い る こ と が わ か る.こ
果 の 生 起 自 体 は,純
力 学 の 詳 細(ハ
態 ψ の磁 気 的並
こ れ らの 磁 気 的 並 進 の 結 果 が 一 致 せ ず 位 相 因 子 だ け
く そ れ が 一 致 しな い で ず れ る こ と を 意 味 す る.こ
あ る 場 合 とAB効
沿 う,状
はC_に
着 く荷 電 粒 子 の 波 の 位 相 とC+を
解 釈 さ れ る.こ
の式 は次 の
対論 的 な領 域 に お い て も起 こ
ら,考 察 下 に あ る荷 電粒 子 が電 子 の場 合,q=-eで
あ るの で,anを
通 る磁 束
が π/eの 奇 数 倍 な らば,磁 束 は局 所 的 に は 量子 化 され て い ない か らで あ る.し た が って,こ
の場 合 に はAB効
め られ た 磁 場 を用 い てAB効 場 合 に はAB効
果 が 起 こ る.こ
う して,超 伝 導 体 の 中 に閉 じこ
果 の 実 験 を行 う場 合,磁
果 は 生 じな い)か 奇 数倍 に応 じて,AB効
渉 縞 の パ タ ー ンの 変 化 に は2通
束 が π/eの 偶 数 倍(こ の 果 を検 出 す る た めの 干
り しか な い こ とが 結 論 され る.こ
れは まさ しく
実 験 事 実 と一 致 す る[36].
3.7
CCRの
弱 ヴ ァイ ル型 表現
表現 の ク ラス で,本 来 のCCRの
表 現 よ りも条件 的 に強 い が ヴ ァ イル
型 表 現 よ りは条 件 的 に弱 い もの を定 義 す る.簡 単 の た め,自
由 度 が1の
場合 だ
け を考 え る.
3.7.1 定 義 と基 本 的性 質 定 義 3.46 Hを ヒル ベ ル ト空 間,QをH上 役 作 用 素 とす る.す べ て の 実数t∈IRに わ ち,任 意 の Ψ ∈D(Q)に
対 して,eitPΨ
の対 称 作 用 素,PをH上
の 自己 共
対 して,eitPQ⊂(Q+t)eitP,す ∈D(Q+t)=D(Q)か
な
つ (3.72)
が 成 り立 つ と き,{H,(Q,P)}をCCRの 命 題3.47 CCRの
{H,(Q,P)}がCCRの
弱 ヴ ァ イ ル 型 表 現 とい う*22. 弱 ヴ ァ イル 型 表 現 な らば,{H,(Q,P)}も
弱 ヴ ァ イ ル 型 表 現 で あ る.
証 明 Ψ ∈D(Q)と
し よ う.こ の と き,ベ ク トル 列 Ψn∈D(Q)で
と な る も の が 存 在 す る.任
意 のt∈IRに
こ れ か ら,(Q+t)eitPΨn→eitPQΨ(n→∞).ま *22 こ の命 名 は 念 はQが
対 して,eitPQΨn=(Q+t)eitPΨn. た,eitPΨn→eitPΨ(n→
,標 準 的 な もの で は な く,筆 者 の 発案 に よ る もの であ る[12].な 対称 作 用 素 で ない 場 合 に も定 義 され る.
お,こ の概
∞).し
た が っ て,eitPΨ
∈D(Q+t)=D(Q)か
ゆ え に,{H,(Q,P)}はCCRの
つ(Q+t)eitPΨ=eitPQΨ.
弱 ヴ ァ イ ル 型 表 現 で あ る.
■
次 の 命 題 は 基 本 的 で あ る. 命 題3.48
{H,(Q,P)}をCCRの
のt∈IRに
弱 ヴ ァ イ ル 型 表 現 とす る.こ
対 し て,eitPD(Q)=D(Q)で
あ り,作
の と き,任
意
用素の等式
(3.73) が 成 り 立 つ. 証 明 CCRの
弱 ヴ ァ イ ル 型 表 現 の 定 義 か ら,任 意 のt∈IRに
D(Q)…(*).し
た が っ て,D(Q)⊂e-itQD(Q).(*)に
に 含 ま れ る.し (3.72)は
系3.49
よ っ て,右
た が っ て,D(Q)=e-itPD(Q)で
作 用 素 の 等 式(3.73)を
{H,(Q,P)}をCCRの
役 な ら ば,{H,(Q,P)}は
対 して,eitPD(Q)⊂
あ る.こ
辺 はD(Q)
れ が 確 立 さ れ れ ば,
意 味 す る.
■
弱 ヴ ァ イ ル 型 表 現 とす る.も ヴ ァ イ ル 型 表 現 で あ る.す
な わ ち,ヴ
し,Qが
自己 共
ァイル の 関 係 式
(3.74) を 満 た す. 証 明 (3.73)は
作 用 素 の 等 式Q=eitP(Q-t)e-itP(t∈IR)を
が 自 己 共 役 な ら ば,作
用 素 解 析 の ユ ニ タ リ 共 変 性 に よ り,任
て,eisQ=eitPeis(Q-t)e-itP=e-isteitPeisQe-itPが (3.74)を
意 味 す る.Q 意 のs∈IRに
成 り立 つ.し
対 し
た が っ て,
得 る.
■
こ の 系 と命 題3.47に
よ っ て,弱
ヴ ァ イ ル 型 表 現 が 独 自 の 意 味 を もつ の は,Q
が 本 質 的 に 自 己 共 役 で な い 場 合 に 限 る こ と が わ か る.
3.7.2
CCRの
CCRの
弱 ヴ ァ イ ル 型 表 現 が 実 際 にCCRの
よ っ て 示 さ れ る.
他 の型 の表 現 との 関 連 表 現 を与 え る こ とは次 の 命 題 に
命 題3.50
{H,(Q,P)}をCCRの
D(P)⊂D(QP)か
弱 ヴ ァ イ ル 型 表 現 とす る.こ
の と き,D(PQ)∩
つ
(3.75) が 成 り立 つ.特
に,Q,PはD(QP)∩D(PQ)上
証 明 Ψ ∈D(PQ)∩D(P)と
し よ う.こ
teitPΨ=QeitPΨ=QeitPΨ.QΨ
D(Q)か
の と き,(3.72)に
∈D(P),Ψ
に つ い て 強 微 分 可 能 で あ り,そ
と計 算 さ れ る.し
でCCRを
た が っ て,右
∈D(P)で
満 た す.
よ っ て,eitPQΨあ る か ら,左
辺 は,t
の強 微 分 は
辺 も微 分 可 能 で あ り,Qは
つ そ の 強 微 分 はQieitPPΨ
で 与 え ら れ る.ゆ
閉 で あ る か ら,PΨ
え に,Ψ
∈D(QP)で
∈ あ り
(3.76) が 成 り立 つ こ と に な る.そ
こ で,t=0と
命 題3.50か
弱 ヴ ァ イ ル 型 表 現{H,(Q,P)}に
D(PQ)が
ら,CCRの
す れ ば,(3.75)が
稠 密 な ら ば{H,D(QP)∩D(PQ),(Q,P)}は
称 表 現 で あ る こ と が わ か る.こ い".
次 にCCRの
弱 ヴ ァ イ ル 型 表 現 は,そ
ル 型 表 現 よ り も"弱
命 題3.51 H上
い"こ
ヴ ァ イ ル 型 表 現 と す る.す
よ び{H,(P,-Q)}はCCRの
よ り,任
対
弱 ヴ ァ イ ル 型 表 現 はCCRの
の 名 が 示 唆 す る よ う に,CCRの
の 自 己 共 役 作 用 素 で ヴ ァ イ ル の 関 係 式(3.74)を
証 明 (3.74)に
お い て,D(QP)∩
ヴァイ
と を 示 そ う.
{H,(Q,P)}をCCRの
き,{H,(Q,P)}お
■
自 由 度1のCCRの
の 意 味 で,CCRの
表 現 よ り も"強
得 ら れ る.
意 の Ψ,Φ ∈Hに
な わ ち,Q,Pは
満 た す も の とす る.こ
の と
弱 ヴ ァ イ ル 型 表 現 で あ る.
対 して
特 に,Ψ,Φ
∈D(Q)と
が 成 り立 つ.そ D(Q)は
す れ ば,両
こ でs=0と
辺 と も にsに
す れ ば,〈QΦ,eitPΨ
任 意 で あ っ た か ら,こ れ はeitPΨ
を 意 味 す る.こ
つ い て微 分 可 能 で あ り
れ は(3.72)と
〉=〈 Φ,eitP(Q-t)Ψ
∈D(Q)か
同 値 で あ る.し
〉.Φ ∈
つQeitPΨ=eitP(Q-t)Ψ
た が っ て,{H,(Q,P)}はCCR
の 弱 ヴ ァ イ ル 型 表 現 で あ る. (3.74)は,eisPeit(-Q)=e-isteit(-Q)eisP, に 注 意 し,上
の 議 論 で,Q→P,
{H,(P,-Q)}もCCRの
P→-Qと
同値 であ る こと
役 割 を 変 え た も の を 考 え れ ば,
弱 ヴ ァ イ ル 型 表 現 で あ る こ と が 結 論 さ れ る.
こ う し て,CCRの
表 現 に つ い て,次
● ヴ ァイ ル型 表 現
⇒
● 弱 ヴ ァ イル 型 表 現+稠 だ が,こ
s,t∈IRと
■
の 論 理 的 関 係 が 成 り立 つ.
弱 ヴ ァ イル 型 表 現 密 性 条件
⇒ 対称 表現
れ ら の 関 係 の 逆 は 一 般 に は 成 立 し な い.
例3.4L>0と
し,ヒ ル ベ ル ト空 間HL:=L2([-L/2,L/2])に
お け る作 用 素xL, pL, 0
を次 の よ う に定 義 す る:
こ の と き,xLは
有 界 な 自 己 共 役 作 用 素 で あ り,pL
pL, 0の 閉 包 をpLと
記 す.{HL,(pL,0,-xL)}がCCRの
,0は 非 有 界 な 対 称 作 用 素 で あ る. 弱 ヴ ァ イ ル型 表 現 で あ る こ
とは 直 接 計 算 よ り容 易 に証 明 さ れ る.し
た が っ て,命 題3.47に
もCCRの
が,pLは
弱 ヴ ァ イ ル 型 表 現 で あ る.だ
項 を参 照),そ
3.7.3
れ は ヴ ァ イ ル 型 表 現 で は な い.
ス ペ ク トル 特 性 と 作 用 素 論 的 性 質
次 の 定 理 は 基 本 的 で あ る.
よ っ て{H,(pL,-xL)}
自己 共 役 で は な い の で([13]の2.3.8
定 理3.52 す る.こ
{H,(Q,P)}を
弱 ヴ ァ イ ル 型 表 現 と し,P':=P│D(P)∩D(Q)と
の と き,σp(P')=0,す
証 明 λ ∈IRと こ の と き,作 (3.72)と
な わ ち,P'は
し て,PΨ=λ
Ψ と な る Ψ ∈D(P)∩D(Q)が
用 素 解 析 に よ り,任
意 のt∈IR\{0}に
Ψ の 内 積 を と り,〈 Ψ,eitPQΨ
注 意 す れ ば,t〈 Ψ,Ψ 〉=0が
固 有 値 を も た な い.
あ っ た と し よ う.
対 して,eitPΨ=eitλ
〉=〈e-itPΨ,QΨ
得 ら れ る.し
〉=eitλ
た が っ て,Ψ=0.ゆ
Ψ.
〈 Ψ,QΨ
〉に
え に,P'は
固
有 値 を も た な い.
一 般 に,ヒ と き,Tは
■
ル ベ ル ト空 間 上 の 対 称 作 用 素Tが 半 有 界(semi-bounded)で
定 理3.53
ヒ ル ベ ル ト空 間Hは
表 現 と す る.Pは
証 明 (3.73)は
下 に 有 界 ま た は上 に有 界 で あ る
あ る と い う.
可 分 で あ る と し,{H,(Q,P)}を
半 有 界 で あ る と し よ う.こ
の と き,Qは
作 用 素 の 等 式eitPQe-itP=Q+tを
自 己 共 役 で あ る と し よ う.こ
の と き,作
eitPeisQe-itP=eis(Q+t)=eisteisQ.し 関 係 式 を 満 た す.ゆ
え に,フ
弱 ヴ ァ イル型 自 己 共 役 で は な い.
意 味 す る.仮
用 素 解 析 の ユ ニ タ リ 共 変 性 に よ り, た が っ て,eisQ, eitPは
ォ ン ・ノ イ マ ン の一 意 性 定 理 に よ り,Pは
の シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 表 現pの
直 和 に ユ ニ タ リ 同 値 で あ る.こ
を 意 味 す る.だ
半 有 界 性 に 反 す る.
3.7.4
が,こ
れ はPの
弱 ヴ ァ イ ル 型 表 現{H,(Q,P)}に
にQが
ヴ ァイルの 自 由 度1
れ は σ(P)=IR ■
お け るeitP(t∈IR)のtに
関 する
減衰的性質 自 己 共 役 作 用 素Pに
SP:={S│Sは
例3.5
対 し て,対
対 称 作 用 素 でeitPS⊂SeitP,
任 意 の 実 数a∈IRに
ル 可 測 関 数).
称 作 用 素 の 集 合SPを
次 の よ う に 定 義 す る:
∀t∈IRを
対 し て,0, aI, f(P)∈SP(f:IR→Cは
満 た す}. (3.77)
任意 の ボ レ
定 理3.54
{H,(Q,P)}をCCRの
固 定 す る.こ
の と き,任
弱 ヴ ァ イ ル 型 表 現 と し,S∈SPを
意 のt∈IR\{0}と
Ψ, Φ ∈D(Q)∩D(S)に
任意 に 対 して
(3.78) 証 明 (3.72)と
Φ の 内 積 を と り,Sの
性 質 を 用 い る と,
が 得 られ る.そ
こで,両 辺 の 絶 対 値 を と り,シ ュ ヴ ァル ツの 不 等 式 とe±itPの
ユ ニ タ リ性 を使 うこ とに よ り,(3 .78)が 得 ら れ る.
3.8
■
時 間 作 用 素
物 理 の教 科 書 や文 献 にお い て は,エ
ネ ル ギ ー と時 間 に 関す る不 確 定 性 関 係 の
取 り扱 い は た い へ ん 曖 昧 で あ る*23.こ の 節 で は,エ ネ ルギ ー と時 間 に関 す る不 確 定 性 関 係 お よ び これ に関 わ る数 学 的 構 造 を原 理 的 観 点 か ら明 晰 に把 握 す る こ と を試 み る.
3.8.1 弱 時 間 作 用 素 と時 間-エ ネル ギー の 不確 定 性 関 係 Hを
ヒル ベ ル ト空 間 と し,HをH上
の 自 己 共役 作 用 素 とす る.い
ヒ ルベ ル ト空 間 がHで
あ り,ハ ミル トニ ア ンがHで
定 義3.55
の 対 称 作 用 素 でD(T)∩D(H)≠{0}を
TをH上
ま,状 態 の
表 さ れ る量 子 系 を考 え る. 満 た す もの とす
る.次 の 性 質(ⅰ), (ⅱ)を満 た す,有 界 な 自己 共 役 作 用 素C∈B(H), C≠0が 在 す る な らば,TをHに
関 す る弱 時 間作 用 素 と い い,Cを(T,H)に
可 換 因 子 と呼 ぶ.こ の 場 合,「Hは
弱 時 間 作 用 素Tを
(ⅰ) す べ て の Ψ,Φ ∈D(T)∩D(H)に
存
関 す る非
もつ」 と もい う.
対 して
(3.79) (ⅱ) δC:=inf‖
Ψ ‖=1, Ψ ∈(kerC)⊥│〈
Ψ,CΨ
〉│>0.
*23 この 問題 に 関 して ,概 念 的 に明 晰 で 数 学 的 に も厳 密 な 議論 を与 えた重 要 な論 文 の一 つ は [28]で あ ろ う.
この 定 義 は,容 易 にみ て とれ る よ う に,自 由 度1のCCRの 表現 のある種の 一 般 化 で あ る.こ こ で は,Hが 半 有 界 で あ る場 合 やHが 連 続 ス ペ ク トル の他 に点 スペ ク トル を有 す る場 合 を も射 程 に 入 れ て い る.弱 時 間作 用 素 の例 に つ い て は,次 の項 で述 べ る. 命 題3.56
TをHに
関 す る弱 時 間 作 用 素 と し,Cを(T,H)の
す る,こ の と きすべ て の Ψ ∈D(T)∩D(H)∩(kerC)⊥
非可換 因子 と
に対 して
(3.80) 証 明 シ ュ ヴ ァル ツの不 等 式 に よ り
し た が っ て,(3.80)が
対 称 作 用 素Sと に お け るSの
し た が う.
■
単 位 ベ ク トル Ψ ∈D(S)\{0}(‖Ψ
‖=1)に
対 して,状 態 Ψ
不確 定 さ を
(3.81) に よ っ て 定 義 す る*24.
定 理3.57
(時 間-エ ネ ル ギ ー の 不 確 定 性 関 係)TをHに
素 と し,(T,H)の
非 可 換 因 子 をCと
Ψ ∈D(T)∩D(H)∩(kerC)⊥
す る.こ
関 す る 弱 時 間作 用
の と き,す
べ て の 単 位 ベ ク トル
に対 して
(3.82) 証 明 任 意 の 実 数a,b∈IRに あ り,(T-a,H-b)の て,‖(T-a)Ψ す れ ば,(3.82)が *24 これ は
対 し て,T-aはH-bに
非 可 換 因 子 はCで ‖ ‖(H-b)Ψ
‖〓 δC/2.そ
得 ら れ る.
,"不 確 定 さ"と い う概 念 をSが た もの で あ る.
あ る.し こ で,a=〈
関 す る 弱 時 間作 用 素 で た が っ て,命
題3.56に
Ψ,TΨ 〉,b=〈 Ψ,HΨ
よっ 〉と ■
必 ず し も自 己共 役 とは 限 ら ない場 合 へ と拡 張 し
定 理3.57は
従 来 曖 昧 に扱 わ れ て い る"時 間-エ ネル ギ ーの 不 確 定 性 関 係"に 対
す る一 つ の 明 晰 な表 現 を与 え る.こ の定 理 は,(ΔT)Ψ
が 一 定 の 限 界 にあ る よ う
な任 意 の状 態 Ψ に 対 して は,エ ネル ギ ー の 不 確 定 さ に正 の 下 限 が 存 在 す る こ と を意 味 す る. だ が,こ
こ で,次
の疑 問 が 生 じる か も しれ な い.す
物 理 量 で あ ろ うか?こ
の 問 い に対 して は,筆 者 は,そ れ は物 理 量 で あ っ て も
な くて も よい と考 え て い る.そ の理 由 の一 つ は,ハ て も,Hに Hが
な わ ち,弱 時 間作 用 素 は
ミル トニ ア ンHを一
関 す る 弱 時 間 作 用 素 は 一 意 的 に定 ま らな い とい う こ とが あ る.ま た,
下 に有 界 な らば,付 加 的 な条 件 の も とで,Hに
関す る弱 時 間 作 用 素 は 本 質
的 に 自己 共 役 で は あ りえ な い こ とが 証 明 され る.他 方,そ 己 共 役 に な る ハ ミル トニ ア ン も存 在 しう る*25.定 理3.57か は,ハ
つ決め
ミル トニ ア ンHに
の 弱 時 間作 用 素 が 自 ら読 み 取 れ る こ と
関 す る弱 時 間作 用 素 とい うの は,エ ネル ギ ー の 不確 定
さ を 測 る尺 度 を提 供 す る作 用 素 の 一 つ で あ る とい う こ とで あ る.こ の観 点 か ら い え ば,弱 時 間作 用 素 が物 理 量 で あ る か否 か は第 二 義 的 な問 題 に な る(考 察 す る ハ ミル トニ ア ン に依 存 す る性 質).さ
らに付 け加 え る な ら ば,弱 時 間 作 用 素 が 仮
に物 理 量 で な い と して も,そ れ が物 理 的 に 意味 が な い とい う こ とに は な らな い. 前 著[13,14]で
もす で に暗 示 した よ う に,本 書 の 観 点― 座 標 か ら自 由 な絶 対 的
次 元 か らの 公 理 論 的 ア プ ロ ー チ― に よれ ば,た リ群{e-itH}t∈IRが
とえ ば,系 の 時 間発 展 は ユ ニ タ
統 制 し,素 粒子 の 生 成 ・消 滅 は 生 成 ・消 滅 作 用 素 が 司 っ て
い る よ う に,自 己 共 役 で な い作 用 素 も物 理 現 象 の 現 出 に何 らか の 役 割 を もっ て い る と考 え る の が 自然 だ か らで あ る.重 要 な こ とは,諸 象 現 出 との 関連 に お い て,ど る こ とで あ る.前 著[13],
々 の 作 用 素 が,量 子 現
うい う役 割 を演 じて い るか を厳 密 な仕 方 で把 握 す
[14]や 本 書 全 体 が 示 唆 す るで あ ろ う よ う に,作 用 素
の 空 間 に は,物 理 現 象 の現 出 との 関連 にお い て もあ る種 の(無 限)階 層 構造 が 存 在 し,各 作 用 素 は そ れ ぞ れ 固 有 の 役 割 を担 い,重 々 無 尽 縁 起 的 な仕 方 で現 象 を 支 え て い る の で あ る.
*25 た と え ば
,や
や 人 工 的 で あ る が,H=cp(c≠0は
運 動 量 作 用 素)に あ る.
実 定 数 で,pはL2(IRx)に
関 す る 弱 時 間 作 用 素 の 一 つ と し て,x/cが
あ る が,こ
お ける
れ は自 己 共 役 で
3.8.2 CCRの 自由度Nの
表 現 と弱 時 間 作 用 素
量子 力 学系 にお け る物理 量 や量 子現 象 と関 わ る作 用 素 は,そ の 状態 の
ヒルベ ル ト空 間 を表 現空 間 とす る適 切 なCCRの
自己 共役 表現{H,D,{(Qj,Pj}Nj=1}
か らつ くられ る.し たが っ て,弱 時 間作 用 素 も― も し,存 在 す る な らば― 当然, CCRの
自己 共 役 表 現 か らつ くられ るは ず で あ る.実 際,こ の構造 は普 遍 的 な形
で 存 在 す る こ とが 示 され る.だ が,こ
こ で は,そ
の 一般 論 を展 開す る余 裕 は な
い の で,自 由度 が1で ハ ミル トニ ア ンが 簡 単 な形 の 場 合 につ い て の み論 述 す る. a. 非 相 対 論 的 な場 合 {H,D,(Q,P)}を (A.1) Pは
自 由度1のCCRの
対 称 表 現 とす る.次 の 仮 定 を設 け る.
自己 共 役 で あ り,単 射 で あ る(し た が っ て,逆 作 用 素P-1が
存在
す る). (A.2) 稠 密 な 部 分 空 間FでQF⊂F,
PF⊂F,
P-1F⊂Fを
満 たす もの が存 在
す る.
m>0を
定 数 と し て,
(3.83) に よ っ て 定 義 さ れ る ハ ミ ル トニ ア ンHNRを レ ー デ ィ ン ガ ー 表 現 に お け る,質 ンを
一 般 のCCRの
量mの
考 え る*26.こ
れ は,CCRの
シュ
自 由 粒 子 の 非 相 対 論 的 な ハ ミ ル トニ ア
表 現 の 場 合 へ と 拡 張 し た も の で あ る.仮
定(A.1),
(A.2)に
よ り
(3.84) は 対 称 作 用 素 で あ り,Fを
命 題3.58
(A.1),
不 変 に す る.ま
(A.2)を
仮 定 す る.こ
間 作 用 素 で あ り,(TNR,HNR)の
*26 「NR」
はnon
,Φ〉.Q, -relativistic(非
等 作 用 素)で
任 意 に と る.こ Pに
関 す るCCRを
相 対 論 的)の
不 変 に す る.
の と き,TNRはHNRに
非 可 換 子 はI(恒
証 明 Ψ,Φ ∈D(TNR)∩D(HNR)=Fを =(1/2m)〈P2QP-1Ψ
た,HNRもFを
意 .
関 す る弱 時 あ る.
の と き,〈QP-1Ψ,HNRΦ
使 う こ と に よ り,P2QP-1Ψ
〉
=(-i+PQ)Ψ.し
たがって
同 様 に,〈HNRΨ,P-1QΦ 〈HNRΨ,P-1QΦ
〉=(1/2m)〈QPΨ,Φ
〉=(i/m)〈
〉.し た が っ て,〈QP-1Ψ,HNRΦ
〉-
Ψ,Φ 〉.こ の 式 を 用 い る と求 め る 結 果 が 得 ら れ る. ■
例3.6
1次 元 空 間IRの
中 に 質 量m>0の
ヒル ベ ル ト空 間 と して座 標 表 示 のL2空
量 子 的粒 子 が 一 つ 存 在 す る系 を考 え,状 態 の 間L2(IR)=L2(IRx)を
とる.外 力 が 働 い て い な
い場 合 の系 の ハ ミル トニ ア ン― 自由 粒 子 の ハ ミル トニ ア ン― はH0:=-Δx/(2m)で え られ る.た だ し,Δxは1次 CCRの
シ ュ レー デ ィ ンガ ー表 現 を(x,p)と
らL2(IRk)へ で あ る.た
の フー リエ 変 換 をF1と だ し,Dkは
変 数kに
作 用 素 で あ る.L2(IRk)の
す る.x,pい
記 す.こ
とお け ば,こ れ はL2(IRx)で
ず れ も単 射 で あ る.L2(IRx)か
関 す る 一 般 化 され た微 分 作 用 素,kはkに
不 変 に す る.し
稠 密 で あ る.さ
稠 密 で あ り,x,p,p-1はF0を
不 変 にす る.し
して 満 た さ れ る.ゆ
関 す る 弱 時 間 作 用 素 で あ り,(TAB,H0)の
時 間 作 用 素TABは
よ るか け 算 ら に,
た が っ て,F0:=F-11C∞0(IRk\{0})
仮 定(A.1),(A.2)がQ=x,P=p,F=F0と
あ る.弱
おけ る
の と き,F1xF-11=iDk,F1pF-11=k
部 分 空 間C∞0(IRk\{0})はL2(IRk)で
iDk,k,k-1はC∞0(IRk\{0})を
とお け ば,TABはH0に
与
元 の 一 般 化 さ れ た ラプ ラ シ ア ンで あ る.L2(IRx)に
た が っ て,
えに
非 可 換 因 子 はIで
ア ハ ラ ノ フ-ボ ー ム の 時 間 作 用 素 と呼 ば れ る[2].こ
の例
は 高 次 元 へ の 拡 張 を もつ(演 習 問 題5).
b. 相 対 論 的 な 場 合(1) 相 対 論 的 な ハ ミ ル ト ニ ア ン に つ い て もCCRの あ る.だ
が,こ
こ で は 簡 単 の た め,CCRの
C∞0(IRx),(x,p)}で
考 え る.質
量 がm>0の
任 意 の 表 現 で の考 察 が 可 能 で
シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 表 現{L2(IRx), 自 由 粒 子 の 相 対 論 的 ハ ミ ル トニ ア
ンは
(3.85) で定 義 され る.IRk上
の関数 ω を
(3.86)
に よっ て定 義 す る.作 用 素 解 析 の ユ ニ タ リ共 変 性 を使 うこ とに よ り
(3.87) が わ か る(右
辺 は 関 数 ω に よ る か け 算 作 用 素 を 表 す).容
ωC∞0(IRk\{0})⊂C∞0(IRk\{0}).し
易 に わ か る よ う に,
た が っ て,HRはF0を
不 変 に す る.ゆ
え に作 用 素
(3.88) が 定 義 さ れ る.こ
命 題3.59
れ は 対 称 作 用 素 で あ る.
作 用 素TRはHRに
換 因 子 はIで
非可
あ る.
証 明 任 意 の ψ ∈F0に iF1ψ.し
関 す る 弱 時 間 作 用 素 で あ り,(TR,HR)の
対 し て,F1[HRp-1x,HR]ψ=ω
た が っ て,[HRp-1x,HR]ψ=iψ.同
・k-1[iDk,ω]F1ψ=
様 に(あ る い は,い
共 役 を と る こ と に よ り)[xHRp-1,HR]ψ=iψ.し
ま導 い た式 の
た が っ て,[TR,HR]ψ=iψ.
■ こ の 例 も 高 次 元 へ の 拡 張 を も つ(演
c. 相 対 論 的 な 場 合(2)― 質 量 がm>0で
デ ィ ラ ッ ク ハ ミ ル トニ ア ン
ス ピ ン が1/2の
ル ベ ル ト空 間L2(IR3x;C4)=
習 問 題6).
自 由 な 相 対 論 的 粒 子 の ハ ミ ル トニ ア ン は,ヒ 4L2(IR3x)で
働 くデ ィラ ッ ク作 用 素
(3.89) に よ っ て 与 え ら れ る(2.10節 f3│fj∈F0, j=1,2,3})はL2(IR3x)で 和 ベ ク ト ル 空 間D0:= う に,HD, xj, p-1jはD0を
を 参 照).L2(IR3x)の
部 分 空 間F0(3):=L({f1×f2×
稠 密 で あ る.し
4F(3)0はL2(IR3x;C4)で 不 変 に す る.ゆ
た が っ て,そ
稠 密 で あ る.容 え に,各j=1,2,3に
の4個
の直
易 にわか るよ 対 して
に よ っ て 定 義 さ れ る作 用 素 は対 称 作 用 素 で あ る.xj, plが 満 た すCCRと
αj,β
に 関す る 反 交 換 関係 を用 い る こ とに よ り,次 の 事 実 が 証 明 され る: 命 題3.60
D0上 で[Tj,HD]=iが
弱 時 間作 用 素 で あ り,(Tj,HD)の
成 立 す る.す な わ ち,TjはHDに 非 可 換 因 子 はIで
関す る
あ る.
d. 相 互 作 用 の 入 っ た ハ ミル トニ ア ン お よ び 量 子 場 の ハ ミル トニ ア ン に 関 す る弱 時 間作 用 素 上 に あ げ た例 は い ず れ も,相 互 作 用 の な い 自 由粒 子 を記 述 す るハ ミル トニ ア ン に 関 す る弱 時 間 作 用 素 で あ っ た.同 様 に して,自 由 な量 子 場 の ハ ミル トニ ア ン(第 二 量 子 化 作 用 素)に 関 す る 弱 時 間作 用 素 を 具 体 的 に 構 成 す る こ とが で きる [12].次 の 問 題 は,相 互 作 用 の 入 った ハ ミル トニ ア ン も弱 時 間 作 用 素 を もつ か ど うか を吟 味 す る こ とで あ る.本 書 で は,残 念 な が ら,こ の主 題 につ い て論 じる 余 裕 は な い が,次 の事 実 だ け を指摘 して お く:一 般 に,自 己 共役 作 用素Hが 時 間作 用 素 を もつ と き,あ る条 件 を満 たす 対 称 作 用 素Vに
弱
対 して,H+Vも
弱 時 間作 用 素 を もつ こ と を証 明 す る こ とが で きる[12].
3.8.3 強 時 間 作 用 素 弱 時 間作 用 素 よ りも強 い特 性 を もつ 時 間 作 用 素 の概 念 を導 入 す る.Hを ベ ル ト空 間,HをH上 定 義3.61 tC)eitH,
H上
の有 界 な 自己 共 役 作 用 素C≠0が
∀t∈IRか
素(strong
の 自己 共 役 作 用 素 と し,TをH上
つ δC>0が
time operator)と
場 合,「Hは
強 時 間作 用 素Tを
注 意3.14
こ の定 義 にお い て,C=Iな
イル 型 表 現 で あ る.し
の対 称 作 用 素 とす る. 存 在 して,eitHT⊂(T+
成 り立 つ と き,TをHに
呼 び,Cを(T,H)の
ヒル
関 する強時間作用
強 非 可 換 因子 とい う.こ の
もつ」 とい う. らば,{H,(T,H)}はCCRの
たが って,(T,H,C)は,一
弱ヴァ
般 化 され た 弱 ヴ ァイ ル型 表 現
の 一 つ とみ る こ とが で き る. 命 題3.48の
証 明 と 同様 に して,TがHに
関 す る強 時 間作 用 素 な ら ば,作 用
素の等式
(3.90)
が 成 立 す る こ とが 証 明 され る.さ
らに,極 限 操 作 に よ り,作 用 素 の等 式
(3.91) が 成 り立 つ こ と もわ か る.す な わ ち,TもHに
関す る 強 時 間 作 用 素 で あ る.
強 時 間 作 用 素 の 概 念 が弱 時 間作 用 素 の 概 念 よ り も強 い こ と は次 の命 題 に よっ て保 証 され る. 命 題3.62
TをHに
関 す る強 時 間作 用 素 と し,Cを(T,H)の
とす る.こ の と き,TはHに 子 はCで
関 す る弱 時 間作 用 素 で あ り,(T,H)の
非可換 因
あ る.
証 明 Ψ,Φ ∈D(T)∩D(H)と 〈(T+tC)Ψ,eitHΦ〉.両
し よ う.こ 辺 と も にtに
係 数 を と れ ば〈(-iH)Ψ,TΦ
注 意3.15
CCRの
〉=〈CΨ,Φ
命 題3.62に
の と き,(3.90)に
よ り 〈e-itHΨ,TΦ
つ い て 微 分 可 能 で あ り,t=0で 〉+〈TΨ,iHΦ
〉=
の微 分
〉を 得 る.
■
表 現 が 必 ず し も弱 ヴ ァ イ ル 型 表 現 で は な い よ う に,Hに
す る 弱 時 間 作 用 素 は 必 ず し もHに
よ っ て,強
す べ て 成 立 す る.特 こ で,そ
強 非 可 換 因子
に,時
関
関 す る 強 時 間 作 用 素 と は 限 ら な い.
時 間 作 用 素 に つ い て は,弱
時 間作 用 素 の 一般 的性 質 は
間-エ ネ ル ギ ー の 不 確 定 性 関 係 も成 立 す る.だ
が,こ
れ ら を 書 き 下 す こ と は 省 略 す る.
3.8.4 量 子 系 の 時 間発 展 に お ける 状 態 の 生 き残 り確 率 と強 時 間 作 用 素 量 子 系 の状 態 の 時 間発 展 に関 す る公 理 に よ り,自 己 共 役 作 用 素Hを ニ ア ン とす る量 子 系 の 時刻t∈IRに さ れ る(h=1の
単 位 系).た
お け る状 態 は ベ ク トルe-itHΨ
だ し,Ψ ∈H\{0}は
ハ ミル ト に よっ て表
初 期 状 態 ベ ク トル― 時 刻0
で の状 態 ベ ク トル― を表 す.時 刻tに お い て状 態 Φ ∈H\{0}に 期 状 態 Ψ の,時 刻tに お け る,状 態 Φ へ の遷 移 確 率―
あ る確 率― 初
をPΨ,Φ(t)と す れ ば,そ
れは
(3.92)
に よ っ て与 え られ る(確 率 解 釈 の 公 理).時 刻tで 初 期 状 態 と 同 じ状 態 に留 ま る 確率
(3.93) を 残 存 確 率(survival う に,残
probability)ま
た は 生 き 残 り確 率 と い う.以
下 に示す よ
存 確 率 と 強 時 間 作 用 素 は 深 い つ な が り を も つ.
TをHに
関 す る 強 時 間 作 用 素 と し,Cを(T,H)の
定 理3.63
S∈SHを
任 意 に 固 定 す る*27.こ
強 非 可 換 因 子 と す る. の と き,任
意 のt∈IR\{0}と
単 位 ベ ク トル Ψ,
に
対 して
(3.94) 証 明 (3.90)に
よ り
両 辺 の 絶 対 値 を と り,シ
ュ ヴ ァ ル ッ の 不 等 式 とe±itHの
ユ ニ タ リ 性 を 使 え ば,
これから,(3.94)が 得られ
る.
■
(3.94)は,状
態 の 時 間 発 展 に お け る 遷 移 確 率 がt→
束 す る こ と,す
な わ ち,遷
こ と を 示 す と 同 時 に,そ supt∈IRt2PΨ
,CΦ(t)が
味 に お い て,強
系3.64 C2=Cと IR\{0}と
±∞
に お い て0に
収
移 確 率 が 時 間 の 大 き さ│t│の 増 大 と と も に 崩 壊 す る の 崩 壊 の 度 合 い に つ い て の 評 価 を 与 え る.こ
の 場 合,
Ψ,Φ と 時 間 作 用 素 か ら決 ま る 定 数 で 抑 え ら れ る と い う 意
時 間 作 用 素 は 系 の 状 態 の 時 間 発 展 と 関 わ る.
す る(i. e., Cは
正 射 影 作 用 素).こ
単 位 ベ ク トル
の と き,任
意 のt∈
に対 して
(3.95) *27 S
Hは(3.77)に
お い て,P=Hと
した も の.
証 明 (3.94)に
お い て,Φ=Ψ
と し,Sと
し てS=-〈
Ψ,TΨ〉 を と り,CΨ=Ψ
を 用 い れ ば よ い.
(3.95)は
■
残 存 確 率 の 時 間 減 衰 に 関 す る 評 価 を与 え る.右
辺 にTの
不 確 定 さが
現 れ る の は 興 味 深 い.
ノ
CCRの CCRの
ー
ヴ ァ イ ル 型 表 現 の 一 意 性 は,フ
ト
ォ ン ・ノ イ マ ン に よ っ て 証 明 さ れ た[26].
対 称 表 現 が い つ シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 表 現 に な る か とい う問 題 に つ い て は,本
章 で 論 じる こ と が で き な か っ た が,こ (Dixmier)に 理;[29]を
れ に 対 し て は,レ
よ っ て 一 つ の 解 答 が 与 え られ て い る(レ
リ ッ ヒ と デ ィ ク ス ミエ ー ル
リ ッ ヒ-デ ィ ク ス ミエ ー ル の 定
参 照).
シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 表 現 と非 同 値 なCCRの [33, 34]に み られ る.弱
表 現 の 純 数 学 的 な例 は,た とえ ば,[16],
ヴ ァ イル 型 表 現 の 研 究 は,[15],
[33, 34]に よ っ て 基 本 的 な部
分 が 完 成 さ れ て い る. ア ハ ラ ノ フ-ボ ー ム 効 果 の 表 現 論 的 扱 い は お そ ら く[18]が 学 的 に厳 密 な 解 析 的 ア プ ロ ー チ は[32]に CCRの
よ っ て な さ れ た.ア
最 初 か も し れ な い.数 ハ ラ ノ フ-ボ ー ム 効 果 と
非 同 値 表 現 と の 関 連 を 最 初 に 指 摘 した の は,多 分[31]で
文 に動 機 付 け られ て,CCRの
表 現 と アハ ラ ノ フ-ボ ー ム 効 果 とい う主 題 につ い て,一
連 の 研 究 を展 開 した[3, 4, 5, 6, 7, 9, 10, 11].関 3.6節 で 考 察 した2次
あ る.筆 者 は,こ の 論
元 系 に お い て,特
連 す る 研 究 と して,[19,
異 点anの
個 数 を可 算 無 限 個 に し,そ の 分
布 に関 して あ る 種 の 対 称 性 を も た せ る と(た と え ば,格 子 点 の 集 合),こ CCRの
21]が あ る.
れに付 随す る
非 同 値 表 現 に 関 し て い ろ い ろ と興 味 深 い 事 実 が 見 い だ され る.た
子 平 面 や 量 子 群[20]の
表 現 が 構 成 さ れ る.こ
の 側 面 に つ い て は,一
とえ ば,量
般 向 け の解 説 を
[11]に 書 い て お い た.ア ハ ラ ノ フ-ボ ー ム 効 果 の 数 理 は,現 在 で も活 発 に 研 究 さ れ て い る(現 状 を知 る に は,論 文[17]が 参 考 に な る か も しれ な い). 時 間 作 用 素 の 理 論 は 最 近 の 量 子 論 の 熱 い 話 題 の 一 つ か も しれ な い[24].こ 対 す る 表 現 論 的 な ア プ ロ ー チ はMiyamoto[23]に
よ っ て 着 手 さ れ た.こ
強 非 可 換 因 子 が 恒 等 作 用 素 の 場 合 の 強 時 間作 用 素 が 扱 わ れ て い る.強 す る,よ は,3.7節
り一 般 的 で 包 括 的 な理 論 展 開 につ い て は[12]を
時 間作 用 素 に 関
参 照 さ れ た い.論
文[12]で
で 論 じた 弱 ヴ ァ イ ル型 表 現 お よ び 強 時 間 作 用 素 の 一 般 化 が 導 入 さ れ た.特
に,量 子 系 の ハ ミル トニ ア ンHが
一 般 化 され た 意 味 で の 強 時 間 作 用 素Tを
遷 移 確 率 につ い て次 の 事 実 を 証 明 す る こ と が で きる:各 Dnが
の 理論 に
の 論 文 で は,
あ っ て,
自 然 数nに
もつ と き,
対 して,部
分空 間
(cn(Ψ,Φ)はtに が で き る.こ
よ ら な い 定 数).ま
た,Hの
ス ペ ク トル に 関 して も情 報 を 得 る こ と
れ ら の 事 柄 の 他 に も い ろ い ろ 興 味 深 い 事 実 が 見 い だ さ れ る.
こ の 章 の 論 述 や 上 に述 べ た こ と か ら 示 唆 され る よ う に,CCRあ
るいは その変 形の
表 現 と して 量 子 力 学 を 捉 え る 観 点 は,諸 々 の 量 子 現 象 を原 理 的 か つ 統 一 的 な 仕 方 で 厳 密 に 認 識 す る た め の 基 礎 を 提 供 す る だ け で な く,具 体 的 な諸 問 題 に お い て も実 り多 い 結 果 を も た ら す の で あ る.
第3章
Hを
演 習 問 題
ヒ ル ベ ル ト空 間 とす る.
1. A, TをH上
の 自 己 共 役 作 用 素 と し,T∈B(H)と
す る.こ
強 可 換 で あ る た め の 必 要 十 分 条 件 はTA⊂ATが
の と き,AとTが
成 り立 つ こ とで あ る.こ
れを
証 明 せ よ. 2. (3.33)に
よ っ て 定 義 さ れ る 作 用 素ASのker ASを
3. 自 由 度2以
求 め よ.
上 の 場 合 に 関 す る フ ォ ン ・ノ イ マ ン の 一 意 性 定 理 の証 明 の 詳 細 を 埋
め よ. 4. LをH上
の 自己 共 役 作 用 素 と し
と お く.
(ⅰ) L〓0な
らば,
(ⅱ) L〓0な
らば,
を 示 せ. を 示 せ.
(ⅲ)
5. d〓1を
を 示 せ. 任 意 の 自 然 数 と し,ヒ
ニ ア ンH0:=-Δ/(2m)を m>0は
ル ベ ル ト空 間L2(IRdx)に
考 え る(Δ
定 数).各j=1,…,dに
を 定 義 す る.た
だ し,F0は
はd次
お い て 自 由 ハ ミル ト
元 の 一 般 化 され た ラ プ ラ シ ア ン,
対 して
例3.6に
お け る部分 空 間で あ り
こ の と き,各TNR 換 因 子 はIで
,jはH0に
関 す る 弱 時 間 作 用 素 で あ り,(TNR,j,H0)の
非可
あ る こ と を示 せ.
6. 記 号 は 前 問 題 に した が う と し,L2(IRdx)で
働 く非 負 自 己 共 役 作 用 素― 相 対 論 的
自 由 ハ ミ ル トニ ア ン―K0:=(-Δ+m2)1/2を
考 え る.各j=1,…,dに
対
して
を 定 義 す る.こ
の と き,各TR,jはK0に
の 非 可 換 因 子 はIで
関
[1] Y.Aharonov
and
quantum
関 す る弱 時 間作 用 素 で あ り,(TR,j,H0)
あ る こ と を 示 せ.
連
図
書
D.Bohm,Significance
of
electromagnetic
potentials
in
the
theory,Phys.Rev.115(1959),485-491.
[2] Y.Aharonov
and
relation
for
D.Bohm,Time
time
and
in the
[3] A.Arai,Momentum
operators
magnetic
quantum
theory
and
the
uncertainty
energy,Phys.Rev.122(1961),1649-1658.
flux,and
with
gauge
representation
of
potentials,local
canonical
quantization
commutation
of
relations,J.
Math.Phys.33(1992),3374-3378. [4] A.Arai,Properties gauge
of
[5] A.Arai,Gauge of
the
Dirac-Weyl
operator
with
a
strongly
singular
potential,J.Math.Phys.34(1993),915-935. theory
canonical
on
a non-simply
commutation
[6] A.Arai,Representation ory,the
conneted
domain
and
representations
relations,J.Math.Phys.36(1995),2569-2580. of
Aharonov-Bohm
canonical
commutation
effect,and
relations
the Dirac-Weyl
in
a
gauge
the
operator,J.Nonlinear
Math.Phys.2(1995),247-262. [7] A.Arai,Canonical
commutation
Zeta-function,and quantum
group
[8] 新 井 朝 雄,『 [9] 新 井 朝 雄,ゲ 二 洋
infinite
編
relations
ヒ ル ベ ル ト 空 間 と 量 子 力 学』,共
tum
theory,the
space
singular
algebras,and
Weierstrass
representations
of
the
立 出 版,1997.
ー ジ 理 論 に お け る 正 準 交 換 関 係 の 表 現 と ア ハ ラ ノ フ-ボ
『数 理 物 理 へ の 誘 い2』(遊
in
a gauge
Hilbert
Uq(sl2),J.Math.Phys.37(1996),4203-4218.
星 社,1997)の
[10] A.Arai,Representation-theoretic tems
in
dimensional
vector
aspects
of
potentials:canonical
reduction
to
lattice
ー ム 効 果,荒
木 不
第7話,p.165-p.190. two-dimensional
quantum
commutation
relations,quan
quantum
systems,J.Math.Phys.39
(1998),2476-2498. [11] 新 井 朝 雄,非 星 社,2000)の
単 連 結 空 間 上 の ゲ ー ジ 量 子 力 学,江 第6話,p.143-p.164.
沢
洋
編
『数 理 物 理 へ の 誘 い3』(遊
sys
[12] A.Arai,Generalized
weak
Weyl
relation
and
decay
of
quantum
dynamics,
Rev.Math.Phys.17(2005),1-39. [13] 新 井 朝 雄
・江 沢
洋,『
量 子 力 学 の 数 学 的 構 造Ⅰ』,朝
[14] 新 井 朝 雄
・江 沢
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量 子 力 学 の 数 学 的 構 造Ⅱ』,朝
[15] G.Dorfmeister
and
倉 書 店,1999. 倉 書 店,1999.
J.Dorfmeister,Classification
of
certain
pairs
of
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tors(P,Q)satisfying[P,Q]=-iId,J.Funct.Anal.57(1984),301-328. [16] B.Fuglede,On the
relation
[17] V.A.Geyler
and
PQ-QP=-iI,Math.Scand.20(1967),79-88.
P.Stovicek,Zero
modes
in
a system
of
Aharonov-Bohm
fluxes,Rev.Math.Phys.16(2004),851-907. [18] G.A.Goldin,R.Menikoff rent
algebra
and
in
nonsimply
D.H.Sharp,Representations
connected
space
and
of the
a
local
Aharonov-Bohm
cur effect,
J.Math.Phys.22(1981),1664-1668. [19] M.Hirokawa,Canonical
quantization
Aharonov-Bohm
phase,J.Funct.Anal.174(2000),322-363.
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[29] C.R.Putnam,Commutation
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[31] H.Reeh,A
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波 書 店,
4 量子力学 にお ける対称性
対 称性 は現 代 物 理 学 にお け る最 も基本 的 な概 念 の一 つ で あ り,数 学 的 には,群 や リー代 数 と呼 ば れ る根 源 的理 念 あ るい は こ れ ら に類 似 の代 数 的構 造 の 表現 と して普 遍 的 ・統一 的 に捉 え られ る.こ の章 で は,作 用 素 論 的 に厳 密 な仕方 で,量 子 力 学 にお け る対 称 性 の 基 本 的 な 構 造 を普 遍 的 な観 点 か ら論 述す る.
4.1
は じめ に― 対 称 性 と は ど う い う も の か
対 称 性 とい う と きに,多 な か ろ う か.実 際,左 が で き る.た
くの 人 が す ぐ に想 い浮 かべ るの は,左 右対 称 性 で は
右 対 称 的 な対 象 は,私
た ち の 周 囲 に難 な く見 い だ す こ と
と え ば,人 間 の 体 や 植 物 の葉 の 多 くは,そ れ ぞ れ,然 るべ き視 点
か ら眺 め れ ば,左 右 対 称 的 に見 え る.建 築 物,家
具,食 器 な ど につ い て も 同様
の こ とが 観 察 され る.左 右 対 称 性 を数 学 的 にみ た場 合,そ
れ は,あ る 種 の 空 間
的操 作 に対 す る不 変 性 と して捉 え ら れ る こ とが わ か る.た
とえ ば,2次
上 の 図 形 が左 右 対 称 で あ る とい う こ とは,あ 直 線 に関 して,そ
元平面
る基 準 と な る直 線 が あ っ て,こ の
の 図 形 を折 り重 ね た と き に,直 線 の 左 側 の 図形 の部 分 と右 側
の そ れ が ぴ っ た り重 な る とい う こ と に ほ か な ら な い.つ
ま り,こ の場 合 は,あ
る 直線 に関 す る"折 り重 ね"と い う空 間 的操 作 に関 して不 変 な図 形 を,こ の直 線 に 関 す る左 右 対 称 な 図形 とい うわ け で あ る. い う まで もな く,"折
り重 ね"以 外 に も種々 の空 間 的操 作 が 可 能 で あ る.た
と
え ば,平 行 移 動(並 進),鏡 映,回 転 な どが あ る.こ れ らの操 作 で 不 変 に保 た れ る性 質 は,そ れ ぞ れ,並 進 対 称 性(不 変 性),鏡
映 対 称 性,回 転 対 称性 と呼 ば れ
る.こ の 観 点 を普 遍 へ と向 か って 徹 底 的 に押 し進 め て い く と,任 意 の,一 つ な
い し複 数 の空 間 的 操 作 に対 して不 変 と な る性 質 と して 一 つ の 対 称 性 を想 定 す る こ とが で き,こ れ が す な わ ち対 称 性 の 一 般 的概 念 像 に ほ か な ら ない.こ
の概 念
像 を 数 学 の 概 念 と して明 晰 に捉 え るた め に は,ま ず,対 称 性 と関 わ る空 間 的操 作 を 一 つ の 数 学 的 構 造 と して抽 象 的 ・普 遍 的 に措 定 す る必 要 が あ る.こ の よ う に して得 ら れ る根 源 的 理 念 の 一 つ が 群 と呼 ば れ る対 象 で あ る*1.対 称 性 とい う の は,普 遍 的 ・本 質 的 な い い方 をす れ ば,群 の作 用 に対 す る 不 変 性 の こ とで あ る.こ
う して,対 称 性 の 概 念 は,日 常 的 な次 元 を 超 え て,普 遍 的 な,よ
り高 次
の 次 元 へ 向 か って一 挙 に拡 大 す る.こ の 普 遍 的 な 高 み に立 つ こ とに よ り,種 々 様 々 な 個 別 的 対 称 性 を あ る絶 対 的根 源 か ら統 一 的 に俯瞰 す る こ とが 可 能 とな り, 感 覚 的 ・表 層 的 次 元 に と ど ま って い た の で は得 る こ とが で きな い,深
く美 しい
認 識 に到 達 す る こ とが で きる.も ち ろ ん,こ の 認 識 は美 しい とい うだ け で な く, 応 用 上 も強 力 で あ る*2. で は,群
とは何 か,ま ず,そ
の定 義 を与 え よ う.
4.2
4.2.1
定
定 義4.1
集 合Gが
て,Gの
義
元g1g2を
と
群
例
群(group)で
あ る と は,Gの
対 応 さ せ る 演 算 が 定 義 さ れ,か
任 意 の 二 つ の 元g1, g2に 対 し つ 以 下 の 条 件(G.1)∼(G.3)
が 満 た さ れ る と き を い う:
(G.1) (結 合 法 則)(g1g2)g3=g1(g2g3), (G.2) (単 位 元 の 存 在)あ ge=eg=gが
∀gj∈G,j=1,2,3.
る 元e∈Gが
成 立 す る.eをGの
存 在 す る.g-1をgの
条 件(G.1)∼(G.3)は し て,g1g(g1∈G)を
べ て のg∈Gに
対 して
単 位 元 と い う.
(g.3) (逆 元 の 存 在)各g∈Gに g-1∈Gが
あ っ て,す
対 し て,gg-1=g-1g=eを
み たす元
逆 元 と い う.
群 の 公 理 系 と呼 ば れ る.こ 割 り当 て る対 応 をg1の
*1 「群 」 と い う理 念 に 至 る 道 は 他 に も あ る
*2 こ こで略 述 した観 点 を初等 的 な レヴ
の 場 合,任
意 のg∈Gに
左 作 用 と い う.g1gを
.
ェ ル で詳 述 した本 と して[1]が あ る.
対
得 ることを
「gにg1を
左 か ら作 用 さ せ る,あ
り当 て る 対 応 をg1の せ る,あ
右 作 用 と い う.gg1を
(ⅰ) 群Gの
得 る こ と を 「gにg1を
割
右 か ら作 用 さ
足 的 な 注 意 を し て お こ う.
単 位 元 は た だ 一 つ で あ る.実
を 満 た す 元e'∈Gが (G.2)でg=e'と
際,別
あ っ た と す れ ば,g=eと
∀g∈G 方,
え に,e=e'.
逆 元 も た だ 一 つ で あ る.実
あ っ た とす れ ば,左 か らg-1を
にge'=e'g=g, し て,ee'=e'e=e.他
す れ ば,e'e=ee'=e'.ゆ
(ⅱ) 各g∈Gの g'∈Gが
た,gg1を
る い は 右 か ら か け る 」 とい う.
群 の 公 理 系 に 関 し て,補
る い は 左 か ら か け る 」 とい う.ま
際,別
に,gg'=g'g=eと
なる
作 用 させ る こ と に よ り,g'=g-1e=g-1
を 得 る. (ⅲ) 群Gを
定 義 す る 演 算(g1,g2)〓g1g2は,通
と 呼 ば れ る.こ g1g2=g2g1が
の 積 が 可 換 の と き,す 成 り 立 つ と き,Gを
(ⅳ) Gが
可 換 群 の 場 合,演
呼 び,g1g2をg1+g2と の 単 位 元 は0, gの 群Gの
べ て のg1,
る い は"乗 g2∈Gに
法"
対 して
可 換 群 あ る い は ア ー ベ ル 群 と い う.
算(g1,g2)〓g1g2を
書 く場 合 が あ る.こ 逆 元 は-gと
元gとn∈INに
常,"積"あ
な わ ち,す
積 と い う 代 わ り に"和"と
の 場 合 に は,群
は 加 群 と呼 ば れ,そ
書 か れ る.
対 して
(4.1)
と記 し,そ れ ぞ れ,gのn乗,マ
イ ナ スn乗
とい う.
例4.1 任 意のベ ク トル空 間 は,そ の加 法 の演算 に関 して加群 で あ る. 群Gの
元 の個 数 をGの
位 数 とい う.位 数 が 有 限 の 群 は有 限 群 と呼 ば れ,位 数
が 無 限 の 群 は無 限 群 と呼 ば れ る. 群Gの
部 分 集 合HがGの
群 の演 算 に関 して群 で あ る と き,HをGの
群 とい う.容 易 に わ か る よ う に,HがGの は,任 意 のg, h∈Hに
対 して,gh∈Hか
例4.2 加 群 と して のIRdをd次
部分
部分群 であ るための必要 十分条件 つg-1∈Hが
成 り立 つ こ とで あ る.
元 並 進群 とい う.こ れ は無 限群 で あ る.
例4.3
d次
GL(d,IR)と
の 実 正 則 行 列 の 全 体 は 行 列 の 積 の 演 算 に よ っ て 群 に な る.こ 書 き,実
一 般 線 形 群 と 呼 ぶ.GL(d,IR)の
は直 交行 列 はGL(d,IR)の
部 分 群 を な す.こ
れ をd次
の群 を
部 分集 合
元 直 交 群 と い う.ま
(4.2)
た,O(d)の
部分 集合
(4.3) はO(d)の 例4.4
部 分 群 を な す.こ
れ をd次
d次 の複 素 正 則 行 列 の 全体 も群 を なす.こ
と記 す.GL(d,IR)はGL(d,C)の 例4.5
元 回 転 群 と い う.い ず れ も無 限 群 で あ る.
VをIK上
れ を複 素 一 般 線 形 群 と呼 び,GL(d,C)
部 分 群 で あ る.
の ベ ク トル空 間 と し(IK=IRま
用 素 の 全 体 をL(V)と
記 す.こ
の と き,V上
た はC),Vか
らVへ
の全 単射 な線 形作 用素 の全 体
は全 単射 は 作 用 素 の 積 に 関 して 群 を な す.こ 例4.6
ヒル ベ ル ト空 間Hに
の線 形作
れ をV上
(4.4)
の 一 般 線 形 群 とい う.
対 して,
(4.5) (H上
の 全 単 射 な有 界 線 形 作 用 素 の全 体)はGL(H)の
例4.7
ヒル ベ ル ト空 間H上
部 分 群 を な す.
の ユ ニ タ リ作 用 素 の 全 体
(4.6) はGLB(H)の 特 に,H=CNの
部 分 群 で あ る.こ
の 無 限 群 をH上
場 合
はN次
とい う記 号 で 表 され る.CN上 同 一 視 す る と(以 下,こ
の ユ ニ タ リ群 と い う. 元 ユ ニ タ リ群 と 呼 ば れ,通 常,
の 線 形 作 用 素 をN次
の 同 一 視 を適 宜 用 い る),U(N)はN次
体 と同 一 視 で き る.U(N)の
の正方 行列 と
の ユ ニ タ リ行 列 の全
部分 集 合
(4.7) も部 分 群 で あ り,こ れ はN次
の 特 殊 ユ ニ タ リ群 と呼 ば れ る.
4.2.2
線
HをIK上
形
リ ー 群
の ヒ ル ベ ル ト空 間 と す る と き,群GLB(H)はB(H)の
あ る の で,作
用 素 ノ ル ム で の 位 相 が 入 る.以
集 合 と し て 考 え る.Tn,T∈B(H)に
この 位 相 の 入 っ た
つ い て,
つ と き,
が 成 り立
と記 す .
定 義4.2
GをGLB(H)の
部 分 群 とす る.も
な ら ば,常 い る と い い,こ
た はCdの
群GLB(H)自
体 は,定
例4.8
H上
例4.9
GL(d,IK)は,こ
GL(IKd)と
に
場 合 の 線 形 リ ー 群 をd次
明 的 にH上
下,こ
の 線 形 リ ー 群 と い う.
の 線 形 リ ー 群 で あ る.
線 形 リ ー 群 で あ る.
れ に属 す る 元 をIKd上
の 線 形 作 用 素 とみ る こ と に よ り,
同 一 視 で き る.こ の 場 合,GL(d,IK)の
こ とが で き る.以
中で 閉 じて
の 線 形 リ ー 群 と い う.
義 に よ っ て,自
の ユ ニ タ リ群U(H)は
し,
と な る と き,GはGLB(H)の
の よ う な 部 分 群GをH上
特 に,H=IRdま
はd次
下,GLB(H)は
部分集 合で
の 同 一 視 を 用 い る.し
の 線 形 リー 群 で あ る.GL(d,IK)の
部 分 群 はGL(IKd)の
部 分 群 とみ る
た が っ て,O(d),SO(d),U(d),SU(d)
部 分集 合
(4.8) も線 形 リ ー 群 で あ る.こ
れ をd次
の 特 殊 線 形 群 とい う.こ
れ ら の 他 に も種 々 の 線 形
リー 群 が 存 在 す る*3.
4.2.3
変 換 群 と対 称 性
Xを 空 で な い集 合 と し,X上 演 算fgを
の任 意 の2つ
の 写 像f,g:X→Xに
(合 成 写 像,i.e.,
て定 義 す る.明
らか にf9はX上
)に よっ
の 写 像 で あ る.
X上 の 全 単 射 な写 像 の 全体 をG(X)で
表 す.次
の事 実 は基 本 的 で あ る.
命 題4.3 G(X)は
写 像 の 積 演 算 に 関 して 群 を な す.こ
の 恒 等 作 用 素IXで
あ り,
*3 た と え ば
,[23]を
参 照.
対 して,積
の 逆 元 は,fの
の場 合,単 位 元 はX上
逆 写 像 f-1で あ る.
こ の 命 題 を 証 明 す る た め に,次 補 題4.4
の 事 実 に 注 意 す る:
(ⅰ) 任 意 の
(ⅱ) 任 意 の
に 対 し て,
に 対 し て
証 明 (ⅰ) fgの 単 射 性 を 示 す た め に, こ の と き,f(g(x))=f(g(y)).こ 単 射 で あ る か ら,x=y.ゆ め に,
れ とfの え にfgは
を 任 意 に と る.fの
gの 全 射 性 に よ り,x=g(w)と ゆ え にfgは
と し よ う. 単 射 性 に よ り,g(x)=g(y).gは
単 射 で あ る.次
に,fgの
全 射 性 に よ り,y=f(x)と な る
が あ る.し
全 射 性 を示 す た
な る
が あ る.
た が っ て,y=(fg)(w).
全 射 で あ る.
(ⅱ) こ れ は 逆 写 像 の 定 義 か ら 明 ら か. 命 題4.3の
証 明 写 像 の 積 演 算 が 結 合 法 則 を 満 た す こ と は 容 易 に わ か る.X上
の 恒 等 写 像IXは に よ り,題
■
全 単 射 で あ る か ら,G(X)の
元 で あ る.こ
れ ら の 事 実 と補 題4.4
意 が し た が う.
群G(X)をX上
■
の 全 変 換 群(full
transformation
G(X)の
部 分 群 をX上
の 一 つ の 変 換 群 と い う.
例4.10
GL(IKd)はIKd上
の 変 換 群 で あ る.し
group)と
た が っ て,そ
呼 ぶ.
の 任 意 の 部 分 群 もIKd
上 の 変 換 群 で あ る. 例4.11
任 意 の ベ ク トル 空 間Vに
意 の 部 分 群 はV上 例4.12
対 して,V上
の 一 般 線 形 群GL(V)お
(ロ ー レ ン ツ群,ポ
ア ン カ レ群)
と す る.(d+1)次
間
元 ベ ク トル 空
を 考 え,双
線形形式
を
に よ っ て定 義 す る.こ れ をIRd+1上
の ロ ー レン ツ内 積 ま た は ロ ー レ ン ツ計 量 とい う*4.
た だ し,こ れ は 本 来 の 意 味 で の 内 積 で は な い.実 *4 文 献 に よ っ て は
よびそ の任
の 変 換 群 で あ る.
,ミ
際,内 積 の 正 値 性 は成 立せ ず,xの
ン コ フ ス キ ー 内 積 あ る い は.ミ
関
ン コ フ ス キ ー 計 量 と い う 場 合 もあ る.
数g(d+1)(x,x)は
正 に も負 に も な り う る*5.こ
れ る.IRd+1とg(d+1)の
組(IRd+1,g(d+1))を
ク トル 空 間 とい う*6.こ
の よ うな 双 線 形 形 式 は 不 定 内積 と呼 ば 標 準 的(d+1)次
元 ミン コフス キーベ
れ は 特 殊 相 対 性 理 論 の 時 空 を定 義 す る概 念 で あ る(d+1=4
の 場 合). IRd+1上
の 線 形 写 像Λ が ロ ー レ ン ツ計 量 を 保 存 す る と き,す
を 満 たす と き,Λ
をIRd+1上
の ロ ー レ ン ツ写 像 とい う*7.容
なわ ち
易 に わ か る よ う に,ロ ー
レ ン ツ 写 像 Λ は全 単 射 で あ る. IRd+1上
の ロ ー レ ン ツ 写 像 の 全 体 をO(d,1)と
変 換 群 を な す.こ
の 変 換群 を(d+1)次
任 意 のa∈IRd+1と
に よっ て 定 義 す る.こ
表 す.こ
に 対 して,写
像
れ を ポ ア ン カ レ写 像 とい う.ポ
す れ ば,こ れ もIRd+1上
れ は 写 像 の 積 演 算 に 関 して
元 ロ ー レ ン ツ 群 とい う.
の 変 換 群 を な す.こ
を
ア ン カ レ写 像 の全 体 をP(d,1)と
の 場 合,任 意 の
に対 し て
が 成 り立 つ.群P(d,1)を
ポ ア ン カ レ群 と い う.
写 像f:X→XとXの
部 分 集 合Sに
対 して
(4.9) とお く.こ れ はfの
定 義 域 をSに
制 限 して 得 られ る写 像 の像(値 域)で あ る.
TをX上
の 変 換 群 とす る.Xの
部 分 集 合Dが
T(D)=Dを
満 た す と き,DはT-不
変 また はT-対 称 で あ る とい う.こ う して,
各 変 換 群 に 応 じて,Xの
任 意 の
に対 して,
部 分 集 合(抽 象 的 な意 味 で の幾 何 学 的 対 象)に 関 す る対
称 性 が定 義 され る. *5 た と え ば ,x=(0,x1,…,xd)≠0と
い う ベ ク トル を 考 え る と,
で あ り,y=(y0,0,0,…,0)(y0≠0)と とg(d+1)(y,y)>0. *6 抽 象 的 な ミ ン コ フ ス キ ー ベ ク トル 空 間 の 概 念 も あ る[5] *7 "ロ ー レ ン ツ 変 換"と
い うベ ク トル を 考 え る
.
い うの が慣 習 的 な呼 び名 で あ るが
味 で 使 う場 合 が 多 い の で,こ う言 葉 は 使 用 し な い,座
,物 理 で は,こ れ と の 混 同 を 避 け る た め,本 書 で は,ロ
標 変 換 と写 像 は 別 の 概 念 で あ る.
れ を座 標 変 換 の 意 ー レ ンツ変 換 とい
例4.13
IRdのSO(d)-不
た と え ば,IRdの
変 な 部 分 集 合 をd次
中 の 半 径rの(d-1)次
元 の 回 転 対 称(不 変)な 図 形 と い う.
元 球 面
は回転 対
称 で あ る. 例4.14
IRd+1のO(d,1)-不
な 図 形 と い う.た
(
変 な 部 分 集 合 を(d+1)次
元 の ロ ー レ ン ツ対 称(不 変)
とえば
は定 数)― 質量mの
質量 超双 曲面― はロ ー レンツ対称 で あ る.
Xの 部 分 集 合 に 関 す る 対 称 性 は,次 に示 す よ うに,Xの
直積集合
(4.10) ―Xのn重
直 積(n=1
,2,…)―
か ら別 の 集 合 へ の 写 像 に 関 す る 対 称 性 を 誘
導 す る. Yを Yへ
集 合 と し,
をXnか
の 写 像 と す る.こ
の と き,任
意 の
ら
に 対 し て,TF:Xn→Yを
(4.11) に よ っ て 定 義 す る.も ば,FはT-不 例4.15
し,す べ て の
変 ま た はT-対 SO(d)-不
のFは
例4.16 O(d,1)-不
元 の 回 転 対 称(不 変)な
用 い て 写 像F:IRd→IRを
変 な 関 数 を(d+1)次
に よ っ て 定 義 す れ ば,こ
と え ば,
によっ て定
のFは
元 の ロ ー レ ン ツ対 称(不 変)な 関 数 とい う.
用 い て 写像F: ロ ー レ ン ツ対 称 で あ る.
準 同 型 写 像 と核
群 に 関 す る 基 本 的 概 念 を い くつ か 述 べ て お く.G,Hを G→Hが
関 数 とい う.た
回 転 対 称 で あ る.
た とえ ば,IR上 の 任 意 の 関数fを
4.2.4
成 り立 つ な ら
称 で あ る と い う.
変 な 関 数 をd次
[0,∞)上 の 任 意 の 関 数fを 義 す れ ば,こ
に 対 し て,TF=Fが
す べ て の
に 対 し て,
群 と す る.写
像 φ:
を満 たす と
き― こ の性 質 を写 像 φの 準 同 型 性 とい う―,φ 像 とい う.こ れ は,つ
中への準同型写
全射であるとき
準 同 型 で あ る とい う.
全 単 射 な準 同型 写 像 φ:G→Hを 準 同型 写 像 φ:G→Hに 単 位 元)―eH∈Hの 注 意4.1 eGと
らHの
ま り,群 の 構 造 を保 存 す る よ う な写 像 の こ とで あ る.
準 同型 写像 φ:G→Hが GはHに
をGか
同 型 写 像 とい う.
対 して,
(eHはHの
φ に関 す る逆 像― を φ の 核(kernel)と
φ:G→Hが
準 同 型 写 像 な ら ば,φ(eG)=eHで
準 同 型 性 に よ り,
φ(eG)=eHが
出 る).ま
い う. あ る(∵e2G=
両 辺 に左 か ら φ(eG)-1を た,任
意 のg∈Gに
か け れ ば,
対 し て,
(∵
であ る
に よ る).こ
れ ら の 事 実 は,以
後,
断 り な し に 用 い られ る で あ ろ う.
命 題4.5
φ:G→Hを
準 同 型 写 像 と す る と き,kerφ
証 明 上 の 注 意 に よ り,g-1∈kerφ,g∈kerφ.ま 対 し て,
4.2.5
はGの
た,任
部 分 群 で あ る.
意 のg,h∈kerφ
に
し た が っ て,
位
並 進 群IRdや
相
■
群
線 形 リ ー 群 で は,点
列 の 収 束 と極 限 の 概 念 が 定 義 され て い る.こ
の よ う な 群 の 普 遍 化 を 考 え る. Gを
群 と す る.Gが
か らGへ の 逆 元)が 例4.17
位 相 空 間 で あ り(付 録Fを
の 写 像:
お よ びGか
と も に 連 続 で あ る と き,Gは d次 元 並 進 群IRd,ロ
群 は位 相 群 で あ る.
参 照),直 らGへ
積 位 相 空 間G×G の 写 像:
位 相 群 と呼 ば れ る.
ー レ ンツ 群O(d,1),ポ
ア ン カ レ群P(d,1),線
形 リー
4.3 量子 力学 にお ける対 称性 の原 理 的構 造
4.3.1
対 称
性
変 換
前 著[8]の3章,3.1節 空 間Hの
で 定 式 化 し た よ う に,量
射 影 空 間
子 系 の 状 態 は,ヒ の元
こ れ を 射 線 と 呼 ん だ― に よ っ て 表 さ れ る.二 率 は
―
つ の 状 態[Ψ],[Φ]の
で 与 え ら れ た([8],p.255).こ
≪[Ψ],[Φ]≫
ルベル ト
間の遷 移確
こ で は,こ
の量 を
と記 す:
(4.12) 状 態 間の 遷 移 確 率 を保 存 す る よ う な,P(H)上
の写 像 は量 子 系 の基 本 的 な 対 称 性
を表 す もの とみ る こ とが で き る.そ こで,そ の よ う な写 像 に名 前 をつ け て お く: 定 義4.6
全 単 射 な 写 像T:P(H)→P(H)で,す
べ て の
に
対 して
(4.13) を 満 た す も の をP(H)上
の 対 称 性 変 換(symmetry
P(H)上
の 対 称 性 変 換 の 全 体 をSym(H)と
"群=対
称 性"と
transformation)と
呼 ぶ.
記 す.
い う 理 念 に し た が え ば,次
の 事 実 は,対
称 性 変 換 と い う命 名
の 妥 当 性 を 支 持 す る:
命 題4.7
Sym(H)はP(H)上
の 変 換 群 で あ る.
証 明 Sym(H)⊂G(P(H))(4.2.3項 合)で
あ る か ら,任
を 示 せ ば よ い.だ
Hの
に お け るG(X)に
意 のT1,T2,T∈Sym(H)に が,こ
お い てX=P(H)の
対 して,T1T2,T-1∈Sym(H)
れ は 容 易 で あ る.
■
零 で な い 二 つ の ベ ク トル Ψ,Φ が 同 じ 射 線 に 属 す る と き,Ψ
こ と は[8]の3章,3.1節 な ら ば
で 述 べ た.H上
場
の 写 像F:H→Hに
が 成 り立 つ と き,Fを
∼ Φ と記 す
つ い て,「 Ψ ∼ Φ
同 値 性 保 存 写 像 と 呼 ぶ.
F:H→Hが
同 値 性 保 存 写 像 な らば,各 射 線[Ψ]に 対 して,射 線[F(Ψ)]は
[Ψ]の代 表 元 の選 び 方 に よ らず に一 つ 定 まる か ら,P(H)上
の 写 像Fを
(4.14) に よっ て 定 義 で きる.FをFの
誘 導 写像 と呼 ぶ.
容 易 に わ か る よ う に,F:H→Hが 件 は,各
同値 性 保 存 写 像 で あ る た め の 必 要 十 分 条
と各
に 対 して,
が あ っ て,
が 成 り立 つ こ とで あ る.
した が っ て,特
に,H全
体 を定 義 域 とす る線 形 作 用 素 お よび 反 線 形 写 像 は 同
値 性 保 存 写 像 で あ る. 次 の事 実 は容 易 に証 明 さ れ る(演 習 問題1): 命 題4.8
Fが
ユ ニ タ リ また は 反 ユ ニ タ リ な らば,Fは
な わ ち
対 称 性 変 換 で あ る.す
.
逆 に次 の 事 実 が 成 り立 つ: 定理4.9
(ウ ィ グ ナ ー-バ ー グ マ ン(Bargmann)の
Sym(H)に
対 して,H上
定 理)各 対 称 性 変 換T∈
のユ ニ タ リ また は反 ユ ニ タ リな作 用 素Uが
あって
(4.15) と 表 さ れ る.こ ち,別
の よ う な 作 用 素Uは
にT=Wと
満 た す 定 数 θ ∈[0,2π)が
す べ て ユ ニ タ リで あ る か,す
証 明 任 意 の
Ψ ご と に 一 つ 選 ぶ.す
る と,対 応
表 さ れ る.こ
ィ グ ナ ー の 定 理([8]のp.318)に 写 像θF:H→IRが れ は
に,(4.15)を
と な る
写 像 を定 義 し,し か も,遷 移 確 率 を保 存 す る.Tの
な 作 用 素Uと
あ る.特
あっ 満 た
べ て 反 ユ ニ タ リ で あ る か の ど ち ら か で あ る.
に 対 し て,
よ う な ベ ク トル ΨTを
し た が っ て,ウ
なわ
な る ユ ニ タ リ ま た は 反 ユ ニ タ リ な 作 用 素W:H→Hが
た とす れ ば,U=eiθWを すUは
指 数 因 子 を 除 い て 一 意 的 に 定 ま る.す
全 射 性 に よ り,Fは
が あ る.こ
の
はH上
の
全 射 で あ る.
よ り,ユ ニ タ リ ま た は 反 ユ ニ タ リ
存 在 して, を 意 味 す る.し
と た が っ て,T=U.
次 に,U=Wと
し よ う(Wは
ユ ニ タ リ ま た は 反 ユ ニ タ リ).こ
で あ る か ら, が あ る.U,Wの
ユ ニ タ リ 性 ま た は 反 ユ ニ タ リ性 に よ り,│aΨ│=1.し
っ て,
が た だ 一 つ 存 在 し て,
る こ と に よ り,θ(Ψ1)=θ(Ψ2)が 考 え る と,U,Wは
線 形 独 立)を
え に, 考 え
導 か れ る. と も に ユ ニ タ リ で あ る か,と
る か の ど ち ら か で あ り,か つ θ(Φ)=θ(α
たが
と 書 け る.ゆ
こ の 式 で,Ψ=Ψ1+Ψ2(Ψ1,Ψ2∈Hは
は 任 意)を
の と き,
を満 た す 複 素 数
も に 反 ユ ニ タ リで あ
Φ)が 示 さ れ る.し
た が っ て,θ(Ψ)は
に よ ら な い 定 数 で あ る.
4.3.2
射
影
表
■
現
量 子 系 にお い て,空 間 的 ま た は 時 間 的 な"操 作"あ る い は他 の何 らか の"操 作 "を 記 述 す る群Gが 与 え られ た と し よう(た とえ ば ,IRdの 原 点 に関 す る回 転 で あ れ ば,G=SO(IRd)). の空 間P(H)に
Gの 各元gに
よ って 記 述 され る操 作 に対 応 して,状 態
お け る変 換― ρ(g)と 書 こ う― が 誘 導 され る と想 定 す るの は物 理
的 にみ て 自 然 で あ る.こ の 場 合, 群 に な っ て お り,し か もGの
が 対 称 性 変 換 群Sym(H)の
部分
群 構 造 を保 存 す る もの で あ る な らば,こ れ に よっ
て,ρ は,当 該 の量 子 系 の,群Gに
関 す る対 称 性 を記 述 す る も の とみ なせ る で
あ ろ う.こ う して,次 の 定 義 に達 す る: 定 義4.10
Gを
群 とす る.写
をGのP(H)に
Gを
像
お け る 射 影 表 現(projective
群 と し,
よ っ て,各gに
representation)と
を 射 影 表 現 と し よ う.こ
対 し て,ユ
あ っ て,ρ(g)=π(g)と
い う.
の と き,定
理4.9に
ニ タ リ ま た は 反 ユ ニ タ リ な 作 用 素 π(g):H→Hが
書 け る.も
タ リ(反 ユ ニ タ リ)で あ る と き,ρ こ の 場 合,射
が 準 同 型 写 像 で あ る と き,ρ
し,す
べ て のg∈Gに
対 し て,π(g)が
を 射 影 ユ ニ タ リ(反 ユ ニ タ リ)表 現 と い う*8.
影 表 現 ρ は ユ ニ タ リ(反 ユ ニ タ リ)で あ る,と
い う.
そ の 射 影 表 現 が 常 に ユ ニ タ リ と な る よ う な 群 の ク ラ ス を 導 入 し よ う: *8 括弧 は括 弧 に対 応 させ て読 む .
ユニ
定 義4.11
群Gの
と き,Gは
各 元gに
対 し て,元h∈Gが
表 される
平 方 的 で あ る と い う.
定 理4.12
平 方 的 な 群Gの
射 影 表 現 は す べ て ユ ニ タ リで あ る.
証 明 ρ をGの
射 影 表 現 とす る.仮
と 表 さ れ る.準
同 型 性 に よ り,
ρ(g)=π(g).し
た が っ て,定 あ る.再
リ で あ る.し
た が っ て,π(h)2は
例4.18
並 進 群IRdは あ る.し
例4.19
び,定
理4.9に
た が っ て,IRdの
よ り,
方,
を満たす定 数
よ り,π(h)は
ユ ニ タ リ で あ る.ゆ
ユ ニ タ リで あ る か 反 ユ ニ タ え に,題
際,任 意 のx∈IRdに
意 が 成 立 す る. ■
対 して,x=(x/2)+
任 意 の 射 影 表 現 は ユ ニ タ リ で あ る.
対 して,d次
元 回 転 群SO(d)は
平 方 的 で あ る.し
たが っ
任 意 の 射 影 表 現 は ユ ニ タ リ で あ る.
証 明 まず,Aを (tAはAの
が 成 り 立 つ.他
平 方 的 で あ る.実
任 意 のd∈INに
て,SO(d)の
定 に よ り,各g∈Gはg=h2(h∈G)
理4.9に
θ ∈[0,2π)が
(x/2)で
あ っ て,g=h2と
任 意 のd次
の 実 交 代 行 列,i.e.,
tA=-Aを
転 置 行 列 を表 す)と す る と き,eA∈SO(d)で
形 代 数 学 で よ く知 られ て い る よ う に,各T∈SO(d)に p,r∈IN(p+2r=d)お
と 表 さ れ る(た
満 た すd次
あ る こ と に 注 意 す る*9.線 対 し て,直
よ び 定 数
と え ば,[17, p.178]).こ
の実 行 列
交 行 列Pと
定数
が あ って
こ で,Ipはp次
の単位 行列
(4.16)
と お け ば,R(θ)=eθJと
*9 正 方 行 列Aに 問 題19ま
対 して
書 け る.そ
,eA:=Σ∞n=0An/n!.[7]の1章
た は[5]の9章
演 習 問 題17を
参 照.
こで
演 習 問 題31,
[2]の2章
演習
とす れ ば,P-1TP=eY.し る.任
た が っ て,X=PYP-1と
意 の 実 数t∈IRに
た が っ て,こ
対 して,tXは
あ り,T=h2が
任 意 のN∈INに
が っ て,U(N)の
対 して,N次
元 ユ ニ タ リ群U(N)は
平 方 的 で あ る.し
意 の ユ ニ タ リ行 列U∈U(N)に
た
対
対 角 行 列
があ っ
て,
と表 さ れ る([17]の
§5,p.167の
て,X=W-1DWと
お け ば,U=eiXと
書 け る.そ
例 4.21
■
任 意 の 射 影 表 現 は ユ ニ タ リで あ る.
ニ タ リ行 列Wと
h∈U(N)で
こ で,h=eX/2
成 立 す る.
証 明 線 形 代 数 学 で よ く知 ら れ て い る よ う に,任 し て,ユ
表 され
実 交 代 行 列) .し
の 証 明 の は じめ に述 べ た 事 実 に よ り,etX∈SO(d).そ
と お け ば,h∈SO(d)で 例 4.20
お け ば,T=eXと
実 交 代 行 列 で あ る(∵Yは
あ り,U=h2が
定 理7の
応 用) .し
こ で,h=eiX/2と
たが っ お け ば,
成 り立 つ*10.
2次 の 複 素 特 殊 線 形 群SL(2,C)は
■ 平 方 的 で あ る.し
た が っ て,SL(2,C)
の 任 意 の 射 影 表 現 はユ ニ タ リ で あ る. 証 明 A∈SL(2,C)と り,2次
の 正 則 行 列Pが
α ≠0,β
る.結
∈Cは
形 代 数 学 の 一 般 論(ジ
ョ ル ダ ン標準 形 の 理 論)に
あ っ て,
定 数 で あ る.右
が 成 立 す る.た
辺がeYに
等 し い よ う な
X=0)で
書 け る.
(∵
あ る か ら,B∈SL(2,C).よ
っ て,題
意 が成 立
す る.
例 4.22
だ し,
し た が っ て,
お け ば,A=B2,B:=eX/2と
ト レ ー ス を 表 し,Tr
よ
を求 め
果 は 次 の よ う に な る:
X=P-1YPと Trは
す る.線
■
ロ ー レ ン ツ 群O(d,1)の
Λμνと 記 す(μ,ν=0,1,…,d).η 1,…,d),ημν=0,μ
≠ν
任 意 の 元Λ
を 行 列 表 示 で 考 え,そ
を(d+1)次
の 対 角 行 列 で,η00=1,ηjj=-1(j=
を 満 た す も の と す る.こ
の と き,任
の(μ,ν)成
分 を
意 のx,y∈IRd+1に
対 して
(4.17) *10 AがN次
の エ ル ミー ト行 列 な ら ば
,eiA∈U(N).
と書 け る(〈・,・〉IRd+1はIRd+1の
標 準 内 積).こ
の 事 実 を 用 い る と,(d+1)次
の正
方 行 列 Λ が ロ ー レ ンツ 写 像 で あ る た め に は
(4.18) が 必 要 十 分 で あ る こ とが わ か る. Λ ∈O(d,1)と 得 る.し
し よ う.(4.18)の
両 辺 の 行 列 式 を と る こ と に よ り,
を
たが っ て または
ま た,(4.18)の る.し
両 辺 の(0,0)成
(4.19)
分 を 考 え る と
が わ か
た が っ て,
また は そ こ で,detΛ
(4.20)
の 符 号 と Λ00の 値 域 に 応 じて,ロ
合 に 分 け る こ とが で き る.そ
ー レ ンツ 群O(d,1)を
四 つの部 分 集
の一 つ
(4.21) はO(d,1)の group)と
部 分 群 を な す(演 習 問 題2).こ
れ を 固有 ロ ー レ ン ツ 群(proper
Lorentz
呼 ぶ.
d+1=4の 定 理4.13
場 合 を 考 え よ う.こ
の 場 合,次
の事 実 が あ る:
準 同 型 写 像 φ:
で 次 の 性 質(ⅰ)∼(ⅲ)を
の が あ る:(ⅰ)φ は 全 射 で あ る.(ⅱ)各 と な るA∈SL(2,C)が
こ こ で は,紙 定 理4.13に
た だ 一 つ 存 在 す る.(ⅲ)kerφ={±I2}.
数 の 都 合 上,こ よ っ て,任
が あ る.例4.21に
満 たす も
に 対 し て,φ(A)=φ(-A)=Λ
の 定 理 の 証 明 は 割 愛 す る*11.
意 の
に 対 し て,Λ=φ(A)と
よ り,A=B2と
準 同 型 性 に よ り,T:=φ(B)と た が っ て,
な るB∈SL(2,C)が お け ば,
は 平 方 的 で あ る.ゆ
な る.A∈SL(2,C)
とれ る.し
た が っ て,φ の
で あ り,Λ=T2と え に,
書 け る.し
の 任 意 の 射 影 表 現 はユ ニ タ
リで あ る.
注 意4.2 る.こ
線 形 リ ー 群 の 概 念 の 普 遍 化 と し て,リ
れ は,大
*11 た と え ば
ざ っ ぱ に い え ば,可
,[23]のⅣ
通 読 す る 上 で は,定
ー群 な る 群 の ク ラ ス が存 在 す
微 分 多 様 体 の 構 造 が 入 る 群 で あ り,群
章 の §2あ る い は[4]の11章,11-1-2項 理4.13を
認 め て 先 に 進 ん で も 問 題 は な い.
を 参 照.だ
が,本
の演
書 を
算 と逆 元 を 対 応 さ せ る 演 算 が 連 続 で あ る よ う な 群 の こ とで あ る*12.一 な リ ー 群 は 平 方 的 で あ り,し 示 さ れ る.こ
た が っ て,そ
の 一 般 的 事 実 を使 え ば,任
般 に 連結
の 射 影 表 現 は ユ ニ タ リで あ る こ と が
意 のd∈INに
対 して,の
射
影 表 現 は ユ ニ タ リ で あ る こ とが 証 明 さ れ る.
4.3.3 Gを
ユ ニ タ リ 表 現
群 と し,ρ:G→Sym(H)を
よ う に,各g∈Gに
射 影 表 現 と す る.こ
対 し て,ρ(g)=π(g)と
ニ タ リ な 作 用 素π(g)を
一 つ 選 ぶ こ とが で き る.誘
こ と に よ り,π(g)π(h)=π(g)π(h), よ び 定 理4.9に 数 ω(g,h)が
な る,H上
よ っ て,Gの
g, h∈Gが
の と き,す
の ユ ニ タ リ ま た は反 ユ
導 写 像 の 定 義 に戻 っ て考 え る
わ か る.こ
任 意 の 元 の 対(g,h)に
で に述 べ た
れ と ρの準 同型 性 お
対 し て,絶
対 値 が1の
複素
あ って
と 表 さ れ る.群
演 算 の 結 合 則 を 用 い る と,す
べ て のf,g,h∈Gに
対 して
π(f)が ユ ニ タ リ の と き π(f)が 反 ユ ニ タ リ の と き が 示 さ れ る.一 が,そ
般 に は,ω(g,h)を
の よ う な 場 合 も あ り う る.そ
定 義4.14
写 像 π:G→u(H)が
ユ ニ タ リ表 現 と い う .こ
命 題4.15
π がGのH上
て,
の 場 合,Hを
な る よ う に 選 べ る と は 限 ら な い.だ
こ で,次
の 定 義 を 設 け る:
準 同 型 写 像 で あ る と き,π
を,GのH上
の
表 現 空 間 と い う.
で の ユ ニ タ リ 表 現 で あ る と き,任
意 のg∈Gに
対 し
が 成 り立 つ.
証 明 π の 準 同 型 性 に よ り, の ユ ニ タ リ 性 に よ り,
*12 た と え ば
常 に1と
,[14]のⅣ
(注 意4.1を
参 照).他
した が っ て,π(g-1)=π(g)*.
章 を参 照.
方,π(g) ■
Gが
位 相 群 の 場 合 の ユ ニ タ リ表 現 に は 連 続 性 の 概 念 が 伴 い う る.そ
表 現 の ク ラ ス を 定 義 す る た め に,こ
こ で,位
の よ うな
相 空 間 か ら ヒ ル ベ ル ト空 間 上 の 有
界 線 形 作 用 素 の 空 間 へ の 写 像 の 連 続 性 の 概 念 を 定 義 して お く.
定 義4.16
Xを
位 相 空 間,Hを
界 線 形 作 用 素 の 全 体)へ
(ⅰ) 各 Ψ ∈Hに
ヒ ル ベ ル ト空 間,TをXか
対 し て,Xか
らHへ
の 写 像:
ノ ル ム に よ る 通 常 の 位 相)で
continuous)で
あ る と い う.す
と に,任
の有
の 写 像 と す る.
の 強 位 相(Hの
Ψ ∈Hご
らB(H)(H上
な わ ち,Tが
意 の ε>0に
がH
連 続 の と き,Tは
強 連 続(strongly
強 連 続 で あ る と は,各x∈Xと
対 し て,
がx
の 近 傍 を 含 む こ と で あ る*13.
(ⅱ) 任 意 の Ψ, Φ ∈Hに
連 続 で あ る と き,Tは
定 義4.17
位 相 群Gの
が 強 連 続 で あ る と き,π
注 意4.3
対 して,X上
弱 連 続(weakly
の 複 素 数 値 関 数: continuous)で
ヒ ル ベ ル ト空 間Hに
が
あ る と い う.
お け る ユ ニ タ リ 表 現 π:G→u(H)
を 強 連 続 ユ ニ タ リ 表 現 と呼 ぶ.
文 献 に よ っ て,"位
相 群 の ユ ニ タ リ表 現"と
い う 言 葉 に よ っ て,強
連
続 性 も 含 め て い る 場 合 が あ る. 例4.23
ヒル ベ ル ト空 間H上
の 強 連 続1パ
ラ メ ー タ ー ユ ニ タ リ群 は,1次
元 並進 群
IRの 強 連 続 ユ ニ タ リ表 現 で あ る.
強 連 続 ユ ニ タ リ表 現 の 別 の 例 は 次 の 項 で み る こ と に し て,ユ
ニ タ リ表 現 の 強
連 続 性 を 判 定 す る た め の 命 題 を 証 明 し よ う.
命 題4.18
Xを
位 相 空 間,uをXか
らu(H)へ
の 弱 連 続 な 写 像 と す れ ば,uは
強 連 続 で あ る.
*13 点 列 収 束 で い えば て,
,
の と き,す べ て の Ψ ∈Hに 対 し が 成 り立 つ とい うこ と.た だ し,一 般 の 位 相空 間の
場 合 に は,点 列 収 束 に対 してい まの 条件 を満 た して も,強 連 続 で あ る とは い え な い.し か し,本 書 を通 読 す る上 で は,点 列収 束 の 場 合 を念 頭 に おい て い ただ け れ ば十 分 で あ る.
証 明 Ψ ∈Hとx∈Xを
任 意 に と る.u(・)の
ユ ニ タ リ性 に よ り,任
意 のy∈X
に 対 して
と評 価 で き る.一
方,仮
が 存 在 し て,y∈Uε
定 に よ り,任
意 の ε>0に
命 題4.19
が 成 り立 つ. ゆ え にuは
Xを
位 相 空 間,uをXか し,任
証 明 命 題4.18に
らu(H)へ
意 の Ψ,Φ ∈Dに
が 連 続 で あ る な ら ば,uは
の 写 像,DをHの
対 して,X上
稠密 な部分
の 関 数:
強 連 続 で あ る.
よ っ て,uの
弱 連 続 性 を 示 せ ば よ い.任
対 し て,
と お く.Dの と な る Ψn,Φn∈Dが と す れ ば,シ
意 の Ψ,Φ ∈Hに
稠 密 性 に よ り,
あ る.そ
こ で,
ュ ヴ ァ ル ツ の 不 等 式 に よ り, 任 意 の ε>0に
対 し て,番
な ら ば,
号n0が
が 成 立 す る.し さ て,x∈Xを
のy∈Xに
対 して,
関 数Fn0は
連 続 で あ る か ら,任 と な る 近 傍Vε
強 連 続 で あ る. ■
も う少 し使 い や す い 形 に し て お こ う:
空 間 と す る.も
ε>0は
近 傍Uε ,Ψ⊂X
,Ψ な ら ば
し た が っ て,
命 題4.18を
対 し て,xの
意 の ε>0に が あ る.し
が 成 立 す る.ゆ 任 意 で あ っ た か ら,こ
あ っ て, た が っ て,
任 意 に 固 定 す る.任
意
対 し て,
た が っ て,任
意 のy∈Vε
に 対 し て,
え に,
れ は,Fが
点xで
連 続 で あ る こ と を 意 味 す る. ■
4.3.4
保 測 変 換 と ユ ニ タ リ表 現
(X,B,μ)を
σ 有 限 な 測 度 空 間 と す る.写
意 のB∈Bに
対 し て,
う.φ
が 全 単 射 で,φ
像 φ:X→Xが
可 測 で あ る と は,任 が 成 り立 つ こ と を い
お よ び 逆 写 像 φ-1が
と も に 可 測 で あ る な ら ば,φ
は両 可
測 で あ る と い う. 可 測 な 写 像 φ:X→Xが 満 た す と き,φ
す べ て のB∈Bに
は 保 測(measure
対 し て,μ(B)=μ(φ-1(B))を
preserving)で
あ る と い う.こ
の 場 合,μ
は φ
に 関 し て 不 変 な 測 度 あ る い は 単 に φ-不変 測 度 で あ る と い う. 両 可 測 な 保 測 写 像 を 保 測 変 換 と呼 ぶ*14.
命 題4.20
φ:X→Xが
証 明 f:=φ-1(φ
保 測 変 換 な ら ば,φ-1も
の 逆 写 像)の
保 測 性 を 示 せ ば よ い.こ
に 対 して,
あ る か ら,φ の 保 測 性 に よ り, ゆ え にfは
例4.24 IRd上
おけ し た が っ て,
保 測 で あ る.
■
の 任 意 の 直 交 変 換T∈O(d)は,(IRd,
ベ ー グ 測 度)上
て,X上
の と き,任 意 のB∈B
が 成 り立 つ.C=φ(B)と
ば,B=φ-1(C)で
命 題4.21
保 測 変 換 で あ る.
Bd, μdL)(μdLはIRd上
のル
の 保 測 変 換 で あ る(ル ベ ー グ測 度 の 基 本 的 性 質 の 一つ) .
φ:X→XをX上
の 関 数U(φ)Ψ
の 保 測 変 換 と す る.X上
の可 測 関 数 Ψ に対 し
を
(4.22) に よ っ て 定 義 す る.こ
証 明 ま ず,任
意 のA1,…,An∈Bか
(xAはAの
とφ-1の
の と き,U(φ)はL2(X,dμ))上
保 測 性(命
ら つ く ら れ る 単 関 数(階
定義 関数 題4.20)を
αj∈Cは
意味 で 用 い る.
定 数)に
段 関 数)f=
対 し て,積
分 の定 義
用 い る こ と に よ り,
を 示 す こ と が で き る.次 *14 もっ と一般 には
の ユ ニ タ リ作 用 素 で あ る.
に,非
負 の 可 積 分 関 数fに
対 して
,保 測 な写 像 を保 測 変換 とい う場合 が あ る.本 書 で は,こ こ で定 義 した
は,こ
れ を 単 関 数 の 単 調 増 加 列 で 近 似 で き る の で,や
意 の 可 積 分 関 数fに と す れ ば,f±
は 非 負 の 可 積 分 関 数 で あ り,f=f+-f-と
す れ ば,
は 可 積 分 関 数 で あ る か ら,(*)に
こ と が わ か る.し
た が っ て,U(φ)は
で あ る か ら,U(φ)は
書 け る の で,U(φ)
成 り 立 つ.
∈L2(X,dμ)と
と 書 け る.Ψ*Φ
成 り立 つ.任
対 して,
の 線 形 性 に よ り,(*)が さ て,Ψ,Φ
は り(*)が
内 積 を 保 存 す る.さ
全 射 で あ る.ゆ
容 易 に わ か る よ う に,X上
よ り,右
え に,U(φ)は
辺 は 〈 Ψ,Φ 〉に 等 し い ら にU(φ)U(φ-1)=I
ユ ニ タ リ で あ る.
■
の 保 測 変 換 す べ て か らな る集 合
(4.23) は 群 を な す.こ X上
の 群 を(X,B,μ)上
の 全 保 測 変 換 群 と い う.GMP(X)の
部分群 を
の 保 測 変 換 群 と 呼 ぶ.
系4.22
GをX上
φ〓U(φ),φ
の 保 測 変 換 群 とす る.こ
∈GはGのL2(X,dμ)上
証 明 前 命 題 に よ り,Uの
の と き,対 応U:G→u(L2(X,dμ));U:
で の ユ ニ タ リ表 現 を 与 え る.
準 同 型 性 を だ け を み れ ば よ い が,こ
れ は容 易 で あ る. ■
例4.25 ν
∈INと
す る.任
意 のa∈IRν
に対 して,写
像Ta:IRν
→IRν
を
(4.24) に よ っ て 定 義 す る.こ (IRν,Bν,μνL)上
れ をベ ク トルaに
よ る並 進 ま た は平 行 移 動 とい う.写 像Taが
の 保 測 変 換 で あ る こ とは 容 易 に わ か る*15.し
た が っ て,L2(IRν)
上 の 写 像T(a)を
に よ っ て 定 義 す れ ば,T(・)は 数T(a)fを
関数fの,ベ
並 進 群IRν のL2(IRν)に
ク トルaに
*15 ル ベ ー グ 測 度 の 並 進 不 変 性 を 使 う .
お け る ユ ニ タ リ表 現 に な る.関
よ る 並 進 ま た は平 行 移 動 と い う.
ユ ニ タ リ表 現Tの
強 連 続 性 を 示 そ う.そ
C∞0(IRν)と す れ ば,K:=supp
の た め に,命 題4.19を
応 用 す る.g,f∈
gは 有 界 閉 集 合 で あ り,
この 右 辺 にル ベ ー グ の 優 収 束 定 理 を応 用 す る こ とに よ り,関 数: の 連 続 性 が 示 され る.C∞0(IRν)はL2(IRν)で Tは
稠 密 で あ る か ら,命 題4.19に
よ っ て,
強 連 続 で あ る.
Tの す る:
強 連 続 性 の 含 意 の 一つ を み よ う.
上 に 証 明 した 事 実 に よ り,任 意 のt∈IRに
と お く と,{Tj(t)}t∈IRは
強 連 続1パ
を ベ ク トル 空 間IRν の 標 準 基 底 と
対 して
ラ メ ー タ ー ユ ニ タ リ 群 で あ る.し
た が っ て,ス
トー ン の 定 理 に よ り
を 満 た す 自 己 共 役 作 用 素Ljが
た だ一つ 存 在 す る.任
意 の
に 対 して,
(4.25) を 示 す の は 難 し くな い*16.し はC∞0(IRν)を
た が っ て,f∈D(Lj)で
不 変 に して い る の で,
等 式
が 成 り立 つ.こ
運 動 量 作 用 素 のj成
分 で あ る.よ
あ り,
はLjの こで,pjは
芯 で あ る.ゆ
え に,作
用素 の
シュ レーデ ィンガー表現 にお け る
って
(4.26) こ う して,運
動 量 作 用 素pjの(-1)倍
は,ν 次 元 並 進 群 の ユ ニ タ リ表 現Tの
第j座
標 の 並 進 の 生 成 子 で あ る こ とが わ か る. 任 意 のa∈IRν
*16 K
=supp fと
は
お け ば,Kは
と書 け る の で
有 界 で あ り
とす れ ば
右 辺 の 積 分 の被 積 分 関 数 をFt(x)と す れ ば, かつ したが っ て,ル ベ ー グの優 収 束 定 理 に よ り,(4.25)が 得 られ る.
が 成 り立 つ.一
方,pjとpkは
強 可換 で あ ったか ら
(4.27) と な る.た
だ し,
で あ り,apはapの
閉 包― これ は 自 己 共 役― を
表 す. 例4.26
d次 元 直 交群O(d)は(IRd,
Bd, μdL)上 の 保 測 変 換 群 で あ る.ル
の 直 交 変 換 不 変 性 に よ り,φ をO(d)の U:O(d)→u(L2(IRd))はO(d)の 続 で あ る.こ
元 と し て,(4.22)に
ユ ニ タ リ表 現 を与 え る.し
れ に 対 す る証 明 の 方 法 は,例4.25の
例4.27 IRd上
ベ ーグ測度
よっ て定 義 され る対応 か も,こ の 表 現 は 強 連
そ れ と 同 様 で あ る(演 習 問 題3).
の 空 間 反 転Iは
(4.28) に よ っ て 定 義 さ れ る.集
合
(4.29) は位 数2の
群 で あ る.こ
れ を空 間 反 転 群 と 呼 ぼ う,こ れ はO(d)の
は保 測 変 換 で あ るの で,φ をGspの
元 と して,(4.22)に
部 分 群 で あ る.I
よ って 定 義 され る 作 用 素U(φ)
は 空 間 反 転 群 の ユ ニ タ リ表 現 を 与 え る. 容 易 に わ か る よ う に,U(I)は
自己 共 役 で も あ る.ユ
ニ タ リ作 用 素 の ス ペ ク トル は
複 素 平 面 の 単 位 円 周 内 に含 ま れ,自 己 共 役 作 用 素 の ス ペ ク トル は 実 数 の 部 分 集 合 で あ る か ら,
で な け れ ば な ら な い.一
方,
で あ る.し
た
が って
(4.30) を得 る.ゆ
え に,
と直 和 分 解 で きる.量 の 状 態, 例4.28
をU(I)の
固 有 値 ±1に 属 す る 固 有 空 間 とす れ ば
子 力 学 に お い て は,
の 元 を パ リテ ィ が 負(ま SNをN次
よ う.σ ∈SNに
の 対 称 群(す な わ ち,N文 対 し て,IRdのN個
の 元 を パ リ テ ィ が 正(ま
た は偶)
た は 奇)の 状 態 とい う. 字 の 置 換 全 体 か ら な る 置 換 群)と
の 直 積IRdN=IRd×
…
×IRd上
し
の変換 σが
(xj∈IRd,j=1,…,N)に 変 換 で あ り,対
よ っ て 定 義 さ れ る.こ
応 σ → δ はSNの,IRdN上
れ は(IRdN,BdN,μLdN)上
で の 表 現 に な っ て い る.し
の保 測 たが って
(4.31) とす れ ば,SNはIRdNの 定 義 さ れ るU(σ)を
保 測 変 換群 で あ る.ゆ あ ら た め てU(σ)と
す べ て の σ ∈SNに る と い い,ま
た,す
の 関 数 ψ は 反 対 称 で あ る とい う.こ [8]の4章,4.1節
書 け ば,こ れ はSNの
対 して,U(σ)ψ=ψ べ て の σ ∈SNに
え に,φ=δ
と し て(4.22)に
よって
ユ ニ タ リ表 現 を与 え る.
を 満 た す,IRdN上
の関数 ψ は対 称で あ
対 して,U(σ)ψ=ε(σ)ψ
を 満 た す,IRdN上
こ で ε(σ)は置 換 σ の 符 号 を 表 す.こ
れ は,前 著
に 現 れ た,対 称 状 態 関 数 あ る い は 反 対 称 状 態 関 数 の 表 現 論 的 特 徴 付
け を 与 え る.
4.3.5
回 転 群 の 強連 続 ユ ニ タ リ表 現 と一 般 軌 道 角 運 動 量
d次 元 回転 群SO(d)の
強 連 続 ユ ニ タ リ表 現 の あ る一 般 的 構 造 にふ れ て お く.
Hを 複 素 ヒ ル ベ ル ト空 間 と し,UをSO(d)の,Hに
お け る任 意 の強 連 続 ユ ニ タ
リ表 現 とす る. 1〓j
し,IRdに
の 写 像 をRjk(θ)と
し,y=Rjk(θ)(x),x∈IRdと
お い て,xj-xk平
容 易 に わ か る よ う に,Rjk(θ)∈SO(d)で
面 の 角 度 θの 回 転 を 考 え る.こ す れば
あ り
(4.32) が 成 り立 つ.そ
こで
と お け ば,{Ujk(θ)│θ こ と が わ か る.し
∈IR}はH上
た が っ て,ス
の 強 連 続1パ
ラ メー タ ーユ ニ タ リ群 で あ る
トー ン の 定 理 に よ り
(4.33) を 満 た す 自 己 共 役 作 用 素Ljkが
た だ 一 つ 存 在 す る.物 理 的 に は,Ljkの
(Ljk)j,k,j≠kは 状 態 の ヒ ル ベ ル ト空 間Hに
組
お け る,普 遍 化 され た 意 味 で の 軌
道 角 運 動 量 と解 釈 さ れ る も の で あ る の で,こ 呼 ぶ.Ljkの
ス ペ ク トル に つ い て,表
れ をHに
お け る一 般 軌 道 角 運 動 量 と
現 の 如 何 に 関 わ ら ず,次
の事 実 が 成 立 す
る の は 興 味 深 い:
定 理4.23
各j,k=1,…,d(j≠k)に
n:=dimH<∞
対 し て,σ(Ljk)=σp(Ljk)⊂
な ら ば,Ljkの
相 異 な る 固 有 値 は 高 々n個
算 無 限次 元 で あ れ ば,σ(Ljk)=σp(Ljk)は
証 明 任 意 の θ ∈IRに e-iθLjk.し ⊂ 〓.ゆ
え に 題 意 が 成 立 す る.後
で あ り,Hが
あ る か ら,e-i(θ+2π)Ljk=
れ と ス ペ ク トル 写 像 定 理 に よ り,σ(Ljk) 半 の 言 明 は,前
半 の 結 果 と ス ペ ク トル 定 理 か
ら容 易 に 導 か れ る.
4.3.6
可
〓 の 可 算 無 限 部 分 集 合 で あ る.
対 し て,Rjk(θ+2π)=Rjk(θ)で
た が っ て,e-2πiLjk=I.こ
〓.
■
時 間 反 転 と 反 ユ ニ タ リ作 用 素
群 の 射 影 表 現 に お い て,反 ユ ニ タ リ作 用 素 が 現 れ る 重 要 な 例 を 一 つ 述 べ て お く. (d+1)次 お い て,写
元 時 空
に
像Itime:IRd+1→IRd+1を
に よ っ て 定 義 し,こ れ を時 間 反 転 と 呼 ぶ.明 し か し,Itime ,SO(d+1).ま
らか に,Itime∈O(d,1)∩O(d+1). た,各t∈IRに
対 し て,写
Tt:IRd+1→IRd+1を
に よ っ て 定 義 し,こ れ を時 間tに よ る時 間 並 進 と呼 ぶ.容 易 に わ か る よ うに
し た が っ て,特
に,Itime,
Ttは
い ず れ も全 単 射 で あ り
像
が 成 り立 つ.ゆ
と お け ば,こ
えに
れ は 群 を な す.こ
ン カ レ群p(d,1)の さ て,Hを
の 群 を 時 間 反 転-時 間 並 進 群 と呼 ぶ.こ
れ はポ ア
部 分 群 で あ る.
ヒ ル ベ ル ト空 間 と し,Gtimeの
が 与 え ら れ た と し よ う.し
射 影 表 現ρ:Gtime→Sym(H)
た が っ て,各g∈Gtimeに
対 して,H上
リ 作 用 素 ま た は 反 ユ ニ タ リ 作 用 素π(g)が
あ っ て,ρ(g)=π(g)と
T:=π(Itime),U(t):=π(Tt)と
の と き,各t∈IRに
お こ う.こ
を 満 た す 実 数 θ(t),ξ(t)∈[0,2π)が
あ る.(*)に
のユ ニ タ 表 さ れ る.
対 して
よ っ て,π(ItimeTt)=π(T-tItime)
で あ るか ら
た だ し,x(t):=θ(t)-ξ(-t). い ま,対
応:t〓U(t)はIRの
自 然 な 仮 定).す
を満 たす,H上
強 連 続 ユ ニ タ リ表 現 で あ る 仮 定 し よ う(こ れ は
る と ス トー ン の 定 理 に よ り
の 自己 共 役 作 用 素Hが
学 の コ ンテ クス トで は,ハ
た だ 一 つ 存 在 す る.こ のHは,量
子力
ミル トニ ア ン と解 釈 さ れ る もの で あ る.上 の 結 果 に
より
U(t+s)=U(t)U(s)=U(s)U(t),t,s∈IRお x(t)=0,∀t∈IRが Tが
よ び│x(t)│〓4π
わ か る.
ユ ニ タ リ作 用 素 で あ る と し て み よ う.す
共 変 性 に よ り,上 σ(-H)…(**).し
を 用 い る と,
の 式 は,THT-1=-Hを か し,も
立 し な い(∵E0(H):=infσ(H)>-∞
し,Hが
る と,作
用素 解析 のユ ニ タ リ
導 く.し
た が っ て,σ(H)=
非 有 界 か つ 下 に 有 界 な ら ば,こ と し,(**)が
れ は成
成 り立 つ と す れ ば,
-E0(H)∈σ(H)
.し
た が っ て,E0(H)〓-E0(H),
に 非 有 界 で あ る か ら,E>-E0(H)と (**)に
よ っ て,-E∈
よ っ て,次 て,ハ
i.e., E0(H)〓0.
な るE∈
σ(H).だ
σ(H)が
が,-E<E0(H)で
の 興 味 深 い 結 論 に 到 達 す る:時
あ る.す
な 構 成 法 に つ い て は,演
あ る か ら,こ
先 に 進 む 前 に,こ
こ で,群
び,
れ は 矛 盾).
間 反 転 は反 ユ ニ タ
間 反 転 を 記 述 す る 反 ユ ニ タ リ作 用 素 の 具 体 的
習 問 題8を
4.4
る と,再
上
間 反 転-時 間 並 進 群 の 射 影 表 現 に お い
ミル トニ ア ン が 非 有 界 か つ 下 に 有 界 で あ る な ら ば,時
リ 作 用 素 に よ っ て 記 述 さ れ る.時
Hは
参 照.
一 般 の 表 現
の ユ ニ タ リ 表 現 を そ の 一 分 節 と し て 含 む,一
般の
表 現 の 概 念 に つ い て 簡 単 に ふ れ て お こ う.
4.4.1
定
IK=IRま る.Gか
義 た はCと
らV上
(〓,V)を 群GのV上 (IK=C)の
群,V≠{0}をIK上
実 表 現(複
こ の 場 合,も
し,す
い う*18.〓
が 単 射 で あ る と き,
い う.
場 合 に は,(〓,H)をGの
べ て のg∈Gに
組
表 現 空 間 と い う*17.IK=IR
素 表 現)と
忠 実 で あ る(faithful)と
ヒ ル ベ ル ト空 間Hの
の ベ ク トル 空 間 と す
の 準 同 型 写 像〓 と ベ ク トル 空 間Vの
で の 表 現 と い い,VをGの
場 合(〓,V)を
表 現(〓,V)は Vが
す る.Gを
の 一 般 線 形 群GL(V)へ
ヒル ベ ル ト空 間 表 現 と い う.
対 し て,〓(g)∈B(H)な
ら ば,表
現(〓,H)
を 有 界 表 現 と呼 ぶ.
注 意4.4
dimV<∞
な ら ば,Vは,Vに
空 間 と み る こ と が で き,V上
入 る任 意 の 内積 に よ っ て ヒル ベ ル ト
の 線 形 作 用 素 は こ の 内 積 に 関 して 有 界 で あ る の で,
群 の 有 限次 元 表 現 は 有 界 な ヒ ル ベ ル ト空 間 表 現 と み な せ る. 例4.29
Vを ベ ク トル 空 間 と し,GをGL(V)の
*17 す で に 定 義 し た ユ ニ タ リ表 現 は あ る. *18 括 弧 に は 括 弧 を対 応 さ せ て 読 む
,Vが
.
部 分 群 とす る.こ の と き,各T∈G
ヒ ル ベ ル ト空 間,〓(g)が
ユ ニ タ リ作 用素 の場 合 で
に対 して,〓(T):=Tと Gの
す れ ば,こ
れ は,V上
で のGの
表 現 を与 え る.こ
の表 現 を
恒 等 表 現 と い う.
例4.30
空 で な い 集 合X上
のIK値
ベ ク トル 空 間 で あ る.GをX上
関 数 の 全 体 をF(X;IK)と
の 変 換 群 と す る.任
記 す.こ
意 のg∈Gに
れ はIK上
の
対 し て,T(g):
F(X;IK)→F(X;IK)を
に よ っ て 定 義 す れ ば,(T,F(X;IK))はGの
群Gの
表 現(〓,V)は,Vが
表 現)で
あ る と い い,Vが
(〓,V)をGの 間Mを
表 現 で あ る.
有 限次 元(n次
表 現 と し よ う.す
べ て のg∈Gに
不 変 に す る と き― こ の 場 合,Mは〓-不
う―,す
な わ ち,Ψ
元)な
ら ば 有 限 次 元 表 現(n次
元
無 限 次 元 な ら ば 無 限 次 元 表 現 で あ る と い う.
∈Mな
の 不 変 部 分 空 間 と い う.こ す れ ば,(〓M,M)は,群Gの
ら ば〓(g)Ψ
∈Mが
対 し て,〓(g)がVの
部分 空
変 ま た は〓(G)-不
変 で あ る とい
成 り立 つ と き,Mを
表 現(〓,V)
の 場 合,〓M(g):=〓(g)│M(〓(g)のMへ
の 制 限)と
一 つ の 表 現 に な る.
表 現 を 類 別 す る 上 で の 基 本 的 な 概 念 を 導 入 して お く.
定 義4.24
(〓,H),(σ,K)を
群Gの
な 有 界 線 形 作 用 素T:H→Kが ら ば,二
ヒ ル ベ ル ト空 間 表 現 と す る.も
あ っ てT〓(g)=σ(g)T,∀g∈Gが
つ の 表 現(〓,H),(σ,K)は
用 素 の と き は,(〓,H),(σ,K)は
同 値 で あ る と い う.特
れ ぞ れ,Gの
に 一 つ の 同 値 関 係 を 定 義 す る こ とが わ か る.し
ど う し は,外
4.4.2
に,Tが
ユ ニ タ リ作
ヒ ル ベ ル ト空 間 表 現 の 集 合 ヒ ル ベ ル ト空 間
つ の 同 値 類 に属 す る表 現
質 的 に 同 じ も の と 解 釈 さ れ る.
表 現 の 可 約性 と既 約 性
表 現 の 同 値 性 の 概 念 に 加 え て,群 す る.
成 り立 つ な
た が っ て,Gの
の 同 値 関 係 に よ っ て 類 別 さ れ る.一
見 は 異 な っ て も,本
単射
ユ ニ タ リ 同 値 で あ る と い う.
こ こ で 定 義 し た 同 値 性 の 概 念 は,そ
表 現 の 集 合 は,こ
し,全
の 表 現 を解 析 す る上 で の 重 要 な概 念 が 存 在
(〓,V)をGの
表 現 とす る.こ
分 空 間 で あ る.こ
の と き,明
ら か に,Vと{0}は,(〓,V)の
れ ら を 自 明 な 不 変 部 分 空 間 と呼 ぶ.Vが
が 非 自 明 な 不 変 部 分 空 間 を も た な い と き,こ と い う.既
約 で な い 表 現(〓,V)は
約 で あ る と い う.そ 表 現(〓,H)に
ある
あ る と い う.
自 明 な 不 変閉 部 分 空 間 を も た な い と き,既
う で な い 場 合 に は,(〓,H)は
お い て,そ
有 限次 元 で 表 現(〓,V)
の 表 現 は 既 約(irreducible)で
可 約(reducible)で
ヒ ル ベ ル ト空 間 表 現(〓,H)は,非
不変部
可 約 で あ る と い う.
の 任 意 の 不 変 閉 部 分 空 間Mに
も不 変 部 分 空 間 で あ る と き,(〓,H)は
対 し て 直 交 補 空 間M⊥
完 全 可 約 で あ る と い う(既 約 表 現 は 完 全 可
約 表 現 の 特 別 な 場 合 で あ る). 例4.31
任 意 の 群 の1次
例4.32
(〓,H)を 群Gの
ル Ψ,Φ ∈H\{0}に
元 表 現 は既 約 で あ る.こ
れ は 既 約 表 現 の 自 明 な例 で あ る.
ヒ ル ベ ル ト空 間 表 現 とす る.も
対 して,〓(g)Ψ=Φ
し,任 意 の 零 で な い ベ ク ト
を満 た すg∈Gが
あ る な ら ば,(〓,H)は
既
約 で あ る. 証 明 M≠{0}をHの〓-不
変 な 閉 部 分 空 間 と す る.こ
い.そ
任 意 に と る.仮
こ で,Ψ
∈H\{0}を
て,Ψ=〓(g)Φ
と な るg∈Gが
て,H⊂M(0∈Mは
命 題4.25 満 た す,有
あ る.右 辺 はMの
自 明).よ
Hが
示せ ば よ
元 で あ る か ら,Ψ
∈M.し
対 し たが っ
っ て,M=H.
有 限次 元 で,(〓,H)が
対 し て,表
■
完 全 可 約 な ら ば,次の
限 個 の 不 変 部 分 空 間M1,…,MNが
(ⅰ) 各n=1,…,Nに
の と き,M=Hを
定 に よ り,任 意 の Φ ∈M\{0}に
性 質(ⅰ),(ⅱ)を
存 在 す る:
現(〓Mn,Mn)は
既 約 で あ る.
(ⅱ)
注 意4.5
Hが
有 限次 元 な ら ば,L(H)(例4.5のL(V)でV=Hの
は す べ て 有 界 で あ る の で,(〓,H)は
証 明 仮 定 に よ り,非 て,〓(g)は て,は
自 明 な 部 分 空 間Mが
有 界 作 用 素 で あ る か ら,Mの
じ め か らMは
分 解 で き る.も
存 在 す る.す
既 約 で な け れ ば,同
空 間 の 直 和 に 分 解 で き る.(〓M⊥,M⊥)に
べ て のg∈Gに
閉 包 も不 変 部 分 空 間 で あ る.し
閉 と し て 一 般 性 を 失 わ な い.ゆ
し,(〓M,M)が
場 合)の
元
必 然 的 に 有 界 表 現 で あ る.
え にH=M 様 に し て,Mを
つ い て も 同 様 で あ る.い
M⊥
対 し たが っ と直 交
不変閉部分 ま,Hは
有 限
次 元 で あ るか ら,こ の 手 続 きは有 限 回で 終 了 し,つ い には,Hは,(〓Mn,Mn)が 既 約 で あ る よ う な閉 部 分 空 間Mnの 命 題4.25の
直和 に分 解 され る.
結 論 が 成 り立 っ て い る と き,各〓Mnを〓
■
の既 約 成 分 とい い,〓 は
既 約 成 分(表 現)の 直 和 に 分 解 さ れ て い る とい う. 定 理4.26 (U,H)が
Hを
ヒ ル ベ ル ト空 間 とす る(無 限次 元 で も よ い).ユ
ニ タ リ表 現
可 約 な ら ば,そ れ は 完 全 可 約 で あ る.
証 明 Mを(U,H)の のg∈G,Ψ
任 意 の 非 自 明 な 不 変 部 分 空 間 と す る.こ
∈M⊥,Φ
∈Mに
対 し て,命
<Ψ,U(g-1)Φ>.仮
定 に よ り,U(g-1)Φ
た が っ て,U(g)Ψ
∈M⊥.ゆ
命 題4.25と
題4.15に
∈Mで
定 理4.26に
よ っ て,有
べ て
よ っ て,
=
あ る か ら,右
え に,U(g)はM⊥
の と き,す
辺 は0で
あ る.し
を 不 変 に す る.
■
限 次 元 ユ ニ タ リ表 現 に お い て は,そ
の既
約 表 現 だ け を 問 題 に す れ ば よ い こ とが 結 論 さ れ る.
4.4.3 IK上
既 約 性 の特 徴 づ け
の ベ ク トル 空 間V,
Wに
対 して,V全
線 形 作 用 素 の 全 体 をL(V,W)と
す る(例4.5で
体 を 定 義 域 と す る,Vか
らWへ
導 入 し たL(V)はL(V,V)に
の ほか
な ら な い). 次 の 補 題 は 群 の 表 現 の 既 約 性 を 論 じ る 上 で 基 本 と な る も の で あ る.
補 題4.27 を 群Gの
(シ ュ ー ア の 補 題)V,
WをIK上
二 つ の 既 約 表 現 と す る.線
の ベ ク トル 空 間 と し,(〓,V),(σ,W)
形 作 用 素A∈L(V,W)が
す べ て のg∈G
に対 して
(4.34) を 満 た す な ら ば,Aは
証 明 (4.34)を わ か る.し ker A=Vな
全 単 射 で あ る か,A=0の
用 い る と,Aの
核ker
Aは(〓,V)の
た が っ て,〓 の 既 約 性 に よ り,ker ら ば,A=0で
あ る.そ
ど ち ら か で あ る.
A={0}ま
こ で,A≠0の
不 変 部 分 空 間 で あ る こ とが た はker
A=V.も
場 合 を 考 え る.こ
し, の と き,
ker A={0}で (σ,W)の
あ る か ら,Aは
単 射 で あ る.Aの
不 変 部 分 空 間 で あ る.し
た はA(V)=W.い
ま,A≠0で
し た が っ て,Aは
た が っ て,σ
像A(V)は,(4
.34)に
よ っ て,
の 既 約 性 に よ り,A(V)={0}ま
あ る か ら,A(V)=Wで
な け れ ば な らな い .
全 射 で あ る.
■
シ ュ ー ア の 補 題 か ら種 々 の 事 実 を 導 く こ と が で き る.
定 理4.28
Vを
こ の と き,す
べ て のg∈Gに
作 用 素 で あ る.す
有 限次 元 複 素 ベ ク トル 空 間,(〓,V)を
な わ ち,す
対 して〓(g)と
群Gの
既 約 表 現 と す る.
可 換 な 線 形 作 用 素A∈L(V)は
べ て のg∈Gに
定数
対 して
(4.35) が 成 り立 つ な ら ば,あ
証 明 Aの
る λ ∈Cが
成 り立 つ.
固 有 値 の 一 つ を λ と し,B=A-λIと
〓(g)B=B〓(g),∀g∈G.し Bは
あ っ て,A=λIが
全 単 射 で あ る.だ
た が っ て,シ が,Bは
す れ ば,(4.35)に
よ り,
ュ ー ア の 補 題 に よ り,B=0ま
全 単 射 で は な い の で,B=0,す
たは
な わ ち,A=λI
で な け れ ば な ら な い.
■
こ の 定 理 の 無 限次 元 版 は次 の 定 理 に よ っ て 与 え ら れ る. 定 理4.29
Hを
複 素 ヒ ル ベ ル ト空 間,(〓,H)を
こ の と き,す
べ て のg∈Gに
対 し て〓(g)と
群Gの
既 約 な 有 界 表 現 とす る.
可 換 な 有 界 線 形 作 用 素A∈B(H)
は 定 数 作 用 素 で あ る.
証 明 Aの
ス ペ ク トル σ(A)は
λ と し,B=A-λIと
お く.こ
定 理 の 証 明 と 同 様 に して,B=0,す
系4.30
空 で な い の で([7]の の と き,Bは
定 理2.21-(ⅱ)),そ
全 射 で は な い.し
な わ ち,A=λIで
た が っ て ,前
な け れ ば な ら な い. ■
可 換 群 の 既 約 で 有 界 な 複 素 ヒ ル ベ ル ト空 間 表 現 は す べ て1次
証 明 Gを
可 換 群 と し,(〓,H)を
g,h∈Gに
対 して,〓(g)〓(h)=〓(h)〓(g)で
題 意 に い う 表 現 と す る.こ あ る か ら,定
の一 つ を
元 で あ る.
の と き,任
理4.29に
意の
よ っ て,あ
る 定 数 λ(g)∈Cが 分 空 間 は〓(g)の
あ っ て〓(g)=λ(g)Iと 作 用 で 不 変 で あ る.こ
な る.し
た が っ て,Hの
す べ て の部
れ と既 約 性 を 合 わ せ れ ば,dimH=1で
な け れ ば な ら な い. 例4.33
■
2次 元 回 転 群
(4.36) (R(θ)は(4.16)に
よ っ て 定 義 さ れ る)の 既 約 で 有 界 か つ 強 連 続 な複 素 ヒル ベ ル ト空
間表 現 は
に よ っ て 与 え ら れ る1次 証 明 SO(2)は
元 表 現(〓m,C)(m∈〓)に
可 換 群 で あ るか ら,定 理4.29に
ト空 間 表 現 は1次
元 で あ る.い
限 る. よ っ て,そ の 既 約 で有 界 な 複 素 ヒ ルベ ル
ま,こ れ を(〓,C)と
す る.こ
とす れ ば,準 同型 性 に よ り,f(θ+φ)=f(θ)f(φ),θ,φ 意 の 有 理 数q∈IRに
対 して,f(q)=f(1)qと
に 対 して,f(θ)=f(1)θ
あ っ て,f(1)=eimを
∈IRが 成 り立 つ.こ
意 味 す る.し
対 し て,f(θ+2π)=f(θ)
な け れ ば な ら な い.こ
れ は,あ る 整 数mが
た が っ て,f(θ)=eimθ.
■
次 の 定 理 は,群
の 表 現 の 既 約 性 の 判 定 に と っ て 有 用 で あ る.
定 理4.31
ヒ ル ベ ル ト空 間,(〓,H)を
Hを
れ か ら,任
な る.連 続 性 に よ り,任 意 の実 数 θ∈IR
が 得 ら れ る.任 意 の θ ∈IRに
で あ る こ と に 注 意 す る と,f(1)2π=1で
の と き,f(θ)=〓(R(θ))
群Gの
完 全 可 約 な 有 界 表 現 とす る.
こ れ が 既 約 で あ る た め の 必 要 十 分 条 件 は,す べ て の〓(g)と
可 換 で あ るA∈L(H)
が 定 数 作 用 素 と な る こ と で あ る.
証 明 条 件 の 必 要 性 は す で に 示 し た の で,十 こ で,〓 M⊂Hが Mへ
が 既 約 で な い と す れ ば,そ あ っ て,す べ て のg∈Gに
の 正 射 影 作 用 素 をPと
しか し,P≠0, Iで
偶 を 証 明 し よ う.そ
の 完 全 可 約 性 に よ り,非 対 し て,〓(g)はMお
す れ ば,補
あ る の で,Pは
分 性 を 示 す.対
題3.10に
自明 な閉 部 分 空 間
よ びM⊥
を 不 変 に す る.
よ り,P〓(g)=〓(g)P,g∈G.
定 数 作 用 素 で な い.す
な わ ち,す べ て の〓(g)
と可 換 な 定 数 作 用 素 で な い 作 用 素 の 存 在 が 示 さ れ た こ と に な る.
■
4.5 物 理 量 の 対 称性
次 に 物 理 量 の 対 称 性 を 定 式 化 し よ う.ま は 自 己 共 役 作 用 素 で 表 さ れ る か ら,抽
ず,抽
象 的 な 構 造 を 述 べ る.物
象 的 に は,自
理量
己共 役 作 用 素 と群 の ユ ニ タ
リ表 現 の 関 係 を 調 べ れ ば よ い.
4.5.1
自 己 共 役 作 用 素 の群 対 称 性
以 下,Gを
群,Hを
定 義4.32
BをH上
UBU-1=Bが
ヒ ル ベ ル ト空 間 と す る.
の 線 形 作 用 素 と す る.H上
成 り立 つ と き,BはU-不
次 の 命 題 は,具
の ユ ニ タ リ作 用 素Uが
あって
変 で あ る と い う.
体 的 な コ ン テ ク ス トに お い て 現 れ る 作 用 素AのU-不
変性 を
確 か め る の に 有 用 で あ る.
命 題4.33
AをH上
自 己 共 役 で,UがAと
(ⅰ) Aが
ら ば,AはU-不
の 線 形 作 用 素,UをH上 強 可 換,す
な わ ちUA⊂AUが
成 り立 つ な
変 で あ る.
(ⅱ) UA⊂AUか
つU-1A⊂AU-1な
証 明 (ⅰ)仮 定 に よ り,任
た が っ て,A⊂U-1AU…(*).右
U-1AUで
な け れ ば な ら な い.こ
(ⅱ)(ⅰ)でUの
か わ りにU-1を
れ は,U-1AU⊂Aを
ら ばAはU-不
意 の Ψ ∈D(A)に
UAΨ.し
立 つ.こ
の ユ ニ タ リ 作 用 素 と す る.
変 で あ る.
対 して,UΨ
∈D(A)か
つAUΨ=
辺 も 自 己 共 役 で あ る か ら,A= れ はUAU-1=Aと 考 え る と(*)に
意 味 す る.こ
同 値 で あ る*19. 加 え て,A⊂UAU-1が
れ と(*)に
成 り
よ り,A=U-1AUを
得 る.
■
具 体 的 な 問 題 で 有 用 に な る 一 つ の 事 実 を証 明 し て お く.
*19 H上 の 線 形 作 用 素B WBW-1=WCW-1が
, CがB=Cを 満 たせ ば,任 意 の ユ ニ タ リ作 用 素Wに 成 り立 つ.
対 して,
補 題4.34
Hを
ヒ ル ベ ル ト空 間,AをH上
の 閉 作 用 素 と し,DをAの
の 芯 と す る.ユ
ニ タ リ 作 用 素UがUAΨ=AUΨ,∀
UA⊂AU.し
た が っ て,特
に,Aが
証 明 任 意 の Ψ ∈D(A)に AΨ(n→∞)を n→∞ て,Aの
対 し て,ベ
定 義4.35
∈D(A)か
後 の 主 張 は,い
群Gの
補 題4.36
AをH上
す と す る.λ
つAUΨ=UAΨ.こ
をTの
Ψ,AΨn→ 辺 は,
ま の 結 果 と命 題4.33-(ⅰ)に
称 性 の(一
存 在 し て,す
つ の)表
たがっ れ はUA⊂AUを
変 で あ る と き,AはG-対
の 場 合,(U,H)をAのG-対
Ψn→
た,UΨn→UΨ(n→∞).し
ユ ニ タ リ表 現(U,H)が
上 の 線 形 作 用 素AがU(g)-不
変 で あ る.
定 に よ り,UAΨn=AUΨn.左
に 収 束 す る.ま
閉 性 に よ り,UΨ
意 味 す る.最
ク トル 列 Ψn∈Dで
一 つ
満 た す な ら ば,
自 己 共 役 な ら ば,AはU-不
満 た す も の が とれ る.仮
の と き,UAΨ
Ψ ∈Dを
よ る.
■
べ て のgに
対 し て,H
称 性 を も つ と い う.こ
現 と呼 ぶ.
の 自 己 共 役 作 用 素 と し,T∈B(H)はTA⊂ATを 固 有 値 と す る.こ
の と き,Tの
満 た
固 有 空 間ker(T-λ)はA
を 簡 約 す る.
証 明 M=ker(T-λ)と り,任
意 のt∈IRに
Ψ ∈Hに
お き,M上
へ の 正 射 影 作 用 素 をPと
対 して,TeitA=eitATが
対 し て,TeitAPΨ=λeitAPΨ.し
PeitAPΨ=eitAPΨ.こ
あ ら た め てtと
意 味 す る.し
た が っ て,eitAPΨ
す れ ば,eitAP=PeitAが
た が っ て,MはAを
定 によ
た が っ て.任
れ は 作 用 素 の 等 式PeitAP=eitAPを
の 共 役 を と り,-tを はPA⊂APを
成 り 立 つ.し
す る.仮
意の
∈M.ゆ
え に
意 味 す る.こ 得 ら れ る.こ
簡 約 す る.
れ ■
こ の 補 題 の 簡 単 な 応 用 と し て次 の 命 題 が 得 ら れ る:
命 題4.37
H上
の 自 己 共 役 作 用 素AはG-対
称 性 の 表 現 とす る.こ
の と き,Aは
次 の 事 実 も有 用 で あ る:
各U(g)の
称 性 を も つ と し,(U,H)を
その 対
固 有 空 間 に よ っ て 簡 約 さ れ る.
命 題4.38
H上
表 現 とす る.λ はGの
の 閉 作 用 素AはG-対
をAの
固 有 値,Hλ
称 性 を もつ と し,(U,H)を を そ の 固 有 空 間 とす る.こ
そ の対 称 性 の
の と き,(UHλ,Hλ)
ユ ニ タ リ表 現 で あ る.
証 明 AのG-対
称 性 に よ り,Hλ
は(U,H)の
不 変 部 分 空 間 に な る.し
た が っ て,
(UHλ,Hλ)はGの
ひ と つ の ユ ニ タ リ 表 現 を 与 え る.
命 題4.38は,量
子 力 学 へ の応 用 にお い て,た とえ ば,次 の よ う に使 う こ とが
で きる:も し,dim
■
Hλ が 有 限 な らば,(UHλ,Hλ)は,Gの
有 限次 元 ユ ニ タ リ表
現 で あ る か ら完 全 可 約 で あ り,有 限個 の既 約 表 現 の 直和 に分 解 さ れ る.し たが っ て,も
し,Gの
有 限 次 元 ユ ニ タ リ表 現 の 既 約 表 現 の種 類 が あ らか じめ 別 の 方 法
で わ か っ て い れ ば,dim
Hλ の 可 能 な値 が わ か る.つ
ま り,固 有 値 λ の縮 退 度
(多 重 度)の 可 能 な値 が 知 られ る の で あ る.
4.5.2 IRか
動 力 学(時
間 発 展)の
対称性
ら複 素 ヒ ル ベ ル ト空 間Hへ
と 記 す.こ
れ は,ベ
の 写 像(IR上
のH-値
関 数)の 全 体 をMap(IR;
ク トル 値 関 数 の 和 と ス カ ラ ー 倍 に よ っ て,複
H)
素 ベ ク トル 空
間 に な る*20. 各 写 像T:H→Hに
対 し て,Map(IR;
H)上
の 写 像Tが
(4.37) に よ っ て定 義 され る.こ れ をTの
持ち 上 げ とい う.
IR上 の 強 連 続 なH-値 関 数 の 全 体 をC(IR; H)で 表 す:
Fは 強連続}. こ れ は,幾
何 学 的 に は,H内
*20 任 意 のF ,G∈Map(IR;H)と H,(αF)(t):=αF(t)∈H,t∈IR.零
(4.38)
の 曲 線 の 全 体 と 解 釈 さ れ る*21.
α ∈Cに
対 し て,(F+G)(t):=F(t)+G(t)∈ ベ ク トル は,す べ て のt∈IRに
対 して
O(t)=0H(Hの 零 ベ ク トル)を 満 た す 写 像 で あ り,Fの 逆 ベ ク トル は,(-1)Fで あ る. *21 通 常 ,有 限 次 元 空 間 の 幾 何 学 に お い て は,"曲 線"と い え ば,連 続 性 は 仮 定 さ れ て い る.
さ て,Hを
ハ ミル トニ ア ン を表 す,ヒ ル ベ ル ト空 間H上
し よ う.初 期 状 態 Ψ ∈Hに
対 して,H-値
の 自己 共役 作 用 素 と
関数 ΨH:IR→Hが
(4.39) に よ っ て 定 義 さ れ る.{e-itH}t∈IRは か ら,ΨH∈C(IR;H)で
あ る.前
強 連 続1パ
ラ メ ー タ ー ユ ニ タ リ群 で あ る
著[8]の3章,3.5節
で み た よ う に,写
は 初 期 状 態 が Ψ で あ る 量 子 系 の 時 間 発 展 を 記 述 し,Ψ
∈D(H)な
像 ΨH
ら ば,ΨHは
抽 象 的 シ ュ レ ー デ ィ ンガ ー 方 程 式
(4.40) の 一 つ の 解 で あ る.ハ
ミル トニ ア ンHに
よ る時 間発 展 の 全 体 の集 合
(4.41) を― 古 典 力 学 にお け る術 語 を流 用 して― 量 子 力学 的状 態 の 流 れ ま た は相 流 と呼 び,そ の 要 素 ΨHを 量 子 的 力 学 的 流 線(あ る い は 単 に流 線)ま た は 状 態 曲 線 と い う.容 易 にわ か る よ うに,SHはC(IR;H)の SHの
部 分 空 間で あ る.
部分集 合
(4.42) は シュ レー デ ィ ンガ ー方 程 式(4.40)の
解 の 全 体 の集 合 で あ る.こ れ も部 分 空 間
で あ る. 次 の 事 実 は興 味 深 い. 命 題4.39
(ⅰ) 異 な る 初 期 状 態 を もつ 流 線 は,交
Ψ ≠ Φ(Ψ,Φ
∈H)な
ら ば ΨH(t)≠
(ⅱ) 状 態 の ヒ ル ベ ル ト空 間Hは
(ⅲ) S(1)Hの 流 線 はSHに 線F∈SHに Fn∈S(1)Hが
な わ ち,
ΦH(t),∀t∈IR. 流 線 で 埋 め 尽 く さ れ る.す
お い て 稠 密 に 分 布 して い る.す
対 し て,∀t∈IRを 存 在 す る.
わ る こ と は な い.す
な わ ち,
な わ ち,任 意 の 流 満 たす流線
証 明 (ⅰ)対 偶 を 証 明 す る.あ ば,
るt0∈IRが
で あ る.両
あ っ て,ΨH(t0)=ΦH(t0)と
辺 に 左 か らeit0Hを
すれ
作 用 さ せ れ ば,Ψ=Φ
を 得 る. (ⅱ) 任 意 の Ψ ∈Hに
対 し て,
.逆 (ⅲ) あ る Ψ ∈Hが
.し
の 包 含 関 係 は 自 明.
あ っ て,F=ΨHと
書 け る.D(H)は
を 満 た す ベ ク トル 列 Ψn∈D(H)が Fn:=(Ψn)Hと
た が っ て,
お け ば,Fn∈S(1)Hで
稠 密 で あ る か ら, 存 在 す る.そ
こ で,
あ り, ■
量 子 系 の 時 間発 展 に 関す る群 対 称 性 の 基 本的 な 構 造 は次 の 定 理 に よ っ て与 え られ る. 定 理4.40
HがG-対
称 で あ り,(U,H)を
の 持 ち 上 げ をU(g)と
書 く(U(g):=U(g)).こ
はSHお
不 変 に す る.
よ びS(1)Hを
証 明 ΨH∈SHを
任 意 に と る.こ
定 に よ り,
そ の 対 称 性 の 表 現 と し,U(g)(g∈G) の と き,各g∈Gに
の と き,(U(g)ΨH)(t)=U(g)e-itHΨ.仮
で あ る か ら,作
り,
.し .ゆ
∈D(H)で
定 理4.40は,物
理的 に は,次
∈D(H)な
あ る の で,U(g)ΨH∈S(1)Hで
の こ と を 語 る:G-対
に よ っ て 記 述 さ れ る 量 子 系 に お い て は,F:IR→Hが す な ら ば,任 のU(g)-不
意 のg∈Gに 変 性).こ
対 して,U(g)Fも
ら ば,HのU(g)-対
称
あ る.
■
称 性 を も つ ハ ミル トニ ア ン 系 の 状 態 の 時 間 発 展 を表
状 態 の 可 能 な 時 間 発 展 を表 す(SH
れ を 方 程 式 論 的 な レ ヴ ェ ル で い え ば,F:IR→Hが
レ ー デ ィ ン ガ ー 方 程 式(4.40)の 不 変 性).
用 素 解 析 の ユ ニ タ リ共 変 性 に よ
た が っ て,
え に,U(g)ΨH∈SH.Ψ
性 に よ り,U(g)Ψ
対 し てU(g)
解 な ら ば,U(g)Fも
そ う で あ る(S(1)HのU(g)-
シュ
4.6
シ ュ レー デ ィ ン ガー 型 作 用 素 の 対 称 性
こ れ ま で に展 開 した一 般 論― そ れ は,有 限 自 由度 の量 子 力 学 だ け で な く,量 子 場 の理 論 に も適 用 さ れ う る― を シ ュ レー デ ィ ン ガ ー型 作 用 素 に応 用 しよ う.
4.6.1 回 転 対 称 性 d∈INと 元gに
して,ヒ
ル ベ ル ト空 間L2(IRd)を
考 え る.d次
対 して,
元 回 転 群SO(d)の
各
を
(4.43) に よ っ て 定 義 す れ ば,(Urot,L2(IRd))はSO(d)の
強 連 続 ユ ニ タ リ表 現 で あ る(例
4.26).
定 義4.41 Urot(g)-不
L2(IRd)上
の 線 形 作 用 素Tは,す
変 で あ る と き
つ と き),d次
対 し て,
,∀g∈SO(d)が
成 り立
元 の 回 転 対 称 性 を も つ あ る い は 単 に 回 転 対 称 で あ る と い う.
ま ず,次
の 事 実 を 証 明 す る.
定 理4.42
d次 元 の 一 般 化 さ れ た ラ プ ラ シ ア ンΔ
わ ち,
は,回
転 対 称 で あ る.す
な
,∀g∈SO(d).
証 明 Δ は 自 己 共 役 で あ り,C∞0(IRd)は に よ っ て, 示 せ ば よ い.Djを の(j,k)成
べ て のg∈SO(d)に
分(要
そ の 芯 の 一 つ で あ る か ら,補 ,
変 数xjに 素)をgikで
題4.34
,∀g∈SO(d)…(*)を
関 す る 一 般 化 さ れ た 偏 微 分 作 用 素 と し,行 表 す.g-1=tg(gの
転 置 行 列)に
列g
注 意 す る と,
.し た が っ て, .そ を 用 い る と(*)を
得 る.
こ で,jに
つ い て 和 を と り, ■
次 に,V:IRd→IRを
ポ テ ン シ ャ ル と し,シ
ュ レー デ ィ ン ガ ー型 作 用 素
(4.44) を 考 え る. IRd上
の ル ベ ー グ 測 度 に 関 し て ほ と ん ど い た る と こ ろ(a.e.)定
Fは,す
べ て のg∈SO(d)に
た す と き,回 例4.34
義 され た 関数
対 し て(Urot(g)F)(x)=F(x),a,e.x∈IRdを
満
転 対 称 あ る い は 回 転 不 変 で あ る と い う.
[0,∞)上
の 任 意 の 関 数fに
定 義 さ れ る 関 数Fは
対 して,F(x):=f(│x│),a.e.x∈IRdに
よって
回 転 対 称 で あ る.
ク ー ロ ンポ テ ン シ ャ ル や 湯 川 型 ポ テ ン シ ャル は 回 転 対 称 で あ る. 定 理4.43
Vが
回 転 対 称 で あ り,HVはD(Δ)∩D(V)上
で あ る と し よ う(そ の 閉 包 をHVと 証 明 前 定 理 とVの で あ り,す
記 す).こ
べ て のg∈SO(d),ψ
よ り,求
の と き,HVは
回 転 対 称 で あ る.
回 転 対 称 性 に よ り, ∈D(Δ)∩D(V)に
が 成 り立 つ.D(Δ)∩D(V)上 4.34に
で 本 質的 に 自 己 共 役
で のHVの
対 し て, 本 質的 自 己 共 役 性 と 補 題
め る 結 果 を 得 る.
■
4.6.2 空 間 反 転 対 称 性 Gspを
例4.27で
定 義 した空 間 反 転 群 とす る.Gsp-対
称 な 自己 共 役 作 用 素 は
空 間 反 転 対 称 あ る は 空 間 反 転 不 変 で あ る とい う.I,U(I)を で 定 義 した 空 間 反 転,ユ F(x),a.e.x∈IRdを
ニ タ リ作 用 素 とす る.IRd上
満 たす な らば,Fは
あ る とい う.次 の 定 理 は,定 理4.43と 定 理4.44
の 関 数Fが(IF)(x)=
空 間 反 転 対 称 あ る い は空 間反 転 不 変 で 同様 に して,容 易 に証 明 され う る.
Vが 空 間反 転 対 称 で あ り,HVはD(Δ)∩D(V)上
共 役 で あ る と し よ う.こ の と き,HVは
4.6.3置
そ れ ぞ れ,例4.27
で本 質的 に 自己
空 間 反転 対 称 で あ る.
換 対 称 性
SN-対 称 な 自己 共役作 用 素 は置 換対 称 あ るい は置換 不変 で あ る とい う.{U(σ)│σ ∈SN}を
例4.28で
導 入 し たユ ニ タ リ表 現 とす る.IRdN上
の 実 数 値 関 数V:
IRdN→IRを
ポ テ ン シ ャ ル に もつ シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 型 作 用 素
を 考 え よ う.こ
こ で,m>0は
プ ラ シ ア ン を 表 す.次 定 理4.45
Vが
定 数 で あ り,Δxnは
変 数xn∈IRdに
関す る ラ
の 定 理 も 容 易 に 証 明 さ れ る.
置 換 対 称 で あ り,HNは
自 己 共 役 で あ る と し よ う.こ
の と き,HNは
上 で 本 質的 に 置 換 対 称 で あ る.
4.7 対 称 性 と保 存 則
4.7.1 Hを
一
般
的
構
造
ヒ ル ベ ル ト空 間H上
し,(U,H)を
そ のG-対
ン を 表 す と し よ う.作
の 自 己 共 役 作 用 素 で群Gに
称 性 の 表 現 と す る.い
進 群 や 回 転 群 の 場 合 の よ う に,連
と え ば,H上
トー ン の 定 理 に よ り,一
対 し て,
保 存 量 で あ る*22.と
続 パ ラ メ ー ター で 定 義 され
成 子 と 呼 ば れ る,い
さ れ る こ と が 知 ら れ て い る(た
は,そ
量 子 系 の ハ ミ ル トニ ア
成 り立 つ の で,U(g)は
る 位 相 群 の 場 合 に は,U(g)は,生
群 は,ス
ま,Hは
称 な もの と
用 素 解 析 の ユ ニ タ リ 共 変性 に よ り,各g∈Gに ,∀t∈IRが
こ ろ で,Gが,並
関 し てG-対
くつ か の 作 用 素 か ら 構 成
の 強 連 続1パ
ラ メ ー ター ユ ニ タ リ
つ の 自 己 共 役 作 用 素 に よ っ て 生 成 さ れ る).で
の よ う な 作 用 素 も保 存 量 に な る で あ ろ う か.
簡 単 の た め,こ
こ で は,Gの
元gが
い くつ か の 実 パ ラ メ ー タ ーt1,…,tnの
よ っ て 定 義 さ れ,自 己 共 役 作 用 素Aj,j=1,2,…,nが に 対 して,tj=0の
組 に
存 在 し て,各j=1,…,n
近傍 で
(4.45) と 表 さ れ る 場 合 を 考 え よ う*23. *22 以 後
,保 存 量 の概 念 を 自己共 役作 用 素 以 外 に も拡 大 して 使 う.す なわ ち,任 意 のt∈IR に対 して,eitHAe-itH=Aを 満 たす作 用 素 はハ ミル トニ ア ンHに 関 して保 存 量 で あ る と定 義 す る. *23 詳 細 は割 愛 す るが ,線 形 リー 群 の よ う な場 合,こ の形 に帰 着 で きる.
定 理4.46
H,G,Uを
上 述 の よ う な も の と す る.こ
の と き,各Ajは
保存量で
あ る.
証 明 (4.45)を
満 た す よ う なtjを
べ て のs∈IRに
対 して,
任 意 の ベ ク トル と し,tj=0で か つ
と る.こ
の と き,HのU(g)-不
.こ の 式 で,Ψ
れ は
辺 も 右 辺 も 自 己 共 役 で あ る か ら,
て,Ajは
保 存 量 で あ る.
例4.35
(T,L2(IRν)を
この と き,L2(IRν)上
例4.25に
お い て 定 義 さ れ た,強
連 続 ユ ニ タ リ表 現 と す る. に よ っ て 定 義 す る.た
己 共 役 作 用 素-iDjと-iDkは
変 で あ る こ と も容 易 に わ か る.し
の 生 成 子 た ち,す な わ ち,運 動 量p1,…,pν この 事 実 は,Hとpjの
たが っ ■
は 本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る([8]の 補 題4.15-(ⅱ)の に 対 して,T(a)-不
.し
の線 形 作 用 素Hを
し,λjは 実 定 数 で あ る*24.自
をD(Aj)の
の 強 微 分 を 考 察 す る こ と に よ り, で あ る こ と が 導 か れ る.こ
を 意 味 す る.左
変 性 に よ り,す
はHに
強 可 換 性 に 注 目 す れ ば,た
応 用)*25.さ
だ
強 可 換 で あ る か ら,H ら に,Hが,a∈IRν
た が っ て,定 理4.46に
よ り,T(a)
関 す る 保 存 量 で あ る.も だ ち に わ か る.こ
ち ろ ん,
こで は,こ
の事
実 を 対 称 性 の 観 点 か らみ た わ け で あ る.
4.8 回転 対称 性 と軌 道 角運 動 量 作用 素 の保 存
前 節 の 定 理 を軌 道 角 運動 量 作 用 素 に応 用 し よ う.d〓2を 元 の 軌 道 角運 動 量 は,CCRの
自然 数 とす る.d次
シ ュ レー デ ィ ン ガ ー表 現 に お い て
(4.46) (4.47) を満 た す 作 用 素 の 組(Mjk)j
,k=1,…,dに よ っ て 定 義 され る.Mjkを
量(の 成 分)作 用 素 あ る い は単 に成 分 とい う.た だ し,xjは か け 算 作 用素(位 置 作 用 素),pj:=-iDjは *24 た と え ば
軌道 角運動
座 標 変 数xjに
運動 量 作 用 素 で あ る.
,H=D21-D22-…-D2ν(ν 次 元 の ダ ラ ン ベ ー ル シ ャ ン). *25 フ ー リ エ 解 析 を 用 い て 直 接 的 に も 証 明 で き る .
よる
4.3.5項
に お け る 一 般 論 を い ま の 場 合 に 応 用 す れ ば,
(4.48) を 満 た す,L2(IRd)上 C∞0(IRd)を
の 自 己 共 役 作 用 素Ljkが
不 変 に す る の で,C∞0(IRd)はLjkの
に 対 し て
た だ 一 つ 存 在 す る.Vjk(θ)は 芯 で あ り,任 意 の ψ ∈C∞0(IRd) .が
に,す べ て の φ ∈C∞0(IRd)に
成 り立 つ.し
た が っ て,特
対 して .た
だ し
平 均 値 の 定 理 に よ り,
であ
り,
.よ っ て,ル
ベ ー
グ の 優 収 束 定 理 に よ り. を 得 る.し
た が っ て,
意 味 す る.こ
定 理4.47
.こ
う し て,次
れ は,
を
の 事 実 が 証 明 さ れ た こ と に な る.
各j,k=1,…d,j≠kに
対 し て,MjkはC∞0(IRd)上
で本質的 に
自己 共 役 で あ り
(4.49) が 成 り立 つ.
式(4.49)は,軌
道 角 運 動 量 作 用 素Mjkが,xj-xk平
転 群 の 生 成 子 の(-1)倍 定 理4.47と 系4.48
で あ る こ とを示 して い る.
定 理4.46か
HをL2(IRd)上
j,k=1,…d,j≠kに
面 の 回 転 に対 応 す る 回
ら次 の 結 果 が 得 られ る: の 回 転 対 称 な ハ ミ ル トニ ア ン とす る.こ
対 し て,軌
道 角 運 動 量 作 用 素MjkはHに
の と き,各 関 して 保 存
量 で あ る. 例4.36 る と す る.
H=-Δ,HV.た
だ し,Vは
回 転 対 称 で,HVは
本 質的 に 自 己 共 役 で あ
4.9 軌 道 角 運 動 量 の 固有 空 間 に よ る直和 分 解(I)―2次
例4.3.6と
命 題4.37に
よ り,回
転 対 称 な シ ュ レ ー デ ィ ン ガー 型 作 用 素 は軌 道
角 運 動 量 の 固 有 空 間 へ 簡 約 さ れ る.こ の 節 で は2次
4.9.1
元 空 間の 場 合
の 構 造 を 具 体 的 に 見 て み た い.ま
ず,こ
元 空 間 の 場 合 を 考 え る.
L2(IR2)の
2次 元 空 間IR2の
直和分解 点 を(x,y)(x,y∈IR)と
運 動 量 は,L2(IR2)で
表 す.2次
元 空 間 に お け る軌 道 角
働 く作 用 素
(4.50) で 与 え ら れ る.た
だ し,Dx,
作 用 素 で あ る(x, yに
θ ∈IRに
そ れ ぞ れ,x, yに
関 す る一 般 化 され た偏 微 分
よ る か け 算 作 用 素 を ふ た た びx, yと
た よ う に,MはC∞0(IR2)上 で 表 す.各
Dyは
記 す).す
で 本 質的 に 自 己 共 役 で あ る.そ
で に証 明 し
の 閉 包 も 同 じ記 号
対 して
(4.51) とお け ば,2次
元回転群 は
(4.52) と表 され
(4.53) が 成 り立 つ. 定 理4.23に
よ っ て,σ(M)=σp(M)⊂〓
の ス ペ ク ト ル を 完 全 に 決 定 した い.そ
は す で に わ か っ て い る.こ の た め に 極 座 標(r,θ)(r>0,θ
こ で は,M ∈[0,2π))
を 用 い る:
(4.54)
極 座 標 へ の 移 行 に は,あ
る ユ ニ タ リ変 換 が 伴 う こ と を 示 そ う.
正 の 実 数 空 間IR+:=(0,∞)と
区 間[0,2π)の
直積 空間
(4.55) に は 直 積 測 度dμ:=rdr れ る*26.以
後,便
dθ が は い る の で,ヒ ル ベ ル ト空 間L2(E,dμ)が
宜 上,L2(E,dμ)の
に よ っ て,IR+×IRに
考 えら
関 数 ψ の 定 義 域 を,ψ(r,θ)=ψ(r,θ+2π)
拡 張 し て お く.写
像P:L2(IR2)→L2(E,dμ)を
(4.56) に よ っ て 定 義 す れ ば,Pが L2([0,2π])上
ユ ニ タ リ で あ る こ と は 容 易 に わ か る.
の 作 用 素pθ を 次 の よ う に 定 義 す る:
(4.57) (4.58) た だ し,AC2[0,2π]は[0,2π]上
の 絶 対 連 続 関 数fでf'∈L2([0,2π])を
も の の 全 体 で あ る*27.[7]の2.3.8項
で 証 明 し た よ う に,pθ
満たす
は自 己 共 役 で あ り
(4.59) が 成 り立 つ.こ の 場 合,各 固 有 値l∈〓
の 多重 度 は1で
あ り,こ れ に 属 す る 規
格 化 さ れ た 固 有 ベ ク トル は
(4.60) で 与 え ら れ る. 以 下,自
然 な 同 一 視(同
用 い る*28.こ 作 用 素Bに
型)
の 場 合,L2(IR+,rdr)上 対 し て,A
*26 任 意 の ボ レ ル 集 合B⊂IR
I, I Bを +,C⊂[0,2π)に
はCの ル ベ ー グ 測 度 を 表 す. *27 [7]のp.147を 参照 . *28 [8]の4 .1.3項 を 参 照.
を 自由 に の 閉 作 用 素Aお そ れ ぞ れ,A,Bと
よ びL2([0,2π])上 表 す.
対 し て,μ(B×C)=(∫Brdr)│C│.│C│
の閉
任 意 のψ∈C∞0(IR2)に
対 し て,Pψ
∈D(pθ)で
あ りpθPψ=PMψ
が成 り
立 つ こ と は合 成 関 数 の 微 分 法 に よ り,容 易 に わか る.C∞0(IR2)はMの
芯 であ
り,pθ は 自己 共 役 で あ る か ら,作 用 素 の 等 式
(4.61) が 結 論 さ れ る.し
た が っ て,ス
ペ ク トル の ユ ニ タ リ不 変 性 に よ り,次
の定理 を
得 る.
定 理4.49
(4.62) 各l∈〓
に対 して
(4.63) 証 明 (4.63)だ
け 証 明 す れ ば よ い.ψ
し た が っ て,a.e.rに 立 つ.Pψ
対 し て 定 数f(r)が
∈L2(E,dμ)で
ψ=P-1f
∈ker(M-l)と
す れ ば,pθPψ=lPψ.
あ っ て,(Pψ)(r,・)=f(r)φlが
あ る か ら,f∈L2(IR+,rdr)で
あ る.し
成 り た が っ て,
φl.
逆 に ψ=P-1f か ら,(4.61)に
φl(f∈L2(IR+,rdr))と よ り,ψ
∈D(M)で
す れ ば,Pψ
あ り,Mψ=lψ
∈D(pθ)で
が 成 り立 つ.す
ある
な わ ち,
ψ ∈ker(M-l).
[7]の 例1.20で を な す.し ψ(r,θ)は
■
み た よ う に,{φl}l∈〓 はL2([0,2π])の
た が っ て,任
意 の ψ ∈L2(E,
θの 関 数 と し てL2([0,2π])に
完 全 正 規 直 交 系(CONS)
dμ)に 対 して,a.e.rを
固 定 す る ご とに
属す るので
(4.64) と 表 さ れ る(L2([0,2π])に
お け る 強 収 束).た
だ し
(4.65)
ベ ッセ ル の不 等 式 の応 用 に よ り,任 意 の 自然 数Lに が 成 り立 つ こ とが わ か る.こ (4.64)はL2(E,dμ)の
対 して,
れ と ル ベ ー グ の 優 収 束 定 理 に よ り,
強 収 束 の 意 味 で も 収 束 す る こ と が わ か る.ゆ
えに
(4.66) とす れ ば
(4.67) が 成 り立 つ(Hlが
で あ る.し
閉 部 分 空 間 で あ る こ と は 容 易 に わ か る).(4.63)に
よ り
た が って
(4.68) と無 限 直 和 分 解 で き た こ とに な る.
4.9.2
ラ プ ラ シ ア ンの 直 和 分 解
一 般 化 さ れ た2次
元 ラプラシア ン
(4.69) は,定
理4.42に
和 分 解(4.68)に
よ り,SO(2)-対 応 じ て,直
称 で あ る か ら,命
題4.37に
和 分 解 さ れ る.(4.61)か
ユ ニ タ リ表 現 の 生 成 子Mは,L2(E,dμ)上
よ り,L2(IR2)の
ら わ か る よ う に,SO(2)の
の ほ う が 簡 潔 な 形 を も つ.ラ
ア ン に つ い て も 同 様 の こ と が 期 待 さ れ る.L2(E,dμ)上
直
プラシ
で の ラプラシアン
(4.70) は,定
義 域 をPD(Δ)と
し て,L2(E,dμ)で
自 己 共 役 で あ る.命
題4.37を
い ま
の 場 合 に応 用 す れ ば
(4.71)
と直 和 分 解 され る.た だ し,Δ(l)r,θ はΔr ,θのHlに
お け る 部 分 で あ る.こ の作 用
素 の具 体 的 な表 示 を適 当 な部 分 空 間上 で 求 め て み よ う. 次 の記 法 を導 入 す る:
ψ∈C∞0(IR2)と しよ う.容 易 に確 か め られ る関 係 式
を用 い る と
が 導 か れ る.こ れ か ら
と な る こ と が わ か る.し
たがって
(4.72) IR+上
の 関 数fが
次 の 条 件(ⅰ)∼(ⅲ)を
満 た す と き,fは
空 間D0に
属 す ると
い う: (ⅰ) f∈L2(IR+,rdr). (ⅱ) (0,∞)上
で2回
連 続 微 分 可 能 でlimr→0f(r)が
存 在 し,limr→0rf'(r)=
0.
(ⅲ) す べ て のl∈〓 f∈D0と
に 対 して,
し
(4.73)
と す る.こ
の と き,任
意 のψ∈C∞0(IR2)に
を 得 る.PC∞0(IR2)はΔr,θ
対 して,部
分積分 に よ り
の 芯 で あ る か ら,ψ(l)f∈D(Δr,θ)か
つ
(4.74) が 成 り立 つ.し
た が って
(4.75) とお け ば
(4.76) 上
(4.77)
と な る こ と が わ か っ た.
4.9.3
シ ュ レーデ ィ ン ガ ー型 作 用 素 の 直和 分 解
V:IR2→IRを
回 転 対 称 な ポ テ ン シ ャ ル と し よ う.こ
け の 関 数 で あ る の で,V=V(r)と
書 く こ と に す る.シ
用 素HV:=-Δ+VはD(Δ)∩D(V)上 そ の 閉 包 も 同 じ記 号HVで
れ は
だ
ュ レー デ ィ ンガ ー 型 作
で 本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る と仮 定 し, 表 す.こ
の と き,定
称 で あ る の で,HVは
直 和 分 解(4.68)に
換PHVP-1のHlに
お け る 簡 約 部 分 をH(l)Vと
理4.43に
よ っ て,HVは
応 じ て 分 解 さ れ る.HVの
回転 対 ユ ニ タ リ変
し
(4.78) と お く.こ
の と き,上
の議 論 か ら
(4.79) 上
(4.80)
が 成 り立 つ こ と が わ か る.こ
う し て,ハ
れ は 自 然 な 仕 方 でL2(IR+,rdr)上 (radial
part)と
ミ ル トニ ア ンHVの
解 析 はHlV―
の 作 用 素 と み る こ と が で き,HVの
動径 部 分
呼 ば れ る― の 解 析 の 問 題 に 帰 着 さ れ る.
4.10 軌 道 角運 動量 の固 有空 間 に よる直和 分解(Ⅱ)―3次
4.10.1
こ
元 空 間 の場合
3次 元 空 間 にお け る軌 道 角 運 動 量 の成 分 の 変 換性
3次 元 空 間 に お い て は,独 立 な 軌 道 角 運 動 量 の成 分 は3個 で あ り,そ れ らは, 符 号 の 不 定 性 を除 い て,次 の 作 用 素 に よ って 与 え られ る(4.8節
を参 照):
(4.81) こ れ らの 作 用 素 の組
(4.82) を― こ れ 自 体 は 作 用 素 で は な い が― 便 宜 上,3次 い う こ と に す る.こ と考 え ら れ る.有
れ は,そ
元 の(量
子)軌
道角運動量 と
の 成 分 が 線 形 作 用 素 で あ る よ うな ベ ク トル の一 種
限 次 元 空 間 の ベ ク トル の 成 分 の 変 換 に 対 応 す る あ る 概 念 を導
入 す る:
定 義4.50
d∈INと
(A1,…,Ad)が
す る.L2(IRd)上
の 線 形 作 用 素A1,…,Adの
回 転 に 関 して ユ ニ タ リ装 備 的 で あ る(unitary
は,す べ て のg∈SO(d)とψ∈∩dj=1D(Aj)に
組A=
implementable)と
対 し て,Urot(g)-1Ψ∈∩dj=1D(Aj)
であ って
(4.83) が 成 り立 つ と き を い う.
注 意4.6 IRdの
v:IRd→IRd;IRd∋x〓v(x)∈IRdをIRd上
の ベ ク トル 場 と し,
標 準 基 底ej=(0,…,0,1,0,…,0)(j=1,…,d)に
関 す る成 分 表 示
を(υj(x))dj=1と
す る:
とす れ ば,(ej)dj=1はIRdの
こ の と き, 基 底 で あ り,こ
の 基 底 に 関 す るv(x)の
第j成
分 を
υj(x)と す れ ば 成 り立 つ.こ
が
の 構 造 と の ア ナ ロ ジ ー か らい え ば,(4.83)の
標 系 の 回 転 に 伴 う,"作 こ れ が,回 (4.83)の
用 素 成 分"A1,…,Adの
右 辺 は,IRdの
直 交座
変 換 を 表 す も の と解 釈 さ れ る.
転 群 の ユ ニ タ リ表 現 に よ るユ ニ タ リ変 換 で 与 え られ る とい う の が式 意 味 で あ る.
回 転 に 関 し て ユ ニ タ リ装 備 的 な 作 用 素 の 組 の 基 本 的 な 例 に つ い て は 演 習 問 題 4を み よ. 軌 道 角 運 動 量Lは
定 理4.51
回 転 に 関 して ユ ニ タ リ装 備 的 で あ る こ と を 証 明 し よ う:
す べ て のg∈SO(3)に
対 し て,作
用素 の等式
(4.84) が 成 り立 つ.こ
こ で,右
辺 は,作
証 明 ま ず,(4.84)がC∞0(IR3)上 Urotと
用 素
で 成 立 す る こ と を 示 す.証
記 す.ψ∈C∞0(IR3),θ∈IR\{0}と
も の と し,U1(θ):=U(R23(θ))と
の 閉 包 を 表 す.
す る.Rjk(θ)を4.8節
お く.こ
の と き,U1(θ)=e-iθL1で
した が っ て
ただ し
と こ ろ で,R23(-θ)=I+K(θ)と
明 を 通 して,U=
書 け る.た
だ し
で 定 義 した あ り
し た が っ て,Kg(θ):=gK(θ)g-1と と な る.こ
お け ば,gR23(-θ)g-1x=x+Kg(θ)(x)
こ で
に注意す れば
と な る.し
た が っ て,L2(IR3)収
と な る こ と が わ か る.ゆ
束の意味で
えに
が 得 ら れ る.と
こ ろ でgj=(g1j,g2j,g3j)と
g2×g3の
分 は
第j成
し,εjkl(j,k,l=1,2,3)は
す れ ば,g2とg3の
ベ ク トル 積 と書 け る.た
だ
次 の よ う に 定 義 さ れ る 数 で あ る(反 対 称 シ ン ボ ル ま
た は レ ビ ・チ ビ タ シ ン ボ ル と 呼 ば れ る):
(j,k,l)が(1,2,3)の
偶 置換 の とき
(j,k,l)が(1,2,3)の
奇 置 換 の と き
(4.85)
その 他 の場 合 した が っ て
(4.86)
と な る.gが る.つ
直 交 行 列 で あ る こ と は〈gj,gk〉=δjk
ま り,{gj}3j=1はIR3の
正 規 直 交 基 底 を な す.こ
し て,〈gk,g2×g3〉=0と
な る こ と,お
い る と,g2×g3=g1と tg=g-1を
,(4.84)でj=1と
同値 で あ
の 事 実 とk=2,3に
よ び〈g1,g2×g3〉=det
な る こ と が わ か る.こ
使 えば
(j,k=1,2,3)と
対
g=1を
用
れ を(4.86)の
右 辺 に 代 入 し,
し た 場 合 をC∞0(IR3)上
に制 限 した 関 係
式 が 得 ら れ る.
C∞0(IR3)はL1の 芯 で あ る か ら,任 意 の ψ ∈D(L1)に
L1ψ(n→
∞)と
な るψn∈C∞0(IR3)が
対 して,ψn→
とれ る.φn:=U(g)ψnと
ψ,L1ψn→ す れ ば,φn∈
C∞0(IR3)で あ り上 に 示 し た 事 実 に よ り, は,n→
∞ の と き,U(g)L1ψ
左辺
に収 束 す る.他
っ て,
方,φn→U(g)ψ(n→
∞).し
たが
を 意 味 す る.右
辺 は
か つ
が 結 論 さ れ る.こ
れ は
対 称 作 用 素 で あ り,左 す る.j=2,3の
4.10.2
辺 は 自 己 共 役 で あ る か ら,(4.84)でj=1の
場 合が成立
場 合 も 同 様 に して 証 明 さ れ る.
■
軌 道 角 運 動 量 の2乗
軌 道 角 運 動 量 の2乗
は
(4.87) に よ っ て 定 義 さ れ る 非 負 対 称 作 用 素 で あ る(C∞0(IR3)⊂D(L2)に L2│C∞0(IR3)の フ リ ー ド リ ク ス 拡 大 をΛ
と す る(2.8.5項
Λ は 非 負 自 己 共 役 作 用 素 で あ り,C∞0(IR3)はΛ1/2の
定 理4.52
任 意 のg∈SO(3)に
Λ はSO(3)-対
証 明
証 明 を 通 し て,U(g)=Urot(g)と
,Λ
を 参 照).し
た が っ て,
芯 で あ る*29.
はUrot(g)-不
変 で あ る.す
な わ ち,
称 性 を も つ.
U(g)はC∞0(IR3)を
*29 実 は
対 し て,Λ
注 意).
不 変 に す る.定
はC∞0(IR3)上
る 読 者 は,た
お く.任 理4.51に
意 のg∈SO(3)に
よ っ て,任
意のψ,φ∈C∞0(IR3)
で 本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る こ とが 証 明 で き る.証
と え ば,[19]のp.61,
Lemma
2.20を
対 し て,
参 照 さ れ た い.
明 に興 味 の あ
に 対 し て(Lj=U(g)-1[U(g)LjU(g)-1]U(g)と
変 形 で き る こ と に 注 意)
そ こ で,
に 注 意 す れ ば,最
〈ψ,U(g)-1ΛU(g)φ〉
に 等 し い こ と が わ か る.し
〈Λ1/2U(g)ψ,Λ1/2U(g)φ〉.C∞0(IR3)は 任 意 の ψ ∈D(Λ1/2)に
D(Λ)の
た が っ て,〈 Λ1/2ψ,Λ1/2φ〉=
Λ1/2の 芯 で あ る か ら,極 限 理 論 に よ り,
対 し て,U(g)ψ
〈Λ1/2U(g)ψ,Λ1/2U(g)φ〉,ψ,φ
∈D(Λ1/2)で
∈D(Λ1/2)で
あ り,〈 Λ1/2ψ,Λ1/2φ〉=
あ る こ と が 示 さ れ る.U(g)φ
場 合 を考 え る こ と に よ り,U(g)-1ΛU(g)⊂
で あ る か ら,そ れ ら は 一 致 し な け れ ば な ら な い.す よ っ て,題
後 の 式 は
Λ が 出 る.両
∈
辺 と も自己 共役
な わ ち,U(g)-1ΛU(g)=Λ.
意 が 成 立 す る.
系4.53
■
各Lj(j=1,2,3)と
証 明 e-iθLj(θ
∈IR)はUrot(g)の
e-iθLjΛeiθLj=Λ.こ
4.10.3
Λ の
Λ は 強 可 換 で あ る.
れ はLjと
固
有
特 殊 な 値 で あ る か ら,定
理4.52に
よ り,
Λ の 強 可 換 性 を 意 味 す る.
■
値
系4.53に よ っ て,軌 道 角 運 動 量 の2乗 Λ と,Lj(j=1,2,3)の うち の任 意 の 一つ は同時固有空間 をもちうる .こ の こ と を 念 頭 に お い て Λ の 固 有 値 を 求 め よ う.結
(r>0,φ
果 的 に 言 え ば,2次
元 空 間 の 場 合 と 同 様,こ
の 場 合 も3次
元極座 標系
∈[0,2π),θ ∈([0,π])に 移 る と 便 利 で あ る こ と が わ か る*30.直
積集合
に は 直 積 測 度dν:=r2dr
sinθdθ dφ が 入 る.し
た が っ て,ヒ
L2(Ω,dν)が
座 標 変 換 に 対 応 し て,ユ
ニ タ リ 変 換T:L2(IR3)→
考 え ら れ る.極
*30 物 理 描 像 的 な 理 由 は ,軌 道 角 運動 量 の2乗
の 回転 対 称性 に あ る.
ル ベ ル ト空 間
L2(Ω,dν)が
(4.88) に よ っ て 定 義 さ れ る. 2次
元 の 軌 道 角 運 動 量Mの
L2(IR+,rdr)
場 合 と 同 様 に し て― 自 然 な 同 型L2(Ω,dν)=
L2([0,π],sinθdθ)
L2([0,2π],dφ)を
用 い る と簡単 ―
(4.89) を証 明 す る こ とが で きる.し た が って
(4.90) で あ り,L3の
固 有 値m∈〓
に属 す る固 有 関 数 はF(r,θ)exp(imφ)と
与 え られ る.た だ し,Fは
い う形 で
とい う条 件 を満
た す 関 数 で あ る. 合 成 関 数 の微 分 法 に よ り,任 意 のf∈C∞0(IR3)に
を 示 す こ と が で き る.こ
れ ら の 表 示 式 と(4.89)を
や 長 い 計 算 を 行 う こ と に よ り,任
意 のf∈C∞0(IR3)に
対 して
用 い て,初
等 的 で あ る が,や
対 して
(4.91) (4.92) が 成 り立 つ こ とが わ か る.作 用 素 Λ の形 をみ れ ば わ か る よ うに,そ の 固有 関 数 は変 数 分 離 法 に よ っ て求 め られ る こ とが 予 想 され よ う.実 際,fを 数 とし
とす れ ば
θだ け の 関
で あ る か ら,Λ の 固 有 ベ ク トル方 程 式
(λ ∈IR)は
(4.93) と い う 形 を と る.x=cosθ, f(θ)=F(x)と
す れ ば,こ
の方程式 は
(4.94) と書 か れ る.こ れ は級 数 展 開の 方法 で 解 くこ とが で きる*31.特 か つlが 非 負 の 整 数 の 場 合 を考 え る と,(4.94)は て,ル
に,λ=l(l+1)
古 典 的 な微 分 方 程 式 論 に お い
ジ ャ ン ドル の 陪 多 項 式 の 満 た す 微 分 方 程 式 と して知 られ て い る方 程 式 に
ほ か な らな い.ル
ジ ャ ン ドルの 陪 多 項 式 とい うの は
(4.95) に よ っ て 定 義 さ れ る 多 項 式 で あ る.こ こ で,右 辺 の 関 数Pl(x)は
ル ジ ャ ン ドル
の 名 で 呼 ば れ るl次 の 多 項 式 で
(4.96) と い う形 を も ち,ル
ジ ャ ン ドル の 微 分 方 程 式
(4.97) を 満 た す*32.し │m│>lな
た が っ て,(4.93)の
ら ばPml=0で
一 つ の 解 はf(θ)=Pml(cosθ)で
あ る.
あ る こ と に 注 意 し よ う.
次 の 式 を 証 明 す る こ と が で き る(証
明 は 難 し く な い)*33:
(4.98) *31 た と え ば *32 [7]の1章 *33 [13]の2章
,[13]の2章
を 参 照.
,演 習 問 題7を ま た は[12]のp
参 照.詳 .136を
し く は,[13]の2章 参 照.
ま た は[12]のp.57を
み よ.
し た が っ て,特
にPml(cosθ)はL2([0,π],sinθdθ)の
Pml(cosθ)とPml'(cosθ)は
直 交 す る.関
元 で あ り,l≠l'な
ら ば,
数
(4.99) お よ び そ の1次 結 合 はl次 の 球 関 数 と呼 ば れ る.関 数 系
はL2([0,π]×[0,2π],sinθdθ dφ)に こ と が で き る*34.し
た が っ て,任
L2([0,π]×[0,2π],sinθdθ
お い て完 全 直 交 系 で あ る こ とを 証 明 す る 意 の ψ〓L2(Ω,dν)とa.e.r>0に
対 し て,
dφ)の 収 束 の 意 味 で
(4.100) と 展 開 さ れ る.こ に よ り,任
こ で,展
意 のL〓INに
開 係 数al, m(r)に
ッセ ル の 不 等 式 の 応 用
対 して
が 成 り立 つ こ と が わ か る.こ L2(Ω,dν)に
つ い て は,ベ
れ と ル ベ ー グ の 優 収 束 定 理 に よ り,(4.100)は,
お け る 収 束 の 意 味 で も成 立 す る こ と が わ か る.し
た が っ て,L2(Ω,dν)
の 部 分 空 間Klを
(4.101) に よ っ て定 義 す れ ば,こ れ は 閉部 分 空 間で あ り
(4.102) *34 た とえ ば ,[23]の5章 §2を 参 照.い まは,こ の事 実 を認 め て,こ の項 の 終 わ りま で読 み進 んだ ほ うが全 体 の 流 れ を把 握 しや す い で あ ろ う.
と直 和 分 解 さ れ る.し た が って
(4.103) が 成 り立 つ. 関 数 系yに Dy:=L(y)を
よ っ て 生 成 さ れ る,L2([0,π]×[0,2π],sinθdθ dφ)の 定 義 域 と す る 線 形 作 用 素RΛ
部分 空間
を
(4.104) に よ って 定 義 す る.関 数 系yの 閉包 も同 じ記 号RΛ
完 全 性 に よ り,RΛ
は対 称 作 用 素 で あ る.そ の
で表 す.こ の と き
(4.105) (4.106) dimMl=2l+1で
あ る か ら,RΛ
の 固 有 値l(l+1)は(2l+1)重
に縮 退 して
い る. さ て,W:L2(Ω,dν)→L2(IR+,r2dr)
L2([0,π]×[0,2π],sinθdθ
dφ)を
自然 な 同 型 と す れ ば
(4.107) が 成 り立 つ.し 2.9.6項
た が っ てWTAT-1W-1⊃I
の 事 実 に よ っ て,RΛ
はL2(IR+,r2dr)
Dy上
はDy上
RΛ│L2(IR+,r2dr)
Dy.
[7]の
で 本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る か ら,I
で 本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る.し
RΛ
た が っ て作 用 素 の 等 式
(4.108) が 成 り立 つ.こ
れ と テ ン ソ ル 積 の ス ペ ク トル の 理 論 に よ り,次 の 定 理 が 得 ら れ る:
定 理 4.54
(4.109) であり
(4.110)
軌 道 角 運 動 量 の 大 き さは
(4.111) に よ っ て定 義 され る.上 の 定理 とス ペ ク トル写 像 定 理 に よ り
(4.112) │L│の 固 有 値 (4.89)に T-1Klに
を 特 徴 づ け る 非 負 整 数lを
よ っ て,閉
部 分 空 間T-1Klはe-itL3の
お け る 簡 約 部 分 は(2l+1)個
こ と が わ か る.こ
4.10.4
軌 道 角 運 動 量 の 量 子 数 と い う. 不 変 部 分 空 間 で あ り,L3の
の 固 有 値m=-l, -l+1,
…, lを
もつ
れ を 軌 道 角 運 動 量 の 方 向 量 子 化 と い う*35.
シ ュ レ ー デ ィ ンガ ー型 作 用 素 の 簡 約
こ の 項 で は 次 の 仮 定 の も と で 考 察 す る: 仮 定:ポ
テ ン シ ャ ルV:IR3→IRは
回 転 対 称 で あ る と し,シ
ガ ー 型 作 用 素HV:=-Δ+VはD(Δ)∩D(V)上
ュ レー デ ィ ン
で本 質 的 に 自己共 役 で
あ る と す る(そ の 閉 包 も 同 じ記 号 で 表 す).
補 題4.55
HVとΛ
は 強 可 換 で あ る.
証 明 す で に み た よ う に,任 た が っ て,す
意 のt〓IRに
べ て のf,g〓C∞0(IR3)に
が 成 り 立 つ.C∞0(IR3)はΛ1/2の 式 は,す D(Λ1/2)が
べ て のf,g〓D(Λ1/2)へ わ か る).す
eitHVΛe-itHΛ.こ *35 軌 道 角 運 動 量 の 第
対 し て,eitHVLje-itHV=Lj.し
対 して
芯 で あ っ た か ら,極
限 議 論 に よ り,こ
と 拡 張 さ れ る(同
時 にe-itHVD(Λ1/2)⊂
る とΛ ⊂eitHVΛe-itHVが
れ は,Λ 一成 分L
とHVの 1,第
導 か れ る.し
た が っ て,Λ=
強 可 換 性 を 意 味 す る.
二 成 分L2に
の等
つ い て も 同 様 の こ と が 示 さ れ る.
■
さて
(4.113) と お け ば,補 る の で,そ
題4.55に のKlに
よ り,HVは,直
和 分 解(4.102)に
お け る 部 分 をH(l)Vと
応 じて 直 和 分 解 さ れ
す る.
とす れ ば
(4.114) とな る.こ
う して,HVの
解析 は,L2(IR+,r2dr)上
の 作 用 素HlVの
解 析 に還 元
さ れ る.
4.11
4.11.1
リー 代 数 的 構 造 と対 称 性
リー代 数 とそ の 表 現
こ れ まで は,群 の 表 現 と い う観 点 か ら,量 子 系 にお け る対 称 性 の構 造 に関 す る 基 本 的側 面 を み て きた.こ
こで,前 節 まで の 議 論 を注 意 深 く振 り返 っ て 眺 め
る と,連 続 群(位 相 群)の ユ ニ タ リ表 現 の場 合,表 現 の特 性 は,最 終 的 に は,そ の 表 現 の生 成 子― た とえ ば,回 転 群 の ユ ニ タ リ表 現 の 場 合 に は,軌 道 角 運 動 量 で あ り,空 間 並 進 群IRdの
場 合 に は,運 動 量,時 間並 進 群 の場 合 に は,ハ ミル ト
ニ ア ン― の そ れ に帰 着 さ れ る こ とが わ か る .ゆ え に,こ の 場 合 に は,対 称 性 の 現 出 にあ た っ て,生
成子 の 集 合 が よ り基 本 的 で あ る と考 え られ る.そ こ で,も
し生 成 子 の集 合 が 何 らか の 普 遍 的 な代 数 的構 造 を有 す る な ら ば.む 代 数 的 構 造 の ほ う を,群
よ り も高 い 位 階 に あ っ て,よ
しろ,こ の
り深 い 次 元 か ら対 称 性 を
統 制 して い る基 本 的 理 念 の 一 つ とみ なす こ とが で き よ う.実 際 にそ の よ うな代 数 的構 造 は 存 在 す る.そ の 一 つ が 次 に定 義 す る リ ー代 数 で あ る. 定 義4.56
gをIK上
(X,Y)〓[X,Y]が
のベ ク トル 空 間 とす る.写 像[・,・]:g×g→g;
g×g∋
あ っ て,次 の条 件(ⅰ)∼(ⅲ)を 満 た す と き,こ の 写 像 をg上
の 括 弧 積 また は リー 括 弧 積 と呼 び,gをIK上
の リー代 数 ま た は リー環 とい う.
(ⅰ) (線 形 性)[aX+bY,Z]=a[X,Z]+b[Y,Z],a,b〓IK,X,Y,Z〓g.
(ⅱ) (反 対 称 性)[X,Y]=-[Y,X],X,Y〓g. (ⅲ) (ヤ コ ビ恒 等 式)[X,[Y,Z]]+[Y,[Z,X]]+[Z,[X,Y]]=0,X,Y,Z〓g. IK=IR, Cに 例4.37
応 じて,そ VをIK上
れ ぞ れ,gを
の ベ ク トル 空 間 と す る と き,V上
換 子 積[A,B]:=AB-BAを 例4.38 IK上
実 リ ー 代 数,複
括 弧 積 と してIK上
のn次
素 リ ー 代 数 と い う.
の 線 形 作 用 素 の 全 体L(V)は
の リ ー 代 数 に な る.
の 正 方 行 列 の 全 体Mn(IK):={A=(Aij)i,j=1,…,n│Aij〓IK}
は 交 換 子 積 に よ っ て,IK上
の リ ー代 数 に な る.こ
般 線 形 リー 代 数 と い う.こ
れ は リ ー 代 数 と して のL(IKn)(前
例4.39 N〓INに
の リ ー代 数 をgl(n,IK)と 例)と
表 し,一
同 じで あ る.
対 して
は リ ー代 数 を な す.こ
れ を示 す た め に,ま ず,す べ て のt〓IRに
らば,ス トー ンの 定 理 に よ り,N次 に 注 意 す る.し た が っ て,Xは
の エ ル ミー ト行 列Aが
交代 行 列 で あ る.逆
は エ ル ミー ト行 列 で あ る の で,す る.し
交
べ て のt〓IRに
に,Xが
対 して,etX〓U(N)な
あ っ て,X=iAと
書 け るこ と
交 代 行 列 な ら ば,A:=-iX
対 して,etX=eitA〓U(N)で
あ
たが っ て
(4.115) 右 辺 の 集 合 が 交 換 子 積 に 関 して リ ー代 数 を な す こ と は容 易 に わ か る.u(N)をN次 元 ユ ニ タ リ群U(N)の 例4.40
N〓INに
リ ー 環 と い う. 対 して
は リ ー代 数 を な す.証 書 け る(Aは t〓IRに
明 は 次 の 通 り:前 例 に よ り,任 意 のX〓su(N)はX=iAと
エ ル ミー ト行 列).detetX=1に
よ り,eitTrA=1.こ
対 して 成 立 しな け れ ば な ら な い か ら,TrA=0で
を 満 た す 交 代 行 列 と す れ ば,す 容 易 に わ か る.よ
べ て のt〓IRに
あ る.逆
対 してetX〓SU(N)で
れが すべ ての にXを,TrX=0 あ る こ とは
って
(4.116) 右 辺 の 集 合 が リ ー代 数 に な る こ と も 簡 単 に示 さ れ る.su(N)をN次 群SU(N)の
リ ー環 とい う.
元特殊 ユ ニ タ リ
例4.41
例4.39,例4.40と
同 様 に,Vが
有 限 次 元 ベ ク トル 空 間 でGがV上
の線 形
リ ー 群 で あ る と き,
(4.117) に よ っ て定 義 され る 集 合 は交 換 子 積 に 関 して リー 代 数 を な す こ と が 証 明 さ れ る(簡 単 で は な い)*36.こ
注 意4.7
の リー 代 数 を線 形 リー 群Gの
上 述 の 例 に お い て は,リ
ー 括 弧 積 は 交 換 子 積 で 与 え ら れ て い る が,そ
う で な い リ ー 代 数 の 例 も 存 在 す る(演
例4.39,例4.40,例4.41は
リー 環 とい う.
習 問 題5).
線 形 リ ー 群 と特 定 の リ ー 代 数 と の 関 係 を 与 え る.
一 般 の リ ー群 につ い て も同 様 の 関 係 が あ る と い う の は,リ と は,リ
ー 代 数 を"積 分 し て"得
ー 群 の"微
分"な
.非
常 に 大 ざ っ ぱ に い え ば,リ
ら れ る も の で り,逆
の で あ る.こ
れ が,リ
に み れ ば,リ
ー群 ー代数
ー群 よ り も リー代 数 の 方 を よ り
根 源 的 な 存 在 と み る 理 由 の 一 つ で あ る. 群 の 場 合 と 同 様,リ
ー 代 数 に つ い て も そ の 表 現 の 概 念 が 存 在 す る:
定 義4.57
gをIK上
の リ ー 代 数,VをIK上
g→L(V)が
線 形 で あ り,か
立 つ と き,(π,V)ま
の ベ ク トル 空間 と す る.写
つ[π(X),π(Y)]=π([X,Y]),
た は 単 に π をgのV上
の 表 現 空 間 と 呼 ぶ.表
像 π:
X,Y〓gが
で の 表 現 と い う.こ
成 り
の 場 合,Vをg
現 空 間 が ヒ ル ベ ル ト空 間 の 部 分 空 間 の 場 合 に は,ヒ
ルベ
ル ト空 間 表 現 と い う. Vの
部 分 空 間Dに
つ い て,π(X)D⊂D,
X〓gが
成 り立 つ と き,Dを
πの
不 変 部 分 空 間 と い う. も し,π の 不 変 部 分 空 間 が{0}, ほ か に な い な ら ば,π
注 意4.8 例4.42
V―
こ れ ら を 自 明 な 不 変 部 分 空 間 とい う― の
は 既 約 で あ る と い う.
言 葉 の 混 用 で あ る が,{π(X)│X〓g}をgの Vを
ベ ク トル 空 間 とす る.L(V)の
い れ ば(i.e., A,B〓h⇒[A,B]〓h), の 場 合,π(A):=A,
A〓hと
*36 た と え ば
,[23]の3章
部 分 空 間hが
を 参 照.
交 換 子 積 に 関 して 閉 じて
hは 交 換 子 積 に 関 し て リ ー 代 数 を な す.こ
す れ ば,(π, V)はhの
表 現 とい う.
表 現 と い う場 合 も あ る.
表 現 を 与 え る.こ
れ をhの
恒等
例4.43 gをIK上
の リー 代 数 とす る.各X〓gに
に よ っ て 定 義 で き る.こ 現(adjoint
例4.44
の と き,Adはg上
representation)と
L2(IR3)で
対 して,Ad(X)〓L(g)を
で のgの
表 現 で あ る.こ
れ をgの
随伴 表
い う.
働 く 軌 道 角 運 動 量(L1,
L2,
L3)は
交 換 関係
(4.118)
を満 た す([8]の3章,
3.4.4項).し
た が って,L1,
の 部 分 空 間
L2, L3か
ら生 成 され る,L(C∞0(IR3))
は 交 換 子 積 に 関 し てリー 代 数 を な す.
リ ー 代 数 の 同 型 の 概 念 は 次 の よ う に 定 義 さ れ る:
定 義4.58 g1,
g2をIK上
の リ ー 代 数 とす る.ベ
線 形 作 用 素)T:g1→g2で
括 弧 積 を保 存 す る も の,す
T([X,Y]),
X,Y〓g1を
い う.Tを
リ ー 代 数 の 同 型 写 像 と い う.
4.11.2
ク トル 空 間 同 型(i.e.,全 な わ ち,[T(X),T(Y)]=
満 た す も の が 存 在 す る と き,g1とg2は
同型であ る と
リー代 数 に関 す る対 称 性
gを 複 素 リ ー 代 数 と し,(π, V)をgの 素 ヒ ル ベ ル ト空 間Hの
複 素 ヒ ル ベ ル ト空 間 表 現 と す る(Vは
部 分 空 間).H上
の 自 己 共 役 作 用 素A―
テ ク ス トで は 物 理 量― に つ い て,eitAπ(X)⊂ り立 つ と き,Aはg-対
π(X)eitA,
複
量子力学の コ ン
∀t〓IR,
∀X〓gが
成
称 性 を も つ と い う.
こ の 対 称 性 の 概 念 は,群 が 次 の よ う に し て わ か る.い
に関 す る対 称 性 の あ る種 の 一 般 化 に な って い る こ と ま,各X〓gに
対 し て,π(X)は
役 で あ る と し よ う.(そ
の 閉 包 も 同 じ 記 号 π(X)で
の 定 理 に よ り,π(X)は
強 連 続1パ
す る.そ
単射 な
表 す).こ
本 質的 に 自己共 の と き,ス
トー ン
ラ メ ー タ ー ユ ニ タ リ群{eitπ(X)}t〓IRを
生成
こで
(4.119)
と お け ば,こ がg-対
れ はH上
の ユ ニ タ リ群u(H)の
称 性 を も て ば,任
が わ か る.し AのGg-対
意 のX〓gに
部 分 群 で あ る.自
対 し て,π(X)はAと
た が っ て,eitπ(X)Ae-itπ(X)=A,
己 共 役 作 用 素A 強可換であ るこ と
∀t〓IRが
導 か れ る .こ
逆 にAがGg-対
称 性 を も て ば,Aはg-対
称 性 を も つ こ と も 容 易 に わ か る.
だ が,上
の 定 義 の 要 点 は,π(X)が
い こ と,ま
た,本
を 含 む,よ
り大 き な 群 に 関 す る対 称 性 を もつ 必 要 は な い と い う 点 に あ る.
4.11.3
ハ イ ゼ ン ベ ル ク ・ リ ー 代 数 の 表 現 と して の 正 準 交 換 関 係
Nを
れは
称 性 を 意 味 す る*37.
必 ず し も本 質 的 に 自己 共 役 で あ る必 要 は な
質 的 に 自 己 共 役 で あ っ て も,g-対
自然 数 と す る.(2N+1)個
成 さ れ る 複 素 リ ー 代 数hに
の 元X1,
称 な 自 己 共 役 作 用 素 が ,Gg
…, XN, Y1,
…, YN, Z≠0か
ら生
お いて
(4.120) (4.121) が 成 り立 つ と き,hを(2N+1)次
元 の ハ イ ゼ ン ベ ル ク ・リー代 数 とい う.
前 著[8]に お い て,正 準 交 換 関係(CCR)の に 据 え た が,実
表 現 を量 子 力 学 の 基 本 原 理 の 一 つ
は,そ れ は抽 象 的 な意 味 で の ハ イゼ ンベ ル ク ・リ ー代 数 の 表現
とみ るの が 適 切 で あ る.実 際,次 の 事 実 が 成 り立 つ: 定 理4.59
を 自 由 度NのCCRの
し,QjD⊂D, PjD⊂D, j=1,
…, Nと
す る),表
表 現 とす る と き(た だ 現 π:h→L(D)(D上
の線
形 作 用 素 の 全 体)で
を 満 た す も の が 存 在 す る.π
証 明 hの 元X1,
…, XN, Y1,
は 単 射 で あ る.
…, YN, Zは
線 形 独 立 で あ る.実 と し,こ
*37 G gに つ い て は,恒
等 表 現 を 採 用 し て い る.
際,
れ とXkと
の括弧積 を
と れ ば,iβkZ=0.
Z≠0で
弧 積 を 考 え る と αk=0を Q1, …, QN,
あ る か ら,βk=0.ま 得 る.し
P1, …, PN, IはL(D)の
た,(*)とYkと
た が っ て,γ=0も
出 る.同
様 に し て,
元 と し て 線 形 独 立 で あ る.し
た が っ て,
ベ ク トル 空間 同 型 写 像 に 関 す る 存 在 定 理([5]のp.31,定
理1.22)に
ル 空 間 同 型 写 像 π:h→L({I,Qj,Pj│j=1,…,N})で Pj, π(Z)=Iを
の括
よ り,ベ ク ト
π(Xj)=Qj,
満 た す も の が た だ 一 つ 存 在 す る.こ
れ がhの
π(Yj)=
表 現 で あ る こ とは
容 易 に わ か る.
4.11.4 Hを
■
リー 代 数 の 表 現 と し て の 第 二 量 子 化
複 素 ヒ ル ベ ル ト空 間,
し([8]の4章,4.3節),H上 用 素 をdΓ(A)と
をH上
の 全 フ ォ ッ ク空 間 と
の 稠 密 に 定 義 さ れ た 可 閉 作 用 素Aの
す る*38.Hの
部 分 空 間Dに
対 し て,F(H)の
あ る 番 号n0が
第二量子化作 部分 空間
あ っ て,n〓n0な
ら ば Ψ(n)=0
(4.122) を 定 義 す る.次 補 題4.60
の 事 実 が 成 り 立 つ:
A, BをH上
の 稠 密 に 定 義 さ れ た 可 閉 作 用 素 と し,[A,
B]も 稠 密 に
定 義 さ れ た 可 閉 作 用 素 で あ る と す る(D([A,B]):=D(AB)∩D(BA)).こ き,す
べ て の Ψ〓Ffin(D([A,B]))に
の と
対 して
(4.123) 証 明 n〓INを
任 意 と して,Ψ= nj=1Ψj,
対 し て(4.123)を
*38 [8]の4章
では
示 せ ば よ い.第
,Aが
Ψj〓Dと
い う形 の ベ ク トル Ψ に
二量子化作用素の定義 によ り
自 己共 役 の場 合 だ け考 え たが,容 易 にわ か る よ う に,Aが
定義 され た可 閉 作 用 素の 場 合 に も,dΓ(A)は
ま った く同 じ形 で定 義 され る.
稠密に
dΓ(B)dΓ(A)Ψ
は,い
か ら(4.123)が
得 ら れ る.
さ て,H上
ま の 式 でAとBを
D⊂D(A)か
部 分 空 間Dが
つAD⊂D(i. の と き,写
れ らの事 実 ■
の 稠 密 に 定 義 さ れ た 可 閉 作 用 素 の 集 合gが
リ ー 代 数 を な す と し,Hの
る*39.こ
入 れ 換 え た も の で あ る.こ
e., Dはgの
あ っ て,す
交 換 子 積 に関 して複 素
べ て のA∈gに
不 変 部 分 空 間)が
対 し て,
成 り立 つ も の と す
像 π:g→L(Ffin(D))を
(4.124) に よ っ て 定 義 す れ ば,補
題4.60に
で あ る こ とが わ か る.こ
う して,第
よ っ て,(π,Ffin(D))は
リ ー 代 数 のgの
二 量 子 化 作 用 素 を通 し て,L(H)の
表現
中のあ る
ク ラ ス の リ ー 代 数 は 全 フ ォ ッ ク 空 間 上 に そ の 表 現 を もつ. 第 二 量 子 化 作 用 素dΓ(・)は ボ ソ ン フ ォ ッ ク 空 間Fs(H)お ッ ク 空 間Fas(H)に
よ っ て 簡 約 さ れ る.そ
よび フ ェル ミオ ンフ ォ
の 簡 約 部 分 を そ れ ぞ れ,dΓs(・),dΓas(・)
と し
(4.125) (4.126) と す れ ば(Ps:F(H)→Fs(H), Pas:F(H)→Fas(H)は
そ れ ぞ れ,ボ
フ ォ ッ ク 空 間Fs(H),フ
の 正 射 影 作 用 素) ,
πs,πasもgの
ェ ル ミ オ ン フ ォ ッ ク 空 間Fas(H)へ
ソ ン
表 現 を 与 え る.
こ の 種 の 表 現 は 量 子 場 の 理 論 に お い て 重 要 な 役 割 を演 じ る.
4.11.5
角 運 動 量 代 数
す で に み た よ う に(例4.44),軌 数 を な す.だ
が,L2(IR3)は
道 角 運 動 量 が 生 成 す る ベ ク トル 空 間 は リ ー 代
具 象 的 な ヒ ル ベ ル ト空 間 で あ る の で,軌
道角運動量
に よ っ て形 成 され る リー代 数 は あ る抽 象 的 な リー代 数 の表 現 の 一 つ とみ るの が 自 然 で あ る.こ
の 考 え 方 は,軌
道 角 運 動 量(L1,
L2, L3)以
と 同 じ交 換 関 係 を 満 た す も の の 存 在 に よ っ て 補 強 さ れ る. *39 gの
自 明 な 例 はg
=B(H).こ
の 場 合,D=H
.
外 の 物 理 量 で(4.118)
例4.45
ス ピ ン1/2の
ス ピン角運動 量
(4.127) ―C2で
働 く 自 己 共 役 作 用 素 ― も(4 .118)と
例4.46
ス ピ ン1/2の
ル ベ ル ト空 間 は NC2で の 第j成
分(j=1,
量 子 的粒 子 がN個
同 じ交 換 関 係 を満 た す.
存 在 す る 系 の ス ピ ン 自 由度 に関 す る状 態 の ヒ
あ り,この 場 合 の 全 ス ピ ン角 運 動 量
2, 3)は
(4.128)
(Iは 恒 等 作 用 素)で 与 え ら れ る.S(N)1, S(N)2, S(N)3も(4.118)と
同 じ交 換 関 係 を 満
た す. 例4.47
3次 元 ユ ー ク リ ッ ド空 間IR3の
中 に 現 象 す る,ス
ピ ン1/2を
粒 子 の 状 態 の ヒ ル ベ ル ト空 間 と して, こ の 場合 の全 角 運 動 量J:=(J1,
J2, J3)(軌
もつ量 子 的 が と れ る.
道 角 運 動 量+ス
ピ ン角 運 動 量)の 第j成
分は
(4.129) に よ っ て 定 義 さ れ る.こ 例4.48 N個
れ ら も(4.118)と
同 じ交 換 関 係 に した が う.
の(内 部 自 由 度 を も た な い)量 子 的 粒 子 の 系 の 状 態 ヒ ル ベ ル ト空 間 (自 然 な 同 型 に よ る 同 一 視)に お い て 定 義 され る線 形 作 用 素
(4.130) も,た
と え ば, NC∞0(IR3)(
換 関 係 を 満 た す.L(N)jは す こ と に す る.こ
は 代 数 的 テ ン ソ ル 積 を 表 す)上 で(4.118)と
同 じ交
本 質 的 に 自 己 共 役 で あ り,そ の 閉 包 も 同 じ記 号L(N)jで
の と き,自 己 共 役 作 用 素 の 組(L(N)1,
L(N)2, L(N)3)はN粒
表
子 系の 全
軌 道 角 運 動 量 を 表 す. 例4.49 N個
の ス ピ ン1/2の
(L2(IR3; C2)のN重
量 子 的 粒 子 の 系 の 状 態 ヒ ル ベ ル ト空 間 NasL2(IR3; C2)
反 対 称 テ ン ソ ル 積;ス
ピ ン1/2の
量 子 的 粒 子 は フ ェ ル ミ オ ンで
あ る こ と に注 意)に お い て 定 義 され る 線 形 作 用 素
(4.131)
は 自 己 共 役 で あ る.作 運 動 量 を 表 す.こ 例4.50
用 素 の 組J(N):=(J(N)1,
れ も(4.118)と
J(N)2, J(N)3)は
こ の 系 にお け る 全 角
同 じ交 換 関 係 を満 た す.
(量 子 場 の 軌 道 角 運 動 量)L2(IR3)上
の フ ォ ッ ク空 間F#(L2(IR3))(#=
s, as)に お い て
とす れ ば,こ れ らの 作 用 素 は 自己 共 役 で あ り,補 題4.60に で,(4.118)と は,量
同 じ交 換 関 係 を満 た す こ と が わ か る.作
子場 の 理 論 の コ ン テ ク ス トで は,4次
よ っ て,P#Ffin(C∞0(IR3))上 用 素 の 組(M#
,1, M#,2, M#,3) 元 時空 にお け るス カラー量 子場 の空 間的
軌 道 角 運 動 量 を 表 す. こ れ ら の 例 を 一 つ の リ ー 代 数 の 異 な る 表 現 と み る こ と に よ り,統 へ と 移 行 す る こ と が で き る .そ
一 的 な観 点
の リー代 数 とは次 の 定 義 に よっ て 与 え ら れ る も
の で あ る. 定 義4.61
3個 の 元J1, J2,
J3(Jk≠0, k=1,
2, 3)か
ら生 成 され る 複 素 リ ー
代 数Aが
を満 た す と き,Aを 定 理4.59と
角 運 動 量 代 数 とい う.
同様 に して,L1,
L2, L3は 角 運 動 量 代 数Aの
表 現 であ る こ とが わ
か る(演 習 問題6). 同様 に ス ピ ン1/2の
角 運 動 量s1, s2, s3もAの
表 現 で あ る.こ れ は既 約 表 現
で あ る(演 習 問題7). 上 述 の他 の 例 もす べ てAの
表 現 で あ る こ とが わ か る.
角 運 動 量 代 数 の 表 現 とい う理 念 は,先 述 の例 に現 れ る種 々 の 角 運 動 量 を 統 一 す る に と ど ま らず,角
運 動 量 の 概 念 を拡 大 す る.た
とえ ば,ス
ピ ンが1/2と
は
異 な る ス ピ ン角 運 動 量 は も と よ り,ア イ ソ ス ピ ンの よ うな 内 部 自 由度 で さえ も 一 種 の 角 運 動 量 とみ な す こ とが 可 能 に な る*40 . *40 ア イ ソ ス ピ ン とは
,荷 電 以 外 の性 質 は ほぼ等 しい素 粒 子 を同 じ素 粒 子 の 異 な る固 有状 態 とみ るた め の量 子 数 で あ る.た とえ ば,核 子 の ア イ ソス ピ ンは1/2で,通 常 の ス ピ ンの
場 合 と同 様,2種 類 の 固有 状 態 が 可 能 で あ り,そ れ ぞ れ,陽 子 と中性 子 に対 応 す る.同 様 に π 中 間子 の アイ ソス ピ ンは1で3種 類 の異 な る固有 状 態 が 可 能 で あ り,そ れぞ れ, π+,π0,π-と い う 中間 子 に対 応 す る.
自然 哲 学 的認 識 論 の観 点 か ら は,角 運 動 量 代 数 の 理 念 に よっ て,非 常 に豊 か な― 事 実 上,無
限 的 とい って よ い― 量 子 的現 象 の展 開 を内 蔵 す る,自 然 ・宇 宙
の 根 源 的 な構造 の 一 つ が 認 識 され た こ と に な るの で あ る. 次 の事 実 に も注 目 しよ う. 命 題4.62
su(2)とAは
リー代 数 と して 同 型 で あ る.
証 明 su(2)の 任 意 の元Xは,例4.40に
と い う 形 に 書 か れ る.た
よって
だ し,α*=-α,β
∈Cで
あ る.そ
こ で,写
像T:
su(2)→Aを
に よ って 定 義 す れ ば,こ れ は リー代 数 の 同 型 写 像 を与 え る こ とが 確 か め られ る. ■ この 命 題 に よ り,角 運 動 量 代 数 の表 現 を求 め る問 題 は,su(2)の
表現 を求める
問 題 に帰 着 され る.こ れ を用 い る こ と に よ り,次 の 重 要 な事 実 が 得 られ る. 定 理4.63 Sj:=π(Jj)(j=1, 角 運動 量代 数Aの
2, 3)を 有 限 次 元 ヒ ルベ ル ト空 間Hに
既 約 な表 現 と し,各Sjは
自 己共 役 で あ る とす る.こ の と き,
非 負整 数 ま た は正 の 半 奇 数(1/2, 3/2, 5/2,…)lが 成 り立 つ.こ の 場 合,j=1, 固 有値mの
存 在 して,dimH=2l+1が
2, 3に 対 して,
多 重 度 は1で あ る.さ
ら に,Aの
お け る,
各 有 限 次 元 既 約 表 現 は こ の型 の表 現
に 限 る. この 定 理 の 証 明 は こ こで は しな い*41. 上 の 定 理 に い う既 約 表 現 を 区 別 す る数lは,物 動 量 の1成 *41 た と え ば
理 的 に は,量 子 的 粒 子 の角 運
分 の と り うる値 の 最 大 値 で あ る と解 釈 され る.ス ,[5]の10章,演
習 問 題2や[23]の
Ⅲ
章,§4を
参 照.
ピ ン角 運 動 量 の場
合 に は,こ れ を ス ピ ン量 子 数 と呼 び,Aの(2l+1)次
元 既 約 表 現 をス ピ ンlの
表 現 と い う. 例4.51 l次
の 球 関 数Yl,mで
空 間Ml(4.10.3項
生 成 さ れ る,
の部 分
を 参 照)は
に よ っ て 定 義 さ れ る,角 π(Jk)はLkを
運 動 量 代 数 の(2l+1)次
元 既 約 表 現 の 表 現 空 間 で あ る(各
極 座 標 で 表 し,作 用 す る ベ ク トル 空 間 をL({ψ
∈Ml│l∈{0}∪IN})
に 制 限 し た も の で あ る*42).
付 録F
位 相 空 間
ユ ー ク リ ッ ド空 間,ヒ ルベ ル ト空 間,バ ナ ッハ 空 間 にお け る点 ど う しの近 さは,そ の ノ ル ム か ら定 義 され る距 離 を用 い て測 られ る.だ が,集 合 の中 には線 形 空 間 で な い もの も無 数 にあ る し,距 離 が 定 義 され な い も の も存在 しう る.で は,距 離 の概 念 が 必 ず し も存 在 しな い よ う な集 合 にお い ては,点
どう しの近 さを どの よ うに測 るの が 自然 であ ろ うか.こ の 問 い に応 え
る一 つ の概 念 が 以 下 に定 義 す る位 相(topology)と
い う概 念 で あ る.こ れ は上 に言 及 した空
間 の 開集 合全 体 の 構 造 の 抽 象 化 と して得 られ る.
F.1
定
定 義F.1
義
と
集 合Xの
例
部 分 集 合 の 一 つ の 族Tが
次 の 三 つ の 性 質 を 満 た す と き,TをX
の(一 つ の)位 相 あ る い は トポ ロ ジ ー とい う: (T.1)X, 0∈T. (T.2)Tの
任 意 の 有 限 個 の集 合 の 共 通 部 分 はTに
と任 意 のT1,…,Tn∈Tに (T.3)Tの
注 意F.1 照),位 相Tに
属 す る.す
らば,∪ α∈A Tα ∈T(Aは
も つ 集 合Xを
開 集 合(open
属 す る.す
な わ ち,任 意 のn∈IN
.
任 意 個 の 集 合 の 和 集 合 はTに
は 添 え字 集 合)な 位 相Tを
対 して,
な わ ち,Tα
∈T(α
∈A; A
可 算 集 合 で あ る必 要 は な い).
位 相 空 間(topological
space)と
い う.こ の 場 合,Tの
元 を
set)と い う. 集 合Xが
有 す る 位 相 は一 つ と は 限 らな い の で(以 下 の 例F.2,例F.3を
よ る位 相 空 間 で あ る こ と を明 確 し た い場 合 に は,(X, T)の
*42 こ の 表 現 の 自 然 な 導 出 に つ い て は
,[23]の
Ⅴ 章 を 参 照.
参
よ う に 記 す.
例F.1
Eを バ ナ ッハ 空 間 と し,Eに
お け る 開 集 合 の 全 体 をOEと
す れ ば,OEは
位
相 で あ る. 証 明 ま ず,E, 0∈OEは り,x∈
明 らか.(T.2)を
∩ni=1Tiと す る.こ
ら,あ るδi>0が
存 在 して,‖x-y‖<δiな
と お け ば,‖x-y‖<δ (T.3)を
示 す.Tα
の と きy∈
∈OE(α
が あ っ てx∈Tα0. Tα0は
∈A)と
はXの
集 合Xに
i=1,…,n.他
方,Tiは
らばy∈Ti.そ
∩ni=1Ti,し して,x∈
任意 に と 開集 合であ るか
こで,δ=min{δ1,…,δn}
た が っ て,∩ni=1Ti∈OE.最
∪αTα とす る.し
開 集 合 で あ る か ら,あ る δ0>0が
な らばy∈Tα0⊂UαTα.ゆ 例F.2
示 す た め に,T1,…,Tn∈OEを
の と き,x∈Ti,
後 に
た が っ て,あ
る α0
存 在 して,‖x-y‖<δ0
え に ∪αTα ∈OE.
お い て,Xの
す べ て の 部 分 集 合 か ら な る 集 合 族D:={A│A⊂X}
位 相 の 一 つ で あ る(証 明 は 容 易).こ
の 位 相 を 離 散 位 相 と い い,(X,
D)を
離散
空 間 と い う. 例F.3
集 合Xに
お い て,Xと
位 相 の 一 つ で あ る.こ
空 集 合0だ
け か ら な る 集 合 族{X, 0}は
の 位 相 を密 着 位 相 とい い,(X,
F.1.1
閉 集 合 と基 本 近 傍 系
(X, T)を
位 相 空 間 とす る.部 分 集 合A⊂Xに
開 集 合 で あ る と き,Aは Xの
明 ら か にXの
{X, 0})を 密 着 空 間 と い う.
つ い て,そ
の 補 集 合Ac:=X\Aが
閉 集 合 で あ る と い う.
開 集 合 で 点x∈Xを
含 む も の をxの
近 傍 と い う.位
相 空 間 に お い て は,こ
の
近 傍 な る 概 念 が 点 ど う しの 近 さ を測 る 尺 度 を与 え る. 定 義F.2
Xを
位 相 空 間 と す る.点x∈Xの
「xの 任 意 の 近 傍Uに う性 質 を も つ と き,xの 例F.4
バ ナ ッハ 空 間Eの
位 相 空 間Xの
つV⊂Uと
な る もの が 存 在 す る 」 とい
基 本 近 傍 系 と呼 ば れ る. 任 意 の 点xの
全 体B(x)={Uε(x)│ε>0}はxの 例F.5
近 傍 か ら な る,一 つ の 集 合 族B(x)は,
対 して,V∈B(x)か
ε近 傍Uε(x):={y∈E│‖x-y‖<ε}の
基 本 近 傍 系 で あ る.
点 をx∈Xを
含 む 開 集 合 の 全 体 をO(x)と
す れ ば,こ
れ はx
の 基 本 近 傍 系 で あ る. 定 理F.3
Xを 位 相 空 間 と し,Xの
い る とす る.こ 意 のx∈Oに
の と き,Xの 対 し て,V⊂Oと
各 点xに
部 分 集 合Oが
対 して,基 本 近 傍 系B(x)が
与 えられて
開 集 合 で あ る た め の 必 要 十 分 条 件 は,任
な るV∈B(x)が
存 在 す る こ とで あ る.
証 明 (必 要 性)Oが
開 集 合 な らば,任
意 のx∈Oに
ら,基 本 近 傍 系 の 定 義 に よ り,V⊂Oと (十 分 性)任 意 のx∈Oに の よ う なVの
対 して,V⊂Oと
一 つ をVxと
近傍 であ るか
存 在 す る.
な るV∈B(x)が
存 在 す る と す る.そ
書 く.こ の と き,O={x│x∈O}⊂∪x∈OVx⊂O.し
が っ て,O=∪x∈OVx. Vxは
F.2
対 し て,Oはxの
な るV∈B(x)が
開 集 合 で あ っ た か ら,Oは
た
開 集 合 で あ る.
■
連 続 写像 と位 相 同型
位 相 空 間 に お い て は,写 像 の 連 続 性 の 概 念 が 定 義 で き る: 定 義F.4
X, Yを
位 相 空 間 と し,f:X→YをXか
(ⅰ) 点x∈Xに
つ い て,Yに
{x∈X│f(x)∈U}がXの て の 点x∈Xで
らYへ
お け るf(x)の
任 意 の 近 傍Uに
近 傍 で あ る と き,fは
連 続 で あ る と き,fを
の 写 像 と す る.
点xで
対 して,f-1(U):=
連 続 で あ る と い う.fが
すべ
連 続 写 像 と呼 ぶ.
(ⅱ) fが 連 続 写 像 で 全 単 射 か つ 逆 写 像f-1:Y→Xも らYへ
の 同 相 写 像 ま た は 位 相 写 像 と い う.
Xか
らYへ
の 同 相 写 像 が 存 在 す る と き,XとYは
連 続 で あ る と き,fをXか
位 相 同 型 ま た は単 に 同 相 で あ る
と い う.
F.3
位 相 空 間 の 直積
X, Yを 位 相 空 間 と し,Xの 系BX(x), BY(y)が X,y∈Y}の
各 点xお
よ びYの
与 え られ て い る とす る.こ
任 意 の 点(x,y)に
各 点yに
対 して,そ れ ぞ れ,基 本 近 傍
の と き,直 積 集 合X×Y:={(x,y)│x∈
対 し て,
が(x, y)の 基 本 近 傍 系 と な る よ う な,X×Yの こ の 位 相 を もつ 直 積 集 合X×YをXとYの
位 相 が た だ 一 つ 存 在 す る*43.
直 積 位 相 空 間 と い う.
ノ
ー
ト
本 章 の 論 述 の 主 眼 は,量 子 力 学 や量 子 場 の 理 論 に お け る 対 称 性 の 一 般 的 構造 を提 示 す る こ と に あ る.こ 論 の み な らず,相
の 一 般 的 枠 組 み は,非 相 対 論 的量 子 力 学 や 非 相 対 論 的 量 子 場 の 理
対 論 的 量 子 力 学 や 相 対 論 的 量 子 場 の 理 論 に も適 用 さ れ うる こ と を 強
調 して お き た い.ロ
ー レ ン ツ 群 やポ ア ン カ レ群 の 例 を 出 して お い た の は,こ
い て の 注 意 を喚 起 す る た め で あ る*44. *43 証 明 に つ い て は
,た
と え ば,竹
之内 脩
『トポ ロ ジ ー 』(廣 川 書 店,1973(15版))の5
章 を 参 照. *44 特 殊 相 対 論 的 量 子 場 の 理 論 へ の 応 用 に つ い て は
,[4]の7.4節
を 参 照.
の点 につ
紙 数 の 都 合 上,具
体 的 な例 の 詳 述 は,回 転 群 の 表 現 と軌 道 角 運 動 量 の 関 係 に 限 定 せ
ざ る を得 な か っ た.同
様 の 方 法 に よ り,他 の 群 や リ ー代 数 の 無 限 次 元 表 現 を扱 う こ と
が 可 能 で あ る.今
日で は,群 や リ ー代 数 の 表 現 論 につ い て 詳 し く論 じた 数 学 書 も多 く
出 回 っ て い る(た
と え ば,[9,
群 論 の ユ ニ ー ク な 書[22]も
11, 14, 18, 23]).数
理 物 理 学 との 関 連 で 書 か れ た 連 続
本 章 で扱 え な か っ た 内 容 を補 っ て くれ る だ ろ う.
量 子 力 学 の 具 体 的 な例 に 関 す る 群 論 的 あ る い は リー 代 数 的 議 論 は,た 20, 21]に み られ る.特
に,[10]は,本
理 学 にお け る対 称 性 の 役 割 を理 解 す る の に 適 して い る.相
対 論 的 量 子 力 学(デ
ク方 程 式 の 理 論)に お け る 対 称 性 に つ い て は[19]の2章,3章 に詳 し く書 か れ て い る.ロ
第4章
を参 照 さ れ た い.
演習 問 題
証 明 せ よ.
2. (4.21)で 定 義 され る 集 合L↑+(IRd+1)がO(d, ヒ ン ト:(4.18)か 3. O(d)のL2(IRd)上 4. 各j=1,…,dに L2(IRd)の
ィラ ッ
あ る い は[4]の11章
ー レ ン ツ 群 やポ ア ン カ レ群 の 量 子 場 の 理 論 にお け る表 現 の
具 体 的 構 成 に つ い て は,[4]の9章,11章
1. 命 題4.8を
と え ば,[10,
章 で は 言 及 す る こ とが で き なか っ た,素 粒 子 物
1)の 部 分 群 で あ る こ とを 証 明 せ よ.
ら, で の ユ ニ タ リ表 現(例4.26)の 対 して,AjをIRd上
強 連 続 性 を 証 明 せ よ.
の ボ レル 可 測 関 数 と し,こ の 関数 に よ る,
か け 算 作 用 素 も同 じ記 号 で 表 す.こ
の と き,A=(A1,…,Ad)が
回
転 に 関 して ユ ニ タ リ装 備 的 で あ る た め の 必 要 十 分 条 件 は,す べ て のg∈SO(d) に対 して
が 成 り立 つ こ と で あ る こ と を 証 明 せ よ.こ の よ う なAの
例:d=2の
場 合,B∈IRを
(x1, x2)∈IR2.こ
定 数 と して,A1(x)=-Bx2,
の 場 合 のA=(A1,
IR2をIR3={(x1, x2, x3)│xj∈IR3, 軸 方 向 に 一 様 な磁 場Bを 5. Vを3次
A2)は,電 j=1,
例 を構 成 せ よ. A2(x)=Bx1, x=
磁 気 学 の コ ン テ ク ス トで は,
2, 3}の 部 分 空 間 とみ る と き,x3
生 み 出 す ベ ク トル ポ テ ン シ ャル を 表 す.
元 実 ベ ク トル 空 間 と し,Vの
この 基 底 に関 す る ベ ク トルx∈Vの
基 底(e1, e2, e3)を 任 意 に 一 つ 固 定 す る. 成 分 をxiで
表 す: .写
像
[・,・]=V×V→Vを
に よっ て 定 義 す る.こ
の と き,こ の 写 像 はV上
(し た が っ て,Vは[・,・]に 6. L2(IR3)に
の リー 括 弧 積 で あ る こ と を 示 せ
関 して 実 リ ー 代 数 で あ る).
お け る 軌 道 角 運 動 量L1,
L2, L3は
角 運 動 量 代 数Aの
表現 であ る こ
と を次 の 手 順 で 証 明 せ よ.
(ⅰ) Aの 生 成 元J1, J2, J3は
(ⅱ) 線 形 な 単 射 π:A→L(C∞0(IR3))(C∞0(IR3)か 素 の 全 体)で
π(Jk)=Lkを
(ⅲ) (ⅱ)の π はAの 7. ス ピ ン1/2の
線 形 独 立 で あ る こ と を 示 せ. らC∞0(IR3)へ
の線形 作用
満 た す もの が 存 在 す る こ と を示 せ.
表 現 で あ る こ と を示 せ.
ス ピ ン角 運 動 量s1, s2, s3は 角 運 動 量 代 数Aの
既 約表現 の 一つで
あ る こ と を 示 せ. 8. Hを 複 素 ヒ ル ベ ル ト空 間 と し,CをH上
(ⅰ) H上
の 各 反 ユ ニ タ リ作 用 素Wに
だ 一 つ 存 在 し て,W=CUと
対 して,H上
の ユ ニ タ リ作 用 素Uが
た
表 さ れ る こ と を示 せ.
(ⅲ) HをH上 の 自己 共 役 作 用 素 でCに 関 して 実 で あ る とす る.UをH上 の ユ ニ タ リ作 用 素 でHと 強 可 換 な もの と し,W:=CUと お く.こ の と き, 任 意 のt∈IRに
の 共 役 子 とす る.
注 意:(ⅱ)の
対 して,We-itH=eitHWを
反 ユ ニ タ リ作 用 素Wは,ハ
系 にお け る,時
示 せ.
ミ ル トニ ア ンがHで
与 え られ る 量 子
間 反 転-時 間並 進 群 の 射 影 表 現 に お け る 時 間 反 転 に 対 応 す る反
ユ ニ タ リ作 用 素 の 候 補 で あ り うる.
関 連
図 書
[1] 新井 朝 雄,『 対称 性 の数 理 』,日 本 評 論 社,1993. [2] 新井 朝 雄,『 ヒルベ ル ト空 間 と量 子力 学 』,共 立 出版,1997. [3] 新井 朝 雄,『 フ ォ ック空 間 と量 子 場 上 』,日 本評 論 社,2000. [4] 新井 朝 雄,『 フ ォ ック空 間 と量 子 場 下 』,日 本評 論 社,2000. [5] 新井 朝 雄,『 物 理現 象の 数 学 的 諸 原理-現 代 数 理 物 理 学 入 門 』,共 立 出版,2003. [6] 新井 朝 雄,『 現代 物 理 数 学 ハ ン ドブ ック』,朝 倉 書 店,2005. [7] 新井 朝 雄 ・江 沢 洋,『 量 子 力 学 の 数学 的 構 造Ⅰ』,朝 倉 書 店,1999.
[8] 新 井 朝 雄 ・江 沢 洋,『 量 子 力 学 の 数 学 的 構 造Ⅱ』,朝
倉 書 店,1999.
[9] 江 沢 洋 ・島 和 久,『 群 と 表 現 』,岩 波 講 座 ・応 用 数 学,岩
波 書 店,1994.
[10] H.ジ ョ ー ジ ア イ,『 物 理 学 に お け る リ ー 代 数― ア イ ソ ス ピ ン か ら 統 一 理 論 へ 』(九 後 汰 一 郎 訳),吉 岡 書 店,1990. [11] 平 井 武 ・山 下 博,『 表 現 論 入 門 セ ミナ ー』,遊 [12] H.ホ
星 社,2003.
ッ ク シ タ ッ ト,『 特 殊 関 数 』(岡 崎 誠 ・大 槻 義 彦 訳),培
風 館,1974.
[13] マ ー ジ ナ ウ ・マ ー フ ィー,『 物 理 と化 学 の た め の 数 学Ⅰ』(改 訂 版28刷),共 立 全 書502, 1973. [14] 松 島 与 三,『 多 様 体 入 門 』(13版),裳
華 房,1976.
[15] M,.Reed and B.Simon,Methods tional Analysis,1972. [16] M.Reed ysis
and
of Modern
B.Simon,Methods
of Operators,Academic
立 出 版,共
of Modern
Mathematical
Mathematical
Physics
Physics Ⅳ:Anal
Press,1978.
[17] 佐 武 一 郎,『 線 型 代 数 学 』(32版),裳
華 房,1976.
[18] 島 和 久,『 連 続 群 と そ の 表 現 』,岩 波 書 店,1981. [19] B.Thaller,The
Dirac
Equation,Springer,1992.
[20] 朝 永 振 一 郎,『 角 運 動 量 とス ピ ン 』,み す ず 書 房,1989. [21] E.ウ
ィ グ ナ ー,『 群 論 と 量 子 力 学 』(森 田 正 人 ・森 田 玲 子 訳),吉
[22] 保 江 邦 夫,『 数 理 物 理 学 方 法 序 説7連
続 群 論 』,日 本 評 論 社,2001.
[23] 山 内 恭 彦 ・杉 浦 光 夫,『 連 続 群 論 入 門 』,培 風 館,1960.
Ⅰ:Func
岡 書 店,1971.
5 物理量の摂動 と固有値の安定性
この 章 で は,物 理量 が 固有 値E0を の入 った 物 理 量 もE0の"近
もつ と き,こ の物 理 量 に摂 動 が 加 わ っ た場 合 ,摂 動 くに"固 有 値 を もつ か,と い う基 礎 的 な 問題 を考 察 す る.
この 考 察 の 目的 の 一 つ は,物 理 で発 見 法 的 に使 われ て い る,い わ ゆ る形 式 的摂 動 法 に対 す る数 学 的 に厳 密 な根 拠 を与 え る こ とで あ る.だ が,本 章の 真 の 目的 は,物 理 量 の 固有 値 お よび こ れ に関連 す る数学 的 諸対 象 の 在 り方 を よ り深 い,根 源 的 な相 か ら明晰 に認識 す るた め の 第一 の 階梯 の 一部 を提 示せ ん とす る もの で あ る.
5.1
は
じ
め
に
前 著[7]の 命 題3.3で 証 明 した よ う に,量 子 力 学 的 状 態 の 在 り方 に関 す る 自然 な仮 定 の も とで,量 子 系 の物 理 量Aの
測 定 値(観 測 値)の 全 体 は そ の ス ペ ク ト
ル σ(A)と 一 致 す る.し た が って,物
理 量 の ス ペ ク トル の 構 造 を 明 らか にす る
こ と― ス ペ ク トル解 析― は,量 子 力 学 の 種 々 の 具 象 的 モ デ ル の理 論 的 結 果 を実 験 あ るい は観 測 と比 較 す る意 味 にお い て 欠 か す こ との で き ない 仕 事 で あ る. スペ ク トル解 析 の う ちで,最 も基 本 的 な 問 題 の 一つ は次 の よ う に述べ られ る: 物 理 量Aが
固有 値E0を
もつ と き,こ の物 理 量 に摂 動Bが
加 わ っ た場 合―A+B
が 自己 共 役 に な る とい う条 件 の も とで― 摂 動 の入 っ た物 理 量A+Bも もつ か?こ
の 問題 は 摂 動 の も とで の 固 有 値 の 安 定 性 の問 題 と呼 ばれ る*1.物
理 量A+BがE0の"近 Bの
く"に 固 有値 を も ち続 け る場 合,Aの
も とで安 定 で あ る(stable)と
い わ れ る.そ
も とで 不 安 定 で あ る とい う.こ の章 で は,こ *1 A+Bが
固 有値 を
固有 値E0は
摂動
うで ない場 合,そ れ は摂 動Bの
の 問 題 に対 す る 一 つ の 解 答 を与 え
,さ しあ た り,本 質 的 に 自己共 役 で あ る か 自己共 役 拡 大Cを もつ こ と しか わ か ら な い場 合 も起 こ り うる.前 者 の場 合 に は その 閉 包A+Bに つ い て,後 者 の 場 合 に はCにつ い て 同 じ問題 を考 え る.
る 解 析 的 摂 動 論(analytic
perturbation
の 基 礎 的 部 分 を 論 述 す る.こ
れ は,物
theory)と
呼 ば れ る 理 論 に つ い て,そ
理 で 発 見 法 的 に使 わ れ て い る,い
わゆる
形 式 的 摂 動 法 に 対 す る 数 学 的 に 厳 密 な 根 拠 を 与 え る も の で あ る*2. 前 著[6,7]や
本 書 の こ れ ま で の 章 で み た よ う に,量
子力学 の具象的モ デル に
お け る 物 理 量 は,質
量 や 電 荷 な ど の 物 理 定 数 を 含 む 場 合 が 多 い.そ
は,数
ラ メ ー タ ー と み な せ る.そ
学 的 に は,パ
着 目 す る こ と に よ り,物
理 量 は,一
け ら れ た 自 己 共 役 作 用 素A(κ)の た と え ば,上
のBを
κBで
作 用 素 の 族 が 考 え ら れ る.こ が 無 摂 動 作 用 素Aを
れ らの定 数
の よ う なパ ラ メー タ ー の一 つ に
つ の 実 数 パ ラ メー タ ー κ に よ っ て添 え字 づ
族{A(κ)}κ
と し て 捉 え る こ と が 可 能 に な る.
置 き換 え る こ と に よ り,A(κ):=A+κBと の 例 で は,κ=0に
お け るA(κ),す
い う な わ ち,A(0)
与 え る.
物 理 量 の 族{A(κ)}κ
に 対 し て,固
有 値 の 安 定性 の 問題 は次 の よ う に定 式 化 さ
れ る:
パ ラ メ ー ター κ の特 殊 な値 κ0に お け る作 用 素A(κ0)― 無 摂 動 作 用 素 に相 当― が 固 有 値E0を
もつ と き,κ が どの よ う な範 囲 にあ れ
ば,物 理 量A(κ)はE0の"近
く"に 固 有 値 を もつ か?
この 問 題 は,純 数 学 的 な観 点 か ら は,パ ラ メー ター κが 連 続 的 に変 化 す る と き に,作 用 素A(κ)の か,あ
諸 々 の性 質― スペ ク トル特 性 を含 む― が どの よ う に変 わ る
る い は 変 わ らな い か を探 究 す る作 用 素 論 的研 究 の 一 環 と して位 置 づ け る
こ とが で きる.以 上 が 本 章 で提 示 す る理 論 に対 す る 基 本 的 動 機 で あ る. 注 意5.1
上 述 の 作 用 素A(κ)の
λ を λ:=κ-κ0に で あ る.す
お い て は,摂
よ っ て 導 入 しA(λ):=A(λ+κ0)と
な わ ち,A(λ)に
作 用 素A(κ0)を
固 有 値 問 題 を 考 え る 場 合,新
与 え る.し
お い て λ=0の た が っ て,摂
しい パ ラ メ ー タ ー
お け ば,A(0)=A(κ0)
場 合 が も と も と の 問題 で の無 摂 動
動 の も とで の 固 有 値 の安 定 性 の 問 題 に
動 の 入 っ た 作 用 素 を 指 定 す る パ ラ メ ー タ ー の 空 間 は― 必 要 な ら ば
今 述 べ た パ ラ メ ー タ ー 変 換 を 行 う こ と に よ り― 原 点 を 含 む 近 傍 で あ る と し て 一 般 性 を失 わ な い.5.4節
以 降 で の 議 論 は,こ
*2 解 析 的 摂 動 論 は 正 則 的 摂 動 論(regular
の 観 点 を 前 提 と し て い る.
perturbation
theory)と
も呼 ば れ る
.
5.2
複 素 変 数 の バ ナ ッハ 空 間 値 関 数
複 素 解 析 学 で 学 ぶ よ う に,た
とえ ば,実 変 数 の 複 素 数 値 関 数 がテイラー 展 開
可 能 な場 合,こ の 関 数 は,複 素解 析 関 数 の 実 変 数 へ の 制 限 とみ る こ とが で きる. この 教 え に 習 うな らば,も っ と一般 的 な コ ンテ ク ス トに お い て も,実 数 パ ラ メ ー ター κ を もつ 対 象 が あ る と き,κ を複 素 数 ま で拡 張 して 考 え る の は― そ れ が う ま くい くか ど うか とい う問 題 は さ しあ た り脇 にお い て― 自然 な 方 法 の 一 つ で あ る.複 素 関 数 論 との 類 推 か らい え ば,こ の 方 法 は,少 な く と も"解 析 的 な"範 疇 を扱 う場 合 に は― も ちろ ん,考 察 の対 象 に応 じて 自然 な"解 析 性"の 概 念 が 見 い だ され た と して の話 で あ るが― 有 効 で あ ろ う こ とが 推 察 され る. 前 節 の コ ンテ クス トで い え ば,作 用 素 の族{A(κ)}κ
を指 定 す るパ ラ メ ー タ ー
κ を複 素 数 まで拡 張 して考 え る こ と にな る.こ の場 合,対 応:κ〓A(κ)は
複素
変 数 κ を変 数 と し,ヒ ル ベ ル ト空 間上 の作 用 素 に値 を と る写 像― この よ う な写 像 を複 素 変 数 の作 用 素 値 関 数 とい う― とみ る こ とが で き る.そ こ で,こ の よ う な 関 数 につ い て の 解 析 学 を構 築 す る必 要 が あ る.だ が,結 論 か ら言 え ば,こ の 作 業 は,よ
り普 遍 的 な観 点 か ら行 っ た ほ うが統一 的 で 明 晰 な 認 識 を もた らす こ
とが わ か る.す な わ ち,写 像 の 値 域 を ヒル ベ ル ト空 間上 の作 用 素 の 集 合 に限 る の で は な く,こ れ を概 念 的 に含 む,も っ と一般 的 な集 合 に と るの で あ る.し か し,い き な り一 般 的 な場 合 を扱 うの は,本 書 の 範 囲 を越 え る.そ で は,ヒ ル ベ ル ト空 間H上
の有 界線 形 作 用 素 の 空 間B(H)が
る こ とに留 意 し,ま ず,複 素 平 面Cの
こで,こ
の節
バ ナ ッハ 空 間 に な
開集 合 を定 義 域 と して,バ ナ ッハ 空 間 に
値 を とる 写 像 につ い て基 礎 的 な事 柄 を論 じる*3.
5.2.1 連 続 性 と解 析 性 DをCの か らXへ をDで
開 集 合,XをC上
の バ ナ ッハ 空 間(複 素 バ ナ ッハ 空 間)と す る.D
の 写 像F:D→X;D∋z〓F(z)∈X,す
な わ ち,D上
定 義 され た,複 素 変 数 の バ ナ ッハ 空 間 値 関 数 とい う.
*3 バ ナ ッハ 空 間 に つ い て は ,[6]の1章,1.2.6項
を 参 照.
のX値
関数
定 義5.1
F:D→X,z0∈Dと
(ⅰ) 任 意 の ε>0に
す る.
対 して,定
ば‖F(z)-F(z0)‖<ε
数 δ>0が
存 在 し て,│z-z0│<δ,z∈Dな
が 成 り立 つ と き,Fは
で あ る と い う.FがDの
点z0に
ら
お い て 連 続(continuous)
す べ て の 点 に お い て 連 続 で あ る と き,FはDに
お い
て 連 続 で あ る と い う. (ⅱ) 点z0∈Dに き,Fはz0で
お い て,極
限limh→0[F(z0+h)-F(z0)]/hが
微 分 可 能 で あ る と い う.Dの
る と き,FはD上
で 微 分 可 能 ま た は 解 析 的(analytic)あ
で あ る と い う.こ
関 数F'をFの
写 像F':D→XがDの
す べ て の 点 で 微 分 可 能 で あ る と き,FはD上
微 分 可 能 でF(2)がDの
対 し て,FがD上
の 導 関 数 と い う.以
で(n-1)回
で3回
でn回
微
下 同 様 に し て,
微 分 可 能 で あ り,(n-1)階
各 点 で 微 分 可 能 で あ る と き,FはD上
い い,F(n):=(F(n-1))'をFのn階
で2回
の 導 関 数 とい う,FがD上
各 点 で 微 分 可 能 で あ る と き,FはD上
分 可 能 で あ る と い い,F(3):=(F(2))'を3階
F(n-1)がDの
る い は 正 則(regular)
導 関 数 ま た は 微 分 と い う.
微 分 可 能 で あ る と い い,F(2):=(F')'をFの2階
自 然 数nに
微 分可能で あ
の場 合
に よ っ て 定 義 さ れ るX値
で2回
存在す ると
す べ て の 点zでFが
の導関数
微分可能であ ると
の 導 関 数 と呼 ぶ.F(n)(z)=dnF(z)/dzn
と い う 記 法 も 用 い る. FがDの
各 点 で 何 回 で も微 分 可 能 で あ る と き,Fは
無限回微分可能であ ると
い う.
例5.1 き,レ
Aを
ヒ ル ベ ル ト空 間H上
の 閉 作 用 素 で〓(A)≠0を
ゾ ル ヴ ェ ン ト方 程 式 に よ り,任 意 のz,z+h∈〓(A)(h≠0)に
こ の 式 に お い てh→0の (A-z)-1は
極 限 を 考 察 す る こ と に よ り,B(H)値
満 た す と す る.こ
の と
対 して
関 数:〓(A)∋z〓
正 則 であ り
(5.1)
で あ る こ とが わ か る.同
様 に し て,写 像:z〓(A-z)-1は〓(A)上
で無限 回微分 可
能であ り
(5.2) が 成 り立 つ こ とが わ か る. 補 題5.2
DをCの
開 集 合 と し,F:D→XはD上
の と き,FはD上
で 連 続 で あ る.
証 明 z∈Dと お く.こ
で 正 則 で あ る と す る.こ
し,o1(z,h)=F(z+h)-F(z)-F'(z)h∈X(z+h∈D)と
の と き,仮
定 に よ り,limh→0‖o1(z,h)‖/│h│=0で
あ り
(5.3) と 書 け る.し
た が っ て,‖F(z+h)-F(z)‖〓‖F'(z)‖│h│+‖o1(z,h)‖
0(h→0).ゆ
5.2.2
え に,Fは
線
積
連 続 で あ る.
分
複 素 変 数 の バ ナ ッハ 空 間 値 関 数 に つ い て も,通 仕 方 で,線
積 分 が 考 え ら れ る.DをCの
区 間[a,b]か
らDの
中 へ の 写 像)を
導 関 数 をC(t):=dC(t)/dtと の と き,FのCに
→
常 の複 素 関 数 の 場 合 と同様 な
開 集 合 と し,C:[a,b]→D(IRの
閉
区 分 的 に 滑 ら か な 曲 線 とす る*4.曲
も記 す.F:D→Xは
線Cの
連 続 で あ る と し よ う.こ
沿 う 線 積 分 ∫CF(z)dzを
(5.4) に よ っ て 定 義 す る.た 積 分 で あ る([7]のp.265に
だ し,右 辺 は,バ ナ ッハ 空 間 値 関 数F(C(・))C(・)の お け るB(H),
で 置 き換 え て 定 義 さ れ る も の).こ い こ と が わ か る*5.す *4 複 素 平 面Cに
な わ ち,通
T(t)を
れ は,曲
そ れ ぞ れ,X,T(t)=F(C(t))C(t)
線Cの
パ ラ メ ー タ ー表 示 に よ ら な
常 の 複 素 関 数 に 関 す る 線 績 分 の 場 合 と 同 様,
お け る 曲線 の基 本 的 な概 念 につ い て は
い.*5 全 単 射 な連 続微 分 可 能 な写 像h
,複 素 解析 学 の教 科 書 を参 照 され た
:[c,d]→[a,b]でh'(s)>0,s∈[c,d]を
(曲線 の 向 きを 変 え な い写 像)に 対 して,C(s):=C(h(s))と ∫CF(z)dz.
リー マ ン
満 たす もの
お くと き ∫CF(z)dz=
∫CF(z)dzは
曲 線Cの
像 と 向 き だ け か ら 決 ま る(バ
ナ ッ ハ 空 間Xに
お け る)対
象 で あ る. Cが
閉 曲 線 の と き の 線 積 分 を 周 積 分(contour
で は,特
に 断 ら な い 限 り,周
integral)と
い う.以
下,本
書
積 分 は 反 時 計 ま わ り に と る も の と す る.
5.2.3 正 則 な バ ナ ッハ 空 間値 関 数 の 基 本 的 性 質 バ ナ ッハ 空 間Xの よっ て,X値
双対 空 間 をX*で
表 す(付 録Gを
参 照).双 対 空 間 の存 在 に
の正 則 関 数 の理 論 を通 常 の 正 則 関数 の場 合 と ま っ た く並 行 的 に展
開す る こ とが で きる.ま ず,通 常 の 複 素 解 析 の結 果 を援 用 す る た め の 概 念 を定 義 す る: 定 義5.3
DをCの
関 数l(F(z))が (weakly
点z0∈Dに
analytic)で
FはD上
開 集 合,F:D→Xと
す る.各l∈X*に
お い て,正
あ る と い う.FがDの
則 で あ る と き,Fは
対 し て,複 点z0で
素
弱解析 的
す べ て の 点 で 弱 解 析 的 で あ る と き,
で 弱 解 析 的 で あ る と い う.
命 題5.4 Cの
開 集 合Dで
定 義 され た 写 像F:D→Xが
解 析 的 で あ り,任 意 のl∈X*に
正 則 な らばFは
弱
対 して
(5.5) が 成 り立 つ.
証 明 任 意 のz∈Dに
対 して
これ は題 意 を意 味 す る. 実 は,驚
くべ き こ と に,命
■ 題5.4の
逆 も 成 り 立 つ:
定 理5.5
DをCの
則 で あ る.さ もDで
開 集 合 とす る.F:D→XがD上
ら に,FはD上
正 則 で あ る.ま
た,任
で 弱 解 析 的 な ら ば,正
で 無 限 回 微 分 可 能 で あ り,各
階 の 導 関 数F(n)(z)
意 のl∈X*とn=1,2,…
に対 して
(5.6) が 成 り立 つ.
この 定 理 は 非 常 に有 用 で あ る.と いう の は,一 般 的 に い っ て,与
え られ た 関
数 が 正 則 で あ る こ と を直 接 証 明 す る よ り も弱 解 析 的 で あ る こ と を証 明 す る ほ う が 簡 単 だ か ら で あ る. 定 理5.5を 補 題5.6
証 明 す る た め に,補 題 を一 つ 用 意 す る. Xを
バ ナ ッ ハ 空 間 と す る.Xの
の 必 要 十 分 条 件 は,「 任 意 の ε>0に ら ばsupl∈X*
対 し て,番
成 り立 つ.ゆ
え に,任
(十 分 性)(*)が
xm)│〓‖l‖
ε(n,m〓n0).こ
(n,m〓n0).し 定 理5.5の り,z0を
意 のl∈X*\{0}に
命 題G.7に
対 し て,
線 形 性 に よ り,│l(xnよ っ て‖xn-xm‖〓
ε ■
弱 解 析 的 で あ る とす る.点z0∈Dを
任意 にと
意 のl∈X*に
た が っ て,コ
ε で あ る.こ
コ ー シ ー 列 で あ る.
中 心 と す る 半 径R>0の
則 で あ る.し
の と き,任
あ る か ら,(*)とlの
た が っ て,{xn}nはXの
も の を 任 意 に と る.任
が
成 り立 つ.
れ と付 録Gの
証 明 F:D→Xは
た が っ て,任
ら ば‖xn-xm‖<ε
対 し て,│l(xn-xm)│〓‖l‖
成 り 立 つ と す る.こ
と お け ば,‖l'‖=1で
あ っ て,n,m〓n0な
成 り 立 つ こ と で あ る.
あ っ て,n,m〓n0な
意 のl∈X*に
l'=l/‖l‖
コ ー シ ー列 で あ る た め
コ ー シ ー 列 で あ る と す る.し
号n0が
線 形 性 に よ り,(*)が
号n0が
ε」 …(*)が
列{xn}nはXの
意 の ε>0に
れ とlの
対 し て,番
,‖l‖〓1│l(xn)-l(xm)│〓
証 明 (必 要 性)点
点 列{xn}nが
円Kで,そ 対 して,関
の 周 と 内 部 がDの
中 に含 まれ る
数f(z):=l(F(z))はDで
ー シ ー の積 分公 式 に よ り
正
fはK上
で 連 続 で あ り,Kは
有 限 で あ る.こ X⊂X**を
有 界 閉 集 合 で あ る か ら,Cl:=supz∈K│f(z)│は
れ は│l(F(z))│〓Cl,z∈Kを
意 味 す る.付
用 い る と,各F(z)は,F(z)(l):=l(F(z))と
と み る こ と が で き,│F(z)(l)│〓Cl,l∈X*が 界 性 の 原 理[7,p.353]に
こ れ と 補 題5.6に と が わ か る.し Fはz0で
こ の 場 合.上
成 り立 つ.し
様有
コー シー列 で あ る こ
た が っ て,limh→0[F(z0+h)-F(z0)]/hはXで
収 束 す る の で,
任 意 で あ っ た か ら,FはD上 任 意 のz∈Dで
た が っ て,一
元
れ を用 い る と
よ り,{[F(z0+h)-F(z0)]/h}hはXの
の 不 等 式 でz0を
述 べ た事 実
い う仕 方 で,X**の
よ っ て,cF:=supz∈K‖F(z)‖<∞.こ
正 則 で あ る.z0∈Dは
録Gで
で 正 則 で あ る.
置 き換 え る こ と に よ り
(5.7) を 得 る.関
数dl(F(z))/dzは
的 で あ る.ゆ
え に,上
り,(5.6)でn=2の n∈INに
正 則 で あ る か ら,(5.7)に
の 議 論 で,Fの
か わ り にF'を
場 合 が 成 り立 つ こ と に な る.以
対 し て,F(n)は
正 則 で あ り,(5.6)が
よ っ て,F'(z)は 考 え れ ば,F'は 下,同
弱解析 正 則であ
様 に し て,任
意の
成 り立 つ こ と が 帰 納 的 に 証 明 さ
れ る.
■
命 題5.4と
定 理5.5は
バ ナ ッハ 空 間値 解 析 関数 の 理 論 を展 開す る上 で の 基 礎
に な る.こ れ らの 事 実 に よ り,通 常 の 複 素 関数 論 の 結 果 を援 用 で きる.こ は,基 本 的 な結 果 だ け を述 べ て お く.ま ず,コ
こで
ー シー の 積 分 定 理 の 一般 化 は次
の 定 理 で 与 え られ る. 定 理5.7
複 素 変 数 のX値
関 数Fが
ジ ョル ダ ン閉 曲線Cの
内 部 で 正 則 で,C
の 周 ま で 含 め て連 続 な らば
(5.8) が 成 り立 つ.
証 明 任 意 のl∈X*に
対 し て,l(F(z))はD上
で 正 則 な 関 数 で あ る か ら,通
常 の コ ー シ ー の 積 分 定 理 に よ っ て,∫Cl(F(z))dz=0.左 よ り,左 辺 はl(∫CF(z)dz)と l∈X*に
辺 は,lの
書 け る か ら,l(∫CF(z)dz)=0.こ
対 し て 成 立 す る か ら,付 録Gの
系G.6に
連続性 に
れがすべての
よ っ て,(5.8)が
結 論 さ れ る.
■ (5.8)が 証 明 され れ ば,あ とは 通 常 の 複 素 解 析 関 数 論 とま った く並 行 的 な展 開 が 可 能 に な る. 定 理5.8
(積 分 表 示,テ イ ラ ー展 開)F:L→Xは
して,R:=infz∈
∂D│z-z0│と
と の 距 離 を表 す).こ
お く(∂DはDの
の と き,z0のR近
に 含 ま れ る 任 意 の 円 周K(中
正 則 で あ る と し,z0∈Dに 境 界 を表 し,RはDの
対
境 界 と 点z0
傍UR(z0):={z∈C‖z-z0│
心 はz0)に
対 して
(5.9) が 成 り立 つ(右
辺 は,円Kの
取 り方 に よ ら な い).さ
ら にFはUR(z0)に
お いて
(5.10) (作 用 素 ノ ル ム に よ る 収 束)と
い う 形 に展 開 さ れ る.し
か も,こ
の 展 開 は一 意 的
に 定 ま る.
証 明 任 意 のl∈X*に
対 し て,f(z):=l(F(z))は,Dで
の 複 素 解 析 関 数 で あ る か ら,こ
れ に 対 し て,コ
n!(2πi)-1∫Kf(z)(z-z0)-(n+1)dzが
定義 された通常
ー シ ー の 積 分 公 式f(n)(z0)=
成 り立 つ.こ
れ は,す
べ て のl∈X*に
対 して
を 意 味 す る.し
た が っ て,付
(5.10)は,f(z)=l(F(z))の
録Gの
系G.6に
よ っ て(5.9)が
テ イ ラ ー 展 開 と(5.6)を
導 か れ る.
用 い れ ば よ い.
■
5.3
Aを
ヒル ベ ル ト空 間H上
:〓(A)∋z〓(A-z)-1は limz→z0(A-z)-1は
閉 作 用 素 と冪 等 作 用 素
の 閉作 用 素 とす る と き,例5.1で 解 析 的 で あ る.だ が,z0がAの
存 在 し ない(演 習 問題1).こ
み た よ う に,写 像 孤 立 固有 値 な らば,
の意 味 で,Aの
孤立固有値は
この作 用 素値 解 析 関 数 の あ る種 の"特 異 点"と み なせ る.通 常 の解 析 関 数 論 にお い て,極 の まわ りの 周 積 分 を2πiで 割 っ た数 は留 数 と呼 ば れ,重
要 な役 割 を演
じる こ とは よ く知 られ て い る.そ こ で,作 用 素 値 解 析 関 数 の 場 合 も この 留 数 に 相 当 す る対 象―(A-z)-1の
周 積 分― を定 義 し,そ れ が い か な る作 用 素 論 的 性
質 を もつ か を調 べ る こ と は 自然 で あ る.そ の よ う な対 象 は,固 有 値 あ る い はス ペ ク トル に関 す る情 報 を担 っ て い る と予 想 され る.こ れ が こ の節 の 理 論 の 背 後 に あ る基 本 的着 想 あ る い は 見通 しの 一 つ で あ る.5.1節 に よっ て指 定 さ れ る 作 用 素A(κ)の の 固有 値E(κ)は
で ふ れ た パ ラ メ ー ター κ
固 有 値 問 題 と 関連 させ て い うな らば,A(κ)
κ の あ る 関 数 を定 義 す る もの とみ る こ とが で き,次 の 節 以 降
で 示 す よ う に,(A(κ)-z)-1の
周 積 分 か ら,E(κ)に
関 す る情 報 を引 き 出す こ
とが で き るの で あ る.
5.3.1 自 己 共 役 作 用 素 の レ ゾル ヴ ェ ン トの 周 積 分 まず,基 本 的 な場 合 と して,自 え る.Aを
ヒ ルベ ル ト空 間H上
を 満 た す と す る(E0は
σ(A)に
r∈(0,δ)に
心 がE0で
Aの
対 し て,中
レ ゾ ル ヴ ェ ン ト集 合〓(A)に
補 題5.9
A, r, E0を
己共 役 作 用 素 の レ ゾ ル ヴ ェ ン トの周 積 分 を考 の 自 己共 役 作 用 素 と し,点E0∈IRは
属 して い て も い な くて も よ い).ゆ 半 径 がrの
え に,任
意の
円 周{E∈C‖E-E0│=r│}は
属 す る(図5.1).
上 述 の も の と す る.
(ⅰ) 任 意 のr∈(0,δ)に
対 して
(5.11)
図5.1 〓の 部 分 は σ(A)の 描 い た が,そ
はrに
れ はAの
幾何学的配位
一部 を 表 す.こ
の 図 で は 連 続 的 ス ペ ク トル の よ う に
孤 立 固 有値 の 部 分 集 合 で あ る場 合 もあ り うる.
よ ら な い.た だ し,∫│E-E0│=r(・)dEは
円 周:│E-E0│=rを
反時計 ま
わ りに一 周 す る線 積 分 を 表 す. (ⅱ) E0がAの
固 有 値 で あ れ ば,Pは
固 有 空 間ker(A-E0)の
上 へ の正 射 影
作 用 素 で あ る. 証 明 (ⅰ) (5.11)の
と 書 け る.関
右 辺 をPrと
数:E〓
し よ う.任
〈Ψ,(A-E)-1Φ
シ ー の 積 分 定 理 に よ っ て,右
〉 は〓(A)で
〈 Ψ,PrΦ 〉はr∈(0,δ)に
よ ら な い.Ψ,Φ 対 し て,Pr1=Pr2を
(ⅱ) ス ペ ク トル 定 理 に よ り,任
∈Hは
対 して
正 則 で あ る か ら,コ
辺 の 線 積 分 はr∈(0,δ)に
べ て のr1, r2∈(0,δ)に
と書 け る.た
意 の Ψ,Φ ∈Hに
よ ら な い.し
ー
た が っ て,
任 意 で あ っ た か ら,こ
れ は,す
意 味 す る.
意 の Ψ,Φ ∈Hに
だ し,I1(E):=∫(-∞,E0-δ](λ-E)-1d〈
対 して
Ψ,EA(λ)Φ
〉(EAはAの
ス ペ ク トル 測 度), .
したがっ て, 関 数I1(E), (j=1,2).他
I2(E)は│E-E0
正 則 で あ る か ら,∫│E-E0│=rIj(E)dE=0
方
ゆ え に,P=EA({E0})が 作 用 素 で あ る か ら([6]の
結 論 さ れ る.EA({E0})はker(A-E0)へ 命 題2.54),題
意 が し た が う.
の正 射 影 ■
5.3.2 冪
等
こ こ で,正
作
用 素
射 影 作 用 素 の 自 己 共 役 性 を 捨 象 して 得 ら れ る 作 用 素 の 概 念 を 導 入
し て お く.
定 義5.10
作 用 素P∈B(H)に
つ い て,P2=P(冪
等 性)が
成 り立 つ と き,P
を冪 等 作 用 素 と い う.
注 意5.2
文 献 に よ っ て は,冪
前 著[6,7]に 素)の
お い て は,射
影 作 用 素 と い う 言 葉 を 直 交 射 影 作 用 素(正
意 味 で 用 い た の で,こ
定 義5.11
M, NをHの
に 対 し て,Ψ1∈M,
Ψ2∈Nが
形 作 用 素Lの
命 題5.12
あ っ て Ψ=Ψ1+Ψ2と
つ 任 意 の Ψ ∈H 表 さ れ る と き,MとN
あ る と い い,H=M〓Nと
値 域R(L)をRan
PをH上
射 影作用
こ で も そ れ を 踏 襲 す る こ と に す る.
閉 部 分 空 間 と す る.M∩N={0}か
は 相 補 的(complementary)で
以 下,線
等 作 用 素 の こ と を 射 影 作 用 素 と い う場 合 が あ る.
Lと
の冪 等 作 用 素 と す る.こ
記 す.
い う ふ う に も 記 す. の と き,次
の(ⅰ)∼(ⅳ)が
成 り
立 つ:
(ⅰ) Ran
Pは
(ⅱ) I-Pは冪
閉 で あ る. 等 作 用 素 で あ る(し
た が っ て,(ⅰ)に
よ っ て,Ran(I-P)
は 閉). (ⅲ) ker P=Ran(I-P). (ⅳ) H=Ran (ⅴ) dim
Ran
P〓ker
P.
P<∞
ま た はdim
Ran
P*<∞
の と き,
(5.12) 証 明 (ⅰ) こ れ は 正 射 影 作 用 素 の 場 合 と 同 様. (ⅱ) (I-P)2を
直 接 計 算 し て み れ ば よ い.
(ⅲ) P(I-P)=0よ
り,Ran(I-P)⊂ker
と す れ ば,PΨ=0.し
た が っ て,Ψ=(I-P)Ψ.ゆ
(ⅳ) 任 意 の Ψ ∈Hに
対 し て,Ψ1=(I-P)Ψ,
ker P, Ψ2∈Ran
Pで
あ り,Ψ=Ψ1+Ψ2が
Pが
出 る.逆
に,Ψ
∈ker
P
え に Ψ ∈Ran(I-P). Ψ2=PΨ 成 り立 つ.Φ
と お け ば,Ψ1∈ ∈Ran
P∩ker
P
と す れ ば,PΦ=0…(*)で (*)とPの冪 Ran
き,{Pfk}Nk=1が
と書 け る.
た が っ て,Φ=0.ゆ
P)⊥
え にdim(ker
えに
P*に
よ る.dim
え に,dim
Ran
P*).よ
Ran
P.逆
線 形 独 立 で あ る(直
Ran
P〓dim
っ て,dim
Ran
の 線 形 独 立 な ベ ク トル の 集 合 とす る.こ
P)⊥〓dim
基 底 と す れ ば,{P*ej}nj=1は を 使 え),ゆ
P Ran
線 形 独 立 で あ る こ と を 示 す の は 容 易 で あ る.し
P.ゆ
ker P
出 る.し
第 二 の 等 号 は,直 交 分 解H=ker
と し,{fk}Nk=1を(ker
Ran
あ っ て Φ=Pη
P={0}.
(ⅴ) (5.12)の
dim
る η ∈Hが
等 性 を 用 い る と,Pη=0が
P∩ker
<∞
あ り,あ
Ran
Ran
た が っ て,N〓
交 分 解H=ker
P=dim(ker
の と
に,{ej}nj=1をRan
P*=dim(ker P)⊥.
Pの
P*
Ran
P)⊥(直
交 分 解H=
dim Ran
P*<∞
■
Q, PをH上
の冪 等 作 用 素 と す る.も
な ら ば‖P-Q‖〓1で
Q,
dim
M.し
N∩M,
N=ker
Pと
お く.命
Ran
P
題5.12-(ⅴ)に
た が っ て,N∩M≠{0}(第2章,付
Ψ ≠0と
し,dim
Ran
P≠dim
Ran
Q
あ る.
証 明 一 般 性 を 失 う こ と な く,dim Ran
P
の
場 合 も 同 様.
命 題5.13
P
す る と,PΨ=0,
意 味 す る.
DをC上
な わ ち,連
の 領 域,す
作 用 素P(z)∈B(H)を
Qと
よ っ て,dim 録C,補
QΨ=Ψ.し
こ れ は‖P-Q‖〓1を
Ran
し て よ い.M=
N⊥=dim
Ran
題C.1).そ
P<
こ で,Ψ
た が っ て,‖(P-Q)Ψ‖=‖
∈
Ψ‖. ■
結 開 集 合 と す る.各z∈Dに
対 応 さ せ る 写 像P:D→B(H)を冪
対 し て,冪
等
等作用素値 関数 と
い う.
命 題5.14 つ い て,dim
DをCの Ran
領 域 とす る.連 P(z)はz∈Dに
証 明 z0, z1∈Dを
任 意 に と る.Dの
続 な冪 等 作 用 素 値 関 数P:D→B(H)に
よ ら な い 定 数 で あ る.
連 結 性 に よ り,z0,
[a,b]→DでC(a)=z0, C(b)=z1と 点z(t)に δt,z∈Dな
対 し て,Pの
z1を
結 ぶ 曲 線C:
な る も の が と れ る.C上 連 続 性 に よ り,定
ら ば‖P(z)-P(z(t))‖<1が
数 δt>0が
の任意 の
あ っ て,│z-z(t)│<
成 り 立 つ.こ
れ と前 命 題 に よ り,
dim
Ran
P(z(t))=dim
Ran
P(z).
ば,K:={C(t)│t∈[a,b]}⊂∪t∈[a る.Kは
,b]Ut. Ut上
コ ン パ ク ト集 合(有
よ り,有 UtN,
界 閉 集 合)で
限 個 のt1,…,tNが
あ っ て,K⊂
Utj∩Utj+1≠0, j=1,…,
に,K上
でdim
Ran
Ut:={z∈D││z-z(t)│<δt}と
P(z)は
N-1,で
で はdim
あ る か ら,ハ
お け
Ran
P(z)は
∪Nj=1Utj.こ
の 場 合,a∈Ut1,
あ る よ う に と れ る.し
一 定 で あ る か ら,dim
Ran
一定 であ
イ ネ ・ボ レ ル の 定 理 に b∈
た が っ て,特
P(z0)=dim
Ran
P(z1)
が 得 ら れ る.
5.3.3 AがH上
■
閉 作 用 素 の レ ゾル ヴ ェ ン トの 周 積 分 の(自 己 共 役 とは 限 らな い)閉 作 用 素 の 場 合 に,前 項 の事 実 は どの よ
うに変 更 ・拡 張 され るで あ ろ うか.こ れ を次 に調 べ よ う.い ま,点
λ0∈Cは
(5.13) を 満 た す と す る.こ は 〓(A)に
の と き,任
属 す る の でB(H)値
意 のr∈(0,δ)に
対 し て,円
周:│λ-λ0│=r
の線積分
(5.14) が 定 義 さ れ る.こ
定 理5.15
の 作 用 素 の 基 本 的 性 質 は 次 の 定 理 に ま と め ら れ る:
A, λ0, rを 上 の も の と す る.
(ⅰ) Pλ0はrに
よ ら な い.さ
(ⅱ) Pλ0≠0で
あ る た め の 必 要 十 分 条 件 は λ0∈ σ(A)(す
の ス ペ ク ト ル σ(A)の (ⅲ) M:=ker H=M〓N,
孤 立 点)と
Pλ0,
N:=Ran
M∩N={0}が
(ⅳ) N⊂D(A),
ら にP2λ0=Pλ0.
な る こ と で あ る. Pλ0と
お く と,M,
成 り立 つ. AN⊂N.
(ⅴ) Pλ0A⊂APλ0. (ⅵ) A[M∩D(A)]⊂M. (ⅶ) λ0がAの
な わ ち,λ0はA
固 有 値 な ら ば,ker(A-λ0)⊂N.
Nは
閉 部 分 空 間 で あ り,
(ⅷ) Mに
お け る 作 用 素BをD(B):=D(A)∩M, BΦ:=AΦ,
よ っ て 定 義 す る と き(こ れ は(ⅵ)に (ⅸ) λ0∈ σ(A)か 然 数nが
あ っ て,す
(ⅹ) dim
N=1な
つNが
Φ ∈D(B)に
よ り可 能),λ0〓
σ(B).
有 限 次 元 な ら ば,λ0はAの
べ て の Ψ ∈Nに
固 有 値 で あ り,あ
対 し て(A-λ0)nΨ=0が
ら ば,λ0はAの
る 自
成 り立 つ.
固 有 値 で あ り,ker(A-λ0)=Ran Pλ0
が 成 り立 つ.
証 明 (ⅰ) 前 半 は 補 題5.9-(ⅰ)の
証 明 と 同 様.0
と し よ う.レ
ゾル
ヴ ェ ン ト方 程 式 を 用 い る こ と に よ り,P2λ0を 次 の よ う に 計 算 す る こ と が で き る:
(ⅱ) (必 要 性)対 射 で あ り,対
偶 を 示 す.λ0∈〓(A)と
し よ う.こ
λ=λ0+reiθ, θ
応:z〓(A-z)-1は│z-λ0│<δ ∈[0,2π]と
変 数 変 換 し,r→0と
の と き,A-λ0は
で 解 析 的 で あ る.そ
全単 こ で,
す る こ と に よ り,Pλ0=0
が 導 か れ る. (十 分 性)対
偶 を 示 す.ま
ず,一
般 的 な 事 実 を 証 明 す る.写
像
(5.15) を導 入 す る.容 易 に 導 か れ る等 式
(5.16)
を用 い る と
(5.17) が わ か る.任意のΨ
∈Hに
対 し て,
を 積 分(2πi)-1∫│λ-λ0│=r(λ-λ0)-1(A-λ)-1Ψdλ マ ン 近 似 和 と し よ う.す
な わ ち,定
数c(n)j, λ(n)jは,
(2πi)-1∫│λ-λ0│=r(λ-λ0)-1(A-λ)-1Ψdλ=RΨ る.明
ら か に Φn∈D(A).作
に対 す る リ ー
n→
∞ の と き,Φn→
とな る よ う に選 ば れ て い
用 素 の等 式
(5.18) を 用 い る と(A-λ0)Φn→
Ψ-Pλ0Ψ(n→
A-λ0の
∈D(A-λ0)=D(A)か
閉 性 に よ り,RΨ
∞)を
示 す こ と が で き る.こ
れ と
つ
(5.19) が 結 論 さ れ る. さ て,Pλ0=0と
し よ う.こ
あ り,R=(A-λ0)-1が (ⅲ) 命 題5.12-(ⅳ)の (ⅳ) お よ び(ⅴ)Ψ -(2πi)-1∫│
え に,λ0∈
∈Hと
λ-λ0│=r(A-λ)-1Ψdλ
を周積分 に 対 す る リ ー マ ン 近 似 和 と す る(す
∞ の と き,Ψn→Pλ0Ψ
ら か に,Ψn∈D(A).恒
れ とAの
ら ば,Pλ0≠0.
し,
等 式A(A-λ)-1=1+λ(A-λ)-1を
閉 性 に よ り,Pλ0Ψ
∈D(A)か
な わ ち,
に収 束 す る よ う に選 ば れ て い
る と{AΨn}nは,-(2πi)-1∫│λ-λ0│=rλ(A-λ)-1Ψdλ る.こ
よ っ て,λ0∈〓(A)で σ(A)な
応 用.
定 数c(n)j, λ(n)jは, n→ る).明
の と き,(5.17),(5.19)に
導 か れ る.ゆ
用 い
に 収 束 す る こ とが わ か つ
(5.20) し た が っ て,特 Ψ ∈D(A)な 出 る.
に,N⊂D(A). ら ば,上
式 の 右 辺 はPλ0AΨ
に 等 し い.よ
っ て(ⅴ)の
事実 が
上 に 示 し た こ と に よ り,Ψ る.し
た が っ て,(ⅴ)に
(ⅵ) Ψ ∈M∩D(A)と APλ0Ψ=0.し
∈Nな
す る とPλ0Ψ=0で
た が っ て,AΨ
(ⅶ) λ0がAの
ら ば,Ψ
∈D(A)で
固 有 値 で あ る と し,Ψ
∈ker(A-λ0)と
よ り,Pλ0Ψ=Ψ
た が っ て,Ψ
が 導 か れ る.し
す る と,Pλ0Ψ=0.こ
の と き,
∈N. 示 さ れ る.し
た が っ て,Ran
れ ら の 事 実 と(5.17),(5.19)に
(B-λ0)R=IMを
λ0〓 σ(B)を
す る.こ
定 義 お よび コ ー シ ー の 積 分 定 理 に
(ⅷ) (ⅰ) の 計 算 と 同 様 に して,Pλ0R=0が
R(B-λ0)⊂IM,
れ と(ⅴ)を 使 え ばPλ0AΨ=
∈M.
れ とPλ0の
Ψ ∈Mと
で あ
∈N.
あ る.こ
(A-λ)-1Ψ=(λ0-λ)-1Ψ.こ
M.
あ り,Pλ0Ψ=Ψ
よ っ て,AΨ=APλ0Ψ=Pλ0AΨ
得 る.こ
れ は λ0∈〓(B),し
R⊂ よ っ て,
た が っ て,
意 味 す る.
(ⅸ) Ψ ∈Nか
つAΨ=aΨ
と し よ う(a∈
σp(A)).こ
の と き,r>0が
い く
ら で も小 さ くで き る こ と に 注 意 す る と
と な る.し
た が っ て,A│Nの
ら ば,A│Nは
固 有 値 は λ0だ け で あ る.ゆ
固 有 値 を も ち,そ
を と る こ と に よ り,A│Nはn次 こ の と き,Cの あ るnに
れ は λ0に 等 しい.dim
え に,dim
N<∞
な ら ば,Nに
の 正 方 行 列 と して 表 さ れ る.こ
れ をCと
ジ ョ ル ダ ン標 準 形 の 対 角 成 分 は す べ て λ0で あ る.し
対 し て(C-λ0)n=0が
成 り立 つ.こ
N<∞
な 基底
し よ う. た が っ て,
れ は(A-λ0)nΨ=0,
Ψ ∈N
を 意 味 す る. (ⅹ) dim
N=1な
ら ば,(ⅴ)に
て,N⊂ker(A-λ0).こ
よ り,AΨ=λ0Ψ,
れ と(ⅷ)の
Ψ ∈Nが
成 り立 つ.し
たが っ
結 果 を 合 わ せ れ ば,ker(A-λ0)=N. ■
系5.16 λ0が
実 数 で,Aが
自 己 共 役 な ら ば,Pλ0は
証 明 Pλ0の 自己 共 役 性 を示 せ ば よい.そ
のため には
正 射 影 作 用 素 で あ る.
と 表 し,
お よ び[(A-λ0-reiθ)-1]*=
(A-λ0-re-iθ)-1を
用 い,変
定 理5.15-(ⅸ)に 点 で あ り,か
よ っ て,閉
つRan
Pλ0が
こ の 型 の 固 有 値 をAの ma(λ0):=dim と い う.こ
数 変換
θ'=-θ+2π
作 用 素Aの
ス ペ ク トル の 点 λ0が
有 限 次 元 で あ る な ら ば,λ0はAの
離 散 固 有 値(discrete
Ran Pλ0を
を 行 え ば よ い.
幾 何 学 的 多 重 度(geometric
い う.こ
常 の 多 重 度mg(λ0):=dim
multiplicity)と
σ(A)の
孤 立
固 有 値 で あ る.
eigenvalue)と
固 有 値 λ0の 代 数 的 多 重 度(algebraic
れ と の 対 比 に お い て,通
■
の 場 合,
multiplicity) ker(A-λ0)を
い う*6.(ⅶ)に
よ っ てmg(λ0)〓
ma(λ0). Aの
離 散 固 有 値 の 全 体 を σd(A)で
離 散 ス ペ ク トル の(σ(A)に 性 ス ペ ク トル(essential
注 意5.3
Aが
表 し,こ
れ をAの
お け る)補 集 合 σess(A):=σ(A)\ spectrum)と
σd(A)をAの
離 散 固 有 値 で あ る こ と は 「λ0がAの
あ る か ら(補 題5.9), 孤 立 固 有 値 で あ り,そ
の 多 重 度 が 有 限 で あ る こ と 」 と 同 値 で あ り,mg(λ0)=ma(λ0)が
5.3.4
真
い う.
自 己 共 役 の 場 合 は,Pλ0=EA({λ0})で
λ0∈ σ(A)がAの
離 散 ス ペ ク トル と い う.
成 り立 つ.
離 散 固 有 値 をも つ た め の 十 分 条 件
定 理5.15を
も う 少 し一 般 化 し よ う.AはH上
r}⊂〓(A)を
満 た す も の と す る(r>0は
の 閉 作 用 素 で{λ ∈C││λ-a│=
定 数 で,a∈Cは
定 点).し
たが っ て
(5.21) が 定 義 さ れ る.
定 理5.17
(ⅰ) Pは冪
(ⅱ) dim n個
A, a, rを 上 の も の とす る. 等 作 用 素 で あ る. Ran
P=n<∞
な ら ば,Aは{λ
∈C││λ-a│
の 離 散 固 有 値 を も つ.
*6 この 概 念 は
,λ0が 離 散 固有 値 で な い場 合 に も定 義 さ れ る.
中 に高 々
(ⅲ) (ⅱ)に お い てn=1な
ら ば,Aは{λ
∈C││λ-a│
の 単 純 な 離 散 固 有 値 を もつ.こ
の 場 合,任 意 の Ψ ∈D(A)に
中 にた だ一 つ 対 し て,APΨ=PΨ
が 成 り立 つ. (ⅳ) aが
実 数 で,Aが
証 明 (ⅰ) 定 理5.15-(ⅰ)の (ⅱ) お よ び(ⅲ)定 Ran
P⊂D(A),
自 己 共 役 な ら ば,Pは
証 明 と 同 様.
理5.15の ARan
場 合 と 同 様 に し て,H=ker
P⊂Ran
P, A[ker
こ と が わ か る.A1:=A│Ran き,│λ-a│
P,
ら ば,λ〓 あ る の は,λ
P<∞
σ(A2).し
な ら ば,A1の
だ け か ら な る.し
算 に よ り,PνP=PPν=Pν
成立 す る の と
の よ う な λ に 対 し て,
σ(A1).も
たが っ し,n:=
λ0をν
はAの
有 限 集 合 で あ る.こ と し た も の)を 考 え る と,直
た が っ て,Ran
Pν ⊂Ran
P.ゆ
の
接計 え
離 散 固 有 値 で あ る.
証 明 と 同 様.
5.4
よび
し よ う.こ
つ こ の と き に 限 る.し
∈C││λ-a│
が わ か る.し っ て,ν
Pお
ス ペ ク トル は 相 異 な る 固 有 値 λ1,…,λk(k〓n)
集 合 の 任 意 の 点 をν と し,Pν(Pλ0で
(ⅳ) 系5.16の
た が っ て,そ
た が っ て,σ(A)∩{λ││λ-a│
に,dim Pν
Pが
P∩D(A)と
あ る と き,か
σ(A)={λ
P〓Ran
P∩D(A)]⊂ker
A2:=A│ker
∈〓(A1)で
∈C││λ-a│
Ran
正 射 影 作 用 素 で あ る.
■
物 理 量 の 摂 動 の 一 般 的 ク ラ ス― 解 析 的 摂 動
準 備 が や や 長 くな っ て し ま った が,こ
れ で摂 動 の も とで の 物 理 量 の 固 有値 の
安 定 性 の 問 題 へ 滑 らか に考 察 の歩 み を進 め る こ とが で き る.
5.4.1 H0を
自 己 共 役 作 用 素 の あ る一 般 的 な族
ヒル ベ ル ト空 間H上
無 摂 動 系 の 物 理 量―
の 自 己 共役 作 用 素― 量 子 力 学 の コ ンテ ク ス トで は
と し,IRの
原 点 を含 む 区 間Ⅱ に よ っ て 添 え字 づ け られ た
対 称 作 用 素 の 族{HI(κ)}κ ∈Ⅱが 次 の 条 件 を満 た して い る とす る: (H.1)す
べ て の κ ∈Ⅱ に対 して,D(H0)⊂D(HI(κ))か
つHI(0)=0.
(H.2)κ
∈Ⅱ に 依 存 し う る 定 数a(κ), b(κ)〓0が
存 在 して
(5.22) が 成 り立 つ. (H.3)a(0)=0,
b(0)=0か
つ κ ∈Ⅱ の 関 数 と し て,a(κ), b(κ)は 連 続 で あ る.
こ の と き,H0のHI(κ)に
よる 摂 動 と して得 られ る対 称作 用 素
(5.23) は,a(κ)<1を に よ り,自
満 た す 任 意 のκ ∈Ⅱ に 対 して,加 己 共 役 で あ る.条
件(H.1)よ
藤-レ
リ ッ ヒ の 定 理(定 理2.7)
り,H(0)=H0で
あ り,条
件(H.2),
(H.3)は
を 導 く.こ
の 意 味 でH(κ)はH0の
以 下,H0が
一 つ の"連 続 変 形"と
離 散 固 有 値E0∈IRを
み ら れ る.
も つ 場 合 を 考 え る.し
たが って
(5.24) ゆえに
(5.25) とす れ ば,点E0を
中心 とす る,半 径 εの 円 周
(5.26) はH0の
レ ゾ ル ヴ ェ ン ト集 合〓(H0)に
と し た 状 況).そ
こ で,次
にKε
含 ま れ る 条 件 を 考 察 し よ う.結
補 題5.18
含 ま れ る(図5.1に
がH(κ)の
レ ゾ ル ヴ ェ ン ト集 合〓(H(κ))に
果 か ら い え ば,次
κ ∈Ⅱ と 上 の ε に 対 し て,定
お い て,A=H0, r=ε も
の 補 題 が 成 り立 つ.
数
(5.27)
を 導 入 し,r(κ)<1と
す る.こ
の と き,H(κ)は
自 己 共 役 で あ り,Kε
⊂ ρ(H(κ))
かつ
(5.28) が 成 り立 つ(収 束 は 一様 位 相 に よ る収 束).さ
らに
(5.29) 証 明 (5.27)の る.し
右 辺 第 二 項 は 非 負 で あ る か ら,r(κ)<1な
た が っ て,す
E〓Kε, r(κ)<1と
で に 指 摘 し た よ う に,H(κ)は す る.定
理2.4に
ら ばa(κ)<1で
あ
自 己 共 役 で あ る.
よっ て
(5.30) な ら ば,E〓
ρ(H(κ))で
不 等 式│E│〓
ε+│E0│とH0の
‖(H0-E)-1‖〓
⊂ ρ(H(κ))で
E)-1‖〓r(κ)に
補 題5.18の
不 等 式 か ら した が う
習 問 題2)に
あ る.(5.29)は
注 意 す る と,(5.30)が
定 理2.4の
成 立 し,
評 価 式 と‖HI(κ)(H0-
よ る.
■
仮 定 の も と で,作
が 定 義 さ れ る.定
理5.17(ⅲ)に
次 の 定 理 は作 用 素H(κ)の
る.こ
成 り立 つ.3角
ス ペ ク トル 表 示 を 用 い て 証 明 さ れ る 不 等 式
ε-1(E〓Kε)(演
し た が っ て,Kε
定 理5.19
あ り,(5.28)が
H0の
の と き,次
(ⅰ) H(κ)は (ⅱ) n=1の す る:‖ Ω0‖=1,
用 素
よ り,P(κ)は
正 射 影 作 用 素 で あ る.
固 有 値 の 存 在 に 関 す る 基 本 定 理 の 一 つ で あ る.
離 散 固 有 値E0の の(ⅰ)∼(ⅲ)が
あ る と し,r(κ)<1/2と
す
成 立 す る:
開 区 間(E0-ε,E0+ε)の 場 合 を 考 え,Ω0をH0の H0Ω0=E0Ω0.こ
多 重 度 はnで
中 に,高々n個 固 有 値E0に の と き,H(κ)は
の 固 有 値 を も つ. 属 す る 単 位 ベ ク トル と 開 区 間(E0-ε,E0+ε)
の 中 に た だ一 つ の 固 有 値E(κ)を
も つ.さ
らに
(5.31) はH(κ)の
固 有 値E(κ)に
属 す る 固 有 ベ ク トル で あ り
(5.32) が 成 り 立 つ.
(ⅲ)
(5.33)
証 明 (ⅰ)r(κ)<1/2と
す る.補
題5.9-(ⅱ)に
よって
(5.34) は,H0の
固 有 空 間ker(H0-E0)へ
の 正 射 影 作 用 素 で あ る.容 易 に証 明 され る
不等 式
と(5.29), r(κ)<1/2に
よ って
(5.35) (5.36) (5.36)と
命 題5.13か
5.17-(ⅱ)とH(κ)の
らdim
Ran
P(κ)=dim
Ran P0=nを
固 有 値 の 実 性 に よ り,(ⅰ)の
(ⅱ)後 半 の 事 実 だ け を証 明 す れ ば よ い.n=1で
得 る.す
る と定 理
題 意 が 成 立 す る. あ れ ば,(H(κ)-E)-1のEに
関 す る 正 則 性 を 用 い てP(κ)=-(2πi)-1∫│E-E(κ)│=r(H(κ)-E)-1dEと で き る(r〓(0,ε)は
十 分 小).す
る と系5.16に
の 上 へ の 正 射 影 作 用 素 で あ り,dim ker(H(κ)-E(κ))で
ker(H(κ)-E(κ))=1に
あ る.P0Ω0=Ω0と‖
変形
よ り,P(κ)はker(H(κ)-E(κ))
Ω0‖=1に
よ り, Ω(κ)〓 よ っ て,‖ Ω(κ)-Ω0‖
〓‖P(κ)-P0‖<1.し 値E(κ)に
た が っ て,Ω(κ)≠0.ゆ
属 す る 固 有 ベ ク トル で あ る.す
え に Ω(κ)はH(κ)の
固有
な わ ち,H(κ)Ω(κ)=E(κ)Ω(κ).
こ の 式 の 各 辺 と ベ ク トル Ω0の 内 積 を と り,<Ω0,P(κ)Ω0>=‖P(κ)Ω0‖2≠0 を 用 い る とE(κ)=/<Ω0,P(κ)Ω0>が H(κ)Ω0=E0Ω0+HI(κ)Ω0に (ⅲ)(5.35)とlimκ 一 式 とlim
注 意 す れ ば(5.32)が
→0r(κ)=0は(5.33)の
κ→0HI(κ)Ω0=0か
r(κ)<1/2と
導 か れ る.そ
し よ う.こ
ら,(5.33)の
の と き,(5.28)に
こで
得 ら れ る.
第 一 式 を 意 味 す る.(5.33)の
第
第 二 式 が 導 か れ る.
■
よ り
(5.37) ただ し
(5.38) E0の
多 重 度 が1の
場 合,(5.37)は,H(κ)の
固 有 ベ ク トル Ω(κ)=P(κ)Ω0
が
(5.39) と 展 開 さ れ る こ と を 意 味 す る.し
た が っ て,N〓1と
して
とい うベ ク トル を考 え る と,Nが
大 き くな れ ば な る ほ ど ΩN(κ)は Ω(κ)を よ り
よ く近 似 す る ベ ク トル で あ る こ とが わか る. 以 上 に よ り,作 用 素 論 にお い て解 析 的 摂 動 論 と よば れ る理 論 の 基 礎 的 な部 分 が叙 述 され た こ とに な る*7.
*7 こ こ で の"解
析 性"の
意 味 につ い て は ,5.4.3項
を 参 照.
5.4.2 基 底 状 態 の存 在 前 著[7]で は,量 子 系 の ハ ミル トニ ア ンHの
最 低 エ ネ ル ギ ー がHの
固有値
で あ る と き,そ れ に 属 す る固 有 ベ ク トル をHの
基 底 状 態 と呼 ん だ.だ が,こ こ
で,便 宜 上,言 葉 の 用 語 法 を拡 張 して お く. 一 般 に,下 に有 界 な 自己 共 役 作 用 素Aに
対 して,そ の ス ペ ク トル の下 限
(5.40) がAの
固 有 値 で あ る と き,そ
ち,Aの {0}の dim
の 固 有 ベ ク トル をAの
基 底 状 態 と は,E0(A)がAの 元 の こ と で あ る.も
ker(A-E0(A))=1),
定 理5.19は,基
なわ
固 有 値 で あ る と き のker(A-E0(A))\
し,E0(A)がAの Aの
基 底 状 態 と 呼 ぶ.す
単 純 固 有 値 で あ る な ら ば(i.e.,
基 底 状 態 は 一 意 的 で あ る と い う.
底 状 態 の 存 在 と 一 意 性 の 問 題 に つ い て,次
の 結 果 を もた ら
す*8.
定 理5.20
H0は
下 に 有 界 な 自 己 共 役 作 用 素 と す る.E0(H0)はH0の
な 固 有 値 に な っ て い る と し,そ の 多 重 度 をnと 縮 退 し た 基 底 状 態 を も つ).E0=E0(H0)と き,次
す る(し
離散的
た が っ て,H0はn重
お き,r(κ)<1/2と
す る.こ
に の と
の(ⅰ), (ⅱ)が 成 立 す る:
(ⅰ) H(κ)は
基 底 状 態 を も ち,そ
の 縮 退 度 はn以
下 で あ る.ま
た
(5.41) (ⅱ) n=1と
し,H0の
規 格 化 さ れ た 基 底 状 態 を Ω0と す る.こ
の 基 底 状 態 は 一 意 的 に 存 在 し,そ
れ は,定
数 倍 を 除 い て,Ω(κ):=P(κ)Ω0に
よ っ て 与 え ら れ る.
証 明 (ⅰ)加 藤-レ
リ ッ ヒ の 定 理(第2章,定
*8 基 底 状 態 の存 在 の 重 要性 に つ いて は ,第2章
の と き,H(κ)
理2.7)に
より
の序 節 で ふ れ た.
r(κ)<1/2に
よ り
し た が っ て,E0(H(κ))>E0-ε/2…(*).
Ψ0をH0の
規 格 化 され た 基 底 状
態 の 任 意 の 一 つ とす れ ば
変 分 原 理 に よ り,E0(H(κ))〓〈 ε/2…(**)を
得 る.(*)と(**)か
て,H(κ)は,区
多 重 度 はn以
ら,(5.41)が
間(E0-ε/2,E0+ε/2)の
も つ だ け で あ る.し
で あ る か らE0(H(κ))<E0+ 導 か れ る.定
中 に は,高
た が っ て,E0(H(κ))はH(κ)の
々n個
理5.19-(ⅰ)に
よっ
の離 散 固有 値 を
離 散 固 有 値 で あ り,そ
の
下 で あ る.
(ⅱ)(ⅰ)と 定 理5.19-(ⅱ)に
5.4.3
Ψ0,H(κ)Ψ0〉
HI(κ)が
よ る.
κ に つ い て1次
■
である場合
前 項 の 一 般 論 の 一 つ の 特 殊 化 と し て,HI(κ)がH0-有
界 な 対 称 作 用 素H1を
用いて
(5.42) と表 され る場 合 を考 え
(5.43) と お く.た
だ し
(5.44) (a, b〓0は
定 数)と
す る.パ
ラ メ ー タ ー κ を 摂 動H1に
関 す る結 合 定 数 また は
摂 動 パ ラ メ ー タ ー と い う. 容 易 に わか る よ う に
(5.45)
と す れ ば,こ
のa(・),
b(・)は 条 件(H.1),
(H.2),
(H.3)を
満 た す.こ
の 場 合
(5.46)
と お け ば,い
ま の 場 合 のr(κ)は
(5.47) と い う 形 を と る.し
た が って
(5.48) が 成 り立 つ.上
のHI(κ)を(5.38)の
右 辺 に 代 入 し,(5.37)を
用い る と
(5.49) を 得 る.た
だ し
(5.50) (5.49)の 右 辺 の 級 数 は,複 素 平 面 の 原 点 の近 傍
(5.51) で も定 義 さ れ る.こ B(H)値
関 数 で あ り,κ〓IR∩URε
て,P(κ)はURε 展 開(5.49)の え る.い
のB(H)値
上 のB(H)値
関 数 をP(κ)と
す れ ば,PはURε
な ら ばP(κ)=P(κ)が 解 析 関 数P(κ)へ
含 意 の 一 つ を み る た め に,E0が
上 の解析的 な
成 り立 つ.し
たが っ
拡 張 さ れ る. 単 純 な離 散 固 有 値 の場 合 を考
まの 場 合
(5.52) そ こ で,URε
上 の 関 数Eを
(5.53)
に よ っ て 定 義 す れ ば,こ E(κ)=E(κ)が
れ は 解 析 的 で あ り,任
成 り立 つ.こ
意 の κ〓IR∩URε
に 対 し て,
れ らの事 実 に よ り
(5.54) と冪 級 数 展 開 で き る(cn〓IRは
定 数).級
対 す る レ イ リ ー(Rayleigh)-シ
ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 級 数 ま た は 摂 動 級 数(pertur
bation
series),展
開 係 数cnを
固 有 値E(κ)に
レ イ リ ー-シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 係 数 と い う .
レ イ リ ー-シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 係 数cnを (5.49)と(5.52)に
数(5.54)をH(κ)の
計 算 す る に は 次 の よ う に 進 め ば よ い.
よ り
(5.55) が 成 り立 つ.た
だ し
(5.56) (5.55)と(5.54)か
ら,数
列{cn}∞n=1に
対 し て 次 の 漸 化 式 が 得 ら れ る:
(5.57) こ こ でb0=1を
用 い た.し
一 意 的 に表 さ れ る
た が っ て,cnはa1,
…, an, b1,
…, bn -1を
用 いて
.
以 上 の 事 実 を ま と め る と 次 の 定 理 を 得 る:
定 理5.21
H1は(5.44)を
き,L(κ)は
自 己 共 役 で あ り,次
(ⅰ) L(κ)は
も し,H0が
満 た す 対 称 作 用 素 と し,│κ│
開 区 間(E0-ε,
の(ⅰ), E0+ε)の
下 に 有 界 で,E0がH0の
底 状 態 を も ち,E0(L(κ))はL(κ)の (E0-ε/2,
E0+ε/2).
E0(L(κ)の
と す る.こ
の と
(ⅱ)が 成 り立 つ: 中 に,高
々n個
の 固 有 値 を も つ.
最 低 エ ネ ル ギ ー で あ れ ば,L(κ)は 離 散 的 固 有 値 で あ る.ま 多 重 度 はn以
下 で あ る.
た,E0(L(κ))〓
基
(ⅱ) E0の
多 重 度 が1で
だ 一 つ の 固 有 値E(κ)を
あ る と き,L(κ)は も ち,(5.54)が
開 区 間(E0-ε,
成 り立 つ.ま
E0+ε)の
た,L(κ)の
中にた
固 有 値E(κ)
に 属 す る 固 有 ベ ク トル Ω(κ)は
(5.58) と 展 開 さ れ る.た も し,H0が
だ し,Pnは(5.50)で
定 義 さ れ る.
下 に 有 界 で,E0がH0の
状 態 は 一 意 的 に 存 在 し,そ ま の 場 合,Ω0はH0の
れ は,零
最 低 エ ネ ル ギ ー で あ れ ば,L(κ)の で な い 定 数 倍 を 除 い て,Ω(κ)に
基底
等 し い(い
基 底 状 態).
(5.57)と(5.56)を
用 い る とcnを
具 体 的 に 計 算 す る こ と が で き る.ま
ず
(5.59) は す ぐ に わ か る.(5.57)に
よ っ てc2=a2-b1c1.一
E)-1Ω0=(E0-E)-1Ω0を
方,(5.56)と(H0-
用 い る と
した が っ て
(5.60) 以 下,同
様 に し て,逐
注 意5.4
H0が
{Ω0,Ψn│n〓1}と
とな る の で
次cnを
計 算 す る こ と が で き る.
固 有 ベ ク トル の 完 全 正 規 直 交 系 を も つ 場 合 を 考 え,そ す る:H0Ψn=EnΨn,
En〓
σd(H0)(n〓1).こ
れ らを
の とき
と計 算 さ れ る.こ
れ が通 常 の 物 理 の 教 科 書 で扱 わ れ る形 式 的 摂 動 級 数 に お け る
2次 の係 数 の形 で あ る.だ が,公 式(5.60)は,H0が
固 有 ベ ク トル の完 全 正 規
直 交 系 を もた ない 場 合 に も成 立 す る式 で あ り,こ の 例 の場 合 よ り もは る か に 一 般 的 で あ る. 注 意5.5
摂 動 作 用 素HI(κ)がH0-有
界 な対 称 作 用 素H1,
用 い てHI(κ)=κH1+κ2H2+…+κNHNと
…, HN(N〓2)を
い う形 で 与 え られ る場 合 で も,
上 述 の 場 合 とま っ た く同 様 な議 論 が 可 能 で あ る.
5.5
応
用
この節 で は,前 節 の 結 果 を量子 力学 の具 体 的 な モ デ ル に応 用 す る.以 下,h= 1, c=1の
単 位 系 を用 い る.
5.5.1 量 子 調 和 振 動 子 の 摂 動 1次 元 量 子 調 和 振 動 子 の 系 を考 え,状 態 の ヒ ルベ ル ト空 間 と してL2(IR)を る.し
た が っ て,そ
で 与 え ら れ る.こ は そ れ ぞ れ,振 素 で あ る.[7]で 度1の
と
の ハ ミル トニ ア ン は
こ で,Δ
は1次
動 子 の 質 量,角
元 の 一 般 化 さ れ た ラ プ ラ シ ア ン,m>0, 振 動 数,xは
示 し た よ う に,H0は
座 標 変 数x〓IRに
自 己 共 役 で あ り,そ
離 散 固 有 値 λn:=(n+1/2)ω(n=0,
1, 2, …)だ
上 の ボ レ ル 可 測 関 数 で,D(H0)⊂D(V)か
あ る.し
よ るか け算 作 用
の ス ペ ク トル は 多 重 け か ら な る.VをIR
つ
を 満 た す も の と し よ う.λn-λn-1=ω(n〓1)で て λnを と る と,ε はω/2で
ω>0
た が っ て,い
あ る か ら,前 ま の 場 合 のRε
節 のE0と は
し
と な る.ゆ ば,Vに
え に,定 理5.21に
よ っ て,結 合 定 数 κが│κ│
よ っ て 摂 動 を 受 け た ハ ミル トニ ア ンH0+κVは,(λn-ω/2,λn+ω/2)
の 中 に た だ 一 つ の 固 有 値En(κ)を N個
満 たす な ら
も ち,こ
れ は κ に つ い て 実 解 析 的 で あ る.
の 量 子 調 和 振 動 子 か ら な る 系 の ハ ミ ル トニ ア ン は テ ン ソ ル 積 NL2(IR)
上の 作 用素
と し て 定 義 さ れ る*9.テ
が 成 り立 つ.し
ン ソ ル 積 の 理 論 に よ り,H(N)0は
たが っ て,N=1の
自己 共 役 で あ り
場 合 と同様 に して,H(N)0の
固 有 値 は,相
対 的 に有 界 な摂 動 の もとで 安 定 で あ る こ とが わ か る(詳 細 を埋 め る こ とは 読 者 に任 せ る*10). こ う して,量 子 調 和 振 動 子 の 多 体 系 の ハ ミル トニ ア ンの 各 固 有 値 は,相 対 的 に有 界 な摂 動 の も とに お い て,結 合 定 数κ の 大 き さが十 分 小 さけ れ ば 安 定 で あ る こ とが わ か る.
5.5.2 2電 子 系 の 基 底 状 態 の存 在 電 荷Zeを
もつ 原 子 核 がIR3の
原 点 に 固 定 さ れ て い る と し,そ の ま わ りに2
個 の 電子 が 存 在 す る系 を考 え る.こ の と き,系 は2個 の 電 子 か ら な る2体 系 と み な せ る の で,状 態 の ヒル ベ ル ト空 間 と して,1電 間L2(IR3;C2)の2重
子 系 の状 態 の ヒル ベ ル ト空
反対 称 テ ン ソル 積 2asL2(IR3;C2)を
とる こ とが で き る.
Z=2の
場 合 の系 は ヘ リ ウ ム原 子 の あ る"近 似 形 態"を 記 述 す る*11.原 子 番 号
Zは,数
学 的 に は,自 然 数 で あ る必 要 は な い の で,以 後,正
の パ ラ メ ー ター と
み な す. 以 下 で は,簡 単 の た め,電 子 の ス ピ ン と統 計 性 は無 視 す る.し た が っ て,状 *9 [7]の4章
を参 照 . *10 た だ し ,N〓2の と きは,最 低 エ ネル ギ ー以 外 の 固有 値 は縮 退 してい る こ とに注 意. *11 よ り精 密 に は ,原 子 核 を構 成 す る陽 子2個 も動 い て いる場 合 を考 え る必 要 が あ る.も っ と根 源 的 に考 察 す るの で あ れ ば量 子 電磁 場 との相 互 作用 も考 慮 しな けれ ば な らな い.
態 の ヒ ル ベ ル ト空 間 と し てL2(IR3)
L2(IR3)=L2(IR3×IR3)(自
然 な 同 型)を
と る. 1個 の電 子 と 原点 に 固定 さ れ た 原 子 核 との相互 作 用 に 関 す る ハ ミ ル トニ ア ン は
で 与 え ら れ る.こ り,mは
こ で,Δxは
変 数xに
関 す る 一般 化 され た ラ プ ラ シ ア ンで あ
電 子 の 質 量 を 表 す パ ラ メ ー タ ー で あ る.作
子 の ハ ミ ル トニ ア ン で あ る の で,第2章 か つHhyd(Z)は
た ハ ミ ル トニ ア ン はL2(IR3×IR3)上
の作 用 素
で 与 え ら れ る.た
点 を(x1,x2)と
は 変 数xjに
水素様 原
で み た よ う に,D(Hhyd(Z))=D(Δx)
下 に 有 界 な 自 己 共 役 作 用 素 で あ る.電
だ し,IR3×IR3の
用 素Hhyd(Z)は
子間 の 相 互 作 用 を 無 視 し
表 す と き,hj(j=1,2)
関 す る 水 素 様 原 子 の ハ ミ ル トニ ア ンHhyd(Z)で
あ る:
電 子 間 の 相 互 作 用 は クー ロ ン ポ テ ンシ ャル
で与 え られ るか ら,電 子 間 の 相 互 作 用 も取 り入 れ た 系 のハ ミル トニ ア ン は
で 与 え ら れ る.こ
こ で,摂
動 パ ラ メ ー タ ー κ ∈IRを
で 示 し た よ う に,H(κ)はD(H0)上
導 入 し た.第2章,2.3節
で 自 己 共 役 で 下 に 有 界 で あ る.
水 素 様 原 子 の ハ ミ ル トニ ア ン の ス ペ ク トル に つ い て は 次 の 補 題 に 述 べ る 事 実 が 成 立 す る:
補 題5.22
各n〓1に
対 して
と お く.こ
の とき
(5.61) で あ り,各 離 散 固 有 値Enの
こ こ で は,こ
多 重 度 はn2で
あ る.
の 事 実 を認 め て 先 に進 む*12.ハ
化 され た基 底 状 態 は(絶 対 値 が1の
ミル トア ニ ンHhyd(Z)の
規格
定 数倍 を除 い て)
(5.62) で 与 え ら れ る:Hhyd(Z)ψ0=E1ψ0, ‖
ψ0‖L2(IR3)=1.
自 然 な 同 型L2(IR3×IR3)〓L2(IR3) I+I
Hhyd(Z)に
L2(IR3)の
ユ ニ タ リ 同 値 で あ る*13.自
も と でH0はHhyd(Z)
己共 役 作 用 素 の テ ン ソル 積 の ス
ペ ク トル 理 論 の 応 用 に よ り
とお け ば
が 成 立 す る*14.各 式 の右 辺 の 集 合 を具 体 的 に計 算 す る と
が わ か る. *12 各EnがH
hyd(Z)の 固 有 値 で あ る こ と は 周 知 で あ ろ う(量 子 力 学 の 入 門 的 教 科 書 に お い て 必 ず 扱 わ れ る 事 項 で あ る).し か し,Hhyd(Z)の ス ペ ク トル の 精 確 な 構 造(5.61) を証 明 す る こ と は そ れ ほ ど 簡 単 で は な く,次
の よ う な 階 梯 を 踏 ま ね ば な ら な い.ま
Hhyd(Z)の 真 性 ス ペ ク トル の 構 造―(5.61)の 第 二 式― こ れ か ら,離 散 ス ペ ク トル σd(Hhyd(Z))は(-∞,0)の 次 にE<0に IR3\{0}上
対 す る 固 有 ベ ク トル 方 程 式Hhyd(Z)ψ=Eψ(ψ ∈D(Δ))の 解 ψ は で 無 限 回 微 分 可 能 なL2関 数 と 同一 視 で き る こ と を 示 し― い わ ゆ る楕 円 的
正 則 性(elliptic な 値 は 上 述 のEn, *13 [7]の4章 を参照 *14 [7]の4章
ず,
を 証 明 す る(第6章 の 例6.4). 部 分 集 合 で あ る こ とが わ か る.
を参照
regularity)と n=1, . .
2,…,で
よ ば れ る 性 質([5]の
定 理17.52を
尽 き る こ と を 証 明 す る.
参 照)―,Eの
可能
次 の 点 に 注 意 し よ う.す トル[E1,∞)の
中 に"埋 め 込 ま れ て"い
有 値(embedded はH0の
な わ ち,n,m〓2に
eigenvalue)と
る(図5.2).こ
い う.他
離 散 固 有 値 で あ り,そ
対 す る 固 有 値En,mは
方,H0の
の 多 重 度 は1で
図5.2 H0の
真性スペク
の よ うな 固有 値 を埋 蔵 固 最 低 エ ネ ル ギ ーE1
,1=2E1
あ る.
ス ペ ク トル
実 は,埋 蔵 固 有 値 の概 念 は,一 般 的 な概 念 で あ り,次 の よ う に定 義 され る: 定 義5.23 λ をAの
作 用 素Aの
固 有 値 λ がAの
埋 蔵 固 有 値(embedded
一般 的 に い っ て,埋
て た い へ ん 難 しい.な 有 値 に 対 し て は,こ い か ら で あ る.こ 第2章,
2.3節
ス ペ ク トル σ(A)の
eigenvalue)と
い う.
蔵 固 有 値 に 対 す る 摂 動 問 題 は,離 ぜ な ら,埋
散 固有 値 の そ れ に比 べ
蔵 固 有 値 の 定 義 か ら 明 ら か な よ う に,埋
蔵固
れ まで に述 べ た解 析 的摂 動 論 の 手 法 が そ の ま まで は 使 え な の 問 題 に つ い て は,次
の 節 で も う 少 し 詳 し く論 じ る .
で み た よ う に,VeeはH0に
摂 動 論 に よ り,│κ│が
関 し て 無 限 小 で あ る の で,解
十 分 小 で あ れ ば,H(κ)の
区 間(2E1-│E1│/2,2E1+│E1│/2)=(5E1/2, だ 一 つ の 固 有 値 で あ り,そ 特 に,H(κ)の
孤 立 点 で な い と き,
の 多 重 度 は1で
最 低 エ ネ ル ギ ーE0(H(κ))は, 3E1/2)の
中 に あ る,H(κ)の
あ る こ と が 結 論 さ れ る .し
基 底 状 態 は 一 意 的 に 存 在 す る.さ
析 的
ら に,E0(H(κ))は
た
た が っ て, κの 実解 析
関数で あ り
が 成 り立 つ.た 式 を用 い る と
だ し,Ω0(x1,x2):=ψ0(x1)ψ0(x2).一
方,付
録Hの
積分公
を得 る.た
だ し,Ehyd:=-e2/(2a0)は
水 素 原 子 の 基 底 状 態 エ ネ ル ギ ー で あ る.
した が って
す で に 述 べ た よ う に,Z=2の
場 合 は ヘ リ ウ ム 原 子 で あ り,こ
の場 合 に は
(5.63) で あ る.ヘ
リ ウ ム 原 子 の 基 底 状 態 の エ ネ ル ギ ー の 実 験 値 は5.807Ehydで
とが 知 ら れ て い る.κ〓0.88な ら,も
ら ば,(8-5κ/2)Ehyd〓5.807Ehydで
し,κ=0.88でE0(H(κ))が
あ るか
収 束 す る な ら ば,E0(H(0.88))は あ る が,κ=1が
展 開(5.63)の
実験値 と
よ い 一 致 を 示 す.本
来 は κ=1で
て い る と して も,理
論 と実 験 の 一 致 は あ ま り よ くな い こ と が わ か る.
5.5.3
あ るこ
収 束 域 に入 っ
2核 子 系 の 束 縛 状 態 の 存 在
原 子 核 の 構成 要 素 で あ る 核 子(陽
子,中
よ り,核 力 と呼 ば れ る 引 力 が 生 じ る.こ 領 域 に お い て は,第
性 子)ど
う し の間 に は 中 間 子 の 交 換 に
の 核 力 の ポ テ ン シ ャ ル は,低
エ ネル ギ ー
一次 近 似 的 に
(5.64) と い う形 で 与 え られ る.こ す る 中 間子 の質 量,│x│は
こで,g>0は
核 子 の結 合 定 数,m>0は
力 を媒 介
核 子間 の距 離 を表 す.こ の ポ テ ン シ ャルVYを
テ ン シ ャル とい う*15.容 易 にわ か る よ うに,VYは
湯 川ポ
超 関数 方 程 式
(5.65) (φ ∈D(IR3)')の
解 で あ る(Δ
は3次
元 の 一 般 化 さ れ た ラ プ ラ シ ア ン,δ(x)は
3次 元 の デ ル タ超 関 数)*16方 程 式(5.65)は *15 日 本 の 偉 大 な 理 論 物 理 学 者 湯 川 秀 樹(1907 *16 直 接 示 す に は
,VYの
[7]の 付 録Cの(C.
湯 川 方 程 式 と 呼 ば れ る こ と が あ る. -1981)に
よ る.
フ ー リ エ 変 換 を 計 算 す れ ば よ い(演 45)と(C.
53)を
習 問 題3).他
既 知 と す れ ば,(5.65)は
(C. 45)に は 誤 植 が あ り,(-Δ+1)G(f)=(2π)d/2δ(f)が で は 訂 正 済 み).
方,[6]ま
た だ ち に わ か る.な 正 しい 式 で あ る(2刷
たは お, 以降
二 つ の 核 子 か ら な る 系 の 状 態 の ヒ ル ベ ル ト空 間 と し て,L2(IR3×IR3)を 核 子 は 非 相 対 論 的 で あ る と す る(こ こ の と き,系
の ハ ミ ル トニ ア ン は,ヒ
ル ベ ル ト空 間L2(IR3×IR3)で
に よ っ て 与 え られ る((x1,x2)∈IR3×IR3).た ま た はMj=mn(中
と り,
こ で も核 子 の ス ピ ン と統 計 性 は 無 視 す る).
性 子 の 質 量)(j=1,2)で
働 く作 用 素
だ し,Mj=mp(陽
子 の 質 量)
あ り
こ の ハ ミル トニ ア ン に お け る ポ テ ン シ ャ ル 部 分VYはx1とx2の
差 だ けの 関数
で あ る の で,第2章,2.3.4項
問題 の ハ ミル
で 示 し た よ う に,Hの
解 析 は1体
トニ ア ン
(5.66) ―L2(IR3)で M2)(換
働 く作 用 素― の 解 析 に 帰 着 さ れ る .た
だ し,M:=M1M2/(M1+
算 質 量).
ハ ミ ル トニ ア ンHY(m)の
固 有 値 問 題 を 考 察 す る た め に,m=0の
場 合 のVY,
す な わ ち,
(5.67) は ク ー ロ ン型 ポ テ ン シ ャ ル で あ る こ と に 注 目 す る.こ
れ を ポ テ ン シ ャ ル とす る
シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 型 ハ ミ ル トニ ア ン
(5.68) は,第2章,2.3.5項aで
示 し た よ う に,自
己 共 役 で 下 に 有 界 で あ る.作
用 素H0
を用 い る と
(5.69) と書 け る.た
だ し
で あ り,パ
ラ メ ー タ ーmは[0,∞)を
動 く も の とす る.容
易 に わか る よ うに
(5.70) した が っ て
(5.71) ゆ え に,か
け 算 作 用 素Wmは
た,Wm〓0に
よ り
し た が っ て,特
に,HY(m)の
有 界 で あ る の で,HY(m)は
自 己 共 役 で あ る.ま
最 低 エ ネ ルギ ー
に対 して
(5.72) が 成 り立 つ.た
だ し,
(5.73) はH0の
離 散 ス ペ ク トル の 点 で あ る(補 題5.22を
の 最 低 エ ネ ル ギ ー が 摂 動Wmの 定 理5.24
各n〓1に
参 照).不
等 式(5.72)は,H0
も と で 下 が ら な い こ と を 意 味 す る.
対 して
(5.74) と す る. (ⅰ) も し
(5.75) な ら ば,HY(m)は
開 区 間(λn-εn,λn+εn)の
(ⅱ) (基 底 状 態 の 存 在 と一 意 性)m<2π ギ ーE1(m)はHY(m)の
中 に 高 々n2個 ε1/gな
ら ば,HY(m)の
の 固 有 値 を も つ. 最 低 エ ネル
単 純 な 離 散 固 有 値 で あ り,
(5.76) が 成 り立 つ.
証 明 (ⅰ)H0の Wmの
固 有 値 λnの 摂 動 を 考 え る.前
節 の 一 般 論 で κ=m,HI(κ)=
場 合 を 考 え れ ば よ い.
と は,(5.73)を
であ る こ
使 え ば 容 易 に わ か る.い
a(m)=0,b(m)=gm/4π
ま の 場 合,κ=m,ε=εnと
で あ る か ら,Rε n=2π
も と で 定 理5.19を
(ⅱ)(5.76)の
右 側 の 不 等 式 だ け 示 せ ば よ い.(5.70)に
トル ψ ∈D(H0)に
応 用 で き,証
εn/gと
条 件(5.75)の
対 し て,〈 ψ,HY(m)ψ
つ い て,最
な る.し
た が っ て,
明 す べ き事 実 が し た が う.
〉〓 〈ψ,H0ψ
低 エ ネ ル ギ ー に 対 す る 変 分 原 理 に よ り,E1(m)〓 H0に
して
よ り,任
意 の単 位 ベ ク
〉+(gm/4π).こ
〈 ψ,H0ψ
れ と最
〉+gm/4π.次
低 エ ネ ル ギ ー に 対 す る 変 分 原 理 を 用 い れ ば(5.76)の
に,
右 側 の不
等 式 が 得 ら れ る.
注 意5.6
HY(m)の
は,m/M<3g/128π 135Mev(π0中
■
基 底 状 態 の 存 在 と一 意 性 の た め の 十 分 条 件m<2π と 同値 で あ る.M,mの
間 子),140Mev(π±
ε1/g
実 験 値 はM〓938Mev,m〓
中 間子)で あ る か ら,た
とえ ば,g〓20
な ら ば2核 子 系 の基 底 状 態 は 存 在 す る.陽 子 と中性 子 の系 は重 陽 子 と呼 ば れ る 一 つ の束 縛 状 態 を形 成 す る こ とが 実 験 的 に 知 られ て い る.い ま得 た理 論 的 結 果 は こ の実 験 事 実 に対 応 して い る と解 釈 され う る.
5.6
埋 蔵 固 有 値 の 摂 動,共
鳴 極,生
き残 り確 率
5.6.1 埋 蔵 固 有 値 の 摂 動 問題 につ い ての 予 備 的 注 意 埋 蔵 固有 値 に対 す る摂 動 問題 は,数 学 的 に繊 細 で微 妙 な側 面 を もつ.実 際,具 体 的 な例 を研 究 す る こ と に よ り,無 摂 動 作 用 素 の 埋 蔵 固有 値E0は 安 定 な場 合― 摂動 を受 けた 作 用 素 がE0の"近
摂 動 の も とで
く"に 固 有 値 を もつ 場 合― もあ れ
ば,不 安 定 な場 合― 摂 動 の もとで 消 えて しま う場 合(摂 動 を受 け た作 用 素 はE0 の"近 く"に は固 有 値 を もた ない 場 合)― もあ る こ とが 知 られ る.ど ち らに な る か は,無 摂 動 作 用 素 と摂 動 の特 性 や作 用 素 に含 まれ るパ ラ メー タ ーの 範 囲 に よ る*17.埋 蔵 固有 値 が摂 動 の もとで 消 え て しま う場 合,そ *17 次 の 節 で す る.
.こ
の よ う な 例 の 一 つ を論 じ る.こ
の 節 で は,ま
こ に い か な る数 学 的構
ず,あ
る 一 般 的 な 構 造 を提 示
造 が 関 与 し,量 子 力 学 の コ ンテ クス トに お い て,そ れ が どの よ う な現 象 に 関 わ る か を調 べ る こ とは た い へ ん 興 味 の あ る と こ ろで あ る.
5.6.2
レ ゾ ル ヴ ェ ン ト法
埋 蔵 固 有 値 の 摂 動 問 題 に対 す る ア プ ロ ー チ の 一 つ は 次 の よ う な も の で あ る.例 5.1で み た よ う に,ヒ (H-z)-1はEの た が っ て,任
ル ベ ル ト空 間H上
の 自 己 共 役 作 用 素Hの
レ ゾ ル ヴ ェ ン ト集 合〓(H)上 意 の ベ ク トル Ψ ∈Hに
対 し て,複
のB(H)値
レ ゾル ヴ ェ ン ト
解 析 関 数 で あ る.し
素 変 数z∈〓(H)の
関数
(5.77) は〓(H)上
の解 析 関 数 で あ る.Hの
ス ペ ク トル 測 度 をEHと
す れ ば,自 己 共
役 作 用 素 の レ ゾ ル ヴ ェ ン トに対 す る ス ペ ク トル 表 示 に よ り,任 意 の 実 数Eと z∈〓(H)に
対 して
と書 ける.こ の 式 か ら次 の こ とが わか る:(ⅰ)EがHの ≠0な
らばEはFH(z;Ψ)の
EはFH(z;Ψ)の1位
特 異 点 で あ る.特 に,Eが
の極 で あ る.(ⅱ)逆
limε→0,ε ≠0(-iε)FH(E+iε;Ψ)≠0な が って,Hの
固 有値 で あ り,EH({E})Ψ 孤 立 固 有 値 で あ れ ば,
に,EがFH(z;Ψ)の
らば,EはHの
特 異 点 で あ り,
固有 値 で あ る*18.し た
固 有 値 は― 埋 蔵 固有 値 で あれ,孤 立 固 有 値 で あ れ― あ る ク ラス に
属 す るベ ク トル Ψ に対 す る解 析 関 数FH(z;Ψ)の
特 異 点 と して特 徴 づ け られ る.
と こ ろで,複 素 解 析 学 の 観 点 か らい えば,解 析 関数 とい うの は,そ れ を可 能 な 限 り解 析 接 続 す る こ とに よ っ て初 め て,そ の 全 貌 に到 達 す る こ と が で き る.し たが っ て,FH(z;Ψ)に
つ い て もそ の 解 析 接 続 を考 察 す る の は 自然 で あ り,そ の
解 析 接 続 の 特 異 点 は,量 子 力 学 の コ ン テ ク ス トで は,何 *18 ル ベ ー グ の 優 収 束 定 理 を 用 い る こ と に よ り
が 証 明 され る.
らか の 物 理 的 意 味 を も
つ と推 察 され る.Hの
孤 立 固有 値 が,FH(z;Ψ)の
す る と,FH(z;Ψ)の
実 軸 上 の極 で あ る こ と を考 慮
解析 接 続 の,実 軸 以外 の場 所 にあ る 極 は 固 有 値 に準 ず る役
割 を担 っ て い る と予 想 され る.次 の定 義 は,こ の 予 想 を動 機 づ け と して 導 入 さ れ る もの で あ る. 定 義5.25
関数FH(z;Ψ)が
分 を横 切 っ て,(第二
上 半 平 面{z∈C│Imz>0}か
ら,実
リ ー マ ン面 の)下 半 平 面{z∈C│Imz<0}の
解 析 接 続 可 能 で あ る と し,こ の 解 析 接 続 をFH(z;Ψ)と 点z0∈Dに
極 を も つ と き,z0をHの
あ る 領 域Dへ
す る.関
共 鳴 極(resonance
軸 の あ る部
数FH(z;Ψ)が
pole)と
い い,2Im z0
を 共 鳴 の 幅 と い う.
こ の 定 義 に い う 「共 鳴 極 」 とい う 命 名 は,Hが き,FH(z;Ψ)の state)と
下 半 平 面 に お け る 極 が,考
察 下 の 量 子 系 の 共 鳴 状 態(resonance
呼 ば れ る 状 態 に 対 応 す る も の で あ る こ と を 予 想 し た上 で つ け ら れ た も
の で あ る*19.共
鳴 状 態 と い う の は,厳
ア ン の 固 有 状 態)で あ る*20:(ⅰ)そ る;(ⅱ)あ
は な く,物 理 的 に 粗 くい え ば,次
る 程 度"長
い"時
間 に わ た っ て 継 続 し,そ
た,(ⅱ)に
き
の 後 に別 の状 態 に あ る確 率 常,Γ
い う継 続 時 間 を 共 鳴 状 態 の 寿 命 と い う.こ 鳴 状 態 は,た
粒 子 ど う しの 衝 突 ・散 乱 の 中 間 状 態 と し て 現 れ る.こ 射 粒 子 の エ ネ ル ギ ーEの
関 数 と み た と き,そ
とい う記号 で
scattering)と
同 伴 す る.物
の 組 か ら決 ま る 複 素zr:=Er-i(Γ/2)が
れ はΓ に 反 比
と え ば,原
の 場 合,散
れ はE=Erの
の よ う な 散 乱 を 共 鳴 散 乱(resonance
共 鳴 状 態 に は 実 数 の 組(Er,Γ)が
でHが
似"で
鳴 状 態 の エ ネ ル ギ ー 幅 を 表 す 区 間 は[Er-Γ/2,Er+Γ/2]
例 す る 量 で あ る こ と が 実 験 的 に 確 認 さ れ る.共
もつ.こ
ミル トニ
の 性 質 を もつ状 態 の こ とで
お け る 幅 を 共 鳴 状 態 の 準 位 幅 と い い,通
た が っ て,共
で あ る.ま
密 な 意 味 で の 束 縛 状 態(i. e.,ハ
の エ ネ ル ギ ー の 観 測 値 は あ る微 小 な 幅 の 中 間 点Erで"近
で 遷 移 す る.(ⅰ)に 表 す.し
量 子 系 の ハ ミ ル トニ ア ン を表 す と
乱の確率 を入
と こ ろで ピー ク を い う.こ
う し て,
理 的 ・発 見 法 的 議 論 に よ れ ば,こ
ハ ミ ル トニ ア ン の 共 鳴 極(上
ハ ミル トニ ア ン を 表 す 場 合 の 共 鳴 極)の
子 や素
の 定義
一 つ を与 え る と推 測 さ れ る.だ
*19 もち ろ ん ,純 数 学 的 には,上 の定 義 にお け る 対象z0を 何 と呼 ぶ か は全 然 本 質 的 な 問題 で は ない. *20 F H(z;Ψ)に お け るベ ク トル Ψ が表 す 状 態 とは別 物 で あ る.
が,こ の 推 測 を,普 遍 的 な形 で 証 明す る の は 簡 単 で は な く,多 くの 準 備 が い る.
5.6.3 共 鳴 極 と生 き残 り確 率 の指 数 関数 的 崩 壊 ハ ミル トニ ア ンの 共鳴 極 の存 在 は,状 態 の 生 き残 り確 率 の 時 間 崩壊(時 間 的減 衰)と 関連 して い る こ と を示 そ う*21.次 の 定 理 が 成 り立 つ. 定 理5.26 a∈IRが
HをH上
の 自己 共 役 作 用 素 と し,次 の 性 質(ⅰ)∼(ⅲ)を もつ 実 数
存 在 す る とす る:
(ⅰ) a〓 σP(H). (ⅱ) あ る ベ ク トル Ψ C\[a,∞)で
対 し て,zの
解 析 的 で あ り,上 半 平 面 か ら,実
(第二 リ ー マ ン面 の)下
関 数FH(z;Ψ)は
切 断平面
軸 の 部 分 区 間[a,∞)を
横切 って
半 平 面 の 部 分 集 合Da:={z∈C│Rez>a,Imz<0}
へ と 解 析 接 続 さ れ る .こ FH(z;Ψ)=FH(z;Ψ)), Er-i(Γ/2)を
∈D(H)に
の 解 析 接 続 をFH(z;Ψ)と FH(z;Ψ)は,Daの
す れ ば(Imz>0な 中 に た だ 一 つ の1位
ら ば, の 極Z0=
も っ.
(ⅲ) limz∈Da,z→∞│FH(z;Ψ)│=0. こ の と き,す
べ て のt>0に
対 して
(5.78) た だ し,R0はF(z;Ψ)のz=z0に
お け る留 数 で あ り
証 明 記 号 上 の 煩 雑 さ を避 け る た め に,証 明 を 通 し て,f(t):=〈 >0),F(z):=FH(z;Ψ),F(z):=FH(z;Ψ)と
お く.Imz>0に
つ公式
*21 生 き残 り確 率 に つ い て は
,3.8.4項
を 参 照.
Ψ,e-itHΨ〉(t 対 し て 成 り立
([7]のp.
268,補
と 書 け る.た
題3.11)に
だ し,x[0
F(x+iy)はxの
よ っ て
,∞)は[0,∞)の
関 数 と して,ix[0
で あ る.関数f(t)e-ytはt〓0で る の で,フ
定 義 関 数 で あ る.し
,∞)(t)f(t)e-ytの
た が っ て,F(z)=
フ ー リエ 変 換(の
倍)
微 分 可 能 で あ り,
であ
ー リ エ 逆 変 換 公 式 が 成 り立 つ:
(5.79) た だ し,右
辺 は 広 義 積 分 の 意 味 で と る*22.ま
が 切 断 平 面C\[a,∞)で
た,y>0は
解 析 的 で あ る こ と を 考 慮 し て,(5.79)の
三 つ の 部 分 に 分 け る:f(t)=I1(t)+I2(t)+I3(t).た
た だ し,0<ε
す る.積
分I1(t), I3(t)を
右 辺 の積 分 を
計 算 す る た め に,F(z)e-itz
正 則 関 数 で あ る こ と,F(z)e-itzはDa上 ー シ ー の 積 分 定 理 を 用 い る.ま
で有理型であ るこ と
ず,I3(t)を
計 算 し よ う.そ
こ の と き,極z0は
のため
満 た す よ う に 選 び,関
閉 曲 線:[a+ε+iy,a+ε+R+iy]→{a+ε+iy+Re-iθ│θ
[0,π/2]}→{a+ε+iy+iζ│ζ
数F
だ し
数R>0をR>-Imz0+y,R>Rez0-aを
F(z)e-itzを
任 意 で よ い.関
∈[-R,0]}に
数 ∈
添 っ て 積 分 す る(図5.3).
こ の 閉 曲 線 内 に 含 ま れ る.し
た が っ て,コ
ー シ ー の積 分 定
理 によ り
*22 積 分 は 発 散 して い る.
か ど うか はわ か らな い.具 体 的 な例 で は ,多 くの場 合,こ の
図5.3
I3(t)の 計 算 の た め の 積 分 路
条 件(ⅲ)と
を 用 い る と,左 R→
辺 の 第 二 項 の 積 分 はR→
∞ と し て か ら,y→0と
を 得 る.I1(t)に
つ い て は,閉
∞ で0に
収 束 す る こ と が わ か る.
す る こ とに よ り
曲 線: に つ い てF(z)eitz
を 積 分 す る こ と に よ り,I3(t)の
が 示 さ れ る.
場 合 と 同様 に して
は 容 易 に わ か る.以
上 を 整 理 す れ ば,(5.78)が
得 ら れ る.
式(5.78)の
■
物 理 的 意 味 を 考 え よ う.議
論 を み や す くす る た め に,‖Ψ‖=1の
場 合 を考 え る. て 区 間[α,β](α〓0)が
を 満 た す一 つ の 集 合 と し と れ る と 仮 定 す る.こ
の と き,任
意 のt∈[α,β]に
対
して
が成 り立 つ. 第3章
で す で にみ た よ う に,Hが
は 時 刻0で
量 子 系 の ハ ミル トニ ア ン を表 す場 合
状 態 Ψ に あ っ た 系 が 時 刻tで
(残 存 確 率)―
を表 す.し
状 態 Ψ に 留 ま る 確 率― 生 き残 り確 率
た が っ て,時 刻t∈[α,β]に な わ ち,そ
お け る 生 き 残 り確 率 は 近 似
的 にe-tΓ
に比 例 す る.す
ゆ え に,状
態 Ψ の 生 き 残 り時 刻 の 平 均 値― 状 態 Ψ の 平 均 寿 命―
こ
れ は 時 間 に 関 し て,指 数 関 数 的 に 減 衰 す る.
れ か ら,も
な ら ば τ〓1/Γ
と な る.よ
っ て,条
し,αΓ≪1か
件(**)の
も と で,Γ
え て よ い.ゆ
え に,Γ
次 に(*)を
満 た さ な い よ う な 状 況 を 考 え る.こ
と え ば,R1(t)お
つ βΓ≫1…(**) は 平 均 寿 命 の 逆 数 と考
が 大 き け れ ば 状 態 Ψ の 平 均 寿 命 は 短 く,小
よ びR2(t)の
れ は,tが
減 衰 の オ ー ダ ー がtの
に 比 例 す る 場 合 に 起 こ る*23.こ
の 場 合 に は,も
を τ とす れ ば,
さ け れ ば 長 い.
十 分 大 き い と き,た
負冪t-γ(γ>0は
は や,状
定 数)
態 の 平均 寿 命 につ い て
語 る こ と は で き な い.
5.6.4
指 数 関 数 的 減 衰 と ス ペ ク トル
前 項 の 最 後 に 述 べ た こ と と 関 連 し て,次
定 理5.27
AをH上
が あ っ て,す
べ て のt∈IRに
が 成 り立 つ と す る.こ
証 明 f(t):=〈
*23 実 際
,こ
の 自 己 共 役 作 用 素 と し,単 位 ベ ク トル Φ と定 数C,γ>0 対 して
の と き,σ(A)=IR.
Φ,e-itAΦ〉,
μ(B):=‖EA(B)Φ‖2と
の 驚 くべ き 事 実 を 証 明 し て お こ う.
t∈IRと
お け ば,こ
の よ う な 例 は 存 在 す る.
お く.1次
れ は,(IR,B1)上
元 ボ レ ル 集 合Bに
対 し て,
の 確 率 測 度 で あ り,f(t)=
と 書 け る.仮 定 に よ り,
で あ る か ら,f
の 逆 フー リエ 変 換
は存 在 し,そ
れ は帯 領 域
で 定 義 さ れ る正 則 関 数 へ と解 析 接 続 され る .任 意 の λ ∈IRに
は 実 数 で あ り,fはIR上
で 有 界 か つ 連 続 で あ る.フ
対 して,f(λ)
ー リエ 解 析 と作 用 素 解 析
に よ り,
が 成 り立 つ こ とが 示 さ
れ る*24.ゆ
え に,μ は ル ベ ー グ測 度 に関 して 絶 対 連 続 で あ る.fはS上
で正
則 で あ り,そ れ は恒 等 的 に0で な い か ら,一 致 の 定 理 に よ り,そ の零 点 はSの 孤 立 点 に 限 る.こ の事 実 と任 意 の λ ∈IRに 対 して,f(λ)は 考 慮 す る と,supp supp μ ⊂supp
μ=IRで
な けれ ば な らな い こ とが 結 論 され る.と
EA=σ(A)で
定 理5.27は,ハ
あ るか ら,σ(A)=IRで
ミル トニ ア ンHに
い て 次 の 性 質 を導 く:Hが
実数 になる ことを ころ が,
あ る.
■
よ って 記 述 され る系 の 生 き残 り確 率 につ
下 に有 界 ま た は 上 に 有 界 な ら ば,任 意 の 単位 ベ ク ト
ル Ψ に関 す る 生 き残 り確 率 は,t∈IRの
関 数 と して
IR全 体 で 指 数 関 数 的 に 減 衰 す る こ とは な い.
5.7
最 後 に,前 的 に は,フ
フ リ ー ドリ ク ス モ デ ル
節 の 最 初 の 項 で 述 べ た 事 柄 を 例 証 す る 簡 単 な モ デ ル の 一つ― 歴 史 リ ー ド リ ク ス(K.O.Friedrichs)[10]に
よ って 最 初 に考 案 され たモ デ
ル― を 考 察 し て お く.
5.7.1
モ デ ル の 定 義
ω:IR→[0,∞)を
連 続 関 数 で,任 意 の λ〓0に
ル ベ ー グ 測 度 が0で
あ り,か
ル ベ ル ト空 間L2(IR)に *24 まず
つ ω(k)→
お い て,関
∞(│k│→
対 して{k∈IR│ω(k)=λ}の ∞)を
満 た す も の と し,ヒ
数 ω に よ る か け 算 作 用 素 を ω で 表 す.し
た
,有 界 な台 を もつ実 数値 連 続関 数gの す べ て に対 して,
を示 せ.次 に,IRの 任 意 の有 界 区 間Jの 定 義 関数xJを 有界 な台 を もつ実 数 値連 続 関 数列 で 近似 す る こ とに よ り,B=Jの 場 合 の(*)を 導 け.最 後 に,μ(IR)=1 に注 意 し,ホ ップ の拡 張 定 理 の一 意 性 に よ り,(*)を
示 せ.
が っ て,ω
は非 負 自 己共 役 作 用 素 で あ り
(5.80) と す れ ば,m〓0で
あ り
(5.81) が 成 り立 つ*25.μ0∈IRを 例5.2 る,質
(ⅰ)m〓0を 量m,運
定 数 と す る.
定 数 と し て, k∈IR(2次
動 量kの
て,ω(k)=k2/(2M), k∈IR(質 ル ギ ー).(ⅲ)α>0を
元 時空 にお け
相 対 論 的 自 由 粒 子 の エ ネ ル ギ ー).(ⅱ)M>0を 量M,運
動 量kの
定 数 とし
非 相 対 論 的 自 由粒 子 の 運 動 エ ネ
定 数 と して,ω(k)=│k│α+m.
1次 元 ユ ニ タ リ 空 間CとL2(IR)の
直 和 ヒ ル ベ ル ト空 間
(5.82) を考える.HFの
ベ ク ト ル(z,ψ)を
L2(IR)か
の 線 形 作 用 素,SをCか
らCへ
上 の 線 形 作 用 素 とす る と き,HF上
をD(L):=C
らL2(IR)へ
般 に,α
∈C,
Tを
の 線 形 作 用 素,AをL2(IR)
の線形作 用素
[D(A)∩D(T)]
に よ っ て 定 義 す る.こ う*26.容
と も 表 す.一
の 型 の 作 用 素Lを
作 用 素 行 列(operator
matrix)と
い
易 にわかる ように
*25 [6]のp .136,例2.13, [6]のpp. 126-127,命 題2.26,定 理2.27の 応 用. *26 作 用 素 を 行 列 要 素 とす る 作 用 素 の 意 .任 意 の 有 限 個 の ヒ ル ベ ル ト空 間H1,…,HNの 和 ベ ク トル 空 間 表 さ れ る.N=2の
に お け る 線 形 作 用 素 の 非 常 に 広 い ク ラ ス が,作 場合 に つ い て は,[3]の
付 録Cを
参 照.
直
用 素 行 列 の形 に
で あ る.右
辺 はC上
の 作 用 素 α(α を か け る 作 用 素)とAの
直 和 で あ る*27.
さて
(5.83) とす れ ば,こ れ は 自 己 共 役 で あ り
(5.84) が 成 立 す る.こ の 場 合,固
有 値 μ0の 多 重 度 は1で
あ り,そ の 固 有 ベ ク トル は
(定 数 倍 を 除 い て)
(5.85) で 与 え ら れ る.も
し
(5.86) な ら ば,μ0はH0の
埋 蔵 固 有 値 で あ る(図5.4).以
下,こ
の 条 件 の も とで考 え
る*28.
図5.4
H0の
ス ペ ク トル(μ0>mの
場 合)
図5.5
H0の
ス ペ ク トル(μ0<mの
場 合)
ヒル ベ ル ト空 間HFお
よ び μ0,ω に対 す る 量子 力 学 的 に 可 能 な描 像 の 一 つ は
次 の よ うな もの で あ る.す な わ ち,HFは,1次
元 的 な 運動 を行 う量 子 的粒 子 が
高 々1個 存 在 しえ る よ うな 系 の 状 態 の ヒル ベ ル ト空 間 を表 す.こ トル(z,0)∈HFは
量 子 的粒 子 が0の 状 態 を記 述 し,(0,ψ)∈HFは
*27 ヒ ル ベ ル ト空 間 上 の 作 用 素 の 直 和 に つ い て は *28 μ0<mの
場合 は
,μ0はH0の の 解 析 は 演 習 問 題 とす る(演
,[7]の4章,4.3.2項
離 散 固 有 値 で あ る(図5.5).こ 習 問 題4).
の 場 合,ベ
ク
量 子 的粒 子
を 参 照. の 場 合 の摂 動 につ い て
が1個 存 在 す る状 態(運 動 量 表 示)を 記 述 す る.ω は,量 子 的 粒 子 の 自由 運動 の ハ ミル トニ ア ン を表 し,μ0は 量 子 的粒 子 が存 在 し ない と きの 系 のエ ネ ル ギ ー を 表 す.作 用 素H0は,こ
の よ うな系 に お け る 自 由ハ ミル トニ ア ン(無 摂 動 ハ ミル
トニ ア ン)で あ る. 次 にH0の
摂 動 を 考 え る.関 数g∈L2(IR)(g≠0)に
対 して,写 像Ag:
L2(IR)→Cを
(5.87) に よ っ て定 義 す る.容 易 に わ か る よ う に,Agは
有界線形作用素 であ り
(5.88) が 成 り立 つ*29.上
述 の 描 像 で い えば,Agは
る作 用 素 で あ る.作 用 素Agの
量 子 的 粒 子 を一 つ 減 らす 働 きをす
共 役 作 用 素A*g:C→L2(IR)は
(5.89) とい う形 で与 え られ る.こ れ は量 子 的粒 子 が 存 在 しな い状 態 か ら,量 子 的 粒 子 が 一 つ 存 在 す る状 態 をつ くる働 き をす る作 用 素 で あ る. 摂 動 作 用 素HI:HF→HFを
(5.90) に よ っ て 定 義 し,κ
∈IRを
パ ラ メー タ ー と して
(5.91) と お く.こ
れ が フ リ ー ド リ ク ス モ デ ル の ハ ミル トニ ア ン で あ る.HIは
称 作 用 素 で あ る の で,加
藤-レ
リ ッ ヒ の 定 理 に よ っ て,H(κ)は
有 界 な対
自 己 共 役 で あ り,
下 に 有 界 で あ る. 以 後,L2(IR)やHFの *29
内 積 を 単 に 〈・,・〉で 表 す. は 容 易 にわ か る .実 際 に 等号 が成 立 す る こ とを 示 す には,
に注 意 す れ ば よい.
5.7.2
埋 蔵 固 有 値 の消 失
以下
(5.92) とい う条 件 の も とで 考 え る.作 用 素H(κ)に
関 す る基 本 的 性 質 の一 つ が次 の 定
理 で 与 え られ る. 定 理5.28
κ ≠0と
し,(5.86),
(5.92)お
よ び 次 の 二 つ の 条 件(ⅰ),(ⅱ)を
仮
定 す る: (ⅰ) 任 意 のE>mに
対 して
(5.93) (ⅱ)
(5.94) こ の と き,H(κ)は
固 有 値 を も た な い.す
な わ ち,H0の
埋 蔵 固 有 値 μ0は 摂 動
の も と で 消 え る.
証 明 固 有 ベ ク トル 方 程 式 は
を 意 味 す る.こ
ら
ま ず,z=0な
ら,Φ=0.し
た が っ て,Φ
の 第 二式 か
ら ば,ψ=0で
は 固 有 ベ ク トル で は な い.zが0で
あ るか
な い と き,次
の
三 つ の 場 合 が 考 え ら れ る. (a) E=mの
場 合.こ
を(*)の
に 代 入 す る と μ0-m=κ2Cgと
第1式
E=mはH(κ)の (b) E<mの
これ な り,条
件(5.94)に
反 す る.
固 有 値 で は な い. 場 合.(a)と
を 得 る.(-∞,m)上
方 程 式f(x)=xは(-∞,m)の
同 様 に して,
の 関 数
続 で 単 調 減 少 で あ る.条
値 で は な い.
の と き は,
は連
件(5.94)に
よ っ て,
中 に 解 を も た な い.ゆ
した が っ て, え に,EはH(κ)の
固有
(c) E>mの
場 合.こ
て,EはH(κ)の
件(5.93)に
固 有 値 で は な い.以
例5.3 g∈L2(IR)が
ら ば,例5.2の の よ う な ω とgに
よ っ て,
上 か ら,H(κ)は
連 続 関 数 で あ り,ω(k)>mを
て,│g(k)│>0な が っ て,こ
の 場 合,条
した が っ
固 有 値 を も た な い. ■
満 た す,す
べ て のk>0に
関 数 ω の す べ て に 対 し て,(5.93)は 対 し て は,条
件(5.86),
(5.94)の
対 し
成 り 立 つ.し
た
も と で,H(κ)(κ
≠0)
は 固 有 値 を も た な い.
5.7.3
H(κ)が
条 件(5.93)ま
固 有 値 をも つ条 件
た は(5.94)が
成 立 し な い よ う な ω とgに
対 して は,H(κ)が
固 有 値 を も つ 場 合 が あ る.
定 理5.29
条 件(5.86),
(5.92)お
よび
(5.95) を 仮 定 す る.こ
の と き,H(κ)は
多 重 度1の
固 有 値Em(κ)∈(-∞,m)を
も ち,
これは方程式
(5.96) を 満 た す.さ
らに
(5.97) と す れ ば,ΦmはH(κ)の
固 有 値Em(κ)に
属 す る 固 有 ベ ク トル で あ る:H(κ)Φm=
Em(κ)Φm.
証 明 条 件(5.95)の り,f(x)=xは(-∞,m)の ψm∈L2(IR)で
も と で は,前
定 理 の 証 明 に お け る(b)の
中 に た だ 一 つ の 解Em(κ)を
あ り,Φm∈ker(H(κ)-Em(κ))で
部 分の考察 に よ もつ.仮
定 に よ り,
あ る こ とは直 接計 算 に よ り
確 か め ら れ る.
定 理5.29は,摂
■
動 パ ラ メ ー タ ー の 大 き さ│κ│が 十 分 大 き け れ ば,H(κ)は
値 を も つ こ と を 示 す も の で あ り,興 味 深 い.た
固有
だ し,こ の 場 合 の 固 有 値 は,埋
蔵
固 有 値 μ0の"変
容"と
い う よ り も,む
し ろ,強
結 合 領 域―│κ│の
に 特 有 の 新 し い 数 理 的 現 象 と み る の が 自 然 で あ る.定 ラ メ ー タ ー│κ│の 変 化 に お い て,│κ│が
を"通
過 す る"際
(critical point)と 一般
に,量
理5.28も
大 きい 領 域― 考 慮 す る と,パ
点
に 劇 的 な 変 化 が 起 こ る わ け で あ る.こ
の 種 の 点 を摂 動 の 臨 界 点
呼 ぶ.
子 力 学 や 量 子 場 の 理 論 に お い て,ハ
ミ ル トニ ア ン の 強 結 合 領 域 で
独 自 に 出 現 す る 構 造 な い し 効 果 を 非 摂 動 的 構 造(nonpeturbative た は 非 摂 動 的 効 果(nonperturbative フ リ ー ド リ ク ス モ デ ルH(κ)に
effect)と
structure)ま
い う.
お け る 固 有 値Em(κ)の
出 現 は非 摂 動 的 効 果 の
一 つ とみ なせ る .
5.7.4 H0の
レ ゾ ル ヴ ェ ン トと ス ペ ク トル
埋 蔵 固 有 値 μ0が 摂 動 κHIの
在 す る か ど う か を調 べ る た め に,ま
も と で 消 え て し ま う場 合 に,共
ず,H(κ)の
鳴極が存
レ ゾ ル ヴ ェ ン トが ど うい う 形 で
与 え ら れ る か を み よ う. z∈C\IRと
し(し
た が っ て,z∈〓(H(κ))),任
対 し て,(H(κ)-z)-1Ψ=(ω,φ)と
お く.こ
意 の Ψ=(η,ψ)∈HFに の とき
この 連 立 方 程 式 を ω と φ につ い て 解 け ば
(5.98) を 得 る.た
だ し
(5.99)
した が っ て
(5.100) この 形 か ら,H(κ)の
レゾ ル ヴェ ン トの性 質 に とっ て,関 数D(z)の
な役 割 を演 じる こ とが 推 察 され る.そ こで,こ 補 題5.30
関 数D(z)は
性質が重要
の 関数 の性 質 を調 べ よ う.
切 断平 面
(5.101) で 解 析 的 で あ る.さ
(ⅰ) (5.94)が
ら に,次
(ⅱ)が 成 立 す る:
成 り立 つ と き,D(z)はCmの
て,1/D(z)はCmで
中 に 零 点 を も た な い.し
たがっ
解 析 的 で あ る.
(ⅱ) (5.95)が Em(κ)だ
の(ⅰ),
成 り立 つ と き,D(z)のCmに
け で あ る.し
お け る 零 点 は 定 理5.29に
た が っ て,1/D(z)はCm\{Em(κ)}で
い う
解 析 的 で あ る.
証 明 最 初 の 主 張 を 証 明 す る の は 容 易 で あ る.方
程 式D(z)=0…(*)を
すz∈Cmをz=x+iy(x,y∈IR)と
そ の 実 部 と 虚 部 が と も に0と
し,(*)を
い う 条 件 で 吟 味 す る こ と に よ り ,y=0で た が っ て,D(x)=0.こ
れ と 定 理5.28と
が 出 る.
定 理5.31
満 た
な け れ ば な ら な い こ と が わ か る.し 定 理5.29の
証 明 か ら(ⅰ), (ⅱ)の 主 張 ■
(ⅰ) (5.94)が
成 り立 つ と き
(5.102) (ⅱ) (5.95)が
成 り立 つ と き
(5.103)
証 明 (ⅰ) (5.100)の 的 で あ り,z∈C\IRな
が 成 り立 つ.任
す る と,こ れ はCmで
対 して,z=x+iε,
Φ ∈HFが
任 意 のz∈Cmに
ρ(H(κ)).ゆ
解析
らば
ε>0と
し,ε→0の
稠 密 で あ る こ と を使 え ばT(x)(H(κ)-x)Ψ=Ψ,
(H(κ)-x)T(x)Φ=Φ,
Cm⊂
関 数 をT(z)と
意 のx∈(-∞,m)に
を と り,D(H0)が
式(5.100)は
右 辺 のB(HF)値
導 か れ る.こ
れ はx∈
極限
Ψ ∈D(H0), ρ(H(κ))を
対 し て 成 り 立 つ こ と が わ か る.し
意 味 し,
た が っ て,
え に,σ(H(κ))⊂[m,∞).
(ⅱ) (ⅰ)と 同 様.
■
定 理5.31は
次 の こ と を 語 る:弱
で は,H(κ)は
基 底 状 態 を も た な い が,強
領 域― で はH(κ)は
結 合 領 域― 条 件(5.94)を
基 底 状 態 を も つ.こ
底 状 態 が 現 れ る こ と を 意 味 す る.こ binding)と
5.7.5
い う.こ
満 たす κ の 領 域―
結 合 領 域― 条 件(5.95)を れ は,強
満 たす κの
結 合 領 域 に お い て 初 め て,基
の よ う な 現 象 を 束 縛 の 高 ま り(enhanced
れ も た い へ ん 興 味 深 い 現 象 で あ る.
解 析 接 続 と共 鳴 極
こ の 項 を 通 し て,(5.86)を トに つ い て,無
仮 定 す る.ハ
ミ ル トニ ア ンH(κ)の
摂 動 系 の ハ ミ ル トニ ア ンH0の
レゾ ル ヴ ェ ン
固 有 ベ ク トル Ω0に 対 す る 行 列
要素
(5.104) の 解 析 接 続 を 考 え る.(5.100)に
よっ て
(5.105) し た が っ て,D(z)の
解 析 接 続 を考 え れ ば よ い.こ
こ で は,簡
単 のため
(5.106)
の 場 合 に つ い て の み 論 述 す る*30.こ
の とき
ただ し
(5.107) 関 数gは
次 の 条 件 を満 たす とす る:
(g.1) g∈L2(IR)でgはIR上
連 続 で あ り,│g(k)│>0, k>0か
つsupk∈IR│g(k)│2<
∞,∫IR(│g(k)│2/│k│)dk<∞. (g.2) hgは[0,∞)上
で 連 続 微 分 可 能 で あ る.
(g.3) hgは{z∈C│Imz<0}に
お け る 有 理 型 関 数 へ の 解 析 接 続 を も つ.こ
の 有 理 型 関 数 も 同 じ記 号hgで は 極 を も た ず,supRez〓0 条 件(g.1)はm=0の ω(k)=│k│の
表 す.hgは{z∈C│Rez〓0,Imz<0}の
,Imz<0│hg(z)│<∞ 場 合 の(5.93)の
中 に
を満 た す.
成 立 を 導 く.上
の 条 件 に 加 え て,m=0,
場 合 の 条 件(5.94)
(5.108) も 仮 定 す る.こ わ ち,H0の 例5.4
の と き,定
理5.28に
埋 蔵 固 有 値 は 摂 動 κHIの
a,b>0を
定 数,n>l,
に よ っ て 定 義 さ れ る 関 数gは
D(z)は
固 有 値 を も た な い.す
な
も と で 消 え る.
n, l∈INと
するとき
上 記 の 条 件(g.1)∼(g.3)を
z2l/[(z+a)2+b2]2n(Imz<0ま
補 題5.32
よ っ て,H(κ)は
満 た す.こ
の 場 合,hg(z)=
た はz∈[0,∞)).
上 半 平 面 か ら[0,∞)を
平 面 上 の 有 理 型 関 数 に 解 析 接 続 さ れ る.そ
横 切 っ て(第
二 リ ー マ ン面 の)下
の 解 析 接 続 をD(z)と
半
すれば
(5.109) *30 ω が も っ と 一 般 の 場 合 に つ い て も
,以
下 の 議 論 は 拡 張 で き る.
証 明 ま ず,任 意 のx〓0に
対 して
を 示 す の は 難 し く な い.た
だ し,P∫(・)dkは
(5.109)に
定 義 す る と,こ
よ っ て,D(z)を
任 意 のx〓0に
対 して
が 成 り立 つ.ゆ
え に,題
以 下,κ
補 題5.33
主 値 積 分 を 表 す*31.し れ はImz<0で
た が っ て,
有 理 型 関 数 で あ り,
意 が 成 立 す る.
■
は 複 素 変 数 と し て 考 え る.
定 数 κ0>0が
位 の 零 点z(κ)を
も ち,こ
存 在 し て,│κ│<κ0な
ら ば,D(z)は
μ0の 近 く に1
れ は 次 の 性 質(ⅰ), (ⅱ)を も つ:
(ⅰ) Imz(κ)<0(│κ│<κ0). (ⅱ) z(κ)は
κ の 関 数 と して,│κ│<κ0に
お い て解 析 的 で あ り
(5.110) と テ イ ラ ー 展 開 さ れ る.こ
こで
(5.111) 証 明 2変 数 κ, z∈Cの
関 数f(z,κ)を 次 の よ う に定 義 す る: Imz>0ま Imz<0,
*31 任 意 のx〓0と
ε>0に
Rez>0の
と き
とき
対 して
と 変 形 し,変 数 変 換 を 用 い て,ε P∫ ∞0hg(k)/(k-x)dkに
た はz∈[0,∞)の
収 束 し,右
↓0の
極 限 を 考 察 す れ ば よ い.右
辺 第 二 項 は ±iπhg(x)に
収 束 す る.
辺 第一 項 は
た だ し,│κ│<αcと
す る(5.108).fは,│z-μ0│<μ0, │κ│<αcで
り,f(z,0)はz=μ0に 定 理*32に て,zに
一 位 の 零 点 を も つ.し
よ っ て,正
数r0<αc,R0が
た が っ て,複
あ っ て,│κ│
素 関数 論 の 陰 関 数 満 た す 各 κ に対 し
関 す る 方 程 式f(z,κ)=0は{z∈C││z-μ0│
1個 の 解 を も つ.そ
れ をz(κ)と
中にち ょうど
す れ ば,z(κ)は
κ の 関 数 と し て,│κ│
解 析 的 で あ る.D(z)は{z∈C│Imz>0}∪[0,∞)に Imz(κ)<0か
つD(z(κ))=0で
と い う形 を も つ の で,正 る.し
正則 で あ
D(z)の
な け れ ば な ら な い.Dの
数r1が
た が っ て,│κ│
は 零 点 を も た な い の で,
あ っ て,│κ│
ら ばD'(z(κ))≠0が
ら ば,z(κ)はD(z)の1位
ら ば│z0-μ0│〓
κ2C(z0)と
だ し
gに 対 す る 条 件 に よ り,C(z)は[0,∞)∪{z∈C│Rez〓0,Imz<0}で あ る.し
た が っ て,│κ│が
か もlimκ →0 z0=μ0.よ
十 分 小 さ け れ ば,零 っ て,あ
点z0は
る 定 数 κ0>0が
z(κ)はD(z)の{z∈C│Rez〓0,Imz<0}に (5.111)は,a1=limκ
以 上 か ら,次 *32 定 理:二
有 界で μ0の 近 傍 に し か な く,し
存 在 し て,│κ│<κ0な
よび
用 い る こ と に よ り証 明 で き る.
■
の 定 理 が 証 明 さ れ た こ と に な る.
つ の 複 素 変 数w
は 定 点,R1,
ら ば,
お け る た だ 一 つ の 零 点 で あ る.
→0(z(κ)-μ0)/κ2お
(w(κ):=a1+a2κ2+a3κ4+…)を
わか
の 零 点 で あ る.
零 点 の 一 意 性 を 示 す に は,D(z0)=0な
評 価 で き る こ と に 注 意 す れ ば よ い.た
導関数 は
R2は
, zの 関 数F(w,z)が│z-a│〓R1, │w-b│〓R2(a, 正 の 定 数)で 解 析 的(正 則)で あ り,F(w, a)がw=bに
位 の 零 点 を も つ な ら ば,正 数r1, r2が 存 在 して,│z-a│
の 解 を も つ.特 に,k=1の 解 析 的 で あ る.
こ の 定 理 の 証 明 に つ い て は,た 版))のp. 144を 参 照.
と え ば,楠
場 合,そ
幸男
b∈C お い てk
満 た す 任 意 のzに 対 し 中 に ち ょ う ど(重 の 解 をw=f(z)と
す れ ば,f
『解 析 函 数 論 』(廣 川 書 店,1974(8
定 理5.34
条 件(5.86),
さ れ る 関 数F(z)は │κ│<κ0な
(g.1)∼(g.3),
(5.108)の
上 半 平 面 か ら,[0,∞)を
ら ば,補 題5.33に
横 切 っ て,下
蔵 固 有 値 μ0が 摂 動 κHIの
極z(κ)を
も つ こ とが わ か る(た
5.7.6
生 き残 り確 率 の 時 間 崩 壊
定 理5.34の Ω0と
だ し,│κ│は
仮 定 を 前 提 とす る.こ
し て 応 用 で き る.い
よって 定義
半 平 面 に 解 析 接 続 さ れ,
い う 複 素 数z(κ)を,{z∈C│Rez〓0,Imz<0}
の 中 に お け る た だ 一 つ の 極 と し て と し て も つ.こ
こ う し て,埋
も と で,(5.104)に
の 極 の 位 数 は1で
も と で 消 え る 場 合 に,H(κ)は
共鳴
十 分 小).
の と き,定 理5.26をa=0,
ま の 場 合,(5.78)に
あ る.
お け るR0,
H=H(κ), R1(t)-R2(t)は
Ψ= 次 の
よ う に 計 算 さ れ る:
した が っ て,z(κ)=Er(κ)-i(Γ(κ)/2)と
す れ ば,定
理5.26に
よ り
(5.112) 容易 にわか るように
(5.113) した が って
な らば
で あ る の で,生 他 方,変
き 残 り確 率│〈 Ω0,e-itH(κ)Ω0〉│2は
数変換 によ り
指 数 関 数 的 に 減 衰 す る.
と 書 け る.た
だ し
hg(0)=0で
あ る か ら,た
と え ば,あ
る α>0に
対 して
な らば
と な る.た
だ し
したが っ て
し た が っ て,十
分 大 き な 時 間t>0に
率 は 指 数 関 数 的 に 減 衰 は せ ず,tに
付 録G
対 し て は,状
態 Ω0に
対 す る 生 き 残 り確
関 し て 冪 の オ ー ダ ー で 減 衰 す る.
バ ナ ッ ハ 空 間 の 双 対 空 間 と ハ ー ン-バ
ナ ッハ の定理
この 付 録 で は バ ナ ッハ 空 間の解 析 にお け る 基礎 的 な事 実 を叙述 す る.
G.1
バ ナ ッハ 空 間 の 双対 空 間
バ ナ ッハ 空 間 に 対 して も,ヒ ル ベ ル ト空 間 の 場 合 と同 様 に双 対 空 間 の 概 念 が 定 義 さ れ る.Xを 定 義G.1
複 素 バ ナ ッハ 空 間 とす る*33. 写 像l:X→Cが
次 の 条 件(ⅰ), (ⅱ)を 満 た す と き,lをX上
形 汎 関 数 とい う:(ⅰ) (線 形 性)す べ て のx, y∈X, αl(x)+βl(y). │l(x)│〓C‖x‖
(ⅱ) (有 界 性)定
数C>0が
α,β∈Cに
あ っ て,す
べ て のx∈Xに
が 成 り立 つ.
*33 バ ナ ッハ 空 間 の 定 義 に つ い て は
,[6]の1章,1.2.6項
を参 照.
の 有界 線
対 して,l(αx+βy)= 対 し て,
X上
の 有 界 線 形 汎 関 数 の 全 体 をX*で
各l∈X*に
対 し て 定 ま る有 限 量
表 し,こ れ をXの
双 対 空 間 とい う.
‖l‖X*:=supx∈X,x≠0│l(x)│/‖x‖
をlの
ノルム
と 呼 ぶ. 容 易 にわ か る ように
(G.1) ヒ ル ベ ル ト空 間 上 の 有 界 線 形 作 用 素 の 場 合 と 同 様 に し て,任 あ る こ と,す
な わ ち,xn,
x∈X, xn→x(n→
意 のl∈X*は
∞)⇒limn→
連続 で
∞l(xn)=l(x)が
示
さ れ る*34.
命 題G.2
(X*, ‖・‖X*)は
証 明 {ln}nをX*の 号n0が あ って
コ ー シ ー 列 と す る.す
あ っ て,n,
m〓n0な
‖ln‖X*〓C,
lm(x)│〓‖x‖
バ ナ ッ ハ 空 間 で あ る.
わ か る.ま
ε,n, m〓n0…(*).こ
を 意 味 す る.し
た が っ て,極
し た が っ て,完
あ る.し
Xが
は,こ
∞
ε,n〓n0を
とすれ
意 味 す る.
中 に 極 限lを
も つ. ■
考 え る こ と が で き る.任 よ っ て 定 義 で き る.対
の 対 応 に よ っ て,XはX**の
記 し,xとxを同 満 た す バ ナ ッ ハ 空 間Xは
ハ ー ン-バ
意 のx∈X
応:x〓xは
中 に 埋 め 込 ま れ る.こ
の
一視 す る. 回 帰 的(reflexive)で
あ る と い う*35.
ナ ッハ の定 理
無 限 次 元 で,し
か は,さ
∞│ln(x)│〓
お い て,m→
っ て,{ln}nをX*の
双 対 空 間X**:=(X*)*を
た が っ て,こ
意 味 で,X⊂X**と
G.2
存 在 す る.l:x〓Cが
れ は,‖ln-l‖X*〓
に 対 し て,x∈X**をx(l):=l(x), l∈X*に
X=X**を
コー シー列 で あ るこ と
備 で あ る.
こ の 命 題 に よ り,X*の
1対1で
数C>0が
対 し て,│ln(x)-
ら に│l(x)│=limn→
え にl∈X*.(*)に
ε,n〓n0.こ
対 し て,番
れ か ら,定
限l(x):=limn→∝ln(x)が
∞‖ln-l‖X*=0.よ
ε>0に
べ て のx∈Xに
れ は{ln(x)}nがCの
〓C‖x‖.ゆ
ば,│ln(x)-l(x)│〓‖x‖ し た が っ て,limn→
た,す
線 形 性 か ら し た が う.さ
limsupn→∝‖ln‖X*‖x‖
意 の
ら ば‖ln-lm‖X*<ε.こ
n〓1が
線 形 で あ る こ と はlnの
な わ ち,任
し あ た っ て,明
か も ヒ ル ベ ル ト空 間 で な い 場 合 に,X*の ら か で は な い.次
の 定 理 が 語 る,バ
元 が ど の く らい あ る ナ ッハ 空 間 の 基 本 的 構 造
の 側 面 に つ い て の 知 見 を 提 供 す る.
*34 [6]のp *35 Xが い.
.64を 参 照. 有 限次 元 な らば
,Xは
常 に 回 帰 的 で あ る が,無
限 次 元 の 場 合 に は,そ
う とは 限 らな
定 理G.3
ハ ー ン-バ ナ ッ ハ の 定 理.Vを
複 素 ベ ク トル 空 間,pをV上
と し,す べ て のx, y∈Vと│α│+│β│=1を
を 満 た す とす る.DをVの
の実 数値 関数
満 た す す べ て の α,β∈Cに
部 分 空 間,φ
をD上
対 して
の 線 形 汎 関 数 で す べ て のx∈Dに
対 して
を 満 た す もの と す る.こ
の と き,V上
の 線 形 汎 関 数 Φ で 次 の 性 質(ⅰ), (ⅱ)を 満 た す
もの が 存 在 す る:(ⅰ) す べ て のx∈Vに
対 して,│Φ(x)│〓p(x).
(ⅱ) す べ て のx∈D
に 対 して,Φ(x)=φ(x). こ の 定 理 の 証 明 に つ い て は,関 以 下,Xは 系G.4
数 解 析 の 本 を参 照 さ れ た い*36.
複 素 バ ナ ッハ 空 間 で あ る とす る.
(拡大 定 理)DをXの
す る.‖ φ0‖:=supx∈D
部 分 空 間,φ0をDで
定義 され た有 界線 形 汎 関数 と
,x≠0│φ0(x)│/‖x‖ とお く.こ の と き,X*の
(ⅰ), (ⅱ)を 満 た す もの が 存 在 す る:(ⅰ) φ(x)=φ0(x), 証 明 p(x)=‖
系G.5
φ0‖ ‖x‖,x∈Dと
証 明 D={αx│α
元 φ で次 の性 質 φ‖=‖ φ0‖.
して ハ ー ン-バ ナ ッハ の 定 理 を応 用 す れ ば よ い. ■
(有界 線 形 汎 関 数 の 存 在)各x∈X,
‖x‖, ‖φx‖=1を
x∈D.(ⅱ) ‖
x≠0に
対 して,φx∈X*で
φx(x)=
満 た す もの が 存 在 す る. ∈C}(1次
元 部 分 空 間),φ0(αx)=α‖x‖
と して,系G.4を
応用
す れ ば よい.
■
こ の 系 は,X≠{0}な
ら ば,X*≠{0}で
あ る こ と,す な わ ち,非
自明 な有界線 形
汎 関 数 の 存 在 を 示 す. 系G.6
ベ ク トルx∈Xに
な ら ば,x=0で
つ い て,す
す る と,系G.5に
満 た す も の が 存 在 す る.し
次 の 命 題 は 重 要 で あ る. *36 た と え ば
対 してl(x)=0が
成 り立 つ
あ る.
証 明 対 偶 を 証 明 す る.x≠0と ‖x‖≠0を
べ て のl∈X*に
,[14]の8章,8.2節.
た が っ て,題
よ っ て,φx∈X*で 意 が 成 立 す る.
φx(x)= ■
命 題G.7 証 明 x≠0の
任 意 のx∈Xに
対 して,‖x‖=supl∈X*
, ‖l‖ 〓1│l(x)│.
場 合 につ い て 示 せ ば 十 分 で あ る.a:=sup‖l‖
定 義 か ら,│l(x)│〓‖l‖‖x‖.し でl(x)=‖x‖, ‖l‖=1を
満 た す も の が 存 在 す る.し
付 録H
半 無 限 開 区 間(0,∞)上
〓1│l(x)│と お く.‖l‖ の
た が っ て,a〓‖x‖.系G.5に
あ る2重
の 連 続 関 数f,
よ っ て,l∈X*\{0}
た が っ て ,‖x‖ 〓a.
■
積 分 の計 算
gが 条 件
を満 た す と き,次 の 等 式 が 成 立 す る:
(H.1) 証 明 仮 定 に よ り,積 分
(H.2) は 有 限 で あ り,累 次 積 分 が で きる.し た が っ て
x=(x1,x2,x3),
(r1=│x│>0, た だ し,xはxを の と き
y-x=(z1,z2,z3)に
φ ∈[0,2π),
θ ∈[0,π];
対 し て,次
ρ=│y-x│>0,
一 つ と め る ご と に ベ ク ト ルxとy-xの
の 極 座 標 変 換 を 行 う.
ψ ∈[0,2π), x∈[0,π]). な す 角 度 に と る .こ
xに つ い て の 積 分 を 変 数 変 換:
を用 い て 行
うと
r2に
関 す る 積 分 をr1〓r2の
り,(H.1)が 例H.1
部 分 とr1
部 分 に分 け て計 算 す る こ と に よ
得 ら れ る. α>0を
■
定 数 と して,f(r)=g(r)=e-αr,r>0の
場 合 を 考 え,(H.1)と
簡 単 に証 明 で きる 公 式
を用 い る と
(H.3) を 得 る.
ノ
ー
ト
解 析 的 摂 動 論 の さ ら に深 い 展 開 は,こ の 理 論 の 創 始 者 に よっ て 書 か れ た 世 界 的 名 著[12] の7章 以 降 や[16]の12章
にみ ら れ る.埋 蔵 固 有 値 の摂 動 問題 の 解 析 へ の 一 つ の ア プ ロー
チ と して,伸 張解 析 的 方 法(dilatation はL2(IRd)の
analytic method)と
呼 ばれ る もの が あ る.こ れ
伸 張 変 換― 各 θ∈IRに 対 して,(u(θ)f)(x):=edθ/2f(eθx),f∈L2(IRd)
に よ っ て 定 義 さ れ る ユ ニ タ リ変 換u(θ)― う手 法 で あ り,特
に,シ
て は,[16]のⅩⅡ.6節
を 用 い て,レ
ュ レー デ ィ ン ガ ー 型 作 用 素 に 対 して 有 効 で あ る(詳 細 につ い
や[11]の16章
を 参 照).
5.7節 で 論 じた モ デ ル の 原 型 は フ リ ー ド リ クス[10]に ル に 関 す る 近 年 の 研 究 の 一 つ と し て[13]が 第 二 量 子 化([7]の4.3節
ゾ ル ヴ ェ ン トの 解 析 接 続 を 行
ま た は[3]を
あ る.フ
参 照)は,量
よ っ て 与 え ら れ た.こ
の モデ
リー ド リ ク ス モ デ ル の ボ ソ ン的 子調 和振 動 子 とボ ース場 の相互 作
用 モ デ ル を 生 み だ す[8,Lemma
6.1].こ の モ デ ル に お い て も,モ
ア ン に含 ま れ る パ ラ メ ー タ ー の 範 囲 に 応 じて,埋
デ ル の ハ ミル トニ
蔵 固 有 値 が 摂 動 の も とで 消 え た り,
消 え な か っ た りす る[1].
第5章
Hを 複 素 ヒ ル ベ ル ト空 間,Aを 1. z0がAの
演習 問 題
ヒル ベ ル ト空 間H上
の 閉作 用 素 と す る.
孤 立 固 有 値 な ら ば,
は 存 在 しな い こ と を
示 せ.
2. Aが 自己 共 役 の と き,任 意 のE∈ とお く.こ の と き, 注 意 実 際 に は,等
ρ(A)に 対 して, を 証 明 せ よ.
号 が 成 り立 つ(余 力 が あ れ ば,こ
3. 湯 川 ポ テ ン シ ャ ルVY[(5.64)を
れ も証 明 せ よ).
参 照]の フ ー リエ 変 換
を計 算 せ よ. (答)
4. 5.7節 の フ リ ー ド リ ク ス モ デ ル に お い て,μ0<mで(5.92)が 考 察 す る(こ の 場 合,μ0はH0の
多 重 度1の
成 り立 つ 場 合 を
離 散 固 有 値 で あ る).以
下 の事柄
を証 明 せ よ. (ⅰ) す べ て の κ ∈IR,に 対 して,H(κ)の(-∞,m)に つ で あ り,そ れ を μ(κ)と す る と
が 成 り立 つ.ま (ⅱ) μ(κ)はH(κ)の
た,μ(κ)は
多 重 度1の
お け る固 有値 は ただ一
離 散 固 有 値 で あ る.
最 低 エ ネ ル ギ ー で あ る(し た が っ て,H(κ)は
基 底状 態
を もつ). (ⅲ) μ(κ)は κ=0の
あ る近 傍 で 実 解 析 的 で あ り,
と テ イ ラ ー展 開 され る.こ
こ で
.
関
[1] A.Arai,Spectral finitely
analysis
many
scalar
連
図
書
of a quantum
harmonic
oscillator
coupled
to in
bosons,J.Math.Anal.Appl.140(1989),270-288.
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フ ォ ッ ク 空 間 と 量 子 場 上 』,日 本 評 論 社,2000.
[4] 新 井 朝 雄,『
フ ォ ッ ク 空 間 と 量 子 場 下 』,日 本 評 論 社,2000.
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to
Spectral
Theory,Springer,
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Theory
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decay
for near
Linear resonance
Operators,Springer,2nd without
Ed.,1976.
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Phys.23(1991),215-222. [14] 黒 田 成 俊,『 [15] M.Reed tional
B.Simon,
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of
Modern
Mathematical
Physics
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Analysis,1972.
[16] M.Reed ysis
関 数 解 析 』,共 and
and of
B.Simon,Methods
Operators,Academic
of
Modern
Press,1978.
Mathematical
Physics
IV:Anal
6 物 理 量 の ス ペ ク トル
物理量のスペ ク トル を解析する上での非摂動的な基本的手法 を論 じ,量 子力学のモデル へ応 用す る.
6.1
は
じ
め
に
前 章 で は,物 理 量 の スペ ク トル解 析 の う ち,固 有 値 の存 在 問 題 を摂 動 的 な観 点 か ら論 じた.だ が,こ の 観 点 で は,非 摂 動 的 な 効 果 は捉 え難 い.そ
こで,摂
動 的 な構 造 に と ど ま らず,非 摂 動 的 な構 造 を も把 捉 し え る よ う な方 法 が必 要 に な る,こ の 章 の 目 的 は,そ の よ うな方 法 の う ち,基 本 的 な もの を論 述 す る こ と にあ る.具 体 例 へ の応 用 に よ り,論 述 され た一 般 的 方 法 の 強 力 さが 示 唆 され る は ず で あ る.
6.2
第5章
の5.3節
離 散 ス ペ ク トル と 真 性 ス ペ ク トル の 特 徴 づ け
に お い て み た よ う に,ヒ ル ベ ル ト空 間 上 の 閉 作 用 素 の スペ ク
トル は離 散 ス ペ ク トル と真性 ス ペ ク トル とい う互 い に 素 な 集 合 の 和 集 合 と して 表 され る.こ の 節 で は,物 理 量 の 非 摂 動 的 ス ペ ク トル解 析 の 予 備 的 段 階 の 一 つ と して,こ 以 下,Hは 定 理6.1
れ らの ス ペ ク トルの 性 質 を特 徴 づ け る. ヒ ルベ ル ト空 間 で あ る とす る.ま ず,次 H上 の任 意 の 自己共役 作用 素Aに
は 閉 集 合 で あ る.
の 事 実 を確 認 して お く.
対 して,そ の真性 スペ ク トル σess(A)
証 明
と し よ う.こ
σess(A)を
示 せ ば よ い.σ(A)は
と す る と,λn≠ (λ-δ,λ+δ)∩
閉 集 合 で あ っ た か ら,λ ∈ σ(A).仮
λ(n〓1)で
あ り,離
∈
に,λ ∈ σd(A)
散 ス ペ ク トル の 点 の 孤 立 性 に よ っ て,
σ(A)={λ}と
な る δ>0が
る か ら,こ
れ は 不 可 能 で あ る.ゆ
え に,λ
注 意6.1
自 己 共 役 作 用 素 の 離 散 ス ペ ク トル は,IRの
い(演
の と き,λ
存 在 す る.し
か し,λn→
λで あ
∈ σess(A).
■
閉 集 合 で あ る と は限 ら な
習 問 題1).
命 題6.2
AをHの
属 す る.特
に σd(A)の
証 明 λ ∈IRを {λn}∞n=1⊂
自 己 共 役 作 用 素 と す る と き,σ(A)の 集 積 点 は σess(A)に
σ(A)の
σ(A)が
属 す る.
集 積 点 と す れ ば,λn≠
あ る.σ(A)は
集 積 点 は σess(A)に
λ,λn→
λ(n→∞)と
閉 集 合 で あ る か ら,λ ∈ σ(A).ど
を と っ て も,(λ-ε,λ+ε)は
λnを 無 数 に 含 む か ら,(λ-ε,λ+ε)∩
し た が っ て,λ〓
σd(A).ゆ
え に λ ∈ σess(A).
以 下 で は,1次
元 の ス ペ ク トル 測 度(単
な る
ん な ε>0
σ(A)≠{λ}. ■
位 の 分 解)E(B)(B∈B1)に
対 して
(6.1) と い う 簡 略 記 号 を 用 い る. 次 の 定 理 は 自 己 共 役 作 用 素 の ス ペ ク トル 解 析 に お い て 基 本 的 で あ る.
定 理6.3
AをH上
の と き,実
数 λ が σ(A)に
てEA(λ-ε,λ+ε)≠0と
の 自 己 共 役 作 用 素,EAを
属 す る た め の 必 要 十 分 条 件 は す べ て の ε>0に
て,λ〓
*1 suppE
対 し
な る こ と で あ る.
証 明 (必 要 性)対 偶 を 示 す.そ と す る.こ
そ の ス ペ ク トル 測 度 とす る.こ
こ で,あ る δ>0が
れ は(λ-δ,λ+δ)⊂(suppEA)c=ρ(A)を
σ(A).
A=σ(A)([4]のp.225,2.9.5項).
あ っ て,EA(λ-δ,λ+δ)=0 意 味 す る*1.し
たがっ
(十 分 性)こ
れ も 対 偶 を 示 す.λ
開 集 合 で あ る か ら,あ
る δ>0が
に,(λ-δ,λ+δ)⊂
命 題6.4
ρ(A).し
AをH上
ρ(A).特
た が っ て,EA(λ-δ,λ+δ)=0.
の 自 己 共 役 作 用 素 とす る.こ
∈ σess(A)と
がAの
■
の と き,実
数 λ が σess(A)に
固 有 値 で 多 重 度 が 無 限 大 で あ る か,ま
し よ う.こ
固 有 値 で あ る 場 合 と(ⅱ)そ
λ の 多 重 度 は 無 限 大 で あ る か,λ 後 者 の 場 合 は,λ λ は σ(A)の σ(A)の
おけ る
集 積 点 に な っ て い る こ と で あ る.
証 明 (必 要 性)λ がAの
し よ う.ρ(A)はCに
存 在 し て,{z∈C‖z-λ│<δ}⊂
属 す る た め の 必 要 十 分 条 件 は,λ た は σ(A)の
∈ ρ(A)∩IRと
集 積 点 で な け れ ば,あ
は σ(A)の
な わ ち,(ⅰ)λ 場 合 は,
孤 立 点 で な い か の ど ち ら か で あ る.
点 で λ と異 な る も の が 存 在 す る か ら,
に(ⅱ)の
場 合 を 考 え る.こ
る δ>0が
の 場 合,も
あ っ て,(λ-δ,λ+δ)∩
こ れ は λ が 孤 立 固 有 値 で あ る こ と を 意 味 す る.だ (十 分 性)こ
つ の 場 合,す
う で な い 場 合 が 考 え ら れ る.(ⅰ)の
の 任 意 の 近 傍 に σ(A)の
集 積 点 で あ る.次
の と き,二
が,こ
し,λ
が
σ(A)={λ}.
れ は今 の 仮 定 に 反 す る.
れ は 真 性 ス ペ ク トル の 定 義 か ら 容 易 に し た が う.
自 己 共 役 作 用 素 の 離 散 ス ペ ク トル あ る い は 真 性 ス ペ ク トル は,そ
■ のスペ ク ト
ル 測 度 を 用 い て 次 の よ う に 特 徴 づ け ら れ る:
定 理6.5
AをH上
の 自 己 共 役 作 用 素 と す る.
(ⅰ) λ ∈ σd(A)で
あ る た め の 必 要 十 分 条 件 は,λ
存 在 し て,Ran(EA(λ-δ,λ+δ))が (ⅱ) λ ∈ σess(A)で Ran(EA(λ-ε,λ+ε))が
∈ σ(A)か
つ あ る δ>0が
有 限 次 元 と な る こ と で あ る.
あ る た め の 必 要 十 分 条 件 は,す
べ て の ε>0に
対 し て,
無 限 次 元 と な る こ とで あ る.
証 明 (ⅰ)条 件 の 必 要 性 は 離 散 ス ペ ク トル の 定 義 か ら 明 ら か. (十 分 性)λ ∞
∈ σ(A)か
と し よ う.仮
す る と,λn→
に,任
つ あ る δ>0が 意 の ε>0に
λ と な る λn∈ σ(A),λn≠
と し て 一 般 性 を 失 わ な い.定 で,In=(λn一
存 在 し て,dim
理6.3に
Ran(EA(λ-δ,λ+δ))<
対 し て,(λ-ε,λ+ε)∩
σ(A)≠{λ}と
λ,が 存 在 す る.λn∈(λ-δ,λ+δ)
よ り,各nに
εn,λn+εn),In∩Im=0,n≠m,EA(In)≠0,と
対 し て,εn>0を
選 ん なる
よ う に で き る.任
意 のN≧1に
対 し て,
で あ る か ら, dim
Ran(EA(In))〓1で
. あ る か ら,N→
こ れ は 今 の 仮 定 に 矛 盾 す る.し σ(A)={λ}で
た が っ て,あ る ε0>0が
な け れ ば な ら な い.こ
示 す もの で あ る.さ で あ る か ら,λ
ら にdim
た が っ て,(ⅰ)に
∈IRが
σess(A)に
る と す れ ば,定
Ran(EA(λ-δ,λ+δ))<∞
上 か ら,λ
∈ σd(A)が
属 す る と す れ ば,λ
結 論 さ れ る.
∈ σ(A),λ〓
σd(A).し
お け る 十 分 性 の 対 偶 を考 え る こ と に よ り,す べ て の ε>0に
理6.3よ
対
無 限 次 元 で な け れ ば な ら な い.
べ て の ε>0に
れ ば λ ∈ σess(A)と
最 後 に,自
存 在 し て,(λ-ε0,λ+ε0)∩ 孤 立 した 固 有 値 で あ る こ と を
Ran(E({λ}))〓dim
して,Ran(EA(λ-ε,λ+ε))は (十 分 性)す
れ は,λ がAの
の 多 重 度 は 有 限 で あ る.以
(ⅱ) (必 要 性)λ
∞ とす れ ば,左 辺 は 無 限 大 に 発 散 す る.
対 し て,Ran(EA(λ-ε,λ+ε))が
り,λ ∈ σ(A).そ
こ で,(ⅰ)に
無限次元であ
お け る 必 要性 の 対 偶 を と
な る.
■
己 共 役 作 用 素 の 真 性 ス ペ ク トル の 同 定 に お い て,非
常 に有 用 な 判
定 法 を 証 明 し て お く.
定 理6.6
(ヴ ァ イ ル の 判 定 法)AをH上
実 数 λ が σess(A)に
の 自 己 共 役 作 用 素 と す る.こ
の と き,
属 す る た め の 必 要 十 分 条 件 は 点 列{Ψn}∞n=1⊂D(A)で
(6.2) (6.3) を 満 た す も の が 存 在 す る こ とで あ る.
証 明 (必 要 性)λ
∈ σess(A)と
す れ ば,命
で 多 重 度 が 無 限 大 で あ る か,σ(A)の 場 合,dim
Ran(EA({λ}))=∞
任 意 の 一 つ を{Ψn}∞n=1と 系 は 零 ベ ク トル0に と な る λn∈ 区 間
題6.4に
はAの
孤 立 固有 値
集 積 点 で あ る か の ど ち ら か で あ る.前 で あ る か ら,Ran(EA{λ}))の
す れ ば,(6.2),(6.3)は
弱 収 束 す る こ と に 注 意).後
σ(A),λn≠
よ り,λ
λ,が 存 在 す る.δn>0を
者の
正規直交系 の
満 た さ れ る(任 意 の 正 規 直 交 者 の 場 合,λ η → λ(n→
∞)
適 切 に 選 ぶ こ と に よ り, ,を 満 た す よ
う に で き る.こ δn→0(n→ dim
の と き,Ran(EA(In))とRan(EA(Im))(n≠m)は ∞)で
あ る.λn∈
σ(A)で
Ran(EA(In))〓1(n〓1).し
Ψn∈Ran(EA(In))が 直 交 系 は0に
た が っ て,各nに
弱 収 束 す る か ら,こ
(λ-ε,λ+ε)(ε>0)と
Ψ=Ψnと
理6.3に
対 し て,単
よ っ て,
位 ベ ク トル
正 規 直 交 系 を な す.任
の{Ψn}∞n=1は(6.2)を
意 の正規
満 た す.さ
らに
満 た さ れ る.
(十 分 性)(6.2),(6.3)を
を 示 せ ば よ い(∵
あ っ た か ら,定
存 在 し て,{Ψn}∞n=1は
し た が っ て,(6.3)も
直 交 し,
満 た す 点 列{Ψn}∞n=1⊂D(A)が お く.任
意 の ε>0に
定 理6.5-(ⅱ)).す
す れ ば,(6.3)に
対 し て,dim
べ て の Ψ ∈D(A)に
Ran(EA(Iε))=∞
対 して
よ って
恒 等 式EA(1ε)=1-EA[λ+ε,∞)-EA(一 .EA(Iε)は
あ っ た と し,Iε=
∞,λ-ε]に
よ り,
射 影 作 用 素 で あ る か ら,こ れ は,
を 意 味 す る. 仮 にdim
Ran(EA(Iε))=M<∞
と す れ ば,
と な る 正 規 直 交 系
が と れ る.こ .(6.2)に
0に 収 束 す る.だ
が,こ
れ は(*)に
矛 盾 す る.し
限 次 元 で あ る.
定 理6.6の
簡 単 な 応 用 を述 べ よ う:
よ り,右 辺 は,n→
の と き,
∞ の と き,
た が っ て,Ran(EA(Iε))は
無 ■
例6.1
L2(IRd)に
お け る シ ュ レー デ ィ ン ガ ー 型 作 用 素
(6.4) を 考 え る(V:IRd→IR).す
で に 知 っ て い る よ う に,σ(-Δ)=[0,∞),σp(-Δ)=0
で あ るか ら
で あ り,HVは
と仮 定 し よ う(d〓3の HVは
場 合 は,第2章
の 定 理2.17に
下 に有 界 な 自 己 共 役 作 用 素 で あ る).こ
本 質 的 に自己共 役 であ る
よ っ て,D(HV)=D(Δ)か
つ
の とき
(6.5) 証 明 次 の 性 質(ⅰ),(ⅱ)を もつ 実 数 値 関 数 ;(ⅱ) し,k∈IRdを
.各n∈INに
とす る,こ が 成 り立 つ*2.直
も わ か る.さ
接 計 算 に よ り,
.ゆ
σess(HV).k∈IRdは
任 意 で あ っ た か ら,(6.5)が
6.3
ヒ ル ベ ル ト空 間H上 ら,Aの
の と き,‖ ψn‖=
らに
し た が っ て,
は,量
と
任 意 に 固 定 し,
1で あ り,
=1)か
を一 つ 選 ぶ:(ⅰ) 対 して,
最 小-最
の 自 己 共 役 作 用 素Aの
え に,定
理6.6に
よ っ て,k2∈
した が う.
■
大 原 理
期待値 〈 Ψ,AΨ 〉(Ψ ∈D(A),‖
Ψ ‖
ス ペ ク トル の 構 造 に 関 す る 情 報 を 取 り出 す こ と を 考 え る .こ
子 力 学 的 に は,物
の ス ペ ク トル の 性 質 を"読
理 量 の 期 待 値 か ら,そ み 取 る"こ
れ
の 物 理 量 を表 す 自己 共役 作 用 素
と に 相 当 す る.し
た が っ て,こ
の 着 想 は,
量 子 物 理 的 に も 自 然 な も の で あ る.
*2 ま ず
,任
意 の
‖ ψn‖=1で f∈L2(IRd)に
に 対 し て,
あ る こ と とC∞0(IRd)がL2(IRd)で 対 して,(*)を
示 す.
を 示 す.次 稠 密 で あ る こ と を 用 い て,す
に,
べての
6.3.1
有限次元 の場合
基 本 的 な ア イ デ ア を 得 る た め に,ま 元 をNと
し よ う.こ
値 か ら な る([4]の う.こ
の 場 合,Aの
定 理2.23と
こ で 便 宜 上,λ1〓
命 題2.33).そ λNと
た が っ て,
を 得 る.こ
で あ る,す
う し て,Aの
の実 固有
れ ら を λn(n=1,…,N)と
しよ
順 序 づ け て お く.固
た が っ て,任
と 一 意 的 に 展 開 さ れ る.Ψ
こ で,特
の次
複 も 含 め て,N個
す る:AΨn=λnΨn.{Ψn}Nn=1はHの
あ る と し て 一 般 性 を 失 わ な い.し
.こ
有 限 次 元 の 場 合 を 考 え,そ
ス ペ ク トル は,重
λ2〓 …〓
る 固 有 ベ ク トル を Ψnと
ず,Hが
有 値 λnに 属 す 正規直交基底 で
意 の
は 単 位 ベ ク トル で あ る と し よ う.し
る と
に Ψ=Ψ1と
最 低 固 有 値 は,Aの
す れ ば,等
号 が 成 り立 つ.ゆ
えに
期 待 値 だ け を用 い て表 され る こ と
が わ か る. 次 に λ2がAの
期 待 値 だ け を用 い て 表 さ れ る か ど う か を 調 べ よ う.Ψ
と直 交 す る も の を とれ ば,α1=0で 特 に Ψ=Ψ2に
と れ ば,等
と して Ψ1
あ る か ら,
号 が 成 り立 つ.ゆ
.
えに
(6.6) ただ し
だ が,λ2に
関 す る 表 示(6.6)は
消 す こ と を 考 え る.任
ま だ Ψ1に 依 存 して い る.そ
意 の
の Φ ∈Hに
存 在 す る.そ
こ で,η=α1Ψ1+α2Ψ2と
あ り,〈 η,Aη 〉/‖η‖2〓 λ2が 成 り立 つ.ゆ
対 し て,uA(Φ)〓
の依 存 性 を
対 して,
と な る 複 素 数 の 対(α1,α2)≠(0,0)が す れ ば,〈 Φ,η〉=0で
こ で,こ
λ2.こ
れ と(6.6)を
合 わせ れ ば
え に,す
べ て
が得 ら れ る.こ
れ は,λ2がAの
期 待 値 だ け を用 い て 表 さ れ る こ とを示 して い
る.同 様 に して
(6.7) を 証 明 す る こ と が で き る(演 1,…,n-1と
習 問 題2).た
だ し,[Φ1,…,Φn-1]⊥
は Φj,j=
直 交 す る ベ ク トル の 全 体 を 表 す:
(6.8) こ う して,Aの
す べ て の 固 有 値 はAの
期 待 値 だ け を 用 い て表 さ れ る こ とが わ
か る.
6.3.2
無 限 次 元 の場 合
以 上 の 予 備 的 考 察 の も とに,ヒ ルベ ル ト空 間Hが 進 め よ う.AはH上
無 限次 元 の 場 合 へ と考 察 を
の 自己 共役 作 用 素 で あ る と し,下 に 有 界 で あ る とす る.上
述 の 考 察 か ら,次 の 対 象 を導 入 す るの は 自然 で あ る:
(6.9) (6.10) ただ し
(6.11) (6.10)に
お い て,Φ1,…,Φn-1は
く.μn(A)をAのn番
注 意6.2
目 の 特 性 レ ヴ ェ ル と 呼 ぶ*3.
dimH=N<∞
定 義 さ れ る.こ
level
of Aで
の 場 合 は,n=1,…,Nに
の 場 合,前
め て 数 え た,Aのn番 *3 こ の 命 名 は
一 次 独 立 で あ る 必 要 は な い こ と を 注 意 して お
,筆
対 し て の み μn(A)が
項 で 見 た よ う に,μn(A)は,小
さい 方 か ら重 複 を こ
目 の 固 有 値 で あ る. 者 が 試 み に 行 う も の で あ る(英
あ ろ うか).筆
語 に 直 す と す れ ば,n-th
者 の 知 る 限 り,μn(A)に
characteristic
は 名 前 が つ い て い な い よ う で あ る.
変 分 原 理 に よ り,μ1(A)はAの
ス ペ ク トル の 下 限 に 等 し い:
(6.12) 任 意 の ベ ク トル Φ1,…,Φn-1∈Hに
対 して
であ るか ら
(6.13) が 成 り立 つ.し Aの
た が っ て,μn(A)はnに
つ い て 単 調 増 加 で あ る.
真 性 ス ペ ク トル の 下 限 を ΣAで
表 す:
(6.14) dim
H=+∞
か つ σess(A)=0の
場 合 は,ΣA=+∞
と規 約 す る.
言 葉 の 使 い 方 を 一 つ 約 束 し て お く. り,λjの
多 重 度 がmjで
あ る と き,Aは
固 有 値 を も つ とい う.こ
Aの
Aを
の と し,a∈IRと
よ っ て 定 義 さ れ る 有 限 数 列E1,…,EMを
の 事 実 が 成 り立 つ:
無 限 次 元 ヒ ル ベ ル ト空 間H上 す る.こ
の と き,次
の 自己共 役 作 用 素 で下 に 有 界 な も
の(ⅰ),(ⅱ),(ⅲ)が
(ⅰ)a<μn(A)な
ら ば,dim
Ran(EA(-∞,a))〓n-1.
(ⅱ)a>μn(A)な
ら ば,dim
Ran(EA(-∞,a))〓n.
(ⅲ)す
重複 を
固 有 値 と い う.
特 性 レ ヴ ェ ル に つ い て,次
補 題6.7
の
の 場 合,Ei:=λ1(i=1,…,m1),Em1+…+mj-1+k:=
λj(j〓2,k=1,…,mj)に こ め て 数 え た,Aの
であ 重 複 を こ め てM:=m1+…+mN個
べ て のn∈INに
証 明 (ⅰ)対偶 を 示 す.そ
成 立 す る:
対 し て,μn(A)<∞.
こ で,dim
Ran(EA(-∞,a))〓nと
し よ う.Aは
下に
有 界 で あ る か ら,ス ペ ク トル表 示 を 用 い る こ と に よ り,Ran(EA(-∞,a))⊂D(A) で あ り,任
意 の Ψ ∈Ran(EA(-∞,a))に
で あ る こ と が わ か る.し
対 し て,〈 Ψ,A〉
た が っ て,Ran(EA(-∞,a))のn次
〓a‖ Ψ‖2…(*) 元 部 分 空 間Vで
V⊂D(A)か
つ 任 意 の Ψ ∈Vに
dimV=nで
あ る か ら,任 意 の Φ1,…,Φn-1∈Hに
≠{0}で
あ る*4.そ
こ で,Ψ
対 して(*)が
成 り立 つ よ う な も の が 存 在 す る. 対 してV∩[Φ1,…,Φn-1]⊥
∈V∩[Φ1,…,Φn-1]⊥,‖
Ψ ‖=1と
し た が っ て,μn(A)〓a.ゆ
え に(ⅰ)の 主 張 が 導 か れ る.
(ⅱ)こ れ も対 偶 を 示 す.そ
こ で,dim
Ran(EA(-∞,a))〓n-1と
た が っ て, 存 在 す る.た
の と き,任
あ る.し
だ し,η1,…,ηn-1は
意 の Ψ ∈[η1,…,ηn-1]⊥
た が って 〈 Ψ,4Ψ
〉〓a‖Ψ‖2.こ
し た が っ て μn(A)〓a.ゆ (ⅲ)仮
に,あ るnに
え に(ⅱ)の
か し,s-lima→
こ れ は 不 可 能 で あ る.し
一 次 独 立 で あ る と は限 らな
∩D(A)はRan(EA[a,∞))の れ か ら,
と す れ ば,(ⅰ)の 条 件 は ど ん なa∈IR
意 のa∈IRに
対 し てdim
∞ EA(-∞,a)=Iで た が っ て,題
中に
主 張 が 成 り立 つ.
対 し て,μn(A)=∞
に 対 し て も 成 り立 つ か ら,任 n-1.し
す る.し
と な る ベ ク ト ル ηj(j=
1,…,n-1)が い.こ
すれ ば
Ran(EA(-∞,a))〓
あ り,dimH=∞
で あ る か ら,
意 が 成 立 す る.
■
次 の 定 理 は無 限 次 元 ヒ ル ベ ル ト空 間上 の 自己 共 役 作 用 素 の ス ペ ク トル解 析 に お い て 重 要 な役 割 を演 じ る: 定 理6.8 間H上
(最 小-最 大 原 理(min-max
の 自 己 共 役 作 用 素 で 下 に 有 界 な も の と す る.こ
に,次の(ⅰ),(ⅱ)の
principle))Aを
そ のn番
中 に,重
複 も こ め て 少 な く と もn個
の 場 合,任
し,Aが(-∞,ΣA)の
め て 高 々(n-1)個
,付
録Cの
の 固 有 値 を も ち,
意 のm〓n+1に
で あ る.
補 題C.1の
対 し て μm(A)=μn(A)
中 に 固 有 値 を もつ とす れ ば,個
証 明 二 つ の 場 合 に分 け て 考 え る. *4 第2章
と
目 の 固 有 値 で あ る.
(ⅱ) μn(A)=ΣA.こ で あ る.も
の と き,各n∈INご
ど ち ら か 一 方 が 成 立 す る:
(ⅰ) Aは(-∞,ΣA)の
μn(A)は
無 限 次 元 ヒ ル ベ ル ト空
応 用.
数 は重複 もこ
(1)あ
る ε0>0に
対 し てdim
こ の 場 合 は,定
理6.8-(ⅰ)の
補 題6.7の(ⅰ),(ⅱ)に
Ran(EA(-∞,μn(A)+ε0))<∞
の場合
状 況 に あ る こ と を 示 そ う.任
意 の ε>0に
対 して
よ り . した が っ て,
こ れ と 定 理6.3に
よ り μn(A)∈
今 の 場 合 の 仮 定 と 定 理6.5-(ⅰ)に μn(A)は
σ(A).0<ε<ε0と よ り,μn(A)∈
多 重 度 有 限 の 孤 立 固 有 値 で あ る か ら,あ
い う場 合 を 考 え る と, σd(A)を
得 る.し
る δ>0が
た が っ て,
存 在 し て .
こ の と き, (補 題6.7-(ⅱ)).し 以 下 の 範 囲 に 少 な く と もn個 も し,仮 あ る が,こ し,こ
に,λn<μn(A)な
れ は,補
と な る εが で な け れ ば な ら な い.し
題6.7-(ⅰ)と
矛 盾 す る.よ
っ て λn=μn(A).す
こ の 場 合 は,定
な わ ち,μn(A)
対 し て
理6.8-(ⅱ)の
の場 合 状 況 に あ る こ と を 示 そ う.補 し た が っ て,す
し て .こ
題6.7-(ⅰ)に
よ り,
べ て の ε>0に
れ と 定 理6.5-(ⅱ)に σess(A).他
方,任 意 のa<μn(A)に
満 た す よ う に とれ ば,補 題6.7-(ⅰ)に し た が っ て,a〓
σess(A).こ
an<μn+1(A)で
し た が っ て,矛
盾 が 生 じ る.ゆ
れ ば,μn(A)=μn+1(A)を が 成 り立 っ.
あ る こ と を 意 味 す る.
し,an:=(μn(A)+μn+1(A))/2と
で あ る か ら,仮
お く.こ
の と き,
れ と(6.13)を
あ わせ
よ っ て
定 に よ り,
え に μn(A)〓
得 る.以
よ り,
よ り,
あ る か ら,補 題6.7-(ⅰ)に
,
対
対 し,ε0を0<ε0<μn(A)-aを
れ は,μn(A)=ΣAで
仮 に μn(A)<μn+1(A)と
一方
か
目 の 固 有 値 で あ る.
(2)す べ て の ε>0に
μn(A)∈
μn(A)
も つ .
ら ば,
の と き
はAのn番
た が っ て,Aは
の 固 有 値 λ1,…,λnを
下,同
μn+1(A).こ 様 に
(-∞,μn(A))の 値 と し よ う.こ
中 にAの
固 有 値 が 仮 にn個
の と き,(a+μn(A))/2>aで 一方
あ っ た と し,aを
,
で あ る か ら,補
題6.7-(ⅰ)に
し た が っ て,矛
え に,(-∞,μn(A))の
く し て,今
目の 固有
あ る か ら,
よ り, る.ゆ
そ のn番
の 場 合 は,定
中 に はAの 理6.8の(ⅱ)の
固 有 値 は 高 々(n-1)個
盾が生 じ
しか な い.か
状 況 に あ る こ とが 示 さ れ た 。
■
6.3.3 基 底 状 態 お よび 離 散 固 有 値 の存 在 最 小-最 大 原 理 か ら出 て くる 簡単 な帰 結 を述 べ て お こ う. 定 理6.9
(基底 状 態 の存 在)Aを
無 限次 元 ヒル ベ ル ト空 間H上
己 共 役 作 用 素 とす る.単 位 ベ ク トル Ψ ∈D(A)で が あ れ ば,Aは
の 下 に有 界 な 自
〈Ψ,AΨ 〉<ΣAを
満 た す もの
基 底 状 態 を もつ.
証 明 仮 定 の 条 件 は μ1(A)<ΣAを よ り,μ1(A)はAの1番
意 味 す る.し
目 の 固 有 値 で あ る.ゆ
た が っ て,最
え に,Aは
小-最 大 原 理 に
基 底 状 態 を も つ. ■
こ の 定 理 は,有 限 自 由度 の量 子 力 学 の モ デ ル だ けで な く,量 子 場 の モ デ ル に 対 して も適 用 す る こ とが で き,そ の応 用 範 囲 は 広 い. 定 理6.10
(離 散 ス ペ ク トル の 存 在)Aを
有 界 な 自 己 共 役 作 用 素 と し,あ
るa∈IRが
て い る と す る.さ
ら に,あ
の と き,Aは,重
複 を こ め て 少 な く)もn個
μn(A)はAのn番
るn〓1に
無 限 次 元 ヒ ル ベ ル ト空 間H上
の下に
あ っ て σess(A)⊂[a,∞)が
わかっ
対 し て,μn(A)
あ る と し よ う.こ
の 固 有 値 を(-∞,a)の
中 に も ち,
目 の 固 有 値 で あ る.
証 明 仮 定 の も と で は,μn(A)<ΣA.し は ま る.ゆ
え に 題 意 が 成 り立 つ.
6.3.4
比 較 定 理 と レイ リー-リ
た が っ て,定
理6.8-(ⅰ)の
状 況があて ■
ッツ の 原 理
多 くの 場 合,自 己 共 役 作 用 素 の 特 性 レ ヴ ェ ル を 陽 に計 算 す る こ とは で きな い. した が っ て,そ の 場 合 に は,特 性 レヴ ェ ル を上 と下 か ら評 価 す る こ とが 重 要 に な る.こ
の項 で は,そ の た め の基 本 的 な方 法 を述 べ る.
定 理6.11
(比 較 定 理)A,
用 素 でA〓Bを
Bを
ヒ ル ベ ル ト空 間H上
満 た す も の と す る(i.e.,
〈Ψ,BΨ 〉,∀Ψ ∈D(B)). (dimH=+∞
D(B)⊂D(A)か と お く.こ
の 場 合;dimH=N<∞
の下 に有 界 な 自己 共 役 作 つ 〈Ψ,AΨ 〉 〓
の と き,す べ て のn∈IN
の と き は,n=1,…,N)に
対 して
(6.15) 証 明 (1)n=1の
場 合.
とA〓B
に よ っ て,
そ こ で,Ψ
辺 の 下 限 を と れ ば(6.15)が (2)n〓2の
場 合.任
に つ い て両
得 ら れ る.
意 の Φj∈H(j=1,…,n-1)と
に 対 して,
し た が っ て, こ れ は,
を 意 味 す る.Φ1,…,Φn-1に
定 義6.12
つ い て 両 辺 の 上 限 を と れ ば(6.15)が
閉 作 用 素Aに
つ い て σess(A)=0が
ル は 純 粋 に 離 散 的(purely
系6.13 す る.Aの
A, BをH上
discrete)で
得 ら れ る. ■
成 り立 つ と き,Aの
スペ ク ト
あ る と い う.
の 下 に 有 界 な 自 己 共 役 作 用 素 でA〓Bを
満 た す もの と
ス ペ ク トル は 純 粋 に 離 散 的 で あ る と し, と す る.こ
と き,Bの
ス ペ ク ト ル も 純 粋 に 離 散 的 で あ り,
En〓Fn,∀n∈INが
よ り,す
し た が っ て,limn→
ん なnに
が,こ
対 し て,En=μn(A)〓
…(*).仮
す る と,最
0に 対 し て μn(B)=ΣB.だ
μn(B)<ΣBで
べ て のn∈INに
∞ μn(B)=∞
0に 対 し て,μn0(B)=ΣBと
く と もn個
と す れ ば,
成 り立 つ.
証 明 定 理6.11に
原 理 に よ り,ど
の
に σess(B)≠0と
小-最 大 原 理 に よ り,す
れ は(*)に
反 す る.し
対 して も,Bは(-∞,ΣB)の
の 固 有 値 を も ち,μn(B)は あ る が,nを
そ のn番
μn(B). し,あ
るn
べ て のn〓n
た が っ て,最
小-最 大
中 に重 複 を こ め て 少 な 目 の 固 有 値 で あ る.こ
十 分 大 き く と れ ば,(*)に
よ っ て,こ
の 場 合,
れは矛盾であ
る.ゆ
え に,σess(B)=0.こ
Bのn番 例6.2
の と き,再
目 の 固 有 値 で あ る.よ
小-最 大 原 理 に よ り,μn(B)は
っ て 題 意 が 成 立 す る.
(調和 振 動 子 の 摂 動)V:IR→IRを
かつ ω>0に
び,最
■
下 に有界 な ボ レル 可 測 関 数 でV∈L2loc(IR)
が
を満 たす な らば
を 満 た す もの とす る.こ の と き,定 理2.25に よ っ て,任 意 の 対 して,Hos(V):=-Δ+ω2x2+VはC∞0(IR)上 で本 質 的 に 自 己共 役 で あ
り,下 に有 界 で あ る.V(x)〓υ0, とお く.Aは,1次
a.e.xと し(υ0∈IRは
の で あ り,自 己 共 役 か つ 下 に 有 界 で あ る.容
はHos(V)の
(*)は す べ て の ψ ∈D(Hos(V))ま 著[5]に
芯 で あ る か ら,
で 拡 張 で きる と 同 時 に,D(Hos(V))⊂D(A)が
お い て す で に 証 明 した よ う に,Aの
的 で あ り,σd(A)={(2n+1)ω+υ0}∞n=0で Hos(V)の
けず ら した も
易 に わ か る よ う に,任 意 の ψ ∈C∞0(IR)
に 対 して,
示 さ れ る.前
定 数),A:=-Δ+ω2x2+υ0
元 調 和 振 動 子 の ハ ミル トニ ア ン を定 数 作 用 素υ0だ
あ る.し
ス ペ ク トル は 純 粋 に 離 散
た が っ て,系6.13に
ス ペ ク トル も 純 粋 に 離 散 的 で あ り,σd(Hos(V))={En}∞n=0と
(2n+1)ω+υ0〓En, こ の例 をd次
n〓0,が
よ っ て, す れ ば,
成 り立 つ.
元 へ の 場 合 に 拡 張 す る こ と は 直 接 的 で あ る.
次 の 比 較 原 理 も重 要 で あ る: 定 理6.14
(レ イ リ ー-リ
ッ ツ(Ritz)の
原 理).Hを
ヒ ル ベ ル ト空 間H上
有 界 な 自己 共 役 作 用 素 と す る.M⊂D(H)をn次
元 部 分 空 間 と し,P:H→Mを
Mへ
し,HMの
の 正 射 影 作 用 素 とす る.HM:=PEP│Mと
(μ1〓 μ2〓 …
〓 μn)と
す る.こ
の下に
固 有 値 を μ1,…,μn
の とき
(6.16) 証 明 最 小-最 大 原 理 をHMに 今,M⊂D(H)で た が っ て,j=1の 次 に,j〓2の
あ て は め る.ま
ず,
あ る か ら,[右 辺]〓infΨ ∈D(H),‖Ψ‖=1〈Ψ,EΨ 場 合 の(6.16)が 場 合 を 考 え る.こ
成 立 す る. の場合
〉=μ1(H).し
任 意 の Ψ ∈M,Φ
∈Hに
対 し て,〈 Ψ,PΦ 〉=〈PΨ,Φ
〉=〈 Ψ,Φ 〉で あ る か ら,
した が っ て, ゆ え に(6.16)が
レイ リー-リ
得 ら れ る.
ッ ツの 原 理 は,た
■
とえ ば,具 体 的 な問 題 に お い て,Hが
固有 値
を もつ こ とが わ か って い る場 合,固 有 値 に対 す る上 界 を数 値 的 に評 価 す るの に 使 う こ とが で きる(μjは,コ 場 合,n次
ン ピュ ー タ を使 え ば,数 値 計 算 可 能 で あ る).こ の
元 部 分 空 間Mを
い ろ い ろ と動 か す こ とに よ り,評 価 の 精 度 をあ げ る
こ とが で きる.
6.3.5 形 式 に よ る定 式 化 最 小-最 大 原 理 は 自己 共役 作 用 素 の形 式 を用 い て も定 式 化 で き る.応 用 上,こ の 方 が よ り有 用 な 場 合 が あ る.自 己 共役 作 用 素Aの 義 域 をQ(A)で
表 す*5.各
Ψ ∈Q(A)に
形 式 をsAで
表 し,sAの
定
対 して
(6.17) と お く(EAはAの
定 理6.15
ス ペ ク トル 測 度).
AをH上
の 下 に有 界 な 自己 共 役 作 用 素 と し よ う.こ の と き
(6.18) 証 明 (6.18)の
右 辺 を μn(A)と
μn(A)(n〓1)…(*).補 に よ り,補
題6.7は
た が っ て,定 た が っ て,も もn番
し よ う.D(A)⊂Q(A)で
題6.7の μn(A)を
理6.8は,μn(4)を し,μn(A)がAのn番
証 明 を,D(A)をQ(A)に
πn(A)に
*5 第2章
,2.8節
中 に は,Aの を 参 照.
変 えて行 うこ と
変 え た 形 で 成 立 す る こ と が わ か る.し
μn(A)に
変 え た 形 で 成 立 す る こ と に な る.し
目 の 固 有 値 で あ れ ば,(*)に
目 の 固 有 値 で あ る か ら,μn(A)=μn(A).ま
(-∞,μn(A))の
あ る か ら,μn(A)〓
固 有 値 は 高 々(n-1)個
た,μn(A)=ΣAな
よ り,μn(A) ら ば,
し か 存 在 し え な い か ら,
(*)に
よ っ て,μn(A)は,Aのn番
μn(A)=ΣA.ゆ
目 の 固 有 値 で は あ り え な い.し
え に μn(A)=μn(A).こ
う して,(6.18)が
た が っ て,
成 立 す る こ とが わ
か る.
■
二 つ の(下 に有 界 な)自 己 共 役 作 用 素A, Bに
つ い て,μn(4),μn(B)を
形式
を用 い て,比 較 す る た め に,あ る概 念 を導 入 す る: 定 義6.16
A, BをH上
の Ψ ∈Q(B)に
の 自 己 共 役 作 用 素 と す る.Q(B)⊂Q(A)か
対 し て,sA(Ψ)〓sB(Ψ)が
つすべ て
成 り立 つ と き,A〓Bと
記 す.
次 の事 実 を注 意 して お く: 命 題6.17 る.こ
A, BをH上
は 実 定 数)と
た が っ て,任
∞)と
し て,A:=A-γ,B:=B-γ
意 Ψ ∈D(B)に
意 の Φ ∈D(B1/2)=Q(B)に (n→
満 たす とす
の と き,A〓B.
証 明 A〓γ(γ B.し
の 下 に 有 界 な 自 己共 役 作 用 素 でA〓Bを
∞A1/2Φnは
存 在 す る.A1/2の
た が っ て,D(B1/2)⊂D(A1/2).そ
て,Φnを
∞
こ れ はA〓Bを
注 意6.3
Ψ と し
は コ ー シ ー 列 で あ る こ と が わ か る.し
か つ η=A1/2Φ.し と り,n→
Φ,B1/2Φn→B1/2Φ
と え ば,Φn=EB[-n,n]Φ).(*)の
と る と,
が っ て,η:=limn→
任
対 して,Φn∈D(B),Φn→
な る も の が と れ る(た
て,Φn-Φmを
と お け ば,0〓A〓
対 して,
閉 性 に よ り,Φ
∈D(A1/2)
こ で,(*)の
とす れ ば,
Ψ と し
以 上 か ら,A〓B.
意 味 す る.
■
上 の 命 題 の 逆 は 成 立 しな い.す
は 限 ら な い.だ
が,Aが
た
な わ ち,A〓Bで
下 に 有 界 で,A〓Bか
あ っ て もA〓Bと
つD(B)⊂D(A)な
ら ばA〓B
で あ る こ と は 容 易 に わ か る.
次 の 定 理 は 定 理6.11の
形 式 版 で あ る.
定 理6.18
(形式 の場 合 の比 較 定 理)A,
でA〓Bを
満 た す も の とす る.こ の と き,各nに
証 明 定 理6.11の
証 明 と 同 様(い
BをH上
ま の 場 合,定
の 下 に有 界 な 自己共 役 作 用 素 対 して μn(A)〓 μn(B).
理6.15を
使 う).
■
6.3.6 特 性 レ ヴ ェ ル の 結 合 定 数 に 関 す る単 調 性 と連 続 性 定 理6.15の
重 要 な応 用 を 一 つ あ げ て お こ う.A,
Bを
ヒ ルベ ル ト空 間H上
の
自 己共 役 作 用 素 で次 の 条 件 を 満 た す もの とす る: (ⅰ) A〓0. (ⅱ) BはAに
関 して,形 式 の 意味 で無 限 小 で あ る.
こ の とき,KLMN定
理 に よ っ て,任 意 の λ〓0に 対 して,下 に有 界 な 自己 共 役
作 用 素CでQ(C)=Q(A)=D(A1/2)か
つ
(6.19) を満 たす ものが た だ 一 つ 存 在 す る*6.こ の 自己 共役 作 用 素CをC=A+λBと 表 す こ とは 第2章 定 理6.19 の λ〓0に
で 述 べ た.
A, Bを
上 の(ⅰ),(ⅱ)を
対 し て,ΣA+λB=0と
満 た す 自 己 共 役 作 用 素 で あ る と し,す べ て 仮 定 す る.こ
の と き,各nに
対 し て,次
の
(ⅰ),(ⅱ)が 成 り立 つ: (ⅰ) μn(A+λB)は
λ の 関 数 と し て,[0,∞)上
(ⅱ)μn(A+λB)<0と
で 連 続 か つ 単 調 減 少 で あ る.
な る λ の 範 囲 で は μn(A+λB)は
λ の 関 数 と して 狭
義 単 調 減 少 で あ る.
証 明 (ⅰ)C=A+λB,μn(λ)=μn(C)と
お く.仮
す べ て のn〓1に
の 性 質 と 定 理6.15に
対 して,μn(λ)〓0.こ
定 と最 小-最 大 原 理 に よ り, よ り
とす れ ば
(6.20) と 書 け る.(6.19)に
*6 第2章
,2.8節
よ り,
を 参 照.
に よ
り,sA(Ψ)〓0で と(6.20)か
あ る か ら,FΨ(λ)は,λ〓0の
ら,μn(λ)も
次 に μn(λ)の
λ の 単 調 減 少 関 数 で あ る こ と が 結 論 さ れ る.
固 定 す れ ば,sA(Ψ)+λsB(Ψ)は
の 場 合,λ
れ
λ に 関 す る 連 続 性 を 示 そ う. ,を
の 連 続 関 数 で あ る.そ [a,b]⊂[0,∞)で
単 調 減 少 関 数 で あ る*7.こ
こ で,関
λ の 連 続 関 数 で あ る か ら,FΨ 数 族
も[0,∞)上 が任意 の区間
同 程 度 に 連 続 で あ る こ と を 示 せ ば 十 分 で あ る*8.な
の 関 数 族
た が っ て,μn(λ)が
ぜ な ら,そ
も 同 程 度 連 続 に な り,し
連 続 に な る か ら で あ る.
を 任 意 に 固 定 す る.上
述 の 条 件(ⅱ)に
よって
(6.21) を 満 た す 定 数b>0が
(★)あ
存 在 す る.次
るζ ∈[0,λ0+1)に
の 事 実 に 注 意 す る.
対 し て,FΨ(ζ)<0な
ら ば│sB(Ψ)│<2b.
(★)の 証 明:条 件 か ら, .し た が っ て, .こ れ を(6.21))の 右 辺 に適 用 す れ ば ,す な わ ち,│sB(Ψ)│<2bを
任 意 の ε>0に (0<δ
〓1に
対 し て,
注 意).二
(1) FΨ(λ0)=0の
と お き,│λ-λ0│<δ
場 合.こ
の 場 合, .し
に,│FΨ(λ)-FΨ(λ0)│<ε.他
*7 一般 に
とす る
つ の 場 合 に 分 け て 考 え る.
て,│sB(Ψ)│<2bで
得 る.
で あ り, た が っ て,FΨ(λ)=0な
方,も
あ る か ら,(*)に
し,FΨ(λ)<0な
ら ば,自 ら ば,(★)に
明的 よっ
注 意 す れ ば,
,a〓0,b∈IRを 固 定 さ れ た 定 数 とす る と き,λ〓0の 関数f(λ):=min{a+ 単 調 減 少 で あ る.こ の 事 実 は,b〓0とb<0の 場 合 に 分 け て 考 え れ ば,容
λb,0}は
に 証 明 さ れ る. *8 一 般 に ,区 間[a,b]上 で 定 義 さ れ た 関 数 の 族 に つ い て,任 意 の ε>0に 対 し て,個 々 の α ∈Iに が 存 在 し て,
易
(Iは あ る 添 え 字 集 合) 依 存 し な い 定 数 δ=δ(ε)>0
で あ る か ぎ り,す
べ て の α ∈Iに
対 して
が 成 り立 つ な ら ば,Fは[a,b]上 で 同 程 度 に 連 続 で あ る と い う. こ の 場 合, infα∈Ifa(x)やsup α∈Ifa(x)は 存 在 す れ ば,そ れ ら は[a,b]上 で連 続 で あ る.こ れ は 容 易 に 確 か め ら れ る.
.し
た が っ て,い
ず れ の 場 合 で も,
が 成 り立 つ.
(2) FΨ(λ0)<0の
場 合.こ
が っ て,(★)に
の 場 合 は,
.し
よ っ て,
.
δ は Ψ の 取 り方 に よ っ て い な い か ら,以 上 の 結 果 は,関 数 族 が[0,∞)の
任 意 の 有 限 区 間 で 同 程 度 連 続 で あ る こ と を 示 す.
(ⅱ)μn(λ)<0と
し よ う.し
が と れ る.Φ1,…,Φn-1を
た が っ て,μn(λ)+ε0<0…(**)と
意 の ε ∈(0,ε0)に
な る ε0>0
任 意 に 固 定 し,
最 小-最 大 原 理 に よ り,
と お け ば,
.こ
の こ と とU(λ)の
定 義 か ら,任
対 し て
が
存 在 し て
が 成立
す る.sA(Ψ)〓0で (**)に
あ る か ら,
よ っ て,任
意 のα>0に
な る β>0が
存 在 す る.こ
れ と(***)を
使 え ば,
る.こ
が 導 か れ る. 対 し て,
と
れ と す ぐ 前 の 式 に よ っ て αsB(Ψ ε)+β<0.こ が 得 られ
れ は,
を 意 味 す る.そ
に 関 す る 上 限 を と れ ば( .さ ,し あ っ た か ら,こ
定 理6.20
れ は,μn(λ)の
A, BをH上
も の と す る(し
こ で,Φ1,…,Φn-1 に よってい ない こと
に 注 意),
(形 式 和)が
た
ら に,ε
→0の
極 限 を と れ ば,
た が っ て,μn(λ+α)<μn(λ).α>0は
任意で
狭 義 単 調 減 少 性 を 示 し て い る.
の 非 負 自 己 共 役 作 用 素 でQ(A)∩Q(B)が
た が っ て,任
意 の λ〓0に
定 義 さ れ る).こ
の と き,各nに
対 し て,非
■
稠密 で あ る
負 自 己 共 役 作 用 素A+λB
対 して,
は の 単 調 増 加 関 数 で あ る.
証 明 B〓0で
あ る か ら,0〓
6.18に
意 を 意 味 す る.
よ り,題
λ〓 μ な ら ばA+λB〓A+μB.こ
れ は,定
理 ■
6.4
こ の 節 と次 の 節 で は,前
コ ン パ ク ト作 用 素
節 の 一 般 論 を量 子 力 学 の 具 象 的 な モ デ ルへ 応 用 す る
た め の 数 学 的 準 備 を 行 う.
6.4.1
定
H,Kを
義
と
例
ヒ ル ベ ル ト空 間 と し,B(H,K)をHを
界 な 線 形 作 用 素 の 全 体 とす る.こ
定 義6.21
T∈B(H,K)と
す る.Hに
強 収 束 す る部
調 増 加 列{nj}∞j=1⊂INでnj→∞(j→∞)を あ っ て,
コ ン パ ク ト(compact)あ
る い は 完 全 連 続(completely
らKへ
の有
お け る す べ て の 有 界 な 点 列{ΨN}∞n=1 .
に 対 し て,{TΨn}∞n=1⊂Kが
も の と ベ ク トル Φ ∈Kが
う.Hか
らKへ
の 空 間 の 中 の 重 要 な ク ラ ス の 一 つ を 定 義 す る:
分 列 を 含 む と き(i.e.,単
定 義 域 と す る,Hか
満たす
が 成 り立 つ と き)Tは continuous)で
の コ ン パ ク ト作 用 素 の 全 体 をC(H,K)で
あ る とい
表 す.C(H):=C(H,H)
と お く.
注 意6.4
上 の 定 義 は,H,Kが
C(H,K)がB(H,K)の
バ ナ ッハ 空 間 の 場 合 に も そ の ま ま拡 張 さ れ る.
部 分 空 間 で あ る こ と は 容 易 に 確 か め ら れ る(演
習問題
4). 例6.3
有 界 線 形 作 用 素T∈B(H,K)で
限 階 作 用 素(finite
rank
operator)と
す.Cfin(H):=Cfin(H,H)と
証 明 dim Ran(T)=M<∞ 意 のΨ ∈Hに
コ ンパ ク トで あ る.す
表
な わ ち,Cfin(H,K)⊂C(H,K).
と お く と,正 規 直 交 基 底
対 して,TΨ
はTΨ=ΣMm=1αm(Ψ)Φmと
.し た が っ て,
け る任 意 の 有 界 列 と し,C:=supn〓1‖Ψn‖― とす れ ば,
次 元 が 有 限 で あ る もの を 有
限 階 作 用 素 の 全 体 をCfin(H,K)で
お く.
● 任 意 のT∈Cfin(H,K)は
て,任
値 域Ran(T)の 呼 ぶ.有
があっ 表 さ れ る.こ .さ て,{Ψn}∞n=1をHに
こ で, お
これ は 有 限― とお く. で あ り,│β(m)n│〓C‖T‖
が 成 り立 つ.し
た が っ て,各mご
と に定 ま る 数 列{β(m)n}∞n=1は 有 界 で あ る の で,ボ
イエ ル シ ュ トラ ス の 定 理 に よ り,ま ず,m=1の が 存 在 して,{β(1)n1k}kは 収 束 す る.次 の 部 分 列{n2k}k⊂INが
に,m=2の
場 合 を 考 え る と,同 様 に{n1k}k
存 在 して,{β(2)n2k}kは 収 束 す る.以
下 同 様 に して,部
で す る も の が 存 在 す る こ とが わ か る.こ {β(m)nMk}kは収 束 す る.こ え にTは
分列
か つ{β(m)nmk}kが 収 束 の と き,す べ て のm=1,…,Mに
よ っ て,ベ
対 して,
ク トル列{TΨnMk}kは
収 束 す る.ゆ
コ ン パ ク トで あ る.
6.4.2
■
基 本 的 な 性 質
定 理6.22
れ と(*)に
ル ツ ァ ー ノ-ワ
場 合 を考 え る と,数 列{n1k}k⊂IN
T∈B(H,K)と
す る.
(ⅰ) Tn∈B(H,K)が
コ ンパ ク トで,‖Tn-T‖
→0(n→∞)な
ら ば,Tは
コ ン パ ク トで あ る. (ⅱ) Lを
ヒ ル ベ ル ト空 間,S∈B(K,L)と
す る.こ
の と き,S,Tの
が コ ン パ ク トな ら ば,ST∈B(H,L)は
コ ン パ ク トで あ る.
証 明 (ⅰ)仮 定 に よ り,任
対 し て,番
ε(n〓n0)が (∵3角
意 の ε>0に
成 り立 つ.し
た が っ て,任 意 のm,n〓n0に
不 等 式).{Ψm}mをHの .T1は
部 分 列 を 含 む.こ {T2Ψmk(1)}kも
た が っ て,
し よ う.T2も
強収束 する
コ ン パ ク トで あ る か ら
れ を{T2Ψmk(2)}kと
す る.以
下同
対 して,部 分 列{mk(n)}kで
べ て のnに
し よ う.‖ Φk‖ 〓Cで
そ こ でk→∞
対 し て‖Tn-Tm‖<2ε
コ ン パ ク トで あ る か ら,{T1Ψm}mは
れ を{T1Ψmk(1)}kと
た し,{TnΨmk(n)}kが )と す れ ば,す
あ っ て‖Tn-T‖<
任 意 の 有 界 列 と し よ う.し
強 収 束 す る 部 分 列 を 含 む.こ
様 に し て,各nに
号n0が
ど ち らか
を満
強 収 束 す る よ う な も の が と れ る.そ 対 し て,{TnΦk}kは あ る か ら,n,m〓n0と
強 収 束 す る.こ す れ ば,任
と す れ ば,
コ ー シ ー 列 で あ る こ と を 意 味 す る.し
こ で,Φk=Ψm(k の 収 束 先 を ηnと
意 のkに
.こ た が っ て,η ∈Kが
対 し て,
れ は{ηn}nが
存 在 し て,‖ηn-η‖
→
0(n→∞).不
等 式
に 注 意 す れ ば,上 た が っ て,Tは (ⅱ) Tが
と 同 様 に し て,TΦk→
な る こ と が わ か る.し
コ ンパ ク トで あ る.
コ ン パ ク トで あ れ ば,任 意 の 有 界 列{Ψn}n⊂Hに
は 強 収 束 す る 部 分 列{TΨnk}kを す る.し
η(k→∞)と
た が っ て,STは
定 理6.22-(ⅰ)は,コ
含 む.Sは
対 して,{TΨn}n
有 界 で あ る か ら,STΨnkは
コ ンパ ク トで あ る.Sが
強収束
コ ンパ ク トの 場 合 も 同 様. ■
ン パ ク ト作 用 素 列 の 一 様 収 束 先 も コ ン パ ク トで あ る こ と(し
た が っ て,C(H,K)は
バ ナ ッハ 空 間B(H,K)の
閉 部 分 空 間),定
理6.22-(ⅱ)は,
作 用 素 の コ ン パ ク ト性 は 有 界 作 用 素 の 積 演 算 で 保 存 さ れ る こ と を 語 る. 次 の 定 理 を 述 べ る 前 に ヒ ル ベ ル ト空 間 論 に お け る 基 本 的 な 事 実 の 一 つ を 補 題 と し て 述 べ る:
補 題6.23
ヒ ル ベ ル ト空 間Hに
わ ち,{Ψn}∞n=1⊂Hを
お い て,弱
収 束 す る 点 列 は 有 界 で あ る.す
証 明 Sn:H→Cを
に よ っ て 定 義 す れ ば,Snは
界 線 形 汎 関 数 で あ り, あ る Ψ ∈Hが
([4]の1.3節
存 在 し て,
対 し て 定 数CΦ>0が
を 参 照).仮
.し た が っ て,各
存 在 し て,
タ イ ン ハ ウ ス の 定 理([5]のp. こ れ と(*)に
353,定
Φ ∈Hに
.ゆ え に,バ ナ ッ ハ-シ ュ 理3.48)に
よ っ て,
.
よ り 題 意 が 成 立 す る.
T∈B(H,K)を
証 明 Φn:=TΨnが
■
コ ンパ ク ト作 用 素 と す る.こ の と き,
な ら ば,
Φ:=TΨ
に 弱 収 束 す る こ と は 容 易 に わ か る.仮
Φ に 強 収 束 し な か っ た と し て み よ う.こ
有
定 に よ り,
コ ンパ ク ト作 用 素 の 重 要 な 性 質 の 一 つ が 次 の 定 理 に よ っ て 与 え ら れ る: 定 理6.24
な
弱 収 束 す る 任 意 の 点 列 と す れ ば,
の と き,「 あ る ε>0と
に,Φnは
部 分 列{Φnk}kが
存 在 し て‖ Φnk-Φ‖〓
ε」 …(*)が
は 有 界 で あ り,Tは む.こ
成 り立 つ.補
題6.23に
コ ン パ ク トで あ る の で,{Φnk}kは
れ を
強 収 束 す る部 分 列 を含
と す る.強
す る か ら, .一 辺 は,Φ
よ っ て,{‖ Ψnk‖}k
方,証
に 等 しい.し
定 理6.24は,コ
収 束すれば弱収束
明 の 初 め に 述 べ た こ と よ り,こ
た が っ て,Φ=Φ.だ
が,こ
れ は(*)に
の右
反 す る.
ン パ ク ト作 用 素 は 弱 収 束 列 を 強 収 束 列 に 変 換 す る,と
■
い うこ
と を 語 る. 定 理622-(ⅰ)と
例6.3に
(一 様 収 束 極 限)は
コ ン パ ク トで あ る.実
定 理6.25
T∈B(H,K)を
規 直 交 系 と し,各N〓1に
よ り,有
限 階 の作 用 素 列 の 作 用 素 ノル ム に よ る極 限 は こ の 逆 も成 り立 つ:
コ ン パ ク ト作 用 素 とす る.{Ψn}∞n=1をHの
完全 正
対 して 作 用 素TNを
(6.22) に よ っ て 定 義 す る.こ
の と き,次
の(ⅰ),(ⅱ)が
成 り立 つ:
(ⅰ) TN∈Cfin(H,K). (ⅱ) ‖TN-T‖→0(N→
∞).
証 明 (ⅰ)
で あ り,右
辺 は 有 限 次 元 部 分 空 間で あ る
か ら,
(ⅱ) 任 意 の
は
と展 開 され る.し た
が っ て,
.た
だ し, .明
に,ΨN∈[ψ1,…,ψN]⊥.し
た が っ て,
.ゆ
らか
え に‖T-TN‖〓
Ψ ∈[ψ1,…,ψN]⊥
に対 し て,TNΨ=0で
.し え に,limN→∞
明 ら か に,λNはNに limN→∞λN=λ〓0が λ/2で あ る こ と と,λNの
だ し,
方,任
意の
あ る か ら,
た が っ て,λN〓‖T一TN‖.よ
λN=0を
λN.他
.た
っ て‖TN-T‖=λN.ゆ
示 せ ば よ い. 関 して 単 調 減 少 で あ り,λN〓0で 存 在 す る.仮
に λ>0と
単 調 減 少 性 に注 意 す れ ば,
あ る か ら,極
し て み よ う.こ
の と き,λ>
限
と な る 列{ΦN}Nを
と な る こ と は 容 易 に わ か る.し .こ れ は 矛 盾 で あ る.ゆ
定 理6.25は,有
た が っ て,定 理6.24に
よ っ て,
え にλ=0.
■
限 階 作 用 素 の 集 合Cfin(H,K)が(作
相 に お い て)コ 定 理6.26
と る こ と が で き る.
用 素 ノル ム か ら定 ま る位
ン パ ク ト作 用 素 の 集 合C(H,K)の
T∈C(H,K)と
中 で 稠 密 で あ る こ と を 示 す.
す る.Sn∈B(X,H)(Xは
ヒ ル ベ ル ト空 間)と
を 満 た す と す る.こ
の と き,
証 明 バ ナ ッハ-シ ュ タ イ ンハ ウ ス の 定 理 に よ り, を 定 理6.25と
同 じ も の と す れ ば,任
意 の ε>0に
.任 意 の Ψ ∈Xに ,
対 し て,番
.こ .し
.ゆ
.TN
え に,n〓n0な
た が っ て,番
ス
定 理6.27 C(H)).こ
ペ Tを
ク
れ と
号n0が
存 在 し て,
存 在 して
ら ば, .よ っ て,定
6.4.3
号N0が
対 して
で あ る か ら,
に よ っ て,
し,
理 の 結 論 を 得 る.
■
ト ル
ヒ ル ベ ル ト空 間H上
の コ ン パ ク ト作 用 素 と す る(i.e.,T∈
の と き,
.す
は 多 重 度 が 有 限 の 孤 立 固 有 値 で あ る.さ
な わ ち,任 意
ら に,σd(T)\{0}の
の 可 能 な 集 積 点 は0
だ け で あ る.
証 明 ま ず,C\(σp(T)U{0})はTの λ ∈C,λ
≠0,と
用 素1-zT(z∈C)に
レ ゾ ル ベ ン ト集 合 に 属 す る こ と を示 す.
す れ ば,
と 書 け る こ と に 注 意 し て,作
つ い て 考 察 す る.T=0の
場 合 は 自 明 な の で,T≠0
と す る. 点a∈Cを
任 意 に 固 定 す る.aTも
て,‖F-aT‖<1/2を し,
コ ンパ ク トで あ る か ら,定
満 た す 有 限 階 作 用 素Fが と す れ ば,す
理6.25に
よっ
と れ る.r=1/(2‖T‖)と べ て のz∈Ur(α)に
対 し て,
‖F-zT‖<1が
成 り立 つ.し
理1.34)に
た が っ て,C.ノ
よ り,1-zT+Fは
イ マ ン の 定 理([4]のp.
全 単 射 で あ り,一
71,定
様位 相で
(6.23) が 成 り立 つ.そ
こ でG(z)=(1-zT+F)-1と
と 書 け る.こ
お けば
れ か ら次 の こ と が わ か る:
(ⅰ) 1-zTが
全 単 射 で あ る た め の 必 要 十 分 条 件 は1-G(z)が
全単射 である
こ と で あ る. (ⅱ) zTΨ=Ψ 0で
が0で
な い 解 Ψ を もつ た め の 必 要 十 分 条 件 はG(z)Φ=Φ
こ う し て,問 Fは
題 は 作 用 素1-G(z)の
解 析 に 帰 着 さ れ る.
有 限 階 作 用 素 で あ る か ら,Ran(F)は
規 直 交 基 底 の 一 つ を{Φn}Nn=1と と表 さ れ る.た .た
有 限 次 元 で あ る.こ
の部 分 空 間 の 正
す れ ば,Fは,
だ し,ηn:=F*Φn.し
た が っ て,
だ し,
G(z)Φ=Φ
が0で
な い 解 Φ を も つ と し よ う.Ran(G(z))⊂Ran(F)で
る か ら,
と 書 け る(αn∈C).し
た が っ て,(*)を
が 成 り立 つ.逆
解{αn}Nn=1≠0を て,G(z)Φ=Φ
も て ば, が0で
はG(z)Φ=Φ
な い 解 を もつ こ と と(**)が
つ こ と は 同 値 で あ る こ と が わ か る.(m,n)成 で 与 え ら れ るN次
の 行 列 をM(z)と
はd(z):=detM(z)=0が
で あ る,と
が0で
い う こ と に な る.こ
使 え ば, に(**)が
を 満 た す.こ
うし
非 自 明 な 解{αn}Nn=1≠0を
も
す れ ば,(**)が
(Ur(a)に
とす れ ば,G(z)Φ=Φ
あ
分 が
必 要 十 分 で あ る.そ
解Ψ
が
な い 解 Φ を も つ こ と で あ る.
非 自明 な解 を もつ た め に
こで お け る,d(z)の
零 点 の 集 合)
な い 解 を もつ た め の 必 要 十 分 条 件 は,z∈Zr(a) れ と 上 記(ⅱ)に
を も つ た め の 必 要 十 分 条 件 は,z∈Zr(a)で
よ っ て,zTΨ=Ψ
が0で
あ る こ と が 結 論 さ れ る.
ない
(6.23)に
よっ て
で あ る か ら,M(z)
の 行 列 要 素 の お の お の はUr(a)で 則 で あ る.ゆ
え に,Zr(a)は
か で あ る.も
し,あ
正 則 で あ る.し
対 して,Zr(a)=Ur(a)が 中 に 任 意 に と り,い
ば,z∈Ur(a)∩Ur(b)はZr(b)に
下 同 様 に し て,任
ま と 同 様 の 議 論 をUr(b)で た が っ て,一
意 のz∈Cに
か し,Tは
る.ゆ
対 し て,Zr(a)≠Ur(a).し
は 離 散 的 な 集 合 で あ る.こ い(も
し,Ur(a)の
な っ て 矛 盾).こ
中 に あ る とす れ ば,一 れ が ど ん なa∈Cに
な い 解 Ψ を も つ よ う なzの で あ る.こ
れ は,σp(T)は
有 界 で あ る か ら,こ
れ が 無 限 集 合 の 場 合 は,集
行 え
致 の 定 理 に よ り,
対 し て,zTΨ=Ψ
0で な い 解 を もつ こ と に な る.し べ て のa∈Cに
どち ら
成 り立 っ た と す れ ば,a
含 ま れ る.し
な る.以
え に,す
正
離 散 的 な 集 合 で あ る か,Zr(a)=Ur(a)の
るaに
とは異 な る 点bをUr(a)の
Zr(b)=Ur(b)と
た が っ て,d(z)もUr(a)で
が
れ は不 可 能 で あ た が っ て,Zr(a)
積 点 はUr(a)の
中 にはな
致 の 定 理 に よ り,Zr(a)=Ur(a)と
つ い て も成 り立 つ か ら,zTΨ=Ψ
集 合 は 離 散 的 で あ り,そ 離 散 的 で あ り,そ
が0で
の 可 能 な 集 積 点 は∞
の 可 能 な 集 積 点 は0だ
のみ
けであ るこ
と を 意 味 す る. 次 に わ ち,1/z∈
ρ(T)を
示 そ う.今
に 対 し て,w1,…,wm∈Cに
G(z)Φ=Φ
あ る.上
も つ.そ
が 成 り立 つ.し と す れ ば,上
な ら な い.し
全 単 射 で あ る こ と,す た が っ て,任
こ で
の 議 論 に よ り,d(z)≠0の
よ り,1-zTも
に 関 す る 結 果 を あ わ せ れ ば,任
と お け ば,
た が っ て,1-G(z)は
た が っ て,1-G(z)は
記(ⅰ)に
な
意 の Ψ ∈H
関す る連 立 方程 式
は 解{βn}Nn=1(wn=βn)を (1-G(z))Φ=Ψ
,に 対 し て,1-zTは の 場 合,d(z)≠0.し
単 射 で あ る.ゆ 全 単 射 で あ る.こ
全 射 で あ る.ま
た,
場 合 は,Φ=0で
なければ
え に1-G(z)は
全単射で
れ と す で に 証 明 し た σp(T)
意 の λ ∈C\(σp(T)U{0})は
ρ(T)に
属す る
こ とが わ か る.
以 上 か ら,σ(T)は は0だ
離 散 的 な集 合 で σ(T)=σp(T)で
けで あ る こ とが 結 論 され る.
あ り,そ の可 能 な集 積 点
最 後 に,固
有 値 λ ∈ σ(T)\{0}の
多 重 度 は 有 限 で あ る こ と を 示 そ う.仮
,を 満 た す Ψnが
無 限 個 あ っ た と し よ う.{Ψn}∞
に
n=1は
(必 要 な ら ば グ ラ ム-シ ュ ミ ッ トの 直 交 化 を 行 う こ と に よ り)正 規 直 交 系 で あ る と し て 一 般 性 を 失 わ な い.Tの
コ ン パ ク ト性 に よ り,あ る 部 分 列{Ψnk}kと
が 存 在 し て,TΨnk→
Φ(k→∞).し
意 の 正 規 直 交 系 は0に
弱 収 束 す る か ら,Φ=0で
て,
.一
た が っ て,Ψnk→
Φ ∈H
λ-1Φ(k→∞).任
な け れ ば な ら な い.し
たが っ
で あ る か ら,矛
盾が生
方,
じ る.
■
自 己 共 役 な コ ンパ ク ト作 用 素 の ス ペ ク トル に 関 し て は も っ と 詳 し い こ と が い え る.ま
ず,準
補 題6.28
備 と し て 次 の 補 題 を 証 明 す る.
T∈B(H)を
く と も一 つ は σ(T)に
証 明 仮 に,±‖T‖〓
自 己 共 役 作 用 素 とす る.こ
σ(T)と
し よ う.こ
か し,σ(T)=supp
ら,任 意 の Ψ ∈Hに
の と き,σ(T)⊂[-‖T‖,‖T‖]とTの
ET(ETはTの
ス ペ ク トル 測 度)で
.
こ の 補 題 と定 理6.27を
あ わ せ れ ば 次 の 補 題 を 得 る:
コ ンパ ク ト作 用 素T∈C(H)が
の 少 な く と も 一 方 はTの
ら,も
Tが
定 理6.30
■
自 己 共 役 な ら ば,‖T‖
ま た は-‖T‖
離 散 的 固 有 値 で あ る.
有 界 な 自 己 共 役 作 用 素 の と き,σ(T)⊂[-‖T‖,‖T‖]で
し,‖T‖(-‖T‖)がTの
(最 小)の
あるか
対 し て, を 意 味 す る か ら矛 盾 で あ る.
注 意6.5
閉
存 在 して,
こ れ は,‖T‖〓‖T‖-δ
補 題6.29
の う ち少 な
属 す る.
性 に よ り,あ る 定 数 δ ∈(0,‖T‖)が が 成 り立 つ.し
の と き,±‖T‖
固 有 値 な ら ば,そ
れ は,Tの
あ るか
固 有 値 の う ち最 大
も の で あ る*9. Hを
可 分 な無 限 次 元 ヒ ル ベ ル ト空 間 と し,TをH上
ン パ ク ト作 用 素 と す る.こ
の と き,λn→0(n→∞),TΨn=λnΨn(n∈IN)
*9 括 弧 に は括弧 を対 応 させ て読 む .
の 自己共 役 な コ
を 満 た す 実 数 列{λn}∝n=1とHの で も λn≠ λmと 合 は σp(T)に
完 全 正 規 直 交 系{Ψn}∝n=1が
は 限 ら な い).λ1,λ2,…,の
存 在 す る(n≠m
うち 互 い に異 な る もの を集 め た集
等 しい.
証 明 Tが0の
場 合 は 自 明 で あ る か ら,T≠0と
と定 理6.27に
よ っ て,Tの0で
有 空 間 をMnと
限 ま た は 可 算 無 限)(m≠nな …
と し て 一 般 性 を 失 わ な い.固
す れ ば,Tの
は 直 交 し て い る.定
の と き,補
な い 固 有 値 の 集 合 σ(T)\{0}は
こ の 集 合 の 点 をE1,E2,…(有 とす る.│E1│〓│E2│〓
す る.こ
空 で は な い. ら ばEm≠En)
有 値Enに
自 己 共 役 性 に よ り,m≠nな
理6.27に
題6.29
属 す る固
ら ばMmとMn
よ っ て,dn:=dimMn<∞.Mnの
正規直
交 基 底 を{Ψn, k}dnk=1と す れ ば, .各nと k=dn-1+1,…,dn-1+dn(d0=0と とお く.し
お く)に 対 し て,νk=En,Φk:=Ψn
た が っ て, .M1, M2,…,の
か ら張 ら れ る 部 分 空 間 の 閉 包 をMと
し よ う.し
ま ず,M⊥={0}の
場 合 を 考 察 す る.こ
し た が っ て,{Ψk}kは
完 全 で あ る.dim
無 限 集 合 で あ る.ゆ
え に,定
λn=νn,Ψn=Φnと 次 にM⊥
理6.27に
す れ ば,こ
≠{0}の
場 合 を 考 え る.こ
な ら ばTΨ
∈M⊥
に 制 限 した も の をT0と も しT0が0で Eと
て,あ
の と き は,MはHで H=∞
よ っ て,νk→0(k→
の と き,M⊥
ず,TがM⊥
す れ ば,T0は
に な る が,MnとM⊥
は 固 有 値0に
こ で,
よ り,T0は0で
こ で,TをM⊥
が っ て,T0=0で
あ る.こ
がTの
と を 意 味 す る.こ
の 空 間 の 正 規 直 交 基 底 を
た が っ て,
とす れ ば,T0Ψ0=EΨ0で
固 有 値0に
はHの
る と Ψ0∈Mnと
れ を
あ る が,
な い 固 有 値 で あ る.し
は 直 交 し て い る か ら,Ψ0=0.こ
固
な わ ち,
な い 固 有 値 を もつ.こ
な け れ ば な ら な い.す
れ は,M⊥
属 す る,Tの
を 不 変 に す る こ と,す
書 け る の で,EはTの0で
対 してE=λnで
可算
∞).そ
自 己 共 役 で コ ンパ ク トで あ る.し
し,そ の 固 有 ベ ク トル の 一 つ を Ψ0∈M⊥
るnに
稠 密 で あ る.
で あ る か ら,{En}nは
で あ る こ と は 容 易 に 確 か め ら れ る.そ
な け れ ば,補 題6.29に
こ れ はTΨ0=EΨ0と
た が っ て,M=L({Φk}k).
れ が 求 め る も の で あ る.
有 空 間 で あ る こ と を証 明 し よ う.ま Ψ ∈M⊥
,k
す べ て の ベ ク トル
たがっ い うこと
れ は 矛 盾 で あ る.し
た
属す る固有 空 間 で あ る こ と す れ ば,
完 全 正 規 直 交 系 を な す.こ
の
場 合,#{En}nが
有 限 な ら ば,N=∞
定 義 に お い て,あ
るnか
で な け れ ば な ら な い が,こ
ら 先 は0と
立 す る.#{En}n=∞,N<∞ と す れ ば よ い.最
お け ば よ い.ゆ の と き は,λj:=0,
後 に#{En}n=∞, N=∞
え に,こ
の と き は,λnの
の場 合 に も主 張 が 成
j=1,…,N,
λN+n:=νn
の と き は,λ2n=0,λ2n-1=νn
と す れ ば よ い.
定 理6.30は
■
次 の こ と を 語 る:可
分 な 無 限 次 元 ヒ ル ベ ル ト空 間 上 の 自 己 共 役 な
コ ン パ ク ト作 用 素 は 自 ら の 固 有 ベ ク トル の 完 全 系 を も ち,0∈IRは
そ の真 性 ス
ペ ク トル に 属 す る.
6.5
定 義6.31 よ う.Bが
Aを
真 性 ス ペ ク トル の 安 定 性
ヒ ル ベ ル ト空 間H上
の 閉 作 用 素,BをH上
の線 形作 用 素 と し
二つの条件
(ⅰ) D(A)⊂D(B); (ⅱ) あ るz∈
ρ(A)に
対 し て,B(A-z)-1は
を 満 た す と き,BはAに
コ ンパ ク ト
関 し て 相 対 コ ン パ ク トあ る い は 単 にA-コ
ン パ ク トで
あ る と い う. 定 理6.32
Aを
ヒ ル ベ ル ト空 間H上
の 閉 作 用 素,BをH上
な 作 用 素 と す る.こ
の と き,次
の(ⅰ)∼(ⅲ)が
(ⅰ) す べ て のz∈
ρ(A)に
対 し て,B(A-z)-1は
(ⅱ) Aが
自 己 共 役 な ら ば,BはA-有
(ⅲ) Aが
自 己 共 役 でBが
有 界 な ら ば,A+Bも
ンパ ク ト
成 り立 つ: コ ン パ ク ト.
界 で あ り,そ
対 称 な ら ば,A+Bは
の 相 対 限 界 は0で
自 己 共 役 で あ る.Aが
あ る. 下 に
そ う で あ る.
証 明 (ⅰ)仮 定 に よ り,あ Aの
のA-コ
るz0∈
ρ(A)に
対 し てB(A-z0)-1は
コ ン パ ク ト.
レ ゾ ル ベ ン ト方 程 式 を使 う こ と に よ り
B(A-z)-1=B(A-z0)-1+(z-z0)B(A-z0)-1(A-z)-1,
定 理6.22-(ⅱ)に
よ り,右
z∈
辺 の 第 二 項 も コ ン パ ク ト で あ る.コ
和 は コ ン パ ク ト で あ る か ら,B(A-z)-1は
ρ(A).
ン パ ク ト作 用 素 の
コ ン パ ク ト で あ る.
(ⅱ)nを
自然 数 と す れ ば,in∈
(A-i)(A-in)-1と
な 作 用 素 で あ る.さ
書 け る.関
数f(x)=
有 界 連 続 で あ る か ら,作 用 素 解 析 に よ り,Snは
を 得 る.し が 存 在 し て,n〓n0な
た が っ て,任
有界
∞Sn=
示 す こ と が で き る(S*n=(A+i)(A+in)-1で
コ ンパ ク トで あ る か ら,定 理6.26を
Ψ ∈D(A)に
Sn:=
ら に ス ペ ク トル 表 示 を用 い る こ と に よ り,s-limn→
∞S*n=0を
に 注 意).Tは
あ る.T:=B(A-i)-1,
お け ば,B(A-in)-1=TSnと
(x-i)(x-in)-1(x∈IR)は
0, s-limn→
ρ(A)で
ある こと
応 用 す れ ば,
意 の ε>0に
ら ば ‖B(A-in)-1‖<ε.こ
対 し て,番
号n0=n0(ε)
れ を 用 い る と,任
意 の
対 して
を 得 る.ε>0は
任 意 で あ っ た か ら,こ
れ はBのA-限
界 が0で
あ る こ とを意 味
す る. (ⅲ)(ⅱ)と
加 藤-レ
リ ッ ヒの 定 理 に よ る.
■
次 の定 理 は,摂 動 の も とで の 真 性 ス ペ ク トル の 不 変 性 に 関 す る もの で あ る. 定 理6.33
Aを
ヒ ル ベ ル ト空 間H上
パ ク トな 対 称 作 用 素 と す る.こ
の 自 己 共 役 作 用 素,BをH上
のA-コ
ン
の とき
(6.24) 証 明 λ ∈ σess(A)と で(6.2),
と 書 け る.こ (λ-z)Ψnで
し よ う.こ
(6.3)を
あ る か ら,w-limn→
σess(A+B).
よ っ て,点 意 のz∈
列
ρ(A)に
対 して
強 収 束 す る.(A-z)Ψn=(A-λ)Ψn+ ∞(A-z)Ψn=0.定
コ ン パ ク ト で あ る か ら,上
し た が っ て,‖(A+B-λ)Ψn‖ σess(A)⊂
理6.6に
満 た す も の が 存 在 す る.任
の 右 辺 の 第 一 項 は0に
B(A-z)-1は
よ って
の と き,定
→0(n→
理6.32-(ⅰ)に
式 の 右 辺 の 第 二 項 も0に ∞).ゆ
え に,λ
よ り,
強 収 束 す る.
∈ σess(A+B).
定 理6.32-(ⅱ)の た が っ て,そ
証 明 よ り,nを
の よ う なnに
が 成 り 立 つ.こ
れ は,±B(A+B-in)-1の
ち,±BはA+B-コ Bを-Bと
十 分 大 き く と れ ば,‖B(A-in)-1‖<1.し
対 し て,1+B(A-in)-1は
コ ン パ ク ト性 を 意 味 す る.す
ンパ ク トで あ る.そ す れ ば,σess(A+B)⊂
6.6
6.6.1
基
本
こ で 前 段 の 議 論 で,AをA+Bと
なわ し,
σess(A+B-B)=σess(A).
■
シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 型 作 用 素 の 真 性 ス ペ ク トル
定
前 節 の 結 果 を(6.4)に
作 用 素HVに
全 単射 で あ り
理 よ っ て 定 義 さ れ る,L2(IRd)上
の シ ュ レー デ ィ ン ガー 型
応 用 し よ う.こ の 節 を通 して
(6.25) と お く.σess(-Δ)=[0,∞)(例6.1)と
定 理6.33に
よ っ て,次
の事 実 が た だ ち
に 導 か れ る:
定 理6.34
VがH0-コ
ン パ ク トな ら ば,HVは
下 に有 界 な 自己 共 役 作 用 素 で
あ り
(6.26) こ の 定 理 の 観 点 か ら は,ど
の よ う な ポ テ ン シ ャ ルVがH0-コ
か を 調 べ る こ と が 重 要 で あ る.以
6.6.2
下は こ の 問 題 の 考 察 に あ て ら れ る.
レ ゾ ル ヴ ェ ン トの 積 分 核 表 示
ポ テ ン シ ャ ルVがH0-コ C\[0,∞)に こ で,特
ン パ ク トに な る
ンパ ク トで あ る こ と を 示 す に は,適 当 なz∈
対 して,V(H0-z)-1が
にz=-1の
場 合 を 考 え,作
ρ(H0)=
コ ン パ ク トで あ る こ と を 示 せ ば よ い.そ 用 素V(H0+1)-1に
つ い て 考 察 す る.
フ ー リエ 変換 に よ り
こ こ で,l. i.m.は す れ ば,右
平 均2乗
辺 は,ψ
収 束(L2(IR2)で
∈S(IRd)と
換 と み る こ と が で き る.し
(FはIRd上
の 収 束)を
緩 増 加 超 関 数1/(k2+1)の
こ で,*は
∈S(IRd)と
積 の 逆 フ ー リエ 変
た が っ て,
の 緩 増 加 超 関 数 の フ ー リ エ 変 換)と
と 表 さ れ る.こ
表 す*10.ψ
す れ ば,
超 関 数 の 意 味 で の 合 成 積 で あ る*11.緩
増 加 超 関 数G
は関数
(6.27) と 同 一 視 さ れ る こ と が 証 明 さ れ る*12.ゆ
えに
(6.28) (6.28)に
は,あ
る 一般
(M2,μ2)を
測 度 空 間 と す る と き,(M2,μ2)上
上 の あ る 関 数 空 間D1へ 上 の 関 数K(x,
y)を
的 な 作 用 素 の 形 が 具 現 化 し て い る.一 般 に(M1,μ1),
の 線 形 作 用 素Tが
の 一 つ の 関 数 空 間D2か
ら(M1,μ1)
直 積 測 度 空 間(M1×M2,μ1
μ2)
用 いて
(6.29) と 表 さ れ る と き,Tを 積 分 核(integral *10 [4]ま
た は[5]の
*11 [4]ま
た は[5]の
*12 [4]ま
た は[5]の
積 分 作 用 素(integral
kernel)と 付 録A
い う.
, A.7節 を 参 照. 付 録C.7を 参照 . 付 録Cの 定 理C.13 .
operator)と
呼 び,K(x,
y)を
そ の
こ の 概 念 を 用 い る と,上
に 得 た 結 果(6.28)は,(H0+1)-1のS(IRd)へ
制 限 は,積
d)の 積 分 作 用 素 で 与 え ら れ る,と
分 核 がG(x-y;
し た が っ て,V(H0+1)-1は V(x)G(x-y; d)で
の 言 い 換 え ら れ る.
定 義 域 を 適 当 に 制 限 す る こ と に よ り,積
与 え ら れ る 積 分 作 用 素 に な る.そ
こ で,こ
分 核が
の種 の積分作用
素 が コ ン パ ク ト に な る 条 件 を考 察 す る 必 要 が あ る.
6.6.3
ヒ ル ベ ル ト-シ ュ ミ ッ ト型 積 分 作 用 素
こ こ で ひ と ま ず,上 記 の 問 題 を 離 れ て,あ る 種 の 積 分 作 用 素 に 関 す る一 般 論 を展 開 し て お く.(M1,μ1),(M2,μ2)を
測 度 空 間 と し,K∈L2(M1×M2,
し よ う: .こ
dμ1 dμ2)と
の と き,任 意 のf∈L2(M2,
に 対 して,シ
dμ2)
ュ ヴ ァ ル ツ の不 等 式 に よ って
であるか ら
した が っ て
(6.30) に よ っ て 線 形 作 用 素K:L2(M2, こ れ は 有 界 で あ る.し
か も,そ
dμ2)→L2(M1,
dμ1)を
定 義 す る こ と が で き,
の 作 用 素 ノル ム につ い て
(6.31) が 成 り立 つ.作 い う.こ
定 理6.35 Kは
用 素KをKに
れ に 対 し,次
L2(M1,
同 伴 す る ヒ ル ベ ル ト-シ ュ ミ ッ ト型 積 分 作 用 素 と
の 定 理 が 成 り立 つ.
dμ1),L2(M2,
コ ン パ ク トで あ る.
dμ2)は
と も に 可 分 で あ る と す る.こ
の と き,
証 明
を そ れ ぞ れ,L2(M1,
交 系(CONS)と
し,ψm,n(x,
こ の と き,{ψm
y):=em(x)fn(y)*と
,n}m,nはL2(M1×M2,
が っ て,L2(M1×M2, だ し,αmn:=〈
dμ2)の
K〉
で あ り,
し て,
dμ2)の
完 全 正 規直
,n=em×f*n).
dμ2)のCONSに
な る*13.し
た
強 収 束 の 意 味 で .た で あ る.各
と す る.明
dμ2).KNを
L2(M2,
お く(i. e.,ψm
dμ1
dμ1 ψm,n,
dμ1),
積 分 核 と す る 作 用 素 をKNと
こ れ は 有 限 階 の 作 用 素 で あ る か ら,コ
番 号Nに
ら か に,KN∈L2(M1×M2,
対 dμ1
す れ ば
.
ン パ ク ト で あ る .(6.31)に
よ っ て
.一 方
し た が っ て, .ゆ
え に,定
理6.22-(ⅰ)に
よ り,K
は コ ン パ ク ト で あ る.
■
自己 共役 な ヒル ベ ル ト-シュ ミッ ト型 積 分作 用 素 の積 分 核 と固 有 値 の 間 に は あ る 関係 が あ る: 定 理6.36
(M,μ)を
M, dμ
dμ)と
す る.こ
の と き,次
(ⅰ) Kが
測 度 空 間 でL2(M,
し,KをKに
dμ)は 可 分 で あ る とす る.K∈L2(M×
同 伴 す る ヒ ル ベ ル ト-シ ュ ミ ッ ト型 積 分 作 用 素 と
の(ⅰ),(ⅱ)が 成 り立 つ:
自己 共 役 で あ る た め の 必 要 十 分 条 件 は
(6.32) が 成 り立 つ こ と で あ る. (ⅱ) Kは(6.32)を
満 た す と し よ う(し
異 な る 固 有 値 の 全 体 を よ う.こ
た が っ て,Kは と し,Enの
自 己 共 役).Kの
相
多 重 度 をm(En)の
と し
の とき
(6.33) *13 [5]の 定 理4
.2を
参 照.{f*n}nもL2(M2,
dμ2)のCONSで
あ る こ と に 注 意.
証 明 (ⅰ)(必要 性)Kは
自 己 共 役 で あ る とす る.こ の と き,任 意 のf,g∈L2(M,
に 対 し
.今, と お け ば,ηj∈L2(M,
定 理 に よ り,(*)は〈f,η1〉=〈f,η2〉 あ っ た か ら,η1=η2.こ (6.32)が
dμ)
dμ)で あ り,フ
と 書 き直 せ る.f∈L2(M,
れ が す べ て のg∈L2(M,
ビニ の
dμ)は 任 意 で
dμ)に 対 し て 成 り立 つ か ら
得 ら れ る.
(十 分 性)(6.32)が
成 り立 つ な ら ば,Kが
自 己 共 役 で あ る こ と は,フ
ビニ の 定
理 を 応 用 す れ ば 容 易 に わ か る. (ⅱ)(ⅰ),定 理6.35と
定 理6.30に
よ っ て,Kfn=λnfnを
と 実 数 列{λn}nで 在 す る.{fm×f*n}m,nはL2(M×M,
λn→0(n→
満 た す, ∞)を
dμ dμ)のCONSで とL2(M×M,
い て 展 開 さ れ る.こ
の と き,パ
dμ dμ)に
よ り
た が っ て,bmn=0, . ま た,λn=〈fn,
あ る か ら,
m≠n.ゆ Kfn〉=bnn.し
.右 辺 に お い て は,λn=0の
が
え に, た が っ て,
部 分 は 寄 与 し な い か ら,右
辺 は,(6.33)
の 左 辺 に 等 し い こ と が わ か る.
6.6.4
■
ポ テ ン シ ャ ル のH0-コ
さ て,初
め の 問 題 に 戻 ろ う.
補 題6.37
作 用 素V(H0+1)-1が
た め の 必 要 十 分 条 件 はd〓3か
お
ー セ ヴ ァ ル の 等 式 に よ り
が 成 り立 つ. 成 り立 つ.し
満 た す もの が 存
ン パ ク ト性
ヒ ル ベ ル ト-シ ュ ミ ッ ト型 積 分 作 用 素 で あ る つV∈L2(IRd)で
あ る.こ
の 条 件 が 成 り立 つ と
き,VはH0-コ
ン パ ク トで あ る.
証 明 V≠0の
場 合 だ け を考 え れ ば 十 分 で あ る.積 分 作 用 素V(H0+1)-1が
ヒ ル ベ ル ト-シ ュ ミ ッ ト型 で あ る こ と と 条 件
(6.34)
は 同 値 で あ る.フ ビニ の 定 理 に よ っ て,(6.34)は の 有 限 性 と 同 値 で あ る.こ
に 等 しい.こ
順 序 積 分
の 積 分 は 発 散 す る 場 合 も含 め て
れ が 有 限 で あ る た め に は,V∈L2(IRd)か
あ る こ とが 必 要 十 分 で あ る.後
つG(・;d)∈L2(IRd)で
者 の 条 件 はd〓3と
同 値 で あ る*14.よ
っ て,題
意 が し た が う.
補 題6.37と 定 理6.38
■
定 理6.34に d〓3,
よ っ て 次 の 事 実 に 導 か れ る:
V∈L2(IRd)な
ら ば,HVは
下 に有 界 な 自己 共 役 作 用 素 で
あ り
(6.35) が 成 り立 つ. 例6.4
湯 川 型 ポ テ ン シ ャ ル.d〓3,α
と す れ ば,V∈L2(IRd)で
あ る.し
あ り,σess(HVm)=[0,∞)が
補 題6.37を
∈IR,0<β
た が っ て,HV
m>0を
mは
定 数 と し
下 に有界 な 自己 共役作 用 素 で
成 り 立 つ.
基 礎 と し て,H0-コ
ン パ ク トに な るVの
も っ と広 い ク ラ ス を み つ
け る こ と が で き る.
定 義6.39
1〓p<∞
L∞(IRd)(1〓p<∞)が
と し よ う.任
意 の〓>0に
対 して,V1 ,〓∈Lp(IRd),V2,〓
存 在 して
が 成 り 立 つ な ら ば,Vは(Lp+L∞〓)(IRd)に
属 す る と い い,V∈(LP+L∞〓)(IRd)
と 記 す. *14 [4]ま た は[5]の
付 録Cの
定 理C
.13の(ⅱ),(ⅲ)を
用 い よ.
∈
注 意6.6
V∈Lp(IRd)な
ら ば,V1,〓=V,
V2,〓=0と
(Lp+L∞〓)(IRd).し
た が っ て,Lp(IRd)⊂(Lp+L∞〓)(IRd).
補 題6.40
す る.V∈(L2+L∞〓)(IRd)な
d〓3と
と れ る か ら,V∈
ら ば,VはH0-コ
ンパ ク ト
で あ る.
証 明 {〓n}∞n=1を〓n→0(n→
と な る 関 数Vn(j)(j=1,
補 題6.37よ
∞)と
な る 正 数 列 と し よ う.仮
2)が 存 在 す る.し
り,Vn(1)(H0+1)-1は
補 題6.40と
定 理6.34か
た が っ て,
コ ン パ ク トで あ る.し
素 ノ ル ム で の 極 限 で あ るV(H0+1)-1も
ら,H0に
定 に よ り,
た が っ て,そ
コ ン パ ク トで あ る.
対 す る 摂 動Vの
の 不 変 性(安
定 性)に
関 す る 次 の 定 理 が 得 ら れ る.
定 理6.41
d〓3と
し,V∈(L2+L∞〓)(IRd)と
の作用 ■
も と で の 真 性 ス ペ ク トル
す る.こ
の と き,HVは
下 に
有 界 な 自己 共 役 作 用 素 で あ り
(6.36) が 成 り立 つ. 例6.5
原 点 に 特 異 性 を もつ ポ テ ン シ ャル.d〓3と
と い う 場 合 を 考 え よ う.こ 満 た す と す る.r>0を V1=xrV;
V2=(1-xr)Vと
こ で,α
∈IR,β>0は
任 意 に 固 定 し,xrを お け ば,V=V1+V2と
し
定 数 で あ り,β
は0<β
書 く こ と が で き る.し
か も,
V1∈L2(IRd),
V2∈L∞(IRd)で
V2∈(L2+L∞∈)(IRd)が し て,(6.36)が
成 り立 つ.d=3,
定 理6.41のd〓4の 定 理6.42 はH0-コ
あ り,V2(x)→0(│x│→∞)を
わ か る.ゆ
β=1の
っ て,こ
れ か ら, のVに
対
場 合 が ク ー ロ ン 型 ポ テ ン シ ャル で あ る.
場 合 へ の 拡 張 つ い て は 次 の 結 果 が 知 ら れ て い る.
d〓4,
p>d/2と
し,V∈(Lp+L∞∈)(IRd)と
ン パ ク トで あ る.し
り,σess(HV)=[0,∞)が
た が っ て,HVは
す る.こ
の と き,V
下 に有 界 な 自己 共 役 作 用 素 で あ
成 り立 つ.
こ の 定 理 の 証 明 に つ い て は,た
6.7
満 た す.こ
え にV∈(L2+L∞∈)(IRd).よ
と え ば,[10]の
§3.3, c), d)を
参 照 さ れ た い.
シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 型 ハ ミ ル トニ ア ン の 離 散 ス ペ ク トル
こ の 節 で は,シ
ュ レ ー デ ィ ン ガ ー ハ ミ ル トニ ア ンHVの
離 散 スペ ク トル が 存
在 す る た め の 十 分 条 件 と 離 散 的 固 有 値 の 個 数 に つ い て 調 べ る.
6.7.1
σd(HV)が
定 理6.43 [0,∞)が
無 限 集 合 と な るVの
V∈L2loc(IRd)か
つHVは
満 た さ れ る と仮 定 す る.さ
クラ ス
自 己 共 役 で 下 に 有 界 で あ り,σess(HV)⊂ ら に,定
数a>0,
ε>0,
r0が
存 在 して
(6.37) が 成 り立 つ と す る.こ
の と き,σd(HV)∩(-∞,0)は
無 限 集 合 で あ る.
証 明 真 性 ス ペ ク トル の 仮 定 と最 小-最 大 原 理 に よ っ て,す 1に 対 し て,μN(HV)<0を │x│<2},
‖ψ ‖=1を
ψR(x)=R-d/2ψ(R-1x)と {x∈IRd│R<│x│<2R}.し て,R>r0な
満 た す ψ ∈C∞0(IRd)を
な わ ち,あ
べ て の 自然 数N〓 ⊂{x∈IRd│1<
一 つ と ろ う.R>0に
お け ば,ψR∈C∞0(IRd), ‖
あ る か ら,右 る 定 数c>r0が
〓R-2〈 辺 は,十
対 して,
ψR‖=1, suppψR⊂
た が っ て,ψR∈D(Δ)∩D(V).
ら ば,〈 ψR,HVψR〉
が わ か る.ε>0で な る.す
示 せ ば 十 分 で あ る.suppψ
ψ,-Δ ψ〉-aR-2+ε〈 分 大 き な す べ て のRに
存 在 し て,〈 ψR,HVψR〉<0,
(6.37)に
よっ
ψ,│x│-2+ε ψ〉 対 し て,負 R〓c.
に
さ て,ψn=ψ2nc(n=1,2,…)(R=2ncの suppψn∩suppψm=0で 〈ψn,HVψm〉=0,
場 合)と
あ る か ら,{ψn}nは n≠mも
L({ψ1,…,ψN})と
成 り立 つ.し
し,PNをMNへ
ッ ツ の 原 理(定
方,前
理6 .14)に
正 規 直 交 系 で あ る.同
た が っ て,任 意 のNに
与 え ら れ る.し
前 節 の 結 果(定
じ理 由 か ら,
対 し て,MN:=
た が っ て,レ
よ り,μN(HV)〓max1〓n〓N〈
段 の 結 果 に よ り〈ψn,HVψn〉<0(n〓1).し
定 理6.43を
らば
の 正 射 影 作 用 素 とす れ ば,PNHVPN│MN
の 固 有 値 は〈ψn,HVψn〉(n=1,…,N)で -リ
す れ ば,n≠mな
理6.41,定
イ リー
ψn,HVψn〉.他
た が っ て μN(HV)<0.
理6.42)と
を あ わ せ れ ば,次
■
の結 果 を
得 る.
定 理6.44
d〓3な
ら ば,V∈(L2+L∞ε)(IRd)と
が あ っ て,V∈(Lp+L∞ε)(IRd)で が 存 在 して(6.37)が σd(HV)は 例6.6
し,d〓4な
あ る と す る.さ
成 り立 つ とす る.こ
ら に,定
ら ば あ るp>d/2 数a>0,
ε>0, r0
の と き,σd(HV)⊂(-∞,0)で
あ り,
無 限 集 合 で あ る. U:IR3→IRはL∞(IR3)に
を 満 た す とす る.α
属 し,あ るR0>0が
∈(0,3/2)を
定 数 と して,IR3に
と い う型 の ポ テ ン シ ャ ル を考 え る.こ た す こ とは 容 易 に確 か め ら れ る.ゆ
あ っ て,inf│x│〓R0U(x)>0 おい て
のVが(L2+L∞∈)(IR3)に
え に,こ のVに
属 し,(6.37)を
対 し て,定 理6.44の
満
結論 が成 り
立 つ. α=1,
U(x)=Ze2の
6.7.2
場 合 のHVは
水 素 様 原 子 の ハ ミル トニ ア ンで あ る.
ビ ル マ ン-シ ュ ウ ィ ン ガ ー の 方 法
こ の 項 で は,HVの 察 す る.そ
離 散 ス ペ ク トル σd(HV)が
の た め に,任
意 のE<0に
対 して,Eよ
有 限 集 合 に な る 十 分 条 件 を考 り も 小 さ い,HVの
固有 値
の 個 数 を 評 価 す る. 一 般 に,線
形 作 用 素Aの
σd(HV)={λn}Nn=1(N〓∞)と の と き,固
固 有 値 λ の 多 重 度 をmA(λ)で し よ う(n≠m⇒
有 値 の 多 重 度 も含 め て 数 え た,HVの
表 す. λn≠
λmと
す る).こ
離 散 ス ペ ク トル の 点 の 個 数 を
N(V)と
す れ ば,こ
れは
(6.38) に よ っ て 与 え ら れ る.σd(HV)=0の
と き は,N(V)=0と
す る.目
標 は次の
定 理 を 証 明 す る こ と で あ る:
定 理6.45
(ビ ル マ ン(Birman)-シ
ン シ ャ ルV:IR3→IRはV∈(L2+L∞ε)(IR3)
ュ ウ ィ ン ガ ー(Schwinger)の , V〓0お
定 理)ポ
テ
よび
(6.39) を 満 た す と す る.こ
の とき
(6.40) こ の 定 理 を証 明 す る た め に 補 題 を 二 つ 用 意 す る. V:IR3→IRは
ボ レ ル 可 測 で あ る と し,各E<0に
対 し て,作
用素
(6.41) を 導 入 す る(E∈
補 題6.46
ρ(H0)に
VはIR3上
の と き,KEは
注 意).
の 実 数 値 ボ レ ル 可 測 関 数 で(6.39)を
満 た す と す る.こ
自己 共 役 な ヒ ルベ ル ト-シ ュ ミ ッ ト型 積 分 作 用 素 で あ り,そ の 積
分核 は
(6.42) で 与 え ら れ る.
証 明 d=3の 録Cの
場 合,(6.28)と [[4]ま
式(C.53)]に
よ り,(H0-E)-1は
た は[5]の 積 分 作 用 素 で あ り,そ
付
の積分核 は
(6.43)
で 与 え ら れ る*15.し 条 件(6.39)に
た が っ て,KEは
意 が 成 立 す る.
■
(ビ ル マ ン-シ ュ ウ ィ ン ガ ー 原 理)HVはD(H0)∩D(V)で
自己 共 役
で あ る と し,V〓0,
あ る か ら,題
V≠0, λ>0,
有 値 な ら ば λ-1はKEの
E<0と
固 有 値 で あ る.さ
す る.こ
ψ ≠0,と
す れ ば,直
か る.│V│1/2ψ
定 理6.45の はH0に る.し
固
HλVψ=Eψ,
ψ ∈D(H0)∩
接 計 算 に よ り,KE(│V│1/2ψ)=λ-1│V│1/2ψ
∈L2(IR3), │V│1/2ψ
り,│V│1/2ψ
の と き,EがHλVの
ら に,mKE(λ-1)〓mHλV(E).
証 明 仮 定 に よ り,D(HV)⊂D(V)⊂D(│V│1/2). D(V),
積 分 作 用 素 に な る.
よって
し た が っ て,kE∈L2(IR6)で
補 題6.47
積 分 核 がkE(x,y)の
≠0,で
あ る か ら,λ-1はKEの
が わ 固有 値 で あ
は そ の 固 有 ベ ク トル で あ る. 証 明 Vに
■
対 す る 仮 定 と 定 理6.41に
関 して 無 限 小 で あ る か ら,VはH0に た が っ て,定 理6.19-(ⅰ)に
よ り,ΣHV=0.今
の 場 合,V
関 して形 式 の意 味 で も無 限小 で あ
よ り,対 応:[0,∞)∋λ〓μn(λ):=μn(HλV)
は 連 続 な 単 調 減 少 関 数 で あ る. さ て,E<0と
して,NE(V)をHVのEよ
重 度 も含 め て 数 え る).最 成 り立 つ(#Sは
集 合Sの
σess(H0)=[0,∞)と
小-最 大 原 理 に よ り,NE(V)=#{n│μn(1)<E}が 濃 度 を 表 す).μn(0)=0で
最 小-最 大 原 理),μn(1)<Eな
存 在 し て,μn(λn)=Eが
成 り立 つ.こ
の 十 分 小 さ な 近 傍 で 負 で あ る か ら,定 *15
とお け ば
換 に よっ て
と な る こ と に 注 意.
り小 さ い 固 有 値 の 数 とす る(多
の 場 合,μnの 理6.19-(ⅱ)に
,(H0-E)-1=a-2(a-2H0+1)-1で
あ る か ら(∵ ら ば,あ
σ(H0)=
る λn∈(0,1)が
連 続 性 に よ り,μnは よ り,そ
の よ う な λnは あ る の で,ス
λn た
ケ ー ル変
だ 一 つ で あ る.λ
∈(0,1)な
ら ばλ-2>1に
NE(V)=#{n│あ
と評 価 で き る.補
る λn∈(0,1)に
題6.47に
で あ り,そ の 多 重 度 はEの
そ れ 以 上 で あ る.し 理6.36-(ⅱ)に
以 上 の 事 実 を あ わ せ れ ば,NE(V)〓
ら ば,λ-1nはKEの た が っ て,Σ
λn; μn(λn)=Eλ-2n〓
よって
‖V‖2R/(4π)2を 得 る.そ
こ でE↑0と
す ■
と な る ポ テ ン シ ャ ル は ロ ル ニ ッ ク(Rollnik)ポ
れ,‖V‖R(〓0)を
ロ ル ニ ッ ク ノ ル ム と い う.ロ
テ ン シ ャル と呼 ば
ル ニ ッ クポ テ ンシ ャル の 全 体
表 す.
次 の 系 は,結
合 定 数 λ>0が
十 分 小 さ い 場 合 に,HλVが い"ク
系6.48 V≠0は
仮 定 を 満 た す と す る.こ
4π/‖V‖Rを
定 理6.45の
対 し て,定
理6.45に
し た が っ て,λ2‖V‖2R/(4π)2<1な
応 用 の 一 つ と し て,次 ポ テ ン シ ャ ルV:IR3→IRは
よ り,N(λV)〓
ら ば,N(λV)=0で
非 負 整 数 で あ る こ と に 注 意).ゆ
定 理6.45の 定 理6.49
存 在 す る こ と を 示 す.
満 た す 任 意 の λ に 対 し て,σd(HλV)=0,
証 明 任 意 の λ>0に
(N(λV)は
ラ ス(⊂R)が
離 散 的 固 有 値 を もた
な い よ う な ポ テ ン シ ャ ルVの"広
(ⅰ)
固有値
し た が う.
‖V‖2R<∞
をRで
対 し て,μn(λn)=E}
よ っ て,μn(λn)=Eな
Σ μ∈σp(KE)mKE(μ)μ2.定
れ ば,(6.38)が
注意す れば
の と き,0<λ<
σess(HλV)=[0,∞).
λ2‖V‖2R/(4π)2. なけれ ばな らない
え に 題 意 が し た が う.
の 定 理 が 導 か れ る. 次 の 条 件 を 満 た す とす る:
■
(ⅱ) 定 数r0>0,
ε0>0, 0〓b<1が
存 在 して
または が 成 り立 つ とす る.こ
の と き,#σd(HV)は
証 明
有 限 で あ る.
と お こ う.ハ
て,
.し
ー デ ィ ー の 不 等 式(補
題2.69)に
よっ
たが っ て形 式 の 意 味 で
た だ し,W-(x):=min{W(x),0}.し
た が っ て,σess(HV)=[0,∞)と
最小
―最 大 原 理 お よび形 式 の 場 合 の 比 較 定 理 に よ り
仮 定 に よ り,│x│>r0ま は ε0〓│x│〓r0の
た は│x│<ε0な
ら ばW〓0で
範 囲 に あ り,W-∈L2(IR3)で
あ る か ら,W-の
あ る.し
た が っ て,ビ
台 ルマ
ン-シ ュ ヴ ィ ン ガ ー の 定 理 に よ り,σd(H0+(1-b)-1W-)は
有 限 集 合 で あ る.
他 方,σess(H0+(1-b)-1W-)=[0,∞).し
る 番 号n0が
し て,n〓n0な μn(HV)=0が
た が っ て,あ
ら ば μn(H0+(1-b)-1W-)=0.ゆ 得 ら れ る.こ
れ は,σd(HV)が
え にn〓n0な
存在 らば
有 限 集 合 で あ る こ と を 意 味 す る. ■
6.7.3
純 粋 に 離 散 的 な ス ペ ク トル を も つ 場 合
最 後 にHVの
ス ペ ク トル が 純 粋 に 離 散 的 に な る よ う な ポ テ ン シ ャ ル の ク ラ ス
の 存 在 を 示 そ う.
定 理6.50
d〓1を
任 意 に 固 定 す る.ポ
で あ る と し,V∈L1loc(IRd)お す る.こ
よ び│x│→∞
の と き,H:=H0+Vの
σ(H)=σd(H)の れ ば,En→∞(n→∞)で
テ ン シ ャ ルV:IRd→IRは の と き,V(x)→∞
下 に有 界 を満 た す と
スペ ク トル は 純 粋 に 離 散 的 で あ る.さ
固 有 値 を 小 さ い 順 に 並 べ た と き のn番 あ る.
目 の 固 有 値 をEnと
ら に, す
証 明 V〓0と
し て 証 明 す れ ば 十 分 で あ る*16.最
の と き,μn(H)→∞ r0>0が
を 示 せ ば よ い.仮
存 在 し て│x│>r0な
│x│〓r0な
小― 最 大 原 理 に よ り,n→
定 に よ り,任
ら ばV(x)>Rが
意 のR>1に
成 り立 つ.関
ら ば,W(x):=-R, │x│>r0な
対 し て,
数W:IRd→IRを
ら ばW(x):=0に
よ っ て 定 義 す る.
こ の と き,V〓R+Wで
あ る か ら,比 較 定 理 に よ り,μn(H)〓R+μn(H0+W).
Wは
Wも
有 界 で あ り,supp
る こ と が で き る.し
有 界 で あ る の で,定
μn(H0+W)〓-1が μn(H)〓R-1.
定 理6.42を
応用 す
の 事 実 と最 小-最
る 番 号n0=n0(R)が
成 り立 つ こ と が わ か る.し R>1は
意 味 す る.し
理6.41と
た が っ て,σess(H0+W)=[0,∞).こ
大 原 理 を 組 み 合 わ せ れ ば,あ
∞
あ っ て,n〓n0な
ら ば,
た が っ て,n〓n0な
ら ば,
任 意 で あ っ た か ら,こ れ は,μn(H)→∞(n→∞)を
た が っ て,σess(H)=0,
σ(H)=σd(H).こ
の 場 合,En=μn(H)
で あ る か ら,En→∞(n→∞). 例6.7
■
(非 調 和 振 動 子)nj〓1,
と す る.α=(α1,…,αd)を
はd次
自 然 数 と し,n=min{n1,…,nd}
多 重 指 数 とす る.cj>0,
と し よ う(α:=Σdj=1│αj│).こ て,こ の 場 合 のH0+Vの
j=1,…,d,を
の と き,Vは定
cα ∈IR,を 定 数 と し
理6.50の
仮 定 を 満 た す.し
ス ペ ク トル は純 粋 に 離 散 的 で あ る.nj〓2な
たがっ
らば,H0+V
元 の 非 調 和 振 動 子 の ハ ミル トニ ア ン の 一 般 形 の 一 つ を与 え る.
ノ
本 章 で 論 述 し た 一 般 論(6.2節 と え ば,シ
ー
ト
∼6.5節,6.6.3項)は,非
常 に 広 い 応 用 を も つ.た
ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 型 作 用 素 だ け で な く,量 子 場 の 理 論 にお け るハ ミル トニ
ア ンの ス ペ ク トル解 析 に も使 わ れ る([3]の13章
お よ び そ の ノ ー トを 参 照).こ
の章
で 扱 え な か っ た,多 体 系 の シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 作 用 素 の ス ペ ク トル 解 析 に つ い て は, [6]や[7]な
ど を参 照 さ れ た い.前
者 に は,シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 型 作 用 素 に 関 す る非 常
に詳 しい 内 容 が 見 い だ さ れ る. *16 V〓-b(b>0:定
数)な
らば
,V=V+bと
純 粋 に 離 散 的 で あ る こ と と σ(H0+V)が
す れ ば,V〓0で
あ り,σ(H0+V)が
そ う で あ る こ と と は 同 値 で あ る.
第6章
H, Kは
演 習 問題
ヒ ル ベ ル ト空 間 で あ る とす る.
1. {en}∞n=1をHの 0, n∈INを
完 全 正 規 直 交 系 とす る.{qn}∞n =1は
満 た す も の と し,q:=limn→∞qnと
狭 義 単 調 減 少 数 列 でqn>
お く.
(ⅰ) 任 意 の Ψ ∈Hに
対 して,Σ∞n=1qn〈en,Ψ〉enは収
(ⅱ) (ⅰ)に よ り,写 像Q:H→HをQ(Ψ):=Σ∞n=1qn〈en,Ψ〉enに 定 義 で き る.Qは
束 す る こ と を 示 せ. よって
有 界 な 自 己 共 役 作 用 素 で あ る こ と お よ び ‖Q‖=q1で
あ る こ と を 示 せ.
(ⅲ) σd(Q)={qn}∞n=1を
(ⅳ) σess(Q)={q}を
注:(ⅲ)か
らQの
2. N〓n〓3の
示 せ. 示 せ.
離 散 ス ペ ク トル はIRの
場 合 の 等 式(6.7)を
証 明 せ よ.
3. 任 意 の 有 界 な 自 己 共 役 作 用 素A, B∈B(H)と
を 証 明 せ よ.た
注:対 る.上
だ し,μn(A)はAのn番
応 μn:A〓
μn(A)は,有
の 不 等 式 は,こ
つ い て,定 数C>0が
成 り立 つ とす る.こ
対 して
目 の 特 性 レヴ ェ ル で あ る.
界 な自己共役 作 用素 の集 合上 の関数 を定義 す
コ ンパ ク トな ら ば,│A│も
6. A,B∈B(H,K)に
各nに
の 関 数 が 一様 位 相 で 連 続 で あ る こ と を 意 味 す る.
4. コ ン パ ク ト作 用 素 の 集 合C(H,K)はB(H,K)の 5. A∈B(H,K)が
閉 集 合 で は な い こ とが わ か る.
の と き,も
し,Aが
部 分 空 間 で あ る こ と を示 せ. コ ンパ ク トで あ る こ と を証 明 せ よ. あ っ て,‖BΨ
‖〓C‖AΨ
コ ン パ ク トな ら ばBも
‖,Ψ ∈Hが コ ンンパ ク ト
で あ る こ と を 証 明 せ よ. 7. A∈B(H)を
非 負 で 自 己 共 役 な コ ンパ ク ト作 用 素 とす る.こ
コ ンパ ク トで あ る こ と を証 明 せ よ.
の と き,A1/2も
関
連
図
書
[1] 新 井 朝 雄,『
ヒ ル ベ ル ト空 間 と量 子 力 学 』,共 立 出 版,1997.
[2] 新 井 朝 雄,『
フ ォ ッ ク空 間 と量 子 場 上 』,日 本 評 論 社,2000.
[3] 新 井 朝 雄,『
フ ォ ッ ク空 間 と 量 子 場 下 』,日 本 評 論 社,2000.
[4] 新 井 朝 雄 ・江 沢 洋,『 量 子 力 学 の 数 学 的 構 造Ⅰ 』,朝 倉 書 店,1999. [5] 新 井 朝 雄 ・江 沢
洋,『 量 子 力 学 の 数 学 的 構 造Ⅱ 』,朝 倉 書 店,1999.
[6] H.L.Cycon,R.G.Froese,W.Kirsch Springer,1987. [7] J.Derezinski N-particle
and
B.Simon,Schrodinger
and C.Gerard,Scattering Systems,Springer,1997.
[8] T.Kato,Perturbation [9] P.D.Hislop
Theory
Theory
for Linear
Operators,
of Classical
and
Operators,Springer,2nd
and I.M.Sigal,Introduction
to
Spectral
Quantum
Ed.,1976. Theory,Springer,
1996. [10] 黒 田 成 俊,『
ス ペ ク ト ル 理 論Ⅱ
[11] 黒 田 成 俊,『 [12] M.Reed
波 書 店,1979.
立 出 版,1980.
and B.Simon,Methods
tional
of
Modern
Mathematical
Physics
I:Func
Analysis,1972.
[13] M.Reed ysis
関 数 解 析 』,共
』,岩
and of
B.Simon,Methods
of
Operators,Academic
Modern
Mathematical
Physics IV:Anal
Press,1978.
[14] B.Simon,Quantum
Mechanics
Forms,Princeton
University,1971.
for
Hamiltonians
Defined
as
Quadratic
7 散 乱理 論
量 子 系 の 時 刻パ ラ メ ー タ ー をtと す る と き,系 の状 態 のt→
±∞ に お け る挙 動― 長
時 間挙 動― に 関わ る理 論 の 一般 的 な枠 組 み を論 述 す る.
7.1
は じ め に―
発 見 法的 議 論
量 子 的 粒 子 の 性 質 や 構 造 を 調 べ る 基 本 的 な 方 法 の 一 つ は,二
つ の量 子 的 粒 子
を 衝 突 さ せ て そ の 結 果 を 解 析 す る こ と で あ る.そ
の よ う な 実 験 は,加
ば れ る 装 置 を 用 い て な さ れ る.量
突 す る こ と に よ り,い
子 的 粒 子 は,衝
速 器 と呼 ろいろ
な 方 向 へ 確 率 的 に 散 乱 す る(図7.1)*1.
図7.1
典 型 的 な散 乱 実 験 の模 式 図
そ う した 散 乱 現 象 を量 子 力 学 の基 本 原 理 に基 づ い て 理 論 的 に解 明 す るの が 量 子 力 学 に お け る散 乱 理 論 で あ る.こ れ は,よ メ ー ター をtと す る と き,t→
り一般 的 な 観 点 か らは,時 刻 パ ラ
±∞ に お け る系 の 漸 近 挙 動― これ を系 の長 時 間
挙 動 とい う― に関 わ る理 論 の 一 部 とみ る こ とが で き る.前 著[6]で 定 式 化 した よ う に,系 の 時間 発 展 は,状 態 の 時 間 発 展(シ ュ レ ー デ ィン ガ ー描 像)あ る い は 物 理 量 の時 間発 展(ハ イ ゼ ンベ ル ク描 像)と して 捉 え られ る.し た が って,量 子 *1 図7
.1に お い て,タ ー ゲ ッ トは入 射 粒子 と相 互 作 用 を行 う と想 定 され る量 子 的 粒 子 で あ る.同 一 の 入 射状 態 に対 して,入 射 粒 子 が 散 乱す る方 向 は確 率 的 に分布 す る.入 射 の 向 きをz軸 の 正 の 向 きとす る と き,z軸 と散 乱 の 方 向 の なす 角 θ を散 乱 角 とい う.散 乱 の
確 率 は,一 般 に は,θ だ け で な く,z軸
の ま わ りの方 位 角 に も依存 す る.
系 の 長 時 間 挙 動 に 関 す る問 題 は次 の よ う に定 式 化 され る:対 象 とす る量 子 系 の 状 態 の ヒル ベ ル ト空 間 をH,ハ
ミル トニ ア ンをHと
当 な 部 分 空 間 に属 す る任 意 の 状 態 Ψ ∈Hに
し よ う.こ の と き:(ⅰ) 適
対 して,e-itHΨ
振 る舞 い を調 べ よ.(ⅱ) 一 定 の ク ラス に属 す る物 理 量Aに のt→±∞
のt→±∞
での
対 して,eitHAe-itH
にお け る挙 動 を解 析 せ よ.
この 章 で は,上 記(ⅰ) の 問 題 に 焦 点 を しぼ り,こ の 問 題 に関 わ る数 学 的側 面 を で き る だ け普 遍 的 な観 点 か ら考 察 す る.具 体 的 な 散 乱 実 験 や現 象 に 関す る観 測 と理 論 の 比 較 を行 う こ とは しな い*2.だ が,数 学 的 に厳 密 な理 論 を展 開 す る 前 に,そ の 背 後 に あ る物 理 的 描 像 を 略述 して お こ う. 簡 単 の た め,質 量m>0の V:IR3→IRの
量 子 的 粒 子 が3次
元 空 間IR3を
ポ テ ンシャル
作 用 の も とで 運 動 す る系 を考 え る.こ の 系 の 状 態 の ヒル ベ ル ト
空 間 と してL2(IR3)を
と り,ハ
ミル トニ ア ンは シ ュ レー デ ィ ン ガ ー型 作 用 素
で与 え られ る もの と しよ う.こ こで,K0=-Δ/(2m)(Δ 元 ラ プ ラ シ ア ン)は 自 由ハ ミル トニ ア ンで あ る*3.ハ
は一 般 化 さ れ た3次 ミル トニ ア ンHsは
に 自己 共 役 で あ る と仮 定 し,そ の 閉包 も同 じ記 号 で 表 す.Vは
本質的
無 限 遠 で は"急
速 に"0に 近 づ く と し,そ の実 効 的 な作 用 は原 点 の近 くに集 中 して い る とす る*4. この 系 にお け る散 乱 とは,理 想 化 した形 で 述 べ る な ら ば,当 該 の 量 子 的粒 子 が 無 限遠 か ら原 点 の近 傍 に 入射 し,十 分 時 間 が経 過 した とき に,こ の 粒 子 が,観 測 に よ って,再
び無 限 遠 に見 い だ さ れ る現 象 に ほか な ら な い.こ の 場 合,す
でに
注 意 した よ うに,無 限 遠 で 見 い だ さ れ る 量 子 的 粒 子 の運 動 の 向 き は確 率 的 に分 *2 こ う した事 柄 は ,物 理 学 の観 点 か ら書 か れ た,量 子 力学 や 量子 場 の理 論 の 標 準 的 な教 科 書 に載 って い る.だ が,通 常 の物 理 の 文 献 にお ける扱 い は極 め て発 見 法 的 で あ り,実 験 と比 較 す る結 果 を出 す の に,厳 密 に 基礎 づ け ら れて い ない,形 式 的摂 動 論 を使 用す る. この 章 の 目的 は,そ の よ うな発 見 法 的議 論 に対 す る 数学 的基礎 づ け に とど ま らず,量 子 力 学 の 基本 原 理 か ら必 然 的 に導 か れ る 非 摂動 的 か つ 数学 的 に厳 密 な結 果 を論 述 す る こ と で あ る. *3 h=1の 単位 系 で 考 え る . *4 た とえ ば ,入 射粒 子 と ターゲ ッ トが と もに核子 の 場合 には,Vは 近似 的 に湯 川 ポ テ ン シャ ル (g>0,mπ>0は この ポ テ ンシ ャ ルは 言 及 した特 性 を もつ.
定 数)で 与 え られ る.
布 す る こ と に な る.こ の確 率 は相 互 作 用Vの
形 に よ っ て決 定 され る.構 築 され
るべ き散 乱 理 論 は,そ う した確 率 の計 算 方 法 も与 え る もの で な けれ ば な らない. 考 察 下 の 系 の 時 刻t∈IRで ψ ∈L2(IR3)(‖ ψ‖=1))と
の状 態 ベ ク トル は,時 刻0で
の 状 態 ベ ク トル を
す れ ば,量 子 力 学 の 公 理 に よ り,e-itHsψ
で与え ら
れ る.散 乱 現 象 に お け る 入射 粒 子 の 存 在 領 域 は,ポ テ ン シ ャ ル が ほ ぼ0に 等 し い 無 限 遠 の 領 域―D-∞
と し よ う― と考 え る こ とが で き る.ま た,入 射 粒 子 が
ポ テ ン シ ャ ル の 中 心 近 くに や って くる と想 定 され る適 当 な 時 刻 を時 刻 の原 点 に と りな お せ ば,入 射 粒 子 がD-∞ 描 像 的 に は"無 限 の過 去")と 粒 子 はD-∞
にあ る時 刻 は,数 学 的 には,t→-∞(物
して よい*5.し
にあ る と想 定 され るの で,系
た が っ て,t→-∞
理
に お い て は,
の運 動 は 自 由ハ ミル トニ ア ンK0に
よ る運 動 に よ っ て近 似 され る で あ ろ う.す な わ ち,あ るベ ク トル ψ-∈L2(IR3) が あ っ て,漸 近 的 に
(7.1) とい う関 係 が 成 立 す る こ とが期 待 され る(ψ-は 注 意).こ
ψ と は一 般 には 異 な る こ と に
の近似 の意味 は
(7.2) とす る の が,ま
ず は 自 然 で あ ろ う.こ
の 漸 近 的 配 位(asymptotic
configuration)と
で あ る). と解 釈 さ れ る.作
の よ う な 状 態 ψ-を
い う(‖ ψ‖=1よ
は,入 射 粒 子 のt→-∞ 用 素e-itHsお
よ びe-itK0の
状 態 ψ のt=-∞
で
り,‖ ψ-‖=1
で の漸 近 的 状 態 を表 す
ユ ニ タ リ 性 を 用 い る と,(7.2)は
(7.3) (7.4) *5 原 子 スケ ー ル の 距 離〓10-10m(ポ
テ ンシ ャ ルが 本 質 的 に効 い て くる長 さの ス ケー ル)
を,た とえ ば,粒 子 が 光速 ≒3×108m/sの1/3の 速 さ(実 験 的 にい っ て標 準 的 な速 さの オ ー ダー)で"通 過 す る"時 間 は〓10-18秒 で極 め て短 い.他 方,入 射粒 子 が発 射 され た 位 置 か ら原子 ま での 距 離 はマ ク ロ的 な ス ケー ル で あ る ので,こ こで述 べ た近似 的 描 像 が 妥 当 性 を もつ.
を 導 く こ とが わ か る.し
た が っ て,も
し,強
極 限
(7.5) が存 在すれ ば
(7.6) と書 け る.作 用 素W-(Hs,K0)は
波 動 作 用 素 と呼 ばれ る作 用 素 の ク ラス の 一例
で あ る*6. t→+∞ て,漸
に お け る系 の 任 意 の 漸 近状 態 は,t→-∞
近 的 に
の場 合 の議 論 と同様 に し と い う形 で 与 え られ る と し
よ う.す な わ ち,L2(IR3)の
適 当 な部 分 空 間 に 属 す る任 意 の ベ ク トル φ に対 し
て,
とな る φ+∈L2(IR3)が
が っ て,t→+∞
あ る とす る.し た
に対 応 す る 波 動 作 用 素
が 存 在 す る とす れ ば
(7.7) こ の よ う な 設 定 の も と で,t→-∞ た と き,t→+∞ か ら φ+へ
に お い て,系
に お い て,系
の 状 態 がe-itK0φ+に
の 散 乱 の 遷 移 確 率 と い う―
理 に よ り[t→+∞
で の(観
をP(ψ-,φ+)と
測 さ れ る 前 の)系
の 状 態 がe-itK0ψ-で
あっ
見 い だ さ れ る 確 率― す れ ば,量
の 状 態 はe-itHsψ
ψ-
子 力 学 の公
で あ る の で]
(7.8) で 与 え られ る.そ こ で
(7.9) を導入す れば
(7.10) *6 波 動 作 用 素 の 厳 密 な定 義 は本 章 の7
.3節 で与 え る.
と 書 け る.A(ψ-,φ+)を (7.7)を
用 い て,(7.9)の
ψ-か
ら φ+へ
の 散 乱 の 遷 移 確 率 振 幅 と 呼 ぶ.(7.6),
右 辺 を変 形 す る と
(7.11) とい う簡 潔 な表 示 を得 る.た だ し
(7.12) こ こ で,次
の 点 に 注 意 し よ う.t→-∞
ら れ る と き,t→+∞ の 関 係 は,(7.7)に
と こ ろ で,任
で の 状 態 が 漸 近 的 にe-itK0ψ-で
の 系 の 漸 近 的 状 態 はe-itK0ψ+で よ っ て,ψ=W+(Hs,K0)ψ+で
意 の χ,η ∈L2(IR3)に
あ る.た あ る.こ
与 え
だ し,ψ
れ と(7.6)に
と ψ+ より
対 して
であ るか ら
した が っ て
(7.13) が 成 り立 つ.ゆ
え に,作 用 素S(Hs,K0)はt=-∞
の 漸 近 的 配 位 へ 変 換 す る.こ operator)と
の 故 に 作 用 素S(Hs,K0)を
で
散 乱 作 用 素(scattering
呼 ぶ.
(7.11)に
よ っ て,散
算 す る に は,散 れ ば よ い.こ
乱 の 遷 移 確 率 振 幅― し た が っ て,ま
乱 作 用 素S(Hs,K0)の
行 列 要 素
の 型 の 行 列 要 素 の 集 合
を 散 乱 行 列(scattering *7 慣 習 上
で の 漸 近 的 配 位 をt=+∞
matrix)と
,作 用 素S(Hs,K0)を
い う*7.
単 に散 乱行 列 とい う場 合 もあ る.
た,遷
移 確 率― を 計 を計 算 す
上 述 の 発 見 法 的議 論 に お い て,本 質 的 な点 の 一 つ は,い う ま で も な く,作 用 素eitHse-itK0のt→
±∞ で の 強 極 限 の存 在― 波 動 作 用 素 の 存 在― で あ る.だ
が,波 動 作 用 素 の存 在 を証 明 す る こ とは全 然 自明 な問 題 で は な い.実 際,波 作 用 素 が 存 在 す る か 否 か は ポ テ ン シ ャ ル の性 質 に依 存 す る.こ
動
う して,散 乱 理
論 へ の 数 学 的 に厳 密 な ア プ ロー チ に とっ て は,波 動 作 用 素 の存 在 を証 明 す る こ とが そ の 基 本 的 課 題 の 一 つ と な る. 上 の議 論 で は,非 相 対 論 的粒 子 の,ポ テ ンシ ャ ル に よ る散 乱 を考 察 した が,散 乱 現 象 は何 もこ の形 だ け に限 定 さ れ ない.す で に,示 唆 した よ う に,量 子 系 の 長 時 間 挙 動 は任 意 の量 子 系― 量 子 的粒 子 と量 子 場 の相 互 作 用 系 や 量 子 場 ど う しの 相 互 作 用 系 を含 む― に お い て 考 え られ る か らで あ る.そ れ ゆ え,こ の 問 題 は, 少 な く も理 論 の 大 枠 に 関 す る 限 り,一 般 的 か つ 抽 象 的 な形 で考 察 した ほ うが よ く,応 用 の 範 囲 も広 くな り うる.つ 一 般 の ヒ ルベ ル ト空 間H上
のt→±∞
ま り,こ こで 考 察 したHs,K0の
の 二 つ の 自 己 共役 作 用 素H
,H0を
乱 理 論 を 構 成 す る 際 に あ ら か じめ 注 意 し て お
か な け れ ば な け れ ば な ら な い 点 を 一 つ だ け 述 べ て お く.そ て の ベ ク ト ル Ψ ∈Hに
トル で あ る と し よ う.こ る か ら,(*)の
ず し もす べ
が 存在す るわけ
と え ば,Ψ
がH0の
固 有 値Eに
属 する固有ベ ク
の と き,
であ
存 在 と
の 場 合,任
れ は,必
対 し て,
で は な い と い う こ と で あ る.た
の 存 在 は 同 値 に な る.だ
意 のs∈IRに
対 し て(t→
±∞ の と き,t+s→
か ら)
±∞ で あ る
で な け れ ば な ら な い.こ
は,
,す
は 任 意 で あ っ た か ら,s=0で HΨ=EΨ
と り,作 用 素
の 強 極 限 を 考 察 す る の で あ る.
こ の 節 を 終 え る に あ た っ て,散
が,こ
か わ りに,
が 結 論 さ れ る.ゆ
の 一 つ で あ る.だ
が,こ
い ま の 議 論 か ら,H0が
な わ ち,eis(H-E)Ψ=Ψ
固 有 値Eを
の 場 合,Φ ±=Ψ 固 有 値Eを
は 存 在 し な い こ と も わ か る.以
を 意 味 す る.s∈IR
の 強 微 分 を 考 え る こ と に よ り,Ψ え に,Hは
∈D(H)か
つ
も ち,Ψ は そ の 固 有 ベ ク トル
と な っ て,興 味 あ る 結 果 は 得 ら れ な い.
もつ 場 合 に,EがHの 上 か ら,極
れ
限
固 有 値 で な け れ ば,(*)
(Ψ ∈H)の
存 在 を考 察 す る 問題 にお いて は,ベ ク トル Ψ はH0の
固有 空 間―H0
の す べ て の 固 有 ベ ク トルか ら生 成 され る部 分 空 間― に属 さな い もの と して一 般 性 を失 わ な い こ とが わか る.こ れ は,次 に述 べ る意 味 で,物 理 描 像 的 に も自然 で あ る.実 際,(**)が
存 在 す る とす れ ば,ポ テ ンシ ャル に よ る散 乱 の 場 合 との ア ナ
ロ ジ ー に よ り,Ψ は考 察 下 の 系 の漸 近 的 配 位 を表 す と解 釈 され る[i .e.,t→-∞ で あ れ ば,あ るベ ク トル Φ ∈Hに の よ う な状 態 は,CCRの
対 して,
こ
シュ レー デ ィン ガ ー表 現 の 描 像 で い え ば,t→
±∞ の
と き,空 間の 任 意 の 有 界 領 域 に量 子 的 粒 子(一 般 に は複 数)が 存 在 す る 確 率 が0 と な る よ う な状 態 に対 応 す る で あ ろ う.し たが っ て,そ れ はH0の
固有 状 態(束
縛 状 態)で はあ りえ な い. そ こ で,漸 近 的 配 位 を表 す と予 想 され る状 態 ベ ク トル の 空 間 を あ らか じめ 導 入 して お くと便 利 で あ る.こ の 考 察 は,私
た ち を 自己 共 役 作 用 素 の ス ペ ク トル
の 一 つ の分 類 へ と導 く.
7.2
数 学 的 準 備―
絶 対 連 続 ス ペ ク トル と特 異 ス ペ ク トル
7.2.1 絶 対 連 続 部 分 空 間 と特 異 部 分 空 間 自己 共 役 作 用 素 の ス ペ ク トル を分 類 す る概 念 と して,離 散 スペ ク トル と真性 ス ペ ク トル とい う概 念 が あ る こ とは 第5章,5.3節
にお い てす で にみ た(6.2節
も参 照).散 乱 理 論 を構 成 す る 上 にお い て,前 節 の 終 わ りで 示 唆 され た,ス ペ ク トル の 分 類 は これ とは異 な る もの で あ る.こ の 分 類 の鍵 と な る の は,自 己 共 役 作 用 素 が ス ペ ク トル測 度 を もつ とい う事 実 と測 度 に 関 す る ル ベ ー グ の分 解 定 理 ([5]ま た は[6]の 付 録Aの
定 理A.12)で
あ る.こ れ が 以 下 の 理 論 の背 後 に あ る
基 本 的 な ア イデ ア で あ る. Hを ヒ ルベ ル ト空 間,HをH上 をEHと
の 自己 共 役 作 用 素 と し,そ の ス ペ ク トル 測 度
す る.こ の と き,任 意 の Ψ ∈Hに 対 して B∈B1(IRの
に よ っ て 定 義 さ れ る 写 像 μΨ:B1→[0,∞)はIR上 し た が っ て,そ
れ が1次
ボ レ ル 集 合 体)
(7.14)
の 有 界 な ボ レ ル 測 度 で あ る.
元 ル ベ ー グ 測 度 に 関 し て 絶 対 連 続 で あ る か,あ
るいは
特 異 で あ る か を 問 う こ とが で きる*8.こ の 問 い は,む す る の に使 うの が 自然 で あ る.こ 定 義7.1
測 度 μΨ が1次
全 体 をHac(H)と
う して,次
しろ,ベ
ク トル Ψ を分 類
の定 義 へ と到 る:
元 ル ベ ー グ測 度 に 関 して絶 対 連 続 で あ る よ うな Ψ の
記 す.ま
た,μ Ψ が1次 元 ルベ ー グ測 度 に 関 して特 異 で あ る よ
う な Ψ の全 体 をHs(H)と
表 す.
次 の事 実 は基 本 的 で あ る. 定 理7.2
Hac(H)とHs(H)は
互 い に直 交 す る 閉部 分 空 間 で あ り
(7.15) が 成 り立 つ.
証 明 ま ず,Hac(H)が る.こ
の と き,任
部 分 空 間 で あ る こ と を 示 そ う.Ψ,Φ
意 の α,β ∈Cに
の 式 の 右 辺 は0で 絶 対 連 続 で あ る.ゆ 次 にHac(H)の 意 のB∈B1に
た が っ て,μ αΨ+βΦ は1次
元 ル ベ ー グ測 度 に関 して
え に, . 閉 性 を 示 す.Ψn∈Hac(H),Ψn→
Ψ ∈Hと
閉 で あ る.以
な る.し
た が っ て,Ψ
上 か ら,Hac(H)はHの
部 分 空 間 で あ る こ と を 示 そ う.Ψ,Φ
得 る.│B∪C│=0で
∈Hac(H).
∈Hs(H)と
す れ ば,│B│=
と な るB,C∈B1が
存 在 す る.EH(IR\B)=I-EH(B)で
を 作 用 さ せ,単
ら ば,
閉 部 分 空 間 で あ る.
0,│C│=0,
EH(C)Φ=Φ.し
す れ ば,任
で あ る.│B│=0な
あ る か ら,EH(B)Ψ=0と
ゆ え に,Hac(H)は Hs(H)が
で あ る か ら,上
対 し て,
EH(B)Ψn=0で
定 に よ り,│B│(Bの1
ら ば,
あ る.し
す
対 し て, .仮
次 元 ル ベ ー グ 測 度)=0な
∈Hac(H)と
あ る か ら,EH(B)Ψ=Ψ.同
た が っ て,
左 か らEH(B∪C)
位 の 分 解 の 性 質 を 用 い る と, あ る か ら,こ
様 に,
れ は,Ψ+Φ
を ∈Hs(H)を
意 味 す る.任
*8 絶 対連 続 な測 度 と特 異 な測 度 の定 義 につ い て は ,[5]ま た は[6]の 付 録A,A.6節
意の を参 照.
α ∈Cに
対 して,
で あ る こ と は 容 易 に わ か る.ゆ
え に,Hs(H)は
部 分 空 間 で あ る. 部 分 空 間Hs(H)の ば,│Bn│=0と
閉 性 を 示 す た め に, な るBn∈B1が
存 在 し て,
と す れ ば,│B│=0で が っ て,n→∞
と な る.し
を 得 る.ゆ
え に,Ψ
∈Hs(H).す
た な
閉 で あ る.
Hac(H)とHs(H)が
直 交 す る こ と を 示 そ う.そ
と す る.こ Ψ.一
が 成 り立 つ.
あ っ て,
とす れ ば,EH(B)Ψ=Ψ
わ ち,Hs(H)は
とす れ
の と き,│B0│=0と
方,│B0│=0に
よ り,EH(B0)Φ=0で
最 後 に(7.15)を ま た は[6]の
示 そ う.任
付 録Aの
こ で,
な るB0∈B1が
あ る.し
意 の Ψ ∈Hに
定 理A.12)に
存 在 し て,EH(B0)Ψ=
対 し て,ル
た が っ て,
ベ ー グ の 分 解 定 理([5]
よ り,μ Ψ は
(7.16) と い う形 に 一 意 的 に 分 解 さ れ る.こ
こ で,μ Ψ,ac,μΨ,sは そ れ ぞ れ,μ Ψ の1次
元 ル ベ ー グ 測 度 に 関 し て 絶 対 連 続 な 部 分,特 μΨ,s≠0と
し よ う.こ
異 な 部 分 を 表 す.
の と き,│B0│=0と
が 成 り立 つ.し
な るB0∈B1が
た が っ て,C⊂Bc0,C∈B1,な
存 在 し て, ら ば,
ゆ え に
と お け ば,
Ψ=η+χ…(*).任
意 のB∈B1に
対 し て,
で あ る か ら,μ η は 絶 対 連 続 で あ る.し 一方
,
で あ る.ゆ
た が っ て,η .し
え に,χ
μΨ,s=0の H=Hac(H)と
∈Hs(H).こ
場 合 は,す
singularity)と
continuity), い う.
対 して,Ψ
意 味 す る.
∈Hac(H)で
あ る か ら,
自 明 的 に 成 り立 つ.
上 の 定 理 に 基 づ い て,Hac(H)をHに of absolute
た が っ て,μ χ は 特 異
れ ら の 事 実 と(*)は(7.15)を
べ て の Ψ ∈Hに
な っ て,(7.15)は
∈Hac(H).
Hs(H)をHに
■
関 す る 絶 対 連 続 部 分 空 間(subspace 関 す る 特 異 部 分 空 間(subspace
of
次 の定 理 は 重 要 で あ る. 定 理7.3
Hac(H),Hs(H)はHを
簡 約 す る.
こ の 定 理 を 証 明 す る た め に,あ
補 題7.4 H上
MをHの
閉 部 分 空 間 と し,PMをMへ
の 自 己 共 役 作 用 素 と し,そ
のB∈B1に
る 有 用 な 一 般 的 事 実 を 補 題 と し て 用 意 す る.
の 正 射 影 作 用 素 とす る.Tを
の ス ペ ク トル 測 度 をETと
対 し て,PMET(B)=ET(B)PMが
す る.も
し,す
べ て
成 り立 つ な ら ば,MはTを
簡
約 す る.
証 明 Ψ ∈D(T)と
す る.仮 定 に よ り,任 意 のB∈B1に .し
こ れ はPMΨ
∈D(T)を
対 して,
たが っ て
意 味 す る.さ
ら に,任
意 の Φ ∈HとB∈B1に
対 して
で あ る か ら
し た が っ て,PMTΨ=TPMΨ.ゆ 定 理7.3の
え に,MはTを
証 明 PacをHac(H)へ
│B│=0な
ら ば│B∩C│=0で
∈Hac(H),
任 意 のC∈B1に
. あ る か ら,(*)の
な る.ゆ
れ ば,│B0│=0,EH(B0)Ψ=Ψ
ΨC∈Hs(H).
不 変 に す る こ と を 示 そ う.Ψ
とす れ ば,
て,‖EH(B)ΨC‖=0と
ば,
■
の 正 射 影 作 用 素 と す る.ま ず,任 意 のC∈B1に
対 し て,EH(C)はHac(H),Hs(H)を ΨC=EH(C)Ψ
簡 約 す る.
右 辺 は0で
え に ΨC∈Hac(H).ま を 満 た すB0∈B1が
対 し て,│B0∩C│=0で
あ り,し た,Ψ
∈Hsと
存 在 す る.こ
あ り,ΨC=EH(C)Ψ
たが っ す
の と き, とす れ
し た が っ て,
定 理7.2に
よ っ て,任
意 の
と 一 意 的 に 表 さ れ る.こ
の と き,任
意 のB∈B1に
対 し て,上
述 の こ
と に よ り,
した
が っ て,PacEH(B)=EH(B)Pac.こ
れ は,補
題7.4に
を 簡 約 す る こ と を 意 味 す る.Hs(H)=Hac(H)⊥
よ っ て,Hac(H)がH
で あ る か ら,HはHs(H)に
よ っ て も 簡 約 さ れ る.
定 理7.3に ら を,そ
■
よ っ て,Hac(H),Hs(H)に
れ ぞ れ,Hac,Hsと
part),特
お け るHの
書 き,Hの
異 部 分(singular
part)と
部 分 が 定 義 さ れ る.こ
れ
絶 対 連 続 部 分(absolutely continuous
呼 ぶ.し
た が っ て,
(7.17) と 書 け る.Hac,Hsの
ス ペ ク トル を そ れ ぞ れ,Hの
ス ペ ク トル と い い,記
号 的 に,そ
絶 対 連 続 ス ペ ク トル,特
れ ぞ れ,σac(H),σs(H)に
作 用 素 の ス ペ ク トル 理 論([6]のp.
447,定
理4.22-(ⅷ))に
よ っ て 表 す .直
異 和
より
(7.18) が 成 り立 つ.
注 意7.1 σac(H)∩
定 理7.2に
σs(H)=0と
よ っ て,次
は 限 ら な い(以
の 三 つ の 場 合 が 可 能 で あ る:(ⅰ)H=Hac(H)(し
て,Hs(H)={0});(ⅱ)H=Hs(H)(し Hac(H)≠{0}か absolutely
注 意7.2
場 合,Hは
あ る と い い,(ⅱ)の
純 粋 に 絶 対 連 続(purely
場 合,Hは
純 粋 に 特 異(purely
あ る と い う.
Hが
成 立 し な い.た あ る(以
たがっ
た が っ て,Hac(H)={0});(ⅲ)
つHs(H)≠{0}.(ⅰ)の continuous)で
singular)で
下 の 例 を 参 照).
純 粋 に 絶 対 連 続 な ら ば,σ(H)=σac(H)で
あ る.だ
と え ば,σs(H)≠0か
な る よ う な場 合 が
下 の 例7.4を
参 照).
つ σ(H)=σac(H)と
が,逆
は
例7.1
L2(IR)上
の 座 標 変 数xに
ク トル 測 度Exは
よ る か け算 作 用 素 をxと で 与 え られ る の で(χBはBの
に 対 して,
か つ
例7.2
Hを
定 義 関 数),任
標 変数xjに
意の
が ルベ ー
た が っ て,
よ っ て,xは
上 の位 置作 用素xj座
対 連 続 で あ る.証
の作 用素 のス ペ
こ れ は測度
グ 測 度 に 関 して 絶 対 連 続 で あ る こ と を 意 味 す る.し
例7.3
す る.こ
ゆ え に,
純 粋 に 絶 対 連 続 で あ る.
よるか け算作 用素)は 純粋 に絶
明 は 前 例 と同 様.
可 分 な ヒ ル ベ ル ト空 間,
を 有 界 な 実 数 列 と す る.こ
をHの の と き,任
で あ る か ら,H上
に よ っ て 定 義 で き る.容
完 全 正 規 直 交 系 と し, 意 の
に 対 し て,
の 線 形 作 用 素MΛ
易 に わ か る よ う に,MΛ
を
は有 界 な 自己共 役 作 用 素 で あ り が 成 り立 つ,[5]の2.9.6
項 と 同様 の 議 論 に よ り,
が 証 明 さ れ る.MΛ
は 純 粋 に特 異 で あ る こ とが 次 の よ う に して 示 さ れ る. とす れ ば,MΛ で 与 え られ る.い
とすると, と な る.ψ (1点
≠0で
の ス ペ ク トル 測 度EMΛ
ま,仮 に,
ならば常に
あ る か ら,
と な るnが
λnか ら な る 集 合)と す れ ば,│Bn│=0で
あ る が,
な り,矛 盾 が 生 じる.し 例7.4
Hを
た が っ て,
よ りK上
意 の
え に,
直 和 ヒ ル ベ ル ト空 間 作 用 素 とす る.こ
の 作 用 素
ス ペ ク トル 測 度EHは
た が っ て,任
こ で, と
を そ れ ぞ れ,例7.1,例7.3の
き,直 和 作 用 素 の 理 論([6]の4.3.2項)に
題1).し
あ る.そ
で あ る.ゆ
複 素 ヒ ル ベ ル ト空 間 と し,こ れ とL2(IR)の を 考 え る.x,MΛ
共 役 で あ る.Hの
は
のと
は 自己
で 与 え られ る(演 習 問 とB∈B1に
これ か ら,
対 して,
で あ る こ と と
つ
は 同値 で あ る こ とは わ か る.ゆ
え に,
だ が,例7.3の
結 果 に よ り,
で あ る か ら,
か
が 結 論 さ れ る.し
た が っ て,
あ る こ と は,
ま た,
ま た はf=0で
あ る こ と と 同 値 で あ る.し
こ れ は の 例 で は,
で た が っ て,
を意 味 す る.ゆ よ っ て,
え に,こ
で あ る が,
で
あ る.
絶 対 連 続 部 分 空 間 の重 要 性 の 一 つ は次 の事 実 にあ る: 定 理7.5
任 意 の
と
に対 して
(7.19) 証 明 定 理7.2に
よ り,Φ=Φ1+Φ2と
定 理7.3に
直 交 分 解 で き る
よ っ て,e-itHはHac(H),Hs(H)を
て
不 変 に す る.し
ゆ え に,(7.19)の
い て は,は
じ め か ら,
極 恒 等 式 に よ り,Φ=Ψ
左 辺 を考 察 す る こ とに お
の 場 合 を 考 え れ ば 十 分 で あ る.さ の 場 合 に(7.19)を
度 た は[6]の
に 注 意).し か ら,リ (7.19)で
ま の 場 合,左
辺 は,す
べ て のB∈B1に
よ り,
対 して 有 限 で あ る こ と ρΨ は 可 積 分 で あ る
ー マ ン-ル ベ ー グ の 補 題([5]ま
た は[6]の
付 録B,定
理B.11)に
の 場 合 が し た が う.
次 の こ と を語 る:Hの
よ り, ■
量 子 力 学 の コ ン テ クス トにお い て,Hが れ ば,(7.19)は
理A.11)に
ベ ー グ可 積 分 関 数
た が っ て,
Φ=Ψ
用素解 析 の 絶対 連 続
付 録A,定
を 満 た す,ル が 存 在 す る(い
ら に,偏
示 せ ば 十 分 で あ る.作
に よ り, 測 性 と ラ ド ン-ニ コ デ ィ ム の 定 理([5]ま
たが っ
量 子 系 の ハ ミル トニ ア ン を表 す とす
絶 対 連続 部 分空 間 に お け る系 の 状 態 は,無
限 の未 来 お よび 過 去 に お い て,零 ベ ク トル に弱 収 束 す る よ うに時 間発 展 を行 う.
7.2.2 純 粋 に 絶 対 連 続 な 自 己共 役 作 用 素 の 基 本 的 性 質 定理7.6
自己共 役 作 用 素Hは
は ボ レ ル可 測 で,
純 粋 に絶対 連 続 で あ る とす る.関 数 な らば,常
に
を満たす
もの とす る*9.こ
の と き,作 用 素 解 析 を経 由 して 定 義 さ れ る 自 己 共 役 作 用 素 は純 粋 に絶 対 連 続 で あ る.
証 明 [5]のp. 223,例2.24と
同様 の 方 法 に よ り,f(H)の
は
ス ペ ク トル 測 度Ef(H)(・)
で 与 え られ る こ とが 示 さ れ る.し
て,任 意 の Ψ ∈Hに
対 して,
条 件 に よ り,│B│=0な
たが っ に対 す る
ら ば
し た が っ て,
ゆ え に
こ れ は
を意 味 し,
が 結 論 さ れ る. 例7.5 a≠0,bを
■ 実 定 数 と し,
対 して,
とす れ ば,任 意 の.B∈B1に
が 成 り立 つ.し
で あ る か ら,こ のfは 己 共 役 作 用 素Hに
定 理7.7
定 理7.6の
対 して,aH+bも
自己 共 役 作 用 素Hは
ユ ニ タ リ変 換UHU-1も
証 明 H':=UHU-1と 題327-(i)).し
純粋 に絶 対 連 続 で あ る とす る.Kを
純 粋 に絶 対 連 続 で あ る.
お く と,
は 成 り立 つ([6]の
意 の
Ψ
∈Kに
な ら ば,右 辺 は0で
例7.6
任 意 の複 素
任 意 のユ ニ タ リ作 用 素 とす る.こ の と き,
た が っ て,任
し た が っ て,題
ら ば げ
え に,任 意 の 純 粋 に 絶 対 連 続 な 自
純 粋 に絶 対 連 続 で あ る.
ヒ ル ベ ル ト空 間 と し,U:H→Kを Hの
た が っ て,│B│=0な
仮 定 を満 た す.ゆ
補
対 し て, あ る か ら,
意 が し た が う.■
L2(IRdx)上 の 運 動 量 作 用 素(Djは
変 数xjに
関 す る 一 般 化 され
た偏 微 分 作 用 素)は 純 粋 に 絶 対 連 続 で あ る. 証 明
をd次
作 用 素 で あ り,作 用 素 の 等 式 j座 標kjに 定 理7.7に
*9
よ る か け算 作 用 素).例7.2に よ り,pjの
元 の フ ー リエ 変 換 と す れ ば,こ が 成 り立 つ(kjは よ り,kjは
純 粋 絶 対 連 続 性 が した が う.
れ はユ ニ タリ
運 動 量k∈IRdkの
純 粋 に 絶 対 連 続 で あ る.こ
第 れ と ■
7.2.3 特 異 部 分 空 間 の 分 解
Hの
特 異 部 分 空 間 は さ ら に細 か く分 解 す る こ とが で きる.Hが
と き,Hp(H)をHの
固有 値 を もつ
固 有 ベ ク トル全 体 が 生 成 す る部 分 空 間 の 閉 包 と しよ う:
(7.20) Hが
固 有 値 を も た な い と き は,
と規 約 す る.こ
の とき
(7.21) で あ る.実
際,
とす れ ば, で あ る の で,Ψ
す る 部 分 空 間 はHs(H)に
∈Hs.し
た が っ て,Hの
含 ま れ る.Hs(H)は
閉 部 分 空 間 で あ る か ら,い
ら れ た 包 含 関 係 の 閉 包 を と る こ と に よ り,(7.21)が (7.21)か
固有 ベ ク トルが 生 成 ま得
導 か れ る.
ら
(7.22) とお け ば
(7.23) が 成 立 す る.閉 continuity)と 定 理7.3の 定 理7.8
部 分 空 間Hsc(H)は
of singular
呼 ば れ る. 証 明 と 同 様 に して,次 Hp(H)とHsc(H)はHを
純 点 ス ペ ク トル 部 分,特
ペ ク トル を そ れ ぞ れ ,Hの
の 事 実 が 証 明 さ れ る(演
習 問 題2):
簡 約 す る.
自 己 共 役 作 用 素HのHp(H),Hsc(H)に と記 し,Hの
特 異 連 続 部 分 空 間(subspace
お け るHの
部 分 を,そ れ ぞ れ,Hp,Hsc
異 連 続 部 分 と呼 ぶ.ま
純 点 ス ペ ク トル,Hの
た,Hp,Hscの
ス
特 異 連 続 ス ペ ク トル と い う.
後 者 につ い て は
(7.24) と記 す.直 和 作 用 素 の ス ペ ク トル 理 論 に よ り
(7.25)
こ れ と(7.18)に
よっ て
(7.26) が 成 立 す る こ と に な る.だ 和 集 合)に
が,右
辺 は,一 般
は な ら な い こ と(例7.4),ま
に は 集 合 の 直 和(互
た,
成 立 す る と は 限 ら な い こ と に 注 意 し よ う(次 例7.7
例7.4に
Hの
で あ る が,等 の 例7.7を
お い て,
と き,
号 は
参 照). の 場 合 を 考 え よ う.こ
で あ る が,
の
で あ る.
点 ス ペ ク トル σp(H)と
定 理7.9
い に素 な集 合 の
σ(Hp)と
の 関 係 は 次 の 定 理 に よ っ て 与 え ら れ る.
σp(H)=σ(Hp).
証 明 包 含 関 係 た.σ(Hp)は
が 成 り立 つ こ と(証 明 は容 易)は す で に言 及 し
閉 集 合 で あ るか ら,
が 導 か れ る.逆 の 包 含 関 係
を証 明 す る に は
(7.27) を 示 せ ば よ い. Hの
とす れ ば,
固 有 ベ ク トル の 全 体 か ら 張 ら れ る 部 分 空 間 をDp(H)と
B∈B1に
対 し て,EH(B)はDp(H)を
度
の 台 は,σp(H)に
で あ る こ と,お
よ びEH(・)の
の 台 は,σp(E)に
す れ ば,任
不 変 に し,任 意 の Ψ ∈Dp(H)に 含 ま れ て い る.定
対 して,測
義 に よ っ て,Dp(E)=Hp(H)
有 界 性 に よ り,任 意 の Ψ ∈Hp(H)に 含 ま れ て い る.し
意 の
た が っ て,任
対 し て,測
度
意 の Ψ ∈D(Hp)
に対 して
こ れ は λ ∈ ρ(Hp)を
意 味 す る.こ
H=Hp(H)(H=Hsc(H))で (純 粋 に 特 異 連 続 で あ る)と
う し て,(7.27)が
あ る と き,Hは い う.
示 さ れ る.
■
純 粋 に 点 ス ペ ク トル 的 で あ る
例7.8
例7.3の
自 己 共 役 作 用 素MΛ
は 純 粋 に 点 ス ペ ク トル 的 で あ る.
7.2.4 非 相 対 論 的 自由 ハ ミル トニ ア ンの純 粋 絶対 連 続 性 d次 元 空 間IRdを L2(IRdN)上
運 動 す る,N個
の非 相 対 論 的 自由粒 子 の ハ ミル トニ ア ンは,
の 作 用 素 と して
(7.28) に よ っ て 与 え ら れ る([6],p. と き,Δxjは
変 数xj∈IRdに
297).た
だ し,
とす る
関 す る 一 般 化 さ れ た ラ プ ラ シ ア ン,mj>0はj
番 目 の 量 子 的 粒 子 の 質 量 を 表 す.
定 理7.10
H(N)0は 純 粋 に絶 対 連 続 で あ り
(7.29) 証 明
は す でに 証 明 し た の で([6]の
す る 絶 対 連 続 部 分 空 間 がL2(IRdN)で う に,H(N)0は-Δxに
Δx=Δ
あ る こ と を 示 せ ば よ い,第2章
ユ ニ タ リ 同 値 で あ る の で,定
対 連 続 部 分 空 間 がL2(IRdN)で
定 理3.28),H(N)0に
理7.7に
あ る こ と を 示 せ ば よ い.証
絶
明 を 通 じ て,n=dN,
とす る.
のp. 299,
(3.60)式).た
だ し,
よ る か け 算 作 用 素 で あ る.k2の
に よ っ て 与 え ら れ る.し
で あ り,kjは
径1の
球 面)と
た が っ て
し,n次
([6] 運動量座標 関数
ス ペ ク トル 測 度 は
と し よ う. 面(半
で 示 した よ
よ っ て,-Δxの
を フ ー リ エ 変 換 とす れ ば,
kjに
関
と し, を(n-1)次
元 の 極 座 標 変 換
元 の単 位 球 を使 え ば
と 書 け る.た
だ し,dS(ω)は,
的 な 測 度 で あ る.こ た が っ て,任 n=1の
の 式 か ら,│B│=0な
意 の
ら ば,
は,-Δ
の標準 と な る.し
に 関 す る 絶 対 連 続 部 分 空 間 に は い る.
場 合 も 同 様.
定 理7.10と
系7.11
と な る,Sn-1上
定 理7.6に
■
よ り,次
関数f:IR→IRは
の 事 実 が 得 ら れ る:
ボ レ ル 可 測 で,
を 満 た す もの とす る.ま ラ シ ア ン と す る(n∈IN).こ 例7.9
た,Δ
な ら ば,常
を
の と き,f(-Δ)は
を 定 数 とす る と き,自
に
上の一般化 されたラプ
純 粋 に 絶 対 連 続 で あ る.
由 な 相 対 論 的 シ ュ レー デ ィ ン ガー 作 用 素
は 純 粋 に 絶 対 連 続 で あ る(∵
関 数
は系
7.11の 仮 定 を 満 た す*10). 例7.10
任 意 の 正 の 実 数 α>0に
対 して,(-Δ)α
と 同様 に して,関数
7.2.5
は純 粋 に絶 対 連 続 で あ る(∵
は 系7.11の
前例
仮 定 を満 た す こ とが 示 さ れ る).
自由 なデ ィラ ッ ク作 用 素 の純 粋 絶 対 連 続 性
前 著[6]の3.4.3項
を 考 察 し た.こ
で 自 由 な デ ィ ラ ッ ク作 用 素
こ で,αj,β
は4次
の エ ル ミー ト行 列 で 反 交 換 関 係
(7.30) (j,k=1,2,3)を
満 た す も の で あ り,m>0は
ラ ッ ク 粒 子 と い う― の 質 量 を 表 す.HDが *10 任 意 のB∈B1に
量 子 的 粒 子― い ま の 場 合,デ 働 く ヒ ル ベ ル ト空 間 は
対 して ,
に 注 意.右
辺 は│B│=0な
ら ば0で
あ る.
ィ で
あ る.
上の作用素Aか ら定 まる直和作用素
上 の作用素― も簡単の ため,し ば しば,単 にAと 記す*11.次 の事実 を証明 し よう. 定 理7.12 HDは
純 粋 に絶 対 連 続 で あ る.
証 明
を フ ー リ エ 変 換 と す る*12.し
た が っ て,
そ れ は ユ ニ タ リで あ り,作 用 素 の 等 式
(7.31) が 成 り立 つ.関
数
を
(7.32) に よ っ て 定 義 し,ω に よ る か け算 作 用 素 をω で 表 す.容 は 自 己 共 役 で 全 単射 で あ る.さ ら に,ω-1は
が 成 り立 つ*13.ま
た1±mω-1は
易 に わか る よ う に,ω
有界で あ り
非 負 の 有 界 な 自 己 共 役 作 用 素 で あ る.し
た
が って
(7.33) は 有 界 な 自 己 共役 作 用 素 で あ る.|k│に よ るか け算 作 用 素 を同 じ記号│k│で 表 す. 任 意 の
に対 して の
3.29の 証 明 にお け るK(ψ)の
補題
計 算 を参 照)で あ る か ら
(7.34) *11 こ う し て も
,ど の ヒ ル ベ ル ト空 間 の 作 用 素 と し て み て い る か を 明 晰 に把 握 して い れ ば 混 乱 は 生 じ な い で あ ろ う. *12 上 の 規 約 に し た が っ て , *13 実 際 に は等号 が 成 り 立 つ(演
習 問 題3)
.
は 定 義 域 をD(│k│-1)と
す る有 界 な 自 己 共 役 作 用 素 で あ る.D(│k│-1)は
あ る か ら,Sは
稠密で
上 の 有 界 な 自己 共 役 作 用 素 へ と一 意 的 に拡 大 され る.
こ の 拡 大 も 同 じ記号Sで
表 す .u±,Sを
用いて
(7.35) を 定 義 す る.こ
の と き,uは
上 の ユ ニ タ リ作 用 素 で あ り,(7.30)を
用 いる直接計算 に よ り
(7.36) を 証 明 す る こ とが で き る(こ れ は,αj,β の 具 体 的 な 行 列 表 示 を用 い な い で 証 明 さ れ る こ と を 強 調 し て お く).[6]のp. と お く と,こ
308で
み た よ う に ,uD=α1α2α3β
れ は エ ル ミ ー トか つ ユ ニ タ リ で あ り,UDβuD-1=-β
こ れ は,σ(β)=σ(-β)を つ.こ
307∼p.
れ と β2=I
意 味 す る か ら ,λ
,β ≠Iか
つ β=-Iと
∈ σ(β)⇔-λ
が 成 り立 つ. ∈ σ(β)が 成 り立
い う事 実 を使 え ば
(7.37) で あ り,固
有 値 ±1の 多 重 度 は そ れ ぞ れ2で
次 の ユ ニ タ リ行 列wが
と対 角 化 で き る.ゆ
あ る こ と が わ か る.し
た が っ て ,4
あって
え に,hDは
(7.38) と対 角 化 さ れ る.以
上 を ま とめ る と,UD:=F-1wuFと
お け ば,こ れ は
上 の ユ ニ タ リ変 換 で あ り,HDは
(7.39) とい う形 に対 角 化 され る こ とが わ か っ た.右 る こ とが 示 され る(演 習 問題4).ゆ
辺 の 作 用 素 は純 粋 に絶 対 連 続 で あ
え に題 意 が したが う.
■
7.3
散乱 理 論 の 一般 的枠 組 み
こ の節 で は,散 乱 理 論 の 一 般 的 枠 組 み を論 述 す る.ま ず,7.1節
で 言 及 した波
動 作 用 素 の厳 密 な定 義 を よ り普 遍 的 な形 で行 い,そ の 基 本 的性 質 を調 べ る.
7.3.1 波 動 作 用 素 H1,H2を
複 素 ヒ ル ベ ル ト空 間,Hj(j=1,2)をHj上
る.一 般 に,自 己 共 役 作 用 素Aの で 表 す.J:H1→H2を
の 自己 共 役 作 用 素 とす
絶 対 連 続 部 分 空 間 へ の 正 射 影 作 用 素 をPac(A)
有 界 線 形 作 用 素 とす る.7.1節
の 発 見 法 的 考 察 か ら次
の 定 義 へ と導 か れ る:作 用 素
(7.40) の強極限
(7.41) が 存 在 す る と き,こ
れ を 三 つ 組(H2,H1,J)に
の 定 義 は 次 の 二 つ の 点 に お い て,7.1節 な っ て い る:(ⅰ)ヒ
ル ベ ル ト空 間H1とH2が
う 作 用 素 が 導 入 さ れ て い る.い
付 随 す る 波 動 作 用 素 と い う.こ
で 言 及 した波 動 作 用 素 の概 念 の一 般 化 に 必 ず し も 同 じ で は な い.(ⅱ)Jと
う ま で も な く,H1=H2,J=Iの
用 素 論 に お け る 第 一 段 階 的 レ ヴ ェ ル で あ る.だ 理 的 に 自 然 で あ り,応
用 上 も 威 力 を 発 揮 す る.以
と き,「 波 動 作 用 素W±(H2,H1;J)は H1=H2,J=Iの
が,い
い
場合が波動作
ま 言 及 し た 一 般 化 は,数
下,(7.41)の
右 辺が存在す る
存 在 す る 」 と い う い い 方 を す る.
場 合 の 波 動 作 用 素 を
と記 す:
(7.42) 波 動 作 用 素 が 存 在 す る か 否 か はH2,H1,Jの
性 質 に よ る.波 動 作 用 素 の 存 在
条 件 につ い て は 後 ほ ど議 論 す る こ とに して,ま ず,波 動 作 用 素 が 存 在 した と し て,そ の 性 質 が どの よ う な もの で あ るか を調 べ る.
命 題7.13
波 動 作 用 素
が 存 在 す る と き,次
の(ⅰ)∼(ⅳ)が
成
り立 つ*14.
(ⅰ) す べ て のs∈IRに
対 して
(7.43) (ⅱ) す べ て の
に対 して
であ り
(7.44) す なわち
(7.45) (ⅲ) す べ て の
に対 して
(7.46) (ⅳ) EH2,
EH1を
レ ル 集 合B⊂IRに
そ れ ぞ れ,H2,
H1の
ス ペ ク トル 測 度 と す れ ば,す
べ てのボ
対 して
(7.47) 証 明 (ⅰ)任意 のs∈IRに
こ こ で,exp(isH1)とPac(H1)は 右 辺 は
可 換 で あ る こ と(∵
定 理7.3)に
注 意 す れ ば,
に 等 し い.
(ⅱ)(ⅰ)か ら,任
s→0と
対 して
意 の
に対 し て
す れ ば,右 辺 は
に 収 束 す る.し
ン の 定 理 に よ り, *14 以 下 の 諸 式 にお い て は ,±
で あ り,(7.44)が は複 号 同順 で 読 む.
た が っ て,ス 得 ら れ る.
トー
(ⅲ)こ
れ は(ⅱ)を
(ⅳ)(ⅲ)と
使 え ば 容 易 に わ か る.
ス トー ン の 公 式([6]の
上 の 命 題 か ら,波
定 理3.10)を
動 作 用 素 の 値 域 に つ い て,次
系7.14
用 い れ ば よ い.
■
の 基 本 的 な 結 果 が 導 か れ る:
は 存 在 す る と し よ う.こ
の とき
(7.48) 証 明 Pac(H1)の
冪等性 に より
(7.49) 任 意 のB∈B1に
対 し て,Pac(H1)とEH1(B)は
命 題7.13-(ⅳ)か
ら,任
意 の Ψ ∈H1に
Pac(H1)Ψ
∈Hac(H1)で
る の で,上
式 の 右 辺 は0と
れ らの事 実 と
対 して
あ る か ら,│B│=0な
ら ば,
であ
な り,し た が っ て,
こ れ は,
命 題7.15
可 換 で あ る.こ
を 意 味 す る.
波動 作 用 素
■
が と もに存 在 す れ ば
(7.50) 証 明 系7.14か
ら
(7.51) し た が っ て,任
意 の Ψ ∈H1,Φ
∈H2に
対 して
ゆ え に,(7.50)が
成 り立 つ.
■
H3を 複 素 ヒル ベ ル ト空 間,H3をH3上 とす る.も し,波 動 作 用 素
の 自己 共役 作 用 素 と し, が と も に存 在 す
る な らば,そ れ らの 合 成 が
が 考 え られ る.こ
れ
に付 随 す る波 動 作 用 素 に な る とい う調 和 的 関 係 につ い て 言 明
した の が 次 の定 理 で あ る. 定 理7.16
(結 合 法 則(chain
rule))
に存 在 す る と し よ う.こ の と き,
が とも も存 在 し
(7.52) が 成 り立 つ. 証 明 任 意 のt∈IRに
対 して
(7.53) と変 形 で き る.た (7.53)の
だ し,
右 辺 の 第 一 項 は,t→
± ∞ の と き,
強 収 束 す る か ら,R(t)が,t→ が 得 ら れ る.実
際,任
こ こで,系7.14を 作 用 素Jを
±∞
意 の Ψ ∈H1に
の と き0に
に 強 収 束 す る こ と を 示 せ ば(7.52)
対 して
用 い た.
■
有 界 作 用 素 の あ る ク ラ ス の 中 に制 限 した場 合 に は,波 動 作 用 素 は
次 の定 理 に述 べ る 意 味 で 良 い 性 質 を もつ こ とが 見 い だ され る. 定 理7.17
作 用 素Jに
つ いて
(7.54)
が 成 り立 つ と し,波 動 作 用 素 の(ⅰ),(ⅱ)が
が 存 在 す る と す る.こ
の と き,次
成 立 す る.
(ⅰ)
は,始 空 間 をHac(H1)と
す る 部 分 等 長 作 用 素 で あ る*15.
す なわ ち
(7.55)
(7.56) 特 に,
はHac(H1)か
リ 作 用 素 で あ る.こ
へ のユ ニ タ
の ユ ニ タ リ 作 用 素 を
(ⅱ) R± はHac(H2)の に お け る 部 分H2│R± (H1)acと
ら と書 く.
閉 部 分 空 間 で あ り,H2を
は,
簡 約 す る.さ
を 介 して,H1の
ら に,H2のR±
絶 対 連 続 部 分
ユ ニ タ リ 同 値 で あ る:
(7.57) 注 意7.3
条 件(7.54)は,H1=H2,J=Iの
場 合 に は,自
明 的 に 成 り 立 つ.
証 明 証 明 を 通 し て, (ⅰ)任 意 の Ψ ∈H1に
対 して
こ れ は(7.55),(7.56)を
意 味 す る.
(ⅱ) R± の 閉 性 は,W± す た め に,H2か の Ψ ∈H2に (7.46)に
らR±
の 部 分 等 長 性 か ら 出 る.H2のR± へ の 正 射 影 作 用 素 をP±
対 し て,
よ り,す
*15 部 分 等 長(等
と お く.
べ て のz∈C\IRに
距 離)作
用素については
と し よ う.し
と な る Φ ∈Hac(H1)が 対 して
,[5]の2.6.3項
を 参 照.
に よる簡 約 性 を示 た が っ て,任 存 在 す る.こ
意 れ と
した が っ て, す る.ゆ
こ れ は
え に,R±
はH2を
任 意 の
立 つ.こ
簡 約 す る. は,
き,(7.45)に
を意 味
よ り,
と 書 け る
.こ
で あ り
れ は,
を 意 味 す る.両
る か ら,そ
れ ら は 一 致 し な け れ ば な ら な い.
注 意7.4
(7.57)は
の と
が成 り 辺 と も に 自己 共 役 で あ ■
(7.58) す なわ ち,波 動 作 用 素 の存 在 は,H1,H2の
絶 対 連 続 スペ ク トル に 関 す る 一 つ の
関 係 を導 く.こ れ も散 乱 理 論 にお け る重 要 な結 果 の 一 つ で あ る.
7.3.2 散 乱 作 用 素 と完 全 性 7.1節 で は波 動 作 用 素 か ら散 乱 作 用 素 が 定義 され る こ と を示 唆 した.こ れ に な ら って,波 動 作 用 素
が存 在 す る と き
(7.59) に よ っ て 定 義 さ れ る 作 用 素 を(H2,H1,J)に operator)と
呼 ぶ.こ
の 作 用 素 の 基 本 的 な 性 質 は 次 の 定 理 で 与 え ら れ る.
定 理7.18
は 存 在 す る と仮 定 す る.
(ⅰ) S(H2,H1;J)とH1は
S(H2,H1;J)が (ⅱ) H1=H2の
付 随 す る 散 乱 作 用 素(scattering
強 可 換 で あ る.す
な わ ち,S(H2,H1;J)H1⊂H1
成 り立 つ. と きH2,H1と
強 可 換 な 任 意 の ユ ニ タ リ 作 用 素Uに
対 して
(7.60) 特 に,
な ら ば,S(H2,H1;J)とUは
可 換 で あ る.
(ⅲ) 条 件(7.54)を
仮 定 す る.こ
の と き,S(H2,H1;J)がHac(H1)上
のユニ
タ リ作 用 素 で あ る た め の 必 要 十 分 条 件 は
(7.61) と な る こ と で あ る.
証 明 証 明 を 通 し て, とお く. (ⅰ) Ψ
∈D(H1)と
す れ ば,(7.44)に
よ っ て,
(最 後 の 等 式 は Tを
有 界 作 用 素,Xを
成 り立 つ.こ れ と(*)に
に よ る).一
の 事 実 を(7.44)の よ り,SΨ
共 役 関 係 に 応 用 す る と .こ
∈D(H1)で
(ⅱ) 仮 定 に よ り,す
あ り,SH1Ψ=H1SΨ
べ て のt∈IRに
が 結 論 さ れ る.
対 し て
し た が っ て, 意 の Ψ,Φ ∈Hac(H1)に
こ れ は,(7.60)を
ゆ え に,任 対 して
意 味 す る.
(ⅲ) 条 件 の 十 分 性 は,定 め に,SがHac(H1)上
理7.17か
な る
が 存 在 す る.仮
が 存 在 す る.し を 意 味 す る.ゆ も
え ば よ い.
ら 明 ら か で あ ろ う.条
で ユ ニ タ リで あ る と し よ う.任
と な る
れ は,
般 に,
稠 密 な 定 義 域 を も つ 作 用 素 と す れ ば(TX)*=X*T*が
え に
た が っ て,
件 の 必 要 性 を示 す た
意 の Ψ ∈R+に
定 に よ り,
対 して と こ
こ の 逆 の 包 含 関 係 を 示 す に は,
上 の ユ ニ タ リ で あ る こ と に 注 意 し て,同 様 の 議 論 を 行 ■
注 意7.5
定 理7.18は,Uが
U*JU=Jが
量 子 系 の 対 称 性 を 表 す 群 の ユ ニ タ リ 表 現 で あ り,
成 り 立 つ 場 合,そ
の 表 現 の 不 変 部 分 空 間 に お い て,散
考 察 す る こ と を 可 能 に す る(演 習 問 題7を
散 乱 作 用 素S(H2,H1;J)がHac(H1)上 ク トル Ψ,Φ ∈Hac(H1)に
乱作 用素 を
参 照).
の ユ ニ タ リ 作 用 素 で あ る と き,単
対 し て
の 散 乱 の 遷 移 確 率 振 幅 と い い,そ
位 ベ
を 状 態 Ψ か ら状 態 Φ へ
の 絶 対 値 の2乗
を状
態 Ψ か ら 状 態 Φ へ の 散 乱 の 遷 移 確 率 と 呼 ぶ*16. 条 件(7.54)の
も と で,性
質(7.61)が
意 味 で 漸 近 的 に 完 全 で あ る,ま t=-∞
で の 漸 近 的 配 位 の 全 体 とt=∞
よ っ て,1対1に
で の漸 近 的 配位 の全 体 が散 乱 作 用 素 に
は,「 弱 い 漸 近 的 完 全 性 」 よ り も強 い 漸 近 的 完 全
性 の 概 念 を 考 え る こ と が で き る.こ た 散 乱 の 描 像 に 戻 ろ う.今
れ を 説 明 す る た め に,再
度 は,Hs,K0の
簡 単 の た め,H1=H2,J=Iと
と き,"時
か わ り にH2,H1を
す る).7.1節
記 述 さ れ る 系― こ れ を 仮 にH2-系
の 散 乱 に 関 す る もの で あ っ た.言
に お け るH2-系
と い う 型 の 状 態―
が"時 か し,も
"時 間 漸 近 的 に 自 由 な"状
考 え る(た
で 記 述 し た の は,全
い 換 え れ ば,初
だ し,
ハ ミ ル トニ ア の
期 条 件 を,t→-∞
に お い て,
の 時 間 発 展 を 問 題 に し た の で あ っ た.
の 任 意 の 散 乱 状 態―
間 漸 近 的 に 自 由 な"状 し,t→-∞
で 略述 し
で あ る と した 場 合
そ の よ う な 状 態 に 設 定 し た 場 合 のH2-系 し か し,t→-∞
び,7.1節
と 呼 ぼ う― の 状 態 が,t→-∞
間 漸 近 的 に 自 由 な"状 態
事 柄 で は な い.し
弱 い の 場 合,
対 応 づ け ら れ る.
そ の 命 名 が 示 唆 す る よ う に,実
ン がH2で
成 り立 つ と き,W±(H2,H1;J)は
た は 弱 い 漸 近 的 完 全 性 を も つ と い う.こ
態 に漸 近 す る か ど うか は 自明 な
に お け るH2-系
態 で つ く さ れ る とす れ ば
,任
のすべての散乱状態が 意 の Ψ ∈Hac(H2)に
対
して
とな る
が存 在 しな けれ ば な らない.こ れ は
を意 味 す る か ら, *16 この 命 名 の背 後 にあ る物 理 的 な描 像 につ いて は7
と な る.こ の逆 の 包 含 関 係 は
.1節 で ふ れ た.散 乱作 用 素 の ユ ニ タ リ 性 は散 乱 の過 程 にお け る金 確 率 の 保 存 の た め に要 請 され る.
す で に知 ら れ て い る か ら(系7.14),結
局
が成
り立 つ こ と に な る.同 様 に,t→+∞
に お け るH2-系
の散 乱 状 態 の 全 体 が"時
間漸 近 的 に 自由 な"状 態 で つ くされ る とす れ ば, で な け れ ば な らな い. 以 上 の発 見 法 的 考 察 か ら次 の定 義 へ と到 る: 定 義7.19
条 件(7.54)が
成 立 し,波 動 作 用 素
が存在 する と
す る.こ の と き
(7.62) が 成 り立 つ な ら ば,波
動 作 用 素
は 完 全 で あ る と い う.
こ の 完 全 性 の 条 件 は,重
要 な 結 果 を 導 く:
定 理7.20
満 た さ れ,波
条 件(7.54)が
つW±(H2,H1;J)は
動 作 用 素W±(H2,H1;J)は
完 全 で あ る と し よ う.こ
(ⅰ) W±(H2,H1;J)はHac(H1)か
の と き,次 の(ⅰ),(ⅱ)が
らHac(H2)へ
存 在 し,か 成 り立 つ:
の ユ ニ タ リ作 用 素 で あ り
(7.63) し た が っ て,特
に
(7.64) (ⅱ) S(H2,H1;J)はHac(H1)上
の ユ ニ タ リ作 用 素 で あ る.
証 明 (ⅰ)W±(H2,H1;J)が
完 全 で あ れ ば,
の 事 実 と 定 理7.17-(ⅱ)か
ら 題 意 が 成 立 す る.
(ⅱ)定 理7.18-(ⅲ)に
注 意7.6 こ う し て,ス
こ
よ る.
(7.64)は,H1,H2の
■
絶 対 連 続 ス ペ ク トル が 等 し い こ と を 意 味 す る.
ペ ク トル 理 論 の 観 点 か ら み る と,散
ス ペ ク トル の 同 定 に 使 う こ と が で き る.
乱 理 論 と い う の は,絶
対連続
た と え ば,シ
ュ レ ー デ ィ ン ガ ー型 作 用 素
の 場 合 で い え ば,
に付 随 す る 波 動作 用 素 が 完 全 とな る よ う なVの
ク ラ ス に対 して は
と同 定 で きる わ け で あ る. こ の 意 味 に お い て,散 乱 理 論 とい う の は,純 数 学 的 に は,絶 対 連 続 ス ペ ク ト ル に 関 す る摂 動 論 の 一 つ の重 要 な ク ラ ス とみ る こ とが で き る. 定 義7.19に
お け る完 全 性 の概 念 よ り もさ らに強 い完 全 性 の概 念 を定 義 す る こ
とが で き る.す な わ ち
(7.65) が 成 り 立 つ と き,W±(H2,H1;J)は
漸 近 的 に 完 全 で あ る と い う.実 際,容
わ か る よ う に,W±(H2,H1;J)が か つHsc(H2)=0で 定 義 さ れ る,波 間"に
漸 近 的 に 完 全 で あ る こ とは そ れ が完 全 で あ り
あ る こ と と 同 値 で あ る.し 動 作 用 素 の 完 全 性 は,弱
た が っ て,定
義7.19に
よっ て
い 意 味 で の 完 全 性 と 漸 近 的 完 全 性 の"中
あ た る 完 全 性 の 概 念 で あ る.
7.4
前 節 に お い て,散
波動 作 用 素 の存 在 に対 す る判 定 条件
乱 理 論 の 一 般 的 構 造 が 明 ら か に さ れ た の で,次
素 の 存 在 条 件 に つ い て 考 察 し よ う.波 る に は,任 t→
易 に
意 の Ψ ∈Hac(H1)に
± ∞ の と き,tに
動 作 用 素W±(H2,H1;J)の
対 して,ベ
に波 動 作 用 存 在 を証 明す
ク トル
が,
関 して コ ー シ ー 列 を な す こ と,す な わ ち, を 示 せ ば よ い.し
い う 条 件 を 満 た せ ば(*)が
た が っ て,問
題 は,H1,H2,Jが
どう
成 り立 つ か を 調 べ る こ と で あ る.
そ の た め の 一 つ の ア イ デ ア は,IR上
の 関 数
お け る 極 限 の 存 在 を 示 す 次 の 方 法 か ら 示 唆 さ れ る:も を 満 た す と す れ ば,任
意 の
に し,fが
連 続微分可能 で
に対 して
s
場 合 も 同 様.し
た が っ て,limt→
こ の 考 え 方 自体 は,ヒ 想 に 基 づ い て,波 る.そ
±∞f(t)は
存 在 す る.
ル ベ ル ト空 間 値 関 数 の 場 合 へ と拡 張 さ れ う る.こ
動 作 用 素 の 存 在 を 示 す 方 法 は ク ッ ク(Cook)の
の着
方 法 と呼 ば れ
れ は 次 の よ う に 定 式 化 さ れ る.
定 理7.21
Hac(H1)の
稠 密 な 部 分 集 合Dで
以 下 の 条 件 を満 た す もの が 存 在 す
る と す る:
(ⅰ) D⊂D(H1).
(ⅱ) 各 Ψ ∈Dに
対 して
関 数:
で あ り,IR上 は 強 連 続 で あ る.さ
のH-値
らに
(7.66) こ の と き,W±(H2,H1;J)は
存 在 し,す
べ て の Ψ ∈Dに
対 して
(7.67) が 成 り 立 つ.
証 明 Ψ ∈Dと
し,
とお く.仮 定 に よ り,
で あ る の で,Ψ(t)はtに
つ い て 強 微 分 可 能 で あ り,
が 成 り立 つ.こ
れ か ら,
に 対 して
(7.68) した が って
(7.66)に は,t→ Hac(H1)で
よ り,右 辺 は,
の と き0に
∞ の と き,コ ー シ ー 列 で あ る.ゆ 稠 密 で あ り,
収 束 す る.し
え に,
た が っ て, は存 在 す る .Dは
で あ る の で,極 限 論 法 に よ り,い ま得
た 結 果 は,す べ て の Ψ ∈Hac(H1)に
拡 張 さ れ る.一
方,Ψ
∈Hac(H1)⊥
な ら ば,
で あ る か ら, こ う し て,W+(H2,H1;J)の と す れ ば,(7.67)に
存 在 が 示 さ れ る.(7.68)に お け る"+"の
お い て,t=0,t'→
式 が 得 ら れ る.W_(H2,H1;J)の
∞
存 在 とそ
の 表 示 に つ い て も 同 様 で あ る.
系7.22
H1=H2,J=Iの
Hac(H1)の
■
場 合 を 考 え,H2―H1はH1-有
稠 密 な 部 分 集 合Dで
界 で あ る と す る.
以 下 の 条 件 を 満 た す もの が 存 在 す る と す る:
(ⅰ) D⊂D(H1). (ⅱ) 各 Ψ ∈Dに
対 して
(7.69) こ の と き,W±(H2,H1)は
存 在 し,す
べ て の Ψ ∈Dに
対 して
(7.70) が 成 り立 つ.
証 明 T:=H2−H1と 定 数 a,b〓0が
お く.仮 あ っ て,
し た が っ て,任
意 の Ψ ∈D(H1)に
ゆ え に,H1-値
関 数:
H1, H2に
定 に よ り,D(H2)=D(H1)⊂D(T)で
対 し て,定
理7.21の
あ り, が 成 り 立 つ.
対 して
は 強 連 続 で あ る.以
上 に よ っ て,い
仮 定 は す べ て 満 た さ れ る.し
た が っ て,結
まの 論 が
し た が う. 例7.11
■
7.1節 で 考 え た シ ュ レー デ ィ ン ガ ー 作 用 素HS=K0+Vを とす る . この と き,VはK0に
関 して 無 限 小 で あ り,HSは
考 え, 自 己 共 役 で 下 に有 界
で あ る こ と は す で に み た(第2章 で あ る の で,DはHac(K0)で ψ ∈Dに
を 参 照).D=C∞0(IR3)と
お く,Hac(K0)=L2(IR3)
稠 密 で あ り,D⊂D(K0)が
成 り立 つ.さ
ら に,任
意 の
対 して
他 方,
の 具 体 的 な 表 示([6]の
定 理3.42-(ⅱ))を
用いると
し た が っ て, は
のtに
満 た さ れ る.ゆ
関 す る 連 続 性 か ら した が う.よ
え に,W±(HS,K0)は
っ て,系7.22の
仮定 がすべ て
存 在 す る.
7.5 波動 作 用 素 の完 全性 に対 す る判 定 条件
波 動 作 用 素 の 完 全 性 の 問 題 は,次 の 命 題 に よ っ て,波 動 作 用 素 の 存 在 の 問題 へ と還 元 さ れ う る. 命 題7.23
条 件(7.54)が
成 立 し,W±(H2,H1;J)は
存 在 す る とす る.さ
らに
(7.71) を 仮 定 す る.こ
の と き,W±(H1,H2;J*)が
存 在 す れ ば,W士(H2,H1;J)は
完
全 で あ る.
証 明 W±(H1,H2;J*)が
存 在 し た と す る.こ
の と き,波 動 作 用 素 の 結 合 法 則 に
よ っ て
(最
後 の 等 号 は(7.71)に
よ る).し
た が っ て,
れ と系7,14に
よ っ て,W±(H2,H1;J)の
命 題7.23に
よ っ て,適
の 存 在 を 示 せ ば,波 は,応
こ
完 全 性 が 導 か れ る.
■
切 な 仮 定 の も とで,W±(H2,H1;J),W±(H1,H2;J*)
動 作 用 素 の 完 全 性 が 示 さ れ る こ と に な る.だ
用 上 そ れ ほ ど 強 力 な もの で は な い.た
と え ば,シ
が,こ
の方法
ュ レー デ ィ ンガ ー型 作 用
素 へ の 応 用 に お い て は,H1は Vの
自 由 ハ ミ ル トニ ア ン で あ り,H2は
入 っ た ハ ミル トニ ア ン で あ る(V:=H2-H1が
の 場 合,e-itH1は
陽 な 表 示 を もつ の で,こ
み た よ う に, て,適
当 なVの
ク ラ ス に 対 して は,ク
れ を 利 用 す る こ と に よ り,例7.11で たが っ
ッ ク の 方 法 に よ っ て,W±(H2,H1)の
存
方,e-itH2は
陽 な 表 示 を もつ と は 限
対 す る 陽 な 表 示 が み つ か ら な い 場 合 に は,W±(H1,H2)の
在 を 示 す の は 一 般 に は 難 し く な る.し 7.23は
ポ テ ン シ ャ ル を 表 す).こ
を 評 価 す る こ とが で き る.し
在 を そ れ ほ ど 難 な く示 す こ と が で き る.他 ら な い.eーitH2に
ポ テ ン シ ャル
か し,こ
そ れ な りの 価 値 と有 用 性 を も ち う る.特
ス ペ ク トル 理 論 に お い て そ う で あ る.だ
が,こ
存
う し た 難 点 に も 関 わ ら ず,命 に,抽
題
象 的 な レ ヴ ェル にお け る
の 側 面 に つ い て は,こ
れ以上立
ち 入 ら な い.
7.6 散 乱 作 用素 の 積 分表 示 と漸 近展 開
散 乱 行 列 を 具 体 的 に 計 算 す る た め の 有 用 な 諸 式 を 導 く.本
質 的 な事 柄 だ け に
集 中 す る た め に,H1=H2=H,J=Iと
い う 場 合 を 考 え る*17.H0,
の 自 己 共 役 作 用 素 と しHI:=H-H0と
お く.し
HをH上
たがって
(7.72) 摂 動 論 の 観 点 か ら は,HIはH0に
対 す る 摂 動 と み る こ とが で き る.次
の仮 定 の
も と で 論 を 進 め る: 仮 定(H) (ⅰ) HIはH0-有
界 で あ る.す
な わ ち,D(H0)⊂D(HI)で
あ り,定 数a,b〓0
が あ って
(7.73) が 成 り立 つ. (ⅱ) Hac(H0)の
稠 密 な部 分 集 合Dで
(a) D⊂D(H0).(b)
各 Ψ ∈Dに
以 下 の 条 件 を満 た す もの が存 在 す る: 対 して
*17 よ り一 般 の 場 合 も ま っ た く並 行 的 に扱 う こ と が で き る .
こ の と き,系7.22に
よ り,波 動 作 用 素W±(H,H0)は
存 在 し,す べ て の Ψ ∈D
に対 して
(7.74) が 成 り立 つ.こ
の節 を通 して
(7.75) と お く. 命 題7.24
仮 定(H)の
も と で,す
べ て の Ψ,Φ ∈Dに
対 して
(7.76) (7.77) 証 明 W+の
部 分 等 長 性 を用 い る と
した が っ
て, (7.74)に
よ り
(7.78) こ れ を(*)に 代 入 す れ ば
を 得 る.さ (7.76)が て,上
ら に,
(命 題7.13-(ⅰ))に
得 ら れ る.(7.77)は,等
注 意 す れ ば,
式
を用 い
と 同 様 に して 導 か れ る.
式(7.76)ま
た は(7.77)は,散
■
乱 行 列 の 計 算 が 本 質 的 に 波 動 作 用 素W±(H,H0)
の い ず れ か の 計 算 に 帰 着 で き る こ と を 示 す.こ
の 構 造 を 用 い て,次
に散乱行列
の 近 似 式 を 導 出 し よ う. 定 理7.25
仮 定(H)に
加 え て,す
変 に す る と す る:e-itH0D⊂D.こ
べ て のt∈IRに の と き,す
対 し て,e−itH0はDを
べ て の Ψ,Φ ∈Dに
不
対 して
(7.79)
ただ し
(7.80) 証 明 (7.76)の
右 辺 のW+に(7.74)を
代 入 す れ ば よ い.
(7.79)か ら,散 乱 行 列 要 素 に対 して,摂 動HIに
関 して1次
■
の 漸 近 展 開 を導
くこ とが で きる: 系7.26
定 理7.25と
同 じ仮 定 の も と で,κ∈IRに
対 して
(7.81) と お き,
と す る.こ
の と き,任
意 の Ψ,Φ∈Dに
対 して
(7.82) た だ し, す,κ
は
κ∈IR(C>0は
定 数)を
満た
の 関 数 を 表 す.
証 明 (7.79)の 右 辺 の第 三項 の 絶 対 値 は次 の よ う に評 価 で きる:
したが っ て,題 意 が 成 立 す る.
■
式(7.82)は,│κ│が
が
十 分 小 さい な らば,散 乱作 用 素 の行 列 要 素
(7.83) と近 似 され る こ とを意 味 す る.こ れ は,具 体 的 な モ デ ル にお い て,実 験 と比 較 す る際 に使 わ れ る第 一 次 近 似 式 で あ る*18. *18 こ こで や
っ た こ とは,物 理 の 散 乱 理 論 に お い て発 見 法 的 に使 わ れ る"近 似 式"の 一 つ を
抽 象的 ・普 遍 的 な枠 組 み で厳 密 に基 礎 づ け た こ とに もな る.
注 意7.7
付 加 的 な 条件 を付 け れ ば,同 様 に して,
任 意 の次 数 まで,漸
は,κ に関 して,
近 展 開 可 能 で あ る こ とが 示 され る.
ノ
ー
ト
量 子 力 学 の 数 学 的 に 厳 密 な散 乱 理 論 に つ い て は す で に 良 書 が 多 く出 て い る の で(た と え ば,[1,
7, 8, 9, 10, 12]),本
書 で は ご く基 本 的 な事 柄 だ け を叙 述 した.シ
デ ィ ン ガ ー 型 作 用 素 に付 随 す る波 動 作 用 素 の解 析 は,邦 書 で は,[10]に て い る.デ
ィ ラ ッ ク作 用 素 に 関 す る散 乱 理 論 に つ い て は[15]が
て の 論 述 は,た
こ に 引 用 され て い る 原 著 論 文 を 参 照).物
と え ば,[7]の
§5.5や[15]の
詳 し く書 か れ
参 考 に な る で あ ろ う.
量 子 場 の 理 論 に お け る 波 動 作 用 素 の 取 り扱 い の 例 の 一 つ が[14]の (よ り詳 し くは,そ
ュ レー
§17.5に み ら れ る
理 量 の 漸 近 的挙 動 に つ い
§8.2に み られ る.
第7章 演習 問 題 H,Hj(j=1,…,N)は 1. AjをHjの
複 素 ヒ ル ベ ル ト空 間 を表 す とす る. 自 己 共 役 作 用 素 とす る.こ
の と き,自 己 共 役 作 用 素
の ス ペ ク トル 測 度 は
に よ って与 え られ るこ
と を 証 明 せ よ. 2. 定 理7.8を
証 明 せ よ.
3. (7.32)で 定 義 さ れ る 関 数 ω か ら定 ま る, て,
上 の か け 算 作 用 素ω に つ い
を証 明 せ よ.
4. AjをHj上
の 純 粋 に 絶 対 連 続 な 自 己 共 役 作 用 素 と す る.こ
ベ ル ト空 間
上 の 自 己 共 役 作 用 素
の と き,直 和 ヒル
も純 粋 に 絶 対 連 続 で あ る こ
と を 示 せ. 5. H1をH上
の 自 己 共 役 作 用 素 とす る. を
を ひ と つ 固 定 し,写 像 に よ っ て 定 義 す る.
(ⅰ) Pφ は 有 界 な 自 己 共 役 作 用 素 で あ り, 注:作
用 素Pφ
で あ る こ と を示 せ.
をベ ク トル φ に 付 随 す る 階 数1の
作 用 素 とい う.
(ⅱ) (ⅰ)と加 藤-レ リ ッ ヒの 定 理 に よ り, あ る.Hac(H1)の
稠 密 な 部 分 集 合Dで
は 自己 共役 作 用 素 で 次 の 性 質(a),
(b)を 満 た す も の
が あ る と す る:(a)D⊂D(H1);(b)各 C>0が
対 して 定 数 α>1と
あ って
こ の と き,W±(H2,H1)は
6. L2(IR)上
Ψ∈Dに
の 座 標 変 数xに
存 在 す る こ と を 示 せ.
よる か け 算 作 用 素 をxと
す る.
(急 減 少 関
数 の 空 間)を 任 意 に 一 つ 固 定 し(f≠0),fに
付 随 す る 階 数1の
とす る.
に よ り,自
と お く(こ れ は,前問
作 用 素 をPf
己 共 役).こ
の とき,
は 存 在 す る こ と を示 せ. 7. Hsを7.1節 Vは
で 考 察 し た シ ュ レー デ ィ ン ガ ー 型 作 用 素 と し,そ
回 転 対 称 で あ る とす る.波
動 作 用 素
(散 乱 作 用 素)と お く. 群SO(3)の
を3次
元 回転
にお け る 強 連 続 ユ ニ タ リ表 現 と す る: (第4章
す べ て の
に対 して,
ち,SとUrot(g)は 注:こ
のポ テ ンシ ャル
は 存 在 す る と仮 定 し,
の と き,
可 換 で あ る こ と を証 明 せ よ.
の 事 実 に よ っ て,ポ
テ ン シ ャルVに
て い る と き は,散 乱 作 用 素 を 表 現Urotの
つ い て 要 求 さ れ る仮 定 が 満 た さ れ 不 変 部 分 空 間― 具 体 的 に は,4.10節
で 登 場 した 閉 部 分 空 間 ― 理 論 に お い て,い
を参 照).こ
が 成 立 す る こ と,す な わ
へ と 簡 約 で き る.物 理 の 散 乱
わ ゆ る 部 分 波 解 析(partial
wave
analysis)と
呼 ばれ る手続
きの 数 学 的 に厳 密 な根 拠 は こ こ に あ る.
関連 図書
[1] W.O.Amrein,J.M.Jauch Mechanics,W.A.Benjamin,1977.
and
K.B.Sinha,Scattering
Theory
[2] 新 井 朝 雄,『
ヒ ル ベ ル ト空 間 と量 子 力 学 』,共 立 出 版,1997.
[3] 新 井 朝 雄,『
フ ォ ッ ク 空 間 と 量 子 場 上 』,日 本 評 論 社,2000.
[4] 新 井 朝 雄,『
フ ォ ッ ク 空 間 と 量 子 場 下 』,日 本 評 論 社,2000.
in Quantum
[5] 新 井 朝 雄 ・江 沢 洋,『 量 子 力 学 の 数 学 的 構 造Ⅰ 』,朝 倉 書 店,1999. [6] 新 井 朝 雄 ・江 沢
洋,『 量 子 力 学 の 数 学 的 構 造Ⅱ 』,朝 倉 書 店,1999.
[7] H.L.Cycon,R.G.Froese,W.Kirsch
and
B.Simon,Schrodinger
Operators,
Springer,1987. [8] J.Derezinski N-Particle
and C.Gerard,Scattering Systems,Springer,1997.
Theory
of Classical
and
Quantum
[9] T.Kato,Perturbation [10] 黒 田 成 俊,『 [11] M.Reed
and
tional
B.Simon,Methods
and
tering
Linear
Operators,Springer,2nd
Ed.,1976.
波 書 店,1979. of
Modern
Mathematical
Physics I:Func
B.Simon,Methods
of
Modern
Mathematical
Physics Ⅲ:Scat
of
Modern
Mathematical
Physics
Theory,1979.
[13] M.Reed
and of
B.Simon,Methods
Operators,Academic
[14] H.Spohn,Dynamics bridge
for 』,岩
Analysis,1972.
[12] M.Reed
ysis
Theory
ス ペ ク ト ル 理 論Ⅱ
University
[15] B.Thaller,The
of
Charged
Particles
Press,2004. Dirac
Ⅳ:Anal
Press,1978.
Equation,Springer,1992.
and
Their
Radiation
Field,Cam
8 虚数時間 と汎関数積分の方法
量 子 系 の時 間発展 を司 どる強 連 続1パ
ラ メー ターユ ニ タ リ群 は,そ の時 間 パ ラ メー ター
を虚 数 へ と拡 張 す るこ とに よ り,よ り一般 的 な範疇 に属 す る作 用 素 の族 へ と"変 容"す る.特 に純 虚数 時 間へ の 移行 に よ り,そ れ は,熱 半群 と呼 ばれ る対 象 へ と姿 を変 え る. そ して,こ こ にお い て 興 味 深 い 事 実 に出 会 う.す なわ ち,ハ ミル トニ ア ンが シ ュ レ ー デ ィ ンガ ー型 作 用 素 や ボ ソ ン フ ォ ッ ク空 間 上 の第 二 量 子 化 作 用 素 に,あ る ク ラ ス の摂 動 を加 え てで きる作 用 素 の場 合 に は,こ の 熱半 群 は,そ れ ぞれ の場 合 に応 じて,あ る種 の確 率 過程 を用 い て表 示 され る,と い う数理 的 構造 の存 在 で ある.こ の表 示 に は,関 数 を いわ ば積 分 変 数 とす る よ うな無 限 次元 の積分― 汎 関 数 積分― が 関 与す る.こ う して, 実 時 間 か ら純 虚 数 時 間へ の"解 析 接 続"に よ り,量 子 力 学 と確 率 過 程論 あ るい は汎 関数 積 分 論 との関 わ りが 顕 在 化す る.こ の構 造 は,有 限 自由度 の 量子 力 学 お よ び量 子場 の理 論 にお け る諸 々 の具 体 的 なモ デ ル の解 析 に おい て重 要 な役 割 を演 じる.本 章 はそ の入 門 的 部 分 を叙 述 す る もの で あ る.
8.1 は じめ に― 量 子 動 力 学 の虚 数 時 間へ の 拡 張
Hを 量 子 系 の ヒ ル ベ ル ト空 間 と し,Hを と き,系 の 状 態 の 時 間発 展 は−Hに ユ ニ タ リ群
こで,時
ラ メーター
間 パ ラ メ ー タ ーtを 実 数 に 限 定 す る必 要 は
間パ ラ メ ー ターt∈IRを
数)ま で 拡 張 して み る.す λ∈IR,に 作 用 素
よ っ て 生 成 され る強 連 続1パ
で 与 え られ る(状 態 の 時 間発 展 に関 す る公 理) .だ が,
よ り普 遍 的 な観 点 に立 つ な らば,時 な い.そ
そ の ハ ミル トニ ア ン とす る.こ の
な わ ち,e-izHを
虚 数
(実 数 で な い 複 素
考 え る の で あ る.こ
よ っ て 定 義 さ れ るIR上
の作 用 素 は,
の 連 続 関 数ezに
と して定 義 され る(EHはHの
同伴 す る ス ペ ク トル
測 度).詳
し く書 け ば次 の 通 りで あ る:
(8.1) (8.2) こ の 型 の 作 用 素 をHに
関 す る 指 数 型 作 用 素 と い う*1.実
ら い え ば,e-izHは"虚
数 時 間"zで
の"状
時 間 との ア ナ ロ ジ ー か
態 の 時 間 発 展"を
与 え る と解 釈 さ れ
る*2. と お き,
と す れ ば,作
用 解 析 に よ り,
と 書 け る.[3]の
定 理2.71-(iv)に
で あ る か ら, Tの
し た が っ て,(*)は
極 分 解 を 与 え る 式 で あ り,esHは
そ の 絶 対 値 部 分 で あ る(esHが
役 作 用 素 で あ る こ と は 作 用 素 解 析 か ら た だ ち に わ か る).す tを 実 時 間 と 解 釈 す る と き,e-itHは で は,絶
対 値 部 分esHは
よ り,
で に 述 べ た よ う に,
量 子 系 の 実 時 間 に 関 す る 発 展 を 統 制 す る.
何 を 記 述 す る で あ ろ う か.こ
象 徴 的 な 意 味 で 純 虚 数 時 間z=isに
非 負 自 己共
う し て,私
た ち は,esH―
お け る時 間発 展 を支 配 す る作 用 素 ― とい う
指 数 型 作 用 素 を研 究 す る課 題 へ と導 か れ る . 新 しい対 象 を研 究 す る に 際 して は 簡 単 な 場 合 か ら始 め る の が 筋 で あ る.そ 場 合 を 考 察 し よ う.し が 有 界 に な る か,で
命 題8.1
(ⅰ) Hは
Hは
た が っ て,最
あ る.次
こ で,ま
ず,esHが
初 の 問 い は,ど
有 界 にな る よ う な
の よ う な 条 件 の も と でesH
の 命 題 が 成 り立 つ:
非 有 界 で あ る と す る.
下 に 有 界 で あ る と し よ う.こ
十 分 条 件 はs〓0で
あ る.こ
の と き,esHが
の 場 合,D(esH)=Hで
有 界 で あ る た めの 必 要 あ り
(8.3) た だ し,E0(H):=infσ(H).
*1 以 下 で 証 明 す る 命 題8 *2 こ の 言 い 回 し は 物 理 現 象 と"接
,さ
.1に
お い て 明 ら か に な る よ う に,e-izHは
し あ た り,単
続 す る"か
は,こ
な る 象 徴 で しか な い,eーizHが,実 の 段 階 で は 不 明 で あ る.
有 界 と は 限 ら な い. 際 に,ど
の よう に
(ⅱ) Hは
上 に 有 界 で あ る と し よ う.こ
十 分 条 件 はs〓0で
あ る.こ
の と き,esHが
の 場 合,D(esH)=Hで
有 界 で あ るた め の 必 要 あ り
(8.4) が 成 り立 つ. (ⅲ) Hが esHは
下 に も上 に も 有 界 で な い な ら ば,す
べ て のs∈IR\{0}に
対 し て,
非 有 界 で あ る.
証 明 (ⅰ) 仮 定 に よ り,E0(H)>-∞ が っ て,H:=H-E0(H)と (必 要 性)esHは 有 界 で あ る.し
お け ば,Hは
た が っ て,定
数Rn>nが
R(EH([n,Rn]))に べ て のn∈INに
s〓0と
た が っ て,
易 に わ か る よ う に,す
にs>0と
す れば
れ は 矛 盾 で あ る.
な け れ ば な ら な い. λ〓0で
∈D(esH)=D(esH)お
D(esH)=Hお
よ び(8.3)が
(十 分 性)s〓0と
esH=e(-s)(-H)が
意 の Ψ ∈Hに
対 して
意 味 す る.ゆ
えに
成 り立 つ. の と き,前
段 の 内 容 は 題 意 を 意 味 す る.
非 有 界 で 下 に 有 界 で あ る.し
た が っ て,(ⅰ)に
有 界 で あ る た め の 必 要 十 分 条 件 は-s〓0,
の と き,‖esH‖〓e-sE0(-H)が
あ る か ら,(8.4)が
あ る か ら,任
よ び‖esH‖〓1を
す る.こ
(ⅱ) こ の 場 合 に は,-Hは
あ り,こ
と れ る.容
ま,仮
意 のn∈IN
成 り立 つ.し
い く ら で も大 き く と れ る か ら,こ
す る と,e2sλ〓1,∀
こ れ は,Ψ
上 に 有 界 で な い か ら,任
属 す る 単 位 ベ ク トル Ψnが
し た が っ て,esn〓C.nは ゆ え にs〓0で
あ っ て,
あ っ て,EH([n,Rn])≠0が
対 し て Ψn∈D(esH).い
た
の と き,esH=esHe-sE0(H)も
数C>0が
成 り立 つ.Hは
成 り立 つ.し
非 負 の 自 己 共 役 作 用 素 で あ る.
有 界 で あ る と し よ う.こ
,∀ Ψ ∈D(esH)が に 対 し て,定
で あ り,H〓E0(H)が
成 り立 つ.
よ り,
i.e., s〓0で
成 り立 つ.E0(-H)=-supσ(H)で
(ⅲ)(ⅰ)と(ⅱ)か 命 題8.1に
ら の単 純 な帰 結 で あ る.
よ り,Hが
下 に 有 界 な 場 合 に は,e-sH(s〓0)が
本 的 対 象 の 一 つ と し て 措 定 さ れ る*3.研 用 素 は,Hに は,作
■ 解 析 す べ き基
究 を 実 際 に 進 め る こ と に よ り,こ
関 す る い ろ い ろ な 情 報 を担 っ て い る こ とが わ か る.こ
用 素e-sHか
らHや
の作
の 章 の 目的
量 子 系 の特 性 に 関 す る情 報 が い か に 引 き出 され うる
か を 入 門 的 な レ ヴ ェ ル で 示 す こ とで あ る.ま
ず,次
の 節 に お い て,e-sHの
基本
的 な 性 質 を調 べ る.
注 意8.1 e-izHΨ
任 意 の Ψ ∈ ∩a∈IRD(eaH)に に よ っ て 定 義 で き る.作
で あ る.さ
ら に,FΨ
はC上
対 して,写
像FΨ:C→HをFΨ(z):=
用 素 解 析 に よ り, で解析的 であ り
(8.5) が 成 り立 つ こ と が わ か る(演
習 問 題1).こ
e-itHΨ
のC全
e-itHの
解 析 接 続 と み る こ と が で き る.
体 へ の 解 析 接 続 で あ る こ と を 示 す*4.こ
8.2
8.2.1 熱 Aを
れ は,e-izHΨ
半
熱 半 群,ス
ペ ク トル の 下 限,基
がIR上
のH-値
関数
の 意 味 で,e-izHは
底状態
群
ヒ ルベ ル ト空 間H上
の 自己 共 役 作 用 素 で 下 に有 界 な もの と しよ う.こ の
と き,前 節 で述 べ た よ う に,任 意 のt〓0に
対 して,H上
の 有 界 な 自己 共 役 作
用素
(8.6) が 定 義 され る(前 節 で のHをAと
した もの*5).作 用 素 の族{TA(t)}t〓0の
基
本 的 な性 質 をみ よ う: *3 Hが
上 に有界 な場 合 に は ,-Hを 考 え る こ とに よ り,下 に 有界 な場 合 に帰 着 で きる. *4 バ ナ ッハ 空 間値 関数 の解 析接 続 の概 念 は通 常 の 複素 関 数 の解 析 接 続 の そ れ と同様 に定 義 され る. *5 量 子 力 学 の コ ンテ クス トで は
,Aは
下 に有 界 な任 意 の物 理 量 で よい.
命 題8.2
(ⅰ)TA(0)=I.(ⅱ)TA(s+t)=TA(s)TA(t)=TA(t)TA(s),s,t〓
0.(ⅲ)対
応:t〓TA(t)は
強 連 続 で あ る.(ⅳ)任
意 の Ψ ∈D(A)に
対 して
(8.7) と す れ ば,ΨA(t)は
強 微 分 可 能 で あ り,
(8.8) (ⅴ)ベ ク トル Ψ ∈Hに
つ い て,s-limt→0t-1(TA(t)-I)Ψ
が 存 在 す る な ら ば,
Ψ ∈D(A).
証 明 (ⅰ)は 自 明.(ⅱ)は に,Ψ
∈Hを
作 用 素 解 析 の 単 純 な 応 用 か ら導 か れ る.(ⅲ)を
任 意 に と り,A〓a(aは
実 定 数)と す る.こ
示すため
の と き,任 意 のt,s〓0
に 対 して, .た
だ し,
fs,t(λ):=│e-sλ-e-tλ│2.容 s,t〓T).こ
易 に わ か る よ う に,0〓fs,t(λ)〓2e2T│a│(0〓
の 右 辺 は,s,
tに よ ら な い(測
数 で あ り, よ り,(*)の 理3.37の 一 般 に
度‖EA(・)Ψ‖2に
し た が っ て,ル 右 辺 は,s→tの
と き,0に
関 す る)可
積分 関
ベ ー グ の優 収 束 定理 に
収 束 す る.(ⅳ),(ⅴ)の
証 明 は[4]の
定
証 明 と ま っ た く並 行 的 に な さ れ る.
,H上
の 作 用 素Lが
■
与 え ら れ た と き,H値
関 数 Φ:[0,∞)→Hに
つ
い て の微 分 方程 式
(8.9) (Φ(t)∈D(L))をLか
ら 定 ま る 抽 象 的 な熱 方 程 式 と い う*6.ベ
を 与 え て,Φ(0)=Φ0を 的 熱 方 程 式(8.9)の 合,Φ0を
満 た す,(8.9)の 初 期 値 問 題(initial
解 Φ(t)∈D(L)を value
problem;
ク トル Φ0∈D(L) 求 め る問 題 を抽 象
IVP)と
い う.こ
の場
初 期 値 と い う.
命 題8.2-(ⅳ)は,下
に 有 界 な 自 己 共 役 作 用 素Aか
ら定 ま る抽 象 的 熱 方 程 式
(8.10) *6 Ω をIRd(d ラ シ ア ン)の
=1,2,3)の
連 結 開 集 合 と し,H=L2(Ω), L=-Δ(一
場 合 が も と も と の 具 象 的 な 熱 方 程 式(熱
伝 導 方 程 式)で
般 化 さ れ た ラプ あ る.
は,任
意 の Ψ ∈D(A)に
さ ら に,こ
対 し て,解
の 解 の一 意 性 も証 明 で き る(演 習 問 題2).ゆ
象 的 熱 方 程 式(8.10)の
注 意8.2
も つ こ と を 語 る. え に,こ
の 場 合 に は,抽
初 期 値 問 題 は 一 意 的 に 解 け る.
方 程 式(8.9)自
共 役 で あ れ ば,任 (8.9)の
ΨA(t)=e-tAΨ,t〓0を
体 はt〓0に
お い て も 考 え る こ と が で き,Lが
意 の
自己
に 対 し て,Φ(t):=e-tLΦ,t〓0は
初 期 値 問 題 の 解 で あ る(注 意8.1).だ
共 役 作 用 素 の 場 合,t〓0に
が,Lが
非 有 界 で 下 に有 界 な 自己
お け る 抽 象 的 熱 方 程 式(8.9)の
初期値問題の解の一
意 性 は 保 証 さ れ な い.
上 の 命 題 に 述 べ ら れ た,作 用 素 の 族{TA(t)}t〓0の
性 質(ⅰ)∼(ⅲ)は
集 合[0,∞)
に よ っ て添 え字 付 け られ た 有 界 な線 形 作 用 素 の族 の あ る普 遍 的構 造 の現 れ とみ る こ とが で き る.
定 義8.3
H上
の 有 界 線 形 作 用 素 の 族{T(t)}t〓0は,次
満 た す と き,強 連 続1パ
の 条 件(T.1)∼(T.3)を
ラ メー タ ー 半 群 と呼 ば れ る:(T.1)T(0)=I.(T.2)(半
群 特 性)T(s+t)=T(s)T(t)=T(s)T(t),s,t〓0.(T.3)対
応:t〓T(t)
は 強 連 続. 各T(t)が
自 己 共 役 で あ る と き,{T(t)}t〓0を
条 件(T.2)は,任
意 のs,t〓0に
な わ ち,T(s)T(t)=T(t)T(s)を {TA(t)}t〓0は
自 己 共 役 半 群 とい う.
対 して,T(s)とT(t)は
可 換 で あ る こ と,す
意 味 す る*7.
自 己 共 役 半 群 の 例 で あ る.こ
の 場 合,H値
関 数 ΨAがAか
定 ま る 抽 象 的 熱 方 程 式 を 満 た す こ と に ち な ん で,{TA(t)}t〓0をAが 半 群(heat
semi-group)と
実 は,自
己 共 役 半 群 は 熱 半 群 で 尽 く さ れ る:
*7 一 般 に
呼 び,Aを
,集 合Xに お い て,演 則(xy)z=x(yz),∀x,y,z∈Xが し,xe=ex=x,∀x∈Xを す べ て のx,y∈Xに
ら
生 成 す る熱
そ の 生 成 子 と い う.
算X×X∋(x,y)〓xy∈Xが 定 義 さ れ て い て,結 合 成 り立 つ と き,Xを 半 群(semi-group)と い う.も 満 た す 元e∈Xが あ る な ら ば,eをXの 単 位 元 と い う.
つ い てxy=yxが
成 り立 つ と き,Xは
可 換 半 群 と 呼 ば れ る.
群 は 単 位 元 を もつ 半 群 で あ る.
上 の(T.1),(T.2)を 満 た す 作 用 素 の 集 合{T(t)│t〓0}は 作 用 素 の 積 演 算 に よ っ て, 単 位 元 を も つ 可 換 半 群 で あ る,こ れ が,上 の 定 義 に お け る 命 名 の 由 来 で あ る.
定 理8.4
(自 己 共役 半 群 に関 す る生 成 定 理)各 自己 共 役 半 群{T(t)│t〓0}に
対
して
(8.11) を 満 た す,下
に 有 界 な 自 己 共 役 作 用 素Aが
証 明 強 連 続1パ 3.38)と
ラ メ ー タ ー ユ ニ タ リ 群 に 関 す る ス トー ン の 定 理([4]の
定理
ま っ た く並 行 的 に 証 明 さ れ る*8.
8.2.2 Aの
た だ 一 つ 存 在 す る.
■
ス ペ ク トル の 下 限 と 基 底 状 態
ス ペ ク トル の 下 限
(8.12) は 熱 半 群e-tAを
用 い て 表 さ れ う る.こ
ル 測 度 と し,Hの
部分集合
れ を 示 す た め に,EAをAの
スペ ク ト
(8.13) を 導 入 す る.E0(A)∈
定 理8.5
σ(A)で
任 意 の Ψ ∈E(A)に
あ る か ら,E(A)≠0で
あ る.
対 して
(8.14)
証 明 B:=A-E0(A)と
お け ば,Bは
非 負 の 自己 共 役 作 用 素 で あ り,E0(B)=0.
(8.14)は 証 明 し よ う.B〓0に
と 同 値 で あ る.そ よ り,‖e-tB‖〓1.し
こ れ は
*8 (8
を 意 味 す る.一
.11)を 満 た す 自 己 共 役 作 用 素Aが
こ で,(*)を 〉〓‖ Ψ‖2. 方,任
意の
あ っ た とす れ ば,ス ペ ク トル写 像 定 理 に よ り,
これ とT(t)の ば な ら ない.
た が っ て,〈 Ψ,e-tBΨ
有 界性 に よ り,Aは
下 に有 界 で なけ れ
ボ レル 集 合J∈B1に
対 して,
に注意す れ
ば,作 用 素 解 析 に よ り
た だ し,
と お い た.Ψ
て の ε>0に
対 し てCε>0で
両 辺 の 下 極 限lim る.そ
こ で,ε
る.こ
れ と(**)を
定 理8.5の
あ る.し
∈E(A)に
よ り,十
分 小 さな す べ
たが って
inft→ ∞ を と れ ば,
→+0と
とな
す れ ば,
合 わ せ れ ば(*)が
系 と し て,次
が 得 られ 導 か れ る.
■
の 結 果 を 得 る:
系8.6
E0(A)はAの
固 有 値 で あ る と し,そ の 固 有 ベ ク トル の 一 つ(Aの
状 態)を
Ψ0と す る.こ
の と き,〈 Ψ0,Ψ 〉≠0と
対 し て(8.14)が Φ ∈Hに
成 り立 つ.特
基底
な る ベ ク トル Ψ ∈H\{0}に
に
を 満 た す 任 意 の ベ ク トル
対 して
(8.15) 証 明 系 の 仮 定 を 満 た す Ψ がE(A)の E(A)と
して み よ う.す
元 で あ る こ と を 示 せ ば よ い.仮
る と,あ る δ>0が
し た が っ て る.一
方,
で あ る か ら,
(**)の が,こ
変 形 し,シ
次 の定 理 も有 用 で あ る:
ら 出 る 式
左 辺 は 〈Ψ0,Ψ 〉に 等 し い こ とが わ か る.し
たが っ
れ は 仮 定 に 反 す る.
な ら ば,│〈 Ψ0,Φ 〉│≠0を Ψ0+(Φ-Ψ0)と
〓
が導 かれ
これ と(*)か
て,〈 Ψ0,Ψ 〉=0.だ
に,Ψ
存 在 し て
示 す こ と は 容 易 で あ る(Φ=
ュ ヴ ァ ル ツ の 不 等 式 を 用 い よ).
■
定 理8.7
ker(A-E0(A))へ
の 正 射 影 作 用 素 をP0(A)と
す る*9.こ
の とき
(8.16) 証 明 作 用 素 解 析 に よ り(P0(A)=X{E0(A)}(A)に
注 意)
容 易 に わ か る よ う に, した が っ て,ル ベ ー グ の 優 収 束 定 理 に よ り,上 式 の 右 辺 は,t→ の と き,0に
Aの
∞
収 束 す る.
■
基 底 状 態 が 縮 退 して い な い場 合 に は,そ れ をe-tAを
用 い て 表 す こ とが
で きる: 定 理8.8
E0(A)はAの
ベ ク トル を Ψ0と
固 有 値 で 多 重 度 が1で
あ る と し,そ の 規 格 化 さ れ た 固 有
し よ う:
こ の と き,〈Ψ,Ψ0〉>0
と な る 任 意 の ベ ク トル Ψ ∈Hに
対 して
(8.17)
証 明 い ま の 場 合,
で あ る.こ
れ と(8.16)に
よ り,
した が っ て, 仮 定 に よ り,〈Ψ0,Ψ 〉>0で を 得 る.こ
れ を(*)に
あ る か ら,
代 入 す れ ば,(8.17)が
以 上 の 抽 象 的 な 一 般 的 結 果 を,た と え ば,Aが
得 ら れ る.■
具 象 的 な量 子 系 の ハ ミル トニ
ア ンで あ る場 合 に 応 用 す る な ら ば,そ の ハ ミル トニ ア ンが 生 成 す る 熱 半 群 を経 由 して,量 子 系 の 最 低 エ ネル ギ ー や基 底 状 態 に対 す る何 らか の 具 体 的 表 示 が 得 られ るで あ ろ う こ とが 期 待 され る. *9 E 0(A)が る.
固 有 値 で な け れ ば,ker(A-E0(A))={0}で
あ る か ら,P0(A)=0で
あ
8.2.3 基 底 状 態 が存 在 す る ため の 一 つ の 十 分 条 件 前 項 まで の結 果 を補 完 す る意 味 で,熱 半 群 の 生 成 子 が 基 底 状 態 を もつ 十 分 条 件 の 一 つ を述 べ て お こ う. 命 題8.9
AをH上
H,Ψ0≠0が
の 下 に 有 界 な 自 己 共 役 作 用 素 と す る.あ
存 在 し て,次
の 二 つ の 条 件 が 満 た さ れ て い る と す る:
(ⅰ) 弱 極 限 Ψ: (ⅱ) あ るs0>0が
こ の と き,Ψ
が 存 在 し,Ψ あ っ て,す
はAの
る ベ ク トル Ψ0∈
べ て のs∈(0,s0)に
≠0.
対 して
基 底 状 態 で あ る.
証 明
と お く.任
意 の Φ ∈Hとs∈(0,s0)に
対 し
て,仮 定 の 条 件 を使 うこ とに よ り
したが っ て,
この式 に お い てs=0で
る こ とに よ り,Ψ ∈D(A)か 注 意8.3
つAΨ=E0(A)Ψ
の 強 微 分 を考 察 す
が 証 明 され る.
こ の 命 題 は,具 体 的 な 問 題 にお い て,
■ に関 す
る 何 らか の 陽 な表 示(た とえ ば,こ の 章 の主 題 で あ る 汎 関 数 積 分 表 示)が 得 られ る な らば,そ
の表 示 を用 い て 仮 定 の条 件 の 成 立 を確 か め る こ とに よ り,Aの
基
底 状 態 の 存 在 を示 す の に 使 用 す る こ とが 可 能 で あ る.
8.3 汎 関数 積 分 お よび 確率 過 程 との 接続 ― 発 見 法 的議 論
こ の 節 で は,シ
ュ レー デ ィ ン ガー 型 作 用 素 の 生 成 す る 熱 半 群― シ ュ レ ー デ ィ
ン ガ ー 半 群 と呼 ば れ る― に対 す る無 限次 元 積 分 表 示(汎 関数 積 分 表 示)を 発 見 法 的 に 導 き,次 節 以 降 の 数 学 的 展 開の 動 機 づ け とす る.そ の が 次 の極 め て重 要 な 定 理 で あ る:
の た め の基 礎 と な る
定 理8.10
Hを
複 素 ヒ ル ベ ル ト空 間,A,
はD(A)∩D(B)上
BはH上
の 自 己 共 役 作 用 素 でA+B
で 本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る と す る.こ
(ⅰ) (ト ロ ッ タ ー(Trotter)の
(ⅱ) (ト ロ ッ ター-加
積 公 式)す
べ て のt∈IRに
藤 の積 公 式)AとBが
の と き: 対 して
下 に有 界 な らば,す べ て のt〓0
に対 して
(8.18) こ の 定 理 の 証 明 は,残
8.3.1
略 す る*10.
時 間 発 展 の ユ ニ タ リ群 の 無 限 順 序 積 分 表 示
d次 元 空 間IRdを 量m>0の
念 な が ら,省
ポ テ ンシ ャ ルV:IRd→IRの
影 響 の も と に運 動 す る,質
量 子 的粒 子 を考 え よ う.そ の ハ ミル トニ ア ン と して シ ュ レー デ ィ ン
ガ ー 型作 用 素
(8.19) を と る(Δ
は 一 般 化 さ れ たd次
定 理8.11
HVはD(Δ)∩D(V)上
元 ラ プ ラ シ ア ン).
で 本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る と仮 定 す る(そ
の 閉 包 も 同 じ 記 号 で 書 く).xj∈IRd,j=0,…,n,t∈IRに
対 して
(8.20) と お く.こ
の と き,任 意 の ψ ∈L2(IRd)とt>0に
対 し て,L2(IRd)に
お け る収
束 の意味で
(8.21) *10 証 明 に つ い て は タ ー-加
,[14]のp.146∼p.148や[16]の 藤 の 積 公 式 に つ い て は,A+Bが
れ る な ら ば,(8.18)は,実 密 な 誤 差 評 価 と と も,証
は,作
§Ⅷ.8とNotesを 自 己 共 役 で 定 理8.10-(ⅱ)の
参 照.ト ロッ 仮 定 が満 た さ
用 素 ノ ル ム の 意 味 で の 収 束 で 成 立 す る こ とが,そ
明 され る[9].
の精
が 成 り立 つ.た
だ し,右 辺 の 順 序 積 分 に お け る 各 積 分
の 意 味(L2(IRd)収
束 の 意 味)で
と ら れ る.ま
た,Imi1/2>0と
す る.
証 明 証明 を通 して
(8.22) とお く.定 の3.6節
理8.10-(ⅰ)に,よ
り
[4]
で証 明 した よ う に
こ こで
した が って
こ れ を 整 理 す れ ば(8.21)が
式(8.21)の 可 能 で∇Vは は,古
得 ら れ る.
■
右 辺 の 物 理 的 意 味 を 考 え て み よ う.簡 有 界 で あ る とす る.(8.20)の
単 の た め,Vは
連続微 分
右 辺 を よ くみ る とSn(x0,…,xn,t)
典 力 学 の作 用 汎 関数
と 何 ら か の 関 連 を も っ て い る こ と が 推 測 さ れ る.こ 区 分 的 に 連 続 微 分 可 能 な 関 数 と す る.よ δS(φ;t)=0を
こ で,φ:[0,t]→IRdは
く知 ら れ て い る よ う に,変
満 た す 関 数 を φcl(s)と す れ ば,こ
分 方程式
れ は ニ ュ ー トンの運 動 方 程 式
を 満 た す(変
分 原 理)*11.関
経 路 φn(s)を
こ れ は,時
数 φcl(s)を 古 典 的 経 路(classical
に あ る と き は,速
等 しい よ う な 運 動 を 表 す 曲 線―"折
(図8.1).
図8.1
経 路 φn
経路 φnに対す る古 典的作用 を計算 す ると
*11 た と え ば
い う.
次 の 式 に よ っ て 定 義 す る:
刻sが(j-1)t/nとjt/nの間
(xj-xj-1)/(t/n)に
path)と
,[2]の5章,5.3節
を 参 照.
度dφn(s)/dsが
れ 線"軌
道― で あ る
で あ る.し
たが っ て
仮 定 に よ り,∇Vは
が 成 り立 つ.し
ゆ え に,nが
有 界 で あ る か ら,(j-1)t/n〓s〓jt/nの
とき
た が って
十 分 大 き い と き,│xj-xj-1│は と な る.そ
値 関 数 φ で φ(0)=x0な
十 分 小 さ く な る の で,
こ で,閉 区 間[0,t]上
の 区 分 的 に 連 続 微 分 可 能 なIRd
る も の に対 して,折 れ 線 軌 道 φ を,(j-1)t/n〓s〓jt/n
な らば
で あ る よ う に 定 義 し,xj=φ(jt/n)の Sn(x0,…,xn,t)〓S(φ;t)〓S(φ;t)が 式(8.21)の │xj-xj-1│が
場 合 を 考 え る と,n→∞
の と き,
成 り立 つ.
右 辺 の 積 分― 本 質 的 に 無 限 次 元 積 分― は 振 動 積 分 で あ る か ら, 大 き い と こ ろ で の 積 分 の 寄 与 は 無 視 し う る こ とが 予 想 さ れ る.い
ま は 発 見 法 的 議 論 に 興 味 が あ る の で,こ
こ で は,こ
う.す
右 辺 は,φ(0)=x0を
る と,上
の 考 察 に よ り,(8.21)の
の 予 想 が 正 しい と仮 定 し よ
連 続 曲 線 φ の す べ て に わ た っ て,ψ(φ(t))exp(iS(φ;t))を"加 こ と が で き る(区
分 的 連 続 微 分 可 能 性 の 条 件 は は ず す).そ
満 た すIRd内 え た も の"と
の みる
こ で,各x∈IRdに
対 して
と い う 関 数 空 間 を 導 入 す れ ば,(8.21)は,象徴
的に
(8.23)
と 書 け る で あ ろ う.た
だ し,Dφ
は
で 与 え ら れ る 発 見 法 的 ・形 式 的 な"測 度"で て φ ∈Cx0([0,t];IRd)を 関 す る1次
あ る.こ
こ で,φ(jt/n)はjを
動 か す と実 変 数 と み る こ と が で き る の で,こ
元 ル ベ ー グ 測 度 をdφ(jt/n)と
書 い た.こ
とめ の変数 に
の 極 限 が い か な る意 味 で
存 在 す る か は い ま は 問 わ な い. 発 見 法 的 公 式(8.23)は,歴 り,こ
史 的 に は,フ
ァ イ ン マ ン(1948)に
の 型 の 積 分 は 実 時 間 経 路 積 分(real-time
論 の こ の 段 階 で は,Dφ で あ る.だ
が,物
path
よる もの で あ
integral)と
呼 ば れ る.議
を 象 徴 的 記 号 とす る よ う な 測 度 が 存 在 す る か 否 か は 不 明
理 の 文 献 で は,Dφ
て 言 及 さ れ る.(8.23)は,古
は,慣
習 的 に,"フ
ァ イ ン マ ン測 度"と
し
典 的 作 用 と量 子 系 の 時 間 発 展 を直 接 結 び つ け る と
い う 点 で は あ る 種 の 物 理 的 意 味 を も つ.し
か し,実
は,(8.23)の
に 厳 密 に 意 味 づ け る こ と は 極 め て 難 し い 問 題 で あ る.こ
右 辺 を数 学 的
こ で は,こ
の 問題 に は
立 ち 入 ら な い*12.
注 意8.4 は,HVが で あ る.だ
本 書 の 観 点 か ら い え ば,古 典 力 学 的 な 描 像 と の 正 確 な 対 応 を 与 え る の 本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る と い う 仮 定 の も と で 厳 密 に成 立 す る 式(8.21) が,こ
れ は,あ
く ま で もCCRの
シュ レー デ ィ ンガ ー表 現 とい う特 殊
な 表 現 に 結 び つ い た 表 示 の 一 つ に す ぎ な い こ と に 注 意 す べ き で あ る*13.CCR の シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 表 現 は,も 描 像 か ら き て い る の で,古
と も と,量
子 的粒 子 の 位 置 を測 定 す る とい う
典 力 学 的 描 像 に 依 拠 し た も の で あ る.式(8.21)は
こ
の こ と を よ り詳 し い 形 で 提 示 し た も の と み る こ と が で き る.
*12 た とえ ば ,[7]や[14]と そ こ に引 用 され て い る文 献 を参照. *13 [4]で も言 及 した よう に ,HVはCCRの 別 の 表現 を使 っ て も定 義 で きる.本 書 の観 点 か らい えば,実 時 間経 路 積 分 は― 仮 に存 在 す る と して も― 一つ の表 示 で あっ て,そ れ に よっ て量 子 論 が 定義 される よう な対 象 で は な い.し ば しば,物 理 の 文 献 でみ られ る,実 時 間経 路 積 分 と量 子化 の同等 性 に関 す る 主 張 は,仮 に前 者 が 数学 的 に存 在す る こ とが保 証 され た と して も(も ち ろん,そ の存 在 が 示 され な け れ ば,ま った く空虚 な主 張 にす ぎ な い),論 理 構造 的 に正 しい主 張 とは い え な い.
8.3.2
熱半群 の無限順序積分表示
次 に,8.1節
で 述 べ た 観 点 に し た が っ て,前
項 の 内 容 がHVに
よ っ て 生 成 され
る 熱 半 群 の 場 合 に は ど の よ う な 形 を と る か を み よ う. 定 理8.12
HVはD(Δ)∩D(V)上
じ記 号 で 書 く),Vは
で 本 質 的 に 自 己 共 役 で あ り(そ の 閉 包 も 同
下 に 有 界 で あ る と す る.xj∈IRd(j=0,…,n),t>0に
対 して
(8.24) と お く*14.こ
の と き,任 意 の ψ ∈L2(IRd)に
対 し て,L2(IRd)に
お け る収 束 の 意
味 で
(8.25) た だ し,右
辺 の 各 積 分 ∫dxjは,l.i.m.R→
証 明 -H0に
∞∫│ xj│〓Rdxjの
よ っ て 生 成 さ れ る ユ ニ タ リ 群e-itH0に
た の と ま っ た く 同 様 に し て([4]の
定 理3.42の
意 味 で と る.
関す る積分核表示 を求め
証 明)
(8.26) を 証 明 す る こ と が で き る.ト
ロ ッ タ ー 加 藤 の 積 公 式 に よ り,す
べ て のt>0に
対 して
(8.26)を
用 い て,定
理8.11の
証 明 と 同 様 の 考 察 を 行 う こ と に よ り,(8.25)が
ら れ る.
公 式(8.25)の
得 ■
意 味 に つ い て 考 え よ う.容
易 に気 付 くよ うに
(8.27) *14 添 え 字"E"は"ユ
ー ク リ ッ ド的(Euclidean)"の
意 .後
述 を参 照.
で あ る.す
な わ ち,SEn(x0,…,xn,t)はSn(x0,…,xn,t)をtに
時 間-itま
で 解 析 接 続 し た も の で あ る*15.そ
お け るtを
発 見 法 的 ・形 式 的 に-itで
ついて純虚数
し て,(8.25)は,公
式(8.21)に
置 き 換 え て 得 ら れ る 式 に な っ て い る*16.
こ れ は 調 和 的 な 照 応 と い え る. と こ ろ で,Sn(x0,…,xn,t)に
お け るtは
ツ 座 標 系 の 座 標 時 間 成 分 と み な せ る.こ の 移 行 は,時
特 殊 相 対 論 的 に は,一
の 場 合,座
つ の ロ ー レン
標時 間成分の純虚 数時間へ
空 的 に は ユ ー ク リ ッ ド時 空 へ の 移 行 に 対 応 す る*17.こ
考 察 下 の コ ン テ ク ス トに お い て は,純 も と の 理 論 の あ る 種 の"ユ し う る."E"と
虚 数 時 間 へ の 移 行 は,描
ー ク リ ッ ド化"な
の 意 味 で,
像 的 に は,も
い し"ユ ー ク リ ッ ド的 変 容"と
と みな
い う添 え 字 を 付 け た の こ の 意 を 表 す た め で あ る.
い ま 述 べ た こ と を 考 慮 す る と,古 典 的 作 用S(φ;t)に 域 で の 対 象 は,[0,t]上
対 応 す る,純
の 区 分 的 に 連 続 微 分 可 能 なIRd値
虚数時間領
関数 ω 全 体 か ら な る集
合 上の汎関数
(8.28) で 与 え ら れ る こ と に な る.実
際,(8.23)を
得 た の と 同 様 な 議 論 に よ っ て,発
見
法 的 ・形 式 的 に
(8.29) と な る こ と が わ か る.こ
こ で,(8.29)の
右 辺 は,発
見 法 的 ・形 式 的 に
と書 き直 せ る こ と に注 意 し よ う.た だ し
*15 S
n(x0,…,xn,t)は
作 用 の 次 元(エ
ネ ル ギ ー × 時 間)を
も つ の で,そ
れ が(-i)倍
さ
れ る の は 自然 で あ る. *16 い う ま で も な く ,こ の 形 式 的 置 き換 え は,(8.25)の 証 明 を 与 え る も の で は な い. *17 ロ ー レ ン ツ座 標 系 に お け る2点(t ,x),(t',x')∈IR×IRdの間 の 計 量 は(t-t')2-(x-x)2 で あ る の で,形
式 的 にt→-it,t'→-it'と
計 量-[(t-t')2+(x-x')2]に"変
す れ ば,そ 容"す
る(マ
れ はIR×IRdの
ユ ークリッド
イ ナ ス の 符 号 は 本 質 的 で な い).
(Dsは
変 数sに
関 す る 超 関 数 の 意 味 で の 微 分).こ
前 にe-∫t0│Dsω(s)│2dsと あ る.こ
い う,減衰因子
ァ イ ン マ ン 測 度"の
さ れ う る.ま
た,V=0の
exp(-tH0)1=1で μtは,も
象 徴 記 号 とす る よ う な 無 限 次 元 測 度 の
場 合 に 比 し て,よ
場 合 を 考 え,形
あ る か ら,∫C
り現 実 味 を 帯 び た 形 で 想 定
式 的 に ψ=1の
x([0,t];IRd)dμ0t(ω)=1が
し存 在 す る とす れ ば,集
た が っ て,(Cx([0,t];IRd),μ0t)は
の
と み な せ る 汎 関 数 が つ い てい る こ と で
の 因 子 の 存 在 に よ っ て,μ0tを
存 在 が,"フ
こ で 注 目 す べ き 点 は,Dω
合Cx([0,t];IRd)上 確 率 空 間),そ
場 合 を 考 え る と, 成 り立 つ.す
な わ ち,
の 確 率 測 度 で あ る こ と(し して
(8.30) が 成 立 す る こ とが 期 待 さ れ る*18.実 (8.30)に (8.30)は
お け る"積
分 変 数"ω
際,こ
は 始 点 がxのIRd内
そ う し た 経 路 す べ て に わ た る"積
お い て,(8.30)型
の 量 は,一
path
呼 ば れ る.
integral)と
の 予 想 は 正 し い こ と が わ か る.
般 に,純
分"と
の 曲 線(経
し て 表 象 さ れ る.こ
虚 数 時 間 経 路 積 分(pure
あ り,
の意味 に
imaginary-time
他 方,各s∈[0,t]に
対 して,写 像Xs:Cx([0,t];IRd)→IRdをXs(ω):=ω(s),
ω ∈Cx([0,t];IRd)に
よ っ て 定 義 す る と,こ
の 確 率 ベ ク トル と み な せ る.こ
路)で
れ は 測 度 空 間(Cx([0,t];IRd),μ0t)上
の 観 点 か ら は,(8.30)は
確 率 ベ ク トル に 関 す る
積 分 と み る こ と が で き る. こ こ に 現 れ た 確 率 ベ ク トル の 族{Xs}s∈[0,t]の 添 え字 集 合 とす る,確 率 空 間(Ω,B, P)上 Xτ:Ω
→IRd)はTに
process)と
れ は"パ
ラ メ ー タ ー"の
象 を 記 述 す る た め の 概 念 で あ る.任
程{Xτ}τ
確 率 変 数 の 集 合{Xτ}τ ∈T(i.e.,
よ っ て 添 え 字 付 け ら れ た,IRd-値
呼 ば れ る.こ
Xτ(ω),τ ∈Tに
よ う に,一 般 に,一 つ の 集 合Tを
のIRd-値
よ っ て,Tか
∈Tに お け る(一
値 に 応 じて変 化 す る確 率 的 事
意 の ω ∈ Ω を 固 定 す る と き,ζ ω(τ):=
らIRdへ
つ の)標
確 率 過 程(stochastic
の 写 像ζ ω が 定 ま る.写
本 関 数(sample
*18 確 率 空間 お よび確 率 変 数の概 念 につ い ては
function)ま
像ζ ω を 確 率 過 た は標 本 経 路
,[3]ま た は[4]の 付 録A. 8を 参 照.な お,い まは発 見 法 的 議論 を して い るの で,μ0tが"の っ てい る"ボ レル集 合体 が い か な る もの で あ る か は 問 わ ない.
(sample
path)と
こ う して,シ
い う*19. ュ レー デ ィン ガ ー型 作 用 素 に よっ て 生 成 され る熱 半 群 は,あ る
種 の 確 率 過 程 と も結 び つ くこ とが 予 想 され る.こ の 予 想 の も と に適 切 な確 率 過 程 を構 成 す る こ とに よ り,(8.30)に だ が,そ
対 して数 学 的 に厳 密 な意 味 づ けが な され る.
の よ う な確 率 過 程 を天 降 り的 に導 入 す る 前 に,こ れ を発 見 す る た め の
助 け とな る議 論 を次 の項 で行 う こ と に し よ う.
8.3.3
自 由 ハ ミル トニ ア ンが 生 成 す る熱 半 群 に 関 わ る基 本 的 事 実
発 見法 的式(8.30)はV=0の 確 率 過 程Xsと
場 合 で も当然 成 り立 つべ きで あ るか ら,求 め た い
測 度 μ0tは自由 ハ ミル トニ ア ンH0=-Δ/(2m)か
こ とが 予 想 され る.こ の構造 を推 測 す るた め に,H0か
ら構 成 さ れ る
ら生 成 され る1個 の 熱半 群
だ け で な く,複 数 の熱 半群 か ら定 ま るベ ク トル (sj〓0,j=1,…,n,ψjは
しか る べ きク ラ ス に属 す る 関 数)を 計 算 して み よ
う.次 の 記 号 を導 入 す る:
(8.31) 便 宜 上,P0(x,y):=δd(x-y)(δdはIRd上 き,(8.26)に
の デ ル タ 超 関 数)と
お く.こ
の と
よ り
(8.32) が 成 り立 つ.こ
れ は,e-tH0(t>0)が
素 で あ る こ と を 意 味 す る.t>0な
関 数Pt(x,y)を ら ば,積
積 分 核 とす る 積 分 作 用
分 に関 す る シ ュ ヴ ァル ツの 不 等 式 に
*19 確 率過 程 に関 す る一 つ の物 理 的描像 は次 の よ うな もの で あ る .ラ ン ダムな運 動 をす る粒 子 を考 え よ う(た とえば,非 常 に細 か く砕 い た花 粉 が 水 の 中 を運 動 す る場 合).そ の よう な 運 動 に お い ては,時 刻tで の位 置X(t)∈IRdは 確 率 的 に分 布 す る.し たが っ て,X(t) は,あ る確 率 空 間(Ω,B, P)上 のIRd-値 確 率 変数 とみ なす の が 自然 で あ る.こ の場 合, 考 察 下 の 運動 は確 率 変 数 の集 合{X(t)}t∈[0,T](T>0は 定 数)― 確 率 過程― に よ って 記 述 され る と予 想 され る.こ の 枠組 み で は,い う まで もな く,粒 子 の時 刻tで の位 置 に つ い て は確 率 的 に予 言 で きる だ けで あ る.す な わ ち,粒 子 が 時 刻tで 集合B⊂IRdの 中 にあ る確率 はP({ω 本 関数ζω はIRd内
∈ Ω│X(t)(ω)∈B})で
あ る と解 釈す るの で あ る.こ の 場 合の 標
の 曲線(粒 子 の 可能 な軌 道 曲 線 の一 つ)を 表 す.
よ り
し た が っ て,(8.32)の さ ら に,ル xに
右 辺 は 各 点x∈IRdご
と に 定 義 さ れ た 有 界 な 関 数 で あ る.
ベ ー グ の 優 収 束 定 理 を 応 用 す る こ と に よ り,(8.32)の
つ い て 連 続 で あ る こ と も 証 明 さ れ る.ゆ
と は,L2(IRd)の 味 で,各
元 で あ る が,IRd上
点x∈IRdの
値(e-tH0ψ)(x)に
積分核Pt(x,y)の基本的性質
補 題8.13
t,s>0と
右 辺 の 関数 は
え に,e-tH0ψ(t>0)は,も
とも
の 有 界 な 連 続 関 数 と 同 一 視 さ れ る.こ
の意
つ い て 語 る こ と が で き る.
を み て お こ う.
す る.
(ⅰ) Pt(x,y)>0,∀x,y∈IRdか
つ∫IRdPt(x,y)dy=1,∀x∈IRd.
(ⅱ) (鎖 則)∫IRdPt(x,y)Ps(y,z)dy=Pt+s(x,z),∀x,z∈IRd.
証 明 直接 計 算. 注 意8.5
■
(ⅱ)は 半 群 特 性e-tH0e-sH0=e-(t+s)H0と
呼 応 し て い る.こ
れを
用 い て 証 明 し て も よ い.
定 理8.14 る.こ
ψ1,…,
ψn-1∈L∞(IRd),ψn∈L2(IRd),0〓t1〓
…
〓tnと
す
の と き
(8.33) と書 け る.た
だ し
で 定 義 さ れ る,(IRd)n上
証 明 s1=t1,
の 測 度 で あ る*20.
s2=t2-t1,…,sn=tn-tn-1と
ら,j=1,…,n-1に
お く.ψjに
対 し て ψje-sj+1H0…
た が っ て,(8.32)を
繰
つ い て の 条 件 か
ψn-1e-snH0ψn∈L2(IRd).し
り返 し用 い る こ と に よ り
(8.35) さらに
で あ り,補
題8.13に
し た が っ て,フ で よ い.ゆ
ビ ニ の 定 理 が 応 用 で き る の で,(8.35)に
え に(8.33)が
補 題8.13を る.す
よ り
出 る. ■
用 い る とdμt1,…,tn;xは(IRd)n上
な わ ち,μt1 ,…,tn;x((IRd)n)=1.し
上 の 確 率 ベ ク トル(Xt1,…,Xt に は,(8.33)の A. 8の 定 理A.
,B)上
応 用*21).こ
れ は,適
れ を 用 い て,ト
書 け る([3]ま
,確
当 な確 率 空 間
切 な ク ラ ス のVに
対 し て(e-tHψ)(x)=
成 り立 つ と き,dμ(x)=f(x)dν(x)と 率 空 間(Ω,B,μ)上 の 確 率 変 数Xに
期 待 値 を 表 す.
の場 合
た は[4]の
付録
ロ ッ タ ー の 積 公 式 を 経 由 し て,
の 二 つ の 測 度 μ,ν と 可 測 関 数f:X→Cに
∫Bf(x)dν(x),∀B∈Bが *21 同 付 録 で 述 べ た よ う に ∫ΩX(ω)dμ(ω)はXの
た が っ て,そ
ψn(Xtn)]と
発 見 法 的 ・形 式 的 な 議 論 を 行 う と,適 *20 可 測 空 間(X
の 確 率 測 度 で あ る こ とが わ か
n)の 分 布 に な っ て い る 可 能 性 が あ り,そ
右 辺 はE[ψ1(Xt1)… 19の
お け る積 分 順 序 は任 意
つ い て,μ(B)= 象 徴 的 に 記 す. 対 し て,E(X):=
が 成 立 す る こ と が 予 想 さ れ る.こ (t〓0)の
う し て,熱 半 群e-tHV
汎 関 数 積 分 表 示 を 厳 密 に確 立 す る 問 題 は,確 率 変 数 の 族{Xt}t〓0で,任
意 の 自 然 数nと0〓t1
対 し て,確 率 ベ ク トル(Xt1,…,Xtn)
の 分 布 がμt1 ,…,tn;xに 等 し い よ う な も の が 存 在 す る か ど う か を 調 べ る 問 題 へ と 私 た ち を 導 く.こ
れ は 純 数 学 的 な 問 題 で あ る.こ
の 問 題 に対 す る 一 つ の 解 答 を
次 の 節 で 述 べ る.
8.4 確 率過 程 の存 在
前 節 の 最 後 に 述 べ た 問 題 は,よ う.す
な わ ち.集
(n∈IN)の
合M(前
の 確 率 変 数 の 族{Xμ}μ て,確
節 の 場 合 で 言 え ば,M=[0,∞))の
各 元(μ1,…,μn)に
当 て ら れ て い る と き,ど
り一般 的 に は 次 の よ う に 定 式 化 で き る で あ ろ
対 し て,(IRd)n上
がPμ1,…,μnで
その上
結 合 分 布― こ れ を{Xμ}μ
対 し ∈Mの
あ る よ う な も の が 存 在 す る か?こ
る 一つ の 解 答 を 述 べ る た め に,あ
Mを
率 空 間(Ω,B,P)と
べ て のn∈INと(μ1,…,μn)∈Mnに
率 ベ ク ト ル(Xμ1,…,Xμn)の
分 布 と い う―
の 確 率 測 度Pμ1 ,…,μnが 割 り
の よ う な 条 件 が あ れ ば,確 ∈Mで,す
直 積 集 合Mn
有 限次元
の 問 題 に対 す
る 基 本 的 な 概 念 を 導 入 す る.
任 意 の 空 で ない 集 合 と し,Mか
らIRdへ
の 写 像 全 体 の 集 合 を(IRd)M
で 表 す:
(8.36) 各 μ1,…,μn∈Mに
対 して,写
像pμ1…μn:(IRd)M→(IRd)nを
(8.37) に よ っ て 定 義 す る.こ d=1の IRnの
の 型 の 写 像 を(IRd)M上
場 合 を 考 え る.IRMの ボ レ ル 集 合Bが
部 分 集 合Aに
の 射 影 と い う*22. つ い て,μ1,…,μn∈Mと
あって
(8.38) *22 平 た くい え ば
,ω
か ら,そ
の 有 限 個 の 成 分 を 取 り 出 す 写 像.
と 表 さ れ る と き,Aを
ボ レ ル 筒 集 合(cylinder
全 体 か ら 生 成 さ れ る ボ レ ル 集 合 体 をBMで
(IRM,BM)が
set)と 表 す.こ
い う.ボ
レル 筒 集 合 の
う し て,一
つの可 測空 間
構 成 さ れ る.
IRl(l∈IN)上
の 確 率 測 度ν に対 して
に よ って 定 義 され る,IRl上 の非 負 値 関数Fをν は
の 分 布 関数 とい う
の直 積 集 合 を表 す).
さて,上 記 の 問 題 に対 す る基 本 的 な解 答 の 一 つ を書 き下 す こ とが で き る: 定 理8.15 IRn上
(コ ル モ ゴ ロ フ の 定 理)各
自 然 数nと
μ1,…,μn∈Mに
対 し て,
の 確 率 測 度Pμ1… μnが 割 り 当 て ら れ て い る と し,Pμ1… μnの 分 布 関 数
は 次 の 条 件(ⅰ),(ⅱ)を
満 た す と す る*23.
(ⅰ) す べ て の 自然 数nと
す べ て の μl∈M,l=1,…,n,お
よ び(1,2,…,n)
の 任 意 の置 換 σ に 対 して
(ⅱ) 任 意 のl
す べ て の μl∈M,l=1,…,n-1,に
た だ し,(-∞,∞]:=IRと
率 測 度Pで,任
規 約 す る.こ
の と き,可
意 の ボ レル筒 集 合A⊂IRMに
対 して
測 空間(IRM,BM)上
の確
対 して
(8.39) と な る も の が た だ 一 つ 存 在 す る.た て 与 え ら れ る とす る. *23 上 の 設 定 で い え ば
,d=1の
場 合.
だ し,AとB∈Bnの
関 係 は(8.38)に
よっ
こ の 定 理 の 証 明 の 基 本 的 な ア イ デ ア は 次 の 通 りで あ る:(ⅰ)ま よ っ てP(A)を 示 す.(ⅱ)次
定 義 し,こ にPが
完 全 加 法 的 で あ る こ と を証 明 す る.こ
拡 張 定 理([11]のp.52,定 だ が,こ
こ で は,そ
各 μ ∈Mに
ず,(8.39)に
れ が ボ レル筒 集 合 上 の 有 限 加 法 的 測 度 で あ る こ と を
理9.1)に
の と き,E.ホ
ップの
よ り,求 め る確 率 測 度 の 存 在 が 結 論 さ れ る.
の 証 明 の 詳 細 を述 べ る こ と は 割 愛 す る*24.
対 し て,IRM上
の 関 数Xμ
を
(8.40) に よ っ て 定 義 す れ ば,こ
れ はBM-可
測 で あ り,す
8.15の 仮 定 を 満 た す も の とす る.こ
の と き,(8.39)に
べ て の ω ∈IRMに
対 して 有
限 で あ る. 以 下,確
Mに
率 測 度 の 族
対 し て,確
は定 理 よ っ て,任 意 の μ1,…,μn∈
率 ベ ク トル
の 結 合 分 布PXμ1…μn
はPμ1…μ nで あ る こ と が わ か る:
(8.41) こ う して,定 理8.15の
仮 定 を満 たす 確 率 測 度 の 族PMが
空 間(IRM,BM,P)と
この 上 の確 率 変 数 の族
け られ た確 率 過 程― で(8.41)を
与 え ら れ る と,確 率 に添 え 字 づ
満 たす もの が 構成 され る.結 合 分 布 の定 義 に よ
り,任 意 の
に対 して
(8.42) が 成 り立 つ.左
辺 のE[・]は,も
ち ろ ん,Pに
関す る 期 待 値 を表 す.
次 に前 段 で得 られ た結 果 を用 い て,任 意 のd∈INに 率 測 度 と確 率 過 程 の存 在 を示 そ う.各j=1,…,dに を満 た す 確 率 測 度 の族
対 して,(IRd)M上
の確
対 して,定 理8.15の
仮定
が 与 え られ た
とす る.こ の と き
(8.43) *24 [13] ,[12]のp.178∼p.179を
参 照.
を 満 た す,IRM上
の 確 率 測 度Pjが
個 の 直 積 集 合(IRM)d上
た だ 一 つ 存 在 す る.し
に,直 積 測 度
た が っ て,IRMのd が 定 義 さ れ る*25.た
だ し,ボ レル 集 合 体 は,
とい う形 の 集
合 す べ て に よ っ て 生 成 され る最 小 の ボ レル 集 合 体 で あ り,こ れ をBdMと 各 μ ∈Mに
対 して,
記 す.
を
(8.44) に よ っ て 定 義 す れ ば,{Xμ}μ ∈MはMに 確 率 過 程 を 与 え る.さ
よっ て 添 え字 づ け られ た,IRd-値
らに任意 の に
の
対 して
(8.45) が 成 り立 つ.た
だ し,
E[・]は 測 度Pに
とい う記 法 を用 い た(こ こで の
関 す る期 待 値 を表 す).
集 合(IRM)dの
任 意 の元
に対 し
て,ω:M→IRdを
(8.46) に よ っ て 定 義 す れ ば(し ら(IRd)Mへ
た が っ て,
の 全 単 射 で あ る.こ
と が で き る.以
下,こ
最 後 に,(8.42)を
),対
応:ω
→ω
の 意 味 で,(IRM)dと(IRd)Mを
同一視するこ
の 同 一 視 を 用 い る. 満 た す 確 率 過 程{Xμ}μ
は た だ 一 つ な の か,あ
あ る の か と い う 一 意 性 の 問 題 に つ い て 簡 単 に ふ れ て お く((8.45)に 様).そ
は(IRM)dか
る い は複 数 つ い て も同
の た め に あ る 概 念 を 導 入 す る.
*25 直 積 測 度 につ い て は
,[3]ま た は[4]の 付 録AのA.5節 を参 照.当 該 の場 所 で は,2個 の測 度 の 直積 測 度 につ い て だ け しか 言 及 され てい ない が,ま っ た く同様 に して(あ るい は帰 納 的 に),任 意 の有 限 個 の測 度 の 直積 測 度 の存 在 を証 明す る こ とが で きる.な お,測
度 は σ-有限 な測 度 の 範 疇 で考 える.
を確 率 過 程 とす る.x,yが
空 間(Ω,B,P)上
で 定 義 さ れ,す
べ て の τ ∈Tに
い ず れ も 同 じ確 率
対 し て,Xτ=Yτ,P-a.e.
が 成 り立 つ と き,一 方 の 確 率 過 程 を他 方 の 確 率 過 程 の 変 形(modification)と
い
う.ま
と
yは
た,x
のすべての
有 限 次 元 分 布 の 集 合 とyの
同 一 の 確 率 空 間 上 に あ っ て も な く て も よ い),一
と い う.こ
の 場 合,二
(8.42)は{Xμ}μ つ.し
つ の 確 率 過 程x
とyは
そ れ が 一 致 す る と き(x 方 を他 方 の 表 現(version)
同 値 で あ る と い う*26.
を そ の 任 意 の 変 形 ま た は 任 意 の 表 現 で 置 き 換 え て も 成 り立
た が っ て,{Xμ}μ
が 自 ら と は 異 な る 変 形 ま た は 表 現 を もつ な ら ば,(8.42)
を 成 立 さ せ る 確 率 過 程 は 一 意 的 で は な い. Tが
位 相 空 間 の 場 合 に は,こ
れ を添 え 字 と す る 確 率 過 程{Xτ}τ
∈Tに つ い て,
τ に 関 す る 連 続 性 を 考 え る こ と が で き る: 定 義8.16
確 率 過 程X={Xτ}τ
程X={Xτ}τ
∈Tが 存 在 す る と き,Xは
と い い,XをXの(一
連 続 版(continuous
実 現 し て い る 確 率 空 間 を(Ω,B,P)と
本 経 路
満 たす 確 率 過
version)を
す る と き,各
ω ∈Ω
対 し て,(Xτ1,…,Xτn)の
分布 と
分 布 は 一 致 す る.
連 続 版 の 存 在 条 件 に つ い て は,付
8.5
録Kを
参 照.
ブラ ウ ン運 動
この 節 で は,前 節 で 述 べ た確 率 過 程 の構 成 法 を,(8.34)で 族
定 義 され る測 度 の に応 用 す る こ と
に よ り,あ る確 率 過 程 の 存 在 を証 明 し,自 由 ハ ミル トニ ア ンH0の 半 群e-tH0に
もつ
は 連 続 で あ る.
(ⅱ) 任 意 の 自 然 数nとτ1,…,τn∈Tに (Xτ1,…,Xτn)の
の(ⅰ),(ⅱ)を
つ の)連 続 版 と い う:
(ⅰ) 確 率 過 程Xが
に 対 し て,標
∈Tに 対 し て,次
生 成 す る熱
関 す る経 路 積 分 表 示 を導 く.こ の 節 を通 して
(8.47) *26 "表 現"と い う関 係 は確 率過 程 全 体 の集 合 にお け る一 つ の 同値 関係 で あ る こ とは容 易 に わ か る.こ の 意 味 で,同 値 とい う呼 称 は正 当性 を もつ.
と お く.各t〓0に
対 し て,
を
(8.48) に よ っ て 定 義 す る*27.
定 理8.17
各x∈IRdに
対 し て,可
のn∈INとtl〓0(l=1,…,n)に
測 空 間(M,Σ)上 対 し て,確
の 確 率 測 度Pxで,す
べ て
率 ベ ク トル(B(t1),…,B(tn))
の結合分布 が
(8.49) で 与 え られ る もの が た だ 一 つ 存 在 す る. 証 明 x∈IRdと
す る.確 率 測 度 の族
か ら確 率 測 度 の 族
を次 の よ うに 定 義 す
る:各
に 対 して,
換 σ が 存 在 す る か ら(t1,…tnの な い が,そ
の 場 合 に は,ど
とな る置
中 に 同 じ も の が あ る 場 合 に は,σ
れ か を 一 つ 選 ぶ),こ
は 一意 的 で
れ を用 い て
(8.50) と す る. d=1の
場 合,
が,M=[0,∞)
の 場 合 に 関 す る 定 理8.15の る.ま
た,補
が わ か る.し
題8.13に
仮 定 の 条 件(ⅰ)を
よ っ て,定
た が っ て,(IR[0,∞),B[0
tl〓0(l=1,…,n)に
理8.15の
満 たす こ と は容 易 に確 か め られ
仮 定 の 条 件(ⅱ)も
,∞))上 の 測 度P1,xで
満 たされる こと
す べ て のn∈INと
対 して
(8.51) *27 文 献 に よ っ て は
,B(t)=Bt,Bj(t)=Bt,jと
い う記 号 を 用 い る 場 合 も あ る.
とな る もの が た だ 一 つ 存 在 す る. d〓2の
場 合 には
(8.52) に注 意すれ ば
(8.53) (d=1の
場 合 の 測 度 の 直 積 測 度)で あ る こ とが わ か る.こ の 事 実 と前節 の 最 後
の ほ うで 述 べ た こ と に よ り,題 意 が した が う. この定 理 にお け る確 率 測 度Pxに
関 す る期 待値 をExで
■
レー デ ィ ン ガ ー半 群e-tHv(t>0)に
表 す.次 の定 理 は,シ ュ
関 す る経 路 積 分 表 示 を導 くた め の 基 礎 と
な る もの で あ る: 定 理8.18 る.こ
とす
の と き,任
意 のx∈IRdに
対 して
(8.54) 証 明 定 理8.14と(8.49)に
注 意8.6
よ る.
■
詳 細 は 省 略 せ ざる を得 ない が,確 率 過 程{B(t)}t〓0は,上
述 の もの
と は異 な る表 現 を もつ.し た が って,経 路 積 分 表 示(確 率 過 程 表 示)(8.54)は
一
意 的 で は な い. 確 率 過 程B(t)の
性 質 を調 べ よ う.ま ず,任
で あ り,最 右 辺 はxjに
意 のt>0に
等 しい こ とが わか るの で(t=0の
対 して
場 合 も同様)
(8.55)
が 成 立 す る.こ つxに
れ は,B(t)の
期 待 値 が パ ラ メ ー タ ーtに
等 し い こ と を 示 す.ま
よ らず一 定 で あ り,か
た
で あ るか ら
(8.56) こ れ はB(・)の と こ ろxに
初 期 値B(0)(運
動 の 出 発 点)が
等 し い こ と を示 す.こ
の 事 実 を 考 慮 し て,定
在 が 保 証 さ れ る確 率 空 間(M,Σ,Px)上 発 す るd次 Pxは
測 度Pxに
関 して ほ と ん ど い た る 理8.17に
の 確 率 過 程{B(t)│t〓0}を
元 ブ ラ ウ ン 運 動 ま た は ウ ィ ー ナ ー(Wiener)過
よっ て そ の存 点xか
程 と い う.確
ら出 率測度
ウ ィ ー ナ ー 測 度 と 呼 ば れ る.
(8.55)はEx(B(t)-x)=0と
同 値 で あ る.そ
こ で,B(t)よ
り も,む
しろ
(8.57) に よ っ て 定 義 さ れ る 確 率 過 程A(t)で と る こ とが 推 測 さ れ る.実
際,た
考 え た ほ う が 諸 々 の 計 算 は よ り簡 単 な 形 を と え ば,0〓t<sな
ら ば,j,q=1,…,dに
対 して
した が って
(8.58) が 得 ら れ る.こ
れは
(8.59)
を 導 く.し
たが っ て
(8.60) さ らに,次 の 重 要 な事 実 が 成 立 す る: 命 題8.19 均0の
各j=1,…,d,h>0,t〓0に
対 し て,
は平
ガ ウ ス 型 確 率 変 数 で あ る.
証明
の 特 性 関 数(付 録Ⅰ を参 照) は
で あ る か ら,こ れ
を 計 算 す れ ば
を 得 る.し
た が っ て,Xは
ガ ウ ス 型 で あ る. ■
次 に確 率 過 程{A(t)}t〓0に 定 理8.20
関 す る特 性 関数 を計 算 して み よ う.
任 意 の
を満 た す す べ て のtl〓0
お よび す べ て の
に対 して
(8.61) が 成 り立 つ.
証 明 0
場 合 だ け を 証 明 す る(他 と す る.ま
2,…,n)と
お く.定
理8.17に
変 数変換y1=x1-x,yl=xl-xl-1を
た.s1=t1,sl=tl-tl-1(l=
よって
行 うと
の 場 合 も 同 様).
と い う 形 に 表 さ れ る.た
だ し
こ れ を代 入 して 整 理 す れ ば(8.61)が
得 ら れ る.
■
こ の 定 理 は,{A(t)}t≧oがIRd-値
の ガ ウ ス 型 確 率 過 程(付
録Jを
参 照)で
あ
る こ と を 示 す.
物 理 的 な観 点 か らい え ば,少 な く と もPxに ω ∈Mに
対 して,標 本 関 数:
関 して ほ とん どい た る と ころ の 点
は連 続 に な っ て い て ほ しい.こ
の側
面 に つ い て は 次 の 事 実 が 証 明 され る: 定 理8.21
を 点xか
す る.
(ⅰ) 0<α<1/2と
ら 出 発 す るd次
元 ブ ラ ウ ン 運 動 と す る.
に 対 して,B(t)(ω)はtの
関数 と
し て 指 数 α の ヘ ル ダ ー 連 続 性 を も つ*28. (ⅱ)
に 対 し て,B(t)(ω)はtの
証 明 (ⅰ)d=1の と(8.60)お (Cpは
よ び 付 録Jの
定 数).任
と な る.し
場 合 を 示 せ ば 十 分 で あ る.h>0と 命 題J.1に
録Kの
対 して,pを 系K.2に
指 数 α の ヘ ル ダ ー 連 続 版 を も つ.し (ⅱ)た と え ば,[12]の
す る.こ
の と き,命 題8.19
よ っ て
意 の0<α<1/2に
た が っ て,付
関 数 と し て 微 分 不 可 能 で あ る.
た が っ て,題
付 録 の 定 理5の
十 分 大 き くと れ ば,α<1-p-1
よ っ て,B(t)は(同
じ確 率 空 間 上 で)
意 が 成 立 す る.
証 明 を 参 照.
■
こ の定 理 に お け る(ⅱ)の 性 質 も注 目すべ きで あ る.す な わ ち,ブ
ラ ウ ン運 動
につ い て は,通 常 の 意 味 で の速 度 の 概 念 は定 義 され な い*29. 定 理8.21と(8.56)に
よ っ て,確
(パ ラ メ ー タ ー 空 間 は
率 測 度Pxは,始
点 がxで
あ るIRd内
の 曲線
の全体
(8.62) *28 写 像f:Ⅱ
→IRd(Ⅱ
はIRの t,s∈Ⅱ
区 間)に つ い て ,定 数C〓0,α>0が が 成 り立 つ と き,fは 指 数 α の(ま
連 続 性 を も つ と い う. *29 だ が ,超 関 数 的 な 意 味 で の 微 分 は 存 在 し,そ
あ っ て, た は α 次 の)ヘ
れ は ホ ワ イ トノ イ ズ と呼 ば れ る.
ル ダー
上 で 定 義 され た も の と して よ い.た Σ}で
だ し,こ の 場 合 の ボ レ ル 集 合 体 は{B∩Mx│B∈
あ る.
8.6
フ ァ イ ン マ ン-カ
だ い ぶ 準 備 が 長 くな っ て し ま っ た が,こ
れ で シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 型 半 群e-tHv
に 対 し て 経 路 積 分 表 示 を 導 くこ とが で き る.こ 場 合 だ け を 考 察 す る.こ
の 場 合,前
ッツの 公 式
こ で は,簡 単 の た め,Vが
節 の 結 果 に よ り,d次
に 関 し て ほ と ん ど い た る と こ ろ の ω ∈M=(IRd)[0,∞)に 続 で あ る か ら,∫t0V(ω(s))dsは 可 測 で あ る.さ
ら にVは
下 に 有 界 で あ る と し よ う.こ 理2.25の
対 し て,t→
ω(t)は 連
の と き,HVは
応 用).HVの
(フ ァ イ ン マ ン-カ ッ ツ(M.Kac)の
数 で 下 に 有 界 な も の とす る.こ
元 ウ ィ ー ナ ー 測 度Px
リ ー マ ン 積 分 と し て 定 義 さ れ(t〓0),
上 で 本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る(定 定 理8.22
連続 な
閉 包 もHVで
公 式)VをIRd上
表 す.
の実 数値 連続 関
の と き,任 意 のn∈INと0
と
に対 して
(8.63) (8.64) 特 に,任
意 のt>0と
ψ ∈L2(IRd)に
対 して
(8.65) 証 明 s1=t1,sj=tj-tj-1(j=2,…,n)と 式(定
理8.10-(ⅱ))に
と 書 け る.た
だ し
よ り
お く.ト
ロ ッ タ ー-加
藤 の 積 公
こ の式 の 右 辺 は 定 理8.18を
と 変 形 さ れ る.そ
応用 する ことによ り
こ でc:=infx∈IRdV(x)と
す れ ば,Px-a.e.ω
に対 し て
で あ るか ら,ル ベ ー グ の優 収 束 定 理 に よ り
が 得 ら れ る.ゆ
え に(8.64)が
定 理8.22は,8.3.2項
成 立 す る.
■
に お け る発 見 法 的議 論 に対 す る 数 学 的 に厳 密 な基 礎 づ
け を 与 え る. 次 に 定 理8.22か
ら帰 結 さ れ る 事 柄 の 一 つ と し て,"純
虚 数 時 間 にお け る状 態 の
遷 移 確 率 振 幅"―
〈ψ0,e-(t1-t0)HVψ1…e-(tn-tn-1)HVψn〉
とい う 型 の 量 ―
に 対 す る 経 路 積 分 表 示 を 導 こ う.た
で あ る(他 の 諸 量 も同様).そ
と え ば,ψ0,ψ1∈L2(IRd)に
対 し て,
こで 問 題 は,右 辺 を一 つ の 確 率 空 間上 の確 率 過 程
を用 い て表 す こ とで あ る. 補 題8.23
n∈IN,
tl〓0(l=1,…,n), f:(IRd)n→C(ボ
が 満 た さ れ る と す る.こ
の とき
レ ル 可 測)と
し
証 明 0〓t1〓
そ こ で,変 IRd)と
…
〓tnの
場 合 を 示 せ ば 十 分 で あ る.左
数 変 換zj=yj-xを
辺 をL(f)と
お くと
行 い,Pt(x',y')=Pt(0,y'-x')(t〓0,x',y'∈
い う性 質 に注 意 す れ ば
こ れ は(8.66)の
補 題8.24
右 辺 に 等 しい.
定 理8.22の
■
仮 定 の も とで
(8.67)
証 明 左 辺 をL(f)と
す る.ル ベ ー グ の 優 収 束 定 理 に よ り(定 理8.22の
証明 を
参 照)
右辺 に前 補題 を応用す れば
こ こで,最 後 の 等 号 を得 るの に再 び ル ベ ー グの 優 収 束 定 理 を応 用 した.
■
さて
(8.68)
と し,こ
の 空 間 の 上 に 測 度 μ0を
(8.69) に よ っ て 導 入 す る*30.こ 各t〓0に
対 し て,関
れ は 確 率 測 度 で は な い が σ 有 限 な 測 度 で あ る. 数 φ(t):IRd×M→IRdを
(8.70) に よ っ て 定 義 す る.
定 理8.25 V,ψj(j=1,…,n)は t0
定 理8.22の す る.こ
も の と し,ψ0∈L2(IRd),0〓
の と き
(8.71) 特 に,す
べ て のt>0,η,ψ
∈L2(IRd)に
対 して
(8.72)
証 明 t0=0の
場 合 を 考 え る.こ
の と き,(8.64)と
補 題8.24に
よって
(8.73)
c:=infx∈IRdV(x),‖・‖∞:=‖・‖L∝(IRd)と
お く.積
分 に関 す る シ ュ ヴ ァル ツ
の不 等 式 に よ って
*30 ボ レ ル 集 合 体 と し て は ,B×A,B∈Bd,A∈
Σ に よ っ て 生 成 さ れ る も の を と る.
し た が っ て,フ
に等
し い.こ
ビ ニ の 定 理 に よ っ て,(8.73)の
こ で,μ0-a.e.(x,ω)に
ω(0)=0,P0-a.e.ω((8.56)でx=0の 次 にt0>0の 1,…,n,と
場 合 を 考 え,(8.71)の す れ ば,tk-tk-1=sk-sk-1,
右辺 は
対 し て,φ(0)=xで 場 合)].よ 左 辺 をLと
あ る こ と を 用 い た[∵ っ て(8.71)が
得 ら れ る.
お こ う.sj=tj-t0,j=
k=2,…,n.し
た が っ て,前
段
の結 果 を応 用 す れ ば
を 得 る.と
こ ろ で,分
布 ま で 戻 っ て 計 算 す る こ と に よ り,一
L2(IRd),fj∈L∞(IRd),j=1,…,m-1と0
般 に,任
意 のf0,fm∈ 対 して
が 成 り立 つ こ とが わ か る(φ(0)(x,ω)=x,μ0-a.e.に
注 意).こ
の事 実 を用 い る と
(*)は(8.71)の
右 辺 に 等 しい こ とが わ か る((*)に
に つ い て は,積
分 部 分 を リ ー マ ン近 似 和 の 極 限 と し て 書 き 直 す.そ
式 の 段 階 で 上 の 事 実 を 適 用 し,そ
の 後 で,ル
お け る 因 子 し て,近
似
ベ ー グ の 優 収 束 定 理 を用 い て極 限
移 行 す る).
■
フ ァ イ ン マ ン-カ ッ ツ の 公 式(8.64)は
い ろ い ろ な 応 用 を も ち う る.こ
こ で は,
そ の 一 つ だ け を 取 り上 げ る. 定 理8.26
(最 低 エ ネ ル ギ ー の 経 路 積 分 表 示)V:IRd→IRは
で あ る と す る.こ
連 続 で下 に有 界
の と き,任 意 の ψ ∈E(HV)(E(HV)は(8.13)でA=HVの
場 合 の集 合)に対し
て
(8.74) 証 明 定 理8.5と(8.72)を
使 え ば よ い.
■
8.7 基 底 状 態 過 程
この 節 で は,L2(IRd)上
の,基 底 状 態 を もつ 自己 共 役 作 用 素 に よ って 生 成 され
る熱 半 群 と確 率 過 程 との普 遍 的連 関構 造 を明 ら か に す る. HをL2(IRd)上
の 下 に有界な 自己共役 作用素とし て
(8.75) とお く.こ
の と き,Hは
非 負 自己 共 役 作 用 素 で あ る.各t>0に
上 の ボ レ ル 可 測 関 数KHtが
存 在 し て,e-tHが
で 与 え ら れ る と き,す
な わ ち,
が 成 り立 つ と き,Hは
熱 核(heat
的 にe-tH(x,y)と
記 す:
kernel)KHtを
対 し て,IRd×IRd
これ を積 分 核 とす る積 分 作 用 素
もつ と い う.Hの
熱 核 を記 号
以 下 で は 次 の 条 件(H.1), (H.1)各t>0に e-tH(x,y)を
(H.2)を
仮 定 す る:
対 し て,e-tHは,次
の 条 件 を 満 た す 熱 核Kt(x,y):=
も つ:(a)KtはIRd×IRd上
連 続 でKt(x,y)>0, x,y∈IRd;
(b) x∈IRd.便 超 関 数)と
宜 上,K0(x,y):=δ(x-y)(デ
(H.2)Hはa.e.正 ‖ΩH‖=1と 例8.1
の 基 底 状 態 ΩHを
も つ:HΩH=0か
1次 元 量 子 調 和 振 動 子 の ハ ミル トニ ア ン([4],3.8節)
定 数)の
で与 え られ る.L0は
熱 核 は,メ
ー ラ ー の 公 式([4],p.383)に
よ り
基 底 状 態 を 一意 的 に も ち,そ れ は,
の零 で な い 定 数 倍 で 与 え られ る([4],3.8節).こ
れ らの 事 実 か ら,H=L0は(H.1),
満 た す こ と が わ か る.
例8.2
こ こ で は証 明 を 与 え る 紙 数 は な い が,あ
シ ャ ルVに
対 し て,H=HVと
い て は,た
と え ば,[19]のTheorem
の3.5節
つ ΩH>0(a.e.x).
す る.
(m,ω>0は
(H.2)を
ルタ
お く.
や[17]の
§XⅢ.12を
6.6を,条
(H.1)を
満 た され る.条
件(H.2)に
参 照(演 習 問 題4の
指 摘 した 事 実 を心 に と どめ て,先
補 題8.27
る一般 的 な ク ラス に属 す る ポテ ン
して(H.1),(H.2)は
件(H.1)に
つ い て は,た
注 も参 照).だ
が,こ
つ
と え ば,[6] こ で は,い
ま
に 進 ん で 差 し支 え な い.
仮 定 す る*31.こ
の と き:
(ⅰ)
(ⅱ) 証 明 (ⅰ)e-tHの
対称性
に よ り,任 意のf,g∈C∞0(IRd)に
が 成 り立 つ.こ ([4],付 録C,補
題C.2)を
*31 こ の 補 題 で は ,(H.2)の
対 し て,
れ を 具 体 的 に 書 き下 し,ド ゥ ・ボ ワ ・レ イ モ ン の補 題
応 用 す れ ば, 条 件 は 必 要 で な い.
x∈IRdが よ り,結
得 ら れ る.そ
こ で,再
び,ド
ゥ ・ボ ワ ・レ イ モ ン の 補 題 を 使 う こ と に
論 を 得 る.
(ⅱ)(ⅰ)の 事 実 と(H.1)お 関 数Kt,(x,y)Ks(y,z)は
よ び 積 分 に 関 す る シ ュ ヴ ァ ル ツ の 不 等 式 に よ っ て,yの 可 積 分 で あ る.こ
れ と半 群 特 性e-(t+s)H=e-tHe-sH
を 用 い る こ と に よ り結 論 が し た が う(f∈C∞0(IRd)に
作 用 さ せ て 考 察 し,ド
ゥ ・
ボ ワ ・レ イ モ ン の 補 題 を 応 用 せ よ).
定 理8.28
(H.1),(H.2)を
■
仮 定 す る.可
測 空 間(M,Σ)は(8.47)で
る も の と し,各t〓0とj=1,…,dに
対 し て,Xj(t):M→IRを
に よ っ て 定 義 す る.こ
の と き,(M,Σ)上
の 確 率 測 度 μHで,す
tl(0〓t1〓t2〓
〓tn)に
…
対 し て,確
定 義 され
べ て のn∈INと
率 ベ ク トル(X(t1),…,X(tn))の
結
合 分布 が
(8.76) で 与 え ら れ る もの が た だ一 つ存 在 す る. 証 明 (8.76)で
定 義 さ れ る 測 度 μHt1,…,tnが(IRd)n上
容 易 に わ か る.確
率 測 度 の 族{μHt1,…,tn│n∈IN,0〓t1〓
い う 確 率 測 度 μ の 存 在 を 示 す 方 法 は,定 の で,詳
理8.17の
の確率 測度で ある ことは …
〓tn}か
ら題 意 に
場 合 と ま っ た く並 行 的 で あ る
細 を 埋 め る こ と は 読 者 の 演 習 とす る(演 習 問 題7).
定 理8.28に
い う確 率 過 程{X(t)}t〓0をHに
state process)とい
■
関 す る 基 底 状 態 過 程(ground
う.
一 般 に,任
意 の 量 子 系 の ハ ミ ル トニ ア ン の 基 底 状 態 ― Ψ0と
(vacuum)と
も 呼 ば れ る*32.‖
空 間 に 作 用 す る 作 用 素Aの
Ψ0‖=1と
す る.当
該 の 系 の 状 態 の ヒ ルベ ル ト
状 態 Ψ0に 関 す る 期 待 値 〈Ψ0,AΨ0〉
*32 真 空 の概 念 は も と も と量 子 場 の 理論 に 由来 す るが
し よ う― は真 空
をAの
真空期
,こ こで は,そ の用 語 法 を拡 張す る.
待 値 とい う(も ち ろ ん,Ψ0∈D(A)と
す る).真 空 期 待 値 の すべ て の 集 ま りは,
系 の多 くの 情 報 を 担 う.こ の意 味 で,真 空 期 待 値 の 性 質 を調 べ る こ と は重 要 で あ る. 次 の 定 理 は,Hを
ハ ミル トニ ア ン とす る系 に お け る真 空 期 待 値 の確 率 過 程 表
示(経 路 積 分 表 示,汎 定 理8.29 t0〓t1〓
(H.1), …
〓tnと
関 数積 分 表 示)を 与 え る.
(H.2)を
仮 定 し,n∈IN,
す る.こ
f0,f1,…,fn∈L∞(IRd)
,0〓
の と き
(8.77) 証 明 左 辺は
と書 け る.こ
例8.3
れ は,μHの
定 義 に し た が っ て ,(8.77)の
1次 元 量 子 調 和 振 動 子L0(例8.1)に
よ う ― は 振 動 子 過 程(oscillator レ ン ベ ッ ク(Uhlenbeck)過
process)ま
程 と 呼 ば れ る.こ
n∈INと0
右 辺 に 等 し い.
関 す る 基 底 状 態 過 程―{q(t)}t〓0と た は オ ル ン シ ュ タ イ ン(Ornstein)-ウ の 場 合,次
の 事 実 が わ か る:(ⅰ)任
対 し て,(q(t1),…,q(tn))は
■ し ー 意 の
ガウス型確 率 ベ ク
ト ル で あ る;(ⅱ)
(8.78) が 成 り立 つ. 証 明 (ⅰ) 任 意 のkj∈IR(j=1,…,n)に
対 して
右 辺 は ガ ウ ス 型 関 数 の フ ー リエ 変 換 で あ る か ら, ((Ajl)は
正 定 値 行 列).し
た が っ て,結
論 を 得 る.
とい う形 に な る
(ⅱ)t>sと
す れ ば,
こ こ で,
と書 け る こ と に 注 意 す る.た L0=ωa*aが
成 り 立 つ([4],定
と す る.任 す るCCRお
意 の β>0に よ びaΩL0=0を
理3.61;aの
だ し,aは
消 滅 作 用 素 で あ る([4],3.8節).
閉 包 もaと
記 す).
対 し て,
とa,a*に
用 い る こ と に よ り,D0上
が 成 り立 っ こ とが わ か る.し
関
で
たが って
ゆ え に 題 意 が し た が う*33.
熱 半 群e-tHに て,Hに
■
対 す る経 路 積 分 表 示 が 確 立 され る と,HVの
場 合 と同 様 に し
摂 動 を加 え た作 用 素 の 生 成 す る熱 半 群 につ い て も経 路 積 分 表 示 を導 く
こ とが で き る: 定 理8.30
{X(t)}t〓0をHに
関 す る 基 底 状 態 過 程 と し,μHに
ん ど い た る と こ ろ の ω ∈ ω に 対 し て,対 す る.V:IRd→IRを
応:t〓X(t)(ω)は
関 し て,ほ
と
連 続 で あ る と仮 定
連 続 で下 に 有 界 な関 数 と し
(8.79) は 本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る と 仮 定 す る.n∈IN, 0〓t0
す る.こ
f0,f1,…,fn∈L∞(IRd),
の とき
(8.80) 証 明 トロ ッター-加 藤 の積公 式 に よ り こ れ を(8.80)の 左 辺 に代 入 し,定 理8.29を 理8.25の
証 明 と同 じなの で 詳 細 は省 略 す る).
*33 別 証 と し て い(演
用 い て変 形 す れ ば よい(や り方 は 定
,
習 問 題8).
■ を 用い て,右
辺 を直接 計算し
て もよ
例8.4
W:IR→IRは
連 続 で 下 に有 界 で あ る とす る.し
た が っ て,L2(IR)上
の対
称 作用 素
はC∞0(IR)上 LWで
で 本 質 的 に 自 己 共 役 で あ る(定 理2.25の
表 す.例8.3に
述 べ た 性 質 と付 録Kの
ほ と ん どい た る と こ ろ の 点 η ∈Mに よ い.し
系K.2の
応 用).LWの
応 用 に よ り,μL0に
対 し て,q(t)(η)はtに
た が っ て,定 理8.30をH(V)=L0+Wと
閉 包 も 同 じ記 号 関 して,
つ い て 連 続 で あ る と して
して 応 用 で き る の で 次 の 事 実 を
得 る: 定 理8.31
n∈IN,
f0,f1,…,fn∈L∞(IR),0〓t0
す る.こ
の とき
(8.81)
付 録 Ⅰ 確 率 論 の基 本事 項
Ⅰ.1 特
性
(Ω,B,P)を
確 率 空 間 とす る.こ
か ら定 ま る,IRn上
関
数 の 確 率 空 間 上 の 確 率 ベ ク トルX=(X1,…,Xn)
の 関数
(Ⅰ.1)
(Ⅰ.2) をXの
特 性 関 数(characteristic
function)と
い う.容
易 に わか る よ うに
(Ⅰ.3)
が 成 り立 つ. 命 題Ⅰ.1 CXはIRd上
の 有 界 な連 続 関 数 で あ る.
証 明 有 界 性 は す で に み た の で,連 続 性 だ け を証 明 す る.k,p∈IRnに Ω →Cを
に よ っ て定義 す る.こ
対 して,fk
,p:
れ を用い る と
容 易 に わ か る よ う に,│fk ,p(ω)│〓2
か つ
し た が っ て,ル ベ ー グ の 収 束 定 理 を応 用 す る こ と に よ り, こ れ と(*)に
よ り,CXは
連 続 で あ る こ とが 結 論 さ
れ る.
■
[3]ま た は[4]の 付 録A.8の
定 理A.19に
よって
(I.4) と書 け る
.
一 般 に,μ
を 可 測 空 間(IRn,Bn)上
の 有 限 測 度 とす る と き
(I.5) をμ の フ ー リエ 変 換 と い う. 例I.1
に 対 して,
は 有 限 な 測 度 で あ り,μ の フ ー リ エ 変 換 は,fの 意 味 で,有
とす れ ば,こ
れ
フ ー リエ 変 換 に ほ か な ら な い.こ
の
限 測 度 の フ ー リエ 変 換 は,非 負 値 関 数 の フ ー リエ 変 換 の一 般 化 と み る こ と
が で き る.
(I.4)は,Xの い る.し
特 性 関 数 の 複 素 共 役 が そ の 分 布 の フ ー リエ 変 換 で あ る こ と を 示 して
た が っ て,フ ー リエ 解 析 を応 用 す る こ とに よ り,特 性 関 数 か ら,分 布PXを
求 め る こ とが 可 能 に な る.こ
れ に 関 す る定 理 を 述 べ る 前 に,ま ず,分
布 の一 意性 に関
す る 事 実 を 述 べ て お こ う: 定 理I.2
(IRn,Bn)上
の 二 つ の確 率 測 度P1,P2の
フー リエ 変 換 が 一 致 す れ ばP1=P2
で あ る.
こ の 定 理 は,Levy-Havilandの き る が,こ
反 転 公 式 を 応 用 す る こ と に よ り証 明 す る こ とが で
こ で は そ の 証 明 は省 略 す る*34.こ
の 定 理 か ら,た
だ ち に次 の事実 が導 か
れ る: 定 理I.3 C*XがIRn上
の あ る 有 限 測 度 μ の フ ー リエ 変 換 な らば,μ=PX.
次 の定理 は,特 性 関数 か ら分 布 関数 を計 算す る ため に有用 で あ る.
*34 た と え ば
,[12]の
§5.2や[11]の
定 理30.7を
参 照.
定 理Ⅰ.4 CX∈L1(IRn)と
もL1(IRn)に
し,関 数
属 す る と 仮 定 す る.こ
の と き,分
布PXは
ル ベ ー グ測 度 に 関 し て 絶 対
連 続 で あ り,そ の ラ ドン-ニ コ デ ィム 導 関 数 はρ で 与 え ら れ る:
証 明 定 理 の仮 定 と フ ー リエ 変 換 に 対 す る 反 転 公 式 を 応 用 す る こ と に よ り が 成 り立 つ(こ れ は,も と も と は,ほ と ん どい た る と こ ろ のkに て の み 成 り立 つ 式 で あ る が,両 に 対 し て 成 り立 つ).定 CX∈L1(IRn)で
辺 と も連 続 関 数 で あ る の で,結 局,す
理Ⅰ.3に よ り,あ
とρ〓0を
示 せ ば,定
対 し
べ て のk∈IRn
理 の 証 明 が 完 結 す る.
あ る か ら,ル ベ ー グ の 優 収 束 定 理 と フ ビニ の 定 理 に よ り
最 後 の式 は非 負 の関数 の積分 の 極 限で あ るか ら非負 で あ る.ゆ え にρ〓0.
■
Ⅰ.2 モ ー メ ン トと 特 性 関 数
Xを
確 率 空 間(Ω,B,P)上
の と き,Xnの
をXのn次
の 確 率 変 数 と す る.n∈INに
対 して,Xn∈L1(Ω,dP)
期待 値
の モ ー メ ン トま た は積 率 と い う.
定 理Ⅰ.5 nを
自 然 数 とす る.こ
のとき
(I.6) な らば,Xの
特性 関 数CXはn回
連 続微 分可 能 で あ り
(I.7)
が 成 り立 つ.こ
こで,C(l)XはCXのl皆
の 導 関 数 を 表 す.し
た が っ て,特
に
(I.8) 証 明 ま ず,(I.6)は,任
意 のl=1,…,nに
対 し て,
を意味
す る こ と に注 意 す る.実 際
残 りの事 実 は,微 分 と積 分 の順 序 交 換 に関 す る定 理([3]付 の 付 録Aの
定 理A.8)を
実 は,定 理I.5の
録 の 定 理A.4.1,ま
応 用 す る こ と に よ り,証 明 さ れ る.
あ る 意 味 で の 逆 も成 り立 つ.す
モ ー メ ン トの 存 在 を 導 くの で あ る.応 定 理I.6 CX(k)がk=0の
た は[4] ■
な わ ち,特 性 関 数 の な め らか さ が
用 上 は こ の ほ う が 有 用 で あ る.
近 傍 で2n回
連 続 微 分 可 能 な らば,l=1,…,2nに
対
して
(I.9) で あ り,(I.7)がl=1,…,2nに
証 明 ま ず,n=1の
対 し て 成 り立 つ.
と き に 題 意 が 成 立 す る こ と を示 す.そ
と表 され る こ と に 注 目 す る*35.こ
*35 一 般 に ,開 区 間(a,b)上
が 成 り立 つ.こ
こ で,特
にk=0の
の2回 連 続 微 分 可 能 な 関数fに
の た め に,t=0の
場 合 を考 え る と
対 して
れ は テ ー ラ ー 展 開 を 用 い て 容 易 に 証 明 さ れ る.
近傍 で
そ こで,フ ァ トー の補題と
を用 い る と
し た が っ て,(I.9)がn=1の 次 に(I.9)がn=2m(mは
自然 数)の
場 合 に 成 り立 つ.
と き 成 立 す る と し よ う.こ
の と き,定 理I.5
に よ り, に 注 意 す れ ば,前
した が っ て,前
段 の議論 か ら
段 と 同 様 に して
に(I.9)はn=2(m+1)の 定 理I.5,定
定 理I.7
理I.6は
ゆえ
と き も成 立 す る. 確 率 ベ ク ト ルX=(X1,…,Xn)の
(ⅰ) n∈IN(l=1,…,n)と
し,
■ 場 合 へ と 拡 張 さ れ る*36:
を満 たす すべ ての 多重指 数
に対 して
(I.10) とす る.こ
の と き,CXはn回
が 成 り立 つ.し
連 続 微 分 可 能 で あ り,
た が っ て,特
(ⅱ) CXがk=0の べ て の 多 重 指 数
に
近 傍 で2n回
連 続 微 分 可 能 な ら ば, に 対 し て,nを2nと
を満 た す す した(I.10)が
成 り立 つ.
付録J ガ ウス型 確 率 過程 量 子 力 学 や 量子 場 の理 論 にお い て重 要 な役 割 を演 じる確 率 過 程 の クラ ス を導 入 す る.一 つ の 見 通 しをい え ば,ブ ラ ウ ン運動 をそ の 一 つ の具 体 例 とす る よ うな一般 的 な確 率 過程 の ク ラス であ る.ま ず,確 率 変 数 の あ る一般 的 な ク ラス を定 義 す る. *36 証 明 は る.
,こ れ らの 定 理 ない しそ の証 明 の 手法 を利 用 す る こ とに よ り,容 易 に遂 行 され う
J.1
ガ ウ ス 型確 率 変 数
(Ω,B,P)を
確 率 空 間 とす る.こ
の 空 間 上 の 確 率 変 数Xが
ガ ウ ス 型 で あ る と は,そ
の特 性 関数 が
(J.1) と い う形 に な る 場 合 を い う.こ CX(t)は
こ で,a〓0は
無 限 回連 続 微 分 可 能 で あ る の で,定
定 数,mは 理I.6に
実 定 数 で あ る.明
ら か に,
よ り,す べ て の 自 然 数nに
対
して
で あ る.
が 確 率 変 数X-mの
特 性 関 数 で あ る こ と に 注 意 し,(I.7)お
よび
とい う事 実 を使 え ば
(J.2) を得 る.特
に,Xの
が(J.1)で
与 え ら れ る確 率 変 数 を 平 均 がm,分
(J.2)か
ら 明 ら か な よ う に,ガ
は,平
平 均 はm,分
散 はaで
あ る こ とが わ か る.そ 散 がaの
ウ ス 型 確 率 変 数Xの
れ ゆ え,特
性 関数
ガ ウ ス型 確 率 変 数 と い う. 場 合,Xの
任意 のモ ー メ ン ト
均 と 分 散 を用 い て 表 さ れ る.
a>0な
ら ば,定
理I.4と
公式
を 用 い る こ と に よ り,ガ ウ ス 型 確 率 変 数 の 分 布 は
(J.3) で 与 え られ る.a=0の
と き は,(J.3)でa→0の
極 限 を考 察 す る こ と に よ り
(J.4) で あ る こ とが わ か る. 特 性 関 数 が(J.1)で X:=X-mを
与 え ら れ る ガ ウ ス 型 確 率 変 数Xに
考 え る と,こ れ は 平 均0,分
散aの
対 し て,新
しい 確 率 変 数
ガ ウ ス 型 確 率 変 数 に な る.逆
に,
平 均0,分 れ は,平
散aの
ガ ウス 型 確 率 変 数Yが
均m,分
散aの
を 考 え る 場 合,平 均 が0の らな い 限 り,ガ
与 え られ た場 合,X:=Y+mと
ガ ウ ス 型 確 率 変 数 で あ る.し
もの を考 え れ ば 十 分 で あ る.そ
ウ ス 型 確 率 変 数 と い う と き は,そ
す れ ば,こ
た が っ て,ガ
ウス型確 率 変数
れ ゆ え,以 下 で は,特 に 断
の 平 均 は0で
あ る と す る.
次 の 事 実 は 有 用 で あ る: 命 題J.1
Xを(平
均0の)ガ
ウ ス 型 確 率 変 数 とす る と き,任 意 の 正 数pに
対 して
(J.5) が 成 り立 つ.こ
こで
証 明 a:=E(X2)と
す れ ば,(J.3)に
そ こ で,
J.2
よ り
と変 数 変 換 す れ ば,(J.5)が
得 られ る.
■
ガ ウ ス 型 確 率 ベ ク トル
ガ ウ ス 型 確 率 変 数 の 確 率 ベ ク トル 版 を定 義 す る. 正 定 値 実 対 称 行 列 で あ る と す る.す な わ ち. 意 の
に 対 して
ク トルX=(X1,…,Xn)の
をn次
の半 かつ任
が 成 立 す る と す る.確 率 ベ
特 性 関数 が
(J.6) とい う形 で 与 え られ る と き,Xを
ガ ウ ス 型 確 率 ベ ク トル と い う.こ の場 合,X1,…,Xn
は 結 合 的 に ガ ウ ス 型 で あ る と も い う.容 易 に わ か る よ う に,CXは 能 で あ る か ら,定 理I.7-(ⅱ)に 特 に,定理I.7-(ⅰ)に
よ っ て,X1,…,Xnの
無 限 回連 続 微 分 可
任 意 の冪 の 積 は 可 積 分 で あ る.
より
(J.7) が 成 り立 つ.第 *37 一 般 に
,確
二 式 は,Xの
共 分 散 行 列 はAで
率 ベ ク ト ルY=(Y1,…,Yn)か
行 列 と い う.
あ る こ と を 示 す*37. ら 定 ま る 行 列
をYの
共分散
(J.6)の 右 辺 を 級 数 展 開 す れ ば
(J.8) で あ る か ら,た
とえ ば
(J.9) (J.10) が 導 か れ る.こ
こ で, は,(1,…,2n)か
らn個
の互 い に異 な る対
を取 り 出 す 仕 方 す べ て に わ た る 和 を表 す*38.し か ら決 ま る.こ 各Xjの
た が っ て,X1,…,Xnの
任 意 の 積 の 期 待 値 は 共 分 散E[XjXl]
れ は ガ ウ ス 型 確 率 ベ ク トル の 特 徴 の 一 つ が あ る.
特 性 関数 は
(J.11) で あ る の で,Xjは 定 理J.2
分 散 がAjjの
ガ ウ ス 型 確 率 変 数 で あ る*39.
共 分 散 行 列
X=(X1,…,Xn)の
が 正 定 値 で あ る ガ ウ ス 型 確 率 ベ ク トル
分布は
(J.12) で 与 え ら れ る.こ
証 明 定 理I.4を
こ で,det
Aは,行
応 用 す る.そ
を計 算 す る必 要 が あ る.線
列Aの
行 列 式 を表 す.
の た め には
形 代 数 で よ く知 ら れ て い る よ う に,正 定 値 実 対 称 行 列 は 適
当 な 直 交 行 列 を 用 い て 対 角 化 され る.す
な わ ち,あ
と表 さ れ る.た
だ し,
*38 例: *39
はAの
半 正 定 値 性 か ら容 易 に 導 か れ る
.
るn次
の 直 交 行 列Tが
存 在 して
はAの
固有
値 で あ る.そ
こ で, と
お けば
し
たが っ て
さ ら に, (J.12)が
J.3
に注意
す れ ば
よ っ て,
得 ら れ る.
■
ガ ウ ス型 確 率 過程
集 合Tに よ っ て 添 え 字 付 け られ たIRd-値 確 率 変 数 の 族 (各X(t)は 同 一 の 確 率 空 間 上 のIRd-値 確 率 変 数)に つ い て ,す べ て の 自 然 数n∈INと すべ ての に 対 して 確 率 ベ ク トル(X(t1),…,X(tn))が をIRd-値
ガ ウ ス 型 で あ る と き,
の ガ ウ ス 型 確 率 過 程 とい う.
付録K 確率過程の連続性に対する判定条件 定 理K.1
(コ ル モ ゴ ロ フの 連 続 性 定 理)a,b(a
間(Ω,Σ,P)上
の 実 数 値 確 率 過 程 とす る.定
実 数,
数C>0,r,p(0
を確 率 空 あ っ て,不
等式
(K.1) が 成 り立 つ と仮 定 す る.0<α
固 定 す る.こ
と ん ど い た る と こ ろ の ω ∈ Ω に対 し て 定 数C(ω)>0が て の2進
有 理数s,tに
の と き,Pに
存 在 して,[a,b]の
関 して,ほ 中のす べ
対 して
(K.2) が 成 立 す る.
証 明 た と え ば,[19],p.
系K.2
43,
定 理K.1の
Theorem
5.1を
参 照.
■
仮 定 を 満 た す 確 率 過 程
を も ち,す べ て のs,t∈[a,b]に
は(Ω,B,P)上
に連 続 版
対 して
(K.3) が 成 立 す る.こ
こ でC(ω)は,s,tに
証明
よ ら な い 定 数 で あ る.
が 成 立}と
す る.し
[a,b]の 中 の2進 有 理 数 の全 体 は,[a,b]で に よ り,Xt(ω)はtの Xt(ω)と
た が っ て,
で あ る.
稠 密 で あ る か ら,ω ∈ Ω0に 対 して は,(K.2)
関 数 と して,[a,b]上
の 連 続 関 数 に 一 意 的 に拡 大 され る.こ
書 く.こ れ は Ω0上 の確 率 変 数 で あ り,Ω \Ω0上 で は,0と
全 体 へ と拡 張 され る.こ して,対 応: し て(Xt1,…,Xtn)の て わ か る:各tjに
の 拡 張 もXt(ω)で
表 す.こ
は 連 続 で あ る.さ
ら に,任 意 の
分 布 と(Xt1,…,Xtn)の
の と き,明 らか に,各ω
∈ Ω に対 に対
分 布 が 一 致 す る こ とが 次 の よ う に し
対 して,
と な る2進
う な2進 有 理 数 に対 し て は,Xtの
れを
す る こ とに よ り,Ω
有 理 数 が 存 在 し,そ の よ
定 義 に よ り,任 意 の 実 数 αj,j=1,…,nに
対 して,
が成 り立つ.右 辺 は,Xt(ω)の 連続
性 と ル ベ ー グ の 優 収 束 定 理 に よ り, よ っ て,tj(m)の
に収 束 す る.一 方,(K.1)に
適 当 な 部 分 列
を とれ ば,
した がっ て,ル ベ ー グ の 優 収 束 定理 に よ り,
ゆ え に, こ れ は(Xt1,…,Xtn)の
が 得 られ る.
特 性 関 数 と(Xt1,…,Xtn)の
い る か ら,分 布 の 一 意 性 定 理(定 理I.2)に は 一 致 す る.よ
っ て,
よ っ て,こ
は
そ れ が 一 致 す る こ と を示 し て れ ら二 つ の 確 率 ベ ク トル の 分 布
の連 続 版 で あ る.(K.3)は(K.2)か
ら極 限 移 行 す る こ と に よ り得 ら れ る*40. 一 般 に,T=[a,b]ま
た は[0,∞)上
のIRd-値
■ 関 数 ω に 対 して,定
数C>0が
存在
して
*40 定 数C(ω)に ば よ い.
つ い てい えば
,
とす れ
が 成 り立 つ と き(α ∈(0,1]は 系K.2の 連 続 版 と 呼 ば れ る.
は,よ
定 数),ω
は 指 数 α の ヘ ル ダ ー 連 続 性 を もつ とい う.
り精 密 に は,
ノ
ー
に対 す る,指 数 α の ヘ ル ダ ー
ト
こ の 章 で 論 述 した 汎 関 数 積 分 法 は,量 子 場 の 理 論 の モ デ ル の研 究 に お い て も非 常 に 有 用 で あ り,強 力 で あ り う る.こ の 側 面 に つ い て は,た
と え ば,[6]や[8]を
参照 され
た い. 数 理 物 理 学 と の 関 連 に お い て 確 率 論 を 要 領 よ く簡 潔 に 解 説 した 邦 書 と して[21]が あ る.こ
の 本 や[20]は,本
章 に登 場 した確 率 過 程 の さ ら に 詳 細 な 性 質 や 数 理 物 理 的 発
展 を学 習 す る の に 役 立 つ で あ ろ う. 量 子 力 学 に お け る 経 路 積 分 の 物 理 的 ・発 見 法 的議 論 が ど ん な もの で あ る か を知 る に は,た
と え ば,[18]が
参 考 に な る か も しれ な い.し
は― 発 見 法 的 に は 有 用 で あ る とは い え―,理
か し,も
ち ろ ん,こ の 種 の 議 論 で
論 的 に 完 全 な 結 論 に 到 る こ と は で き な い.
第8章 演 習 問題 Hは 複 素 ヒ ル ベ ル ト空 間 とす る. 1. 注 意8.1に 2. LをH上
述 べ た 事 実 を証 明 せ よ. の 下 に 有 界 な 自己 共 役 作 用 素 とす る.抽
象 的 な 熱 方 程 式(8.9)の
つ の 解 Ψ1(t) ,Ψ2(t)の 初 期 条 件 が 一 致 す る な ら ば,す が 成 り立 つ な らば, 3. H0は(8.22)に
で あ る こ と を 示 せ.
よ っ て 定 義 さ れ る作 用 素 とす る.次
(ⅰ) ψ ∈L2(IRd)が
二
な わ ち,
実 数 値 な らば,す べ て のt>0に
の 事 実 を 証 明 せ よ. 対 して,e-tH0ψ
も実 数
値 で あ る.
(ⅱ) ψ ∈L2(IRd)が
非 負 な ら ば,す べ て のt>0に
対 して,e-tH0ψ
も非 負 で
あ る.
(ⅲ) ψ ∈L2(IRd)が t>0に
非 負 か つ ψ ≠0(L2(IRd)の
対 し て,e-tH0ψ>0(a.e.).
(ⅳ) ψ ∈L1(IRd)な
らば
元 と し て)な
ら ば,す
べ ての
さらに
こ こ で,ψ(k):=(2π)-d/2∫IRde-ikxψ(x)dxは
ψ の フ ー リエ 変 換 を
表 す.
定 義(X,
μ)を 測 度 空 間 と し,TをL2(X,dμ)上
(a)f〓0, f〓L2(X,dμ)な
ら ば,常
保 存 す る(positivity
Tは
にTf〓0で
preserving)と
(b)f〓0,f〓L2(X,dμ)\{0}な
の 有 界 な 線 形 作 用 素 と す る. あ る と き,Tは
い い,Tを
ら ば,常
正 値 性 を 改 良 す る(positivity
正値性 を
正 値 性 保 存 作 用 素 と 呼 ぶ.
にTf>0(μ-a.e.)で
improving)と
い い,Tを
あ る と き, 正 値性 改良
作 用 素 と 呼 ぶ.
注:演
習 問 題3-(ⅲ)に
よ っ て,す
べ て のt>0に
対 し て,e-tH0は
正値性 改
良 作 用 素 で あ る.
4. (X,u)を
測 度 空 間 と し,TをL2(X,dμ)上
の 有 界 な 線 形 作 用 素 とす る.
(ⅰ) す べ て の 非 負 関 数f,g〓L2(X,dμ)に
対 して,〈f,Tg〉〓0な
らば,Tは
正 値 性 保 存 作 用 素 で あ る こ と を 示 せ. (ⅱ) す べ て の 非 負 関 数f,g〓L2(x,dμ)\{0}に Tは (ⅲ) Tが
対 して,〈f,Tg〉>0な
ら ば,
正 値 性 改 良作 用 素 で あ る こ と を 示 せ. 正 値 性 保 存 作 用 素(正 値 性 改 良 作 用 素)な
ら ば,T*も
正値 性保 存作
用 素(正 値 性 改 良作 用 素)で あ る こ と を 示 せ*41. 注:L2(X,dμ)上
の 下 に有 界 な 自己 共 役 作 用 素Hに
対 し て,e-tHが
正 値 性 改 良 作 用 素 な ら ば,Hの
つ い て,す べ て のt>0に 基 底 状 態 は(存 在 す れ ば)一
意 的 で あ り,か つ 基 底 状 態 と して μ に関 し て ほ と ん ど い た る と こ ろ 正 で あ る も の が とれ る こ と が 証 明 され る([6],定 用 素 の 概 念 は 重 要 で あ る.
*41 括 弧 に は括 弧 を対 応 させ て読 む .
理3.5.2).こ
の 意 味 で も,正 値 性 改 良 作
5. VをIRd上
の 連 続 な 関 数 で 下 に有 界 な も の とす る.こ
に対 して,e-tHvは ヒ ン ト:(8.72)と 6. A,BをH上
の と き,す べ て のt>0
正 値 性 改 良 作 用 素 で あ る こ と を 証 明 せ よ. 演 習 問 題3-(ⅲ)を
用 い よ.
の 下 に有 界 な 自 己 共 役 作 用 素 と し,A+Bは
あ る とす る.さ
ら に,す べ て のt>0に
保 存 作 用 素 で あ る とす る.こ
対 して,e-tA,
の と き,す べ て のt>0に
本 質 的 に自己共 役で e-tBは
ともに正値 性
対 して,e-t(A+B)は
正 値 性 保 存 作 用 素 で あ る こ と を 証 明 せ よ. 7. 定 理8.28の
証 明 の 詳 細 を 埋 め よ.
8. 積分∫(IRd)2xydμL0s,t(x,y)を
直 接 計 算 す る こ と に よ り,(8.78)を
証 明 せ よ.
関連 図書 [1] 新 井 朝 雄,『
ヒ ル ベ ル ト空 間 と量 子 力 学 』,共 立 出 版,1997.
[2] 新 井 朝 雄,『 物 理 現 象 の 数 学 的 諸 原 理 』,共 立 出 版,2003. [3] 新 井 朝 雄 ・江 沢 洋,『 量 子 力 学 の 数 学 的 構 造Ⅰ 』,朝 倉 書 店,1999. [4] 新 井 朝 雄 ・江 沢 洋,『 量 子 力 学 の 数 学 的 構 造Ⅱ 』,朝 倉 書 店,1999. [5] 江 沢 洋,量
子 力 学 の 構 造,[22]の
第17章.
[6] 江 沢 洋 ・新 井 朝 雄,『 場 の 量 子 論 と 統 計 力 学 』,日 本 評 論 社,1988. [7] 藤原 大 輔,『 フ ァ イ ンマ ン経 路 積 分 の 数 学 的 方 法― 時 間 分 割 近 似 法 』,シ ュ プ リ ン ガ ー ・ フ ェ ア ラ ー ク 東 京,1999. [8] 廣 島 文 生,開 放 系 の ス ペ ク トル 解 析― 汎 関 数 積 分 に よ る ア プ ロ ー チ,荒 『数 理 物 理 へ の 誘 い4』(遊 星 社,2002)の 第6話,p.143-p.174. [9] Takashi Ichinose and Kato product formula
Hideo with
Tamura,The norm convergence error bound,Commun.Math.Phys.217(2001),
木不二洋 編
of the
Trotter
489-502. [10] 伊 藤 清,『 確 率 論 』,岩 波 書 店,1953. [11] 伊 藤 清三,『
ル ベ ー グ 積 分 入 門 』(12版),裳
華 房,1963,1974.
[12] 掛 下 伸 一,『 確 率 論 』,サ イ エ ン ス 社,1973. [13] A.コ
ル モ ゴ ル フ 『確 率 論 の 基 礎 概 念 』(根 本 伸 司 訳),東
[14] 中 村徹,『
超 準 解 析 と 物 理 学 』,日 本 評 論 社,1998.
[15] M.Reed Functional
and B.Simon,Methods Analysis,Academic
[16] M.Reed
and
B.Simon,Methods
Self-adjointness,Fourier [17] M.Reed Analysis [18] L.S.シ
of Modern Press,1972. of Modern
Analysis,Academic
and B.Simon,Methods of Operators,Academic
of Modern Press,1978.
京 図 書,1975.
Mathematical
Mathematical
Physics
Physics
Vol.Ⅰ:
Vol.Ⅱ:
Press,1975. Mathematical
ュ ル マ ン,『 フ ァ イ ン マ ン 経 路 積 分 』(高 塚 和 夫 訳),講
Physics
談 社,1995.
Vol.Ⅳ:
[19] B.Simon,Functional 1979.
Integration
and
Quantum
Physics,Academic
[20] 保 江 邦 夫,『 数 理 物 理 学 方 法 序 説3量
子 力 学 』,日 本 評 論 社,2001.
[21] 保 江 邦 夫,『 数 理 物 理 学 方 法 序 説4確
率 論 』,日 本 評 論 社,2001.
[22] 湯 川 秀 樹 ・豊 田 利 幸 編,『 岩 波 講 座 現 代 物 理 学 の 基 礎[第2版]4量 書 店,1978.
Press,
子 力 学Ⅱ 』,岩 波
9 超対称 的量子力学
通 常 の 時空 の一 般 化 と して,外 的 な時 空 に加 えて,"ス ピンの 古 典力 学"を 記 述 す る"内 部 空間"を も取 り入 れ た超 空 間 の概 念 につ い て叙 述 す る.超 空 間 に は超 並 進群 と呼 ばれ る変 換群 が 作 用 し,こ の 変換 群 の対 称性 として古 典 力 学 的 レヴ ェル での 超 対称 性 が定 義 され る.古 典力 学 で の超 対 称性 は,量 子 力学 にお い て は,ボ ソ ン とフ ェ ル ミオ ン を対 等 に扱 う対 称 性 と して 現 れ る.超 対 称性 を もつ 量 子 力学― 超 対称 的 量 子 力 学― を公理 論 的 に定式 化 し,一 般 論 を展 開す る.こ れ に よ って超 対 称 的量 子 力 学 の普 遍 的 な数 学 的構 造 が 明 らか に され る.こ の普 遍 的 な レヴ ェル に おい て,超 対 称 的量 子 力学 は,超 対称 性 を もた な い量 子 力 学 に比 べ て興 味 深 い性 質 を もつ こ とが 示 唆 され る:摂 動 法が 破綻 す る 構 造 の 存在 や基 底 状 態 の 縮 退等 々.具 体 的 なモ デ ル の解 析 も行 う.
9.1
前 著[14]の4章
は じめ に― 超 対 称 性 と は ど うい う も の か
に お い て,量
子 的 粒 子 は 二 つ の 族,す
ボ ソ ン に 分 類 さ れ る こ と を 述 べ た.前 ち,後
者 は 非 負 整 数(0,
1, 2, …)の
ル ミ オ ン と ボ ソ ン は"物 場 合,フ
質"の
ェ ル ミ オ ン は"物
間 の 力 を 媒 介 す る.こ さ れ て",あ
ス ピ ン を も つ(ス
質"の
い わ ば"素
と え ば,原
材"で
ェ ル ミオ ン と ス ピンをも
ピ ン と 統 計 の 関 係).フ
あ り,ボ
子 核,原
子 や 分 子,そ
然 の こ と な が ら,そ
ェ くの
ソ ンは フェ ル ミオ ン
材 と し て の フ ェ ル ミ オ ン は"つ
と し て の 巨 視 的 物 質)が 生 み 出 さ れ る の で あ る*1.フ 的 性 質 の 違 い は,当
3/2, …)の
形 成 に あ た っ て 互 い に 異 な る 役 割 を 担 う.多
の 力 に よ り,素
る 構 造 体(た
な わ ち,フ
者 は 半 奇 数(1/2,
な ぎ合 わ
して そ れ らの 集 合体
ェ ル ミオ ン とボ ソ ンの 物理
の 数 学 的 形 式 に 反 映 して い る.そ
の一
*1 い う ま で も な く ,各 フ ェ ル ミオ ン ご と に,そ の フ ェ ル ミ オ ン ど う し の 力 を 媒 介 す る ボ ソ ン の 種 類 は 異 な り う る.た と え ば,核 子 ど う し の 力(核 力)は 中 間 子 とい う ボ ソ ン に よ っ て 媒 介 さ れ,電 さ れ る.
気 力 は,光
の 量 子 で あ る光子―
こ れ は ス ピ ン1の
ボ ソ ン― に よ っ て 媒 介
端 は,前 著[14]の4章 しか し,こ
で み た通 りで あ る.
う した 性 質 の違 い に も関 わ らず,フ
類 の対 象 と は み な い で,よ と も可 能 で あ る.平
ェ ル ミオ ン とボ ソ ン を別 の 種
り高 次 の 実 体 の 特 殊 分 節 とみ る統 一 的 観 点 を とる こ
た くい え ば,ボ
ソ ン と フ ェ ル ミ オ ンを あ る 意 味 で 同 等 に扱
う の で あ る.こ の よ う な観 点 を可 能 にす る一 つ の 数 学 的 構 造 と して 構 想 され た の が 超 対 称 性(supersymmetry)と
呼 ば れ る 対 称 性 の概 念 で あ る.こ の 対 称 性
は,描 像 的 に い え ば,時 空 の対 称 性 と内 部 対 称 性 を統 一 し,ボ ソ ン と フ ェ ル ミ オ ン を互 い に 関連 づ け る対 称 性 で あ る.超 対 称 性 は,歴 子 場 の 理 論 の コ ンテ クス トで導 入 され た(Wess-Zumino,
史 的 に は,相 対 論 的 量 1974).だ
が,非 相 対
論 的 な量 子 場 の理 論 や 有 限 自 由 度 の 量 子 力 学 に お い て も超 対 称 性 を考 え る こ と は可 能 で あ る.こ の 章 の 目 的 は,こ の 広 い 意 味 で の 超 対 称 的 量 子 力 学 の 基 本 的 な部 分 を叙 述 す る こ とで あ る,9.3節
以 降 に お い て示 され る よ うに,超 対 称 的量
子 力 学 は,通 常 の 量 子 力 学 に は な い興 味 深 い 側 面 を もっ て い る.
9.2 超 空 間,超 場 お よび超 対 称 性 代 数
超 対 称 的 量 子 力 学 の数 学 的 理 論 を定 式 化 す る前 に,古 典 力 学 的 次 元 にお い て, 超 対 称 性 が ど うい う もの で あ る か に つ い て の 発 見 法 的 な議 論 を して お こ う. 前 節 で 述 べ た よ う に,超 対 称 性 は ボ ソ ン と フ ェ ル ミオ ン を関 連 づ け る とい う 意 味 に お い て,本 質 的 に は,量 子 論 的 な概 念 で あ る.し か し,超 対 称 性 の,古 典 力 学 にお け る 対 応 物 を考 え る こ と は可 能 で あ り,こ れ に よ って,通 常 の 時 空 間の 拡 大 と して の"超 空 間"(superspace)と か れ る.ま ず,こ
い う概 念 が,あ る意 味 で は 自然 に導
れ が ど の よ う な もの で あ る か を簡 単 な例 に よ っ て示 そ う.
通 常 の 古 典 力 学 の 正 準 量子 化 にお い て は,正 準 交 換 関 係 を通 して,座 標 と運 動 量 が ヒ ルベ ル ト空 間 上 の 作 用 素 に対 応 させ られ る.し か し,こ の場 合,ス
ピ
ンの こ と は考 慮 され て お らず,さ
しあ た っ て は,ス
ピ ンが0の
学 的記 述 で あ る と考 え られ る.ス
ピ ン自 由度 は,あ
とか ら内 部 自 由度 と して つ
け加 え るの が 普 通 で あ る.も
ボ ソ ンの 量 子 力
し,古 典 力 学 の レ ヴ ェ ル で もス ピ ン 自由度 に対 応
す る もの を記 述 し よう 思 うな ら ば,通 常 の座 標,運 動 量 変 数 の ほ か に 別 の い わ ば"内 的 な"力 学 変 数 を導 入 す る 必 要 が あ る で あ ろ う.こ れ が どの よ うな もの
で あ る べ き か を さ ぐ る た め に,フ い も の,す
な わ ち,ス
ェ ル ミオ ンの う ちで もス ピ ンの 値 が 最 も小 さ
ピ ン が1/2の
素 粒 子― た と え ば 電 子―
を考 え て み よ う.
こ の 素 粒 子 の ス ピ ン 作 用 素S=(S1,S2,S3)はSj=(h/2)σj({σj}3j リ行 列)に
よ っ て 与 え ら れ,こ
=1は
パ ウ
れ らは 反 交 換 関 係
(9.1) を 満 た す*2.(9.1)の ピ ン 作 用 素 は,"古
右 辺 は,古
典 的 極 限 ん →0を
典 的 に は",何
と る と き,0に
な る の で,ス
か あ る 反 可 換 な 量 の 組(θ1, θ2, θ3)で表 さ れ る
と 考 え ら れ る:
(9.2) パ ウ リ行 列 は σjσk=Σ3l=1iεjklσl(εjklは で,ス
ピ ン 作 用 素 の 成 分 の う ち,独
し て も 一 般 性 を 失 わ な い.し 理 論 が あ る とす れ ば,そ る で あ ろ う.逆 立 な"力
典 力 学 系"が
あ っ て,そ
み な す こ とが で き る.以
ン 的 変 数 ま た は フ ェ ル ミ オ ン 的 座 標 と い う こ と に す る.こ 元 時 空 の 点(t, x1, x2, x3)〓IR4と
, S2と
ピ ンの 力 学 に対 応 す る古 典 的 な 力 学
関 係 式 で あ る と み 直 す の で あ る.こ
わ ば"古 典 的 ス ピ ン力 学 変 数"と
れ ら をS1
か あ る 反 可 換 な 代 数 的 対 象 θ1,θ2を 二 つ の 独
す る よ う な"古
に お け るj, k=1,2の
満 たす の
つ の 独 立 な 反 可 換 変 数 θ1,θ2を 用 い て 記 述 さ れ
に い う な ら ば,何
学 変 数"と
立 な もの は 二 つ で あ り,そ
た が っ て,ス
れ は,二
レ ヴ イ ・チ ビ タ 記 号)を
の"量 子 化"が(9.1) の 場 合,(θ1, θ2)は い 後,こ
れ を フ ェル ミオ
う して,通
常 の4次
フ ェ ル ミ オ ン 的 変 数 の 組(θ1, θ2)を あ わ せ た
も の(t, x1, x2, x3, θ1,θ2)か ら な る 空 間 を 想 像 す る こ と が で き る.こ
れ が"超
間"と
も含 め た古
呼 ば れ る 空 間 に 対 す る 素 朴 な 描 像 で あ る."古
典 力 学 を つ くる に は,通
常 の 古 典 力 学 の 枠 組 み を"超
典 的 ス ピ ン"を 空 間"の
空
上 に拡 張 す れ ば よ
い で あ ろ う こ と は 容 易 に 推 測 さ れ よ う. "超 空 間"に お い て は,時 空 点(t, x1, x2, x3)と を"混
ぜ 合 わ せ る"変
る 困 難 に 出 会 う.た *2 古 典 的 極 限h AB+BA.
→0を
換 が 考 え ら れ る.と と え ば,"超
空 間"の
考 え た い の で ,hを
フ ェ ル ミ オ ン 的 変 数 の 組(θ1, θ2)
こ ろ が,そ
の種 の 変 換 を考 え る と あ
点 の 第 一 成 分 の 座 標tがt+θ1θ2と
復 活 させ た.{・,・}は
反 交 換 子:{A,B}:=
な る よ う な 変 換 を 考 え て み よ う.こ が な い,だ
が,実
数 で あ る と す る と θ=0と
θ2=θ1θ2θ1θ2=-θ21θ22=0).他 言 及 し た,"超 唆 す る.つ
の 場 合,θ:=θ1θ2は
な っ て し ま う(∵(9.2)を
の 成 分 の 変 換 に つ い て も 同 様.こ
使 う と, れ は,上
に
空 間"に 対 す る 素 朴 な 描 像 が 修 正 さ れ な け れ ば な ら な い こ と を 示
ま り,超 空 間 が 数 学 的 に 存 在 す る と す れ ば,そ
ル ミオ ン 的 座 標 と 同 様 に,実
数 で は あ り え な い.こ
も っ と き ち ん と した 考 察 を行 う こ と に よ り,以 の 真 の 姿 が 見 い だ さ れ る.な は,9.3節
実数 でなけ れば意味
お,超
の 時 空 の 座 標 も,フ
ェ
れ を 動 機 づ け の 一 つ と し て,
下 に 叙 述 す る よ う に,"超
空 間"
対 称 的 量 子 力 学 をす ぐに も学 習 した い 読 者
か ら 読 み 進 ん で 差 し支 え な い(こ
の 節 の 残 りの 内 容 を 知 ら な く て も,
9.3節 以 降 の 数 学 的 内 容 は 理 解 で き る よ う に 書 か れ て い る).
9.2.1
超 空 間 と 超 場
単 位 元eと 数 をAと
可 算 無 限 個 の 元υn(n=1,2,…)か
し よ う.す
な わ ち,Aは
ら生 成 され る グ ラ ス マ ン代
無 限 次 元 代 数 で あ り,υnは
(9.3) を 満 た し,Aの
任 意 の 元Aは
(9.4)
(9.5)
と い う形 で 与 え ら れ る.こ 反 対 称 で あ り,(9.4)の (9.5)の
こ で,A0〓C,
右 辺 の 和 は,Aご
Ai1…ip〓Cは(i1,
に,A(p)の
関 して
と に 定 ま る 有 限 項 に わ た る 和 で あ り,
第 二 式 の 和 も 有 限 項 に わ た る 和 で あ る*3.グ
ラ ス マ ン 数 とい い,特
…, ip)に
形 の 元 を 次 数pの
*3 無 限 次 元 グラ ス マ ン代 数 の基 本 的 モ デ ル の 一 つ は
ラ ス マ ン代 数Aの
元 をグ
グ ラ ス マ ン 数 と い う.
,無 限 次 元 ベ ク トル空 間Vか らつ く られ る外 積 代 数∧(V):= ∞p=0∧p(V)で あ る[∧p(V):= pasVはVのp重 反 対 称 代 数 的 テ ン ソル 積([14], 4章)].Vが ヒル ベ ル ト空 間 で あ れ ば,∧(V)の 閉包は V上 の フ ェ ル ミオ ン フ ォ ック空 間Fas(V)で あ る([14], 4章).∧(V)に お け る 積演 算 は外 積∧ に よ っ て与 え る.す なわ ち,任 意 のu= ∞p=0u(p), υ= ∞p=0υ(p)〓
次 数 が 偶 数 で あ る グ ラス マ ン数 の1次
結 合 が な す 部 分 空 間 をA+,次
数 で あ る グ ラス マ ン数 の1次 結 合 が な す 部 分 空 間 をA_と
す れ ば,明
数が奇 らか に
(9.6) と 直 和 分 解 さ れ る.A+は
部 分 代 数 を な す が,A_は
そ う で は な い.実
際,容
易
にわかる ように
(9.7) が 成 り立 つ.さ
ら に,(9.3)に
可 換 で あ り,A_の
よ っ て,A+の
任 意 の 元 は 任 意 の グ ラ ス マ ン数 と
任 意 の 二 つ の 元 は 反 可 換 で あ る.特
に
(9.8) が 成 立 す る. 自 然数m,
nに
対 して
(9.9) と す る.こ
れ らの 直和
(9.10) を 超 空 間 と い う.Bmの θ=(θ1,… xを
元xとSnの
元 θ を そ れ ぞ れ,x=(x0,x1,…,xm-1),
θn)と 記 す[xμ〓A+(μ=0,…,m-1), θa〓A_(a=1,…,n)].
時 空 変 数,θ
を 内 部 変 数 ま た は フ ェ ル ミ オ ン 的 変 数 と呼 ぶ.m=4,
の 場 合,す
な わ ち,A4,2が,上
つ ま り,時
空 の 座 標 の お の お の をA+の
そ れ ぞ れ はA_の
n=2
で 素 朴 な 形 で 考 え た 超 空 間 の 厳 密 な 形 を 与 え る. 元 と し て,ま
元 と し て 解 釈 し直 す の で あ る.こ
た"古 典 的 ス ピ ン座 標"の う す る こ と に よ り,時
空座
標 と フ ェ ル ミ オ ン 的 変 数 を 混 合 す る 変 換 が 可 能 に な る. ∧(V)に
対 し て,uυ:=u∧υ:= p,qu(p)∧υ(q).Vの
基 底 を{υn}∞n=1と
(有 限 項 に わ た る 和)と i1, …, ipに
関 し て 反 対 称).
す れ ば,
書 け る(ui1…ip〓Cは
超 空 間Am, nか F(Am,n)で 表 す ぶ よ う に,こ
らAへ .通
の 写 像 を 超 場(superfield)と
呼 ぶ.超
常 の 時 空 上 の 関 数 や ベ ク トル 場,テ
場全体の集合 を
ン ソ ル 場 を 古 典 場 と呼
こ で 定 義 し た 意 味 で の 超 場 は 超 空 間 上 の 古 典 場 で あ る.以
下 で は,
こ の 古 典 場 に 関 す る 理 論 の 一 部 を叙 述 す る こ と に な る*4 .
9.2.2
超
並
通 常 の(d+1)次
進
群
元 時 空IRd+1に
群 で あ っ た(こ れ も同 じ記 号IRd+1で
お け る 単 純 で 自然 な 変 換 群 の 一 つ は,並 進 書 か れ る)(第4章
を参 照).超 空 間 にお い
て も この 種 の 変 換 群 を考 察 す る の は 自然 で あ る.こ の場 合,超 対 称 性 とい う観 点 を 考 慮 す る と,時 空 変 数 と内 部 変 数 が 混 合 す る よ うな 並 進 が よ り意 味 の あ る もの で あ ろ う こ とが 予 想 され る.以 下 の 論 述 は,純 数 学 的 に は,こ の動 機 づ け の も と に発 見 さ れ る 理 論 内 容 の 一 部 で あ る. 内 部 変 数 θ〓Snの 1,…,n)を
成 分 の 添 え 字 と して,英
用 い る(し た が っ て,θ の 第a成
各a,b=1,…,n,に
対 して,Bmの
語 の 小 文 字a, b, …,(a,b=
分 は θaと 表 され る).
元γabで
(9.11) を 満 た す も の を任 意 に 一 つ 固 定 し(た だ し,γμabのう ち,少 い と す る),任
意 の 二 つ の 元(x,θ), (y,ξ)〓Am,nに
な く と も一 つ は0で
な
対 し て ,積 演 算(x,θ)(y,ξ)〓
Am,nを
(9.12) に よ っ て 定 義 す る.た
だ し
(9.13) 右 辺 第 三 項 の 各 因 子γμabθaξbはA+の つ.定
元 で あ る か ら,こ の 定 義 は 確 か に 意 味 を も
義 に 即 し た 直 接 の 計 算 に よ り,Am,nは,こ
が わ か る.単
位 元 は(0, 0)で あ り,(x,θ)〓Am,nの
の 演 算 に 関 して 群 に な る こ と 逆 元 は(-x, -θ)で
あ る(こ
*4 念 の た め に述 べ てお くと ,こ の節 の 内容 は量 子 論 で は な い.だ が,以 下 に述べ る超 並 進 群 に 関 わ る代 数 的 構 造 自体 は超 対称 的量 子 論 へ と直接 に接 続 す る.
こ に 性 質(9.11)が
き く;Σna,b=1γμabθaθb=0).こ
0,…,m-1,a,b=1,…,n}に と い う.こ る.変
れ をTA
が0で
同 伴 す る 超 並 進 群(super ,γで 表 す*5.超
並 進 群 はAm,
換 群 と し て の 超 並 進 群 の 元(y,
(supersymmetric
の 群 をAとγ:={γμab|
transformation)と
あ る も の(y, 0)は,物
group)
n上
の変 換 群 とみ る こ とが で き
ξ)で ξ ≠0で
ある ものを超対称 的変換
い う*6.他
理 的 に は,時
超 並 進 群 の 各 元(y,ξ)〓TA,γ
translation
μ=
方,超
並 進 群 の元 で 内 部 変 数
空 上 の 並 進 を 表 す.
に 対 し て,写
像T(y,ξ):F(Am,n)→F(Am,n)
を
(9.14) に よっ て定 義 す れ ば,容 易 に わ か る よ うに,対 応:(y,ξ)〓T(y TA,γ のF(Am,n)上 第4章
,ξ)は,超 並 進 群
で の表 現 で あ る.
で み た よ う に,通 常 の並 進 群IRdはIRd上
の 関 数 空 間上 に 自然 な表 現
を も ち,そ の 生 成 子 は座 標 変 数 に関 す る偏 微 分 作 用 素 で 与 え られ る.こ れ との ア ナ ロ ジー か ら い え ば,超 並 進 群 に 関 す る上 述 の 表 現 の生 成 子 は― 存 在 す る と す れ ば"―
グ ラス マ ン数 に関 す る偏 微 分 作 用 素"(発 見 法 的 に は,そ の よ う な も
のが あ る と想 定 され る)を 用 い て与 え られ るで あ ろ う こ とが 推 測 さ れ る.実 際, こ の推 測 は正 しい.こ の 事 実 を正 確 に述 べ る た め に,次
に グ ラ ス マ ン数 に関 す
る偏 微 分 作 用 素 の 概 念 を定 義 す る.
9.2.3
グ ラ ス マ ン 数 に 関 す る偏 微 分
xμ〓A+(μ=0,…,m-1)で (a=1,…,n)で
生 成 さ れ る 多 項 式 の 全 体 をp+m,eと
生 成 さ れ る 多 項 式 の 全 体 をp-nと
θa〓A_
し
(9.15) を 定 義 す る.(pm,nの し て,写
像 ∂μ:pm
元 をAm,n上 ,n→pm,nを
*5 以下 の論 述 に お い て
の 多 項 式 と 呼 ぶ.各
μ=0,…,m-1に
次 の よ う に 定 義 す る:∂μα:=0,
対 ∀α 〓A;
,m=1, n=1と い う最 も簡 単 な場 合 を念頭 にお くと理解 が しや す い であ ろ う. *6 ξ ≠0な らば ,(y, ξ)は 時 空 変 数 と内部 変 数 を真 に混 合 す る こ と に よ る.
(9.16)
(x=(x0,…,xm-1)∈Bm,0〓
μj〓m-1,p∈IN,Q∈P-n).た
δν μ:=δμν は ク ロ ネ ッ カ ー の デ ル タ で あ り,xμjは 表 す 記 号 で あ る.Pm,nの xμ ∈A+に
だ し,
和 に お い てxμjを
除 くこ とを
任 意 の 元 に 対 し て は 線 形 性 に よ っ て 拡 張 す る.∂μ
を
関 す る偏 微 分 作 用 素 と い う.
各a=1,…,n,に
対 し て,θaに
関 す る 偏 微 分 作 用 素 ∂a:Pm,n→Pm,nは
次 の よ う に 定 義 さ れ る*7:∂aP:=0,∀P∈P+m;∂aα:=0,∀
α ∈A;
(9.17)
(θ=(θ1,…,θn)∈Sn,1〓al〓n,q∈IN,P∈P+m).右 (-1)l-1に
注 意.∂ μ の 場 合 と 同 様,Pm,nの
張 す る.た
だ し,任 意 のF∈Pm,nに
α ∈A-な
ら ば ∂a(αF):=-α
辺 の符 号因子 任 意 の 元 に 対 して は 線 形 性 に よ っ て 拡
対 して,α ∈A+な ∂aFと
ら ば ∂a(αF):=α
∂αF,
す る.
次 の 関 係 式 を 示 す の は 難 し くな い:
(9.18) (9.19) こ こで,注
目 すべ き は,時 空 変 数xに
関す る偏 微 分 作 用 素 ど う し,お よ び時 空
変 数 に 関 す る偏 微 分 作 用 素 と内 部 変 数 に 関す る偏 微 分 作 用 素 は 可 換 で あ る が, (9.19)が 示 す に よ うに,内 部 変 数 に関 す る偏 微 分作 用素 ど う しは 反可 換 で あ る. 特に
(9.20) *7 こ こ では
,記 号 上 の 簡 略 化 の た め,添 え字 の種 類 で 異 な る種 類 の 変数 に 関す る偏微 分作 用素 を区 別す る.
作 用 素 ∂aの 定 義 か ら容 易 に わか る よ う に,任 意 の ξ ∈A-に
対 して
(9.21) ま た,任
意 の ξ,∈∈A-に
対 して
(9.22) 偏 微 分 作 用 素
に対 して,写
像
を
(9.23) に よ っ て 定 義 す る.Φ 項 式 で あ る の で,右
はxμ,θa(μ=0,…,m-1,a=1,…,n)に
辺 は,実
際 に は,有
の 定 義 は 意 味 を も つ.e∈AをAに
9.2.4
関す る多
限 項 に わ た る 和 に な る.し
た が っ て,こ
関 す る 指 数 型 作 用 素 と い う.
超 並 進 群 の 生 成 子 と超 対 称 性 代 数
超 並 進 群 の 表 現T(y,ξ)((y,ξ)∈TA,γ)の
生 成 子 を 求 め よ う.簡
単 の た め,次
の 二 つ の 場 合 に 分 け て 考 察 す る.
(ⅰ) ξ=0の
IRd上
場 合.す
な わ ち,(T(y,0)Φ)(x,θ)=Φ(x-y,θ).こ
の 場 合 は,
の 並 進 群 の 場 合 と同様 に して
(9.24) が わ か る.
(ⅱ) y=0の
場 合.す
な わ ち,(T(0,ξ)Φ)(x,θ)=Φ(x-z,θ-ξ).た .各a=1,…,nに
対 し て,Pm,n上
だ し, の 作 用 素Daを
(9.25) に よ っ て 定 義 す る.容
易 に わ か る よ う に,各a=1,…,nと
任 意 の ξ ∈A-に
対 して
(9.26)
し た が っ て,特
に
(9.27) ゆ え に,任
意 の Φ ∈Fm,n(A)に
対 して
Φ(x,θ)=(x0)k0…(xm-1)km(θ1)α1…(θn)αn(kμ
∈{0}∪IN,αj=0,1)と
い う形 の Φ を と り,右 辺 を計 算 す る と,右 辺 は Φ(x-za,θ-ξa)に か る.た
等 しい こ と が わ
だ し,
に 注 意].し
たがって
(9.28) これ か らわ か る よ う に,作 用 素Daは る の で 超 対 称 荷(supercharge)と
超 対称的変換 の表現 に関わる生成子で あ
呼 ば れ る.
以 上 か ら,超 並 進 群 の 表 現T(y,ξ)は 偏微 分 作 用 素 ∂μ と超 対 称 荷Daか
ら生
成 され る こ とが わ か る.こ れ らの生 成 子 が 反 交 換 関 係
(9.29) を満 た す こ とを 証 明 す る の は難 し くな い(直 接 計 算*8).ま
た
(9.30) 関 係 式(9.29)は,内
部 的 自 由 度 と外 部 自 由 度(時
空 に 関 わ る 自 由 度)を
生成子
の 次 元 で 関 連 付 け る 代 数 的 構 造 とみ る こ と が で き る. 作 用 素 の 組{Da,∂
μ│a=1,…,n,μ=0,1,…,m-1}に
代 数 を 超 対 称 性 代 数(supersymmetry (9.29),(9.30)が
*8
algebra)と
よ っ て生 成 され る い う.関
係 式(9.18),(9.19),
そ の 構 造 を 統 制 す る.
等 を使 う
.
9.2.5
ボ ソ ン的 超 場 の 空 間 と フ ェル ミ オ ン的 超 場 の 空 間
任 意 の Φ ∈Pm,nは
(9.31) と い う 形 に 書 け る.た 0,a=1,…,nに
だ し,φ,φi1…iqはBm上
よ り,q〓n+1な
のA値
多 項 式 で あ る((θa)2=
ら ば,θi1…θiq=0).そ
こで
(9.32) (9.33) とお け ば
(9.34) し た が っ て,Φ+の
型 の 多 項 式 で 生 成 さ れ る 部 分 空 間 をP+,Φ-の
で 生 成 さ れ る 部 分 空 間 をP-と
型 の 多項 式
す れば
(ベ ク トル 空 間 と し て の 直 和) が 成 り立 つ.P+,P-を
そ れ ぞ れ,古
典 的 な 意 味 で の ボ ソ ン 的 超 場 の 空 間,フ
ェ
ル ミ オ ン的 超 場 の 空 間 と い う. 式(9.31)は,各x∈Am+を {e,θi1… き る.こ
と め て 考 え る な ら ば,Φ(x,・)をPnの
θiq│1〓i1<…
よ っ て 展 開 した 式 とみ る こ とが で
の 場 合,{φ(x),φi1…iq(x)│1〓i1<…
す る,Φ(x,・)の 分 と して,時
成 分 で あ る.こ
う して,一
り,φi1…iqはqが
の 基底 に 関
つ の 実 体 で あ る 超 場 Φ か ら,そ
空 上 の 場 φ,φi1…iqが 派 生(分
節)す
る.φ
う し て,前
の成
は 古 典 的 ボ ー ス場 で あ
奇 数 な ら ば 古 典 的 フ ェ ル ミ場 を 表 し,qが
ボ ー ス 場 を 表 す と 解 釈 さ れ る.こ
基 底
偶 数 な ら ば古 典 的
節 で 述 べ た超 対 称 性 につ い て の描
像 が 少 な く と も古 典 場 の レ ヴ ェ ル で は 数 学 的 に 厳 密 な 形 で 定 式 化 さ れ る. P±:Pm,n→P±
を射 影 作 用 素 と し
(9.35)
と し よう.こ
の と き,τ
≠Iで
あ り
(9.36) (9.37) が 成 立 す る(∵(9.36)の
第 一 式 は 直 接 計 算,第
二 式 は,∂μ がP±
不 変 に す る こ と に よ る.(9.37)は,DaがP± よ る).こ (9.37)を
をP〓(複
号同順)に
をそれぞれ 移 す こ とに
れ ら の 関 係 式 も超 対 称 性 の 構 造 を 反 映 し て い る の で,(9.29),(9.36), あ わ せ て 超 対 称 性 の 代 数 的 構 造 を規 定 す る 関 係 式 と み る べ き で あ る.
9.2.6
拡 大 さ れ た超 対 称 性
ス ピ ン の ほ か に,ス 対 称 荷Daは
ピ ン と は 異 な る 内 部 自 由 度 を 有 す る 超 場 の 場 合 に は,超
そ の 内 部 自 由 度 の 数―N〓1と
D(1)a,…,D(N)aと
す る.こ
し よ う―
だ け 増 え る.そ
れ らを
の 場 合 に は,(9.29)は
(9.38) と い う 形 を と る.作 1,…,N}に
よ っ て 生 成 さ れ る 代 数 を 拡 大 さ れ た 超 対 称 性 代 数(extended
persymmetry
9.2.7
用 素 の 組{D(j)a,∂ μ│a=1,…,n,μ=0,1,…,m-1,j=
algebra)と
量
子
図 式 的 に は,上
論
い う.
へ
述 の 古 典 的 超 場 の 理 論 を"量 子 化"す
場 の 量 子 論(supersymmetric
quantum
前 著[14]の4章,4.3節,4.4節 理 論 は 無 限 自 由 度 のCCRの
方,フ
ェ ル ミ場(フ
anti-commutation
*9 内 積 空 間 κ に よ が す べ て のf,
g∈
field theory)が
得 ら れ る こ と に な る. ー ス 場(ボ
ソ ンの 量 子
ヒ ル ベ ル ト空 間 表 現 と し て 捉 え ら れ る.他
ェ ル ミ オ ン の 量 子 場)の
と し て 把 握 さ れ る*9.超
る こ と に よ り,超 対 称 的
で ふ れ た た よ う に,ボ
場)の
係(canonical
su
relations;
理 論 は,無 CARと
対 称 的 な 場 の 量 子 論 は,ボ
限 自由 度 の正 準 反交 換 関 略)の
ヒ ル ベ ル ト空 間 表 現
ー ス 場 と フ ェ ル ミ場 を超 対
っ て 添 え 字 付 け ら れ た 代 数 的 対 象 の 集 合{B(f),B(f)†,I│f∈ κ に 対 し て,{B(f),B(g)†}=〈f,g〉
κI,{B(f),B(g)}=0,
κ}
称 性 と 調 和 す る 形 で 扱 う.ゆ
え に,超
は,《 無 隈 自 由 度 のCCRとCAR+拡 も含 む)》 (9.38)に
対 称 的 場 の 量 子 論 と い う の は,数
学的 に
大 さ れ た 超 対 称 性 代 数((9.36),(9.37)
の ヒ ル ベ ル ト空 間 表 現 の 一 部 と み る こ と が で き る. 関 す る 特 殊 な 場 合 と し て,γ0ab=iδab,γμab=0,μ=1,…,m-1(i
は 虚 数 単 位)の
場 合を考え
(9.39) とお く と
(9.40) とい う代 数 関 係 式 が 得 られ る.特
に
(9.41) これ は,時 空次 元 が1+0の
場 の理 論,す な わ ち,有 限 自 由度 の超 対 称 的古 典力 学 に
対 応 す る.こ の クラ スの古 典 力 学 の量 子版 が超 対 称 的量 子 力学(supersymmetric quantum
mechanics)と
呼 ば れ る もの で あ る.こ れ は,数 学 的 に は,《 有 限 自由
度 のCCR+(9.40),(9.36),(9.37)を て捉 え られ る.こ の 場 合,P0は
満 た す代 数 》の ヒルベ ル ト空 間 表 現 と し 時 間並 進 の生 成子 で あ る の で,P0の
表 現 は考 察
下 の 量 子 系 の ハ ミル トニ ア ン と して解 釈 され る こ とに な る.次 の節 で は,こ の 観 点 に 立 って,超 対 称 的 量子 力 学 を公 理 論 的 に定 式 化 し,そ の性 質 を調 べ る*10.
9.3
公 理 論 的超 対 称 的 量子 力学
超 対 称 的 量 子 力 学 の公 理 論 的 定 式 化 の た め の 鍵 とな る ア イデ ア は,す で に 示 唆 した よ う に,超 対 称 性 代 数 の 基 本 的 関 係 式(9.36),(9.37),(9.40)を
満たす
代 数 的 対 象 を ヒ ルベ ル ト空 間 上 の 自己 共 役 作 用 素 を用 い て 実 現 し,こ れ で もっ て 超 対 称 的 量 子 力 学 を定 義 す る こ とで あ る.
{B(f)†,B(g)†}=0,[I,B(f)]=0,[I,B(g)†]=0を 満 た す と き,こ れ らの 関係 式 を κ に よ って添 え字 付 け られ た正 準 反 交 換 関係(CAR)と 呼 ぶ.こ の場 合,κ が 有 限 次 元 な らば,有 限 自 由度 のCAR,κ が 無 限次 元 な らば,無 限 自由度 のCARと い う. フ ェル ミ場 の 理論 とCCRの 表 現 の 関係 の詳 細 に つ いて は,た とえば,[10]の5章 およ
び[11]の11章 を参照. *10 拡 大 され た超 対 称 性 代 数(9
.40)の 簡 単 な表現 につ い て は,演 習 問 題1∼7を
参 照.
9.3.1
定 義9.1
定
義
N〓1を
自 然 数 と す る.ヒ
役 作 用 素H,Ql(l=1,…,N),Γ (Ql≠0,l=1,…,N)が
ル ベ ル ト空 間Hと
そ こ で働 く 自己 共
か ら つ く ら れ る 四 つ 組{H,H,(Ql)Nl=1,Γ} 以 下 の 条 件 を 満 た す と き,こ
つ 超 対 称 的 量 子 力 学(supersymmetric
quantum
れ をN-超
mechanis;
対称 性 を も
SQMと略
す)と
い う: (S.1) Γ2=I(恒
等 作 用 素).
(S.2) H=Q2l,l=1,…,N(Hはlに (S.3) 作 用 素Γ
は 各Qlの
よ ら な い). 定 義 域D(Ql)を
関 係{Γ,Ql)=0(l=1,…,N)を
不 変 に し,D(Ql)上
で,反
交換
満 た す.
(S.4) 任 意 のl,k=1,…,N,l≠kに
対 し て,QlとQkはD(Ql)∩D(Qk)
上 の 準 双 線 形 形 式 の 意 味 で 反 可 換 で あ る:
(9.42) 作 用 素Qlを
注 意9.1
超 対 称 荷(supercharge),Hを
{H,(Ql)Nl=1,Γ}を9.2.7項
超 対 称 的 ハ ミ ル トニ ア ン と 呼 ぶ.
で 述 べ た 超 対 称 性 代 数 の ヒ ル ベ ル ト空 間
表 現 と し て み た 場 合 の 対 応 は 次 の 通 り:D(j)a→Ql[(a,j)を てlに
対 応 さ せ る;し
で あ る],P0→H,τ
た が っ て,こ →Γ.な
こ で のNは,9.2.7項
一 つ の 添 え字 とみ のNで
お,(S.4)は(a,j)≠(b,k)の(9.40)の
は な く,nN 表現 を
作 用 素 論 的 に よ り一 般 的 な 形 で 捉 え た も の で あ る.
注 意9.2
ス ペ ク ト ル 定 理 に よ り,Q2l=│Ql│2で
あ る の で,(S.2)は
(9.43) を 意 味 す る.し
た が っ て,特
にD(H1/2)=D(│Ql│)=D(Ql).ゆ
え に,実
は,
(9.44) で あ る.
例9.1
ヒル ベ ル ト空 間
に お い て 働 く作 用 素H, Q, Γ
を
次 の よ う に定 義 す る: H=-Δ(Δ
は3次
元 の 一 般 化 さ れ た ラ プ ラ シ ア ン),
[質量 が0の 自由 なデ ィラ ック作用 素(2.10節
を参照)]
Γ=β. この と き,
は1-超 対 称 性 を もつ 超 対 称 的 量 子 力 学 で あ る([14]
の3章,3.4節
を参 照).す
な わ ち,質 量0の
自 由 な デ ィ ラ ッ ク作 用 素 は,あ
る超 対 称
的 量 子 力 学 の 超 対 称 荷 と み る こ と もで き る.
超 対 称 的 量 子 力 学 の 例(モ
デ ル)は
ほ か に も た く さ ん 存 在 す る.だ
が,ま
ず,
上 述 の 公 理 系 か ら 導 か れ る 一 般 的 結 果 を 叙 述 す る こ と に す る. 以 下,{H,H,(Ql)Nl=1,Γ}をN-超
対 称 性 を も つ 超 対 称 的 量 子 力 学 と す る.
9.3.2
ス ペ ク トル に 関 す る 基 本 的 性 質
命 題9.2
(ⅰ)H〓0.(ⅱ)各Qlの
離 散 ス ペ ク トル σd(Ql),真 称 で あ る.す
な わ ち,λ
れ か を表 す)な 値-λ
ら ば-λ
∈ σp(Ql)の
ス ペ ク トル σ(Ql),点 性 ス ペ ク トル σess(Ql)は
∈ σ#(Ql)(σ#(Ql)は ∈ σ#(Ql).特
に,固
ス ペ ク トル σp(Ql),
い ず れ も原 点 に 関 し て 対
言 及 した ス ペ ク ト ル 集 合 の い ず 有 値 λ ∈ σp(Ql)の
多 重 度 と固 有
多 重 度 は 等 し い.
証 明 (ⅰ)は(S.2)とQlの
自 己 共 役 性 に よ る.(ⅱ)条
件(S.1)はΓ
が 自己 共 役
な ユ ニ タ リ作 用 素 で あ り
(9.45) が成 り立 つ こ と を 意 味 す る.こ
れ と(S.3)に
よ り,作
用素 の等式
(9.46) が 成 り 立 つ.こ
れ と ス ペ ク トル の ユ ニ タ リ不 変性([13,命
σ(Ql)=σ(-Ql).こ こ れ と[13]の 命 題2.24を
れ は σ(Ql)が
題2.24])に
よ り,
原 点 に つ い て 対 称 で あ る こ と を 意 味 す る.
応 用 す れ ば,σp(Ql)に
つ い て の 結 果 が 得 ら れ る.σd(Ql)
に つ い て も 同 様.σess(Ql)=σ(Ql)\
σd(Ql)で
あ る か ら,σess(Ql)も
原 点 に関
して 対 称 で あ る.
9.3.3
■
同伴 す る超 対 称 荷
各 超 対 称 荷Qlに
対 して,作 用 素Q'lを
(9.47) に よ っ て 定 義 す る.
命 題9.3
各l=1,…,Nに
対 し て,Q'lは
Ql(l=1,…,N)をQ'lと
自 己 共 役 で あ り,(S.2),(S.3)で
し た も の が 成 立 す る.さ
らに
(9.48) (9.49) が 成 り立 つ.
証 明 -iΓ
は 有 界 で あ る か ら,(Q'l)*=iQlΓ.(9.46)と(9.45)に
は-iΓQlに
等 し い.し
た が っ て,(Q'l)*=Q'l.ゆ
え にQ'lは
よ っ て,右 辺 自 己 共 役 で あ る.
H=(Q'l)2も(9.46)と(9.45)を
使 う こ と に よ り 証 明 さ れ る.(S.4)でQl,Qκ
をQ'l,Q'κ で 置 き 換 え た 式 は,-iΓ
の ユ ニ タ リ性 か ら し た が う.(9.48)は(9.46)
に よ る.(9.49)は(-iΓ)*=iΓ
に 注 意 す れ ば よ い.
命 題9.3は,{H,H,(Q'l)Nl=1,Γ}もN-超 る こ と を 意 味 す る.そ 特 に,N=1の
こ で,Q'lをQlに
■
対 称 性 を もつ超 対 称 的量 子 力 学 で あ 同 伴 す る 超 対 称 荷 と呼 ぶ.
場 合,{H,H,(Q1,Q'1),Γ}は2-超
対 称 性 を もつ 超対 称 的量 子
力 学 で あ る こ と が わ か る.
9.3.4
状 態空 間の基本的構造
命 題9.2の(ⅱ)の あ る.さ
ら に,Γ
証 明 で 言 及 し た よ う に,Γ は ±Iで
な い こ と も わ か る.な
は 自 己 共 役 な ユ ニ タ リ作 用 素 で ぜ な ら,も
し,Γ=Iな
ら ば,
(S.3)に
よ っ てQl=0と
Γ の ス ペ ク トル は ±1と
な る か ら で あ る.Γ=-Iの
場 合 も同 様.し
た が っ て,
い う 二 つ の 異 な る 固 有 値 か ら な る:
(9.50) そ こで
(9.51) (9.52) とす れ ば,状 態 の ヒル ベ ル ト空 間Hは
(9.53) と直 和 分 解 さ れ る.閉 部 分 空 間H+,H-の れ ぞ れ,ボ
ソ ン的 状 態,フ
ベ ク トル に よ っ て表 さ れ る状 態 をそ
ェル ミオ ン的 状 態 とい う.作 用 素Γ を状 態 符 号 作 用
素 と呼 ぶ*11. Hか
らH± へ の正 射 影作 用 素 をP±
とす れ ば
(9.54) と 表 さ れ る.こ
れ とP++P-=Iを
使 えば
(9.55) を 得 る.
*11 物 理 の 文 献 で は
,Γ の こ と を"フ ェ ル ミオ ン数 作用 素"と い う場 合 が多 い.こ れ は 次 の 理 由 に よる.フ ェ ル ミオ ンが奇 数 個 あ る状 態 は フ ェ ル ミオ ン的状 態 で あ り,偶 数 個 あ る 状 態 は ボ ソ ン的 で あ る(こ れ は,半 奇 数 ス ピ ンの 奇 数個 の和 は半 奇 数 ス ピ ンで あ り,偶 数 個 の和 は整 数 にな る こ とに よ る).し たが って,量 子 力 学 的状 態 に含 まれ る フ ェル ミオ ンの 数 をFと し,(-1)Fと い う量 を考 え る と,こ れが+1に な る状態 は ボ ソ ン的 で あ り,-1に な る状態 は フ ェ ル ミオ ン的 で あ る こ とに な る.超 対称 的場 の 量 子論 の具 体 的 な モ デ ル で は,ま さ にΓ=(-1)Fと なる の で あ る.だ が ,場 の 量子 論 にお け る フ ェ ル ミオ ン フ ォ ック空 間上 の数 作 用 素― これ は本 当 にフ ェ ル ミオ ンの個 数 を数 え る作 用 素― も フェル ミオ ン数作 用 素 と呼 ばれ る ので,こ れ とΓ との 混 同 を避 け る ため に,こ こ で は, "フ ェ ル ミオ ン数 作 用 素"と い う 名称 は用 い な い .
直 和 分 解(9.53)に
よっ て,Hの
任 意 の ベ ク トル Ψ はH+の
ベ ク トル の組 ,Ψ± に対 応 して,Hに
∈H±で表される.こ
お け る 任 意 の 線 形 作 用 素Lは,線
2列 の行 列
(AはH+上
の 線 形 作 用 素,CはH+か
ベ ク トル とH-の
らH-へ
の表示
形 作 用 素 を成 分 とす る2行
の線 形作用素,BはH-からH+へ
の線 形 作 用 素,DはH-上
の 線 形 作 用 素;
― この型 の線 形 作 用 素 を作 用 素 行 列 と い う― で表 され る(作 用 は,TΨ:=(AΨ++BΨ-,CΨ++DΨ-),Ψ+∈ D(A)∩D(C),Ψ-∈D(B)∩D(D)).実
際,
と す れ ば,自
そ れ ぞ れ,H+,H-上
然 な 仕 方 で,L++,L--は
ま た,L+-(L-+)はH-(H+)か
らH+(H-)へ
の 線 形 作 用 素 と,
の線 形 作 用 素 と 同一 視 され
(9.56) が 成 り立 つ*12.こ た と え ば,Γ
れ をLの
は,(9.54)に
作 用 素 行 列 表 示 と い う*13. よっ て
(9.57) と 表 さ れ る*14.
*12
の場 合 には
,D(L)=[D(L)∩H+]∩[D(L)∩H-]と は 限 らな い こ と に注 意. *13 い ま述 べ た 定義 か ら明 らか な よう に ,任 意 の ヒル ベ ル ト空 間H1, H2の 直 和 上 の 線形 作 用 素 に対 して,作 用 素行 列表 示 が で きる. *14 容 易 にわ か る よ う に ,一 般 に,H+上 の作 用 素AとH-上 の 作 用素Bの 直和 の 作用 素 行列 は え られ る.
とい う型 の作用素行列― 対 角 的作 用素 行 列 とい う― で 与
9.3.5 超 対 称 荷 の 作 用 素 行 列表 示 超 対 称 荷Qlに
関 す る作 用 素 行 列 表 示 を求 め よ う.だ が,そ の ため に は少 し準
備 が必 要 で あ る. 補 題9.4
QをH上
の 自己 共役 作 用 素 と し,Γ はD(Q)を
不 変 に し,D(Q)上
で
(9.58) が 成 り立 つ と し よ う*15.こ
の と き,任 意 の Ψ ∈D(Q)に
対 し て,P±
Ψ ∈D(Q)
であ り
(9.59) が 成 り立 つ.特
に,QはD(Q)∩H±
証 明 Ψ ∈D(Q)と (9.58),
Qを
(9.54),
す る と,仮 (9.55)を
補 題9.4の
をH〓
定 と(9.55)に
用 い る と(9.59)が
も の と す る.こ
の 中 へ う つ す.
よ り,P±Ψ
∈D(Q).そ
こ で,
得 ら れ る.
■
の補 題 の結 果 に よ り
(9.60) に よ っ て定 義 され る作 用 素Q±
はH±
か らH〓 へ の 作 用 素 で あ り,
(9.61) が 成 り立 つ*16.し
た が って,D(Q±)はH±
で 稠 密 で あ る.
次 の 補 題 は,作 用 素 行 列 に関 す る重 要 な一 般 的事 実 の 一 つ で あ る: 補 題9.5
AをH+か
らH-へ
の稠 密 に定 義 さ れ た作 用 素,BをH-か
へ の 稠 密 に定 義 され た作 用 素 と し,H上
*15 い う ま で も な く *16 AをHの
の作 用 素Sを
,各Qlは こ の 性 質 を も つ. 自己 共役 作 用 素 とす る とき ,一 般 に は,
しか い え な い こ と に 注 意.
らH+
に よ っ て 定 義 す る.た (ⅰ) D(S)は
だ し,
.こ
の と き:
稠 密 で あ り,S*は
(9.62) とい う形 で 与 え られ る. (ⅱ) Sが 自 己 共 役 で あ る た め の 必 要 十 分 条 件 は,A, A*=Bが
成 立 す る こ とで あ る.
証 明 (ⅰ) D(S)が をLと
Bが 閉作 用 素 で あ り,
稠 密 で あ る こ と は 明 ら か で あ ろ う.(9.62)の
お く.Ψ+∈D(B*),Ψ-∈D(A*)と
が っ て,Ψ
∈D(L)).こ
D(B)]…(*)に が っ て,Ψ
の と き,任
対 し て,直 ∈D(S*)で
し Ψ=(Ψ+,Ψ-)と
お く.こ
接計算 に よ り 〈 Ψ,SΦ 〉=〈LΨ,Φ
あ り,S*Ψ=LΨ
の と き,(*)の
〈S*Ψ,Φ 〉で あ る か ら,〈Ψ+,BΦ-〉+〈 で,特
に,Φ-=0の
Φ+∈D(A)に
が 成 立 す る.ゆ
え にL⊂S*…(**).
Ψ-,AΦ+〉=〈
η+,Φ+〉+〈 η-,Φ-〉.そ
で あ る か ら,A,Bは
閉 で あ る.逆
閉 でA*=Bな
と な る の で,S=S*.
こ の と き,Q±
補 題9.4の
っ て,(**)の
逆
得 ら れ る.
あ る か らB=A*,A=B*.A*,B*は に,A,Bが
な る.
つB*Ψ+=η.よ
用 素 の 等 式(9.62)が
こ
れ がす べ て の
あ り,η+=A*Ψ-と
え に,
(ⅱ) Sが 自 己 共 役 な ら ば,S=S*で
Qを
η+,Φ+〉.こ
場 合 を 考 え る こ と に よ り,Ψ+∈D(B*)か
が 示 さ れ た こ と に な る の で,作
た
形 の 任 意 の ベ ク トル Φ に 対 し て 〈 Ψ,SΦ 〉=
対 し て 成 立 す る か ら,Ψ-∈D(A*)で
で あ る こ と が わ か る.ゆ
補 題9.6
〉が わ か る.し
任 意 に と り,S*Ψ=
場 合 を考 え る と 〈 Ψ-,AΦ+〉=〈
同 様 に,Φ+=0の
お く(し た
意 の Φ=(Φ+,Φ-)[Φ+∈D(A),Φ-∈
こ の 逆 の 関 係 を 示 す た め に,Ψ=(Ψ+,Ψ-)∈D(S*)を (η+,η-)と
右辺 の作 用素
閉
ら ば,A=A**=B* ■
も の と し,Q±
は 閉 作 用 素 で あ り,Q*+=Q-か
は(9.60)で
定 義 さ れ る も の と す る.
つ
(9.63)
が 成 立 す る.さ H+か
らH-へ
ら に,こ
の 表 示 は 一 意 的 で あ る.す
の 閉 作 用 素Cが
な わ ち,稠
密 に 定 義 さ れ た,
す れ ばQΨ=Q+Ψ++Q-Ψ-で
あ り,
あ つ て ならば,C=Q+で
あ る.
証 明 Ψ=Ψ++Ψ-,Ψ±
∈D(Q±)と
で あ る か ら
と書 け る.Qは
か ら,補
題9.5に
よ り,Q±
(9.63)を
得 る.一
意 性 に 関 す る 言 明 は 明 ら か.
補 題9.6を
は 閉 で あ り,Q-=Q*+が
超 対 称 荷Qlに
自己 共 役 で あ る
成 り立 つ.し
た が っ て, ■
応用す れば
(9.64) と表 さ れ る.た
だ し,Ql
,+は(9.60)に
お い てQ=Qlの
場 合 の 作 用 素Q+で
あ る.
9.3.6
超 対 称 的 ハ ミ ル トニ ア ン の 直 和 分 解
(9.64)と(S.2)か
ら,超
対 称 的 ハ ミル トニ ア ンHに
対 して
(9.65) (9.66) とい う作 用 素行 列 表 示 を得 る.こ れ は,HがH± 味 し,H±
はHのH±
に よっ て 簡約 され る こ と を意
称 的 ハ ミル トニ ア ンHの
にお け る部 分 を表 す.作 用 素H+,H-を ボ ソ ン 的部 分,フ
そ れ ぞ れ,超 対
ェル ミオ ン的 部 分 と呼 ぶ.
9.3.7 超 対 称 的 量 子 力 学 の 構 成 法 こ れ まで の 議 論 を"逆 読 み"す れ ばわ か る よ う に,超 対 称 的 量 子 力 学 を構 成 す る に は,二 つ の ヒ ルベ ル ト空 間H± お よ び稠 密 に定 義 され た 閉作 用 素Ql,+: H+⊃D(Ql,+)→H-(l=1,…,N)の
組{Ql,+}Nl=1か
ら出発 す れ ば よ い こ と
が わ か る.す (9.64),
な わ ち,こ
(9.65),
の 場 合,H, Γ,
(9.66)に
し て で き る 四 つ 組{H,
Ql, H, H±
を そ れ ぞ れ,(9.53),
よ っ て 定 義 す る の で あ る.
H,{Ql}Nl=1,Γ}がN-超
(9.57),
の 場 合 に は,こ
う
対 称 性 を もつ 超 対 称 的 量 子 力 学
であ るためには
(9.67)
(9.68) が 成 立 す る こ とが 必 要 十 分 で あ る. N=1の
場 合 には,上 の 条 件 は必 要 な い の で,任 意 の 稠 密 に定 義 され た 閉作
用 素T:H+⊃D(T)→H-に
対 して
(9.69) を超 対 称 荷 とす る超 対 称 的 量 子 力 学 が 存 在 す る こ とに な る.QTを 超 対 称 化 とい う.こ れ は,純 数 学 的 に は,作 用 素Tの
作 用 素Tの
解析 を調 べ る の に有 効 な
手 段 の 一 つ を与 え る.
一 例 と して,Tの
超 対 称 化 を用 い て,フ
証 明 し よ う(天 才 的 数 学 者E.ネ
ォ ン ・ノ イマ ンの 定 理(2.8.4項)を
ル ソ ン に よ る).補 題9.5―
別 こみ い っ た議 論 は必 要 で な い こ とに注 意― に よっ て,QTは したが っ て,Q2Tも
この 証 明 に は,特 自己 共 役 で あ る.
自 己 共 役 で あ る.一 方
(9.70) こ れ とQ2Tの
自 己 共 役 性 に よ りR(Q2T±i)=Hで
i)=H+,R(TT*±i)=H-が こ の よ う に,超
で る.し
あ る こ と を 用 い れ ばR(T*T±
た が っ て,T*T,TT*は
対 称 化 の 方 法 に よ り,フ
自 己 共 役 で あ る.
ォ ン ・ノ イ マ ン の 定 理 が 見 事 な ま で
に 簡 潔 か つ 美 し い 形 式 で 証 明 で き る こ と は ま こ と に 驚 き で あ る.超 法 の 威 力 を 示 す 好 例 の 一 つ で あ る.
対 称化の方
例9.2
σj,j=1,2,3を
パ ウ リ行 列 とす る.A1,
A2をIR2上
の 実 数値 関 数 でL2loc(IR2)
に 属 す る も の と し,A=(A1,A2)と
お く.L2(IR2)上
に よ っ て 定 義 す る(pj:=-iDj).容
易 に わ か る よ う にC∞0(IR2)⊂D(Q+(A))で
る か ら,Q+(A)は
稠 密 に 定 義 され て い る.さ
で あ る の で,D(Q+(A)*)は 閉 包 をQ+(A)と
稠 密 で あ る.し
し,
の 作 用 素Q+(A)を
あ
ら に,Q+(A)*⊃p1-A1-i(p2-A2) た が っ て,Q+(A)は
上 の 作 用 素Q(A),
H±(A),
可 閉 で あ る.そ
H(A)を
の
次 の よ うに 定 義
す る:
こ の と き, る.容
は1-超 対 称 性 を もつ 超 対 称 的 量 子 力 学 で あ
易 に わか る よ うに
作 用 素Q(A)を A1,A2が
ベ ク トル ポ テ ン シ ャ ルAを
もつ デ ィ ラ ッ ク−ヴ ァ イ ル 作 用 素 とい う.
連 続 微 分 可 能 な らば
(9.71) が 成 り立 つ.た
だ し,B:=∂1A2-∂2A1は
場 を表 す.H±(A)は2次
ベ ク トル ポ テ ン シ ャ ルAか
ら定 まる磁
元 パ ウ リ作 用 素 と呼 ば れ る.
例9.3 Aj(j=1,2,3)をIR3上
の 実 数 値 関 数 でL2loc(IR3)に
(A1,A2,A3)と
上 の 作 用 素DAを
お く.
属 す る もの と し,A=
に よ っ て 定 義 す る.前 例 と同 様 に して, は 可 閉 で あ る こ と が わ か る.
で あ り,DA 上 の 作 用 素Q(A),H±(A),H(A)を
次のよ
う に 定 義 す る:
こ の と き, る.容
は1-超 対 称 性 を もつ 超 対 称 的 量 子 力 学 で あ
易 にわか る よ うに
ただ し
(こ こで は,αjに
対 し て,[14]の3.4節
をベ ク トル ポ テ ン シ ャルAを 各Ajが
もつ,質
で 用 い た の とは 違 う表 示 を と る.)作 用 素Q(A) 量0の3次
元 デ ィ ラ ッ ク作 用 素 とい う.
連続 微 分可 能 な らば
(9.72)
が 成 り 立 つ.た Bは
だ し,σ:=(σ1,σ2,σ3),B:=(B1,B2,B3),
ベ ク ト ル ポ テ ン シ ャ ルAか
.
ら 定 ま る 磁 場 を 表 す.H±(A)は3次
元 パ ウ リ作 用
素 と 呼 ば れ る.
9.3.8
超 対 称 的 ハ ミ ル トニ ア ン の ス ペ ク トル
超 対 称 的 ハ ミル トニ ア ン の ス ペ ク トル は,あ
定 理9.7
(ス ペ ク トル 的 超 対 称 性(spectral
さ れ た 作 用 素H±
る 著 し い 構 造 を も つ:
supersymmetry))9.3.6項
で導入
に つ い て 次 が 成 り立 つ:
(9.73) (9.74) (9.75)
さ ら に,任
意 の 各E∈
σp(H+)\{0}に
対 して
(9.76) と す れ ば,U(l)Eはker(H+-E)の し た が っ て,特
か らker(H--E)上
へ の ユ ニ タ リ 変 換 で あ る.
に
(9.77) が 成 り立 つ.
こ の 定 理 は,次 定 理9.8 H2へ
の 一 般 的 定 理 をA=Ql,+と
(デ イ フ ト(Deift)の
定 理)H1,
し て 応 用 す れ ば 証 明 さ れ る. H2を
の 稠 密 に定 義 さ れ た 閉 作 用 素 と す る.こ
H1, H2上
ヒ ル ベ ル ト空 間,AをH1か の と き,A*A,
AA*は
ら
そ れ ぞ れ,
の非 負 自己 共 役 作 用 素 で あ っ て
(9.78) (9.79) が 成 り立 つ.さ
ら に,任
意 の λ ∈ σp(A*A)\{0}に
対 して
(9.80) とす れ ば,Uλ
はker(A*A-λ)か
し た が っ て,特
らker(AA*-λ)上
へ の ユ ニ タ リ 変 換 で あ る.
に
(9.81) が 成 り立 つ. こ の 定 理 を 証 明 す る た め に 補 題 を 一 つ 用 意 す る. 補 題9.9
H1, H2を
閉 作 用 素 と す る.こ 作 用 素 で あ り,任
ヒ ル ベ ル ト空 間,AをH1か の と き,A*A,
意 の
AA*は (AA*の
らH2へ
そ れ ぞ れ,H1,
の稠 密 に定 義 され た H2上
の 非 負 自己 共 役
レ ゾ ル ヴ ェ ン ト集 合)に
対 して
(9.82) に よっ て 定義 され る作 用 素Fz(A)は
有 界 で あ る.
証 明 AA*が
非 負 自 己 共 役 作 用 素 で あ る こ と は フ ォ ン ・ノ イ マ ン の 定 理 に よ る.
R((AA*-z)-1)=D(AA*)で い る.Ψ
∈D(A)と
こ こ で,ε>0は
を 得 る.し
あ る か ら,B:=Fz(A)は し よ う.こ
の とき
任 意 で あ る.そ
た が っ て,あ
れ は 全 空 間H2を
こ で0<ε<1と
す れば
と は(AA*-z)-1Aが
そ の た め に(AA*-z)-1Aの
有 界 で あ る こ と を 示 せ ば よ い.
共 役 作 用 素T:=A*(AA*-z*)-1を
定 義 域 とす る 作 用 素 で あ る.こ
に 確 か め ら れ る.ゆ
き ち ん と定 義 さ れ て
れ が 閉作 用 素 で あ る こ とは容 易
え に 閉 グ ラ フ定 理 に よ り,Tは
も 有 界 で あ る.T*⊃(AA*-z)-1Aで
考 え る.こ
有 界 で あ る*17.ゆ
あ る か ら,(AA*-z)-1Aは
有 界であ
る.
■
補 題9.9に
よ っ て,作
的 に 拡 大 さ れ る.こ
定 理9.8の
え にT*
用 素Fz(A)はH1全
の 拡 大 も 同 じ 記 号Fz(A)で
証 明
任 意 の Ψ ∈D(A*A)に
体 で定 義 され た 有 界 作 用 素 に一 意
,λ ≠0と
表 す.
し,B:=Fλ(A)と
お く.こ
の と き,
対 して
し た が っ て,ABΨ
∈D(A*)で
あ り,A*ABΨ=AAΨ+λBΨ.そ
C:=λ-1(B-I)と
お け ば,(A*A-λ)CΨ=Ψ
*17 直 接 評 価 して 証 明 す る こ と もで き る
.
…(*).D(A*A)は
こ で, 稠 密であ
り,Cは
有 界 で あ る か ら,(*)は,A*A-λ
て の Ψ ∈H1に
拡 張 さ れ る.し
た が っ て,A*A-λ
次 に Φ ∈D((A*A)2)と
し よ う.こ
ゆ え にC(A*A-λ)Φ=Φ
…(**)が
の で,(**)は
こ と が わ か る.し な ら ば λ=0ま
と拡 張 さ れ る.し
い ま の 議 論 で,Aの
か わ り にA*を
係 σ(AA*)\{0}⊂
σ(A*A)\{0}が
あ る.し
…(†)と
た が っ て,A*A-λ
ず,λ
た が っ て,λ
お け ば,こ
は単
は全 単 射 で あ る
∈ σ(A*A)\{0}な
な わ ち σ(A*A)\{0}⊂
考 え,A**=Aに 導 か れ る.よ
っ て,(9.78)に
∈ σp(A*A),λ>0と
れ はD(AA*)に
σ(AA*)\{0}.
注 意 す れ ば,逆
し,こ
の 固 有 ベ ク ト ル の 任 意 の ひ と つ を Ψ と す る:A*AΨ=λ Φ=AΨ
芯である
.こ の 結 果 の 対 偶 を と れ ば,λ ∈ σ(A*A)
得 ら れ る.す
示 す た め に,ま
あ るか ら
れ と前 段 の 結 果 を あ わ せ る とA*A-λ
た は λ ∈ σ(AA*)で
ら ば λ ∈ σ(AA*)\{0}が
∈D(A)で
得 ら れ る.D((A*A)2)はA*Aの
た が っ て,
べ
は 全 射 で あ る.
の と き,A*AΦ
す べ て の Φ ∈D(A*A)へ
射 で あ る こ とが わ か る.こ
(9.79)を
の 閉 性 を 用 い る こ と に よ り,す
属 し(Ψ
の包含 関
到 達 す る.
れ に 属 す る,A*A
Ψ,Ψ ≠0.そ ∈C∞(A*A)で
こ で, あ ること
に 注 意)
さ ら に‖ Φ‖2=〈 て,λ
∈ σp(AA*)で
わ り にA*を
Ψ,A*AΨ
あ る.ゆ
し て,λ-1/2A*Φ=Ψ
≠0.し
たが っ
σp(AA*)\{0}.Aの
か
の 逆 の 包 含 関 係 も 成 り立 つ こ と が わ か る.こ
証 明 さ れ る.
(†)と(† †)に よ り,Uλ
定 理9.7の
え に σp(A*A)\{0}⊂
と っ て 考 え れ ば,こ
う し て,(9.79)が
Uλ Ψ=Φ
〉=λ‖ Ψ‖2…(† †)で あ る か ら,Φ
は 等 長 作 用 素 で あ る.任
と す れ ば,上
意 の Φ ∈ker(AA*-λ)に
と 同 様 に し て,Ψ
が 成 り立 つ こ と が わ か る.し
た が っ て,Uλ
意 味 に つ い て 考 え て み よ う.(9.74)は,超
∈ker(A*A-λ)で
あ り,
は ユ ニ タ リ で あ る.
■
対 称 的 ハ ミル トニ ア ン
の ボ ソ ン 的 部 分 の ス ペ ク トル と フ ェ ル ミ オ ン 的 部 分 の そ れ は0を る こ と を 示 し て い る.(9.75)は,ボ
対
除 い て一 致 す
ソ ン的 部 分 の正 の励 起 エ ネ ル ギ ー 準 位 の 全
体 と フ ェル ミオ ン的 部 分 の そ れ が 零 エ ネ ルギ ー を除 い て 同 じで あ る こ と意 味 す
る.し
か も,(9.77)に
よ っ て,同
一 の 励 起 エ ネ ル ギ ー の 固 有 状 態 に属 す る ボ ソ
ン 的 状 態 と フ ェ ル ミ オ ン 的 状 態 と は(9.76)で し て1対1に
対 応 し て い る.つ
ま り,正
定 義 さ れ る ユ ニ タ リ変 換U(l)Eを
の 励 起 エ ネ ル ギ ー 固 有 状 態 は,ボ
的 状 態 と フ ェ ル ミ オ ン 的 状 態 の 対 に な っ て お り,縮
退 し て い る.そ
通 ソ ン
こ で,次
に
問 題 に な る の は 零 エ ネ ル ギ ー 状 態 で あ る.
9.3.9 超 対 称 的 状 態 と超 対 称 性 の 自発 的破 れ 超 対 称 荷Qlは
量 子 力 学 的 超 対 称 的 変 換 の 生 成 子 と解 釈 され る.し たが っ て,
超 対 称 的 変 換 の も と で不 変 な状 態 はQlΨ=0(l=1,…,N)を ル Ψ ∈H,Ψ
≠0で
(supersymmetric
あ る と考 え ら れ る.こ
満 たす ベ ク ト
の よ うな ベ ク トル を超 対 称 的 状 態
state)と い う.し た が って,超 対 称 的状 態 の全 体 は 部 分 空 間
を な し,そ れ は ∩Nl=1kerQlに 等 しい. 超 対 称 的状 態 が 存 在 しな い と き,す なわ ち,∩Nl=1kerQl={0}の
と き,超 対
称 性 は 自発 的 に破 れ てい る と い う. 前 項 の 終 わ りで 述 べ た こ とか ら,超 対 称 性 が 自発 的 に 破 れ て い る と き,も Hの
し
基 底 状 態 が 存 在 す る な ら ば,基 底 状 態 エ ネ ル ギ ー は正 で あ り,基 底 状 態 は
縮 退 す る こ とに な る.通 常 の量 子 力 学 で は,基 底 状 態 が 非 自明 な仕 方 で 縮 退 す る の は 稀 で あ る.こ
こ に,超 対 称 的 量 子 力 学 特 有 の 興 味 深 い 側 面 の一 つ が 現 れ
て い る.こ の 観 点 か ら,超 対 称性 の 自発 的 破 れ の構 造 を調 べ る こ とが 重 要 な課 題 の 一 つ と な る. 注 意9.3
相 対 論 的 な超 対 称 的 場 の量 子 論 にお い て は,零 エ ネ ル ギ ー の 基 底 状
態 が 存 在 す る場 合(し たが っ て,超 対 称性 の 自発 的破 れ が な い場 合)に は,形 式 的 ・発 見 法 的 に,当 該 の理 論 が 記 述 す る ボ ソ ン とフ ェ ル ミオ ンの 質量 は 等 し く な け れ ば な らな い こ とが 示 さ れ る*18.他 方,実
験 的 に は,こ れ まで の とこ ろ,
同 質量 の ボ ソ ン と フ ェ ル ミオ ンで 超 対 称 的 な対 を つ くる よ う な もの は 発 見 さ れ て い な い.し
た が っ て,相 対 論 的 超 対 称 的 場 の量 子 論 が しか るべ き位 階 にお い
て リア リ テ ィ を もつ 物 理 理 論 の 候 補 た り う る た め に は,超 対 称 性 の 自発 的 破 れ *18 4次 元 に お け る相 対 論 的 な超対 称 的場 の量 子 論 の 存 在 は 量 子論 の場 合 と 同様,ま だ,証 明 され て い な い
,超 対 称 的 で な い相 対 論 的場 の
を もつ モ デ ル が 構 成 され な け れ ば な ら ない.た の 限 りで は な い.い
だ し,非 相 対 論 的 な場 合 は,こ
ず れ に して も,超 対 称 性 の破 れ の 有 無 につ い て研 究 す る こ
と は重 要 で あ り,興 味 が あ る. 超 対 称 的状 態 を特 徴 づ け るた め に,次 の補 題 に注 意 す る. 補 題9.10
Aを
ヒル ベ ル ト空 間H1か
らヒ ルベ ル ト空 間H2へ
の 稠 密 に定 義 さ
れ た 閉 作 用 素 とす る と き
(9.83) 証 明 まず,kerA⊂kerA*Aは
明 ら か.逆
0.し
〉=〈AΨ, AΨ
た が っ て,0=〈
意 味 す る.ゆ
Ψ, A*AΨ
に,Ψ ∈kerA*Aと
す れ ば,A*AΨ
〉=‖AΨ‖2.こ
=
れ はAΨ=0を
え に Ψ ∈kerA.
補 題9.10をA=Qlと
し て 応 用 す れ ば,性
■
質(S.2)か
ら
(9.84) を得 る.こ れ は,超 対 称 的 状 態 の全 体 と零 エ ネ ル ギ ー 状 態 の全 体 が 一 致 す る こ とを示 して い る.さ
ら に,補 題9.10をA=Ql,+,Q*l,+と
して応 用 す る と
(9.85) が 得 ら れ る.(9.66)か
ら
(9.86) で あ る.
9.3.10
ウ ィ ッテ ン指 数
超 対 称 性 の 自発 的 破 れ が あ るか ど うか を直接 調 べ る に は 方程 式QlΨ=0(l= 1,…,N)あ
る い は こ れ と同 等 な方 程 式HΨ=0[(9.84)を
らな い.だ が,こ
参 照]を 解 か ね ば な
れ が 陽 に解 け るか ど うか は 個 々 の モ デ ル に よ る.そ
こで,超
対 称 性 の 自発 的破 れ の 有 無 を確 か め る た め の 間接 的 な方 法 を一 般 的 な形 で 探 索
す るの は 自然 で あ る.そ の た め に,ボ
ソ ン的 零 エ ネ ル ギ ー 状 態 の個 数 と フ ェル
ミ オ ン的 零 エ ネル ギ ー状 態 の個 数 の 差 を表 す 量
(9.87) を 導 入 す る.こ dim
ker H+,
れ を ウ ィ ッ テ ン(Witten)指 dim
ker H-の
H={0}で
た が っ て Δw=0で
ィ ッ テ ン指 数 の 有 用 性 は,dim
で き な く て も,そ
9.3.11 (9.85)か
の 場 合,
あ る か ら,(9.86)に
あ る.ゆ
自 発 的 に 破 れ る た め の 必 要 条 件 を 与 え る.だ か し,ウ
ち ろ ん,こ
少 な く と も一 方 は 有 限 で あ る と仮 定 し て お く.超
対 称 性 が 自 発 的 に 破 れ て い れ ばker ker H±={0}.し
数 と 呼 ぶ.も
え に,Δw=0は
が,そ
ker H+,
れ は,十
dim
よ って
超 対称性 が
分 条 件 で は な い.し
ker H_の
そ れ ぞ れ は計 算
の 差 は 計 算 で き る 可 能 性 が あ る と い う 点 に あ る.
ウ ィ ッテ ン指 数 と作 用 素 の 指 数 ら
(9.88) が 成 り立 つ.こ
の 右 辺 に 現 れ た 量 は,実
的 指 数(analytical 一 般 に,H1,
H2を
閉 作 用 素 と す る.も
index)と
は,数
学 に お い て,作
用 素Ql,+の
解析
し て 知 ら れ る も の で あ る.
ヒ ル ベ ル ト空 間,AをH1か
らH2へ
し,dim
少 な く と も一 方 が 有 限 で あ る
ker A, dim
ker A*の
の 稠 密 に 定 義 され た
な らば
(9.89) に よ っ て 定 義 さ れ る 整 数 ま た は ±∞
をAの
指 数(index)と
い う.(A*)*=A
で あ るか ら
(9.90) が 成 り立 つ.
作 用 素 の指 数 の 概 念 を用 い る と(9.88)は
(9.91) と書 き直 せ る.こ う して,超 対 称 性 と作 用 素 の 指 数 理 論 が 関連 して くる.作 用 素 の 指 数 とい う概 念 が 特 に重 要 性 を もつ 作 用素 の クラ ス が 存 在 す る:
定 義9.11
Aを
ヒ ル ベ ル ト空 間H1か
れ た 閉 作 用 素Aと (ⅰ) dim る と き,Aを
ら ヒ ル ベ ル ト空 間H2へ
の 稠 密 に定 義 さ
す る.
ker A<∝
か つdim
ker A*<∝
フ レ ドホ ル ム(Fredholm)作
お よ びR(A)がH2の 用 素 と 呼 ぶ.こ
閉集 合 で あ
の 場 合,Aは
「フ レ
ド ホ ル ム で あ る 」 と い う い い 方 も す る. (ⅱ) dim
ker A,
で あ る と き,Aは
注 意9.4
dim
ker A*の
少 な く と も 一 方 が 有 限 でR(A)がH2の
半 フ レ ドホ ル ム(semi-Fredholm)で
定 義 か ら明 ら か な よ う に,Aが
閉集合
あ る と い う.
フ レ ドホ ル ム で あ れ ば,Aは
半 フレ
ドホ ル ム で あ る.
フ レ ドホ ル ム作 用 素 は,性 質 の よ い作 用 素 の ク ラ ス の一 つ を形 成 す る こ とが 知 られ て い る(残 念 な が ら,本 書 で は,紙 数 の 都 合 上,こ の 側 面 を論 述 す る こ とは で きな い).こ の こ と も考 慮 す る と き,超 対 称 的 量 子 力 学 へ の 応 用 にお い て は,超 対 称 荷 の ボ ソ ン状 態 へ の 制 限Ql ,+が いつ(半)フ 考 察 す る こ とは重 要 で あ る.そ
レ ドホ ル ム に な るか を
こで,次 に,線 形 作 用 素 が(半)フ
レ ドホ ル ム で
あ る こ と を判 定 す る た め の 条件 を考 察 し よ う.
9.3.12
フ レ ドホ ル ム 性 の 条 件
H1, H2を
ヒ ル ベ ル ト空 間 と す る.
補 題9.12
AをH1か
らH2へ
で あ る た め の 必 要 十 分 条 件 は,定
の 閉 作 用 素 と す る.こ 数c>0が
の と き,R(A)がH2で
閉
存 在 して
(9.92) が 成 立 す る こ とで あ る. 証 明 (必 要 性)R(A)が の 任 意 の 元 Ψ ∈Mに ‖ ・‖MはM上
閉 で あ る と 仮 定 す る.部
分 空 間M:=D(A)∩(ker
対 して,‖ Ψ‖Mを‖ Ψ‖M:=‖AΨ‖H2に
の ノ ル ム で あ る(正 定 値 性 の 証 明 に,条
で あ る こ と に 注 意).Mは
A)⊥
よ っ て 定 義 す れ ば,
件 Ψ ∈(ker
A)⊥
が必 要
ノ ル ム‖ ・‖Mに 関 し て バ ナ ッ ハ 空 間 に な る こ と を 示
そ う.Ψn∈MをMの し た が っ て,η R(A)は
コ ー シ ー 列 と す れ ば,AΨnはH2の ∈H2が
存 在 し て,‖AΨn-η‖H2→0(n→∞).い
閉 で あ る か ら,η
と な る Φ ∈D(A)が 和 分 解 す れ ば,Ψ ‖Ψn-Ψ
な け れ ば な ら な い.し
∈D(A)∩(ker
A)⊥=Mで
場 合,Ψn∈M,Φ
の と き,Jの
∈(ker
A)⊥
と直
と な る.ゆ
え に
・‖Mに 関 し て 完 備,
用 素J:M→H1をJΨ=Ψ,Ψ
∈Mに
グ ラ フ は 閉 で あ る こ と は 容 易 に わ か る(こ の ら ば Φ ∈Mで
グ ラ フ 定 理 に よ り,Jは Ψ‖M,Ψ
A,Ψ
ノ ル ム‖
∈H1,‖ Ψn-Φ‖H1→0な
し て‖JΨ‖H1〓K‖
た が っ て,η=AΦ
あ り,η=AΨ
た が っ て,Mは
ナ ッ ハ 空 間 で あ る.作
し た が っ て,閉
ま の 場 合,
存 在 す る.Φ=Φ0+Ψ,Φ0∈ker
よ っ て 定 義 し よ う.こ
(9.92)が
∈R(A)で
‖M→0(n→∞).し
す な わ ち,バ
コ ー シ ー 列 で あ る.
有 界 で あ る.ゆ
∈Mが
成 り立 つ.そ
あ る こ と に 注 意).
え に 定 数K>0が こ で,c=K-1と
存在 すれ ば
得 ら れ る.
(十 分 性)(9.92)を
仮 定 す る.ηn∈R(A),η
を 満 た し て い る と し よ う.こ に よ り,‖AΨn-AΨm‖H2〓c‖ シ ー 列 で あ る.ゆ に よ り,Ψ
Ψn-Ψm‖H1.し
え に‖ Ψn-Ψ‖H1→
∈D(A)か
∈H2が‖
の と き,ηn=AΨnと
つ η=AΨ
ηn-η‖H2→0(n→∞)
な る Ψn∈Mが
た が っ て,ΨnはH1の
と な る Ψ ∈H1が
∈R(A)が
あ る.(9.92)
結 論 さ れ る.し
存 在 す る.Aの
コー 閉性
た が っ て,R(A)は
閉 で あ る.
■
定 理9.13
AをH1か
らH2へ
の 稠 密 に 定 義 され た 閉 作 用 素 とす る.
(ⅰ) Aが
フ レ ドホ ル ム で あ る た め の必 要 十 分 条 件 は,次 の 三 つ の条 件 が 成 り
立 つ こ と で あ る:
(F.1)
(ⅱ) Aが
(F.3)
(F.2)
半 フ レ ドホ ル ム で あ る た め の 必 要 十 分 条 件 は,(F.1),
く と も 一 方 と(F.3)が
少な
成 立 す る こ と で あ る.
証 明 (ⅰ)(必 要 性)Aは
フ レ ドホ ル ム で あ る と仮 定 す る.こ
よ っ て,(F.1),
成 立 す る.R(A)の
(F.2)が
(F.2)の
た が っ て,任 意 の Ψ ∈D(A*A)∩(ker
A*A)⊥
の と き,補 題9.10に
閉 性 に よ り,(9.92)が に 対 し て,〈 Ψ, A*AΨ
成 り立 つ.し 〉〓c‖ Ψ‖2.
A*Aは
非 負 の 自 己 共 役 作 用 素 で あ る か ら,こ
味 す る.し
た が っ て,(F.3)が
(十 分性)(F.1),
(F.2),
題9.10に
よ り,dim
H1=ker
A*A
れ は,infσ(A*A)\{0}〓cを
意
成 り立 つ. (F.3)を
仮 定 す る.こ
ker A<∞,dim
(ker A*A)⊥
の と き,(F.1),
ker A*<∞
に お い て,A*Aはker
(F.2)は,補
を 意 味 す る.直 A*Aお
よ び(ker
に よ っ て 簡 約 さ れ る の で,σ(A*A)=σ(A*A│ker A*A)Uσ(A*A│(ker σ(A*A│ker A*A)は
空 集 合 で あ る か{0}の
はA*A│(ker
A*A)⊥〓cを
(ker A*A)⊥
に 対 し て,〈 Ψ,A*AΨ
c‖Ψ‖2…(*).左 が│A│の
も 書 け る こ と,お
つ.ゆ
A)⊥
え にR(A)は
え に,‖AΨ‖2〓
よ びD(│A│2)=D(A*A)
限 議 論 に よ り,(*)は
へ と 拡 張 さ れ る こ と が わ か る.し
た が っ て,(F.3)
意 の Ψ ∈D(A*A)∩
〉〓c‖ Ψ‖2が 成 り 立 つ.ゆ
辺 は‖│A│Ψ‖2と
芯 で あ る こ と に 注 意 す れ ば,極
D(A)∩(ker
た が っ て,任
A*A)⊥
A*A)⊥).
ど ち ら か で あ る.し
意 味 す る.し
和 分解
すべ ての Ψ ∈
た が っ て,(9.92)が
成 り立
閉 で あ る.
(ⅱ)(ⅰ)の 場 合 と 同 様 で あ る.
定 理9.13の 系9.14
系 と して次 が 得 られ る.
AをH1か
Aが(半)フ
■
らH2へ
の 稠 密 に 定 義 さ れ た 閉 作 用 素 と す る.こ
レ ドホ ル ム な ら ば,A*も(半)フ
レ ドホ ル ム で あ り,こ
の と き,
の 逆 も成 り
立 つ.
証 明 Aを 成 立 す る.こ
フ レ ドホ ル ム と し よ う.こ れ と定 理9.8に
の が 成 立 す る((A*)*=Aに A*で
の と き,定 理9.13-(ⅰ)に
よ っ て,(F.3)に 注 意).し
置 き換 え た も の が 成 立 す る.し
よ っ て,(F.3)が
お け るAをA*で
た が っ て,定 た が っ て,A*は
理9.13-(ⅰ)の
し て 応 用 す れ ば,次
条 件 でAを
フ レ ドホ ル ム で あ る.半
フ レ ド ホ ル ム 性 に つ い て も 同 様 で あ る.
定 理9.13をA=Ql,+と
置 き換 え た も
■
の 結 果 を 得 る.
定 理9.15 (ⅰ) 作 用 素Ql,+が
フ レ ドホ ル ムで あ る た め の必 要 十 分 条 件 は
(9.93)
(9.94) が 成 り立 つ こ と で あ る. (ⅱ) 作 用 素Ql,+が
半 フ レ ドホ ル ム で あ る た め の 必 要 十 分 条 件 はdim
の 少 な く と も 一 方 が 有 限 で あ り,か
証 明 (9.66)と
定 理9.13に
条 件(9.93)は,物 意 味 す る.他
成 り立 つ こ と で あ る.
よ る.
理 的 に は,零
方,条
つ(9.94)が
ker H±
■
エ ネ ル ギ ー状 態 の 縮 退 度 が 有 限 で あ る こ と を
件(9.94)は,零
エ ネ ル ギ ー の 基 底 状 態 が 存 在 す る 場 合 に は,
基 底 状 態 エ ネ ル ギ ー と 零 で な い エ ネ ル ギ ー ス ペ ク トル の 間 に 正 の 間 隙 が あ る こ と を 意 味 す る.こ
の 描 像 に 基 づ い て,条
件(9.94)を
間 隙 条 件(gap
condition)
と い う.
9.3.13
指 数 に 対 す る トレ ー ス 公 式
フ レ ドホ ル ム 作 用 素 の 指 数 を 計 算 す る た め の 基 本 的 な 方 法 の 一 つ を述 べ て お こ う.Tを
ヒ ル ベ ル ト空 間H1か
作 用 素 とす る.さ
ら に,P1, P2を
ら ヒ ル ベ ル ト空 間H2へ そ れ ぞ れ,H1 H2か
の 稠密 に定 義 され た閉 らH1,
H2へ
の正 射 影 作
用素 とし
(9.95) と お く.ま
た,QTを(9.69)に
H1, H-=H2の
よ っ て 定 義 さ れ る 自 己 共 役 作 用 素 とす る(H+=
場 合).
定 理9.16 (ⅰ) あ る β>0に の と き,Tは
対 し て,e-βQ2Tが
ト レ ー ス 型 作 用 素 で あ る と す る*19.こ
フ レ ドホ ル ム で あ り
(9.96) が 成 立 す る(Trは
ト レ ー ス を 表 す).右
*19 ト レ ー ス 型 作 用 素 に つ い て は
,付
録Lを
辺 は β に よ ら な い.
参 照.
(ⅱ) あ るz∈C\ とす る.こ
「0,∞)に 対 し て,(Q2T-z)-1が
の と き,Tは
トレ ー ス 型 作 用 素 で あ る
フ レ ドホ ル ム で あ り
(9.97) が 成 立 す る.右
辺 はzに
証 明 (ⅰ)Q2T=T*T e-βT*T
よ ら な い.
TT*に
e-βTT*が
成 り立 つ こ とが わ か る.し
ト レ ー ス 型 作 用 素 で あ る.ト 題L.4),e-βT*T, 素 の0以 T*T,
注 意 して,作 用 素 解 析 を応 用 す れ ばe-βQ2T= た が っ て,e-βT*T,
e-βTT*は
レー ス 型 作 用 素 は コ ン パ ク トで あ り(付 録Lの
e-βTT*は
非 負 の 自 己 共 役 作 用 素 で あ る か ら,こ れ ら の 作 用
外 の ス ペ ク トル は 多 重 度 有 限 の 正 の 固 有 値 だ け か ら な る.し
TT*の
ス ペ ク トル は 多 重 度 有 限 の 非 負 固 有 値 だ け か ら な り,スペ
可 能 な 集 積 点 は+∞ た さ れ る.ゆ
だ け で あ る.し
え に,Tは
E1<E2<…)と
た が っ て,定
理9.13-(ⅰ)の
た が っ て, ク トル の
条 件 が すべ て 満
フ レ ドホ ル ム で あ る.σ(T*T)\{0}={En}n〓1(0< し,Enの
σ(TT*)\{0}={En}n〓1で
し た が っ て,(9.96)が
多 重 度 をm(En)と あ る こ と,お
す る と,定
よ びγ=I
(-I)に
理9.8に
よって
注 意すれ ば
成 立 す る.
(ⅱ)(Q2T-z)-1=(T*T-z)-1
(TT*-z)-1で
あ る こ と に 注 意 し,(ⅰ)と
同 様 に 論 を 進 め れ ば よ い.
定 理9.16をT=Ql,+と
命
■
し て 応 用 す れ ば,次
の 結 果 を 得 る.
定 理9.17 (ⅰ) あ る β>0に
対 し て,e-βHが
ト レ ー ス 型 作 用 素 な ら ば,各Ql,+は
フ
レ ドホ ル ム で あ り
(9.98) が 成 り立 つ(右
辺 は β に よ ら な い).
(ⅱ) あ るz∈C\[0,∞)に 各Ql,+は
対 し て,(H-z)-1が
ト レ ー ス 型 作 用 素 な ら ば,
フ レ ドホ ル ム で あ り
が 成 り立 つ(右
辺 はzに
よ ら な い).
9.4 超 対 称性 と特 異 摂 動―
摂 動 法 の破 綻
超 対 称 的量 子 力 学 にお い て も摂 動 を考 察 す る こ とは興 味 が あ る.こ の 場 合,あ る 意 味 で 注 目す べ き構 造 に 出 会 う.す な わ ち,通 常 の 量 子 力 学 で 用 い られ て い る 摂 動 法―
摂 動 系 の物 理 量 の 固 有値 を,摂 動 パ ラ メー タ ー の 冪 級 数 に 展 開 し
て,"近 似 的"に 求 め る方 法(第5章
を参 照)―
が 破 綻 す る よ うな ハ ミル トニ ア
ンの 一 般 的 ク ラ ス の 存 在 が 示 唆 さ れ る の で あ る.こ の よ う な意 味 で,超 対 称 的 量 子 力 学 系 の摂 動 は非 常 に特 異 で あ り うる.だ が,別
の見 方 をす れ ば,超 対 称
的 量 子 力 学 は 本 質 的 に非 摂 動 的効 果 を記 述 す る構 造 を 内蔵 して い る と もい え る. まず,い 定 義9.18 をH上
ま言 及 した"特 異"の 意 味 を 明確 に 定 義 す る こ とか ら始 め よ う. Hを
ヒ ル ベ ル ト空 間,{H(g)}g∈[0,
の 下 に 有 界 な 自 己 共 役 作 用 素 の 族 で,任
を 満 た す も の とす る(i. e., H(g)は,g→0の 収 束 す る と い う こ と*20).さ る と し よ う.こ
の と き,gn→0と
g0](g0>0は
固 定 さ れ た 定 数)
意 のz∈C\IRに
と き,H(0)に
対 して
強 レゾ ル ヴ ェ ン ト
ら にE(g):=infσ(H(g))がH(g)の な る ど ん な 列{gn}∞n=1⊂(0, g0]に
固有値 であ 対 して も
*20 自己共 役作 用 素 の 族 の 強 レゾル ヴ ェ ン ト収 束 に関 す る基 本 的 な事 柄 につ い て は ,付 録M に論 述 して お い た.
E(gn)がE(0)に
収 束 し な い と き,自 己 共 役 作 用 素 の 族{H(g)}0
の 特 異 摂 動(singular はH(0)に
perturbation)で
関 し て 特 異 で あ る と い う(簡 単 に 「H(g)は
こ の 定 義 の"こ
こ ろ"は,H(g)は
お い て 連 続 で あ る が,そ た が っ て,こ
と い う 形―
摂 動 法―
特 異 摂 動 は,摂
際,仮
特 異 で あ る 」 と もい う).
連 続 に な って い な い とい うこ
の 摂 動 の ク ラ ス で は,H(g)の
で 求 め る こ と は で き な い.す
最 小 固 有 値E(g)を
な わ ち,こ
固 有 ベ ク トル― Ω(g)と
意 のz∈C\IRに
,左 辺 は(E(g)-z)-1〈
z)-1=(E(0)-z)-1が
す れ ば(‖ Ω(0)‖=1
対 して
Ω(0),Ω(g)〉 に 等 しい.し 導 か れ る.だ
ラ メ ー タ ーg∈[0, g0]に
の 族{H,{Ql(g)}Nl
の場
しよ う― に つ い て も摂 動 法 は破 綻 す る.実
にlimg→0Ω(g)=Ω(0),H(0)Ω(0)=E(0)Ω(0)と
さ て,パ
こ で定 義 した
動 法 が 破 綻 す る よ う な 一 つ の ク ラ ス を 与 え る の で あ る.こ
と し て お く),任
一方
の 場 合,{H(g)}0
強 レ ゾ ル ヴ ェ ン ト収 束 の 意 味 で は,g=0に
の 最 小 固 有 値 はg=0で
と で あ る.し
合,E(g)の
あ る と い う.こ
が,こ
た が っ て,limg→0(E(g)-
れ は 矛 盾 で あ る.
よ っ て 添 え 字 づ け られ た 超 対 称 的 量 子 力 学
=1, H(g),Γ}(0〓g〓g0)が
与 え られ た と し
(9.99) と お く.す
で に 知 っ て い る よ う に,E±(g)〓0で
仮 定(H)H(g)は,g→0の
と き,H(0)に
こ の 仮 定 の も とで,H±(g)が,g→0の
あ る.次
の 仮 定 を お く:
強 レ ゾ ル ヴ ェ ン ト収 束 す る.
と き,H±(0)に
強 レ ゾ ル ヴ ェ ン ト収
束 す る こ と は 容 易 に わ か る*21.
(9.100) *21 任 意 のz∈C\IRに
対 し て(H(g)-z)-1
あ る こ と を 使 えば よ い.
=(H+(g)-z)-1
(H-(g)-z)-1で
とお く.{H+(g)}g∈Ⅱ
がH+(0)に
関 して特 異 で あ る ため の 十 分 条 件 は次 の 命 題
に よっ て 与 え られ る: 命 題9.19
仮 定(H)の
も と で,任
意 のg∈[0,g0]に
の 固 有 値 で あ る と す る.こ
の と き,次
立 つ な ら ば,{H+(g)}g∈Ⅱ
はH+(0)に
対 し て,E+(g)はH+(g)
の 三 つ 条 件(ⅰ),(ⅱ),(ⅲ)の
一つが成 り
関 し て 特 異 で あ る:
(ⅰ) E±(0)>0,E+(g)=0,g∈Ⅱ.
(ⅱ) E+(0)>0,E-(0)=0,E±(g)>0.こ る 任 意 の 列{gn}∞n=1⊂Ⅱ
の 場 合,gn→0(n→∞)と
に 対 して,そ
な
の 部 分 列{hn}でlimn→∞E+(hn)=0
と な る も の が 存 在 す る. (ⅲ) E+(0)>0,E-(0)=E+(g)=0,E-(g)>0,g∈Ⅱ.こ E1 ,+(g):=inf(σ(H+(g))\{0})と 0(n→∞)と
の 場 合,
す れ ば,E1,+(g)>0で
な る 任 意 の 列{gn}∞n=1⊂Ⅱ
limn→∞E1
,+(hn)=0と
あ り,gn→
に 対 し て,そ
の 部 分 列{hn}で
な る も の が 存 在 す る.
証 明 (ⅰ)の 場 合 は 明 ら か. (ⅱ)こ の 場 合,(9.75)に り,gn→0(n→∞)と
よ っ てE+(g)=E-(g),g∈Ⅱ
に 強 レ ゾ ル ヴ ェ ント 収 束 す る.し 分 列{hn}⊂{gn}とEn∈ が 成 り立 つ.一
…(*).仮
な る 任 意 の 列{gn}∞n=1⊂Ⅱ た が っ て,付
σ(H-(hn))が
方,En〓E-(hn)で
定(H)に
よ
に対 して,H-(gn)はH-(0)
録Mの
命 題M.3-(ⅱ)に
よ り,部
存 在 し てlimn→∞En=E-(0)=0
あ る か ら,(*)に
した が っ て,limn→∞E+(hn)=0.E+(0)>0で
よ っ て,En〓E+(hn).
あ る か ら,こ
れ はH+(g)が
特 異 で あ る こ と を 示 す. (ⅲ)H+(g)が
特 異 で あ る こ と は 明 ら か.い ま の 場 合(9.75)に
E-(g).(ⅱ)の
場 合 と 同 様 に し て,gn→0と
limn→∞E-(hn)=0と limn→∞E1
,+(hn)=0
注 意9.5
+〓-の
立 つ.
な る 部 分 列{hn}が
よ っ て,E1,+(g)=
な る 任 意 の 列{gn}に 存 在 す る こ と が 示 さ れ る.ゆ
対 して え に, ■
対 称 性 に よ り,H-(g)に
つ い て も対 応 す る 結 果 が 成 り
表9.1
特 異 摂 動 の生 起 に 関 す る場 合 分 け
命 題9.19-(ⅲ)は,E1,+(g)(も
しH+(g)の
固 有 値 な らば,そ れ はH+(g)の
正 の最 小 固 有 値)に 対 して も摂 動 法 が 破 綻 す る こ とを示 して お り,興 味 深 い. 命 題9.19の
条件(表9.1)を
超 対 称 性 の 自発 的 破 れ との関 連 で 読 み直 す こ とは
意 味 が あ る か も しれ な い.ま ず,条 件(ⅰ)に お い て は,H(0)に る"無 摂 動 系"の 超 対 称 性 は 自発 的 に破 れ て い るが,H(g)に "摂 動 系"の そ れ は 自発 的 に破 れ てお らず た は フェ ル ミオ ン的(E-(g)=0の 逆 の状 況 に あ る.た
よっ て 記 述 され る
,そ の 零 エ ネ ル ギ ー状 態 は ボ ソ ン的 ま
場 合)で あ る.条 件(ⅱ)に お い て は,そ の
だ し,無 摂 動 系 の零 エ ネル ギ ー 状 態 は フ ェ ル ミオ ン的 で あ
る.最 後 の条 件(ⅲ)に が,零
よ って 記 述 され
お い て は,双 方 の 系 の 超 対 称 性 は 自発 的 に破 れ て い ない
エ ネ ル ギ ー 状 態 の 種 類(フ ェ ル ミオ ン的状 態 か ボ ソ ン的状 態 か とい う こ
と)は,無
摂 動 系 と摂 動 系 で は異 な って い る.な お,双 方 の 系 の 超 対 称 性 が と も
に破 れ て い る場 合 は,一 般 に は特 異 と は い え な い が,特 異 に な る よ うな例 は 存 在 す る[2].
9.5
ウ ィ ッテ ンモ デル
この 節 で は,超 対 称 的 量 子 力 学 の モ デ ル の うち で 最 も単 純 な もの の一 つ を考 察 す る.そ れ は,通 常 の 量 子 力 学 の意 味 で は,1次
元 空 間IRを
運動 するス ピン
1/2の 量 子 的粒 子 に 関す る モ デ ル で あ るが,超 対 称 性 の 観 点 か らは,ス ピ ン1/2 の 内 部 自 由度 だ け を もつ"フ ェ ル ミオ ン"と ス ピ ン0の
ボ ソ ン1個 が 超 対 称 的
に 相 互 作 用 を行 う系 の モ デ ル の一 つ とみ る こ とが で きる も の で あ る.モ デ ル の 構 成 にあ た っ て は,9.3.7項
で 述 べ た,超 対 称 的 量 子 力 学 の 構 成 法 を適 用 す る.
9.5.1 ま ず,状 L2(IR)
モ デ ル の 定 義 態 の ヒ ル ベ ル ト空 間 と してL2(IR)の L2(IR)を
と る.W:IR→IRを2回
直 和 ヒ ル ベ ル ト空間 2L2(IR)= 連 続 微 分 可 能 な 関 数 と し,L2(IR)
上 の 作 用 素Q+を
(9.101) に よ っ て 定 義 す る.た
だ し,pは
か る よ う に,D(Q+)⊃C∞0(IR)で
運 動 量 作 用 素 で あ る:p:=-iDx.容 あ り― し た が っ て,D(Q+)は
易 にわ 稠 密―
(9.102) が 成 立 す る.さ
ら に,Q*+⊃e-WpeWで
あ る か ら,C∞0(IR)⊂Q*+で
あ り
(9.103) が し た が う.ゆ をQ+で
え に,D(Q*+)は
表 す.補
題9.5を
稠 密 で あ る の で,Q+は
可 閉 で あ る.そ
の閉包
応用す る ことによ り
(9.104) は 自 己共 役 で あ る.こ
こで
(9.105) と 表 さ れ る こ と に 注 意 し よ う(σ1,σ2は す な わ ち,Qは1次
パ ウ リ 行 列 の1番
目 と2番
目 の も の).
元 の デ ィ ラ ッ ク 型 作 用 素 で あ る.
次 に
(9.106) を 導 入 す る.こ 子 力 学 で あ る.こ
の と き,{
2L2(IR),H,Q,Γ}は1-超
の モ デ ル を ウ ィ ッ テ ン モ デ ル と 呼 ぶ[29,30].関
モ デ ル の 超 ポ テ ン シ ャ ル(superpotential)と ち な み に,作
対 称 性 を もつ 超 対 称 的 量
用 素pに
数Wを
この
い う.
関 し て,p〓eWpe-Wと
そ の 創 始 者 の 名 を と っ て ウ ィ ッ テ ン 変 形(Witten
い う形 で 摂 動 を行 う手 法 は deformation)と
呼 ばれてい
る[31].こ
の 変 形 の ア イデ ア は い ろ い ろ な コ ンテ クス ト―p,Wを
別の作用素 に
置 き換 え て考 え る― で 有 用 で あ る こ とが 知 られ て い る. 一 般 論 に した が って,非 負 自 己 共役 作 用 素
(9.107) を導入すれ ば
(9.108) が 成 り立 つ. 超 対 称 的 ハ ミル トニ ア ンHの
具 体 的 表 示 を み て み よ う.(9.105)か
う に, 2C∞0(IR)⊂D(Q2)=D(H)で -σ2σ1=iσ3を
らわ か る よ
あ り,パ ウ リ行 列 の 性 質 σ21=1,σ1σ2=
使 えば
(9.109) と な る こ と が わ か る,こ
れは
(9.110) を 意 味 す る.H±〓0で
あ る か ら,
(9.111) が 証 明 さ れ た こ と に な る.さ ら に次 の事 実 が した が う: 定 理9.20
関 数Wは
(9.112) を 満 た す と す る.こ
の と き,
(9.113) はC∞0(IR)上 で 本 質 的 に 自 己 共役 で あ り,L±(W)〓0か
つ
(9.114)
が 成 り立 つ.こ
こ で,L+(W)の
重 度 とL-(W)の
多
固 有 値 と し て の λ の 多 重 度 は 一 致 す る.
証 明 L±(W)のC∞0(IR)上 に よ る.ゆ
正 の 任 意 の 固 有 値 λ ∈ σp(L+(W))\{0}の
で の 本 質 的 自己 共 役 性 は 第2章
の定 理2.25の
応用
えに
(9.115) が し た が う.こ
れ と ス ペ ク トル 的 超 対 称 性(定
理9.7)に
よ り,(9.114)が
した
が う.
■
(9.111)お よび 定 理9.20はQ+と 副 産 物 で あ る.定 理9.20の
い う作 用 素 の超 対 称 化 に伴 う,い わば 数 学 的
重 要 な点 は,L+(W)とL-(W)と
い う二 つ の シ ュ
レ ー デ ィ ンガ ー型 作 用 素 の スペ ク トル の構 造 の 関連 を明 らか に した こ とに あ る. だ が,超 対 称 性 の ア イデ ア を用 い ず に,L+(W)とL-(W)を
個 別 的 に解析 した
の で は,こ の 結 論 に到 達 す る こ と は難 しか っ たで あ ろ う こ と は想 像 に難 くな い (読 者 は試 しに定 理9.20の
別 の 証 明 を考 案 さ れ た い).超 対 称 性 とい う概 念 の 有
用 性 の 一 つ が こ こ にみ られ る.閉 作 用 素 の 超 対 称 化 とい う方 法 は,実
は,非 常
に 広 範 な応 用 を も ち,数 学 的 に非 自明 な 事 実 を容 易 に導 く場 合 が あ る. 注 意9.6
同 様 の 事 実 は,2次
作 用 素H±(A)(例9.3)に
元 パ ウ リ作 用 素H±(A)(例9.2)や3次
元パ ウリ
つ い て も 成 立 す る.
9.5.2 零 エ ネル ギ ー状 態 の存 在 条 件 ウ ィ ッテ ン モ デ ル の 零 エ ネ ル ギ ー状 態 が 存 在 す る か ど うか を調 べ て み よ う. こ れ はWの
性 質 に依 存 しう る こ とが 予 想 され る.9.3節
の 場 合 の 適 用 す れ ば,ウ
の一 般 論 の結 果 を い ま
ィ ッテ ンモ デ ル の 零 エ ネ ル ギ ー状 態 の 空 間 は
(9.116) で 与 え ら れ る.そ
こ で,kerQ+とkerQ*+の
ψ ∈kerQ+と
し よ う:ψ
C∞0(IR)に
∈D(Q+)か
対 して〈Q*+u*,ψ〉=0.こ
-∫IRW'(x)ψ(x)u(x)dx
.こ
れ は,超
構造 を 明 ら か に す る こ と を 考 え る. つQ+ψ=0.し れ と(9.103)に
た が っ て 任 意 のu∈ よ っ て,∫IRψ(x)u'(x)dx=
関 数 方 程 式Dxψ=W'ψ
と 同 値 で あ る.
ψ ∈L1loc(IR)で あ る か ら(∵ 積 分 に関 す る シ ュ ヴ ァ ル ツ の不 等 式),付 録Nの 定 理N.2をd=1の
場 合 に応 用 す る こ とが で き,ψ=CeWが
定 数).こ れ か ら,任 意 の定 数C∈C\{0}に
得 られ る(Cは
対 して ψ ∈L2(IR)と
な る必 要十
分 条件は
(9.117) で あ る.こ
定 理9.21
う し て,次
の 定 理 が 得 ら れ る:
kerQ+≠{0}で
る こ と で あ る.こ
あ る た め の 必 要 十 分 条 件 は,(9.117)が
満 た され
の場 合
(9.118) 上 の 議 論 と同様 に して,kerQ*+に 定 理9.22
kerQ*+≠{0}で
つ い て次 の結 果 が 得 ら れ る:
あるための必要十分条件 は
(9.119) が 満 た され る こ とで あ る.こ の場 合
(9.120) と こ ろ で,条 対 し て,シ
両 立 し得 な い.実
際,任
意 のR>0に
ュ ヴ ァル ツ の 不 等 式 に よ っ て
が 成 り立 つ.も はR→∞
件(9.117)と(9.119)は
し,(9.117),(9.119)が
の と き,有
限 値 に 収 束 す る.だ
あ る. こ う して,次
の 定 理 が 得 ら れ る.
と も に 満 た さ れ て い る とす れ ば,右 が,左
辺
辺 は 無 限 大 に な る か ら矛 盾 で
定 理9.23
ウ ィ ッ テ ンモ デ ル の 超 対 称 的 ハ ミ ル トニ ア ンHが
態 を も つ た め の 必 要 十 分 条 件 は(9.117)ま る こ と で あ る.そ
の 場 合,次
(ⅰ) (9.117)が
満 た さ れ る 場 合,Hの
に 限 ら れ る.特
た は(9.119)の
零 エ ネ ル ギ ー状
ど ち らか が 満 た され
が 成 立 す る: 零 エ ネ ル ギ ー 状 態 は(eW,0)の
定数倍
に,
(9.121) (ⅱ) (9.119)が
満 た さ れ る 場 合,Hの
倍 に 限 られ る.特
に,
零 エ ネ ル ギ ー 状 態 は(0,e-W)の
定数
(9.122) こ の 定 理 の 一 つ の 帰 結 は 次 で あ る: 系9.24
(9.117)と(9.119)の
す な わ ち,Hの
ど ち ら も満 た さ れ な い な ら ば,kerH={0},
零 エ ネ ル ギ ー 状 態 は 存 在 し な い.し
た が っ て,こ
の 場 合,超
対
称 性 は 自 発 的 に破 れ て い る. こ う し て,ウ ン シ ャ ルWの
9.5.3
ィ ッ テ ン モ デ ル に お い て は,超 特 性 に依 存 す る こ とが わ か る.
多 項 式 型 超 ポ テ ン シ ャル
こ の 項 で は,Wが と し,Wがq次
対 称 性 の 自発 的 な破 れ は 超 ポ テ
多 項 式 型 の 場 合 を 考 え,こ
れ ま で の 結 果 を応 用 す る.q〓2
の多 項 式
の 場 合 を 考 え る(aj∈IRは
定 数,aq≠0).こ
し た が っ て,W'(x)2は2(q-1)次 で あ る か ら,(9.112)は
の とき
の 多 項 式 で あ り,W"は(q-2)次
満 た さ れ る.次
の 事 実 は 容 易 に 確 か め ら れ る:
の多 項 式
(ⅰ) eW∈L2(IR)⇔qが
(ⅰ) e-W∈L2(IR)⇔qが
偶 数 か つaq<0. 偶 数 か つaq>0.
(ⅲ) e±W〓L2(IR)⇔qが
奇 数.
こ れ ら の 結 果 を ま と め て 記 述 す る た め に,Wの
無 限 遠 で の 符 号sgnW±∞
を
次 の よ う に 定 義 す る: の と き の と き こ の と き,定
理9.21と
定 理9.22に
よ り
(9.123) と書 け る こ とが わか る.こ の よ う に表 す と,Q+の
指 数 は,Wの
無 限遠 で の 振
る舞 い だ けで 決 ま り,途 中 の 詳 細 に は よ らな い こ とが 一 目瞭 然 に な る. こ の 例 で は,W'2±W"∈L2loc(IR)で
あ り
で あ る の で,定
の結果
理6.50が
適 用 で き る.そ
(9.124) す な わ ち,H±
は 離 散 ス ペ ク トル しか も た な い.し
が 満 た さ れ る.ゆ
9.5.4
え にQ+は
た が っ て,定
理9.15の
条件
フ レ ドホ ル ム で あ る.
特 異 摂 動 の生 起
ウ ィ ッ テ ン モ デ ル に お い て は,特 う.g∈IRを
異 摂 動 が ご く"自 然 に"起
パ ラ メ ー タ ー,W1:IR→IRを2回
こ る こ と を示 そ
連 続 微 分 可 能 な 関 数 と し て,
作用素
(9.125) ―Q+の
摂 動― を 考 え る .作
用 素Q,
H, H±
に お け るWをW+gW1に
え る こ と に よ り得 られ る 作 用 素 を そ れ ぞ れ,Q(g),
H(g),
H±(g)と
置 き換 記 す.(9.109)
に よ って
(9.126) (9.127) (9.128) 以下
(9.129) を 仮 定 す る.
補 題9.25
条 件(9.129)の
も と で,H±(g)は,g→0の
と き,H±
に強 レゾ
ル ヴ ェ ン ト収 束 す る.
証 明 (9.129)が
仮 定 さ れ て い る の で,定
応 用 で き る.し
た が っ て,C∞0(IR)はH±(g)の
用 い る こ と に よ り,任
意 の ψ ∈C∞0(IR)に
な る こ と が 容 易 に わ か る.し
た が っ て,付
理9.20を,WがW+gW1の 芯 で あ る.さ
場合 に ら に,(9.128)を
対 し てlimg→0H±(g)ψ=H± 録Mの
定 理M.4の
ψ と
応 用 に よ り,題
意 が し た が う.
定 理9.26 の と き,次
■
(9.129)を
仮 定 し,g0>0を
任 意 に と り,Ⅱ:=(0,g0]と
の 三 つ の 条 件 の 一 つ が 成 立 す れ ば,H+(g),g∈Ⅱ
お く.こ
はH+に
関 して 特
異 で あ る: (ⅰ) (ⅱ)
(ⅲ) 証 明 定 理9.23に 件(ⅰ),(ⅱ),(ⅲ)を
定 理9.26の 存 在 す る.
よ っ て,上
の 条 件(ⅰ),(ⅱ),(ⅲ)は
そ れ ぞ れ,命
題9.19の
導 く.
条 件(ⅰ),(ⅱ),(ⅲ)の
条 ■
ど れ か を 満 た すW,
W1は
無 数 に"十
分 多 く"
例9.4
W(x):=x2n,W1(x):=-x2m+2,m〓n〓1.こ
ば,定 理9.26の
条 件(ⅲ)が
満 た さ れ る.条
く らで も例 をつ くる こ とが で き る.そ が[2]に
の と き,g>0な
ら
件(ⅰ),(ⅱ)に つ い て も ,同 様 に して,い
の よ う な例 の い くつ か に 関 す る 更 に詳 しい解 析
あ る.
注 意9.7
ウ ィ ッ テ ン モ デ ル の 多 次 元 へ の 拡 張 に つ い て は,演
習 問 題8∼10を
参 照.
9.6
例9.2の
縮 退 した零 エ ネル ギ ー基 底 状 態 を もつ モデ ル
超 対 称 的 量 子 力 学 の モ デ ル は,あ る ク ラ ス の ベ ク トル ポ テ ンシ ャル
Aに 対 して,縮 退 した 零 エ ネ ルギ ー基 底 状 態 を もつ こ とを示 そ う. B:IR2→IRを
有 界 な台 を もつ 連 続 な関 数 と し
(9.130) を定 義 す る.こ
の と き,φ は 連 続 関 数 で あ り超 関 数 の 意 味 でΔ φ(x)=B(x)…(*)
が 成 り 立 つ([13]ま 可 能 で あ る(ル
た は[14]の
付 録C.3の
例C.3を
ベ ー グ の 優 収 束 定 理 を応 用 せ よ).そ
参 照).ま
た ,φ
こ で,IR2上
は偏 微 分
のIR2値
関数
A=(A1,A2)を
(9.131) に よ っ て 定 義 し,Q+(A)を D1A2-D2A1で
例9.2に
あ る か ら,Bを
ン シ ャ ル の 一 つ と 解 釈 さ れ る.こ
お け る 作 用 素 と す る.(*)に
磁 場 と解 釈 す る と き ,Aは
よ っ て ,B=
そ の ベ ク トル ポ テ
の場 合
(9.132) はBの
磁 束 を 表 す.
正 の 実 数a>0に {0}:=0と 定 理9.27 0.
対 し て,aよ
り も 真 に 小 さ い 最 大 の 整 数 を{a}で
す る. A1, A2は(9.131)で
(ⅰ) ΦB>0な
ら ば,dim
与 え ら れ る も の と す る.こ kerQ+(A)={ΦB/2π}か
の と き:
つdim
kerQ+(A)*=
表 す.
(ⅱ) ΦB<0な
ら ば,dim
kerQ+(A)={0}か
つdim
kerQ+(A)*=
{-ΦB/2π}. 証 明 (ⅰ)ω L1loc(IR2)の
∈D(IR2)'のu∈C∞0(IR2)に
お け る 値 を ω(u)と
書 く(ω
場 合 に は,ω(u):=∫IR2ω(x)u(x)dx).
ΦB>0と
す る.ψ
∈kerQ+(A)と
<ψ,Q+(A)*u>=0.一
す れ ば,す
方,Q+(A)*u=-2ieφ
0…(*).ε>0に
対 して,φε:=Jε
軟 化 作 用 素),φε ∈C∞(IR2).し で あ る の で,(*)に
べ て のu∈C∞0(IR2)に
∂ze-φuと
(∂1-i∂2)/2(z=x1+ix2,(x1, x2)∈IR2).し
書 け る.た
対 して だ し,∂z:=
た が っ て,(eφ ψ*)(∂ze-φu)= φ と お け ば(Jε は2次
た が っ て,uε:=eφεuと
元 の フ リー ド リ ク ス の す れ ば,uε
よ り,(eφ ψ*)(∂ze-φuε)=0…(**).φ
あ る か ら,limε →0φε(x)=φ(x),limε
∈C∞0(IR2)
は連 続 微 分 可 能 で
→0∂zφε(x)=∂zφ(x),x∈IR2が
成 り立
つ.こ
れ ら の 事 実 と ル ベ ー グ の 優 収 束 定 理 を 応 用 す る こ と に よ り,(**)の
は,ε
→0の
と き,(eφ ψ*)(∂zu)=0に
方 程 式Dz(eφ
ψ)=0を
収 束 す る こ とが わ か る.こ
意 味 す る(Dz,
が っ て,付
録Nの
り立 つ.し
た が っ て,ψ=e-φf.式(9.130)か
定 理N.5に
Dzに
よ っ て,C上
suppB⊂{x∈IR2││x│〓R}(R>0は │x│>Rな
つ い て は,付 の 整 関 数fが
定 数)と
ら ば0<│x│-│y│〓│x-y│〓│x│+Rで
とき
こ れ と ψ ∈L2(IR2)よ
あ る か ら,│x│〓R+1の
依 存 す る 定 数).し
り,fは
参 照).し
あ っ てeφ ψ=fが
成
つ
と き,log(1+t)〓Cδ│t│
たが っ て
多 項 式 的 に有 界 で な け れ ば な ら な い.し
多 項 式 で な け れ ば な ら な い.そ
た
あ る か ら,log(1-R/│x│)〓
(Cδ>0は
が 成 立 す る(dRはRに
れ は超 関 数
す れ ば,y∈suppBか
δ<1の
定 数)で
録Nを
左辺
ら
log(│x-y│/│x│)〓log(1+R/│x│).0<│t│〓
fは
∈
こ で,fをn次
た が っ て,
の 多 項 式 と し よ う(n〓1).
こ の と き,ψ
∈L2(IR2)で
あ る た め の 必 要 十 分 条 件 は ΦB/2π-n>1で
る.ΦB/2π=l+ε(l∈{0}∪IN,ε n=0,
∈[0, 1))と
1,…,l-1(ε>0の
場 合)ま
の と き は 仮 定 に よ り,l〓1で で あ り,ε=0の
場 合,l-1={ΦB/2π}.し っ て,dim
次 に ψ ∈kerQ+(A)*と
し よ う.し
て,<ψ,Q+(A)u>=0.こ
(ⅱ)ΦB<0な
ず れ の 場 合 で も,
kerQ+(A)={ΦB/2π}. た が っ て,任
の 整 関 数gが
の 場 合,ψ(x)∼│x│ΦB/(2π)g(z)(│x│→∞)で け れ ば な ら な い.ゆ
場 合;こ
場 合,l={ΦB/2π}
た が っ て,い
意 のu∈C∞0(IR2)に
れ は(e-φ ψ*)(∂z(eφu))=0を
の 場 合 と 同 様 に し て.C上
の よ う なnは
1,…,l-2(ε=0の
な け れ ば な ら な い).ε>0の
n=0,…,{ΦB/2π}-1.よ
て,上
た はn=0,
す れ ば,そ
あ
あ っ て,ψ=eφgと あ る か ら,ψ
系9.28
たが っ
書 け る.こ
∈L2(IR2)は0で
な
え にkerQ+(A)*={0}.
ら ば,(ⅰ)の
二 つ の 議 論 が"逆
転 す る"の
で題 意 が 成 立 す る こ
と に な る.
定 理9.27か
対 し
意 味 す る.し
■
らた だ ち に次 の 結 果 が 得 られ る:
定 理9.27の
仮 定 の も とで
(9.133) こ こ で,sgn(t)はt∈IR\{0}の
符 号 を 表 す:t>0な
ら ばsgn(t)=1;t<0な
ら ばsgn(t)=-1.
定 理9.27は,考
察 下 の超 対 称 的 量子 力 学系 にお け る線 形 独 立 な零 エ ネ ル ギ ー
状 態 の個 数 は磁 束 だ け か ら定 ま る こ と,お よび零 エ ネ ル ギー 状 態 の 帰 属― ボ ソ ン 的 か フ ェ ル ミオ ン的 か とい う こ と― が 磁 束 の符 号 に よ って 交 代 す る こ と を語 っ て お り,た いへ ん 興 味 深 い. 定 理9.27の
結 果 を2次 元 パ ウ リ作 用 素H±(A)[(9.71)]の
基底 状態 について
の 情 報 と して読 み 直 せ ば次 の結 果 を得 る: 系9.29
定 理9.27の
仮 定 の も とで,
(9.134)
(9.135) た だ し,θ(t):=1(t>0);θ(t):=0(t<0).
こ の 結 果 は し ば し ば ア ハ ラ ノ フ(Aharonov)-キ
ャ シャ-(Casher)の
結果 と
し て 言 及 さ れ る[1]. 注 意9.8 IR2に
上 述 の モ デ ル の あ る種 の 極 限 と して,磁 場Bが
集 中 し て い る 場 合,す
ΣNn=1cnδ(x-an)と 合,零
な わ ち,cn∈IRを
定 数 と し て,BがB(x)=
い う形 の 超 関 数 で 与 え ら れ る 場 合 が 考 え ら れ る.こ
エ ネ ル ギ ー 状 態 の 在 り方 は一 変 し,定
か わ り,別
何 個 か の 点a1,…,aN∈
理9.27の
の場
結 果 は 成 立 し な い.そ
の
の 法 則 性 が 見 い だ さ れ る[7].
付 録L
トレー ス型 作 用 素
Hを 可 分 な ヒ ル ベ ル ト空 間 と し,TをH上 N=dimH<∞
の と き,Hの
の 有 界 線 形 作 用 素 とす る(T∈B(H)).
任 意 の 正 規 直 交 基 底{en}Nn=1に
対 して,ス
カ ラー
量TrTを
(L.1) に よ っ て 定 義 で き る.こ て,TrTはTに
れ は 正 規 直 交 基 底 の 選 び 方 に よ ら ず に 定 ま る*22.し
固 有 の 量 で あ る.こ
れ をTの
トレー ス と呼 ぶ.こ
たが っ
の概 念 の 無 限 次 元
版 を 定 義 す る こ とが こ の 付 録 の 目 的 で あ る. 以 下,Hは る.も
無 限 次 元 で あ る と し,{en}∞n=1をHのCONS(完
し,T〓0な
散 す る 場 合(+∞ 補 題L.1
ら ば,<en,
T〓0の
*22 {f
別 のCONSと
n}Nn=1をHの
き る.し
全 正 規 直 交 系)と す
あ る か ら,Σ∞n=1<en,
Ten>は
発
と な る場 合)も 含 め て 定 義 さ れ る. と き,Σ∞n=1<en,
証 明 α:=Σ∞n=1<en, をHの
Ten>〓0,n∈INで
Ten>はCONS{en}∞n=1の
Ten>と
す れ ば,α=Σ∞n=1‖T1/2en‖2と
す れ ば,パ
ー セヴ ァルの等 式 によ り
別 の 正 規 直 交 基 底 と す れ ば,
た が っ て,
取 り方 に よ ら ない. 書 け る.{fn}∞n=1
と展 開 で で あ る か ら, .
し た が っ て―2重
正 項 級 数 の 和 の順 序 は発散 す る場 合 もこ めて 交 換 可 能 で あ る か
ら― . Tが
非 負 で な い 場 合 で も,│T│=(T*T)1/2は
■
非 負 の 自 己 共 役 作 用 素 で あ る .そ
こ
で 次 の 定 義 が 可 能 で あ る: 定 義L.2
Hの
あ るCONS{en}∞n=1に
対 して
(L.2) が 成 り立 つ と き,Tを をTの
トレ ー ス型 作 用 素 ま た は トレ ー ス ク ラ ス 作 用 素 と呼 ぶ.‖T‖1
トレ ー ス ノ ル ム と い う.H上
補 題L.1に
の トレ ー ス 型 作 用 素 の全 体 をC1(H)と
よ っ て,こ の 定 義 はCONS{en}∞n=1の
取 り方 に よ らな い.次
記す. の事 実 は
基 本 的 で あ る: 命 題L.3
(ⅰ)C1(H)は
複 素 ベ ク トル 空 間 で あ る.
(ⅱ) T∈C1(H),S∈B(H)な
(ⅲ) T∈C1(H)な
ら ばTS,ST∈C1(H)で
らばT*∈C1(H).
証 明 紙 数 の 都 合 上,割 命 題L.4
て,Hの
愛 す る*23.
各T∈C1(H)は
証 明 │T│∈C1(H)で
あ り
■
コ ンパ ク トで あ る.
あ る か ら,命 題L.3-(ⅲ)に
任 意 のCONS{en}nに
と し よ う.こ 部 と み る こ とが で き る.し
よ っ て,│T│2∈C1(H).し
の と き,{e1,…,eN,Ψ}は
た が っ て,
ち, .こ
あ るCONSの ,す
一 なわ
れ は を意 味 す る.し た が っ て,
0(N→∞)を
たが っ
対 して,
得 る(定 理6.25-(ⅱ)の
とす れ ば ,‖TN-T‖= 証 明 を参 照).TNは
も コ ン パ ク トで あ る.
コ ンパ ク トで あ る か ら,T ■
次 の事 実 は重要 で ある. *23 証 明 の 基 本 的 ア イ デ ア は 標 準 極 分 解([13 証 明 は そ れ ほ ど 難 し くは な い.た Ⅵ.19等
を 参 照.
, p.178])を 使 う こ と で あ る.こ れ に 気 づ け ば, と え ば,[22]の §49,[19]の4.2節,[24]のTheorem
補 題L.5
Tは
トレ ー ス 型 作 用 素 で あ る と し,{en}∞n=1をHのCONSと
す る.こ
の とき
(L.3) は 絶 対 収 束 し,CONS{en}∞n=1の 証 明 [22]の
選 び方 に よ ら な い.
§49,[19]の4.2節,[24]の
§Ⅵ.6等を参照.
ト レー ス型 作 用 素T∈C1(H)に TrTをTの
対 し て,(L.3)に
■
よ っ て,定
義 され る ス カ ラ ー量
トレ ー ス と い う.
命 題L.6
T∈C1(H)が
自 己 共 役 な ら ば,TrT=Σnλn.た
複 もこ め て 数 え た,Tの0で 証 明 仮 定 と命 題L.4に 定 理6.30に
よ っ て,Tは
自己 共 役 な コ ン パ ク ト作 用 素 で あ る.し
よ っ て,CONS{ψn}nと
0を 満 たす も の が あ る.ゆ
だ し,{λn}nは,重
な い 固 有 値 全 体 で あ る. た が って,
実 数 列{μn}nでTψn=μnψn,limn→∞
μn=
え に,TrT=Σn<ψn,Tψn>=Σnμn=Σ
μn≠0μn=
Σnλn. 定 理L.7
■ (ⅰ) (線 形 性)Tr(αT+βS)=αTrT+βTrS,T,S∈C1(H),α,β
(ⅱ) 任 意 のT∈C1(H)に
対 し て,TrT*=(TrT)*.
(ⅲ) 任 意 のT∈C1(H)とS∈B(H)に
対 し て,TrTS=TrST.
証 明 (ⅰ),(ⅱ)は容 易 に証 明 さ れ る.(ⅲ)い ニ タ リ の 場 合.{en}nをHの
くつ か の ス テ ッ プ に 分 け る.(a) Sが
任 意 のCONSと
ば,{fn}nもHのCONSで
あ る.こ
(b) Sが 自 己 共 役 で‖s‖=1の が 定 義 され,い
∈C.
す る.こ
の と き,fn:=Senと
れ に注意 すれ ば
場 合.こ
の と き,S2〓1で
ず れ もユ ニ タ リ で あ る.そ
あ る か ら,U±:=S±
して,S=(U++U-)/2と
け る.(a)に
よ っ て,TrTU±=TrU±Tで
あ る か ら,TrTS=TrSTが
(C) S≠0が
自 己 共 役 の 場 合.S:=S/‖S‖
とお け ば,Sは
た が っ て,(b)に
よ り,TrTS=TrST.ゆ
界 線 形 作 用 素 の 場 合.S=S1+iS2(S1,S2は 果 を使 え ば,結 論 を 得 る.
ユ
おけ
書 成 り立 つ.
自己 共 役 で‖S‖=1.し
え に題 意 が し た が う.(d) Sが 任 意 の 有 自 己 共 役)と 書 け る.こ
れ と(C)の 結 ■
付 録M
自 己共役 作 用 素 の強 レゾル ヴ ェ ン ト収 束
Hを ヒ ル ベ ル ト空 間,An, A(n∈IN)をH上 の 自 己 共 役 作 用 素 とす る.任 z∈C\IRと Ψ ∈Hに 対 し て,limn→∞‖(An-z)-1Ψ-(A-z)-1Ψ‖=0が り立 つ と き,AnはAに
強 レ ゾ ル ヴ ェ ン ト収 束 す る と い う(nが
意の 成
連 続パ ラメ ー ターの
場 合 も 同 様). 補 題M.1
Tn, T(n∈IN)をH上
い る とす る(す な わ ち,任 ‖T‖〓lim
強収 束 して
対 して,limn→∞TnΨ=TΨ)
.こ の と き,
infn→∞‖Tn‖.
証 明 Ψ ∈Hを n〓n0な
の 有 界 線 形 作 用 素 と し,TnはTに
意 の Ψ ∈Hに
任 意 に 固 定 す る.こ
の と き,任
ら ば,‖TnΨ-TΨ‖<ε.し
し た が っ て,a:=lim
infn→∞‖Tn‖
意 の ε>0に
対 し て,番
Ψ‖.
と す れ ば,‖TΨ‖〓(a+ε)‖
Ψ‖.そ
→
Ψ‖ を 得 る か ら,‖T‖〓aで
補 題M.2
の 自 己 共 役 作 用 素 と し,a, b∈IR,a
とお く.こ の と き,(a,
b)∩ σ(B)=0で
あ っ て,
ε〓(‖Tn‖+ε)‖
0と す れ ば,‖TΨ‖〓a‖
BをH上
号n0が
た が っ て,‖TΨ‖〓‖TnΨ‖+
こ で,ε
あ る.
■
対 して
あ るため の必 要 十分 条件 は
(M.1) が 成 り立 つ こ と で あ る. 証 明 (必 要 性)(a,
b)∩ σ(B)=0と
こ れ と作 用 素 解 析 に よ り,(M
す る.こ
の と き,infλ ∈σ(B)| λ|z0|=(b-a)/
(十 分 性)対 偶 を示 す.し た が っ て,(a, b)∩ σ(B)≠0を と す る.ま ず,a<E<(a+b)/2の 場 合 を考 え る.十 IE:=(E-δ,E+δ)⊂(a,(a+b)/2)と ば,EB(IE)≠0で
で きる.Bの
はBの
仮 定 し,E∈(a, b)∩ σ(B) 分 δ>0を 小 さ く とれ ば,
ス ペ ク トル 測 度 をEBと
あ る か ら,零 で な い ベ ク トルf∈R(EB(IE))が
に 対 して, .一
*24 任意 の Ψ ∈Hに
対 し て, 用 い て 評 価 せ よ.
すれ
存 在 す る.こ 方
ス ペ ク トル 測 度)を
.
.1)が 得 られ る*24.
れ
と お く と,λ
∈IEな
ら ば,│λ-z0│〓c.し
こ れ は,‖(B-0o)-1‖〓c-1を
た が っ て,‖(B-z0)-1f‖2〓c-2‖f‖2.
意 味 す る.容
易 に わ か る よ う に,
.
よ っ て, .
■
命 題M.3
An,
A(n∈IN)をH上
ン ト収 束 して い る とす る.こ
(ⅰ) a, b∈IR,a
つ す べ て のn∈INに
σ(A)=0で
(ⅱ) 任 意 の
の 自己 共 役 作 用 素 と し,AnはAに
対 し て,部
よ っ て,す
.こ れ と 補 題M.1に 題M.2に
よ っ て,(a,
(ⅱ) 任 意 のk>0に に よ っ て,あ
b)∩
σ(An)=0な
ら ば,
σ(Ank)が
存 在 し,
分 列{nk}kとλk∈
が 成 立 す る.
証 明 (ⅰ) 仮 定 と補 題M.2に
び,補
対 し て(a,
あ る.
λ ∈ σ(A)に
limk→∞λk=λ
強 レゾル ヴェ
のとき
べ て のn∈INに
し た が っ て,再
b)∩ σ(A)=0を
得 る.
対 し て,(λ-k-1,λ+k-1)∩
るnk∈INが
λk∈(λ-k-1,λ+k-1)∩
対 して,
よ っ て,
σ(A)≠0で
あ っ て,(λ-k-1,λ+k-1)∩ σ(Ank)を
あ る か ら,(ⅰ)
σ(Ank)≠0.そ
一 つ 選 べ ば,こ
こ で,
れ が 求 め る 数 列 で あ る.
■
次 の 定 理 は 有 用 で あ る. 定 理M.4
An,
∩n∈IND(An)を
A(n∈IN)をH上
の 自 己 共 役 作 用 素 と し,DをAの
満 たす もの とす る.さ
AΨ が 成 り立 っ て い る と す る.こ
ら に,任 意 の Ψ ∈Dに
の と き,AnはAに
証 明 z∈C\IR,Ψ=(A-z)Φ,Φ
∈Dと
芯 でD⊂
対 して,limn→∞AnΨ=
強 レゾ ル ヴ ェ ン ト収 束 す る.
す る.こ
の と き,
で あ るか ら
し た が っ て,limn→ {(A-z)Φ│Φ │I mz│-1.こ て,Ψk→ て,(*)が
∞(An-z)-1Ψ=(A-z)-1Ψ
∈D}はHの
れ ら の 事 実 を 用 い て,極 Ψ(k→∞)と
…(*).DはAの
稠 密 な 部 分 空 間 で あ る.ま
な るΨk∈Dを
成 り立 つ こ と が わ か る.
芯 で あ る か ら,
た,supn〓1‖(An-z)-1〓
限 議 論 を 行 う こ と に よ り(任 意 の Ψ ∈Hに と っ て 考 察 す る),す
べ て の Ψ ∈Hに
対 し 対 し ■
付録N 簡単な超関数方程式の解
IRdの 座 標 変 数xj(j=1,…,d)に 定 理N.1
ψ ∈L1loc(IRd)に
で あ る.す
な わ ち,あ
証 明 ε>0に
関 す る 一 般 化 さ れ た偏 微 分 作 用 素 をDjで
つ い て,Djψ=0(j=1,…,d)な
る 定 数cが
対 し て,Jε
る).こ
を フ リ ー ド リ ク ス の 軟 化 子 と し([13]ま
た が っ て,ψ ε=cε(定
す .
数)…(*).一
方,任
意 のu∈C∞0(IRd)
ビ ニ の 定 理 を応 用 す る こ と に よ り
た だ し,Rはsuppu⊂{x∈IRd││x│〓R}と
な る 定 数 で あ る.limε
ε*u)(y)│〓‖u‖L∝(IRd)│ψ(y)│お
→0(ρε*u(y)=
よ び ψ ∈L1loc(IRd)に
注意
ベ ー グ の 優 収 束 定 理 を 応 用 す る こ と が で き, を 得 る.こ
の 事 実 と(*)を
合 わ せ る と,c:=limε
が 結 論 さ れ る.u∈C∞0(IRd)は デ ュ ・ボ ワ ・レ イ モ ン の 補 題([13]ま ψ(x)=c,
付 録C.8
は 無 限 回 微 分 可 能 で あ り,
辺 は0.し
u(y),y∈IRd,│ψ(y)││(ρ す れ ば,ル
た は[14]の
と お く(ρ(x)=ρ(-x),x∈IRdと
の と き,ψε
に 対 し て,フ
らば ψ は定 数 関数
あ っ て,ψ(x)=c,a.e.x∈IRd.
を 参 照),ψε=Jεψ=
仮 定 か ら,右
表 す.
a.e.xを
た は[14]の
は 存 在 し,
任 意 で あ っ た か ら, 補 題C.3)に
よ り,こ
れ は
意 味 す る.
定 理N.2 V:IRd→Cを
■
連 続 微 分 可 能 な 関 数 とす る.こ
が 超 関 数 方 程 式Djψ=(∂jV)ψ,j=1,…,dの 数C∈Cが
付 録Cの
→0cε
の と き,ψ
∈L1loc(IRd)
解 で あ る た め の 必 要 十 分 条 件 は,定
あ っ て ψ(x)=CeV(x),a.e.xが
成 り 立 つ こ と で あ る.
証 明 条 件 の 十 分 性 は 直 接 計 算 か ら 容 易 に わ か る の で,必 要 性 だ け を 証 明 す る.ψ L1 loc(IRd)がDjψ=(∂jV)ψ,j=1,…,dを 満 た す と し,f(x):=e-Vψ(x)と く.∂jVは fに
連 続 で あ る か ら,Djψ
∈L1loc(IRd).ま
た,f∈L1loc(IRd).し
あ っ てf(x)度C,a.e.x.ゆ
Ω をIRdの で 表 す(m=0,
た が っ て,定
よ っ て ,定
理6.18), 数Cが
え に ψ(x)=CeV(x),a.e.x.
開 集 合 とす る と き,Ω 上 のm回 1,…or
理N.1に
■
連 続 微 分 可 能 な 関 数 の 全 体 をCm(Ω)
m=+∞)*25.D(IRd)'をIRd上
*25 0回 連 続 微 分 可 能 な 関数 は ,単 に連 続 な関 数 と読 む.
お
た が っ て,
対 し て 一 般 化 さ れ た 偏 微 分 に 対 す る ラ イ プ ニ ッツ 則 を 適 用 で き([23],定
Djf=e-V(-∂jV)ψ+e-VDjψ=0.し
∈
の 超 関 数 の 空 間 と す る.
定 理N.3
(ヴ ァ イ ル の 補 題)g∈D(IRd)'は
は 超 関 数 方 程 式-Δ てg∈Cm(Ω)な
ψ=gを
し,あ
ら ば,0〓l<m-(d/2)+2を
は Ω 上 でCl(Ω)の C∞(Ω)の
与 え られ た 超 関 数 と し,ψ
満 た す と す る*26.も
満 た す 任 意 の 整 数lに
関 数 と同 一 視 で き る*27.特
∈D(IRd)'
る 開 集 合 Ω ⊂IRdに
に,g∈C∞(Ω)な
らば,ψ
対 し
対 し て,ψ は Ω 上で
関 数 と 同 一 視 で き る.
この 非 常 に 重 要 で 有 用 な 定 理 の 証 明 は,残 念 な が ら,紙 数 の 都 合 上,割 愛 す る*28. ヴ ァ イ ル の 補 題 をg=0の 系N.4 IRd上 C∞(IRd)の
場 合 に応 用 す れ ば,次
の 事 実 が 導 か れ る:
の 超 関 数 の 意 味 で の ラ プ ラ ス 方 程 式-Δ
ψ=0を
満た す超 関数 ψ は
関 数 と 同 一 視 で き る.
この 系 の 簡 単 な応 用 を一 つ 述 べ て お く. 複 素 数z=x1+ix2((x1,x2)∈IR2)お 偏 微 分 作 用 素Dz,Dzを
よ びz=x1-ix2に
関す る 一般化 された
そ れぞれ
(N.1) に よ っ て 定 義 す る. 定 理N.5
ψ ∈ L1loc(IR2)が 超 関 数 方 程 式Dzψ=0を
で 正 則 な 関 数(i.e.,整 証 明 Dzψ=0な
ら ば,Dzψ*=0で
Reψ,ψ2:=Imψ
と す れ ば,D1ψ1=D2ψ2,D1ψ2=-D2ψ1…(*).し
超 関 数 方 程 式Δ C∞(IRd)の
ψ1=0,Δ
あ る こ と は 容 易 に わ か る.し
ψ2=0が
元 と 同 一 視 で き る.こ
リ ー マ ン 方 程 式 で あ る.よ
成 り 立 つ.ゆ
え に,系N.4に
っ て,ψ
ー
■
ト
超 関 数 の 空 間に 作 用 す るd次
数f∈Cl(Ω)が
∫IRdf(x)u(x)dxが *28 た と え ば ,[25]の
よ っ て,ψ1,ψ2は に 対 す る コ ー シ ー-
章 で 叙 述 し た の は そ の ご く一 部
対 称 性 とい う 理 念 の 射 程 の 広 さ と深 さ は 測 り知 れ な い.こ
*26 Δ:=Σdj=1D2jは .e.,関
体
た が っ て,ψ1:=
は 整 関 数 で あ る.
超 対 称 的 量 子 力 学 に つ い て 語 る べ き こ とは 多 い.本
*27 i
はC全
た が っ て,
の 同 一 視 を す れ ば,(*)は,ψ
ノ
分 に す ぎ な い.超
満 た す な ら ば,ψ
関 数)で あ る.
存 在 し て,任
元ラプラシアン
意 のu∈C∞0(Ω)に
れ は,た
. 対 し て,ψ(u)=
成 り 立 つ と い う こ と. §IX.6を
参 照.楕
が い は 載 っ て い る は ず で あ る.
円 型 偏 微 分 方 程 式 の 理 論 を 扱 う 専 門 書 な らば,た
い
と え ば,最 る.超
近 刊 行 され た 超 対 称 性 に 関 す る 百 科 事 典[18]か
対 称 的 量 子 力 学 を,数 学 的 に 厳 密 な 仕 方 で,さ
ば,[26]の5章
ら も うか が う こ とが で き
ら に 深 く学 び た い 人 は,た
と そ こ に引 用 さ れ て い る文 献 に あ た る こ と を薦 め る.物
ま と め た 教 科 書 と して[16]が
とえ
理 的 な議 論 を
あ る.こ の 本 に は,本 書 で述 べ ら れ な か っ た トピ ッ ク ス
が 書 か れ て い る.本 章 で 取 り上 げ た超 対 称 的 量 子 力 学 の モ デ ル とは 別 の モ デ ル の 数 学 的 に厳 密 な 理 論 に つ い て は,た
と え ば,[3,4,7,15,20]な
どが 参 考 に な る で あ ろ う.
超 対 称 的 量 子 場 の 理 論 の 数 学 的 に 厳 密 な 構 成 に つ い て は,た や[10]の6章
を 参 照 され た い.だ
が,超
に あ り,十 分 な 結 果 は 得 られ て い な い.21世 あ る.若
と え ば,[5,6,8,21]
対称 的 量子 場 の数学 的 理論 は まだ発 展途 上 紀 の数 理物 理学 の 重要 な主題 の一 つで
い 人 た ち の 挑 戦 を期 待 し た い.
第9章 演 習 問題 1. ヒ ル ベ ル ト空 間F上
の 有 界 線 形 作 用 素 の 組a, a*は1自
係(CAR){B,B†}=1,B2=0,(B†)2=0の 1,a2=0(こ
表 現 で あ る とす る:{a, a*}=
の と き,(α*)2=0は
つ い て は 以 下 の 演 習 問 題3を (i) M>0を
由度 の 正準 反交 換 関
自 動 的 に し たが う)(こ の よ う な 表 現 の 例 に
参 照).
定 数 と し て,作
用 素Q(j),j=1,
2を ,
に よ っ て 定 義 す る.こ
の と き,Q(j)は
有界 な
自己 共役作 用 素で あ り
が 成 り立 つ こ と を示 せ. (ii) Γ:=1-2a*aと
お く と,Γ
は 自 己 共 役 か つ ユ ニ タ リ作 用 素 で あ り
が 成 り立 つ こ と を示 せ.
注:こ の 問題 に述 べ た 事 実 は,1自
由度 のCARの
表 現 か ら,N=2の
を もつ 超 対 称 的 量 子 力 学― た だ し,ハ ミル トニ ア ンMは れ る こ と を示 す(こ の"N=2"は
ス ピ ン 自 由度 に 関 す る も の で は な く,ス ピ ン
とは 異 な る 内 部 対 称 性 に 関 す る も の で あ る).別
の い い 方 を す る と,(Q(j)2j=1
は 拡 大 され た 超 対 称 性 代 数(9.40)のn=1,N=2の 現 を 与 え る.こ
れ はN=2の
場 合 の ヒル ベ ル ト空 間 表
内部対 称 性 を もつ相対 論 的超対 称 的量子 場 の理
論 の コ ン テ ク ス トに お い て は,静 空 間 の 表 現 を与 え る.次
超 対称性
定 数 作 用 素― が 構 成 さ
止 系 に お け る,質
の 問 題 も参 照.
量Mの1粒
子状 態の 内部
2. F,a,a*,Q(j),Γ
は 前問 の も の と す る.単
す も の が あ る と す る.こ 呼 ぶ.
位 ベ ク トル ψ0∈Fでaψ0=0を
の よ う な ベ ク トル ψ0をCARの
表 現a,a*の
満 た 真 空 と
と お く.
(ⅰ) ψ0と ψ1は 線 形 独 立 で あ る こ と を 示 せ. (ⅱ) ψ0と
ψ1に
よ っ て 生 成 さ れ る 部 分 空 間 をFaと
dimFa=2).a,a*はFaを
す る((ⅰ)に
よ っ て,
不 変 に す る こ と を示 せ. を 示 せ.
(ⅲ) (ⅳ) を示 せ.
3. 2 次 元 ユ ニ タ リ空 間C2に
(ⅰ) a,a*は1自
お い て
由 度 のCARの
と す る.
表 現 で あ る こ と を示 せ. の 定 数 倍 に 限 られ る こ と を 示 せ.
(ⅱ) この 表 現 の真 空 は存 在 し,
(ⅲ) この 表 現 で は,演
習 問 題2の
作 用 素Q(j),Γ
は
とい う 形 を と る こ と を 示 せ. 4. a1,a*1,a2,a*2を る.す
ヒ ル ベ ル ト空 間Hに
な わ ち,各aα(α=1,2)はH上
お け る 自 由 度2のCARの
有 界 表 現 とす
の 有 界 線 形 作 用 素 で あ り を 満 た す も の とす る(こ
例 に つ い て は 以 下 の 演 習 問 題6を
参 照).こ
の よ うな表 現 の
の と き,有 界 な 自 己 共 役 作 用 素
が 定 義 さ れ る. を 示 せ.
(ⅰ)
とお く と,γ
(ⅱ)
は 自己 共 役 か つ ユ ニ タ リで
あり
が 成 り立 つ こ と を示 せ. 5. a1,a*1,a2,a*2を Ω ∈Hが
前問
の も の と し,aα
存 在 す る と す る.こ
の 真 空 と 呼 ぶ.
Ω=0,α=1,2を
の よ う な ベ ク ト ル をCARの と お く.
満 た す 単 位 ベ ク トル 表 現{a1,a*1,a2,a*2}
(ⅰ) Ω,ψ1,ψ2,ψ12は 線 形 独 立 で あ る こ と を示 せ.
(ⅱ) Ω,ψ1,ψ2,ψ12に
よ っ て 生 成 さ れ る 部 分 空 間 をHaと
dim Ha=4).aα,a*α
はHaを
(ⅲ)
注:ヒ
す る((ⅰ)に よ っ て,
不 変 に す る こ と を示 せ. を 示 せ.
ル ベ ル ト空 間Haは,相
お い て は,静
対 論 的 超 対 称 的 量 子 場 の 理 論 の コ ン テ ク ス トに
止 系 に お け る,質 量Mの1粒
さ れ る.(ⅲ)が
示 す よ う に,Ω,ψ12は
子 の ス ピ ン状 態 を 表 す 空 間 と解 釈 ボ ソ ン 的 状 態 を 表 し,ψ α(α=1,2)は
フ ェ ル ミオ ン的 状 態 を表 す. とお け ば, さ れ る.Haに ば,Haは
角 運 動 量 代 数 の 表 現 空 間 に な って い な け れ ば な ら な い.こ
ら,直 和 分 解(*)は
ン が1/2の
ピ ンが0の
表 現 で あ る.こ
表 現 で あ り,M1は2次
う して,こ
ェ ル ミ オ ンの ス ピ ンは1/2で
6. a,ψ0を 演 習 問 題3の
の モ デ ル で は,ボ
もの とす る.C2の2個
ピ あ
の テ ン ソ ル 積 空 間
に
に よ っ て 定 義 す る.
(ⅰ) a1,a*1,a2,a*2は
(ⅱ) こ の 表 現 の 真 空 は
自 由 度2のCARの
任 意 の 自然 数 と し,N次
表 現 で あ る こ と を示 せ.
の零 で な い 定 数 倍 に 限 られ る こ と を示 せ. 元 ユ ニ タ リ空 間CN上
ク 空 間 のp重
元 で あ る の で,ス ソ ンの ス ピ ン は0で
あ る こ とが わ か る.
お け る 作 用 素a1,a2を
7. Nを
の観 点 か
角 運 動 量 代 数 の 既 約 表 現 の 直 和 と解 釈 さ れ る.M0,M2は
1次 元 で あ る か ら,ス
り,フ
と直和 分解
対 す る上述 の解 釈 と相対論 的 場 の量子 論 の公 理論 的要 請 に よれ
の フ ェ ル ミオ ン フ ォ ッ
を 考 え る
反 対 称 テ ン ソ ル 積*29).e1,…,eNをCNの
はCN 標 準 基 底 とす る:el:=
l成 分
(0,…,0,1,0,…,0)(l=1,…N).各l=1,…,Nに対 上 の 線 形 作 用 素alを
し て,
そ の 共 役 作 用 素a*1が(a*lψ)(0)=0,
とな る よ うに 定 義 す る(Apはp次
の 反 対 称 化 作 用 素).ベ に よ っ て 定 義 す る.こ
ク トルΩ∈∧(CN)を の ベ ク トル は∧(CN)
に お け る フ ォ ッ ク 真 空 と呼 ば れ る. (ⅰ)
に 対 し て,
φ(q)=0,q≠pと *29 [14]の4章 ,4.3.1項
を 参 照.
い う形 の ベ ク トル
かつ を と る.
こ の と き,各l=1,…,Nに
対 して
を 示 せ. (ⅱ) alΩ=0(l=1,…,N)を
示 せ.
(ⅲ) {al,a*l│l=1,…,N}は
自 由度NのCARの
表 現 で あ る こ と,す な わ ち,
が 成 り立 つ こ と を示 せ. (ⅳ)
偶数
奇数
とす れ ば,
と表 され る. 用 素 をp±
と し,
とお く.こ
上へ の 正射影作
の と き,
を
示 せ. (ⅴ)
と し, と お く.た
だ し,M>0は
定 数 で あ る.こ
とき
が 成 り立 つ こ と を示 せ. 8. ajを 演 習 問 題7の
も の と し(N=nと
に お い て,作
を考 え る(Djは
す る),ヒ
ル ベ ル ト空 間
用素
変 数xjに
関す る 一般 化 され た偏 微 分 作 用 素).
と お く( は代 数 的 テ ン ソ ル 積 を表 す). (ⅰ)
で あ り(し た が っ て,dは
稠 密 に 定 義 さ れ て い る),
を示 せ. (ⅱ) D0上
でd2=0,d*2=0で
あ る こ と を示 せ.
(ⅲ)
とす る(Δ の 一 般 化 さ れ た ラ プ ラ シ ア ン).こ
の とき (D0上), (D0上)
はL2(IRn)上
の
を 示 せ.
(ⅳ) Qj(j=1,2)はD0上
で 本 質 的 に 自 己 共 役 で あ り,作 用 素 の 等 式H=
Q12=Q22が
成 立 す る こ と を 示 せ.
ヒ ン ト:(ⅲ)と (ⅴ)
交 換 子 定 理 を用 い よ.
とお く(τ は 演 習 問 題7で
定 義 し た作 用 素).
お よ び作 用 素 の 等 式
を 証 明 せ よ.
注:こ の問題 の結 果 は, を 示 し て い る.dはHに と 呼 ば れ る.こ て,ス
が超 対称 的量 子力 学で あ るこ と お け る 外 微 分 作 用 素(exterior
differential
の モ デ ル で は,
operator)
で あ る.し
ペ ク トル 写 像 定 理 に よ り,
特 に,超
たが っ 対 称性 は
自 発 的 に 破 れ て い る. 9. (研 究 課 題)
をC∞
関 数 とす る.前問
テ ン 変 形dt:=etWde-tW(t∈IRは 前問
の 作 用 素dに
パ ラ メ ー タ ー)を
対 し て,ウ
行 う.こ
ィッ
れ に 関 し て,
と 同 様 の 問 題 に つ い て 考 察 せ よ*30.
10. (研 究 課 題)演
習 問 題7を
基 礎 に し て,ヒ
ル ベ ル ト空 間
を 状 態 空 間 と す る 超 対 称 的 量 子 力 学 の モ デ ル を 構 成 せ よ.
関
[1] Y.Aharonov and a two dimensional
連
図
書
A.Casher,Ground state of a spin 1/2 charged magnetic field, Phys.Rev.A19(1979),2461-2462.
[2] A.Arai,Supersymmetry
and
singular
particle
in
perturbations,J.Funct.Anal.60
(1985),378-393. [3] A.Arai,On supersymmetric
the
degeneracy quantum
[4] A.Arai,Exactly solvable Anal.Appl.158(1991);63-79. [5] A.Arai,A integral
general representation
[6] A.Arai,Supersymmetric
class
in the ground state of the N=2 mechanics,J.Math.Phys.30(1989),2973-2977. supersymmetric
of infinite
of their
quantum
dimensional
Wess-Zumino
mechanics,J.Math.
Dirac
operators
and
path
index,J.Funct.Anal.105(1992),342-408.
extension
of
quantum
Quantum and Non-Commutative Analysis,H.Araki demic Publishers,Dordrecht,1993,pp.73-90.
scalar
field
theories,
et al.(eds.),Kluwer
in Aca
*30 リーマ ン多 様 体 上 で の対 応 す る議 論 が[31]に あ る .た だ し,こ の論 文 の議 論 は数 学 的 な 観 点 か らい う と完 全 には 厳 密 で は ない.
[7] A.Arai,Properties gauge
of
the
Dirac-Weyl
operator
[8] 新 井 朝 雄,超
対 称 的 場 の 量 子 論 と 無 限 次 元 解 析,数
[9] 新 井 朝 雄,『
ヒ ル ベ ル ト 空 間 と量 子 力 学 』,共
[10] 新 井 朝 雄,『
フ ォ ッ ク 空 間 と量 子 場
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Uni
索
A AB効
果 167,168
Aか
ら生 成 さ れ る代 数 30
引
n回
元 特 殊 ユ ニ タ リ群SU(N)の
N次
元 ユ ニ タ リ群 191,201
N次
A-限 界 43
n重
A-コ
N粒
ンパ ク ト 352
Aに
微 分 可 能 264
N次
元 ユ ニ タ リ群U(N)の
子 系 の 全 軌道 角 運 動 量 252 P
A-有 界 43 π± 中 間 子 297 πO中 間 子 297
C∞-定 義 域 8
ρ(G)-不 変 214
CCR ―
ρ-不変 214 の 自 己共 役 表 現 177 R
― の弱 ヴ ァ イ ル型 表 現 169 ― ―
の表 現 の 非 有 界性 130 の表 現 の ヒ ルベ ル ト空 間 129
C上
リー 環 246
可 換 子 集 合 28
同 伴 す る準 双 線 形 形 式 92
C
リー 環 246
IRd-並 進 対 称 性 61 IRd-並 進 不 変 性 61
の 代 数 28
S D
S方
向へ の微 分 81
d次 元 の 回 転 対 称 性 224 d次 元 の 軌 道 角 運 動 量 227 G
T T-対 称 194 T-不 変 194
G-対 称 性 220 ― の(一 つ の)表 現 220
U U-不 変 219
g-対 称 性 248 ア H
行
ア イ ソ ス ピ ン 253 H安
定 性 41
H0-コ
アハ ラ ノ フ-キ ャ シ ャー の 結 果 513 アハ ラ ノ フ-ボ ー ム効 果 154,167
ンパ ク ト 358 K
KLMN定
ア ーベ リア ン 29 理 108
ア ーベ ル群 190 N
n階
の 導 関 数 264
アハ ラ ノ フ-ボ ー ム の 時 間 作 用 素 178
安 定 261 生 き残 り確 率 182,300,303,316
位 数 190
解 析 ベ ク トル定 理 88
位 相 255
回 転 群 191,200
位 相 空 間 255
回 転 対 称 224,225
位 相 群 196
―
位 相 写 像 257 位 相 同 型 257 一 意 性 ベ ク トル 86
な 関 数 195 ―な 図 形 195
回 転 不 変 225
一意 的 284
外 微 分 作 用 素 524 ガ ウス 型 確 率 ベ ク トル 456
位 置 作 用 素 7,12,135,381
ガ ウス 型 確 率 変 数 455
―
の 組 25
ガ ウス 型 関 数 147
1次 元 調 和 振 動 子 36
可 換 29
1次 元 の デ ィ ラ ッ ク型 作 用 素 503
―
1次 元 量 子 調 和 振 動 子 の ハ ミル トニ ア ン 446
―
1自 由 度CARの 一 般 化 さ れ たd次
表 現 520 元 ラ プ ラ シア ン 61
一 般 化 され た デ ィ リ ク レ境 界条 件 つ き ラ プ ラ シ
な 観 測 量 の完 全 な組 32
な 観 測 量 の極 大 集 合 32 ― な 観 測 量 の極 大 な組 21 ,22,28 ― な 物 理 量 の極 大 な組 23 可 換 群 190
ア ン 101 一 般 化 され た ノ イマ ン境 界条 件 つ き ラ プ ラ シア
可 換 子 集 合 28,132
ン 126 一 般 化 さ れ た ラ プ ラ シ ア ン 15
可 換 半 群 414
一 般 軌 道 角 運 動 量 211
,59
可 換 子 代 数 28 核 196 角 運 動 量 代 数 253,522
一 般 線 形群 191
核 子 294 拡 大 され た 超 対 称 性 代 数 475
一 般 線 形 リー 代 数 246
拡 大 定 理 319 ヴ ァ イ ル 型 表 現 138 ヴ ァ イ ル 関係 式 138
確 率 過 程 426 核 力 294
ヴ ァ イ ル の 判 定 法 327
加 群 190
ヴ ァ イル の 補 題 519 ウ ィグ ナー-バ ー グマ ンの 定 理 198
可 測 206 ― な 写 像 206
ウ ィ ッテ ン指 数 493
括 弧 積 245
ウ ィ ッテ ン 変 形 503
荷 電 粒 子 の 多 体 系 の ハ ミル トニ ア ン 67
ウ ィ ッテ ン モ デ ル 503
加 藤 の 不 等 式 74
ウ ィー ナ ー過 程 437
加 藤-レ リ ッヒ の定 理 48,58,65
運 動 量 作 用 素 8,12,135,208,383 ―の組 26
可 閉 93
エ ネ ル ギ ー ・運 動量 作 用 素 22
完 全 398
オ ル ン シ ュ タ イン-ウ ー レ ンベ ッ ク過 程 448
完 全 可 約 215 完 全 で あ る 86
可 約 215 間 隙 条 件 497
カ 開 集 合 255 階 数1の
完 全 連 続 343 緩 増 加 超 関 数 355 簡 約 18,33,35
作 用 素 406
解 析 関 数 298 外積代数
行
467
基 底 状 態 41,284,418,447 ―
の 存 在 335
解 析 的 264
基 底 状 態 過 程 447
解 析 的 指 数 493
軌 道角運動量
解 析 的 摂 動 論 262,283 解 析 ベ ク トル 85
―(の
成 分)作
用素 227
―
の 大 き さ 244
―
の2乗
― ―
の 方 向量 子 化 244 の 量 子 数 244
―
の 公 理 189
238 形 式 92 ―
の 意 味 で のA-限
基 本 近 傍 系 256
―
の 意 味 で 無 限 小 105
既 約 132,215,247
―
の 定 義 域 92
逆 元 189
―
の 場 合 の比 較 定 理 339
既 約 成 分 216 ―(表 現)の 球 関 数 242
界 105
形 式 芯 92 直和 216
形 式 的 摂 動 級 数 289 形 式 和 103,110
強 安 定 41 強 可 換 17,20,134
結 合 ス ペ ク トル 22 結 合 定 数 285
― な物 理 量 の極 大性 31 強 結 合 領 域 310
結 合 的 に ガ ウ ス型 456 結 合 法 則 189,393
強 時 間 作 用 素 180
ケ ー リー 変 換 119
強 非 可 換 因 子 180
原 子 の 安 定 性 40
強 閉 包 29
原 点 に 特 異性 を もつ ポ テ ン シ ャ ル 360
共 鳴 極 299 共 鳴 散 乱 299
交 換 子 121
共 鳴 状 態 299
交 換 子 積 247
共 鳴 の 幅 299
交 換 子 定 理 79
共立的 2
恒 等 表 現 247
―
な観 測 量 2
― な物 理 量 2
勾 配作 用 素 68,113 古 典 的 極 限 466
強 レゾ ル ヴ ェ ン ト収 束 516
古 典 的 経 路 421
強 連 続 204
古 典 的 フ ェ ル ミ場 474
― なH-値 関 数221 強 連 続1パ ラ メー ター 半 群 414
古 典 的 ボ ー ス 場 474
強連 続 ユ ニ タ リ表 現 204 局 所 的 特 異 性 113 局 所有界な測度 7 極大
20,22
極 大 ア ー ベ ル代 数 32
固 有値 の 安 定 性 の 問 題 261 固 有 ロ ー レ ンツ 群 202 孤 立 固 有 値 11 コ ル モ ゴ ロ フの 連 続 性 定 理 458 混 合 型 ポ テ ン シ ャ ル 78 コ ンパ ク ト 343
極 大 観 測 量 12,28
サ
極 大 物 理 量 12,36
行
虚 数 時 間 410
最 小-最 大 原 理 333,361
空 間 反 転 209
最 低 エ ネ ル ギ ー 41 ― の経 路 積 分 表 示 445
空 間 反 転 群 209
作 用 素 解 析 の ユ ニ タ リ共 変 性 138
空 間 反 転 対 称 225 空 間 反転 不 変 225
作 用 素 行 列 305,481
ク ッ クの 方 法 400
作 用 素 行 列 表 示 481 3次 元 の(量 子)軌 道 角 運 動 量 235
グ ラ ス マ ン数 467
3次 元 パ ウ リ作 用 素 487
グ ラ ス マ ン代 数 467
残 存 確 率 182
グ リムージ ャ ッ フ ェーネ ル ソ ンの 交 換 子 定 理 79
散乱
クー ロ ン型 ポ テ ン シ ャ ル 64,361
―
の 遷 移 確 率 397
ク ー ロ ンポ テ ン シ ャ ル 291
―
の 遷 移 確 率 振 幅 374,397
群 189
散 乱 角 370
散 乱 行 列 374
自 由度NのCCRの
散 乱作 用 素 374,395
自由 な相対 論 的 シ ュ レーデ ィ ン ガー 作用 素 387
―
の 積 分 表 示 と漸 近 展 開 403
散 乱理 論 370,390
対 称 表 現 129
自 由 な デ ィ ラ ック作 用 素 110 自由 ハ ミル トニ ア ン 15 重 陽 子 297
時 間-エ ネ ル ギ ー の 不 確 定 性 関 係 175
縮 退 17
時 間作 用 素 174
縮 退 した 零 エ ネ ル ギ ー 基 底 状 態 510 シ ュ タ ル ク効 果 84
時 間 反転 211 時 間 反転-時 間 並 進 群 212
シ ュ タル ク ・ハ ミル トニ ア ン 84
時 間並 進 211 時 間崩 壊 300,316
寿 命 299 シュ レーデ ィ ンガ ー 型作 用 素 52,56,77,225,
磁 気 的 並 進 160
226,329,354
時 空 の 対 称 性 465
シ ュ レー デ ィ ン ガ ー型 半 群 440
時 空 変 数 468
シ ュ レー デ ィ ン ガ ー半 群 418
自己 共 役 132
シ ュ レー デ ィ ン ガー 表 現 136
自己 共 役 作 用 素 の 組 110
シ ュ レー デ ィ ン ガー 描 像 370
自己 共 役 半 群 414
準 位 幅 299 巡 回ベ ク トル 8,14
―
に関 す る生 成 定 理 415
指 数 493 ―
純 虚 数 時 間 425
に対 す る トレー ス 公 式 497
純 虚数 時 間経 路 積 分 426
指 数 型 作 用 素 410,472
純 粋 に絶 対 連 続 380
磁 束 510
純 粋 に点 ス ペ ク トル 的 385
―
の 局 所 的 量 子 化 165
磁 束 の 局 所 的 量 子 化 165 下 に 有 界 91
純 粋 に特 異 連 続 385 純 粋 に離 散 的 336 準双線形形式
実 一般 線 形 群 191 実 時 間経 路 積 分 423
―sの ―
の 拡 大 93
実 表 現 213
―
の 相 等 90
実 リー代 数 246
―
の 和 90
質 量mの
超 双 曲 面 22
質 量0の3次
元 デ ィ ラ ッ ク作 用 素 487
質 量 超 双 曲面 195
ス カ ラ ー 倍 90
純 点 ス ペ ク トル 384 純 点 ス ペ ク トル的 3 ― に極 大 17
磁 場 67,154,486 ― を もつ シ ュ レー デ ィン ガ ー 作 用 素 104
純 点 ス ペ ク トル部 分 384
自明 な不 変 部 分 空 間 215
準 同 型 写 像 196
射 影 430
準 同 型 性 196 状態
射 影 演 算 子 18
準 同 型 196
射 影 反 ユ ニ タ リ表 現 199
―
の一意的決定性 1
射 影 表 現 199
― ―
の 一 意 的 指 定 10 の準 備 1
射 影 ユ ニ タ リ表 現 199 弱 安 定 性 41
状 態 曲線 222
弱 解析 的 266
状 態符 号 作 用素 480
弱 時 間 作 用 素 174 弱連 続 204
芯 48,91
シ ュ ー ア の 補 題 216
真 空 447,521
重 心 ベ ク トル 62
真 空 期 待 値 448
初期 値413
周積 分 266 自 由度NのCCRの
真 性 スペ ク トル 278,324 自 己 共 役 表 現 129
伸 張 解 析 的 方 法 321
伸 張 対 称 55
遷 移 確 率 182, 197,
伸 張 変換 52, 53
全 解 析 ベ ク トル 85
振 動 子 過 程 448
全 角 運 動 量 252
373
漸 近 的 に完 全 399 水 素様 原子 の ハ ミ ル トニ ア ン 64, 115,
362
漸 近 的 配 位 372
随 伴 表 現 248 ス カ ラ ー ポ テ ン シ ャ ル 113
線 形 リ ー群 192
ス ケ ー ル 不 変 55
全 ス ピ ン角 運 動 量 252
ス ケ ー ル 変 換 52, 53 ス ピン 1
全 フ ォ ッ ク空 間 250
線 形 リ ー群Gの
リー 環 247
全 変 換 群 193
―lの 表 現 255 ― 角 運 動 量 252
全 保 測 変 換 群 207
― ―
相 互 作 用 部 分 39
作 用 素 26 量子 数 255
ス ペ ク トル解 析 261,
相 対 位 置 ベ ク トル 62 324
ス ペ ク トル空 間 10
相 対 限 界 43 相 対 コ ン パ ク ト 352
ス ペ ク トル測 度 32
相 対 的 に有 界 43
ス ペ ク トル的 超 対 称 性 487
相 対 論 的 自 由 粒 子 の エ ネ ルギ ー 305
ス ペ ク トルの 下 限 415
相 対 論 的超 対 称 的 量 子 場 の 理 論 522 相 対 論 的 な 自 由 粒 子 110
ス ペ ク トルの 単 純 性 6
相 対 論 的 な 超 対 称 的 場 の 量 子 論 491 静 止 系 520, 522 正 射 影 作 用 素 18
双 対 空 間 318
正準 交 換 関 係 36, 38
相 流 222
正 準 反 交 換 関係 476
測 定 に よ る 状 態 の 一 意 的 指 定 10
生 成 子 414
速 度 作 用 素 155
生 成 元 6, 23
束 縛 の 高 ま り 312
相 補 的 272
正 則 264
タ
正 則 的 摂 動 論 262 正 値 性 改 良作 用素 461
第 一 種 の 安 定 性 41
正 値 性 保 存 作 用 素 461
対 角化 9
積 演 算 192
対 角 的 作 用 素 行 列 481
積 分 核 355 ― に 同伴 す る 作 用 素 145
対 称 210
積 分 作 用 素 355
対 称 性 194
積 分 表 示 269
対 称 性 変 換 197
積 率 452
第二 種 の 安 定 性 41
行
対 称 群 209
絶 対 連 続 ス ペ ク トル 380
第二 量 子 化 作 用 素 250
絶 対 連 続 部 分 380
楕 円 的 正 則 性 292
絶 対 連 続 部 分空 間 378 切 断 平 面 311
多 項 式 型 超 ポ テ ン シ ャ ル 507 多項 式 型 ポ テ ン シ ャ ル 71
摂 動 39
多体 系 の ハ ミル トニ ア ン 65
摂 動 級 数 287 摂 動 作 用 素 39
多 電 子 系 の ハ ミル トニ ア ン 66 単 位 元 189, 414
摂 動 パ ラ メ ー ター 285
単 純 17 単 純 ス ペ ク トル 6
摂 動 法 の 破 綻 499 零 エ ネ ル ギ ー状 態 502, ― の 空 間 505
505,
507,
513 置換 群 209
置 換 対 称 225
同時 対 角 化 24
置 換 不 変 225
同相 257
忠 実 213
同相 写 像 257
抽 象 的 シ ュ レー デ イ ン ガ ー 方 程 式 222
同値 137,
抽 象 的 な熱 方 程 式 413 抽 象 的 熱 方 程 式 の初 期 値 問 題 413
同程 度 に連 続
超 空 間 465
同伴 す る 内積 空 間 93 特 異 ス ペ ク トル 380
長 時 間挙 動 370 超 対 称 荷 477
214 341
同伴 す る超 対 称 荷 479
特 異 摂 動 500, 508 ― の生 起 508
超 対 称 性 465 ― の 自発 的破 れ 491
特 異 部 分 380
超 対 称 性 代 数 473
特 異 部 分 空 間 378
超 対 称 的 状 態 491
特 異 連 続 ス ペ ク トル 384
超 対 称 的 場 の 量 子 論 475
特 異 連 続 部 分 384
超 対 称 的 ハ ミ ル トニ ア ン 477
特 異 連 続 部 分 空 間 384
超 対 称 的 変 換 470 超 対 称 的 量 子 力 学 465, 476,
特 殊 相 対 性 理 論 22 477
― の 公 理 論 的 定 式 化 476 超 場 469 重 複 度 理 論 35
特 殊 ユ ニ タ リ群 191 特 性 関 数 450 特 性 レ ヴ ェ ル 331 トポ ロ ジー 255
超 並 進 群 470
トレー ス 513,
超 ポ テ ン シ ャ ル 503
トレー ス 型 作 用 素 514
515
直 積 位 相 空 間 257
トレー ス ク ラ ス作 用 素 514
直 和 に 同 値 137
トレー ス ノ ル ム 514
直 和 表 現 131
トロ ッ ター-加 藤 の 積 公 式 419
直 和 分 解 131
トロ ッ ター の 積 公 式 419
直 交 群 191
ナ
行
デ イ フ トの 定 理 488
内 部 対 称 性 465
デ ィラ ッ ク-ヴ ァ イ ル作 用 素 486 デ ィラ ッ ク型 作 用 素 110
内 部 変 数 468
デ ィラ ッ ク作 用 素 42, 387
2核 子 系 の 束縛 状 態 294
デ ィラ ッ クハ ミル トニ ア ン 179
2次 形 式 90 2次 元 回転 群 218,
デ ィラ ック 粒 子 387
229
デ ィ リ ク レ境 界 条件 101
2次 元 パ ウ リ作 用素 486 2重 可 換 子 集 合 28
デ ル タ超 関 数 162
2重 積 分 の計 算 320
電 磁 場 中 を運 動 す る 荷 電 粒 子 の ハ ミル トニ ア ン 67
2電 子 系 の基 底 状 態 290
テ イ ラ ー 展 開 269
2体 系 60
電 場 67 熱 伝 導 方 程 式 413 導 関数 264
熱 半 群 414
同型 写像 196
ネル ソ ンの 解 析 ベ ク トル 定 理 88
同時 固有 値 17 ― の 縮退 17 ―
の単 純 性 17
同 時 固有 ベ ク トル 16, 19 ―
の完 全系 17
ハ
行
ハ イゼ ンベ ル ク描像 370 ハ イゼ ンベ ル ク ・リー 代 数 249 ハ ー デ ィー の 不 等式 114, 波 動 作 用 素 373, 390
366
― の 完 全性 402 ハ ミル トニ ア ン 40, 226, 409 パ リテ ィ 209 ― が 負(奇)の 状 態 209
フ ェ ル ミオ ン的 零 エ ネ ル ギ ー 状 態 493
半 群 414
フ ォ ン ・ノ イマ ン環 35 フ ォ ン ・ノ イ マ ン代 数 30, 35
反 対 称 210 反 対 称 シ ンボ ル 237 ハ ー ン-バ ナ ッハ の 定 理 319
フ ェル ミオ ン フ ォ ック 空 間 251 フ ェ ル ミ場 475 フ ォ ック真 空 522
フ ォ ン ・ノ イマ ンの-意
性 定 理 142
フ ォ ン ・ノ イ マ ンの定 理 99, 121 不 確 定 性 原 理 の補 題 113
半 フ レ ドホ ル ム 494 半 有 界 173
複 素 一 般 線 形 群 191 複 素 代 数 28
非 可 換 因 子 174
複 素 特 殊 線 形 群 201
比 較 定 理 336
複 素 表 現 213
非 自明 131
複 素 変 数 の作 用 素 値 関 数 263
非 摂 動 的 効 果 310
複 素 変 数 のバ ナ ッハ 空 間 値 関 数 263
非 摂 動 的 構 造 310 非 相 対 論 的 自由 粒 子 の 運 動 エ ネ ルギ ー 305
複 素 リー代 数 246 不 足 指 数 119
左 作 用 189
物 質 の安 定 性 40
非 調 和 振 動 子 367
物 理 的 運動 量 155 物 理 量 の観 測 1
非 同 値 137 非 同 値 表 現 154 非 負 73, 91
不定 内 積 194
非 負 超 関 数 73
不 変測 度 206
微 分 264
不 変 部 分 空 間 141, 214
微 分 可 能 264
ブ ラ ウ ン運 動 434, 437 フ ー リエ 変換 15, 26, 58, 451
部 分群 190
表 現 213, 247, 434 ― の 第m成 分 131 表 現 空 間 203,
213,
フ リー ドリク ス 拡 大 99, 101, 238 フ リー ドリク ス モ デ ル 307
247
フ レ ドホ ル ム 作 用 素 494
表 現 定 理 96 標 本 関 数 426 標 本 経 路 426 ヒ ルベ ル ト空 間表 現 213,
分 布 関 数 431 247
閉 93
ヒ ルベ ル ト-シ ュ ミ ッ ト型 積 分 作 用 素 356
閉拡 大 93
ビ ルマ ン-シ ュ ウ ィ ン ガー 原 理 364
閉 曲線 の 内部 を貫 く磁 束 160
ビ ルマ ン-シ ュ ウ ィ ン ガー の定 理 363
平均 寿 命 303
ビ ルマ ン-シ ュ ウ イ ン ガー の方 法 362
平 行 移 動 56,
141, 207
閉 集 合 256 フ ァ イ ンマ ン-カ ッ ツの 公 式 440 フ ァ イ ンマ ン測 度 423
閉準 双 線 形形 式 93 並 進 56, 57, 141, 207
フ ァ リス-ラ ヴ ァ イ ンの 定 理 82
並 進 群 190
不 安 定 261 フ ェ ル ミオ ン 的座 標 466
平 坦 161 ― なベ ク トルポ テ ンシ ャ ル 162 , 163, 閉 包 96
フ ェ ル ミオ ン 的状 態 480
平 方 的 な群 200
フ ェ ル ミオ ン 的零 エ ネ ルギ ー状 態 493
冪 級 数 展 開 287
フ ェ ル ミオ ン 的 超場 の 空 間 474
冪 等 作 用 素 272
フ ェ ル ミオ ン的部 分 484 フ ェ ル ミオ ン 的 変 数 466,
冪 等 作 用 素 値 関 数 273 ベ ク トルポ テ ン シ ャ ル 113,
フ ェ ル ミオ ン 464
468
155,
162
166
ヘ リ ウ ム原 子 290
モ ー メ ン ト 452
ヘ ル ダ ー連 続 性 439 , 460 ヘ ル ダ ー連 続 版 460
ヤ
変 換 群 193
有 界 線 形 汎 関 数 317
偏 微 分 作 用 素 471
―
ポ ア ン カ レ群 193,
有 界 表 現 213 有 限 群 190
194
行
の 存 在 319
方 向 量 子 化 244 ボ ー ス 場 475
有 限 次 元 表 現 214
保 測 206
有 限 自由 度 のCAR
保 測 変 換 206
優 作 用 素 81
保 測 変 換 群 207
有 理 型 関 数 163
ボ ソ ン 464 ボ ソ ン的 状 態 480
湯 川 型 ポ テ ン シ ャ ル 359
ボ ソ ン的 零 エ ネ ルギ ー 状 態 493 ボ ソ ン的 超 場 の 空 間 474
湯 川 ポ テ ン シ ャ ル 294 ユ ニ タ リ群 191
ボ ソ ン的 部 分 484
ユ ニ タ リ装備 的 235
ボ ソ ン的 零 エ ネル ギ ー状 態 493
ユ ニ タ リ同 値 214
ボ ソ ン フ ォ ッ ク空 間 88, 251
ユ ニ タ リ表 現 203
保 存 量 226 ポ テ ン シ ャ ル 52
弱 い 意 味 で 漸 近 的 に完 全 397
ボ レル 筒 集 合 431
弱 い 漸 近 的 完 全 性 397
有 限 次 元 分 布 430
湯 川 方 程 式 294
ホ ワ イ トノ イ ズ 439 マ 埋 蔵 固 有 値 293, ― ―
476
ラ 行
306
の 消 失 308 の 摂 動 問 題 297
行
ラ イ プニ ッ ツ則 69, 81 ラ プ ラス 作 用 素 101 リー 括 弧 積 245 リー 環 245
右作 用 190
離 散 位 相 256
密 着 位 相 256
離 散 空 間 256
密 着 空 間 256 ミ ン コ フス キ ー計 量 193
離 散 ス ペ ク トル 278, ―の 存 在 335
ミ ン コ フス キ ー 内 積 193 ミ ン コ フス キ ー ベ ク トル 空 間 194
324
リー 代 数 245 リー 代 数 の 同 型 写 像 248 流 線 222
無 限 遠 で の 符 号 508
両 可 測 206
無 限 回 微 分 可 能 264
量 子 系 の 時 間 発 展 222
無 限 群 190
量子 調 和 振 動 子 の 摂 動 289 量 子 的 力 学 的 流 線 222
無 限 次 元 表 現 214 無 限 自由 度 ― のCAR ― ―
量 子 場 の 軌 道 角 運 動 量 253 476
のCCR 475 の 正 準 反 交 換 関 係 475
量 子 力 学 的 状 態 の 流 れ 222 臨 界 点 310
無 限 小 43
ル ジ ャ ン ドル の 陪 多 項 式 241
無 摂 動 系 279
ル ジ ャ ン ドルの 微 分 方 程 式 241
無 摂 動 作 用 素 39 無 摂 動 部 分 39
零 エ ネ ル ギ ー 状 態 502, ― の 空 間 505
505,
507, 513
レ イ リー-シ ュ レー デ ィ ンガ ー 級 数 287
ロ ル ニ ッ ク ノ ルム 365
レ イ リー-シ ュ レー デ ィ ンガ ー 係 数 287 レ イ リー-リ ッツ の原 理 337
ロ ル ニ ッ クポ テ ンシ ャ ル 365
レ ゾル ヴ ェ ン トの積 分 核 表 示 354
ロ ー レ ン ツ計 量 193
ロ ー レ ン ツ群 193,
201
レ ビ ・チ ビ タ シ ンポ ル 237
ロー レ ン ツ写 像 194
レ リ ッ ヒ-デ ィ クス ミエ ー ルの 定 理 183
ロ ー レ ン ツ対 称 な関 数 195
連 続 257,
264
連 続 写 像 257 連 続 版 434
ロー レ ン ツ対 称 な図 形 195 ロ ー レ ン ツ内 積 193
著 者 略歴 新 井 朝 雄 1954年 埼玉 県に生 まれる 1979年 東京大 学大学 院理学研 究科 修士課 程修了 現 在 北海道 大学大 学院理学 研究 院 数学 部門教授 理学博 士
朝倉物理学大系12 量子現象 の数理 2006年2月20日 2008年5月20日
定価 は カバー に表 示
初 版第1刷 第2刷
著 者 新
井
朝
雄
発行者 朝
倉
邦
造
発行所
株式 会社 朝
倉
書
店
東 京 都 新 宿 区 新 小 川 町6-29 郵 便 電 FAX
2006 〈無 断複写 ・転載 を禁ず 〉
ISBN 978-4-254-13682-1
03(3260)0180
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〈検 印省 略〉 C
番 号 162-8707 話 03(3260)0141
C 3342
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