編集
荒船次郎 大学評価 ・ 学位授与機構教授
江沢 洋 学習院大学名誉教授
中村孔一 明治大学教授
米沢富美子 慶應義塾大学名誉教授
は
し
が
き
21世 紀 を迎 え た.や や 大 まか に 言 え ば,こ れ は 第2次
大 戦 後50年
の 節 目で
もあ る.こ の 機 会 に,戦 後 の 窮 乏 か ら脱 して 大 き く発 展 し た 日本 の物 理 学 を― 世 界 の 流 れ の 中 に お い て ― 振 り返 っ て み るの も意 義 の あ る こ とだ ろ う. 第2次 大 戦 後 の 日本 の 物 理 学 は,人 材 は別 と し て本 当 に ゼ ロか ら再 出発 し た の で あ る.本 書70章
の 「量 子 エ レ ク トロ ニ ク スの 変 遷 」 の な か に霜 田光 一 先
生 が書 い て お ら れ る.「 そ の こ ろ の実 験 物 理 研 究 室 の 実 情 は,戦 前 の 装 置 や 器 具 を集 め,軍 放 出 品 を利 用 して 実 験 装 置 を作 った り して,ど
う にか こ うに か 実
験 的研 究 を再 開 し た有 様 で あ っ た.大 学 の1実 験研 究 室 が使 え る年 間予 算 は 真 空 ポ ン プ1台
か2台
の 費 用 に す ぎ なか っ た.」
戦 後 す ぐに,そ れ ま で の 日本 数 学 物 理 学 会 か ら独 立 して生 まれ た 日本 物 理 学 会 は,1996年
に50周
年 を迎 え た.物 理 学 会 の 雑 誌 『日本 物 理 学 会 誌 』 は 過 去
を振 り返 っ て こ う書 い て い る1).「戦 争 の 終 結 を境 に 堰 を切 っ た よ う に 入 っ て くる欧 米 の科 学 研 究 の 成 果 は まば ゆ い ほ ど 目覚 しい もの で した.」 た とえ ば,1949年
の 『会 誌 』 に は トラ ン ジ ス ター の 解 説 が あ る が2),括 弧 つ
きで 結 晶 三 極 管 と注 記 し 「真 空管 と同様 の 作 用 を営 む新 し い文 明 の 花 形 で あ っ て,現 在 で はや が て電 子 工 学 お よ び 電 気 通信 の分 野 に お い て 大 い な る貢 献 を な す もの と して 非 常 に注 目 され て い る」 と して い る.し か し トラ ン ジ ス ター の 増 幅 作 用 の機 構 は,ま 2通Physical
だ 明ら か で な く 「Bardeenお
Reviewに
よびBrattainに
よ る速 報 が
あ るの み だ が,そ の短 い文 面 か ら察 し られ る彼 らの 考
え を述べ て み よ う」 とつ づ け て い る.こ の 頃,外 国 の 雑 誌 も容 易 に は 手 に 入 ら な か っ た は ず で あ る.1954年 実 用 上,人
の 記 事3)に な る と 「多 くの 解 説 が 巷 に 見 られ,
の 口に 上 る機 会 も多 くな っ て きて い る」 とい い,し か し 「日本 の研
究 者 が 常 に 一 歩 ず つ ア メ リカ の 水 準 に遅 れ て きた こ と も謙 虚 に 反 省 しな け れ ば な ら な い 」 と した.い や,そ 後 に1973年
の 中 か ら トラ ン ジ ス タ ・ラ ジ オ が 生 まれ(1955),
度 の ノー ベ ル 賞 に輝 く江 崎 ダ イ オー ドが 発 明 さ れ た の だ(1957)4).
国 産 の ア イ デ ア で は,さ
ら に 後 藤 英 一 の パ ラ メ トロ ン(1954)が
追 究 さ れ た.
素 粒 子 論 の 分 野 で は 戦 後 す ぐに 独 自 の 活 動 が は じ ま っ た.坂 健 の2中
間 子 論(こ
れ は 戦 争 中(1943)の
仕 事 だ が)が1947年
ら の 写 真 乾 板 に よ る 宇 宙 線 の 実 験 で 実 証 さ れ,意 湯 川 秀 樹 の 中 間 子 論(1935)が が,そ
の 前 年,ア
い た.加
田 昌 一 ・井 上 にC.
F. Powell
気 が あ が っ た.1949年
ノ ー ベ ル 賞 に 輝 き,国
に は
を挙 げ て 喜 び に わ い た
メ リカ で は π 中 間 子 が加 速 器 に よ っ て 人工 的 に つ く られ て
速 器 実 験 に お け る 劣 勢 は 覆 うべ く も な か っ た が,そ
か ら続 く宇 宙 線 実 験 が 気 を 吐 い た.理
論 の 方 面 で は,い
れ に代 わ っ て 戦 前
わ ゆ る 発 散 の 困 難 をめ
ぐっ て坂 田 昌一 の凝 集 力 中間 子 の仮 設 に 示 唆 さ れ た 朝 永 振 一 郎 の く りこみ 理 論 が 成 功 し(1948),こ
れ も1965年
に ノ ー ベ ル 賞 を 受 け る.1953年
には理 論物
理 学 国 際 会 議 を 主 催 し 外 国 の 参 加 者 か ら 大 き な 刺 激 を 受 け る と と も に 日本 の 実 力 を示 す 機 会 と も な っ た.会
場 は,湯
て ら れ た 湯 川 記 念 館(1952)で 核 力 や 天 体 核 物 理,宇 は,や
川 の ノー ベ ル 賞 を 記 念 し て 京 都 大 学 に 建
あ っ た.こ
こ は 全 国 共 同 利 用 の 研 究 所 と し て,
宙 線 な ど 大 き な 研 究 プ ロ ジ ェ ク ト を 育 て る.1953年
に
は り全 国 共 同 利 用 施 設 と し て 東 大 付 置 の 宇 宙 線 観 測 所 が 乗 鞍 山 頂 に つ く
ら れ た. そ の 後 の 日 本 に お け る 物 理 学 の 発 展 は 目覚 し い.そ
れ こ そ が 本 書 の 内 容 だ.
物 理 学 の 国 際 会 議 も 各 分 野 で 次 々 に 開 か れ る よ う に な っ た.外 議 へ の 参 加 も 日 常 茶 飯 事 に な っ て ゆ く.一 も お こ り,海
時 は若 手 研 究 者 の就 職 口不 足 の 問 題
外 で の 研 究 条 件 の よ さ も 手 伝 っ て 頭 脳 流 出 が 騒 が れ た が,大
理 工 系 学 部 が 拡 大 さ れ て 緩 和 さ れ た(現 の 処 遇 も 手 厚 くな っ た が,時
在 で は,大
限 つ き で,そ
つ い た 術 語 を あ げ て み よ う か.小
則,近
谷-波
公 式(1957),高 (1959)-Trotterの
田 模 型(1955),松
橋(1957)-Wardの 公 式,荒
木(1961)-Haagの
部(1965)-Goldstoneボ
(1972),冨
松-佐 藤 の 時 空(1972).い
つ か な い 寄 与 も 多 い.人
川 ポ テ ン シ ャル の よ うに個 人 名 の
ソ ン,戸 や,数
永(1950)-Luttinger
野-西 島(1953)-Gell-Mannの
規
原 グ リ ー ン 関 数(1955),久
恒 等 式,江
(1961),南
学 院の奨学金や学位 取得後
谷 プ ロ ッ ト(1949),朝
岡 型 真 空 分 光 計(1952),中
藤 効 果(1954),坂
学の
の 後 が 大 き な 問 題 に な っ て い る).
日本 の 物 理 学 の 寄 与 を 見 る 指 標 と し て,湯
模 型,瀬
国 で 開 か れ る会
保 の
崎 ダ イ オ ー ド(1958),加 散 乱 理 論,林
田 格 子(1967),小
フ ェ ー ズ 林-益
川行 列
え は じめ た ら き り が な い.名
名 で は な い が カ ゴ メ 格 子(伏
見,1950),カ
藤
前の
ミオカン
デ(1983)な
ど も 日本 か らの 発 信 で あ る.
さ きに ア メ リカ に お け る π 中 間 子 の 人工 創 成 に触 れ た が,日 本 で そ れ が な され た の は1962年,原
子 核 研 究 所 に1.3GeVの
た 年 で あ る.こ の 研 究 所 が1955年7月
電 子 シ ン ク ロ トロ ンが 完 成 し
に 設 立 さ れ る ま で に は 日本 の 戦 後 史 が
凝 縮 され て い る5).敗 戦(1945年8月)の
年 の11月,進
駐 軍 は 理 化 学 研 究 所,
京 大,阪 大 の サ イ ク ロ トロ ン を破 壊 し た.こ れ に対 して ア メ リカの 科 学 者 の 非 難 もあ り,1951年
にLawrenceが
来 日 して サ イ ク ロ トロ ン の 再 建 を 示 唆 し,
連 合 軍総 司 令 部 の 経 済 科 学 局 を も説 得 した.1949年1月
に 設 立 され て い た 学
術 会 議 の 原 子核 研 究 特 別 委 員 会 で の 議 論 も経 て科 学 研 究 所,京
大,阪 大 の3ヶ
所 で それ ぞ れ再 建 す る こ とが き ま っ た.そ の とき東 京 近 辺 の 原 子 核 研 究 者 か ら 自分 た ち も加 速 器 が 欲 しい とい う議 が お こ り,そ れ が エ ス カ レー トして全 国 共 同 利 用 の 大 型 装 置 の建 設 が 要 望 され,学 術 会 議 は1953年4月
に 原 子核 研 究 所
を共 同 利 用 施 設 と して 設 置 す る こ と を 内 閣総 理 大 臣 に 申 し入 れ た6).政 府 の 対 応 は 速 く,菊 池正 士 ・藤 岡 由 夫 ・朝 永 も加 わ っ た文 部 省 の研 究所 協 議 会 で 東 大 付 置 の 共 同 利 用 研 究 所 とす る こ とが き ま り,同 年 の10月 で た.こ
に は ゴー ・サ イ ン が
こ で 共 同利 用 と東 大 の 自主 性 との相 克 が 問 題 と され た が,12月
決 着 した.と
こ ろ が,翌 年3月
に 政 府 が 原 子 力予 算 を提 出 し,4月
には
にはア メ リ
カ の水 爆 実 験 が あ っ て 近 くの海 に い た漁 船 が い わ ゆ る 「死 の灰 」 をか ぶ る とい う事 件(ビ
キ ニ事 件)が
お こ る.そ れ で敏 感 に な っ た原 子 核 研 究所 建 設 予 定 地
(田 無)の 住 民 が 反 対 運 動 をお こ し,朝 永 ら は 原 子 核 と原 子 力 の研 究 の 違 い を 説 い て 説得 に 当 た らね ば な ら な か っ た.菊 して反 対 す る と町 民 に約 束 し た.こ
う して 原 子核 研 究 所 は生 ま れ た.高 エ ネ ル
ギー 物 理 学 研 究 所 が 実 現 す るの は1971年 共 同利 用 研 究 所 の 第1号
池 は 兵 器 研 究 の動 きが で た ら職 を賭
で あ る.こ れ は 大 学 付 置 で な い 全 国
と し て 日本 の 科 学 の 進 め 方 に も大 き な影 響 を あ た え
た. 1956年4月
の 学 術 会 議総 会 は1大
「物 性 物 理 学 研 究 所(仮 称)の
学 で は も て な い 大 型 実 験 装 置 を備 え た
設 置 」 の 要 望 を決 議,こ
れ は1957年4月
に,
や は り東 大 付 置 の 共 同利 用 ・物 性 研 究所 と して発 足 した.朝 永 らが 唱 導 した共 同 利 用 研 究 所 は 日本 に定 着 し た とみ て よか ろ う.物 理 以外 に も広 が り,現 在, 共 同 利 用 研 究 所 は 文 科 省 直轄 の も の16,大 学 付 置 の 共 同利 用 施 設28が
学 付 置 の も の19を 数 え,加 え て 大
あ る.し か し,最 近 で は 大 学 付 置 の もの に は 大 学
の独 立 法 人化 が ど う影 響 す るか 懸 念 され て い る. 科 学 の 進 展 に よ っ て物 理 学 と化 学,生 物 学,天 文 学,地 球 科 学 な ど周 辺 諸 科 学 と の相 互 浸 透 が 進 ん だ.工 業 ・技 術 な ど産 業 の 諸 分 野 との 間 で も ま た しか り.本 書 に も,こ れ に 関連 す る章 が い くつ もあ るが,手
の届 いていない ところ
が 多 くあ る こ と も認 め な け れ ば な らな い.相 互 浸 透 は広 範 囲 に 及 ん で い るの だ. 『物 理 学 会 誌 』 は,1996年,学
会 の50周
年 を機 に 「日本 の 物 理 学 の 過 去50
年 の 活 動 を 回顧 す る」 特 集 を行 な っ た1).1月 号 か ら12月 号 に 及 ん だ そ の 特 集 記事 に 『 数 理 科 学 』 別 冊 か ら借 りた論 稿 な ど を加 え て,筆 者 に加 筆 ・修 正 を十 分 に して い た だ き,そ れ に ほ ぼ 同数 の書 き下 ろ し原 稿 を依 頼 して,本 書 は 構 成 した.2巻
の大 冊 とな っ た結 果,原 稿 集 め と編 集 に 意 外 に 長 時 間 を要 して刊 行
が 遅 れ,執 筆 者 に は ご迷 惑 をお か け す る こ とに な っ た.こ の 場 を か りて,お 詫 び し,か つ 御 協 力 に感 謝 す る.そ の 間,会 誌 か らの 転 載 の承 諾 を い た だ い た 後 に沢 田正 三,小
田
稔 の両 先 生 が他 界 され,校 正 が す ん だ 後 に 若 谷 誠 宏,松 本
元 の 両 先 生 が 亡 くな られ た.こ こ に 謹 ん で御 冥 福 をお 祈 りす る. な お,各 論 稿 の 末 尾 に初 出箇 所 と と もに 執 筆 者 の 肩 書 と所 属 を付 記 したが, これ は刊 行 当 時 の もの で あ る.初 出 の 記 載 が な い もの は書 き下 ろ し で あ る. 2004年5月 編者 一 同 参 考文 献 1) 会 誌編集委員会:50周 年記念特集 を企画す るに あたって,日 本物理 学会誌51(1996) 10-11. 2) 山 下 次 郎 ・渋 谷 元 一:ト
ラ ン ジ ス タ ー(結
晶 三 極 管),日
本 物 理 学 会 誌4(1949)152-
158. 3) 菊 池
誠,垂
井 康 夫:ト
ラ ン シ ス タ ー に つ い て,日
(ト ラ ン シ ス タ ー と トラ ン ジ ス タ ー と2通 4) Leo
Esaki:New
phenomena
in narrow
本 物 理 学 会 誌9(1954)113-122
.
りの 読 み が あ る こ と を 注 意 して い る.) germanium
p-n
junctions
,Phys.Rev.109
(1958)603-604. 5) 朝 永 振 一 郎:原
子 核 研 究 所 の 設 立 と 菊 池 先 生,『 核 研 二 十 年 史 』(東 大 原 子 核 研 究 所,
1975),pp.1-11. 6) 原 子 核 研 究 所 と 反 射 望 遠 鏡 の 設 置 に つ い て(申 会 議,1974),pp.44-47.
入),『
学 術 会 議 二 十 五 年 史 』(日 本 学 術
目
次
Ⅰ 量子力学 1 1. 量子力学の物理的基礎 1.1 遠距離相関 1.2 隠れた変数 1.3 粒子性と波動性 1.4 波束の運動と量子飛躍 1.5 干渉性の破壊 2. 量子力学の数学的基礎 2.1 vonNeumannによる数学的基礎付け 2.2 数学的散乱理論の発展 2.3 70年以降の数学的散乱理論 2.4 Schrodinger作 用素の数理の展開 3. マクスウェルの悪魔と量子計算機の歴史 3.1 はじめに 3.2 ジラードエンジンの量子バージョン 3.3 量子計算機の歴史 3.4 量子計算機とは 3.5 万能量子回路 3.6 量子計算による因数分解 3.7 グローバーによる検索アルゴリズム 3.8 幾何学的量子計算 3.9 結 び
〔 江沢
洋〕…2 2 6 9 18 19 〔 黒田 成俊〕…28 28 30 33 35 〔 細谷 暁夫〕…42 42 44 45 46 48 50 51 52 53
Ⅱ 素粒子物理 57 4. くりこみ理論の誕生 4.1 朝永以前 4.2 発散の現れ方を探るいろいろの試み 4.3 超多時間理論 4.4 朝永ゼ ミ 4.5 C中間子論が示唆したこと
〔 伊藤 大介〕…58 58 60 62 64 66
4.6 くりこみ理論へ 67 5. 坂田学派と素粒子模型の進展 〔 小川 修三〕 69 5.1 2中間子論 69 5.2 混合場理論と研究室制度の導入 70 5.3 くりこみ理論をめぐって 72 5.4 複合模型の提唱 72 5.5 SU(3)対 称性 73 5.6 新名古屋模型と重粒子オクテット 74 5.7 1粒子交換とクォーク組替振幅 75 5.8 標準模型の成立 76 6. 中間子論とその遺産―クォークの時代から振り返る― 〔 町田 茂〕 78 6.1 中間子論―素粒子論のはじまり― 78 6.2 中間子"場"の理論 79 6.3 核力の中間子論 79 6.4 クォークの存在と拡張された排他律 82 6.5 クォーク・レベルのダイナミックス―量子色力学(QCD)― 84 6.6 中間子論からQCDへ 84 6.7 21世紀への課題 86 7. 素粒子の究極理論を求めて 〔 武田 暁〕 88 7.1 素粒子の統一理論を求めて 90 7.2 量子場の理論の発展 91 7.3 標準理論の成立 95 7.4 標準理論を越えて 98 7.5 終 りに 101 8. 高エネルギー物理の将来 〔 宮沢 弘成〕 103 8.1 はじめに 103 8.2 高エネルギー物理の創成期 103 8.3 成 熟 期 104 8.4 世紀末の高エネルギー物理 107 8.5 素粒子物理の将来 108 8.6 理論形式の将来 110 8.7 高エネルギー実験の将来 112 8.8 あとがき 112 9. ひもの理論 〔 川合 光〕 113 9.1 弦理論のはじまり 113
9.2 臨界弦と非臨界弦 9.3 統一理論としての弦理論 9.4 くりこみと標準模型 9.5 大統一理論とPlanckス ケールの物理 9.6 究極の理論に向けて 10. 量子色力学の計算機を用いた研究 10.1 歴史的概観 10.2 格子量子色力学 10.3 専用並列計算機 10.4 物理結果 10.5 今後の展望 11. KAMIOKANDEの こと 11.1 KAMIOKANDEの 生い立ち 11.2 大Magellan星 雲内で超新星SN 1987Aが 爆発 11.3 太陽ニュートリノの観測 11.4 地球大気中で創られたニュートリノ 11.5 陽子崩壊その他について 11.6 これからのこと 11.7 最後にあたって 12. ニュートリノに質量があることの発見 12.1 は じめに 12.2 大気ニュートリノ 12.3 ニュートリノ振動の発見 12.4 おわ りに 13. 宇宙線研究50年の歩み 13.1 戦後からの出発 13.2 1950年 代のこと 13.3 1960年 代から70年代 13.4 1980年 代から 13.5 1990年 代とむすび 14. 場の量子論へのアプローチ 14.1 場の量子論の概観 14.2 対 称 性 14.3 S行 列 14.4 ゲージ場の量子論
〔 岩崎
〔 小柴
〔 梶田
〔 西村
〔 中西
114 116 118 119 121 洋一〕 125 125 125 126 127 128 昌俊〕…130 130 133 134 137 138 138 139 隆章〕 140 140 140 141 143 純〕 145 146 147 152 156 157 襄〕 160 160 161 163 165
14.5 重力場の量子論 14.6 ハイゼンベルク描像での解法 15. 素粒子実験と加速器―戦後の日本を中心に― 〔 西川 15.1 は じめ に 15.2 核研電子シンクロトロン 15.3 核研から高エ研への道 15.4 高エ研陽子シンクロトロン 15.5 トリスタン計画 15.6 国際協力 15.7 KEKBとJLC 16. 加速器の将来 〔 西川 哲治・黒川 眞一 ・中村 健蔵 ・永宮 16.1 KEKBフ ァクトリー 16.2 K2K長 基線ニュートリノ振動実験 16.3 大強度陽子加速器プロジェクト(J-PARC) 17. ニュートリノ振動の予言と実証 〔 牧 17.1 無と有の狭間から:パウリとフェルミ 17.2 初期のニュートリノ像 17.3 ニュー トリノ物理学の確立 17.4 ニュートリノ振動 17.5 史料的判断とむすび 18. 素粒子標準理論の形成 〔 長島 18.1 は じめ に 18.2 強い相互作用(1935-1965) 18.3 クォークモデル(1956-1970) 18.4 弱い相互作用(1934-1967) 18.5 ゲージ理論の進展(1954-1971) 18.6 GWS理 論 18.7 QCD 18.8 ま と め Ⅲ 原 子 核 257 19. 原子核の実験研究50年間の展開 19.1 戦後から1960年代 19.2 1960∼1970年 代 19.3 1970∼1980年 代
166 167 哲治〕 169 169 170 171 172 175 181 185 正治〕 190 190 208 218 二郎〕 225 225 226 226 228 230 順清〕 232 232 233 234 238 242 246 249 252
〔 杉本 健三〕…258 261 262 265
19.4 1980年 代以降 268 20. 原子核分光学の展開―私の来た道― 〔 森永 晴彦〕 275 20.1 ひとりで考えていた頃 275 20.2 核分光学のフロンティアへ 277 20.3 みんなと一緒に 280 21. 原子核構造理論の発展と現在―殻模型を中心として― 〔 有馬 朗人〕 283 21.1 黎 明 期 283 21.2 殻模型の精密化 286 21.3 クラスター模型 296 21.4 原子核の集団運動 298 22. 原子核構造理論の将来 〔 大塚 孝治〕 311 22.1 少数多体系の構造 311 22.2 核力と殻模型 312 22.3 不安定核の構造と新しい魔法数 313 22.4 平均場計算 315 22.5 クラスター構造論 315 23. 原子核多体問題の研究をふりかえって―集団運動の微視的理論を中心として― 〔 丸森 寿夫〕 317 23.1 はじめに 317 23.2 核構造模型 317 23.3 殻模型・ 集団模型の基礎 320 23.4 多体問題としての核構造 323 23.5 自己束縛有限量子多体系としての原子核 326 23.6 大振幅集団運動と非線形動力学 327 23.7 展 望 331 24. 核構造におけるクォークの役割 〔 土岐 博〕 334 24.1 クォークはシャイ 334 24.2 クォークの作る強い斥力 335 24.3 クォークがパイオンを作る 335 24.4 構造を持たない核子からなる原子核 336 24.5 EMC効 果 337 24.6 南部-ジョナラシニオ模型 337 24.7 クォーク核物理実験 338 24.8 まとめに代えて 338 25. 核反応理論の発展の一断面 〔 河合 光路〕 340
25.1 始 め に 25.2 連続状態への遷移 25.3 弾性散乱,離散状態への直接過程 25.4 直接過程と複合核過程 25.5 終わ りに 26. 不安定核ビームによる物理 26.1 はじめに 26.2 新しく開かれた核物理 26.3 おわ りに 27. 高エネルギー核物理 27.1 ハドロン物理学の成立過程 27.2 ハドロン物理学のフロンティア
340 340 342 349 350 〔 谷畑 勇夫〕 354 354 354 357 〔 初田 哲男〕 358 358 359
Ⅳ 超 高 温 363 28. 核融合をめざしたプラズマの研究 28.1 はじめに 28.2 1958∼1961年 28.3 1961∼1971年 頃 28.4 1968∼1973年(Artimovichの 時代) 28.5 トカマクの発展(1974年 以降) 28.6 磁気閉じ込め代替方式の研究 28.7 慣性閉じ込め 29. ITERに触れて 29.1 はじめに 29.2 ITERの物理課題 29.3 ITERを通して関わった研究者の印象
〔 宮本 健郎〕 364 364 364 365 366 368 374 379 〔 若谷 誠宏〕 383 383 384 386
Ⅴ 宇宙物理 389 30. 宇宙論の進展と展望 30.1 はじめに 30.2 宇宙のインフレーション 30.3 宇宙論的観測の急激な進展 30.4 量子宇宙論 30.5 真空のエネルギー,ダークエネルギー 30.6 終わ りに
〔 佐藤 勝彦〕 390 390 391 393 395 398 399
目
次
31. 天 体 物 理 理 論
〔 佐藤
文 隆 〕 401
31.1 は じ め に
401
31.2 基 研 研 究 会 「天 体 の核 現 象 」
402
31.3 林 の 研 究 経 歴
403
31.4 1960年 代− 天 体 核 研 究 室 と基 礎 物 理 学 研 究 所 −
406
31.5 1970年 代 − 一 般 相 対 論 と素 粒 子 宇 宙 −
409
31.6 現 状 と 未 来
411
32. X線
天文 学 の誕生 とその発展
32.1 日本 のX線
天文 学
32.2 科 学 衛 星
「あ す か 」
〔 小田
稔 〕 415 419
420
32.3 草 創 期 の い くつ か の エ ピ ソ ー ド 33. 重
力
波
422 〔 三尾
典 克 〕 427
33.1 重 力 波 の研 究
427
33.2 ウ ェ ー バ ー ・バ ー
427
33.3 バ ー か ら 干 渉 計 へ
428
33.4 日本 の 研 究 の 進 展
428
33.5 重 力 波 天 文 台
429
事 項 索 引
(1)
人 名 索 引
(13)
『現 代 物 理 学 の 歴 史Ⅱ― 物性 ・生 物 ・数理物 理―』 目 Ⅵ 統計 力 学
54. 新 強 誘 電 体 の 発 見 を め ぐ って
34. 相 転 移 の 数 理 と展 望(鈴 木 増 雄)
(沢 田正 三)
35. 臨 界 点 物 理 学 とパ ラ ダ イ ム の 転 換
55. 固体 表 面 の 物 理 と化 学(村
田好 正)
56. フ ォ トン フ ァ ク ト リー 誕 生 の こ ろ
(川 崎 恭 治) 36. 線 形 応 答 理 論 の 成 立(中 嶋 貞雄) 37. 統 計 力 学 に お け るGreen関
(高良 和 武)
数
57. 生 物 物 理 へ の イ ン パ ク ト
(阿 部 龍 蔵)
(飯塚 哲 太 郎)
38. ボー ス-ア イ ン シ ュ タ イ ン凝 縮
58. 電 子 線 ホ ロ グ ラ フ ィー の 発 展
(久 我 隆 弘 ・鳥 井 寿 夫)
(外村
39. レ ー ザ ー 冷 却 さ れ た 原 子 気 体 の ボ ー ス-ア イ ン シ ュ タ イ ン 凝 縮
彰)
59. 半 導 体 の 物 理(植 村 泰 忠) 60. 光 物 性 研 究50年
(上 田正 仁) Ⅶ
次
(豊沢
数理物 理
史の あ る断面
豊)
61. 半 導 体 素 子 研 究 の 周 辺(菊 地
40. 格 子 ソ リ トン の 発 見(戸 田 盛 和)
62. 高 温 超 電 導 の 展 望(田 中 昭 二)
41. 無 限 自由 度 系 へ の 代 数 的 ア プ ロ ー
63. 強 磁 場(三 浦
チ(荒 木 不 二 洋)
誠)
登)
64. メ ゾ ス コ ピ ッ ク系(川 畑 有 郷)
42. あ る 流 体 物 理 屋 の 軌 跡(今 井
功)
65. メ ゾ ス コ ピ ッ ク― こ れ から の 応 用 ―(高 柳 英 明)
43. 非 線 形 の 物 理(和 達 三 樹) 44. 非 相 対 論 的 量 子 電 気 力 学
66. 超 格 子 か ら 量 子 細 線 ・量 子 箱 ま で
(廣 島 文 生)
(榊
裕 之)
45. マ ク ロ系 の 数 理 物 理 学(田 崎 晴 明)
Ⅹ 低 温 物 理 ・量 子 エ レ ク トロ ニ ク ス
Ⅷ
67. 低 温 物 理 の50年(益
原 子 ・分 子
田 義 賀)
46. 原 子 分 子 物 理(高 柳 和 夫)
68. 超 伝 導 研 究 の 歩 み(大 塚 泰 一 郎)
47. 原 子 分 子 物 理 の 将 来(市 川 行 和)
69. 超 伝 導 の 研 究(恒 藤 敏 彦)
48. 分 子 構 造 論(藤 永
70. 量 子 エ レ ク トロ ニ ク ス の 変 遷
茂)
49. 高 分 子 物 理 学(土 井 正 男)
(霜 田光 一)
Ⅸ 固体物 理
ⅩⅠ 生 物 物 理
50. 結 晶 成 長 学 の発 展(砂 川 一 郎)
71. 生 命 の 分 子 物 理 的 背 景(和 田 昭 允)
51. Anderson局
在 の研 究(長 岡 洋 介)
52. 磁 性 研 究50年 53. Fermi面
の あ ゆ み(芳 田
効 果(近 藤
淳)
奎)
72. 脳 の 物 理 学(松 本
元 ・辻 野 広 司)
73. タ ンパ ク質 の 自 己 集 積 化 技 術 (永 山 國 昭)
I 量
子
力
学
1. 量 子 力 学 の物 理 的 基礎 江
沢
洋
量 子力 学 の物理 的 な基礎 を固め るため に行 われ て きた実験 を概 観す る. 1.1 遠 距 離 相 関 1.1.1
A.
Einstein-Podolsky-Rosenの
EinsteinとB.
Podolsky,
パ ラ ド ック ス N.
子 力 学 は 完 全 で な い と 論 じ た4).彼 簡 単 の た め と も にmと れ た(し
す る.2つ
た が っ て,も
Rosenは,1934年,1つ 等 は,2つ
の 思 考 実 験 を提 出 して 量
の 粒 子 の 系 を 考 え た.粒
子 の 質 量 は,
の 粒 子 が 短 い 時 間 だ け 相 互 作 用 し て 互 い に 遠 く離
は や 相 互 作 用 は な い)と
し,そ
の と きの 系 の 波 動 関 数 を
(1) と し よ う.こ
れ が 各 粒 子 の 関 数 の 積 の 形 で な い の は,2つ
用 が あ っ た こ と を 意 味 し て い る.も
ち ろ ん,積
の 粒 子 の 間 に か つ て相 互 作
の 和 の 形 に な ら書 け る.た
とえ ば
(2) こ の 形 の 状 態 は 一 般 に 絡 み 合 っ た 状 態(entangled 粒 子1に
state)と よ ば れ る5).こ の 状 態 で
対 して 位 置 の 観 測 を して 測 定 値r1'を 得 た とす れ ば,系
の波動 関数 は
(3) に 収 縮 し,粒
子2の
位 置 はr1'+r0に
確 定 す る.と
こ ろ が 同 じ波 動 関 数(1)は
(4) と も書 け る か ら,も
し粒 子1に
対 して 運 動 量 の 測 定 を し て い た ら,そ
の 測 定 値 がp1'
だ っ た とす る と,波 束 の 収 縮 は
(5) を も た ら し,粒 子2の と こ ろ が,粒
子2は
運 動 量 が-p1'に 粒 子1か
確 定 す る.
ら遠 く離 れ て い る の で,粒
の 状 態 に 影 響 す る とは 考 え られ な い とEinsteinら の 座 標 と運 動 量 と は 確 定 値r1'-r0と-p1'を Einsteinら
は,考
と が で き れ ば,そ 子2の
子1に
対 す る 測 定 が 粒 子2
は主 張 し た.そ
うだ とす れ ば 粒 子2
も っ て い た こ と に な る.
え る 系 に何 らの 擾 乱 を与 え る こ と な く物 理 量Aの のAは
物 理 的 実 在 性 を もつ と し た.そ
観 測 を行 う こ
うす る と,上 の 結 果 か ら粒
座 標 と運 動 量 は と も に 物理 的 な実 在 性 を もつ こ と に な る.
Einsteinら
は,物
理 的 実 在 性 を もつ 量 が,ど
れ も あ る理 論 の な か に 対 応 物 を もつ と
き,そ
の と き に 限 っ て,そ
と こ ろ が,量
の 理 論 は 完 全 で あ る と い う こ と に し た.
子 力 学 と い う理 論 の 中 で は位 置 を測 定 した 後 に は 運 動 量 が 完 全 に 不 確
定 に な り地 位 を失 う こ と に な っ て い る.運 う.だ か ら,上
動 量 を測 定 した 後 に は位 置 座 標 が 地 位 を失
の こ と を考 え る と量 子 力 学 は 不 完 全 で あ る.こ
ゆ か な い とEinsteinた N.Bohrは,こ
う結 論 し な い わ け に は
ち は 主 張 し た の で あ る.
れ に 対 して,系
の どの 面 が 物 理 的 実 在 と して 立 ち現 わ れ る か は実 験
条 件 に よ るの で あ り,位 置 を測 定 す るか,運
動 量 を測定 す るか に よって系 の以後 の振
る 舞 い が 実 際 に ち が っ て く る とい う こ と を 指 摘 した.そ 他 の 決 定 を排 除 し な が ら,し か し両 者 は2つ 性(complementarity)を
強 調 して,量
1.1.2 Aspectの
実験
相 互 作 用 の 後,互
い に 遠 く離 れ た2つ
して,位
置 と運 動 量 は 相 互 に
と も系 の 記 述 に は 必 要 で あ る とい う相 補
子 力 学 を擁 護 し た6,7).
の 粒 子 の 一 方 に 対 して 位 置 の 測 定 を す る と,
他 方 の 粒 子 も位 置 の 固 有 状 態 に な る と い うEinstein-Podolsky-Rosenの
指 摘 は,遠
く離 れ た粒 子 た ち に対 して行 わ れ る観 測 の 結 果 が 強 く相 関 す る場 合 が あ る こ とを 言 っ て い る.こ
の 遠 距 離 相 関 は,現
A.Aspectら
は,1つ
方 向 に 出 た2つ
実 の実 験 に よ っ て 確 か め ら れ た.
の 原 子 の カ ス ケー ド遷 移 に よ っ て全 角 運 動 量0の
の 光 子 が,互
い に 遠 く離 れ て か ら,そ
強 い 相 関 を見 出 し た8,9).そ れ ら の 光 子 の 偏 光 状 態 は,右 │r>,左
回 りの 円 偏 光 の 状 態 を│1>と
状 態 で反対
れ ぞ れ の 偏 光 の 方 向 を観 測 し, 回 り円偏 光 の光 子 の 状 態 を
すれば
(6) で 表 さ れ る.x-軸
方 向 の 直 線 偏 光 状 態 を│x>,y-方
向 の そ れ を│y>と
書 けば
z-方 向 に 進 む 光 で は: で あ り,-z-方
向 に 進 む 光 で は 右 辺 の ± が 逆 に な るか ら
(7) と い っ て も よ い.こ こ こ で,x,y-軸
れ も 絡 み 合 っ た 状 態 で あ る. をz-軸
の ま わ り に 角 φ だ け 回 転 し てxφ,yφ-軸
とす れ ば
(8) だ か ら,(7)に
代 入 して
(9) を得 る.全 角 運 動 量 が0な な お,x-方
向,xφ-方
の だ か ら当 然 の こ と で あ る が,式
の 形 は φに よ ら な い.
向 に 偏 光 し た 状 態 へ の 射 影 演 算 子P0=│x><x│,Pφ=│xφ>
<xφ│は,(8)か
ら 分 か る よ う に 交 換 し な い.一
般 にPφ,Pφ'は
φ'≠ φ な ら 交 換 し な
い.
さて,状 測 っ てx-方
態│Ψ>に
向 を 得 た とす れ ば,波
x-方 向 と定 ま る.こ い ま,ベ
お い て は,2つ
aに 通 し,第2の
束 は│Ψ'>=│x>│x>に
の よ う に,偏
ク トルa,
偏 光 子 を偏 光 子aと
の 光 子 が 遠 く離 れ た と き,第1の
光 子 の偏 光 も
光 の 方 向 に 遠 隔 相 関 が あ る.
bが な す 角 を(a,b)と よび,bに
収 縮 し第2の
光 子 の偏 光 を
し よ う.aの
つ い て も同 様 とす る.状
光 を偏 光 子bに
通 して,通
そ れ ぞ れ の 場 合 の 確 率 をp++(a,b)な
方 向 に 偏 光 し た 光 を通 す
態│Ψ>の
る こ と を+,通
ど と書 け ば,量
第1の
光 を偏 光 子
ら な い こ と を-で
子 力 学 で は(9)か
表 し,
ら
(10) とな る.2つ
の光 子 の偏光 方 向の相 関関数 を
(11) に よ っ て 定 義 し よ う.量 子 力 学 に よ れ ば(10)か
ら
(12) Aspectら8,10)は,図1に
示 すCaの
カ ス ケ ー ド遷 移 に よ る光 を 用 い て 偏 極 の 遠 隔相
関 を 測 り,後 に 述 べ る あ る理 由 か ら次 のSで
図1
Caの
Aspectの
結 果 を整 理 した:
カ ス ケ ー ド遷 移
実 験 に 用 い られ た.
図2 偏光子の方向
図3 Aspectの 実 験 の結 果 エ ラー ・バ ー は 標 準 偏 差 の ±2倍 .灰 色 の 部 分 は,局 所 的 な 隠 れ た 変 数 の 理 論 で は あ りえ な い 領 域 (次項 を参 照).
(13) 量 子 力 学 の(12)に
よれ ば,(13)はA,bな
どが 図2の
よ うで あ る と き
(14) と な る.Aspectら
の 実 験 の 結 果8)は,こ
れ に よ く合 っ て い る(図3).こ
う し て,絡
み 合 っ た状 態 に お け る遠 距 離 相 関 は 現 実 の も の で あ る こ とが 確 か め ら れ た. こ の 実 験 は,検 mを
隔 て た2カ
出 器 を10km隔
て て お い て く りか え さ れ た11).ま た,距
所 に 検 出 器 を お き,検
で ラ ン ダ ム に 変 化 させ て 行 わ れ,遠
離L=360
出 す る偏 光 の 方 向 を<1.2μs=(1/10)(L/c)
距 離 相 関(ベ
ル の 不 等 式)が
確 か め られ た12).相
関 は超 光 速 で 伝 わ っ て い る. な お,遠
距 離 の 相 関 が 超 光 速 で あ り得 る こ とか ら,超 光 速 の 通 信 が 可 能 に な る と期
待 す る向 き も あ る が,そ 不 可 能 で あ るか ら,先
れ は 不 可 能 で あ る.こ
ち ら で検 出 す る 偏 光 が,そ
もそ も予 知
方 の 検 出 す る偏 光 との あ い だ に 相 関 が あ る とい っ て も,信 号 を
つ く る こ とが で き な い の で あ る. 1.1.3 Bellの 不 等 式 J. S. Bellは 上 に 述 べ た遠 距 離 相 関 が 何 か の 変 数 λ に よ っ て 媒 介 さ れ て い る の で は な い か と考 え,も
し そ う で あ る な ら ば 相 関 を表 わ す 関 数 が あ る 不 等 式 をみ た す は ず で
あ る こ と を導 い た13).こ れ は 実 験 に か け る こ と の で き る 結 果 で あ る.し か し,変 数 λ は 実 験 に は か か ら な い の で 隠 れ た 変 数(hidden Bellの 考 え は 次 の とお りで あ る.第1の い と きA=-1と
し,第2の
の 原 子 か ら 出 た の で,そ
variable)と
光 子 が 偏 光 子aを
光 子 に つ い て 同 様 にBを
よ ば れ る. 通 る と きA=1,通
定 義 す る.2つ
の と き 共 通 に 変 数 λの あ る値 を 担 い,ど
ン ダ ム に き ま る と す る の だ が,A=±1,B=±1の
らな
の光 子 は 同一
の値 を担 うか は ラ
ど の 組 み 合 わ せ が お こ る か は,
そ の λの 値 に よ っ て き ま る と して み る の で あ る.Aは,も
ち ろ ん 第1の
光 子 が 出会
う偏 光 子 の 方 向aに らA(λ,a)と
も よ る だ ろ うが,遠
隔 の 偏 光 子bの
書 け る.同 様 にBはB(λ,b)と
方 向 に は よ ら な い とす る か
書 け る.
2つ の 光 子 が λの ど の値 を 担 う か の 確 率 密 度 を ρ(λ)と す れ ば,こ
れは
(15) を み た す.そ
して,相
関 関 数(11)は
(16) に よ っ て 与 え られ る こ と に な る.こ
の λ は,2つ
の 光 子 が 同 一 の 原 子 か ら で た こ とで
担 う もの だ か ら局 所 的 に き ま る も の で 局 所 的 な 隠 れ た 変 数(local と よ ば れ る.こ
うす る と,(15)か
ら相 関 関 数 の 組 み 合 わ せ(13)に
hidden
variable)
対 して 不 等 式
(17) が 証 明 さ れ る14).局 所 的 な 隠 れ た 変 数 の 考 え に も とづ く,こ の 種 の 不 等 式 は 一 般 に ベ ル の 不 等 式(Bell's
Aspectの あ る が,実
inequality)と
よ ば れ る.
実 験 の 結 果 を示 す 図3で
は,こ
の 不 等 式(17)を
験 の 点 は そ の 中 に 入 りこ ん で い る.SQMが
の と き,す な わ ち φ=π/8で
破 る領 域 を 灰 色 に し て
最 大 に な る の は
で あ るが,実
験 で は 光 の で る方 向 に広
が りが あ る た め 偏 極 の 方 向 に も 開 き が あ る こ と,検 出 器 の 効 率 が100%で 補 正 を す る とS'QM(π/8)=2.70±0.05が
期 待 さ れ る.実
な い こ との
験値 は
(18) で10),期 待 に よ く合 っ て い る.±0.015は 定 か らす る(17)の
標 準 偏 差 で,SQMは
最 大 値 を標 準 偏 差 の40倍
局所 的 な隠れ た変数 の仮
も越 え て い る!15)
1.2 隠 れ た 変 数 1.2.1
von
NeumannのNO
GO定
隠 れ た 変 数 とい えば,量 こ と を示 し たvon
子 力 学 は 壊 さ ず に そ れ を導 入 す る の は 不 可 能 で あ る と い う
Neumannの
証 明16)が 思 い 出 さ れ る.そ
仮 定 が 含 ま れ て い る こ と をJ.S.Bellが von
Neumannは,任
理
の証 明 には 物理 的 で ない
指 摘 した13).
意 の 状 態 ψ に つ い て,任
意 の エ ル ミー ト演 算 子A,Bの
実
係数 α,β に よ る和 の 期 待 値 は期 待 値 の 同 様 な 和 で あ る こ と,す な わ ち
(19) を量 子 力 学 の 特 性 と して 抜 き出 した.彼 の 証 明 は,し か し,期 待 値 の 線 型性 の仮 定 を "隠 れ た 変 数 を動 員 して 指 定 し た状 態"に ま で お よ ぼ して い る も の で ,こ れ は 必 要 の な い こ と で あ る.実
際,た
と え ば 後 の(20)のAの
測 定 に は,Stern-Gerlach型
実 験 な ら β ご と に磁 石 の 異 な る 配 置 を 必 要 と し期 待 値 の 線 型 性 は 自明 で は な い.
の
Bellは,波
動 関 数ψ と隠 れ た 変 数 λ を 用 い て,分
散 の な い 状 態uψ,λで,そ
れによ
る 期 待 値 を λに つ い て 平 均 す る と波 動 関 数 ψ に よ る 量 子 力 学 の 期 待 値 に 一 致 す る と い う もの を つ くっ て み せ た.い βy,βz)とPauliの
ま,物
理 量 と し て は,3次
元 の 実 ベ ク トル β=(βx,
行 列 σ か らつ く っ た
(20) を と る.こ
の演 算子 の 固有値 は
(21) で あ る.座 標 系 を適 当 に 回 転 し て た 変 数 λ で 指 定 さ れ,Aの,固
と して お く.状 態uψ,λは,こ
のψ と 隠 れ
有値
(22) に 属 す る固 有 ベ ク トル とす る.こ
とす る.こ
の 固 有 値 は(21)の
こ に
とし
ど ち ら か で あ っ て β に 関 し て 線 型 で な い か ら,状
uψ,λ に よ る平 均 値
=aψ,λはvon か し,量
Neumannの
態
仮 定 をみ た し て い な い.し
子 力 学 的 平 均 値 を,隠 れ た 変 数 に 関 す る平 均
とす れ ば,こ
とな る.本
れ は α+βzに 等 し く
来 の 量 子 力 学 に お け る平 均 値 を正 し く与 え る の で あ る.こ
う して,量
子力
学 は 壊 さ な い で 隠 れ た 変 数 の 理 論 を つ く る こ とは 不 可 能 で は な い こ とが わ か っ た. 1.2.2
1952年
Bohmの
にD.
理論
Bohmは
し た17).彼 は,1体
量 子 力 学 の 範 囲 で は そ れ と一 致 す る隠 れ た変 数 の 理 論 を提 出
問題 で い え ば,シ
ュ レー デ ィ ン ガ ー 方 程 式
(23) をψ(r,t)=R(r,t)eiS(r,t)/hと
し て2つ
の 実 数 値 関 数R,Sに
対 す る方 程 式
(24) に 書 き 直 し た.さ
ら にP(r,t)=R2(r,t)と
お くと
(25) と な っ て,(25)の
第1式
確 率 密 度:
は
流 速:
P(r,t),
に 対 す る連 続 の 方 程 式,第2式 の 方 程 式 に な っ て い る.こ
はV+VQを
ポ テ ン シ ャ ル と す る ハ ミル トン-ヤ コ ビ
こに
(26) は 量 子 力 学 的 ポ テ ン シ ャ ル と よば れ,h→0で
は0に
Sが 与 え ら れ た と き 流 速 の 式dr/dt=gradS/mを が,そ
積 分 す れ ば粒 子 の軌道 が きま る
れ は ハ ミ ル トン-ヤ コ ビの 方 程 式 か らい っ て ポ テ ン シ ャ ルV+VQの
す る粒 子 の も の で あ る.そ で あ る か ら,規 て,量
な る.
の粒 子 群 の密 度 は 連 続 の 方 程 式 か らPで
場 を運動
あ っ て,P=│ψ│2
格 化 す れ ば 量 子 力 学 の い う 粒 子 の 存 在 確 率 密 度 に 一 致 す る.こ
うし
子 力 学 の い う存 在 確 率 密 度 の 背 後 に 粒 子 の 軌 道 群 を 想 定 す る こ とが で き る.こ
の 軌 道 に 名 前 をつ け た と し て,こ こ れ は 高 林 武 彦 がBohmよ あ る18).古 くはL. み る点 でE. 高 林 は,運
れ が 隠 れ た 変 数 と い う こ とに な る.
り早 く流 体 モ デ ル と よ ん で 提 出 し て い た も の と 同 じ で
de Broglie19)やE.
Nelsonの
Madelung20)に
遡 る.ま
た 軌 道 群 を確 率 空 間 と
ブ ラ ウ ン運 動 モ デ ル21)と 似 て い る.
動 量や 角運 動量 につ い ては
が 成 り立 ち,量
子 力 学 的 平 均 と上 記 の軌 道 群 に わ た る 平 均 が 一 致 す る が,し
か し
(27) と な っ て 運 動 エ ネ ル ギー に つ い て は 一 致 が 破 れ る こ と を注 意 した.同 運 動 量 の2乗
様 の 不 一 致 は角
で も現 わ れ る.全 エ ネ ル ギ ー に つ い て は
(28) が 成 り立 つ か ら,ハ
ミル トン-ヤ コ ビ の 方 程 式(25)に
に く り こ む 了 解 で 受 け 入 れ る こ とが で き る.こ は 物 理 量 の 期 待 値 の 計 算 に 不 満 が あ る が,さ な い.古
典 力 学 で あ れ ば,ポ
テ ン シ ャ ルVを
ポテ ン シ ャル
隠れ た 変数 の理論
ら に そ の 非 局 所 性 も指 摘 しな け れ ば な ら 局 所 的 に 変 更 す る と,粒 子 に は そ こ を
通 る 間 に 違 っ た 力 が は た ら くだ け で あ るが,Bohmの ャ ルVQが
な ら っ てVQを
の よ う にBohmの
理 論 で は量子 力学 的 なポ テンシ
全 空 間 で 変 わ るか ら力 も全 空 間 で ちが っ て く る.多 粒 子 系 を考 え る と,非
局 所 性 は よ り顕 著 に 現 わ れ る22).こ の 非 局 所 性 が 隠 れ た 変 数 の 理 論 に は避 け られ な い も の か ど うか は興 味 深 い 問 題 だ とBellは
い っ て い る22).
1.3 粒 子 性 と 波 動 性 1.3.1 干 渉 縞 の 形成 過 程 外 村 彰 ら は1987年 リ ズ ム(図4)に 個,ま
にE=50keVの
電 子 線(波
長=5.4×10-12m)を
電 子線 バ イ プ
通 し て 干 渉 縞 の 形 成 過 程 を み た23).電 子 が 干 渉 面(蛍
た1個
光 面)に1
と到 着 す る く らい 電 子 線 を 弱 く し,電 子 の 到 着 す る位 置 を光 電 子 増 倍 管
で 検 出 して 干 渉 面 上 に1つ1つ
記 録 す る よ う に 仕 組 ん だ の で あ る.
そ の 様 子 を 図5に
示 す.干
ン ダ ム に 見 え る.し
か し,や が て到 着 した 電 子 が 多 くな る と縞 ら し い も の が 見 え は じ
め,し
渉 面 に 到 着 す る電 子 が 少 な い 間 は 到 着 位 置 は ま っ た くラ
ば ら くす る と規 則 的 な縞 模 様 が 浮 き出 して く る.干
た の で,個
々 の 電 子 の 到 着 を示 す 点 の 集 ま りで あ る.電
置 に は 来 て,来
渉縞 は こ の よ うに し て で き
子 は,は
量 子 力 学 の 標 準 的 な コペ ンハ ー ゲ ン解 釈 に よ れ ば,電
子 が 蛍 光 面 の 原 子 に衝 突 し て
励 起 し た と き電 子 の 波 動 関 数 が 収 縮 し て 電 子 の位 置 が き ま っ た.あ 光 を発 して,そ
の 位 置 が コ ン ピ ュ ー タ ー に 記 録 さ れ た.
光 面 上 の ど の 位 置 に 到 着 す る か の確 率 は 電 子 の 波 動 関 数 で き ま っ て い
る.そ の 波 動 は 電 子 線 バ イプ リ ズム の 芯 線 の 両 側 を通 っ て きた.入 をz-軸
る い は,原 子 が 蛍
の 光 子 が 光 電 子 増 倍 管 に電 子 な だ れ をお こ した と き に 到 着 した 電 子 の
位 置 が き ま っ た の か も し れ な い.そ 電 子 が,蛍
じ め か ら来 るべ き位
る べ き で な い位 置 に は 決 して 来 て い な か っ た の だ.
に し て い え ば,芯
射 電子 の進行 方向
線 の 右 側 を通 っ て 運 動 量 が や や 左 を 向 きh(-kx,0,kz)と
図4 電 子線 バ イ プ リズ ム 電 子 は 上 か ら入射 す る.
(a)
(b) 図5 電子線 による干渉縞 の生成過程
な っ た 波 と左 側 を通 っ て 運 動 量 が や や 右 を 向 きh(kx,0,kz)と
な っ た 波 が 出会 っ て
(29) と な り,電 子 の 存 在 確 率 密 度 に│ψ(x,z)│2=4cos2kxxと あ る.も ず,干
し電 子 が 終 始,粒
い う濃 淡 の 縞 が で き た の で
子 と し て 振 る舞 っ て い た ら芯 線 の 両 側 を 通 る こ とは で き
渉 もで き な か っ た だ ろ う.
Bohmの
隠 れ た 変 数 の 理 論 で は,電
子 は常 に粒 子 で あ る.粒
子 で あ る電 子 が,量
力 学 的 な ポ テ ン シ ャ ル を 含 む 運 動 方 程 式 に し た が っ て 運 動 す る.そ 在 確 率 密 度 は 波 動 関 数(29)か 粒 子 を導 く役 を し て い る.(de 波 動 関 数(29)に
ら き ま るP=│ψ│2に Broglieが
の 結 果,電
な る は ず で あ っ て,波
子
子 の存
動 関数 が
詳 し い解 析 を し て い る 由24,25).)
対 して は
(30)
で あ って,こ
れ は 確 か に 方 程 式(25)を
定 数 関 数VQ=(hkx)2/2mに
み た して い る が,量
子 力学的 ポテ ンシ ャルは
な る.
1.3.2 大 きな 粒 子 の 干 渉 中 性 子 に つ い て は,干
渉 を 中 心 に さ ま ざ ま な 量 子 現 象 が チ ェ ッ ク さ れ た26).
自由 空 間 に お け る 重 心 の 運 動 は 一 般 に 自 由 粒 子 の 波 動 方 程 式 に従 うか ら,ど ん な に 大 き な物 体 も波 動 性 を示 す は ず で あ る.そ れ は ど こ まで 大 き な もの ま で確 か め ら れ る か?古 1988年
くはHe原 に は,X線
隔d=0.2μm)に
子 がLiF結
晶 表 面 に よ る 反 射 で 示 す 干 渉 が 実 証 さ れ た27).
リ トグ ラ フ ィ 技 術 で つ くっ た 金 の 回 折 格 子(図6,ス よ るNa原
速 さ:v=103m/s, Δv/v=12%,
のNa原
子 の 進 行 方 向 を 幅10μmの2つ
波 長:λ=1.7×10-11m
の ス リ ッ トで10μradに
図6 金 の回折格子
図7
リ ッ ト間
子 の 回折 が 報 告 さ れ た.炉 か ら 出 て 断 熱 膨 張 で冷 え た
金 の 回 折 格 子 に よ るNa原
子 の 回折
(a) 回折 格 子 な しの 場 合,(b) あ りの 場 合.
絞 っ て,1cm先
(31)
の
金 の 回 折 格 子 に 当 て る.そ
こ か ら1.5mの
位 置 にPt-W合
金(太
さ25μm)の
熱 し
た 針 金 をお い て検 出 器 と し た.こ れ に 当 た っ た 原 子 は イ オ ン 化 して 電 流 を生 ず るの で あ る.実
験 の 結 果 を 図7(b)に
示 す.1次
の 回 折 ピー クが
角: に で て い る.2次 で,実
際,第nス
(32)
の ピー クが 見 え な い の は 回 折 格 子 の ス リ ッ ト間 隔 が 幅 に 等 し い た め リッ トを通 っ て角 θ 回折 さ れ た 光 の 振 幅 は 図8か
と な りkθd=2π
で は0に
ら
な る.
図8 回折縞の計算 1994年
に は,レ
ー ザ ー ・ ビ ー ム を 格 子 と し てI2分
分 子 の 分 子 量 は254で v1=350m/sだ
あ る.炉
か ら 吹 き 出 し たI2分
子 の 干 渉 が 報 告 さ れ た28).こ
の
子 の 速 さ の 最 も確 か ら し い値 は
っ た か ら 運 動 量 はp=mv1=1.48×10-22kg・m/sと
な る .Ch.
J. Borde
ら は 回 折 格 子 を 使 う 代 わ り に 次 の 工 夫 を し た(図9). I2分 子 の 進 行 方 向 に 合 わ せ てx軸
を と る.そ
に 進 む レ ー ザ ー 光 を 当 て,2点A2,B2で-z方
図9 4点A1,B1,A2,B2で
し て,ビ
ー ム に2点A1,B1でz方
向
向 に 進 む レ ー ザ ー 光 を 当 て る.
I2分 子 の 干 渉 実 験 レ ー ザー 光 を 当 て る.
A1B1=A2B2=dで
あ る.
正 確 に は レ ー ザ ー 光 はz-軸 A1,B1で
か ら 微 小 角 θ だ け 傾 い て い て,光
はk1=(-ksinθ,0,kcosθ),A2,B2で
な っ て い る.ア
の 波 数 ベ ク トル は
はk2=(-ksinθ,0,-kcosθ)に
ル ゴ ン ・ レ ー ザ ー を 用 い た の で 光 の 波 長 は λ=514.5nmで
あ り
(33) で あ る.こ
の 光 はI2分 子 に 共 鳴 的 に 吸 収 さ れ る.hk≪pで
運 動 量pで
飛 来 し た 分 子 は 点A1で
図10 図9のdは(a)で
は1mm,(b)で
光 子k1を
あ る こ とに 注 意 す る.
吸 収 す る と運 動 量p1=(p-hksinθ,
I2分 子 の 干 渉 パ ター ン
は2mmで
あ る.実
線 は,観 測 点 に フ ィ ッ トさせ た もの.
0,hkcosθ)に
な る が,点B1で
る.こ
離dを
の 間,距
光 に 出 会 っ て光 子k1を
走 るがz-方
向 に は 距離lを
分 子 に 比 べ て-kdsinθ+klcosθ 吸 収,放
の 位 相 差 が 生 じ て い る.次
出 し て-kdsinθ-klcosθ
に 比 べ て 合 わ せ て-2kdsinθ 生 む(図10).こ
誘 導 放 出 し,運 動 量pに
の 位 相 差 が 生 じ,光
にA2とB2で
た は2mmだ
光 子k2を
と相 互 作 用 し な か っ た 分 子
の 位 相 差 が 生 ず る こ とに な る.こ
の 実 験 で はd=1,ま
もど
走 る とす れ ば 光 を 吸 収 し な か っ た
れ が干 渉 パ ター ン を
っ た.d=1mmを
とれ ば (34)
そ し て,1999年 子 量 は720で
に はA.Zeilingerら
あ る.C70の
彼 等 は900∼1,000Kの
がC60分
炉 か ら 出 たC60を1.04m隔
の ス リ ッ トで コ リ メ ー ト して,SiNxの nm)に
通 し,そ の 後1.25mの
検 出 に は,ま
子 の 回 折 を観 測 した29).こ の分 子 の 分
干 渉 も見 た とい っ て い る. て て お い た2つ
回 折 格 子(ス
の 幅 約10μm
リ ッ トの 幅 約50μm,周
期100
位 置 で検 出 して 干 渉 縞 を見 た の で あ る(図11). ー ム に 垂 直 に,コ
リメー シ ョ
ン ・ス リ ッ トお よ び 回 折 格 子 の ス リ ッ トに 平 行 な 方 向 か ら照 射 し,C60の
ず 細 く絞 っ たArレ
位 置 に焦 点
を合 わ せ て 幅8μmの う してC60を
ー ザ ー 光 をC60ビ
と こ ろ に だ け 当 た る よ う に し,μmの
局 所 的 に 熱 し て イ オ ン 化 させ,そ
精 度 で ス キ ャ ンす る.こ
れ を検 出 す る の で あ る.
C60の 速 度 分 布 は 飛 行 時 間 法 で 別 に 測 定 し,マ
クスウ ェル分 布 で吹 き出 した と きと
超 音 速 ビー ム の 中 間 の 場 合 と し て期 待 さ れ る
で よ く近 似 さ れ
る こ と を確 か め た.こ
こ にv0=166m/s,vm=92m/sだ
最 も確 か ち しい 速 さ:v1=223m/s, と な る.得
られ た 干 渉 縞 を 図12(b)に
た だ し,(ⅰ)コ び(ⅲ)全
示 す.実
ったか ら 波 長:λ=2.48×10-12m
線 は キ ル ヒ ホ フ の 回 折 理 論 に よ る.
リメ ー シ ョ ン ・ス リッ トの 幅,(ⅱ)回
折 格 子 の ス リッ トの 幅,お
体 の 規 格 化 は 理 論 曲 線 が 実 験 と一 致 す る よ うに 調 節 し た.特
ウ ス分 布 を す る と した ら実 験 と広 い 範 囲 で の 一 致 が 得 られ た.
図11
(35)
C60の 回折 実 験
に(ⅱ)は
よ ガ
図12
C60の 干 渉
(a) は ス リ ッ トが な い 場 合,(b)
自 然 界 に は12Cの
ほ か に13Cが1.1%存
は ス リ ッ ト あ りの 場 合.
在 す る.す
る と12C60に
存 在 す る こ とに な る(60C2等
は組 み 合 わ せ の 数).Zeilingerら
た 混 合 物 で あ っ た.12C60-nは
同 じnの
ン はnに
加 えて
が 用 い たC60も
こ うし
もの と しか 干 渉 しな い は ず だ が,干 渉 の パ タ ー
ほ と ん ど よ ら な い か ら― 理 論 値 の 規 格 化 は 実 験 に 合 わせ た の で― 同 位 体 の
存 在 を 無 視 し た 理 論 が 実 験 と一 致 し た の は 不 思 議 で は な い.Zeilingerた
ち は,も
し
1種 類 の 同 位 体 だ け の 実 験 を し た らバ ッ ク グ ラ ウ ン ドが 増 え た だ ろ う と い っ て い る. Zeilingerた
ち は,C60が1,000Kと
い っ た 高 温 の 炉 か ら 吹 き 出 して 励 起 状 態 の 分 子
が か な り混 じっ て い た は ず で あ る こ と を 注 意 して,理
論 と実 験 が 定 量 的 に 一 致 した の
は 励 起 状 態 が 干 渉 性に 影 響 し な い こ と を示 す もの だ と言 っ て い る が,こ い.励
起 状 態 のC60は
項 を参 照).し
れ も承 服 し難
同 じ励 起 状 態 の もの と しか 干 渉 し な い は ず で あ る(こ
の 点,次
か し,そ れ ぞ れ の 干 渉 パ タ ー ン に は 差 が な い か ら,理 論 値 の 規 格 化 を
実 験 に 合 わ せ た の で 違 い が 見 え な か っ た の で あ る.
1.3.3
Which
Way?
2重 ス リ ッ トの 実 験 で,通
っ た の は ど ち ら の ス リ ッ トか を観 測 し た ら― 朝 永 振 一 郎
が 「光 子 の 裁 判 」30)で描 い た よ うに― 干 渉 縞 は 消 え て し ま う は ず で あ る .実 際,Bohr は ス リ ッ トが 動 くよ うに し て 粒 子 が 通 る と き の 反 動 を観 測 す る と,不 確 定 性 関 係 か ら ス リ ッ トの 位 置 が 不 定 と な り干 渉 縞 が 消 え る とい う思 考 実 験 を提 示 し た31). そ れ の あ る 変 形 がA.Zeilingerら 光 を あ て る とそ の 光 子(運
に よ っ て 実 際 に行 わ れ た32).あ る結 晶 に レ ー ザ ー
動 量hk)が2つ
と い う現 象 が お こ る.2つ
の 光 子 が 運 動 量hk1,hk2の
相 関 を もっ て 発 生 す る の で あ る.そ の 光1を2重 レ ン ズLに
に 分 裂 す る,ダ
通 し て 背 後 の 面S2で
(a) 面S2を
観 測 す る.
レ ン ズ か ら 焦 点 距 離fだ
け 離 し て お く と,Lに
定 し た こ と は 光1が2つ
こ の と き,S2上
れ を し な い とS1上
壊 さ れ な い か ぎ り光 子1が2重
る か の 情 報 を も っ て い る か ら だ,と
に干 渉
説 明 さ れ て い る.
ら距 離DA+ALに リ ッ トDか
に干 渉縞 は 現
ス リ ッ トの ど ち ら を通
背 後 に 検 出 器 を お い て 光 子 を 捕 え る と,レ
け 離 れ た位 置 に お い た 面S2の
に お く.そ れ は,ス
方 向 が確
平 等 に 通 る と い う こ とだ か ら,S1上
で 光 子 を捕 え る こ と が 重 要 で,こ
S1上 の 干 渉 縞 が 消 え た!2つ
確定
際 に そ れ は 観 測 さ れ た.
わ れ な い と い う.光 子2は,破
(c) 面S2を,Lか
よ りk1も
思 考 実 験 の 場 合 と同 じ) .k1の
の ス リ ッ トDを
2重 ス リ ッ トDの
入射 した平 行 光 線
観 測 す る こ と に な り,相 関k1+k2=kに
縞 が で き る は ず で あ っ て,実
上 にDに
ン ズLか
よ っ て 像 を結 ぶ 位 置
ら で た 光 が レ ン ズ に 像 を結 ぶ 位 置 で あ る.す の 光 子1,2の
の 光 子 の相 関 を 利 用 して 実 験 した.図
強 い 相 関 に よ っ てS2で
のk1',k2'は
ら焦
よ る干 渉 縞 が 現 わ れ た.
あ る 物 体 が レ ン ズLに
図13 2重 ス リ ッ トの 干 渉 ど ち らの ス リッ トを光 が 通 っ た か 観 測 す る と干 渉 縞 は消 え る,等 よ る2つ
い う強 い
の 光 を 二 手 に 分 け て,図13に
す る(A.Einstein-B.Podolsky-N.Rosenの
点 距 離fだ
和 が 一 定(=hk)と
示 す よ う に ,一 方 ス リ ッ トに とお して 背 後 の ス ク リー ン 上 で 干 渉 縞 を見 る.他 方 の 光2は
(定 ま っ た 方 向 を も つk2)を
(b)
ウ ン ・コ ン ヴ ァ ー ジ ョ ン
光 を2手
る と,
の 観 測 がDの2
々.ダ ウ ン ・コン ヴ ァー ジ ョ ン に に分 け た 後 の もの.
本 の ス リ ッ トの ど ち ら を光 子1が S. Durrた や し て,ト
通 っ た か の 観 測 に な っ た と い う.
ち の 実 験 は 手 が こ ん で い る33).彼 等 は85Rbの ラ ップ を切 っ て 自由 落 下 させ,20cm落
リ メ ー ト し,さ
ら に25cm落
原 子 を磁 気 トラ ッ プ 中 で 冷
ち た と こ ろ で ス リ ッ トを 通 し て コ
ち た と こ ろ で 共 鳴 器 中 の レ ー ザ ー 光 の 定 常 波 に2回
図14
S. Durrら
の実 験
原 子 を レー ザ ー 光 の 定 常 波 で ブ ラ ッ グ反 射 させ て 行 路 差 をつ くる.
図15 a) 図14の 実 験 に よ る干 渉 縞.b) マ イ クロ波 で どの 道 を通 っ て き たか 状 態 に 印 をつ け る と(図16) 干 渉 縞 が 消 え る.
通
(a) Rbの
図16 状 態 に 印 をつ け る は宗 常 波 の角 振 動 数.(b) マ イ ク ロ波 で 状 熊 を制 御 す る.
エ ネ ル ギー 準 位.ω
し て ブ ラ ッ グ 反 射 させ(図14),行 Rbの
基 底 状 態52S1/2はF=2,3の2つ
る.今 度 は,最 │3>を
路 差 に よ る 干 渉 を見 た(図15(a)). の 超 微 細 構 造 準 位│2>,│3>に
初 の 定 常 波 の 前 に マ イ ク ロ 波 を あ て て,こ
分 裂 して い
れ ら の 重 ね 合 わ せ│2>+
つ く る(図16).
こ こ で,定
常 波 の 振 動 数 を│2>と│3>の
す る よ う に して お く と│2>は
準 位 の 中 間 か ら 励 起 準 位│e>ま
定 常 波 で 反 射 さ れ る と き位 相 が π だ け 変 わ り
透 過 波:│3>+│2>,
と な る.こ
反 射 波:│3>-│2>
こ で 再 び マ イ ク ロ 波 を あ て 最 初 と 同 様│2>→│2>+│3>と
ユ ニ タ リ変 換 だ か ら│2>と│3>の
と な る(図14(b)).こ
でに相 当
す る と,こ れ は
直 交 性 は保 存 さ れ│3>→│3>-│2>と
れ が,第2の
定 常 波 で合 成 さ れ,右
側,左
な るの で
側では
(36) と な り(図14),こ と,│2>と│3>の
れ ら の 絶 対 値2乗
をつ くって 原 子 の 内部 座 標 に つ い て積 分 す る
直 交 性 の た め 干 渉 項 は 現 わ れ な い.こ
れ は,原
っ て 原 子 が 「ど ち らの 道 を 」 通 っ た か 印 を つ け た ため だ,そ の だ,と
説 明 さ れ て い る が,原
子 の 内部状 態 に よ
れ を読 み た け れ ば 読 め た
子 の 状 態 は 観 測 し て い な い の だ か ら不 思 議 で あ る .
「Wignerの
友 人 」 の 話 が 思 い 出 さ れ る.な
だ と き,す
な わ ち状 態│2>に
お,「 ど ち ら の 道 を通 っ た か 」 の 印 を読 ん
あ る 原 子 の み,あ
る い は│3>に
あ る原子 の み を検 出 し
た と き に も干 渉 縞 は 現 わ れ な か っ た.
1.4 波 束 の 運 動 と 量 子 飛 躍 原 子 の 高 い 一 電 子 励 起 状 態(リ に観 測 し て,周
ュ ー ドベ リ原 子)に
お け る電 子 の 波 束 を一 周 期 ご と
期 が ケ プ ラ ー 運 動 の そ れ に 一 致 す る こ と を 確 か め た 実 験 が あ る.Rb
原 子 で 主 量 子 数n=42付
近 の2∼3個
を重 ね 合 わ せ た 波 束34),K原
∼5個 を 重 ね 合 わ せ た 波 束35)に つ い て ,よ
子 でn=89付
近の
い一 致 が 得 られ て い る.こ れ ら は 電 子 の 定
常 状 態 を 主 量 子 数 に つ い て 重 ね 合 わ せ た 波 束 を見 た の で,動
径 方 向 の 振 動 で あ る.方
図17 蛍光強度 の時 間変化 トラ ップ さ れ たHg+イ
オ ン の数 が,上 段 か ら3,2,1の
場 合.
向 の 局 在 化 も観 測 さ れ て い るが36),電 子 の軌 道 運 動 の 観 測 に は い た っ て い な い. 原 子 を1個 験 も あ る.原
な い し3個 子 の3つ
や や 遅 く,E2→E1の
トラ ッ プ し て お き,そ の 電 子 の 量 子 飛 躍 を観 測 し た と い う実 の 準 位E1<E2<E3で
の 遷 移 は 速 い が,E3→E2は
遷 移 は 非 常 に遅 い とい う場 合 を考 え る.そ
トラ ップ して,E1→E3に
お こ っ て 原 子 の 出 す 蛍 光 が 観 測 さ れ る.し か し,稀 と,E2→E1の
の遷移 が盛 ん に
に だ がE3→E2の
遷移がおこる
遷 移 は お こ りに くい の で 原 子 の 発 光 が ピ タ リ と止 む.や
の 遷 移 が お こ る と,再 観 測 され る(図17).こ
び
験 に 用 い られ たHg+イ
つ あ り,E2b→E2aもE2b→E1も E2aに い て もE2bに
が てE2→E1
の 遷 移 が 盛 ん に お こ る よ う に な り原 子 の だ す 光 が
の よ うに 発 光 が 止 ま る そ の と き にE3→E2の
り,発 光 が 再 開 さ れ るそ の と きにE2→E1の 実 は,実
の よ う な 原 子 を1個
共 鳴 す る レー ザ ー 光 を あ て る と,
量子 飛躍 がお こ
量 子 飛 躍 が お こ っ た の で あ る.
オ ンで は 問 題 に な る準 位 がE1<E2a<E3b<E3の4 遅 く,E2a→E1は
い て も蛍 光 は休 止 とな る.実
E1の 遷 移 に よ る指 数 関 数 とE2a→E1に
極 端 に 遅 い.そ
際,蛍
こ で,電
子 が
光 の 休 止 期 間 の 分 布 はE2b→
よ る 指 数 関 数 の 和 に な り,そ れ ぞ れ か ら求 め
た寿 命 は他 の 方 法 に よ る 測 定 値 とだ い た い 一 致 した37).H.
J. Kimbleら
の 詳 細 な理 論
的 解 析 が あ る38).
1.5 干 渉 性 の 破 壊 Schrodingerの
猫 は,観
測 され る前 に は 生 き て い る状 態 と死 ん で い る 状 態 の 重 ね 合
わ せ に あ る と い う こ とが パ ラ ドキ シ カ ル な の で あ る.
1.5.1 巨視 的 状 態 の 重 ね 合 わ せ こ の 種 の 状 態 が,実
験 で は ス ク イ ドを用 い て 実 現 さ れ た39,40).超伝 導 体 で環 をつ く
り,臨 界 温 度 よ り上 で 磁 束 を とお し た上 で,温 度 を 臨 界 温 度 以 下 に 下 げ る と,環 の 中 に 磁 束 量 子 Φ0=2πh/2cの
整 数 倍 の 磁 束 が 閉 じ こ め ら れ る.特
に,は
じめ に と お し
た 磁 束 が Φ0/2で あ る と,温 度 を 下 げ た 後 の 磁 束 が0の
状 態 と Φ0の 状 態 が 可 能 と な
り,両 者 は エ ネ ル ギ ー が 同 じで あ る.ス
伝 導 体 でつ くっ た 環 の1カ
に 超 伝 導 性 の こ わ れ た 部 分(ジ で あ る が,こ
ク イ ド とは,超
ョ セフ ソ ン ・ジ ャ ン ク シ ョ ン)を
うす る と系 の エ ネ ル ギ ー は 貫 通 す る磁 束xの
所
わ ざ とつ く っ た もの
関 数 と し てx=0,Φ0に
極
(a)
(b)
図18
W字
型 の ポテ ン シ ャ ル
エ ネ ル ギ ー の 固 有 関 数 は 左 右 反 対 称 な もの と対 称 な も の に な る.実 験 で はt=0に その重 ね合 わせ ψo(x)を つ くっ た.最 低 の2準 位 の 間 隔 を示 し た数 値 は ア ン モ ニ ア分 子(後 出)の もの.
小 を もつW字
型 に な る(図18).
す る と,エ
ネ ル ギ ー の 固 有 状 態 で はxの
関 数 と し て の 波 動 関数u(x)は
左右対称
ま た は 反 対 称 とな り,前 者 の エ ネ ル ギ ー が 少 しだ け 低 くな る は ず で あ る.対 称 な波 動 関 数 をus(Φ)と
書 き,そ の エ ネ ル ギ ー をEsと
え る.実 験39,40)では,時
刻t=0に
と な る よ う に して,時
間発 展
を 見 た.時
は,波
し よ う.反 対 称 な 方 は 添 字 をaに
替
波 動関 数が
(37) 刻t=0に
に はx<0の
動 関 数 はx>0の
側 で 大 き い が,時
側 で 大 き くな る.以 後,T=2πh/(Es-Ea)を
大 は左 右 に 振 動 す る は ず で あ る.実 こ の 波 動 関 数 は,電 と い うxが0の
刻t=πh/(Es-Ea)
周期 として波動 関 数 の極
際 そ う な る こ とが 実 験 で確 か め ら れ た.
子 で い え ば1010∼1015個
の 協 動 で で き て い る .そ れ がus,ua
状 態 と Φ0の 状 態 の 重 ね 合 わせ と も い うべ き状 態 を エ ネ ル ギ ー の 固 有
状 態 と し て い る こ と を,こ の 実 験 は 示 し て い る. 1.5.2 分 子 の 形 左 右 ど ち ら と もつ か な い 状 態 が エ ネ ル ギー の 固 有 状 態 で あ る と い う事 実 が,た
とえ
ば ア ン モ ニ ア 分 子 につ い て 問 題 に な っ た. ア ン モ ニ ア 分 子NH3は,3つ 平 面Pに
垂 直 な 直 線(x-軸
のH原 と す る)上
考 え られ て い る.し か し,N原 に 関 し て 左 右 対 称 で,図18と 態 で は 固 有 関 数 はus(x)と に い る状 態uL(x)の
子 が 正3角 にN原
形 を な し,そ
の重 心 を通 っ て その
子 が位 置 して 四面体 をつ くって い る と
子 が 感 じ る ポ テ ン シ ャ ル は,xの
関 数 と して,平
同様 な 形 を し て い る は ず で あ る.し な り,N原
子 は 平 面Pの
た が っ て,基
右 側 に い る 状 態uR(x)と
面P 底状 左側
重 ね 合 わ せ に い る こ と に な る.
(38) NH3分
子 は,き
実 際,NH3分
ま っ た 形 を も た な い の で あ る(図19) 子 が こ の よ うな 状 態 に あ る こ と は,セ
常"41)の 説 明 と してP.W.Andersonが こ れ は,し Hundが
. ン チ メー トル 波 の 吸 収 の"異
指 摘 し た42).
か し,通 常 の 条 件 下 で は 化 学 者 の 常 識 に 反 す る43,44) .こ
の 問 題 は,F.
量 子 力 学 に よ る分 子 構 造 論 の最 初 の 論 文 と も い え る もの の 中 で 旋 光 性 を もつ
物 質 が 長 い 寿 命 で 存 在 す る こ と との 矛 盾 と して 述 べ て い た45). 分 子 が(38)の
よ うな 状 態 に あ る と,物 理 量Oの
期待 値
(39) に 干 渉 項(右
辺 の 第3項)が
現 わ れ る.も
し分 子 がuRま
こ れ は な か っ た は ず で あ る.干 渉 項 を 欠 く状 態 は,一
た はuLの
状 態 に あ っ た ら,
般 に密 度行列
(40)
図19
ア ン モ ニ ア分 子 の 形
(a) 鏡 像 と区別 が つ く よ うに 水 素 原 子 を3つ の 同 位 体H,D,Tに 底 状 態 で は(a)の2つ の 状 態 の重 ね合 わせ で あ る.
で 表 わ さ れ,uRとuLの れ の 状 態 の 確 率 で,通 数(38)で
混 合 状 態(mixture)と 常 と もに1/2で
よ ば れ る.こ
ア ン モ ニ ア分 子 は,基
こ に,pR,pLは
それ ぞ
あ る と考 え られ て い る.こ れ に 対 して,波 動 関
表 さ れ る の よ う な 状 態 は 純 粋 状 態(pure
理 量Oの
した.(b)
state)と
よ ば れ る.ρ に よ る物
期待 値 は
(41) で 与 え られ る. NH3が (40)の
化 学 者 の 想 像 す る よ う な 形 を も っ て い る と す れ ば,そ は ず で あ る.そ
に な る.そ Claverie,
こ で,問
題 は,い
か に し て純 粋 状 態 が 混 合 状 態 に移 行 す るか,
の 機 構 と し て 環 境 と の 相 互 作 用―P. G. Jona-Lasinioは
用 の 結 果 と してuR,uLに の で あ る.こ
の状 態 は混 合 状 態
Pfeiferは 輻 射 と の 相 互 作 用46),P.
双 極 子 相 互 作 用47,48)―が 考 え ら れ て い る43,44,49).相 互作
ラ ン ダ ム な 位 相 が つ き,平 均 と し て 干 渉 項 が 落 ち る と い う
れ を干 渉 性 の 破 壊(decoherence)と
い う.
1.5.3 古 典 的 世 界 像 の 生 成 量 子 力 学 が 普 遍 的 に 成 り立 つ な ら,巨 視 的 物 体 に お い てE.
Schrodingerの
猫 にお
け る よ うな 重 ね 合 わ せ 状 態 が な い こ と も 導 出 さ れ ね ば な ら な い. E. JoosとH.
D. Zehは,そ
れ も環 境 との 相 互 作 用 に よ る とい う50,51).巨視 的 な物 体
は 常 に 光(太
陽 光,宇
宙 背 景 輻 射)に
さ ら され て い る し,空 気 分 子 に 絶 間 な く衝 突 さ
れ て い る.散
乱 は 散 乱 体 の位 置 に よ るか ら,そ れ は位 置 の 測 定 と考 え られ る.
い ま,散 乱 体 が 大 き くて 散 乱 を して も状 態 が 変 わ ら な い とす れ ば,散 状 態 を│x>,散
乱 さ れ る もの の 状 態 を│χ>と
す れ ば,散
乱 過 程 はS行
乱体 の重心 の 列 を用 い て
(42) と書 く こ とが で き る.し
た が っ て,散
乱後 の散 乱体 の密 度行 列 は
(43)
とな る.xとx'が
遠 く離 れ れ ば
とな る だ ろ う .散 乱 が 並 進 不 変
なら
(44) の 形 を して お り,次 の 形 に 書 け る:
(45) い ま,散
乱 さ れ る粒 子 の 波 長 が 物 体 の 差 し渡 し よ り大 き い と し初 期 状 態│χ>を
面 波eik0・xで 近 似 す れ ば,指
数 関 数 は 展 開 し,k0の
方 向 に つ い て 平 均 して,1回
平
の散
乱 で密度行 列 は
の よ う に変 化 す る こ とが 分 か る.こ
こ にLは
規 格 化 立 方体 の1辺
の 長 さ で あ り,
(46) で あ る.時
間tの
の 衝 突 が あ る.た た が っ て,時
間tの
あ いだ には
だ し,散 乱 さ れ る粒 子 の 密 度 をN/L3,平
均 の 速 さ をvと
した.し
後 には密 度行 列 は
(47) に な っ て い る.こ
こに
(48) 物 体 の 位 置 が 異 な る 位置x,x'に で あ る.消
え 方 は│x-x'│が
あ る状 態 の あ い だ の 干 渉 が 時 間 と と もに 消 え る の
大 き い ほ ど速 い.こ
の 速 さで量 子 力 学 的 な干 渉 は消 え
て ゆ く.古 典 物 理 的 な 物 体 像 が 回復 す る の で あ る. σeffは物 体 の 大 き さ に 関 係 し,た の 半 径 の6乗
とえ ば 誘 電 体 の 球 を 輻 射 に さ ら し た場 合 に は,そ
に 比 例 す る. 表1
物体 の 局 所 化 の 速 さΛ/cm-2s-1
こ れ は 散 乱 さ れ る粒 子 の 波 長 が 散 乱 物 体 よ り大 き い 場 合 で あ る が,逆
の場 合 に は
σeffは物 体 の 幾 何 学 的 断 面 積 く ら い に な る で あ ろ う. い ろ い ろ の 大 き さ の 物 体 に 対 して,い
ろ い ろ の 散 乱 過 程 の 場 合 にΛ の 値 を 表1に
示 す50,51,53). 同 じ効 果 に よ っ て,巨 視 的 な 物 体 は,量
子 力 学 に した が い つ つ も,P.
Ehrenfestの
定 理 が 示 す 古 典 軌 道 に した が っ て運 動 す る こ とに な る50,51). 1.5.4 Zeno効
果
ハ ミル トニ ア ンHを
もつ 量 子 力 学 的 な 系 を 時 刻t=0に
観 測 して,状
出 し た とす る.そ れ か らΔt後 に観 測 し て 同 じ状 態│a>に
見 出す確 率 は
態│a>に
見
か ら
(49) と な る.こ
こに
(50) は,す
ぐ後 で 明 ら か に な る 理 由 か らZeno時
ニ ア ンの 固 有 状 態 で は な い と し て お く.し こ の 観 測 を,時 間tの
あ い だ にN回
間 と よ ば れ る.こ た が っ て,τz<∞
こ で│a>は
ハ ミル ト
で あ る.
く りか え して 常 に 状 態│a>に
見 出す 確 率 は
(51) と な り,N→
∞ の極 限 で
(52) とな る.連
続 的 に観 測 を く りか えす と系 は 時 間 発 展 で き な い!こ
れ をZeno効
果 と
い う54∼56). しか し,エ ネ ル ギ ー 準 位 が 密 な 系 で は,こ 小 さ くて も,Fermiの
果 に よ って
黄 金 律 に よ る 遷 移 が お こ り う る こ とが 指 摘 され て い る57).
ま だ 述 べ るべ き こ とは 多 い が,こ 学名 誉 教 授.1932年
この 準 位 へ の 遷 移 はZeno効
生 まれ,1955年
こ で 筆 を お く.(筆 者=え ざ わ ・ひ ろ し,学 習 院 大
東 京 大学 理 学 部卒 業)
参 考 文 献 1)
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渡 辺
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J.E.Lukens:Nature
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mun.Math,Phys.80(1981)22.P.Claverie (1986)2245.分
6D(1983)393.輻
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E.Scoppola:Phys.Rep.77(1981)313;Com
子 間 の 双 極 子 相 互 作 用.AsH3で
and
G.Jona-Lasinio:Phys.Rev.A は 干 渉 項 が 消 え る け れ どNH3で
え な い. 48)
S.Yomosa:J.Phys.Soc.Jpn.44(1978)602.
49)
H.Primas:Adv.Chem.Phys.38(1978)1;Lecture
Notes
in Chemistry(Springer,
33 は 消
1981)Sect.1.4,p.10,Sect.1.5,p.16 E.Joos
51)
D.Giulini,E.Joos,C.Kiefer,J.Kupsch,I.-O.Stamatescu ce
and
and
and
50)
the
H.D.Zeh:Z.Phys.B
Appearance of
Classical
52)
M.Tegmark:Found.Phys.Lett.6(1993)571.
53)
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B.Misra
55)
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E.Squires:Phys.Rev.Lett.73(1994)1.
中 由 也,中
M.Namiki,S.Pascazio (World
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手 法 』 大 場 一 郎,山 56)
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里 弘 道 訳(丸
量 子 論 の 概 念 と 善,2001)p.393,410.
H.Nakazato:Decoherence and
Quantum
Measurement
2. 量子 力学 の数学 的基礎 黒
田
成
俊
本 稿 の 依 頼 を 受 け た と き渋 っ て い た ら,量 子 力 学 の 数 学 的 基 礎 に つ い て,過 年 間 の 主 と し て 日本 に お け る発 展 を書 け,さ ば よ い,と
ら に 言 え ば,お
言 わ れ た よ うに 記 憶す る.確 か に,1950,60年
な る 日本 で の研 究 が,数 (教 授 は1962年
前 の 昔 の 思 い 出 話 を書 け
代 に加 藤敏 夫教 授 の創 始 に
学 的 散 乱 理 論 の 発 展 の 一 翼 も 二 翼 も担 っ た の は 事 実 で あ る .
に 米 国 の カ リフ ォ ル ニ ア 大 学 バ ー ク レー 校 に 移 ら れ た .)そ
に はLeningrad(当
去50
時)のM.S.Birmanの
グル ー プ と,ユ ニ ー ク な(そ
の 頃,他 してその後
息 長 く研 究 さ れ る こ とに な る)波 動 方 程 式 につ い て の 散 乱 理 論 を創 始 中 のP.D.Lax, R.S.Phillips(米
国)の
他 に は 研 究 者 の 数 も少 な か っ た こ の分 野 は,70年
て か ら爆 発 的 と も 言 え る 発 展 を 経 験 し,今
で は,量
子力 学の数 学 的基礎 に とらわれ な
い 解 析 学 の 中 の 一 つ の 分 野 に ま で な って い る.そ れ で も,量 トが 陰 に 陽 に 生 き て い る 研 究 が 多 い か ら,敢 方 程 式 」 と い う こ とに で も な ろ うか.そ
代 にな っ
子 力 学 の 題 材 や ス ピ リッ
え て 括 れ ば 「量 子 力 学 の 数 理 物 理 と微 分
して,日
本 の 研 究 者 達 も,国
際的 な グループ
に 見 事 に 溶 け こ ん だ 形 で 研 究 を続 け て い る. この よ う な 状 況 を考 え る と,思 い 出 話 だ け で は 新 味 が な い .そ 筆 者 よ り1世 代(約15年)若
くて,現
筆 者 の 身 近 に お られ て 勝 手 な お 願 い が しや す い,田 賢 二(東
京 大 学 大 学 院 数 理 科 学 研 究 科),磯
に お 集 ま り願 っ て,座
崎
村 英 男(岡
洋(東
計 を案 じて
山 大 学 理 学 部),谷
京 都 立 大 学 理 学 部)の
談 会 の よ う な 形 で お 話 を伺 う こ とに し た.そ
会 形 式 で ま とめ る の も一 法 か と思 っ た が,全
島
お3方
れ を そ の ま ま座 談
く自 由 に か つ 気 楽 に 話 し た こ と だ か ら,
そ れ を参 考 に して 筆 者 が 単 著 の 形 で ま とめ よ,と しか し,広
こ で,一
在 の 研 究 を リー ドし て お ら れ る 方 の 中 か ら,
い う の が 皆 さ ん の ご 意 向 で あ っ た.
い範 囲 に わ た っ た 内容 を う ま くま とめ る の は 難事 で あ る の に 加 え て,筆 者
の 側 の 時 間 的 制 約 も あ り,結 局 筆 者 の 尻 切 れ トン ボ な エ ッ セ イ の よ うな もの で終 っ て し ま っ た.草 稿 を お3方 い た .そ
の 結 果,特
に お 見 せ して,時
に 第4節
に文 献 を追 加 す る な ど著 し く改 善 す る こ とが 出 来 た.こ
の稿 の 責 任 は あ くま で筆 者 に あ るが,こ 方 の お か げ で あ る.こ
間 の 許 す 範 囲 で ご意 見 を伺 い 色 々教 え て 頂
こ に,田
の稿 に い さ さ か で も新 味 が あ る とす れ ば お3
村 英 男,谷
島 賢 二,磯
崎
洋3氏
の ご協 力 に 深 く感 謝
す る. 2.1
von
Neumannに
量 子 力 学 の 数 学 的 基 礎 と聞 く と,誰
よ る数 学 的基 礎 付 け し もJ.von
Neumannの
同 題 の 本[16]を
思い
出 す だ ろ う.1932年
出 版 の こ の 本 ま で の 数 年 間 の 仕 事 に よ っ て,von
Neumannは
量
子 力 学 の 数 学 的 な 枠 組 を 次 の よ う に確 立 した. 「量 子 力 学 で 記 述 さ れ る 系 の 状 態 は,あ っ て 表 され,物
る ヒル ベ ル ト空 間 の 長 さ1の
理 系 の 「オ ブ ザ ー バ ブ ル 」 に は,そ
役 作 用 素 が 対 応 す る.そ
し て,あ
ベ ク トル に よ
の ヒ ル ベ ル ト空 間 に お け る 自 己共
る状 態 に お け る オ ブ ザ ー バ ブ ル の 観 測 量 の分 布 は,
対 応 す る 自 己 共 役 作 用 素 の ス ペ ク トル分 解 に よ っ て 決 る.」 こ の理 論 の も と に な っ て い る数 学 は,自
己 共 役 作 用 素 の ス ペ ク トル 定 理(=無
元 ヒ ル ベ ル ト空 間 に お け る 固 有 値 問 題 の 一 般 論)で のD.Hilbertに た.し
始 ま る研 究 に よ っ て,有
か し,量
あ る.こ
子 力 学 のハ ミル トニ ア ン は微 分 作 用 素 で あ り,そ れ は ヒル ベ ル ト空 間
Neumann(同
時 にM.H.Stone)は
か に量 子力 学の 発展 に触発 さ
非 有界 自己共役 作用素 に対す るスペ
ク トル 定 理 を あ っ と い う 間 に 作 り上 げ た.こ
の 定 理 が あ っ て こ そ,von
に よ る 量 子 力 学 の 数 学 的 枠 組 は 確 固 た る も の に な っ た の で あ る.こ 力 学 の 数 学 的 基 礎 」 の 第 一 フ ェ ー ズ と し よ う.(von の理 論,作 い.さ
用 素 代 数 の 方 向 へ 発 展 し た.し
らに,20世
Neumannの
限次 紀初頭
界 自己共役 作 用素 の 場合 には確 立 され て い
に お け る作 用 素 と し て は 非 有 界 に な ら ざ る を得 な い.明 れ て,von
の 定 理 は,20世
紀 後 半 の 場 の 理 論,量
Neumannの
こ ま で を,「 量 子 研 究 は その後 観 測
か し,こ れ ら は本 稿 で は 関 心 の 外 に お き た 子 電 磁 力 学 の 数 理 物 理 的 な研 究 に もvon
理 論 は 少 な か ら ぬ 影 響 を 与 え て い る と思 わ れ る が,こ
書 で は 荒 木 不 二 洋 さ ん,廣
Neumannn
れ らにつ いて は本
島 文 生 さん の 論 説 で 述 べ ら れ る だ ろ うか ら,本 稿 で は触 れ
な い.) von
Neumannの
が,ど
う し た わ け か 「現 実 の ポ テ ン シ ャ ル に よ っ て 相 互 作 用 す る2粒 子 ま た は 多粒 子
研 究 に よ り,抽 象 的 な 作 用 素 論 の 中 で の 量 子 力 学 の 枠 組 は 出 来 た
系 の ハ ミル トニ ア ン(後
に(1),(2)と
して 提 示)が,疑
念 の ない形 で 自己共役 作 用
素 を定 め るか 」 とい う問 題 は 十 数 年 後 の 加 藤 敏 夫 の 研 究([39])ま と が な か っ た.加
藤 の 研 究 に よ り,(1),(2)の
作 用 素 を定 め る こ とが 一 挙 に 証 明 され,量
ハ ミル トニ ア ン が 一 意 的 に 自 己共 役
子 力 学 の 基 礎 付 け の 数 理 が,抽
素 論 か ら,関 数 や 微 分 方 程 式 の 解 そ の もの を 対 象 とす る数 学,言 析 と偏 微 分 方 程 式 論 を手 法 とす る数 理 物 理 に 転 換,拡 ん の 事 情 は,[11]に
成 で あ る と同 時 に,第二
藤 の 研 究 は,量
象 的 な作 用
い か え れ ば,関
数解
大 し て い っ た の で あ る.こ
のへ
生 き 生 き と書 か れ て い る.筆 者 も最 近[14]で
こ れ 以 上 は 繰 り返 さ な い.加
で取 り上 げ られ る こ
一 部 触 れ たの で,
子力 学の数 学 的基礎 の 第一 フ ェー ズの完
フ ェ ー ズ の ス タ ー トで あ っ た と い え よ う.本 稿 で は,こ
二 フ ェ ー ズ が ど の よ う に 発 展 し て い っ た か,そ
の第
れ に話 を限 っ て見 て い くこ とに した
い. 本 稿 は レ ビ ュ ー で は な く,長
さ も 限 ら れ て い る.原 著 の 引 用 は代 表 的 な も の に 限
り,し か も 日本 か ら の寄 与 に ウ エ イ ト を置 い た こ と を お 断 り し て お く.
2.2 数 学 的 散 乱 理 論 の 発 展 2.2.1 Schrodinger作 N粒 子 系(多
用素
体 問 題)の
元 ベ ク トル,Δkをxkに
ハ ミル トニ ア ン は,xkをk番
目 の 粒 子 の座 標 を表 す3次
つ い て の ラ プ ラ シ ア ン,Vjk(j
目 とk番
目の 粒
子 の 間 の 相 互 作 用 を表 す ポ テ ン シ ャ ル と して
(1) と書 け る.(mkはk番
目の 粒 子 の 質 量,h=1と
の 場 合 は 重 心 座 標 を分 離 し,相 対 座 標 をxで
した.)2粒
子 系(2体
問 題,N=2)
表 し単 位 系 を 適 当 に 取 れ ば,(1)は
(2) と な る.(1)もmk=1と
な る よ う に 座 標 変 換 す れ ば(2)の
(2)の 形 の 作 用 素 はSchrodinger作
用 素 と よ ば れ,数
形 とみ て よ い.一
般に
理物 理 や偏 微分 方 程 式 をや っ
て い る数 学 者 の間 で は す っか り定 着 した 術 語 とな っ て い る.こ れ か ら本 稿 で取 り上 げ る の は,い
う な れ ばSchrodinger作
用 素 の 数 理 で あ る.こ
的 な基 礎 づ け で は な い か も知 れ な い が,量
れ は,狭
い意 味 で の数 学
子 力 学 の 基 礎 に 横 た わ る 数 理,あ
子 力 学 の 諸 相 か ら発 展 し た数 学 の広 が り と して,数
るい は量
学 の 中 に よ り広 く浸 透 し て 行 く も
の と言 え る の で は な か ろ うか. 先 に 述 べ た 加 藤 の 結 果[39]に の と き,ハ
ミル トニ ア ン(1)ま
に定 め る.(よ
よ れ ば,Vjk(x)→0ま た は(2)は
物 理 的 に 自然 な 自 己 共 役 作 用 素 を 一 意 的
り一 般 的 な 条 件 はVjk,V∈L2+L∞.)さ
て い る の は,そ
れ が スペ ク トル 表 示(固
た はV(x)→0(│x│→∞)
て,自
己共 役 作 用 素 が 際 立 っ
有 関 数 展 開 表 示 の 一 般 形,言
いか えれ ば い わ
ゆ る対 角 化 の 数 学 的 表 現)
を持 つ こ とで あ る.詳 用 素 の 族 でHの の 固 有 値,連
しい 解 説 は省 くが,E(λ)は
ス ペ ク トル 分 解 と よば れ,そ
続 的 に 増 大 す る と こ ろ がHの
(2)でV(x)→0(│x│→∞)の
連 続 ス ペ ク トル で あ る.ハ
と き に は(例
つ か の 孤 立 し た 負 の 固 有 値(離
λ に 関 して 単 調 に増 大 す る射 影 作
れ が 不 連 続 に ジ ャ ン プ す る と こ ろ がH
散 固 有 値)と,0か
え ば 水 素 原 子),Hの
Neumann-E.
い う漸 近 形 を持
続 ス ペ ク トル に 埋 め こ ま れ た 正 の 固 有 値 を 持 つ 例(J.
P. Wigner,
Neumann-Wignerの
スペ ク トル は 幾
ら∞ に わ た る連 続 ス ペ ク トル を持
つ と い う の が 標 準 的 な ピ クチ ャ ー で あ る が,V(x)∼c(sinkr)/rと つ ポ テ ン シ ャ ル で,連
ミル トニ ア ン
1929)も あ る か ら,一 概 に は 言 え な い.水
例 に せ よ,「 計 算 出 来 る 例 」 で あ る が,V(x)に
仮 定 し な い でH=-Δ+V(x)の
von
素 原子 にせ よvon 球対称性す ら
ス ペ ク トル の 構 造 を研 究 し よ う と い う 「数 学 的 な 」
態 度 が,Schrodinger作
用 素 の 数 理 と い う 大 き な 分 野 の 発 展 を も た ら し た と言 え よ
う. Schrodinger作 い.最
用 素 の 数 理 の 広 が りは 大 き く,手 短 な 一 般 的 解 説 を す る の は 難 し
新 の レ ビ ュ ー と し て[18]が
す が 博 識 のSimonと
あ る が,か
な り専 門 的 で あ る.33頁
い う感 じの レ ビ ュ ー で あ る が,長
に 及 び,さ
さの 関係 で 意図 的 に外 され た
幾 つ か の トピ ッ クス を別 と し て も,内 容 の 選 択 に 多 少 の 偏 りが 感 じ ら れ る.Simon とい え ば4巻
の 成 書[17]を
れ た こ の 本 が,関 い .つ
挙 げ ね ば な ら な い.1972年
か ら1979年
数 解 析 を手 段 とす る近 代 的 数 理 物 理 の 普 及 に 果 た した 寄 与 は 大 き
い で に か な り専 門 的 だ が 情 報 豊 富 な 本 と し て[2]も
のIntroduction
and
overviewに
分 る.[13]は
挙 げ て お く.ま た,[7]
比 較 的 最 近 の 動 向 に つ い て の 少 し違 っ た 見 方 か らの
レ ビ ュ ー が あ る.日 本 語 の 本 と して は,[12],[13]が は[12]で
にか けて 出版 さ
よ り入 門 的 で あ る.ま
あ る.1970年
た,[9]が
代 末 まで の 動 向
近 刊 予 定 で,後 述 す る 散
乱 の 定 常 理 論 に 詳 し く,研 究 の 変 遷 の 歴 史 も書 か れ て い る そ う で,出 版 が 楽 しみ で あ る. 先 に 触 れ たLax-Phillipsの
波 動 方 程 式 の 散 乱 理 論 は,レ
ゾナ ンス ポー ルの分 布 の
問 題 な ど,漸 近 解 析 の 手 法 と組 ん だ 一 つ の 流 れ に な っ て い るが(日 等),量
子 力 学 と は 少 し離 れ るの で 本 稿 で は こ れ 以 上 触 れ な い.(誕
lips理 論 は[15]に
書 か れ て お り,最 近 の解 説 と して[8]が
2.2.2 数 学 的 散 乱 理 論:1960年
本 で は井 川
満
生 時 のLax-Phil
あ る.)
代
シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 作 用 素 の 問 題 を と りあ え ず 二 つ に 大 別 す る と,離 散 固有 値(束 縛 状 態)に
関 す る こ と と,連 続 ス ペ ク トル(散
固 有 値 に つ い て は,摂
乱 状 態)に
関 す る こ とに 分 れ る.離 散
動級数 に よ る固有値 計 算が量 子 力学 の現場 での 基本 的な道具 で
あ る.摂
動 級 数 の 収 束 は,数
1942,純
粋 に 作 用 素 論 的 な研 究)が
動 の 問 題 を研 究 し([40],結
学 者 の 関 心 を 引 き,つ
と にF.
Rellichの 研 究(1937-
あ る.加 藤 敏 夫 は 自 己共 役 性 の 研 究 と並 ん で,摂
果 的 に はRellichと
独 立),摂
動 級 数 が漸 近 展 開 とな る
場 合 を含 む 理 論 を 構 築 し た. 連 続 ス ペ ク トル の解 析 は,ま 含 むSchrodinger方
ず 数 学 的 散 乱 理 論 と し て60年
代 に 発 展 し た.時
間を
程式
(3) の解
ψ(t)=exp(-itH)ψ(0)に
用 素(propagator, ア ン,H=-Δ+Vを W±,散
現 れ る ユ ニ タ リ 作 用 素exp(-itH)が(3)の
evolution
operator)で
あ る.H0=-Δ
発 展作
を 自 由 状 態 の ハ ミル ト ニ
実 状 態 の ハ ミ ル ト ニ ア ン と す る 散 乱 問 題 で は,波
動 作 用 素
乱 作 用 素Sは
(4)
と定 義 さ れ る.Vが
遠 方 で 十 分 小 さ くな る ポ テ ン シ ャ ル で あ る と き,Sが
作 用 素 に な る こ とが 物 理 的 に は 当 然 とさ れ る が,数 的 散 乱 理 論 の 最 初 の 問 題 で あ っ た.こ
れ は,発
ユニ タ リ
学 的 に証 明 で き るか.こ
展 作 用 素exp(-itH)のt→
れが数 学 ∞ での漸
近 挙 動 を調 べ る こ と と言 っ て も よ い. や や 専 門 的 に な る が,[17]の 素 は 弱 漸 近 完 全,さ
ら にW±
(complete),さ
ら にHが
(asymptotically
complete)と
はSが
ユ ニ タ リで,か
用 語 法 に 従 う と,Sが の 値 域 がHの
ユ ニ タ リに な る と き 波 動 作 用
絶 対 連 続 部分 空 間 に 一 致 す る と き完全
特 異 連 続 ス ペ ク トル を 持 た な い と き 漸 近 完 全 い わ れ る.物 理 的 な 言 葉 で 言 え ば,W±
つ 状 態 関 数 の ヒル ベ ル ト空 間 がHの
が漸 近完 全 と
固 有 状 態 と散 乱 状 態 の 全
体 で 張 り尽 され るれ る こ と,と 言 って よ い だ ろ う. 研 究 の 方 法 を 大 き く分 け る と,時 間 を含 む 方 法(time-dependent 的 方 法(stationary
method)が
あ る.前 者 で は,あ
波 の 伝 播 状 態 を解 析 して,exp(-itH)ψ(0)の で は 時 間 を 含 ま な いSchrodinger方 Lippmann-Schwinger方
程 式)を
近 挙 動 を調 べ る.そ
考 え,レ
れ を 用 い て,Hの
般 化 され たFourier変 る が,ス
漸 近 挙 動 に 迫 る.一
程 式Hψ(x)=Eψ(x)ま
定常
よ る物 質
方,定
常 的 な方 法
た は そ の 変 形(例
ゾ ル ベ ン ト(H-z)-1の
し て,(H-(E±i0))-1が
(極 限 吸 収 原 理),そ
method)と
く ま でexp(-itH)に
えば
実 軸近 くでの漸
何 らか の 意 味 で存 在 す る こ と を示 し
ス ペ ク トル 表 現 を 作 る.(ス
換 と思 っ て も よ い.)こ
ペ ク トル 表 現 を ラ プ ラ ス 変 換 でtに
して 完 全 性 を証 明 す る こ とが 出 来 れ ば,定
こ ま で でHの
ペ ク トル 表 現 は 一
ス ペ ク トル の 構 造 が 分
戻 してexp(-itH)の
漸近 挙 動 を解析
常 的 な 方 法 に よ る散 乱 理 論 が 出 来 あ が る.
こ の ア プ ロ ー チ はHに
よ る 固 有 関 数 展 開 と結 び つ い て お り,池 部 晃 生 に よ る 固 有 関
数 展 開 の 理 論([30])は
典 型 的 な 定 常 理 論 で あ っ た.
こ こ で,V(x)∼1/│x│a(│x│→ 短 距 離 型,0
∞,a>0)と
と き遠 距 離 型 と呼 ば れ,数
距 離 型 の 場 合 で 様 相 を 異 に す る.こ 年 頃 ま で に 段 階 的 にa>2の 成 俊[45],池 ([43])を
部 晃 生[30]),そ
経 て,加
い てS.Agmonに
の 節 で は,短
学 的 散 乱 理 論 は 短 距 離 型 の 場 合 と遠 距 離 型 の 場 合 を 見 て み よ う.1960
の後 加 藤 敏 夫 と筆 者 に よ る抽 象 的 な 定 常理 論 の研 究
藤 敏 夫 に よ りa>1な
ら ば 完 全 で あ る こ とが 証 明 さ れ([42]),続
よ り漸 近 完 全 で あ る こ とが 証 明 さ れ た([20]).Agmonの 者([46])は[43]の
仕 事 は 固有 関 数 展 開 も含 ん で お り,こ れ で2体
言 っ て よ い.a>3あ
問題 短 距離 型 は決 着 した と 終結 果 は この 時点 で
は定 常 的 な 方 法 の 開 発 に よ っ て 得 られ た こ と を強 調 して お き た い.(最 結 果 が 最 終 的 で あ っ た た め,1969年
強 調 さ れ て い な か っ た よ う に 思 え るの で,こ
方 法 は偏
流 れ に よ る 別 証 を 与 え た.
た り ま で は 時 間 を含 む 方 法 で で き た が,最
門 的 に な っ た が,Agmonの
と きVは
と き ま で波 動 作 用 素 は 漸 近 完 全 で あ る こ とが 分 り(黒 田
微 分 方 程 式 の 方 法 で あ る が,筆 Agmonの
い う場 合 を考 え よ う.a>1の
後 は か な り専
の加 藤 の結 果 が十分
の 機 会 を 利 用 し て正 させ て頂 い た.)
以 上,2体
問 題,短
距 離 型 の 場 合 の 完 全 性 の 問題 が 決 着 に 到 る過 程 を,筆 者 が か か
わ っ た 部 分 に バ イ ア ス を か け て 瞥 見 し た.こ グ ルー プ は,散
イ デ ア を 生 み 出 し て い た.そ [10]に
の 間,Leningrad(当
時)のBirmanの
乱 理 論 を作 用 素 論 と して 研 究 し,波 動 作 用 素 の 不 変 原 理 な ど多 くの ア れ も含 め て,1966頃
ま で の 進 展 は,加
藤敏夫の大著
ま と め られ て い る.読 む の が 大 変 だ け れ ど も,こ の 分 野 の バ イ ブ ル と言 わ れ
る こ と もあ る名 著 で あ る. 2.2.3
この節の 終 りに
こ こ ま で は,研
究 の 中 身 は 数 学 で あ っ た け れ ど も,少
数 学 的 基 礎 とい う こ と を意 識 して い た.筆 の 摂 動 に 関 す る最 初 の論 文(1957)と され た.筆
者 は,こ
Proceedingsの Jauchの
者 が 院 生 の 頃,加
相 前 後 して,J.
子 力学の
藤 敏 夫 の 連 続 ス ペ ク トル
Jauchの
論 文[38]が
出版
rigorの 大 切
とつ の よ り ど こ ろ を 与 え られ る よ う な気 持 ち で 読 ん だ と記
年,Jauchの60歳
の誕 生 日を記 念 して開 か れ た シ ン ポ ジ ュ ウ ムの
標 題 は"Physical
伝 統 は,Geneveを
Reality
and Mathematical
Description"で
あ る.
中 心 に 生 き て お り,そ れ は ヨー ロ ッパ 全 体 に も あ る伝 統
な の で あ ろ う.座 談 会 で も,ヨ ー ロ ッパ で は,大 と い う よ う な 講 座 が あ っ て,数 をや る,そ
M.
れ を量 子 力 学 に お け る健 全 な 形 で のMathematical
さ を 説 く もの と受 取 り,ひ 憶 し て い る.後
な く と も筆 者 は,量
学 に よ っ て はRational
学 の学 生 が 物 理 の 話 ば か り聞 い て,そ
うい う伝 統 も あ る の で は な い か,と
Mechanics
して 数 学 の研 究
い う話 が で た.
2.3 70年 以 降 の 数 学 的 散 乱 理 論 2.3.1
1960年 1969年
1970年
代 にな って
代 の 終 り近 く な る と,数
に はC.
H. Wilcoxの
か れ る ま で に な っ た([43]は
学 的 散 乱 理 論 の 研 究 者 の 数 も段 々 増 え て き て,
肝 い りでArizonaのFlagstaffでSummer そ こ で の 連 続 講 演 に 基 づ く).そ
っ て 研 究 者 の 数 が 急 に 増 え る.[10]が Agmonと
新 人B.
Simonの
Schoolが して,1970年
登 場 の お 陰 で あ ろ うか.1950,1960年
々か ら見 る とち
あ る くら い で あ っ た.そ
仕 事 が 出 た わ け で あ る.)B.
わ り頃 か ら論 文 を 書 き始 め たPrinceton出
身 の 秀 才 で あ る.A.
然 物 理 の 感 覚 は豊 富 だ け れ ど,書
識 に加 え て,本
用素
か し60年 代 の 研 究 は 作 用 素 論 中 心 の もの が 多 く,
偏 微 分 方 程 式 ら しい 方 法 に よ る 研 究 は[30]が
だ そ う で,当
の旗 手 の一人
用 素 の研 究 を始 め た とい う こ と で,Schrodinger作
ょ っ と癪 な こ と な の で は あ る が,し
家
代 は偏微 分 方程 式
が 偏 微 分 方 程 式 の 一 般 舞 台 に 迎 え られ た と い う感 が な く も な い.(我
方 程 式 の 方 法 に よ るAgmonの
代 にな
じ わ じ わ と浸 透 し て き た の に 加 え て,大
の 一 般 的 な 理 論 が 関 数 解 析 や 超 関 数 を使 っ て大 進 歩 し た 時 代 だ っ た.そ のAgmonがSchrodinger作
開
こへ,偏
Simonは1960年 S. Wightmanの
微分
代 の終 弟子
い た もの は 最 初 か ら数 学 で あ る.超 博
質 的 な も の に対 す る 嗅 覚 は 鋭 い が,そ
れ が 難 し い こ とで あ る と き,場
合 に よ っ て は 一 般 性 を 少 し犠 牲 に して も,要 う とい う術 に 長 け て い る.[17]が
点 を抜 き 出 し て上 手 に 易 し く書 い て し ま
完 成 した の は70年
た 皆 さ ん の 世 代 が 論 文 を 書 き始 め られ た の が,70年 い よ 華 や か な70,80年 2.3.2
Enssの
代 終 り近 く,座 談 会 に 出 て頂 い 代 に 少 し入 っ た 頃 か ら で,い
よ
代 の 幕 開 け で あ る.
理 論 とMourre評
価
先 に,2体
問 題 短 距 離 型 は 定 常 理 論 で 決 着 し た と 書 い た.こ
Schwinger方
程 式 の 流 れ で あ っ て,物
れ は,Lippmann-
理 的 に も 出 所 正 しい もの で あ る は ず だ が,数
学 の 証 明 を詰 め て い く と相 当 に 複 雑 に な り,数 理 物 理 をや っ て い る物 理 学 者 達(特
に
ヨー ロ ッパ の)は
に
ドイ ツ のV.
こ れ に 不 満 で あ っ た ら しい .そ れ に 応 え る か の よ う に,1978年
Enssが2体
短 距 離 型(続
提 唱 した([24]).Enssの
方 法 は,波
metric
methodと
い て遠 距 離 型)を
束 の 運 動 を 配 位 空 間 で 追 う も の で,そ
呼 ば れ て い る.geometric
ろ う とい う期 待 は 世 に あ っ た よ う で,当 ZurichのHunzikerはEnssの
時 間 を含 む 方 法 で 扱 う理 論 を
methodが
時Zurichに
走 り出 せ ば,そ
の 後geo
れ は有効 で あ
お られ た 谷 島 賢 二 さ ん に よ る と,
仕 事 が 出 る と時 を お か ず に そ れ を3体
問題 に応 用 した
そ う で あ る. 60年 代 の 散 乱 理 論 は,抽 素 に 応 用 す る こ とでW±
象 的 な 作 用 素 論 と し て 発 展 し,そ
の 完 全 性 を証 明 し た.し
を 非 摂 動 作 用 素,V=V(x)を の 中 の位 置xが た.(抽
か し,抽 象 論 で は,H0=-Δ
摂 動 作 用 素 と捉 え る だ け で,H0の
象 論 を 応 用 す る と き に 使 うFourier変
換 とか,Sobolev型 に 提 唱 さ れ,そ
mateの
方 法 と して 多体 問題 を 含 め て 広 く用 い ら れ るE.
mateの
理 論([49])は
の 不 等 式 を通 して の 後Mourre
esti
Mourreのcommutator
esti
そ こ を巧 妙 に 突 い て 作 用 素 論 的 な 枠 組 み を与 え た も の で, ・x)/2iと し
で あ る.
2.3.3 遠 距 離 型 ポ テ ン シ ャ ル,多 短 距 離 型2体
∼-ξ2
中 の 運 動 量 ξ とV
程 式 に 応 用 す る と き に 基 本 と な る 公 式 はA=(x・∇+∇
て,[-Δ,iA]=-2Δ
多体 問 題,遠
用
正 準 交 換 関 係 を 満 た す 変 数 で あ る と い う こ と は 取 り入 れ て い な か っ
間 接 的 に 取 り入 れ て い た と は 言 え るが.)1981年
Schrodinger方
れ をSchrodinger作
問 題 が 片 付 い た 後,数
体 問題 学 的 散 乱 理 論 は,遠
距 離 型 多体 問 題 へ と進 み,難
の 波 動 作 用 素W± 場 合 はexp(-itH)ψ に 漸 近 す る が,遠
は最 早 存 在 せ ず,修 はt→
距 離 型2体
問 題,短
距離 型
度 を上 げ て い く.遠 距 離 型 に な る と,(4)
正 波 動 作 用 素 を考 え ね ば な ら な い .短 距 離 型 の
∞ の と き,自
由 運 動exp(-itξ2)ψ+(ξ
距 離 型 の 場 合 は 変 形 さ れ た 運 動exp(-iS(t,ξ))ψ+に
は 運 動 量 変 数) 漸近するの
が 根 本 的 な違 い で あ る. 遠 距 離 型 に な る と,条 件V(x)∼1/│x│aの 要 に な る が,こ
ほ か に,Vの
導 関 数 に 関 す る 条 件 も必
こ で は 詳 細 に は 立 ち 入 ら な い.定 常 理 論 に つ い て は1970年
極 限 吸 収 原 理 が 証 明 さ れ(池
部 晃 生,斉
藤 義 実[31]),ス
代前半に
ペ ク トル 表 現 も構 成 さ れ
(ま とめ は[54]),ま 月
清,内
山
た 振 動 す る 遠 距 離 型 ポ テ ン シ ャ ル の 問 題 な ど も研 究 さ れ て(望
淳[48]),Hの
スペ ク トル の構 造 は 明 らか に な っ た が,こ れ が 直 ち に
修 正 波 動 作 用 素 の 完 全 性 とは 結 び つ か な か っ た.遠
距 離 型 で は,時
常 的 方 法 との 関 係 は 短 距 離 型 の と き ほ ど直 接 的 で は な い.修 つ い て の 研 究 は[44],[32]を
経 て,Enssの
理 論 が 出 た 頃 か ら 急 速 に 加 速 し,そ
80年 代 に わ た っ て 多 くの 研 究 が な され た 結 果,完 Hormander,北
N体
田
均,磯
崎
方 に 飛 び 去 る とい う状 態(channel)が に な る.波
展 し た の は,Enssの methodに
現 れ るの で,波
([9]の
動 作用 素 の構 造 は一 挙 に複 雑
問 題 に つ い て は,60年
代 に も い くつ か の研 究 が あ っ た が,多 方 法 以 降 で あ る.そ
詳 し い.N体
にN体
書[3]に
代 のL.D.Fad
ら にtime-dependent 詳 し く書 か れ て い る.
の 完 全 性の 発 展 の ス トー リー は[3]の6.0節
近 距 離 型 の 完 全 性 の 最 初 の 証 明 はI.SigalとA.Sofferに
書 き 方 が 分 り難 く,プ [57],[59]の
証 明 も 出 て,Sigal-Sofferの
に
よ る([55]).
レ プ リ ン トの と きか ら 物 議 をか も し て い た が,そ
場 合 も研 究 さ れ([23]),90年
の場合 と
体 の完 全性 が 急 速 に発
れ に つ い て は(さ
よ る 散 乱 理 論 の 研 究 全 般 に つ い て は)成 出 版 も待 た れ る.)特
こ で は,
け を挙 げ て お く.
動 作 用 素 の 存 在 は 早 くか ら分 か っ て い た が,完 全 性 の 証 明 は2体
研 究 の後,70年
の後
の 粒 子 が 幾 つ か の ク ラ ス ター に 分 れ て 遠
は 比 べ も の に な ら な い く らい 複 雑 に な る.3体 deevの
全 性 の 問 題 は 片 付 い た.こ
洋 ら に よ る[25],[28],[34]だ
問 題 に な る と,漸 近 状 態 と してN個
間 を含 む 方 法 と定
正波 動作 用素 の完 全性 に
ア イ デ ア も評 価 さ れ,さ
代 初 め に は 決 着 を見 た よ うで あ る.な
の 後[27],
らに遠 距 離 型 の お,多
体 問題 の
波 動 作 用 素 の 完 全 性 の 証 明 の 中 で は,次 節 で 述 べ る 固 有 関 数 の 指 数 型 減 衰 評 価 が 重 要 な 役 割 を す る. 70年 以 降 の 多 体 問 題 で は,完 全 性 の 証 明 は 時 間 に よ る方 法 を 用 い る と こ ろ が 多 く, 多 体 に つ い て の 統 一 的 な定 常 理 論 は 未 開 拓 で あ る.定
常 理 論 に はHの
スペ ク トル 表
限 に加 え て 散 乱 作 用 素 の ス ペ ク トル 表 現 を与 え る とい う メ リ ッ トが あ り,磯 崎 ん の3体
に 関 す る最 近 の 結 果([33])が
2体 の 場 合,完
全 性 の 証 明 がa>2か
の に 比 べ る と,70年
注 目さ れ る. らa>1ま
で い くの に ほ とん ど10年
以 降 の ス ピ ー ドは 眩 暈 が す る く ら い で あ る.し
は あ る 出 席 者 か ら,「10年
洋さ
か か っ て ゆ っ く り進 ん で よ か っ た,そ
かかった
か し,座
談会 で
の お 陰 で定 常 理 論 が
出 来 た か ら.定 常 理 論 が 好 き な ん で す.」 とい う感 想 が 述 べ ら れ た こ と も記 し て お こ う. 2.4 こ こ ま で,波
Schrodinger作
用 素 の数 理 の 展 開
動 作 用 素 の 完 全 性 を 中 心 に 数 学 的 散 乱 理 論 の 流 れ を述 べ た.こ
が,い
っ と きSchrodinger方
が,そ
れ が 遠 距 離 型,多
の流 れ
程 式 の数理 の発 展 の牽 引 車 で あ っ た こ とは事 実 で あ る
体 問 題 の 研 究 と深 く潜 行 して 目標 に 立 ち 向 か っ て い る 間 に,
そ の 周 り で はSchrodinger方
程 式 の 数 学 の 多 面 的 な 研 究 が 進 行 し て い た.万
よ う に 花 開 い た そ の 全 貌 を紹 介 す る こ とは とて も出 来 な い.紙
華鏡の
数 も尽 きて き た の で,
勝 手 に 選 ん だ 幾 つ か の ト ピ ッ ク ス を 項 目 的 に 並 べ て 責 を 塞 ぐ こ と に し た い. (Schrodinger方 愛 す る.ま
程 式 に 限 り,Dirac方
た,引
程 式,最
近 盛 ん なPauli方
用 文 献 は 各 トピ ッ ク ス で 代 表 的 な もの の う ち,わ
程 式 な どは 一切 割 ず か な例 外 を 除 い
て 日本 か ら の もの に 限 っ た.) 2.4.1 固 有 値,固
有 関数
散 乱 理 論 は 連 続 ス ペ ク トル の 構 造 の 研 究 で あ っ た.そ (固 有 値,固
有 関 数)の
研 究 は,そ
れ と対 を な す 離 散 ス ペ ク トル
れ 自体 の 興 味 だ け で な く,散 乱 理 論 の 展 開 の 中 で
要 とな る 情 報 を提 供 す る こ と もあ る. Schrodinger作
用 素 の 正 の 固 有 値 の 存 在 に つ い て のvon-NeumannとWignerの
(V(x)∼(csinr)/r)は
例
ぎ り ぎ りの 例 で,V(x)=o(1/r)に
な る と正 の 固 有 値 は 存
在 しな い こ とが 加 藤 敏 夫 に よ っ て 証 明 さ れ た([41]).物
理 学 者 に は 「期 待 通 り」 と
片 付 け ら れ る か も知 れ な い が,こ
の 研 究 は 発 表 当 時 偏 微 分 方 程 式 の 理 論 と して 難 しい
もの の 一 つ で あ っ た と い っ て も よ い だ ろ う.こ
こ で 問 題 に な る の は 固 有 関 数 の│x│
→ ∞ に お け る 減 衰 度 を下 か ら評 価 す る こ と で あ る .逆 に,負 (束 縛 状 態 の 波 動 関 数)の
が 証 明 さ れ る.同 な お,近
の 固 有 値 の 固 有 関数
減 衰 度 を上 か ち評 価 す れ ば 固 有 関 数 の 指 数 型 減 衰
年 正 の 固 有 値 の 不 存 在 や,固
じ減 衰 の 問 題 で も手 法 は 異 な る([1])
有 関 数 の 指 数 型 減 衰 を示 す の に,Mourre評
. 価
を用 い た よ り簡 単 な 方 法 が 得 られ て い る. 固 有 値 に つ い て は,連
続 スペ ク トル の 下 に あ る 固 有 値(真
の 束 縛 状 態)の
数 が有 限
か 無 限 か と い う 問 題 と,固 有 値 の 漸 近 分 布 の 問 題 が あ る.多 体 問 題 に 関 す る 固 有 値 の 数 の 問 題 に つ い て の 研 究 は 古 くか ら あ り,ま た イ オ ン に つ い て は[58]が 分 布 の 問 題 はE→
∞ ま た はE→0の
と き の 固 有 値 の 分 布 の 問 題 で あ る.有 界 領 域 に
お け る 境 界 値 問 題 の 固 有 値 の 漸 近 分 布 はH. 領 域 に お け るSchrodinger作
あ る.漸 近
Weyl以
用 素 に つ い て は,負
来 の 古 典 的 問 題 で あ る が,無 の 固 有 値 が0に
限
集 積 す る と き の0
の 近 くで の 漸 近 分 布 が 新 しい 問 題 と な る.こ の 問 題 は 田村 英 男 ら に よ っ て 徹 底 し て研 究 さ れ た([56]). 2.4.2 伸 張 解 析 性 と レ ゾ ナ ン ス ポ テ ン シ ャ ル が 伸 張 解 析 性(dilation
analyticity)と
呼 ば れ る性 質 を もつ 場 合,こ
れ を利 用 して ス ペ ク トル の 部 分 を分 離 した り,連 続 ス ペ ク トル に 埋 め こ ま れ た 固 有 値 が 摂 動 に よ り消 滅 す る 問 題(レ [22]).ク
ゾ ナ ン ス)を 解 析 し たり す る こ と が 出 来 る([21],
ー ロ ン ・ポ テ ン シ ャ ル は 伸 張 解 析 性 を も ち,こ
され て い る.
の 方法 は色々 な局 面 で利用
2.4.3
漸
近 解
析
散 乱 理 論 の 研 究 で は,往
時 は作 用 素 論 的 な 方 法 が 主 流 で あ っ た がEnss以
トが 漸 近 解 析 的 な 手 法 に 移 っ た 感 が あ る.定 常 位 相 法(stationary や,さ
来ウエイ
phase
method)
ら に 進 ん だ漸 近 解 析 の 手 法 に よ り古 典 力 学 で粒 子 が 入 れ な い 領 域(classically
forbidden
region)に
お け る波 束 の 大 き さ を評 価 す る の で あ る.さ
ら に 漸 近 解 析 は,
量 子 力 学 の 数 理 物 理 全 般 に亘 っ て 有 力 な 手 段 と な っ て お り,準 古 典 近 似([61],[53] な ど),ト
ン ネ ル 効 果,レ
研 究 が あ る.(漸
ゾ ナ ン ス(中
村
周[52],[51]な
近 解 析 の 手 法 に つ い て は[4]が
2.4.4 時 間 発 展 の 基 本 解,非 Schrodinger方
自励 系,Feynman積
程 式 の 解exp(-itH)ψ(0)を
る研 究 で あ る.Feynman積 る結 果([26])は,作
に 亘 っ て 多 くの
分
表 す 基 本 解 の 構 成 と そ の 性 質 を調 べ
分 の 数 学 的 研 究 を動 機 とす る と推 測 さ れ る藤 原 大 輔 に よ
用 素 論 的 な研 究 で も よ く利 用 さ れ る.Feynman積
を数 学 的 に 完 全 に 記 述 す るの は,困 は 成 書[5]に
ど)等
あ る.)
分 その もの
難 な 問 題 で あ る よ うだ が 漸 近 解 析 も駆 使 した 成 果
ま とめ ら れ て い る.
時 間 発 展 に つ い て は さ らに,ポ 問題 が あ る.ポ
テ ン シ ャ ル が 時 間 を含 む 場 合 に 時 間 発 展 を解 析 す る
テ ン シ ャ ル が 時 間 周 期 的 な場 合 な どが 研 究 さ れ て い た が,最
本 解 のregularity-singularityと
谷 島 賢 二 の研 究 が 注 目 され る(総 説 と し て[63]).Schrodinger型 (熱 方 程 式 型)の
近 では基
ポ テ ンシャル の 無 限遠 で の増 大度 との関 係 を調べ る
話 に な るが,最
で は な く,放 物 型
近 密 に 研 究 され た トピ ッ ク ス と し て,Kato-Trotter
の 公 式
(ま た は そ
の 対 称 型,A,B>0)の
ノ ル ム 収 束 の 研 究 を 挙 げ て お く(一
瀬
孝,田
村 英 男
[29]). 2.4.5
電 磁 場 付 きSchrodinger作
ポ テ ン シ ャ ル が 静 電 場 の 項E・xを ク トル 理 論,散
用素
含 むSchrodinger作
乱 理 論 に つ い て は70年
代 後 半 に[60]を
時 間 に つ い て 周 期 的 な 電 場 μE・xcosωtを [62]に Stark場
始 ま り,レ
ゾ ナ ン ス の 現 象(イ
用 素(Stark効
果)の
スペ
含 む 幾 つ か の 研 究 が あ る.
か け た と き(AC-Stark オ ン 化 の 問 題)等
effect)の
研究は
が 研 究 さ れ て い る.AC-
中 の 多 体 系 の 散 乱 問 題 は 未 解 決 で あ る.
磁 場 を含 むSchrodinger作 operatorと
呼 ば れ る.そ
が な さ れ て い る.例 ([36],[37])定
用 素-(∇-iA(x))2+V(x)はMagnetic
え ば スペ ク トル の 離 散 性,絶
元 磁 場 に つ い て のAharonov-Bohm効
([35]な
ど).磁
ど.こ
こ数
果 の 数 理 の 研 究 が 注 目 を集 め て い る
場 中 の 多 体 系 の 散 乱 問 題 に つ い て は[6]に Problemsと
くの 研 究
対連 続性 につ いて の岩 塚 明 の研 究
磁 場 の と きの 固 有 関 数 の 指 数 型 減 衰 に つ い て の[50]な
年 は2次
ter7はOpen
Schrodinger
の ス ペ ク トル 構 造 に は 色 々 面 白 い こ と が あ り,多
い う題 で,Challengingで
詳 し い.こ
の 本 のChap-
は あ る が 難 し そ う な11個
の未
解 決 問 題 が 並 ん で い る. 2.4.6 物 質 の 安 定 性 上 述 の もの と少 し性 格 が 違 い,物
理 の 観 点 に よ り強 く結 び つ い た 研 究 で,E.
が 長 年 リー ドし て き た もの で あ る.K個 と す る,例
え ば 〓92)とN個
ロ ン 型)の
基 底 状 態 の エ ネ ル ギ ーE0に
が 成 り立 つ と き,系
の 原 子 核(核
の 電 子(フ
の 質 量 は 無 限 大,電
ェ ル ミオ ン)か
ら な る 系(相
い う評価
れ をwith
full
rigorで 証 明 す るの で あ る.フ
ェ ル ミオ ン で あ る こ とが 本 質 的 で,ボ
cN5/3(c>0)と
分 りや す い レ ビ ュ ー.)
2.4.7
な る.([47]は
mathematical ソ ン だ とE0〓-
その他の 問題
これ ま で に 言 及 し な か っ た 大 き な 問 題 と して,逆 ら ポ テ ン シ ャ ル を 決 定 す る 問 題)や,ラ が 確 率 変 数 で あ る と き,ほ ペ ク トル に な る,と る.前
互 作 用 は クー
対 し て,E0〓-c(N+K)(C>0)と
の 安 定 性 が 示 さ れ た と考 え,こ
Lieb
荷 は有 界
問 題(散
ン ダ ム ・ポ テ ン シ ャ ル の 問 題(ポ
崎
洋 さ ん の 肝 い りで2002年
在 と 関 係 す る)な
数 理 物 理(Mathematical
数 理 物 理 に 限 っ て も,人
Physics)と
どが あ
秋 に京都 で国 際会 議が 開 か れ
た ば か りで あ る し,後 者 で は 小 谷 真 一 の研 究 が あ るが,本
終 り に
テ ンシ ャル
とん どす べ て の ポ テ ン シ ャ ル に 対 して ス ペ ク トル が 純 点 ス
い う よ う な こ と を 研 究,Anderson局
者 につ い て は,磯
乱 振 幅 等 の 散 乱 デ ー タか
稿 で は こ れ 以 上 触 れ な い.
い う 言 葉 の 理 解 は,量
子力学の
に よ っ て さ ま ざ ま で あ る.量 子 力 学 はSchrodinger方
程式
と い う数 学 的 な表 現 の 上 に 立 つ 理 論 だ か ら,多 少 と も理 論 的 な 考 察 は す べ て 数 理 物 理 だ と い う論 も あ る が,こ Schrodinger方
れ は い さ さ か 極 論 で あ ろ う.一
方,そ
程 式 の もつ 豊 富 な 内 容 か ら 引 き 出 され た 問 題 が,数
の 対 極 と し て, 学 と して 面 白 く本
質 的 な 意 味 を持 つ な ら ば,物 理 に役 立 つ とい うよ う な こ とは 気 に せ ず に どん どん や り ま し ょ う,と い う の が 筆 者 の 立 場 で あ る.も が 発 展 し て数 学 的 に 価 値 が 高 い が,物 て き た な ら ば,そ Quantum
れ は(数
Dynamicsか
っ と極 論 す れ ば,物
理 か ら 出 て きた 問 題
理 学 者 は 何 をや っ た ん だ と仰 る よ うな 結 果 が 出
学 の 側 か ら 見 て の)理
想 的 な 数 理 物 理 か も し れ な い.
ら 引 き 出 せ る数 学 が ま だ ま だ あ る の で は な い か,と
い うのが
座 談 会 で の 一 つ の 見 解 で あ っ た. Sirnonの[19]は,[18]の
姉 妹 編 と し て 彼 の 目 か ら 見 たOpen
べ た も の で あ る が,具 Problem 第1原
13は"…
体 的 な 問 題 か らvague
…, prove
exist
from
vaguer
Problemsを15並 problemと
first quantum
理 か ら き っ ち り と 導 く こ と に 価 値 を 置 く の で あ ろ う.[17]の
で こ う も 言 っ て い る."one derive
crystals
problem,
it from
first
こ の 好 例 で あ ろ う.(念
does
principles."先
not
fully
understand
に 挙 げ たLiebの
の た め に 付 け 加 え る が,文
a physical
進 ん で,
principles"で
あ る.
第IV巻 fact
until
の序 文 one
can
物 質 の 安 定 性 に 関 す る研 究 は, 脈 か ら み てSimonはmathematical
rigorに
と ら わ れ な い理 論 物 理 の 進 め 方 を 否 定 し て い る わ け で は な い.)
Mathematical い い ん だ .こ
rigorに こ だ わ る,こ
だ わ ら な い,さ
の よ うな さ ま ざ ま な 立 脚 点,こ
ら に は 数 学 と して 面 白 け れ ば
れ らが 互 い に他 を否 定 す る の で は な く,
む し ろ そ れ ぞ れ に 固 有 の 価 値 を 認 め あ い 共 有 す る こ と の 上 に,量 の,一
つ の サ イ エ ン ス あ る い は 文 化 と し て の,ま
念 しつ つ こ の 稿 を閉 じ た い.(筆 名 誉 教授.1932年
子 力学 の数 理 物 理
す ま す 発 展 が あ る と信 じ,そ れ を 祈
者=く ろ だ ・しげ と し,学 習 院大 学 名 誉 教 授,東 京大 学
生 まれ,1955年
東 京大 学理 学部 卒 業)
参考 文 献 参考 文 献[19]ま
で は本 また は全 体 に わ た る レ ビュ ー,[20]以
降 は 原 著 論 文 また は 分 野
別 の レビ ュー,講 義録 な ど. 1)
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on
equations:bounds cal 2)
on
exponential
decay
eigenfunctions
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of
of
to
of
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Differential
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Nakamura,S.:Lecture
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Yajima,K.:数
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学50(1998)368-384.
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Sect
IA
26(1979)377-390;28(1981)1-15.
3. マ ク ス ウ ェ ル の悪 魔 と量 子 計 算 機 の歴 史 細
3.1
は
じ
め
谷
暁
夫
に
本 書 の タ イ トル に あ る 「現 代 物 理 学 の 歴 史 」 と い う文 脈 の 中 で 量 子 計 算 の 歴 史 を考 え る と,物 理 学 上 の 一 本 の 地 下 水 脈 が 地 上 に 現 れ て大 きな 流 れ に な っ て い く様 子 が わ か り興 味 深 い.も 意 図 を持 っ てa
ち ろ ん,歴
史 と い う もの は 事 実 の 羅 列 で は な く,将 来 に つ い て あ る
posterioriに 過 去 を語 る もの で あ る以 上,多
少 の主観 が入 るこ とは容
赦 して い た だ き た い. 意 外 に 思 うか も し れ な い が,量 Maxwellの3人
子 計 算 機 の 歴 史 をA.TuringとA.EinsteinとJ.C.
か ら 説 き起 こす 人 が 多 い の で あ る.Turingが
あ る こ と は 言 を待 た な い し,Einsteinに
計 算 機 科 学1)の 元 祖 で
つ い て はEinstein-Podolsky-Rosenの
パ ラ
ドッ ク ス2,3)の中 に で て く るエ ン タ ン グル メ ン トが 量 子 情 報 理 論 の 中 心 的 な 概 念 で あ る こ と を知 っ て い れ ば 驚 か な い が,Maxwellに
つ い て は い さ さ か 説 明 を要 す る だ ろ
う. 実 は,1867年 1871年
に,MaxwellがP.G.Taitに
の教 科 書 「Theory
of Heat」 の 末 尾 で触 れ て い る熱 力 学 第2法
し れ な い か の 有 名 な るMaxwellの の は,1929年
のL.Szilardの
宛 て た 手 紙 の 中 で は じめ て 言 及 し,
悪 魔 な の だ.こ
論 文4)か ら で あ る*1.Maxwellの
ー ジ ョ ン に つ い て は あ ち こ ち 図 入 りの 解 説*2が あ る し ,以 い の で,周
悪 魔 の オ リジナ ルバ 下 の 話 に は直 接 関 係 しな
知 の こ と と し て こ こ で は 再 説 し な い.Szilardは,問
子 が一 個 だ け 入 っ て い る 温 度Tの
則 を破 る か も
の 悪魔 につ い ての理 解 が深 ま った
題 を 簡 単 化 し て,分
熱 浴 と接 触 して い る シ リ ン ダ ー を 考 え た.シ
ダー の 真 ん 中 に は 必 要 に 応 じ て 仕 切 を取 り付 け る こ とが で き る とす る.そ ひ も を取 り付 け,そ も とに,以
リン
の仕切 に は
の ひ もの 先 に は お も りが ぶ ら下 が っ て い る と し よ う.こ の 設 定 の
下 の 操 作 を考 え よ う(図1).
(1) 温 度Tの
熱 浴 と接 触 し て い る長 さL,単
位 断面 積 の シ リンダー に分 子 が一
個 だ け 入 っ て い る状 態 を初 期 状 態 とす る. (2) 真 ん 中 に 仕 切 を挿 入 す る. *1 Einsteinと
共 同 で冷 蔵 庫 に 関 す る特 許 を取 得 した事 も あ るSzilardは
,彼
を 説 得 し て ル ー ズベ
ル ト大 統 領 宛 て に 原 爆 製 造 を促 す 手 紙 を書 かせ た 人 物 と して も歴 史 に名 を留 め て い る. *2 時 代 に よ っ て 悪 魔 の イ ラス トが 変 遷 す るが ,H.S.Leff and A.F.Rexの 編 集 した 奇 書5)に 一部 紹 介 さ れ て い る.
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
図1
(3) 悪 魔 が,仕 (4)
切 の ど ち ら側 に 分 子 が あ るか を観 測 して 判 定 す る.
そ の 判 定 が,右 あ れ ば,反
ジ ラー ドエ ン ジ ン
と あ れ ば仕 切 を左 に 準 静 的 に左 の 端 ま で 移 動 す る.ま た 左 と
対 に 仕 切 を右 に 準 静 的 に 左 の 端 ま で移 動 す る.分
く こ とに よ る圧 力 が 仕 切 を押 し,重 (5)
い ず れ の 場 合 に も,シ
子 が仕 切 を た た
りを 持 ち上 げ る 仕 事 をす る の で あ る.
リ ン ダー の 状 態 は(1)に
戻 る.
一 見 す る と ,上 の サ イ ク ル を繰 り返 す と第2種
永 久 機 関 が で き る よ うな 気 が す る.
こ の パ ラ ドッ ク ス を解 く鍵 は,等
よ る仕 事 を計 算 す る と得 られ る.す
温 過 程(4)に
な わ ち, (1) Szilardは
第2法
は ず だ と考 え た.こ
則 を 救 う た め に は,悪 魔 の 操 作 がkBTlog2以
上 の仕 事 を要 す る
れ を 情 報 科 学 を 多少 わ き ま え た 現 代 的 な 言 い 方 を す れ ば,分
子が
左 右 ど ち ら に あ るか は 悪 魔 に 取 っ て 観 測 す る ま で 未 知 で あ る の で そ の 情 報 エ ン トロ ピ ー はkBlog2で
あ る.(こ
の 部 分 は 後 で 述 べ る量 子 バ ー ジ ョ ン で よ り明 示 的 に な る.)
こ れ を 熱 力 学 の エ ン トロ ピー だ と思 え ば 第1法 て 仕 事 を し な け れ ば な ら な くな る.そ ン トロ ピー とC. E. Shannonの
則 か らkBTlog2だ
の 後,1947年
にL.
け悪 魔 が 系 に対 し
Brillouinが,物
理的なエ
意 味 の 情 報 エ ン トロ ピー を大 胆 に も 同 一 視 し て,悪 魔
の行 う観 測 に は エ ン トロ ピー の 増 大 が 伴 う と い う主 張 を して,賛 理 学 者 に 議 論 を引 き起 こ した.そ
の 中 で,R.
Landauer7)とC.
否 を含 め て 多 くの 物 H. Bennett8)の
よ り,悪 魔 の 行 う判 定 は 可 逆 で あり エ ン トロ ピ ー の発 生 を伴 わ な い が,判
仕事 に
定 を行 っ た
悪 魔 の メ モ リー を リセ ッ トす る た め に エ ン トロ ピー の 発 生 が 起 き る こ と を明 らか に し て,問
題 の 核 心 が ピ ン ポ イ ン トさ れ た.こ
こ で 肝 心 な こ とは 悪 魔 が<物
処 理 あ る い は計 算 を行 っ て い る こ と で あ る.計
理 的 に>情
算 そ の も の は 可 逆 で あ り得 る.た
サ イ クル と して 繰 り返 す 目的 で 初 期 状 態 に戻 る 必 要 が あ れ ば,そ
報
だ,
の 段 階 で メ モ リー を
リセ ッ トす る た め に エ ン トロ ピー を外 界 に放 出 す る 必 要 が あ る. 3.2 Szilardの
ジ ラ ー ドエ ン ジ ン の 量 子 バ ー ジ ョ ン
思 考 実 験 の 量 子 バ ー ジ ョ ン はW.
H. Zurek6)に
よ っ て為 さ れ た.簡
単に
紹 介 し よ う.始 状 態 に お け る分 子 の 状 態 を 表 す 密 度 行 列ρ を カ ノ ニ カ ル分 布:
と し よ う.た だ し,mは の 座 標 で あ る.Zは
分 子 の 質 量 で,x∈[0,L]は
分 配 関 数:
シ リ ン ダ ー に沿 っ て 測 っ た 分 子
で あ る.仕 切 を入 れ る と,分 子 の状 態 は
(2) と遷 移 す る.た
だ し,
で あ り,ρr(L/2)も
と し て,同 様 に 定 義 で き る.
こ こ で 悪 魔= 検 出 器 の 状 態 を,「 分 子 が 左 」 を 表 す│Dl>「 |Dr>の2レ
ベ ル 状 態 と し て お こ う.初
分 子 が 右」 を表 す
期 状 態 と し て は,た
と え ば,
を選 ぼ う.古 典 的 な ジ ラー ドエ ン ジ ン に 対 応 す る 量 子
状 態 の 遷 移 は 以 下 の よ う に な る. (1)
初 期 状 態:
(3)
(2) 真 ん 中 に 仕 切 を挿 入 す る.
(4) (3) 悪 魔 が,仕
切 の ど ち ら側 に 分 子 が あ る か を 判 定 す る.
(5) こ の プ ロ セ スは 測 定 を 必 要 とせ ず,ユ
ニ タ リー 変 換 で 行 え る*3.
(4) 判 定 に し た が っ て,仕 切 を端 ま で 準 静 的 に 移 動 す る.
(6) (5)
シ リ ン ダ ー の 状 態 は 元 に 戻 るが,検
出 器 の 状 態 は元 に 戻 っ て い な い.検
の 状 態 を 元 に 房 す:
出器
に は エ ン トロピー を
kB log 2だ け 熱 浴 に 放 出 し な け れ ば な ら な い.そ
の た め に 必 要 な仕 事 は,得
した は ず
の 分 を キ ャ ン セ ル す る*4. 上 の,第3ス
テ ッ プ が す な わ ち計 算 で あ る.一
般 に,
をf
(a)を 計 算 す る遷 移 とみ な す が,こ
れ が ユ ニ タ リー 変 換 で 可 能 な こ とは コ ロ ン ブ ス の
卵 的 で あ る が,す
方,第5ス
ぐ理 解 で き る.他
テ ップ が,悪
魔 の メ モ リー を リセ ッ ト
す る不 可 逆 過 程 で あ る. 3.3 以 上 が,量
量 子 計 算機 の歴 史
子 計 算 の い わ ば 前 史 で あ る.こ れ か ら派 生 して,可
プ ロ セ ス だ け で 計 算 が で き る か,と 達8)に よ り議 論 さ れ て,肯
い う問 題 が60年
定 的 に解 決 さ れ た.1980年
け る情 報 処 理 量 と消 費 エ ネ ル ギ ー の 関 係 を調 べ て,量
逆(reversible)な
代 か らLandauer7)とBennett にP.
Benioff9,10)が,計
算にお
子 計 算 な らば 計 算 が 可 逆 な の で
原 理 的 に は エ ネ ル ギ ー を全 く消 費 し な い で 計 算 が で き る こ と を 述 べ て い る.R.
P.
Feynman1,11)が,晩
子
年,量 子 計 算 に 熱 心 だ っ た こ とは 有 名 で あ る.Feynmanは,量
力 学 的 問 題 に は 量 子 計 算 機 の ほ うが 普 通 の 計 算 機 よ り も速 い は ず だ と考 え て い た.こ の 段 階 ま で は,量
子 計 算 と言 っ て も,│a>│0>→│a>│f(a)>の
レベ ル の 研 究 で あ
っ た.
*3 こ の 場 合 の ユ ニ タ リ ー 演 算 子 は
*4 こ の プ ロ セ ス を計4回 途 中 で
や れ ば 元 に 戻 る と思 うか も しれ な い が ,そ の よ う な状 態 が現 れ るが,仕
気 体 を圧 縮 す る方 向 に なり エ ン ジ ンは 止 ま っ て しま う.
う で は な い.続
け て い く と,
切 を 「間違 っ た方 向」 す な わ ち一 分 子
しか し,量 子 計 算 機 を,重 ね 合 わ せ の 原 理 に よ る並 列 計 算 を行 う量 子 テ ュ ー リン グ マ シ ン と して 明 確 に 定 式 化 し た の はD.Deutsch12)で 列 的 に計 算 をす る と言 う こ とは,上
あ る.重 ね 合 わ せ を使 っ て,並
の例 で言 えば
(7) を行 う こ とで あ る.出 力 状 態 が 量 子 的 な エ ン タ ン グ ル ド状 態 に な っ て い る こ とか ら, 量 子 並 列 計 算 は 物 理 的 に 非 自 明 な こ と を行 っ て い る と 言 え る し,後 子 計 算 の 速 さ と も関 係 す る*5.さ
ら に,D.Deutsch達
は,量
で述 べ る よ うに 量
子 テ ュ ー リン グ マ シ ン と
現 実 の ハ ー ドウ ェ ア をつ な ぐ中 間 的 な 概 念 で あ る量 子 回 路 も定 式 化 し,1ビ ニ タ リー 変 換 と以 下 に 述 べ る2ビ
ッ トの 制 御NOT
(controlled-NOT)と
ー トで 任 意 の ユ ニ タ リー 変 換 が 実 行 で き る こ と を示 し た13) .制 御NOTは
ッ トの ユ 呼ば れ るゲ
後 で述べ る
よ うに,エ ン タ ン グル メ ン トを作 る操 作 を す る の で,計 算 す る ゲ ー トと 言 っ て も良 い. しか し,一 部 の 愛 好 家 た ち を別 に して,量 思 わ れ て い な か っ た よ う だ.そ れ が,1994年
子 計 算 機 が 何 か ま と もな 計 算 を す る とは にP.W.Shorが,大
き な数 の 因 数 分 解 を
圧 倒 的 な 速 さ で 実 行 す る 量 子 計 算 の ア ル ゴ リズ ム を発 表 し た14)こ と で 一 変 し,多 の 野 心 的 な 人 た ち が 参 入 す るに 至 っ た.そ リズ ム が 発 表 さ れ て,多 ズ ム は こ の2つ
し か 知 られ て い な い.こ
な お 多 くの 人 が,量
の 後,L.K.Grover15)に
くの 応 用 が 見 出 さ れ た.い の2つ
く
よって検索 アル ゴ
ま の と こ ろ,独 立 な量 子 ア ル ゴ リ
に つ い て は あ と で 簡 単 に 紹 介 し よ う.
子 計 算 機 の実 現 性 に 疑 問 を持 っ て い るの も事 実 で あ る.量 子 的
な コ ヒー レ ン ス を マ ク ロ な レベ ル で保 つ の が 難 し い の で,デ じ るエ ラ ー に 対 し て,計
コ ヒ ー レ ン ス16)か ら生
算 機 が 脆 弱 で あ ろ う,と い う の で あ る.し か し,ご
く最 近,
誤 りを ソ フ トウ ェ ア の レベ ル で 訂 正 す る研 究 が 急 速 に 発 展 して い る17∼19).実験 的 に も い くつ か の グ ル ー プ が,量
子 計 算 機 の 素 子 に つ い て 成 果 を発 表 す る よ うに な っ て きて
い る20∼23). こ の よ う に,量
子 計 算 の 歴 史 をみ る と熱 力 学 上 の 問 題 か ら端 を発 し て い て,そ
の概
念 が 確 立 さ れ た今 そ れ が い っ た ん 捨 象 さ れ て い るか に 見 え る.確 か に,量
子 計算機 を
作 る 動 機 と して,原
だ し,将 来
理 的 に 発 熱 し な い 計 算 機 を あ げ る人 は今 は 少 な い.た
を考 え る と,観 測 の プ ロ セ ス を厳 密 に 扱 う量 子 情 報 理 論 に よ る 基 礎 的 な裏 付 け が 必 要 に な る と 言 う 意 味 で,熱
力 学 上 の 問 題 に 再 び 回 帰 す る と思 え る. 3.4
こ の 辺 で,歴
量子 計 算 機 とは何 か
史 を い っ た ん 忘 れ て,現
在 受 け 入 れ られ て い る 量 子 計 算 の パ ラ ダ イ ム
を ま とめ て お こ う. *5 A .Aspectの
実 験 で 示 さ れ た ベ ル の不 等 式 の 破 れ に代 表 さ れ る と こ ろ の 量 子 相 関 の 強 さ が 量 子
計 算 の 速 さ に ど う現 れ て い るか は,実
は よ くわか って い な い.
図2
古 典 テ ュ ー リン グマ シ ン と量 子 テ ュ ー リン グマ シ ン
量 子 計 算 機 に つ い て 話 す 前 に,普 通 の 計 算 機(古 い る か,さ
典 計 算 機 と呼 ぼ う)が
ど う動 い て
ら に そ も そ も 「計 算 」 とは 何 か を整 理 して お く必 要 が あ る だ ろ う.
古 典 計 算機 は,原
理 的 に テ ユ ー リ ン グ マ シ ン と い う概 念 的 な 計 算 機 に 帰 着 さ れ る.
テ ュ ー リ ン グ マ シ ン は テー プ とプ ロ セ ッ サ ー か ら 成 り立 っ て お り,テ ー プ に は0と1 の 羅 列 が 書 き 込 ま れ て い る.プ
ロ セ ッサ ー に は ヘ ッ ドが 付 い て い て テ ー プ に 書 い て あ
る数 字 を読 ん だ り書 き 換 え た り し な が ら,テ
ー プ を前 後 に 移 動 す る(図2).そ
き は あ らか じめ プ ロ グ ラ ム さ れ て い る.簡 単 な 例 を あ げ れ ば,2を られ る数 を テ ー プ に2進 法 で 表 して お い て,そ す に は,一
番 最 後 の0を1に,そ
一般 に ,は
じ め に テ ー プ に 書 か れ て い た0と1の
え ら れ た結 果 の テ ー プ の0と1の
書 き足 せ ば よ い.1を
け 足
書 き換 え れ ば よ い.
羅 列 を初 期 状 態 と見 な し,書
き換
羅 列 を終 状 態 と見 な し た と き,計 算 とは そ れ ら の状
態 間 の 遷 移 で あ る と い う こ とが で き る.そ 問 題 に な る.
の 末 尾 に0を
れ よ り下 の 桁 の1を0に
の動
掛 け る に は,掛
の 遷 移 の 意 味 付 け は上 の 例 の よ う に 解 釈 の
計 算 が 可 能 で あ る とは テ ュー リン グマ シ ン の 動 きが い つ か は 停 止 す る こ とで あ り, 近 代 の 論 理 学 の 採 用 して い る ク ラ イ テ リ オ ン で あ る.計 算 が 複 雑 で あ る とは 上 記 の ヘ ッ ドの 逐 次 的 な動 き の 回 数 が 多 い とい う こ とで あ る. 量 子 計 算 機 が 古 典 計 算 機 と 違 う 点 は,量 │0>と│1>だ
子 計 算 機 に お い て は 可 能 な状 態 と して
け で は な く(状 態 で あ る こ と を 強 調 す る た め に ケ ッ トベ ク トル を 導 入
し た),そ
れ ら の 重 ね 合 わ せ も許 す こ と で あ る.す
な わ ち,α
と β を 規 格 化 条 件,
を 満 た す 複 素 数 と し て
(8) な る状 態 も テー プ に 書 き込 め る.(図2の れ が 物 理 的 に 可 能 で あ る こ と は,た
下 に そ の 気 持 ち を描 い た つ も りで あ る.)こ
とえ ば 磁 気 モ ー メ ン トを もつ ス ピン1/2の
粒子に
「書 き換 え」 は 量 子 計 算 機 に お い て は 複 素2次
元空 間
磁 場 を か け る こ と を考 え れ ば よ い. 古 典 計 算 機 に お け る0と1の
の ユ ニ タ リー 変 換 に あ た る.「 読 み 出 し」 に つ い て は,も 量 子 力 学 の 公 理 に よ れ ば,ス
ピ ン のz成
っ と本 質 的 な 違 い が 起 こ る.
分 の 観 測 を行 う と│0>か│1>の
状 態 に遷移
し,そ の 確 率 は お の お の│α│2と│β│2で 与 え られ る. │0>と│1>の 重 ね 合 わ せ の 状 態 を と り う る も の を キ ュ ー ビ ッ ト(qubit)と キ ュ ー ビ ッ ト をn個 た とえ ば,n個 で を2進
用 意 す れ ば,2n個
の キ ュ ー ビ ッ ト を い っせ い に90度
法 で ラベ ル さ れ た状 態│a)を
呼 ぶ.
の 状 態 の 重 ね 合 わせ を実 現 す る こ とが で き る. 回 転 し て,0か
らN-1=2n-1ま
等 しい重 み で た し あげ た重 ね合 わせ 状 態 か 実
現 で き る.
nビ ッ トの 量 子 計 算 機 は,量
て,N=2n項
子 力 学 の 公 理 の 一 つ で あ る重 ね 合 わ せ の 原 理 に 基 づ い
の 重 ね 合 わせ の 各 項 を一 つ の 計 算 機 の よ う に 扱 う.そ
っ ぺ ん に ユ ニ タ リー 変 換 し,あ 行 う.す
る演 算f:a→f(a)を
す べ て のaに
し て,2n項
をい
対 して並 列 的 に
な わ ち,
(9) こ の テ ン ソル 積 を使 っ た大 量 の 項 に 対 す る量 子 並 列 計 算 こ そが,量 本 質 的 な 原 因 で あ る.こ
こ で,は
子 計 算 機 の速 さ の
じめ の 状 態 は 積 で表 さ れ る状 態 で あ っ た が,計
は 積 で 表 す 事 の で き な い 「絡 ま っ た状 態(エ
算後
ン タ ン グ ル ド状 態)」 に な っ て い る こ と
に 注 意 し よ う. 3.5 「歴 史 」 の 中 で 述 べ た よ う に,D. トの ユ ニ タ リー 変 換 と2ビ 制 御NOTは,量
万 能 量 子 回 路 Deutschた
ッ トの 制 御NOTゲ
ち は,任
意 の ユ ニ タ リー 変 換 が1ビ
ッ
ー トで実 現 で き る こ とを 示 した.
子 計 算 に お い て 重 要 な役 割 を 果 た す.図3に
あ る よ うに,2つ
の
図3
制 御NOTゲ
ー ト
入 力 ビ ッ トの う ち 一 方 を制 御 ビ ッ ト,他 方 を標 的 ビ ッ ト と呼ぶ.制 る た め に,黒 トが│0>の NOTゲ
丸 を 打 っ て あ る.図 の 左 側 か ら 入 力 さ れ,右 と きに は 標 的 ビ ッ トは 遷 移 をお こ さ な い が,制
御 ビ ッ トが│1>の
ー ト と し て働 く.言 い 替 え る と,制 御 ビ ッ ト│a>と
が あ れ ば,標
的 ビ ッ トに│a+bmod2>の
を考 え よ う.例 制 御NOTを
と し て,制
御 ビ ッ トを 明 示 す
側 に 出 力 さ れ る.制 御 ビ ッ ときは
標 的 ビ ッ ト│b>の
入力
出 力 が あ る.入 力 が 重 ね 合 わ せ 状 態 の 場 合
御 ビ ッ トに,│0>+│1>,標
的 ビ ッ トに│0>を
入 力 して
働 か せ た場 合 の 出 力 は
(10) と な り,Einstein-Podolsky-Rosenの
対 状 態2,3)が で き て,確
か に エ ン タン グ ル して
い る. こ こ で も う 少 し 計 算 ら し い こ と を し て み る た め に,a+bmod2を 算 す る ア ル ゴ リ ズ ム を 考 え よ う.す
を 行 う の で あ る.回 1+1;mod2を い る.少
路 は 図4に
量 子並 列 的 に計
な わ ち,
与 え て お い た.結
果 は 確 か に,0+0,0+1,1+0,
並 列 的 に 実 行 して お り,積 で は 表 せ な い エ ン タ ン グ ル ド状 態 に な っ て し考 え る と量 子 並 列 計 算 こ そ エ ン タ ン グル メ ン トに他 な らな い こ と を得 心 さ
れ る で あ ろ う. た だ し,こ
の ま ま で は欲 しい 問 題 の解 を得 る確 率 は 小 さ くな る の で 用 を な さ な い.
図4
a+b
mod
2を 行 う量 子 回路
必 要 な 項 を 干 渉 効 果 に よ っ て 増 幅 させ る 巧 妙 な ア ル ゴ リズ ム を発 見 して,観
測 す る必
要 が あ る.実
題 ご とに
は こ の 後 半 部 分 が イ ン ス ピ レー シ ョ ン を 必 要 とす る部 分 で,問
工 夫 を す る 必 要 が あ る.以 下 に 述 べ る2つ
の ア ル ゴ リズ ム が そ の 代 表 で あ る.
3.6 量 子 計 算 に よ る 因 数 分 解 P.W.Shorが
示 した 因 数 分 解 の 量 子 ア ル ゴ リ ズ ム を 詳 細 に 紹 介 す る こ と は 紙 数 の
関 係 で 無 理 で あ るが そ の ポ イ ン ト を物 理 的 な 直 観 に 訴 え て 述 べ よ う. 整 数Nを
因数 分 解 す る に は,ま
は こ れ を 繰 り返 す.因 い 整 数xを
ず そ の 因数 を 一 つ 見 つ け,Nを
数 を見 つ け る た め に,Nと
そ れ で 割 り,あ
互 い に 素 で あ る よ う なNよ
と
り小 さ
選 んで
(11) を満 た す 整 数rを 偶 数 な ら ば,上
捜 す.(xがNと
互 い に 素 な の で,こ
の 方 程 式 は 解 を持 つ.)rが
の 式 を少 し変 形 して,
整数 を得 るの で,最
大 公 約 数gcd(xr/2+1,N)かgcd(xr/2−1,N)の
を与 え る.rが
奇 数 な らば,別
ざ っ ぱ に は,確
率50パ
さ て,xr=1mod
のxを
選 ん で 偶 数 が 出 て く る ま で 続 け れ ば よ い.大
ー セ ン トでrは
Nを
(12) ど ち らか が 欲 し い 因 数
偶 数 に な る の で,こ
量 子 計 算 機 で解 くの で あ る.こ
の 試 行 は す ぐ終 わ る.
こ では述 べ な いが 量子 並 列
を 用 い た 離 散 的 な フ ー リエ 変 換24)と,す で に知 られ て い る 巾 計 算│a)→xamod
N)に
対 す る ア ル ゴ リズ ム を用 い る と,次 の 重 ね 合 わ せ 状 態 を 高 速 で 作 る こ とが で き る.
(13) こ こ にqは
充 分 大 き な2の
そ れ ぞ れcとxkを
巾 乗 に と っ て お く.二 つ の 状 態 の 量 子 数 を 各 々 測 定 し て,
得 た と し よ う.そ
の 確 率 は,量
子 力 学 の 公 理 に よ り,
(14) で 与 え ち れ る.こ
こ で,xr=1mod
を 整 数 と し てa=br+kと
Nを
思 い 出 し て,拘
解 け る こ と を 用 い た.
束 条 件xa=xk
mod
Nはb
rcがqの
倍 数 に 近 い と こ ろ で の み(14)式
る し,厳 密 に も示 せ る の で,測 量rを
定 し たcの
割 り出 す こ とが で き る.rcがqの
が ピー ク を持 つ こ と は容 易 に 納 得 で き 値 とは じめ か ら用 意 し たqか
ら,求 め る
倍 数 に 近 くな い と こ ろ で は,干
渉効 果 の た
め に 確 率 は 小 さ くな り実 際 上 そ の よ う なrは の は,鋭
観 測 さ れ な い.qを
大 き くとって お く
い ピー クが 欲 しい か ら で あ る.
離 散 的 な フ ー リエ 変 換 を行 うの に,(logN)2回 は,logN回
ぐ らい,
につ い て
の ゲ ー ト数 が 必 要 で あ る の で,計(logN)3回
見 す る こ とが で き る.一
方,知
ぐ ら い で,Nの
られ て い る古 典 計 算 で は,cを1の
と して,
が 最 速 な の で,Shorの
因 数 を発
オー ダー の正 の数
ア ル ゴ リ ズ ム は確 か に そ
れ よ り速 い.
3.7 グ ロ ー バ ー に よ る検 索 ア ル ゴ リズ ム い ま,N個
の フ ァ イ ル が あ りそ の 中 の1個
だけ 「 正 しい フ ァ イル」 が あ る とし よ
う.問 題 は,そ
の 「正 し い フ ァ イ ル 」 を見 付 け る速 い ア ル ゴ リズ ム を見 付 け る こ とで
あ る.ま ず,古
典 の 計 算 で は 基 本 的 に は フ ァ イ ル を順 番 に 調 べ て 行 く しか な い の で ど
うや っ て もNぐ 行 す る.も Groverに
ら い の 回 数 は か か る.こ
ち ろ ん,多
項 式 時 間(logN程
れ を 量 子 計 算 で は, 度)の
個 の ス テ ップ で 実
ア ル ゴ リ ズ ム で は な い が,こ
の
よ っ て 見 出 さ れ た ア ル ゴ リ ズ ム15)は 次 の 点 で 興 味 深 い.第 一 に,問 題 に特
別 な 構 造 が な い の で 量 子 計 算 の 特 徴 が 見 易 い.第 二 に,Groverに
よ るア ル ゴ リズム
が 量 子 計 算 と して 最 適 で あ る こ とが 示 され て い る事 が 重 要 で あ る. お お ま か な 要 点 を 言 え ば 次 の よ う に な る.古 典 計 算 で は,N個 個 の フ ァ イ ル を見 付 け る確 率 は1/Nな 率 振 幅 は そ の 平 方 根 の
の で,あ る1個
の フ ァ イ ル に 対 応 す る状 態 の確
で あ ろ う.量 子 計 算 を 繰 り返 し て う ま くや れ ば,「 正 し
い フ ァ イ ル 」 に 対 応 す る状 態 の確 率 振 幅 が, され て い っ て,全 な る だ ろ う,と
部 で
の フ ァ イ ル か ら1
回 ぐ ら い 行 え ば,確
い うの で あ る.こ
とい う風 に 足 率 振 幅 が1す
な わ ち 確 率 自体 も1に
こ で は,確 率 振 幅 とい う量 子 力 学 的 な 概 念 が もっ と
も明 白 な形 で 現 れ て い る. ま ず,始
状 態 と し て,N個
の 状 態 を 等 し く重 ね 合 わせ た 標 準 的 な も の を 採 用 し よ
う.
(15) これ か ら,量 ち ろ ん,上
子計 算 で捜す
「 正 し い フ ァ イ ル の 状 態 」 を│w>と
の 重 ね合 わせ の 中 に 入 っ て い る と して い る.こ
の ユ ニ タ リー 変 換:
U1は 正 し い 状 態│w>の
し よ う.こ れ は,も
の 始 状 態 に 対 し て,2種 を 交 互 に 行 う.
位 相 を マ イ ナ ス に 変 え る.こ
れ は,f(a)=0,∀a≠w,
類
f(w)=1と
い う 関 数 を す べ て の 状 態│a)に
(-1)f(a)を わ ば1ス
状 態│a)に
対 し て 量 子 並 列 的 に 計 算 して 位 相
掛 け る こ と を行 え ば よ い.こ
れ は 本 質 的 に は 簡 単 な の で,い
テ ップ の 計 算 で あ る.U2=2│s><s│-1は
仮 に 正 し い 状 態 が 無 い場 合 に は
始 状 態 を変 え な い 変 換 で あ る. U1とU2が│w>と│w>を
含 ま な いN-1個
の 状 態 を 等 し く重 ね 合 わ せ た 状 態
で張られるベ ク トル空間 を不変にす るこ とに留意 しよ う.
そ の と き,合 成 変 換U=U1U2は
二 次 元 の 実 ユ ニ タ リー 変 換 す な わ ち二 次 元 回 転 に な
る は ず で あ る.そ れ を便 利 な 正 規 直 交 基 底{│w>,│r>}で 簡 単 な 計 算 に よ る と,二
表 現 し よ う.
次元 回 転 の行 列
(16) た だ し,cosθ=1-2/N. こ の 変 換 をk回
繰 り返 せ ば 回 転 角 はk倍
だ か ら す れ ば,十
回 で オ ー ダ ー1の
分 高 い 確 率 でwの
こ こ か ら さ らに,L.K. 2ビ ッ トの 制 御NOTで
た が っ て,Nが
確 率 振 幅 が│w>に
大 き い と き
対 して 得 ら れ る.観 測 を
値 を 読 み と る こ とが で き る.
Groverの
操 作U2が
基 本 的 な1ビ
ッ トの ユ ニ タ リー 変 換 と
「局 所 的 」 に 構 成 で き る こ と を示 す 必 要 が あ る が,こ
省 略 す る*6.こ れ で,N個 に
に な る.し
の フ ァ イ ル の 中 の1個
こ では
の 「正 し い フ ァ イ ル 」 を見 付 け る の
個 の オ ー ダ ー の ス テ ッ プ で実 行 す る量 子 計 算 の ア ル ゴ リ ズ ム を示 し た こ と に
な る.た
だ し,こ
こ で フ ァ イ ル 検 索 と 言 っ て い る の は 比 喩 的 で あ っ て,実
の状 態 の 振 幅 を 増 幅 して い る に 過 ぎ な い.多 分,こ
際に は特定
れ 自体 で は 有 用 性 は な い の で,サ
ブ ル ー テ ィ ン と し て使 わ れ るべ き もの だ ろ う26).
3.8 幾 何 学 的 量 子 計 算 ご く最 近 の 展 開 と して,特
に 幾 何 学 的 量 子 計 算 の パ ラ ダ イ ム を挙 げ た い.そ
基 底 状 態 に 縮 退 の あ る系 につ い て,外
れ は,
力 を操 作 して 非 可 換 的 な ベ リー 位 相 変 換 を行 う
こ とに よ り量 子 計 算 を行 う もの で あ り,デ
コ ヒー レ ン ス に 対 して 原 理 的 に 堅 牢 で あ る
と期 待 さ れ て い る27).デ バ イ ス に 適 した もの か も しれ な い し28),プ ロ グ ラ ム 的 に 自然 か も しれ な い.た
だ し,計 算 能 力 と して は 標 準 モ デ ル と等 価 で あ ろ う29).
1ビ ッ トの ユ ニ タ リー 変 換 を例 に 取 っ て,ラ う.ハ
ビ振 動 に よ る も の と の 違 い を 説 明 し よ
ミル トニ ア ンは
*6 U2=-WS0W
.こ こにWは
ウ オ ル シ ュ-ア ダ マ ー ル 変 換 で,す を行 う.S0は
作.証
明 は た とえ ば文 献 をみ て 欲 しい25).
べ て の ビ ッ トに 対 して に の み 符 号 を 付 け る操
(17) ω=ε の 共 鳴 条 件 を満 た す と きに は,波
動関 数 は
(18) の よ うに,状
態│0>と│1>の
間 を振 動 す る.あ
る時 間 だ け レ ー ザ ー を照 射 す れ ば 任
意 の 割 合 の 重 ね 合 わ せ を実 現 で き る. 一 方 ,外 的 な 力 に よ っ て 非 対 角 成 分 の 大 き さ を,断 熱 的 に ゼ ロ か ら λ ま で 増 加 さ せ る と,エ
ネ ル ギ ー が 縮 退 して い る ε=0の
場 合,断
熱 定 理 から は じめ│0>に
あ った
波 動 関数 は
(19) と な る.
A.
てfault
Ekertた
ち は,上
tolerantな
の 操 作 が デ コ ヒ ー レ ン ス に 強 くか つ エ ラ ー 訂 正 コー
操 作 が で き る と 述 べ て い る が,筆
3.9
結
ドに 対 し
者 は確 認 して い な い .
び
量 子 計 算 は 重 ね 合 わせ の 原 理 を用 い て,並
列 的 に 計 算 を行 い,答
えの候補 の状 態 の
重 ね 合 わせ を生 成 す る.候 補 を そ の 中 か ら絞 る に は 干 渉 効 果 な ど を も ちい て 正 し くな い もの を か な り大 幅 に 消 して お く.そ
う して,少
数 の 候 補 を 観 測 して は 検 算 し,正
い もの に 出 会 う ま で 繰 り返 す.量
子 計 算 は 確 率 的 な 計 算 な の で,量
合 わせ 論 的 に 複 雑 で は あ る が,検
算 が容 易 な 問題(NP問
量 子 計 算 機 を 動 作 す る ため の 論 理 ゲ ー トと して は1ビ ッ トの 制 御-NOTが
あ れ ば 十 分 で あ る.前
題)を
子 計 算 機 は ,組
し み
得 意 とす る.
ッ トの ユ ニ タ リー 変 換 と2ビ
者 が 重 ね 合 わせ を作 り制 御 し,後 者 が 状
態 の エ ン タ ン グ ル メ ン トを引 き起 こ し,計 算 を実 質 的 に 担 う. 量 子 計 算 を広 く とら え て 量 子 情 報 処 理 と考 え る と量 子 的 な エ ン タ ン グ ル メ ン トの 操 作 と い う こ と に な るが,そ
こ で は 情 報 量 と エ ン トロ ピー とい う熱 力 学 上 の 深 い 問 題 と
正 面 切 っ て 向 か い 合 う こ とに な る.そ
の 深 い理 解 の た め に は,有
名 なア スペ の実験 で
代 表 さ れ る よ うに 量 子 状 態 を実 験 的 に 操 り,情 報 を 引 き 出 し た り転 送 す る 必 要 が あ る.た
だ 自然 に あ るが ま ま の もの を,せ
不 十 分 な の で あ る.こ 研 究 課 題 が,量
の 点 に お い て,量
いぜ い純粋 に してその性 質 を調べ るだけ では 子力学 の 基礎 とい うもっ ともア カデ ミックな
子 計 算機 と い う極 め て 工 学 的 な も の へ と直 接 結 びつ け る 根 本 的 な 原 因
に な っ て い る.逆
に,量
子 計 算 機 を作 る とい う夢 は,同
科 学 の 深 い 理 解 と繋 が っ て い る と も い え る.こ
時 に 量 子 力 学,熱
の よ う に,量
力 学 と情 報
子計算 機 の実現 は技術 的
な 大 き な 挑 戦 で あ る.多 分,ま だ ろ う.そ
だ 知 られ て い な い 新 し い ア イ デ ア が い くつ も必 要 な の
の 一 つ ひ とつ が 基 礎 科 学 に ま た フ ィ ー ドバ ッ ク して い くに違 い な い.
量 子 計 算 の レ ビ ュ ー と して 筆 者 が 目 を通 し た も の を4つ 挙 げ て お こ う30∼33). (筆者=ほ
そや ・あ き お,東 京 工 業 大 学 教 授.1946年
生 ま れ.1969年
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Ⅱ 素 粒 子 物 理
4.
く りこみ 理 論 の誕 生 伊
21世 紀 を迎 え た い ま,20世
藤
大 介
紀 後半 の 素粒 子 の発 展 の 出発 点 で あっ た くりこみ理論
の 誕 生 に つ い て 思 い 起 こす こ と は,意 義 が あ る こ と と思 い ま す.先 が 第 二 次 世 界 戦 争 終 結(1945)直
後 で あ り,久
ず その誕生 の時期
し く連 絡 が 全 く途 絶 え た 日米 両 国 で独
立 に進 行 し た こ とで あ り,特 に 日本 に つ い て 言 え ば どん 底 の 社 会 状 況 の な か で,一 の 優 れ た 研 究 者Tomonaga(朝 な ど,全 す.私
永 振 一 郎)の
く驚 異 的 な 出 来 事 で す が,そ
に最 も興 味 あ る の は,日
達 した か と い う事 で す.く
の 思 い 出や 意 義 に 就 い て は 人 さ ま ざ ま と思 い ま
本 で は どの よ うな 思 考 過 程 を経 て,く
り こみ 理 論 の 誕 生 とは,く
と い う こ との 発 見 を意 味 し ま す.こ
れ は,い
と思 わ れ ます.こ
来 一 貫 し た,深
4.1 朝
関 係 で も,場
は,発
こ に はTomonagaの,理
化学研 究
い洞察 に 導か れ た徹 底 した追求 が あ った
後Tomonagaを
永
見 の 年 と も い わ れ,多
のSchrodinger方
発 見 が あ り ま し た が,こ り ます.こ
りこ み とい う処 方 が 可 能 で あ る
れ につ い て 私 が 知 り得 た こ と を 述 べ て 見 た い と思 い ます.(師
び 捨 て に す る よ う で いや な の で す が,以
こ の1932年
りこ み 理 論 に到
ま考 え るほ ど簡 単 な こ と で は な く,一 朝
一 夕 に して 達 成 で きた こ と だ とは 思 え ませ ん .そ 所 入 所(1932年,26歳)以
程 式 のFock表
以
前
くの 重 要 な 発 見 が な さ れ た 年 で す.理 現,Diracの
多 時 間 理 論,陽
論
電子論 の
時 の 歴 史 を簡 単 に 覗 い て お くの が 便 利 で す.
く知 られ て い る よ うに,作
射 場 の エ ネ ル ギ ー は,そ
を呼
や め 朝 永 と書 き ます.)
れ ら の 発 見 は どれ も後 年 の 朝 永 理 論 の 展 開 と重 要 な 関 係 が あ
れ らに つ い て 述 べ るに は,当
ち ょ う ど一 世 紀 前,よ
人
指 導 す る グ ル ー プ か ら生 ま れ た こ と等
用 量 子 が 発 見 さ れ ま した.空
の ベ ク トル ・ポ テ ン シ ャ ルAの
調 和 振 動 子 の エ ネ ル ギー の 和 の 形(aは
偏 極,sは
適 当 なFourier展
洞輻
開 に よ り,
波 数 ベ ク トル)
(1) に変 形 さ れ,こ
れ が 温 度Tの
れ は 直 ち にRayleigh-Jeansの
熱 源 と平 衡 に あ り,等 分 配 則 が 成 り立 つ とす れ ば,こ 式 と な り,理 由 は 分 か ら な い が,
(2) と仮 定 す れ ば,実
験 と良 く会 うPlanckの
用 量 子 の 発 見 で す.と
式 が 得 られ る こ とが 解 り ま した.こ
ころ でこの式 は調 和振動 子 の量 子論 の 固有値方 程式
れ が作
(3) と 同 じ形 を し て い る の で,Planckの
式 を得 る た め の 仮 定,即
射 波 の 基 準 振 動 を 量 子 化 す れ ば得 ら れ る こ と が解 り ます.こ
ち,光 量 子 の 仮 定 は 輻 の量 子化 に よって輻射 波
の 振 幅 は 演 算 子 に な り,新 た に こ れ が 作 用 す る確 率 振 幅 ψが 現 れ て き ます.こ 量 子 電 磁 気 学 の 誕 生 で,作
用 量 子 の 発 見 か ら27年
現 象 論 」(前 期 量 子 論)の
時 代 と い え ま し ょ う.量
(1930),こ
の と き,自
りこ み 理 論 に 到 達 し た の が 朝 永 で す.現
誕 生(1947)に は,こ
後
の 排 除 に 多 くの 試 み が
己 エ ネ ル ギー の 発 散 の み に と らわ れ ず,理
散 が どん な 起 こ り方 を す る か,い
こ とが で き ます.く
の 間 は 「量 子 現 象 の
子 電 磁 気 学 の 誕 生 か ら3年
の 理 論 で も 自 己 エ ネ ル ギー の 発 散 の 困 難 が 現 れ,そ
な さ れ ま し た.こ 程 で,発
の 後 で す.そ
れが
論 の展開 の過
わ ば,「 無 限 大 の 現 象 論 」 を推 し進 め,く
在 は く りこ み 理 論 に よ り こ の 困 難 を 回 避 す る
り こ み は 必 ず し も最 終 理 論 で は な い か も知 れ ませ ん が,く
到 る ま で の 「無 限 大 の 現 象 論 」 は 非 常 に 教 訓 的 で し た.朝
の 独 特 な 「無 限 大 の 現 象 論 」 と 「無 限 大 の 運 動 学(特
りこ み
永 の成 功
殊 相 対 論)」 に よ る もの
と思 わ れ ます. 1927年P.A.M.Diracが
始 め た こ の 量 子 化 さ れ た波 の 理 論 は,物 質 波 に適 用 し て
物 質 粒 子 の 集 団 を 記 述 す る こ と も で き ます.但
し 同種 粒 子 の状 態 の 数 え 方(統
計)の
差 に よ っ て 量 子 条 件 が 変 わ る こ と に 注 意 しな け れ ば な り ませ ん. 1929年Heisenberg-Pauli 子 の 系 に 適 用 し て,相
(HP)は,こ
合 の 量 子 条 件 がLorentz条 じ く1929年E. 制 限 条 件(付
の 考 え を電 磁 場 と相 互 作 用 す るDirac電
対 論 的 な 量 子 電 気 力 学 を建 設 した の で す が,相 件 と馴 染 ま ず,か
FermiはLorentz条 加 条 件)と
な り強 引 に 量 子 化 し た 感 じで し た.同
件 の そ の 時 間 微 分 を,系
考 え得 る こ と,そ
の 確率 振 幅 ψに対 す る
し て 適 当 な ユ ニ タ リー 変 換 ψ=eχ φに よ っ
て こ の 制 限 を 受 け な い 状 態 φに 移 れ る こ と(付 加 条 件 の 消 法),そ 系 のSchrodinger方
互 作 用 の あ る場
して こ れ に よ っ て
程 式(h=c=1) 電磁場
相互作用
電子
(4)
は 光子
と な る こ と な ど を 示 し ま し た.こ 波)の で す.こ
み,電
子 の み,光
こ でH0光 子,H0電 子,H',Hcは
子 ‐電 子 相 互 作 用,電
れ に は も はや,HPの
(5)
電子
そ れ ぞ れ の光 子(横
子 間 クー ロ ン相 互 作 用 のHamiltonian
時 の 様 な 面 倒 は 起 こ り ませ ん.こ
解 い た 最 初 の 近 似 は実 験 と良 く一 致 す る の で す が,さ の 近 似 を 求 め る と 多 くの 場 合 発 散 が 現 れ ます.電
の 方 程 式 を摂 動 法 で
ち に 良 い 結 果 を得 る た め に,次
子の 自己エネ ル ギーが その一例 です
(1929,1930).小
さ い は ず の 補 正 が 無 限 大 で は 近 似 法 は 無 意 味 で す.こ
に 回 避 し て 高 次 近 似 ま で 計 算 で き る よ う に し た の が,く FermiのHamiltonianは (4.2)式
り こ み 理 論 で す .ま
た
一 見 し て 相 対 論 的 に 不 変 か ど うか 明 瞭 で は な い の で す が,
を 摂 動 で 結 合 定 数 の2次
的 に 不 変 なMollerの
の 問 題 を上 手
ま で 解 き,電 子 散 乱 の 散 乱 行 列 を計 算 す れ ば 相 対 論
散 乱 式 が得 ら れ る な ど,内 容 的 に は 相 対 論 的 な 量 子 電 気 力 学 が
得 られ て い るは ず な の です.し
か し無 限大 が 現 れ た と き,そ の 相 対 論 的 意 味(物
意 味 役 割)を
算 の ど の段 階 で も相 対 論 的 不 変 性 が は っ き り し て い る
知 るた め に は,計
よ う な理 論 形 式(い
わ ば 無 限 大 の 運 動 学)が
後 の 超 多 時 間理 論 で す.以
必 要 に な っ て き ます.こ
理的
れに答 え たのが
上 が 朝 永 が 理 研 に 入 る 頃 ま で の 歴 史 の あ ら ま し で す.
4.2 発 散 の 現 れ 方 を 探 る い ろ い ろ の 試 み さ て 前 に も 述 べ た よ うに,朝 論(多
時 間 理 論)を
永 が 理 研 に 入 っ た1932年,Diracは
発 表 し ま し た.こ
生 に そ の 研 究 を命 ぜ ら れ た の で す.先
一 風 変 わ っ た理
の 論 文 が 仁 科 芳 雄 先 生 の お 目 に 止 ま り,朝 永 先 生 は こ の 理 論 か らKlein-仁
科 の式 が得 られ る
か ど う か 確 か め ら れ ま し た が,「 計 算 を終 わ り ま で や っ て 見 る ま で も な く,HPと 容 的 に 何 ら異 な ら な い こ とが分 か っ た 」 そ う で す.そ
内
し て 「学 会 で 前 の 席 の 偉 い 先 生
方 の 間 で 『こ の 理 論 を発 展 させ た ら 当 面 の 困 難 を解 決 で き るか も知 れ な い 』 とい う 論 議 を な され て い た の で,『 そ ん な こ と して も何 も で て き ませ ん よ 』 と言 っ た ら,オ カ ナ イ顔 で 睨 ま れ 」 た と い うお 話 も伺 い ま し た.こ Diracが ky
用 い た モ デ ル が 簡 単 過 ぎ た か らか も知 れ ま せ ん.同
(DFP)は
式 化 し,こ
電 磁 場 と相 互 作 用 す るN個 の理 論 がHPと
ッ
う い う期 待 が も た れ た も の も, 年Dirac-Fock-Podols
の 電 子 系 に つ い て,多
同 等 で あ る こ と を示 し ま し た.そ
時 間 理 論 を 詳 し く定
の 内容 につ い ては 後 で
述 べ ま す. 1932,1934年
に,Dirscの
陽 電 子 論 の 論 文 が 現 れ ま し た.仁 科 先 生 は 朝 永 先 生 に 理
研 の コ ロ キ ウム で そ の 紹 介 を命 ぜ られ た の で す.朝 で(1934年),こ
永 は 「ドイ ツヘ 行 く少 し前 の こ と
の こ とが 私 が 電 子 の 無 限 大 の 問 題 に 取 り組 む 契 機 に な っ た 」 と 述 懐
さ れ て い ます. そ こ で まず 無 限 大 の 電 子 の 自 己 エ ネ ル ギ ー が 散 乱 問 題 に ど の よ うに き い て くる か, Fock空
間 を使 っ て 解 い て み る こ とか ら 始 め ま し た.電
磁 場 を量 子 化 し た と き現 れ た
確 率 振 幅 ψ は 光 子 の 集 団 の 状 態 を記 述 す る は ず で す か ら,ψ は,光 子 が な い 場 合, 一 つ あ る場 合 ,二 つ あ る場 合,… の 確 率 振 幅 ψ0,ψ1,ψ2,… を成 分 とす る(縦 に な らべ た)表
示(Fock表
示)が
す れ ば 確 か に 満 足 され ます.も
あ り う る.こ
れ を 輻 射 場 の 固 有 値 方 程 式(3)に
し輻 射 場 が 電 子 と相 互 作 用 す る と きは,相
代入
互 作用 のハ
ミル トニ ア ン は 光 子 の 生 成 ・消 滅 演 算 子 が 含 まれ て い る の で,ψ の 成 分 ψnに 混 じ り 合 い が お こ り,固 有 値 方 程 式 は 成 分 間 の 無 限 次 元 連 立 方 程 式 に な り ま す.こ
れが
Schrodinger方 が,光
程 式 のFock表
示 で す.こ
の 方 程 式 は こ の ま ま 解 くの は む つ か し い
子 の個 数 を制 限 す れ ば 纏 ま っ た解 が 得 ら れ ます.こ
ま ま に し て進 み ます.こ す が,発
散 も無 限 の 先 ま で 現 れ ま す.発
は 発 表 され ませ ん で し た.そ ませ ん.こ
の と き発 散 が 現 れ て も そ の
の 解 を結 合 定 数 の 羃 で 展 開 す れ ば 摂 動 で と い た 解 が 得 られ ま 散 の 現 象 論 に 出 発 した 訳 で す.然
の 理 由 は 聞 い て い ませ ん が,留
の 論 文 が 発 表 さ れ た の は ドイ ツ か ら帰 国 後 お くれ て1940年
で す.Heisenbergの40歳 え て い ます が,留
記 念 誌 に 準 備 し た もの で,内
しその論文
学 が 迫 っ たか らか も知 れ に な ってか ら
容 は 核 子-中 間 子 場 に 置 き 換
学 前 に 電 子-電 磁 場 に つ い て や っ た の と全 く同 じ も の だ そ うで す.
ノー ベ ル 賞 講 演 で 朝 永 は 「 場 の 反 作 用 の 重 要 性 を 教 え て くれ た の は,Heisenberg で あ る 」 とい う意 味 の こ と を 言 っ て い ます.ま
た 次 の よ う に 語 られ た こ とが あ りま し
た: 「ドイ ツ に 留 学 し,前
半 は 核 物 質 の 研 究 を 仕 上 げ,後
半 に つ い てHeisenbergに
相
談 し た 所,か
れ は 『中 間 子 に つ い て 人 々 は摂 動 論 をつ か っ て い ろ い ろ 言 っ て い るが,
あ れ は 皆,信
用 で きな い.場
の 反作 用 が 結 論 を ガ ラ リ と変 え て し ま う は ず だ 』 と い っ
て 彼 は 私 に発 表 前 の 論 文 の ゲ ラ刷 を くれ た.と 理 論 を)も 前 にFock空
い う こ とは,『 こ れ を(彼
っ とキ チ ン とや れ 』 と いふ こ とだ っ た の か も し れ な い.こ 間 で や っ た こ と を思 い だ し た 」
こ の こ とか ら,核 子-中 間 子 系 の よ う な 強 い 相 互 作 用 の 場 合 に は,相 逆 冪 に 展 開 す る と い う近 似 法 が あ る こ とに気 づ か れ た ら し い.い す.強
の 大 まか な
の と き私 は 留 学
結 合 の 場 合,静
わ ゆ る強結合 理論 で
止 し て い る核 子 と最 も強 く結 合 し て い る 中 間 子 場 の 成 分 を取 り
出 し て考 え る こ とが で き ます.実 は 複 雑 で す が,こ
互作 用定 数 の
際 に こ れ を取 り出 す 運 動 学 的 操 作 は モ デ ル に よ っ て
こで重 要 な逆 冪展 開の機構 は系のエ ネル ギー 固有値 方程 式 が
(6) と書 け る こ と に よ り ま す.こ
こ で 変 換Qr→Q'r+gJrを
行 え ば,右
辺は
(7) とな ります.「相 互作 用 定 数 の逆 冪 に展 開」 な どと言 う奇 異 な辞 句 も,最 強 の相 互 作 用 を上 の変 換 で消去 した(近 似 的 に解 いた)残 りが逆 冪 に展 開で きる とい うこ とに他 な らな い こ とが解 ります.展 開 の 第1項 では強 い相互 作用 は 回転半径 として現 れて い る.強 結合 理論 で核 子 の励起 状 態が 比較 的低 レベ ル として現 れ るこ とのモ デル として 重要 です.
お な じ 手 法 は 赤 外 異 変 の処 理 や,後 Nordsieck変 dsieck
換 と よば れ て い ます.朝
(1937)を
に は く り こ み 理 論 の 展 開 に も役 だ ち,Bloch永 の 帰 国 の 頃 に 出 た 論 文 で す が,「Bloch-Nor
ドイ ツ で 読 ん だ記 憶 は な い 」 そ う で す.
欧 州 の 風 雲 急 に な り,こ の 仕 事 は 帰 国 後 ゆ っ く り仕 上 げ よ う と思 っ て 帰 っ た ら,G. Wentzel れ た.こ
(1939)に
先 を越 さ れ て い た.然
の 理 論 は 個 数 を制 限 し たFock表
摂 動 解 とWentzelの
しそ の お 返 しが 中 間 結 合 の 理 論 と な っ て 現 現 の 場 の 方 程 式 を数 値 的 に 解 き,弱 結 合 の
強 結 合 解 を 内挿 す る理 論 で す.
4.3 超 多 時 間 理 論 帰 国 後 の 朝 永 は 中 間 結 合 の 理 論 を開 発 し発 展 さ せ る と共 に,Diracの
多時 間理 論 を
超 多 時 間 理 論 に 拡 張 し,場 の理 論 を完 全 に 相 対 論 化 す る こ と に 成 功 し ま した.さ 述 べ たDirac-Fock-Podolsky
(DFP)は,電
磁 場 と相 互 作 用 す るN個
きに
の 電 子系 の
方程式 電磁場
か ら 出 発 し ます.ま
(8)
ず ユ ニ タ リー 変 換 に よ っ て 電 磁 場 の 相 互 作 用 表 示 に 移 れ ば,(8)
は
(9) と な り ま す.こ
の 方 程 式 を 時 間 依 存 の 摂 動 法 で 解 く た め,さ
ら に 変 換
に よ り電 子 も相 互 作 用 表 示 に 移 せ ば,(10)は
(10) とお いて
(11) と な り,こ れ を 逐 次 代 入 法 で 展 開 す れ ば
(12) と な りま す.こ
れ か ら,例
え ば 電 子 ‐電 子 の 散 乱 振 幅 を 求 め る た め,電 磁 場 に つ い て
こ の 式 の 真 空 期 待 値 を と れ ば,時 くAμ(x),Aυ(x')>0が ル(propagater)の 相 互 作 用 表 示(自
現 れ,こ
刻 の 異 な る2点x,x'に
役 目 を して い ます.こ 由 場)の
お け る場 の真 空 期 待 値
れ が 散 乱 ポ テ ン シ ャル の よ う な遠 隔 作 用 の ポ テ ン シ ャ
場 合 に は,こ
の 関 数 は 場 の 交 換 関 係 か ら 導 か れ ま す が,
の 交 換 関 係 は 良 く知 られ て い て
(13) で す.こ
の 右 辺 は光 円錐 状 で 特 異 な 関 数 で す か ら,散
乱 ポ テ ン シ ャ ル もMoller散
の よ うな 遅 滞 現 象 も記 述 で き る不 変 な 関 数 に な り ま す.こ 型 でや っ て 見 せ た こ と と本 質 的 に 同 じで す が,こ な 後 年 のR. P. Feynman,
F. DysonのS-行
れ がDiracが,簡
乱
単 な模
れ は ま た 相 対 論 的 不 変 性が 一 目瞭 然
列 と 同 じ手 口 で す.Diracの
魂 胆や 相互 作
用 表 示 の役 割 が だ ん だ ん 見 え て 来 ま した. 積 分 結 果 が 相 対 論 的 に 不 変 とい うだ け で な く,方 程 式 そ の も の を 不 変 に し た い の で,こ
こ でDiracは
電 子 ご と に 時 間tsを 付 与 し,(9)を
バ ラ し た 形 の φ"(t1,t2,…,
tn)に 関 す る一 組 の 方 程 式,
(14) を も っ て(多
時 間)理
論 の 基 礎 方 程 式 に し よ う,と
い う 大 飛 躍 を し ま す.理
由は
(14)が 各 電 子 のDirac方 程 式 に 外 な ら な い の で,相 対 論 的 不 変 だ か ら で す.し 一 つ の 関 数 φ"につ い て の 多 くの 方 程 式 が ― 意 的 な 解 を もつ た め に は
か し
(15) な る 条 件(積
分 可 能 条 件)が
満 足 さ れ な け れ ば な り ませ ん.こ
子 を 頂 点 とす る光 円 錐 の 外 側 に あ る よ う な 配 置(空
間 的 配 置)の
的 配 置 を 保 っ た ま ま の 変 動 に よ る φ"の変 動 は,(14)の す.ま
た(14)の
れ は どの 電 子 も他 の 電 と き満 足 さ れ,空
間
解 として一 意 的 に 決 ま りま
両 辺 を加 え合 わ せ た
(16) で 全 て のts=Tと
お い た もの は(9)に
一 致 し,も
と のHP理
付 加 条 件 もφ"に対 す る 条 件 で す か ら, り ませ ん が,実
は 可 換 で は あ り ませ ん.し
論 に戻 りま す. と 可 換 で な け れば な
か し
(17) の よ う に修 正 す れ ば 可 換 に な り ます. Dirac等
の 論 文 は こ こ まで で,そ
の 消 去 まで は や っ て い ませ ん.そ
の消 去 が戦 後朝
永 グ ル ー プ の く り こ み へ 向 か っ て の 第 一 歩 で し た. Diracの
多 時 間 理 論 の 欠 陥 は 電 子 の 数 を保 存 す る 形 式 を 用 い た こ とで す.電
子対 の
生 成 消 滅 ま で 取 り扱 う に は,電 子 も 量 子 化 さ れ た 電 子 波 で 記 述 せ ね ば な りませ ん.そ の た めHPに
戻 り(4)を 電磁場
に よ って相互 作用 表示 に移せ ば
電子
(18)
(19) とな り ます.こ
れ を 多 時 間 理 論 の 場 合 の(14)と
応 す る こ と が 分 か り ます.そ で(9)を
く らべ れ ば 和 Σsに は積分 ∫dvが 対
こ で 多 時 間 理 論 に 倣 い 点rご
と に 時 間tを
付 与 し(14)
ば ら した よ う に
(20) と書 け ば,(9)に
対 応 して
(21) と書 け ます.多 時 間理 論 で これ に対 応す る式 と見比べ て
(22) が 得 ら れ,こ の2点
れ が 多 時 間 理 論 のSchrodinger方
程 式 に 対 応 し ま す.σ
を と っ て も空 間 的 配 置 に あ る よ う な 曲 面(空
け る 時 間微 分 に 対 応 す る汎 関 数 φ(σ)の 変 分 と考 え れ ば,こ 系(量
子 化 さ れ た 波)に
理 論 のSchrodinger方
永-Schwinger方
程 式)と
の上 の ど
を 点xに
お
れ は連 続無 限個 の粒子 の
対 す る 多 時 間 理 論 のSchrodinger方
程 式(朝
を,そ
間 的 曲 面),
程 式 で あ り,超 多 時 間
呼 ば れ て い ます.こ
の変 分
方 程 式 が 一 意 的 な解 を もつ た め に は 多 時 間理 論 同 様
(23) で な け れ ば な り ませ ん.こ
の 理 論 は1943年 4.4
朝 永 は1941年(昭
和16年)東
朝
理 研 彙 報(邦 永
ゼ
文)に
発 表 さ れ ま した.
ミ
京 文 理 科 大 学 教 授 に 就 任 し ま し た.こ
日真 珠 湾 攻 撃 が あ り,太 平 洋 戦 争 が 始 ま っ た の で す.戦
の 年12月8
争 が 激 し くな り,海 軍 島 田研
究 所 で磁 電 管 や 立 体 回 路 の 研 究 に従 事 し ま し た.こ れ らの 研 究 は 戦 後 に 邦 文 と欧 文 で 発 表,前
者 に 対 し て 学 士 院 賞(1948)を
終 戦 の 前 年(1944)東 講 義 終 了 後,木
受 け る こ と に な りま し た.
京 帝 国 大 学 講 師 を兼 ね,東
庭 二 郎,宮
本 米 二,早
問会 な る談 話 会 を も っ た の で す.こ
川 幸 男,福
大 で素 粒 子 論 の 講 義 を し ま し た.
田 博 らは,朝
永 を囲 ん で"遜
れ が 所 謂 朝 永 ゼ ミの 始 ま り で す.連
称"愚
日の 空 襲 下,
メ ン バ ー の 招 集 な ど に 耐 え 良 く続 い た もの で す. 1945年8月,戦
争 は 終 わ り ま した.翌
に移 りま す.毎
週 金 曜 日午 後,東
年 初 め か ら朝 永 ゼ ミは 文 理 大 の 朝 永 研 究 室
大 か ら木 庭 二 郎,宮
本 米 二,早
川幸 男の三 方 が朝永
研 究 室 に 現 れ る とゼ ミが 始 ま る.文 理 大 側 か らは 宮 島 龍 興 先 生 は じめ 永 田恆 夫,後 (金 沢)捨 W.
男,田
Heitlerの
地 隆 夫 の 諸 氏 が 参 加 さ れ ま した.私
藤
も加 え て 載 い た の は こ の 頃 で す.
輻 射 の 量 子 論 か ら始 ま っ た と い う こ の ゼ ミはDFPの
多時間理 論 の研究
討 論 中 で し た.こ
の 頃,既
に付 加 条 件 の 消 去 に つ い て先 生 の ユ ニ ー ク な ア イ デ ア に 基
づ い て 木 庭,宮
本,早
用(具
る後 藤 の研 究 が は じ ま っ て い ま した.セ
体 化)す
川 の 研 究 が は じ ま り,超
超 多 時 間 理 論 へ す す み,回
多 時 間 理 論 を,電
磁 場-中 間 子 系 に 適
ミナ ー の 方 は 多 時 間 理 論 か ら
を 重 ね る に つ れ て 次 第 に 新 し い研 究 の 発 表 討 論 会 に な っ て
ゆ き ま し た. 前 に も(17)と
して 述 べ ま し た が,DFPは
付加 条件
(24) を求 め て い ま し た が,そ
の 消 去 ま で は や っ て い ませ ん.「 こ れ を相 対 論 的 不 変 な 方 法
で 消 去 せ よ」 と い うの が 宮 本,早
川 が 取 り組 ん だ 問題 で す.朝
永 先 生 の 方 法 を適 用 し
て 得 られ た 結 果 を 宮 本 さ ん が セ ミナ ー で 発 表 さ れ ま し た.「 走 っ て い る電 子 に つ い て は,付
加 条 件 消 去 後,Coulombで
は な くて,Lienard-Wiehertポ
に 現 れ る」 こ と を 示 した と き に は,相
テ ンシ ャル が 自然
対 論 的 不 変 な理 論 の 威 力 に圧 倒 さ れ ま した.
木 庭 さ ん と田 地 さ ん は 超 多 時 間 理 論 の 基 礎 方 程 式 を電 子-電 磁 場 の 系 に 具 体 化 し, 量 子 電 気 力 学 の 体 系 を 再 構 成 す る とい う大 仕 事 を完 成 さ れ ま し た.こ 的 な 量 子 電 気 力 学 で す.こ
の 木 庭 ・田地 ・朝 永 の 論 文 に よ っ て 戦 後 の 典 型 的 な相 対 論
的 場 の 理 論 が で きた と い え る で し ょ う.と
こ ろが 中 間 子-電 磁 場 の 相 互 作 用 の ハ ミル
トニ ア ン は そ の ま ま で は 積 分 可 能 条 件 を厳 密 に は 満 足 し ませ ん.x, 限 距 離 で あ れ ば 満 足 し ま す が,距 点 」 で)満
れ が今 日の 標 準
足 しな い の で す.異
離 ゼ ロ の 極 限 で(先
x'が 空 間 的 に 有
生 の 当 時 の 言 葉 で は 「相 隣 る
常 は 空 間 曲 面 上 の 「相 隣 る2点 」 に 依 存 す る,対 称 性
を考 慮 す れ ば 「空 間 曲 面 の 法 線 」 に よ るの で す.ハ
ミル トンニ ア ン に 法 線 に 依 存 す る
項 を補 っ て 異 常 を 除 く とい う先 生 の ア イデ ア は 有 効 で し た.後 藤 さ ん の 大 変 な ご努 力 に よ り,中 間 子-電 磁 場 系 へ の 具 体 化 は 完 成 さ れ ま した.こ くの 人 々 に よ っ て,い
う して 超 多 時 間 理 論 は 多
ろ い ろ な場 に 具 体 化 さ れ て 行 き ま し た.
具 体 化 が 終 わ る こ ろ,セ
ミナ ー で は 赤 外 発 散 の 論 文 が 系 統 的 に 読 まれ ま し た.今
で 量 子 場 の理 論 の 遷 移 行 列 要 素 が 波 数 無 限 大 で お こ す 発 散(紫 が,赤
外 発 散 は 電 磁 場 の 場 合,制
外 発 散)が
動 輻 射 の微 分 断 面 積 が 波 数 ゼ ロ(赤 外)で
現 象 で す.波
数 ゼ ロ に 限 りな く近 い 光 子(soft
の 電 流 はC数
と 見 な せ る の で,Bloch-Nordsieck
photon)の
ま
問題 で し た 発散 す る
放 出 吸 収 に 対 して は 電 子
(BN)は
変 換 に よ りsoft
photon
との 強 い相 互 作 用 の 効 果 を 無 限 次 ま で と りい れ る と,赤 外 発 散 は消 え て しま う こ と を 示 し ま し た.そ BNが
れ ど こ ろか 近 似 の 適 用 外 で で る紫 外 発 散 も消 え ます.Pauli-Fierzは
無 視 して い た エ ネ ル ギー 保 存 則 を と りい れ て 計 算 す れ ば 赤 外 発 散 は 消 え る が,
紫 外 発 散 は 消 え な い こ と を 示 し ま した.紫 要 が あ り ます.こ
れ を や っ た の がS.
M.
外 発 散 を ま と も に(近 似 な し に)調 べ る必 Dancoffで
す.
例 の セ ミナ ー で は 朝 永 先 生 みづ か ら こ の 論 文 を紹 介 さ れ,こ
の 系 統 の セ ミナ ー は終
わ り ま し た.
4.5 C中 間 子 論 が 示 唆 した こ と 朝 永 研 究 室 が 大 塚 か ら新 宿 区 大 久 保 の 旧 陸 軍 の研 究 所 跡 へ 移 り,戦 後 の ひ ど い 住 宅 事 情 の た め,先
生 は ご家 族 と と もに 一 時,元
て い る実 験 小 屋 に 住 まわ れ ま した.当 い ま し た.馬 場 一 雄 さ ん(現 た.こ
射 撃 実 験 に 使 っ た ら し い トン ネ ル が 貫 い
時 は,学
生 も皆 住 め そ う な 所 を探 し て は 住 ん で
奈 良 女 子 大 名 誉 教 授)と
私 は低 温 実験 室 跡 に住 みつ い
ん な ひ ど い 部 屋 に も 夕 食 後 な ど時 々 先 生 が お 見 え に な る こ とが あ りま し た.引
っ越 し 間 も な い あ る と き,い
ろ い ろ面 白 い お 話 の 後,「 名 古 屋 の 坂 田 くん が 例 のC-メ
ソ ン で 電 子 の 自 己 エ ネ ル ギー が 有 限 に な る と い っ て得 意 に な っ て い るが,動
的 な散 乱
問 題 の 無 限 大 ま で う ま く行 くか ね え.木 庭 君 もや っ て み る と言 っ て い たが 君 た ち もや っ て み な い か 」 とい う宿 題 をだ さ れ た.そ
の 昔,H.
Poincareは,電
子 は電磁 自己エ
ネ ル ギ ー の た め 不 安 定 で,電 磁 力 以 外 の 凝 集 力 が な い か ぎ り安 定 に は なれ な い こ と を 示 し ま し た.坂 考 え,こ
田 昌 一 先 生 は 電 子 の 凝 集 力 の 働 き をす る もの と し て 中性 中 間 子Cを
れ をC-中
間 子 と呼 び,こ
れ ら と電 子 の 相 互 作 用 の ハ ミル トニ ア ン を
(25) と し て 電 子 の 自 己エ ネ ル ギ ー を計 算 す れ ば,結
合 定e,
fの 間 に
(26) な る関 係 が あ れ ば 発 散 が 打 ち 消 し合 う こ と を 示 され た の で す.朝 永 先 生 の 宿 題 は 「C -中 間 子 が ,例 え ばDancoffが 計 算 した よ うな,散 乱 の 補 正 に 現 れ る発 散 ま で 打 ち 消 す こ と が で き る か ど うか 」 と い う こ とで す.現 及 びC-メ
代 語 で 言 え ば 「vertex partの
ソ ン に よ る 二 次 の 輻 射 補 正 を求 め よ」 と い う こ と で,も
在 し な か っ たFeynmanグ い う こ とで す .今
ラ フ で い え ば,図1に
の 技 術 な ら 簡 単 で,素
対 応 す るS-行
ち ろん 当時 まだ存
列 要 素 を計 算 せ よ と
粒 子 の 教 科 書 に も載 っ て い ます が,超
図1
電磁 場
多時 間
理 論 は具 体 化 さ れ た もの の,そ
の 共 変 な積 分 法 は 十分 間 に 合 っ て い な い の で,計
算法
と な る と,例 の 付 加 条 件 を 消 去 し た 歪 ん だ ハ ミル トニ ア ン と古 い摂 動 論 で す.大
変 な
計 算 に な る だ ろ うが,相
互 作 用 の ハ ミル トニ ア ン の行 列 要 素 は み な 分 か っ て い る の で
で き る は ず だ とい う訳 で,先 が,名
生 に 教 わ りな が ら,四 五 日 夜 更 か し て 計 算 し た の で す
古 屋 流 の 条 件 で は 発 散 が 消 え な い の で 仕 方 な く結 果 を 先 生 に 提 出 し ま し た.次
の 金 曜 日 セ ミナ ー が は じ ま る ま え,木 庭 さ ん が 私 た ち の 汚 い 低 温 実 験 室 に お い で に な り計 算 結 果 を見 せ て 下 さ い ま し た.矢 張 り名 古 屋 流 の 条 件 で は 発 散 は 消 え な い と い う 結 論 で し た.発 散 が 消 え る た め に は,
(27) で は な くて は な ら な い こ とが 分 か っ た の で す.「 散 乱 で はC-中 な ら そ れ で 仕 方 が な い 」 と い う わ け で,結
間 子 で は だ め だ.そ
れ
果 は プ ロ グ レ ス に 発 表 さ れ,木 庭 さ ん が 学
会 で 講 演 さ れ ま し た. こ こ で の 不 衛 生 な 生 活 が た た っ て,す
っ か り体 調 を 崩 し,冬 休 み は 早 め に 郷 里 に帰
っ て い た あ る 日,木 庭 さ ん か らお 葉 書 を 戴 い た.「 実 は 大 変 な こ とが お こ っ たの で す. 私 達 の 計 算 で 図(省 け,こ
略)の
よ う な過 程 が 見 落 と さ れ て い る こ と を先 生 か ら ご注 意 を受
れ を入 れ て 計 算 す る と名 古 屋 流 の 条 件 で発 散 が 消 え ます 」 とい う意 味 の こ とが
書 か れ て あ り ま した.簡 り ませ ん か.で こ の,散
単 な 項 な の で実 際,計
算 し た ら係 数2/9が
で 出 て くる で は あ
は先 生 は ど の よ うに して こ の 見 落 と し を発 見 さ れ た か とい い ま す と,
乱 の 補 正 の 計 算 が 終 わ っ た 頃,朝
る方 法 を 開 発 し ま し た.例
の 接 触 変 換 に よ り外 場 の 補 正 を求 め る方 法 で す.こ
合 定 数 の 冪 に 展 開 す れ ば,そ まれ て い る は ず で す.そ
永 先 生 は 超 多 時 間 理 論 で散 乱 の 補 正 を求 め
の 二 次 の項(多
重 交 換 子)に
れ を結
は 二 次 の補 正 が 漏 れ な く含
して 生 成 演 算 子 を 左 へ 移 す や りか た で 遷 移 過 程 に 分 解 し て み
た ら 見 落 と しが あ っ た とい うわ け で す.駄
目 だ と思 っ た 坂 田 のC-メ
ソ ンは電 子 の 自
己 エ ネ ル ギー の み ら な ず 散 乱 で も大 成 功 で し た.
4.6 同 時 に 重 大 な の は,C-メ
くり こみ理 論 へ
ソンが 電 子の 電磁 自 己エ ネル ギー の無 限大 を打 ち消 し た
の と同 じ条 件 で 電 子 の 散 乱 の 電 磁 補 正 に 現 れ る 一 部 の 無 限 大 を も 打 ち消 す,と と は,両
無 限 大 は 無 関 係 で は な い こ と を示 唆 して い る こ と で す.す
なわ ち自己エ ネル
ギ ― の 発 散 と散 乱 の 補 正 の 発 散 は 同 じ機 構 に よ る もの か も知 れ ませ ん.こ 正 の 計 算 を調 べ れ ば わ か る は ず の こ とで す.こ
ソ ン で う ま くい く な ら,く
りこ み とい う手 も あ る.そ
の 通 りだ っ た と思 い ます.学
れは電磁 補
れ は 朝 永 が 理 研 の は じめ か ら の 意 図 し
て き た こ と で あ り今 そ れ が 実 現 で き る 準 備 が で き た と考 え ら れ ま す.先
れ ま し た が,そ
い うこ
生 は 「C-メ
こ で パ ッ と切 り替 え た 」 と言 わ
会 か ら一 月 く らい で 間 違 い の 訂 正 と く り
こ み の 第 一 報 論 文 が プ ロ グ レ ス に 発 表 さ れ ま した.こ の 誕 生 で す.以
れ が 日本 に於 け る く り こ み理 論
後 の 発 展 に つ い て は本 稿 の 範 囲 で は な い と し ま し ょ う.
く りこ み 理 論 がLambシ
フ トや 電 子 の 異 常 磁 気 モ ー メ ン トの 実 験 と驚 くべ き一 致
を 示 し,発 散 に 阻 まれ て 攻 撃 不 能 だ っ た 領 域 の 開 発 にSchwinger積 の 直 観 的 方 法 が 威 力 を 発 揮 す る一 方,ゲ た.こ
ー ジ不 変 性 の破 れ,不
れ ら基 礎 的 未 解 決 問 題 の 攻 撃 中 の ま ま1949年,朝
分 法 やFeynman
定 性 な どの 問 題 が 現 れ
永 はR.
Oppenheimerの
招
き に よ リプ リン ス トン 高 級 研 究 所 へ 渡 る こ とに な りま し た. さ て,ア
メ リ カ で の お 仕 事 の プ レプ リン トが 送 られ て き ま した.当
中 の 「輝 か し き く り こ み 理 論 の 決 定 版 」 か と思 っ た らF. て で した.「1次
元 のFermion集
界的流行
音 波 の理 論 につ い
団 が あ る 条 件 の も と で 量 子 化 さ れ た 密 度 波 に な る」
と い う こ の理 論 は 光 の 中 性 微 子 説 に 関 係 あ る と は い え,プ ロ チ ン の パ イ電 子)な
Blochの
然,世
ラ ズ モ ンや 人 参 の 赤 さ(カ
ど全 然 別 の 世 界 を 指 向 し た もの か と 思 い失 望 し ま した .帰 国 後
の 集 団 運 動 に つ い て も 似 た 感 じ で し た .「 く り込 み 理 論 も鼻 に つ い て きた 」 か らだ そ う で,「 誰 も彼 も同 じ よ う な こ とば か り し て い て 個 性 が 無 さ過 ぎ る の で,す 欲 を失 っ て し ま っ た 」 の だ そ う で す.が,果 か.先
っか り食
た して そ れ を 信 じ て も 良 い の で し ょ う
生 の 仕 事 の 一 貫 性 を思 う と き,そ れ は 違 う よ う な 気 が し ま す.例
えば強結 合 に
於 け る 多数 の 固 有 場 粒 子 の 真 空 の 海 は 何 時 ま で もハ ー ト リー 的 で い る は ず が な い.こ れ ら多 数 の 粒 子 群 の 振 る舞 い が 如 何 な る素 粒 子 現 象 に 対 応 し う る だ ろ うか.あ
る時 こ
れ につ い て 確 実 な 見 通 し が た っ た と き,全 然 関 係 な い と思 っ て い た こ れ ら の理 論 が, 完 成 さ れ た 素 粒 子 の 理 論 とな っ て あ る 日突 然,我 うか.も
しそ の 時 間 が あ っ た と した ら!(筆
1918年 生 ま れ,1947年,東
編 者 注―
々 の前 に現 れて きたので は ないだ ろ
者=い
と う ・だ い す け,埼 玉 大 学 名 誉教 授.
京文 理 科 大 学理 学 部卒 業)
伊 藤 大 介 の 回想 に は,な お 次 の もの が あ る:
(1) く りこみ理 論 の生 い 立 ち,自 然1966年1月 (2) 場 の理 論へ の 反逆,自 然1969年1月 (3) 朝 永 先 生 に 聞 く,自 然1979年10月
号
号 号(朝 永振 一 郎 博 士 適 悼号)
(4) く りこ み の史 跡− 一 九 四七 年 の 朝 永研 究室 訪 問,『 回 想 の 朝 永 振 一 郎』,松 井 巻 之 助 編,み す ず書 房(1980) (5) 廃墟 の 中 か ら,『 追 想 朝 永振 一 郎 』,伊 藤 大介 編,自 然選 書,中 央公 論 社(1981) (6) 東 京 時 代 の木 庭 二 郎 さん,日 本 物 理学 会 誌1996年8月
号
5. 坂 田学 派 と素 粒 子模 型 の進 展 小 小 林 誠,益
川 敏 英(1973,以
て す で に23年
が 経 過 し,い
が 注 目 を集 め て い る.坂 提 唱 し た2中
下 全 て 敬 称 略)に
よ る素 粒 子 の3世
まや そ の 最 後 の 粒 子 トッ プ(t-)ク
田 昌一 が,第2世
川
代 模 型が提 唱 され
代 の レプ ト ン に あ た る μ 中 間 子 の 存 在 を を 遡 る.こ
一 つ の 学 派 の 中 か ら得 ら れ た こ と は 注 目 す べ き こ とか も知 れ な い え ず そ の 方 法 論 的 検 討 の 重 要 性 を,と
わ れ の 認 識 は,現
象 論,実
の間
と よ り国 際 的 協 業 に よ り達 成 さ れ た もの で は あ るが,現
の 標 準 模 型 に 至 る 素 粒 子 模 型 の 発 展 の な か の い くつ か の 重 要 な 貢 献 が,坂
る に あ た り,絶
三
ォー クの実験 的確 認
間 子 論 を携 え て 名 古 屋 大 学 に 赴 任 した の は さ ら に31年
の 素 粒 子 物 理 の 発 展 は,も
修
体 論,本
在
田の 開い た
.坂 田 は 研 究 を 進 め
くに 武 谷 三 男 の 三 段 階 論(わ
れ
質 論 な る 各 段 階 を螺 旋 的 に 経 過 し な が ら 深 化 す
る)を 引 用 し な が ら強 調 して い た こ と は,年 配 の 研 究 者 の 記 憶 に 多 分 留 め られ て い よ う.ま
た 本 年(1996年)は
坂 田模 型 公 刊40周
ハ ドロ ン 物 理 の 進 展 に 大 き な 転 回 を与 え る こ と と な っ た
年 に も あ た り,上 記 の発 展 を 坂 田 学 派 に よ る貢 献 を 中 心 に 据 え て,
い さ さ か の 感 慨 を こ め 筆 者 の 見 聞 を とお して 振 り返 る こ とに す る1). 5.1 2中
間
子
論
坂 田 が 科 学 方 法 論 に 関 心 を も っ た の は 甲 南 高 校 時 代 以 来 の よ う で あ る が,そ 体 的 研 究 活 動 の 上 に鮮 や か に な っ た の は 多分2中 れ は ま た,日 郎,坂
本 の 素 粒 子 論 研 究 の 黄 金 時 代 を創 っ た3人
田 昌 一 の 間 の協 力 と競 り合 い の,そ
っ た.当
間 子 論 提 唱(1942)の
して3人
に は 無 限 の 仕 事 を必 要 とす る)に 加 え て,量
中 間 子 論 は,素
川 秀 樹,朝
永振 一
の 特 長 の 一 端 が 見 え た 時 期 で もあ
時 古 典 電 子 論 に お け る点 電 荷 の もつ 無 限大(有
克 服 す る こ とが,素
の 巨 匠,湯
れ が具
頃 で あ る.そ
限 の 電 荷 を一 点 に 集 め る た め
子 論 的 場 の 理 論 に 現 れ る無 限 大 の 困 難 を
粒 子 論 の 基 本 的 課 題 と考 え ら れ て い た.湯
粒 子 物 理 の 新 局 面 を拓 い た とは い え,こ
川 の 提 唱 し た(π-)
の 困 難 を 引 き継 い だ だ け で な
く,π 中 間 子 を 宇 宙 線 中 間 子 と誤 っ て 同 定 し た こ と に よ り明 らか に な っ た実 験 との 矛 盾 が,上
記 の い わ ば ア カ デ ミ ッ クな 困難 が 現 実 的 困 難 と し て 現 れ た こ とを 示 す も の と
受 け 取 られ て い た.と
く にHeisenbergに
よ っ て 強 調 さ れ た こ の 観 点 は,3人
の 巨匠
た ち に お お き な 影 響 を与 え て い た. こ の 問 題 に 対 す る3人 (1935)以
の 巨 匠 の 対 応 を見 て み よ う.湯 川 は か れ の 中 間 子 論 の 提 唱
前 か ら指 向 し て い た の で あ る が,こ
決 す る こ と を 目指 し,4次
元Minkowski時
の 困 難 を理 論 の 基 本 的 変 革 に よ っ て 解
空 に 閉 じ た球 面 を と り,そ の うえ に 定 義
さ れ る確 率 波 の 導 入 に 苦 慮 して い た2).朝 永 が こ の 球 面 を平 ら に し て 時 空 の 各 点 に 絞 り,Diracの
多時 間 理 論 か ら超 多 時 間 理 論 を作 り上 げ た(1943)の
別 に 朝 永 は,湯
は こ の 頃 で あ る.
川 中 間 子 論 が 強 い相 互 作 用 の 理 論 で あ る こ と に鑑 み,計
算 に お け る近
似 法 の 改 善 を 目指 し,中 間 的 強 さ の 相 互 作 用 を 取 り扱 う方 法− そ れ は 場 の 反 作 用 を分 離 す る一 つ の 方 法 を 含 む− を 編 み 出 した.そ
して こ の 方 法 を上 記 の 宇 宙 線 現 象 の 分 析
に 適 用 し,宇 宙 線 の 地 下 透 過 力 と理 論 との 矛 盾 を 回避 で き る こ と を示 し た.し
か し宇
宙 線 中 間 子 の 寿 命 に 関 す る矛 盾 は残 っ た ま ま で,結 局 当 面 の 問 題 の 解 決 に は 失 敗 した の で あ る が,こ
の 経 験 が 後 の く りこみ 理 論 の 発 見 に役 立 った と朝 永 は 述懐 して い
る3). 一 方 坂 田は 間 子(μ)は で この2中
,谷 川 安 孝 との 討 論 に 示 唆 を受 け 上 記 の2中
間 子 論 を提 唱 し,宇 宙 線 中
π 中 間 子 と 異 な り,前 者 は 後 者 の 崩 壊 に よ り生 ず る も の と し た.と 間 子 論 は,湯
っ た の で あ る.実 際2中
川,朝
永 に は も ち ろ ん,武
間 子 論 は,場
ころ
谷 に さ え 評 判 の 良 い もの で は な か
の 理 論 の 困 難 の解 決 に は な ん ら寄 与 す る こ とは
な く,皮 肉 な 見 方 を す れ ば 模 型 の 変 更 に よ り増 え た余 分 の パ ラ メー タ ー を,実 験 に 合 う よ うに 決 め た に す ぎ な い と云 え た で あ ろ う.対 的 な 検 討 を 懸 命 に 行 な い,自 ば1943年9月
し て 坂 田 は 四面 楚 歌 の な か で方 法 論
説 の 妥 当 性 を擁 護 す る記 録 を い くつ か 遺 して い る.例
末 に 開 か れ た 中 間 子 討 論 会 の 報 告 で,坂
え
田は 冒頭 で次 の よ うに述べ て
い る4).「周 知 の 如 く現 在 素 粒 子 論 は 次 の 三 つ の 段 階 か ら形 成 され て い る.即
ち,先
ず 始 め に ど ん な 種 類 の素 粒 子 が 実 在 し そ れ らが ど ん な相 互 作 用 の も とに あ る か と謂 う 模 型 に 関 す る仮 定 が 設 け ら れ,次 Lagrange関
に こ の 体 系 に 量 子 論 が 適 用 さ れ る もの と 見 做 し て
数 を拵 てHamiltonian関
数 を 導 きSchrodinger方
程 式 を見 い だす 段 階
が あ り,最 後 に こ の 方 程 式 を 適 当 な数 学 的 方 法 を用 い て 解 き,実 験 と比 較 で き る よ う な結 論 を 導 きだ す段 取 り とな す の で あ る.従
っ て,中
間 子 論 の 現 状 の よ う に,そ
の結
論 が 実 際 とひ ど く食 い違 っ て い た り,自 分 自 身 の 中 に 矛 盾 を 含 ん で い る 場 合 に は そ の 困 難 の 原 因 を う え に 述 べ た 三 段 階 に 対 応 し て(ⅰ)模 型 の 適 否,(ⅱ)量 界,(ⅲ)数
学 的 方 法 の 可 否 の 三 点 に 就 い て 注 意 深 く探 索 せ ね ば な ら な い … 」 と し,
模 型 の 形 成 は,自 開 陳 し,2中 川,朝
子 論 の適 用 限
然 認 識 の 深化 の 過 程 に お け る不 可 欠 の一 過 程 とす る 自 らの 方 法 論 を
間 子 論 を 擁 護 し て い る.な
永 を意 識 し た もの で あ る.し
お 上 記 の(ⅱ)お
よ び(ⅲ)は,そ
れ ぞれ 湯
か し そ の 後 坂 田 は 太 平 洋 戦 争 の 終 結 ま で著 しい 業
績 は 遺 して い な い.
5.2 混合 場 理 論 と研 究室 制 度 の導 入 1945年8月 J. D. Bernalの
を迎 え た 坂 田 の 活 動 は,漸
く 目覚 ま し くな っ た.こ
の 年 の ノー トに は
『 科 学 の 社 会 的 機 能 』 に お け る研 究 組 織 論 の 抜 き書 きや,疎
谷 を招 き そ の 後 の 研 究 計 画 を 方 法 論 と と もに 検 討 した 跡 が 見 られ る.続
開先 に武
い て 坂 田 は,
1946年1月24日,幸
い 周 囲 の 戦 禍 か ら残 され た バ ラ ッ ク建 て の 名 大 で 開 か れ た 第 一
回 研 究 室 会 議 で,戦
後 の 学 界 に 大 き な 影 響 を広 げ る こ と と な っ た 研 究 者 組 織 の 民 主 化
に 関 す る 主 張 を,挨 拶 と して初 め て 展 開 した.そ 点 は,第1に
こで坂 田が重要 な原則 として述べ た
研 究 者 の 思 索 に 完 全 な 自 由 が 与 え られ る こ と,第2に
さ れ た 仕 事 が,研
究 室 に 属 す る個 々 の 研 究 者 の 仕 事 の 単 な る 和 で あ っ て は な ら な
い5),と い う こ とで あ っ た.そ 導 入 を進 め た.こ
し て こ れ を保 障 す る制 度 と して,民
の 主 張 は さ らに 教 室 全 体 の 支 持 を受 け,民
古 屋 大 学 物 理 学 教 室 憲 章 の 制 度 を も た ら し た.教 制 に 対 し て,研
研 究室 にお い てな
究 員(現
授が 絶対 的権 限 を もった当時 の講座
在 の ドク タ ー ・コー ス以 上 に相 当 し よ うか)に
れ る最 高 決 議 機 関 と し て の教 室 会 議 の 票 決 に よ っ て,教 ど定 め た こ の 憲 章 は,ま
主 的研 究 室制 度 の
主 的 教 室 運 営 を定 め た名
よって構 成 さ
授 な ど の選 考 を行 な う こ と な
さに 瞠 目す べ き事 件 で あ っ た.し か しそ れ は 当 時 の 若 い研 究
者 達 に と っ て 研 究 者 と して の 自覚 と 自信 をお お い に 鼓 舞 し た もの で あ る .同 会 議 に お い て,坂
じ研 究 室
田 は 当 面 取 り組 む べ き課 題 と して 素 粒 子 論 の 基 本 的 困 難,す
なわ ち
場 の 理 論 に お け る 発 散 の 困 難 の 解 決 を 目指 し,混 合 場 の 理 論 を提 唱 し,そ れ は ま た 戦 後 創 設 さ れ た 日本 物 理 学 会 第1回
総 会 に お い て 発 表 さ れ た の で あ っ た.
こ の 理 論 の 意 義 を 坂 田 は 次 の よ う に 述 べ て い る6).「 自然 を全 体 的 関 連 か ら 引 き 離 し て そ の個 別 に お い て研 究 す る態 度 は 自然 科 学 の 発 展 の初 期 の段 階 に お い て は極 め て 有 力 な 方 法 で あ り,近 代 自然 科 学 の 偉 大 な 進 歩 の 根 本 条 件 で あ っ た.… Baconに
しか し
始 ま る斯 様 な 形 而 上 学 的 方 法 は そ の 適 用 限 界 を 超 え れ ば た ち ま ち 一 面 的 な
偏 狭 な も の と化 し,解
くべ か ら ざ る矛 盾 に 迷 い こ む の で あ る.… 従 来 は 場 の 理 論 に お
い て 個 々 の 場 の 相 互 作 用 が 単 独 に と りだ さ れ他 と切 り離 して 研 究 さ れ て 来 た .と
ころ
が 私 ど も は 同 一 の 粒 子 と作 用 す る全 て の 場 及 び 同 一 の 場 の 湧 源 とな る す べ て の 粒 子 の 相 互 作 用 間 の 内 部 的 な 関 連 を探 求 す る こ とが 今 後 の 理 論 的 発 展 の有 力 な 方 法 で あ り, 現 在 の 理 論 の 困 難 を解 決 す る 有 望 な 路 で あ る … 私 ど もが 湧 源 の 多 様 性 を も含 め た 混 合 場 理 論 の 総 合 的 研 究 の 必 要 を 説 く所 以 は,本
質 論へ の移行 に先 立 って現象 論的実体
論 的段 階 の 整 理 が 大 切 な仕 事 と考 え るか ら で あ る」.こ の 陳 述 の 中 に 武 谷 三 段 階 論 の 影 響 を読 み 取 る こ とが で き,ま た こ の 考 え は 現 在 の 素 粒 子 論 の 研 究 に も依 然 大 き な 影 響 を 遺 して い る の で あ る.そ れ は と もか く具 体 的 仕 事 と し て は,電 凝 集 力 場(cohesive
field)と
子が 電磁場 の他 に
も相 互 作 用 し,結 合 常 数 の 間 に 適 当 な 関 係 が あ る と電
子 の 自 己 エ ネ ル ギ ー の 無 限 大 は 相 殺 で き る こ とが 示 され,陽 も好 ま しい 結 果 を 与 え た の で あ っ た.井
上
健,高
子 と 中性 子 との 質 量 差 に
木 修 二,続
い て原
治 との協力 に
よ っ て 進 め ら れ た こ の 考 え は,朝 永 学 派 を刺 激 し く り こ み 理 論 の 提 唱 を促 す こ と に な っ た.続
い て 坂 田学 派 で は,梅
沢 博 臣 を 中心 と し て光 子 の 自 己 エ ネ ル ギー の 無 限 大 を
同 じ く混 合 場 の 方 法 に よ っ て解 決 す る こ と を 目指 し た.こ て 注 目 さ れ,梅
の 仕 事 はW.
沢 ら の 仕 事 は具 象 的 方 法 と して 評 価 され た.し
Pauliに
か し,亀 淵
よっ
迪 ら を加
え た そ の 後 の 研 究 に よ っ て,真
空 偏 極 に よ る誘 起 電 荷 の 無 限 大 は 近 似 方 法 に よ らず 混
合 場 に よ っ て は解 決 で き な い こ とが 明 らか に な り,混 合 場 の 方 法 の 限 界 は 漸 く見 え て き た.
5.3 く り こ み 理 論 を め ぐ っ て 一 方 量 子 電 磁 力 学 に 関 す る く り こみ 理 論 の 成 功 は ,目 覚 ま しい もの で あ っ た.し し,50年
代 に 入 る と強 い 相 互 作 用 系 で あ る π 中 間 子 に つ い て の 計 算 と,漸
か
く始 ま っ
た加 速 器 に よ る実 験 との 食 い 違 い は 大 き く,ま た宇 宙 線 実 験 に よ りす で に得 ら れ た2 中 間 子 論 の 証 明 に 加 え て,新 第 に 変 わ りつ つ あ っ た.湯
し い 粒 子 も続 々 見 つ か り始 め,素
粒子 物理 学の局 面 は次
川 は く りこ み 理 論 の 成 功 を 一 応 評 価 し な が ら も,く
り込 み
の 手 続 き を正 当 化 す る根 拠 が 理 論 の な か に な い こ と を 指 摘 して 不 満 を表 し7),ま た 朝 永 自 身,量
子 電 磁 力 学 に く り込 まれ るに して もそ の 項 が 無 限 大 で あ る こ と に 矛 盾 を表
明 して い た の で あ る8).日 本 に お い て 素 粒 子(場 い も の とな っ た.坂
田 も,無
の 理)論
に 関 す る信 頼 は,極
限 大 回避 の 手 続 きは 定 義 さ れ て い る が,そ
め て低
の物 質的根 拠
を欠 い た く り こ み 理 論 に 不 信 を 表 明 し,一 方 で は 自 然 界 に 現 れ る相 互 作 用 が く り込 み 可 能 か 否 か の 判 定 基 準 を,梅 沢,亀
淵 ら と研 究 し,さ
子 群 に 関 し て 関 心 を 深 め て い っ た.こ い 研 究 方 針 の 模 索 を 開 始 し た.そ す べ て く り込 み 可 能 か 否 か,他 象 論 的 規 則 性,と た,強
ら に ま た 新 し く見 い だ さ れ た 粒
の 頃坂 田は 「 相 互 作 用 の 構 造 」 と題 して,新
し
して 一 方 で は 自然 界 に 現 れ る さ ま ざ ま な相 互 作 用 が
方 で は 新 粒 子 を含 み こ れ ら粒 子 の 間 に 見 い だ さ れ る現
く に 中 野 董 夫 ・西 島 和 彦 お よ びM.
い 相 互 作 用 を 共 有 す る 粒 子 群(ハ
ド ロ ン)の
お よ び大 根 田 定 雄 ・小 此 木 久 一 郎 ・岩 田 健 三,崎
Gell-Mannに
よ っ て 発 見 され
間 に 成 り立 つ 規 則(NNG規
則)
田 文 二 ・筆 者 ら に よ る 弱 い相 互 作 用
の 普 遍 性 の 研 究 に 注 目 し た.
5.4 複 合 模 型 の 提 唱 1954年 春 か ら 秋 に か け て 坂 田 はCopenhagenに
外 遊 し た が,こ
の時 遺 した ノー ト
を 見 る と 中 野 ・西 島 理 論 と武 谷 三 段 階論 を い ろ ん な と こ ろ で 紹 介 した 跡 が 伺 わ れ る. また 坂 田 は,Fermi・Yang(1949年)に
よ る π 中 間 子 が 核 子 と反 核 子 とか ら構 成 さ
れ て い る とす る理 論 に 当 初 か ら関 心 を も っ て い た が,こ 験 的 確 認 に 先 立 つ こ と10年,谷 γ崩 壊 し う る こ と を,初
の 関 心 は 坂 田 が1940年,実
川 と共 同 で 中 性 π 中 間 子 が 核 子,反
核 子 を媒 介 して
め て 提 唱 し た 時 点 に 遡 る と 思 わ れ る.1955年
秋,基
礎物理
学 研 究 所 で は 素 粒 子 物 理 学 の そ の 後 の 研 究 計 画 に 向 け て 大 規 模 な研 究 会 が 予 定 さ れ, 坂 田 は そ の 責 任 者 とな っ た.そ な か で も 田 中 正 のFermi・Yang模 規 則 に お け る新 し い 量 子 数(ス
の 準 備 の た め 研 究 室 で も各 研 究 員 の 報 告 が 求 め られ, 型 に よ る研 究 が 報 告 さ れ た.田 トレ ン ジ ネ ス)を,力
中 の 意 図 はNNG
学 的 自由 度 か ら導 こ う とす る も
の で あ っ た が,そ
れ は容 易 で は な か っ た.そ
ス を担 う 実 体 を 導 入 す る こ と を 試 み,そ る こ と と した.お
そ ら く坂 田 に は,京
た 中 性 子 に よ っ て,原
の 議 論 に 刺 激 さ れ,坂
田 は ス トレ ン ジ ネ
れ と して ス レ ン ジ粒 子 の ひ とつ Λ 粒 子 を と
大 に お い て卒 論 を用 意 す る年(1932)発
見 され
子 核 の 原 子 番 号 と質 量 数 に か か わ る秘 密 が 晴 れ た 当 時 の 記 憶 が
甦 っ た と 思 わ れ る9).こ
う して 陽 子(P)・
中 性 子(N)・
Λ 粒 子(Λ)お
よび そ れ ら
各 反 粒 子 を ハ ドロ ン の 基 本 粒 子 と し,他 の ハ ドロ ン は これ ら基 本 粒 子 の 複 合 系 で あ る とす る 坂 田模 型 が 提 唱 され る こ と とな っ た. し か し,坂 田 模 型 に 対 す る 当 時 の 一 般 的 受 け 取 り方 は 決 し て 好 意 的 な も の で は な く,NNG規
則 の 単 な る 言 い な お し に過 ぎ な い も の と見 做 さ れ て い た.し
か し松 本 賢
一 は坂 田模 型 に基づ き ,粒 子 の 質 量 を構 成 粒 子 の そ れ と各 構 成 粒 子 間 の ポ テ ン シ ャ ル ・エ ネ ル ギ ー と の 和 とい う単 純 な 表 現 で,加 速 器 実 験 で 見 い だ さ れ た励 起 状 態 を含 め て ハ ドロ ン の 質 量 を表 す こ と を試 み た.坂 て 大 い に もち 挙 げ,自
田 は松 本 公 式 を原 子 核 の 質 量 公 式 に 準 え
己 の 模 型 の 妥 当性 を擁 護 して い た が,胸
た も の が あ っ た よ う で あ る.事 実 坂 田 は,1956年 ン ポ ジ ュ ウ ム で,当
面 の 素 粒 子 論 の 研 究 状 況 に お け る 困 難 の 分 析 と研 究 方 法 に つ い て
展 望 を 述 べ て い る10).そ れ は か つ て2中 で あ る が,こ 後,坂
中に は別 に確信 に満 ち
春 基礎 物 理 学研 究 所 で 開か れ た シ
間 子 論 を 提 唱 し た 時 の 所 論 を 彷 彿 させ る も の
こ で も 困 難 克 服 の 方 法 と して 模 型 の変 更 を 提 唱 し て い るの で あ る.そ
の
田 模 型 に よ れ ば ス ト レ ン ジ 粒 子 の レ プ トンへ の 崩 壊 に あ る種 の 規 則 性 が あ る こ
とが 大 根 田定 雄 ら に よ っ て 指 摘 さ れ た が 実 験 的 検 証 も得 ら れ ず,し た坂 田模 型 に 関 す る研 究 で あ るが,そ
ば ら く停 滞 の 続 い
れ は模 型 に含 ま れ る対 称 性 の 発 見 に よ っ て 一 歩
前 進 す る こ と とな っ た. 5.5
SU(3)対
こ こ で 筆 者 の 関 わ り を 述 べ る こ と に す る.さ
称性 きに 触 れ た相 互 作 用 の 普 遍 性,と
くに
強 い 相 互 作 用 の 普 遍 性 は 坂 田模 型 に お け る基 本 粒 子 間 の 同 等 性 を示 唆 し て い る.電 荷 (電磁 相 互 作 用)お 等 で あ り,し
よ び 質 量 に お け る若 干 の 相 違 を 無 視 す れ ば,基
本 粒 子 は互 い に 同
た が っ て そ れ ら粒 子 間 の 入 れ 替 え に対 し,理 論 は不 変 とな ろ う.こ れ と
陽 子 ・中 性 子 間 に 見 られ る荷 電 不 変 の性 質 か ら,当 的 知 ら れ て い た π,K中
間 子の電
荷 の 自 由 度 の ほ か に 新 し く中 性 中 間 子(現 在 η と呼 ば れ る)を 加 え て8個 の 粒 子 が 一 つ の 組(オ ク テ ッ ト)を 作 っ て 存 在 す る こ とが 予 言 さ れ る .山 口嘉 夫 もCERNに あ っ て 同様 な 考 察 を進 め て い た,さ
て筆 者 の依 頼 に 対 して 大 貫 義 郎 は,こ
の同質 性 が
3次 元 の ユ ニ タ リー 群 に よ っ て 記 述 で き る こ と を見 い だ し て よ り一 般 的 観 点 か ら新 し い 粒 子 の 枠 組 み をつ く り,さ
ら に 池 田 峰 夫 との 協 力 で 数 学 的 な 理 論 構 築 を 行 な っ た
(1959)11).沢
穣 は さ きの 松 本 公 式 を こ の 対 称 性 理 論 に 適 合 す る よ う
修 正 し た が,そ
田 昭 二 ・米 沢
れ は 当 時 続 々 加 速 器 実 験 で 発 見 さ れ るハ ドロ ン の励 起 状 態 に ― 今 か ら
考 え れ ば 多 分 に 偶 然 で もあ る の だ が ― う ま く符 合 し,坂 る こ とに な っ た.坂
田模 型 へ の 関 心 を 一 挙 に 高 め
田 は しか し対 称 性 理 論 そ の もの へ の 関 心 は あ ま り示 さ ず,む
しろ
上 記 の 同 質 性 を保 証 す る物 質 的 根 拠 を探 しは じめ る の で あ る.現 象 論 的 規 則 の 背 後 に 物 質 的 根 拠 の 存 在 を,そ
して 自然 界 の 階 層 的 構 造 を 強 調 す る こ とは 彼 の 持 論 で あ っ
た.ち
E. Marshak一
ょ う ど そ の 頃,R.
間 に 対 応 関 係(BL対
称 性 と呼 ぶ)が
派 が 坂 田 模 型 の 基 本 粒 子 と レ プ トン粒 子 との あ る こ と を 見 付 け て い た.こ
質 性 と を物 質 の構 造 と し て 理 解 す べ く,坂 田 は 牧 模 型 の 基 本 粒 子P,N,Λ うか)と
は,強
ニ ュ ー ト リ ノ(ν),電
子(e),μ
に)結 合 した も の とす る模 型(名 模 型 と して 提 唱 し た.B物 が,B物
二 郎,中
い 相 互 作 用 の 源 と な るB物 中 間 子(μ)と
の 関 係 と さ きの 同
川 昌 美,大 質(一
貫 ら と,坂 田
種 の 電 荷 と云 え よ
の そ れ ぞ れ(超
量 子 力学 的
古 屋 模 型 と呼 ば れ る)を ハ ドロ ン ・レプ トン の 統 一
質 は今 で 云 え ば グ ル ー オ ン場 の 先 駆 とい え る か も知 れ な い
質 と言 っ た と こ ろ に 当 時 の場 の 理 論 に 対 す る不 信 感 が よ み と れ る.実
模 型 に つ い て は,場
は坂 田
の理 論 の 観 点 か ら基 本 粒 子 間 の 強 い 相 互 作 用 を 媒 介 す る も の と し
て 中 性 ベ ク トル 場 を,す
で に 坂 田 の も とに あ っ て 藤 井 保 憲 が 導 入 して い た.彼
を ゲ ー ジ 場 と し て 導 入 す る こ と を考 え た の だ が,湯
はそれ
川 の 中 間 子 論 と同 じ く力 の 有 限 到
達 距 離 を だ す ため に は媒 介 粒 子 の 固有 質 量 に 帰 着 させ ざ る を得 ず,固 を ゲ ー ジ 場 とす る た め い ろ い ろ工 夫 を こ ら し た が,結
有 質 量 を もつ 場
局 対 称 性 の 自発 的 破 れ の メ カニ
ズ ム の 知 ら れ て い な い 当 時 と し て は 理 論 的 に 無 理 で あ り,そ の 頃 の 雰 囲 気 も あ っ て 埋 も れ て し ま っ た の で あ っ た.
5.6 新 名 古 屋 模 型 と重 粒 子 オ ク テ ッ ト 模 型 の 次 の 進 展 は,実
験 に 先 導 され る も の で あ っ た.一
つ は か つ て 坂 田 が 気 に して
い た μ 中 間 子 に 伴 う ニ ュ ー ト リ ノ(ν μ)と 電 子 の そ れ(νe)と 答 え が,BNLで
否 と 出 た.こ
の 基 本 粒 子 を一 つ(第4番 田 英 二 お よ び 牧,中 た.と
の事 実 を 先 の 統 一 模 型 に 組 み 入 れ る た め に,ハ
目P'と
川,坂
くに 後 者 で は,弱
が 同 一 か 否 か とい う
記 す)増
や す こ と を,片
田 が それ ぞ れ独 立 に 提 唱(1962,新
山 泰 久,松
ドロ ン 中,山
名 古 屋 模 型 と よ ぶ)し
い 相 互 作 用 に 見 ら れ る 特 長 の分 析 か ら,νeと
転 化 の 振 動 現 象 が 起 り得 る こ と を 予 見 し た が,こ
本,田
νμの 間 に相 互
れ は 現 在 も実 験 的 関 心 を 集 め て い
る. も う一 つ は,ハ
ドロ ン粒 子 の う ち 重 粒 子 群 も,坂
田模 型 の 三 つ の 基 本 粒 子 を含 め 新
し く見 つ か っ た粒 子 と と もに オ ク テ ッ トを作 る こ とが だ ん だ ん 確 か ら し くな り,模 型 の 変 更 が 迫 ら れ て 来 た.1963年 ッ トを 取 り上 げ,さ
春 坂 田 は 広 島 で 開 か れ た研 究 会 で,重
きの 階 層 論 の 立 場 か ら陽 子,中
基 本 的 要 素(Ur-P,Ur-N,Ur-Λ)の 針 は64年
牧 に よ っ て 具 体 化 さ れ,上
粒 子 の オ クテ
性 子 を もそ の 複 合 系 とす る,よ
探 求 を次 の 研 究 課 題 と して 述 べ て い る.こ
り
の方
記 の 基 本 要 素 か ら 先 ず従 来 通 り オ ク テ ッ ト を作
り,そ れ に 新 し く導 入 した 基 本 重 粒 子 要 素 を結 合 す るの で あ る.こ よ っ て も独 立 に 出 さ れ た.実 CERNか
は そ れ に 先 立 っ て す で に1959年
ら坂 田 に 手 紙 を寄 せ,名
古 屋 模 型 に ヒ ン トを得 て3個
の方法 は原康 夫 に 暮 れ,山
口嘉夫 は
の レ プ トン μ,e,ν
で ま ず オ クテ ッ トを 作 り,そ れ に 重 粒 子 要 素 を結 合 す る模 型 を 述べ て い る.重 粒 子 オ ク テ ッ ト説 の 多 分 最 初 で あ る が,残 坂 田 は研 究 室 に あ っ て,若 ん だ が,こ
念 な が ら公 表 され て い な い12).
い 研 究 者 との 談 笑 を こ との ほ か 大 切 に し,ま た そ れ を好
の 頃 が 坂 田 の も っ と も 円 熟 し た時 で あ る と思 わ れ る.研 究 室 の 忘 年 会 で 新
聞 を 丸 め て 弟 子 と頭 を た た き合 っ た り,餅 つ き に 興 じて い る フ ィ ル ム が 遺 さ れ て い る. 一 方 同 じ く1964年
,全
独 立 に 提 唱 され た.そ れ1/3減
く斬 新 な模 型 がGell-MannとG.
れ は 基 本 要 素 と して,も
ら し た もの(Gell-Mannに 記 す)を
とす る が,重
粒 子 は 反 要 素 を含 まず 要 素 だ け の3体
に 対 応 して そ れ
と り,現 実 の 中 間 子 は 従 来 ど お り要 素 と 反 要 素 の2体
反 重 粒 子 は全 て 反 要 素 か らつ く る).こ
の3体
結合系
結 合 系 とす る の で あ る(も
系 は オ クテ ッ トの 他 に10個
ちろ ん
の粒 子 の組
もつ く り,そ の 存 在 が 実 験 的 に確 認 さ れ る こ とに よ っ て,こ
し い模 型 は 次 第 に 広 く受 け 入 れ られ る こ と と な っ た.し 素 粒 子 の 電 荷 は 電 子 の そ れ を単 位 と して0か1か さ れ て い な い.こ
よ って それ ぞ れ
との 坂 田 模 型 の 各 要 素 の 電 荷 を そ れ ぞ
従 い ク ォ ー ク と 呼 ば れ,P,N,Λ
ぞ れu,d,sと
(デ カ プ レ ッ ト)を
Zweigに
の 新 し い要 素 の 導 入 は,古
影 響 を与 え る もの と筆 者 は考 え る が,そ
か しMillikanの
の新
実 験 以 来,
で あ り,自 然 界 に半 端 電 荷 は 見 い だ
代 ギ リシャ以来 の原子論 の発 展 に大 きな
の 意 義 は 現 在 必 ず し も明 らか で な い.事 実,
提 唱 者 の ひ と りで あ るGell-Mannも,こ
の 要 素 の 役 割 は理 論 構 築 の 手 段 以 上 で は な
く用 が 済 め ば棄 て る もの で あ るか の よ う に 述 べ て そ れ 以 上 の 言 明 を避 け て い る.一
方
坂 田 は こ の 新 し い 要 素 を 彼 の 階 層 論 の 立 場 に 沿 う もの と して す ん な り受 け 入 れ て お り,む
し ろ そ の 実 在 性 を な い が し ろ に す るGell-Mannを
と こ ろ で ク ォ ー ク が 電 荷 は 別 と して,従
う とす る と,こ れ ら ク ォ ー クは さ ら に 厳 密 なSU(3)対 呼 ば れ る)自
批 判 し て い る の で あ る13).
来 の フ ェル ミ粒 子 と 同 じ くフ ェ ル ミ統 計 に従
由 度 を共 有 す べ き こ とが,M.
Y. Han・
称 性 に 従 う 三 つ の(カ 南 部 陽 一 郎,宮
ラー と
本 米 二 お よ び堀
尚 一 らに よ っ て そ れ ぞ れ独 立 に 提 唱 さ れ て お り,そ れ は ま た クォ ー クが 単 体 で(半 電 荷 が)見
端
い だ せ な い こ と の理 論 構 築 の 可 能 性 を与 え て い る.
5.7 1粒 子 交 換 と ク ォ ー ク 組 替 振 幅 少 し遡 る が,武
谷 を 中 心 とす る湯 川 中 間 子 論 に 基 づ く核 力 の 研 究 グ ル ー プ は,1個
の π 中 間 子 を 交 換 す る効 果 は 比 較 的 離 れ た 領 域 で の 核 力 を う ま く説 明 で き る が,さ らに 近 似 を 上 げ て2個 示 し て い た.一
の 交 換 の効 果 を見 る と,必 ず し も よ い 結 果 が 得 られ な い こ と を
方 坂 田模 型 の 立 場 か ら考 え る と,基 本 粒 子 間 の 相 互 作 用 が 元 で あ っ
て,湯
川 型 相 互 作 用 は そ れ か ら 導 か れ た い わ ば有 効 相 互 作 用 と 見 做 す べ き こ と に な
る.坂
田模 型 に お い て 色 々 な 複 合 粒 子 の 存 在 が 予 想 さ れ る とす れ ば,有 効 相 互 作 用 で
の 近 似 を上 げ る 前 に そ の こ と を優 先 して 考 え るべ き で は な か ろ うか.星 昭 一 郎,亘
和 太 郎,米
沢 は こ う した 考 え に 基 づ い て,粒
子1個
田,上
田 保,亘,米
沢 ら は,さ
槻
の 交 換 で は あ る が,π
中 間 子 の 他 に 模 型 か ら予 想 され る全 て の 粒 子 を考 慮 に 入 れ て,近 な り う ま く 説 明 で き た.沢
崎 憲 夫,大
距離 までの核 力 をか
らに この 考 え を π中 間
子 ・核 子 反 応 に ま で 広 げ て 適 用 した. と こ ろ で,さ
き に 中 間 子 は2体
系,重
粒 子 は3体
系 と述 べ た が,強
い相 互 作 用 系 で
あ る こ れ らの 粒 子 に は,通 常 の 場 の 理 論 か らす れ ば 無 数 の要 素 ・反 要 素 の 対 が 介 在 し て い る は ず で あ る.し を 担 う,い
た が っ て2体,3体
と 云 う と き は,各
粒 子 を特 長 づ け る量 子 数
わ ば こ れ ら の 対 の く り込 ま れ た 最 小 数 の 要 素 に つ い て 述 べ て い る と考 え よ
う.実 際,要
素 の 保 存 を 加 え た 対 称 性U(3)の
極 限 で は,ハ
ドロ ン を特 徴 づ け る量
子 数 と この 最 少 数 の 要 素 との 間 に は 一 意 的 な 関 係 の あ る こ とが 示 せ る14).こ の 要 素 像 に した が っ て 粒 子 の 強 い 相 互 作 用 に よ る崩 壊 を見 る と,最 初 の 粒 子 に 存 在 して い た要 素 ・反 要 素 が 崩 壊 さ き の 粒 子 の 中 に 残 っ て い る よ う な過 程 が と くに優 先 して い る,と い う特 長 が あ る.大 長 を,さ
久 保 進,Zweig,続
いて飯塚 重五 郎 に よって 見 いだ され た この特
き の 一 粒 子 交 換 に よ る反 応過 程 に 適 用 し,そ れ をFeynman図
要 素 の 描 くさ ま ざ ま な ラ イ ン の 組 み 替 え 図 が 得 ら れ る.1967年,井 夫,二
宮 勘 助,沢
田 ら に よ っ て 始 め られ た こ の 研 究 は,そ
分 散 理 論 に よ る散 乱 振 幅 の 研 究 と良 く符 合 し,ハ
に 表 す と,各 町 昌 弘,松
岡武
の頃盛 ん に行 なわれ てい た
ドロ ン の 複 合 性 を素 粒 子 反 応 の面 で
も裏 付 け る こ と と な っ た.
5.8 標 準 模 型 の 成 立 1971年,丹
生
潔 ら の グ ル ー プ が 宇 宙 線 実 験 中,写
粒 子 の 崩 壊 を 示 唆 す る軌 跡 が,次 合 栄 一 郎,松
田 正 久,重
の 発 展 の 契 機 を与 え る こ とに な っ た.林
枝 新 成 と筆 者 は,こ
ジ 粒 子 に 同 定 で き な い こ と を見 い だ し,こ
武 美,川
の 軌 跡 の 分 析 か ら そ れ が 従 来 の ス トレ ン れ を さ き の 新 名 古 屋 模 型 の 第4番
対 応 す る要 素(c-ク
ォ ー ク)の 兆 候 とす る予 想 と,そ
的 特 長 を 与 え た.こ
れ が 正 し け れ ば,ク
対 称 性=新
真 乾板 上 に 見 い だ した新 しい
目P'に
の場 合 の 粒 子 の 崩 壊 の 示 す 実 験
ォ ー ク レベ ル で あ る が 重 粒 子 と レ プ トン との
名 古 屋 模 型 が 予 想 した 対 称 性 は実 験 的 に 完 結 す る.こ
に 模 型 に 関 す る 注 目 を 引 く こ と に な っ た が,な
か で も小 林,益
の 予 想 は研 究 者 の 間 川 はS.
Weinbergら
の 電 磁 ・弱 相 互 作 用 の ゲ ー ジ場 に よ る統 一 理 論 と弱 い 相 互 作 用 に 見 られ るCP変 対 す る 理 論 の 毀 れ を と も に保 証 す る た め に は,少 ク ・レ プ トン(t,b;ν
換に
な く と も さ らに も う1世 代 の クォ ー
τ,τ)が 存 在 しな け れ ば な ら な い こ と を 結 論 し た(1973).こ
う
して ク ォー ク ・レ プ トン の3世 代 の 存 在 を核 とす る標 準 模 型 が 成 立 す る の で あ るが,
加 速 器 実 験 に お い て も,翌 年 よ うや く第2世
代 に 属 す る ハ ドロ ン(上
記c-ク
ォー ク
を含 み チ ャー ム 粒 子 と呼 ば れ る)が 見 い だ さ れ た の で あ っ た15).し か し遺 憾 な こ と に 坂 田 は こ れ らの 発 展 を 見 る こ とな く,1970年10月16日
逝 去 して い た. (筆者=お が
わ.し ゅ うぞ う,名 古 屋 大 学 名 誉 教 授,広 島 大 学 名 誉 教 授.1924年
生 まれ,1947年
名古屋
大学 理 学 部 卒 業)
参考 文 献 1) 小 川 修 三,広
川 俊 吉:『
日本 の 物 理 学 者 』 辻 哲 夫 編(東
210― 坂 田 昌 一 に お け る 「物 理 学 と方 法 」1.こ
海 大 学 出 版 会,1995)pp.171-
れ に は く りこみ 理 論 ま で の 経過 が や や
詳 し く記 録 さ れ て い る. 2) 湯 川 秀 樹:『 存 在 の 理 法 』(岩 波 書 店,1943)pp.43-109― 川晩年の
場 の 理 論 の 基 礎 に つ い て.湯
「素 領 域 の 理 論 」 に 通 じ る考 え で あ る.
3) 朝 永 振 一 郎:筆
者 は 朝 永 か ら 直 接 聞 い た 記 憶 が 残 っ て い る が,つ
る こ と が で き る.自
然300号(1971)241-10年
ぎ の 文 献 か ら読 み 取
の ひ と り ご と.
4) 坂 田 昌一:中 間 子 討論 会 予 稿1943年9月
―素 粒 子 論 にお け る模 型 の 問 題.名 古 屋 大 学
理 学 部物 理 学 教 室 坂 田 記念 資料 室 蔵. 5) 坂 田 昌一:『 科 学 者 と社 会,論
集2』(岩
波 書 店,1972)p.5―
6) 坂 田 昌一:『 物 理 学 と方 法,論
集1』(岩
波 書 店,1972)pp.201-208―
7)
H.Yukawa:Science tary
121(1955)405-408―Attempts
at
素 粒 子 論 の 方 法.
a unified
theory
of
elemen
particles.
8)
素 粒 子 論 研 究12(1956)303-311参
9)
S.Sakata:Prog.Theor.Phys.16(1956)686-688―On new
10)
研 究 室 会 議 の 提 唱.
particles,お
照.
よ び 文 献1参
a
composite
model
for
the
照.
素 粒 子 論 研 究12(1956)296-303.
11) 大 貫 義 郎:素
粒 子 論 研 究82(1991)503-547―
対 称 性 理 論 事 始.こ
れ に 当時 の 詳 しい紹
介 が あ る. 12) 山 口嘉 夫:名
古 屋 大 学 理 学 部 物 理 学 教 室 坂 田 記 念 資 料 室 蔵.
13) 素 粒 子 論 研 究30(1964)406参
照.
14) M.Ikeda,Y.Miyachi,S.Ogawa,S.Sawada 25(1961)pp.1-16―A System
Possible
and Symmetry
M.Yonezawa:Prog.Theor.Phys.
in Sakata's
Model
for Bosons-Baryons
Ⅲ.
15) 複 合 模 型 以 後 の 文 献 に つ い て は 下 記 を 参 照 さ れ た い.S.Ogawa:Prog.Theor.Phys. Suppl.No.85(1985)52-60―The toward
初 出:日
the age
of new
Sakata flavours.
本 物 理 学 会 誌51(1996)90-94.
model
and
its succeeding
development
6. 中間子論 とその遺 産 ― ク ォ ー ク の 時 代 か ら振 り返 る ― 町
6.1 湯 川 秀 樹(H. ら70年
田
茂
中 間 子 論 ― 素 粒 子 論 の は じ ま り―
Yukawa)の
中 間 子論 の 論 文 が 書 か れ た の は1934年
だ か ら,い
前 で あ る.素 粒 子 論 は 現 在 で は 大 き な 分 野 に な っ て い るが,そ
まか
の発 展 の糸 口
は こ こ に あ る と 言 っ て よ い. 素 粒 子 と して 知 られ て い る もの は,現
在 で は,数
相 互 作 用 をす る粒 子 ― ハ ド ロ ン― で,そ
れ は ス ピ ン が 半 整 数(フ
子 族 ― バ リオ ン― と ス ピ ンが 整 数(ボ
ソ ン)の
ェ ル ミオ ン)の 重 粒
中 間 子 族 ― メ ソ ン ― とに 分 れ る.そ
ほ と ん ど は 不 安 定 で 非 常 に 短 い 寿 命 ―10-8∼10-23秒 も っ と も よ く知 ら れ て い る の は 核 子(陽
百 種 類 も あ る.そ の 大 多数 は 強 い
― で 崩 壊 す る.バ
子 と 中性 子 の 総 称)で
あ り,メ
の
リオ ンの 中 で ソ ンの 中 で も
っ と も よ く知 られ て い る の は π 中 間 子 で あ る. 湯 川 の 理 論 は,強
い 相 互 作 用 の 中 で 当 時 唯 一 つ 知 ら れ て い た 核 力 ― 核 子 を結 び つ け
て 原 子 核 を つ く る 力 ― と 原 子 核 の β 崩 壊 と を一 つ の 新 し い 場 を 導 入 して 説 明 し よ う とす る も の だ っ た が,現
実 は も っ と複 雑 な こ とが だ ん だ ん 明 らか に な り,β 崩 壊 を 含
む 弱 い相 互 作 用 に つ い て は,電 WeinbergとA.
Salamの
磁 相 互 作 用 と と も に ゲ ー ジ 理 論 と し て 統 一 す るS.
理 論 に 到 達 す る.こ
れ は ず っ と あ との1970年
頃 の こ とで あ
る. 中 間 子 論 が 提 唱 さ れ た 当 時 に知 ら れ て い た素 粒 子 は 陽 子 ・中 性 子 ・電 子 ・光 子 だ け で あ り,ニ ュ ー ト リ ノは1930年 一 方
にW.
,理 論 の 方 で い う と1928年
論 の 形 式 をつ く り上 げ,そ 同 じ年 にP.
A. M.
Diracは
Pauliに
にW.
よ っ て 仮 説 と して 導 入 さ れ て い た.
HeisenbergとPauliが
量 子 化 さ れ た 場 の理
れ が 内 容 的 に 特 殊 相 対 論 の 要 求 をみ た す こ と を 証 明 し た. 電 子 の 相 対 論 的 方 程 式 を 見 出 し,そ れ は1932年
に発見 さ
れ る 陽 電 子 を は じめ と す る 反 粒 子 の 存 在 を 予 言 す る こ とに な る.中 性 子 も 同 じ く 1932年
に 発 見 され,D.
D. IwanenkoやHeisenbergに
よ る,原
子核 が陽 子 と中性子
と で で き て い る とす る理 論 の提 唱 に つ な が っ た.原 子 核 の 構 成 の理 論 は,核 適 当 な 力 の ポ テ ン シ ャル(核
子 の 間に
力 ポ テ ン シ ャ ル とい う)を 仮 定 す る現 象 論 で あ っ た.
そ こ へ 提 出 さ れ た 湯 川 の 中 間 子 論 は 大 き な セ ン セ ー シ ョン を ま き起 した.そ の 理 由 は,陽
子 と 中性 子 と電 子 と光 子(と
け で 宇 宙 が で きて い るの だ ろ う と い う,当 時 の 漠 然 と した,し な も の に 穴 を あ け た こ と で あ る.
の一つ
ニ ュ ー ト リ ノ)と い う よ く知 ら れ た粒 子 だ か し,強 い 信 条 の よ う
私 は そ の こ ろ の 雰 囲 気 を 直 接 に は知 らな い が,未 が 大 きか っ た 中 で,目
か ら鱗(う
う.半 信 半 疑 に せ よ,ま よ,パ
ろ こ)が
知 の 粒 子 を導 入 す る こ とへ の 抵 抗
落 ち る思 い を した人 も少 な くなか った ろ
た そ の 提 唱 が ど こ ま で 正 しい か は 大 い に 疑 問 で あ っ た に せ
ラ ダ イ ム の 転 換 に 近 い もの だ っ た. 6.2
中 間 子"場"の
この こ と と結 び つ い て 注 目 して よ い の は,そ
理 論 の 考 え 方 が 場 の 理 論 を徹 底 す る も の だ
っ た こ と で あ る. 現 在 で は,素 以 下 は"低
粒 子 物 理 学 で は100GeV(=105MeV=1011eV,eVは
エ ネ ル ギー"で
に な っ た の は1949年 MeV(GeVで た.加
あ る.私
で あ るが,そ
は な い!)ま
電 子 ボ ル ト)
が 大 学 を卒 業 し て 曲 りな りに も研 究 者 の は し くれ の 頃 ま で 高 エ ネ ル ギ ー の 実 験 と い え ばせ い ぜ い10
で の 陽 子-陽 子 お よ び 中 性 子-陽 子 散 乱 の 実 験 し か な か っ
速 器 の エ ネ ル ギ ー が 数 百MeVま
で 跳 ね上 が って π 中 間 子 が 人 工 的 に つ くら れ
る よ うに な り,π 中 間 子-核 子 散 乱 の 実 験 が 行 わ れ る よ うに な っ た の は そ の 頃 か ら で, 外 国 との 文 通 も ろ くに で き な か っ た 戦 後 の 日本 の 研 究 者 に と っ て は,ま で き ご と だ っ た.そ が 行 わ れ,バ
の 後10年
位 の 間 に,い
わ ゆ る"共
鳴 狩 り(resonance
hunting)"
リオ ン と メ ソ ン で 合 せ て 数 百 も見 つ か っ た わ け で あ る.
場 の理 論 は 電 子 と 電磁 場 の 系 を モ デ ル に して つ くら れ たが,摂 無 限 大 が 出 る 困 難 も あ っ て,核
子 の よ う な電 子 の 約2,000倍
で 使 え る と い うほ どに は 信 用 し な い 雰 囲 気 が 強 か っ た.事
程 式 を適 用 す る こ と を 疑 問 視 し て,反 性 π 中 間 子 の2個
動 論 の高次 の補 正 に
もの 質 量 を持 つ 粒 子 に ま 実,1950年
子 に 反 粒 子 が 存 在 す る こ とは 確 か で あ っ た に もか か わ らず,核
た.中
っ た く突 然 の
前 後 で も,電
子 に まで デ ィラ ック方
核 子 の存 在 を否 定 す るよ うな 雰 囲気 が 強 か っ
の 光 子 へ の 崩 壊 が 見 つ か り,当 時 の 理 論 で 言 え ば,中
性 π
中 間 子 が 中 間 段 階 で 核 子 と反 核 子 とに な る メ カ ニ ズ ム しか 説 明 が な い に も か か わ ら ず,で
あ る.
そ うい う状 況 の 中 で提 唱 さ れ た 中 間 子 論 は,し 存 在 を 予 言 し た ば か り で は な く,"中 もあ っ た.こ
た が っ て単 に 中 間 子 と い う素 粒 子 の
間 子 場 の 理 論"と
い う新 し い 場 の 理 論 の 提 唱 で
の 面 は 整 数 ス ピ ン の 量 子 を と も な う場 の 一 般 論 の 形 成 を も含 み,ま
た場
の 理 論 の 威 力 の 一 面 を示 し た もの で もあ っ た.
6.3 核 力 の 中 間 子 論 π 中 間 子 論 の 強 い 相 互 作 用 の 理 論 と して の 重 要 な 部 分 は 加 速 器 に よ っ て つ く られ た π 中 間 子 と核 子 との 衝 突 実 験 に よ っ て 明 らか に さ れ て い っ た が,湯
川 の 中間 子 論 の 発
生 地 で あ る核 力 は 中 間 子 論 の い わ ば 古 典 的 な 部 分 を 成 し て い る. そ れ は なぜ か と い う と,核
力 が 現 実 の 独 立 した 粒 子 と して の π 中 間 子 と核 子 との
相 互 作 用 で は な くて,一
つ の 核 子 に 結 び つ い て 離 れら れ な い 仮 想 中 間 子 の 場 とそ こ に
入 っ て き た別 の 核 子 と の相 互 作 用 で あ る こ と か ら く る. い ま1個
の 核 子 が 座 標 の 原 点 に あ る と し よ う.そ
ら っ ぽ くい え ば,図1の そ の 位 置 をr0と
よ う に な る.そ
す る と,原 点 に あ る1番
こ へ,図2の
の ま わ りの π 中 間 子 の 場 は,あ よ う に,別
の 核 子 が きた と し,
目 の 核 子 が つ く る π 中 間 子 場 と2番
目の核
子 と の 相 互 作 用 ハ ミル トニ ア ン は
(1) と な る.ρ(2)(r-r0)はr0に
あ る2番
目 の核 子 の 拡 が り,σ(2)は そ の ス ピ ン作 用 素,
τi(2)は 核 子 の 陽 子 状 態 と 中性 子 状 態 と を表 す 荷 電 ス ピ ン 空 間 で の 作 用 素,φ i(1)(r)は 1番 目 の核 子 が つ く る π 中 間 子 場 で,i は π中 間 子 の 荷 電 が 正 ・負 ・中性 と3種 類 あ る こ と を表 す 荷電 ス ピ ン 空 間 で の 成 分 で あ る .mπ 中 間 子 場 と の 相 互 作 用 定 数 で あ っ て,そ
は π 中 間 子 の 質 量,gは
の値 は実験 か ら
で あ る.
図1
図2
座 標 の 原 点 に あ る核 の まわ りの π 中 間 子 場
一 つ の核 子 の ま わ りの π 中 間 子場 と2番 子 との相 互 作 用
目の 核
核子 とπ
π 中 間 子 の 場,φ(r),は
ギ ス カ ラー で あ り,σ ・∇ も ギ ス カ ラ ー な の で,上
ル トニ ア ン は ス カ ラ ー で あ る.強
い相 互 作 用 が 時 間 反 転 ・空 間 反 転 ・荷 電 共 役 の そ れ
ぞ れ に つ い て 不 変 で あ る とす る と,静 止 して い る ス ピ ン1/2の の 相 互 作 用 と して は こ の(1)の り重 要 で な い 数 百MeVま
のハ ミ
形 し か 許 され な い.こ
粒 子 とギスカ ラー場 と
の こ とが,核
子 の運 動 が あ ま
で の 現 象 の 扱 い を非 常 に簡 単 に す る.
π 中 間 子 を 直 接 見 る π 中 間子-核 子 散 乱 や ハ ドロ ン衝 突 に よ る π 中 間 子 の 発 生 な ど で も,核 子 が 静 止 して い る近 似 で は,(1)の し,こ
相 互 作 用 ハ ミル トニ ア ンが 使 え る.し
こ で核 力 と の 大 きな 違 い が あ る.そ れ は(1)の
核 力 の 場 合 に は 図2の
よ う に,ほ
か の 核 子 の ま わ りの 場 で あ る の に対 して,π
中間 子
-核 子 散 乱 な ど の 場 合 に は π 中 間 子 の 自 由 場 で あ る こ と で あ る.こ の 場 合,図2の う な,φ(r)が
よ
指 数 関 数 的 に 小 さ くな る こ と は起 ら な い.
こ れ に 対 し て 核 力 の 場 合 に は,│r0│を (r-r0),と
か
中 の π 中 間 子 の 場,φ(r),が
大 き くす れ ば2番
目 の 核 子 の 拡 が り,ρ(2)
重 な る φ(1)(r)の 値 は い く ら で も小 さ く な る.言
作 用 ハ ミル トニ ア ン で 同 じ相 互 作 用 定 数 で あ っ て も,遠
い か え れ ば,同
じ相 互
く離 れ た二 核 子 間 の 核 力 で は
相 互 作 用 ハ ミル トニ ア ン は い く らで も小 さ くな る. こ の た め,遠
方 の 核 力 ポ テ ン シ ャ ル は 一 切 の 曖 昧 さ な し に 決 ま る.こ の 部 分 の核 力
ポ テ ン シ ャ ル の 形 は ま っ た く厳 密 に 正 確 な も の で,核
子 場 と π 中間 子場 の相 対論 的
な 理 論 か ら 出 発 し て す べ て の 高 次 補 正 を考 慮 し て も,ま
た,核
子 と π中 間子 とが ク
ォ ー ク で で き て い る と し て も,核 子 間 の 距 離 が 大 き く核 子 が 静 止 し て い る とす る近 似 で は,こ
こ に 述 べ た もの に な っ て し ま う.ど
計 算 し て み れ ば わ か るが,だ
い た い,核
を越 え る あ た りが 目安 に な る(図3).そ
図3
の く ら い遠 け れ ば よい か は,他
の効 果 を
子 間 の 距 離 が π 中 間 子 の コ ン プ トン 波 長,
れ よ り内 側 で は π 中 間 子 よ り重 い ρ,ω な
核力 ポテンシャル
どの 中 間 子 の 交 換,核
子 の 励 起 状 態 の 存 在,2個
以 上 の π 中 間 子 の 交 換,π
中 間子 と
核 子 が ク ォ ー クで で き て い る こ と の 影 響 な ど あ ら ゆ る こ とが き い て く る 可 能 性 が あ る. こ の 遠 くの 核 力 は クー ロ ン の 静 電 ポ テ ン シ ャ ル の よ うな もの で,実 も効 か ず,φ(r)と
し て核 子 の ま わ りの 古 典 論 的 な 場 を 使 え ば 十 分 で あ る.量
効 果 を 無 視 で き る領 域 は π 中 間 子-核 子 散 乱,π が,核
は量 子論 的効果
力 の 場 合,一
子論 的
中間 子 の発 生 な どの現 象 に は無 い
番 外 の 領 域 だ け は 古 典 論 的 な の で あ る.
6.4 ク ォ ー ク の 存 在 と拡 張 さ れ た 排 他 律 核 子 が3個
の ク ォー ク で で き て い る と して そ の 波 動 関 数 を ψ(x1,x2,x3)と
間 子 が ク ォー ク と反 クォ ー ク で で き て い る と して そ の 波 動 関 数 を φ(y,y)と
し,π 中 す る と,
核 子 が π 中 間 子 を放 出 あ る い は 吸 収 す る相 互 作 用 は
(2) の 形 に 書 け る.こ
こ でOは
ス ピ ン,荷
電 ス ピ ン な ど に 作 用 し,ま
た,x1,…,yお
よ
び そ れ に つ い て の 微 分 を 一 般 に は 含 ん で い る.積 分 は す べ て の 座 標 に わ た る.こ れ は 核 子 と π 中 間 子 とが 何 個 か の 局 所 場 で で き て い る と した と き の 一 般 形 で あ る が,こ の(2)の
形 も,核
子 が 静 止 して い る 近 似 で は,粒
子 の 内 部 座 標 で 積 分 す る と,(1)
の 形 に 帰 着 し て し ま う. こ う して,核 与 え ず,中
力 ポ テ ン シ ャ ル の 遠 方 の 部 分 に は 核 子 と π 中 間 子 の 複 合 性 も影 響 を
間 子 論 の 結 果 が そ の ま ま成 り立 つ.
しか し,ハ
ドロ ン が ク ォ ー クで で き て い る こ とだ け か ら く る,ク
ォー ク 間 の ダ イナ
ミ ッ クス に よ らな い効 果 が あ る.そ れ は ク ォ ー クが フ ェ ル ミ-デ ィ ラ ッ ク統 計 に 従 う こ とか ら く るPauliの 図4(a)の
排 他 律 の 影 響 で あ る.
よ う に,運
て,運 動 量p'とk'と
動 量 が,そ
れ ぞ れ,pとkの
に な る散 乱 振 幅 は,核
核 子 と π 中間 子 が 散 乱 に よ っ
子 と π 中 間 子 を,そ
れ ぞ れ,一
つ の局 所
場 とす れ ば
(3) で あ る.こ る.ψ,φ 素,は
こ で,p,k,x,yな は,そ
れ ぞ れ,核
ど は す べ て4元
どは そ の 内積 であ
子 場 と π 中 間 子 場 の 作 用 素 で あ り,ψ は ψ の 共 役 作 用
作 用 素 を 時 間 の 順 序 に 並 べ たT積
ψ と ψ は 反 可 換,φ
ベ ク トル,pxな
の 真 空 期 待 値 を 表 す.T積
の 中では
は 他 の 作 用 素 と可 換 で あ り,そ の こ とか ら,π 中 間 子-核 子 散 乱
の 交 又 対 称 性 が 導 か れ る. こ こ で核 子 が ク ォ ー ク3個
で,π
中 間 子 が ク ォー ク と反 ク ォ ー ク で で き て お り,ク
(a)
(b)
図4
中 間子-核 子 散 乱
ォー ク は 局 所 場 で 表 さ れ る とす る と,(3)式
を行 い,ハ
ドロ ン をつ くる ク ォ ー ク の 波 動 関 数 の 効 果 を表 す 因 子
を加 え れ ば よ い.qは …
で 置 き換 え
ク ォ ー ク場 の 作 用 素,qは
,y1',y2'に つ い て行 わ れ る.こ
ら,散 乱 振 幅 で は 図4(b)の 定 の 反 対 称 性 を示 し,ハ
そ の 共 役 量 で あ り,積 分 はx1,x2,
の 式 の 中 で す べ て のqお
ク ォ ー ク の10本
よ びqは
互 い に 反可換 だか
の外 線 の すべ ての 入 れか え につ いて 一
ドロ ン と し て の 統 計 性 だ け で な く,ま た,入
射 粒 子 同 士,散
乱 粒 子 同 士 の 間 の統 計 性 だ け で も な く,入 射 粒 子 と散 乱 粒 子 との 入 れ か え に も関 係 す る式 が 導 か れ る.こ れ は 構 成 子 の 排 他 律 に よ っ て ハ ドロ ン の レベ ル の パ ウ リ原 理 を 拡 張 した もの で あ る.上
の 式 で は ク ォー ク の 色(カ
度 を 表 す 添 字 は 省 略 し て あ る が,そ の 効 果 が 大 き い か も わか る.い
ラー)と
れ を考 慮 す れ ば,ど
香 り(フ
レー バ ー)の
自由
の 粒 子 間 の 反 応 で パ ウ リ原 理
ず れ に し て も,波 動 関 数 の 重 な りが ク ォー ク の フ ェ ル
ミ-デ ィ ラ ッ ク統 計 に よ っ て 制 限 さ れ る効 果 だ か ら,そ の 影 響 は低 エ ネ ル ギ ー で だ け 大 き い. こ れ は ハ ドロ ンがq,qと
い うフ ェ ル ミオ ン場 で で き て い る こ と だ け を使 っ た もの
で あ る.こ
れ 以 上 進 む に は ク ォ ー ク 間 の ダ イナ ミ ッ ク ス が 必 要 で あ る.
6.5 ク ォ ー ク ・ レベ ル の ダ イ ナ ミ ッ ク ス ― 量 子 色 力 学(QCD)― QCDと
中 間 子 論 の 関 係 を見 る と き,QCDの
役 割 を,完 全 に で は な い が,さ
しあた
り二 つ に 分 け て 考 え る こ とが で き る.そ れ は ハ ドロ ン を つ く る作 用 とで き たハ ドロ ン の 間 の 作 用 とに分 け る こ と で あ る.ハ く ク ォ ー ク で で き て お り,ま 現 象 は数 多 くあ るか ら,上
ドロ ン の 間 の 作 用 に も,ハ
た そ の ダ イナ ミ ッ ク ス がQCDで
の よ うに 分 け て 考 え る と き,た
ドロ ン が 点 粒 子 で な
あ る こ とが 直 接 現 れ る え ず そ の 点 に 注 意 しな け れ
ば な ら な い こ とは 言 う ま で も な い. 1950年 代 後 半 か ら1960年
代 に か け て,ハ
ドロ ンの 強 い 相 互 作 用 を摂 動 論 に よ ら ず
に 扱 う た め にS行
列 の解 析 性 が 研 究 さ れ,分
理 論 が 出 さ れ,超
ひ も理 論 に つ な が る弦 模 型 も そ こ か ら生 み 出 され た.
一 般 に ハ ドロ ン 間 の 反 応 を 表 すS行
散 関 係 や レ ッ ジ ェ(Regge)極
列 を運 動 量 の組合 せ や角 運 動量 の複 素 関数 と
し て 考 察 す る と極 や 分 岐 点 な ど の 特 異 性 が 存 在 し,そ な りの 部 分 が 決 ま る.1個
を 認 め て し ま え ば,ハ
れ に よ っ てS行
列 の性 質 のか
の ハ ドロ ン あ る い は 共 鳴 状 態 は 極 を 与 え,2個
分 岐 点 そ の 他 を生 じ るか ら,ハ
な どの
ドロ ンがQCDか
以上 あ る と
ら 導 か れ る もの と仮 定 して そ の 性 質
ドロ ン反 応 を あ る程 度 扱 う こ と が で き る.
こ う して も限 度 が あ り,直 接 ク ォー ク の 集 ま り と し てQCDに な ら な い場 合 が 多 い の は 前 に も述 べ た 通 りで あ る が,一
方 で,こ
よ って扱 わ なけ れば の よ う なハ ドロ ンが
与 え る粒 子 的 特 異 性 に は そ の 起 源 に よ ら な い 部 分 も 多 い か ら,こ の よ う な方 法 は,複 雑 なハ ド ロ ン 反 応 を扱 う手 段 と して 将 来 も役 立 つ だ ろ う.
6.6 中 間 子 論 か らQCDへ ハ ド ロ ン の 複 合 性 を 初 め て 明 確 に 論 じ た の は"Are cles?"と
い う題 のE.
FermiとC.
N.
Yangの1949年
Mesons
の 論 文 で あ る.こ
が 核 子 と 反 核 子 と の 結 合 状 態 で あ る と し た も の で あ る.た Podolsky-Rosenの
パ ラ ド ッ ク ス のRosen)が
Elementary
だ しN.
Rosen
Parti
れ は π 中間 子 (Einstein-
そ の 少 し前 に 同 じ よ うな 内 容 を ア メ リ
カ 物 理 学 会 で 発 表 し て い て 優 先 権 を 主 張 し た 論 文 を 書 い て い る.
こ の こ ろハ ドロ ン(当
時,ハ
ドロ ン とい う言 葉 は な か っ た の だ が)の
う ち で知 ら れ
て い た の は 核 子 と π 中 間 子 だ け だ っ た.FermiとYangの
論 文 は い か に もFermiら
し い 大 胆 な着 想 と 人 の 意 表 を つ く表 現 で 書 か れ て い た."中
間 子 は 素 粒 子 か?"と
う題 名 と,"素
れ らのす べ てが素 粒 子 で
粒 子 が た く さ ん 見 つ か れ ば 見 つ か る ほ ど,そ
あ る確 率 は 減 少 す る.だ
か ら素 粒 子 の 数 を減 らす こ と を試 み る"と
い
い う書 き 出 しは,
素 粒 子 と し て確 認 さ れ て い た の が,核 子 ・π 中 間 子 の ほ か は μ 中 間 子 ・電 子 ・ニ ュ ー ト リノ だ け で あ っ た 当 時 の 多 くの 研 究 者 の 盲 点 を突 い て い た .
こ の 論 文 が 出 た こ ろ は ま だ フ ィ ジ カ ル ・レ ビ ュ ー 誌(Physical 2∼3冊
しか こ な い よ う な 状 況 だ っ た が,そ
永 振 一 郎(S. 安 孝(Y.
Tomonaga)・
Tanikawa)と
坂 田 昌 一(S.
Revue)が
東京 に
の す ぐあ との 物 理 学 会 の 会 合 で 湯 川 ・朝 Sakata)・
い っ た 諸 先 生 方 が,こ
武 谷 三 男(M.
の 論 文 に つ い て,活
Taketani)・
谷川
発 に 論 じ合 わ れ
た の を お ぼ え て い る. そ の 後 の10年
ほ ど の 間,ハ
ドロ ン の 複 合 性 に つ い て の 研 究 は た くさ ん の 共 鳴 状 態
や ス トレ ン ジ粒 子 の 発 見 な ど に刺 激 さ れ て,ユ
ニ タ リー 群 の 対 称 性 を 中心 と して行 わ
れ た. 観 測 され るハ ドロ ン の 種 類 や 大 体 の 質 量 ・ス ピ ン な どの 性 質 を説 明 す る た め に,ハ ドロ ン は クォ ー ク と呼 ば れ る ス ピ ン1/2の 年 にM.
Gell-MannとG.
/3,荷
Zweigに
構 成 子 か ら で きて い る とす る考 え が,1963
よ っ て提 唱 さ れ た.こ
電 が 電 子 の 電 荷 の 大 き さの2/3あ
る い は-1/3と
の 構 成 子 は バ リ オ ン数 が1
考 え られ た 点 で,い
ま まで物
理 学 が 遭 遇 して き た粒 子 と は ま っ た く違 っ て い た.し か し,ク ォ ー クが 実 際 に 点 粒 子 と して 存 在 す る と して 非 相 対 論 的 な ポ テ ン シ ャ ル を仮 定 し て 計 算 し たハ ドロ ン の性 質 は 実 験 結 果 と非 常 に よ く一 致 し,当 時,"ク こ と を除 い て は,す
ォ ー ク模 型 は,ク
べ て う ま くゆ く"と 言 わ れ た.し
ル の 基 礎 は ま っ た く信 頼 で きず,ク
ォー クが見 つか らな い
か し,非 相 対 論 的 な ポ テ ン シ ャ
ォ ー ク 間 の ダ イ ナ ミ ッ ク ス の不 透 明 が す べ て の ネ
ッ ク に な って い た. こ の 状 態 を 打 破 っ た の は 高 エ ネ ル ギ ー で の レ プ トン-ハ ドロ ン 反 応 で あ っ て,深 部 非 弾 性 散 乱 の 解 析 か ら,バ
リ オ ン は た しか に3個
れ は"点
い て い る よ うに 振 舞 っ て い た.
粒 子 が 自 由 に"動
の 構 成 子 か ら成 っ て お り,し か もそ
深 部 非 弾 性 散 乱 は 空 間 的 に構 成 子 の ご く近 傍 を 調 べ て い る の で,そ の 構 成 子 を ク ォ ー ク とす る と ,ク
ォ ー ク は非 常 に 強 い 力 で 結 び つ い て ハ ドロ ン をつ くっ て い る の に,
そ の ご く近 傍 で は 相 互 作 用 が 弱 くて あ た か も 自由 粒 子 の よ う に見 え る こ とに な る.量 子 電 気 力 学 で は 電 子 に 遠 くか ら近 づ い て ゆ く と,電 子 の 自 己 場 の 衣 を は い で ゆ く こ と に よ っ て そ の 電 荷 は ど ん どん 強 くな る.ク る の だ が,そ Politzerお
の"漸 よ びD.
近 自 由 性"を J. GrossとF.
ォー ク の 相 互 作 用 は そ れ と逆 の よ う に 見 え
持 つ 場 の 理 論 が 存 在 す る こ とが,1973年 Wilczekに
よ っ て 発 見 さ れ た .そ れ は1954年
表 さ れ て い た ヤ ン-ミ ル ズ 場 の 理 論 で あ っ た.こ て3種
類 の ベ ク トル 場 を導 入 した,SU(2)を
量 子 色 力 学(QCD)は
ク ォ ー クに3種
に発
ゲ ー ジ群 と す る理 論 で あ っ た .
類 の 色(カ
ラー)と
呼 ば れ る 自 由 度 を与 え,
類 の ベ ク トル 場(グ
ル ー オ ン)を
ゲ ー ジ群 とす る理 論 で あ る.
この 理 論 で は グ ル ー オ ン が近 傍 の 相 互 作 用 を弱 く し,ク る.色
D.
れ は 核 子 の 荷 電 ス ピ ン を ゲ ー ジ化 し
そ れ に と もな う ゲ ー ジ場 と して 同 じ く色 を持 つ8種 導 入 す るSU(3)を
に,H.
の ゲ ー ジ群 がSU(3)で
ォー ク が そ の逆 の 働 き を す
あ る と き は ク ォ ー ク の 香 り(フ
レ ー バ ー)の
数 が17
以 下 で あ れ ば 漸 近 自 由性 が 生 じ る.ク
ォー ク の 香 りの 数 は 現 在 で は6と 考 え られ て い
る. 漸 近 自 由 性 が あ る と ク ォ ー クの す ぐ近 くで は相 互 作 用 は 非 常 に 弱 くて 摂 動 論 が 使 え る.反 応 で 言 え ば,交
換 さ れ る 運 動 量 が 大 き い場 合 で あ る.こ
言 は 実 験 と よ く合 っ て い る.難 る.そ
の 極 端 な 例 は"ク
の 領 域 で のQCDの
予
し い の は運 動 量 交 換 が 小 さ く相 互 作 用 が 強 い 場 合 で あ
ォ ー ク の 閉 じ込 め"の
問 題 で あ っ て,QCDで
や グル ー オ ン な ど色 が あ る も の は 独 立 粒 子 と して は 出 現 せ ず,赤
は,ク
ォー ク
・青 ・緑 の 三 原 色 が
ま ざ り合 っ て 無 色 に な っ た バ リオ ン と赤 と反 赤 な どで 色 を消 し た メ ソ ンだ け が 出 現 で き る よ う に な っ て い るの だ ろ う と思 わ れ て い るが,ま
だその メカニ ズム はわか って い
な い. S行 列 の 解 析 性 と の 関 係 で 言 え ば,ク
ォー ク あ る い は グ ルー オ ン の 束 縛 状 態(共
状 態 を 含 む)の
動 量 あ る い は 角 運 動 量 の 適 当 な 組 合 せ を複 素
存 在 は,エ
ネ ル ギー,運
変 数 とす る リー マ ン(Riemann)面 性 質 を決 定 す る は ず だ が,極(あ
上 の 極 と し て 現 れ る.QCDはS行 る い は も っ と複 雑 な特 異 点)の
ス と,適 当 な 性 質 の 極 な どの 存 在 を 認 め た あ とで のS行 る部 分 が あ る.こ
列 の すべ て の 生 じ る ダ イナ ミッ ク
列 の決 定 を分 け て考 え られ
の よ うに 分 け て もハ ドロ ン間 の 反 応 は 複 雑 で あ る が,か
ジ ェ極 理 論 の 成 功 な ど は,こ
鳴
の 後 者 の 領 域 に お け るQCDの
つ ての レ ッ
扱 い 方 に 示 唆 を 与 え る.
6.7 21世 紀 へ の 課 題 1897年
の 電 子 の 発 見 を最 初 の 素 粒 子 の 発 見 とす る と,そ れ か ら ほ ぼ ち ょ う ど1世
紀 が た っ た こ とに な る.素
粒 子 論 とい え る もの が つ く られ た の は1934年
が 重 要 な き っか け だ っ た.素
粒 子 論 は 多 くの ハ ドロ ン の 発 見,強
互 作 用 の 発 見 な ど を経 て,そ
れ らの 統 一 に 向 っ た.ク
認,一
方 で は,ゲ
ォー ク の 理 論 的 予 測 と間 接 的 確
ー ジ 原 理 の 強 力 さ の 認 識 に も とづ い て,量
な どが つ くら れ た.さ
の 中間子 論
い 相 互 作 用 と弱 い 相
子 色 力 学 ・電 弱 統 一 理 論
ら に 重 力 を も統 一 す る 可 能 性 を持 ち,素
粒子 の すべ ての種 類 と
そ れ ら の 間 の 相 互 作 用 を 導 く可 能 性 を持 つ も の と して 超 ひ も理 論 が 深 く研 究 さ れ て い る. 多 くの 困 難 が あ るが,上
に述 べ た研 究 の 方 向 を さ ら に 追 及 す る こ とは 必 要 な こ と と
思 わ れ る. この よ う に約100年 あ る.あ は,場
の 歴 史 を持 つ 素 粒 子 の 研 究 の 基 礎 に あ る の は 相 対 論 と量 子 論 で
る い は 場 とい う概 念 と量 子 力 学 とい っ て も よ い.す べ て の 物 質 は,基
本的 に
だ とい う見 方 と,す べ て の 物 質 の 基 本 法 則 は 量 子 力 学 だ と い う認 識 は20世
紀
の 物 理 学 に特 徴 的 な も の で あ る.こ の 二 つ の 見 方 に 疑 念 を さ し は さ ま ね ば な らな い徴 候 は,い
ま の と こ ろ,な
い.そ
れ ど こ ろか,こ
の 二 つ の 見 方 を あ ら ゆ る領 域 に,さ
に,貫 徹 す る こ とが 必 要 で あ る よ う に 見 え る.ま
ら
っ た く古 典 論 的 に 見 え る 現 象 が 純 粋
に 量 子 論 的 な 物 質 の 一 つ の あ り方 と して 出 現 す る こ との 説 明 も,重 要 な テ ー マ で あ っ て,そ
れ は と くに,宇
宙 の 初 期 の 問 題 と も関 連 して 研 究 さ れ て い る.
私 た ち は,日 常 的 経 験 を通 じ て つ く り上 げ ら れ た 言 語 と概 念 を使 い,そ して 考 え る が,そ
の 方 法 は,基
れ を も とに
本 的 に 日常 的 経 験 の 精 密 化 で あ る古 典 物 理 学 が 成 り立
た な い 現 象 を把 握 す る に は 不 十 分 で あ る.量 子 力 学 は,い
ま ま で 当 然 の こ と と して 暗
黙 の う ち に 前 提 され て き た基 本 概 念 の い くつ か に 問 題 点 が ひ そ ん で い る こ と を明 らか に し た.そ
の 重 要 な教 訓 は,探
の 理 論 は,基
究 さ れ る 自然 の 領 域 が 新 しい も の に な る と き,私
たち
本 概 念 の 変 更 あ る い は 精 密 化 を要 求 され る可 能 性 が あ る こ と を,い つ で
も意 識 し て お く必 要 が あ る こ と で あ る. しか し,現 在,基 領 域 に,そ
本 的 に 必 要 な の は,量
子 論 の 考 え 方 を も っ と徹 底 的 に,す
の 状 況 に も っ と も 忠 実 に 適 用 す る こ とで あ る.も
り,次 の 理 論 へ の 突 破 口 が 見 つ か る と し た ら,そ れ は,そ り え な い だ ろ う.(筆
し,量
子力学 に限界が あ
うす る こ とに よ っ て し か 起
者=ま ちだ ・しげ る,京 都 大 学 名 誉 教授.1926年
生 まれ,1949年
京 大 学理 学 部卒 業)
初 出:臨
べ ての
時別 冊 ・数 理 科 学 『20世 紀 の 物理 学 』(サ イエ ン ス社,1998)pp.
221-227.
東
7. 素 粒 子 の究 極 理 論 を求 め て 武 物 理 学 会 の 編 集 委 員 会 よ り,湯 川,朝
所 収).素
た,素
粒 子 モ デ ル の 日本 の 研 究 に つ い て
誌51(1996)90,2月
号 参 照,本
自身 が 読 ん だ 本 の 中か ら幾 つ か を あ げ る と,S.
理 論 へ の 夢 』,A.
Zeeの
に
Hawkingの
Weinbergの
『究 極
『宇 宙 の デ ザ イ ン 原 理 』 等 の 素 粒 子 研 究 の 第 一 線 の 学 者 に よ
り書 か れ た 素 晴 ら しい 本 が あ り,ま あ げ れ ば,今
て,読
書 第5章
粒 子 理 論 の 発 展 に つ い て は 多 くの 優 れ た 啓 蒙 書 が 出 さ れ て い る.比 較 的 最
近 に 刊 行 さ れ,私
W.
暁
永 先 生 以 後 の これ ま で の 日本 の 素 粒 子 論 研 究
の 展 開 に つ い て 書 く よ うに と依 頼 さ れ た.ま は 小 川 修 三 さ ん が 別 に 書 か れ て い る(会
田
た,素 粒 子 理 論 と宇 宙 論 の 関 係 を論 じた 本 を取 り
は 古 典 と も言 え るS. Weinbergの
『宇 宙 創 成 は じめ の3分
間 』 とか,S.
『ホ ー キ ン グ 宇 宙 を語 る』 等 の 優 れ た 本 も 出 さ れ て い る1).し た が っ
者 が 素 粒 子 理 論 の 展 開 の 全 体 像 を得 る に は こ と欠 か な い.こ
の よ う な こ と は物
理 学 の 諸 分 野 の 中 で も素 粒 子 物 理 学 と宇 宙 物 理 学 に 顕 著 に 見 られ る特 徴 で あ り,物 質 世 界 の 究 極 理 論,宇
宙 の 誕 生 と進 化 の 統 一 理 論 を 求 め る こ れ ら の 分 野 が 多 く の 若 い
人 々 を 引 き付 け る魅 力 を具 え て い る証 拠 で あ る. こ れ ら の 本 に 書 か れ て い る素 粒 子 論 の 発 展 の 背 景 と 内容 を 熟 知 して い る読 者 に は, こ の 半 世 紀 の 素 粒 子 研 究 の 歴 史 を 短 い文 章 に ま とめ て も訴 え る と こ ろ は 少 な い も の と 思 わ れ る.ま
た,素
粒 子 物 理 が 専 門 外 の 会 員 に と っ て は,素 粒 子 物 理 学 の 進 展 の 中 で
個 々 の 人 々 が あ げ た 業 績 を通 し て 日本 の 研 究 の 歩 み を語 っ て も,全 体 の 素 粒 子 理 論 の 研 究 の 流 れ の 中 で こ れ らの 仕 事 が 果 し た 役 割 を感 じて い た だ くの は 難 し い と 思 わ れ る.そ
もそ も 自分 自 身 が そ の 流 れ の 中 に 置 か れ て きた 研 究 の 歴 史 を語 る こ とは 困 難 で
あ り,過 去 の 文 献 を改 め て読 み 直 し,そ の 頃 の知 識 の 状 況 と研 究 の 動 向 を再 認 識 し, そ れ 以 降 に 集 積 さ れ 既 成 概 念 と な っ て い る常 識 を一 旦 は 自分 の 頭 の 中 か ら払 拭 しな け れ ば な ら な い が,私
に は で き そ うに も思 え な い.
日本 の研 究 者 に よ る幾 つ か の 代 表 的 な論 文 を改 め て 眺 め て み る と,論 文 に 書 か れ て い る研 究 の 動 機,問
題 意 識,得
の あ る もの が 多 い.ま
られ た 結 論 の 何 れ に つ い て も現 在 に お い て な お 説 得 性
た,そ れ らの 論 文 に は 多 くの 外 国 の 論 文 も参 照 さ れ,素
粒 子研
究 者 の 作 る社 会 共 同体 の 各 時 代 に 存 在 し た パ ラ ダ イ ム の 中 で の 位 置 付 け が 行 わ れ て い る が,1950,60,70,80年
代 と年 代 が 進 む に つ れ こ の よ う な 傾 向 は 著 し く,国 際 的
な 共 同 作 業 と与 論 形 成 の 傾 向 は益 々 顕 著 に な って い る.こ 準 理 論 と呼 ば れ る理 論 が 次 第 に 作 り上 げ られ,受 い 傾 向 と思 わ れ る.し
の こ とは,素
粒 子理論 に標
け 入 れ られ て 来 た こ と と無 縁 で は な
た が っ て 日本 人 の研 究 を主 体 に し て 素 粒 子 理 論 の 展 開 を語 る の
は 非 常 に 難 し い し,ま た 必 ず し も理 に 適 っ た こ と とは 思 え な い.
別 の 試 み と して,会 う人 ご とに各人 が素粒 子研 究 を始 めて か らこれ までに大 きな影 響 を受 け た 日本 人の論文 を数 編 ずつ あげ て貰 ってみ た.皆 さんが挙 げ る論 文 は案外 に 共 通 して お り,ま た予 想 した以上 に そ こであげ られ た原論 文 を 当人 は読 んで お らず, 身近 に行 われ た セ ミナ ーや 講義録 あ るい は研 究 者社 会の 与論 を通 して影響 を受 け た と 言 う人 が 多 い.原 論文 が いか に優 れ てい て も理解 され るには 時間 が必要 で あ り,別 の 人が その論 文 を評 価 し原著 者 自身です ら気 が付 か なか った意義 を認 め て論 文 の重要 性 を指摘 した り,原 論文 よ り受 け 入れ易 い見 通 し良 い形 に表現 し直 され てか ら初 め て一 般 的 に受 け入 れ られ る よ うに なる こ とを示 してい る. 1978年
に 初 め て 日本 で 高 エ ネ ル ギ ー 物 理 学 の 国 際 会 議 が 開 か れ た.そ
さ れ た 南 部 陽 一 郎 とH. るQCDの
の直 後 に な
D. Politzerの 対 話 を 読 む と2),強 い相 互 作 用 の 標 準 理 論 で あ
重 要 な 特 徴 で あ る漸 近 的 自由 性(高
エ ネ ル ギー で 相 互 作 用 定 数 が 漸 近 的 に
0に な り,素 粒 子 が 自 由 粒 子 の よ う に振 舞 う こ と)を 発 見 したPolitzerの
仕 事,素
粒
子 物 理 学 に お け る 自発 的 対 称 性 の破 れ の 重 要 性 を初 め て議 論 し た 南部 の仕 事 の場 合 に も,周
り に 誰 も理 解 し励 ま し て くれ る 人 が い な か っ た と 述 べ て い る.1967年
Weinbergの
のS.
電 弱 統 一 理 論 は 殆 ど す べ て の 実 験 的 な検 証 に こ れ ま で耐 え て きた 理 論 で
あ り,電 磁 相 互 作 用 と弱 い相 互 作 用 の 統 一 理 論 の 標 準 理 論 と して の 地 位 を今 日で は確 保 し て い る が,こ に3回,そ
のWeinbergの
し て72年
中 で 述 べ て い る.こ
論 文 の 場 合 で も3年 後 の70年
に 初 め て1回,71年
か ら突 如 多数 回 引 用 さ れ た と著 者 自 身 が 『 究極 理 論へ の 夢』 の の 統 一 理 論 は 独 立 にA.
で,Weinberg-Salam理
Salamも
同 じ内 容 の 理 論 を提 出 した の
論 と呼 ば れ て い る.
研 究 者 が 新 し い概 念 を受 け 入 れ る に は 多 大 の 困 難 が 伴 う もの で あ り,重 要 な仕 事 ほ ど そ れ を受 け 入 れ る に は 意 識 の 変 革 が 必 要 で,一
般 に認知 され るまで の時間が相 当に
長 い こ と を 示 し て い る.多 数 の 研 究 者 が 同一 の 目標 を持 っ て 研 究 して い る素 粒 子 物 理 学 の 場 合 に は,少
し で も異 端 的 な考 え は 無 視 す るか 聞 き 流 す よ う な 与 論 形 成 が 行 わ れ
易 い と も 言 え る の で,理
論 形 式 が す っ き り して い る,物 理 的 描 像 が 明 確 に 描 け る,実
験 的 な 検 証 が あ る 等 の3拍
子 揃 っ た 形 に 理 論 の 内 容 が 整 理 さ れ る ま で は,な か なか 受
け 入 れ ら れ な い 背 景 が あ る よ う に 思 わ れ る.こ い こ とな の で,研
の よ う な こ とは 原 論 文 に は 殆 ど望 め な
究 者 社 会 の 与 論 の 支 持 を受 け 認 知 され る ま で に は 数 年 の 歳 月 を必 要
とす る の で あ ろ う.
この数 年 間 は素粒 子物 理学 の進 展 は小 康状 態 に あ る と思 い込み,私 自身 は脳神 経科 学や 言 語学 の勉 強 に凝 っ ていた ので,こ の小 論 で は言語学 的観 点 を加 味 して素粒 子研 究 の歩 み を振 り返 るこ とに しよ う.紙 数 の制 限か ら多 くの 日本 の研 究者 の業績 をあげ なが ら研 究 の 歩み を論 ず るこ とはで きな いの で,色 々 な人に 尋ね た と きに共通 に挙 げ られた 湯川 ・朝永 以後 の少数 の 日本人 の論文 の み を取 り上 げ なが ら,自 分 自身の意 識
の変遷 をた どる気持 ちで素粒 子論研 究 の歩 み を論 す るこ とにす る. 7.1 素 粒 子 の 統 一 理 論 を 求 め て 素粒 子物理 学 の進 展 の半世 紀 の歴史 を一 言で言 えば,物 質世 界の 究極 の構成 要素 と それ らの 間の相 互作 用 の究極 の法 則 を探 し求 め て来 た歴史 で あ り,素 粒 子の統 一理論 の探求 で あ る.私 が未 だ学生 で あ った頃 に湯 川先生 が 『 存 在の理 法』 とい う題 の本 を 書 かれ,そ の題 名 に引 かれ て読 んだ覚 えが あ る.何 時 の間 にか この 本は 手元か らな く な り出版元 さえ不明 で あ るが,そ れ ぞれの素 粒子 が存在 す る理 由づ け を当時 は私 な り に考 えた覚 えが あ る.究 極 理 論の探 求 とは素 粒子 の存在 の理 法 の追 及 であ り,同 時 に 素 粒子 を記述 す る言語 その もの であ る相 対論 的量 子場 の理論 の深 層構 造 の追及 と言 っ て も良 い.
Weinbergの
『究 極 理 論 へ の 夢 』 の 中 に も強 調 して あ る が,究
極 理 論 と は素 粒 子 物
理 学 の 還 元 論 的 性 格 の 研 究 の 終 末 点 で あ り,あ る一 群 の 法 則 は よ り深 い階 層 の 法 則 に に そ れ ら の 法 則 は 更 に 次 の 階 層 の 法 則 に よ り説 明 され,究
極 理論 に
現 れ る最 終 段 階 の 法 則 は そ れ よ り深 層 の 法 則 を持 ち得 な い 法 則 と考 え る.そ
よ り説 明 さ れ,更
の よ うな
究 極 理 論 が あ る とす れ ば,そ
の 理 論 の 持 つ 美 し さ の 一 つ の 特徴 は 理 論 の 持 つ 必 然 性 で
あ り,そ の 中 の 一 つ の 法 則,一
つ の 定 数 す ら僅 か に 変 え る 自由 度 も残 さ れ て い な い,
極 め て制 限 の 強 い 論 理 体 系 で あ る こ とが 望 ま し い.本 うか は と もか く と し て,現 意 味 で よ り基 礎 的,よ
在 ま で の 素 粒 子 の 統 一 理 論 探 求 の 歴 史 を振 り返 る と,あ
り包 括 的,そ
て き た よ うに 見 え る.こ
当 に 究 極 理 論 が 存 在 し得 るか ど る
して よ り制 限 の 強 い 任 意性 の な い 法 則 を探 し続 け
の 意 味 で 現 在 の 標 準 理 論 は 未 だ 多 くの 実 験 的 に の み 決 め 得 る
パ ラ メ ー タ を含 ん で お り,実 験 事 実 に は 良 く合 うが 理 論 的 に は 不 満 足 な もの と考 え ら れ て い る. 最 近,J.
Watsonと
共 にDNAの
構 造 を 明 らか に し たF. Crickが
と 言 う 本 を書 い て い る3).彼 の 言 う驚 くべ き仮 説 と い う の は,人 志,自
『驚 くべ き仮 説 』 間 の 記 憶,自
由意
己 認 識 等 の 人 間 の 心 的 活 動 の す べ て は,多 数 の ニ ュ ー ロ ンの 集 合 体 の 機 能 と し
て 理 解 で き る とい う還 元 論 的 仮 説 で あ り,脳 神 経 科 学 で 最 も良 く調 べ ら れ て い る視 覚 の ニ ュー ロ ン レベ ル で の知 識 を基 に して,視
覚 の 高 次 機 能 に ゆ くに 連 れ て 自 己 認 識 が
生 ず る 可 能 性 を論 じて い る.脳 神 経 科 学 の 現 状 は とて も 自 己 認 識 の 問 題 に ま と も に 取 り組 む 段 階 ま で 進 ん で い な い と い う方 が 常 識 で あ ろ うが,多 材 が 断 片 的 に 蓄 積 さ れ て お り,重 要 な,し もの と思 わ れ る.こ
くの 実 験 的 に 得 られ た素
か も現 実 的 な 問 題 提 起 と し て受 け 取 るべ き
の よ う な 脳 神 経 科 学 の 状 況 は,多 数 の 素 粒 子 や そ の 共 鳴 状 態 が 発
見 され 個 別 の 知 識 が 急 増 し な が ら,理 論 の 全 体 像 が 見 え な か っ た1950年 代 に か け て の 素 粒 子 物 理 学 の 状 況 を想 起 させ る.一 方,素
代 か ら60年
粒 子理 論 の最近 の傾 向を眺
め る と,実 験 事 実 や 近 い 将 来 の 実 験 的 な 検 証 可 能 性 を 越 え た 色 々 な ア イ デ ィ ア が 提 出
さ れ て お り,究 極 理 論 の あ るべ き 姿 が 純 理 論 的 に 議 論 さ れ て い る.そ 識 機 構,認
識 能 力 の 限 界,あ
ろ そろ人 間の認
る い は 認 識 能 力 の 学 習 と そ の 限 界 の 問 題 を抜 き に して は
素 粒 子 理 論 は 論 じ ら れ な い 側 面 を 見 せ て 来 て い る よ う に も思 わ れ る. 素 粒 子 物 理 学 は 他 の分 野 と異 な る幾 つ か の特 徴 を持 っ て い る.第1の 素 粒 子 研 究 者 が 意 識 的 に,あ
特 徴 は 多 くの
る い は 意 識 下 に,物 質 の 究 極 理 論 の 探 求 と い う知 的 な好
奇 心 と 目的 を共 有 し て い る こ と で あ る.多
くの 研 究 者 が 素 粒 子 研 究 の す べ て の側 面 に
関 心 を持 ち,す べ て の 研 究 は 物 質 世 界 の 究 極 原 理 の 探 求 に つ なが る可 能 性 が あ る とい う意 識 で あ る.あ
る い は,意
正 し い か も知 れ な い.こ
識 さ れ て い な い 無 意 識 の 動 機 を 共 有 し て い る と い う方 が
の よ う な研 究 者 間 の 暗 黙 の 一 体 感 は,例
トン とそ れ ら を結 ぶ ゲ ー ジ粒 子 か ら な る 物 質 世 界像 の 形 成,強 で あ るQCD,電 成,更
え ば ク ォ ー ク ・レ プ
い相 互 作 用 の 標 準 理 論
磁 相 互 作 用 と弱 い相 互 作 用 を統 一 し た 標 準 理 論 で あ る 電 弱 理 論 の 形
に 進 ん で大 統 一 理 論 や 重 力相 互 作 用 まで 含 む 超 弦 理 論 の 可 能 性 の 追 及 等 の 共 同
作 業 に 大 き な 役 割 を 果 して きた もの と思 わ れ る. 第2の
特 徴 は 素 粒 子 理 論 と素 粒 子 実 験 の 関 係 で あ り,極 言 す る と素 粒 子 物 理 学 は通
常 の 実 験 施 設 ・設 備 の ほ か に 量 子 場 の 理 論 とい う第2の で あ る.人 間 が 言 葉 を用 い る と きに,会
実 験 場 を併 せ 持 っ て い る こ と
話 や 文 書 を通 して の外 部 との 情 報 伝 達 に よ り
言 語 理 解 や 構 文 能 力 を高 め る の は 実 験 物 理 学 の 場 に 相 当 し,脳
の中 の言語 野等 に おけ
るニ ュ ー ロ ン 間 の シ ナ プ ス 結 合 とそ の 変 化 を通 して 言 語 理 解 や 構 文 能 力 を 理 解 し よ う とす る の は,場
の 理 論 の 探 求 に 相 当 す る.脳 の 中 の 様 子 は外 か ら見 え な い が,脳
は言
語 形 成 の 中枢 で あ り,五 感 を 通 して 外 部 の 実 験 場 で の 経 験 と互 い に 相 互 作 用 しな が ら 言 語 形 成 を行 っ て い る.こ
れ ら二 つ の 実 験 場 の 存 在 は 必 ず し も素 粒 子 研 究 の み に 見 ら
れ る訳 で は な い け れ ど も,相 対 論 的 量 子 場 の 理 論 は 極 め て奥 深 く,か つ,制 理 論 で あ り,最
限の 強い
も顕 著 に こ れ ら の 特 徴 が 見 られ る物 理 学 の 分 野 で あ る こ とは 間 違 い な
い.
7.2 量 子 場 の 理 論 の 発 展 こ の 半 世 紀 の 素 粒 子 理 論 の 展 開 を 強 い て 言 語 論 的 な 言 い 方 で 分 類 す る と,1950年 代 は 日常 言 語 と し て の 場 の 理 論 の 有 効 性 検 証 の 時 代,60年 と し て の 文 法 探 求 の 時 代,70年
代 は場 の理 論 の科 学 用 語
代 は ク ォ ー ク ・レ プ トン を 用 い た 言 語 の 時 代,80年
代 は ゲ ー ジ場 理 論 と呼 ぶ 内容 豊 富 で,か つ,制 限 の 強 い 統 一 言 語 に 基づ く素 粒 子 の 統 一 理論 の時代 ,90年 代 は 多 様 化 の 時 代,あ る い は 少 し不 謹 慎 な 言 い 方 を す る と分 離 脳 の 時 代 と位 置 づ け た い.
私が 素粒 子研 究 を始 め た50年 代 の こ とを振 り返 る と,湯 川理 論 の成 功 は,素 粒 子 間の相 互作 用は場 に付随 す る素粒 子 に よ り媒 介 され る とい う概 念 を定 着 させ,朝 永等 の繰 り込み理 論 の成 功 は,量 子場 の理 論 は素 粒 子物理 学 を定量 的 に も記述 で きる優 れ
た 理 論 形 式 で あ り得 る こ と を認 識 させ た .両
者 が 相 俟 っ て,量
子場 の理論 は当面 は素
粒 子 物 理 学 を記 述 で き る 言 語 そ の もの で あ る と い う意 識 を 定 着 させ た よ う に 思 わ れ る.ま
た,朝
永 等 の 繰 り込 み 理 論 に 一 つ の 実 体 を与 え た 坂 田 グ ル ー プ のCメ
導 入 に よ るQEDの
発 散 除 去 は,場
の 理 論 の 繰 り込 み 可 能 性 と素 粒 子 の モ デ ル が 有 機
的 に 結 合 す る こ と を示 唆 し て い た が,こ れ る よ う に な っ た の は,後
ソ ンの
の こ と が 明 確 に 認 識 さ れ 本 格 的 に 取 り入 れ ら
に場 の 理 論 が 超 対 称 性 を持 つ 場 の 理 論 と い う形 に 拡 張 さ れ
て か ら で あ る. 量 子 場 の 理 論 は1929年
のW.
HeisenbergとW.
電 磁 場 の 量 子 場 の 理 論(QED),湯
Pauliの 論 文 に 始 ま るが,電
川 の 中 間 子 理 論 の 成 功 は,場
子 と
の理論 が極 め て 内容
の あ る素 粒 子 物 理 学 の 言 語 で あ る こ と を示 し て き た .相 対 論 的 場 の 理 論 は 相 対 論 的 不 変 性,局
所 的 因 果 律 等 の 一 般 的 要 請 を 満 足 す る よ うに 構 成 さ れ,場
場 に は 素 粒 子 が 付 随 し,素 粒 子 の放 出 と吸 収 過 程,そ 粒 子 の 交 換 に よ る 力 の 媒 介,反
の 量 子 化 に よ り,
れ ら を組 み 合 わ せ て 得 られ る素
粒 子 の 存 在 等 の こ とが 組 み 込 まれ て い る.こ
れ らは基
本 的 な 実 験 事 実 と整 合 し,場 の 理 論 は す べ て の 素 粒 子 現 象 を語 る為 の 素 材 を含 ん だ素 粒 子 の 言 語 体系,あ
る い は 極 限 す れ ば 場 の 理 論 は 素 粒 子 理 論 そ の もの で あ る とい う感
じ を与 え て き た. 1940年 代 の 終 わ りに 提 出 さ れ た 朝 永,J. の 研 究 に よ り,場 の 理 論 はQEDに 示 さ れ た.ま し,そ
た,Feynmanダ
Schwinger,
R . Feynman等
に よ るQED
関 す る 限 り定 量 的 な 数 値 計 算 に も 耐 え得 る こ とが
イ ア グ ラ ム は 色 々 な 物 理 過 程 を視 覚 的 に も 明 ら か に
の 正 当性 が 十 分 に 議 論 さ れ る 前 に,50年
し て使 う素 粒 子 言 語 と し て 定 着 し,Feynmanダ
代 半 ば に は 多 くの 人 々 が 日常 用 語 と イア グ ラム に よる計算 法 は今 日まで
場 の 理 論 の 汎 用 的 な ア ル ゴ リズ ム と も言 え る役 割 を 果 す こ とに な る.し た が って,素 粒 子 物 理 学 を 語 る 日常 言 語 と し て の 場 の 理 論 の 有 用 性 の 検 証 は50年
代 に は 完 成 した
と言 っ て も良 い. 勿 論,当
時 か ら場 の 理 論 に は 多 くの 問 題 点 も 抱 え て い た.電
の 計 算 値 が 無 限 大 に な る 発 散 の 問 題,次 場 を対 応 させ る か,QEDと
子 ・光 子 の 質 量 や 電 荷
々 に 発 見 さ れ る素 粒 子 の 何 れ に 基 本 的 な 量 子
異 な り強 い 相 互 作 用 の よ う に 結 合 定 数 が 大 きい 場 合 に ど
の よ う に して 有 効 な 計 算 を行 うか 等 の 問 題,こ
れ ら は 場 の理 論 か ら導 か れ る結 果 と実
験 との 比 較 を可 能 に す る為 に ど う して も解 決 し な け れ ば な ら な い 問 題 で あ っ た.し し,QEDの
成 功 と,Feynmanダ
か
イ ア グ ラ ム を 日常 言 語 と して 用 い る とす べ て の 物 理
現 象 を語 れ る こ と等 か ら見 て,こ
れ らの 残 さ れ た 問 題 の 解 決 に は 多分 に 楽 観 的 な 空 気
が あ っ た よ う な感 じ もす る. 一 方
,場 の 理 論 を素 粒 子 物 理 学 の 言 語 体 系 と し て 眺 め る と,そ の 言 語 体 系 に 隠 され
て い る,あ
る い は 内 在 して い る新 た な物 理 的 内容 の 発 見 や,言
討 す る 先 駆 的 な 試 み が1950年
語 体 系 の 無 矛 盾 性 を検
代 に な さ れ て お り,そ の 中 の 幾 つ か の 日本 の 優 れ た 研
究 を あ げ る こ とに し よ う.51-52年 適 用 性 の 研 究 で は,相 能,正
の 坂 田,梅
沢 博 臣,亀
淵 迪 に よ る繰 り込 み 理 論 の
互 作 用 定 数 の 長 さ の 次 元 が 負 の 値 を持 つ 場 の理 論 は 繰 り込 み 可
の 値 を持 つ 場 合 に は一 般 に繰 り込 み 不 可 能 な こ と を示 し た だ け で な く,後 者 の
場 合 で も実 ベ ク トル 場 の ベ ク トル相 互 作 用 と い う特 殊 な場 合 に は繰 り込 み 可 能 で あ る こ と を示 し て い る4). 更 に1957年
に は50年
に 提 出 され たJ.
Wardの
関 数 と電 子 と光 の 相 互 作 用 の 強 さ を 表 すvertex関
恒 等 式 を 一 般 化 し て,電
子 の伝 播
数 との 間に成 立す る一般 的 な関 係
式 が 高 橋 康 に よ り証 明 さ れ た5).こ の 関 係 式 はQEDだ
け で な くゲ ー ジ 場 の 理 論 に 一
般 的 に 適 用 さ れ る 関 係 式 で あ り,異 な る物 理 過 程 の振 幅 を関 連 づ け る極 め て 有 用 な 等 式 で あ る.高 橋-Ward恒
等 式 は 今 日 ま で し ば し ば 引 用 さ れ,ゲ
ー ジ 理 論 に 基 づ く素
粒 子 の 言 語 体 系 に 共 通 の 文 法 規 則 と も 言 え る役 割 を果 し て い る.ま 襄,L.
Landauに
よ り独 立 にFeynmanダ
り6),日 常 言 語 と して のFeynmanダ
た59年
に は 中西
イア グラ ムの 解析 性 の研 究 もな され て お
イア グ ラム の持 っ数 学 的 な性格 を明 らか に し た
研 究 で あ る. 相 対 論 的 量 子 場 の 理 論 は 素 粒 子 を 記 述 す る 言 語 と し て 色 々 な角 度 か ら検 討 さ れ た が,そ
の 中 か らゲ ー ジ場 の理 論 が 今 日の よ う に 特 別 の 位 置 を 占め る ま で に は 長 い期 間
を 必 要 と し た.現 在 の 素 粒 子 理 論 の 状 況 は,局 ー ジ場 の 理 論 の 正 当 性 が 広 く受 け 入 れ られ 言 語 と して の 役 割 を 果 して い る.QEDは 局 所 ゲ ー ジ場 の 理 論 で あ る が,こ て い る.54年
所 ゲ ー ジ変 換 に 対 して 不 変 性 を持 つ ゲ
,素 粒 子 物 理 学 を 記 述 す る最 も魅 力 の あ る
場 の位 相 の局 所 変 換 に 対 す る 不 変 性 を持 つ
の よ う な ゲ ー ジ理 論 の 一 般 化 が1950年
のYang-MillsのSU(2)対
称 性 を持 つ ゲ ー ジ理 論 は,素
称 性 で あ る 荷 電 ス ピ ン の 局 所 回 転 に 対 す る ゲ ー ジ 理 論 で あ り,56年 る ゲ ー ジ理 論 の 定 式 化 は,一
般 のLie群
代 にな され 粒 子の 内部 対
の 内 山龍 雄 に よ
に 対 す る ゲ ー ジ理 論 の 拡 張 と,Einsteinの
重
力 理 論 を ゲ ー ジ理 論 と し て解 釈 す る研 究 で あ る7).素 粒 子 物 理 学 に ゲ ー ジ理 論 を一 般 的 に 用 い る必 然 性 に つ い て は,当 意 識 さ れ て い な か っ た が,こ
時 の 実 験 事 実 や ゲ ー ジ理 論 の 理 解 の 状 況 か らは 余 り
れ らの 仕 事 は極 め て先 見的 な研 究 と して位 置 付 け ら
れ る. ゲ ー ジ場 の 理 論 を素 粒 子 物 理 に 適 用 す る 際 の 当 時 の 最 大 の 難 点 は,ゲ す る ゲ ー ジ粒 子 は 光 子 の よ うに 質 量0に に 対 応 す る ス ピ ン1,質
量0の
な る こ と で あ っ た.光
ー ジ場 に対 応
子 以 外 に は ゲ ー ジ粒 子
素 粒 子 が 発 見 さ れ な か っ た こ とか ら,当 時 の 多数 意 見
は ゲ ー ジ理 論 の 普 遍 的 な 適 用 性 に つ い て 否 定 的 で あ っ た と思 わ れ る.60年 に桜 井 純 等 は 当 時 ま で に 存 在 が 確 認 さ れ て い た 有 限 質 量,ス 中 間 子 の 役 割 を強 調 す る論 文 を書 き8),ハ 定 の 成 功 を収 め た.こ
代 の初 め
ピ ン1の 数 種 の ベ ク トル
ドロ ン相 互 作 用 を記 述 す る現 象 論 と し て 一
れ ら の 仕 事 は 素 粒 子 物 理 学 に お け るベ ク トル 粒 子 の 役 割 の 重 要
性 を示 し た も の と言 え るが,局
所 ゲ ー ジ場 の 理 論 の 正 当 性 を確 認 す る ま で に は 至 ら な
か っ た.1960年
頃 にSchwingerが
来 日 し た と き に 呼 び 出 さ れ,東
京 で2人
で宝塚 歌
劇 を見 な が ら盛 ん に 彼 が ゲ ー ジ場 の 質 量 の こ と を 気 に して い た こ と を 思 い 出 す.彼
の
よ う に ゲ ー ジ場 の 理 論 に は 有 限 質 量 の ゲ ー ジ粒 子 の 存 在 が 隠 さ れ て い る可 能 性 を感 じ て い た 人 々 が い た け れ ど も,有
限 質 量 を生 み 出 す 明 確 な メ カ ニ ズ ム を 明 らか に す る ま
で に は 至 ら な か っ た. ゲ ー ジ 場 の 理 論 に 隠 さ れ た 物 理 的 内 容 の 豊 か さが 次 第 に 明 ら か に な っ て き た の は 60年 代,ク
ォ ー ク ・レ プ トン を基 本 的 構 成 粒 子 とす る 系 に ゲ ー ジ場 の 理 論 が 適 用 さ
れ 実 験 的 な 検 証 を受 け 成 功 を 収 め た の が70年
代,ゲ
ー ジ場 の 理 論 に 基 づ く素 粒 子 の
統 一 理 論 の 妥 当 性 が 一 般 常 識 とな り,ゲ ー ジ場 の 理 論 が 素 粒 子 理 論 の 構 成 に 不 可 欠 な 言 語 と し て 定 着 す る よ う に な っ た の は80年
代 の こ と で あ る.60年
代 の初 め に南部 に
よ り初 め て 素 粒 子 物 理 学 に お け る対 称 性 の 自発 的 破 れ の 機 構 と そ の 重 要 性 が 指 摘 され た.す
な わ ち物 理 法 則 は 色 々 な 内 部 対 称 性 を示 す け れ ど も,系
の 基 底 状 態(真
空)が
そ の 対 称 性 の 幾 つ か を破 る為 に 現 実 の 素 粒 子 間 に は 対 称 性 が 破 れ て い る よ う に 見 え る こ とが 示 さ れ た.ま
た,内 部 対 称 性 の 自発 的 破 れ に 伴 っ て,ス
南 部-Goldstone粒 ぜ られ,更
子 と呼 ば れ る粒 子 が 現 れ る こ とが 南 部,J.
量0を
Goldstone等
持つ
に よ り論
に ハ ド ロ ン の 中 で 最 も軽 い π 中 間 子 は カ イ ラ ル 対 称 性 の 自発 的 破 れ に 伴
う南 部-Goldstone粒 1966年
ピ ン0,質
に はP.
子 で あ る こ とが 南 部 に よ り論 ぜ ら れ た9). Higgsに
よ り,局 所 ゲー ジ理 論 に お け る 対 称 性 の破 れ に 伴 い 生 ず る
ス ピ ン0を 持 つ 南 部-Goldstone粒 向 の ス ピ ン 成 分 とな り,質 量0の
子 は,そ
の局 所対 称 性 に関 す るゲ ー ジ粒子 の 縦方 分 と併 せ て3成
分 を持 つ
有 限 質 量 の ゲ ー ジ 粒 子 に な る こ と を示 す 場 の 理 論 の モ デ ル が 提 出 さ れ た.こ
の機 構 は
今 日で はHiggs機
ゲ ー ジ粒 子 の 横 方 向 の2成
構 と呼 ば れ て お り,対 称 性 の 自 発 的 破 れ に 伴 い ゲ ー ジ粒 子 が 有 限
質 量 を持 ち 得 る物 理 的 な 機 構 が 明 らか に な っ た.自 発 的 対 称 性 の 破 れ を伴 う場 の 理 論 の 探 求 は,最 唯,ど
近30年
間 の 素 粒 子 研 究 の 進 歩 の 背 景 に あ る 原 動 力 で あ る と思 わ れ る.
の 内 部 対 称 性 に 対 して 自発 的 対 称 性 の 破 れ が 起 こ る か は実 験 との 比 較 か ら は決
定 で き る が,純
理 論 的 に 決 定 す る に は 未 だ 任 意 性 が 残 され て い る.
関 連 す る 多 くの 仕 事 を総 合 す る と,ゲ ー ジ場 の 理 論 は 極 め て 内 容 豊 か な 素 粒 子 の 言 語 体 系 で あ り,対 称 性 の 自発 的 破 れ に 伴 い 南 部-Goldstone粒
子 を生 み 出 す 機 構,こ
の 粒 子 が ゲ ー ジ 粒 子 と一 体 に な る と きに は ゲ ー ジ粒 子 に 有 限 の 質 量 が 生 ず る機 構,等 が 内在 して い る こ とが 示 さ れ た.そ
れ で も強 い相 互 作 用 や 弱 い相 互 作 用 の ゲ ー ジ理 論
が 素 粒 子 を記 述 す る現 実 的 な 言 語 体 系 と して 認 知 さ れ る に は,こ
れ ら の理 論 が 繰 り込
み 可 能 で あ り,ま た 摂 動 展 開 等 が 可 能 で 計 算 能 力 の あ る ア ル ゴ リズ ム を持 つ こ とが 明 らか に な る ま で 待 た な け れ ば な ら な か っ た.し て の 場 の 理 論,特
たが っ て,1960年
代 は科 学 用 語 と し
に ゲ ー ジ 場 の理 論 に 内 在 す る豊 富 な 文 法 の 骨 子,物
か に さ れ て き た 時 代 と考 え られ る.
理 的 内容 が 明 ら
ゲ ー ジ 場 の 理 論 に 内 在 す る 物 理 的 内 容 の 探 求 は そ の 後 も 引 き続 き行 わ れ て き た.量 子 場 の 理 論 は 時 空 の 各 点 で の 場 の 値 が 独 立 に揺 ら ぐこ とが で き る の で 無 限 の 自 由 度 を 持 つ 系 で あ り,基 礎 法 則 は 有 限 自由 度 の 量 子 力 学 系 の 場 合 と似 て い て も無 限 自 由 度 の 存 在 の 為 に 今 日で は 量 子 異 常 と呼 ば れ る 現 象 が 存 在 す る.40年
代 か ら 無 限 自由 度 を
持 つ 場 の 揺 ら ぎ の 為 に 色 々 な 物 理 量 を 計 算 す る と無 限 大 に な り,ま
た,予
期 しな い効
果 が 現 れ る場 合 が あ る こ とが 知 られ て い た.ゲ ー ジ理 論 に お け る 基 本 的 な 相 互 作 用 は ゲ ー ジ場 と対 応 す る 電 流 との 相 互 作 用 で あ り,ゲ ー ジ場 の 理 論 に お け る電 流 の役 割 は 極 め て 重 要 で あ る.各 種 の 電 流 間 の 代 数 関 係 は カ レ ン ト代 数 と呼 ば れ る が,こ は 量 子 異 常 項 に よ る修 正 を受 け る.こ 後 藤 憲 一 に よ り指 摘 さ れ,そ
の よ うな 異 常 項 の 存 在 は55年
の 後 のSchwingerの
の代数
に既 に今村
勤,
仕 事 と併 せ て 後 藤-今 村-Schwin
ger異 常 項 と も呼 ば れ て い る10).ま た,カ
レ ン ト代 数 は60年
代 に 場 の理 論 に 内在 す
る 重 要 な 文 法 規 則 と し て 研 究 され た が,カ
レ ン ト代 数 に 基 づ く場 の 理 論 の 構 成 を行 っ
た 菅 原 寛 孝 の 論 文 等 の 優 れ た研 究 が あ る11). ま た,1960年
代 の 終 り に は 別 種 の 異 常 項 の 存 在 に よ り電 流 の 保 存 則 も修 正 を 受 け
る こ とが あ る こ とが 示 さ れ,特
に カ イ ラ ル 異 常 と呼 ば れ る異 常 項 は ゲ ー ジ場 の 存 在 に
よ りカ イ ラ ル 電 流 の 保 存 則 を 修 正 し,実 験 的 に も π0中 間 子 の2光 の 存 在 が確 か め られ て き た.こ
の よ う な2種
崩 壊 等 を 通 して そ
類の量 子 異常 は 自由度無 限大 の場 の理論
に 内 在 す る もの で あ り,一 見 し た だ け で は 分 か ら な い場 の 理 論 の持 つ 新 た な 物 理 的 内 容 を明 らか に し た も の で あ る.今
日で は ゲ ー ジ理 論 の 構 成 に 量 子 異 常 の 有 無 と理 解 が
不 可 欠 の 要 素 で あ る こ とが 広 く認 識 さ れ て い る.ま た,量 に 一 般 的 に導 出 す る 方 法 が79年
子 異 常 項 を 摂 動 論 に 頼 らず
に 藤 川 和 男 に よ り提 出 さ れ,量
幾 何 学 的 性 質 の 現 れ で あ る こ とが 明 ら か に さ れ た.藤
子異 常 は ゲー ジ場 の
川 の 方 法 は 今 日 ま で 広 く用 い ら
れ て い る最 も一 般 的 に 量 子 異 常 項 を導 く方 法 で あ る12).
7.3 標 準 理 論 の 成 立 以上 の よ うな書 き方 をす る と50年 代 後半 か ら60年 代 に かけ ての研 究 は場 の理 論 一 辺倒 の よ うに思 われ るが,実 は この時代 は素 粒子衝 突実 験 に よ り多数 の素 粒子 とその 共 鳴状 態が発 見 され,強 い相 互作用 に つ いての モデル と理解 の仕 方 の理 論 研究 が主 流 を 占め て いた時代 で あ る.ま た新 た な素 粒子 の弱 い相 互作用 に よ る崩壊 の研 究,特 に 空間反転 に対 す る対称 性 の破 れ の発 見 等 によ り弱い相互 作用 に つ いての知 見 が画期 的 に変 化 した時 代 で もあ る.共 鳴 の役 割 と共 鳴状 態間の 対称性,素 粒 子衝 突,素 粒 子 の 多重発生 等 の理論 的研 究 が盛 ん に行 わ れ たが,当 時の場 の理 論 では 強 い相 互作 用 を定 量 的 に記 述 で きな い とい う状 況 の 中で,分 散 公 式やS行
列理 論 を用 いて精 力的 な研
究 が行 われ た.私 自身 は50年 代 の 中頃 はア メ リカに在 住 して ρ中間 子 の存 在 の予 言 や(1955),有
限 の運 動量 変 化 に対 す る分散 公 式 の導 出等 の研 究 を して いたが,当 時
の ア メ リカの状況 を振 り返 る と次 々 に素 粒 子や 共 鳴状態 が発 見 され た素粒 子 実験 の黄 金時 代 であ っ た. S行 列 理 論 や 分 散 式 は 実 験 で測 定 が 原 理 的 に 可 能 な量 の 間 に 成 立 す る 関 係 の み を 取 り上 げ て 論 ず る研 究 方 法 で あ り,特 に 力 を 媒 介 す る素 粒 子 ・共 鳴 粒 子 群 と衝 突 の 際 に 現 れ る共 鳴 粒 子 群 と の 関 係 を セ ル フ コ ン シ ス テ ン トに 決 め る ブ ー ス トラ ップ 法 と 呼 ば れ る枠 組 等 が 提 出 され,後
に ハ ドロ ン の 弦 理 論 へ と発 展 す る こ と に な る.そ
れ ら の研
究 の 中 で 猪 木-松 田 理 論 と呼 ば れ る有 限 エ ネ ル ギー 和 則 等 は 当 時 の 研 究 に 大 き な 影 響 を与 え た優 れ た 研 究 で あ る13). 当 時 の 強 い相 互 作 用 に 関 す る研 究 の 日本 の 状 況 を 強 い て 言 え ば,東
京 の大学 出 身の
研 究 者 は よ り実 験 結 果 に敏 感 に 反 応 し,関 西 の 大 学 出 身 の研 究 者 は場 の 理 論 に よ り こ だ わ っ た と 言 え る か も知 れ な い.基
礎 物 理 学 研 究 所 の15周
(1968年)で
の 宮 沢 弘 成 氏 の 講 演 を読 み 直 す と,『S行
で 解 析 性,ユ
ニ タ リー 性,対
括 が 述 べ られ て い る.『S行 究 と違 っ て ボ ス が お らず,自
列 と対 称 性 』 と い う題 の 講 演
称 性 を 基 に し て 理 論 を組 み 立 て る枠 組 の 日本 の 研 究 の 総 列 的 研 究 方 法 は 新 し い考 え 方 で 素 粒 子 モ デ ル や 構 造 の 研 由 な 研 究 の 雰 囲 気 の 中 で 非 常 に 多数 の 研 究 成 果 が あ げ ら
れ た 』 と述 べ て い る.一 方,S行
列 理 論 に 批 判 的 で あ っ た 梅 沢 氏 が60年
粒 子 研 究 の様 子 を懐 古 して い る 随 筆(80年)の 一 辺 倒 で 場 の 理 論 の影 が 薄 か っ た 部 で あ り,本
年 記 念 シン ポ ジュ ー ム
代 前半 の素
中 に,『 当 時 の 素 粒 子 研 究 は 分 散 公 式
.し か し,分 散 公 式 もつ ま る と こ ろ は 場 の 理 論 の 一
当 の 場 の 理 論 は こ れ ま で 考 え ら れ て い た よ うな 簡 単 な もの で は な い,と
い う こ と を漠 然 と感 じて い た 』 と書 い て い る. 素 粒 子 衝 突 に お け る素 粒 子 の 多 重 発 生 は 素 粒 子 の 放 出 ・吸 収 の 自由 度 を持 つ 場 の 理 論 の 象 徴 的 な 現 象 で あ り,多
くの研 究 者 の 関 心 を 引 き付 け た.し
か し定 量 的 に 場 の 理
論 に 基 づ い て 議 論 す るの は極 め て 困 難 な 問 題 で あ り,各 種 の モ デ ル に 基 づ く研 究 が 盛 ん に 行 わ れ た.日 本 の 多 くの 研 究 の 中 で も木 庭 二 郎 等 に よ り提 出 され たKNO則
は多
重 発 生 に お け る ス ケ ー リン グ 則 の一 つ で あ り14),極 め て 良 く 多 くの 実 験 結 果 を再 現 す る こ と等 か ら,長 期 に わ た りそ の後 の 研 究 に 影 響 を与 え た 研 究 と評 価 で き る.そ
の後
の 高 エ ネ ル ギ ー 領 域 で の 素 粒 子 反 応 の 理 解 に は ス ケ ー リ ン グ 則 は欠 か せ な い もの に な っ て き て お り,KNO則
は こ の よ う な 研 究 の 流 れ に先 鞭 を付 け た も の で あ る.木 庭 氏
は 私 が 学 生 時 代 か ら親 し く指 導 を受 け た 先 輩 で あ り,最 究 者 で あ っ た だ け に,氏
も優 れ た見 識 と能 力 を 持 つ 研
が 早 く亡 くな られ た こ と は 誠 に 残 念 な 気 持 ちが す る.
強 い 相 互 作 用 を示 す ハ ドロ ン は複 雑 な 構 造 と相 互 作 用 を持 ち,た
と え今 日 の ク ォ ー
ク ・レプ トン を基 本 とす る素 粒 子 物 理 学 の ゲ ー ジ理 論 を用 い て も,共 鳴 エ ネ ル ギー 領 域 の 素 粒 子 衝 突実 験 や 多 重 発 生 の 問 題 を 定 量 的 に 論 ず る の は 難 し い.ハ つ い て は 多 くの こ とが 理 解 不 十分 の ま ま 今 日 ま で 残 さ れ た が,こ の 役 割 等 の 問 題 は 核 物 理 学 の 観 点 か ら再 び 取 り上 げ られ,核
ドロ ン衝 突 に
れ らの 中 で 共 鳴 状 態
理 論 研 究 者 の よ り定 量 的
な 研 究 に 任 か さ れ て い る よ う に 見 え る.ク
ォ ー ク が 直 接 に は 顔 を 出 さ な い エ ネ ル ギー
領 域 で の ハ ドロ ン の 相 互 作 用 を 記 述 す る 有 効 理 論 を,い か に し て 構 築 す る か が 重 要 な 鍵 と な るが,ρ
中 間 子 等 のベ ク トル 中 間 子 を 有 効 理 論 に 現 れ る ゲ ー ジ粒 子 と し て 理 解
す る こ と等 を含 む 現 実 的 な 枠 組 が 出 され て い る.こ れ ら の研 究 の 中 で 坂 東 昌 子 ・九 後 汰 一 郎 ・山 脇 幸 一 等 に よ る精 力 的 な 研 究 等 は 非 常 に 評 価 す べ き成 果 で あ る15). 素 粒 子 の 言 語 体 系 と し て の ゲ ー ジ場 理 論 の 内 容 が 研 究 され る一 方 で,1964年 M.
Gell-Mann,
G. Zweigに
よ り素 粒 子 の ク ォ ー クモ デ ル が 提 出 さ れ た.そ
日本 の 研 究 と の 関 連 は 小 川 修 三 氏 が 書 か れ た の で,こ
には
こ に到 る
こ で は 触 れ な い こ とに す る.70
年 代 の 初 め に は ク ォ ー ク を素 材 と し,グ ル ー オ ン を ゲ ー ジ場 とす る 量 子 色 力 学 が 提 出 さ れ,QCDと
呼 ば れ る素 粒 子 の 強 い 相 互 作 用 を 記 述 す る場 の 理 論 が 誕 生 し た.こ
QCDはSU(3)カ
の
ラ ー 対 称 性 を持 つ ゲ ー ジ理 論 で あ り,ク ォ ー クの カ ラ ー と名 付 け
た属 性 の 局 所 変 換 に 対 す る不 変 性 に 基 づ い て い る.ク
ォー ク は ハ ドロ ン を構 成 す る 素
材 で あ り,核 子 は3個
の ク ォ ー ク,中 間 子 は ク ォ ー ク と反 ク ォ ー クの 複 合 体 と して 理
解 さ れ る.し か し,ク
ォー ク は 半 端 の 電 荷 を持 ち,ま
た,ハ
ドロ ン の 中 に 閉 じ込 め ら
れ 外 に 取 り出 せ な い 等 の不 思 議 な 性 質 を示 し て い る. QCDの
ゲ ー ジ粒 子 で あ る グ ル ー オ ン と ク ォ ー ク の 相 互 作 用 の 強 さ は,電
磁 気 力の
場 合 と異 な り,短 距 離 で 弱 く,長 距 離 で 強 くな り(反 ス ク リー ニ ン グ),高
エネルギ
ー 領 域 で は ク ォ ー クは 漸 近 的 自 由 な 性 質 を 示 す 一 方 で ,長 距 離 で は 相 互 作 用 は 強 くな り ク ォ ー クや グ ル ー オ ン を単 独 で 外 に 取 り出 す こ とが で き な くな る.こ ォ ー クや グ ル ー オ ン の 性 質 の 物 理 的 描 像 も明 ら か に さ れ,70年 の 定 着 した 時 代 とい っ て 良 い.ク
数 の 都 合 で個 々 の 研 究 に は 触 れ な い こ とに す る.
一 方 ,素 粒 子 の 高 エ ネ ル ギ ー で の 実 験 が1970年
代 に 盛 ん に 行 わ れ,ハ
点 状 の 構 成 粒 子 か ら な る と して 実 験 結 果 を解 析 す るFeynmanの
か っ て き た70年
パ ー トン モ デ ル が 大 せ て ゲー
ー ジ 理 論 が パ ー トン モ デ ル で 示 され た よ うに 計 算 可
つ,高
エ ネ ル ギー の 実 験 事 実 が 良 く説 明 で き る こ とが 分
代 末 で あ る と言 わ れ て い る.
強 い 相 互 作 用 のQCDと
平 行 し て,1967年
に はWeinberg,
磁 相 互 作 用 と弱 い相 互 作 用 の 統 一 理 論 が 出 さ れ た.ゲ あ っ た に 違 い な い が,先 は,広
ドロ ン が 質
パ ー トン は ク ォ ー ク で あ る こ と を認 め,併
ジ 理 論 の有 効 性 を 認 め た の は,ゲ 能 な ア ル ゴ リズ ム を持 ち,か
代 は クォー クモ デ ル
ォー ク の 閉 じ込 め 機 構 等 に つ い て は 日本 の研 究 者 に
よ る 多 くの 優 れ た仕 事 が あ る が,紙
き な 成 功 を収 め た.Feynmanが
れ ら奇 妙 な ク
Salamに
よ り独 立 に 電
ー ジ理 論 の全 盛 時 代 の 幕 開 け で
に 触 れ た よ うに こ の 統 一 理 論 が 受 け 入 れ ら れ る と言 う よ り
く真 剣 に 検 討 さ れ る ま で に は5年
以 上 の 歳 月 が 経 過 し て い る.こ
の理 論 は クォ
ー ク,レ プ トン の そ れ ぞ れ を弱 荷 電 ス ピ ン と呼 ば れ る 性 質 に よ り2組 に 分 類 し,そ れ ら2組
の素 粒 子 間 の 内 部 変 換 に 対 す る局 所 変 換 不 変 性 に 基 づ く場 の 理 論 で あ り,ゲ ー
ジ場 と し てW±
粒 子,Z0粒
子 の3種
の 重 い 質 量 を持 つ ゲ ー ジ 粒 子 と電 磁 場 の 光 子 を
持 つ よ う に 構 成 され て い る. QCD,
Weinberg-Salam理
論 は 共 に 質 点 状 の 素 粒 子 で あ る ク ォ ー ク,レ
プ トン に
局 所 ゲ ー ジ 対 称 性 を適 用 した も の で あ り,初 め て 現 実 的 な ゲ ー ジ場 の 理 論 が 構 成 さ れ た こ と に な る.こ
れ ら二 つ の 標 準 理 論 は70年
代 に は 各 種 の 実 験 的 な 検 証 を受 け,前
述 の 東 京 で の 国 際 会 議 の 頃 ま で に は 広 く受 け 入 れ ら れ る よ うに な っ て い た.70年 は ク ォ ー ク,レ プ トン を用 い た 言 語 の 時 代 と言 っ て も良 い.そ
の 後,当
代
然 の 成 り行 き
と し て 標 準 理 論 の 構 成 の 線 に 沿 い 二 つ の 標 準 理 論 を統 一 す る大 統 一 理 論 の探 求 が 行 わ れ た.ク
ォ ー ク,レ プ トン を ま とめ て 異 な る世 代 の フ ァ ミ リー に 分 け,各
内 の 素 粒 子 を 関 連 付 け る対 称 性 と してSU(5),SO(10)等 て き た.こ り,80年
フ ァ ミ リー
の 内部 対称 性 が 議 論 さ れ
れ ら は ゲ ー ジ場 の 理 論 と 自発 的 対 称 性 の 破 れ が 柱 と な っ て い る 理 論 で あ 代 は ゲー ジ場 の理論 が素粒 子 を記述 す る言語 として定 着 した時代 であ る.
7.4 標 準 理 論 を 越 え て QCD,電
弱 理 論 が 素 粒 子 の 標 準 理 論 と して 定 着 し,更 に こ れ ら を統 一 す る大 統 一
理 論 等 が 真 剣 に 定 量 的 に も取 り上 げ られ て い る 現 在 で も,素 粒 子 物 理 学 は 幾 つ か の 当 面 の 問 題,あ CP不
る い は 長 く抱 え て い る 問 題 を持 っ て い る.K0中
変 性 の 破 れ の 原 因,宇
の 質 量 の 値,ク
間子 の崩壊 に見 られ る
宙 の 粒 子 数 と反 粒 子 数 の 非 対 称 性 の 原 因,ニ
ォ ー ク等 の 質 量 の 原 因 で あ るHiggs粒
子 の 存 在 の 有 無,ク
ュー トリノ ォー ク ・
レ プ トン の フ ァ ミ リー 数 等 の 問 題 が あ り,こ れ らの 諸 問 題 は 現 在 の 大 統 一 理 論 の 枠 組 に も制 限 を 与 え る し,ま た,更
に よ り深 い 新 し い 考 察 を 必 要 とす る 問 題 と も思 わ れ
る.こ の よ うな 問 題 に 対 して 重 要 な 役 割 を 果 し た 日本 の 研 究 の 幾 つ か に触 れ る こ とに し よ う. 1973年
に小 林
さ れ たCP不
誠,益
川敏 英 は,現
在 の標 準 理 論 の 枠 内 でK0中
変 性 の 破 れ を 説 明 す る た め に は,ク
間子 の崩壊 で発 見
ォ ー ク ・レ プ トン の フ ァ ミ リー は3
世 代 以 上 が 必 要 で あ る こ と を 初 め て 指 摘 し た16).こ の 研 究 は3世
代 目の ク ォ ー ク,レ
プ トン が 発 見 さ れ る 大 分 以 前 に な さ れ た 先 駆 的 な研 究 で あ り,ま
た今 日で もCPの
れ を定 量 的 に 説 明 で き る 唯 一 の 現 象 論 と し て の 立 場 を維 持 し て い る.78年 彦 に よ る研 究17)は,大
統 一 理 論 で予 期 さ れ るCPの
破 れ,バ
膨 張 初 期 に お け る熱 平 衡 か らの 僅 か な ず れ を用 い て,宇
破
の 吉村 太
リオ ン数 の 非 保 存,宇
宙
宙 の バ リ オ ン数 と非 バ リ オ ン
数 の 非 対 称 性 の 発 生 の 機 構 を示 し た も の で あ り,初 め て 我 々 の 宇 宙 が 核 子 優 勢 の 宇 宙 で あ る こ と,宇 宙 の バ リオ ン数 と光 子 数 の 割 合 が 極 め て 小 さ い こ と等 を理 解 す る こ と を可 能 に し た.ま 小 さ い が,ニ
た,ニ
ュ ー ト リノ の 質 量 の 上 限 は ク ォ ー ク の 質 量 に 比 べ て も非 常 に
ュ ー ト リノ質 量 の小 さ い こ と を説 明 す る為 に 柳 田
勉 等 に よ り導 入 され
た シー ソ ー 機 構 は今 で も ニ ュ ー ト リ ノ質 量 を理 解 す る最 も強 力 な考 え方 と して 残 っ て い る18).こ れ らの 仕 事 は そ れ ぞ れ の 難 問 の 解 決 に 初 め て 糸 口 を与 え た研 究 で あ り,今
日 で も そ の 正 当 性 を主 張 で き る 内 容 を持 っ て い る. 対 称 性 の 行 きつ く と こ ろ は,ス 対 称 性 で あ る 超 対 称 性 で あ る.60年
ピ ン 整 数 のBose場
と半 整 数 のFermi場
との間 の
代 の 終 りに は 宮 沢 弘 成 に よ り既 に ス ピ ン整 数 と
半 整 数 の ハ ドロ ン 問 の 超 対 称 性 が 論 じ ら れ た が19),時 期 尚 早 で あ っ た こ と と審 美 的 に 訴 え る こ とが 少 な くて,余
り本 気 で 取 り上 げ られ な か っ た よ う に 思 わ れ る.60年
に は 色 々 な 対 称 性 が 提 唱 さ れ 論 じ ら れ た が,素 粒 子 の 内部 対 称 性 を表 すLie群 の 対 称 性 を表 すPoincare群 議 論 され た.宮
代
と時 空
と を単 な る直 積 で は な い 形 で 統 合 す る 対 称 群 の 可 能 性 が
沢 の 仕 事 は そ の 可 能 性 を示 す 一 つ の 研 究 で あ っ た が,1971年
に はLie
群 の概 念 を拡 張 す れ ば 直 積 以 外 の 方 法 で 内部 対 称 性 を含 ませ る こ とが で き る こ とが, よ り厳 密 にYu. る.74年
Gelfand等
に はJ. Wess,
が 定 式 化 さ れ,超
に よ り示 され た.こ B. Zuminoに
の 拡 張 に は 超 対 称 性 の 演 算 子 が 含 まれ
よ り4次 元 の超 対 称 性 を持 つ 場 の 理 論 の モ デ ル
対 称 性 を持 つ 素 粒 子 を記 述 す る言 語 体 系 の 原 型 が 用 意 さ れ た こ とに
な る. 超 対 称 性 理 論 の 良 い 点 はBose場
とFermi場
と の 共 存 に よ り場 の 理 論 の 発 散 が 消
去 さ れ 繰 り込 み 可 能 に な る こ と,す べ て の 素 粒 子 を超 対 称 性 ま で 含 め た 対 称 性 の観 点 か ら統 一 的 に理 解 で き る 道 筋 を与 え た こ とで あ る.一 方 で,釈
然 と しな い 点 は 既 存 の
素 粒 子 の 中 に は 超 対 称 性 を通 して 対 を な す素 粒 子 の候 補 者 は 見 当 た らず,超
対称性 を
仮 定 す る と素 粒 子 の 数 は倍 増 し,新 た に 加 え られ る素 粒 子 は超 対 称 性 の 自発 的 な破 れ に よ り質 量 が 大 き くな り,現 在 ま で の 実 験 で は 見 付 か ら な い と い う言 い 訳 をす べ て の 超 対 称 性 に よ るパ ー トナ ー に用 意 しな け れ ば な ら な い こ と で あ る. しか し,素 粒 子 の 統 一 理 論 を作 る為 に は 超 対 称 性 を取 り込 む こ と は 有 用 で あ る こ と が 次 第 に 示 さ れ て き て い る.大 統 一 理 論 で は 強 い 相 互 作 用,電 作 用 は あ る高 エ ネ ル ギ ー 領 域 で 統 合 され,一 れ る が,例
え ばSU(5)の
統 一 理 論 で は1017GeVの
磁 相 互 作 用,弱
い相 互
つ の 共 通 の 結 合 定 数 を持 つ こ とが 要 請 さ
大 統 一 理 論 で は う ま く行 か な い が,SU(5)の
超 対称 性 大
辺 の エ ネ ル ギー で 三 つ の 相 互 作 用 定 数 が 一 致 す る こ とが 示
され て お り,こ の 外 に も 色 々 と超 対 称 性 の 存 在 を示 唆 す る傍 証 が あ る.そ 超 対 称 性 を持 つ 統 一 理 論 は 繰 り込 み 可 能 な 場 の 理 論 で あ り,80年
れ 以 上 に,
代 後 半 か ら現在 ま
で 素 粒 子 を記 述 す る 現 実 的 な 言 語 の 一 つ と し て 機 能 し て い る.
超 対称 性理論 研 究 の詳 細 には詳 し くないの で,身 近 に接 した幾 つか の優 れ た 日本 の 研 究 をあ げ よ う.1982年
頃 の坂 井典 佑 に よ る超 対 称 性 を緩や か に破 る項 を持 つSU
(5)超 対称 性 モ デル の提 唱,井 上研 三等 に よ る素粒 子 の標準 モ デル の超対 称性版 の提 案 と輻 射補 正 に よ る対 称 性 の破 れ を取 り入 れ た計算,柳 田等 に よ るSU(5)超 モ デル に よ る陽 子 の寿 命やHiggs粒
対称 性
子 の質 量計 算,こ れ らは 日本 の素 粒 子 研 究 が純
論 理 的 な面 だけ で な く,実 験 との定 量的 な対 比 を含 め て世 界各地 の実 験計 画 に も影響 を与 え る までに成 長 してい る こ とを示す研 究 の例 であ る20).
超 対 称 性 に つ い て は 年 配 の 研 究 者 に は 一 種 の 嫌 悪 感 が あ る.直 接 的 証 拠 の 存 在 しな い概 念 は 昔 で あ っ た ら顧 み ら れ な い の が 物 理 社 会 の 規 範 で あ っ た と思 わ れ るが,素 子 の 究 極 理 論 追 及 を 暗 黙 の コ ン セ ンサ ス とす る素 粒 子 社 会 の 与 論 で は,超 念 は す で に80年
学 は 実 数,量
対称 性 の概
代 に 入 っ て か ら社 会 的 認 知 を 受 け て い る よ う に 思 わ れ る.超
字 に は 素 晴 ら しい とい う意 味 と,う 子 力 学 は 複 素 数,そ
粒
さ ん 臭 い とい う意 味 が 同 居 して い るが,古
とい う 典 物理
し て 超 対 称 性 理 論 で は 反 可 換 なGrassmann数
を必
要 とす る こ とか ら,我 々 の 脳 の 機 能 と構 造 は複 素 数 は と も か く と してGrassmann数 ま で も許 容 す る の か 等 と思 い 悩 む こ と もあ る. 素 粒 子 理 論 の 夢 の 一 つ は 大 統 一 理 論 を越 え て 重 力 ま で含 め た 統 一 理 論 の 探 求 で あ り,80年
代 は こ の よ う な 統 一 理 論 の 研 究 が 盛 ん に 行 わ れ た が,素
粒 子 を 質 点 と考 え
る代 わ りに す べ て の 素 粒 子 を一 つ の 弦 の 振 動 状 態 に 対 応 させ る弦 理 論 が 最 有 力 の 候 補 者 と し て 登 場 した.60年
代 終 りに ハ ドロ ン の 多数 の 共 鳴 状 態 の 存 在 とそ れ ら の 関 連
を 良 く説 明 で き る双 対 共 鳴 モ デ ル と呼 ば れ る モ デ ル が 提 出 さ れ,そ
の 後 この モデ ルは
一 つ の 弦 の 振 動 状 態 を こ れ ら の ハ ドロ ンの 共 鳴 状 態 に 対 応 させ る こ とに よ り理 解 で き る こ とが 明 らか に な っ た.弦
理 論 の 最 初 の 相 対 論 的 形 式 化 は1970年
南 部 陽 一 郎 に よ り独 立 に 提 出 さ れ,弦 な 影 響 を 与 え て い る21).74年 等 に よ り な され,ま
た,同
頃 に 後 藤 茂 男,
理 論 の原型 としてそ の後 の弦理論 の展 開 に大 き
には弦 の場 の理論 の 本格 的 な形 式化 が初 め て吉 川圭 二
じ年 に 米 谷 民 明 に よ り弦 理 論 は あ る条 件 下 で 重 力 相 互 作 用
を含 み 得 る こ と が 示 さ れ て い る22).ま た,崎
田 文 二 が 色 々 な局 面 で 弦 理 論 の 発 展 に 重
要 な 寄 与 を し た こ と も付 け 加 え た い. 1980年 代 後 半 か ら本 格 的 に 登 場 し た 超 対 称 性 を 取 り入 れ た 超 弦 理 論 は,素 究 極 理 論 に 近 い一 つ の候 補 者 と し て 多 くの 若 い 人 々 を 引 き付 け て い る.弦 め て 短 く通 常 の ス ケ ー ル で は 質 点 と見 な せ る もの で あ り,ま た,弦
粒 子の
の長 さは極
の振 動 の基底 状態
と励 起 状 態 の エ ネ ル ギ ー 差 はPlanckエ
ネ ル ギ ー の程 度 で あ り,通 常 の エ ネ ル ギー 範
囲 で は 基 底 状 態 の み を考 え れ ば 良 い.標
準 モ デ ル に 現 れ る ク ォ ー ク,レ プ トン等 の 素
粒 子 は 弦 の 基 底 状 態 の 一 つ に 対 応 し,ま た 基 底 状 態 に は 光 子 や 重 力 を媒 介 す る重 力 子 が 含 ま れ る こ と も示 さ れ て い る.時 な整 合 性 が 得 ら れ な い が,4次
空 の 次 元 は10次
元 の よ う に 拡 大 し な い と論 理 的
元 以 外 は コ ン パ ク ト化 さ れ る次 元 で あ り,特 に 不 都 合
は 生 じな い と思 わ れ て い る. こ れ ら の 研 究 を 眺 め る と,90年
代 は 多 様 化 の 時 代,あ
る い は 分 離 脳 の 時 代 と名 付
け た い.超 弦 理 論 は 左 脳 で考 え る と論 理 的 に 可 能 な 素 粒 子 の 統 一 描 像 を 与 え,ま 現 在 の 標 準 理 論 を 内 蔵 す る よ う に 見 え る が,低
た,
エ ネ ル ギ ー で の 実 効 理 論 で あ る標 準 理
論 を 導 くア ル ゴ リ ズ ム を作 る の は 今 の と こ ろ 困 難 で あ り,ま た,Planckエ
ネル ギー
で の実 験 を行 い 弦 の 振 動 の 様 子 を調 べ る の は 永 久 に 不 可 能 で あ る.実 験 物 理 学 との 決 別 の 当 否 は 左 脳 で は イ エ ス と肯 定 し,右 脳 で は 経 験 的 に 否 定 す る.必 要 に よ り脳 を分
離 して 機 能 させ る こ と,あ
る い は 人 間 の 脳 機 能 に つ い て の よ り深 い理 解,あ
習 に よ り脳 機 能 を 高 め る こ とが 究 極 理 論 探 求 の 条 件 な の か も知 れ な い.超
るい は学
弦 理 論 は数
学 的 に あ ま りに 複 雑 で あ り,私 の よ うに そ の 詳 細 に つ い て い け な い もの に は 両 脳 と も 弦 の妙 え な る調 べ を長 期 記 憶 と して 脳 に 埋 め 込 む の は 難 しい. 7.5
終
り
40数 年 前 初 め て ア メ リカ に 行 っ た と き,一
に
つ の実 験事 実 か らは一 つ の こ との み検
証 す る の が 西 欧 科 学 の 伝 統 で あ る とア メ リ カ 人 のS教
授 か ら 言 わ れ,す
を一 度 に理 解 し よ う とす る の は 東 洋 的 だ と言 わ れ た 覚 え が あ る.4年 滞 在 し た が,当
時Chicago大
学 に 居 たGell-Mannが
べ ての こと
ほ ど ア メ リカ に
我 々 ア メ リカ 中 西 部 で 研 究 し て
い た 日本 人 の 仕 事 振 り を 身 近 に 見 て,東
洋思 想の 汚染 あ るいは それに近 い 言葉 を言 っ
て い た よ う な 覚 え が あ る.し か し,70年
代 か ら の 素 粒 子 理 論 の 展 開 は あ る意 味 で 東
洋 的 な様 相 を示 して い る よ う に 思 わ れ る し,ま た,こ 脳 と左 脳 の 微 妙 な 使 い分 け,調
れ か らの 素 粒 子 論 の 発 展 に は 右
整 ま で 要 請 さ れ る よ う に も思 わ れ る.
紙 数 も尽 き た の で 最 後 に文 化-文 明 論 と い わ ゆ る頭 脳 流 失 に つ い て 一 言 付 け 加 え よ う.司 馬 遼 太 郎 の 『ア メ リカ 素 描 』 とい う本 に 色 々 と面 白 い観 察 が 書 か れ て い る.文 明 は 誰 で も参 加 で き る普 遍 的 ・合 理 的 な もの,文 団 に の み 通 用 す る特 種 な も の,ア
化 は む し ろ不 合 理 な も の で 特 定 の 集
メ リ カ は 文 明 だ け で 出来 あ が って い る特 種 な 国 で あ
るが,ア
メ リ カ とい う人 工 国 家 が なけ れ ば 世 の 中 は 息 苦 しい 等 々 の こ とが 書 か れ て い
る.50年
代 か ら60年
代 に か け て6年
間 ほ ど2度 に 分 け て ア メ リ カ に 滞 在 し た が,何
人 か の ア メ リカ 人 か ら 日本 の 素 粒 子 研 究 の 論 文 に は あ ら ゆ る ア イデ ィ ア が 書 か れ て い て ア イ デ ィ ア の 泉 で あ る と言 わ れ た こ と を 思 い 出 す.日
本 や ヨー ロ ッパ で 育 っ た ア イ
デ ィ ア は そ の 国 の 文 化 を 反 映 し て 多 彩 で ユ ニ ー クの もの が 多 いが,そ
れ らのア イデ ィ
ア が 合 理 的 ・普 遍 的 な も の に 成 長 す る に は ア メ リ カ の 存 在 が 必 要 で あ っ た,と が70年
い うの
代 前 半 まで の素 粒 子 物 理 学 の 状 況 で あ っ た よ うな 感 じが す る.
素 粒 子 物 理 学 の 研 究 者 で 海 外 で 長 く活 躍 して 優 れ た業 績 を あ げ て い る人 々 は 多 い. しか し,ヨ ー ロ ッパ や 他 の 地 域 の 国 々 と比 べ る と言 葉 の 障 壁 等 も一 因 で あ ろ うが,い わ ゆ る頭 脳 流 失 の 程 度 は 微 々 た る よ うに 思 わ れ る.50年
代 の ア メ リカ の 様 子 を見 る
と,自 国 の 文 化 の 重 苦 し さ を敏 感 に 意 識 し て 自由 な研 究 雰 囲 気 を 求 め て 色 々 な 国 か ら 優 秀 な研 究 者 が 来 て い た よ う に 思 わ れ る.日 が あ っ た こ とは 否 め な い.し ず,日
本 の 頭 脳 流 出 の 場 合 で も似 た よ う な事 情
か し,結 果 と し て そ れ ほ ど 目立 っ た 頭 脳 流 失 は 起 こ ら
本 に 研 究 場 所 を設 定 す る研 究 者 と 海 外,特
適 当 な 数 の 比率 で 推 移 して き た.こ
に ア メ リカ に 居 を構 え る研 究 者 とが
の こ とが 日本 の研 究 の 文 化 的 特 徴 と文 明 的 普 遍 性
と の 良 い バ ラ ン ス を支 え て き た よ うに 思 わ れ る.(筆 誉 教 授,東 北大 学 名 誉教 授.1924年
生 まれ,1946年
者=た け だ ・ぎ ょ う,東 京 大学 名
東 京大 学 理 学部 卒 業)
参 考文 献 1) S.ワ イ ン バ ー グ 著,小 1994).A.ジ
ー 著,杉
社,1989).S.ワ
尾 信 彌 ・加 藤 正 昭 訳:『 究 極 理 論 へ の 夢 』(ダ
イ ヤ モ ン ド社,
山 滋 郎 ・佐 々 木 光 俊 ・木 原 英 逸 訳:『 宇 宙 の デ ザ イ ン 原 理 』(白 揚
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the
Copen
S.
8. 高 エ ネ ル ギー 物 理 の将 来 宮
8.1
は
じ
め
れ が20世
の50年
を振 り返 り,
の よ う な 予 測 は 当 た る も の で は な い .19
世 紀 末 に,物 理 学 で は も うや る こ とは な い,終 あ る.そ
弘 成
に
20世 紀 後 半 に 高 エ ネ ル ギー 物 理 は め ざ ま し い 活 躍 を し た.そ 21世 紀 に 向 け て の 将 来 の 予 測 を 試 み る.こ
沢
わ っ た,と
い うこ とが 言 わ れ た そ う で
紀 に 量 子 物 理 と い う 方 向 に 大 発 展 を し た の で あ っ た.行
き詰 ま っ
た と思 わ れ た の が 思 い が け な い 突 破 口が 見 つ か る の は しば しば で あ り,物 理 は 不 連 続 的 に 進 歩 す る の で あ る.だ
か ら と い っ て 将 来 予 測 をす る の は 無 意 味 で は な い.故(ふ
る)き
来 を見 渡 す の は 意 味 が あ り,必 要 な こ と で あ ろ う.
を た ず ね て 現 状,将
不 連 続 を承 知 の 上 で 外 挿 す るの で あ る か ら,現 状 か ら 一 義 的 な 予 想 が で き る は ず は な い.本
稿 の 将 来 予 想 は 客 観 的 な も の で な く,筆 者 の 主 観 に よ る もの で あ る.そ の 結
論 を先 に 延 べ れ ば,21世 発 展 を遂 げ る だ ろ う,と
紀 の 高 エ ネ ル ギ ー 物 理 は 新 しい 理 論 形 式 の 開 発 に よ っ て 大 な る.
高 エ ネ ル ギ ー 物 理 とは 何 か,素
粒 子 物 理 と ど う違 うの か.日
葉 に な じみ が 深 く,高 エ ネ ル ギー 物 理 は 輸 入 語 で あ る が,両
本 で は 素 粒 子 と い う言
者 ほ ぼ 同 義 で あ る.物 質
の 究 極 構 造 を解 明 し よ う とす る努 力 で あ る.
8.2 高 エ ネ ル ギ ー 物 理 の 創 成 期 高 エ ネ ル ギ ー 物 理 は,ま 実 験 で は な い.マ 見 さ れ,そ
ず 量 子 電 磁 力 学(QED)で
始 ま る.こ
れ は高 エ ネ ル ギー
イ ク ロ 波 分 光 学 の 発 展 に よ り水 素 原 子 の 微 細 構 造 に ラ ム シ フ トが 発
れ が 電 磁 補 正 に よ る も の で あ る こ とが わ か っ た.丁 度 そ の と き 日本 で は朝
永 振 一 郎 お よ び そ の グル ー プ が 相 対 論 的 場 の 理 論 を 建 設 中 で あ り,繰 っ て 無 限 大 を処 理 し,電 磁 補 正 を計 算 で き る よ うに な っ た.こ の 図 式 計 算 法 も加 わ っ て,1950年 で,後
に はQEDは
に 木 下 東 一 郎 に よ っ て 電 子 の 磁 気 モ ー メ ン トがe8ま
と10桁
れ にR.
P. Feynman
の 理 論 は 驚 く ほ ど精 確 で 計 算 され た が,実
験値
の 精 度 で 一 致 す る.
1950年
頃 の 高 エ ネ ル ギ ー 物 理 の 主 役 は パ イ 中 間 子(パ
各 地 で 強 力 な 加 速 器 が 続 々 と作 られ た.戦 て,ま
完 成 す る.こ
り込 み 理 論 に よ
た 核 物 理 が 実 際 に 役 に 立 つ と思 わ れ た の で,こ
れ た よ う で あ る.パ
イ オ ン)で
あ る.戦
後米 国
時 中 の マ ンハ ッタ ン計 画 成功 の褒 美 とし の 方 面 に 潤 沢 に研 究 費 が 支 給 さ
イ オ ン は 宇 宙 線 中 に 見 つ か っ て い た が,人
工 的 に作 ら れ る よ うに
な っ た.そ
の 性 質 を解 明 す べ く,各 地 で 実 験 も理 論 研 究 も競 争 の よ う に行 わ れ た.は
じめ はQEDに か っ た.共 の,角
倣 っ て結 合 定 数 の べ き展 開 で計 算 し た の だ が,こ 鳴 状 態 が 幅 を利 か せ て い た か ら で あ る.代
運 動 量 で 部 分 波 展 開 す る とい う手 法 が 用 い ら れ た.こ
ス カ ラー で あ る こ と,ア
うしてパ イオ ンの場 が擬
イ ソス ピ ンが 保 存 す る こ と な どが 確 か め ら れ た.
パ イ ・核 子 散 乱 に 対 し強 力 な 武 器,分
散 公 式 が 考 案 され,こ
た 共 鳴 状 態Δ の 存 在 が 確 認 され た.結 合 定 数 もf2=0.08と グ ル ー プ は 核 力 の 周 辺 部 の 解 析 か ら 同 じ結 論 を 出 し た.そ 低 エ ネ ル ギ ー の パ イ 中 間 子 論 は50年
決 ま っ た.武
谷 三 男 らの
の 後 理 論 的 整 備 も行 わ れ, イ オ ン の 物 理 を 片づ
方 分 散 公 式 は 散 乱 行 列(S
論 へ と進 む .
同 時 進 行 し た の が ス ト レ ン ジ粒 子 の 理 論 で あ る.1948年 は 理 解 で きな い 奇 妙 な 現 象 が 見 つ か っ た.日 そ の 解 明 に 取 り組 み,珍 た.こ
れ に よ り予 言 さ れ て い
代 後 半 に は 解 明 さ れ た.パ
け た加 速 器 群 は Δ の 仲 間 を捜 す 「共 鳴 捜 し」 に 向 か い,一 -行 列)理
れ は使 い物 に な らな
わ っ て 原 子 核 反 応 で お な じみ
本 の 理 論 屋 た ち は この 問 題 を 取 り上 げ て
粒 子 は 二 個 組 に な っ て生 成 さ れ る と い う正 し い結 論 に 到 達 し
の 随 伴 生 成 則 は そ の 後 奇 偶 則 を 経 てM.
Gell-Mannと
ネ ス と い う加 算 量 の 保 存 則 に 至 る.実 験 的 に は Ξ0,Ω-と の 粒 子 が 発 見 さ れ,ス
も う一 つ 大 き な 出 来 事 が あ っ た.空
N.
西 島 和 彦 の,ス
間 反 転 の パ リテ ィ非 保 存 で あ る.私 た ち は 半 ば
Yangは
ま り右 と左 は対 称 と思 い こ ん で きた.し
え 方 の 根 本 的 な変 革 と大 騒 ぎ で あ っ た が,空
同 義 だ が,こ
間 反 転Pと
こ ろ が こ のCP不
変 性,こ
を組 み
張 さ れ た 意 味 で)左 右
れ は 時 間 反 転 で の 不 変 とほ ぼ
れ も僅 か で あ る が 壊 れ て い る の が 見 つ か っ た.こ
くわ か ら な い.神
間 に 対 す る考
粒 子 反 粒 子 反 転Cと
不 変 で あ る こ とが わ か り,や は り空 間 は(拡
対 称 で あ る と納 得 し た.と
か し
弱 い相 互 作 用 で は 空 間 反 転 の 不 変 性 が 確 か め ら れ て い な
い こ と を指 摘 し,実 験 し て み る と もの の 見 事 に左 右 非 対 称 で あ っ た.空
合 わせ たCPは
トレ ン ジ
い う ス ト レ ン ジ ネ ス-2,-3
トレ ン ジ ネ ス の 保 存 が確 立 し た.
無 意 識 に 自然 現 象 は 空 間 反 転 で 不 変,つ T. D. LeeとC.
宇 宙 線 中 に既知 の粒 子 で
れ の真 の意 味 は まだ よ
が ど う して こ ん な 不 自然 な こ と をす るの か 納 得 が い か な い.
以 上 は 初 め の10年
以 内 に 起 こ っ た こ とで あ る.ま
こ とに め ま ぐる し く,活 気 に 満
ち た 時 期 で あ っ た.何 事 も創 成 期 は こ の よ う な もの だ ろ うか.あ
るいは活 気 に満 ちた
か ら こ そ 分 野 が 生 き残 っ た の で あ ろ う.初 期 に は 日本 の 理 論 グ ル ー プ は 世 界 を リー ド して い た と言 っ て 過 言 で は な い.大 体 外 国 に は 素 粒 子 論 と い う言 葉 もな か っ た の で あ る. 8.3
成
熟
創 成 期 の 主 役 の 素 粒 子 が パ イ オ ン な ら ば,次 ハ ドロ ン の 複 合 性 が 提 案 さ れ た の は1949年
期 の 主 役 は ク ォ ー ク と レ プ トン で あ る.
で あ る.E.
FermiとYangは
素粒 子 の
数 が 多 す ぎ る と 言 っ て,パ
イ オ ン は 「素 」 で な く,核 子 と反 核 子 の結 合 状 態 と した.
ス トレ ン ジ粒 子 が 沢 山 見 つ か る よ うに な る と,ど
う し て も複 合 模 型 が 必 要 に な る.原
子 核 は 陽 子,中
性 子 の2素
粒 子 で で き て い るが,ス
ジ ネ ス の 素(も
と)を 持 っ た 素 粒 子 が 必 要 で あ る.坂
粒 子 を 基 本 素 粒 子 と し,そ
の ス クー ル は3個
トレ ン ジ粒 子 の た め に は ス トレ ン 田 昌 一 は 陽 子,中
の 間 の 対 称 性SU(3)も
性 子 とラム ダ
考 え た の だ が,
重 粒 子 の 分 類 が う ま くい か な か っ た. と こ ろ がGell-Mannが 個 だ が,p,n,Λ
う ま い こ と を考 え た.同
粒 子)が
で き て い る と い うの で あ る.こ
く.中 間 子 は ク ォ ー ク ・反 ク ォ ー クで よ い.更 よ く一 致 し た の で,一
挙 に 信 用 を 得 た.だ
模 型 で う ま くい っ て い る.実 際 に 電 子,光 の 影 が 見 え る.ハ
本 粒 子 は3
ォ ー ク3個
で核 子
れ で 重粒 子 の 分 類 は う ま く い
に 粒 子 群 の 質 量 差 を表 す 公 式 が 実 際 と
が ク ォ ー ク は1/3と
端 の 電 荷 な ど 見 つ か っ て な い で は な いか.し
間 子 に は2個
を使 い,基
で は な く,ク ォ ー ク と称 す る 別 の も の とす る.ク
や そ の 仲 間(重
つ.半
じSU(3)群
い う半 端 の 電 荷 を 持
か し量 子 数 に 関 す る 限 りこ の 複 合
子 等 で 叩 い て み る と,重 粒 子 に は3個,中
ドロ ン(重 粒 子,中
間 子)が
ク ォー ク で で き て い るの
頃 の 中 心 課 題 で あ っ た が,次
第 に クォー クは ひ もにつ
に ク ォー クが 出 て 来 な い の は 何 故 か. ク ォー ク 閉 じ こ め は1970年
な が れ て 出 て こ られ な い と言 う こ とに 落 ち着 い た.ハ
ドロ ン は ス ー パ ー 状 態 の 真 空 の
中 に で きた 正 常 な 空 間 の 泡 の 中 に 納 ま っ て い る.1個
の ク ォー クが 飛 び 出 そ う と し て
も,ク
ォ ー クか ら の 力線 は ス ー パ ー 状 態 に 絞 られ て ひ も状 と な り,一 定 の 力(約3ト
ン 重 の 大 き さ)で
ク ォー ク を 引 き戻 す の で 出 られ な い.無
多 数 の 中 間 子 に な っ て 飛 び 出 て く る.こ
理 に 引 く と ひ もが ち ぎ れ て
の 現 象 は ジ ェ ッ ト と呼 ば れ,観
測 され て い
に カ リ フ ォ ル ニ ア とニ ュ ー ヨー クで 新 現 象 が 見 つ か っ た.J/ψ
と呼 ば れ る
る. 1974年
も の は そ れ ま で の知 識 で は理 解 で き な い と思 わ れ た.素 た の だ が,結 な く第5番 一 方 ,核
目の ク ォ ー ク(チ
目の ク ォ ー ク(ボ
トム,b)も
ャ ー ム,c)で
粒 子 物 理 の 革 命 か と も騒 が れ 説 明 され て し ま っ た.ま
ュ ー オ ン は 招 か れ ざ る客 で あ っ た.パ
称 性 に 倣 っ て 電 子,ミ
良 い こ とは な に も な い.そ 始 め,実
プ トン の 理 解
イ オ ンが 核 力 の た め 必 要 だ っ た の
ュ ー オ ン は ど う し て こん な も の を神 が 作 っ た の か 意 味 が わ か ら な い.調
て み る と質 量 の 違 い を 除 け ば 電 子 と全 く同 じ性 質 で あ る.そ SU(3)対
ュ ー オ ン,ニ
こ で ハ ドロ ン で成 功 し た
類 あ る の で は な い か と言 わ れ
ュー ト リ ノ と電 子 が 組 を作 り,ミ ュ ー オ ン ニ ュー ト リ ノ
と ミュ ー オ ン が 別 の も う一 つ の 組 を作 る.ク と ダ ウ ン ク ォ ー クdが
べ
ュ ー ト リ ノ を 基 本 素 粒 子 に して み た が
の う ち に ニ ュ ー ト リ ノ は2種
験 で確 認 さ れ た.ニ
も
見 つ か っ た.
子 と並 ん で物 質 の も う一 つ の 構 成 要 素 で あ る 電 子 の仲 間,レ
も 進 ん だ.ミ に対 し,ミ
局 は 第4番
ォ ー ク も 同 じ よ う に ア ッ プ ク ォ ー クu
組 を 作 り,電 子 の 組 と合 わ せ て 第 一 世 代 の 素 粒 子 群 で あ る.
同 じパ タ ー ン でcとsク
ォ ー クの 組,ミ
ュ ー オ ン の 組 が 第2世
本 素 粒 子 を納 得 の い く形 に ま とめ る こ とが で き,招 更 に うれ し い こ とは,ハ
代 を作 る.こ
うして基
か れ ざ る客 も座 るべ き席 を得 た.
ドロ ン は レプ トン と は全 く別 種 の もの と思 わ れ た の に,ク
ォ
ー クに 至 っ て レプ トン と 同類 の もの とな っ た こ と で あ る. 小 林 誠 と益 川 敏 英 は 基 本 粒 子 間 の 弱 い 相 互 作 用 を整 理 し,第1,第2世 だ け で は 時 間 反 転 の 不 変 性 は 壊 れ ず,壊 な い こ と を示 し た.ハ な ら な い.bが
れ る た め に は 少 な く と も3世 代 な け れ ば な ら
ドロ ン 現 象 で 時 間 反 転 が 壊 れ て い るの で,第3世
そ の候 補 だ が,も
う一 つtが
オ ン と そ の 相 棒 ニ ュ ー ト リ ノで 第3世
な け れ ば な ら な い.レ
代 が なけれ ば
プ トン の 方 は タ ウ
代 を 形 成 す る.
高 エ ネ ル ギ ー 物 理 の 実 験 は 加 速 器 が 主 体 で あ る.シ っ て 陽 子 シ ン ク ロ トロ ン へ と移 行 す る の だ が,大 束 の 原 理 で,こ
代 の粒 子群
ン ク ロサ イ ク ロ トロ ンか ら始 ま
き な 革 新 が 二 つ あ っ た.一 つ は 強 収
れ に よ り粒 子 ビー ム を細 く絞 り,加 速 器 を小 さ くす る こ とが で き る.
も う一 つ は 大 河 千 弘 の 衝 突 型 加 速 器 で,加 る.こ れ ら に よ り加 速 器 の(重
心 系)エ
速 ビー ム 同 士 をぶ つ け て衝 突 され る の で あ
ネ ル ギー は 飛 躍 的 に 大 き くな り,素 粒 子 物 理
の 進 歩 を 牽 引,応 援 した の で あ っ た. 一 方 が,散
,理 論 形 式 も進 展 す る.場 乱 行 列(S-行
列)理
の 理 論 で は 現 れ る無 限 大 を処 理 し な け れ ば な ら な い
論 は観 測 可 能 な 量 だ け を扱 い,無
に つ い て は 精 力 的 に 研 究 さ れ,面 い,場
限 大 は 現 れ な い.こ
れ
変 数 関 数論 の 困難 に遭
の 理 論 に 取 って 代 わ る こ とは で きな か っ た.
こ の 頃 場 の 理 論 で は,Yang等 た.ゲ
白 い 結 果 が 得 られ た が,多
に よ り非 ア ー ベ ル 的 対 称 性 の ゲ ー ジ 理 論 が つ く ら れ
ー ジ理 論 の 重 要 性 は 次 第 に 明 ら か に な る.
大 き な 成 果 を生 み だ し た の は1960年
の 南 部 陽 一 郎 の 自発 的 対 称 性 の 破 れ で あ る.
厳 密 に 成 り立 つ と思 わ れ る対 称 性 が 壊 れ て し ま う と い うの で 呆 気 に と られ た が,よ 考 え る と この 現 象 は 身 近 に 起 こ っ て い る の で あ っ た.3次
く
元 等方 な空間 内に い る我 々
の 世 界 が 等 方 で な い 形 を 保 っ て い るの は 南 部 の 機 構 の お 陰 で あ る.こ の 理 論 は 見 事 な 応 用 を 生 み 出 し た.ク
ォ ー ク と レ プ トン に 非 ア ー ベ ル 的 ゲ ー ジ場 を結 合 させ,ヒ
ス 場 と い う ス カ ラー 場 を 混 ぜ る.こ
ッグ
こ に 対 称 性 の破 れ を起 こ させ る と,ゲ ー ジ場 は 質
量 ゼ ロ の 電 磁 場 と,質 量 を持 っ た 弱 い 相 互 作 用 の場 に分 裂 す る.南 部 理 論 の 演 習 問 題 の よ うに ス ム ー ズ に い く.こ う して 電 磁 気 と弱 い相 互 作 用 が 統 一 的 に 理 解 で きた. 強 い 相 互 作 用 の 理 論,ク 力 学(QCD)も
ォ ー ク の 色 に 強 い 相 互 作 用 の グ ル オ ン を結 合 させ た 量 子 色
ほ ぼ 固 ま っ た.QCDは
繰 り込 み 可 能 で,エ
合 が 弱 くな る と い う性 質 を持 つ の で 摂 動 計 算 が で き る.低
ネ ル ギー が 高 くな る と結 エ ネル ギー赤外部 では逆 に
結 合 が 大 き くな る の で 始 末 が 悪 い.ス ー パ ー 状 態 の 真 空,ク み が な さ れ た が,結
ォ ー ク 閉 じ こ め を 扱 う試
局 は 計 算 機 に 任 せ る こ とに な っ て し ま っ た.
3世 代 の ク ォ ー ク ・レ プ トン の 電 弱 理 論 とQCDを
組 み 合 わ せ た もの が 標 準 理 論 で
あ る.標 準 理 論 は こ れ ま で の 素 粒 子 物 理 の 総 括 で あ る.得 し,万 事 説 明 で き る よ うに な っ て い る.強 て し ま っ た が,こ
ら れ た 知 識 をす べ て 料 理
い相 互 作 用 は 電 弱 場 と は無 関 係 に 導 入 され
れ も統 一 的 に 理 解 し よ う とす る 試 み は ま だ 成 功 して い な い.
超 対 称 性 に つ い て も触 れ るべ き か も知 れ な い.回 る リー 代 数 で あ るが,ス 数 に 拡 張 で き る.ロ
転 群 は角 運 動 量 を生 成 演 算 子 とす
ピ ノ ル 量 の 演 算 子 を加 え て 交 換 関 係,反
ー レ ン ツ群 も同 様 に 拡 張 で き,こ
可 能 性 と して は 面 白 い が,物
交 換 関 係 を含 む 超 代
れ が 超 対 称 性 で あ る.数
学上 の
理 が 超 対 称 で あ る とい う証 拠 は 見 出 さ れ な い.
8.4 世 紀 末 の 高 エ ネ ル ギ ー 物 理 標 準 理 論 が 提 案 さ れ,登 通 りに 見 つ か っ た.最 とに な っ た.ヒ
場 す る粒 子 の う ち 弱 相 互 作 用 の 中 間 子W,Zは
後 の ク ォ ー クtに は 手 こ ず っ た が,1998年
ッ グ ス 粒 子 が 残 っ て い る.こ
ほ ぼ予 想
には確 認 され た こ
れ の 質 量 如 何 で は理 論 に 影 響 が 及 ぶ が,
20世 紀 中 に は 見 つ か ら な か っ た. 標 準 理 論 は う ま くで き て い て,こ
れ を 越 え る こ とが で き な い.こ
れか らはみ 出す粒
子 は 見 つ か ら な い し,標 準 理 論 に 決 定 的 に 矛 盾 す る 現 象 は 観 測 さ れ て い な い.理 で,QCDの
赤 外 部 分 は 紙 と鉛 筆 で は ど う に も な らな か っ た.あ
る ほ か な い.格
論
と は 計 算 機 に や らせ
子 ゲ ー ジ理 論 は 無 限大 を生 じな い の で計 算 機 が 答 え を 出 せ る.岩 崎 洋
一 らつ くば の グ ル ー プ の ,専 用 並 列 計 算 機 を 開 発 して の 精 力 的 な 計 算 は 満 足 す べ き結 果 を 出 して い る.少
な く と もQCDが
駄 目 と言 う こ とに は な っ て い な い.こ
の研 究 は
実 験 で も な く理 論 で も な い 計 算 物 理 を拓 くも の と して 評 価 さ れ る. 加 速 器 は 次 々 と よ り高 エ ネ ル ギー の もの が 作 ら れ て き た の だ が,SSC ducting
Super
Collider)計
画 は 挫 折 して し ま っ た.建
(Supercon
設 費 が 高 額 で あ り,高 エ ネ ル
ギー 物 理 が あ ま り実 用 に な ら な い こ とが わ か っ て し ま っ た か ら で あ る. 最 高 エ ネ ル ギ ー 領 域 で あ ま りぱ っ と した こ との な い と き,気 リノ実 験 で あ る.こ
を吐 い た の は ニ ュ ー ト
の 時 期 の 主 役 素 粒 子 と言 うべ き で あ ろ う.ク
ォー ク ・レプ トンの
う ち で ニ ュ ー トリ ノ は 最 も わ か っ て い な い も の で あ る.第 一,質
量 が 正 確 に わ か って
い な い .小
さ い質 量(質
量 差)が
あ る な らば,三
種 の ニ ュ ー トリ ノ は 混 合 し,他 の 世
代 の も の へ 行 っ た り来 た りす るは ず で あ る.こ の 理 論 的 予 想 に 基づ き,ニ ュ ー ト リノ 振 動 を観 測 す る実 験 が 東 大 宇 宙 線 研 究 所 の 神 岡 の 装 置 で 行 わ れ た.大 ニ ュ ー ト リ ノ につ い て 初 め て 振 動 が発 見 され た.太
気 中 で 作 られ た
陽 か ら飛 ん で くる もの に つ い て は
他 グ ル ー プ の 結 果 とを 総 合 し て 振 動 の 詳 細 が わ か っ た.こ
れ ら か ら3つ の ニ ュ ー ト リ
ノ に は 質 量 差 が あ る と結 論 さ れ た. 小 林 ・益 川 機 構 の 解 明 も前 進 し た.高 中 間 子 の 崩 壊 を調 べ,こ
こ で もCP不
理 論 は ひ も全 盛 で あ る.点xの
エ ネ ル ギー 研 の グ ル ー プ は 所 内 の 加 速 器 でB
変(T-不
変)が
壊 れ て い る こ とを確 か め た.
関 数 で あ る場 の 理 論 で は 片 づ か な い と,点 で な く
図1 物質の階層構造
ひ もの 汎 関 数 を扱 う.一 次 元 の ひ もで な く,2次 考 え て も よ い.こ あ る.い
元 の 膜,あ
るいは任 意 次元 の もの を
れ に 超 対 称 性 を課 し,重 力 理 論 も解 決 し よ う との 計 画 が 超 弦 理 論 で
ろ い ろ と結 果 は 得 ら れ て い るが,ま
だ 実 験 と比 較 で き る素 粒 子 物 理 に は な っ
て い な い.
8.5 素 粒 子 物 理 の 将 来 然,ク
ォ ー ク,レ プ
トン の 物 理 が 課 題 で あ る.標 準 模 型 に よ り役 者 の 名 前 は わ か っ た が,そ
こ れ か ら素 粒 子 物 理 は ど の よ う に進 む か,の
の正体 は不 明
と 言 うべ き で あ る.と
くに ニ ュ ー ト リ ノが わ か ら な い.以
ロ の 簡 単 な 粒 子 と思 わ れ た が,ニ こ とに な っ た.こ な い が,解
予 想 で あ る が,当
前 はニ ュー トリノは質量 ゼ
ュー ト リ ノ振 動 か ら,微 小 な 質 量 ら し き も の を持 つ
れ を デ ィ ラ ッ ク方 程 式 に 従 う 粒 子 と して 良 い の か,一
明 され るべ き 問 題 の 第1で
筋縄 では いか
あ る.
こ れ ら の 粒 子 の 相 互 作 用 の う ち,電 磁 弱 理 論 は 納 得 い く形 で 導 入 され た が,そ 造 が 完 全 に わ か っ た わ け で は な い.一 ず れ に な っ て し ま っ た.こ
統 一 す る の が 究 極 の 目的 だ が,こ ク ォー ク,レ す れ ば24個
い 相 互 作 用 の 色 力 学(QCD)は
れ は 遠 い 将 来,別
の 段 階 で 達 成 さ れ る で あ ろ う.
プ トン の 質 量 は 大 き な 問 題 で あ る.3世
代12個
進 む に し た が っ て 次 第 に 重 くな る.何
で あ り,そ れ を突 き止 め て,す で あ る が,な
の,色
違 い を別 種 と
微 細 構 造 定 数1/137の
分 な い で あ ろ う).こ
れ て 以 来 の 疑 問 で あ っ た が,こ
量 は 第1世
か の規 則 に従 っ てい るはず
べ て の 質 量 を計 算 す べ き で あ る.ミ
ぜ か.207は
そ れ は 意 味 が あ る 等 式 か(多
仲間は
力 も加 え て 大
の ク ォ ー ク ・レプ ト ンが す べ て 「素 」 と は考 え ら れ な い.質
代 か ら第2,第3と
子 の207倍
方,強
れ ら は 当然 統 一 し て 理 解 され る で あ ろ う.重
の構
ュ ー オ ン質 量 は 電
逆 数 の3/2倍
で あ る が,
れ は 半 世 紀 前 ミュ ー オ ン が 発 見 さ
の 段 階 で 解 明 さ れ る で あ ろ う.
こ れ ら の 問 題 解 決 の た め に は ク ォー ク,レ プ トン の 構 造 に 踏 み 込 ま な け れ ば な らな い .目 下 の と こ ろ そ れ らが 構 造 を持 つ と い う直 接 的 証 拠 は な い が,ク
ォー ク,レ
プ ト
と大 き さ(メ ー トル)
ン の 複 合 性 の 根 拠 と し て そ れ らが 変 化 す る こ とが 挙 げ られ る.ク
ォ ー ク,レ プ トン は
W± を 出 し入 れ し て 他 の も の に 変 わ る.変 化 す る も の は 「素 」 で は な い,変 化 す る も の の 中 に は不 変 な 「 素 」 が あ る,と ク ォ ー ク,レ
い うの は今 ま で 成 功 し て き た 原 理 で あ る.
プ トン の大 き さ,広 が りは,ま
気 モー メ ン トの 実 験 値 とQEDに を 持 たせ る余 地 は な い.広
子の磁
よ る 計 算 値 と は 誤 差 範 囲 内 で 一 致 し,電 子 に 広 が り
が っ て い る な ら ば そ の大 き さ はam(10-18m)以
ク ォー ク も点 電 荷 か ら の ず れ,た 当 に 彼 ら は 点(あ
だ実 験 的 に 測 られ て い な い.電
下 で あ る.
と え ば 異 常 磁 気 モ ー メ ン トな どは 認 め ら れ な い.本
る い は極 め て 小 さ い)な
大 き さ につ い て の 推 測 を試 み る.図1は
の か,あ
る程 度 大 き く広 が っ て い る か.
自然 界 の 階 層 構 造 で あ る.私
た ち は 自然 界
を,あ
る もの は よ り細 か い 構 成 子 で で きて い る とい う見 方 で 階 層 に 分 け て 理 解 し て き
た.お
よ そ6桁
下 が っ て 次 の 階 層 に 至 る.こ
れ は 自然 界 が そ う な っ て い る と言 う よ
り,人 間 が そ の よ う な 見 方 を し て き た と言 うべ き で あ ろ う.10-5mの 理 で は 決 定 的 な 「a-tom」 で あ る が,無
ォ ー ク,レ プ ト ン階 層 で は 大 き さ は10-20m程 の 予 想 だ が,も
細 胞 は生 命物
機 物 理 は これ は バ イパ ス す る.図
を眺 めて ク
度 で は な い か と思 わ れ る.こ
れ は全 く
し正 し け れ ば 現 段 階 か ら あ と二 桁 か 三 桁 で新 階 層 に 到 達 で き る.理 論
も実 験 も頑 張 りた い. 以 上 は 素 粒 子 物 理 あ る い は 高 エ ネ ル ギ ー 物 理 の 話 で あ る が,ク
ォ ー ク ・レ プ トン は
他 分 野 に 進 出 す る.原 子 核 理 論 あ る い は 中 間 エ ネ ル ギ ー 物 理 は ハ ドロ ン階 層 の 物 理 と 考 え られ,原
子 核 は核 子 等 ハ ドロ ン で で き て い る と さ れ た.今
は そ れ で は 済 ま な い.
精 確 に は 原 子 核 は ク ォ ー ク で で きて い る とす るべ き て あ る.実 際 重 イ オ ン 衝 突 の 際 は ハ ドロ ン で な く ク ォ ー ク物 質 が 創 られ る こ と も考 え られ て い る.更
に,更
に大 きな多
体 問 題 で 重 力 が 効 く よ うに な っ た もの が 宇 宙 物 理 で あ る.現 在 の とこ ろ 目に 見 え る 天 体 で ク ォー ク物 質 で で きて い る もの は な い よ うで あ る が,宇
宙 開 闢 の 際 は ク ォ ー クの
段 階 を経 て 原 子 核,原
ォー ク物 理 の 格 好 の 応 用
子 分 子 生 成 へ と進 ん だ と思 わ れ る.ク
問 題 と な る か も知 れ な い.
こ の よ う に や る べ き事 は い っ ぱ い あ る.そ 料 理 す べ きか,を
れ を どの よ う な 理 論 で,あ
るいは実 験 で
考 え て み た い.
8.6 理 論 形 式 の 将 来 素 粒 子 論 の 展 開 に は場 の 理 論 が 用 い られ て き た.し か し現 在 の 相 対 論 的 場 の 量 子 論 は 無 限 大 の 困 難 を 伴 い,完 全 な もの で は な い.繰
り込 み 法 を 用 い る とか な りの 発 散 を
除 く こ とが で き る が,重 力 論,フ ェ ル ミ オ ン同 士 の 相 互 作 用 な ど は繰 り込 め な い の で, 今 の 場 の 理 論 は 不 完 全 と言 わ ざ る を得 な い.
相互 作用 を広げ れば発 散 は生 じな いが,空 間 的 に広 が っ た相 互作 用 は相 対性 理論 と 相容 れ ない.相 対論 的不 変 な形に広 げ る と幽霊 の よ うな粒 子 が現 れて意 味の あ る散乱 行 列が得 られ な い.信号 が光速 度 よ り速 くは伝 わ らない と言 う因果律 を条件 とす る と, 相 互作 用 は局所 的 な ものに 限 られ,広 が りを入 れ る余 地 は ないの であ る.そ れ な らば と相 対性 原 理 に手 を入 れ るのは極め て難 しい.4次 元 時空構 造 を変 え る試 み は 多分 成 功 しない であ ろ う. ク ォ ー ク ・レ プ トン階 層 の 物 理 は 完 全 に 相 対 論 的 で あ り,非 相 対 性 理 論 は 役 に 立 た な い の で,今
の場 の 量 子 論 で は 手 に 負 え な い.ど
う な る だ ろ うか.図1を
再 び 眺め る
と,階 層 が 大 き く変 わ る と別 の 理 論 形 式 が 用 い ら れ る こ とに 気 づ く.ニ ュー トン 力 学 は 惑 星 運 動 の た め に 開 発 さ れ た もの だ が,そ
の 先 宇 宙 に 行 くに は 一 般 相 対 論 が 必 要 で
あ っ た.地
子 ・分 子 階 層 で は 量 子 力 学 で あ る.そ の
上 の 現 象 は 古 典 物 理 で よ い が,原
下 の 階 層 で は そ れ に ふ さ わ し い新 し い 理 論 形 態 が 開 発 さ れ,用
い られ るの で は な い だ
ろ うか. ど の よ う な理 論 形 態 か は 出 来 上 が っ て み な け れ ば わ か ら な い が,一 述 べ て み る.今 る.場
の 場 の 量 子 論 の 何 処 が 悪 い か.そ
ψ(x,t)を 量 子 化 す る の に 時 間tを
パ ラ メ タ とす る.つ
つ の 考 え 方1)を
れは 「 場 」 の理論 で はな いか らであ
独 立 変 数 と し,空 間 座 標xは
自由 度 を表 す
ま りや っ て い るの は 場 の 理 論 で は な く,無 限 自由 度 の 量 子 力 学 な
の で あ る.古 典 場 は 無 限 個 の 質 点 の 集 合 と 言 っ て も 良 い.し か し こ の 無 限 和 は絶 体 収 束 で な い の で,そ
の 量 子 論 は場 の 量 子 論 と は な ら な い.収
量 子 力 学 は,時 刻tに
キー 空 間 の 物 理 に な っ て い な い.3次
元 空 間 の 各 点 に 時 刻 を与 え る超 多時 間 形 式 で,ロ
ー レ ン ツ 不 変 の 形 に 書 く こ とは で き るが 間)で 間),自
自 由 度 が 無 限 大 で あ る.真 由 度 は1(あ
,内 容 は 変 わ っ て い な い.独 立 変 数 は1個(時
の相 対 論 的 場 の 量 子 論 は独 立 変 数 が4個(時
る い は 少 数)と
い っ た 形 の もの で は な い だ ろ うか.そ
限 な 量 だ け を扱 う明 快 な新 理 論 が 完 成 し て,ク だ ろ う.当
然,相
束 ど こ ろ か 発 散 し て い る.
お け る 状 態 の 時 間 的 発 展 を追 う の で あ っ て,4次 元 ミン コ フ ス
間,空
の よ うな 有
ォ ー ク ・レ プ トン の 物 理 が 大 発 展 す る
対 論 的 束 縛 問題 も解 決 し,原 子 核 は ク ォー ク の 結 合 状 態 と し て 完 全
に わ か っ た もの に な る.
「場 」 の 理 論 で 良 い か は 自 明 で は な い.場 原 子 をZ個
の 量 子 論 は 量 子 の 多体 問 題 を扱 う もの で,
の 電 子 の 束 縛 状 態 と し た理 論 は 完 全 に 成 功 し,原 子 核 はA個
合 状 態 とす る の は か な り良 い線 を行 っ て い る.し (場 の 量 子)の
の核 子 の結
か し粒 子 の 構 造 を,更
結 合 状 態 と し て 理 解 す る 方 法 が,つ
に小 さ い 粒 子
ぎの 階 層 で も有 効 と は 限 ら な い.
こ れ に 代 わ るべ き もの と し て 「ひ も」 理 論 が あ る.し か しひ もは 自 由 度 が極 端 に 多 く,複 雑 で あ る.有
限 個 の ク ォ ー ク ・レ プ トン に 用 い るの は 牛 刀 の 感 が あ る.ま
た,
か な りの 大 き さ に 広 が っ て い る と,因 果 律 な ど の 基 本 原 理 に 反 し意 味 の あ る 答 が 得 ら れ な い 恐 れ が あ る.広 が りが,一
般 相 対 性 理 論,重
ら排 斥 で き な い.一 部 の 予 想 で は,場
力 が 問 題 に な るプ ラ ン ク長 程 度 な
の理 論 の 困 難 も,素 粒 子 の構 造 も,す べ て プ ラ
ン ク長 の 階 層 で解 決 され る と言 わ れ る.こ れ が 正 し い の か も知 れ な い.も ば,ハ
ドロ ン の 下20桁
しそ うな ら
ほ ど何 も構 造 が な い こ と に な り,素 粒 子 物 理 は 荒 涼 と し た 難 し
い学 問 に な っ て し ま う.そ
う で な くて 変 化 に 富 ん だ 活 気 あ る も の で あ る こ と を祈 る.
超 対 称 に つ い て 言 え ば,こ
れ は 空 間 の 本 質 的 対 称 性 で は な い の で は な いか.超
対称
は 基 本 表 現 す な わ ち 基 本 素 粒 子 に フ ェ ル ミ粒 子 と ボ ー ズ 粒 子 が 混 在 す る こ と を意 味 す る.こ
れ は 基 本 素 粒 子 は ご く少 数 で あ るべ し と言 う原 則 に 反 す る.願
ェ ル ミ粒 子 だ け で あ っ て ほ し い.超 対 称 はE. Wignerの
わ くば 究 極 は フ
超 多 重 項 の よ う な作 られ た 対
称 性 で あ ろ う.
8.7 高 エ ネ ル ギ ー 実 験 の 将 来 高 エ ネ ル ギー 物 理 を引 っ 張 っ て き た の は 加 速 器 で あ る.出 せ る エ ネ ル ギ ー は10年 で 一 桁 あ が る と言 わ れ た も の で あ る .し か し,こ れ が ど こ ま で も続 くわ け に は い か な い. 莫 大 な 経 費 を ま か な うべ き人 類 の 総 生 産 は そ れ ほ ど増 加 し て い な い の だ か ら,ど で 行 き 詰 ま っ て し ま う.SSCの
失 敗 が こ れ で あ る.現 行 の 方 式,す
な わ ちマ ク ロ の 装
置 で マ ク ロ の 電 界 で ミク ロ の 粒 子 を加 速 す る の は も う 限 界 で は な い か.画 構 が 発 明 さ れ,エ も ち ろ ん,画 る こ と だ が)で
こか
期 的 な新 機
ネ ル ギー が 飛 躍 的 に 増 大 す るの を期 待 す る.
期 的 発 明 を座 して 待 つ こ と は な い.大
強 度 の ビー ム(こ
れ も金 の か か
丁 寧 な 精 確 な 実 験 をや る.精 度 が 上 が るの は エ ネ ル ギー を上 げ る の と
同 じ効 果 が あ る.電 子 磁 気 モ ー メ ン トの10桁
精 度 の 値 が,am,
込 ん で い る の は 印 象 的 で あ る.新 場 の 理 論 が 完 成 す れ ば,ハ
TeVの ドロ ン,ク
世 界 まで 踏 み ォー ク ・レプ
トン 物 理 で 同 様 の こ とが で き,加 速 器 な し で 高 エ ネ ル ギ ー 領 域 に到 達 で き る.ま
た,
丁 寧 な 実 験 は 精 度 向 上 だ け で な く,稀 な思 い が け な い現 象 を発 見 す る こ とが あ る. 将 来 原 子 核 物 理 は 素 粒 子 物 理 と区 別 が 付 か な くな る だ ろ う.重
イオンの衝 突は複 雑
だ け れ ど も 面 白 い 情 報 を提 供 す るだ ろ う.宇 宙 か ら の 信 号 も有 効 に 用 い られ る だ ろ う. い ま ま で も,高
エ ネ ル ギー 物 理 と言 っ て も,最 高 エ ネ ル ギー 加 速 器 以 外 の 実 験 も大 い
に 活 躍 し た の で あ っ た.
8.8
あ
と
が
き
高 エ ネ ル ギー 物 理 は 標 準 理 論 に 到 り,一 応 の 段 落 が 着 い た.今 し て つ ぎ の 階 層 の 解 明 に 進 む,と 子,分
言 う予 想 で あ る.一 世 紀 前 の こ とが 頭 に 浮 か ぶ.原
子 階 層 の 事 情 が か な り明 らか に な っ た が,理
た は ず で あ る.そ
れ が,量
世 紀 は装 い を新 た に
論 的 解 明 が で きず,閉
塞感 が あ っ
子 力 学 の 発 明 で 一 挙 に 爆 発 し た の で あ っ た.
量 子 力 学 の 出 現 は 劇 的 で あ っ た.de 長 年 の 懸 案 が 一 挙 に 解 決 した.彼
Broglieの
「電 子 は 波 で あ る 」 とい う一 言 で,
が 歴 史 学 専 攻 か ら転 向 した の で あ る こ と は意 味 深 長
で あ る.当 時 の 物 理 専 門 屋 は こ の よ う な発 想 が で き な か っ た の だ.今
日高 エ ネ ル ギ ー
物 理 を志 す 若 い 学 徒 は こ の こ と を肝 に 銘 じ,常 に 柔 軟 な 発 想 を 心 が け るべ き で あ る. も ち ろ ん,四 六 時 中 柔 軟 な 発 想 で は い け な い.場
の 理 論 な り,ひ
勉 強 し,平 行 して 奇 想 天 外 な こ と も考 え る の で あ る.de bergは
Broglieと
も理 論 な りは 着 実 に 並 ん でW.
Heisen
当 時 の 正 統 理 論 の 延 長 と して 曲が りな りに も量 子 力 学 に 到 達 し た の で あ っ た.
高 エ ネ ル ギー 物 理 の 将 来 に つ い て 悲 観 的 見 方 も あ り得 る.高 エ ネ ル ギ ー 物 理 全 盛 の 時 代 は 終 わ っ た,つ
ぎ は 複 雑 系 の 物 理,生 命 現 象 な どが 幅 を利 か す,と
言 う の で あ る.
た しか に 生 命 物 理 は 面 白 い 重 要 な 問 題 で あ る.高 エ ネ ル ギ ー 物 理 屋 も本 業 と平 行 して 積 極 的 に発 言 す るべ きで あ る.し か し他 分 野 の物 理 が発 展 して も,物 質 の 究 極 追 求 の 最 前 線 は常 に 存 在 す るの で あ り,高 エ ネ ル ギ ー 物 理 が衰 退 す る と は 思 え な い. 前 世 紀 前 半 高 エ ネ ル ギー 物 理(当
時 は 核 物 理 と呼 ば れ て い た)は 核 エ ネ ル ギ ー を解
放 す る とい う人 類 に と っ て 重 大 な 業 績 を成 し遂 げ た.今 世 紀 も同 様 な こ とが で き る か. ク ォ ー ク レベ ル で核 子 は 崩 壊 す るか ら,こ れ を 制 御 しつ つ 起 こ させ れ ば エ ネ ル ギ ー を 取 り出 せ る.す べ て の 物 質 が 燃 料 な の だ か ら,エ て し ま う.も
ネ ル ギー は 水,空
気 同様 た だ に な っ
っ と も,地 上 に は核 融 合 エ ネ ル ギ ー が 有 り余 る ほ ど あ る の で,核
子 崩壊
炉 の 出 番 は 当分 な い で あ ろ う. 以 上 い ろ い ろ と個 人 的 予 想 を 述 べ て き た が,始 は な く,全
め に 述 べ た よ う に 予 想 は 当 る もの で
く思 い が け な い 事 態 が 起 こ るだ ろ う.こ の 予 想 も 当 た ら な い か?
みや ざわ ・ひ ろ な り,東 京大 学 名誉 教 授.1927年
生 まれ,1950年
(筆者=
東京 大 学 理学 部 卒 業)
参考 文献 1) 場 の 量 子 論 の 考 え 方 に つ い て は 宮 沢 弘 成:「 場 と 質 点 」 数 理 科 学39(2001)34,http://www7.ocn.ne.jp/ miyazaw1.
9.
ひ
も の 理 論 川 合
光
9.1 弦 理 論 の は じ ま り 弦 理 論 の 歴 史 は,1967年
の 猪 木 慶 治 ・松 田 哲 に よ る有 限 エ ネ ル ギ ー 和 則 の 発 見 か
ら は じ ま る.以 前 か ら,ハ
ドロ ン の 散 乱 振 幅 をs-チ
エ ネ ル ギ ー の 関 数 と し て 見 た場 合,比 か らの 寄 与 の 和 と して 表 され るが,エ こ とが 知 ら れ て い た.こ
れ は,t-チ
ャ ン ネ ル,す
くさんの共 鳴状 態
ネ ル ギ ー が 大 き くな る と,滑
らか な関数 に な る
ャ ン ネ ル,す
量 の 関 数 と して 散 乱 振 幅 を見 る と,Regge極
な わ ち粒 子 間 でや り取 り さ れ る 運 動
の 交 換 と し て 理 解 で き る.猪
は,実 験 結 果 を解 析 し,散 乱 振 幅 か らt-チ ャ ン ネ ル のRegge極 差 し引 い た もの に 対 し て は,s-チ た.い
な わ ち重 心 系 で の
較 的 低 い エ ネ ル ギ ー で は,た
木 ・松 田
の 交 換 に よ る寄 与 を
ャ ン ネ ル の 分 散 式 の 収 束 が 非 常 に は や い こ と を示 し
い か え る と,散 乱 振 幅 はs-チ ャ ン ネ ル の 共 鳴 状 態 の 和 と し て も表 せ る し,ま
たt-チ ャ ン ネ ル のRegge極 こ の よ う なsとt,2つ (図1).こ
の 交 換 の 和 と して も表 せ る と い う こ と で あ る. の チ ャ ン ネ ル で の 記 述 の 同 等 性 は,s-t双
の 双 対 性 を満 た す 具 体 的 な散 乱 振 幅 と して,G.
りい わ ゆ るVeneziano振 モ デ ル と して,南 案 され た.こ
幅 が 構 成 さ れ,さ
部 陽 一 郎,L.
れ は,ク
Veneziano,鈴
ら にVeneziano振
Susskind,後
対 性 と呼 ば れ る 木真 彦 に よ
幅 を実 現 す る 力 学 的 な
藤 鉄 男 に よ り,ハ
ドロ ン の 弦 模 型 が 提
ォ ー クや 反 ク ォ ー クが カ ラ ー フ ラ ッ ク ス で つ な が れ て い る とい
う,現 在 の 量 子 色 力 学 に よ る描 像 の さ きが け と な っ た. こ の よ うに,1960年
代 の 終 りか ら1970年
図1
代 の初め にか け ての 弦理 論 の発 展 の動機
s-t双 対 性
s-チ ャ ン ネ ル共 鳴 の和=t-チ
ャンネル交換の和
は ハ ド ロ ン 物 理 で あ り,ハ くの 努 力 が な さ れ た,歴 論,す
ドロ ン を 記 述 し う る よ り現 実 的 な 弦 理 論 を作 ろ う と い う 多
史 上 は,こ
れ らの 努 力 が 実 る 前 に,ハ
ドロ ン は,ゲ
ー ジ理
な わ ち 量 子 色 力 学 で 完 全 に 記 述 さ れ て い る こ とが わ か り,弦 理 論 は ハ ドロ ン を
記 述 す る 基 本 原 理 と して は も はや 注 目 さ れ な くな っ た.し
か し な が ら,弦 理 論 が ハ ド
ロ ン の 一 面 を よ く表 して い る の は 依 然 と し て事 実 で あ り,弦 理 論 は 少 な く と も あ る極 限 で は 量 子 色 力 学 の 非 常 に よ い近 似 で あ る と 思 わ れ る.こ
の よ うに,量
効 理 論 とみ なせ る よ うな 弦 理 論 を作 ろ う と い う試 み は,当
初 考 え られ た ほ ど 簡 単 で は
な い が,興 一 方
子 色力学 の有
味 深 い も の で あ る.
,ハ
ドロ ン に こ だ わ ら ず に 弦 理 論 を解 析 し て み る こ と も可 能 で あ る.実
も簡 単 で 矛 盾 の な い 弦 理 論 は,時
空 の 次 元 が26や10の
う な理 論 で は 閉 じた 弦 は ス ピ ンが2で 振 る舞 うこ と が,米 に 示 さ れ た.い
谷 民 明,J.
質 量 が0の
Scherk,
J. H.
と き に 構 成 で き るが,そ
状 態 を も ち,そ Schwarz等
際,最 のよ
れが重 力子 の よ うに
に よ っ て1970年
代 の前 半
い か え る と,重 力 の 量 子 化 と い う場 の 理 論 の 難 問 が 弦 理 論 に よ っ て,
い と も簡 単 に解 決 して し ま う の で あ る .最 近 の 弦 理 論 の 流 れ は 主 に これ に 沿 っ た もの で あ り,弦 理 論 に よ っ て ゲ ー ジ場,重
力 場,物
質 場 な ど す べ て を含 む 統 一 理 論 が 構 成
で き る と期 待 され て い る.
9.2 臨 界 弦 と非 臨 界 弦 一 般 に い .す
,系
の 時 間 発 展 を量 子 力 学 的 に 記 述 す る た め に は,経
な わ ち,時 刻t1に 状 態s1に
求 め る た め に は,時
刻t1か
あ る系 が,時
らt2ま で の 間 に状 態 がs1か
べ て の 仮 想 的 な 時 間 発 展 を 考 え る.こ 呼 び,系
路 積 分 を用 い れ ば よ
刻t2に 状 態s2に 遷 移 す る確 率 振 幅 を らs2ま で 変 化 す る よ う な,す
の よ うな 仮 想 的 な 時 間 発 展 の そ れ ぞ れ を経 路 と
が 各 経 路 に 沿 っ て 時 間 発 展 し た と き の 確 率 振 幅 をexp(iS)と
指 数 関 数 の 中 に 現 れ たSは
書 く.こ こ で,
経 路 の 汎 関 数 で あ り,作 用 と呼 ば れ て い る.そ
求 め る確 率 振 幅 は す べ て の 可 能 な 経 路 に つ い て のexp(iS)の
うす る と,
和 と して 与 え られ る.
こ の よ う に 全 て の 可 能 な 経 路 に つ い て 足 し上 げ る こ と を 経 路 積 分 と呼 ん で い る.特 に,古
典 力 学 的 な極 限,す
な わ ち 経 路 を少 し変 化 させ た と きの 作 用 の 変 化 が1に
て 十 分 大 き い とみ な せ る よ うな 状 況 で は,経
比べ
路 積 分 の な か で,作 用 の 値 が 停 留 値 を と
る よ う な経 路 が 支 配 的 と な り,最 小 作 用 の 原 理 に 帰 着 す る. こ の よ う に,原 て,系
理 的 に は 系 の 作 用Sを
与 え てexp(iS)を
の 量 子 力 学 的 な 記 述 が 得 ら れ る が,経
準 的 な 定 義 が あ る わ け で は な い.う
路 積 分 は 一 般 に 無 限 多 重 積 分 で あ り,標
ま く経 路 積 分 を 定 義 し,で
の な い 量 子 論 に な っ て い る よ うに す る 必 要 が あ る.た を作 る た め に は,作 と し て,世
経 路 積 分 す る こ とに よ っ
用 と して 粒 子 の 世 界 線 の4次
き あ が っ た もの が 矛 盾
とえ ば 相 対 論 的 な粒 子 の 量 子 論
元 的 な長 さ を と り,経 路 積 分 の 測 度
界 線 の パ ラ メー ター の 付 け 替 え に 対 して 不 変 な も の を とっ てや れ ば よ い.
す な わ ち,世
界 線 をパ ラ メ トラ イ ズ す るパ ラ メー タ ー 空 間 上 で,一
般座 標変 換 に対す
る不 変 性 を要 求 す る こ と に よ り,相 対 論 的 粒 子 の 正 し い 量 子化 が 得 ら れ る.こ
れ を素
朴 に 弦 に 拡 張 す る と次 の よ う に な る.簡 単 の た め 輪 ゴ ム の よ う な 閉 じた 弦 を 考 え る こ と に す る.輪 は2次
ゴ ム が 振 動 しな が ら伸 び 縮 み し て い る とす る と,時 空 に お け る そ の 軌 跡
元 の 曲 面 で あ り,そ れ を世 界 面 と呼 ぶ.作
長 さ を と っ た の を拡 張 し て,世
用 と して は,粒
界 面 の 面 積 を と る.こ
子の ときに世 界線 の
れ を 南 部-後 藤 の 作 用 と呼 ん で
い る.経
路 積 分 の 測 度 と して は,原 理 的 に は 世 界 面 の パ ラ メ ー タ ー の 付 け 替 え,す
わ ち,世
界 面 をパ ラ メ トラ イ ズ す る パ ラ メー タ ー 空 間 上 の 一 般 座 標 変 換 に 対 し て 不 変
な も の を と っ て や れ ば よ い.し き る の か,現
な
か し な が ら,そ れ で 経 路 積 分 が 本 当 に 矛 盾 な く定 義 で
時 点 で は 不 明 で あ る.
例 外 的 に 経 路 積 分 が 矛 盾 な く定 義 で き て い る こ とが わ か っ て い る場 合 が 二 つ あ る. そ の 一 つ が 時 空 が26次 の 特 殊 性 は,世 す な わ ち,各
元 や10次
元 の 場 合 で あ り,臨 界 弦 と呼 ば れ て い る.こ の 場 合
界 面 を パ ラ メ トラ イ ズ す るパ ラ メー ター 空 間上 に局 所 ス ケ ー ル 変 換,
点 の ま わ り で 異 な る倍 率 を も っ た ス ケ ー ル 変 換 に 対 す る不 変 性 が 現 れ る
こ とで あ る.そ
の不 変 性 の お か げ で,弦
の ダ イ ナ ミク ス をパ ラ メー ター 空 間 上 の 自由
場 に帰 着 す る こ とが で き,完 全 な解 析 が 可 能 に な る の で あ る. こ れ とは 逆 に,世
界 面 上 で 一 般 座 標 変 換 に 対 す る 不 変 性 は もつ が,局 所 ス ケ ー ル 変
換 に 対 す る不 変 性 は もた な い よ う な弦 理 論 を非 臨 界 弦 とい う.非 臨 界 弦 は,臨 トイ モ デ ル で あ る ば か り で な く,時 空 が2次
界弦 の
元 の 場 合 の 量 子 重 力 の モ デ ル,あ
るいは
ラ ン ダ ム ウ ォ ー クの 拡 張 で あ る ラ ン ダ ム 面 の モ デ ル と もみ な す こ とが で き る.ま
た,
ク ォー ク の 閉 じ込 め な ど,非 可 換 ゲ ー ジ理 論 の 低 エ ネ ル ギー で の ふ る ま い を 記 述 す る モ デ ル と し て の 応 用 も議 論 さ れ て い る.非 臨 界 弦 を 一 般 の 時 空 次 元 の 場 合 に き ち ん と 定 式 化 す る こ と は 大 変 難 し い.し く行 く こ とが 知 られ て い る.こ
か し,時 空 の 次 元 が1以
こ で 次 元 が1以
下 の 場 合 は,例
下 と い う の は,0か1だ
外 的 に うま
け を意 味 して
い る の で は な く,パ ラ メー タ ー 空 間 上 に 種 々 の コ ン フ ォ ー マ ル フ ィ ー ル ドを 導 入 す る こ と に よ っ て,そ ば,パ
の 中 心 電 荷 を次 元 とす る 非 臨 界 弦 を考 え る こ とが で き る.た
ラ メー ター 空 間 上 にIsing模
型 を導 入 す る と,時 空 が1/2次
え て い る こ とに な る.時 空 の 次 元 が1以 く,そ の た め,パ
元 の非 臨界弦 を考 空に は タキオ ンが な
ラ メ ー ター 空 間 の 面 積 が う ま く定 義 さ れ る よ うに な る こ とで あ る.
時 空 の 次 元 が1以 も重 要 で あ る.弦
下 の 場 合 の 特 殊 性 は,時
とえ
下 の 非 臨 界 弦 は,非
摂 動 的 に 定 式 化 で き る弦 理 論 の モ デ ル と して
は 時 間 発 展 の 途 中 で分 裂 し た り合 体 した りす る が,そ
を と り入 れ る た め に は,い し上 げ れ ば よ い.そ
ろ い ろ な トポ ロ ジー を も っ た世 界 面 につ い て遷 移 振 幅 を足
の よ う な 足 し上 げ を摂 動 級 数 と呼 ぶ が,そ
で は な く,漸 近 級 数 に す ぎ な い こ とが 知 られ て い る.い と定 義 す る ため に は,遷
の よ う な効 果
れ は 一 般 に は収 束 級 数
い か え る と,弦 理 論 を き ち ん
移 振 幅 を何 らか の 方 法 で 矛 盾 な く与 え,そ
の漸 近展 開が上 述
の 摂 動 級 数 に な っ て い る よ う に す る 必 要 が あ る.そ
の よ う に理 論 を 定 義 す る こ とを 非
摂 動 的 な定 式 化 と い うが,以
下 に 述 べ る よ うに,臨
界 弦 に 関 して は ま ず 明 らか で は な
い.一
下 の 非 臨 界 弦 は 行 列 模 型 に よ っ て,非
方,時
空 の 次 元 が1以
摂動 的 に定式化 で
き る こ とが 知 られ て お り,ト イ モ デ ル で は あ る が 弦 理 論 の 非 摂 動 的 定 式 化 の 重 要 な モ デ ル に な っ て い る. 非 臨 界 弦 に つ い て の 議 論 は こ れ だ け に して お き,以 下 で は 統 一 理 論 と し て の 弦 理 論,す
な わ ち,臨
いが,以
界 弦,特
に 超 弦 理 論 に つ い て議 論 す る こ と に す る.い
ち い ち断 ら な
下 で 弦 理 論 と言 え ば 臨 界 弦 の こ とで あ る.
9.3 統 一 理 論 と して の 弦 理 論 初 め に,統
一 理 論 と し て の 弦 理 論 の 現 状 を大 まか に ま とめ て お こ う.弦 理 論 がthe
ory of everythingと
し て,注
目 を集 め る よ う に な っ た の は1984年
時 の い わ ば 第 一 期 ス ト リ ン グ ブ ー ム は3∼4年 ま とめ る と,結 局,次
間 続 い た が,そ
の よ う に 言 え る.『 弦 理 論 は,重
の こ と で あ る.当
の時 に わか っ た こ とを
力 を含 む 統 一 理 論 と し て,お
そ ら く唯 一 の 矛 盾 の な い理 論 で あ る.し か し な が ら,弦 理 論 で は 非 摂 動 効 果 が 本 質 的 に 重 要 で あ り,理 論 か ら現 実 の世 界 を説 明 して み せ る た め に は,非
摂動効 果 をきちん
と取 り入 れ た 定 式 化 が 必 要 で あ る.』 そ れ 以 来,10年
以 上 に わ た っ て 弦 理 論 に お け る非 摂 動 効 果 を解 析 し,非
を 含 ん だ 厳 密 な 弦 理 論 を構 成 し よ う と い う試 み が,比
こ こ 数 年 の 進 歩 に よ り,そ の 試 み が 完 成 しつ つ あ る よ う に み え る.こ ば,な
ぜ 我 々 の 時 空 が4次
摂動 効 果
較 的 地 道 に 進 め られ て き た が,
元 で あ っ た か を は じめ と して,す
れ が 完成 す れ
べ て の基本 法則 が一 つの
原 理 か ら 導 き 出 さ れ る こ とに な り,人 類 が そ の 歴 史 の 中 で 営 々 と積 み 重 ね て き た営 み の ひ とつ が 一 段 落 す る こ とに な る と思 わ れ る. ま ず,キ
ー ワ ー ドの 一 つ で あ る非 摂 動 効 果 とい う もの を 説 明 し て お こ う.一 般 に,
量 子 論 に お い て 摂 動 級 数 で は 表 せ な い 効 果,い
い か え る と,無 限 個 の 中 間 状 態 が 関 与
す る よ う な 効 果 の こ と を非 摂 動 効 果 と呼 ん で い る.弦 理 論 の 場 合 で い う と,非 摂 動 効 果 とは,中
間状 態 に 無 限 個 の 弦 が 現 れ る よ う な 多 体 効 果 の こ とで あ る とい え るが,そ
の よ う な効 果 を 無 視 し て,中 の 場 合,…
間 状 態 に 現 れ る 弦 の 数 が1個
とい う具 合 に展 開 して い くの が,弦
ト リン グ ブ ー ム の 時 に 考 え ら れ て い た よ うな,弦 くつ か の輪 ゴ ム の よ う な もの が,ぶ て い る と い う も の で あ る(図2).そ
の 場 合,2個
の 摂 動 論 で あ る.と
の 場 合,3個
こ ろ で,第
一期 ス
理 論 の 最 も 直 接 的 な イ メー ジ は,い
わ ぶ わ と振 動 しな が ら,切 れ た り く っつ い た り し うす る と,途
中 の 現 れ る状 態,す
なわ ち 中間状
態 と して は 必 然 的 に 有 限 個 の 弦 しか な い わ け で,摂 動 論 的 に 系 を扱 っ て い る こ とに な る.
弦理 論 を摂動 論 的 な近似 で扱 う と,理 論 に は非 常 に 多 くの安 定 な真 空が存 在す る こ
図2 弦 の摂動論的描像 弦 は振 動 しな が ら分 か れ た り くっ つ い た りす る.
とが わ か っ て い る.実 際,時
空 の 次 元 が10以
ゲ ー ジ場 と物 質 場 を も つ 真 空 が,ま 動 論 の 範 囲 内 で は 独 立 だ が,非
下 の い ろ い ろ な値 を持 ち,さ
さ に 星 の 数 ほ ど知 られ て い る.こ
摂 動 効 果 を 取 り入 れ る と,ト
まざ まな
れ らの真 空は摂
ン ネ ル 効 果 に よ っ て互 い
に結 び つ い て お り,現 実 の 真 空 は そ れ らの 重 ね あ わ せ に 近 い もの だ と考 え られ る.そ の た め,本
当 の 真 空 が どの よ う な もの で あ る か を定 め,物
る た め に は,非 と こ ろ で,非 現 れ る.た
理 的 に 意 味 の あ る 予 言 をす
摂 動 効 果 を き ちん と取 り入 れ た 理 論 形 式 を作 る こ とが 不 可 欠 で あ る . 摂 動 効 果 と い うの は 弦 理 論 に 特 有 の も の で は な く,さ
と え ば,ク
ォ ー クの 間 に 働 く力 は,摂 動 論 的 に は,グ
ま ざまな場合 に
ル ー オ ン と呼 ば れ る
粒 子 を ク ォ ー ク 間 で や り取 りす る こ と に よ っ て 生 じ る と解 釈 で き る.し か し,ク
ォー
クの 間 の 距 離 が 大 き く な る と,無 限個 の グル ー オ ン を交 換 す る効 果 が 重 要 に な り,そ の 結 果,ク
ォ ー ク が お 互 い に い く ら離 れ て い て も減 衰 しな い よ うな 引 力,す
なわ ち閉
じ込 め 力 が 働 くわ け で あ る.こ の よ う な非 摂 動 効 果 を き ち ん と記 述 す る た め に は,理 論 自 身 を摂 動 論 に 頼 ら ず に 定 義 す る 必 要 が あ る が,今 は,格
の ク ォ ー ク と グ ル ー オ ン の例 で
子 ゲ ー ジ 理 論 に よ っ て そ れ を実 現 す る こ とが で き る .す
論 に よ って 定 義 さ れ る種 々 の 量 を計 算 す る こ とに よ り,ハ を,少
子 ゲ ー ジ理
ド ロ ン の 質 量 な どの 物 理 量
な く と も原 理 的 に は曖 昧 さ な く求 め る こ とが で き る.
上 に 述 べ た よ う な 弦 理 論 の 素 朴 な 描 像,す
な わ ち,振 動 し な が ら切 れ た り くっ つ い
た り し て い る 輪 ゴ ム の よ うな も の と い うの は,ち 換 し合 っ て い る と い う描 像 に 対 応 す る.よ は,ハ
な わ ち,格
ドロ ン の 場 合 に,ク
こ とに よ っ て,非
ょ う ど,ク
っ て,我
ォ ー クが グ ル ー オ ン を 交
々が今 しな けれ ば な らな い こ と
ォ ー ク と グ ル ー オ ンの 描 像 か ら格 子 ゲ ー ジ理 論 に移 行 す る
摂 動 効 果 を 含 ん だ 完 全 な 記 述 を し た の と 同 じ よ うに,弦
ム の描 像 か ら な に か よ り深 い理 論 に 移 行 させ て,非 に す る こ と で あ る.こ
れ は 弦 理 論 とは 何 か,と
あ り,非 常 に チ ャ レ ン ジ ン グ で あ る 反 面,難
理 論 を輪 ゴ
摂 動 効 果 を含 め て 記 述 で き る よ う
い う こ と を本 質 的 に 問 うて い る わ け で しい 問 題 で あ る.し
か しな が ら,最 近 の
弦 理 論 の 発 展 をみ て い る と,そ れ もつ い に 最 終 段 階 に な りつ つ あ る の で は な い か と感 じ られ る.弦 理 論 に は,ま
だ ま だ 解 決 し な け れ ば な ら な い 問題 もあ る が,こ
著 し い 進 歩 を み て い る と,そ
こ数 年 の
う遠 くな い将 来 に す べ て の 力 の統 一 理 論 が で き る の で は
な い か と思 わ れ る. 弦 理 論 で起 こ りつ つ あ る こ との概 略 は 以 上 の とお り で あ る.以 下 で は ま ず,素 粒 子
に つ い て知 られ て い る 実 験 事 実 を ま とめ,そ
の 後,な
ぜ 弦 理 論 が 究 極 の 統 一 理 論 と考
え られ て い るか を 議 論 し て い こ う.
9.4 素 粒 子 物 理 学 は,よ た わ け で あ るが,そ り,も
り基 本 的 な法 則 を 求 め て,よ の 結 果,1980年
い 相 互 作 用,強
は,標
然 界 に は4つ
の 基本 的 な力 が あ
い相 互 作 用,そ
れ か ら重 力 で あ る.こ の う ち で,重
とは, 力以外
準 模 型 と呼 ば れ るゲ ー ジ場 の 理 論 で 見 事 に 記 述 さ れ て い る.実 際,現
の 加 速 器 で は,大
体10-17mか
ら10-18mの
の 範 囲 で 知 ら れ て い る結 果 は,標 た,ゲ
り微 視 的 な対 象 の探 求 を続 け て き
頃 ま で に は,自
ろ も ろの 現 象 は す べ て そ れ で 説 明 で き る こ とが わ か っ て き た.そ の4つ
電 磁 気,弱 の3つ
く り こ み と標 準 模 型
ー ジ場 の 理 論 は,す
と定 義 す る こ とが で き,大
在
分 解 能 で も の を 見 る こ とが で き る が,こ
準 模 型 に よ っ て す べ て 問 題 な く記 述 で き る*1.ま
ぐあ とで 説 明 す る よ う に,く
りこみの操 作に よ って きちん
き さ の な い 点 粒 子 を 記 述 す る もの と し て,理 論 的 に も矛 盾
の 無 い 完 全 な もの で あ る. と こ ろ が,重
力 の ほ うは 少 し様 子 が 違 っ て お り,一 筋 縄 で は いか な い.天 体 や 宇 宙
の よ う な大 きな ス ケ ー ル で は,重
力 はEinsteinの
方 程 式 で う ま く記 述 で き る が,そ
の 方 程 式 を そ の ま ま微 視 的 な 対 象 に 当 て は め る と,Planckス m程
ケ ー ル,す
度 の 非 常 に 小 さ い ス ケ ー ル で の 場 の 量 子 的 な 揺 ら ぎが,く
な い ほ ど大 き くな っ て し ま い,意 み 可 能 で な い と い う事 実 は,重
な わ ち10-33
りこみ で は制 御 で き
味 の あ る 理 論 に は な らな い の で あ る.重 力 が く り こ
力 とい う現 象 が,も
はや 点 粒 子 ど う し の相 互 作 用 と し
て は 理 解 で き な い と い う こ と で あ り,点 粒 子 の か わ りに,基 考 え る 必 要 が あ る こ と を示 し て い る.そ
本 的 に ひ ろ が っ た もの を
の よ う な ひ ろ がっ た も の と し て 最 も 自然 な も
の が 弦 理 論 で あ り,し か も弦 理 論 で は,重
力 場,ゲ
ー ジ場,物
質場 が統 一的 に現 れて
い る の で あ る. こ こ で,場 子 論 とは,場
の 量 子 論 の 基 本 とな る く り こ み の 概 念 に つ い て 説 明 して お こ う.場 の 量 を量 子 力 学 的 に 扱 う こ と で あ る が,素
と,波 長 の短 い モ ー ドの た め に,粒
子 の 質 量 や 電 荷 な ど,い
の 量 子 補 正 を受 け て し ま う こ とが 多 い.こ そ れ を さ け る最 も安 易 な 方 法 は,あ
朴 に 場 の 量 子 的 な揺 ら ぎ を考 え る ろい ろな物理量 が無 限大
の よ うな 問題 を紫 外 発 散 と呼 ん で い るが,
る長 さ(カ
ッ トオ フ と呼 ぶ)よ
り短 い波 長 を持 つ
*1 も ち ろ ん ,現 時 点 で 標 準 模 型 に 関 す るす べ て の 量 が 知 られ て い る と い う わ け で は な い.ク ォ ー クや レプ トン の 質 量 や ミキ シ ン グ な どの パ ラ メー タ ー は,実 験 で 測 っ て い か な け れ ば な らな い し,ま
た,超
対称 性 が1TeV程
を待 た ね ば な ら な い.弦
度 の 比 較 的 低 い エ ネ ル ギ ー で 見 え る か ど うか な ど も今 後 の 実 験
理 論 の 立 場 か らす る と こ れ ら の 量 は あ る 意 味 で,ダ
イナ ミクスのデ
ィー テー ル に す ぎ な い と もい え るが,い ず れ に して も,弦 理 論 が 完 成 し た あ か つ き に は す べ て 理 論 的 に 予 言 で き るは ず で あ り,実 測 値 と 比 較 す る こ とに よ っ て 理 論 の さ ら な る検 証 が で き る と思 わ れ る.
モ ー ドを理 論 か ら落 と して し ま う こ とで あ る.そ の よ う に 短 波 長 の モ ー ドを落 と して し ま っ た 理 論 を カ ッ トオ フ さ れ た理 論 と呼 ん で い る が,そ す る量 子 補 正 は 有 限 に 求 ま る こ と に な る.し
うす る と当 然,物
か しな が ら,カ
理 量 に対
ッ トオ フ され た 理 論 は,
因 果 性 や ユ ニ タ リ性 とい っ た,健 全 な 理 論 が もつ べ き基 本 的 な 性 質 を壊 して い る た め,そ
の ま ま で 基 礎 理 論 と考 え る こ と は で き な い.そ
い な い理 論 を作 る た め に は,カ わ け だ が,単
の よ う な基 本 的 な 性 質 を壊 し て
ッ トオ フ をゼ ロ に す る よ うな極 限 を とっ て や れ ば い い
純 に 極 限 を と る と当 然,は
じめ の 問 題,す
な わ ち物 理 量 に 対 す る量 子 補
正 が 無 限 大 に な る と い う問 題 に も ど っ て し ま う.し か し,カ るの と 同 時 に,理 れ ば,量 う.こ
ッ トオ フ をゼ ロ に 近 づ け
論 の もつ パ ラ メー ター を カ ッ トオ フ の 関 数 と して う ま く調 節 して や
子 補 正 を受 け た 後 の 物 理 量 が 有 限 に と ど ま る よ うに で き る 場 合 も あ る だ ろ
の よ うに,現
実 に 観 測 さ れ る物 理 量 が 有 限 に な る よ うに,理
を調 節 しな が ら カ ッ トオ フ を ゼ ロ に す る極 限 を 取 る こ と を,く
論 の パ ラ メ ー ター
りこ み と呼 ん で い る .
紫 外 発 散 の 問 題 は,実
は1930年
問 題 で あ っ た.実
川 博 士 は場 の 量 子 論 に 基 づ い た素 粒 子 物 理 学 の 元 祖 と も い う
際,湯
べ き 人 で あ るが,彼
こ ろ に 場 の 量 子 論 が 考 え られ は じめ た 当 初 か ら の
は 場 の 理 論 の 基 礎 に な っ て い る 点 粒 子 と い う概 念 に は 限 界 が あ る
とい う こ と を強 調 しつ づ け た.と 子 的 な 揺 ら ぎ は,朝
こ ろ が,ゲ
か 不 幸 か,場
の量
永 博 士 ら に よ っ て 創 始 さ れ た く り こみ 理 論 に よ っ て う ま く制 御 で
き る こ とが わ か っ た わ け で あ る.し て お り,く
ー ジ 場 の場 合 に は,幸
か し,重 力 の 方 程 式 は ゲ ー ジ場 の 場 合 と少 し違 っ
りこ み 理 論 が 使 え な い 形 に な っ て い る.言
い 換 え る と,重 力 ま で 考 慮 す る
と,基 本 法 則 は も はや 点 粒 子 に た い す る 場 の 量 子 論 で は な くて,湯
川博 士 が考 えた よ
う に ひ ろ が っ た もの を 考 え た ほ うが 自然 で あ る と 思 わ れ る. こ の よ う に 一 見,重
力 は ほ か の3つ
の 相互 作 用 と本 質 的 に違 っ て い る よ うに見 え
る.し か し な が ら,そ れ は現 在 の加 速 器 に よ っ て到 達 で き る ス ケー ル で み た 時 の 話 で あ る.次 る と,4つ
に 議 論 す る よ う に,ず の 力 がPlanckス
っ と短 い ス ケ ー ル で の 振 る 舞 い を理 論 的 に 分 析 し て み
ケ ー ル 付 近 で統 一 さ れ て い る と考 え る の が 自然 で あ る こ
とが わ か る.
9.5 六 統 一 理 論 とPlanckス 標 準 模 型 で は ク ォ ー ク,レ プ トン,ゲ が,今
ケ ール の物 理
ー ジ場 な ど を完 全 な 点 粒 子 と し て 扱 っ て い る
の と こ ろ標 準 模 型 と矛 盾 す る よ う な実 験 結 果 は 何 一 つ な い .そ れ ゆ え,純
実 験 で 得 ら れ た 結 果 だ け を 眺 め る と い う立 場 に た て ば,標 り,こ れ 以 上 手 を 加 え る 必 要 は な い.し 合,系
か し な が ら,も
粋に
準模 型 は 完全 な もの で あ
っ と短 い ス ケ ー ル で 見 た 場
が ど の よ うに 振 る舞 うか を理 論 的 に 調 べ て み る こ とが で き る.
例 と して,2つ れ て い る 時 は,よ
の 電 子 の 間 に 働 く電 気 力 を考 え て み よ う.電 子 の 間 の 距 離 が 十 分 離 く知 られ て い る よ う に,距 離 の2乗
に 反 比例 す る力 が 働 く.こ れ 自
体 は 単 純 な 現 象 に 見 え るが,本 で は,真
当 は か な り複 雑 な プ ロセ ス の 結 果 な の で あ る.量 子 論
空 は何 もな い 空 っ ぽ の 状 態 で は な く,粒 子 と反 粒 子 が い くつ も あ る よ うな,
い ろ い ろ な 状 態 の 重 ね あ わせ で あ る.そ く る 電 場 の た め に,真 は,物
質 の 分 極,す
す る の と 同 様 に,真
子 を2つ
も っ て くる と,そ れ ら が つ
空 中 の 粒 子 と反 粒 子 の 分 布 は 変 更 を受 け る は ず で あ る.こ
れ
な わ ち物 質 中 に 電 荷 を持 ち 込 む と そ の ま わ りの 分 子 の 状 態 が変 化 空 自体 も分 極 す る こ と を示 し て い る.い
室 で 観 測 して い る クー ロ ン 力 は,真 分 極 の 効 果 を避 け て,な して や れ ば よ い.な
こ に,電
空 が 複 雑 に 分 極 した 結 果 な の で あ る.こ の よ うな
ま の 相 互 作 用 を 見 た け れ ば,電
ぜ な らば,電
い か え る と,我 々 が実 験
子 間 の 距 離 を どん どん 小 さ く
子 間 の 距 離 よ り長 い 波 長 を持 つ 分 極 は,電
子 間の力
に ほ とん ど影 響 しな い か らで あ る. 標 準 模 型 を仮 定 す れ ば,こ 果,粒
電 磁 気,弱 る.こ
い 相 互 作 用,強
れ は,標
をGUT
(Grand
ま た,標
の 力,す
の結 なわ ち
い相 互 作 用 は す べ て 同 じ程 度 の 大 き さ に な る こ と が わ か れ く ら い の ス ケ ー ル を持 っ た 基 本 的 な 理 論 が あ
の理 論 の 低 エ ネ ル ギ ー に お け る近 似 理 論 で あ る こ と を示 唆 して い
の よ う な 理 論 の候 補 と し て,ゲ
が で き る が,そ
ば,な
らい に な る と,標 準 模 型 に現 れ る3つ
準 模 型 の 背 後 に は,そ
り,標 準 模 型 は,そ る.そ
の よ う な 分 極 の 効 果 を 理 論 的 に 計 算 で き る が,そ
子 間 の 距 離 が10-31mく
ー ジ理 論 に 基 づ い た い くつ か の 模 型 を 作 る こ と
れ ら を総 称 して 大 統 一 理 論 と い い,そ Unified
Theory)ス
こ に 現 れ る10-31m程
度 の長 さ
ケ ー ル と呼 ん で い る.
準 模 型 で は ク ォ ー クや レプ トン は 一 見 不 規 則 な 現 れ 方 を し て お り,た
とえ
ぜ ク ォー ク と レ プ トン が 対 に な っ て い る か を標 準 模 型 の 範 囲 内 で 説 明 す る こ と
は不 可 能 で あ る.一 方,大
統 一 理 論 で は,ク
ォ ー ク と レ プ トンは 統 一 的 に 記 述 さ れ て
お り,ク ォ ー クや レ プ トン の 現 れ 方 を 自然 に 説 明 す る こ とが で き る.こ れ は 標 準 理 論 の 背 後 に も っ と基 本 的 な 理 論 が あ る は ず で あ る と い う も う一 つ の 根 拠 と な っ て い る. 次 に 重 力 の 大 き さ を議 論 す る た め に,具 体 例 と し て,2つ
の 電 子 の 間 に 働 く重 力 を
電 気 力 と 比べ て み よ う.万 有 引 力 の 公 式 を使 う とす ぐに わ か るが,今 電 気 力 よ り40桁
以 上 小 さ い.そ
が 観 測 さ れ る こ とは な い.し
れ ゆ え,通
の 場 合,重
力は
常 の素 粒 子 どう しの反 応 では 重力 の効 果
か し なが ら,2つ
の 電 子 の 距 離 を 近 づ け る と,重 力 は 電
気 力 よ り もず っ とは や く大 き くな っ て い く.な ぜ な らば,重
力 は2つ
ギー の 積 に 比 例 す るが,不
離 を近 づ け る と,そ れ に
確 定 性 関 係 か ら わ か る よ うに,距
の粒子 の エネル
反 比 例 し て エ ネ ル ギ ー が 増 大 す る か ら で あ る.具 体 的 に 計 算 す る と,距 離 がPlanck ス ケ ー ル,す
な わ ち10-33m程
度 に な る と,重 力 と電 気 力 は 同 じ く ら い の 大 き さ に な
る こ とが わ か る.前 節 に も述 べ た よ うに,重 表 せ な い が,Planckス
力 は く り こ み 可 能 で は な く,点 粒 子 で は
ケ ー ル は そ れ を特 徴 づ け る 量 で もあ る.実
で表 そ う とす る と,Planckス
際,重
力 を局所 場
ケ ー ル よ り長 い 波 長 の モ ー ドに は 問 題 が な い が,短
い
波 長 の モ ー ドは く りこ み で は 処 理 で きな い ほ ど大 き な 揺 ら ぎ を持 つ こ とが わ か る.言
い換 え る と,Planckス
ケ ー ル は 点 粒 子 の 描 像 が 成 り立 つ 限 界 を 示 し て い る わ け で あ
る. こ こ で 現 れ た 二 つ の ス ケ ー ル,す
な わ ちGUTス
と ん ど 等 しい こ と は 注 目に 値 す る.こ
れ は,そ
ケ ー ル とPlanckス
ケ ー ル が,ほ
の程 度 の ひ ろ が りを も っ た 何 か 基 本 的
な もの が あ り,標 準 模 型 と重 力 は ど ち ら も低 エ ネ ル ギ ー に お け る そ の 近 似 理 論 で あ る と い う こ と を強 く示 唆 して い る.
9.6 究 極 の 理 論 に 向 け て 上 で 議 論 し た よ う な,点
粒 子 の か わ りに な る ひ ろ が り を も っ た 基 本 的 な もの と し
て,太
さ の な い輪 ゴ ム の よ うな もの を考 え よ う とい う の が 弦 理 論 で あ る.す
図2の
よ う に 輪 ゴム が ぶ わ ぶ わ と振 動 しな が ら,ち
状 況 を考 え る.そ
して,輪
な わ ち,
ぎ れ た り くっ つ い た りす る よ うな
ゴ ム を遠 くか ら眺 め る と一 つ の 点 に見 え るが,そ
れ がわ れ
わ れ の 見 て い る素 粒 子 だ と解 釈 す るわ け で あ る.輪
ゴムは 当然 い ろい ろな仕方 で振動
す る が,そ
ー ジ 場 や ク ォ ー クの み な ら ず,重
の 仕 方 に 応 じて,遠
くか ら見 た 時 に,ゲ
力 子 に も見 え る こ とが わ か る. こ の よ う な 系 の 運 動 を 完 全 に 記 述 す る た め に は,弦 ば よ い が,素 きて,理
の ラ グ ラ ン ジ ア ン を与 え て や れ
朴 に考 え る と,そ の よ う な ラ グ ラ ン ジ ア ン は い く らで も書 き下 す 事 が で
論 が 全 然 決 ま ら な い と思 うか も しれ な い.し か し な が ら,弦 の 量 子 力 学 を調
べ て み る と,確 率 が き ち ん と正 の 値 に な って い る こ とや,弦
が 切 れ た り く っつ い た り
す る相 互 作 用 が ロ ー レ ン ツ 不 変 性 と矛 盾 し な い こ と,タ キ オ ンが 存 在 し な い こ とな ど か ら,弦
の ラ グ ラ ン ジ ア ン に は 相 当 強 い 条 件 が つ き,い わ ゆ る超 弦 理 論 とい わ れ る一
群 の 高 い対 称 性 を も っ た理 論 の み が 許 さ れ る こ と が わ か る. こ れ ら の 理 論 を くわ し く調 べ て み る と,重 力 子 が 弦 の 振 動 状 態 の ひ とつ と して う ま く表 さ れ て お り,し か も摂 動 級 数 に は ま っ た く紫 外 発 散 が な い こ と が わ か る.す な わ ち,局
所 場 の 理 論 で は実 現 で きな か っ た 矛 盾 の な い 量 子 重 力理 論 が,弦
も簡 単 に で き て し ま うの で あ る.ま
た,弦
る と,ゲ ー ジ場 に 対 応 し て い る もの や,物 とが わ か る.こ
の よ うに,弦
理 論 は,今
理 論 ではい と
の 振 動 状 態 で 重 力 子 以 外 の もの も調 べ て み 質 場 に 対 応 して い る もの も ち ゃ ん と あ る こ まで に知 ら れ て い る す べ て の 力 と物 質 を 統 一
的 に 記 述 して い る の で あ る. こ こ ま で は,弦
の 相 互 作 用 を 図2の
よ うな もの と し て 記 述 して き た わ け で あ る が,
こ れ は い い か え る と,理 論 に 現 れ る 中 間 状 態 と し て有 限 個 の 弦 の み を考 え て い た と い う こ と,す
な わ ち摂 動 論 の 範 囲 内 で の み 理 論 を考 え て い た とい うこ とで あ る.し か し
な が ら,第1節
で も議 論 した よ うに,い
ろ い ろ な 多体 系 で は 非 摂 動 効 果 が 本 質 的 に 重
要 で あ り,弦 理 論 で も そ うで あ る こ とが わ か っ て い る.た
とえ ば,上
で弦 の ラグ ラン
ジ ア ン と して 許 さ れ る もの と し て 一 群 の 超 弦 理 論 が あ る と い っ た が,実
は そ れ らが 互
い に 異 な る理 論 に 見 え る の は 非 摂 動 効 果 を 無 視 し た と き の こ とで あ り,ト
ンネル効 果
の よ う な 非 摂 動 効 果 ま で考 慮 す る と本 当 は互 い に 遷 移 し得 る事 が わ か る.す
な わ ち,
一 群 の 超 弦 理 論 が 表 し て い るの は 一 つ の 理 論 の 摂 動 論 的 な数 々 の 真 空 で あ り,本
当の
真 空 を見 つ け て 現 実 の 世 界 を説 明 し て み せ る た め に は,非
摂 動 効 果 を き ち ん と取 り入
れ た 理 論 形 式 を作 る こ とが 不 可 欠 で あ る.こ の こ と は,裏
をか え せ ば,非
式 化 が き ち ん と で き た 暁 に は,少
空 の 次 元 を は じめ,ゲ
群 の 構 造,ク
な く と も原 理 的 に は,時
ォ ー ク ・レ プ トン の 世 代 数,結
摂動 的 な定 ー ジ
合 定 数 の 大 き さ,そ の 他 の す べ て の 事 柄
が ひ とつ の 理 論 で 説 明 さ れ る とい う こ と を 意 味 し て お り,ま さ に,theory
of every
thingの 完 成 とい え る. 歴 史 は 繰 り返 す とい うが,1984年
か ら現 在 に 至 る弦 理 論 の 発 展 の 経 緯 を,1970年
代 に ゲ ー ジ理 論 が 発 展 し完 成 して い っ た 歴 史 と重 ね て み る と,非 常 に よ く似 て い る よ うに 思 わ れ る.ゲ ー ジ 理 論 の 発 展 は,お 解 した 第 一 段 階,70年
お まか に い っ て,70年
代 初 め の摂 動 論 を理
代 中 頃 の ソ リ トンや イ ン ス タ ン ト ン お よ び デ ュ ア リテ ィ な ど,
摂 動 論 の 延 長 上 で 非 摂 動 効 果 を理 解 しよ う と し た 第 二 段 階,そ
し て70年
代 終 りの 格
子 ゲ ー ジ 理 論 に よ る 完 全 な定 式 化 を行 っ た 第 三 段 階 とい う よ うに 分 け ら れ る.弦 理 論 を これ と比 べ て み る と,1984年 第 一 段 階 で あ っ た と い え る.ま
か らの 第一 ス トリングブー ム は摂動 論 が理 解 され た た,こ
の5∼6年
間 ブ ー ム で あ っ た の はD-braneと
ば れ る弦 の ソ リ トン ・イ ン ス タ ン ト ンで あ り,ま たM-theoryに ア リテ ィ で あ っ た が*2,こ
呼
代 表 され る弦の デュ
れ は ち ょ う どゲ ー ジ理 論 の 発 展 の 第 二 段 階 に 対 応 す る と思
わ れ る1).そ し て 最 近 の3∼4年
で は 第 三 段 階 の,弦
理 論 を行 列 模 型 と し て,摂
動論
に 頼 ら ず に 完 全 に 定 義 す る 試 み が 追 求 さ れ て い る わ け で あ る3). 現 在 提 唱 さ れ て い る行 列 模 型 は 対 称 性 の 高 い 非 常 に 単 純 な もの で あ り,あ 究 極 の 理 論 に ふ さ わ し い 形 を して い る とい え る.た
と え ば,ⅡB行
る意 味 で
列 模 型 と呼 ば れ
て い る理 論 の 作 用 は
(1) で 与 え ら れ る.こ ス ピ ノル で あ る.ま
こ で,Aμ
は10次
た,Aμ,φ
元 の ベ ク トル,φ
の 各 成 分 はn行n列 れ は,10次
は10次
元 の マ ヨ ラ ナ.ワ
イル
の エ ル ミー ト行 列 で あ り,理 論
はn→
∞ の極 限 と して 定 義 さ れ る.こ
元 の 超 対 称U(n)ヤ
ン-ミ ル ズ理 論
を,形
式 的 に 一 辺 の 長 さ が ゼ ロ の 周 期 的 な 箱 に 入 れ た も の で あ り,10次
元N=2と
い う極 大 な 超 対 称 性 を持 っ て い る.
*2 D-braneの
応 用 で話 題 に な っ た こ と とし て,ブ
ラ ッ クホ ー ル の エ ン トロ ピー とAdS-CFT対
が あ げ ら れ る.弦 理 論 の 非 摂 動 効 果 とい う 観 点 か ら は新 しい もの は あ ま りな く,結 局,超 論 の 低 エ ネル ギー の有 効 理 論 が 超 重 力 で あ る こ との 再 確 認 で あ っ た が,応 白い 結 果 も得 られ た2).
応 弦理
用 面 で い くつ か の 面
この 理 論 が 通 常 の 場 の 理 論 と大 き く異 な っ て い る 点 は,時 の で は な く,Aμ こ と で あ る.そ
空 は 初 め か ら与 られ た も
の 固 有 値 の ひ ろが り と し て ダ イ ナ ミ カ ル に生 成 され る も の だ と い う の た め,こ
の 理 論 で は 時 空 の 次 元 さ え もが,論 理 的 帰 結 と し て 説 明 さ
れ 得 る の で あ る.行 列 模 型 は こ の よ うに 美 し い 形 を して い るが,そ
の 反 面,な
ぜ この
よ う な形 の 理 論 を 考 え るべ き な の か とい う指 導 原 理 が 欠 け て い る こ と もあ り,残 念 な が ら現 時 点 で は,完 全 に 正 し い の か ど うか 判 定 す る の は 難 し い.も は,行 列 模 型 を解 い て み て,本
当 に 時 空 の 次 元 が4で
あ るか,低
ちろ ん原 理 的 に
エ ネル ギー の有効理
論 が 標 準 理 論 に な っ て い る か な ど を調 べ れ ば い い わ け で あ るが,今
の とこ ろ満 足 で き
る近 似 法 は 見 つ か っ て い な い. 一 方,非 が,行
可 換 幾 何 学 と 弦 理 論 との 関 係 が 最 近 話 題 に の ぼ る よ う に な っ て きて い る
列 模 型 の 立 場 か ら も,非 可 換 幾 何 学 は 興 味 深 い もの で あ る4).そ れ は,行
型 で は 作 用(1)に
現 れ た変数Aμ
の よ う に,時
列模
空 の 座 標 そ の もの が 行 列 で あ り,時
空 を本 来 非 可 換 な も の と して 記 述 し て い る と考 え ら れ る か ら で あ る.通 常 数 学 で 論 じ ら れ て い る い わ ゆ る 非 可 換 空 間 は,座
標 ど う しの 交 換 子 がc-数
列 模 型 に 現 れ るAμ ほ ど ラ ン ダ ム な 非 可 換 性 で は な い が,そ 場 の 理 論 はtwisted 知 られ て い る.い
reduced
modelと
の よ うな非 可換 空 間上 の
呼 ば れ る あ る種 の 行 列 模 型 と等 価 で あ る こ と も
ず れ に して も,行 列 模 型 の 背 後 に 非 可 換 幾 何 学 の よ う な も の が 見 え
隠 れ し て い る よ うで あ る.う た よ う に,弦
の 場 合 に 相 当 し,行
ま くい く と一 般 相 対 論 が リー マ ン 幾 何 学 の 上 で展 開 さ れ
理 論 を表 す行 列 模 型 を非 可 換 幾 何 学 を 少 し拡 張 した よ うな もの の 上 で 展
開 で き る か も しれ な い.あ
と一 二 度 の ジ ャ ンプ は 必 要 か も し れ な い が,近
成 され た理 論 が で き る こ とが期 待 さ れ る.ま
い将 来 に 完
だ ま だ解 決 し な け れ ば な ら な い 問 題 も あ
る が,す べ て の 基 本 法 則 を統 一 的 に 記 述 す る究 極 の 理 論 を手 に す る の も夢 で は な く な っ て き て い る よ う で あ る.(筆 1955年 生 まれ,1978年
者=か わ い ・ひか る,京 都 大 学 大 学 院 理 学 研 究 科 教 授.
東 京 大学 理 学部 卒 業)
参 考 文献 1) 弦 理 論 の 最 近 の 発 展 ま で 書 か れ て い る教 科 書 と して は 次 の も の が よ い.
J.Polchinski:String
Theory(Cambridge
University
Press,1998).
2) 次 の も の は 弦 理 論 に お け る ブ ラ ッ ク ホ ー ル の よ く ま と ま っ た解 説 で あ る. 夏 梅 誠:日 AdS-CFT対
本 物 理 学 会 誌54(1999)178. 応 の レ ビ ュ ー と し て は 次 の も の が よ い.
O.Aharony,S.S.Gubser,J.Maldacena,H.Ooguri
and
Y.Oz:hep-th/9905111.
3) 行 列 模 型 に よ る弦 理 論 の 非 摂 動 的 定 式 化 の い くつ か の 試 み に つ い て は 原 論 文 を あ げ て お く.
T.Banks,W.Fischler,S.H.Shenker
N.Ishibashi,H.Kawai,Y.Kitazawa
R.Dijkgraaf,E.Verlinde
and and and
L.Susskind:Phys.Rev.D55(1997)5112. A.Tsuchiya:Nucl.Phys.B498(1997)467.
H.Verlinde:Nucl.Phys.B500(1997)43.
4)
非 可 換 幾 何
と 弦 理 論 の 関 係 は い ろ い ろ 論 じ ら れ て い る が,行
い る も の と し て,以
A.Connes,M.R.Douglas
N.Seiberg
and
and
A.Schwarz:JHEP
E.Witten:JHEP
9802:003,1998.
9909:032,1999.
H.Aoki,N.Ishibashi,S.Iso,H.Kawai,Y.Kitazawa N.Ishibashi,S.Iso,H.Kawai
列 模 型 と の 関 連 を 議 論 し て
下 の も の を あ げ て お く.
and and
Y.Kitazawa:hep-th/9910004.
T.Tada:hep-th/9908141.
10. 量 子色力学 の計算機 を用 いた研 究 岩
10.1 歴 原 子 核 を構 成 す る陽 子,中
性 子,パ
本 粒 子 ク ォ ー ク か ら構 成 さ れ る.そ
洋
一
史 的 概 観
イ 中 間 子 な ど の粒 子 は ハ ドロ ン と総 称 され,基 の基 本 法 則 が 量 子 色 力 学 で あ る.し
ク は ハ ドロ ン に 「閉 じ込 め 」 ら れ て お り,ク め,基
崎
か し,ク ォ ー
ォ ー ク は 単 独 で 存 在 で き な い.こ
のた
本 粒 子 が ク ォ ー ク で あ る こ と,及 び 基 本 法 則 が 量 子 色 力 学 で あ る こ との 検 証 は
簡 単 で は な い. ク ォ ー ク ・モ デ ル は,ハ Mann,
G. Zweigに
ドロ ン の 質 量 対 称 性 を 説 明 す る も の と して,M.
よ っ て,1964年
に最 初 に 提 唱 さ れ た.し
ォ ー ク は 数 学 的 な存 在 で あ る と論 文 で 述 べ る な ど,当 初,ク
Gell
か し,提 唱 者 自 身 が ク ォ ー クの 物 理 的 な 実 態 と
して の 存 在 は 疑 問 視 さ れ て い た. 一 方 ,電 定)間
子 ・陽 子 の 深 非 弾 性 衝 突 実 験 に よ っ て,構
の 相 互 作 用 は,漸
成 基 本 粒 子(後
に ク ォー ク と同
近 的 自 由 性 を もつ こ と が 明 らか に な っ た.す
ク 間 の 距 離 が ゼ ロ に 近 づ くに し た が っ て,ク
な わ ち,ク
こ の 漸 近 的 自 由 性 は 非 可 換 ゲ ー ジ理 論 の み が 有 す る事 が,理
論 的 に 証 明 され た.さ
に,「 ク ォー クが ハ ド ロ ン に 閉 じ込 め ら れ て い る 」 と い う概 念 自体 は,何 の で な く,第2種
量 子 色 力 学(QCD;
論 結 果,モ
Quantum
デ ル 考 察 に 基づ き,ク
Chromo
Dynamics)が
ク ォ ー ク と グ ル オ ン を基 本 粒 子 とす るSU(3)ゲ 子 は ク ォ ー ク に,光
提 唱 さ れ た.量
ー ジ理 論 で あ る.量
子 は グ ル オ ンに 対 応 す る.2つ
な わ ち,量
ォ ー ク の 基 本 法 則 と して, 子 色 力 学 は,
子電 磁 気 学 の電
の 理 論 は 一 見 良 く似 て い るが,根
子 電 磁 気 学 で は 摂 動 論 が 成 功 裏 に 適 用 さ れ た が,量
子色
力 学 で は,ご
く限 られ た 適 用 範 囲 で しか 摂 動 論 を用 い る事 が で き な い.こ
ク ォ ー ク,グ
ル オ ンが 自 由 粒 子 と して 存 在 し な い こ と と,密 接 に 関 係 し て い る.た
え ば,ハ
ら
ら奇 妙 な も
超 伝 導 体 モ デ ル な ど を用 い て 解 釈 で き る こ と も わ か っ て きた.
これ らの 実 験 事 実,理
本 的 に 異 な る.す
ォー
ォー ク は 互 い に 自由 粒 子 と し て振 舞 う.
ドロ ン の 質 量 は 量 子 色 力 学 の 基 本 的 な 物 理 量 で あ る が,摂
の こ とは, と
動 論 を用 い て 計 算
す る こ と は 不 可 能 で あ る.摂 動 論 に よ ら な い 計 算 方 法 が 不 可 欠 で あ る.
10.2 格 子 量 子 色 力 学 量 子 色 力 学 の 非 摂 動 論 的 定 式 化 が,K. が 格 子 量 子 色 力 学 で あ る.3次
Wilsonに
よ っ て1974年
提 唱 され た1).こ れ
元 空 間 と1次 元 時 間 を ユ ー ク リ ッ ド化 し,4次
元 ユー
ク リッ ド空 間 の 超 立 法 格 子 上 に理 論 を構 築 す る.格 導 入 さ れ た もの で,最
後 に は,格
の 経 路 積 分 方 式 を用 い,任
子 は紫 外 発 散 を正 則 化 す る ため に
子 間 隔 ゼ ロの 連 続 極 限 を と る.量
子 化 はFeynman
意 の 物 理 量 は 超 立 法 格 子 上 の 多 重 積 分 と して 表 さ れ る.統
計 物 理 学 の カ ノニ カ ル 集 団 の 統 計 平 均 と数 学 的 構 造 は ま っ た く同 等 で あ る.ク 場 は 各 格 子 点 上 に 反 交 換 す る グ ラ ス マ ン 数 で 表 さ れ,グ ク)上
に群SU(3)の
要 素 と して 表 さ れ る.
格 子 の 体 積 が 有 限 の 時 は,コ
ン パ ク ト空 間 上 の 多 重積 分 で あ り,数 学 的 に 何 の 不 定
性 もな く,完 全 に一 意 的 に 定 義 さ れ て い る.連 続 空 間 で の 物 理 量 は,ま の 無 限 大 の 極 限 を と り,次 は,さ
ら に,格
ォー ク
ル オ ン 場 は 各 ボ ン ド(リ ン
に,格
ず,格
子体積
子 間 隔 ゼ ロ の 連 続 極 限 を と っ て 計 算 す る.Wilson
子 量 子 色 力 学 の 強 結 合 極 限 で は,ク
ォ ー ク は 閉 じ込 め られ て い る こ と
を証 明 した. そ れ ま で の 理 論 計 算 は,摂 動 論 に よ る 計 算 が 主 で あ っ た た め に,Wilsonの た 格 子 量 子 色 力 学 の 本 質 的 な 重 要 性 が 広 く認 識 さ れ る ま で に は,あ 要 で あ っ た.す
る程 度 の 時 間 が 必
な わ ち,そ れ ま で 見 慣 れ た連 続 空 間 上 で の 作 用 と,格 子 上 で の 作 用 が
見 か け 上 異 な っ て い る た め,理 た.し
提唱 し
論 を 変 更 す る の は お か し い,な
ど と い う意 見 も あ っ
か し,こ れ らの 意 見 は 的 外 れ で,連 続 空 間 上 の作 用 を 用 い た 理 論 は,摂
動 論の
範 囲 外 で は 定 義 され て い な い の で あ る.摂 動 論 を 用 い る事 が で きな い場 合 は,理 の もの を非 摂 動 論 的 に 定 義 す る必 要 が あ る.す 要 が あ る.格 子 量 子 色 力 学 は,現
論そ
な わ ち,構 成 論 的 に 理 論 を構 築 す る 必
時 点 で 知 られ て い る 唯 一 の 量 子 色 力 学 の 構 成 論 的 な
構 築 で あ る. 格 子 量 子 色 力 学 が 数 学 的 に 厳 密 に 定 義 さ れ て い る こ との 裏 返 し と し て,経 数 値 的 に 不 定 性 な しに 計 算 す る 事 が 可 能 で あ る.ま と同 じで あ る事 は,統
路積 分 を
た,数 学 的 構 造 が カ ノ ニ カ ル 統 計
計 力 学 で 開 発 さ れ た モ ン テ カ ル ロ 法 な ど種 々 の 計 算 ア ル ゴ リズ
ム を用 い る こ とが 可 能 で あ る事 を 意 味 して い る.
M.
Creutzは1980年
で あ る,ク
に,モ
ン テ カ ル ロ 法 を 用 い て,量
子 色 力 学 の2つ
の基 本 性質
ォ ー クの 閉 じ込 め と漸 近 自 由性 が 共 存 す る こ と を示 唆 す る数 値 結 果 を,簡
単 化 したSU(2)ゲ
ー ジ モ デ ル に 対 して 示 し た2).現 時 点 か ら見 れ ば,2つ
存 を結 論 す る ため に は,数
値 計 算 の 精 度 は さ らに 上 げ る必 要 が あ る が,解
す る事 が 非 常 に 困 難 な,量
子 色 力 学 の 基 本 的 な2つ
の性質 の共 析 的 に証 明
の 性 質 の共 存 を,計 算 機 に よ る数
値 計 算 で 示 す事 が 可 能 で あ る と い う事 実 は 多 くの 人 に衝 撃 を 与 え,そ
れ以 降の計 算機
を用 い た 格 子 量 子 色 力 学 の 研 究 の 先 鞭 を つ け た.
10.3 専 用 並 列 計 算 機 モ デ ル な どに よ らず,第
一 原 理 で あ る 量 子 色 力 学 か らハ ドロ ン の質 量 の よ う な 物 理
量 を 計 算 す る(現 在 知 られ た)唯
一 の 方 法 は,計
算 機 を 用 い た 数 値 計 算 で あ る.計 算
手 法 は 物 性 物 理 学 に お け る手 法 と基 本 的 に 同 じで あ る.し か し,こ れ が 容 易 で な い. 一つは ,次 元 が4次 元 で あ り,自 由 度 の 数 が 多 い こ とに よ る.も う一 つ は,ク ォ ー ク が フ ェ ル ミオ ン で あ る こ と,お
よ びuク
ォ ー ク とdク
(量 子 色 力 学 の 典 型 的 な エ ネ ル ギー の 約100分 1980年
代 前 半 に,そ
の1程
ォー クの 質 量 が 非 常 に軽 い
度)こ
と に よ る.
の 当 時 の ス ー パ ー コ ン ピ ュ ー ター な ど を 用 い て,格
力 学 か らハ ドロ ン の 質 量 を 導 く計 算 が 開 始 さ れ た が3),た だ ち に,ス ー タ ー とい え ど も計 算 能 力 が 足 りな い こ とが 判 明 した .一 方,格
子量子色
ーパ ー コン ピ ュ
子 量 子 色 力 学 は,並
列 計 算 機 に 適 し た 問 題 で あ る こ とが 認 識 さ れ た. こ の よ う な 背 景 を基 に,物
理 学 研 究 者 が 中 心 的 な役 割 を 果 た し なが ら,格 子 量 子 色
力 学 の た め の 専 用 並 列 計 算 機 が,米,欧,お 構 成,メ
モ リ ま わ りの 構 成,演
ー キ テ クチ ャ が
よ び 日本 で 開 発 ・製 作 さ れ た.演
算器 の
算 器 間 の ネ ッ トワ ー ク構 成 ・性 能 な ど並 列 計 算 機 の ア
,量 子 色 力 学 を主 た る 利 用 目的 と して 想 定 し,設 定 さ れ た.あ
多様 な可 能 性 を も っ て い る新 し い 方 式 で あ るが た め に,当
時,メ
ま りに
ー カー にお いて は研
究 所 レベ ル で の 開発 段 階 で あ っ た 並 列 計 算 機 の 目的 仕 様 を 明 確 に し,開 発 ・製 作 し, か つ,実
際 問 題 に 対 す る 実 行 計 算 能 力 が 高 い こ と を示 し た 功 績 は 評 価 さ れ て よ い.
一 旦 ,並 列 計 算 機が 完 成 して し ま え ば,専 で あ り,ベ
用 計 算 機 と い っ て も,多
ク トル 型 計 算 機 に の る科 学 計 算 で あ れ ば,ほ
機 で 計 算 で き る こ と も判 明 し た.こ
目的に使 用 可能
とん ど の 問 題 が そ の 並 列 計 算
の こ とに も よ り,主 要 な メ ー カー に よ る並 列 計 算
機 の 商 用 化 の動 き も 本 格 化 し,1990年
前 後 に,最
高 性 能 の 計 算 機 は従 来 の ベ ク トル
型 か ら並 列 型 に 取 っ て 代 わ られ た. 日本 で は,筑
波 大 学 を 中 心 に し て,並
し てCP-PACS5)が
開 発 ・製 作 さ れ,格
CP-PACSは1996年
列 計 算 機QCDPAX4),さ
らに そ の 後継 機 と
子 量 子 色 力 学 の 計 算 が 主 と し て な さ れ た.
に 完 成 し,そ の 当 時 の 世 界 の 高 性 能 計 算 機 ト ップ500の
第一 位
に ラ ン ク され た.
10.4 物 基 本 的 に は,量 る.し
か し,現 実 に は,計
1つ 目は,ク
果
算 機 の 能 力 な どの 制 限 の た め 限 度 が あ る.一 ル ゴ リ ズ ム の 改 良,格
理 計 算 の 質 が 飛 躍 的 に 向上 し た.こ
要 と思 え る2つ
結
子 色 力 学 か ら全 て の ハ ドロ ン に 関 す る物 理 量 が 計 算 で き る は ず で あ
う な 並 列 計 算 機 の 能 力 の 向上,ア 近,物
理
こ で は,最
方,上
述のよ
子 作 用 の 改 善 に よ っ て,最
近 の 物 理 計 算 結 果 の 内,最
も重
の こ と を取 り上 げ た い. エ ン チ 近 似 に お け る ハ ドロ ン質 量(詳
す る基 底 状 態)の
し くは,フ
レーバ ー 多重 項 に属
結 果 が 確 立 し た こ と で あ る6).ハ ドロ ン ・ス ペ ク トロ ス コ ピー は 格
子 量 子 色 力 学 の 試 金 石 で あ る.正 色 力 学 の 正 し さ を確 立 し,さ
し くハ ドロ ン質 量 を再 現 す る こ とに よ り,格 子 量 子
ら に 他 の 物 理 量 の 計 算 結 果 の 信 頼 性 を確 立 で き る.し
か
し,計
算 は 当 初 考 え ら れ て い た よ り格 段 に 難 し い.動
計 算 を フ ルQCDと
呼ぶ が,フ
ルQCDで
的 ク ォ ー ク の 効 果 を取 り入 れ た
の計 算 は 今 ま で は 実 行 が 困 難 で あ っ た た め,
動 的 ク ォ ー ク の 効 果 の う ち結 合 定 数 の 繰 り込 み に 取 り込 め る もの(か り込 め る)以 外 を 無 視 す る近 似 を クエ ン チ 近 似 と呼 び,主 算 が 行 わ れ て き た.1981年 れ て か ら15年
い に 最 終 的 な 答 え を 出 す こ とに 成 功 した.
析 計 算 と は 異 な り,誤 差 の 評 価 が 重 要 で あ る.統 計 誤 差 は通 常 の 手
法 で 簡 単 に評 価 で き る.一 方,系 らゼ ロへ の 外 挿,格
統 誤 差 の 評 価 は 単 純 で な い.格 子 間 隔 有 限 の 計 算 か
子 体 積 無 限 大 へ の 外 挿,ク
よ る 系 統 誤 差 が あ る.こ の 計 算 に お い て は,メ
ォ ー ク質 量 に関 す る 外 挿 ・内挿 な ど に
れ ら の 系 統 誤 差 を制 御 す る こ と が 肝 要 で あ る.し か し,初 期
モ リ容 量 お よ び 計 算 速 度 の制 限 の た め,格
体 積 よ りか な り小 さ く,系 統 誤 差 を 制 御 で き て い な い.こ て,初
と して そ の 近 似 の も とに 計
に 最 初 の ク エ ン チ 近 似 に よ るハ ドロ ン 質 量 計 算3)が 試 さ
以 上 か か っ て,つ
数 値 計 算 は,解
な りの部 分 が 取
子 体 積 が ハ ドロ ン の
の よ うな系統誤 差 を制御 し
め て 系 統 誤 差 を評 価 で き る.こ の あ た り の事 情 は 実 験 と よ く似 て い る.
こ の クエ ン チ 近 似 の ハ ドロ ン 質 量 の 計 算 結 果 は,実 度 で再 現 す る.こ
の10%の
際 の ハ ドロ ン質 量 を10%の
精 度 は 現 象 論 か ら 予 想 さ れ た 程 度 で あ る.さ
精
らに,ク
エ
ン チ 近 似 の 限 界 に よ る実 験 値 か ら の数 パ ー セ ン トの 系 統 的 な ズ レ を 明 確 に 示 す こ と が で き た. 2つ 目 は,動 (u,d,sク
的 なuク
ォ ー ク とdク
ォー ク の 効 果 を 取 り入 れ た,軽
い ク ォー ク
ォ ー ク)の 質 量 の 系 統 的 な 計 算 で あ る7).こ れ らの ク ォー ク の 質 量 は 自然
界 の 基 本 的 な パ ラ メ ー ター で あ りな が ら,「 ク ォー クの 閉 じ込 め 」 の た め,正 は 知 られ て い な か っ た.こ
の 計 算 結 果 に よ り,sク
て い た よ りか な り小 さ い 値(約90MeV)で
確 な値
ォー クの質 量 が それ まで考 え られ
あ る こ と が 判 明 し た.こ
の 結 果 は,CP
非 保 存 の 解 釈 に も大 き な影 響 を 与 え る. 紙 面 の 都 合 で 詳 し い こ とは 割 愛 す る が,こ
れ 以 外 に もハ ドロ ン の 崩 壊 定 数,弱
相 互 作 用 の ハ ドロ ン 間 の 行 列 要 素 な どが 計 算 さ れ,10%程 で に あ る.こ れ ら の 結 果 はCKM行 に,宇
電磁
度 の誤 差 を含ん だ結果 がす
列 の 決 定 に 欠 か せ な い 重 要 な も の で あ る.さ
ら
宙 初 期 の ハ ドロ ン ・ク ォー ク相 転 移 の 性 質 な ど の解 明 も進 ん で い る.
10.5 今 後
の 展 望
計 算 機 の 能 力 は指 数 関 数 的 に 向 上 し て い る.2005年
前 後 に は 数10OTFLOPSの
計
算 機 が 開 発 ・製 作 され る可 能 性 が 充 分 に あ る.そ れ ら の 計 算 機 を 用 い る こ とに よ り, 前 節 で述 べ た 物 理 量 は,系 統 誤 差 が 充 分 制 御 ・評 価 さ れ,最 う.ま
た,重
力 の 量 子 論,ス
ー パ ー シ ン メ ト リー 理 論 な ど他 の 場 の 理 論 に も計 算機 を
用 い た数 値 的 手 法 が 用 い ら れ て い くこ とが 期 待 され る.(筆 筑波 大 学 学 長.1941年
終結 果が確 立す るであ ろ
生 まれ,1964年
東 京 大 学理 学 部卒 業)
者=い
わ さ き ・よ うい ち,
参 考 文献 紙 面 の 都 合 上,文 て お
り,そ
献 は 網 羅 的 で な い.格
の 会 議 録 はNuclear
で 発 行 さ れ て い る.詳
細 は,こ
1)
K.Wilson:Phys.Rev.D10(1974)2445.
2)
M.Creutz:Phys.Rev.D21(1980)2308.
3)
H.Hamber
and
Physics
子 場 の 理 論 に 関 す る 国 際 会 議 が 毎 年1回 B(Proceedings
Supplements)にLattice
開 催
さ れ
XXの
形
の シ リ ー ズ を 参 照 の こ と.
G.Parisi:Phys.Rev.Lett.47(1981)1792;D.Weingarten:Phys.
Lett.109B(1982)57. 4)
星 野
力:『PAXコ
ン ピ ュ ー
Shirakawa,Y.Oyanagi 5)
Y.Iwasaki
for
and the
CP-PACS
タ 』(オ
ー ム 社,1985).Y.Iwasaki,T.Hoshino,T.
T.Kawai:Comp.Phys.Comm.49(1988)449. Collaboration:Nucl.Phys.B(Pro.Suppl)60A(1998)
246;T.Boku,K.Itakura,H.Nakamura International
Conference
and on
6)
CP-PACS
Collaboration:S.Aoki,et
7)
CP-PACS
Collaboration:A.Ali
K.Nakazawa:Proceedings
Supercomputing'97(1997)108. al.:Phys.Rev.Lett.84(2000)238. Khan,et
al.:Phys.Rev.Lett,85(2000)4674.
of
ACM
11.
KAMIOKANDEの
こと 小
早 い もの で 日本 物 理 学 会 が 独 立 し て か ら50年
に な る そ う で,振
が 第 一 高 等 学 校 の 理 科 甲類 一 年 だ っ た の で す か ら,ス を 共 に して きた よ う な 気 が し ます.こ つ の 単 独 実 験 と し てKAMIOKANDEが
の50年
昌
俊
り返 っ て み る と私
ケー ル は 勿 論 違 い ます が,苦
楽
を ふ り か え る 特 別 企 画 の な か で,唯
一
取 り上 げ られ た こ と は,こ
た 総 て の 人 々 に と っ て 大 き な 名 誉 と喜 び で す.そ 成 し た の で し ょ う か?以
柴
の 実 験 に 関与 し
れ で はKAMIOKANDEは
何 を達
下 に他 の 分 野 の 方 々 に も ご理 解 い た だ け る よ うに 述 べ て み
た い と思 い ます. まず 挙 げ るべ き は 「ニ ュ ー ト リノ 天 体 物 理 学 観 測 の 創 始 」 で あ る と,国 内 外 で 認 め ら れ て い ます.透
過 力 が き わ め て 大 きい 素 粒 子 ニ ュー ト リ ノが 星 の 生 涯 で 果 た し て い
る で あ ろ う役 割 につ い て は早 くか ら知 られ て お り,天 体 か らの ニ ュ ー ト リ ノ を 観 測 す る こ と の 重 要 性 も指 摘 さ れ て い ま し た.米 国 で は20年 以 上 も 前 か ら 地 下 深 い 所 に 37Clを 含 む 多量 の 液 体 検 出 器 を 設 置 し ,太 陽か ら 降 り注 い で い る筈 の ニ ュ ー ト リ ノが 37Clを37Arに 変 換 し た の を 月 に一 度 位 の 割 合 で抽 出 し検 出 す る 方 法 で 観 測 をつ づ け , 太 陽 か らの 電 子 ニ ュ ー ト リ ノは 理 論 値 の 三 分 の 一 く らい しか な い と い う結 果 を 報 告 し て い ます.し
か し こ の よ う な 放 射 化 学 的 方 法 で は 入 射 し た ニ ュ ー ト リ ノの 到 来 時 刻,
到 来 方 向 は 不 明 で す し,ま
た エ ネ ル ギ ー スペ ク トル も わ か り ませ ん.Keplerの
ら 天 文 観 測 に は 到 来 信 号 の 時 刻 と方 向 を知 る こ とが 不 可 欠 で す.ま 測,た
とえ ば 表 面 の 温 度 や 元 素 比,に
れ ば な りませ ん.KAMIOKANDEは ュ ー ト リ ノ を観 測 した の で,ニ け で す が,こ
昔か
た天 体 物 理 的観
は 更 に 信 号 の エ ネ ル ギ ー スペ ク トル を知 ら な け こ れ ら三 つ の 条 件 を み た す 方 式 で 天 体 か らの ニ
ュー ト リ ノ天 体 物 理 学 観 測 を創 始 し た と さ れ て い る わ
の 実 験 が ど の よ うに して は じ ま っ た か,ま
た 透 過 力 が 極 め て 大 き く,レ
ン ズ も反 射 鏡 も遮 蔽 も使 え な い 天 体 ニ ュ ー ト リノ の 観 測 を ど の よ うに して 達 成 し たか に 入 り ま し ょ う.
11.1 KAMIOKANDEの
KAMIOKANDE―
然 崩 壊 す るか?別 で は な い か?と Decay
Experimentを
神 岡NDE―
は 当 初,物
生 い立 ち 質 の構 成粒 子 であ る 陽子 や 中性 子 は 自
の 言 葉 で い えば 重 粒 子 数 の 保 存 則 は 完 全 に は 成 り立 っ て い な い の い う 問 に 答 え る た め に起 案 さ れ た の で,語 意 味 し ま した.1970年
尾 のNDEはNucleon
代 の半 ば に は物質 の基礎 粒 子 クォー ク
は 三 世 代 まで 存 在 し,ニ ュ ー ト リノ も三 種 類 存 在 す る こ と が 確 実 に な っ て い ま し た
し,ま
た 自然 界 の 四 つ の 力 の う ち 電 磁 力 と弱 い力 を統 一 した 理 論,い
わ ゆ る標 準 理 論
が 成 り立 つ こ と も ほ ぼ 確 実 に な っ て い ま した か ら,こ の 時 期 に 更 に も う一 つ の 力,強 い 力,を
も統 合 す る理 論,大
う ち の 一 つ,素
統 一 理 論,が
粒 子 の 分 類 の 基 礎 にSU(5)群
で て きた の も不 思 議 で は あ りませ ん.そ を お い た もの の 予 言 は,陽
て 陽 電 子 と中 性 パ イ 中 間 子 と に 崩 壊 し,そ の 寿 命 は 約1030年(ち は1010年
の 桁)と
い う こ と で,こ
れ な ら1030個 の 陽 子(1,000ト
年 か 観 測 す れ ば 陽 子 の 崩 壊 が 見 つ か る 可 能 性 が あ る.そ 計 画 さ れ ま し た が,こ 類 で き ます.1979年
子 は 主 とし
な み に宇 宙 の年齢 ン程 度 の 物 質)を
で した.こ
れ ら は 大 き く分 け て鉄 板 を 重 ね た も の と水 を用 い る もの と に分 の 暮,当
時 高 エ ネル ギー物 理 学研 究所 の物 理 研 究部 主 幹 を して ぐ頭 に 浮 か
下 深 くに 多 量 の 水 を 蓄 え て そ れ を常 時 四 方 八 方 か ら観 測 しつ づ け る こ と
れ は1960年
処 で 起 き た事 象 で も,ま は,透
何
こで幾 つか の陽子 崩壊 実験 が
い た 菅 原 寛 孝 氏 か ら 陽 子 崩 壊 実 験 を考 え て 欲 し い との 電 話 が あ っ た 時,す ん だ の は,地
の
に 似 た よ うな 実 験 を考 え た こ と が あ る し,多 量 の 物 質 中 の 何 た,ど
ん な 方 向 に 粒 子 が 飛 び 出 し て も一 様 に 観 察 で き る の
明 度 の 良 い 水 に 如 く もの は な い か ら で す し,更 に 水 自体 が安 価 な ば か りか,検
出 器 も表 面 だ け に 配 置 す れ ば い い の で す か ら,極 め て 経 済 的 な 実 験 が 設 計 で き ます. 米 国 で も 同様 な 結 論 に 到 達 し た 人 達 がIMB う総 量7,000ト
(Irvine-Michigan-Brookhaven)と
い
ン の 水 を使 う実 験 を計 画 して い る こ とが 伝 わ っ て き ま し た.は
も水 を使 う陽 子 崩 壊 実 験 の 競 演 とな っ た わ け で す.も
しSU(5)理
しな く
論 が 正 し い とす れ
ば,崩 壊 二 次 粒 子 の 陽 電 子 と中 性 パ イ 中 間 子― す ぐ二 つ の ガ ンマ 線 に 崩 壊― は そ れ ぞ れ 陽 子 質 量 の 約 半 分 の エ ネ ル ギ ー を持 って 反 対 方 向 に 飛 び 出 し,水 ドを起 こ して,そ
れ ぞ れ が 高 速 陰 陽 電 子 の 束 を作 るは ず です.こ
は 水 中 の 光 の 速 度 よ り大 き い の で,光
中 で 電 磁 カ ス ケー
れ ら陰 陽 電 子 の 速 度
の 衝 撃 波 と も言 うべ きCherenkov光
を進 行 方
向 に 一 定 の 角 度 で 円 錐 状 に 放 出 し ます か ら,問 題 は こ の 光 を検 出 す る こ とで す,こ ま で はIMBもKAMIOKANDEも
同 じ考 え 方 な の で す が,SU(5)理
い 信 ず るか に よ っ て や り方 が 異 な っ て き ま す.上
記 の 現 象 だ け を狙 うな らバ ッ ク グ ラ
ウ ン ドも問 題 に は な ら な い の で,深
度 も程 々 の 所 に で き る だ け 大 量 の 水 を蓄 え,光
量 も相 当 に あ り ます か ら 市 販 の5イ
ン チ 径 の光 電 増 倍 管 を用 い て,周
め 続 け れ ば よい こ と に な り ま す.IMBが は信 じて も必 ず し もSU(5)で
こ
論 を どの くら
と っ た の は こ の道 で す.一
の
りか らそ れ を 眺 方,大
あ るか は わ か ら な い とす る 立 場 で は,上
統 一理 論
の崩壊 様 式 だ
け で な く,他 の 幾 つ か の 崩 壊 様 式 に 壊 れ て もそ れ ぞ れ を き ち ん と同 定 して,そ
れによ
り どの タ イ プ の 大 統 一 理 論 が 真 実 に 近 い か の 手 が か り を得 よ う とす る 訳 で す か ら,更 に ず っ と微 弱 な光 信 号 を正 確 に 捕 ま え な くて は な りませ ん.ま
た,バ
との 戦 い も ず っ と厳 しい もの に な り ます.KAMIOKANDEが
採 択 したのは こ の路線
で し た か ら,検
ッ クグラウ ン ド
出器 を よ り深 い 地 下 に 設 置 す る だ け で な く,光 の 検 出効 率 を大 幅 に 改
善 す る た め に 新 た に径20イ
ン チ の 光 電 子 増 倍 管 を開 発 し ま し た.こ
の 結 果,岐
阜県
神 岡鉱 山 の 地 下1,000メ
ー トル に 設 置 し たKAMIOKANDEはIMBに
量 こ そ7,000対3,000ト
ン と劣り ます が,光
の 検 出 効 率 は16倍
ウ ン ドも 遙 か に 少 な い実 験 に な り ま し た.1983年 が,直
ぐ気 が つ い た こ とは12MeVの
陽 芯 部 の核 融 合 反 応 で で き る8Bの は14MeVま
較べ て水 の総 も良 く,バ ッ ク グ ラ
の 夏 か ら デ ー タ を 採 り始 め ま し た
電 子 ま で 綺 麗 に 観 測 で き て い る こ と で す.太 ベ ー タ 崩 壊 に 由 来 す る ニ ュ ー ト リ ノの エ ネ ル ギ ー
で 延 び て い る は ず で す か ら,も
う少 し頑 張 れ ば 太 陽 ニ ュ ー ト リ ノが 水
中 の 電 子 を弾 い た の を観 測 で き る で し ょ う.し か し こ の た め に は,周
りの 岩 石 中 の 放
射 性 元 素 や 空 気 中 の ラ ドン の 崩 壊 か らの バ ッ ク グ ラ ウ ン ドを 減 ら す た め に 全 体 を遮 蔽 層 で 覆 わ な くて は な り ませ ん し,ま た,そ
の よ う な 比 較 的 低 エ ネ ル ギー の 電 子 の 発 生
位 置 と方 向 を精 度 良 く測 定 す る た め に は,個 す る 回 路 を備 え ね ば な り ませ ん.こ
々 の 光 電 子 増 倍 管 に光 の 到 着 時 刻 を記 録
の 夢 を追 うよ う な 実 験 を 英 断 を も っ て 実 施 させ て
くれ た 文 部 省 で も,実 験 開 始 後 半 年 も経 た ず に 新 し い 可 能 性 が 見 え るか ら も う1億 円 程 出 し て くだ さ い と 言 っ た ら,門 前 払 い を 食 うの は 目 に 見 え て い ます.そ 年1月
米 国 で の 陽 子 崩 壊 の 国 際 学 会 の 折 に,陽
け で な く,KAMIOKANDEで
子 崩 壊 に 関 す る 中 間 結 果 を報 告 し た だ
太 陽 ニ ュー トリ ノ の 電 子 散 乱 に よ る検 出 の 可 能 性 が あ
る か ら,時 間 測 定 回 路 を 持 ち 込 む 共 同 研 究 者 を求 め る とい う こ と と,さ 本 格 的 実 験 と して,水
容 量 が5万
トン のSuper-KAMIOKANDEを
し て や ろ う で は な い か と い う提 案 を し た と こ ろ,ペ Mann教
き た ば か りの 底 面 光 電 子 増 倍 管 層 を1メ
らに は 次 な る
国 際共 同 実 験 と
ン シ ル ヴ ァ ニ ア 大 学 のA.
授 が た だ ち に共 同研 究 者 と して 名 乗 り を挙 げ て き ま し た.そ
る た め に,で
こ で1984
K.
こ で 遮 蔽 層 を造
ー トル 程 嵩 上 げ して そ の 下 に も
光 電 増 倍 管 層 を つ く り,貯 水 槽 の 外 側 に も岩 壁 との 間 に 水 を は り,こ こ に も光 電 子 増 倍 管 層 を設 置 し ま した し,上 面 に も約1メ
図1
ー トル の 深 さの 層 を 追 加 し ま した.純
KAMIOKANDEの
断面図
水装
置 も 強 化 し,ペ
ン 大 の 時 間 測 定 回 路 も取 り付 け,総
も終 わ る 時 で し た.改
装 し たKAMIOKANDE-Ⅱ
年 初 頭 か ら デ ー タ を採 り始 め た と こ ろ,予 MeV以
て の 調 整 が 終 わ っ た の は1986年 の 断 面 図 を 図1に
期 以 上 の 性 能 で バ ッ ク グ ラ ウ ン ドを7.5
下 に 抑 え ら れ る こ とが は っ き り した の で,本
を 開 始 し ま した.す
太 陽 質 量 の8倍 新 星),も
格 的 に太 陽ニ ュー トリノの実 験
る と三 月 も経 た な い う ちに一つの事件が発生し
11.2 大Magellan星
ま した.
雲 内 で 超 新 星SN1987Aが
爆発
以 上 の 巨大 な 星 は 晩 年 に な る と核 融 合 の 暴 走 を お こ した り(Ⅰ 型 超
っ と大 きな 星 で は核 融 合 の 最 終 生 成 物 で あ る鉄 が 溜 ま りす ぎ る と そ れ が 自
分 の 重 力 を支 え き れ ず 重 力 崩 壊 して 中 性 子 星 に な る(Ⅱ ま す.特
示 し ま す.1987
に 後 者 の 場 合 は,1053エ
型 超 新 星),と
ル グ 台 の エ ネ ル ギ ー を10秒
考 え られ てい
位 の間 に総 て の種 類 の
ニ ュ ー ト リ ノ と反 ニ ュ ー ト リ ノ と して 放 出 す る は ず だ と い う の です か ら,全 世 界 の 地 下 実 験 屋 が 色 め き立 っ た の も当 然 で す.特
に 反 電 子 ニ ュ ー ト リ ノ は 陽 子 と反 応 し て ほ
ぼ 同 じ エ ネ ルギー の 陽 電 子 に 変 わ り,そ の 断 面 積 が 電 子 衝 突 の それ よ りず っ と大 き い し,ま
た 平 均 エ ネ ル ギ ー も太 陽 ニ ュ ー ト リノ の 数 倍 以 上 が 期 待 され ます か ら,自 由 陽
子 を 沢 山 含 ん だ検 出 器 に は 格 好 の 獲 物 と い え ま す.で 初 の概 算 要 求 文 書 に も,も ば,そ SN
す か らKAMIOKANDEの
最
し銀 河 内 あ る い は そ の 近 傍 で 第 二 種 の 超 新 星 爆 発 が 起 き れ
の放 出 ニ ュ ー ト リ ノ信 号 を観 測 で き る 可 能 性が あ る こ と を指 摘 し て あ り ます.
1987 Aの
発 見 が 公 表 さ れ た の は 国 際 天 文 学 連 合 サ ー キ ュ ラー(IAUC)の2月24
日号 で す が,我
々 が 天 文 学 の 友 人 か ら ニ ュ ー ス を 知 ら さ れ た の は 翌25日
で,直
ちに
神 岡実 験 所 の 当 番 に 電 話 して デ ー タ テ ー プ を トラ ッ ク 便 で 送 らせ ま し た.こ れ が 東 大 に 着 い た の が27日
で,直
ぐ解 析 を始 め 次 の 日,28日
ー ト リ ノ信 号 を〓 ま え ま した .と
図2
に は 図2に
示 す 紛 れ もな いニ ュ
こ ろ が フ ァ ク ス で 入 っ たIAUC2月28日
KAMIOKANDEが〓まえた超新星
ニ ュ ー ト リノ
号 に,イ
タ リア-ソ 連 邦 グ ル ー プ がMont
Blanc山
の 反 電 子 ニ ュ ー ト リ ノ信 号 を23日 ま え た,と
世 界 時2時52分36.8秒
い う発 表 が で ま し た.こ
47.44秒 の 間 に12個
中 で 実 施 し て い る実 験LSDが,SN
の 信 号 時 間 は,我
と い う信 号 と4時
か ら43.8秒
1987 A の 間 に5個 〓
々 の7時35分35.00秒
間 半 以 上 の 違 い が あ り ま す.こ
か ら
れ は相 当 な論
戦 に な りそ うだ と考 え て 直 ち に 全 員 に箝 口令 を し き,論 文 の 投 稿 前 に あ らゆ る 可 能 性 をチ ェ ッ ク す る こ とに し ま した.先 う点 で す.LSDは90ト
ず 第 一 は ニ ュー ト リ ノ放 出 が 二 度 起 きた の か とい
ン の 液 体 シ ンチ レー タ ー で す か ら,そ の 中 の 自 由 陽 子 の 数 と
陽 電 子 の 検 出 効 率 か ら算 定 し て,も
し そ の5個
の事 象 が 本 当 にSN
電 子 ニ ュ ー ト リ ノ信 号 だ とす る と,KAMIOKANDEの 同 時 刻 に7.5MeV以 ー タ に は1個
上 の 事 象 が20個
もで て い ませ ん .そ
争 い に な り ます.我 月5日
論 文 が,LSDの
信 号 時 刻 を 探 し た ら8個 き ま し た.さ
後400年
ち らが 本 物 か と い う論 戦 は,我
々 の論文 の 直後に掲
信 号 時 刻 を探 し た が 何 もな い,KAMIOKANDEの 実上 の決 着が着
ン液 体 シ ン チ レ ー ター 地 下 実 験 が,KAMIOKANDE
の 事 象 を遅 れ て 報 告 し ま し た.人
類 が 目視 で き た 超 新 星 は
近 く経 っ て の こ と で す し,当 時 の 天 文 学 者 の 常 識 に 反 し て 青 色 巨
星 がⅡ 型 超 新 星 爆 発 を起 こ し,し か もKAMIOKANDE及 よ れ ば 爆 発 エ ネ ル ギー は 約3×1053エ で約10秒
ンの 中に は
か し,我 々 の デ
う な る と,今 度 は どち ら の 信 号 が 本 物 な の か と い う
の事 象 が 見 つ か っ た と報 告 して い るの で,事
らに ソ連 の330ト
の 信 号 時 刻 の 近 傍 に5個 Kepler以
有 効 質 量2,140ト
以 上 な くて は な り ませ ん.し
らの 反
々 は 考 え 得 る あ らゆ るバ ッ ク グ ラ ウ ン ドの 可 能 性 を 潰 し た 上 で3
に 論 文 を 投 稿 し ま した.ど
載 さ れ たIMBの
1987 Aか
ル グ,ニ
び そ れ を追 認 し たIMBに
ュ ー ト リ ノ 放 射 は 有 効 温 度 約4MeV
間 継 続 と,重 力 崩 壊 に よ るⅡ 型 超 新 星 爆 発 に 関 す る理 論 の 基 本 的 な 諸 点 が
検 証 され た の で,大
き な 反 響 を 呼 び ま し た. 11.3
太 陽 ニ ュ ー ト リ ノの 観 測
主 系 列 に あ る恒 星 の エ ネ ル ギ ー 源 は,陽 られ て い ます.こ
の 時,弱
子4個
をHe4に
相 互 作 用 に よ っ て 陽 子 を2個
核 融 合 す る こ と だ と考 え
中 性 子 に 変 換 せ ね ば な ら ず,
そ の 結 果 陽 電 子 と電 子 ニ ュ ー ト リノ が そ れ ぞ れ2個 放 出 され ま す.エ 核 融 合 が ど ん な 経 路 を通 るか に よ っ て 異 な り ます が,太 に示 し ます.図
に あ る よ う に,KAMIOKANDEが
ネル ギー分布 は
陽 理 論 に 基 づ い た 予 想 を 図3
電 子 ニ ュ ー ト リ ノ を電 子 との 散 乱
に よ っ て 検 出 で き る の は数MeV以 上 の もの だ け で す.現 在 こ れ 以 下 の も の は37Clや 71Gaを 用 い た 放 射 化 学 的 検 出 に頼 ら ざ る を得 ませ ん .極 め て 小 さ い 反 応 断 面 積 の た め,KAMIOKANDEの の で す か ら,バ
有 効 水 質 量1,000ト
ン で も三 日 に1事 象 位 しか 期 待 で き な い
ッ ク グ ラ ウ ン ド との 戦 い は 熾 烈 な もの に な り ます.さ
らには何年 に も
わ た る観 測 を 通 じて 測 定 系 の ゲ イ ン の 安 定 とエ ネ ル ギー 値 の 更 正 も忘 れ て は な り ませ ん.詳
しい こ と は こ こ で は 述 べ ませ ん が,図4に
バ ッ ク グ ラ ウ ン ドの 除 去 の 努 力 を,
図3
太 陽 電 子 ニ ュー ト リ ノの 予 想 エ ネ ル ギー 分 布
図4
そ し て 図5に
は,太
種 々 の バ ッ ク グ ラ ウ ン ドの 除 去
陽 電 子 ニ ュ ー ト リ ノ との 電 子 散 乱 事 象 の 方 向 性 を利 用 した 更 な る
バ ッ ク グ ラ ウ ン ドの 除 去 を示 し て い ま す .こ す ぐ見 て とれ る の は,太 か な い こ と で す.太 す.37Clの
う して 得 られ た 結 果 は 図6に
陽 理 論 か ら期 待 さ れ る ス ペ ク トル に 較 べ て,一
陽 理 論 を い じ っ て み て も期 待 値 を こ ん な に 減 ら す こ と は 無 理 で
結 果 が 出 て か ら言 わ れ て い た こ とで す が,ニ
な くて 有 限 な らば,質
あ り ます.
様 に 半分位 し
量 固 有 状 態 が3個
あ っ て,そ
固有 状 態 とは 一 致 して い な い で し ょ う.太
ュー トリノの質 量が ゼ ロでは
れ らは 一 般 に 弱 相 互 作 用 の3個
の
陽内部 で弱相 互作 用 に よって電 子 ニュー ト
図5
図6
太 陽電 子 ニ ュ ー ト リ ノ事 象 の 方 向性
太 陽 電 子 ニ ュー トリ ノの 観 測 結 果
リ ノ 固有 状 態 に 創 られ た ニ ュー ト リ ノ は,3個 態 に あ る とい え ます.と か ら,異
の 質 量 固有 状 態 の 一 定 の 重 ね 合 わ せ 状
こ ろ が 同 じ運 動 量 状 態 で も三 つ の 項 は 異 な る質 量 を も ち ま す
な る エ ネ ル ギ ー で 従 っ て 異 な る固 有 振 動 数 を持 ち ます.そ
こで 時間が 経つ に
つ れ 重 ね 合 わ せ の 比 重 が 変 わ り,当 初 は 電 子 ニ ュ ー トリ ノ純 粋 状 態 だ っ た も の が,他 の(ミ
ュ ー ニ ュ ー ト リノや タ ウ ニ ュ ー ト リノ)成
ト リノ成 分 が 減 りま す.こ さ れ ま し た.そ
れ は,太
分 が 増 え て きて,そ
の 分 電 子 ニ ュー
の 説 明 が 出 て 暫 く し て も っ と変 換 効 率 の 良 い 可 能 性 が 指 摘
陽 内部 の よ う な 電 子 密 度 の 大 き い 所 で は,電
子 ニュー トリノ
は 電 子 との 相 互 作 用 に よ っ て 真 空 中 と は 異 な る有 効 質 量 を持 つ こ とに よ る も の で,提 唱 者 達 の 頭 文 字 を 採 っ てMSW方
式 と呼 ば れ て い ま す.こ
の 場 合 も変 換 の 効 率 は2
種 類 の 固 有 状 態 間 の 混 合 角 と質 量 の2乗 差 に よ っ て 決 ま り ま す.KAMIOKANDEと 37Clの 他 ,最 近 発 表 さ れ た 低 エ ネ ル ギ ー 太 陽 電 子 ニ ュ ー ト リノ に 関 す る71Gaの を も含 め て のMSW解
析 結 果 を,図7に
示 し ます.
結果
図7
太 陽 電 子 ニ ュー ト リ ノMSW解
析結果
11.4 地 球 大 気 中 で 創 ら れ た ニ ュ ー トリ ノ 弱 相 互 作 用 で 創 ら れ た ニ ュ ー ト リ ノが 他 の 種 類 の ニ ュ ー ト リ ノ に変 わ っ て し ま う ら し い 現 象 が,もう一つ見つかり
ま した.宇
宙 線 は 地 球 大 気 に 入 る と核 衝 突 に よ って パ
イ 中 間 子 等 を創 り,荷 電 パ イ 中 間 子 は 荷 電 ミュ ー オ ン と ミュ ー オ ン族 ニ ュ ー ト リノ と に 崩 壊 し,荷 電 ミュ ー オ ン が 更 に 崩 壊 す る と電 子(陽
ま た は 陰)と 電 子 族 ニ ュー ト リ
ノ と,ミ ュ ー オ ン 族 ニ ュー ト リ ノ とに 崩 壊 し ます.で
す か ら,ミ
リ ノ と電 子 族 ニ ュ ー ト リ ノ との 数 の 比 は2対1か ん.KAMIOKANDEで
は 水 中 の 酸 素 の 原 子 核 と の衝 突 で ミュ ー オ ン族 ニ ュー ト リ ノ
は ミュ ー オ ン を,そ
して 電 子 族 ニ ュー トリ ノ は 陽 ま た は 陰 の 電 子 を創 りま す.ミ
オ ン で あ る か 電 子 で あ る か は,創 ます か ら,ミ で,結 IMBも
るCherenkov光の散らばりを定
ュー
量 す れば 判定 で き
ュ ー オ ン族 ニ ュ ー ト リ ノ と 電 子 族 ニ ュ ー ト リ ノ の 数 の 比 が わ か る わ け
果 は 約1対1と
出 ま し た.こ
こ の 結 果 を 追 認 して い ま す.こ
表 した の で,神
ュー オ ン 族 ニ ュ ー ト
ら大 き くず れ る は ず は あ り得 ませ
岡NDEのNDEをNeutrino
多 くな っ て い ます.
の 結 果 の 解 析 結 果 も 図7に
示 し て あ り ま す.
の よ う に ニ ュー ト リ ノ関 連 の 結 果 を 幾 つ か 発 Detection
Experimentと
理 解 す る人 も
11.5 陽 子 崩 壊 そ の 他 につ い て 当初 の 主 目的 で あ っ た 陽 子 崩 壊 は10年 (5)理 論 は 否 定 さ れ まし た.最 近,高 精 密 実 験 の デ ー タ か ら,Fermi粒 SUSY-SU(5)理
論 が,衝
以 上 観 測 を続 け て も事 例 が み つ か ら ず,SU
エ ネ ル ギ ー 電 子-陽 電 子 衝 突 のLEP実
子 とBose粒
子 と の 対 称 性SUSYを
突 エ ネ ル ギー3×1016GeVで
強,弱,電
験 での
取 り入 れ た
磁 の3相
互 作用 の
強 さ を等 し くす る こ とが わ か り,大 統 一 理 論 の 有 力 候 補 と考 え る 人 が 多 くな っ て い ま す.陽
子 崩 壊 以 外 に も,磁 気 単 極 子 や 宇 宙 の 暗 黒 物 質 の 有 力 候 補 と考 え ら れ て い た
SUSY粒
子 ニ ュ ー トラ リー ノ も探 索 し ま した が,こ
れ ま での と ころ結 果 は 否定 的 で
す. 11.6
これ か らの こ と
不 遜 と思 わ れ る 方 もあ る と は 存 じ ます が,こ
こで 不 惑 の 年 に 免 じ て私 見 を 述 べ させ
て 戴 き ます. 1) 太 陽 ニ ュ ー ト リ ノ と 大 気 ニ ュ ー ト リ ノ の 問 題 は,現 KAMIOKANDE(神
岡 で5万
て 今 世 紀(20世
紀)中
トン)とSNO(カ
在 建 設 中 のSuper-
ナ ダ で 重 水1,000ト
に 飛 躍 的 な精 密 化 が 達 成 さ れ る で し ょ う.し
ン)と
か し こ れ ら は,
或 る種 類 の ニ ュ ー ト リ ノが 見 え るべ き量 ほ ど見 え て な い とい う実 験 結 果 で,こ で ニ ュ ー ト リ ノの 種 類 間 振 動 を結 論 す る わ け に は い き ませ ん.初
によっ
れ だけ
めは なか った種類 の
ニ ュ ー ト リ ノ が確 か に現 れ て い る こ と を実 験 で示 す こ とが 緊 要 で す . 2) ニ ュ ー ト リ ノ質 量 の 小 さ い 理 由 を 自然 に 説 明 す るsee-saw理
論 と 図7の
結果
と を私 流 に 組 み合 わ せ る と;各 世 代 に 重 い右 巻 きニ ュ ー ト リノ が 存 在 し,そ の 質 量 は 対 応 す る 軽 粒 子 の 質 量 の 約4×1010で 10-5eV,ミ
あ っ て,お
お よ そ 電 子 ニ ュ ー ト リ ノ質 量 は2×
ュ ー ニ ュ ー ト リ ノ質 量 は4×10-3eV,タ
ウ ニ ュ ー ト リ ノ 質 量 は7×10-2
eVと 結 論 さ れ ま す.こ れ を地 上 で検 証 す る に は,加 速 器 か らの4GeV以 上 の エネ ル ギーを持 っ た ミュ ー ニ ュ ー ト リノ の ビ ー ム を数 百 キ ロ メー トル位 飛 ば した 所 で タ ウ ニ ュ ー トリ ノ が 現 れ て い る こ と を,巨 大 検 出器 で タ ウ が 実 際 に 創 られ る の を示 す 必 要 が あ りま す.準 して はKEKの
備 期 間 を考 え る と今 世 紀(20世
紀)中
陽 子 エ ネ ル ギー をせ め て35GeVま
に は 無 理 か も し れ な い が,私 で 増 強 し て,で
と
き た 高 エ ネ ル ギー
の ミュ ー ニ ュ ー ト リ ノ の ビ ー ム を神 岡 に 向 け て 射 出 し,Super-KAMIOKANDEで 創 ら れ た タ ウ を 検 出 し て 欲 し い と願 っ て 止 み ま せ ん.外 研 究 所 で も ヨー ロ ッパ のCERNで
も,既
国 で は 米 国 のFermi加
速器
に この種 の実 験 の具体 的検 討 に入 って い ま
す. 3) 宇 宙 に 満 ち満 ち て い る と信 じ ら れ て い る1.9Kの ニ ュ ー ト リ ノ天 体 物 理 学 の 最 重 要 問 題 で す が,こ
背 景 ニ ュ ー ト リ ノ の 研 究 は,
れ を フ ォー カ ス す る可 能 性 が 見 え て
き た の で,も れ ば,宇
し検 出 器 自体 が 最 近 の 目覚 ま しい 技 術 革 新 に よ っ て 近 い 将 来 に 可 能 に な
宙 の 理 解 は 大 き く進 歩 す る こ と で し ょ う.あ
るいは今世 紀 中に見 通 しくらい
は つ くか も し れ ませ ん. 11.7
最 後 に あ た って
与 え ら れ た 紙 数 も 尽 き か け て き ま し た.も ら,拙 (1992)
著"Observational 229∼402を
Neutrino
う少 し詳 し い 話 を と い う方 が あ り ま した
Astrophysics",
Phys.
Rep.
220
No.5
&
6
御 参 照 下 さ い.
KAMIOKANDEを
実 現,さ
ら に はSuper-KAMIOKANDEの
に 実 に 多 くの 方 々 の お 世 話 に な り ま した.い
建 設に 到達 す る の
ち い ちお 名 前 を 挙 げ ませ ん が,文
部省及
び 東 京 大 学 の 関 連 部 局 の 方 々 の 力 強 い御 後 援 に は我 々 一 同 深 く感 謝 して お りま す.ま た 現 地 の 神 岡 鉱 山 及 び 神 岡町 の 皆 さ ん の 暖 か い 協 力 が な け れ ば 現 在 の 状 況 は あ り得 な か っ た と痛 感 し て お り ま す.ま
た 忘 れ て は な ら な い の は,20イ
ンチ径 の光 電 子 増倍
管 の 開 発 に 踏 み 切 っ て 下 さ っ た浜 松 ホ トニ クス 社 長晝 馬 輝 夫 氏 の 英 断 です.こ でKAMIOKANDEの
成 果 の 基 礎 が で き た の で す か ら.(筆 者=こ
京大 学名 誉 教 授.1926年
生 まれ,1951年
のお 陰
しば ・ま さ と し,東
東 京 大学 理 学部 卒 業)
初 出:日 本 物 理 学 会 誌51(1996)332-336.
編 者 注:小 柴 昌俊 氏 は,ニ ュー ト リノ天文 学 を創 始 した 功 績 に よ り2002年 度 の ノー ベ ル 物 理 学 賞 を授 賞 され た.
12.
ニ ュ ー ト リノ に 質 量 が あ る こ との 発 見 梶
12.1
は
も しニ ュ ー ト リ ノに 質 量 が あ る と,あ
じ
め
田
隆
章
に
る種 類 の ニ ュ ー ト リ ノが 飛 行 中 に 別 な 種 類 の
ニ ュ ー ト リ ノ に 転 移 す る ニ ュ ー ト リ ノ 振 動 と い う現 象 が 起 こ る こ と は ,理 論 的 に は 1962年 や,加
以 来 知 ら れ て い た1).こ の た め,原
子 炉 か ら の ニ ュ ー ト リ ノ を測 定 す る 実 験
速 器 で ニ ュ ー ト リ ノ を生 成 し測 定 す る 実 験 で ニ ュ ー ト リ ノ振 動 を探 す 試 み が 多
く な さ れ て き た が,ニ
ュ ー トリ ノ振 動 は 発 見 さ れ なか っ た.
ニ ュ ー ト リノ 振 動 は,上 年,カ
記 の よ う な実 験 と は全 く別 な と こ ろ か ら発 見 さ れ た .1988
ミオ カ ン デ 実 験 は 大 気 ニ ュー ト リ ノ 中 のν μ/νe比が 理 論 の 約6割
しか な い と発
表 した2).こ の 結 果 は 当 初 他 の 実 験 で 確 認 さ れ な か っ た こ と も あ り,必 ず し も広 く受 け 入 れ られ な か っ た.し
か し,こ
の 問 題 は1996年
観 測 が 始 ま っ た50,000ト
ン水 チ ェ
レ ン コフ 検 出 器 ス ー パ ー カ ミオ カ ン デ に お い て 大 量 の 大 気 ニ ュ ー ト リ ノ事 象 が 観 測 さ れ た こ とに よ り急 速 に 理 解 が 進 ん だ.ス 1998年6月
ー パ ー カ ミオ カ ン デ 共 同 実 験 グ ル ー プ*1は
岐 阜 県 高 山 市 で 開 催 さ れ た 第18回
会 議("ニ
ュ ー ト リノ98")に
お い て,大
ニ ュ ー トリ ノ物 理 学 と天 体 物 理 学 国 際
気 ニ ュ ー ト リ ノの デー タ か ら得 ら れ た 結 論
と して 「ニ ュ ー ト リ ノ振 動 の 証 拠 」 を発 表 し た3).ス ー パ ー カ ミオ カ ン デ の デ ー タ は 現 在 も増 え 続 け て い る の で,本 文 に お い て は,そ
の 後 の デー タ も含 め て ニ ュ ー ト リノ
振 動 の 発 見 に 関 して 報 告 す る. 12.2
大 気 ニ ュ ー トリノ
大 気 ニ ュ ー ト リ ノ は大 気 上 層 に 入 射 し た 一 次 宇 宙 線 の大 気 中 の 原 子 核 との 相 互 作 用 に よ り作 られ た π 中 間 子(お
よ び,数
は π の1割
程 度 で あ る が,K中
チ ェ ー ン に よ り生 成 さ れ る( の
).こ
比 は エ ネ ル ギ ー に よ らず 精 度 よ く計 算 で き る.大
ノ の フ ラ ッ ク ス の 絶 対 値 の 不 定 性 は 約20%あ で あ る.ま 1GeV以
崩壊
ラ ッ クス
気 ニ ュー トリ
るが,ν μとνeの比 の 不 定 性 は5%以
下
た,大 気 ニ ュ ー ト リノ の フ ラ ッ ク ス は 地 磁 気 の 効 果 が あ ま り きか な くな る
上 で は 数%内
の 精 度 で 上 下 対 称 と予 想 さ れ て い る.一
*1 東 京 大 学 宇 宙 線 研 究所 所,東
間 子)の
の た め,フ
海 大 学,東
,東
北 大 学,新
京 工 業 大 学,岐
ラ ン ドか らな る13の
潟 大 学,高
阜 大 学,大
し,ニ
ュー ト
エ ネ ル ギ ー 加 速 器 研 究 機 構 素 粒 子 原 子核 研 究
阪 大 学,神
外 国 の 研 究 機 関 の共 同 研 究.
方,も
戸 大 学,お
よ び ア メ リ カ,韓
国,ポ
ー
リ ノ振 動 が 起 こ っ て い る と,こ れ らの 量 の 観 測 値 は 予 想 と違 っ て くる は ず で あ る. 大 気 ニ ュ ー ト リ ノの 観 測 は1960年
代 に 始 ま っ た.そ
の 後,大
気 ニ ュー トリノの研
究 が 進 む の に 間 接 的 に 大 き な影 響 を 及 ぼ し た の は 陽 子 崩 壊 の 探 索 で あ っ た.陽 は1970年
子崩壊
代 に 提 唱 され た 素 粒 子 間 に 働 く3種 の 力 の 「大 統 一 理 論 」 の 必 然 的 帰 結 と
し て 予 言 さ れ,1980年 験 で は100か
ら1,000ト
頃 か ら世 界 各 地 で 陽 子 崩 壊 探 索 実 験 が 始 ま っ た.こ ン ほ どの 物 質 を1年
で の 陽 子 崩 壊 を観 測 し よ う と い う もの で あ っ た.こ
れ らの 実 験 装 置 は 宇 宙 線 の バ ッ ク
グ ラ ウ ン ド を極 力 避 け る た め 地 下 深 く設 置 さ れ た.し 避 け ら れ な い の が 大 気 ニ ュ ー ト リノ で あ る.さ 事 象 は 測 定 器 内部 で 発 生 す る の で,他 た が っ て,大
か しい く ら地 下 深 くに 行 っ て も
らに や っか い な こ と に,ニ
ュー トリノ
の 宇 宙 線 に 比 べ て 陽 子 崩 壊 と 間違 えや す い.し
気 ニ ュ ー トリ ノ事 象 を き ち ん と理 解 して 陽 子 崩 壊 の バ ッ グ グ ラ ウ ン ドが
ど の程 度 あ る か 調 べ る 必 要 が あ っ た.陽 い が,あ
れ らの実
以 上 に わ た り長 時 間 観 測 し,そ の 物 質 中
子 崩 壊 は2000年
末現 在 まだ発 見 されて い な
る 意 味 で 陽 子 崩 壊 の バ ッ グ グ ラ ウ ン ドの研 究 と して 始 ま っ た 大 気 ニ ュ ー ト リ
ノ の研 究 は ニ ュー ト リノ 振動 の 発 見 と して 結 実 した. 12.3 2000年
ニ ュ ー ト リ ノ振 動 の 発 見
末 現 在 ス ー パ ー カ ミ オ カ ン デ は 約3年
互 作 用 した 大 気 ニ ュ ー ト リノ 事 象 約11,000例 に,大
半 の観 測 で測 定器 の 有効 体積 内 で相 を得 た.と
こ ろ で,先
ほ ど述べ た よ う
気 ニ ュ ー ト リノ 中 の ミュ ー ニ ュ ー ト リ ノ と電 子 ニ ュ ー ト リ ノの フ ラ ッ ク ス 比 は
精 度 よ く計 算 で き る.し た が っ て,実 験 的 に ニ ュー ト リノ相 互 作 用 で 生 成 され た ミュ ー オ ン と電 子 の 数 を調 べ て シ ミュ レ ー シ ョ ン 計 算 と比 較 す れ ば ミュ ー ニ ュー ト リノ と 電 子 ニ ュ ー ト リ ノの フ ラ ッ ク ス 比 が 予 想 通 りか 否 か 調 べ る こ と が で き る.も 値 が 予 想 と合 っ て い な け れ ば,ニ
ュー ト リノ 振 動 な ど に よ り フ ラ ッ クス の 比 が 変 わ っ
た と考 え る こ とが で き る.こ れ らの 大 気 ニ ュ ー ト リノ事 象 に つ い て,(ミ 子)比(こ GeVの
れ は νμ/νe比に ほ ぼ 対 応 す る)を
と こ ろ で,垂 15km,一 で,観
求 め る と,エ
ュ ー オ ン/電
ネ ル ギ ー 約0.1か
範 囲 で あ ま りエ ネ ル ギ ー に 強 く よ らず 理 論 値 の 約65%と,明
果 が 得 られ た.こ
し,観 測
ら10
らか に 小 さ い 結
れ は カ ミオ カ ンデ の 結 果 と 誤 差 の 範 囲 内 で 一 致 し て い る.
直 下 向 き の ニ ュ ー ト リノ の 飛 行 距 離 が 大 気 の 厚 さ に 対 応 して お お よ そ
方 垂 直 上 向 き の ニ ユ ー ト リ ノ の 飛 行 距 離 は地 球 の 直 径 か ら12,800kmな 測 さ れ た νμ/νe比の 異 常 が ニ ュ ー トリ ノ振 動 に よ る も の だ とす る と,ニ
の ュー ト
リノ振 動 の 振 動 長 に よ っ て は 事 象 数 の 天 頂 角 分 布 に 際 だ っ た 上 下 非 対 称 性 が 予 想 で き る.特
に ニ ュ ー ト リ ノの エ ネ ル ギ ー が 高 い ほ ど2次 粒 子 の 方 向 とニ ュ ー トリ ノ の 方 向
の 相 関 が 強 い の で,こ 測 し た 約1GeV以
の 効 果 を は っ き り観 測 しや す い.一
下 の エ ネ ル ギ ー の デ ー タ で は,ニ
方,当
初 カ ミオ カ ン デ が 観
ュ ー ト リノ と2次 粒 子 の 方 向 の
相 関 が あ ま り よ くな い の で,明 確 な上 下 非 対 称 性 を観 測 す る の は なか な か 難 し い.こ
図1
スー パ ー カ ミオ カ ン デ で 観 測 さ れ た 約1.4GeV以 上 の 高 エ ネ ル ギ ー大 気 ニ ュー トリ ノサ ンプ ル 中 の 電 子 事 象 と ミュー オ ン事 象 の 天 頂角 分 布 実 線 の ヒス トグ ラム は ニ ュ ー ト リノ振 動 を考 え な い とき の モ ンテ カ ル ロ計 算 に よ る 予 想 分 布 を示 す.ま た,点 線 の ヒ ス ト グ ラ ム は νμ→ ντ間 の ニ ュ ー ト リ ノ振 動 を 仮 定 し,Δm2=0.0025eV2,sin22θ=1.0の 場合 の予想分 布で あ る.こ
の 際,事
象数 は最 もフ ィ ッ トが 良 くな る よ うあ わせ て あ る.θ は 天
頂 角 を表 し,cosθ=1は
の よ う な 考 え に 基 づ き,カ
下 向 きの 事 象 を示 す.
ミ オ カ ン デ で は 既 に1994年,数GeV領
域 の大 気 ニ ュー
ト リノ の デ ー タ を研 究 して ミュ ー ニ ュー ト リ ノ事 象 に つ い て 上 向 き の 事 象 が 大 き く減 っ て い る こ と を 発 表 し て い た4).し か し な が ら,統 計 精 度 が 足 りず,ニ
ュ ー ト リ ノ振
動 の 決 定 的 な デ ー タ と は な らな か っ た. 図1に
ス ー パ ー カ ミオ カ ン デ で観 測 さ れ た 高 エ ネ ル ギ ー 大 気 ニ ュ ー ト リ ノサ ン プ ル
中 の 電 子 事 象 と ミュ ー オ ン事 象 の天 頂 角 分 布 を 示 す.図 象 は 下 向 の そ れ に 比 べ て0.53±0.04し
よ り,上 向 き の ミュ ー オ ン事
か な い こ と が わ か る.こ
は ニ ュ ー ト リ ノ 振 動 が な い 場 合 に は2%の
の エ ネ ル ギー 領 域 で
精 度 で 事 象 数 は 上 下 対 称 と計 算 さ れ て お
り,観 測 さ れ た上 下 非 対 称 性 を ニ ュ ー ト リノ振 動 を 導 入 せ ず に 説 明 す る こ とは で き な い.一
方,図1に
示 した ように ν μ と ντ間 の ニ ュ ー ト リ ノ振 動 を 導 入 す る と う ま くデ
ー タ を説 明 で き る .な お,電
子事 象 の 天 頂 角 分 布 の 形 が 計 算 値 とよ くあ うこ と な どか
ら,ν μ と νe間の ニ ュ ー ト リ ノ振 動 で は デ ー タ を う ま く説 明 で き な い こ と も わ か る. よ り高 エ ネ ル ギ ー 領 域 の 大 気 ニ ュ ー ト リ ノ は,測 定 器 の 下 の 岩 盤 で の相 互 作 用 で 生 成 さ れ 測 定 器 に 上 向 きに 入 射 した ミュ ー オ ン 事 象 と して 観 測 さ れ る.カ
ミオ カ ン デ と
ス ー パ ー カ ミ オ カ ン デ で は 測 定 器 に 上 向 きに 入 射 し た ミュ ー オ ン事 象 に つ い て も解 析 を行 っ た.詳 細 は 述 べ な い が,観
測 さ れ た 上 向 き ミュ ー オ ン の デ ー タ を説 明 す る た め
に も ニ ュ ー ト リ ノ 振 動 が 必 要 で あ る. 以 上 述 べ て き た よ うに 大 気 ニ ュ ー ト リノ の デ ー タ は νμと ντ間 の ニ ュ ー トリ ノ振 動 な し に は 説 明 が で き な い.図2に
は カ ミオ カ ン デ と ス ー パ ー カ ミオ カ ン デ の 大 気 ニ ュ
ー ト リ ノ デ ー タ か ら求 め た ニ ュ ー ト リ ノ振 動 パ ラ メー タ の90%信 域 を示 す.ス (Δm2)で
ー パ ー カ ミオ カ ン デ の デ ー タ は2種
お お よ そ1.6×10-3か
ら4×10-3eV2間
頼 度 で 許 さ れ る領
の ニ ュ ー ト リ ノ の 質 量 の2乗 と,2種
の差
の ニュ ー トリノ間の混 合角
図2
カ ミオ カ ンデ と スー パ ー カ ミオ カ ンデ の デー タか ら求 め た ニ ュ ー ト リノ 振 動 の パ ラ メー タ(Δm2,sin22θ)の90%信 頼 度 で 許 され る領 域 νμ→ ντ振 動 を 仮 定 して い る.図
中の そ れ ぞ れ の 線 の 内 部 が 許 さ れ る
領 域 で あ る.図 中,実 線 と点 線 は それ ぞれ スー パ ー カ ミオ カ ンデ と カ ミ オ カ ン デ の デ ー タか ら求 め た もの を表 す.
(θ)が 大 き い こ と(sin22θ>0.88)を デ の デ ー タ は2000年
示 して い る.本 文 で 述 べ た ス ー パ ー カ ミオ カ ン
末 現 在 の もの で あ り,1998年
当 時 と比 べ る とデ ー タ 量 は2倍
上 に な っ て い る.本 文 で 述 べ た の と定 性 的 に は 同 じ結 果 を も とに,1998年 カ ミオ カ ン デ 共 同 実 験 は,大
気 ニ ュ ー ト リ ノの 観 測 を 通 して,ニ
以
スー パ ー
ュ ー トリ ノ振 動 の 証
拠 をつ か ん だ と結 論 し た3). 12.4
お
わ
り
に
こ の よ うな カ ミオ カ ン デ と スー パ ー カ ミオ カ ン デ に お け る ニ ュ ー ト リ ノ振 動 の 研 究 が き っ か け と な っ て,加 で 測 定 し,よ
速 器 で 生 成 した ニ ュ ー ト リノ を数 百km以
り精 密 に ニ ュ ー ト リ ノ の質 量 を 測 定 す る実 験 や,ニ
上 も離 れ た とこ ろ ュ ー トリ ノ振 動 の 結
果 生 ま れ て い る は ず の タ ウ ニ ュ ー ト リ ノの 観 測 な ど,大 気 ニ ュー ト リノ の 観 測 と相 補 的 な研 究 を進 め る 実 験 が 日本,ア る.こ れ ら の 研 究 は,将
メ リカ,ヨ
ー ロ ッパ で 進 行 中,あ
る いは準備 中 であ
来 ま す ま す 発 展 す る と期 待 さ れ て い る.
も し異 種 の ニ ュ ー ト リ ノ間 の 質 量 が 大 き く違 う と仮 定 す る と,大 気 ニ ュ ー ト リノ の デ ー タか ら一 番 重 い ニ ュ ー ト リノ の 質 量 は お お よ そ0.05eV/c2で と こ ろ で,こ 小 さ い.な
の 質 量 は,一
あ る こ とが わ か る.
番 重 い ク ォ ー ク や 荷 電 レ プ トン と 比 べ る と,10桁
ぜ こ の よ う に ニ ュ ー ト リノ の 質 量 は 特 別 小 さ い の で あ ろ うか?シ
メ カ ニ ズ ム5)と 呼 ば れ る理 論 に よ れ ば,こ
ー ソー
の よ う に 小 さ い ニ ュ ー ト リ ノの 質 量 は,
超 高 エ ネ ル ギ ー の世 界 に新 しい 物 理 が あ る と考 え て 自然 に 説 明 が で き る.さ し ろ い こ と に,ニ
以上 も
らに お も
ュ ー トリ ノ の 質 量 で示 唆 さ れ た超 高 エ ネ ル ギー の エ ネ ル ギー ス ケ ー
ル は大 統 一 理 論 で示 唆 さ れ る エ ネ ル ギー ス ケー ル よ り少 し小 さ い も の の ほ ぼ 同 じ程 度
で あ り,ニ
ュ ー ト リ ノ の 質 量 は お そ ら く大 統 一 理 論 の 世 界 を 理 解 す る た め の 貴 重 な デ
ー タ に な っ て い る は ず で あ る .と ノ の 質 量 ば か り で な く,ミ
こ ろ で,大
気 ニ ュ ー ト リ ノ の デ ー タ は,ニ
え 得 る 最 大 で あ る と い う こ と も 示 し て い る.こ
の こ と は,実
が 発 見 さ れ る ま で 予 想 さ れ な か っ た こ と で あ り,現 い ろ な 理 論 的 研 究 が な さ れ て い る が,ま を 理 解 す る こ と で,大 う.こ
の よ う に,ニ
ュー トリ
ュ ー ニ ュ ー ト リ ノ と タ ウ ニ ュ ー トリ ノ 間 の 混 合 角 が ほ ぼ 考 験 的 に ニ ュー ト リノ振 動
在 こ の 理 由 を説 明 す る た め に い ろ
だ 定 説 は 無 い よ う で あ る .お
そ ら く,混
合 角
統 一 理 論 の 世 界 を よ り具 体 的 に 理 解 す る こ と が で き る の で あ ろ ュ ー ト リ ノの 質 量 の 発 見 は素 粒 子 の 標 準 理 論 を 越 え た 物 理 を理 解
す る た め の 突 破 口 と な る も の と 期 待 し て い る.(筆 宙 線 研 究 所 教 授.1959年
生 まれ,1981年
者=か
じ た ・た か あ き,東
京大 学宇
埼 玉 大 学 理 学 部 卒 業)
参 考 文献 1) Z.Maki,M.Nakagawa
and
2) K.S.Hirata,et 3) Y.Fukuda,et and
Physics
4) Y.Fukuda,et
collaborations,talk and
Proceedings
in the Universe,edited
1979)p.95.M.Gell-Mann,P.Ramond van
Nieuwenhuizen
the Kamiokande
at the 18 th International
Astrophysics,Takayama,Japan,June
al.:Phys.Lett.B
5) T.Yanagida:in Number
205(1988)416.
al.:Phys.Rev.Lett.88(1998)1562;T.Kajita:for
Super-Kamiokande
Neutrino
S.Sakata:Prog.Theo.Phys.28(1962)870.
al.:Phys.Lett.B
and
Conference
on
1998.
335(1994)237. of by
the
Workshop
O.Sawada and
D.Z.Freedman(North
on and
the
Unified
A.Sugamoto(KEK
R.Slansky:in
Theory
and report
Supergravity,edited
Holland,Amsterdam,1979)p.315.
Baryon 79-18, by
P.
13.
宇 宙 線 研 究50年
の歩 み 西
は
じ め
村
純
に
宇 宙 線 が 発 見 され た の は1912年 で あ っ た.Hessは
オ ー ス トリア の 科 学 者V.
自 か ら 自 由 気 球 に 乗 り,高 度4kmま
F. Hessに
よ る気 球 実 験
で昇 っ て 気 体 の 電 離 度 が ふ
え る こ と を観 測 し,エ ネ ル ギー の 極 め て 高 い 放 射 線 が 宇 宙 か ら 入 射 し て い る と 推 論 し た.こ
こ に 現 代 の 飛 翔 体 に よ る 宇 宙科 学 研 究 の 原 形 を 見 る こ とが で き る.数
試 と討 論 の 末,宇
宙 物 理 学 的 な 研 究 と新 粒 子 の 発 見 が も た ら さ れ,宇
の 一 つ の 分 野 と し て 成 立 す る の は1930年
多 くの追
宙線研 究 が学 問
代 の こ と で あ る.宇 宙 線 研 究 の 精 神 は 未 掘
の 鉱 山 か ら未 知 の 鉱 石 を掘 り出 す こ とに あ っ た. 日本 で の 宇 宙 線 の 研 究 も1930年
代 に 入 っ て 始 ま っ て い る.わ
発 祥 は 戦 前 の 理 化 学 研 究 所 に 見 る こ とが で き る が,宇
宙線 の組織 的研 究 の始 ま りもま
た 理 研 の 仁 科 芳 雄 研 究 室 に 見 る こ とが で き る.直 径40cmの トン ネ ル で の 地 下 実 験,安 C. Anderson達
が 国の近 代 物理 学 の
マ グ ネ ッ ト霧 箱,清
定 な 連 続 観 測 を 可 能 に す る 大 型 電 離 箱,そ
し て 気 球 観 測.
の 発 見 と独 立 に 一 足 遅 れ た もの の,「 陽 電 子 や μ 中 間 子 の 発 見 」,世
界 で 最 深 の 地 下 実 験(水
深 に 直 し て3,000m).戦
争 で 実 現 に 至 ら な か っ た が,異
る地 磁 気 緯 度 の 宇 宙 線 強 度 連 続 観 測 に樺 太 か ら パ ラ オ 諸 島 の5か る計 画,世
水
な
所 に電離 箱 を配 置す
界 的 水 準 を ゆ くレ ベ ル と そ の 構 想 の雄 大 さ は 驚 くに値 す る.
理 研 で は1942年
に 大 型 電 離 箱 の 連 続 観 測 が 始 ま っ て,す
ぐ太 陽 爆 発 に 伴 っ て 発 生
す る 高 エ ネ ル ギー 粒 子 「太 陽 宇 宙 線 」 の 観 測 に 成 功 し て い る.し か し,こ れ は 機 械 の 故 障 とい う こ と で 見 逃 して し ま っ た.ま に,あ
た,陽
電 子や μ中間 子 の例 に見 られ る よ う
と一 息 で 世 界 最 初 の 発 見 とい う こ とに 止 ま っ た の は,研
こ とで,や
む を得 な い結 果 で あ っ た.戦
さ れ る.あ
と10年
続 け て い た ら,ど
究者 の層 の薄 さに よる
争 が 始 ま り,大 部 分 の 研 究 が 停 止 を余 儀 な く
ん なにか 大 きな発 展が もた らさ れて い た こ とで
あ ら う か,と
残 念 な こ とで あ る.
戦 時 中,宇
宙 線 の 研 究 で 継 続 して い た の は宇 宙 線 強 度 の 連 続 観 測 と理 論 的 研 究 で あ
る.連
続 観 測 は 金 沢 に疎 開 して 続 行 し て い る.
理 論 の 研 究 は μ 中 間 子 の 謎 を解 くた め に 提 唱 さ れ た 坂 田 昌 一 ・谷 川 安 孝 ・井 上 健 の 「2中 間 子 論 」,大 気 外 か ら 入 射 す る一 次 宇 宙 線 の 「陽 電 子 説 」 に 対 す る 玉 木 英 彦 の 「陽 子 説 」,坂 田 ・谷 川 に よ る 「中 性 中 間 子 の 短 寿 命 で の γ線 へ の 崩 壊 」,そ し て こ の γ線 に よ り起 こ され た 電 子 シ ャ ワ ー が 「 上 空 の 電 子 成 分 」 を作 る とす る 武 谷 三 男 の 提 唱,い
ず れ を取 っ て も戦 後 の 宇 宙 線 研 究 の根 幹 を なす 第 一 級 の 研 究 で あ っ た.
13.1
戦 後 か らの 出発
戦 後 い ち早 く宇 宙 線 の 実 験 的 研 究 に 取 り掛 か っ た の は こ の 理 研 の 宇 宙 線 研 究 室 と, 理 研 か ら名 古 屋 大 学 に 移 られ た 関 戸 弥 太 郎 の 研 究 室 で あ る.ま
た理 研 か ら気 象 研 究所
に 移 られ た 皆 川 理 の 研 究 室 で あ る.つ い で,日 本 で の 原 子 核 研 究 の 禁 止 に よ り大 阪大 学 か ら新 し くで き た 大 阪 市 大 に 渡 瀬 譲 の 率 い る大 き な グ ル ー プ が こ れ に加 わ っ た.気 象 研 究 所 の 皆 川 はや が て 神 戸 大 学 に 移 り,理 研 か ら 中 川 重 雄 が 立 教 大 学 に 招 か れ,こ こ に 五 つ の 大 き な宇 宙 線 研 究 室 が 生 ま れ た こ とに な る.戦
後 わが 国の宇宙 線研 究 はこ
れ らの 研 究 室 と各 地 の 若 手 の 理 論 グル ー プ を 中 心 に 発 展 し て 行 く. 1948年
に はC.
M.
G. Lattes, G. P. S. Occhialinni,
川 ・井 上 が 予 言 し た2中 のNobel賞
C. F. Powellに
間 子 が 宇 宙 線 中 に 発 見 さ れ た.π
よ っ て 坂 田 ・谷
中 間 子 の 発 見 と,湯
は 宇 宙 線 研 究 に も大 き な刺 激 を与 え ず に は お か な か っ た .そ
中 途 絶 え て い た数 年 間 に わ た る 文 献 が 日本 に 入 っ て 来 た.諸
川秀 樹
し て,戦
時
外 国で行 われ た膨大 な実
験 結 果 と新 し い発 見 で あ る. 13.1.1 宇 宙 線 理 論 の 研 究 素 粒 子 論 研 究 は 湯 川 ・坂 田 達 の 中 間 子 論 と朝 永 振 一 郎 の 超 多 時 間 理 論 を 中心 に意 気 は 大 い に 上 が っ て い た.そ た.東
京,名
古 屋,京
の 中 に 宇 宙 線 の 理 論 的 研 究 を 行 う グ ル ー プ も生 ま れ て き
都 の グ ル ー プ で あ る.
先 年 亡 く な られ た 早 川 幸 男 は 若 手 の研 究 者 を組 織 して,こ し,宇 宙 線 像 の確 立 に全 力 を か た む け た.そ
の 膨 大 な 文 献 を整 理 分 析
の成 果の 一つ は朝 永の 電子対 生成 の理論
を活 用 し て 清 水 トン ネ ル の 実 験 デ ー タ を解 析 し た 「地 下 宇 宙 線 の 解 釈 」 で あ る.つ
い
で 共 同 研 究 者 の 藤 本 陽 一 ・山 口嘉 夫 は 新 し い 「ス ター 理 論 」(低 エ ネ ル ギ ー 原 子 核 反 応 で の 核 の 蒸 発 現 象)を
提 案 し た.空 気 シ ャ ワ ー 現 象 の解 析 に 不 可 欠 な西 村 純 ・鎌 田
甲 一 に よ る 「三 次 元 電 子 シ ャ ワ ー 理 論 」(N-K[西 囲 気 の 中 で 刺 激 さ れ て 生 ま れ て き た が,そ
村 ・鎌 田]関
れ は2∼3年
数)は
こ の よ うな 雰
後 の こ とで あ っ た.
13.1.2 宇 宙 線 の 実 験 的研 究 設 備 や 研 究 費 が 不 十 分 な 中 で 実 験 の 成 果 が 生 まれ る に は 今 しば ら くの 時 を 必 要 と し た.た
だ,理
研 に は 僅 か な が ら昔 か らの 資 材 が 残 っ て お り,三 浦 功 と 亀 田薫 は 「 宇宙
線 シ ャ ワー の 遷 移 効 果 」 の 実 験 に 取 り組 ん で い た.一
応 の 結 果 が 得 ら れ た 頃,仁
来 日 さ れ た 親 友 のI. I. Rabi(核
受 賞 者)を
ら れ た.廃
屋 の 実 験 室 の 中,ブ
進 め 方 を見 てRabiは
磁 気 共 鳴 のNobel賞
よ う に との お 勧 め で あ っ た.こ 後 初 め て の 成 果 で あ っ た.1949年
研 究 室 に 案 内 して こ
リ キ缶 を集 め て 作 っ た 回路 の 箱,そ
大 変 感 銘 を受 け た 様 子 で あ っ た.す れ は,そ
科が
ぐ,Phys.
し て慎 重 な 実 験 の Rev.に 投 稿 す る
の 後 発 展 を遂 げ た 日本 の 二 次 宇 宙 線 研 究 の戦
の こ と で あ る.
13.2
1950年
代 の こ と
13.2.1 新 しい 宇 宙 物 理 学 の 提 唱 1950年,早
川 はMITの
夏 の 学 校 の 参 加 を機 会 に ア メ リカ を訪 れ て い る.ア
で の 実 験 の 素 晴 ら し い進 歩 の 状 況 を見 て,現
メ リカ
在 の 中 心 課 題 で 争 っ て は 日本 で は 不 利 で
長 い 先 を 見 通 し た 研 究 をや る 方 が効 率 的 だ と考 え た とい う.そ
こで着 目したのが宇 宙
物 理 学 的 な 宇 宙 線 の 研 究 で あ っ た. ま ず 宇 宙 線 の 加 速 理 論 に 関 連 して1952年
に 「γ線 天 文 学 」 の 重 要 性 を 提 唱 し た.
次 に 宇 宙 線 の 超 新 星 起 源 説 で あ る.「 超 新 星 起 源 説 」 は1934年 河 外 超 新 星 の 観 測 に 成 功 し た 際 唱 え,1950年
に はV.
L. Ginzburgも
早 川 の 説 は 元 素 の 生 成 に 関 連 し た と こ ろ が 新 し い 点 で あ る.つ 間 で 作 る 「放 射 性 物 質10Be」 功 した の は1970年
Zwicky自
身銀
提 唱 して い た.
い で,宇
の 重 要 性 の 指 摘 で あ る.γ 線 も10Beも
宙線 が宇宙 空
実 際 の 観 測 に成
代 に 入 っ て か ら で,現 在 も宇 宙 線 の 中 心 的 課 題 で あ る.と
γ線 天 文 学 は γ線 大 型 衛 星GROの て い る.1950年
にF.
くに,
登 場 に よ り宇 宙 物 理 学 の 一 つ の 学 問 分 野 を 形 成 し
代 に そ の 重 要 性 を提 唱 した 先 見 性 は 素 晴 ら し い と い う ほ か は な い.
13.2.2 宇 宙 線 研 究 の 息 吹 1950年
代 は 日本 の そ の 後 の 宇 宙 線 研 究 の 発 展 を も た ら した 重 要 な 時 期 で あ っ た.
一 つ は1950年
「朝 日新 聞 の 寄 付 に よ る実 験 室 」 が 契 機 と な っ て
「乗 鞍 宇 宙 線 観 測 所 」 で あ る.こ
の 年,日
で 開 か れ て い る.H.
M. S. Vallarta, J. A. Wheeler等
者 も 来 日 し,我 つ い で1956年
J. Bhabha,
,1953年
に作 られ た
本 で戦 後初 め て の理 論物 理 国 際学会 が京都 著 名 な宇 宙 線 物 理 学
々 に刺 激 を与 え て くれ た. に 共 同 利 用 研 と し て の 「原 子 核 研 究 所 」 が 設 立 さ れ た こ と で あ る.
そ して1950年 代 の 終 りに は,こ れ ら を軸 と して 日本 の 宇 宙 線 研 究 は 世 界 の 学 会 で 第 一 線 に 並 ぶ レ ベ ル に ま で 発 展 す る こ と とな っ た . 13.2.3 乗 鞍 宇 宙 線 観 測 所 の 設 立 比 較 的 お 金 の か か ら な い 宇 宙 線 研 究 に まず 力 を注 ぎ 成 果 を上 げ るべ き で は な い か と,朝 永 ・武 谷 は 宇 宙 線 の 研 究 を 応 援 して 下 さ っ た.朝 日の 乗 鞍 岳 山 頂 の 実 験 室 は1950年
に 渡 瀬,関
戸,宮
日新 聞 の 学 術 奨 励 金 に よ る 朝
崎 友 喜 雄,皆
川 を代 表 者 と し て
贈 ら れ て い る. 大 阪 市 大 は 乗 鞍 に す で に 小 屋 を持 っ て い た の で,朝
日の 小 屋 と並 ん で,宇 宙 線 研 究
者 は 乗 鞍 山 頂 で 日夜 そ の 研 究 に 没 頭 す る こ とに な っ た.し
か しこ の2つ
の小屋 だ けで
は い か に も手 狭 で あ っ た.要 望 が 叶 っ て現 在 の 宇 宙 線 観 測 所 が 東 京 大 学 の 付 置 と して 出 来 あ が っ た の は1953年
の こ と で あ る.
観 測 所 が 出 来 あ が る と,そ れ ま で 胸 に た め た 構 想 と鬱 積 を吐 き 出 す よ うに 本 格 的 な 研 究 が 始 ま る こ と に な っ た.ま
ず 作 ら れ た の が 大 型 の マ グ ネ ッ ト霧 箱,高
圧 水素 霧
箱,大
型 霧 箱,空
気 シ ャ ワ ー 観 測 装 置,そ
して 高 山 で の 宇 宙 線 強 度 の 連 続 観 測 装 置 な
ど で あ る.い ず れ も 当 時 の 宇 宙 線 研 究 の 中心 的 テ ー マ に 対 応 す る 観 測 装 置 で あ っ た. 当 時 の 研 究 の 状 況 を知 る上 で,こ 験 に 触 れ て お き た い.当
こ で は一 つ だ け 三 宅 三 郎 の 「高 圧 水 素 霧 箱 」 の 実
時,「 中 間 子 の 多重 発 生 」 は す で に観 測 か ら知 ら れ て い た が,
こ れ が 核 内 カ ス ケ ー ドに よ る も の か,核
子-核 子 衝 突 で 中 間 子 が 一 挙 に 多 数 発 生 す る
の か とい うの が 議 論 の 分 か れ る所 で あ っ た.実 験 的 に は 高 圧 の 水 素 霧 箱 が 本 命 の 装 置 で あ っ た が 技 術 的 に 難 し く,諸 外 国 で も成 功 した 例 は な か っ た.研 究 費 の ほ とん どな い 中 で,設 備 や 人 材 の 整 っ た大 会 社 に は 製 作 を頼 む こ とは で き な い.三
宅 は 町工場 と
掛 け 合 っ て,設 計 ・製 作 ・組 立 て ・検 査 ・安 全 に つ い て 全 て に 責 任 を持 つ か ら こ ち ら の い う通 り作 っ て くれ と頼 み,一 一 号 機 は 直 径25cm
,深
緒 に そ の 製 作 に あ た っ た.
さ10cm,水
素100気
圧 の 霧 箱 で,1950年
大 の 小 屋 で 陽 子-陽 子 衝 突 に よ る 中 間 子 多 重 発 生 と思 わ れ る1例 した.つ 1953年
い で 二 号 機 は 大 型 化 し,直 径50cm,深
さ20cm,水
に は 完 成 し,市
を捉 え る こ とに成 功
素 圧150気
圧 の霧 箱 を
に は 完 成 し,目 標 とす る現 象 を数 例 捉 え る こ と に 成 功 し て い る.丁 度 そ の 頃,
コス モ トロ ンが ア メ リ カ で 完 成 し,こ の 研 究 自 身 が 加 速 器 実 験 の分 野 に 移 っ た ため, そ の 物 理 的 成 果 は 大 き く取 り上 げ られ る こ とは な か っ た が,三
宅 の示 した物理 実験 学
者 と して の 高 い技 量 は 多 くの 人 に 深 い 感 銘 を与 え ず に は お か なか っ た. 13.2.4 地 上,地 この 時 期,地
下,気
上,地
球 実験 へ
下,そ
心 とす る名 古 屋 大 学,そ
して 気 球 で の 実 験 も始 め られ て い る.一
長 い デ ー タ の 集 積 と ユ ニ ー クな 考 察 を下 に,日 を生 み 始 め た.こ
戸 を中
時 中 か らの
本 の 研 究 は 国 際 的 に も注 目 さ れ る成 果
の 分 野 に は 天 文 の 萩 原 雄 祐 を委 員 長 に 地 球 物 理 の 永 田武 や 天 文 の 畑
中武 夫 が 中 心 とな っ て 電 離 層 委 員 会(現
在 の 超 高 層 委 員 会)と
の 地 球 物 理 や 天 文 の 関 係 者 が 毎 月 集 っ て,各 て い た.こ
つ は,関
して 理 研 の 連 続 観 測 の グ ル ー プ の 研 究 で あ る.戦
い う組 織 が あ り,日 本
自 の 観 測 結 果 と研 究 の 意 見 交 換 が 行 わ れ
の よ うに 多 くの他 分 野 の 学 者 の 意 見 交 換 が 太 陽 活 動 と宇 宙 線 の 強 度 変 化 に
関 す る新 し い考 察 を生 み 出 し た 功 績 は 大 きか っ た. 地 下 の 宇 宙 線 の 研 究 は 大 阪 市 大 の 渡 瀬 の 主 導 の 下 に,静
岡 県 の 焼 津 の 旧 国 鉄 の トン
ネ ル 跡 で 精 力 的 に 行 わ れ て い る.地 下 深 く 「十 数 本 の μ 中 間 子 が 同 時 に 入 射 し て く る現 象 」 の発 見 は,当
時 は 初 め て 見 る新 し い 現 象 で あ っ た.焼 津 の 地 下 で 培 わ れ た実
験 の 技 術 は そ の 後 の 地 下 の 実 験 に 生 か さ れ る こ とに な っ た もの と思 わ れ る. 原 子 核 乾 板 に よ る宇 宙 線 の 研 究 は 顕 微 鏡 で 乾 板 の 観 測 を行 う とい う こ とで,あ 研 究 費 を 必 要 と しな い 分 野 で あ っ た.π,μ
中 間 子,そ
まり
して 高 エ ネ ル ギ ー ・ジ ェ ッ ト
の 観 測 が 比 較 的 簡 単 に で き る の で 取 り付 きや す い テ ー マ で あ っ た.戦
後 間 も な くバ ー
ク レ イ の サ イ ク ロ トロ ン に 当 て た π 中 間 子 検 出 用 の 乾 板 を ス キ ャ ン し て は ど うか と い う話 が 持 ち 上 が り,各 大 学 に 幾 つ か の エ マ ル シ ョ ン ・グ ル ー プ が 発 足 し た.ゴ
ム気
球 に 原 子 核 乾 板 を取 り付 け て上 空 の 宇 宙 線 に 露 出 す る観 測 も始 ま っ た.問 線 に 感 度 を もつ 高 感 度 の 原 子核 乾 板 で あ る.Powellの のG5は
日本 へ は 輸 出 禁 止 項 目で あ っ た.富
板 の 開 発 に 力 を 注 い で くれ た が,暫
題 は,宇
指 導 に よ っ て 作 ら れ たIlford
士 フ イ ル ム や 小 西 六 写 真 工 業 も原 子 核 乾
くは 高 感 度 の も の は で き な か っ た.
長 時 間 の 気 球 観 測 を行 う た め に は 「プ ラ ス チ ッ ク気 球 」 が 不 可 欠 で あ る.海 の 僅 か な 情 報 を た よ りに,神 て 打 ち上 げ た の は容 積600m3の 約1時
宙
外か ら
戸 大 学 の 皆 川 を 中 心 に プ ラ ス チ ッ ク気 球 を 自作 して 初 め 気 球 で あ る.1954年
に 気 球 は 米 子 か ら打 ち上 げ ら れ
間 半 の 水 平 浮 遊 に 成 功 して い る.や が て,G5の
よ る 宇 宙 線 研 究 の 基 盤 は と との っ た が,や
禁 輸 も とか れ,原
子核 乾板 に
は り こ の分 野 で も研 究 費 の とぼ し さ が 決 定
的 で あ る こ とが 明 らか に な って き た. こ の 時 期,藤
本 は 早 川 の 勧 め で ブ リス トル 大 学 のPowellの
リス トル の 研 究 室 は 当 時 世 界 の 第 一 線 を行 く研 究 室 で,各 つ め か け て い た.藤 Powellの
研 究 室 に お ら れ た.ブ
国 か ら2,
30人 の 研 究 者 が
本 か ら の 情 報 は 最 先 端 の 情 報 を 日本 に も た ら し て くれ た .
研 究 室 で は,そ
の 当 時 従 来 の 約10倍
本 の 研 究 費 で は そ の1/100の
量 位 が せ い ぜ い で あ る.こ
子 シ ャ ワー が 乾 板 の 中 で観 測 され,こ 藤 本 か ら連 絡 が あ っ た.原
の 量 の 原 子 核 乾 板 を露 出 して い た .日 れ だ け 大 きい ス タ ッ ク だ と電
の 解 析 に三 次 元 シ ャ ワー 理 論 が 有 効 で あ ろ う と
子 核 乾 板 中 の 電 子 シ ャ ワ ー の 解 析 にN・K関
数 が 使 われ 始
め た の は そ の 時 か ら で あ る. 13.2.5 中 間 子 多 重 発 生 の 研 究 会(横 湯 川 先 生 のNobel賞 あ る.所
運 動 量 の 着 想)
を記 念 して 京 都 の 基礎 物 理 学 研 究 所 が 発 足 し た の は1953年
で
員 の 木 庭 二 郎 や 早 川 は 将 来 の 宇 宙 線 研 究 の 目 標 に 中 間 子 多重 発 生 を 取 り上
げ,数
回 に わ た って 研 究 会 を 開 い て お られ る.そ
し,新
し く提 案 さ れ たFermi理
論 や,そ
れ ま で の 宇 宙 線 の 実 験 や 理 論 を総 括
れ を 改 良 し たLandau理
論 を分 析 し て,そ
の 本 質 を探 り将 来 の 手 掛 か りを得 るべ く検 討 を続 け られ た. 「エ マ ル シ ョ ン ・チ ェ ンバ ー 」 の 有 効 性 と,ジ 親 の エ ネ ル ギ ー に 無 関 係 に 数 百MeVと
ェ ッ トの 「二 次 粒 子 の 横 運 動 量 」 は
い う低 い 値 を と っ て い る こ と,こ
多重 発 生 の 本 質 的 な 部 分 に 関 係 が あ る こ と に気 づ い た の は,こ
れが 中間子
の 研 究 会 の 刺 激 の賜 物
で あ る.実 験 の 一 番 の 問 題 点 は 二 次 粒 子 の エ ネ ル ギ ー を 精 度 良 く測 る こ と が む つ か し い 点 に あ っ た. エ マ ル シ ョン ・チ ェ ン バ ー は 金 属 板 と 乾 板 を 交 互 に 組 み 合 わせ サ ン ドイ ッ チ に し た 観 測 器 で,そ て い た.そ
の 構 想 は ア メ リ カ の ロ チ ェ ス ター 大 学 のB.
の 特 色 は,色
Petersた
ち に よ って 生 まれ
々 な物 質 を組 み 合 わ せ る こ とに よ り,タ ー ゲ ッ トに よ る核 相
互 作 用 の 違 いが 観 測 で き る こ と と,使 用 す る乾 板 の 量 が 少 な く経 済 性 が 高 い と い う点 で あ っ た. 日本 で も最 初 は 経 済 性 が 高 い とい う と こ ろ に そ の 魅 力 が あ っ た .や が て ター ゲ ッ ト
と な る物 質 を う ま く組 み 合 わ せ る こ と に よ っ て,効 器 が で き る こ とに 気 が つ い た.そ
率 的 でユ ニ ー ク な ジ ェ ッ トの観 測
れ は ブ リス トル の 大 ス タ ッ ク で は,二
発 生 し た π0中 間 子 か ら の γ線 が 電 子 シ ャ ワ ー を起 こ し,他
次 粒 子 と して
の 二 次 粒 子 と入 り交 じ っ
て 解 析 が 大 変 難 し い と い う藤 本 か ら の 知 らせ が ヒ ン トで あ っ た. 上 段 に 炭 素 板 の よ う な 原 子 番 号 の低 い チ ェ ン バ ー を 置 き,下 段 に 鉛 板 の チ ェ ンバ ー を 配 置 す る.上 段 で発 生 し た π0中 間 子 か ら の γ線 は 電 子 対 生 成 を起 こ さ ず に 下 段 ま で 来 て 電 子 シ ャ ワ ー を発 達 させ る.各 々 の γ線 を 分 離 して 観 測 し,親 の π0中 間 子 に 組 み 合 わ て,運 で き る.そ
動 学 的 な 関 係 か ら精 度 良 く π0中 間 子 の エ ネ ル ギ ー を決 定 す る こ とが
れ ま で 極 端 に い え ば,ジ
ェ ッ トは 形 状 しか 分 ら な か っ た こ の 方 面 の 研 究 で
エ ネ ル ギ ー 測 定 を可 能 に し,横 運 動 量 測 定 の よ う な 定 量 的 な 解 析 を可 能 に す る道 が 開 け た こ とに な る. 13.2.6 原 子 核 研 究 所 の 設 立 1956年
に は,原
子 核 研 究 所 の 設 立 に 伴 い,ど
議 論 が 高 ま っ て い た.こ
の よ うな 宇 宙 線 部 門 を 置 くべ きか の
の 年 の 初 め に 木 庭 と早 川 が 主 催 し て 基 研 で 宇 宙 線 の 将 来 計 画
シ ン ポ ジ ウ ム が 開 か れ て い る.超 高 エ ネ ル ギー 現 象 の ど こ に 焦 点 を 当 て て 研 究 す べ き か?加
速 器 の 遠 く及 ば な い1015eV以
中 の 大 き な テ ー マ で あ っ た.そ
上 の 宇 宙 線 が 起 こ す 「空 気 シ ャ ワ ー 」 は そ の
れ ま で 各 研 究 室 で 独 自 の 方 針 で 宇 宙 線 の研 究 を進 め て
き た 全 国 各 地 の 宇 宙 線 研 究 者 が 一 堂 に 会 し,そ れ ぞ れ の 戦 略 と結 果 に つ い て 述 べ て 討 論 した. 初 め に,空
気 シ ャ ワ ー の ど こ に 焦 点 を お け ば 高 エ ネ ル ギー 核 現 象 の 本 質 に 迫 る こ と
が で き るか と い う討 論 が あ り,エ マ ル シ ョ ン ・チ ェ ンバ ー,乗 ど の 新 し い成 果 の 発 表 が 行 わ れ た.何
日か の 討 論 の 後 に,大
鞍,焼
津 の地 下実験 な
方 の 意 向 と し て,近 代 的
な 空 気 シ ャー ワ ー 装 置 の 建 設 を行 い,超 高 エ ネ ル ギ ー 現 象 の 解 明 に 迫 る こ と と,原 子 核 乾 板 に よ る研 究 の 中 心 設備 をお き,エ マ ル シ ョン ・チ ェ ンバ ー を軸 に全 国 の 共 同研 究 を行 う とい う 二 つ の 案 に纏 まっ て き た. 空 気 シ ャ ワ ー の 装 置 に つ い て は,そ
の2∼3年
の 所 で 新 しい 装 置 の 建 設 に 携 わ っ て お ら れ た.こ
前 か ら小 田
Rossi
の 知 識 と経 験 に新 しい ア イ デ ア を加
え て 取 り組 め ば 世 界 第 一 級 の 装 置 が で き あ が り,新 い.ま
稔 はMITのB.
し い 成 果 が もた ら さ れ る に 違 い な
た そ の よ う な機 器 開 発 は 宇 宙 線 の 他 の 分 野 の 研 究 に も大 き な波 及効 果 をお よぼ
す に 違 い な い. こ の シ ン ポ ジ ウ ム が 終 りに 近 づ い た 頃,毎 が 基 研 を 訪 れ る こ と に な っ た.Powell博
日新 聞 の 招 待 で 来 日 さ れ たPowell博
線 の 実 験 的 研 究 が そ の 緒 に つ い た ば か りの 日本 で,こ 感 銘 を受 け られ た よ う で あ っ た.ブ い て も詳 し く解 説 し,我
士
士 に 我 々 の 討 論 の 結 果 を紹 介 す る と,宇 宙 の よ う な計 画 が あ る こ と に 深 い
リ ス トル で 長 年 に わ た っ て 蓄 積 した 気 球 技 術 に つ
々 を大 い に励 ま して 次 の 旅 に 立 っ て 行 か れ た.
宇 宙 線 研 究 の 将 来 計 画 シ ン ポ ジ ウ ム は そ の 後 も何 度 か 開 か れ て い るが,こ シ ン ポ ジ ウ ム ほ ど実 りの 多 か っ た例 を私 は 知 ら な い.そ
の基 研 の
の 成 功 の 最 大 の 理 由 は皮 肉 な
こ とに 現 在 の よ う に 情 報 が 行 き渡 っ て い な か っ た た め で あ る.こ
の シ ンポ ジウムで話
され た 詳 し い 内 容 は長 年 に わ た っ て 各 研 究 室 で 独 自に 考 え 抜 か れ て きた もの で,他 の 人 に と っ て は 初 め て 聴 く もの が 殆 どで あ っ た.し
た が っ て,討
論 も熱 が 入 り,そ の 討
論 を も とに 更 に 新 し い ア イデ ア が 提 案 さ れ て 議 論 が 煮 詰 ま っ て い っ た か ら だ と思 わ れ る. 13.2.7 原 子 核 研 究 所 の 空 気 シ ャ ワ ー 部 と エ マ ル シ ョ ン部 1956年
の5月
か ら原 子 核 研 究 所 に 空 気 シ ャ ワー 部 とエ マ ル シ ョ ン部 が 発 足 す る .
エ マ ル シ ョン 部 で は,す
ぐ全 国 の研 究 者 の 協 力 の 下 に エ マ ル シ ョン ・チ ェ ンバ ー の 実
験 に 向 け て 準 備 が 始 ま っ て い る.そ
の 夏,20cm×25cm,厚
ル シ ョ ン ・チ ェ ンバ ー が 静 岡 と神 戸 か ら計8機 進行 し た.こ
の エ マ ル シ ョ ン ・チ ェ ン バ ー の 中 に1012eVを
見 付 か り,そ の ジ ェ ッ トか ら発 生 し た49個 さ れ た.そ
さ20cmの17個
の 気 球 で 放 球 され,実
の 値 は そ れ か ら約10年
越 す23個
のエ マ
験 は 予 定 通 りに の ジ ェ ッ トが
の π0中間 子 か ら横 運 動 量 の 分 布 が 導 き 出
を経 てCERNのISRで
観 測 さ れ た値 と良 く一 致
し て い る精 度 の 高 い も の で あ っ た.こ れ は 気 球 実 験 と し て も 当 時 の 国 際 的 に 最 大 規 模 の も の で,こ
れ を契 機 に 日本 に お け るエ マ ル シ ョ ンに よ る研 究 は 世 界 の 第 一線 に並 ぶ
こ とに な っ た. 丹 生 潔 に よ っ て 中 間 子 は2個
の ク ラ ス ター と して 多 重 発 生 す る 「火 の球 モ デ ル 」
が 提 唱 され た の も こ の 頃 で あ る.二 coniや
ポ ー ラ ン ドのM.
Miesowitzに
中心 火 の 球 モ デ ル は 丹 生 とは 独 立 にV. よ っ て も提 唱 さ れ,中
T. Coc
間 子 多 重 発 生 機 構 に新 し
い 手 掛 か り を与 え る モ デ ル と して 迎 え られ た . 空 気 シ ャ ワ ー の 装 置 は,大
型 プ ラ ス チ ッ ク ・シ ン チ レ ー タ ー を基 盤 に,「 タ イ ム ・
オ ブ ・フ ラ イ ト」 に よ る 到 来 方 向 の 測 定,直
径30cmの
「鉛 ガ ラ ス の チ ェ レ ン コ
フ ・カ ウ ン ター 」 に よ る エ ネ ル ギ ー ・フ ロー 測 定 とい う オ リ ジナ ル な検 出 器 を含 む 最 新 技 術 を取 り入 れ た 世 界 で最 も精 度 の 高 い装 置 で あ っ た.わ 既 存 の 全 観 測 デ ー タ に 匹 敵 す る成 果 を 出 し て い る.こ
ず か1週
間程 度 の 運 転 で
の装 置 は その後 「 大 横運 動量 」
の 可 能 性,「 水 平 シ ャ ワー 」 の 発 見 な ど数 々 の 成 果 を も た ら し た.同
時 に,そ
の後 の
宇 宙 線 研 究 に と っ て 基 礎 とな る い くつ か の 機 器 開 発 や 観 測 技 術 を生 み 出 す も とに な っ て い る. 一 つ は 大 型 の プ ラ ス チ ッ ク ・シ ン チ レ ー タ ー の 一 般 化 で あ る
.宇 宙 線 研 究 の他 の 分
野 で も,そ れ ま で の ガ イ ガ ー ・カ ウ ン タ ー の 装 置 は 一 掃 さ れ,安 シ ン チ レー タ ー に 入 れ 代 わ っ た.大 開 発 は,菅
定 なプ ラ スチ ック ・
型 の 鉛 ガ ラ ス に よ る チ ェ レ ン コ フ ・カ ウ ン タ ー の
浩 一 に よ り提 案 さ れ た もの で あ る.
菅 は こ の 時 期 にA.
Chudakovら
とほ ぼ 同 時 に 空 気 シ ャ ワ ー 粒 子 が 上 空 の 大 気 を励
起 して 出 す
「シ ン チ レー シ ョ ン光 検 出 に よ る 空 気 シ ャ ワ ー の 観 測 」 も提 案 し,そ の 基
礎 と な る実 験 も行 っ た.1960年
代 の 初 め の こ とで あ る.こ
心 を 呼 び,観 測 の 可 能 性 に つ い て の 実 験 が 行 われ た が,残
の提 案 は ア メ リ カ で も 関 念 な こ と に,夜
光 に よる ノ
イ ズ の た め こ の 実 験 は 成 功 に 至 らな か っ た. そ の 後,棚
橋 五 郎 は こ れ ら の 実 験 結 果 を踏 ま え て,直
レ ン ズ を 用 い て 集 光 し,S/N比
を あ げ,空
径1.6mの
よ る イ メ ー ジ を 捕 ら え る こ と に 世 界 で 初 め て 成 功 し た.菅 1960年 代 後期 の 事 で あ る.さ よ う と し た が,種
ら に,大
々 の 理 由 で,こ
大 形 の フ レネ ル
気 シャ ワーか らの シ ンチ レー シ ョン光 に が 提 案 して 数 年 を経 た
形 の フ レ ネ ル レ ン ズ を 用 意 し,計
画 をす す め
の 発 展 が 取 り止 め に な っ た の は 残 念 な こ と で あ っ
た.現 在 はユ タ大 学 を 中 心 にfly's eyeと 呼 ば れ る空 気 シ ャ ワ ー 観 測 装 置 が 稼 動 して 空 気 シ ャ ワー の 立 体 的 構 造 と超 高 エ ネ ル ギー に よ る空 気 シ ャ ワ ー を観 測 す る 中 心 的 な 装 置 と し て成 果 を 上 げ て い る. 空 気 シ ャ ワ ー 中 心 部 の 電 子 密 度 の 高 い 部 分 の 観 測 の た め に,基 研 シ ン ポ ジ ウムで小 型 の ネ オ ン ・ホ ドス コー プ を 多 数 配 置 す る提 案 が な さ れ て い る.こ の ネ オ ン ・ホ ドス コー プ の 開発 実 験 を 通 して,福 に 辿 りつ い た.ス
井 崇 二 ・宮 本 重 徳 は 「ス パ ー ク ・チ ェ ンバ ー 」 の 発 明
パ ー ク ・チ ェ ンバ ー は そ の 後,高
γ線 天 文 衛 星GROで
エ ネ ル ギ ー 実 験 で 活 躍 し,現 在 の
も活 躍 して い る画 期 的 な 装 置 で あ った.
原 子 核 研 究 所 は 当 時 日本 の 最 も近 代 的 な研 究 所 で あ っ た.R.
J. Oppenheimerを
始
め 数 多 くの 著 名 な 物 理 学 者 が 来 所 し,宇 宙 線 研 究 の 成 果 に も興 味 深 く耳 を傾 け 激 励 し て くれ た. 乗 鞍 の 宇 宙 線 観 測 所 を 経 て 原 子 核 研 究 所 の 宇 宙 線 部 の 発 足 に 至 る1950年 間 は,ほ
代 の10年
と ん ど無 か ら 出 発 し た 日本 の 宇 宙 線 研 究 を世 界 の 第 一 線 の レベ ル に 押 上 げ た
大 切 な時 期 で あ っ た.そ
し て こ れ ら の 成 果 を も と に1960か
ら70年
代 の研 究 が 展 開 し
て 行 くこ と に な る. 13.3
1960年
13.3.1 宇 宙 線 研 究 の 国 際 協 力(高 宇 宙 線 の 研 究 で は 高 山 や,深 が 多 い.こ た だ,国
代 か ら70年
代
山 と地 下 の 海 外3件)
い 地 下 な ど国 内 で は 満 たせ な い 条 件 が 要 求 さ れ る こ と
の 意 味 で 宇 宙 線 の 研 究 は 本 質 的 に 国 際 協 力 を 必 要 と し て い る分 野 で あ る.
際 協 力 は 国 内 の 実 力 が そ れ な りに 整 っ て い な け れ ば 成 り立 た な い.日 本 の 宇
宙 線 研 究 が 国 際 的 に 評 価 さ れ る よ うに な っ た1950年
代 の 終 わ りか ら1960年
代 に入 る
と,宇 宙 線 研 究 の 国 際 協 力 が 他 の 分 野 に 先 が け て 始 ま っ た. 一 つ は1014eV付 近 の 「高 エ ネ ル ギ ー ・一 次 γ線 」 検 出 の た め 南 米 の チ ャ カ ル タヤ 山 上 に 展 開 し た 空 気 シ ャ ワ ー 観 測 装 置 で あ る.「 チ ャ カ ル タ ヤ 」 に は 世 界 最 高(5,220 m)の
宇 宙 線 観 測 所 が あ り,LattesやPowellた
ち が 初 め て π 中 間 子 を発 見 し た 場 所
と し て 知 ら れ て い た.小 核 研 究 所,そ
田 とRossiの
グ ル ー プ との 相 談 の 結 果 始 ま っ たMIT,原
子
し て 地 元 の ボ リビ ア の 研 究 者 を 入 れ た 国 際 協 力 で あ る.宇 宙 線 が 銀 河 系
内 を 伝 播 し て 行 く際,星
間 物 質 と衝 突 して 核 作 用 を起 こ し て 発 生 し た π0中 間 子 か ら
の γ線 を観 測 し よ う とい う狙 い で あ る.現 在 の γ線 天 文 学 の は し り とい え る. γ線 が 大 気 中 に 入 射 す る と,電 子 シ ャ ワ ー を起 こ す が,陽 ワ ー と比 べ る と そ の 発 達 が 早 い.ま な い.こ ナ(鉛
れ らの 性 質 を使 っ て,ご
鉱 石)を
2∼3年
く僅 か な γ線 を陽 子 か ら分 離 す る.600ト
ン のガ レ
敷 い た μ 中 間 子 の 観 測 装 置 を 含 む 空 気 シ ャ ワ ー 装 置 の 建 設 が 終 わ り,
後 に は1014eVの
しか し,そ
子 に よる一般 の 空 気 シ ャ
た 二 次 粒 子 と し て 含 まれ る μ 中 間 子 が 極 端 に 少
γ線 が 銀 河 面 方 向 か ら や や 多 く来 て い る 気 配 が 観 測 さ れ た.
の 後 統 計 的 精 度 が 上 が る と こ の 増 加 は 消 え て し ま っ た.γ 線 の 観 測 は 不 首
尾 で あ っ た が,世
界最 高 の 場 所 に お け る貴 重 な 空 気 シ ャ ワ ー 観 測 器 と して 今 も活 用 さ
れ て い る. ほ ぼ 同 じ時 期 に チ ャ カ ル タ ヤ で 始 ま っ た の が エ マ ル シ ョ ン ・チ ェ ン バ ー の 実 験 で あ る.原 子 核 研 究 所 の エ マ ル シ ョ ン ・チ ェ ン バ ー 実 験 は 気 球 観 測 で行 わ れ た が,よ エ ネ ル ギ ー に進 む に は,更 必 要 が あ っ た.考 で あ る.大
に 大 量 の 露 出 が 必 要 で,観
測気球 の性能 を飛躍的 に 高め る
え 出 さ れ た の が 「高 山 で の 大 型 エ マ ル シ ョ ン ・チ ェ ン バ ー 」 の 露 出
型 化 す る た め,現
問 題 は 高 感 度 のX線
象 を 見 付 け 出 す 顕 微 鏡 で の ス キ ャ ン が 問 題 とな る.こ
フ イ ル ム を使 う こ とで 解 決 され,乗
年 の こ と で あ る.乗 鞍 で の 観 測 に 成 功 す る と,よ
の こ とで あ る.初
め10m2程
で 拡 張 し,藤 本 が 中 心 と な っ て1016eVを
の 相 互 作 用 を始 め と し,大 横 運 動 量 や,多
の
鞍 山 上 に 露 出 し た の は1958
り高 い 山 で の 効 率 の 良 い 観 測 が 望 ま
れ る こ と に な る.湯 川 の 紹 介 で ブ ラ ジ ル のLattesと 始 ま っ た の は1963年 m2ま
り高
チ ャ カ ル タヤ 山 上 に 共 同 研 究 が 度 であ っ たこの チ ャ ンバー は 数 十
越す 超 高 エ ネル ギー 領 域 での 宇 宙 線
重 発 生 の ク ラ ス タ ー 的 な 振 る 舞 い な ど様 々
な 特 徴 を 直接 観 測 し,成 果 を あ げ た. イ ン ドの 「コラ 金 鉱 」 は世 界 最 深 の 鉱 山 で あ り,一 番 深 い場 所 は 水 深 に 換 算 して 約 9,000mに
あ た る.大
阪 市 大 の三 宅 グ ル ー プ と イ ン ドの タ タ研 究 所 との 共 同 で 地 下 実
験 が 始 ま っ た の は1960年
代 の 初 め で あ る.こ
ネ ル ギ ー μ 中 間 子 の 絶 対 値 を 捉 え る と共 に,地
の よ う に し て,地
下 深 く貫 通 す る 高 エ
上 か ら貫 通 して 来 た 大 気 ニ ュ ー ト リ
ノ に よ る μ 中 間 子 の 発 生 を初 め て観 測 す る こ と に 成 功 して い る. こ れ と は 別 に 当 時 シ カ ゴ大 学 のM.
Scheinは,ブ
リス トル の 更 に 数 倍 の 原 子 核 乾
板 の ス タ ッ ク を気 球 に搭 載 し て ジ ェ ッ トの 研 究 を行 う国 際 協 力 「ICEF計 した.残
念 な こ とに,Sheinは
責 任 者 と し て遂 行 した.ICEFは
画 」 を提 唱
計 画 半 ば で病 を得 て 亡 くな り,小 柴 昌 俊 が 引 き 継 い で こ れ ま で の世 界 最 大 の ス タ ッ ク で,原
子核 乾板 に よ
る最 も信 頼 で き る ジ ェ ッ トの 基 本 的 な デ ー タ を生 み 出 す こ と に な っ た. 現 在 国 内 の どの 分 野 で も 国 際 共 同 研 究 は 行 わ れ て い る.日
本 の経 済 状 況 もよ くな
り,そ の た め の 予 算 や 組 織 も徐 々 に整 備 さ れ て き た.宇
宙 線 の 海 外3件
は わが 国の国
際 協 力 の は し りで あ り,経 済 状 態 の 悪 い 中 で 相 手 国 は こ ち らの 能 力 を信 頼 し,滞 在 費 も相 手 側 の調 達 で 行 わ れ て き た. 13.3.2 1965年
宇宙 航空研 究所 と高エネ ル ギー研 究所の 発足 に 宇 宙 科 学 研 究 所 の 前 身 に あ た る宇 宙 航 空 研 究 所 が 発 足 して い る.こ の 研
究 所 は 飛 翔 体 の 開 発,お 研 究 所 で,1981年
よ び こ れ を 用 い て 宇 宙 の 研 究 を 行 う東 京 大 学 付 置 の 共 同利 用
に は 現 在 の 大 学 共 同 利 用 機 関 宇 宙 科 学 研 究 所 に移 行 して い る.
宇 宙 線 の 研 究 は 大 型 の 加 速 器 の 登 場 に よ っ て 転 機 を迎 え,宇
宙 物 理 学 指 向 の研 究 が
増 え て き た 時 期 で も あ る.当 時 発 見 さ れ た 「X線 星 」 の 研 究 に は 世 界 的 に 見 て 宇 宙 線 研 究 者 が 多 い こ とか ら も分 る よ うに,物 理 的 内 容 も観 測 方 法も宇 宙 線 の 研 究 に 近 か っ た.日
本 に お い て も,小
田 を初 め と し て何 人 か の 研 究 者 が こ の 分 野 に移 っ て 発 展 に
尽 し大 き な成 果 を も た ら した.も 発 で あ る.宇
う一 つ は,宇
宙線研 究 に不 可 欠な大気球 の本 格的 開
宙 線 研 究 者 が 同 研 究 所 に 移 り,や が て 日本 の 大 気 球 観 測 の 基 盤 を築 く こ
と とな っ た. 日本 に 大 加 速 器 を作 り,素 粒 子 の 実 験 的 研 究 を進 め る 構 想 は 原 子 核 研 究 所 の 発 足 当 時 か ら 議 論 さ れ て い る.1GeV程 い う構 想 で あ っ た.シ
度 の 電 子 シ ン ク ロ トロ ン を ま ず 建 設 し次 に 進 む と
ン ク ロ トロ ン建 設 に 目途 が つ き 始 め た1959年
に次 の計 画の議
論 が 始 ま り,最 終 的 に 日本 学 術 会 議 の 勧 告 と して ま と ま っ た の は1962年 か し,そ れ まで の10倍 ら ん で,発
を 越 す300億
足 ま で に 更 に 約10年
ル ギ ー 物 理 学 研 究 所(素
で あ る.し
円 と い う予 算 規 模 と研 究 所 の 体 制 の 問題 点 が か
の 歳 月 を 要 し て い る.初 め は 宇 宙 線 の研 究 も 高 エ ネ
粒 子 研 究 所)の
中 に 共 存 す る 予 定 で あ っ た が,10年
る議 論 の 中 で 計 画 が 進 ま な い 焦 り と,考 え 方 の違 い が 軋 轢 を 生 み,最
にわ た
終 的に は宇宙 線
研 究 所 の 設 立 を別 に 考 え る こ とに な っ た. 13.3.3 宇 宙 線 研 究 所 の 設 立 乗 鞍 の 宇 宙 線 観 測 所 と 原 子 核 研 究 所 の 宇 宙 線 部 を統 合 し,発 展 的 に 拡 大 し て 「宇 宙 線 研 究 所 」 が 発 足 し た の は1976年 ル シ ョ ン部 に μ 中 間 子 部 門,一 と,1013eV領
の こ と で あ る.こ
次 線 部 を加 え,新
れ ま で の 空 気 シ ャ ワ ー 部 とエ マ
た に 「明 野 空 気 シ ャ ワ ー 観 測 装 置 」
域 の μ 中 間 子 を直 接 観 測 す る 「ミュ ー トロ ン 」 が 建 設 さ れ る こ とに な
っ た. 1960年
代 は50年
代 に 発 展 し た 宇 宙 線 の 独 創 的 な 観 測 技 術 と構 想 を も と に 研 究 が
花 々 し く開 花 し た.70年
代 に 入 っ て も こ の 方 式 は 基 本 的 に は 変 らず,研
進 ん で い る よ う に見 え た.隔
分 野 の 寄 与 は そ の 比 重 を増 し て行 っ た と い え る.そ 観 測,高
究 は順 調 に
年 に 行 わ れ る 宇 宙 線 国 際 会 議 で も 日本 が 力 を 注 い で い る
山 の エ マ ル シ ョ ン ・チ ェ ン バ ー,10TeVに
の 成 果 は,大
空 気 シ ャ ワー の 精 密
及 ぶ ミュ ー トロ ン の 直 接 観 測,
地 下 宇 宙 線 の 観 測 の 成 果 な ど幾 つ か を あ げ る こ とが で き る.ミ
ュー トロ ン の グル ー プ
は 後 に 日米 協 同 のHawaii沖 乗 鞍,チ
で 行 う深 海 実 験 「DUMAND」
に 加 わ る こ とに な る.
ャ カ ル タヤ に 始 ま る高 山 の エ マ ル シ ョ ン ・チ ェ ンバ ー は,ソ 連 で は 「パ ミ
ー ル 」 での大 掛 か りな実験
,国 内 で は 富 士 山,そ
して1980年
に は 中 国 と の 共 同研 究
で 「チ ベ ッ トの 高 山 」 で 研 究 が 始 ま り,1016eVに
及 ぶ 核 作 用 の 研 究 に 成 果 を上 げ て
い る.エ
下 の μ 中 間 子 に よ る バ ー ス ト,そ
マ ル シ ョ ン ・チ ェ ンバ ー は こ の 時 期,地
して 気 球 や 航 空 機 に よ る観 測 へ も発 展 して い る.こ
の 中 で 特 記 す べ き は,精 密 に 組 み
立 て られ た チ ェ ン バ ー を使 っ て の 新 粒 子 の 発 見 で あ る. 13.3.4
チ ャ ーム粒 子の発 見
丹 生 た ち は ジ ェ ッ ト発 生 層 と して20cm×25cm×800μ 両 面 塗 布 し た チ ェ ンバ ー を精 密 に 組 み 立 て,航 の チ ェ ン バ ー の 解 析 中 に,ジ 次 粒 子 の 飛 跡 が10-3ラ
の49枚
空 機 で 約500時
ェ ッ トの 発 生 点 か ら1cm程
の メ タ ア ク リル に
間 上 空 に 露 出 した.こ
度 の 所 で 二 本 の 近 接 す る二
ジ ア ン程 度 折 れ 曲 が っ て い る例 を 見 つ け た.一 つ の 折 れ 曲 が
り点 か ら は コプ ラ ナ ー の 条 件 を満 た す π0中 間 子 に よ る電 子 シ ャ ワー が 発 生 して い た. こ れ は 折 れ 曲 が り点 で π0と 他 の 粒 子 に 崩 壊 し た こ と を 示 唆 して い る.電 子 シ ャ ワー の エ ネ ル ギ ー と崩 壊 点 ま で の 距 離 か ら粒 子 の 寿 命 は10-14s, 推 定 さ れ,も 1971年
2∼3GeV程
度 の質 量 と
う一 個 の 崩 壊 粒 子 と併 せ て新 粒 子 の 対 発 生 で あ る可 能 性 が 高 い こ と を
に 報 告 し て い る.小
川 修 三 は 四 番 目の 基 本 粒 子 に も とづ く新 し い 量 子 数 を持
つ 新 粒 子 で あ る こ と を 強 く示 唆 した.こ い か と考 え た 人 は他 に も い た.し
れ は 未 発 見 の 「チ ャー ム 粒 子 の 候 補 」 で は な
か し,こ
れ ま で の 数 多 くの 実 験 で ど う して 観 測 さ れ
な か っ た の か と い う疑 念 が 災 し て,名 古 屋 大 学 の 坂 田 を 中 心 とす る グル ー プ 以 外 で は そ の 時 点 で は 大 方 の 認 め る所 と は な ら な か っ た.や 益 川 の モ デ ル が 提 唱 さ れ,ト た の は,こ
ッ プ ク ォー ク,ボ
が て,坂
田 の グ ル ー プ か ら小 林 ・
トム ク ォー ク を世 界 に 先 駆 け て 予 言 し
の 実 験 で チ ャ ー ム ク ォ ー クが 発 見 さ れ た と い う確 信 が あ っ た た め で あ ろ
う. 当 時 の 加 速 器 で は こ の 新 粒 子 の 対 発 生 に は エ ネ ル ギ ー が 足 りず,宇 命 が 極 め て 短 い た め に 原 子 核 乾 板 以 外 で は 観 測 が 難 し い.ま
宙 線 実 験 で は寿
た 通 常 の ス タ ッ クで は電
子 シ ャ ワー が 二 次 粒 子 の 飛 跡 と入 りま じ り,精 密 な 観 測 は 難 しい.電
子 シ ャ ワ ー を起
こ しに くい物質 で極 め て精密 に 組み 立 て たチ ャ ンバ ーの 有効 性 が 成 功 の 原 因 であ っ た. 1974年
にJ/Ψ
粒 子 が 加 速 器 で発 見 さ れ る ま で,丹
見 出 し,そ の 解 釈 の 正 当 性 を 示 した.現 ク を含 むD*粒
生 た ちは更 に数 例 の似 た現 象 を
在 で は 観 測 さ れ た 粒 子 は 「チ ャ ー ム ・ク ォー
子 」 の 発 見 で あ っ た と考 え ら れ て い る.宇
宝 庫 で あ っ た が,K中
間 子 発 見 を最 後 に,加
宙 線 は か つ て新 粒 子 発 見 の
速 器 領 域 の 研 究 に 移 っ て い た.チ
ャー
ム 粒 子 の 発 見 は 加 速 器 に 先 駆 け て 久 々 に 宇 宙 線 が 新 粒 子 を発 見 し た輝 か し い成 果 で あ っ た.
13.4 一 つ の研 究 分 野 で は ま え て 次 の10∼20年
,初
め の10年
1980年
代 か
は 当 初 の 目的 を 目指 し た発 展 期,そ
が そ の 充 実 期 に あ た る.そ
や が て 清 新 さが 失 わ れ,自
ら の成 果 を踏
して 研 究 方 式 が 質 的 に 変 ら な い 限 り,
然 の 本 質 に 迫 る よ う な発 見 や 成 果 が 少 な くな っ て くる.宇
宙 線 研 究 も例 外 た りえ な い.確
か に精 密 な 実 験 や 定 量 的 な 実 験 は 増 え た が,物
本 質 に 迫 る よ う な成 果 は 年 と と もに 少 な くな っ て,1950∼60年
理 学の
代 の生 き生 き と した
雰 囲 気 が 失 わ れ 始 め た か の よ うに 見 え た. こ の 時 期,海
外 で は ま だ 未 解 決 の 一 次 線 宇 宙 線 中 の 「同 位 体 組 成 の 観 測 」 な ど を通
して 新 た な道 を 開 い て い た.日
本 は 地 磁 気 緯 度 が 低 く,こ れ らの 研 究 に 必 要 な低 エ ネ
ル ギ ー 粒 子 の 気 球 観 測 に は 不 向 き で,人 工 衛 星 に よ る こ の 分 野 の 観 測 も 出 遅 れ て い た.い
きお い,ま
だ 観 測 さ れ て い な い 高 い エ ネ ル ギ ー 領 域 に 主 力 が 注 が れ る こ とに な
っ た. 気 球 観 測 に つ い て い え ば,1970年
代 か ら始 ま っ て い るエ マ ル シ ョ ン.チ
に よ る 「一 次 電 子 の 観 測 」 で あ り,も
ェ ンバ ー
う一 つ は 原 子 核 研 究 所 の 実 験 以 来 の 懸 案 で あ っ
た 「高 エ ネ ル ギー ・一 次 線 組 成 の 直 接 観 測 」 で あ る.高 エ ネ ル ギー ・一 次 線 の 直 接 観 測 は 「JACEE」
と い う計 画 の 名 の も と に ア メ リ カ との 共 同研 究 に 発 展 し,世 界 で 最
も高 い エ ネ ル ギー の1015eVに 13.4.1
及 ぶ 一 次 線 の 直 接 観 測 と して 活 躍 し て い る.
陽 子 崩 壊 と ニ ュ ー ト リノ 物 理 学
宇 宙 線 の地 下 実 験 は 国 際 的 に イ ン ドの コ ラ 金 鉱 の 実 験 が そ の 先 端 を 走 っ て い た が, 1970年 代 の 後 半 に な る と,大 統 一 理 論SU(5)の
検 証 の た め 「陽 子 崩 壊 の 実 験 」 の 場
と し て 地 下 実 験 が 世 界 各 国 で 注 目 され 始 め た.力
を注 い だ の は ソ連,ア
で あ る.コ
ラ金 鉱 に加 え て,日
メ リ カ と 日本
本 で は東 京 大 学 の小 柴 を 中 心 に 宇 宙 線 研 と 高 エ ネ ル ギ
ー 研 とが 協 力 して 「 神 岡 での実 験」 が始 まって い る .1983年
の こ と で あ る.や
が て,
陽 子 の 崩 壊 寿 命 が 当初 考 え た よ り長 い ら しい と い う結 果 が 出 て,「 太 陽 ニ ュ ー ト リノ の 観 測 」 に切 り替 え 始 め た 時,一
つ の 重 大 な イベ ン トが 起 き た.そ
マ ゼ ラ ン星 雲 で 起 き た 超 新 星 の 爆 発 神 岡 の2,000ト
ンに及 ぶ 「 大 型 水 タ ン ク のCherenkovカ
爆 発 の 際 に発 生 し た11個
れ は1987年
の大
「1987 A」 で あ る.
の ニ ュ ー ト リ ノ を検 出 した.ま
ウ ン ター」 は この 超新 星 た 宇 宙 科 学 研 究 所 のX線
科
学 衛 星 「ぎ ん が 」 は 超 新 星 を囲 む 厚 い プ ラ ズ マ を通 過 し て 約 半 年 後 に 出 て 来 たX線 の 観 測 に 成 功 し た.SN
1987 Aで
日本 が 世 界 に 先 が け て 主 要 な 観 測 に 成 功 した こ と
は 高 く評 価 され た. 大 型 水 タ ン ク に よ るニ ュ ー ト リ ノ観 測 の 有 効 性 と将 来 へ の 展 望 は さ ら に大 型 の 装 置 を 作 る 強 い要 望 を生 む こ と に な っ た.一
桁 大 き い装 置 と な る と,グ ル ー プ も宇 宙 線 研
究 所 内 に 置 くの が よ い と す る 意 見 が 実 現 した の は1988年
で あ る.こ の5万
トン の 水
タ ン クか ら な る 「ス ー パ ー 神 岡(ス
ー パ ー カ ミ オ カ ン デ)」,太 陽 ν,大 気 ν,超 新 星
νに つ い て の ニ ュ ー ト リ ノ物 理 学 と宇 宙 物 理 学 的 な 意 義 と展 望 に つ い て は 他 の 項 で 述 べ ら れ るが,宇
宙 線 が 大 気 中 で 発 生 す る 大 気 ニ ュー トリ ノ に つ い て は こ こ で も述 べ て
お き た い. 「大 気 ニ ュ ー ト リ ノ」 は 本 来 の 実 験 に は 邪 魔 な粒 子 で あ る.だ 通 して,素
が神 岡 実験 の解 析 を
粒 子 の 本 性 に か か わ る 重 大 な 意 義 を持 つ ら しい こ とが 明 ら か に な っ て き
た.宇
宙 線 が 大 気 中 で 発 生 す る νμと νeの比 は π-μ,μ-eが
に,宇
宙 線 の スペ ク トル や π 中 間 子 発 生 の モ デ ル に あ ま り よ ら ず 運 動 学 的 な 関 係 で
決 ま り,ほ ぼ2と
い う値 を持 つ.し
連 鎖 崩 壊 で あ るた め
か し,観 測 さ れ た νμ と νeの 比 は1に 近 い結 果 で
あ る.実 験 的 な精 度 の 検 討 は 慎 重 に 行 わ れ て い る が,こ
の値 は変 らな い.一 番 可 能 性
の あ り そ うな の は 「ニ ュ ー ト リ ノ振 動 」 と呼 ば れ る現 象 で あ る.も 質 量 が あ れ ば,3種
しニ ュ ー ト リ ノに
類 の νe,νμ,ντは お 互 い に 振 動 的 に 入 れ 替 わ る.宇
宙線 か ら発
生 す る大 気 ニ ュ ー ト リ ノの 実 験 は 素 粒 子 の 本 性 を探 る 重 要 な 鍵 を握 って い る. 13.5
1990年
代 とむ すび
「 神 岡 」 と 「重 力 波 」 の グ ル ー プ が 宇 宙 線 研 究 所 に 加 わ っ た こ と は 宇 宙 線 研 究 に 大 き な影 響 を与 え た.新
し い文 化 の 発 展 は 異 な る文 化 との 融 合 に よ っ て もた ら さ れ る.
こ れ ま で の 宇 宙 線 研 究 に 加 え て,神 線 の 第 一 人 者 が 研 究 所 を訪 れ,有
岡 実 験 に 関 連 し て 国 内 外 か ら高 エ ネ ル ギ ー ・宇 宙
能 な 若 い研 究 者 も加 わ り,新
し い 波 の うね りが 感 じ
られ る. 世 界 最 大 の 明 野 の 空 気 シ ャ ワー 観 測 装 置 は,銀 空 間 の 伝 搬 の 鍵 を に ぎ る1020eVを
河 系 外 で の 宇 宙 線 発 生 機 構 と銀 河 間
越 す 超 高 エ ネ ル ギ ー の 銀 河 外 宇 宙 線 を 捉 え,世
界
の 注 目 を集 め て い る. 天 体 か らの1012eVを 中 のCherenkov光
越 す γ線 の検 出 は,長
い 間 こ の γ線 の 起 こ す シ ャ ワ ー の 大 気
を使 っ て 観 測 され て い た が,確
1989年 ア メ リカ のWhipple観 の イ メー ジ を観 測 し て,つ
測 所 で 直 径10mの
定 的 な結 果 は 得 られ て い な か っ た. 反 射 鏡 でCherenkov光
を集 め,そ
い に 「か に 星 雲 か ら の 高 エ ネ ル ギ ー γ線 」 を 高 い 精 度 で
捉 え,「 か に 星 雲 」 の 構 造 と電 子 加 速 に つ い て新 た な 知 見 を もた ら す こ と に な っ た. 宇 宙 線 研 究 所 と 東 工 大 の 研 究 者 達 は オ ー ス ト ラ リ ア との 協 同 研 究 で,直 径3.8m の 月 の レー ザ ー ・レ ー ダ と し て使 わ れ て き た 反 射 鏡 を転 用 し て 南 天 で の 観 測 を行 い, 「1706-44」 と 呼 ば れ る パ ル サ ー か ら の 高 エ ネ ル ギ ー γ線 を新 た に 発 見 し た.現 で に 世 界 中 の 観 測 で 確 認 さ れ た 僅 か4個 の 発 見 の 意 義 は 大 き い.更
在 ま
の 高 エ ネ ル ギ ー γ線 天 体 の 一 つ で あ り,そ
に 多数 の 大 型 反 射 鏡 で 構 成 す る高 精 度 の 興 味 深 い 観 測 を可
能 に す る 「宇 宙 線 望 遠 鏡 」 の 構 想 が 進 行 中 で あ る. 「チ ベ ッ トの 高 山 」 で は1013eV付
近 の 高 エ ネ ル ギ ー γ線 天 体 の 検 出 を 目指 し て 日
中 協 同 の 観 測 が 進 行 中 で あ り,宇 宙 線 が 作 る 月 や 太 陽 に よ る 陰 を 明確 に検 出 して,そ の 精 度 の 高 さ は 国 内 外 の 研 究 者 に 大 き な感 銘 を 与 え て い る. 高 エ ネ ル ギ ー 物 理 学 の 研 究 者 も宇 宙 線 に 深 い 関 心 を持 ち 始 め,大
型の超伝 導 マ グネ
ッ トを気 球 を 搭 載 し,長 年 の 謎 で あ っ た 低 エ ネ ル ギ ー 領 域 の 「宇 宙 線 中 の 反 陽 子 の観 測 」 に 初 め て 成 功 し,さ
らに 陽 電 子 や 同 位 体 の精 密 観 測 に も発 展 し よ う と し て い る.
JACEEは
日本 で 発 案 さ れ た 「南 極 周 回 気 球 」 の 手 法 を生 か して 長 時 間 飛 翔 に 成 功
し,ま
年(1996年)に
た,今
案 で あ っ たKamchatkaから 長 時 間 観 測 も こ の7月 宇 宙 線 研 究 の50年
な っ て 青 山 大 学,弘 放 球 しMoscow付
前 大 学 な ど の グ ル ー プ は,長
年 懸
近 で 回 収 す る 「日 露 の 共 同 研 究 」 の
に 成 功 した. を振 り返 る と,素 粒 子 物 理,宇
宙 物 理,高
エ ネル ギー物 理 との
色 々 な 分 野 の 交 流 に よ っ て 刺 激 を受 け た 時 に 大 き な発 展 を とげ て き た.宇
宙線研 究 は
こ れ か ら も ま た 新 た な飛 躍 の 時 期 を 迎 え る こ と に な る で あ ろ う.
あ と が き この 原 稿 を物 理 学 会 誌 の も とめ に 応 じて 書 い た の は1996年
の こ とで,そ
の後数 年
の 歳 月 が 流 れ て い る. こ の 間,宇
宙 線 研 究 の 分 野 で も,大
ー カ ミオ カ ン デ の 観 測 に よ り ,ニ
き な 進 歩 が も た ら さ れ て い る.一 つ は,ス ー パ
ュー ト リノ の 観 測 精 度 が 飛 躍 的 に 向 上 し,本 文 に あ
る ニ ュ ー ト リノ振 動 の 存 在 が 更 に 確 定 的 に な っ た事 で あ る.ニ
ュー ト リ ノ に 質 量 が あ
る事 は 確 定 的 と な り,素 粒 子 理 論 に大 き な イ ン パ ク トを あ た え て い る.更 実 験 を行 う た め,高
に確 定 的 な
エ ネ ル ギ ー 研 究 所 か ら,人 工 加 速 器 で作 られ た 大 量 の ニ ュ ー ト リ
ノ ビ ー ム を神 岡 に 向 け て 放 射 す る 実 験 も始 ま り,す で に 初 期 の デ ー タが 得 れ は じめ て い る.日
本 は こ の分 野 で 世 界 の 第 一 線 に あ る こ と は 間 違 い な い .
本 文 で 述 べ た チ ャー ム 粒 子 の 丹 生 の研 究 に 引 き続 い て,丹 羽 公 雄 の グ ル ー プ は,原 子 核 乾 板 を 自 動 的 に 解 析 す る 装 置 の 開 発 を続 け,人 量 の デ ー タ を ス キ ャ ン す る方 式 を 発 展 させ た.こ ト リ ノ を捕 ら え る事 に 成 功 して い る.ニ て,大
間 に よ る顕 微 鏡 ス キ ャ ン無 しに 大 の 結 果,加
速 器か ら出 るタウニュ ー
ュー ト リ ノ振 動 に 関 連 して,こ
の 方 式 を使 っ
規 模 な実 験 が 進 行 し よ う と して い る.
明 野 で の 大 空 気 シ ャ ワ ー の 観 測 で は,1021eVに 気 シ ャ ワ ー が さ ら に 観 測 され て き た.1020eVを 事 は で き ず,そ
こ す と,銀 河 磁 場 で 閉 じ込 め て お く
の 源 は 銀 河 外 に 求 め ね ば ら な ら な い.し
す る ま で に 宇 宙 背 景 輻 射 の2.7Kの し ま う.そ
いた る極 め てエ ネル ギー の高 い 空
の 加 速 源 や,銀
か し遠 くの 源 で は 銀 河 に 到 達
マ イ ク ロ波 と衝 突 して そ の エ ネ ル ギ ー を 失 っ て
河 外 か らの 伝 播 機 構 に つ い て謎 は 深 ま る ば か りで あ る.
本 文 で 述 べ た 空 気 シ ャ ワ ー か ら の チ ェ レ ン コ フ光 を 捕 ら え る,Cangarooグ は そ の 後 い くつ か の γ線 点 源 の 観 測 に 成 功 した が,西
暦1006年
に 爆 発 し たSN
ループ 1006
の 超 新 星 残 骸 か ら1012eVを ー 電 子 が ,2.7Kの
こ す ガ ンマ 線 の観 測 に 成 功 して い る.こ
宇 宙 背 景 輻 射 をCompton効
超 新 星 の 中 で,1014eVに
果 で は ね 飛 ば し て 生 成 した もの で,
及 ぶ 電 子 が 加 速 さ れ て い る証 拠 と考 え られ て い る.こ
宇 宙 科 学 研 究 所 の 人 工 衛 星 「ぎ ん が 」 が 捕 ら え た硬X線 た もの で,と
れ は高エ ネ ル ギ
れは
の 観 測 に 刺 激 され て 行 わ れ
も に宇 宙 線 の 超 新 星 起 源 説 に 大 き な証 拠 を も た らす 事 に な っ た.
チ ベ ッ ト高 山 で の チ ェ レ ン コ フ 光 を用 い な い 精 密 な 通 常 の 空 気 シ ャ ワ ー 観 測 で も活 動 銀 河 お よ び 「か に 星 雲 」 か ら の ガ ン マ 線 の 観 測 に 成 功 し て い る. ま た 超 伝 導 マ グ ネ ッ トに よ る 反 粒 子 観 測(BESS)で
は1,000個
をこす 反陽 子 の観
測 に 成 功 し,宇 宙 線 の 銀 河 伝 播 や 反 粒 子 の 生 成 に つ い て新 しい 知 見 を もた ら し た. 他 に 書 くべ き事 柄 や 発 展 は 多 い が,別 は,本
文 との つ な が り上,そ
た.(Dec/2000)(筆 1927年 生 まれ,1948年
初 出:日
者=に
に 詳 細 な解 説 が あ る と思 わ れ る の で,こ
の 後 の 経 過 とい う こ とで,そ
こで
の 一 部 を紹 介 す る に と どめ
しむ ら ・じゅん,東 京 大 学 名誉 教 授,宇 宙科 学研 究所 名 誉 教 授.
東北 大 学理 学 部卒 業)
本 物 理 学 会 誌51(1996)479-485.
14.
場 の量 子 論 へ の ア プ ロー チ 中 西
襄
14.1 場 の 量 子 論 の 概 観 場 の 量 子 論 は,量
子 力 学 に 特 殊 相 対 論 と粒 子 の 創 生 消 滅 の 自由 度 を取 り入 れ た理 論
で あ る.素 粒 子 の 個 数 変 化 の 自 由 度 を 取 り入 れ る こ とは,量
子 力学 の根 本的 拡張 で あ
り,そ の 重 要 性 は い く ら 強 調 し て も強 調 し過 ぎ る こ と は な い.す
な わ ち,こ
れによ
り,粒 子 の 力 学 か ら場 の 力 学 に移 行 した の で あ る.素 粒 子 そ の も の を物 理 学 の 基 本 的 対 象 とみ な さ な い と い う こ と は,非 常 に 本 質 的 な 理 論 構 成 の 進 展 で あ る.古 典 物 理 学 で は 物 質 は粒 子 に よ り,力 は 場 に よ り記 述 され る と考 え られ て い た.場 た っ て 初 め て,物
の量 子論 に い
質 も 力 もす べ て 場 に よ っ て 記 述 され る こ と に な っ た.こ
の こ とは,
場 の 量 子 論 が 物 理 学 を統 一 的 に記 述 す る基 礎 理 論 と して の 性 格 を も っ て い る こ と を示 して い る. も ち ろ ん そ うは 言 っ て も,物 質 と 力 が 完 全 に 同 質 で あ る と い う わ け で は な い.現 の 素 粒 子 の 標 準 理 論 で は,核
子 な どの 構 成 要 素 で あ る18種
種 の レ プ トンが 物 質 場 で,光
子 を含 む4種
で あ る と考 え られ て い る.前
者 は す べ て ス ピ ン1/2で,フ
の 電 弱 ボ ソ ン と8種 の グ ル ー オ ン が 力 の 場 ェ ル ミオ ン(波 動 関 数 が 反
対 称 関 数 で あ る こ と を要 求 す る フ ェ ル ミ統 計 に 従 う)で あ る.後 の ゲ ー ジ 場 で,ボ う)で あ る.こ
在
の ク ォ ー ク と電 子 な ど6
者 は す べ て ス ピ ン1
ソ ン(波 動 関 数 が 対 称 関 数 で あ る こ と を 要 求 す る ボ ー ス統 計 に 従
の 他 に 質 量 の 源 で あ る ス ピ ン0の
ヒ ッ グ ス ボ ソ ンが あ る と さ れ るが,
ま だ 確 認 さ れ て い な い. 上 に 強 調 した よ うに,場
の 量 子 論 の 基 本 的 対 象 は 場,よ
り正 確 に い え ば,量
あ る.各 素 粒 子 は そ れ ぞ れ 対 応 す る素 粒 子 の 量 子 場 を持 つ.だ 場 に 対 応 す る素 粒 子 が 必 ず あ る とは い え な い.ゲ
が 逆 に,す
子場 で
べ ての量 子
ー ジ場 な どの 定 式 化 で は,補
助場 も
し くは ゴ ー ス ト と呼 ば れ る,素 粒 子 に 対 応 しな い 量 子 場 の 導 入 が 必 要 とな る か ら で あ る. 量 子 場 を一 般 的 にφA(x)で す 記 号,xは
表 す.こ
こ に,添
字Aは
時 空 座 標xμ(μ=0,1,…,D-1;現
数 学 的 に は 作 用 素 値 超 関 数 と呼 ば れ る も の で,xμ ー ター で も あ る.そ る.状 態 の 全 体 は,内
の オ ペ ラ ン ド,す な わ ち,作
場 の 種 類 や 成 分 を一 括 して 示
実 に はD=4)で
子 場 は,
用 の 受 け 皿 とな る もの が状 態 で あ
積 を 備 え た無 限 次 元 複 素 線 形 空 間 を な す.そ
間 で あ る と は 限 らず,一
あ る.量
の 特 異 関 数 で あ る と 同 時 に オペ レ
れ は ヒル ベ ル ト空
般 に 内 積 に 関 す る計 量 は 不 定 計 量 で あ る と考 え な け れ ば な ら
な い. 量 子 場φA(x)の
性 質 を規 定 す る の は,作
用 積 分Sで
1階 微 分 ∂μφA(x)の 同 時 空 点 で の 関 数L(x)(ラ 時 空 間 で 積 分 し た も の で あ る(後 は-∞<xμ<+∞
しか な い).古
あ る.Sは,φA(x)及
び その
グ ラ ン ジ ア ン 密 度 と い う)を,全
述 の ポ ア ン カ レ対 称 性 に 矛 盾 し な い 積 分 領 域
典 物 理 学 の 場 合 と同 じ よ う に,Sの
と い う条 件 で 運 動 方 程 式 が 導 か れ る.す
な わ ち,量
変 分 が0に
なる
子場 は場 の方程 式
を満 足 す る.量 子 場 の オペ レー タ ー と し て の 性 質 は,正 準[反]交
換 関 係 に よ り規 定
さ れ る.す
定 義 し,x0=y0の
な わ ちφA(x)の
正 準 共 役 量 πA(x)を(∂/∂(∂0φA))Lで
交 換 関係
を設 定 す る.こ
こ に 角 括 弧 は 交 換 子,そ
ー ・デ ル タ,δD-1(*)はD-1次
が 独 立 量 に な ら な い 場 合 は,デ
で,場
略,δBAは
クロ ネ ッ カ
元 空 間 の デ ィ ラ ッ ク ・デ ル タ 関 数 で あ る.な
もφBも 共 に フ ェ ル ミオ ン場 の 場 合 は,交
る い は,L(x)に
の 添 字0はx0=y0の
お,φA
換 子 を 反 交 換 子 に 置 き換 え る.正 準 共 役 量
ィ ラ ッ ク に よ る 拘 束 系 に対 す る量 子 化 法 を用 い る.あ
時 間 微 分 が 含 ま れ な い よ うな 量 子 場 は,そ
の正 準共 役量 を考 え な い
の 方 程 式 に よ っ て そ の オペ レー ター 性 を定 め る.理 論 を 具 体 的 に 記 述 す る た め
に は,こ
れ を 状 態 空 間 に よ って 表 現 しな け れ ば な らな い.そ 14.2
上 に 見 た よ うに,作 す る 原 理 が,対 る と き は,形 の 下 に,場
用 積 分Sを
称 性 で あ る.量
対
称
れ につ い て は 後 述 す る.
性
ど う採 る か に よ っ て 理 論 が 決 ま る.そ のSを
子 場 は 一 般 に 非 可 換 だ が,同
式 的 に す べ て 可 換(フ
時 空 点 の もの の 積 を考 え
ェ ル ミ オ ン場 同 士 で は 反 可 換)と
の 無 限 小 変 化 δφA(x)を 考 え,そ
の と き のSの
選定
す る.そ の 仮 定
変 化 δSが0に
な る 場 合,
そ の 無 限 小 変 換 を対 称 性 とい う.た だ し,こ の 計 算 に 場 の 方 程 式 を使 っ て は い け な い
.
δφA(x)が 時 空 の 任 意 関 数 を含 む 場 合 を ゲ ー ジ 対 称 性 と い うが,場 は ゲ ー ジ 対 称 性 は 許 さ れ な い.ゲ
ー ジ理 論 の 量 子 化 の 問題 に つ い て は 後 述 す る.変 換
が 時 空 の座 標 変 換 を伴 う場 合 を 時 空 対 称 性,そ 空 対 称 性 の 代 表 的 な例 は,並
の量子 論 で は実
う で な い 場 合 を 内部 対 称 性 とい う.時
進 と ロー レ ン ツ不 変 性 で,両
者 を合 わ せ て ポ ア ン カ レ 対
称 性 と い う. 対 称 性 を定 義 す る変 換 の い くつ か は,一 つ い て い る もの は,一
括 して1つ
般 に 非 可 換 で あ る.非 可 換 性 で 互 い に 結 び
の 対 称 性 と して 取 り扱 う.2つ
子 は ま た 無 限 小 変 換 に な る の で,そ
の 無 限小変 換 の交 換
れ ら の 全 体 は リー 代 数 を構 成 す る.従
性 とは リー 代 数 で あ る とい う こ とが で き る.
っ て,対
称
素 粒 子 の 仲 間 に は ボ ソ ン とフ ェ ル ミオ ン とが あ る か ら,ボ 間 の 対 称 性 を考 え る の は 自然 で あ る.し た.ボ
か し この 可 能 性 は 長 い 間 気 づ か れ な い で い
ソ ン ・フ ェ ル ミオ ン変 換 を許 せ ば,正
定 値 計 量 の 場 の 量 子 論 の 枠 内 で も,ポ ア
ン カ レ対 称 性 の ノ ン ト リヴ ィ ア ル な拡 張 が 得 られ る.こ SUSYと
呼 ば れ る.こ
こ で は,前
ソ ン と フ ェ ル ミオ ン との
の 理 論 は 超 対 称 性,も
し くは
者 の 呼 称 は リー 超 代 数 を 持 つ 対 称 性 を 一 般 的 に 指
す 言 葉 と して 使 う. Sが[超]対
称 性 を 持 つ と,古 典 論 の 場 合 と 同 様 に し て,そ
記 す)に
対 応 す る ネ ー タ ー ・カ レ ン トjNμが 存 在 して,保
の 第0成
分 を 空 間 積 分 し た も の, が存在すれば,そ
ャ ー ジ で あ る.積
分 が収 束 し な い と き は,チ
れ ぞ れ の 変 換(Nと
存 則 ∂μjNμ=0を満 た す.こ れ は保存 チ
ャ ー ジ で は な い が,次
の意 味 で変換 の生
成 子 を与 え る:
た だ し,生 成 子 も量 子 場 も フ ェ ル ミオ ン 的 な場 合 は,交 換 子 の代 わ り に 反 交 換 子 を と る(以 下 こ の こ とは い ち い ち断 ら な い).右 微 分 商 に 相 当 す る 量 を 表 す.生
辺 はφA(x)の
成 子 の 全 体 は,リ
変 換 の(無
ー[超]代
限 小 量 で な く)
数 を場 の 量 子 論 的 に 表 現
す る. カ レ ン トや 生 成 子 の 計 算 で は,作
用 積 分 内 と違 っ て,場
ま た 反 対 称 テ ン ソ ル の発 散 を加 え て も よ い.従
の 方 程 式 を使 っ て も よ い.
っ て そ れ ら の 表 式 は 一 意 的 で は な い.
そ して どの 表 式 を 採 る か は た ん な る 審 美 的 な 問題 で は な い.ま 分 が 収 束 し た り,し な い.さ
ら に,後
な か っ た りす る.ま
た,必
ず,表
式 に よ り空 間積
ず し も δNφA(x)がδNS=0を
述 の 「場 の 方 程 式 ア ノ ー マ リー 」 が 現 れ る場 合 に は,本
再 生 し 質 的 な違 い
が 出 て く る. 並 進 の 生 成 子 は エ ネ ル ギ ー 運 動 量Pμ,ロ (=-Mν
μ)で,一
ー レ ン ツ 変 換 の 生 成 子 は角 運 動 量Mμ ν
括 して ポ ア ン カ レ生 成 子 と呼 ば れ る.こ
存 在 す る も の とす る.す
な わ ち,こ
同 時 固有 状 態 を真 空 と い い,│0>で
れ ら は保 存 チ ャ ー ジ と して
れ ら の 固 有 状 態 が 存 在 す る.そ 表 す.エ
ネ ル ギ ーP0の
れ ら の 固 有 値0の
固 有 値 は,実
か つ非 負 と
す る.そ の と き真 空 は安 定 で あ る. 真 空 は,通 常,一
意 的 とす る.真
空 に 量 子 場(に
テ ス ト関 数 を乗 じ積 分 し た も の)
を有 限 回 作 用 さ せ て 得 られ る状 態 に よ り生 成 さ れ る 空 間(を し た もの)が,状 粒 子 状 態 で,ポ
態 空 間 で あ る.真
空 に1個
ア ン カ レ対 称 性 の 表 現 は,そ
な ん らか の 意 味 で 完 備 化
の 量 子 場 を作 用 させ て 得 ら れ る状 態 は1 の 粒 子 の ス ピ ン と質 量 で特 徴 づ け ら れ
る. オ ペ レ ー タ ーOを,2つ
の 状 態│α>,│β>で
は さ ん で 得 ち れ る 複 素 数<β│O│α>
をOの
行 列 要 素 と い う.完 全 直 交 系 を用 い る と,こ
現 が 得 られ る.た
だ し不 定 計 量 の 場 合(す
れ に よ り オペ レ ー タ ー の 行 列 表
な わ ち<α│α>が
正 定 値 で な い と き)は,
行 列 の積 の 定 義 に は 不 定 計 量 に よ る補 正 が 必 要 で あ る. 真 空 は,ポ
ア ン カ レ生 成 子 以 外 の 生 成 子 に 対 して は,必 ず し も 固有 状 態 に な る とは
限 ら な い.真
空 が あ る生 成 子QGの
る 局 所 量x(x)が
あ っ て<0│[QG,x(x)]│0>≠0と
破 れ て い る と い う.x(x)は が,NG粒
固 有 状 態 に な っ て い な い 場 合,よ
対 称性 は 自発 的 に
必 ず し も作 用 積 分 に 含 ま れ る 量 子 場 の1つ
子 と呼 ば れ る1つ
そ れ と一 致 す る.NG粒
な る 場 合,QGの
り精 確 に は,あ
の 粒 子 に 対 応 す る.NG粒
子 の 質 量 は 正 確 に0で
とは限 ら ない
子 の ス ピ ン と統 計 性 はQGの
あ る.つ
ま り内 部 対 称 性 が 自 発 的 に 破
れ る と,必 ず 質 量0の
ス カ ラ ー 粒 子 が 存 在 し な け れ ば な ら な い.SUSYの
質 量0の
粒 子 が 存 在 す る こ とに な る.現 実 の 世 界 で,そ
ス ピ ン1/2の
場 合 は,
れ らは いずれ も
観 測 さ れ て い な い. 自発 的 対 称 性 の 破 れ は,対 称 性 の 表 現 段 階 に お け る破 れ で あ る が,オ 表 現 そ の も の に 矛 盾 は な い.こ
表 現 す る こ とが 不 可 能 な 場 合,ア
ノー マ リー が あ る と い う.こ
で 矛 盾 を具 体 化 す る か に は 任 意 性 が 残 る.こ の 意 味 で,対 的 な 概 念 と は 認 め 難 く,よ
の 場 合,ど
の よ う な形
称 性 の ア ノ ー マ リー は 基 礎
り基 本 的 な レベ ル か ら の考 察 が 必 要 と思 わ れ る. 14.3
素 粒 子 反 応 の 遷 移 確 率 は,以 っ て,場
ペ レー タ ー の
れ に 対 し,対 称 性 の 生 成 子 を 含 む代 数 関 係 を矛 盾 な く
S行
列
下 に 説 明 す るS行
列 要 素 か ら 直 ち に 計 算 で き る.従
の 量 子 論 の 予 言 を実 験 と比 較 す る た め に は,S行
列 を求 め る こ とが 重 要 で あ
る. 素 粒 子 反 応 の 起 き る 時 間 は,通
常,マ
ク ロ な 時 間 尺 度 に 比 べ て 十 分 短 い.そ
れゆ
え,素 粒 子 反 応 の 量 子 論 的 な 時 間 発 展 を記 述 す る場 合 に,初 期 状 態 す な わ ち反 応 させ る粒 子 を準 備 す る段 階 はx0→-∞,終 →+∞
と考 え る こ とが で き る.量
因 子 を 除 き)φAin(x),x0→+∞ と書 き,漸 近 場 と い う(た 要).漸
状 態 す な わ ち 反 応 の 結 果 を 観 測 す る段 階 はx0 子 場φA(x)のx0→-∞
に お け る 弱 極 限 を(定
に お け る 弱 極 限 を(同
じ定 数 因 子 を 除 き)φAout(x)
だ し複 合 粒 子 や 不 安 定 粒 子 が あ る と き は 適 当 な修 正 が 必
近 場 は 自 由 場 の 方 程 式(線
形 偏 微 分 方 程 式)を
よ っ て 生 成 さ れ る 状 態 を イ ン状 態,φAout(x)に と い う.イ
数
満 た す.真
空 か ら φAin(x)に
よ っ て 生 成 さ れ る状 態 を ア ウ ト状 態
ン状 態 の 全 体 は フ ォ ッ ク 空 間 を な す が,そ
れ は 空 間 と して φA(x)の 状 態
空 間 よ り も小 さ くな い こ と を要 請 す る.こ れ を漸 近 的 完 全 性 と い う.漸 近 的 完 全 性 と は,す
べ て の 状 態 は 本 質 的 に 粒 子 に 関 す る情 報 だ け で 書 き 表 さ れ る と い う命 題 で あ
る.ア
ウ ト状 態 に つ い て も 同 様(CTP定
ウ ト状 態 の フ ォ ッ ク 空 間 は 一 致 す る.す
理)な
の で,イ
ン状 態 の フ ォ ッ ク空 間 とア
な わ ち,φAout(x)は
φAin(x)と(一
般 には
不 定 計 量 的)ユ
ニ タ リー 変 換 に よ っ て 結 ば れ る.こ
ユ ニ タ リー 性 は 反 応 の 全 遷 移 確 率 が1に 全 性 を 満 た さ な い よ う な理 論(例
の変 換 がS行
列 で あ る.S行
列の
等 しい こ と と結 び つ い て い る の で,漸 近 的 完
え ば 真 空 の 縮 退 の あ る理 論)を
考 え る場 合 は,粒
子
以 外 の 情 報 を ど うや っ て 特 定 す るの か を 明 示 す る 必 要 が あ る. 量 子 力 学 で散 乱 行 列 を計 算 す るの に,ハ
イ ゼ ンベ ル ク描 像 を用 い る よ り も,シ ュ レ
デ ィ ン ガ ー 描 像 を用 い る方 が 便 利 で あ っ た.場 は 相 対 論 に な じ ま な い の で,代
の 量 子 論 で は,シ
ュ レデ ィンガー 描像
わ りに 相 互 作 用 描 像 を用 い る の が 便 利 で あ る .そ の 概
要 は 次 の 通 りで あ る.素 粒 子 論 の ラ グ ラ ン ジ ア ン密 度 は 多 くの 場 合,量 た も の も含 め て)の
多 項 式 で あ る.0次
だ け ず らせ ば 消 去 で き る の で,2次 場 の ラ グ ラ ン ジ ア ン 密 度,残 L0(x),後
者 を LI(x)と
の 項 は 意 味 が な く,1次
子 場(微
分 し
の 項 は 量 子 場 を定 数
の 項 か ら 始 ま る と考 え て よ い.2次
の 部 分 を 自由
り を 相 互 作 用 ラ グ ラ ン ジ ア ン 密 度 と い う.前 者 を
書 く.LI(x)を
とい う.自 由 場 の 量 子 論 は,容
無 視 して 得 ら れ る理 論 を,自
由場 の 量子論
易 に 厳 密 に 解 け る.系 の 時 間 発 展 の う ち 自 由 場 に 相 当
す る部 分 だ け を オペ レ ー タ ー に 背 負 わ せ,状 る相 互 作 用 ハ ミル トニ ア ン密 度HI(x)に 描 像 で あ る.相 互 作 用 描 像 で は,x0→-∞
態 の 時 間 発 展 は,LI(x)か
ら定 義 さ れ
よ っ て 記 述 さ れ る と考 え るの が,相 及 びx0→+∞
に お い てHI(x)が
互 作用 消える
と い う 断 熱 仮 設 を 設 け,初 期 状 態 と終 状 態 が フ ォ ッ ク空 間 の 状 態 で あ る こ と を実 現 す る. 一 般 に 系 の 時 間 発 展 を 追 う と相 対 論 的 不 変 性 が 見 に く く な る が は,フ
ァ イ ン マ ン の 時 空 的 ア プ ロ ー チ に よ り,S行
列 がHI(x)な
級 数 と し て 一 挙 に 与 え ら れ る(共 変 的 摂 動 論).す が,フ
,相 互 作 用 描 像 で
い しはLI(x)の
な わ ち任 意 のn点
ァ イ ンマ ン ・ダ イ ア グ ラ ム の 方 法 で 計 算 で き る の で あ る.こ
冪
グ リー ン 関 数 こ にn点
グ リー
ン 関 数 とは,
の よ う な 量 で,記 に分 け,そ
号Tはn個
の 時 間x10,x20,…,xn0の
の そ れ ぞ れ に お い て 量 子 場 を 時 間順 序(若
う指 示 で あ る.S行
列 要 素 は,グ
リー ン 関 数 か ら,フ
大 小 に よ りn!個
の セ ク ター
い もの ほ ど右 に)に 並 べ よ とい ー リエ 変 換 の 留 数 を と る操 作 で
求 ま る. 相 互 作 用 描 像 は,機
能 的 に は 大 変 便 利 で あ る が,論
理 的 に は 作 用 積 分Sを
手 で2
つ の 部 分 に 分 け る とい う不 自然 な 操 作 をや っ て い る こ と に 注 意 し なけ れ ば な ら な い. こ の た め あ とか ら繰 り込 み と い う 操 作 に よ るSの
分 割 の 再 調 整 が 必 要 に な る .フ
イ ン マ ン ・ダ イ ア グ ラ ム の 計 算 を 行 う と一 般 に 紫 外 発 散(高 無 限 大)が
現 れ る が,繰
をす べ て,理
り込 み 可 能 な理 論 で は,紫
エ ネ ル ギー 領 域 か ら来 る
外 発 散 切 り捨 て に 起 因 す る不 定 性
論 に含 ま れ て い るパ ラ メ ー タ ー の 不 定 性 に繰 り込 む こ とが で き る.従
て そ れ ら の パ ラ メー ター の 値 を実 験 で 決 め れ ば,紫
ァ
っ
外 発 散 が な くな る真 の 理 由 が 分 か
ら な くて も,有 限 確 定 な 理 論 値 を 与 え られ る.そ れゆ え,重 力 場 の 量 子 効 果 の よ う な 超 高 エ ネ ル ギ ー か ち の 寄 与 を無 視 す る理 論 は,繰 ン1/2の
場 が 相 互 作 用 で き る 繰 り込 み 可 能 な 理 論 は,D>4の
正 準 形 式 の 理 論 か ら共 変 的 摂 動 論 のS行 ア ン密 度 が 微 分 を含 む 場 合 は,大 非 常 に 簡 単 で,グ る.そ
り込 み 可 能 で な くて は な ら な い.ス
れ は,作
列 を 導 くの は,特
ピ
時 空 で は 存 在 しな い. に相 互 作 用 ラ グ ラ ン ジ
変 面 倒 で あ る.し か し最 終 結 果 を 与 え る だ け な ら ば
リー ン 関 数 の 母 関 数 は フ ァ イ ンマ ン 経 路 積 分 で 書 き表 す こ とが で き
用 積 分 と ソー ス 項(φAと
積 分 し た も の)と
の 和 のi倍
そ れ に 対 応 す る外 場 と の 積 の 和 を全 時 空 で
の 指 数 関 数 を,φAの
自由 場 波 動 関 数 に よ る 展 開 の 展 開
係 数 に 関 し無 限 多 重 積 分 した もの で あ る. 経 路 積 分 法 は確 か に 計 算 に は 便 利 な 表 式 を 与 え て い る.し の レ ベ ル と表 現 の レベ ル とを 区別 し な い の で,デ こ とは で き な い.し な い.に
か も そ れ は,後
か しそ れ は オペ レー ター
リケ ー トな 問 題 を き ち ん と取 り扱 う
述 す る よ うに,常
に 正 しい 結 果 を与 え る と は い え
も か か わ ら ず,現 在 多 くの 物 理 屋 が 経 路 積 分 法 を基 礎 的 理 論 形 式 の ご と く考
え,オ ペ レー ター 形 式 で は定 式 化 で き な い よ うな 状 況 に まで 拡 張 解 釈 し て 用 い て い る.
14.4 ゲ ー ジ 場 の 量 子 論 古 典 論 の 段 階 で,任 ー ジ 変 換 はδ φ A(x)が
意 関 数 を含 む 内部 対 称 性 を持 つ 理 論 を,ゲ ー ジ理 論 と い う.ゲ 任 意 関 数 を 含 む もの だ が,そ
れ に 対 し ∂μφA(x)はφA(x)と
同
じ変 換 性 を 示 さ な い.微 分 演 算 子 に 特 別 な ベ ク トル 場Aaμ(x)(a=1,2,…,N)の 次 結 合 を 付 け 加 え た 共 変 微 分Dμ と い う 演 算 子 を 定 義 し,DμφA(x)がφA(x)と ゲ ー ジ 変 換 性 を示 す よ うにAaμ(x)の
変 換 性 を 決 め る.Aaμ(x)を
そ れ は も と の 対 称 性 の 随 伴 表 現 に 属 し,Nは Dν]φA(x)のφA(x)に 分 で 書 け る が,ゲ
同 じ
ゲ ー ジ 場 と い う.
そ の 表 現 の 次 元 で あ る.[Dμ,
依 ら な い 部 分 をFaμν(x)と す る と,そ れ はAaμ(x)と
ー ジ変 換 に 対 し て も普 通 の 場 と同 じ よ うな 変 換 性 を示 す.従
共 変 微 分 とFaμν(x)を 使 え ば,ゲ
一
ー ジ 変 換 に 対 し て 不 変 な,だ
そ の微 っ て,
が 質 量 項 な し の,作
用 積 分 を書 き下 す こ とが で き る. しか し な が ら,ゲ ー ジ不 変 な 作 用 積 分 に 基 づ い て 量 子 論 を こ し ら え る こ とは で き な い.な
ぜ な ら,ゲ ー ジ の 自 由 度 は 量 子 場 の 他 の 自 由 度 と複 雑 に 絡 み合 っ た 形 で 含 まれ
て い る の で,そ
こ だ け を古 典 量 に 留 め る こ と は 不 可 能 な の で あ る.そ れ ゆ え,ゲ ー ジ
変 換 の 任 意 関 数 を新 し い 量 子 場Ca(x)に れ,ス
ピ ン0で
あ る に もか か わ らず,フ
置 き換 え る.こ の 場 はFPゴ
ー ス ト と呼 ば
ェ ル ミオ ン場 で あ る と しな け れ ば な ら な い.
こ れ は 不 定 計 量 の あ る場 合 に の み 可 能 で あ る. FPゴ
ー ス トを含 む 作 用 積 分 を構 成 す る基 本 原 理 は,BRS対
性 で あ る.BRS変
換 δ*は,外
通 常 の 量 子 場 のBRS変
換 は,任
微 分 の よ うに冪 零 性 δ*2=0を 意 関 数 をFPゴ
称 性 と呼 ば れ る超 対 称 持 つ.ゲ
ー ジ場 を含 め
ー ス トに 置 き換 え た もの で 定 義 す る.
従 っ て,古
典 論 の 作 用 積 分 はBRS不
変 で あ る.FPゴ
量 子 場 に 対 す る冪 零 性 で 決 め ら れ る.こ
ー ス トのBRS変
の と き δ*2Ca(x)=0は,リ
換 は,通
常の
ー 代 数 の ヤ コー
ビ恒 等 式 と等 価 で あ る. ゲ ー ジ 場 の 量 子 論 の 作 用 積 分 は,古 量(或
る 量 のBRS変
は,フ
ェ ル ミオ ン 場 のFP反
場Ba(x)を
典 論 の そ れ にFPゴ
換 で 書 け る量)を
ゴー ス トCa(x)と
導 入 す る 必 要 が あ る.冪
の 作 用 積 分 の 付 加 項 は,δ*(Cafa)で 当 な 関 数 で あ る.B場 と呼 ば れ て い る.ゲ
ー ス トを 含 むBRS完
付 け 加 え た も の で あ る.こ そ のBRS変
零 性 か ら,B場 与 え ら れ る.こ
に よ る 変 分 か らfa(x)=0が ー ジ 固 定 は ∂μAaμ(x)=0と
全な
れ を実 現 す る に
換 で あ る ボ ソ ン 場 のB
のBRS変
換 は0で
こ にfaは
ゲ ー ジ不 変 で な い 適
で る の で,こ
あ る.上 述
れ はゲ ー ジ固定 条件
い うラ ン ダ ウ ・ゲ ー ジ 条 件 を 採 る の
が 最 も 自然 で あ る. ゲ ー ジ 理 論 で は 不 定 計 量 が 本 質 的 な の で,そ
のS行
列 は確 率 の正 値性 が要 求 す る
真 の ユ ニ タ リー で は な い.そ
こ で 次 の よ うに 物 理 的S行
に よ り,BRSチ
存 在 す る.QB2=0な
ャ ー ジQBが
列 を 導 入 す る.BRS不
の で,そ
の 固 有 値 は0の
変性
み で あ る.
そ の 固 有 状 態 の 全 体 を 物 理 的 部 分 空 間 と い う.漸 近 的 完 全 性 を 使 う と,物 理 的 部 分 空 間 の 計 量 は 非 負 で あ る こ とが 示 せ る.こ 全 で,量
こ で<α│α>=0で
あ る状 態│α>は,BRS完
子 化 され た ゲ ー ジ の 自 由 度 に 対 応 す る.そ の 全 体 で 物 理 的 部 分 空 間 の 商 空 間
を と る と,そ
の 計 量 は 正 定 値 に な る.そ
れ ゆ え,そ
こ に 制 限 さ れ たS行
列 は真 の ユ
ニ タ リー で あ る. 素 粒 子 物 理 学 の 標 準 理 論 は,強
い相 互 作 用 に 対 す る
電 磁 及 び 弱 い 相 互 作 用 に 対 す る は 自発 的 にu(1)に 除 さ れ,破
まで 破 れ る.ゲ
カ イ ラ ル ・ゲ ー ジ理 論 か ら 成 り,後 者 ー ジ 理 論 で は,NG粒
れ た 自由 度 の ゲ ー ジ 場 が0で
り,質 量0の
ス カ ラー 粒 子 は 現 れ ず,質
ー ク ・ボ ソ ン が 得 ら れ る.こ ン が 観 測 さ れ な い の は,カ
カ ラ ー ・ゲ ー ジ理 論 と,
子 が 物 理 的 部 分 空 間 か ら排
な い 質 量 を獲 得 す る.こ 量0の
れ に 対 し,強
の ヒッグス機構 に よ
電 磁 場 と大 き な 質 量 を もつ3種
の ウィ
い相 互 作 用 の 基 本 粒 子 ク ォ ー ク と グ ルー オ
ラー 閉 じ込 め 問 題 とい わ れ,未
解 決 で あ る.
14.5 重 力 場 の 量 子 論 以 上 で は,重
力 は,素 粒 子 の 世 界 で は あ ま りに も微 弱 な の で,除
し重 力 も素 粒 子 と相 互 作 用 す るの だ か ら,同 ば コ ン シ ス テ ン ト とは い え な い.一 古 典 論 で あ り,ア
外 し て き た.し か
じ場 の量 子 論 の 枠 組 み に 取 り入 れ な け れ
般 相 対 論 は,特 殊 相 対 論 の 拡 張 で は な く,重 力 の
イ ン シ ュ タ イ ン 重 力 と呼 ぶ の が 正 当 で あ る.一
般座 標変 換 は時空的
な ゲ ー ジ 変 換 の よ うな もの だ か ら,ゲ ー ジ 理 論 の 場 合 と同 様 にBRS対 て 重 力 場 の 正 準 量 子 論 を 建 設 す る の が,成 最 も妥 当 で あ ろ う.そ
称 性 に基づ い
功 し た標 準 理 論 との 整 合 性 か らい っ て も,
して そ れ は極 め て 見 事 に 遂 行 で き る の で あ る.
ち ま た に 量 子 ア イ ン シ ュ タ イ ン 重 力 は 存 在 し な い か の よ う に 言 い ふ ら す 物 理 屋 が 多 い が,彼
ら の 主 張 は 誤 解 に 基 づ い て い る.量 子 ア イ ン シ ュ タ イ ン重 力 を 共 変 的 摂 動 論
で 計 算 す れ ば,紫
外 発 散 が 繰 り込 み 不 可 能 に な る こ とが 彼 ら の主 張 の 根 拠 で あ る.し
か し相 互 作 用 描 像 で 重 力 場 を考 え る に は,「 量 子 重 力 場 は 重 力 定 数0の
極 限で古 典 的
時 空 計 量 に な る」 とい う仮 定 が 必 要 で あ る.だ が こ の 仮 定 は 事 実 に反 す る.量 れ た 一 般 座 標 変 換 の 自由 度 が 重 力 定 数0の
極 限 で も生 き残 るの で,こ
子化 さ
の よ うには仮定
で き な い. 重 力 場 の 正 準 量 子 論 で は,FPゴ
ー ス トcσ(x),FP反
ゴ ー ス トcτ(x),B場bλ
(x)は す べ て ベ ク トル 場 で あ る.ゲ ー ジ 固定 条 件 と して は,ゲ ー ジ理 論 の ラ ン ダ ウ ・ ゲ ー ジ 条 件 に 対 応 す る ド ・ ドン デ ア座 標 条 件 を 用 い る.そ
うす る と,ポ
ア ン カ レ対 称
性 よ り広 い ア フ ィ ン 不 変 性 が 残 る(先 験 的 に 一 切 の 古 典 的 時 空 構 造 を 前 提 と し な い こ とに 注 意).だ 4D次
が こ の 理 論 の 持 つ 対 称 性 は そ れ よ りず っ と 巨 大 で,D次
元 超 空 間
に 自動 的 に 拡 大 し,4D(2D十1)個
子 を持 つ ポ ア ン カ レ 的 超 対 称 性(非
斉 次
発 的 に 破 れ る.と
くに,ア
の生 成
)が 存 在 す る こ とが 示 され る.
こ れ は 時 空 と場 の 統 一 を 示 唆 す る 興 味 あ る結 果 で あ る.こ 多 く は,自
元 時 空xμ が
の 超 対 称 性 の 中 の不 変 性 の
フ ィ ン は ポ ア ン カ レ に 落 ち る が,そ
(1/2)D(D+1)個
の 自 由 度 に 対 す るNG粒
子 が,重
力 子 の 質 量 が0で
あ る こ とが 自然 に 導 か れ る.
の時破 れた
力 子 に 他 な ら な い.従
っ て,重
14.6 ハ イ ゼ ン ベ ル ク 描 像 で の 解 法 重 力 場 の 量 子 論 に は 相 互 作 用 描 像 が 適 用 で きな い の で,ハ こ とが 必 要 で あ る.そ ま ず 正 準[反]交
の 方 法 は 最 近 開 発 され た の で,以
換 関 係 か ら,量
の 同 時 刻[反]交
元[反]交
換 関 係 を計 算 す る.こ
じ た 形 で 遂 行 で き る .次 に,「 右 辺 が
0の 場 の 方 程 式 の 左 辺 は い か な る 量 子 場 と も[反]可 量 子 場 間 のD次
下 に そ の 概 要 を述 べ る .
子 場 の 間 の 同 時 刻[反]交
れ は 例 え ば 上 述 の 重 力 場 の 正 準 量 子 論 で も,閉
イゼ ンベ ル ク描 像 で 解 く
換 で あ る」 と い う 式 を,2つ
の
換 子 に 対 す る偏 微 分 方 程 式 に 書 き換 え る.こ れ と先 ほ ど
換 関 係 とに よ り,コ ー シー 問 題 を設 定 す る.オ ペ レー ター に 対 して
も,コ ー シ ー 問 題 は一 意 的 に 解 け る もの と し,こ の 解 を求 め る.も
ちろん一般 に この
厳 密 解 を 求 め る の は 困 難 な の で,理 論 に 含 ま れ る パ ラ メ ー タ ー で 展 開 し て 計 算 を行 う.こ
の 展 開 は 相 互 作 用 描 像 で の 共 変 的 摂 動 論 とは 異 な り,共 変微 分 をパ ラ メ ー タ ー
を含 ま な い 形 で 定 義 して い る の で,各 論 で は,重
次 数 でBRS不
力 定 数 に つ い て の 展 開 の 第0項
変 性 が 保 た れ る.重 力 場 の 量 子
は 古 典 論 的 時 空 計 量 だ け で は な く,上 で指
摘 した 量 子 論 的 一 般 座 標 変 換 の 自 由 度 を も含 ん で い る. D次
元[反]交
き る.そ
換 子 が す べ て 分 か れ ば,こ
れ か ら 多重 交 換 子 を 計 算 す る こ と が で
して そ れ に 基 づ い て オ ペ レー タ ー 解 の 表 現 を構 成 す る.こ れ は,状
態 その も
の を構 成 す る代 わ りに,公
理 論 的 場 の 量 子 論 の 基礎 と し て 用 い られ る ワ イ トマ ン関 数
を す べ て 与 え る こ と に よ っ て 実 現 で き る.n!個 1)!個
のn点
ワ イ トマ ン 関 数 は,(n-
の 独 立 な 多 重 交 換 子 に 対 す る 条 件 を満 た さ な け れ ば な ら な い.条
不 足 す る が,エ
ネ ル ギー の 正 値 性 条 件(xj0-xj+10の
に な る こ と)の 要 請 に よ っ て,ワ
件 式 の数 が
解 析 関 数 の 下 半 面 か らの 境 界 値
イ トマ ン 関 数 が 決 め ら れ る.こ の 際,公
理論 的場 の
量 子 論 の と き と異 な り,一 連 の 同 時 空 点 の 量 子 場 の 積 が で て く る.同 時 空 点 に し た た め 現 れ る ワ イ トマ ン 関 数 の 中 の 時 空 変 数=0の 序 に よ ら な い よ うに 捨 て る.n点
特 異 項 は,結
グ リー ン 関 数 は,も
果 が そ れ らの量 子場 の順
ち ろ んn!個
のn点
ワ イ トマ
ン関 数 の 一 次 結 合 で 書 け る. 上 述 の プ ロ グ ラ ム を実 行 す るの は 一 般 に 非 常 に 大 変 で あ るが,い 空 の 重 力 場 や ゲ ー ジ場 の 量 子 論 で は,そ る.と
くつ か の2次
くに ド ・ドン デ ア ・ゲ ー ジ を は じ め い くつ か の ゲ ー ジ で の2次
論 は,厳
密 解 が 閉 じ た形 で 求 ま る.こ
元時
れ を最 後 ま で き ち ん と遂 行 す る こ とが で き 元 重力場 の量 子
れ は 共 変 的 摂 動 論 や 経 路 積 分 法 で は 到 底 為 し得
な い こ とで あ る. こ の 方 法 で構 成 さ れ る 表 現 は,各
量 子 場 の 交 換 子 に 対 して 求 め た の だ か ら,同
点 の 量 子 場 の積 を含 む よ う な場 の 方 程 式 が,表 に 可 能 で あ る.実
際,こ
時空
現 の レベ ル で 少 し破 れ る こ とが 原 理 的
れ ま で に 厳 密 解 の 求 ま っ た量 子 重 力 の モ デ ル で は,B場
を含
む 場 の 方 程 式 が 「ほ ん の わ ず か 」(微 分 操 作 に よ り除 去 で き る程 度 と い う 意 味)表 レベ ル で 破 れ る.こ れ を 場 の 方 程 式 ア ノ ー マ リー と呼 ぶ.場 あ る と,そ
の場 の 方 程 式 を使 っ て保 存 カ レ ン トの 表 式 を 変 形 す れ ば,そ
の 対 称 性 の ア ノー マ リー は 出 た り出 な か っ た りす る.こ リー は,対
れ に 応 じて そ
の 意 味 で 場 の 方 程 式 ア ノー マ
称 性 の ア ノー マ リー よ り基 本 的 な概 念 で あ る.
共 変 的 摂 動 論 及 び 経 路 積 分 法 は標 準 的 ア プ ロー チ の 如 くみ な され,そ す る 反 省 は な され て こ な か っ た.し む 場 合 と,場 い.対
現
の 方 程 式 ア ノー マ リー が
か し作 用 積 分Sが
の妥 当性 に関
正 準 共役 量 の な い量 子場 を含
の 方 程 式 ア ノ ー マ リー が 現 れ る 場 合 は,必
ず し も正 し い 結 果 を与 え な
称 性 の ア ノー マ リー の 計 算 に 関 し て も先 入 観 に 基 づ く誤 判 断 が あ る よ う で,再
検 討 が望 ま れ る.(筆 者=な か に し ・の ぼ る,京 都 大 学 名 誉 教 授.1932年
生 ま れ,1955年
京都 大 学理 学 部 卒 業) 参 考 文 献 N.Nakanishi Quantum 6節
and Gravity(World
I.Ojima:Covariant Operator Formalism of
Gauge
に 関 し て は,N.Nakanishi:in Proceedings of ICHEP2000(World
1402;中
西襄:T*積
Theories
Scientific,1990).
の 怪,素
粒 子 論 研 究100(1999)167の
Scientific,2001) 引 用 文 献.
and
15. 素粒子実験 と加 速器 ― 戦 後 の 日本 を 中 心 に ― 西
15.1
は
じ
め
川
哲
治
に
今 世 紀 後 半 の 素 粒 子 実 験 は 宇 宙 線 に よ る も の を 除 く と,相 対 論 的 エ ネ ル ギー 領 域 に 挑 戦 し た 加 速 器 の 進 歩 に よ っ て 始 ま っ た.こ
れ に 大 き く貢 献 し た の は1945年
に発 見
さ れ た位 相 安 定 性 の 原 理 と,レ ー ダ ー な どに 関 連 して 急 速 な 発 展 を とげ た マ イ ク ロ波 技 術 で あ る.そ っ てGeV領
して シ ン ク ロ サ イ ク ロ トロ ン,シ
ン ク ロ トロ ン,リ
ニア ックな どに よ
域 の 物 理 学 の研 究 が 可 能 に な っ た.
敗 戦 に よ っ て サ イ ク ロ トロ ン を破 壊 さ れ 加 速 器 に よ る 実 験 を禁 止 さ れ た 日本 が, 1951年
のLawrenceの
来 日 を契 機 に 再 び加 速 器 に よ る本 格 的 な素 粒 子 実 験 に 挑 む こ
と が で き る よ う に な っ た の は,1956年
に始 まった東 大 原子 核研 究所 にお け る電 子 シ
ン ク ロ トロ ン の 建 設 か ら と い え よ う.実 質 的 に は 欧 米 の 先 進 国 に10年 再 出 発 で あ り,こ の た め 朝 永,菊
池,熊
谷,木
力 の あ っ た こ と を忘 れ るわ け に は い か な い.と 大 の 宮 本,大
河 グ ル ー プ な どは,小
村,宮
本 な どの 諸 先 達 の 並 々 な らぬ 尽
くに 東 北 大 の 木 村,北 垣 グ ル ー プ,東
型 電 子 シ ン ク ロ トロ ン の 研 究 に 取 り組 ん で い た.
ま た 米 国 で は 弱 集 束 の 陽 子 シ ン ク ロ ト ロ ンCosmotron Bevatron
(6GeV,Berkeley)を
MARK Ⅲ)が
は じめ,電
(3GeV,Brookhaven),
子 リ ニ ア ッ ク(0.6GeV,Stanford,
完 成 し,陽 子 ・反 陽 子 ・中 間 子 を は じめ 各 種 素 粒 子 の 創 成,反
部 構 造 の 研 究 な どが 行 わ れ て い た.ヨ Brookhaven国
以上遅 れ て の
立 研 究 所(BNL)で
ー ロ ッパ 連 合 原 子 核 研 究 所(CERN)や は30GeV級
応,内 米国の
の 強 集 束 の 陽 子 シ ン ク ロ トロ ン の
建 設 が 始 ま っ て い た. 電 子 シ ン ク ロ トロ ン に つ い て い え ば,と 集 束 型 で1GeVを
くにCornell大
越 え る こ とに 成 功 し 注 目 さ れ て い た.そ
科 大 学 や イ タ リア や ス エ ー デ ン で も,1GeV級 計 画 中 で あ っ た.こ
学 のR.R.Wilsonら
が強
の ほ か に もCalifornia工
の 電 子 シ ン ク ロ ト ロ ンが 建 設 ま た は
の よ う な状 況 の な か で,同 程 度 の エ ネ ル ギー 領 域 の 強 集 束 電 子 シ
ン ク ロ トロ ン を 日本 で もつ くろ う と い う こ と に な っ た.こ は 電 子 リニ ア ッ ク(∼6MeV)を
こで,と
くに 特 色 と した の
入 射 器 と し て 用 い よ う,と い う こ と で あ っ た.我
が 国 で は 初 め て の 高 エ ネ ル ギー 加 速 器 計 画 で あ る か ら,将 来 を見 通 して 新 し い加 速 器 技 術(強
集 束,リ
ニ ア ッ ク な ど)の 開 発 に重 点 を お き,完 成 し た 時 に こ れ を素 粒 子 の
実 験 に 用 い るか ど うか は ひ と まず ペ ン デ ィ ン グ に し た ま ま で の 出発 で あ っ た.
15.2 核 研 電 子 シ ン ク ロ ト ロ ン 1956年
定 員6名
INS-ES)は
の 教 官 に よ っ て 建 設 が 始 ま っ た 核 研 電 子 シ ン ク ロ トロ ン(以
総 額 約2億5千
た 人 は 約20名
万 円 で1961年
で あ っ た が,リー
して そ の 多 くが 将 来 の 高 エ 研 の 加 速 器 計 画 に 主 導
者 もそ の 一 人 で,東
波 分 光 学 の 研 究 を行 っ て い た 縁 で,建 とに な っ た.そ
大 の大学 院生 時代 か らマ イク ロ
設 当初 か ら入 射 用 リニ ア ッ クな ど を 担 当 す る こ
れ ま で加 速 器 の 勉 強 は殆 ど し た こ と が なか っ た の で,書 物 や 外 国 の 文
献 な ど を漁 り読 ん だ.建 計,建
の 間実 際 に建 設 に関 与 し
ダ ー の 熊 谷 寛 夫 を 除 く と初 め て 本 格 的 な加 速 器 建 設
に 取 り組 む 者 た ち ば か りだ っ た.そ 的 役 割 を 果 た す こ と に な っ た.筆
に 完 成 し た.そ
下
設 グ ル ー プ 全 体 の 間 で は 電 磁 気 学 の 基 礎 な ど を は じめ,設
設 の 方 針 か ら部 品 の 製 作 に 至 る まで,し
く,我 が 国 で最 初 の 直 径 が10m級 が な い 電 磁 石,高
周 波,真
ば し ば 激 しい 議 論 が 行 わ れ た.と に か
の 加 速 器 で あ り,当 時 の 日本 で は 企 業 も全 く経 験
空 な どの 新 技 術 を積 極 的 に 用 い よ う と い う意 気 込 み で,各
部 の 主 要 部 品 を そ れ ぞ れ 自分 た ち で 開 発 し た仕 様 に よ りメ ー カ ー に 製 作 依 頼 し,自 分 た ち の 手 で 一 台 の 加 速 器 に 組 み 上 げ る とい う,い わ ば"チ 設 が 行 わ れ た.そ MeV)に
れ だ け に1961年12月
中 旬,遂
到 達 した 時 の ス タ ッ フ の 喜 び は ひ と しお で あ っ た(図1).
こ のINS-ESは
そ の 後 新 た に 加 わ っ た ス タ ッ フ も含 め て 改 良 に 改 良 を重 ね,1966
年 に は 到 達 エ ネ ル ギ ー1.3GeV,1975年 20Hz)を れ,実
ー ム の 手 造 り"の 方 法 で 建
に 第 一 段 階 の 目標 エ ネ ル ギ ー(700
得 た.1960年
に は ビー ム 強 度2×1012電
験 用 装 置 の 整 備 も本 格 的 に進 め ら れ,測
ャ ネ ル,液 体 水 素 標 的,運 バ ー,そ
子/s(繰
り返 し
度 か らは こ れ を素 粒 子 実 験 の 共 同利 用 に 用 い る予 算 も認 め ら 定 器 グ ル ー プ が 形 成 さ れ た.ビ ー ム チ
動 量 分 析 用 各 種 電 磁 石,シ
ンチ レー ター や スパ ー ク チ ェ ン
して 日本 で は 最 初 の トラ ン ジ ス ター 等 の 半 導 体 を積 極 的 に 用 い た実 験 用 の 各
種 エ レ ク トロ ニ ク ス 装 置 な どの 開 発,整
備 が 行 わ れ た.1962年
に は共 同利 用 実験 や
将 来 の 日本 の 高 エ ネ ル ギ ー 物 理 学 の 研 究 を考 え る全 国 的 な組 織,高
図1
1961年12月,核 700MeVを
研 電 子 シ ン ク ロ トロ ン が
達 成 した(核
研 二 十 年 史 より)
エネ ルギー 同好会
も発 足 し た. こ う してINS-ESの
建 設 と共 同 利 用 実 験 は 所 内 外 の 我 が 国 に お け る素 粒 子 実 験 チ
ー ム を育成 す る原動 力 とな り ,数 多 くの研 究 者 を養 成 し た.行
わ れ た 実 験 で 最 も数 の
多 い の は 中 間 子 の 光 発 生 に 関 連 した も の で あ る こ と は い う ま で も な い が,引 子 ビー ム に よ る実 験 や 制 動 放 射 な どの 電 磁 相 互 作 用,と 射 の 干 渉 効 果 等 の 特 色 あ る研 究 が な さ れ た.シ 射 に 関 す る 研 究 も推 進 され,1975年
くにSi単
き出 し電
結 晶 に よ る制 動 放
ン ク ロ トロ ン完 成 直 後 か ら電 子 軌 道 放
に は 放 射 光 利 用 専 用 のSORリ
こ の よ う な 加 速 器 研 究 者 と物 性 や 原 子 ・分 子 研 究 者 の 連 携 が,我
ン グ が 完 成 し た. が 国の放射 光研 究 グ
ル ー プ の 誕 生 の 起 動 力 と な っ た. こ れ ら の 詳 細 な経 緯 や 成 果 は 核 研 二 十 年 史 や 年 次 報 告 な ど に 記 載 さ れ て い る1).そ れ に よ る と,こ の30年 間 平 均60人 3,000時
間 に 共 同利 用 実 験 に 使 われ た 総 時 間 数 は10万
以 上 の研 究 者 が 参 加,う
間 稼 動 し,我
ち85名
時 間 を越 え,年
が 学 位 を取 得 して い る.今
が 国 の素 粒 子 ・原 子 核 分 野 の 研 究 に 限 ら ず,国
日で も年 間 約
際 的 ・学 際 的 な
研 究 に 大 き く貢 献 して い る.
15.3 核 研 か ら高エ 研 へ の 道 INS-ESの
建 設 が 軌 道 に乗 り実 験 準 備 が 進 む 中 で,当
時 の 世 界 の 状 況 に 鑑 み,我
が
国 で も本 格 的 な 高 エ ネ ル ギー 陽 子 加 速 器 を建 設 し よ う とい う要 望 が 研 究 者 間 に 高 ま っ た.し
か し,そ れ が つ くば の 高 エ ネ ル ギ ー 物 理 学 研 究 所(以
下 高 エ 研)の
ま で の 道 は筆 舌 に 尽 く しが た い 苦 難 に 満 ち た もの で あ っ た.茅,湯
川,朝
創 設 に至 る 永,小
伏 見 な ど の 大 先 輩 の 強 力 な 支 援 に も拘 わ らず,1)建
設 す る加 速 器 の 機 種,規
算,研
初 は 仮 称 素 粒 子 研 究 所)の
究 体 制,2)新
た に 創 設 さ れ る べ き研 究 所(当
や 組 織 運 営 と大 学 等 との 関 係,3)我
谷,
模,予 敷地
が 国 初 の 巨 大 基 礎 科 学 の 研 究 と他 分 野 の 学 術 研
究 との バ ラ ン ス,な
ど を 巡 っ て 研 究 者 間 や 研 究 者 と行 政 側 との 間 に 意 志 疎 通 の 欠 如 や
不 信 感 が 解 け ず,不
毛 な 議 論 に 多 くの 時 間 を浪 費 し て,当
事 者 た ち は しば しば 絶 望 感
に 襲 わ れ た こ と も あ っ た.結 局 は 主 観 的 意 欲 と客 観 的 情 勢 の ず れ が 主 な 原 因 で あ っ た か も し れ な い が,学
問 を 愛 す る者 た ち に と っ て は 極 め て 不 幸 な 事 態 で あ っ た.
歴 史 的 に主 な経 緯 だ け述べ る と,関 連 研 究者 の要 望 を受 けて 日本 学 術会 議 は1962 年,「 エ ネル ギー12GeV,強
度0.1μAを
越 え る陽子大 強 度加 速器 の建 設 を含 め,広
く原 子核 物理 学 に必要 な研 究 設備 の飛 躍的 充実 をはか る」 とい う原子核 研究 将来計 画 の実 現 を政府 に勧 告 した2).文 部省 では この勧 告 に基 づ き国立 大学 研 究所 協議 会,学 術 審 議会 研 究体 制 分 科会,学 術 審議 会 な どの勧 告 に従 い,1964年
度か ら 巨大 加 速 器
の基礎 研 究 費 を核 研 に計上 した.以 後1969年 度 まで,基 礎 ・準 備研 究 費 と して総額 約14億 円が 計上 され た.そ の 間研 究者 側 では 学術 会議 原子核 特 別委 員 会 に素研 準備 調査 委 貝会(SJC)が
発 足,核 研 には具体 的作 業 を行 う素研 準備 室 が 設 け られ た.し
か し,当 初 朝 永 委 員 長 の も と熊 谷 寛 夫(加 し たSJCは GeV陽
速 器),三
浦 功(測
従 来 の 計 画 を 再 検 討 し,加 速 器 を12GeV大
子 シ ン ク ロ ト ロ ン に 変 更 し た.当
は な か っ た と思 う.た 早 川 幸 男 に,加 諏 訪 は1966年
だ,こ
責 任 者 で発 足
強 度 シ ン ク ロ ト ロ ン か ら40
時 筆 者 はBNLに
ん な 議 論 が 行 わ れ た か に つ い て は 詳 ら か で な い が,学
定 器)両
滞 在 し て お り,国
内でど
術 的,技 術 的 に は 誤 っ た選 択 で
の 計 画 の 変 更 が 与 え た 波 紋 は 大 き く,SJCの
委員長は
速 器 の 責 任 者 は 当 時 や は り米 国 に 滞 在 して い た諏 訪 繁 樹 に 交 代 し た. 帰 国,実
質 的 に 高 エ 研 創 設 の 責 任 者 と な っ た.筆
者 も諏訪 に請 われ て
相 次 い で 帰 国 し,米 国 で 眼 の あ た りに体 験 し た よ うな 素 粒 子 実 験 が 我 が 国 で も本 格 的 に 行 え る よ う に な る た め,微 一 方
力 を尽 く し協 力 した.
,こ の よ う な 大 型 加 速 器 計 画 に対 す る 国 内 の 他 分 野 の 研 究 者 や 行 政 側 な どか ら
の 危 惧 が 一 段 と高 ま っ た の も この 頃 か ら で,い
わ ゆ る 大 学 紛 争 に も巻 き込 まれ て,研
究 や 教 育 と創 設 準 備 の 仕 事 と を両 立 させ る た め に は 殆 ど家 に 帰 れ な い よ う な状 態 が 続 い た .し か し,こ
の よ うな 苦 難 は ま た 改 め て 高 エ ネ ル ギー グル ー プ の 結 束 を 固 め た.
準 備 研 究 に お い て も 電 磁 石 用 の 新 素 材,リ
ニ ア ッ ク用 空 洞 の 銅 メ ッ キ 法,高
用 の 高 性 能 フ ェ ラ イ トな ど の 新 技 術 を は じめ,加 着 々 と進 め られ た.大
速 器 や 測 定 器 に 関 す る技 術 開 発 が
学 を 中 心 と し て 泡 箱 の 写 真 解 析,偏
ク探 索 の 研 究 な ど も行 わ れ,加
周 波加 速
極 標 的,宇
速 器 完 成 後 の 物 理 研 究 の た め,特
宙線 中 の クォー
に若 手研 究者 の養 成
が 並 行 し て な さ れ た こ と も銘 記 す べ き で あ ろ う. 1969年8月,ま
さ に 紆 余 曲 折 の 後 に 学 術 審 議 会 は 「素 研 を 設 立 し,当 面 の 基 本 的
な 施 策 と して 総 額 約80億
円 で エ ネ ル ギ ー8GeVの
陽 子 加 速 器 を建 設,実
世 界 の 第 一 線 に 立 つ 将 来 の 発 展 を期 待 す る 」 とい う答 申 を 出 し た.そ 度 予 算 で 素 研 設 置 準 備 費 が 文 部 省 に つ き,1971年4月 究 所 の 用 地 に つ い て,全
国 で80カ
に 高 エ 研 が 創 設 さ れ た.新 研
所 近 くの 候 補 地 が挙 げ ら れ た が,熊
る 土 地 調 査 グ ル ー プ の 調 査 の 結 果,既 kmの
に1967年
績 を積 ん で
う して1970年
谷 を 中 心 とす
に つ く ば に 南 北 約2km,東
西 約1
予 定 敷 地 が 決 ま っ て い た.
研 究 所 の体 制 は,全
国 の 大 学 の 教 員 そ の 他 の 者 が 広 く共 同 利 用 で き る新 し い 形 態 の
国 立 大 学 共 同 利 用 機 関 の 第 一 号 と し,国 際 協 力 は も ち ろ ん,大 学 院 教 育 に も協 力 す る こ と を 目 的 と した.そ
の 具 体 的 な あ り方 は 研 究 所 の 成 長 と と もに 変 化 し て い っ た が,
以 下 で は詳 細 を 割 愛 す る3). 15.4
高 エ 研 陽 子 シ ン ク ロ トロ ン
筑 波 山 を 背 景 とす る松 林 の 中 に1971年 ン ク ロ トロ ン(以 下KEK-PS)は,我
か ら槌 音 高 く建 設 が 始 ま っ た 高 エ 研 陽 子 シ が 国最 初 の世 界 に伍 した素粒 子 実 験装 置 で あ
る.
諏訪初 代所 長 をは じめ全 所員 が50歳 代 前 半以 下 で,初 年 度 の研 究 者や 技術 者 は30
名 余,事
務 職 員 が 約20名
で あ っ た.大
学共 同 利用機 関 の 第一 号 であ る ばか りでは な
く,筑 波 研 究 学 園 都 市 の パ イ オ ニ ア で も あ り,道 路 を 含 む 都 市 造 り もス タ ー トし た ば か りで あ っ た.周
辺 に は住 居,商
店,学
校,病
院 な ど さ え な く,た ま た ま研 究 所 の予
定 敷 地 内 に あ っ た 倒 産 した ゴ ル フ場 の ク ラ ブ ハ ウ ス を仮 の オ フ ィ ス と し,そ
こに最初
の 所 員 た ち が 泊 ま り こ ん で 寝 食 を共 に し な が ら研 究 所 の 創 設 や 加 速 器 の 建 設 な ど に あ た っ た.長
靴 とヘ ル メ ッ ト と懐 中 電 灯 が 必 携 の 三 種 の 神 器 で,多
の 生 活 の 友 で あ っ た が,野
くの 野 性 動 物 が 我 々
犬 の 襲 来 を 防 ぐた め に棒 切 れ も 欠 か せ な か っ た.
筆 者 は加 速 器 建 設 の 責 任 を 負 うこ とに な っ たが,規
模 と し て は 後 発 で あ るが 故 に性
能 や 強 度 に 特 に 重 点 を置 い た新 しい ア イ デ ア や 技 術 を積 極 的 に取 り入 れ た.そ
して こ
の エ ネ ル ギ ー 領 域 で は 世 界 で初 め て ブ ー ス ター を使 っ た カ ス ケー ド方 式 を 採 用 し た. 素 研 準 備 室 時 代 か ら 開 発 され た リニ ア ッ ク,電 磁 石,高 新 技 術 は 勿 論,主
周 波 加 速,計
算 機 制御 な どの
リ ン グ に は機 能 分 離 型 の 強 集 束 法 を 用 い た り も し た4).こ の よ う な
新 方 式 や 新 技 術 の 利 用 に は 当 時 の 欧 米 の 一 流 加 速 器 研 究 者,特 し て くれ た客員 研 究 者 な どか ら,KEK-PSの
に 当 初 か ら建 設 に 協 力
成 功 を 危 ぶ む 忠 告 も受 け た.確
ざ実 際 の 建 設 を行 っ て み る と さ ま ざ ま な 困 難 に 直 面 した.例
え ば,加
か にい
速器 全体 の コ ン
プ レ ッ クス を必 要 な 精 度 に 配 置 す る た め の 土 木 ・建 築 工 事 な ど も当 時 の 常 識 を越 え て お り,受 注 メー カ ー と激 し いや り と り を し た り も し た.既 速 器 の 建 設 に 欠 くこ と の で き な い の は,ま
に 述 べ た よ う に,優
れ た加
ず 多 くの 分 野 の 担 当者 た ち の チ ー ム造 りで
あ り,そ れ と共 に 装 置 の 各 部 を製 作 す る 企 業 との 連 携 で あ る.そ
こ で ひ とつ ひ とつ 発
図2 現 在 のKEK-PS施 設の概観図 主 に リ ン グに よ る高 エ ネ ル ギ ー 実 験 の 他 に ブ ー ス ター を利 用 した様 々 な学 際 的 な研 究 の ため の施 設 も加 え られ た.
注 が 進 み,最
終 段 階 に 近 い とこ ろ で 主 リン グ 電磁 石 の 入 札 が 済 ん だ 時 は,筆
が 始 ま っ て い た 直 径108mの
者 は建設
トン ネ ル の 中心 部 に 駆 け て い っ て 流 れ る涙 を こ ら え ら
れ な か っ た. こ う し て 図2に
示 す よ うなKEK-PSの
建 設 は 文 字 通 りチ ー ム ワ ー クの 結 晶 と して
完 成 し,1976年3月4日
の 早 朝0時30分
目標 エ ネ ル ギ ー8GeVに
到 達 した こ と を示 し た.5年
た が,前
頃,加
年 の 暮 に そ の半 分 を 越 しな が ら,い
速 され た ビ ー ム の モ ニ ター の 信 号 が
る の に 苦 労 し容 易 に 目標 値 に 達 しな か っ た の で,当 した 約40人
の ク ル ー は 大 き な歓 声 を あ げ た.同
材 の 活 用 な ど に よ っ て 当 初 目標 の1.5倍
計 画 として は予 定 通 りで あ っ
わ ゆ る トラ ン ジ シ ョン エ ネ ル ギー を越 え 夜 コ ン トロ ー ル 室 に集 ま っ て 乾 杯
じ年 の 暮 に は 主 リン グ電 磁 石 の 新 素
の12GeVに
達 し た.ま
た その後 の 着実 な改
良 と調 整 に よ っ て 各 部 の ビー ム 強 度 も 当初 目標 を大 き く上 回 っ た.な き こ と は 故 障 に よ る停 止 時 間 が 数%以
下 と い う昼 夜 連 続 の 安 定 な 運 転,後
タ ン建 設 期 間 中 の 入射 リニ ア ッ クの エ ネ ル ギー の 倍 増,ブ H-イ
か で も特 筆 す べ 述 の ト リス
ー ス タ ー の荷 電 変 換 に よ る
オ ン 多 重 入 射 方 式 の 採 用 な ど で あ ろ う.こ れ ら は 筆 者 に 引 き継 ぎPS加
速器 責
任 者 と な っ た 亀 井 亨 らに よ る チ ー ム の 手 で行 わ れ た5). KEK-PSは
今 日で はBNL-AGSと
と も に 世 界 で 活 躍 し て い る た だ2台
の10GeV
領 域 陽 子 シ ン ク ロ トロ ン で あ る.PSを
用 い た 共 同 利 用 実 験 は,筆
た 直 後 の1977年5月
初 は 内 部 標 的 か ら 発 生 した π 中 間 子 を用 い る
か ら開 始 さ れ,最
者 が 所 長 に就 任 し
カ ウ ン ター 実 験 と,速 い 取 り出 し ビー ム に よ る泡 箱 実 験 が 行 わ れ た .泡 箱 実 験 は 海 外 加 速 器 に よ る写 真 解 析 に 実 績 を もつ 東 北 大 北 垣 敏 男 グ ル ー プ が 中 心 と な り,p,p,π ビ ー ム な ど を用 い 直 径1mの
泡 箱 内 に タ ン タ ル 板 や 原 子 核 タ ー ゲ ッ ト を装 〓 す る な
ど の ユ ニ ー ク な実 験 を行 い,1981年 カ ウ ン タ ー 実 験 は1977年11月 はK中
ま で に500万
枚 以 上 の 写 真 を撮 影 して 終 了 し た.
に 遅 い ビー ム 取 り出 し に 成 功 し て 以 来,1979年
間 子 や 反 陽 子 を 用 い る実 験 も可 能 に な っ た.そ
し た 弱 い 相 互 作 用 の 研 究,バ ハ ドロ ン分 光 学,ハ
し てK中
か ら
間 子 の 崩 壊 を 中心 と
リオ ニ ウ ム な ど の ク ォ ー クの エ キ ゾ チ ッ ク な 結合 状 態 の
ドロ ン ・原 子 核 相 互 作 用 や ハ イ パ ー 核 の研 究 な ど,特
で 質 の 高 い 実 験 が 次 々 に 行 わ れ て きた.1990年 共 同 利 用 実 験 審 査 委 員 会 の 厳 格 な 審 査 で98件 共 同 利 用 実 験 に 参 加 した.こ
±
度 ま で に215件 が 採 択 さ れ,年
色 あ る広 範
の 提 案 実 験 が あ り, 平 均250名
の研 究者 が
れ らの 実 験 の 遂 行 の た め に は 大 型 超 伝 導 電 磁 石 を我 が 国
で 初 め て 実 用 化 し た ビー ム ラ イ ンや,稀 極 重 陽 子 標 的 な ど を は じめ,数
釈 冷 却 法 に よ っ て0.1K以
下 まで下 げ た 偏
々 の 実 験 技 術 の 開 発 が 行 わ れ た.1989年
箱 実 験 室 の 近 くに 新 た に 第 二 の 実 験 室(北 超 伝 導 ス ペ ク トロ メ ー タ ー を 中 心 に,従
カ ウ ン ター ホ ー ル)を
か らは 旧泡
建 設 し,二 基 の 大 型
来 の 東 カ ウ ン ター ホ ー ル に よ る トピ カ ル な課
題 と相 補 的 に ハ イパ ー 核 の 研 究 な ど を 中心 と す る長 期 的 で持 続 性 の あ る研 究 が 進 め ら れ て い る.現
在 約10カ
所 の 実 験 エ リヤ が 用 意 さ れ,K中
間 子 の稀 崩壊 を調べ た実
験,ハ
イ パ ー 核 の 研 究,p-He原
子 の エ キ ゾ チ ッ ク準 安 定 状 態 の 発 見 な ど,国 際 的 に
も極 め て 高 い 評 価 を受 け て い る.重 陽 子,He++,偏 の 更 な る 改 良 と と も に 特 にK中
極 陽 子 の 加 速 を は じめ,加
速器
間 子 や ニ ュ ー ト リ ノ の研 究 な ど で 大 き な成 果 が 期 待
さ れ る6). こ こ で 特 筆 す べ き こ と は,KEK-PSが
カ ス ケ ー ド方 式 を採 用 し た た め,主
入 射 用 ブ ー ス タ ー(500MeV,5μA,く
りか え し20Hz)の
ス タ ー 利 用 施 設(1978年
度 新 設)で
る.パ
ル ス μ粒 子 ビー ム,陽
ル ス 中性 子 源,パ
ビ ー ム の 約80%がブ
ー
学 際 的 な研 究 に優 れ た貢献 を して い るこ とで あ
け た 数 々 の 研 究 や 応 用 が 原 子 核 物 理,物 て きた.素
リン グ
子線 医学 利 用 の 三分 野 で世 界 に先 駆
質 科 学,生
命科 学 な どの多彩 な領域 で行 われ
粒 子 関 係 で は 偏 極 中性 子 を用 い た 強 い 相 互 作 用 に お け るパ リ テ ィ非 保 存 の
検 証 な どが あ る. 15.5 KEK-PS計
ト リス タ ン 計 画
画 が 果 た した も う一 つ の 大 き な 成 果 は,素
粒 子 ・原 子 核 の 実 験 分 野 に
お け る若 手 人 材 の 養 成 で あ る.高 エ ネ ル ギ ー 加 速 器 の 研 究 や 技 術 開発 は も とよ り,共 同 利 用 実 験 が 軌 道 に 乗 っ た1980年 毎 年10名 理,デ
近 く に達 した.単
ー タ処 理,低
に 至 る ま で,ノ
代 の 初 め に は,PS実
験 に よる学 位 取 得 者 の数 が
に加 速 器建 設 や 実 験 に 限 ら ず,こ
温 や 真 空 技 術,精
れ に 関 連 し た 放 射線 管
密 機 械 工 作 か ら土 木 建 設 や 行 政 面 で の 対 応 な ど
ー ・ハ ウ の 著 しい 進 歩 が 得 られ た.
こ の よ う な 我 が 国 の 素 粒 子 実 験 分 野 の 急 速 な成 長 を踏 ま え,高 れ ず 世 界 の 第 一 線 に 立 つ よ う な将 来 計 画 と し て1973年 タ ン 計 画 で あ る.こ
れ に 先 立 ち,約200haあ
大 型 陽 子 シ ン ク ロ トロ ン を建 設,PSに と い う計 画 が あ っ た.し
筆 者 が 提 案 し た の が,ト
る 高 エ 研 の 予 定 敷 地 に,さ
接 続 して100GeV近
に は 米 国 フ ェ ル ミ加 速 器 研 究 所(FNAL)の
ン が 完 成 し200GeVに
達 し て い た.そ
加 速 器 を造 るべ きだ と考 え た.従 のISRの
よ うに,別
くの エ ネ ル ギ ー を得 よ う
で しか 増 え な い う え,
直 径2kmの
陽 子 シ ン ク ロ トロ
こ で 筆 者 は 日本 の 将 来 計 画 は 衝 突 ビ ー ム 型 の
来 の 衝 突 ビ ー ム 型 加 速 器 は 同 じ頃 完 成 し たCERN
の 加 速 器 で 既 に 加 速 し た ビー ム を ス トー レ ジ ・ リン グ(以
蔵 リン グ)に 貯 め 込 み,逆
の よ う な 土 地 が 狭 く,地 震 が 多 く,土 木 建 設 の 工 費 が 高 い 国 で は,断 っ か り した トン ネ ル を ひ とつ 造 り,そ
pp, pp, ep, e+e-な リス タ ン(TRISTAN:
下貯
方 向 に 回 して 何 カ 所 か で 衝 突 させ て い た.し か し1台 の 加
速 器 で加 速 と貯 蔵 を共 に行 う こ と も可 能 と考 え,貯 蔵 型 加 速 器 と呼 ん だ.特
く,し
リス
らに通 常 の
か し,こ の よ う な相 対 論 的 エ ネ ル ギー 領 域 の 固定 標 的 の 実 験
で は 研 究 に 有 効 な 重 心 系 エ ネ ル ギー が 加 速 エ ネ ル ギ ー の1/2乗 1972年
エ研 創 設 の 初 心 を忘
に我が 国
面 が比 較 的広
こ に 貯 蔵 型 加 速 器 を 何 台 か 設 置 し て,
どの 多様 な衝 突 ビ ー ム 実 験 が で き る よ うに し よ う とい うの が,ト Transposable
Ring
Intersecting
STorage
Accelerators
in
Nippon)計
画 の 基 本 概 念 で あ っ た.今
日では その幾 つ かが 現 に稼 動 または 計画 中 の
世 界 中 の大 型 加 速 器 で 採 用 さ れ て い るが,当
時 と し て は 全 く野 心 的 で,筆
年 に 開 催 され た 国 際 集 会 や 日米 セ ミナ ー な ど で 紹 介 し た と き は,欧 速 器 研 究 者 か ら 「日本 で は こ ん な 計 画 が ま と も に(serious)に と質 問 され た り批 判 さ れ た り した7).Gell-MannはJames の 第2部 が,日
者 が1973
米 の物理 学 者や加
考 え られ て い る の か 」
JoyceのFinnegans
Wake
の 終 りの ト リ ス タ ン を 賛 え る ソ ネ ッ トか ら ク ォ ー ク を命 名 し た と伝 え られ る
本 で も ク ォ ー ク を探 求 す る素 粒 子 の 本 格 的 な 実 験 が 行 え る よ う に した い と い う
悲 願 が こめ られ た 計 画 で もあ っ た. ト リ ス タ ン 計 画 は 高 エ 研 創 設 時 に 比 べ る と,関 連 研 究 者 は も とよ り他 分 野 や 国 際 的 な研 究 者 集 団 の 支 持 も得 て 比 較 的 ス ム ー ズ に検 討 が 進 め られ た.行 間 の 多年 に わ た る 人 脈 か ら も好 意 的 な支 援 を受 け た.そ 段 階 の 検 討 で は17GeVの 子 のep衝
電 子 と70GeV(超
突 実 験 を検 討 した.1992年
規 模 の も の で あ っ た が,1970年
政 や 企 業 な ど との
し て 高 エ 研 を 中 心 とす る 第 一
伝 導 電 磁 石 を 用 い れ ば180GeV)の
に 完 成 し た ドイ ツ のHERA計
画 の1/3程
代 の 計 画 と し て は ユ ニ ー ク な ア イ デ ア で,加
陽 度 の 速器 の
詳 し い技 術 的 検 討 も行 わ れ た8).し か し 電 子 ・陽 子 の 深 部 非 弾 性 散 乱 で 陽 子 の 内部 構 造,特
に ク ォ ー ク 等 の構 成 粒 子 に 関 す る研 究 を行 っ た りす る場 合 は 運 動 量 移 行 が 充 分
で は な い と判 断 さ れ た上,超 ー ル な ど を考 慮 して
,1980年
伝 導 リ ン グ を含 む 予 算,技
術 的 諸 問 題,タ
イム スケ ジュ
に む し ろ高 エ 研 の 予 定 敷 地 一 杯 に 全 周 約3kmの
電子 ・
陽 電 子 衝 突 型 加 速 器 を建 設 す る こ と を第 一 段 階 とす る とい うこ とで 研 究 者 間 の 合 意 を 得 た9). ト リス タ ンe+e-衝 (PF)入
突 型 加 速 器 は 既 に1982年
射 用 の2.5GeV(全
長400m)電
図3
度 完 成 予 定 で建 設 中 の 放 射 光 実 験 施 設
子 リニ ア ッ ク を,陽 電 子 用 に も増 強 して 初
ト リス タ ン施 設
段 の 入 射 器 とす る こ とに し た.リ ン グ(AR)で8GeVま
ニ ア ッ ク で 加 速 さ れ たe± ビー ム は ま ず 入 射 蓄 積 リ
で加 速 され,そ
れ ぞ れ2個
同 じ主 リ ン グ を逆 向 き に 回 転 させ る(図3).主
の 電 子,陽
電 子 の バ ン チ と な り,
リン グ は い わ ば シ ン ク ロ ト ロ ン の 偏
向 ・集 束 電 磁 石 を 配 置 し た 円 弧 部 分 と定 在 波 型 リニ ア ッ ク な ど を配 置 した 直 線 部 と を 交 互 につ な い だ,従
来 の 高 エ ネ ル ギ ー 加 速 器 とは 異 な っ た タ イ プ の リン グ で あ る.こ
れ は 放 射 光 に よ る エ ネ ル ギ ー 損 失 を 考 え る と,直 径 が エ ネ ル ギ ー の2乗 き くな る円 形 加 速 器 が 必 要 で あ る とい う経 験 則 に 拘 泥 せ ず,全 波 加 速 を増 強 し,で
に 比 例 して 大
周 長 を一 定 に し て 高 周
き る だ け 高 い到 達 エ ネ ル ギ ー を得 ら れ る よ うに 設 計 し た か らで あ
る.こ
の た め 後 述 のCERNのLEPが
全 周 長 約27kmも
GeV程
度 しか 得 ら れ て い な い の に 対 し,ト
あ る の に 重 心 系 で は100
リス タ ン は3kmで60GeVを
越 えてい
る. こ の た め に ト リス タ ン加 速 器 建 設 に 最 も重 要 な 役 割 を 果 た し た の は 高 周 波 加 速 空 洞 の 開 発 で,二
重 周 期 構 造(APS)型
定 在 波 リニ ア ッ ク と超 伝 導 加 速 空 洞 を世 界 で 初
め て 実 用 化 し た こ と で あ る.前 Giordanoら
者 の 原 理 は,筆
者 が1960年
代 にBNL滞
在 中 にS.
と 初 め て 考 案 し た も の で あ っ た10).後 者 は 小 島 融 三 ら の グ ル ー プ が 高 エ
研 創 設 当初 か ら綿 密 に 開 発 して き た も の で,高 場 合 の10万
分 の1で
周 波(508MHz)電
数 倍 の 加 速 電 界 強 度 が 得 ら れ,5セ
て 定 常 的 に稼 動 して い る11).8GeVで 速 空 洞 で 最 高32GeVま
力損 失 が 常 温 の
ル 型 の 空 洞32台
が 設 置 され
入 射 され た 電 子 ・陽 電 子 の バ ン チ は こ れ ら の 加
で 加 速 さ れ,貯
蔵 モ ー ドに 入 る.そ
して4カ
所 の直 線部 の 中
心 点 で正 面 衝 突 す る の で あ る. こ の 衝 突 点 を 囲 ん で幅 約55m,奥 ぞ れ 富 士,日 約11mに
光,筑
波,大
設 置 さ れ,全
行 き45m,高
穂 と 名 づ け られ た.実
さ 約20mの
実 験 室 が あ り,そ れ
験 室 は 地 下 約15m,加
コ ン プ レ ッ ク ス が1mm程
速 リン グは
度 の 精 度 で 設 置 で き る よ う,地 震
対 策 も含 む 大 規 模 で 高 度 な 構 造 体 が 建 設 され た. 上 記 の 高 周 波 加 速 空 洞 に 限 らず,加
速 器 や 検 出 器 な どの 各部 で 多 岐 に わ た る 新 技 術
の 開 発 が 行 わ れ た こ と は い う ま で も な い.そ
れ ら の 代 表 的 な も の だ け 挙 げ て も,加
器 に 関 し て は 全 ア ル ミ合 金 超 高 真 空 シ ス テ ム,高 ミニ β 衝 突 シ ス テ ム 用 超 伝 導 四極 電 磁 石,加
速
周 波 加 速 用 高 出 力 ク ラ イ ス トロ ン,
速 ビ ー ム 設 計 ・制 御 用 計 算 機 シ ス テ ム,
不 安 定 性 を含 む ビ ー ム 力 学 や 放 射 ス ピ ン偏 極 効 果 の 研 究 な どが あ る.粒 子 検 出 器 に 関 連 し て も大 型 薄 肉 超 伝 導 ソ レ ノ イ ド,各 種 の ド リフ トチ ェ ン バ ー や カ ロ リ メー ター, 検 出 さ れ た 膨 大 な 数 の 信 号(数 ロ ニ ク ス,コ
万 チ ャ ネ ル)を
計 測 ・処 理 す る最 先 端 の 高 速 エ レ ク ト
ン ピ ュ ー タ ー グ ラ フ ィ ッ ク スや 大 型CPU,研
究 所 と大 学 間 の ネ ッ トワ
ー ク な ど を 駆 使 した デ ー タ解 析 な ど,枚 挙 に い と まが な い12). 4実 験 室 の う ち3カ
所 で はAMY,TOPAZ,VENUSと
名 近 い メ ンバ ー か ら な る 共 同 実 験 グ ル ー プ が10m立
呼 ば れ る,そ
れ ぞ れ100
方程 度 の 大 型測 定 器 を据 え付
図4
け,実
験 ・解 析 を 行 っ て きた.い
AMYは
ト リス タ ン計 画 の年 表
ず れ も大 学 と高 エ研 の 共 同研 究 グ ル ー プ で あ る が,
特 に 国 際 協 力 に よ る研 究 グ ル ー プ で,Rochester大
の 主 導 の も と,米 い る.TOPAZで
大,京
大,神
を 行 っ て きた.こ は,磁
の 他,超
工 大,東
良 女 子 大,
北 大,都
立 大,
実 験 も米 日共 同 で行 わ れ た.
も鍬 入 れ に参 加 した.翌
面 で は 現 高 エ 研 所 長 菅 原 寛 孝 が,加
エ 研 創 立10年
目の1981年,ま
ず
起 工 式 が 行 わ れ た.南 部 陽 一 郎,W. 年 度,陽
設 も認 め ら れ ト リス タ ン 計 画 推 進 部 が 発 足,菊
電 子 リニ ア ッ ク と 主 リン グ の 建
池 健 が 初 代 の 総 主 幹 に な っ た.物
理の
速 器 の 面 で は 現 副 所 長 の 木 村 嘉 孝 が 早 くか ら中 心
に な り,研 究 所 が 一 体 と な っ て 総 力 を あ げ て 推 進 に あ た っ た.特 敏 が 米 国 よ り帰 国 し,1983年
工 大,奈
れ ぞ れ の 測 定 器 の 特 色 を生 か した 実 験
ト リス タ ン 計 画 の 年 表 的 な 図 解 を示 す.高
Panofskyら
Olsenら
伝 導 加 速 空 洞 が お か れ た 日光 の 直 線 部 の 中 央 の 実 験 室 で
入 射 蓄 積 リ ン グ の 予 算 が 認 め られ,11月19日 K. H.
大,農
も高 エ 研 グ ル ー プ と筑 波 大,東
戸 大 な どの 研 究 者 が,そ
気 モ ノ ポ ー ル を探 索 す るSHIPの
図4に
時)のS.
・日 ・韓 ・中 ・フ ィ リッ ピ ン合 同 チ ー ム が ユ ニ ー ク な実 験 を 進 め て は 高 エ 研 物 理 研 究 部 に名 大,東
大 阪 市 大 な ど の 研 究 者 が,VENUSで 広 大,阪
学(当
か ら は 第2代
検 出 器 の 設 計 ・建 設 な ど に 尽 力 した.ま
に1981年
には 尾崎
推 進 部 総主 幹 に な っ て 実 験 課 題 の 採 択 や
た1982年
か ら は ト リス タ ン物 理 審 査 委 員 会
図5
トリス タ ン加 速 器 の 完 成 後 の 運 転 統 計 お よ び 積 分 ル ミノ シ テ ィ
図6 e+e-衝
突 に よ る ハ ドロ ン生 成 断 面
積 の重 心 系 エ ネ ル ギー 依 存
も発 足 し,日 本 の 研 究 者 の ほ か 欧 米 か ら も 第 一 線 の 研 究 者 が 参 加 し,計 画 の 内容 に 貴 重 な勧 告 を お こ な っ て い る. 起 工 式 か ら 丁 度5年
目 の1986年11月19日
の 世 界 最 高 エ ネ ル ギ ー でe+e-衝
の 早 朝,ト
突 現 象(Bhabha散
乱)の
リス タ ン は 重 心 系50GeV 観 測 に 成 功 し た.こ
の 日
の 午 後 研 究 本 館 の 講 堂 を埋 め 尽 く した 所 内 外 の 研 究 者 や 職 員 の 祝 杯 を あ げ た歓 声 は,
Wagnerの
ト リ ス タ ン と イ ゾ ル デ の バ ッ ク ミュ ー ジ ッ ク を圧 して 余 りあ る も の で あ っ
た.我 が 国 で は 初 め て文 字 通 り世 界 最 高 エ ネ ル ギ ー の 加 速 器 が 完 成 し た 日 で あ っ た13). そ の 後 も 着 実 に 性 能 を挙 げ,最 率)4×1031cm-2s-1を Accelerator
高 エ ネ ル ギ ー64GeV,最
高 ル ミ ノ シ テ ィ(衝
得 て い る.1989年CERNのLEPやSLAC
Center)のSLCが
完 成 す る ま で3年
(Stanford
1,000億
円 弱,運
Linear
近 くに わ た っ て 最 高 エ ネ ル ギ ー を
保 有 し,人 類 未 踏 の エ ネ ル ギ ー 領 域 で の研 究 が 行 わ れ た.完 と実 験 に 使 わ れ た 積 分 ル ミ ノ シ テ ィ は 図5の
突確
成後 の加速 器 の運転 統計
通 りで あ る.建
転 に 使 わ れ た 経 費 の 年 間 平 均 は 約100億
設 に使 われ た総 経 費 は
円 で,1995年
度 を もって実
験 目標 を完 了 す る. 図6に
示 す よ う に,ト
成 断 面 積 が,γ(光
子)の
来 の 同 種 の 加 速 器 と,弱 SLCと
リス タ ン の エ ネ ル ギ ー 領 域 は,e+e-衝
い 相 互 作 用 のZ0ボ
ゾ ン に よ る 生 成 が 支 配 的 で あ るLEPや
の 狭 間 の 極 小 値 を と る 領 域 で あ る.そ
くの 新 しい 物 理 的 知 見 が 得 られ た.そ
ギ ー 領 域 に 存 在 し な か っ た.し
れ だ け に,実
験 は 困 難 で あ っ た が,多
れ ら の う ち の 主 な も の を あ げ る と,1)理
実 験 の 両 面 か ら の 大 方 の 予 想 に 反 して,ト
ッ プ ク ォー ク(tク
か し γ とZ0に
な エ ネ ル ギ ー 領 域 で の ボ トム ク ォ ー ク(bク ら,bク
突に よるハ ドロン生
媒 介 す る 電 磁 相 互 作 用 に よ る ク ォ ー ク対 生 成 を 主 とす る従
ォ ー ク)は
論 ・
このエ ネ ル
よ る反応 が干 渉 しあ って い るユニ ー ク ォ ー ク)生 成 時 の角 度 分 布 の 測 定 な どか
ォー クの パ ー トナ ー で あ るtク ォ ー ク の 存 在 の 必 然 性 を確 立 し た.2)Z0の
質 量 がCERNのpp衝 した.3)干
突 実 験 か ら得 ら れ た92.5GeVよ
りか な り低 い こ と を 明 確 に 示
渉 効 果 の さ ま ざ まな 測 定 に よ っ て γ とZ0を 統 一 的 に 取 り扱 う電 弱 相 互 作
用 の 検 証 に 大 き く貢 献 した.4)初 期 の 探 索 で,tク ォー クだ け で な く第4世 代 の ク ォ ー クや レ プ トン を は じめ 超 対 称 粒 子 な ど も ,60GeV領 域 ま でに は存 在 しない こ とを 明 らか に した.5)更
に 重 要 な こ とは,QCDの
体 系 的 な 研 究 で,特
媒 介 す る グ ル ー オ ン の 本 性 を世 界 に 先 駆 け て解 明 し た.例 異 な り他 の グ ル ー オ ン と も結 合 す る.6)QCDの
え ば,グ
に 強 い相 互作 用 を ルー オンは光 子 と
最 も基 本 的 な 物 理 量 で あ る 結 合 定 数
asは エ ネ ル ギ ー が 高 く な る ほ ど 弱 くな る こ と を あ らゆ る方 法 で 検 証 し た.こ の 大 統 一 の 可 能 性 へ の 実 験 的 根 拠 と もい え よ う.7)e+e-→e+e-+ハ れ た 光 子-光 子 の 衝 突 断 面 積 は 単 純 な ク ォ ー ク モ デ ル の 約2倍 ハ ドロ ン成 分 同 士 の 硬 散 乱 を含 め たQCD理 に し た,な
mに
ドロ ン で 測 定 さ も大 き く,光 子 の 中 の
論 な しで は 説 明 で き な い 新 事 実 を 明 ら か
ど が あ る.特 に カ ラー 電 荷 に よ るQCDの
究 な ど は,ミ
特 殊 性 の 研 究 や2光
ニ β シ ス テ ム に よ り衝 突 点 に お け る ビ ー ム を幅 ∼500μm,高
絞 っ て ル ミノ シ テ ィ を倍 増 し た1990年
れは力
子過 程 の研 さ ∼15μ
以 降 に よ る もの が 多 く,今 後 も,測 定 さ
れ た 多 数 の 現 象 の 解 析 と理 論 的 分 析 に よ り,新 た な 成 果 が 期 待 され る. ト リス タ ン計 画 を 通 して 学 術 雑 誌 や 国 際 会 議 のproceedingsな 数 は,建
設 が 始 ま っ た1981年
どに 掲 載 され た 論 文
以 降 の も の だ け で 加 速 器 関 係 約200篇,実
験 装 置関係
約100篇,物
理 成 果 に 関 す る も の 約150篇(理
論 計 算 を含 む)に
リ ス タ ン に よ る 物 理 の 研 究 で 学 位 を取 っ た 者 の 数 は 約100名(う 名)に
の ぼ っ て い る14).ト ち 外 国 機 関 か ら30
達 して い る. 15.6
最 初 に 述 べ た よ うに,戦 い 遅 れ を とっ た.若
国
際
協
力
後 我 が 国 は加 速 器 に よ る素 粒 子 実 験 の 分 野 で 欧 米 露 に著 し
い研 究 者 の 中 に は 海 外 に 渡 り外 国 の 研 究 所 な ど で 素 粒 子 実 験 に 参
加 し て 中 心 的 役 割 を 果 た した り,藤 井 忠 男 らの よ う に そ の後 帰 国 して 国 内 の 素 粒 子 実 験 の 推 進 に 貢 献 し た 者 も少 な くな い.我
が 国 の 研 究 者 が 組 織 的 に 国 際 協 力 を開 始 した
の は 素 研 準 備 室 が で き た 頃 か ら で,BNLやCERNか て そ の 解 析 を行 っ た.特 1970年
ら泡箱 実 験 フ ィル ム を入 手 し
に 東 北 大 学 に は 北垣 ら を中 心 に した 泡 箱 写 真解 析 施 設 が
に で き,そ の 後 のKEK-PSに
よ る泡 箱 実 験 で も大 い に活 躍 した.
高 エ 研 が 創 設 されPSが 完 成 して,日 本 も よ うや く素 粒 子 実 験 の 分 野 で 国 際 社 会 の 一 員 とな っ た .ト リス タ ン の建 設 が 開 始 さ れ た 頃 に な る と,ア ジ ア に お け る高 エ ネ ル ギー 物 理 学 の セ ン タ ー と し て.KEKの 7).そ
れ と と も に,こ
名 は 広 く世 界 に 知 ら れ る よ う に な っ た(図
の 分 野 の 海 外 か らの 研 究 者 の 来 日や 国 際 会 議 等 の 日本 で の 開 催
の 頻 度 が 急 速 に 増 え た. 1973年 の 日米 加 速 器 科 学 セ ミナ ー は,い が あ っ た.1978年
に は,従
来 米 国,西
わ ば そ の嚆 矢 で,5人
欧,共
産 圏 の3地
の 西 欧 か らの 参 加 者
域 持 ち 回 りで 開 催 さ れ て き
た 高 エ ネ ル ギ ー 物 理 学 国 際 会 議 が 例 外 的 に 東 京 で 開 か れ る こ と に な っ た15).1985年 に は レ プ トン と光 子 の 相 互 作 用 に 関 す る 国 際 会 議 が 京 都 で16),1989年
に は高 エ ネ ル
ギー 加 速 器 国 際 会 議 が つ くば 市 で 開 催 され た17).高 エ ネ ル ギ ー 分 野 のIUPAP主
催3
大 国 際 会 議 が 我 が 国 で 開 か れ た わ け で あ る.
高 エ研 の設 立 と呼応 して各大 学 におけ る素粒 子実 験 グルー プ も着 実 に育成 され,中
図7 最近の高エ研全景
に は 当 面 日本 で は 出来 な い 実 験 的 研 究 を 国 外 の 加 速 器 で行 う グ ル ー プ も生 まれ た.東 大 の 小 柴 昌 俊 や 折 戸 周 治 らの グ ル ー プ は,1972年 所(DESY)で
建 設 中 のe+e-衝
し た.1974年
の 実 験 は 新 粒 子Pcの
壊 の 研 究 な ど で 成 果 を挙 げ,次 こ れ に 伴 い,施
設 も1977年
発 見,τ 粒 子 の確 認,チ
の 加 速 器PETRAを
用 い るJADE実
に 実 験 を 開 始 し,グ ル ー オ ン の 発 見,新
験 計 画 を提 案 し た.LEPは
で160GeV達
が 完 成,近
し て1994年
展 し た.LEP完
CERNを
建 設 が 決 定 し たLEPにOPAL実 突 型 加 速 器 で,1989年
そ の 四 つ の 実 験 計 画 の 一 つ で,東
あ る こ と,tク
の 根 拠 地 は1984年
粒子の
ォ ー クの 質 量 の 推 定 な ど で 数 々 の 成 果 を挙 げ つ つ あ る19).
反 陽 子 ビー ム を 用 い る実 験 を は じめ,大
(25機 関)が
に素 粒 子 物 理 国 際 セ
日の 素 粒 子 の 標 準 理 論 の 精 密 な 検 証,素
利 用 す る 日本 の 研 究 者 数 は 近 年 急 速 に 増 え,OPALの
他 に も 山 崎 敏 光 らの
学 ・高 エ 研 の研 究 者 ら の ニ ュ ー ト リ ノ振 動,
ソ ン 分 光 学 な ど の 実 験 を 含 め る と,1993年
研 究 に 参 加 して い る20).一 方DESYで
周 約6kmのep衝
大の 他
か ら は 全 国 共 同 利 用 の素 粒 子 物 理 国 際 研 究 セ ン ター へ と発
成 後 の 実 験 で は,今
核 子 の ス ピ ン の 起 源,メ
重心系エ
研 究 グ ル ー プ に よ る 国 際 共 同 実 験 で あ る.東 大 グ ル ー プ は 測
定 器 建 設 の 段 階 か ら 中 心 的 役 割 を果 た し,そ ン ター に,そ
験 へ と発 展 し た.
い 将 来 に は 超 伝 導 加 速 空 洞 を用 い たLEP-Ⅱ
成 を 目指 して い る.OPALは は じめ 約25の
ャー ム 粒 子 の 崩
粒 子 探 索 な どの 目 ざ ま し い 成 果 を挙
か らCERNで
全 周 約27kmのe+e-衝
ネ ル ギー100GeVのLEP-Ⅰ
世 代 が3で
提案
に は 素 粒 子 物 理 学 国 際 協 力 施 設 に 転 換 し た.JADEは
げ た18).東 大 グ ル ー プ は 更 に1981年
CERNを
用 い る 実 験 計 画DASPを
に は こ の 計 画 の 国 内 根 拠 地 と して 理 学 部 付 置 高 エ ネ ルギー 物 理 学 実 験
施 設 が 設 立 さ れ た.こ
1979年
ドイ ツ の 電 子 シ ン ク ロ トロ ン研 究
突 型 加 速 器DORISを
突 型 加 速 器HERAの
翌 年 か ら実 験 が 開 始 さ れ た.こ
は,PETRAに
建 設 が1984年
の 実 験 計 画ZEUSに
度 現 在 約90人 継 ぐ計 画 と し て全
か ら始 ま り,1991年
に 完 成,
は 東 大 核 研 の 山 田作 衛 ら を 中心
とす る 日本 の 大 学 グル ー プ が 初 期 か ら参 加 し,加 速 器 の 特 殊 性 を生 か し て 核 子 の 内部 構 造 の 解 明 に 取 り組 ん で い る.今 後 更 に 偏 極 電 子 ビー ム を用 い る こ とに よ り新 知 見 が 得 られ る もの と期 待 さ れ る21). 素 粒 子 実 験 の 国 際 協 力 の 中 で も代 表 的 な も の は,何 の 中 で15年
とい っ て も,日 米 科 学 協 力 事 業
以 上 に わ た っ て 続 け られ て きた 高 エ ネ ル ギ ー 物 理 学 分 野 で の 協 力 で あ る.
こ れ は,KEK-PSの
完 成 や1978年
機 に 両 国 の 研 究 者 間 で 提 案 され,両
の 東 京 に お け る高 エ ネ ル ギー 物 理 学 国 際 会 議 を契 国 政 府 の 支 援 も得 て1979年11月11日SLACで
調 印 さ れ た,文 部 省 と米 国 エ ネ ル ギ ー 省 の 実 施 取 り決 め に 基 づ き行 わ れ て き た もの で あ る.主
と して 米 国 のBNL,FNAL,SLACに
型 加 速 器 を 用 い た 共 同 実 験 で あ るが,米
お け る エ ネ ル ギー ・フ ロ ン テ ィ ア の 大 国 研 究 者 のAMY実
リ ス タ ン 計 画 の 推 進 に も大 き く貢 献 し た.実 担,知
験 へ の 参 加 を は じめ ト
施 に あ た って は,計
的 所 有 権 な ど行 政 当 局 と も係 わ る幾 多 の 問 題 が あ っ た が,両
画 の 遂 行,経
費負
国研 究 者 た ち の積
表1 米国内で実施 され た日米協 力実験
極 的 な 意 欲 に よ っ て 研 究 協 力 が 順 調 に 進 め ら れ た.隔 同 委 員 会 の 日本 側 議 長 を 初 め の10年 調 整 の た め の 尽 力 に 感 謝 した い.こ 進 行 中 の もの を含 め 表1の 導 高 周 波 空 洞,線
年 に 日本 と米 国 で 開 催 され た 合
間 務 め た筆 者 は,特
に 菊 池 健,尾
崎敏 らの実 施
の 協 力事 業 で 現 在 ま で に 行 わ れ た 主 な共 同 実 験 は
通 りで あ る.こ
れ らの 実 験 に加 え て,超
形 衝 突 加 速 器 な どの 加 速 器 の 将 来 技 術 やSSC計
伝 導 電 磁 石,超
伝
画 な どを念頭 にお
い た 衝突 実 験 用 各 種 新 型 測 定 器 の 共 同 開 発 な ど も行 わ れ た22).こ
れ ら を通 して 発 表 さ
れ た 論 文 は600篇,日
を 越 え,国
本 側 学 位 取 得 者(AMYを
除 く)は60人
高 い 評 価 を 受 け て い る協 力 事 業 と して 現 在 も続 い て い る.中 こ の事 業 の 最 初 の 段 階 か ら重 点 的 に 推 進 さ れ て きた,近 中 心 と す る,FNALのTevatron(重 を用 い た 総 重 量5,000ト 測 定 で あ る(図8).こ 月 公 式 発 表 さ れ た.CDF計 れ,こ
の 発 見 は5カ
国 約440人
画 そ の もの は1978年
の 協 力 事 業 の 柱 と して 出発 し,そ
し た もの で,日
で も特 筆 す べ き こ と は,
藤 都 登 らの 筑 波 大 グル ー プ を
心 系 エ ネ ル ギ ー 約2TeVのpp衝
ン 以 上 の 大 型 検 出 器CDFに
際的に も
突 型 加 速 器)
よ るtク ォー ク の 発 見 と質 量 の
の 研 究 者 の 共 同 研 究 と し て1995年3 頃 か ら 日米 間 の研 究 者 の 間 で 検 討 さ
の 後 イ タ リ ア は じめ 各 国 の 研 究 者 た ち が 参 加
本 の グ ル ー プ の 寄 与 は 極 め て 大 き い.そ
もそ もtク ォ ー クの 存 在 は,
1973年
小 林 誠 と益 川 敏 英 に よ っ て 理 論 的 に 予 言 さ れ た こ と が よ く知 ら れ て い る が,
CDFグ
ル ー プ は ま ず1994年5月
の 発 表 で は 質 量 は176±13GeVと
に そ の 存 在 の 検 証 を公 表 し,1995年3月 報 告 し,予 想 外 に 重 い こ と を確 認 した .23)
の この 度
図8 tク ォー ク を発 見 し たCDF検
以 上 お も に 欧 米 諸 国 との 協 力 に つ い て 述 べ た が,中 国 と は も ち ろ ん,高
出器
国,ロ
シア,韓
国 な どの 近 隣 諸
エ 研 を 中心 と した 国 際 協 力 は 広 範 で 多彩 な 発 展 を しつ つ あ る.素
粒 子 実 験 の 分 野 は 物 理 学 の 中 で も最 も国 際 交 流 が 盛 ん な分 野 で あ る とい っ て も過 言 で は あ る ま い.こ
の よ う な 学 問 的 必 然 性 を ふ ま え,大
型加 速器 の 国際的 な共 同利用 や将
来 計 画 の 検 討 を行 う 加 速 器 将 来 計 画 国 際 委 員 会(ICFA)が1976年 ICFAの
起 源 は1960年
た が,1975年3月
代 後 半 に 遡 る.初 期 に は 米,欧,ソ
米 国New
Orleansで
い う主 題 の 国 際 セ ミナ ー に,山 招 か れ 参 加 し た.こ ICFAの
開 催 され た 「高 エ ネ ル ギ ー 物 理 学 の 展 望 」 と
口 嘉 夫 と筆 者 が 初 め て 日本 か ら の オ ブ ザ ー バ ー と し て
の 会 合 で 国 際 協 力 に よ る 将 来 の 超 大 型 加 速 器 の 建 設 が 討 議 され,
設 立 を 提 案 す る こ とに な っ た の で あ る.そ
してICFAが
に 発 足 し た.
の間 で討 議 が行 われ て い
正 式 に 発 足 し た が,こ
果 た し た役 割 は 非 常 に 大 き い.将 ワ ー ク シ ョ ッ プ を 開 催,ワ
し て 翌 年,IUPAPの
下部 機 関 と
のた めや そ の後 の 活 躍 の ため に 山 口が 国際 的 に
来 の加 速 器 や 測 定 器 の 技 術 的 検 討 を含 め た 国 際 的 な
ー キ ン グ パ ネ ル を 形 成 し た りす る と と も に,1984年
には
世 界 各 地 の 高 エ ネ ル ギ ー 研 究 所 の 所 長 や 指 導 的 研 究 者 か ら行 政 担 当 者 ま で 一 堂 に 会 し た,「 高 エ ネ ル ギー 物 理 学 の 将 来 の 展 望 」 に 関 す るICFAセ た.ICFAは
ま た,1980年
ミナ ー が 高 エ 研 で 開 か れ
に 大 型 加 速 器 の 国 際 的 共 同 利 用 に 関 す る 有 名 なICFAガ
イ ドラ イ ン を ま とめ た り も し た24). こ の よ う なICFAの
並 々 な ら ぬ 努 力 な ど に もか か わ ら ず,全
世 界が 協 力 して一 台
の 超 大 型加 速 器 を建 設 し よ う とい う国 際 的 な合 意 は 容 易 に 得 られ ず,例 級 の 陽 子 ・陽 子 衝 突 型 加 速 器 を建 設 し よ う と い う計 画 は,米 にSSCを,CERNがLEPト 向 で 進 め ら れ た.し
ン ネ ル を利 用 し てLHCを,そ か し1993年,既
国 がTexas州
のDallas
れ ぞ れ 独 自に 建 設 す る方
に 建 設 が 始 ま っ て い たSSC計
画は 米国議 会 の決
議 で 中 止 さ れ る こ と に な り,大
き な 衝 撃 を 与 え た25).一 方1994年12月
事 会 はLHC計
紀 初 頭 に は 重 心 系 で10TeVを
画 を承 認,21世
え ば10TeV
越 すpp衝
にCERN理 突実 験 が行
え る こ と を 目標 に,近 Higgs粒 SSC計
く建 設 に 着 手 す る 運 び と な っ た.標
準理 論 の 決 め 手 と な る
子 の 探 索 な どが い よ い よ期 待 さ れ る こ と に な り,日 本 の 研 究 者 グ ル ー プ も 画 の た め の 測 定 器 や 超 伝 導 電 磁 石 の 開 発 の 経 験 な ど を 生 か して,新
た にLHC
計 画 へ の 参 加 に 意 欲 を 示 して い る. 15.7
KEKBとJLC
我 が 国 の 素 粒 子 実 験 研 究 グ ル ー プ は,ト
リス タ ン 建 設 中 の1984年
頃 か ら,既 に ト
リス タ ン に 続 く将 来 計 画 に つ い て 検 討 を始 め た.高
エ ネ ル ギー 委 員 会 の も とに 置 か れ
た 「次 期 計 画 検 討 小 委 員 会 」(委 員 長 長 島順 清)が
こ の 作 業 の 中 心 に な っ た.2年
に わ た る精 力 的 な検 討 の 末,次
間
の よ うな 提 言 を ま とめ た26).
Ι. エ ネ ル ギ ー フ ロ ン テ ィ ア 計 画 1. TeV領
域 の 電 子 リニ ア コ ラ イ ダー(線
た 加 速 器 のR & Dに 2. SSCに
形 衝 突 加 速 器)の
国 内 建 設 を 目指 し
直 ち に 着 手 す る.
お け る 国 際 協 力 実 験 を推 進 す る.
Ⅱ. 当 面 の 推 進 課 題 a. 現 ト リ ス タ ン 計 画 達 成 後 に 主 リ ン グ の エ ネ ル ギー を 増 加 す る.さ
ら に,低
エ ネ ル ギ ー ・大 強 度 コ ラ イ ダー 等 へ の 将 来 の 改 造 を 目指 し た 努 力 をす る. b. 現12GeV陽
子 加 速 器 を 改 良 して 強 度 増 を 図 る.
Ⅲ. 非 加 速 器 素 粒 子 実 験 計 画 を推 進 す る. 今 日の 我 が 国 の 素 粒 子 実 験 計 画 は ほ ぼ こ の 提 言 に 沿 い,菅 で進 め ら れ て い る.上
述 の よ う にSSC計
原 現 高 エ 研 所 長 らの 主 導
画 は 中 止 さ れLHC計
画 へ の 参加 が 表 明 さ
れ た り,原 子 核 や 他 分 野 と の 学 際 的 研 究 を新 しい 研 究 体 制 の も と で行 お う とい う大 型 ハ ドロ ン 計 画 が 推 進 さ れ た り,高 エ 研PSで 巨大 水Cherenkov装 して い る が,こ
発 生 させ た ニ ュ ー ト リ ノ ビー ム を神 岡 の
置 に 打 ち 込 み ニ ュー ト リ ノ振 動 の 検 証 を行 う提 案 が な さ れ た り
こ で は 特 に 上 記 次 期 計 画 提 言 のⅡ-aとΙ-1に
ま ず ト リス タ ン を 改 造 し て行 え る重 要 な研 究 の 一 つ にCP不 る.1964年,中
性K中
間 子 の 崩 壊 でCP不
つ い て 述 べ て お く. 変性 の破 れ の問題 が あ
変 性 の 破 れ が 発 見 さ れ た が27),こ の 問 題
は 現 宇 宙 に お け る物 質 と反 物 質 の ア ン バ ラ ン ス に も関 連 した,素 最 重 要 課 題 と も い え る.1973年,3世 は,本 1981年
来,こ に,三
の は,bク
のCP不
代6ク
粒 子 ・宇 宙 物 理 学 の
ォー クの 存 在 を予 言 し た 小 林-益 川 理 論
変 性 の 破 れ に 理 論 的 根 拠 を 与 え た も の で あ っ た28).1980年
田 ら は こ の 理 論 に 基 づ きCP不
と
変 性 の 破 れ の 効 果 が 最 も 大 き く現 れ る
ォ ー ク と軽 い ク ォ ー クの 結 合 状 態 で あ るB中
る こ と を指 摘 し た29).そ こ で 実 験 室 系 でBとBの
間 子(質
量5.28GeV)で
あ
崩 壊 の プ ロ セ ス を 詳 し く比 較 で き
る よ うに 電 子 と陽 電 子 を 異 な るエ ネ ル ギ ー で衝 突 さ せ て 実 験 し よ う と い うの が,Bフ ァ ク ト リー 計 画 で あ る.こ
の 目的 の た め,現
在 の ト リ ス タ ン に よ る デ ー タ収 集 が 終 わ
っ た 時 点 で,1リ GeV,陽
ン グ の 対 称 エ ネ ル ギ ー のe+e-衝
電 子3.5GeV)の
突 型 加 速 器 を2リ
ン グ(電
子8
非 対 称 エ ネ ル ギー 衝 突 型 加 速 器 に 転 換 させ る こ と に な っ
た. これ はKEKBと
も称 せ られ,1994年
度 か ら建 設 が 始 ま っ た30).と くにB中
間子 が
あ る特 定 の モ ー ドに 崩 壊 す る 率 は 非 常 に 小 さ く10-4程 度 で あ る の で,BとBの 明 らか に す る た め に は 大 量 のB・B対
を 集 め て 調 べ な け れ ば な ら な い.従
ム の衝 突確 率 を トリス タ ン で達 成 さ れ た もの の200倍 で加 速 器 と して は 驚 異 的 な 強 度(ア 約5,000個
の バ ン チ を60cm間
ン ペ ア 程 度)の
っ て,ビ
ー
以 上 に 高 め る必 要 が あ る.そ
こ
ビ ー ム を貯 蔵 し な け れ ば な ら ず,
隔 で 貯 え る こ と を 考 え て い る.各
回 ず つ 衝 突 させ る た め に は,±11mradの
差 を
バ ン チ を 互 い に1
交 差 角 を持 たせ る 設 計 に な っ て い る.従
来
有 限 の 交 差 角 で ビー ム を衝 突 させ る と ビー ム ・ビー ム 効 果 に よ る不 安 定 性 を 強 く助 長 させ る恐 れ が 指 摘 され て い た.し
か し最 近 目覚 し い進 展 を 見 せ て い る計 算 機 シ ミュ レ
ー シ ョ ンの 研 究 に よ り,適 切 なパ ラ メ ー ター の選 択 で,こ 突 点 付 近 で の 複 雑 な ビー ム 偏 向 を 避 け,測 見通 しが 立 っ て き た.ま
た,多
の よ う な 恐 れ も 回避 し,衝
定 器 に 対 す るバ ッ ク グ ラ ウ ン ドも減 らせ る
数 の バ ン チ を貯 蔵 す る と,各 バ ンチ の 運 動 が 軌 道 中 に
お か れ る高 周 波 空 洞 等 を 通 して 共 鳴 的 に 結 合 す る結 合 バ ン チ 不 安 定 性 の 問 題 が 避 け ら れ な い.KEKBで
は こ の た め 新 し い 型 の 加 速 空 洞(ARES型
極 的 に 進 め て い る.現 在,世
界 的 に はBフ
所 で 同 時 進 行 し て い るが,KEKBは
空 洞)の
開 発 な ど を積
ァ クト リー 計 画 は 高 エ 研 とSLACの2カ
こ れ らの 意 欲 的 な 加 速 器 開 発 で一 歩 先 ん じ て い
る と い え よ う.
KEKBの
測 定 器 は 現 在 の 筑 波 実 験 室 に1台
る粒 子 崩 壊 点 測 定 器,大 別 の た め のCherenkovカ 子 やKL粒
突点 に近 接 して おか れ
ウ ン ター や 飛 行 時 間 差 測 定 器,CsIカ
呼 ば れ る 国 際 共 同 研 究 チ ー ム が 結 成 され,39機
関)か
ら176名
に 及 ぶ 研 究 者 が 参 加 し て い る.こ
子識
ロ リ メ ー タ ー,μ
子 を 観 測 す る大 面 積 飛 跡 検 出 チ ェ ンバ ー 等 で構 成 さ れ る.実
た めBELLEと カ 国16機
設 置 さ れ る.衝
型 超 伝 導 ソ レ ノ イ ドと組 み 合 わせ た 粒 子 飛 跡 検 出 器,粒
関(国
粒
験 を遂行 す る 内23,国
のKEKBは1999年
外6 早々
に 完 成 す る予 定 で あ る. 最 後 に エ ネ ル ギ ー フ ロ ン テ ィ ア へ の 挑 戦 と し てJLC 画 に つ い て 述 べ た い*1.線
(Japan
Linear
Collider)計
形 衝 突 加 速 器 の ア イ デ ィ ア は 初 めU.Amaldiら
提 案 さ れ31),1979年FNALで
開 か れ たICFAの
に よって
ワー クシ ョップ な どで国 際的 に検 討
さ れ る よ う に な っ た32).放 射 光 に よ る 膨 大 な エ ネ ル ギ ー 損 失 を 考 え る と,LEP-Ⅱ (重 心 系 エ ネ ル ギ ー 約150GeV)以
*1 2003年4月 Linear
にJLC計
Collider)計
上 のe+e-衝
突 リ ン グ は 殆 ど現 実 性 が な い.そ
画 は ア ジ ア 地 域 の 高 エ ネ ル ギ ー 研 究 者 の 総 意 に 基 づ き,GLC 画 に名 称 変 更 さ れ た.
こ
(Global
で 数 百GeV以
上 の 領 域 の レ プ トン や 光 子 の 衝 突 実 験 に は 線 形 衝 突 加 速 器 が 有 力 に な
る が,必
要 な 衝 突確 率 を得 る た め に は 加 速 さ れ る ビ ー ム 強 度 を格 段 に 大 き くす る と と
も に,衝
突 点 で の ビー ム を で き るだ け 細 く絞 る必 要 が あ る.従
は従 来 の 加 速 器 技 術 を は る か に越 え る も の で,既 協 力 の 枠 組 の も とで 進 め られ て い る が,道
っ て,要
求 され る性能
に 十 数 年 に及 ぶ 開 発 研 究 が 国 際 的 な
な お 遠 しの 感 も あ る.特 に 我 が 国 で は 木 村
現 高 エ 研 副 所 長 らの 主 導 の も と,世 界 に 先 駆 け た 研 究 が 行 わ れ て き た.2,3の 挙 げ れ ば,生
例 を
出勝 宣 に よ る衝 突 点 で の ビ ー ム 集 束 の 限 界 を 与 え た 理 論 的 考 察33),新 竹
積 ら に よ る ナ ノ メー タ ー 程 度 の ビー ム サ イ ズ の 新 しい 測 定 方法34),小 泉 晋 ら に よ る拡 散 接 合 に よ る加 速 管 の 製 作 な ど が あ る.高
エ ネ ル ギ ー 委 員 会 で も1993年,開
発研 究
の 成 果 や 素 粒 子 物 理 学 の 新 た な知 見 に 基 づ き, 1. リニ ア コ ラ イ ダ ー の 第 一 期 建 設 計 画 の 目標 を 重 心 系300∼500GeVに 一期 計 画完 了後
,エ
ネ ル ギ ー を1∼1.5TeVに
2. 目標 の 早 期 実 現 を 図 る た め,第 1993∼1995年 開 発,製
置 き,第
向 け て 増 強 す る.
一 次 期 開 発 計 画(1987∼1991年)に
を 第 二 次 開 発 期 間 と定 め る.そ
引 き 続 き,
こ で は 主 要 装 置 の プ ロ トタ イ プ の
作 とパ ラ メ ー タ ー の 最 適 化 を行 い,JLC実
験施 設 の概 念設 計 の 完 成 を
目指 す. 3. 第 二 次 開 発 計 画 で は,試 最 重 点 課 題 とす る.加
験 装 置ATF
え てATFと
(Accelerator
Test
Facility)の
完成 を
相 補 的 な 外 国 の 開 発 計 画 に 協 力 す る と共 に,
本 開 発 計 画 へ の 外 国 グル ー プ の 積 極 的 な 参 加 を求 め,国
際 的 な開発勢 力 の結集 を
通 し て 問 題 の 解 決 に 当 た る, と提 言 して い る35).こ の よ う な 提 言 を ふ ま え,JLC計
画 を 中 心 と して,我
が 国の主 導
性 に よ る エ ネ ル ギー フ ロ ン テ ィ ア を拓 く国 際 的 セ ン タ ー が 実 現 され る こ とに 筆 者 の 期 待 を か け て 本 稿 の 結 び とす る. 15.8 素 粒 子 実 験,と ー クに よ る,い
お
わ
り
に
くに 大 型 加 速 器 を用 い た 実 験 は,文
字 通 り多 くの研 究 者 の チ ー ム ワ
わ ゆ る 巨 大 科 学 の 典 型 の 一 つ で あ る.従
っ て,こ
の 状 態 か ら世 界 の 第 一 線 に立 つ に 至 っ た 我 が 国 の 素 粒 子 実 験 を,一 紹 介 す る こ とは 至 難 の わ ざ で,公
正 を 欠 き,誤
りを 含 み,ま
の50年
間 に 殆 ど零
人 の筆 者 で 回顧 ・
た 限 られ た紙 数 を大 幅 に
越 え て も紹 介 し き れ な か っ た 多 くの 業 績 が あ っ た こ と を お 詫 び す る. そ れ と と もに,筆 し た い.特
者 に数 々の情 報や 支援 を与 えて下 さっ た多数 の方 々に心 か ら感謝
に,全 章 に わ た っ て 編 集 委 員 会 の 担 当者 と して 筆 者 に協 力 して くだ さ っ た
高 エ 研 の 阿 部 和 雄 氏 の 尽 力 な しに は 本 稿 は ま と ま ら な か っ た.加 ば,山
田 作 衛(核
(東 理 大),折
研),諏
戸 周 治(東
訪 繁 樹,亀 大),近
井 亨(元
藤 都 登(筑
高 エ 研),菊
波 大),山
え て各 章順 に い え
池 健(学
口 嘉 夫(東
振),中
井浩二
海 大),木
村嘉孝
(高 エ 研)な
ど の 諸 氏 か ら,研 究 の 歴 史,成
て い た だ い た,そ え られ,筆
の 上,特
果,文
献 な ど に つ い て 貴 重 な 情 報 を教 え
に若 手 の 方 々 か ら は 最 近 の 研 究 等 につ い て 新 た な 知 見 を与
者 に は 大 変 よ い 勉 強 の 機 会 と も な っ た.こ
げ る と と も に,最
後 に 只 一 つ 心 残 り と な っ た こ と を述 べ て お く.そ れ は,素
が 他 の 学 問 分 野,特 拘 わ らず,そ
れ ら の 方 々 に 厚 くお 礼 を 申 し上 粒 子実験
に 原 子 核 実 験 の よ うな 隣 接 分 野 と は 深 い 関 わ りを も っ て き た に も
の よ う な 学 際 的 な分 野 で の 研 究 に つ い て は 殆 ど触 れ る こ とが で き な か っ
た こ と で あ る.物
理 学 は一 体 で あ り,他 の 広 汎 な 科 学 や 技 術 の 分 野 に お け る 基 礎 と も
な っ て い る と信 じ る 者 の 一 人 と して,物
理 学会 の今 回 の企画 が我 が国 の学術全 体 の未
来 の 発 展 の た め に 礎 石 と な る こ と を願 っ て や ま な い.(筆
者=に
エ ネル ギー 物 理 学 研 究 所 所 長,前
生 まれ,1949年
東 京理 科 大 学 学 長 .1926年
しか わ ・て つ じ,元
高
東 京 大 学理 学
部 卒 業)
参 考 文献 1) 東 京 大 学 原 子 核 研 究 所 編:核 2) 日本 学 術 会 議25周 3) 諏 訪 繁 樹:日
研 二 十 年 史(1978)な
年 記 念 事 業 会 編:日
6) 中 井 浩 二,大
島 隆 義:日
KEK-PS
年 の 歩 み(1981)な
Scientific Programs,High
Energy
Seminar on
News
High
1977)な
ど.
Energy Accelerator
Science,
学44(1974)737;科
学 研 究 費 報 告(総
合 研 究A-034081,A-134020,
ど.
9) 高 エ ネ ル ギ ー 物 理 学 研 究 所 編:高 設 計 研 究―(1980)な
and
村 嘉 孝,小
Ozaki
Y.Kimura:Survey
林
14) 高 崎 史 彦:日
Report
誠:日
本 物 理 学 会 誌37(1982)10.T.Nishikawa,S. in High
Energy
Physics,3(1983)161な
86-14(1987)な
本 物 理 学 会 誌43(1988)352.真
Energy
ど.
Electron-Positron
Colliding
ど. 木 昌 弘:ibid.45(1990)461
ギ ー 物 理 学 研 究 所 物 理 部 ・加 速 器 部 編:TRISTAN-I中 15) Proc.19th Int.Conf.High
ど.
ど.
ト リ ス タ ン ・プ ロ ジ ェ ク ト ・グ ル ー プ:TRISTAN Project,KEK
トリス タ
D.Carter:Rev.Sci.Instr.37(1966)652な
温 工 学24(1990)150な
12) 西 川 哲 治,木 and
エ ネ ル ギ ー 物 理 学 研 究 所 加 速 器 拡 充 計 画―
ど.
10) T.Nishikawa,S.Giordano 11) 小 島 融 三:低
Beam
al.:Review 14(1995)No.2な
and Tsukuba,1973(KEK,1973)p.209.
8) 西 川 哲 治:科
13)
ど 参 照.
本 物 理 学 会 誌47(1992)85.S.Nagamiya,et
7) T.Nishikawa:Proc.U.S.-Japan
ンIの
ど.
ど.
5) 高 エ ネ ル ギ ー 物 理 学 研 究 所 編:十
Tokyo
史(1974)p.119.
本 物 理 学 会 誌27(1972)262,40(1985)919な
4) T.Kitagaki:Phys.Rev.89(1953)1161な
of the
ど参 照 .
本 学 術 会 議25年
.高
間 報 告 書(1993)な
Physics,Tokyo,1978(Physical
エネル
ど.
Society
of Japan,
1979). 16) Proc.1985 17)
Proc.14th
Int
Symp.Lepton
Int.Conf.High
and
Photon
Interactions
1990). 18) 山 田 作 衛:日
at High
Energy Accelerators,Tsukuba,1989(Gordon
本 物 理 学 会 誌40(1985)687な
ど.
Energies,Kyoto. and
Breach,
19)
竹 下
徹,折
戸 周 治:日
本 物 理 学 会 誌46(1991)643,森
俊 則:ibid.50(1995)441
な ど. 20)
丹 生潔,駒
宮 幸 男:日
本 物 理 学 会 誌49(1994)843.
21)
徳 宿 克 夫,久
世 正 弘:日
本 物 理 学 会 誌49(1994)803な
22)
高 エ ネ ル ギ ー 物 理 学 研 究 所 編:日 告 書,1979-1986.M.Riordan,高 (1993)166な
23)
近 藤 都 登,滝
橋 嘉 右,湯
川 紘 治,金
信 弘,近
川 良 一:日
本 物 理 学 会 誌48
松
健:日
本 物 理 学 会 誌50(1995)176.近
藤 都
ど.
Y.Yamaguchi:Proc.1985
Int.Symp.Lepton
Kyoto,p.826.山 均:日
田 春 雄,梶
ど.
登:ibid.50(1995)312な 24)
ど.
米 科 学 技 術 協 力 事 業 高 エ ネ ル ギ ー 物 理 学 研 究 成 果 報
口 嘉 夫:日
25)
山 本
26)
高 エ ネ ル ギ ー 委 員 会:高
27)
J.H.Christenson,J.W.Cronin,V.L.Fitch
Photon
Interactions
本 物 理 学 会 誌43(1988)379な
本 物 理 学 会 誌49(1994)929な
at High
Energies,
ど.
ど.
エ ネ ル ギ ー 物 理 学 将 来 計 画 一 次 期 計 画 検 討 小 委 員 会 報 告
(1986). and
R.Turlay:Phys.Rev.Lett.13
(1964)138. 28)
M.Kobayashi
29)
A.B.Carter
and and
T.Maskawa:Prog.Theor.Phys.42(1973)652. A.I.Sanda:Phys.Rev.Lett.45(1980)952.I.I.Bigi
and
A.I.
Sanda:Nucl.Phys.B193(1981)85. 30)
日 本 物 理 学 会 誌49(1994)718―
31)
U.Amaldi:Phys.Lett.61B(1976)313な
32)
Proc.Workshop
交 流 小 特 集
「Bフ
ァ ク ト リ ー 建 設 が 始 ま る 」.
ど.
Possibilities
and
Limitations
of
Accelerators
and
Detectors,Batavia,
1978(Fermilab,1979). 33)
K.Oide:Phys.Rev.Lett.61(1988)1713.
34)
T.Shintake:Nucl.Instr.Meth.A311(1992)453.
35)
高 エ ネ ル ギ ー 委 員 会:高
エ ネ ル ギ ー 物 理 に お け る リニ ア コ ラ イ ダ ー 開 発 計 画 に つ い て
(1993).
初 出:日
本 物 理 学 会 誌51(1996)11-21.
16.
加 速 器 の将 来 西 川 哲 治 ・黒 川 眞 一 ・中 村 健 蔵 ・永 宮 正 治
1961年,欧
米 の 先 進 諸 国 に 約10年
粒 子 実 験 が1986年
の ト リス タ ン の 完 成 を 契 機 に,フ
歴 史 は,1996年1月 章)で
遅 れ て ス タ ー ト し た,我
が 国 の 加 速 器 に よ る素
ロ ン トラ ンナ ー の 一 員 に な っ た
の 日本 物 理 学 会 誌 「日本 物 理 学 会50周
年 記 念 」 号(本
書 第15
述 べ た.
そ れ か ら7年 後,今
や 我 が 国 の 素 粒 子 実 験 は,い
くつ も の分 野 で 世 界 を リー ド し,
真 理 の 探 究 や 技 術 の 開 発 に ユ ニ ー ク で最 尖 端 の 貢 献 を な しつ つ あ る.そ れ ら を列 挙 す れ ば,キ
リが な い が,こ
1) KEKB(CP対 2) K2K長
こ で は,な
か で も重 要 と考 え られ る,
称 性 の 破 れ の 発 見) 基 線 ニ ュー トリ ノ振 動 実 験
3) 大 強 度 陽 子 加 速 器(J-PARC)計 の3つ
画
を と り上 げ る こ とに した.
筆 者 は,1989年 し た.従
っ て,こ
高 エ ネ ル ギ ー 物 理 学 研 究 所 を退 官 し,翌 年,東 れ らの 新 しい 計 画 に は,直
京理 科 大 学 に 転任
接 携 わ っ て い な い.そ
こ で,こ
れ らの 各
計 画 で 主 導 的 役 割 を 果 して い る,高 エ ネ ル ギ ー 加 速 器 研 究 機 構 の 1) 黒 川 眞 一 2) 中 村 健 蔵 3) 永 宮 正 治 の3教
授 に そ れ ぞ れ 上 記3計
なお 参 考 ま で に,当
画 に つ い て 執 筆 を依 頼 した.
該 研 究 所 の 沿 革 を表1に 16.1
16.1.1
Bフ
KEKBフ
ま とめ て お く.(西
川
哲 治)
ァ ク ト リー
ァ ク ト リー 前 史
戦 後 欧 米 に 遅 れ て 出 発 す る こ と を余 儀 な く さ れ た 日本 の 高 エ ネ ル ギ ー 物 理 学 と加 速 器 科 学 に と っ て,ト
リス タ ン(TRISTAN)は
完 成 か ら,CERNのLEPとSLACのSLCが1989年
画 期 的 な マ シ ン で あ っ た.1986年
の
に 運 転 を 開 始 す る ま で の 間,
ト リス タ ン は 世 界 最 高 の エ ネ ル ギ ー を 持 つ 電 子 陽 電 子 衝 突 型 加 速 器 で あ り続 け た.他 の 研 究 所 と比 べ て 決 し て大 き くな い 敷 地 を ぎ り ぎ りい っ ぱ い ま で 使 い,さ ギ ー を 高 め る ため に,大
規 模 な 超 伝 導 加 速 空 洞 シ ス テ ム を世 界 で 初 め て実 用 化 した こ
と1)に よ り,世 界 一 の エ ネ ル ギ ー を達 成 す る こ とが 可 能 と な っ た.ト に よ り,日 本 は,米
らにエ ネル
国,ヨ
ー ロ ッパ と と もに,高
リス タ ン の 完 成
エ ネ ル ギ ー 物 理 学 と加 速 器 科 学 の 分
表1 沿
革
野 に お け る世 界 の3極 超 伝 導 技 術 は,こ
の ひ とつ に な っ た と い え る. の 他 に,ト
リ ス タ ン の3つ
の 大 型 超 伝 導 ソ レ ノ イ ド電磁 石 と,ト 絞 る ため の 超 伝 導4極
リス タ ン の4衝
突 点 に お い て ビー ム を極 限 ま で
最 終 収 束 電 磁 石2)に も用 い られ た.こ
れ も設 計 ど お りの 性 能 を示 し,ト は,世
の 実 験(VENUS,TOPAZ,AMY)
れ らの超伝 導機 器 は いず
リ ス タ ン の 成 功 に 貢 献 し た と い え る.ト
リス タ ン
界 の 超 伝 導 技 術 の 進 展 に と っ て 画 期 と な る加 速 器 で あ り,超 伝 導 空 洞分 野 に お
い て は,そ
の 後 のLEP-Ⅱ
やCEBAFに
お け る大 規 模 超 伝 導 加 速 空 洞 シ ステ ム の さ き
が け と な り,超 伝 導 電 磁 石 分 野 で も,例 え ばTOPAZの た 超 伝 導 コ イ ル巻 線 技 術3)が,BNLに
ソ レ ノ イ ド製 造 に 用 い ら れ
お け る ミュ ー 粒 子g-2精
ン グ の 超 伝 導 コ イ ル 製 作4)に い か さ れ,g-2実
密 測定 実験 用 蓄積 リ
験 の測 定精 度 の大 幅 な向 上 に貢 献す る
こ と に な っ た5). ト リ ス タ ン が 建 設 を 始 め る時 点 で は,ト
ップ ・ クォ ー クは,ト
る エ ネ ル ギ ー 領 域 で 見 つ か る だ ろ う と思 わ れ て い た.1973年 ォ ー クが6種
あ れ ば,CP不
変 性 の 破 れ が 自然 に 説 明 で き る と い う,小 林-益 川 理 論
を提 唱 し た6).ト ッ プ ・ク ォ ー クは,第6番 とは,小
リス タ ン の 達 成 で き
に は 小 林 と益 川 は,ク
目の ク ォ ー ク で あ り,こ れ を 発 見 す る こ
林-益 川 の 予 言 の 正 し さ を示 す 最 も 有 効 な 方 法 で あ る.実 際 は,ト
ォ ー クの 質 量 は 約170GeVと
い う と て つ も な く重 い もの で あ っ た た め,ト
で は 創 り出 す こ とが で き ず,1994年
のTEVATORONで
ッ プ ・ク リス タン
の 発 見 を待 た な け れ ば な ら
な か っ た7). 日本 の 高 エ ネ ル ギ ー 物 理 学 者 は,小
林 と益 川 が 予 言 した,CPの
を転 換 す る こ と に な る.こ の 目的 の た め に は,Bフ 能 の 高 い2リ
ァ ク ト リー と よ ば れ る,非 常 に 性
ン グ型 の 非 対 称 エ ネ ル ギ― 電 子 陽 電 子 衝 突 型 加 速 器 が 必 要 とな る.
ト リス タ ン(TRISTAN)はThree Nipponの
破 れの 探求 に方 向
略 称 で あ り,も
Ring
と も と は,ト
Intersecting
ン ネ ル の 中 に,陽
る3つ の リン グ を 納 め る計 画 と して 出 発 した.そ
STorage 子,電
の た め,ト
Accelerators
子,陽
ン ネ ル は3つ
の リン グを
十 分 に 収 容 で き る 断 面 積 を持 ち,複 雑 な 衝 突 方 式 に 対 応 で き る よ う に,200mに ぶ4つ
の 直 線 部 を も っ て い る.エ
ネ ル ギ ー の 異 な る電 子 と 陽 電 子 の2リ
り,複 雑 な ビー ム 衝 突 領 域 を 必 要 とす るBフ 件 と な っ た.ま
さ に,高
エ ネ ル ギ ー 加 速 器 研 究 機 構 のBフ
リ ス タ ン の 基 礎 の 上 に造 ら れ た,ト も し,ト
ァ ク ト リー に とっ て,こ
およ
ン グか ら な
れ は最 適 の 条
ァ ク ト リーKEKBは,ト
リ ス タ ン の 直 系 の 子 供 で あ る.
リス タ ン に お け る 超 伝 導 技 術 を始 め とす る各 種 の 技 術 の集 積 と,ト
ン と い う 巨 大 加 速 器 を建 設 し,安 定 に 運 転 し た経 験 が な け れ ば,そ した,最
適 な トン ネ ル が な け れ ば,Bフ
終 わ っ た で あ ろ う.
in
電 子 を蓄積 す
して,先
リスタ
達 が用 意
ァ ク ト リー は 実 現 さ れ る こ との な い 夢 物 語 に
16.1.2
Bフ
ァ ク トリー 加 速 器 の 特 徴
ト リス タ ン に よ っ て,世
界 最 高 エ ネ ル ギー で の 電 子 陽 電 子 衝 突 を 実 現 し た 日本 の 高
エ ネ ル ギ ー 物 理 学 研 究 者 は,ト
リス タ ン の 資 産 と ト リス タ ン で 培 わ れ た 技 術 を最 大 限
に 利 用 す る こ と に よ り,世 界 で 最 も 高 い ル ミ ノ シ テ ィ を 持 つ 電 子 陽 電 子 衝 突 型 加 速 器,Bフ
ァ ク ト リーKEKB,を5年
計 画 で 建 設 す る 作 業 に1994年
か ら と りか か っ
た8). 現 在 私 た ち が 住 ん で い る こ の 宇 宙 は 粒 子 だ け か ら で き て お り,反 粒 子 は 存 在 しな い.ビ
ッ グ バ ンに よ り宇 宙 が 生 ま れ た 直 後 に は,等
は ず な の に,い
し い数 の 粒 子 と反 粒 子 が 存 在 し た
つ の ま に か 反 粒 子 が 消 え て し ま っ た.物 理 学 者 は,粒 子 と反 粒 子 間 の
振 る舞 い の微 妙 な違 い(CP不
変 性 の破 れ)が,こ
を も た ら し た と考 え て い る.CP不 だ け で で きて い る の か,ひ
の よ う な 粒 子 と反 粒 子 の 間 の 偏 り
変 性 の 破 れ を 調 べ る こ と に よ り,宇 宙 は なぜ 粒 子
い て は,物
質 か ら で き て い る 私 た ち 自身 が 何 故 存 在 す るの
か と い う根 本 的 な 謎 を解 くて が か りを 得 る こ とが で き る. CP不
変 性 の 破 れ は,1964年
に 中 性K中
間 子 に お いて実 験 的 に見 つ け られ て い る
が9),高 エ ネ ル ギ ー 物 理 学 者 の 懸 命 の 探 究 に か か わ らず,20世 間 子 以 外 で は 発 見 さ れ な か っ た.1980年 れ を調 べ る 最 も有 望 な 舞 台 は 第5番 とす るB中
紀 の 間 は,中 性K中
田 とBigiはCP不
あ る.B0は
い て で き た 粒 子 で,反B0は
変 性 の破
目の ク ォー ク で あ る ボ トム ・ク ォ ー クを 構 成 要 素
間 子 で あ る と い う提 案 を行 っ た10).電 気 的 に 中 性 なB中
そ の 反 粒 子 で あ る 反B0が
と反B0中
代 初 め に は,三
間 子 に はB0と,
反 ボ トム ク ォ ー ク と ダ ウ ン ク ォ ー ク が 結 び 付
ボ トム と 反 ダ ウ ンが 結 び 付 い て で きて い る.B0中
間 子 の 対 を大 量 に あ た か も工 場(フ
ァ ク ト リー)の
間子
よ う に 造 りだ し,CP
不 変 性 の 破 れ の 検 出 をは じめ とす る種 々 の 素 粒 子 物 理 学 の 研 究 を行 う こ と を 目 的 とす る 電 子 陽 電 子 衝 突 型 の 加 速 器 がBフ
ァ ク ト リー で あ る.
ト リ ス タ ン は 等 しい エ ネ ル ギ ー の 電 子 と陽 電 子 の衝 突 を行 わせ る対 称 エ ネ ル ギ ー の 1リ ン グ 型 衝 突 型 加 速 器 で あ る が,こ
れ に 対 し,KEKBは,電
ギ ー が 異 な る 非 対 称 エ ネ ル ギ ー,2リ
ン グ 型 の 衝 突 型 加 速 器 で あ る こ と を 特 徴 とす
る.前 項 で も紹 介 した よ うに,ト と こ ろ で は,断
面 が 広 い,し
リス タ ン の 基 本 思 想 は,我
が 国の よ うに土地 が狭 い
っ か り し た トン ネ ル を一 つ 造 り,そ こ に 貯 蔵 型 加 速 器 を
何 台 か 設 置 し,陽 子 ・陽 子,陽
子 ・反 陽 子,電
子 ・陽 子,電
衝 突 ビー ム 実 験 が で き る よ うに す る と い う こ と で あ っ た.こ ン の 子 供 で あ る2リ
子 と陽 電子 の エ ネ ル
ン グ 型 衝 突 型 加 速 器KEKBに
お い て,大
子 ・陽 電 子 な どの 多 様 な の 基 本 思 想 は,ト
リス タ
き く花 開 くこ と に な っ
た. Bフ
ァ ク ト リー の よ うな 非 対 称 エ ネ ル ギー 型 の 衝 突 型 加 速 器 で は,電
異 な っ た リン グ 中 に 蓄 積 さ れ な け れ ば な ら ず,2リ 衝 突 型 加 速 器 に は,異
子 と陽電子 は
ン グ が 必 要 と な る.2リ
ング型 の
な っ た エ ネ ル ギー の 粒 子 同 士 を ぶ つ け る こ とが で き る 以 外 に も
大 き な 利 点 が あ る.電 子 陽 電 子 衝 突 型 加 速 器 の リ ン グ 中 を周 回 して い る もの は,バ チ と よ ば れ る電 子 ま た は 陽 電 子 が 数100億 型 の 加 速 器 に お い て は,電 回 し て い れ ば,リ
個 程 度 集 ま っ た か た ま りで あ る.1リ
子 お よ び 陽 電 子 の リン グ 中 に そ れ ぞ れN個
ン グ 中 の2N箇
起 こ っ た.衝
ず つ 蓄 積 さ れ て お り,4個
突 型 加 速 器 の 性 能 を大 幅 に 向 上 させ る た め に は,蓄
の 数 を大 き く し な け れ ば な ら な い.例 す る な らば,1リ
リス タ ン
所 で衝 突 が
積 され てい るバ ンチ
え ば 各 ビー ム あ た りに5,000個
ン グ 型 で あ れ ば,10,000個
ング
のバ ンチが 周
所 で バ ン チ の 衝 突 が 起 こ る こ と に な る.ト
で は 電 子 お よ び 陽 電 子 の バ ン チ が そ れ ぞ れ2個
ン
の バ ン チ を蓄 積
所 で ビー ム 衝 突 が 起 こ っ て し ま う.バ
ン
チ が 衝 突 す る と,片 方 の バ ン チ 中 の 粒 子 は 他 の バ ン チ か ら電 気 的 な 力 を受 け 軌 道 が 乱 さ れ る.乱
れ が 大 き い と きに は,粒
くな り,失 わ れ て し ま う.こ グ 型 の と き は,リ な い.こ KEKBの
の 乱 れ は リ ン グ の 中 の 衝 突 箇 所 に 比 例 す る か ら,1リ
ン グ中 に 蓄 積 で き るバ ン チ数 は,数
れ に 対 し2リ
ン グ 型 の加 速 器 で は,衝
よ う に最 大5,000に
KEKBに
お い て は,既
す る8GeVの
子 は も はや リン グ 中 を 回 りつ づ け る こ とが で き な ン
個 か ら数 十 個 以 下 に せ ざ る を得
突 点 を1つ
とす る こ と が で き る た め,
の ぼ る 多 数 の バ ン チ の 蓄 積 が 可 能 と な る.
存 の 周 長3kmの
ト リス タ ン ・ トン ネ ル の 中 に 電 子 を 蓄 積
リ ン グ と陽 電 子 を 蓄 積 す る3.5GeVの
リ ン グの2つ
の リン グを左右 に
並 べ て 設 置 す る.電 子 と陽 電 子 は そ れ ぞ れ の リ ン グ の 中 を 反 対 方 向 に 周 回 す る.2つ の リ ン グ は2ヵ
所 で 交 差 す るが,そ
子 が 衝 突 す る こ とに な る.他 と は な い.衝
の うち の1ヵ
の 交 差 点 で は,リ
突 点 を 囲 ん でBELLE測
ア ウ ト を,図2に
所,す
な わ ち 衝 突 点 で,電
子 と陽 電
ン グ は 上 下 に す れ 違 い衝突 を 起 こ す こ
定 器 が 設 置 さ れ て い る.図1にKEKBの
レイ
トン ネ ル 内 に 左 右 に 設 置 さ れ た リン グ を示 す.8GeVと3.5GeV
と い うエ ネ ル ギ ー はΥ(4s)共
鳴(ウ
プ シ ロ ン4エ
ス と よぶ)に
対 応 し,B中
間子
の 一 対 を ち ょ う どつ く りだ す エ ネ ル ギ ー で あ る . そ れ で は,な ぜ,わ か11).8GeVの
ざわ ざ 異 な る エ ネ ル ギー の 電 子 と 陽 電 子 を衝 突 させ る の だ ろ う
電 子 と3.5GeVの
す る観 測 者 か ら見 る と,電
陽 電 子 の 正 面 衝 突 し た 状 態 を,電
子 の 方 向 に進 行
子 の エ ネ ル ギー が 小 さ くな り,陽 電 子 の エ ネ ル ギ ー が 大 き
く な っ て 見 え る.観 測 者 の 速 度 を う ま く選 ん で や る と,つ い に は,こ GeVと5.3GeVの し,10.6GeVの
電 子 と 陽 電 子 の 正 面 衝 突 と な る.電 質 量 を持 つ Υ(4s)共
対 が 生 成 さ れ る.B0中
間 子 と反B0中
ほ とん ど静 止 した 状 態 で 生 ま れ て く る.元 突 す る 系 で み る と,生 成 し たB中
100か
ら200ミ
間 子 と 反B0中
量 が ち ょ う ど5.3GeVで
の8GeVの
間 子 対 は,電
(8+3.5=11.5,5.3+5.3=10.6,11.5>10.6で の エ ネ ル ギ ー 差0.9GeVがB0と
子 と陽 電 子 は 衝 突 し て 消 滅
鳴 状 態 を 経 て,B0中 間 子 は,質
の 衝 突 は,5.3
電 子 と3.5GeVの
間子の
あ る た め, 陽電 子が 衝
子 の 進 行 方 向 に 飛 び 出 す こ と に な る. あ る.11.5GeVと10.6GeVの
反B0の
運 動 エ ネ ル ギ ー と な る.)B0と
ク ロ ン ほ ど飛 ん だ と こ ろ で 崩 壊 し,い
間 反B0は
くつ か の 粒 子 に 変 化 す る.崩 壊
図1 既 存 の 周 長3kmの る3.5GeVの され,そ の1ヵ
KEKB加
速 器 の リ ン グ配 置 の 概 念 図
トリス タ ン ・トン ネ ル の 中 に 電 子 を董 積 す る8GeVの
リン グ の2つ
れ ぞ れ の リン グの 中 を 反 対 方 向 に 周 回す る.2つ
所,す
リン グ と 陽電 子 を蓄 積 す
の リン グが 並 べ て 設 置 さ れ る.電 子 と陽 電 子 は 上 流 の 線 形 加 速 器 か ら 入 射
な わ ち衝 突 点 で,電
の リン グ は2ヵ 所 で 交 差 す る が,そ
子 と 陽 電 子 が 衝 突 す る こ とに な る.他 の 交 差 点 で は,リ
に す れ 違 い衝 突 を起 こ す こ とは な い.図 中 で,e+は 陽 電 子 を,e-は 電 子 を,ま た,HERは,電 ン グ,LERは 陽 電 子 リン グ の こ とで あ る.RFと 書 か れ た 場 所 に 高 周 波 空 洞 が 設 置 さ れ る.ト の 半 周 で は,電 子 リン グ が 外 側 に 設 置 され,残
は 確 率 的 に 起 こ る た め,一
りの半 周 で は,陽
般 に は,B0と
反B0は
り生 成 し た 粒 子 を測 定 器 に よ り検 出 す れ ば,ど を 決 め る こ とが で き る.既
に述 べ た よ うに,CP不
間 の 微 妙 な 振 る 舞 い の 違 い で あ る か ら,CP不 で ど ち らが 反B0か 5.3GeVの
子リ ンネル
電 子 リ ン グが 外 側 に設 置 さ れ る.
異 な っ た場 所 で 崩 壊 し,崩 壊 に よ ち ら がB0で
ど ちら が 反B0で
変 性 の破 れ と は,粒
あ るか
子 と反 粒 子 の
変 性 を 調 べ る た め に は,ど
ち ら がB0
を特 定 す る こ と が 本 質 的 に 必 要 で あ る こ とが わ か る で あ ろ う.
電 子 と陽 電 子 を衝 突 さ せ る1リ
芸 当 は で き な い.
の うち
ングは上下
ン グ 型 の 衝 突 型 加 速 器 で は,こ
の よ うな
図2
16.1.3
Bフ
KEKBの
ァ ク ト リー に 要 求 さ れ る性 能
特 徴 は,目
あ る(ル
トン ネ ル 中 に左 右 に 並 べ て 設 置 さ れ た 電 子 リ ン グ と陽 電 子 リン グ
標 と す る ル ミ ノ シ テ ィ が1034cm-2s-1と
ミ ノ シ テ ィ の 定 義 と 単 位 に つ い て は 付 録1を
非 常 に 大 き い こ とに
参 照 の こ と).こ
れ は ト リス タ
ン の ル ミ ノ シ テ ィ4×1031cm-2s-1の250倍
に あ た り,Bフ
世 界 最 高 の ル ミ ノ シ テ ィ8×1032cm-2s-1を
達 成 し て い る 米 国 コ ー ネ ル 大 学 のCESR
(シ ー ザ と い う)の10倍
以 上 で あ る.衝
ァ ク ト リー が で き る 前 の
突 型 加 速 器 に お い て,ル
ミ ノ シ テ ィLは,
次 の 式 に よ っ て 表 さ れ る.
こ こ で,Lの て,Iは
単 位 はcm-2s-1で
あ り,Eは
ビ ー ム の エ ネ ル ギ ー をGeVを
蓄 積 電 流 を ア ンペ ア ー を単 位 と して 表 し た もの で あ る.ま
単位 と し
た,ξ は ビ ー ム ・
ビ ー ム ・チ ュ ー ン シ フ ト と い う,衝 突 時 に 働 く ビ ー ム 同 士 の 力 の 強 さ を表 す 量 で あ り,通 常1衝
突 あ た り0.03∼0.05と
い う大 き さ を持 つ.rは
衝 突 点 にお け る垂 直 方
向 の ビ ー ム サ イ ズ を水 平 方 向 の ビ ー ム サ イ ズ で割 っ た 値 で あ る.通 常 の電 子 リ ン グ に お い て は,ビ
ー ム は 非 常 に偏 平 で あ り,rの
βy*は 衝 突 点 で垂 直 方 向(y方 あ り,cmを 結 局,ル
単 位 とす る.衝
向)に
値 は0.01∼0.03と
ど れ だ け に ビ ー ム を絞 るか を表 す パ ラ メー タ で
突 点 に お け る ビ ー ム サ イ ズ は,βy*の
ミノ シ テ ィ を大 き くす る た め に は,ξ
す れ ば よ い こ と に な る.KEKBの な値 を 仮 定 し,か つ βy*を1cmま
電 子 リ ン グ で は2.6Aと
平 方 根 に 比例 す る.
と 蓄 積 電 流 を 大 き く し,βy*を
設 計 に お い て は,ξ
と して0.05と
な る(ト
対 して,電
小 さ く
い う比 較 的 大 き
で 小 さ く12)(ト リス タ ン で は4cm)す
で も必 要 な 電 流 は最 終 的 な ル ミノ シ テ ィ1034cm-2s-1に は1.1A,陽
小 さ く無 視 し て よ い.
る が,そ
れ
子 リン グ に お い て
リ ス タ ン の 蓄 積 電 流 は 電 子 と陽 電 子 を
あ わせ て20mAで
あ っ た).ま
た,ル
ミ ノ シ テ ィ は,両
リ ン グ に 共 通 した 物 理 量 で あ
り,上 の 式 か ち 明 ら か な よ うに,蓄 積 電 流 と エ ネ ル ギー の 積 は 両 リン グで 等 し くな け れ ば な らな い.こ
の た め,エ
ネ ル ギ ー の 低 い 陽 電 子 リン グ に よ り大 き な 電 流 を蓄 積 し
な け れ ば な ら な い こ と に な る.1つ
のバ ン チが 担 う こ とが で き る電流 はせ いぜ い数
mAで
あ り,こ の よ う な 大 き な 電 流 は 非 常 に 多 くの バ ン チ に 分 散 させ な け れ ば な ら な
い.先
に 述 べ た よ う に,KEKBに
お い て は,各
リ ン グ に 最 大5,000個
の バ ン チ を蓄
積 す る こ とに な る. 16.1.4 結 合 バ ンチ 不 安 定 性 とそ の 克 服 KEKBに
代 表 さ れ るBフ
ァ ク ト リー 加 速 器 の 難 し さ は,も
っ ぱ ら蓄 積 電 流 とバ ン
チ 数 が 大 きい こ と に よ って い る.高 周 波 加 速 空 洞 を バ ン チ が 通 過 す る と きに,バ は 空 洞 中 に 電 磁 波 を励 起 す る.加 ず,次
ンチ
速 空洞 中 では励 起 され た電磁 波 は なか なか 減 衰せ
に や っ て く るバ ンチ は 先 行 す るバ ン チ に よ っ て励 起 され た 電 磁 波 に よ っ て ゆす
ら れ,同
時 に 自分 自 身 も空 洞 中 に 電磁 波 を励 起 す る.あ
る 条 件 の も と で は,こ
が 正 の フ ィ ー ドバ ッ ク とな り,バ ン チ の 振 動 が 次 第 に 成 長 し,つ
の連鎖
いには ビーム が失 わ
れ て し ま う.こ の 現 象 を 結 合 バ ン チ 不 安 定 性 と い う.振 動 の 成 長 速 度 は 蓄 積 電 流 に 比 例 す る た め,KEKBの
よ う な大 電 流 蓄 積 リ ン グ で は,こ
の不 安 定性 が 非常 に深 刻 な
問 題 と な る13). 高 周 波 空 洞 中 に 励 起 さ れ る 電 磁 波 の うち 最 も周 波 数 の 小 さ い もの を 基 本 モ ー ドと い い,そ
れ 以 外 を 高 次 モ ー ドと い う.基 本 モ ー ドは ビ ー ム を加 速 す る た め に用 い ら れ る
電 磁 波 で あ り,加 速 モ ー ドと も よ ば れ る. 高 次 モ ー ドに 基づ く結 合 バ ン チ 不 安 定 性 を 克 服 す る た め に は,バ
ン チ が 通 過 して も
高 次 モ ー ドが 励 起 さ れ に く い特 殊 な 高 周 波 空 洞 を 開 発 す れ ば よ い.KEKBに は,こ
の 目 的 の た め に 超 伝 導 単 一 セ ル 単 一 モ ー ド空 洞 と常 伝 導 のARES空
お いて 洞 が 開発
さ れ た. 通 常 の 蓄 積 リン グ で は,高 る が,KEKBの
次 モ ー ドの み が 結 合 バ ン チ不 安 定 性 を引 き起 こす の で あ
よ う な 大 電 流 を 蓄 積 す る 周 長 の 長 い加 速 器 で は,加
速 モ ー ド も結 合
バ ン チ 不 安 定 性 の 原 因 と な る.加 速 モ ー ドに 基 づ く結 合 バ ン チ 不 安 定 性 は 非 常 に 強 く,こ の 不 安 定 性 を克 服 で き るか ど うか が,KEKBの
死 命 を制 す る とい え る.
高 次 モ ー ドに 基 づ く結 合 バ ン チ不 安 定 性 の と きは,ビ ー ド電 磁 波 を 空 洞 か ら取 り除 い てや れ ば よか っ た が 不 安 定 性 の 場 合 は,加
,加 速 モ ー ドに 基 づ く結 合 バ ン チ
速 モー ドが ま さ に ビー ム の加 速 に 使 わ れ る た め に,こ
と る こ とが で き な い と い う本 質 的 な 困 難 が あ る.KEKBに よ る結 合 バ ン チ 不 安 定 性 を抑 え る た め に,空 と る.空
ー ム に よ り励 起 され た 高 次 モ
の方法 を
お い て は,加 速 モ ー ドに
洞 の 蓄 積 エ ネ ル ギ ー を 大 き くす る 方 法 を
洞 の 蓄 積 エ ネ ル ギー が ビー ム に よ っ て 励 起 さ れ る加 速 モ ー ドの エ ネ ル ギ ー に
比 べ て 十 分 に 大 きけ れ ば,ビ ー ム の 影 響 は 無 視 で き る か らで あ る.蓄 積 エ ネ ル ギ ー は
図3
KEKBの
超伝導空洞
超伝 導 空 洞 に お い て は 常 伝 導 の 空 洞 に お い て 加 速 電 場 の 強 さ を制 限 す る空 洞 内壁 で の エ ネ ル ギー 損 失 が 無視 で きる ほ ど小 さ く,高 い 加 速 電 場 を 得 や す い.そ こ で,常 伝 導 空 洞 で は加 速 電 場 が 小 さ くな る た め に採 用 で きな い,な
め らか な 空 洞 形 状 を と り,高 次 モー ドが 励 起 さ れ に く くす る こ とが で き る.
さ らに,空 洞 に 接 続 され る ビ ー ム パ イプ の 径 を極 限 ま で大 き くす る こ とに よ り,加 速 モー ドを除 くす べ て の 高 次 モ ー ド電 磁 波 を ビ ー ム パ イプ の 方 向 に 逃 が す こ とが で き る よ う に な る.こ の よ うに 加 速 モ ー ドだ け が 空 洞 中 に 保 持 さ れ る よ う な空 洞 を単 一 モ ー ド空 洞 とい う.高 次 モ ー ドは ビー ム パ イ プ の 内 壁 に 張 り付 け られ た フ ェ ラ イ トに よ り吸 収 さ れ 熱 に 変 え ら れ る こ とに な る.ニ 液 体 ヘ リウム を溜 め た槽 の 中 に お か れ,ヘ
オブで作 られ た空洞は
リウ ム 槽 を 囲 ん で 断 熱 真 空 槽 が あ る.入 力 結 合 器 は 高 周 波
電 磁 波 を空 洞 に 導 く.空 洞 の 共 振 周 波 数 は チ ュー ナ ー に よ っ て調 整 さ れ る.
空 洞 中 の 電 場 強 度 の2乗 よ っ て,蓄
に 比 例 す るた め,電
場 強 度 の 大 き い 超 伝 導 空 洞 を使 うこ と に
積 エ ネ ル ギ ー を大 き くす る こ とが で き る.常 伝 導 空 洞 を用 い た と きに は,
電 場 強 度 を大 き くす る こ と は 難 し く,そ の 代 わ りに,空 積 エ ネ ル ギー の 増 加 をは か る こ とに な る.ARES with
Energy
Storage)と
洞 の 有 効 体 積 を大 き く し て蓄
(Accelerator
Resonantly
は こ の よ う な 空 洞 の こ とで あ る.ARESで
Coupled
は,加 速 空 洞 を
結 合 空 洞 を介 し て 低 損 失 の エ ネ ル ギー 貯 蔵 空 洞 に接 続 す る こ とに よ り,系 の 有 効 体 積 を 大 き く し,全 蓄 積 エ ネ ル ギ ー を 増 大 さ せ る.高 ARESも
単 一 モ ー ド空 洞 で な け れ ば な ら ず,加
の 導 波 管 が4本
取 り付 け ら れ て い る.取
りつ け られ たSiC(シ ト リス タ ン で は,世
次 モ ー ドを 減 衰 さ せ る た め に は,
速 セ ル に 高 次 モ ー ドを 取 り 出 す た め
り出 さ れ た 高 次 モ ー ドは,導
波 管の終 端 に と
リ コ ン カー バ イ ド)吸 収 体 に よ り熱 に 変 え られ る. 界 に 先 駆 け て 大 規 模 な 超 伝 導 空 洞 シ ス テ ム を 実 用 化 した.ト
ス タ ン の 子 供 で あ るKEKBの
超 伝 導 空 洞 は,ト
リ
リ ス タ ン で培 っ た 超 伝 導 技 術 の 上 に
図4
トン ネ ル 内 に 設 置 され たARES空
洞
常伝 導 空 洞 で あ るARESで は加 速 空 洞 を結 合 空 洞 を介 し て低 損 失 の エ ネ ル ギー 貯 蔵 空 洞 に 接 続 す る こ とに よ り,系 の 有 効 体 積 を 大 き く し,全 蓄 積 エ ネ ル ギー を増 大 させ る.ARESも 単 一 モ ー ド空 洞 で な け れ ば な らず,加
速 セ ル に 高 次 モ ー ドを取 り出 す た め の 導 波 管 が4本
さ れ た 高 次 モ ー ドは,導
波 管 の 終 端 に と りつ け られ たSiC(シ
取 り付 け られ て い る.取 り出 リコ ン カー バ イ ド)吸 収 体 に よ り熱 に
変 え られ る.
作 ら れ た大 電 流 用 の 空 洞 で あ り,蓄 積 電 流 の 世 界 記 録(1,000mA)を 図3にKEKBの 16.1.5
超 伝 導 空 洞 を,図4にARESを 有 限 角度衝 突
KEKBで,電
子 と 陽 電 子 の バ ン チ は 正 面 衝 突 で は な く,±11mr(約
い う有 限 の 角 度 を も って 衝 突 す る.有 不 要 とな り,バ ン チ 間 隔 は0.6mま ま で 大 き くで き る.ま た め に,偏
達 成 し て い る.
示 す.
た,衝
±0.7度)と
限 角 度 衝 突 の 場 合 は分 離 の た め の 偏 向 電 磁 石 が
で 小 さ くす る こ とが で き,蓄 積 バ ン チ 数 を5,000
突 点 近 傍 に ビー ム 分 離 用 の 偏 向 電 磁 石 を 置 く必 要 が な い
向 電 磁 石 か ら発 生 す る放 射 光 を気 に しな くて よ い こ とに な り,衝 突 点 付 近
を大 幅 に 簡 略 化 で き る こ とに な る. 有 限 角 度 衝 突 に お い て は,粒 あ る い は 後 部)に
子 のバ ン チ 内 の 前 後 方 向 の 位 置(バ
ン チ の 前,中
央,
よ っ て 相 手 の バ ン チ か ら受 け る 電 気 的 な 力 が 異 な る こ とに な り,シ
ン ク ロベ ー タ トロ ン 共 鳴 と よば れ る共 鳴 が 励 起 さ れ る こ と に な る. 計 算 機 シ ミュ レー シ ョ ン に よ れ ば,こ 減 少 は 起 こ ら な い は ず で あ る が,ビ
の程 度の有 限角 度衝 突に よ るル ミノシテ ィの
ー ム 衝 突 は 非 常 に 複 雑 な現 象 で あ り,シ
シ ョン を信 頼 し き る わ け に は い か な い.有 面 衝 突 させ る こ とが で きれ ば,有
限 角 度 衝 突 で あ りな が ら,バ
ミュ レー
ン チ 同 士 を正
限 角 度 衝 突 の 利 点 を保 持 しな が ら ビー ム 衝 突 に 由 来
す る シ ン ク ロベ ー タ トロ ン共 鳴 を 回 避 す る こ とが で き る.ク
ラ ブ 衝 突 方 式 に よ れ ば,
こ の こ とが 実 現 で き る. ク ラ ブ 衝 突 方 式14)で は,衝
突 点 に 向 か う電 子 お よ び 陽 電 子 の バ ン チ は ク ラ ブ 空 洞
図5
陽 電 子 リ ン グの 真 空 ダ ク トヘ 巻 か れ た ソ レ ノイ ド
陽 電 子 リン グの 真 空 ダ ク トの ほ とん どに ソ レ ノ イ ド巻 き線 を行 う こ と に よ り,光 電 子 不 安 定 性 に よ る ビー ム ・サ イ ズ の増 大 を押 さえ 込 む こ とに 成 功 した.
と よ ば れ る特 殊 な 高 周波 空 洞 に よ っ て バ ン チ の 長 手 方 向 の 軸 が 水 平 方 向 に 傾 け られ, 衝 突 点 で は 正 面 衝 突 を す る こ と に な る.衝
突 後 も う一 つ の ク ラ ブ 空 洞 を通 過 す る こ と
に よ り,傾 け ら れ た 軸 は も とに も ど さ れ る.こ
の 衝 突 は あ た か も蟹 が 横 這 い を して い
る よ う に み え る の で ク ラブ 衝 突 と よ ば れ る.ク
ラ ブ 衝 突 を実 現 す る ため に は,ク
ラブ
空 洞 に よ っ て 大 き な横 方 向 の 蹴 り をバ ン チ に 与 え な け れ ば な ら ず,非 常 に 強 い 電 場 が 必 要 と な る.KEKBに 16.1.6
お い て は,超
伝 導 ク ラ ブ 空 洞 の 開 発 が 進 行 中 で あ る.
光電子 不安定 性
KEKBの
性 能 を制 限す る 最 大 の 要 因 は,陽
電 子 リ ン グ に お け る,光
電子 不安 定性
と よ ば れ る ビー ム 不 安 定 性 で あ る.陽 電 子 リ ン グに 蓄 積 さ れ た 陽 電 子 は 偏 向 電 磁 石 に よ っ て 曲 げ られ る と きに 放 射 光 を発 生 す る.こ こ とで 発 生 し た光 電 子 は,陽 成 さ れ る.蓄
の 放 射 光 が 真 空 ダ ク トの 内 壁 を た た く
電 子 ビ ー ム に 引 き寄 せ られ,ビ
ー ムの 周 りに電子 雲が形
積 電 流 が 大 き くな り,電 子 雲 の 濃 度 が 高 くな る と,陽 電 子 ビー ム が こ の
電 子 雲 と相 互 作 用 す る こ とに よ り,垂 直 方 向 の ビー ム ・サ イ ズ が 増 大 し て し ま う. 発 生 した 光 電 子 を 真 空 ダ ク ト内壁 付 近 に 閉 じ こ め,光
電 子 不 安 定 性 を抑 制 す るべ
く,陽 電 子 リン グの 真 空 ダ ク トに ソ レ ノイ ドを 巻 く作 業 が,2000年 2001年
に か て の 冬 休 み,2001年4月
の1週
の 夏 休 み,2000-
間 の 休 み,2002年1月,2002年
の 夏 の5
回 に 分 け て 行 わ れ た.壁 か ら で て きた 光 電 子 は,壁
と平 行 す る ソ レ ノ イ ド磁 場 の 磁 力
線 に 巻 き付 くた め,壁
ー ム の ま わ りに 電 子 雲 を形 成 す る
こ とが で き な い.こ こ とが で きた.こ て,2001年3月
か ら離 れ る こ とが で きず,ビ
の 対 策 は,非
の 結 果,KEKBの
常 に 有 効 で あ り,ビ ー ム ・サ イ ズ の 増 大 を抑 制 す る ル ミ ノ シ テ ィ は,対
の 段 階 で,2×1033cm-2s-1か
策 開 始 前 の2000年
ら7×1033cm-2s-1へ3.5倍
夏 に比 べ に向上 し
た15).図5に
陽 電 子 リン グ に ま か れ た ソ レ ノ イ ドの 様 子 を,ま
月,2001年12月,お
よ び2002年2月
に 行 わ れ た,陽
に と も な う垂 直 方 向 の ビー ム ・サ イ ズ の 変 化 を示 す.ソ くな る に と も な い,ビ で あ ろ う.2002年10月
た,図6に,2001年7
電 子 リン グ に 蓄 積 さ れ た 電 流 リ ノ イ ドが 巻 か れ た 長 さの 長
ー ム ・サ イ ズ の 増 大 が 抑 制 され て い く様 子 が は っ き り と分 か る の 測 定 に お い て は,蓄
積 電 流1.6Aま
で,全
く ビー ム ・サ イ
ズ の 増 大 が み ら れ て い な い. 16.1.7 KEKBの KEKBは,予 グ(総
合 運 転)が
た が,1999年5月1日 BELLEを
コ ミッシ ョニ ング
定 よ り早 く1998年11月 始 ま っ た.コ
に 建 設 を 終 了 し,12月
か ら コ ミッ シ ョニ ン
ミ ッ シ ョニ ン グ開 始 当 初 は,加 速 器 単 独 で運 転 を行 っ
に はBELLEが
衝 突 点 に ロ ー ル ・イ ン さ れ,5月25日
と も な っ た 運 転 が 始 ま っ た.6月1日
に は,最
か ら は,
初 の ハ ドロ ン事 象 の 観 測 に
成 功 し た. そ の 後,KEKBの cm-2s-1,
性 能 は,着
1999年
1033cm-2s-1を 2001年3月
実 に 向 上 し 続 け た.1999年8月5日
末 ま で に は,6.9×1032cm-2s-1,
超 え る こ と が で き た.さ に は,3.0×1033cm-2s-1を
PEP-Ⅱ(PEP-Ⅱ
図6
ら に,2000年7月 超 え,4月4日
に つ い て は 次 項 を 参 照 の こ と)の
2001年7月,2001年12月,お
よ び2002年2月
2000年2月
に は,2.9×1032 に は,つ
い に1.0×
に は2.0×1033cm-2s-1を, に は,つ
い に 先 行
して い た
ル ミ ノ シ テ ィ を 超 え る,3.31×
に お け る 陽 電 子 リ ン グに
蓄 積 され た電 流 を横 軸 に とっ た と きの,垂 直 方 向 の ビー ム サ イ ズ の 変 化 2001年 夏 お よ び2002年1月 に行 わ れ た ソ レ ノ イ ドの 追 加 の効 果 が 明確 で あ る.
図7
1999年 か ら2002年10月
ま で の,KEKBの
ピー ク ・ル ミノ シ テ ィ,一
ミノ シ テ ィ,電 子 リン グ と陽 電 子 リ ン グ の蓄 積 電 流 お よ びBELLEが シテ ィ の変 遷
1033cm-2s-1に
達 した.そ
の 後,前
項 で 述 べ た ソ レ ノ イ ドに よ る ビー ム ・サ イ ズ 増 大
の 抑 制 と,加 速 器 の 調 整 が 進 ん だ こ と に よ り,2002年10月29日 テ ィ8.26×1033cm-2s-1を
記 録 した.現
在,PEP-Ⅱ
s-1ま で 増 大 して い る が,KEKBは,名 速 器 で あ る.図7に,1999年 の積 分 ル ミノ シ テ ィ,電
日 あ た りの 積 分 ル
集積 し た積 分 ル ミ ノ
に は最 高 ル ミノシ
の ル ミノ シ テ ィ も4.6×1033cm-2
実 と も に世 界 最 高 性 能 の 電 子 陽 電 子 衝 突 型加
秋 か ら2002年10月
ま で の ル ミ ノ シ テ ィ と 一日 あ た り
子 リン グ と陽 電 子 リン グの 蓄 積 電 流,お
した 積 分 ル ミ ノ シ テ ィ の 変 遷 を示 す.こ
の 図 か ら 明 らか な よ うに,KEKBは
始 か ら順 調 に 性 能 向 上 を続 け て お り,特 に,2001年
か ら2002年
ま し く向 上 し た こ と が わ か る.2002年10月25日 積 した 総 積 分 ル ミノ シ テ ィ100/fb(単
よ びBELLEが
位1/fbに
に は,実
蓄積 運転開
に か け で 性能 が め ざ
験 開 始 以 来BELLEが
つ い て は 付 録1を
蓄
参 照 の こ と)を 世
界 に 先 が け て 達 成 し た*1. 16.1.8 PEF-Ⅱ
と の 競 争 とB中
間 子 に お け るCP不
米 国 の サ ン フ ラ ン シ ス コ の 郊 外 に あ るSLAC(ス ー)に
お い てPEP-Ⅱ
と よ ば れ るBフ
変性 の破 れの 発見
タ ン フ ォ ー ド線 形 加 速 器 セ ン タ
ァ ク ト リー が あ り ,2000年5月
か らBaBarと
よ ば れ る測 定 器 に よ る 物 理 実 験 が 始 ま っ て い る16). *1 そ の 後 もKEKBは cm-2s-1,積
順 調 に 性 能 が 向 上 し,2004年2月
分 ル ミノ シ テ ィ200/fbを
現 在 に お い て,ル
達 成 し て い る.
ミ ノ シ テ ィ1.16×1034
PEP-Ⅱ
もKEKBと
器 で あ り,9GeVの
同 様 な,非 電 子 と3.1GeVの
か つ て 存 在 したPEPと ル(周
にPEPを
KEKBとPEP-Ⅱ
は,熾
に ま ず,電
も 完 成 し た.こ 成 をみ た.こ KEKBが
の 加 速 器 は,SLACに
ン グ 型 電 子 陽 電 子 衝 突 型 加 速 器 の トン ネ
改 造 して 建 設 され た ため,PEP-Ⅱ
と よ ば れ て い る.
烈 な競 争 を行 っ て い る ま っ た だ な か に あ る.PEP-Ⅱ
子 リ ン グが 完 成 し,1年
れ に 対 して,KEBKは
の た め,1999年
後 の1998年7月
よ うや く1998年11月
と2000年
は,加
に は,陽
の 性 能 が 足 踏 み を 続 け る な か で,KEKBの
に は 性 能 が 逆 転 し た.2002年10月
PEP-Ⅱ
を80%上
に つ い て も,2002年10月2日 を追 い 抜 くこ とが で き た.さ 2001年
に は,人
BELLEで
Review
は,0.99±0.14±0.06,ま 上 で,ま
に し て,初
達 成 した.
間 子 に お い てCPが
Lettersに 発 表 し た.1964年
破 れ が 見 つ か っ て か ら37年
者 で は,99.999%以
類 未 踏 の100/fbを
双 方 と も,B中
破 れ が 見 つ か っ た こ と に な る.CPの
ル ミ ノ シ テ ィ は,
収 集 した 積 分 ル ミノ シ テ ィ は,BaBar
らに10月26日
の7月,BELLE17)もBaBar18)の
に お け るCPの
に な ってか ら
き く水 を 空 け ら れ て い た 積 分 ル ミ ノ シ テ ィ
に はBELLEの
て い る とい う実 験 結 果 をPhysical
が 先 行 し,
性 能 は 急 速 に 向 上 し,2001
の 時 点 で は,KEKBの
回 る こ とに な っ た.大
は,
電 子 リン グ
に両 リン グが 同時 に完
速 器 の 性 能 で は,PEP-Ⅱ
そ の 後 を ほ ぼ 半 年 の 遅 れ で 追 う とい う状 態 で あ っ た.2001年
は,PEP-Ⅱ 年4月
ン グ型 電 子 陽電 子衝 突型 加 速
陽 電 子 を衝 突 させ る.こ
い う15GeVの1リ
長2.2km)中
1997年7月
対 称 エ ネ ル ギ ー2リ
め てK中
にK中
は,0.58±0.15±0.05で
た 後 者 で も,99.997%以
れ て い る こ とに な る.小 林-益 川 の 理 論 は,大
上 の 確 率 で,CP対
きなCP対
今 回 の 観 測 結 果 を支 持 す る も の で あ る.B中
値 は, あ り,前 称 性 が破
称 性 の破 れ を予 言 し て お り,
間 子 に お け るCP不
詳 細 お よ び そ の 後 の 実 験 の進 展 に と もな うCPの
間子
間 子 以 外 で,CPの
破 れ の 大 き さ を 表 す 量 で あ るA(CP)の たBaBarで
破れ
変 性 の破 れ の 検 出 の
破 れ の 測 定 結 果 に つ い て は 付 録2を
参 照 して ほ し い. こ の 発 見 は,電
子 の 発 見 以 来 の 過 去100年
に わ た る素 粒 子 物 理 学 研 究 に お い て,日
本 の 加 速 器 に よ っ て な さ れ た 最 初 の 大 発 見 で あ る.ト
リス タ ン に よ っ て 大 きな 飛 躍 を
遂 げ た,日 本 の 高 エ ネ ル ギー 物 理 学 と加 速 器 科 学 は,KEKBとBELLEに
お い て,
加 速 器 科 学 の 先 達 で あ る米 国 と堂 々 と太 刀 打 ち で き る ま で に 成 長 を 遂 げ た とい え る. (黒川 眞 一)(筆 れ,1968年
者=く
ろか わ ・しん い ち,高 エ ネ ル ギー 加 速 器研 究 機 構 教 授.1945年
生ま
東 京 大 学理 学 部 卒 業)
参 考 文 献 1)
Y.Kojima,et Workshop
2)
al.:"Superconducting on
RF
RF
Activities
Superconductivity,KEK
Report
K.Tsuchiya,K.Egawa,K.Endo,Y.Morita Eight
Superconducting
and Quadrupole
Magnets
for
at
KEK",Proceedings
of the
4th
89-21,pp.85-96. N.Ohuchi:"Performance the
TRISTAN
of Low-Beta
the
Insertions",
IEEE 3)
A.Yamamoto,et
4)
G.T.Danby,et
Trans.Magn.MAG-27(1991)1940. al.:J.Phys.C1(1984)1337. al.:"The
Brookhaven
muon
storage
ring
magnet",Nucl.Instr.and
Meth.A457(2001)151. 5)
H.N.Brown,et
6)
M.Kobayashi
7)
al.:g-2 and
F.Abe,et
collaboration,Phys.Rev.Lett.86(2001)2227.
T.Maskawa:Prog.Theo.Phys.49(1973)652.
al.:Phys.Rev.D
50(1994)2966.F.Abe,et
al.:Phys.Rev.Lett.73(1994)
225. 8)
KEKB
9)
J.H.Christenson,J.W.Cronin,V.L.Fitch
B-Factory
Design
Report,KEK
Report
95-7,August and
1995.
R.Turlay:Phys.Rev.Lett.13
(1964)138. 10)
I.I.Bigi
11)
P.Oddone:Proceedings
and
Conceptual 12)
A.I.Sanda:Nucl.Phys.B193(1981)85. of
the
UCLA
Workshop:Linear
Design,D.Stork,ed.,World
KEKB加
High
Energy
Acceleratorsが
PUB
16)
PEP-Ⅱ
17)
A.Abbe,et
18)
B.Auber,et
and
al.:"Study of An
of
HEACC
Collective Beam
of
B
beam
Blowup
in
KEKB
Low
Energy
Factory,SLAC-418,June
1993.
al.:Phys.Rev.Lett.87(2001)091802. al.:Phys.Rev.Lett.87(2001)091802.
る現 象 の生 成 断 面積 を σ,こ の 現 象 の生 成 す る頻 度 をNと に よ っ て 定 義 さ れ る.生 シ テ ィ の 単 位 はcm-2s-1と
成 断 面 積 σ の 単 位 はcm2,Nの
単位 はs-1で
あ る こ と か ら,ル
ミノ
な る.
面 積 の 単 位 の ち ょ う ど逆 数 に な っ て い る こ と か ら,生 用 い て,1/nb,1/pb,1/fbと
意 味 す る.nb,pb,fbは
あ る が,こ
れ は生 成 断 逆数 を
そ れ ぞ れ,b(バ
れ ぞ れ,10-33cm2,10-36cm2,10-39cm2と
こ でbと
は バ ー ン と よば れ る 量 で あ
ー ン)の10-9,10-12,10-15の な る.こ
こ
れ か ら,1/nb,1/pb,1/
な る.
均 ル ミノ シ テ ィ が1×1034cm-2s-1で1日
シ テ ィ は,1×1034cm-2s-1×864,000s=8.64×1038cm-2,す 平 均 ル ミ ノ シ テ ィ が1×1034cm-2s-1で107秒
突 型加 速 器 に お け るデ
成 断 面 積 の 単 位nb,pb,fbの
表 さ れ る こ と が 多 い.こ
fbは,1033cm-2,1036cm-2,1039cm-2と た と え ば,平
表 され る.あ
した とき,ル ミノシ テ ィLは
積 分 ル ミ ノ シ テ ィ と は,ル ミ ノ シ テ ィ の 時 間 積 分 の こ と で あ り,衝 ー タ蓄 積 量 に 比例 す る量 で あ る .積 分 ル ミ ノ シ テ ィ の 単 位 は,cm-2で
と で あ り,そ
Ring",
2001.
付 録1 ル ミノ シテ ィ と積 分 ル ミノ シテ ィの 単位 につ い て ル ミノシ テ ィ とは,衝 突型 加 速器 の性 能 を表す 物 理 量 で あ り,通 常 記 号Lで
り,10-24cm2を
生 出
し た.R.B.Palmer:SLAC-
K.Yokoya:Phys.Rev.A40(1989)315. Vertical
01,March
Asymmetric
βy*
Instabilities
よ り リ ニ ア コ ラ イ ダ ー の た め に 提 唱 さ れ,KEKの
4707(1988).K.Oide
Proceedings
のPhysics
ン グ 型 衝 突 型 加 速 器 へ の 適 用 を 提 案
H.Fukuma,et
突 点 の
標 準 的 な 教 科 書 で あ る.
ク ラ ブ 衝 突 はR.B.Palmerに と 横 谷 が,リ
15)
Factory
で 絞 る こ と に 成 功 し て い る.
ビ ー ム 不 安 定 性 に つ い て は,A.W.Chao著 in
14)
BB
速 器 に は 非 常 に 進 ん だ ビ ー ム 光 学 設 計 が と り 入 れ ら れ て お り,衝
を 設 計 値 よ り も は る か に 小 さ い6.5mmま 13)
Collider
Scientific,p.243(1987).
連 続 して 運 転 し た と き の 積 分 ル ミ ノ な わ ち864/pbと
連 続 し て 運 転 し た と き は(ち
な る .ま な み に,1年
た, 間の
秒 数 は,3.15×107秒 cm-2,す
で あ り,107秒
な わ ち100/fbと
は ほ ぼ1/3年
に 相 当 す る),積
分 ル ミ ノ シ テ ィ は1041
な る.
付 録2 B中 間 子 に おけ るCP不 変性 の破 れ の 発 見に つ い て CP不 変 性 の破 れ とは,粒 子 と反粒 子 の 間 の振 る舞 い の違 い の こ とで あ る.現 在 の宇 宙 は 粒 子 だ け か ら成 り立 っ て い る と考 え られ て い る.宇 宙 創 生 時 に は,同
じ数 の 粒 子 と反粒 子 が
存 在 した は ず で あ り,宇 宙 が発 展 す る過 程 で,反 粒 子 が 消 え,粒 子 の みが 残 るため には,CP の不 変 性 が破 れて い な けれ ば な ら ない.こ の 宇 宙 が なぜ粒 子 だ け か らで きて い るの か とい う 素 粒 子 物 理 学 と宇宙 論 に お け る最 大 の 謎 の 一つ を解 くため に は,CP不 解 明 す る こ とが 必 須 で あ る. 1973年 に小 林 と益 川は,も
変性 が破 れ る機 構 を
し クォー クの数 が6個 で あれ ば,弱 い相 互 作 用 に お け る クォ ー
クの 混合 行 列 の要素 のす べ て を実 数 で表 す こ とは で きず,複 素数 の位 相 が 必 要 と な る こ と, そ して この複 素 数位 相 の存 在 がCP不
変 性 の破 れ を 引 き起 こす とい う理 論 を提 唱 した1).こ の
理 論 を小 林-益 川 理 論 と い う.1973年
当 時 は,3つ
の クォー クの み が知 られ て い た だけ で あ
るが,そ の 後 さ らに3つ の 重 い ク ォー クが発 見 され,現 在 では,ク ォ ー クの 数 は,6個 る こ とが わか って い る.小 林 と益 川 の先 見 性 は 感 嘆す べ き もの で あ る.CP不
であ
変 性 の破 れ が,
実 際 に小 林-益 川理 論 が 提 唱 す る機 構 に よ る もの で あ るか ど うか を調 べ る こ とは,現 在 の素 粒 子 物理 学 の非 常 に 重要 な課題 であ る. 1981年 に三 田 たち は,B中
間子 の 崩壊 過 程 に お い て大 きなCP不
性 が あ る こ とを示 した2).この提 唱 は,非 対 称 エ ネル ギーBフ な きっか け とな っ た.2001年7月
の,BELLEとBaBarに
変 性 の破 れ が 生 ず る可能
ァ ク トリー 建 設 に 向 か う重 要
よ るB中
間 子 に お け るCP不
変
性 の 破 れ の発 見3)は,1964年 のK中 間 子 の崩 壊 に お け るCP不 変 性 の破 れ の,実 に40年 後 の,K中 間 子 以外 の場 所 にお け る初 め て のCPの 破 れ の発 見 で あ り,ま た,小 林 ・益 川 ・三 田 とい う,日 本 人 物理 学 者 に よ る提 唱 を,日 本 の加 速 器 で あ るKEKBに
よ って 検 証 した と
い う画期 的 な もの で あ る. ク ォー ク混 合 行列 は
(1) の よ う に 書 き表 す こ とが で き る.こ 目 と3列
の 行 列 が ユ ニ タ リ行 列 で あ る こ とか ら,こ
の 行 列 の1列
目よ り
(2) と な る 関 係 が 成 り立 つ.こ VtdVtb*で
の 式 は,複
素 平 面 上 で,3辺
あ る 三 角 形 を 示 し て い る.こ
φ1,φ2,φ3と
KEKBの
が,そ
れ ぞ れ,VudVub*,VcdVcb*,
れ らの 辺 の 間 の 角 を そ れ ぞ れ,図8に
示 す よ う に,
い う.
よ う な非 対 称 エ ネ ル ギーBフ
って 生 成 さ れ たB0とB0の
ァ ク ト リー に お い て は,電 子 と陽 電 子 の 衝 突 に よ
対 は,電 子 の 進行 方 向 に数100ミ
クロ ン飛 ん だ後 に 崩壊 す る.こ
こ で注 意 しな け れば な ら ない こ とは,一 方 の粒 子 を例 えばB0と
特 定 した 時点 で,他 方 が 反
B0で あ る こ とが確 定 す る こ とで あ る. 時 刻t=0に
お い てB0で
を Г(B0→fcp),ま
あ っ た もの が 時 刻tに お い てCPの
た時 刻t=0に
お い て反B0で
の 固有 状 態fcpに 崩 壊 す る頻 度 を Г(B0→fcp)と 非 対称A(t)は
固有 状 態fcpに 崩 壊 す る頻 度
あ った ものが 時刻tに お い てや は り同 じCP す る.Г(B0→fcp)と
Г(B0→fcp)の
間の
図8
図9 3.5GeVの
陽 電 子 と8GeVの
れ る.B1とB2は,電 反B中
で あ るJ/Ψ
電 子 が衝 突 し,二 つ のB中
子 の 進 行 方 向 に 飛 び 出 し,い
に 崩 壊 し たB1か B2は
ク ォー ク混 合 行 列 要 素 が つ くる三 角 形
ら の 崩 壊 粒 子 を 調 べ,B2が
た とえ ばB中
間 子 で あ る こ とが 確 定 す る.B1は とKsに
た粒 子 がB中
崩 壊 す る.zは
間 子 の と き と反B中
と に よ っ て,CP不
間子(図
で は,B1とB2)が
の 場 合,先
間 子 と し て 特 定 さ れ た 時 点 で,
そ の 後 距 離zだ
け 飛 ん だ 後,CPの
数 百 ミ ク ロ ン程 度 の 大 き さ で あ る.タ 間 子 の と きに,そ
生成 さ
くつ か の粒 子 に 崩 壊 す る.図
れ ぞ れzの
固有状態
グに よ っ て 特 定 され
分 布 が ど う な るか を 調 べ る こ
変 性 の 破 れ を調 べ る こ とが で き る.
(3) と 書 き 表 さ れ る.こ CPの
固 有 値(1ま
こ でΔmはB0と た は-1),φ1は
反B0の2つ
の 組 み 合 わ せ 間 の 質 量 差 で あ り,ξfは
上 に 述 べ た 角 度 で あ り,sinΔmtの
互 い に 変 わ り あ う こ と に よ り現 れ る 項 で あ る.φ1が0で 素 が 複 素 数 で あ り,CP不 こ でcは
よ る影 響 が 非 常 に 小 さ く,か
実 験 は,B0反B0対 (CP=1)な
反 チ ャ ー ム ・ク ォ ー ク を 意 味 す る),強
つ 崩 壊 振 幅 自 身 のCPの
れ を 直 接 的CPの
と き は(こ い相 互 作 用 に 破 れ と い う)
の 式 が 良 い 精 度 で 成 立 す る. の う ち,一
方 がCPの
ど に 崩 壊 し た 事 象 を と ら え(Ψ
で あ る か を 見 極 め る(こ
破 れ(こ
お
ォー ク混 合行 列 の要
変 性 が 破 れ て い る こ と を 意 味 す る.fcpが(cc)K0の
チ ャ ー ム ・ ク ォ ー ク を,cは
の 寄 与 が 小 さ い た め,上
項 は,B0とB0が
な い こ と は,ク
固 有 状 態 で あ るJ/ΨKs(CP=-1),J/ΨKL はcとcか
れ を タ グ を付 け る と い う).こ
ら な る),他 れ ら2つ
方 がB0で
の 事 象 間(CP固
あ る か 反B0 有状態への
図10
2002年7月
に 発 表 さ れ た,78/fbの
積 分 ル ミ ノシ テ ィ(こ れ は85×106B0B0対
に対応す
る)を 用 い て得 られ た デ ー タ 横 軸 は,崩
壊 事 象 間 の 時 間 差,縦
q=+1,反B0の と き はq=-1と ま た,下 の 図 は,式(3)のA(t)を
図11
2002年7月
崩 壊 と タ グ付 け され たB中
軸 は,上
の 図 に お いて は,qを,タ
し た と き に,qξfが+1と-1の 示 す.
グ付 け され た側 がB0の
とき は
そ れ ぞ れ の 場 合 の 事 象 の 頻 度 を,
時 点 に お け るsin2φ1こ れ ま で の 実 験 結 果 の ま とめ
間 子 の 崩壊)の 距 離 を測 り,速 度 で 割 る こ とに よ り,式(3)に
お け るtを 計 測 す る.tは,CP固 ち らの値 も とる こ とに な る(図9).
有 状 態 へ の崩 壊 とタ グ付 け崩 壊 の 時 間 的 前後 に よ り正 負 ど
図10に
は2002年7月
対 に 対 応 す る)を の 時 間 差,縦 B0の
に 発 表 さ れ た4),78/fbの
軸 は,上
と き はq=-1と
た,下
積 分 ル ミ ノ シ テ ィ(こ
用 い て得 ら れ た デ ー タ を 示 す.こ の 図 に お い て は,qを,タ
の 図 の 横 軸 は,上
グ 付 け さ れ た 側 がB0の
し た と き に,qξfが+1と-1の
の 図 は,式(3)のA(t)を
示 す.こ
れ は85×106B0B0
で説 明 した 崩 壊事 象 間 と き はq=+1,反
そ れ ぞ れ の 場 合 の 事 象 の 頻 度 を,ま
の 結 果,sin2φ1と
して,
が 得 られ た.最 初 の ± は統 計誤 差 を,次 は 系 統誤 差 を示 す.ち な み に,ほ ぼ 同 時 期 に 発 表 さ れ たBaBarの で あ る.こ
値5)は
れ ら の 値 は 小 林-益 川 理 論 の 期 待 値 で あ るsin2φ1=0.70±0.06に
よ くあ って い る
と い え る. 図11に
は,2002年7月
時 点 に お け る各 種 の 実 験 結 果 の 比 較 を示 して い る.
参 考 文 献 1)
M.Kobayashi
2)
A.B.Carter
I.I.Bigi 3)
and and and
K.Abe,et
T.Maskawa:Prog.Theor.Phys.49(1973)652. A.I.Sanda:Phys.Rev.D
193(1981)85.
al.:Phys.Rev.Lett.87(2001)091802.
B.Auber,et
4)
K.Abe,et
5)
B.Auber,et
al.:Phys.Rev.Lett.87(2001)091802. al.:Phys.Rev.D66(2002)071102. al.:Phys.Rev.Lett.89(2002)201802.
16.2 K2K長
KEK-PSで
23(1981)1567.
A.I.Sanda:Nucl.Phys.B
基 線 ニ ュ ー ト リ ノ振 動 実 験
は 国 際 的 に も高 い評 価 を受 け て い る 多 くの素 粒 子 ・原 子 核 の 実 験 が 行
わ れ て き た が,最
も世 界 の 注 目 を浴 び て い る の はK2K(KEK-to-Kamiokaの
長 基 線 ニ ュー ト リ ノ振 動 実 験 で あ る.世
界 の10GeV級
以上 の 陽 子 シ ン ク ロ トロ ン で
は ほ と ん ど ニ ュ ー ト リ ノ実 験 が 行 わ れ て き た.KEK-PSで 壊 実 験,Kamiokandeの
は1980年
代 に神 岡 陽 子 崩
大 気 ニ ュ ー ト リ ノバ ッ ク グ ラ ウ ン ドに対 す る レ ス ポ ン ス を
調 べ る た め ニ ュ ー ト リノ ビー ム が 欲 し い と い う話 は あ っ た が,実 年 に 開 始 され たK2K実
意 味)
験 は,岐
現 し な か っ た.1999
阜 県 神 岡 に あ る東 大 宇 宙 線 研 の5万
コ フ 検 出 器Super-Kamiokandeま 基 線 ニ ュ ー ト リ ノ振 動 実 験(図12)で
で の 距 離250kmと
トン水 チ ェ レ ン
い う世 界 初 の 数 百km級
あ る と と も に,日
の長
本 で 最 初 の 加 速 器 を用 い る
ニ ュ ー トリ ノ実 験 で あ る . K2K実
験 の 目的 は,東
大 宇 宙 線 研 の 戸 塚 洋 二 ら がSuper-Kamiokandeに
気 ニ ュ ー ト リ ノ の観 測 で 確 実 な 証 拠 を 見 い だ し,1998年
よ る大
に岐 阜 県高 山 での ニ ュー ト
リ ノ 国 際 会 議 で 発 表 し た ミ ュ ー ニ ュ ー ト リ ノ の 振 動1),す な わ ち ニ ュ ー ト リ ノ の 有 限 質 量 を,人
工 的 に コ ン ト ロー ル さ れ た加 速 器 か らの ミュー ニ ュ ー ト リノ ビ ー ム を 用 い
て確 認 す る こ とで あ る.ニ
ュー トリ ノ の 有 限 質 量 は素 粒 子 の 標 準 模 型 を超 え る初 め て
図12
K2K長
基 線 ニ ュー ト リ ノ振 動 実 験 の概 念 図
の 事 実 で あ り,柳 田 勉 お よ びGell-Mannら
の シ ー ソー 機 構2)に よ れ ば 微 少 な ニ ュ ー
ト リ ノ質 量 は 超 重 質 量 ス ケ ー ル の 存 在 を意 味 す る こ とか ら,物 理 学 に 対 す る イ ンパ ク トは 計 り知 れ な い. Super-Kamiokandeの 用 い る 数 百km級 CERNで
結 果 が 発 表 さ れ る や,Δm2の
の 長 基 線 ニ ュ ー ト リ ノ 振 動 実 験 で 検 証 で き る た め,FNALと
も実 験 計 画 が 真 剣 に 議 論 さ れ 始 め た.し
らSoudan鉱
山 へ730kmのMINOS実
イ タ リア のGran 2006年
許容 領 域 か ら これが加 速 器 を
Sasso国
験 は2002年
あ り,我 が 国 のK2K実
の 理 由 は,Kamiokandeの
Injectorか
に実 験 開 始,CERNのSPSか
ら
立 研 究 所 へ 同 じ く730kmのOPERAとICARUS実
実 験 開 始 の 予 定(ICARUS実
が 決 ま っ て い な い)で
か し,FNALのMain
験 は2005年
現 在,提
験は
案 中 の ま ま で,ま
だ実施
験 は は る か に 先 行 して 開 始 さ れ た.そ
大 気 ニ ュ ー トリ ノ 観 測 デ ー タが ミュ ー ニ ュ ー ト リ ノ の 不
足3)や 天 頂 角 分 布 の 異 常4)な どか ら既 に ニ ュ ー ト リ ノ振 動 の 兆 候 を示 し て い る こ と に 注 目 し,1996年
にSuper-Kamiokandeが
完 成 す る とほ ぼ 同 時 にKEK-PSの
ト リ ノ ビー ム ラ イ ン の 建 設 を 開 始 し た た め で あ る.こ 結 果 をニ ュ ー ト リ ノ振 動 と見 る こ と に つ い て,欧 こ の 間 の 経 緯 を述 べ る と,1993年 建 設 中 のSuper-Kamiokandeへ Letter
頃,当
の 段 階 で は,Kamiokandeの
米 で は ま だ 懐 疑 的 で あ っ た.
時 東 大 核 研 の 西 川 公 一 郎 がKEK-PSか
菅 原 所 長 は,1994年
に発 表 さ れ たKamiokan
deの 大 気 ミュ ー ニ ュ ー ト リ ノ 天 頂 角 分 布 の 論 文4)を 見 て,こ た 中井 実 験 企 画 調 整 室 長 もPSに
持 し た.1994年12月
に 行 わ れ たPS実
の 実 験 は 進 め るべ き で
お け る ニ ュ ー ト リノ 実 験 を 強 く支
験 の 外 部 評 価 で もK2K実
され,翌
年3月
れ て,い
よ い よニ ュ ー ト リ ノ実 験 がKEKの
え,こ
のPS共
ら
向 け て の 長 基 線 ニ ュ ー ト リ ノ振 動 実 験 の 構 想 を 含 む
of Intentを 提 出 した.KEKの
あ る と判 断 し,ま
ニ ュー
験 計 画 は 高 く評 価
同 利 用 実 験 審 査 委 員 会 で 条 件 付 き な が ら実 施 の 方 向 で 採 択 さ プ ロ ジ ェ ク ト と し て 認 知 さ れ た.と
はい
の プ ロ ジ ェ ク トは ニ ュ ー ト リ ノ ビ ー ム ラ イ ン の 建 設 を含 む か な り大 きな 事 業 で
あ り,菅 原 所 長 は 東 大 宇 宙 線 研 に 対 し こ れ を推 進 す る プ ロ ジ ェ ク ト リー ダ ー を要 求 し,こ
れ に 応 じて 中 村 健 蔵 がKEKに
移 っ た.当
時KEKはBフ
で あ り,ニ ユ ー トリ ノ ビ ー ム ラ イ ン建 設 の た め 数10億 は 困 難 な 状 況 で あ っ た が,文 先 導 的 研 究 設 備 費 を1996年
部 省 の 理 解 を得 て,運
ァ ク ト リー の 建 設 中
円 の 新 た な 予 算 を 獲 得 す るの
良 く1995年
度 か ら制 度 化 さ れ た
度 か ら3年 間 措 置 し て い た だ き(こ
の ため には 当初 東大
か ら施 設 整 備 費 を概 算 要 求 す る な ど,東 大 宇 宙 線 研 と 東 大 施 設 部 に協 力 を お 願 い し た が,結
局 こ の 経 費 はKEKに
1998年
と共 に,研 た め3所
験 は 予 算 的 に 見 た場 合,KEKと
東 大宇宙 線研 の共 同事業 であ る
究 者 の 側 か ら は 東 大 核 研 も加 わ っ た3研
長 が1995年
Kamiokande実
究 所 が 推 進 し た もの で あ り,そ の
に 合 意 し て覚 書 を 取 り交 わ し た.(そ
大 核 研 は 統 合 さ れ た.)ま
た,そ
の 後1997年
の 経 緯 か ら も わ か る よ う に,日
験 グ ル ー プ の か な りの 部 分 がK2K実
にKEKと
東
米 共 同 のSuper-
験 グル ー プ の 母 体 と な っ た が,
に 韓 国 研 究 者 が 加 わ り,日 米 韓 の 国 際 共 同 研 究 と な っ た.実 験 開 始 時 に お い て
日本 が10研 名,そ
た 後 に 述 べ る よ う に 経 費 節 減 に 努 め,
末 に は ニ ュー ト リ ノ ビ ー ム ラ イ ン の 建 設 が ほ ぼ 完 成 し た.
と こ ろ で,K2K実
1996年
措 置 さ れ た),ま
究 機 関 か ら約50名,米
国 が5機
関 か ら約25名,韓
の 他 ポ ー ラ ン ドか ら も加 わ り,総 勢 約100名
国 が4機
関 か ら約25
の 規 模 の 実 験 グ ル ー プ と な っ た.
16.2.1 準 備 段 階 ニ ュー ト リ ノ 実 験 がKEKの GeV陽
正 式 プ ロ ジ ェ ク ト と な っ て,山
子 シ ン ク ロ トロ ン グ ル ー プ(以 下,PS加
と速 い 取 り出 し装 置 の 建 設 に 取 り組 ん だ.ビ
速 器 グ ルー プ と略 称)も
ビー ム 増 強
ー ム 増 強 に つ い て は 佐 藤 皓 を リー ダー と
す る グル ー プ 横 断 的 な タ ス ク フ ォ ー ス が 編 成 さ れ,そ が 最 大 で あ っ た もの を,6×1012個
根 功 主 幹 の 率 い る12
れ ま で パ ル ス あ た り4×1012個
の 陽 子 を 加 速 す る こ と を 目標 に,1995年
か ら精 力
的 な ス タ デ ィ ー を行 っ た.目 標 を超 え る 強 度 の ビー ム が 安 定 に 加 速 で き る よ う に な っ た の はK2K実 は,ト
験 が ス ター トし た 直 後 の1999年5月
ラ ン ジ シ ョ ン エ ネ ル ギー を超 え る前 にRF電
畳 して ビ ー ム を拡 散 さ せ,縦
に 入 っ て か ら で あ っ た.そ
れに
圧 に ホ ワ イ ト ノ イ ズ 的 な電 圧 を 重
方 向 の 空 間 電 荷 効 果 を 緩 和 させ た こ とが 非 常 に 有 効 で あ
っ た.12GeV主
リン グでの キ ッカー 電 磁石 に よ る速 い取 り出 しは勿 論 初 め てで あ
り,同
イ ン で の 遅 い 取 り出 しへ の 変 更 が 簡 単 に で き る こ と 等 の 条 件 も あ り
じEP1ラ
難 しい 設 計 で あ っ た が,1998年 ビー ム ラ イ ン の 建 設 は,高
の 秋 に 取 り出 し シ ス テ ム の 設 置 を 行 っ た. 崎 稔 の 率 い る ビー ム チ ャ ン ネ ル グ ル ー プ が 担 当 し た.北
カ ウ ン タ ー ホ ー ル の 壁 をぶ ち抜 い て 既 存 のEP1ラ 方 向 に90度
曲 げ て 標 的 に 導 くが,途
ル が 必 要 と な り,そ の 先 に200mの 確 にSuper-Kamiokandeに
イ ン を 外 部 に 延 長 し,西
の神 岡の
中 に あ る建 物 を よ け る た め 長 さ400mの
トン ネ
崩 壊 領 域 が 置 か れ る(図13).ビ
向 け る た め,GPSを
論 高 エ ネ ル ギ ー 実 験 で世 界 初 の 試 み で あ っ た.π
ー ムの方 向 を正
利 用 す る長 基 線 測 量 を行 っ た が,勿 中 間 子 を収 束 す る た め の 磁 気 ホー ン
図13
高 エ ネ ル ギ ー加 速 器 研 究 機 構 内 のK2K実
験施設全景
ュー ト リ ノビー ムの 安 定 性 を モ ニ ター す る.⑤
は 前 置 検 出 器 を収 容 す る半 地 下 実 験 室.
中 間 子 の 崩 壊 か ら生 じる ミュ ー 粒
ニ ター デ ー タの 取 得 時 だ け短 時 間 ビー ム ラ イ ン 中 に ミュ ー オ ン モニ ター と呼 ば れ る装 置 で,π
ュー トリ ノの エ ネ ル ギー 分 布 を 推 定 す る ため の 装 置.モ
ュ ー トリ ノ振 動 の 測 定 中 は ビー ム ラ イ ンの 外 に置 か れ る.④'は
子 を測 定 し,ニ
入 れ られ,ニ
れ た π 中 間 子 の 運 動 量 ・角 度 分 布 を測 定 し,ニ
① の 陽 子 シ ン クロ トロ ンは,実 際 は写 真 の 左 側 に あ る.写 真 左 端 の 大 き な建 物 は 北 カ ウ ン ター ホー ルで,そ こ か ら延 び る放 射 線 遮 蔽 用 の 土盛 りの 下 に, 加 速 器 か ら 引 き 出 さ れ た 陽 子 線 の ビー ム ラ イ ン② が あ り,電 磁 石 群 が 並 ぶ.③ は π 中 間 子 生 成 標 的 と磁 気 ホ ー ン.④ は パ イ オ ン モ ニ ター と呼 ば れ,生 成 さ
と呼 ば れ る大 電 流 パ ル ス 電 磁 石 の 製 作 も,KEKで い 課 題 を抱 え た仕 事 で あ っ た .長 た が,カ
くの 難 し
もの 電 磁 石 が 必 要 で あ っ
ウ ン ター 実 験 ホー ル の 幾 つ か の ビー ム ラ イ ン を シ ャ ッ トダ ウ ン して 相 当 数 の
電 磁 石 を 転 用 し,更
にTRISTAN加
使 わ れ た 古 い 電 磁 石20台 K2K実
は 経 験 の な い 技 術 で,多
い ビ ー ム ラ イ ン に は86台
験 で は,陽
速 器 の 電 磁 石 の 転 用,SLACか
の 供 与,等
らBevatronに
々 可 能 な 限 り経 費 節 減 を図 っ た.
子 ビ ー ム の エ ネ ル ギ ー が12GeVと
量 も低 く,生 成 角 が 大 き く広 が る.そ
低 い た め,二
次 粒 子 の 運動
こ で π 中 間 子 を で き る だ け 収 束 させ る た め,
生 成 標 的 を ホ ー ン 本 体 と一 体 化 し た が,有
効 磁 場 体 積 を大 き くす る た め に 大 口径 で,
しか も構 造 体 の 物 質 量 を で き るだ け 減 らす とい う難 しい も の と な っ た.短 要 な キ ッ ク を 与 え る た め,250kAの
大 電 流 パ ル ス を 必 要 とす る が,パ
い距 離 で必
ル ス電流 に よ
る衝 撃 力 は最 大4.4ト
ン に も な り,運 転 中 は す さ ま じい 振 動 と 巨 大 な 太 鼓 を た た く よ
うな 轟 音 を発 す る.こ
の ホ ー ン の 電 源 も,過 酷 な運 転 に 耐 え 長 期 的 に 安 定 して 作 動 す
る こ とが 必 要 だ が,メ
ー カ ー は 未 経 験 で,ビ
ー ム チ ャ ンネ ル グ ル ー プ が 開 発 ・設 計 を
行 っ た. K2K実
験 の ニ ュ ー ト リ ノ ビー ム は,い
わ ゆ る ワ イ ドバ ン ドビー ム で,一
ー ム が 二 次 粒 子 と共 に 崩 壊 領 域 を通 過 す る.従 ー ル ドの 外 部 の 土 壌
,あ
っ て,崩
壊 領 域 を 囲 む コ ン ク リー トシ
る い は 地 下 水 の 放 射 化 対 策 が 問 題 とな る.こ
れ ま で詳 し く検 討 され た こ と の な い 問 題 で,陽
次陽子 ビ
れ は 日本 で は そ
子 加 速 器 で 土 壌 放 射 化 の 実 験 を行 っ た
り,敷 地 内 の 地 下 水 の 動 態 調 査 を行 っ て安 全 基 準 を 作 る と こ ろ か ら始 め る 必 要 が あ っ た.ニ
ュ ー ト リ ノ実 験 施 設 の 放 射 線 障 害 防 止 法 に 基 づ く施 設 検 査 を,実 験 開 始 予 定 に
間 に 合 わ せ て 合 格 に 導 い た,近
藤 健 次 郎 と そ の 後 を 継 い だ 柴 田 徳 思 の 率 い るKEK放
射 線 管 理 グ ル ー プ の 努 力 も特 筆 さ れ る.
KEK敷
地 内 に 置 か れ る 前 置 検 出 器 は,K2K実
費 節 減 に 努 め,1,000ト テ ス ト実 験 に,ミ 器,シ
ュ ー 粒 子 検 出 器 用 ド リフ トチ ェ ン バ ー と鉄 の 厚 板,鉛
ン チ レ ー タ ー は,い
し た.シ
験 グル ー プ が 製 作 し た.こ
こ で も経
ン水 タ ン ク は 水 チ ェ レ ン コ フ検 出 器 に よ る μ/e弁 別 の ビ ー ム
ず れ もTRISTAN実
ガ ラス検 出
験 に それ ぞれ使 用 した もの を再 利用
ン チ レー シ ョン フ ァ イ バ ー 検 出 器 や 前 置 検 出 器 全 体 の 組 立 経 費 等 は,基
に は 科 研 費 の 特 別 推 進 研 究 の 経 費 を得 て まか な っ た.そ
の 他,共
本的
同研究 者 として加 わ
っ た 米 国 と韓 国 の グ ル ー プ も前 置 検 出 器 製 作 の あ る 部 分 を分 担 し た. 16.22
実 験 開 始
全 て の 準 備 が 整 い,新
し く建 設 さ れ た 陽 子 ビー ム の 速 い取 り出 し シ ス テ ム とニ ュ ー
ト リ ノ ビ ー ム ラ イ ンの コ ミ ッ シ ョ ニ ン グ を開 始 し た の は,1999年1月 3日 に 速 い 取 り出 し ビ ー ム が 標 的 位 置 に 達 した こ と が 確 認 さ れ,PS加 は 祝 杯 を 上 げ た.そ
の 後 ビー ム ラ イ ンの 調 整 運 転 を 続 け,こ
設 置 せ ず 単 体 の 標 的 で あ っ た が,2月13日
末 で あ る.2月 速器 グルー プ
の 段 階 で は ま だ ホー ン は
に 前 置 検 出 器 で 最 初 の ニ ュ ー ト リ ノ事 象
図14 スー パー カ ミ カ カ ンデ(SK)の 観 測 した最 初 の事 象 の デ ィス プ レー 円 筒 形 のSKの 展 開 図上 に,ニ ュ ー ト リ ノの 反 応 に よ っ て発 生 し たチ ェ レ ン コ フ光 を受 け た光 電 子 増 倍 管 が,信
号 の 大 き さに 比 例 し た小 円 で 示 さ れ て い る.左 上 の 挿 入 図 は,外 部 か ら の 宇 宙 線 の 進 入 ン タ イ カ ウ ン タ ー)の デ ィ ス プ レー で,目 立 っ た 活 動 が な い こ とか ら,こ
を モ ニ ター す る 外 水 槽(ア
の 事 象 は 内部 の 水 槽 で 起 こ っ た こ とが わか る.
の 検 出 が 確 認 さ れ た.そ
の 後 ホ ー ン を設 置 して3月
ー ト リ ノ ビ ー ム の フ ラ ッ ク ス を10倍 予 定 で は3月
末 ま で に 全 て の 調 整 を 終 え,新
あ っ た が,4月,5月
年 度 か らK2K実
計 通 りニ ュ
.
験 を開 始 す るは ず で
は 連 続 して ホ ー ン の トラ ブ ル に 見 舞 わ れ,KEKか
た ニ ュ ー ト リ ノ をSuper-Kamiokandeで ブ ル は,周
に 調 整 運 転 を行 い,設
以 上 に 強 め る こ とが 確 認 され た
ら発 射 さ れ
検 出 す る に は 至 ら な か っ た .ホ ー ン の トラ
到 に 設 計 され た 本 体 で は な く,付 属 品 の 冷 却 水 配 管 や 電 流 フ ィ ー ダ ー が 振
動 に よ っ て 破 壊 され た 初 期 故 障 で,そ ー ン は 標 的 と一 体 化 され て い る た め
れ ら を強 化 した 後6月
に実 験 が 再 開 さ れ た.ホ
,陽 子 ビー ム を 当 て る と 当 然放 射 化 す る.従 っ て 一 度故 障す る と ,近 づ い て 作 業 で き る まで 放 射 線 レベ ル が 下 が るに は相 当 の 時 間 を要
す る.し か し こ の 間 を利 用 して,既
に 述 べ た よ うにPS加
速 器 グルー プが 集 中的 に ビ
ー ム 増 強 の ス タ デ ィ ー を行 い ,当 初 設 定 目標 を超 え る ビー ム 強 度 を達 成 した. 実 験 再 開 直 後 問 題 に な った の は,ニ パ ラ メー タ ー に も よ るが,数
ュ ー ト リノ ビー ム の 強 度 とニ ュ ー ト リノ振 動 の
日に1事
象 が 予 測 さ れ る と こ ろ,2倍,3倍 ら の ニ ュ ー ト リノ が 神 岡 で検 出 され な い こ と で あ っ た
と待 っ て も
ー ム が 本 当 に 正 し くSuper-Kamiokandeの
.こ う な る と ビ 方 向 に 発 射 さ れ て い るの か とい う疑 い ま
一 向 にKEKか
で 出 て く る 中,と
う と う6月19日
準)体
ン 内 で 最 初 の 事 象 が 観 測 さ れ た こ とが 報 告 さ れ た.ニ
積22,000ト
にSuper-Kamiokandeの
発 射 の タ イ ミン グ との 関 係 か ら 見 て,間
違 い な くKEKか
で あ り,人 工 的 に 生 成 し た ニ ュ ー トリ ノ を 地 中 数 百km飛
フ ィ デ ュ ー シ ャ ル(規 ュー トリノ
ら発 射 さ れ た ニ ュ ー ト リ ノ 行 させ た 後 に検 出 し た初 め
て の例 で あ る(図14). 翌 年(2000年)6月
ま で に,世
ュ ー ト リ ノ ビー ム の 方 向,エ
界 初 の 長 基 線 ニ ュ ー ト リ ノ 振 動 実 験,K2Kは,ニ
ネ ル ギー 分 布 等 の 長 期 安 定 性 や そ の モ ニ タ ー の 方 法,前
置 検 出 器 や パ イ オ ン モ ニ タ ー で 測 定 し た ニ ュ ー ト リ ノ の エ ネ ル ギ ー 分 布 か ら,遠 方 の Super-Kamiokandeで き)ニ
の(ニ
ュ ー ト リ ノ振 動 が 起 き な い と した と き に 観 測 され るべ
ュ ー ト リノ の エ ネ ル ギ ー 分 布 を推 定 す る方 法,Super-Kamiokandeに
速 器 ニ ュ ー ト リ ノの 検 出 と,そ れ が 確 か にKEKか と確 認 す る方 法,等
々 を確 立 し,長 基 線 ニ ュ ー ト リ ノ振 動 実 験 が プ リン シプ ル 通 りに
実 施 可 能 で あ る こ と を証 明 し た.こ 16.2.3 2001年-2002年 K2K実
の 場 合,ニ
の 陽子 を π中間 子生 成標 的 に照 射 す る こ ととさ
ュ ー ト リ ノ振 動 が 起 き な い(つ
ミ ュ ー ニ ュ ー ト リ ノ が,途
ら発 射 さ れ た ニ ュ ー ト リ ノ が 約200事 共 同 利 用 施 設 で あ る た め,ニ
シ ン タ イ ム は1年
あ た り5ヵ 月 程 で あ る.目
ン が 終 了 した7月
初 め で あ っ た.
実 験 再 開 予 定 の2002年1月 抜 き,故
ら発 射 さ れ た
象観 測 され る
ュ ー ト リ ノ実 験 に 供 され るマ
標 の 半 ば に 達 した の は2001年1月
ま で に,Super-Kamiokandeで
障 し た 光 電 子 増 倍 管 の 交 換 作 業 を行 っ た.し
注 入 中 に,1個
ま り,KEKか
中 何 事 も な く そ の ま ま神 岡 に 達 す る)と 仮 定 す る と,
Super-KamiokandeでKEKか は ず で あ る.KEK-PSは
れ ら は論 文5)と し て ま とめ られ た.
の状況
験 の 一 応 の 目標 は,1020個
れ て い る.こ
よ る加
ら発 射 さ れ た ニ ュ ー ト リ ノ で あ る
は完 成以 来初 めて 水 を
か し,作 業 を終 え,再
の 光 電 子 増 倍 管 が 水 圧 に よ り破 壊 され,発
さ な 傷 が 入 っ た こ と が 原 因 と考 え ら れ る.こ
り,Super-Kamiokandeは Kamiokandeは れ て お り,K2K実
び純 水 を
生 し た衝 撃 波 が 連 鎖 反 応 的
に 多 数 の 光 電 子 増 倍 管 を破 壊 し た.最 初 に 破 壊 さ れ た 光 電 子 増 倍 管 に,交 何 らか の 理 由 で,小
のラ
約 半 数 の 光 電 子 増 倍 管 を 失 っ た.し
換作業 中 の
の 不 幸 な事 故 に よ
か し,当 初 のSuper-
低 エ ネ ル ギ ー の 太 陽 ニ ュ ー ト リ ノ を精 度 良 く測 定 す る よ うに 設 計 さ 験 の 高 エ ネ ル ギ ー ニ ュ ー ト リ ノ を測 定 す る に は 半 分 の 光 電 子 増 倍
図15 横 幅 の Δ(T)は,Super-Kamiokandeで ニ ュー ト リ ノ が 検 出 され た 時 間 か ら,そ の 直 前 のKEK で の ニ ュー トリ ノ ビー ム 発 射 開 始 時刻 を 差 し引 き,更 にKEK・ 神 岡 間 の ニ ュ ー ト リノの 飛行 時 間 を差 し引 い た も の.Super-Kamiokandeで 検 出 さ れ た(KEKか ら の)ニ ュー ト リノ は 全 て ニ ュ ー ト リ ノ ビー ム の パ ル ス幅 に 収 ま って お り,そ の 前後 に バ ッ ク グ ラウ ン ドは 存 在 しな い.
管 数 で 十 分 で あ る.こ Kamiokandeは
験 に と っ て,不
か らはK2K実
標 の 半 分 に 達 し た2001年
れ ら の 事 象 が 全 てKEKか
夏 ま で の デ ー タ に よ れ ば,Surer-Kamiokande ら発 射 さ れ た ニ ュ ー ト リ ノ が56事
象観 測 され
ら の ニ ュ ー ト リ ノで あ る こ と は,KEKで
ニ ュー ト
リ ノ ビ ー ム が 発 射 され た 時 間 とSuper-Kamiokandeで (図15)を
調 べ る こ とで 確 認 さ れ る.ほ
ノ は,KEK・
神 岡 間250kmを0.8ミ
モー ドで は,陽
子 ビー ム は2.2秒
事 象 が検 出 され た時間 の相 関
と ん ど真 空 中 の 光 速 度 で 飛 行 す る ニ ュ ー ト リ リ秒 強 で 通 過 す る.KEK-PSの
毎 に1.1マ
ュ ー ト リ ノ ビー ム も 同 じパ ル ス 幅 を もつ.従
の 間 に 分 布 す る は ず で あ る.時
速 い 取 り出 し
イ ク ロ秒 の パ ル ス と して 取 り 出 さ れ,ニ っ て,Super-Kamiokandeの
時 刻 か ら直 前 の ニ ュ ー ト リ ノ ビー ム 発 射 開 始 時 刻 を差 し 引 き,さ 飛 行 時 間 を差 し引 く と,KEKか
には完
験 も再 開 し た.
の フ ィ デ ュ ー シ ャ ル 体 積 内 でKEKか た.こ
幸 中 の 幸 い で あ っ た.Super-
急 ピ ッ チ で 残 っ た 光 電 子 増 倍 管 の 再 配 置 を進 め,2002年12月
了 した.2003年1月 さ て,目
れ はK2K実
事象検出
らに ニ ュ ー ト リノ の
ら発 射 され た ニ ュ ー ト リ ノ は0か
ら1.1マ
イ ク ロ秒
間分 解 能 を考 慮 す れ ば こ の 幅 は 少 し広 が る が,図15
の 分 布 は ま さ に そ うな っ て お り,前 後 に バ ッ ク グ ラ ウ ン ドは 全 く存 在 し な い . こ の56事
象 に 対 して,KEKの
前 置 検 出 器 の デ ー タか ら は,ニ
ュー トリノ振動 が
起 き な い 場 合 に は80.1+6.2-5.4事 象 が 検 出 さ れ る と推 定 さ れ る.Super-Kamiokandeの 大 気 ニ ュ ー ト リノ 振 動 の 結 果 に よ れ ば,ミ 動 す る が,K2K実
ュ ー ニ ュ ー ト リ ノは タ ウ ニ ュー ト リ ノに 振
験 で は ニ ュ ー ト リ ノの 平 均 エ ネ ル ギ ー が1.3GeVと
荷 電 カ レ ン ト反 応 で タ ウ粒 子 を作 れ な い.タ 出 され る だ け で,反
応 確 率,検
低 い た め,
ウ ニ ュ ー ト リ ノは 中 性 カ レ ン ト反 応 で 検
出 効 率 が 共 に 低 く,そ の 結 果 ニ ュ ー トリ ノ振 動 が 起 き
な い 場 合 よ り検 出 さ れ る事 象 数 が 減 少 す る.K2K実
験 の 結 果 は,ま
さ にニ ュー トリ
ノ振 動 に よ り検 出 事 象 数 が 有 意 に 減 少 して い る こ と を示 して い る . 検 出事 象 数 よ りさ ら に 確 実 な ニ ュ ー ト リノ 振 動 の 証 拠 は,エ
ネ ル ギー 分 布 の 変 化 で
図16
KEKか
ら発 射 されSuper-Kamiokandeで
観 測 さ れ た ニ ュ ー トリ ノの エ ネ ル ギ ー分 布
幅 の あ る ヒス トグ ラ ム はKEKで ニ ュ ー ト リノ の 発 生 直 後 に 測 定 され た エ ネ ル ギ ー 分 布.一 方,実 線 の ヒ ス トグ ラ ム は ニ ュ ー ト リノ振 動 を仮 定 した 場 合 の ベ ス トフ ィ ッ ト.こ れ らの ヒ トス グ ラ ム は分 布 の形 だ け を比 較 す るた め,面
積 を事 象 数 に規 格 化 して あ る.Super-Kamiokandeで
数 が 予 想 よ り減 っ て い る こ と を考 慮 す る と,点 ニ ュー ト リノ の エ ネ ル ギ ー分 布 で あ る.
あ る.飛 行 距 離 と Δm2が 一 定 の 場 合,ニ ネ ル ギー に 依 存 し,Super-Kamiokandeの 値(∼0.003eV2)は,K2K実 確 率 が 最 大(ミ
フ リン グ が1個
ュ ー ト リノ 振 動 の 確 率 は ニ ュ ー ト リ ノ の エ 大 気 ニ ュ ー トリ ノ振 動 が 示 す Δm2の 最 確
験 で は ニ ュ ー ト リ ノ エ ネ ル ギ ー0.6GeV近
ュ ー ニ ュ ー ト リ ノ の エ ネ ル ギー 分 布 で は 事 象 数 が 最 小)と
予 言 す る.Super-Kamiokandeで
観 測 され た事 象
線 の ヒ ス トグ ラ ム が デー タ と比 較 す るべ き発 生 直 後 の
検 出 され た事 象 の う ち,ミ
だ け の 事 象 を選 ぶ と,そ の 大 部 分 は2体
辺 で振 動 な るこ とを
ュー 粒 子の チ ェ レン コ
反 応 νμ+n→
μ-+p(陽
子
は 運 動 量 が 低 くチ ェ レ ン コ フ 光 を 出 さ な い)で
あ り,親 の ニ ュ ー トリ ノ の エ ネ ル ギ ー
が 推 定 で き る.結 果 は 図16に
ュー ト リノ 振 動 の 特 徴 的 な エ ネ ル ギ ー
分 布 の 変 化 を示 唆 す る.な 性 は,ニ
示 す よ う に,ニ
お,こ
の よ う な ニ ュ ー トリ ノ振 動 の 特 徴 的 エ ネ ル ギー 依 存
ュ ー ト リ ノ振 動 の 絶 対 的 証 拠 で あ るが,Super-Kamiokandeの
大 気 ニ ュー
ト リ ノ観 測 は こ の 分 布 に 関 して は 精 度 が 悪 く,大 気 ニ ュ ー ト リ ノ振 動 が 本 当 に ニ ュ ー トリ ノ 振 動 で あ る と完 全 に 決 ま っ た わ け で は な い.こ Kamiokandeの
の 意 味 でK2K実
験 はSuper-
単 な る 追 試 で は な く,積 極 的 に ニ ュ ー ト リ ノ振 動 を 証 明 で き る可 能
性 を持 つ. K2K実 果 が,共
験 で こ れ ま で得 られ た,事
象 数 に 関 す る 結 果 とエ ネ ル ギ ー 分 布 に 関 す る 結
に ニ ュ ー ト リ ノ振 動 で は な く単 な る統 計 的 変 動 で そ の よ う に 見 え る確 率 を計
算 す る と,1%以
下 で あ る.こ
れ ら の デ ー タ を ニ ュ ー ト リ ノ振 動 を仮 定 し て 解 析 す る
と,Δm2とsin22θ(θ
は 混 合 角)に
つ い て の 許 容 領 域 は,Super-Kamiokandeの
大 気 ニ ュ ー ト リ ノ振 動 の 解 析 結 果 と 良 い一 致 を示 し,既 にSuper-Kamiokandeの 気 ニ ュ ー トリ ノ振 動 の 結 果 を追 認 し た と い っ て も良 い.今 KEKか
大
後Super-Kamiokandeで
ら発 射 され た ニ ュ ー ト リ ノ の 検 出 数 を倍 増 す る こ と に よ り,さ
らに確 定 的 な
結 果 と な る こ とが 期 待 さ れ る. 16.2.4
日本 の ニ ュ ー ト リノ 物 理:将
来 への期待
理 論 的 に ニ ュー ト リ ノ振 動 の 可 能 性 を 初 め て 予 言 し た の は,牧 二 郎,中 田 昌一6)で あ り,ニ ュ ー ト リ ノ の 混 合 行 列 はMNS行
列 と呼 ば れ る.更
川 昌 美,坂 に柳 田 の シ ー
ソー 機 構 の 提 案2)な ど,日 本 の ニ ュ ー ト リ ノ物 理 は ま ず 理 論 面 で 世 界 に 誇 る成 果 を 上 げ た.次
い で,小
柴 昌 俊 ら に よ るKamiokandeで
の世 界初 の 超新 星 爆発 か らの ニ ュ
ー ト リ ノ の 検 出 成 功7),戸 塚 洋 二 ら に よ るSuper-Kamiokandeで 動 の 発 見1)と,非
の ニ ュ ー トリノ振
加 速 器 素 粒 子 実 験 で 世 界 の ト ップ に躍 り出 た が,今
やK2K実
験 や,
更 に は 丹 羽 公 雄 ら名 古 屋 大 学 グ ル ー プ が エ マ ル シ ョ ン 技 術 を 用 い てFermilabで
行 っ
た タ ウ ニ ュ ー ト リ ノの 確 認8)に よ っ て 日本 の ニ ュ ー トリ ノ物 理 は あ ら ゆ る面 で世 界 の 第 一 線 に あ る.し か し競 争 は 激 し く,特 に 実 験 的 研 究 で は,こ て い て は10年 KEKと
と経 た な い 内 に 再 び 世 界 の 後 塵 を 拝 す る こ とに な りか ね な い.幸
日本 原 子 力 研 究 所 の 共 同 事 業 と して50GeVの
建 設 を 含 む 計 画 の 予 算 が 認 め られ,2001年 の こ と).こ
れ までの 成果 に安住 し い,
大 強 度 陽 子 シ ン ク ロ トロ ン の
度 か ら建 設 が ス ター トし た(16.3節
参照
の 加 速 器 か ら の 強 力 な ニ ュ ー ト リ ノ ビ ー ム とSuper-Kamiokandeを
い て,ν μ→ ντ振 動 の Δm2や
混 合 角 を精 密 に 決 定 し,更 に は 未 発 見 の νμ→ νe振 動
を 初 め て 検 出 し よ う と い う実 験 計 画 が 練 ら れ て い る9).そ の 先 で50GeV陽 ロ トロ ン の 強 度 増 強 と,神 実 現 す れ ば,ニ
岡 の 次 期 計 画 と して の100万
ュ ー ト リ ノ セ クタ ー で のCP非
更 に は50GeV陽
用
子 シンク
トン水 チ ェ レ ン コ フ検 出 器 が
保 存 の 測 定 も現 実 味 を帯 び て くる9).
子 シ ン クロ トロ ン を 用 い る ニ ュ ー ト リ ノ フ ァ ク ト リー 計 画 のR & D
も開 始 さ れ て い る.こ
れ らの 計 画 が 一 歩 一 歩 実 現 され て,将
ノ 物 理 で 世 界 を リー ドす る こ と を 期 待 し た い.(中 う,高 エ ネル ギー 加 速器 研 究機 構 教授.1945年
来 も我 が 国 が ニ ュ ー トリ
村 健 蔵)(筆
生 まれ,1968年
者=な か む ら ・け ん ぞ
東 京 大学 理 学 部卒 業)
参考 文 献 1)
Y.Fukuda,et
2)
T.Yanagida:Proc.of the
al.:Phys.Rev.Lett.81(1998)1562. the
Universe,edited
by
M.Gell-Mann,P.Ramond,and huizen
and
3)
K.S.Hirata,et
4)
Y.Fukuda,et
5)
S.H.Ahn,et
Workshop on
O.Sawada
and
the
Unified Theory
A.Sugamoto(KEK
R.Slansky:Supergravity,edited
D.Z.Freedman(North
Holland,Amsterdam,1979)p.315.
al.:Phys.Lett.B205(1988)416,Phys.Lett.B280(1992)146. al.:Phys.Lett.B335(1994)237. al.:Phys.Lett.B511(2001)178.
and
Baryon
Report
Number
79-18,1979)p.95. by
P.van
Nieuwen
in
6)
Z.Maki,M.Nakagawa,and
7)
K.Hirata,et
al.:Phys.Rev.Lett.58(1987)1490.
S.Sakata:Prog,Theor.Phys.28(1962)870.
8)
K.Kodama,et
al.:Phys.Lett.B504(2001)218.
9)
Y.Itow,et al.:KEK
Report
2001-4,hep-ex/0106019.
16.3 大 強 度 陽 子 加 速 器 プ ロ ジ ェ ク ト(J-PARC) 16.3.1
プ ロ ジ ェ ク トの あ ら ま し と これ まで の 経 緯
加 速 器 計 画 に は,よ
り高 い エ ネ ル ギ ー を め ざ す 方 向 と,よ
り大 き なパ ワ ー をめ ざす
方 向 の 二 つ が あ る.近 年 注 目 さ れ 始 め た の は 後 者 の大 パ ワ ー 化 で,そ の要 求 は,ニ ュ ー ト リ ノ ビー ム な ど の 素 粒 子 物 理 学 ,K中 間 子 ビ ー ム な ど の 原 子 核 物 理 学,中 性 子 や ミュ オ ン を 用 い た物 質 ・生 命 科 学,そ 学,と
し て,核
い っ た 多 方 面 か ら沸 き起 こ って い る.こ
廃 棄 物 の 処 理 に 関 連 す る原 子 核 工
の 要 望 に 応 え よ う とす る の が,大
強度
陽 子 加 速 器 プ ロ ジ ェ ク トで あ る1).建 設 は2001年
度 に 始 ま り,高 エ ネ ル ギ ー 加 速 器
研 究 機 構(高
研)と
る.2002年10月 Research
エ ネ 機 構)と
日本 原 子 力 研 究 所(原
に こ の プ ロ ジ ェ ク トの 愛 称 がJ-PARC
Complex)に
代 の 半 ば,そ
ロ ン計 画 が 提 案 され た.こ 型 と な り,そ の 後,高
(Japan
Proton
Accelerator
決 定 し た.
この 共 同 企 画 に 至 る ま で に は,多 て は,1980年
の 共 同 企 画 として実 施 され
々 の 試 み や 提 案 が な さ れ た.原
子核物 理学 にお い
れ ま で の ニ ュ ー マ トロ ン 計 画 に 替 わ る計 画 と して 大 ハ ド の 提 案 は,東
大 原 子 核 研 究 所 に よ る 大 型 ハ ドロ ン計 画 の 原
エ ネ ル ギ ー 物 理 学 研 究 所 と東 大 核 研 が 合 併 す る大 きな 要 因 と も
な っ た. 一 方
,高 エ ネ ル ギ ー 研 の 陽 子 加 速 器 の 一 つ で あ る500MeVブ
ー ス ター に お い て 進
め られ て き た二 つ の 学 際 研 究 も,大 強 度 化 へ の 動 機 とな っ た.一 つ は,東
北大 電子 シ
ン ク ロ トロ ン に お い て 始 ま っ た パ ル ス 中 性 子 に よ る 中 性 子 散 乱 の 物 質 科 学 研 究 で あ る.こ
の 研 究 は ブ ー ス タ ー に お い て精 力 的 に 進 め られ て き た.そ
理 学 者 は,さ
し て,中 性 子 物 性 物
らに 強 力 な パ ル ス 中 性 子 源 の 建 設 を 強 く要 求 し て い た.第 二 は,ブ
ース
ター に お い て 世 界 に 先 駆 け て 日本 が は じめ た パ ル ス 状 ミュ オ ン ビー ム に よ る ミュ オ ン 物 性 科 学 研 究 で あ る.こ 進 め ら れ,こ
の 研 究 は,東
大 理 学 部 中 間 子 科 学 実 験 施 設 を 中心 に 精 力 的 に
こ で も大 強 度 化 の要 求 が 起 こ っ て い た.
こ れ らの 諸 要 求 を合 体 し,さ
ら に 高 エ ネ ル ギ ー 研12GeV陽
子 シン クロ トロンにお
い て 展 開 し て い た 素 粒 子 ・原 子 核 実 験 の ユ ー ザ ー 層 に よ る ビー ム 強 度 化 の 要 求 を汲 み 入 れ た の が,高
エ ネ 機 構 に よ っ て 提 案 され た 大 型 ハ ドロ ン 計 画2,3)で あ る.1997年
の
機 構 発 足 以 来,機 構 を挙 げ て の提 案 と な っ て い た. 一 方 ,原 子 炉 に お け る核 廃 棄 物 の 処 理 は,古 くか ら社 会 的 問 題 と して 取 り上 げ られ て き た.原
子 力 研 究 の 中 心 で あ る原 研 に お い て は,オ
メ ガ計 画 と呼 ば れ る群 分 離 ・消
図17 世 界の大強度陽子加速器 現 在 稼 働 中 の も の は,0.1MW級
の もの が 多 く,2000年
代 後 半 に 向 け て1MW級
の建 設 競 争 が 始
ま りつ つ あ る.
滅 処 理 技 術 開 発 長 期 計 画 が 立 て ら れ,そ 種 の 短 寿 命 化 が 検 討 さ れ て き た.さ い た 中 性 子 科 学 研 究 が,近
の 一 環 と し て,陽
ら に,原
子 加 速 器 を用 い た 長 寿 命 核
研 で はJRR-3Mと
年 大 き く進 展 し て き た.そ
いつ つ 中 性 子 科 学 を 飛 躍 的 に 進 展 させ る た め,中
の た め,核
呼 ば れ る 原 子 炉 を用 廃 棄 物 の 核 変 換 を行
性子 科学 研究 計画 とよばれ る陽子加
速 器 計 画 の提 案 が 生 ま れ た4). こ の よ うに,高
エ ネ 機 構 と原 研 の 両 加 速 器 計 画 は,共
こ と を め ざ し て い た.そ
の た め,両 機 関 は,二
に 大 強 度 の 陽 子 ビ ー ム を得 る
つ の 計 画 を 一 本 化 し,世 界 に 誇 る こ と
の で き る最 高 級 の 陽 子 加 速 器 を 日本 に 一 つ 作 ろ う と話 し合 い を始 め,共
同企画 が生 ま
れ た の で あ る. 本 プ ロ ジ ェ ク トは,完
成 す れ ば21世
な る.中 性 子 科 学 研 究 に お い て は,米
紀 の 学 際 科 学 を支 え る世 界 最 先 端 の 加 速 器 と 国 ・オ ー ク リ ッ ジ 国 立 研 究 所 に お い て1MW
級 の 陽 子 加 速 器 の 建 設 が 始 ま っ た ば か り で あ る.日
本 の 本 プ ロ ジ ェ ク トも1MWを
め ざ し て い る.ヨ ー ロ ッ パ で も,こ の 二 つ に 追 い 付 こ う と真 剣 な 検 討 が 始 ま っ て い る.ま
た,原
子 核 物 理 学 で は,K中
こ とが 期 待 さ れ て い る.さ CERNと
ら に,ニ
間 子工 場 と して世 界 の研 究者 の 中核 を形 成 す る ュ ー ト リ ノ に お い て は,フ
ェ ル ミ国 立 研 究 所 や
並 ん で 世 界 の 三 つ の セ ン タ ー の 中 で 最 も進 ん だ プ ロ ジ ェ ク トと し て 注 目 を
図18
大 強 度 陽 子 ビー ム に よ り生 成 され る二 次 粒 子 と,二 次 粒 子 ビー ム を 用 い て 展 開 す る科 学
浴 び る こ とに な る. 図17に
世 界 の パ ワ ー フ ロ ン テ ィ ア 加 速 器 を示 した,1GeV領
域 の陽 子加 速器 は中
性 子 や ミュ オ ン を用 い る物 質 ・生 命 科 学 に 用 い ら れ る もの が 多 く,100GeV領 陽 子 加 速 器 は 素 粒 子 や 原 子 核 の 研 究 に 用 い られ る.い ィ ア加 速 器 は0.1MWの 器 は,21世
ず れ の 場 合 も,世
域の
界の フ ロンテ
もの が 多 い.本 加 速 器 プ ロ ジ ェ ク トの よ うなMW級
の加 速
紀 の 最 先 端 加 速 器 と な る.
16.3.2 施 設 構 成 と そ こで 展 開 され る科 学 1GeV領
域 以 上 の 陽 子 ビー ム を原 子 核 標 的 に 照 射 す る と,図18に
子 核 を構 成 して い る要 素 の 一 つ で あ る 中 性 子 が 叩 き出 さ れ,標 短 寿 命 原 子 核 が 放 出 さ れ る.さ
ら に,50GeVと
と,原
子 核 内 部 に は 元 来 存 在 し な か っ たK中
る.さ
ら に,高
示 す よ う に,原
的原 子核 の一部 であ る
い っ た 高 エ ネ ル ギー 陽 子 を用 い る 間 子 ・反 陽 子 と い っ た粒 子 が 生 成 さ れ
エ ネ ル ギ ー の π 中 間 子 が 生 成 さ れ,そ
の 崩 壊 に よ り,高 エ ネ ル ギ ー
の ニ ュ ー ト リ ノや ミュ オ ンが 生 成 され る. こ れ らの 生 成 粒 子 は 「二 次 粒 子 」 と呼 ば れ る.大 強 度 陽 子 加 速 器 プ ロ ジ ェ ク トは, こ れ ら 二 次 粒 子 を ビー ム と して 取 り出 し,そ れ を 用 い た 研 究 を 展 開 し よ う とす る もの で あ る.こ
の よ う な 二 次 粒 子 ビー ム を最 も有 効 に使 うた め に は,一
次粒 子 であ る陽子
ビー ム の 大 強 度 化 が 必 至 で あ る.大 強 度 陽 子 ビー ム が 必 要 に な る理 由 が こ こ に あ る. 図19に
完 成 予 想 図 を 示 し た,シ
伝 導 リニ ア ッ ク(線
型 加 速 器)を
ン ク ロ ト ロ ン へ の 入 射 器 と し て は400MeVの 用 い る.さ
ら に,そ
常
の 後 段 に 超 伝 導 リニ ア ッ ク を製
作 し,そ の ビ ー ム を 「核 変 換 実 験 の 工 学 基 礎 実 験 」 に 用 い る.放 射 性 廃 棄 物 処 理 の 可 能 性 を 見極 め る た め の 開 発 研 究 を こ こ で 行 う た め で あ る.核 変 換 実 用 器 と して の 将 来 の加 速 器 と して は,連
続 ビー ム を 供 給 す る数10MW級
の 超 大 強 度 の 超 伝 導 リニ ア ッ
ク が 必 要 だ と考 え て い る.こ の 後 段 リニ ア ッ クは,こ
れ に 向 か う加 速 器 の 超 伝 導 技 術
の 習 得 ・開 発 も 兼 ね て い る. リニ ア ッ クか ち の ビ ー ム は25Hzの そ こ で3GeVに る.こ
ま で 加 速 され る.出
速 い 繰 り返 し の シ ン ク ロ トロ ンへ と導 か れ, 力 に し て1MW級
の 陽 子 ビ ー ム が こ こ で 得 られ
の ビー ム は 「物 質 ・生 命 科 学 実 験 施 設 」 に 送 られ,中
に供 さ れ る.パ
ル ス 中性 子 の 施 設 と して は,世
さ らに,3GeVシ
ン ク ロ トロ ン か ら の ビ ー ム の 約20分
ク ロ トロ ン に 送 ら れ る.そ
こ で加 速 さ れ た 後,一
「原 子 核 ・素 粒 子 実 験 室 」 に 送 られ,も 導 か れ る.神
性 子 散 乱 や ミュ オ ン 実 験
界 最 大 級 の も の とな る. の1は,次
つ の ビー ム はK中
う一 つ は,ニ
の50GeVシ
ン
間 子 等 を用 い る
ュー ト リノビー ム生 成 ラ イ ンに
岡 鉱 山 の ス ー パ ー カ ミオ カ ン デ 検 出 器 を用 い た ニ ュ ー トリ ノ振 動 実 験 を
行 う た め で あ る.特
に,ニ
ュ ー ト リ ノ ビー ム の 強 度 は,高
る も の の 百 倍 以 上 と な る.す
な わ ち,世
ビ ー ム が 得 られ る施 設 と な る.
界 最 大 級 のK中
エ ネ機 構 で現在得 られ てい 間子 ビー ムや ニ ュー ト リノ
図19 大 強度陽子加 速器の完成予 想図 場 所 は 日本 原 子 力研 究 所 ・東 海 研 究 所 敷 地 内 に設 置 さ れ る.
こ の よ う に,本 施 設 を 用 い て 展 開 さ れ る科 学 は 多彩 で あ る.ニ
ュー ト リ ノや ミュ オ
ン を 用 い る と,ニ ュ ー ト リノ の 質 量 は 存 在 す る の か と い う疑 問 の 解 明 に 始 ま り,レ プ トン族 の 混 合 は 定 量 的 に ど の程 度 か,と プ トン 族 のCP対
称 性 の破 れ は,宇
デ ー タ と な る.ま
た,K中
間 子 ビ ー ム を 用 い る と,原 子 核 の 中 に ス トレ ン ジ ネ ス 自
由 度 を持 ち 込 ん だ ハ イパ ー 核 分 光 や,核 究,と
い っ た物 理 学 の 基 本 的 研 究 が 展 開 で き る.レ
宙 空 間 の 物 質 ・反 物 質 の 非 対 称 性 を解 明 す る 重 要
物 質 中 の ス トレ ン ジ 中 間 子 の 振 る 舞 い の 研
い っ た新 し くユ ニ ー クな 原 子 核 物 理 学 研 究 が 可 能 に な る.さ
ム を 用 い た ハ ドロ ン ス ペ ク トロ ス コ ピー は,QCD(量 い 局 面 を拓 く.こ
の よ うな 興 味 深 い研 究 が50GeVシ
子 色 力 学)研
らに,反
陽 子 ビー
究 にお け る新 し
ン ク ロ トロ ン に お い て 展 開 さ れ
る. ま た,中 性 子 は ミ ク ロ な 磁 石 で あ り,そ の 性 質 を有 効 に 利 用 した 中 性 子 散 乱 に よ る 物 質 の 磁 性 研 究 は,今 は,パ
後 も 大 い に 進 展 す る で あ ろ う.近 年,ラ
ザ フ ォ ー ド研 究 所 で
ル ス 中 性 子 を 用 い た 磁 性 体 の ス ピ ン 波 や そ の 励 起 に 関 す る 興 味 深 い研 究 が 進 ん
で い る.3GeVシ
ン ク ロ トロ ン に お い て は,こ
こ とが 出 来 よ う.ま た,中 で あ る た め,中 た め,中
の よ う な 研 究 を 飛 躍 的 に 発 展 させ る
性 子 は 電 荷 を も た ず そ の 質 量 が 水 素 原 子 の 質 量 とほ ぼ 同 じ
性 子 散 乱 は 原 子 番 号 の 小 さ い 元 素 を鋭 敏 に 検 出 す る とい わ れ る.そ
性 子 散 乱 は 蛋 白質 の 水 分 子 を鋭 敏 に 眺 め る1).こ の 蛋 白質 がDNA鎖
と きに は,水
の
を動 く
和 構 造 が 重 要 な 役 割 を果 た す と い わ れ て お り,強 力 な 中性 子 ビ ー ム を用
い た 散 乱 実 験 に よ る蛋 白質 の 機 能 研 究 に も期 待 が 寄 せ られ て い る. さ ら に,二
次 ビ ー ム と して 得 られ る ミュ オ ン は 自然 偏 極 して お り,い わ ゆ る μSR
法 と呼 ば れ る 日本 の 研 究 者 が 開 拓 し た 分 野 に お け る さ ま ざ まな 磁 性 研 究 を は じめ,ミ
ュ オ ン を 用 い た 多 々 の 応 用 研 究 が 考 え ら れ る.た 10分 の1な
の で,正
と え ば,ミ
の ミュ オ ン と電 子 の 系 は ミュ オ ニ ウ ム と よ ば れ,物
原 子 的 な 振 る舞 い を示 す.ま
た,ミ
ュ オ ンの 質 量 は 電 子 の200倍
ン が 原 子 核 に 束 縛 さ れ る と,ボ ー ア 半 径 は 電 子 半 径 の200分 利 用 し て,二
ュオ ン の質 量 は 陽子 の 質 中 で水 素
な の で,負
の1と
の ミュ オ
な る.こ の 性 質 を
つ の 原 子 核 間 の 距 離 を縮 め る ミュ オ ン触 媒 核 融 合,等
々,ユ
ニ ー クな 応
用 が 考 え ら れ る. 以 上 は 研 究 の ほ ん の 一 例 で あ るが,本
加 速 器 は 多 彩 な 学 際分 野 を開 拓 す る も の で あ
り,そ の 意 味 で大 い に 注 目 され て い る. 16.3.3
加 速器 の 工夫
大 強 度 陽 子 加 速 器 は,加
速 器 技 術 的 に も開 発 部 が 多 く,技 術 的 に 大 い な る 進 展 が 期
待 さ れ て い る.従 来 の シ ン ク ロ トロ ン で は,い
っ た ん 加 速 器 の サ イ ズ を決 め る と,ビ
ー ム が 不 安 定 に な る トラ ン ジ シ ョ ン ・エ ネ ル ギー と呼 ば れ る エ ネ ル ギ ー が 決 ま り,そ れ 以 上 の エ ネ ル ギー に ビー ム を加 速 す る の は種 々 の 技 術 的 困 難 が あ る と さ れ て い た. 今 回 建 設 す る シ ン ク ロ トロ ン で は,こ
の 難 点 を巧 み に解 決 し,ト
ル ギ ー の 存 在 し な い 磁 石 配 置 構 造 が 採 用 さ れ る.ま も,特 殊 な 磁 性 体 を採 用 す る こ と に よ り,1m当 来 の10倍
ラ ン ジ シ ョ ン ・エ ネ
た,高 周 波 加 速 の 方 法 に お い て り50kVも
以 上 に 加 速 勾 配 を上 げ る こ とに 成 功 し た.こ
加 速 で き る と い う,従
の 原 理 に 基 づ く加 速 空 胴 は,
米 国 の ブ ル ッ クヘ ブ ン 国 立 研 究 所 や 高 エ ネ ル ギー 加 速 器 研 究 機 構 に お い て 設 置 さ れ, 実 機 と し て の テ ス トも完 了 し て い る. 全 加 速 器 系 の ビー ム の質 は,線
型 加 速 器 の ほ ぼ 初 段 で 決 定 さ れ る.そ の た め,初
の 技 術 開 発 は 最 も重 要 で あ る.イ
オ ン源 に お い て 作 られ た 負 水 素 イ オ ン は,RFQと
呼 ば れ る最 前 段 の 高 周 波 四 重 極 線 型 加 速 器 に よ っ て3MeVの れ る.RFQに
は,高
エ ネ ル ギー ま で 加 速 さ
エ ネ 機 構 に お い て 発 明 さ れ た π(パ イ)モ
ー ド安 定 化 ル ー プ と
い う加 速 電 場 を安 定 化 させ る機 構 が 取 り付 け ら れ る.ビ ー ム は,そ ー ブ 型 線 型 加 速 器(DTL)に
送 られ る が ,ド
み 込 ま れ て お り,こ れ らの 四 極 電 磁 石 に は,新 が 使 用 さ れ て い る.こ
段
の 後 ド リフ トチ ュ
リ フ トチ ュ ー ブ 間 に は 四 極 電 磁 石 が 組 し く開 発 され た 電 気 鋳 造 方 式 の コ イ ル
れ に よ り飛 躍 的 に コ ン パ ク トな 四 極 電 磁 石 が 可 能 とな っ た.図
20に 建 設 中 の ド リフ トチ ュ ー ブ 型 線 型 加 速 器 を示 す. こ の よ うに,本
プ ロ ジ ェ ク トに は 加 速 器 技 術 に 対 す る 多 くの ユ ニ ー ク な 工 夫 が 盛 り
込 ま れ て い る が,今
後 解 決 しな け れ ば な ら な い課 題 も あ る.そ れ は,加 速 器 が 莫 大 な
数 の 部 品 か ら成 っ て い る 複 雑 系 の 要 素 を持 つ こ と に よ る不 安 定 性 の 課 題 で あ る.先 述 べ た よ うに,本
速 器 は 加 速 器 自体 の 放 射 線 損 傷 を最 小 限 に し な け れ ば な らず,そ
の た め に,異
な る種
類 の 加 速 器 間 の ビー ム輸 送 を ビー ム の 損 失 を最 小 に し て行 わ な け れ ば な ら な い.さ に,大
に
加 速 器 は リニ ア ッ ク と二 つ の シ ン ク ロ トロ ン か ら成 る.大 強 度 の 加
強 度 ビー ム を 多数 の 粒 子 群(バ
ン チ)構
造 を も っ て 加 速 す るが,バ
ら
ンチ内 の粒
図20
初 段 の加 速 に用 い ら れ る ドリフ トチ ュ ー ブ型 線 型 加 速 器(DTL)
コ ンパ ン トな 四 重 極 電 磁 石 を組 み 込 む な ど,大 強 度 化 に 向 け て 多 くの 工 夫 が 凝 ら され て い る.
子 同士 の 相 互 作 用 や バ ンチ と周 辺 環 境 との 相 互 作 用 は,ビ
ー ム不 安 定 性 の 大 き な要 因
と な る5).こ の よ う な 問 題 の 解 決 は こ れ か らの 課 題 で あ る. 16.3.4
建 設
計 画
建 設 計 画 は2期
に 分 け て 実 施 さ れ るが,第1期
体 計 画 の コ ス トは1,890億 と こ ろ,こ
の 第1期
円 と計 上 さ れ て い るが,第1期
分 は1,335億
円 で,現
在の
以前 に 稼動 予定 の ものが 多 く ,日 本 の 大 強 度 陽 子 加 速 器
の 頃 に 世 界 の 一 大 セ ン ター を 築 くで あ ろ う.
私 た ち 当 事 者 と し て は,第2期 2010年
度 に 終 了 予 定 で あ る.全
分 の建 設 着 手 が 認 可 さ れ て い る.諸 外 国 に お け る 中性 子 源 や ニ ュ
ー ト リ ノ実 験 な ど も2010年 は,そ
は2006年
分 も 含 め て,建
設 開 始 か ら7∼8年
以 前 に は 全 施 設 の フ ル 稼 動 が 可 能 な よ う に,そ
後,す
なわち
の 目標 に 向 か っ て 努 力 を 続 け
る. 冒 頭 に 述 べ た よ うに,建
設 着 手 に 至 る ま で に は 長 い 歴 史 が あ っ た.し
施 設 で は,大
出 力 の 中 性 子 ビ ー ム,ミ
ノ ビ ー ム,等
々,世
新 し い,時
ュ オ ン ビー ム,K中
界 で大 い に 注 目 され,こ
か し,こ の 本
間 子 ビ ー ム,ニ
れ か ら待 望 さ れ る ビー ム が あ る.古
宜 を得 た加 速 器 プ ロ ジ ェ ク ト と い え よ う.(永
し ょう じ,高 エ ネ ル ギー加 速 器 研 究機 構 教授.1944年
宮 正 治)(筆
生 まれ,1967年
江 知 文,大
山 幸 夫,三
宅 康 博,高
者=な が み や ・
野 英 機,J.R.Helliwell,J.C.Peng:エ
ネ ル ギ ー レ ビ ュ ー,Vol.19,No.12(1999)pp.4-23. 2) 永 宮 正 治:日
本 物 理 学 会 誌 52(1997)154.
3) 池 田 宏 信,永
嶺 謙 忠,野
4) 向 山 武 彦:日
本 原 子 力 学 会 第29回
5) 西 川 哲 治:学
術 月 報,Vol.150,No.10(1997)982.
村
亨:日
本 物 理 学 会 誌 51(1997)430 炉 物 理 夏 期 セ ミナ ー(1997)p.147.
くて
東 京 大 学理 学 部卒 業)
参考 文献 1) 永 宮 正 治,永
ュー トリ
.
17.
ニ ュ ー ト リ ノ振 動 の 予 言 と実 証 牧
ま
え
が
き
超 新 星 爆 発 で 大 量 に 放 出 さ れ た ニ ュ ー ト リ ノが170,000光 し,そ
の 数 例 が 観 測 に か か っ た(1987年3月).人
た1)が,わ
ず か60年
二 郎
年 の 彼 方 か ら地 球 に 到 達
類は そ の 発 生 源 を直 ち に 見 抜 い
前 ま で そ の 存 在 に す ら気 付 い て い な か っ た の で あ る.だ
ュ ー ト リノ の 物 語 は,か
の パ ウ リ(Wolfgang
能 学 者 マ イ トナ ー 女 史(Lise
Meitner)ら
Pauli)が1930年12月4日
か らニ
付 で放 射
の 集 会 に あ て た公 開 書 簡 か ら は じ ま る2).
17.1 無 と有 の 狭 間 か ら:パ
ウ リと フ ェル ミ
そ の 短 い書 簡 に ニ ュ ー ト リ ノ仮 説 の す べ て が 簡 潔 に語 ら れ て い た.エ
ネ ル ギ ー,角
運 動 量 な ら び に 統 計 性 の 保 存 は 原 子 核 に お い て も正 確 に 成 立 す べ き で あ り,そ の た め に は ス ピ ン角 運 動 量=1/2(プ リの 禁 制 原 理)に
ラ ン ク定 数 を単 位),電
荷 ゼ ロ(中 性)で
排 他 律(パ
し た が う未 知 の 粒 子 が 存 在 す れ ば よ い とい う主 張 で,彼
初 は ニ ュ ー トロ ン と呼 ん で い た.原
ウ
は これ を当
子 核 の ベ ー タ崩 壊 の エ ネ ル ギ ー 保 存 則 か ら こ の粒
子 の 質 量 は 電 子 の よ う に 軽 く,過 去 に 見 つ か っ て い な い の は 物 質 透 過 能 力 が きわ め て 高 い か らだ とす る.一 方 で そ の 存 在 を 主 張 しな が ら,他 方 で そ れ は容 易 に 見 付 か っ て は 困 る と い う ジ レ ン マ が こ の仮 説 の 特 徴 で あ る.パ
ウ リ も こ の こ とに 悩 み,手
紙 の中
で 「存 在 し て い る な ら と う の 昔 に 見 つ け ら れ て い た で し ょ うか ら,私 の 解 決 法 が 始 め か ら駄 目 だ と見 られ て も止 む を え ませ ん 」 と言 い なが ら,な
お 「冒 険 な くし て 勝 利 な
し で す 」 と 言 葉 をつ い で こ の 着 想 の 検 討 を求 め た の で あ る.実
験家 の反 応 は必ず しも
悪 くは な か っ た. 当 時 ロ ー マ 大 学 に あ っ た フ ェ ル ミ(Enrico
Fermi)は
中 性 子 の 発 見(1932年)の
以 前 か ら こ の 仮 説 を 支 持 し,原 子 核 のベ ー タ 崩 壊 を扱 う本 格 的 な 理 論 を 創 り上 げ る こ と に 成 功 し(1934年)3),こ リ ノ と命 名 し た)の
の 理 論 に よ りパ ウ リの 粒 子(フ
ェ ル ミは こ れ を ニ ュ ー ト
持 つ べ き重 要 な性 質 の い くつ か が まず 明 らか に さ れ た.
(ⅰ) ニ ュ ー ト リ ノ も電 子 も 原 子 核 の 中 に あ らか じめ 在 っ た も の で は な く,一 対 と な っ て 生 成 され た もの で あ る. (ⅱ) 電 子 と同 じ く反 粒 子(反
ニ ュ ー ト リノ)が 存 在 す る.
(ⅲ) 電 子 の エ ネ ル ギ ー ス ペ ク トル の 理 論 値 の 上 端 付 近 を実 験 デ ー タ と比 べ て質 量 の 上 限 値 を し らべ る と,電 子 よ りは る か に 軽 く,質 量 ゼ ロ と して 矛 盾 は な い.
(ⅳ) ニ ュ ー ト リ ノ を核 粒 子 に 当 て て 電 子 が 出 る 反 応(ベ く観 測 で き ぬ ほ ど 弱 い.ガ
ー タ 崩 壊 の 逆 過 程)は
ン マ 線 の 鉛 板 へ の 有 効 透 過 距 離 が10cmだ
ー ト リ ノの そ れ は1016∼1017cmに
全
とす れ ば ニ ュ
及 ぶ ので通 常 の条 件 で は検 出は 絶望 的 で あ る .エ
デ ィ ン トン(A.S.Eddington)は1939年
の 啓 蒙 書 「物 理 科 学 の 哲 学 」 の 中 で
「い か に 才 能 に 富 ん だ 実 験 物 理 学 者 とい え ど もニ ュー ト リ ノ を作 る こ と は で き ま い 」 と ま で 書 い て い た4). ニ ュ ー ト リ ノ研 究 の 第 一 歩 が こ う し て 踏 み 出 さ れ た が,上 り越 え る に は さ らに20年
記(ⅳ)の
ハ ー ドル を乗
を必 要 と した. 17.2
初 期 の ニ ュ ー ト リ ノ像
この 謎 め い た粒 子 の質 量 に つ い て は,パ
ウ リの 考 え も揺 れ 動 い た.前
述の 書簡 の な
か で そ の 中性 粒 子 は'光 速 度 で 走 る の で は な い か ら光 子 と区 別 が つ く'と の べ 質 量 ゼ ロ と は考 え た くな か っ た 様 子 で あ るが,3年
後 の ソル ヴ ェ ー 会 議(1933年10月)で
は フ ェ ル ミの 命 名 を紹 介 しつ つ ニ ュ ー ト リ ノ は'固 有 質 量 は ゼ ロ に 等 し くて よ い,そ し て 光 子 の よ う に 光 速 度 で 伝 播 す る'と 発 言 して い る.余 談 に わ た る が 当 時 の ヨー ロ ッ パ の 雰 囲 気 を伝 え る戯 作 の 脚 本5)を 読 む と,電 子 か ら電 荷 も質 量 も取 り去 る よ う な こ とは メ フ ィ ス ト(パ ウ リ)の 所 業 で あ る と主 の 神(ボ な っ て い る.ま
ー ア)の
眼 に は 映 っ た よ うに
た,晩 年 に パ リ テ ィ非 保 存 の 発 見 を 受 け 入 れ た 後(1957年1月)に
行 っ た 彼 の 講 演 で は'そ の 質 量 は 理 論 的 に は ゼ ロ で あ る'と 報 告 して い る.そ
れ は,
弱 い相 互 作 用 の パ リ テ ィ 非 保 存 の 形 が 質 量 ゼ ロ の ニ ュ ー ト リノ と整 合 す る と感 じ た か ら で あ ろ う. わ が 国 に 眼 を 移 せ ば,中 一)の
間 子 論 の 時 代 に 入 り1942年
二 中 間 子 論 が 生 まれ た が
の 湯 川 中 間 子(パ
イ 中 間 子)は
粒 子 とに 崩 壊 す る と考 え た.後
,と
に は 谷 川(安
くに 坂 田-井 上(健)の
宇 宙 線 中 間 子(今 者 の 質 量 は(当
田(昌
唱 え た モ デ ル6)で は 核 力
日の ミュ ー オ ン)と
他 の 一 つ の 中性
時 の 宇 宙 線 の 実 験 知 識 の 範 囲 で は)両
中 間 子 よ り十 分 軽 け れ ば よ く,'し た が っ て 中 性 微 子(ニ な し て 差 支 か な い'と 論 じて い た.ま
孝),坂
ュ ー ト リ ノ)と
た ミュ ー オ ンの 発 見(1947年)を
同一 物 と見 う け て この 理
論 を分 析 した 他 の 著 者 の 論 文 に も'種 々 の 理 由 か ら して これ は 中性 微 子 と考 え られ る' とい う記 述 が 見 られ る. この 粒 子 こ そ 後 年 の ミュー オ ン ・ニ ュ ー ト リノ で あ るが,当
時 は パ ウ リの 粒 子 か ら
自 ら を 区 別 す る積 極 的 な 論 理 を 見 出せ な か っ た の で あ る.
17.3 ニ ュ ー ト リ ノ 物 理 学 の 確 立 物 理 学 の 立 場 か らす れ ば,あ
る'も の'の 存 在 を 証 明 す る とは,思
れ を 実 験 の 対 象 に変 え る こ とで あ ろ う.
考 の対 象 か らそ
フ ェ ル ミ理 論 に し た が え ば,ニ
ュ ー ト リノ は 通 常 の 粒 子 に 比 べ て い わ ば'1,000億
分 の1'(象 徴 的 な 数 値)の 確 率 で しか 物 質 と反 応 し な い.し か し同 時 に こ の 理 論 は 万 一 わ れ わ れ が'10億 個'も の ニ ュ ー ト リ ノ反 応 の 実 験 を可 能 に す れ ば ,そ の 存 在 が 証 明 され る こ と を 示 唆 して い た.こ
の 大 き な数 値 の 壁 を 打 ち破 って 生 ま れ た の が ニ ュ ー
ト リノ 物 理 学 で あ る. 圧 倒 的 大 量 の ニ ュ ー ト リ ノ の 発 生 源 と し て 核 分 裂 反 応 が 持 続 す る原 子 炉 が 選 ば れ た こ と は 周 知 の 通 りで あ る.ラ
イ ネ ス(F.
Reines)と
コー ワ ン(C.
Cowan)は
巨大 な
液 体 シ ン チ レー タ でベ ー タ 崩 壊 の 逆 過 程 か らの 陽 電 子 の 検 出 に 成 功 し,ニ ュ ー ト リ ノ の 存 在 を遂 に 実 証 した(1956年)7).同 ヤ ン(C.
N. Yang),ウ
ー(C.
の 現 象 が 発 見 さ れ た.パ
年 か ら翌1957年
S. Wu)の
に か け て リー(T.
D. Lee),
研 究 に よ っ て ベー タ崩 壊 にパ リテ ィ 非 保 存
ウ リが他 界 した の は そ の 翌 年 で あ る.
大 量 の ニ ュ ー ト リ ノ反 応 を実 現 す る他 の 方 法 は,粒
子 加 速 器 で 発 生 させ た 高 エ ネ ル
ギ ー パ イ 中 間 子 ビー ム の 崩 壊 で ミュ ー オ ン と組 み に な っ て生 まれ る ニ ュ ー ト リ ノ を用 い る こ と で あ る.パ
イ 中 間 子 ビ ー ム の 粒 子 あ た りの エ ネ ル ギ ー を 上 げ れ ば 反 応 確 率 は
急 激 に 増 大 す る.ビ ー ム の 強 度 と収 束 性 に 改 良 を加 え て,標
的 へ の 照 度 を上 げ る効 果
と相 ま っ て加 速 器 物 理 と し て の ニ ュ ー ト リノ 研 究 が 軌 道 に 乗 っ た の は1969年 る.こ
の 時 代 とは,乱
増 え た 時 代 で あ る.パ ら 多 に 向 い,ま
暴 な 言 い 方 が 許 さ れ る な らば,と
これ ま で1種
も か く素 粒 子 の 種 類 が 急 激 に
ウ リや 湯 川 の 置 か れ た 状 況 と は 異 な る局 面 と な っ て い た.一
か
た そ の 統 一 を求 め る の が こ の世 界 で あ る.「 奇 妙 さ 」,「色 」,「香 り」
とか 「世 代 」 とい っ たjargonの
え られ た.ニ
代であ
洪 水 も こ の た め で あ る.
類 の よ うに 扱 わ れ て き た ニ ュ ー ト リノ も今 や 豊 富 な 素 粒 子 の 仲 間 に加
ュ ー ト リノ と反 ニ ュー ト リノ と い う 自 由 度 の ほ か に 他 の 自 由 度 が あ る か
ど うか が 自ず か ら 問 わ れ る時 代 とな っ た の で あ る. まず,パ
ウ リの ニ ュ ー ト リ ノ とパ イ 中 間 子 の 崩 壊 や ミュ ー オ ン の 原 子 核 へ の 吸 収 の
さ い に 発 生 す るニ ュ ー ト リノ と が 同種 類 の も り か ど うか を 問 題 に し な け れ ば な ら な い.実
は ミュ ー オ ン も'ベ ー タ 崩 壊'し て 電 子 と二 つ の'ニ ュ ー ト リ ノ'に な る こ とが
知 られ た が,こ ン マ 線)と
の 二 つ が 同 種 類 か 否 か の 問 題 で もあ る.ミ
ュ ー オ ン は 電 子 と光 子(ガ
に崩 壊 す る例 が な い こ と を 説 明 す る ほ とん ど唯 一 の 考 え は,ニ
に は 対 とな る レプ トン(電 子 か ミュ ー オ ン か)が て 互 い が 区 別 され て い る とす る こ とで あ る.こ
ュー トリノ
本 来 定 ま っ て お り,そ の こ とに よ っ こ で は そ の 説 明 は 省 くが,1960年
前
後 に 多 くの 人 が 独 立 に こ の 考 え 方 を 展 開 した8).質 量 に つ い て の 実 験 的 知 識 は 相 変 ら ず ど ち ら もゼ ロ に 近 い とい う程 度 に ど と ま っ て い た が,2種 の 問 題 は あ ま り関 係 し な い.た
ニ ュ ー ト リ ノ理 論 に 質 量
だ しパ リテ ィ非 保 存 と質 量=0の
ニ ュ ー ト リ ノ を結 び
つ け る と反 ニ ュ ー ト リノ との 関 係 で こ の 理 論 に も異 な る拡 張 の 可 能 性 が 出 て く るが, 今 は 立 ち 入 る余 裕 は な い.
こ こ に 来 て 望 ま れ た こ とは こ の2ニ こ と で あ っ た.米
ュ ー ト リ ノ理 論 を 実 験 に よ っ て 直 接 テ ス トす る
国 の ブ ル ッ クヘ ヴ ン 国 立 研 究 所(BNL)に
完 成 したAGS大
型加 速
器 の ニ ュ ー ト リ ノ ・ビ ー ム と新 型 の 粒 子 検 出 装 置 の組 合 せ に よ っ て こ れ が 可 能 とな っ た. 以 下 で は い ろ い ろ な 素 粒 子 を化 学 元 素 の よ うに 慣 用 の 記 号 で 表 わ して 話 を す す め よ う.言 葉 の 簡 約 の た め で あ る.電 子 をe-,ミ 電 荷 を 表 わ す の で,反
粒 子 はe+,μ+と
ν と書 くの が 普 通 で あ る.さ
ュ ー オ ン を μ-な ど.肩 の マ イ ナ ス は 負
な る.ニ
ュ ー ト リ ノ は ν,反 ニ ュ ー ト リノ は
ら に 添 字 をつ け て νeと書 け ば,電
子 と対 と な る ニ ュ ー
ト リ ノ(電 子 ニ ュ ー トリ ノ),ν μは 同様 に ミュ ー オ ン ニ ュ ー ト リ ノの 記 号 で あ る.し か し 添 字 に よ っ て ν を 使 い 分 け る だ け で は 意 味 は な く,両 者 が 異 な る 粒 子 で あ る こ と を実 験 で 示 し た い の で あ る.質 量 に よ る 区 別 が 不 可 能 な ら ば 他 の 排 反 事 象 に よ っ て 実 証 す る ほ か は な い.た ば,μ-を
と え ば'μ-と
と もに 生 じ た νμビ ー ム を 標 的 物 質 に 当 て れ
発 生 す る こ とは あ っ て もe-は
生 ぜ ず,ま
た νeを 当 て れ ばe-の
み が 生 じて
μ-は 見 られ な い'こ と を事 実 に よ っ て 確 か め れ ば よ い. 前 記BNLの
実 験 で こ の 命 題 の 前 半 部 分 が 高 い 信 頼 度 で 実 証 さ れ た.百 歩 ゆ ず っ て
も νEと νμ とは もは や 「同 一 物 」 とは 見 な せ な い の で,ニ こ とが 決 定 的 に確 立 し た の で あ る.レ ー(J
. Steinberger),シ
ー ダ ー マ ン(L.
ュ ヴ ァ ル ツ(M.
Schwarz)ら
ュ ー ト リノ が1種
Lederman),ス
類 で ない
タ イ ンバ ー ガ
の チ ー ム の 業 績(1962年)で
あ る. 17.4 ニ ュ ー ト リノ に(す
ニ ュー トリノ振 動
く な く と も)2種
類 あ る こ とが 確 認 さ れ た の でνeとν μ と を あ
ら た め て'一 つ の ニ ュ ー ト リノ の 取 り う る 二 つ の 異 な る 状 態 で あ る'と 考 え よ う.排 反 的 な こ の 二 つ の 状 態 は 量 子 力 学 の 言 葉 で'た が い に 直 交 す る'と 呼 ば れ る. ニ ュ ー ト リ ノ は こ れ ら の 粒 子 状 態 νe,νμに お い て ど ん な 質 量 を も つ だ ろ う か? も し そ れ が 確 定 し た値 を もつ な ち ば,(ⅰ)と (ⅲ)等
し くな い の 三 通 りで あ る.と
もに ゼ ロ,(ⅱ)ゼ
くに(ⅲ)の
ロ で は な い が 等 し い.
場 合 は そ の 条 件 自体 に よ り νeと νμ
と は 直 交 し て い な け れ ば な ら な い. だ が ニ ュ ー ト リ ノ と い え ど も量 子 力 学 に 支 配 さ れ る の で話 は こ こ で 終 ら な い.そ
れ
が ニ ュ ー ト リ ノ振 動 の 現 れ る場 合 で あ る. こ こ で ニ ュ ー ト リ ノ に 限 らず 素 粒 子 が 「振 動 す る 」 とは,異 の 状 態 の 内 容 を 周 期 的 に 交 換 し合 う こ と で あ る.こ 1950年
代 にK-中
間 子 が 中 性 のK0状
明 ら か に され た.他 リ ノ(ν)状
な る種 類 の 素 粒 子 が そ
れ が 可 能 な 例 は 限 ら れ て お り,
態 と そ の 反 粒 子 状 態K0と
の 間 で振 動 す る こ とが
の例 を探 す な ら ば こ れ と類 似 して ニ ュ ー ト リ ノ(ν)-反
態 の 振 動 が あ る が(ポ
ン テ コ ル ボ,1957年)9),こ
ニュー ト
こ で は 異 な る種 類 の
ニ ュ ー ト リ ノ間 に 生 ず る 振 動 に つ い て 解 説 し よ う. 先 述 の よ うに,ニ
ュ ー ト リ ノの 種 類 を確 定 す る とは'そ の 量 子 力 学 的 状 態 を定 め る
こ と で あ る'と い う考 え 方 に 立 て ば,状
態 νe,νμに お け る 質 量 を 問 う代 りに,質
量
の 大 き さ が 確 定 して い る こ と を条 件 と した ニ ュ ー ト リ ノ状 態 を別 に定 義 す る こ と も可 能 で あ る.2種
類 の ニ ュ ー トリ ノ の(確 定 した)質
量 値m1,m2が
対 応 す る ニ ュ ー ト リ ノ粒 子 状 態 ν1と ν2とは 互 い に 直 交 す る.一
異 な る場 合 に は, 方 であれ ば 必ず他 方
で は な い か ら で あ る. 対 と な る相 手 がe-か し た も の(ν1,ν2)と る,と
μ-か で 定 義 し た ニ ュ ー ト リ ノ(νe,νμ)と 質 量 に よ っ て 定 義
は,一
い う関 係 に あ る.重
方 の 組 が 他 方 の 組 の'重 ね 合 わ せ'状 態 と し て 表 わ さ れ ね 合 わ せ とは ベ ク トル の 加 え算 な ど を頭 に描 け ば よ い.直
交 す る 二 つ の 状 態 に よ っ て2種
類 の ニ ュ ー ト リ ノ を 定 義 す る 仕 方 は,(νe,ν μ)や
(ν1,ν2)の ほ か に も無 数 に あ るが,質
量 値(m1,m2)自
体 は 自然 が 定 め た 大 き さ の 量
で あ る こ とに 注 意 して お こ う.定 義(νe,ν μ)と 定 義(ν1,ν2)の
二 つが 特 に選 ばれ る
理 由 は観 測 を通 じて 知 られ るニ ュ ー トリ ノ の 物 理 的 性 質 と直 接 結 び つ い て い る か らで あ る.前 者 は ニ ュ ー ト リ ノ の 識 別 が 弱 い 相 互 作 用(ベ れ る レ プ トン(e-,μ-,τ-)に
ー タ 崩 壊 な ど)で 発 生/吸 収 さ
よ っ て な さ れ るか ら で あ り,ま た 後 者 の 定 義 は 一 般 に
素 粒 子 が あ る時 空 点 か ら十 分 遠 方 の 別 の 点 ま で 自 由 粒 子 と し て伝 播 す る こ と は 定 ま っ た 質 量 値 を も っ て の み 許 さ れ る とい う事 実 に対 応 す る.定 義 の 異 な る こ の 粒 子 状 態 は 角 度 θ に よ っ て 互 い に 重 な り合 っ て い る.θ
は 混 合 角 と よ ば れ るが,こ
れ が0°,90°
な どで は 両 者 は 等 価 で あ り,二 つ の 質 量値 が た ま た ま 等 しけ れ ば,νeも
νμも そ の 質
量 値 を もつ 粒 子 で あ る.ニ トン の 種 類(フ
ュ ー トリ ノ振 動 は こ の ど ち らで も な い 場 合 に 生 ず る.レ
レ ー バ ー)が3種
あ れ ば'フ レ ー バ ー'ニ
ト リ ノ と を結 ぶ パ ラ メ ー ター は1個
か ら4個
プ
ュー ト リノ と'量 質'ニ ュ ー
に増 え て 複雑 と な る.さ
らに 言 え ば,以
上 の 枠 組 み か ら外 れ た ニ ュ ー ト リノ(不 毛 ニ ュー ト リ ノ と仇 名 さ れ る)を
導 入 す る理
論 も あ り,こ れ を 含 め た 振 動 も考 え られ る が こ こ で は 省 略 す る. い ま あ る 点 で 生 ま れ た ニ ュ ー ト リ ノ(例
え ば νe)が,離
れ た別 の 点 で 検 出 さ れ る
ま で の 時 間 的 経 過 を 追 っ て み よ う.状 態 ν1,ν2の 重 ね 合 わ せ(混 た 状 態(νe)の で き,そ
合)と
して 出 発 し
時 間 的 変 化 は 成 分 状 態 ν1,ν2の 時 間 的 振 動 を 重 ね 合 わ せ た 形 に 記 述
して 後 者 の 時 間 的 振 動 の 周 波数 は そ れ ぞ れ の エ ネ ル ギ ー に 比 例 す る が,運
量 の 同 じ状 態 で 比 べ れ ば,エ
ネ ル ギー は 質 量 の 大 き い 方 が 大 とな る の で 時 間 的 周 波 数
も そ の 分 だ け 高 くな る わ け で あ る.質 の 周 波 数 の 差 は(質
動
量 が 十 分 小 さ い ニ ュ ー ト リ ノの 場 合 に は,二
量)2の 差:Δm2=│m12-m22│に
比 例 す る.こ
つ
の周 波数 の差 の た
め に 成 分 状 態 ν1,ν2の 時 間 的 振 動 に は位 相 差 が と も な う こ と に な り,合 成 に 際 し て 状 態 ν1と ν2の振 幅 は 強 め 合 っ た り弱 め 合 っ た りの 変 化 を 周 期 的 に 繰 り返 す こ と に な る.こ
の 効 果 が 最 大 と な る の は 混 合 角 θが45° の 場 合 で あ っ て,最
初 に νeで あ っ た
もの が あ る 時 間 経 過 後 に は 完 全 に νμと な り,さ ら に 同 時 間 た て ば 元 の νeに戻 る と い う周 期 運 動 と な る.θ が45° よ り小 さ くな れ ば
の 完 全 な 入 れ 替 りは 生 ぜ ず
相 手 の 成 分 に よ る変 調(modulation)の 形 とな る が そ の 周 期 は θ の 大 き さ に よ らず 一 定 で あ って ,い ず れ にせ よ 前 記 の 質 量 差 Δm2に 逆 比 例 す る.周 期(時 間)に ニ ュ ー ト リ ノの 速 度 を 乗 じて 得 られ る'う な り振 動'の 節 の 長 さ は 振 動 長 と よ ば れ る が そ れ は Δm2が0に イ ズ,あ
接 近 す る と と も に 非 常 に 長 くな り,巨 視 的 な 空 間 領 域(地
る い は 太 陽 系 の サ イ ズ で)こ
,
球 のサ
れ を 見 る こ とが で き る の で あ る.
以 上 で ニ ュ ー ト リノ 振 動 の 物 理 的 骨 子 を概 説 し た.数
式 抜 きの 説 明 の た め 冗 長 と な
っ た こ と を お 許 し 頂 きた い.
17.5 史 料 的 断 片 と む す び 筆 者 らは 前 節 に の べ た 研 究 を1962年3月 て 投 稿 す る と と も に1962年7月4-11日
末 か ら6月 の 時 期 に 仕 上 げ,論 ジ ュ ネ ー ヴ のCERNに
「1962年 度 高 エ ネ ル ギー 物 理 学 国 際 会 議 」(第11回 した.筆
文10)と し
お い て 開 催 され た
ロ チ ェ ス ター 会 議)に
お いて発 表
者 の 講 演 の 頭 目 は 投 稿 論 文 と同 じだ が,内 容 は上 記 ニ ュ ー ト リ ノ振 動 の 理 論
の 部 分 に しぼ っ た(7月6日,セ
ッ シ ョ ンT1,座
し た ブ ル ッ クヘ ヴ ン研 究 所(BNL)の
長 は 山 口嘉 夫 教 授)11).3節
成 果 は 同 会 議7月9日
に紹 介
の特 別 セ ッ シ ョン で シ
ュ ヴ ァ ル ツ 教 授 に よ っ て 詳 細 に報 告 さ れ た(司 会 は ワ イ ス コ ップ(V.F.Weisskopf) CERN所
長)12).
BNLの2ニ
ュ ー ト リノ 説 実 証 の 結 果 は,1962年3月
に は 非 公 式 な が ら世 界 に 知 ら
れ て い た.筆 者 ら は こ れ を受 け て 従 来 の 複 合 模 型 を 改 良 す る た め に 混 合 角 θ を 導 入 し た が,同
じ考 え は 独 立 に 京都 グ ル ー プ の 片 山(泰)ら
に よ っ て も提 出 さ れ た13).た
だ し後 者 の 論 文 は混 合 角 の 自由 度 は 質 量 ゼ ロ の 故 に可 能 で あ る と考 え た よ う に 読 み と れ る.そ
れ が 振 動 の 話 ま で 進 ま な か っ た 理 由 で あ ろ う.ま た,筆
動 の 可 能 性 に気 付 い た の は,逆
説 的 に もBNLの
ト リ ノ(νe,ν μ)の 安 定 性(あ
る い は 自 己 同 一 性)を
た か ら で あ っ た.し m2│が1eV(電
前 提 し て い る こ と に 疑 問 を感 じ
た が っ て 論 文 で は こ の こ と に 触 れ,こ
で は な い'と 論 じ た の で あ る14).な お,同
言 え な い.そ
実 験 が 暗 黙 に 各 フ レ ー バ ー の ニ ュー
子 ボ ル ト)程 度 以 内 で な け れ ば2ニ
仮 想 的 遷 移 の た め に(こ
れ ら の)ニ
者 が ニ ュ ー ト リノ振
の 実 験 は'質 量 差│m1-
ュ ー ト リ ノ仮 説 の テ ス トに 有 効
論 文 中 の 振 動 を 説 明 す る 文 章,'
の
ュ ー ト リノ は安 定 で は な い'は あ ま り適 当 だ とは
れ は 飛 行 中 の ニ ュ ー ト リ ノが,こ
れ を観 測 す るか 否 か に か か わ らず 周 期
的 に フ レー バ ー を変 え て い る か の よ うな 印 象 を与 え るか らで あ る.
ニ ュ ー ト リノ振 動 の 理 論 は 量 子 力 学 の 正 直 な応 用 か ら生 まれ た も の で あ るが,微 な エ ネ ル ギ ー 差(こ
の 場 合 に は 質 量 差)を
小
巨視 的 なスケー ルの 干渉効 果 として把 え る
と い う 点 で は 測 定 手 段 に 一 つ のbreak リ ノ に 限 ら ず,よ
throughを
り 多 く の 複 雑 な'振
も た ら し た と も 言 え る .ニ
動 問 題'が
ゼ ロ に 近 い 質 量 値 を 説 明 す る 柳 田(勉)ら
の シ ー ソ ー 機 構14)に
都 大 学 名 誉 教 授.1929年
文
生 ま れ,1952年
た,
も振 動 問 題 と 絡 み 合
わ せ て 未 だ 追 求 す べ き 問 題 が 多 く残 さ れ て い る よ う に 思 わ れ る.(筆 う,京
ュ ー ト
研 究 さ れ て よ い と 思 わ れ る .ま
者=ま
き ・じ ろ
東 京 文 理 大 学 物 理 学 科 卒 業)
献
1) 「学 術 月 報 」52巻9号(1999)の 2) W.Pauli:Writings
on
小 柴 昌 俊 氏 の 記 事. Physics
and
Philosophy(edit.C.P.Enz
&
K.von
Moyenn,
Springer,1994)p.198. 3) E.Fermi:Zeitschrift
fur
4) A.S.Eddington:The
Physik
88(1934)161.
Philosophy
5) 《史 劇 》 中 性 子 誕 生 の 前 夜(朝
of Physical
永 振 一 郎 訳),朝
Science(Cambridge,1939)p.112. 永 著 作 集 第8巻(み
す ず 書 房,1982)p
.
208. 6)
坂 田 昌 一,井
7)
C.L.Cowan
上
8)
R.P.Feynman,K.Nishijima,J.Schwinger,T.D.Lee,C.N
9)
B.Pontecorvo:Zh.Exp.Teor.Fiz.33(1957)549.
and
健:日
本 数 学 物 理 学 会 誌16(1942)232.
F.Reines:Phys.Rev.107(1957)528.
10)
Z.Maki,M.Nakagawa
11)
著 者 同 上:Proceedings,1962
and
.Yangほ
か.(文
献 未 詳)
S.Sakata:Prog.Theor.Phys.28(1962)870 International
Conference
. on
High
Energy
Physics
CERN(edit.J.Prentki,Geneve,1962)p.663. 12)
G.Danby,J.M.Gaillard,K.Goulianos,L.M.Lederman,N.B.Mistry and
13)
,M.Schwarz
J.Steinberger:ibid.809.
Y.Katayama,K.Matumoto,S.Tanaka
and
E.Yamada:Prog.Theor.Phys.28
(1962)675. 14)
T.Yanagida:in report
Proceedings
of
the
Workshop
at
KEK
,edit.S.Sawada
et al.KEK
79-18(1979)p.95.
M.Gell-Mann.P.Ramond
and
p.315.
初 出:「 学 術 月 報 」52巻9号(1999)pp.17-22.
R.Slansky:in
Supergravity(North
Holland
,1979)
of
18. 素粒 子標準理論 の形成 長
18.1
は
ベ ッ ク レル の放 射 能 発 見(1896)に 力 と電 磁 気 力 の他 に,強 学 的 枠 組 み は,弱 り1935年
じ
め
島 順
に
よ り,物 質 間 に働 く相 互 作 用 に は 古 くか らの 重
い 力 お よ び 弱 い 力 が あ る と認 識 さ れ た が,そ
い 相 互 作 用 は フ ェ ル ミに よ り1934年
に 初 め て 提 案 され た.そ
ォ トン を 意 味 し た が,湯
清
に,強
の こ ろ の 素 粒 子 は,陽
川 理 論 に は パ イ(π)メ
子,中
ソ ン が,フ
れ を 記 述 す る数
い相互 作用 は 湯 川に よ 性 子,電
子 お よび フ
ェ ル ミ理 論 に は パ ウ リの
提 案 し た ニ ュ ー ト リ ノ(ν)が 存 在 す べ き仮 説 の 素 粒 子 と し て 組 み 込 ま れ て い た.π メ ソ ン は核 力 の 担 い 手 と し て 導 入 さ れ た が,力
の媒 介粒 子は その後 の素 粒子論 の底 流
と な っ た 重 要 な概 念 で あ る.現 代 標 準 理 論 の 形 成 は,1960年 ー ク構 造 の 発 見 に よ り急 速 に 発 展 し た が,素 して の 場 の 量 子 論 の 原 型 は,既
に 量 子 力 学 成 立 直 後 の1929年
あ る 場 の 量 子 論 の 中 か ら, して 抽 出 す る 過 程 は,素
代 に お け る物 質 の ク ォ
粒子 を記述 す る基本的 な数 学的枠 組 み と に 提 案 さ れ て い る.数
ゲ ー ジ理 論 を 正 し い 理 論 と
粒 子 の 性 質 と対 称 性 を理 解 す る 過 程 で あ るが,そ
造 の 解 明 に 始 ま り,原 子 核,核 りで徐 々 に 明 ら か に さ れ た."素
れ は 原 子構
子 構 造 か ら ク ォ ー ク ・レ プ トン の 発 見 に 至 る 長 い 道 の 粒 子 とは 何 か"の
基 本 概 念 は,物
質 粒 子 も電 磁 場 な
ど と同 様 な場 の 励 起 状 態 とみ な す こ と を 出 発 点 とす る.初 期 素 粒 子 論 に は 量 子 力 学 の 形 成 と 重 複 す る部 分 が 多 々 あ る が,素
粒 子 を生 成 消 滅 す る実 体 と して 捕 ら え,強
電弱
相 互 作 用 の 担 い 手 と して 認 識 した 時 点 か ら量 子 力 学 とは 別 個 の 発 展 を 始 め た と考 え る こ とが で き る.素 粒 子 の 生 成 消 滅 は 場 の 量 子 論 に よ り記 述 され るの で,素 粒 子 標 準 理 論 の 歴 史 は場 の 量 子 論 か ら 出発 す る の が 適 切 で あ ろ うが,こ 説(第14章)が
れ に 関 して は 中 西 氏 の 解
収 め ら れ て い る の で こ こ で は 触 れ な い.た だ,場 の 量 子 論 に 現 れ る無
限 大 の 発 散 に つ い て は,全
て 質 量 と電 荷 の 再 定 義,波
動 関数 の規 格 化 な ど に 押 し込 め
る く り こ み 手 法 で 整 合 性 の あ る体 系 を築 け る こ と が,1946-49年
に 朝 永-シ ュ ウ ィ ン
ガ ー-フ ァ イ ン マ ン に よ り示 さ れ た歴 史 的 事 実 は指 摘 して お く必 要 が あ る.時
を同 じ
く し て 行 わ れ た 水 素 原 子 エ ネ ル ギー 準 位 に お け る ラ ム シ フ トや 電 子磁 気 能 率 の 精 密 実 験 値 が,繰 Quantum
り込 み 計 算 に よ り見 事 に 再 現 さ れ る こ とが 判 り,量 子 電 磁 力 学(QED; Electro-Dynamics)が
能 率 計 算 に お い て10桁 cmの
確 立 した の で あ る.QEDは
電 子 や ミュ ー オ ン の 磁 気
の 精 度 で 実 験 値 を再 現 す る こ とが で き る.適
極 微 の 世 界 か ら 銀 河 ス ケ ー ル に 到 る40桁
近 く を カ バ ー し,今
用 範 囲 は,10-16 なお 限 界 を広 げ
つ つ あ る.QEDの
成 功 は,場 の 量 子 論 が 素 粒 子 を記 述 す る正 し い 言 語 で あ る こ との 証
で あ り,そ の 後 の 場 の 量 子 論 は 常 にQEDを 18.2 中 間 子 論
1935年
規 範 と しつ つ 発 展 し て き た と言 え よ う.
強 い 相 互 作 用(1935-1965)
に 提 案 さ れ た核 力 の 湯 川 理 論 は 電 磁 相 互 作 用 を モ デ ル と し て
い る .質 量 ゼ ロ の フ ォ トン の 代 わ りに 有 限 質 量 を持 つ 力 の 場 は,ク ル の 代 わ り に 湯 川 ポ テ ン シ ャ ル
を与 え る.す
ー ロン ポテン シャ
な わ ち 到 達 距 離
が 有 限 の 短 距 離 核 力 は 有 限 質 量 μ を持 つ 粒 子 に よ り媒 介 さ れ る こ と を 示 し, 電 子 の 約200倍
の 質 量 を 持 つ π メ ソ ン の 存 在 を 予 言 し た.湯
川 理 論 の 提 唱 後,1937
年 に ア ン ダー ソ ン とネ ッ ダー マ イ ヤ ー は 宇 宙 線 の 中 か ら,予 言 通 りの 質 量 を持 つ ミュ ー オ ンを発 見 したが ,貫 通 力 が 高 く強 い 相 互 作 用 を媒 介 す る粒 子 と して の 性 質 が 充 た され て な い よ う に み え た.坂
田-井 上,谷
を 唱 え て こ の 解 決 法 を示 唆 し,1947年 付 い た.核
川 や マ ル シ ャ ッ ク 等 は2中
間 子 論(1942)
のパ ウエ ル等 に よる πメ ソンの発 見 で決 着 が
力 ポ テ ン シ ャ ル が 重 陽 子 の 性 質 や 低 エ ネ ル ギー 核 子 散 乱 な ど を再 現 し た こ
と で 湯 川 理 論 の 基 本 的 正 し さ は証 明 さ れ た が,π N 散 乱 を始 め1940年 見 さ れ た ス トレ ン ジ粒 子 や1960年
代 の後 半 に発
代 に 大 量 に 発 見 され た 各 種 共 鳴 間 な どの 生 成 散 乱
の 振 る 舞 い を 定 量 的 に 記 述 す る こ とは で き な か っ た.理
由 は 強 い 相 互 作 用 の 強 さが
と非 常 に 大 き な値 を と り,摂 動 計 算 が 適 用 で き な い こ とに あ っ た.こ
のた
め 結 合 定 数 の 逆 数 で展 開 す る 強 結 合 の 理 論 や 朝 永 に よ る 中 間 結 合 の 理 論 な ど種 々 の 試 み が 行 わ れ た.こ 1954年
の 辺 の 事 情 に つ い て は 町 田 氏 の 解 説(第6章)を
参 照 さ れ た い.
に は ヤ ン-ミ ル ズ1)に よ る非 ア ー ベ ル ゲ ー ジ理 論 の 定 式 化 と い う重 要 な 進 展 が
あ っ た が,一
般 的 に は あ ま り注 目 を浴 び な か っ た.ゲ
は 質 量 ゼ ロ を 持 ち,長
短 距 離 力 で あ っ た か ら,現 1950∼60年
い 力 や 弱 い 力 は 明 らか に
実 的 に 役 に 立 つ 理 論 と は 思 わ れ な か っ た の で あ る.
代 は 場 の 量 子 論 に 対 す る 信 頼 性 が ゆ ら い だ 時 代 で あ り,代 わ り とな る方
法 を模 索 す る 時 代 で も あ っ た.そ 論 す るS行
ー ジ理 論 に お け る 力 の 媒 介 粒 子
距 離 力 で な け れ ば な ら な か っ た が,強
の 中 で 有 望 と思 わ れ た の は 観 測 量 間 の 関 係 だ け を議
列 の 方 法 で あ っ た.
素粒 子民 主 主義
S行 列 で は粒 子 や 共 鳴 状 態 は,複
は そ の 留 数 と し て 表 され る.S行 分 散 公 式 に,散
列 の 方 法 と は,解
素 平 面 に お け る極,結
合 定数
析 性 の よ い 関 数 に つ い て 成 り立 つ
乱 振 幅 を規 制 す る ユ ニ タ リテ ィ 条 件 と交 叉 対 称 性*1を 使 っ て 種 々 の
粒 子 の 間 に 生 じ る 関 係 式 を 自 己 無 撞 着 に 解 く こ と に よ り散 乱 振 幅 を計 算 し,粒 子 スペ ク トル や 力 学 構 造 を再 現 し よ う とす る試 み で あ る.πN散 換 に よ り引 力 が 生 じ てsチ *1 例 え ば πN散
乱 の場 合
ャ ネ ル(π+π-→pp),uチ
,散
ャ ネ ル に3-3共
鳴 の⊿(1232)を,π-π
乱 振 幅f(s,t,u)は,変 ャ ネ ル(π-N→
乱 で はuチ
π-N)を
数 の 値 に よ りsチ 同 時 に 記 述 す る.
ャネルの核 子交 散 乱 で はtチ
ャ ネ ル(π+N→
π+N),tチ
ャ
ネ ル ρ交 換 に よ りsチ
ャ ネ ル に ρ共 鳴 を 導 く こ と に 成 功 し た こ とか ら,チ
ひ も理 論 を唱 え た2)(1962).靴
ひ も理 論 は,全
ュー は靴
て の 素 粒 子 は 同 等 で 互 い が 互 い を靴 ひ
もの よ うに 結 い 上 げ る と い う素 粒 子 民 主 主 義 を 主 張 し,基 本 粒 子 の ラ グ ラ ン ジ ア ン か ら 出発 す る場 の 量 子 論 と は 対 極 に位 置 す る思 考 で あ る.こ れ に は,1960年 電 子 ・核 子 弾 性 散 乱 デ ー タ が,核 支 持 材 料 もあ っ た.さ
代前半の
子 は 芯 を持 た な い 柔 構 造 を持 つ こ と を 示 した とい う
ら に 散 乱 振 幅 の 複 素 角 運 動 量 平 面 に お け る極 と して の レ ッジ ェ
軌 跡 が,ス
ピ ンパ リテ ィ 以 外 は 同 じ量 子 数 を持 つ 共 鳴 群 の ス ペ ク トル と し て実 現 され
る こ と,レ
ッ ジ ェ 軌 跡 交 換 に よ る表 式 で はsチ
低 エ ネ ル ギーtチ
ャネ ル 高 エ ネ ル ギー 散 乱 現 象 が 一 連 の
ャ ネ ル 共 鳴 の 和 とい う 形 に 表 され る こ とな ど も 明 らか に さ れ た.粒
子 群 寄 与 の 和 と して 表 さ れ る散 乱 振 幅 が,組
み替 え に よ りsチ
ネ ル振 幅 と も な る と い う双 対 性(duality)が
ャ ネ ル 振 幅 と もtチ
具 体 的 に 示 さ れ,ハ
ャ
ドロ ン の 紐 モ デ ル
か ら後 の 超 弦 理 論 へ 発 展 す る重 要 な 契 機 と も な っ た.最 終 的 に は,S行
列 の解 析 性 だ
け か ら全 て を導 こ う とい う試 み は,あ
密 な フォーマ
る程 度 の 成 功 は 収 め た もの の,厳
リ ズ ム を完 成 す る と こ ろ まで は行 か な か っ た.や が て,ハ
ドロ ンが 少 数 の 基 本 的 粒 子
ク ォー ク よ り構 成 さ れ る こ と が 判 っ て 再 び 場 の 量 子 論 に 戻 る こ と に な る. 18.3
ク ォ ー ク モ デ ル(1956-1970)
18.3.1 ス ト レ ン ジ 粒 子 の 発 見 西 島-ゲ ル マ ン の 法 則
宇 宙 線 の 中か ら ス トレ ン ジ粒 子 が 発 見 さ れ た の は1947年
で あ り3),π の 発 見 とほ ぼ 同 時 で あ っ た.当 ジ粒 子)の
性 質 は,物
時 の 理 論 家 を悩 ませ た 新 粒 子(ス
質 中 で の 飛 程 距 離 が ∼1cm以
で あ り なが ら,生 成 後 崩 壊 す る ま で の 飛 程 距 離 も同程 度 あ る こ と,つ き は 弱 い 相 互 作 用 をす る とい う2重 性 で あ っ た.こ 成 さ れ る こ とか ら 中 野-西 島-ゲ ル マ ン(1953)に
トレ ン
下 と い う強 い 相 互 作 用 の 持 ち 主
の2重
ま り崩 壊 す る と
性 は,新 粒 子 が 常 に 連 携 生
よ り,強 い 相 互 作 用 で は 保 存 す るが
弱 い相 互 作 用 で は 保 存 し な い ス トレ ン ジ ネ ス と い う量 子 数 を導 入 す る こ と に よ り解 決 し た.ス
トレ ン ジ ネ スSは,電
荷Q,バ
リオ ン 数B,ア
イ ソ ス ピ ン 第3成
分I3と
の
間 に 次 の 西 島-ゲ ル マ ン の 法 則 を充 た す.
(1) Yは ハ イ パ ー チ ャー ジ で あ る.こ う と こ ろ の 安 定 粒 子,つ Σ,Ξ)等
続 々 と共 鳴 群(寿 た.素
ま り寿 命 が10-8∼10秒 程 度 のKメ
で あ っ た が,1960年
ヴ ァ トロ ン(6GeV)や
の こ ろ知 ら れ て い た ス トレ ン ジ 粒 子 は,今
代 に 入 っ て か ら は,ロ
ソ ン及 び ハ イ ペ ロ ン(Λ,
ー レンスバ ー クレー研 究 所 のベ
ブ ル ッ ク ヘ ブ ン 研 究 所(BNL)のAGS(30GeV)に
命10-22∼24秒)が
発 見 さ れ,粒
粒 子 の 数 が こ れ だ け 多 く な れ ば,よ
日で言
よ り
子 の数 は百 個 を越 え る ほ ど とな っ
り基 本 的 な 粒 子 を探 し求 め るの は 当然 で あ
ろ うが,坂
田 モ デ ル4)は そ れ に 先 駆 け て 早 く も1956年
18.3.2 SU(3)対
に 提 唱 さ れ て い た.
称性
坂 田 モデル か ら クォー クモ デル ヘ
素 粒 子群 を分 類 す る量 子 数 と して は,従
来の
ス ピ ン-パ リテ ィ の 他 に ア イ ソ ス ピ ン とス トレ ン ジ ネ ス が 加 わ り,各 粒 子 間 の 相 互 作 用 を力 学 的 に 再 現 す る こ と を含 め て,い
ろ い ろ な モ デ ル が 提 案 さ れ た.坂
重 要 性 は 基 本 粒 子 と して 全 て ス ピ ン1/2で 池 田-大 貫-小 川 に よ るIOO対 な げ た こ と で あ ろ う.SU(3)対 が,基
本 粒 子 と し て(p,n,Λ)を
称 性5)(1959),今
日のSU(3)ユ
ニ タ リー 対 称 性 に つ
称 性 の 導 入 に よ り,メ ソ ン8重 項 の 説 明 に 成 功 し た 採 用 し た が た め に バ リオ ン8重
つ ぶ っ て し ま い 袋 小 路 に 入 り込 む.こ 1962)の
田 モデル の
質 量 が ほ ぼ 等 し い フ ェ ル ミオ ン を 採 用 し,
項 の存在 には 目を
れ を 修 正 し た ネ ー マ ン と ゲ ル マ ン6)(1961-
八 正 道 説 や ゲ ル マ ン-大 久 保 の 質 量 公 式7)は 実 験 デ ー タ を 良 く再 現 す る事 が
で き た.さ
ら に ス ピ ン パ リ テ ィ3/2+の10重
項 の 最 後 の 欠 員 Ω-が 発 見 され8),SU
(3)対 称 性 へ の 信 頼 度 は 多 い に 高 ま っ た. SU(3)対
称 性 の成 功 に 刺 激 さ れ て ク ォ ー ク モ デ ル9)(1964)が
は 基 本 粒 子(p,n,Λ)を(u,d,s)の の 違 い はSU(3)の
組 に 置 き換 え た も の で あ る.坂
保 存 量 と して ス トレ ン ジ ネ スSの
を採 用 し た こ と,q=(u,d,s)が,バ を持 つ こ と に あ っ た.た
提 唱 さ れ た が,こ
れ
田モデル と
代 わ りに ハ イ パ ー チ ャ ー ジY
リオ ン 数1/3,半
端 電 荷(2/3,-1/3,-1/3)
だ し,半 端 電 荷 の 存 在 は 当 時 と して は 異 端 の 考 え で あ り,提
唱 者 の ゲ ル マ ン は,当 初 ク ォ ー クは 実 在 の 粒 子 で な く分 類 の た め の 数 学 的 枠 組 み と考 え るべ き で あ る と言 っ て い た ほ ど で あ る.基 本 粒 子 存 在 の 否 定 に は 当 時 の 流 行 で あ っ た 靴 ひ も理 論 も影 響 し た と思 わ れ る.SU(3)ユ 性 を 含 め た拡 張 型 のSU(6)(崎 ンパ リテ ィ0-,1-の1重 テ ィ1/2+の8重 (図1)か
ニ タ リー 対 称 性 に ス ピ ン の 時 空 対 称
田他10):1964)ク
ォ ー ク モ デ ル に よれ ば,qqが
項 と8重 項 を 合 わ せ た9重
項 と3/2+の10重
項 が 現 れ る.こ
項 を 作 り,qqqに
スピ
は ス ピンパ リ
れ らの 共 鳴 状 態 が 全 て観 測 され
つ 初 期 に は こ れ の み が 観 測 さ れ た こ と,SU(6)モ
デル がバ リオンの磁 気 能
率 を ほ ぼ 正 確 に再 現 し た こ とは ク ォ ー ク モ デ ル の 信 用 を大 い に 高 め た. チ ャ ー ム:第4の な っ た の は,チ AGSのpp反
ク ォー ク
ク ォ ー クモ デ ル が 正 し い と誰 もが 確 信 を 持 つ よ うに
ャ ー ム 発 見 の 影 響 が 大 き い.1974年
応 で,同
に テ ィ ン 等 の グ ル ー プ がBNL/
時 に リ ヒ タ ー 等 の グ ル ー プ も ス タ ン フ ォ ー ド線 形 加 速 器 セ ン タ
ー(SLAC)のSPEARに
お け るe-e+反
応 で
今 日J/ψ(1S)
,
て 知 られ る共 鳴 の 存 在 を 発 表 し た12).こ の 共 鳴 発 見 が 衝 撃 的 で あ っ た の は,測
と し 定器分
解 能 限 度 以 下 とい う共 鳴 幅 の 小 さ さ で あ っ た.こ
の 事 実 は 何 ら か の 選 択 規 則*2が 働
*2 反応 の フ ァ イ ン マ ン ダ イ ア グ ラ ム を描 い た と き ,ク
ォー ク線 が 途 中 で 切 断 す る 過 程 は反 応 率 が
小 さ い とい うOZI則(大 繋 が って い る.
久 保 ・Zweig・ 飯 塚)13)と 解 明 され た.QCDの
解 釈 ではグルー オ ンで
図1 (a) JP=0-擬
クォー クモ デ ル に よ る 各種 ハ ドロ ンの ク ォー ク構 成 要 素11)
ス カ ラ ー メ ソ ン,(b)
1-ベ
ク ト ル メ ソ ン,(a)(b)共SU(4)16重
上 か ら チ ャ ー ム 量 子 数(1,0,-1)の
面,ηc,J/ψ
す.(c)
項,(d)
1/2+バ
リ オ ンSU(4)20重
ム 量 子 数(0,1,2,3)の
面,最
い て い る こ と を 意 味 し,J/ψ
下 面 がSU(3)8重
3/2+バ
ク ォー ク の 存 在 は,レ た,弱
束 縛 状 態)の
構15)等 に よ っ て も そ の 存 在 が 予 言 さ れ,し 予 想 さ れ て い た.続
よ び そ の 崩 壊 スペ ク トル は,ポ
ジ ト ロニ ウ
示 す 励 起 状 態 に そ っ く りで あ り,チ ャ ー モ ニ ウ ム と名 付 け
られ た.違 い は ポ ジ トロニ ウ ム の エ ネ ル ギ ー 準 位 差 が ∼5eVで の そ れ は ∼500MeVと1億
の束 縛状 態 で
プ トン ・バ リオ ン 対 応 な ど か ら牧 や
質 量 差 か ら質 量 は ほ ぼ1.5GeVと
い て 発 見 さ れ た ψ(2S),m〓3686お ム(e-e+の
項 を 表 す.
い 相 互 作 用 に お い て ス トレ ン ジ ネ ス の 変 わ る 中 性
カ レ ン トの 不 在 を説 明 す る た め のGIM機 ソ ンK10−K20の
項 を 表
項 で下 か らチ ャ ー
は た だ ち に新 し い チ ャ ー ム ク ォ ー クcc対
原 の4元
か も中 性Kメ
リオ ン のSU(4)20重
項,10重
あ る と決 定 さ れ た.第4の 模 型14)と し て,ま
項 を 表 し,
を 除 く 中 央 面 の メ ソ ン がSU(3)9重
倍 も大 き きか っ た こ と で あ る.こ
あ っ た の に 対 し,J/ψ れ は ス ピ ン1/2を
持つ
2粒 子 間 に ク ー ロ ン ポ テ ン シ ャ ル に 類 似 の しか し遙 か に 強 い 力 が 働 い て 束 縛 状 態 が で きて い る こ と を示 す. 閉 じ こ め
チ ャー モ ニ ウム の ス ペ ク トル は純 粋 の クー ロ ン力 で な くポ テ ン シ ャ ルが
(2) とい う構 造 を持 つ と し て 良 く再 現 で き る.距
離 に 比 例 す る ポ テ ン シ ャ ル はM2∝Jの
回 転 励 起 状 態 を 作 る の で,レ ッ ジ ェ 軌 跡 を 再 現 す る こ と が で き る.デ ー タ か らa ∼0 .1GeV×10-13cm,b∼0.7GeV/10-13cmと 決 め ら れ た.ク ォ ー ク 間 に は 強 い 力 が 働 い て い る こ と,し
か も そ の 力 の 強 さ は 距 離 が 大 き くな っ て も一 定 で ク ォー ク を 引
き離 す こ とが で き な い紐 構 造 を持 つ こ と を意 味 す る.ク に は 無 限 大 の エ ネ ル ギー を 必 要 とす る の で,紐
ォ ー ク を単 独 に 取 り 出す た め
が 引 き延 ば さ れ る と真 空 か らqq対
作 り紐 が ち ぎ れ て 多 数 の ハ ドロ ン を生 成 す る 方 が エ ネ ル ギ ー 的 に 得 で あ る.実 述 べ る よ うに パ ー トンが ジ ェ ッ トと し て 観 測 され る こ とか ら も,ク 取 り出せ な い と い う"ク ォ ー クの 閉 じこ め"説 ク ォ ー ク は6個
に は 第5の
チ ャー モ ニ ウ ム の 発 見 に 続 い て,チ
ォ ー ク を単 独 で は
ャ ー ム クォ ー ク を含 み,チ
た が,こ
称 性 構 造 を 充 た す こ と も明 ら か に な っ た(図1参 ボ トム ク ォ ー ク(b),1998年
際次 に
が 生 ま れ た.
ャ ー ム 量 子 数 を 陽 に 持 つ チ ャ ー ム メ ソ ン や バ リオ ンが 次 々 と発 見 さ れ,そ ル がSU(4)対
を
に は 第6の
照).次
の スペ ク ト い で1978年
ト ップ ク ォ ー ク(t)が
発 見 され
れ は 標 準 理 論 が 定 着 し た 後 の 話 で あ る.
18.3.3 パ ー トン モ デ ル ハ ドロ ン の 透 視
ハ ドロ ンの 分 類 学 に よ る基 本 粒 子 の 追 求 と平 行 し て,ハ
の 内 部 構 造 を 調 べ る動 力 学 的研 究 も行 わ れ た.構
ドロ ン
造 を 調 べ る た め の プ ロー ブ と して ま
ず 使 わ れ た の は 電 子 で あ っ た.電 磁 気 相 互 作 用 はQEDに
よ り記 述 で き る か ら,電 子
と核 子 の 散 乱 反 応 式 は核 子 内 の 電 荷 分 布 と磁 気 能 率 分 布 が 判 れ ば 書 き下 ろ せ る.反 断 面 積 の 式 の 中 に は,標
応
的 の 広 が りを表 す 分 布 関 数 が フー リエ 変 換 され た 形 状 因 子 と
い う形 で 入 る の で,
(3) 電 子 ・核 子 弾 性 散 乱 の 断 面 積 を調 べ る こ と に よ り, る*3.も
までの分 布 が 調べ られ
し,分 布 の 中 心 に 電 荷 λ の 点 粒 子 が あ れ ば 形 状 因 子 は どん な にQ2を
して も,λ の 値 以 下 に は 下 が ら な い.す
な わ ち,
定 数>は
大 き く
点 電荷 の存在 を
意 味 す る. ハ ド ロ ン の 階 層 構 造 デ ー タ は,核
1960年 代 前 半 の ホ フ シ ュ タ ッ タ ー 等 に よ る 弾 性 散 乱 実 験
子 が ∼10-13cm程
あ る こ と を示 し た.核
度 に 広 が っ て い て 堅 い 芯 を持 た な い 柔 ら か な 分 布 で
子 の 深 奥 構 造 を調 べ る た め にQ2を
優 勢 に な る.非 弾 性 散 乱 の 場 合 は 自 由度 が 一 つ 増 え て,形 *3 式(3)を
見 れ ば ,│q・r│>1の ル ギ ー の 加 速 器 は ∼1TeVな べ る能 力 が あ る こ と に な る.
大 き くす る と非 弾 性 散 乱 が 状 因 子(こ
の 場合 は構造 関
部 分 は振 動 が 激 し く積 分 に寄 与 し な い.ち な み に,現 在 最 高 エ ネ の で,お お ざ っ ぱ に 言 っ てr∼10-16cmま で の 小 さ な構 造 体 を調
数 と い う言 葉 を 使 う)はQ2とν=Ei-Efの 的 な 点 粒 子(パ
ー トン)の
関 数 と な る.標
集 合 体 で あ れ ば,そ
的 ハ ドロ ン が よ り基 本
う して パ ー トン 同 士 の 相 互 作 用 が 緩 け
れ ば パ ー トン は核 子 内 で 自 由 に動 い て い る と み なせ る の で,eN非
弾性 散 乱 はパー ト
ン との 弾 性 散 乱 の和 で 書 き 直 せ る.こ の 場 合 構 造 関 数 は
の み の関 数 とな
る(ブ
核 子 の運 動 量 で
ジ ョ ル ケ ン ス ケ ー リ ン グ16)).xは
規 格 化 し た)運 (1969)は
パ ー トン の 核 子 内 で の(親
動 量 を 表 す.MIT/SLACグ
ル ー プ に よ る ス ケ ー リ ン グ の 発 見17)
ハ ドロ ン に 階 層 構 造 が あ る こ と を示 し,長 い 間低 迷 して い た ハ ドロ ン 力 学
に 発 想 転 換 の 契 機 を与 え た 点 で 画 期 的 で あ っ た. パ ー トンは ク ォー ク CERNのSPS(共
1972年
に は フ ェ ル ミ研 究 所 の 陽 子 加 速 器,1976年
に ビー ム エ ネ ル ギ ー400GeV)が
ー ニ ュ ー ト リ ノ実 験 が 始 ま り ,νN深
動 き 出 して,本 格 的 な 高 エ ネ ル ギ
非 弾 性 散 乱 デ ー タ をeN深
パ ー トン の 性 質 を決 め る こ とが で き た.デ
には
非 弾 性 散 乱 と比 較 して
ー タ は 両 者 が 全 く同 じパ ー トン分 布 を与 え
る こ と を示 し18),パー トン モ デ ル の 正 当 性 を再 確 認 し た上,パ ー トン が ス ピ ン1/2の 粒 子 で あ る こ と,ク
ォ ー ク モ デ ル の 予 言 す る半 端 電 荷 を持 つ こ と,そ
電 磁 相 互 作 用 も弱 い 相 互 作 用 も行 わ な い(つ る こ と も示 し て い た.こ
点
して 核 子 内 に は
ま り強 い相 互 作 用 の み を持 つ)成
分があ
れ は グ ル ー オ ンの 存 在 を 意 味 す る.パ ー トン とは ク ォ ー ク と
グル ー オ ン で あ る こ とが 深 非 弾 性 散 乱 に よ り証 明 され た の で あ る.こ
う して ク ォー ク
モ デ ル は ハ ドロ ン の ス ペ ク トル を再 現 し,動 力 学 的 に も点 粒 子 と し て の構 造 を 持 つ こ とが 証 明 さ れ,ハ
ドロ ン は 素 粒 子 と して の 位 置 を ク ォー ク に 譲 り渡 し た の で あ っ た.
パ ー トン の ジ ェ ッ ト化
パ ー トン モ デ ル が 確 立 した か ら と 言 っ て,パ
り 出 して 見 る こ とが で き た わ け で は な い.実
ー トン を 取
験 的 に はパ ー トン が あ るべ き所 に は 常 に
多 量 の ハ ドロ ン(主 に π)が 存 在 した だ け で あ っ た が,そ の 集 団 的 行 動 は 一 つ の 親 パ ー トンか ら 多 数 の π メ ソ ン が 派 生 し た と す る ジ ェ ッ ト構 造 で 良 く説 明 で き る もの で あ っ た.ク
ォ ー ク が ジ ェ ッ ト と し て 現 れ る こ と の 確 証 は,1975年SLACのPEP電
子 コ ラ イ ダ ー に お け る実 験 で,2ジ
ェ ッ トが ス ピ ン1/2の2体
反 応 に 期 待 さ れ る角 分
布 を再 現 し た こ と で得 ら れ た19).後 に グル ー オ ン も ジ ェ ッ トと して 現 れ る こ と が 示 さ れ,1979年
ドイ ツ のPETRAで 18.4
18.4.1 普 遍V-A型 フ ェ ル ミ相 互 作 用
そ の 存 在 が 確 認 さ れ た. 弱 い 相 互 作 用(1934-1967)
相互作 用 弱 い 相 互 作 用 は ま ず β 崩 壊 で 発 見 さ れ た.β 崩 壊 の 特 徴 は
同 時 に 発 見 さ れ た γ崩 壊 や α崩 壊 と違 っ て β 線(放
出 電 子)の
エ ネ ル ギー スペ ク ト
ル が 連 続 で あ り,エ ネ ル ギ ー 保 存 則 を破 っ て い る よ う に 見 え た こ と で あ る.パ こ の 困 難 を解 決 す る た め,ま
た 同 時 に ス ピ ン と統 計 の 困 難 を 救 う た め に1930年
子 と共 に ニ ュ ー ト リ ノが 放 出 さ れ る と提 案 した.実
ウ リは に電
験 に 整 合 す る た め に は ニ ュ ー トリ
ノ は ス ピ ン1/2を
持 ち,電
気 的 に 中 性 で質 量 が ほ ぼ ゼ ロ,そ
ば な ら な か っ た.フ
ェ ル ミは1934年
理 論 を 提 唱 し た.陽
子(p)と
し て 貫 通 力 が 強 くな け れ
に 電 磁 相 互 作 用 を モ デ ル と して 弱 い 相 互 作 用 の
中 性 子(n)が
カ レ ン トを 作 り,電 子(e)と
ノ(ν)の 作 る カ レ ン ト と結 合 す る と して,相
ニュ ー トリ
互 作 用 は カ レ ン ト ・カ レ ン ト型4フ
ェ
ル ミオ ン相 互 作 用 で 表 さ れ る.
(4) h.c.は エ ル ミー ト共 役 項 で あ る.こ
こ に 現 れ る カ レ ン ト(以 下 弱 カ レ ン ト と言 う)は
相 互 作 用 に よ り電 荷 を 変 え る の で 荷 電 カ レ ン トと呼 ば れ る.ま 移 の よ う に 書 い た が,実
際 は 原 子 核 間 の 遷 移 で あ る.フ
ル ギ ー スペ ク トル を説 明 す る こ と に 成 功 し た.さ
ク トル 型(V)の
ル 型(T),軸
ス カ ラ ー 型(P)の
に 対 応 で き る よ う に し た.1935∼1957年
験 が 困 難 で 混 乱 し て い た.
パ リテ ィ 非 保 存
1957年
カ ラ ー 型(S),テ
相 互 作 用 を含 め,各
の パ リテ ィ 非 保 存 の 発 見20)は,対
ン ソ
種 β崩壊
称 性 に対 す る常 識 を
互 作 用 も パ リテ ィ非 保 存 項 を含 め る よ う拡 張 さ れ た が,こ
れ を 境 に実 験 デ ー タは 急 速 に 収 束 し,S,Tは ー ト リ ノ の ヘ リ シ テ ィ も測 定 され ,カ な おP型
他 に,ス
の 間 は どの 相 互 作 用 が 効 くか を 決 め る作 業
が 主 で あ っ た が,実
覆 した 大 事 件 で あ っ た.相
ェ ル ミ理 論 は β 崩 壊 の エ ネ
らに ロー レ ン ツ不 変 性 を 充 た す 一 般
的 な ラ グ ラ ン ジ ア ン に 拡 張 し て,ベ 性 ベ ク トル 型(A),擬
た 中 性 子 ・陽 子 間 の 遷
寄 与 し な い こ とが 判 っ た.電
イ ラ リテ ィL状
子やニュ
態*4に あ る こ と が 判 明 した.
相 互 作 用 は 原 子 核 で は 許 容 遷 移 が 無 く,後 に π→ μνμ,eνe崩 壊 の 比 較 でP
も無 い こ とが 確 か め ら れ た. CVC仮
説
ミュ ー オ ン崩 壊 も また フ ェ ル ミ理 論 で 記 述 で き,し か も結 合 の 強 さ
が β 崩 壊 に 等 し い こ とが 判 っ た.ミ
ュ ー オ ン は そ れ 自体 基 本 粒 子 で 強 い 相 互 作 用 を
し な い か ら結 合 定 数 は 最 低 次 の も の で あ る.一 方,核
子 は 強 い 相 互 作 用 をす るか ら 中
間 状 態 に π な ど を 含 み 高 次 の 補 正 が 付 け 加 わ る.最 低 次 で 同 じで あ っ て も 高 次 補 正 後 も両 者 が 同 じ で あ る 必 要 は な い.実
際 軸 性 ベ ク トル カ レ ン トの 結 合 定 数 に は26%
の 高 次 補 正 効 果 が 付 加 され て い る.こ れ を説 明 す る た め に 弱 カ レ ン トの ベ ク トル 部 分 は 保 存 カ レ ン ト(CVC=Conserved され た.核
Vector
Current)と
い う考 え21)が1958年
に提 唱
子 の 弱 カ レ ン トjWの ベ ク トル 部 分 と電 磁 カ レ ン トjEMを
(5) (6)
*4 カ イ ラ ル演 算 子 γ5はヘ リシ テ ィの 相 対論 的 拡 張 概 念 で,正 表 され る.カ
イ ラ リテ ィLの
負 の 固有 状 態 は
粒 子 は,粒 子 速 度 を β とす る とヘ リ シ テ ィ
反粒 子 はヘ リシ テ ィh〓 β を持 つ.
と
と書 き換 え る と,jEMの
式 は 西 島-ゲ ル マ ン の 法 則Q=Y/2+I3を
再 現 す る.弱
カレ
ン トの ベ ク トル 部 分 と電 磁 カ レ ン トの ア イ ソ ス ピ ン部 分 は 同 じ ア イ ソ ス ピ ン カ レ ン ト:NγμτNに 属 す る兄 弟 と 見 な せ る.も
し そ う な ら ば 高 次 効 果 と して 電 磁 カ レ ン ト
に 誘 起 され る 異 常 磁 気 能 率 項 が 弱 カ レ ン トに も現 れ る(弱 磁 気 能 率)は 1963年
に 実 験 で 確 か め られ22)CVC仮
え ば,p→n変
換 はu→d変
説 の 正 し い こ とが 判 っ た.ク
換 と な るか ら,弱
ず で あ る が,
ォ ー クモ デ ル を 使
い 相 互 作 用 は ク ォ ー ク レベ ル で は
(7) に よ っ て 統 一 的 に 記 述 で き る こ と に な る.こ 世 代 の謎
れ を 普 遍V-A型
ミ ュー オ ン崩 壊:
で2個
る こ とは 電 子 の エ ネ ル ギー ス ペ ク トル か ら判 るが,2種
相 互 作 用 と い う.
のニ ュー トリノが放 出 され
類 の ニ ュー ト リノ が あ る と疑
う き っ か け に な っ た の は,μ →eγ 反 応 が 存 在 し な い と 言 う事 実 で あ っ た.二
つのニ
ュ ー ト リノ が 同 じ な らば,ニ
ュー ト リノ を仲 介 して μ→e遷 移 が 可 能 な は ず だ か ら で
あ る.1962年
お け る最 初 の 加 速 器 ニ ュ ー ト リノ 実 験23)で 確 か に νeと
に は,BNLに
νμは 違 う こ とが 証 明 さ れ た.ミ の 性 質 を持 っ て い る が,こ
ュ ー オ ン は 重 い 電 子 と 呼 ば れ る く らい に 電 子 と共 通
れ に よ り(νe, e-)と(ν
の 香 り)を 持 つ こ と が 判 っ た の で あ る.こ 未 だ に解 明 さ れ て い な い.そ 1980年 代 後 半 に はLEPに
μ, μ-)は 違 う量 子 数(レ
プ トン
の 違 い は 世 代 の 謎 と して 現 在 に 引 き継 が れ
の 後,1975年
に は 第3世
お け る(e-e+→Z→
代 の τ レプ トン が 発 見 さ れ,
Σ νiνi)反応 で,3種
類 の そ し て 多分3
種 類 だ け の ニ ュ ー ト リ ノが 存 在 す る こ と が確 認 さ れ た.ク
ォ ー ク も3世 代 存 在 す る.
宇 宙 物 質 の ほ と ん ど は 第 一 世 代 で尽 きて お り,第2第3世
代 は 第 一 世 代 の 繰 り返 し で
しか な く世 代 の 謎 は こ こ に も存 在 す る. ニ ュ ー ト リノ 質 量 い た が,正
質 量 は β 崩 壊 の スペ ク トル か ら ゼ ロ に 近 い と は 予 想 さ れ て
確 に ゼ ロ と思 わ れ る よ う に な っ た の は,パ
リテ ィ 非 保 存 発 見 に よ り2成 分
ワ イ ル ニ ュ ー ト リ ノ の 可 能 性 が 高 く な っ て か ら で あ る.1960年 質 量 測 定 の 試 み は 精 力 的 に 行 わ れ た が,常 た の で 通 常 は ゼ ロ に 設 定 す る.ニ す るが,こ
ス トレ ン ジ 粒 子 の 崩 壊
う.(2)崩 お よび
種 々 の 反 応 デ ー タ か ら,ス お よ び
えば,
あ る;こ
参 照 さ れ た い.
トレ ン ジ粒 子 の 崩 壊 に 共 通 す
則 に 従 い,ス
壊 相 互 作 用 の 強 さ は 約1/20で 則 とは,例
得ら れ なか っ
ュ ー ト リ ノ質 量 問 題 は い ろ い ろ 興 味 あ る 話 題 を提 供
れ に 関 して は 梶 田 氏 お よ び 牧 氏 の 解 説(第12,17章)を
る 特 徴 は,(1)ΔS=ΔQ則
代 以 降ニ ュー トリノ
に実験 精度 以下 の質 量値 し
ペ ク トル はV-A型
に合
とが 明 らか に な っ た.ΔS=ΔQ則 の よ うに ハ ドロ ン 部 分 が,反
応の
前 後 で ス ト レ ン ジ ネ ス の 増減 と電 荷 の 増 減 が 一 致 し て い る こ と,ア イ ソ ス ピ ン が1/2 変 化 し て い る こ と を 意 味 す る.こ
れ ら の 規 則 は,弱
カ レ ン ト の ク ォ ー ク部 分 に
を付 加 す れ ば 導 け る.
カ ビ ボ 回 転
カ ビボ24)は,1963年
に ク ォー ク 弱 カ レ ン トを,
の 形 に す る こ と を提 案 し た.そ θc,Gs=GFsinθcと
書 き換 え て,弱
うす る とGμ=GF,Gβ=GFcos
い相 互 作 用 を一 つ の 普 遍 結 合 定 数GFで
る こ と が 可 能 とな り,か つ 弱 い相 互 作 用 反 応 に お け る 良 い 量 子 状 態 が,質 d,sで
は な く,d',s'=-dsinθc+scosθcで
い な ら ば,ミ
量 固有状 態
の考 え方 が 正 し
ュー オ ン 崩 壊 の 結 合 定 数 と 原 子 核 β 崩 壊 の 結 合 定 数 は わ ず か な が ら違
う は ず で あ る.実 際,Gμ,Gβ れ,カ
あ る こ と も判 る.こ
代 表 させ
の 精 密 測 定 に よ っ て 両 者 に2%の
差 が あ る こ とが 示 さ
ビ ボ 回 転 の 正 し さ が 証 明 さ れ た.
小 林-益 川 行 列 混 合 を表 す.3世 角 と1個
カ ビ ボ 回 転 は2世
代 に 拡 張 す る と小 林-益 川 行 列25)と な り,パ ラ メ タ ー は3個
の位 相 に 増 え る.こ
非 保 存 は クォー ク が3世 現 象 は1964年
代 の ク ォ ー ク2重 項(u,d'),(c,s')間
の 位 相 はCP非
保 存 を 引 き起 こ す の で,小
代 あ れ ば 可 能 と1973年
に 発 見 さ れ た が26),パ
18.4.2
保存
れ て い た の に 対 し,破 れ の 大
き さ が ∼10-3と 小 さ く実 験 が 困 難 で あ り,し か も数 例 のK稀 観 測 さ れ な か っ た た め モ デ ル の 検 証 は21世
の 混合
林-益 川 はCP
に 提 案 し た の で あ っ た.CP非
リテ ィ が100%破
の
崩 壊 反 応 に お い て しか
紀 に持 ち 越 さ れ た.
ゲ ー ジ理 論 へ の 道
フ ェ ル ミ理 論 の 整 形
V-A型
相 互 作 用 は,カ
に 対 す る 不 変 性 か ら も導 くこ とが で き る.カ
イ ラ ル 変 換:
イ ラ ル 対 称 性 は フ ェ ル ミオ ン の 質 量 が ゼ
ロ で あ る な ら ば 厳 密 に成 立 す る対 称 性 で あ り,カ イ ラ リテ ィが 正 と負 の 世 界 は分 離 し て 独 立 とな る.式(7)に
よれ ば 弱 い 相 互 作 用 は カ イ ラ リテ ィ 負 の ψLに の み 働 くか ら,
ψLの み が 弱 い 相 互 作 用 を 引 き起 こ す"弱 トル 型 とな る.ま
た,弱
は さ れ る もの の,本
荷"を
持 つ と考 え れ ば,弱
い相 互 作 用 は 現 象 論 的 に は4フ
カ レ ン トはベ ク
ェ ル ミ型 相 互 作 用 で 良 く再 現
来 は 湯 川 理 論 と同 じ く力 の 媒 介 粒 子(W±)を
の で は な い か と い う考 え方 は 古 くか らあ っ た(リ ー;1949).Wが
通 して 実 現 さ れ る ψLに の み結 合 し,
相 互 作 用 ラ グ ラ ン ジ ア ンが
(8) と書 け るな らば,W粒
子交換 反応 に よ る β崩壊 行 列要素 は (9)
と な る の で, き る.こ
うす る と,弱
と置 け ば,4フ い 相 互 作 用 が 弱 い の はmwが
は 必 ず し も小 さ くな く,gw∼eと
ェ ル ミ相 互 作 用 を 再 現 で
大 き い か ら で あ っ て,結
い う考 え方 が で き る.さ
合定数
ら に一 歩 踏 み 込 ん で,W0
な る 中性 ボ ソ ン が 存 在 しア イ ソ ス ピ ン不 変 性 が 成 立 して い る とす る な らば,
(10) (11) と書 け る の で,SU(2)対
称 性 を 充 た す 非 ア ー ベ ル ゲ ー ジ 理 論 の 相 互 作 用 と 同 じ形 を
実 現 し,理 論 的 に 端 正 な形 と な る.形 せ ざ る を 得 な い が,未
を整 え る代 償 と して 中性 の ゲ ー ジ ボ ソ ン を 導 入
発 見 な だ け で 存 在 す る とみ な す .た
だ し,Wの
質 量 が 大 きい
の で この ま ま で は ゲ ー ジ粒 子 と して の 資 格 は な い .ゲ ー ジ ボ ソ ン の 質 量 問 題 は 次 に述 べ る ヒ ッ グ ス機 構 を と り入 れ る こ と で 解 決 す る が,電
磁 相 互 作 用 と整 合 さ せ る ため に
は も う少 し工 夫 が 必 要 で あ る. 18.5
ゲ ー ジ 理 論 の 進 展(1954-1971)
ゲ ー ジ理 論 は 最 初 ワ イ ル に よ り1918年 ジ 不 変 性 を 充 た し,1949年 で あ る.ゲ
に 提 案 さ れ た .マ
頃 に 完 成 さ れ たQEDはU(1)対
クスウ ェル 方程 式 はゲー 称 性 に 基 づ く ゲ ー ジ理 論
ー ジ場 が 質 量 を持 って も,ゲ ー ジ 不 変 性 を保 つ 処 方 が あ る こ と を理 解 す る
前 に,1954年
に ヤ ン と ミル ズ に よ り定 式 化 さ れ た 非 ア ー ベ ル ゲ ー ジ 理 論1)の 骨 格 を
さ ら っ て お こ う. 18.5.1 ゲ ー ジ 場 の 幾 何 学 的 解 釈 アー ベ ル ゲ ー ジ 理 論
ア ー ベ ル ゲ ー ジ理 論 で は,場
∂μψ)に よ っ て 記 述 さ れ,U(1)変
換:ψ →exp(-iα)ψ
的 ゲ ー ジ 不 変 性 を 充 た す と い い,保 き る.こ
ψ が ラ グ ラ ン ジ ア ン £(ψ, に 対 して 不 変 で あ る と き大 域
存 量(一
般 的 に 電荷 と い う こ とに す る)が 定 義 で
こ で 微 分 ∂μをDμ=∂ μ+iqAμ(x)に
置 き 換 え て ベ ク トル 場Aμ を 導 入 す る
と,£(ψ(x),Dμ
ψ(x))は,局
所 ゲー ジ変 換
(12) に 対 し不 変 で あ る.こ と い い,導
う して 相 互 作 用 を導 入 す る こ と をU(1)対
入 した ベ ク トル ボ ソ ン を ゲ ー ジ 粒 子 と い う.qは
ゲ ー ジ ボ ソ ン と場 ψ との 結 合 の 強 さ を表 す.ゲ
ー ジ場Aμ
称性 をゲー ジ化す る 場 ψの 持 つ 電 荷 で あ り
の充 たす運 動方程 式 は質量
項 を持 た な い の で ゲ ー ジ場 が 媒 介 す る 力 は 長 距 離 力 で あ る. 電 荷 は 空 間 を 曲 げ る
ゲ ー ジ化 手 続 き を 直 観 的 に 理 解 す る た め に,電 荷 を持 つ 場
ψ を 時 空 と 内部 空 間 を合 わせ た 超 空 間 の ベ ク トル とみ な し,重 力 の 幾 何 学 的 解 釈 に な ら っ て こ の 超 空 間 が 電 荷 の 存 在 に よ り曲 が る と考 え よ う*5.曲 が っ た 空 間 の 幾 何 学 は *5 この考 え方 は
,最 初 に5次 元 時 空 の 重 力 を考 え,第5の 座 標 が巻 き込 ま れ て 小 さ な 円 に な り閉 じて い る と す る と,一 般 相 対 性 理 論 か ら電 磁 場 を 導 け る と い う カ ル ー ツ ァ-ク ラ イ ン理 論 (1921)に
て,近
ルー ツ が あ る.重 力 場 も ゲー ジ理 論 の 一 種 で あ る との 内 山 の 指 摘27)(1956)と
年 で は超 対 称 性 を4+n次
作 る 試 み に 発 展 して い る.
元 空 間 に拡 張 して ゲ ー ジ 化 す る こ と に より,全
相 まっ
て の統 一 理 論 を
ベ ク トルVを
図2 閉 曲 線A→B→C→Aに
沿 っ て平 行 移 動 す れ ば,平
な 空 間(左 図)で は ベ ク トル が 元 に 戻 るが,曲 元 に 戻 ら な い.こ
の 例 で は 余 剰 角 π/2を 閉 曲 線 で 囲 ん だ 面 積 πR2/2
で割 れ ば 空 間 の 曲率1/R2を
微 分 幾 何 学 に よ り記 述 さ れ る.ベ
得 る.
ク トル の 微 分 演 算 は 近 傍 の2点xとx+dxに
る ベ ク トル の 差 を 計 算 す る こ とで あ る が,曲 をx+dxま
坦
が っ た 空 間(右 図)で は
が っ た 空 間 で はx点
で 平 行 移 動 した ベ ク トル と,x+dx地
おけ
に お け るベ ク トル
点 で のベ ク トル との 差 を と ら な け
れ ば な ら な い(共
変 微 分).曲
は接 続 と呼 び,空
間 の 性 質 と座 標 系 を指 定 す れ ば 計 算 で き る量 で あ る.平 坦 空 間 の場
合,接
が っ た 空 間 で の 平 行 移 動 を指 定 す る量 を微 分 幾 何 学 で
続 は 全 領 域 で ゼ ロ で あ るか,も
カ ル ト座 標 系 の 存 在).曲
た と きベ ク トル の 向 き が 一 致 せ ず(余 間 の 曲 率 を表 す(図2).ア
し くは適 当 な 座 標 変 換 に よ りゼ ロ に で き る(デ
が っ た 空 間 で は ベ ク トル を 閉 曲 線 上 で 平 行 移 動 し元 に 戻 っ 剰 角),余
剰角 を閉 回路 の 面積 で割 っ た量が 空
イ ン シュ タ インの 重 力方程 式 は 時空 に お け る物質 分 布 が
曲率 を決 め る とい う式 で あ る.物
質 が 存 在 す る と空 間 を 曲 げ る の で,そ
粒 子 や 光 の 経 路 が 曲 げ ら れ る.平
坦 空 間 で の粒 子(相
は慣 性 の 法 則 に よ り与 え ら れ,dv/dτ=0と
こを通過す る
互 作 用 の な い 自 由粒 子)の
書 くこ とが で き,曲
の 法 則 は 微 分 を 共 変 微 分 で 置 き換 え れ ば 得 られ る(等 価 原 理).以
経路
が っ た空 間 での慣 性 上 が 物 質間 の重 力
相 互 作 用 とい う 力 学 現 象 を 空 間 の 幾 何 学 に 置 き換 え る 手 続 き で あ る.
電 磁 場 は 空 間 の 曲 率
電磁 相 互 作 用 の場 合,荷 電 物 質 場 ψの 平 行 移 動 は接 続
Aμ(x)を 用 い て,
(13) と定 義 で き る.ゲ ー ジ変 換 は 内部 空 間にお け る座 標変 換 に対応づ け られ る.内 部 空間 のベ ク トル ψを時 空 内 の微 少 閉 回路 に沿 っ て平行 移動 して位 相 角 の ずれ を計算 す る と (14)
と な る の で 電 磁 場Fμν は 超 空 間 の 曲 率 で あ る こ とが 判 る.従
っ てマ クス ウ ェ ル方程
式 は 空 間 の 電 荷 分 布 が 曲率 を決 め る方 程 式 と な り,曲 が っ た空 間(電 間)で
の 荷 電 物 質 場 の 方 程 式 は,平
ア ン £(ψ(x),∂ μψ(x))の
坦 空 間(電
荷 の 無 い 空 間)で
荷 の存在 す る空
の 自由 場 ラ グ ラ ン ジ
微 分 を 共 変 微 分 で 置 き換 え た £(ψ(x),Dμψ(x))と
な
り,ゲ ー ジ 化 の 処 方 に一 致 す る. 非 ア ー ベ ル 場 ク トルΨ
非 ア ー ベ ル ゲ ー ジ理 論 で は 内 部 空 間 の 次 元 が 増 え,場
と な る.ゲ ー ジ 変 換 は 行 列 変 換 と な る の で2回
り異 な る 変 換 と な るが,そ
ψは列ベ
続 けて行 う変換 は 順序 に よ
れ 以 外 の 手 続 き は 同 じで あ る.式(13)と
同 じよ うに次 式
で 平 行 移 動 を定 義 す る.
(15) tは 非 ア ー ベ ル 対 称 群 の 生 成 演 算 子 で あ る.SU(2)の り,SU(3)で
は ゲ ル マ ン の λ/2行 列 と な る.従
個,SU(3)で
は8個
式(14)に
場 合tは
パ ウ リ行 列 τ/2で あ
っ て ゲ ー ジ ボ ソ ン はSU(2)で
現 れ る.共 変 微 分 は(Dμ=∂u+igW・t)で
な ら っ て Ψ を微 少 閉 回 路 で 平 行 移 動 す れ ば,ゲ
は3
与 え ら れ る.再
び,
ー ジ場Fμν の 表 式 が 決 め ら
れ る.
(16) 非 ア ー ベ ル ゲ ー ジ場 も ま た 質 量 項 を 持 た な い が,ア
ー ベ ル場 と異 な る と こ ろ は,非
ア
ー ベ ル ゲ ー ジ場 が 非 線 形 で あ り,ゲ ー ジ 場 が さ らに ゲ ー ジ場 を生 み 出 す こ とが で き る とい う こ とで あ る.ゲ ー ジ 場 を 生 み 出 す 源 を 電 荷 と呼 ぶ な らば,ゲ
ー ジ場 自身 が 電 荷
を持 つ が ア ー ベ ル 場 の フ ォ トン は 電 荷 を 持 た な い. 18.5.2 対 称 性 の 自発 的破 れ 南 部-ゴ ー ル ドス トー ン ボ ソ ン
素 粒 子 の 振 る 舞 い を解 明 す る 歴 史 は 素 粒 子 の 持
つ 対 称 性 を 発 見 す る 歴 史 で あ る.し
か し,対 称 性 が 整 然 と あ る い は 厳 密 に 自然 界 に 現
れ る こ と は まれ で あ り,大 抵 の 場 合 何 らか の不 規 則 性 を示 す.場 基 本 ラ グ ラ ン ジ ア ン に 織 り込 み,不
規 則 性 は,わ
の理論 で は対称 性 を
ず か で は あ るが 明 白 に 対 称 性 を破 る
摂 動 項 を付 加 し て 処 理 す る の が 伝 統 的 処 方 で あ っ た.こ
れ に 対 して,ラ
は 対 称 性 を 充 た す が,対
現 した 基 底 状 態(真
称 性 の 良 い状 態 は 不 安 定 で,実
対 称 性 が 破 れ て い る場 合,対 れ る場 合 は,質
グ ランジア ン 空)で
は
称 性 が 自発 的 に破 れ る とい う.連 続 対 称 性 が 自発 的 に 破
量 が ゼ ロ の 南 部-ゴ ー ル ドス トー ン ボ ソ ンが 発 生 す る28).あ る温 度 以
下 で は ス ピ ン の 方 向 が そ ろ い 回 転 対 称 性 を破 る強 磁 性 体 は 自発 的 対 称 性 の 破 れ(物
性
論 で は 相 転 移 と い う)の 例 で あ り,マ グ ノ ン が 南 部-ゴ ー ル ドス トー ン ボ ソ ン で あ る. 磁化 の方 向 は任 意 に選べ て基底 状 態 が縮 退 して い る ところ に 回転 対称 性 の 名 残 が あ る.場
の 理 論 で は 自 己相 互 作 用 を持 つ ス カ ラー 場(ヒ
よ う な 状 況 が 発 生 す る(図3).場
ッ グ ス 場)が
存在 す る ときこの
の 量子 論 で は 自由度 が 無 限大 なの で選 ば れ た真 空
は 他 の 選 ば れ な か っ た 真 空 に 移 行 す る こ と は で き な い.全
ての状 態は選 ば れた真 空か
(a) ポテ ン シ
(b)
図3
ゴー ル ドス トー ン定 理(対
ャ ル
空 とな るが,低
称 性 の 自発 的破 れ)
は,高
温 で は 対 称 的 で│φ│=0が
温 で は ポ テ ン シ ャ ル の 形 が 変 わ り
した真 空 状 態 とな る.φ1=v,φ2=0が ゴー ル ドス トー ン ボ ソ ン と な る.ゲ
真
が無限に縮 退
真 空 に な っ た とす る と,φ2が 南 部-
ー ジ場 と共 存 す る場 合 に と表 記 し直す と,真 空 の 選 択 は位 相(ゲ ー ジ)の 固 定 化 を意 味 す る こ
とが 判 る.
ら の励 起 状 態 で あ る の で 対 称 性 は 見 え な くな る.物 性 で は,種 境 に 急 速 に 変 化 す るの で 相 転 移 の 発 生 が 判 るが,素
々 の特 性 が あ る 温 度 を
粒 子 集 合 体 の 温 度 を コ ン トロー ル
して 相 転 移 を起 こ させ る こ とは 非 常 に 困 難 で あ る*6.観
測 され る相転 移 の兆候 は錯 綜
して お り,自 発 的 対 称 性 の 破 れ の 本 質 を理 解 し て 初 め て 背 後 に 隠 れ て い る対 称 性 を 見 抜 くこ と が 可 能 に な っ た の で あ っ た. 真 空 の 相 転 移 場 の 量 子 論 に 初 め て 自発 的 対 称 性 の 破 れ を取 り入 れ た の は,南 部 -ジ ョナ ラ ジ ニ ヨ29)(1961)で あ る.カ イ ラ ル 不 変 性 が 破 れ る と フ ェ ル ミオ ン対 が 凝 縮 し π メ ソ ン が 現 れ る こ と を 示 し,後 た.し
か し,長 距 離 力(ゲ
ー ジ場)が
に ゴー ル ドス トー ン が 一 般 の 場 合 に 定 式 化 し あ る と南 部-ゴ ー ル ドス トー ン ボ ソ ン は 現 れ ず,
代 わ りに ゲ ー ジ ボ ソ ン が 質 量 を 獲 得 す る(ヒ
ッ グ ス機 構30);1964).ゲ
ー ジ場 と結 合
し た ヒ ッ グ ス 場 の 充 た す ラ グ ラ ン ジ ア ン は,超 伝 導 に お い て秩 序 パ ラ メ ター(ク ー 対 の 波 動 関 数)の
ーパ
充 た す ギ ン ズ ブ ル グ-ラ ン ダ ウ の 自 由 エ ネ ル ギー 方 程 式 と 同 じ形
を し て い る.高 温 で は クー パ ー 対 が 存 在 せ ず 臨 界 温 度 よ り下 が る と クー パ ー 対 が 大 量 発 生 して 凝 縮 し た状 態 が 基 底 状 態 と な る.こ 果 が 働 い て,磁 じ る.フ
の超 伝 導 相 で は クー パ ー 対 に よ る 遮 蔽 効
力 線 は 超 伝 導 体 に わ ず か し か 進 入 で き な い と い うマ イ ス ナ ー 効 果 が 生
ォ トン が 質 量 を 獲 得 し た の で あ る.こ
値< φ>=vは
の事 例 か ら ヒ ッグ ス場 の 真 空 期 待
ボ ー ス-ア イ ン シ ュ タ イ ン凝 縮 体 を表 す こ とが 判 る.ボ
巨 視 的 な 量 子 状 態 で あ る が,全 *6 重 イ オ ン を衝 突 させ て ,ク 進 行 中 で あ る.
ー ス凝 縮 体 は
空 間 に 広 が っ て い て 粒 子 と して は 観 測 さ れ な い と言 う
ォー ク グ ル ー オ ン プ ラ ズマ 相 を 作 る試 み が,現
在BNLのRHICで
意 味 で 古 典 的 な 場 で あ る.高 温 で は 真 空 は ゲ ー ジ対 称 性 を 充 た し ゲー ジ粒 子 は ゼ ロ質 量 で あ る が,臨
界 温 度 以 下 に な る と ヒ ッ グ ス場 が 真 空 期 待 値 を獲 得 して(凝
対 称 性 が 自発 的 に 破 れ(相
縮 して),
転 移 が 起 こ り),ゲ ー ジ ボ ソ ン が 質 量 を獲 得 す る.こ
ヒ ッ グ ス 場 自 身 も 自 己相 互 作 用 に よ っ て 質 量 を獲 得 す る.な お,自
の際
発 的 対 称 性 の破 れ
に伴 う真 空 の 選 択 は ゲ ー ジ の 固 定 化 を意 味 す る(図3). 隠 さ れ た 対 称 性
対 称 性 は 破 れ た の で は な く隠 さ れ た と言 うべ きで あ る.自 由 フ
ェ ル ミオ ン 場 の 方 程 式 を ゲ ー ジ化 し た ゲ ー ジ セ ク タ ー は,ゲ ー ジ ボ ソ ン は 質 量 を持 た な い .ヒ す.ゲ
ー ジ不変 性 を充 たすが ゲ
ッ グ ス場 とゲ ー ジ 場 の 結 合 も ゲ ー ジ不 変 性 を 充 た
ー ジ ボ ソ ン質 量 項 は 対 称 性 の 自発 的 破 れ に 伴 い ヒ ッ グ ス セ ク タ ー に 現 れ る が,
質 量 項 だ け を取 り出 し て ゲ ー ジセ ク ター に 付 加 し,残 す とゲ ー ジ不 変 性 は破 れ る.し か し,全
りの ヒ ッ グ ス セ ク タ ー を切 り離
ヒ ッ グ ス セ ク タ ー を 考 慮 す れ ば,ゲ
ー ジは 固
定 され る もの の 固 定 の 仕 方 に 自由 度 が あ り,ゲ ー ジ 不 変 性 は 充 た し て い る.通 常 は 物 理 的 錨 像 の 見 や す い ユ ニ タ リー(U)ゲ
ー ジが 使 わ れ る.し
た され て い れ ば 結 果 は ゲ ー ジ に よ ら な い.ト 考 え,対
左 は 左,右 (1961)で
は 右
あ り,ヒ
ア ー ベ ル ゲ ー ジ理 論 が 繰 り込 み
GWS理
論
弱 い相 互 作 用 と電 磁相 互 作 用 を結 び つ け た の は グ ラ シ ョ ウ
ッ グ ス 機 構 を取 り入 れ て ゲ ー ジ 理 論 に 仕 立 て た の が ワ イ ン バ ー グ
と サ ラ ム(1967-1968)で 証 さ れ て い る な らば,弱 あ るが,先
ージを
に 証 明 して31),ゲ ー ジ場 量 子 論 は 大 き な 転 機 を迎 え た. 18.6
で,電
・フー フ トは 計 算 の 容 易 なRゲ
称 性 が 自発 的 に破 れ る と否 と に 関 わ らず,非
可 能 で あ る こ と を1971年
か し,ゲ ー ジ 不 変 性 が 充
あ る32).ゲ ー ジ ボ ソ ン が 質 量 を持 っ て も ゲ ー ジ 不 変 性 が 保 い 相 互 作 用 はSU(2)対
称 性 を ゲ ー ジ 化 す る の が 最 も簡 単 で
に 述 べ た よ う に 電 磁 カ レ ン トの 中 に ア イ ソ ス ピ ン 成 分 が 混 入 して い る の
磁 相 互 作 用 と 無 関 係 に扱 う わ け に は行 か な い.し
か も,弱 い 相 互 作 用 は 負 の カ
イ ラ リテ ィ に の み 作 用 しパ リテ ィ を破 る が,電 磁 相 互 作 用 は パ リテ ィ を保 存 す る.そ こ で,電
磁 相 互 作 用 がQ=Y/2+I3と
互 作 用 は ハ イ パ ー チ ャー ジYに
い う構 造 を持 っ て い る こ と に 着 目 し,電 磁 相 よ り誘 起 さ れ るU(1)ゲ
ン相 互 作 用 の 和 で あ る と考 え,Yに
下 で は ク ォ ー ク ・レ プ トン に は 多数 の2重 e-L)で
代 表 さ せ る こ とに す る.eRはW±
1/2,I3(eL)=-1/2,I3(eR)=0と Y(eR)=-2と
項 が あ る が,以
な る.νRは,Q=I3=Y=0を
異 な る 値 を持 っ て い て,宇
項 で あ る.I3(νL)=
求 め れ ば,Y(νL)=Y(eL)=-1,
持 つ の で 相 互 作 用 をせ ず 対 象 外 とな る.
本 相 互 作 用 とSU(2)基
イ パ ー チ ャー ジ と2種 類 の 弱 荷(I3=±1/2)は,同
い相 互作 用 の
下 の 議 論 で はΨL=(νL,
に 結 合 し な い の で1重
電 荷 か らYを
こ う し て み る と本 来 のU(1)基
ー ジ相 互 作 用 とア イ ソ ス ピ
よ っ て 調 整 を 計 る こ と に す る.弱
本 相 互 作 用 を生 む 源 で あ る ハ
じ粒 子 で も カ イ ラ リ テ ィ が 違 う と
宙 は 本 質 的 に 左 右 独 立 な世 界 で あ る こ と を示 して い る.両
者 の 混 合 し た 電 磁 相 互 作 用 でQL=QRが
成 り立 ち パ リ テ ィ が 保 存 す る の が む し ろ偶
然 の よ うに 見 え るの は 興 味 深 い. ビ ッ グ ス は 幾 つ あ る? と3個
あ る の で,ヒ
質 量 を獲 得 す る ゲ ー ジ ボ ソ ン の 数 は 中 性 ボ ソ ン を含 め る
ッ グ ス場 の 自 由 度 は最 低4で
ヒ ッ グ ス 場Φ=(φ+,φ0)は2重
あ る.最
項 でY(Φ)=+1を
質 量 はヒ ッ グ ス の 引 き ず り効 果
も簡 単 な4を 採 用 す れ ば,
持 つ.
電 子 の 質 量 項 は £mass=-me(eLeR+h.c.)と
書 け るがI3(eL)=-1/2,I3(eR)=0で
あ る か らSU(2)対
称 性 を破 っ て い る.そ
こで
電 子 の 質 量 も ま た 自 発 的 対 称 性 の 破 れ で 生 じ る と考 え て, と し て や れ ばSU(2)対
称 性 を 充 た す.対
v/√2)と な り,電 子 は 質 量
称 性 が 破 れ れ ば <Φ >=(0,
を獲 得 す る.質 量 値 は電 子 と ヒ ッ グ ス の 結 合
の 強 さ に 比 例 す る こ とが 判 る.以 上 の 考 察 か ら,ゲ ー ジ粒 子 だ け で な く,物 質 粒 子 も ま た 本 来 は ゼ ロ 質 量 を持 っ て い た こ とが 判 る.質 量 は 素 粒 子 固 有 の 性 質 で は な く,ヒ ッ グ ス の 海 を泳 ぐこ とか ら生 じ る引 きず り効 果 で あ る と言 う主 張 は,質 的 に 変 え た と言 え る.フ
ェ ル ミオ ン質 量 に 関 す る 考 察 も ま た,対
界 で は カ イ ラ ル不 変 性 が 成 立 して お り,左 し て い る.パ
量 概 念 を根 本
称 性 が破 れ る前 の 世
と右 の世 界 は 独 立 な世 界 で あ っ た こ と を 示
リテ ィ の 破 れ は 奥 深 い とこ ろ に そ の 本 質 的 な 原 因 が あ っ た の で あ る.
中 性 カ レ ン ト相 互 作 用 が あ る?
SU(2)L×U(1)Yゲ
ー ジ相 互 作 用 は 共 変 微 分 項
(17) の 中 に 含 ま れ て い る .Bμ,gBはU(1)ゲ W0,Bは
ー ジ場 と結 合 定 数 を 表 す.中
同 じフ ェ ル ミオ ン に 結 合 し て 混 合 が 生 じ る の で,混
性 ベ ク トル 場
合 角 をtanθw=gB/gW
で 定 義 し,
(18) (19) に よ っ て 中 性 ボ ソ ンZと
電 磁 場Aを
導 入 し てW0とBを
書 き換 え,Q=Y/2+I3を
使 う と,電 磁 相 互 作 用 お よ び 中性 カ レ ン ト相 互 作 用 を得 る.
(20) (21) QL=QRで ら,ニ
あ るか ら電 磁 相 互 作 用 は パ リテ ィ を保 存 す る.Q(ν)=I3(νR)=0で ュ ー ト リ ノ は 電 磁 場 に 結 合 せ ず,νRはZに
電 カ レ ン トは 純 粋 な カ イ ラ リテ ィL状 トは 電 流 成 分 を も含 み,や 重 くて もゲ ー ジ ボ ソ ン
も 結 合 しな い.W±
態 で あ るが,ゲ
あ るか
に結 合 す る荷
ー ジ化 で導 入 した 中 性 カ レ ン
や 複 雑 な 構 造 を持 つ もの とな っ た. WとZは
ヒ ッ グ ス に も結 合 して い る か ら ヒ ッ グ ス 場 Φ
が 真 空 期 待 値 を持 て ば 質 量 項 が 出現 す る.W±
交 換 行 列 要 素 を フ ェ ル ミ相 互 作 用 と比
較 し て質 量 値 を 求 め る こ とが で き る.
(22) 質 量 が 出 現 す る の はΦ が 真 空 期 待 値 を持 つ こ と に よ り ゲ ー ジ が 固 定 さ れ る か ら で あ り,そ の 結 果 と してSU(2)対 で あ る た,ゲ
称 性 は 破 れ る.し
ー ジ変 換:exp(-iQα(x))に
性 が 残 っ て い るの で,電 磁 場Aμ GWSモ
デ ル の 検 証
か しQ<Φ
>=(Y/2+I3)<Φ
は質 量 ゼ ロ の ま ま で あ る.
こ う し て 電 弱 相 互 作 用 統 一 モ デ ル が 得 ら れ た が,当
ま り注 目 され な か っ た とい う興 味 深 い 事 実 を 指 摘 して お こ う.1971年 トが 繰 り込 み 可 能 を証 明 し て 急 に 脚 光 を浴 び る よ うに な り,1973年 ノ散 乱 で 中 性 カ レ ン トの 存 在 が 証 明 さ れ33),sin2θw〓0.23と タ の 混 乱 に よ りGWSモ SLACに
作 用 の 正 当 な理 論 と して 市 民 権 を得 た(図4).1983年
mz=91GeVを る.1980年 X)反
初はあ
に ト ・フ ー フ に はニ ュー トリ
決 め ら れ た.実
験 デー
デ ル の 妥 当 性 が 一 時 期 ゆ ら い だ こ と も あ っ た が,1979年
お け る偏 極 電 子 と重 陽 子 との 散 乱 デ ー タ に よ り34),GWSモ
CERNのSppS衝
>=0
よ り真 空 期 待 値 は 変 わ ら ず ゲ ー ジ 不 変
突 反 応 でW,Zを
ビア の グル ープ他 が
論 は 疑 い の 余 地 な く立 証 さ れ た とい え
代 に か け て はCERNのLEPに
お い て,(e-e+→Z→
応 に お け る 種 々 の チ ャ ネ ル の 精 密 デ ー タ が 得 られ た.GWS理
図4
種 々 の レ プ ト ン 反 応 に よ るGWS理 論の検 証35) ベ ク トル結 合 定数gvと 軸 性 ベ ク トル 結 合 定 数gAが, GWS理
デル は 電弱相 互
発 見 し36),予 言 通 り の 質 量mw=80GeV,
持 つ こ とが わ か っ て,GWS理 代 後 半 か ら1990年
に は,ル
の
論 の に 収斂 した.
論 の高 次計 算 に
よ る 輻 射 補 正 値 は こ れ ら の デ ー タ を全 て きわ め て 正 確 に 再 現 し,他 の モ デ ル の 入 る余 地 は な い こ とが 示 さ れ た.GWS理
論 はQEDに
匹 敵 す る 精 度 で 実 験 値 を正 確 に 再 現
す る 能 力 の あ る こ とが 示 さ れ た の で あ る. 18.7 カ ラ ー 自 由 度 端 電 荷 に あ っ た.ハ
1964年
QCD
に ク ォ ー ク モ デ ル が 提 唱 さ れ た と き一 番 の 難 点 は そ の 半
ン-南 部37)(1965)は,3種
類 の カ ラー と呼 ば れ る 量 子 数 を 導 入
す る こ とに よ り半 端 電 荷 が 避 け られ る こ と を示 し た が,半 ラー 量 子 数 は 必 要 で あ る.こ
端 電荷 を認め た と して もカ
れ を 簡 単 に 見 る た め に は ス ピ ン3/2+の
Ω-=SSSが
同一
フ ェ ル ミオ ン の 複 合 体 で あ り,軌 道 角 運 動 量 の 基 底 状 態 と考 え られ る こ と に 注 目す れ ば よ い.こ
の状 態 は3個
の ク ォー ク の 入 れ 替 え に 対 し完 全 対 称 性 を持 つ が,ス
計 の 関 係 を充 た す た め に は 全 反 対 称 で なけ れ ば な ら ず,余 しか も3個 の 入 れ 替 え で 全 反 対 称 で あ る た め に は,カ ば な ら な い.自 れ る*7.ハ
由 度3の
と証 明 され,実
カ ラ ー 量 子 数 が 存 在 す る こ と は他 に も多 数 の 証 拠 に 裏 付 け ら
の ころ までには場 の量 子論 に
論 が ト ・フ ー フ トに よ っ て 繰 り込 み 可 能
験 的 に も成 功 し た こ との 影 響 は 大 き か っ た.
カ ラ ー 交 換 力
南 部 は,カ
ル ー オ ン)に
カ ラー 交 換 力 がqq,qqqの
ラー がSU(3)対
称 性 を充 た し,付
カ ラ ー 一 重 項 で 引 力 と な る 事 実 は,ハ
ポ テ ン シ ャ ル モ デ ル の 質 量 公 式は,メ
ソ ンや バ リ オ ン の 質 量 スペ ク トル を か な り正 確
し て 半 端 電 荷 と3色 の カ ラ ー を持 ち,強
代 初 頭 に か け て,ク
ォー クが 実在
い 力 が カ ラー 荷 を源 とす るSU(3)ゲ
Chromo-Dynamics)に
ー ジ理
従 う との 認 識 が 徐 々 に浸 透 して い っ た.
深 非 弾 性 散 乱 か ら 得 ち れ た ク ォ ー ク の 質 量 は,mμ 非 常 に 小 さか っ た が39),ハ
ドロ ン がqq,qqq
らに ス ピ ン 交 換 力 な ど を加 え た 非 相 対 論 的
に 再 現 す る こ とが で き た38).こ う して1964∼70年
Quantum
随 す る8色 の ゲ ー
よ る 束 縛 力 が 働 い て ク ォ ー クが ハ ドロ ン を作 る と推 測 し た.
とい う 形 で の み 現 れ る こ とに 適 合 す る.さ
MeVと
なけれ
ドロ ン が よ り基 本 的 な 構 成 要 素 の ク ォー ク で で き て い る と判 っ た 時 点 で,
対 す る 信 頼 が か な り復 活 して い た.GWS理
論(QCD:
分 な 自 由度 を 必 要 とす る.
ラー の 自由 度 も ま た3で
場 の 量 子 論 が 復 活 す る の は 当 然 の 成 り行 きで あ ろ う.そ
ジ粒 子(グ
ピン統
∼4MeV,md∼8MeV,ms∼150
ドロ ン の 質 量 スペ ク トル や 磁 気 能 率 か ら得 た 実 効
的 ク ォ ー ク質 量mμ ∼md∼300Mev,ms∼500Mevと
の 差 は,運
じ こ め ポ テ ン シ ャ ル の 圧 力 に よ り生 じ る と説 明 さ れ た.こ
動 エ ネ ル ギー と閉
れ は ク ォ ー クが グル ー オ ン
を何 回 も交 換 し て 実 効 的 質 量 が 生 じ る こ と を 意 味 す る.本 来 は 軽 い ク ォ ー ク質 量 と そ れ に伴 う大 きな 束 縛 エ ネ ル ギ ー の 存 在 は,核 *7 R=σ(e-e+→all ド レ ル-ヤ 岐 比 等.
hadrans)/σ(e-e+→
ン 過 程(π(p)+p→μ-μ++X)反応
子 内 で 各 パ ー トンが 自由 に 振 る舞 う とす
μ-μ+)=3Σ 率,τ
λi2(λiは ク ォ ー ク の 電 荷) やWの
,π0→2γ
崩 壊率,
崩 壊 に お け る ハ ドロ ン ・レプ トン分
るパー dom)に
ト ン モ デ ル と 矛 盾 す る 錨 像 を 与 え る が,こ
れ は 漸 近 自 由(asymptotic
free-
よ っ て 折 り 合 い が 付 い た.
漸 近 自 由
QCDが
強 い相 互 作 用 理 論 の 最 有 力 候 補 と して 急 浮 上 した の は,1973
年 の グ ロ ス-ポ リ ツ ァー-ウ ィ ル チ ェ ッ クの 漸 近 自 由 発 見 に よ る40).カ ラー 荷 の 大 き さ は,試
験 カ ラ ー 荷 との 間 に 働 く力 の 強 さ で 測 れ る.真
空 偏 極 効 果 に よ りそ の 強 さ が 変
図5 (a) 漸 近 自由 の 実 験 的 証 明:αs の μ依 存性11).線 は デ ー タ の 平 均 中央 値 と ±1σ の 幅.デ ー タ は 左 か ら 順 に τ崩 壊,深 非 弾 性 散 乱,γ 崩 壊,25GeVに e-e+反 応 率,TORISTANに
お け る お
け る ジ ェ ッ ト事 象 解 析,Zの 壊 幅,TEVATRONで GeVと189GeVに
崩
の135 おけ る ジェ ッ
ト事 象解 析. (b) 陽 子 構 造 関 数F2(x,Q2) の デー H1)42)と
タ(HERA:
ZEUS,
発展 方程 式 を使 って計
算 した数 値 の 比 較.
わ りQ2の こ ろ)で
関 数 と な る が(実
効 結 合 定 数),電
小 さ くな り(漸 近 自 由),遠
磁 場 とは 逆 に 至 近 距 離(Q2の
くで 強 くな る(反 遮 蔽 効 果).こ
大 きい と
の 違 い は,真
空
偏 極 効 果 が グ ルー オ ン対 の 仮 想 生 成 を含 む と い う非 ア ー ベ ル ゲ ー ジ 理 論 の 性 質 に 由 来 す る.漸
近 自 由 はQ2の
十 分 大 き い とこ ろ で 摂 動 論 使 用 を 可 能 と す る の で,パ
モ デ ル を正 当 化 す る だ け で な くそ のQCD補 近 似 が 使 え る条 件 はQ〓1GeVで ン 反 応 か ら抽 出 し たQCDの QCDの
検証
で 書 け る.ク
ー トン
正 を 計 算 す る 手 段 を も与 え る.漸 近 自由
あ る.図5(a)に
種 々 の コ ラ イ ダ ー に お け る ハ ドロ
結 合 定 数 αsの値 を図 示 す る.
ν(e)N深
非 弾 性 散 乱 は パ ー トン モ デ ル を使 え ば ν(e)q散 乱 の 和
ォ ー クは 核 子 内 で 運 動 量 分 布 を持 つ が,こ
の 分 布 は グ ル ー オ ン 多重 交 換
に よ り生 じ る 長 距 離 効 果 で あ り,漸 近 自 由 が 成 り立 て ば 静 的 な 分 布 で 置 き換 え られ る.QCD補
正 効 果 は ク ォ ー クの グル ー オ ン放 出 も し くは 核 子 内 に 定 常 的 に 存 在 す る
グ ル ー オ ン の ク ォ ー ク対 発 生 に よ る分 布 関 数 の 補 正 と して 現 れ る.分 布 関 数 自体 を導 くに は 非 摂 動 計 算 を 必 要 とす るの で 簡 単 で は な い が,あ え られ た と き に,Q2と る(DGLAP41),1977).パ
の分 布 関数 が与
ー トン モ デ ル で は ブ ジ ョル ケ ン ス ケ ー リ ン グが 成 り立 ち
F(x,Q2)=F(x)で して 発 展 す る.実
るQ2=Q20で
と も に ど う変 化 す る か を 与 え る 発 展 方 程 式 を 作 る こ と は で き
あ るが,QCDの
場 合 は 分 布 関 数F(x,Q2)がlog
Q2の
関数 と
際 に 実 験 デ ー タ が そ の よ うに 振 る舞 う こ とが わ か り,デ ー タ を 細 部
に わ た っ て再 現 す る こ とに 成 功 して(図5(b)),1970年
代 の 末 頃 に はQCDは
強 い相
互 作 用 の 正 当 な理 論 と して 認 知 さ れ る よ う に な っ た. ジ ェ ッ ト現 象 もOK QCDの
QCDが
認 知 され て か ら後 も クォー クの 閉 じこめ 構 造 や
力 学 構 造 を理 解 し よ う とす る試 み は 続 い た.パ
る 厳 密 な理 論 式 は 存 在 し な い が,QCDを
ー トン と ジ ェ ッ トを 対 応 づ け
ベ ー ス に し た 現 象 論 的 手 法 の ハ ドロ ン化 モ
デ ル43,44)を使 っ て 実 験 値 の 定 量 評 価 を す る こ と は 可 能 で あ る.1980年 の 電 子 コ ラ イ ダ ー(PEP,
PETRA,
TRISTAN,
LEP)に
反 応 を解 析 し て ジ ェ ッ ト現 象 の 定 量 化 が 計 られ た.ま どソ フ トな 部 分 はパ ー トン分 布 関 数 に繰 り込 み,漸 を分 離 し て 摂 動 論 で 扱 う"factorization"手
お け るe-e+→
た,グ
ドロ ンAの
散 乱 して パ ー ト ンc,xに る.そ
中 の パ ー トンaと
近 自 由 近 似 の 可 能 な 堅 い成 分 の み
法 がQCDに
よ る理 論 的 裏 付 け を得 て,
ハ ドロ ンBの
え ばA+B→C+X
中 の パ ー ト ンbと
が 大角 度
な り,そ の 各 々 が ハ ドロ ン 化 し て ジ ェ ッ ト と な る と考 え
うす る と ハ ドロ ンA,Bの
量 をxaPA,xbPBと
ハ ドロ ン
ルー オンの 長距離効 果 な
ハ ドロ ン-ハ ド ロ ン 反 応 も ま た 定 量 的 な 記 述 が 可 能 に な っ た .例 反 応 は,ハ
代 に は,種 々
す れ ば,反
持 つ 運 動 量 をPA,PB,パ
ー ト ンa,bの
持 つ運動
応 断面 積 は
(23) と表 す こ とが で き る.こ
こ にfaA(x,μ)は
香 りaの
ク ォ ー クが ハ ドロ ンAの
中 で運
動 量xaを
持 つ 確 率 分 布 関 数 で,深
し た も の で あ る.dσ で,1980∼90年
非 弾 性 散 乱 で 得 られ た 分 布 関 数 を μ ま で解 析 接 続
は 摂 動 計 算 に よ るパ ー トン 反 応 断 面 積 で あ る.こ
代 に か け て ハ ドロ ン コ ラ イ ダ ー(SppS,
ェ ッ ト現 象 を定 量 的 に 評 価 し,9桁
再 現 で き る こ とは パ ー トン が 点 粒 子 で
あ る こ と の 証 拠 で あ り,パ ー トン サ イ ズ が10-16cmを 課題
QCDグ
おけるジ
に 及 ぶ 包 含 断 面 積 デ ー タの 変 化 を再 現 す る こ と が
可 能 に な っ た.断 面 積 が 細 部 に わ た りQCDで
QCDの
う した 手 法
TEVATRON)に
越 え な い こ とが 結 論 で き る.
ル ー オ ン は 質 量 が ゼ ロ で あ り,自 発 的 対 称 性 の 破 れ を 起 こ
さ ず に ゲ ー ジ不 変 性 が 成 立 し て い る と考 え られ るが,閉
じこ め 機 構 の た め ハ ドロ ン 間
に 働 く力 は 短 距 離 力 に な っ て い る と解 釈 で き る.湯 川 理 論 が 対 象 と した 核 力 は ク ォー クの 複 合 体 で あ るハ ドロ ン 間 で 交 換 さ れ る π メ ソ ン に よ り生 じ る2次 的 な カ ラ ー 力 で,い
わ ば 分 子 間 の フ ァ ン ・デ ル ・ワ ー ル ス 力 と 見 な す べ き も の で あ る.今
QCDは,強
日,
い 相 互 作 用 デ ー タ を 定 量 的 に か つ 詳 細 に 記 述 で き る理 論 と して 定 着 し て
い る.今 後 の 課 題 は,ソ
フ トグル ー オ ン の 多 重 交 換 を 扱 う部 分 な ど非 摂 動 的 計 算 手 法
の 開 発 や 閉 じ こ め 機 構 の 完 全 理 解 で あ る.格 子 ゲ ー ジ理 論 に望 み が か か る が,定
量的
計 算 は 今 の と こ ろ ハ ドロ ン 質 量 スペ ク トル や 少 数 の 崩 壊 定 数 な ど一 部 の 物 理 量 に 限 ら れ て い る. 18.8 素 粒 子 標 準 モ デ ル か け て 提 案 され1970年 うに な っ た.標
GWS理
ま
と
め
論 とQCDは,1960年
代 後 半 か ら1970年
代初 頭に
代 の 終 わ りに は 定 説 と な り,合 わ せ て 標 準 理 論 と呼 ば れ る よ
準 理 論 の 本 質 は 次 の3点
に 要 約 で き よ う.
1. 物 質 の 究 極 構 成 要 素 と して の 素 粒 子 は ク ォ ー ク と レ プ トン で あ る. 2. 素 粒 子 間 に 働 く力 は ゲー ジ理 論 で 記 述 さ れ る. 3. 真 空 は"超
伝 導 相"に
あ る.
こ の 簡 単 な 記 述 を も う少 し拡 大 す る と,物 質 構 成 要 素 と し て の 素 粒 子 群 は ク ォ ー ク, レ プ トン と も3世 代 存 在 す る.電
弱 相 互 作 用 に よ る分 類 で は ア イ ソ ス ピ ン2重 項 と1
重 項 が 存 在 し, ク ォ ー ク:
(24)
レ プ ト ン:
(25)
と書 け る が,ク
ォ ー ク は さ ら に3色
の カ ラ ー 荷(R,G,B)を
は ゼ ロ 質 量 を持 つ と し νRは 含 め な い.ク た な い 点 粒 子 で,そ
の 大 き さ は10-16cmを
持 つ.ニ
ュー ト リノ
ォ ー ク と レプ トン は ス ピ ン1/2の 越 え な い.自
構 造 を持
然 界 に 存 在 す る相 互 作 用 の
う ち 重 力 を 除 く強 い 力,電
磁 力,弱
い 力 は,SU(3)color×SU(2)L×U(1)Y対
称性に
基 づ くゲ ー ジ理 論 で 記 述 され る.こ の う ち電 磁 力 と弱 い 力 は 統 一 され て い て 合 わ せ て 電 弱 相 互 作 用 と言 う.ゲ
ー ジ相 互 作 用 は 本 来 長 距 離 力 で あ るが,強
い 力 は 閉 じ こめ 機
構 に よ り,弱 い 力 は 対 称 性 の 自発 的 破 れ に よ り見 か け 上 短 距 離 力 に な る.も ゼ ロ質 量 で あ っ た フ ェ ル ミオ ンや ゲ ー ジ ボ ソ ン(W+,Z0,W-)は,ヒ 合 し て 質 量 を獲 得 す る.ヒ ラー 粒 子 で あ るが,正
と も とは
ッ グ ス 場 と結
ッ グ ス場 は素 粒 子 と して 存 在 す る な らば ス ピ ン ゼ ロ の ス カ
体 は 今 の と こ ろ 不 明 で あ る の で,素
粒 子 の 仲 間 か らは 外 し て あ
る. 最 近 の 話 題
標 準 理 論 の 残 さ れ た 課 題 と し てCP非
年 に な っ て 非 対 称Bフ BABARグ
保 存 問 題 が あ っ た が,2000
ァ ク ト リー 加 速 器 が 建 設 さ れ,KEK/BELLEお
ル ー プ が,Bメ
よ びSLAC/
ソ ン崩 壊 の 非 対 称 性 を測 定 し て 小 林-益 川 モ デ ル の 正 当 性
が 確 立 した45).観 測 さ れ て い るCP非
保 存 現 象 は,全
て 過 不 足 な く標 準 モ デ ル で 説 明
で き て 他 の モ デ ル の 入 る 余 地 は な い.現 在 ほ とん ど全 て の 素 粒 子 現 象 は 標 準 理 論 で 記 述 で き る.た
だ 一 つ の 例 外 は ニ ュ ー ト リ ノ質 量 の ゼ ロ 設 定 が くず れ た こ とで あ る.標
準 理 論 が 提 案 され た 段 階 で は ゼ ロ 以 外 の 有 限 値 に 設 定 す る 理 由 は 無 か っ た が,標
準理
論 の 成 功 そ の もの が ゲ ー ジ対 称 性 に 裏 付 け られ な い保 存 則 は 真 の 保 存 則 で は な い とい う見 解 を育 て た.ニ ら,ゼ
ュ ー ト リ ノ質 量 の み を ゼ ロ に す べ き 対 称 性 は 存 在 し な か っ た か
ロ 設 定 は 当 面 の 暫 定 措 置 で あ る こ とは お お か た の 研 究 者 が 認 識 して い た.1998
年 の ス ー パ ー カ ミ オ カ ン デ に よ る ニ ュ ー ト リ ノ振 動 の 発 見46)は,む
しろ こ の 見解 の
正 し さ を裏 付 け た と言 うべ き で あ ろ う.標 準 理 論 へ の 影 響 は 小 さ く,ご を必 要 とす る の み で あ る.他
シー ソー メ カ ニ ズ ム47)で あ るが,こ カ の 統 一
く一 部 の 修 正
の 粒 子 に 比 べ て 極 端 に 小 さ な 質 量 を生 む 有 力 な モ デ ル は れ は 標 準 理 論 を 越 え た 大 統 一 理 論 の 範 疇 に 入 る.
標 準 理 論 の功 績 は 真 空 の 相 転 移 と い う概 念 を導 入 して,力
の 統 一 また
は 統 一 の 分 離 処 法 を 与 え た こ とで あ る.真 空 偏 極 効 果 を 取 り入 れ た 実 効 結 合 定 数 が Q2と 共 に発 展 し,大 統 一 エ ネ ル ギ ー(1014-16GeV)付 が 示 さ れ た こ と48)は,大 入 れ ら れ て,宇 GeV)付
近 で 強 電 弱 力 が 一 致 す る可 能 性
統 一 が 成 り立 つ こ と を示 唆 す る.こ
の考 えは 宇 宙論 に取 り
宙 は ビ ッ グバ ン か ら 温 度 が 下 が る に 従 い プ ラ ン クエ ネ ル ギー(∼1019
近 で 第 一 の 相 転 移 が 起 こ り重 力 が 分 化 し,次 い で大 統 一 エ ネ ル ギ ー 付 近 で 第
2の 相 転 移 が 生 じて 強 い 相 互 作 用 が 分 化 し,∼1TeV付 とす る考 え方 が 定 着 し た.初 標 準理 論の 課題
近 で電 弱 相 互 作 用 が 分 離 し た
期 宇 宙 論 と素 粒 子 論 は 一 体 と な っ た.
標 準 理 論 の 問 題 点 を 挙 げ る な らば 世 代 の 謎 と質 量 の 起 源 で あ ろ
う.世 代 が 存 在 し何 故3世
代 な の か 説 得 力 あ る提 案 は 今 の とこ ろ存 在 しな い.質
量は
対 称 性 の 自発 的 破 れ で 生 じた とす る こ とに よ り有 限 質 量 の ゲ ー ジ粒 子 問題 は解 決 し た が,質
量 値 を ヒ ッグ ス 場 との 結 合 に 置 き換 え た だ け で パ ラ メ タ ー の 数 は減 らせ て い な
い.判
らな い こ とを ヒ ッ グ ス に責 任 転 嫁 し た だ け で あ っ て,ご
み を と りあ え ず 絨 毯 の
下 に掃 き寄 せ て 隠 し た だ け と言 わ れ る 由 縁 で あ る.ヒ
ッ グ ス場 の 本 質 や 自発 的 に 対 称
性 が 破 れ る力 学 的 要 因 は 未 解 決 の ま ま で あ り,ヒ ッ グス が 素 粒 子 な の か 力 学 的 現 象 の 実 効 表 現 な の か,ヒ ま た,標
ッ グ ス を実 際 に 生 産 して性 質 を解 明 す る 必 要 が あ る.
準 理 論 に 含 ま れ る パ ラ メ タ ー の 数 は,力
θw)の 他 に世 代 間 の3個 ン,1個
の 混 合 角 と位 相,そ
の ゲ ー ジ ボ ソ ン,ヒ
QCD真
ッ グ ス 粒 子),そ
空 に 伴 う θ パ ラ メ ター な ど20個
ター(万
有 引 力 定 数)に
の3つ
の 結 合 定 数(αs,e,sin
れ に 全 て の 質 量 値(9個
の フ ェ ル ミオ
れ に この 解 説 では 触 れ な か っ たが,
近 く も あ り,重 力 理 論 が た だ 一 個 の パ ラ メ
よ り記 述 さ れ る こ とに 比 較 す る と統 一 理 論 と して は 大 い に 不
満 で あ る. さ ら に,1TeV以
上 の 質 量 を生 産 で き る ほ どの 高 エ ネ ル ギ ー で は,標
言 能 力 が 失 わ れ る.な
ぜ な ら ヒ ッ グ ス 場 の 真 空 期 待 値(v=246GeV)か
起 こ る 温 度 は 大 体1TeV前
後 と予 想 さ れ,相
準理 論 の予 ら相 転 移 の
転 移 を引 き起 こす ヒッ グスの凝 縮 原 因
が 明 ら か に な ら な い 限 り,相 転 移 温 度 以 上 の 現 象 に 理 解 は 及 ば な いか ら で あ る.こ の 状 況 を 救 う た め に,フ 性,強
電 弱 の3力
ェ ル ミオ ン ・ボ ソ ン 入 れ 替 え の 超 対 称 性 と超 粒 子 の 存 在 可 能
を 統 一 す る大 統 一 理 論 や 重 力 を 含 む 超 弦 理 論 の提 案 な ど い ろ い ろ な
試 み が あ る.現 在 建 設 途 上 で2007年
に 稼 働 予 定 のLHC加
動 き 出せ ば,何
速 器(重
TeVのppコ
ラ イ ダ ー)が
さ れ る.(筆
者=な が しま ・よ りき よ,大 阪 大 学 名誉 教 授.1938年
らか の 手 が か りが 得 られ る で あ ろ う と期 待
学理 学 部 卒 業)
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02
Ⅲ 原
子
核
19.
原 子 核 の実 験研 究50年
間 の展 開 杉
は
じ め
本 健
三
に
過 去 半 世 紀 に わ た る 日本 で の 原 子 核 実 験 を 展 望 す る に 当 り,ま ず 核 物 理 学 発 展 の あ ら ま し を 思 い 起 こ して お こ う(図1).放
射 能 の 発 見 以 降1930年
よ る 研 究 は 原 子 核 の 発 見 とそ の 認 知 を導 い た.こ 射 線 と標 的"の
に 至 る天 然 放 射 能 に
の 時 期 に 導 入 さ れ た散 乱 実 験 の"入
方 法 は 以 後 の 散 乱 実 験 の 規 範 と な り,ま
た α線 に よ る元 素 人 工 転 換
の 発 見 は 加 速 器 の 開 発 を促 し た. 1930年
代 に 入 る と 中 性 子nの
の 展 開 が 始 ま る.Cockcroft型
発 見 が あ り,核 装 置,Van
等 の 加 速 器 が稼 動 を 始 め,数MeV領 の 導 入 もあ っ た.大 ー タ集積 が進 み
戦 後1950年
代 に か け て は,安
川 に よる核 力 中間子 論
定 核 とその近 傍 の低 励起 準位 のデ
方 で は 数 百MeVの
加 速器 が稼 動 を
体 核 力 に は 短 距 離 斥 力 や ス ピ ン軌 道 力 も働 くこ と が分 か る.ま
1960年 展 す る.研
代 以 降 は,加
速 器,測
究 領 域 も1970年
は 放 射 性 核(RI)ビ
エ ネ ル ギー(素)粒
た核 子の励 起
子 物 理 学 が 分 岐 発 展 す る.
定 器 の 技 術 の 発 達 に 伴 い 核 の 示 す 多様 性 の 発 掘 が 進
代 に は 重 核 領 域 に 至 る 重 イ オ ン 反 応 の 実 験,1980年
ー ム に よ る 反 応 の 実 験 へ と拡 張 さ れ る.こ
れ ら に は,ス
イ ソ ス ピ ン そ の他 の 量 子 数 で 特 定 さ れ る種 々 の 集 団 励 起 状 態,重 形 核 の 高 ス ピ ン状 態 及 び 超 変 形,核
分 裂 ア イ ソ マ ー,安
た は 中 間 子 工 場 と呼 ば れ る数 百MeV大
加 速 器 に よ る一 次 加 速 線 及 び発 生 中 間 子,π,K等
定 領域 か
1970年
担 うハ イペ ロ ン(Λ,Σ,…)を 代 中 期 に は 核 子 当 り数GeV(数A
(米),Dubna(ロ)等
エネ
強度 陽 子
の 二 次 線 を 用 い た 研 究 が 始 ま る.
こ こ で は 核 特 性 に 見 られ る核 子 以 外 の 自由 度(π,Δ 等)の 役 割 の 追 求 と,ス ネ スSを
トレ ン ジ
含 む ハ イ パ ー 核 の 研 究 が 課 題 と な る.ま GeV)に
た
至 る 重 イ オ ン 加 速 がBerkeley
で 始 ま り,高 エ ネ ル ギ ー 核 ・核 衝 突 の 研 究 が 開 始 さ れ る.こ
で は 核 物 質 の 高 温高 密 度 で の様 相 と,ク
ピ
イオン反応 の
ら遠 く離 れ た核 の 特 異 性,等 の 核 子 有 限 多体 系 に 固有 の 特 性 の 発 見 が あ っ た. 一 方 ,1970年 代 に は 中 間 エ ネ ル ギ ー 物 理 学 と 呼 ば れ る新 領 域 が 拓 か れ る.高 ル ギ ー 陽 子 シ ン ク ロ トロ ン(PS)ま
代に
れ らの発 展 につ れ て 新
局 面 の 展 開 が あ り,核 の 示 す 多 様 な 特 性 が 明 らか に さ れ て き た.そ
巨視 的 反 応 過 程,変
の励
面 振 動 励 起 及 び 変 形 核 の 回 転 励 起 な どが 分 か り,核 子 を構
状 態 Δ と各 種 中 間 子 の 発 見 が あ っ て,高
ン,ア
イ ク ロ トロ ン
い で 集 団 運 動 模 型 が 導 入 され る.核
成 子 とす る核 物 理 の 基本 的 枠 組 が 形 成 され た.一 始 め,二
多体 系 とす る核 理 論
装 置(VdG),サ
域 の 研 究 が 進 展 す る.湯
,核 構 造 に つ い て 殻 模 型,次
起 様 式 と し て,核 子 励 起,表
は 陽 子pとnの
de Graaff型
ォ ー ク ・グ ル オ ン ・プ ラ ズ マ(QGP)の
こ 探
図1 原子核物理 学の発展
質 量 数,SSC:分
示:E=K(Q2/A)MeV,た
だ しQは ンデ グ ラ フ.
図2 原子核実 験の加速器
離 セ ク ター ・サ イ ク ロ トロ ン.VdG:パ
サ イ ク ロ トロ ン加 速 エ ネ ル ギー のK表
イ オ ン電 荷 ,Aは
イオ ン
究 が 課 題 と し て 台 頭 す る.1970年
代 に 導 入 さ れ た 量 子 色 力 学(QCD)は,核
間 子 な どの ハ ドロ ン を ク ォ ー ク と グル オ ン か ら な る もの と と ら え,強 質 的 理 論 と考 え られ て い る.そ
こ で,ハ
と ら え 直 す こ とが 問 わ れ は じめ た.た トン散 乱 のEMC効 存 性)以
外,核
果(核
子,中
い相互 作用 の本
ドロ ン 多体 系 の 原 子 核 は 新 た な 自 由 度 の 下 に
だ し現 在 ま で の と こ ろ,超
高 エ ネ ル ギ ー ・レプ
内核 子 の ク ォ ー ク分 布 を 表 わ す 構 造 関 数 の 核 質 量 数A依
の 構 成 上 で 直 接 クォ ー クの 関 与 を示 す 事 実 は 知 られ て い な い.
以 上 に加 え て,他
分 野 との 関 連 で 特 に 追 求 され て き た 課 題 に は 天 体 現 象,特
に元素
生 成 の 素 過 程 の 研 究 が あ り,核 物 理 研 究 の 進 展 に つ れ て そ の 理 解 に 必 須 の 知 識 を提 供 して き た.一
方 で は ま た 原 子 核 は,基
本 的 対 称 性 の 検 証 に 有 用 な 場 を 与 え て き た.こ
の こ とは 核 が 良 い 孤 立 系 で あ り,各 種 の 量 子 数 で 規 定 さ れ る状 態 の 選 択 を 可 能 とす る こ とに よ る. 以 下 で は 各 年 代 を 追 っ て 日本 で の 研 究 活 動 を な が め よ う.ま ず 実 験 施 設 の 推 移 を知 るた め の 代 表 と し て,原
子 核 実 験 用 加 速 器 に つ い て の 年 表 を 図2に 19.1
戦 後 か ら1950年
戦 後 か ら1960年
示 す.
代
代 に か け て は 荒 廃 か らの 復 興 の 時 代 で あ っ た.戦
前 に は理 研,阪
大 等 で の 活 発 な研 究 に よ っ て世 界 の 水 準 に 達 し て い た 原 子 核 実 験 も,戦 時 で の 中 断 と 戦 後 の 極 端 な 疲 弊 の下 に,進 り,潰 滅 に 瀕 し た.バ
駐 軍 に よ る理 研,京
大,阪
大 の サ イ ク ロ トロ ン撤 去 もあ
ン デ グ ラ フ な ど は 一 部 復 旧 が 計 られ た が,世
上 窮 乏 の下 に は か
ば か し くは な く,一 方 海 外 か ら は π中 間 子 の 発 見 や 人 工 発 生 等 の ニ ュ ー ス が 次 々 と 聞 え,焦
燥 の 時 期 が 続 い た.1950年
代 に 入 る と復 旧 さ れ た 装 置 に よ る 研 究 報 告 も
徐 々 に 聞 か れ る よ うに な り,Lawrenceの ロ トロ ン 再 建 の 気 運 が 高 ま る.1952年 ロ ン の 建 設 が 始 ま っ た.ま 究 所(核
研)の
た1953年
来 日(1951年)を に は 阪 大,京
大,科
き っ か け と して サ イ ク 研(理
研)で
サイクロ ト
に は 研 究 者 の 要 望 を受 け て 学 術 会 議 が 原 子 核 研
設 立 を 政 府 に 勧 告,1955年
に東大 附 置共 同利 用研 究所 と して その発
足 をみ た. 核 研 最 初 の 主 装 置 は 磁 極 径60イ で の 加 速(Ep=7.5∼16MeV)と 二 方 式 共 用 で あ っ た.こ
ン チ サ イ ク ロ ト ロ ン で あ り1),一 定 周 波 数(FF) 変 調 高 周 波(FM)に
よ る 加 速(Ep∼55MeV)の
れ は 研 究 者 間 の 対 立 す る意 見 の 結 果 で あ るが,こ
トロ ン の 顕 著 な特 徴 はFF加
のサ イ クロ
速 で の エ ネ ル ギ ー 可 変 性で あ り,完 成 時 は タ ン デ ム ・バ
ン デ グ ラ フ の 稼 動 に 先 行 す る 世 界独 自の 地 位 を 占め た .こ の 特 性 を 生 か し た 初 期 の 研 究 に は,松
田 グ ル ー プ に よ る 陽 子 の 弾 性,非
な どの 励 起 関 数 の 測 定 実 験 が あ る.こ
位 密 度 に よ りな め ら か とす る 予 想 に 反 し,大 っ て"ガ
タ ガ タ"と 呼 ば れ た.1960年
弾 性 散 乱 や 野 中 グ ル ー プ の(α, p)反
応
の エ ネ ル ギ ー 領 域 で は 励 起 関 数 は,高 励 起 高 準 き く変 化 す る こ とが 見 出 さ れ,驚
き もあ
に カナ ダ で 開 か れ た 原 子 核 国 際 会 議 で は こ れ
ら の 結 果 の 報 告 で 注 目 を 集 め,Tokyo
Cyclotronと
の サ イ ク ロ トロ ン の 建 設 の 主 導 者 熊 谷 の 指 針 は,若
し て 知 られ る こ と に な っ た.こ い研究 者 にで きるだけ広 い研 究の
場 を提 供 す る こ とに あ っ た.な お こ の ガ タ ガ タ は1960年 代 に 多 準 位 相 関 に 起 因 す る "E ricsonの ゆ ら ぎ"と して 理 解 さ れ,ま た 高 励 起 に も拘 らず 比 較 的 単 純 な 構 造 を も つ 中 間 共 鳴(ア
ナ ロ グ共 鳴 な ど)に
各 大 学 で も1950年 稼 動 を始 め,原
つ なが る研 究 で あ っ た.
代 中期 か ら サ イ ク ロ トロ ン,バ
子 核 実 験 が 軌 道 に 乗 り だ した.阪
で 質 量 分 解 能,M/ΔM∼90万
ン デ グ ラ フ,ベ
大 の 緒 方 グ ル ー プ は 質 量分 析 の 研 究
の 世 界 レ コー ドを 達 成 し研 究 を進 め た.阪
ラ フ の 杉 本 ら は 核 励 起 状 態19F*(I=5/2,τ=128ns)の し,カ
方 法 を 核 反 応γ 線 角 分 布 に も
適 用 で き る こ と を 提 示 した2).九 大 バ ン デ グ ラ フ の 野 中,森 (Ed∼1.85MeV)のn角 の3倍
分 布 測 定 か ら,重
も 強 い後 方(∼180°)ピ
大バンデグ
磁 気 モ ー メ ン ト測 定 に 成 功
ス ケ ー ドγ 崩 壊 の 擾 乱 場 角 度 相 関(1952年)の
他 に,そ
ー タ トロ ン等 が
田 ら は14N(d,n)15O反
応
陽 子 ス ト リ ッ ピ ン グ に よ る 前 方 ピー ク の
ー ク を 見 出 した3).Butlerの
反 応 理 論(1950
年)に
よ り,放 出粒 子 の 角 分 布 の 測 定 が 生 成 核 準 位 の ス ピ ン決 定 に有 効 な こ とが 示 さ
れ,そ
の 実 験 が 流 行 す る.直
接 反 応 の 特 性 か ら角 分 布 は 主 に 前 方 に集 中す る の で,一
般 に は 前 方 の 測 定 に 重 点 が 置 か れ た が,後 た.こ
の 現 象 は 他 で も見 出 さ れ,標
し て 説 明 さ れ た.京
方 ま で の 測 定 に よ り枠 外 の 現 象 が 見 出 さ れ
的 核 か ら のn放
射(重
粒 子 ス ト リ ッ ピ ン グ)と
大 の サ イ ク ロ トロ ン で はd, αの 散 乱,反
1960年 代 に は α準 弾 性 散 乱(α, 2α)に
応 の 実 験 が 進 め られ,
よ る軽 核 ク ラ ス ター 構 造 の 研 究 が 進 展 し た.
阪 大 の サ イ ク ロ トロ ン で はp, d, αの 散 乱,反
応,反
応γ 線 の オ ン ラ イ ン 計 測;及
β線 分 析 器 に よ る βγ核 分 光 の 実 験 が 進 め ら れ た.山 部 ら は22MeV 応(α, p)の
研 究 か ら,陽 子 角 分 布 の 移 行 角 運 動 量J=L+S依
れ 迄 は 移 行 軌 道 角 運 動 量Lの
存 性 を 見 出 した4).そ
み の 依 存 性 が 考 え られ て い た.こ
し な が ら,明 確 に指 摘 し た 翌1964年
び
αに よ る 直 接 反
のJ依
の 報 告 に よ り,Lee-Schiffer効
存 性 は,し
か
果 と して 知 ら れ
る こ と に な っ た. 19.2 1960年 代 に は 核 研FF/FMサ
1960年
∼1970年
代
イ ク ロ トロ ン に よ る研 究 成 果 が 大 い に 挙 が り,共 同
利 用 研 と して 全 国 の 研 究 水 準 向 上 に 貢 献 し,以 降 の 研 究 に 指 導 的 な 多 くの 人 材 を育 成 し た.核
研 の 電 子 シ ン ク ロ トロ ン(ES)も
稼 動 を始 め る.FF/FMサ
の 運 転 モ ー ド切 替 は効 率 的 で な い と し て そ の 分 離 が 計 ら れ,FF加 ク ロ トロ ン(K=68)が1974年 が,高
に 完 成 す る.ま
た1960年
関 西 に 新 研 究 所 を 設 置 す る案 が 含 ま れ た.こ
の計 画 は10年
速 に代 るSFサ
イ
代 初め には全 国的 将 来計 画
エ ネ ル ギー 物 理 の研 究 推 進 計 画 と共 に 検 討 さ れ,1962年
物 理 研 究 セ ン タ ー(RCNP)の
イ ク ロ トロ ン
の 学 術 会 議 勧 告 に は,
後 の1972年,阪
創 設 と して 遂 に実 現 さ れ た.こ
大 附置核
の時期 各大 学 の研究 者
は,研
究 の 拠 点 な ら び に 若 手 養 成 上 で 必 要 な 大 学 固有 の 施 設 充 実 と,他 方 で は 第 一 級
施 設 を もつ 共 同 利 用 研 の 推 進 とい う,限 れ る.東
北 大 で は300MeVの
発 生 中 性 子 に よ る物 性,生 1967年
られ た 予 算 の 下 で は 両 立 し難 い 選 択 に 悩 ま さ
電 子 リニ ア ッ ク(LINAC)が,核 物,医
物 理 研 究 に 限 ら ず,
学 に わ た る 多 目 的 学 内 共 同 利 用 と し て 設 置 さ れ,
に 稼 動 す る.九 大 で は 既 存 バ ンデ グ ラ フ の 抜 本 的 改 造 が 磯 矢 の 下 に 進 め られ,
従 来 の 荷 電 ベ ル ト方 式 を排 し,新 方 式 の ペ レ ッ ト ・チ ェ ー ン が 世 界 に 先 駆 け て 開 発 さ れ る5).1970年 示 した.理 1966年
に は 電 圧7MVの
安 定 稼 動 に成 功 し"ペ
研 で は 多 目的 利 用 の60イ
に 稼 動 す る.そ
の 特 徴 はN,
レ トロ ン"の 有 効 性 を世 界 に
ン チ 可 変 エ ネ ル ギ ー サ イ ク ロ トロ ン が 建 設 さ れ, O等
を加 速 し重 イ オ ン 反 応 の 研 究 を 進 め た こ と で
あ る.日 本 で の 原 子 力 総 合 研 究 機 関 と し て 日本 原 子 力 研 究 所(原 足 し た.当
初 核 物 理 の 研 究 は バ ン デ グ ラ フ,電
研)が1956年
に発
子 リニ ア ッ ク に よ っ て 進め られ,原
の 性 格 か ら,中 性 子 物 理 を 中 心 課 題 と し た.1977年,20MVタ
研
ンデ ム 完 成 後 は よ り
広 い 基 礎 研 究 が 重 イ オ ン核 物 理 の 分 野 で 進 め られ る.京 大 附 置 原 子 炉 実 験 所 は1963 年 全 国 共 同 利 用 研 と し て 発 足 し,原 子 炉(5MW)を れ,核
物 理 研 究 で は 中 性 子 照 射RIに
中 心施 設 と した研 究 が進 め ら
よ る βγ核 分 光 の 研 究,1980年
に は核分 裂 生成
物 の 迅 速 分 離 器 に よ る 中性 子 過 剰 核 の 系 統 的 研 究 が 進 展 す る. 1960年
代 の 原 子 核 実 験 で は,核 研 の 真 田 ら核 力 研 究 グ ル ー プ は,FMサ
ロ ン の50MeV らか に し,こ さ)が
pに よ るp-p散
の エ ネ ル ギー 領 域 で 既 にLS力(当
必 要 な こ と を示 した1).そ の他 に 核 子2体
進 め た.FMサ
イ ク ロ トロ ンの50MeV
活 用 さ れ る.非 3-,な
乱 微 分 断 面 積 の 精 密 測 定 か らP波
ど)の
弾 性 散 乱(p,
の寄 与 を明
然 必 要 な テ ン ソ ル 力 の 約1/2の
強
散 乱 の ス ピ ン偏 極 を 含 む 各 種 測 定 も
pに よ る散 乱,反
応 の研究 では磁 気分 析器 が
p')の 実 験 は 核 表 面 振 動(四
研 究 に 有 力 で あ り,40Caで
,D波
イ クロ ト
は32極
重 極,Iπ=2+;八
重 極,
振 動 準 位 を 発 見 し た .組
替 反応
(p, d),(p,
t)の 研 究 で は 八 木 ら に よ る核 内 核 子 対 相 関 の 研 究 が あ る1).2n移
応,118Sn(p,
t)116Snの 励 起 ス ペ ク トル 測 定 か ら,基 底 状 態 が 他 に 比 べ て 異 常 に 強 い
と い う顕 著 な 特 徴 を 見 出 し た.こ 遷 移 増 強 と理 解 さ れ る.A.
の こ と は 超 伝 導 状 態 の 対 中 性 子(1S0)移
Bohrら
は 超 伝 導BCS理
動反
行に よる
論 を核 構 造 に 適 用 し,偶 々 核 の
格 子 励 起 状 態 に 見 られ るエ ネ ル ギ ー ・ギ ャ ップ を対 核 子 凝 縮 に よ る現 象 と して 説 明 し た(1957年).こ 実 験 で はSnな
れ を受 け て 吉 田 は(p, ど の 遷 移 領 域 核 の(p,
極 子 相 関(L=2)の
t)反 応 で の 遷 移 増 強 を 予 言 した(1962年) t)反
.
応 の 研 究 か ら,単 極 子 相 関(L=0)と
関 与 を 明 らか に す る 等 の 成 果 を挙 げ た.一
は 中 性 子 空 孔 及 び 空 孔 ア ナ ロ グ 状 態 の 研 究 に 活 用 さ れ る.こ
核 子 移 行(p,
四
d)反
応
こ で は 坂 井 に よ る内 殻 空
孔 励 起 の 指 摘 が あ る1).(p, d)反 応 のdス ペ ク トル に 外 殻 励 起 に よ る一群 の 準 位 よ り 一 段 高 い 励 起 領 域 で 観 測 され る 小 山 が ,内 殻 励 起 に よ る もの と解 釈 さ れ た.FMサ イ ク ロ トロ ン の3He加
速 に よ る(3He,
α)反 応 の 研 究 で は,Sn(A=116∼124)の
内殻
空 孔g7/2準 位 の 明確 な 観 測 に 成 功 し,ピ 鞭 をつ け た.核 器,お
ッ クア ップ 反 応 に よ る深 い 空 孔 準 位 研 究 に 先
研 の βγ核 分 光 グ ル ー プ は 独 自設 計 の 角 度 相 関 測 定 に 適 した β線分 析
よ び 大 型 空 芯 分 析 器(1968年)を
構 造 な ど の 研 究 を進 め た.1962年
建 設 して,中
重 核,重
核 領 域 の振 動 核 準位
に 森 永 に よ る 高 ス ピ ン核 分 光 実 験 の 成 功 が あ り,
これ を契 機 と し て 核 研 で も イ ン ビ ー ム β線 分 析 器,続
い てGe検
線 核 分 光 研 究 が 展 開 され る.核 励 起 準 位 の バ ン ド構 造,反
出器 に よる広範 な γ
応 生 成 核 の ス ピ ン整 列,ア
イ ソマ ー 準 位 と磁 気 モ ー メ ン ト,等 の研 究 で 成 果 を挙 げ た.バ
ン ド構 造 の 研 究 で は,
球 形 核 領 域 か ら変 形 核 領 域 に わ た っ て 幾 つ か の系 統 的 構 造 が 明 ら か に され,こ べ て をquasi
(-ground,
-beta &
-gamma)
bandsに
り提 案 され1),実 験 デ ー タ の 集 大 成 が 進 め られ,そ 1962年,森
永 はGugelotと
れ らす
統 一 し て 考 え る試 み が 坂 井 に よ
の 理 論 的解 析 を先 導 した.
オ ラ ン ダ の サ イ ク ロ トロ ン を用 い て(α, xn)反
応によ
り変 形 核 回転 準 位 系 列 のγ 線 スペ ク トル 観 測 に 成 功 し6),以 降 の 高 ス ピ ン 核 分 光 の 発 展 を 導 い た.数10MeV
α線 に よ る(α, xn)反
が 大 き く,蒸 発nの
持 出 すLは
起 こ るγ 崩 壊 で も個 々 のγ 線 の 持 出 すLは ス ピ ン の 内 で エ ネ ル ギー 最 低)準 放 射 さ れ,そ
応 で は,複 合 核 に 持 込 む 角 運 動 量L
小 さ い の で,生
成 核 は 高 ス ピ ン 状 態 に あ る.次
小 さ い の で,そ
位 系 列 に 到 達 す る.最
の 結 果,イ
いで
ラ ス ト(一 定
終 段 階 で は こ の 系 列γ 線 が
の スペ ク トル が 明 瞭 に 観 測 さ れ る.こ の 実 験 の 動 機 は,阪 大 サ イ ク ロ ト
ロ ン の 吉 沢 ら の 実 験,Ag
(α,3n)
Inで の 高 ス ピ ン ア イ ソマ ー 励 起 関数 の 測 定 に 触 発
され た もの で あ っ た. 阪 大 バ ン デ グ ラ フ の 杉 本 ら は 短 寿 命 ベ ー タ放 射 性 元 素(β-RI)に 気 共 鳴 の 方 法 を 開 発 し,17F(T1/2=66s),12B(20ms)な
適 用 で きる核 磁
ど の 磁 気 モ ー メ ン トの 測 定
に 成 功 し た7).こ の 方 法 は 反 応 の 反 跳 に よ り放 射 さ れ る 生 成 核 を 一 方 の 角 度 で 捕 集 し 偏 極 β放 射 線源 を 作 り,偏 極 核 か ら の β線 放 射 の 非 対 称(パ を指 標 と してNMRを
観 測 す る.こ
持 が 成 功 の 鍵 とな っ た.こ さ れ,阪
大 バ ン デ グ ラ フ で は 鏡 核(A〓40)の
ら れ た.阪 Te鉱
の 際,β-RIの
の 実 験 は β-NMRと
リ テ ィ 非 保 存 に よ る)
捕 集過 程 及 び崩 壊寿 命 間 の偏極 保 して 以 降 の 超 微 細 構 造 の 研 究 に 活 用
電 磁 気 モ ー メ ン トの 系 統 的 研 究 が 進 め
大 の 緒 方 ら は 質 量 分 析 に よ る極 微 量 分 析 の 方 法 を 用 い,大
物 中 のXeを
同 定 計 測 し,二 重 β崩 壊130Teの
め て 成 功 し た8).こ
の 値 はDiracニ
原 研 バ ン デ グ ラ フ で は 数MeV が 進 め ら れ た.塚
谷 で採 集 した
寿 命(∼8×1020年)の
ュ ー ト リ ノ仮 説(ν≠ν)を
測 定 に初
支 持 し た.
nの 散 乱 実 験 に よ り複 合 核 準 位 の 統 計 的 性 質 の 研 究
田 ら は 非 弾 性 散 乱 ス ペ ク タ ル をn飛
行 時 間 に よ り計 測 し,そ の 解
析 か ら準 位 密 度 の励 起 エ ネ ル ギー 依 存 性(Ex=2∼8MeV)に
関 す る標 準 的 デ ー タ を
得 た9).ま た 東 大 等 との 共 同 研 究 で は,結 時 間 の 直 接 同 定 に 初 め て 成 功 す る10).Ge単 に お い て,放
出p'の
晶 中 の ブ ロ ッ キ ン グ 効 果 を 用 い て,核 結 晶 を標 的 とす る数MeV
反応
pの 非 弾 性 散 乱
チ ャ ネ リン グ に 対 す る 複 合 核 反 跳 の 効 果 を 観 測 す る こ と で,
10-17sの
反 応 時 間 を 決 定 し た.
理 研 サ イ ク ロ トロ ン で は 東 大 の 山 崎 ら が,高 の 測 定 か ら,核
内 陽 子 軌 道gl因
ス ピ ン ・ア イ ソマ ー の 磁 気 モ ー メ ン ト
子 の 異 常 を初 め て検 出 す る11).208Pb(α,2n)210Po*反
応 で210Po*(Iπ=11-,τ=24ns)を
生 成 し,外 部 磁 場 の 下 で の γ線 角 分 布 の 回 転 を,
サ イ ク ロ トロ ン の パ ル ス ビー ム を利 用 した 遅 延 時 間 ス ペ ク トル か ら観 測 し,磁 気 モ ー メ ン ト を求 め た.そ
の 結 果gl〓1.1と
換 効 果 の 理 論 予 測(1951年)と
約10%の
異 常 を見 出 し,宮 沢 に よ る 中 間 子 交
見 事 に 一 致 し た.な
核208Pbに
そ れ ぞ れh9/2とi13/2軌 道 を 占 め る2個
し,核g因
子 は,
お210Po*(11-)準
のpがj平
位 は二 重 閉殻
行 の伸 び た状 態 に 結 合
と ほ と ん どgl因 子 に支 配 さ れ る.こ
に よ り一 般 に は 分 離 困 難 な 配 位 混 合 に よ る 不 確 さ を避 け る こ とが で き た.他 マ ー 準 位 に つ い て も研 究 が 進 め ら れ た.物
のこと
のア イ ソ
性 研 サ イ ク ロ ト ロ ン の 小 林 ら は,偏
極n
散 乱(∼1MeV)で の 標 的 核 ス ピ ンI核 依 存 性 を 調 べ た12).極 低 温 で 偏 極 さ れ た 165Ho , 59Coに よ る 全 散 乱 断 面 積 の 測 定 か ら,光 学 ポ テ ン シ ャ ル にnス ピ ンs依 存 項 と し て,s・L項
の 他 に,s・I核 項 の 必 要 性 を 示 し た.ま
た弾性 散 乱 で の減偏 極 度 の測
定 に も初 め て 有 意 な 結 果 を得 た. 東 北 大 電 子 リニ ア ッ ク は1960年 に,第1世
代(Stanford)に
代 後 期 か ら,第2世
比 べ て1桁
代 電 子 リニ ア ッ ク の 競 合 の 下
以 上 強 い 電 子 線 に よ る 高 分 解 能 実 験 を進 め,非
弾 性 散 乱 と光 核 反 応 の 研 究 で 成 果 を挙 げ た13).鳥 塚 らは 非 弾 性 散 乱 の 実 験 に よ り新 し い 巨 大 共 鳴(GR)を
発 見 した .光 反 応 で はE1モ
ー ドの み が 強 く励 起 さ れ る が,電 子 散
乱 で は いず れ の 電 気 多 重 極 モ ー ド も励 起 さ れ,ま る.こ の こ と を用 い て90Zr(e,e')の E1GRに
近 接 す るE0ま
和 則 の ∼70%を
ク を発 見 した13).こ のpの 見 做 さ れ るの で,ピ
応 のpス
モ ー ドの 共 存,高
励起ア イソ
ペ ク トル に ア ナ ロ グ 状 態(IAS)の
起 の 粒 子-空 孔 状 態 と 同 定 さ れ る.こ
観 測 で あ っ た.他
鋭 い ピー
れ は光 反応最
の 重 核 に つ い て も研 究 を進 め,光
反応励
た π発 生 光
実 験 か ら軽 核 の ス ピ ン ・ア イ ソ ス ピ ン(τ σ)共 鳴 の 研 究 が 進 め ら れ
に は150MeVパ
(e,e'n),標
ル ス ・ス トレ ッ チ ャー が 稼 動 し,連 続 電 子 線 に よ る(e,
識 付 光 子 に よ る 光 反 応,等 19.3
1972年
E0両
存 性,等 の 成 果 を 得 た,光 核 反 応 の 研
外 殻 の み な らず 内 殻 の 陽 子 励 起 も 関 与 す る こ と を示 し た.ま
反 応(e,e'π)の
e'p),
たE2,
総
み の 検 出 実 験 は 理 論 的 に は 制 動 放 射 に よ る光 反 応 と 同 等 と
ー ク はE1励
初 のIAS(T=T3+1)の
た.1981年
発 見 し,そ の 強 度 が ア イ ソ ス カ ラ ーE2の
存 在 ,そ れ ら の 質 量 数A依
究 で 庄 田 ら は,90Zr(e,e'p)反
起 のIASは
実 験 で は,光 反 応 の励 起 スペ ク トル との 比 較 か ら,
た はE2GRを
尽 す こ と を 見 出 し た.ま
ベ ク トルE2GRの
た移 行 運 動 量 を変 化 させ て観 測 で き
1970年
の 同 時 計 数 実 験 が 進 行 す る. ∼1980年
に は 阪 大 附 置 核 物 理 研 究 セ ン ター(RCNP)が
代 発 足 し,主 装 置AVFサ
イ
ク ロ トロ ン(K=140)が1976年
に 稼 動 す る14).核 研(INS)で
次 期 計 画 を策 定 し,重 イ オ ン を 核 子 当 り∼1GeV(1A ロ ン を 中核 とす る"NUMATRON(ニ 1978年
よ り入 射 器 リニ ア ッ ク,イ
オ ン蓄 積 リン グ,等
高 エ ネ ル ギ ー 重 イ オ ン実 験 がINS-LBL共 た.し
か しな が ら こ の 計 画 は,用
に は 至 ら なか っ た.東
代 中期 に
加速 す るシ ン クロ ト
画"が
と り挙 げ ら れ た15).
の 開 発 と,BEVALACに
同 研 究(1979∼1983年)と
よる
して進 め られ
地 な ら び に 組 織 の 更 新 に 関 す る難 し さ も あ り,実 現
北 大 で は移 転 整 備 計 画 に 伴 い 多 目 的 学 内 共 同 利 用 のAVFサ
ク ロ トロ ン(K=50)が
設 置 さ れ1979年
績 を生 か し た10MVタ
に 稼 動 す る.九
イ
大 で は ペ レ トロ ン 開 発 の 実
ン デ ム が 建 設 さ れ る.筑 波 大 の 新 設 に 伴 い 学 内 共 同 利 用 ペ レ
トロ ン ・タ ン デ ム(12UD)が ン デ ム(20RD)の
GeV)に
ュ ー マ トロ ン)計
は1970年
設 置 さ れ る.原 研 で は 世 界 最 高 水 準 の ペ レ トロ ン ・タ
建 設 が 始 ま り,1982年
に 稼 動 す る.理 研 で は 次 期 計 画 リン グ サ イ
ク ロ トロ ン の 入 射 器 重 イ オ ン ・リニ ア ッ クが 建 設 さ れ る. 核 研ESで
は1970年
代 初 期,0.7GaV電
子 と核 内 陽 子 の 準 自 由 散 乱(e,
験 に よ り,釜 江 らは 核 内 核 子 軌 道 の 研 究 を行 な っ た16).数 百MeV陽 (p, 2p)と Be,
C,
同 じ く,こ の 実 験 は 核 内 軌 道,特 Ca,
Vを
標 的 と し,最 深1sに
良 好 な デ ー タが 得 ら れ た.1970年 験 か ら,核 MeV)を
内 二 核 子 の"準
12C,光
実
に 深 い 軌 道 の 探 索 に 適 し て い る.Li,
至 る軌 道,束
縛 エ ネ ル ギー,占
有 率 に関 す る
代 後 期 に 本 間 ら は核 子Δ 共 鳴 領 域 で の 光 反 応 の 実
重 陽 子 相 関"を
用 い た 軽 核,9B,
つ の 山が 見 出 され た.そ
e'p)の
子 の準 自由散乱
発 見 し た17).標 識 付 光 子(Eγ=200∼400
反 応 の 放 出 陽 子 ス ペ ク トル に 準 二 体 反 応 に よ る二
の 一 つ は核 子"N"で
の π発 生,γ+"N"→p+π
で あ り,い
ま一 つ はγ+"p-N"→p+Nに
よ る もの と同 定 さ れ る.ま
た 同 時 計 数 の 実 験 か ら,p-
N系
で あ る こ とが わ か っ た.こ
の 相 関 は 微 視 的 に はΔ 関 与
の ∼94%は
重 陽 子p-n系
の 中 間 子 交 換 電 流 効 果 に よ る も の と さ れ て い る. 理 研 サ イ クロ トロ ン で は1970年
代,重
イ オ ン(HI)に
よ る研 究 で 成 果 を挙 げ た.
野 村 らは サ イ ク ロ トロ ン の パ ル ス ビ ー ム 特 性 を利 用 し た イ ン ビ ー ム α線 分 光 の 方 法 を 開発 した18).(HI, 下 の α崩 壊 核126Ra,
xn)反
応 に よ りN=128の
ア イ ソ トー ン を生 成 し,寿 命 μs以
217Acの 同 定 に 初 め て 成 功 し た.重
究 で は,γ 線 多重 度 測 定 に よ る移 行 運 動 量 の 研 究,反
イオ ン反 応 の反 応 機 構 の研
応 生 成 核 の ス ピ ン偏 極 の 研 究,
反 応 生 成 核 の 回 転 帯γ 線 を角 運 動 量 の 指 標 とす る不 完 全 融 合 反 応 の 研 究,等 (14N, 12B)反 応 生 成 核12Bの り,β-RI12Bの ∼10%に
が あ る.
ス ピ ン 偏 極 の 測 定 実 験 は 阪 大 グ ル ー プ との 共 同 研 究 で あ
偏 極 検 出 は β-NMRを
用 い,90MeV
14N入 射 の 準 弾 性 散 乱 領 域 で
及 ぶ 偏 極 を検 出 し た19) .こ の 実 験 は 重 イ オ ン 反 応 が 偏 極 β-RIの 生 成 に 有 効
な こ と を初 め て 示 し た.そ
の 後 阪 大RCNPのAVFサ
イ ク ロ ト ロ ン を 用 い て,入
射
エ ネ ル ギー と標 的 核 質 量 数 へ の 依 存 性 に 関 す る系 統 的研 究 が 進 め られ た . 阪 大 バ ン デ グ ラ フ の 杉 本 グ ル ー プ は,森
田 ら の 理 論 的 研 究 に 支 え ら れ て,鏡
映 β±
崩 壊,
の ス ピ ン 整 列 相 関 項 の 測 定 か ら,核
(荷電 空 間 の座 標 反 転)保
存 の 検 証 に 成 功 した20).核
す る 誘 導 項 の 寄 与 が あ り,ベ ら要 請 さ れ,実
ク トル 流JVの
験 で も検 証 さ れ て い る.一
の 存 否 が 問 わ れ,も
験 は 整 列 核12N,
と して 計 測 す る.こ の 際NMRに 測 定 し た.結
た,こ
異 な り(G非
は誘 導 テ ン ソル項
保 存),β ±崩 壊 に 基 本 的
12Bの β±崩 壊 角 分 布 を β線 エ ネ ル ギ ー の 関 数
よ リス ピ ン 整 列 の 正 負 を調 整 し,整 列 相 関 係 数 を
も提 供 す る の で,以
の 実 験 は 一 般 に は 測 定 困 難 なJAの
時間 成分 に 関す るデー タ
降 は 南 園 ら に よ り,精 密 な 測 定 実 験 が 行 な わ れ た.な
はPrinceton(米),ETH(ス
イ ス)そ
サ イ ク ロ トロ ン の 江 尻 グ ル ー プ は,中 移,禁
方 の 擬 ベ ク トル 流JAで
存(CVC)か
果 は弱 磁 性 項 の み とす る期 待 値 に一 致 し,誘 導 テ ン ソ ル 項 の 寄 与 は認 め
られ な か っ た.ま
M1遷
リテ ィ
β崩 壊 に は核 子 内部 構 造 に 起 因
誘 導 弱 磁 性 項 の 存 在 はJV保
し 存 在 す れ ば 主 項 とGが
非 対 称 を導 入 す る.実
β崩 壊 のGパ
止 β遷 移,等
お 同時期 に
の 他 で も同 様 の 検 証 実 験 が 進 め られ た.阪
大
重 核 領 域 の イ ン ビー ムe, γ分 光 の 実 験 を 進 め,
の 測 定 か ら 多 重 極 ス ピ ン ・ア イ ソ ス ピ ン分 極 効 果 を 見 出
した21).筑 波 大 タ ン デ ム で は,p, に よ る融 合 反 応 と分 裂 反 応,等
dの 偏 極 ビー ム に よ る核 子 移 行 反 応,軽 の 研 究 が 進 め ら れ た.二 核 子 移 行 反 応(p,
で 八 木 ら は 多 段 階 過 程 の 寄 与 を明 確 に した22).(p, t)反 測 定 結 果 を 同 時 に 説 明 す る た め に は,二
い重 イ オ ン t)の
研究
応 の 断 面 積 と偏 極 分 解 能 の 両
段 階 過 程p→d→tが
直 接 過 程 に加 え て 必 要
な こ と を示 し,そ れ ら過 程 の 競 合 と干 渉 の 様 相 を調 べ,20MeV領
域 の反 応機 構 の理
解 を深 め た. 阪 大RCNPのAVFサ
イ ク ロ トロ ン は 稼 動 の 安 定 性 と ビー ム 分 析 器 に よ る 高 い エ
ネ ル ギ ー 分 解 能 を実 現 し,反 分 解 能p/Δp∼2・104を μA)も
応 粒 子 分 析 器RAIDENの
測定 系 に よ って世 界 記録 の 高
達 成 し た23).ま た 高 強 度p, d偏 極 ビ ー ム(偏 極 度〓80%,
安 定 に 加 速 し た.陽
子40∼70MeV領
こ れ らの 技 術 開 発 に よ る顕 著 な 測 定 精 度 の 向 上 に よ り,1980年 た る未 確 定 問 題 の解 決 に 貢 献 した24).そ れ らの 課 題 に は,弾 ル;非
弾 性 散 乱 に よ る ス ピ ン励 起,集
続 状 態;少 光;重
数 粒 子 系 と分 解 反 応;核
団 運 動 励 起,巨
図 る.1980年
代 にか け て 多岐 に わ
性 散 乱 と光 学 ポ テ ン シ ャ
大 共 鳴;高 励 起 前 平 衡 反 応 と連
子 移 行 反 応 と粒 子-空 孔 状 態;イ
イ オ ン 反 応 と生 成 核 ス ピ ン偏 極,等
の グ ル ー プ は,偏 極pに
∼1
域 の 加 速 器 と して は 後 発 で あ っ た が,
ン ビー ム核 分
が あ る.弾 性 散 乱 の 研 究 で 小 林(京
大)ら
よ る全 質 量 域 に わ た る 測 定 で光 学 ポ テ ン シ ャ ル の 精 密 化 を
代 に は 散 乱 粒 子 分 析 器DUMASを
散 乱 振 幅 の 完 全 測 定 を進 め た.非 散 乱 角(θ ∼0°)実 験 に よ るE0,
設 置 して ス ピ ン 回 転 係 数 も測 定 し,
弾 性 散 乱 に よ る 巨 大 共 鳴(GR)の E2GRの
分 離 同 定,高
研 究 で は,微
分 解 能 実 験 に よ るGR微
構 造 の 観 測 な どの 成 果 を挙 げ た.江 尻ら の グ ル ー プ は 非 弾 性 散 乱 粒 子 とGR崩 子 の 同 時 計 数 実 験 に よ り,GRのn放
小 細
壊 中性
出 崩 壊 に 対 す る 部 分 幅 の 観 測 に 成 功 し,GRの
微 視 的 構 造 の 理 解 を 深 め た.非 弾 性 散 乱 に よ る ス ピ ン励 起 の研 究 で は,M1励
起アイ
ソ ス ピ ンΔT=0,
1の 核 ス ピ ン1+準
は 懸 案 の 謎,1+準
位 に つ い て の 研 究 が 進 め ら れ,208Pbに
位 に つ い て 初 め てΔT=0準
だ し強 い と さ れ るΔT=1,
M1遷
位(Ex=5.84MeV)を
ついて
同 定 し た.た
移 の 大 部 分 の 強 度 は 未 だ 不 明 の ま ま 残 さ れ る.ま
た 中 重 核 領 域 で も ス ピ ン励 起 強 度 の 不 足 が 問 題 と し て 提 起 さ れ た.核 子 移 行 反 応 の 研 究 で は 高 分 解 能 測 定 に よ る 空 孔 ア ナ ロ グ状 態 の 微 細 構 造,深
い空孔状 態 の観測 な どに
成 果 を 挙 げ た.分
解 反 応 の 研 究 で は,d→p+n,3He→d+pの
粒 子 連 続 スペ ク トル
を 精 密 測 定 し,理
論 との 照 合 に よ り,反 応 の 相 当 部 分 を 占 め る機 構 の 理 解 を深 め る こ
とに 貢 献 した. 19.4
1980年
代 以 降
1980年 代 に は 高 エ ネ ル ギ ー 研 究 所(KEK)の12GeV陽 に よ る 中 間 エ ネ ル ギ ー 核 物 理 と,500MeVブ を 用 い た 研 究(主
に 物 性)が
進 行 に と も な い,素
進 展 す る.PSで
は,e+−e-衝
粒 子 以 外 の 課 題 も広 く と り あ げ,ハ
ドロ ン 入 射 の 核 反 応 の 研 究 が 進 行 した.こ 高 く,BNL(米)とCERN(欧)に
子 シ ン ク ロ トロ ン(PS)
ー ス タ ー 利 用 の ミュ ー オ ン及 び 中 性 子 突 器TRISTAN計
画の
イ パ ー 核 分 光 とGeV領
域ハ
の エネ ル ギー領域 は メソン工場 の もの よ り
あ るPSと
の 競 合 の 下 に 独 自 の 成 果 を挙 げ た.
核 研 で は 中 間 エ ネ ル ギ ー 物 理 研 究 部 が 発 足 し,KEK-PSで し た 超 伝 導 分 析 器SKSが 速(15A
GeV)に
建 設 さ れ る.ま
加 速 器AGSの
よ る 核 ・核 衝 突 実 験 が 日 米 協 力 事 業 の 一環
LBL-BEVALACで
の 共 同 実 験 で はRIビ
に は 核 研 の 次 期 計 画 と して30GeVに 研 究 を め ざ し た"大 る.阪
たBNL(米)の
の ハ イ パ ー 核 分 光 をめ ざ
大RCNPで
サ イ ク ロ トロ ン(K=400)が
ー ム に よ る核 反 応 実 験 が 始 ま っ た.1987年
至 る大 強 度 のp及
型 ハ ドロ ン計 画"が はAVFサ
び 重 イ オ ン加 速 に よ る 広 範 な
策 定 さ れ26),関 連 す る 開 発 計 画 が 進 め ら れ
イ ク ロ トロ ン に 接 続 す る カ ス ケ ー ド計 画27),リ ン グ ・ 建 設 され,1991年
に 完 成 す る.数
オ ン 反 応 の 精 密 実 験 を主 眼 と し,高 性 能 の 反 応 粒 子 分 析 器,n飛 整 備 さ れ た.理 540)が
建 設 さ れ1986年
域 の軽 イ
行 時 間 測 定 器 な どが
に 稼 動 し た28).
ン デ ム で は 重 イ オ ン 反 応 の 研 究 を進 め,軽 ブ クー ロ ン 反 応,核 分 裂 の 時 間 ス ケ ー ル,等
ン ビ ー ム 核 分 光 の 研 究 も進 展 し た.1994年 クが 設 置 さ れ,す 原 と大 沼(東
百MeV領
研 で は 重 イ オ ン加 速 を 主 目 的 とす る リ ン グ ・サ イ ク ロ トロ ン(K=
原 研 の20MVタ 全 融 合 過 程,サ
重 イ オン加
と し て 進 行 し た25).
め,Gamow-Teller共
は 高 分 解 能 のn飛 鳴,Iπ=0-励
完
の 研 究 で成 果 を挙 げ,イ
に は タ ン デ ム 後 段 加 速 器 超 伝 導 リニ ア ッ
べ て の 質 量 域 で の 核 反 応 が 可 能 と な る.東
工 大)ら
核 分 子 共 鳴 状 態,不
北 大 サ イ ク ロ トロ ン の 織
行 時 間 測 定 に よ り(p, n)反
応 の 研 究 を進
起 な ど の ス ピ ン ・ア イ ソ ス ピ ン励 起 モ ー ドの 研
究 に 成 果 を挙 げ た.ま
た オ ン ラ イ ン 質 量分 析 器 に よ る 短 寿 命RIの
鏡 核(T=1/2)59Zn,
57Cuの
同 定 とfp殻
研 究 で,藤
岡 らは
領 域 の 鏡 核 β崩 壊 の 換 算 寿 命ft値
の決定
な ど の 成 果 を 得 た.東 ∼100keV)の
工 大 バ ン デ グ ラ フ の 武 谷 ら は,核
散 乱(Ep=1.73MeV)に
つ い て 行 な わ れ,そ
鳴 幅 よ りの 値(2h/Γ)に よ る(n,
反 応 に 伴 う制 動X線(Eγ
核 反 応 時 間Δtで の 干 渉 効 果 の 観 測 に 成 功 し た29).実 験 は12C+p共
一 致 し た.東
γ)反 応 の研 究 で 永 井 ら は,宇
の 解 析 か ら得 ら れ たΔt∼10-20sは
工 大3.2MVペ
共
レ トロンのパ ル ス中性子 源 に
宙 初 期 で の 元 素 合 成 に 重 要 な 天 体 反 応12C(n,
γ)13C及 びp(n,γ)dのEn=(10∼100)keV領 LBL-BEVALACで
鳴
域 の 断 面 積 の 決 定 に 成 功 した.
の 共 同 研 究 で は 谷 畑,杉
本 ら の グ ル ー プ がRIビ
ー ムに よる反
応 実 験 で 先 駆 的 成 果 を挙 げ た30).高 エ ネ ル ギ ー 重 イ オ ン反 応 で 入 射 線 方 向 に 放 射 さ れ る 入 射 核 破 砕 片 を 二 次 入 射 線 とす る 反 応 実 験 で,軽 つ い て 核 半 径 の 系 統 的 測 定 を 進 め,極 の 厚 いn表
皮 層,等
核(p殻)領
域 の す べ て のRIに
端 な 中 性 子 過 剰 核11Liで
の 中 性 子 異 常 分 布 を 発 見 し た.こ
のnハ
ロ ー,8Heで
れ らは安 定 核 領 域 で は見 られ
な い 特 性 で あ り,核 構 造 研 究 の 新 局 面 を拓 い た. KEK-PSに た.こ
よ る ハ イ パ ー 核 の 研 究 で は,停
れ ら の 生 成 過 程 は,1970年
代 にCERNの
止Kま
た は(π, K)反
応 が 用 い られ
実 験 で 用 い られ た 無 反 跳(K,
π)反
応 に よ る置 換 状 態 の 生 成 に 比 べ て選 択 性 が な く,高 分 解 能 測 定 が 要 求 さ れ るが,深 準 位 ま で研 究 で き る.東 大 の 早 野 ら は 停 止Kを 態 を 発 見 し た31).そ れ 以 外 の Σ核 は ΣN→ΛN転 K)反
応 に よ る実 験 で は1990年
尻,岸
本(阪
大)ら
偏 極 の 検 出 に 初 め て 成 功 す る.実
束 縛状
換 幅 が 広 く観 測 困 難 と され た.(π,
代 に 高 分 解 能 の 分 析 器SKSが
は 既 知 の 顕 著 なs, p準 位 の 他 に,内 測 され た,江
用 い て Σ ハ イ パ ー 核4ΣHeの
い
稼 動 し,12ΛCの 準 位 で
殻 励 起 を 伴 う 二 つ の 衛 星s準 位 の 存 在 が 初 め て 観 は,12C(π,K)反
応 で 生 成 さ れ る 軽Λ 核 の ス ピ ン
験 で は 反 応 平 面 に 垂 直 方 向 の 偏 極 を散 乱Kの
左右
で 弁 別 し,Λ 核 の 弱 崩 壊 で の 上 下 非 対 称 陽 子 放 射 を指 標 と し て 偏 極 測 定 を達 成 し た. 今 井 ら京 大 ・名 大 グル ー プ は(K-, スS=-2)生
K+)反
応 に よ る 二 重 ハ イ パ ー 核(ス
成 の 新 た な 確 認 に 成 功 した32).そ れ ま で は1960年
トレン ジネ
代 の エ マ ル ジ ョ ン実
験 に よ る た だ 二 例 の観 測 の み で あ っ た.実 験 に は エ マ ル ジ ョ ン ・計 数 器 混 成 検 出 系 が 用 い ら れ,(K-,
K+)反
応 の 反 応 点 を計 数 器 系 で 押 え る こ と に よ っ て エ マ ル ジ ョ ン の
走 査 効 率 を 向 上 し,Ξ ハ イ ペ ロ ン が12Cま
た は14Nに
(10ΛΛBeま た は13ΛΛB)の反 跳 と崩 壊 の 軌 跡 を 同 定 した.こ H粒
子(6ク
ォー ク[uuddss])探
索 の 目的 もあ り,H粒
ΛΛBの 質 量(2,204MeV/c2)はH粒
捕 獲 さ れ て 生 成 さ れ るΛ Λ 核 の研 究 は 理 論 的 に 予 言 され る 子 は 見 出 さ れ な か っ た が,
子 質 量 の 下 限 を 与 え た.細
線 蛍 光 体 束 に よ る検
出 効 率 向 上 の 計 画 が 進 め ら れ て い る. KEK-PSに
よ る核 反 応 の 研 究 は,核
内 に 入 射 さ れ た ハ ド ロ ン(p,
π,K)の
時間 ・
空 間 的 発 展 を 調 べ よ う との 観 点 の 下 に進 め られ る.中 井 ら の グ ル ー プ はハ ドロ ン入 射 反 応 を核 ・核 衝 突 の 素 過 程 と位 置 づ け,そ 大 立 体 角 多粒 子 分 析 器FANCYを
の機 構 を探 る実 験 を行 な っ た.こ
の 目的 で
設 置 し,放 出 粒 子 の スペ ク トル と相 関 の測 定 か ら,
数GeV入
射 粒 子 の 核 内 で の エ ネ ル ギ ー 付 与 率(停
的 理 解 を 深 め た.新
井,八
木(筑
波 大)ら
そ の 機 構 に 関 す る現 象 論
の グ ル ー プ は,π+C反
ン の 生 成 と ス ピ ン 偏 極 の 測 定 を 進 め,π+核 π+p反
止 能)と
応 に よ るハ イ ペ ロ
子 の 二 体 反 応 で は 達 し 得 な い 後 方 で,
応 の 場 合 と は 大 き く異 な る偏 極 を見 出 し,そ の 機 構 が 問 わ れ て い る.1990年
代 に はPSに
よ るd及
び αの 加 速 が 始 ま る.千 葉 ら はd, α入 射 の 核 反 応 で の 反 陽 子,
p発 生 の 励 起 関 数 を,p+p反 GeVのd+Cuに そ のp発
応 で の 閾 値(5.6GeV)以
よ る 断 面 積 はp+Cuの
下 の領 域 で 測 定 した.3.5A
場 合 に 比 べ て2桁
も大 き い こ とが 見 出 さ れ,
生 機 構 の 解 明 に 関 心 が 寄 せ られ て い る.
BNL-AGSで (QGP)相
の15A
GeVの
重 イ オ ン実 験 で は,ク
ォ ー ク ・グ ル オ ン ・プ ラ ズ マ
へ の 相 転 移 現 象 の 検 出 をめ ざ し て,Si+Au反
め,(K+/π+)発
生 比 がp+p反
応 か らの発 生 粒 子 測 定 を進
応 の 場 合 に 比 べ て2∼4倍
大 きい こ と を 見 出 し た.た
だ し こ の 現 象 は 反 応 系 内 多 重 散 乱 に よ る も の と も考 え られ,相 な っ て い な い.CERNで
も200A
GeV
HIに
よ る実 験 が 進 め られ て い る が,相
出 の 決 定 的 実 験 方 法 は 懸 案 課 題 で あ る.BNLで 器RHICの
建 設 が1999年
PHENIXの
転 移 の 確 実 な 証 拠 とは
は100A
GeVの
の 稼 動 を め ざ し て 進 め ら れ,日
本 グ ルー プ は そ の 測定 器
実 験 に 参 加 し,準 備 が 進 め ら れ て い る.
理 研 リ ン グ ・サ イ ク ロ トロ ン の 稼 動 に よ り,軽 核 で は100A 実 験 が,先
発 のGANIL(仏),後
発 のNSCL(米)等
子2体
反 応 閾 値 以 下 で の π-発 生;破
核;天
体 核 反 応;超
重 元 素 の 生 成;高
す る.入 射 核 破 砕 反 応 に よ る二 次RIビ
MeVに
砕 反 応 生 成 核 の ス ピ ン偏 極;極
端 な中性 子過 剰
ス ピ ン 異 性 核 ビ ー ム の 生 成,な
どの 研 究 が 進 展
ー ム が,RI分
の 非 束 縛 状 態 の 同 定 な ど で 成 果 を挙 げ た.RIビ ビ ッ グ ・バ ンで のLiよ
離 器RIPSに
率 を,逆 反 応 の14Oク 阪 大RCNPの
反応
出 と共 鳴 崩 壊pの
励 起 され た
観 測 に 初 め て 成 功 す る.粒
子分
同 時 計 数 二 次 元 スペ ク トル 測 定 で あ り, た71Ga(3He,t)71Ge反
陽 ニ ュ ー ト リ ノの 検 出 に 重 要 な 反 応,7Ga(ν,e-)71Geの
応 の実 験か
反 応 率 の 正 確 な 値(誤
求 め た.
核 研 の 空 芯 β線 分 析 器 を用 い て 川 上 ら は,3Hの 18.5keV)付
反 応率 の 直
よ り始 ま る.反 応 粒 子
電 交 換 反 応,208Pb(3He,t)208Bi*で
鳴 の 陽 子 崩 壊,208Bi*→207Pb+pの
共 鳴 の微 視 的 構 造 の 解 明 に有 用 な デ ー タ を得 た.ま
差 数%)を
→n+11Bの
ー ロ ン分 解 の 断 面 積 か ら決 定 す る な ど の 成 果 を挙 げ た.
析 器 に よ る散 乱 角0° のt検
ら,太
布 の 研 究 や10He
環 の 点 火 に 重 要 な 反 応13N(p,γ)14Oの
リ ン グ ・サ イ ク ロ トロ ンに よ る実 験 は1992年
分 析 器 に よ る 研 究 で 藤 原 ら は,荷 Gamow-Teller共
よ って高効 率 で生
ー ム に よ る天 体 核 反 応 の 研 究 で は,
り重 い 元 素 合 成 に 重 要 な 反 応,8Li+α
た は 恒 星 中 の ホ ッ トCNO循
至 る重 イ オ ン
との 競 合 の 下 に 進 め ら れ,核
成 さ れ る.不 安 定 核 領 域 の 核 反 応 の 研 究 で は,中 性 子 過 剰 核 のn分
接 測 定,ま
転 移検
重 イオ ン同士 の 衝 突
近 を精 密 測 定 し,電
β崩 壊 ス ペ ク トル の 最 大 値(〓
子 ニ ュ ー ト リ ノνe質 量 の 直 接 測 定 に よ る 上 限 値
mν<13eV/c2(95%C.L.)を
得 た33).実 験 で は 線 源(脂
肪 酸 の二 重 分 子 層)の
エ ネ ル ギ ー 校 正 と に 特 別 の 注 意 が 払 わ れ,LASL(米)の
調整 と
値(mν<9.3eV/c2,1991
年)と 並 ぶ 最 低 限 界 値 が 得 ら れ た.阪 大 の 江 尻 グ ル ー プ は 二 重 ベ ー タ(β β)崩 壊, 100Moのν を伴 う崩 壊(2ν ββ)の β線 スペ ク トル の 直 接 測 定 に 初 め て 成 功 し ,半 減 値T2ν1/2=1.3+0.3-0.2・109年 を得 た34).実 験 は ν放 射 な し の 崩 壊(0ν 存)の
ββ;レ プ ト ン 数 非 保
検 出 をめ ざ して 低 バ ッ ク グ ラ ウ ン ド計 数 で 高 感 度 の βγ検 出 器ELEGANT
を開 発 し,神 岡 の 地 下1,000mで
測 定 され た.(0ν ββ)は 検 出 さ れ な か っ た が,そ
半 減 期 の 上 限 値T0ν1/2>7・1021年 を 得 た.こ
れ は ν質 量 の 上 限 値 ∼6eV/c2に
V の
対 応 し,
よ り一 層 の 精 度 向 上 が 計 られ て い る. KEKの
パ ル ス 中 性 子 源 に よ るeV領
(n,γ)反 応 のp波(l=1)共
域 の偏 極n共
を 再 確 認 した35).こ の 顕 著 な 効 果 は,1983年 の 特 性(高
準 位 密 度 で のs-,p-波
以 上,原
田 らは139La
大 きい パ リ テ ィ 非 保 存 効 果
にDubna(ロ)で
共 鳴 の 混 合 とl=1遠
に よ る106倍 増 幅 の 結 果 と さ れ て い る.こ な 対 象 と して,そ
鳴 散 乱 の 実 験 で,増
鳴,En=0.743eVで10%と
発 見 さ れ た が,共
鳴
心 力 障 壁 に よ る 狭 い 共 鳴 幅)
の 共 鳴 は 時 間 反 転T非
保 存 の検 証 に有望
の 実 験 計 画 が 進 め ら れ て い る.
子 核 実 験 の 発 展 を追 っ て き た が,特
に近時 は世 界的 に高水 準 の研究 で 多 く
の 成 果 が 挙 げ ら れ て きた こ と に 意 を強 くす る.ま 域 の 電 子 及 び 光 子 に よ る研 究,RIフ
た 次 期 計 画 も(図2参
照),GeV領
ァ ク ト リ,そ の 他 の 魅 力 あ る 計 画 が 進 行 し,そ
れ らか ら の 展 開 も大 い に 期 待 さ れ る. 本 稿 の た め,各
地 の 多 くの 方 々 か ら 資 料 を送 付 し て い た だ い た が,十
くせ な か っ た こ とは 諒 と さ れ た い.な す ぐれ た 研 究 が な さ れ た が,紙
お 境 界 領 域 の 研 究 で は,p-He原
分 そ の 意 を尽 子の発見など
数 の 制 限 の た め 凡 て 割 愛 し た.
追
記
年6月
に ま とめ た も の で あ っ た.こ
以 上 は 物 理 学 会 誌 の 特 集 記 事,"50年
を か え りみ る"の 一 つ と して1995
こ で は そ の 後 の 展 開 につ い て筆 者 の 知 る と こ ろ を
要 約 して お こ う. 阪 大RCNPサ
イ ク ロ トロ ン に よ る研 究 で は,東
定 装 置 を 用 い て90Zr(p,n)90Nb反
性 子 飛行 時 間 測
応 の微 分 断 面積 の前 方角 度 分 布 とス ピン反 転確 率
SNNと
を 観 測 し,10数
題"に
一 つ の 決 着 を与 え た36).測 定 は,入
エ ネ ル ギ ー 数10MeVに
大 の 酒 井 らは,中
年 来 懸 案 の"Gamow-Teller(G-T)型
巨大共 鳴 の強 度 欠 損 問
射 陽 子295MeVを
わ た っ て 行 わ れ た.そ
用 い て,生
の 解 析 か らG-T遷
成 核 の励 起
移 強 度 は 共 鳴 線9
MeV付
近 に 集 中 し た 強 度 の 外 に 高 い 励 起 エ ネ ル ギ ー に わ た っ て 分 布 し,20∼50
MeVの
領 域 で は 配 位 混 合 の 効 果 に よ る 理 論 的 予 測 と 良 い 一 致 を見 た.ま
の 和 則 値 と実 験 値 との 比 較 か ら,G-T励 て か な り弱 い こ と を示 唆 した.
起 のΔ-h励
た遷 移 強 度
起 との結合 が従 来 の 予測 に比 し
理 化 学 研 究 所 の サ イ ク ロ トロ ンSSCで か ら離 れ たnま
た はp崩
は,軽
核 か ら 中 重 核 領 域 へ 向 け て,安
定核
壊 極 限 の ド リ ップ ラ イ ン に 至 る.不 安 定 核 の 研 究 が 進 展 し,
安 定 核 領 域 で 知 られ て い る魔 法 数 と は 異 な る不 安 定 核 領 域 で の 新 し い魔 法 数 が 見 出 さ れ た37).nま し,核
た はpが
魔 法 数 の核 で は 結 合 エ ネ ル ギー が 近 傍 の 核 に く らべ て 極 大 を 示
内 核 子 軌 道 の 閉 殻 構 造 を指 示 して い る.
π 中 間 子 原 子 の 深 い 束 縛 状 態 の 発 見 が あ っ た.π-原 作 用 の 知 識 を あ た え る.と の 深 い 束 縛 状 態 へ のX線
子 のX線
分 光 は π と核 の 相 互
こ ろ が 軽 核 以 外 で は 基 底 状 態 と そ の 近 傍 の1sや2pな は 観 測 で き な か っ た.そ
軌 道 が 核 内 に 侵 入 し 強 い相 互 作 用 に よ っ て核 に 吸 収 され て し ま うた め,観 な い もの と さ れ て き た.と
こ ろ が,土
岐 と山 崎 がX線
た 現 象 論 的 相 互 作 用 を用 い て 予 測 し38),π--Pb原
子 で も基 底 状 態 に 至 る準 位 幅 は 準 位
々 の 反 応 に つ い て の 試行 の 末,ド
ク ロ トロ ンSISと
核 破 砕 片 分 析 器FRSを
測 にかか ら
分 光 や π-核 散 乱 か ら決 め ら れ
間 隔 よ り狭 く,離 散 準位 と して 観 測 で き る は ず で あ る こ と を 示 し た.こ 位 の 探 索 は,種
ど
こ で こ れ らの 深 い 束 縛 状 態 は,π-
イ ツGSI研
の深 い束縛準
究 所 の 重 イ オ ン ・シ ン
用 い た208Pb(d,3He)反
応 のQ値
スペ ク ト
ル の 測 定 で 初 め て 達 成 され た39).こ れ は 新 し い核 分 光 の 始 ま りで あ り,核 基 底 状 態 か ら140MeVも
高 い所 に 幅 の 狭 い 新 種 の 共 鳴 準 位(G-T型)が
存 在 す る こ との 発 見 で
あ っ た. ハ イ パ ー 核 の 研 究 で は ,Λ ハ イ パ ー 核 は 多 くの 核 で観 測 さ れ,寿 い .一 方,Σ
ハ イ パ ー 核 は 多 くの 探 索 実 験 の 結 果,た
た40).KEK-PSに
よ る ハ イ パ ー 核 の 研 究 で は,東
子 分 析 器SKSと,14個 Hyperballと
のGe半
命 も∼10-7sと
長
だ 一 例4ΣHeの 存 在 が 確 定 さ れ
北 大 の 田 村 らは,超
伝 導 磁 石K粒
導 体 検 出 器 で 構 成 さ れ た 大 立 体 角γ 線 検 出 器
を組 み 合 わ せ,7Li(π+,K+)7ΛLi反
応 の生 成 核 よ りの γ線 の 精 密 測 定 に
初 め て 成 功 し,ハ イパ ー 核 分 光 学 の 進 展 に 重 要 な 一 歩 を も た ら し た41).測 定 さ れ た 7 ΛLi基 底 状 態 の ス ピ ン2重 項 の 分 岐 値 はΛN相 互 作 用 の ス ピ ン ・ス ピ ン項 の 選 定 に 決 定 的 に 重 要 で あ っ た. 高 エ ネ ル ギ ー 重 イ オ ン 衝 突 実 験 は,1986年,欧 (格 子 当 た り200GeV)の GeVの BNLに
お い て,100A
が 稼 動 し,実 fm3程
重 イ オ ン ビー ム が,ま
重 イ オ ン ビ ー ム が 加 速 さ れ,新 GeV+100A
州 のCERNに た 米 国 のBNL研
GeVの
ら に,2000年
には
超 高 エ ネ ル ギ ー 重 イ オ ン衝 突 器(RHIC)
験 が 始 ま っ た42,43).超 高 エ ネ ル ギー の 重 イ オ ン 間 の 衝 突 で は,数100
度 と核 子 サ イ ズ で は 大 き な 容 積 が1012K以
ォー ク が 開 放 され た 相"に
上 の 高 温 状 態 に な り,そ
転 移 し,ク
が あ た か も ス ー プ 状 に な る も の と考 え ら れ,"ク (QGP)"と
GeV
究 所 に お い て15A
た な 時 代 が 始 ま っ た.さ
個 もの ク ォー ク ・反 ク ォー クが 出 現 す る と考 え ら れ て い る.こ 状 態 で は"ク
お い て200A
呼 ば れ る.こ
こ に は104
の高エ ネル ギー密 度の
ォー ク ・反 クォ ー クや グ ル ー オ ン ォ ー ク ・グ ル ー オ ン ・プ ラ ズ マ
の 相 転 移 は 超 高 速 計 算 機 を用 い た 格 子 ゲ ー ジ 理 論 に 基 づ く
計 算 で も 予 測 さ れ て い る.こ RHICの
測 定 器PHENIXに
の 新 し いQGP相
デ ー タ は,CERNのNA50グ る.衝
の 検 出 を 目指 して,日
参 加 し実 験 を進 め て い る.最
ル ー プ に よ るJ/Ψ 粒 子 収 量 の 減 少 に 関 す る も の で あ
突 の 初 期 に は 発 生 可 能 なJ/Ψ 粒 子 もQGP中
落 とす と 溶 解 消 失 す る よ うに,そ CERNで
本 グル ー プ は
近 も っ と も注 目 さ れ て い る
で,ち
ょ う ど熱 い 油 に〓 の 小 塊 を
の 発 生 が 抑 制 さ れ る と理 論 的 に予 言 さ れ て い た44).
の 測 定 は こ の よ う な 現 象 を示 唆 し45),今 後 のRHICに
お け る よ り詳細 な測
定 に 期 待 が か け ら れ て い る. 次 期 計 画 に 関 して は,理 発 足 し た.こ MeV,ウ
化 学 研 究 所 のRIビ
の 計 画 は2つ
ー ム ・フ ァ ク ト リー が1998年
度か ら
の カ ス ケ ー ド ・サ イ ク ロ ト ロ ン に よ り軽 核 で は400A
ラ ン に い た る 重 核 で は150∼200A
MeVま
で 加 速 で き,ま
た 多 目的実 験 用
の 蓄 積 リ ン グ も設 置 さ れ る計 画 で あ る46).元 東 京 大 学 附 置 原 子 核 研 究 所 以 来 の 計 画 で あ っ た 大 型 ハ ドロ ン計 画 は47,48),高エ ネ ル ギ ー 加 速 器 研 究 機 構(高 原 子 力 研 究 所(原
研)の
共 同 企 画 と して,2001年
加 速 器 計 画 は,大
強 度 陽 子(∼10μA)を
加 速 で き る50GeVシ
前 段 の 早 い 繰 り返 し(25Hz)の3GeVシ 置 と す る.元
来 は,素
ハ ドロ ン計 画(高 画(原
研)と
ン ク ロ トロ ン(加
粒 子 ・原 子 核 物 理 学,並
エ ネ 機 構)と,中
が 提 案 さ れ て い た.こ
ン ク ロ トロ ン と そ の 速 電 流0.3mA)を
主装
び に 物 質 科 学 の 研 究 を行 う た め の大 型
れ ら の 計 画 は 共 に そ れ ぞ れ の エ ネ ル ギー 領 域 で 大 れ ら を一 本 化 し最 先 端 の 一 連 の 陽 子 加
速 器 施 設 を建 設 す る こ とに 両 機 関 で合 意 し推 進 され て き た.な 研 究 所 は 高 エ ネ ル ギ ー 研 究 所 と統 合 さ れ て,1998年
れ,1946年
日本
の 大 強度 陽子
性 子 ビ ー ム 利 用 に 主 眼 を 置 い た 中性 子 科 学 研 究 計
強 度 ビー ム を 得 る こ と を 目指 して い るの で,こ
が 発 足 し た49).(筆 者=す
エ ネ 機 構)と
度 か ら 発 足 し た.こ
お この 間,東
大原 子核
に 高 エ ネ ル ギー 加 速 器 研 究 機 構
ぎ も と ・け ん ぞ う,大 阪 大 学 ・東 京 大 学 名 誉 教 授.1923年
生ま
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島 隆 義:日
本 物 理 学 会 誌43(1988)429;Phys.Lett.B
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中 純 一:日
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狭 智 嗣:日
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T.Yamazaki:Phys.Lett.B213(1988)129.
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野 龍 五:日
本 物 理 学 会 誌52(1997)354.
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田
本 物 理 学 会 誌53(1998)274.
41) H.Tamura,et 42) 浜 垣 秀 樹,早
44) T.Matsui 徹,三
融:日
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本 物 理 学 会 誌55(2000)868.
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村
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初 出:日 本 物 理 学 会 誌51(1996)245-252.
本 物 理 学 会 誌52(1996)430.
p.31,
&
No.12
p.102.
20.
原子核分光 学 の展開 ― 私 の 来 た道 ―
森
永
晴
彦
20.1 ひ と りで 考 え て い た 頃 核 分 光 学 の,私 (1945年10月
に と っ て の 原 点 は 多 分,終
∼1946年7月
頃 ま で)に
戦 直 後,大
に あ っ た.先 生 の 講 義 は 装 置 の こ とが 多 く,し か も,ど よ う な 「不 純 」 な話 が 多 くて,つ
学 卒 業 ま で あ と一 年 の 間
聞 い た 嵯 峨 根 先 生 の 講 義 「放 射 能 作 学 」 の 中
ま ら な く,殆
っ ち の 方 が 安 上 が りだ とい う
ど全 部 忘 れ て し ま っ た が,一
つ だ け,
私 が そ の 後 不 純 な こ と をや ら さ れ て い る 間 を 通 して 頭 に 残 っ て い た の は,「 α線 や γ 線 が 線 ス ペ ク トル を もっ て い る こ とか ら して,核 こ と は期 待 さ れ る が,原
に も原 子 や 分 子 の よ うな 構 造 が あ る
子 や 分 子 を 結 び つ け て い るCoulomb力
に 比 べ て,核
の 中の
陽 子 と 中 性 子 を結 び つ け て い る 核 力 は ず っ と複 雑 で,し か も そ の 精 し い性 質 は 未 だ わ か っ て い な いか ら,α 線 や γ線 の エ ネ ル ギ ー ス ペ ク トル か ら得 られ る核 の 励 起 準 位 の ス ペ ク トル が わ か っ て も,そ れ を解 釈 す る こ とは 困 難 で あ ろ う」 と い う 一 節 で あ っ た.因
み に,そ
れ を解 明 して そ れ か ら核 力 を知 る こ とが で きれ ば … … とい うの は,一
つ の 大 きな 夢 で,ま
た核 力 を知 る とい うこ と は聖 な る 物 理 屋 の使 命 で あ る と思 っ て い
る 人 に 会 う こ とは 少 な くな か っ た. 私 は,そ
れ か ら 嵯 峨 根 研 に 入 っ た.仕 事 は,日
本 の原子 核研 究の ため に次世 代 の加
速 器 の 可 能 性 を勉 強 す る こ と だ っ た の で,そ の 頃 出 て き た シ ン ク ロ トロ ン 原 理 や,L. W.
Alvarezに
さ っ た り,新
よ る リニ ア ッ ク な どす べ て の 加 速 器 の 文 献 を わ くわ く しな が ら読 み あ し い加 速 器 の ア イ デ ィ ア の モ デ ル・ テ ス トな ど して い た の で,核
身 の 方 は わ か らず,眠
た いH.
A. Betheの
物理 自
赤 本 輪 講 ぐ ら い の 付 き合 い しか な か っ た.
原 子 核 の研 究 室 の そ も そ もの 目的 で あ る原 子 核 研 究 を,本 場 の 好 条 件 で 自分 でや る チ ャ ン ス に め ぐ ま れ た の は,1951年
に ア メ リカIowa州
る留 学 生 と し て 行 っ た と き だ っ た.嵯 わ れ て い た が,ど
立 大 学 にGARIOA基
峨 根 先 生 は も う古 巣 のBerkeleyに
う も私 が こ ん な と こ ろ に行 く こ と に な っ た の は,少
に 先 生 の 影 響 が あ っ た ら し く,い
う の だ っ た.と
初 の1年
ら い で,16人
の頃 の言
クニ ッ ク で 勝 負 し ろ 」 と い
ク ニ ッ ク で 勝 負 す る に は ど う し て も現 場 に 出 ざ る を得 な
こ ろ が シ ン ク ロ ト ロ ン の 実 験 室 に 行 っ て も,わ
グ ・オ ン"ぐ で,最
こ ろ が,テ
行 って しま
な く と も 間接 的
ろ い ろ と私 の こ と を 心 配 し て下 さ っ た.そ
葉 で よ く覚 え て い る の は,「 ア イ デ ィ ア で 勝 負 す る か,テ
い.と
金に よ
か る 言 葉 は"ビ
ー ム ・カ ミ ン
に 一 人 で 選 ば れ た私 の 英 語 が 全 く通 じな い,と
は 毎 日深 夜 ま で,Chicago大
い うわ け
学 で ミュ ー 中 間 子 に あ て た 原 子 核 乾 板 と
に らめ っ こ を して い た.見 の 中,約2パ
た もの は2万3千
ー セ ン トの場 合 に 何 か 起 こ っ て い る.1個
リ コ イ ル が つ い て い る と き,α 粒 子,そ を,あ
個 の 中 間 子 が 止 っ た ポ イ ン トで あ る.そ 陽 子 が 出 て い る場 合,そ
の ほ か 小 さ な ス タ ー 等,こ
る い は そ の 統 計 を ど う解 釈 す るか は,ま
れに
れ らの 一 つ 一 つ
さ に 楽 し み の 宝 庫 で,私
の核 物理 の研
究 の 出発 点 だ っ た. 2年 目か ら は,シ
ン ク ロ トロ ンで 働 く こ と に な っ た.速
て は との 提 案 もあ っ た が,一
い エ レ ク トロ ニ ク ス をや っ
つ に は 前 と 同 じ よ う な 意 味 で 自信 が な か っ た こ と と,シ
ン ク ロ トロ ンで は ま と も な 提 案 さ え で き れ ば 好 き な こ と をや らせ て も ら う可 能 性 が あ っ た か らだ った.し
か し,二 年 間 い た シ ン クロ トロ ン で は私 の 提 案(三
どれ も う ま くい か な か っ た.今 っ た か ら だ.た 3n)反
と え ば ア ル ミニ ウ ム を70ミ
応 を用 い て24Alを
思 っ た.そ
リ オ ン ボ ル トのX線
で 照 射 し て(γ,
の 崩 壊 か ら24Mgの
構 造 を調 べ よ う と
作 り(馬 鹿 な 話),そ
の 一 つ の 訳 は,当
つ ∼ 四 つ)は
か ら考 え る と,こ れ は 私 が 全 く核 物 理 に 関 して 未 熟 だ
時 ま だ 殻 模 型 は ま だ 私 に は よ くわ か ら ず,Weisskopf
の 教 科 書 に 出 て い る α模 型 で こ れ を オ ク タヘ ドロ ン と して う ま く行 か な い か 調 べ て み た か っ た か ら だ っ た.こ
れ は全 然 う ま く行 か な か っ た が,そ
と調 べ て い く う ち に,8Beで
は 同 じだ が,13C以
の 近 所 の 原 子 核 をず っ
降 ク ロ ー ズ ・パ ッ ク ドの 代 りに 線 形
に な る可 能 性 が あ る の で は な いか と考 え は じめ て,紆
余 曲 折 の 末,線
指 摘 し た と こ ろ,当
Reviewsが
時 は 極 め て 厳 しか っ たPhysical
形核 の可 能性 を
掲 載 して くれ た.お
か げ で α模 型 と い う もの を だ い た い 体 得 す る こ とが で きた. も う一 つ,こ (今 は7.5×105年
の 頃 探 して 随分 や っ た の に 見 つ か ら な か っ た核 は,26Alの と知 られ て い る)の
ア イ ソ マ ー で あ っ た.当
長 い半減期
時 の競 争 に は 負 け た
が,お
か げ で鏡 像 核 とか ア イ ソ ス ピ ン が 核 スペ ク トル に 与 え る影 響 が よ くわ か って き
た.こ
の こ ろ書 い た(γ,p)反
選 択 則 で 説 明 し た 説 は,は 3年 間 のIowaの,牧
応の 断面積 が 異常 に大 き くな るこ とをア イソス ピンの じめ て の,そ
に,Indiana州Purdue大
学 の 核 グ ル ー プ に 移 っ て1年
小 型 の サ イ ク ロ トロ ンが あ っ た.ス た が,理
論 のPeaslee教
ま た とな い 師 で あ っ た.こ
の 短 い 間 に10程 の 他,ア
で あ る こ と を 予 想 して,ま
た 他,50Sc,40Cl,74Gaと し た.な
イ ス のETH出
お,私
半 仕 事 を した.こ
身 のBleuler教
授 と共 に 良 く私 の 考 え を 聞 い て くれ,か
引 用 さ れ た もの を 書 き上 げ た.そ 期 が0.6秒
の 選 択 則 の 動 的 範 疇 に な っ た.
歌 的 だ が 物 理 の 仕 事 で は 何 も殆 ど 不 成 功 に 終 っ た 生 活 の 後
の 論 文,し
授 は その 主任 だ っ つ 指 導 して くれ た,
か も い くつ か は あ と で 何 度 も
イ ソ ス ピ ン の 知 識 に 基 づ い て42Scの
さ に,そ
半減
れ と全 く同 じ値 を観 測 す る の に 成 功 し
い う三 つ の ア イ ソ トー プ も見 つ け て,大
が うれ し く思 っ て い る こ と は,こ
の 研 究 者 に よ り追 試 され て も,は
こに は古 い
体 そ の 崩 壊 を決 定
れ ら の 半 減 期 の 値 が,そ
の 後,多
く
じめ 私 の きめ た値 と殆 ど違 っ て い な い こ とで あ る.
こ の 頃 ま で の 論 文 は約 半 数 が 個 人 名 で,残
りは す べ て 二 人 の 連 名 の もの で,重 要 な 間
違 い は 未 だ 見 つ か っ て い な い.
20.2 核 分 光 学 の フ ロ ン テ ィア ヘ Purdue大 あ っ た.そ
学 に い る 間 は 仕 事 の 方 も 一 気 に進 ん だ が,勉 れ は,同
じ州 の 文 科 系 の 方,Indiana大
れ と の 合 同 ゼ ミナ ー ル が 両 校 で交 替 で行 わ れ,そ
強 の 方 も大 変 面 白 い 契 機 が
学 の物 理 教 室 とわ れ わ れ の 方 の そ こで,そ
の 当 時,花
上 っ た 六 人 ほ どの 若 手 理 論 家 に接 す る機 会 が あ っ た こ とだ っ た.そ ぐ数 ヶ月 前Columbia大
の 内 の 一 人 は,す
学 で,当 時 日本 か ら流 出 し て 居 られ た 湯 川 秀 樹 教 授 の と こ ろ
で 博 士 号 を取 り就 職 して き た ば か りのCarl ろ で や ら さ れ た テー マ(多 か し か っ た の で,今
火 の よ うに盛 り
Levinson博
士 で,私
には湯 川先生 の とこ
分 非 局 所 場 理 論 の こ と だ ろ う)は あ ま り に も抽 象 的 で む ず
度 は も っ と実 験 に近 い 話 を や りた い の だ と言 っ て い た.彼
合 同 ゼ ミナ ー ル で 話 した の は,次 実 験 デ ー タ の 集 積 に よ り,い
ま多 くの 核 の 低 い励 起 状 態 に殻 モ デ ル に よ る状 態 の ア
サ イ ン メ ン トが で き る よ う に な っ た.一
つ の 実 例 と し て,41Caは
ダ ブ ル ・マ ジ ッ ク
の コ ア に 一 つ の 中 性 子 が つ い た ア ル カ リ原 子 の よ う な も の な の で,41Caの 励 起 状 態 はj-j結
が その
の よ う な も の で あ っ た.
合 の 殻 模 型 の1f7/2,2p3/2,1f5/2,2p1/2,…
下 の方 の
…と考 え る こ とが で き る.
そ れ で こ れ ら の エ ネ ル ギ ー か ら,中 性 子 に 対 す る コア の 一 体 ポ テ ン シ ャ ル が ス ピ ン 軌 道 力 ま で 入 れ て 出せ る.次
に42Caの
低 い 状 態 は 下 か ら順 にf27/2(n)か ら で き る0-2-4
-6の 状 態 と仮 定 で き る.こ れ か ら核 内 の 中 性 子 間 の 力 を 出 す.す
る と,あ
りそ う も
な い三 体 力 が な い と仮 定 す れ ば,上 記 の パ ラ メ タ ー の み か らf37/2(n)だ と考 え ら れ る 43Caの 低 い 状 態 が 計 算 で き る .そ れ で や っ て み た と こ ろ,実 験 と き わ め て 正 確 に 一 致 した と い うの だ っ た.こ 核 ス ペ ク トル が,少
の よ うに して,嵯
峨 根 先 生 の 講 義 で は考 え も及 ば な か っ た
な く と も現 象 論 的 に は解 釈 が さ れ 得 る 糸 口 が 見 つ か っ た の で あ
る. Indiana大 学 は そ もそ も原 子 核 分 光 学 とい う言 葉 を は じめ たMitchel教 授 が 居 り, 43Caの 実 験 的 な ス ペ ク トル も こ こ で 決 定 さ れ た も の だ っ た .と こ ろ が,Levinsonの 理 論 が 出 て1年
た っ た か た た な い 間 に,こ
の 実 験 は 間 違 い だ っ た こ とが わ か り,核 物
理 学 者 の 短 い 成 功 の 夢 は 消 え 去 っ た. こ の 一 事 件 は 私 の と こ ろ に も 波 及 し て き た.と 50Scの 崩 壊 型 式 の 中 に 見 出 さ れ た50Tiの 42Caの スペ ク トル と異 な っ て い た こ とで る50Tiの
,か
,な ぜ1f27/2(n)で
ス ペ ク トル と こ ん な に 違 うの か,い
ち が っ て い け な い と は 断 言 で き な い とか,わ も あ っ て50Scに
い う の は,前
ス ペ ク トル が
な りLevinsonの
使 った
あ る42Caが1f27/2(p)で
あ
ろ い ろ な 理 論 家 に き い て ま わ っ た が, か ら な い とか 言 う答 が 大 部 だ っ た.そ
つ い て は 内 部 研 究 報 告 だ け に し て お い た.だ
大 学 を 去 っ て ス ゥ ェ ー デ ンのLundに
記 の 新 し く見 つ け た
向 う途 中New
Yorkで
れ
が 一 年 半 後 にPurdue お会 い した呉健 雄女 史
が,も
しや42Caの
1956年
ス ペ ク トル に 間 違 い で も … … と暗 示 的 な こ と を言 わ れ た.
の 初 め か ら1年
半,前
にIowa大
ー デ ン のJohanssonがLund大 こ は,Copenhagenに て,世
近 く,金 曜 日の コ ロ キ ウ ム は 未 だ い つ もNiels
界 中 の 第一 線 で 仕 事 を し た 人 達 が 話 しに 来 て,私
ま だ 仕 事 を し た ば か りのNilssonと 郎,亀
学 の シ ン ク ロ トロ ン で 一 緒 に い た ス ウ ェ
学 に 席 を つ く っ て く れ て 大 変 有 益 な 時 を 過 し た .こ
淵
迪,江
夏
べ っ て い っ た.そ っ た が,大
一 緒 に 聞 き に 行 っ た.日
弘 氏 が 来 て お ら れ,大
ん な お か げ で,ま
変 勉 強 を し た.特
司会 し
本 か ら は 当 時,田
村太
抵 の と き は 田村 さ ん と最 終 の船 ま で し ゃ
た,Iowaの
にNilssonモ
Bohrが
は い つ も一 時 間 の船 旅 で 当 時
時 の よ う に 論 文 は ひ とつ もで き なか
デ ル を 十 分 に 理 解 で きた の は 後 日 の た め 非
常 に 役 に 立 っ た. 1957年
秋,木
村 一 治 教 授 の 招 き で 東 北 大 学 に 助 教 授 の ポ ス ト を得 た と き,日 本 の
核 物 理 学 は 将 に ス ター トの 用 意 が で き て い た.仙 を あ げ て 手 作 り して い た25MeVの
台 で は 木 村,北
垣 の グループ が総力
ベ ー タ トロ ン が 殆 ど 完 成,ま
た,東 大 核 研 の 新
し い サ イ ク ロ トン も運 転 が 近 く,東 海 村 の 原 研 の1号 炉 に よ る研 究 も殆 ど始 ま って い た.そ
れ で 最 初 に 手 を つ け た 実 験 は,そ
直 し,前 記 のPurdue以 こ とだ っ た.木
の1号
炉 で42Kを
作 り,そ の 崩 壊 形 式 を 調 べ
来 や り た い と思 っ て い た42Caの
村 研 の優 秀 な 若 い 人 達 の 助 力 を得 て,数
準位 構 造 を調 べ 直 してみ る 回 の 東 海 村 行 の 後 に,や
呉 女 史 が 言 っ た よ う に 前 の 第 二 励 起 状 態 の ス ピ ン の 値 が 間 違 い で,こ 1f27/2(n)か れ た.そ
ら く る4+で
の 間 約2年
は な く,所 謂 イ ン トル ー ダ ーO+で
の状態 は
あ る こ とが 一 意 的 に 示 さ
間考 え て い た 問 題 が ホー ム ・グ ラ ウ ン ドで解 決 さ れ た の は 大 変 意
義 あ る こ とだ っ た.50Scの と き,そ
はり
方 は 後1962年Amsterdamか
こ の 小 さ な機 械 でPurdue時
ら1週
間Napoliに
代 の 追 試 を行 な い1f27/2(p)の
認 し,そ れ が 新 し い 仙 台 で の1f27/2(n)と
行 った
ス ペ ク トル を確
酷 似 して い る と い う殻 模 型 と して は 満 足 す
べ き結 果 が 得 ら れ た. こ う い う結 果 が 出 る と 当 然 考 え て み た い こ と は,41Caの 模 型 に よ る ア サ イ ン メ ン トも大 丈 夫 か とい う こ と だ.こ 直 す 機 会 は 当 時 私 に は な か っ た の で,当 て み る こ と しか で き な か っ た.そ は,中
て 複 合 核 が で き,そ
時 は,実
の 核 に つ い て は,実
験 をや り
時 知 られ て い た す べ て の 核 デ ー タ を 考 え 直 し れ
ま まで 考 え られ て い た よ うな 統 計 的 な も の とは
は 今 で も,中 性 子 捕 獲 は,ま
ず 核 が 中 性 子 を捕 獲 し
れ が ガ ン マ 崩 壊 す る と い う二 段 階 の 過 程 と考 え られ て い た(る).
そ うだ とガ ンマ ・ス ペ ク トル は もっ と も っ と複 雑 な は ず な の に,最 部 分 が た っ た 二 つ の 状 態 に しか いか な い.そ 状 態 と,Levinsonが2p1/2と な の で,む
殻
う す る と一 つ の 面 白 い 点 が 浮 か び 上 っ て きた.そ
性 子 捕 獲 に 伴 うガ ン マ 線 が,い
全 く違 う こ とだ っ た.当
低 い 状 態 のLevinsonの
し た2.5MeVの
れ はLevinsonも2p3/2と
初 の ガ ンマ 線 は 大 し た2MeVの
も の よ りは る か に 高 い4MeVの
し ろ 中 性 子 捕 獲 が 複 合 核 を経 な い 直 接 過 程 で2p状
状態
態 のペ ア が捕獲 に関与
して い るの で は な い か と勘 ぐる よ う に な っ て き た .そ れ で 若 い理 論 家 に頼 み,当
時,
原 子 力 研 に 入 っ た ば か り の ア ナ ロ グ計 算 機 を菊 池 正 士 所 長 の 御 厚 意 で 使 わ れ て い た だ い て 計 算 した とこ ろ ,計 算 値 は 捕 獲 断 面 積 とp状
態 へ の 比 を き わ め て よ く再 現 し た .
中性 子 捕 獲 の 直 接 過 程 に つ い て は殆 ど 同 時 に 米 国 と英 国 で別 の 観 点 か ら そ の 存 在 を提 唱 す る論 文 が 出 た.一
人 は 中 性 子 屋,一
人 は 直 接 過 程 屋 で,ち
なみ に私 はガ ンマ屋 と
い う こ とに な っ て い る. こ の 頃,原
子 核 理 論 の 第 一 人 者 のWeisskopf教
授 が 来 日 され た .そ
の 頃わ れ われ
は ま だ 日常 生 活 は 貧 し く,教 授 は も ら っ た 滞 在 費 を寄 附 し て 行 か れ た の を 覚 え て い る.し か し学 会 の 方 は そ ろ そ ろ サ ポ ー ト も得 て 来 て,京 Weisskopfが て 下 さ っ た.私
も仙 台 か らの 旅 費 を い た だ い て,こ
を し に行 っ た.Weisskopf教 さ れ た 直 後,新 っ た の で,一 Fermiの
大 基 研 で 湯 川 秀 樹 所 長 が,
来 るか ら御 前 講 演 を し た い も の は 申 し込 む よ う に,と
の 中性 子 の 捕 獲 過 程 の 計 算 の 報 告
授 は 大 変 面 白 い とほ め て 下 さ り,「 実 は,中
し い 核 理 論 の 展 開 を 試 み たBetheは
直 接 過 程 で は 説 明 で きず,そ 教 え て 下 さ っ た.あ
ぐ直 後 に 出 た 一 連 の
に そ の 断 面 積 が しば しば と ん で も な く大 き くな る 現 象 が れ でNiels
と で 昔,教
Physicsの1936∼37年
性 子 が発 見
他 に ど う い う理 論 も考 え に くか
応 私 の 考 え た よ う な 直 接 過 程 を考 え た の だ が,す
中 性 子 捕 獲 の,特
い う檄 を とば し
Bohrの
複 合 核 理 論 が で き た の だ 」 と歴 史 を
科 書 に用 い たBetheの
に 出 た もの を集 め た も の)を
赤 本(Reviews
of
Modern
見 た と こ ろ,そ
の と お りの い き
湯 川 さ ん が 直 接 司 会 さ れ た こ の 会 は 大 変 印 象 的 な もの だ っ た が,私
に とって特 に重
さ つ が は っ き り書 か れ て い た.
要 な 意 義 の あ る も の だ っ た.そ
れ は,そ
こ に 来 て 居 られ た 吉 沢康 和 氏 に よ る,銀
に α
粒 子 を あ て て で き る イ ン ジ ウ ム の 放 射 性 同位 元 素 の 基 底 状 態 とア イ ソ マ ー との 生 成 比 を α粒 子 の エ ネ ル ギ ー の 関 数 と して 測 る と,非 常 に 広 い エ ネ ル ギ ー 範 囲 で,そ
れ が1
程 度 か ら20ま
多分 そ
で リニ ア ー に変 る と い う 報 告 だ っ た.そ
れ で,ま
だ 着 席 中―
の 次 の 講 演 が 行 な わ れ て い る 間 に―
イ ン プ ッ トの角 運 動 量 が,そ
の二つ の異性 体 の
ス ピ ン の 平 均 値 よ り少 な い よ う な,い
わ ば 正 面 衝 突 に 近 い と き は 基 底 状 態 に な り,角
運 動 量 が 大 き い と き に は ア イ ソマ ー に な る とい う簡 単 な 仮 定 で計 算 して み た ら,吉 沢 氏 の デ ー タが 極 め て き れ い に 説 明 で き た.別 っ た が,い
ろ い ろ そ れ に つ い て考 え た り人 に 話 し て い る う ち に,大
が わ か っ て き た.と
い う の は,前
定 の エ ネ ル ギ ー,単
特 に 偶-偶 の 変 形 核 な ら ば そ の 回 転 状 態―
が,中
一 核 種 の タ ー ゲ ッ ト)の 下
続 領 域 の 複 合 核 反 応 の 際 に 出 て くる ガ ン マ 線 の 中 に,際
とい う こ とで あ る.こ
変重 要 な その意味
記 の 仮 定 が 使 え る こ とは 予 想 した もの の ,そ れ が 本
当 な ら ば 一 意 的 に あ る実 験 条 件(特 に,連
に 論 文 を書 くな ど とい う こ とは考 え なか
立 っ て イ ラ ス ト状 態―
を 経 るガ ンマ ・カ ス ケ ー ドが 見 え る,
の 基 本 的 ア イ デ ィア の 中 に は,そ
の他 案 外 知 られ て い な か っ た
性 子 捕 獲 を や っ て い た 人 達 が 出 して い た デ ー タ 「複 合 核 か ら 出 る ガ ンマ 線 の 数
は3乃
至5」
と い う こ と も 入 っ て い る.
こ の ア イ デ ィ ア を や っ て み る 機 会 に あ りつ い た の は そ れ か ら約2年 damの
国 立 研 究 所 に お い て で あ っ た.物
制度 的 に と て もで き る は ず は な い し,既 た の で 申 し込 め な か っ た.当
時 は,こ
理 的 に は 東 大 核 研 で や れ る実 験 だ っ た が, に 私 の グ ル ー プ が や っ て い た 他 の 実 験 もあ っ
の 日本 唯 一 の 新 鋭 の 加 速 器 に は 使 用 申 込 が 多
く,一 度 や っ た方 は 数 ヶ 月御 遠 慮 下 さ い,と を 改 善 して ま た や る,と Amsterdamに
い う よ うな 条 件 で は,や
出 のBleulerと
ンマ分光 学 の テー マ な ど
ス イ ス で 同 窓 だ っ た 所 長 のGugelot博
め て 私 の ア イ デ ィ ア を買 っ て くれ て,「 僕 が 手 伝 うか ら,や で,彼
の サ イ ク ロ トロ ン の 経 験 を十 分 に 生 か して,行
デ ィ スプ ロ シ ウ ム160の
っ て み よ う」 と い うこ と
っ て か ら二 月 ほ ど 後 に,す
れ は 大 変 な 喜 び で あ っ た.そ
の 第 一 の 理 由 は,そ
そ の 後,バ
に 行 く 道 に 寄 っ たCopenhagenでAage シ ア)の
に こ の た め の 測 定 シ ス テ ム を作 っ て い き,全
在 の 間 に 合 計200時
間 の マ シ ン タ イ ム(た
イ ・ア ン ド ・エ ラ ー の で き る よ う に ア レ ン ジ で き た)を 用 い て,変 ス ピ ン状 態 が8乃
両 方 で な され
い う ニ ュ ー ス を 聞 い て い た か ら だ っ た.
ラ ッ ク ・セ ッ トを止 め,特
10ヶ 月Amsterdam滞
で,更
れ ま で 多 くの 人 か ら そ ん な
ら,似 た よ う な 試 み がBerkeley(米)とDubna(ロ
た が 不 成 功 だ っ た,と
でに
状 態 が 極 く簡 単 な バ ラ ッ ク ・セ ッ トの 実 験 で 見 え て
も の が 見 え る 筈 は な い と 言 わ れ た し,特 Bohrか
士が は じ
知 ら れ て い る 回 転 状 態 をつ な ぐガ ン マ 線 が6+−4+ま
に知 ら れ て い な か っ た8+−6+の き た.こ
って みて は条件
い う こ との 必 要 な 新 し い ジ ャ ン ル の 開 発 な ど で き な か っ た.
は 一 応 お 茶 を濁 す 程 度 の 普 通 の ベ ー タ,ガ
を考 え て い っ た が,前
後,Amster-
至10ま
で の 回 転 レベ ル,そ
だ し これ は トラ 形 核35に
つ いて
の 他 い くつ か の 準 変 形 核 や 振 動 核 の イ
ラ ス ト ・レベ ル を み つ け る こ とが で き た.
20.3 み ん な とー 緒 に AmsterdamのGugelotと hagenで て,私
一 緒 に 実 験 の ー シ リー ズ の あ と 帰 国 の 途 中,Copen
こ の 話 を して い っ た.た
ま た ま幸 に 後 で よ くの び て い っ た 人達 が た く さ ん い
の 結 果 に 非 常 に 注 目 し た が,特
分 の1は
にMottelsonが
彼 に 演 壇 を と ら れ て し ま っ た.彼
大 い に興 奮 して,私
の 話 の 後3
は そ の こ ろ 回 転 レベ ル が ス ピ ン14∼16位
で 切 れ る とい う予 想 を して お り,こ れ は 集 団 運 動 模 型 の 基 礎 に 拘 わ る こ とな の で 何 と か 調 べ た い と思 っ た が,Amsterdamの
実 験 の 成 功 は この 可 能 性 を与 え た こ とに 特 に
重 点 を お い た.結 局 比 較 的 す ぐこ の 乱 れ(い holmの
わ ゆ るバ ッ ク ・ベ ンデ ィ ン グ)はStock
グ ル ー プ に よ り見 つ か り,そ の 後 こ の 問 題 は 長 く核 物 理 学 界 を 賑 わ し た.
実 験 的 に は,私
は ま だ シ ン チ レー シ ョ ン ・カ ウ ン ター を使 っ た の に,す
マ ニ ウ ム 検 出 器 が 出 て き て,こ 達 に よ り,こ の 分 野 ―
ぐそ の 後 ゲ ル
れ と急 速 に 進 ん だ 同 時 計 数 回 路 と コ ン ピ ュ ー タ ー の 発
実 験 的 に 言 え ば イ ン ・ビ ー ム ・ガ ン マ 線 分 光 学,多
少理 論的
に い う と高 ス ピ ン の 核 物 理 ―
は 世 界 中 を に ぎわ す こ とに な っ た.私
こ の分 野 を進 め る た め に 良 い 条 件 の と こ ろ に は い な か っ た が,む の60年
自身 は そ の 後,
し ろ楽 し ん だ の は こ
代 の 日本 の 核 物 理 の 盛 り上 りだ っ た.
も ち ろ ん,こ
の盛 り上 りを 招 来 し た の は,終
の 先 生 方 や 先 輩 の 仕 事 の 結 実 で あ る.こ
戦 直 後 に再 建 の ため に 努 力 さ れ た我 々
れ ら の 努 力 に よ っ て,前
記 の1958年
本 で も,ホ ー ム ・グ ラ ウ ン ドで 原 子 核 物 理 が で き る よ う に な っ て き た.そ 手(私
達)が
で き た仕 事 は,理
論 か,外
国 に 行 っ て す る仕 事 だ っ た.そ
初 め 頃 に は 少 しず つ 日本 国 内 で も デ ー タ が 生 産 され は じめ,当 た の が 理 論 と実 験 との 接 触 で,こ 代(終
戦 の 年 ±2,3年
頃に 日
れ ま での若 れ で60年
然の こ と として起 こ っ
れ は そ れ ま で あ ま り なか っ た こ とで あ っ た .私
に 大 学 卒)で
の
の年
は ま だ理 論 家 は 主 に 素 粒 子 屋 で 直 接 実 験 とは 関
係 な く,実 験 家 は ま だ 余 り核 物 理 自身 は 専 念 で きず,こ
れ を可 能 に す る た め に働 い た
先 人 の 感 じ と似 て い る. と こ ろ が60年
の 初 め 頃 か ら(前
最 初 の 一 つ だ っ た が)理 う に な っ た.こ
記 の 湯 川研 のWeisskopfを
囲 む 研 究 会 な どが そ の
論 実 験 合 同 の 原 子 核 の 研 究 会 と い うの が しば しば 行 わ れ る よ
れ は 主 に 東 大 核 研 が そ の 中心 と な り,そ の 中 で 私 が 特 に 多 くを学 ん だ
の は 坂 井 光 夫 氏 が 中 心 に な っ て 開 い た も の に 多 く,そ 通 の 言 葉 の 模 索 を し た.量 代 の 者 に と っ て,例
こで は よ く理 論 家 と実 験 家 が 共
子 力 学 の 講 義 を空 襲 の た め ま と もに 聞 け なか っ た 我 々 の 年
え ば 有 馬 朗 人 氏 の 話 は ま あ わ か っ た が,丸
森 寿夫氏 は大 変有 難 い
努 力 を して わ か る よ うに と話 し て 下 さ っ て も,梵 語 の 説教 で あ っ た.し や は り我 々 は 習 っ て い っ た の で あ る.し
か し今 思 う と,こ
か し,お 蔭 で
の こ ろ議 論 しあ っ た レベ ル
は 世 界 の 未 知 の 最 先 端 をい っ た もの だ っ た. こ う い う盛 り上 が りか ら は 色 々 な線 が 出 て きた .も 含 め な が ら で あ る が,ま
ち ろ ん,そ
ず 私 の 近 くで 実 験 の 方 で は,核 研 の 坂 井 光 夫,山
よ る イ ン ビー ム 核 分 光 学 の 角 分 布 の 測 定 の 導 入 で あ る.私 が,角
の前の 先人 の仕事 も 崎敏 光 等 に
は大 変 い け な い こ とで あ る
分 布 とい うの は 嫌 い だ っ た の で,余
り興 味 が な か っ た.こ れ は 更 に 山崎 氏 に よ
り遅 延 ガ ン マ 線 の 場 合 に 押 し進 め られ,日
本 の 杉 本 健 三 氏 等 の 伝 統 と合 流 し て 核 分 光
学 の 一 ジ ャ ン ル と して 確 立 し核 内 中 間 子 の 問 題 を 解 く鍵 に まで 発 展 した.な 線 で は 核 モ ー メ ン トの 問 題 が,終
お,こ
の
戦 直 後 の 宮 沢 弘 成 氏 の モ ー メ ン トの 中 間 子 論 と,有
馬 ・堀 江 の 配 位 混 合 の 理 論 と相 俟 っ て 日本 の 核 物 理 の お は こに な っ て い た の で,重
要
な 貢 献 が い くつ か な され た. イ ン ビー ム ・ガ ン マ 分 光 学 が 与 え た 厖 大 な 核 の(主
に)高
ス ピ ン状 態 の研 究 は,世
界 的 に核 構 造 論 研 究 界 を賑 わ した が,こ
こ で も 日本 で は 先 人 の 重 要 な 貢 献 を更 に 開 花
させ る一 流 の 理 論 家 達 が ま っ て い た.そ
れ は 朝 永 振 一 郎 先 生 が 戦 後 す ぐの 頃 に 考 え ら
れ た い わ ゆ る ボ ゾ ン展 開 で,故 藤 田純 一 氏 や 最 近 で は 丸 森 グル ー プ で 強 くそ の 理 論 的 基 礎 が お しす す め ら れ た.最
も 特 筆 す べ き こ と と し て,こ
れ を定 式 化 し た 有 馬-Ia-
chelloの 相 互 作 用 ボ ゾ ン ・モ デ ル はMayer-Jensenの
殻 模 型,Bohr-Mottelsonの
集
団 運 動 模 型 と な ら ん で 現 在 核 分 光 実 験 屋 が 知 っ て い な け れ ば な らな い 三 つ の 重 要 な モ デ ル の 一 つ と な っ て い る. 以 上 の 盛 り上 が りの 中 で,坂
井 さ ん は 「校 長 先 生 」 と呼 ば れ て い て,私
自任 して い た.そ
して,そ
よ り次 の 年 代(私
の 年 代 論 に よ れ ば6.25年
は副校長 を
こ の 先 生 達 で 本 当 に 盛 り上 が り を築 い て い っ た の は,我 若 い)で
あ る.ど
々
うせ 何 をや っ た っ て 食
え な い の だ か ら学 問 をや ろ う,就 職 の 世 話 を し な く て よけ れ ば い く らで も私 の ゼ ミに 来 な さ い,と
い う朝 永 振 一 郎 の 言 葉 に 導 か れ て き た 人達 で,有
馬 さ ん に き い た ら汽 車
弁 を買 っ て まず 蓋 の 裏 に つ い た ゴハ ン粒 を 食べ る年 代 だ そ うで あ る. こ の 盛 り上 が りは も う去 っ て し ま っ た も の だ が,紙 て お く.(筆 者=も まれ,1946年
りなが ・は るひ こ,1968∼1991年
東 京 大 学理 学 部卒 業)
初 出:日 本 物理 学 会 誌51(1996)795-798.
面 を い た だ い た の で書 き し る し
ミュ ンヘ ン工 科 大 学正 教 授.1922年
生
21.
原子核構 造理論 の発展 と現在 ― 殻 模 型 を 中 心 と し て ― 有
戦 後 よ り現 在 ま で50年
馬
朗
人
間 の 原 子 核 構 造 理 論 の 発 展 に お け る 日本 の 寄 与 に つ い て 述
べ る.そ の 際 殻 模 型 を用 い た研 究 に 主 な 焦 点 を当 て て 議 論 を 進 め て 行 く. 21.1
黎
明
期
21.1.1 原 子 核 の 基 本 的 性 質 原 子 核 の 基 本 的 構 成 粒 子 は 陽 子 と中 性 子 で あ る.今
日 で は核 子(陽
は更 に ク ォ ー ク か ち 成 立 して い る こ とが 明 ら か に な っ て き た.現 一つは い.こ
,ク
子 及 び 中 性 子)
在 の最 前 線 の 問題 の
ォ ー クか ら 原 子 核 が ど の よ う に 形 成 さ れ るか で あ る が,ま
だ その 途 は遠
の 小 論 で は 従 っ て 陽 子 と 中性 子 か ら原 子核 が 作 られ て い る と い う,古 典 的 描 像
を 中 心 に 話 を進 め る.一 つ の 原 子 核 で 陽 子 の 数 をZ,中 と呼 び,通
常 そ れ をAと
書 く.A=Z+Nで
性 子 の 数 をN,和
を質量 数
あ る.
原 子 核 の 半 径 は
従 っ て 体 積VはAに な どか ら1.4×10-13cmと
比 例 し て い る.こ のr0は
初 期 に は α粒 子 の 散 乱 断 面 積 の 分 析
思 わ れ て い た が,1953年Rainwater達
の μ原子 の エ ネ ル
ギー の 測 定 や 電 子 散 乱 の 断 面 積 の 測 定 に よ っ て 現 在 の 値 に定 着 し た の で あ る.ま た 結 合 エネ ル ギー は
で あ る.こ
の 二 つ の 性 質 は 原 子 核 の 飽 和 性 と呼 ば れ る.
飽 和 性 を示 す 巨 視 的 物 体 は 水 滴 で あ る.そ に よ っ て 提 案 さ れ,そ
こ で 原 子 核 の 液 滴 模 型 がN.
れ を用 い たWeizsacker-Betheの
は 現 在 で も第 一 次 近 似 と して よ く用 い ら れ て い る.原 て発 見 さ れ た が2),BohrとWheeler3)は
Bohrた
ち
質 量 公 式1)
子 核 の 分 裂 はHahn等
液 滴 模 型 に 基 づ い て,こ
に よっ
の 現 象 を理 論 的 に
解 明 した の で あ る. 21.1.2 原 子 核 の 魔 法 数 の 発 見 液 滴 模 型 に よ れ ば 原 子 核 の 性 質 は,ZやNに
な だ らか に依 存 す る だ け で あ る.と
こ ろが さ ま ざ ま な 原 子 核 の 存 在 量 や,核
反 応 の 断 面 積 はZやNに
か な り鋭 敏 に 左 右
さ れ る場 合 が あ る こ と が 判 っ て きた.特
に 特 定 の数 の と き 原 子 核 の安 定 性 が 大 き くな
図1
原 子 核 の 質 量 の 実 験 値(Mexp)と (MLD)と Myers 309に
る.そ
液 滴 模 型 質 量 公 式 に よ る 予 言 値
の 差 を 中 性 子 数(N)の and
W.
J. Swiatecki:
関 数 と し て 図 示 し た.(W. Annu.
だ しZ=126は
るか も知 れ な い.そ
Part.
Sci. 32
D. (1982)
れは
ま だ 作 ら れ て い な い.N=126を
越 え た 所 に も魔 法 数 が あ
う い う超 重 元 素 を探 る こ とは 最 先 端 の 問 題 で あ る.
魔 法 数 の 存 在 を一 番 は っ き り示 す に は,質 論 値 を 引 い て み る の が 良 い.図1は 1,000MeV前
Nucl.
よ る.)
の数 を 原 子 核 の 魔 法 数 と 呼 ん で い る.そ
で あ る.た
Rev.
量 の 実 験 値 か ら先 程 の 質 量 公 式 に よ る 理
そ の 結 果 で あ る.こ の 差 は せ い ぜ い10MeVで,
後 の 大 き な結 合 エ ネ ル ギ ー に 比 べ て,小
さ な 量 で あ る が,魔
法数 の と
こ ろ で 結 合 エ ネ ル ギ ー が 大 き くな る こ とが 明 瞭 に 判 る で あ ろ う. 天 然 に はZ=92の
ウ ラ ニ ウ ム ま で で あ るが,現
在 はZ=112ま
で 存 在 す る こ とが
確 か め られ て い る.陽 子 や 中 性 子 を放 出 す る 原 子 核 を 人工 的 に作 る努 力 が 現 在 盛 ん に 行 わ れ て い る が,核
子 の放 出 に 対 し て安 定 な 原 子 核 は,ほ
ぼ3,000種
あ る と考 え られ
て い る. 21.1.3 j-j結 合 殻 模 型 原 子 核 の 魔 法 数 の 存 在 は,原 し て い る.核
子 と 同 じよ う に 原 子 核 も殻 構 造 を持 っ て い る こ と を示
内 の 核 物 質 の 密 度 は ほ ぼ 一 定 で あ るか ら,核
の よ う な 滑 ら か な も の で あ る.Wignerは
内 核 子 が 作 る 平 均 場 は 図2
こ の よ う な 模 型 で2,8,20の
し た4).と こ ろ が そ れ 以 上 の 魔 法 数 は 説 明 で き な か っ た.そ 独 立 に,平
魔 法数 を説 明
こ でMayerとJensenは
均 場 に強 い スピン軌道 力
を加 え る こ とに よ っ て,28以
上 の 魔 法 数 を 見事 に 説 明 した の で あ る5).球 形 な 平 均 場
内 の核 子 は そ の 軌 道 角 運 動 量lを
量 子 数 と して 持 つ.そ
力 が 加 わ る と,軌 道 と ス ピ ン が 結 合 し てj(j=l+s)が MayerとJensenの
殻 模 型 をj-j結
の 平 均 場 に 強 い ス ピ ン-軌 道 良 い 量 子 数 に な る.そ
合 殻 模 型 と呼 ぶ.一 方,Wignerの
もの をLS結
こで 合
図2
核 子 に対 す る一 体 ポ テ ン シ ャ ル の例
殻 模 型 と呼 ん で 区別 して い る.16Oよ る.j-j結
質 量 公 式 の 第2項 る.特
り軽 い核 で はLSの
方 が 第 一 近 似 と して 優 れ て い
合 殻 模 型 は,中 重 核 や 重 い核 の ス ピ ンや 磁 気 双 極 子 能 率 を見 事 に 予 言 した. は 表 面 張 力 項 で あ っ た.こ
の 力 に よ り原 子 核 は 球 形 に な ろ う とす
に 魔 法 数 を持 つ 原 子核 ― そ れ を閉 殻 核 と呼 ぶ が ― は 球 形 に な る.そ
重 極 能 率 は,閉
こで電気 四
殻 外 の 陽 子 の 分 布 が 持 つ 球 形 か らの ず れ に 比 例 し て い る と考 え ら れ て
図3 電気4重 極モーメントの観測値(Q)と r0=1.2×10-13cmと
し て あ
との比 る.
い た.実 は こ こ に 二 つ の 問 題 が 含 まれ て い た の で あ る.閉 殻 外 の 核 子 が 球 対 称 の 平 均 場 を 回 転 して い て 全 体 に ほ ぼ 球 形 に 分 布 す る.そ
して 最 後 の1核
子 だけが電気 四 重極 能
率 を持 つ と い う,単 一 粒 子 近 似 で は 到 底 説 明 で きな い程 大 き な値 を持 つ 核 が 発 見 さ れ た の で あ る.そ の 典 型 は175Luで は17Oの
よ うに 閉殻 外 に1個
あ っ た.こ れ が 第 一 の 問 題 で あ っ た.も う一 つ の 問 題
電 荷 の な い 中性 子 を持 つ 核 が,か
な り大 き な 電 気 四 重 極
能 率 を持 つ こ と で あ っ た.即 ち一 方 でj-j結 合 殻 模 型 は,原 子 核 の さ ま ざ ま な 性 質 を 見 事 に 説 明 しつ つ あ っ た 時 に,早 く も こ の よ う な ほ こ ろ び を見 せ て い た の で あ る(図3). 21.1.4 変 形 核 と回 転 運 動 の 発 見 巨 大 な 電 気 四 重 極 能 率 の 問 題 はRainwaterに ば,あ
る種 の 原 子 核 は楕 円 体 に ゆ が ん で,単
能 率 に 寄 与 す る とい うの で あ っ た.ち
よ っ て 解 決 され た6).そ の 考 え に よ れ 一 の 陽 子 だ け で な く多 くの 陽 子 が 四 重 極
な み にRainwaterは
物 理 学 者 と して ご く数 の
少 な い ア メ リ カ ・イ ン デ ィ ア ン で あ る.こ の 考 え を 発 展 した の がA. 力 者 のB.
Mottelsonで
あ っ た.核
その協
は 変 形 す れ ば 回 転 運 動 が あ る 筈 で あ る とBohrは
予 言 し,そ れ は 見 事 に 実 証 さ れ た(図4).巨 の 存 在 は,楕
Bohrと
大 な 四 重 極 能 率 の 存 在 と,回 転 レ ベ ル
円 変 形 し た 原 子 核 を 明 瞭 に 証 明 した の で あ る7).
Rainwater-Bohr-Mottelson模
型 の は な ば な し い 成 功 は,球
対 称 の平 均 場 の代 り
に 四 重 極 変 形 し た場 ― 通 常 異 方 性 の あ る調 和 振 動 子 場 で近 似 す る ― で の 単 一 粒 子 レベ ル に 示 さ れ た.こ
れ はNilssonに
よ っ て 計 算 さ れ た8).こ のNilsson模
型 の 予 言 は,
重 い 変 形 核 の ス ピ ン の 実 験 値 と実 に 良 く一 致 し,変 形核 の概 念 を 確 立 し た の で あ る. 21.2
殻模 型 の精 密 化
21.2.1 磁 気 双 極 能 率 と有 効 電 荷 j-j結 合 殻 模 型 の 成 功 点 の 一 つ は 核 の ス ピ ン と磁 気 双 極 能 率 を 良 く説 明 で き る こ と
図4 ( )内 の 数 字 はE=aI(I+1)を
回 転 核 の例
仮 定 し,2+の
エ ネ ル ギ ー でaを
きめ た と きの 予 言 値.
図5
で あ っ た.単
奇 陽 子 核 の 磁 気 能 率 のSchmidt図
一 粒 子 模 型 に よ れ ば,軌
道 角 運 動 量lで
ス ピ ンjの 核 子 の 磁 気 双 極 子 能
率は
(陽子の場 合) (中性子 の場合) で 与 え ら れ る.こ れ をSchmidt値 は 奇 陽 子 核,奇
と呼 ん で い る.き
中 性 子 核 そ れ ぞ れ2本
の 外 へ 出 るの は ご く軽 い3H,3He,15N等
のSchmidt線
わ め て 多 くの 奇A核
の磁 気 能 率
に 挟 ま れ た 領 域 に 分 布 す る.そ
ご く少 数 の 核 に 過 ぎ な い(図5参
照).
と こ ろ で も し こ の模 型 が 完 全 に正 し け れ ば,実 で あ る.し
験 値 は2本
か し現 実 に は か な りそれ か ら ず れ て い る.こ の 問 題 に 世 界 的 に最 も早 く挑
戦 した の は 宮 沢 弘 成 で あ っ た9).宮 沢 は核 子 間 にPauli禁 の 寄 与 が 核 内 で 変 る こ と を指 摘 し た の で あ る.こ 的 な 仕 事 で あ っ た.宮
沢 はgsが
く評 価 し過 ぎ で あ っ た.し 0.1ぐ
の線 の ど ち らか に 乗 る筈
止 則 が 働 く た め,パ
れ は パ イ オ ン交 換 流 に つ い て の 先 駆
大 き く変 化 す る こ と を予 言 し た が,こ
か しglが10%程
ら い に な る と い う予 言 は,15年
イオ ン
れ はや や大 き
度 陽 子 で 大 き くな り,一 方 中 性 子 で は-
程後 に なっ て山崎敏 光 た ちの実験 に よって確 認
さ れ た の で あ る10). 一 方
,堀
江 久 と 有 馬 は1953年
当 時,き
子 をつ け 加 え る こ と に よ っ て,い そ の 結 果,殻
わ め て 安 定 と考 え られ て い たj-j閉
殻 に核
わ ば ス ピ ン の 潮 汐 運 動 が 起 る 可 能 性 に 気 が つ い た.
模 型 の 波 動 関 数 φ(jm)は,
(1) とい う風 に 配 位 の 混 合 が 起 る と考 え た の で あ る.こ 道 に 孔 が あ い た こ と,j2は
こ でj1-1は 閉 殻 に あ るj1な る軌
そ れ が 閉 殻 外 のj2軌 道 に 励 起 し た こ と,λ は こ の1孔-1
粒 子 状 態 が 持 つ 角 運 動 量 で あ る.α は 混 合 振 幅 で 小 さ い と す る.j1=l1+1/2,j2= l1-1/2で せ る.そ
λ=1で
あ る と,α が 小 さ い に も か か わ らず こ の 混 合 は 大 き く μ を 変 化 さ
の 理 由 は μsをSchmidt値
で δμ は 閉 殻 の 集 団 的 なM1励
と して,(1)の
波 動関数 を用 い る と μは
起 の行 列 要 素 に 比 例 す るか ら で あ る.す
の 多 く の粒 子 が そ ろ っ て 貢 献 す る か らで あ る.こ で あ る核,例
え ば17O,17Fな
陽 子 側 はh11/2,中 うM1励
ど で は こ のM1励
の こ と に よ っ てl±1/2両
方 が 閉殻
起 が な い の で δμが 小 さ い.し
性 子 側 はi13/2ま で 閉 殻 の209Biで は
プ レ プ リ ン トが ま だ 流 行 せ ず,雑
Blin-Stoyleに
誌 も船 便 で 来 た .我
馬 ・堀 江 効 果 ― の み で は 足 りな い こ と,17Oや41Caな
々に とっ て幸 いな こ とであ っ
どLS閉
,上 述 の1次
効果 ―有
殻 ±1核 子 核 と い え ど
な い こ とが 明 ら か に な り,高 次 の 補 正 と交 換 流 の 重 要 性 が 議 論 に 登 場 し
た の は1970年
前 後 の こ と で あ る.Chemtob13)に
よ る 宮 沢 効 果 の 再 発 見(δgl=±
換 流 に つ い て 日向 裕 幸 た ち14)やTownerとKhanna15)の
に あ り,一
じよ
よ っ て 提 案 さ れ た の で あ る12).当 時 は
た. 209Biの δμ が 大 き い と い う謎 は こ う し て解 け た か に 見 え たが
も δμ が0で
か し とい
起 が 可 能 で あ る か ら,δ μ が 大 き い こ と を 説 明 で き た の で あ っ た11).同
うな 考 え は 少 々 早 い く ら い にR.
0.1),交
なわ ち閉殻 内
方 清 水 清 孝,市
た16).こ の2次
村 宗 武 と有 馬 の2次
精 細 な計 算 が一 方
の 摂 動効 果 の 重 要 性 の指 摘 が あ っ
の効 果 で 重 要 な働 き をす る の は テ ン ソ ル 力 で あ る の で,テ
と呼 ば れ る こ と が あ る.こ
ンソル相 関
の 効 果 は 許 容 型 β 崩 壊 ― 例 え ば17F→17O,41Sc→41Ca―
で 重 要 な 役 割 をす る こ とが 判 っ た.こ
れ は 後 にGamow-Teller転
移 に関 して大論 争
の 要 因 とな っ た. glの 変 化 δglと 電 気 双 極 巨 大 共 鳴 の 和 則 へ の 交 換 流 の 寄 与(κ)と が ら な い 二 つ の 量 の 間 に,比
い う一 見 全 く繋
例 関 係 が あ る こ と を 故 藤 田 純 一 と平 田 道 紘 が 発 見 し
た17).こ れ を藤 田-平 田 の 関 係 式 と呼 ぶ.
κは 古 典 的 和 則 か ら の ず れ で あ る.と っ て δglは0.2程 E. Brown,日
こ ろ が 和 則 の 実 験 値 か ら は κ=0.1の
度 に な る.し か し実 験 に よ る と δgl=0.1で
向 裕 幸,市
あ る.そ
程 度,従
こ で 有 馬 はG.
村 宗 武 と協 力 し て 藤 田-平 田 の 関 係 式 を 補 正 し た の で あ
る18). 話 が 再 び1954年
頃 に 戻 るが,(1)式
励 起 し,λ π=2+(π
は パ リ テ ィ)と
の 配 位 混 合 で 閉 殻 内 陽 子j1が,閉 い う1孔-1粒
中 性 子 で も有 限 の 電 気 四 重 極 能 率(Q)を
持 つ こ と に な る.こ の 計 算 は1955年
江 久 と著 者 で 行 わ れ た19).こ の 時17OのQは-0.04×10-24cm2と の 実 験 値 は-0.004×10-24cm2と
殻 外 のj2に
子 状 態 を 作 る と,閉 殻 外 の 核 子 が
遙 か に 小 さ か っ た.し
に堀
予 言 した が,当
か し後 にTownesが
時
実験 しな
お して-0.027×10-24cm2と
我 々 の 予 言 に近 い値 を 得 た の で あ っ た20).こ う し て 中 性
子 が 有 効 電 荷 δeN∼0.5e,陽
子 がe+δepで
導 か れ た の で あ る.似
た考 え はAmadoが
δep∼(0.3∼0.5)eを
持 つ こ とが 理 論 的 に
出 して い る21).
こ の 配 位 混 合 の 考 え 方 は,λ πの 状 態 と して ス ピ ン λの 巨 大 共 鳴 を と る こ とに よ っ て,も
っ と概 念 を一 般 化 す る こ と が で き る.そ
ば れ る よ う に な っ た.こ
こ で こ の よ う な効 果 は 芯 偏 極 効 果 と呼
の 一 般 化 に お い て はBohrとMottelsonの
寄 与 が 大 き い22).
事 実 磁 気 能 率 に 対 す る有 馬-堀 江 効 果 を 最 初 に 認 め て くれ た の は,こ エ ル のde
ShalitとTalmiで
の 二人 とイ スラ
あ っ た.
こ の 芯 偏 極 効 果 は 佐 野 光 男 た ち に よ っ てl-禁 止M1転
移 や23),堀 江-有 馬 に よ っ て
l-禁 止 β崩 壊24).そ し て 浜 本 育 子 に よ っ て許 容 型 β 崩 壊 に 応 用 さ れ た25). 21.2.2 4Heか
多粒 子殻 模 型
ら16Oま
で は0p
InglisやKurathは,0p-軌
-軌 道 が 占拠 さ れ る の で,p-殻 道 に い る 格 子 間 に2体
核 と呼 ば れ る.初 期 の 段 階 で
の 相 互 作 用 を 導 入 し,更
に1体
ス ピ ン-軌 道 力 を加 え た ハ ミ ル トニ ア ン を 対 角 化 す る 計 算 を行 っ た.LSとj-jの 間 に あ る の で,中
れ に2核
で あ っ た.こ
子 付 加 した18O,18F,3核
れ ら の 核 子 は0d軌
現 象 論 的 な2体
中
間 結 合 殻 模 型 と呼 ば れ た もの で あ る26).し か し本 格 的 な配 位 混 合 に
よ る 多粒 子 殻 模 型 の 計 算 はElliottとFlowersに して,そ
の
道 と1s軌
よ る も の で あ っ た27).16Oを
子 付 加 し た19O,19Fの
閉殻 と
エ ネ ルギー の計 算
道 に 入 っ て い る.有 効 相 互 作 用 と し て の
力 と ス ピ ン-軌 道 力 の 強 さ をパ ラ メ タ に し て,低
いエ ネ ルギー 準位 の
実 験 値 を再 現 す る こ とに 成 功 した. こ の 結 果 に 励 ま さ れ て 日本 で も有 馬 は 井 上 健 男,瀬
部 孝,萩
原 仁 の 諸 氏 と協 力 し
図6
20Neの
スペ ク トル
殻 模 型 に よ る予 言 と実 験.
て,0d-1s軌
道 に4個
初 め て20Neの
核 子 が 入 る 核,20O,20F,20Neの
構 造 を計 算 し た28).世
界で
レヴ ェ ル 構 造 の 計 算 に 成 功 し,実 験 値 に 良 く一 致 す る結 果 が 得 ら れ た
こ とは 嬉 し か っ た(図6).日 か な く,そ れ を用 い て50次
本 の 大 学 に は ま だ2K語
の パ ラ メ トロ ン 型 の 計 算 機 し
元 ほ ど の 対 角 化 を行 っ た の で あ っ た.こ
陽 子-2中 性 子 系 が 核 内 で き わ め て 安 定 で あ る こ と,20Neは16Oの
の と き 我 々 は2
周 り に α粒 子 が 廻
転 し て い る と い う ク ラ ス タ ー 描 像 と,殻 模 型 の 描 像 が よ く似 て い る こ と を認 識 した の で あ る.こ
の事 実 は 後 述 す る α ク ラ ス タ ー ・グ ル ー プ の 活 躍 と殻 模 型 グ ル ー プ が 協
力 す る 一 つ の 起 因 で あ っ た. と こ ろ でElliottとFlowersそ て い た18F(=16O+p+n)の
して 井 上-瀬 部-萩 原-有 馬 と 共 に 成 功 し た と思 わ れ 構 造 で 不 思 議 な こ とが あ っ た.そ
パ ラ メ タ を変 化 さ せ て も,1 .7MeVに
あ る ス ピ ン が1で
れ は どん な に2体
パ リテ ィ+の
き な か っ た の で あ る.勿 論 基 底 に 近 い低 い 準 位 に は 問 題 な か っ た.し れ ば1.7MeVあ
力の
準位 を説 明 で か し殻 模 型 に よ
た りに は 準 位 が な く,そ れ 以 外 の 準 位 は そ れ よ りず っ と高 い 所 に し
か 予 言 で きな か っ た. そ の 前 後 ア メ リカ のArgonne研 当 時 最 高 の 計 算 機 を 駆使 し,ま メ タ と し,そ
れ をx2法
究 所 のCohen, た,1粒
Lawson,
子 エ ネ ル ギ ー や2体
MacFarlaneと
曽 我 は,
の核 力 の行 列 要素 をパ ラ
で 実 験 に合 わせ る 方 法 を と っ て,N=50で38〓Z<50の
原子
核 の 構 造 を 説 明 す る こ と に 成 功 し た29).大 規 模 殻 模 型 計 算 の 走 り で あ っ た.更 18O ,19O,20Oの 計 算 に も成 功 し た が,18F,19F,20Neは 成 功 し な か っ た. こ の 問 題 の 解 決 は殻 模 型 に お け る α的4体 与 え ら れ た.19Fに
は 何 と110keVと
相 関 の 重 要 性 を考 慮 す る こ と に よ っ て
い う低 い エ ネ ル ギ ー に1/2-と
こ れ を 説 明 す る た め に は ど う して も0p1/2と
に
い う状 態 が あ る.
い う負 の パ リテ ィ の 閉 殻 軌 道 か ら1個 粒
子 を正 パ リテ ィ の0d-1s軌 ル ギー は,調
道 に 上 げ な け れ ば な ら な い.こ
の ため に必要 な励起 エ ネ
和 振 動 子 型 平 均 場 を仮 定 す る とhω ∼12MeVは
う し て こ の よ う に低 く出 る か.そ 殻 に 入 る.そ
こ で0d-1s殻
の 理 由 は1陽
に は2陽
子-2中
必 要 で あ る.そ
れが ど
子 が0p1/2-軌 道 か ら励 起 して,0d-1s
性 子 が 入 る こ と に な り,20Neの
よ うに安
定 な α-クラ ス ター 的 状 態 を作 る こ と に あ っ た.19Fの
第1励
0p1/2孔 と(0d-1s)4と
わ め て 弱 い こ と が 判 る.そ
の 相 互 作 用 を評 価 す る と,き
空 孔 と4粒 子 の 弱 結 合 近 似 を,有 想 を2空 孔 に 拡 張 す る と,ま 明 し た.即
馬,堀
内 昶,瀬
起 状 態(1/2-)を
用いて こで
部 孝 は 発 表 し た の で あ る30).こ の 着
さ に18Fの1.5MeVあ
た りに1+が
現 れ て良 い こ とが判
ち こ の 状 態 は 閉 殻 の 励 起 を考 え な け れ ば い け な か っ た の で あ る.そ
して エ
ネ ル ギ ー が 低 くな る理 由 は α-型相 関 の ため で あ っ た. こ れ に 先 立 っ て,BrownとGreenは2重
閉 殻 の16Oの
第 一 励 起O+状
態 が6MeV
と い う異 常 に低 い エ ネ ル ギー に 現 れ る理 由 を,当 時 の 常 識 に 大 き く反 して,閉 4核 子 が 空 殻 に 励 起 す る,即 と し て 二 人 は16Oが る.我
ち4孔-4核
子 状 態 で あ る と考 え た の で あ る31).そ の 原 因
励 起 す る と大 き く変 形 し て,エ
ネ ル ギ ー を得 す る と し た の で あ
々 の 弱 結 合 近 似 を用 い る と,き わ め て 自然 に そ の 状 態 が6MeVに
あ っ た.即
子 系 の 基 底 状 態O+だ
け で は な く,2+,4+,6+,8+
と い う 励 起 状 態 に も 空 孔 が 弱 結 合 す る こ と が 予 想 さ れ,事 に よ っ て 見 事 に 証 明 さ れ た の で あ る32).例 結 合 し た7/2-,9/2-な
18F
道 の み を 用 い て,上
,19O,19F,20Neの
移 のB(E2)の
え ば19Fに
実,Ogloblinた
はp-11/2と2+が
述 し たArgonneの
え ば18Fの1.5MeV1+を
排 除 し て0d5/2と
プ ロ グ ラ ム でx2-計
構 造 を 見 事 に 説 明 で き た の で あ る.そ
算 を す る と,18O,
し て20Neの8+→6+遷
予 言 値 は 後 に 行 わ れ た 実 験 の 測 定 値 と 見 事 に 一致
し た.
こ の よ う な 殻 模 型 計 算 は そ の 後 も孜 々営 々 と 続 け ら れ た.特 BrownとWildenthalの
を40Caを
A. の
気 能 率,γ 遷 移,β 遷 移 等 々 の 計 算 に 成 功 して い る.
超 え た 領 域 で 用 い て 成 功 し た の が,堀
グ ル ー プ で あ っ た.現
にMSUのB.
貢 献 は 大 き い33).パ ラ メ タ をx2-法 で 最 適 化 し て0d-1s殻
原 子 核 す べ て の エ ネ ル ギ ー,磁 一 例 を挙 げ て お こ う(図7) . x2-法
ちの 実 験
結 合 し た3/2-,
ど が 存 在 し て い る.
こ う し て 空 孔 状 態 と 思 わ れ る も の,例 1s1/2軌
現 れ たの で
ち この 大 き な 変 形 は α-クラ ス ター 構 造 に よ る こ とが 明 らか に な っ た.
弱 結 合 す る の は 何 も α 型4核
5/2-,4+と
殻 より
江 久,小
在 で も(0f7/2,0f5/2,1p3/2,1p1/2)殻
田 健 司,小
川建 吾 の
で の計 算 の 出発 点 に な
っ て い る34).
さ て殻 模 型 計 算 は 計 算 機 の 進 展 と共 に 伸 び て き た.そ
の 時 最 大 の 問 題 は,ハ
ニ ア ン を対 角 化 す る際 考 慮 に 入 れ な け れ ば な ら な い 次 元 の 大 き さ,即 る.例 に,10個
え ば154Smは,Z=50,N=82の2重 の 中性 子 が82-126殻
閉 殻 の 外 に12個
の 陽 子 が50-82殻
軌 道 に 入 っ て い る.こ の 時 の 次 元 は
ミル ト
ち基底 の数 で あ 軌道
図7 Os-1d殻 の磁気能率 実 験値 と殻 模 型 に よ る予 言 値.
等 々 で あ る.1014次
元 の 対 角 化 を す る の が 大 変 で あ る が,そ
要 素 を勘 定 し な け れ ば な ら な い.勿 論 実 際0で しか し,そ
の 前 に1014×1014の
な い行 列 は,こ
行列
れ よ りず っ と少 な い.
れ に して も膨 大 な 量 の 行 列 要 素 を計 算 しな け れ ば な らな い の で あ る.
こ の 問題 を 避 け る 二 つ の 方 法 が 考 え られ る.一 つ は そ の 系 が 持 つ 何 らか の 対 称 性, 例 え ば 相 互 作 用 に 基 づ くシ ニ オ リテ ィ 形 式(SU2対 SU3対 tion)で
称 性)と
か,後
述 す るElliottの
称 性 な ど を 用 い て 重 要 で な い と考 え ら れ る 状 態 を 切 り捨 て る こ と(trunca あ る.こ
難 点 が あ る.も 攻 撃 せ ず,低
の 方 法 に は 一 般 に 適 切 な 対 称 性 を見 つ け る こ とが む ず か しい と い う う一 つ は 算 法 の 工 夫 で あ る.対 角 化 をHouseholder法
い もの(固
有 値 の 大 き い も の)を
の よ うに 正 面
何 本 か 求 め るLanczos法
の応 用 もそ
の 一 つ で あ り,原 子 核 に は 瀬 部 孝 とNachamkin35)に
よ っ て 導 入 さ れ た .最 近 注 目 を
浴 び て い る の はMonte
Kooninに
Carlo法
の 応 用 で あ り,S.
よ って 開 発 され て い
る36).こ の 方 法 に よ る と普 通 の や り方 で は 達 し得 な い 巨 大 な 次 元 で も,計 算 可 能 に な る.た
だ 計 算 の 際 に 正 の 量 で あ るべ き もの が 負 に な る と い う問 題 が 残 っ て い る し,最
低 エ ネ ル ギ ー 状 態 しか 得 ら れ な い と い う困 難 が あ る.そ 状 態 を複 数 化 し,Monte
Carlo法
こ で 大 塚 孝 治 た ち は 出発 点 の
と対 角 化 を組 合 せ て こ の 困 難 を解 決 す る 可 能 性 を
提 案 し て い る37). 21.2.3
多 粒 子 殻 模 型 と近 似 的 対 称 性
2体 力 が 中 心 力 の み で ス ピ ン 軌 道 力 が な い 時,LS結 は 各 粒 子 の 軌 道 角 運 動 量 の 和,Sは 良 い 量 子 数 で あ る.更 力,距
に2体
合 方 式 が 成 り立 つ.こ
ス ピ ン の 和 で あ る.こ
有 効 相 互 作 用 が,2核
の と きLとSは
こ でL それ ぞれ
子 の 距 離 の み に 依 存 す るWigner
離 と2核 子 の 状 態 が 座 標 の 入 れ か え に 対 す る対 称 性 の み に よ るMajorana力
図8
の 和 で あ る 場 合,全 (super
210Pbの
エ ネ ル ギ ー 準 位
波 動 関 数 は 空 間 対 称 性 で 分 類 で き る.こ
multiplet)理
論 とい う38).軽 い核 で 比 較 的 良 く成 立 す る*1.ス
は19Ne(1/2+)→19F(1/2+)も19O(5/2+)→19F(5/2+)も 前 者 は[3]対 は[3]対
れ をWignerの
称 か ら[3]対
超 多重 項
ピ ンだ けか ら
許 容 β 崩 壊 す る筈 で あ る が,
称 で 移 転 可 能 で あ る が,後 者 は19Oが[2,1]に,一
方19F
称 性 に 属 し て お り,β 崩 壊 の 演 算 子 は こ の 対 称 性 を変 え な い か ら,19O→19F
の β 崩 壊 は 第1次 ZもNも
近 似 で は 起 ら な い こ とに な る.事 実 後 者 の 転 移 確 率 は小 さ い.
偶 数 な 原 子 核 の 基 底 状 態 の ス ピ ン は例 外 な くO+で
2中 性 子 を加 え る と,こ
の2個
動 量 は0+,2+,4+,6+,8+が よ っ て 禁 止 さ れ る.図8か 子 間 に0+や2+を
の 中 性 子 は1g9/2と 可 能 で あ る.こ
止則 に
基 底 状 態 で あ る.こ の こ とは2中
力 が 働 い て い る こ と を意 味 して い る.こ の2体
似 と し て は δ(r)型 の 引 力 を考 え れ ば 良 い.も 働 く と近 似 す る こ と も で き る.こ が あ り,そ
え ば208Pbに
こ で1+,3+,5+,7+はPauli禁
ら わ か る よ う に0+が
低 くす る2体
あ る.例
い う軌 道 に 入 るか ら,全 体 の 角 運
っ て 大 胆 に0+に
な る ときだ け 引力 が
の よ う な 力 を単 極-対 相 互 作 用 と呼 ぶ.j-軌
こ に 多 くの 同 種 核 子 が 入 る と す る.そ
性
力 の近
道 のみ
し て 核 子 間 に こ の 単 極-対 相 互 作 用
の み が 働 く と考 え よ う.そ の 時
*1 核 力 は 中 性 子 と陽 子 を 区 別 しな い.例
え ば 陽 子-陽 子 間 も中 性 子-中 性 子 間 も 同 じ力 で あ る.更
に 中性 子-陽 子 が 陽 子-陽 子 と同 じ対 称 性 を もつ 場 合 に は そ の 間 の 力 も同 じで あ る.そ
こで アイ
ソ ス ピ ン とい う概 念 が 導 入 さ れ た.核 子 は従 っ て ス ピ ン 自 由 度 と ア イ ソ ス ピ ン 自由 度 を持 つ. 核 力 は ア イ ソ ス ピ ン を 保 存 す る.更
に 核 力 が2核
子 間 の 距離 の み の 関 数 で あ る 場 合,核
子 のス
ピ ン ↑,↓,ア イ ソ ス ピンp,nを 全 く区 別 し な い.即 ちSU(4)不 変 で あ る.こ れ が ス ー パ ー マ ル テ ィプ レ ッ トで あ る.こ の と き,SU(4)空 間 で は4核 子 系 ま で 完全 に 反 対 称 状 態 が 作 ら れ る.即
ち4核
子 ま で 空 間 の 波 動 関 数 を完 全 に 対 称 に で き る.N核
子系 の空間波動 関数が完全 に
対 称 の と き[N]と い う ラベ ル を用 い る.一 部 分 が 対 称 で一 部 分 が 反 対 称 で あ る場 合,[N-1, 1],[N-2,2]… … と い うラベ ル をつ け て い る.SU(4)空 間 の 対 称 性 と空 間 の 対 称 性 を掛 け 合 わ せ る と,勿 論 完 全 反対 称 で な け れ ば な ら ない.
(2)
と い う三 つ の 演 算 子 を 導 入 す る.a+jmは 粒 子 をjmの ら消 滅 させ る演 算 子 で あ る.こ
状 態 に 生 成,ajmは
その 状 態か
の と き 単 極-対 相 互 作 用 は
(3) と 書 け る.ま
たS+,S0,Sは
と い う交 換 関 係 を満 足 す る.こ こ でVpの Racahが
れ は ス ピ ン 演 算 子 が 満 た す もの と全 く同 じで あ る.そ
み が 働 く 系 はSU2-群
で 分 類 で き る.こ
れ は シ ニ オ リテ ィ 形 式 と呼 びG.
導 入 し た39).し か し 上 記 の よ う な 演 算 子 を用 い る と,こ
他 な ら な い こ とが 明 ら か に な っ た.そ
の 形 式 はSU2-群
こ で 準 ス ピ ン(quasi-spin)形
に
式 と言 う こ とも
あ る.準 ス ピ ンの 大 き さ は
(4) で あ る.こ
の 固 有 値 を φ(φ+1)と
個 とす る と,S0の 対(j2(0))を 0+対
固 有 値 は(n-Ω)/2で
生 成 し,Sは0+対
の と き φ=(Ω-υ)/2と
る.そ
れ をjυ(JM)と
υ=1が
系jnで
偶 数 な ら υ=0の
し て エ ネ ル ギ ー 差 はgΩ
に 他 な ら な い.こ
あ る.た
書 け る.ま
で 与 え られ る.重 要 な こ とはn体 Vpを 引 力 と して,nが
た,j-軌 道 に い る 陽 子 又 は 中 性 子 をn
を 消 滅 す る.n体
を含 ま な い 状 態 を作 り,そ
ぶ.こ
書 こ う.ま
だ し2Ω=2j+1で 系 にSを
す る と,こ
た(4)に
あ る.S+は0+
何 回 か 掛 け て,こ
の υ を シ ニ オ リテ ィ と呼
よ りVpの
固有値 は
こ の 値 を最 低 に す る の は,gを
負す なわ ち
と き で あ り,次 に 低 い の は υ=2の
で あ り,こ れ は υ=0の2体
系0+対
奇数な ら
最 低 で あ る.
Racah,
Talmi,
de Shalitは
シ ニ オ リテ ィ形 式 を大 い に発 展 させ た が,第2量
記 の 事 実 を1950年
当 時 の 核 理 論 研 究 者 は 良 く知 っ て い た.し
伝導 現 象 に 結 び つ け て 考 え る人 は,私 記 の 準 ス ピ ン に よ る形 式 はBCS理 た41).こ れ はBCSで 文彦,福
と きで あ
が 持 つ エ ネ ル ギー
のgΩ は 超 伝 導 の エ ネ ル ギ ー ギ ャ ップ に 対 応 す る.nが
を初 期 に は 用 い な か っ た40).従 っ て こ の 形 式 の 理 解 は や や 面倒 で あ っ た.に ら ず,上
れ 以上
子化
もかか わ
か しこれ を超
自 身 を含 め て い なか っ た こ とは 残 念 で あ る.上
論 の 発 見 に 伴 っ て,A.
Kermanに
よ って導入 され
運 動 エ ネ ル ギー を 無 視 す る 強 結 合 近 似 に対 応 し,和 田 靖,高
田信 之,Andersonに
よ っ て も論 じ られ た42).ま た,原
野
子核 にお け る超伝 導
性 に つ い て はBohr,
Mottelson,
D.
Pinesに
よ っ て 指 摘 さ れ た43).
準 ス ピ ン形 式 に よ る行 列 要 素 の 計 算 な どはLawson,
MacFarlaneと
独 立 に有 馬 と
市 村 宗 武 に よ っ て 発 展 さ れ た44,45).ただ し公 式 の 殆 どはRacahの
導 出 した もの で あ
っ た.一
力 の対角 成 分 につ
つ だ け 長 年 の 問 題 で あ っ た の は ψ(jnυJM)状 態 で の,2体
い て の 公 式 で あ っ た.こ 1966年
れ は 古 い や り方 で 有 馬 と 河 原 田 秀 夫 に よ り46)1964年 に,
に 準 ス ピ ン 形 式 で有 馬-市 村 に よ っ て求 め られ た45).そ の 公 式 は
と書 け る.F,Gはn,υ
の2次
関 数 で あ る.n体
着 す る こ と に 注 意 し て 欲 し い.こ
こ で,Vは
系 の 行 列 要 素 が υ体 系 の もの に 帰
粒 子-空 孔 相 互 作 用 と呼 ば れ,粒
子-粒
子 相 互 作 用 か ら,粒 子 の 一 つ を 空 孔 へ 変 換 す る こ とに よ っ て 求 ま る. こ の 公 式 に よ っ て 一 つ の 長 年 の 問 題 が 解 決 し た.50Snの エ ネ ル ギ ー 準 位 を 見 る と,基 底 状 態 は 常 に0+で,第1励 か も そ の励 起 エ ネ ル ギ ー は 殆 ど 一 定 で あ る.一 対 相 互 作 用 とQ・Q相 (θ,φ))で あ る.後
互 作 用 の 和 が 用 い られ る.こ に述 べ るBCS+Random
ば こ の 力 が 用 い られ て い る.と 置 が 粒 子 数nに
方,原
こ でQは
Phase
れ がQ・Q力
あ る.し
四 重 極 能 率(Q=r2Ym(2)
Approximationの
大 き く依 存 し て し ま うの で あ る.そ
な る の で あ る.こ
起 状 態 は 常 に2+で
子 核 構 造 の 計 算 で は 良 く単 極-
こ ろ が 対 相 互 作 用 と,Q・Q相
四 重 極-対 相 互 作 用 を加 え れ ばnに な る の で あ る.一 般 にV=V+定
ア イ ソ トー プ で 偶 々 核 の
こ でQ・Q力
依 存 し な くな る こ とが,先 数 型 の 力 で あ れ ば2+の
手 法 で しば し
互 作 用 の み で は2+の
位
と2+-対 の み に き く
程 の 公 式 か ら明 ら か に
エ ネ ル ギ ー はnに
よ らな く
に加 え て 四 重 極-対 相 互 作 用 を 必 要 とす る 一 つ の 根 拠
に な る. 以 上 の 準 ス ピ ン 形 式 は 同一 粒 子 の み の 系 で 成 立 す る.し か し現 実 に は 陽 子 と 中性 子 が い る.j-殻
に2種
の 核 子 が 入 り,単 極-対 相 互 作 用 が あ る と きへ の 拡 張 は,市
武 に よ っ て 行 わ れ た47).そ の 時SU2で 21.2.4
SU(3)形
Elliottは19Fの Mottelsonの
は な くO5群
式
構 造 を 多 粒 子 殻 模 型 で 計 算 し た27).一 方19Fの
変 形 核 模 型 にCoriolis力
知 ら れ て い た.Elliottは
構 造 は,Bohr-
を 考 慮 す る と 良 く似 た 結 果 が 得 ら れ る こ とが
そ こ で 両 者 の 間 に 密 接 な 関 係 が あ る と 睨 み,SU3模
型 を発
見 し た の で あ る48).ス ピ ン-軌 道 力 を 無 視 し調 和 振 動 子 の 平 均 場 を 仮 定 す る.さ Q・Q力
の み が 働 く とす る と,こ の 力 はSU3形
で 与 え ら れ る.こ る.こ
こ でC(λ
μ)はSU3群
は 交 換 し,同
のCasimir演
時 対 角 化 で き る.こ
らに
式 で 対 角 的 で あ る.そ の エ ネ ル ギ ー は
算 子,λ
μ は 表 現 の ラベ ル で あ
の 式 で 自 然 に 回 転 エ ネ ル ギ ー が 得 ら れ る こ と が 判 る.ま
C(λ μ)と
村宗
が 必 要 に な る.
れ はBohr-Mottelson模
たQ0=(3z2-r2)は 型 のintrinsic状
態 に 対 応 す る.た
だ しLの
固 有 状 態 を射 出(project
SU3形
式 の 良 い 応 用 は0d-1s核
健 男,瀬
部 孝 をは じめ,SU3群
out)し
で あ り,特 に20Neで
な け れ ば な ら な い.
あ る.秋 山 佳 巳,有 馬,井
を用 い て状 態 を制 限 した 多 くの 計 算 が あ る49).し か し
先 述 した よ う に 現 在 は 完 全 に 対 角 化 が 行 わ れ る よ う に な っ た の で,こ は不 要 に な っ た か も知 れ な い.し ー 模 型 との 関 係 を 見 る上 で
上
の よ う な制 限 法
か し殻 模 型 と回 転 運 動 及 び す ぐ後 で 述 べ る クラ ス タ
,SU(3)模 21.3
型 は 今 で も役 立 っ て い る の で あ る. クラ ス タ ー模 型
原 子 核 で ク ラ ス タ ー とは,核 内 で 中 性 子 や 陽 子 の み で な く,重 陽 子 や3重 水 素, 3He ,4He=α な どや そ れ に近 い 状 態 を 作 っ て い る と き,こ の よ う な 成 分 を い う.核 が い くつ か の ク ラ ス タ ー か らで き て い る とい う考 え は,早 よ り共 鳴 群 模 型 と し て提 案 さ れ た が,計 の 模 型 は ドイ ツ のHackenbroichグ
く も1937年
にWheelerに
算 が 困 難 な た め 長 年 用 い られ な か っ た50).こ
ル ー プ,ロ
シ ア のNeudatchinグ
p-殻 に 応 用 して い た51).ま たWildermuthとKanellopoulosは
ル ー プ な どが
各 クラ スターが調 和 振
動 子 の 単 一 粒 子 か ら な る と し,相 対 運 動 も ま た 調 和 振 動 子 と い う模 型 を 出 し た52).し か し直 ち にBaymanとBohrに た め に,こ
よ っ て こ れ はSU3結
合 と 同 一 で あ る と批 判 さ れ た53)
の 方 向 は あ ま り発 展 し な か っ た.
最 も精 力 的 に こ の ク ラ ス ター 模 型 を 発 展 さ せ た の は 日本 で あ る.出 発 点 は1960年 代 に 田 中 一,玉
垣 良 三 を中 心 に した共 鳴 群 法 に 基づ く α と αの散 乱 の分 析 で あ っ
た54).こ の 計 算 に よ っ て2α 間 の 近 距 離 で の 斥 力 の 起 源 が格 子 間 のPauli禁 因 が あ る こ と が 明 らか に な っ た.そ 対 運 動 が とれ な いPauli禁
し て 一 般 にPauli禁
止 則 の ため に ク ラ ス ター 間 相
止 状 態 の 概 念 が生 み 出 さ れ た.そ
相 対 運 動 を記 述 す る 強 力 な模 型 と して,直
止 則 に原
れ に基 づ き ク ラ ス ター 間
交 条 件 模 型 が 斉 藤 栄 に よ り提 案 され た55).
先 述 し た よ う に20Neは 殻 模 型 で も良 く理 解 で き る.し か し ま た,こ の 状 態 は 16O+α とす る こ と も で き る .た だ し(0d-1s)4で は8+ま で しか 発 生 し な い し,実 験 的 に も そ う で あ る.一
方,ク
ラ ス タ ー 模 型 で は10+,12+…
と続 く.そ こ で ク ラ ス ター
模 型 に 殻 効 果 を入 れ な け れ ば い け な い こ とが 明 らか で あ る.こ の よ う な 混合 模 型 に基 づ く計 算 は 例 え ば 友 田敏 章 に よ っ て 行 わ れ た56).こ こ で16Oと
α とは 相 互 作 用 が 弱 い
こ と,(0d-1s)4の
い う よ うな 事 実 か ら堀
α的 状 態 と0p-孔
内 昶 と池 田 清 美 は,20Neが
とが 弱 結 合 し て い る,と
単 に 殻 模 型 の 枠 内 で4粒
空 間 的 に ク ラ ス ター が 局 所 的 に 存 在 し,16O+α
子 が 強 く相 関 す る だ け で な く,
構 造 を 持 つ な ら正 パ リテ ィ 回 転 状 態
以 外 に,そ
れ とパ リテ ィ2重 項 の 関 係 に あ る 負 パ リテ ィ 回 転 状 態 が 存 在 す る こ と を予
想 した.そ
して16O+α
弾 性 散 乱 の 共 鳴 準 位 と して 見 つ か っ た 負 パ リテ ィ 回 転 帯 を そ
れ と同 定 し,殻 模 型 的 平 均 場 内 の ク ラ ス ター 相 関 の 研 究 の 他 に,空 ラ ス ター 構 造 の 研 究 へ 向 う端 緒 を作 っ た の で あ る57).
間 的に局 在す るク
図9
池田図
原 子核 が α粒 子 を構 成 単 位 とす るサ ブ ユ ニ ッ トへ こ わ れ る閾 値 エ ネ ル ギ ー を 図示 した もの .こ の 閾 値 付 近 に サ ブ ユ ニ ッ トに 対 応 す る分 子 的 構 造 が 現 れ 易 い と考 え ちれ て い る.
16Oに は6 る こ とは,先
.0MeV0+を
起 点 と す る(0p)-4-(0d-1s)4型
述 し た 弱 結 合 近 似 の 予 言 通 りで あ る.こ
れ α粒 子 分 離 の 閾 値 エ ネ ル ギ ー 近 傍 に あ る.ま
の20Neに れ も20Neの
似 た回転 帯 が あ 基底 状態 もそれ ぞ
た 森 永 晴 彦 が 三 つ の α粒 子 が 鎖 状 に
連 な る構 造 を持 つ と推 定 した12Cの 正 パ リテ ィ の 励 起 状 態 も ま た,α 粒 子 分 離 の 閾 値 エネル
ギー近 傍 に存 在 す る58).こ の よ うに ク ラ ス ター 的 状 態 は お 互 い に 弱 い相 互 作 用
を す る よ う な エ ネ ル ギー に 発 現 す る.強 け れ ば 融 合 して 殻 模 型 的 構 造 に な っ て し ま う で あ ろ う.従
っ て ク ラ ス ター 状 態 は ク ラ ス タ ー 分 離 の 閾 値 付 近 に 現 わ れ る 筈 で あ る.
こ れ を 閾 値 則 と呼 ぶ.そ
れ に 基 づ い て 発 現 が 期 待 さ れ る ク ラ ス ター 分 子 的 構 造 を図 式
で 表 現 し た も の を池 田 図 と呼 ん で い る(図9). 殻 模 型 的 構 造 と共 存 し,ま た そ れ に 結 合 す る ク ラ ス ター 構 造 の 研 究 を進 め る に は, 微 視 的 に 核 子 の 自由 度 ま で 戻 っ た ク ラ ス ター 模 型 を開 発 しな け れ ば な ら な い.そ 表 的 な 手 法 は 上 述 し たWheelerの の は0p殻
共 鳴 群 法 で あ る が,極
前 半 の 核 に 限 られ て い た.一
座 標 法 は,集
の代
め て 煩 雑 で実 際 計 算 で き る
方 同 じ くWheelerに
よ っ て 提案 さ れ た 生 成
団運 動 を記 述 す る上 で有 力 で あ り,し か も計 算 が 容 易 で あ る59).そ こ で
堀 内 昶 は,D. 成 座 標 法 と,共
Brinkが
導 入 し たSlater行
列 型 の ク ラ ス タ ー 模 型 波 動 関 数 を用 い た 生
鳴 群 法 と は 等 価 で あ る こ と を 証 明 し,両
方 法 の 間 の 変 換 公 式 を導 い
た60).こ う して 計 算 が 遙 か に易 し い 生 成 座 標 法 の積 分 核 か ら,こ
の 変 換 公 式 に よ り共
鳴 群 法 の 積 分 核 が 計 算 で き る よ うに な っ た の で あ る.上 村 正 康 は 広 が りパ ラ メ タ の 異 な る ガ ウ ス 関 数 を単 一 粒 子 を 記 述 す る の に 用 い,上 自身 一 つ の ク ラ ス タ ー)間
記 の 変 換 を使 っ て,原
子 核(そ
れ
の 散 乱 を 取 り扱 う 計 算 法 を 大 幅 に 発 展 さ せ た の で あ る61).
そ して 実 験 を ま さ に き わ め て 正 確 に 予 言 す るに 到 っ た. クラ ス ター 模 型 は 特 に 軽 い 核 で 有 効 で あ る.最 近 不 安 定 核 を 加 速 す る こ と に よ っ て,中
性 子 や 陽 子 の 放 出 限 界 に 近 い と こ ろ ま で新 し い 不 安 定 核 の 研 究 が 進 ん で い る.
その 中 で も谷 畑 勇 夫 を 中 心 に し た11Li,特
に そ の,い
わ ゆ る 中性 子 ハ ロ ー の 発 見 は 重
要 で あ っ た62).こ の よ う な核 の 研 究 に も ク ラ ス タ ー 模 型 は 有 力 で あ る. ク ラ ス ター 模 型 の 研 究 に 関 係 し て,分 が あ る.分 子 共 鳴 の 理 論 的 研 究 は1960年
子 共 鳴 状 態 の 問 題 と重 い 核 の α崩 壊 の 問 題 代 の 実 験 に 触 発 さ れ て,野
上 茂 吉 郎 と今 西
文 龍 に よ っ て 始 め られ た63).そ の 発 展 と して バ ン ド交 叉 模 型 が 阿 部 恭 久 た ち に よ っ て 提 唱 され 多 くの 成 果 を挙 げ て い る64).一 方 重 い 核 の α 崩 壊 に 関 して はH. る先 駆 的 研 究 が 殻 模 型 を用 い て 行 わ れ た.原
Mangに
よ
田 は そ の 絶 対 値 が 単 極-対 相 互 作 用 に よ
り大 き く増 幅 さ れ る こ と を 示 した65).し か し依 然 絶 対 値 は 実 験 に 比 べ て 遙 か に 小 さか っ た.殿 塚 勲 と有 馬 は 殻 模型 波 動 関 数 に 高 エ ネ ル ギ ー 配 位 を 系 統 的 に 混 合 す る こ とに よ り,親 核 の 核 表 面 の ク ラ ス タ ー 形 成 確 率 が 著 し く増 大 す る こ と を,212Po→208Pb+ α を例 に と り調 べ た66).こ の 流 れ の 上 の 最 近 の 仕 事 にVarga達 た α崩 壊 に 関 し て,表
の 仕 事 が あ る67).ま
面 近 くの α の 娘 核 に 対 す る 相 対 運動 に つ い て,Pauli禁
影 響 を 入 れ て 規 格 化 し な お す べ き で あ る こ と が,Fliessbachに こ の 効 果 は20Ne→16O+α
で指 摘 さ れ た が,上
村 正 康,松
よ っ て 指 摘 さ れ た68).
瀬 丈 浩,福
も知 られ て い た こ と で あ り69),有 馬 朗 人 と吉 田 思 郎 の20Neの
止則 の
嶋義 博 の計 算 で
α 崩 壊 の 計 算 は規 格 化
し な お す 必 要 が あ っ た の で あ る70).し か し依 然 と し て 核 内 と核 外 の α-クラ ス タ ー 波 動 関 数 を重 い 核 で ど うつ な ぐか は 問 題 で あ る.な お 対 相 関 に よ っ て2核 著 し く増 幅 され る こ とは1961年
吉 田思 郎 に よ っ て 予 言 さ れ,実
子転移 確率 が
験 で確 か め られ てい
る71).原 子 核 に お け る超 伝 導 性 の確 立 の 上 で 大 きな 仕 事 で あ っ た.
21.4 原 子 核 の 集 団 運 動 21.4.1 乱 雑 位 相 近 似(RPA) 1953年BohrとMottelsonは
核 の 液 滴 模 型 を と り,表 面 振 動 を 量 子 化 し た72).こ
の 表 面 振 動 模 型 が 核 の低 エ ネ ル ギ ー 準 位 に 関 す る数 多 くの 実 験 事 実 を 説 明 し た.そ
こ
で 個 々 の 核 子 の 運 動 か ら表 面 振 動 を理 解 し よ う と い う努 力 が 始 ま っ た.勿 論 変 形核 と そ の 回 転 運 動 に つ い て も 同様 で あ る.後 る が,残
者 に つ い て は 日本 で は 朝 永 振 一 郎 の 仕 事 が あ
念 な が ら発 展 が 見 られ て い な い73).宇 井 治 生,最
究 者 が,い
わ ばElliottのSU3をnoncompact群
近 で はD.
へ 拡 張 し たSU(1,1)模
Roweと
共 同研
型 を提 案 し
た が,あ
る意 味 で 朝 永 模 型 の 発 展 とい う側 面 を持 っ て い る74).
表 面 振 動 は,物
性 論 に お け る プ ラ ズ マ 現 象 に つ い て 成 功 した.沢
位 相 近 似(Random
Phase
Approximation,
RPA)を
原 子 核 に 適 用 して,素
ドを説 明 し よ う と い う 試 み が な さ れ た75).高 木 修 二 に よ る3-振 田 川 猛 に よ る2+振 2+を1表
田 克 郎 に よ る乱 雑 励 起 モー
動76),田 村 太 郎,宇
動 な どが そ の 先 駆 的 な もの で あ る77).
面 振 動 子(ボ
ソ ン)の
と い う三 つ の 状 態 が 生 じ,第1励
励 起 と し,2個
振 動 子 を励 起 させ る と0+,2+,4+
起 エ ネ ル ギー の2倍
の と こ ろ に現 わ れ る 筈 で あ る.
そ の傾 向 は あ る が,三
つ の状 態 の エ ネ ル ギ ー は か な り違 っ て い る.こ
と呼 ば れ る.ま
来 の フ ェ ル ミオ ン系 か ら,振 動 子 と い う ボ ソ ン を ど う し て 作 る
た,本
か が 問 題 に な る.そ え が あ る.こ
れは 非調和 効果
こ で フ ェ ル ミオ ン 多体 系 か ら ボ ソ ン 多 体 系 へ の 写 像 を 導 入 す る考
れ を 最 初 に や っ て の は1962年
のBelyaevとZelevinskyで
あ っ た78).
彼 等 は フ ェ ル ミオ ン 演 算 子 を ボ ソ ン の も の と置 きか え よ う と し た の で あ る.こ し て 丸 森 寿 夫,山
村 正 俊,徳
れに対
永 旻 は,二 つ の 異 な る 空 間 で の 行 列 要 素 が 等 し くな る よ
う な写 像 を行 お う と い う方 法 を提 案 した79).丸 森 グ ル ー プ の 活 躍 は 日本 の 集 団 運 動 研 究 の 発 展 を促 した80).例 え ば 岸 本 照 夫,田 等 に よ るDyson型 は,集
村 太 郎 に よ る ボ ソ ン 展 開 法81),高 田 健 次 郎
ボ ソ ン 展 開 法 な ど は そ の 発 展 の 線 上 に あ る82).最 近 の 発 展 と し て
団 運 動 部 分 空 間 を微 視 的 な 立 場 か ら規 定 す る方 法 と し て,自
法 が,丸
森 寿 夫,益
川 敏 英,坂
型 で は 閉 殻 の 場 合 を 除 き,殆 BCS真
田 文 彦,栗
ど す べ て 先 ずBCS近
似 で 単 極-対 相 互 作 用 を 処 理 し,
空 の 上 に 準 粒 子-準 粒 子 の 対 で 素 励 起 状 態 を 作 っ て い る.こ
る相 互 作 用 す る ボ ソ ン模 型 で の2核
己 無 撞 着 集 団座 標
山 惇 に よ り提 案 され て い る83).こ れ ら の 模
れ が す ぐ後 で 論 じ
子 対 と密 接 な 関 係 が あ る こ とが 判 っ て い る.
21.4.2 相 互 作 用 す るボ ソ ン模 型 有 馬 は1966年 1974年F. IBMで
に 相 互 作 用 す る ボ ソ ン模 型 の 雛 型 と な る も の を 提 案 し て い た が84),
Iachelloと
は ス ピ ン とパ リ テ ィ が0+と2+のsボ
の数 をNS,dボ え る.次
協 力 して 「 相 互 作 用 す る ボ ソ ン 模 型(IBM)」
ソ ン の 数 をNdと
にIBMの
ソ ン とdボ
す る と,全
ハ ミル トニ ア ン は,ボ
ソ ン を仮 定 す る.sボ
ボ ソ ン数N=Ns+Ndが
ソ ン の1粒
を 打 出 し た85). ソン
保 存 さ れ る と考
子 エ ネ ル ギ ー と2体 の ボ ソ ン-
ボ ソ ン相 互 作 用 か ら で きて い る と仮 定 す る.相 互 作 用 の 強 度 を示 す パ ラ メ タ の 値 を 適 切 に 選 ぶ と,さ
ま ざ ま な偶 々 核 の励 起 エ ネ ル ギー や 転 移 確 率 を 良 く説 明 で き る.核 力
とい う複 雑 で 強 い相 互 作 用 を通 じて 束 縛 さ れ て い る 多核 子 で あ る とい う事 実 か ら は, 想 像 もつ か な い ほ ど美 しい 規 則 性 が あ る こ とが 発 見 さ れ た.こ 称 性 はSU(6)群 IBMの
で あ る.
ボ ソ ン ・ハ ミ ル トニ ア ン は6個
を と る と き,三
の模 型 の 基礎 に な る 対
の 独 立 な パ ラ メ タ を 含 む.そ
つ の 極 限 的 な場 合 が得 られ,そ
こ とが で き る.こ
れ は(1)球
れ が 適 当 な値
の と き ハ ミル トニ ア ン を解 析 的 に 解 く
形 核 表 面 の 四 重 極 振 動(振
動 核),(2)楕
円体 変形 の 回
図10
実 験 値 とIBMのSU(3)極
156Gdの
スペ ク トル
限 に よ る予 言値.(二
つ の パ ラ メ タ を実 験 に 合
わせ て あ る.)
転(回
転 核),(3)軸
る.IBMで
の 長 さ が 振 動 し な が らの 回 転(ガ
は それ ぞれO(5),SU(3),O(6)の
IBMの
示 し て お く.
微 視 的 基 礎 づ け が 次 の 問 題 で あ っ た.そ
0+Cooper対(S対
と呼 ぶ)に
し た も の(D対)に
対 し てdボ
が 縮 退 度 Ω=Σ(2j+1)/2に か しnは2Ω
場 合,
の典 型的 な場合 の エネル ギー準位 の実
の 時 最 も有 力 な考 え 方 は,ボ
を コ ヒー レ ン トな 核 子 対 に 対 応 させ る も の で あ る.ま ず 原 子 核 のBCS状
る.し
対 応 して い
極 限 と呼 ん で い る.な お(1)の
先 述 し た 非 調 和 性 は 自然 に 考 慮 さ れ て い る.こ 験 との 比 較 を 図10に
ン マ 不 安 定 核)に
対 してsボ
ソ ン を,こ
ソ ン を 対 応 させ る.閉
比 べ て 小 さ け れ ば,こ
を超 え ら れ な い.こ
ソン
態 をつ く る
の コ ヒー レ ン ト対 を2+に
拡 張
殻 外 軌 道 に い る核 子 の 個 数n
れ ら の 核 子 対 は ボ ソ ン 的 振 舞 をす
れ が ボ ソ ン の 数 をIBMで
は保 存 させ る理 由
で あ る. フ ェ ル ミオ ン よ り ボ ソ ンへ の 写 像 は,両
空 間 で 行 列 要 素 が 等 しい こ と を 要 請 す る
OAI写
像 が 良 く用 い られ て い る86).こ れ は 丸 森 写 像 と精 神 に お い て 共 通 す る 所 が あ
る.こ
の 方 法 は 振 動 核 や 遷 移 核 で は う ま く行 っ て い る が,変
形 核 に お い て は い まだ に
問 題 が あ る.こ の 事 実 は 吉 永 尚 孝 に よ っ て 詳 し く調 べ ら れ て い る87). IBMの
拡 張 と して 中 性 子 と陽 子 そ れ ぞ れ に 対 してs,dボ
(IMB-2)や,奇A核
ソ ン を 導 入 す るnp-IBM
を 記 述 す る た め フ ェ ル ミ オ ン を 加 え たIBFMな
どが 成 功 を収
め て い る88,89). 原 子 核 の 高 い励 起 状 態 の 集 団 運 動 的 性 質 の 研 究 は1963年 (α,nx)の
の 森 永 晴 彦 とGugelotの
仕 事 が 始 ま り で あ っ た90).ま た偶 々 核 の 回 転 帯 及 び 振 動 運 動 に つ い て の き
わ め て 包 括 的 情 報 の 整 理 が 坂 井 光 夫 に よ っ て 精 力 的 に 行 わ れ た91).私 た ち の 理 論 的 研 究 は こ の3人
の 実 験 家 の 業 績 に大 き く依 存 して い るの で あ る.
21.4.3 核 力 と有 効 相 互 作 用 原 子 核 の 構 造 を理 解 す る た め に 最 も基 本 的 な こ と は,核 子 間 の 相 互 作 用 即 ち核 力 で あ る.核 力 の 研 究 は 湯 川 秀 樹 の 中 間 子 論(1935)に 役 割 を 演 じた.武
谷 三 男 は1956年
に,核
け て 研 究 を 進 め る こ と を提 案 し,大 以 上 離 れ て 静 的 な1パ で,パ
力 をその 到達 距 離 に よっ て三つ の領 域 に分
き な影 響 を 与 え た.三
が 寄 与 す る 領 域,(Ⅲ)1fmよ
き く領 域,(Ⅱ)1∼2fm
以 上 の パ イ オ ン交 換,重
り近 距 離 で,複
こ の 考 え に 従 っ て 領 域(Ι)でOPEPが
さ れ,武
つ の 領 域 と は,(Ι)2fm
イ オ ン 交 換 に よ る 核 力(OPEP)が
イ オ ン交 換 の 非 静 的 部 分 や,2個
た93).領 域(Ⅱ)で
始 ま り92),日 本 グル ー プ が 中 心 的
い 中間 子の 交換 な ど
雑 な 相 互 作 用 が あ る領 域,で 岩 垂 純 二 た ち に よ っ て1956年
あ る. に確 立 し
は 福 田-沢 田-武 谷 に よ り非 静 的 パ イ オ ン-核 子 相 互 作 用 が 定 式 化
谷-町 田-大 沼 ポ テ ン シ ャ ル が 提 案 され た94).領 域(Ⅲ)で
は強 い斥 力が あ る
こ とが 判 っ て きて い る. こ の 強 い 斥 力 をハ ー ド ・コ ア で近 似 す る浜 田-Johnstonポ 力(ソ
フ ト ・コ ア)で
近 似 す るReidポ
テ ン シ ャ ル と,有 限 な 斥
テ ン シ ャ ル が 導 入 され た95).ど ち ら もパ ラ メ
タ が 核 子-核 子 散 乱 の デ ー タ に 合 せ て あ り,現 象 論 的 で は あ る が,核
構 造や核 反 応 計
算 の 基 礎 的 ポ テ ン シ ャ ル と して 長 く用 い ら れ た. 1970年
以 後 領 域(Ⅱ)の
わ れ,日
本 の伝 統 は 失 わ れ た か に 見 え た.
し か し領 域(Ⅲ)の
研 究 が 進 ん だ が,そ
れ は 主 と し て フ ラ ン ス や ドイ ツ で 行
斥 力 を理 解 す る 上 で 日本 の グ ル ー プ は そ の 伝 統 を復 活 し た.先
ず α-α散 乱 か ら類 推 して 核 子 の ク ォ ー ク構 造 と ク ォー ク の 反 対 称 化 か ら生 じ る斥 力 の 可 能 性 で あ る.そ
れ を最 初 に指 摘 した の はV.G.Neudatchin,Y.F.Smirnovと
垣 良 三 で あ り,1977年
玉
で あ っ た96).し か し そ れ だ け で は な く ク ォ ー ク間 力 ま で 考 慮
に 入 れ な け れ ば な ら な い こ とが 岡 真 と矢 崎 紘 一 に よ っ て 示 さ れ た97).そ の 際 ク ォー ク は 非 相 対 論 的 に 取 扱 い 共 鳴 群 法 を用 い て 計 算 して い る.こ か な り 明 確 に な っ た の で あ る.更
にSU(3)ク
う し て近 距 離 斥 力 の 起 源 が
ォ ー ク模 型 に よ る短 距 離 力,ク
ク ・ク ラ ス タ ー 模 型 に よ る 短 距 離 力 と 中 間 子 力 を 組 み 合 せ て,核
ォー
力 の み な らず 一 般 の
バ リオ ン 間 相 互 作 用 を導 出 す る 試 み な ど が 行 わ れ て い る. 21.4.4
少 数 多 体 系 と有 効 相 互 作 用 の 理 論
前 項 で 論 じ た核 力 で核 構 造 を 論 じ るの が 理 想 的 で あ るが,近
距離 の斥力 ―特 にハー
ド ・コ ア ― が あ る た め 摂 動 計 算 が 使 え な い とい う困 難 が あ る. しか し3体
系 で は核 力 か ら 出発 して 厳 密 に 計 算 す る こ とが 可 能 に な っ た.1980年
代 に 入 っ て か ら で あ る.そ な っ た か ら で あ る.こ
れ はFaddeev方
の3体
程 式 を精 度 良 く解 く こ とが で き る よ う に
問 題 で は笹 川 辰 弥 とそ の協 力者 が 大 い に活 躍 して い
る98).ま
たHannoverグ
ル ー プ とLos
結 合 エ ネ ル ギ ー はReidポ 7.67MeVと
な る.実
Alamosグ
ル ー プ の 寄 与 も 大 き い.ト
テ ン シ ャ ル で7.35MeV,
験 値8.45MeVに
Argonne
は 少 々 足 り な い.そ
加 え て 結 合 エ ネ ル ギ ー に 合 わ せ る と,形
V
14ポ
リ トンの
テ ン シ ャル で
こ で 現 象 論 的 な3体
状 因 子,Coulombエ
力 を
ネル ギー 等 の性質 を良
く再 現 す る こ と が で き る.
変 分 法 も用 い て3体 て,4Heの gonne は3Hの
場 合,そ
以 外 の 軽 い 核 に つ い て も か な り精 度 が 良 い 計 算 が 行 わ れ て い
の 結 合 エ ネ ル ギ ー は 前 述 のReidポ
V 14ポ テ ン シ ャ ル で24.6MeVで
テ ン シ ャ ル で23.5MeV,
あ る.実 験 は28.3MeVで
束 縛 エ ネ ル ギー で 必 要 で あ っ た3体
Ar
あ る が,こ
の差
力 で 説 明 で き る こ と が 知 ら れ て い る99).
この よ う な 性 質 が 非 相 対 論 的 取 扱 い で再 現 で き る こ とは 注 意 す べ きで あ る. 21.4.5 有 効 相 互 作 用 も っ と質 量 が 大 き くな っ た と き,強 い 近 距 離 斥 力 を考 慮 に 入 れ る に は,変 分 関 数 に Πf(rij)と はrが
い う 関 数 を 掛 け る 方 法 がJastrowに
小 さ くな る と0に な り,遠
よ っ て 提 案 さ れ た100).こ こ でf(r)
くな る と1に
な る 関 数 で あ る.こ
の 方 法 は岩 本 文
明 と 山 田 勝 美 に よ っ て 発 展 させ ら れ た101).有 限 核 で は あ ま り使 わ れ な か っ た が,最 近4Heよ
り少 し 重 い 核 で 用 い ら れ て い る.し
BruecknerのG行
か し大 計 算 に な る た め に 普 通 は
列 理 論 とそ れ を 発 展 させ たBethe-Goldstone方
ら 出 発 す る102,103).こうや っ て 求 め たG行
程 式 を 解 くこ と か
列 を 用 い,芯 偏 極 効 果 な ど 高 次 の 補 正 を加
え て 殻 模 型 に 用 い る 有 効 相 互 作 用 を 計 算 す る こ と も 行 わ れ て い る.特 Brownに
よ っ て精 力 的 に 計 算 が 進 め られ た104).日 本 で も坂 東 弘 治,永
田
にKuoと 忍 たち を
中心 とす る 京 都 グル ー プ の 寄 与 が 大 き い105). 1982年 鈴 木 賢 二 は,ユ な2体 核 力 か らG行
ニ タ リー 模 型-演 算 子 法 を提 案 し た が,こ
列 を 求 め,そ
れ に よ って現 実的
れ か ら使 用 可 能 な 有 効 相 互 作 用 を求 め る,一 つ の
処 方 が 得 られ た と言 え そ う で あ る.事 実,鈴
木 と 岡本 良 治 が16Oに
応 用 した 結 果 は 有
望 で あ る106). Brueckner-Betheの わ れ た.し
方 法 で 得 られ たG行
列 を用 い てHartree-Fock計
算 が 多数 行
か し核 物 質 の 結 合 エ ネ ル ギ ー と密 度 の 実 験 値 を得 る に 到 っ て い な い.
近 年Waleckaに Hartree-Fock計
よ っ て相 対 論 的 平 均 場 近 似 が 導 入 され た107).こ の 模 型 に 基づ い て 算 をす る と,核 物 質 の 性 質 が 良 く説 明 で き る と い う.し か し手 離 し
で 喜 べ な い. 軽 い 核 で は 相 対 論 効 果 な し で 説 明 で き た の に,16Oぐ 効 果 が い る よ うに な る の か,不
思 議 で あ る.ま
れ が か た ま っ て 核 子 に な っ て,核 の は,ど
ら い に な る と ど う し て相 対 論
た 核 子 は ク ォ ー クか ら で き て い る.そ
子 全 体 と し て はDirac方
の よ うな 仕 掛 に よ るの で あ ろ うか.
程 式 を満 たす よ うに な る
21.4.6
巨 大 共 鳴
原 子 核 が γ線 を 吸 収 す る と励 起 エ ネ ル ギー が77A-1/3MeVあ 励 起 す る.こ
れ は 電 気 双 極 子 遷 移 に よ る もの で あ り,遷 移 確 率 は 古 典 的 和 則 を ほ ぼ 満
た して い る.こ れ をE1巨
大 共 鳴 と呼 ぶ.
原 子 核 が 変 形 す る と長 軸 方 向 のE1巨 あ る.こ
た りに 大 き な確 率 で
大 共 鳴 と短 軸 方 向 の も の と は 違 っ て く る筈 で
の 可 能 性 は 岡 本 和 人 とDanosに
よ っ て 指 摘 さ れ た108).実 験 に よ り確 か め ら
れ て い る. E2巨
大 共 鳴 やE0巨
大 共 鳴 の 存 在 は 以 前 か ら 指 摘 さ れ て い た が,そ
の 発 見に は鳥
塚 賀 治 を中 心 とす る東 北 大 グ ル ー プ の 寄 与 が 大 き い109). ス ピ ンに 関 す る 巨 大 共 鳴 と して は,ア 藤 田 純 一,藤
井 三 朗 と池 田 清 美 に よ っ てGamow-Teller巨
れ た110).こ の 状 態 は1975年Indianaグ LS結 り,そ
イ ソバ リッ ク ・ア ナ ロ グ状 態 の 発 見 の 直 後, 大 共 鳴 が1963年
ル ー プ の(p,n)反
応 に よ っ て 発 見 さ れ た111).
合 が 成 立 す る軽 い 核 だ と,空 間 対 称 性 即 ちWignerの こ で は ア ナ ロ グ 状 態 だ け で は な く,G-T状
軌 道 力 もCoulomb力 重 い核 に,ア
も大 き い,従
ナ ロ グ状 態 もG-T状
に予 言 さ
超 多重 項 が良 い近 似 で あ
態 も当 然 存 在 す る.し
か し ス ピ ン-
って 空 間 対 称 性 が き わ め て 破 れ て い る中 重 核 や, 態 も存 在 す る と い う事 実 は,驚
き を もっ て 迎 え ら
れ た. と こ ろ で,こ
のG-T状
態 の(p,n)反
応 断 面 積 は,殻 模 型 に よ る理 論 値 の1/3ぐ
らい しか 実 験 的 に 発 見 さ れ て い な か っ た.そ
こ でΔ-空 孔 状 態 が 混 っ て(p,n)反
断 面 積 を 小 さ くす る 可 能 性 が 指 摘 さ れ た.一 粒 子-2空
孔 状 態 が 混 る こ と に よ っ て,こ
方,浜
本 とBertschは,G-T状
の 断 面 積 が 小 さ くな る こ と を 指 摘 し た112).
こ れ は有 馬,市 村,清
水 が 主 張 した テ ン ソ ル相 関 に他 な ら な い.2粒
状 態 に 混 る こ とは,逆
にG-T状
る.そ
こ で2粒
態 が 沢 山 あ る2粒 子-2空
子-2空 孔 が 分 布 す る40∼50MeVの
積 を測 って 和 を とれ ば,予
子-2空 孔 が 基 底
孔 状 態 に 混 る こ と を意 味 す
励 起 状 態 へ の(p,n)反
想 さ れ る和 則 を満 足 す る 筈 で あ る.こ
や 有 馬 た ち の もの で あ る.も
応の 態 に2
応 の断面
う い う説 が 浜 本 た ち
しΔ-空 孔 の 混 合 が 本 当 に 必 要 で あ れ ば,和
則 を満 足す
る ため に はΔ の励 起 エ ネ ル ギ ー300MeV前
後 まで 和 を と る必 要 が あ る こ とに な る.
実 験 が 軍 配 を どち らへ 上 げ る で あ ろ うか.私
は テ ン ソ ル 相 関 の 重 要 性 が 実 験 で 既 に以
下 の よ う に 確 か め られ て い る と思 う.こ の 文 を 発 表 し て 後,酒 MeVま
で 断 面 積 の 和 を と る実 験 が 行 わ れ,Δ-空
井 た ち128)に よ り50
孔 の 寄 与 は あ っ て も10%以
下 で,2
粒 子-2空 孔 状 態 の 寄 与 で ほ とん ど説 明 で き る こ とが 判 明 した. Δ の ア イ ソ ス ピ ン は3/2,1空 ン は1か2で
あ る.そ
可 能 性 が あ る が,ア
孔 の もの は1/2で
こ で ア イ ソ ス ピ ンが1だ
あ る か ら,Δ-h状
イ ソ ス ピ ン が 変 ら な い 遷 移 で は Δ-hは
に は ア イ ソ ス ピ ン が 変 化 し な い よ う な(ΔT=0)励
態 の ア イソ ス ピ
け 変 る 遷 移 に は,Δ-hの きか な い.し
混合 が き く か し実 験 的
起 も,断 面 積 が 抑 制 さ れ 小 さ い
こ と が 判 っ て い る.ま
た2個
の 鏡 映 核(例
え ば178O9と179F8)の
す な わ ち ア イ ソス カ ラー 磁 気 能 率 の ス ピ ン部 分 が,殻 確 か め ら れ た.ア
イ ソ ス カ ラー な 量 に,Δ-空
磁 気 能 率 の 和 の1/2,
模 型 値 よ りず っ と小 さ い こ と が
孔 の 影 響 は 第1次
近 似 で0で
あ る.し
か し テ ン ソ ル 相 関 は この 場 合 に も大 き な 効 果 を持 ち,実 験 値 を 良 く説 明 で き る113) . ア イ ソ ベ ク トル 型 の 遷 移 でΔ-空 孔 の 効 果 が 大 き く評 価 され 過 ぎ た の は,軽
い核 に
つ い て は 表 面 効 果 が 無 視 さ れ た こ と,中 重 核 で は 残 留 相 互 の 近 似 と し て よ く用 い ら れ るLandau-Migdal力
を大 き く と り過 ぎ た た め で あ る.2倍
に して入れ た とい う計算
間 違 い の 論 文 は 論 外 に し て も,全 卓 樹 と清 水 清 孝 が 指 摘 し た よ うに も う少 し小 さ い 値 を と る べ き で あ る114).そ うす る とLandau-Migdal力 ばTownerとKhannaの E1やE2巨
え
結 果 と も良 く一 致 す る115).
大 共 鳴 の 幅 に は,共
子 を 放 出 す る 幅 と,1粒 が あ る.前
を用 い な い で や っ た 計 算,例
子-1空
者 を崩 壊 幅,後
鳴 の 主 要 部 分 で あ る1粒 子-1空
孔 が2粒
孔状 態が 直 接 に粒
子-2空 孔 以 上 の 複 雑 な状 態 に 移 っ て 行 く幅
者 を 分 散 幅 と 呼 ぶ.後
者 に つ い て16Oと40Caを
とっ て 最
も き ち ん と した 計 算 が 星 野 享 と有 馬 に よ っ て116),ま た 中 重 核 や 重 い 核 で も用 い ら れ る普 遍 的 な 優 れ た 計 算 法 が 吉 田思 郎 と安 達 静 子 に よ っ て 提 案 さ れ た.今 似 の 方 法 が 用 いら れ て い るが,吉 素 粒 子 のY-scalingの
日世 界 的 に 類
田-安 達 を 出 発 点 と し て い る と言 っ て よ い117).
概 念 を原 子 核 のE1巨
大 共 鳴 に 応 用 し て,武
は こ の 概 念 が 原 子 核 で も良 く成 り立 つ こ と を示 し た118).Westも 得 て い る119).こ の よ うなscalingと
か,総 和 則 とか は,し
の 大 局 的 な 性 質 を調 べ る上 で,大 変 役 に 立 つ.こ
田 暁 と川添 良 幸
同 じ結 論 を 前 後 し て
ば しば 問題 に して い る 体 系
のY-scalingは
その 良 い例 と言 え る
の で あ る. 21.4.7 ハ イ パ ー核 の 構 造 素 粒 子 のSU(3)模 Σ-,Ξ0,Ξ-)は
型 に よ れ ば,陽
子,中
性 子 と6個
の ハ イ ペ ロ ン(Λ,Σ+,Σ0,
一 つ の 組 を 作 っ て い て 性 質 が 良 く似 て い る.た
レ ン ジ ネ ス を 持 って い て,質
量 が 核 子 よ り少 々 大 き い.こ
る核 をハ イ パ ー 核 と呼 ん で い る.ハ
だ しハ イ ペ ロ ン は ス ト
の ハ イペ ロ ン が 含 ま れ て い
イ パ ー核 の 研 究 は 原 子 核 構 造 研 究 の 先 端 の 一 つ で
あ る. こ の 分 野 に お け る 故 坂 東 弘 治 を 中 心 と し た グ ル ー プ の 活 躍 は,GalやDoverに し て 大 き な もの で あ る.特 ペ ロ ン と核 子 間 のG行
に 山本 安 夫 と坂 東 は バ リオ ン 間 相 互 作 用 か ら出 発 し,ハ
列 を作 っ た と こ ろ が 特 筆 す べ き で あ る120) .こ
て ハ イ ペ ロ ン の 核 内 で の 単 一 粒 子 運 動 の 性 質 を 導 い て い る.例 さ,有 効 質 量,ス
ピ ン-軌 道 力 で あ る.こ
用 を用 い た 殻 模 型 計 算 は 元 場 俊 雄,糸
のG行
互 イ
列 を用 い
え ば平均 場 の形 や 深
う し て 得 られ た 核 子-ハ イペ ロ ン 有 効 相 互 作
永 一 憲 た ち に よ っ て 精 力 的 に進 め ら れ て い る.
ま た 日本 で 特 に 開 発 が 進 ん で い る ク ラ ス ター 模 型 の ハ イ パ ー 核 へ の 応 用 も活 発 に 行 わ れ て い る.こ
の 方 法 で 軽 い ハ イ パ ー 核 の 生 成,構
造,崩
壊 が か な り良 く理 解 さ れ て い
る.
原 田 融 や 赤 石 義 紀 た ち は Σ 粒 子 と原 子 核 の 相 互 作 用 を研 究 し,Σ ハ イパ ー 核 の 可 能 性 を 検 討 し た.Σ
の 寿 命 は 短 い の み な らず 核 子 と強 い 相 互 作 用 を す る の で,幅
狭 い Σ ハ イ パ ー 核 が 存 在 す る か ど うか 疑 問 で あ る.し 予 言 し121),事 実 早 野 龍 五 た ち のKEK,
BNLで
の
か し赤 石 た ち は4ΣHeの 存 在 を
の実 験 に よ って 実 証 さ れ た の で あ
る122). 21.4.8 温 度 の 高 い 変 形 核 及 び 超 変 形 核 変 形 核 に つ い て はHartree-Fock-Bogoljubov あ る.こ
(HFB)法
を用 い た研 究 が 標 準 的 で
こ で は つ じ つ ま の 合 っ た 平 均 場 を生 み 出 す た め にHF法
上 に 強 い 単 極-対 相 互 作 用 の 効 果 を加 味 す る た め,Bogoljubov変 れ て い る.近
が 用 い られ,そ
の
換 が 考 慮 に 入れ ら
年 変 形 核 の 高 い エ ネ ル ギ ー の 研 究 が 盛 ん に な り,レ ベ ル 準 位 の密 度 や 変
形 が 温 度 と と もに ど う変 化 す る か が 問 題 に な っ て き て い る.こ の 効 果 を考 え に 入 れ な け れ ば な ら な い.そ
の 場 合HFB法
に温 度
の ような計 算に おい て田辺孝 哉 及び菅 原 ・
田 辺 和 子 の 活 躍 は 注 目す べ き で あ る123). 長 軸 と短 軸 の 比 が2:1に
な る よ う な大 き な変 形 核 の 存 在 は,核 分 裂 ア イ ソマ ー の
発 見 に よ っ て 明 らか に な っ た が,そ い に 発 展 し た.こ
の よ う な 大 き な 変 形 核 が持 つ 回 転 状 態 の研 究 が 大
の 超 変 形 核 の 回 転 帯 の発 見 は 最 近 の 原 子 核 物 理 学 に お け る最 も重 要
な事 項 の 一 つ で あ る. 色 々 面 白 い 性 質 が 見 つ か っ て い る が,そ 全 く 同 じ 回 転 帯 を 持 つ こ と で あ る.浜 あ る124).こ
の 一 つ は,一
本 育 子 とMottelsonの
こ で 擬 ス ピ ン 機 構 は 有 馬,清
た ち に よ っ て 発 見 さ れ た126).殻
水,Harveyに
模 型 の 軌 道 で,例
l+1/2)と
こ でl=l+1と
S-Σsiが
殆 ど0と
た 独 立 にHecht よ う
の軌道 のエ ネル ギー が ほぼ縮 退 し
い う 擬 角 運 動 量 を 導 入 す る と(l,j=l-1/2),(l,j'=
読 み 換 え る こ と が で き る.こ
軌 道 力(l・s)が
擬 ス ピ ンに よ る説 明が よ り125),ま
え ばp3/2とf5/2,,f7/2とh9/2の
に,(l,j=l+1/2)と(l+2,j'=l+2-1/2)の2本 て い る.そ
つ の偶 々 核 とそ の 隣 の 奇 核 が
のlと
擬 ス ピ ンsを
い う こ と に な る.そ
用 い る と,擬
ス ピン ・
こ で 擬 ス ピ ン を 用 い る と,L=Σliと
ど ち ら も 良 い 量 子 数 を 与 え る の で あ る.
こ の よ う な超 変 形 核 で ク ラ ン ク ト殻 模 型 が よ く使 わ れ る が,こ
れ にRPAを
加 えた
興 味 深 い 研 究 が 松 柳 研 一 た ち に よ っ て 行 わ れ て い る127).こ の 分 野 は 実 験 的 に も理 論 的 に も更 に 大 き な発 展 が 期 待 され る. 最 後 に 中 間 エ ネ ル ギー 核 物 理 の 発 展 に つ い て 述 べ るべ き で あ るが,予
定 の枚 数 を遙
か に 上 廻 っ た の で割 愛 す る こ と を お 許 し い た だ き た い. こ の 論 を 書 く に 当 っ て 矢 崎 紘 一,大
塚 孝 治,堀
氏 と小 川 洋 子 さん の 御 援助 を い た だ い た.こ と,東 京 大学 名 誉教 授.1930年
生 まれ,1953年
内昶,岡
真,吉
永 尚 孝,全
こ に 深 く感 謝 す る.(筆 東 京大 学 理 学部 卒 業)
者=あ
卓樹 の諸 りま ・あ き
参 考文 献 1)
C.F.von
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S.T.Belyaev
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N.Yoshinaga:Nucl.Phys.A
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H.A.Bethe
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K.T.Hecht
127)
T.Nakatsukasa,S.Mizutori
B.R.Mottelson:Phys.Lett.167B(1986)370,333B(1994)294. and
and
K.Shimizu:Phys.Lett.30B(1969)517.
A.Adler:Nucl.Phys.A and
607. 128)
Wakasa,et
初 出:日
al.:Phys.Rev.C55(1997)2909.
本 物 理 学 会 誌51(1996)707-718.
137(1969)129. K.Matsuyanagi:Prog.Theor.Phys.87(1992)
22.
原 子核 構造理論 の将来 大
21世 紀 の核 構 造 理 論 を考 え る に あ た り,20世 りた い.N.
Bohrの
っ て い い の で,そ
に,原
治
複 合 核 模 型 は秩 序 だ っ た もの と し て の 核 構 造 を 否 定 した も の と 言 れ に 対 す る ア ン チ テー ゼ と して 出 て き た殻 模 型 を核 構 造 理 論 の 出 発 G. MayerとJ.
H. D. Jensenに
より
子 核 に お け る ス ピ ン− 軌 道 力 の 導 入 と と もに 明 確 な 形 で 示 さ れ た .
当初 の 殻 模 型 で は,各 ま わ り,ほ
孝
紀 の 発 展 の 歴 史 を ご く簡 単 に 振 り返
点 とす る の は 極 め て 自 然 で あ る.殻 模 型 はM. 1949年
塚
々 の 核 子 は3次 元 調 和 振 動 子 ポ テ ン シ ャ ル の 一 粒 子 軌 道 上 を
とん ど の 核 子 は 閉 殻,即
ち,球
対 称 な 芯 を な し,最 後 の1個
の 粒 子 で 多 体 系 と し て の 量 子 数 が 決 ま る,と 型 で あ りな が ら,ス
い う描 象 で あ っ た.こ
または少数 個
の よ う な簡 単 な模
ピ ン− 軌 道 力 を含 め る事 に よ り,当 時 実 験 的 に は ほ ぼ 判 明 し て い
た 原 子 核 の 魔 法 数 が こ と ご と く説 明 で きて し ま う,と い う画 期 的 な 成 果 を あ げ た の で あ る.こ の 描 像 に は,核
力(核
の 効 果 は 平 均 化 さ れ て1粒 後,単
子 間 の 強 い相 互 作 用)は
子 ポ テ ン シ ャ ル が 構 造 を ほ ぼ 決 め て い る.殻 模 型 は そ の
純 な ポ テ ン シ ャ ル 模 型 か ら発 展 を と げ,名
い っ た.つ
元 々 の 姿 で は 現 れ て来 ず,そ
ま り,様 々 な 配 位 を考 え,そ
前 は 同 じで も内 容 は 大 き く変 わ っ て
れ ら の 重 ね 合 わ せ に よ り動 的 な相 関 も取 り込
め る 多体 系 理 論 へ と進 化 し て い っ た の で あ る.殻 模 型 の例 は 後 で 再 び 議 論 す る事 に し て,一
般 に,核
構 造 論 とは,核
力 と い う甚 だ 扱 い に くい 相 互 作 用 に よ っ て 束 縛 して い
る量 子 多 体 系 の 理 論 と い え よ う.理 論 そ の も の は 一 般 的 な の で,対 必 要 は な い が,原
子 核 の 特 性 を考 え て 発 展 させ ら れ て き た.こ
の 時 点 で核 構 造 論 を代 表 す る と広 く認 め られ て い る3つ
象 を原子核 に限 る
こ で は,21世
紀初 頭
の 主 な 理 論 を 取 り上 げ る .対
象 とす る 原 子 核 が 軽 い 方 か ら順 に そ れ ら を 紹 介 し,そ れ ぞ れ の21世
紀 へ の展望 へ と
進 め た い.
22.1 少 数 多 体 系 の 構 造 ま ず,最
も 軽 い 原 子 核 を 扱 う少 数 粒 子 系 の 理 論 で あ るが,V.
R. Pandharipandeら
の ア ル ゴ ン ヌ を 中心 に し た グ ル ー プ が 進 め て い る 量 子 モ ン テ カ ル ロ 法 に よ る計 算,具 体 的 に は,Variational
Monte
Carlo法
とGreen
わせ た研 究 が あ げ られ る1).こ の 方 法 で は,自
Function
Monte
Carlo法
を組 み 合
由 な 核 子 ど う しの 散 乱 の 約4,000個
の
デ ー タ を再 現 す る よ う に 決 め た 核 子-核 子 間 ポ テ ン シ ャ ル を そ の ま ま ハ ミル トニ ア ン の2体
ポ テ ン シ ャ ル 部 分 と し,そ の 固有 解 と して の 多体 状 態 が 求 め られ る.そ の 意 味
で,核
構 造 理 論 に 限 らず,あ
ち ゆ る分 野 を通 じて 最 も第 一 原 理 的 な 多体 計 算 で あ る と
言 っ て も過 言 で は な い.当 数10に
値 計 算 は 簡 単 で は な く,2001年
到 達 した と こ ろ で あ る.そ れ を,12ま
事 者 達 は 言 っ て い る.そ 多体 計 算 で あ り,21世 し れ な い.最 が,計
然,数
で 持 っ て い くだ け で 数 年 は か か る と 当
の よ う な 困 難 な計 算 で は あ るが,あ
た,ゆ
例 と し て,3体
で あ る が,中
力 を考 え た い.自
間 状 態 で,陽
子,中
の 自 由 度 だ け で 表 そ う とす れ ば3体
由 な 空 間 で の 核 子 間 衝 突 は2体
の プ ロセ ス
力 な どの 多体 力 を含 ん で し ま う.こ の 効 果 が 核 構 れ が 系 統 的 に 評 価 さ れ た.3体
ポ テ ン シ ャ ル ・エ ネ ル ギー の 期 待 値 に 対 し て2∼9%程
な る.こ
に波 動 関
味 深 い 成 果 が 多 く出 て い
の 計 算 で,藤
力 は,軽
度 で あ る が,運
ル ギー が ポ テ ン シ ャ ル ・エ ネ ル ギー とキ ャ ンセ ル し て い る の で,束
記 した い.4体
あ た り質 量 数 で1
性 子 以 外 の バ リオ ン が 形 成 され る とそ の 効 果 を核 子
造 に お い て 重 要 な 課 題 で あ っ た が,そ
較 す る と15∼50%に
い う点 に あ る
る く束 縛 さ れ た粒 子 が 含 ま れ る と,特
数 に お い て精 度 が 落 ち る よ う で あ り,今 後 の 課 題 で あ る.興 る が,一
の重 要 性 は は か り
の 原 子 核 ま で 扱 え る よ う に な る か,と
算 機 の 技 術 的 な 進 歩 に も よ っ て お り,近 未 来 に お い て は1年
程 度 進 め る よ う に 思 わ れ る.ま
で,全
る 意 味 で ほ と ん ど完 全 な
紀 に お い て も継 続 的 な発 展 が 期 待 され,そ
大 の 関 心 は い つ,ど
前 半 の 時 点 で質 量
い核
動エネ
縛 エ ネ ル ギ ー と比
田-宮 沢 模 型2)が 役 に 立 っ て い る こ と を付
力 は は る か に 寄 与 が 小 さ い.も
う一 つ の 重 要 な点 は,2体
力 に戻 っ て,
テ ン ソ ル 力 の 重 要 性 で あ る.そ れ が ポ テ ン シ ャ ル・ エ ネ ル ギ ー 期 待 値 の 大 き な 部 分 を 占 め て い る こ とが 示 さ れ て お り,一 方,テ な の で,や
ン ソ ル 力 の 主 要 な起 源 は π 中 間 子 交 換 力
は り核 力 に は その 性 質 が 強 く含 まれ て い る の で あ る.
22.2 核 力 と 殻 模 型 こ こ で 殻 模 型 に戻 ろ う.殻 模 型 が1粒
子 ポ テ ン シ ャ ル模 型 か ら 多体 理 論 へ 進 化 す る
過 程 に お い て決 定 的 に 重 要 な 役 割 を果 た し た の が,バ あ る.バ で,そ
レ ン ス粒 子 間 の 有 効 相 互 作 用 で
レ ン ス 粒 子 の 運 動 は よ り複 雑 な 状 態 との 結 合 を陰 に 含 ん だ 準 粒 子 的 な もの
の た め に バ レ ン ス 粒 子 間 の 相 互 作 用 は 自由 な 空 間 に お け る核 子 間相 互 作 用 とは
異 な り,有 効 相 互 作 用 と呼 ば れ る.有 効 相 互 作 用 の 導 出 に は,摂 動 論 的 な 意 味 に お け る 中 間 状 態 が 関 わ っ て お り,芯 の 存 在 に 起 因す るパ ウ リ原 理 の 効 果 や 芯 の 偏 極 効 果 が あ る.芯 偏 極 に 関 し て は,有
馬-堀 江 理 論3)が 先 駆 的 で あ っ た.さ
に 含 ま れ るハ ー ドコ ア の 扱 い も含 め て,原
ら に,元
々 の核 力
子 核 中 で の 有 効 相 互 作 用 の 計 算 は 大 き く進
歩 し て そ の 信 頼 性 は か な り高 くな っ て い る.有 効 相 互 作 用 が 与 え られ れ ば,ハ
ミル ト
ニ ア ン が 決 ま っ た の で あ る か ら,そ れ を 多体 問 題 へ の 入 力 とす れ ば 原 子 核 の 構 造 が 第 一 原 理 的 に解 け る こ とに な る.な
お,有
効 相 互 作 用 に は 上 述 の3体
の 効 果 も く りこ み に よ っ て 必 要 に 応 じて 入 っ て い るの で あ る が,く
力 や,テ
ン ソル 力
り こみ が 様 々 な 原
子 核 や 状 態 に 対 して どの よ う に 機 能 し て い る か は 現 在 で も 問 題 で あ り,興 味 深 い テー マ で あ る.実 際,有
効 相 互 作 用 の 導 出 に は100%の
信 頼 性 は ま だ な く,大
き くは な い
が 現 象 論 的 な補 正 を し て 計 算 し な い と実 験 に 合 わ な い.残 力 な ど に も 関 係 して い る よ う な の で,そ り,新
され た ず れ は 飽 和 性 や3体
れ を如 何 に 埋 め て い くか は 今 後 の 課 題 で あ
し い理 論 が い るの か も しれ な い.い
ず れ に せ よ,実 験 との 比 較 か ら判 断 す る 限
り,有 効 相 互 作 用 は全 般 的 に は う ま く行 っ て お り,む
し ろ,そ
うで な い と こ ろ に は 新
しい 物 理 の 種 が あ る と考 え ら れ る. さて,元
の 問 題 に戻 っ て,殻
模 型 で 多 体 系 を ど う解 くか,と
的 な 方 法 は 多 体 系 を表 す 適 当 な 基 底(通
い う事 に な るが,伝
常 は ス レ ー ター 行 列 式)に
よ り,そ の ハ ミル
トニ ア ン を行 列 で 表 し,対 角 化 す る こ とで あ る.計 算 機 の 進 歩 の お か げ で20世 に は1億
次 元 の 行 列 を対 角 化 す る こ とが で き る よ う に な っ た.1億 量 数50前
な 次 元 で しか な い.扱
え る行 列 の 次 元 は 年 々 大 き くな っ て き て い るが,長
し て 見 れ ば2年
界 か と1990年
で2倍 位 の進 歩 で あ る.1兆
い励 起状 態 の 記述 に必 要
代 初 め に は 思 わ れ て い た.そ
期 的 にな ら
次 元 とい う原 子 核 も沢 山 あ り,
算 機 の 進 歩 だ け で は 足 り な い の は 明 らか で あ る.実
ロ 法 の 応 用 で あ る.そ Caltechグ
次 元,1京
紀末
次元 の行 列 は決 し
て 小 さ くは な い が,質
計 算 技 術,計
後 の 原 子 核 の 基 底 状 態,低
際,殻 模 型 は も う限
う い う 中 で登 場 し た の が 量 子 モ ン テ カ ル
の 最 初 の も の は,Shell
Model
Monte
Carlo法
と い い,
ル ー プ を 中 心 に 提 唱 ・発 展 し て き た4).し か し,負 符 号 問 題 が あ る,基
状 態 の 情 報 しか 基 本 的 に 得 られ な い,と
統
底
い う通 常 の 量 子 モ ン テ カ ル ロ法 と同 じ問 題 や
限 界 が あ り,あ る程 度 の 成 功 を収 め た に 留 ま っ て い る.そ れ の数 年 後 に,わ が 国 の グ ル ー プ に よ り提 唱 さ れ 発 展 して い る の が,モ は 名 前 は 似 て い るが 内 容 は 全 く異 な る.モ 全 て の 原 子 核 に 等 し く適 用 可 能 で,基 数 が 求 ま る と い う利 点 を持 つ.何
兆,何
ン テ カ ル ロ殻 模 型 で あ る5).前 者 と後 者
ン テ カ ル ロ殻 模 型 は,負
底,及
符 号 問 題 が な く,
び励 起 状 態 の エ ネ ル ギ ー 固有 値,波
動関
京 と い う 巨大 な次 元 の ヒ ルベ ル ト空 間 か ら 重
要 な 基 底 ベ ク トル の み を選 ん で くる の でimportance
truncationと
特 徴 づ け る事 も で
き る.並 列 計 算 に 向 い て い る の で,不 安 定 核 を 中 心 に ます ます 盛 ん に な っ て き た.
22.3 不 安 定 核 の 構 造 と新 しい 魔 法 数 こ こ で,核
構 造 論 の 現 在 最 大 の 課 題 で あ る不 安 定 核 に つ い て 触 れ た い.核
始 ま っ た の が1950年 い(つ
頃 とす る と,そ の 後40年
ま り β 崩 壊 に 対 して 安 定 な)「 安 定 核 」 に 関 す る もの で あ っ た.安
上 の 物 質 の ほ とん ど を構 成 し て い る の で,実
の よ う な 原 子 核 で も,Bohr-Mottelsonの
ゾ ン模 型,ス
ピ ン や ア イ ソ ス ピ ン に 関 す る励 起,最 か し,20世
定核 は地球
験 対 象 に な っ た の も安 定 核 及 び そ の 近 傍
で あ っ た.そ
理 が 発 展 させ られ て き た.し
構造 論 が
間 の 研 究 の ほ と ん ど は,β 安 定 線 に 近
変 形 核 理 論,相
紀 最 後 の10年
谷 畑 勇 夫 ら に よ り,放 射 性 イ オ ン ビー ム 法(RIビ
互作 用 す るボ
も最 近 で は 超 変 形 な ど,多 様 な 物 位 に な っ て 事 情 が 一 変 し た.
ー ム)と
い う実 験 方 法 が 考 案 さ れ,
安 定 核 で な くて も ビー ム に す る事 が で き,実 験 に 使 え る よ う に な っ た.こ
れは原 子核
物 理 学 に と っ て 革 新 的 な 変 化 で あ っ た.そ
れ に よ り,β 安 定 線 か ら離 れ た,短 寿 命 で
β 崩 壊 を起 こす 「不 安 定 核 」 が ビー ム と な り研 究 さ れ 始 め た.不 安 定 核 は 別 名,「 エ キ ゾ チ ッ ク核 」 と も 言 わ れ る.何 故 な らば,不 中 性 子 数(N)と
陽 子 数(Z)が
安 定 核 は単 に寿 命 が 短 い だ け で な く,
互 い に 大 き く異 な っ て い て,そ
な い様 々 な エ キ ゾ チ ッ クな 性 質 ・構 造 を持 つ か ら で あ る.そ
の ため に安 定核 に は
の 一 例 が 中性 子 ハ ロー で
あ る.中 性 子 を大 量 に 含 ん で い る不 安 定 核 で は フ ェ ル ミ レベ ル が 上 が っ て し まい,基 底 状 態 で あ っ て も,束 縛 エ ネ ル ギ ー の 極 め て 小 さ い 軌 道 に ま で 中 性 子 が 詰 ま っ て い る.そ
の よ うな 中 性 子 は,ご
くか す か に 束 縛 さ れ て い る だ け な の で,そ
の波動 関数 は
トン ネ ル効 果 で 非 常 に 遠 方 ま で伸 び て し ま う.そ の 密 度 分 布 は 広 が り,平 均 自乗 半 径 は 極 め て 大 き くな る.中 性 子 ハ ロー に 付 随 して 面 白 い 現 象 が 励 起 モ ー ドな ど に 起 こ り,21世
紀 の 課 題 の 一 つ で あ る.
中性 子 ハ ロ ー は ゆ る い 束 縛 を 条 件 と して 起 こ る 量 子 力 学 的 な 効 果 で あ り,特 に 中性 子1個
の 場 合 に は,核
力 は 直 接 に は 関 係 な い.エ
め る も う一 つ の 重 要 な メ カ ニ ズ ム で,核 の 変 化,即
ち,殻
キ ゾ チ ッ ク核 を エ キ ゾ チ ッ クた ら し
力 に も密 接 に 関 係 して い る もの と し て 魔 法 数
構 造 の 変 化 を あ げ た い.不 安 定 核 で は魔 法 数 が 消 え た りす る事 が あ
るの は 部 分 的 に は20年
以 上 前 か ら知 られ て い た が,魔
ズ ム の 研 究 が 最 近 進 み,多
法 数 の 系 統 的 な変 化 の メ カニ
くの エ キ ゾ チ ッ ク な性 質 の 背 後 に 魔 法 数 の 変 化=殻
変 化 が あ る こ とが 示 さ れ た6).図1に,と
も にN=16で
あ る30Si及
粒 子 軌 道 の エ ネ ル ギー が 示 され て い る.前 者 は 安 定 核,後 で は,Mayer-Jensen以 るが,後
来 の 魔 法 数N=20が
者 で はN=16と
図1
成 り立 ち,シ
ェ ル ギ ャ ップ が 見 え て い の よ うに 不 安 定 核 で
(a) 30Si及 び(b) 24Oに お け る 中性 子 の 有 効 一 粒 道 を基 準 に し た もの.点
線 は0d3/2軌 道 の変 化 を示 す.(c)
子 核 の1
者 は 不 安 定 核 で あ る.前 者
い う全 く違 う魔 法 数 が 現 れ て い る.こ
子 エ ネ ル ギー で,1s1/2軌
び24O原
構 造の
(a)と(b)の
変 化 を 起 こす 主 要 な 相 互 作 用.(d) (c)の 相 互 作 用 に関 係 す るプ ロ セ ス.文 献6よ り引 用.
は 魔 法 数,或
い は,殻 構 造 と い う最 も 基 本 的 な 多体 構 造 が 変 わ っ て し ま うの で あ る.
そ れ を 引 き起 こ す メ カ ニ ズ ム が 図1の 下 半 分 に示 さ れ て い る.図1(c)に
は軌道 角運
動 量 と ス ピ ン の 結 合 の仕 方 が 逆 向 き に な っ て い る 陽 子 と 中 性 子 の 間 の 引 力 が 示 され て お り,図1(d)に
は そ の 引 力 の 重 要 な 起 源 と して π 中 間 子 交 換 力 か ら も出 て く る ス ピ
ン ・ア イ ソ ス ピ ン結 合(τ τ σσ)力 が 示 され て い る.こ
の 引 力 の 効 き方 が 安 定 核 と不 安
定 核 で 大 き く異 な り,魔 法 数 ま で 変 わ って し ま うの で あ る.同
様 な現象 は他 の原子核
で も起 き て い る.詳
の よ うな 原 子 核,或
し くは文 献6)を 見 て い た だ く事 に し て,こ
い
は ハ ドロ ン 多体 系 に 特 有 な 力 が 安 定 核 と不 安 定 核 の 違 い に 寄 与 し て い る事 を 強 調 した い.こ
の 基 本 性 質 に 基 づ き,原 子 核 中 の1粒
ン 構 造,変
形 の 様 相,な
子 軌 道 の構 造,ス
イ ソス ピ
どが 全 て安 定 核 か ら不 安 定 核 へ と変 化 し て い く と考 え ら れ,
そ れ らの 探 求・ 検 証 は既 に 一 部 行 わ れ て い るが,ま 殻 構 造 がNやZと
ピ ン構 造,ア
さ に21世
紀 の 課 題 で あ る.ま
た,
と も に 変 わ っ て い くと,殻 模 型 計 算 は 二 つ の 殻 を合 わ せ た 大 き な
配 位 空 間 で 行 わ な け れ ば な ら な い.モ も,計 算 は 問 題 な い.新
ン テ カ ル ロ殻 模 型 を用 い れ ば そ の よ う な 場 合 で
しい ア イ デ ア と新 し い計 算 方 法 が ほ ぼ 同 時期 に 出 て きた 事 は
21世 紀 に核 構 造 論 が 発 展 す る た め に も期 せ ず して 幸 運 で あ っ た と 言 え る.
22.4 平 均 場 計 算 現 在,質
量 数 が 十 分 に 大 き い 原 子 核 は,平
均 場 理 論 に よ っ て 扱 わ れ て い る.平 均 場
の 概 念 は核 構 造 論 で こ れ ま で 大 き な役 割 を 果 た して き た.そ
れ は色々 な意味 で物性分
野 で の 密 度 汎 関 数 法 に よ る研 究 に 対 応 す る.非 相 対 論 的 な 方 法 と,相 対 論 的 な 方 法 が あ り,原 子 核 中 の核 子 は 相 対 論 的 な 運 動 学 を必 要 と して い る 訳 で は な い の で,後 方 が 絶 対 的 に優 れ て い る とい う事 は な い.ど
力 を 入 れ て な か っ た り,改 善 の 余 地 は あ り,21世 さ れ た 平 均 場 は 必 要 な も の で あ る.特 に,上
者の
ち ら も,模 型 的 な 核 力 を 用 い た り,交 換 紀 の構 造 論 の展 開 に それ らの改 良
で述 べ て き た ス ピ ン ・ア イ ソ ス ピ ン の 効
果 や 連 続 状 態 ま で 含 ん だ ペ ア リ ン グ相 関 な ど を本 格 的 に 取 り入 れ た も の が 不 安 定 核 の 研 究 の た め に は 必 須 と考 え られ る. 22.5 以 上 が,3つ 理 論 が あ る.そ 核)か
ク ラス ター構 造 論
の 主 な 構 造 理 論 に つ い て で あ る が,原 れ は ク ラ ス ター 構 造 論 で あ る.安
子 核 に は も う一 つ 特 徴 的 な 多 体
定 核 で は 複 数 の α粒 子(4He原
ら 成 る ク ラ ス タ ー と し て の 原 子 核 の 研 究 が 進 ん で き た.特
子
に,α 崩 壊 の 閾 値 近
くで の α ク ラ ス タ ー 形 成 の 起 こ りや す さ を 指 摘 し た 池 田 ダ イ ア グ ラ ム は よ く知 られ て い る7).21世
紀 に 入 ろ う とす る 時 期 に,α
分 子 的 構 造 理 論 が 出 始 め た.そ
ク ラ ス タ ー 模 型 の 拡 張 と言 え る 原 子 核 の
こ で は,α 粒 子 の 他 に,中
性 子 を 配 し,そ れ ら が α粒
子 ど う し を繋 ぎ とめ る共 有 結 合 の 電 子 に似 た 役 目 を 果 た す.例
え ば,3個
の α粒 子 が
図2 14C原 子核 の密 度 分 布 左 に あ る の が 陽子 と中 性 子 の 密 度 の 総 和 で,中 央 は3個 の α粒 子 か ら の 寄 与(陽 の 和),右
は2個
子 と中性子 の密度
余 分 に つ い て い る 中性 子 の 分 布 であ る.α 粒 子 の三 角 形 と中性 子 の 三 角 形 は 入 れ 子 に
な っ て い る こ とに 注意8).
正 三 角 形 の 頂 点 に あ る よ う な,極 うな 状 態 は,池 れ な い が,さ
め て エ キ ゾ チ ッ ク な形 の 原 子 核 を考 え よ う.こ の よ
田 ダ イ ア グ ラム で 示 され る よ う に,安 定 核 で は 閾 値 近 傍 で しか 現 れ ら
ら に2個
の 中性 子 を加 え る事 に よ り,そ れ らが 糊 の 役 目 を果 た し,そ の
状 態 は 束 縛 状 態 と な る.そ の よ う に し て で き た14C原
子核 のあ る状 態 の密 度分 布 が 図
2に 示 さ れ て い る8). 最 後 に
以 上 の よ う に,20世
そ の 勢 い を加 速 し つ つ21世
紀 の 終 わ りに か け て 核 構 造 理 論 は 大 き く発 展 し,
紀 に 入 っ た.今
後 予 想 もつ か な い よ う な 多 体 構 造 や 励 起
様 式 を見 せ て くれ そ うで あ り,量 子 多 体 問 題 の 新 しい 章 が 幾 つ か 書 け そ う で あ る.両 世 紀 の 関 わ りに も 留 意 して 書 い て き た つ も りで あ るが,陽
子過剰 核 で の陽子 放 出や 中
性 子 ス キ ン な ど,紙 幅 の 関 係 上 多 くの 重 要 な興 味 深 い 事 柄 や 参 考 文 献 を 省 略 せ ざ る を 得 な か っ た 事 は 残 念 で あ り,お 詫 び し た い.(筆 授.1952年
生 まれ,1974年
者=お お つ か ・た か は る,東 京 大 学 教
東 京大 学 理 学 部卒 業)
参考 文献 1)
R.B.Wiringa,S.C.Pieper,J.Carlson (2000)014001に
and
2)
J.Fujita
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A.Arima
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S.E.Koonin,D.J.Dean
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K.Langanke:Phys.Rep.278(1997)1に
5) 最 初 の 論 文 はM.Honma,T.Mizusaki 1284;簡
V.R.Pandharipande:Phys.Rev.C
最 新 の レ ビ ュ ー が あ る.
単 な 解 説 は,大
and
レ ビ ュ ー が あ る.
T.Otsuka:Phys.Rev.Lett.75(1995)
塚 孝 治:「 量 子 多 体 系 を解 く画 期 的 方 法 」,科 学,69(岩
波 書 店,
1999)945. 6)
T.Otsuka,et
7)
K.Ikeda,N.Takigawa
al.:Phys.Rev.Lett.87(2001)082502. and
(1968)464. 8)
N.Itagaki,et al.:私
信
H.Horiuchi:Prog.Theor.Phys.Suppl.Extra
Number
23.
原 子核 多体 問題 の研 究 をふ りか え って ―集団運動 の微視 的理論 を中心 と して― 丸 森
23.1
は
じ
め
寿
夫
に
原 子 核 の ’ 集 団運 動'な る も の に魅 せ られ て そ の 微 視 的 理 論 の 研 究 を は じ め て か ら, あ っ と い う 間 に40年
が た っ た.や
っ と ’ 見 え て き た な'と 感 じ た時 は,も
え る 齢 に な っ て い た.” 少 年 老 い や す く学 な りが た し"と
う定 年 を迎
は ま さ に こ の こ と だ な,と
実 感 す る こ の 頃 で あ る.編 集 部 か らの 宿 題 は'核 構 造 の 研 究 を ふ りか え っ て'で あ る. 論 旨 を 明確 に す る た め,こ
こ で は さ らに 焦 点 を う ん と しぼ っ て,集
団運動 の微 視 的理
論 の研 究 を は じめ た 頃 か ら現 在 迄 の 各 時 期 で の,自 分 自 身 の こ の 問題 に つ い て の 課 題 意 識 が ど の よ う な も の で あ っ た か を想 起 し て み る こ と に し た.さ に,当
い わ い各 時期 ご と
時 抱 い て い た 問 題 意 識 を記 し た もの が い くつ か あ る1),2)ので,そ
れ らを土 台 に
し て再 現 す る こ とに つ とめ た.
23.2 核 構 造 模 型 原 子 核 構 造 論 の 歴 史 は き わ め て 浅 い.1932年 Heisenbergの
画 期 的 な 論 文"原
(1932)1)が
の 中 性 子 の 発 見 と,そ
子 核 の 構 造 に つ い て"(Zeitschrift
そ の 誕 生 で あ る.Heisenbergは
テ ィ ア に つ い て 二 つ の 方 向 を示 唆 した.そ
れ に 伴 うW. fur Physik
77
この論 文 で以 後 の物 質 構 造論 の フ ロ ン の 一 つ は,原
子 核 が こ の 中 性 子 と陽 子 とか
ら どの よ う に して 構 成 さ れ て い るか を追 究 す る課 題 で あ る.第 二 は,中 性 子,陽
子等
の 素 粒 子 そ の もの の 性 質 を追 究 す る課 題 で あ る.以 後 物 質 構 造 論 の フ ロ ン テ ィ ア は, こ の 線 に 沿 っ て 前 進 を 開 始 す る.一 つ は 原 子 核 論 で あ り,他 は 素 粒 子 論 で あ る. 私 が 学 生 の 頃 に 勉 強 し た古 い 原 子 核 論 の 教 科 書 を どれ で も よ いか ち一 つ 取 り上 げ て み よ う.そ
こ に は 次 の よ う な 内 容 の 言 葉 が 書 か れ て い る は ず で あ る."核
的 研 究 で の 特 別 な 困 難 は,原 い う問 題 の ほ か に,わ っ て い な い,と け で あ る.た
子 ・分 子 の 場 合 と同 様 に 複 雑 な 多体 系 を い か に解 くか と
れ わ れ が まだ 核 子 間 に働 く核 力 を 支 配 す る法 則 を 充 分 に よ く知
い う と こ ろ に あ る."核
構 造 の研 究 は この よ うな状況 下 で 出発 した わ
と え核 力 に つ い て の 正 確 な 知 識 を持 っ て い た と して も,核 子 多体 系 と し
て の核 の シ ュ レデ ィ ン ガ ー 方 程 式 を解 くこ とは 極 め て 困 難 で あ る.そ つ い て の知 識 は 当 時 に お い て は極 め て 貧 弱 な もの で あ っ た.こ つ の 手 段 は,原
構 造 の理 論
の う え,核
力に
の 場 合 残 され た た だ 一
子 核 に つ い て の い ろ い ろ な 実 験 事 実 の 規 則 性 や 特 徴 を調 べ,そ
の性 質
を端 的 な 形 で表 現 す る模 型 をつ く り,こ れ を テ ス トし改 良 して い く,と い っ た 方 法 で
あ ろ う.核 構 造 論 誕 生 以 後,こ
う し て'核 模 型 の 設 定'が 研 究 出 発 の 基 本 課 題 と して
登 場 す る. 核 力 と い う強 い 相 互 作 用 下 に あ る有 限個 の 核 子 が,自 子 核 の 場 合 に は,こ
の 基 本 課 題 は,そ
己 束 縛 状 態 をつ くっ て い る 原
の 出 発 点 か ら概 念 上 の 困 難 に悩 ま さ れ 続 け て き
た.複 合 核 模 型 や 液 滴 模 型 に 代 表 さ れ る'強 結 合 模 型'と,殻 立 粒 子 模 型'の 宿 命 的 な 対 立 で あ る.独 立 粒 子 模 型 は,量 原 子 模 型 と対 比 させ て 考 え られ た.原 子 模 型 で は,原 電 子 系 は,第0近
模 型 に 代 表 さ れ る'独
子 力学 へ の発端 をつ くった
子核 の まわ りをと りまいて いる
似 と して 電 子 間 相 互 作 用 を 平 均 場 と し て 取 り扱 え ば,各
子 運 動 を 他 の 電 子 と独 立 に 行 う.こ 核 の 場 合 に は,原
電 子 は1粒
う して 系 は い わ ゆ る可 積 分 系 に近 似 で き る.原 子
子 と違 っ て クー ロ ン力 の よ う な 中 心 が な い が,核
る平 均 化 さ れ た ポ テ ン シ ャ ル で 置 き か え る こ と に し よ う.そ
子 間相 互作用 をあ
して 第0近
の 平 均 ポ テ ン シ ャ ル の 中 を互 い に 独 立 に核 子 が 特 定 の 軌 道 を も って1粒
似 と し て,こ 子 運 動 を行 う
こ と を想 定 す る. 独 立 粒 子 模 型 の こ の 基 本 前 提 は,核 矛 盾 し な い で あ ろ う か.核
力 の 示 す 強 い 近 距 離 作 用 と飽 和 性 とい う特 性 と
力 の この 特 性 か ら み れ ば,核
た 核 子 に よ っ て 強 く影 響 され る は ず で,こ
核 の 特 徴 で あ る は ず で あ る.強 結 合 模 型 の 主 張 は,ま の 主 張 に従 え ば,核
内 の 各核 子 の 運 動 は 近 くに 来
の 強 い相 関 こ そ が 核 子 多体 系 と して の 原 子 さ に こ の 点 に あ っ た.こ
の模 型
内 で の 個 々 の 核 子 の 軌 道 運 動 を 想 定 す る こ とは お よ そ不 可 能 な こ
と で あ り,原 子 核 は 基 本 的 に は カ オ ス 力 学 系 と な る.当 験 で 鋭 い共 鳴 が 存 在 す る こ とが 知 ら れ て い た.入
時,熱
中 性 子 に よ る核 反 応 実
射 中 性 子 に 対 す る標 的 核 の影 響 を核
半 径 程 度 の ひ ろ が りを も っ た 平 均 ポ テ ン シ ャ ル で お きか え る独 立 粒 子 模 型 で は,こ よ うな 鋭 い 共 鳴 を 説 明 す る こ とが で き な い.N.
Bohrは
の
強 結合 模 型 の 立 場 か ら,こ の
共 鳴 を 次 の よ う に考 え た.入
射 中 性 子 が 標 的 核 の 表 面 近 くに 到 達 す る と,標 的 核 の 核
子 と強 く相 互 作 用 を し て,そ
の エ ネル ギー は核 内 の すべ ての 核 子 に分 配 され て しま
う.そ の 結 果,こ
の 励 起 さ れ た核 は 核 子 を放 出 す る に 充 分 な エ ネ ル ギー を持 って い る
に もか か わ ら ず,核
内 の 核 子1個
を と る と,そ の もっ て い る エ ネ ル ギー は 核 か ら飛 び
だ す の に 不 充 分 に な る.入 射 中性 子 は こ う して 標 的 核 に捕 獲 され,長 れ た'複 合 核'が つ くら れ る.N.
Bohrの
こ の 考 え に 基 づ け ば,鋭
い寿命 の励起 さ
い共 鳴 は複合 核 の
こ の 長 い 寿 命 に よ る も の と して 理 解 で き る.こ
う して 第2次
の 主 力 は,複
合 核 準 位 が 密 に 重 な り合 う場 合 の 統 計
合 核 模 型 の 量 子 力 学 的 定 式 化,複
大 戦 直後 まで原子 核研 究
理 論 な どの 核 反 応 論 が 中 心 と な っ た. 強 結 合 模 型 の 立 場 に 立 て ば,原
子 核 で の 唯 一 可 能 な 秩 序 運 動 は 核 内 の核 子 全 体 と し
て の 集 団 運 動 で あ る.実 験 事 実 の 示 す'密 度 の 飽 和 性'と'結 に 基 づ い て,原
子 核 を液 滴 に な ぞ ら え る 液 滴 模 型 が,こ
す 模 型 と し て 古 く か ら 存 在 して い た.液
合 エ ネ ル ギ ー の 飽 和 性'
の 集 団 運 動 の 可 能 な型 を 見 出
滴 は い ろ い ろ な運 動 を行 う こ とが で き るが,
最 も低 い エ ネ ル ギ ー で 生 じ う る運 動 は,密
度 の 変 化 を伴 わ な い 表 面 振 動 で あ ろ う.こ
の 表 面 振 動 の 中 で も4重 極 変 形 を行 う表 面 振 動 が 最 低 の 振 動 数 を もつ.こ 面 振 動 を 量 子 力 学 の 対 象 と し て 取 り扱 え ば,そ よ う な ボ ソ ン(フ
ォ ノ ン)が 得 られ る.し
陽 子 か ち な る)偶-偶
の ほ かN.
Bohr-J.
ある
た が っ て(偶 数 個 の 中性 子 お よ び偶 数 個 の
核 の 第1励 起 状 態 は,こ
液 滴 模 型 の 考 え は,こ
の ような表
の ス ピ ン とパ リテ ィ がIπ=2+で
の ボ ソ ン が1個
A. Wheelerに
生 じた 状 態 と み な せ る.
よ る 核 分 裂 の 定 性 的 説 明 や,
光 核 反 応 で み ら れ る 巨 大 共 鳴 の 解 釈 な ど に 重 要 な 役 割 を 演 じて き た. こ の よ う な 状 況 下 で,実 験 技 術 の 著 し い 進 展 に よ っ て 蓄 積 され た 事 実 に 基 づ い て, 1949年M. た.当
G. MayerとJ.
H. D. Jensenら
に よ っ て そ れ ぞれ 独 立 に 殻 模 型 が 提 出 さ れ
時 の 研 究 者 の 衝 撃 は 異 常 な も の で あ っ た.事
Jensenを れ た.こ
訪 ね た 時,こ
実,私
自身 後 年 ハ イ デ ルベ ル ク に
の 画 期 的 な論 文 が あ る 学 術 雑 誌 か ら掲 載 を 断 ら れ た と 聞 か さ
の 模 型 の 出 発 点 は,あ
る 特 定 の 中 性 子(あ
を もつ 原 子 核 が 特 に安 定 で あ る と い う事 実 で あ る.こ
る い は 陽 子)の
数('魔 法 の 数')
の こ とは,原
子 に お け る殻 構 造
と 同 様 な 性 質 が 原 子 核 の 場 合 に も 存 在 して い る こ と を 示 唆 す る.こ
の 魔 法 の 数(閉
殻)を
足 が か りに して 独 立 粒 子 模 型 の 考 え を 原 子 核 に 適 用 し た(j-j結
は,多
くの 核 の 基 底 状 態 の ス ピ ン,パ
に 成 功 し た.核
合)殻
模 型
リテ ィ,磁 気 能 率 な ど を み ご とに 説 明 す る こ と
内 で の 核 子 の 運 動 を あ る平 均 ポ テ ン シ ャ ル の 中 で の 軌 道 運 動 と して 記
述 し得 る こ とが 実 証 さ れ た の で あ る.原
子 核 の 殻 模 型 の 著 し い成 功 は,'核 分 光 学'と
い う新 研 究 分 野 開 拓 の 基 礎 を提 供 す る こ と に な る. そ の 後,ク
ー ロ ン励 起 反 応 な ど の 発 展 と共 に 低 い 励 起 状 態 につ い て の 多 くの 情 報 が
得 られ る よ う に な っ た.原 子 核 に お け る 集 団 運 動 に つ い て の デー タが 集 積 さ れ は じめ た の で あ る.1953年
以 降 の 核 分 光 学 は,原
よ っ て 特 徴 づ け ら れ る.集
子核 の示 す 豊 富 な集 団運 動効 果 の 発 見 に
団運 動 励 起 の スペ ク トル の 知 識 か ら,原 子 核 は 大 別 して 以
下 の 三 つ の ク ラ ス に 分 類 さ れ る こ とが わ か っ て き た.(ⅰ)集 面 振 動 を行 う球 形 核(球
形 領 域 核).こ
の タ イ プ に は,魔
離 れ て い な い よ うな 核 子 数 を もつ 原 子 核 が 属 す る.(ⅱ)回 極 変 形 を し た 原 子 核(変
形 領 域 核).閉
イ プ に属 し,そ の 形 状 が 大 きな4重 れ る.(ⅲ)核
子 数 が(ⅰ)と(ⅱ)の
団 運 動 と して4重
法 の 数(閉
殻)か
極 表
らあ ま り
転 ス ペ ク トル を 示 す4重
殻 か ら も っ と も離 れ た 領 域 の 原 子 核 が こ の タ
極 変 形 を持 つ こ とが,4重 中 間 に 位 す る 原 子 核(遷
極 能 率 の 測 定 か ら知 ら 移 領 域 核).振
動 とも
回 転 と も 明 確 に 区 別 さ れ な い 複 雑 な 励 起 スペ ク トル を示 す. 殻 模 型 に こ の よ う な 集 団 運 動 の 効 果 を 取 り入 れ よ う とい う努 力 は,1953年 ハ ー ゲ ン のA. 模 型 で は,球 る.そ
BohrとMottelsonの
一 模 型)に
コペ ン
よ っ て 実 現 さ れ た.殻
対 称 な 平 均 ポ テ ン シ ャ ル を剛 体 の よ うに 変 形 不 可 能 な もの とみ な し て い
こ で,こ
る と,こ
集 団 模 型(統
の 平 均 ポ テ ン シ ャ ル が 変 形 可 能 な 柔 らか い もの で あ る と考 え よ う.す
の 中 の 核 子 の 運 動 に よ っ て 平 均 ポ テ ン シ ャ ル の 壁 は 反 作 用 を受 け て 変 化 す る
こ とに な る.こ
の 運 動 こ そ が,従
来 の 液 滴 模 型 の 表 面 振 動 と して 考 え て き た 集 団運 動
に ほ か な ら な い.こ
れ がBohr-Mottelsonの
の 考 え に よれ ば,核
全 体 のハ ミル トニ ア ンH集 団模型 は H集 団模型=H殻
と拡 張 さ れ る.H殻
集 団 模 型 の 基 本 の ア イ デ ィ ア で あ る.こ
模型+H表
面振動+H相
互作用
模型 は 従 来 の 殻 模 型 の ハ ミル トニ ア ン で,粒
(1) 子 の 運 動 を 記 述 す る.
H表 面振動 は 液 滴 模 型 の 表 面 振 動 の ハ ミル トニ ア ン で,平 均 ポ テ ン シ ャ ル の 変 化 を記 述 す る.H相
互作用 は粒 子 の 運 動 と表 面 振 動 との 相 互 作 用 を 表 わ す.
H相 互作用 の 弱 い'弱 結 合'の 場 合 に は,第0近
似 と し て,殻 模 型 か ら 生 じ る粒 子 励
起 の エ ネ ル ギ ー ・ス ペ ク トル の ほ か に,核
の 集 団 運 動 と して の ボ ソ ン 励 起 の スペ ク ト
ル(フ
れ が 球 形 領 域 核 に 相 当 す る.つ
ォ ノ ン ・スペ ク トル)が
生 じ る.こ
ぎ に'強 結
合'の 場 合 を考 え よ う.こ の 場 合 は 強 いH相 互作用 の た め に,平 均 ポ テ ン シ ャ ル は 大 き く4重 極 変 形 を し た 平 衡 形 を もつ.こ
れ が 変 形 領 域 核 に 相 当 す る.こ
変 形 した 平 均 ポ テ ン シ ャ ル の 下 で の 粒 子 の 状 態 を 求 め,つ を 動 か して 集 団 運 動 の 状 態 を 求 め る,と
の と き は,ま
ず
ぎに 集 団 運 動 を 表 わ す 変 数
い っ た'断 熱 近 似'を 採 用 す る.こ
の 場 合,
集 団 運 動 は さ ら に 平 衡 変 形 を保 っ た ま ま で の 回 転 運 動 と平 衡 変 形 付 近 で の 振 動 に 分 離 さ れ うる こ とが 示 さ れ る.遷
移 領 域 核 はH相 互作用の'中 間 結 合'の 場 合 に 対 応 す る.
こ の と きは 摂 動 論 も 断 熱 近 似 も使 用 で き な くな り,ス ペ ク トル は 複 雑 な 性 質 を示 す . 23.3 1952年,名
殻 模 型 ・集 団 模 型 の 基 礎
大 理 学 部 物 理 を卒 業 して 素 粒 子 ・原 子 核 理 論(坂
学 院 に 入 っ た私 は,原 行 っ て い た.当
田)研
究 室 の 旧制 大
治 氏 の 協 力 者 と して 湯 川 秀 樹 先 生 の'非 局 所 場 理 論'の 研 究 を
時 は 素 粒 子 論 も原 子 核 論 も'物 質 構 造 論'の
フ ロ ン テ ィ ア に あ り,現
在 の よ う な 分 化 は な か っ た の で,核 模 型 を め ぐ る 当 時 の 核 構 造 論 の 花 々 し い 進 展 に も 強 い 関 心 を 持 っ て い た. 殻 模 型 や 集 団模 型 が 低 エ ネ ル ギ ー ・スペ ク トル に 関 す る数 多 くの 実 験 事 実 をみ ご と に 説 明 す る に つ れ て,こ
れ ま で の核 構 造 論 で は み る こ と の で き な か っ た'新
意 識'が 芽 ば え て き た.1955年
頃 か ら`殻 模 型 の 基 礎
とか'集 団 模 型 の 基 礎'と か い
う よ うな 言 葉 が 一 部 の 研 究 者 に よ っ て 語 ら れ る よ う に な っ た の は,こ て い る.こ
の 問 題 意 識 は,こ
しい 問 題
の 事 情 を物 語 っ
れ ま で の そ れ と明 確 に 区別 さ れ る もの で あ っ た.こ れ ま
で は'模 型 の 設 定 と そ の 実 証 性 の 追 求'が そ の 主 要 課 題 で あ っ た の に 対 し て,こ
の新
しい 問題 意 識 は'模 型 の 必 然 性 の 追 求'と い う 次 の 段 階 を指 向 し て い る か ら で あ る. 戦 後 の核 力 研 究 の 著 し い 発 展 に よ っ て,少
な くとも当時の核 構造論 に使用 す るのに 充
分 な だ け の 核 力 の知 識 が 得 ら れ る よ う に な っ た こ と も,こ の 問 題 意 識 を前 面 に 押 し出 した. 原 子 核 に お け る 殻 構 造 の 存 在 に 対 す る理 論 的 検 討 は,殻
模 型 を特 徴 づ け る核 内 核 子
の 独 立 粒 子 運 動 と,核
力 は'固 い 芯'を 含 む よ う な 特 異 性 を も っ た 強 い 相 互 作 用 で あ
る とい う事 実 との,一
見 し た と こ ろ の 矛 盾 の 解 明 と い う端 的 な 形 式 を と っ て は じめ ら
れ た.1955年 Betheら
以 降 精 力 的 に 展 開 さ れ たBrueckner一
派 の 研 究 で あ る.Weisskopfや
の 大 物 を動 員 し た こ の 理 論 の 基 本 の 考 え は,以 下 の よ う な もの で あ る.核 力
の よ う に 特 異 性 の 強 い 近 距 離 相 互 作 用 に対 し て は,通
常 のHartree-Fockの
よ っ て 平 均 ポ テ ン シ ャ ル を 導 く こ と は 不 可 能 で あ る.そ
方法に
こで この相 互作 用 に よって最
も強 く生 じ る と推 定 さ れ る2体 散 乱 相 関 と,核 内 核 子 間 の パ ウ リ原 理 を で き る だ け 正 し く採 りあ げ,こ 行 列)を
れ ら の 相 関 に よ っ て 遮 蔽 さ れ た,特
核 力 か らつ く りだ す.こ
のG行
異 性 の 少 な い'相 互 作 用'(G
列 か ら独 立 粒 子 運 動 を特 徴 づ け る 平 均 ポ テ
ン シ ャ ル を 導 く*1.こ の 考 え に 基 づ くBruecknerの
理 論 は,原
子 核 の 理 想 化 され た
模 型 で あ る 無 限 に 拡 が っ た'核 物 質'を 対 象 に して 展 開 さ れ た.し 当 時 の 研 究 者 の 間 に 定 着 す る ま で か な りの 年 月 を必 要 と した.課 ア カ デ ミ ッ ク で あ っ た 上,そ
題 が 実 験 とは な れ て
の 初 期 に こ の 理 論 の 解 釈 と し て,"殻
核 の描 像 で は な く,わ れ わ れ が 原 子 核 の あ る一 側 面(の う一 つ の 道 具 に す ぎ な い",と
か し,こ の 理 論 が
物 理 量)を
模 型 は現 実 の 原子 認 識す る ときに使
い う経 験 主 義 的 な考 え が 流 布 さ れ た の も,そ の 一 つ の
原 因 で あ っ た ろ う. 集 団 模 型 の 基 礎 に つ い て の 理 論 的 検 討 は,集 理 論 的 解 明 と い う形 で 展 開 さ れ た.そ
団 運 動 と独 立 粒 子 運 動 との 相 互 関 連 の
の た め に は,原
子 核 の 表 面 振 動 を液 滴 模 型 に 基
づ く も の で は な く,核 子 の 多体 問 題 と して 記 述 し な け れ ば な ら な い.Brueckner一 派 が'殻 模 型 の 基 礎'に つ い て そ の 精 力 的 な 研 究 を 開 始 し た 頃,日
本 で は世 界 に さ き
が け て'集 団 運 動 の 基 礎'に つ い て の 問 題 意 識 が 顕 在 化 して き て い た. 私 が 原 子 核 の 研 究 に の め り込 む こ とに な っ た の は,こ 始 当 時 の 次 の 動 機 は,40年 発 生 は,哲
学(弁
証 法)で
純 な具 体 例 に す ぎ な い.し
の 時 点 で あ っ た.こ
の研 究開
後 の い ま で も鮮 明 に 思 い 出 す こ と が で き る.'集 団 運 動 の 古 くか ら認 識 さ れ て い た"量 か ら質 へ の 転 化"の か し,原 子 核 研 究 の 現 発 展 段 階 は,新
しい"質"と
法則 の単 して の
集 団運 動 の ダ イ ナ ミ ッ ク ス を,核 子 の 多体 問 題 と い う微 視 的 な 立 場 か ら解 明 す る研 究 を可 能 にす る条 件 が と との っ た こ と を意 味 し て い る.集
団運 動 の 発 生 ・成 長 ・転 化 ・
消 滅 の 機 構 を論 理 的 に 理 論 体 系 と し て 展 開 す る こ とに よ っ て,"量 の 法 則 の 内 包 す る 本 質 に 迫 る こ と こ そ,原
か ら質 へ の 転 化"
子核 物理 学 の 本 来 の使 命 で あ るは ず で あ
る.'
A個
の 核 子 か ら な る 原 子 核 の シ ュ レ デ ィ ン ガ ー 方 程 式 か ら 出 発 し て,Bohr-
Mottelsonの
集 団 模 型 の ハ ミル トニ ア ン を 再 現 す る こ と を,こ
*1 Brueckner理
論 の この"基
本 前 提"を
,ハ
立場 か ら の核 内 核 力 の 研 究 を 通 じて,新 題 の一 つ で あ る.
の研 究 の 出 発 点 と し
ドロ ン 多体 系 と して の 近 距 離 相 関 の 研 究 やQCDの
しい 立 場 か ら検 討 す る こ と は,現 代 原 子 核 論 の 主 要 課
た.こ
れ が 可 能 に な る と,集 団模 型 で 導 入 さ れ た集 団 運 動 を特 徴 づ け る種 々 の パ ラ メ
ー ター の物理 的 意味 を ,粒 子 運 動 と の 関 連 に お い て 理 解 す る こ とが で き る.こ れ を実 行 す る に は,ま
ず 集 団 運 動 を記 述 す る集 団 座 標 を新 た に 独 立 変 数 と して 含 む よ うに 原
子 核 の 波 動 関 数 を拡 張 し,A-核 が,拡
子 系 の シ ュ レデ ィ ン ガ ー 方 程 式 か ら集 団 模 型 の そ れ
張 さ れ た状 態 空 間 で の ユ ニ タ リー 変 換 に よ っ て 導 か れ る よ うに す れ ば よ い.こ
の 場 合 集 団 座 標 と粒 子 座 標 と の 間 の 関 数 関 係 は,拡
張 され た 波 動 関 数 に 対 す る補 助 条
件 と な る('補 助 変 数 の 方 法')3). 1955年
に は 京 大 基 礎 物 理 学 研 究 所(基
中 心 と な っ て"多
体 問 題"の
研)で
朝 永 振 一 郎 先 生,久
研 究 会 が 開 か れ た.集
う と い う'朝 永 の 方 法'(Prog.
Theor.
団 運 動 を 多体 問 題 と し て 記 述 し よ
Phys. 13 (1955) 467, 482)が
も'補 助 変 数 の 方 法'3)を 議 論 して 頂 い た.こ
保 亮 五 先 生 らが
れ ら の 理 論 は,集
提 出 され,私
団 運 動 をA個
たち
の核 子
か ら な る原 子 核 の シ ュ レ デ ィ ン ガ ー 方 程 式 か ら導 き 出 す 一 つ の 有 力 な方 法 で あ る.し か し こ れ ら の 方 法 で は,集
団 運 動 を記 述 す る集 団 座 標 と粒 子 座 標 との 関数 関 係 が,あ
ら か じめ 設 定 さ れ て い る こ とが 前 提 と な っ て い る*2.当 時 の 実 験 事 実 は,集 粒 子 座 標 との 関 係 が そ の よ う な'勘'を と を,す
域 で)特
働 か して 求 ま る よ う な 単 純 な もの で は な い こ
で に 明 らか に しは じめ て い た*3.で
い の か.こ
団座 標 と
の 問 題 はせ ん じつ め れ ば,原
は 一 体 どの よ う な 集 団座 標 を選 ん だ ら よ
子 核 に ど の よ う に して(特
定 の 集 団 運 動 が 発 生 す るの か,と
定 の エ ネ ル ギー 領
い う ダ イ ナ ミ カ ル な 問題 を解 くこ と に還 元
さ れ て し ま うの で あ る. 1956年 基 研 の 助 手 と な り,翌 年 京 大 理 学 部 物 理 の 原 子 核 理 論(小 っ た.国
際 的 に は コ ペ ン ハ ー ゲ ン のN.
中 心 と して,活 あ っ た.日 て,そ
Bohr研
究 所(当
林)研
究室 に移
時 は理 論 物 理 学 研 究 所)を
発 な実 験 を 基 礎 に 集 団 模 型 の 精 密 化 が 精 力 的 に 展 開 さ れ て い た 時 期 で
本 で も新 設 さ れ た 東 大 原 子 核 研 究 所(核
研)が
最 新 鋭 の実 験 設備 を もっ
の 活 動 を 開 始 し た 頃 で あ る.一 方 京 大 の 核 実 験 の 設 備 の 貧 弱 さ は 目 に あ ま る も
の で あ っ た.京 都 を 中 心 とす る 原 子 核 多体 問 題 研 究 グ ル ー プ の 萌 芽 は,こ の よ うな 状 況 の 下 で 生 れ た.京 都 で は,豊
富 な新 実 験 事 実 に 基 づ い た'核 模 型 の 一 層 の 発 展 と精
密 化'と い う当 面 の 主 要 課 題 を ね ら う よ り は,基 研 が あ る と い う地 の 利 を い か して '模型 の 必 然 性 の 追 求'と い う新 し い 萌 芽 を 積 極 的 に 発 展 さ せ よ う .こ の 視 点 に 立 っ て,高
木 修 二,田
中 一,玉
垣 良 三,永
田 忍 氏 ら と 共 に 京 大 ・北 大 の 研 究 グ ル ー プ
('核力 と核 構 造 グ ル ー プ')で 次 の よ う な 研 究 方 針 を長 い 議 論 の う え 決 定 し た.'新
し
*2 Bohr -Mottelsonの
集 団模 型 で は,集 団 運 動 に 伴 う核 子 の 流 れ を'渦 な し'と 仮 定 して い る.こ の 場 合 に は集 団座 標 と粒 子座 標 との 関数 関係 は 容 易 に 求 ま る. *3 変 型 領 域 核 の 示 す 回 転 スペ ク トル か ら ,実 験 的 に 求 め る こ との で き る変 形 核 の 慣 性 能 率J実 験 か,J渦 なし<J実 験<J剛 体 とい う 中間 の 値 を 持 つ こ と が 明 らか に な っ た.J渦 なし,J剛 体 は そ れ ぞ れ 核 子 の 流 れ を'渦 な し'と 仮 定 し た場 合,変 す.
型核 を剛 体 と仮 定 し た場 合 の 慣 性 能 率 を表 わ
い萌 芽'は
まだ ア カ デ ミ ッ ク な も の で あ るが,こ
させ る た め に,当
面,意
れ を核 構 造 論 の 主 要 課 題 と して 登 場
識 的 に 以 下 の 三 点 を 積 極 的 に 解 明 す る.(ⅰ)低
ー ・スペ ク トル を特 徴 づ け る核 内 核 子 間 の 相 関 の 特 性 を し らべ ,そ い を開 発 す る.そ
し て,こ
エ ネルギ
の多体 問題 的取扱
れ に よって従 来 の核模 型の 背後 にか くされた基本 的 な物理
的 要 素 を 明 示 す る こ と.(ⅱ)こ
の 核 内 核 子 間 相 関 を 特 徴 づ け る'有 効 相 互 作 用'と
Brueckner理
論 に お け るG行
列 と の 相 互 関 連 を 検 討 す る こ と.(ⅲ)そ
Brueckner理
論 の 基 本 前 提(無
限核 物 質)の'有
の 際,
限 核'に 対 す る適 用 限 界 を 明 確 に す
る こ と.わ が 国 に お け る 多 体 問 題 と し て の 核 構 造 研 究 の 第 一 歩 で あ っ た とい え よ う. こ の 研 究 グ ル ー プ は,そ の 関 係","核
団 運 動 の 微 視 的 理 論","核
物 質 に お け る 対 相 関 の 理 論","有
関 係","Brueckner理 ど,実
の 後,"集
力 とス ピン軌道 結合 力
限 核 に お け る 対 相 関 力 とG行
列 との
論 の 適 用 限 界 と軽 い 核 に対 す る α-クラ ス タ ー 模 型 の 展 開"な
りあ る 多 くの 成 果 を あ げ た.
23.4 多 体 問 題 と して の 核 構 造 原 子 核 多 体 問 題 の 立 場 か らみ れ ば,核 模 型 の 発 展 は核 内核 子 間 の 相 互 作 用 に よ っ て 生 ず る核 子 間 の 特 徴 的 な 相 関 を一 つ 一 つ 考 慮 す る こ とに よ って,押 とい う こ とが で き よ う.殻 模 型 の 成 功 は,核
し進 め られ て き た
内 核 子 間相 互 作 用 の 主 要 な部 分 が,あ
球 対 称 な 自 己無 撞 着 平 均 ポ テ ン シ ャ ル と し て 取 り扱 わ れ う る こ と を 意 味 す る.ま 団模 型 の 成 功 は,核
子 間 相 互 作 用 の 残 りの 部 分 か ら,さ
ら に 付 加 的 な,4重
る た集
極変形の
集 団 運 動 を行 う 自 己 無 撞 着 平 均 ポ テ ン シ ャ ル が 取 りだ さ れ う る こ と を意 味 す る.こ よ う な 平 均 ポ テ ン シ ャ ル の4重 極 変 形 に 寄 与 す る 有 効 相 互 作 用 は,'4重 力'と 呼 ば れ て い る.勿
論,核
内核 子 の 相 互 作 用 の す べ て が,こ
均 ポ テ ン シ ャ ル に 置 き か え られ う る とは か ぎ ら な い.そ と して,一 在 が,殻
対 の 核 子 を角 運 動 量J=0の
極(相
の
関)
の よ う な タ イプ の 平
の よ うな 有 効 相 互 作 用 の 一 つ
状 態 に 結 び つ け よ う とす る'対 相 関 力'の 存
模 型 の 成 立 当 時 か ら知 られ て い た.
1950年 代 後 半 か ら60年
代 初 頭 に か け て は,物
性 物 理 学,核
物 理 学 で'量 子 力 学 的
多体 問 題'の 研 究 が 爆 発 的 に 進 展 し た 輝 か し い 時 期 で あ っ た.核 構 造 論 で は1959-60 の2年
間 に 二 つ の 飛 躍 的 な 発 展 が あ っ た.'対 相 関 理 論'と'集
で あ る.超
伝 導 のBCS理
団 運 動 の 微 視 的 理 論'
論 が 提 出 さ れ た 直 後,SolovievやBelyaevら
に よ って こ
の 方 法 が 対 相 関 力 を 取 り扱 う点 に お い て 有 用 で あ る こ とが 見 出 さ れ た.こ 関 理 論'で
あ る.こ
の 理 論 は 原 子 核 の 基 底 状 態 を,J=0対
相 関 力 に よ る'BCS状
と し て 記 述 す る認 識 に 導 き,粒 子 と空 孔 と を重 ね 合 わせ るBogoliubov変 生 ず る(1粒 は,殻
れ が'対 相
子 モー ドで あ る)'準 粒 子'の 概 念 が核 物 理 に 定 着 す る.こ
態'
換 に よって の準粒 子 概 念
模 型 で 古 くか ら使 用 さ れ て い る セ ニ ョ リテ ィ ー 結 合 ス キ ー ム を一 般 化 した もの
で あ る こ と も明 らか に な っ た.こ
う して 原 子 核 固 有 の 平 均 場 近 似 がBrueckner-Hartree-Fock-Bogoliubov
理 論 の 名 の も とに 定 式 化 さ れ た.こ 態 は,対
相 関 力 を 内 包 す るHartree-Fock-Bogoliubov基
こ で は,殻
模 型 の基底 状
底 状 態(BCS状
態)に
応 し,そ の 励 起 状 態 は 準 粒 子 に よ っ て 特 徴 づ け られ る こ とに な る. '4重 極 相 関 力'に よ る集 団 運 動 の 記 述 に と っ て 重 要 だ っ た こ と は,振 ドを,基 底 状 態 相 関 を伴 っ た2個
の 準 粒 子 励 起('着
て 見 る新 しい 解 釈 だ っ た4).こ う して,集 論 で用 い た 乱 雑 位 相 近 似(RPA)を 化 す る こ とが 可 能 と な っ た.こ
物 を着 た2準
対
動 の基 準 モー
粒 子 モ ー ド')と し
団 振 動 は 沢 田 克 郎 氏 らが プ ラ ズ マ 振 動 の 理
使 っ て,一
般 化 さ れ た2体
問 題 の解 と し て 定 式
の と き 求 め られ た 最 低 エ ネ ル ギ ー 解 は,基
底状 態相 関
に よ っ て 特 別 に低 い励 起 エ ネ ル ギ ー を持 ち,表 面 振 動 の フ ォ ノ ン を 記 述 す る こ と に な る.こ
れ が'集 団 運 動 の 微 視 的 理 論'で あ る.多 様 な 粒 子 励 起 か ら,相 互 作 用 に 基 づ
い て 振 動 運 動 を 導 く こ の 理 論 は,'核 構 造RPA'の 究 の 出 発 点 と して,様
名 の 下 に以 後 の核 構造 動 力学 の研
々 な タ イ プ の'素 励 起 モ ー ド'の 発 見 と研 究 に 決 定 的 な 役 割 を
演 ず る こ と に な る.振 動 運 動 の 古 典 的 描 像 を脱 却 して 量 子 多体 系 に 固 有 な 振 動 現 象 を 考 え う る よ うに な っ た か ら で あ る.
多体 問 題的 方法 の 開発 は,核 分 光 学 の分 野 に重要 な発 展 を もた ら した.対 相 関力 と 4重 極 力 を有効 相 互作用 とす る殻模 型の ハ ミル トニ ア ン H=H殻
模型+H対
相関力+H4重
(2)
極力
か ら出 発 し て,多 体 問 題 の 立 場 か ら 集 団 模 型 の ハ ミル トニ ア ン(1)を
そ っ く り再 現
す る こ と が 可 能 に な っ た の で あ る.こ
集 団運 動 を特
の 場 合,ハ
ミル トニ ア ン(1)で
徴 づ け る た め に パ ラ メ ー タ ー と して 導 入 さ れ た様 々 な 物 理 量 が,す べ て 二 つ の パ ラ メ ー ター(対 相 関 力 の 強 さG 0と4重 極 力 の 強 さx)と 関 与 す る核 子 数Nの 関 数 と して 求 ま る,と
い う こ と が 重 要 で あ る.ハ
ミル トニ ア ン(2)は'対
相 関 力+4重
極 力模
型'の 名 の 下 に'核 構 造 の 微 視 的 理 論'の 出 発 点 と し て 用 い られ る こ と に な っ た.こ の 模 型 で は 短 距 離 相 互 作 用 で あ る対 相 関 力 はNに 例 す る.し
た が っ て,安
Bogoliubov基
定 な 球 対 称 な 形 状 を もつ(対
底 状 態 は,閉
強 くな り,安 定 な4重
比 例 し,一 方4重
極 力 はN2に
相 関 を含 む)Hartree-Fock-
殻 か らは な れ た あ る核 子 数 を 超 え る と,4重
極 力の 方 が
極 変 形 を した 基 底 状 態 を持 つ で あ ろ う.こ の 場 合 に は こ の 変 形
に よ っ て'破 ら れ た 回 転 対 称 性'を 回 復 させ る新 しい 集 団 運 動 と し て,回 生 す る こ とに な る.変 程 式 で は,こ
形 し たHartree-Fock-Bogoliubov基
の 回 転 運 動 は,ゼ
ン ・モ ー ド)と
して 現 わ れ る.こ
転 ス ペ ク トル か ら 求 ま る もの(脚 1950年 代 後 半 か ら60年 物 理"と
転 運動 が発
底 状 態 に 基 づ くRPA方
ロ ・エ ネ ル ギ ー を持 つ 特 別 な 解(南
部-ゴ ー ル ドス ト
の解 か ち求 ま る 回転 運 動 の 慣 性 能 率 は,実 注3参 照)を
験 的に 回
正 し く再 現 す る.
代 初 頭 に か け て の こ の 時 期 は,核
物 理 学 が"量
して 物 性 物 理 学 との 同 質 性 を大 い に 享 受 した 時 期 で あ っ た.こ
い て,B.R.Mottelsonは
比
ノー ベ ル 賞 受 賞 講 演(1975)で
子 多体 系 の の発 展期 につ
次 の よ うに 述 べ て い る.'こ
図1
"物 質"の
構 造(存
在様 式)
(田 中一 「未 来 へ の 仮 説 」(1985,培 に基 づ く)
の 発 展 期 の 原 子 核 物 理 の 全 体 的 描 像 は,1960年 kopfの
風 館)
の キ ン グ ス トン 国 際 会 議 で のWeiss
総 括 報 告 に み ご と に 表 現 さ れ て い る.会 議 で 何 度 も何 度 も繰 り返 しい わ れ た
の は,"そ
れ は 驚 くほ ど よ く成 り立 つ"と
この 時 期 は ま た,素
し,"物 質 の 存 在 様 式(構 な 時期 で あ っ た.こ
い う彼 の 言 葉 だ っ た .'
粒 子 物 理 学 が'素 粒 子 の 構 造'を 中 心 課 題 と し て 飛 躍 的 に 発 展 造)"に
つ い て の 認 識 に 大 き な転 換 が な され た 科 学 史 上 重 要
う して 坂 田 昌 一 先 生 に よ っ て 提 唱 さ れ た"自
1)が,自
然 科 学 者 の 間 に 次 第 に 認 識 さ れ て ゆ くこ と に な る.概
う に,"物
質"の
階 層 構 造 は 下 部 の"物
っ て は じめ て 形 成 され る."原
子 核"と
体 で は な く,こ の 階 層 に 特 有 な"質"が の 誕 生 当 時 素 粒 子 物 理 学 と共 に"物 学 は,素 粒 子 物 理 か ら分 化 し て,新 る.核
子(ハ
ド ロ ン)の
固 有 な"自
質"の
然 の 階 層 構 造"(図 念 図1に
集 合 体 が 新 し い"質"を
い う階 層 は"核
子(ハ
持 つ こ とに よ
ドロ ン)"の
生 ず る こ と に よ っ て 存 在 す る.こ
質 の 構 造"の
示 され るよ
単 な る集 合 う して,そ
物 理 の フ ロ ン テ ィ ア で あ っ た核 物 理
た に 独 自 の"存
在 理 由"を
己 束 縛 有 限 量 子 多体 系"と
存 在 形 態 と運 動 様 式'の 研 究 を 通 じて 新 し い"質"の
明 確 化 す る こ とに な して の"原
子 核"の'
発 生 機 構 を解 明 す る とい う独 自
の 基 本 課 題 を 設 定 す る こ とに な る.
23.5 自己束 縛 有 限 量 子 多 体 系 と しての 原子 核 1963年 森 永(晴 彦)-Gugelotに
よ っ て 提 唱 さ れ た イ ン ビー ム 核 分 光 学 は,こ
れ まで
球 形 領 域 核 と考 え ら れ て きた 原 子 核 の ほ とん どが 遷 移 領 域 核 と見 做 さ れ る こ と を 明 ら か に し た.こ
れ はRPAに
よ っ て 記 述 さ れ る 集 団 運 動 の'素 励 起 モ ー ド'間 の 非 調 和
効 果 が 非 常 に 大 き い こ と を 意 味 す る.RPAに
よ っ て 近 似 的 に ボ ソ ン と し て 取 り扱 わ
れ る素 励 起 モ ー ド間 の パ ウ リ原 理 に よ る補 正*4と,RPAに っ た核 子 間 相 互 作 用 の 部 分 に よ る補 正 が,こ 果 を詳 細 に 分 析 す る 方 法 と し て,(偶 転 写 す る'ボ ソ ン展 開 法'が,二 sky転
写 法'(Nucl.
数 個 の)フ
ェ ル ミオ ン 多体 系 を ボ ソ ン 多体 系 に
つ の 異 な っ た 形 式 で 展 開 され た.'Belyaev-Zelevin
Phys. 39 (1962)
582)と'丸
者 は 等 価 で あ る こ とが 明 らか に さ れ た.*5こ ボ ソ ン の 内 部 構 造 がRPAに
取 り込 む こ と が で き な か
の 非 調 和 効 果 の 原 因 で あ る.こ れ ら の 効
森 ・山 村 ・徳 永 転 写 法'5)で あ り,両
の 方 法 に よ っ て,微
よ っ て規 定 され さ え す れ ば,フ
視 的理 論 の立 場 か ら
ェ ル ミオ ン 系 を こ の よ う
な ボ ソ ン 空 間 へ 転 写 し て,非 調 和 効 果 を明 示 し た 上 で正 し く評 価 す る こ とが 可 能 に な っ た. 1964年
私 は コペ ンハ ー ゲ ン のN.
開 を め ぐ って 討 論 会 が 開 か れ,や た.そ
の 結 果,'有
Bohr研
究 所 に 招 か れ た.非 調 和 効 果 と ボ ソ ン展
が て 世 界 の 各 地 で こ の 方 法 で の 数 値 計 算 が 実 行 され
限'量 子 多体 系 と し て の 原 子 核 の 特 性 が 明 ら か に な っ た.素 励 起 モ
ー ド間 の 非 調 和 効 果 は 重 大 で
,集 団 運 動 の 振 幅 が 大 き くな る に つ れ て 素 励 起 モー ドの
内 部 構 造 それ 自 身 に も 大 き な 変 更 を受 け る の で あ る.こ れ は 特 定 の 内 部 構 造 を もつ 素 励 起 モ ー ドを ビ ル デ ィ ン グ ・ブ ロ ッ ク と して ボ ソ ン展 開 を行 っ て も,得
られ た ボ ソ
ン ・ハ ミル トニ ア ン の 展 開 形 の 収 斂 が 保 証 さ れ て い な い こ と を 意 味 す る.1966年, コペ ンハ ー ゲ ンか ら帰 国 し,当 時 の 理 工 系 ブ ー ム で新 設 され た 九 大 理 学 部 の 原 子 核 理 論 研 究 室 に 着 任 し た.新 幹 線 は ま だ な く,東 京 ・京 都 か ら 遠 く は な れ た 地 で あ っ た *4 集 団 振 動 の 素 励 起 モー ドは ボ ソ ン(フ
ォ ノン)と
起 モー ドの 微 視 的 構 造 は'着 物 を着 た2準
し て取 り扱 わ れ るが ,RPAに
よれ ば こ の 素 励
粒 子 励 起 モー ド'で 記述 され る.強
い基底状態相 関に
よ って この モ ー ドは,沢 山 の2準 粒 子 の生 成 演 算 子 対 と消 滅 演 算 子 対 の線 形 結 合 か らな る.こ の 相 関 の ため,個 々 の準 粒 子 対(フ ェ ル ミオ ン対)間 のパ ウ リ原 理 の効 果 が 弱 め られ,'ボ ソ ン 近 似'が 成 立 す る と仮 定 さ れ て い る. *5 Belyaev-Zelevinskyの 方 法 は ,フ ェ ル ミオ ン対 演 算 子 の 満 た す 代 数 関 係 を再 現 す る よ うに ボ ソ ン空 間 へ 転 写 を定 め る方 法 で あ る.丸 森 ・山村 ・徳 永 の 方 法 は,フ ェ ル ミオ ン 空 間 の状 態 ベ ク トル とボ ソ ン 空 間 の 状 態 ベ ク トル と を1対1に 対 応 さ せ('物 理 的 ボ ソ ン部 分 空 間'),そ れ ぞれ の 空 間 の 中 での 物 理 量 の行 列 要 素 が 等 し くな る よ う に転 写 を決 め る方 法 で あ る.後 に,Belyaev -Zelevinskyの 転 写 演 算 子 に,左 右 か ら,物 理 的 部 分 空 間 へ の射 影 演 算 子 を掛 け た もの が,丸 森 ・山村 ・徳 永 の転 写 演 算 子 に等 しい こ とがMarshalekに け る ボ ソ ン写 像 法 に つ い て は,総 合 報 告,A. (1991) 375に 詳 しい.
よ っ て証 明 さ れ た.原
Klein and E. R. Marshalek:
子核研 究にお
Rev. Mod.
Phys. 63
が,新
任 の 物 理 教 室 の ス タ ッ フ は 皆 若 く,研 究 の 情 熱 で 熱 気 に〓 れ て い た.非
果 が 素 励 起 モ ー ドの 内部 構 造 に ま で 変 更 を与 え る と い う事 実 は,こ
調 和効
の 効 果 を は じめ か
ら有 効 に 取 り込 ん だ'集 団 運 動 部 分 空 間'の 設 定 とい う考 え に 導 い た. この 立 場 に 立 って 京 大 の 山 村 正 俊 氏,宮
西 敬 直 氏,西
山 精 哉 氏 ら と,主 要 な 素 励 起
モ ー ドを構 成 す る核 子 対 の 演 算 子 間 の 交 換 関 係 が 近 似 的 に 閉 じて 一 つ の群 を つ くる 性 質 を利 用 す る'対 演 算 子 の 代 数 的 方 法'6)を考 え た り,高 田 健 次 郎 氏,栗 研 一 氏,坂
田 文 彦 氏 ら九 大 グ ル ー プ で'着 物 を着 たn準
結 合 の 方 法'7)等,微
山 惇 氏,松
粒 子 モー ドとモ ー ド ・モ ー ド
視 的 理 論 の 立 場 か ら の 非 調 和 効 果 の 構 造 の 分 析 を行 っ た.こ
効 果 を う ま く取 り込 む と,奇 質 量 数 核 に 存 在 す る 独 特 の'異 常 結 合 状 態'を'着 着 た3準 粒 子'か ど,実
柳
の
物 を
ら な る フ ェ ル ミ オ ン 型 の 素 励 起 モ ー ド と し て 理 解 し う る8)こ と な
りあ る結 果 が 種 々 得 られ た.
遷 移 領 域 核 の複 雑 な励 起 準 位 群 を特 徴 づ け る パ タ ー ン の 実 験 的 解 明 は核 分 光 学 の 中 心 課 題 と な り,坂 井 光 夫 氏 を 中 心 と す る核 研 の グ ル ー プ が 活 躍 し た.1967年 IUPAP主
催 の 大 規 模 な'核 構 造 国 際 会 議'が 東 京 で 開 か れ,日
際 的 に 指 導 的 な役 割 を演 じた.低
に は
本 の核構 造 研 究 は国
励 起 スペ ク トル を特 徴 づ け るパ タ ー ン の 分 類 に つ い
て は,1975年
有 馬-Iachelloに
提 出 さ れ,集
団 運 動 と系 の'動 力 学 的 対 称 性'と の 関 連 の 解 明 に 大 き な進 展 を も た ら
し た.こ
よ る 代 数 的 ボ ソ ン模 型(相
互 作 用 す る ボ ソ ン模 型)が
の 仕 事 の 意 義 と問 題 意 識 につ い て は,是 非 と も有 馬朗 人 氏 か ら 直 接 に 詳 し く
伺 い た い も の で あ る.
23.6 大 振 幅 集 団運 動 と非 線 形動 力学 1970年
代 か ら80年
代 に か け て の 特 徴 は,世
界 各 地 に 重 イ オ ン加 速 器 が 建 設 さ れ,
イ ン ビー ム 分 光 学 や 重 イ オ ン物 理 が 飛 躍 的 に進 展 した こ と で あ る.こ 回 転 状 態 ス ペ ク トル の 生 成 や 消 滅,大 積 さ れ た.こ
れ ら の 情 報 か ら,原
ク ロ 的 性 格"と"ミ らか に な っ た.核
た.こ
驚 くべ き共 存 系 で あ る,と い う新 事 実 が 次 々 と明
構 造 研 究 の 分 野 で は,(重
の よ う な核 で は,そ
た め,回
振幅 集 団運動 の減衰 や散 逸 につ いての情 報が 蓄
子 核 は様 々 な タ イ プ の'相 転 移'と 結 びつ い た"マ
クロ 的 性 格"の
を もつ 超 低 温 の 原 子 核 の 研 究(高
う して 高 ス ピ ン
イ オ ン 反 応 で 得 ら れ た)大
ス ピ ン ・イ ラ ス ト分 光 学)が,新
き な角 運 動 量
た な展 望 を開 い
の 高 い励 起 エ ネ ル ギ ー の殆 ど を高 速 回転 運 動 が 荷 っ て い る
転 運 動 の 変 化 に 伴 う個 々 の 独 立 粒 子 運 動 の振 舞 い の 特 異 な変 化 を,実
に 基 づ い て 詳 し く調 べ る こ とが で き る.こ Mottelsonの
次 の 言 葉(Physics
Today,
の 研 究 開始 に 当 っ て 強 調 され たA. June
(1979))は,当
に,有
限 系 で あ る 原 子 核 は,個
Bohr-
時 の核 構 造 研 究 の 新 し
い 課 題 意 識 を み ご とに 表 現 して い る.'有 限 量 子 多体 系 で あ る 原 子 核 で は,勿 ク ロ 系 の よ う な 鋭 い特 異 性 を も っ た 相 転 移 は 期 待 で き な い.し
験事 実
論,マ
か し,こ の こ と は 逆
々 の 量 子 状 態 の 言 葉 で こ の よ うな 相 転 移 を研 究 す る こ
と を 可 能 に す る.'
1972年,私
は 核 研 理 論 部 へ 転 任 し た.そ
し て こ の 新 し い 課 題 意 識 の 下 で,集
団運
動 部 分 空 間 を微 視 的 な 立 場 か ら ど の よ うに'最 適 に'規 定 す る か と い う 問 題 か ら取 り 組 ん だ.RPAに
よ っ て 様 々 な2準
励 起 モ ー ドの 内部 構 造 が,非 とい う事 実 は,独 る.集
粒 子 対 の 線 形 結 合 と して 構 成 され る 集 団運 動 の 素
調 和 効 果 の た め 集 団 運 動 の 振 幅 に 依 存 して 変 更 を受 け る
立 粒 子 運 動 と集 団 運 動 と の 間 の 強 い 相 互 循 環 関 係 の 存 在 を 意 味 す
団 運 動 は,Hartree-Fock-Bogoliubov基
底 状 態 に よ っ て 指 定 さ れ る'静 的'
平 均 ポ テ ン シ ャ ル の 量 子 論 的 ゆ ら ぎ を 記 述 す るが,原 は,こ
れ が'大 振 幅'の
子核 の よ うな有限量 子 多体系 で
も の とな り,平 均 ポ テ ン シ ャ ル 中 の 独 立 粒 子 運 動 自 身 が 大 き
な 変 更 を受 け る.こ の こ とは,'部 分 と全 体'の 相 互 循 環 関 係 を 自 己 無 撞 着 に 正 し く取 り扱 わ ね ば な ら な い こ と を要 求 す る.独 団 運 動('全
体')が
こ う し て,有
立 粒 子 運 動('部
ら成 り立 つ は ず の 集
決 ま ら な い と,独 立 粒 子 運 動 自 身 の 性 質 が 決 ま ら な い か らで あ る.
限 多体 系 と して の 原 子 核 の 理 論 的 研 究 で は,独
の 間 の'自 己 無 撞 着 性'が 最 優 先 さ れ ね ば な ら な い.す Hartree-Fock-Bogoliubov基 (Bogoluibov)状
分')か
立 粒 子 運 動 と集 団 運 動 と
で に 実 験 事 実 は,原
子 核 には
底 状 態 以 外 に 様 々 な'安 定 な'Hartree-Fock-
態 が 存 在 す る こ と を 明 らか に し て い た.集
い ろ い ろ な 形 で 相 互 に 結 び つ け る役 割 を演 ず る が,独
団 運 動 は これ ら の 状 態 を
立 粒子 運動 は これ と自己無撞着
に 次 々 と準 位 交 差 を行 い な が ら,系 の 新 し い'内 部 構 造'を 準 備 す る.こ
う し て,集
団 運 動 の 発 生 ・成 長 ・転 化 ・消 滅 の 動 力 学 と,こ の よ うな'内 部 構 造'の 変 化 との 自 己 無 撞 着 な相 互 循 環 関 係 の 記 述 を 可 能 に す る 理 論 的 枠 組 を整 備 す る こ とが,'原
子核
多体 問 題'の 当面 の 主 要 課 題 と し て 登 場 す る(大 振 幅 集 団 運 動 論). '動的'な 平 均 ポ テ ン シ ャ ル と ,そ れ に 自 己 無 撞 着 な 独 立 粒 子 運 動 は,原 理 的 に は '時間 依 存Hartree -Fock-Bogoliubov (TDHFB)理 論'を 使 っ て 定 義 す る こ とが で き る は ず で あ る.実 TDHF
(B)理
際 に,変
形 核 に お け る'回 転 座 標 系 で の 独 立 粒 子 運 動'は,
論 の 単 純 な利 用 と して'ク ラ ン キ ン グ(殻)模
の 解 明 に 重 要 な 役 割 を 演 じて い た.遷 (B)理
論 を基 礎 に し て,集
型'の 名 の下 で 慣 性 能 率
移 領 域 核 で の 集 団 運 動 に つ い て も,TDHF
団 運 動 と独 立 粒 子 運 動 との 関 係 を'断 熱 近 似'を 大 前 提 と
して 求 め よ う と い う試 み も行 わ れ て い た.し
か し,こ
の 大 前 提 で あ る'断 熱 近 似'は
実 験 的 に保 証 さ れ た もの で は な く,本 来 は理 論 自身 の 中 か ら,そ の 近 似 の 成 立 条 件 が 導 き 出 さ れ な け れ ば な らな い も の で あ る.RPAで
記 述 され る 集 団 振 動 の 素 励 起 モ ー
ドは'断 熱 近 似'に 依 存 し な い 点 に そ の 重 要 な利 点 が あ っ た.TDHFB理 振 動 子 近 似'を 行 う と,集 団 運 動 変 数{〓*RPA(t),〓RPA(t)}に ら れ るが,そ
れ が 丁 度RPAで
論 に'調 和
つ い て の運動 方程 式 が得
の 素 励 起 モ ー ドの 生 成 ・消 滅 演 算 子{X†,X}にc-
数 近 似('古 典 近 似')を 行 っ た もの に な る こ と も知 ら れ て い た. そ こ で,集
団 振 動 のRPAモ
ー ドを大 振 幅 集 団 運 動 に 自 動 的 に 拡 張 し,同 時 に 断 熱
近 似 に よ ら な い'集 団 運 動 座 標 系 で の 独 立 粒 子 運 動'を と して,'時
自 己 無 撞 着 に 与 え る変 分 原 理
間 依 存 シ ュ レデ ィ ン ガ ー 方 程 式 の 不 変 性'を 仮 定 し た.*6こ
の よ う に 表 わ さ れ る9). '集団 運 動 変 数{〓(t)
,〓*(t)}の
時 間 発 展 は,つ
の 原理 は以 下
ぎ の 形 式 を も っ たTDHF
(B)方
程式
(3) を 満 足 す る よ う に 決 定 さ れ る.'(〓=1の │φ(〓,〓*)>の{〓,〓*}に
単 位 を 使 用.)こ
こ で,TDHF
(B)状
態
つ い て の 無 限 小 生 成 演 算 子{O+(〓,〓*),O(〓,〓*)}を
(4)
で 与 え,{〓,〓*}が
正 準 変 数 で あ る と い う条 件 式*7
(5) をつ け る と,(3)式
は大振 幅集 団運動 の正 準運 動 方程 式 (6)
と,断 熱近 似 に よ らな い'集 団運 動座 標 系で の独 立 粒子 運動'を 記述 す る変分 方程 式
(7) に 分 解 さ れ る こ と が 示 さ れ る9)*8.
*6 こ の 原 理 は ,RPAの 提 出 者 で あ る沢 田 克 郎 氏 が そ の 解 説 を物 理 学 会 誌(16 (1961) 446)に 書 か れ た時 の,以 下 の 示 唆 を そ の ヒ ン トに し た."RPAの 方 法 は他 の 運 動 と結 合 しな い 集 団 運 動 モ ー ドを と り 出す こ と を 目的 と し て い るが,そ
の よ う な運 動 モ ー ドの 存 在 自 身,本
来は考察下
の 系 の あ る種 の 変 換 に 対 す る不 変性 に 対 応 して い るは ず で あ る."(動 *7 一 般 に は
力学 的 対 称 性) と表 わ され る .S(〓, 〓*)はS=S*を 満 たす 任 意 の 関 数 で,{〓,〓*}の 間 の 任 意 の 正 準 変 換 を許 す.(5)式 と これ に エ ル ミ ッ ト共 役 の 関 係 式 を そ れ ぞれ 〓*お よ び 〓で 微 分 し,そ の 結 果 か ら,'弱 い'正 準 変 換 関
係
(8) が得 られ る. *8 (4)式 の生 成 演 算 子 を用 い れ ば ,(3)式 と 書 け る.こ
の 式 の 変 分 を{〓,〓*}の
は 方 向,す
に とれ ば,交 る.(6)式
を使 っ て,上
な わ ち,
換 関 係(8)を
式 のi〓 とi〓*を 置 きか え る と(7)式
使 っ て,運 に な る.
動 方 程 式(6)が
得 られ
本 来 のTDHF
(B)波
動 関 数 は,個
々 の 粒 子-空 孔(2準
粒 子)励
起に対応する巨
大 な数 の パ ラ メ ー タ ー に よ っ て 規 定 さ れ る.こ
の 巨大 次 元 の パ ラ メ ー タ ー 空 間(シ
プ レ クテ ィ ッ ク 多 様 体;以
相 空 間'と 呼 ぶ)で
れ ば,TDHF
(B)理
後'TDHF
(B)位
論 の 変 分 原 理 の 基 礎 方 程 式 を,こ
ン
正 準 変 数 を採 用 す
の 空 間 の 中 で の 古 典 ハ ミル ト
ン 力 学 系 の 正 準 運 動 方 程 式 の 形 に 書 き か え る こ と が で き る.2),10)この 立 場 か ら み る と,上 記 の'時 間 依 存 シ ュ レ デ ィ ン ガ ー 方 程 式 の 不 変 性'の 仮 定 は,こ TDHF
(B)位
対 応 す る こ と が 示 さ れ る.*9こ TDHF
(B)位
う し て,'最
(7)は,SCC法
己無 撞
核 研 理 論 部 を 中 心 と し て 開 発 さ れ た.
こ の 方 法 を提 出 し て 後1980年,筑 (6),
適 な'集 団 運 動 部 分 空 間 を 巨 大 次 元
相 空 間 の 中 の 停 留 部 分 空 間 と し て 自 己 無 撞 着 に 構 築 す る,'自
着 集 団 座 標(SCC)法'9)が
(5),
の 巨大 次 元の
相 空 間 の 中 か ら,'停 留 な'大 振 幅 集 団 運 動 部 分 空 間 を抜 き と る こ とに
波 大 学 物 理 学 系 に 転 任 し た.1セ
ッ トの 方 程 式
の 基 礎 方 程 式 を構 成 し,問 題 に し て い る 集 団 運 動 を 指 定
す る適 当 な'境 界 条 件'を 与 え れ ば,集
団 運 動 の ハ ミル トニ ア ンH(〓,〓*)と'集
運 動 座 標 系 で の 独 立 粒 子 運 動'を 決 め る必 要 十 分 な 条 件 を 与 え る9).た と え ば,遷 領 域 核 の 集 団 運 動 に つ い て は,こ 〓*)-展 開 法'),そ
の最 低 次 がRPAで
の1セ
ッ トの 方 程 式 を{〓,〓*}で
移
展 開 し('(〓,
求 め た 集 団 変 数{〓RPA,〓*RPA}の もの と一 致 す る
と い う'境 界 条 件'を 与 え る こ と に よ っ て,必 が で き る.こ
団
要 な 次 数 ま でH(〓,〓*)を
決 め るこ と
の 方 法 の モ デ ル 計 算 で の テ ス トは極 め て よ く,ま た 実 験 事 実 との 比 較 も
こ れ ま で 数 値 計 算 が 実 行 さ れ た もの は す べ て 満 足 す べ き結 果 を 与 え て い る.
TDHF
(B)位
多 体 系 は,§5で
相 空 間 で の 古 典 ハ ミル トン力 学 系 を正 準 量 子 化 して 得 ら れ た ボ ソ ン 述 べ た'ボ
2)2),10).この 関 係 を使 え ば,量 そ し て,'(〓,〓*)-展
ソ ン 展 開 法'で 得 ら れ た そ れ と 明 確 な 対 応 を もつ(図 子 化 さ れ た 形 式 で のSCC理
開 法'で の{〓,〓*}を
論 の 構 築 が 可 能 と な る2).
正 準 量 子 化 して 得 ら れ た ボ ソ ンが,'内
部
構 造 が 自 己無 撞 着 に 変 化 す る素 励 起 モ ー ド'を 与 え る こ とが わ か る.
TDHF
(B)の 理 論 がTDHF
(B)位 相 空 間 での古典正 準運 動 方程 式 と して表 現 で
図2 *9 (7)式 で
,{〓,〓*}方 向 の 変 分 と 直 交 す る 変 分 δ⊥│φ(〓,〓*)>を 採 用 す る と, とな り,集 団 運 動 部 分 空 間 は,{〓,〓*}以
Hの
停 留 部 分 空 間 に な る.
外 の 方 向 に つ い て は,ハ
ミル トニ ア ン
き る こ とに 着 目す れ ば,SCC法
で 抜 き 出 さ れ た 集 団 運 動 の 減 衰 や 散 逸 の 動 力 学 を非
線 形 ハ ミル トン力 学 系 で の カ オ ス 発 生 機 構 と結 び つ け て解 明 す る こ と の 可 能 性 が で て く る.核 構 造 と非 線 形 動 力 学 の 間 に はN. が あ る が,坂
田 文 彦,橋
Bohrの
複 合 核 模 型 に さ か の ぼ る長 い 歴 史
本 幸 男 氏 ら と共 に こ の観 点 か ら,原
子核 の規則 的 な運動 様 式
と カ オ ス 的 な 運 動 を 統 一 的 に 理 解 す る 糸 口 を 得 よ う と試 み て い る.こ TDHF
(B)位
相 空 間 で の 正 準 座 標 が,こ
の ボ ソ ン と明 確 な対 応 関 係 を 持 つ こ とは,そ 提 供 して い る(図2)2).私 る.そ
の 際,独
自身,こ
の 場 合,
の フ ェ ル ミオ ン系 に 対 す る ボ ソ ン展 開 法 で の 結 果 を'量 子 論 的'に 理 解 す る 土 台 を
の 課 題 は 実 りあ る成 果 を得 る もの と期 待 し て い
立 粒 子 運 動 の 準 位 交 差 や 配 位 変 化 と集 団 運 動 の 構 造 変 化 との'自 己 無
撞 着 な 微 視 的 構 造'の 解 明 が,こ
の 課 題 の 遂 行 に とっ て 決 定 的 と な る で あ ろ う.'準 位
交 差 と集 団 運 動 部 分 空 間 の トポ ロ ジ カ ル な 構 造'等,こ
の ため に整理 して おか なけれ
ば な ら な い 問 題 が 山 積 して い る.*10 23.7
展
望
1970年 代 後 半 か ら80年 代 に か け て の 物 理 学 の 進 歩 は 急 激 で あ り,そ の 課 題 意 識 が '秩序 -カ オ ス転 移 の 非 線 形 動 力 学'を 足 が か り と し て ,"物 質 の 存 在 様 式(構 造)の 物 理"か
ら"物 質 の 発 展(進
化)の
物 理"へ
と大 き く転 換 しつ つ あ る こ とが,そ
と い え よ う.こ
う し て,取
己 秩 序 形 成(散
逸 構 造)」,「 マ ク ロ 系 と ミ ク ロ系 の 量 子 力 学,"複
視 的 量 子 効 果,観
り扱 う対 象 や 現 象 は様 々 で あ る が,「 非 平 衡 の 揺 ら ぎ の 自 層 系"の
動 力 学(巨
測 問 題)」,「 マ ク ロ 階 層 の 形 成 に お け る 集 団 変 数 と"環 境 変 数"へ
の 分 離 の 構 造 」,「量 子 論 的 秩 序-カ オ ス 転 移 の 動 力 学(可 カ オ ス)」,「 量 子 力 学 系 に お け る"摩 擦"(散 展 の 物 理"へ
の特 徴
積 分 系-エ ル ゴー ド系,量
子
逸 と不 可 逆 性 の 起 源)」 等 の解 明 が,"発
の橋 渡 しへ の 物 理 学 の 共 通 な具 体 的 課 題 と して 登 場 す る.
こ れ ら の 諸 問 題 は,波
動 関 数 の 境 界 条 件 が 重 要 な 役 割 を 演 ず る有 限 量 子 多体 系 に お
い て は じめ て 顕 在 化 し,実 験 的 に 解 明 可 能 に な るで あ ろ う.準 マ ク ロ 系 と ミ ク ロ系 の 複 合 系 と して の 特 性 が 顕 在 化 す る メ ソ ス コ ピ ッ ク系 や マ イ ク ロ ク ラ ス ター や 低 次 元 系 を 人 工 的 に 造 り,そ れ を使 っ て 精 密 実 験 を行 う こ と に 比 べ れ ば,原 ら存 在 す る 有 限 量 子 多体 系 で あ る.こ 研 究 す る た め の"最 化)の
物 理"の
の 側 鎖"を 3).事
適 な 対 象"で
実,原
*10 (後 記)こ
化)の
子 核"は"原
子 ・分 子"と
子 核 は 自然 界 に 自
物 理"へ
あ る と い う こ と が で き よ う.こ
立 場 か ら み れ ば,"原
生 み だ す,き
の 意 味 で"発 展(進
の橋 渡 しを
う し た"発
共 に"新
展(進
しい生体 系
わ め て 重 要 な 階 層 に 位 置 す る こ とが 直 ち に 理 解 で き る(図
子 核 構 造 論 は,そ
の 誕 生 直 後 か ら"発 展 の 物 理"へ
の 論 文 の 執 筆(1994年)以
あ っ た が,紙 数 の都 合 上 省 略 す る.
後
,こ
れ らの 問 題 に つ い て,い
の上 記諸 問題 に常 に
くつ か の 実 りあ る 発 展 が
図3
"物 質"の
発 展(進
化)
(田 中一 「未 来 へ の 仮 説」(1985,培
風館)
に基 づ く)
遭 遇 し困 難 を 味 わ っ て きた.こ
れ らの 古 くか らペ ン デ ィ ン グ で あ っ た諸 問 題 が,最
近
に な っ て や っ と物 理 学 の 共 通 の 具 体 的 課 題 と し て 登 場 した とい え よ う.こ れ は,来
た
るべ き核 物 理 学 の 輝 や か しい"存 在 理 由"の
顕 在 化 に 他 な らな い.
物 質 の 極 微 の 構 造 に 迫 る素 粒 子 物 理 学 は,"存 今 後 と も そ の"存
在 理 由"を
科 学 の ほ とん ど の 分 野 で,こ 存 在 の 必 然 性"は 在(構
造)の
造)の
物 理"の
最 前 線 と して
明 確 に し て 行 くこ とに 間 違 い は な い.し か し現 在 で は, の よ う な解 析 的(還
元 主 義 的)な
方 法 だ け で は"物 質 の
理 解 し得 な い とい う こ とが 常 識 と な っ て い る.従
物 理"と
現 在 急 速 に 成 長 しつ つ あ る"発
長 線 の 交 点 に お い て,は で あ る.(筆
在(構
じめ て"物
展(進
質 存 在 の 必 然 性"の
化)の
来 の解 析 的 な"存 物 理"の
進 展 の延
シナ リオが見 いだ され るはず
者=ま る も り ・としお,筑 波大 学名 誉教 授.1929年
生 まれ,1952年
名 古屋 大 学
理 学 部 卒 業)
参 考 文献 1) 丸 森 寿 夫:科 丸 森 寿 夫:科
学28(1958)No.8∼29(1959)No.3. 学38(1968)No.6,No.7.
高 木 ・丸 森 ・河 合:原
T.Marumori,K.Takada
子 核 論(岩 and
波 講 座,現
代 物 理 学 の 基 礎9,岩
波 書 店,1978)
F.Sakata:Prog.Theor.Phys.Suppl.71(1981)p.1
∼47
.
T.Marumori:Proc.T.Taro
Memorial
RIKEN
Symp.(World
Scientific,1990)p.
23∼34. 2)
F.Sakata
and
T.Marumori:Nuclear
Chaos,Vol.4(World 3)
Collective
Dynamics
and
Chaos,
Directions
Scientific,1992)p.459∼550.
T.Marumori,J.Yukawa T.Marumori
and and
R.Tanaka:Prog.Theor.Phys.13(1955)442.
E.Yamada:Prog.Theor.Phys.13(1955)557.
T.Marumori;Prog.Theor.Phys.14(1955)608. 4)
T.Marumori:Prog.Theor.Phys.24(1960)331. M.Kobayashi
and
T.Marumori:Prog.Theor.Phys.23(1960)387(L).
M.Baranger:Phys.Rev.120(1960)957. R.Arvieu
and
M.Veneroni:Compt.Rend.250(1960)992,2155.
5)
T.Marumori,M.Yamamura
6)
T.Marumori,M.Yamamura,Y.Miyanishi Phys.Extra
7)
and
Number(1968)179;Soviet
A.Tokunaga:Prog.Theor.Phys.31(1964)1009. and
S.Nishiyama:Suppl.Prog.Theor.
J.Nucl.Phys.9(1969)287.
K.Kaneko,T.Marumori,F.Sakata,K.Takada
and
T.Tazaki:Suppl.Prog.
Theor.Phys.71(1975). 8)
A.Kuriyama,T.Marumori,K.Matsuyanagi,R.Okamoto
and
T.Suzuki:Suppl.
Prog.Theor.Phys.58(1975). 9)
T.Marumori,T.Maskawa,F.Sakata
and
A.Kuriyama:Prog.Theor.Phys.64
(1980)1294. 10)
A.Kuriyama
and
M.Yamamura:Prog.Theor.Phys.66(1981)2130.
F.Sakata,T.Marumori,Y.Hashimoto 424.
初 出:日
本 物 理 学 会 誌47(1994)531-536.
and
T.Une:Prog.Theor.Phys.70(1983)
in
24.
核 構 造 に お け る クォー クの役 割 土
1978年 CERNの
岐
博
頃 に レ ー ゲ ン ス ブ ル グ で パ イ オ ン 凝 縮 の 研 究 に 没 頭 し て い た と き に, 夏 の 学 校 の 講 義 録 に 出 会 っ た.そ
ゲ ー ジ理 論 の 講 義 が 書 か れ て い た.そ
の 一 つ に イ リオ ピ ュ ル ス(Iliopoulos)の
の 美 し さ に 触 れ て,強
い 相 互 作 用 の ゲー ジ理 論
の 主 役 で あ る ク ォー ク か ら原 子 核 を 記 述 した い と考 え た.思
え ば そ の と きか ら,表 題
の 「 核 構 造 に お け る ク ォー クの 役 割 」 を導 き出 そ う と し て い た.今 た だ い た 機 会 に,そ
回 上 記 の表 題 をい
の 頃 か ら今 日 ま で の 発 展 と展 望 に つ い て 書 き た い と思 う. 24.1
ク ォー ク は シ ャイ
ク ォ ー クは 核 子 に 閉 じ込 め ら れ て い る.そ の た め に核 物 理 で は 直 接 に は 姿 を見 せ な い.そ
れ で も核 子 は 電 子 散 乱 か ら察 す る に あ る程 度 の大 き さ を も っ て お り,そ の 電 磁
半 径 は0.86fm(フ
ェ ム トメ ー タ(fm)は
お け る核 子 間 の 平 均 距 離 は2fm位
長 さの 単 位 で10-15m)で
あ る.原
な の で これ は か な り の 大 き さ で あ る.ク
効 果 が 核 物 理 で 見 え て も不 思 議 で は な い.と と強 い斥 力 が 短 距 離 で 働 い て い て,核
こ ろ が,核
子核 に
ォー クの
子間 の相 互作 用 を眺め てみ る
子 は 他 の 核 子 を近 づ け な い 性 質 を持 って い る.
強 い 核 子 間 の 斥 力 で ク ォ ー クは 自 ら を 隠 して い る よ う に 見 え る.そ の 意 味 で クォ ー ク
図1
階 層 の違 う3つ の 系 の 相 互 作 用 を短 距 離 で の斥 力 の 距離 の 単 位 で 示 し た も の.
(a) 原 子 間相 互 作 用,(b)
ア ル フ ァ粒 子 間相 互 作 用,(c)
核子間相互作用
は 非 常 に シ ャ イ で あ る. そ れ で は何 が そ の 斥 力 を作 り出 し て い る の か.短 が り を も っ て い る 限 りは,ク 思 え る.実
距離 の性 質 なの で核 子が適 当 な広
ォー クが そ の 性 質 を決 め て い る と考 え る の は よ さ そ う に
際 複 合 粒 子 間 の 相 互 作 用 は 短 距 離 で は 斥 力,長
距離 で は引 力に なって い る
の が 普 通 の よ うで あ る.原 子 間 の相 互 作 用 や ア ル フ ァ粒 子 間 の 相 互 作 用 も良 く似 て い る.参 考 の た め に そ れ ら の 比 較 を図1に
示 す.図1に
示 され てい る水素 原子 間の 斥力
は 陽 子 を取 り巻 く電 子 の 雲 の パ ウ リ効 果 に よ る.ア
ル フ ァ 粒 子 間 もそ の構 成 子 で あ る
核 子 の パ ウ リ効 果 に よ る1).そ れ で は 核 子 間 の 斥 力 も核 子 を構 成 す る クォ ー ク間 の パ ウ リ効 果 に よ る と考 え る の は 非 常 に 自然 で あ る.
24.2 ク ォ ー ク の 作 る強 い 斥 力 核 子 は3つ
の ク ォ ー クか ら で きて い る.そ の 核 子 同 士 が 近 づ く と明 らか に パ ウ リ原
理 が 働 く.と こ ろ が 短 距 離 で 核 子 が 重 な り合 っ て,空 態 に 入 っ た と して も,ス 存 在 す る.そ
こ に6個
間 的 に 全 て の ク ォ ー クが 同 じ状
ピ ン ・ア イ ソ ス ピ ン ・カ ラ ー の 空 間 と して12の
の クォ ー ク を 入 れ る の に何 の 困 難 もな い.多
在 す る ため パ ウ リ効 果 か ら だ け で は 斥 力 は 生 ま れ な い.ア 考 察 をす る と,ス
量子 状 態が
くの 量 子 状 態 が 存
ル フ ァ粒 子 の と きに は 同 じ
ピ ン ・ア イ ソ ス ピ ンに よ る4つ の 量 子 状 態 に8個
の核 子 を入れ よう
とす るの に 困難 が あ り,そ の こ とに よ りパ ウ リの 斥 力 が 生 じ た の とは 大 き く異 な っ て い る.パ
ウ リ原 理 だ け で は核 子 間 の 斥 力 は 出 な い.
そ こ で ク ォ ー ク間 の 相 互 作 用 を考 慮 し,簡 単 の た め に グル オ ン 交 換 力 を採 用 す る. さ ら に,核
子 内 の ク ォ ー クの 波 動 関 数 を 調 和 振 動 子 型 に仮 定 す る.ま
ず は グル オ ン 交
換 力 の 相 互 作 用 の 大 き さ を デ ル タ粒 子 と核 子 の 質 量 差 を 与 え る よ うに 決 め る.核 子 間 の 距 離 を 固 定 し て,そ ラー は3つ
の ま ま で 直 接 グ ル オ ン 交 換 の 行 列 要 素 を計 算 して も,核 子 の カ
の ク ォ ー クの 色 の 和 と して 白 な の で,カ
ラー の 行 列 要 素 が ゼ ロ と な り相 互
作 用 は ゼ ロ とな る.核
子 が お 互 い に 短 距 離 に 来 た と き に,異
重 な りが 実 現 し,2つ
の 核 子 間 で ク ォー クの 交 換 が 可 能 に な る.そ
な る核 子 間 の ク ォー ク の の上 で グル オン交
換 す れ ば 有 限 の 値 を持 つ こ と が で き る よ う に な る.実 際 に そ の 大 き さ を計 算 す る と 必 要 な 強 い 斥 力 が 生 じ る こ と を示 す こ とが で き る2,3).つ ま り は ク ォ ー ク は 自 ら で 強 い 斥 力 を作 り出 して 自分 を 隠 し て しま う の で あ る.ク の 意 味 で は,核
ォー ク は 本 当 に シ ャ イ で あ る.そ
物 理 で の ク ォ ー ク の 直 接 の 役 割 は短 距 離 で の 斥 力 を与 え る こ と とい え
る.
24.3 ク ォ ー ク が パ イ オ ン を作 る ク ォー ク は シ ャ イ で た だ 隠 れ て い る だ け な の か.核 は そ の 証 拠 を必 ず 見 せ て くれ て い る は ず で あ る.ク
子 が ク ォー ク で で きて い る限 り ォー ク は 非 ア ー ベ ル 理 論 で あ る 量
子 色 力 学(QCD)に
従 う.QCDで
比 較 す る意 味 に お い て)で
は ク ォ ー ク は ほ とん ど質 量 が ゼ ロ(核 子 の 質 量 と
あ り,カ
イ ラ ル対 称 性 が 良 い近 似 で成 り立 っ て い る.し
ら くは ク ォ ー ク質 量 が ゼ ロ と して 話 をす る.そ
ば
れ で も真 空 の 複 雑 さ の た め に ク ォ ー ク
は 完 全 に ハ ドロ ン 内 に 閉 じ込 め られ て い る こ と に よ り,お 互 い に 離 れ よ う とす る と引 き戻 さ れ,質
量 ゼ ロ の 自 由 粒 子 の よ う に は 振 舞 え な い.す
イ ラ ル対 称 性 を破 っ て し ま う.す の パ イ オ ン が 生 じ る.ク を獲 得 し,さ
な わ ち 閉 じ込 め の 効 果 が カ
る と南 部-ゴ ー ル ドス トン の 定 理 に よ り質 量 が ゼ ロ
ォー ク は 自 らが 閉 じ込 め られ て い る こ とに よ り,自
らの質量
ら に 自 由 空 間 を 運 動 で き る カ ラー が ゼ ロ で 質 量 が ゼ ロ の パ イ オ ン を作 り
出 す4).こ の パ イ オ ン が 湯 川 粒 子 と呼 ば れ る核 子 間 の 相 互 作 用 を 与 え る 基 本 的 な 粒 子 で あ る.ク
ォ ー ク は 黒 衣(く
ろ ご)と
し て 自 らの 演 技 者 で あ るパ イ オ ン を 働 か せ る こ
と に な る. 話 を定 量 的 に しよ う.ク
ォー ク はQCDの
レベ ル で は 約10MeVの
の ク ォ ー クが 閉 じ込 め ら れ て い て,QCDの 量 を得 る.こ
の 質 量 を得 た ク ォ ー ク(構 成 子 ク ォ ー ク)が3つ
約940MeV)を
作 り上 げ る.さ
の 質 量 の た め に,パ
ら に,カ
イ オ ン は140MeVの
質 量 を もつ 粒 子 と して 振 舞 う.そ
集 ま っ て 核 子 を構 成 し,さ
離 で の 相 互 作 用 を 与 え,核
集 ま っ て 核 子(質
質 量は
イ ラル対称 性 の破 れ とこの小 さ な クォ ー ク
ン は 湯 川 粒 子 と して 核 子 間 の 強 い 相 互 作 用 を 与 え る.ク 場 し な い が,3つ
質 量 を もつ .こ
ダ イナ ミッ ク ス の ため に 約300MeVの
のパ イオ
ォー ク は 自 ら は 表 舞 台 に は 登
らに パ イ オ ン を生 み 出 し て 核 子 間 の 長 距
子 の 多 体 系 で あ る 原 子 核 の 構 造 や 振 舞 い を決 定 して い るの
で あ る.相 互 作 用 と い う意 味 で は ク ォ ー クは 短 距 離 で の 強 力 な 斥 力 と長 距 離 で の 引 力 を与 え る.そ る.も
の意 味 では クォー クは核 物理 の基 本的 な要素 の全 て を与 えて いる とい え
ち ろ ん,1MeVの
精 度 で 構 造 が 変 化 す る核 物 理 で は,パ
イ オ ン よ り重 い メ ソ
ンや 核 子 の 多体 効 果 が 重 要 に な っ て く る.有 限 多体 系 と して の 現 象 の 面 白 さ は 文 献5) に 詳 し く述 べ られ て い る.
24.4 構 造 を持 た な い 核 子 か ら な る原 子 核 原 子 核 は有 限 の 広 が りを もつ 多 体 系 で あ り,集 団 振 動 と して の 巨 大 共 鳴 や,超 性 を も持 っ て い る有 限 系 で あ る.多 は,そ
流動
くの 興 味 深 い 現 象 を 引 き起 こ す こ の 有 限 多 体 系
れ ら の 現 象 の 豊 富 さ で 我 々 を魅 了 す る題 目に 事 欠 か な い .そ の 面 白 さ や 発 展 の
様 子 は文 献5)に 要 領 よ く述 べ られ て い る.こ
こ で は む し ろ,核
子 は 構 造 を も た ず,原
子 核 を上 記 の核 子 の ク ォ ー ク構 造 か ら生 じ る 二 体 の相 互 作 用 を して い る核 子 の 多体 系 だ と捉 え て,原
子 核 を記 述 す る 多体 系 の 取 り扱 い を議 論 す る.
二 体 の 相 互 作 用 は ク ォ ー ク 物 理 が 与 え る が,そ
の正 確 な 値 を理 論 的 に導 出 す る の は
難 し く,核 子 の 散 乱 の デ ー タ か ら導 出 す る こ とに す る.最 ン の よ う な ボ ソ ン を 交 換 す る相 互 作 用 で,ほ
ぼ10個
も よ く使 わ れ る の は パ イ オ
く らい の パ ラ メ ー タ を使 っ て相
互 作 用 は 表 現 さ れ る1).そ の 上 で 原 子 核 内 で は ま わ りに 核 子 が 存 在 す る こ とに よ る パ ウ リ効 果 を 取 り込 ん だ 理 論(ブ
ル ッ クナ ー 理 論)を
離 で の 斥 力 の効 果 を減 らす こ とが で き て,普 系 の 計 算 を行 う こ とが で き る.こ 原 子 核 を 実 現 し て し ま う.さ
使 っ て 核 子 散 乱 を計 算 す る と短 距
通 の ハ ー トレー-フ ォ ッ ク理 論 で の 多 体
の 際 に 非 相 対 論 近 似 で計 算 す る と密 度 の 大 きす ぎ る
ら に 相 対 論 を 取 り込 ん で 計 算 す る と核 力 の 持 つ 性 質 の た
め に 強 い 密 度 依 存 な 斥 力 が 生 じ,非 常 に 実 験 に 近 い 結 果 を得 る こ とが で き る.6) こ こ ま で 議 論 して く る と核 構 造 に お い て の クォ ー ク の役 割 は 核 子 間 の相 互 作 用 と し て 短 距 離 で の 斥 力 と長 距 離 で の 引 力 を与 え る こ と で あ り,そ の 核 力 の 正 確 な 形 を 自 由 空 間 で の 核 子 散 乱 の デ ー タ か ら決 め て や る とそ の 役 割 を終 え,多 体 理 論 を展 開 して や る と核 構 造 を ほ ぼ 再 現 す る こ とが で き る よ うに 見 え る.本 24.5
EMC効
核 物 理 に と っ て 衝 撃 的 な実 験 結 果 が1983年
当 に そ う な の か.
果 に 発 表 され た.核
子 の深 部 非 弾性散 乱
は 核 子 内 の ク ォー ク構 造 を 調 べ る有 力 な 方 法 で あ る.ヨ ー ロ ッパ ・ミュ ー オ ン ・コ ラ ボ レー シ ョ ン(EMC)の (電 子 の 仲 間)の
グル ー プ は 原 子 核 を標 的 と し た 高 エ ネ ル ギー の ミュ ー オ ン
衝 突 実 験 を行 っ た.ミ
の ク ォ ー ク 構 造 を引 き出 す.結
ュ ー オ ン は 高 エ ネ ル ギ ー の た め に 核 内 の核 子
果 は 驚 くべ き こ とに,自
関 数 に較 べ て 核 内 核 子 の そ れ は 大 き くず れ て い た.こ し て い る こ と を 意 味 して い る.こ 光 を浴 び る よ うに な っ た.つ
由 空 間 の核 子 の ク ォ ー ク構 造
れ は核 子 が 核 内 で は大 き く変 化
の 段 階 か ら核 子 の ク ォー ク構 造 が 原 子 核 の 分 野 で 脚
ま りは 核 子 が 核 内 で 変 化 し て い る とす る と,そ
の核 子 の
クォ ー ク構 造 の 変 化 が 原 子 核 の 多 くの 物 理 量 に 反 映 さ れ る とい う こ とに な る. そ の 一 方 で ア メ リ カ で は 相 対 論 的 超 高 速 度 に加 速 さ れ た 金 の よ うな 重 い 原 子 核 同 士 を 衝 突 させ て,高
温 度 ・高 密 度 の 核 物 質 を作 る装 置RHICを
ブ ル ックヘ ブ ン にお い
て 最 近 完 成 させ た.高 温 度 ・高 密 度 の 核 物 質 で は 核 子 の ク ォー ク構 造 は 激 変 す る こ と が 予 測 で き,広
い 意 味 で の 核 構 造 の 研 究 に 実 際 に ク ォー クの 扱 い を す る 必 要 性 が 生 じ
て き た.核
物 理 に お け る ク ォ ー クの 役 割 は 俄 然 多 くの 研 究 者 の 注 目す る と こ ろ と な っ
て き た.こ
の あ た りの 話 は 文 献7)に 譲 る. 24.6
南 部-ジ
ョナ ラ シ ニ オ 模 型
そ れ で は 核 子 は 自 由 空 間 の 時 と比 べ て 原 子 核 内や 高 い 温 度 状 態 で は どれ く ら い 変 化 す る も の な の か.カ
イ ラ ル対 称 性 を扱 う こ とが で き る 南 部-ジ ョ ナ ラ シニ オ(NJL)
モ デ ル に よ る と,原 子 核 内 部 で は 核 子 の 質 量 は 約20%く
ら い 小 さ く な る4).も っ と
密 度 を上 げ て い く と約5倍
の 核 密 度 で 質 量 が ゼ ロ と な り,ク ォー クは 核 子 内 か ら開 放
さ れ る.一
よ う に 高 い 温 度 が 実 現 さ れ る と,温 度 が200MeVく
方 で,RHICの
に な る と カ イ ラ ル 対 称 性 は 回 復 し ク ォ ー ク は 閉 じ込 め か ら 開 放 され る7,8).
らい
NJLモ
デ ル は カ イ ラ ル対 称 性 を扱 う意 味 で は 問 題 な い が,ク
方 の 重 要 な 性 質 で あ る閉 じ込 め を実 現 で き な い.QCDは も実 現 す る が そ の 取 り扱 い が あ ま りに 複 雑 で,強 とす る.そ
の 意 味 で 閉 じ込 め を記 述 で き,ク
定 量 的 な モ デ ル の 構 築 は 重 要 で あ る.そ
ォ ー ク の 持 つ も う一
閉 じ込 め も カ イ ラ ル 対 称 性
力 な コ ン ピ ュー タ で の 大 計 算 を必 要
ォー クの 世 界 の 描 像 を描 くこ とが で き る
の 試 み と し て 双 対 ギ ン ズ ブ ル グ-ラ ン ダ ウ理
論 や イ ン ス タ ン トン ・モ デ ル な ど トポ ロ ジー の 絡 ん だ 議 論 が な され て い る9).
24.7 ク ォ ー ク 核 物 理 実 験 核 内 の 核 子 の ク ォ ー ク構 造 の 変 化 を本 当 に 把 握 す る た め に は,自 構 造 が どの 様 に な っ て い るの か を まず 把 握 す る必 要 が あ る.ク て い る の はQCDの
ォ ー クが 閉 じ込 め ら れ
真 空 が 複 雑 に な っ て い る こ と を 意 味 して い る.そ
真 空 は どの 様 に な っ て い るの か は まず 答 え を 出 す 必 要 が あ る.そ 態 と し て メ ソ ン(パ
イ オ ン は この 仲 間)や
バ リ オ ン(核
本 のJHFの
で のHERAや
強 力 な 陽 子 やSPring
8のGeV光
れ で はQCDの
の 真 空 か ら の励 起 状
子 は こ の 仲 間)等
は どの 様 に 構 成 さ れ て い る の か な ど が 次 の 大 き な 問 題 で あ る.ア 電 子,日
由 空 間 で の核 子 の
の ハ ドロ ン
メ リ カ のJLABの
で の 研 究,ド
イ ツ やCERN
コ ンパ ス 計 画 な ど で こ れ ら の 物 理 が 実 験 ・理 論 面 か ら明 らか に さ れ よ
う と し て い る.
24.8 ま とめ に代 え て 「 核 構 造 に お け る ク ォ ー クの 役 割 」 とい う表 題 を も ら っ て こ の 原 稿 を 書 き進 ん だ. ク ォ ー クは 核 子 の 中 に 閉 じ込 め ら れ て い るが,自 引 き起 こ す 粒 子 で あ るパ イ オ ン を生 み 出 す.核
らは 黒 衣 と な っ て,強
い相互 作用 を
構 造 の 基 に な る核 子 間 の 相 互 作 用 を作
り出 す 以 上 に は ク ォ ー クの 働 き を 必 要 と し な い よ う に 見 え て い た.1983年
のEMC
効 果 の 実 験 は こ の 信 念 を 一変 し た.核 子 の ク ォ ー ク構 造 が 核 内 で 変 化 し て い る 可 能 性 が 指 摘 さ れ た の で あ る.密 度 や 温 度 を上 げ て い く と質 量 が 小 さ く な りつ い に は ゼ ロ に な っ て し ま う可 能 性 も あ る.こ れ は 中 性 子 星 の 内部 の 構 造 に 大 き な影 響 を も た らす. ア メ リ カ の ブ ル ッ ク ヘ ブ ン で は 相 対 論 的 重 イ オ ン 衝 突 加 速 器(RHIC)が を,開 始 し た.超
ク ・グ ル オ ン ・プ ラ ズマ(QGP)が を知 る に は,核
そ の実 験
高 温 の 核 物 質 が 実 現 さ れ る こ と に な り,核 子 が 完 全 に 溶 け た ク ォー 実 現 さ れ る 可 能 性 が 高 い.核
子 の 核 内 での 変化
子 や パ イ オ ン の 構 造 の 研 究 を き っ ち り とや りぬ く必 要 が あ る.そ
究 は ア メ リカ で はJLABの
電 子,日
本 で はSPring
8で のGeV光
やJHFの
の研
強 力 な陽
子 ビー ム が そ の 研 究 の 道 具 とな る と期 待 され て い る. こ の 表 題 で 書 き 出 し て,こ 閉 じ込 め の メ カ ニ ズ ム,カ 理 が 山 済 み で あ る.た
こ ま で 来 た が も っ と書 き た い 気 が して い る.ク
イ ラ ル 対 称 性 の 破 れ,パ
ォー クの
イ オ ン の 構 造 な ど な ど興 味 深 い物
だ,現 在 進 行 中 の 物 理 で も あ り,別 の 紙 面 で 書 く方 が 適 当 と も
思 わ れ るの で こ こ で 筆 を置 く10).こ の 表 題 は 重 要 な 意 味 を持 っ て い る と思 う.原 子 核 は核 子 か らで き て い る.そ み 上 げ の 探 求 は,自
参考 文 献 玉 垣 良 三:科
2)
H.Toki:Z.Physik
3)
M.Oka
4)
Y.Nambu
5)
有 馬 朗 人:日
and
学46(1996)10. A294(1980)173. K.Yazaki:Phys.Lett.90B(1980)41. and
G.Jona-Lasinio:Phys.Rev.122(1961)345.
本 物 理 学 会 誌51(1996)706.
6)
R.Brockmann
7)
初 田 哲 男:高
エ ネ ル ギ ー 核 物 理(本
8)
U.Vogl
W.Weise:Prog.Part.Nucl.Phys.27(1991)195.
9)
H.Suganuma,S.Sasaki
10)
土 岐
and
and
博:科
階の構造 の積
き.ひ ろ し,大 阪 大 学 核 物 理 研 究 セ ン ター 教 授.1946年
大 阪 大 学理 学 部卒 業)
1)
の2段
然 が 随 所 で階 層 構 造 を な し て い る機 構 を探 索 す る意 味 で も,興 味
深 い 課 題 で あ る.(筆 者=と れ,1969年
の核 子 は ク ォ ー クか ら で き て い る.こ
R.Machleidt:Phys.Rev.C42(1990)1965.
学69(1999)775.
and
書27章).
H.Toki:Nucl.Phys.B435(1995)207.
生ま
25.
核 反 応 理 論 の発 展 の 一 断 面 河 合
25.1 今 か ら50年
始
前 か らの 数 年 間 は,そ
重 陽 子 を用 い た 一 連 の 実 験 で,高
行 わ れ た90MeVの
核 子,200
エ ネ ル ギ ー の 粒 子 が 前 方 に 強 く放 出 さ れ る 射 粒 子 は 標 的 核 と融 合 し て複 合 核 を 作 り,
放 出 粒 子 は 複 合 核 の 熱 平 衡 状 態 か ら 前 後(即 発"さ
に
ず,Berkeleyで
の が 観 測 さ れ た.複 合 核 模 型 に よ れ ば,入
の エ ネ ル ギ ー 分 布 を も っ て"蒸
路
れ ま で 核 反 応 論 に 君 臨 して い た 複 合 核 模 型 の 破
綻 が 明 ら か に な って 時 期 で あ っ た.ま MeVの
め
光
ち90° に 対 して)対
れ る は ず で あ っ た .R.
称 に,Maxwell型
Serber1)は
こ の 現 象 を,
入 射 粒 子 と核 内 核 子 との 少 数 回 の 衝 突 で終 る,複 合 核 を経 過 し な い 反 応,即 程 に よ る も の と解 釈 し た.こ
の 描 像 で 観 測 さ れ た 色 々 な 反 応 の 機 構 が 解 明 さ れ た2).
50年 代 に 入 る と,数
∼10数MeV重
陽 子 のstripping過
さ れ た3).さ ら に,中
性 子 の0∼3MeVの
程(25.3.2項
参 照)が
発見
低 分 解 能 ビー ム で 観 測 さ れ た 全 断 面 積 が,
入 射 エ ネ ル ギ ー と標 的 核 の 質 量 数 の 関 数 と し て 大 き な 山 と 谷(粗 とが 発 見 され4),H.
Feshbach,
体 ポ テ ン シ ャ ル(光
学 ポ テ ン シ ャ ル)に
し た5).こ れ が 光 学 模 型(当
ち直接過
C. E. Porter及
初 は"Cloudy
びV.
い 構 造)を
F. Weisskopfは,そ
持つ こ
れが複 素一
よ る散 乱 と して 良 く記 述 で き る こ と を見 い だ Crystal
Ball
Model"と
呼 ば れ た)で
あ
る. 私 の 世 代 が 研 究 に 参 加 し た の は そ の 直 後 で あ る.私 の 初 め(1953年 論 の 長 期(3カ
度 の 終 わ り)に 基 研(京 月 間)研
こ の 小 文 で は,こ
校"以
後,私
こ で 取 り上 げ るの は,核
型,DWBA,チ
行 わ れ た 原子 核 理
校")6)に 参 加 し た の が 決 定 的 な 第 一 歩 で あ っ た.
の シ リー ズの 編 集 方 針 を汲 ん で,話
理 論 に 限 り,こ の"学 い.こ
究 会("学
自 身 に つ い て 言 え ば,1954年
大 基 礎 物 理 学 研 究 所)で
を軽 イオ ンに よる直接 過程 の
が 関 係 した 研 究 課 題 の 幾 つ か を振 り返 っ て み た
の 離 散 お よ び 連 続 状 態 へ の 直 接 過 程 の 理 論 で,光
ャ ネ ル 結 合 理 論,直
学模
接 過 程 と複 合 核 統 計 理 論 の 関 係 等 に 関 す る もの
で あ る.
25.2 連 続 状 態 へ の 遷 移 基 研 の"学
校"に
行 っ た 当 時,私
は 核 内 で の 核 子 の 平 均 自 由 行 路(mean
free
path, m. f.p.)の 直 接 反 応 との 関 係 に 興 味 を持 っ て い た.同 じ興 味 を持 っ て お ら れ た, "学 校"の 早 川 幸 男 先 生 ,"生 徒"の 一 人 だ っ た 菊 池 健 さ ん と三 人 の 共 同 研 究 が す ぐ始
ま っ た.早
川 さ ん の ア イ デ ィ ア は,当
乱(p,p')で,高
う現 象 を核 内 カ ス ケー ド(Intra っ た.こ
時 観 測 さ れ た10∼30MeVの
陽子 の非 弾 性散
い エ ネ ル ギ ー の 陽 子 が 蒸 発 模 型 の 予 言 よ り は るか に 強 く出 る,と
の模 型 で は,入
との 衝 突 の 繰 返 しで,核 外 に 放 出 さ れ,残
Nuclear
Cascade,
INC)模
射 粒 子 と核 内 核 子 との 衝 突,衝
型2,7)で 説 明 す る こ と だ
突 さ れ た核 子 と別 の核 内核 子
内 に 励 起 した 核 子 の カ ス ケ ー ドが 発 生 し,そ の 一 部 が 直 接 核
りは複 合 核 を 形 成 す る と考 え る.
各 粒 子 の 運 動,衝
突 を 古 典 力 学 的 に 取 り扱 い,Monte
ュ レー トす る.INCは
Carloの
方 法 で事 象 を シ ミ
高 エ ネ ル ギ ー 核 反 応 の 模 型 だ と思 っ て い た 私 は 内 心 少 々 驚 い
た が,と
に か くや っ て み る こ と に した.M.
Fermiガ
ス 模 型 を 仮 定 し,そ の 中 で の 核 子 の 平 均 自 由 行 路(m.f.p.)と
乱 断 面 積 をPauli原 以 下)に
対 し てm.f.p.をGoldberger流
Goldberger7)に
従 っ て,核
エ ネ ル ギ ー(Fermiエ
出 粒 子 の,核
ネ ル ギー の2倍
こ の 仕 事 に は 副 産 物 が あ っ た.そ
依 存 性 はconsistentで くな る の は,二
算 結 果 は,18MeVで
は 過 少評 価 で あ っ た
の 一 つ はm.f.p.と 光 学
ポ テ ン シ ャ ル の 虚 数 部W
逆 数 に 比 例 す る と仮 定 す る と,両 者 の エ ネ ル ギ ー
あ る こ とが 分 か っ た.特
体 散 乱 の 多 くがPauli原
に 低 い エ ネ ル ギ ー でWが
非常 に小 さ
理 に よ っ て 禁 止 さ れ る こ と で 説 明 さ れ る.同
様 な 計 算 は 同 じ時 期 に ヨー ロ ッ パ で も何 人 か の 人 達 に よ っ て行 わ れ10),同 た,核
型"と
評 し たが,二
考 慮 し なけ れ ば,か
も う 一 つ の 副 産 物 はINCの に,核
ま じ め(frivo れ ほ ど悪
し,定 量 的 に は平 均 ポ テ ン シ ャ ル の 非 局 所 性(速
度依
な り過 小 評 価 に な る こ とが 知 られ て い る12). 量 子 力 学 的 解 釈 で あ る.INCの
内 の 核 子-核 子 衝 突 が 起 こ る 場 所 が 特 定 で き る,と
的 に は,放 所"を
こ の 種 の 計 算 を"ふ
核 表面 に
体 衝 突 に核 内 で の有 効 相 互 作 用 を 用 い れ ば,そ
い 近 似 で は な い と思 わ れ る.但 存 性)を
じ結 論 が 得
の 密 度 の 空 間 的 変 化 を考 慮 す る と,低 エ ネ ル ギ ー でWが
集 中 す る こ と も 説 明 さ れ た11).Weisskopfは lous)模
い簡 単
の平 均 ポ テ ン シ ャ ル に よ る 屈
は まず まず で あ っ た8).
との 比 較 で あ る8,9).Wがm.f.p.の
ら れ た.ま
に縮 退
核 子-核 子 散
に 計 算 す る の は 甚 だ 面 倒 で あ るが,幸 射,放
面 で の 全 反 射 を 考 慮 に 入 れ た.計
が,31MeVで
L.
理 を考 慮 して 計 算 した.低
に 計 算 す る別 の 方 法 を見 つ け た.入 折,表
い
基 本 的 な仮 定 の 一 つ
い う こ とが あ る .量 子 力 学
出 波 は 核 の あ ら ゆ る 点 で 発 生 し,そ れ ら は 互 い に 干 渉 す るか ら,"衝
特 定 す る こ と は 一 見 で き そ うに な い.こ
の 問 題 の 鍵 は,観
続 無 限 個 の 状 態 へ の 遷 移 の 断 面 積 の 平 均 値 で あ る,と
突場
測 され る断面積 は連
い う こ と で あ る.個
々の状 態 に
対 応 す る放 出 波 の 位 相 が 乱 雑 な ら,問 題 の 干 渉 は こ の 平 均 を と る と き 相 殺 し て し ま う.実 際,DWBA(25.3.3項)か 動 に 対 して 半 古 典 近 似,核
ら 出 発 し,こ
の こ と を使 い,入 射,放
に 対 して 局 所 密 度Fermiガ
出粒 子 の運
ス 模 型 を 仮 定 す る と,INCを
光 学 ポ テ ン シ ャ ル の 影 響 ま で 取 り入 れ て 拡 張 した 断 面 積 の 式 を 導 くこ と が で き,数 値 計 算 も可 能 で あ る.そ
れ を 使 っ て 中 間 エ ネ ル ギ ー の(p,p'),(p,n)に
対 す る実 験 の
解 析 を行 っ て い る.調 節 パ ラ メ ター な し に 実 験 を か な り よ く再 現 で き る13).
25.3 弾 性 散 乱,離 25.3.1
光 学 模 型
しか し 当 時,世
の 中 の 大 勢 は残 留 核 の 離 散 状 態 へ の 遷 移 の研 究 に 向 か っ た.光 学 模
型 が 色 々 な 入 射 粒 子,入 型 で は な く,な Saxonに
散状 態 へ の 直接 過 程
射 エ ネ ル ギ ー の 弾 性 散 乱 等 に 対 して検 証 され て い っ た.井
よ っ て 初 め て 行 わ れ た14)(図1).そ
計 算機 を 使 っ て15∼20分 の を覚 え て い る.彼
に な っ た.そ
の 論 文 に,一
つ の 角分 布 の 計 算が 電 子
で で き た,と 書 い て あ る の を読 ん で,そ
の 速 さ に 驚 嘆 した
らが 使 っ た ポ テ ン シ ャ ル の 形,
は 今 日Woods-Saxon型 や が て計
戸
だ らか な 縁 を もつ 光 学 ポ テ ン シ ャ ル に よ る 散 乱 の 計 算 がWoodsと
と して 核 物 理 の 随 所 に 登 場 す る.
算機が 発 達,普 の 結 果,光
及 し,光 学 模 型 に よ る実 験 の 解 析 が 日常 的 に行 わ れ る よ う
学 模 型 の 普 遍 性 が 明 ら か に な り,そ れ は全 て の核 反 応 理 論 の
基 礎 に な っ た.
図1
初 め て の,縁 が な だ らか な光 学 ポ テ ン シ ャ ル に よ る計 算 18MeV陽 子 のNiに よ る弾 性 散 乱 の 微 分 断 面 積 の 計 算 値(実 Saxon:
線)と
実 験値(点).(R.
Phys.
D.
Woods
Rev. 95 (1954) 577に よ る.)
and
D.
S.
25.3.2 離 散 状 態 へ の 直 接 過 程 一 方
,直 接 過 程 に よ る,核
の き っ か け は 重 陽 子dに 論3)の 成 功 で あ っ た.こ
よ る,(d,p)反
Butlerに
殻 模 型 軌 道 の 一 つ に 入 る.pは
渉 縞 の よ う な 特 異 な も の に な る(図2).こ
決 め る こ と も で き る.こ
非 常 に 役 立 つ.実 て,核
T.
中 の 中 性 子nは
反 応 を"傍 観"す
や が て,(d,p)だ か っ た.N.
れ を 逆 に 利 用 し て,角
分布か
論 の 出 現 以 後,(d,p)反
応 を 利 用 す る こ とに よ っ
け で な く,核 子 に よ る反 応 で も 同 様 な 直 接 反 応 が 起 こ る こ とが 分
Austernら15)は(n,p)反
応 に よ る一 粒 子 状 態 の 励 起 を 予 言 し,早 川 と笹 か し,干 渉 縞 様 の 角 分 布 は ま ず17
観 測 さ れ た17).早 川 と吉 田思 郎18)は 核 子 の 非 弾 性 散 乱 に よ る核 の 集
団 運 動 の 励 起 の 機 構 を提 唱 し,低 応 を解 析 し た.D.
エ ネ ル ギ ー 中 性 子 の 非 弾 性 散 乱 と上 記 の(p,p')反
Brink19)も 独 立 に 同 じ機 構 を提 唱 し た.
こ れ ら を き っ か け と して,そ 見 さ れ,そ
強 く依
リテ ィの 決 定 が 飛 躍 的 に 進 ん だ.
川 辰 弥16)は そ の 断 面 積 の 大 き さ を評 価 し た.し MeVの(p,p')で
るだ け
角 分 布 はlに
れ は 反 応 に 関 与 す る 準 位 の ス ピ ン ・パ リテ ィ の 決 定 に
際,stripping理
の 準 位 の ス ピ ン,パ
よ るstripping理
標 的 核 に は ぎ取 ら れ,
の ま ま 出 て 行 く.反 応 が 核 表 面 付 近 で 起 こ る た め に,pの
存 す る,干 らlを
応 に 対 す るS.
の 理 論 に よ る と,dの
決 ま っ た 軌 道 角 運 動 量lの で,そ
の 束 縛 状 態 へ の 遷 移 も人 々 の 強 い 関 心 の 的 に な っ た.そ
の 後 色 々 な 反 応 で核 の 離 散 的 終 状 態 へ の 直 接 過 程 が 発
れ が きわ め て普 遍 的 な現 象 で あ る こ とが 分 か っ た.そ
の研 究は核 構造 につ
い て の 情 報 を 得 る 有 望 な手 段 と な り,核 反 応 研 究 の 中 心 的 課 題 とな っ た .
図2
入 射 エ ネ ル ギ ー7.9MeVで のButler理
lは 移 行 角 運 動 量.(S. (1951)
559に
の14N(d,p)15N反
論 に よ る 計 算 値(実
よ る.)
T.
線)と Butler:
応 の 角 度 分 布
実 験 値(破 Proc.
Roy.
線) Soc.
208A
25.3.3 DWBA しか し,(d,p)
stripping反
応 のButler理
論 に は 一 つ 大 き な 問 題 が あ っ た.そ
断 面 積 の 角 分 布 の 特 徴 を よ く捉 え た が,細 は 全 く無 力 で あ っ た.こ Wave
Born
Approximation,
く,前 節 で 述 べ た(n,p)反 18で は,今
部 ま で 正 確 に は 再 現 せ ず,大
れ ら の 問 題 を解 決 し た の が 歪 曲 波Born近 DWBA)で
っ た 前 記(p,p')反
き さに 対 し て 似(Distorted
あ る20,21).DWBAは(d,p)反
応 の 計 算16),(p,p')の
日の 核 反 応 論 で標 準 的 なDWBAの
れは
応だけでな
計 算18,19)でも使 わ れ た.特
に文 献
定 式 化 が 与 え ら れ て い る.こ
れ を使
応 の 角 分 布 の 計 算 が 梶 川 良 一 ら22)に よ っ て 行 わ れ,実
験 との良 い
一 致 が 得 ら れ た. DWBAは
原 子 衝 突 の 理 論 で は 以 前 か ら知 られ て い た23)が,核
の は こ の 時 期 が 初 め て で あ る.DWBAは
一 次 の 摂 動 論 で,反
反 応論 に導 入 され た 応i→fの
遷 移行 列 要
状 態 の 核 の 波 動 関 数 で あ る.始,終
状 態 の粒 子
素は
で 与 え られ る.た だ し,Φi,fは 始,終
と核 の 相 対 運 動 の 波 動 関 数χi,f(±)は 普 通 のBorn近 曲(光
学)ポ
テ ン シ ャ ルUi,fで 歪 め られ た 波(distorted
り,摂 動 は 粒 子 と核 の 相 互 作 用Vか V,
Uに
似 と違 っ て,平
は 始,終
れ をVnpで
寄 与 しな い.(d,p)の
近 似 す る.こ
あ る.そ
のかわ
差 し引 い た も の に な っ て い る.
状 態 い ず れ の も の を とっ て もTfiは 等 しい.非
Φiと Φfの直 交 性 の 故 にUは Ufを 使 い,そ
らUを
waves)で
面 波 で は な く,歪
弾 性散 乱の 場合 は
場 合 に は 普 通"post
form"Vf-
の 近 似 の 精 度 に つ い て は 久 保 謙 一24)が 実 例 に
つ き 詳 し く検 討 し た.
反応 に よ る内部 状 態 の遷移 は形状 因子
で 記 述 さ れ る.但
し,Fの
計 算 に 際 し て はV-Uに
はFのχi,f(±)間 の 行 列 要 素 で あ る.Fは 位 の 構 造 に 強 く依 存 す る.表 Fの
移 行 角 運 動 量lを
面 振 動 の 励 起 の場 合,lは
大 き さ は 振 動 の 振 幅 βlに 比 例 す る.(d,p)反
る.fは
Φfの 中 で のnの
対 して 上 記 の 近 似 を す る.Tfi
一 体 運 動 の"波
応前 後 の核 の準
応 で はFはf=<Φi│Φf>に
動 関 数"で,そ
の 中 に 存 在 す る確 率 振 幅 で あ る.S=を
含 め,反
フ ォ ノ ン の 角 運 動 量 で あ り, 比例 す
の 振 幅 は そ の 一 体 運 動 が Φf
分 光 学 的 因 子 と い う.こ
れ らの 量 は準
位 の 構 造 を 知 る 上 で 非 常 に 有 用 な 情 報 で あ る. Sの 理 論 的 計 算 に は 始,終
状 態 の 核 の 構 造 論 的 知 識 が 必 要 で あ る.一 核 子 移 行 反 応
に 対 して は 殻 模 型 状 態25),集 団 運 動 状 態26),対 相 関 状 態27)に 対 して 計 算 が 行 わ れ,実 験 と比較 さ れ た.(p,t)反 模 型 軌 道 に,ど
応 の 場 合 に は,Sは
移 行 す る 二 つ の 中 性 子 が ど の よ う な殻
の よ う な 相 関 を持 っ て 入 っ て い るか に よ る.吉
に よ る超 流 動 状 態 だ と,Sが
田 は,標
的核 が対相 関
非 常 に 大 き くな る こ とを 見 い だ し た28).多 核 子 移 行 反 応
のSの 一 方
計 算 も殻 模 型 に よ っ て行 わ れ た29). ,fの
空 間 的 な 動 径 依 存 性 は,普
反 応 の 場 合,nはWoods-Saxon型
通,簡
単 な 模 型 で 計 算 す る.た
と え ば(d,p)
の 一 体 ポ テ ン シ ャ ル に分 離 エ ネ ル ギー と等 しい エ
ネ ル ギー で 束 縛 さ れ て い る と し,そ の 規 格 化 され た 波 動 関 数 に 殻 模 型 な ど で 計 算 され たS1/2を
掛 け た も の をfと
す る の で あ る.こ の"分
が 一 粒 子 状 態 に 近 い 場 合,即
ちSが
離 エ ネ ル ギ ー 法"の
大 き い 場 合 に は 良 い が,そ
近 似 は,Φf
うで なけ れ ば疑 問 で
あ る.も
し,Φi,fが 構 造 論 で正 確 に 与 え ら れ れ ば,fは
き る.し
か し,構 造 論 が 与 え る 波 動 関 数 は,一 般 に 反 応 に と っ て 最 も重 要 な,核
付 近 か ら外 で は 当 て に な ら な い.構
独 立 に 類 似 の 方 法 を提 案 した.そ
対 し て 計 算 が 行 わ れ た.よ
り詳 細 なHartree-Fock型
の 相 互 作 用 を 入 れ た 計 算33)も な され た.分 が 大 き い 場 合 に は よ く合 う が,Sが 井 良 一34)はN=50の 応 のfを
の 内部 で 正 確 な 波 動 関 数 が 分 か っ て い
無 限 遠 ま で 良 い 近 似 で 計 算 す る簡 単 な 方 法 を考 え た30).Austernら
R. Satchlerら31)も
同 調 核(中
表面
造 論 で 問 題 に な るの は 核 の 内 部 だ か ら で あ る.
そ こ で,私 達 は 一 核 子 移 行 反 応 に 対 し て,核 る時,fを
定 義 式 を使 って正確 に計算 で
とG.
れ ぞ れ の 方 法 で い くつ か の 例 に の 計 算32),nと
芯 の集 団運 動 と
離 エ ネ ル ギー の 方 法 は こ れ ら の 計 算 とS
小 さ い と き に は 合 わ な い20).後
に な っ て,生
性 子 数 一 定 の 核)89Sr,90Zr,92Moか
ら の(d,t)反
私 達 の 方 法 で 計 算 し,断 面 積 の 標 的核 の 陽 子 数 に よ る変 化 を 説 明 し た.
DWBAの
導 入 は 直 接 反 応 の 理 論 に と っ て 画 期 的 な こ とで あ っ た.そ
範 囲 の 直 接 反 応 の 記 述 に 大 成 功 を収 め,直
れ は非常 に 広
接 反 応 の 標 準 的 な 理 論 の 一 つ とな っ た.そ
れ は 核 構 造 に つ い て 定 量 的 な 情 報 を 引 き 出 す こ と を初 め て 可 能 に し,"直 る核 分 光 学"を 25.3.4
接 反応 に よ
開 い た.
巨大共 鳴状 態の 励起
こ れ よ り先,Uppsalaで の 一 連 の 実 験 で,超
行 わ れ た180MeV陽
前 方(散
子 の40Caま
が 測 定 さ れ た35).際 立 っ た 二 種 類 の ピー クが 観 測 され た.そ 10数 ∼20MeVに
で の核 に よ る 非 弾 性 散 乱
乱 角 ∼ 数 度)に 放 出 され る陽 子 の エ ネ ル ギース ペ ク トル
対 応 す る大 き な 山 で,測
の 一 つ は 励 起 エ ネ ル ギー
定 さ れ た 全 て の 核 に 対 し て 見 ら れ た.も
う一 つ は 励 起 エ ネ ル ギ ー 数 ∼10数MeVに
幾 つ か ず つ 観 測 さ れ た,よ
り狭 い 幅 の ピ
ー クで あ っ た. 私 達 は 第 一 の 山 を(実 験 者 と 同 じ く)双 極 子 巨 大 共鳴 のCoulomb励 と考 え,そ
の 断 面 積 を既 知 の 光 核 反 応 の 断 面 積 を使 っ てBorn近
果 は理 論,実 な っ て,実
験 の 精 度 を考 え れ ば,絶
起 に よ る もの
似 で 計 算 し た36).結
対 値 を含 め て実 験 と よ く一 致 し た.ず
は こ れ が 当 時 誰 も知 ら な か っ た 四 極 子 巨 大 共 鳴 の,核
こ とが わ か っ た と きに は 大 い に 驚 い た.我
っ と後 に
力 に よ る励 起 で あ る
々 が 考 え た 機構 の 断 面 積 は,DWBAで
計
算 す る と ず っ と小 さ くな る. 第 二 の ピー クは 移 行 軌 道 角 運 動 量l=0で,ス
ピ ン角 運 動 量 が 移 行 す る 反 応 で あ る
と私 達 は 考 え,spin-flip過
程 と名 付 け た37).こ れ が 電 磁 力 に よ る もの で な い こ とは,
断 面 積 の 大 き さ か ら す ぐ分 か っ た.核 に は,な
力 に よ る遷 移 の 断 面 積 の 絶 対 値 を 評 価 す る た め
る べ く理 論 的 模 型 に よ ら な い 評 価 が 必 要 で あ っ た.計
パ ル ス 近 似38)を 使 っ た .核 の 遷 移 行 列 要 素 の評 価 に は,例 15.1MeVに
あ る1+ア
イ ソ ス ピ ンT=1の
ン
た は12Bの
の ベ ー タ 崩 壊 のft値
基底
を使 っ て 計 算 し
算 結 果 は 実 験 の 断 面 積 を,角 分 布 も含 め ∼2倍 の 範 囲 で 再 現 し た.
20Neか RPAを
ら40Caま
での
,い わ ゆ る(s,d)殻
核 に 対 し て は,核
仮 定 し,歪 曲 波 イ ンパ ル ス 近 似(DWIA)の
期 のDWIA計
の 状 態 に一 粒 子 模 型 や
計 算 を行 っ た39).こ れ は 最 も 初
算 の 一 つ で あ る21,40).計算 結 果 は実 験 と よ く合 い,spin-flipと
構 が 立 証 さ れ た.こ
の 間 に,池
る こ と を 予 言 し た.そ た.現
面 波)イ
と し て 良 く知 ら れ た12Cの
状 態 の 励 起 を と り,12Nま
状 態 か ら12Cの 基 底 状 態 へ のGamow-Teller型 た.計
算 に は(平
在 で も,中
田 清 美 ら41)はGamow-Teller型
れ は,約10年
後,40MeVで
い う機
の 巨大 共鳴 が 存在 す
の(p,n)反
応 で初 め て観 測 され
間 エ ネ ル ギー 核 反 応 に よ る核 の ス ピ ン ・ア イ ソ ス ピ ン励 起 は 盛 ん に
研 究 さ れ て い る. 25.3.5 さ て,こ は,日
DWBA計
算 コー ド
の よ うな"distorted
waveの
時 代"の
初 期 に 困 っ た こ と が あ っ た.そ
本 で 使 え る 大 型 電 子 計 算 機 が な か っ た こ と で あ る.米
国 に 行 っ て 計 算 した り,
実 験 デ ー タ を 米 国 の 研 究 者 に 送 っ て 解 析 して も ら っ た りす る他 な か っ た.文 数 値 計 算 も,寺 沢 徳 雄 氏 がOak っ て 行 っ た の で あ る.1962年
Ridgeで,そ ∼1964年
こ で 開 発 さ れ たDWBAの
に ア メ リ カ に 行 っ て い た 私 は,そ
コー ドの 製 作 者 の 一 人 か ら コ ピー を貰 う約 束 を得 た が,結 そ の 頃,日 円!)が DWBAの
コ ー ド を開 発 す る,と
幾 人 か の,主
研(東
コー ドを使 のDWBA
使 用 料 一 時 間30万
大 原 子 核 研 究 所)か
ら予 算 を 出 して
い う プ ロ ジ ェ ク トが 始 ま っ た の は こ の 時 期 で あ る.
と し て 理 論 の ボ ラ ン テ ィ ア が 奮 闘 し た 結 果 で き た の が,光
DWBAのINS-DWBAシ
献39の
局 果 た さ れ なか っ た .
本 に も コマ ー シ ャ ル な 計 算 サ ー ビ ス(IBM704の
行 わ れ る よ う に な っ た.核
れ
リー ズ の コー ド42)であ る.こ
られ た プ ロ グ ラ ム 管 理 機 関 に収 め られ,共
学模型 と
れ らはすべ て核研理 論部 に作
同 利 用 に 供 さ れ た.東 大 計 算 セ ン タ ー が で
き る と,コ ー ドの オ ブ ジ ェ ク ト ・モ ジ ュ ー ル の カ ー ド ・デ ッ ク(!)(そ
の 製作 に は
東 大 の 核 理 論 の 人 た ち が 当 た っ た)が 利 用 者 に 配 ら れ た.利 用 者 の 多 くは実 験 家 で, 実 験 デ ー タ の解 析 に 盛 ん に 使 わ れ た.私 の 利 用 件 数 が800件 で き た の で,入
が 関 与 したDWBA-2に
を超 え た の を覚 え て い る.1ジ
つ い て 言 え ば,或
年
ョブ で 複 数 の デ ー タ セ ッ トが 入 力
力 され た デ ー タ セ ッ トの 数 は 膨 大 な もの で あ っ た ろ う.
25.3.6 二 段 階 過 程 DWBAは
大 成 功 を収 め たが,万
能 で は な か っ た.直
禁 止 ま た は 強 く抑 制 され る も の が あ るか ら で あ る.2フ
接 過 程 の 中 に は,一 段 階 で は ォ ノ ン 状 態 の 励 起 は そ の典 型
的 な 例 で あ る.低 し て は,一
エ ネ ル ギ ー で の(3He,t)反
段 階 の 荷 電 交 換 過 程 は,角
こ と が 分 か っ た.外 よ っ て,こ
山 学 及 びR.
応 で も,残
留核 の高 い ス ピン状 態 に 対
運 動 量 の不 整 合 の た め に 非 常 に 強 く抑 制 さ れ る
SchaefferとG.
の 場 合 に は(3He,α)(α,t)と
F.
Bertsch43)は,二
次 のDWBAに
い う 二 段 階 過 程 が 重 要 で あ る こ と を 示 し た.
こ れ が き っ か け と な っ て,(p,t)(t,d),(3He,d)(d,t),(p,d)(d,t),(p,d)(d,p'), (d,3He)(3He,α)な
ど 色 々 な 反 応 で 組 替 え 二 段 階 過 程 が 発 見 さ れ,そ
理 学 会 会 員 に よ っ て な さ れ た44).二 れ45),核
次 のDWBAで
の 多 くが 日本 物
そ れ を 計 算 す る コー
ドも作 ら
研 の ラ イ ブ ラ リ に 入 れ ら れ た.
25.3.7 チ ャ ネ ル 結 合 法 時 と し て,反
応 が 二 段 階 で は済 まず,中
進 む こ とが あ る.実 る.こ
は,集
間 状 態 間 を無 限 回往 復,経
由 す る過 程 ま で
団 運 動 状 態 の 励 起 で は こ の よ う な場 合 が む し ろ 普 通 で あ
の よ うな 場 合 に は 摂 動 論 展 開 そ の もの が 無 効 で あ る.こ れ に 対 して 導 入 さ れ た
図3
入 射 エ ネ ル ギ ー13MeVで CCに et al.:
よ る 計 算 値(実 Nucl.
Phys.
の114Cd(p,p')に 線)と
実 験 値(丸)と
A119(1968)14に
よ る 集 団 状 態 励 起 の の 比 較(P.
よ る)
H.
Stelson.
の が チ ャ ネ ル 結 合 法(Method
CCで
of Coupled
Channels,
CC)で
は 系 の 波 動 関 数 Ψ を 強 く結 合 した 状 態(チ
あ る.
ャ ネ ル)1,2,…,Nの
波動 関 数 の
和
で近 似 す る.チ
ャ ネ ル の 内 部 波 動 関 数 φ は 既 知 と し,相 対 運 動 の 波 動 関 数χ を 未 知
と して,Schrodinger方
か ら導か れ るCCの
程式
基 本 方程式
を適 当 な 境 界 条 件 の も と に 解 き,各χ Ecは
チ ャ ネ ルcの
の 漸 近 形 か ら遷 移 振 幅 を 決 定 す る.こ
相 対 運 動 の エ ネ ル ギ ー,Ucc'=<φc│H-E│φc'>が
こ に,
チ ャ ネ ルc,c'
間 の 結 合 ポ テ ン シ ャ ル で あ る.無 視 し た チ ャ ネ ル の 影 響 は 各 チ ャ ネ ル のUccを
適 当な
複 素 ポ テ ン シ ャ ル に す る こ と で 取 り入 れ る こ とが で き る と仮 定 す る. CCが
直 接 過 程 の 理 論 で 使 わ れ た の は,吉
初 め て で あ る.そ
の 後,計
乱 に よ る集 団 励 起,荷
田 の(p,p')に
算 機 の 発 達 と相 ま っ てCCは
よ る 集 団 励 起 の 計 算46)が
著 し い発 展 を遂 げ,非
弾性散
電 交 換 反 応 に よ る ア イ ソバ リッ ク ・ア ナ ロ グ状 態 の 励 起 等 の 記
述 に 大 き な 成 功 を収 め た(図3).こ
れ に 対 す る 田 村 太 郎,宇
田 川 猛 ら のTexas大
学
の 場 合 に は 始,終
状態
グ ル ー プ の 寄 与 は 特 に大 き い20,47). や が て,組
替 え 多 段 階 過 程 も あ る こ とが 明 らか に な っ た.こ
で 相 対 運 動 の 座 標 が 異 な る た め,チ る.私 達 は(d,p)反
応 でdとpの
ャ ネ ル 結 合 の ポ テ ン シ ャ ルUcc'は
非局 所 型 に な
チ ャ ネ ル が 結 合 す る場 合 に つ い て,定
式 化 か ら数
値 計 算 ま で 詳 し く研 究 し た48).一 般 的 な 組 替 え 過 程 に 対 す る チ ャ ネ ル 結 合 法 (Method
of Coupled
よ っ て 開 発 さ れ,色 用 で あ る50)が,こ
Reaction
(Rearrangement)
Channels,
CRC)は
々 な 実 験 の 解 析 に 応 用 さ れ て い る.CRCは
宇 田 川 ら49)に
重 イ オ ン 反 応 で も有
こ で は そ れ を指 摘 す る に と どめ る.
重 陽 子 の よ う に 二 つ の 粒 子 が 弱 く結 合 し た 粒 子 が 関 与 す る 反 応 で は,そ tualま た はrealに
れ がvir
分 解 す る過 程 が 重 要 で あ る51).こ の 過 程 を精 度 良 く取 り扱 う に は,
分 解 状 態 を取 り入 れ たCC計
算 をす れ ば 良 い.し
か し,分 解 状 態 は 連 続 状 態 で あ るか
ら,そ の ま ま で は 結 合 チ ャ ネ ル が 連 続 無 限 個 に な っ て し ま う.そ
こ で考 え られ た の が
離 散 化 連 動 チ ャ ネ ル 結 合 法(Method
Coupled
CDCC)52)で
あ る.こ
of Continuum
Discretized
の 方 法 で は,分 解 す る 二 粒 子 間 の 相 対 運 動 量kと
lの 大 き さ を そ れ ぞ れ 適 当 な 上 限 値 以 下 に 制 限 す る:k≦km,l≦lm.kの km]をN個 え,適
の 小 区 間[ki-1,ki](i=1∼N)に
分 け,各
当 な 一 つ の 内 部 波 動 関 数 で 代 表 させ る.こ
算 が 可 能 に な る.計
Channels,
相 対角 運動 量 区 間[0,
小 区 間 を一 つ の チ ャ ネ ル と 考
う して,有
限 個 の チ ャ ネ ル のCC計
算 結 果 が 数 値 的 に 収 束 す るの に 十 分 なkm,lm,Nを
選 ば ね ばな
ら な い.数 はdば
値 的 収 束 性 の 入 念 な 検 討,そ
か りで な く,弱
の 他 の 計 算 法 の 工 夫,改
良 等 の 結 果,CDCC
く結 合 し た 粒 子 一 般 の 反 応 に 対 し て 信 頼 で き る解 析 法 と し て
確 立 し た. こ の 方 法 は 現 象 論 と して 成 功 し て い る が,理 論 的 に は模 型 空 間 を広 げ た極 限 で の 収 展 性 の 保 証 が な い,と
い う批 判 が 出 さ れ た.し か し,こ の 問 題 に つ い て 有 望 な肯 定 的
知 見 が 得 ら れ た と思 っ て い る53). こ の よ う な 発 展 の 結 果,今 立 し た,と
で は,CCは
直 接 過 程 の 現 象 論 の 一 般 的 枠 組 み と して 確
言 っ て よ い で あ ろ う.
こ こ で 注 意 す べ き こ とは,光
学 模 型 や 低 次 のDWBAがCCの
次 の 近 似 で は な い こ と で あ る.た
摂 動 論 の0な
と え ば 光 学 模 型 はCCの0次
で は な く,CCか
性 チ ャ ネ ル 以 外 の チ ャ ネ ル をす べ て 消 去 し た 方程 式 の 解 で あ る.チ テ ン シ ャ ル はUccで
で あ る.ΔUcは
い し低 ら弾
ャ ネ ルcの 光 学 ポ
は な く,
消 去 さ れ た チ ャ ネ ル の 効 果 を 表 し,dynamical
tialと 呼 ば れ る.Love,寺 同様 にDWBAもCCの
沢,Satchler54)は 一 次 近 似 で は な い.こ
の チ ャ ネ ル を消 去 す るが,そ
polarization
poten
そ れ を 近 似 的 に 計 算 す る方 法 を 与 え た.
の 答 をDWBAで
の 場 合 に は 始,終
チ ャネ ル以外 の全 て
再 現 で き るか ど うか は 問 題 で あ る.非
弾 性 散 乱 の 場 合 に は そ れ が 可 能 な こ と が 示 さ れ た55).し か し,組 替 え 反 応 の 場 合 に は 明 らか で な い.
25.4 直接 過 程 と複合 核 過 程 直 接 過 程(以
下Dと
略 す)と
複 合 核 過 程(以
下Cと
略 す)と
は 常 に 共 存 す る.こ
れ ら を統 一 的 に理 解 す る こ とは 核 反 応 理 論 の 基 本 的 な 課 題 の 一 つ で あ る.理 論 的 な枠 組 み と し て,Cに 在 す る.早
対 して はS行
列 の 分 散 公 式,Dに
くか ら光 学 模 型 をS行
ル ギ ー の(d,p)反
対 して は チ ャ ネル 結合 理 論 が 存
列 の分 散 公 式 か ら導 こ う とす る 試 み56)や,低
応 で,strippingと
エネ
複 合 核 過 程 が 同 時 に 起 こ る場 合 の 理 論 の 提 唱 な
どが な さ れ た57). こ の 問 題 に 対 す る 鍵 は エ ネ ル ギ ー と 時 間 の 関 係 で あ る.今,エ 行 列S(E)を,DとCに
の よ う に 分 け た と す る.F.
よ る部 分SD(E)とSC(E)に
L.
波 束 で 観 測 さ れ る と考 え た.従
た だ し,<S>IはSのEの (E)はSC(E)=S(E)-SD(E)で
FriedmanとWeisskopf58)は,Dは
ネ ル ギ ーEで
のS
つ いて
短 い 時 間 τの 幅 の
っ て,
周 り の エ ネ ル ギ ー 幅I=h/τ 与 え ら れ る.
に わ た る 平 均 値 で あ る.Sc
佐 野 光 男,吉
田,寺
沢59)は 初 め てS行
に 書 き 下 し た.た
だ し,Wn=En+Гn/2で
ポ テ ン シ ャ ル(行
列)Uに
をVと
す る とV-Uの
列 の 分 散 公 式 をDとCを
あ る.SuはDを
よ る 項,即
ハ ミル トニ ア ン 中 の 相 互 作 用
三 項 が 共 鳴 項 で あ る.SU,SV-UはEと
ゆ っ く り 変 化 し,<SU>=SU=SD,<SV-U>=SV-Uで Wn)はEと
あ る.共
共 に は 激 し く 変 化 す る.し
<S>I=SD=SUか
記述 す るチ ャ ネル結 合 の
ちSD,SV-Uは
一 次 の 項,第
か し,そ
ら 容 易 に 分 か る よ う に,<Sres>I=-SV-Uで
,Feshbachは
共 に
鳴 項Sres=Σnan/(E-
の エ ネ ル ギ ー 平 均 は0で あ る.こ
間 に は 相 関 が あ る こ と を 示 す.SCはSC=Sres-<Sres>Iで
一 方
同 時 に 含 む 形,
は な く,
れ は共 鳴 項 の
与 え ら れ る.
射 影 演 算 子 に よ る 統 一理 論 を 展 開 し た60).波 動 関 数 のHibert
空 間 を 入 射 チ ャ ネ ル を含 む 任 意 の 部 分 空 間(P空 P空 間 を支 配 す る 有 効 ハ ミル トニ ア ンHeffを の エ ネ ル ギ ー 平 均U=はP空
間)と
そ れ 以 外(Q空
求 め る.Heffの
間)に
分 け,
中 の ポ テ ン シ ャ ルVeff
間 を 入 射 チ ャ ネ ル に 限 れ ば 光 学 ポ テ ン シ ャ ル,P
空 間 に 入 射 チ ャ ネ ル に 強 く結 合 し た チ ャ ネ ル まで 入 れ れ ば チ ャ ネ ル 結 合 法 の ポ テ ン シ ャ ル(行
列)と
な る.
私 達 は こ のFeshbachの
の よ う に,Dの た61).た
理 論 形 式 を使 っ て,S行
部 分 と 共 鳴 項,Sres=Σnan/(E-Wn)の
だ し,Wn=En+Гn/2で
与 え ら れ る.ま
列を
あ る.<S>=SD=SUで
た,<Sres>=0で
る こ と を 意 味 す る.そ
和 の 形 に 書 け る こ と を示 し
あ る.こ
あ る か ら,ScはSc=Sresで
れ は各 共 鳴項 が互 い に統 計的 に 無相 関 で あ
の 意 味 で こ の 式 は,Dが
存 在 す る場 合 の 統 計 的 理 論 を 展 開 す る
場 合 の 基 礎 と し て 適 し て い る62).
最 後 に,統
一 理 論 の 基礎 と して ラ ン ダ ム 行 列 の 理 論63)が あ る こ と を付 け 加 え る.
ハ ミル トニ ア ン の 非 摂 動 系 に よ る行 列 要 素 が ラ ン ダ ム で あ る と仮 定 す る と,断 面 積 等 の 統 計 的 平 均 が 解 析 的 に 計 算 で き る こ とが 示 さ れ た.こ に 取 り扱 う可 能 性 が 開 け た.こ
れ に よ っ てDとCを
統一 的
の理 論 に よ る実 際 の 計 算 に つ い て は 今 後 を期 待 し た
い.
25.5
終
わ
り
に
核 反 応 の 研 究 は 着 実 に そ の 範 囲 と深 さ を 広 げ て き た.現 段 階 で は,軽 直 接 反 応 で の 興 味 の 中 心 は 再 び連 続 状 態 へ の 遷 移(数GeV以 定 ス ピ ン ・ア イ ソ ス ピ ン ・パ リテ ィの 状 態 の励 起,前 に 移 っ て い る.陽
イオ ンに よ る
下 のエ ネル ギ ー での特
平 衡 多 段 階 過 程,破
砕 反 応 等)
子-重 陽 子 衝突 を は じめ とす る少 数 核 子 系 の 反 応 は依 然 と し て 重 要
な 研 究 課 題 で あ る.天 体 核 物 理 の 分 野 で は 超 低 エ ネ ル ギー 荷 電 粒 子 の 捕 獲 反 応 の 研 究 に 進 展 が あ る.重
イ オ ン 反 応 で は クー ロ ン 障 壁 以 下 の 低 エ ネ ル ギ ー で の 反 応,超
重核
の 生 成 反 応 な ど に 研 究 の 前 線 が 広 が っ て い る.近 核,ハ
イ パ ー 核 に 関 す る も の で,そ
反 応 な ど が あ る.ま
た,次
年 の 新 し い盛 ん な研 究 領 域 は 不 安 定
れ ら の 生 成 と 分 光 学,不
の 大 き な 研 究 課 題 に は,今
安 定 核 を入 射 粒 子 とす る
ま さ に実 験 が 始 ま っ た相 対 論 的
高 エ ネ ル ギ ー 重 イ オ ン 反 応 に よ る 高 温 高 密 度 ハ ド ロ ン 物 質,特 ン ・プ ラ ズ マ,の
形 成 と 崩 壊 が あ る.こ
に クォ ー ク ・グ ル ー オ
れ ら 研 究 が 今 後 ど の 様 な 新 し い 世 界 に 導 くの
か 興 味 は 尽 き な い. 核 反 応 論 の 進 展 の 中 で,直 果 た し て き た.そ
接
・複 合 核 過 程 を 中 心 と す る 理 論 は 常 に 基 本 的 な 役 割 を
れ が 築 か れ て き た過 程 の 中 で 本 稿 で 述 べ た よ うな努 力 も あ っ た こ と
を 知 っ て 頂 け た ら 幸 い で あ る.言 極 く 一 部 に 過 ぎ な い.こ
者=か
こ で 取 り上 げ た の は 核 反 応 研 究 の
こ で 触 れ な か っ た 多 くの 研 究 と重 要 な 寄 与 が 我 が 国 の 研 究 者
に よ っ て な さ れ て き た.そ 期 待 し た い.(筆
う ま で も な く,こ
れ ら に つ い て は,別
わ い ・み っ じ,九
の機 会 に どなたか が紹介 され るこ とに
州 大 学 名 誉 教 授.1930年
生 ま れ,1953年
東京大
学 理 学 部 卒 業) 参 考文 献 紙 面 の 都 合 も あ り,実
験 の 論 文 の 引 用 は 殆 ど省 略 し た こ と を お 断 りす る.
1) R.Serber:Phys.Rev.72(1947)1114. 2) 野 上 茂 吉 郎 編:新
編 物 理 学 選 集25『
高 エ ネ ル ギ ー 核 反 応 』(日 本 物 理 学 会,1960).
3) S.T.Butler:Proc.Roy.Soc.208A(1951)559. 4) H.H.Barshall:Phys.Rev.86(1952)431. 5) H.Feshbach,C.E.Porter
and
V.F.Weisskopf:Phys.Rev.96(1954)448.
6) 京 大 基 研 編:『 京 都 大 学 基 礎 物 理 学 研 究 所1953∼1978』(1978). 7) M.L.Goldberger:Phys.Rev.74(1948)1269. 8) S.Hayakawa,M.Kawai 9) K.Kikuchi
and
and
K.Kikuchi:Prog.Theor.Phys.13(1955)415.
M.Kawai:Nuclear Matter and
Nuclear Reactions(North-Holland,
1968). 10) た と え ば,A.M.Lane 11) K.Harada
and
and
C.F.Wandei:Phys.Rev.98(1955)1524.
N.Oda:Prog.Theor.Phys.21(1959)260.K.Kikuchi:Nucl.Phys.
12(1953)305,20(1960)601. 12) J.Negele
and
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宇 田 川 猛,吉 (1965).河
田
弘,久
合 光 路,久
保 謙 一,山 保 謙 一,山
浦 浦
元:ELAST
SCAT,INSDWBA-1,INS-PT-8
元:INSDWBA-2,INS-PT-9(1965).(そ
の 後,
岡 井 末 二 に よ る 改 良 が 加 え ら れ た.)T.Une,T.Yamazaki,S.Yamaji
and
H.Yo-
shida:INS-DWBA-3,INS-PT-10(1965). 43)
M.Toyama:Phys.Lett.38B(1972)147.R.Schaeffer
44)
文 献 が 多 い の で,文 西 文 竜:素 Nuclear of
献21と
粒 子 論 研 究52(1976)127.M.Kawai:in Direct
Tokyo,1979).
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初 期 の も の に つ い て は 下 記 を 参 照 さ れ た い.外
Reactions,Fukuoka,1978,ed.M.Tanifuji
Proc.1978 INS and
山
学,今
Int.Symp.
K.Yazaki(INS,Univ.
45)
TWOSTP,外 Aoki Broglia and
46) 47)
山
and
学,五
十 嵐 正 道,1991,TWOFNR,五
M.Yabe].特 and
十 嵐 正 道,1991[英
訳,Y.
に 二 核 子 移 行 反 応 に つ い て は,U.Gotz,M.Ichimura,R.A.
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T.Tamura:
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Sons,
26.
不 安 定 核 ビー ム に よ る物 理 谷
26.1 1980年
代 の 中 頃 に,核
じ
め
る も の で あ る.最 近 で は,種
勇
夫
に
物 理 の 分 野 で 新 し い 道 具(不
た1).不 安 定 核 ビー ム とは,安
して い るが,不
は
畑
安 定 核 ビ ー ム)が
開 発 され
定 同位 体 に加 えて不安 定 同位体 をビー ム として利 用 す 々 の 粒 子 ビ ー ム が,多
くの 研 究 分 野 で 重 要 な役 割 を果 た
安 定 核 ビ ー ム は こ れ ま で に な い 優 れ た 特 徴 を持 っ て お り,そ の 使 用 に
よ り原 子 核 物 理 や,宇
宙 物 理 で は 新 た な 発 展 の 道 が 開 か れ た.こ
核 ビー ム の 特 徴 を 述 べ,そ
の 後,新
こ で は,ま
ず不 安定
し く開 か れ た核 物 理 学 研 究 に つ い て 簡 単 に 紹 介 す
る. 天 然 に 存 在 す る原 子 核 の イ オ ン を加 速 し た 重 イ オ ン は,1950年 研 究 や 応 用 に使 用 され て い る.天 然 に は,安 だ け,多
くて も数 種 しか 存 在 しな い.そ
代 以 降,多
方面の
定 な ア イ ソ トー プ は 元 素 に よ っ て は 一 種
の た め,重
イ オ ン を用 い た 研 究 で は,一 種 の
元 素 に 限 る と,質 量 や ス ピ ン を変 化 さ せ て 系 統 性 を 見 る こ と は 不 可 能 で あ っ た. 不 安 定 核(ベー
タ崩 壊,核
分 裂 等 で 自 然 壊 変 す る 原 子 核)は6,000種
考 え ら れ て お り(安 定 核 は 約270種),こ
以上 もあ る と
れ らの ビー ム は 利 用 可 能 な 核 種 及 び 方 法 を
大 幅 に 増 や し,種 々 の 系 統 的 研 究 の 可 能 性 を開 くこ と に な っ た.不 安 定 核 ビ ー ム の 利 用 上 の 特 徴 を まず リ ス トす る と, 1) 元 素 及 び ア イ ソ トー プ の 選 択 が 自 由 で あ る. 2) 植 え 込 み の 位 置,深
さ の コ ン トロー ル が 容 易 で あ る.
3) 放 射 性 で あ る の で検 出感 度 が 高 い. 4) 寿 命 が 選 べ る. 5) ス ピ ンが 選 べ る. な ど で あ る.こ
の よ う な特 徴 は,あ
る も の は 重 イ オ ン,他
の も の は 放 射 性核 一 般 の 特
徴 と して 使 わ れ て き た もの が ほ とん ど で あ る.不 安 定 核 ビ ー ム は,こ え 合 わせ て持 ち,こ
れ ま で 不 可 能 で あ っ た か,ま
れ らの 特 徴 を加
た は非常 に困難 で あ った現象 の解 明
に 役 立 つ もの と信 じ られ て い る. 26.2 26.2.1 核
半
新 し く開 か れ た 核 物 理
径
原 子 核 の 構 造 を研 究 す る上 で,こ
れ ま で の 大 き な 制 限 は 散 乱 実 験 に 使 え る ビー ム 及
び ター ゲ ッ トが,安
定 な 核 に 限 られ る こ とで あ っ た.こ の 制 限 は核 物 理 学 に と っ て,
単 に 多 くの 原 子 核 へ の ア ク セ ス を妨 げ る だ け で な く,研 究 が 可 能 な現 象 の 種 類 を狭 い 範 囲 に 縛 る も の で あ り,基 本 的 な 意 味 を も って い た.こ の 制 限 が あ る ため,核 磁 気 モ ー メ ン ト,一 粒 子 軌 道,巨 は,核
半 径,
大 共 鳴 散 乱 過 程 や 反 応 機 構 な どの 詳 細 な 実 験 デ ー タ
図 表 上 で安 定 線 近 くの 細 い 帯 の 中 で しか 得 られ て い な か っ た.
不 安 定 核 ビー ム の 登 場 に よ り,こ の 制 限 は 一 気 に取 り払 わ れ た.た 不 安 定 核 の 半 径 や 磁 気 モ ー メ ン トが,次
々 と決 定 さ れ,さ
とえ ば,短
寿命
らに短寿命 核 の散 乱過程 の
測 定 が な さ れ る よ うに な っ た.都 合 の 良 い こ とに,不 安 定 核 とい う新 しい サ ン プ ル を 取 り扱 う と い う こ と を除 い て は,こ 確 立 し た実 験 法,解
析 法 が,そ
ー タ と し て望 ま れ て い た
,ア
れ ま で安 定 核 の 研 究 に お い て 開 発 さ れ,発
の ま ま 使 え る.こ の た め,系 イ ソ ス ピ ンや,核
展 し,
統 的研究 の重 要 なパ ラメ
子 分 離 エ ネ ル ギ ー な ど を 自由 に 変 化 さ
せ て 研 究 す る こ とが 可 能 と な っ た. さ て,こ
の よ う な 中 で 発 見 さ れ た 新 し い核 構 造 と現 象 に つ い て,以
子 核 の 密 度分 布 は,電
下 に 述 べ る.原
子 散 乱 に よ る電 荷 分 布 と,高 エ ネ ル ギー 陽 子 散 乱 に よ る核 子 分
布 の 測 定 に よ り,陽 子 分 布 と 中性 子 分 布 を分 離 し て測 定 さ れ る.こ
れ らの 結 果 か ら,
以 下 の 三 つ の重 要 な ル ー ル が 得 られ て い た. 1) 核 半径 は 質 量 数(す 2) 核 表 面 の 厚 さ(密
な わ ち 総 核 子A)の1/3乗 度 が 減 少 す る 部 分)は
に 比 例 す る.
す べ て の 核 で 同 じ で あ る.
3) 陽 子 と 中 性 子 の 分 布 は 相 似 で あ る. こ れ らの 性 質 は 核 力 の 飽 和 性,到 る もの と考 え られ た.し
達 距 離,対
称 性 な どの 基 本 的 な 原理 か ら生 み だ され
か し不 安 定 核 の 密 度 分 布 の 測 定(測
定 法 に つ い て は文 献1)
に よ り,こ れ ら は安 定 核 の み で成 り立 つ 特 殊 な 性 質 で あ る こ とが わ か っ て きた.中 子 ス キ ン や 中性 子 ハ ロー の 出 現 が そ の こ と を 日の 下 に 照 ら し出 し た.こ
性
れ らの 現 象 は
ど の よ うな も の か 見 て み よ う. 26.2.2
中性 子 ス キ ン
ま ず,8He+Cと4He+C反 応 の 全 相 互 作 用 断 面 積 や 中 性 子 除 去 反 応 断 面 積 か ら, 8He核 で は 中性 子 分 布 の 平 均2乗 半 径 が ,陽 子 分 布 の そ れ よ り約1fmも 大 きい こ と が わ か り,表 面 付 近 に は 陽 子 が ほ とん ど 存 在 せ ず,中 が で き て い る こ とが 発 見 さ れ た.こ
性 子 だ け の 層"中
性 子 ス キ ン"
れ ほ ど厚 い 中性 子 層 が 観 測 さ れ た の は初 め て の こ
と で あ る2). ま た,Naの
ア イ ソ トー プ で 系 統 的 に,陽
子 分 布 の 半 径 と 中性 子 分 布 の 半 径 が 決 定
さ れ た.陽 子 半 径 は ア イ ソ トー プ シ フ トの 測 定 か ら,中 性 子 の 半 径 は全 相 互 作 用 断 面 積 か ら決 定 さ れ た3).そ の 結 果,安
定 な ア イ ソ トー プ23Naで
は 陽 子 と中性 子 の 半径
は 等 く,そ こ か ら中 性 子 が 増 す に つ れ て徐 々 に 中性 子 の 半 径 が 陽 子 半 径 よ り大 き くな っ て い き,0.3fm以
上 の 厚 さ の 中性 子 ス キ ン が で き て い る.ま た23Naよ
り中 性 子 欠
損 核 で は 陽 子 半 径 の ほ う が 大 き くな っ て い る.こ 中 性 子 ス キ ン が,中
の よ うに中性子 過剰 な不安 定核 で は
性 子 欠 損 核 で は 陽 子 ス キ ンが 作 ら れ て い る こ と が 明 ら か に な っ
た. 以 前 に は,安
定 核 で は 中性 子 数 が 陽 子 数 の1.5倍
の 厚 さ は0.1fm以
下 と見 積 も ら れ て い た の で,驚
に よ り,現 在,中
も あ る208Pbで
す ら 中性 子 ス キ ン
くべ き こ と で あ る.そ
の後 の発 展
性 子 ス キ ンは 中 性 子過 剰 不 安 定 核 で は,一 般 的 に 存 在 す る も の と考
え ら れ て い る. 26.2.3
中性 子 ハ ロー
中 性 子 を 増 や し て ゆ く と,ア イ ソ トー プ は 束 縛 エ ネ ル ギ ー が 小 さ くな っ て,よ 安 定 に な り寿 命 が 短 くな る.そ
して,そ
れ 以 上 中 性 子 を付 け加 え て も束 縛 状 態 を作 ら
な くな る極 限 が あ り,そ れ を 中 性 子 ドリ ッ プ 線 と呼 ぶ.中 短 寿 命 核11Liや11Beに
り不
性 子 ド リ ップ 線 近 くに あ る
は 密 度 は 薄 い が 大 き く拡 が っ た 中 性 子 の 霧(中
性 子 ハ ロー)
が 存 在 す る こ とが 核 半 径 の 系 統 的 測 定 か ら発 見 さ れ た4).中 性 子 ハ ロ ー は 中 性 子 の 分 離 エ ネ ル ギー が 小 さ く な っ た 時 に 生 じ る.た KeV,
11Liで は300KeVで
あ る.安
と え ば11Beで
は 分 離 エ ネ ル ギ ー は540
定 核 で の 分 離 エ ネ ル ギ ー6∼8MeVに
比 べ て極
端 に小 さい こ とが わ か る. そ の 他 に も,17B,
19C等 ほ と ん ど の 元 素 の ド リッ プ 線 近 傍 に は 中 性 子ハ ロ ー を持 っ
た 原 子 核 が あ る こ とが わ か っ た.こ 核 構 造 で あ り,ポ
の 中性 子 ハ ロ ー 核 は,こ
テ ン シ ャ ル の変 化,新
構 造 を持 っ た 原 子核 な ど,種 化 を誘 導 す る た め,下
れ ま で に な か っ た新 し い
し い低 エ ネ ル ギー に お け る 巨 大 共 鳴,分
々 の 新 し い 問 題 を投 げ か け て い る.ま
た,粒
子状
子軌道 の変
記 の 魔 法 数 の 変 化 な ど の 発 見 の 手 が か りに も な っ た5).
26.2.4 魔 法 数 の 変 化 原 子 核 の 魔 法 数 は,原 子 核 の結 合 エ ネ ル ギー が 増 大 す る こ と等 に よ り発 見 され た. 1948年
メ イ ヤ ー(Mayer)と
イ ェ ン セ ン(Jensen)は,核
力 の 中 に 軌 道 ・ス ピ ン 相
互 作 用 を 導 入 す る こ とに よ り,す べ て の 魔 法 数 をみ ご とに 説 明 し,そ れ を基 に した 殻 模 型(シ
ェ ル モ デ ル)は,原
子 核 の 性 質 を 説 明 す る 強 力 な 道 具 とな っ た.そ
魔 法 数 は 陽 子 と 中性 子 の 混 合 比 に よ っ て 変 化 しな い,す 数 に よ ら ず,ま
れ 以 来,
な わ ち 陽 子 の 魔 法 数 は 中性 子
た 中 性 子 の 魔 法 数 は 陽 子 数 に よ ら な い と考 え られ て き た.し
か し,そ
れ は 安 定 な 原 子 核 の 性 質 か ら認 識 され た も の で あ っ た. と こ ろ が 最 近 の 不 安 定 核 ビ ー ム を用 い た実 験 に よ り,短 寿 命 原 子 核,特 比 べ て 中 性 子 数 の 大 き な 中性 子 過 剰 核 で,魔 測 定 結 果 が 発 表 され た.こ 法 数8が,陽 た6).さ
子 数 が10以
らに,中
法 数 が 消 滅 す る こ と を示 す,い
れ らに よ る と,陽 子 数 が5よ 下 で は 中 性 子 の 魔 法 数20が
性 子 過 剰 核 の,半
中 性 子 過 剰 の 場 合 の み16と
に 陽子数 に くつ か の
り小 さ い と き に は 中 性 子 の 魔 消 え て い る とい う もの で あ っ
径 の 異 常 と分 離 エ ネ ル ギ ー の 系 統 的 な 研 究 か ら,
い う魔 法 が,新
し く現 れ る こ と が,最
近 発 見 さ れ た7).
こ れ らの 観 測 は,魔 も な っ て,変
法 数 は 不 変 の もの で は な く,中 性 子 と陽 子 数 の 比 が 変 化 す る に と
わ っ て い く こ と を示 して い る.不 安 定 核 に お け る魔 法 数 は,こ
れ か らの
観 測 で 大 き く変 え られ る 可 能 性が あ る. 26.3
お
わ
り
に
原 子 核 物 理 学 に お け る不 安 定 核 ビ ー ム の 利 用 に つ い て 述 べ た.不 安 定 核 ビー ム は そ れ だ け で は な く,天 体 核 物 理 学 に お い て も,大
きな 可 能 性 を開 い た.そ
の 中 で も,最
も注 目 さ れ て い る の が 元 素 合 成 過 程 の 研 究 で あ る. 非 一 様 ビ ッ グ バ ン モ デ ル に 関 連 し た8Li(α,n)11B反 CNOサ
イ ク ル か らHotCNOサ
応 の 研 究8),高 温 の 恒 星 で の
イ ク ル へ の 変 化 の 始 ま り と な る13N(p,γ)14Oと
に 続 く反 応9),太 陽 ニ ュ ー ト リ ノ の 生 成 に 重 要 な7Be(p,γ)8B反 が 関 与 した 反 応 の研 究 が 次 々 と進 ん で い る.今 後,よ
それ
応 な ど10),不 安 定 核
り重 い 元 素 の 合 成 過 程 で あ る,
R-過 程 な ど の 研 究 も進 む もの と期 待 され る. 不 安 定 核 ビ ー ム は,そ
の他 に も,物 性 研 究 に,希
釈 不 純 物 に よ るNMR,短
寿命 核
を 親 核 とす る メ ス バ ウ ワ ー 分 光 な ど に も利 用 が 広 が りつ つ あ る. 今 後 の 発 展 が 期 待 さ れ る分 野 で あ る.(筆 RIビ ー ム科 学 研 究 室.1947年
生 まれ,1969年
者=た に は た ・い さ お,前
理化 学研究 所
大 阪大 学 理 学部 卒 業)
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Partitle
HEAVY-ION
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T.Motobayashi,et
al.:Phys.Rev.Lett.68(1992)1283. al.:Phys.Lett.B264(1991)259.S.Kubono:Nucl.Phys.A588
(1995)305. 10)
T.Motobayashi,et
D .A.
Corporation,1989)p.443.I.Tanihata:Progress
al.:Phys.Rev.Lett.73(1994)2680.
H.Tok:
27.
高 エ ネ ル ギー核 物理 初
ハ ドロ ン(陽
子,中
の 束 縛 状 態 で,量
性 子,パ
量 子 電 気 力 学(QED)の 言 え な い よ う に,ハ い.た
の 励 起 状 態)は,ク
男
ォー ク とグルオ ン
ハ ミル トニ ア ン が 書 け て も,超 伝 導 現 象 が 理 解 で き た と は
真 空 は,ク
ミル トニ ア ン か ら の 自 明 な 帰 結 で は な
ォ ー ク ・グ ル オ ン の 凝 縮 状 態 で あ る 事 が わ か っ て
れ は 本 質 的 に 摂 動 論 で は 扱 え な い現 象 で あ る.今
(し ば しば ハ ドロ ン 物 理 学 と呼 ば れ る の で,こ 造,QCDの
哲
そ の 多 様 な構 造 や 相 互 作 用 を 支 配 し て い る.
ドロ ン の 力 学 は,QCDハ
と え ば,QCDの
い るが,こ
イ 中 間 子 や,そ
子 色 力 学(QCD)が
田
真 空 構 造,高
日の高 エネル ギー核 物理
こ で もそ れ に 従 う)は,ハ
温 高 密 度 核 物 質 の 構 造 と相 転 移 な ど を,QCDに
ドロンの構 基礎 をお い
て,ク
ォ ー ク ・グ ル オ ン の 量 子 多体 問 題 と い う観 点 か ら研 究 す る分 野 と位 置 付 け られ
る.以
下,ハ
ドロ ン物 理 学 の 成 立 に 至 る過 程 と現 在 の フ ロ ン テ ィ ア に つ い て 述 べ よ
う.
27.1 ハ ドロ ン物 理 学 の 成 立 過 程 非 整 数 電 荷 を 持 つ ク ォ ー ク は,ハ
ドロ ン の 分 類 学 に お け る 仮 想 粒 子 と して1964年
に 初 め て 導 入 さ れ た.更
か ら始 ま っ た ス タ ン フ ォ ー ド線 形 加 速 器 セ ン タ
ー(SLAC)に
に,1967年
お け る 電 子-核 子 の 深 部 非 弾 性 衝 突 実 験 で ,核 子 中 に 存 在 す る 点 状 粒 子
の 存 在 が 明 らか に な っ た.そ ー クの 発 見 な どに よ り ,ク
の 後 の 詳 細 な レ プ トン-核 子 衝 突 実 験 や,チ ォ ー ク と グ ル オ ン を支 配 す る 力 学 がQCDで
1970年 代 半 ば に は 確 立 す る.QCDは,カ
ラーSUc(3)ゲ
ャー ム ク ォ あ る 事 が,
ー ジ 対 称 性 を 持 ち,そ
の帰
結 と して 以 下 の 特 徴 を持 つ. (1) 漸 近 自 由 性:QCDの
有 効 結 合 定 数 が 高 エ ネ ル ギー で 対 数 的 に 弱 くな る現 象.
70年 代 初 頭 に 理 論 的 に 証 明 され,現
在 で は 高 い 精 度 で 実 験 的 に確 か め られ て い
る. (2) ク ォ ー クの 閉 じ込 め:QCDの ー クや グ ル オ ン は,カ れ る 現 象.現
有 効 結 合 定 数 が 低 エ ネ ル ギー で 強 くな り,ク ォ
ラーSUc(3)の1重
在 で は,格
子QCDの
証 拠 が 蓄 積 さ れ て い る.し
か し,そ
(3) カ イ ラ ル 対 称 性 の 自発 的 破 れ:低 め,真
項 で あ るハ ドロ ン の 中 に 閉 じ込 め ら
数 値 シ ミ ュ レー シ ョ ン に よ り,強 い 数 値 的 の解 析 的 証 明 は ま だ 存 在 しな い. エ ネ ル ギ ー で のQCDの
空 中 で ク ォー ク-反 クォ ー ク対 が 凝 縮 す る.こ
と し た 時 にQCDが
れ は,ク
強 い相 互 作 用 の た ォ ー ク質 量 をゼ ロ
持 つ カ イ ラ ル 対 称 性 が 自発 的 な 破 れ を お こ し,同 時 に ク ォ
ー ク の 有 効 質 量 が 生 ま れ る事 を 意 味 す る .ま
た,パ
イ 中 間 子 は,カ
イラ ル対称
性 の 自発 的 破 れ に伴 う南 部-ゴ ー ル ドス トー ン粒 子 と 同 定 で き る. 1970年 代 にQCDが
確 立 し た 後,1980年
代 初 頭 か らハ ドロ ン 物 理 学 は 新 し い 展 開
を みせ る.そ れ は ク ォ ー ク ・グル オ ンの 多体 問 題 で あ る.た
と え ば1980年
構 成 子 クォ ー ク模 型 の 核 力 へ の 応 用 が な さ れ た.こ
子核 の 安 定 性 に 必 須 で あ
れ は,原
代 初 め に,
る核 子 間 の 近 距 離 で の 強 い 斥 力 の 起 源 を,核 子 の ク ォ ー ク構 造 に 求 め る も の で,原
子
核 物 理 に お い て ク ォ ー ク の 自由 度 が 本 格 的 に 導 入 さ れ る端 緒 に な る.ま
子
QCDの
数 値 シ ミュ レ ー シ ョン で,QCDの
ル オ ン ・プ ラ ズ マ の 存 在 が 示 され た の も こ の 時 期 で あ る.以 ン ジ物 質,高
密 度 星 中 で の ク ォー ク物 質,カ
質 中 で の ハ ドロ ン の構 造 変 化,相 マ な ど,さ
た,格
有 限 温 度 相 転 移 と,高 温 で の ク ォ ー ク ・グ 後,EMC効
果,ス
トレ
ラー 超 伝 導 ,核 子 の ス ピ ン構 造 問 題,媒
対 論 的 重 イ オ ン衝 突 と ク ォ ー ク ・グ ル オ ン ・プ ラ ズ
ま ざ ま な 方 向 で の ク ォー ク・ グ ル オ ン 多体 問 題 の 研 究 が80年
代 ,90年
代
を通 じて 進 展 して き た.
27.2 ハ ドロ ン物 理 学 の フ ロ ン テ ィ ア 現 在 の ハ ドロ ン 物 理 学 に は,4つ 第1の
フ ロ ン テ ィ ア は,高
の 主 要 な フ ロ ン テ ィ ア が あ る.
温 で のQCD相
転 移 で あ る.ビ
ッ グ バ ン宇 宙 論 で は,宇
宙 は 高 温 状 態 か ら 始 ま り,膨 張 に 従 っ て 温 度 を下 げ な が ら,約100億 て,現
在 に至 っ た と考 え ら れ て い る.ビ
2×1012K(約170MeV)を マ 状 態 に あ っ た.し
ッ グ バ ン か ら約10-5秒
宙 はTc=
越 え る 温 度 に あ り,一 様 な ク ォ ー ク ・グ ル オ ン の プ ラ ズ か し,温 度 がTcよ
り低 くな る と,ク ォ ー ク ・グ ル オ ン は ハ ドロ
ン の 中 に 閉 じ込 も っ て し ま う.こ の 閉 じ込 め 相 転 移 に 伴 い,系 急 激 に減 少 す る.こ
年 の年 月 を経
ま で は,宇
れ は,高
低 温 側 で は カ ラー1重
の エ ン トロ ピー 密 度 は
温 側 で は カ ラー の 自 由 度 が 解 放 され て い る の に 対 して,
項 の 励 起 しか 許 され な い た め で あ る.こ の 高 温QCD相
実 験 室 で 生 成 す る 目的 で 建 設 さ れ た の が,ブ
ル ッ クヘ ブ ン 国 立 研 究 所(BNL)の
対 論 的 重 イ オ ン加 速 器RHICで,2000年6月
か ら稼 動 を 始 め て い る.RHICで
核 子 あ た り最 高100GeVで
重 イ オ ン を衝 突 させ,衝
転移を 相 は,
突 の 中 間 状 態 で クォ ー ク ・グ ル
オ ン ・プ ラズ マ を生 成 す る事 を 目標 と して い る.相 転 移 の シ グ ナ ル と して,ス ジ ネ ス の 異 常 生 成,J/Ψ
粒 子 の 異 常 抑 制,レ
理 論 的 予 言 が あ る.実 験 的 に は,こ
トレ ン
プ トン対 の 異 常 ス ペ ク トル な ど複 数 の
れ ら複 数 の シ グ ナ ル を 同 時 観 測 す る事 で相 転 移 を
確 認 す る事 に な る.今 後 数 年 間 に,RHICか
らの 大 量 の デ ー タ が 蓄 積 され,高
温核 物
質 と ク ォ ー ク ・グ ル オ ン ・プ ラ ズ マ の 研 究 が 大 き く進 展 す る と期 待 さ れ て い る. 第2の
フ ロ ン テ ィ ア は,高
は,半 径 が 約10km,質 表 面1km未
密 度 核 物 質 と 中 性 子 星 の 構 造 の 研 究 で あ る.中
量 が 太 陽 の 約1.4倍
満 の 固 体 層 を除 け ば,中
の 高 密 度 星 で あ る.ク
性子星
ラ ス トと呼 ば れ る
性 子 の 一 様 物 質 に わ ず か な 陽 子 と電 子 が 混 ざ っ
た 量 子 液 体 相 が 中性 子 星 の 大 部 分 を 占 め る と考 え られ て き た.し kg/cm(原
子 核 の 密 度 の 約3倍)を
含 む ハ イ ペ ロ ン の 混 合,K中
越 え る 中 性 子 星 の 深 部 で は,ス
間 子 凝 縮 体,そ
可 能 性 も あ る.中 性 子 星 は,こ の 格 好 の 対 象 な の で あ る.さ
か し な が ら,1012
し て 高 密 度 ク ォ ー ク物 質 が 現 れ て い る
の よ う な 高 密 度 に お け るQCDの ら に,星
トレ ン ジ ネ ス を
諸 相 を 研 究 す る上 で
全 体 が 非 閉 じ込 め 相 に あ る ク ォ ー ク で 構 成 さ
れ,ス
トレ ン ジ ク ォー ク を 大 量 に 含 む クォ ー ク星 が 存 在 す る可 能 性 も あ る.観
は,そ
の 質 量 や 半 径 の み な らず,パ
ル サ ー の 回 転 周 期 や そ の変 動,磁
場,温
測面 で
度 な どの
観 測 デ ー タ の 蓄 積 が 進 ん で お り,中 性 子 星 や ク ォ ー ク星 の 内部 構 造 に 関 す る 拘 束 条 件 とな っ て い る.理 論 的 に は,通
常 の 原 子 核 や ハ イ パ ー 核 の デー タか ら得 られ る核 物 質
や 核 力 の 情 報 を 用 い た 外 挿 が,こ
れ ま で の 標 準 的 手 法 で あ っ た が,今
か ら の 第 一 原 理 計 算 の 発 展 が 期 待 さ れ る.ま い て は,ハ
イ ペ ロ ン-核 子,ハ
た,中
後,格
子QCD
性 子 星 内部 の ハ イペ ロ ン 混 合 に つ
イ ペ ロ ン-ハ イペ ロ ン 相 互 作 用 が そ の 鍵 に な り,2006
年 完 成 を 目指 し て 東 海 村 に建 設 が 開 始 さ れ て い るJapan
Hadron
Facility (JHF)で,
そ の 実 験 的 研 究 が 大 き く進 展 す る と期 待 さ れ て い る. 第3の
フ ロ ン テ ィ ア は,高
ドロ ン-ハ ドロ ン 反 応)に
エ ネ ル ギ ーQCD過
よ る,核
プ トン-ハ ドロ ン 反 応 及 び ハ
子 の ク ォー ク ・グ ル オ ン 構 造 の 研 究 で あ る.ク
ー ク ・グ ル オ ン複 合 系 で あ る核 子 は,そ らず,ク
程(レ
ォ
の 内部運動 が本 質 的に相対 論 的で あ るのみ な
ォ ー ク・ グ ル オ ン の 対 生 成 対 消 滅 が 頻 繁 に 起 こ る とい う点 で,こ
れ ま で知 ら
れ て い る分 子 ・原 子 ・原 子 核 な ど の いか な る 束 縛 系 と も異 な っ て い る.レ
プ トン に よ
る 核 子 の 深 部 非 弾 性 散 乱 や,ハ
ドロ ン-ハ ドロ ン の ドレル ー ヤ ン 過 程 の 断 面 積 は,ク
ォー ク ・グ ル オ ンが 関 与 す る高 エ ネ ル ギーQCD素 子 中 で の 分 布 関数 に 因 子 化 で き る(QCDの 計 算 す れ ば,縦 運 動 量分 布,縦
過 程 と,ク
因 子 化 定 理).し
ス ピ ン分 布,横
ォ ー ク ・グ ル オ ン の 核
た が っ て,素
ス ピ ン分 布,歪
クォ ー ク ・グ ル オ ン分 布 関 数 を 実 験 デ ー タ か ら 引 き 出 す こ とが で き る.す の ス ピ ン1/2が
で に,核
子
ク ォ ー ク ・反 ク ォ ー ク ・グ ル オ ン に ど の よ うに 分 配 さ れ て い る の か
(核子 の ス ピ ン 問 題),低
運 動 量 で の グ ル オ ン分 布 と ポ メ ロ ン,偏 極 グ ル オ ン分 布,な
どが 精 力 的 に 研 究 さ れ て い る.実 験 的 に は,HERA Tevatron(フ
過程 を摂動
対 称 分 布 な ど,色 々 な
ェ ル ミ国 立 研 究 所)で
共 同 研 究 に よ る偏 極 ミュー オ ン-陽 子 衝 突,RHICで ます ま す 新 し い デ ー タが 現 れ,核
(DESY)で
の 陽 電 子-陽 子 衝 突,
の 陽 子-反 陽 子衝 突 実 験,CERNで
のCompass
の 偏 極 陽 子-陽 子 衝 突 な ど,今 後
子 の ク ォー ク・ グ ル オ ン構 造 が よ り鮮 明 に 見 え て く
る で あ ろ う. 第4の
フ ロ ン テ ィ ア は,QCDの
来,格
子 ゲ ー ジ理 論 は 第1原
た.現
在 で は,1Tflops級
る 近 似(ク
ェ ン チ近 似)を
数 値 シ ミュ レ ー シ ョ ン で あ る.1974年
理 か らQCDを
解 く最 も 有 力 な 方 法 と し て 発 展 し て き
の 超 並 列 計 算機 を用 い て,ク 用 い れ ば,ハ
の提 唱以
ォ ー クの 真 空 偏 極 を 無 視 す
ドロ ン の 質 量 を 実 験 値 に 対 し て10%以
内の
精 度 で 計 算 で き る.ま QCD過
た,高
温QCD相
程 で の ハ ドロ ン行 列 要 素,弱
転 移 の 相 図 や 相 転 移 温 度,高
エネ ルギー
い 相 互 作 用 の 関 与 す るハ ドロ ン 行 列 要 素 な ど が
研 究 さ れ て お り,第1,第3の
フ ロ ン テ ィ ア の 拡 大 に 欠 か せ な い 要 素 とな っ て い る.
今 後,10
の計 算 機 の 開 発,ク
Tflops,100
Tflops級
ェ ン チ 近 似 を越 え た精 密 計 算,第
2の フ ロ ン テ ィ ア に 関 連 し た有 限 密 度 に お け る シ ミュ レー シ ョ ン 技 法 の 開 発 が 進 む で あ ろ う. 以 上,高
エ ネ ル ギ ー 核 物 理(ハ
ドロ ン物 理 学)の
成 立 と フ ロ ン テ ィ ア を概 観 した.
そ の 柱 を一 言 で 述 べ れ ば,「 ク ォ ー ク ・グ ル オ ン の 量 子 多 体 問 題 」と言 う こ と が で き る.そ
の 対 象 は,ハ
ドロ ン の 構 造,宇
宙 初 期,高
密 度 星,そ
し て実 験 室 で の 高 温 プ ラ
ズ マ 生 成 な どの 広 い 領 域 に また が り,理 論 ・実 験 ・観 測 が あ い ま っ た 研 究 が 進 展 す る と考 え ら れ る.(筆 れ,1981年
者=は つ だ ・て つ お,東 京 大 学 大 学 院理 学 系研 究 科 教 授.1958年
京都 大 学 理 学部 卒 業)
生ま
Ⅳ 超
高
温
28.
核 融 合 をめ ざ した プ ラ ズマ の研 究 宮
28.1
は
核 融 合 反 応 が 発 見 さ れ た の は1920年
じ
め
本 健
郎
に
代 の こ と で あ っ た.そ
れ は,陽
子 や重 陽 子の
粒 子 線 を,原 子 番 号 の 小 さ い 元 素 を 標 的 に して ぶ つ け る と い う もの で あ る.し の よ う な 方 法 に よ る と,粒 子 線 の エ ネ ル ギ ー の 大 部 分 は,標
か しこ
的 元 素 の イ オ ン化 そ の 他
の 非 弾 性 衝 突 に よ り熱 化 に 費 や され て し ま い,核 融 合 反 応 を起 こす 確 率 は 極 め て 小 さ くな っ て し ま う. 現 在 エ ネ ル ギー 開 発 をめ ざす 核 融 合 は,高 温 プ ラ ズ マ を利 用 して い る.プ に お い て は,水 な い.ま
た イ オ ンや 電 子 が クー ロ ン衝 突 を繰 り返 して も,も
に 断 熱 的 に 閉 じ込 め ら れ て い れ ば 温 度 は 下 が らな い(た ン 放 射 な ど は 無 視 で き る と仮 定 した 場 合).し て お くこ とが で き れ ば,ク え,エ は,1億
ラズマ 中
素 イ オ ンが さ ら に 高 次 の 電 離 を し た り励 起 さ れ た りす る こ とは あ り得
ン ク ロ トロ
た が っ て 高 温 プ ラ ズ マ を 長 く閉 じ込 め
ー ロ ン 反 発 力 を 乗 り越 え て 核 融 合 反 応 を起 こ す 粒 子 数 が ふ
ネ ル ギ ー を取 り出 す こ と が期 待 で き る.重 水 素D-三 度(10keV)以
しプ ラ ズ マ が あ る領 域 内
だ し制 動 放 射,シ
上 に 加 熱 し,プ
と の積nτEを 少 な く と も1020m-3・s以
ラ ズ マ 密 度nと
ラズマ の場 合
エ ネ ル ギ ー 閉 じ込 め 時 間 τE
上 に す る必 要 が あ る1).
高 温 プ ラ ズ マ の 不 安 定 性 を い か に 抑 制 す るか,放 ー 損 失 を い か に 小 さ くす る か が
重 水 素Tプ
射,対
流,熱
伝 導 に よるエ ネル ギ
,核 融 合 を 目指 す プ ラ ズマ 物 理 の 最 も重 要 な課 題 で あ
る.数 々 の プ ラ ズマ 閉 じ込 め 装 置,加
熱 法 が 考 案 さ れ,試
み られ て き た.そ
れ らか ら
得 ら れ た 多 くの 成 果 の 積 み 上 げ に よ り,途 方 もな い こ と と思 わ れ て い た炉 心 プ ラ ズマ 臨 界 条 件(核
融合 出 力=外
れ る よ う に な っ て きた.か
部 加 熱 入 力)も,よ
うや く大 型 トカ マ ク実 験 に よ り実 現 さ
か る時 期 に あ た って 日本 に お け る こ れ ま で の 研 究 の 道 程 を
た ど っ て み た い. 28.2 制 御 熱 核 融 合 に 関 す る研 究 は,第2次 ら れ,当
大 戦 後 米 国,ソ
時 と して は か な り大 型 の 実 験 装 置(Stellarator
さ れ て い た.し (MHD)不
1958∼1961年
か し 当 初 の 期 待 に 反 し て,プ
安 定 性 を示 す こ とが 観 測 さ れ,核
の 基 礎 的 研 究,国
連,英
国 な どで 極 秘 裡 に 進 め
C, Zeta, Ograな
ど)が 建 設
ラ ズマ が激 しい電 磁 流体 力 学 的
融 合 の 実 用 化 に は ほ ど遠 く,プ
ラズ マ
際 的 な研 究 情 報 の 交 換 の 必 要 性 が 認 識 さ れ る に 至 っ た.1958年
に
第2回
原 子 力 平 和 利 用 国 際 会 議 が ジ ュ ネ ー ブ で 開 か れ,こ
の 会 議 の 核 融 合 部 会 で は,
こ れ ま で 秘 密 の ベ ー ル に 包 まれ て い た 研 究 内 容 が 堰 を切 っ た よ うに 発 表 さ れ た.こ 会 議 を 境 に して 核 融 合 研 究 は 国 際 的 な 研 究 活 動 へ と広 が っ て い っ た.か フ ラ ン ス,ド
の
か る状 況 は,
イ ツ と共 に 後 発 の 日本 の 核 融 合 研 究 者 に と って も,先 発 の 国 々 に 追 い つ
き肩 を並 べ る 機 会 を も た らす こ とに な っ た わ け で,幸
運 な こ と で あ っ た か も知 れ な
い.
1958年
に は,現 在 の プ ラ ズ マ ・核 融 合 学 会 の 前 身 と な る核 融 合 懇 談 会 が 発 足 し,
学 術雑 誌 『 核 融 合 研 究 』 が 誕 生 し た.こ
の 新 し い分 野 の 核 融 合 研 究 に 参 加 して き た研
究 者 の 出 身分 野 は 原 子 核,電
電 物 理 な ど様 々 で あ っ た.プ
ー ト ロ ン(宮 (岡 田実)な
本 梧 楼) ,ヘ
気 工 学,放
リオ トロ ン(宇 尾 光 治),環
ラ ズ マ ・ベ ー タ
本 賢 三),Zピ
ンチ
ど の研 究 が 始 ま っ て い た.
同 じ く1958年
に は,総
理 府,原
子 力 委 員 会 に 核 融 合 専 門 部 会 が 設 置 さ れ,湯
樹 を部 会 長 と して 研 究 方 針 が 検 討 され た.多 別 委 員 会 で も意 見 の調 整 が 行 わ れ た が,結 見康 治 核 融 合 特 別 委 貝 会 長,嵯 総 合 的,基
状 放 電(山
くの 議 論 が 重 ね られ,学
局,湯
術 会 議 核 融 合特
川 部 会 長 は 菊 池 正 士 原 子 力 委 員,伏
峨 根 遼 吉 原 子 力 研 究 所 理 事 と協 議 の 結 果,プ
礎 的 に 研 究 す る研 究 所 と し て,1961年
川秀
ラズマ を
全 国 的 な 協 力 体 制 の も とに 名 古 屋
大 学 に プ ラ ズマ 研 究 所 を 開 設 す る こ と に な っ た2,3).初 代 研 究 所 長 は 伏 見 康 治 で あ る. プ ラ ズマ 研 の 設 置 に あ た っ て,名 施 設 長)は
古 屋 大 学 に 既 に あ っ た プ ラ ズマ 研 究 施 設(山
包 摂 され る こ と に な っ た.名
本 賢三
古屋 大学 側 の大局 的見地 か らの判 断 であ った
と推 察 さ れ る. 28.3 国 際 原 子 力機 関(IAEA)の 国 際会 議(以
下IAEA会
こ の 会 議 は2000年
1961∼1971年
頃
主 催 に よ る プ ラ ズ マ 物 理 ・制 御 核 融 合 に 関 す る 第1回
議4)と 略 す る)は,1961年Salzburgで
ま で に 既 に18回
を 重 ね て い る.1961年
開 催 さ れ,そ
れ以 降
に 開設 され たプ ラズマ 研
究 所 で最 初 に 進 め ら れ て い た の は 線 形 プ ラ ズ マ の 研 究 で あ っ た.ト
ー ラ ス(環
状装
置)よ
り装 置 が 簡 単 で,不 安 定 性 を避 け プ ラ ズ マ の物 性 が 調 べ られ や す い た め で あ っ
た.比
較 的 大 型 のQP(長
TPM(池
上 英 雄),TPC計
尾 重 夫),BSG計
画 が 進 め ら れ た.QPマ
プ ラ ズ マ を線 形 磁 場 に導 き,イ
ズ マ を 弱 い 磁 場 に 膨 張 させ,高
TPMで
は,ミ
は,高
田 岱 二 郎)とTPD(高 シ ン は,PIGプ
山 一 男), ラ ズマ源 に よ る
オ ン ・サ イ ク ロ トロ ン波 加 熱 や シー タ ー ピ ン チ を加 え
て 高 温 プ ラ ズ マ の 研 究 を行 っ た.BSG装
縮 を 目標 と した.TPDで
画(内
置 は,シ
ー ター ピ ンチで発 生 した高 温 プ ラ
速 プ ラ ズ マ 流 を ミラ ー 磁 場 で 止 め て プ ラ ズ マ の 断 熱 圧 密 度,定
常 プ ラ ズ マ(1020m-3)の
発 生 と そ の 応 用,
ラー 磁 場 に お け る電 子 サ イ ク ロ トロ ン加 熱 機 構 や 速 度 空 間 に お け る非
等 方 性 に よ るwhistler不
安 定 性 の 研 究,TPCで
は,セ
シウム プ ラズマ を用 い て イオ
ン 波 に よ る エ コー の 現 象 な ど の研 究 が 行 わ れ た .研 究 者 た ち は,実
験 プ ロ ジ ェ ク トに
追 わ れ 海 外 か ら洪 水 の よ う に入 っ て くる研 究 情 報 を理 解 し咀 嚼 す る の に 無 我 夢 中 で あ っ た.ハ
ー ドウ ェ ア に お い て も大 型 の 高 真 空 技 術,大
ー ・コ イ ル の 製 作
電 流 密 度 の ホ ロー ・コ ン ダ ク タ
,高 速 高精 度 の 各 種 計 測 法 な ど,ど
れ を と っ て も新 た な 挑 戦 で あ っ
た. 大 阪 大 学 超 高 温 理 工 学 研 究 施 設(伊 藤 博)の カ ス プ 入 射 実 験(IAEA会 マ(IAEA会
議'64),日
議'68),日
本 原 子 力 研 究 所(森
験 な ど,活 発 な研 究 が な さ れ た.京 IAEA会
議'68),名
シ ー タ ー ピ ン チ ・プ ラ ズ
コ ニ カ ル ・ガ ン ・プ ラ ズ マ 入射 実
都 大 学 工 学 部 の ヘ リオ トロ ン 計 画(宇
古 屋 大 学 工 学 部 の トカ マ ク計 画(山
本 賢 三)は
た 浜 田 繁 雄(日
に 導 入 した 自 然 座 標 系 はHamada
ー ラ ス の 平 衡,安
村 久 光)の
茂)の
ー ラ ス ・プ ラ ズ マ 研 究 へ の 挑 戦 で あ っ た .ま た め1962年
コニ カ ル ・ピ ン チ ・ガ ン ・プ ラ ズ マ の
本 大 学(吉
,当 時 数 少 な い ト
大)が
Coordinatesと
尾 光 治,
トー ラ ス 系 解 析 の
よ ば れ て,そ
の後 の ト
定 性 の 解 析 に 広 く用 い ら れ て い る5) .
日本 に お い て よ うや く研 究 体 制 が 整 い は じめ た1965年 定 性 の 理 解 が 進 み,安
頃,プ
定 化 の 方 法 が 明 ら か に な っ て き た.米
に い た 大 河 千 弘 は,toroidal
octapole磁
場 や 磁 気 シ ア ー(〓 じれ)がMHD安
国 のGeneral
場 で 平 均 最 少 磁 場(磁
平 均 値 が プ ラ ズ マ の 外 側 に 向 か っ て 増 大 す る 配 位)を 始 め て 安 定 に 閉 じ込 め る こ と を実 証 し,注
ラ ズ マ のMHD不
安
Atomics
場 圧 力 の磁 気 面 上 の
構 成 し,ト ー ラ ス ・プ ラ ズ マ を
目 を集 め た(IAEA会
議'65).平
均 最 少磁
定 化 に 有 効 で あ る こ と が 認 識 され,最
適 な トー
ラ ス 配 位 が 模 索 され た. プ ラ ズ マ 研 に お い て は,こ
の よ うな 世 界 の トー ラ ス 閉 じ込 め 研 究 の 進 展 に 対 応 す べ
く平 均 最 少 磁 場 の 性 質 を も っ た ス テ ラ レー タJIPP-1計 始 め た.日 が,京
本 原 子 力 研 究 所 に お い て はtoroidal
都 大 学 で は ヘ リオ トロ ンD(宇
画(宮
hexpole計
尾 光 治,IAEA会
本 健 郎)を1970年
画(森
議'71)が
茂,IAEA会
に 議'71)
進 め ら れ た .JIPP-1
で は トー ラ ス プ ラ ズ マ に お い て 対 流 セ ル に よ る 損 失 が 探 針 に よ っ て 観 測 さ れ た (IAEA会
議'71).
Princeton大 spheratorを
学 プ ラ ズ マ 物 理 研 究 所 で 活 躍 し て い た 吉 川 庄 一 は,内 提 案 し,静 か な プ ラ ズ マ 閉 じ込 め を実 証 し た(IAEA会 28.4
第3回IAEA会
1968∼1973年(Artimovichの
議 は,ソ 連 のNovosibirskで1968年
の ト ピ ッ ク ス はKurchatov研 の 発 表 で あ っ た.T-3装 ボ ー ム 時 間 の30倍 始 め て か ら10年
究 所 のL.A
. Artimovichが
議'71) .
時 代) に 開 か れ た.こ
の会 議 の最 大
率 い る トカ マ ク ・グ ル ー プ
置 に よ っ て 電 子 温 度1keV(1.16×107K)の
に あ た る数msを
部導体系 の
高 温 プ ラズマ を
閉 じ込 め た と い う内 容 で あ る .ト
あ ま り,世 界 か ら あ ま り注 目 さ れ な い ま ま,ト
カ マ ク計 画 を
ー ラ ス磁 場 の 精 度 を
高 め,回
転 対 称 性 を 追 求 し,MHD安
定 化 の た め の 導 体 シ ェ ル を 導 入 し,真
空容 器 を
ス テ ン レ ス ・ラ イナ ー に し,徹 底 的 に 放 電 洗 浄 を く り返 し,プ ラ ズマ と真 空 壁 との 相 互 作 用 を少 な くす る リ ミ ッ ター の 導 入 な ど の 改 良 に 改 良 を重 ね て の 結 果 で あ る.ま トカ マ ク ・プ ラ ズマ の 平 衡,不 安 定 性 に つ い て 解 析 を進 め たV.D.
Shafranovの
た
貢献
も大 き い. 会 場 に お い て は,プ
ラ ズ マ 抵 抗 か ら算 定 さ れ た 電 子 温 度 は 電 子 の 小 数 高 温 成 分 の 温
度 で は な い か とい う疑 い が 残 っ た が,も 期 的 な実 験 結 果 で あ る.L.A. は,イ
し こ れ が バ ル ク の 電 子 温 度 で あ る とす れ ば 画
Artimovichと
英 国Culham研
究 所 所 長 のR.S.
Pease
ギ リス チ ー ム に よ る レ ー ザ ー 散 乱 電 子 温度 測 定 の 国 際 的 共 同 研 究 の 実 施 を合 意
し,そ の 結 果 トカマ ク ・グ ルー プ の 実 験 結 果 を確 認 し た6).こ れ は 当 時 の ソ連 の 体 制
図1
日本 原 子 力 研 究 所 の ト カ マ ク装 置JFT-2,JFT-2A, JFT-2M,JT60,JT60Uお Doublet Ⅲ の 概 略 断 面 図
よ びGeneral
Atomicsの
トロ イ ダ ル ・コ イル,真 空 容 器,プ ラ ズマ の み を示 す. ポ ロ イ ダ ル ・コイ ル,架 台 な ど は省 略 し て あ る.JT60の 真 空 容 器,プ ラ ズ マ は 上 半 分 の み 点 線 でJT60U断 に 重 ね て 表示 した.
面図
図2
下 で は 特 別 の 計 ら い で あ っ た.T-3実
JT60Uの
鳥瞰 図
験 の影 響 は世 界 の核 融 合研 究分 野 に衝 撃 波 の
よ う に伝 わ り,各 国 で 新 し く トカ マ ク計 画 が 発 足 した.Princetonプ 所(PPPL)は1年 のIAEA会
足 らず で ス テ ラ レー タ ーCをSTト
議 に お い てT-3の
日本 原 子 力 研 究 所(原 し始 め た.1974年
ラズマ物 理 研 究
カ マ ク に 造 り変 え,1971年
結 果 を再 確 認 す る報 告 を して い る.
研)で
は トカ マ ク 装 置JFT-2,JFT-2Aを1971年
東 京 で 開 催 さ れ た 第4回IAEA会
果 が 吉 川 允 二 か ち 発 表 さ れ た.日
本 か ら は18件
ベ ル に 仲 間 入 りす る こ とが で き た .プ
に建 設
議 で は,JFT-2,JFT-2Aの の 発 表 が あ り,よ
ラ ズ マ 研 に お い て は 第2次
年 に トカ マ ク と ス テ ラ レ ー タ ー のhybrid型JIPP-T2の
結
うや く先 発 国 の レ
計 画 を 作 成 し,1974
建 設 を 始 め た.お
りしも
1973年 秋 の 第 一 次 石 油 シ ョ ッ ク は 核 融 合研 究 に と っ て は追 い風 とな っ た .
28.5
トカ マ ク の 発 展(1974年
以 降)
28.5.1 大 型 トカ マ ク ヘ トカ マ ク ・プ ラ ズ マ の 研 究 は 世 界 の 磁 気 閉 じ込 め 研 究 の 主 流 に な っ た.研 に と も な っ て,装
置 の 規 模 は 大 き くな り,新
た.日 本 原 子 力 研 究 所 が 実 験 を行 っ た トカマ ク装 置 の 概 略 断 面 図 を 図1に 第 一 次 石 油 シ ョ ッ クの 前 後 か らTFTR 1973年 発 足),JET m3,1975年
(Joint European
発 足),T-15の
計 画 が,着
究の進 展
し い 特 徴 を持 っ た 装 置 が 数 多 く加 わ っ
(Tokamak Torus,1972年
Fusion
Test
発 足),JT60
手 され た.TFTRは
示す .
Reactor,米 (Japan
Torus
国, 60
当 時 最 も優 れ た デ ー タ を
図3
プ ロ ッ ト し た 点 は 実 験 デ ー タ の 一 部 の み.ニ
リ カ ル 系(▲),RFP(○),タ は 日 本,ソ
イ ア グ ラ ム に お け る 研 究 の 進 展(ne:線
ト カ マ ク(●),ヘ
neτE-T1(0)ダ
は ソ 連,ア
は ヨー ロ ッパ
ー タ ー ピ ン チ(△).Q=1の
ネ ル ギ ー 閉 じ 込 め 時 間,T1(0):中 ラ ー,シ は ア メ リ カ,ヨ
・ ミ ラ ー,ミ
平 均 電 子 密 度,τE:エ ンデ ム
心 イ オ ン 温 度) 曲 線 は 臨 界 条 件.
出 して い たPLTの
延 長 線 上 の,オ
計 で あ っ た(1982年
ー ソ ド ッ ク ス な 無 駄 の 無 い 円 形 断 面 トカ マ ク の 設
末運 転 開 始).JETの
設 計 原 則 は トカ マ ク ・プ ラ ズ マ 閉 じ込 め に
と っ て の 基 本 パ ラ メー ター は プ ラ ズ マ 電 流 値 で あ る と し,こ れ を最 大 に す る た め に 縦 長 断 面 トカ マ ク(円 形 も 可 能)を
採 用 し た(1983年
運 転 開 始).JT60の
特 徴 は,外
側 ダ イバ ー タ ー 配 位 の 円 形 断 面 トカ マ ク で あ っ た7).T-15は,Kurchatov研
究所の
電 源 容 量 の 制 約 と超 伝 導 コ イ ル の 実 績 を踏 ま え て 大 型 超 伝 導 コイ ル ・トカ マ ク を計 画 した(惜
しむ ら くは 政 治 経 済 情 勢 の た め 技 術 開 発 コ ス トを 負 担 で きず 中 断 し た).こ
れ ら の 大 型 トカ マ ク の 建 設 が 始 っ て か ら も,open に お け るHモ
ー ドの 閉 じ込 め 状 態 の 発 見,縦
divertorの
有 効 性,divertor配
安 定 性 の 実 証 な ど の 相 次 ぐ新 た な 進 展 が あ り,JT60は1991年 に 改 造 さ れ て 現 在 に 至 っ て い る8).JT60Uの ー は 後 出 の 表1に 平 均 密 度neと
か らJT60U(図1)
鳥 瞰 図 を 図2に
示 す.主
なパ ラ メー タ
示 す. エ ネ ル ギー 閉 じ込 め 時 間 τEとの 積neτEと 中 心 イ オ ン 温度Ti(0)の
イ ア グ ラ ム に お け る研 究 の 進 展 を図3に 28.5.2
位
長 断 面 プ ラ ズマ の 高 ベ ー タ ー に お け る
ダ
示 す.
日本 の 貢 献
数 多 くの トカ マ ク の 成 果 の 中 で,日
本 が 大 き く貢 献 し た と思 わ れ る もの を 述 べ て い
く. (1)
ポ ロ イ ダ ル ・ダ イ バ ー タ ー
不 純 物 イ オ ン の 混 入 に よ る放 射 損 失 は,高 温 プ ラ ズ マ 閉 じ込 め に と っ て,最 初 か ら い つ も悩 ま され た 課 題 で あ っ た .プ
ラ ズ マ の 境 界 を リ ミタ ー の 物 質 で 決 め る代 わ りに,
磁 気 面 の セ パ ラ ト リ ッ ク ス*1で 決 め る配 位 が,ポ JFT-2A(図1,通
称DIVA)の
ダ イ バ ー ター 配 位 に よ る不 純 物 制 御 の 実 証 は,世
界 最 初 の 試 み で あ り注 目 され た(IAEA会 米 国GAのDoublet
Ⅲ(大
ロ イ ダ ル ・ダ イ バ ー ター で あ る.
河 千 弘)と
議'76,'78). の 共 同 研 究 に よ るopen
有 効 性 の 実 証 と物 理 機 構 の 解 明 も 注 目 さ れ た(IAEA会
議'80).こ
divertor(図1)の の 共 同 研 究 で は,
日米 が 対 等 に 予 算 を 出 し 日米 両 チ ー ム が そ れ ぞ れ の 研 究 課 題 に つ い て マ シ ン タ イ ム を 分 割 使 用 す る と い う ス タ イ ル を と っ た.こ JT60Uに
取 り入 れ られ て い る.ま
設 計 装 置INTOR,ITERに
の 配 位 は,大
型 ト カ マ クJETお
よび
た こ の 考 え方 は トカ マ ク核 融 合 炉 の 国 際 的 な 共 同
も取 り入 れ ら れ て い る.
(2) 電 流 駆 動 トカ マ ク 配 位 で は トー ラ ス ・プ ラ ズ マ 中 に 電 流 を 流 し,そ れ が 作 る ポ ロ イ ダ ル 磁 場 *1 磁 力 線 が トー ラ ス を何 周 も まわ る こ と に よ
っ て 作 ら れ る面 を磁 気 面 とい う.図1のJT60U,
JFT-2Aに 示 さ れ て い る よ うに,X点 型 の 特 異 点 を含 む磁 気 面 を セ パ ラ ト リ ッ ク ス と い い,そ の 内 側 の 磁 力 線 は トー ラ ス状 に 閉 じ て い る.し か しそ の 外 側 の 磁 力 線 は 真 空 容 器 の 内 壁 に取 り 付 け られ た ダ イバ ー ター 板(熱
負荷 に 対 す る保 護 板)に
ぶつ か る.
に よ っ て,プ に は,通
ラ ズ マ の 平 衡 と閉 じ込 め が 保 た れ て い る.プ
常 変 流 器 を用 い て い る た め,有
ラズマ電 流 を駆動 す るため
限 の 時 間(1,000秒
程 度)し
か プ ラ ズマ電 流
を駆 動 で き な い. 大 河 千 弘 は,1970年
高 速 中 性 粒 子 入 射 に よ り高 速 イ オ ン を プ ラ ズ マ 中 に 入 射 し,
そ の モ ー メ ン タ ム を イ オ ンや 電 子 に 与 え,結 果 と して プ ラ ズ マ 電 流 を駆 動 で き る こ と を提 案 した9).こ の 提 案 は1980年DITE N. J. Fischは,低 子 に 与 え,電
(Culham
域 混 成 波(LH波)を
Lab.)に
よ っ て 実 証 さ れ た.
プ ラ ズ マ に 入 射 し,波 の モ ー メ ン タ ム を電
流 を 駆 動 す る 方 法 を提 案 し た.こ
の 提 案 は1980年JFT-2に
お い て最 初
に 実 証 さ れ た10). 電 子 サ イ ク ロ トロ ン加 熱 に よ っ て タ ー ゲ ッ ト ・プ ラ ズ マ をつ く り,こ れ に低 域 混 成 波 を 入 射 して プ ラ ズ マ 電 流 を零 か ら立 ち あ げ る実 験 が,WT-2に れ た(1983年11)).ひ
きつ づ い てJIPP-T2,
PLT(PPPL)等
お いて 初 め て行 わ で も行 わ れ た(IAEA
会 議'84). 超 伝 導 トロ イ ダ ル コ イ ル を も つTRIAM-1Mに 電 流 をLH波
に よ り駆 動 し た(IAEA会
分 の 電 流 駆 動(Ip=22kA, ne=2×1018m-3)に 大 型
ト カ マ クJT
60Uに
(IAEA会
駆 動 し,し
も の 間,プ
らに こ の 装 置 で1991年
ラ ズマ に は,70
成 功 し注 目 を 集 め た.
お い て は,プ
PRF=3.5×1019m-2A/Wで
お い て は,3分
議'88).さ
ラ ズ マ 電 流Ip=3MAを
効 率 ηCD≡RneIp/
ば ら くは 他 の 追 従 を 許 さ な い 結 果 を得 た
議'94).
(3) ブ ー ト ・ス トラ ッ プ 電 流 高 温 プ ラ ズ マ に お い て は,径
方 向 の プ ラ ズ マ 圧 力 勾 配 に よ っ て トー ラ ス 方 向 に プ ラ
ズ マ 電 流 を駆 動 す る こ とが 理 論 的 に 予 測 さ れ て い た.JT
60Uに
お いて は 高ベ ー タ
ー ・ポ ロ イ ダ ル*2を もつ 急 峻 な イ オ ン 温 度 分 布 を もつ プ ラ ズ マ をつ く り ,条 件 に よ っ て は ブ ー ト ・ス トラ ッ プ 電 流 が 全 プ ラ ズ マ 電 流 の80%に た(IAEA会
議'90).こ
の よ う な デ ー タ ・ベ ー ス を基 に してSSTRの
合 炉 の 概 念 が 提 案 され た(IAEA会 (4)
JIPP-T
な るよ うな状 態 を実現 し よ うな定常核 融
議'90).
イ オ ン ・バ ー ン シ ュ タ イ ン 波 加 熱
2Uに
お い て イ オ ン ・バ ー ン シ ュ タ イ 波 に よ る本 格 的 な プ ラ ズ マ 加 熱 が 初
め て実 証 さ れ 注 目 され た12). (5) プ ラ ズ マ 閉 じ込 め 実 験 で 観 測 さ れ る エ ネ ル ギ ー 閉 じ込 め 時 間 は,通 従 っ て い た.し
常Lモ
ー ドと よ ば れ る 比 例 則 に
か し ダ イ バ ー ター 配 位 で加 熱 入 力 が あ る し きい 値 を超 え る と,エ ネ ル
*2 プ ラ ズ マ 電 流Ipに
よ る ポ ロ イ ダ ル 磁 場B
の 比 βp=p/(Bp2/2μ0)を
p=μ0Ip/2πaの
磁 気 圧 と プ ラ ズ マ 圧 力p=nκ(Te+Ti)
ベ ー タ ・ポ ロ イ ダ ル あ る い は ポ ロ イ ダ ル ・ベ ー タ と い う.
ギ ー 閉 じ込 め 時 間 がLモ
ー ドに 対 して2∼3倍
改 善 さ れ るHモ
ー ドがASDEX
(F.
Wagner,
ラ ズ マ 物 理 研 究 所)に
お い て 発 見 さ れ た(1982年)13)
.こ の
Max
Planckプ
L−H遷
移 の 現 象 は 多 くの 理 論 家 に よ っ て 研 究 さ れ た が 伊 藤 早 苗,伊
藤 公 孝 は,こ
の
L−H遷
移 の 際 プ ラ ズマ 周 辺 に 現 れ る径 電 場 の 重 要 性 を 最 初 に 指 摘 し こ の 分 野 の 研 究
に 影 響 を 与 え た14). JT 60Uに
お い て は,高 ベー ター ・ポ ロ イ ダ ル の 急 峻 な イ オ ン温 度 分 布 を もつ プ ラ
ズ マ を形 成 す る と,閉 に こ の 状 態 とHモ
じ込 め の よ い状 態 に な る こ と を発 見 し(IAEA会
ー ドの 特 性 を合 わ せ もつhigh
βp Hモ
議'92),さ
ら
ー ドを発 見 して い る(IAEA
会 議'94). 最 近(1996∼)負
磁 気 シ ア ー あ る い は最 適 化 磁 気 シ ア ー 配 位 に お い て,安
(r)プ ロ フ ァ イ ル が 最 小 に な る位 置 付 近 で エ ネ ル ギ ー輸 送 障 壁 が 形 成 さ れ,そ 表1
3大
トカマ クJET,
JT 60U,
TFTRの
円 筒 近 似 の 安 全 係 数,Ptotは
こで 閉
装 置 お よ び プ ラズ マ パ ラ メー ター
ni(0)τEtotTi(0)は 核 融合 積,κsは 縦 半 径 と横 半 径 の 比,q'sは 係 数,qIは
全 係 数q
加 熱 全 入 力,ENBは
プ ラ ズマ 境 界 附 近 の 実 効 的 安 全
中 性 粒 子 入 射 加 熱 の 粒 子 エ ネ ル ギー.
じ込 め が 非 常 に よ く な る モ ー ドがDIII-D, れ た(IAEA会 28.5.3
せ て き た.JET,
JT 60U,
示す
0.11の
TFTRの3大
予 備 的D-T実
よ っ て 重 水 素D−
験 が 行 わ れ,15MWのNBI(中
性 粒 子 入 射)加
に は,TFTRに
お い て 本 格 的 なDT実
熱 に よ り9.3MWの
結 果 が 得 られ た(IAEA会議'94).JETグ
図4
ICRF:3.1MW)に
Hモ
ー ド(Elmy)の
位),Bt:ト
入 力 か ら放 射 損 失 を 引 い た 量(MW単 ー ラ ス大 半 径,a:プ
ε=a/R,κ:プ
熱 に よ り,
ル ー プ は1998年 よ り,DT核
験 が 行 わ れ,
核 融 合 出 力,す
融 合 出 力16.1MW,す
ロ イ ダ ル磁 場(T単 位),n19:1019m-3単
ラ ズマ 小 半 径(m単
ラ ズマ 断面 縦 横 比,
なわち
加 熱 入 力25.7
エ ネ ル ギ ー 閉 じ込 め 時 間 の 実 験 値τEexp(s)と そ の 比 例
則τEIPB98y2(s)との 比較 Ip:プ ラズ マ 電 流(MA単 R:ト
ラ ズマ の実
な わ ち核 融 合 出 力 と加 熱 入 力 の 比 エ ネ ル ギー 増 倍 率Q=
モ ー ドで34MWのNBI加
MW(MBI:22.3MW,
三 重 水 素Tプ
お い て 三 重 水 素 の 密 度nTが11%(nT/(nD+nT)=
結 果 が 得 られ た.1994年
supershotの
トカ マ ク の 装 置 お よび プ ラ ズ マ パ ラ メ ー タ
よ びTFTRに
融 合 出 力1.7MW,す
Q∼0.27の
の他 で発 見 さ
.
そ し て い よ い よJETお
DT核
JETそ
水 素 あ る い は 重 水 素 プ ラ ズ マ に よ っ て 進 め られ 性 能 を 向 上 さ
験 が 進 め られ た.1991年JETに 0.11)の
TFTR,
トカ マ ク核 融 合 炉 に む け て
トカ マ ク の 実 験 は,軽
ー を表1に
JT 60U,
議'96).
位),Mi:イ
位),P:加
熱
位 の 電 子密 度, オ ン の 原 子 量,
表2
ITER(2000年)の 熱,βN≡
パ ラ メ ー タ ー(Paux追
β/(Ip/aBt):正
規 化 ベ ー
加 加 熱 入 力,Prad放
射 加
タ ー,NG≡ne/(I/πa2):グ
リ
ン ・バ ル ド係 数 β(%),Ip(MA),a(m),Bt(T)ne(1020m-3))
な わ ちQ∼0.62を
JT 60Uで
導 い て い る(IAEA会
はDT実
じ条 件 のD-Tプ
議'98)15).
験 は で きな い が,重
水 素 実 験 で高 性 能 プ ラ ズ マ を 生 成 し,お な
ラ ズ マ の 核 融 合 出 力 を想 定 し て 計 算 さ れ る等 価 増 倍 率Qeff∼1.0の
結 果 を え て い る(IAEA会
議'98).
ま た 更 に 世 界 の 多 くの トカマ ク 装 置 か ら得 ら れ るHモ 収 集,吟
味,解
析 さ れ,プ
ー ドの 閉 じ 込 め デ ー ター が
ラ ズマ 熱 エ ネ ル ギ ー 閉 じ込 め 時 間 の 種 々 パ ラ メ ー タ ー に 対
す る依 存 を 表 す 比 例 則 を 導 く作 業 が 続 け ら れ た.そ
の 代 表 的 な 比 例 則τEIPB98y2(s)の
結 果 と実 験 デ ー タ と の 比 較 を 図4に
議2000).
こ の 他,電
示 す16)(IAEA会
子 密 度 や ベ ー ター 比 の 限 界 を示 す 比 例 則 も導 か れ て い る.
トカ マ ク研 究 の 進 展 に し た が っ て,あ て き た.INTOR
(International
るべ き核 融 合 炉 の 概 念 設 計 は 絶 え ず 進 め ら れ
Tokamak
Reactor)
Workshopは
よ っ て 組 織 さ れ た 核 融 合 炉 の 国 際 共 同 設 計 の 試 み で あ っ た.森 キ ン グ ・グ ル ー プ のchairmanと (1979∼1987,
IAEA会
議'86).こ
め た 段 階 で,発 展 的 にITER 1988∼2001)に 示 す.ま
駆 動 に お い てQ∼10の
示 す(IAEA会
茂 はINTORの
ワー
念 設 計 を ま とめ る の に 腐 心 し た
の 作 業 は,3大
(International
引 き 継 が れ た.ITERの2000年
た そ の 断 面 図 を 図5に
よ りQ>5の
し て,概
国 際原 子力機 関 に
トカ マ クの デ ー タ ・ベ ー ス が 整 い 始
Thermonuclear
Experimental
Reactor,
に お け る 設 計 パ ラ メ ー ター を表2に 議2000).ITERの
目標 は,誘
導電 流
プ ラ ズ マ を数 百 秒 間達 成 す る こ と と,更 に 非 誘 導 電 流 駆 動 に
定 常 プ ラ ズ マ を 目指 して い る.
28.6 磁 気 閉 じ込 め 代 替 方 式 の 研 究 前 節 で述 べ て き た 標 準 的 トカマ ク 方 式 以 外 の磁 気 閉 じ込 め と して,こ レー タ ー,コ
ン パ ク ト ・ トー ラ ス(球 状 ト カ マ ク,逆 転 磁 場 ピ ン チ,ス
ク,反 転 磁 場 配位),タ
こ では ステ ラ フ ェ ロマ ッ
ン デ ム ・ミ ラ ー を 取 り上 げ る.そ れ ぞ れ トカ マ ク に は な い 長
図5
所 は あ る が,他
ITERの
断 面 図(2000年)
方 トカマ ク の もつ 長 所 で あ る閉 じ込 め の 良 さ を 欠 い て い る.そ れ ぞ れ
の 方 式 が 核 融 合 炉 の 候 補 と な る た め に は,突 28.61
破 す べ き 多 くの 課 題 が 控 え て い る .
ス テラ レー ター
外 部 導 体 に 流 す 電 流 で つ く られ る磁 場 の み に よ っ て,プ
ラズ マ を閉 じ込 め る こ とが
で き る の で,定 常 的 な プ ラ ズ マ 維 持 の 可 能 性 を もっ て い る.現 在 の と こ ろ そ の 閉 じ込 め 性 能 は トカ マ クに 比 べ て 劣 る. ヘ リ オ ト ロ ンE(京
大 ヘ リ オ ト ロ ン 核 融 合 研 究 セ ン タ ー ,R=2.2m
a=0.2m,
B=2T, l/m=2/19の
ヘ リオ トロ ン ・ トル サ トロ ン 型)に
トロ ン 波 加 熱(ECH)に 加 熱(NBI)を
お い て は,電
子サ イ クロ
よ っ て タ ー ゲ ッ トプ ラ ズ マ をつ く り,そ れ に 中 性 粒 子 入 射
し,ne=2×1019m-3,
マ を 閉 じ込 め た(IAEA会
議'84).ま
Ti(0)=0.85keV,
τE=数msの
無電流プ ラズ
た世 界 の ス テ ラ レ ー ター の 実 験 デ ー タ を 集 め て
ヘ リカ ル 系 の エ ネ ル ギー 閉 じ込 め 時 間 の 実 験 的 比 例 則(LHD比
例 則)を
導 いてい
る17). CHS(名
大 プ ラ ズ マ 研,IAEA会
カ ル 系 でECH,
NBIに
トカ マ クのHモ ら れ て い る.磁 マ クJIPP
議'88)は,R/a=1.0/0.2=5の
より 無 電 流 プ ラ ズ マ を 生 成 し た.
ー ドに お い て は 径 電 場 に よ る シ ア ー の あ る 流 れ が 重 要 な こ と は 知
場 の リッ プ ル の 大 き い ヘ リカ ル 系CHSと
T-2Uに
つ い て,径
に プ ラ ズ マ 研,京
セ ン ター が 統 合 され,核
大 ヘ リ オ トロ ン核 融 合 研 究 セ ン タ ー,広
置 の 鳥瞰 図 を 図6に
平 均 半 径a=0.6∼0.65m,ト
吉 厚 夫 初 代 所 長)が
建 設 が 始 ま り,1998年
示 す.LHDは
Te(0)〓1.6keV, Wstore=0.76MJ, τE∼0.2s等 例 則 やISS
島大 核 融合 理 論
発 足 した18).超 伝 導
か ら 実 験 が 始 ま っ た.
トー ラ ス 半 径R=3.6∼3.9m,プ
ー ラ ス 磁 場B=3.0T,ヘ
10の パ ラ メー タ ー を 持 っ て い る(IAEA会
閉 じ込 め 時 間 は,LHD比
の制 御 法 や 機 構 を
議'94).
融 合 科 学 研 究 所(飯
コ イ ル の 大 型 ヘ リ カ ル 装 置LHDの LHD装
リ ップ ル の 無 視 で き る トカ
電 場 の 詳 細 な 比 較 測 定 が行 わ れ,そ
明 らか に す る実 験 が 発 表 さ れ た(IAEA会 1989年
フ ァ ッ トな ヘ リ
ラ ズマ
リ カ ル巻 線 の 極 数l/m=2/
議'98).B=2.75T,
ne=6.3×1019m-3,
の プ ラ ズ マ が 生 成 され て い る.こ の
95比 例 則 の お よ そ1.5Xの
図6 核融合科学研 究所LHDの
烏瞰図
値 で あ る(IAEA会
議2000).ま
た 得 ら れ た 最 大 ベ ー タ ー 比 はB=1.3Tで
β=2.4%で
あ る.
しか し こ れ ま で 得 られ て い る 実 験 比 例 則 の 延 長 線 上 に 現 実 的 な ス テ ラ レー ター 核 融 合 炉 へ の シ ナ リオ を描 くこ と は 出 来 そ うに も な い.ス プ ラ ズ マ の 生 成(Ti〓10keV),そ ら に は3.5MeVの 28.6.2
テ ラ レー タ ー に お い て は,高
の 閉 じ込 め 時 間 の 大 幅 な 改 善,高
温
ベ ー タ ー 化,さ
α粒 子 閉 じ込 め の シ ナ リオ 等 な どの 重 要 課 題 が 控 え て い る.
コ ン パ ク ト・ トー ラ ス
(1) 球 状 トカ マ ク(ST) ア ス ペ ク ト比A=R/aを1.0へ kamak)の
と限 りな く近 づ け た 球 状 トカ マ ク(Spherical
利 点 は,PengとStricklerに
よ っ て 述 べ られ て い る19).こ の 利 点 と して,
プ ラ ズ マ 断 面 の 高 非 円 形 度(κs∼2),高 め 特 性 等 が 期 待 で き る.こ か め られ,β ∼40%,標 (Culham),
NSTX
トロ イ ダ ル ベ ー タ,ト
カ マ ク と同 様 な 閉 じ込
れ ら の 予 測 は カ ラ ム研 究 所 のStart装
置 に よ り実 験 的 に 確
準 的 トカ マ ク と 同 じ閉 じ込 め 比 例 則 が 得 ら れ て い る.MAST
(Princeton)は
わ が 国 で はSTS-2(東 (IAEA会
To
こ の タ イ プ の 代 表 的 な装 置 で あ る.
大 理),TS-3(東
大 工)で
小 規模 実 験 が行 わ れて い る
議2000).
(2) 逆 転 磁 場 ピ ン チ(RFP) RFPプ
ラ ズ マ に お い て は,ト
大 部 分 がRFPプ っ て い て,コ
カマ ク と 同 様 回 転 対 称 系 で あ る が,ト
ラ ズ マ のMHD緩
和(ダ
イ ナ モ効 果)に
ー ラス磁場 の
よ っ て 形 成 さ れ る 特 徴 を持
ン パ ク トな装 置 と な る.し か し なが ら磁 気 揺 動 に よ る エ ネ ル ギー 輸 送 が
大 き く,こ れ を い か に 小 さ く抑 え るか が 重 要 課 題 で あ る. 電 子 技 術 総 合 研 究 所 に お い て はRFPプ 15, TPE 1RM=20,
TPE
RXと
ラ ズ マ の 研 究 がTPE 1RM,
着 実 に 進 め ら れ て い る.特
TPE 1RM-
にTPE 1RM(小
川 潔)
に お い て は放 電 管 を メ タ ル ・ラ イナ ー に 変 え プ ラ ズマ 電 流 密 度 を大 き く と り,中 心 電 子 温 度0.6KeVと
い う,当 時 のRFPと
の 注 目 を あ び た(IAEA会 プ ラ ズ マ 研 のSTP 0.8keVの
議'82).そ
3Mに
し て は 非 常 に 良 い 実 験 結 果 を 出 し,こ の 分 野 れ 以 来RFPの
お い て はRFPプ
高 温 電 子 温 度 を得 て い る(IAEA会
東 大REPUTE-1に
お い て はRFPプ
最 前 線 の 研 究 が 続 け られ て い る .
ラ ズ マ の 位 置 制 御 を行 い,小 議'88).
ラ ズ マ のMHD緩
和 とダイナ モ現 象 の物理 的
過 程 の 実 験 と理 論 と の 対 応,イ オ ンの 異 常 加 熱 現 象 が 研 究 さ れ た(IAEA会 た こ の 装 置 でULQ(超 配 位)のMHD安 (3)
低qプ
定 性,緩
ラ ズ マ,q値
型 な が ら,
議'90).ま
の 領 域 に お い て トカ マ ク とRFPと
和 現 象 が 調 べ られ た(IAEA会
の中間
議'88).
ス フ ェ ロ マ ッ ク(Spheromak)
ス フ ェ ロ マ ッ ク磁 場 配 位 は,与
え られ た初 期 条 件 と境 界 条 件 の も とに トロ イ ダ ル コ
イ ル も変 流 器 コ イ ル もな い 配 位 で,MHD緩 で あ る.し
和 に よ っ て 落 ち 着 く トー ラ ス ・プ ラ ズ マ
か し得 られ て い る閉 じ込 め 性 能 は 良 くな い.
CTCC装
置(阪
大 超 高 温)に
お い て は,flux
conserverの
に で き る だ け一 致 させ 比 較 的 長 い 時 間(1.2ms)磁 '88) . TS-3('92)に
お い て は,中 心OHコ
導 体 シ ェ ル の 形 を磁 気 面
場 配 位 を持 続 させ た(IAEA会
議
イル を もつ 配位 で 二 つ の ス フ ェ ロ マ ッ ク を 同
軸 上 に 生 成 し二 つ の ス フ ェ ロ マ ッ ク を合 体(merge)さ
せ て,一
あ る い は トロ イ ダ ル 磁 場 の な い 反 転 磁 場 配 位(FRC)を
つ の ス フ ェ ロマ ッ ク
生 成 し,mergingの
機構 に
つ い て 興 味 あ る実 験 結 果 を 出 し て い る. (4)
反転 磁 場 配 位(FRC)
反 転 磁 場 配 位(FRC)は
逆 バ イア ス 磁 場 を か け た リニ ア ー ・テ ー タ ー ・ピ ン チ か
ら発 展 し た 配 位 で あ る. OCT,
PIACE-1(阪
大 超 高 温)に
お い て は,FRCに
見 られ る 回 転 不 安 定 性 を 四 極
磁 場 の 導 入 に よ っ て 止 め ら れ る こ と を 実 証 し た(IAEA会 NUCTE
3 (IAEA会
議'90)に
議'82).ま
た
お い て は 中 心 軸 に 沿 う交 流軸 電 流 を 導 入 し,FRCの
回
転 不 安 定 性 の 抑 制 効 果 を 実 証 し た. 佐 藤(哲
也),林
等 は,ト
程 式 を用 い て 調 べ,計 MHD緩
和 現 象,自
ー ラ ス ・プ ラ ズ マ の 振 舞 い を 三 次 元 非 線 形MHD運
ミラー 磁 場 に と っ て は,そ
の 端 損 失 の 抑 制 は 本 質 的 な課 題 で あ る.イ
央 ミラ ー の 両 側 に,正
Gamma-10(装
置 の 長 さL∼20m,
よ
国),Gamma-10(筑
波 大プ ラズ
どで 行 わ れ た. a=0.15m,
の 静 電 ポ テ ン シ ャ ル を作
(ICRF)に T)の
大 工)な
オンの端 損失
の 静 電 ポ テ ン シ ャ ル 領 域 を発 生 させ る た め の プ
ラ グ ミラ ー を 並 べ た タ ン デ ム ・ ミラ ー 方 式 はTMX(米 マ 研 究 セ ン タ ー),Hiei(京
keV程
議'82,'84,2000).
タ ン デ ム ・ ミラ ー
抑 制 の た め,中
STの
己 形 成 の 過 程 を 見 事 に 再 現 し た.磁 力 線 の 駆 動 再 結 合 に よ る プ ラ
ズ マ の トポ ロ ジ ー 変 化 の 物 理 過 程 を明 ら か に して い る(IAEA会 28.6.3
動方
算 機 シ ミュ レー シ ョ ン に よ っ て ス フ ェ ロ マ ッ ク,RFP,
り,イ
B∼0.5T,図7)に
お い て は,2
オ ン ・サ イ ク ロ ト ロ ン 周 波 数 領 域 加 熱
り,Ti〓10keV, ne〓2×1018m-3, τEi〓8ms, τEe〓2ms,
プ ラ ズ マ を 閉 じ 込 め た.ま
(B=057
た 強 い 径 電 場 に よ り ド リ フ ト波 揺 動 が 押 さ え ら れ,
磁 場 を 横 切 る 損 失 が 端 損 失 よ り小 さ く な っ て い る こ と を 確 か め て い る(IAEA会 議 '94) .ま たECRHの 放 射 パ タ ー ン の 軸 対 称 化 に よ り,閉 じ込 め 静 電 ポ テ ン シ ャル (0.3KeV)を150ms持 4×1018m-3に
Hieiに
続 さ せ,ま 増 大 さ せ た(IAEA会
お い て はICRFの
たICRF,
確 か め て い る(IAEA会
熱 の 組 み 合 わ せ に よ り,密
カ マ ク のHモ 議'92).
度 を
議2000).
ヘ リ コ ン 速 波 に よ っ て プ ラ ズ マ 生 成,加
に 静 電 ポ テ ン シ ャ ル を発 生 させ て い る.中 て 径 電 場 を 誘 起 し,ト
NBI加
熱,安
定 化,更
央 ミ ラー の リ ミタ ー に バ イ ア ス 電 圧 を加 え
ー ドの 場 合 の よ う に,径
方 向損 失 が減 る こ とを
図7
筑波 大 プ ラ ズマ研 究 セ ンタ ー のGamma-10
28.7 慣 性 閉 じ 込 め プ ラ ズ マ が 膨 張 し広 が る ま で に は,イ
オ ン の 慣 性 に よ りあ る短 時 間 を必 要 とす る.
そ の極 短 時 間 内 に 超 高 密 度 の 高 温 プ ラ ズ マ を発 生 させ,核
融 合 反 応 を 完 了 して し ま お
う とす る 試 み が 慣 性 閉 じ込 め で あ る.慣 性 核 融 合 は,1952年 爆 とい う大 規 模 な 形 で 実 証 さ れ て い る が,こ 規 模 で 実 現 で き る か の 鍵 は,爆
縮 の 物 理 過 程 の 究 明 に か か っ て い る.
阪 大 レ ー ザ ー 核 融 合 研 究 セ ン ター(ILE,山 は,1981年
中部 太 平洋 にお い て水
れ を ど こ ま で小 さ く,そ し て 制 御 可 能 な
中 千 代 衛 初 代 セ ン タ ー 長)に
おいて
か ら激 光〓 号 レ ー ザ ー 装置 を用 い て 爆 縮 に よ る核 融 合 の 研 究 が 精 力 的 に
行 わ れ て い る.12ビ
ー ム か ら成 り,3倍
性 能 を 持 つ に 至 っ て い る(図8)20).爆
高 調 波 の 波 長351nm,エ 縮 過 程 で は,レ
ネ ル ギ ー10KJの
ー ザー 照 射 に よ って高 速 で ア
ブ レ イ トす る低 密 度 プ ラ ズマ が ロ ケ ッ トの よ う に 高 密 度 燃 料 を加 速 す る た め,本 にRayleigh-Taylor不
安 定 で あ る.し
た が っ て そ の 影 響 を 押 さ え る た め,均
質的
一な球
形 燃 料 ペ レ ッ ト ・シ ェ ル を作 り,そ の ペ レ ッ ト表 面 全 体 を一 様 に レ ー ザ ー 光 で 照 射 す る 必 要 が あ る.そ の た め ラ ン ダ ム 位 相 板 を レー ザ ー 光 の 集 光 レ ン ズ の 瞳 に 置 き,12 ビー ム の レー ザ ー に よ っ て 平 均14%程 化,三
度 以 下 に 照 度 の 不 均 一 性 を 押 さ え る.重 水 素
重 水 素 化 し た プ ラ ス チ ッ ク の 中 空球 状 シ ェ ル に レー ザ ー 光 を 直 接 照 射 し,固 体
密 度 の600倍(600g/cm)の
爆 縮 の 成 果 を 発 表 した(IAEA会
し て 爆 縮 過 程 の ス タ グ ネ イ シ ョ ン200psの メ ラ を 開 発 し,こ Taylor不
議'90).ま
マ 撮 れ るX線
れ ら の 観 測 に よ りRichtmyer-Meshkov不
安 定 性 の 一 変 形)に
構 を解 析 して い る(IAEA会 現 在800J,
間 に25コ
0.8ps,
た計 測 法 と
高 速 フ レイム カ
安 定 性(Rayleigh-
よ る 燃 料 とプ ッ シ ャ ー(pusher)と
の ミキ シ ングの 機
議'94).
1PW(1015W)のPeta
Watt
Moduleを
製 作 中 で あ り,爆 縮
さ れ た 超 高 密 度 プ ラ ズ マ に 照 射 し て 高 速 点 火 実 験 を 計 画 し て い る(IAEA会
議
2000). 電 子 技 術 総 合 研 究 所 のKrFレ 波 長250nm,エ
ー ザ ー 開 発 も 注 目 され て い る.Super-ASHRAは
ネ ル ギ ー 効 率10%以
上,エ
ネ ル ギ ー8KJの
短
高 性 能 を 目指 し て い る
図8
阪 大 レー ザ ー核 融 合 研 究 セ ン ター,激
光〓 号の 概 念 図
(IAEA会
後
議'94).
記
我 が 国 の プ ラ ズ マ ・核 融 合 の分 野 は,こ
の50年
の 間 に,全
く零 の 状 態
か ら先 発 国 に 追 い つ き,や が て 第 一 線 に 立 ち,世 界 の 研 究 動 向 に 影 響 を 与 え る よ う に な っ た.そ
して 炉 心 プ ラ ズ マ の 臨 界 条 件 を満 た す プ ラ ズ マ を よ うや く生 成 で き る ま で
に な っ た.プ
ラ ズ マ 物 理 ・核 融 合 の分 野 は 多様 で あ り,こ れ ら総 て を与 え られ た 紙 面
に 紹 介 す る こ と は 著 者 の 能 力 を 超 え る こ と で あ っ た.大 と を意 図 し た が た め に,紹 わ れ る が,読 (1996)
き な研 究 の 流 れ を記 述 す る こ
介 し き れ な か っ た 多 くの 業 績 や 公 正 を 欠 くこ と もあ る と思
者 の 寛 容 を 切 に 請 う 次 第 で あ る.な
お 本 文 は,日
本 物 理 学 会 誌51
549に 発 表 さ れ た もの に そ の 後 の 動 向 を付 け 加 え た もの で あ る.(筆
も と ・け んろ う,東 京 大学 名 誉教 授.1931年
生 まれ,1955年
者=み や
東 京 大 学理 学 部卒 業)
参 考文 献 1) 例 え ば,宮 Physics
本 健 郎:『 プ ラ ズ マ 物 理 入 門 』(岩 波 書 店,1997).K.Miyamoto:Plasma
for
Nuclear
Fusion(The
MIT
Press,1989).
2) 原子 力委 員 会 核 融 合 専 門 部 会 長 湯 川 秀樹:核 融 合 反 応 の研 究 の進 め 方 に つ い て(原 子 力委 員 会 委 員 長 宛 報 告)昭 和35年(1960年)10月5日(早 合 研 究57(1987)201に 3) プ ラ ズマ研 究 所10年 4)
Plasma Physics
and
の歩 み(名 古 屋 大学 プ ラ ズマ 研 究所,1972). Controlled Nuclear
Agency,Vienna).1961 Madison,1974 1982
in
in Baltimore,1984
Fusion,Conf.Proc.(Int.Atomic
Salzburg,1964
in Tokyo,1976
D.C.,1992
川 幸 男,木 村 一 枝:核 融
収 録).
in
in
in
Novosivirsk,1971
in Innsburg,1980
in Kyoto,1988
Seville,1996
Energy
in
Berchtesgarden,1978
in London,1986
in Wurzburg,1994
Culham,1968
in Nice,1990
in Montreal,1998
in
in Brussel,
in Washington in Yokohama,2000
in Sorrento. 5)
S.Hamada:Nucl.Fusion
6)
M.Forrest,N.J.Peacock,D.C.Robinson,V.V.Sannikov Culham
Report
7) 『特 集JT
10)
CLM-R
and
P.D.Wilcock:
107,July(1970).
60実 験 』 核 融 合 研 究 別 冊65(1991).
8) 永 見 正 幸:日 9)
1(1962)23.
本 物 理 学 会 誌46(1991)196.
T.Ohkawa:Nucl.Fusion
10(1990)185.
T.Yamamoto,T.Imai,M.Shimada,N.Suzuki,M.Maeno,S.Konoshima,T.Fujii, K.Uehatra,T.Nagashima,A.Funahashi
and
N.Fujisawa:Phys.Rev.Lett.45
(1980)716. 11)
S.Kubo,N.Nakamura,T.Cho,S.Nakano,T.Shimazuka,A.Ando,K.Ogura,T. Maekawa,Y.Terumichi
and
S.Tanaka:Phys.Rev.Lett.50(1983)1994.
12)
O.Ono,T.Watari,R.Ando,J.Fujita,et
13)
F.Wagner,G.Becker,K.Behringer,et
14)
S.I.Itoh
15)
M.Kailhacker,A.Gibson,et
16)
ITER
17)
S.Sudo,Y.Takeiri,Z.Zushi,F.Sano,K.Itho,K.Kondo
and
Physics
al.:Phys.Rev.Lett.54(1985)2339. al.:Phys.Rev.Lett.49(1982)1408.
K.Itoh:Phys.Rev.Lett.63(1988)2369. al.:Nucl.Fusion
Basis:Nucl.Fusion
39(1999)209.
39(1999)No.12. and
A.Iiyoshi:Nucl.
Fusion 34(1990)11. 18) 早 川 幸 男:日 19)
Y-K.M.Peng
本 原 子 力 学 会 誌30(1988)297. and
D.I.Strickler:Nucl.Fusion
26(1986)769.
20) 『 激光〓 号 に よる レー ザ ー核 融合 研 究 の 現状 と展望 』 核 融 合研 究 別 冊68(1992).
初 出:日
本 物 理 学 会 誌51(1996)549-556.
29.
ITERに
触 れ て 若
29.1 ITER
(International
は
Thermonuclear
じ
め
谷
誠 宏
に
Experimental
Reactor:国
際熱 核融合 実 験
炉)計
画 の 内 容 に つ い て は,物 理 学 会 誌 の解 説 記 事1)を 参 考 に し て い た だ き,こ
は,最
近 のITER計
画 の 現 状,ITERの
物 理 の 概 要,お
よ びITERを
こで
通 して個 人 的
に か か わ っ た 研 究 者 の 印 象 を ま とめ て み る. ITER計
画 の 具 体 化 は,EU,日
設 計 活 動(Engineering し た.6年 Design
Design
本,ロ
シ ア,米
Activities:
EDA)が1992年
間 の 設 計 活 動 の 結 果,1998年2月
Report:
FDR)が
環 境 が 整 わ ず,EDAを3年
にITERの
完 成 し た.1998年7月
活 動 に 移 行 す る こ と を 目指 して,非
のEDA終
に 開 始 され て か ら進 展 最 終 設 計 報 告 書(Final 了 後 に 建 設 を前 提 とす る
公 式 の 協 議 が 行 わ れ たが,四
間 延 長 し て,低
図1
国 の 四 極 の 国 際 協 力 に よ り,工 学
新 し いITER装
極 の 社 会 的 ・経 済 的
コ ス ト化 を 計 り,定 常運 転 の 可 能 性 を 検
置の断面図
表1
討 す る こ と に な っ た.た
新 しいITERの
だ し,小
装 置 サ イ ズ お よ び性 能
型 化 して も現 在 の 大 型 トカ マ ク と原 型 炉 を ワ ン ス テ
ッ プ で 橋 渡 しで き る よ う な 実 験 炉 で あ る こ とが 条 件 と な っ た.こ 単 純 延 長 を認 め な い 米 国 議 会 の 反 対 に よ り,米 国 は,ITERの 活 動 を残 し て,EDAか ITERの 万kWで ITERの
ら撤 退 す る こ と に な っ た.残
設 計 が ほ ぼ 完 成 し て い る.そ
の 時 期 に,EDAの
物理 研 究へ の参 加 等 の
っ た 三 極 の 協 力 に よ り,新
の 概 略 図 が,図1で
あ る.核
あ り,将 来 へ の 発 展 の 基 礎 と し て は 十 分 な 性 能 を 有 し て い る.新 装 置 サ イ ズ と性 能 が 表1に
大 半 径 を8.1mか
ら6.2mへ,プ
示 さ れ て い る.ITER-FDEに ラ ズ マ 電 流 を21MAか
しい
融 合 出 力 は,50
比 べ て,プ
ら15MAへ
しい ラ ズマ
下 げ た こ とに
よ り,出 力 が 半 分 に な り コ ス トが 半 減 して い る.現 在 のEDAは,2001年7月
に終 了
し,そ の 後 は建 設 協 議 の 進 行 と と もに 建 設 サ イ ト予 定 地 に 合 わせ た 設 計 を2002年
末
ま で行 う こ とに な っ て い る. 今 後 予 定 さ れ て い る ス ケ ジ ュ ー ル の 概 略 は,各
国 か らの 建 設 サ イ トの 立 候 補 を受 け
付 け,2002年
末 に は,建
る.現 在,建
設 サ イ ト と して 可 能 性 の あ る国 は,日
で あ る.ま
た,重
1∼2年 が,ITERの
設 サ イ トの 決 定 とITER事
要 な 課 題 と し て,建
ラ ン ス,カ
ナ ダ,ス ペ イ ン
設 資 金 の 分 担 案 の 確 定 が あ る.こ
れ か らの
行 方 を決 め る重 要 な 時 期 と な る だ ろ う.
29.2 ITERの 核 融 合 プ ラ ズ マ の 物 理 の 説 明 に は,核 ズマ 密 度)×(閉
業 体 を確 定 す る こ と に な っ て い 本,フ
物理課題
融 合 三 重 積 が わ か りや す い.こ
じ込 め 時 間)×(プ ラ ズ マ 温 度)で あ る.ト
限 界 が あ り,MITのGreenwaldが 流 れ るプ ラ ズ マ 電 流 に 比 例 し,プ デ ル は ま だ 確 立 し て い な い が,新
れ は,(プ
ラ
カ マ ク プ ラ ズ マ に は,密
度
見 い 出 し た経 験 則 に 従 う.ト
カ マ クプ ラ ズ マ 内 を
ラ ズマ 断 面 積 に 反 比 例 す る こ と を示 し た.理 論 的 モ しいITERで
は,こ
のGreenwald限
界 の85%の
密 度 を標 準 と し て 設 計 さ れ て い る. 一 方 ,ト カ マ クプ ラ ズ マ に は,プ ラ ズ マ 圧 力 が あ る 限 界 値 を超 え る と電 磁 流 体 的 不 安 定 性 が 発 生 す る こ とが 知 られ て い る.つ
まり,電
磁 流体 的 に 安 定 で あ る た め に は,
プ ラ ズ マ 圧 力 と磁 気 圧 の 比 で あ るベ ー タ値 を 限 界 値 以 下 に 保 た な け れ ば な ら な い.プ ラ ズ マ 圧 力 は 密 度 と 温 度 の 積 で あ る の で,密 度 限 界 は ベ ー タ 限 界 と 同 じ と予 想 され る が,実
験 結 果 は 違 っ て い る.ベ
に 近 づ く と,閉
ー タ 限 界 値 以 下 で あ っ て も,密 度 がGreenwald限
閉 じ込 め 時 間 は,プ
ラ ズ マ の 径 方 向 の 輸 送 現 象 に よ り決 ま る が,こ
れ を支 配 す る の
は プ ラ ズ マ 乱 流 で あ り,異 常 輸 送 と呼 ば れ て い る.最 近 の 研 究 に よ る と,プ に は 乱 流 と 同 時 に,ゾ 造 が 形 成 さ れ る.そ
ー ナ ル(zonal)流
や ス ト リー マ ー(streamer)と
ラズマ 内
呼 ば れ る構
れ らは ケ ル ビ ン-ヘ ル ム ホ ル ツ不 安 定 性 等 の 破 壊 機 構 と拮 抗 し て
い る こ とが 示 さ れ つ つ あ る.残 念 な が ら,こ の よ う な理 論 モ デ ル に 基づ い て,輸 数 が 計 算 で き る レベ ル に な っ て い な い の で,閉 則)に
界
じ込 め が 劣 化 す る傾 向 が 現 れ る.
じ込 め 時 間 の 予 測 は,経
送係
験 則(比
例
頼 る こ と が 多 い.
ITERで き るELMy ized modeの
は,ト
カ マ クプ ラ ズ マ の 中 で,閉
H (high)モ
ー ド と呼 ば れ る放 電 を標 準 と して い る.ELMはedge
略 称 で あ る.こ
物 理 専 門 家 グ ル ー プ(年2回 参 加 し て い る)で 結 果 は,飛
じ込 め が 良 くて 準 定 常 プ ラ ズマ が 実 現 で
は,世
local
の モ ー ドの 閉 じ込 め 時 間 の 経 験 則 を 導 く た め に,ITER 程 度 の 専 門 家 会 議 を 開 い て い て,現
界 中 の デ ー タ を 組 織 的 に集 め て,統
在 も 四極 の 研 究 者 が
計 的 処 理 を行 っ た.こ
の
行 機 設 計 で使 わ れ る風 洞 実 験 と お な じ よ う な 同一 無 次 元 パ ラ メー タ 実 験 を
複 数 の トカ マ ク 装 置 で行 っ て確 認 され て い る.ま デ ル と矛 盾 し な い こ と も確 認 さ れ て い て,こ
た,経
験 則 の 無 次 元 表 示 は,理 論 モ
の 経 験 則 に よ るITERの
閉 じ込 め時 間
の 予 測 は 十 分 な 信 頼 性 が あ る と考 え られ て い る. 核 融 合 炉 の プ ラ ズ マ 温 度 は,核
融 合 反 応 の 断 面 積 の 温 度 依 存 性 で 決 ま り,当 面 の 目
標 で あ る 重 水 素 と三 重 水 素 の 間 の 核 融 合 反 応 で は,(10∼20)keVが の 値 は,す
で にJT-60等
の 大 型 トカ マ ク に お け るELMy
Hモ
必 要 で あ る.こ ー ドプ ラ ズ マ の 大 電
力 加 熱 実 験 で 達 成 さ れ て い る. トカ マ クプ ラ ズ マ の 物 理 の 最 近 の 成 果 は,ト
カ マ ク炉 の 定 常 運 転 が 可 能 で あ る こ と
を示 した こ と で あ る.電 磁 誘 導 に よ る プ ラ ズ マ 電 流 は 原 理 的 に 有 限 時 間 しか 保 持 で き な い が,電
磁 波 や 粒 子 ビー ム に よ り運 動 量 を与 え 続 け る こ とに よ り,電 流 が 駆 動 され
る こ とが 多 くの トカ マ ク装 置 で実 証 さ れ た.こ
こ で重 要 な こ とは,閉
じ込 め磁 場 の 不
均 一 性 に よ る局 所 ミラ ー に捕 捉 され た 電 子 が クー ロ ン 衝 突 に よ り非 捕 捉 電 子 に な る こ とに よ り,運 動 量 が プ ラ ズ マ に与 え られ,ブ 認 さ れ た こ と で あ る.こ 発 的 に 流 れ る の で,ト
ー トス トラ ップ 電 流 が 流 れ る こ とが,確
の 電 流 は,外 部 か ら電 磁 波 や 粒 子 ビー ム を入 れ な くて も,自
カマ ク の 電 流 を維 持 し て定 常 運 転 を実 現 す る た め に,大
き な意
味 を持 っ て い る.た だ し,こ の 電 流 は,プ
ラ ズ マ の 圧 力 勾 配 に 依 存 す る の で,大
ブ ー トス ト ラ ッ プ 電 流 を 得 る に は プ ラ ズ マ 圧 力 を高 くす る必 要 が あ るが,プ 不 安 定 性 が 発 生 しや す く な るの で,プ
きな
ラズマ の
ラ ズ マ を安 定 に 保 持 す る た め の 制 御 が 不 可 欠 に
な る. さ ら に興 味 深 い こ とは,ブ
ー トス トラ ップ 電 流 の 割 合 が 高 く な る と,ホ
分 布 の ピー ク付 近 に 輸 送 障 壁 が 形 成 され,閉 の 運 転 モ ー ドは,ELMy ば れ,定
Hモ
じ込 め 時 間 が 改 善 され る こ と で あ る.こ
ー ド とは 質 的 に 違 っ て い て,内
部 輸 送 障 壁 モ ー ド と呼
常 運 転 型 トカ マ ク炉 を可 能 に す る と期 待 さ れ て い る.
トカ マ クプ ラ ズ マ の 最 も 危 険 な 不 安 定 性 は,デ 電 磁 流 体 的 不 安 定 性 で あ るが,不
ス ラプ シ ョ ン で あ る.こ の 原 因 は,
安 定 性 が 成 長 して デ ス ラ プ シ ョ ン に 至 る非 線 形 過 程
は 複 雑 で あ り,ま だ 完 全 に は解 明 さ れ て は い な い が,デ
ス ラプ シ ョン を 回 避 した り,
フ ィ ー ドバ ッ ク制 御 す る 手 法 の 開 発 は 進 展 し て い る.ITERで 発 生 す る が,危
効 で あ る か ど うか を 調 べ る こ とは,チ
29.3 ITERを 筆 者 がITER物
ス ラプ シ ョン は
お け る核 燃 焼 プ ラ ズ マ に 対 し て も 有
ャ レ ン ジ ン グ な研 究 課 題 で あ る だ ろ う.
通 して 関 わ っ た 研 究 者 の 印 象
理 専 門 家 グ ル ー プ の メ ン バ ー と し て,ITERに
何 人 か の 記 憶 に 残 る 国 外 の 研 究 者 が い る.た ラ ン ス)で
トカ マ クJETの
は,デ
険 性 を最 小 限 に で き る と考 え ら れ て い る.
以 上 の よ うな プ ラ ズ マ 物 理 の 知 見 が,ITERに
Rebut(フ
ロー状 電流
あ る.個
設 計,建
価 さ れ て,1992年
人 的 に は,ほ
関 わ り始 め て か ら,
と え ば,EDAの
初 代 の所 長 で あ った
とん ど話 し た こ と は な い が,EUの
大型
設 お よ び 実 験 に わ た り指 導 的 な 地 位 に あ り,そ の 功 績 を 評
にITERの
設 計 チ ー ム の 所 長 に な っ た.EDAを
の 予 備 的 な 設 計 と し て ま とめ ら れ て い たCDA
(Conceptual
開 始 し て,ITER
Design
Activity)案
と
は 全 く異 な っ た,大 半 径8mのITER装
置 の 設 計 に 切 り替 え た こ と は 記 憶 に 残 る.
と こ ろ が,こ
進 め 方 は,国
ず,2年
の よ う な ス タ イ ル のEDAの
余り で 四極 の 支 持 を失 い,同
AymarがEDAが
ITER物 Rebutは
際 協 力 ベ ー ス の 設 計 に は合 わ
じフ ラ ン ス 人 の 現 所 長 のAymarが
継 い だ.
置 か れ て い た 米 国 の サ ン デ ィ エ ゴ ヘ 所 長 と し て 赴 任 し た 時,
理 専 門 家 会 議 を 開 い て い て,偶
然 に も彼 の 就 任 の 挨 拶 を聞 くこ とが で き た.
トカ マ ク実 験 の 論 文 だ け で な く,若 い 頃 は 理 論 の 論 文 も書 い て い る.彼
文 は 読 ん だ こ とが あ る が,Aymarの
論 文 は 読 ん だ こ とが な い.彼
フ ラ ン ス の 超 伝 導 トカ マ クTORE-SUPRAを 残 したITERの
設 計 案 をITER-FDRに
の 設 計 変 更 で は,必
の論
の 有 名 な 仕 事 は,
設 計 ・建 設 し た こ と で あ る.Rebutの ま とめ た こ とは 評 価 さ れ る が,新
ず し も主 導 権 を持 っ て い た と は感 じ られ な い.国
しいITER
際 協 力 に よ る設
計 活 動 の む ず か し さ か も しれ な い. 有 名 な 米 国 の理 論 家M.
N.
Rosenbluth
(UCSD)もITERを
積極 的 に推 進 して き
た.し
か し,米
国 がEDAか
く な っ た.1998年 Physics)で
ら 撤 退 し た た め,ITER物
に プ ラ ハ で 開 か れ たICPP
のITER物
理 専 門 家 会 議 で 会 う機 会 も な
(International
Congress
on
Plasma
理 に 関 す る 講 演 が 印 象 に 残 っ て い る.
米 国 の理 論 家 で は,Perkins ま とめ 役 と して,1998年
(GA)を
忘 れ る こ とが で き な い.ITER物
ま で 重 要 な 役 割 を 果 た し て きた.ITER
ま とめ る に 際 し て は,Nuclear
Fusion誌
に行 っ た.彼
カ マ ク物 理 の 集 大 成 で あ るITER
が い な け れ ば,ト
理 委 員会 の
Phsyics
用 の 原 稿 集 め か ら編 集,校
Basis2)を
正 ま で,精
Physics
力的
Basisは
完
成 し な か っ た と思 わ れ る. 米 国 の 古 い 友 人 で あ るCarreras
(ORNL)は,ITERの
プへ 最 初 は 参 加 して い た が,ITER物 年 で 興 味 を な く し,ITER物 Physics EUで dey
理 が 狭 い 範 囲 に しか 関 心 を示 さ な い た め に,数
理 専 門 家 会 議 か ら辞 退 し て し ま っ た.そ
Basisの 草 稿 を書 い た に もか か わ ら ず,著 は,ITERの
(JET)の
輸 送現 象 の専 門家 グルー
の た め,ITER
者 か ら名 前 を抜 い て い る.
た め の デ ー タベ ー ス の 収 集 と経 験 則 導 出 を 指 導 して き たCor
役 割 は 大 き い.EUの
理 論 家 と し て 知 ら れ て い た が,JETに
参 加 して
か ら は,実 験 デ ー タベ ー ス を使 っ て 物 理 を解 明 す る こ とに 興 味 を持 ち,特
に,経
の 精 密 化 と そ の 物 理 的 な 意 味 付 け を 行 っ て き た.ITERに
Hモ
閉 じ込 め 時 間 の 予 測 で は,ITER物
お け るELMy
理 専 門 家 グ ル ー プ の 活 動 を通 し て,大
験則
ー ドの
きな 貢献 を
して い る. ロ シ ア のMukhovatovは,ITER専
門家 グ ル ー プ で は,筆
ー プ に属 し て い る得 難 い 協 力 者 で あ る .彼 は,旧 カ マ ク実 験 家 と し て 有 名 で あ っ た.と るShafranovと に は,最
者 と 同 じ輸 送 現 象 グ ル
ソ連 で は,ク
くに,Nuclear
ル チ ャ トフ 研 究 所 で ト
Fusion誌
に著 名 な理 論 家で あ
発 表 し た トカ マ ク の レ ビ ュ ー 論 文 は 良 く知 られ て い る.ITER-EDA
初 か ら参 加 し,サ
ン デ ィ エ ゴ に1998年
か ら の撤 退 に よ り,原 研 那 珂 研 究 所 のEDAチ 29.4 こ こ で は,主
と し て 新 し いITERの
で あ る こ と は い う ま で も な い.特
お
の 後,米
わ
り
に
物 理 に つ い て ま とめ た が,工
に,燃
国 のEDA
ー ム に加 わ っ て い る.
学 的側 面 が重 要
料 と して ト リチ ウ ム を毎 年1kg程
る こ と と,核 融 合 反 応 で 発 生 す る14Mevの 題 が し ば しば 議 論 に な る.前
ま で い た が,そ
度 使用 す
中 性 子 に よ る壁 材 や 構 造 材 の 放 射 化 の 問
者 に 対 し て は,多
重 防 護 をす る こ と に よ りITER実
験
棟 か らの 漏 洩 を 防 ぐ こ とが で き る こ と,後 者 に対 し て は 低 放 射 化 材 の 開 発 が 進 め られ て い るが,炉 ITERの
材 料 に つ い て は,ITERの
長 時 間 運 転 に は,プ
イバ ー タへ 導 き,こ
重 要 な研 究 課 題 で あ る と見 た ほ うが よ い.
ラ ズ マ の 閉 じ込 め 領 域 か ら逃 げ る粒 子 束 と熱 流 束 を ダ
こ で 排 気 と冷 却 に よ っ て 処 理 しな け れ ば な ら な い.ダ
で 高 熱 流 束 を処 理 で き る材 料 は 開 発 され,設
計 が 可 能 に な っ て い る.ま
イバ ー タ 板
た,燃
料 注入
も重 要 で あ り,重 水 素 と三 重 水 素 の 氷 か ら な る ペ レ ッ トを加 速 して 入 射 す る こ とに な っ て い る.ト
ー ラ ス の 内 側 か ら 入 射 す る と,供 給 効 率 が よ い こ と が 見 い 出 さ れ て い
る. 2002年
に な れ ば,ITERの
会 の 中 間 報 告 で は,核
建 設 を め ぐる 議 論 が 活 発 に な る と思 わ れ る.ITER懇
発 す る意 義 が あ る とい う 「 保 険 論 」 の 立 場 が 述 べ られ て い る.ま 究 は,国
談
融 合 は 日本 の 将 来 の 主 要 な エ ネ ル ギー 源 の選 択 肢 と して 研 究 開
際 的 に 見 て トッ プ レベ ル に あ る の で,日
た,日
本 の核 融 合 研
本 に 建 設 し,国 際 協 力 を活 用 して 核
融 合 炉 実 現 に 向 け て さ ら に研 究 を リー ドす る とい う研 究 実 績 に 基 づ く 「国 際 貢 献 論 」 も あ る.約5,000億
円 と い わ れ て い るITERの
建 設 費 に,長
期 に わ た る 実 験 経 費,
さ ら に 実 験 停 止 後 の 処 理 を考 慮 す る と,相 当 な税 金 を投 入 す る研 究 計 画 に な るの で, 簡 単 に は 決 ま ら な い と思 わ れ るが,21世 前 向 きの 議 論 を期 待 した い.な
紀 の 国 際 的 な 大 型 研 究 計 画 の モ デ ル と して,
お,学 術 会 議 の物 理 学 研 究 連 絡 委 員 会 の議 論 で は,基
礎 科 学 と して も重 要 な 計 画 と認 識 され て い る.(筆 学 大 学 院 エ ネ ル ギー 科 学 研 究 科教 授.1945年 1月9日
者=わ か たに ・ま さ ひろ,元
生 まれ,1968年
死 去)
参考文献 1) 若 谷 誠 宏,嶋 2)
ITER
Physics
田 道 也,玉
野 輝 男,藤
Basis,Nuclear
原 正 巳:日
Fusion
本 物 理 学 会 誌54(1999)417-423.
39(1999)2137.
京都 大
京都 大 学 工 学 部 卒 業.2003年
V 宇
宙
物
理
30.
宇 宙論 の進展 と展望 佐
30.1
は
じ
め
藤 勝
彦
に
我 々 の 住 ん で い る世 界 に は 果 て が あ る の だ ろ うか?こ
の 世 界 に は 始 ま り とい う も
の が あ っ た の だ ろ うか,ま
た 終 わ りが あ る の だ ろ うか?世
話 に も見 られ る よ う に,人
類 は そ の 歴 史 の始 ま っ た こ ろ か ら 自 らの 住 ん で い る この 世
界 が どの よ うな もの で あ る の か 問 いつ づ け て き た.自 成 す る物 の 性 質 や 運 動 の 規 則 を 見 つ け,自 ル の 大 き い 世 界,小
界 各 地 に 残 され て い る神
ら の 生 活 体 験 の 中 か ら世 界 を構
らの 体 のサ イ ズ を基 準 と して,よ
さ い 世 界 へ と 認 識 を広 げ て き た.20世
りス ケ ー
紀 は この よ う な人類 の 歴
史 の 中 で も極 め て 大 き な マ イ ル ス トー ン とな る世 紀 で あ っ た.現
代 物 理 学 を支 え る2
本 の 柱 で あ る量 子 論 と相 対 論 が20世
の 上 に現代 物理 学 の
摩 天 楼 が 建 設 さ れ た.ま
紀 初 め に 作 り上 げら れ,そ
た 同 時 に こ の 物 理 学 を 基 礎 と して,宇
宙,地
球,生
命 を含 む
す べ て の 科 学 が 爆 発 的 に 進 ん だ.直 接 手 に す る こ とが で き な い 宇 宙 に つ い て は 電 波 か ら ガ ン マ 線 に い た る 電 磁 波 を 用 い た望 遠 鏡 に よ り,ま た 肉 眼 で は 見 る こ と の で き な い 極 微 の 世 界 は 光 学 顕 微 鏡,電
子 顕 微 鏡,そ
し て 加 速 器 とい う究 極 の 顕 微 鏡 に よ っ て 物
質 の 存 在 様 式 と運 動 の 法 則 を探 求 して きた.い ル,プ
ラ ン ク長 さ(〓10-33cm)か
ら,大
まや 我 々 は 小 は 時 空 の 量 子 論 的 ス ケ ー
は観 測 的 宇 宙 の 果 て(〓1028cm)ま
身 の 体 の 大 き さ を基 準 と して 大 小 そ れ ぞ れ の 方 向 に お よ そ30桁
で,自
の スケー ル で世 界 の
階 層 構 造 を知 っ て い る. 宇 宙 と は,難
し く言 え ば 時 空 多 様 体 と そ れ を満 た して い る物 質 の 系 で あ る.し
っ て 宇 宙 論 の 科 学 的 研 究 が 可 能 に な っ た の は,時 以 後 で あ る.ア
空 の物 理 学 で あ る 一 般 相 対 論 の 成 立
イ ン シ ュ タ イ ン は 直 ち に 自分 の 方 程 式 が 初 め て 宇 宙 を全 体 と して 記 述
で き る もの で あ る こ と を認 識 し,永 遠 不 変 な 宇 宙 の モ デ ル を作 ろ う と した.し の 宇 宙 は 自分 に は た ら く重 力 に よ っ て,縮
ュ タ イ ン の 静 的 宇 宙 モ デ ル を作 っ た.一
々 の 方 程 式 に 加 え,今
分 の 方 程 式 を素 直 に解 い て 必 然 的 に 導 き 出 さ れ る,宇
こ
日ア イ ン シ
方 ロ シ ア の フ リー ドマ ン は,1922年
シ ュ タ イ ン方 程 式 を解 き宇 宙 が 膨 張 し た り,収 縮 す る解 を見 つ け た.し
め 好 ま な か っ た.そ
か しそ
ん で つ ぶ れ て し ま う こ とが わ か っ た.そ
で 空 間 が 互 い に 押 し合 う効 果 を持 つ 宇 宙 定 数 を,元
ュ タ イ ン は,自
たが
アイン
か しア イ ン シ
宙 膨 張 の 解 を初
れ は ア イ ン シ ュ タ イ ン が 宇 宙 は 永 遠 不 変 の も の と信 じ て い た か ら
で あ る.膨 張 宇 宙 の 解 を認 め る と,も
はや 宇 宙 は 永 遠 不 変 な もの で な くな り,加 え て
世 界 に は 始 ま りが あ っ た こ とに な っ て し ま うか ら で あ っ た.ハ
ッ ブ ル は1929年,遠
方 の 銀 河 ほ ど我 々 か ら早 い 速 度 で 遠 ざ か っ て い る と い う 法 則,宇 た.こ
宙 の膨 張 を発 見 し
れ らに よ り私 た ちの 住 ん で い る 宇 宙 は 大 きな 極 限 で は 銀 河 が 無 数 に 広 が っ た 銀
河 宇 宙 で あ り,そ れ が 膨 張 を続 け て い る とい うこ と が わ か っ た の で あ る.ハ
ッブ ル の
発 見 は 我 々 の 住 ん で い る世 界 の 描 像 を 静 的 な 永 遠 不 変 な もの か ら,動 的 に 進 化 す る も の へ と革 命 的 に 変 え て し ま っ た. ガ モ フ は こ の 始 ま り に,当 我 々 の 宇 宙 は 火 の 玉,ビ
時 最 先 端 の科 学 で あ っ た 「原 子 核 物 理 学 」 を 応 用 し,
ッ グ バ ン と して 始 ま っ た こ と を示 し た の で あ る(1946年).
ガ モ フ は 私 た ち の 宇 宙 を構 成 し て い る元 素 の70%以 で あ り炭 素 や 酸 素 よ り重 い 重 元 素 が1,2%で
上 が も っ と も 単 純 な 元 素,水
玉 と し て 生 ま れ な け れ ば な ら な い こ と を 示 し た の で あ る.そ 玉 の 名 残 で あ るマ イ ク ロ波 宇 宙 背 景 放 射(3K放 っ て 発 見 され,こ
素
あ る こ と を説 明 す るに は 宇 宙 は 熱 い 火 の
射)が
し て1965年,こ
の火の
ペ ン ジ ャス と ウィル ソ ンに よ
の ビ ッ グ バ ン 理 論 は 揺 る ぎ の な い も の と な っ た の で あ る.ビ
ッ グバ
ン理 論 は 今 日大 筋 に お い て 宇 宙 論 的 な 観 測 と も よ く一 致 し,科 学 的 な 宇 宙 論 の 標 準 と な っ て い る. 30.2 ビ ッ グ バ ン 理 論 は,こ
宇宙 の イ ン フ レー シ ョン
の よ う に3K放
射 の 発 見 に よ っ て,標
しか し未 解 決 な 問 題 も残 さ れ た.第1は"始
準 理 論 と な っ た が,
ま り"の 問 題 で あ る.宇
リー ドマ ン の 解 で は 宇 宙 は 時 空 の特 異 点 か ら始 ま る.特
異 点 とは,時
宙 膨 張 の 解,フ 空 の 曲 が りを 表
す 曲 率 な ど の 量 が 無 限 大 に な り,因 果 の 関 係 を表 す 曲 線 が こ こ か ら 出 発 し た り,終 わ っ て し ま う 点 で あ る.こ
の 特 異 点 が あ る 自然 な 条 件 の も とで は 避 け る こ とが で き な い
と い う 「特 異 点 定 理 」 もS.ホ ー キ ン グやR.ペ
ン ロ ー ズ に よ っ て 証 明 され て い る.因
果 の 曲 線 が 出 発 す る特 異 点 か ら宇 宙 が 始 ま る こ とは,宇
宙 の 出来事 は特 異点 の彼方 か
らの 情 報 に 依 存 す る こ と を意 味 す る.物 理 学 者 と して は こ の よ う な,い 撃"に
わ ば"神
の一
よ っ て 宇 宙 が 始 ま る と い う描 像 よ り,物 理 学 の 中 で 自 己完 結 的 に宇 宙 の 創 生 か
ら終 焉 ま で 記 述 で き る と い う描 像 を持 ち た い.こ て 奇 妙 な こ とは,①
率 が 極 め て ゼ ロ に近 い こ と,つ ど平 坦 で あ る とい う こ と,そ 種 は,因
の よ うなア カデ ミックな問題 に加 え
宇 宙 は 因 果 の 関 係 を超 え て 極 め て 一 様 で あ る こ と,②
ま り観 測 的 に 容 易 に ゼ ロ か らの ず れ が 測 定 で き な い ほ し て ③ 宇 宙 の 大 き な 構 造(銀
河 団,超
果 の 関 係 を超 え て仕 込 まれ た よ うに 見 え る こ とで あ る.①
ば れ て い る.地
宇宙の曲
銀 河 団 な ど)の は 地 平 線 問 題 と呼
平 線 とは 因 果 の 関 係 を持 つ こ との で き る領 域 の 大 き さ で,宇
宙 開闢 の
時 刻 に あ る 地 点 を 出 発 し た光 が 到 達 で き る 距 離 で あ る.宇 宙 開闢 以 来 一 度 も因 果 関 係 を持 つ こ との な か っ た と こ ろ が,ま
っ た く同 じ密 度 状 態 に あ る とい う こ とは 奇 妙 で あ
る.②
は 平 坦 性 問 題 と呼 ば れ て い る.宇
は,時
空 の 曲 が りが 少 し で も正 で あ っ た り,ま た 負 で あ る とそ の 方 向 に 急 激 に 成 長 し
宙 膨 張 を 記 述 す る 方 程 式,重
力 場 の方 程 式
図1 宇宙の進化 と構造の形成
て し ま う性 質 が あ る.現 在 の 宇 宙 の 曲 率 は ゼ ロ に 近 い が,曲 率 の 値 が 観 測 的 上 限 値 内 に 収 ま る ため に は,宇
宙 創 生 の 瞬 間(仮
に プ ラ ン ク時 刻 とす る)に は120桁
初 期 密 度 を設 定 し て や ら な け れ ば な ら な い.こ ら ぎの 起 源 問 題 は,実
の精 度 で
れ は 極 め て 不 自然 で あ る.③ の 密 度 揺
際 観 測 さ れ て い る宇 宙 の 大 構 造 の種 を初 期宇 宙 で 作 ろ う と して
も,光 速 を超 え る よ うな 速 さ で 物 質 を運 ん でや ら な け れ ば 凸 凹 を作 れ な い と い う 困 難 で あ り,ア カ デ ミ ッ クな 問 題 を 越 え て 具 体 的 な 困 難 で あ る. 1980年
こ ろ か ら,宇
宙 論 の 研 究 は 爆 発 的 な 進 歩 を始 め た.そ
した 力 の 統 一 理 論 に 基 づ い て,ま
れ は 当 時 大 き く進 歩
た 刺 激 され て 始 ま っ た 宇 宙 初 期 の 理 論 的 研 究 で あ
る.統 一 理 論 に 基 づ い て 提 唱 さ れ た イ ン フ レ ー シ ョ ン理 論 は① か ら③ の 問 題 を 原 理 的 に は 解 決 で き る こ と を 示 し,ま た 引 き続 い て イ ン フ レー シ ョ ンの 進 展 に よ っ て 始 ま っ た 量 子 宇 宙 論 は,特
異 点 な し の 宇 宙 創 生 の モ デ ル を示 す こ とが で き た.現 在 こ の 理 論
的 研 究 の 成 果 と して 我 々 は 次 の よ う な パ ラ ダ イ ム を 持 っ て い る.1.我 間 も 空 間 も物 質 も な い"無"の は,"果
て の な い 条 件"か
々の 宇 宙 は 時
状 態 か ら 量 子 論 的 効 果 に よ っ て 創 生 さ れ た.あ
ら虚 時 間 と し て 始 ま っ た.2.生
フ レー シ ョン と呼 ば れ る急 激 な 加 速 度 的 膨 張 を始 め た.こ
の 急 激 な 膨 張 に よ り宇 宙 の
曲率 は そ の 初 期 値 の 如 何 に か か わ らず ゼ ロ に 収 束 し,平 坦 とな る.そ
し て イ ン フ レー
シ ョ ン の 終 わ る こ ろ に 開 放 さ れ た 真 空 の エ ネ ル ギ ー は 熱 エ ネ ル ギ ー に転 化 し,火 宇 宙 が 始 ま っ た.3.イ
るい
まれ た 宇 宙 は ま も な く イ ン
の玉
ン フ レー シ ョ ン 中 に 量 子 論 的 揺 ら ぎ と して 仕 込 ま れ た 密 度 の
凸 凹 は,宇 宙 が 膨 張 冷 却 す る過 程 で 次 第 に 成 長 し,現 在 の 銀 河 や 銀 河 団 な ど の 大 構 造 を は じめ とす る 多 様 で 豊 か な 宇 宙 が 形 成 さ れ た.現 の パ ラ ダ イ ム の 中 で 進 め られ て い る.(図1)
在 の 宇 宙 論 の研 究 は 基 本 的 に は こ
30.3 宇 宙 論 的 観 測 の 急 激 な 進 展 1992年,ア
メ リ カ の 宇 宙 背 景 放 射 観 測 衛 星,COBEは
っ て い な い こ ろ の 宇 宙 の 姿 を 描 き 出 し た.わ の 強 弱 で あ る け れ ど,描
宇 宙 開闢 か ら30万
ず か10万
き だ され た 宇 宙 構 造 の 種 は,イ
る揺 ら ぎの 予 言 と一 致 し た の で あ る.も
分 の1と
ン フ レー シ ョ ン理 論 の 予 言 す
っ と も標 準 的 な イ ン フ レ ー シ ョ ン理 論 は,揺
ら ぎ の 波 長 ご と の 振 幅 の 大 き さ を表 す パ ワ ー ス ペ ク トラ ム が 波 数kの1次 例 す る こ と を 予言 して い る.COBE衛 冪 は,観
測 誤 差 内 で1で
年 しか 経
い うマ イ ク ロ波 電 波
の冪 に 比
星 に よ っ て 観 測 さ れ た パ ワ ー スペ ク トラ ム の
あ っ た の で あ る.こ
れ に よ っ て イ ン フ レ ー シ ョ ン理 論 は 観 測
か ら大 きな 支 持 を受 け る こ と に な っ た の で あ る. COBEの
成 果 は,実
一つ の成 果 であ る .宇
は1980年
代 中 ご ろか ら,爆
発的 に進 み始 め た観 測 的宇 宙論 の
宙 で は 遠 方 を 観 測 す る と い う こ とは 過 去 を 見 る こ と,つ
宙 の初 期 に 近 づ くこ とで あ る.し
ま り宇
か し,遠 方 で あ る と い う こ と は そ れ だ け 観 測 が 困 難
で あ り,以 前 の 観 測 は 誤 差 も大 き く観 測 的 に宇 宙 の 初 期 を探 る こ とは で き な か っ た の で あ る.し
か し,CCDに
代 表 さ れ る光 電 技 術 の 急 激 な進 歩,人
工 衛 星 に よ る観 測 な
ど に よ り,電 磁 波 の 全 波 長 に わ た る 観 測 が 可 能 に な り,ま た計 算 機 技 術 の 進 歩 に よ る 大 量 デ ー タ処 理 が 可 能 と な っ た こ と な ど に よ り,い
まや 宇 宙 論 の 研 究 は 観 測 的 宇 宙 論
の 時 代 に な っ た の で あ る.宇 宙 論 の 根 幹 に か か わ る 発 見 の ま ず 第1は,1970年 ら1980年
代 に か け て 確 か と な っ た 暗 黒 物 質(ダ
ー クマ タ-)の
代か
存 在 で あ る.そ
の正 体
は 謎 の ま ま で あ る が,そ
の 量 は 宇 宙 を 平 坦 に す る 物 質 密 度,す
%程
こ で ΩDMは 暗 黒 物 質 の 密 度 を臨 界 密 度 で 割 っ た も の で,暗
度,ΩDMで
あ る.こ
黒 物 質 の 密 度 パ ラ メー タ で あ る.ち 常 の物 質,バ ら,せ
リ オ ン の 量 は,宇
いぜ い ΩB〓0.01-0.02程
な み に,我
な わ ち 臨 界 密 度 の30
々 の体 を は じ め 星 な ど を 作 っ て い る通
宙 初 期 の 元 素 合 成 の理 論 や,銀
河 団 ガ ス な どの 観 測 か
度 と考 え られ て お り,暗 黒 物 質 の 量 に 比 べ る と一 桁
以 上 少 な い. 第 二 の 発 見 は,1980年
中 ご ろ の 宇 宙 の 大 構 造 の 発 見 で あ る.銀 河 が 群 れ を つ く り,
銀 河 団 や 超 銀 河 団 を 形 成 して い る こ とは,は
る か 前 か ら知 られ て い た が,そ
い に繋 が り,あ た か も 蜂 の 巣 の セ ル の よ う に 連 な っ て い る こ とが,M ル ー プ に よ っ て 発 見 さ れ た の で あ る.し 空 白領 域,ボ
れ らが 互
.ゲ ラ ー 等 の グ
か も蜂 の 巣 の セ ル の 中 は 銀 河 の数 が 希 薄 な,
イ ドな の で あ る.
新 た な発 見 で は な い が,宇 速 さ を示 す ハ ッブ ル 定 数,H0の
宙 論 に お け る も っ と も重 要 な パ ラ メー タ,宇 宙 の 膨 張 の 値 も,こ
の数 年 で ほ ぼ10%程
た の で は な い か と考 え られ る よ うに な っ た.ハ ッ ブ ル 定 数 を 誤 差10%の
精 度 で 決 め よ う とす る,W.フ
ー プ ロ ジ ェ ク トの 最 終 報 告 はH0=72±8km/s/Mpcで
度 の誤 差範 囲 で定 まっ
ッ ブ ル 宇 宙 望 遠 鏡 を 長 時 間 駆 使 し,ハ リー ドマ ン 等 の ハ ッ ブ ル キ あ る こ と を 示 して い る.
最 近 の も っ と も イ ンパ ク トの 大 き な 宇 宙 論 的 観 測 は,現
在 の 宇 宙 に は真 空 の エ ネ ル
ギ ー が 満 ち て お り,そ れ に働 く斥 力 に よ っ て宇 宙 は 今 加 速 度 的 膨 張 を して い る とい う 発 見 で あ る.2つ
の 遠 方 の 超 新 星 を観 測 す る グ ル ー プ が 独 立 に 真 空 の エ ネ ル ギ ー の 量
は 臨 界 密 度 の70%,つ
ま り ΩΛ〓0.7に も な る こ と を示 した の で あ る.こ
真 空 の エ ネ ル ギ ー 密 度 を臨 界 密 度 で 割 っ た も の で,真
こ で ΩΛは
空のエ ネル ギー の密度パ ラメー
タ で あ る. 真 空 の エ ネ ル ギ ー が 存 在 して い る と い う こ とは,ア 在 して い る こ と と数 学 的 に 同 等 で あ る.か
デ ル を 作 る た め に この 宇 宙 定 数 を 導 入 し た もの の,ハ よ っ て,1929年
イ ンシュ タインの宇 宙定 数が 存
つ てア イン シュ タイ ンは永遠不 変 な宇宙 モ ッ ブ ル に よ る宇 宙 膨 張 の 発 見 に
み ず か ち もは や 不 要 で あ る と捨 て 去 っ た.も
イ ン シ ュ タ イ ン の 宇 宙 定 数 は70年
し観 測 が 正 し い な ら ア
ぶ りに 復 活 し た こ とに な る.こ
の"発
見"は,一
時 イ ン フ レー シ ョ ン理 論 の 危 機 と い わ れ て い た 困 難 を 一 挙 に 解 決 す る もの で あ る.イ ン フ レー シ ョ ン理 論 は 宇 宙 が 平 坦 で あ る こ と を予 言 す る.宇 宙 膨 張 の 式 か ら宇 宙 の 曲 率 の 符 号,k=+1,0,-1はk/H02=Ω-1に パ ラ メ ー タ で,そ
よ っ て 決 ま る.こ
こ で,Ω
れ ぞ れ の 密 度 パ ラ メー タ の合 計,Ω ≡ ΩB+ΩDM+ΩΛ
は宇 宙の 密度 で あ る.
し か し最 近 の 天 文 学 的 な 観 測 は 宇 宙 を 平 坦 に す る ほ ど物 質 が こ の 宇 宙 に 満 ち て お ら ず 暗 黒 物 質 を,宇
宙 の 膨 張 の 速 さ が 速 す ぎ る た め,空
間 の 曲 率 は 負 に な り(k=
-1) ,永 遠 に 膨 張 を 続 け る こ と を示 唆 して い た の で あ る.し か し,超 新 星 の 観 測 か ら "発 見"さ れ た真 空 の エ ネ ル ギ ー を加 え る と ち ょ う ど イ ン フ レ ー シ ョ ン の 予 言 ど お り の 平 坦 な宇 宙 が 実 現 で き る.し が つ き ま と う.よ
か し宇 宙 論 的 な 観 測 に は 系 統 的 な 誤 差 や 統 計 的 な 誤 差
り遠 方 の 超 新 星 を数 多 く観 測 す る 必 要 が あ る.
最 新 の も う ひ とつ の イ ン パ ク トの 大 き い 宇 宙 論 的 観 測 は,宇
宙 背景放射 の細 か な揺
ら ぎの 観 測 か ら,宇 宙 は 極 め て 平 坦 で あ る こ とが 示 さ れ た こ とで あ る.2000年5月, ブ ー メ ラ ン チ ー ム とマ キ シ マ チ ー ム は 独 立 に,気
球 を用 い てCOBEの
倍 も細 か な 揺 ら ぎ の 観 測 を 行 い,Ω=0.9(+0.18,-0.16)と あ る.Ω が ほ ぼ1で
宇 宙 が 平 坦(k=0)で
観 測 よ り何 十
い う結 果 を示 し た の で
あ る と い う結 果 は,ま
さに イ ン フ レー シ
ョ ン理 論 の 研 究 者 が 待 ち 望 ん で い た デ ー タ で あ る.こ れ と遠 方 の 超 新 星 に よ る 真 空 の エ ネ ル ギ ー 密 度 パ ラ メ ー タ の観 測 と組 み 合 わ せ る な らば,Ω ΩB+ΩDM〓0.3と
の 中 の 配 分 も ΩΛ〓0.7,
決 ま っ て しま うの で あ る.
こ の よ う に21世
紀 は じめ に,宇
宙 論 の 基 本 的 な パ ラ メ ー タ は ほ とん ど決 ま っ て し
ま っ た よ う に見 え るの で あ る.し か も そ の 結 果 は イ ン フ レ ー シ ョ ン を前 提 とす る ビ ッ グ バ ン 理 論 と見 事 に 一 致 す る の で あ る.し か し,そ
れ に もか か わ ら ず,中
身 をみれ ば
正 体 不 明 の 暗 黒 物 質 や 真 空 の エ ネ ル ギ ー な ど,根 源 的 な 謎 が 残 さ れ て い る の で あ る. ま た宇 宙 創 生 の 問 題 は,イ が,そ
ン フ レー シ ョ ン と量 子 的 創 生 とい う枠 組 み が で きあ が っ た
の 根 拠 とな っ て い る 統 一 理 論 は 未 完 の ま ま で あ る.
30.4 量 子 宇 宙 論 筆 者 や グー ス の考 え た 当初 の イ ン フ レー シ ョ ン理 論 は,当
時盛 んに研 究 され てい た
大 統 一 理 論 に 基 づ い て考 え 出 さ れ た もの で あ る.こ の 理 論 は ワ イ ンバ ー グ とサ ラ ム の 電 磁 力 と弱 い 力 の 統 一 理 論 を さ らに 拡 張 し,強 宙 開闢,10-36秒
頃,宇
い 力 も含 め て統 一 す る理 論 で あ る.宇
宙 の 温 度 が1015GeV(GeV=109eV)で
あ っ た こ ろ,真
空の相
転 移*1が 起 こ り,強 い 力 が 枝 別 れ を起 こ し た こ と を こ の 理 論 は 予 言 し て い る.ワ ンバ ー グ-サ ラ ム の 統 一 理 論 や,大
統 一 理 論 で は 真 空 の 相 転 移 と は,ヒ
イ
グス場 と呼 ば
れ て い る素 粒 子 の 場 の 相 転 移 で あ る.相 転 移 前 の 状 態 で は 真 空 の エ ネ ル ギー 密 度 は 高 い 状 態 に あ り,こ れ に働 く重 力 は 斥 力 で あ る.宇 宙 は 指 数 関 数 的 な 急 激 な 加 速 膨 張 を す る よ うに な り,ミ う.イ
ク ロ な宇 宙 で も,一 挙 に何 億 光 年 もの マ ク ロ な 宇 宙 に な っ て し ま
ン フ レー シ ョ ン の 持 続 す る 時 間 は,真
空 が 不 安 定 に な っ た エ ネ ル ギー の 高 い 状
態 に ど れ だ け 我 慢 し て 止 ま る こ とが で き る か に よ っ て 決 ま る わ け で あ る.し の エ ネ ル ギー の 密 度 は,宇 体 積 が100桁
宙 が 急 膨 張 し て も,ま
大 き くな っ た と した な らば,そ
っ た く変 化 し な い.つ
か も真 空
ま り,宇 宙 の
の 中 の 真 空 の エ ネ ル ギ ー の 総 量 も100桁
大 き くな る の で あ る.相 転 移 が 最 終 的 に 起 こ る と,真 空 の エ ネ ル ギ ー は 潜 熱 と して 開 放 さ れ,通
常 の 物 質 エ ネ ル ギ ー に 転 化 す る.こ
の シ ナ リオ は エ ネ ル ギー 保 存 則 を 満 た
す 重 力 場 の 方 程 式 や ヒ グ ス場 の 方程 式 を解 く こ とで 導 か れ て い る の で は あ る が,見 け 上,無
か らエ ネ ル ギ ー を生 み 出 す メ カ ニ ズ ム とな っ て い る.今
い る 物 質 エ ネ ル ギ ー は す べ て,イ
か
日,宇 宙 を 満 た し て
ン フ レ ー シ ョ ン が 作 り出 した もの で あ る.こ
れが イ
ン フ レ ー シ ョ ン理 論 の 真 髄 で あ る. ヒ グ ス 粒 子 は 残 念 な が ら まだ 発 見 され て い な い.CERN(ヨ 構)に
あ っ た 加 速 器LEP-Ⅱ
2.9σ の 統 計 で質 量 が115GeVで 大 ハ ドロ ン衝 突 装 置,LHCの ヒ グ ス粒 子 の 発 見 はLHC稼 子 が 発 見 さ れ た な ら ば,真
ー ロ ッパ 素 粒 子 研 究 機
で ヒ グ ス 粒 子 ら し き シ グ ナ ル が2000年 あ る 予 想 と一 致 した*2.し 建 設 の た めLEP-Ⅱ 動(2005年
予 定)を
夏 観 測 さ れ,
か し結 局 次 の 大 型 装 置,
は シ ャ ッ トダ ウ ン さ れ て し ま っ た. 待 た ね ば な ら な い.も
ちろん この粒
空の エネ ル ギーや 真空 の相 転移 は地上 の実 験で確 認 され た
こ とに な り,イ ン フ レー シ ョ ン理 論 は 理 論 的 な 強 い 根 拠 を持 つ こ とに な る. しか し,も
と も と の イ ン フ レ ー シ ョ ン理 論 は,問
っ て は 相 転 移 が 完 了 しな くな る,ま
題 が あ っ た.パ
ラ メ ー タの 値 に よ
た相 転移終 了後の 宇宙 の凸 凹の度合 いが強 す ぎ る
*1 力 の 統 一 理 論 で は仮 想 的 な ス カ ラー 粒 子 の 場 で あ る ヒ グ ス場 が 自発 的対 称 性 の 破 れ を起 こ す こ とに よ って,力 を媒 介 す る ゲー ジ粒 子 に 質 量 を 持 た せ 力 の 性 質 を変 え る.物 性 物 理 学 の 超 伝 導 理 論 か らの ア ナ ロ ジ ー に よ っ て 導 入 さ れ た.し た が って 温度 が 臨 界 温 度 以 下 に な る と相 転 移 を 起 こ し 自発 的 対 称 性 の破 れ を起 こ す. *2 は っ き り と ヒグ ス粒 子 で あ る こ と を確 認 す る た め に は,ノ で あ る.
イ ズ をは るか に 越 え る事 象 数 が 必 要
こ とな ど で あ る.銀 種 と して,凸
河 団 や グ レー トウ オー ル を は じめ と し た宇 宙 の 構 造 を作 る た め の
凹 を 仕 込 ん でや る 必 要 が あ る が,こ
れ で は 揺 ら ぎの 振 幅 が 大 き す ぎ,成
長 し て 宇 宙 は ブ ラ ッ クホ ー ル だ らけ に な っ て し ま う.最 初 の 改 良版 と して 新 イ ン フ レ ー シ ョ ン モ デ ル が リン デ や ス タ イ ンハ ー トな ど に よ っ て 提 案 さ れ た.し か しそ れ に も 問 題 が 残 され て い た こ とか ら,カ オ テ ィ ッ ク イ ン フ レ ー シ ョ ン,ハ
イ ブ リッ ドイ ン フ
レ ー シ ョ ン,拡 張 イ ン フ レー シ ョ ン モ デ ル,超 拡 張 イ ン フ レー シ ョ ン モ デ ル,ソ イ ン フ レー シ ョ ン,ナ
チ ョラ ル イン フ レー シ ョ ン,オ
ー プ ン イ ン フ レー シ ョ ン と数 え
切 れ な い ほ ど の モ デ ル が 今 日 ま で に 提 案 さ れ て い る.こ の よ うな,い レー シ ョ ン の モ デ ル が 提 案 さ れ る な か で,力
フ ト
ろい ろなイ ンフ
の 統 一 理 論 に 基 づ い て イ ン フ レー シ ョ ン
モ デ ル を作 り上 げ る 精 神 は 失 わ れ て し ま っ た.イ
ン フ レー シ ョン を起 こす 真 空 の相 転
移 は 統 一 理 論 で は ヒ グ ス場 とい う,素 粒 子 に質 量 を 与 え る 必 要 性 か ら導 入 され た もの で あ っ た が,い つ ま り,と
まや 真 空 の 相 転 移 を に な う場 は"イ
ン フ ラ トン場"と
もか く素 粒 子 論 的 に は 何 の 根 拠 も な い が,イ
呼 ば れ て い る.
ン フ レー シ ョ ン を起 こす だ け
の た め に い ろ い ろ 工 夫 を して 作 る仮 想 的 な場 で あ る.も
ち ろ ん 新 た な 力 の 統 一 理 論,
超 重 力 理 論 や 超 紐 理 論 な どか ら導 く努 力 も進 め られ て い る こ と は い う ま で もな い. イ ン フ レー シ ョ ン理 論 の,興 る.佐
藤,佐
々 木,小
玉,前
多 重 発 生 の 理 論 を提 唱 し た.そ に 議 論 を進 め た が,後 起 こ る.リ
味 深 い 予 言 の 一 つ は,宇
田 は1982年,イ
宙 が 無 限 に 作 られ る こ とで あ
ン フ レー シ ョ ン の 研 究 の 中 で,宇
こ で は相 転 移 が 単 純 な1次
宙の
の 相 転 移 で あ る場 合 を前 提
に 考 え ら れ た イ ン フ レー シ ョ ン の 改 良 版 で も基 本 的 に 同 じ事 が
ン デ は 自 己増 殖 す る宇 宙 モ デ ル を提 唱 し て い るが,こ
れ は真 空の エネ ル ギ
ー が 凸 凹 だ ら け と な る 原 因 を相 転 移 で は な く ,量 子 論 的 な揺 ら ぎ に 求 め て い る 点 が 異 な る.量 子 論 的 な揺 ら ぎで 真 空 の エ ネ ル ギー に 凸 凹 が 生 じ る よ う な エ ネ ル ギー の ス ケ ー ル は プ ラ ン ク ・エ ネ ル
ギーと呼 ば れ て い る ス ケ ー ル で あ る . 一 つ の 母 宇 宙 が 存 在 す れ ば 無 限 に 宇 宙 が 作 られ る こ と を イ ン フ レ ー シ ョ ン理 論 自体 が 予 言 して い る が,し
か し完 壁 な宇 宙 創 生 論 と な る た め に は,イ
の 種 とな る,"母
ン フ レー シ ョ ン宇 宙
宇 宙"を 創 っ て や ら ね ば な ら な い .そ れ はA.ビ ー トル とS.ホ ー キ ン グ に よ っ て 展 開 さ れ た 量 子 宇 宙 論 で あ る .言
レ ン ケ ン や,J.ハ う ま で も な くイ ン
フ レ ー シ ョ ン理 論 が ミ クロ な 時 空 を 瞬 時 に マ ク ロ な 宇 宙 へ と膨 張 させ,か
つ その 中に
物 質 エ ネ ル ギ ー を満 ち〓 れ さ す こ とが で き る と い う道 筋 を準 備 して い た か ら こ そ 可 能 に な っ た の で あ る.量
子 宇 宙 論 に よ って 作 ち れ る宇 宙 は 当 然,創
生 と同 時 に 直 ち に イ
ン フ レ ー シ ョ ン を起 こ す モ デ ル で あ る. 当 然 な が ら ビ レ ン ケ ンや ホ ー キ ン グ の 量 子 宇 宙 論 も無 限 の 宇 宙 の 存 在 を予 言 す る. 無 か ら 作 られ る宇 宙 が わ れ わ れ の 住 ん で い る宇 宙 一 つ だ け で あ る は ず は な く,ほ か に も無 限 に 作 ら れ て い る は ず で あ る.現 在 宇 宙 を考 え る時,こ
の よ う な 無 限 に数 多 くの
宇 宙 が あ り そ の ひ とつ が 我 々 の 宇 宙 で あ る と して と ら え な け れ ば な ら な くな って きて
い る.こ
の よ う な考 え は マ ル チ バ ー ス(multiverse)と
呼 ば れ て い る.無 限 に 生 ま れ
続 け て い る 一 つ の 宇 宙 に 我 々 は 住 ん で い る こ と に な る が,他
の す べ て の 宇 宙 が,必
し も我 々 の 宇 宙 と同 じ よ うに,多 様 で 美 し い 世 界 で あ る わ け で は な い.創
ず
造 の直後 に
す ぐ膨 張 か ら収 縮 に 転 じつ ぶ れ て し ま う宇 宙 も あ る し,ま た 逆 に 急 激 な膨 張 が 止 ま ら な い た め,ガ か,私
ス が 集 ま り銀 河 や 星 が 形 成 す る こ との で き な い 宇 宙 も あ る.そ れ ど こ ろ
た ち の 世 界 を支 配 して い る 物 理 法 則 とは 異 な る法 則 が 支 配 して い る 宇 宙 も存 在
す る で あ ろ う.例
え ば大 統 一 理 論 で は一 つ の 力 が 真 空 の 相 転 移 に よ っ て 枝 分 か れ を起
こ し,色 の 力 と電 弱 力 が 生 まれ る こ とに な っ て い る が,相 り落 ち る と,電 磁 力 は 生 ま れ る もの の,色
の 力 で も 弱 い 力 で もな い別 の 種 の 力 へ と枝
分 か れ し て し ま う.ま た 最 近 の 超 紐 理 論 は も と も と10次 の 存 在 を考 え て い る.私 る が,量
た ち の 宇 宙 は3次
転移 で異 な った真空 に転 が
元 の よ うな高 い次 元 の空 間
元 の 空 間 と1次 元 の 時 間 か ら な る世 界 で あ
子 宇 宙 論 の 立 場 で は 空 間 の 次 元 が5次
元 で あ る宇 宙 や 逆 に2次
元 しか な い宇
宙 も生 ま れ た は ず で あ る. 我 々 の 住 ん で い る宇 宙 の 性 質 は,あ
た か も神 が 人 間 を創 造 す る た め に デ ザ イ ン し た
か の よ う に 見 え る ほ ど,都 合 よ く物 理 定 数 が 調 整 さ れ て い る.な ぜ この よ う な精 密 な 調 整 が お こ な わ れ た の で あ ろ うか?し
か し よ く考 え て み る と,人 類 の よ う な知 的 生
命 体 が 生 ま れ な い宇 宙 が 存 在 し て い て も,そ の よ う な 宇 宙 は 存 在 が 認 識 も され な い. 認 識 さ れ る 宇 宙 は 知 的 生 命 体 が 誕 生 す る宇 宙 の み で あ る.そ
の 生 命 体 は,自 分 の 住 ん
で い る 宇 宙 は あ た か も 自 身 を生 む よ うに 設 計 さ れ た と思 っ て し ま うの で あ る.こ の よ うな 考 え は 「人 間 原 理 」 とか 「人 間 原 理 の 宇 宙 論 」 と し て 知 られ て い る.マ ス は,多
量 子 論 的 宇 宙 創 生 の最 近 の 話 題 は,多 の 刺 激 を受 け て,多 は,時
ルチバー
様 な宇 宙 が 創 られ る こ と を示 唆 し,「 人 間 原 理 」 の 基 礎 を あ た え て い る. 次 元 宇 宙 の創 生 で あ る.超 紐 理 論 の 進 展 や そ
様 な ア プ ロー チ が 進 め ら れ て い る.従
空 と な る4次 元 を除 い た残 りの 次 元,内
縮 ま っ て い る,つ
来 の 多次 元 宇 宙 モ デ ル で
部 空 間 はプ ラ ンクスケー ルの大 きさに
ま り コ ン パ ク ト化 さ れ て い る と考 え て い た.一
る 方 向 に は 宇 宙 は 膨 張 し な け れ ば な ら な い.こ イ ン宇 宙 モ デ ル と よ ば れ て い る が,こ 満 ち た 多 次 元 宇 宙 で あ る.す
方,3次
元 空 間 とな
の よ う な宇 宙 モ デ ル は カ ル ツ ア-ク ラ
の も っ と も単 純 な もの は,真
で に 内 部 空 間 が 収 縮,も
空 の エ ネ ル ギー に
し くは創 生 時 の ま まの 大 き さ を
保 ち,外 部 空 間 が イ ン フ レ ー シ ョ ン を起 こ す モ デ ル に つ な が る イ ン ス タ ン トン 解(虚 時 間 で の 古 典 解)な 接,時
どが 求 め ら れ て い る.ま
た,こ
の よ う なWKB近
似 で は な く直
空 の 運 動 を 記 述 す る シ ュ レデ ィ ン ガ ー 方 程 式 で あ る ウ イ ー ラ-ド ゥ イ ッ ト方 程
式 を解 き,宇
宙 の 波 動 関 数 の 振 る舞 い を調 べ る こ と もお こ な わ れ て い る.こ
れ ら の解
析 は 内 部 空 間 も外 部 空 間 も共 に大 き くな る イ ン ス タ ン トン の 寄 与 が も っ と も大 き い こ と を示 し て い る.内 部 空 間 を小 さ く保 ち,外 に は,ど
部 空 間 で イ ン フ レー シ ョ ン を起 こ す た め
う し て も 内 部 空 間 と外 部 空 間 で 圧 力 な どが 非 対 称 な物 質 場 を考 え ざ る を得 な
い. 最 近 の 新 た な,も
っ と も興 味 深 い 宇 宙 の モ デ ル は ブ レー ン 宇 宙 モ デ ル で あ る.究 極
の 統 一 理 論 と な り う る超 紐 理 論 と し て考 え られ て い るM理 高 次 元 の 空 間 の 中 に,3次
元 の 膜 が 存 在 し,そ れ が 我 々 の住 む 宇 宙 で あ る.物 質 は こ
の 膜 内 に 閉 じ込 め ら れ て い る と考 え る の で,こ 化 され る必 要 は な い.ラ
ン 的4次
の 膜 に 垂 直 な 方 向 は 決 し て コ ンパ ク ト
ン ダー ル と ス ン ドラ ム は5次
3次 元 の 空 間 の 膜 が あ る モ デ ル を用 い て,5次
は,多
論 の 示 唆 す る と こ ろ で は,
元 重 力 則 と な る モ デ ル を示 し た.特 くの 研 究 者 に よ っ て 調 べ られ,ブ
な る こ とが 示 され て い る.ま
ュー ト
に ブ レ ー ンが 正 の 表 面 張 力 を持 つ モ デ ル
レー ン 内 で の 重 力 則 が 確 か に ニ ュ ー トン 則 と
た そ の ブ レー ン宇 宙 の 宇 宙 膨 張 の 式 は 通 常 の 式 に,2つ
の 付 加 項 が 加 わ っ た もの で あ る.こ 大 き くな っ た 時 点 で は,寄
元 ア ン チ ドシ ッ タ 時 空 の 中 に,
元 的 な 重 力 が こ の 膜 内 で は,ニ
れ ら の 項 は物 質 密 度 が 小 さ くな り,ス ケ ー ル項 が
与 は 小 さ く無 視 で き るが,宇
宙 初 期 に は 効 果 を現 し,宇 宙
が 単 な る フ リー ドマ ン宇 宙 で は な く,ブ レ ー ン の 世 界 で あ る こ と を示 す もの で あ る. 現 在 ブ レー ン 宇 宙 モ デ ル は,多 る.こ
くの研 究 者 の 興 味 を 引 き つ け,大
れ が 新 た な パ ラ ダ イ ム と な る よ う な もの とな る の か,一
で は 判 断 で き な い が,た こ と は,確
き く進 展 しつ つ あ
つ の流行 なのか 現時 点
と え 後 者 で あ っ て も,こ の モ デ ル が 豊 か な 内容 を 持 っ て い る
か で あ る.
30.5 真 空 の エ ネ ル ギー,ダ
ー ク エ ネル ギー
遠 方 の 超 新 星 の 観 測 や 気 球 を 用 い た 背 景 放 射 の 観 測 か ら得 られ た,真 空 の エ ネ ル ギ ー 密 度 パ ラ メ ー タ の 値 は ΩΛ〓0 .7で あ り,暗 黒 物 質 や 通 常 の 物 質 密 度 の 合 計,ΛB+ ΩDM〓0.3を
超 え て い る.こ
れ は 再 び真 空 の エ ネ ル ギ ー が 宇 宙 の 主 な エ ネ ル ギ ー と な
り,宇 宙 は 急 激 な 膨 張,"第2の
イ ン フ レ ー シ ョ ン"を
始 め た こ と を 意 味 す る.こ
真 空 の エ ネ ル ギー の 正 体 は い っ た い何 な の だ ろ うか?最 クマ タ-(暗
黒 物 質)と
呼 ぶ の に 対 応 し て,こ
近,正
の
体不 明 の物 質 をダー
の正 体 不 明の真 空 の エ ネル ギー をダー
クエ ネ ル ギ ー(暗
黒 エ ネ ル ギ ー)と
な ぜ 我 々 は 第2の
イ ン フ レー シ ョ ン が 始 ま っ た と い う宇 宙 の 歴 史 の 特 別 な 時 期 に 生 き
て い るの か?偶
然 そ の よ う な こ とが 起 こ る確 率 は極 め て小 さ い.そ
必 然 性 が あ る は ず で あ る.こ
密 度 が 導 か れ る な ら,宇 の か"と
は そ の 正 体 だ け で は な い.
こ に は何ら か の
の 疑 問 は偶 然 一 致 問 題 と呼 ば れ る.本 来 何 の 関 係 も な い
量 で あ る両 者 の 値 は50桁,100桁 法 則 の 必 然 的 帰 結 と し て,例
呼 ぶ よ う に な っ た.謎
違 っ て い て も そ の ほ う が 自 然 な の で あ る.物
理学
えば 量子重 力理 論 の帰結 として現在 の真 空 のエ ネル ギー
宙 定 数 は も は や 物 理 定 数 で あ り,"何
故 こ の よ う な値 を も つ
い う疑 問 は 宇 宙 論 の 疑 問 で は な くな る.真 空 の エ ネ ル ギ ー が 存 在 す る と そ の
値 と して 自 然 な値 は,量 (1019GeV)4で
あ る.こ
子 重 力 理 論 の ス ケ ー ル で あ る プ ラ ン クエ ネ ル ギ ー 密 度G-2〓 こ でGは
重 力 定 数 で あ る.し か し現 在 の 真 空 の エ ネ ル ギ ー 密
度 は プ ラ ン クエ ネ ル ギ ー 密 度 の10-120で この よ う な120桁
あ る.
の 違 い を,現 在 の 物 理 学 の 範 囲 で 人 為 的 操 作 な しに 自然 に 導 くの
は ほ とん ど不 可 能 で あ ろ う.こ の 疑 問 は 小 さ さの 問 題 と呼 ば れ て い る.し か く宇 宙 時 刻 で 言 え ば 最 近 始 ま っ た 第2の ろ うか?未
か し,と
も
イ ンフレー シ ョンは永 遠 に続 くもの なのだ
完 で は あ る が 力 の 統 一 理 論 の 大 筋 を信 じ るな ら,宇 宙 の 真 空 の 相 転 移 に
した が っ て,真
空 の エ ネ ル ギ ー 密 度 は,プ
ラ ン クエ ネ ル ギー 密 度 か ら,大 統 一 理 論 の
ス ケ ー ル へ,ま
た 電 弱 力 の ス ケ ー ル へ,そ
して 強 い 力 の ス ケ ー ル へ と,階 段 状 に 下 が
っ て 来 た は ず で あ る.ク
ォ ー クハ ドロ ン相 転 移 以 後 真 空 の エ ネ ル ギー は ゼ ロ と な らず
に 現 在 の 値 と な っ て 落 ち 着 い た の だ ろ うか?そ 至 っ て い る の だ ろ うか?前
者 の 場 合,再
イ ン フ レー シ ョ ン は 終 了 す る の だ ろ うか?し ル ギ ー が 残 さ れ,第3の
か し,わ ず か なが ら も再 度 真 空 の エ ネ
イ ン フ レ ー シ ョ ン が 始 ま るの だ ろ うか?
真 空 の エ ネ ル ギ ー が,宇
宙 初 期 か ら 緩 や か に 減 衰 し て 今 日の 値 に な っ て い る と い う
モ デ ル も提 唱 さ れ て い る.最 ま り第5の
れ と も滑 らか に 変 化 し な が ら今 日に
度 何 兆 年 後 に 真 空 の 相 転 移 が お こ り第2の
近 減 衰 して い く真 空 の エ ネ ル ギー に,quintessence,つ
元 素 と い う実 に仰 々 し い い 名 前 が つ け ら れ て 盛 ん に 研 究 が 進 め られ て い
る.し か し,ち
ょ う ど今,真
空 の エ ネ ル ギー が 物 質 の エ ネ ル ギー を上 回 る よ うに な り
始 め た の か を 本 質 的 に 説 明 で き る もの で は な い.も
ち ろ ん,適
当 な 減 衰 モ デ ル を作
り,モ デ ル 内 の 減 速 速 度 に 対 応 す るパ ラ メー タ を微 細 調 整 し,人 為 的 に 今 の 時 刻 に合 わせ る こ と は で き る が,そ
れ で は 偶 然 一 致 問 題 を解 い た こ とに は な らな い.し
か しこ
の よ うな 現 象論 的 モ デ ル で ま ず ア プ ロ ー チ す る こ と は研 究 の 第 一 歩 で あ る.し
か し個
人 的 に は,偶
然 一 致 問 題 は,人
間 原 理 的 解 決 しか な い の で は な い か と考 え て い る.現
在 観 測 され て い る真 空 の エ ネ ル ギ ー 密 度 を は るか に 越 え る よ う な 値 を 持 つ"宇 は,早
い 時 期 に 第2の
生 まれ な い.知
的 生 命 体 が 生 まれ る の は 現 在 の 値 程 度 の 真 空 の エ ネ ル ギ ー 密 度,も
くは そ れ 以 下 の 値 を持 つ 宇 宙 の み で あ る(S. 30.6
終
の 方 向 で あ る.20世
わ
り
に 最近 しば しば言 われ る精密 宇宙 論
紀 末 に 宇 宙 論 パ ラ メ ー タ の 基 本 的 値 は ほ ぼ 決 ま り,21世
題 は こ れ を精 度 よ く決 め,か
紀 の課
つ イ ン フ レー シ ョン を含 む ビ ッ グ バ ン宇 宙 論 を 基 に,宇
宙 進 化 の 描 像 を 明 確 に 描 き 出 す こ と で あ る.最 近 打 ち上 げ られ たNASAの 放 射 観 測 衛星,MAPや,ESAが2007年
に 打 ち 上 げ るPLANCKは
を は じめ とす る 量 を ま さ に 精 密 に 決 め る こ と に な る.ま
とす る10メ
し
Weinberg(1989)).
宇 宙 論 研 究 は今 二 つ の 方 向 で 進 ん で い る.第1は
体 形 成,化
宙"で
イ ン フ レー シ ョ ンが 始 ま り宇 宙 構 造 は 形 成 され ず 知 的 生 命 体 も
学 進 化 の研 究 は,今
た宇 宙 に お け る構 造 形 成,天
爆 発 的 に 進 み つ つ あ る.現 在,す
ー タ ク ラ ス の 巨 大 望 遠 鏡 が 世 界 で10台
宇 宙背 景
密 度 パ ラ メー タ
ば る望 遠 鏡 を は じめ
以 上 稼 動 す る時 代 とな りつ つ あ
る.さ
ら に,ハ
ッ ブ ル 望 遠 鏡 の 後 継 宇 宙 望 遠 鏡 計 画 も具 体 化 しつ つ あ る.X線
衛 星,CHANDRA,
NEWTONを
で い る.宇 宙 論 は,今 に は,観
天文
は じめ と し て宇 宙 空 間 から 全 波 長 で の 観 測 が 進 ん
は っ き り と,"論"か
ら 天 文 学 と な っ た の で あ る.21世
紀 前半
測 に よ っ て 豊 か な宇 宙 進 化 の 描 像 が 天 文 学 と して 描 き 出 され るで あ ろ う.21
世 紀 末 に は,COBEが
宇 宙 開闢30万
年 こ ろ の 宇 宙 の 地 図 を描 い た よ う に,重
力波 に
よ っ て イ ン フ レー シ ョ ンの 起 こ っ た 頃 の 地 図 が 描 か れ る と夢 見 る こ と もで き る. しか し,同 時 に期 待 し た い こ とは,従来
の 理 論 に 矛 盾,も
は 説 明 す る こ との で き な い 観 測 が 出 て く る こ とで あ る.知 然 そ れ だ け,そ ー
,ダ
の 表 面,フ
し くは そ れ ま で の 理 論 で の世 界 の体 積 が 膨 らめ ば 当
ロ ン テ ィ ア,も 広 が る の は 当 然 で あ る.実 際,ダ
ー クエ ネ ル ギ ー の 問 題 は 大 き な謎 で あ る.我
を構 成 す る 物 質 の99%が
々 は,我
ー クマ タ
々の住 んで い るこの宇 宙
何 で あ る か を ま っ た く知 ら な い の で あ る.第
二の 方 向は こ
の 謎 へ の チ ャ レ ン ジ で あ る.ダ ー クマ ター の 候 補 と して は 超 対 称 性 理 論 が 予 言 す る ニ ュー トラ リー ノ を は じめ と して 各 種 の 素 粒 子 が 考 え られ て い る .そ の 直 接 検 出 を 目指 す 実 験 も行 わ れ て い る.21世
紀 は じ め の10年
内 に は 稼 動 す る で あ ろ うLHCに
て 何 らか の 示 唆 が 得 られ る こ と を期 待 し た い.一 見"は
そ れ が 正 し い な らば,宇
よっ
方 ダー ク エ ネ ル ギ ー の 存 在 の"発
宙 論 的 意 義 以 上 に 物 理 学 の根 幹 に ふ れ る発 見 で あ り,
歴 史 に 残 る大 発 見 で あ る.超 新 星 を 用 い た 方 法 で さ らに デー タ を 増 や し統 計 誤 差 を小 さ くす る と 同 時 に,異
な る 方 法 で の 観 測 で 確 認 す る こ と も必 要 で あ ろ うが,ダ
ネ ル ギー の 存 在 は,イ
ン フ レー シ ョ ン をふ くむ ビ ッ グ バ ン理 論 と整 合 性 が よ い だ け で
ー クエ
な く,他 の 宇 宙 論 的 観 測 と も整 合 性 が 高 く,そ の 存 在 が 否 定 され る こ とは な い で あ ろ う. 科 学 は 矛 盾 や 謎 を解 く こ と に よ っ て 進 む.宇
宙 定 数 問 題 は,21世
な 宇 宙 論,物
者=さ
理 学 へ の 鍵 な の か も しれ な い.(筆
理 学 系研 究 科 教 授.1945年
生 まれ,1968年
紀 に 花 開 く新 た
とう ・かつ ひ こ,東 京 大 学 大 学 院
京都 大学 理 学 部卒 業)
参 考 文献 1) E.Kolb
and
2) 数 理 科 学,素 932.佐
M.Turner:The
Early
藤 勝 彦:数
4) 日 経 サ イ エ ン ス,宇
(Addison 号.田
Wesley,1990).
中 貴 浩:日
本 物 理 学 会 誌55(2000)
理 科 学442(2000)33,451(2001)19.
3) S.Weinberg:Rev.Mod.Phys.61(1989)1.佐
年,12月.
Universe
粒 子 的 宇 宙 論 特 集,1991年7月
宙 論 特 集,2001年4月
藤 勝 彦:日 号,お
本 物 理 学 会 誌51(1996)347
よ び別 冊
「宇 宙 論 の 新 展 開 」,2001
.
31.
天体 物 理 理 論 ―京大 天体核 研 究室 の足跡 か ら― 佐
31.1
は
じ
め
藤 文
隆
に
本 稿 で触 れ る範 囲 を 限 定 す る幾 つ か の 事 項 をは じめ に 記 して お く.第 一 に,天 体 物 理 に は素 粒 子 の 「 標 準 理論 にい た る途 」の よ うな一 筋 の歴 史 の階 梯 が あ るわ け で な く,何 が 「主 な 進 歩 か?」
に 客 観 的 な 答 は な い.ま
的 に は 肩 を並 べ る 老 舗 の 隣 接 分 野 が あ る.過
た 天 文 学 と い う物 理 学 全 体 と制 度
去50年
の 歴 史 を見 れ ば 現 実 に は 「 物理
学 化 」 が 即 天 文 学 「近 代 化 」 で あ り,現 在 で は 研 究 内容 で 天 文 学 と天 体 物 理 を分 け る 客 観 的 な 基 準 は な い,観
測 も含 む 天 文 学 が 独 自の 学 問 的 使 命 を 見 失 っ て 物 理 学 の 価 値
観 に 併 合 さ れ つ つ あ る こ との 問 題 は あ る が,こ 第 二 に,仮
に 天 体 物 理 を,物
的 」 に 定 義 す れ ば,我
が 国 に お け る 理 論 天 体 物 理 の 発 祥 は 比 較 的 明 確 に 特 定 で き る.
基 礎 物 理 学 研 究 所 が1955年 で あ る.こ
れ に つ い て 第2節
第 三 に,今
こ で は論 じな い.
理 教 室 で 宇 宙 の 現 象 を研 究 す る こ と で あ る と 「現 象 論
に 物 理 学 者 と天 文 学 者 を集 め て 企 画 し た 共 同 研 究 が そ れ で 述 べ る.
か ら振 り返 っ て 見 る と,我 が 国 で の 天 体 物 理 理 論 の 展 開 に と っ て,林
忠
四 郎 と彼 が 主 宰 した 京 都 大 学 の 「天 体 核 研 究 室 」 の 役 割 が 大 き か っ た こ とは 衆 目 の一 致 す る と こ ろ で あ る.し
た が っ て 第3節
に は 林 の 研 究 歴 とそ の研 究 手 法 の 特 徴 に つ い
て 記 す. 第 四 に,私
自 身 の 研 究 の 遍 歴 は 前 述 の 林 の 研 究 歴 と相 補 的 で あ る の で,第4節
私 の 経 験 し た1960年 第 五 に,こ
では
代 に お け る 天 体 核 研 究 室 と基 研 を 中心 と し た研 究 活 動 を述 べ る.
の 時 期 ま で は 基 研 と天 体 核 グ ル ー プ の 研 究 を述 べ れ ば 我 が 国 の 理 論 天体
物 理 の 相 当 な 部 分 を カバ ー す る こ とに な る が,70年 文 学 な どが この 時 期 に 興 隆期 を迎 え,ま
代 か ら は事 情 が 変 わ る.X線
天
た基研 以外 の共 同利用 研究所 の 活動が 活発 に
な り,日 本 で も観 測 と関 係 し た 理 論 研 究 が 生 ま れ,多
極 化 し た.こ
れ らの歴 史 は前
史 ・動 機 と も 多 岐 に わ た り,理 論 研 究 の 観 点 か ら だ け 記 述 す る の は 適 当 で な く,ま た 私 が 記 述 す る の も 適 当 で な い の で 触 れ な い.第5節
に は,1970年
代 での 天体 核 研 究
室 か ら み た 多様 化 の ス ケ ッ チ と私 自 身 の 周 辺 で 起 こ っ た こ とを 記 す.そ て は,紙
れ以 後に つ い
数 が 尽 き る の で 私 自 身 が 関 心 を 持 つ テ ー マ に つ い て の 感 想 を 第6節
に述 べ
る. こ れ で は 日本 で の 研 究 の 全 貌 は 記 述 で き な い が,私 うこ とで 上 記 に 限 定 す る.ま
た 文 中 で は 敬 称 を 略 す.
が 特 徴 を持 っ て書 け る 内 容 と い
31.2 基 研 研 究 会 「1954年 の 初 秋,武
「天 体 の 核 現 象 」
谷 三 男 先 生 を交 え て(湯
べ っ て い た .何 か の 拍 手 に 湯 川 先 生 が,お 上 の 研 究 で発 展 し た 物 理 で,天
川 秀 樹,早
川 幸 男)三
人 でサ ロンで だ
星 さ ま の 話 は ど うか ね とい い 出 され た.地
体 現 象 が ど こ まで 理 解 で きる の か 知 りた い と い う こ と
で あ っ た」1).基 研 の 原 子 核 理 論 部 門 の 初 代 教 授 に 着 任 し た 早 川 は 早 速 こ の 企 画 に 取 りか か り,55年2月 た.天
に 第 一 回 の 研 究 会 が 開 か れ,そ
文 学 か ら は 畑 中 武 夫 が 中 心 に な っ た.最
他 に,当
節 で 見 る よ う に,林
は1947,1949年
こ の 分 野 か ら遠 ざ か っ て い た.早
理 学 者 に 対 し て 天 体 物 理 を講 義 し た.次
に 恒 星 の 内部 構 造 の 論 文 を書 い た が,そ
の種 族,球
の後 は
川 は そ の林 を 口 説 い て 講 義 を実 現 し た の で あ る.
こ の 研 究 会 の 議 論 を 基 礎 に ま とめ た の がTHOと
呼 ば れ た 論 文 で あ る2).こ れ は 星
状 星 団 の 分 布 な どか ら渦 巻 き銀 河 の 形 成 の 筋 書 き を総 合 的 に 論 じた も の で の 研 究 会 を期 に 天 体 核 の 論 文 が プ ロ グ レ ス(湯
ress of Theoretical
Physics)に
は い ろ い ろ な 動 機 が あ っ た.湯
と天 体 との 出 会 い は1939年
川 が 創 刊 し た 学 術 誌Prog
出 る よ うに な っ た(図13)参
照) .こ
のSolvay会
た 所 長 業 と して の 提 案 だ け で な く,湯 川
議 に ま で 遡 る と い う.こ
ポー ラ ン ド侵 攻 で 中 止 に な っ た が 発 表 予 定 の 論 文 は 後 に 配 られ,そ Weizsackerら
の展開 の背景 に
川 は 新 し い 型 の 研 究 所 に 相 応 し い 構 想 を摸 索 して お
り,天 体 以 外 に も生 物 物 理 を 入 れ て くる.ま
やC.F.
中の
時 京 大 物 理 教 室 湯 川 研 の 助 教 授 と し て 非 局 所 場 の 理 論 やBethe-Salpeter方
程 式 な ど を研 究 して い た林 忠 四 郎 な どが,物
あ る.こ
の 後 も半 年 お き ぐ ら い に 集 ま っ
初 の 会 で は 天 文 学 の 一 柳 寿 一,畑
の会議 はナ チ ス の の 中 にH.
Bethe
の 熱 核 融 合 反 応 で の 太 陽 エ ネ ル ギ ー の 論 文 が あ り,原 子 核 物
理 の 展 開 の 一 つ の 方 向 と して 早 くか ら認 識 して い た よ う で あ る4).
早 川 は二次 宇 宙線 の研 究 で既 に地 位 を築 い てい たが,素 粒 子実 験 の主役 が宇 宙線 か
図1 プ ログレスに発表 され た天体物理関係論文 数(点 線は外 国人)
ら加 速 器 に 交 代 しつ つ あ り,天 体 物 理 と して の 宇 宙 線 物 理 へ と研 究 を転 換 しつ つ あ っ た.軽
元 素D,Li,Be,Bの
存 在 比 な ど か ら早 川 は 宇 宙 線 の 超 新 星 起 源 説 を 展 開 し
た.宇
宙 線 と天 体 物 理 の 接 点 は,電 波 天 文 学 が 初 め に 捉 え た電 波 源 の 多 くが 高 エ ネ ル
ギ ー 電 子 に よ る シ ン ク ロ ト ロ ン放 射 だ っ た こ と に も あ る.早
川 らは1958年
に これ ら
の 研 究 の 大 論 文 を 書 い た5). 宇 宙 線 の 加 速 と も 関 連 す る天 体 プ ラ ズ マ の 研 究 は,次
に 述 べ る核 融 合 以 外 に,ロ
ッ トや 人 工 衛 星 の 打 ち上 げ で 活 気 づ い て い た宇 宙 空 間(space)科 た.1961年
に は 京 都 で 宇 宙 線 とspace科
ケ
学 と も関 係 して い
学 合 同 の 国 際 会 議 が あ っ た.ま
た 当 時 は,
日本 で 原 子 力 研 究 が 解 禁 に な っ て 間 もな い 時 期 で あ り,原 子 力 ブ ー ム で研 究 機 関 が 拡 大 し た.1956年5月
に は 基 研 で 核 融 合 の 研 究 会 が 初 め て 開 か れ,61年
に創 設 され た
プ ラ ズ マ 研 究 所 の 性 格 決 定 に 重 要 な 役 割 を果 た し た.大 学 で も原 子 力 関 連 講 座 の 増 設 が あ り,京 大 理 学 部 に も3講 座 新 設 さ れ,1957年 ル ギー 学 」 講 座 担 当 の教 授 に 就 任 し た.こ
に は林 が そ の う ち の 一 つ 「核 エ ネ
の 時 期 に林 と 同 様 に 非 局 所 場 理 論 か ら天 体
物 理 に 転 向 した 北 大 の大 野 陽 朗 の 研 究 室 と林 の 研 究 室 が 物 理 教 室 の 中 に初 め て 天 体 物 理 の 拠 点 を 築 い た.名 大 に移 っ た 早 川 は 実 験 を 主 に し た グ ル ー プ を作 っ た.当
時,湯
川 ノ ー ベ ル 賞 効 果 で 増 加 して い た 素 粒 子 や 原 子 核 の 理 論 物 理 学 を修 め た 若 手 の就 職 問 題 が 深 刻 化 し て い た が,こ
の 原 子 力 ブー ム は そ の 緩 和 に 若 干 寄 与 した.
31.3 林 の 研 究 経 歴 1980年 Bethe「
に 林 は 天 体 物 理 と の 出 会 い に つ い て 語 っ て い る6).東 大 の 学 部 生 時 代 の 赤 本 」(Review
of Modern
原 子 核 物 理 の 総 合 報 告)の 却 に 利 く β過 程)のG.
Physics誌,8,
学 習 会,卒
Gamowら
論 で の ウ ル カ過 程(ニ
の 論 文 学 習,終
る 京 都 市 に 帰 り,京 大 の 湯 川 研 究 室 に 入 っ た.当 座 を兼 担 し て い た.こ
83, 1936, 9, 69, 245, 1937に 載 っ た ュ ー ト リ ノ放 射 で 星 の 冷
戦 で 海 軍 か ら解 放 さ れ て 実 家 の あ 時,湯
川 は 宇 宙 物 理 学 教 室 の あ る講
れ は戦 争 に 熱 心 だ っ た 前 任 教 授 が 敗 戦 で 若 く して 辞 職 し,空 席
とな っ て い た た め で あ る.湯 川 は林 に こ の 教 授 室 に机 を与 え た.そ の 宝 庫 で,林
の 独 学 に は 理 想 的 な 環 境 で あ っ た.新 情 報 は 市 内 の ア メ リカ 文 化 セ ン タ
ー に 出 向 い て雑 誌 か ら 学 ん だ .こ エ ンベ ロ ー プ(外
き,第
二 論 文 は 当 時 で は 珍 し くPhysical 川 がNobel賞
層)の
う して 巨星 の 内 部 構 造 説 明 に 必 要 な 星 の コ ア(中 心
核)と
1949年,湯
ポ リ ト ロー プ 解 を繋 ぐ と い う 問 題 で 最 初 の 論 文 を 書
の 論 文 でGamowが
Review誌
に 投 稿 した.
を 受 賞 し た.「 素 粒 子 論 研 究 」 誌 の 記 念 号 に 林 は 日 本 語
で い わ ゆ る ビ ッ グバ ン 宇 宙 で のp/n比
文 を,Gamowは
こ は 天体 物 理 文 献
の 論 文 を寄 せ,翌
年 英 文 で 出 版 した.1948年
始 原 物 質 の 組 成 を 中 性 子 と勝 手 に 仮 定 し た こ と を 批 判 し た 林 論 じめ 当 時 の 一 流 の 核 物 理 学 者 が 評 価 した.当
時 ア メ リカを訪 れ る こ
と の で き た 日本 の ボ ス物 理 学 者 が 「ハ ヤ シ」 の こ と を尋 ね ら れ た と い う逸 話 が あ る.
こ の 論 文 に は 後 に林 が 口癖 の よ うに 云 っ た 「素 過 程 か ら積 み 上 げ る 」 手 法 の 原 型 を見 る こ とが で き る.中 で,Gamowが
間 子 の 反 応 ま で 遡 っ て 超 高 温 状 態 で の 素 粒 子 反 応 を論 じ る こ と
無 視 して い た ニ ュ ー ト リ ノ黒 体 放 射 の 存 在 を 明 らか に し た.こ
れ は暗
黒 物 質 を初 め て 導 入 した 論 文 と い う評 価 も で き る7).ビ ッ グバ ン宇 宙 論 は そ の 後 注 目 され な か っ た し,ま
た素 粒 子 論 の 主 流 の 研 究 を 手 掛 け た い と い う指 向 が 林 に 強 か っ た
か ら,前
節 で述 べ た 基 研 の 強 い要 請 が あ る ま で 天体 物 理 に戻 る 気 は な か っ た とい う.
1957年
に発 足 した 「 核 エ ネ ル ギ ー 学 」 講 座 は 当 初,湯
で 構 成 さ れ,林 て い た.ス
は 研 究 室 の 半 分 を 天 体 物 理,半
川 研 と小 林 研 か ら の 移 籍 組
分 をプ ラ ズマ 核 融 合 に す る 構 想 を持 っ
タ ッ フ も そ う い う 配 置 で考 え た.1959年
に 出 版 さ れ た 「核 融 合 」 と い う
岩 波 講 座 の 冊 子 は 「天 の 部 」 を 早 川 が,「 地 の 部 」 を林 が 執 筆 し て い る8).林 は 天 体 物 理 だ け で は 就 職 に 苦 労 す る だ ろ う と い う 危 惧 を も っ て い た.し 年 間,NASAで
研 究 す る 機 会 を得 て 帰 っ た 後,林
か し1959年
か ら一
本 人は天体 物 理 に熱 中す る こ とに
な っ た. 1950年 代 の 後 半 に お け る 星 の 天 体 物 理 の 課 題 は,様 化 を総 合 し て,天
文 学 の 観 測 で 描 か れ た星 団 のH-R図
エ ネ ル ギ ー 輸 送 を 含 め て,星 階 に な っ て い た.林
々 な質 量 と組 成 を もつ 星 の 進 を説 明 す る こ と で あ っ た.
の 構 造 を表 面 ま で 解 く計 算 と観 測 を定 量 的 に 対 比 す る段
は こ の 星 の 進 化 を広 い 質 量 範 囲 に わ た っ て 系 統 的 に 調 べ,こ
雑 な 課 題 を解 明 す る 目標 を 立 て た.こ つ の 側 面 が あ っ た が,理 こ れ は林 が1947,1949年
の複
れ に は 「熱 核 融 合 反 応 」 と 「内 部 構 造 論 」 の 二
論 的 に 難 しい の は ガ ス 球 の 重 力 平 衡 を扱 う後 者 の 方 で あ り, の 論 文 で 扱 っ た 問 題 で あ る.非 線 形 性 を数 値 計 算 で う ま く
扱 う こ とが 要 求 さ れ る 問 題 で,従
来 扱 わ れ て い た 量 の 対 数 を変 数 に 取 り直 し,広 い 数
領 域 で の 計 算 を行 う な ど の 工 夫 を し て,解
の 振 舞 を一 般 的 に 理 解 す る努 力 を し た.こ
の 経 験 が 十 年 近 く経 た 後 の研 究 再 開 に 役 立 っ た. 1950年 代 後 半 は 戦 後 の 原 子 核 物 理 の 興 隆 の 一 翼 を担 っ て,国
際 学 界 で も 「星 の 進
化 と元 素 の 起 源 」 と い う 天 体 核 物 理 が 活 発 な 段 階 に あ っ た.3α
反 応 に 導 く12C核 の
励 起 レ ベ ル が 特 定 さ れ た こ と を は じめ とす る,核 物 理 と 天 文 学 の 知 識 の 統 合 が あ っ た.元
素 起 源 の 大 筋 を 明 らか に し たB2FHと
期 の 到 達 度 を表 して い る.ま
の 大 論 文9)は,こ
た,1955年,Hoyle-Schwarzschildの
星 の 巨 星 の 計 算 と球 状 星 団 のH-R図 Hoyle-Fowlerが
呼 ば れ た1957年
の時
仕 事 か ら低 質 量
と の 対 比 が 本 格 的 に 始 ま っ た.1960年
には
超 新 星 爆 発 の 二 つ の メ カ ニ ズ ム を 提 案 し,Feynman-Gell-Manの
弱 い相 互 作 用 の 中 性 カ レ ン トが 存 在 す れ ば,高 の 進 化 に 影 響 を 与 え る こ と を,B.
Pontecorvoが
期 か ら始 ま っ た コ ン ピ ュ ー タ の 性 能 向 上 が,こ
温 ・高 密 度 に な る 星 の 終 段 階 で 中 心 部 指 摘 した(1959年).ま
の時
の分 野 の 研 究 に も大 き く影 響 した.進
化 し て 多重 組 成 層 に な っ た 星 構 造 の 計 算 を 可 能 に す る,L.G. ピ ュ ー タ を 駆 使 し た 計 算 法 が,60年
た,こ
代 に 急 進 展 した.
Henyeyに
始 まる コ ン
こ う した 活 発 な状 況 に 新 た に参 入 し た林 が とっ た戦 略 は 見 事 な もの で あ っ た .そ の 戦 略 の 中 身 を外 か ら窺 え る の は,1962年
に 出 版 され た 「サ プ ル メ ン ト」 と呼 ば れ た
論 文 で あ る10).そ れ は 徹 底 した 物 理 素 過 程 の 再 吟 味 と,星 平 衡 方 程 式 の 解 の 包 括 的 な 理 解 で あ る.当
時 既 に こ の 分 野 で は 種 々 の観 測 結 果 と理 論 モ デ ル を 直 接 対 比 す る研 究
もあ っ た が,林
は そ の 前 線 に は 参 入 せ ず,基
と思 わ れ る.そ
の 後 こ の 論 文 が 息 の 長 い 影響 を及 ぼ す こ とに な る の は こ の ため で あ ろ
礎 か ら組 み 立 て 直 す と い う戦 略 を と っ た
う. この 徹 底 した 再 吟 味 の 中 で あ ぶ り出 さ れ た 成 果 が,原 見 で あ る11).林 の 表 現 に よ れ ば,こ
始 星 に 関 す る林 フ ェー ズの 発
れ は 「巨星 研 究 の 副 産 物 」 だ っ た.半
径 が大 き く
な っ て エ ンベ ロー プ が 低 温 に な れ ば 原 子 を 中性 化 し,放 射 輸 送 よ り も対 流 に よ る 熱 輸 送 が 卓 越 し て くる.こ
う い う表 面 条 件 の も とで の 平 衡 解 の 考 察 か ら,H-R図
表 面 温 度 領 域 に 平 衡 解 の 禁 止 領 域(解 の で あ る.そ
し て これ は,巨
の 存 在 しな い領 域)が
Helmholtz-Kelvin収
存 在 す る こ と を発 見 し た
星 の 半 径 が ど こ ま で 大 き くな るか と い う問 題 に 答 え るだ
け で な く,主 系 列 に 向 か う原 始 星 の 進 化 過 程 を支 配 す る.即 衡 状 態 に達 し た 後 に,対
上 の低
ち,動
的重 力収縮 で準平
流 平 衡 の か た ち で光 度 を減 じ,そ の 後 に 放 射 平 衡 で冷 却 す る
縮 と い う段 階 に 達 す る こ と と な る(図2参
照) .こ
れ は天 文 学
で そ れ ま で の 定 説 を 変 更 す る も の で あ っ た か ら,非 常 に 大 き い イ ンパ ク トを天 文 学 に 与 え,1970年
に はEddingtonメ
ダ ル を 受 賞 した.こ
は 主 系 列 か ら最 終 段 階 へ の 進 化(advanced tar)へ
の 「思 わ ぬ 発 見 」 で 林 の 星 研 究
phase)と,星
の 進 化 の 二 手 に 分 か れ る こ と に な っ た.ち
間 雲 か ら原 始 星(protos
ょ う ど新 講 座 の 大 学 院 生 が 増 加 し
た 時 期 と も重 な り,幾 つ か の ザ ブ グ ル ー プ に分 か れ る き っか け に な っ た .研 究 室 運 営 で こ の 時期 に林 が 重 視 した の は,コ
ン ピュ ー タに よ る計 算 の 積 極 的 導 入 で あ る .こ れ
図2 H-R図 上 で の星 の進 化 ハ ヤ シの 禁 止 領 域 の 限 界 に沿 っ て明 る さ が減 少 す る段 階 がハ ヤ シ ・フ ェー ズ.
は1959∼60年
のNASA滞
在 でIBMの
大 型 計 算 機 を 使 っ た経 験 と,そ れ が 星 研 究 に
不 可 欠 な 時 期 に さ しか か っ て い た こ と に よ る.数 繋 ぐ共 通 課 題 と位 置 づ け て い た.1962年
値 計 算 の 経 験 蓄 積 を サ ブ グル ー プ を
の サ プ ル メ ン トは 前 コ ン ピ ュ ー タ 時 代 の 精
華 で あ り,複 雑 な数 値 計 算 の 結 果 の み に 着 目す る ス タ イ ル に 批 判 的 な 観 点 を強 調 して い た.し
か しこ の 手 法 に 拘 る こ と をせ ず,新
の 明 が あ っ た.東 advanced
京 に しかIBM機
phaseの
た もの とな っ た.こ
時 代 の 道 具 を先 進 的 に 導 入 した の は 先 見
が な い段 階 か ら,こ
れ を使 う手 だ て を 講 じた.
計 算 に は ま す ま す コ ン ピ ュ ー タが 不 可 欠 に な り,複 雑 で 錯 綜 し の 面 で若 手 を 指 導 し つ つ も,林
をつ け る こ とに 力 を 入 れ,星
自 身 は 未 開 拓 なprotostarに
間 物 質 の 加 熱 ・冷 却 とい っ た 新 た な テ ー マ の 大 局 的 な解
析 を行 っ た12).こ れ らが1970年
以 降 に 太 陽 系 形 成 に 集 中 す る 出 発 点 に な っ た.多 分,
50年 代 末 に 星 研 究 に 戻 っ た 頃 は,ニ
ュ ー ト リ ノ過 程 や 中 性 子 星 な ど を 通 じ た 素 粒
子 ・核 物 理 との 接 点 が 大 き く な る とい う見 通 しが あ っ た し,ま そ の 方 向 に拡 大 し た が,林
大筋
自 身 が 直 接 手 を下 す 問 題 は,非
た研 究 室 の 分 野 も実 際
球 対 称 自 己 重 力 ガ ス体 の 不
安 定 や 惑 星 ・地 球 科 学 との 接 点 を求 め る 方 向 に移 っ て い っ た.70年
代 には 研 究室 の
コ ロ キ ュ ー ム の テー マ は 「地 球 の 大 気 」 か ら 「宇 宙 初 期 の 素 粒 子 」 ま で 拡 大 し て い た. 林 の 研 究 の 後 半 期 の テー マ 「太 陽 系 の 起 源 」 は,天 と し た もの と して 長 い 間 止 ま って い た.他
文 学 か ら地 球 科 学 に拡 が る漠 然
の 星 で の 惑 星 系 形 成 は 観 測 され て お らず,
他 方 で は,一 個 の 例 で あ る太 陽 系 に つ い て は 衛 星 の 数 か ら岩 石 ま で含 め て事 細 か な 情 報 が あ る.し
た が っ て 探 究 の 手 法 も 一 通 りで は あ り え な い.林
メ ン トの精 神 で,こ
は,1962年
のサ プ ル
こ で も 太 陽 系 と い う一 つ の例 に 関 す る あ り余 る 観 測 情 報 か ら説 き
起 こ す の で は な く,物 理 素 過 程 か ら モ デ ル を積 み 上 げ て 太 陽 系 で の 一 般 性 と偶 然 性 を 相 対 化 す る分 析 を徹 底 して 行 っ た.原
始 太陽系 星雲 で の固体微 粒 子が赤 道面 に集 中 し
て 薄 い 円 盤 を 形 成 し,そ れ が 重 力 不 安 定 で 分 裂 し て,ま き,こ
れ ら の衝 突 集 積 で 惑 星 に成 長 す る,と
ず微 惑 星 とい う小 天体 が で
い う大 筋 で あ る.特
に 微 惑 星 の 集 積 が,
原 始 星 雲 の ガ ス が 存 在 す る 中 で起 こ り,太 陽 表 面 の 活 動 性 と絡 ん で,ガ か ら吹 き飛 ば さ れ る 時 期 な どが 内 惑 星,外
スが 原 始 太 陽
惑 星 の 形 成 に 連 な る とい っ た,グ
ラ ン ドシ
ナ リオ を提 出 し た13).こ れ は 個 別 に 増 え つ つ あ る観 測 デ ー タ を総 合 的 に 理 解 す る段 階 に あ っ た 地 球 惑 星 科 学 に大 き な イ ン パ ク トを 与 え た.
31.4 1960年
代― 天 体 核 研 究 室 と基 礎 物 理 学 研 究 所 ―
当 初,星
と並 ぶ 研 究 室 の テ ー マ は プ ラ ズ マ,核
で い た.私
が4回
融 合 で,前 者 は 宇 宙 線 の起 源 を含 ん
生 の時 に 「 核 融 合 」8)が出 版 さ れ,こ
展 示 を し た 記 憶 が あ る.1960年
れ を種 本 に11月
祭 でポ ス ター
に 大 学 院 に 入 っ た の が 蓬 茨 霊 運 と私 で,蓬
先 輩 の 杉 本 大 一 郎 とサ プ ル メ ン トの 完 成 の た め 林 に 協 力 し た.早
茨 は一 年
川 と宇 宙 線 の 起 源 を
研 究 し,当 時 助 手 だ っ た 寺 島 由 之 助 と私 は 天 体 プ ラ ズ マ を研 究 し よ う と し た が,寺 は 直 ぐに プ ラ ズ マ 研 究 所 に 転 出 した.院 あ り方 だ っ た.M1ゼ
生 は 星 とプ ラ ズマ に分 か れ る の が 「正 常 な 」
ミ も テ キ ス トはSpitzerとB2FH9)やSchwarzschildの
一 部 だ っ た .し か し,プ
島
本14)の
ラ ズ マ 分 野 は 拡 張 期 で 就 職 が よ く,後 を継 い だ 天 野 恒 雄,百
田 弘 も次 々 と他 に 転 職 し,こ 源 を勉 強 中 の1961,1962年
の 分 野 は60年 頃 の 準 星(ク
代 後 半 に な くな っ た.私 ェ ー サ ー)発
自身 は宇 宙線 起
見 に よ り,そ れ を 追 い か け て
急 速 に 天 体 物 理 に 移 っ て い っ た. 1963年
にHFB2と
は,1939年
い う プ レ プ リン ト15)を林 か ら手 渡 さ れ,そ
のOppenheimer-Snyderの
比 す る よ うな 場 面 に 引 き 出 す 画 期 的 な も の で あ っ た.こ B. Zeldovichが
の 頃,J.A.
こ の 課 題 に つ い て 理 論 物 理 的 議 論 を し て い たが,準
核 エ ネ ル ギー で は 不 足 で,相 き る,と
の 紹 介 を し た .こ れ
重 力 崩 壊 と ブ ラ ッ ク ホー ル の 論 文 を 観 測 と対
い うHoyle達
WheelerやYa. 星 の エ ネ ル ギー が
対 論 的 重 力 系 の 形 成 が それ を上 回 るエ ネ ル ギ ー を提 供 で
の 論 点 は 新 鮮 な もの だ っ た.ま
た1964年10月
に 基 研 で 「ニ
ユ ー ト リ ノ天 文 学 」 と い う素 粒 子 と天 体 合 同 の 研 究 会 が あ り,私 は1950年 を含 む ビ ッ グ バ ン 宇 宙 と残 存 ニ ュ ー ト リノ の 報 告 を した16).そ の 頃,林 HeはC以
上 の 重 元 素 と 同程 度 に し か 作 れ な い か ら,Heに
に な る と し て,ビ に1965年
の林 論 文
は星起 源 で は
は ビ ッ グ バ ン合 成 が 必 要
ッ グバ ン元 素 合 成 の再 考 を言 い だ し,私 が そ れ に 取 り組 ん だ.そ
のPezias-Wilsonの
「3K放 射 」(宇 宙 マ イ ク ロ 波 背 景 放 射)の
こ
発 見 が公
表 さ れ た. こ う し た 時 代 の 動 きに 小 突 か れ て 天 体 プ ラ ズ マ の 初 志 は 霧 散 し,60年 膨 張 宇 宙,一
般 相 対 論 な ど で私 は仕 事 をす る よ う に な っ て い た.高
と一 般 相 対 論 の 進 展 を活 気づ け た の は,1963年 あ っ た.早
エ ネル ギー天 文学
か ら始 ま っ たTexasシ
川 は よ く これ らに 出 席 して 話 題 を教 え て くれ た.国
代中頃には
ンポ ジ ウム で
内的に は基研 の研 究会
が 私 の 研 究 遂 行 に 重 要 な役 割 を 果 た し た. 基 研 研 究 会 の 初 期 の 話 題 は 準 星 の エ ネ ル ギ ー 源 で,武 理 論 」 が 提 唱 さ れ た.こ 的 爆 発 理 論 で あ る.新
谷 が 音 頭 を と っ て,「 パ イ ル
れ は 現 在 で い うス タ ー バ ー ス トの 様 な も の で,超
新星 の連 鎖
天 体 の 発 見 に は 「同 じカ テ ゴ リー に 属 す る異 常 な もの が 最 初 に
発 見 さ れ る 」 とい う法 則 性 が あ る.こ れ は 少 数 で も強 力 な もの か ら観 測 に か か る の で 当 然 で あ る.準 星 の と き も非 熱 放 射 に ま ず 目が奪 わ れ,超 ニ 星 雲 の 集 合 体 とみ な す 見 方 に 引 きず ら れ た.そ 動 的 銀 河 中 心 核)は
輝 線 や 熱X線
の 後 の 観 測 の 進 展 で は,AGN(活
の 放 射 が 基 本 で,シ
持 つ も の は む し ろ例 外 で あ る.反 省 す る に,銀
新 星で は同様 に例外 的 な カ
ン ク ロ トロ ン放 射 の 電 波 源 を
河 の観 測 天 文 学 の 全 般 的 な 素 養 が な い
の で,「 異 常 な も の 」 の 同 類 項 の 探 索 が 次 に ど う進 展 す る か に つ い て 正 し い 判 断 を 持 っ て い な か っ た よ うに 思 う. 国 際 的 に はHFB2の
影 響 で,星
の 最 終 段 階 も含 め て,一 般 相 対 論 的 な 重 力 崩 壊 へ
の 理 論 的 関 心 が 天 体 物 理 の 前 面 に 出 て き た.日 書 き 始 め,ま 移 っ た.私
た 天 体 核 研 究 室 で 相 対 論 を研 究 しは じめ た 冨 田 憲 二 が 広 島 大 学 理 論 研 に の 学 位 論 文 も超 重 質 量 星 の 一 般 相 対 論 的 不 安 定 性 で あ っ た.実
にWheelerが 性 子 星,重
本 で は 成 相 秀 一 が これ に つ い て 論 文 を
は1962年
基 研 で 一 般 相 対 論 に つ い て 何 回 か の 連 続 講義 を し た こ と が あ っ た.中 力 崩 壊 か ら量 子 時 空 ま で の 彼 の 先 駆 的 業 績 の 講 義 で あ るが,聴
に は い さ さ か"ネ
コ に 小 判"で
究 で は,何
の よ い"も
が"質
あ っ た.数
の で,何
学が か って いた 当時 の一般 相対論 の専 門研
か"質
の 悪 い"も
体 物 理 か ら相 対 論 に接 近 す る と,当 時 はHoyleのC場 出 会 う とい う変 な 状 況 に あ っ た.こ で 書 い たADM論
講 した 我 々
の か が 判 然 と し な か っ た.天 理 論 とかBrans-Dicke理
論に
う した修 正 理 論 で は な く,一 般 相 対 論 を正 準 形 式
文 の よ うな,Einstein理
論 そ の も の を展 開 す る 手 段 の 発 展 は な か
な か 見 え な か っ た17).山 内 ・内 山 ・中 野 の 教 科 書 が 出 た の が1967年 の 正 準 量 子 化 へ の 興 味 が 前 面 に 出 て い て,天
で あ る が,重
力
体 との 接 点 は 日本 で は し ば ら くな か っ
た. 3K放
射 発 見 当 時,私
は 林 の 示 唆 で 宇 宙 起 源 の 元 素 合 成 の 計 算 を手 掛 け て い た が,
日本 で は 当 時 ま だ 開 拓 的 だ っ た コ ン ピュ ー タ で の 数 値 計 算 で 骨 を 折 り,ま た 軽 元 素 核 反 応 デ ー タ を ゼ ロ か ら集 め る こ と で手 間 取 っ た.結 局,こ きWagoner,
Fowler,
Hoyleの
差 は歴 然 と し て い た.私 を 出 し た が,当
られ て い た.軽
論 文 と同 じ頃 に私 の 論 文18)も 出 た が,核
の 論 文 で はLi,
星 間 空 間 にDを
代,基
発 見 した1973年 か ら70年
外 線衛
以 後 の こ と で あ る.
にかけ て宇 宙論 の研 究会 が基研 で行
研 で 走 っ て い た 宇 宙 関 係 の 研 究 計 画 は 星 の 進 化,銀
河 の構 造 と
ュ ー ト リ ノ天 文 学 な ど の 他 に,地 球 と惑 星 の 内部 とい う物 性 との 境 界 を 目指
す も の が あ っ た.初 に 移 っ て い た.宇 た.現
含 め 軽 元 素 組 成 は 隕 石 の 分 析 か ら主
れ らの 起 源 は 太 陽 系 内 で の 宇 宙 線 に よ る核 破 砕 で あ る と信 じ
会 津 晃 と私 が 提 案 者 と な っ て1967年 わ れ た.60年
デ ー タ等 で の
Bも 宇 宙 初 期 起 源 で な い か と い う観 点
元 素 が 宇 宙 初 期 起 源 で な い か と真 剣 に 議 論 さ れ だ し た の は,紫
星COPERNICUSが
進 化,ニ
Be,
時 こ れ は 斬 新 な 主 張 だ っ た.Dも
に 得 られ て い た か ら,こ
の 計 算 の 決 定 版 と も云 うべ
在 はSilk質
期 に あ っ た宇 宙 線,核
融合 プ ラズマ 関係 は新 しい共同利 用研 究所
宙 論 の 研 究 会 は 途 中 か ら 「宇 宙 論 と銀 河 の 形 成 」 と 目的 が 絞 られ 量 と呼 ば れ る,放 射 粘 性 に よ る ゆ ら ぎの 散 逸 ス ケ ー ル が 銀 河 質 量
に 近 い こ と を発 見 し,放 射 と物 質 の 脱 結 合 後 で の 水 素 分 子 形 成 を 計 算 し た.ま 雲 収 縮 で の 水 素 分 子 に よ る冷 却 に つ い て,京 か に した19).松 田 卓 也,武
た原始
大 と立 教 の グル ー プ が 初 め て 大 筋 を 明 ら
田 英 徳 が 加 わ り,コ ン ピ ュ ー タ で数 値 計 算 が 簡 単 に な り,
面 白 い ほ ど結 果 が 出 た.最 近 こ れ ら の 問 題 が 再 び 詳 細 に調 べ られ る よ うに な っ た が, 25年 以 上 前 の 仕 事 で は 引 用 も さ れ ず,少 郎,東
し早 す ぎ た 感 じが す る.こ
の 他 に,木
辻 浩 夫 に よ る銀 河 分 布 の 統 計 的 相 関 関 数 を 出 す と い う仕 事(1969年)も
研 究 会 で 発 表 さ れ た が,こ
れ は そ の 後 こ の ア イ デ ア を体 系 的 に 展 開 したJ.E.
原太 この
Peebles
の 業 績 に な っ て し ま っ た.こ
の 研 究 会 の 成 果 の 一 部 は プ ロ グ レ ス の サ プ ル メ ン トと し
て 出版 さ れ た20).
31.5 1970年 大 学 紛 争 を 間 に 挟 ん で70年 よ う に,こ advanced が,主
代 ― 一 般 相 対 論 と素 粒 子 宇 宙 ― 代 に 入 り 日本 の 天 体 物 理 も拡 大 し た.第 一 節 で 断 っ た
こ に は 私 の 周 辺 で の70年 phaseの
代 の 歴 史 を 記 す.天
研 究 は コ ン ピ ュ ー タ が 主 役 に な り中 沢 清,池
流 は 京 都 か ら で た杉 本 グ ル ー プ に な っ て い っ た.中
究 に 協 力 し,地 球 惑 星 科 学 に 進 ん だ.ま
内 了 らが 引 き継 い だ
沢 は そ の 後,林
々 の 「宇 宙 論 と銀 河 形 成 」 の 興
元 素 を全 く含 ま な い星 や 重 元 素 の 濃 縮 過 程 に移 っ て い っ た.松
学 進 化 を学 位 論 文 に した.元
田は銀河 の化
素 の 拡 散 は 超 新 星 爆 発 に よ る との 観 点か ら,池 内 を巻 き
込 ん で 爆 発 残 骸 の 膨 張 の 論 文 を 一 緒 に 書 い た り し た.彼 成 を研 究 し,後
の太 陽系研
た 原 始 星 の 動 的 形 成 を林 と初 め か ら研 究 し て
い た 中 野 武 宣 は 星 間 物 質 の 研 究 に 傾 斜 して い っ た.我 味 は,重
体 核 グルー プでの星 の
に 銀 河 間 物 質 の テ ー マ に 拡 大 した.我
は そ の 後,星
間空 間で の泡形
々 の グル ー プ は職 場 が バ ラ バ ラ
に な っ て 一 段 落 した. こ の 頃 か ら 重 力 崩 壊,ブ た.Caltechの
ラ ッ クホー ルが一 般 相 対 論 の課 題 として 注 目を浴 び て き
オ レ ン ジ色 カバ ー の プ レプ リン トの 発 行 数 が 急 増 し,大 抵 が 相 対 論 に
な っ て い くの に 刺 激 さ れ た.当
時,PrincetonとCaltechの
相対 論 の グループ に全 米
か ら優 秀 な 大 学 院 生 が 集 中 し た とい わ れ た 程 の 活 況 を呈 し た.話 ッ ク ホ ー ル と異 な っ て,も め た こ と で,ブ
っ と定 量 性 の あ る近 接 連 星X線
ラ ッ ク ホ ー ル の 現 実 感 が 増 し た.ま
源 の 観 測 が 結 果 を 出 し始
た 少 し遅 れ て1975年,連
サ ー の 電 波 観 測 で一 般 相 対 論 の きれ い な 検 証 が な さ れ た.一 ロー して い く と,ど れ もKerr時
題 は準 星 の 巨 大 ブ ラ
星パ ル
般 相 対 論 的 な研 究 を フ ォ
空 を用 い て 議 論 さ れ て い る.1972年
当 時,こ
れが ブ
ラ ッ ク ホ ー ル 時 空 と して 唯 一 で あ る とい う 「奇 妙 な 」 証 明 が 試 み られ て い た が,私 は そ の 証 明 の 動 機 が 真 面 目 な も の に は 思 え ず,理
解 し な か っ た.そ
こ の 解 以 外 の も の を 出 す と い う 目 標 を た て た.そ Ernst形
式 に 着 目 し て,Kerr解
S解)を1972∼73年 時 空 がKerr解
を 含 む 整 数 で 分 類 され る一 群 の 厳 密 解 シ リー ズ(T-
か ど うか 探 る こ と は で き な い.し
S解 が 動 機 と な っ て,こ
か し,い
の 唯 一 性 を 導 く こ と は,そ
わ ゆ る裸 の 特 異 点 を 許 さ な の 後 の 証 明 で 完 結 し た .T-
の 厳 密 解 問 題 は ソ リ ト ンの 数 学 と 同 一 で あ る との 認 識 に 達 し
常 軸 対 称 で のEinstein方
式 で あ る.そ
こ で,回 転 を持 つ
し て 当 時 は 全 く無 視 さ れ て い た
に 冨 松 彰 と見 い だ した21).観 測 的 に は 現 在 で も ブ ラ ッ ク ホ ー ル
い と い う数 学 的要 請 がKerr解
た.定
に
程 式 は,ソ
の対 応 で 云 う と,1978年
こ とが わ か っ た22).こ う してT-S解
リ トン と 同 じ2次
頃 にT-S解
元 空 間上 の 非 線形 方 程
は 多重 ソ リ トン の シ リー ズ で あ る
は 数 理 物 理 の 研 究 に 刺 激 を 与 え た.ブ
ー ル が どん な 時 空 解 に な るか は解 決 済 み で な く ,重
ラ ック ホ
力崩壊 を実際 に解 いてみ なけ れば
判 らな い.と た が,こ
い う見 解 を 私 は 周 辺 に 話 して い た.こ
れ は 当 時 も主 流 の 見 解 で は な か っ
う し た 風 潮 が 重 力 崩 壊 を数 値 計 算 で や っ て み る と い う仕 事 を若 い 人 に 啓 発 す
る こ とに な っ た.1979年,ADM形 た23).ま た そ の 後,佐
式 と数 値 計 算 を 組 み 合 わせ て 先 駆 的 な 仕 事 を し
藤 勝 彦 の ア イ デ ア を定 式 化 し た ワ ー ク ホ ー ル 形 式(1982年),
膨 張 宇 宙 の ゲ ー ジ不 変 な 摂 動(83年),ブ な ど の 研 究 を推 進 した 中 村 卓 史,前
ラ ッ ク ホ ー ル 摂 動 で の 重 力 波 放 出(84年),
田 恵 一,小
相 対 論 の 研 究 を 日本 に 根 付 か せ た.重
玉 英 雄,佐
々 木 節,等
は本 格的 な一般
力 崩 壊 の 数 値 計 算 に 参 加 した 観 山 正 見 は そ の 後
天 体 物 理 の シ ミュ レ ー シ ョ ン で 活 躍 す る. 1974年
の チ ャー ム の 発 見 前 後 で の 素 粒 子 標 準 理 論 の 確 立 は 天 体 物 理 に と っ て も大
き な意 味 を持 っ た.星
の物 理 に は 中 性 カ レ ン トは折 り込 み 済 み で あ っ た が,現
パ ラ メー タ ー の 数 値 が 確 定 し た.さ
らに 膨 張 宇 宙 を 温 度 が1GeV以
気 体 の状 態 方 程 式 で 遡 る こ とが 正 当 化 さ れ た.こ が 結 局 正 しか っ た 」 と い う こ と な の で,現
象論 的
上 の時 期 に理 想
の こ とは 「 物 事 を よ く考 え な い 連 中
在 は 殆 ど指 摘 さ れ な い が,こ
うな る 直 前 に
は ハ ドロ ン の 弦 模 型 に 基 づ い た 温 度 に は最 高 値 が あ る とい う説 に 熱 中 して い た.弦 模 型 の 熱 力 学 と して 理 論 的 に は結 構 面 白 い この 議 論 に 終 止 符 を打 ち,単 い と な っ た の は 電 弱 理 論 とQCDの 標 準 理 論 とそ の 延 長 上 で のGUT(大 に 適 用 す る考 察 が 始 ま っ た.現
統 一 理 論)を
て 間 も な くチ ャー ム 騒 動(74年)が もの にS. Hawkingの
ロ セ ス(中
て い て,WS
年 間 のBerkeley滞
あ っ た が,当
の 頃,佐
藤(勝)が
こ
研 に帰 っ
も こ れ に 関 心 を持 っ た が,場
宇 宙 現 象 で のHiggs粒
や っ て き た.彼
子 の効 果
は そ れ まで 中 性 子 星 物 質,超
性 子 吸 収 に よ る重 元 素 合 成 過 程)等
(Weinberg-Salam)理
在 後,基
時 多 くの 理 論 屋 を惹 き つ け て い た
ブ ラ ッ ク ホー ル 蒸 発 が あ っ た.私
を 考 え て い るの で議 論 し て 欲 しい,と 星,r-プ
超 高エ ネ ル ギー の宇 宙初 期状 態
時 点 で 整 理 した 課 題 を次 節 で述 べ る こ とに して,こ
で は 当 時 の 自分 の 周 辺 で あ っ た こ と を記 す.一
の 量 子 論 の 勉 強 に お わ っ た.そ
に理 想気体 で よ
お かげ であ る.
新
の 星 の 終 末 を研 究 テー マ と し
論 を よ く勉 強 して い た.彼
と一 緒 にHiggs粒
子
の効 果 を論 文 に した が24),そ の 後 彼 は 引 き続 き弱 作 用 粒 子 の 質 量 と寿 命 を 宇 宙 現 象 か ら 現 象 論 的 に狭 め て い く とい う仕 事 を し,素 粒 子 宇 宙 論 に 本 格 的 に 入 っ て い っ た.こ れ ら に つ い て 「自 然 」 に 解 説 を 書 き25),1977年
に は 海 外 で も講 義 を し た が,当
時は
学 界 の 関心 が そ こ に な い こ と を知 っ た. 1978年 に 素 粒 子 の 国 際 会 議 が 東 京 で あ り,WS理 た.陽 子 崩 壊,宇
宙 バ リオ ン数 生 成,等
のGUTの
論 の 大 成 功 とGUTが
予 言 が確 認 され る 日が 間 近 に 迫 っ
た 緊 迫 感 が あ っ た26).吉 村 太 彦 の バ リ オ ン数 の 論 文,KAMIOKANDE計 も 中 心 と な り熱 気 が あ っ た.こ 年)に
登 場 す る の が 図3で
喧伝 さ れ
画 等,日
本
の 興 奮 冷 め や ら ぬ 内 に 書 い た 「自然 」 の 解 説(1978
あ る25).こ れ はGUTの
互 作 用 の 強 さ を 描 い た 図 を縦 に して,エ
説 明 で,エ
ネ ル ギ ー(横
軸)と
相
ネ ル ギ ー と一 緒 に 時 間 を入 れ た だ け の もの で
図3
初 期 宇 宙 で の 温 度 降 下 に よ っ て真 空 の 相 転 移 が 起 こ り相 互 作 用 が 分 化 して きた と い う.現 代 の 「力 の 統 一 理 論 」 のパ ラ ダ イム を表 現 し た 図25)
あ る.こ
の 「力 の分 岐 発 展 図 」 は1980年
し た.我
々 は 英 文 の 論 文 に も こ の 図 を用 い た の で,あ
代 の 素 粒 子 宇 宙 論 流 行 の 中 で 繰 り返 し登 場 ち らの 解 説 本 に ま で こ の 図 が 登
場 し,そ の 翻 訳 本 で 再 上 陸 も した. 1980年 の 春 に 軽 い ニ ュ ー ト リ ノ質 量 が 検 出 さ れ た とい う報 道 が あ っ た.こ が1964年
に 勉 強 し た 課 題 で あ る.早 速,高
の 暮 れ のTexasシ
原 文 郎 と構 造 形 成 の 論 文 を書 き,そ
の年
ン ポ ジ ウ ム に 招 待 され た27).ニ ュ ー ト リ ノ等 の 暗 黒 素 粒 子 が こ の
会 の メ イ ン トピ ッ ク ス で あ っ た が,A. て い て,夜
れ は私
の分 科 会,サ
Guthの
イ ン フ レー シ ョ ン 説 が 話 題 に な りか け
テ ラ イ トの 会 議 で 彼 の 話 に 多 くの 人 が 聞 き入 っ た が,ど
価 す る か 皆 迷 っ て い た.こ
う評
れ が 爆 発 的 に 流 行 り出 す の は 新 イ ン フ レー シ ョ ン 説 に な
り,場 の 量 子 論 真 空 の 量 子 ゆ ら ぎで 天 体 構 造 形 成 の 種 で あ る 密 度 ゆ ら ぎ が 形 成 さ れ る,と
い う理 論 が 追 加 さ れ て か らで あ る28).80年
夏 に コペ ン ハ ー ゲ ン か ら 帰 っ た 佐
藤(勝)は
旧 イ ン フ レー シ ョ ン で の バ ブ ル 膨 張 で は う ま く相 転 移 は 完 結 しな い と言 っ
て い た.何
れ にせ よ,モ
ノ ポ ー ル を薄 め る動 機 とい い,こ
とい う の が 私 の 第 一 印 象 で,当
の 説 は マ ッチ ポ ンプ で あ る
時 物理学 会 の特別講 演 で もその よ うに紹介 した記憶 が
あ る.
31.6 現 状
と 未 来
1980年 以 後 に つ い て は 歴 史 を離 れ て私 が 関 心 を 持 つ 事 項 に つ い て コ メ ン トす る. 31.6.1 素 粒 子 宇 宙 論 の 憂 鬱28) 「1984年 の 虚 脱 感 」 とい う こ と を私 は 言 っ て き た が,こ 感 が 遠 の い た こ と を 指 す.勿
論,嘘
の 頃 にGUT理
とな っ た わ け で もな い が,Higgs部
論 へ の緊 迫 分 の具体 的 構
造 な どが 当 分 確 定 し な い雰 囲 気 に な っ た.素 粒 子 宇 宙 に は 新 粒 子 論 と真 空 理 論 の 課 題 が あ る.前 者 の 代 表 は 暗 黒 物 質,宇
宙 バ リ オ ン 数,後
者 は 大 別 して位 相 欠 陥(モ
ノポ
ー ル
,宇 宙 ひ も等)と イ ン フ レー シ ョ ン説 に わ か れ る.真 空 部 分 の 不 定 さ は イ ン フ レ ー シ ョ ン 説 の 研 究 を繁 盛 させ たが ,物 理 と し て は 押 さ え ど こ ろ が な い こ と を認 識 す る
結 果 に 終 わ っ て,白 生 成 だ が,1992年 Friedmanモ
け て し ま っ た.マ のCOBEで
ッチ ポンプ 的で ない ポジ ティブ な主張 はゆ らぎ
観 測 さ れ て い る振 幅 を 予 言 す る能 力 を持 っ て い な い.
デ ル で 許 さ れ るHarrison-Zeldovich型
必 要 条 件 を満 た す に 過 ぎ な い.Einstein方
に 近 い ス ペ ク トル を 導 く こ と は
程 式 に 真 空 エ ネ ル ギ ー が ど う入 る か,あ
い は 真 空 エ ネ ル ギ ー の絶 対 値 に 意 味 が あ る の か,こ や り過 ご し た,場 む.宇
の 量 子 論 の 大 問 題 で あ る.ま
る
う し た 問 題 は く りこ み 理 論 の 時 も
た,こ
れ は現 在 の宇 宙 項 問題 とも絡
宙 の 問 題 に な っ た 途 端 に こ の 物 理 学 上 の 歴 史 的 難 問 が 軽 く扱 わ れ て い る 印 象 を
持 つ.と
もか く課 題 山積 で 挑 戦 的 分 野 で は あ る が,一
る前 進 を す る の は大 変 で あ る.一
通 り荒 ら し 回 っ た 後 で 意 味 の あ
様 等 方 時 空 は 量子 宇 宙 で の 「 選 択 」 で あ る可 能 性 も
あ り,量 子 宇 宙 と イ ン フ レー シ ョ ン期 を分 離 して 考 え ね ば な ら な い 必 然 性 も定 か で な い と思 う.何
れ にせ よ実 証 が 遠 の い た現 在,現
実 を ど う 押 さ え るか は 憂 鬱 な事 態 で あ
る. 31.6.2
1981年 (Sloan
大 規 模 構 造 とlook-backの
観 測
頃 か ら 話 題 に な っ た 銀 河 分 布 の 大 規 模 構 造 の 発 見 は,今 Digital Sky
Survey)な
を 初 め 大 型 望 遠 鏡 の 活 躍 で,ま な る.ま
たlook-backの
立 体 角 で のCOBE衛 あ る.こ
後 さ ら にSDSS
どの 観 測 で 明 確 に な っ て い くで あ ろ う.ま た ス バ ル す ま す 古 い 原 始 銀 河 をlook-backす
る こ とが 可 能 に
限 界 で あ る 宇 宙 マ イ ク ロ波 背 景 放 射 の ゆ ら ぎ の 観 測 が,大
星 で の 観 測 か ら小 立 体 角 で の 地 上 観 測 に移 り,着 実 に 進 み つ つ
れ ら天 文 学 的look-back観
測 は し ば ら くは 順 調 に 結 果 を 出 す で あ ろ う.た
だ し観 測 の 進 展 は 多様 性 を確 認 し,物 理 学 が 好 む 単 純 さ は 失 わ れ て い く可 能 性 も あ る.い
ち い ち騒 い で 狼 少 年 に な ら な い 注 意 が い る.理
ち ゃ ん と星 を含 む 銀 河 を ど う作 る か で あ る.こ 分 子,放
し,ま
れ は単 純 な 重 力 系 の 問 題 で な く,原 子
射 過 程 の 絡 ん だ も の で あ ろ う.
31.6.3
SN
論 的 な考 察 で 欠 け て い る の は,
高 エネル ギーガ ンマ線
1987 A出 現 はKAMIOKANDEと た,生
日本 のX線
に 存 在 す る こ と を世 界 に実 証 し た(こ の 高 エ ネ ル ギ ー ガ ン マ 線 をNew KAMIOKANDEの
天 文 学 に 幸 運 な贈 り物 で あ っ た
の観 測 デ ー タ を有 効 に 宇 宙 物 理 の 発 見 に も っ て い け る理 論 的素 養 が 日本 の テ ー マ は 別 項 参 照).こ
Zealandで
の 際,こ
の 天体 か ら
観 測 す る実 験 に私 は 関 わ っ た29).こ れ は
発 見 に 刺 激 さ れ て 何 か観 測 を した い と い う実 験 家 の フ ィー バ ー が
も た ら し た も の で,た
ま た ま私 が1977年
に 書 い た 話 が き っ か け に な っ た.超
発 で 形 成 さ れ た 中 性 子 星 や 膨 張 す る 残 骸 雲 で宇 宙 線 が 発 生 す れ ば,濃
新星爆
い物質 で囲 まれ
た 爆 発 直 後 で は,そ
れ が シ ャ ワー をつ くっ て 高 エ ネ ル ギー ガ ン マ 線 や ニ ュ ー ト リ ノ と
な る と い う話 で あ る.や だ け で あ っ た が,こ し,さ
や 紛 ら わ し い ポ ジ テ ィ ブ イベ ン ト一 回 以 外 は 上 限 を押 さ え た
の 経 験 はAustraliaで
のCANGAROOを
生 み 出す動 機 に な った
ら に 宇 宙 線 望 遠 鏡 に 進 展 して い る.
31.6.4 超 高 エ ネ ル ギ ー 宇 宙 線 宇 宙 線 エ ネ ル ギー ス ペ ク トル が ど こ ま で伸 び て い る か とい う 問 題 が あ る.こ して3K放
射 の 発 見 直 後 に だ さ れ た予 言 にGZKカ
ッ トオ フ が あ る.そ
れ に関
して 私 は こ の
議 論 が 相 対 性 原理 の 適 用 限 界 を 検 証 す る 現 象 だ と指 摘 し た30).空 気 シ ャ ワ ー に よ る 高 エ ネ ル ギー 宇 宙 線 の 観 測 は 日本 で 忍 耐 つ よ く進 め ら れ た .そ こ のGZKカ
し て1990年
ッ トオ フ を 越 え るエ ネ ル ギ ー の イ ヴ ェ ン トを 発 見 し た.確
代 の初 め に 認 の ため の次
期 計 画 が 動 き 出 して い る31). 31.6.5
重力波 実験
病 に倒 れ た 早 川 が 晩 年 情 熱 を傾 け て 立 ち上 げ た の が レ ー ザ ー 干 渉 系 重 力 波 検 出 で あ っ た.平
川 浩 正 が 先 駆 的 に70年
代 に 方 形 ア ン テ ナ 等 で の 実 験 を始 め て い た が,実
験
室 か ら は み 出 る大 型 化 を考 え れ ば レ ー ザ ー 干 渉 系 に将 来 性 が あ る とい う世 界 の 風 潮 に 沿 っ た もの で あ る. 31.6.6 観 測 実 験 との 共 同 を 1960年 ル サ ー,ブ
代 は 素 晴 ら しい 「宇 宙 の 発 見 の 時 代 」 だ っ た.ク
ェ ー サ ー,3K放
射,パ
ラ ッ ク ホ ー ル 発 見 や,「 検 出 」 が 話 題 に な っ た 重 力 波 や 太 陽 ニ ュ ー ト リ ノ
と い っ た課 題 が 登 場 し て 観 測 と理 論 の 双 方 で 天 体 物 理 の 枠 が 広 が り,し か も物 理 学 者 の 活 躍 す る舞 台 が 用 意 さ れ た.こ た こ と も な か っ た.し
ん な 観 測 上 の 研 究 が 日本 で で き る とは 私 は 当 時 考 え
か し経 済 と技 術 で 豊 か に な っ た 日 本 の 観 測 実 験 は,現
一 を 目指 せ る可 能 性 を持 っ て い る .こ
の こ とは,こ
在,世
界
れ まで我々理 論家 の 周辺 ではお 手
本 で あ っ た 「林 ス タ イ ル 」 で の 研 究 だ け で な く,積 極 的 に観 測 実 験 と も絡 ん で理 論 研 究 も進 め る 「早 川 ス タ イ ル 」 の 研 究 の 環 境 が で きて き た こ と を 意 味 す る.宇 宙 物 理 の テ ー マ は 観 測 可 能 性 を 第 一 条 件 に して い る こ と を 歴 史 は 教 え て い る32).次 の 世 代 に 期 待 した い も の で あ る.(筆 れ,1960年
者=さ
と う ・ふ み た か,甲 南 大 学 理 工 学 部 教 授.1938年
生ま
京都 大 学 理学 部 卒 業)
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粒 子 論 研 究39(1967)385参
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K.Sato
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佐 藤 文 隆,佐
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央 公 論 社,1976)6月
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佐 藤 文 隆 編:『
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佐 藤 S.ワ
文
隆:科
29)
佐 藤 文 隆,政
30)
H.Sato
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佐 藤 文 隆:『
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H.Sato sal
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and
Academy
文
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本 物 理 学 会 誌51(1996)172-178.
Holes
and High
店 書 店,1995). Energy Astrophysics(Univer
32.
X線
天文 学 の 誕 生 とそ の発 展 小
宇 宙 物 理 の 歴 史 を追 っ て み る と,1960年
田
稔
代 が 特 殊 な 時 代 だ っ た こ とに 気 が つ く.
こ の 分 野 で そ の 時 々 に解 か れ て い な か っ た 問 題 を個 人 的 に 整 理 し見 直 し を つ け る た め に,や
や 主 観 的 だ が い くつ か の ダ イア グ ラ ム を描 い て 見 た こ とが あ る.す
と こ ろ で ご 披 露 して い るが1),1960年 軸 は 北 に 向 か っ て"意
外 性"セ
は知 識 の 深 ま り で あ る.セ 話 か ら派 生 した,思 1960年
代 の も の を お 目 に か け る こ と に す る.図1の
レ ン デ ィ ピ テ ィ ー(serendipity)*1を
レ ン デ ィ ッ プ とい うの は,セ
宙 の 残 照(ぬ
,い
イ ロ ン の 三 人 の 王 子 とい う民
い が け な い発 見 とい う 意 味 に 科 学 者 が よ く使 う言 葉 で あ る. ル サー や クェ
ず れ も常 識 的 な 物 理 で は 理 解 しが た い 天 体 が 発 見 さ れ,火
く も り)3K背
景 放 射 が 検 出 さ れ た.そ
イ ン ス ピ レー シ ョ ン に よ るX線
天 体 の 発 見 か らX線
球 は 厚 い 大 気 に 包 ま れ て い る.そ の た め に,X線 達 し な い.Rossiは,誰 た1960年
縦
表 して い る.南
代 は 思 い が け な い 発 見 が 相 次 い だ 疾 風 怒 濤 の 時 代 だ っ た.パ
ー サ ー とい っ た
で に色々 な
も が 強 いX線
し て,MITのBruno
の玉 宇 Rossiの
天 文 学 が 始 ま っ た の で あ る.地
は 大 気 に吸 収 され て地 表 までは 到
を放 射 す る 天 体 が あ る とは 想 像 して い な か っ
代 初 期 に,「 自 然 は 人 間 の 想 像 を 越 え た 姿 を 見せ る こ とが あ る.い
ま は大 気
の 外 に 出 る 手 段 が あ る の だ か ら… 」 と小 さ な ガ イ ガ ー 計 数 管 を ロ ケ ッ トに 載 せ て 大 気 の 外 に 送 りだ した の で あ る.今 か らみ る と小 さ な ロ ケ ッ トに よ る 幼 稚 な 観 測 だ っ た が,そ
れ で も1960年
Astrophysical
代 は 発 見 に 次 ぐ 発 見 の 時 代 だ っ た.当
Journal
(ApJ)の
速 報 誌 を 見 る と,40%ほ
時の米 国天文 学会誌
どがX線
あ る.筆
者 の 個 人 的 な 話 に な っ て 恐 縮 だ が,私
の で,幸
い に も この 新 しい 学 問 分 野 の 誕 生 に初 め か ら 立 ち会 う こ と に な っ た.
何 故,X線
は,超
ン ク ロ トロ ン放 射 や 逆Compton効
果 に よ っ て,プ
「Copernicus, Newton,
っ た 静 的 な 宇 宙 像 が,X線
Einsteinを
International
時Princeton高
通 じて 基 本 的 に は 変 え られ る こ との な か
,serendipityは
っか り
「セ イ ロ ン の 三 人 の 王 子 」 と い う
「思 い が け な い 発 見 を す る 才 能 」 を 意 味 す る.―Webster's
Dictionary
宙の
等 研 究 所 のFreeman
天 文 学 の 出 現 に よ っ て ダ イ ナ ミ ッ ク な も の に,す
い う の は セ イ ロ ン の昔 の 呼 名 で
ペ ル シ ャ の お 伽 話 に 発 し て New
ラ ズマ の 中の高 エ ネル ギ
ず れ に して も,こ れ まで み た こ と もな か った 天体,宇
姿 が 見 え て く る こ と に な っ た の で あ る.当
*1 Serendipと
的 な メカ ニ
高 温 プ ラ ズ マ か ら放 射 さ れ る.非 熱 的 な メ カ ニ ズ ム に よ るX
ー 電 子 か ら放 射 さ れ る.い
Dysonは
も と で働 い て い た
天 文 学 が こ ん な に 急 速 な 実 り を も た ら し た の だ ろ う か.熱
ズ ム に よ るX線 線 は,シ
は 以 前 か らRossiの
天文 学 の速報 で
Third
図1 宇宙物理学 の変遷 宇 宙 物 理 学 の 問 題 や 発 見 を,ほ ぼ10年
ご とに ま とめ た.こ
の"地
図"で
は,北
性 」 を,南 に 向 か っ て 「知 識 の 深 ま り」 を表 し て い る.水 平 軸 は左 か ら順 に,宇 遠 い 銀 河 の 話,私 射 す る波 長21cmの
た ち の 銀 河 の 話,銀
河 の 中の 天 体 の話 と並 ん で い る.1950年
電 波 の ドップ ラー 効 果 を使 っ て,銀
ど を通 して 素 粒 子 物 理 学 の 基 礎 を築 い たが,そ の 玉 の 残 照3K,宇
天文 学 は,中
た,星 が 生
代 以 降,コ ン ピ ュー ター 技 術 の 発 達 と と も 代 か ら の 宇 宙 線 の研 究 は,新 粒 子 の 発 見 な
の起 源 につ い て は 謎 が 深 ま る ば か り で あ る.1960年
宙 の 果 て の 天 体 クェ ー サ ー,正
星 の 発 見 が 相 次 い だ.X線
代 に は,水 素 原 子 が 放
河 の 渦 巻 構 造 が 明 確 に な っ た.ま
まれ て 進 化 す る も の だ とい う こ と も明 らか に な り,1960年 に,星 の 誕 生 や 進 化 の理 論 が 急 速 に発 展 し た.1920∼30年 は,火
に 向 か って 「意 外
宙 全 体 にか か わ る話,
性 子 星 の 研 究,ブ
代
確 な 周 期 で また た く電 波 星 パ ル サ ー,X線 ラ ッ ク ホ ー ル の 発 見 を経 て,X線
銀 河 の研
究,宇 宙 全 体 のX線 放 射 な ど,物 理 学 の地 平 線 を 大 き く広 げ つ つ あ る.こ の 間 に 発 見 さ れ た ガ ンマ 線 バ ー ス トの 正 体 は い ま な お 明 らか で は な い.1987年 に 出現 し た超 新 星 が 神 岡鉱 山 地 下 の装 置 で捕 らえ られ た こ とは,新
しい ニ ュ ー ト リノ天 文 学 へ の 道 を ひ ら く画 期 的 な 出 来事 だ っ た.こ
の 装 置 は,そ
の
後 も太 陽 ニ ュ ー ト リノ観 測 装 置 と し て活 躍 して い る.大 統 一 理 論 が 予 測 す る 陽 子 崩 壊 や 磁 気 モ ノポー ル が 見 つ か って い な い の も大 き な謎 で あ る.遠 い 宇 宙 が む らの あ る 大 規 模 構 造 を もつ こ と は,宇 宙論 の 根 底 に ふ れ る 問題 で あ る.(小
書 き 換 え ら れ て し ま っ た.」
1960年
代,1970年
田
稔:日
経 サ イエ ン ス(1994)No.1よ
り転 載)
と 言 っ て い る2).
代 に は,X線
星 か らX線
を放 射 させ て い る の は,連
星 を形 成 し
て い る高 密 度 の 星 に 恒 星 か ら流 れ 込 む プ ラ ズ マ が 解 放 す る 重 力 エ ネ ル ギー だ とい うこ とが は っ き り し て き た.こ
う して,も
重 力 で つ ぶ れ て し ま っ た 高 密 度 星,つ る手 段 を,X線 X線
とは 理 論 物 理 学 者 の 頭 脳 の 産 物 だ っ た,自
分の
ま り中性 子 星 や ブ ラ ッ クホ ー ル を実 際 に観 測 す
天 文 学 が 提 供 す る こ とに な っ た の で あ る.
天 文 学 の 歴 史 を,大 づ か み に論 文 の 数 の 変 遷 と し て と ら え て み る.図2の
ラ フ は1962年
のX線
を示 し て い る3).1966年
天 文 学 の 発 祥 以 来,1年 以 前 はNatureを
み に つ い て か ぞ え て あ る.1970年
間 に 発 表 さ れ たX線
国 の初 のX線
こ ま で 観 測 ロ ケ ッ トが せ いぜ い10分
に と ど ま っ て い な か っ た の に 対 して,科
れ 以 後 はApJの
天文 衛 星Uhuruが,ケ
ア 海 岸 の沖 合 の 海 中 に あ る イ タ リア の 人 工 の ロ ケ ッ ト基 地San ら れ て い る.そ
天文 学 の論文 の数
含 む す べ て の 学 術 雑 誌,そ
末 に は,米
グ
Marcoか
か 長 く と も30分
ニ
ら打 ち 上 げ
間 しか 大 気 圏 外
学 衛 星 は 地 球 を 回 る軌 道 上 に あ っ て観 測 を続
け る の で あ る.こ れ を境 に論 文 の 数 は 急 激 に 増 え て,1980年
代 に か け てApJだ
けで
天文 学 関 連 の 論 文数 と著 者
以 前 は 天 文 学 の 一 部 と い う意 識 は な か っ た の で,Astrophys.
J.に 掲 載 さ れ たX線
図2 発表論文 の変遷
稔:日
経 サ イエ ン ス(1994)No.1よ
り転 載.)
J.以 外 の 全 雑 誌 に つ い て 数 え た.打 ち上 げ たX線 天 文 衛 星 も示 し た が, 1980年 代 以 後,日 本 の ウ ェー トが 大 き くな って い る こ とが わ か る.(小 田
数.1966年
天 文 学 雑 誌Astrophys.
一 年 に200編
の 論 文 が で る時 代 が 続 く.1982年
め る 割 合 は15%に
な っ て い る.図
に は,天 文 学 全 分 野 の 中 でX線
の カ ー ブ の 上 に 衛 星 の 名 前,あ
の 占
るい はニ ッ クネー
ム が つ け て あ る. こ の 歴 史 の 中 で の 日本 の 役 割 を 拾 っ て み る.X線 得 る き っ か け をつ く っ た の は,1966年 星Sco
X-1を
天 文 学 が 天 文 学 の 「市 民 権 」 を
東 京 天 文 台 岡 山 観 測 所 が さ そ り座 に あ るX線
光 学 的 に 同 定 した こ と だ っ た4).こ れ は,や
や 手 前 味 噌 に な る が,筆
自 身 が 関 与 し た モ ジ ュ レ ー シ ョ ン ・コ リ メ ー タ ー に よ るNew Sandsで
の ロ ケ ッ ト観 測 が 火 を つ け た と言 っ て 良 い か も知 れ な い.こ
の装 置 は,レ
ズ も使 え ず,特 殊 な 条 件 以 外 で は 反 射 鏡 に よ る 普 通 の 望 選 鏡 も使 え な いX線 域 で,精
密 な"望 遠 鏡 の よ う な もの"を
造 に は 触 れ な い が,か
工 夫 した もの で あ る.こ
screen)だ
た 巨大 な 天 文 衛 星 に搭 載 さ れ た 精 密 な"す こ に 光 の 天 体 も発 見 さ れ てX線
日本 で は 宇 宙 科 学 観 測 は1957∼58年 学 の 永 田 武,前
航 空 研 究 所(後 っ て,1963年
だ れ"が
だれ コ リ
頃に は米 国 で打 ち上 げ られ
次 々 にX線
星 の 位 置 を決 め,そ
星 カ タ ロ グ が 作 られ て い っ た.
32.1
高 木 昇,理
生 が 「これ は,
ね 」 と言 わ れ た こ とか ら,す
メ ー タ ー と よ ぶ こ と に な っ た の で あ る.そ の 後,1980年
ン
波長 領
こで はそ の原理や 構
つ て 滞 在 し た 京 都 を 深 く愛 した 恩 師 のRossi先
ま る で 京 都 の宿 の す だ れ(bamboo
者
Mexico州White
田憲 一,畑
日本 のX線
天文 学
の 国 際 地 球 観 測 年 を 契 機 に,工 学 の 糸 川 英 夫, 中武夫 の諸 先生 の先導 で開 かれ た東 京大学 宇宙
の 文 部 省 宇 宙 科 学 研 究 所)で
育 て ら れ て い た.そ
に は 当 時 名 古 屋 大 学 の 早 川 幸 男,松
の 観 測 ロ ケ ッ トを使
岡 勝 が い ち 早 くX線
天 文 学 の仲 間
入 りを し て い る. 生 ま れ て 間 も な い 日本 のX線
天 文 グ ル ー プ が 心 血 を そ そ い だ 衛 星CORSAの
上 げ が 手 痛 い 失 敗 を 喫 し た3年 誕 生 し た,こ
の 頃 に は,X線
こ ろ に 現 わ れ るX線
後,1979年
バ ー ス ト,X線
パ ル サ ー,そ
新 星 な ど に 代 表 さ れ る よ う に,「X線
る」 こ とが わ か って き た.し
た が っ て,小
打ち
に は 日本 初 の 天 文 衛 星 「は く ち ょ う」 が して思 わ ぬ 時 に思 わぬ と 星 は激 し い 時 間 変 動 を見 せ
型 の 衛 星 に も十 分 に 活 躍 の 場 が あ る こ とが
わ か っ た. 1980年 代 初 期 に は 英 国Leicester大
学 と の 人 の 往 来 ・交 流 が 始 ま っ て,1987年2
月 に は 共 同 作 業 の よ う に し て 「ぎん が 」 が 軌 道 に の っ た.そ して 間 もな く,数 世 紀 に 一 度 天 空 に 起 き る華 麗 な 物 理 現 象 ,超 新 星 に 遭 遇 す る な ど,論 文 数 の カ ー ブ か ら も読 み 取 れ る よ う に,日 本 のX線
天 文 学 の 比 重 が 大 き くな っ て い くの で あ る.
こ れ に は 日本 特 有 の 宇 宙 科 学 の 戦 略 が もの を 言 っ て い る.わ 対 して,科
学 と実 用 の 計 画 ・実 施 と を 明 確 に 区分 して い る.現
宇 宙 開 発 事 業 団 とが そ れ ぞ れ を担 当 し て,こ
が 国 で は,宇 在,宇
宙開発 に
宙科 学研 究所 と
れ を宇 宙 開 発 委 員会 が 総 合 す る と い う体
制 を と っ て い る. も とは と言 え ば,ロ
ケ ッ トや 宇 宙 通 信 等 の 宇 宙 工 学 が 大 学 で 始 め られ た とい う歴 史
的 事 情 が あ っ た が,結 戦 略 が,そ
果 的 に は,本
来 科 学 と実 用 と で は っ き り違 うは ず の 目的 意 識 と
れ ぞ れ 上 手 に 活 か さ れ る こ と に な っ た.こ
局)やESA(欧
州 宇 宙 機 関)の
う し て,NASA(米
航空宇宙
科 学 者 た ち の う らや む よ う な体 制 が,わ
が 国 に確 立
さ れ た の で あ る. 日本 の 宇 宙 科 学 の 成 果 を 詳 し く見 たPrincetonのDysonは,こ quick Noel
is
beautiful"と
Hinnersは
い う言 葉 で 表 現 し,NASA
「ISAS(宇
宙 研)は
れ を"small
Goddard研
but
究所 の所 長 だ っ た
学 問 と人 の 連 続 性 を重 視 して,Goddardの6%
の 予 算 で 大 き な 成 果 を あ げ て い る.こ
ん な こ とが で き る の だ .」 とNASAに
警告 を
発 し て い る. 1982年
の 「ひ の と り」 を 先 駆 と して1991年
「よ うこ う」 は,地 学 に,た
に 打 ち 上 げ ら れ た 太 陽X線
味 な 学 問 に な る よ う に 見 え て い た(少
天文衛星
な く と も私 に は)太
陽物理
いへ ん な 活 力 を 与 え る こ とに な っ た よ う で あ る5).
「は く ち ょ う 」 に始 ま る 日本 のX線
天 文 衛 星 は,年
を 追 う と と も に数 多 くの 外 国 の
研 究 者 を ひ きつ け て い る.「 よ う こ う」 や 「あ す か 」 に い た っ て は,欧 学 者 は 「自分 た ち の もの,学
米 のX線
天文
界 の 共 有 の 財 産 」 と思 っ て くれ て い る よ う で あ る.
32.2 科 学 衛 星 「あ す か 」 図2を
見 る と 日本 のX線
して,1960年
以 降 に 急 成 長 し た 有 様 が み られ る.こ
代 中期 の 東 大 宇 宙 研 を 中 心 に 呱 々 の 声 を挙 げ た 日本 のX線
ル ー プ は,1980年
代 以 降,田
こ う」 衛 星 で あ り,銀 河 系 内 か ら遠 く銀 河 団 に お よぶX線 夏 現 在,活
陽 物 理 学 に つ い て は 「よ う 天 文 学 に つ い て は 「あ す
動 を続 け て い る 「あ す か 」(ASCA)は
ドイ ツ の
星 と ともに宇宙 物理学 に 豊か な稔 りを もた らしてい る.
現 役 を は な た れ た筆 者 に は,論
文 の 中 身 は お ろ か,そ
の 表題 を 追 っ て い く こ とに も
困 難 を覚 え る ほ ど,そ の 質 と量 は 膨 大 な もの に な っ て い る.も な る が,1994年3月 ASCAと
天文学のグ
中 靖 郎 に 率 い られ た 若 者 達 の 活 躍 は 目 ざ ま し い も の
の 努 力 の 最 近 で の集 大 成 と考 え ら れ るの が,太
か 」 衛 星 で あ る.1995年 ROSAT衛
う
代 に は 欧 米 か ら の 訪 問 者 も含 め て 世 界 で も有 数 の 大 グ ル ー プ に 成
長 し て い る.1980年 が あ る.そ
天 文 学 が1980年
にNew
Horizon
of
X-ray
う1年 以 上 前 の こ とに
Astronomy―First
題 す る 国 際 会 議 が 八 王 子 の 都 立 大 学 で 開 か れ て い る.こ
官 記 念 の 意 味 も もっ て い た が,国
内 外 か ら そ れ ぞ れ100名
Results
from
れ は 田中靖 郎 の 退
を越 え る参 加 者 を数 え た も
の で あ る. 「あ す か 」 の 英 文 表 記 で あ るASCAは,Advanced Astrophysicsを
表 す こ と に な っ て い る が,筆
Satellite
for
Cosmology
者 は 仏 教 文 化 が 華 を 咲 か せ た6∼7世
and 紀
Statueof Maitreya Bodhisattva in meditation Chugu-jiTemple in Asuka (From Heibonsya'sEncyclopedia,1982)
Asca era:6th-7th century when Buddihism Art flourished also 1993∼in X-ray astronomy
図3 X線 天文学発祥の時期か ら現在 までの発展の歴史 ダイアグラム
の 飛 鳥 時 代 に 対 比 させ て 現 在 をX線
天 文 学 の 「あ す か 」 時 代 と呼 ん で い る.X線
文 学 発 祥 の 時 期 か ら現 在 ま で の 発 展 の歴 史 を,や や ふ ざけ 過 ぎか と も思 うが,漫 の ダ イ ア グ ラ ム で 表 し て み た の が 図3で 三 つ の 方 向 の 観 測 に 分 類 して,そ
あ る.空
ば れ る 現 象 等,ま
ペ ク トル,時
画風
間変動 とい う
れ ぞ れ の マ イ ル ス トー ン を 描 き こ ん で あ る.個 々 の
内 容 に 触 れ る の が 本 稿 の 目 的 で は な い の で,詳 ィ ン グ ス6)を 参 照 さ れ た い.矢
間 的,ス
天
細 に つ い て は 八 王 子 会 議 の プ ロ シー デ
印 で示 し て あ る よ うに,rapid
た ブ ラ ッ ク ・ホ ー ル の 最 有 力 候 補Cyg
burster
X-1の
QPOと
呼
時 間 変 動 等,10年
あ
る い は そ れ 以 上 に わ た っ て観 測 デ ー タ が 蓄積 され て き て い るの に,未
RB,
だ に そ の物 理 的
正 体 が 明 ら か で な い も の が い くつ か あ る.そ の 著 名 な も の の 一 つ は ガ ン マ 線 バ ー ス ト で あ る.そ
の 発 見 以 来20年
天 体 な の か,遠 くる の だ が!)す
を 越 え る の に そ の 正 体 は お ろ か,そ
い 天 体 な の か(そ
れが 銀 河系 内の近 い
う だ とす れ ば 想 像 を絶 す るエ ネ ル ギ ー が か か わ っ て
ら明 確 で は な い.
32.3 草 創 期 の い くつ か の エ ピ ソ ー ド さ て,X線
天 文 学 の 揺籃 期 の い くつ か の エ ピ ソ ー ド を紹 介 して お こ う.そ れ は ク
レ ジ ッ トに つ い て他 人 の 事 だ け で な く自分 に つ い て も極 め て 厳 し く公 正 な ひ と で あ る MITのWalter
Lewinが"個
人 的 な偏 見 で み たX線
天 文 学30年
史"と
題 す る 論 文7)
の 中 で,「 科 学 の 進 歩 の 歴 史 は デ リ ケ ー ト,い つ 何 が 誰 に よ っ て 発 見 され た か と い う 記 憶 は しば し ば 曖 昧 な も の に な る」 と言 っ て い る よ う に,忘
れ 去 られ て し ま うか も し
れ な い こ と を 記 憶 に と どめ て お くこ とに は あ る 意 義 が あ るか も しれ な い と思 うか らで あ る. 32.3.1
さ そ り 座X線
こ の 問 題 に つ 1966
brought
limator
the
invented
MIT. arcmin).
spite
rainy
June
clo uds,
gave who
boxes the
quote
(each
the
&
E
about
Japanese
from
col
AS
and
1 by
found
the
historical
2
star
optical
which
are
prevalent
in
Japan
V=12.6±0.2…"…"These relayed
them
during
results
by
telephone
to
confirmed
the
colors
were
Palomar
on
with and
the
revealed
200 the
inch
that
"fast
flicker
same
night
of
the
order
of
2
percent
measured
(0.02mag)
in
minutes". on
X-1
an
was
turned
out
事 実 は,私
extrapolation expected
to
of to
be
the
X-ray
a blue
star
spectrum of
∼13
(現MIT)等
mag,
to
and
optical
that
wave-lengths,
is precisely
は ロ ケ ッ ト実 験 の 結 果 を 日本 に 持 ち 帰 っ た の で は な か っ た.そ
what
it
のデー タ
を 手 伝 っ て くれ て い たHale
Bradt
が 結 果 を だ した の は も う少 し後 に な っ て か らの こ とで あ る.一 方,東
天 文 台 の 寿 岳 潤 は,私
とHerbert
Gurskyの"も
れ は マ グ ニ チ ュ ー ドV=12∼13の
づ き,そ
down
be.
解 析 は な か な か 骨 の 折 れ る も の だ っ た の で,私
ば,そ
error
modulation
(1966):
by
Giacconi,
the between
P.S.T"
Based
Sco
al.
using
(June!), I
る:
endeavor
small
clouds).
et
し て み
X-1
joint
in Japan
the
observations to
Sco
a
two
season
Sandage
cable
was
Japan
interrupted
the by
Japan
several
rainy
by
season,
23,
to
を 引 用
of
This
between
Observations
Oda.
frequently
communicated
in
identification
Minoru
the
paper
"Although
the
of
光 学 的 同 定
optical
away(peeking
identification
X-1の
授 の 論 文 の 一 部
hand-carried
In
right
by
Minoru
星Xco
い て のLewin教
し,Sco
写 しの 像 を つ く って
共 に 岡 山天 体 物 理 観 測 所 の90イ
,青
わ た りUVと
い 星 を探 そ う と考 え た.当
い う推 論 に も と 青 の フ ィル タ
時 の大沢 清輝 台長 と
ン チ 望 遠 鏡 を使 っ て 観 測 した 結 果,Lewinの
文にあ
る よ う に青 い天 体 を発 見 し た の で あ る.こ れ に は 現 場 の 石 田 五 郎 所 長 や 市 村,他 タ ッ フ に 加 え,私
も許 さ れ て 望 遠 鏡 を 覗 い て 初 め てX線
味 わ っ た の で あ る.こ
の 星 の 位 置 は ま さ に 私 やBradt達
京
光 っ て い る とす れ
極 端 に 青 い 天 体 だ ろ う"と
の 辺 の 空 の か な り広 い 領 域(1deg.×1deg.)に
ー に よ る2重
X-1が
のス
星 の 光 を 見 る とい う興 奮 を の解 析 に よ る二つ の エ ラー
ボ ッ ク ス の 一 つ に ぴ た り と収 ま っ た の で あ る. こ の 発 見 は後 に 多 少 問 題 を 残 して し ま っ た.そ 施 したRiccardo
Giacconi,私,そ
「我 々 の 観 測 でSco
X-1の
れ は も と も と こ の ロ ケ ッ ト実 験 を実
してPalomar天
文 台 のAllan
位 置 が 決 ま っ た ら,そ
Sandageの
間 で,
こ をSandageがPalomarの200イ
ン チ望 遠 鏡 で捜 索 す る」 と い う こ と に な っ て い た か らで あ る.と
こ ろ が,寿
岳 の思 い
が け な い 着 想 に よ る 方 法 で 青 い 星 が 見 つ か って し ま っ た の で あ る. 私 は 二 つ の 点 で 非 難 を 浴 び る こ と に な っ た. 1) 日本 の 天 文 学 者 に青 い 星 の 重 要 性 を知 らせ た の は ア ン フ ェ ア で は な か っ たか? 2) 逆 に,全
く独 立 な 方 法 で 青 い 天 体 が 発 見 さ れ た の な ら,共 著 論 文 の 筆 頭 著 者 は
Sandageで
は な く,日 本 側 で は な い の か?
と い う こ とで あ る.Sandageの
紳 士 的 な 態 度 と 日米 双 方 の 仲 間 の 友 情 の お か げ で,
や や ぎ す ぎ す した 感 情 も し ば ら く し て 永 解 し て し ま っ た.私 に した 背 景 に は,発
見 は こ ち ら だ っ た が80イ
がSandageを
ン チ と200イ
筆頭著者
ンチ の望 遠鏡 が つ くる ス
ペ ク トル の 質 の 余 りの 違 い に シ ョ ッ ク を受 け た こ と もあ っ た よ うに 思 う. 32.3.2
白 鳥 座X線
こ れ もLewinの
星Cyg
X-1の
位 置決 定
論 文 に 引 い て あ るAstrophys.J.Lett.Aug.15,1971号
の 目次 を見
て み る. X-rays
Observations
M.
Lampton,
X-rays
from
R.
E.
of Virgo
S. Bowyer, the
Prince,
XR-1
J. E. Mack
Magellanic
D.
and
B.
Margon
Clouds
J. Groves,
R. M.
Rodrigues,
F. D.
Seward,
C. D.
Swift
and
A.
Toor Measurement S.
Miyamoto,
Ohta
and
X-ray A. On
of the M. M.
Source Toor,
the
R. X-ray
R.
H.
of the
M.
X-ray
Matsuoka,
Source
Cygnus
J. Nishimura,
X-1 M.
Oda,
Y.
Ogawara,
S.
Wada for
Prince,
Location
Emission M.
Fujii,
Positions
S. Rappaport, Radio
Location
Hjellming
と な っ て お り,三
X-2,
and
Cyg
X-3
J. Scudder
R.
Doxsey
Sources
C. W.
of GX H.
and
and
X-ray
and
Cyg
X-1
Zaumen
from
Observations Tananbaum,
X-1,
F. Seward
of Cyg W.
Cyg
Wade
17+2
Gursky,
つ の 論 文 がCyg
from E. Kellog X-1の
Uhuru and
R.
Giacconi
位 置 決 定 に 関 わ る も の で あ る.こ
位 置 が 電 波 観 測 や 光 学 観 測 に よ っ て 精 密 化 さ れ,最
終 的 に はCyg
X-1を
のX線
の
ブ ラ ッ ク ・
ホ ー ル と す る 推 論 に 導 い た の で あ る.と じ こ と な の だ が,そ
の 結 果 は 電 波,光
こ ろ が,Miyamoto
et al.の
論文 は結論 は同
学 観 測 に は 直 接 は 使 わ れ て い な い.そ
れ は,論
文 の 結 論 が: In view error
of the possible
box
latest Cyg
is not
error X-1
box
with
variability
simple.
But
produced an
we by
accuracy
と や や 文 学 的(?)表
of the
conclude
Uhuru
of 1
source,
that
the estimation
the
region
observations
arc
near
of the the
is the most
west
size of the edge
probable
of the
position
of
minute.
現 に な っ て い る せ い か も し れ な い.実
験の論 文 で の結論 の表現
に つ い て 学 ぶ と こ ろ が あ っ た と 考 え た も の で あ る. 32.3.3
Cyg
Uhuru衛
X-1の
輝 く も の で は な く,激 Cyg
時間 変動
星 が 観 測 を 始 め て ま も な く,そ
X-1の
れ ま で の 予 想 と違 っ てX線
星 は定 常 的 に
し い 時 間 変 動 を 示 す も の が 多 い こ と が 分 か っ て き た.中
で も,
激 し い 変 動 は 何 か ブ ラ ッ ク ・ホ ー ル に 特 有 な メ カ ニ ズ ム を 秘 め て い る の
か と 思 わ せ る も の が あ っ た.筆
者 は こ の 天 体 に 深 く こ だ わ っ て"Oda's
ら か わ れ た こ と も あ っ た が,結
局 は 実 ら な か っ た.こ
baby"と
か
の辺の こ とをあ るエ ッセーに書
い た こ と が あ る: I enjoyed Cyg
X-1
graduate handed me
Kosei
data
that
which
there
is essentially
15 years
the
dynamic
a "sonagraph"
student me
add
print
producing with
32.3.4 Rapid も は や15年
Doi,
still may
do
noting
power
spectrum
of the
makes
the voice
print
that
he deliberately
similar
later. But
which
not
be
something
to what
weak
at "statistics",
I found
in Cyg
is used
misunderstand:
Bursterと
I was
shuffled.
a periodicity
X-1).
to find QPO I do
not
intensity (so, voice
And
い う不 思 議 な挙 動 を す るX線
that
of A
tricked there
me. too!
this method
(quasi-periodic
cliam
variation of swan!).
I found
He (Let
of voice oscillation)
QPO
earlier.
天体
以 上 も 「は くち ょ う」 「て ん ま 」 「ぎん が 」 が 監 視 を 続 け て い て 十 分 な
デ ー タ が 溜 っ て い る と思 わ れ るの に,い
ま だ にRapid
Bursterの
物 理 的 な正 体 は 明 ら
か で は な い.
以 上,1960年
代 初 期 に 生 ま れ た 若 い分 野,X線
の 星,天
河 系,そ
体,銀
天 文 学 が,そ
の 後 の30年
間 に我 々
し て宇 宙 全 体 に 対 す る視 界 を革 命 的 に 広 げ た 有 様 を漫 画 風 の
図 の 授 け を借 りな が ら解 説 した.一
方,い
わ ば 開 拓 史 の 初 期 の エ ピ ソ ー ドを何 か の ご
参 考 に な れ ば と思 っ て 物 語 と して 紹 介 し た の で あ る. (筆者=お だ ・み の る,東 京大 学 名 誉教授.1923年
生 まれ,1944年
大 阪帝 国 大 学理 学部 卒 業.2001年3月1日
死 去)
参 考 文 献 1)
小 田
2)
F.Dyson:Infinite
稔:日
経 サ イ エ ン ス(1994)No.1,19-X線 in
all
天 文 学 の 展 開 .
Directions(Harper
Row,1985)p.163.鎮
様 化 世 界 ―
生 命 と 技 術
3)
小 田
経 サ イ エ ン ス(1994)Na.1,21.
4)
A.R.Sandage,P.Osmer,R.Giacconi,P.Gorenstein,H.Gursky,F.Waters,H.Bradt,
稔:日
と 政 治 』(み
&
す ず 書 房,1990).引
G.Garmire,B.V.Sreekantan,M.Oda,K.Osawa (1966)316-On 5)
Physics
of
1993) 6)
Solar
Institute
初 出:日
Stellar
identification
of
Sco
F.Fugaku:Astrophys.J.146
X-1.
Coronao,ed.J.F.Linsky
and
S.Serio(Kluwer
Academic,
of
X-ray
Astronomy,ed.F.Makino
and
T.Ohashi(Universal
Acad
Press,1994).
W.H.G.Lewin:The
view
&
and
optical
『多
ー ジ か ら.
pp.59-68.
New Horizon emy
7)
the
目恭 夫 訳
用 は207ペ
of
of
Evolution of Physics,1994)―Three
a biased
observer.
本 物 理 学 会 誌51(1996)557-561.
X-Ray decades
Binaries,AIP of
X-ray
Conf.Proc.308(American astronomy
from
the
point
of
33.
重
力
波 三
尾 典
克
33.1 重 力 波 の 研 究 重 力 波 は,重
力 が 波 動 と し て 伝 播 す る 現 象 で あ る.ア
イ ン シ ュ タ イ ンが1916年
完 成 し た一 般 相 対 性 理 論 に よ り そ の 存 在 が 予 言 さ れ た が,重 た め,そ
れ を検 出す る こ と は不 可 能 と考 えら れ て い た.ま
視 さ れ た こ と も あ っ た.し た.特
に,連
に
力相 互 作 用 が 極 め て 弱 い
た,理
論 的 に も存 在 が 疑 問
か し,こ の 半 世 紀 の 研 究 の 進 展 に は,目 覚 し い も の が あ っ
星 パ ル サ ー の 観 測 か ら そ の 存 在 が 確 認 さ れ た こ との 意 味 は 大 き い.1993
年 に発 見 者 の テ イ ラ ー とハ ル ス が ノー ベ ル物 理 学 賞 を 受 賞 し た の も,も っ と もな こ と で あ ろ う.そ
し て,現 在 は 直 接 観 測 を 目指 し,巨 大 な 検 出 器 が建 設 さ れ て い る.理
論
的 な研 究 で も,数 値 計 算 の 手 法 が 発 展 し完 全 に 相 対 論 的 な シ ミュ レ ー シ ョ ンが 可 能 に な っ た.た
だ,こ
超 え る.そ
こ で,こ
の よ うに 重 力 波 研 究 で の 様 々 な 展 開 を網 羅 す る こ とは 筆 者 の 能 力 を こ で は 地 上 の検 出器 の 開 発 に 焦 点 を絞 っ て 話 を進 め た い. 33.2
ウ ェ ー バ ー
重 力 波 を 実 際 に検 出 し よ う とす る試 み は,米 こ の 検 出器 は,ア い う もの で,重 1.4tで
国 の ウ ェー バ ー に よ っ て 始 め られ た.
ル ミ製 の 円柱 を真 空 中 に 吊 る して そ の 固 有 振 動 モー ドを 観 測 す る と
力 波 が 入射 す る と そ の 振 動 が 励 起 さ れ る の で あ る.最 初 の 装 置(質
共 振 周 波 数1,660Hz)は,メ
所 に設 置 さ れ た.こ
の2つ
た が っ て,も
れ て い る の で,局 所 的 な影 響 に
し,2つ
れ は 重 力 波 に よ る もの で あ る 可 能 性 が 高 い.そ
観 測 し た と発 表 した.し とや,放
か し,そ の 後,解
して,1969年,彼
だ,こ
は重 力 波 を
析 に使 わ れ た ソフ トウエ ア に 誤 りが あ る こ の結果 につ い ては
の 実 験 が 契 機 に な り,世 界 各 地 で重 力 波 を検 出
し よ う とす る 試 み が 始 ま っ た の は事 実 で,こ は 非 常 に 大 き い.こ うが,ほ
の検 出器 が 同 時 に信 号 を出せ
出 さ れ た エ ネ ル ギー が 大 きす ぎ る こ とな ど が 指 摘 さ れ,そ
疑 わ し い と考 え ら れ て い る.た
量
リー ラ ン ド大 学 とア ル ゴ ン ヌ 国 立 研 究 所 の2カ
の検 出器 は約1,000km離
は 相 関 が な い と考 え ら れ る.し ば,そ
・バ ー
の 分 野 の 創 始 者 と し て 彼 の 果 た し た役 割
の よ う に 弾 性 体 の機 械 共 振 を利 用 し た 検 出 器 を 共 振 型 検 出 器 とい
とん ど の装 置 が 現 在 も彼 の 開 発 した 円柱 型 の 検出 器 を 用 い て お り,ウ
ー ・バ ー と呼 ば れ て い る(な
お
ェー バ
,本 稿 を執 筆 中 に 彼 の訃 報 が 届 い た.一 つ の 時 代 が 終
わ っ た とい う こ とで あ ろ うか). ウ ェ ー バ ー ・バ ー は 最 初,常
温 で 観 測 が 行 わ れ た.し
か し,バ ー の 振 動 モ ー ドの 熱
振 動(ブ
ラ ウ ン運 動)が
低 温(4K以
下)に
の よ り3桁 な い.と
も 高 い.た
こ ろ で,こ
め られ た.ま の 際 は,ア
感 度 を制 限 す る た め,次
冷 却 す る方 式 を取 り入 れ,現
た,ヨ
だ,こ
の 世 代 の 検 出 器 で は 振 動 子 全 体 を極 在 の 装 置 の 感 度 は,ウ
ェー バー の も
の よ う な最 新 の 装 置 で も い ま だ に 重 力 波 を観 測 し た 例 は
の 低 温 検 出 器 は,ス
タ ン フ ォ ー ド大 学 の フ ァエ バ ン クに よ っ て 始
ー ロ ッパ で は ロ ー マ 大 学 がCERNで
研 究 を 展 開 して き た が,そ
マ ル デ ィ の リー ダ ー シ ップ に よ る もの が 大 きい .低 温 物 理 や 高 エ ネ ル ギー
物 理 の 大 家 で あ っ た 彼 ら を新 し い分 野 に 引 きず り出 し た 重 力 波 の 研 究 の 魅 力 は,今 変 わ る こ と は な く,多
くの 研 究 者 の 関 心 を集 め て い る. 33.3
バ ー の 実 験 が 進 行 して い る時 ,ま 案 がMITの
バ ー か ら干 渉 計 へ っ た く異 な る 原理 で 重 力 波 を捕 ら え よ う とす る 提
ワ イ ス に よ って 行 わ れ た.レ ー ザ ー 干 渉 計 を 用 い て 重 力 波 に よ っ て 生 じ
る 空 間 の 変 化 を観 測 し よ う とす る も の で あ る.こ せ ず,干
の方 法 で は,特 定 の 機 械 共 振 を利 用
渉 計 の 鏡 を振 り子 の よ うに 吊 るす こ とで 自 由 空 間 に 漂 わ せ,重
動 を 測 る た め の 基 準 点 とす る もの で あ る.そ る.こ
も
の 方 法 の 最 大 の 利 点 は,周
う こ とで あ る.こ
れ は,非
の た め,自
力波 に よる変
由 質 量 型 検 出 器 と も呼 ば れ
波 数 帯 域 が 広 く入 射 重 力 波 の 波 形 を観 測 で き る とい
常 に 重 要 な 点 で あ っ た.も
し,波 形 が 観 測 で きれ ば,そ
の
波 形 か ら重 力 波 を発 生 さ せ た 現 象 の 詳 しい 情 報 を 引 き 出 す こ とが で き る か ら で あ る. も う ひ とつ の 利 点 は,干
渉 計 の サ イ ズ を大 き くす る こ と で感 度 を上 げ る こ とが で き る
こ と で あ る. 干 渉 計 の 実 験 は 実 験 室 内 の小 型 干 渉 計 か ら始 ま り,1980年 呼 ば れ る 数10mの 到 達 し た.現
代 に はプ ロ トタイ プ と
大 き さの 干 渉 計 に 移 行 し,先 行 し て い た 共 振 型 に 匹 敵 す る 感 度 に
在,巨
大 な 干 渉 計 を建 設 す る こ と で,宇 宙 の 果 て まで 見 渡 す こ と の で き
る検 出 器 を実 現 し よ う と して い る.
33.4 日本 で の 実 験 的 研 究 は,東 に 始 め ち れ た.平
日本 の 研 究 の 進 展
大 理 学 部 物 理 の 平 川 に よ っ て,ウ
ェー バ ー の 報 告 の 直 後
川 は 外 国 の 研 究 グ ル ー プ が み な ウ ェ ー バ ー の 方 式 を採 用 した こ と と
は 異 な り,別 の 形 状 の 共 振 型 検 出器 を開 発 し,よ
り低 周 波 数 の 重 力 波 を 目標 に し た.
特 に,い つ 起 こ る か 不 明 な 天体 現 象 を相 手 に せ ず,常 に 存 在 す る と考 え られ る パ ル サ ー ,特 に か に(Crab)パ ル サ ー か らの 連 続 重 力 波 を 狙 っ た の で あ る.パ ル サ ー の 回 転 は 光 学 や 電 波 の 観 測 で 非 常 に 正 確 に観 測 さ れ て お り,そ の 情 報 を 用 い る こ とで 感 度 を上 げ る こ とが 可 能 で あ っ た.そ
して,Crab
検 出 器 を用
い た 実 験 か らCrab
Ⅳ(液
た.残
に パ ル サ ー の 重 力 波 を検 出 す る に は 感 度 不 足 で あ っ た が,後
念 な が ら,か
体 ヘ リウ ム 温 度,1
Ⅰと呼 ば れ る常 温400kgの ,200kg)に
い た る一 連 の研 究 が 行 わ れ に高
速 回 転 の パ ル サ ー が 数 多 く発 見 さ れ,パ
ル サー か らの重 力波検 出 の可能 性が見 直 され
て い る. 干 渉 計 に 関 して は,1984年 を作 り始 め た.こ
こ ろ か ら,宇 宙 科 学 研 究 所 の 河 島 が 長 さ10mの
の 干 渉 計 は,マ
ッ ク ス プ ラ ン ク研 究 所 の30m干
計 さ れ た が 改 良 を繰 り返 し,1988年 検 出 器 は 当 時 世 界 に4台
に は,世
干渉 計
渉計 をモデ ル に設
界 的 な レベ ル の 感 度 に 到 達 し た.こ
の
し か な い 干 渉 計 の ひ とつ と し て 活 躍 し,現 在 の研 究 の 基 礎 を
固 め る上 で 大 き な役 割 を果 た した. こ の よ う な 流 れ の な か で,平 きた.名
古 屋 大 学 学 長(当
の 判 断 の も と,重
川 は 病 に 倒 れ,研
時)の
早 川 幸 男 が,重
究 グ ル ー プ の 構 成 に大 き な 変 化 が 起 力 波 検 出 に は 干 渉 計 を用 い るべ き と
力 波 の 研 究 グ ル ー プ の 再 編 を行 っ た の で あ る.そ
し て,1992年,
基 研 の 中村 卓 史 を研 究 代 表 者 と し文 部 省 科 学 研 究 費 の 重 点 領 域 研 究 「重 力 波 天 文 学 」 が ス タ ー ト し,本 格 的 な 干 渉 計 建 設 の 歩 み が 始 ま っ た.そ が 終 了 す る こ ろ に は,い
して,重
点 領 域 の研 究 期 間
くつ か の プ ロ トタ イ プ 干 渉 計 が 完 成 し,特
に干渉 計の運 転 に
必 要 な 制 御 技 術 に 関 して,世 な 干 渉 計 の 建 設 が,や
界 の トップ レベ ル に 到 達 し た.そ
の 成 果 を も とに,新
は り科 研 費 の 創 成 的 基 礎 研 究 の テ ー マ と して 採 択 さ れ,国
文 台 の 古 在 由 秀 を 代 表 と し て300mの
干 渉 計 の 建 設 が 始 ま っ た.こ
TAMAと
に 建 設 を開 始 し,現
い う名 前 が 付 け られ,1994年
在,ほ
的 な 観 測 を 繰 り返 し な が ら,感 度 の 向 上 に 努 め て い る.2000年 カ リフ ォ ル ニ ア 工 科 大 の40m干 高 感 度 の検 出 器 と な っ た.ま
た
立天
の干渉計 には
ぼ 完 成 して,短
の 夏 に は,こ
期
れ まで
渉 計 が 持 っ て い た 感 度 の 世 界 記 録 を超 え,現 在,最 た,2001年8月
か ら9月
に か け て は1000時
間 を越 え る
観 測 を世 界 に 先 が け て 実 施 した.
33.5 重 力 波 天 文 台 世 界 に 目 を 移 せ ば,す され て い る.米 計 画 で,2003年 ば,重
で に 米 国 と ヨー ロ ッパ でTAMAを
国 のLIGOは
東 海 岸 と西 海 岸 に4kmの
の 観 測 開 始 を 目標 に 着 実 に建 設 が 進 め ら れ て い る.こ
力 波 検 出 の 実 現 性 は か な り高 い もの に な る だ ろ う.ま た,ヨ
ン ス と イ タ リ ア が 共 同 でVIRGOと る.こ
超 え る大 型 検 出器 が 建 設 干 渉 計 を2台 建 設 す る と い う
い う検 出 器 を イ タ リア の ピ サ の 近 くに 作 っ て い
ち ら の 方 は 当初 の 計 画 か ら遅 れ 気 味 で あ る が,高
い 光 学 技 術 を蓄 積 して い る グ
ル ー プ で あ り,イ ン フ ラ や 真 空 装 置 の 建 設 が 完 了 す れ ば,そ が 高 い.ま る.こ
た,イ
れ が完 成 す れ
ー ロ ッパ で は フ ラ
ギ リス と ドイ ツ が 共 同 でGEO
600
の後 は順調 に進 む可能性
(600m)と
い う装 置 を作 っ て い
の 研 究 の 母 体 は干 渉 計 の 研 究 を リー ドし て き た マ ッ クス プ ラ ン ク研 究 所 と グ ラ
ス ゴー 大 学 の 研 究 グ ル ー プ で,2001年 21世 紀 に は,世
の 観 測 開 始 を 目標 に 建 設 を 続 け て い る.
界 各 地 で 大 型 干 渉 計 が 稼 動 し,早 い 時 期 に重 力 波 が 検 出 さ れ る 日
が くる と思 わ れ る.日 本 の 研 究 は,現
時 点 で はTAMAが
順 調 に 動 き始 め て,世
界を
リー ドす る 形 とな っ て い るが,理
論 的 な 予 測 か らTAMAで
性 は か な り低 い と い わ ざ る を得 な い.次 め に低 温 技 術 を 導 入 し,さ
が 必 要 で あ る.そ
重 力 波 を観 測 で き る 可 能 こ で,熱
揺 ら ぎ を抑 え る た
らに 地 下 深 くの 静 粛 な 環 境 に 設 置 す る こ とで,感
させ 宇 宙 の 果 て か らの 重 力 波 で も検 出 で き る よ うな 検 出 器(LCGT)の 礎 研 究 を 開 始 した.こ
れ ら の研 究 が 実 を結 び,重
度 を 向上
提案 とその 基
力波 天文 学の時 代 がや って くるこ と
を強 く期 待 し て い る.
後 記
紙 面 の 都 合 で,参 考 文 献 を挙 げ る こ とが で きな か っ た.詳
等 に 興 味 を お 持 ちの 方 は,下 中村 卓 史,三
尾 典 克,大
し い 内 容,文
献
記 の本 を参 照 くだ さ い.
橋 正 健 編 著 『重 力 波 を と ら え る ― 存 在 の 証 明 か ら検 出 へ 』
(京都 大 学 学 術 出 版 会,1998年) (筆者=み お ・の りか つ,東 京 大 学 大 学 院 新 領 域 創 成 科 学 研 究科 助 教 授.1959年 1982年 東 京大 学理 学 部 卒 業)
生 まれ,
事
項
索
引
和 文 索 引 ア
イ ン ビー ム核 分 光 学 280, 281, 行
327
アイソス ピン
宇宙論
イ ン フ レー シ ョン 392, 398
― ・カ レ ン ト 240 ― ―
空 間 80 保 存 104
ア イ ソバ リ ッ ク ・アナ ロ グ状 態 303
―
の 励 起 348
―
の パ ラ メー タ 394, 399
ウ イー ラ-ド ゥ イ ッ ト方 程 式
埋 め こ まれ た 固 有 値 36 ウ ル カ 過 程 403
397 ウ ェー バ ー ・バ ー 427
エ キ ゾ チ ッ ク核 314
宇宙 ―
液 滴模 型 に なぜ 反 粒 子 が 少 な い か
原 子 核 の― 283, 318 エ ネ ル ギ ー 増 倍 率 373, 374
193, 205
ア イ ソマ ー 276, 279 ア イ ソマ ー 準 位 264
― ア イ ン シュ タ イ ン の重 力 方程 式 ― ― 243 ― 明 野 の 空 気 シ ャ ワー 観 測 158 あ す か 420 ア ナ ロ グ共 鳴 262
エ マ ル シ ョ ン ・チ ェ ンバ ー
の創 生 392 の大 構 造 393
149, 151, 153, 154, 156 遠 距離 型ポ テ ン シ ャル 34
の波 動 関 数 397 の膨 張 392
振動 す る―
35
遠 距離 相 関
静 的― 390 膨 張― 390
ア ナ ロ グ状 態 263, 265
宇 宙科 学 研 究 所 419
超 光 速 の― 5 エ ン タ ン グル ド状 態 46, 48, 53
ア ノー マ リー 163
宇 宙 空間 科 学 403
エ ン トロ ピー 43
α ク ラス ター 290
宇 宙項 412
(α,p)反 応 261
宇 宙航 空研 究 所 154, 419
大 型 電 離 箱 145
α模 型 276
宇宙線
大 型 ハ ドロ ン計 画 185, 218, 268, 273
泡 箱 実 験 174 泡 箱 写 真 解 析 施 設 181
宇 宙物 理 学 147
― ―
強 度 の 連 続 観 測 145 中 の 反 陽 子 158
オー ク リッ ジ国 立 研 究 所 219 オブ ザ ー バ ブ ル 29
暗 黒 物 質 393, 398, 404
―
の加 速 理 論 147
ア ンモ ニ ア 分 子 21 ― の 形 22
―
の 強 度 変 化 148
オー プ ン ・ダ イバ ー ター 370
の 超新 星 起 源 147 の超 新 星 起 源 説 159 ,
オ メガ 計 画 218
― ―
403 ― の 発 見 145
イ オ ン ・リニ ア ッ ク 266 池 田ダ イア グ ラ ム 297, 315
原 子 核 乾 板 に よ る―
異常磁気モー メン 電子の― 異 性 核 279
音波の理論 Blochの の研究
宇 宙 線研 究 147 ― の 国 際 協 力 152
―
― カ
148
68
位 相安 定 性 の 原 理 169 1億 次 元 の 行 列 の 対 角 化 313
Ω-の 発 見 235 68 行
階 層 90 回転 核 300
の 将 来 計 画 151
回転 状 態 280
1粒 子 軌 道
宇 宙 線 研 究 所 154
回転 スペ ク トル 322
原子核中の― 315 一 般 座 標 変 換 166
宇 宙 線 望 遠 鏡 157 宇 宙 定 数 394
カ イ ラ リテ ィ 239, 241 カ イ ラル 異 常 95
イ ラ ス ト準 位 264
宇 宙 の 初 期 87
カ イ ラル ・ゲー ジ理 論 166
イ ラス ト状 態 279 イ ンス タ ン トン ・モ デ ル 338
宇 宙 背 景 放 射 391, 407 ― の 揺 ら ぎ 394
カ イ ラ ル対 称 性 241, 245, 336
―
の 自発 的 破 れ 358
カ イ ラル 変 換 241
―
の飽 和 性 318
カ ウ ン ター 実 験 174
―
の 領域 301
『科 学 の社 会 的機 能 』 70
核 力 ポ テ ンシ ャ ル
可 逆 45
遠 方 の ― 81 武 谷-町 田-大 沼 ―
核 エ ネ ル ギー 112 殻構 造 原 子 核 の ―
276, 284, 311,
312, 320, 345 核 構 造 論 317 核 構 造RPA
324
造 360 ― の 内 部 構 造 176 ,182 核 子移 行 反 応 267, 268
Bohmの ― ―
核 子-ハ イペ ロ ン有 効 相 互 作 用
核 内核 子 軌 道 266 核 内 カス ケ ー ド模 型 341 核 半 径 269
中 間 エ ネ ル ギー ―
346
核 表 面 振 動 263
―
―
懇 談 会 365
―
三 重 積 384
― 反 応 132 ミュ ー オ ン触 媒 ―
技術開発 加 速 器 ・測 定 器 に 関 す る― 172 基 本解 37
9重 項 235
荷 電 ス ピ ン空 間 → ア イ ソ ス ピ ン空間
強 結 合理 論 61, 233
果 415
球 形 領域 核 319 キュ ー ピ ッ ト 48
カニ星 雲 407 か にパ ル サ ー 428
強 収 束 の 原 理 106
カ ノ ニ カ ル 集 団 126
鏡 像 核 268, 276
カ ビ ボ 回 転 241
京都大学基礎物理学研究所
神 岡 271
340, 401 共 鳴 234
― で の 実 験 156 カ ラー 249 カ ラ-荷
252
共 振 型 重 力 波 検 出 器 347
共 鳴 捜 し 104 共 鳴状 態 96, 104, 113
カ ラー 閉 じ込 め 問 題 166 絡 み 合 っ た状 態 2, 48
行列の対角化 1億 次 元 の ―
カル ツ ア-ク ラ イ ン宇 宙 397
行 列模 型 123
カ レ ン ト代数 95
極 限 吸収 原 理 32, 34
環境
局 所 ゲ ー ジ変 換 93 との 相 互 作 用 22
干渉 中性 子 の ―
323 ― の 近 距 離 作 用 318
気球 に よ る実 験 145, 151, 154
基 本 的 な 力 118
11
電 子 線 の ― 9 C60分 子 の ― 14
核 力 75, 78, 263, 275, 311, 317 ― とス ピ ン軌 道 結 合 力
γ線 天 文 学 147 ガ ンマ 線 バ ー ス ト 422
荷 電 交 換 反 応 348
―
223
観 測 的宇 宙 論 393
究 極 の 法 則 90
の 基 礎 320
322
逆Compton効
264
核 融合 403 ― 科 学 研 究 所 376
原 子核 の―
荷 電 カ レ ン ト → ア イソ ス ピ ン ・カ レ ン ト
核 物質 ― の 結 合 エ ネ ル ギー 302
核 分 裂 227, 319 殻 模 型 276, 311, 312, 320, 345
状 態 48 の 原理 46 ,53
高 密 度― 359 核 分 光 学 264, 275, 319, 345
慣 性 閉 じ込 め 379
活動 的 銀 河 中 心 核 407
核 反応 ― 時 間 264
高 ス ピ ン―
― 7, 10
184
学 術 審 議 会 171, 172
慣 性核 融合 379
観 測 44
加 速 器 79 ―将 米 計 画 国 際 委 員 会
学 術 会 議 171 ― の 勧 告 261 ,262
― の破 壊 22, 23 関 数解 析 29
慣 性 能率 342
ガ ス球 の 重 力平 衡 404
が 起 こ る場 所
304
の形成過程 9
重 ね 合 わせ 229
核 子 対 相 関 263 核 子 の 励 起 状 態 82
―
局 所 的 な― 6 Bellの ― 7
核 子-核子 衝 突
301 302
隠れ た変 数 5
核 子 78 ― の ク ォー ク ・グ ル オ ン構
核 内 で ― 341
301
301, 302
Woods-Saxon型
―
干 渉効 果 50 干 渉性
浜 田-Johnston― Argonne V 14― Reid―
He原
子の―
11
I2分 子 の― 12 Na原 子 の ― 11 干 渉 計 型 重 力 波 検 出 器 428, 429 干渉縞
313
局 所 場 82 巨星 405 巨大科 学 187 巨大 共 鳴 265, 267, 271,289, 303, 336 双 極 子 ―
345
光 核 反 応 に お け る― 四 極 子― 345 Gamow-Teller型 346 ぎん が 419
の―
319
激光ⅩⅡ 号 379 ゲー ジ ―化 242
銀 河 団 396 銀 河 分 布 の 大 規 模 構 造 412 近 接 連 星Ⅹ
線 源 409
空 間 反 転 対 称 性 の 破 れ 95 空 気 シ ャ ワ ー 146, 148,
150,
151, 152, 153 明 野 の ―
観 測
157
―
固 定 166 , 245, 248
― ―
対 称 性 161, 246 場 114 , 118, 165
― ―
ボ ソ ン 242, 244, 245 理 論 85 ,93, 94, 97, 165 結合 定 数
ケ ル ビ ン-ヘ ル ム ホ ル ツ不 安 定
235 代 240
―
の 質 量 108, 249
非 臨 界―
―
の 真 空 偏 極 360
臨 界 ―
―
―
115
検 索 ア ル ゴ リズム 46
―
模 型 235
―
レベ ル の ダ イナ ミ ッ クス
の 創 設 172 の 超 伝 導 スペ ク トロ メー
― の 偏 極 重 陽子 標 的 174
115
研 究 者 組 織 の 民 主 化 71
の 閉 じ 込 め 86, 97, 105, 115, 117
―
の 陽 子 シ ン ク ロ トロ ン
172
―
の 陽 子 シ ン ク ロ トロ ンの
原 子 核 225 ― の 殻 構 造 276 , 284, 311, 312, 320, 345 ― の 結 合 エ ネ ル ギー 283
高 エ ネ ル ギー 物 理 学 国 際会 議 181
マ 245, 270, 272, 338, 351,
―
の 中 性 子 分 布 355
光 学 ポ テ ン シ ャ ル 265, 340
359
― ―
の 半 径 283 , 355 の 魔 法 数 356
― の 虚 数 部 341 光 学模 型 340,342
― ―
の 密 度 分 布 355 の 陽 子 分 布 355
交 叉 対 称 性 233
, 301
84 ク ォ ー ク ・ グ ル ー オ ン ・プ ラ ズ
クォ ー ク構 造 核 内 核 子 の ―
337
高 温 度 ・高 密 度 の 核 子 系 の ―
原 子 核研 究 所 147, 150, 261
337 靴 ひ も 理 論 234, 235
原子 核 研 究 将 来 計 画 171
ク ーパー
建 設 173
1962年 ―
230
光 子 78
―-光
子 の衝 突 断 面積
180
原子 核 実 験 188
格 子 ゲ ー ジ理 論 107
ク ラ ス タ ー 構 造 262, 315
原子 核 特 別 委 員 会 171
高 周 波 加 速 空 洞 177, 197
ク ラ ス タ ー 模 型 296, 298, 304
検 出 器 44
高 出 力 ク ラ イ ス トロ ン 177
グ ラ ス マ ン 数 126
原 子 力研 究 所 263 原 子 力 平 和 利 用 国 際 会 議 365
格 子 量 子 色 力 学 126
対 245
ク ラ ブ 衝 突 方 式 199 ク ラ ン ク ト殻 模 型 305
く り こ み 可 能 93, 99, 106,
164,
248 く り こ み 理 論 68, 91, 103, グ ル ー オ ン 85, 126,
―
110
― の 起 源 404, 408 元 素 合 成 270 ― 過 程 357 宇 宙 初 期 で の―
166, 180,
238, 249 ― 交 換 力 335
269
弦 理 論 84, 100, 114, 123 ― に お け る非 摂 動 効 果
116 ― の真 空 116
―
の 発 見 182
グ レ ー トウ オ ー ル 396
原 子 炉 227, 263 元素
く り こ み 119
ター 174
― に お け る高 周 波 加 速 空 洞 177 ― の 大 型 超 伝 導 電磁 石
弦
高 エ ネ ル ギー 物 理 学 研 究 所 154, 170, 171, 268
174
ゲ ル マ ン-大 久 保 の質 量 公 式
261 の3世
高 エ ネ ル ギー 同好 会 170
性 385
335 ― の 核 の 構 成 へ の 関 与
―
104
結 合 バ ンチ 不 安 定 性 186, 197
105, 125, 166, 232, 249, 252,
223, 273 高 エ ネ ル ギー 加 速 器 国 際 会 議 181
π-核子 相 互 作 用 の―
58
ク ォ ー ク 75, 81, 82, 85, 104,
γ線 天 体 157 物 理 103
高 エ ネ ル ギー 加 速 器 研 究機 構
空 孔 ア ナ ロ グ 状 態 268 空 洞 輻 射
― ―
の 非 摂 動 的 定 式 化 116
高 ス ピン ― 異 性 核 270
―
―
・イ ラ ス ト分 光 学 327 の 核 物 理 281
拘 束 系 の 量 子 化 法 161 光 電 子 増 倍 管 131 光 電 子 不安 定 性 200 「国 際 天 文 学 連 合 サ ー キ ュ ラー 」 133 国 立 大 学 共 同 利 用 機 関 172 国 立 大 学 研 究 所 協 議 会 171 コス モ トロ ン 148 古典 軌 道 24
計 算 機 科 学 42 計 算 物 理 107, 405
高 圧 水 素 霧 箱 148
経 路 積 分 114, 126, 165
高 エ ネ ル ギ ー 79
小 林-益 川
―
行 列 241
―
の 行 列 モ デ ル 155
Σ ハ イパ ー 核 272
―
の3世
自 己 エ ネ ル ギ ー 66
―
代 模 型 76
の 理 論 185, 192, 203, 205, 208
―
―
の 量 子 論 的 ゆ ら ぎ 118
自 己共 役 性 ハ ミル トニ ア ン の ―
―
は く りこみ 不 可 能 118
29
固 有 関 数 展 開 30, 32 ゴ ー ル ドス トー ン の定 理 245
自 己無 撞 着 集 団座 標 法 299 4重 極(相 関)力 323
混 合 状 態 22
自然 の 階 層構 造 325 シー ソー 機 構 209, 217, 231,
混 合 場 の 理 論 71
短 距 離 に お け る― 120 2次 元 時 空の ― 168 重 力 崩 壊 407, 409 縮 退Fermiガ
253 行
ス模 型 341
主 系 列 405 シュ レー デ ィ ン ガー 作 用 素 31
実在性 2
サ イ ク ロ トロ ン 265, 276
質 量 概 念 247
準位密度 原 子 核 の―
可 変 エ ネ ル ギー ―
質 量 公 式 73, 105
準 古典 近 似 37
シニ オ リテ ィ形 式 294
準 重 陽 子相 関 266 純 粋 状 態 22
理 研 ―
263
266
リン グ ― 270 AVF― 265, 266, 267 FF/FM― FM― SF―
271
準 星(ク ェー サ ー) 407 準 粒 子 323
清 水 トンネ ル で の地 下 実 験
状 態 空 間 162
145, 146 272
73, 234, 235
作 用 素 論 33 作用量子 の 発 見 58
衝 突 型加 速 器 106
弱 カ レ ン ト 239 重 イ オ ン 354 ― 衝 突 109 ,112 ―衝 突 器 272
鳴 233
―
非 対 称 エ ネ ル ギー の― 186, 193 情 報 エ ン トロ ピー 43 初期 宇 宙論 253 ジ ョセフ ソ ン ・ジャ ン クシ ョ ン
反 応 266, 327
相 対 論 的 高 エ ネ ル ギ ー―
3種 類 の ニ ュ ー ト リノ 240 3体 問題 35
10重 項 235
3体 力 312 三 段 階 論 69, 71
重 心 の 運 動 11
散 乱 作 用 素 31 散 乱 状 態 31
20
351 ―物 理 327
3世 代 模 型 69, 252
ジ ラ ー ド ・エ ン ジン 44 深 海実 験 155 真 空 246
集 束 電 磁 石 177
― 期 待 値 62, 248 ― の安 定性 162
集 団 運 動 345
―
―
―
散 乱 理 論 28
と独 立粒 子 運 動 との 無撞
紫 外 発 散 118 時 間 を含 む 方 法 32 時 間依 存Hartree-FockBogoliubov
(TDHFB)理
論 328
時 間 反 転 の 不 変 性 106
― ―
原 子 核 に お け る― 327
集 団座 標 322 集 団振 動 336
の分 極 120 の量 子 ゆ ら ぎ 411
シ ン ク ロ トロ ン 275, 276
模 型 280 励起 267
大 振 幅―
時 間 反 転 非 保 存 271
― の相 転 移 253, 395
の微 視 的 理 論 323
― の 励起 343, 347, 348 ― 部分 空 間 327
― ―
の エ ネ ル ギー 394, 398
減 衰 して い く ― 399
着 性 328
ジ ェ ッ ト 105, 153, 238, 251
264
準 ス ピ ン形 式 294
自発 的 対 称 性 の 破 れ 106, 244
262
坂 田 モ デ ル69,
3-3共
を含 むSchrodinger作 用 素 37
263
サ イ ク ロ トロ ンSSC
―
磁場 ―
261
RCNP―
の発 散 59
自 己共 役 作 用 素 29
― モ デ ル の 正 当性 253 コペ ン ハ ー ゲ ン解 釈 9
サ
重 力 場 114 ― の 正 準 量 子 論 167 ,408 ― の 量 子 論 128
陽 子― 268, 269, 270 シ ン ク ロ トロ ン放 射 403, 415 319
伸 張解 析 性 36 シ ン チ レー ター 170
振 動 核 280, 299, 300 ― 準 位 264
次 期 計 画 検 討 小 委 員 会 185 磁 気 トラ ップ 17
集 団模 型 の基 礎 320
芯 の偏 極 312, 289, 302
自 由場 164
深 部 非 弾 性 散 乱 125, 176, 238,
磁 気 モー メ ン ト
重粒 子 族 78
原 子核 の ―
265
磁 気 モ ノポ ー ル 178 時 空 の次 元 100
重 力子 114 ― の質 量 167 重 力波 413
248, 358 新 粒 子(ス トレ ン ジ粒 子) 234 数 学 的 厳 密 性 38
数 学 的 散 乱 理 論 28 数理物理 量 子 力 学 の― ス ク イ ド 20
28
漸 近解 析 31, 37 漸 近 的 完 全 性 163
―
漸 近 的 自由 性 85, 97, 125, 250,
410 ― 民 主 主 義 234
358 ― の 実 験 的 証 明 250
ス ケ ー リン グ則 96 す だ れ コ リメー タ ー 419 ス テ ラ レー ター 366, 375 ス ト リ ッ ピン グ 262
素 粒 子 物 理 学 国際 協 力 施 設
素 粒 子 論 86
線 形核 276, 297
「素粒 子 論研 究 」 403 ソ ル ヴ ェー 会 議 226
ス トレ ン ジ ネ ス 72, 234
ドリ フ トチ ュ ー ブ 型 ― 223
― の保 存 則 104
素 励 起 モー ド 原 子 核 の ―
線 形衝 突 加 速 器 185, 186, 187
253
170 ス ー パ ー コ ン ピュ ー タ ー 127
―
タ
を もつ 分 子 の 寿 命 21
超対称性理論
第一 原理 計 算 360
専 用並 列 計 算 機 127
大 気 ニ ュ ー ト リノ 140, 142 大 強 度 陽 子 加 速 器 計 画 218,
相関 遠 距 離 ―
315 ― ・ア イ ソ ス ピン分 極 効 果
3
相 互作 用 ― す る ボ ソ ン模 型 299 , 327 の 構 造 72
―
―
核 の ― 343 ス ペ ク トル分 解 29, 30
― ハ ミル トニ ア ン密 度 164
―
ス リッ ト
― ラ グ ラ ン ジア ン密 度 164
267 ― 軌 道 力 284 , 311 ― ・パ リテ ィ の 決 定
ど ち ら の―
16
―
273 の 完 成 予 想 図 221
―
の 建 設計 画 224
対 称 性 161, 292 ― の 自発 的 破 れ 74, 94, 163, 244
の 分 化 253
大 統 一 エ ネ ル ギー 253 大 統 一 理 論(GUT)98, 99, 120, 131, 143, 156, 253, 395, 410, 524
表 示 62
太陽Ⅹ 線 天文 衛 星 420 太陽 系の 起 源 406
鋭 い共 鳴
相 対論 的 重 イ オ ン加 速 器RHIC
太 陽芯 部 132
熱 中性 子 反応 に お け る―
太 陽 ニ ュー ト リ ノ 132, 134, 270, 357, 413
318
337, 338, 359
相 対論 的 重 イ オ ン衝 突 359 相 対論 的 場 の 量 子 論 93, 110
星 間 物 質 409 制 御NOT
真 の―
52
相 対論 的 不 変 性 60
― の確 認 217 τ レプ トン 240
双 対 共 鳴 モデ ル 100
生 命 科 学 175
双 対 ギ ン ズ ブル グ-ラ ン ダ ウ理 双 対性 234
世 代 240
相 転移 原 子 核 に お け る―
69, 182, 252
接 続 243
GCDに
摂動級数
相 補性 3
― ―
漸 近 展 開 と して の 31 の 収 束 31
お ける―
武谷 三 男の 三 段 階 論 69 多 時 間理 論 58, 60 327 359
束 縛状 態 31, 86 素 研 準備 調 査 委 員 会 171
摂 動 計 算 106
素 粒子
摂 動 論 125
― ―
宇 宙 論 410 研 究 所 171
セ レ ン デ ィ ピ テ ィ ー 415
― ―
実 験 チー ム 171 の 生 成 消 滅 232
遷移 領 域 核 319
―
の 世 代 182
連 続 スペ ク トル の―
高橋-ワ ー ドの 恒 等 式 93 タ キ オ ン 115
論 338
積 分 ル ミ ノシ テ ィ 203 素 粒 子 の―
タ ウ ニ ュー ト リ ノ 136, 143, 158
110
正 準 交 換 関 係 161 赤 外 発 散 62, 65
行
前 平衡 多段 階 過 程 350
ス ー パ ー シ ン メ トリー理 論 → ス ピ ン 48, 225 ― ・ア イ ソ ス ピン 結 合 力
324
存在 様 式(構 造)の 物 理 331
旋 光性
ス パ ー ク ・チ ェ ン バ ー 152,
182
漸 近場 163 線 型加 速 器
ス ー パ ー カ ミオ カ ン デ 158,
の 標 準 理 論 232 ,252,
33
セ パ ラ ト リ ッ クス 370
多重 発 生 ― の クラ ス タ ー 的 振 舞 い 153
多体 問題 322 ― の定 常 理 論 35 ― の波 動 作 用素 35 磁 場 中 の― AC-Stark場
37 中の―
37
多体 力 312 単 極-対 相 互 作 用 293, 295, 299, 305
タ ンデ ム 263, 266, 268
FNALに KEKに
断 熱 近 似 328 断 熱 定 理 53
209
⊿S=⊿Q則
209
電 気 四重 極 能率 289
254, 397
チ ェ レ ン コ フ ・カ ウ ン ター
―
コ ライ ダ ー 251
超 重 元 素 270, 284
―
シャ ワ ー 146
151 地 下 宇 宙 線 実 験 145, 148, 153
力 の 統 一 理 論 392
155, 157 チ ャ カル タヤ 山 上 の 共 同 研 究
Ⅰ型―
133
Ⅱ型―
133, 134
217 ―SN
地 平 線 問 題 391 チ ベ ッ トの 高 山 で の 宇 宙 線 実 験
原子 核 乾 板 の 中 で の― 149 ― シ ン ク ロ トロ ン 262
超 新 星 爆 発 225 ― か らの ニ ュ ー ト リノ
力 の 分 岐 発 展 図 411 地 球 の 内 部 408
電 子 78
超 高 エ ネ ル ギー 現 象 150 超新星
地 下 水 の 放 射 化 212
1987 A
133 , 156
超 対 称 性 99, 107, 111, 162, 254
超 対 称U(n)
153
122
原 子 核 研 究 所 の― 171
169,
原 子 核 研 究 所 の― 170
の建 設
― ニ ュ ー ト リノ 136, 141, 228
― 理 論 128 超 対 称 粒 子 180
348 離 散 化 運 動 ―
超伝導 ― 加 速 空 洞 177 , 178,182,
348
チ ャネ ル 結 合 理 論 349 チ ャー ム 235, 410
190 ― 技 術 192
― の 質 量 270 の磁 気 モ ー メ ン ト 109,
―
― ―
― リニ ア ッ ク(東 北 大) 263
111, 232
超 多重 項 293, 303
組 替 え過 程 に 対 す る―
74, 105,
超 多時 間 理 論 62
チ ャネ ル 結 合 性
240
デ ル タ粒 子 335
超 弦 理 論 84, 86, 100, 121, 234,
蛋 白質 ― の 機 能 222
の 質 量 247 陽電子衝突型加速器
190
―
状 態 263
電 磁 カ ス ケ ー ド 131
―
相 245, 252
電 磁 相 互 作 用 99, 243, 246
チ ャー モ ニ ウ ム 236
―
ソ レ ノイ ド 186
中 間 結 合 の 理 論 62, 233
― 単 一 セ ル単 一 モー ド空 洞 197 ― 電磁 石 176
電 弱 相 互 作 用 の 統一 86, 180, 248
お け る― お け る―
―
粒 子 の 発 見 155
中間子 ― 族 78 ― の 多重 発 生 149 , 151
― ―
の 光 発 生 171 論 226 ,233
電 弱相 互 作 用 の 理 論 → Weinberg-Salamの
超 ひ も理 論 → 超 弦理 論
テ ン ソ ル相 関 303
超流動性
テ ン ソ ル カ 288, 312
原 子 核 の ―
336
天体 核 反 応 270
中 性 カ レ ン ト 247, 248, 410 中 性 子 11, 78 ― 科 学 研 究 計 画 219
直 接 過 程 278, 343 直 接 反 応 262
天文 衛 星 419
貯 蔵 型 加 速 器 175
電 離 層 委 員 会 148
―
過 剰 核 263 , 269, 270
―
散 乱 222
― ―
ス キ ン 355 星 359 ,408, 417
―
― ―
ド リッ プ 線 356 の 非 弾 性 散 乱 343 ハ ロー 269 , 298, 314, 356
― 陽 子 散 乱 79 パ ル ス ― 源 218
中性 π 中 間 子 79 中性 微 子 → ニ ュ ー ト リ ノ
離 散 状 態 へ の ―
同位 体 組 成 の 観 測 156 統 一 理 論 114, 116, 117
強 い 相 互 作 用 79, 86, 99, 250
射 影 演 算 子 に よ る―
350
等価 原理 243 定 在 波 リニ ア ッ ク 177
統 計 性 238
定 常 的 方 法 32 デ ィ ラ ッ ク方 程 式 79
統 計理 論
適用限界
同 時計 数 回 路 280
ブ ル ッ クナ ー 理 論 の―
動 的重 力収 縮 405 東洋 思 想 101
核 反 応 に お け る―
323 デ コ ヒー レ ン ス 52
CERNに
⊿I=1/2則
209
電 波 天 文 学 403
極 力模 型 324
中性 ボ ゾ ン 241 長 基 線 ニ ュ ー ト リ ノ振 動 実 験 お け る―
天体 核 物 理 350, 357 343
対 相 関 力 323 対 相 関 力+4重
理論
デ ス ラプ シ ョン 386 240
トカ マ ク 368, 385, 387
―
計 画 366
特 異 点定 理 391
318
ニ ュ ー トリ ノ 78, 107, 108,
独立粒子運動 ― と集 団 運 動 の 自 己無 撞 着 性 328 集 団 運 動 座 標 系 で の ― 330
― ―
独 立 粒 子模 型 318, 319
黒 体 放 射 404 振 動 107 ,136, 138, 140,
― 発散
253
― とエ ネ ル ギー 分 布
192, 237 トポ ロ ジ ー 338
よ る観
朝 永 ゼ ミ 64 程 式 64
トラ ン ジ シ ョ ン ・エ ネ ル ギー 223
―
―
突型加速器
176, 177, 180, 181, 190, 192 ― の エ ネ ル ギー 領 域 180
ド リ ップ ラ イ ン 272 トロ イ ダ ル ・コ イ ル 367 トン ネ ル 効 果 37 ナ
行
―-反 ニ ュ ー ト リノの 振 動
228 ― ・フ ァ ク トリー 217 超 新 星 爆 発 か らの ― 105
人 間 原理 397
ネ オ ン ・ホ ドス コー プ 152 ネー ター ・カ レ ン ト 162
ハ
の 散 乱 振 幅 113
―
の 質 量 125, 126, 360 の 質 量 の 計 算 128 の 紐 モデ ル 234
― の 崩 壊 定 数 128 ―物 質 高 温 高 密 度 ― ―物 理 69
351
反 陽 子 を用 い た ― スペ ク ト ロ ス コ ピー 222 パ ー トン 237, 238 ― は点 粒 子 252
行
パ イ オ ン → π中 間 子 パ イオ ン交 換 流 288
変 化 359
― ― ―
乗鞍 宇 宙 線 観 測 所 147
後 藤 の作 用 115 ―ゴ ー ル ドス トン の定 理
の構造
媒 質 中 での ―
名 古 屋 大 学 物 理 学 教 室 憲 章 71 南部 ―
の 完 全 性 35
―
認識 能 力 の 限 界 91
中 野-西 島理 論 72
34
修 正 ―
ハ ドロ ン 78 ― 間 の 行 列 要 素 128
105
ミュー オ ン ―
修 正―
多 体 の― の 完 全 性 35 ハ ー ドコア 312
217
内部 輸 送 障 壁 モー ド 386
名 古屋 模 型 74
59
波 動 作 用 素 31, 33 ― の 漸 近 完 全 性 32
の存 在 を実 証 227 ― は1種 類 で は な い 228
電 子―
の 困 難 92
発 展(進 化)の 物 理 331 ハ ッブ ル 定 数 393
の 質 量 の上 限 225
ト リス タ ン計 画 175, 178 ト リス タ ンe+e-衝
実 験 208
―天 体 物 理 学 130 ― 天 文 学 407 ― の質 量 208 ,271
冨 松-佐 藤 時 空 409 朝 永-Schwinger方
長 基 線 ―
の 収 縮 9
自己 エ ネ ル ギ ー の― 八 正 道 説 235
測 208
ド ・ ドン デ ア ・ゲ ー ジ 168
の 運 動 18
発 展 作 用 素 31
Kamiokandeに
トップ ・クォ ー ク 69, 180,
波束 ―
216 ― のSuper-
18
142, 158, 185, 215, 217, 230, ―
閉 じ込 め 338 閉 じ込 め相 転 移 359 ど ち ら の 道 を?
破 砕 反 応 350
175, 225, 226, 238, 264
―
分布 関 数 251
―
モ デ ル 97 , 251
336 ― ゴー ル ドス トー ン ボ ソ
π ・核 子散 乱 104
場 の 反作 用 61
π-核子 相 互 作 用 の結 合 定数
場 の方 程 式 ア ノー マ リー 168
ン 94, 244, 359 ― ゴ ー ル ドス トン ・モ ー ド 324
背 景 放射 415
―
ジ ョナ ラ シ ニ オ ・モ デ
ル 337 西 島-ゲ ル マ ンの 法 則 240 2重 井 戸 21 2重 ス リ ッ トの 干 渉 16 日米 科 学 協 力事 業 182 日米 加 速 器 科 学 セ ミナ ー 181 2中 間 子 論 69, 226, 233 ⅡB行
列 模 型 122
日本 学 術 会 議 171, 261, 262
104 排他 律 225 π中 間 子 69, 78, 103, 227, 336 π中 間 子-核 子 散 乱 79, 81 ハ イパ ー 核 174, 304, 351, 360 ― 分 光 222
場 の量 子 論 79, 160, 232 ハ ミル トニ ア ン 30 ― の 自己共 役 性 29 林 フ ェー ズ 405 バ リオ ン 78 ― 間相 互作 用 301
―8重
項 235
Σ― 305 二 重― 269 ハ イペ ロ ン 234
パ リテ ィ非保 存 104, 226, 227,
パ ウ リ原 理 312, 321, 326, 335
175 バ レ ンス 粒 子 312
爆 縮 に よ る核 融 合 379 は くち ょ う 419
239, 247, 264, 271 強 い相 互 作 用 に お け る
反 遮蔽 効 果 251
バ ン デ グ ラ フ 264
不 安 定 粒 子 163 フ ェ ム トメー タ 334
反 電 子 ニ ュー ト リ ノ 133 バ ン ド構 造(原 子核 に お け る)
フ ェ ル ミ オン 38
264
フ ェ ル ミ相 互 作 用 241
半 端 電 荷 75, 235 反 陽 子-ヘ リウ ム 原 子 271
フ ェ ル ミ理 論 239 フ ォ ッ ク空 間 163
反 粒 子 79, 225
深 い 空 孔状 態 原 子核 の―
ベ ー タ崩 壊 78, 225 ―
の 逆 過 程 226
Gamow-Tellerの ― 346 ベ ー タ ・ポ ロ イダ ル 371 ヘー ア ― の 「赤 本 」 403 ヘ リオ トロ ン 375
複 合 核 模 型 278, 279, 318 ― の破 綻 340
ヘ リシ テ ィ 239
非 可 換 幾何 学 123
複 合 粒 子 163 ブ ジ ョル ケ ン ・ス ケ ー リン グ
変 換 の生 成 子 162 変 形 核 279, 280, 286, 295, 305
非 可 換 ゲ ー ジ理 論 106, 115, 125, 242, 244, 251
物 質 世 界 像 91
偏 光 3
光 核 反 応 265, 345
物 質 の 安 定 性 38
偏 微 分 方 程 式論 29
非局 所 場 理 論 320
物 理 学 の 統 一 160
非 ア ー ベ ル ・ゲ ー ジ理 論 → 非
可 換 ゲ ー ジ理 論 (p,n)反 応 268
非局 所 性 Bohmの
理論の
― 8
238, 251
ポ ア ン カ レ 対称 性 161
不 定 計 量 166
放 射 光 171, 176
非調 和 効 果 327
不 毛 ニ ュー ト リノ 229 ブ ラ ウ ン運 動 428
相 互 作 用 240
― モデ ル 8
ピ ッ クア ップ 反 応 264
プ ラス チ ッ ク ・シ ン チ レー ター
ヒ ッ グ ス機 構 106, 166, 245, 246
151 プ ラ ズマ 415, 417
ヒ ッ グ スセ クター 246
プ ラズ マ 研 究 所 365, 403
ヒ ッ グ ス場 244, 241, 253, 254
ブ ラ ッ ク ・ホ ー ル 396, 409,
ヒ ッ グ ス粒 子 107, 160, 254 ビ ッ グ ・バ ン 193, 270, 359, 391 ビ ッ グバ ン ・モデ ル 非一様
― 357
319
物 理 素 過 程 405 普 遍V―A型
326
ペ レ トロ ン 263
変 形 領域 核
ヒグ ス粒 子 395 原子 核 の 素励 起 モ ー ド間 の ―
268
ベ ー タ値 385
417, 422
放 射 性 イ オ ン ビ ー ム 法 313 放 射 性 物 質10Be
147
放射線管理 グループ KEKの ― 212 放射能 ―
の 発 見 232
膨 張 宇 宙 410 飽和性 核 力 の― 318 捕 獲 反 応 350
― 蒸 発 410 プ ラ ン ク ・エ ネ ル ギ― 396
星
プ ラ ン ク長 111
星 の 平 衡 方 程 式 405
―
の 進 化 404
ブ ル ッ クナ ー 理 論 323, 337
補 助 変 数 の 方 法 322
火の 球 モデ ル 151
ブ ル ッ クヘ ヴ ン国 立 研 究 所
保 存 カ レ ン ト 239
ビー ム ・サ イ ズ 201
保 存 則 162
ビー ム 不 安 定 性 200
(BNL) 228, 268, 270, 272 ブ レー ン 宇 宙 398
ひ も構 造 237
「プ ロ グ レ ス」 402
保 存 チ ャ ー ジ 162 ボ ソ ン 38
標 準 理 論 69, 90, 106, 107, 118,
文 化 と文 明 101
ボ ソ ン 展 開 法 326, 330
分 散 関 係 84
ボ トム クォ ー ク 237
分 散 公 式 95, 104, 113, 349
ボー ム 時 間 366
分 散 理 論 76
ポ ロ イ ダ ル ・ダ イバ ー ター
119, 166, 185, 252 ― の 予 言 能 力 254 短 距 離 に お け る―
120
表 面 振動 298, 320 核 の― の 励起 344 ヒル ベ ル ト空 間 29 フ ァ ミ リー数 の 問 題 98 不 安 定核 313, 351, 354 ― の核 半 径 355 ― ―
の散 乱 過 程 355 の磁 気 モー メ ン ト 355
― ビー ム 354
370 平 均 自 由行 路 核 内核 子 の―
マ
341
行
平 均 場 理 論 315
マ イ ク ロ 波 技 術 169
平 行 移 動 243
マ イ ス ナ ー効 果 245
平 坦 性 問題 391
マ グ ネ ッ ト霧 箱 145, 147
並 列 計 算 機 127 ベ ヴ ァ トロ ン 234
マ グ ノ ン 244
ベ ク トル 中間 子97 β安 定 線 313
魔法数 原 子 核 の―
272, 284, 311,
314, 319, 356
中性 子過 剰 核 に お け る― 356 魔 法 数 の 変 化 314 マ ル チ バ ー ス 397
― ―
―
―
じ込 め 時 間)積
の崩 壊 131 , 141, 156 陽 子 散 乱 79
364, 370 密 度 汎 関数 法 315
― ―
リニ ア ッ ク 178 論 58
169
相 関 46
量 子 並 列 計 算 46 量 子 モ ンテ カ ル ロ法 313
172
量子力学
4体 力 312
ミュー オ ン ・ニ ュ ー ト リノ
情報 理 論 46
―
Heisenberg-Pauliの ― 59 量子 飛 躍 19
弱 い相 互 作 用 86, 99, 238, 241 40GeV陽 子 シ ン クロ トロ ン
― のベ ー タ崩 壊 227 パ ル ス― ビー ム 218
―
量 子 電磁 力 学 65, 103, 232 ― の 誕 生 59 横 運動 量 149, 151, 153 ヨー ロ ッパ ・ミュー オ ン ・コ ラ Fermiの ― 59
(CERN)
― の 質 量 108
重 力 理 論 121
量 子 テ ユ ー リ ン グマ シ ン 46
ボ レー シ ョン(EMC) 337 ヨ ー ロ ッパ 連 合 原 子核 研 究所
μ →eγ 反 応 240 ミュー オ ン 105, 227 ― 触 媒 核 融 合 223
―
― 場 の 理 論 78, 91 量 子 多体 系 324
陽 電子 227
丸 森 ・山 村 ・徳 永 転 写 法 326 (密 度)・(閉
と中性 子 の質 量差 71 の弾 性 散 乱 261
74, 105, 136, 141, 228 ミュー トロ ン 154
ラ
行
― ―
の数 理 物 理 28 は完 全 で な い 2
量 子 力 学 的 ポテ ン シャ ル 8, 11
ラ ビ振 動 52
量 子 論 的揺 ら ぎ 392
無 限 自 由 度 95
ラ ム シ フ ト 232
理 論 と実 験 との 接 触 281
無 限大 の 困 難 69, 79
乱雑 位 相 近 似 295, 299, 324
臨 界 条 件 364
ラ ン ダ ム行 列 の理 論 350
リ ン グ ・サ イ ク ロ トロ ン 268
メ ソ ン 78 メ ソ ン8重
ラ ン ダ ム ・ポ テ ン シ ャ ル 38 項 235
ル ミノ シテ ィ 196, 204
メ モ リー 44
離 散 固有 値 31 リー(超)代 数 162
模 型 の必 然 性 322 モ ン テ カ ル ロ殻 模 型 313 ヤ
リニ ア コ ラ イ ダー 185, 186, 187 電 子 ―
粒 子-空 孔 状 態 原 子核 に お け る ―
有 限核 323 有 効 相 互 作 用 312, 323
粒 子 と反粒 子 の 非 対称 性 98 流体 モ デ ル 8
湯 川 理 論 91, 232, 233 ユ ニ タ リテ ィ 233
リュー ドベ リ原 子 18
量子
よ う こ う 420
―
検 索 の― ―
169
267
50
高 エ ネ ル ギ ー 物 理 学 研 究 所 の― の建 設 173 弱 集 束 の ― 169
―-ハ
ドロ ン反 応 85
連 続 極 限 126 連続 スペ ク トル 31
色 力学(QCD)
84, 85,
格 子― 126 ― 宇 宙 論 392
ρ 共 鳴 234 炉心 プ ラズ マ 364 ロ チ ェ ス ター 会 議 第11回
―
230
回路 46
ρ中 間 子 97 ロー レ ン ツ群 107
―
計算 45
ロ ー レ ン ツ不 変 性 161
―
―
ス キ ン 356
―
計 算 ア ル ゴ リ ズム 46
―
線 の 医 学 利 用 175
―
計 算 機 42
大 強 度 加 速 器 171
―
時 空 408
―
レプ トン 104, 232, 252 ― の 香 り 240 ― の 質 量 108
50
97, 106, 113, 114, 125, 126, 335
高 エ ネ ル ギ ー 物 理 学 研 究所 の― 172
レ ッ ジ ェ極 84
連 星 パ ル サ ー 409
51
巾計 算 の―
シ ン クロ トロ ン 強 集 束 の―
レ ッ ジ ェ軌 跡 234, 237
ア ル ゴ リズ ム
因数 分 解 の―
陽 子 78 ― 過 剰 核 316
204
レゾ ナ ンス 37
265
ヤ ン-ミ ル ズ理 論 122
―
204
平 均―
励 起 状 態 15 レー ザ ー 干 渉 計 428
リニ ア ッ ク 275 行
積 分―
ワ
行
歪 曲 波 ボ ル ン近 似 344
―
ワイ トマ ン関数 168
の コ ー ド 346
2次 の ―
欧 文
A
索
引
Brueckner理 論 321, 323 ― の 適 用 限 界 323
D
Srueckner-Hartree-Fock-
AC-Stark場 ―
若 手 人 材 の 養 成 175
若手研究者 の養 成 172
347
Bogoliubov理
中 の 多 体 問 題 37
ADM理
論(R. Deser,
Arnowitt,
C. W.
S.
Butler理
論 323
論 343
Misner)
C
D*粒
D-brane
DESY
DGLAP
C60
速 器 228, 234
Aharonov-Bohm効
278, 280
Anderson局 ARES空
果 37
Amsterdam
在 38
―
―
の 干 渉 14
自 由性 ATF
270, 272 CESR
196
channel
187 B
35
Cloudy
131
Crystal
B中
間 子 107
CNO循
Bフ
ァ ク ト リ ー 185, 192, 193
COBE衛
B物
質 74
Compass
360
Conserved
Vector
Bell,
ソン の 崩 壊 253
Neumannの
定
―
の 不 等 式 5
B2FH
and BL対
Burbidge,
F.
W. Hoyle)
A.
G.
R.
BNL
182, 183, 223, 228
Bohr-Mottelsonの 313
175, 182, 183,
現 58
FP(Faddeev-Popov)ゴ
CP不
Friedman時
空 412
変 形 核 理 論
G 間 子 の 崩 壊 に お け る― G行 列 Gパ 241
302, 321 リ テ ィ 267
Gamma-10
変 性 104, 185
GANIL
変 性 の 破 れ 98, 107,
GEO
中 性K中 る―
Cyg Ⅹ-1
378 270
600
geometric
429 method
間 子 の 崩 壊 に お け
GIM機
185, 193
Ginzburg-Landauの
239
422
ー ス ト
165
217
崩 壊 に お け る ―
186,
209, 219 Fock表
保 存 217, 253
Kの
CP不
CVC 称 性 165
分 37
FNAL よる 発 見
192, 205 の 隠 れ た 変 数 7, 10
型 72
Feynman積
203, 205 CP非
Bohm
BRS対
のKEKBに
B中
換 65
の 黄 金 律 24
222
Fowler 404
称 性 74
Bloch-Nordsieck変
―
278, 280
レ プ ト ン 族 に お け る ― 程 式 302
Burbidge,
―
203, 205
258, 280
(E. M.
Current
Fermi・Yang模
け る―
Bethe-Goldstone方
程 式 301
Fermi
ニ ュ ー ト リ ノ ・セ ク タ ー に お
写 法
326
Berkeley
267
Faddeev方
称 性 の 破 れ
―
Belyaev-Zelevinsky転
ゆ ら ぎ 262
420
F 星 393, 412
CP対
理 の 反例 7
Ericsonの
環 270, 357
Copenhagen
のvon
程 式 118, 412
ETH
239
J. S.
―
Model
定 理 24
Einstein方
ESA
Ball
ォ ー ク 105
―
突 現 象 179
340
bク
Bメ
e+e-衝
Ehrenfestの
Cherenkov光
E 184, 190, 209, 219, 268, 269, 漸 近 的
344, 345, 348
258, 271, 280
175, 177, 180, 181,
の 実 験 5 freedom→
応 345
ル ー プ 158
CERN
asymptotic
応 343,
(d,t)反 Dubna
間 子 66
Cangarooグ
347
多 時 間 理 論 62
(d,p)反
ォ ー ク 105
C-中
Aspect
251
Diracの
cク
洞 197, 198
122 182
(d,3He)(3He,α)
408, 410 AGS加
子 の 発 見 155
34
構 236 方 程 式
245 Grassmann数
100
Greenwald限 GSI研
界 384
JT60U
究 所 272
J/ψ
GUTス
ケ ー ル 120
GWS理
論 248
GZKカ
ッ トオ フ 413
―
の 発 生 抑 制 273
K中
Coordinates
Hartree-Fock型
366
の 計 算 302,
Kメ
ソ ン →K中
K0中
間 子 98
方 法 321
NO
305
間 子
130, 132,
HERA
公 式 37
176, 182, 250, 360
(3He,α)(3He,t)(α,t)反
G. R.
W.
Burbidge,
Burbidge)
270
Fowler,
―
E.
Kerr時
M.
407
に よ るCPの
196
空 409
画 266
Ridge研
OPAL実
究 所 346
験 計 画 182 P
Pauli禁
止 則 →Pauli原
Pauli原
理 296, 341
(p,d)(d,p')
科 の 公 式 60
344
O
破 れ の 発 見
の ル ミ ノ シ テ ィ
Klein-仁
6 の 反例
NUMATRON計
201 ―
203 Hoyle,
応 343,
Oak
に お け る ビ ー ム ・サ イ ズ
応
347 HFB2(F.
(n,p)反 NSCL
186, 192, 193
―
―
von Neumannの―
ィ 203 縮 405
理
Neumannの
に お け る積 分 ル ミ ノ シ テ
347
Helmholz-Kelvin収
GO定
7
Kato-Trotterの
―
(3He,d)(d,t)
数 149
von
KAMIOKANDE
KEKB
404, 420
NK関
412
Hartree-Fock-Bogoliubov法
278
NASA
の 振 動 228
345 Hartree-Fockの
N Napoli
間 子 174, 234
― 子 269
Hamada
372
K
H H粒
368, 370, 371,
粒 子 105, 235
理
347
(p,d)(d,t)
347
Higgs機
構 94
KNO則
96
PEP
Higgs粒
子 185
K2K
208
PEP電
子 コ ラ イ ダ ー 238
PEP-Ⅱ
202
Hot
CNOサ
イ ク ル 357 L I
IAEA会
Lambシ 議 365, 366, 368, 370, 371, 374, 376, 378 ICEF計
画
ICFA
153
IOO対 ISR
235
175
ITER
370, 374, 383
―
の エ ネ ル ギ ー 増 倍 率
384 ―
の 閉 じ込 め 時 間 385 184
Japan
Hadron
JET JHF
JLAB JLC
(Japan
Linear
J-PARC
267
画 184, 185
LHD
376
Lie群
99
412
85, 125, 180, 249, 250
―
263
の 結 合 定 数 180
―
278
37
悪 魔 42 乱 60, 63 価 34, 36
122
の 相 転 移 温 度 361
高 エ ネ ル ギ ー― Schrodinger
式 136
の数 値 シ ミュ レー シ ョ ン 360
― M
M-theory
応 344, 347
277, 278
QCD
look-back
Mourre評
Purdue
Q
429
MSW方 218
344
LHC計
operator
Collider)
99
(p,p')反応
(p,t)(t,d)反
Mφller散
186
Poincare群
Princeton
Maxwellの
338
応 346
184, 254, 395
Magnetic
319
190, 248,
ケ ー ル 118, 120
(p,n)反
395
338, 360 合
果 262
360
368, 372, 373
ネ ル ギ ー 100
LHC
Lund
Facility
Planckエ
LEP-Ⅱ
LS力 J
子 175
Planckス
177, 180, 182,
LIGO
IUPAP
304
251
277
称 性
238, 251
p-He原
271
LEP
ガ イ ド ラ イ ン 184
Indiana
j-j結
Landau-Migdal力
Lee-Schiffer効
186
―
PETRA フ ト 68
LASL
251
高 温―
過 程 360
の 相 図 361
強 い相 互 作 用 の 理 論 と して の ― Q・Q相
251 互 作 用 295
qqq 235 Quantum 249
Chromo-Dynamics
Quantum
Dynamics
38
R Rayleigh-Jeansの Regge極
式 58
113
RHIC
TRISTAN
8 338
SSC
107, 111, 185
SSC計
画 184
s-t双
対 性 113
Stanford
245, 337, 338
U(1)対 称 性 242 Uhuru衛 星 425 実 験 6
Stockholm 列 86
V
280
stripping過
程 340
Veneziano振
論 343
VIRGO
―
の 解 析 性 84
stripping理
―
の 方 法 233
SU(3)color×SU(2)L×U(1)Yゲ
S行
ー ジ 理 論 232
列 理 論 95, 96, 104, 106
Schmidt線
287
Schrodinger作
SU(3)color×SU(2)L×U(1)Y対
用 素 30, 33, 34
―
の 固 有 値 の 漸 近 分 布 36
―
の 正 の 固 有 値 36
画 268 U
果 37
Stern-Gerlachの
251
TRISTAN計
265
Stark効
S S行
Spring
称 性 ゲ ー ジ理 論 253 SU(2)L×U(1)Yゲ
幅 113
429
von
Neumann
―
のNO
GO定
理 6
― のNO 7
GO定
理 の 反例
ー ジ相 互 作
W
用 247
37
SU(3)カ
ラ ー 対 称 性 97
Schrodingerの
猫 22
SU(3)ゲ
ー ジ 理 論 125, 249
W中 Wの
Schrodinger方
程 式
SU(3)対
称 性 73, 85, 105, 235
Ward-高
―
の 基 本 解 37
SU(2)対
称 性 242, 247
Weinberg-Salam理
―
の 逆 問 題 38
SUSY
162, 163
Wignerの
磁 場 を 含 む―
時 間 を 含 む ― Sco
X-1同
Shell
31
Model
Monte
SLC SN
1987
A
Solvay会 SORリ
議
T Carlo法
180, 182, 183, 190 180, 190
―
X線
の 発 見 183
TAMA
ン グ 171
theory THO論
天 文 学 401, 415
429
Z
372
Tevatron TFTR
程 346
星 154
X線 天 文 衛 星 417
402
spin-flip過
X線
tク ォ ー ク 105
TETR
412
論 89, 97
友 人 18 X
量 408
SLAC
橋 の 恒 等 式 93
思 考 実 験 44
定 419
313 Silk質
Szilardの
間 子 97, 107 発 見 248
183, 250,
252, 360
368, 373 of everything 文 402
Z中 間 子 97, 107 Zの 発 見 248
122
Zeno効
果 24
人
名
索
引
和 文 索 引 ア 会津
行
晃 408
今村
勤 95
小田
稔 150, 154, 415
岩 崎 洋 一 125
折 戸 周治 182, 187
岩 田健 三 72
織 原彦 之 丞 268
赤 石 義 紀 305
岩 垂 純 二 301
秋 山 佳 巳 296
岩塚
安 達 静 子 304 阿部 和 雄 187
岩 本 文 明 302
梶 田 隆章 140, 144 片 山泰 久 74, 230
阿部 恭 久 298
宇 井 治 生 298 上 田 保 76
加 藤 敏 夫 28, 29, 31, 32, 33, 36 釜 江常 好 266
宇 尾 光 治 365, 366 字 田川 猛299, 348
鎌 田 甲一 146
内 田岱 二 郎 365
亀井
亨 174, 187
内 山龍 雄 93, 408
亀田
薫 146
梅 沢 博 臣 71, 93, 96
亀淵
天 野恒 雄 407 新 井 一 郎 270 新竹
積 187
有 馬朗 人 281, 283, 288, 289, 290, 291, 295, 298, 299, 303, 304, 305, 312, 327
カ
明 37
上 村 正 康298
茅 江沢
井川
江 尻 宏 泰 267, 269, 271
川合
江夏
弘 278
河合 光 路 340
池上 英雄 365
生 出勝 宣 187
川上 宏 金 270 河 島信 樹 429
池 田 清 美 296, 303
大 河 千 弘 106, 169, 366, 371
池 田 峰 夫 73, 235 池 部 晃 生 32, 34
大 久 保 進 76, 235
川 添 良 幸 304 河 原 田秀 夫 295
石 田 四郎 423
大 沢 清 輝 423 大 塚 孝 治 292, 305, 311
菊池
磯崎
洋 28, 35, 38
大 槻 昭 一 郎 76
磯矢
彰 263
猪 木 慶 治 96, 113 池内
洋 2
迪 71, 93, 278 誠 司 171
飯 塚 重五 郎 76, 235 満 31 了 409
行
川合 栄 一 郎 76 光 113
健 178, 183, 187, 340
大 貫 義 郎 73, 74, 235
菊 池正 士 169, 279, 365 岸本 忠 史 269
市 村 宗 武 288, 289, 295, 303 一 柳 寿 一 402
大 沼 甫 268, 301 大 根 田定 雄 72, 73
北 垣 敏 男 169, 174, 181, 278
伊 藤 公 孝 372
大 野 陽 朗 403
北田
伊 藤 早 苗 372
岡
真 301, 305
吉 川圭 二 100
伊 藤 大 介 58
岡田
実 365
木下 東一 郎 103
伊藤
緒 方 惟 一 262, 264
木 原 太郎 408
糸 川 英 夫 419
岡 本 和 人 303
木 村一 治 169, 278
糸 永 一 憲 304
岡 本 良 治 302
木 村 嘉 孝 178, 187
井上
小川
博 366
健 71, 145, 226, 233
岸本 照 夫 299 均 35
潔 377
井 上 研 三 99
小 川 建 吾 291
九後 汰 一 郎 97
井 上 健 男 289, 290, 296
小 川 修 三 69, 72, 97, 155, 235
熊 谷 寛 夫 169, 170, 172, 262
今 井 憲 一 269
小 此 木 久 一 郎 72
井 町 昌 弘 76 今 西 文 龍 298
尾 崎 敏 178, 183 小 田健 司 291
栗 山 惇 299, 327 黒 川 眞一 190, 203 黒 田 成俊 28, 29, 32
小泉
晋 187
寿 岳 潤 423 菅 原 寛 孝 95, 131, 178, 185, 209
寺 島 由 之 助 407
古 在 由 秀 429 小 柴 昌 俊 130, 153, 182, 217
杉 本 健 三 258, 262, 264, 269,
東 辻 浩 夫 408
小 島融 三 177
281
土 岐
博
徳 永
旻 299, 326
272, 334
小 谷 真 一 38
杉 本 大 一 郎 406, 409
小 谷 正 雄 171
鈴 木 賢 二 302
戸 塚 洋 二 208, 217
小 玉 英 雄 396, 410
鈴 木 真 彦 113
殿 塚
勲 298
後 藤 憲 一 95
諏 訪 繁 樹 172, 187
外 村
彰 9
後 藤 茂 男 100 後 藤(金 沢)捨 男 64 後 藤 鉄 男 113
冨 田 憲 二 407
関 戸 弥 太 郎 146, 148 瀬 部 孝 289, 290, 291, 292,
木 庭 二 郎 64, 96, 149, 150
296
冨 松
朝 永 振 一 郎 58, 64, 69, 85, 88,
小 林 農 作 265, 267 小林
誠 69, 76, 98, 106, 155,
146, 169, 171, 172, 232, 281,
183, 192, 203, 205, 241
サ 斉藤
282, 298
曽 我 道 敏 290 タ
近 藤 都 登 183, 187 近 藤 健 次 郎 212
彰 409
友 田 敏 章 296
行
外 山
学 347
鳥 塚 賀 治
265, 303
高 木 修 二 71, 299, 322 行
栄 296
高木
昇 419
高崎
稔 210
ナ
行
中 井 浩 二 187, 209
高 田健 次 郎 299, 327
長 尾 重 夫 365
斉 藤 義 実 34
高 野 文 彦 294
中 川 重 雄 146
坂 井典 佑 99
高橋
中 川 昌 美 74, 144, 217
酒 井 英 行 271, 303 坂 井 光 夫 263, 281, 301, 327
高林 武 彦 8
中沢
高 原文 郎 411
長 島 順 清 185, 232
坂 田 昌 一 66, 69, 73, 74, 85, 92,
清 409
高 山 一 男 365
永 田
忍 302, 322
93, 105, 144, 145, 146, 217,
武田
永 田
武 148, 419
226, 233, 320, 325
武 田 英徳 408
中 西襄
武 谷 汎 268 武 谷三 男 69, 75, 85, 145, 301,
中 野 武 宣 409
坂 田文 彦 299, 327, 331 嵯 峨 根 遼 吉 277, 365 崎 田文 二 100 桜井
康 93
純 93
暁 88, 304
402
93, 160
中 野 董 夫 72, 408 永 宮 正 治 190, 224
田地 隆夫 64
中 村 健 蔵
笹 川 辰 弥 301
田中
正 72, 74
中 村 卓 史 410, 429
佐 々 木 節 396, 410
田中
一 296, 322
生 井 良 一 345
佐 藤 勝 彦 390, 396, 410
田 中靖 郎 420
成 相 秀 一 408
佐 藤 哲 也 378
棚 橋 五 郎 152
南 部 陽 一 郎 75, 89, 94, 100,
佐藤
田辺(菅 原)和 子 305
106, 113, 178, 244, 245, 249,
佐 藤 文 隆 401, 406, 408
田辺 孝 哉 305
324, 336, 337, 359
真 田順 平 263
谷川 安 孝 70, 85, 145, 226, 233
佐 野 光 男 289, 350
谷 畑 勇 夫 269, 298, 313, 354
丹 生
沢 田 克郎 299, 301 沢 田昭 二 73, 76
玉 垣 良 三 296, 301, 322
西 川 公 一郎 209
玉 木 英 彦 145
西 川 哲 治 169, 173, 174, 175,
三 田一 郎 185, 193, 205
田村 太 郎 278, 299, 348 田村 英 男 28, 36
西 島 和 彦 72, 240
田村 裕 和 272
仁 科 芳 雄 60, 145,
皓 210
重 枝 新 成 76 柴 田徳 思 212 清 水 清 孝 288, 303, 304, 305
全
卓 樹 304, 305
新竹 菅
積 187 浩 一 151
潔 76, 151,
155
177, 183, 184, 190
西 村
庄 田 勝 房 265
190, 210, 217
純 145, 146
西 山 精 哉 327 二 宮 勘 助 76
塚 田 甲子 男 264
丹 羽 公 雄 158, 217
寺 沢徳 雄 346, 349, 350
野 上 茂 吉 郎 298
146
野中
到 261, 262
星 崎 憲 夫 76
野村
亨 266
星野
ハ 萩原
行
仁 289, 290
萩 原 雄 祐 148
森 永 晴 彦 264, 275, 297,
細 谷 暁 夫 38 堀
ヤ
尚 一 75
堀内 堀江
昶 291, 296, 297, 305 久 281, 288, 291, 312
橋 本 幸 男 331
マ
畑 中武 夫 148, 402, 419
行
初 田哲 男 358 浜 田繁 雄 366
前 田 恵 一 396, 410 前 田 憲 一 419
浜 田哲 夫 301
牧
浜 本 育 子 289, 303, 305
益 川 敏 英 69, 76, 98, 106, 155,
行
八 木 浩 輔 263, 267, 270 矢 崎 紘 一 301, 305 谷 島 賢 二 28, 37 柳 田
勉 98, 99, 144, 209, 217, 231
山 口 嘉 夫 73, 75, 146, 184, 187, 230
二 郎 74, 144, 217, 225, 236
早 川 幸 男 64, 146, 147, 149,
山 崎 敏 光 182, 265, 272, 281, 288
183, 192, 203, 205, 241, 299
150, 172, 340, 343, 402, 419,
増 田 康 博 271
山 田 英 二 74
429
町田
山 田 勝 美 302
武 美 76
松 岡 武 夫 76
山 田 作 衛 182, 187
林 忠 四郎 401, 402, 403
松岡
山 中 千 代 衛 379
早 野 龍 五 269, 305
松 瀬 丈 浩 298
山 根
原
治 71, 320
松 田一 久 261
山 内 恭 彦 408
原
康 夫 75, 236
松 田 哲 96, 113 松 田卓 也 408, 409
山 部 昌 太 郎 262
原 田 融 305 坂 東 弘治 302, 304
松 田正 久 76
山 本 賢 三 365, 366
松 本 賢一 73, 74
山 本 安 夫 304
坂 東 昌子 97
松 柳 研 一 305, 327
山 脇 幸 一 97
林
原 田吉 之 助 298
300,
326
享 304
茂 78, 301 勝 419
功 210
山 村 正 俊 299, 326, 327
丸 森 寿 夫 281, 299, 317, 326 日 向裕 幸 288, 289
湯 川 秀 樹 69, 78, 85, 88, 146,
平 川 浩 正 428
三浦
平 田慶 子 144
三 尾 典 克 427
平 田道 紘 289
皆川
南 園忠 則 267 三 宅 三 郎 148, 153
吉 川 庄 一 366
福 嶋 義 博 298 福 田信 之 294
宮 崎 友 喜 雄 147
吉 田思 郎
福田
福 田善 之 144
宮 沢 弘成 96, 99, 103, 265, 281, 288, 312
藤 井 三 朗 303 藤 井 忠 男 181
宮 西 敬 直 327 観 山正 見 410
吉 村 久 光 366
藤 井 保 憲 74 藤 岡 學 268
宮 本 健 郎 364, 366
米 沢
宮 本 悟 楼 169, 365
米 谷 民 明 100, 114
藤 川和 男 95
宮 本 重徳 425
藤 田純 一 281, 289, 303, 312
宮 本 米二 64, 75
博 64, 301
功 146, 172 理
171, 227, 232, 277, 279, 320, 336, 365, 402
146
伏 見康 治 171, 365
吉 沢 康 和 264, 279 263, 298, 304, 343,
344, 348, 350 吉 永 尚 孝 300, 305
吉 村 太 彦 98, 410 穣 73, 76
ワ 若 谷 誠 宏 383
藤 本 陽 一 146, 149, 153
元 場 俊 雄 304
渡 瀬
譲
藤 原 大 輔 37
百田
弘 407
和 田
靖 294
藤原
森
茂
亘 和 太 郎 76
守 270
蓬 茨霊 運 406
366, 374
森 田正 人 266 森 田 右 262
146
行
欧 文 索 引 92, A
Agmon,
S.
Altarelli,
C
32,
G.
33
251
Alvarez,
L.
W.
275
Amaldi,
E.
428
Amaldi,
U.
186 D.
Anderson,
P.
W. L.
A.
Austern, Aymar,
233 21,
A.
294
M. G.
345
386
241 387
151
Fowler,
22 T.
151
290
F.
Bayman,
Bell,
A.
J. S.
6, 7
N.
Cowan,
C.
227
Gal,
Creutz,
M.
126
Gamow,
S.
T.
Benioff,
P.
45
Bennett,
C.
H.
Danos,
Belyaev,
Bernal,
J.
Bertsch,
G
Bhabha,
H.
Bjorken,
J.
D.
Bleuler,
K.
276,
Stoyle,
Bloch,
62,
Bogoliubov, Bohr,
A.
Bohr,
263,
295,
N.
L.
282,
286,
Elliott, 319
12
Enss,
235,
R.
Ginzburg,
V.
Giordano,
S.
85,
240,
97, 244,
424 L.
S.
Green,
A.
M.
Gross,
D.
405
Grover,
2, 16,
42,
243,
Gugelot,
J.
N.
251
85,
384
250
K.
P.
245,
359 291
J L.
338
341
244,
M. V.
226,
94,
336,
Greenwald,
S.
L.
J. 324,
245,
246
M.
302,
147,
177
L.
Goldstone,
63
75,
404
Goldberger,
17
46,
C.
52
264,
280,
300,
326
427 A.
53
J.
P.
V.
Ericson,
72,
209,
Giacconi,
249
A.
Ekert,
Gursky, 289,
295,
298
H.
Guth,
A.
423
411
34 T.
H 262 Hackenbroich,
H.
H.
296
F 43
Hahn,
D.
343
Faddeev,
B.
A.
291
Fairbank,
Brown,
G.
E.
289,
291,
302
K.
A.
302,
321,
T.
262,
343
323 S.
251
288,
99 M.
125,
Glashow, L.
A.
390,
Brown,
Butler,
70,
304
D.
F.
Brink,
Brueckner,
297,
S.
324
283,
423
Brillouin,
N
279,
H.
Durr,
B.
Einstein,
3, 278,
Bradt,
S.
60,
264
Eddington,
327
J.
59,
E
68
280,
48
271,
393
Yu.
Gribov,
313,
ch.
M.
112
251
296,
Borde,
294
Yu.
Drell,
Dyson,
288
N.
289,
8, 10,
289,
280
R.
F.
33
238,
V.
A.
C.
M.
101,
46,
270,
403
Gell-Mann,
L.
161,
Dover,
28,
65
D. P.
304 G.
Gelfand,
A.
Dokshitzer,
147
S.
303
Shalit,
78, 283,
193
M.
M.
Broglie,
347 279,
403
J.
I. I.
Birman,
Blin
303,
402,
M.
de
Dirac,
275,
321,
A.
391,
S.
de
390
245 387
90
Deutsch,
70
A.
302,
326
44
F.
H.
Bigi,
299,
D.
G.
Bethe,
393
G.
Dancoff,
349
W.
J.
D 232
324,
404
L.
Freedman,
L.
296
H.
A. F.
Geller,
F.
Becquerel,
W.
A.
Cordey,
71
B.
321,
A.
Cooper,
B
Bacon,
289
302,
Friedmann,
S.
F.
60,
Friedman,
Cohen,
Crick,
298
H.
345
A.
V.
T.
V.
404
371
B.
Fock,
233
232,
J.
Flowers,
288
P.
164,
N.
Fliessbach,
A.
F.
Cocconi,
366
343,
R.
Chemtob,
Claverie,
3, 46
N.
B.
Chudakov,
C.
Aspect,
N.
Carreras,
Chew,
Anderson,
Artimovich,
Cabibbo,
97,
Fisch,
Fermi,
L.
E. 225,
D.
W. 59,
232,
35,
M.
Feshbach,
H.
Feynman,
R.
Han,
428
72,
239,
301
84,
M.
Hartle, 104,
149,
279
Hartree,
Harvey, 45,
283 Y.
J.
75,
249
396
D.
R.
302,
321,
345
350 P.
O.
63,
68,
Hawking,
M. S.
305 391,
396
323,
Hecht,
K.
T.
Heisenberg,
305
304,
W.
78,
92,
Heitler,
112,
59,
61,
Nelson, R.
Lattes,
317
W.
C.
64
Helmholtz,
338
Landauer,
69,
44
M.
G.
146,
O.
261
152,
von
385
8 G.
Nilsson,
153
H.
E.
Neudatchin, V. S.
278
A.
62
Nordsieck,
G.
Lawrence,
E.
296,
301
O Henyey,
L.
Hess,
V.
Higgs,
G.
F. P.
252,
404
Lawson,
145
W.
Lax, 94,
245,
247,
N.
D. 28,
Lederman,
395
Hinners,
R. D.
P.
420
290,
Occhiaiinni,
228
Ogloblin,
L.
Lee.
L.
L.
Lee,
T.
D.(李
227,
241
295
31
262
G. A.
P.
Oppenheimer, 正 道)
S.
A.
146
291
R.
J.
68,
152
104, P
Hofstadter,
R
Hormander,
237
L.
Hoyle,
F.
Hubble,
35
Leff,
E. R.
A.
Hund,
F.
21
Hunziker,
S.
W.
Lieb,
427
34
Iachello,
F.
Iliopoulos,
A.
Lipatov,
281,
299,
327
232,
N.
H. W.
G.
251
A.
34
G.
59
349
334
R.
311
H.
178
59,
71,
78,
92,
225,
238
Pease,
A.
K.
251
W.
396
B.
Love,
W.
Pauli,
L.
V.
Panofsky, Parisi,
D.
Lorentz,
J.
278
37
Lippmann, I
277,
423
E.
Linde,
W.
Pandharipande,
42
C.
Lewin,
390
Hulse,
H.
Levinson,
404
R.
S.
Peaslee,
D.
Peebles,
J.
367
C.
276
E.
408
Penrose,
R.
391
Penzias,
A.
391
M Inglis,
D.
R.
Iwanenko,
289
D.
Perkins,
D.
78
MacFarlane,
M.
Madelung,
H.
E.
290,
295
8
J
Jastrow,
R.
302
Jauch,
J.
M.
Jeans,
J.
H.
Jensen,
J. 311,
H.
D.
S.
Johnston,
282,
A.
K.
J.
245,
337
C.
M.
22
R.
S.
D. M.
K.
E.
L.
2,
16,
H.
Politzer,
245
H.
C. 152,
M.
58, 60
85,
89,
250
F.
228, 146,
404 149,
233
151 R
Migdal,
A.
B.
304
K Millikan, Kanellopoulos,
Th.
Kelvin,
Lord
Kerman,
A.
Khanna,
C.
H.
Mills,
J.
R.
288,
304
A.
Mφller,
C.
A.
326
286,
O.
60
327
T.
T.
S.
D.
Kurchatov,
302
Mourre,
289
233, 69
60,
289,
Rabi, I. 242
Racah,
294,
L.
Rayleigh,
63 280, 305,
282, 313,
Reid,
P. P.
34 387
V.
S.
58
301
F.
31
F.
42
Richter,
B.
235
Riemann,
G.
A.
286
386
227
Rex,
366
W.
H.
F.
Rellich,
V.
J. 398
J.
Rebut, 324,
295
L,
Reines, E.
146
G.
Randall,
277
R. 295,
I.
Rainwater,
G.
B.
Mukhovatov,
I. V.
93, H. C.
Mottelson,
19
Klein,
Kurath,
75
L.
Mitchel,
Klein,
Kuo,
A.
Minkowski,
294
F.
Kimble,
296
385
R.
N F
86
L Nachamkin, Lamb, Landau,
W.
E. L.
D.
68
J.
Neddermeyer, 93,
149,
245,
Ne'eman,
S. Y.
235
292 H.
Rosen, 233
N.
Rosenbluth, Rossi,
2, 16, M.
B.
390
42,
66
D. B.
Powell,
225
31
B.
Pontecorvo,
L.
28,
295
Poincare, 311,
356
Miesowitz,
22
P.
Phillips,
Podolsky,
284,
387
149
Pfeifer,
Planck,
242
282,
R.
Meitner,
233 326
42,
G.
Meissner, 22,
74,
R.
W.
B.
Pines,
E. E.
319,
301
G.
132
R.
Maxwell,
284,
278
I. D.
E.
A.
Mayer,
Jona-Lasinio, Joos,
Mann,
298
Marshalek,
356
Johansson,
H.
Marshak,
33 58
319,
Mang,
F.
Peters,
150,
42, N.
415
84 386
150,
Rowe,
D.
Rubbia,
298
C.
Weizsacker T
248
Wentzel, Tait,
P.
G.
42
S Salam,
A.
78,
Sandage,
A.
Satchler,
G.
89,
345,
R. M.
Scherk,
J.
114
Schiffer,
J.
P.
Schmidt,
T.
J.
M.
J.
Simon,
114
46,
50
35 408 31,
F.
Szilard,
P. M.
H.
J.
304
147,
A.
Wigner,
42
242
A.
283,
296,
319
Wightman, 288,
304
36,
Wheeler,
235
228 396
M.
S.
33,
E.
P,
30,
C.
H.
33
168
111,
284,
303
S.
92,
A.
Neumann,
von
Weizsacker,
F.
W.
Wildenthal,
298
von
387
147
113
K.
Wilson,
J.
28,
C.
30
F.
Wu,
291
296
125
R. C.
250
H.
K.
Wilson,
396
85,
B.
Wildermuth,
G.
Vilenkin,
68,
W.
391
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227,
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249
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Wagner,
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427
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Zelevinsky, 76,
78,
89,
97,
Zumino,
428
B.
V.
Zweig, F.
230,
321,
349
C.
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276,
14,
V.
Zurek, W.
410
281,
C. 84,
D.
S.
R.
Weizsacker,
372
93
J.
29
42
288
297,
S.
K.
H.
L.
C.
A.
Watson,
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Stelson,
Susskind,
301
J.
Steinhardt,
Sundrum,
33
35
Steinberger,
Stone,
64,
367,
W.
A.
271,
248
Veneziano,
404
34,
D.
Y.
Soffer,
C.
Varga, 230
43
Smirnov,
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228,
E.
B.
E.
Wilcox,
58
H.
V.
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270,
B.
Wilczek,
C. P.
H.
62
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V
232
Sigal,
G.
Weyl,
H.
262
M.
Shor,
West,
427
Turing,
J.
Shannon,
294
J.
Towner, I.
Schwarzschild,
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I. 289,
Taylor
Ting,
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Schwarz,
J.
Talmi,
287
Schwarz,
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349
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Schrodinger,
Schwinger,
410
347
Schein,
94,
246,
424 R.
Schaeffer,
97,
G.
Wess,
99
H.
44
75,
76,
G. 235
Zwicky,
F.
16
G.
147
85,
97,
125,
朝倉物理学大系20 現代 物理学の歴 史 Ⅰ 2004年5月31日
初 版 第1刷
2005年3月25日
第2刷
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