横 山隆一 【 監修】
電力 自由化 と 技術 開発 21世 紀 における電気事業の 経営効率 と供給信頼性の向上を目指 して Liberalization
of
Electricity and
Technological
Issues
東京 電機 大学出版局
Markets
本 書 の 全部 また は一 部 を無 断 で 複 写複 製(コ ピー)す る こ とは,著 作 権 法 上 で の例 外 を除 き,禁 じ られ てい ます.小 局 は,著 者 か ら複 写 に係 る 権 利 の 管 理 に つ き委 託 を受 け て い ます の で,本 書 か らの複 写 を希 望 され る場 合 は,必 ず 小 局(03-5280-3422)宛 ご連 絡 くだ さ い.
は じ め に エ ネ ル ギ ー 等 の 諸 分 野 で の規 制 緩 和 と 自 由 化 が 世 界 各 国 に お い て進 め られ て お り, と りわ け,米 にEU諸
国 で の 競 争 的 電 力 市 場 の 創 設,英
国 の 電 力 自 由 市 場 の統 合 が,わ
えた 。1997年
国 で の 完 全 電 力 自 由化 へ の 移 行,さ
7月 に,電 気 事 業 審 議 会 基 本 政 策 部 会 か ら,日 本 型 電 力 小 売 自 由 化 と言
うべ き 「 部 分 自 由 化 」が 打 ち だ さ れ,1995年12月 あ い ま っ て,大
ら
が 国 の 電 気 事 業 の あ り方 に も大 き な影 響 を 与
口 需 要 家 は,従
に施 行 された 卸電気 事業 の 自由化 と
来 の 区 域 内 電 気 事 業 者 の み な らず,区
電 事 業 者 及 び 電 気 事 業 者 か ら の 電 力 購 入 が 可 能 とな り,ま た,電
域 内外 の新規 発
力供 給 に参入 しよ う
とす る事 業 者 に と っ て は 自 社 保 有 の 発 電 設 備 以 外 の 他 発 電 事 業 者 や 区 域 内 外 の 電 気 事 業 者 か らの 電 源 調 達 も可 能 と な る な ど選 択 の 自 由 度 が 向 上 した 。 さ ら に,小 売 り託 送 お よ び 料 金 設 定 ル ー ル が 明 示 さ れ,2000年
3月 よ り,我 が 国 に お い て も競 争 原 理 に基
づ く電 力 市 場 自 由 化 の 本 格 的 潮 流 が 動 き だ して い る。 今 後 は,新 電 気 事 業 の 経 営 効 率 の 向 上,供
た な環境 下 にお け る
給 信頼 度 の確保 の た めの電 力設備 形成 及 び公平性 のあ
る 系 統 運 用 と送 電 サ ー ビ ス の 確 立 が 求 め られ て い る 。 こ の よ う な 電 力 自 由 化 の 流 れ の 中 で,建
設 期 間 が 短 く,需 要 地 に近 接 し て 設 置 が 可
能 で あ り送 電 ネ ッ トワ ー ク へ の 負 担 が 軽 く,ま た ク リー ン で 地 球 温 暖 化 の 防 止 に 貢 献 す る こ とか ら,天 然 ガ ス コ ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン,マ
イ ク ロ タ ー ビ ンや 燃 料 電 池 な ど の新
エ ネ ル ギ ー 利 用 技 術 及 び 風 力 発 電 や 太 陽 光 発 電 な どの 自 然 エ ネ ル ギ ー 利 用 発 電 と い っ た 分 散 電 源 が 注 目 を集 め て い る。 総 合 資 源 エ ネ ル ギ ー 調 査 会 新 エ ネ ル ギ ー 部 会(2001 年 5月)に お い て は,2010年 策 維 持 ケ ー ス)は,原 合 は,1.4%に
度 に お け る 供 給 サ イ ドの 新 エ ネ ル ギ ー 導 入 見 通 し(現 行 対
油 換 算 で 約878万klで
あ り,1 次 エ ネ ル ギ ー 総 供 給 に 占 め る割
と ど ま る と見 込 ま れ て い る。 これ をふ ま え 官 民 の 最 大 限 の 努 力 を前 提 と
した 新 エ ネ ル ギ ー 導 入 見 通 し(目 標 ケ ー ス)で は,石 油 換 算 で1,910万klと 場 合 の 1次 エ ネ ル ギ ー 総 供 給 に 占 め る割 合 は,3.2%に
な り,こ の
な る こ とが 期 待 さ れ て い る。新
エ ネ ル ギ ー(再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー)に よ る電 力 の 導 入 促 進 の た め の 法 的 措 置 に よ る 諸 般 の 制 度 の 整 備 と並 ん で,こ
の よ うな 新 エ ネ ル ギ ー 利 用 の分 散 電 源 が 電 力 系 統 に導 入 さ
れ る に あ た っ て は,系 統 の 計 画 ・運 用 へ の 影 響 評 価,系 護 シ ス テ ム の 整 備,系
統 周 波 数,電
技 術 開 発 が 重 要 とな っ て い る。
圧,高
統 連 系 時 の 接 続 技 術 要 件 と保
調 波 な ど の 電 力 品 質 の 管 理 と制 御 に関 す る
一 方,電
力 自 由 化 に 伴 う電 力 系 統 運 用 に 係 わ る懸 念 も指 摘 され て い る。 規 制 緩 和 が
進 展 す る な か ア メ リ カ 西 部 地 域 の 大 停 電 事 故(1994年12月,1996年 月),マ
レ ー シ ア の 全 系 崩 壊(1996年
8月),ニ
7月,1996年
8
ュ ー ジ ー ラ ン ド北 島 の 長 期 間 停 電(1998
年 1月)な ど電 力 系 統 支 障 が 多 発 し て い る。 これ は 電 力 自 由 化 に よ り送 電 ネ ッ トワ ー ク は コ モ ン キ ャ リア 化 され,多
くの市 場 参 加 者 間 の複 雑 な 電 力 取 引 に よ りネ ッ トワ ー
ク 運 用 に歪 み が 生 じ,電 力 潮 流 が 混 雑(過 負 荷)状 態 に 陥 っ た こ とが 原 因 とい わ れ て い る。 これ らの 対 応 と して,送
電 可 能 容 量 の 算 定 と評 価,系
故 波 及 防 止 な どの 供 給 信 頼 性 確 保 に係 わ る 技 術 開 発,パ
統 安 定 度,電
圧 安 定 性,事
ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス 機 器 に
よ る送 電 可 能 容 量 の 向 上 技 術 が 求 め られ て い る。 ま た,ア
メ リ カ で 他 州 に 先 駆 け て電 力 自 由化 に踏 み 切 った カ リ フ ォ ル ニ ア 州 は,電
力 危 機 に襲 わ れ て い る。 州 の 4割 に あ た る1300万
人 が利 用 して い る最大 手 電 力会社
パ シ フ ィ ッ ク ・ガ ス&エ
レ ク ト リ ッ ク(PG&E)が
経 営 難 に よ る 資 金 不 足 か ら十 分 な
電 力 の 調 達 が で き ず,広
い 範 囲 で 計 画 停 電 を実 施 せ ざ る を得 な くな り,つ
い に は倒 産
に い た っ た 。 エ ネ ル ギ ー 分 野 へ の 競 争 導 入 の 旗 の 下 に 規 制 緩 和 が す す め られ,同 電 力 会 社 は 発 電 と送 電 部 門 が 分 離 さ れ,電 が 義 務 付 け ら れ て,そ
力 は 卸 電 力 取 引 所(PX)か
州の
ら調 達 す る こ と
こ か ら電 力 を購 入 して 企 業 や 一 般 消 費 者 に 送 電 ・販 売 す る とい
う仕 組 み と な っ た 。 同 州 で は,厳
しい 環 境 規 制 と不 透 明 な 電 力 需 要 動 向 の も とで コ ス
トの か か る 発 電 設 備 の 新 設 は こ こ十 年 ま っ た く行 わ れ て い な か っ た 。 この 状 況 に お い て,シ
リコ ン バ レ ー に 代 表 さ れ るIT産
業 の 急 成 長,人
口 の 急 増 加 さ ら に は豪 雨,寒
波,猛
暑 とい っ た 異 常 気 象 な どの 複 数 の 要 因 が 重 な っ て 電 力 需 要 が 急 増 加 し,電 力 供
給 力 不 足 に 陥 り電 力 価 格 が 暴 騰 し た こ とが この 危 機 の 第 一 要 因 と考 え られ て い る。 し か し,始
ま っ た ば か りの 自 由 電 力 市 場 の 中 で,発
電 事 業 者 が よ り高 く電 力 を 売 ろ う と
供 給 調 整 や 価 格 調 整 を は か っ た の で は な い か との 意 見,あ 市 場,強
制 的 な 発 電 設 備 の 売 却 命 令,ス
る い は 前 日入 札 型 ス ポ ッ ト
トラ ン デ ッ ドコ ス ト回 収 ま で の 決 済 価 格 へ の
プ ラ イ ス キ ャ ッ プ 制 な ど の 市 場 メ カ ニ ズ ム の 未 熟 さ に起 因 す る と い っ た 見 方 も あ る。 これ らの 対 応 と して は,供 計 画 手 法 の 確 立,需 発,双
給 信 頼 度 監 視 機 構 の 見 直 し,そ
給 運 用 と設 備 補 修 計 画 の 策 定,信
の維持 のた めの送 配電設 備
頼 度 解 析 ソ フ トウ ェ ア 技 術 の 開
方 向 情 報 通 信 技 術 の 開 発 の 重 要 性 が 認 識 さ れ て い る。
我 が 国 の 電 気 事 業 体 制 の あ り方 に 関 して は,2000年 に渡 っ て検 証 し,さ
し,電 力 市 場 の 自 由化 は,従 系 構 造,供
3月 の 部 分 自 由 化 の 効 果 を 3年
ら な る 自 由 化 を進 め る か 否 か を決 定 す る こ と とな っ て い る。 しか 来 の 供 給 体 制,エ
ネ ル ギ ー 事 情,国
際 あ るいは地域 間連
給 信 頼 性 及 び安 定 運 用 に 対 す る需 要 家 の 要 望 等 の 国情 に よ り そ の 選 択 す る
べ き道 も大 き く異 な る。 我 が 国 の電 力 事 業 は,世 界 で も最 も良 質 で 信 頼 性 の 高 い 電 力
を安 定 に供給 して きてい る ことか ら,今 後 の電力 自由化 の方 向 は,他 国 を模倣 す るこ とな く,我 が 国電気 事業 の特 性 に則 した独 自の最 適選 択 をす る こ とが望 まれ る。 本 書 にお い て は,電 力 自由化 とい う新 環境 下 にお いて電 気事 業 の経営効 率 の 向上 と 供 給 信頼 度 の確保 のた めの重 要 ソ フ ト及 びハ ー ド技術:電 力市 場 のた めの基礎 経済 理 論(第 2章 岡 田健 司),送 電 サー ビス と送 電料 金設 定理 論(第 3章 浅 野浩 志),短 期 限 界 費 用 と最 適 潮流 計 算(第 4章 久保 川 淳 司),系 統 維 持運 用 ・制御 とア ンシ ラ リー サ ー ビス(第 5章 栗原 郁夫 ,岡 田健 司),安 定度 評価 と固有値 解析(第 6章 的場誠 一), 供 給信 頼 度評 価 と電 力設 備 形成(第 7章 陳 洛 南),電 力系 統 の運 用 ・解析 支 援 シ ミュ レー シ ョ ン技 術(第 8章 中 西 要祐),分 散電 源連 系 と電 圧 管 理 技 術(第 9章 福 山 良 和),分 散 型電 源 系統 連 系 と単独 運転検 出技 術(第10章 と可 変 速 回転 機器 技 術(第11章 (第12章
舟橋俊 久),新 エ ネル ギー導 入
小 柳 薫),電 力 品 質 維 持 とパ ワ ーエ レク トロニ クス
荒井 純 一),新 エネ ルギ ー利 用 と分散 電源(第13章
系 統計 画 へ の影響 評価(第14章
藤 田吾郎),分 散 電源 の
新村 隆英)に つい て述べ る。 本書 におい て紹介 す る各
種 の先 端技 術 が,廉 価 で信 頼性 の高 い電力 を安 定的 に供 給 で きる電気 事業 及 び電力 系 統 の構 築 の一助 となる こ とを期待 してい る。
2001年 8月 監 修 横 山隆一
■監修者 横 山隆 一
工学博士 東京都立大学大学院 工学研究科 教授
■執筆 者 浅野浩志 荒井 純 一 岡 田健 司
工学博 士
(財)電力中央研究所 経済社会研究所 上席研 究員
博士(工学) (株)東芝 電力 システム社 電力 ・産業 システム技術開発セ ンター 技監 工学博 士
(財)電力中央研究所 経済社会研究所 主任研究員
久保 川 淳 司 博士(工学)広
島工業大学 工学部 知能機械工学科 助教授
栗 原郁 夫
工学 博士
小柳 薫
博 士(工学) 東電 ソフ トウエア(株)応 用技術部 次長
陳洛南
(財)電力 中央研 究所 狛江研究所 電力 シス テム部長
工 学博士
中西 要 祐
工学博士
新村隆英
工学博士
大阪産 業大 学 電気電子 工学科 助教授 富士電機(株)事 業開発室ITソ
リュー ション部 課長
University of British Columbia Department
of Electricaland Computer
福 山良 和
博士(工学)富
士電機 ㈱
藤 田吾 郎
博士(工学)芝
浦工業大学 工学部 電 気工学科 電力 システム研 究室 講 師
舟橋 俊 久
博士(工学)(株)明
的場 誠 一
工学博 士
■執筆 分担
第 1章 第 2章
事業開発室ITソ
Engineering
リュー ション部 担当課長
電舎 エネル ギー事業本部 電力事業部 電力技術部 主管技師
(株)開発計算 セ ンター 電力 システム部 解析技術室 グル ープ リーダ
横山 隆一
第 6章
的場 誠一
第12章
荒 井 純 一
陳
第13章
藤 田 吾 郎
岡田 健 司
第 7章
洛 南
第 3章
浅野 浩志
第 8章
中西 要祐
第14章
新 村 隆英
第 4章
久保川淳 司
第 9章
福 山 良和
第15章
横 山 隆一
第 5章
栗原 郁夫
第10章
舟橋 俊久
岡田 健司
第11章
小 柳
薫
目 第
1 章 1.1
電
力
自 由
化
動
次 向
と 技
術
課
題
電 力 自 由 化 の 背 景 と 供 給 形 態 の 変 遷
1 1
1.1.1 電 力 自 由 化 の 背 景
1
1.1.2 電 力 自 由 化 の 世 界 的 潮 流 と供 給 形 態
3
1.1.3 資 本 所 有 形 態 に よ る電 力 供 給 事 業 体 系 の 分 類
6
1.1.4 垂 直 統 合 型 と水 平 分 割 型 に よ る電 力 供 給 事 業 体 系 の 分 類
7
1.1.5 競 争 導 入 に よ る電 力 供 給 形 態 の変 遷
8
1.2
イ ギ リ ス に お け る 電 力 自 由 化 の 動 向
12
1.2.1 電 気 事 業 の 民 営 化 と完 全 競 争 型 供 給 形 態
12
1.2.2 プ ー ル 市 場 の 設 立 と電 力 取 引 の手 順
14
1.2.3 プ ー ル 市 場 で の 電 力 取 引 の構 造
16
1.2.4 競 争 導 入 後 の 電 気 事 業 へ の 影 響
18
1.2.5 完 全 自 由 化 へ 向 け て の 今 後 の 動 向
18
1.3
ア メ リ カ に お け る 電 力 自 由 化 の 動 向
1.3.1 ア メ リカ に お け る電 力 自 由 化 の 経 緯 1.3.2 FERC
Order
1.3.3 ISO設
立 に よ る 電 気 事 業 再 編
No.888とNo.889に
よ る 電 力 自 由 化 の 促 進
22 22 23 24
1.3.4 カ リ フ ォル ニ ア 州 の ハ イ ブ リ ッ ド型 電 力 取 引 形 態
25
1.3.5 送 電 線 情 報 シ ス テ ム の 設 置
28
1.4
欧 州 連 合(EU)に
お け る 電 力 自 由 化 の 動 向
28
1.4.1 EU電
力 市 場 自 由 化 指 令 の 背 景
28
1.4.2 EU委
員 会 の 電 力 市 場 自 由 化 の 提 案
30
1.4.3 自 由 化 電 力 市 場 の 選 択 制
31
1.4.4 送 電 事 業 の 機 能 分 離
32
1.4.5 EU域
33
内 電 力 市 場 構 想 と加 盟 国 の対 応
1.4.6 今 後 の 課 題
33
参考文献
第 2 章 電力市場のための基礎経済理論 2.1
電 力 産 業 の 概 要
34
36
36
2.1.1 電 力供 給体 制 と電力 系統 の特徴
36
2.1.2 電 力産 業 にお け る自然独 占性 と規制 の根拠
40
2.2
需 要 と 供 給 の 経 済 学 的 な 考 え 方
43
2.2.1 基本 的 な経 済問題
43
2.2.2 需 要 曲線 の 基本 的な性 質
44
2.2.3 供給 関数 と費 用概 念
46
2.3
完 全 競 争 市 場 で の 需 給 均 衡 と 社 会 厚 生
53
2.3.1 市場 構造 の特徴
53
2.3.2 完全 競争 市場 に お ける需給 均衡
55
2.3.3 消費 者余剰 ・生産 者余 剰 と社会 厚生
57
2.4
不 完 全 競 争 市 場 の 特 徴
59
2.4.1 独 占市場
59
2.4.2 独 占的競 争市場
61
2.4.3 寡 占(お よび複 占)市 場
61
2.5
電 力 自 由 化 に 伴 う 諸 問 題
参 考 文 献
62 65
第 3 章 送電サー ビス と送電料金設 定理論 3.1
67
送 電 サ ー ビ ス と 送 電 コ ス ト
67
3.1.1 オ ー プ ン ・ア ク セ ス と送 電 サ ー ビス
67
3.1.2 送 電 コ ス ト
69
3.2
送 電 プ ラ イ シ ン グ 手 法
70
3.2.1 総括 費 用方 式 と限界費 用 方式
70
3.2.2 固定 費 回収 のた めの ア クセ ス料 金 設定
72
3.2.3 限界 費 用方 式の特 徴 とノー ダル プラ イ シング
74
3.3
送 電 線 混 雑 管 理 と 送 電 利 用 権 の 導 入
83
3.3.1 送 電線 混雑 管理
83
3.3.2 送 電線 混雑 料金
86
3.3.3 送 電利 用権 の導 入
88
3.4
欧 米 諸 国 に お け る 送 電 料 金 設 定 方 式 の 動 向
90
3.4.2 ドイ ツの送 電料 金
93
3.4.3 ア メ リカの送電 料 金
96
3.4.4 北欧 の送 電料 金
99
3.5
日 本 の 託 送 料 金
100
3.5.1 託送制 度 の概 要
100
3.5.2 託送料 金体 系
102
3.6
今 後 の 課 題
104
参 考 文 献
第
90
3.4.1 イギ リスの送電 料 金
4
章
4.1
105
短 期 限 界 費 用
と 最 適 潮 流 計 算
短 期 限 界 費 用 の 算 出 方 法
107 107
4.1.1 短期 限 界費 用 の定 義
107
4.1.2 直流 法 潮流 計算 に基 づ くノーダル プ ライス の計算 法
108
4.2
最 適 潮 流 計 算 法 の 定 式 化
4.2.1 OPF問
題 の定式 化
110 111
4.2.2 目的関 数
112
4.2.3 等式制 約
112
4.2.4 不 等式 制約
112
4.3
内点法 による最 適潮 流計算の解 法
4.3.1 主 双 対 内 点 法 に よ るOPFの
定 式 化
113 113
4.3.2 主双 対 内 点 法 の ア ル ゴ リズ ム
116
4.3.3 主 双 対 内 点 法 に よ るOPF解
118
4.4
法 の 実 行 例
最 適 潮 流 計 算 法 の 拡 張
118
4.4.1 実 行 不 可 能 な運 用 条 件 に 対 す る 最 適 潮 流 計 算 法
119
4.4.2 電 圧 安 定 度 を 考 慮 し た 最 適 潮 流 計 算 法
120
4.4.3 安 定 度 制 約 を 考 慮 し た 最 適 潮 流 計 算 法
123
4.5
ま と め
127
参 考 文 献
第
5
章
サ ー
系 統 維 持 運 用
127
・制 御 と ア ン シ ラ リ ー
ビ ス
5.1
電 力 市 場 に お ける ア ン シ ラ リー サ ー ビス の
必 要 性 5.2
電 力 系 統 に お け る 系 統 維 持 運 用 ・制 御 の 現 状
130 132
5.2.1 系統 維持 運用 ・制御 の種 類
132
5.2.2 個 別 発電事 業者/需 要家 を対 象 とした系統 運 用 ・制 御
138
5.3
ア メ リカ にお け る ア ン シ ラ リー サ ー ビス の
考 え 方 と 問 題 点
140
5.3.1 ア メ リカにお け るア ンシラ リー サー ビス の考 え方
141
5.3.2 カ リフ ォル ニ ア州 にお け るア ンシラ リー サー ビスの 実例
148
参 考 文 献
第
130
6
章
6.1
安 定 度 評 価 と 固 有 値 解 析
156
159
電 力系統安 定度解析 手法 と電 力自由化 にお ける
そ の 役 割
159
6.1.1 電力 系統 の安定 度
159
6.1.2 近 年 の安定 度 と規制 緩和
160
6.1.3 安 定 度解析 にお ける固有値 法 の位 置 づ け
161
6.2
線 形 微 分 方 程 式 の 安 定 性 と 固 有 値 解 析
163
6.2.1 線 形微 分 方程式 の解 の固有 値 に よ る表 現
163
6.2.2 デ ジタル制 御系 に対応 す る固有 値解 析
166
6.3
電 力 系 統 解 析 に お け る 固 有 値 解 析 の 定 式 化
170
6.3.1 電力 系統 動特 性 方程式
170
6.3.2 固有 値 の数値 解析 手法
172
6.4
大規 模電 力系統 にお ける固有値 解析手 法
175
6.4.1 大 規 模 電 力 系 統 の 固 有 値 法 の 特 徴
175
6.4.2 行 列 の ス パ ー ス 性 を 考 慮 し た 固 有 値 計 算 法
177
6.4.3 固 有 値 計 算 の効 率 化
180
6.4.4 大 規 模 固 有 値 解 析 の 今 後 の 課 題
183
参 考 文 献
183
第 7 章 供給信頼 度評価 と電力設 備形成 7.1
供給信 頼 性と生産 コス トの評価法
185 185
7.1.1 等 価 負 荷 持 続 曲 線 と信 頼 性 指 標
187
7.1.2 直 接 た た み 込 み 法(RCT)に
189
よ る評 価
7.1.3
高 速 フ ー リエ 変 換 法(FFT)に
よ る 評 価
189
7.1.4
フ ー リエ 級 数 近 似 法(FEA)に
よ る 評 価
190
7.1.5 グ ラ ム シ ャ リエ 級 数 近 似 法(GCE)に 7.1.6
7.2
よ る評 価
比 較
191 192
電 力市場 における 需要家 向け信頼度 指標 と
そ の 評 価 法
193
7.2.1 需 要 家 向 け信 頼 度 指 標
193
7.2.2
モ ン テ カ ル ロ 法 に よ る 評 価
195
7.2.3
高 速 モ ン テ カ ル ロ 法 に よ る 評 価
196
多 地 域 電 源 拡 張 計 画 法
197
7.3
7.3.1 多 地 域 電 源 計 画 の 定 式 化
199
7.3.2
下 位 問 題 と解 法
200
7.3.3
上 位 問 題 と解 法
201
7.3.4
評 価
203
不 確実性 を考慮 した電源 拡張計画 法
203
7.4
7.4.1 2-ステ ッ ジ統 計 計 画 問 題 の 定 式 化
204
7.4.2 統 計 電 源 計 画 問 題 の 解 法
205
7.4.3
208
ア ル ゴ リ ズ ム
7.4.4 小 規 模 系 統 の 計 算 と比 較
210
7.4.5 大 規 模 系 統 の 計 算 と比 較
213
7.4.6
215
評 価
参 考 文 献
215
第 8 章 電力系統の運用 ・解析 支援 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 技 術 8.1
218
電 力 系 統 の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 技 術
218
8.1.1
系 統 解 析 ソ フ ト ウ ェ ア
219
8.1.2
シ ミ ュ レ ー タ
220
8.2
電 力 自 由 化 に お け る シ ミ ュ レ ー シ ョ ン の 課 題 例 222
8.2.1 配 電 系 統 に お け る分 散 型 電 源 の シ ミュ レ ー シ ョ ン の 必 要 性
222
8.2.2
送 電 線 の 利 用 に 対 す る シ ミ ュ レ ー シ ョ ン
224
シ ミ ュ レー シ ョ ン の 実 例
225
8.3
8.3.1 供 給 信 頼 度 評 価 解 析 支 援 ソ フ ト ウ ェ ア:PROMODIV
225
8.3.2 送 電 可 能 容 量 評 価 支 援 ソ フ トウ ェア:PSS/E
229
8.3.3 長 周 期 系 統 現 象 評 価 解 析 支 援 シ ミ ュ レー タ:EUROSTAG
233
8.4
電 力 系 統 の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 技 術 の 開 発 動 向
237
8.4.1 モ デ ル の ラ イ ブ ラ リー 化 と シ ミュ レ ー シ ョ ン結 果 の 可 視 化 技 術 237 8.4.2
リ ア ル タ イ ム シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 技 術
238
8.4.3
統 合 型 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 技 術
239
8.4.4 独 立 系(IPP)の
導 入 評 価 お よび 運 用 支 援 技 術
8.4.5 緊 急 時 給 電 指 令 の 公 平 性 の 検 証 技 術
参 考 文 献
240 241
242
第 9 章 分 散電源連系 と電圧 管理 技術 9.1
送電 系統の 電圧安 定性解析 による 管理
243 243
9.1.1 連 続 型 潮 流 計 算
244
9.1.2
P-Vカ
ー ブ の シ ナ リ オ 作 成
246
9.1.3
簡 単 な シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に よ る 比 較
247
送電 系統の想 定事故 解析 による電圧 管理
248
Look-Ahead法
249
配電 系統の 電圧 管理 のための 高速潮 流計 算
251
9.2 9.2.1
9.3
9.3.1 放 射 状 系 統 潮 流 計 算
9.4
252
電圧 制御機器 の最適整 定
9.4.1 最 適 整 定 問 題 の 定 式 化 Search(RTS)の
258
9.4.2
Reactive
9.4.3
最 適 整 定 方 式
261
9.4.4
シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に よ る 検 証
265
配 電系統の 電圧 制御機 器の 協調制 御
268
9.5
Tabu
257
概 要
259
9.5.1 協 調 制 御 方 式 の 基 礎 検 討
269
9.5.2 協 調 制 御 シ ス テ ム の 概 要
269
9.5.3
シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に よ る 検 証
270
ま と め
271
9.6
参 考 文 献
第10章
272
分散型電源系統連系と単独運転
検 出 技 術 10.1
273
分 散 型 電 源 系 統 連 系 と 電 力 品 質
273
10.1.1
周 波 数 変 動
273
10.1.2
電 圧 変 動
274
10.1.3
高 調 波
275
10.1.4
信 頼 度
276
10.2
単 独 運 転 検 出 の 必 要 性
277
10.2.1
単 独 運 転 と は
277
10.2.2
単 独 運 転 の 弊 害
278
10.2.3 従 来 の 単 独 運 転 検 出 技 術
278
10.2.4 受 動 的 方 式 と能 動 的 方 式
280
10.3
単 独運転 検出技術(受 動 的方式)
281
10.3.1 周 波 数 変 化 率 検 出 方 式(ROCOF)
281
10.3.2 電 圧 位 相 シ フ ト検 出 方 式
281
10.4
単独運 転検出技術(能 動 的方式)
10.4.1 無 効 電 力 変 動 方 式
283 283
10.4.2
QCモ
10.4.3
負 荷 変 動 方 式
ー ド周 波 数 シ フ ト方 式
285 287
10.4.4
周 波 数 シ フ ト方 式
287
10.4.5 次 数 間 高 調 波 注 入 方 式
288
10.4.6
そ の 他 の 能 動 的 方 式
288
単 独 運 転 検 出 リ レ ー シ ー ケ ン ス
289
10.5
10.5.1 周 波 数 変 動 量 の 検 出
289
10.5.2 無 効 電 力 変 動 方 式 の 単 独 運 転 検 出 シ ー ケ ン ス
290
10.5.3 無 効 電 力 変 動 方 式 に対 す る電 圧 変 動 低 減 対 策
291
10.6
今 後 の 課 題 と 将 来 展 望
292
10.6.1 分 散 型 電 源 複 数 台 連 系 時 の 単 独 運 転 検 出
292
10.6.2 誘 導 発 電 機 を用 い た 風 力 発 電 機 の 単 独 運 転 検 出
292
10.6.3 パ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス 技 術 や 通 信 網 を 活 用 し た 新 し い
自律 分散 型電 源 の実現 可能 性
参 考 文 献
第11章
294
新 エネル ギー導入 と可変速
回 転 機 器 技 術 11.1 11.1.1
294
297
新 エ ネ ル ギ ー 導 入 と 可 変 速 技 術 の 応 用
297
新 エ ネ ル ギ ー 電 源 の 系 統 導 入
297
11.1.2 風 力 発 電 の 概 要 と課 題
297
11.1.3 風 力 発 電 シ ス テ ム へ の可 変 速 技 術 の 応 用
299
11.2
可変速 揚水発 電 システムの構 造 と特徴
302
11.2.1 夜 間 揚 水 運 転 時 に お け る揚 水 電 力 調 整 が 可 能
303
11.2.2
303
系 統 安 定 度 の 向 上
11.2.3 発 電 運 転 時 に お け る運 転 効 率 の 向 上
11.3
可変 速揚水発 電 システムの 制御方式
304
304
11.3.1 過 渡 安 定 度 な ど の 短 時 間 領 域 で の 解 析
304
11.3.2 周 波 数 応 答 解 析 な ど の 長 時 間 領 域 で の 解 析
306
11.4
可変 速揚水発 電 システム と系統安定 度
311
11.4.1 可 変 速 機 に よ る 系 統 安 定 度 向 上 効 果 の 解 析 モ デ ル
311
11.4.2 可 変 速 機 の 安 定 化 装 置 の設 計 例
311
11.4.3 設 計 した 安 定 化 装 置 適 用 の 効 果
314
11.5
可 変速 回転機器 の系統連 系装置 と しての
適 用 研 究 事 例 11.5.1
317
回 転 形 系 統 連 系 装 置 の 構 成 と特 性,モ
デ リ ン グ
317
11.5.2 簡 単 な モ デ ル 系 統 で の 系 統 連 系 装 置 の 動 特 性 シ ミ ュ レー シ ョ ン319 11.5.3
ウ イ ン ド フ ァー ム と系 統 と の 連 系 装 置 へ の適 用 研 究 事 例
参 考 文 献
第12章
326
電 力品質維 持 とパ ワー
エ レ ク ト ロ ニ ク ス 12.1
322
328
電 力託送 と既存送 電線の送 電能 力向上
328
12.1.1
送 電 電 力
329
12.1.2
FACTS機
12.1.3
SSSC
334
12.1.4
UPFC
335
12.1.5
TCSC
336
12.1.6
TCBR
337
12.1.7
TCPST
337
部 分 系 統 の 運 用 と 制 御
338
12.2
器
330
12.2.1 自 励 式 直 流 送 電
338
12.2.2 他 励 式 直 流 送 電
340
12.2.3
サ イ リ ス タ ス イ ッ チ
341
12.2.4
限 流 器
343
高 調 波 と ア ク テ ィ ブ フ ィ ル タ
344
12.3.1
LCRパ
345
12.3.2
ア ク テ ィ ブ フ ィ ル タ
345
12.3.3
組 み 合 わ せ 型
345
電 力品質 にお ける今後の 多様 化 と課題
346
12.3
12.4
ッ シ ブ フ ィ ル タ
参 考 文 献
第13章
348
新 エ ネ ル ギ ー 利 用 と分 散 電源
350
13.1
概 要
350
13.2
背 景
352
13.2.1
新 エ ネ ル ギ ー へ の 転 換 政 策
352
13.2.2
研究
352
・普 及 支 援 体 制
13.2.3 電 力 業 界 の グ リー ン制 導 入
353
13.2.4 余 剰 電 力 の購 入
353
13.2.5
353
13.3
ESCOの
成 立
連 系 方 法
354
13.3.1 分 散 電 源 導 入 へ の 法 規 整 備
354
13.3.2
連 系 の 要 件
355
13.4
風 力 発 電
355
13.4.1
開 発 の 背 景
355
13.4.2
標 準 シ ス テ ム
355
13.4.3
基 本 技 術
356
13.4.4
導 入 事 例
357
太 陽 光 発 電
359
13.5.1
開 発 の 背 景
359
13.5.2
標 準 シ ス テ ム
360
13.5.3
基 本 技 術
360
13.5.4
導 入 事 例
361
13.5
13.6
コ ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン シ ス テ ム
361
13.6.1
開 発 の 背 景
361
13.6.2
標 準 シ ス テ ム
364
13.6.3
基 本 技 術
365
13.6.4
開発
366
13.7
・導 入 状 況
燃 料 電 池
369
13.7.1
開 発 の 背 景
369
13.7.2
標 準 シ ス テ ム
370
13.7.3
基 本 技 術
371
13.7.4
導 入 事 例
372
ま と め
373
そ の ほ か の 開 発 動 向
373
13.8 13.8.1
13.8.2 分 散 型 電 源 の 限 界
374
13.8.3
374
今 後 の 動 向
参 考 文 献
第14章
374
分 散 電 源 の 系 統 計 画 へ の影 響 評 価
14.1
背 景:分
散 電 源 の 影 響 評 価
14.2
影 響 評 価 の 指 標
376 376 377
14.2.1 最 適 潮 流 計 算 の概 要
377
14.2.2
379
14.3
評 価 指 標
フ ァ ジ ィ 指 標 に よ る 総 合 評 価
380
14.3.1
送 電 損 失
381
14.3.2
環 境 影 響
382
14.3.3
系 統 混 雑 度
382
14.3.4
系 統 信 頼 度
382
14.3.5
電 圧 分 布
383
14.3.6
総 合 評 価
383
14.4
適 用 事 例
384
14.4.1
モ デ ル 系 統 と 設 定
384
14.4.2
評 価 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン(1):託
送 な し の 場 合
384
14.4.3
評 価 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン(2):託
送 が あ る 場 合
390
14.5
考 察
参 考 文 献
第15章 15.1 15.1.1
電 力 自 由 化 の 今 後 の 展 望
395
395
397
わ が 国 に お け る 電 力 自 由 化 の 動 向
397
部 分 自 由 化 の 採 用
397
15.1.2 電 力 自 由 化 の 効 果 の 検 証
399
15.1.3
わ が 国 の 小 売 部 分 自 由 化 に お け る制 度 整 備
399
主要諸 国にお ける電 力自由化 の動向
401
15.2
15.2.1 電 力 市 場 統 合 へ 向 け て の 諸 国 の 動 向
401
15.2.2
フ ラ ンス の 電 力 自由 化 動 向
408
15.2.3
北 欧 諸 国 の 動 向
410
15.2.4
ド イ ツ の 動 向
413
15.2.5
イ タ リア の 電 力 自由 化 動 向
415
15.2.6
ス ペ イ ン の 電 力 自由 化 動 向
416
15.2.7 EU区
15.3
域 電 力 市 場 統 合 の た め の 新 た な取 り組 み
電力市場 自由化 に伴 う諸課題
419
15.3.1 電 力 系 統 の計 画 ・運 用 に お け る諸 課 題
419
15.3.2 送 電 線 開 放 に 伴 う諸 課 題
420
15.3.3 電 気 事 業 の競 争 へ の 対 応
421
15.4
送 電可能容 量の算 定 と公開
422
15.4.1 競 争 的 電 力 取 引 と送 電 可 能 容 量 算 定
422
15.4.2 送 電 可 能 容 量 の 定 義
423
15.4.3 送 電 可 能 容 量 の 算 定
424
15.5
地 域送電機構(RTO)に
最 終 規 則(Order
関す る
2000)
426
15.5.1 地 域 送 電 機 構(RTO)の
提 案
426
15.5.2 地 域 送 電 機 構(RTO)の
特 徴 と機 能
427
15.5.3 地 域 送 電 機 構(RTO)の
形 成 動 向
428
参 考 文 献
索
417
引
429
433
第 1章 電力 自由化動向 と技術 課題
1.1電
力自由化の背景と供給形態の変遷
1.1.1電
力 自由化の背景
電 力 ・ガ ス ・水 道,電
信 ・電 話,鉄
規 制 の も とに あ り,参 入 規 制,料
道 な どの 産 業 は,公
金 規 制,事
業 規 制,業
そ の 内 容 は産 業 に よ り若 干 異 な る もの の,幅
益 事 業 と して 伝 統 的 に政 府
務 規 制 や 安 全 ・保 安 規 制 な ど,
広 い 制 約 を受 け て きた.電
気 事 業 な どへ
公 的 規 制 が 必 要 で あ る と考 え ら れ て き た 理 由 は,自 然 独 占 が 成 立 す る こ と,電 気 は 日 常 生 活 や 産 業 に不 可 欠 で あ る こ と,設 備 投 資 額 が 大 き く事 業 リス ク が 高 い こ と,エ
ネ
ル ギ ー の 確 保 な ど政 策 的 な側 面 が 強 い こ と な どが あ げ ら れ る.こ の よ う な 自然 独 占 性 は,あ
る産 業 の 市 場 需 要 に 見 合 っ た供 給 量 の 生 産 が,技
っ て 行 わ れ た 方 が,複
術 的 特 性 か ら,単 一 企 業 に よ
数 の 企 業 に よ る供 給 よ り も費 用 が 安 くな る と い う性 質 を 意 味 す
る. しか し,市 場 に お け る供 給 者 を特 定 企 業 の み に託 す 場 合,価 が 発 生 す る お そ れ が あ るの で,公 と な る.一
方,規
的 機 関 に よ る料 金 規 制 な どが 参 入 規 制 と同 時 に必 要
制 関 連 費 用 の増 大,規
規 制 の 非 効 率 面 も指 摘 され,規
格 支 配 な ど独 占 の 弊 害
制 の 目的 と手 段 間 の 不 適 合 に よ る 損 失 な ど,
制 自体 の 再 検 討 も行 わ れ て き て い る.
1970年 代 以 降,ア メ リカ,イ ギ リス や 日本 な ど の 主 要 国 を 中 心 に,電 気 通 信,運 輸, 金 融,鉄 た.参
道 な ど の 多 くの 産 業 分 野 に わ た っ て規 制 緩 和(deregulation)が
入 規 制 や 価 格 規 制 を緩 和 す れ ば,新
実 施 され始 め
規 企 業 の 参 入 に よ る競 争 や新 規 企 業 と既 存
企 業 と の 間 お よ び 既 存 企 業 間 で の 価 格 競 争 が 発 生 し,競 争 の 導 入 ・促 進 を通 じて,多 様 な サ ー ビ ス の 提 供,料
金 水 準 の 低 下,料
金 体 系 の 多 様 化,技
術 革新 の促進 な どが期
待 で き る と考 え られ る よ う に な っ て きた か らで あ る. こ の よ う な 背 景 の も と に,近 年,諸
分 野 の 規 制 緩 和 あ る い は 自 由 化 が 進 め られ,こ
れ ま で 自 然 独 占 が 成 立 し,独 占 が 認 め れ て き た 公 共 事 業 に お い て も競 争 原 理 の 導 入 が 行 わ れ て い る.特 カ で は,カ
ー タ ー 政 権 時 代(1970年
緩 和 が 行 わ れ,レ に,ガ
に,欧 米 で は1970年
代 後 半 か ら規 制 緩 和 が 始 ま っ た.ま ず,ア
代 後 半)に 陸 上 輸 送,航
空,電
メリ
気通 信 の分野 で規制
ー ガ ン 政 権 で は さ ら に これ らの 分 野 で の規 制 緩 和 を促 進 す る と と も
ス ・電 力 分 野 に も競 争 が 導 入 され た.イ
国 有 企 業 の 民 営 化 に 伴 っ て,石
油,陸
ギ リ ス で は,サ
上 輸 送,電
気 通 信,ガ
ッチ ャー 政 権 時 代 に,
ス,電
力 に競 争 が 導 入 さ
れ た. 日本 で も,1985年
のNTT民
割 ・民 営 化 さ ら に1995年
営 化 と 競 争 導 入,1987年
のJAL民
の ガ ス ・電 力 へ の 競 争 導 入 と,高
営 化,国
鉄 の分
度 成 長 が 終 りを遂 げた
1980年 代 後 半 か ら,経 済 の 活 性 化 対 策 と し て規 制 緩 和 策 が と られ て い る.こ の よ うな 内 外 の 規 制 緩 和 の 背 景 と し て,図1.1に
示 す よ う に,技
術 革 新,ニ
ー ズ の 多 様 化,経
済 の 成 熟 化,国
際 化 と い っ た 経 済 社 会 の 基 本 潮 流 の 変 化 が 指 摘 され て い る.
特 に,1970年
代 後 半 か ら始 ま っ た 公 益 事 業 へ の 規 制 緩 和 の 流 れ の 中 で,従 来 よ り,
自然 独 占 が 成 立 す る と考 え られ て い た ネ ッ トワー ク型 産 業 に も競 争 導 入 が な され た こ と が き わ め て 特 徴 的 で あ る.電 力 事 業 の 規 制 緩 和 あ る い は 自 由 化 の 固 有 の 背 景 と し て,と
りわ け,以 下 の 状 況 を あ げ る こ とが で き る
①
分 散 型 電 源 の 普 及:技
図1.1規
術 革 新 に よ り,従 来,自
然 独 占が 成 立 す る と考 え ら れ,
制 緩 和 推 進 の 因 果 関 係(参 考 文 献 6よ り作 成)
独 占 が 認 め られ て き た 分 野 へ の 分 散 型 電 源 の参 入 が 可 能 に な っ た.小
規模 発電 が
大 規 模 発 電 に 対 抗 で き る よ う な 技 術 的 ・制 度 的 な 基 盤 が で き上 が り,従 来 の 発 電 分 野 に お い て,独
占体 制 が 崩 れ,電
力 分 野 に お け る規 制 緩 和 の 推 進 要 因 の 一 つ で
あ る と考 え られ る. ②
エ ネ ル ギ ー 間 競 合:電
力 産 業 の ほ か に,ガ
ス 産 栄 お よ び 石 油 産 業 に お い て,エ
ネ ル ギ ー の 供 給 お よ び 利 用 方 法 に つ い て 技 術 開 発 が 進 み,特
に 熱 需 要 を め ぐっ て
の各 エ ネ ル ギ ー 産 業 間 で の 競 争 ・競 合 が 強 ま っ て い る. ③
発 電 ・送 電 部 門 を 独 占体 制 に お き,配 電 部 門 を 地 域 独 占 体 制 に お く こ とが 企 業 の効 率 化 や 活 性 化,料
金 の 低 廉 化,サ
ー ビ ス の 多 様 化 な ど に弊 害 を もた らす と考
え られ,競 争 体 制 を 導 入 した 方 が これ らが 改 善 さ れ る とい う認 識 が,他 の 産 業(航 空 産 業 や ガ ス 産 業 な ど)に お け る規 制 緩 和 の 実 績 を通 じ て 強 ま った こ と. ④ECや
北 ア メ リカ に お け る電 力 の 広 域 運 営 が 進 行 し,こ
れ を 可 能 な 限 り競 争 体
制 で 運 営 す る こ と が 効 率 化 を促 進 す る と い う考 え方 が 支 配 的 と な っ て きた こ と. これ ら の ほ か に も,首 都 圏 の 電 力 需 給 の 逼 迫,電 分 野 で の 規 制 緩 和 の 背 景 と して 考 え られ る.さ
気 料 金 の 内 外 価 格 差 な ど も,電 力
ら に,イ
ギ リス で は サ ッチ ャー 政 権,
ア メ リ カ で は 共 和 党 政 権 が 公 的 規 制 の 削 減 と市 場 原 理 導 入 を 強 く主 張 した よ う に,政 策 的 に"小
さ な 政 府"へ
の志 向 が 強 くな っ て い る こ と も見 逃 せ な い.
わ が 国 の 電 気 事 業 に お い て は,戦 後 9電 力 体 制(1978年 電 力 体 制)と 呼 ば れ る地 域 独 占 の 供 給 体 制 が と られ,電 体 系 に つ い て 詳 細 な 規 定 が 設 け られ て い る.電 な 規 制 を 受 け て い る理 由 の一 つ と し て,電
以 降 は 沖 縄 電 力 が 加 わ り10
気 事 業 法 に基 づ き参入 や 料金
力 産 業 が,一
般 の産 業 と異 な り,公 的
力 産 業 自体 が 自然 独 占性(natural
mono
poly)と い う 特 別 な 技 術 的 要 件 を 備 え て い る と考 え られ て い る.さ ら に,電 力 は,一 般 の 財(製 品 や サ ー ビ ス)と 異 な り,日 常 生 活 や 産 業 活 動 に 必 要 不 可 欠 で あ る こ と,大 規 模 な 設 備 形 成 が 要 求 さ れ,埋 避,さ
没 費 用 が 大 き く事 業 リス ク が 高 い こ とや 二 重 投 資 の 回
ら に破 滅 的 競 争 の 防 止 な ど も公 益 事 業 規 制 の 根 拠 と して あ げ られ て い る.
さ ら に,発
電 用 燃 料 な どエ ネ ル ギ ー の 確 保 な ど の 政 策 的 な 必 要 性 が あ る こ と も考 え
られ て きた.し
か し,技 術 進 歩 の 変 化 や 規 制 に よ る費 用 と効 率 を比 較 検 討 す る こ との
必 要 性 が 注 目 さ れ る よ う に な り,こ れ ら の 規 制 の根 拠 に つ い て も再 検 討 さ れ る よ う に な っ た.そ
の 結 果,規
制 関 連 費 用 の増 大 や,規
制 目的 と規 制 手 段 との 間 の 不 適 合 に よ
る 損 失 な ど の 非 効 率 性 に も注 目 が 集 ま る よ う に な っ て きた.
1.1.2電 旧 来,電
力 自由化の世界 的潮流と供給形態 力 供 給 シ ス テ ム は,国 営,公
営,私
営 と い っ た 企 業 形 態 の 差 異 は あ る もの
の,発 送 配 電 一 貫 型 の電 気 事 業 者 を 中 心 と し た 供 給 体 制 で あ っ た.こ 者 は,公 益 事 業 と し て,一 られ て い た.そ
定 の供 給 地 区 に 独 占 的 に 電 力 を販 売 す る権 利 を 法 的 に認 め
の一 方 で,需
広 範 な規 制 を受 け て い た.こ 年 代 後 半 か ら,民
れ ら の電 気 事 業
要 家 に供 給 義 務 を 負 い,規
制 当 局 か ら料 金 や 参 入 な どの
の よ う な 電 力 事 業 シ ス テ ム の あ り方 へ の 疑 問 か ら,1970
営 化 や 規 制 緩 和 に よ る競 争 原 理 導 入 の 兆 しが 見 え 出 し て い る.
電 気 事 業 へ の 競 争 原 理 の 導 入 は,ア メ リ カ に お い て,1978年 制 政 策 法(PURPA:Public
Utilities Regulatory
Policies
に成立 した公益 事業 規 Act)の 発 効 に よ り,QF
(qualifying facilities:認 定 設 備)と 呼 ば れ る非 電 気 事 業 者 が 電 力 市 場 へ の 参 入 を認 め られ た こ と に始 ま る.そ
の 後,こ
のQFやIPP(Independent
系 発 電 事 業 者)か らの 供 給 力 の調 達 が 拡 大 し,1992年
Power
Producer:独
の エ ネ ル ギ ー 政 策 法(EPAct)の
成 立 に よ り,非 電 気 事 業 者 の 発 電 市 場 へ の 自 由 な参 入 が 認 め ら れ た.し
か し,送 電 線
の ア ク セ ス が 問 題 とな り,卸 電 力 市 場 の 自 由 化 が 不 完 全 な 状 態 で あ っ た.そ 1996年
に,連 邦 エ ネ ル ギ ー 規 制 委 員 会(FERC:Federal
mission)は,「
Energy
こ で,
Regulatory
Com
送 電 線 の 開 放 及 び 回 収 不 能 投 資 費 用 に 関 す る 最 終 規 則(Order
888)」 と 「送 電 線 の 情 報 公 開 お よ び 運 営 に 関 す る 最 終 規 則(Order し,電 気 事 業 者 は す べ て の 発 電 事 業 者(IPPを 電 料 金 の 算 定 が 義 務 づ け られ,競 一 方,イ
立
No.889)」
No. を制 定
含 む)へ の 送 電 網 の 開 放 と非 差 別 的 な 送
争 的 な 卸 電 力 市 場 の 実 現 へ の 道 が 開 か れ た.
ギ リ ス で は 戦 後 復 興 期 に 建 設 さ れ た 数 多 くの 老 朽 発 電 所 建 て 換 え の 時 期 を
迎 え て い た.電
力 会 社 が 国 有 独 占形 態 で あ っ た こ と に加 え,国
政 治 的 に利 用 さ れ て い た こ とや,小 策 の 流 れ か ら,1990年
内 炭 や メ ー カ保 護 な ど
さ な 政 府 を標 榜 とす る サ ッチ ャ ー 政 権 の 民 営 化 政
に イ ン グ ラ ン ド ・ウ ェ ー ル ズ 地 域 に お い て,国 有 電 気 事 業 が,
発 電 ・送 電 ・配 電 の 各 社 に 分 離 さ れ,発
電 と小 売 供 給 に 競 争 が 導 入 さ れ た.そ
の 後,
北 欧 諸 国 や ニ ュ ー ジ ー ラ ン ドな ど,世 界 各 国 で 電 力 市 場 の 自 由 化 が 進 展 し て い る. この よ う な ア メ リカ で の 競 争 的 卸 電 力 市 場 の 創 設,イ 行,ヨ
ー ロ ッパ の 発 電 自 由 市 場 統 一 の進 展 が,わ
与 え て い る.1995年12月
ギ リスで の完全 自由化 への移
が 国 の 電 気 事 業 の あ り方 に も影 響 を
に施 行 さ れ た 改 正 電 気 事 業 法 に よ り,卸 電 気 事 業 へ の 参 入
規 制 が 原 則 と し て 撤 廃 さ れ,電
力 会 社 の 電 源 調 達 に係 る入 札 制 度 が 導 入 さ れ た.そ
の
落 札 価 格 は 上 限 価 格(電 力 会 社 が 自 ら電 源 開 発 した 場 合 に か か る コ ス ト)よ り20∼40 %ほ
ど安 い もの と な り,発 電 部 門 へ の参 入 自 由 化 は初 期 の 効 果 を達 成 し て い る との 評
価 も得 られ た.そ
こ で,さ
らな る効 率 化 の手 段 と し て 小 売 り供 給 の 自 由 化 を始 め とす
る競 争 導 入 の 論 議 が 電 気 事 業 審 議 会 に お い て 進 め られ,2000年
3月21日
よ り小 売 り
の 部 分 自 由 化 が 実 施 され る は こ び と な っ た. ア メ リ カ に お い て,1978年
に成 立 した 公 益 事 業 規 制 政 策 法 の 発 効 に よ り,QFと
呼
ば れ る 非 電 気 事 業 者 が 電 力 市 場 へ の 参 入 を認 め られ た こ とに よ り,電 力 自 由化 が は じ ま っ た こ と は先 に述 べ た.そ ル ニ ア 州 で は,1994年
の 後 は,競 争 導 入 に 関 し て 先 進 的 な 立 場 を と る カ リ フ ォ
4月 に 提 案 さ れ た 電 力 事 業 再 編 指 令 後,1996年
に直 接 ア ク セ ス(小 売 自 由化)を 実 施 す る こ とが 法 制 化 さ れ た.1998年 卸 プ ー ル 市 場 と し て 需 給 調 整 を 行 う電 力 取 引 所(PX:Power
System
時 に,直 接 ア ク セ ス 制 度 も 導 入 され,す
事 業 者 を 選 択 で き る よ う に な っ た(全 面 自 由 化).こ
3月31日
exchange)と
の 運 用 制 御 ・監 視 を 担 う独 立 系 統 運 用 機 関(ISO:Independent 運 営 が そ れ ぞ れ 開 始,同
に は,全 需 要 家
れ は,卸
に,
系 統 設備
Operator)の
べ ての需 要家 が供給
プ ー ル 市 場 と直 接 ア ク セ
ス 制 度 の 両 者 を 含 む ハ イ ブ リ ッ ト型 供 給 シ ス テ ム と も呼 ば れ,ま たISOとPXの
機能
は明 確 に 分 離 さ れ て い る. イ ギ リス で は,長
ら く電 力 国 有 化 が 続 い て い た が,サ
年 電 気 法 」が 成 立 し,1990年 割 ・民 営 化 さ れ た.ま な っ た.電
4月 に 国 営 電 力 会 社 は発 電 会 社 3社 と送 電 会 社 1社 に分
た,従 来 の12地
域 電 力 局 も そ の ま ま民 営 化 さ れ12配
気 法 の 成 立 に よ りプ ー ル 制 度 が 導 入 さ れ,電
き る よ う に な っ た.民 れ,政
ッチ ャ ー 政 権 の も とで 「1989
営 化 後,電
力 を商 品 市 場 の よ う に売 買 で
気 事 業 の 規 制 機 関 と し て,従
府 か らの 独 立 性 の 強 い電 気 事 業 規 制 局(OFFER)が
電会 社 と
来 の電気 会議 が廃 止 さ
新 た に設 置 さ れ た .2001年
3月 よ り,イ ギ リス で は小 売 市 場 完 全 自 由 化 の た め の 環 境 整 備 な ら び に 電 力 取 引 の 枠 組 み の 再 構 築 を 実 施 した. 最 近 で は,ア ducer)の
メ リ カ に お け る 独 立 系 発 電 事 業 者(IPP:Independent
興 隆 と送 電 線 開 放 の 動 き,EC統
ス(TPA:Third
Party
Access)の
図1.2
Power
Pro
合 に よ る電 力 市 場 の 単 一 化 と第 三 者 ア ク セ
動 き,多
くの途 上 国 に お け る電 気 事 業 の 民 営 化 と
電 気 事 業 に お ける競 争 原 理 導 入 の 流 れ
図1.3 電力 自由化 に伴 う供 給形態の転換
自由化 な ど,来 世紀 に向 けて,電 気事 業 の再編 が世 界 的な潮 流 にな って い る(図1.2参 照). 世 界 的 に電 気事 業 の供 給 体制 は,発 送 配電 一貫 の独 占供給 体 制か ら,発 送 配電 部 門 お よび供 給部 門 の分離 供給 体制 へ と移行 しつつ あ る.こ れ ら分 離供給 体 制 は,送 配電 網 への公 平 な アクセ ス,発 電 ・供給 事 業へ の参入 自由化 と公正 な競 争 の確保 のた めに 採 用 され る.特 に,送 配電 事 業 で は,経 済 的 な観 点 か ら も,自 然独 占が容認 され る. そのた め,送 配電 設備 の公平 な利 用 と適正 な設備 形 成 を達成 し,独 占に よ る弊 害 を排 除 す るた め に,託 送料 金 規制 や託 送義 務 な どの公的 規制,発 電や供 給事 業 か らの分 離 (組織 分離 や機能 分離)を 実施 す る方 向 にあ る(図1.3参
照).
次項 以下 には,こ れ まで に諸 国で採 用 され て きた電力 供給 形態 とその変 遷 を電力 自 由化 の進展 に合 わ せて整 理 す る.さ らに,自 由化 が進 んで い る代 表 的な例 としてア メ リカ,イ ギ リス(イ ング ラ ン ド ・ウ ェール ズ),北 欧諸 国,ECの
電 力市 場 の単 一化構 想
な どの概 要 を紹介 す る.
1.1.3資
本所有形態 によ る電力供給事 業体系の分 類
資 本 の 所 有 形 態 に よ っ て,電 (1)国
気 事 業 者 は大 き く,国 営,公
営,私
営 に 分 類 さ れ る.
営
一 般 に,国 家 が 所 有 す る 企 業 を さす.た で は公 社 と呼 ん で い る.こ と に す る.ま た,株
こで は,厳
だ し,政 府 が 全 額 出 資 して い る も の を 日本
密 に 完 全 所 有 で な い も の も含 め て 国 営 と呼 ぶ こ
式 会 社 の 形 態 を と らず,国
体 制 下 の 企 業 も狭 義 で 国 営 とい え よ う.た
家 が 直 接 経 営 す る企 業 お よ び 社 会 主 義
とえ ば,フ
ラ ン ス 電 力 公 社(EdF),イ
タリ
ア 電 力 公 社(ENEL)な
(2)公
どが,国
営 に属 して い た.
営
公営 とは州 また は市町村 な どの地方 自治体 が所 有 す る企業 を意 味 す る.大 規模 な電 源 開発 は,大 規模 な資金 を要 す る上 に,国 家 のエネ ルギ ー政策 に密 接 な関係 が あ るの で,発 電事 業者 に は国営 が比 較 的多 いの に対 して,配 電 系統 規模 と行政 区画 が類 似 し てい るケ ースが 多 い こ とな どか ら,配 電業 者 には公営 の ものが 多 い. (3)私
営
私 営 は私 的 資 本 に よ る所 有 で あ る が,一
部 に公 的 資 金 が 含 まれ て い る 場 合 もあ る.
た と え ば,国 営 か ら民 営 化 さ ら た イ ギ リス のNational は,株
式 の 約60%が
民 間 に 売 却 さ れ た が,残
Power社
りの 約40%は
やPower
Gen社
で
政 府 が所有 す るケー スで
あ る. 国 営 中 心 の 企 業 体 制 で は,民
間 投 資 導 入 に よ る合 理 化 を 目 的 と して,株
民 営 化 さ ら に競 争 導 入 を検 討 ま た は 実 施 して い る.一 方,公 で は,規 制 緩 和 に対 す る防 御 策 と し て,市
式会社 化 や
営や私 営 中心 の企業 体制
場 支 配 力 の 強 化 を 目的 とす る合 併 ・統 合 が
く り広 げ られ つ つ あ る.
1.1.4垂
直 統合型 と水平分割 型 による電 力供 給事業体系の 分類
発 送配電 事業 を同一 事業 者が 一貫体 制 で行 うか,分 業体 制 で行 うか とい う分 類 もで きる. (1)垂
直 統合 型供 給体 制
この供給 体制 は,発 送配 電事 業 を同一事 業 者が一 貫体 制 で行 う.さ らに,こ の体 制 は以 下 の 2種類 に大別 す る こ ともで き る. ①
従 来,多 数 の小 規模 な電 気事 業者 が存 在 してい たが,規 模 の経 済性 の効 率化 を 図 る こ とを目的 として,統 合 し国家 の一 元的 な管理 下 にお く国有 1社 に よる独 占 的体 制 に移行 した ケー スで あ る.
②
あ る程 度 まと まった需要 が 見込 まれ る大都 市で,公 営 事業 者 が その供給 地 区 の 需 要の ほ とん どを 自社 の発 電 設備 で賄 うこ とによって安 定供 給 を確保 し,地 域熱 供給 事業 な ども兼 業 す る こ とに よ って,効 率 的 な事 業運 営 を めざ した ケー スで あ る.
(2)水
平分 割型 供給 体制
従 来,こ の水平 分割 体制 は,競 争導 入 とは直接 関係 な く,発 送 配電 が 別 々の事 業 に よっ て行わ れて い る分 業体 制 を意 味す る.し か し,最 近 の動 向で は,競 争 導入 に伴 い, 各部 門 間の相 互補 助 を禁 止 して系 統使 用料 金の透 明性 を確保 す るため に,各 部 門 ご と
に水 平分 割 して別 会社 化 を図 るケ ース もあ る.ま た,EU指
令 の よ うに,会 計上 の分 離
を行 うケー ス もあ る. 送 電系 統運 用部 門 を発電 部 門 よ り引 き離 し,国 家 に よる所 有 また は複 数 発電 事業者 に よ る共 同所 有 の もとで,自 然独 占を維持 し,発 電部 門 のみ競 争 を導入す るケー ス も あ る.こ の とき,配 電 部 門 を配電 系 統運 用部 門 と供 給部 門 に分割 して,配 電系統 運 用 部 門 は自然独 占の ま まと し,供 給 部 門 に も競争 を導入 す る再 編 が進行 してい る.電 気 事 業体 制 の水 平分 割 を どの段 階 まで進 め るか は,競 争 導入 の進展 度合 い と密接 な関係 が あ る とと もに,各 国の エネル ギー政 策 な ど個 別 の事情 に左 右 され る.
1.1.5競
争導入 による電力供給形 態の変遷
電 気 供 給 形 態 は,競 争 導 入 や 自 由 化 の 度 合 い に よ っ て,"独 場 自 由 型 供 給 形 態","送 さ れ る.こ (1)独
こ で は,そ
電 線 開 放 型 供 給 形 態","完
占 的 な 供 給 形 態(monopoly
電 か ら送 電,配
全 自 由 型 供 給 形 態"の
電市
四つ に大別
れ ら の 市 場 構 造 の 違 い と電 力 供 給 上 の特 徴 に つ い て 解 説 す る.
独 占 的 供 給 形 態(monopoly し,発
占 的 供 給 形 態","発
model)を
model) とる 国 の 電 気 事 業 者 は,発
送 配 電 設 備 を所 有
電 ま で を垂 直 的 に 統 合 さ れ た 独 占 企 業 体 で あ る(図1.4参
照).
こ れ らの 電 気 事 業 者 は,一 定 の 供 給 地 区 に独 占 的 に 需 要 家 に電 力 を 供 給 し て い る.こ の 体 制 で は,電
気 事 業 へ の 新 規 参 入 が き び し く制 限 され て お り,発 電 部 門 や 供 給 部 門
の い ず れ に も競 争 は 導 入 され て い な い.よ
っ て,こ
の 段 階 で は,既
存の 発電事 業者 が
独 占 的 に 供 給 して い る た め,規 制 の 対 象 外 と な る独 立 系 発 電 事 業 者(IPP:indepen dent power
producer)が
参 入 す る余 地 は な い.た
だ し,供 給 力 の 一 部 を,種
を受 け る卸 発 電 事 業 者 か ら購 入 す る ケ ー ス もあ る.
図1.4 独 占的供給形態 の構造
々の規 制
私 営,国
営 とい っ た 経 営 形 態 の 違 い は あ る もの の,1995年
以 前 の 日本,フ
イ タ リア な どが,こ の モ デ ル に属 す る.ま た,公 共 事 業 規 制 政 策 法(PURPA)に 認 定 施 設(QF)が
ラ ン ス, よ って
発 電 市 場 に 参 入 す る前 の ア メ リカ の 電 気 事 業 体 制 も含 ま れ る.再 生
可 能 エ ネ ル ギ ー 発 電 設 備 や コ ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン な ど に つ い て は,発 電 事 業 許 可 が 不 要 で あ っ た り,自 家 発 電 か らの 余 剰 電 力 につ い て は 回避 可 能 コ ス トで 買 い 取 る こ とが, 法 律 で 義 務 づ け られ て い た りす る な ど,次 の 段 階 で あ る発 電 自 由 化 へ の 端 緒 と な る ケ ー ス もあ る .た だ し,卸 電 気 事 業 者 との 買 電 は,供 給 義 務 に基 づ く供 給 で あ る ケ ー ス が 多 い. (2)発
電 市 場 自 由 化 型 の 供 給 形 態(purchasing
この供給 形態 は,図1.5に
agency)
示 す よ うに,送 配 電部 門 につ いて は既存 の電 気事 業者 に
よ る系統 設 備 の独 占 的所 有 と利 用 が認 め られ る一 方 で,発 電 部 門 で は独 占が 撤 廃 さ れ,新 規参 入 が 自由化 され た供 給 体制 で あ る.供 給 域 内で送 配電施 設 を所 有 し,最 終 需 要家 に電 力 を供給 す る既存 の電 気事 業者 は,必 要 とす る供 給力 の一部 を,規 制 の緩 和(撤 廃)に よ り参入 して きたIPPな
どの他 の発電事 業者 か ら買電 す る.
こ こで は,発 電部 門 の一部 に競 争 が導 入 され,電 力会 社 が所有 す る既存 の発 電設 備 まで競 争 入札 の対 象 には な らない.こ の場 合,既 存 の電気事 業者 は自 ら新 規 の発電 所 を建設 せ ず,IPPな
どの他 の発 電事 業者 を対 象 とし競 争入札 が行 わ れ る.契 約 に先立
ち,既 存 の電 気事 業者 は,電 源 の規模 や型,必 要 電力 量や そ の他 の供 給条 件 を,入 札 者(IPPな
ど)に提 示 す る.入 札 して きた各発 電 プ ロジ ェク トは,入 札 価格 の低 い順 に
ラン ク付 けされ,必 要 量 に達 した点 で締 め切 られ る.入 札 した各 プ ロジ ェク トが提示 した中 で最 も高 い価格 の ものが 共通 の買取料 金 とされ(メ リッ トオ ーダ 方式),需 給契 約 を締結 す る落札 者 が決定 され る. この供 給 形態 は,競 争 導入 の最初 の形態 で あ る.発 電部 門 への競 争導 入 とい うよ り
図1.5 発 電市 場 自由化型 の供給 形態の構 造
も,電 力 会社 が新 規発 電設 備 の選択 ・導入 に競 争 が導入 され,新 規 発電設 備 の競 争 的 調 達 とい う意 味合 い が強 い. (3)送
電 線 開 放 型 あ る い は 卸 託 送 型 供 給 形 態(open wholesale
access
or
competition)
こ の供 給 形 態 は,図1.6に キ ャ リア 化 さ れ,さ
示 す よ うに,発
電 部 門 の 自 由 化 に加 え,送 電 線 が コ モ ン
ら に 競 争 が 進 展 した 供 給 体 制 で あ る.こ
を有 す る電 気 事 業 者 が,第
の モ デ ル で は,送 電 系 統
三 者 に 送 電 サ ー ビス を 提 供 す る こ と を義 務 づ け られ る こ と
に な る.つ ま り,あ る発 電 事 業 者(ま た はIPP)は,送
電 系 統 所 有 事 業 者(既 存 の 電 気 事
業 者 で あ る場 合 も あ る)に 対 して,配 電 事 業 者 へ 卸 託 送 を希 望 す る場 合 に は,卸 託 送 を 希 望 す る 発 電 事 業 者 は適 切 な送 電 系 統 使 用 料 金 を 支 払 い,送 す る こ とが で き る.こ
の 場 合,送
電 系 統 所 有 事 業 者 は,送
電 系 統 の 余 裕 部 分 を使 用
電 料 金 設 定 の透 明 性 を確 保
す る た め に,送 電 部 門 と他 の 部 門 との 内 部 相 互 補 助 が 禁 止 され,部 創 設 す る か,会 た だ し,こ
門 ご と に別 会 社 を
計 上 の 分 離 を行 う こ とが 必 要 と な っ て く る.
の 形 態 で は,基 本 的 に 卸 電 力 市 場 で の 競 争 促 進 を意 図 した もの な の で,
最 終 需 要 家 を巡 っ て の競 争 は 考 慮 さ れ な い.つ ま り,最 終 需 要 家 へ の小 売 託 送(直 接 供 給)は 認 め ら て お らず,送
電 系 統 運 転 者(た と え ば 既 存 の 電 気 事 業 者)や 配 電 事 業 者 へ
の 卸 託 送 に 限 定 さ れ る の で,最 (wholesale
wheeling)は,託
終 需 要 家 は供 給 者 を選 択 す る こ と は で き な い.卸
託送
送 さ れ る 電 力 の 買 い 手 が 電 気 事 業 で あ る の に対 し,電 力
の 買 い手 が 最 終 需 要 家 で あ る 場 合 を小 売 託 送(retail wheeling;)と 呼 ば れ る.供 給 形 態 で,卸
託 送 の 拡 大 や,競
争 条 件 の整 備 が な さ れ る と,小 売 託 送 が 導 入 され た 供 給 形 態
図1.6 送 電線開放 型あ るいは卸託送型供給形 態の構造
(4)に近 づ く こ と に な る.1992年
の エ ネ ル ギ ー 政 策 法(EPAct)成
立 以 降 のア メ リカな
どが この モ デ ル の代 表 例 で あ る. (4)完
全 競 争 型 の 供 給 形 態(complete:competition
or
retail
wheeling) この 供 給 形 態 で は,各 部 門 の垂 直 統 合 が 分 離 さ れ(unbundling),ネ 接 続 も開 放 され,最
終 需 要 家 へ の 小 売 託 送 が 認 め られ,発
供 給 部 門 に 至 る ま で 徹 底 し て 競 争 原 理 が 導 入 さ れ る.現 ア 州 も こ の 形 態 で あ る が,そ 当 す る の で,イ
れ 以 前 の1990年
在 の ア メ リ カ.カ
電 系 統 運 用 会 社 は,日
照).
々 の 需 給 状 態 に応 じ て,メ
リ ッ トオ ー ダ 方 式 に よ り,発 電 事 業 者 に 対 し て給 電 指 令 を 行 い,卸 決 め て配 電 事 業 者 に 売 電 す る.こ
リ フ ォル ニ
以 降 の イ ギ リ ス な どが この モ デ ル に 相
ギ リ ス型 供 給 体 制 と呼 ぶ 場 合 もあ る(図1.7参
この 完 全 競 争 型 電 力 市 場 で は,送
ッ トワ ー ク へ の
電 部 門 か ら最 終 需 要 家 へ の
購 入 ・販 売 料 金 を
の 形 態 で は 配 電 系 統 も開 放 され て い る の で,系
所 有 す る電 気 事 業 者 に小 売 託 送 を義 務 づ け る こ とで,最 終 需 要 家 はIPPか
統を
ら直 接 電 力
を購 入 す る こ とが で きた り,地 元 以 外 の 配 電 事 業 者 か ら電 力 を購 入 す る こ と が で き る. 発 電 と最 終 需 要 家 へ の供 給 の 両 部 門 に 競 争 が 導 入 さ れ る が,送 を,こ
電 系 統 の 所 有 ・運 用
の よ うな 完 全 競 争 体 制 下 に お く と,設 備 の 二 重 投 資 を招 き,経 済 的 に 非 効 率 で
あ る た め,自
然 独 占 が 維 持 さ れ て い る.発 送 配 電 が 垂 直 統 合 され た 電 力 会 社 が 発 電 部
門 の 投 下 資 本 を 回 収 す る た め に,自 社 の 発 電 設 備 を優 先 的 に投 入 し よ う とす る可 能 性 が あ る.原 価 配 分 の 際 に,固 定 費 用 や 間 接 費 用 を 発 電 部 門 よ り も送 配 電 部 門 に 多 く配 分 す る可 能 性 が あ る.よ
っ て,発
電 コ ス トは 安 くな り,送 配 電 コ ス ト(託 送 コ ス ト)を
高 く し て 自社 の 発 電 設 備 を優 先 させ て,電
図1.7完
力 会 社 に有 利 な 競 争 条 件 を つ く る こ と も可
全競争型 の供給 形態の構造
能 とな り,ネ ッ トワー クに連 系 しよう とす るIPPな
どへ参 入障 壁 をつ くる可 能性 が指
摘 され てい る.こ の 完全競 争型 供給 体制 下 で は,内 部相 互補 助 を防 ぎ,系 統使 用料 金 の透 明性 を確保 す るた めに,送 電部 門 と配電部 門 につ いて も,系 統運 用部 門 と供給 部 門 の別 会社 化 また は会 計分 離 が義務 づ け られ て いる.
1.2イ
ギ リスにおける電力自由化の動向
1.2.1電
気事 業の民営 化との完全競 争型供給形態
イ ギ リス の 電 力 構 造 改 革 は,電 気 事 業 の 再 編 と民 営 化 に よ り,発
・送 ・配 電 を 垂 直
的 に 統 合 し て い た 国 営 電 力 を分 割 し,電 力 プ ー ル 制 度 を 導 入 す る こ と で 発 電 部 門 と配 電 部 門 に市 場 競 争 を 導 入 した 点 で,電
力 市 場 を競 争 原 理 に基 づ い て 自 由化 した 典 型 的
な モ デ ル の 一 つ と し て知 られ て い る.こ と も呼 ば れ,完
れ は,イ
ギ リス 型 あ る い は電 力 プ ー ル 型 な ど
全 競 争 型 の 供 給 形 態 で あ る.
サ ッチ ャ ー 保 守 政 権 下 に,国 営 企 業 の 効 率 化 ・民 営 化 の 一 環 と し て,1990年 中央 発 電 局(CEGB:Central ョナ ル ・パ ワ ー(NP:National
図1.8民
Electricity Generating Power),パ
Board)を
に国営
3社 の 発 電 会 社(ナ シ
ワー ・ジ ェ ン(PG:Power
Gen) ,ニ ュ ー
営化 後 の イ ギ リス(イ ング ラ ン ド ・ウ ェー ル ズ)の 電 力 供 給 形 態
ク リ ア ・エ レ ク トリ ッ ク(NE:Nuclear
Electric,現
送 電 1社(ナ シ ョナ ル グ リ ッ ト,NGC:National
ブ リテ ィ ッ シ ュ ・エ ナ ジ ー))と
Grid Company)に
分 割 ・民 営 化 し,
12地 区 配 電 局 は 従 来 の 形 態 と供 給 区域 の ま ま配 電 事 業 者 と して 民 営 化 した.原 子 力 発 電 所 を 民 間 会 社 に移 管 す る こ とは 負 担 が 大 き す ぎ る と判 断 さ れ,NE社 子 力 発 電 会 社 と し て 設 立 さ れ た(図1.8参
照).
この 民 営 化 の 基 本 的 な 目 的 は,経 済 効 率 の 改 善,公 に対 す る政 府 干 渉 の 軽 減 な ど に よ っ て,経 う.ま
た,当
で あ っ た こ と,さ っ た た め,短
的 債 務 の 軽 減,企
業 の意 思決 定
済 の活 性 化 を 図 っ た もの で あ っ た とい え よ
時 の サ ッチ ャ ー 政 権 の “小 さ な 政 府 ” 政 策,割
国 有 企 業 の 非 効 率 性,国
の み国有 の 原
高 な 電 気 料 金 に み られ た
有 企 業 で あ っ た た め に議 会 の 決 定 の み で 再 編 ・民 営 化 が 可 能
ら に,エ
ネ ル ギ ー 自 給 率 が ほ ぼ100%で,発
電 設 備 も過 剰 状 態 で あ
期 的 に は供 給 不 足 の 問 題 が な か っ た こ と も民 営 化 の 背 景 と して 指 摘 さ れ
て い る. 民 営 化 後,発 電 市 場 は 自 由 化 さ れ,発 電 電 力 は す べ て 送 電 会 社(NGC)が 力 取 引 市 場 を 介 して 取 引 す る こ とを 義 務 づ け た プ ー ル 市 場 を 導 入 し た.送 は,民
営 化 前 と同 様 所 有 に つ い て は,自 然 独 占 を 認 め る 一 方 で,利
運営 す る電 配電部門
用 につい ては独 占
を認 め ず コ モ ン キ ャ リア と した. 新 体 制 の 発 足 に と もな い,電 気 事 業 規 制 局(OFFER:Office tion)が 新 た に 設 立 さ れ た.OFFERは,1986年
of Electricity Regula
電 気 事 業 法 で 示 さ れ た 政 府 の 関 与 の極
力 排 除 に 則 り,政 府 か ら独 立 し た 規 制 機 関 で あ る.OFFERに
は,発
電 事 業 か ら供 給
事 業 に 至 る まで す べ て の 事 業 者 の ラ イ セ ン ス 発 給 権 限 を有 す る と と も に,発 給 した ラ イ セ ン ス の 内 容 に 基 づ き業 者 を監 督 す る義 務 を 負 っ て い る.ま た,表1.1に イ セ ン ス は,競
争 の 促 進,供
給 信 頼 度 の 維 持,需
表1.1電
力 市 場 に お け る ラ イ セ ンス の 種 類
ライセ ンスめ種 類 発電 ライセンス
内容 ・5万kW以
上 の 発 電 設 備 容 量 を 有 す る発 電
所 を運 転 す る際 に必 要(NP社,PG社 の ほ か に12配
など
電 会 社 も取 得)
送電 ライセンス
・送 電 業 務 を行 う際 に必 要(NG社
一 般 供 給 ラ イ セ ンス
・供給地域内 にお いて小 売供給 事業お よび配
第 2種 供 給 ラ イ セ ンス
・一 般 供 給 ライ セ ン ス外 で行 わ れ る小 売 供 給
取 得)
電事業 を営む者(12配 電 会社取得)
事 業 の 際 に 必 要 と さ れ る(12配 NP,PG他 出 典:“
示 す各 ラ
要 家 の 利 益 保 護 な ど を意 図 して 作 成
が 取 得)
海 外 の 電 気 事 業 ” 電 力 新 報 社(1996).
電 会 社,
さ れ,各
ラ イ セ ン ス 保 有 者 が 遵 守 しな け れ ば な らな い 条 件 が 記 さ れ て い る.
自 然 独 占 を容 認 した 送 電,配 規 制 の 代 わ りに,料
電 事 業 や 配 電 会 社 に よ る供 給 事 業 に は,伝
統 的な原価
金 上 限 規 制(プ ラ イ ス キ ャ ッ プ規 制)が 導 入 さ れ た.プ
ライス キ ャ
ッ プ規 制 は,消 費 者 物 価 上 昇 率(RPI)-生
産 性 向上 率(X)を 上 限 と し,こ
の範 囲 で あ
れ ば事 業 者 は価 格 を 自 由 に設 定 す る こ とが で き る. さ ら に,小 売 供 給 事 業 に つ い て も大 口需 要 家 を対 象 に段 階 的 に 自 由 化 さ れ,1998年 4 月 か ら,順 次 す べ て の 需 要 家 に つ い て 小 売 供 給 が 自 由化 さ れ た.
1.2.2プ
ー ル市場の 設立と電力 取引の手順
表1.2に
示 す よ う に,八
①
取 引 前 日:取
つ の 手 順 に よ り プ ー ル で の 電 力 取 引 が 行 わ れ て い る.
引 前 日 の 発 電 事 業 者 に よ る入 札 デ ー タ の 提 示 内容 は,ユ
時 系 列 形 式 の発 電 可 能 出 力,起
動 費 や 発 電 コ ス ト(価 格),運
れ る.無 制 約 供 給 計 画(U-schedule)で,必 要 供 給 発 電 量 は,想 力 と して,30分
ニ ッ トの
転 特性 や運 転制 約 が含 ま
要 供 給 発 電 量,入
札 価 格 の 計 算 を行 う.必
定 需 要 に 必 要 予 備 力 を 上 乗 せ し た もの を取 引 当 日 の 必 要 供 給 発 電
ご と に作 成 す る.入 札 価 格 は,発 電 事 業 者入 札 デ ー タ を も と に,30分
単 位 に 対 応 す る ユ ニ ッ トの 可 能 出 力 値 に対 応 す る発 電 費 用 を算 定 す る.最 後 に,30分 ご との 必 要 供 給 発 電 力 お よ び 発 電 ユ ニ ッ トの 入 札 価 格 を も とに,各
時 間 ご と に取 引 当
日 に運 転 さ れ る ユ ニ ッ ト を入 札 価 格 の 安 い順 に選 択 す る(メ リ ッ トオ ー ダ 方 式).こ メ リ ッ トオ ー ダ 方 式 に よ る必 要 供 給 電 力 量 の 決 定 で は,送 ッ トの 単 純 な 運 転 特 性 の み は考 慮 し て 決 め られ る.さ
の
電 制 約 を 無 視 し,発 電 ユ ニ
ら に,送 電 制 約,各
発 電 ユニ ッ
トの 詳 細 な 特 性 を反 映 し,取 引 当 日 に 系 統 運 用 者 が 使 用 す る “運 転 用 給 電 計 画(opera tional schedule)”
も併 せ て 作 成 され る.
U-scheduleで
選 択 さ れ た 発 電 ユ ニ ッ トの 中 で,最
(SMP:system
marginal
帯(table
price)と す る.な お,発
A period)と 軽 負 荷 時 間 帯(table
増 分 費 用 の み だ が,重
B
も高 い 発 電 価 格 を 系 統 限 界 価 格 電 価 格 の 計 算 方 法 は,重
負荷 時間
period)と で 異 な る.軽 負 荷 時 間 帯 で は
負 荷 時 間 帯 で は増 分 費 用 の ほ か に発 電 ユ ニ ッ トの 起 動 費 用 の 回
収 も考 慮 した 発 電 価 格 が 計 算 さ れ る.た だ し,運 転 制 約 や 出 力 指 定 の あ る発 電 ユ ニ ッ トは,こ
のSMPの
LOLP(loss
選 定 か ら除 外 さ れ る.
of load probability:供
ue of lost load:需
給 電 力 が 想 定 需 要 を 下 回 る確 率)とVOLL(val
要 家 が 停 電 を避 け る た め に支 払 っ て も よい とす る 価 格)か ら,各 時
間 帯 ご と にCE(capacity
element)の
値 を 計 算 す る. CEは,短
需 要 の 抑 制 お よ び 供 給 力 の 増 加 とい う 点 で,長 促 す とい う 点 で,イ
期 的 には需給 逼迫 時 の
期 的 に は発 電 設 備 へ の 投 資 の 必 要 性 を
ンセ ン テ ィ ブ を与 えて い る.
表1.2イ
ギ リス の 完 全 競 争 型 プー ル 市 場 で の取 引 手順
電力取 引の手順
業務内容 と算 定項 目 ・取 引 前 日の 午 前10時 分 間 隔). ・過 去 の実 績,天
[1]需 要 想 定
ま で に 当 日の 需 要 想 定 を 行 う(30
気 予 報,そ
の 他 の 需 要 変 動 に 影 響 を与 え
そ う な要 因(社 会 的 行 事)を 考 慮 し て,予 測 され る. ・取 引 前 日 の午 前10時
[2]発電事業者入札 データの提示
ま で に,各
ユ ニ ッ トご と に入 札 デ
ー タ を提 示(発 電 可 能 量 ,起 動 費,発 ・必 要 供 給 発 電 力(+必
電 コス トな ど)
要 予 備 力)を 算 定 し,30分
単 位 に発
取
電 費 用 を計 算 し,入 札 価 格 の 安 い 順 に発 電 ユ ニ ッ トを選
引 前
[3]無 制 約 の給 電 計 画(U-sched ule)の 作 成
日
(運 転 用 給 電 計 画 の 作 成)
択 す る. ・U-scheduleの
作 成 に は ,GOALと
呼 ばれ る 給 電 計 画 作
成 専 用 プ ロ グ ラ ム が利 用 さ れ て い る. ・送 電 制 約,各 発 電 ユ ニ ッ トの 詳 細 な特 性 を反 映 した 運 転 用 給 電 計 画 も作 成 さ れ,取
引 当 日 に系 統 運 用 者 が 使 用 す
る. ・無 制 約 給 電 計 画 の 中 で ,最 [4]SMPの
計 算(系 統 限 界 価 格)
も高 い 発 電 価 格 を 系 統 限 界価
格 とす る.た だ し,運 転 制 約 や 出 力 指 定 の あ る 発 電 ユ ニ ッ トは,SMPの
選 定 か ら除 か れ る.
・供 給 量 が 想 定 需 要 を下 回 る確 率(loss ity=LOLP),需
い とす る価 格(value [5]CE(capacity
element)の
計 算
of load
probabil
要家が停電 を避 けるた めに払 って もよ of lost load:VOLL)よ
り,
CE=LOLP×(VOLL-SMP) を求 め る. ・短 期 的 に は需 給 逼 迫 時 の 需要 抑 制 と供 給 力 の増 加,長
期
的 に は発 電 設 備 投 資 へ の イ ン セ ンテ ィ ブ と な る. ・取 引 当 日 に発 電 事 業 者 が プ ー ル に 電 力 を供 給 す る際 の価 格PPP(pool [6]PPPの
purchase
price)の 決 定(時 間 帯 別)
PPP=SMP+CE =SMP+LOLP×(VOLL-SMP)
決定
=(1-LOLP)×SMP+LOLP×VOLL
取引当日
[7]取引 当 日の給 電 修正無制 約給 電計画作成
・運 転 用 給 電 計 画 に沿 っ た発 電 ユ ニ ッ トの 給 電 . ・修 正 無 制 約 給 電 計 画(revised
U-schedule)の
作成.
・uplift:送 電 制 約 の た め に 出 力 調 整 を行 っ た 場 合 に ,給
取引後
電 計 画 と運 転 実 績 の 誤 差 分 の補 償 費 用. [8]upliftの 算 定 とPSPの
決定
そ の 他 に,周 波 数 制 御 や 無 効 電 力 補 償 な どの 補 助 サ ー ビ ス(ancillary service)も 含 まれ る. ・プ ー ル 販 売 価 格PSPを 求 め る. PSP(pool
selling price)=PPP+uplift
プ ー ル 市 場 で,取 格(PPP:pool
引 当 日の 発 電 電 力 量 に対 し て 支 払 わ れ る価 格 で あ る プ ー ル 支 払 価
purchase
引 前 日 ”に,SMPとCEの 階 で,想
price)は,需
要 想 定 と発 電 事 業 者 に よ る競 争 入 札 を行 う “取
和 と し て 決 定 さ れ る(表1.2参
照). PPPは,取
引前 日の段
定 需 要 が 供 給 力 を 上 回 る か 否 か と い う 2ケ ー ス を 考 慮 した 確 率 的 な 予 想 価 格
(期 待 値)で あ る と い え よ う. ②
取 引 当 日:取
引 当 日 は,NGCの
系 統 運 用 者 が,運 転 用 給 電 計 画 に 基 づ い て,需
要 変 動 に応 じ た発 電 ユ ニ ッ トへ の 給 電 指 令 と,運 用 上 の 制 約 を 考 慮 した 系 統 運 用 を 実 施 す る.た
だ し,発 電 ユ ニ ッ トの 入 札 デ ー タ(た だ し価 格 に 関 す る もの は 除 く)の 変 更
は,取
引 当 日 で も,事 前 に な さ れ れ ば,随
る.ま
た,取
時 受 け付 け られ 運 転 用 給 電 計 画 に反 映 さ れ
引 当 日 の 発 電 ユ ニ ッ トの 運 転 予 定 の 変 更 や 実 際 の 運 転 実 績 は,発
者 へ の 支 払 い の 計 算 に 必 要 な の で,こ
電事 業
れ ら の 変 更 ・実 績 記 録 を も と にU-scheduleを
修 正 す る. 取 引 後:取 用,需
引 当 日 に 送 電 線 制 約 の た め に 運 転 した 高 価 格 の 発 電 ユ ニ ッ トの 運 転 費
要 想 定 の 誤 差 や 発 電 ユ ニ ッ トの 給 電 計 画 と 実 際 の 運 転 実 績(operational
turn)と の誤 差 分 に つ い て の 補 償 費 用 は,ア れ る.さ
ら に,系
統 周 波 数 ・電 圧 の 安 定 運 用 に必 要 な 発 電 ユ ニ ッ トが提 供 す る補 助 サ
ー ビス 費 用 や ,発 電 ユ ニ ッ トが 提 示 した 出 力 可 能 値 の う ち,修
正U-scheduleの
組 み 込 ま れ な か っ た 発 電 可 能 容 量 分 の 費 用 もupliftに 含 ま れ る.こ を も とに,供
1.2.3
のupliftとPPP
引 後 に決 定 さ れ る.た だ し,こ のupliftは 重 負 荷 時 間 帯 に配
電 ロ ス 費 用 は供 給 事 業 者 の 購 入 電 力 量 に 比 例 して 分 担 さ れ る.
プール市場 での電力取 引の構造
プ ー ル 市 場 で の 価 格 決 定 手 順 の 中 で,プ 市 場 か ら構 成 さ れ て い る(図1.9参 (1)
中に
給 事 業 者 が プ ー ル か ら電 力 を購 入 す る価 格 で あ る プ ー ル購 入 価 格(PSP:
pool selling price)が,取 分 さ れ,送
out
ッ プ リフ ト(uplift)と して 取 引 後 に 清 算 さ
先 物 市 場(forward
発 電 事 業 者 が 取 引 前 日 に,価
ー ル を 介 し て 行 わ れ る 電 力 取 引 は,以
下の
照).
market) 格PPPで
販 売 電 力 の 契 約 を結 ぶ 市 場 で,プ
ー ル にお
け る 発 電 事 業 者(電 力 の 売 り手)と 供 給 事 業 者(電 力 の 買 い 手)と の 間 で取 り交 わ され る 電 力 の 先 物 取 引(厳 密 に は 先 渡 取 引 と い う)と 考 え る こ と が で き る.つ scheduleで
決 め られ た 価 格(PPP)で,U-scheduleで
供 給 す る こ とが 相 当 す る.プ ー ル で 取 引 され る電 力 の 大 半 は,取 物 市 場 で 電 力 取 引 が 成 立 す る.
ま り,U-
決 定 した 発 電 電 力 量 を プ ー ル に 引前 日に行わ れ る先
図1.9
イ ギ リス に お け る電 力 取 引 プ ール 市 場 の構 造
(2) オ プ シ ョ ン 市 場(option
market)
実 際 に,送 電 制 約 の 発 生 に よ り,U-scheduleに 抑 え,U-scheduleに
組 み 込 ま れ た 発 電 ユ ニ ッ トの 出 力 を
組 み 込 ま れ な か っ た 高 価 な 発 電 ユ ニ ッ ト を運 転 し な け れ ば な ら
な い 場 合 が あ る.こ の よ う な事 態 を想 定 して,こ
の 市 場 で は,取
引 前 日 の 段 階 で,予
備 的 な 位 置 づ け の 発 電 ユ ニ ッ ト,あ る い は 発 電 ユ ニ ッ トの 容 量 余 力 に対 し て,取
引当
日 の 不 測 の事 態 や 送 電 制 約 発 生 時 に 給 電 指 令 に応 じ ら れ る よ う に 待 機 す る 契 約 を 結 ぶ.こ
の 場 合,い
ざ 必 要 が る と き に は,U-scheduleに
トの 発 電 可 能 容 量 分(unscheduled
組 み 込 まれ な か っ た 発 電 ユ ニ ッ
availability)に 対 す る費 用 を オ プ シ ョ ン料 金(給 電
指 令 を す る権 利)と して 支 払 う.実 際 に こ れ ら の 発 電 ユ ニ ッ トが 給 電 指 令 を受 け た 場 合 に は,そ
の ユ ニ ッ トの 表 示 価 格(>PPP)で
プ シ ョ ン料 金 に相 当 す るunscheduled は,取
支 払 い を受 け る こ とが で き る.な
availabilityに 対 し て 発 電 事 業 者 に 支 払 う 価 格
引 当 日 に そ の 発 電 ユ ニ ッ トが 実 際 に給 電 指 令 を 受 け る期 待 値(CEの
似)を 反 映 して 決 め られ る.こ
お,オ
算 定 に類
の オ プ シ ョ ン 料 金 と高 価 な発 電 ユ ニ ッ トの 運 転 費 用 は,
ア ッ プ リ フ ト費 用 と して 算 定 さ れ る. (3) ス ポ ッ ト市 場(spot
market)
取 引 前 日 に 作 成 され た 給 電 計 画 と取 引 当 日の 運 転 実 績 との 差 を調 整 す るた め に,そ の と き ど き に 応 じて 必 要 電 力 量 を取 引 す る市 場 で あ る.特 に,U-scheduleに れ た 発 電 ユ ニ ッ トが 取 引 前 日 の 先 物 市 場 で 価 格PPPで
組 み込 ま
契 約 し た 取 引 量 が,取
引当 日
の 送 電 線 制 約 発 生 に よ り発 電 で き な か っ た 場 合,プ 電 ユ ニ ッ トの 提 示 価 格(
ー ル か ら そ の 発 電 事 業 者 に そ の発
払 い戻 し が 行 わ れ る.な お,送
電 制 約 の た め に 出力
を抑 制 した ユ ニ ッ トに 対 して 払 い戻 す た め に 生 じ る損 益 分 も,ア
ップ リ フ ト費 用 に組
み 込 まれ る. (4) 供 給 事 業 者 側 の 市 場 プ ー ル か ら電 力 を 引 き 出 す 供 給 事 業 者 市 場 で は,プ
ー ル 市 場 全 域 で 価 格PSPで
電
ま ざ ま な 評 価 が な さ れ て い る.た
とえ
力 取 引 が 行 わ れ る.
1.2.4
競争導 入後の電気 事業への影響
民 営 化 お よ び 競 争 導 入 の 成 果 に つ い て は,さ ば,規
制 緩 和 後 の イ ギ リス の電 気 料 金 の 変 化 を 他 のEU諸
(規 制 緩 和 直 前)と1996年
時 点(規 制 緩 和 後 6年)で の 電 気 料 金 を名 目 と実 質 で,標
的 な 家 庭 用 需 要 家 の 名 目値 で は20%上 の 名 目値 は23%上
国 と比 較 す る と,1990年
昇 し 実 質 値 で は 5%低 下,大
昇 し実 質 値 で は 3%低 下 し て い る.こ
れ ば 電 気 料 金 は 実 質 的 に 低 下 し て い る.こ
準
口産業 用 需要 家
の よ う に 需 要 家 に とっ て み
の 実 質 的 な 電 気 料 金 の 低 下 に よ り,電 力 規
制 緩 和 は成 功 と の 評 価 も聞 か れ る も の の,名 目価 格 で も低 下 し て い る 国(ド イ ツ,デ ン マ ー ク,ア イ ス ラ ン ドな ど)も あ り,為 替 レー トベ ー ス で も購 買 力 平 価 ベ ー ス で も,イ ギ リ ス の 電 気 料 金 の 相 対 的 な ポ ジ シ ョ ン に は大 き な低 減 効 果 は現 れ な か っ た. 規 制 緩 和 後 も電 気 料 金 が 名 目 で 低 下 し な い 原 因 の 一 つ は,競 争 が 導 入 さ れ た 発 電 市 場 価 格(プ ー ル 価 格)が 大 幅 に上 昇 し た もの と み ら れ て い る.1990年 8月 の 間,需 要 量 で 加 重 平 均 し た販 売 価 格(PSP)は,名 質 値 で2.7%の
増 加 で あ っ た.市
4月 か ら1996年
目値 で 年 平 均5.7%の
場 価 格 の 上 昇 は 年 々 増 加 し,そ
率 が 大 き くな っ て い る.こ の よ う な プ ー ル 価 格 上 昇 の 要 因 は,発
増 加,実
の 中 で もCEの
増加
電市 場 内の大手 発電
事 業 者(ナ シ ョ ナ ル ・パ ワ ー とパ ワ ー ・ジ ェ ン)の 価 格 操 作 に あ る とい わ れ て い る.規 制 当 局 は,こ
の 発 電 市 場 内 の 市 場 支 配 力 解 消 の た め,こ
低 下 を 図 る た め の 対 策 を行 っ た も の の,依 シ ェ ア は76%を 討 の 必 要 性,さ
占 め る状 態 に あ る.こ ら に,こ
の 問 題 が,イ
れ ら大 手 発 電 事 業 者 の シ ェ ア
然 と して これ ら事 業 者 の プ ー ル 価 格 設 定 の
の 市 場 支 配 力 問 題 の 原 因 と対 策 に つ い て の検 ギ リ ス 型 の プ ー ル モ デ ル の 有 効 性 評 価 を左 右 す
る重 要 な 課 題 で あ る こ とが 指 摘 さ れ て い る.
1.2.5 1990年
完全 自由化へ 向けての今後の動 向 の 電 力 民 営 化 以 来,プ
ー ル シ ス テ ム を 導 入 し,発 電 事 業 者 お よび 供 給 事 業 者
の 間 で プ ー ル 規 則 に則 っ た 電 力 取 引 が 実 施 され て き た.1998年4月1日
か ら,同 地 域
(イ ン グ ラ ン ド ・ウ ェ ー ル ズ 地 域)の 電 力 供 給 事 業 で,す
べ ての最 終需 要家 が供給 事 業
者 を 自 由 に 選 択 で き る よ う に 完 全 自 由 化 さ れ て い る. この よ う な 供 給 事 業 者 間 で の 競 争 は,90年
の 民 営 化 当 初 か ら,段 階 的 に 導 入 され て
い る.民 営 化 当 初 は,ピ ー ク 需 要 が1000kWを で き る と限 定 さ れ て い た が,94年
超 え る需 要 家 の み が 供 給 事 業 者 を 選 択
に は 対 象 と な る需 要 家 の規 模 が100kWに
られ た.現 在,同 地 域 の 小 売 供 給 部 門 で は,ピ ー ク 需 要100kWを の競 争 市 場(100kW以
上 の大 口需 要 家)お よ び地 元 の 配 電 会 社 の 独 占 市 場(100kW以
下 の 需 要 家)が 存 在 す る状 態 で あ る.そ
して,98年
に はすべ て の需要 家 が供 給事 業 者
を選 択 で き る よ う に な り,完 全 自 由化 が 実 現 され,各 kW以
引 き下 げ
境 に,供 給 事 業 者 間
地 域 の 配 電 会 社 の独 占市 場(100
下 需 要 家)は 消 滅 した.
(1) イ ギ リ ス の 完 全 電 力 自 由 化 に お け る 課 題 イ ギ リス の完 全 電 力 自 由化 実 施 後 の 課 題 も明 ら か に な りつ つ あ る.ま ず,完
全 自由
化 市 場 の 特 徴 は 以 下 の よ う で あ る. ①
電 力 取 引 は,自 由 化 以 降 も引 き続 き プ ー ル 市 場 を 介 して,毎 日30分
ご とに 決 定
さ れ る プ ー ル 価 格 に 基 づ き,発 電 事 業 者 と供 給 事 業 者 間 で 行 わ れ る. ②
自 由 化 に 合 わ せ て,す
べ て の メ ー タ シ ス テ ム を30分
送 す る こ とが 可 能 な メ ー タ シ ス テ ム(30分 る.(た
だ し,98年
ご と の 電 力 量 を計 算 し伝
メ ー タ)に 変 更 す る こ とが 不 可 能 で あ
4月 1日以 降 は,100kW超
需 要 家 は30分
メー タの設 置義 務
を 負 う). ③
現 在 の100kW以
下 の 市 場 を独 占 し て い る地 元 の 配 電 会 社 の 供 給 部 門 は,競
争
す る 他 の 供 給 事 業 者 と同 様 に公 平 に扱 わ れ る. 現 在,同 地 域 の 電 力 取 引 は,現 行 の30分 を保 持 し つ つ,30分 イ リ ン グ)や,そ
ご との プ ー ル シ ス テ ム で の 電 力 取 引 の 枠 組
メ ー タ が 設 置 さ れ て い な い 需 要 家 の 使 用 電 力 量 の 計 測(プ ロ フ ァ
れ に伴 う プ ー ル 決 済 方 式 の 変 更 に対 応 す る た め の シ ス テ ム の 準 備 が
進 め られ て い る.し か し,こ れ らの シ ス テ ム の 準 備 は 大 幅 に 遅 れ て お り,当 初 の 予 定 で あ っ た1998年
4月 1日 の 完 全 自 由化 に は 間 に合 わ ず,整 備 が 急 が れ て い る.規 制 当
局 側 も “完 全 自 由化 の 段 階 的 導 入 ” な ど シ ス テ ム の 準 備 の 進 捗 状 況 に 合 わ せ た 妥 協 を 迫 られ て い る. (2) 完 全 自 由 化 に お け る 新 運 用 シ ス テ ム 完 全 自 由環 境 下 で の 新 運 用 シ ス テ ム の 枠 組 は,発 電 事 業 者 と供 給 事 業 者 の 間 の 既 存 の プ ー ル 決 済 シ ス テ ム は保 持 しつ つ,供 い え よ う.シ
給 事 業 者 側 の シ ス テ ム の 変 更 が 大 き な特 徴 と
ス テ ム変 更 の ポ イ ン トは,プ
ロ フ ァ イ リ ン グ に よ る デ ー タ 処 理 や ,既 存
の プ ー ル 決 済 シ ス テ ム との リン ク を 考 慮 し た 2段 階 決 済 シ ス テ ム で あ る .さ
ら に,最
終 需 要 家 の デ ー タ処 理 か ら供 給 事 業 者 の プ ー ル 取 引 電 力 量 決 定 に 至 る ま で の デ ー タ処 理 フ ロ ー も修 正 さ れ る. ①
プ ロフ ァイ リ ン グ の 適 用
設 置 す る こ と は,経
約2200万
軒 の 需 要 家 の す べ て に,30分
済 的 に み て も実 行 不 可 能 で あ る.そ
こ で,需
メー タ を
要 家 種 別,電
力使 用
状 況,負 荷 率 な どを も と に 8種 類 の 需 要 パ タ ー ン(商 工 業 用 6パ タ ー ン,住 宅 用 2パ タ ー ン)を 設 定 し ,こ の 需 要 パ タ ー ン に 基 づ い て30分 リ ン グ す る方 法 が 適 用 さ れ る.こ 量 を も とに,供
の30分
ご との 需 要 パ タ ー ン を プ ロ フ ァイ
ご と の プ ロ フ ァ イ リ ン グ に よ り求 め た 電 力
給 事 業 者 の プ ー ル か ら の 取 引 電 力 量 が 暫 定 的 に決 定 され る.こ
な 需 要 パ タ ー ン の 利 用 に よ っ て,既 存 のkWhメ
ー タ を30分
の よう
メ ー タ に 取 り替 え る費 用
を需 要 家 が 負 担 し な くて す む よ う に な る. ②
段 階決 済 シス テ ム
供 給 事 業 者 は,計 測 デ ー タ とプ ロ フ ァイ リ ン グ に よ る推
定 デ ー タ が 混 在 した 状 態 で 初 期 の 決 済(initial settlement)を
暫 定 的 に行 う.実
ー タ 値 が 得 られ た あ と に ,初 期 決 済 との 差 額 を調 整(reconciliation)す
際の メ
る.
(3) 小 規 模 電 源 の 配 電 系 統 運 系 の 影 響 最 近,イ
ギ リス で は,再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー 開 発 プ ロ ジ ェ ク ト,ガ ス を燃 料 とす る コ
ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン ・プ ロ ジ ェ ク トの 推 進 や小 規 模 発 電 の 効 率 向 上 な ど急 速 な 技 術 進 歩 を 背 景 に,配 電 系 統(132kV以 開 発 が 増 大 し て い る.98年 さ れ る 予 定 で,取
下)に 接 続 さ れ る小 規 模 電 源(embedded
の 完 全 自 由 化 以 降,小 規 模 電 源 に対 す る規 制 が 大 幅 に緩 和
引 規 模 が 少 量 な 故 に 認 め ら れ る プ ー ル 外 取 引 が増 加 す る見 込 み で あ
る.小 規 摸 電 源 の 存 在 が,配 電 系 統 に と っ て 系 統 設 備 の 増 強 回 避,送 ピ ー ク 電 源,無
generators)の
配 電 ロ ス の 低 減,
効 電 力 の 供 給 源 と して の便 益 は 定 性 的 に 理 解 さ れ て い る もの の,系
運 用 の 複 雑 化,短
絡 容 量 の 増 大 な ど技 術 的 な 問 題 点 が 指 摘 さ れ て い る.今 後,完
由 化 を 目 前 に し て,さ
統
全 自
ら に 小 規 模 電 源 が もた らす 便 益 と技 術 的 問 題 点 を 定 量 的 な評 価
な どの 議 論 が 活 性 化 す る もの とみ られ て い る. プ ー ル 市 場 で は,発
電 事 業 者 と供 給 事 業 者 と の 間 で 差 額 契 約(CFD:contract
difference)と 呼 ば れ る制 度 が 導 入 さ れ て い る.CFD制
り決 め た 価 格 と 実 際 の 価 格 の 差 額 を後 日調 整 す る も の で,プ ス クヘ ッ ジ が 可 能 とな る.実 に よ る もの で あ る た め,プ
際,プ
for
度 は,あ ら か じ め 両 者 の 間 で と ール価 格 の変動 に よる リ
ー ル 市 場 で 取 引 さ れ る 電 力 量 の ほ ぼ90%がCFD
ー ル で の 価 格 決 定 が 経 済 原 理 か ら乖 離 し て い る と の 問 題 が
指 摘 さ れ て い る. しか し,OFFERは
労 働 党 政 府 の 意 向 を受 け て1997年11月
度 の 見 直 し に着 手 し,1998年
7月29日
か ら,現 行 の プ ー ル 制
に 新 電 力 取 引 制 度 最 終 報 告 書(proposa1)を
府 に提 出 し,プ ー ル 制 度 に代 わ る新 しい 電 力 供 給 体 制 の 全 面 改 革 案 を 発 表 し た.
政
導 入 か ら 8年 間 運 用 さ れ て きた プ ー ル制 度 は,旧 が 排 除 さ れ る な ど一 定 の評 価 を得 て い る.し 入 障 壁,長
国 有事 業者 が抱 え ていた非 効率 性
か し,複 雑 な価 格 形 成 プ ロ セ ス に よ る参
期 供 給 保 証 の 面 か ら有 効 性 が 懸 念 され る キ ャパ シ テ ィエ レ メ ン ト機 能,プ
ー ル プ ラ イ ス と発 電 コ ス トの 乖 離
,流 通 性 が 低 いCFD契
約,プ
ー ル 市 場 とガ ス 市 場
との 相 互 干 渉 な ど数 々 の 問 題 点 が 指 摘 さ れ て お り,今 回 の制 度 見 直 し に 至 っ た. OFFERが
提 案 した 新 し い 取 引 制 度 は,先 物 市 場(forward
期 契 約 市 場(short
term
bilateral market),需
場 の 創 設 が 提 案 され て い る(図1.10参
and future market),短
給 調 整 市 場(balancing
market)の
3市
照).先 物 市 場 で,発 電 事 業 者 と小 売 事 業 者 の 間
で 数 年 先 ま で 契 約 が 締 結 さ れ る.短 期 契 約 市 場 で は,実 際 の 電 力 取 引 の 直 前(提 案 で は 4時 間 前)ま で 契 約 の 過 不 足 分 が 取 引 さ れ る.こ の 二 つ の 市 場 で の 取 引 を ベ ー ス に30 分 ご と の給 電 計 画 が 策 定 さ れ る.需 給 調 整 市 場(提 案 で は 実 際 の 電 力 取 引 の 4時 間 前 か ら ス タ ー ト)で は,発 電 ・供 給 事 業 者 と シ ス テ ム ・オ ペ レ ー タ(NGC)と 契 約 容 量 と想 定 需 要 量 の相 異 分 が 取 引 さ れ る.こ
れ らの 取 引 に は送 電 会 社 と は別 組 織
で ブ ロ ー カ ー 的 機 能 を 有 す る マ ー ケ ッ ト ・オ ペ レ ー タ(market る.い
ず れ の 市 場 も従 来 と は 違 い 参 加 は 自 由 で あ る.OFFERで
市 場 か ら こ の 新 電 力 取 引 制 度 へ の移 行 を2000年 ュー タ ソ フ トの 開 発,法 を抱 え て い た た め,そ
改 正,ラ
図1.10
0FFERに
operator)が は,今
介在す
まで のプ ール
4月 に 予 定 し て い た.し か し,コ ン ピ
イ セ ンス 条 件 の 改 訂,既
の 実 施 は2001年
の 間 で,総
契 約 の 見 直 し と多 く の課 題
3月 と な っ た.
よ る新 た な電 力供 給 形 態 の提 案
1.3
ア メ リ カ に お け る 電 力 自 由 化 の 動 向
1.3.1
ア メ リカ にお け る 電 力 自 由 化 の 経 緯
(1) 発 電 市 場 の 競 争 化 ア メ リ カ に お け る 電 気 市 場 へ の 競 争 制 度 導 入 は,1978年 (PURPA:Public
Utility Regulation
認 定 施 設(QF:qualifying
の公 益 事 業 規 制 政 策 法
Policies Act)成 立 に始 ま る.PURPAに
よ り,
facility)と 呼 ば れ る小 規 模 発 電 事 業 者 や コ ジ ェ ネ レ ー タ か
ら余 剰 電 力 の購 入 義 務 が 電 力 会 社 に課 さ れ た.再 生 可 能 な エ ネ ル ギ ー 資 源 を使 用 す る 小 規 模 発 電 施 設(8 万kW以
下)や コ ジ ェ ネ レー シ ョ ン施 設 の う ち,PURPAで
る資 格 要 件(燃 料,規
率 な ど)を 満 た す 発 電 プ ロ ジ ェ ク トを,連
模,効
制 委 員 会(FERC:Federal
Energy
電 気 事 業 者 に 対 して このQFか
Regulatory
け た.こ の 回 避 可 能 減 価 と は,QFか る 発 電,あ kWhあ
る い はQF以
Commission)が
ら回 避 可 能 減 価(avoided
規定す
邦 エ ネル ギー規
“QF” と し て 認 定 し,
cost)で 買 取 る こ と を 義 務 づ
ら の 電 力 購 入 が な か っ た と した 場 合 に,自 社 に よ
外 の 電 源 か ら電 力 購 入 し た こ とに よ っ て 生 じ る 電 力 会 社 の
た りの 増 分 コ ス ト を意 味 す る.こ の 結 果,QF資
格 が 与 えれ た 小 規 模 発 電 設 備
や コ ジ ェ ネ レー シ ョ ン施 設 な どが 発 電 市 場 に 参 入 す る よ う に な り,電 気 事 業 者 以 外 の 発 電 設 備 が 急 増 した. (2) 送 電 線 の コ モ ン キ ャ リ ア 化 さ らに,卸
電 力 市 場 を活 性 化 さ せ る た め に,電
発 電 事 業 者 が ア ク セ ス し,託
で あ る と い う議 論 が な さ れ た.IPPやQFと 者 らは,発
気 事 業 者 が 所 有 して い る送 電 線 に卸
送 に よ り配 電 事 業 者 を選 択 で き る よ う に す る こ とが 必 要 い った発 電事業 者や 配電 専業 の公 営 事業
電 部 門 へ の 競 争 導 入 に は送 電 線 を所 有 す る 電 気 事 業 者 に 対 す るFERCの
託 送 命 令 要 件 の 緩 和 が 必 要 で あ る と主 張 して い た の に対 し,発 送 配 電 一 貫 の 私 営 電 気 事 業 者 側 は,供 い た.ア
給 信 頼 度 や 費 用 負 担 の 面 か ら,こ
メ リカ で は,1992年
に成 立 して たEPAct(エ
の 託 送 命 令 要 件 の 緩 和 に は反 対 して ネ ル ギ ー 政 策 法)に お い て,卸 電
力 市 場 の 競 争 促 進 の た め,送 電 網 の 開 放,卸 託 送 の 自 由 化 の た め のFERCの 権 限 を 強 化 し た.こ れ 以 降IPPが ェ ア は11%に
台 頭 し,1995年
に は,IPPの
託 送命 令
総発 電 量 に 占め るの シ
達 して い る.
(3) 送 電 線 の 非 差 別 的 オ ー プ ン ア ク セ ス FERCは
利 用 者 個 々 の 申 請 に よ る託 送 命 令 権 限 の行 使 だ け で は,差 別 的 な送 電 線 利
用 を 是 正 す る に は 十 分 で は な い と認 識 し,競 争 的 な 卸 電 力 市 場 を 実 現 す る た め に, 1995年
3月 に 送 電 線 利 用 の 非 差 別 性 に 関 す る 一 般 規 則 案(MEGA-NOPR:MEGA
NOtice
of Proposed
議 論 を行 っ た.約
Rule-making)を
示 し,規 制 委 員 会,学
術,産
1年 間 に わ た る議 論 の 末,FERCは,1996年
に対 し連 邦 の す べ て の 送 電 線 の 開 放(transmissiOn
業 界 を巻 き込 ん だ
4月 に,各 電 気 事 業 者
open
access)を 義 務 づ け,そ
関 わ る 各 種 規 則,「 送 電 線 の 開 放 及 び 回収 不 能 投 資 費 用 に関 す る 最 終 規 則(Order 888)」 と 「 送 電 線 の 情 報 公 開 及 び そ の 運 営 の 基 準 に 関 す る最 終 規 則(Order
れに No.
No.889)」
を 発 効 した.
1.3.2
FERO
Order
No.888とNo.889に
よる電力 自由化の促進
(1) 送 電 線 の 開 放 及 び 回 収 不 能 投 資 費 用 に 関 す る 最 終 規 則(Order 本 規 則 で は,電
気 料 金 の 低 廉 化,電
力 供 給 の 信 頼 性 の 確 保,公
No.888)
平 な送電 サ ー ビス の
提 供 を 実 現 す る た め,送 電 線 を 所 有 ・運 用 ・制 御 す る す べ て の 電 気 事 業 者 が 第 三 者 に 対 し 自 己 の 電 力 売 買 活 動 と非 差 別 的 に 送 電 サ ー ビ ス を提 供 す る こ と を義 務 づ け て い る. 送 電 線 開 放 に よ り,卸 契 約 需 要 家 が 契 約 供 給 者 を変 更 す る こ と に よ り発 生 す る 回 収 不 能 投 資(stranded
investment)の
完 全 回収 を認 め て い る.た だ し,こ の 費 用 回 収 の 適
用 範 囲 は,回 収 不 能 投 資 回 収 に 関 す る 規 則 案 が 公 示 以 前(1994年
7月11日)に
締結 さ
れ た 卸 契 約 と し,以 前 の 卸 供 給 契 約 を破 棄 す る需 要 家 に 対 し て の み と し,回 収 不 能 投 資 費 用 を離 脱 料 金 と し て付 加 す る こ と を明 確 に し て い る.さ 付 属 す る形 式 的 送 電 料 金 規 則(pro
forma
open
ら に,Order
access transmission
No.888に
tariff)で,各
種送
電 サ ー ビス を す べ て の 送 電 利 用 者 に非 差 別 性 を も っ て提 供 す る こ とを 義 務 づ け,地 点 間 サ ー ビ ス(point-to-point work
integration
transmission
transmission
service),ネ
ッ ト ワー ク 送 電 サ ー ビ ス(net
service)の 詳 細 な 規 定,系
lary service)の 規 定 が 盛 り込 まれ て い る(表1.3参
統 運 用 補 助 サ ー ビ ス(ancil
照).
(2) 送 電 線 の 情 報 公 開 及 び そ の 運 営 の 基 準 に 関 す る 最 終 規 則 (Order
No.889)
送 電 系 統 に 関 す る リ ア ル タ イ ム で の情 報 公 開 と そ の情 報 ネ ッ トワ ー ク の 運 営 に 関 す る 規 則 で,OASIS(Open い る.こ のOrder
Access
No.889は,送
補 完 す る形 で 公 開 さ れ,以 ①
Same-time
Information
System)ル
ー ル と呼 ば れ て
電 ア ク セ ス を活 性 化 させ るた め に,Order
No.888を
下 の こ と を 義 務 づ け て い る.
送 電 線 所 有 者 が 自 己 の 電 力 売 買 活 動 に 必 要 とな る 系 統 情 報 を 第 三 者 に 対 して も 非 差 別 的 に提 供 す る(送 電 線 情 報 公 開 シ ス テ ム の 構 築).
②
送 電 線 所 有 者 の 電 力 売 買 活 動 と系 統 運 用 業 務 を 完 全 に独 立 さ せ る こ と に よ り, 情 報 公 開 に対 し て 公 正 性 を もた せ,電 電 系 統 の 運 用.計
気 事 業 者 の 卸 電 力 取 引 に 従 事 す る 部 門 と送
画 に従 事 す る部 門 を 分 離 させ 行 動 規 制 を行 う.
表1.3
ア メ リカ に お け る 送 電 サ ー ビ ス と補 助 的 サ ー ビス
サ ー ビス 分 類
サ ー ビス 分 類
サ ービス内容 常 時 地 点 間送 電 サ ー ビス (短 期,長
地 点 間 送 電 サ ー ビス 送電サー ビス
期 サ ー ビ ス)
非常時地点 間送電 サー ビス ネ ッ トワ ー ク送 電 サ ー ビス グ ルー プ 1
スケ ジ ュ ー リン グ ・系統 制 御 お
(送 電 線 提 供 者 が 唯 一 の
よび デ ィ スパ ッ チ
サ ー ビ ス提 供 者)
電 圧 ・無 効 電 力 制 御 サ ー ビス 需 給 バ ラ ン ス調 整 ・周 波 数 制 御
補助 的サー ビス
グル ー プ 2
サー ビス
(送 電 線 提 供 者 以 外 に サ ー ビス 調 整 が 可 能 な サ ー
電力量偏差調整サー ビス
ビス)
瞬動予備力サ ービス 運転予備力サー ビス
1.3.3ISO設 FERCの
立 による電気事業 再編 最 終 規 則 に よ り卸 電 力 市 場 の 創 設 の 土 台 が 整 備 さ れ た も の の,電 力 取 引 の
複 雑 化 に よ る系 統 信 頼 性 の 低 下 や 市 場 支 配 力 の 問 題 な ど,競 争 的 電 力 市 場 を正 常 に機 能 させ るた め に 克 服 す べ き課 題 が 多 く残 され て い る.電 力 市 場 に お い て,複 取 引 を把 握 し,公 平 な 競 争 を実 現 す るた め に,す で あ るISO(独
立 系 統 運 用 機 関,Independent
い る.最 終 規 則(Order ISO組
織 は,す
構 築 さ れ,従
No.888)に
べ て の 市 場 参 加 者 か ら独 立 した 機 関
System
お い て も,ISO設
Operator)の
設 置 が 検 討 され て
置 の ガ イ ド ラ イ ン を掲 げ て い る .
べ て の 市 場 参 加 者 か ら独 立 し た 機 関 とな る よ う な 公 正 か つ 非 差 別 的 に
来 の 電 力 系 統 の 運 用 業 務(系 統 運 用 業 務,需
参 加 者 の 電 力 取 引 の 調 整 も行 う.さ (OASIS)を
雑 な電 力
ら に,ISOは,送
給 運 用 業 務)に 加 え て,市 場 電線同時情報 公開 システム
介 し,送 電 系 統 の 情 報 を一 般 に公 開 す べ き で あ る と し て い る.
この 最 終 規 則 で はISOの 域 協 議 会(MAAC)管 州(NEPOOL),カ
設 立 を義 務 づ け て い る わ け れ は な い もの の,中 部 大 西 洋 地
轄 地 域(PJM),ニ リ フ ォ ル ニ ア 州,テ
太 平 洋 北 西 部 地 区(Indego),ウ 8地 域 でISOの
ュ ー ヨ ー ク 州(NYPP),ニ
ューイ ン グラ ン ド6
キ サ ス 電 力 信 頼 度 協 議 会 管 轄 地 域(ERCOT),
ィス コ ン シ ン州 や ア メ リ カ 中 西 部 地 域(Midweat)な
設 置 が 検 討 され て い る.次
項 で は,ア
高 い 州 で あ る カ リ フ ォ ル ニ ア 州 で 実 施 さ れ て い る 電 力 取 引 シ ス テ ム を 例 と し てISO の 特 徴 を 説 明 した い.
ど
メ リカ の 中 で も電 気 料 金 の 最 も
1.3.4
カ リ フ ォ ル ニ ア 州 の ハ イ ブ リ ッ ド型 電 力取 引 形 態
カ リ フ ォ ル ニ ア 州 で は,図1.11に が 進 め ら れ て い る.Order PX(電
示 す よ う な電 力 取 引 モ デ ル の 構 築 に つ い て 検 討
No.888の
力 取 引 所,Power
送 電 線 利 用 の 公 平 性 を確 保 す る た め に,ISO,
EXchange),SC(Scheduling
Coordinator)の
機能 分離 が意
識 的 に 行 わ れ て い る. (1) ISOの
機能
あ ら ゆ る 送 電 線 利 用 者 に対 し て 公 平 な 送 電 サ ー ビ ス を 提 供 す る た め に,供
給地域
(カ リ フ ォル ニ ア州)全 域 の 送 電 系 統 の 信 頼 度 運 用 を行 う.具 体 的 に は, ①
送 電 系 統 情 報 提 供:制
御 地 域 内 の 需 要 分 布,送
助 サ ー ビス な ど の 系 統 情 報 を,OASISネ ②
給 電 計 画 策 定:PXお
よ びSC(Scheduling
電 制 約,送
電 ア クセス料 金 や補
ッ トワ ー ク を介 し て提 供 す る. Coordinator)か
ら提 出 さ れ た 需 給
計 画 を統 合 し,制 御 地 域 内 の 短 期 給 電 計 画 を 策 定 す る. ③
系 統 運 用 制 御:信
頼 度 お よび需給 バ ラ ンス維 持 のた め の オ ン ライ ンで系 統 運
用 ・制 御 を行 う. ④
電 力 取 引 決 済:送
電 線 利 用 者 の 電 力 取 引 に 対 す る決 済 業 務 とそ の費 用 回 収 を行
う.
図1.11
カ リ フ ォル ニ ア州 の電 力 取 引 形 態
な ど で あ る.な ahead)”
お,ISOに
よ る給 電 計 画 は,電
と “取 引 1時 間 前(hour-ahead)”
力 取 引 の 特 徴 か ら “取 引 前 日(day
の二 つ の 先 物 市 場(forward
market)で
の
取 引 を も とに 作 成 さ れ る. (2) PXの
機能
日 間 ス ポ ッ ト市 場 の 運 営 を行 い,時 間 ご と(30分 ま た は 1時 間)の 電 力 売 買 の 需 給 バ ラ ン ス と そ の ス ポ ッ ト料 金 設 定 を行 う.具 体 的 に は, ①
発 電 入 札:最
終 需 要 家 と直 接 取 引 を行 わ な い 発 電 事 業 者 か らの 入 札 を 受 け付 け
る. ②
需 要 入 札:PXが
運 営 す る 短 期 ス ポ ッ ト市 場 か ら 買 電 す る 事 業 者 が,地
点 ご
と ・時 間 ご との 希 望 需 要 量 と購 入 希 望 上 限 価 格 を提 示 す る. ③
入 札 決 定:原
子 力 やQFな
ど の 買 取 り義 務 の あ る 電 力 は前 も っ て 組 み 込 ま れ,
最 小 費 用 で 時 間 ご とに 需 給 バ ラ ン ス が 保 た れ る よ う に 各 入 札 電 源 を 決 定 す る.こ こで 策 定 され た 需 給 計 画 はISOに
提 出 さ れ,ISOが
策 定 した給 電計 画が フィー ド
バ ッ クされ る. ④
市 場 価 格 の 決 定:ISOが
策 定 した 給 電 計 画 の 中 で 増 分 発 電 費 用(限 界 費 用)が 最
も高 い 発 電 ユ ニ ッ トは 限 界 ユ ニ ッ ト と され,そ 送 電 ロ ス が 考 慮 さ れ,各 ⑤
決 済 業 務:発
の 発 電 ユ ニ ッ トの 価 格 を も とに,
発 電 事 業 者 へ の 支 払 い 料 金 を決 定 す る.
電 業 者 お よ び 買 電 業 者 に 対 し,電 力 取 引 計 画 と実 績 の 差 分 処 理 を
行 う. (3) SCの
機能
送 電 損 失 を考 慮 し て電 力 の 直 接 取 引 の 売 り手 と買 い 手 の 間 の 需 給 バ ラ ンス を 確 保 す る需 給 調 整 機 関 で あ る.送 電 線 を 利 用 す る 経 済 主 体(発 電 事 業 者,IPPや は,必 ず い ず れ か のSCを と も可 能).つ
需 要 家 な ど)
指 名 しな け れ ば な ら な い(た だ し,自 分 自 身 もSCに
ま り,こ のSCは,“
なるこ
一 つ また は 複 数 の 発 電 事 業 者 ”,“一 つ また は複 数 の
最 終 需 要 家 ”あ る い は “1組 み ま た は複 数 組 み の 発 電 事 業 者 お よ び 最 終 需 要 家 ” を代 表 す る電 力 取 引 仲 介 者 と して,ISOに
よ る給 電 計 画 作 成 に 参 加 す る 重 要 な 役 割 を 果 た
す.ス
“不 特 定 多 数 の 発 電 事 業 者 お よ び 需 要 家 ” を代 表
ポ ッ ト市 場 を 運 営 す るPXも
す るSCと
み な す こ と もで き る.な お,ISOの
お よ びSCは,送
給 電 計 画 作 成 作 業 を 助 け るた め に,PX
電 損 失 も考 慮 し需 給 バ ラ ン ス を満 足 す る給 電 計 画 の 作 成 が 義 務 づ け
られ て い る. カ リ フ ォル ニ ア 州 の ハ イ ブ リ ド型 電 力 取 引 形 態 が 義 務 づ け られ,す 別 的 な 卸 託 送 が 実 施 可 能 で あ る.一 方,小 る た め,州
べ ての州 で非差
売 レベ ル で は,各 州 の判 断 に 委 ね ら れ て い
に よ っ て 状 況 が 異 な る.競 争 導 入 に 関 し て 先 進 的 な 立 場 を と る カ リフ ォル
ニ ア 州 で は,1994年
4月 にCPUC(California
提 案 さ れ た 電 力 事 業 再 編 指 令 後,1996年
Utility Commission)に
よって
に は,全 需 要 家 に直 接 ア ク セ ス(小 売 自 由化)
を 実 施 す る こ と が 法 制 化 され た.1998年 を 行 う 電 力 取 引 所(PX)と
Public
3月31日
に,卸
プ ール 市場 として需給 調 整
系 統 設 備 の 運 用 制 御 ・監 視 を担 う 独 立 系 統 運 用 機 構(ISO)
の 運 営 が そ れ ぞ れ 開 始 さ れ た.同
時 に,直 接 ア ク セ ス 制 度 も 導 入 され,す
家 が 供 給 事 業 者 を選 択 で き る よ う に な っ た.つ
べ ての需 要
ま り,卸 プ ー ル 市 場 と直 接 ア クセ ス 制
度 の 両 者 を含 む ハ イ ブ リ ッ ト型 供 給 シ ス テ ム が 採 用 さ れ た た め,ISOとPXの
機能 が
分 離 さ れ た. この 新 シ ス テ ム に よ り,発 電 事 業 者 も消 費 者 も イ ン タ ー ネ ッ トを利 用 し て,OASIS を介 し て,送
電 線 利 用 の 予 約 を行 う こ とが で き る.現 在 の と こ ろ 大 手 3社(PG&E,
SCE,SDG&E)は
全 発 電 電 力 をPXに
業 者 かPXか dinator)経
卸 売 り し,配 電(供 給)は,電
ら電 力 を 購 入 す る.地 域 配 電 会 社 は,PXあ 由 の 直 接 購 入 の何 れ も選 択 で き る.さ
を バ ラ ン ス さ せ た給 電 計 画 を提 出 す る.ISOは,希 の 有 無,補
助 サ ー ビ ス の 量,系
え た 上 で,最 PXは,こ
る い はSC(scheduling
ら に,新
接 ア ク セ ス を 選 択 し た 市 場 参 加 者 の 代 理 者 と して,需
力 会 社 の配 電 事
要 と供 給 の ま と め,ISOに
需給
望 給 電 計 画 を も と に,送 電 線 混 雑
統 信 頼 度 基 準 の 評 価 な ど の確 認 の 後,必
終 給 電 計 画 を提 示 し,当
coor
シ ス テ ム の 中 で,SCは,直
要 な修 正 を加
日 の リア ル タ イ ム 給 電 運 用 を 実 施 す る.
の 最 終 給 電 計 画 を も とに,市 場 決 済 価 格 を 算 定 し,市 場 参 加 者 との 間 で 料
金 決 済 を 行 う.こ
の ほ か,自
(CTC:Competition
由化 に よ り回収 で き な くな っ た費 用 は競 争 移 行 料 金
Transition
Charge)を
通 して,電
力 会 社 が 徴 収 す る こ とが で き
る. 卸 市 場 の 自 由 化 後 も,世 界 的 な規 制 緩 和 の 取 り組 み,技 備 の 経 済 性 向 上 と ガ ス価 格 低 下 の影 響,地
術 進 歩 に よ る小 規 模 発 電 設
域 間 の 電 気 料 金 価 格 格 差 な ど を背 景 と し,
小 売 部 門 ま で 含 め た 電 力 市 場 自 由 化 の 議 論 が 活 発 に進 め ら れ た.一
部 の 州 で は急 激 と
い え る ス ピー ドで 小 売 部 門 の 開 放 が 進 ん で い る お り,連 邦 レベ ル で の 電 力 再 編 に 関 す る コ ン セ ン サ ス を 得 る た め の 調 整 が 今 後 必 要 と な る も の と予 想 さ れ て い る.現 は,ほ
在で
ぼ 全 米 の 各 州 で小 売 託 送 に 関 す る検 討 が 進 め ら れ て い る.各 州 の 電 気 料 金 水 準
が 異 な る た め,小
売 託 送 へ の 取 り組 み に は 差 が あ る も の の,電
気 料 金 水 準 が 合 衆 国全
体 平 均 よ り も 高 い 州 で は積 極 的 な導 入 へ の 動 きが み られ る.1998年
6月 の 時 点 で,12
州 が 電 力 再 編 を州 法 で 決 定 し,6 州 の 公 益 事 業 委 員 会 が 再 編 に 関 す る 命 令 を 発 効 し て い る.ま た,約2500も
あ っ た 電 力 関 連 会 社 が,規 制 緩 和 を 通 して 統 合 さ れ,最 終 的 に
は い くつ か のMega-utilityへ
と再 編 され るか も しれ な い との 見 方 も あ る.
1.3.5送
電線情 報システ ムの設置
最 終 規 則Order 情 報 を,す
No.889で
は,送 電 線 所 有 者 へ,送
電 ネ ッ トワ ー ク の 運 用 に関 わ る
べ て の 送 電 線 利 用 者 に非 差 別 的 に 提 供 す るた め に,こ
し く は他 の 団 体 が 運 用 す るOASISへ
のOASISの
設立 も
の 参 加 を義 務 づ け て い る.
送 電 線 利 用 の 透 明 性 を 確 保 し公 平 な電 力 市 場 を 実 現 させ る た め,情
報 ネ ッ トワ ー ク
と計 算 機 シ ス テ ム を利 用 した 効 率 的 な電 力 供 給 シ ス テ ム を構 築 す る た め に,送 電 サ ー ビ ス 業 務 は,原 則,す
べ てOASISを
介 して 行 わ れ る.OASISに
①
送 電 線 の 利 用 可 能 送 電 能 力(available
②
価 格,条
掲 載 さ れ る情 報 は,
and total transmission
件 な ど の 送 電 サ ー ビス に 関 す る情 報(transmission
capability) service
offering
and price) ③
形 式 型 送 電 料 金 で 規 定 さ れ た 内 容 と そ の 料 金 な ど補 助 サ ー ビ ス に 関 す る情 報 (ancillary service offering and
④
price)
サ ー ビ ス の 申 請 と 申 請 に 対 す る 回 答(transmission
service
requests
and
responses) ⑤
送 電 サ ー ビ ス の ス ケ ジ ュー ル に関 す る情 報(transmission
schedule
informa
tion) ⑥
発 電,送
電 設備 の運 転状 況
な どで あ る. 送 電 線 利 用 者 は こ のOASISに 報 を得 る こ とが で き,希
ア ク セ ス す る こ とで,電
力取 引 を行 う上 で必 要 な情
望 す るサ ー ビ ス を 申 請 す る こ と もで き る.送 電 線 利 用 が 拒 否
さ れ た り,送 電 サ ー ビス が 停 止 さ れ た りす る 可 能 性 を判 断 す る こ とが で き る.現 在, 当 シ ス テ ム は,OASISフ 網 を利 用 し,OASISを
1.4
ェ ー ズ 1 と し て 運 用 さ れ て お り,イ ン タ ー ネ ッ トの公 衆 情 報 介 して 送 電 線 利 用 の 予 約 を行 う こ とが で き る.
欧 州 連 合(EU)に
1.4.1 EU電 EUは,市
お ける電 力 自由化 の 動 向
力市場 自由化指 令の背景
場 統合 の一 環 と して,80年
代後 半か ら “ 域 内エネ ル ギー単 一市場 ” の形
成 をめざ して,さ まざ まな法制 化 を試 みて きた(図1.12参 照).電 力 につ いて は,1990 年 代初頭 の イギ リスや 北 欧諸 国の電 気事 業 の改革 に触発 され,9O年 に は託送 命令,価 格 透明化 指令 を制 定 し,92年 に は小 売供 給部 門へ の競争 導入 を 目的 とす る第 三者 ア ク
図1.12
EUの
エ ネ ル ギ ー 政 策 の 取 り組 み
表1.4 EU電 力市場 におけ る規制緩和 の経緯 と今後 の展 開 規制緩和の経緯
年次 1987年
EU委
員 会,域
内 エ ネ ル ギ ー単 一 市場 構 想 を発 表
1992年
EU委
員 会,第
三 者 ア ク セ ス(TAP)指
1993年
EU委 員会,TPA修
1994年 1995年
フ ラ ン ス,対 6月
EU閣
令 案 を提 出
正指令案 を提出
案 と し て単 一 購 入 者 制 度(SBS)を
僚 理 事 会,SBSを
1995年10月
議 長 国 ス ペ イ ン,TPA修
1996年
2月
議 長 国 イ タ リア,再 修 正 案 を提 出
1996年
6月
EU閣 僚理事会,基 本合意 EU議 会,閣 僚 理事会合意案 を修正 なしで採択 EU閣 僚理事会,最 終的 に指令案 を採択
1997年
EU指 令 発 効 -以 下 ,市 場 開 放 ス ケ ジ ュー ル年 間4000万kW以 を開 放.た
並 列 導 入 が 可 能 と結 論
正 指 示 案 を提 出
1996年12月
2月
提案
一 部 修 正 す れ ばTPAと
上 の 需 要 家 のEU全
域 で の シ ェ ア(22.5%)以
だ し,2 年 間 の 国 内 法 化 の た め の猶 予 期 間 あ り
1999年
猶予期間 の終 了.指 令 の法的効力発生
2000年
自由 化 対 象 を2000万kWhに
2003年
自 由化 対 象 を900万kWhに
2006年
自由化対象 をされに拡大す るか再検討
拡 大(EUシ 拡 大(EUシ
ェア28.5%) ェ ア32%)
上 の 自国 市 場 電 力
セ ス(TPA:Third
Party
Access)制
度 の 案 を提 出 す る な ど,卸 発 電 ・小 売 の 自 由 化
や 送 配 電 網 の 開 放 を是 非 を 巡 り,EU加 参 照).特
盟 国 内 で は げ し い 議 論 が な され て き た(表1.4
に,小 売 供 給 事 業 自由 化 を 主 張 す る イ ギ リス や北 欧 諸 国 に 対 して,発 送 配 電
一 貫 の 国 営 企 業 形 態 で 電 気 事 業 を行 う フ ラ ン ス や イ タ リ ア な どが に 限 定 し,小 Buyer
System)を
し,EU市
,自 由 化 を発 電 部 門
売 供 給 事 業 の 自 由 化 を 原 則 認 め な い 単 一 購 入 者 制 度(SBS:Single 提 案 す る な ど,各 国 の 利 害 が 絡 み 合 い,議
論 は 紛 糾 し て き た.し
か
場 統 合 の 一 環 と し て電 力 市 場 の 統 合 も不 可 欠 で あ る と い う考 え方 に,各 国 と
も歩 み よ りみ せ,1997年(2
月)にEU電
の 共 通 規 制 に 関 す るEU閣
力 市 場 規 制 緩 和 指 令(正 式 に は 「域 内 電 力 市 場
僚 理 事 会 指 令 」)が発 効 され た.こ れ に よ り,EU加
盟 国 は,
発 令 後 2年 以 内 に この 発 令 の 内容 を 国 内 法 化 し な け れ ば な らな い状 況 を 迎 え て い る.
1.4.2
EU委
員会の電 力市場 自由化の提案
イ ギ リス の 電 力 規 制 緩 和 の 動 き は,前
述 の よ う に 小 売 市 場 の 自 由 化 に ま で 突 き進 む
大 胆 な 改 革 とな っ た.こ れ が 一 つ の き っ か け とな り,欧 州 連 合(EU)全
体 に まで 電 気 事
業 の再 編 と規 制 緩 和 の 動 きが 及 ん だ. EU委
員 会 は,1991年
に公 益事 業 で ある電気 とガスの 市場 につ いて次 の よ うな提案
を 行 っ た. ①
発電 お よび送配 電線
ガ ス ・パ イ プ ラ イ ン建 設 の 排 他 的 な 権 利 に終 止 符 を 打 っ
こ と. ②
垂 直 統 合 型 事 業 者 に つ い て,分 事 業 で あ れ ば,発
③
離(ア ンバ ン ド リ ン グ)を 行 う.す
な わ ち,電
気
・送 ・配 電 部 門 の 管 理 と会 計 を 分 離 す る.
大 口 産 業 用 需 要 家 と配 電 ・配 給 事 業 者 が 送 配 電 線 あ る い は ガ ス ・パ イ プ ラ イ ン に ア ク セ ス す る権 利 を 認 め,安 三 者 ア ク セ ス(TPA)を
価 な エ ネ ル ギ ー の購 入 を可 能 に す る.い
わ ゆる第
認 め る.
しか し,加 盟 国 の 一 部 に こ れ に対 す る 強 硬 な 反 対 が で た.そ
の急先 鋒 であ る フラ ン
ス は,自
を 提 案 し,第 三 者 ア ク
由化 を発 電 部 門 に 限 定 し た “単 一 購 入 者 制 度(SBS)”
セ ス と同 等 の 選 択 肢 と し て認 め る よ う に 求 め た.そ
し て 最 終 的 に は,第 三 者 ア ク セ ス
に つ い て,“ 交 渉 に よ る 第 三 者 ア ク セ ス ”を認 め る の か,“ 修 正 さ れ た 単 一 購 入 者 制 度 ” を選 択 す る の か,と い う二 つ の 方 法 を加 盟 国 ご とに 決 め る こ と で ま と ま り,1996年12 月 にEU電
気 市 場 指 令 が 成 立 し た.こ のEU指
令 で は,第 三 者 ア ク セ ス の 有 資 格 者(大
口 需 要 化 や 配 電 会 社)に つ い て の 統 一 基 準 は な く,各 国 が そ の 基 準 を公 表 す る こ とに な っ て い る(図1.13参 また,事
照).
業 の 分 離 に つ い て は,送 電 シ ス テ ム の オ ペ レ ー タ 管 理 は 他 の 部 門 か ら独 立
(a)SBS
(b)TPA
図1.13
し,透
EU案
と フ ラ ン ス案 の ア ク セ ス 制 度 の 比 較
明 性 を担 保 す る こ と,垂 直 統 合 型 の 電 気 事 業 者 は発 ・送 ・配 電 事 業 ご と の 会 計
の 分 離 を行 わ な け れ ば な ら な い こ とが 盛 り込 ま れ た.す な わ ち,EU指
令 で は,イ ギ リ
ス の よ う な 事 業 の 完 全 分 割 と小 売 市 場 で の 完 全 自 由化 に まで は 至 っ て い な い が,垂
直
統 合 型 電 気 事 業 者 の 発 ・送 ・配 電 活 動 に お け る会 計 と管 理 の分 離 を 求 め て い る.
1.4.3
自由化電力市場の選 択制
こ のEU指
令 に よ り,EU加
自 由 化 を,1999年
盟 国 は,こ
の指令 で定 め られた小 売供 給 の段 階的部 分
まで に 国 内 法 化 し な け れ ば な ら な くな った.EU加
事 業 者 と需 要 家 の 取 引 形 態 と し て,第 三 者 ア ク セ ス制 度(TPA),ま 度(SBS)の
い ず れ か を選 択 す る こ とが で き,一
盟 各 国 は,発 電 た は単一 購入 者制
定範 囲以上 の市場 を段 階的 に開放 す る
こ と に な っ た. TAPで
は,地 域 内 の 送 電 網 を 開 放 し,小 売 託 送 を認 め る も の で,発 電 事 業 者 と需 要
家 が 直 接 契 約 し,送 電 事 業 者 に は,送 TPAを
配 電 線 利 用 料 金 は 支 払 う(図1.13(b)参
選 択 し た 国 は,“ 交 渉 に よ るTPA(negotiated
制 託 送)ま た は “ 規 制 せ さ れ たTPA”(強 は,系
access
照).
to the system)”(非
強
制 託 送)を 選 択 で き る.“ 交 渉 に よ るTPA”
統 運 用 者 と商 業 ベ ー ス に基 づ く交 渉 を して,系
統 運用 者が 認 めれ ば系統 を使 用
で き る.こ れ は,系 統 ア ク セ ス へ の 交 渉 権 で あ り系 統 ア ク セ ス 権 で は な い. 一 方,“ 規 制 さ れ たTPA” 使 用 料 金 は公 開 さ れ る.こ
は,有 資 格 需 要 家 に系 統 ア ク セ ス 権 が 与 え られ,送 の 場 合 で は,商
電線
業 ベ ー ス の 交 渉 に 基 づ く もの な の で,送
線 使 用 料 金 な ど の 交 渉 内 容 は 公 表 さ れ な い.た
電
だ し,送 配 系 統 運 用 者 は,必 要 な 系 統
容 量 が な い 場 合 に は,明 確 な 理 由 を提 示 し系 統 ア ク セ ス を 拒 否 す る こ とが で き る.
SBSは,自
国 の 大 口 小 売 市 場 を 開 放 し,単 一 の 購 入 者 が 国 内 外 の 発 電 事 業 者 か ら電
力 を一 括 して 購 入 した 上 で,需 要 家 に供 給 す る シ ス テ ム で,送 とす る(図1.13(a)参
照).こ
配 電 設 備 の 運 用 は独 占
の シ ス テ ム で は,発 電 事 業 者 と需 要 家 が 直 接 契 約 を 結 ぶ
が,電 力 の 売 買 は発 電 事 業 者 と単 独 購 入 者,単 独 購 入 者 と需 要 家 とい う形 で 行 わ れ る. 単 独 購 入 者 以 外 の 発 電 事 業 者 を需 要 家 の 個 別 の 契 約 内 容 を競 争 相 手 で あ る 単 独 購 入 者 は 一 方 的 に 知 り う る とい う 問 題 点 が あ り,EU指 運 営,情 SBSで
令 に お い て は,発
報 交 換 制 限 を行 う もの と され て い る.TPAで
送 配電 部 門 の分離
の 新 規 電 源 の 建 設 は 許 可 制 で,
は入 札 制 を と る.
さ らに,1999年
にEU指
令 が 発 効 され た が,各
国 は,そ れ に 準 拠 す る よ う国 内 法 を
整 備 し て き た.た
だ し,ベ
ル ギ ー とア イ ル ラ ン ドに は 1年,ギ
リ シ ャ に は 2年 の 追 加
猶 予 期 間 が 与 え ら れ て い る. 特 に,こ
れ まで 独 占供 給 体 制 を 維 持 し て き た フ ラ ン ス,イ
急 な 国 内 法 の 改 正 が 進 め ら れ,部 で も,国
分 的 な 自 由 化 を実 施 し て い る ス ペ イ ンや ポ ル トガ ル
内 法 の 一 部 改 正 が 必 要 と な っ た.大
を,制 限 的 な 自 由化 を め ざ す 国 はSBSを 供 給 体 制 か ら,TPAを
タ リア や ドイ ツ で は,早
幅 な規 制 緩 和 を 実 施 を め ざ す 国 はTPA
選 択 す る もの と考 え ら れ て い る.各 国 の 電 力
選 択 す る とみ られ て い る 国 は,イ ギ リ ス,ス ウ ェ ー デ ン,フ ィ
ン ラ ン ド,ド イ ツ,ス
ペ イ ン,オ
ラ ンダ な どで,一
る 国 は,フ
タ リア,ポ
ル トガ ル,ベ
ラ ンス,イ
ー ス トリ ア な どで あ るが
方,SBSを
ル ギ ー,ギ
,ま だ 流 動 的 で あ り,フ
選 択 す る とみ られ て い リ シ ャ,ア
イ ル ラ ン ドや オ
ラ ン ス も近 々TPAへ
の 移 向 との こ
とで あ る.
1.4.4
送電 事業の機能 分離
こ のEU指
令 で は,公
平 な 競 争 を確 保 す るた め に,発
分 経 理 が 最 低 条 件 と し規 定 され,新
電,送
電 お よび配 電事 業の 区
規発 電 設備 の建 設 に入 札 制 度 を導入 す る場合 に
は,発 送 配 電 事 業 か ら独 立 し て入 札 評 価 を行 う 第 三 者 評 価 機 構 の 設 置 も規 定 さ れ て い る. 今 後 の ス ケ ジ ュ ー ル は,段 る.第
1段 階(1997年)で
力 量 が4000万kWh以 第 2段 階(2000年)で
は,各 国 の 年 間 消 費 電 力 の 上 位22.5%(EU全
体 の年 間消費電
上 の 需 要 家 の構 成 比 に相 当)の 需 要 家 が 対 象 とな っ た.さ ら に, は.同28.5%(2000万kWh)の
で は,同32%(900万kWh)の は2006年
階 的 に小 売 供 給 自 由 化 の 対 象 を 拡 大 し て い く予 定 で あ
需 要 家 が 対 象,第
需 要 家 が 対 象 と拡 大 さ れ る.さ
に 再 度 検 討 す る と し て い る.
3段 階(2003年)
らに,対 象 を 拡 大 す る か
1.4.5
EU域
1987年,EU委 た.従
内電力市場構 想と加盟国の対 応 員 会 が,域
内エ ネル ギー の大規模 単 一市 場 の実現 に向 けて動 き出 し
来 の 地 域 独 占供 給 体 制 か ら,発 電 市 場 の 自 由 開 放 と,小 売 電 力 取 引 の 広 汎 な 自
由 化 へ の 転 換 が 目標 と され,EU関
係 国 の 共 通 ル ー ル づ く りが 議 論 され た.1996年12
月 に 共 通 ル ー ル と して,「 域 内 電 力 市 場 の 共 通 規 制 に 関 す るEU閣 と ま り,1997年
2月 に 発 効 され た.こ
僚 理 事 会 指 令 」が ま
の 共 通 ル ー ル で は,発 送 配 電 事 業 の 区 分 経 理,
発 電 所 建 設 時 に コ ス トを 比 較 す る 第 三 者 評 価 機 関 の 設 置 な ど,公 平 な競 争 を 可 能 とす る た め の 環 境 整 備 が 明 文 化 さ れ た. このEU指 国 はEU指
令 を受 け て,段
階 的 な 小 売 供 給 の 自 由 化 を 行 う こ とが 決 ま り,EU加
令 の 法 的 効 力 が 発 生 す る1999年
ま で に,国
い.イ ギ リス や 北 欧 諸 国(ノ ル ウ ェ ー(91年),ス
フ ラ ン ス,ド
イ ツ,イ
内 法 を整 備 し な け れ ば な ら な
ウ ェ ー デ ン(96年),フ
年)で は 小 売 市 場 を全 面 自 由化)で は,す で にEU指
盟
ィ ン ラ ン ド(97
令 以 上 の 自由 化 を達 成 して い る.
タ リア な ど独 占供 給 体 制 を 維 持 し て き た 国 で は,よ
う や く重 い
腰 を 上 げ,再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー の活 用 な ど を 含 め競 争 条 件 の 整 備 を 進 め つ つ あ る.EU 指 令 の 決 着 に 先 行 す る形 で,1994年 緩 和 を 実 施 し た.そ
し て,イ
に ポ ル トガ ル が,1995年
に ス ペ イ ンが 独 白 の規 制
タ リア も民 営 化 と規 制 緩 和 に 向 けて 動 い て い る.
な お,一 部 の 国 は,国 内 事 情 を配 慮 して 国 内 法 整 備 の 準 備 期 限 に1∼2年 が 認 め られ て い る(ア イ ル ラ ン ドは 1年,ギ
の猶予 期間
リ シ ャ は 2年)こ と は先 に述 べ た と お りで
あ る. また,ス 後,EU電 府 は,国
イ ス はEU加
盟 国 で は な い が,欧
州 国 際 送 電 連 網 の 中 心 的 存 在 で あ り,今
力 自 由 化 の 動 き に巻 き 込 ま れ て い く こ とが 予 想 され る.そ の た め,ス イ ス 政 際 競 争 に 対 応 して い くた め に,事 業 再 編 の 動 き が 活 発 に な っ て き た.ヨ
ーロ
ッパ で も電 気 料 金 水 準 が 最 も高 い ス イ ス の 産 業 用 需 要 家 か ら の 規 制 緩 和 の 要 請 も強 く,EU電 し か し,イ
力 自 由 化 指 令 の 加 盟 国 で の 国 内 法 化 に 合 わ せ て,法 制 化 を行 う予 定 で あ る. ギ リス や 北 欧 諸 国 の よ う な全 面 自 由 化 で は な く,フ
ラ ン ス や ドイ ツ な ど の
近 隣 諸 国 に合 わ せ た段 階 的 な 自 由 化 を指 向 して い る.
1.4.6
今後の 課題
90年 代 初頭 に欧米 で 始 まった電 気事 業の規 制緩 和 や競争 原 理導 入の 流れ は,世 界的 に広 まって い く傾 向 にあ る.た だ し,電 力産 業 にお け る規制 緩和 の考 え方や その程 度, 電 力供 給 体制 再編 は,国 情 に よって異 な る.し か し,従 来 の電 力会 社 と卸電 気事 業者 を含 め た発電 部 門全体 の費用 最小 化 と電 力産 業活 性化 へ の貢献 とい う点 か ら,発 電部
門 へ の参入規 制緩 和 は評価 され なけれ ばな らな い.次 に,わ が国 で も必 然的 に “ 託送 の自 由化 ”(い わ ゆ るオ ープ ンア クセ ス)の議 論が 生 まれて くる.た だ し,託 送 自由化 問題 は,電 力 会社 の供 給義 務,供 給 信頼 性,経 営安 定性 な どの電 力供 給体 制 の あ り方 と深 い関わ りを もつ ので,十 分 な検 討が 必要 で あ る. このよ うな,新 環境 下 にお け る電 気事 業分 野 の技術 課 題 として は,新 規 参 入者 に よ る電 力 系統計 画 ・運用 へ の影響評 価,分 散 電源 系統連 系のた めの技 術 要件 の整 備,自 然 エ ネルギ ーお よび分 散電 源 の電力 品質 に及 ぼす影 響評 価,供 給信 頼 度評 価 お よびそ の維 持 のた めの送 配電 設備 計画 手法 の確立,託 送料 金算 定や 需給運 用 計 画の た めの系 統解 析 ソ フ トウェア技術 の開発,双 方 向情 報 通信技術 の活用,単 独 運転 検 出 な どの系 統保 護 方式 の構 築 な どが あ げ られ る. そ こで後章 で は,こ れ らの重 要技術 開発 課題 を解 決 す る手段 として,以 下 に示 す よ うな解析 理論 お よび技 法 につ いて詳 し く述 べ る. 電 力市 場 のた め の基 礎 経済理 論
(a) (b)
送電 サー ビス と送 電料 金設 定理論
(c)
短 期 限界 費用 と最 適潮 流計 算
(d)
系 統 維 持 運 用 ・制 御 とア ン シ ラ リー サ ー ビス
(e)
安定度 評価 と固有値 解 析
(f)
供 給信 頼 度評価 と電力 設備形 成
(g)
電 力 系 統 の 運 用 ・解 析 支 援 シ ミ ュー シ ョ ン技 術
(h)
分 散電 源連 系 と電圧 管理 技術
(i)
分散電 源 系統連 系 と単 独運転 検 出技術
(j)
新 エ ネル ギー 導入 と可変 速 回転機 器技術
(k)
電 力 品 質 維 持 とパ ワー エ レ ク トロ ニ ク ス
(l)
新 エネル ギー利 用 と分 散電源
(m)
分散 電源 の系 統計 画 への影 響評価
(n)
電力 自由化 の今後 の展 望
参考文献 1)
石 井 編:現 代 の 公 共事 業NTT出
2)
植 草 益:公 的 規制 の経 済 学,筑 摩 書房,1991. 益 事業 と規 制 緩和,東
版,1996.
3)
林 敏彦編:公
4)
植 草 益:講 座 ・ 公 的規 制 と産業 ① 電 力,NTT出
洋経 済 新 報社,1990.
5)
B.Tenenbaum,R.Lock
版,1994.
and J.Barker:Electricity
Privatization Structural,com-
petitive
and
regulatory
options,ENERGY
POLICY,pp.1143-1161,December
6)矢
島 正 之:電
力 市 場 自 由 化,日
7)矢
島 正 之:電
力 市 場 自 由 化 モ デ ル 分 析,電
8)S.Hunt
and
1992.
本 工 業 新 聞 社,1994. 力 中 央 研 究 所 報 告,Y95012,1997.
G. Shuttleworth:Competition
and
Choice
in Electricity,John
Wiley
&Sons,1996. 9)(社)海
外 電 力 調 査 会:海
10)電
力 新 報 社:電
11)圓
浄:英
外 諸 国 の電 気 事業
気 事 業 講 座15海
第 1編1993年,1993.
外 の 電 気 事 業,1997.
国 に み る 電 力 ビ ッ ク バ ン(そ の 光 と影),電
12)M.Yajima, egulation
C. Riechman
13)(社)海
in England
and
and
M.
Wales,CRIEPI
外 電 力 調 査 会:98年
気 新 聞,1997.
Kitamura:Evaluation Report
of Electric
Power
Der
EY97001,1997.
以 降 の 英 米 の 電 力 供 給 シ ス テ ム,海
外 電 力 調 査 報 告No.
186,1997. 14)塚
本:送
し て),エ 15)塚
本:米
電 ア ク セ ス が 電 力 計 画/運
用 に 与 え る影 響 と 課 題(米 国 規 制 緩 和 事 例 を参 考 と
ネ ル ギ ー 経 済,23,5,pp.2-25,1997. 国 に お け る 送 電 ア ク セ ス を巡 る 動 き と託 送 料 金 算 定 方 式 例,エ
ネ ル ギ ー 経 済,
21,9,1995. 16)岡
田,浅
討,電
野,松
川:Nodal
Pricingに
17)矢
島 正 之:電
力 改 革,東
18)矢
島 正 之:世
界 の 電 力 ビ ッ グ バ ン,東
19)石
原 正 康:電
力 自 由 化,日
20)電
力 政 策 研 究 会:図
21)鶴
田 俊 正:規
22)川
本 明:規
23)鶴 24)橋
よる送 電料 金 に よる送 電 料 金 設定 方 法 の基礎 的検
気 学 会 電 力 技 術 研 究 会 資 料No.PE-96-53,1996.
本 寿 郎,中
洋 経 済 新 報 社,1999.
刊 工 業 新 聞 社,1999.
説 電 力 の 小 売 り 自 由 化,電
制 緩 和,ち 制 改 革,中
光 太 郎:日
洋 経 済 新 報 社,1998.
公 新 書,1998.
本 的 市 場 経 済 シ ス テ ム,講 川 淳 司:規
力 新 報 社,2000.
く ま 新 書,1997.
談 社 現 代 新 書,1998.
制 緩 和 の 政 治 経 済 学,有
斐 閣,2000.
第 2章 電力市場のための基礎経済理論
2. 1
電力産業の概要
2.1.1
電 力供 給 体 制 と 電 力 系 統 の 特 徴
(1) わが 国の 電 力供 給体 制 わが 国 の電力 供給 体制 は,一 定 の供給 区域 を もち,そ の区域 内 の需要 家 に電気 を供 給 す る “一 般電 気事 業者 ”(既 存 の電力 会社)と,供 給 区域 を もた ず一般 電気 事業 者 に 電 気 を卸供 給 す る “卸電 気事 業者” に よって営 まれ て きた.約30年
ぶ りとな る1995
(平成 7)年の電 気事 業法 改正 で は,卸 電 気事 業 に係 わ る認 可が 原則 撤廃 され,発 電 部 門 へ の新規 参入 の拡 大が 図 られた(卸 電 力入 札制 度 の創設).同 時 に,特 定 の供 給地 点 にお け る需要 に応 じ電気 を供給 す る “特 定電 気事 業者 ”に係 わ る制 度(特 定電 気事 業制 度)も 創設 され た.さ らに2000(平 成12)年 3月21日 に施 行 され た改 正電 気 事業 法 で は,“特 定規 模電 気事 業者 ”に係 わ る制度 が創 設 され,小 売部分 自由化 が 導入 された*1. *1 一 般 電 気 事 業 者 に は,電
気 の 生 産 か ら販 売 に至 る まで 発 電.送
従 来 の 電 力 会 社 が 含 ま れ る.現 在,1951(昭 中部,北
陸,関
西,中
縄 電 力 を加 えた10電 社,公
国,四 国,九
和26)年
州 電 力 会 社 に,1972(昭
力 会 社 が あ る.卸 電 気 事 業 者 に は,電
営 電 気 事 業 者(34事
業 者),そ
和47)年
5月 の 沖 縄 返 還 以 降 に発 足 した沖
源 開 発 株 式 会 社,日
の 他 の 私 営 電 気 事 業 者(20社)が
直 接 電 気 を供 給 す る事 業 者 で あ る もの の,そ
電 ・配 電 部 門 を 一 貫 して に な う
5月 の 電 力 再 編 時 に誕 生 した 北 海 道,東 北,東 京, 本 原子力 発電株式会
あ る.特 定 電 気 事 業 は,需 要家 へ
の 事 業 が 一 般 電 気 事 業 者 の よ うに 広 域 的 な需 要 に応 じて
供 給 を 行 う もの で は な く,限 定 さ れ た 供給 地 点 にお け る需 要 に 対 して 効 率 的 な 供 給 を行 う こ とを 前提 とす る もの で あ る.そ
の た め,特
定 電 気事 業 者 に は料 金 認 可 や 供 給 計 画 の 届 出 等 が 義 務 づ け られ て お
らず,一 般 電 気事 業 者 よ り も簡 易 な 規 制 の も とに お か れ て い る.2000(平 訪 エ ネ ル ギ ー サ ー ビ ス(株)(長 野 県,最 大 出 力3122kWの ー テ ィ リテ ィサ ー ビ ス(株)(兵 庫 県 ,最 大 出力12600kWの
成12)年
火 力 発 電 機(LPGガ
9月 1日現 在 で,諏
ス タ ー ビ ン))と 尼 崎 ユ
火 力 発 電 機(都 市 ガ ス タ ー ビ ン))の 2社 が
特 定 電 気 事 業 者 と し て認 可 を受 け,事 業 を 行 っ て い る.さ らに,平 成12年 3月21日 ン ドパ ワー(株),丸 紅(株),旭 硝 子(株),イ ー レ ッ ク ス(株),新 日本 製 鐵(株),(株)エ 特 定 規 模 電 気 事 業 者 と して届 出 を行 っ て い る.
以 降,ダ イ ヤ モ ネ ッ トな どが,
こ の 特 定 規 模 電 気 事 業 者 と は,一 般 電 気 事 業 者(従 来 の 電 力 会 社)が 維 持 ・運 用 す る 送 電 ネ ッ トワ ー ク を 利 用 して(託 送),電 電 力 を 受 電 し,原 則2000kW以 で あ る.特
気 を 特 定 規 模 需 要 家(2 万 V 以 上 の 送 電 線 で
上 の 最 大 使 用 電 力 を有 す る 需 要 家)に 販 売 す る事 業 者
定 の 需 要 家 へ 私 契 約 に基 づ き電 力 供 給 を行 う こ とか ら,こ
の特定 規模 電 気
事 業 者 へ は,原 則 と し て参 入 規 制 ・供 給 義 務 ・料 金 規 制 は 課 さ れ な い.ま た,同 時 に “火 力 全 面 入 札 制 度 ”が 導 入 さ れ ,従 来 の 電 力 会 社 や 卸 電 力 会 社 も新 規 参 入 者 と 同 等 に 卸 電 力 市 場 へ の 入 札 が 可 能 と な っ た(図2.1参
照).
(2)わ
が 国の電 力需 要の動 向
近 年,バ
ブ ル の 崩 壊 や 円 高 の 進 行 な ど に よ り 日本 経 済 の成 長 は 鈍 化 し た が,こ
も電 力 需 要 は 比 較 的 堅 調 に推 移 し て い る.1999(平 kWhで,対
前 年 度 増 加 率 は2.4%と
な り,2 年 ぶ りに 2%を 上 回 る伸 び と な っ た*2.
図2.1
*2 こ の う ち,民 生 用 需 要 に つ い て は,東 要 の増 加 に よ る も の で あ る.一
方,景
業 の ア ジア 向 け輸 出増 や電 気 機 器(IT関 とな っ た.
の間
成11)年 度 の総 電 力 需 量 は,9573億
わが国の電力供給体制
日 本 を 中 心 と した 夏 場 の 高 気 温 な どの 影 響 に よ る 冷 房 需
気 低 迷 の影 響 は あ る もの の,鉄 連)の 好 調 を 反 映 し,大
鋼 を は じ め とす る 一 部 素 材 型 産
口電 力 の 対 前 年 度 増 加 率 は,2.1%増
一 方,最
大 電 力 の 伸 び は,夏 季 の 気 温 の 影 響 を 大 き く受 け つ つ も,電 力 量,の伸 び を
ほ ぼ 一 貫 し て 上 回 っ て い る.さ らに,年 負 荷 率(年 間 平 均 電 力 量 の最 大 電 力 に 対 す る比 率)は,1970年
代 の60%を
も の の90年
代 に は55∼57%台
の 低 下 要 因 と して,冷
上 回 っ て い た が,猛 暑 ・冷 夏 な どの 影 響 で変 動 して は い る へ と,そ の 水 準 は 低 下 し て い る.こ
房 需 要 の 増 加,用
化 な ど が あ げ られ る*3.し
途 構 成 の 変 化,産
の よ う な 年 負荷 率
業 用需 要 にお ける業種 の変
か し な が ら,近 年 ヒ ー トポ ン プ エ ア コ ンや 電 気 カ ー ペ ッ ト
な どの 暖 房 機 器 の 普 及 増 に よ り,冬 季 の 最 大 電 力 の 増 勢 も顕 著 に な っ て い る.
(3) 電 力 系統 の構 成 と特 徴 “電 気 エ ネ ル ギ ー ”は,そ の ま まの 形 で 大 量 に貯 蔵 す る こ とが 困 難 で あ り,瞬 時 瞬 時 で 生 産 量 と 需 要 量 が バ ラ ン ス し て い な け れ ば な ら な い.“ 電 力 系 統(電 力 シ ス テ ム)” は,多
種 多 様 な 需 要 家 に 対 し安 全 か つ廉 価 に 電 気 エ ネ ル ギ ー の 発 生,輸
送,配
分 を行
う こ と を 目 的 と し,常 時 莫 大 な エ ネ ル ギ ー を 取 り扱 う巨 大 な シ ス テ ム で あ る.電 力 系 統 は,石
油,石
炭,ガ
ス,水
い う形 に 変 換 す る発 電 所,発
力,原
子 力,太
陽 光 や 風 力 な どの エ ネ ル ギ ー 源 を電 力 と
生 した 電 力 を輸 送 す る 送 電 線 や 配 電 線,利
用 しや す くす
る た め に 適 切 な 電 圧 値 に 変 換 す る と と も に集 積 ・配 分 の 役 割 を果 た す変 電 所 な どの 設 備 に よ り構 成 さ れ て い る.電
力 系 統 を構 成 す る 各 電 力 設 備 は,時
要 に 対 応 し所 要 の サ ー ビ ス レベ ル を確 保 しつ つ,系 る た め に 運 用 さ れ て い な け れ ば な ら な い.そ
々 刻 々 と変 化 す る需
統 全 体 の 安 定 性 や効 率 性 を保 持 す
の た め,電
力 系 統 内 に は保 護 ・制 御 ・監
視 設 備 ・通 信 設 備 な ど運 用 に 必 要 と な る諸 設 備 も備 え られ て い る. 電 力 系 統 で 発 生 し輸 送 す る 電 力(交 流 電 力 の 場 合)は,有 効 電 力(reactive
power)の
冷 蔵 庫 の モ ー タ を 回 し,熱
二 つ が あ る.有 効 電 力 は,電
効 電 力(active
離 れ た 地 点 で 発 生 した 有 効 電 力 の 変 化 が,電 と え ば,あ
ネル ギ
伝 わ る た め,地 理 的 に遠 く
気 的 に は即 座 に,シ
る地 点 で 生 じ た 消 費 電 力 の 急 増 が,系
無
ア コンや
を 発 生 させ る とい う 実 際 的 な 仕 事 を行 う もの で,エ
ー そ の も の で あ る .電 気 現 象 は 光 の速 度(約3×108m/s)で
与 え る.た
power)と
灯 に 灯 を と も し,エ
ス テム全 体 に動揺 を
統全 体 の需給 バ ラ ンス を
崩 し,そ の 結 果 と し て周 波 数 低 下 と い う現 象 を生 じ さ せ る可 能 性 も あ る.電 力 系 統 は, 有 効 電 力 の 面 で は,系 統 全 体 が 一 つ の シ ス テ ム と して 動 作 し,そ の 動 特 性 は全 体 的 で あ る. *3
家 庭 用 エ ア コ ンの 普 及 率 の 増 加 に加 え,業 務 用 ビル の 高 層 化,機 密 性 の 高 い建 造 物 の増 加,オ フ
ィ ス環 境 の 改 善 や工 場 にお け る ク リー ンル ー ム な どで の 冷 房 ・空 調 需 要 が増 加 して い るた め と考 え ら れ る.ま
た,経
済 の サ ー ビス 化 の 進 展 に よ り年 負 荷 率 の低 い 業 務 用 電 力 の比 率 が 上 昇 す るな どの 用 途
構 成 の変 化 が 生 じて い る.ま た,産
業 用 需 要 に お け る鉄 鋼 ・紙 パ ル プ ・石 油化 学 な どに 代 表 され る昼
夜 間連 続 操 業 型 の電 力 多 消 費 産 業 の 比 率 が 低 下 し,機 械 な どの 昼 間 操 業 型 産 業 の ウ エ イ トが 増 加 す る な どの産 業 用 需 要 に お け る業 種 の 変 化 が 生 じ て い る.
一 方,電 力 系統 を安 定 に運転 す るた めに は,負 荷 状況 に合 わせ て適切 な無 効電 力 を 供給 しな けれ ば な らない*4.無効 電力 の供給 方 法 は,発 電機 の運転 に よる もの と調相 設備 に よる もの に大 別 され る.こ の うち,調 相 設備 は,系 統 の拠 点 とな る送 電用 変電 所 や配 電用 変電 所 に設 置 され る.無 効電 力 は,発 生源 付近 の送 電線 や 負荷 で消費 され, 数百 ㎞ 離 れ た地 点 にそ の影響 が及ぶ こ とはな く,無 効 電力 の発 生 とその 消費 は局所 的 で あ る.電 力 の需給 調整 とは,こ の よ うにま った く対 照的 な性格 を有 す る有効 電力 と無 効 電力 の両 者 のバ ランス を保 つ ことで ある. また,電 力系 統 の発 達 の歴 史 的な経 緯か ら,わ が 国 の電力 系統 は本州 中部 以東 の50 Hz,本 州 中部 以 西 の60Hzと
異 な る二 つ の周 波 数域 に分 かれ て いる.こ のた め,両 周
波数 領 域間 に直 流 を用 いた 周波数 変換 設備 が設 置 され てい る. (4) 発電 お よび流 通 設備の 動 向 1963(昭 和38)年
度 に 初 め て 火 力 発 電 設 備 出 力 が 水 力 発 電 設 備 出 力 を 上 回 っ て 以 降,
燃 料 コ ス トの安 い石 油 火 力 の 積 極 的 な 導 入 に よ り,大 容 量 ・高 効 率 の 火 力 発 電 所 を 中 心 に 建 設 が 進 め られ,総
発 電 設 備 に 占 め る 火 力 発 電 設 備 の 比 率 は 年 々 増 加 し て きた.
しか し,第 一 次 石 油 危 機 を境 に,原 子 力 発 電,石
炭 火 力 発 電,LNG火
力 発 電 な どの 石
油 代 替 電 源 の 開 発 が 推 進 さ れ,電 源 の 多 様 化 が 図 られ て き た.1999(平 在 の 発 電 設 備 容 量(一 般 電 気 事 業 用)は,2 億2410万kWで,そ 力19.8%,火
力60.2%,原
子 力20%と
成11)年 度 末 現
の 電 源 構 成 比 率 は,水
な っ て い る.し か し,大 都 市 周 辺 な どの 需 要 地
帯 周 辺 に は,火
力 発電 所 や原 子 力発 電所 な どの大 規模 電 源 を建 設 で きる適 地 は 少 な
い.さ
年,環
ら に,近
境 問 題 へ の 関 心 の 高 ま りな どか ら,需 要 中 心 地 帯 か ら遠 隔 化 す
る傾 向 に あ る. 日本 の 基 幹 送 電 線 は,高 度 経 済 成 長 時 代 の 電 力 需 要 の増 加 に伴 い,187∼275kVの 超 高 圧 送 電 線 が 増 強 さ れ,基 化 や 大 容 量 化 に 伴 い,高 近 い.最 る.電
近 で は,地
幹 送 電 網 と し て 骨 格 が形 成 され た.そ
の 後,電
源 の遠隔
電 圧 大 容 量 の 長 距 離 送 電 設 備 の増 強 が 進 め られ,ほ
ぼ完 成 に
域 社 会 の 発 展 に 伴 い,都
力 需 要 の 巨 大 化,大
市 化,過
密 化 の 傾 向 が 一 段 と強 ま っ て い
都 市 集 中 の傾 向 に対 処 す る た め に,架
空送電 線 の太線 化 や
複 導 体 化 が 図 られ て い る.し か し,偏 在 す る電 源 地 帯 と大 都 市 部 を結 ぶ 送 電 系 統 は, 人 口 密 度 の 高 い 地 域 を 通 過 す る部 分 が 多 い た め,環 境 対 策 や 都 市 構 造 との 調 和 な ど さ ま ざ ま な 制 約 を 受 け,電
*4
無 効 電 力(reactive
力 輸 送 設 備 計 画 も ます ます 困 難 に な っ て きて い る.
power)は,系
統 内 の イ ンダ ク タ ン ス や コ ンダ クタ ンス に蓄 え られ る単 位 時
間 あ た りの エ ネ ル ギー に相 当 す る 電 力 で,有 重 要 な物 理 量 の 一 つで あ る.
効 電 力 と 同様 に,電
力 系 統 の 特 性 に大 き な影 響 を与 え る
電気という財の特性
(5)
電 気 エ ネ ル ギ ー は,国 民 生 活 や 産 業 活 動 に不 可 欠 な エ ネ ル ギ ー で あ り,電 気 の 利 便 性 ・安 全 性 ・快 適 性 な ど の 面 で,他
の エ ネ ル ギ ー と比 較 して す ぐれ た特 性 を もっ て い
るた め,国
民 生 活 や 産 業 経 済 の あ らゆ る分 野 で 電 気 の 使 用 範 囲 が 拡 大 し て い る.現 代
社 会 は,電
気 エ ネ ル ギ ー の利 用 な く して 成 り立 た な い と い っ て も過 言 で は な い.電
は,社
気
会 経 済 に お け る必 需 な 財(社 会 に お け る共 通 の 必 需 財)と い え よ う.そ の た め,
電 気 を供 給 す る企 業(電 力 会 社 な ど の 発 電 事 業 者)に は,電 気 を顧 客(供 給 事 業 者 や 個 別 需 要 家 な ど)に 安 定 的 か つ 低 廉 に供 給 で き る体 制 を整 備 す る こ とが 要 求 さ れ る, さ らに,電 気 を供 給 す る企 業 は,需 要 家 か ら公 平 で 非 差 別 的 な 供 給(価 格 や 供 給 条 件 も含 む)を 行 う こ とが 強 く求 め られ る.こ もつ が,個
の よ う に “電 気 とい う財 ” は公 共 的 な 性 格 を
別 需 要 家 の 需 要 量(消 費 量)が 明 確 に 区分 で き る財 で も あ るた め,価
が 可 能 な “私 的 財 ” あ る い は “経 済 財 ”で あ る*5.し た が っ て,私
企 業,公
格形 成
企業 を問わ
ず に企 業 は,需 要 家(消 費 者)か ら,提 供 し た 電 気 の 使 用 量(消 費 量)に 応 じ て料 金 を 徴 収 で き る.た
だ し,電 力 は大 規 模 な 貯 蔵 が 困 難 な財 で あ る た め,季
変 動 す る 需 要 に応 じて,瞬 い.さ
節 別 ・時 間 帯 別 に
時 瞬 時 で 生 産 量 と需 要 量 を バ ラ ン ス さ せ な け れ ば な ら な
ら に,需 要 が 季 節 別 ・時 間 帯 別 に 変 動 す る た め,発
合 っ た 供 給 設 備 を 常 に 確 保 し な け れ ば な らず,オ
電 事 業 者 は ピ ー ク需 要 に見
フ ピ ー ク時 に は遊 休 と な る設 備 が 発
生 す る.
2.1.2 電 力 産 業 に お け る 自 然 独 占 性 と規 制 の 根 拠 19世 紀 末 に登場 して以来,電 力産 業 は,各 国で さ まざ まな形 で公 的 規制 の もとで発 展 して きた.し か し,15年 あ ま り前 に経 済学 の分野 で電 気事業 へ の競 争 の導入 可能性 が示 唆 されて以 来,第
1章 で述 べ られ てい るよ うに,欧 米 諸 国 で電 力 民営 化 ・電力 自
由化 が検討 ・実施 されて い る.わ が国 で は,沖 縄 返還後,10電
力体 制 と呼 ばれ る地域
独 占の供給 体制 が と られ,電 気 事業 法 に よって参入 や料金 な どに関 して詳細 な規 制 が 実施 され て きた. 第 1章 で述 べ られ た よ うな90年 代 以降 の世 界 的 な電力 市 場 改 革 の潮 流 の中,わ が 国 の特性 をふ まえ,1995年 の電 気事業 法 の改正 による発電 部 門へ の競 争導 入 に続 き, *5
公 共 財(public
不 能性),あ さす.一
goods)と
は,「 各個 人 が 共 同 で 消 費 し,料 金 を支 払 わ な い 人 を排 除 で きず(排 除
る人 の 消 費 に よ り他 の 人 の 消 費 量 が 減 少 しな い(消 費 の 非 競 合 性)よ う な財 ・サ ー ビ ス」を
方,私
的 財(private
goods)と
は,「 対 価 を支 払 わ な け れ ば消 費 で きず(排 除 可 能 性),ま
たは
あ る人 が 消 費 す る分 だ け他 の人 が 消 費 で き な くな る(消 費 の 競 合 性)よ うな 財 ・サ ー ビ ス」 を さ す.し た が っ て,電 る.
力 は公 共 財 で は な く,わ れ わ れ が 消 費 す る ほ とん どの財 ・サ ー ビス と同 様 に 私 的財 で あ
2000年
3月 の 電 気 事 業 法 改 正 で は小 売 部 分 自 由化 が 導 入 され た.し か し,こ の よ う な
電 力 改 革 以 前,電
力 産 業 が 一 般 の産 業 と異 な り公 的 規 制 を 受 け て い た(受 け て い る)の
は,自 然 独 占 性(natural い て い る.自
れ が あ る の で,こ また,自
monopoly)と
い う特 別 な 条 件 を備 え て い る とい う考 え に 基 づ
然 独 占性 を 有 す る産 業 で は,価
格 支 配 な ど の 独 占 の 弊 害 が 発 生 す るお そ
れ を防 ぐた め に公 的 機 関 に よ る 参 入 規 制 や 料 金 規 制 が 必 要 と な る.
然 独 占性 の ほ か に,サ
ー ビスの必需 性や 二重 投資 の 回避 お よび破壊 的競 争 の
防 止 な ど も公 的 規 制 の 根 拠 と し て あ げ られ て い る.そ
こ で まず,"自
然 独 占性"の 考 え
方 に つ い て 概 説 した い.
(1) 自然独 占性 自然 独 占性 とは,資
源 の 希 少 性 や 規 模 の 経 済 性 ・範 囲 の 経 済 性 が 存 在 す るた め,単
一 の財 ・サ ー ビ ス(な い し は複 数 の 財 を 結 合 して)を 供 給 す る企 業 が ,一 社(独 占)も し く は 少 数 の 企 業(寡 占)を 形 成 す る蓋 然 性 が 高 い こ と を い う.技 術 的 理 由 ま た は特 異 な 経 済 的 理 由 で 成 立 し た 独 占 を"自 然 独 占"(寡
占 を 自 然 寡 占)と い う*6.そ
財 ・サ ー ビ ス の 生 産 段 階 に お け る"規 模 の 経 済 性(economic 産 規 模 が 増 加 す る に 従 っ て,そ 状 態 を さ す.た 用(C(q))の
of scale)"と
の中で も は,そ の 生
の財 ・サ ー ビ ス の 1単 位 あ た りの 平 均 費 用 が 逓 減 す る
と え ば,あ る 財 ・サ ー ビス 量 がq1か
らq2に 増 加 し,各 生 産 量 の 平 均 費
間 に 以 下 の よ う な 関 係 が 成 り立 つ 場 合,こ
の生 産水 準 の範 囲 で は規 模 の
経 済 性 が 存 在 す る.
(2.1) 最 近 で は,自
然 独 占性 の 条 件 と し て 規 模 の 経 済 性 と は 区 別 し て,費
(subadditivity)と
い う概 念 が 用 い られ て い る.あ
る産 業 の 市 場 に,同
サ ー ビ ス な ど)を 生 産 す る企 業 が n社 あ る と し,i 企 業 の 生 産 量 をqiと 生 産 す る た め の 総 費 用 をC(qi)と
用 の劣 加 法性 じ生 産 物(財 ・ し,そ のqiを
す る.一 方,市 場 全 体 の 総 需 要 量 を Q と し,こ れ を
1社 が す べ て 生 産 し た と き の 総 費 用 をC(Q)と
す る.こ
の と き,
(2.2)
*6 資源 の 希 少 性 に よ る 自然 独 占が 成 り立 つ ケ ー ス と して,資 然 条 件 が 決 定 的 な 要 因 とな っ た 独 占が 考 え られ る.た 確 保 で き な い 場 合,そ
の 井 戸 を特 性 の 組 織(個 人,企
と え ば,あ
源 の利 用 可 能 性 が 限 定 され る な ど 自 る 村 落 で 利 用 可 能 な 井 戸 を一 つ しか
業 も し く自治 体 組 織)が 所 有 し,全 住 民 が 利 用 す
る場 合 な どが 典 型 的 な ケ ー ス と して 考 え られ る.自 然 独 占 は,こ
の よ う な資 源 の希 少 性 や 規 模 の 経 済
性 の他 に,範
囲 の 経 済 性 は,規 模 の 経 済 性 と密 接
囲 の 経 済 性 な どに よ って 説 明 され る場 合 もあ る.範
に関 連 した概 念 で,二 安 くな る状 態 を さす.詳 い.
つ の 製 品 を別 々 の企 業(ま た は 工 場)で 生 産 す る よ りも集 中 した 方 が,総 し く は,植 草 著 「公 的 規 制 の 経済 学 」(筑 摩 書 房,1991年)な
費用が
ど を参 照 され た
と い う条 件 の も と,
(2.3) が 成 立 す る場 合,す
な わ ち,市
場 全 体 の 需 要 量 を 1社 で 生 産 した と きの 費 用(C(Q))
の 方 が,2 社 以 上 の 企 業 で 分 割 し て 生 産 し た と きの 費 用(〓C(qi))よ 生 産 費 用 が 安 くな る と き,"費
りもそ の産 業 の
用 の 劣 加 法 性 が あ る"と い う*7.規 模 の 経 済 性 の 条 件 が
成 立 し て い れ ば,上 記 の 費 用 の 劣 加 法 性 の 条 件 も満 た され る.つ
ま り,規 模 の 経 済 性
は 自然 独 占 の た め の 十 分 条 件 で あ り,自 然 独 占 的 な 産 業 の 特 徴 と し て 重 視 さ れ て き た.
(2) 電 力産 業 におけ る 自然 独 占性 の議 論 歴 史 的 な経 緯 や 各 部 門(発 電 ・送 電 ・配 電 な ど)を 形 成 す る要 因 を整 理 す る と,電 力 産 業 は規 模 の 経 済 性 が 強 く作 用 す る 産 業 で,自 近 年,効
然 独 占 性 を もつ 産 業 で あ る.し か し,
率 的 な 小 規 模 発 電 技 術 の 開 発 は 目 を み は る もの が あ る.さ
利 用 技 術 機 器 の 発 達 と相 ま っ て,電
力,石
ら に,エ
ネル ギー
油 お よびガ ス産 業の 間で のエ ネル ギー 市場
の 奪 い 合 い(エ ネ ル ギ ー 間 競 合)が 強 ま っ て い る.こ れ らの 理 由 か ら,電 力 産 業(特 に 発 電 分 野)で の 自然 独 占 性 が 薄 れ て き て い る の で は な い か と い う指 摘 が な さ れ て い る. 規 模 の 経 済 性 が 自然 独 占 の た め の 十 分 条 件 と し て意 味 を も つ と して,こ 産 業 の規 模 の 経 済 性 に 関 し て 多 数 の 研 究 が な さ れ て い る.そ とGreen(1976年)は,長
れ ま で に電 力
の 中 で も,Christensen
期 費 用 関 数 を用 い て ア メ リカ の 火 力 発 電 に お け る 規 模 の 経 済
性 の推 計 を初 め て行 っ た.彼
ら の 研 究 結 果 は,ア
メ リカ の 発 電 分 野 で は規 模 が 拡 大 す
る に つ れ 規 模 の 経 済 性 が 消 失 す る傾 向 に あ る こ とを 意 味 す る も の と して 注 目 さ れ,そ れ 以 降,ア
メ リ カ で の 発 電 分 野 の 規 制 緩 和 が 唱 え られ る よ うに な っ た*8.
一 方,送
電 部 門 に 関 して は 規 模 の 経 済 性 が 存 在 す る た め,従
め,規
来 どお り 自 然 独 占 を認
制 を継 続 す べ きで あ る と い う考 え が 主 流 で あ る.電 力,ガ
ス,熱
供 給 お よ び水
道 な ど の 産 業 で は,製 造 設 備(電 力 の 場 合 は 発 電 設 備)か ら需 要 家 へ の サ ー ビ ス 供 給 (電 力)の た め に ネ ッ トワ ー ク 設 備(送 配 電 設 備)が 形 成 さ れ て い る.こ
*7 この 場 合,費
用関 数C(qi)が
の よ う な産 業 で
市 場 に参 加 す るす べ て の 企 業 で 共 通 で あ り同 一 の 技 術 が 各 企 業 で
利 用 可能 で あ る と い う仮 定 の も とで 成 り立 つ.さ
らに,規 模 の 経 済 性 は,必
ず し も費 用 の 劣 加 法 性 を
意 味 す る もの で は な い.規 模 の経 済 性 が 成 立 し な い場 合 で も,単 一 企 業 に 生 産 を委 ね た 方 が,総 が 安 くな る場 合 が あ る.詳 細 は,植 草 編,「 講 座 ・公 的規 制 と産 業①
電 力 」(NTT出
費用
版,1994年)な
どを 参 照 され た い. *8
わ が 国 お よ び ア メ リカ に お け る電 気 事 業 の規 模 の 経 済性 に 関 す る研 究 動 向 は,た
(1992),植
草(1994)な
ど を参 照 さ れ た い.ま
た,富
田(1994)で は,電
と え ば,根
本
力需要構造の計量経 済学的分析
を 含 め企 業 の 経 済 分 析 にお け る実 証 的 分 析 手 法 に つ い て,体 系 的 に ま とめ られ て い る の で 参 照 され た い。
は,ネ
ッ ト ワ ー ク供 給 シ ス テ ム は,利
用 者 数 や 供 給 区 域 な どの 規 模 が 増 大 す る ほ ど,
送 電 設 備 や パ イ プ ラ イ ン な ど の膨 大 な 固 定 資 本 投 資 を必 要 とす る.財
・サ ー ビ ス の 生
産 ・配 分 を 含 め た 総 費 用 に 占 め る固 定 費 用 の 比 率 が 大 きい 産 業 で は,一 多 い ほ ど,固 定 費 用 が 各 需 要 に分 散 され るた め,規 て い る.第
般 に需 要 量 が
模 の経済 性 が享受 で きる といわれ
1章 で も述 べ た競 争 的 な 電 力 市 場 を導 入 し た 諸 外 国 の 事 例 を み て も,送 電
系 統 の 運 営 に 関 し て,市
場 参加 者 への非 差別 的 なオー プ ンア クセス や送電 料 金設 定 に
関 す る規 制 が 課 せ られ る もの の,送
電 部 門 に 関 して は,従 来 ど お り,電 力 会 社 に よ る
自然 独 占 が 認 め ら れ て い る.
2.2
需要と供給の経済学的な考え方
2.2.1
基 本 的 な経 済 問 題
"ど の よ うな 財 が どれ だ け 生 産 さ れ る の か","こ の か","こ る.こ
れ ら の 財 は どの よ う に 生 産 さ れ る
れ ら の 財 は 誰 の た め に 生 産 さ れ る の か"が,経
れ らの 解 決 方 法 は,歴
中 で も,市 場 経 済(market
済学 にお ける基本 問題 で あ
史 的 ・社 会 的 な 条 件 の相 違 に 応 じて さ ま ざ ま で あ る*9. economy)は,商
品 の 売 り手 と買 い 手 が そ の 価 格 と数 量 を
決 定 す べ く相 互 に 関 係 し 合 う仕 組 み が 上 手 く機 能 す る市 場(market)を
通 じ て,上
記
の 基 本 的 な 経 済 問 題 を効 率 的 に解 決 し よ う と した もの で あ る.市 場 経 済 で は,個 人 や 企 業 な ど個 々 の 経 済 主 体 の 選 択 が,財 ま た,1 市 場 内 で,需
・サ ー ビス の 需 要 と供 給 とい う形 で 現 れ る.
要 サ イ ド と供 給 サ イ ドを 結 び つ け る の が 価 格 で あ る.価 格 は,
財 ・サ ー ビス に対 す る対 価 で あ り,そ の 価 格 の 変 化 が,売 要 量 に 影 響 を与 え る.売 が,市
場 で 取 引 さ れ る財 ・サ ー ビ ス の 性 質 や,市
手(消 費 者)の 性 質 が,市
り手 の供 給 量 や 買 い 手 の 需
り手 と買 い 手 は価 格 を媒 体 と し て 経 済 取 引 を行 お う と す る 場 に参 加 す る売 り手(供 給 者)と 買 い
場 設 計(制 度 設 計)の あ り方 や そ の市 場 モ デ ル が 望 み ど お りに
機 能 す る か 否 か な ど に 大 き な 影 響 を与 え る. この よ う な 市 場 経 済 の 利 点 を 利 用 し効 率 的 な資 源 配 分 を 実 現 す る た め に,第 も述 べ た よ うに,欧
米 を 中 心 に,競
争 的 な 電 力 市 場 の 導 入 が 検 討 ・実 施 され て い る.
*9 この よ うな 三 つ の 基 本 問題 に 加 えて,"だ て 行 うの か"と
方,政
economy)で
は,政
府 が 経 済 活 動 の あ ら ゆ る決 定 を行 い,そ
れ を官 僚 機 構 を通 じ
府 も重 要 な 経 済 的 な 決 定 を行 い つ つ,公 共 部 門 と民 間 部 門 との 相 互 依 存 関 係 を
重 視 す る混合 経 済(mixed か は,歴
れ が 経 済 的 決 定 を行 うの か,ま た どの よ う な過 程 を経
い う第 4の 基 本 問 題 が あ る.市 場 経 済 と相 対 す る考 え方 で あ る 中 央 集 権 的 計 画 経 済
(centrally planned て実 行 す る.一
1章 で
economy)と
史 的 ・社 会 的 な 条 件 に よる.
い う考 え 方 もあ る.社 会 に お い て,ど の よ う な形 態 を 選 択 す る
多 少,経 済学 の入 門的 な話 が中心 とな って し まうが,以 下 に需要 や供給 の 基本 的な考 え方,さ らに市場 で の需給均 衡 の仕組 み な どにつ いて紹 介 した い.
2.2.2
需要 曲線の基本 的な性質
需 要 と い う概 念 は,与
え ら れ た 価 格 の も とで 個 人 や 企 業 な ど の 個 々 の 経 済 主 体(以
下,需 要 家 と称 す)が 購 入 し よ う とす る財 ・サ ー ビ ス の 量 を 表 した もの で あ る.一 般 的 に,財
の 価 格 が 上 昇 す る と,予 算 制 約 な どの 要 因 に よ り,需 要 家 は そ の購 入 量 を減 少
させ よ う とす る.経 と り,さ
済 学 の 慣 例 に従 う と,財
・サ ー ビス の 数 量 を横 軸 に価 格 を 縦 軸 に
ま ざ まな 価 格 水 準 に お い て 需 要 家 が 選 択 し た 財 の 購 入 量(需 要 量)は,図2.2
に 示 す よ う に,右 下 が りの 曲線(ま た は 直 線)と な る.こ れ を 需 要 曲 線(demand と呼 ぶ.た
だ し,あ
る財 ・サ ー ビ ス の 需 要 は,そ
関 連 し た 他 の 財 の 価 格(代 替 財 や 補 完 財 の 価 格),各 (preference)や
curve)
れ 自 身 の 価 格 だ け で は な く,密 接 に 需 要 家 の 所 得(予 算 制 約),選
好
金 利(耐 久 財 の場 合)な ど の 要 因 に依 存 す る*10.
ま た,そ の 財 ・サ ー ビ ス の 当該 市 場 に お け る 総 需 要 は,市 場 内 の す べ て の 買 い 手(需 要 家)の そ れ ぞ れ の 価 格 の も と に お け る個 々 の 需 要 量 を集 計 し た も の で あ る.す
べて
の 需 要 家 の 需 要 量 を 合 計 し(各 需 要 家 の 需 要 曲線 を 水 平 方 向 に足 し あ わ せ た も の),各 価 格 水 準 で の 市 場 全 体 の 需 要 量 を 表 し た も の を 市 場 需 要 曲 線(market curve)と
呼 ぶ.個
(注) あ る 財 の価 格 がP1の と き の需 要 家 1の需 要 量 がD1,需 市 場 全 体 で の 需 要 量 はD(=D1+D2)と な る. 図2.2
*10
こ こで は,財
demand
別 需 要 曲 線 と同 様 に,価 格 が 上 昇 した と き,各 需 要 家 が 需 要 量 を減
要 家 2がD2の
と き,
市 場 需 要 曲線 の 考 え方
・サ ー ビ ス 自身 の価 格 以 外 の 諸 要 因 は一 定 と仮 定 し,価 格 変 化 に 対 す る需 要 変 化
は,需 要 曲線 に沿 った 動 き をす る もの とす る.
少 さ せ る た め,市 場 需 要 曲 線 も右 下 が り とな る. 財 の 価 格 変 化 が そ の 需 要 量 を どれ だ け変 化 さ せ る か は,そ
の財 の性質 や各 需 要家 の
選 好 に よ り異 な り,各 需 要 家 の 需 要 曲線 の傾 きに 反 映 さ れ る.財 変 化 率 に対 す る財 の 需 要 量 の 変 化 率 の比 を,需 demand)と
呼 ぶ.た
し た と き,そ
と え ば,図2.3に
・サ ー ビ ス の 価 格 の
要 の価 格 弾 力 性(price
elasticity
of
示 す よ う に,財 の 価 格 が P か ら ⊿P だ け値 上 り
の 需 要 量 が D か ら ⊿D だ け 減 少 し た 場 合,そ
の 需 要 の 価 格 弾 力 性 η(点
弾 力 性)は,
(2.4) で 表 さ れ る*11. 価 格 弾 力 性 の 大 きな 財 ほ ど,価 格 変 化 に対 して 需 要 の 変 化 量 が 大 き く(弾 力 的),そ の 需 要 曲 線 は平 ら に な る.一 方,価 格 弾 力 性 の 小 さ な財 の 需 要 の 変 化 量 は 小 さ く(非 弾 力 的),そ
の 需 要 曲線 の 傾 き は 急 に な る(図2.4参
一 般 に,生
活 必 需 品,所
得 と比 較 し て 支 出 額 の 小 さい 財 や 代 替 性 の 少 な い財 ・サ ー
ビ ス な ど の 需 要 は 非 弾 力 的 で,代 な る傾 向 に あ る.さ た と え ば,価
照).
替 財 が 多 数 存 在 す る よ うな 財 ・サ ー ビ ス は弾 力 的 に
ら に,需 要 の 弾 力 性 を左 右 す る 要 因 と し て,時
間 も重 要 と な る.
格 が 変 化 し て も時 間 の 経 過 が 長 け れ ば需 要 量 を調 整 す る こ と も可 能 と な
る.し た が っ て,長 期 の 需 要 曲線 は短 期 の 需 要 曲線 に比 べ て 弾 力 的 とな る傾 向 が あ る. 公 表 され た 統 計 や ア ン ケ ー ト調 査 に基 づ き,原
図2.3
*11式(2.4)の
油 価 格 やGNPが
電 力 消費 に及 ぼす
価 格 の値 上 げ に よる 需 要 量 の 変 化
よ う に有 限 な変 化 幅 に よ っ て 表 す 弾 力 性 を 弧 弾 力 性 と い う.一
(∂D/∂P)の よ うに微 分 的 な 変 化 に よ る弾 力 性 を 点 弾 力 性 と い う.
方,η=-(P/D)
(注) ここ で は,価
格 P の と き,各 需 要 家 の
需 要 量 が とも にD(D1=D2)で あ る とす る.価 格 の 値 上 げ(⊿P)によ る弾 力 的 な 需 要 家 の 需 要 減 少 量(⊿D2)は,非 弾力 的 な需 要 家 の 需 要 減 少 量(⊿D1)よ り も 大 き くな る.
図2.4 需要 曲線 の形状 と価格弾 力性
影 響 を 考 慮 し た 計 量 経 済 モ デ ル に よ る エ ネ ル ギ ー 需 要 予 測 や,産
業 や 家 庭 な ど用途 別
の 需 要 構 造 に 注 目 した 価 格 弾 力 性 の計 測 を も とに 電 気 料 金 と需 要 の 関 係 な ど,電 力 需 要 分 析 に 関 す る研 究 が 行 わ れ て きた*12.特 に,1980年 幅 な 変 動 は,省
代 にお けるエ ネル ギー価格 の大
エ ネ ル ギ ー の 進 展 や 自 家 発 電 と購 入 電 力 の 競 合 な ど,産 業 部 門 の エ ネ
ル ギ ー 消 費 構 造 に 多 大 な 影 響 を与 え た.そ
の た め,他
の エ ネ ル ギ ー 価 格 の 影 響 も明 示
的 に考 慮 した 分 析 も行 わ れ て い る.産 業 や 家 庭 部 門 の 電 力 需 要 に お け る デ マ ン ド ・サ イ ド ・マ ネ ジ メ ン ト(DSM:demand
side management)の
観 点 か ら も,エ ネ ル ギ ー 間
競 合 を 考 慮 し た 電 力 需 要 の価 格 効 果 の 計 測 は重 要 で あ る. ま た,電
気 料 金 が 家 庭 の 電 力 需 要 に 与 え る影 響 の 分 析 は,料 金 を通 じ た 間 接 的 な負
荷 管 理 手 法 の 一 つ で あ る季 時 別 料 金 制 度 の 効 果 を検 討 す る際 に も重 要 とな る.特
に,
省 エ ネ ル ギ ー 機 器 導 入 効 果 や 燃 料 費 の 低 下 に よ るエ ネ ル ギ ー 消 費 増 大 効 果 な ど を議 論 す る上 で,個
別 需 要 家 の 価 格 弾 力 性 は 重 要 な デ ー タ と な る.こ
の よ う に,電 力 需 要 の
構 造 分 析 や 価 格 効 果 の 測 定 は,電 力 自 由化 が 議 論 さ れ る 以 前 か ら行 わ れ て い る.
2.2.3 供 給 関 数 と 費 用 概 念 企 業 は,何
を どれ だ け生 産 す る か,そ
れ ら を 生 産 す る の に 労 働,材
ど の よ う に 組 合 せ る か を 決 定 しな け れ ば な らな い.な
お,こ
料,機
こ で は,財
械 設備 を
・サ ー ビ ス の
価 格 が 市 場 に よ っ て 定 ま る 単 一 の 財 ・サ ー ビ ス を生 産 す る企 業 に つ い て 考 え る. *12公 して は,富
表 され た デ ー タ を用 い て,計 量 経 済 モ デ ル に よ る部 門 別 の 電 力 需 要 の価 格 弾 力 性 の 測 定 に関 田著 「企 業 経 済 の 計 量 分 析 」(税 務 経 理 協 会,1994年)や,松
(日本 評 論 社,1995年)な
ど を参 照 され た い.
川 著 「電 気 料 金 の 経 済 分 析 」
企 業 が 何 を 生 産 す るか は,そ
の 企 業 が もつ 技 術 を 前 提 と し て,財
に お け る価 格 を参 照 して 決 定 さ れ る と考 え ら れ る.つ る製 品 を生 産 す る労 働,材
料,資
ま り,あ
本 財(機 械 な ど の 設 備,ビ
・サ ー ビ ス の 市 場
る技 術 を前 提 と し,あ
ル や 工 場 な ど の建 造 物 な
ど)な ど の生 産 要 素(ま た は 投 入 物)の い ろ い ろ な 組 合 せ が 考 え られ る が,企 業 は,利 潤 が 最 大 と な る よ う に 財 ・サ ー ビ ス の 生 産 数 量 や 生 産 要 素 の 組 合 せ を決 定 す る*13.そ の 際,す
べ て の 生 産 要 素 を増 減 で き る よ う な場 合 を"長 期",あ
生 産 要 素 の み 増 減 で き る よ う な場 合 を"短 期"と
呼 ぶ.こ
る生 産 要 素 が 固 定 で 他 の こで は,主
に"短
期"の
費
用 概 念 と企 業 の 最 適 化 行 動 に つ い て 概 説 す る. (1)短
期 の費 用概 念
総 費 用 と は,あ 通 常,生
る 財 の 生 産 量 に 対 す るす べ て の 生 産 要 素 の 費 用 を総 計 し た も の で,
産 量 が 増 加 す る と総 費 用 も増 加 す る.こ
の各 生 産 量 と総 費 用 の 関 係 を結 ん だ
軌 跡 を総 費 用 曲線 と呼 ぶ.短 期 の 総 費 用(短 期 費 用)C(Q)は,可 iable cost)と 固 定 費 用(FC:fixed
変 費 用(VC(Q):var-
cost)か らな り,以 下 の よ う に 生 産 量(Q)の 関 数 と
して 表 さ れ る.
(2.6) 固 定 費 用(FC)は
生 産 量 の 大 き さ に 関 係 な く一 定 な の で,図2.5に
期 費 用 曲線C(Q)をFC分
示 す よ う に,短
だ け下 方 に シ フ トさ せ た の が 可 変 費 用 曲 線(VC(Q))と
な
る. あ る生 産 量 の 微 小 増 分 に 伴 う総 費 用 の増 分 比 を 限 界 費 用(MC(Q):marginal と呼 び,以
cost)
下 の よ う に 表 さ れ る.
(2.7) つ ま り,限 界 費 用 は,総
費 用 曲 線 の 接 線 の 傾 き の 値 で あ り,こ
の傾 き は 可 変 費 用 曲
線 の 接 線 の 傾 きの 値 で も あ る. 平 均 費 用(AC:average 用 で あ る.た
と え ば,生
勾 配 に 等 しい.ま
cost)は,任 産 量Q2の
意 の生 産 量 の も と に お け る 1単 位 あ た りの 費
と きの 総 費 用 曲 線 上 の A 点 と原 点 を結 ん だ 直 線 の
た,平 均 費 用 は,平 均 可 変 費 用(AVC:average
均 固 定 費 用(AFC:average
variable
cost)と 平
fixed cost)の 和 に 等 し い.
(2.7)
固定費 用 は生産 量 に関係 な く一 定で あ るた め,平 均 固定 費 用 は生産量 が大 き くなる *13
生 産 要 素 の 投 入 量 と生 産 可 能 な生 産 物 の最 大 量 との 関 係 を表 した もの を,生 産 関 数 と呼 ぶ .
図2.5
各 費 用概 念 の 関 係
に従 っ て だ ん だ ん 小 さ くな り,垂 直 双 曲 線 を 描 く.一 定 の 生 産 設 備 の も とで は,通 常, そ の 設 備 の 規 模 に 見 合 っ た 最 適 な 生 産 量 の 水 準 と い う も の が あ り,生 産 量 が そ れ をか け 離 れ て 過 大 あ る い は過 小 に な る と生 産 の 効 率 が 低 下 し,生 産 物 1単 位 あ た りの 費 用 が 増 加 す る.そ の た め,平 均 費 用 曲 線 は U 字 型 の 形 状 と な る.図2.5に 生 産 量Q2で
総 費 用 曲 線 の 接 線 が 原 点 を とお り,同 様 に,生 産 量Q1で
示 す よ う に, 可 変 費用 曲線 の
接 線 が 原 点 を と お る.こ の と き,MC(Q2)=AC(Q2),MC(Q1)=VAC(Q1)と 図2.5に
な り,
示 す よ う に 限 界 費 用 曲 線 は,平 均 費 用 曲 線 と平 均 可 変 費 用 曲 線 の 最 小 点 で 交
差 す る. (2)短
期 に お ける企 業の 利潤 最大 化
次 に,利 潤(=総
収 入(売 上 げ)一 総 費 用)の 最 大 化 を 目標 と し た と き の,企
者)の 生 産 活 動 に つ い て 考 え よ う.い 企 業 が 価 格 受 容 者(price
taker)と
ま,財
業(生 産
の 価 格 は 完 全 競 争 市 場 で 決 ま る も の と し,
し て 行 動 し,市 場 内 で の 価 格 支 配 力 を も た な い(行
使 しな い)も の とす る.図2.6に き の,各
示 す よ う な 費 用 曲 線 を も つ 企 業 に対 し,価 格P1の
生 産 量(Q)に お け る 利 潤(Ⅱ(Q)=総
を む す ん で い く と,図2.6の
費 用(C(Q))の
と
大 きさ
よ う な 利 潤 曲線 を描 く こ とが で き る.任 意 の 生 産 量 の も
と で の 利 潤 曲 線 の 勾 配(dⅡ/dQ)を 曲 線 の 山 頂 で,限
収 入(P1・Q)-総
限 界 利 潤 と呼 ぶ.利
潤 が 最 大 と な る生 産 量 は,利 潤
界 利 潤 が ゼ ロ とな る点 で,
(2.8) と な り,短 期 の 最 適 生 産 量(Q1)は,価 企 業 に とっ て,現
格=限
界 費 用 を満 た す 点 で あ る.つ
ま り,あ る
在 の 生 産 量 を 変 化 させ る こ とが 有 利 か ど うか を 判 断 す るた め に は,
生 産 量 を 変 化 させ た 場 合 の 収 入 面 と費 用 面 の 両 者 の 変 化 を 比 較 す る こ と が 必 要 と な る.生 産 量 を も う 1単 位 増 加 さ せ た 場 合 に 得 られ る 売 上 げ の 増 加 分 の 大 き さ は そ の 生 産 物 の 価 格 に 等 し い. 一 方,そ
の 場 合 の 費 用 の増 加 分 は 限 界 費 用 に 等 しい.よ
っ て,生
産 物 の価格 が 限界
費 用 を上 回 る(下 回 る)か ぎ り,生 産 量 を増 加(減 少)す る こ とで 追 加 的 な 利 潤 を 得 る (損失 を避 け る)こ とが で き る. し か し,式(2.8)は,極
値 条 件 で あ り利 潤 極 大 化 の 必 要 条 件 に す ぎ ず,図2.6に
よ う に利 潤 極 小 の ケ ー ス も含 ま れ る 可 能 性 も あ る(Q=Q"の 大 化 の た め の 十 分 条 件 と して は,以
場 合).そ
示す
の た め,利 潤 極
下 の 条 件 が 成 り立 っ て い な け れ ば な ら な い.
(2.9) こ の 条 件 で,d2C(Q)/dQ2は,限 な るた め に は,限
界 費 用(MC)の
界 費 用 曲線 の 勾 配 が 正,つ
勾 配 で あ る.つ ま り,利 潤 が 極 大 と
ま り右 上 が り(限 界 費 用 が 逓 増 的)で な け
れ ば な ら な い こ と を 意 味 し て い る. よ っ て,限 す る.図2.6に
界 費 用 曲 線 が 与 え られ れ ば,生 示 すA2点
産 物 の 価 格 に 対 し て,最
適生産 量 が決定
の よ う に,価 格 が 平 均 費 用 と等 しい 場 合(P2=AC)に
は超過
利 潤 は ゼ ロ と な る が,総
収 入 を も っ て す べ て の 費 用 を ま か な う こ とが 可 能 な の で 生 産
を行 う こ とが で き る.こ
のA2点(平
均 費 用 曲 線 の 最 低 点)は 損 益 分 岐 点 と い わ れ る.
そ れ よ り も価 格 が 下 が る と,料 金 収 入 で 固 定 費 用 をす べ て 回 収 す る こ とが で き な くな る.た だ し,P3よ
り高 い 価 格 で あ れ ば可 変 費 用 は 回 収 で き,短 期 的 に生 産 続 行 が 可 能
と な る.し か し,価 格 がP3よ
り も下 落 し た 場 合 に は,生 産 の 続 行 に よ り固 定 費 用 に加
え,可 変 費 用 す ら回 収 す る こ と が で きな くな る.こ のA3点(平
均可 変費 用 曲線 の最低
点)は 操 業 停 止 点 と呼 ば れ る*14.短 期 に お け る 1企 業 の 行 動 の 指 針 と な る の は,逓 的 な 限 界 費 用 曲 線 の う ち,操
業 停 止 点(図2.6のA3点)よ
り も上 の部 分 で,こ
増
の 部分
図2.6
短 期 に お け る最 適 生 産 量 の 決 定 の考 え方
を 1企業 の短期 供給 曲線 と呼 ぶ. 先 で述 べ た市場 の需 要 曲線 の導 出 と同様 に,当 該 市場 に存在 す るすべ て の企 業(生 *14図2.6に
お い て,も
は,AC>MCと
し価 格 がP3で
あれ ば,P3=MCと
な るた め 利 潤 は負 とな る.こ
な る生 産 量Q3が
の と き の 総 収 入(P3×Q3)と
Q3)は 等 し くな り,損 失 は総 固 定 費 用 に等 し くな る.つ ま り,総 費 用=総 総 収 入-総
費 用 の 関 係 か ら,利 潤=(総
は等 し い の で,利
潤=-総
収 入-総
固 定 費 と な る.
可 変 費 用)-総
選 ば れ る.こ
の点で
総 可 変 費 用(VC=AVC×
可 変 費 用+総
固 定 費 とな るが,総
固 定 費 と利 潤=
収 入 と総 可 変 費 用
(注)価
格 がP1の
と き,企
供 給 量 はQ(=Q1+Q2)と
業 家 1の 生 産 量 がQ1,企
業 家 2がQ2で,市
場全体 での
な る. 図2.7市
場 供 給 曲 線 の 考 え方
産 者)の そ れ ぞ れ の価 格 の も とで の 供 給 量(生 産 量)を 集 計 す れ ば(具 体 的 に は,す の 企 業 の 供 給 曲 線 を 水 平 方 向 に集 計),市
べて
場 の供 給 曲 線 を求 め る こ と が で き る(図2.7
を 参 照).
(3)長
期 費用 曲線
短 期 の 場 合 に は設 備 な どの 資 本 は,考 し て 考 え た.し た が っ て,そ 取 り扱 っ た.し
察 期 間 中 で は そ の 規 模 が 変 更 で き な い もの と
の よ う な 固 定 要 素 に 関 す る費 用 は,固 定 費 用(FC)と
か し,長 期 に お い て は そ の資 本 も可 変 的 で あ る.つ
して
ま り,企 業 は,生
産 規 模 に応 じて 最 低 費 用 の 生 産 設 備 を 選 択 す る と仮 定 す る と,長 期 総 費 用 曲線(LC: long-run
cost curve)は,図2.8に
示 す よ う に,短 期 費 用 曲 線 の 包 絡 線 と して 描 く こ と
が で き る*15.同 様 に,長 期 平 均 費 用 曲 線(LAC:long-run
average cost)は,短
期平 均
費 用 曲 線 の 包 絡 線 と して 描 く こ とが で き る. 一 方,長
期 限 界 費 用 曲 線(LMC:long-run
長 期 費 用 曲 線 の 勾 配 で あ る.短
marginal cost)は,各
生 産 量 の も とで の
期 限 界 費 用 が 生 産 量 の増 産 に 伴 う可 変 費 用 の み の 増 分
比 で あ る の に 対 し,長 期 限 界 費 用 は増 産 に伴 う総 費 用(固 定 費 用 は な い も の と して)の 増 分 比 率 で あ る の で,長
期 限 界 費 用 曲 線 は,短 期 限 界 費 用 曲線 の包 絡 線 とは な ら な い
こ とに 留 意 さ れ た い.長
期 平 均 費 用 が 最 小 とな る生 産 量 を最 適 最 小 規 模 とい う.あ
産 業 の 需 要 規 模 が 各 企 業 の 最 適 最 小 規 模 よ り も十 分 大 き け れ ば,そ
る
の産 業 に は多数 の
企 業 が 存 在 し う る こ と に な る. ま た,長
期 供 給 曲 線 と は,長 期 費 用 曲 線 の も と,生 産 物 の価 格 が所 与 の と き に 決 定
さ れ る各 企 業 の 生 産 量 の 合 計 量 を結 ん だ 曲 線 を さ す.こ
*15た
だ し,こ
こで は生 産 設 備 が 連 続 的 に 変 化 す る も の とす る。
れ は短期 の供 給 曲 線 と同様
図2.8 長期費用 曲線 の考え方
に,価 格=長 期 限界 費 用 の関係 か ら求 め られ る.た だ し,短 期 の場 合 とは異 な り,赤 字 が生 じれ ば企 業 は生産 を停 止 し,当 該 市場 か ら撤 退す るので,長 期供 給 曲線 は,長 期 平均 費 用曲線 を上 回 る長期 限界 費用 曲線 の こ と とな る. (4)
電気事業 における限界費用の計測
これ まで,電 気 事業 を対 象 とした 限界費 用 の計測 は,期 間 や需 要種 間 の費用配 分 な どの料 金 分析 を主 な目的 として行 わ れて きた.電 気 事業 の料 金形 成 に限界 費用 原理 を 適 用 す る こ とに関 して は,理 論 面 お よび 実践面 か ら多数 の議 論 が な され てい るが,電 気 事 業 に お け る限界 費 用 につ い て具体 的 な計 測 な い し実証 分析 を試 み た事 例 は少 な い. い ま,簡 単 化 の ため発 電部 門の み考 え よう.将 来 の電 力 需要 が与 え られた場 合,系 統 全体 で信頼 性 を保 ち つつ電 力需要 を賄 うよ うな発電設 備 の建 設計 画 お よび運 転計 画 を作 成 す る こ とが必 要 とな るが,こ の一 つ のア プ ローチ として は最 適化 モ デル によ っ て,発 電 設備 の資本 費(固 定費)と 運 転費(可 変 費)の 現 在価 値換 算値 の総和 を最小 とす る こ とが考 え られ る.こ の最 適化 モデ ル によ り発 電設 備 の総費 用(=固 定費+可 変 費) を最小 とす る運 転 ・建 設計 画 が得 られ る とす る な ら ば,1 単 位 の 需 要量(kWま kWh)の
たは
増加 に よっ て もた らされ る発電 部 門の総 費用 の 増加 量 が 限界 費用 とな る.た
とえば,最 大 ピー ク時 の電 力需要 〔kW〕の 1単 位 の増 加 に よ る総費 用 の増 加量 は最大 kWの
限 界費 用,ま た,各 時 間帯 で の 1単位 の電 力量 〔kWh〕の増 加 に よる総 費 用の増
加 分 は,時 間 帯別kWhの
限界費 用 と解 釈 す る こ とがで きる.
その ほか に,計 量経 済学 的 な手 法 を用 いて電 気事 業 の費用 関数 を推 定 し,そ の結果 を も とに需 要 家別 の 限界費 用 を測定 す る方法 もあ る.こ のア プロー チの利 点 は,公 表
され た電 気事 業 関連 の デー タを用 いて比較 的容易 に測 定可 能 で ある こ と,ま た経 済理 論 との整 合性 が保 持 で き る点 な どで ある.費 用 関数 の推定 に際 して は電 気事業 の費 用 最 小化 行 動 を前提 として行 い,費 用構 造 の地 域差 や時 系列 的 な変動 を引 き起 こす 要因 を説 明変 数 として考慮 し,そ の他 の要因 は誤 差項(確 率 変数)と して取 り扱 う.こ の よ うに して求 めた費 用 関数 は,限 界費 用の計 測 の ほか に,要 素価格 お よび生 産量 の 説明 要 因 に も用 い られ る.
2.3
完全競争市場での需給均衡と社会厚生
2.3.1
市場構造の特徴
売 り手 や 買 い 手 の 各 経 済 主 体 の 相 互 関 係 が も た ら す 条 件 の 相 違 に よ り,市 場 構 造 は い くつ か の タ イ プ に分 類 さ れ る.た す る と,表2.1に
示 す よ うに,完
と え ば,企
全 競 争,独
業 の 数,財
占,独
の差別 化 な どを もとに区別
占 的 競 争,寡
占 の 四 つ の市 場 構 造
に分 類 さ れ る*16. (1)
完全 競争
完 全 競 争(perfect
competition)と
は,①
市 場 内 に 売 り手 ・買 い 手 が 多 数 存 在 し(多
数 性 の 条 件)市 場 参 加 者(売 り手 と買 い 手 の 双 方 と も)が 価 格 に 対 し影 響 力 を も た な い 価 格 受 容 者 で あ り,② 取 引 され る財 が 同 質 的 で(同 質 性 の 条 件),③ 表2.1
市場構 造の分類
特 競 争状態
市場構造
市場内の 企 業数
完全競争
完全競争市場 独 占的競争市場
不完全競争
寡 占市場(複占市場)
無数 多数
*16
市 場 構 造 の 特 徴 に は,製 品 差 別 も あ る.寡
徴
企業 の
参 入の
価格支配力
可 能牲
ない
容易
若干の支配 力 あ り
容易
少 数(2 社)
ある
困難
1社
絶大
不 可能
独 占市場
質,デ
売 り手 も買 い手 も
占市 場 や 複 占 市 場 で は,同 種 の 製 品 で あ りな が ら品
ザ イ ン,ブ ラ ン ドに よ っ て製 品 の差 別 化 が 生 じ る場 合 が あ る.独 占 市場 で は,1 社 が 製 品 の 生 産
を行 う の で 差 別 化 は生 じな い.独
占 的 競 争 市 場 は,企
製 品 の差 別 化 が 存 在 す る た め,各
企 業 に あ る程 度 の価 格 支 配 力 を もつ 点 で は 完全 競 争 と は異 な る.完
全 競 争 は,そ
業 数 が 多 数 と い う点 で は 完全 競 争 と同 じだ が,
の 定 義 で もあ る よ う に,同 種 類 の 財 を つ くる 企 業 の 生 産 物 は 同 質 で差 別 化 が され な い.
図2.9 完全競争 市場の市場状態
価格 の み を行 動 の 目安 とし価 格 の動 向 に関 す る情報 が完 全 か つ即 時的 に伝 わ り(情報 の 完全性),④ 売 り手 と買 い手 が 当該 市 場 に自 由 に参 入 ・退 出 で きる(参 入 退 出 の 自 由)状 態 で あ る こ とを い う.こ の よ うな状態 が満 た された 市場 を完全 競 争 市場 と呼ぶ (図2.9参 照). (2)
不完全競争
実 際 の 市 場 構 造 で は,上 記 の 完 全 競 争 市 場 の 条 件 が あ て は ま らな い 不 完 全 競 争(im perfect
competitian)の
対 し て 影 響 力 を も つ.具
ケ ー ス が 多 く,企 業 が 直 接 的 あ る い は 間 接 的 に製 品 の 価 格 に 体 的 に は,①
市 場 を構 成 す る需 要 ・供 給 の 経 済 主 体 の 数 が 少
な く,② 同 質 の 財 を供 給 しな い で 製 品 間 で 差 別 化 が 存 在 す る,③ 完 全 で は な い,④
市 場 を め ぐる 情 報 が
価 格 を め ぐ っ て 競 争 す るの で は な く,そ の 他 の 要 因 で 取 引 が 行 わ れ
る な ど特 殊 な取 引 関 係 が あ る,⑤ 市 場 へ の 参 加 ・退 出 に 制 限 が あ る,な 状 態 で あ れ ば,そ 特 に,市
の 市 場 を 不 完 全 競 争 市 場 と呼 ぶ.
場 へ の 供 給 が 1企 業 に よ っ て 行 わ れ る 場 合 を 独 占(monopoly)ま
独 占 と い う.こ
の と き,買
い手 も また 一 人 の場 合 は,双 方 独 占 と呼 ぶ.ま
供 給 が 少 数 企 業 に よ っ て 行 わ れ て い れ ば 寡 占(oligopoly),特 (duopoly)と 一 方,製
た は供 給 た市場 への
に 2企 業 の 場 合 を複 占
呼 ぶ. 品 差 別 化 が あ れ ば,長
期 的 に は競 争 圧 力 が 生 じ る が,短
対 して 独 占者 と し て ふ る ま う こ とが で き る.し 品 差 別 化 が あ る場 合(独 占 的 競 争,monopolistic り う る.
ど の何 れ か の
た が っ て,企
期 的 には買 い手 に
業 数 が 多 数 で あ っ て も製
competition)で
は,不
完全競 争 とな
完全競 争市場 にお ける需 給均衡
2.3.2
需給均衡の考え方
(1)
完 全 競 争 市 場 の 四 つ の 条 件 が 満 た さ れ る と き,市 場 に お け る財 の 価 格 と取 引 量 は, 図2.10に
示 す よ う に,市
定 さ れ る.こ
場 の 供 給 曲線(S(P))と
の 均 衡 点 で は,も
需 要 曲 線(D)(P))と
の 交 点(E)で 決
はや 価 格 や 取 引量 の変 化 を 引 き起 こす 力 が 働 か な い状
態 で あ り,市 場 参 加 者 の 誰 一 人 と し て 価 格 と取 引 量(需 要 量 と生 産 量)を 変 え よ う とす る イ ン セ ン テ ィ ブ が 働 か な い 状 況 を意 味 す る*17. 先 に述 べ た よ う な 短 期 の費 用 構 造 か ら も,短 期 市 場 の 場 合 に る は,供 給 曲線 は 限 界 費 用 に よ っ て 決 め ら れ る.た
と え ば,電
力 市 場 に お け る ス ポ ッ ト市 場 を考 え た 場 合,こ
の 発 電 事 業 者 の供 給 曲 線(限 界 費 用 曲 線)と し て,経 済 負 荷 配 分(ELD:economic dispatching)で
を 用 い る こ とが で き る.さ 場 合 は,あ
load
用 い られ る発 電 の 燃 料 費 用 関 数 の 一 階 微 分 関 数(増 分 燃 料 費 用 関 数) ら に,あ
る発 電 事 業 者 が 複 数 の 電 源 設 備 を 保 有 し て い る
る供 給 量 で 総 燃 料 費 が 最 小 とな る発 電 設 備 の 出 力 配 分 の 組 合 せ か ら等 増 分
燃 料 費 を求 め る こ とが で き る.供 給 量 毎 の 等 増 分 燃 料 費 を プ ロ ッ トす れ ば 1発 電 事 業 者 の 限 界 費 用 曲線 を 描 く こ とが で き る.さ 限 界 費 用 曲 線 か ら,図2.10に
ら に,市 場 に参 加 して い る全 発 電 事 業 者 の
示 す よ う な 市 場 で の 供 給 曲 線 も 同 様 に描 く こ とが で き
図2.10 完全競争市場で の市場均衡 の概 念
*17 えた.こ
こ こ で は,需 こ で は,他
要 関 数 と供 給 関 数 をそ れ ぞ れD(P),S(P)と の 財 の価 格 か らの 影 響 を無 視 し,あ
い う単 純 化 した 形 で市 場 均 衡 を 考
る 1財 の市 場(あ る い は数 個 の 財 の 市 場)に お
け る市 場 均 衡(需 給 均 衡)の み を考 え,残 余 の 市 場 との 作 用 ・反 作 用 の 影 響 は 考 慮 し な い.こ 市 場 分 析 を部 分 均 衡 分 析(partial
equilibrium
analysis)と 呼 ぶ.こ
れ に対 して,さ
の よ うな
まざまな市場間の
価 格 変 化 に 対 す る作 用 ・反 作 用 の 関 係 を す べ て 考 慮 し,市 場 全 体 の 均 衡 状 態 分 析 を 一 般 均 衡 分 析 (general equilibrium え る.
analysis)と 呼 ぶ.な
お,こ
こで は,部 分 均 衡 分 析 の立 場 で 市 場 構 造 に つ い て 考
る.
(2)
完全競争市場における個別企業の生産量の決定
完 全 競 争 で は,供 給 者 や 需 要 家 は 当 該 市 場 へ の 参 入,退 出 の 自 由 を 阻 害 す る要 因(法 律 上 お よ び 慣 行 上)は 一 切 存 在 し な い.し た が っ て,売
り手(企 業)は,利
潤が 存在 すれ
ば 当 該 市 場 に 参 入 し,利 潤 が な くな り赤 字 に なれ ば そ の 市 場 か ら 自 由 に 退 出 す る こ と が で き,市 場 内 で の 超 過 利 潤 が あ るか ぎ り新 規 企 業 の 参 入 が 続 く こ と に な る.た ば,図2.11(a)に
とえ
示 す よ う に,市 場 の 供 給 曲 線 と需 要 曲線 の交 点 に よ っ て 決 ま っ た 市
場 で の 取 引 量(需 給 均 衡 量)Q0と
価 格(市 場 均 衡)P0の
も と で,図2.11(b)に
示す よう
な 各 費 用 曲 線 を も つ あ る企 業 で 超 過 利 潤 が 発 生 す れ ば,新 規 の 企 業 が 市 場 に参 入 す る.そ の 結 果,図2.11(c)に
(a)
(c)
み られ る よ う に,市 場 の 供 給 曲 線 は右 方 に シ フ ト し,新 た
市場均衡状態
市 場参入 と市場均衡の考 え方 図2.11
(b)
価格P0の ときの既存企業 の生 産量
(d)
参入後 の既存企 業の生産量の変 化
市 場 参 入 と市 場 均 衡 の考 え 方
な 市 場 で の取 引 量 がQ1に 図2.11(d)に
増 加 し,価 格 もP1に
示 す よ う に,既
P1が 平 均 費 用 曲線(AC)の
下 落 す る.こ
の価 格 の 下 落 に応 じ て,
存 企 業 は 生 産 削 減 を 行 い 生 産 量 をQ1に
最 小 値 と等 し い の で,超
決 定 す る.価
過 利 潤 は ゼ ロ と な る.市
格
場 に参 加
す るす べ て の 企 業 に超 過 利 潤 が 発 生 し な け れ ば,当 該 市 場 の 参 入 企 業 数 は 確 定 し,市 場 内 の 取 引 量 とそ の均 衡 価 格 が 決 定 す る.
消費者 余剰 ・生産 者余剰 と社会厚生
2.3.3
市 場 均 衡 が 成 り立 ち,あ 剰(surplus)と
剰(CS:consumer's plus:PS)と
る 財 が 取 引 さ れ る と,売
り手(企 業)と 買 い 手(消 費 者)に 余
呼 ば れ る便 益 が 生 じ る.こ の と き,消 費 者 が 得 る 便 益(効 用)を 消 費 者 余 surplus),生
呼 ぶ.こ
消 費 者 余 剰 は,消
産 者 が 得 る便 益(利 潤)を 生 産 者 余 剰(producer's
れ らの 余 剰 を,図2.12を
用 い て 説 明 し よ う.
費 者 が 現 在 の 消 費 に対 して 支 払 っ て も良 い 最 大 の 金 額(消 費 者 便
益 ま た は効 用)と 実 際 に 支 払 う額 と の 差 額 と し て 定 義 され る*18.各 和 が,市
場(産 業)の 消 費 者 余 剰 とな る.図2.12(a)に
曲 線 と で 囲 ま れ た 領 域(領 域DEP*)と
消費 者 の余 剰 の総
示 す よ う に,均 衡 価 格 が P*,均
衡 取 引 量 Q*の 均 衡 状 態 で の 市 場 全 体 の 消 費 者 余 剰CSは,市
一 方,競
sur
場 価 格 線 と市 場 の 需 要
し て 表 され る.
争 的 企 業 は 市 場 価 格 と 限 界 費 用 を 等 し くさせ る生 産 量 を選 ぶ こ と で 利 潤 を
最 大 に す る.企 業 が 財 を 供 給 ・販 売 す る こ とで 生 じ る生 産 者 余 剰(PS)は,企
業 が財 を
売 っ て 得 た 収 入 か ら可 変 費 用 を 差 引 い た 準 レ ン トと し て 表 さ れ る*19.産 業 全 体 の 生 産 者 余 剰 は,産 業 が 受 け る総 収 入(=P*×Q*)か の領 域SEP*の
ら総 可 変 費 用 を 引 い た もの で,図2.12
面 積 に 等 しい.
*18
消 費 者 は,自
は,消
費 者 が財 の 各 単 位 に対 し て貨 幣 で ど う評 価 す るか を表 した もの と も考 え る こ とが で き る.需
らの 意 思 で 対 価 を支 払 い財 を入 手 す る こ と で 満 足(効 用)が 得 られ る.需
曲線 が 右 下 が りな の で,需 さ くな る.図2.12(a)に
要 量 を追 加 的 に 1単 位 増 加 す る と限 界 的(追 加 的)"金
要 曲線 要
銭 に よ る"評 価 は小
示 す よ う に,市 場 価格 が P*の と きに は,消 費 者 は 限界 的 単 位 の 貨 幣 的 評 価 が
市 場 価 格 と一 致 す る購 入 量 Q*を 決 め る.た とえ ば,財 を Q*以 上 購 入 し よ う とす る と,限 界 的評 価 が 価 格 P*を 下 回 り,追 加 的購 入 に よ る追 加 的 効 用 は 負 とな る.価 格 P*は,す れ るの で,Q*よ
べ て の 需 要 単 位 に適 用 さ
り も少 な い 各 単 位 の貨 幣 に よ る限 界 的 評 価 は P*を 上 回 る.こ の 上 回 った 貨 幣 に よ る
限界 的 評 価 の 総 和 を消 費 者 余 剰 と呼 ぶ. *19 レ ン トとは,生 産 要 素 の 受 け取 る余 剰 を さ す.準 い 総 額(可 変費 用)を 除 した もの と して 定 義 さ れ る.短
レ ン トと は,総 収 入 か ら可 変 的 要 素 へ の 支 払
期 で は 固 定 要 素 の 量(た とえ ば あ る 発 電 事 業 者
が保 有 す る発 電 機 の 総 数)を 変 化 させ る こ とが で きな い.ま た,消 費 者 の 場 合 で も,使 用 契 約 を む す ぶ だ けで 発 生 す る水 道 や 電 話 利 用 の 基 本 料 金 や ク レ ジ ッ トカ ー ド利 用 に お け る年 会 費 な ど,消 ゼ ロで も負 担 し な けれ ば な らな い 費 用 が 存 在 す る場 合 が あ る.こ
体 が 実 際 の 経 済 活 動 を行 わ な い 場 合 に比 べ て,実 際 に行 う こ とで 得 られ る超 過 利 得 額 は,総 ら総 可 変 費 用 を差 し引 か な け れ ばな ら な い.こ 呼 ぶ.
費活動が
う した 固 定 費 の 存 在 に よ り,経 済 主
の よ うな超 過利 得 額,ま
便益額か
た は 準 レ ン トを一 般 に 余 剰 と
(a)
消 費者余剰
(b)
図2.12 (c)
総余剰(社会厚生)
welfare)は,あ
完全競 争市場(短期)にお ける消費者 余剰,生 産者余剰,総 余剰の考 え方
各 経 済 主 体 の 余 剰 の 定 義 と 同 様 に,社 social
生産者 余剰
会 全 体 の 総 余 剰(ま た は 社 会 厚 生,SW:
る財 の 生 産 ・消 費 活 動 に よ っ て 社 会 が 享 受 す る 総 消 費 便 益(効
用)と 産 業 の 総 費 用(総 可 変 費 用)と の 差 と し て 定 義 さ れ る.図2.12(c)に 総 余 剰 は,消
費 者 余 剰(CS)と
生 産 者 余 剰(PS)の
消 費 者 と企 業 の 便 益 の 総 和 に等 し い.図2.12(c)か
和 で 表 さ れ,市
示 す よ うに,
場 取 引 か ら得 ら れ る
ら も容 易 に わ か る よ う に,総 余 剰
が 最 大 とな る 取 引 量 は,市 場 需 要 曲 線 と市 場 供 給 曲線 とが 交 わ る Q*で あ る.つ ま り, 総 余 剰 は,当
該 市 場 の 需 要 曲 線 と供 給 曲 線(限 界 費 用)が 等 し い 均 衡 状 態 の も とで 最 大
とな る.競 争 的 市 場(完 全 競 争 市 場)で は,す な る よ う に 各 々 の 需 要 量 を 決 め,一 方,す
べ て の 消 費 者 が 価 格 と限 界 便 益 が 等 し く
べ て の 企 業 が 価 格 と限 界 費 用 が 等 し くな る
よ う に 各 々 の 供 給 量 を決 め,価 格 を媒 体 と し て 需 要 と供 給 が 調 整 さ れ れ ば 均 衡 状 態 に 至 る.つ
ま り,理 論 的 に は,競 争 的 市 場(完 全 競 争 市 場)下 で は効 率 的 な資 源 配 分 が 実
現 され る.
図2.13
停 電 コス トの 考 え方
特 に,消 費 者 余 剰 の 概 念 を,電 力 需 要 の 停 電 コ ス ト と考 え る場 合 も あ る.停 電 コ ス トは,消
費 者 が 電 力 供 給 停 止 に よ っ て 被 る経 済 的 費 用 と み な し,停 電 対 策 の有 無 に よ
り,短 期 と長 期 の 停 電 コ ス トに 区 分 す る こ と が で き る*20.こ ト(interruption
costも
の 水 準 が 一 定,ま な い 状 況 で,需 は,あ
し くはoutage
cost)は,「
の う ち,短 期 の停 電 コ ス
バ ッ ク ・ア ッ プ電 源 な ど の停 電 対 策
た は 停 電 時 に 電 力 以 外 の 生 産 要 素 お よ び 消 費 財 へ の 切 り替 えが で き
要 家 が 被 る経 済 損 失 」 と定 義 す る こ とが で き る.図2.13の
る供 給 信 頼 度 の 水 準 を所 与 と し た 場 合 の 需 要 曲 線 で,そ
需 要 曲線
の場 合 の 停 電 コ ス トは
供 給 量 ゼ ロ と な っ た 場 合 に 消 費 者 の ネ ッ トの 損 失 と し て 考 え る な ら ば,図2.13の
消
費 者 余 剰 が 停 電 コ ス トに 相 当 す る.
2.4
不完全競争市場の特徴
2.4.1
独 占市場
(1)
独占の定義
一 般 に,あ い う.つ *20
る 市 場 が 1企 業 に よ り支 配 さ れ て い る と き,(完
全)独 占(monopoly)と
ま り,生 産 ・供 給 さ れ る財(製 品 や サ ー ビ ス)に は 競 合 す る 代 替 財(substitu 長 期 の 停 電 コ ス ト(shortage
た もの で あ る.つ
ま り,こ
cost)は,短
期 の 停 電 コ ス トの期 待 値 に 停 電 対 策 関 連 費 用 を 加 え
こで い う長 期 と は需 要 家 に よ るバ ッ ク ・ア ップ な どの停 電 対 策 や 電 気 利 用
機 器 の 選 択 を変 更 で き るほ ど十 分 に長 い 期 間 で あ る こ と を意 味 す る.し 合 理 的 に行 動 す れ ば,停
た が っ て,企
業や家計が経済
電 に よ る経 済 的 損 失 を 最 小 に す る よ う にバ ック ・ア ップ 設 備 の 投 入 を決 定 す
る こ とが で き る は ず で あ る.ま た,停
電 に よ る 影 響 は,直
こで は直 接 的 な影 響 に よ る停 電 コ ス トの み とす る.
接 的 影 響 と間 接 的影 響 が あ げ られ るが,こ
tional goots)が 場 を独 占 市 場,こ
な く,他 の 企 業 が 新 規 参 入 しか ね る参 入 障 壁 が 存 在 す る状 態 に あ る 市 の市 場 内 に 存 在 す る企 業 を独 占企 業 と呼 ぶ*21.
独占企業の価格と生産量の決定
(2)
供給 独 占で は供 給者 は唯 一 で あるの で,独 占企業 は 自社製 品 の生産 量 と価 格 を 自由 に決 め る こ とがで きる立場 にあ る.し か し,自 由 に決定 した価 格 で想定 した生産 量が 販 売 で きるわ けで はない.独 占企 業 で あって も,完 全 競 争市場 下 で の企 業 と同様 に, 利 潤 の最大 化 を求 め て,市 場 の需 要 曲線 に沿 って製 品の価格 と生産 量 の組合 せ を決定 す る. 独 占企 業 の利潤 Ⅱ(Q)は, Ⅱ(Q)=R(Q)-C(Q)
(2.10)
で 表 され る.利 潤 が 最 大 と な る生 産 量 は,次
式 の よ う に 限 界 利 潤 が ゼ ロ と な る点 で,
(2.11) と な る.図2.14に dC/dR)の る.こ
示 す よ う に,限
交 点(図2.14中
界 収 入 曲 線(MR=dR/dQ)と
の A 点)に よ っ て 独 占 企 業 の 最 適 生 産 量(図 中 のQ0)が
の 生 産 量 に対 応 す る市 場 の 需 要 曲 線 上 の B 点 に よ っ て,独
る*22.こ の と き の 独 占 利 潤 は,図2.14に
図2.14
*21
限 界 費 用 曲 線(MC=
占価 格(P0)が
示 す よ う に,販 売 価 格(P0)と
決 ま 決ま
平 均 費 用(AC)
独 占企業 にお ける価格 と生産量 の決定 の考 え方
あ る財 の市 場 で 供 給 が 独 占 さ れ て い る場 合 を供 給 独 占 また は売 り手 独 占 と呼 ぶ .需 要 が独 占 さ に,生 産 要 素 市 場(input market)で の買 い手 独
れ て い る場 合 を需 要 独 占 ま た は 買 い 手 独 占 と呼 ぶ.特 占 をmonopsonyと
呼 ぶ.供 給 と需 要 の双 方 が独 占 さ れ て い る場 合 を,双 方 独 占 と呼 ぶ.こ
こで は,供
給 独 占の み取 り扱 う もの とす る. *22 この 価 格 は,市 場 の需 要 曲 線 に よっ て 決 ま る需 要 価 格 で ,販 売 可 能 な最 高価 格 で あ る.な お, この B 点 を クー ル ノ ー 点 と呼 ばれ る.
と の 差 額 に 生 産 量(Q0)を 図2.14に
示 す よ う に,完
P1と な る*23.完 る.さ
乗 じ た 大 き さ とな る.
ら に,独
全 競 争 均 衡 は E 点 で,そ
全 競 争 で は,独
占 に 比 べ て,よ
占 市 場 の 方 が,消
は,図2.14に
の と き の 生 産 量 がQ1で
価格が
り安 く よ り多 く供 給 さ れ る こ と に な
費 者 余 剰 と生 産 者 余 剰 の和 で あ る社 会 厚 生(総 余 剰)
示 す よ う に 面 積BEA分
だ け 小 さ く な る.こ
の 減 少 分 を,社 会 的 欠 損
(social deficit)と 呼 ぶ.。
2.4.2
独 占的競 争市場
独 占 企 業 に は,同 一 製 品 に つ い て競 争 者 が 存 在 し な い.し か し,そ れ に も関 わ らず, 類 似 の 代 替 的 商 品 が 存 在 す る場 合 に は独 占 企 業 は代 替 的 商 品 に 関 して 競 争 者 を も ち, 間 接 的 な競 争 が 行 わ れ る よ うな 市 場 形 態 が 考 え ら れ る.こ 競 争(monopolistic る.つ
competition)と
呼 ぶ.独
ま り,同 種 類 の 生 産 物 で あ るが,各
の よ う な 市 場 形 態 を独 占 的
占 的 競 争 の典 型 的 な 例 は,製
あ り,各 企 業 は独 自 の ブ ラ ン ド製 品 と して 独 占者 で あ っ て,し る と い う状 況 で あ る.ま な っ て い る が,買
た,地
品差 別 で あ
企 業 の 生 産 物 の 形 態 や 性 能 に 大 き な相 違 が か も互 い に競 争 して い
理 的条件 に よってあ る企業 が一 定地 域 内で は独 占者 と
い 手 が 他 の 地 域 まで 手 を伸 ばす こ と に よ っ て 同 一 の 商 品 を 買 う こ と
が で き る よ う な場 合 も,独
占 的 競 争 に あ る.つ
ま り,独 占 的 競 争 と は,完 全 競 争 の 条
件 の う ち,“ 取 引 さ れ る財(製 品 や サ ー ビ ス)が 同 質 で あ る ” とい う 条 件 が 成 り立 た な い 場 合 で あ る.
2.4.3
寡 占(お よ び 複 占)市 場
寡 占(oligopoly)と
は,市 場 内 の個 々 の 売 り手(ま た は 買 い 手)の 行 動(価 格 ・販 売 戦
略 の 決 定 ・変 更 な どの す べ て の 行 動)が 競 争 相 手 に影 響 を 及 ぼ す ほ ど少 数 の 売 り手(ま た は 買 い 手)し か 存 在 し な い よ うな 市 場 の状 況 の こ とで あ る.ま た,複
占(duopoly)と
は企 業 数 が 2で あ る寡 占 の 特 殊 ケ ー ス で あ る. 寡 占 は,寡
占 企 業 間 の 競 争 の 有 無 に よ っ て 競 争 的 寡 占 と非 競 争 的 寡 占 と に分 け る こ
とが で き る.こ で あ る.ま
た,寡
こ で,非
競 争 的 寡 占 と は,企 業 が 互 い に 結 託 し て 協 調 行 動 を と る場 合
占 企 業 の 生 産 物 が 企 業 間 で 同 質 で あ る 場 合 を 同 質 寡 占,製
品差別 が
存 在 して 生 産 物 が 企 業 間 で 異 質 で あ る場 合 を異 質 寡 占 と呼 ぶ.
*23 先に述べ たよ うに,各 企業 の操業停 止点よ りも上の逓増的 な限界費 用曲線が企業 の供給 曲線 で ある.こ の各企業 の供給曲線 を集計 した ものが,市 場 の供給曲線 である.た だ し,独 占企業 の行動指 針 とな る限界費 用曲線 を,完 全競争市場 におけ る市場 の供給曲線 とした.
2.5
電力 自由化に伴 う諸問題
2001年 1月 に アメ リカ ・カ リフォルニ ア州 で発生 した電 力危 機 は,百 万世 帯 に影響 を与 える停 電 とい うか たち で顕在 化 した.近 年 の人 口増加,ITの
普 及 や好景 気 に よる
電 力需 要 の増加 に加 え,同 州 の慢 性的 な供給 力不 足,き び しい環境 規制 と卸 電 力価格 へ の上 限価格 の導入 な どで発 電所 の投 資 が予想以 上 に進 まな かっ たな どが,今 回の電 力 危機 の要 因 で はない か と考 え られ てい る.さ らに,小 売価格 規制,長 期契 約 の制限, ス ポ ッ ト市 場 への偏 り,行 き過 ぎた ア ンバ ン ドリグ,価 格 操作 しやす い構造 な ど電力 市 場設 計 の不備 な どの 問題が 指摘 され た.特 に,発 電設備 や流 通設 備(特 に送電 線)へ の投 資の イ ンセ ンテ ィブが働 くよ うな政策 の必 要性 が強調 され る結 果 となった.何 れ に して も,カ リフォル ニア州 の電 力危 機 問題 は,電 力の 市場取 引 のむ ずか しさを端 的 に示 した事 例 であ り,こ れ まで に述べ た市場 メカニ ズム に基 づ く電 力取 引 システム の あ り方 につい て,世 界 中 に大 きな試金 石 を投 じた.伝 統 的な規 制体 制下 におか れて い た電気 事業 に競争 市場 を導入 す る場合 に,適 切 な施策 が講 じ られ な けれ ば,重 大 な事 態 を招 く可 能性 が あ る ことが 示 され た. (1) 回収 不能 費用 問題 伝統 的 な規制体 制 下 で は,一 般 に発 電設備 や 流通 設備 な ど投 資費 用 の回収 が 認 め ら れ る.つ ま り,規 制 当局 は電 力会 社 に対 し,投 資費 用 を回収 す るに十分 な収 入 が得 ら れ る ような料金設 定 を認 め,こ れ らの コス トはすべ て電 気料金 を通 じて需 要家 か ら回 収 された.し か し,適 切 な施 策 を講 じな い と,規 制体 制 下で は回収 を予 定 していた設 備 投 資費用 が競 争市場 体 制 へ の移 行 に よ り回収 で きな くな り,巨 額 な費 用(回 収 不能 費 用,stranded
cost)が 発生 す る可能性 が あ る.
これ まで に,ア メ リカ を中心 に回収 不能費 用 の 回収 の是 非 を巡 って議 論 が なされ て きた.た とえば,規 制 上 の盟 約 の義務 を果 た すた めに電 力会社 は設 備投 資 な どを行 っ て きたが,政 策 変更 に よ り生 じた設備 投資 に対 す る損失 を電力 会社 が被 る必 要 は ない とい う主張 と,盟 約 は過 去 の設備 投資 に対 し完全 回収 を保 証 して い る もので はな く, む し ろ回収 不能費 用 の ほ とん どは電力 会社 の過剰 ・不良 な設備 投資 に起 因 す る もので あ る とい う相対 す る二 つの主 張が あった*24. 回収 不能 費用 の負 担 は,電 力業 界 の財務 問題 の みな らず,社 会経 済 的 お よび政策 的 要素 も含 んで い る.ま た,こ れ らの費 用 が需要 家負 担 とな った場合,回 収額 や回収 時 *24規
制 上 の 盟 約(regulatory
compact)と
は,電 力 会 社 が そ の供 給 地 域 内 の 需 要 に 対 し正 当 な 価
格 で 適 切 なサ ー ビス を供 給 す る 義 務 を負 う代 償 と し て,そ 規 制 当 局 と電 力 会 社 間 の社 会 契 約 の こ とで あ る.
の 区域 内 で の 市 場 独 占権 と有 す る とい う,
期 の設 定 に よって は競争 へ の移行 が遅 れ,自 由化本 来 の 目的 で あ る電 気料 金値 下 げや その経 済効果 が もた ら され ない 可能性 もあ る.電 力 自由化 を推進 す る欧米 諸 国で は, 事 業再 編 にあ た り,こ の 回収 不 能費 用 の取 り扱 い を最重 要 課 題 と して 受 け止 めて い る.ア メ リカ にお いて は,電 力 自由化 を推 進 す る州 の うち,回 収 不能費 用 の全額 回収 を認 め る州 もあ るが,競 争市 場 へ の円滑 な移行 を図 るた め に,各 々 の利 害 関係 者へ の 公 正 を配慮 した上 で適切 な処 置 を講 じる こ とが,政 策 変 更の成 功 の鍵 を握 ってい る と い えよ う. (2)市
場 支配 力
市 場 支 配 力 と は,あ
る事 業 者 が 競 争 市 場 下 で 決 定 され る 価 格 水 準 以 上 に,価 格 を 吊
り上 げ,か つ そ れ を維 持 す る能 力 で あ る.さ
らに,市 場 支 配 力 は “水 平 的 市 場 支 配 力"
と “垂 直 的 市 場 支 配 力 ”に 区分 さ れ る*25.そ
の 中 で も,水 平 的 市 場 支 配 力 は,「 あ る 企
業 が,あ
る一 つ の 市 場 で 高 い 占有 率 を 有 して い る場 合 に,そ
格 を 吊 り上 げ る能 力 」 で あ る.こ
の 支 配 力 を通 じ て 市 場 価
の水 平 的 市 場 支 配 力 は,市 場 集 中 度 と い う指 標 に よ
り評 価 され る こ とが 多 い. 市 場 集 中度 を定 量 化 す る代 表 的 な指 標 と し て,ア
メ リカ の 司 法 省 連 邦 取 引 委 員 会 が
考 案 した ハ ー フ ィ ン ダ ル ・フ ィ ッ シ ャー マ ン指 標(HHI)が お け る 全 事 業 者 の 市 場 占 有 率(%)を
あ る.こ れ は,あ
る市 場 に
二 乗 した もの を す べ て 加 算 す る こ と で 得 られ る.
(2.12) n:あ る市 場 内 の 事 業 者 の 総 数,Si:企 特 に,ア
メ リ カ で のM&Aの
度 は 低 く,1000〓HHI<180Oで HHIが50ポ
業 iの 市 場 占 有 率(%)
ガ イ ド ラ イ ンで は,HHI<1000の は や や 高 く,HHI〓1800で
場合 で は市場 集 中
は 高 い と し て い る.特 に,
イ ン ト増 大 す る 場 合 に は 競 争 を阻 害 す る懸 念 が あ り,100ポ
イ ン ト増 大
す る場 合 に は市 場 支 配 力 の 増 大 と行 使 が 懸 念 さ れ る と し て い る. イ ギ リ ス(イ ング ラ ン ド と ウ ェ ー ル ズ)で は,1990年 が 導 入 され て 以 来,発 お け るHHIは
大 幅 に 改 善 さ れ た も の の,市
れ て い る と い う評 価 も さ れ て い る.こ
*25垂
に 卸 電 力 市 場(強 制 プ ー ル 市 場)
電 市 場 へ の 新 規 参 集 者 は 増 加 して い る.イ
ギ リス の 発 電 市 場 に
場 支 配 力 の 行 使 に よ り価 格 操 作 が 継 続 さ
の よ うな イギ リス の プー ル 市場 運 営 の経 験 か
直 的 市場 支 配 力 は,あ る企 業 が 生 産 活 動 の上 流 と下 流 の両 方 あ るい は どち らか で 生 産 活 動 を
行 っ て い る と き に,ど げ た り,上 流,下
ち らか一 方 の 市 場 に お け る独 占 力 を利 用(行 使)し て,他
の市 場 の価 格 を 吊 り上
流 間 の 取 引 を 制 限 した りし て企 業 全 体 と して利 益 増 加 を図 る能 力 とさ れ て い る.た
とえ ば,卸 電 力 市 場 が 導 入 さ れ,送
電 系 統 の非 差 別 的 な オ ー プ ンア クセ ス が 義 務 づ け られ 場 合 に,垂
直 統 合 型(発 送 配 電 一 貫 型)の 電 力 会 社 が,自
然 独 占性 を有 す る送 電 部 門 な どの 支 配 力 を行 使 し,自 社
の発 電 設 備 の送 電 系 統 の 利 用 を優 先 にす る よ う な場 合 が,垂 直 的 市場 支 配 力 の 行 使 に相 当 す る.
ら,市 場集 中度 を低 下 させ るだ けで は市場 支配 力 を緩和 す る こ とが で きない可能 性 も あ る とい えよ う. (3) 電 力市場 の価 格高 騰 1998年 6月25日 に,ア メ リカ 中西 部 地 域 で 卸電 力 価 格 が,一 時7500ド ル/MWh と通常 の100∼200倍
の水準 に まで高騰 した*26.さ らに,カ リフォルニ ア州 で は,1998
年 7月13日 に,ア ンシラ リーサ ー ビスの一 種 で あ る待 機 予備 力 の価 格 が,一 時9999 ドル/MWと
通 常 の1000倍 の水 準 まで高騰 した(第 5章 参 照).卸 電 力 市 場 に競 争 原
理 を導 入 した に も係 わ らず,卸 電 力や ア ン シラ リーサ ー ビスの価格 が高騰 す る理 由 に つ い て は,さ まざ まな見 解が あ るが,こ こで は,需 要側 の価格 弾力 性 と系統 内 の混 雑 に着 目 して紹 介 したい. も し,卸 電 力 プール市 場で供 給 サ イ ドと需要 サ イ ドの双 方 が提 出す る希 望価 格 と希 望 電 力取 引 量 の組 合せ に基 づい て市 場価 格(プ ー ル価 格)と 取 引 電力 量 を決定 す る場 合,需 要側(供 給 事 業者 や需要 家 な ど)が価格 に対 して弾 力的 であれ ば,プ ー ル価格 が 希 望価格 よ りも高 けれ ば電力 需要 は減 少 し,価 格 の上 昇 は(あ る程度)抑 制 され る.し か し,電 力 は,一 般 の財 とは異 な り,価 格 高 騰時 の消 費電 力 の抑 制 や他 の財へ の代替, 他 の時 間帯 へ の シフ トが むず か しい.特 に,小 口需 要家(一 般家 庭 な ど)は価格 に対 し て “非 弾力 的” で あ るた め,市 場支 配力 を行 使 す るイ ンセ ンテ ィブ とな り,発 電事 業 者 は価格 を引 き上 げやす くな る.こ の ような発電 事業 者 の市場 支配 力 を緩 和 す るため には,需 要側 の価 格 弾力性 を向上 させ る こ とが効 果 的で あ る.需 要 の価格 弾力 性 を高 め るには,卸 電 力市 場価格 との連動 した小売 料金 の適 用 に加 え*27,直 接 負荷制 御 な ど のDSM方
策 の促 進,消 費 電力 を時 間帯 別 に計 測 で きるメー ターの設 置 な どの情 報伝
達 システム の構築,バ ックア ップ用 電源 や分 散型 電源 の設 置促 進や電 力貯 蔵技 術 の促 進 な どの技術 的 な対策 を組 合せ る必 要が あ ろ う. 一 方,卸 電 力市 場 が競争 的 であ った として も,電 力 会社 の供給 区域 間 を連系 す る送 電線 の容 量 が十分 で な ければ,送 電 制約 によ り電 力取 引が拒 絶 され る場 合 もあ り,卸 電 力 市場 の活 性化 にはつ なが らな い.こ の よ うな供 給 区域 間 の送電容 量不 足が,経 済 的 な電力 取 引 の阻害要 因 にな り卸電 力価格 が低 下 しに くくな る.そ の結果,電 力市場 へ の参入 障壁 とな り,相 対 的 に規 模 の小 さい独 占的 な電 力市 場 が乱立 し,発 電 事業者 *26
FERCは,こ
需 要 の 急 増,送
の 価 格 高 騰 は,計 画 外 の発 電 ユ ニ ッ トの 停 止 や 季 節 は ずれ の熱 波襲 来 に よ る電 力
電 線 混 雑 に 伴 う電 力 取 引 の 制 限 や競 争 市 場 にお け る経 験 不 足 な どの,さ
ま ざ まな 要 因
が 重 な り合 っ た結 果 発 生 した もの で あ り,再 度 生 じる 可 能 性 は低 い とい う調 査 結 果 を ま とめ た.し し,同 地 域 の卸 電 力価 格 は,1999年 *27
た だ し,需
7月 下 旬 に は再 び 1万 ドル/MWhま
か
で 高 騰 した
要家 保 護 の 観 点 か ら,想 定 を上 回 る卸 電 力価 格 の 高 騰 が 生 じた 対 策(上 限 価 格 規 制
な ど)を 講 じ てお く必 要 は あ る.
が 市 場 支 配 力 を 行 使 しや す くな る.さ
ら に,送 電 線 の 電 力 潮 流 は,系
物 理 的 ・電 気 的 な 法 則 に よ っ て 決 ま る の で,電 し い.そ
統構 成 に依存 し
力 潮 流 そ の も の を 制 御 す るの は む ず か
の た め,系 統 内 の 混 雑 解 消 や 需 給 バ ラ ンス の 維 持 の た め に,高
コ ス トの 発 電
ユ ニ ッ トを運 転 し な け れ ば な らな い場 合 も あ る.系 統 の ボ トル ネ ッ ク に位 置 す る発 電 事 業 者 は,故
意 に 系 統 内 に 混 雑 を発 生 さ せ 価 格 を 引 き上 げ る な ど,市 場 支 配 力 を行 使
し や す く な る. 供 給 区 域 内 お よ び 区域 間 の 送 電 容 量 を 増 強 す る こ とに よ り,市 場 支 配 力 を緩 和 す る こ とが で き る.し
か し,競 争 市 場 化 に 伴 い,送
電 線 所 有 者(電 気 事 業 な ど)は,リ
を伴 う 巨額 な 設 備 投 資 を控 え る傾 向 に あ る た め,送 め,す
電 線 増 強 も容 易 で は な い.そ
スク のた
べ て の 市 場 参 加 者 に送 電 線 増 強 へ の 投 資 イ ンセ ン テ ィ ブ を与 え る よ う な 仕 組 み
が 必 要 とな る.
参考文献 1)植
草:公
2)植
草 編:講
3)江
副:市
場 と規 制 の 経 済 理 論,中
4)大
山:最
適 化 モ デ ル 分 析,日
5)奥
野,鈴
木:ミ
6)大
住:図
解
7)金
森 ら:経
8)熊
野:実
証 研 究/電
9)川
島:寡
占 と 価 格 の 経 済 学,勁
10)佐 A 11)資
的 規 制 の 経 済 学,筑
摩 書 房,1991.
座 ・公 的 規 制 と産 業
科 技 連,1993.
ク ロ 経 済 学 Ⅰ,岩
済 辞 典(新 版),有
波 書 店,1985. ー エ ー ピ ー 出 版,2000.
斐 閣,1986.
気 料 金 行 政 と 消 費 者,中
央 経 済 社,1992.
草 書 房,1995.
門 ミ ク ロ経 済 学(原 著:Hal
Approach,5th
版,1994.
央 経 済 社,1994.
価 格 と市 場 の 理 論,シ
藤 監 訳:入 Modern
① 電 力,NTT出
R.Varian:Intermediate
edition,W.W.Norton&Company,1999),勁
源 エ ネ ル ギ ー 庁 公 益 事 業 部 編:電
気 事 業 の 現 状(2000年
Microeconomics: 草 書 房,2000
・平 成12年
版),(社)日
.
本電
気 協 会,2000. 12)資
源 エ ネ ル ギ ー 庁 公 益 事 業 部:電
力 構 造 改 革(改 正 電 気 事 業 法 を ガ イ ドラ イ ン の 解 説),
(財)通 商 産 業 調 査 会 出 版 部,2000. 13)電
力 新 報 社:電
気 事 業 講 座,第
1巻
電 気 事 業 の 経 営,1996.
14)電
力 新 報 社:電
気 事 業 講 座,第
7巻
電 力 系 統,1997.
15)電
気 学 会(電 力 ・エ ネ ル ギ ー 部 門,電
調 査 専 門 委 員 会):新 16)電
力 政 策 研 究 会:図
17)細
江,大
住:ミ
18)関
根:電
力 系 統,電
19)田
村 編:電
力 系 統 技 術 委 員 会,新
し い 電 力 シ ス テ ム 計 画 手 法,電 説
電 力 の 小 売 り 自 由 化,電
ク ロ ・エ コ ノ メ ト リ ッ ク ス,有
力 新 報 社,2000. 斐 閣,1995.
気 書 院,1985.
力 シ ス テ ム の 計 画 と運 用,オ
しい電 力 シス テム 計 画手 法
気 学 会 技 術 報 告 書,第647号,1997.
ー ム 社,1991.
20)富
田:企
業 経 済 の 計 量 分 析,税
21)長
岡,平
尾:産
22)根
本:電
気 事 業 の 規 模 の 経 済 性,最
23)野
村,松
田:電
24)矢
島:電
力改革
25)矢
島 編:世
26)藪
下 ほ か 訳:ス
業組 織 の経 済学
力
力 経 済 研 究,No.31,1992.
文 舘 出 版 株 式 会 社,2000.
規 制 緩 和 の 理 論 ・実 際 ・政 策,東
洋 経 済 新 報 社,1998.
洋 経 済 新 報 社,1999.
テ ィ グ リ ッ ツ ・ミ ク ロ 経 済 学(原 著:J.E.Stiglitz:ECONOMICS,W. 洋 経 済 新 報 社,1995.
下 ほ か 訳:ス
28)松
川:電
気 料 金 の 経 済 分 析,日
29)森
本:ミ
ク ロ 経 済 学,有
30)西
村:ミ
ク ロ 経 済 学 入 門(第
テ ィ グ リ ッ ツ 入 門 経 済 学(第
31)L.R.Christensen
of Wholesale
本 評 論 社,1998.
近 の 研 究 展 望,電
界 の 電 力 ビ ッ クバ ン,東
27)藪
32)FERC:Staff
基 礎 と応 用,日
自 由 化 と競 争,同
W.Norton&Company,1999),東
tion,Journal
務 経 理 協 会,1994.
and of Political Report on Electricity
1998(www.ferc.fed.us)
2版),東
洋 経 済 新 報 社,1999.
本 評 論 社,1995.
斐 閣 ブ ッ ク,1992. 2版),岩
波 書 店,1995.
W.H.Greene:Economies
of Scale
in U.S.Electric
Genera
Economy,No.84,pp.655-676,1976. the Federal Pricing
Energy
Abnormalities
Regulatory in the
Commission Midwest
on the Causes
During
June
1998,
第 3章 送 電サ ー ビスと送 電料金設定理 論
3.1
送電サービスと送電 コス ト
3.1.1
オ ー プ ン ・ア ク セ ス と 送 電 サ ー ビ ス
電 力 の 送 電 設 備 は,電
力 シ ス テ ム 内 あ る い は電 力 シ ス テ ム 間 で 異 な る 電 力 消 費 パ タ
ー ンや 発 電 コ ス トの違 い を調 整 す る た め に,電 力 シ ス テ ム の 効 率 的 な計 画 ・運 用 に お い て 中 心 的 な 役 割 を果 た して きた.発 可 能 で あ るが,自
電 お よ び 供 給 に は本 書 の 主 題 で あ る競 争 導 入 が
然 独 占 の 性 質 を有 す る送 電 お よ び 配 電 へ の 非 差 別 的 な ア ク セ ス が 発
電 お よ び供 給 に お け る 競 争 の た め の 前 提 条 件 で あ る. 伝 統 的 な 垂 直 統 合 型 電 気 事 業 で は,発 電 か ら供 給 に 至 る 電 力 供 給 の す べ て の 機 能 が 一 つ の 組 織 に組 み 込 まれ て い た た め ,送 電 は電 源 と需 要 を む す び つ け る物 理 的 な ネ ッ ト ワー ク と し て 存 在 して き た.一
方,自
由 化 され,電
気 事 業 の機 能 が 分 離 さ れ た 競 争
的 環 境 で は 発 電 事 業 者 か ら卸 売 事 業 者 や 小 売 り需 要 家 へ の物 理 的 な送 電 を可 能 と す る の が 送 電 サ ー ビ ス(transmission 送 電 電 力 量 〔kWh〕,無
service)で あ る.送 電 サ ー ビ ス は,送
効 電 力 〔VAR〕 を あ る受 給 点 か ら別 の 受 給 点(複 数 の 受 給 点 も あ
る)ま で輸 送 す る サ ー ビ ス で あ る.定 ー ビス と呼 ば れ
電 容 量 〔kW〕,
め られ た 1組 の 受 給 点 間 の サ ー ビ ス は 地 点 間 サ
,複 数 の 受 給 点 を 認 め るサ ー ビス を 送 電 網(ネ ッ トワ ー ク)サ ー ビ ス と
呼 ぶ.送 電 容 量 〔kW〕 に つ い て は,常 に 契 約 容 量 を 確 保 す る 確 約(firm)サ 電 容 量 に 空 きが あ る 場 合 に利 用 可 能 な非 確 約(non-firm)サ 託 送(wheeling)と
ー ビ ス と,送
ー ビ ス とが あ る.
は,新 規 発 電 事 業 者 が 既 存 電 力 会 社 の 送 電 設 備 を利 用 し て 他 の 電
力 事 業 者 や 最 終 需 要 家 に 電 力 を供 給 す る こ とで あ り,送 電 サ ー ビ ス に含 ま れ る.託 送 料 金 の 設 定 が 新 規 参 入 規 模 に大 き な 影 響 を与 え る.託 者 に対 し て,会
送 料 金 の 算 定 の た め,送
電所有
計 的 に 明 確 な費 用 配 賦 が 求 め ら れ る.発 電 事 業 者 や ト レ ー ダ な どの 市
場 参 加 者 は送 電 系 統 の 所 有 者 との 間 で 系 統 接 続 と利 用 に 関 し て,需
要 家 との 間 で 電 力
図3.1
第 三 者 ア クセ ス(TPA)の
概念 図
供 給 に 関 し そ れ ぞ れ 相 対 契 約 を締 結 す る.託 送 は ヨ ー ロ ッパ で は 第 三 者 ア ク セ ス (TPA)と
呼 ばれ,電
力 の 受 け手 に 配 電 事 業 者 を含 む.TPAと
三 者(電 気 事 業 者,IPPな
は,託
送 を希 望 す る第
ど)の 無 差 別 な送 配 電 網 利 用 を認 め るた め,配
電 会社 お よび
大 口 需 要 家 が 国 内 外 の 発 電 会 社 や 供 給 事 業 者 か ら直 接 電 力 を 購 入 で き る制 度 を さ す (図3.1).系
統 の ア ク セ ス 条 件 や そ の 利 用 料 金 は,送
渉 に 基 づ き認 め られ る 交 渉TPA(第 の ア ク セ ス 条 件 が 規 制 さ れ,公
電 会 社(電 気 事 業 者)と の 個 別 交
三 者 ア ク セ ス)と,一
表 さ れ る 規 制TPAが
般 化 さ れ た ル ー ル の も とで
あ る.
託 送 は一 般 に 卸 託 送 と小 売 託 送 に 区 別 され る.前
者 は 送 電 され る電 力 の 受 け 手 が 卸
売 事 業 者(パ ワ ー マ ー ケ ッ タ ー)で あ り,後 者 で は最 終 需 要 家 で あ る.1995年 業 法 改 正 まで,託
送 が 認 可 制 で あ っ た が,改
正 後 は 自家 発 電 を 所 有 す る大 口需 要 家 と
電 力 会 社 との 交 渉 の 私 契 約 に委 ね られ る よ う に な っ た.わ され る前 に,工 託 送 が1997年
の電気事
が 国 で は,小
売 託送 が導入
場 の 自家 発 電 か ら同 一 電 力 会 社 管 内 に あ る同 社 の工 場 へ 託 送 す る 自 己 に 導 入 さ れ た.
競 争 的 な 電 力 市 場 を構 築 す る た め,ネ め られ る必 要 が あ る.そ
の 際,既
ッ ト ワー ク に対 す る オ ー プ ン ・ア ク セ スが 認
存 の 発 送 配 電 一 貫(垂 直 統 合)型 私 営 電 力 会 社 は,財
産 権 の 問 題 を 回 避 す る た め に,発 電 ・送 電 ・配 電 の 機 能 分 離 は す る もの の,自 の 性 格 を もつ 送 電 網 を所 有 した ま ま,電 力 供 給 体 系 が 再 編 さ れ る.そ 電 を優 先 して 給 電 す る可 能 性 が あ る.そ
こで,送
然独 占
の と き,自 社 発
電 網 の所 有 権 は 既 存 電 力 会 社 に残 し
た ま ま,運 用 の み を 独 立 し た 中 立 組 織 に委 ね る と い うア イ デ ア が ア メ リ カ で 生 まれ, これ を 実 現 し た の がISO(独 給 に 関 わ る が,電
立 系 統 運 用 機 関)で あ る.ISOは
技 術 的 な 側 面 か ら電 力 供
力 取 引 に は 関 与 しな い.
競 争 が 有 効 に 機 能 す るた め に は,ISOの
よ う に系 統 運 用 と所 有 権 を 法 的 に分 離 す る
な ど系 統 ア ク セ ス の あ り方 が 重 要 で あ る.送 電 サ ー ビ ス の 料 金 は,送
電網 の全 費用 を
負荷見 合 い で分担 す る ことが基本 で あ る.最 も単 純 な負荷 見合 い とは,系 統 全体 の最 大負荷 と特 定 の送 電利 用 者 の最大 負荷 の比率 で費 用 を配分 す る郵 便切 手 法 を さす.送 電 サ ー ビス料 金(あ るい は簡単 に送 電料 金 ともい う)に は,卸 託送 料 金 お よび小売 託送 料 金,プ ール市 場 下 にお ける系統使 用料 金 な どが 含 まれ る. 望 ましい送電 料 金 を設定 す る目的 と して は,以 下 の六 つ が考 え られ る. 目的[1]:電 力 市場 の効 率 的 な運 用 目的[2]:新 規 発電 投 資へ の適切 な価 格 シグ ナル 目的[3]:新 規 送電 線 投資 への適 切 な価格 シグナル 目的[4]:既 存 コス トの回収(既 存 事業 者 に とって重 大 な事項) 目的[5]:一 般 に簡 潔 かつ透 明性 の高 い こ と 目的[6]:送 電線 使 用者 に とっ ての公 平性 と受容 性 目的 1は,短 期 的 な効 率 の優劣 につい て言及 す る もの で あ る.目 的 2か ら 4は長期 的 な効率 に関す る もの,目 的 5お よび 6は実施上 の検 討項 目に相 当す る.当 然 の こと なが ら,自 由化 の段 階 に応 じて,ま た 国や地 域 に よ り,ど の 目的 に優先 順位 をつ ける か は異 な る.た とえば,託 送 料金 設定 の効率 性 と透明性,簡 潔性 とは矛 盾 す る面 もあ る.系 統利 用 の短 期 的 な効 率 性 は,系 統 混雑 時(送 電制 約発 生 時)に 系統 アクセ ス に混 雑 費 用 を反 映 した理論 的 に適 切 な価 格 シグ ナル を提供 す る.一 方,長 期 の効 率性 は, 新 規発 電投 資 お よび新 規送 電線 投資 へ の適切 な価格 シグ ナル を要求 し,そ のた め には 各 負 荷 断面 にお け る潮 流計 算 に基 づ く送 電 の長 期 限界費 用 を計 算 しな けれ ば な らな い.そ の た めに系 統利 用者 へ の計算 の透 明性 は減 じられ,効 率性 追 及 と両立 しない. 現 実 に はあ る程 度 の系 統条 件 を反映 す る ものの,電 力系 統工 学 の非専 門 家で も理解 で きる簡 単 な料金 設定 が 適用 されて い る.
3.1.2
送電 コス ト
わ が 国 の 送 電 費 用 の 内 訳 は,資
本 費70%,修
繕 費19%,人
件 費11%と
が 高 い(電 気 事 業 審 議 会 電 力 流 通 設 備 検 討 小 委 員 会,1997年12月) ∼98年 度 3年 平 均 の 送 電 お よ び変 電 の 原 価 を示 す
表3.1送
資本 費比 率
.表3.1に1996
.系 統 構 成 や 設 備 の ビ ン テ ー ジ な ど
電 お よ び 変 電 の 原価(円/kWh)
に よ りコ ス トの 水 準 は 変 わ る.託 送 料 金 に は 送 電 費 用 と一 部 の 変 電 費 用 が 含 まれ る. 実 際 の わ が 国 の 小 売 り託 送 料 金 は,電 源 開 発 促 進 税 を除 い て2.3∼2.6円/kWh程
度で
あ る. 一 般 に,送
電 コ ス トは送 電 設 備 の 資 本 費 を 反 映 した “送 電 容 量 コス ト” と系 統 運 用
制 約 や 経 済 効 率 改 善 を 考 慮 した “系 統 運 用 コ ス ト”(一 部 の ア ン シ ラ リー サ ー ビス コ ス ト も含 ま れ る)の 和 と して 考 え る こ とが で き る.
(3.1)
送 電 コス ト=送 電 容 量 コ ス ト+系 統 運 用 コ ス ト 送 電 容 量 コ ス トは,資
本 費(固 定 費 に 相 当 す る部 分)の ほ か に,送
電 系 統 の 運 転 ・維
持 に 関 わ る費 用 が 含 ま れ る.系 統 の接 続 場 所 や 送 電 線 の 利 用 実 態 な ど を 反 映 さ せ て, 利 用 者 に 配 分 さ れ る.系 統 運 用 コ ス トは,送
電 系 統 の 安 定 運 転 用 に 必 要 な コ ス トで,
送 電 ロ ス や 送 電 制 約 に よ り発 生 す る コ ス ト(混雑 費 用 も含 む)が 含 まれ る.混 詳 細 は ノ ー ダ ル プ ラ イ シ ン グ の 節 で 述 べ る.ま service)コ
た,ア
雑費 用 の
ン シ ラ リー サ ー ビ ス(ancillary
ス トに は,運 転 予 備 力 の 確 保,無 効 電 力 供 給,負 荷 追 従 な ど に 関 連 す る コ ス
トが 含 ま れ る が,そ
の一 部 は 送 電 系 統 の 安 定 運 用 コス トと考 え る こ とが で き る.
ど の よ う な競 争 導 入 形 態 に お い て も,電 力 系 統 が効 率 的 に運 用 され,長 ま し い シ ス テ ム が 構 成 さ れ る こ とが 望 ま しい.さ
期 的 に も望
ら に,発 電 市 場 で の 競 争 が 維 持 さ れ
る た め に も,送 電 線 を 利 用 す る す べ て の 電 力 取 引 に 対 し て 非 差 別 的 な サ ー ビ ス を行 い,コ
ス ト と価 値 を 忠 実 に反 映 した 送 電 料 金 設 定 が 不 可 欠 とな る.本 章 で は,送
電サ
ー ビ ス の コ ス ト と送 電 料 金 設 定 方 法 の 理 論 と国 内 外 の 実 際 例 を紹 介 す る.
3.2
送電プライシング手法
3.2.1 総 括 費 用 方 式 と 限 界 費 用 方 式 託 送 料 金 を設 定 す る に は,託
送 に係 わ る 費 用 を特 定 し,共 通 費 を 利 用 者 間 で 配 分 す
るル ー ル を決 め な け れ ば な らな い.特
定 さ れ た 費 用 か ら料 金 ス ケ ジ ュ ー ル に 展 開 す る
こ と を プ ラ イ シ ン グ(価 格 設 定)あ る い は レ ー ト メ イ キ ン グ(料 金 設 定)と い う(図 3.2).こ (embedded
れ まで さ ま ざ ま な 送 電 料 金 が 提 案 さ れ て い る が,大 cost method,埋
大 別 で き る.表3.2に
別 す る と総 括 費 用 方 式
没 費 用 方 式)と 限 界 費 用 方 式(marginal
cost method)に
そ れ ぞ れ の 特 徴 を概 括 す る.
総 括 費 用 配 分 方 式 は,系 統 内 の送 電 線 や 変 電 設 備,調
相 設 備 な どの 総 費 用(資 本 費,
運 用 費,保 守 費 な ど)を 一 括 して,送 電 線 利 用 者 の 利 用 状 況 に応 じ て 配 分 す る も の で あ る.利 用 状 況 の 定 義 の 違 い か ら,郵 便 切 手 方 式(postage
stamp
method),契
約経 路 方
図3.2
送 電 コス トと送 電 料 金 方 式 の関 係
表3.2 総 括費用方式 と限界費用方式 コス ト配分 の考 え方
配分方式
総括 費用方式
特徴
・送 電 設 備 の総 費 用(資 本 費 ,運 用 費,保
・算定 方 式 は 容 易 で あ る
守 費 な ど)に 基 づ い た配 賦 方 式 ・個 々 の利 用 者 か ら費 用 回 収 で き る よ う
・実際 の送 電 線 の利 用 状 況 を反 映 しに く い ・シ ス テ ム効 率 向上 の イ ン セ ン テ ィブ を
に,料 金 水 準 を 設 定 す る
付 与 しに くい な ど,効 率 の よ い運 用 や 投 資 を誘 導 しに くい
限界費 用方式
・効 率 的 な 資 源 配 分 の 面 か ら考 え られ た
・系統制約 や運 用制約 を考慮 した料金 設
方法 ・各 経 済 主 体 に最 適 イ ン セ ンテ ィブ を与
定方 法 を実現 す るの が困難(計 算方 式 が複雑 になる)
え る こ とが で き る
式(contract る.こ
path
method)や
負 荷 ・距 離 法(MW-mile
method)な
どが提 案 され て い
れ ら総 括 費 用 配 分 方 式 は,既 存 の 送 電 網 の コ ス ト を 回収 す る 上 で は都 合 の よ い
方 法 で あ る も の の,効
率 の よ い 運 用 や 投 資 を誘 発 す るた め の最 適 経 済 シ グ ナ ル を各 意
思 決 定 主 体 に 与 え る と い う意 味 か らは 最 適 な 方 法 と は い え な い.し い 方 法 で あ る た め,主 一 方,限 で,各
か し,わ
か りや す
に 固 定 費 回 収 の た め の ア ク セ ス 料 金 設 定 に 適 用 さ れ て い る.
界 費 用 配 分 方 式 は,経 済 学 上 の 効 率 的 な 資 源 配 分 の 面 か ら導 出 さ れ た 方 法
経 済 主 体 に 送 電 線 利 用 の価 格 シ グ ナ ル を与 え る こ とが で き る.た
費 用 回 収 の た め の 収 支 均 衡 を満 た す と は 限 らず,す け で は な い.限
べ て の送 電 線 費 用 を 回 収 で き る わ
界 費 用 方 式 は,短 期 限 界 費 用 方 式(short-run
と長 期 限 界 費 用 方 式(long-run
marginal
だ し,送 電 線
cost method)に
marginal
cost method)
分 類 さ れ る.
短 期 ・長 期 の経 済 効 率 的 な 送 電 線 利 用 の イ ン セ ン テ ィ ブ,全 利 用 者 へ の 公 平 性,信 頼 度 や 予 備 率 の確 保 な ど系 統 運 用 条 件 を 同 時 に 満 足 す る送 電 料 金 を 設 計 す る こ と は, 国 内 外 で 重 要 な研 究 課 題 とな っ て い る.
3.2.2
固 定 費 回 収 の た め の ア クセ ス 料 金 設 定
こ れ ま で に 主 に 既 存 の 送 電 設 備 の み を対 象 と し て 適 用 さ れ て い る コ ス ト算 定 方 式 と し て,“ 郵 便 切 手 方 式 ”,“契 約 経 路 方 式 ”,“負 荷 距 離 型 方 式 ”が あ げ られ る1,2).表3.3 に こ れ ら総 括 費 用 方 式 の 概 要 を ま とめ る. (1)郵
便 切 手 方 式(postage
stamp
method)
郵 便 切 手 方 式 で は,送 電 サ ー ビ ス が 提 供 さ れ る域 内(電 力 会 社 の サ ー ビ ス 区域 内)に つ い て は,郵
便 切 手 と同 様 に,距 離 や 接 続 地 点 に 関 係 な く一 定 の 送 電 料 金 を設 定 す る
方 法 で あ る.郵 便 切 手 方 式 に よ る送 電 料 金(送 電 線 使 用 コス ト)は,USps〔
表3.3
円/kW〕 は,
総 括 費 用 方 式 の概 要 1)
郵便切 手方式
契約経路方式
負荷距離 方式
概 要図*
・所 有す る送電 設備 を一 体 と
・契約時 に送電 系路 を交 渉で
・送電 線 を流 れ る潮 流 を,送
概要
考 え,単 位kWあ た りの平 均 費用 にて配賦 ・算 定が容 易で サー ビス提供
決定.決 定 した経 路 を対象 に費用 配賦 を行 う ・算定 が比較 的容 易で あ り,
電す る距 離 を考慮 して費用 配賦 を決 定 ・個 々の送電 線利 用が送電 線
長所
者,利 用者の 双方に対 して わか りやす い ・送電線 に与える影響の大 きい
あ る程 度潮 流,距 離 を考慮 で きる ・電力潮 流の物 理 的な法 則 を
に与 える責任度(潮 流負 荷, 距離)を 反映 してい る ・個別 の送電 利用 に対 し潮 流
もの も,小 さいもの も同様に 取 り扱われるので,効 率的利 用のインセンティブが働 かない
忠実 に反映 して お らず,ル ー プフ ローな どの問題 が発
短所
*太 線 は対象範囲 を示 す
生 しやす い
計 算 を実施 す る必要 があ り, 複雑 .逆 向 き潮 流の問 題 あり
域 内 の送電 線 の設備 費 用(建設 費 に年経 費率 をか けた)の 総和 に対 し,系 統 内 の最大 電 力 需要 で除 した もので あ る. (3.2) 郵便 切手 型送 電料 金 は,系 統利 用者 の接 続地 点 や供 給 距離 に関 わ らず,託 送電 力 の 大 き さのみ に比 例 す るので,料 金算 定 が比較 的容 易 で あ り,説 明が しやす い.し か し, 新 規 ・既存 設備 の区別 をせ ずす べ ての送電 設備 を一 設備 として考 えるた め,送 電 線所 有 者 へ の新規 設備 投資 の イ ンセ ンテ ィブに乏 しい とい う欠 点 を もってい る.さ らに, 実際 の送 電線 の使 用状 況 や個々 の託送 取 引が 系統 に与 える影 響 が反映 され て いな い こ とか ら,系 統 全体 の運 用 コス トを上 昇 させ る よ うな託送 取 引 に関 して も,他 の託 送 取 引 と同水 準 の料金 が適 用 され る. (2)契
約 経 路 方 式(contract
path
method)
この 方式 で は,系 統利 用者 と系統 運 用者 との 間で,託 送 の送 受電地 点 を託送 が 流れ る送 電 線(送 電経 路)を 契 約時 に定 め る.送 電 料金 UCcp〔円/kW〕 は,契 約時 に決定 し た託 送 潮流 量 に対 す る契 約送電 線 の送 電容量 の割 合 を もとに配 分 され る. (3.3) 託 送 料金 算定 時 に考慮 す る送電 線 は,契 約経路 のみ に限定 され るた め,送 電料 金算 定 が比 較 的容 易で あ る.し か し,現 実 の電 気物 理法 則 を無視 して契約経 路が 設定 され た場合,契 約 時 に決定 した送 電経 路 と実際 の託 送 が流 れ る潮 流 の送電経 路 が一致 す る とは限 らな い.そ のた め,契 約送 電経 路以 外 の送電 線 に流 れた電 力が,送 電 系統 内に 混 雑(過 負荷潮 流)を 発 生 させ,経 済運 用 を阻害 す る要 因 とな りうる.さ らに,系 統利 用者(託 送者 な ど)と系統運 用者(電 力 会社 な ど)の間で費 用 負担 の相互補 助 が生 じ,市 場 の公平 性 が維持 されな い可能性 もあ りうる.こ れ はいわ ゆ るルー プ フロー 問題 と呼 ばれ,北 米 で大 きな問題 に なった. (3)負
荷 距 離 方 式(MW-mile
method)
この 方式 は,各 電 力取 引(既 存取 引+託 送取 引)に よる送 電系 統上 の潮流 分布 に基づ き,託 送 取 引が 実際 に使 用 した送電 経路 ご とに,送 電 容量 と送 電距 離 を用 いて送 電 コ ス ト(送電容 量 コス ト)を配分 す る. 送 電料 金UCMM〔 円/年 〕は,系 統 内 の総費 用 を各 送 電容 量 と線 路 こ う長 の積 の 合計 で割 った 「単位kW・
㎞ あた りの費 用」を もとに,各 送 電経路 ご との託 送電 力 の通過
量(託 送潮 流)と 送電 距離 を考 慮 して算 定 され る. (3.4)
た だ し,⊿MWは,電 線 潮 流)-(既
力 取 引 が 各 送 電 線 に与 え た 影 響 分(=(託
存 取 引 の み 各 送 電 線 潮 流))を,ど
さ れ る2).た と え ば,⊿MWの
送 取 引 を含 め た 各 送 電
の よ う に 見 積 る か で,料
金 水準 が左右
考 え 方 と し て,
①
正 ・負 両方 の潮 流変化 を考慮
②
正 の潮 流変化 のみ考慮(増 分潮 流の み)
③
潮 流 変化 を絶 対値 として考 慮
な どが あ げ られ る.た とえば,正 の潮 流変化 の み を考 慮 した場 合 は,過 負荷 潮流 を軽 減 す る潮 流変 化 は評 価 され ない.正
・負両者 の潮 流変 化 を考慮 した 場合 は,過 負荷 潮
流 を軽減 す る電力 取 引 に は負 の 送電 料金 が設 定 され る場 合 もあ る(系統利 用者 が逆 に 料 金 を受 ける こ とが で き る).し か し,同 じ電 力取 引 で も,潮 流 変化 を絶対 値 で評価 す る と常 に料 金 は正 とな り,過 負荷潮 流軽減 の貢 献 は評 価 されな い. この よ うに,送 電 系統へ の影 響評価 の仕 方 に よって料 金水 準 が左右 され る もの の, 負 荷距 離 法 は,送 電 系統 ご とに流れ る潮流 の大 きさ と送電 距離 が 料金 に反 映 され てい る.
3.2.3
限 界 費 用 方 式 の 特 徴 と ノー ダ ル プ ラ イ シ ン グ
(1)電
力取 引へ の 限界 費用 原理の 適用
既 存 設 備 の コ ス ト回 収 を 目 的 とす る総 括 費 用 型 送 電 料 金 方 式 に対 し,経 済 効 率 や 運 用 効 率 の 向 上 を考 慮 した の が 限 界 費 用 方 式 で あ る.わ 要 構 造 に 地 域 差 が あ るた め,発 め,低
が 国 に お い て も,電 源 構 成 や 需
電 の 限 界 費 用 は 必 ず し も全 国 で 均 一 で は な い.こ
コ ス ト地 域(地 点 ま た は母 線)か ら,高 コ ス ト地 域 へ 送 電 す れ ば,両
力 取 引 の 便 益 を享 受 す る こ とが で き る.そ
のた
者 の 間 で電
こ で,発 電 ・送 電 ・受 電 の 3者 間 で,純 便
益 が 最 大 と な る よ う な 電 力 取 引(電 力 融 通 また は 電 力 託 送)が 行 わ れ れ ば,経 済 効 率 の 点 で 望 ま し い状 態 と な る.図3.3は,発
電 の 限 界 費 用 の 低 い 地 域 2(電力 会 社)か ら,送
電 会 社(ま た は 電 力 会 社)を 通 じ て,限 界 費 用 の 高 い 地 域 1(電力 会 社)へ の 電 力 託 送(電 力 融 通)を 想 定 し た 場 合 の,託 の で あ る.送
送 量(Q)と 各 地 域 の 限 界 費 用(Ci)と
電 の 限 界 損 失(増 分 送 電 損 失)が,送
の 関係 を示 した も
電 量 また は託 送 量 に近 似 的 に比 例 す
る もの と仮 定 す る と,図 中 の W は,送 電 会 社 の 限 界 費 用 と して 解 釈 す る こ とが で き る.図 C2よ
で,託
送 量 が ゼ ロ の 場 合 に は,地
域 1の 発 電 限 界 費 用C1が
地 域 2の 限 界 費 用
り も大 幅 に上 回 っ て い る.電 力 託 送 に よ り,両 者 の 間 の 限 界 費 用 の 格 差 は縮 小 す
る が,送 C10P1A,地
電 損 失 は 増 加 す る.こ 域 2はC20P2B,送
の よ う な 状 況 で,各 電 会 社 は(W0P1A+W0P2B)と
ら,最 適 な 電 力 取 引 き(電 力 託 送,融
通)は,各
者 の 純 便 益 は,地
域 1は 領 域
な る.経 済 効 率 の 点 か
者 が 享 受 す る純 便 益 の 総 和 が 最 大 とな
図3.3 経 済効 率の観点か らの最適な電力取引(融通,電 力託送)
る点 とな る. 限 界 費 用 原 理 に基 づ く送 電 料 金 方 式 は,短 とが で き る.長
期 お よび長期 限界 費 用方 式 に分類 す る こ
期 限 界 費 用 方 式 は,長 期 の 需 要 変 動 に 応 じ て,電
力 設 備 投 資 を最 適 に
求 め る 問 題 を 解 く こ とに よ り導 出 さ れ る.将 来 の 電 力 系 統 の 拡 充 計 画 に基 づ き,運 転 費(燃 料 費 含 む)と 資 本 費(建 設 費 含 む)を 統 合 し た 総 コ ス トの 最 小 化 を 図 る.し 競 争 環 境 下 で は 需 要 や 市 場 価 格 の 変 動 な どの 不 確 実 性 が 増 す た め,最 時 期 と そ の 規 模 を 特 定 す る の が 困 難 と な る.イ pany)が
採 用 し たICRP(investment
か し,
適 な設 備 投 資 の
ギ リスNGC(National
Grid
Com
cost related pricing)が 長 期 限 界 費 用 に 基 づ く送
電 料 金 方 式 の 代 表 例 で あ る.こ のICRPで
は,送 電 系 統 上 の ノ ー ドご と(母 線 ま た は地
点)の 需 要 ま た は 発 電 量 の 増 加 に よ り,必 要 とな る 送 電 系 統 の 設 備 投 資 の 限 界 費 用 を 算 定 す る. 一 方,短 期 限 界 費 用 方 式 は,発 電 お よ び送 電 設 備 を 一 定 と し(分 析 期 間 中 に は,設 備 の 増 強 や 新 設 は な い も の とす る),送 た 送 電 料 金 設 定 方 式 で あ る.つ
電 制約 な どの運 用制 約 や送 電 損 失 な どを考 慮 し
ま り,発 電 ・送 電 に 関 す る 固 定 費 用 の 部 分 は 一 定 で,
発 電 に関 す る 可 変 費 用 の 部 分 を考 慮 した 料 金 設 定 方 式 で あ る.近 の 州(カ リ フ ォ ル ニ ア 州 やPJM(ペ
年,ア
メ リカの一部
ン シ ル ベ ニ ア ・ニ ュ ー ジ ャ ー ジ ー ・メ リ ー ラ ン ド)
地 域 や ニ ュ ー ヨ ー ク 地 域)で 導 入 さ れ た ロ ケ ー シ ョ ナ ル ・プ ラ イ ス ま た は ノ ー ダ ル ・ プ ラ イ ス が,短
期 限 界 費 用 に 基 づ く送 電 料 金 方 式 の 代 表 例 で あ る.こ
れ らの 送 電 料 金
方 式 は,系 統 運 用上 の制 約 と経済効 率 の両 者 を同時 に満足 す る手法 と して期 待 され て い る. (2)短
期 限界費 用原 理 に基 づ く送 電料 金方 式
短 期 限 界 費 用 方 式 は,発 電 ・送 電 設 備 を一 定(考 察 期 間 中 は,こ れ ら の 設 備 の 増 設 や 新 設 が な い もの と す る)と し て,送 や 送 電 損 失 を 考 慮 し て,送
電 容 量 制 約(主 に熱 容 量 制 約)な どの 系 統 運 用 制 約
電 料 金 を 設 定 す る 手 法 で あ る.
送 電 系 統 内 の 各 母 線(ノ ー ド)は,“ 電 力 の 発 電 ・送 電 に関 わ る 費 用 ” と “系 統 内 に 発 生 す る機 会 費 用 ” と を反 映 し た 短 期 限 界 費 用(spot い う考 え 方 を べ ー ス に,次
price)3)と し て 価 格 づ け さ れ る と
式 の よ う に各 母 線 の ノ ー ダ ル プ ラ イ ス が 求 め られ る.
(3.5) ここで,MC(G)i:母
線 i(ノー ドi)が発 電機母 線 で あれ ば発 電 限界 費 用(増 分燃 料
費),負 荷母 線 で あれ ば限界便 益.MC(L)i:母
線 iの 発電量(ま た は需 要 量)が 1単位
変動 した とき系統 全 体 の送 電 損失 に及 ぼす影 響 を表 す 増 分 送電 損 失 に関 わ る費 用. OC(PE)i:送
電容 量制 約 に よって発 生 す る機 会費 用.
通 常,発 電機(主 に火 力発 電設 備)の 経 済運 用 は,各 発 電機 の増 分効 率が 等 し くな る よう に各 発電機 の 出力 が配 分 され る.こ れ は,発 電 機 の運転状 態 が効 率 その もの で は な く,増 分効率 によ って発 電機 の出 力配分 が決 め られ る こ とを意 味 し,系 統運 用上 き わ めて重 要 な概 念 で ある(等 増分効 率則).こ の増分 効率 の逆 数 として増 分 燃料 費 が与 え られ るので,特 に火 力発 電機 間 で,経 済負荷 配分 を行 う場 合 に は,増 分燃 料費(発 電 の限界 費 用)が等 し くな る よ うに発電 機 出力 を決 めれ ば よ い(等増 分燃 料 費則).送 電 線 容 量制約 な どの送 電制 約 を考慮 しな けれ ば,経 済効 率 的 に最 適 な発電 機 の 出力配分 を求 め る ことが で き る.経 済 的 に最適 な状 態 であれ ば,各 ノー ドの発 電 限界 費用(も し くは限界便 益)は 等 し くな る.こ の ような場合,ど の地 点間 で託送 を行 って も,系 統 内 に は機 会費 用 は発 生 しない. しか し,系 統 内の あ る送 電線 の電力 潮流(負 荷)が 送 電容 量 を超 えた場 合 に は,そ の 過 負荷 潮流 を解 消す るよ うに各発電 機 出力 や需 要量 の調整 が行 わ れ る.つ ま り,送 電 制 約 を満た すた め に経 済性 を犠 牲 に して需給 調整 が行 わ れ るので,制 約 を満 足 した需 給 バ ラ ンスは,最 適状 態 か らはず れ,出 力調 整 な らび に需 要調整 を行 った ノー ドの限 界費 用 は増 減す る.つ ま り,混 雑 管理 に よ り系統 内 に機会 費用 が発 生 す る.こ の機会 費 用(混 雑費 用)は,混 雑 の場所 と程 度 に依存 して,各 ノー ドに配 分 され る. 混 雑 が発生 した系統 で,地 点 A か ら地 点 B に容量 W の託送 を行 う とき,混 雑 費用
を 考 慮 した ノ ー ダ ル プ ラ イ ス に 基 づ く託 送 料 金 は,次 式 の よ う に 求 め られ る.
(3.6) (3)ノ
ー ダル ・プラ イス の導 出 と特性
ノ ー ダ ル ・プ ラ イ ス(nodal
price,地
点 別 料 金)の 導 出 方 法 を 簡 単 に 紹 介 す る 1)。ノ
ー ダ ル ・プ ラ イ ス が 価 格 シ グ ナ ル と し て 機 能 し,市 場 内 の 電 力 取 引 が 決 ま る 場 合,需 要 家 も価 格 変 動 に 応 じて 消 費 量 を調 整 す る.需 図3.4の
要 家 の 便 益(B)お よ び 発 電 費 用(C)が
よ う に 表 さ れ る とす る と,系 統 内 の 電 力 取 引 が,社
し い 状 況 は,社
会 便 益(B-C)曲
る.同 様 に,(C-B)曲
線 の 最 小 点 を求 め れ ば,(B-C)曲
致 す る.本 モ デ ル で は,各 種 制 約 を 満 足 し(C-B)曲 に 発 電 量 を求 め る.こ
会 全 体(系 統 全 体)で 望 ま
線 が 最 大 と な る 発 電 ・需 要 量(需 給 バ ラ ン ス 量)で あ 線 の 最 大 時 の 需 給 均 衡 量 と一 線 の 最 小 値 とな る,需 要 量 な ら び
の と き の 目 的 関 数(社 会 便 益 に マ イ ナ ス を 付 す)は,次
式のよう
に表 す こ とが で き る.
(3.7) Ci(Gi):i発
電 機 の 出 力Gi〔puMW〕
る発 電 機 の 総 数,Bi(Di):i需
の 発 電 費 用(燃 料 費 の み),NG:系
要 家 の 需 要 量Di〔puMW〕
の 便 益,ND:系
統 に連 系 す 統 に連 系 す
る需 要 家 の 総 数. こ こ で,従
来 の 経 済 運 用 方 式 との 違 い は,想
消 費 量(需 要 量)を 変 化 さ せ る 点 で あ る.ま た め,別
定 す る 需 要 家 が 価 格 変 動 に 反 応 し て,
た,送
電 の 固 定 費 は 目的 関 数 に 含 ま れ な い
途 この 費 用 を 回 収 す るた め ア ク セ ス 料 金 を設 定 す る必 要 が あ る.
図3.4
費 用 関 数 お よ び便 益 関 数
式(3.7)の
目 的 関 数 の 最 小 値 を 求 め る 際 に,以
下 の 制約 条件 を想定 す るこ とが で き
る*1.
(系統 内の需給 均衡 制 約)
(3.8)
(発電機 出力 の上 下 限制約)
(3.9)
(需要量 の非 負制約)
(3.10)
(送電線 容 量制 約) TPL:系
(3.11)
統 全 体 で の 送 電 ロ ス 〔MW〕,GMINi,GMAXi:発
限 制 約 量 〔MW〕,PFk:k送
電 機 iの 下 限 制 約 お よ び上
電 線 を 流 れ る電 力 潮 流 量:〔MW〕,PFMAXk:κ
送電線 の送
電 容 量 〔MW〕 式(3.7)を
最 小 化 し,各 制 約 式 を 満 足 す る よ う な 需 給 バ ラ ン ス(各 発 電 量 と需 要 量)
を 求 め れ ば よ い.こ
こ で は,簡 単 化 の た め,送
電 線 電 力 潮 流 をDC法(直
流法 潮 流計
算)で 計 算 し,送 電 系 統 内 の 混 雑 に よ る託 送 料 金 へ の 影 響 に 重 点 を お い て 送 電 損 失 を 考 慮 し な い で モ デ ル 化 を行 う.式(3.8)∼(3.11)の
各 制 約 条 件 を満 た し,式(3.7)の
的 関 数 を 最 小 とす る発 電 機 出 力 と需 要 量 を 求 め る た め に,次
目
式 の よ うな ラ グ ラ ン ジ ュ
関 数 を 導 入 す る.な お,送 電 損 失 や 無 効 電 力 を 考 慮 し た 場 合 は最 適 潮 流 計 算(OPF)を 適 用 し て 導 出 で き る(4章 参 照).
(3.12)
λ(シス テ ム ラ ム ダ):需 力 制 約,μDLi:需
給 バ ラ ン ス 制 約(等 号 制 約),μGUi,μGLi:発
要 量 の 下 限値 制 約,μTk:送
電 機 の上下 限出
電線 容量 制 約 に関す るラグ ランジ ュ未定
乗数 式(3.12)か
ら,各 発 電 機 出 力 に 関 す る ラ グ ラ ン ジ ュ 関 数 の 一 階 微 分 ベ ク トル(勾 配
ベ ク トル)は,次
式 の よ う に な る.
(3.13) 一方
,需 要 量 に 関 す る勾 配 ベ ク トル は,以
下 の よ う に な る.
(3.14)
*1
そ の ほ か に,系 統 全 体 で の予 備 力 制 約 や 信 頼 度 制 約 な ど も考 え る こ とが で き るが,こ
略 す る.
こで は省
特 に,DC法
に よ る潮 流 計 算 の 基 準 ノ ー ドの 勾 配 ベ ク トル は,他
送 電 制 約 の 影 響 を 受 け な い.た
の ノ ー ド と異 な り
と え ば,発 電 機 母 線 を 基 準 ノ ー ド した 場 合 に は,勾 配
ベ ク トル は以 下 の よ う に 表 す こ とが で き る.
(3.15) 式(3.7)の
目 的 関 数 を 最 小 に す る最 適 な 発 電 ・需 要 量 に お け る 有 効 制 約 条 件 の 勾 配
ベ ク トル が 1次 独 立 な ら ば,ク 式(3.13),(3.14)で
ー ン ・タ ッ カ 条 件 を満 た す 解 が 存 在 す る.こ
の と き,
表 され る 各 変 数(各 発 電 機 出 力 な ら び に 各 需 要 量)に 関 す る 勾 配 ベ
ク トル は,
(3.16) となる. 上記 の条件 が成 り立 ち,需 給制 約 や送電 線容 量制 約 な どの各制 約 を満足 す る各発 電 機 出 力 と需要 量が 求 め られ た ときの各 ラグ ラ ンジュ未定 乗 数 を用い ると,以 下 の よう に各発 電機 な らびに需要 ノー ドの ノー ダル プラ イス は,そ れ ぞれ以下 の よ うに表 す こ とが で き る. (発 電 ノ ー ド):
(3.17)
(需 要 ノ ー ド):
(3.18)
(基準 ノー ド:発 電 機 が接続 す る場 合)
(3.19)
た と え ば,送
電 線 の 電 力 潮 流 をDC法
を 用 い て 計 算 す る と以 下 の よ う に 定 式 化 す る
こ と が で き る.
(3.20-a) (3.20-b) PF:NB次
元 の線 路 潮 流 ベ ク トル,A:(NB×NN)次
元 の 潮 流 分 布 係 数 行 列(た
だ し,基 準 ノ ー ド に相 当 す る 列 ベ ク トル の 要 素 は ゼ ロ),NP:NN次 ベ ク トル,CN:(NN×(NG+ND))次 家Di)が
元 の 接 続 行 列(た だ し,発 電 機Gi(ま
接 続 す る ノ ー ド jの 要 素CNjiの
式(3.17),(3.18)の
用 い れ ば,以
た は需 要
み 1)
送 電 線 容 量 制 約 に 関 す る 項(右 辺 の 最 終 項)は,上
よ る潮 流 計 算 式 を用 い た が,各Gi,Diの の 行 要 素akjを
元 の ノ ー ド電 力
式 のDC法
に
接 続 す る ノ ー ド jに 関 連 す る潮 流 分 布 係 数
下 の よ う に表 す こ とが で き る.
(3.17)'
(3.18)' 通 常,直
流 法 に お け る潮 流 計 算 で は,基 準 ノ ー ドを 省 い て 計 算 で き る.送 電 容 量 制
約 以 外 の 制 約 違 反 が 生 じ な い よ うな 発 電 機 また は 需 要 の 接 続 ノ ー ドを 基 準 ノ ー ド とす れ ば,こ
の ノ ー ドの ノ ー ダル プ ラ イ ス は,需 給 均 衡 制 約 の ラ グ ラ ン ジ ュ 未 定 定 数 λ と
等 し くな る.
(3.21)
pj=λ
この ノ ー ダ ル ・プ ラ イ ス の 格 差 を用 い て,混 雑 費 用 を 考 慮 し た託 送 料 金 を 求 め る こ と が で き る.た
と え ば,発 電 ノ ー ドN1か
ら需 要 ノ ー ドN2に
販 売 し た 場 合 に は,そ の 託 送 価 格(WP12)は,次
容量 X の電 力 を託送 し
式 の よ う に,受 電 ノー ド と送 電 ノ ー ド
間 の ノ ー ダ ル プ ラ イ ス格 差 で 求 め る こ とが で き る.
P1(Gi):発
電 ノ ー ド 1の ノ ー ダ ル ・プ ラ イ ス,P2(Di);需
要 ノ ー ド 2の ノ ー ダ ル ・
プ ラ イス 系 統 内 に 混 雑 が 発 生 せ ず,発
電 出 力 の 上 ・下 限 制 約 な どす べ て の 不 等 式 制 約 違 反 が
な け れ ば,各 ノ ー ドの ノ ー ダ ル ・プ ラ イ スPjは
す べ て 同 じ値 と な る.こ の と き の 混 雑
費 用 を 考 慮 し た ノ ー ダ ル ・プ ラ イ ス に 基 づ く託 送 料 金 は ゼ ロ と な る.仮 制 約 違 反 の み 発 生 した 場 合(系 統 内 に混 雑 が 発 生 した 場 合),各 差 は,混
に,送 電 容 量
電 力取 引 の託送料 金格
雑 が 発 生 した 送 電 線 の 個 所 と超 過 潮 流 の 大 き さ(混 雑 の 度 合 い)の み に左 右 さ
れ る.た だ し,送 電 系 統 を利 用 す る市 場 内 の す べ て の 電 力 取 引 を行 う市 場 参 加 者(発 電 事 業 者 や 需 要 家)は,あ
る ル ー ル に よ り配 分 さ れ る送 電 線 の 固 定 費 分(送 電 容 量 コ ス
ト)を 送 電 設 備 保 有 者(た と え ば電 力 会 社)に 支 払 わ な け れ ば な ら な い. ノ ー ダ ル ・プ ラ イ ス が 経 済 的 に 最 適 な 需 給 均 衡 を 導 出 す る た め の 価 格 シ グ ナ ル と し て 機 能 す る た め に は,需 常,費
要 家 の 需 要 量 も価 格 に応 じ て 調 整 さ れ な け れ ば な ら な い.通
用 ・便 益 分 析 に お け る便 益 は,理 論 的 に は,公
に対 し て,消
共 投 資 が 生 み 出 す 財 ・サ ー ビ ス
費 者 が 支 払 っ て も よい と思 う最 大 貨 幣 額 で 表 さ れ る.図3.5に
な 当 該 財 ・サ ー ビ ス の 需 要 曲 線 を 想 定 す る と,消 費 者 がOC量
示すよう
を需 要 す る と き,支 払
い 額 は,面 積ABCOと
な る.一 方,消 費 者 が 支 払 っ て も よ い と 思 う最 大 貨 幣 額 は面 積
EBCOで
さ に,こ
表 さ れ る.ま
の 右 下 が りの 曲 線 は,需 要 曲線 とな り,価 格 が 低 下 す
れ ば 需 要 が 増 加 し,価 格 が 高 騰 す れ ば 需 要 が 減 少 す る性 質 を 表 して い る*2.
図3.5
図3.6 需給均衡の概念(送電制約 を考慮
需 要 曲線(限 界 便 益 曲線)の 概 念
しない場合) さ ら に,図3.5に
発 電 機 の 限 界 費 用 曲 線 を 重 ね る と,図3.6の
よ う に な る.図3.6
の 限 界 発 電 費 用 は,燃 料 費 用 関 数 の 一 階 微 分 関 数(増 分 燃 料 費 用 曲線)に 相 当 す る.送 電 制 約 が 活 性 で な い 場 合(系 統 内 に 混 雑 が 発 生 し な い 場 合),図3.6よ 側 の 限 界 曲 線(MCとMB)が
等 し い 点(両 曲 線 の 交 点)で,系
均 衡 量)が 最 も経 済 的 とな る.最 適 解 は,図3.6の る.系 統 に混 雑 が 発 生 した 場 合 に は,そ
り,発 電 と需 要
統 内 の 電 力 取 引 量(需 給
需 給 均 衡 点 で の 発 電 量 と需 要 量 で あ
の 制 約 を 満 足 す る需 給 均 衡 量 を 調 整 し,混 雑
を解 消 す る た め の 費 用 配 分 を,混 雑 の 発 生 場 所 と程 度 に応 じ て 配 分 す る.
(4) 長 期 限界 費用 方式 の特徴 長期 限界費 用型 送 電料 金方 式(長期 限界 費 用方 式)は,系 統全 体 の長期 限界 費用 に基 づ き,系 統利 用者 に費用 配分 を行 うもので あ る.長 期 限界 費用 とは,長 期 の需要 変動 に応 じて,資 本費 用 を含 む あ らゆ る投 入財 を最 適 に変 化 させ る こ とがで き る もの と し,単 位 発電 量 を増加 させた場 合 に必要 最小 限 とな る増分 費用 と して定 義す るこ とが で き る.た とえば,あ る発電 設備 の総費 用が,燃 料費,建 設費,保 守費,人 件 費 な ど か ら構 成 され る場 合,燃 料費 は短期 的 に変動 させ る ことはで きるが,建 設費 な どの固 定 費 は いっ た ん計 上 す る と短期 的 に変動 させ る ことがで きな い.も し,分 析対 象期 間 を長 く とれ ば,総 コス トが最小 とな る組 み合 わせ を見 つ け る ことが で き る. 送電 系 統 にお け る長 期 限界費 用 は,将 来 の システ ム拡張計 画 に基 づ き送電線 ご とに 策 定 され る運 用費 と投 資費 用 の両者 を統 合 した限界 値 と考 える こ ともで きる.そ のた め,各 ノー ドご とに設 定 され る長期 限界 費用 は,各 市場 参加 者 や送 電線 運用者 に とっ て設備 投 資へ の経 済 シ グナル とな る.さ らに,長 期 限界 費 用 はス ポ ッ トプ ライ スでの
*2 需要家 の便益関数 は,価 格弾 力性 と現在 の料金水準か ら設定 で きる.
運 用 の み に適 用 さ れ るの で は な く,電 力 市 場 の 価 格 リス ク を回 避 す る た め の 長 期 契 約 (た と え ば,送 場 合,短
電 線 混 雑 を 考 慮 した 送 電 利 用 権 な ど)に も適 用 可 能 で あ る.こ
の よ うな
期 限 界 費 用 の 長 期 に わ た る期 待 値 が 算 定 さ れ る.完 全 競 争 の も とで は,短 期
限 界 費 用 の 期 待 値 は長 期 限 界 費 用 と一 致 す る.た
だ し,長 期 限 界 費 用 ア プ ロ ー チ は,
将 来 の 投 資 計 画 に よ っ て 算 定 さ れ る 費 用 に大 き な 違 い が 生 じ る. た と え ば,い
ま,地 域 A と地 域 B の 電 力 系 統 の 間 に 送 電 線 は な く,お の お の が 単 独
で 運 用 し て い る とす る.各 地 域 の 発 電 限 界 費 用(ま た は 発 電 増 分 費 用)をMCa(Ga), MCb(Gb)と
す る と,全 シ ス テ ム の 発 電 総 コス トは,次 式 の よ う に 表 す こ と が で き る.
(3.23) Ga:地
域 A の 発 電 量 〔MW〕,Gb:地
域 B の 発 電 量 〔MW〕
両 系 統 間 に送 電 線 を 新 し く建 設 し電 力 の 相 互 融 通 を行 う場 合,ま ゼ ロ とす れ ば,両 性=0
系 統 の 総 発 電 量 は 一 定 す る.つ
ず,送
電 コ ス トを
ま り,両 系 統 の 需 要 家 の 価 格 弾 力
と仮 定 し,仮 に 系 統 内 の 限 界 費 用 が 変 化 し て も需 要 量 の 変 化 は な い も の とす る.
(3.24) 全 系 統 で 発 電 コ ス ト最 小 化 の 条 件 は,両 地 域 の 発 電 限 界 費 用 が 等 し くな る こ とで あ る.図3.7に
示 す よ う に,両 系 統 の 限 界 費 用 曲 線 の 交 点 で,両 地 域 の 発 電 量 が 決 ま る.
し か し,現 実 に は 送 電 線 の 建 設 コ ス トが 存 在 す る の で,両 の 発 電 量 と乖 離 す る(図3.8).こ は,送
電 線 の 固 定 費(+送
地 域 の 発 電 量 は,図3.7
系 統 間 で 送 電 線 を 建 設 す る イ ン セ ン テ ィブ
電 損 失)が 両 系 統 の発 電 費 用 の 節 約 分 を 上 回 る こ とは な い.
送 電 混 雑 が 発 生 す る と,系 統A,B間
図3.7
こで,両
の 限 界 発 電 費 用 の差 に 等 し い混 雑 料 金 が 課 せ ら
連 系 系 統 で の最 適 出力 配 分(送 電 コ ス ト=0 の 場 合)
図3.8
れ る(3.2.3(1)お
よ び3.3.2参
準 に 送 電 容 量 を 拡 大 す る.す (LRMTC)を
送電 線 建 設 の イ ンセ ンテ ィ ブ
照).こ
の 混 雑 料 金 単 価 と送 電 の 限 界 費 用 が 一 致 す る水
な わ ち,送
電 線 新 設 の建 設 費 を含 む 長 期 限 界 費 用
系 統 A の 限 界 発 電 費 用 に 上 乗 せ した 費 用 が 系 統 B の 限 界 発 電 費 用 が 一
致 す る点 で(図 の B)送 電 線 容 量 が 決 定 さ れ る. (送 電 線 固 定 費+送
電 損 失)<(系
長 期 限 界 送 電 費 用(LRMTC)=短
統A,B間
の 電 力 取 引 に よ る発 電 費 用 節 約)
期 限 界 発 電 費 用(SRMC)の
3.3
送電線混雑管理と送電利用権の導入
3.3.1
送電線 混雑管理
(1) NERCの 表3.4に
差(3.25)
送電 線 混雑 解消手 順
示 す 送 電 線 混 雑 解 消(TLR:transmission
loading
relief)手 順 は,ア
メ リ
カ の 東 部 連 系 系 統 に お け る ル ー プ フ ロ ー に起 因 す る送 電 線 混 雑 を 解 消 す る た め に NERC(北
ア メ リカ 電 力 信 頼 度 協 議 会)に よ っ て 開 発 さ れ た もの で,1998年
夏 か ら運 用
さ れ て い る4). ア メ リカ で は,送 電 線 開 放 に よ り,複 数 の制 御 地 域 を 通 過 す る卸 電 力 取 引 が 急 増 し た.そ
の 結 果,北
米 系 統 の 電 力 潮 流 分 布 は 複 雑 と な り,特 に,東 部 連 系 系 統 で は ル ー
プ フ ロ ー 問題 が 深 刻 とな っ た.NERCは,1996年12月
に 北 米 系 統 の22箇
ュ リテ ィ ・コ ー デ ィ ネ ー タ” を設 置 し た .現 在 運 用 さ れ て い るISOの
所 に “セ キ
多 くが 兼 ね る
表3.4NERCのTLR手 TLR レベ ル
系統状態
順 4)
制約違反 セキュリティ・ コーディ-ネータの対応
健全状 態 #系統 事故 時 に送 電 設 備 の潮 流が緊急時運用 な し 目標 を超過 す ることが
1
他 の す べ て の セ キ ュ リテ ィ ・コ ー デ ィネ ー タ へ 制 約 違 反 の 可 能 性 が あ る こ と を通 告 す る.
予想 される場 合 制 約 違 反 の 可 能 性 の あ る送 電 線 の 電 力 潮 流 分 流 係 数*1 2a 2
2b 2c
なし 健全状 態 #送電 設備 の潮流 が 平
常時運 用目標 に近 づい な し ている場 合 なし
送電設備 の潮 流が平常 3
時運用 目標 を超過 して あ り いる,ま た は超過 する
5
あり
送電設備 の潮 流が平 常 時運用 目標 を超過 して い る場合
あり
あり
0
健全状態 #送電 設備 の過負 荷 解 な し
*1 電 力 潮 流 分 流 係 数 とは ,あ
5%
確 約 送 電 サ ー ビス の 再 割 り当 て る
非確約送電 サー ビスの再割 り当て る PTDFが
5%以 上 の 非 確 約 サ ー ビ ス を 制 約 違 反 が 解 消 す
る ま で制 限 す る(指 定 地 点 サ ー ビス,時 間,日
間,週 間,月
定 外 電 源 サ ー ビ ス*2の 順 に カ ッ ト)
系統構成 の変更お よび発電ユニ ッ トの再給電 の実施 によ混 雑解消 を図る PTDFが
5%以 上 の 確 約 送 電 サ ー ビ ス を取 引 電 力 に比 例
し て制 限 す る.
緊急時 系統操作 す る(系統非常事 態 と判 断 した場 合,制 御
6
消状態
flow transfer distribution factor)が
間 サ ー ビ ス,指
ことが予想 される場 合 4
(PTDF:power
以 上 の新 規 電 力 取 引 及 び既 存 電 力 取 引量 の増 加 を中 止 す る
地域 に対 し,系 統構成の変更,発 電 ユニッ トの再給電 また は負荷遮 断 を命令) 他 の セ キ ュ リテ ィ ・コー デ ィネ ー タ に 系統 が 平 常 時 状 態 へ の回 復 を宣 言
る制 御 地 域 か ら他 の 制 御 地 域 へ の電 力 取 引 が,他
の 連 系 送 電 線 の電
力 潮 流 に 及 ぼ す 影 響(ポ れ だ け パ ラ レル フ ロ ー が 流 れ るか)を 定 量 化 した もの で,ル 生 の 可 能性 を表 現 した もの で あ る.基 本 的 に は,送
ー プ フ ロ ー発
電 線 の イ ン ピー ダ ンス 値 の 逆 比 に基 づ く値 で
あ る. *2 指 定 外 地 点 間 サ ー ビス と は ,確 約 地 点 間 サ ー ビス の利 用 者 が 確 保 して い る送 電 容 量 の 範 囲 内 で 利 用 して,指 定 地 点 以 外 の 送 電 サ ー ビ ス(非 確 約 送 電 サ ー ビス).ま
た,指 定 外 電 源 サ ー ビス と は,
送 電 線 所 有 者 が か か え る 需 要 家(自 社 需 要 家)へ 供 給 す るた め に 外 部 か ら輸 入 す る 非 確 約 サ ー ビ ス,あ
る い は ネ ッ トワ ー ク電 源 で は な い 電 源 か らネ ッ トワ ー ク需 要家 に供 給 す るサ ー ビ ス.
注)本TLR手
順 は2000年11月
に修 正 さ れ,新
し い手 順 が2001年
3月 か ら運 用 さ れ て い る.
“セ キ
ュ リ テ ィ ・コ ー デ ィ ネ ー タ ” は,翌
日 の 系 統 運 用 計 画 の 策 定,当
当 日の 送 電 系 統 運 用 を行 う.東 部 連 系 系 統 の み,こ
日 の 需 給 運 用,
の 当 日 の 送 電 系 統 運 用 に お い て,
セ キ ュ リテ ィ ・コ ー デ ィ ネ ー タ は,管
轄 地域 内の送 電設 備で 混雑発 生 す るお それが あ
る場 合,以 下 に示 すNERCのTLR手
順 と地 域 独 自の 手 順 の ど ち らか を使 い,送 電 線
混 雑 解 消 に 努 め る*3.た だ し,あ
る送 電 サ ー ビス の 電 力 取 引 に よ る ル ー プ フ ロ ー が,
契 約 上 の 送 電 経 路 以 外 の 送 電 線 に 混 雑 を 引 き起 こ す 可 能 性 もあ る.そ こで,TLR手 で は,実
順
潮 流 に基 づ き ル ー プ フ ロ ー を考 慮 し,契 約 上 の 送 電 経 路 上 の送 電 制 約 発 生 の
有 無 な ど発 生 箇 所 の 違 い に よ り,送 電 の 優 先 順 位 が 差 別 化 し 電 力 取 引 の 制 限 が 行 わ れ る. このTLRは,複
数 の 制 御 地 域 を また ぐ地 点 間 電 力 取 引(point-to-point
sion service)の み に 適 用 さ れ,ネ ッ トワ ー ク電 力 取 引(network 者 が 抱 え る需 要 家(native ス の差 別 化 は,常
load)へ 適 用 さ れ な い.し
service)や 送 電 線 保 有
た が っ て,こ
の よ う な送 電 サ ー ビ
時 地 点 間 送 電 サ ー ビ ス と ネ ッ トワ ー ク 送 電 サ ー ビ ス お よ び 送 電 線 所
有 者 自 身 が 抱 え る 需 要 家 へ の 送 電 サ ー ビ ス の 同 等 な 扱 い を 定 め たFERCの Order
No.888に
transmis
反 す る とい う意 見 も出 て い る.さ
ら に,ル
く電 力 取 引 の制 限 に よ り送 電 線 混 雑 を 解 消 し よ う と す るTLR手 保 の た め の 技 術 的 な 手 法 で あ る が,市
最 終規 則
ー プフ ローの 割合 に基 づ 順 は,系
場 性 を無 視 して い るた め,市
統信 頼 度確
場参 加者 へ の混雑
解 消 に 要 す る費 用 の 増 加 を もた らす な ど経 済 効 率 性 を損 ね る お そ れ が あ る と い う指 摘 も あ る. 一 方,PJM-ISOで
は,ル
FERCに
の 独 自 の手 順 で は,送 電 線 利 用 者 は,“TLR手
申請 し た.こ
ー プ フ ロ ー に よ る 送 電 線 混 雑 を解 消 す る 独 自 の 手 順 に 順 の発 動 に よ る
電 力 取 引 の 制 限 ” と “再 給 電 の 実 施 に 伴 う送 電 線 混 雑 料 金 の 支 払 い ” とい う何 れ か を 選 択 す る.送 電 線 混 雑 料 金 は,地 price,3.2.3項
点 別 限 界 価 格(LBMP:locational
参 照)に 基 づ き算 定 さ れ る.な
お,FERCは,「PJMの
based
marginal
送 電線 混雑 解 消
法 は,系 統 信 頼 度 問 題 に 対 す る市 場 主 導 に よ る 解 決 策 で あ る,市 場 参 加 者 に 適 切 な価 格 シ グ ナ ル を与 え る こ と に よ り,効 率 的 な 発 電 設 備 の 建 設 を促 進 す る」 と して,1999 年 1月 に承 認 して い る.
*3
セ キ ュ リテ ィ ・コ ー デ ィネ ー タ は,iIDL(internal
interchange
distribution calculator)と
呼ば
れ る解 析 ツー ル を用 い て,系 統 解 析 を行 う.電 力 取 引 を希 望 す る す べ て の 市 場参 加 者 は,電 力 取 引 情 報(取 引 の 始 点 と終 点,契 MWh),負 知 す る.
約 経 路 上 の制 御 地 域 とそ の 契 約 名,取
引 の 開 始 と終 了 時 刻,取
引量(MWと
荷 形状,送 電 ロ ス(予 想))を イ ン タ ー ネ ッ トを通 じて,セ キ ュ リテ ィ ・コー デ ィ ネ ー タ に 告
3.3.2
送電 線混雑料金
地 点 別 限 界 価 格(LBMP:locational
based marginal price)と は,先
に述 べ た ノ ー
ダ ル ・プ ラ イ ス と 同 じ考 え で,短 期 限 界 費 用 に 基 づ き 「需 給 が バ ラ ン ス し た電 力 系 統 内 の あ る 地 点(母 線,ノ
ー ド)で,電
力 需 要 の 増 加 が あ っ た と き に,こ
し て 電 力 を供 給 す る の に 要 す る限 界 費 用 」 と定 義 さ れ,す プ ー ル(NYPP)とPJMで
(=需 給 均 衡 価 格),送
示 す よ うに基 準 母 線 にお け る供給 限界 費 用
電 ロ ス の 限 界 費 用,送
電 線 混 雑 費 用 の 3項 目 か ら構 成 さ れ る.
定 に あ た っ て 基 準 母 線 を 設 定 す る こ とで,地
点別 限界 価 格 を上 記 の 3
要 素 に 分 け る こ とが で き る.な お,基 準 母 線 の 選 択 場 所 が,LBMPの ぼ さ な い.た
と え ば,ニ
ュー ヨー ク パ ワ ー プ ー ル で は,ニ
れ ば 基 準 母 線 は任 意 に 設 定 で き るが,現 州 電 力 庁 の 管 轄 地 域 に あ るMarcy変 LBMPの
ュー ヨ ー ク パ ワ ー
混 雑 料 金 と し て 採 用 さ れ て い る 5).
系 統 内 の 各 母 線 の 価 格 は,式(3.26)に
こ のLBMP算
で に,ニ
の増 分 負 荷 に対
在,地
値 に は影 響 を 及
ュ ー ヨ ー ク制 御 地 域 内 で あ
方公営 電気 事業 者で あ るニ ュー ヨー ク
電 所 の345
kV母
線 を 基 準 母 線 と し て い る.
考 え方 の 特 徴 は,送 電 線 の 制 約 が 発 生 し た 場 合(混 雑 が 発 生 した 場 合),電
の 経 済 的 な給 電(merit
order
dispatch)が
妨 げ られ る こ と に よ って 生 じ る混 雑 費 用 を
機 会 費 用 と して 各 母 線 の価 格 に 織 り込 ん で い る点 で あ る*4.し た が っ て,系 雑 が な く送 電 ロ ス を 無 視 す れ ば 各 母 線 のLBMPは 線 ご と にLBMPは
源
統 内 に混
等 し くな り,混 雑 が 発 生 す れ ば母
異 な る.
(3.26) Pi:母
線 iに お け る 地 点 別 限界 価 格(LBMP)〔$/MWh〕
λR:基 準 母 線 に お け る供 給 限 界 費 用
〔$/MWh〕
μLi:母 線 iに お け る送 電 ロ ス の 限 界 費 用 μCi:母 線 iに お け る送 電 混 雑 費 用 な お,μLiと
μCiは,基
〔$/MWh〕
〔$/MWh〕
準 母 線 と母 線 iの 間 の送 電 ロ ス 費 用 も し くは送 電 混 雑 費 用
の 差 と し て 解 釈 す る こ と が で き る*5.
*4 な お,LBMPは,カ
リフ ォル ニ ア 州 で 採 用 し て い る ゾ ー ン別 限 界 費 用 方 式 とは異 な る.LBMP
は 系統 内 の 2地 点(ノ ー ド)間 の 限 界 費 用 の 差 を送 電 線 混 雑 費 用 と し,ノ
ー ドご とに 1時 間 単 位 で 清 算
さ れ る.送
電 線 利 用 者 に対 して 最 も正 確 な 価 格 シ グ ナ ル を 送 る方 式 で あ る.一
方式 は,限
界 費 用 の差 が 比 較 的 少 な い(混 雑 度 が 少 な い)ノ ー ドを集 約 し て ゾ ー ン を 定 義 して い る.こ
方,ゾ
ー ン別 限 界 費 用
の ゾ ー ン間 の 限 界 費 用 の 差 を送 電 線 混 雑 費 用 と し て い る. *5 このLBMPの 同 じ で あ る.ス が,LBMPに
考 え 方 は,前
述 の 短 期 限 界 費 用 に 基 づ く送 電 料 金 方 式 の ス ポ ッ ト ・プ ラ イ ス と
ポ ッ ト ・プ ラ イ ス の 送 電 制 約 に関 す る ラ グ ラ ン ジ ュ未 定 乗 数 に潮 流 変微 分 を掛 けた 値
お け る 混 雑 費 用 に 相 当 す る.こ の 式 か ら判 る よ う に,も し系 統 内 に混 雑 が 発 生 しな けれ
ニ ュ ー ヨー ク パ ワ ー プ ー ル で は,こ
の 混 雑 費 用 を 織 り込 ん だ 価 格 は,ス
ポ ッ ト市 場
で の 電 力 取 引 の 清 算 お よ び相 対 取 引 を 選 択 し た 送 電 線 利 用 者 に課 せ られ る “送 電 線 利 用 料 金 ” に 適 用 さ れ る. ス ポ ッ ト市 場 か らの 買 電 価 格 は,当 が 属 す る ゾ ー ン のLBMPと 電 価 格 は 同 じ値 段 と な る.ゾ のLBMPを
該 供 給 事 業 者 が 電 力 を 供 給 す る地 点(負 荷 地 点)
な る*6.も し,電 力 供 給 が 同 じ ゾ ー ン 内 で あ れ ば,市 場 買 ー ン 内 のLBMPは,当
該 ゾー ン内 のす べ ての 負荷 母 線
各 負 荷 の 大 き さ で 加 重 平 均 した 値 を 用 い て い る.こ の ゾ ー ン のLBMPは
次 式 の よ う に 表 さ れ る.
(3.27) 〓:母
線 iが 属 す る ゾ ー ン Z の 地 点 別 限 界 価 格(LBMP)〔$/MWh〕
〓:母
線 iが 属 す る ゾ ー ン Z の 送 電 ロ ス の 限 界 費 用
〓:母
線 iが 属 す る ゾ ー ン Z の 送 電 混 雑 費 用
〔$/MWh〕
〔$/MWh〕
一 方,相 対 取 引 を 選 択 した 送 電 利 用 者 に は,“ 送 電 線 利 用 料 金(TUC:transmission usage charge)”
が 課 され る.こ の 場 合 に は,次
式 の よ う に,“ 送 電 ロス の 限 界 費 用 ”
と “送 電 混 雑 費 用 ” か らな り,電 力 供 給 地 点(負 荷 母 線)が 属 す る ゾ ー ン のLBMP と受 電 地 点(契 約 先 の 電 源 母 線 〉のLBMP
〓
Piの 価 格 差 で 表 され る.
(3.28)
相 対 取 引 を選 択 した 送 電 線 利 用 者 の 負 担 総 額 は,送
電 線 線 利 用 料 金 に,相 対 契 約 を
と り交 わ し た 発 電 事 業 者 に 買 電 費 用(Pe)を 加 えた もの と な る.も
し,こ の 買 電 費 用 が
取 引 相 手 の 発 電 ユ ニ ッ トが 接 続 す る 電 源 母 線 のLBMPに
等 し け れ ば,そ
は,上 記 の ス ポ ッ ト市 場 か らの 買 電 と同 じ水 準 と な る.つ
ま り,送 電 線 利 用 者 が ス ポ
の買 電価 格
ッ ト市 場 か ら の 電 力 購 入 を選 択 し て も,送 電 線 利 用 者 が 負 担 す る送 電 ロ ス 費 用 と混 雑 費 用 は 同 一 水 準 と な る. た だ し,NYPPで
は,ニ ュ ー ヨ ー ク制 御 地 域 内 で 送 電 サ ー ビ ス を受 け る す べ て の 送
電 線 利 用 者 に対 し て,送
電 線 提 供 者 の 年 間 の 総 括 原 価 とア ン シ ラ リ ー サ ー ビ ス の 提 供
費 用 を 回 収 す る よ う に 郵 便 切 手 方 式 で 設 定 さ れ た 卸 売 送 電 サ ー ビ ス料 金(wholesale transmission
service charge)が
ば,各 地 点 のLBMPの
課 さ れ る.
送 電 線 混 雑 費 用 は ゼ ロ とな り,送 電 ロ ス を 無 視 す れ ば,系 統 内 の す べ て の ノー
ドは 等 しい 値 と な る. *6
母 線 ご との使 用 電 力 量 を清 算 す る メ ー タ が 十 分 に 設 置 さ れ て い な い の で,ゾ
採 用 して い る.こ
う した 負荷 ゾー ンは,NYPP内
で11箇
所 存 在 す る.
ー ンのLBMPを
電 力 市 場 が 完 全 競 争 で あ れ ば,混 LBMP)を
雑 費 用 を 考 慮 し た ノ ー ダ ル プ ラ イ ス(ま た は
用 い て 効 率 的 に 混 雑 管 理 を行 う こ とが で き る.し
か し,系 統 運 用 者 が 故 意
に送 電 制 約 を き び し く設 定 した り,送 電 線 利 用 の 拡 大 に よ る混 雑 発 生 の 増 加 に よ り, 市 場 内 の 経 済 性 が 損 な わ れ る お そ れ が あ る.こ
の よ うな 送 電 料 金 の 価 格 変 動 に よ る リ
ス ク ヘ ッ ジ対 策 と して “送 電 利 用 権 ”が 考 え られ,PJMやNYPPで
3.3.3
導 入 さ れ て い る.
送電利 用権の導 入
プール シス テム な ど垂 直統 合が 分離 され た状況 で は,伝 統 的 な発 送配 電一 貫電 気事 業者 の特 徴 で あ る発 電 プ ラン トと送 電 系統 の投資 決定 は調 整 され な い.発 電 プラ ン ト へ の投 資 は市 場 にお い て十分 な需要 が見 込 める場 合 に競 争 的 に意 思 決 定 され る.一 方,送 電 網 は規制 下 にあ り,競 争 的 な発 電事 業者 との間 に何 らか の調整 メカニ ズム を 設 け る必 要 が あ るが,そ れ は複雑 な もの にな る6).送電 網 拡 張 のた めの イ ンセ ンテ ィ ブを送電 網所 有者 にい か に付 与す るか が重要 な課 題 として残 され て い る.送 電利 用権 は混 雑費 用 に よ る託 送料 金高騰 の リスク に対 処 す る手 段 として有効 で あ る. 送 電利 用権(送 電権)と は,系 統 内 の 2地点 間(ま た はゾー ン)の送 電容 量 を所有 す る 権利 で,経 済学 の所 有権(property right)*7の概 念 を応用 した もので あ る7).つま り, 送電 権 は送 電容 量 を所有 す る権利 を表 し,効 率 的な オー プ ンア クセ ス市 場 の形成 を目 的 として,市 場参 加 者 に送電 容量 を効率 的 に使 用す るイ ンセ ンテ ィブ を与 える. 送 電権 の所 有形 態 には, ①
物 理 的所 有:送 電 容量 を優 先的 に利用 す る権利
②
金 融取 引上 の所有:送 電制 約が発 生 した とき(系統 内 に混雑 が発 生 した とき)に 徴収 され る送電 線混 雑料 金 の一部 を受 け取 る権利
前述 の混雑 費 用 は,送 電線 の熱 容量,系 統 安定 度 また は電圧 安 定性 に よ り定 まる送 電容 量制 約 発生 時 に,最 経済 な需給 運 用が妨 げ られ た こ とに よって生 じ る機会 費用 で あ る.こ の機 会 費 用 を徴 収 す る目的 で課 され るのが送 電線 混雑 料 金 で あ る.こ の送電 線 混雑 費 用 発生 に よ る費 用 負担 の 変動 や増 加 の リス ク を回 避 す る こ とが で き る.ま た,送 電 権 は,他 者 に売却 す る こ とが可能 で,送 電権 の価 値 を高 く評 価 して い る者 に 売 却で きれ ば双 方 の利益 とな り,効 率 的 な送 電線 利 用が促 進 され る. また,送 電権 は,契 約 上 の送電 経路(contract pass)上 を通 らな い潮 流(ル ー プ フ ロ ー)が 引 き起 こす フ リー ライ ダ(送電 料 金 を支 払 わず 送電 線 を利 用 す る こ と)問題 や 送 *7 所 有 権 とは,所 有 者 が 好 き な よ うに 財 産 を使 用 し売 却 す る権 利 を意 味 す る.市 場 参 加 者 は,所 有 権 を もつ こ とで,利
潤 の 一 部 を確 保 す る機 会 が 与 え られ,自
る イ ンセ ンテ ィ ブ を もつ.
分 の 管 理 下 に あ る財 産 を効 率 的 に使 用 す
電 線 混 雑 と い う “負 の 外 部 性 ” の 解 決 もめ ざ して い る.こ る こ とで,送
電 権 は,特
の ような外部 性 を内部化 す
定 の 送 電 線 で は な く,系 統 内 の 2地 点 間(ゾ ー ン間)の 送 電 容
量 を有 す る権 利 と して 定 義 さ れ て い る. た と え ば,ニ mission
ュ ー ヨー ク パ ワー プ ー ル で は送 電 権(送 電 線 混 雑 契 約:TCCs:trans
congestion
contracts)を,市
場 取 引 に基 づ く料 金 決 済 と相 対 取 引 に 基 づ く送
電 線 利 用 料 金 を通 して 徴 収 さ れ る費 用 の う ち,送 て 定 義 し て い る.つ ま り,送 電 権 と は,「ISOに 権 利 」 で あ る.NYPPが
①
電 線 混 雑 費 用 分 を分 配 す る 手 段 と し
支 払 われ た送 電線混 雑費 用 を受 け取 る
採 用 して い る送 電 権 の 特 徴 と し て,
送 電権 取得 に よる費用 授受 はLBMPと
確 保 した送 電 容 量 に よ り一 意 に定 ま る
金融 取 引で あ り,実 際 の電力 取引 の有無 には関 係 はな い. ②
送 電権 は特 定 の送 電線 で発 生 した混雑 費用 を受 け取 る権 利 で はな く,指 定 され た受 電地 点 と供給 地 点 間で発 生 した混雑 費用 を受 け取 る権利 で あ る こと.
③
送 電権 取得 に よ り,思 惑 とは逆 にISOに 対 す る費 用支 払 いの義 務が発 生 す る場 合 もあ る.
が あ げ られ る. 送 電権 の所 有 者 は,負 荷母 線 が属 す る ゾー ンに お け る送 電 線 混雑 費 用 〓 母 線 の送 電 線 混雑 費 用 μCjの 価 格差 に基 づい て,以 下 の よ うにISOか
と電 源
ら混 雑費 用 の
配 分 を受 けた り,支 払 い を行 う. (3.29) こ こ で,CRP(congestion
rents payment)は,送
電 容 量Q〔MW〕
の 送 電権 で 所 有 す
る市 場 参 加 者 に 配 分 さ れ る 送 電 線 混 雑 費 用 で あ る. た と え ば,負
荷 母 線 の 混 雑 費 用 が 電 源 母 線 の 混 雑 費 用 よ り も高 け れ ば,ISOか 表3.5各ISOの
送電権の概要
カ リ フ ォル ニアISO
送電権 の名称
FTR:Firm sion Right
Transmis
NYPP
PJM-ISO FTR:Fixed mission
Trans Right
TCC:Transmission Congestion
送電権 の形 態 物理的権利+金 融的管理 金融的権利
金融 的権 利
送電混雑料 金 の基準
LBMP
送電権 の割 当 方法 送電権 の売買 方法
ゾー ン制 料 金
LBMP ネ ッ トワ ー ク送 電 サ ー ビ
オ ー ク シ ョ ン
ス 利 用 者 と常 時 地 点 別 送 電 サ ー ビ ス利 用 者
2次市場
らの
OASIS(そ 場)
の 他 2次 市
Contracts
既存 の送電契約締 結者 と 送電線 提供者 オ ー ク シ ョ ン,OASIS, そ の 他 2次 市 場
配 分 を受 け,そ
の 逆 な ら ば 支 払 い 義 務 が 生 じ る.し た が っ て,送
の 経 済 性 を十 分 に検 討 す る 必 要 が あ る.NYPPの ISOで
も送 電 権 を 導 入 し て い る.各ISOで
電 権 取 得 に 際 し,そ
ほ か に も,PJMや
カ リフ ォル ニア
の 送 電 権 の 概 要 を 表3.5に
示 す.送 電 権 の
売 買 に は,送 電 線 利 用 者 が イ ン タ ー ネ ッ トを 通 じ て 送 電 線 提 供 者 が 所 有 す る送 電 線 に 関 す る情 報 を非 差 別 的 に ア ク セ ス す る こ と が で き る送 電 線 同 時 情 報 公 開 シ ス テ ム (OASIS)な
3.4
ど を 用 い る.
欧米諸国にお ける送電料金設定方式の動向
3.4.1イ
ギ リス の 送 電 料 金
NGC社
の送 電 料 金 は,送 電 系 統 使 用 料 金 と接 続 料 金 か ら構 成 され る.NGC社
は,
自社 の 設 備 を, ①
送 電 系 統 内 の 利 用 者 と の 接 続 点 で,そ に支 障 を来 さ な い 設 備 は,そ 備 ” とみ な さ れ,接
②
の 接 続 点 で 切 り離 して も送 電 系 統 の運 用
の利 用 者 の 特 定 の 利 益 の た め に 提 供 さ れ る “接 続 設
続 料 金 が 課 さ れ る.
送 電 系 統 の 一 部 と し て 必 要 で あ る と さ れ る設 備 は,送 そ の 設 備 の 提 供,運
転,保
電 系 統 使 用 料 金 に よ り,
守 に 関 わ る費 用 を 回 収 す る.
と分 類 し,ど の 料 金 で 関 連 コ ス トを 回 収 す る か 定 め て い る8).
(1)送
電 系統 使用 料金
送 電 系 統 の使 用(use 況,利
of system)に
対 し て,利 用 者 の 場 所(ゾ ー ン),電
用 者 の タ イ プ(系 統 か ら電 力 を 受 電 し て い る か,系
を考 慮 して 設 定 さ れ る.送
力 の使用 状
統 に電 力 を送 電 し て い るか)
電 系 統 使 用 料 金 は,送 電 系 統 を14ゾ
ー ン(初 期 は11ゾ
ー
ン)に 分 割 し,利 用 者 の 利 用 状 況 に よ り発 電 料 金 と需 要 料 金 に 分 け ら れ て い る(図3. 9). ①
発電 料金
capacity)に
発 電 所 の 所 内 消 費 電 力 を 差 し 引 い た 送 電 端 電 力(registered
課 さ れ,送 電 系 統 の 接 続 点 と送 電 し た 電 力 量 に よ っ て 決 ま る.た だ し,送
電 端 出 力 は,会
計 年 度 内 の 4月 か ら 2月 の 間 の 1発 電 所 の一 つ ま た は 複 数 の 発 電 ユ ニ
ッ トの 送 電 端 出 力 の 最 大 値 の 合 計 値 と さ れ,当 掛 け た 額 がNGCに
ゾ ー ンが 5箇 所 あ るが,こ ②
需要 料金
れ る.こ
該 ゾ ー ン の 料 金 単 価(ポ ン ド/kW)を
支 払 わ れ る.た だ し,図3.9に れ らの ゾ ー ン は,NGCか
示 す よ う に,負
の発 電料 金 とな る
ら料 金 の 支 払 い を 受 け る.
供 給 事 業 者 の 送 電 系 統 の 接 続 点 に お け る 受 電 電 力 に 基 づ き支 払 わ
こで の 受 電 電 力 は,年
3回 の 系 統 全 体 の 最 大 電 力 発 生 時 の 受 電 電 力 の 平 均 値
(a) 1990/1991年 図3.9
と し て定 義 さ れ て い る.こ NGC社
(b) 1996/1997年
NGC社
の送電 系統使 用料 金(発電料金 と需 要料金)9)
の 平 均 受 電 量 に 当 該 ゾー ンの 需 要 料 金 単 価 を掛 け た額 が,
に 支 払 う料 金 と な る.た だ し,年
3回 の 系 統 最 大 電 力 発 生 時 に,送
との 接 続 点)で 系 統 に 対 し て送 電 し て い れ ば,需 要 料 金 を ゼ ロ とす る.た
電 端(系 統
と え ば,3 回
の う ち,1 回 で も系 統 か ら電 力 を 受 電 す る状 況 で あ れ ば,送 電 電 力 を ゼ ロ と し た み か け の 受 電 電 力 の 平 均 値 に 需 要 料 金 単 価 が か け られ てNGC社 送 電 系 統 の ゾ ー ン 分 割 は,投 related
に 料 金 が 支 払 わ れ る.
資 コ ス ト関 連 価 格 づ け(ICRP:investment
pricing)と い わ れ る手 法 が 適 用 さ れ て い る.ICRPは
cost
設 備 の 限 界 費 用 に基 づ
き,送 電 系 統 上 の す べ て の ノ ー ド に対 し て送 電 料 金 が振 り分 け る こ と が 可 能 で あ る. ICRPは,送
電 系 統 内 の す べ て の ノ ー ドご と に,需 要 また は 発 電 の増 加 の 結 果 と し て,
必 要 とな る送 電 系 統 設 備 の 投 資 の 限 界 費 用 を 計 算 す る 方 法 で あ る.ICRPに さ れ る料 金 は,1MWの
電 力 を 1 ㎞ 送 電 す るの に 必 要 と さ れ る送 電 設 備 の 建 設 ・維
持 費 用(設 備 の 増 分 費 用)に 基 づ く.算 定 結 果,ほ で,ゾ
よ り算 定
ー ンが 形 成 され,ゾ
ぼ 等 し い料 金 を もつ ノ ー ドの 集 ま り
ー ン内 の ノ ー ド別 料 金 の 平 均 値 が 当 該 ゾ ー ン の 料 金 と し て
設 定 さ れ る. 図3.9に
示 す ゾ ー ン ご と に 送 電 系 統 使 用 料 金 を 比 較 す る と以 下 の よ う な 特 徴 が あ
る. (a)発 電 料 金 は,北
部 の 地 域 が 高 く,南 西 部 の ゾ ー ンが 安 く設 定 され,特
の ゾ ー ン の 料 金 は 負 の値 な の で,NGCか
ら 支 払 い を受 け る.ま た,ロ
に,一 部
ン ドン 市 内 中 心
部 に位 置 す る ゾー ンの 需 要 料 金 が 国 内 で 最 も高 く,逆 に 北 上 す る に つ れ 需 要 料 金 が 低 下 して い る.こ
の た め,国
内 北 部 の 電 源 地 帯 か ら ロ ン ドン を 含 む 南 部 へ の 南 向 き 重 潮
流 が 発 生 し や す く,系 統 運 用 の 安 定 運 用 と重 要 な 係 わ り合 い を も っ て い る.つ 新 規 に 発 電 所 を建 設 す る場 合 に は,北 潮 流 を緩 和 す る こ とが 可 能 で,系
部 よ り も南 部 に建 設 した ほ うが,こ
統 安 定 度 の 向 上,送
ま り,
の南 向 き重
電 損 失 の 軽 減 な ど利 点 が 多 い.
(b)南 部 の 5ゾ ー ン で は,電 源 が 不 足 して い る こ とか ら,供 給 力 の確 保 や 安 定 度 向 上 の た め の 送 電 線 拡 充 の コ ス トを 考 慮 す れ ば,NGC社 業 者 に 料 金 を 支 払 っ て も,経 済 的,技
が五 つ の ゾー ンの新規 発 電事
術 的 な 効 果 が 十 分 に あ る.逆
南 部 に 建 設 す る よ り も北 部 に 建 設 し た 方 が,発
に,新 規 の 工 場 を
電 設 備 と同 様 の 理 由 で,系
統 全体 に と
っ て プ ラ ス の 効 果 を もた ら す. し か し これ まで の と こ ろ,こ
の よ うな 系 統 使 用 料 の 南 北 格 差 は 十 分 な 効 果 を あ げ て
い な い.
接 続料 金
(2)
接 続 料 金 は,送 電 線 利 用 者 に 提 供 す る接 続 設 定 に直 接 的,間 ス トに,適 切 な 投 資 報 酬 率 を 加 え,NGC社 て い る.特 value)を
に,こ
の 接 続 料 金 に つ い て は,各
も と に料 金 が 算 定 さ れ,そ
①
定 額減 価償 却費
②
純 資 産 価 値(NAV:net し 引 い たGAVで,そ
③
接 的 に必 要 とな っ た コ
が 回 収 す る こ とが で き る よ う に 設 定 され 設 備 の 総 資 産 価 値(GAV:gross
asset value)に 対 す る報 酬(NAVは,累
積 償却 費 を差
の 設 備 の 平 均(中 央)の 値 を さ す)
設 備 の 修 理 ・メ ン テ ナ ン ス サ ー ビス 費
の 3項 目 か らな る.以
上,NGCの
図3.10
asset
の 内 訳 は,
送 電 料 金 の 構 造 は 図3.10に
NGCの
送電料金 の構造
示 す よ う に な る.
3.4.2ド
イツの送電料金
1998年
4月 に 発 効 し た エ ネ ル ギ ー 法 と と も にEU電
化 の 一 環 で,1998年 連 盟(BDI)の
気 事業 規 制緩 和 指 令 の 国 内 法
5月,ド イ ツ 電 気 事 業 連 合(VDEW),自
家 発 連 合 会(VIK)と
間 で 託 送 料 金 の 基 本 的 な 設 計 方 法 を示 す"託
送 料 金 協 定"が
産業
締 結 され
た10,11).この 託 送 料 金 は,各 州 経 済 省 の 料 金 局 が 定 め る"総 括 原 価 算 定 要 綱"に 基 づ き 算 定 され,①
系 統 利 用 料 金,②
変 電 設 備 利 用 料 金,③
ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス 料 金 の 3
項 目 か ら な る.各 料 金 項 目 の 年 間 料 金 が,実 際 の 託 送 に お け る料 金 算 定 の 基 礎 と して, 系 統 運 用 者 に よ り算 定 され る.そ で 割 っ て 求 め る年 間 料 金 を,"同
して,実
際 の 託 送 料 金 は,年
間 費 用 を年 間 最 大 電 力
時 率"*8 に よ っ て補 正 し算 出 さ れ る.
(1) 系統 利 用 料 金 各 電 圧 区分(超 高 圧,高
圧,中
圧,低
料 金 区 分 は,送 電 系 統 利 用 料 金,配 ①
送電 系統利 用料 金
圧)ご とに,系
託 送 距 離 に 関 係 の な い設 備 利 用 料 金(郵 便 切 手 方 式)と 距 電 線 に 関 わ る年 間 費 用 を 最 大 電 力 で 割 る こ
とで 求 め て い る.特 に,距 離 比 例 料 金 は,100㎞ ㎞
・年)の 託 送 料 金 を設 定 して い る.さ
接 的 に 送 電 系 統(380/220kV)を
を超 え る託 送 に 関 して,0.125DM/ ら に,電 力 供 給 点 な い し受 電 地 点 が 直
使 用 す る場 合 な い し は,配 電 系 統 に よ る 託 送 距 離 が 一
定 の 境 界 値 を超 え た 場 合 の み に課 金 さ れ る(表3.6,図3.11,図3.12参 ②
の
電 系 統 利 用 料 金 に 大 別 さ れ る.
離 比 例 料 金 か らな る.設 備 利 用 料 金 は,送
(kW・
統 利 用 年 間 料 金 を定 め る.こ
配 電 系 統 利 用 料 金
電 圧 区分 ご と に求 め られ,高
圧,中
照). 圧,低
圧 の 3区 分 に
原 価 配 分 され た 既 存 系 統 の 年 間 費 用 を 各 々 の 電 圧 区 分 の 最 大 電 力 で 割 る こ と で 求 め ら 表3.6
配 電 系 統 にお け る距 離 の境 界 値
*8 同 時 率 に つ い て:設 備 の 年 間 費 用 は年 最 大 電 力(同 時)で 割 る こ とで 求 め られ る.託 送 料 金 の 算 定 に 用 い られ る託 送 要 求 者 の託 送 容 量 は,当
該 託 送 の最 大 電 力(非 同時)に よ り計 測 す る.し
か し,送
電 さ れ る個 々 の 需 要 家 の非 同時 最 大 電 力 の 和 は,年 間 最 大 電 力(同 時)を 上 回 るた め,調 整 が 必 要 で あ る.今 回 の 協 定 で は,こ の 最 大 電 力 の調 整 法 と して,需 要 家 を,年 間 使 用 時 間 ご と(⊿ T)に グ ル ー プ化 す し,"⊿ T の 需 要 家 グ ル ー プ の 年 同 時 最 大 電 力"を"⊿ て"⊿ T の と きの 「同時 率 」 g(⊿T)"を
求 め て い る.
T"需要 家 グル ー プ の非 同時 最 大 電 力"で 割 っ
図3.11
図3.12
託送料金の構成
ドイ ツ の送 電 料 金 の 概 要
れ る.こ れ らの料 金 は,各 系統 運用 者が 算定 す る. (2) 変 電設備 利 用料 金 系統 使 用料 金 の算定 に使 用 した電 圧 区分 を もとに,変 電電 圧 の 区分 ご とに年 間平 均 費 用 を もとに算定 され,妥 当 な方法 に よ り公表 され る.
(3)ア
ンシ ラ リーサ ー ビス料金
ア ン シ ラ リー サ ー ビス 料 金 に は,周 波 数 制 御 サ ー ビ ス,電 旧 サ ー ビ ス,管
理 費 が 対 象 とな る.こ
い し は 受 電 側 に課 さ れ る.ま れ,こ
た,電
圧 制 御 サ ー ビス,系
の料 金 は,費 用 の 発 生 箇 所 に 応 じて,発
統復
電側 な
圧 階 級 別(系 統 運 用 者 別)に 平 均 送 電 損 失 が 公 表 さ
の 送 電 損 失 に対 す る補 償 は,系 統 運 用 者 の 平 均 電 力 購 入 費 に 基 づ く もの と され
て い る.電
力 供 給 者 は,ロ
ス分 の 料 金 を 系 統 運 用 者 に 支 払 う代 わ り に,ロ
ス分 の追加
供 給 で 代 替 す る こ と も可 能 で あ る. こ こで,上
記 の 託 送 料 金 は,図3.13の
比 例 料 金 で は100㎞ の で,実
ケ ー ス で は,以 下 の よ う に 求 め られ る.距 離
ま で の 送 電 距 離 と高 圧 系 統 の 境 界 値(表3.6参
際 に料 金 請 求 対 象 距 離 は,6.6㎞
と な る.ま た,配
家 の 受 電 電 圧 が 送 電 料 金 の 算 定 根 拠 と な る の で,高 設 備 利 用 料 金 と 高 圧/中
照)が 控 除 さ れ る
電 系 統 使 用 料 金 は,需 要
圧 で 受 電 す る場 合 は,中
圧 の系統
圧 の変 電 設 備 料 金 は 請 求 対 象 外 と な る.こ の 場 合 で は託 送 料
金 は,
託 送料 金=A+超 ここで A=超 B=高
高 圧系統 設備 利 用料金/B ×同時率 ×託送容 量(3.30) 高圧系統 設備 利用 料 金+距 離比 例料 金 ×請 求対 象距離
圧 の変電料 金+高 圧 系 統設 備利 用料 金 +ア ンシラ リーサ ー ビス料金
とな る. この よ うな託 送料 金 の算定 方法 に対 し,超 高圧 送 電 にお いて距 離比例 料金 を用い る と遠距 離 送電 の託送料 金 は高 くな り,需 要家 に近 い電源 の選択 が誘 導 され る な どの市 場 メカ ニズ ム が作用 す る との評価 が あ る(日本 での需 要地 近接 性 の考慮 に相 当 す る). しか し,送 電 距 離 の増大 に伴 い送 電 コス トが増加 す る とい う前提 が成立 しな けれ ば, 上 記 の電 源選 択 の考 え方 は成 立 しない.た とえば,メ ッシュ状 の系統 で は,潮 流が必
図3.13
託 送 例(高 圧 系 統(受 電 点)お よ び 中 圧 系 統(供 給 点)に よ る託 送)
ず し も契 約 ど お りの 送 電 方 向 に な る と は 限 ら な い.む 需 要 家 の 所 在 地 と需 給 量 な ど の 系 統 構 成 が,託
し ろ,潮
流,系
統 内 に発 電 所 や
送 に よ る 短 期 的 ・長 期 的 な コ ス ト変 動
の 要 因 に な る 可 能 性 が あ る. しか し,送
電 距 離 を 送 電 料 金 に反 映 さ せ る 方 法 は,広
域 の 電 力 取 引 を 阻 害 す る可 能
性 が あ る こ とか ら,現 行 制 度 に よ る 複 雑 な 料 金 設 定 は新 規 参 入 者,国
内の一部 大 口需
要 家,国 内 規 制 当 局,経 済 学 者,欧 州 委 員 会 規 制 局 な ど の批 判 を受 け,1999年12月 需 要 家 の 系 統 接 続 へ の 接 続 地 点 で 料 金 を 決 定 す る"接 続 地 点 料 金(point tion tariffs)"制 の 導 入 を決 め た"系 統 使 用 料 金 協 定"が,ド イ ツ産 業 連 合 お よ び 自 家 発 連 合 会 の 間 で 結 ば れ た.本 し い 送 電 料 金 制 度 が 導 入 さ れ た.新 代 わ りに,ド
力 取 引 に つ い て は,0.25ペ
2月 か ら新
協 定 で は,現 行 の送 電 距 離 比 例 方 式 が 廃 止 さ れ る
ニ ッ ヒ(約15銭)/kWhが
の 南 北 を ま た が る電
課 され る.南 北 双 方 に取 引 が あ る
か ら北 へ の 送 電 量 と北 か ら南 へ の 送 電 量 を 差 分 に,南
過 電 力 量(15分
connec
イ ツ 電 気 事 業 連 合 会,ド
協 定 に よ り2000年
イ ツ 全 国 を南 北 に 分 けた ゾー ン 制 が 導 入 さ れ た.こ
場 合 に は,南
of
に
北 ど ち らか へ の 超
ご と に 算 定)だ けが 課 金 対 象 とな る.2 点 目 の 主 要 な 変 更 点 は,ド
イツ
全 国 の 系 統 を 利 用 で き る よ う に接 続 電 圧 よ り上 の送 電 関 連 コ ス トを 導 入 し た こ とで, 送 電 料 金 は発 電 側 に は 課 さず 需 要 家 側 に の み 課 した こ と で あ る.た 会 社 のRWE社
の 系 統 使 用 料 金 は,受 電 電 圧 別,年
設 定 さ れ て お り,10/20kVRWE社 料 金 が23.31ユ
ー ロ/kW・
点 目 の変 更 点 は,計
年,電
と え ば,7 大 電 力
間使 用 時 間 別,利
変 電 設 備 受 電,年 間2500時 力 量 料 金 が1.99セ
ン ト/kWhの
用変電 設備 別 に
間 以 下 の 使 用 で,容 量 二 部 料 金 で あ る.3
画 電 力 量 と実 際 の 電 力 量 との偏 差 の 調 整 法 と し て,新
ス ・プ ー ル 制 が 導 入 され た こ とで あ る.従 来,系 差(イ ン バ ラ ン ス)を 管 理 し て い た.2000年 を 可 能 とす る た め,系
た にバ ラ ン
統管 理者 が 系統利 用者 ごとに需給偏
2月以 降,系 統 利 用 者 が 偏 差 の費 用 最 小 化
統 利 用 者 が 他 の 系 統 利 用 者 とバ ラ ンス ・プ ー ル を つ く り,偏 差
の 調 整 を 可 能 と し た.
3.4.3ア
メリカの送電 料金
連 邦 エ ネ ル ギ ー 規 制 委 員 会(FERC)は,1994年 て い る.こ
の 中 で,送
に 送 電 政 策 ス テ ー トメ ン トを 制 定 し
電 料 金 設 定 方 式 は,従 来 は平 均 費 用 に 基 づ く郵 便 切 手 方 式 や 契
約 経 路 方 式 が 採 用 さ れ て き た が,競
争 市場 で の送電料 金 設定 方法 の 多様 な メニ ュー を
容 認 す る とい う観 点 か ら,費 用 算 定 方 式,電
力 潮 流 の 取 り扱 い 方 法,料
と な る 送 電 設 備 の 単 位 の 3項 目 に つ い て,表3.7の
金算定 の対 象
ような組 み合 わ せ の送電料 金設 定
方 法 を 認 め た. さ ら に,1996年
に 発 令 した 最 終 規 則Order
No.888(「 送 電 線 の 開 放 及 び 回収 不 能 費
表3.7
費用算定方 式
認 め た送 電 料 金 設 定 方 法
料金算定の対象 となる送 電 電 力潮流の取 り扱い方法
平均費用 増分費用
設備 の単位
郵便切手 ゾー ン
実潮流 契約上の送電経路
OR方 式* 長期 限界 費用 短期 限界 費用 *平
FERCが
各送 電設備
均費 用 と増分費用 の うち安価 な方を採用する方法
用 に 関 す る 最 終 規 則 」)とNo.889(「
送 電線 の情 報 公 開及 び その 運 用 に 関 す る最 終規
則 」)によ り,す べ て の 市 場 参 加 者 が 同 じ条 件 で 公 平 に送 電 線 を利 用 で き る よ う に な っ た.Order No.888の
中 で,送 電 線 提 供 者 に対 して,送 電 サ ー ビ ス と ア ン シ ラ リー サ ー
ビス の 供 給 規 定 を盛 り込 ん だ"形 送 電 料 金 表)"を
式 上(Pro-format)の
送 電 料 金 表(オ ー プ ン ア ク セ ス
提 出 す る こ とを 要 求 し て い る.す べ て の 送 電 線 提 供 者 は,① 共 通 サ ー
ビス に 関 す る供 給 規 定(ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス を 含 む),② る 供 給 規 定(確 約 と非 確 約),③ て,送
電 料 金 表 をFERCに
地点 間送 電 サー ビスに関 す
ネ ッ トワ ー ク 送 電 サ ー ビ ス に 関 す る供 給 規 定 に 従 っ
申 請 し,認 可 を受 け な けれ ば な ら な い.
送 電 サ ー ビ ス に は,"ネ
ッ トワ ー ク サ ー ビ ス"と"地
点 間 サ ー ビ ス"の
2種 類 が あ
る*9.送 電 線 利 用 者 は,あ
る 負 荷 へ の供 給 お よ び 電 力 取 引 を満 足 す る の に 必 要 な 送 電
容 量 を確 保 す る た め に,送 電 線 所 有 者(ま た は系 統 運 用 者)に 送 電 線 利 用 を 申 請 す る. こ の 申請 に基 づ き,送 電 線 所 有 者(ま た は系 統 運 用 者)は,送
電 線 の 空 き容 量 を確 認 し,
系 統 解 析 を実 施 し て 系 統 運 用 上 問題 が な い と判 断 す れ ば,送
電 線 の利 用 を承 認 す る.
現 在,ア
メ リカ で は カ リ フ ォ ル ニ アISOな
て い る.表3.8に (ERCOT),中 *9
各ISOの 西 部,ニ
ど六 つ のISOが
送 電 サ ー ビス を提 供 し
規 模 等 と送 電 料 金 設 定 の 地 域 比 較 を 示 す12).テ キ サ ス
ュ ー イ ン グ ラ ン ドで 大 幅 な修 正 案 が 提 案 さ れ て お り,矢 印 で 変
地 点 間送 電 サ ー ビ ス の 利 用 者 は,電 力 の 受 電 地 点(電 源 地 点)と 供 給 地 点(負 荷 地 点)を 指 定 し,
指 定 した 各 受 電(ま た は供 給)地 点 で 必 要 な 送 電 容 量 を確 保 す る.受 電 地 点 で 確保 した 送 電 容 量 の合 計 と供 給 地 点 で確 保 した 送 電 容 量 の合 計 の 大 きい 方 が,送 ity)と な る.ま
電 線 利 用 者 の 予 約 送 電 容 量(reserved
capac
た,送 電 サ ー ビ ス利 用 の優 先 権 の違 い か ら,確 約(firm)サ ー ビ ス(長 期 サ ー ビ スで 1年
以 上,短 期 サ ー ビ スで 月 間 ・週 間 ・日間 の単 位)と 非 確 約(non-firm)サ
ー ビ ス(月 間 ・週 間 ・日 間)の 2
種 類 が あ る. 一 方,ネ ッ トワ ー ク 送 電 サ ー ビ ス の使 用者(ネ ッ トワ ー ク需 要 家)は,送 電 線 所 有 者 自身 が 自己 の抱 え る需 要 家 に電 力 を供 給 す るた め に送 電 線 を利 用 す る場 合 と同 じ よ う に,送 電 線 所 有 者 の 制 御 地 域 内 の 指 定 され た ネ ッ トワ ー ク負 荷 に電 力 を供 給 す るた め に,送
電 容 量 に 余 裕 が あ れ ば,ネ
源 と して 指 定 さ れ て い な い 電 源 を追 加 料 金 な しに利 用 す る こ とが で き る.ネ ッ トワ ー ク送 電 サ ー ビス 利 用 者 が,ネ い る す べ て の 電 源 を さ す.
ッ トワー ク電
ッ トワ ー ク電 源 と は,ネ
ッ トワ ー ク 負 荷 に電 力 を供 給 す るた め に所 有 ・購 入 ・賃 貸 し て
表3.8 送 電料金の地域比較
出 所:L,D.Kirsch(2000)に
更 案 を 示 す.給
基 づ き作 成.*地
点 間 サ ー ビス の ア クセ ス 料 金 決 定 要 因
電 指 令 に 関 連 す る 電 力 量 料 金 は,カ
で は 均 一 料 金(ゾ ー ン制),テ
リ フ ォル ニ ア で は少 数 の ゾ ー ン 内
キ サ ス とニ ュ ー イ ン グ ラ ン ドで はISO全
系 で 均 一料 金
(郵便 切 手 方 式),ニ
ュ ー ヨ ー ク で は発 電 会 社 は 接 続 地 点 別(ノ ー ダ ル)料 金 で 需 要 側 は
ゾー ン料 金,PJMで
は全 利 用 者 が ノ ー ダ ル プ ラ イ ス で 設 定 さ れ て い る.送 電 損 失 に つ
い て は テ キ サ ス を 除 い て,限
界 費 用 方 式 あ る い は収 支 均 衡 を 満 足 す る修 正 限 界 費 用 方
式 で 課 金 され る予 定 で あ る.た
だ し,経 済 負 荷 配 分 と整 合 的 な の は 純 粋 な 限 界 費 用 方
式 の み で あ る.修 正 限 界 費 用 方 式 で も伝 統 的 な 平 均 費 用 方 式 と 同様 に発 電 会 社 に経 済 負 荷 配 分 へ の イ ン セ ン テ ィ ブ を付 与 で き な い. 従 来,送
電 ア ク セ ス が き び し く規 制 さ れ て い た 時 代 に は混 雑 管 理 に は需 要 家 ご と に
決 め られ た 優 先 順 位 に従 っ て,負 が,競
荷 制 限 さ れ る方 式(優 先 順 位 割 当)が 主 流 で あ っ た
争 導 入 に従 っ て,混 雑 管 理 に も価 格 メ カ ニ ズ ム が 活 用 さ れ る よ う に な っ て きた
(カ リ フ ォル ニ ア,ニ
ュ ー ヨ ー ク,PJM).こ
れ か ら は,混 雑 料 金 で は 十 分 に 混 雑 管 理
が で き な い と き の み 発 動 す る ラ ス ト リゾ ー トと して 優 先 順 位 割 当 て を 行 う こ とが 望 ま しい.
3.4.4北
欧の送電料金
ノ ル ウ ェ ー とス ウ ェ ー デ ン は ノ ル ドプ ー ル と呼 ば れ る 北 欧 電 力 市 場 を 形 成 し て い る.両
国 と も ポ イ ン ト料 金 と呼 ば れ る 送 電 距 離 に関 係 な く,発 電 設 備 も し く は 受 電 設
備 の 系 統 へ の 接 続 ポ イ ン トで 料 金 が 決 ま る 方 式 を 採 用 し て い る13).可 変 費 は短 期 限 界 費 用 に 基 づ い て 設 定 され る.な
お,同
じ く ノ ル ドプ ー ル に 参 加 し て い る フ ィ ン ラ ン ド
に お い て もポ イ ン ト料 金 の 考 え方 が 採 用 さ れ て い る. (1) ノル ウ ェー 1991年
エ ネ ル ギ ー 法 に 基 づ き,ポ イ ン ト料 金 が 導 入 さ れ た.送 電 料 金 に は 発 電 側 が
支 払 うネ ッ トワ ー ク へ の 注 入 料 金 と需 要 家 側 が 支 払 う引 き出 し料 金 が あ る.ノ ー の 送 電 系 統 は,基 幹 系 統,地
域 系 統,地
ル ウェ
方 系 統 の 3階 層 か らな り,上 位 系 統 か ら下
位 系 統 へ 送 電 料 金 が 加 算 され る.需 要 家 は ど の発 電 所 か ら電 力 を購 入 し て も,あ
るい
は プ ー ル 市 場 か ら購 入 し て も,送 電 料 金 は 需 要 家 の 系 統 接 続 地 点 の み で 決 ま る.ま た, 供 給 不 足 地 域 で は 注 入 料 金 は 引 き 出 し料 金 よ り低 く設 定 さ れ,供 逆 に設 定 さ れ,電
給過 剰地 域 で は その
源 地 域 か ら需 要 地 域 へ 潮 流 を 流 し や す くイ ン セ ン テ ィ ブ を与 え て い
る. 基 幹 送 電 系 統 の 送 電 料 金 は,可 変 費 の 回 収 部 分 と 固定 費 の 回 収 部 分 に分 け ら れ,可 変 費 の 回 収 は エ ネ ル ギ ー 料 金 と容 量 料 金,固 ら れ る.エ
ネ ル ギ ー 料 金 は,送
統 の 接 続 ポ イ ン トは215箇
定 費 の 回収 は 接 続 料 金 と需 要 料 金 に 分 け
電 ロ ス の 回 収 の た め に設 定 さ れ る.基 幹 系 統 と地 域 系
所 あ る が,計 算 を簡 単 化 す るた め,五 つ の地 域 で34箇
代 表 的 な 接 続 ポ イ ン トを決 め,冬
季 昼 間,冬
季 夜 間,夏
所 の
季 全 日の季時 別 に限界 ロス率
を 設 定 し て い る. また,容
量 料 金 は,発 電 線 容 量 制 約(混 雑)が 発 生 した 場 合 に送 電 量 に課 さ れ る料 金
で あ る.こ
の 料 金 は プ ー ル 市 場 を通 じ て 徴 収 さ れ る.た だ し,ノ ル ウ ェ ー の 場 合,実
際 に は 国 内 取 引 に お け る送 電 線 容 量 制 約 の 発 生 は ほ とん ど な い.固
定 費 の資本 費 回収
の た め に 設 定 され て お り,発 電 側 の 注 入 と需 要 側 の 引 き出 し そ れ ぞ れ に つ い て,基 的 に 国 内 一 律 で 設 定 さ れ る.固 る た め の 料 金 と し て,ま
本
定 費 回 収 料 金 の う ち 接 続 料 金 は,設 備 を系 統 に 接 続 す
た 需 要 料 金 は接 続 料 金 に よ る 回 収 分 を除 くす べ て の 費 用 を回
収 す る た め に 設 定 され て い る. (2)ス
ウ ェー デ ン
送 電 料 金 の 設 定 方 式 に つ い て は,ノ
ル ウ ェ ー と同 様 の ポ イ ン ト料 金 制 を1995年
か
ら採 用 して い る.こ れ は 送 電 距 離 に 関 係 な く,発 電 側 お よ び 需 要 側 の 接 続 点 で 料 金 が 決 定 さ れ,可
変 費,短
期 限 界 費 用 に 基 づ き計 算 さ れ る もの で あ る.
基幹 送 電線 の ポ イ ン ト料 金 は① 需要料 金,② 接続 料金,③ エ ネル ギー料 金の三 つ の 構 成 要素 か らなる.以 下,こ れ ら三 つの構 成要 素 の内容 を述 べ る. 需 要料 金 は固定 費 の回収 を目的 と して設 定 され る.ス ウェー デ ンでは水 力発電 所 の 存 在 す る北部 か ら需 要地域 の南部 へ電 力 の潮流 が あ り,こ の よ うな潮 流 を緩 和 し,系 統 安 定化 や ロ ス低 減 を促進 す るため に,需 要料 金 は緯度 によ り決 定 され る.料 金 は, 高 緯度 で は,発 電 事 業者 が系統 に注入 す る電力 に対 して は高 く,ま た需要 家が 系統 か ら引 き出 す電 力 に対 して は安 く設定 され る.逆 に,低 緯 度 で は,発 電事 業者 には安 く, 需 要 家 に は高 く料 金 が設定 され る.緯 度 に よる価格 差 は,発 電所 や需 要 の立地 に対 し て効 率的 な需 給 シ ステム を形成 す るため のイ ンセ ンテ ィブを与 える ことを 目的 として い る. 接続 料 金 は設備 を系統 に接続 す るため に必 要 な料 金 として設定 され る.需 要料 金 は で は回収 で きない送 電設備 等 の一部 を賄 うた め に,送 電 線利 用者 が送 電系 統 に接続 す るた めの 設備 にかか わ る費 用 として支 払 う. エ ネル ギー料金 は可変費 の 回収 を 目的 とし,送 電 ロス を補 償 す るため のた めの料金 として設 定 され る.限 界 ロス率 は負荷 に応 じて系統 のポ イ ン トご と,季 節 ご とに決定 され,ス ポ ッ ト価 格 に限界 ロス率分 が加 算 され る形 で支 払 われ る. ス ウェー デ ンにお け る送 電料 金の設 定 方法 は ノル ウェー とお おむ ね同 じで あ るが, ノル ウェー の混雑 料 金で あ る容 量料金 はス ウ ェー デ ンで は設定 され てい ない.ス ウェ ー デ ンで は,混 雑 の解消 は,バ ラ ンス ・サー ビス と して扱 われ る.
3.5日
本 の託 送料 金
3.5.1託
送制度 の概要
供 給信 頼度 や エ ネルギ ーセ キ ュ リテ ィ,環 境 保全 に配 慮 しなが ら競 争導 入 す る自由 化 モデル と して 日本 で は託 送 モデル が採 用 され た.送 電 網 を所 有す る電力 会社 は新規 参 入 者 と自由化対 象 需要 家 を獲 得 し合 う競 合 関係 に あ るので,対 等 で有効 な競 争関係 を確保 す る と ともに,他 の規制 分野 の需 要家 に不利 益 を及 ぼ さな い ように託送 ル ール を公 平 かつ公 正 に定 め る必 要が あ る. 託 送 を行 う場合 には送電 利用 者 は電力 会社 の送電 サー ビス セ ンター に接 続検 討 を申 請 す る必 要 が あ る.託 送 契約 に至 る まで に,電 力 会社 は送 電潮 流等 につい ての情報 を 事 前 に公 表 す る こ と,新 規 参入 者 は発電 の方 式,出 力,連 系電 圧 な ど託送 検討 に必 要 な技 術情 報 を公 表 す る こと,電 力会社 は申 し込 みか ら 3か月 を め どに連 系 に関す る検
討結 果 を回 答す るこ とが求 め られ る.潮 流 を接続 地点 別,季 時別 に把 握 す る ことは現 時点 で 困難 で あ るた め,最 大 ピー ク時 の潮 流 の み公表 してい る.個 別 の接続 地 点 にお け る託送容 量 は,新 規 参入 者が個 別 に電力 会 社 に問 い合わ せ る こ とにな って い る. 電 力 はネ ッ トワー ク全体 の安定 性 を確保 す るた め に,新 規 参入 者 に同時 同量 と電 力 会 社 の給 電指令 に応 じる ことが求 め られ る.一 般 に同 時同量 とは電力 系統全 体 で瞬 時 瞬 時 の需 要 と供 給 が一 致 してい る こ とを さす.新 規 参 入者 は30分 の範 囲 内 で顧 客 の 需 要変 動 に追従 した供給 量(変 動範 囲 3%以 内)を ネ ッ トワー クに提 供 す る こ とで需 要 と供 給 の同時 同量 を達成 してい る とみなす.系 統 全体 の需給 バ ラ ンス は従来 どお り電 力 会社 が責 任 を もつ. 託 送 に関 す る行政 の規 制 は,事 前 に託 送 料 金算 定 ル ール を通 商産 業 省(現 経 済産 業 省)令 として定 め,事 後的 に規制 してい く.電 気 事業 法上,問 題 が あれ ば経 済産 業省 が 変更 命 令 を発動 す る.電 力 会社 が届 け出 る接 続供 給約 款 に基 づい て電力会 社 と新規 参 入者 は託 送 契約 を締結 し,託 送 に関 して生 じた紛 争 に対 して は,行 政が事 後 的 に処 理 す る こ とにな った.変 更命 令発 動 の判 断 の主 な基 準 は以下 の10点 であ る. ①
経 営 の効率 化 が適切 に反映 され てい るか.
②
活 動基 準帰 属(ABC)手 ABC手
法 な ど を活 用 して一 般管 理費 を適 切 に配 分 してい るか.
法 とは特定 部 門 に帰属 で きな い費 用 につ い て,当 該費 用 を複 数部 門 に帰
属 させ るた めの客観 的 かつ合 理的 な基 準(活 動基 準,コ ス トドライバ)を 可 能 な限 り設定 し,共 通 経費 を帰 属 させ る こ とをい う. ③
潮 流 安 定 調 整 サ ー ビ ス,受
電 用 変 電 サ ー ビ ス な どの 費 用 を 適 切 に 抽 出 し て い る
か. ④
託 送 コ ス ト を固 定 費 お よ び 可 変 費 に 分 類 し た 上 で,固 定 費 に つ い て は2:1:1法 (当 該 需 要 種 別 の 最 大 電 力 2,電 力 量 1,系 統 ピ ー ク時 の 最 大 電 力 1の 比 率)に よ っ て,可
変 費 に つ い て は 販 売 電 力 量 の 比 率 に よ っ て 大 口 と小 口 に 公 平 に配 分 し て い
る か.
⑤
小 売料 金 メニ ュー と整合 的 な二部料 金 を設 定 して い るか.
⑥
ネ ッ トワ ー ク の利 用 状 況 を 反 映 す る時 間 帯 別 料 金 な ど の 選 択 メ ニ ュ ー が 適 切 に 設 定 さ れ て い る か.
⑦
電 力会 社 の区域 を潮 流改善 に資 す るエ リア を特定 し,電 源不足 地域 に発 電所 を 立 地 す る場 合 につ い て料 金 を割 り引 くエ リア制 料金 が適 切 に設定 され て い るか.
⑧
複 数電 力会社 の 区域 を利 用 す る場 合 に ゾー ン料金 が適 切 に設定 され て い るか.
⑨
同 時同量 が達 成 で きない場合,新 規参 入 者 の発電 量が その需要家 の 需要量 に不 足 す る場 合,契 約 電 力 の 3%の 範 囲 内で 電 力 会社 が そ の不 足分 を補 給 す る料 金
(し わ と りバ ッ ク ア ッ プ 料 金)が 適 切 に設 定 さ れ て い る か.
⑩
新 規 参入 者 の発電 機事 故時 の事故 時バ ックア ップ料 金が 適切 に設 定 され てい る か.
託 送 費 用 を推 定 す る 際 に,将 来 の 適 正 な 費 用(forward
looking
cost)と して 推 定 さ
れ る の も の に適 正 な 報 酬 を加 え た も の とす る.こ の 費 用 に は,設 備 の 更 新 時 期 の 見 直 しや 設 計 の 合 理 化 な ど経 営 の 効 率 化 に よ る コ ス ト低 減 が 織 り込 ま れ る.
3.5.2託
送 料金体 系
省令 に よ り自由化対 象 とな った特 定規模 需要 に係 わ る送 電 関連費 の総額 と原価 算定 期 間 にお ける料 金 収入 は一 致 しな けれ ばな らない.す なわ ち,需 要種 別 の収入 中立 の 原 価 主義 が踏 襲 され てい る.ネ ッ トワー ク利用 形態 を反 映 した託 送料 金体 系 は以下 の よ うな特 徴 を もつ. (1)二
部 料 金制 による基 本 的な メニ ュー
発 電 設 備 と同 様 に 送 電 線 の 利 用 に お い て も,負 荷 率 改 善 は,託 与 す る こ と か ら,ネ め,託
送事 業 の効率 化 に寄
ッ ト ワー ク利 用 者 の 負 荷 率 に応 じ た 料 金 設 定 が 望 ま し い.こ
送 料 金(接 続 供 給 料 金 と呼 ば れ る)は 一 般 の小 売 り電 気 料 金 と同 様,二
と しな け れ ば な ら な い(省 令 に よ る).し 料 金 は割 安 と な る.表3.9に
表3.9
単 位:基
電 力10社
電 力10社
部 料金制
た が っ て,利 用 率 が 高 い ほ ど電 力 量 あ た りの の 託 送 料 金(2000年10月)を
の小 売 り託 送 料 金(2000年10月)
本 料 金 の み 〔円/kW〕,ほ
のた
か は 〔円/kWh〕.
示 す.負 荷 率 の 異
な る産 業 用 ・業 務 用 な ど の 需 要 構 成 の 違 い に よ り平 均 単 価 に ば らつ き が 生 じ,1.35 3.05円/kWhの
範 囲 で あ る.業 務 用 の ウ エ イ トが 高 い ほ ど平 均 単 価 は 高 くな る.東
電 力 の 場 合,基 本 料 金 は495円/kW,電
力 量 料 金 は1.74円/kWhで
な ど業 務 用 需 要 家 な ど の 負 荷 率 が 低 い 月 間 稼 働 時 間200時 業 な ど 負 荷 率 の 高 い 月 間 稼 働 時 間500時
あ る.事 務 所 ビ ル
間 で3.84円/kWh,素
間 で2.58円/kWhと
京
材産
な る.こ れ らの 料 金 単 価
に は全 需 要 家 が 均 等 に 負 担 し な け れ ば な ら な い 電 源 開 発 促 進 税0.455円/kWhを
含
む.
(2)ネ
ッ トワーク 利用 形態 を反 映 した選択 メニ ュー
電 力 各 社 は ネ ッ トワ ー ク利 用 形 態 を 反 映 した 選 択 メ ニ ュー と し て,時 金 サ ー ビス お よ び 夜 間 ピー ク シ フ ト割 引 を提 供 して い る.時 の 基 本 料 金 は 標 準 送 電 サ ー ビス と 同 額 で あ る.時 と し,そ
間帯別 送電 料金 サ ー ビス
間 帯 の 設 定 は 8時 か ら22時
を昼 間
の 他 を夜 間 と す る 2時 間 帯 別 の 設 定 で あ る.託 送 利 用 者 の 夜 間 最 大 託 送 電 力
が 昼 間 を 上 回 る場 合,昼
間 の 最 大 託 送 電 力 を 上 回 る部 分 に つ き圧 縮 評 価 す る の が,夜
間 ピ ー ク シ フ ト割 引 で あ り,基 本 料 金 の60∼85%を
(3)混
間帯 別送 電料
割 り引 く.
雑 回 避の た めの エ リア制 料金
混雑 現 象 を 回避 す るため,イ ギ リス や北欧 の よ うな接続 料金 に需 要地 と電 源地域 で 基 本料 金 に大 きな格差 をつ け,需 要地域 に電 源 を誘 導す る よ うな イ ンセ ンテ ィブ を与 え る こ とが考 え られ る.現 在 の ところ,託 送 の基 本料 金 は電力 会社 域 内の需 要地 と電 源 地域 で 均一 で あ り,基 本料 金 に潮 流改 善 のイ ンセ ンテ ィブ は与 えて いな い.地 点 ご とに潮 流 に基 づ い て この ような送電 料金 を設 定す る方 式 は今後 の課 題 とな って い る. 原 則 と して混 雑 を発生 させ ない こ とが小 売託 送の 前提 とな ってい るた め,わ が国 の送 電料 金 には明 示的 な混 雑 料金 の要素 は含 まれ て いな い.火 力電 源入 札制 度で立 地 点 に よ る需 要 地近 接性 評価 に類 似 した簡 単 な近接性 評価 割 引 を導入 してい る.需 要超過 の エ リア に立 地 す る場合 には託送 料金 が3∼18銭/kWh割 (4)ゾ
り引 かれ る.
ー ン料 金
負荷 距離 法 の よ うに,電 源 と受電 点 の距離 を勘案 した料金 設 定 もあ るが,個 別 の送 電経 路 を特 定 す る こ とが 困難 であ るた め,電 力 会社 の域 内で は距離 に依存 しな い郵 便 切手 方 式 が採 用 され た.本 来電 力 ネ ッ トワー クの潮 流状 況 を分析 し,潮 流の違 いに よ りゾー ンを設 定す べ きで あ るが,実 態 として各 電力 会社 単位 に系統 管理 を行 って い る こ とか ら,各 電 力会 社 の供 給 区域 を ゾー ンと した.新 規 参入 者 が 区域 外 の特定 規模 需 要家 に供給 す る場 合 の送電 料金 は振替 供給 料金 と呼 ばれ,卸 託送 料金 に近 い水 準 に設 定 され て い る.
上記 の標 準 的 な送 電 サー ビスお よび選 択制 のサ ー ビスの ほか に,新 規参 入 者 の発 電 不 足 に対応 す る負荷 変動 対応 電 力,事 故 時補給 電力,定 期検 査時補 給 電 力 な どが 接続 供 給約 款 に含 まれ る.た とえば,事 故 時補 給電 力 の料金 は,平 均 的 な発電 原価 と限界 的 な発 電原 価 との格 差率 や事 故 時 の発 電設 備 の利 用 実績,自 家 発補 給 電力 の料 金 との 整 合性 な どを考慮 して設 定 され る. 原則 と して混雑 を発生 させ ない こ とが小 売託 送 の前提 となって い るが,必 要 な託 送 容 量 が不足 してい る場合 の設 備増 強 の費 用負担 につい て は,以 下 の よ うに設備 別 に定 め られて い る. ①
電源線 の場 合
新規 参入 者 の電源線 も系統 安定 とい う公益 的課 題 に寄 与 す る
と考 え,そ の一定 基 準額 まで は電 力会 社 の電源線 と同様 に託送 コス トに含 め る一般 負 担 とす る.た だ し,す べ て の電源 線費 用 を一般 負担 とす る と,建 設 コス ト低 減 の イ ン セ ンテ ィブが働 か な いた め,一 定 基 準額 以 上 の コス トは新 規 参 入者 の特 定 負 担 とす る.一 定基 準額 は電 力会 社 の託送 約款 に記載 され る. ②
送電線 ・変 電所 の 場合
電力 会社 の送 変電 設備 を増強 す る場合,電 力 会社 の
ネ ッ トワー クが プー ル的 性格 を有 してい る中 で,当 該設備 の増 強原 因 を新規 接 続電 源 に どの程 度 負わ せ るべ きか を厳 密 に特 定 す る こ とは 困難 で あ るた め,一 般 負 担 とす る. ③
負荷線 の場 合
負荷 線 は新規 参入 者 か ら電 力供給 を受 け よう と,電 力 会社 か
ら受 け よう といず にせ よ必要 な もので あ る.し たが っ て,一 般 供給 約款 にお け る需 要 線 の費 用負担 ル ール どお り,一 定 基準額 まで は一般 負担 とし,一 定 基準 額 を越 える分 は特定 負担 とす る. 2000年 3月 に特 別 高圧 需要 家 を対象 と した電 力小 売 り自由化 が 導入 され た.同 年 8 月 にダイヤ モ ン ド ・パ ワーが鹿 島 北共 同発 電(茨 城 県)お よびNKK京
浜 製 鉄所 自家 発
か ら調 達 した電力 を東京 電力 の ネ ッ トワー クを利 用 して東京丸 の 内 の三 菱 地所 な ど事 務 所 ビル に31850kWの
電 力 を供 給 した のが最 初 の小 売 り託 送 とな った.2001年
現 在,経 済産 業省 に届 け出た 特定 規模 電気事 業者(PPS)は す る発 電機 出力 の合計 は約102万kWで
4月
9社 で,供 給 力 と して使 用
ある.託 送料 金 の設定 は,地 元 電 力会 社以 外
か らの供 給 の規模 に少 なか らぬ影 響 を与 え るため,今 後 も慎重 に検 討 す べ きで あ る.
3.6今
後の課題
ドイ ツの よ う に,い わ ち,自
っ た ん,導
由化 導 入 の1998年
入 した 託 送 料 金 制 度 を 短 期 で 見 直 す例 も あ る.す
か ら2000年
な
ま で は 送 電 電 圧 と距 離 比 例 方 式 の 併 用 で あ っ
た が,2001年
1月 か ら適 用 予 定 の 新 託 送 ガ イ ドラ イ ンで は,距 離 比 例 方 式 を廃 止 し,
電 圧 別 の み に し,北
欧 の よ うな 需 要 家 へ の 接 続 地 点 で 決 定 す る ポ イ ン ト料 金 制 度 とな
る.複 数 の 送 電 網 を ま た ぐ取 引 も存 在 し,大 手 8社 が 送 電 網 を所 有 す る た め,中
継電
力 会 社 に お け る託 送 コ ス ト は当 事 者 間 の交 渉 に よ り配 分 され る. また,ア
メ リカ で は六 つ のISOが
し が 進 ん で い る.し
独 自 の 送 電 料 金 体 系 を導 入 して お り,現 在 も見 直
か も,見 直 し後 の 価 格 設 定 方 式 もニ ュー ヨ ー ク州 の 需 要 サ イ ド ・
ノ ー ダ ル プ ラ イ シ ン グ や ニ ュー イ ン グ ラ ン ドの ゾ ー ナ ル プ ラ イ シ ン グ な ど必 ず し も あ る 一 定 の 方 式 に 収 束 す る訳 で は な く,進 化 の途 中 とみ る べ き で あ ろ う.こ れ は 送 電 系 統 の 運 用 が 地 域 ご と の 電 力 事 情,歴
史 的経 緯 な ど に 依 存 す る と こ ろ も あ り,理 論 の み
か ら は ど の 方 式 が 最 も優 れ て い る と は い い き れ な い こ と を如 実 に 表 し て い る. わ が 国 で は部 分 自 由 化 を 導 入 し た ば か りの た め,ま い な い が,自
だ 大 き な 問 題 と して 顕 在 化 し て
由 化 で 先 行 し,広 域 取 引 が 増 え て い る地 域 で は 送 電 投 資 問 題,特
に連系
線 の 弱 さ が 未 解 決 の 問 題 と して 残 っ て い る. 理 論 的課 題 と して は,ゾ に な っ て い な い.し
ー ン制 料 金 が 送 電 投 資 を促 進 す る か 否 か は現 時 点 で は 明 確
か し,混 雑 費 用 を 内 部 化 す る 送 電 料 金 設 定 が 理 論 的 に 望 ま し い こ
とは 明 らか で あ る.送 電 料 金 が 電 気 料 金 に 占 め る割 合 は必 ず し も 大 き くな い が,送
電
容 量 不 足 が 発 電 容 量 不 足 や 市 場 支 配 力 と あ い ま っ て短 期 的 な価 格 高 騰 を招 く可 能 性 も あ り,ア
メ リ カ で 送 電 投 資 問 題 が 注 目 され て い る.現 在 の 送 電 価 格 水 準 の み で は送 電
会 社 に対 し て 送 電 投 資 へ の 十 分 な イ ン セ ン テ ィブ を与 え る こ と は で き ず,過 傾 向 に あ る.ア で,過
去25年
メ リ カ エ ジ ソ ン 電 気 協 会 に よ る と,1998年 間 年 間1.15億
た,送
の 送 電 投 資 額 は25億
ドル(実 質 価 格)の ペ ー ス で 減 少 して き た と さ れ る.ア
リカ で 送 電 線 建 設 が 長 期 に 停 滞 し て い る 主 な理 由 は,建 あ る た め で あ る.ま
小 投 資の ドル メ
設 す る際 の土 地 取 得 が 困 難 で
電 線 建 設 に よ り域 外 供 給 者 に 自社 需 要 を奪 わ れ る お そ れ が
あ る.そ こ で,規 制 の 見 通 しが 不 透 明 な 環 境 下 で 地 域 送 電 機 構(RTO)の 画 と投 資 を 合 理 化 す る も の と期 待 さ れ て い る.送 電 設 備 の 立 地 難,不
形 成 は送 電 計 透 明 な 将 来 の規
制 政 策 に もか か わ ら ず,停
電 の 社 会 的 コ ス トや 送 電 制 約 に よ る 市 場 支 配 力 の 行 使 に よ
る機 会 費 用 を鑑 み れ ば,十
分 な 送 電 容 量 を確 保 す る た め の費 用 は正 当 化 さ れ る べ き で
あ ろ う.
参 考文献 1)岡
田,浅
野:ノ
ー ダ ル プ ラ イ ス の 基 づ く送 電 料 金 の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 分 析,電
究 所 報 告,Y97019,1998.
力 中央研
2)浅
野,岡
田:地
域 別 送 電 線 使 用 料 金 の 算 定 手 法,電
気 学 会 論 文 誌B,117-B,1,pp.61-
67,1997. 3)Fred Spot
C.Schweppe,Michael Pricing
of
C.Caraminis,Richared
Electricity,Kluwer
4)NERC:Transmission
D.Tabors,and
Academic
Loading
Relief
Roger
E .Bohn
Publisher,1987.
Procedure
http://www.nerc.com/∼oc/pds
.
html
5)鈴
木:ニ
ュ ー ヨ ー ク パ ワ ー プ ー ル に お け る ロ ケ ー シ ョ ナ ル プ ラ イ シ ン グ の 適 用(米 国),
海 外 電 力,pp.2-13,1998. 6)I.Matsukawa,K.Okada tic
and
Electricity
Markets"the
Sydney,Australia,7-10,June
H.Asano:"Transmission 23rd
Annual
木:米
国 に お け る 送 電 権 の 適 用,海
8)田
山:英
国NGC社
-194
in
Oligopolis
of
the
IAEE,
外 電 力,pp.22-26,1999-06.
の 送 電 料 金 に つ い て,海 pricing
in England
外 電 力,pp.12-23,1996-02. and
Wales,Utilites
Policy,6,3,pp.185
,1997.
10)C.Wilcok ment,Powey 11)伊
Conference
2000.
7)鈴
9)R.Green:Transmission
Investment
International
and M. Krun:Wheeling
in Germany-the
Economics,2,pp.22-23,June
藤:VDEW,VIK,BDIの
Industry Associations'Agree
1998.
3者 間 託 送 料 金 協 定 の 内 容 と料 金 算 定 事 例,海
外 電 力,
pp.16-22,1998-10.
12)L.D.Kirsch:Pricing
the Grid,Comparing
Transmission
Rates of the U.S.ISOs
Public Utilities Fortnightly,Feb.15,2000. 13)桑
原:北 欧電 力 市場 統 合 と英 国電 力 計 量 シ ス テム,海 外 電 力調 査 会,1998 .
,
第 4章 短期限界費用と最適潮流計算
電 力 市場 の 自由化,特 に送電 線 の開 放 に伴 い,融 通や 託送 な どの料金 に対 す る透 明 性 と公 正化 が求 め られ てい る.こ の ような背景 の もとで,地 点別 の電 力価格 を示 す指 標 で あ るノー ダル プラ イス を利 用 した 送電 線混 雑管理 手 法 の研 究 が なされ て い る.こ のノ ーダ ルプ ライ スは短期 限界 費 用 に基 づ く定 式化 が な され て お り,そ の計 算 には最 適潮 流 計算 法*1な どに よる電力 シス テムの"最 適 運 用"の 保証 が必 要 とな る. 本 章 で は,ま ず ノー ダル プラ イス計 算 の基礎 とな る短期 限 界費 用の算 出 方法 につい て説 明 し,有 効 電力 の みを考慮 した ノー ダル プ ライス計算 方 法 につい て説 明す る.次 に電 圧 や無効 電 力 も考慮 す る こ との で きる最適 潮流計 算 法 の定式化 を説 明 し,近 年 注 目を集 め てい る内点法 に よる解 法 を解説 す る.最 後 に,電 力 市場 自由化 に よ り幅 広 く 適用 され る こ とにな っ た,近 年 の 最適 潮流 計算 法 の拡張 に つい て説 明 す る.
4.1短
期限界費用の算出方法
4.1.1短
期 限界 費 用 の 定 義
前 章 の 送 電 料 金 決 定 理 論 に お い て,ノ
ー ダ ル プ ラ イ ス と は電 力 の 需 給 均 衡 モ デ ル と
送 電 系 統 の キ ル ヒ ホ ッ フ則(潮 流 方 程 式)の 両 方 を満 足 す る 数 学 的 最 適 化 モ デ ル に 基 づ い た,各
地 点 で の 電 力 の 価 格 づ け と し て 定 義 さ れ た.こ
の モ デ ル で は,発 電 機 の 燃 料
費 や 需 給 平 衡 条 件 の よ う な 瞬 時 あ る い は あ る短 い 期 間 の み を 考 慮 した 定 式 化 が 行 わ れ る た め,そ る.送 *1
の 限 界 費 用 は 短 期 限 界 費 用(SRMC:short
電 系 統 の 各 地 点(母 線,ノ 潮 流 と はPower
計 算"が
Flowの
ー ド)の 短 期 限 界 費 用 が"発
marginal
cost)と 呼 ば れ
電 限 界 費 用 ・需 要 限 界 便
日本 語 訳 で あ り,送 電 線 を流 れ る電 力 を 示 して い る.ま た,"最 適 潮 流
電 力 潮 流 の 最適 化 を 目的 と した もの で あ るが,よ
の 法 則 に則 っ て,電
run
く似 た名 前 の"潮
流計 算"は
力潮 流 の 流 れ を計 算 に よ り求 め る も ので あ り根 本 的 に 異 な る.
キル ヒホ ッ フ
益","送
電 損 失 の 増 分 費 用","送
費 用(機 会 費 用)"で スpiは
電 容 量 制 約 の よ うな 電 力 系 統 の 制 約 に よ り発 生 す る
表 され る と考 え る と,各
ノ ー ドの 限 界 費 用 で あ る ノー ダ ル プ ラ イ
次 式 の よ う に 表 す こ と が で き る.
(4.1) こ こで,x
は状 態 変 数 ベ ク トル,MCi(x)は
益,MLi(x)は
ノ ー ド iで の 発 電 限 界 費 用 ・需 要 限 界 便
ノ ー ド iで の 送 電 損 失 の 増 分 費 用,OCi(x)は
送 電 容 量 制 約 な ど の制 約
に よ り生 じ る機 会 費 用 で あ る. も し,送 電 損 失 が な く,す べ て の制 約 を ま っ た く違 反 す る こ とな く,電 力 系 統 が 経 済 効 率 的 に 最 適 に運 用 され て い る とす る と,式(4.1)の
第 2項 と 3項 は 0 とな り,各 ノ
ー ドの 限 界 費 用 が 系 統 全 体 の 発 電 限 界 費 用 ・需 要 限 界 便 益(一 般 に シ ス テ ム ラ ム ダ と 呼 ば れ る)と 等 し く な る.つ
ま り,す べ て の 地 点 で の 増 分 費 用(単 位 電 力 あ た り の 供
給 ・需 要 の 増 加 に対 す る費 用)が 同 じ とな る.こ の こ と は,電 力 費 用 ・価 値 が ど の地 点 で も同 じ とい う こ と を表 し て い る. こ の モ デ ル に お い て,容 量 W を ノー ドij間 で 託 送 を行 う と き,ノ ー ダ ル プ ラ イ ス に基 づ く託 送 料 金WRijは
次 式 で 定 義 す る こ と が で き る.
(4.2) 一 般 に,電
力 系 統 の ふ る まい は状 態 変 数 の 非 線 形 関 数 と し て 表 さ れ,ノ
イ ス は"最 適 な運 用"と MLi(x)やOCi(x)は
い う条 件 の も とで 計 算 さ れ るの で,piを
ー ダル プ ラ
構 成 す る要 素 で あ る
非 線 形 最 適 化 問 題 の 解 か ら求 め る 必 要 が あ る.次 項 で は,x
と
し て 発 電 機 出 力 や 需 要 の 有 効 電 力 分 の み を用 い て 簡 略 的 に 定 式 化 し た直 流 法 潮 流 計 算 に基 づ くノ ー ダ ル プ ラ イ ス 計 算 法 につ い て説 明 す る.
4.1.2直
流 法 潮 流 計 算 に 基 づ く ノー ダ ル プ ラ イ ス の 計 算 法1∼4)
ノ ー ドiで の 発 電 量,需
要 量,お
の と き,ノ ー ドiで の 需 要 便 益-発
よ び そ の 差 を そ れ ぞ れPGi,PLi,Piと 電 費 用 と し て 定 義 さ れ るFiは,以
す る.こ 下 の式 で表 す こ
と が で き る.
(4.3) このFiの
総 和 で あ る社 会 厚 生 を 目 的 関 数 と し て 最 大 化 す る こ と に よ り,需 要 家 は
そ の 便 益 を 最 大 化 し,供 給 者 は供 給 コ ス トの 最 小 化 を 達 成 す る こ とが で き る.し か し, 式(4.3)は
さ ま ざ ま な 物 理 制 約 を無 視 した 消 費-供
給 便 益 の み を表 して お り,電 力 系
統 に お い て 満 た す べ き物 理 的 電 気 回 路 の 方 程 式 が 考 慮 さ れ て い な い.
電 力系 統 に おい て満 た さな けれ ばな らない需給平 衡 条件 は,
(4.4) こ こ で,PLoss(P)は 件 と し て,以
系 統 全 体 の 送 電 損 失 で あ る.ま た,電 力 系 統 運 用 上 満 た す べ き条
下 の 制 約 を 考 慮 す る.
(4.5) (4.6) (4.7) 直 流 法 に基 づ く定 式 化 に お い て は,線 路 潮 流PFij(P)は
潮 流 分 流 係 数 ベ ク トルAi
を 用 い て,
(4.8) の よ う に 表 さ れ る.ま
た,総
線 路 損 失PLoss(P)は
各 線 路 の 抵 抗rijを 用 い て 以 下 の
よ う に 近 似 的 に計 算 す る こ とが で き る.
(4.9) した が っ て,最
適 化 す べ き問 題 は,以 下 の とお り と な る.
(4.10)
式(4.10)は
有 効 電 力 の み を 変 数 と し て 定 式 化 が 行 わ れ て お り,線 形 計 画 法 や 2次 計
画 法 を用 い て 容 易 に 解 を 求 め る こ とが で き る. 式(4.10)に
対 し て,ラ
グ ラ ン ジ ュ関 数L(P)を
定 義 す る.
(4.11) こ の ラ グ ラ ン ジ ュ 関 数 の 勾 配 ベ ク トル で あ る 1階 の 偏 導 関 数 は,
(4.12) と な る.式(4.10)の
*2
最 適 化 問 題 の最 適 解 に お け る有 効 制 約 条 件 下*2 の勾 配 ベ ク トル が
有 効 不 等 式 制 約 とは 最 適 点 に お い て 等 式 制 約 に加 え て,不 等 式 制 約 の うち で 制 約 境 界 上 に あ り,
か つ,そ
の 不 等 式 制 約 を取 り除 い た と きに は 制 約 違 反 を引 き起 こす もの を い う.
1次 独 立 な らば,Kuhn-Tucker条
件 を満 た す 解 が 存 在 す る.こ
こで,λ1と/λ2ijは そ れ
ぞ れ 需 給 バ ラ ン ス と送 電 線 容 量 欄 約 に 関 す る ラ グ ラ ン ジ ュ の 未 定 定 数 で あ る. 送 電 損 失 を 考 慮 した 需 給 制 約 条 件 と送 電 線 容 量 制 約 の 両 方 を 満 足 し,社 会 厚 生 を最 大 化 す る ラ グ ラ ン ジ ュ 定 数 が 得 られ た ら,以 下 の よ う に各 ノ ー ド ご との ノ ー ダ ル プ ラ イ スpiを
求 め る こ とが で き る.
(4.13) このpiを
用 い て,式(4.2)に
よ り託 送 料 金 を決 定 す る こ とが で き る.
本 項 で 説 明 し た ノ ー ダ ル プ ラ イ ス の 計 算 手 法 で は,有 効 電 力 の み を 変 数 と して い る た め 解 法 が 容 易 で あ る半 面,電
圧 や 無 効 電 力 な ど の制 約 を考 慮 す る こ と が で きな い と
い う欠 点 が あ る. 一 方,電 圧 や 無 効 電 力 も 同 時 に 考 慮 し た 定 式 化 で は,制 約 条 件 が 非 線 形 関 数 と な り, 問題 は大 規 模 非 線 形 計 画 問 題 とな る.こ
の 種 の 問 題 は 最 適 潮 流 計 算 法 と し て1960年
代 よ り研 究 が 続 け られ て お り,現 在 で は 大 規 模 問 題 に 対 し て も十 分 高 速 に 解 を得 る こ とが で き る よ う に な っ て い る.次 節 で は,そ
4.2最
の 最 適 潮 流 計 算 法 の 定 式 化 を説 明 す る.
適潮流計算法の定式化
セ キ ュ リテ ィ を あ る程 度 確 保 し な が ら,経 済 性 を満 足 す る 運 用 計 画 を 策 定 す る た め の 有 力 な 方 法 と し て,1962年J.Carpentierに power
よ っ て 最 適 潮 流 計 算 法(OPF:optimal
flow)の 概 念 が 提 案 さ れ た 5).最 適 潮 流 計 算 法 は,電 力 回 路 網 の 平 衡 条 件 を規 定
した 等 式 制 約,電
力 系 統 を 安 全 に運 用 す る た め の 種 々 の 条 件 を規 定 す る た め の 不 等 式
制 約 の 条 件 下 で,あ
る 目的 関 数 を最 小 化 す る 計 算 ア ル ゴ リズ ム で あ り,数 理 計 画 分 野
の 最 適 化 問 題 の 範 疇 に 属 す る. 最 初 の 実 用 的 なOPF解
法 は,1968年W.F.TinneyとH.W.Dommelに
さ れ た 縮 約 勾 配 法 に基 づ く手 法 で あ る6).そ の 後,縮 つ か 提 案 さ れ た が,問
よ り提 案
約 勾 配法 を拡 張 した手 法が い く
題 規 模 が 大 き くな る と収 束 が 困 難 に な る と い う 欠 点 を有 して い
た6,7).その 後 準 ニ ュ ー トン 法 な ど の よ り強 力 な 数 理 計 画 手 法 に よ る解 法8∼10)が提 案 さ れ た が,計
算 速 度 の 問 題 か ら大 規 模 系 統 へ の 適 用 は困 難 で あ っ た.こ
な解 法 と し て 線 形 計 画 法 に 基 づ くOPFが 考 慮 で きな い た め,非 1984年EPRI主 Kuhn-Tucker条
の た め,現
実的
提 案 さ れ た11∼13)が,電 力 系 統 の 非 線 形 性 を
線 形 性 の 弱 い 有 効 電 力 の 問 題 と し て 取 り扱 わ れ て い た.
導 の も と で 開 発 さ れ た ニ ュ ー ト ン 形OPFは,最
適条 件 であ る
件 を直 接 解 く も の で あ り,ス パ ー ス技 法 を 採 用 し て い る た め きわ め
表4.1
OPFの
解 法 に よ る分 類
糊御 ・状態変数
解法 線形 計画法
有効 電力のみ 電 圧 の 大 き さ ・位 相 角
2次計画法 非線形計画法
(複 素 電 圧)
逐次線形計 画法 縮約勾配 法
変 圧 器 タ ッ プ比 な ど 準 ニ ュ ー ト ン法 ニ ュ ー トン法
主双 対内点法
て 高 速 で あ る が 多 数 の 不 等 式 制 約 の 取 り扱 い に難 が あ っ た14,15).1984年
のKermer
kerの 提 案 し た 内 点 法 に よ る線 形 計 画 問 題 の 解 法 は,従 来 か ら広 く用 い ら れ て い る シ ン プ レ ッ ク ス 法 に よ る解 法 に比 べ圧 倒 的 に 高 速 で あ っ た.こ 対 内 点 法 は,OPF問
の内点 法 を拡張 した主双
題 を高 速 に,確 実 に 収 束 させ る も の で あ っ た16∼19).現在,こ
双 対 内 点 法 に 基 づ くOPFが い て ま とめ る と表4.1と
の主
解 法 の 主 流 と な りつ つ あ る.最 適 潮 流 計 算 法 の 解 法 に つ
な る.
本 節 で は,電 圧 の 大 き さ ・位 相 角 変 圧 器 タ ッ プ比 な ど の 変 数 を考 慮 す る こ と の で き る 自 由 度 の 高 いOPF問
題 の定 式 化 を行 い,主
双 対 内 点 法 に よ る 解 法 を説 明 す る.
4.2.1
OPF問
OPF問
題 は,制 約 付 き最 適 化 問 題 と し て式(4.14)の
題 の定式化 よ う に記 述 さ れ る.こ
こ で,変
数 ベ ク トル x は状 態 変 数 や 制 御 変 数 を す べ て 含 ん だ もの と し て 定 義 され る.(準)ニ
ュ
ー トン法 や 主 双 対 内 点 法 の 解 法 に お い て ,状 態 変 数 と制 御 変 数 の 区別 は 必 要 な い.し か し,縮 約 勾 配 法 で は 制 御 変 数 の選 択 方 法 に よ り,そ の 解 法 の 性 能 が 大 き く左 右 され る.
(4.14)
こ こで,x:変
数 ベ ク トル,F(x):目
的 関 数,h(x):等
式 制 約,g(x):不
等 式 制 約,
で あ る. 一 般 に,電
力 系 統 に お い て 目 的 関 数 お よ び制 約 は 変 数 の 非 線 形 関 数 とな る た め,本
問 題 は非 線 形 最 適 化 問 題 に な る.こ の 問 題 の 最 適 点 はKuhn-Tucker最 さ な けれ ば な ら な い.
適 条 件 を満た
4.2.2
目的関数
OPF問
題 を最 小 化 問 題 と し て 定 義 して い る た め,ノ
ー ダル プ ラ イス を計 算 す るた
め の 目的 関 数 は総 発 電 費 用 ― 総 需 要 家 便 益(つ ま り社 会 厚 生 の 負 値)と し て 定 義 す る. 発 電 費 用 は式(4.15)の
第 1項 で 示 さ れ る よ う に発 電 機 出 力 の 2次 関 数 と し て近 似 す る
こ とが で き る.一 方,需
要 家 便 益 も同 様 に需 要 の 2次 関 数 と し て 定 義 す る こ とが で き
る.
(4.15)
こ こ で,F(x)は PLk(x)は
目 的 関 数 を 表 し,k
は ノ ー ド,PGk(x)は
ノ ー ド k で の 電 力 需 要,agk,bgk,cgkは
ノ ー ド k で の 発 電 機 出 力,
発 電 コ ス ト係 数,alk,blk,clkは
需要
便 益 関 数 の 係 数 を 表 す.
等式制 約
4.2.3 OPFの
解 は 各 ノ ー ドに お い て 潮 流 方 程 式 を満 足 す る 必 要 が あ り,こ れ を等 式 制 約
と し て 取 り扱 う.
(4.16) (4.17) こ こ で,Ei:ノ
ー ド iで の 電 圧 の 大 き さ,δij:ij間
ド ミ タ ン ス 行 列 のij要
素 の 実 部 と 虚 部 を 表 す.ま
の 電 圧 位 相 差,Gij,Bij:ノ たPiS,QiS:有
効,無
ー ドア
効 電 力 の指 定
値 を 表 す.
4.2.4
不等式制約
系統 の物理 的 限界 お よび運用 上 の限界 を守 るた めに不等 式制 約 を課 す こ とが必 要 で あ る.OPFに
おい て,以 下 の不 等式 制 約が 取 り扱わ れ る.
母 線電 圧 に対 す る制 限 (4.18) 変圧 器 タ ップ比 に関す る制 限 (4.19) 発電 機 出力 に対 す る制 限 (4.20)
無 効電 力発 生源 に対 す る制 限 (4.21) 需 要 に対 す る制 限 (4.22) 線 路潮 流 に対 す る制 限 (4.23) こ こで,PFij(x)は
4.3 4.3.1主
ノ ー ドij間 を流 れ る 有 効 電 力 潮 流 を表 す .
内点法による最適潮流計算の解法 双 対 内 点 法 に よ るOPFの
本 項 で はOPF問
定 式 化17)
題 に 対 す る 主 双 対 内 点 法 を 用 い た 解 法 を 説 明 す る.ま
(4.14)で 表 さ れ るOPF問
題 に対 し て,非
負 の ス ラ ッ ク 変 数 ベ ク トルl,uを
ず,式 それ ぞれ
下 限 お よ び 上 限 の 不 等 式 制 約 に代 入 す る と,問 題 は ス ラ ッ ク 変 数 を除 くす べ て の 不 等 式 制 約 が 等 式 制 約 に 変 換 さ れ る.
(4.24)
次 に,こ
の 問 題 に ラ グ ラ ン ジ ュ の 未 定 乗 数 法 を適 用 す る と,以 下 の ラ グ ラ ン ジ ュ 関
数L(P)が
得 られ る.
(4.25)
こ こ で,
ュ乗 数 ベ ク トル,z,w:不
と な る 合 成 ベ ク トル,λ:等
式制 約 の ラ グラ ンジ
等 式 制 約 の ラ グ ラ ン ジ ュ乗 数 ベ ク トル,z,w:ス
ラ ッ ク変
数 の ラ グ ラ ン ジ ュ乗 数 ベ ク トル を表 す. ラ グ ラ ン ジ ュ関 数L(P)を
ス ラ ッ ク 変 数 に 関 し て 偏 微 分 を と る と,次
式 の よ うに な
る.
(4.26)
これ で,問 る.p*を
題 は 式(4.25)で
表 さ れ る ラ グ ラ ン ジ ュ関 数L(p)を
最 適 点 で あ る と仮 定 す る と,Kuhn-Tuckerの
最 小 化 す る 問 題 とな
最 適 条 件 か ら以 下 の 式 が 成 り
立 つ よ う な p*を 求 め る 問題 に 置 き換 え る こ とが で き る.
(4.27) 合成 ベ ク トル p の それ ぞ れの変数 で偏 微分 した もの は次 式 で表 され る.
(4.28)
の 対 角 行 列,e は単 位 列 ベ ク トル を表 す.
は
こ こ で,
左 辺 の L の 添 字 は,L
を そ の 添 字 が 示 す 変 数 で 偏 微 分 し た こ と を表 す.
次 に 上 式 に ニ ュ ー ト ン法 を適 用 す る.反 復 k 回 目 のpkが と仮 定 し,式(4・27)の
最 適 解 p*の 近 傍 に あ る
テ イ ラ ー 展 開 の 1次 まで の 近 似 を行 い,線
形 化 す る と以 下 の よ
う に な る.
(4.29) こ の 式 を 用 い て 反 復 ご と の 変 数 の ニ ュ ー ト ン修 正 量 ⊿pkを 求 め る.こ (4.26)のl,uで
こ で,式
偏 微 分 した 相 補 条 件 式 を そ の ま ま線 形 化 す る と以 下 の よ う に な る.
(4.30) こ こで,た
と え ば あ る ⊿likが k 回 目 の 反 復 で 偶 然 0に な る とk+1回
目に
とな り,一 度 ⊿likが 0,つ ま り実 行 可 能 領 域 の 境 界 に落 ち 込 む と,そ の境 界 か ら 出 れ な くな っ て し ま い,収 束 を妨 げ る こ と に な る.ま wに
も起 こ る 可 能 性 が あ る.そ こで,式(4.26)のl,uで
た 同 じ よ う な こ とがu,z,
偏 微分 した式 に摂動 係数 とし
て μ〓0を 以 下 の よ う に 導 入 す る こ と に す る.
(4.31) この 摂 動 係 数 に よ り,l,u,z,wが
実行可 能領 域 の境 界 に 向か わ ない よ うに す る こ
と が で き る.よ っ て す べ て のKuhn-Tucker条
件 式 を問 題 な く線 形 化 す る こ とが で き,
修 正 方 程 式 は以 下 の よ う に な る.
(4.32) (4.33) (4.34) (4.35) (4.36) (4.37) こ こ で,▽
は微 分 演 算 子 で あ り ▽ は 1階 の,▽2は は 摂 動Kuhn-Tucker方
こ の 式(4.32)∼(4.37)で
2階 の 微 分 を 表 す.
程 式 の 残 差 ベ ク トル で あ る.
表 さ れ る修 正 方 程 式 を 連 立 し て 解 く と,不 等 式 制 約 の 個 数
が 増 え る に した が っ て 係 数 行 列 の 次 元 が 増 加 し,計 算 時 間 の 点 で 大 き な 問 題 と な りう る.そ
こ で,関
数 不 等 式 制 約 に対 応 す る変 数 の 縮 約 を行 う こ とで 不 等 式 制 約 の 増 加 に
伴 う係 数 行 列 の 次 元 の増 加 を回 避 す る.式(4.34)と そ れ を 式(4.36)と す る と,以
式(4.37)に
下 の 修 正 量 がx,λ
代 入 し て ⊿z,⊿wを
式(4.35)を
⊿l,⊿uに つ い て 解 き,
得 る.得 た 修 正 量 を 式(4.32)に
代入
の み に 縮 約 さ れ た 以 下 の 修 正 方 程 式 を得 る こ とが で き
る.
(4.38) こ こ で,
式(4.38)で
示 され る修 正 方 程 式 を 解 くた め に,行 列 のLU分
こ の 係 数 行 列 の 次 元 は ノ ー ド数 の 4倍 に な るた め,大
る た め に は ス パ ー ス処 理 技 法 を 導 入 す る 必 要 が あ る.図4.1に る た め の 例 題 系 統 を示 す.発 図4.2に
解 を行 う必 要 が あ る.
規 模 問 題 に お い て 高 速 に解 を 得 係 数 行 列 の 形 を理 解 す
電 機 が 2台 接 続 され た 4母 線 系 統 で あ る.
修 正 方 程 式 の 係 数 行 列 が 示 さ れ て い る.図 中 の h は ヘ シ ア ン行 列 の 要 素,
fは ヤ コ ビ行 列 の 要 素,k は 制 御 変 数 に対 応 す る 非 零 要 素 を示 し て い る.な お,*は と も と 0で あ っ た 要 素 がLU分
解 途 中 で 非 零 と な っ た も の で,Fill-inに
相 当 す る.
も
図4.1
4母 線 例 題 系 統
図4.2 修正 方程 式の係数行列
4.3.2
主双対 内点法 のアル ゴリズム
主双 対 内点 法 の アル ゴ リズム を説明 す る. Step 1:
制 約 の 内 点 か ら 始 ま る よ う(l,u,x)>0とw<0,λ
そ し て σ(中 心 パ ラ
メ ー タ)を 選 ぶ.ま た,有 効,無 効 電 力 出 力 は 制 約 値 の 中 間 値 を初 期 値 と し て 選 ぶ. Step 2:
相 補 ギ ャ ップ を 計 算 す る.
Step 3:
相 補 ギ ャ ッ プ と潮 流 方 程 式 の 残 差 が 許 容 値 以 内 な ら 最 適 解 を 出 力 し 終 了.そ
Step 4:
う で な け れ ばStep
4へ
以 下 の 式 を 用 い て 摂 動 係 数 を計 算 す る.
Step 5:
修 正 方 程 式(4.38)を
Step 6:
最 大 ス テ ッ プ 長 を 以 下 の 条 件 で 決 定 す る.
Step 7:
主 双 対 変 数 を 以 下 の 式 を 用 い て 更 新 し,Step
図4.3に
解 き ⊿x,⊿l,⊿u,⊿z,⊿wを
計 算 す る.
2へ も ど る.
主 双 対 内 点 法 プ ロ グ ラ ム 全 体 の フ ロ ー チ ャー トを 示 す.
この 図 に お い て,①
… … ⑦ は,そ れ ぞ れ 文 中 のSTEP
図4.3
1か らSTEP
主双 対 内 点 法 フ ロー チ ャー ト
7に 相 当 す る.
4.3.3主
双 対 内 点 法 に よ るOPF解
主 双 対 内 点 法 に よ るOPF解
法 プ ロ グ ラム を14ノ
テ ス ト系 統 に 適 用 し た.表4.2は 等 式 制 約 の 数 も載 せ て い る.た
Station 10(約100
ー ドか ら118ノ
ー ド ま で のIEEE
テ ス ト系 統 の 規 模 を 示 して お り,制 御 変 数 の 数 と不 だ し,表
さ れ る も の は 含 まれ て お らず,関 SPARC
法 の実行例
中の不等 式制 約 は変数 そ の ものの上 下 限で表
数 不 等 式 制 約 の 数 を 表 して い る.適 用 計 算 機 はSun
MIPS)で
あ り,現 在 で は か な り遅 い マ シ ン で あ る こ と に 注
意 す る 必 要 が あ る. 表4.3に
示 さ れ て い る よ う に,IEEE
を 得 て い る こ とが わ か る.ニ
118母 線 系 統 に お い て 約 1秒 程 度 と高 速 に 解
ュ ー トンOPF解
法 に比 べ て 反 復 回 数 が 多 い が,多
不 等 式 制 約 が 同 時 に 有 効 に な る よ う な 場 合 に は 主 双 対 内 点 法 の 方 が,計
数の
算 の安 定性 と
い う観 点 か ら み て もす ぐれ て い る. 表4.2
テ ス ト系 統 の規 模,制
表4.3 主双対 内点法OPFの
4.4
御 変 数,不
等式制約の数
計算時間/反 復 回数
最適潮流計算法の拡張
最 適潮 流計 算 アル ゴ リズム の改 良や計 算機 性能 の 向上 に よって,最 適 潮 流計 算法 が 電力 系統 の 系統運 用 ・計 画 におい て,広 く一 般 的 に使 用 され る よ うにな って きた.ま た電 力市 場 自 由化 によ る不 確定 性 の増大 に よ り,よ りロバ ス トな最 適潮 流 計算 法 の開 発 が望 まれ てい る.本 節 で は,こ れ まで最適 潮 流計 算が取 り扱 う こ とが困 難 で あった 分 野 に拡張 され つつ あ る,最 新 の最適 潮流計 算 法 につ いて説 明す る.今 回取 り上 げ る
の は,“実行 不可能 な運転 状態 に対 す る最適 潮流計 算法 ”,“ 電圧安 定 度 を考慮 した最適 潮 流計 算法” そ して,“安 定 度制約 を考 慮 した最 適潮 流計算 法” の三 つ で あ る.
4.4.1実
行 不 可 能 な 運 用 条 件 に 対 す る 最 適 潮 流 計 算 法23)
電 力 市 場 自 由化 の 進 展 や 制 御 で き な い 硬 直 電 源 の 増 加 に 伴 い,電 画 は 多 角 化,不
透 明 性 が 顕 著 に な っ て き て い る.特
に,計
力 系 統 の 運 用 ・計
画 立 案 段 階 で は実 行 不 可 能
な運 用 状 態 が 生 じ る場 合 も増 加 し,系 統 解 析 に も支 障 が 生 じて く る.そ 不 可 能 な 運 用 条 件 が 与 え られ た と き で さ え,何
の た め,実
行
らか の解 を 得 て,そ
の解 か ら実行 可能
な運 用 条 件 へ の 速 や か な 回 復 を可 能 に す る手 法 が 望 まれ て い る.こ
の よ うな問題 は実
行 可 能 性 の 回 復(restore
feasibility)問 題 と呼 ばれ て い る.本 項 で は 負 荷 ノ ー ドに お い
て 負 荷 遮 断 を行 う こ と で,実
行 不 可 能 な運 用 状 態 に復 帰 す る こ と を 可 能 に す るOPF
手 法 の 定 式 化 に つ い て 説 明 す る.な
お,解 法 は4.3節
で 説 明 し た 主 双 対 内 点 法 を用 い
る こ と で 高 速 に解 を得 る こ とが で き る. (1)
問題の定式化 (4.39)
こ こで,f(x):発 す.等
電 機 コ ス ト関 数,CLS:負
荷 遮 断 コ ス ト係 数,PLS:負
荷 遮 断量 を表
式 制 約 は以 下 の 潮 流 方 程 式 で あ る.
(4.40) こ こで,P(x),Q(x):正 QL:有
味 の 有 効 無 効 電 力,Pc,QG:有
効 ・無 効 負 荷 を表 す.不
変 圧 器 タ ップ 比,位
等 式 制 約 は電 圧,有 効,無
効,無
効 電 力 発 生 量,PL,
効 電 力 発 生 量,線
相 制 御 角 を 考 慮 す る.負 荷 遮 断 変 数PLSを
路 潮 流,
導 入 す る と有 効 電 力 に
対 す る潮 流 方 程 式 は 次 式 の よ うに 修 正 さ れ る.
(4.41) また,無 効 電力 の遮 断量 を定 義 す る等式制 約 が追加 され る. (4.42) 負 荷遮 断量 に対 す る上下 限値 が 設定 され る (4.43) (2)
lEEE
30テ
ス ト系 統へ の実 行 例
上 記 の 問 題 に対 して,4.3節
で 記 述 さ れ た 主 双 対 内 点 法 を適 用 し た プ ロ グ ラ ム を 用
図4.4
ノー ド番 号-負 荷 量/遮 断 量(負 荷=1.5倍)
い た 実 行 可 能 性 の 回復 の シ ミュ レ ー シ ョ ン を 示 す.シ べ て の 負 荷 は そ の オ リ ジ ナ ル の値 の1.5倍
ミュ レー シ ョ ン条 件 と して,す
と した .こ の こ とに よ り,通 常 のOPFプ
ロ
グ ラ ム で は解 を得 る こ と が で き な い. 図4.4に
ノ ー ドの 負 荷 量 と負 荷 遮 断 量 を示 す.今
断 コ ス トは す べ て の ノ ー ドで 同 一 と した が,負 で あ る.図
回の シ ミュレー シ ョンで は負荷遮
荷 の 重 要 度 に よ っ て 変 え る こ と は可 能
か らわ か る よ う に30,26,24,21,17番
ノ ー ドの 負 荷 が 遮 断 さ れ て お り,
これ らの ノ ー ドが 系 統 運 用 上 の 弱 点 ノ ー ドで あ る こ と が わ か る. こ の よ う に,本
来 は 実 行 可 能 解 が 存 在 しな い よ う な運 用 条 件 に お い て も,適 切 な 負
荷 遮 断 を行 う こ とで 実 行 可 能 解 に 復 帰 す る こ とが で き る こ とが わ か る.こ ー シ ョ ン で は 負 荷 の 量 を1 .5倍 に増 や す とい う 条 件 設 定 を 行 っ た が,た そ の ま ま で,電
の シ ミュ レ
とえば負 荷 は
圧 制 約 を き び し く し て シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を した 場 合 も同 様 な 結 果 を え
る こ とが で き る.
4.4.2電
圧 安 定 度 を 考 慮 した 最 適 潮 流 計 算 法
電力 系統 の運 用 を決定 す る際 には,需 給不 均衡 や 重潮 流 の発 生,各 種 の 系統故 障 な どの障 害 が生 じる可 能性 を考慮 した,安 定 かつ 経済 的 な運用 を求 め られて い るが,近 年 で は社 会 全体 の電 力依 存度 が増 し,停 電 な どに よ る経 済的影 響 は計 り知 れず,電 力 系統 内 の安 定性 の監 視 と故障 が生 じた場 合 の迅 速 な対 応 が必 要 とな る.そ の中 で も電 圧 安 定性 の問題 は重 要 な課 題 で ある. 電 圧安 定度 の判 別 に対 して,現 在 の運 用点 か らノーズ カー ブ の先 端(潮 流 限界 点)ま で の負荷 余裕 を指標 と し,電 圧 安定 性 を評価 す る とい った方法 が提 案 され てい る.こ の指 標 は現在 の運 用状 態 を評価 で き,故 障 に対 す る安 定性 を評 価 す る際 に も,解 の存 在 判 定 を含 め た評 価 を行 うこ とが で きる.潮 流 限界 点 を求 める手法 として,基 準 運用
点 か ら潮 流 限界点 まで を,負 荷 増加 シナ リオ を も とに連 続 的 に求 め る手法 と,直 接 潮 流 限界 点 の条 件式 を直 接解 く手 法が 提案 され てい る.直 接 法 は連 続法 に比 べ,高 速 に 解 を導 くこ とが で き るが,収 束 難 が まれ に発 生 す る ことがあ る とい う欠点 が あ る. (1) 最 適潮 流計 算法 によ る潮 流 限界点 の解 法24,25) 電 圧 安定度 指標 の一 つ で ある潮流 限界 点 まで の距離 指標 で あ る負荷 余裕 に対 して, 主双 対 内点 法OPFに
よる解法 が提 案 され て い る.潮 流限 界点 に基 づ く負荷 余裕 を計
算 す るた めに は,各 母 線 で指定 された 負荷 の増加 シナ リオ を決 定す る必 要が あ る.今 回 は,そ の シナ リオ として系統 全体 の指 定 負荷 を一律 に,力 率 一定 で上昇 す る負荷 増 加 パ ター ン を考 えた.定 常状態 の潮 流 限界 点 を求 め る問題 は以 下 の ように な る.
(4.44)
一 般 的 なP-V曲
線 を図4.5に
示 す.系
統 故 障 に よ り系 統 の 有 効 電 力-電 圧(P-V)
曲 線 は 変 化 し,系 統 の 負 荷 余 裕 は減 少 す る.故 障1で 運 用 可 能 な 点 が 存 在 す る が,故
は,故 障 後 に 系 統 は 安 定 で あ り,
障 2の ケ ー ス で は故 障 後 に潮 流 解 が 存 在 せ ず,系
壊 へ と至 るた め 通 常 の 潮 流 計 算 は収 束 し な い.し
統崩
か し,こ こ で α を 負 の 方 へ 変 化 さ せ
れ ば実 行 可 能 解 を 得 る こ とが で き る.α を 負 の 方 向 へ 変 化 さ せ る と い う こ と は,系 統 の 安 定 を保 つ た め に は何 ら か の 負 荷 遮 断 を 実 施 す る 必 要 が あ る こ と を表 し て い る.し た が っ て,予
防 制 御 の 観 点 か ら も,線 路 故 障 時 に故 障 2の よ う なP-V曲
し ま う よ う な 運 用 を行 っ て は い け な い.こ 潮 流 限 界 点 の 解 法 は容 易 にP-Vカ
こ で,示
さ れ て い る最 適 潮 流 計 算 法 に よ る
ー ブ の 先 端 まで の 距 離 を知 る こ とが で き る た め,
想 定 事 故 に対 す る 電 圧 安 定 度 の 事 前 検 討 な ど に役 立 つ で あ ろ う.
図4.5
線 に移 っ て
ノ ー ズ カ ー ブ と負 荷 増 分 パ ラメ ー タ
(2) 線路 故 障時 の電圧 安定 性 を考慮 した OPF26) 潮 流限界 点(負 荷 余裕)をOPFで
計 算す る場合,故 障 前の余 裕 を最大 化 す る(また は
総 負荷 の最 低何%ま での余裕 を とる)問題 として計算 してい た.つ ま り,前 項 の手 法 は 現時 点 で の負荷 余裕 計算 を行 う もの であ り,故 障 に対 して電圧 安定 度 的 にみて安 全か ど うかの保 証 はな い.こ の ため,線 路 故 障 を考慮 したOPFと
負荷 余裕 を組 み合 わせ
る こ とで,故 障 後 の電圧 安定 性 を維持 す るよ うな定常 状態 の運 用点 を計 算 す る手 法が 提案 され てい る. 想 定 され る電 圧安 定度 的 に過酷 な故障 に対 し,故 障 後 の負荷 余裕 を十 分 に確 保 し, か つ故 障 前(健 全 時)の 発 電 コス トを最 小化 す る問 題 として 定義 す る ことが で きるた め,以 下 の ように記 述す るこ とが で きる.
(4.45)
こ こ で,添 字 0 は故 障 前 の 状 態,添 字 kは k番 目 の 故 障 状 態 を 表 す.αkは 故 障 後 の 負 荷 増 分 パ ラ メ ー タ を示 す(図4.5参
(3)IEEE
118母
照).
線テ ス ト系統 に対す る適用 例
電 圧 安 定 度 を考 慮 した 最 適 潮 流 計 算 プ ロ グ ラ ム をIEEE118母 し た 結 果 を 図4.6に のOPFで
示 す.図
中 に 示 さ れ た よ う に,電
得 られ た 運 用 解 で は,故
な り解 が 存 在 せ ず,か
障 が 発 生 した 場 合 に は 負 荷 余 裕 が α=-0.4604と
な りの 量 の 負 荷 遮 断 を行 わ な い と電 圧 崩 壊 を 起 こ し て し ま う危
険 性 が 高 い.一 方,線 路 故 障 時 の 電 圧 安 定 度 を 考 慮 し たOPFで 障 後 で もa=0.1818と
線 テ ス ト系 統 に 適 用
圧安 定度 を考慮 してい ない従来
得 られ た 運 用 解 は,故
十 分 な 負 荷 余 裕 を確 保 し て お り,安 定 な 運 用 が で き る こ と が 期
待 さ れ る.
図4.6
IEEE118母
線 テ ス ト系統 に お け る ノ ー ズ カ ー ブ
4.4.3
安 定 度 制 約 を 考 慮 し た 最 適 潮 流 計 算 法29,30)
電 力 の 売 買 が 自 由 に行 う こ と の で き る開 か れ た 電 力 市 場 に お い て は,系 統 の 安 定 度 を 監 視 す る電 力 売 買 と は 独 立 した 系 統 運 用 者 が 利 用 可 能 送 電 能 力(ATC:available transfer
capability)を
提 示 す る 必 要 が あ る.し
か し,送 電 系 統 に お け るATCの
ネ ッ
ク は送 電 線 の 熱 容 量 で は な く,安 定 度 限 界 か ら 引 き起 こ され る場 合 が 多 く,時 々 刻 々 と変 化 す る運 用 状 態 に対 し て 正 確 に そ の 値 を 求 め る こ とは 困 難 で あ る. 現 在,ア
メ リカ で 提 示 さ れ て い るATCも
た も の とな っ て い な い.そ
過 渡安 定度 の ような動 的 な制 約 を考 慮 し
の た め,簡 略 化 した モ デ ル を使 っ て 事 前 検 討 し た 安 定 度 余
裕 と託 送 電 力 量 を も と に し て,ATCを
決 定 し て い る の が 実 情 で あ る.そ の た め,最 適
潮 流 計 算 法 に 過 渡 安 定 度 制 約 を 取 り込 む べ く,多
くの研 究 者 が し の ぎ を 削 っ て い る.
本 項 で は,微 分 方 程 式 で 表 現 さ れ る過 渡 安 定 度 問 題 を 有 限 時 間 の 代 数 方 程 式 に 変 換 して,OPFに
取 り込 む ア プ ロ ー チ を 紹 介 す る.
(1) 過 渡 安 定 度 を 考 慮 したOPFの
定式 化
数 学 的 に 安 定 度 問 題 は代 数 微 分 方程 式 で 表 す こ とが で き る.電 力 系 統 の 安 定 度 計 算 モ デ ル は以 下 の 一 階 微 分 方 程 式 と代 数 方 程 式 で 表 す こ とが で き る.
X1=F1(X1,X2)
(4.46)
0=F2(X1,X2) こ こ で,X1は
(4.47)
微 分 方 程 式 に 関 す る 状 態 変 数,X2は
は微 分 方 程 式,F2は
代 数 方 程 式 に 関 す る 状 態 変 数,F1
代 数 方 程 式 を 表 す.
安 定 度 問 題 の 定 式 化 を 行 うた め に,発
電 機 を 直 軸 過 渡 リア ク タ ン スx'dと そ の 背 後
電 圧 で 模 擬 す るx'dモ デ ル を用 い た. 式(4.46)の
微 分 方 程 式 はx'dモ デ ル を用 い て 以 下 の よ う に 書 き表 す こ とが で き る.
(4.48) (4.49)
こ こで,δi,ωi:発 性 定 数,ω0:回
電 機 の 位 相 角 と角 速 度,Pgi:発
転 子 の 定 格 角 速 度,ng:発
電 機iの
出 力,Hi:発
電 機 数,Vxgi+jVygi:発
電iの
慣
電機 母線 の複 素電
圧 を表 す. 式(4.47)の
代 数 方 程 式 は 以 下 の よ う に表 さ れ る.
I=YV こ こで,Y:ア
(4.50) ド ミ タ ン ス行 列,I:母
線 の 電 流 注 入 ベ ク トル, V:母 線 電 圧 を表 す.
安 定 度 制 約 つ きOPFに
お い て 等 式 制 約 の数 を 減 らす た め に,回
路 方 程 式 か ら発 電
機 の つ な が っ て い な い ノ ー ドを消 去 し,負 荷 は定 イ ン ピ ー ダ ンス と し て モ デ ル 化 す る と,式(4.50)は
(4.51) こ こで,G 流IxGとIyGは
と B は縮 約 ア ド ミ タ ン ス行 列 の 実 部 と虚 部 で あ る . 発 電 機 母 線 の 注 入 電 下 式 で 与 え ら れ る.
安 定 度 制 約 を 考 慮 したOPF問 ・目的 関 数f(x):目
題 は 以 下 の よ う に 定 式 化 す る こ とが で き る.
的 関 数 と し て 火 力 発 電 機 の 総 発 電 コ ス トを 用 い る .
(4.52) こ こ で,ai,bi,ci:発
電 機 の コ ス ト係 数
・等 式 制 約h(x):
〓電 力潮 流方 程式: (4.53) nb:母 〓 動 揺 方 程 式:発 OPFは
線数 電 機 の 動 揺 方 程 式 は式(4.48),(4.49)の
本 来 静 的(つ ま り時 間 微 分 を 取 り扱 え な い)た め,こ
取 り扱 う こ とが で き な い.そ
の た め,台
微 分 方 程 式 で 表 さ れ る が, れ ら の 微 分 方 程 式 を直 接
形 法 を用 い て微 分 方 程 式 を連 立 線 形 方 程 式 に
変 換 す る.
(4.54) こ こ で,A
右 辺,⊿t:積
分 時 間 刻 み,T:積
分 期 間
展 開 す る と 以 下 の よ う に な る.
(4.55) 〓 初 期 値 方 程 式:回
転 子 角 の 初 期 値 δi0とEi'を 求 め る た め,以
下 の方程 式 を満足 す
る必 要 が あ る.
(4.56) ・不 等 式 制 約g(x):
〓発電 機 出力,無 効 電 力 発生源 に対 す る制約: (4.57) 〓 状 態 変 数 に対 す る制 約:状
態 変 数 に対 す る制 約 は,母 線 電 圧 の 大 き さ と安 定 度 制 約
で あ る.発 電 機 の 安 定 度 制 約 を定 義 す るた め に慣 性 中 心(COI:center 用 い た.慣
of inertial)を
性 中 心 に対 す る 回 転 子 角 の 大 き さ を制 約 条 件 と し て 与 え る.
(4.58)
〓送 電線 容量 制 約: (4.59) この定 式化 に4.3節 で説 明 した主双 対 内点法 アル ゴ リズ ム を適 用 す る.図4.7は 定 度制約 を考慮 したOPFの
修正 方程 式 の係数 行 列 を示 して い る.こ の図 でSE+NE
図4.7 修正 方程 式の構 成
安
とな っ て い る行 が 微 分 方程 式 を台 形 公 式 で 展 開 し た部 分 の 代 数 方 程 式 を 示 して い る. 時 間 刻 み を 小 さ く と り,考 察 期 間 を長 く と る と行 列 が 大 き くな り,計 算 時 間 が か か る よ う に な る.そ
の た め,適
切 な 時 間 刻 み と考 察 時 間 を設 定 す る 必 要 が あ る.ま
の 係 数 行 列 は ス パ ー ス 性 が 強 い た め,高
た,こ
度 な スパ ー ス処 理 技 法 を導 入 す る こ とに よ
り,高 速 に 解 を 得 る こ と が で き る. (2) 3 機 9 母 線 系 統 に 対 す る 実 行 例 安 定 度 制 約 を 考 慮 し たOPFを 結 果 を 示 す.こ
こで,線
路5∼7が
図4.8で
故 障 した と仮 定 し て い る.
従 来 の 安 定 度 を考 慮 し て い な いOPFで た め,事 故 後 線 路5∼7が
示 され る 3機 9母 線 系 統 に 対 し て 実 行 した
は 線 路5∼7を
流 れ る事 故 前 潮流 が大 きい
開放 さ れ た と き に発 電 機 2が 加 速 さ れ る.図4.9は
例題系
統 に 対 す る事 故 後 の 最 大 回 転 子 角 の大 き さ を 示 して い る.図 か らわ か る よ う に安 定 度
図4.8
3機 9母 線 系 統
図4.9 3機 9母線 系統 での事故後の最大 回転子角
を 考 慮 し て い な い従 来 のOPFは
事 故 後 1秒 程 度 で脱 調 し て い る こ とが わ か る.こ
よ う に,安 定 度 制 約 を組 み 込 ん だOPFを
実 行 す る こ とで,事
の
故 後 で も安 定 な 運 用 点
を 求 め る こ とが で き る.
4.5ま
と
め
本 章で は短 期限界 費用 と最適 潮流計 算 に つい て概 説 した.4.1節
で は短 期 限界 費 用
の算 出方 法 につ いて述 べ,直 流 法潮 流計 算 に基 づ くノー ダル プライ スの計 算法 を説 明 した.4.2節
で は短 期 限界費 用 を計算 す る際 に用 い られ る最 適 潮流 計 算法 の 定式 化 に
つ いて述 べ,そ の 目的関数,等 式 制約,不 等 式制 約 の詳 細 につ いて述 べ た.4.3節 で は 主双対 内点法 によ る最適 潮 流計 算法 の解 法 につ いて述 べた.主 双 対 内点法 によ る最 適 潮 流計 算 法 は大規模 系統 で も高 速 に解 が得 られ る こ とを示 した.4.4節
で は最適 潮 流
計 算 の拡 張 につ いて三 つ の例 をあ げて説 明 した.は じめ に,実 行 不可 能 な運用 状 態が 与 え られ た場 合 で も運 用解 を求 め る こ とが で きる手 法 を説 明 した.次 に,電 圧 安 定度 制 約 を考 慮 した最適 潮流 計 算法 につい て述 べた.故 障 時で も電圧 安定 度が 維持 で きる よ うな手 法 につ いて説 明 を した.最 後 に,過 渡 安定 度制 約 を考慮 した最適 潮流 計 算法 に つい て説明 した.現 在,ATCの
正確 な計 算方 法 として,過 渡安 定度 制約 を考 慮 した
最適 潮流 計算 法 の研 究 が盛 ん に行わ れ てい るが,微 分 方程 式 を台形法 で代 数方 程 式 に 変換 して解 く手法 の説 明 を行 った.
参 考文献 1)F.C・Schweppe,
M.C.Caramanis,
Electricity,Kluwer
Academic
2)W.W.Hogan:Contract Regulatory 3)岡
4)浅
and
R.E.Bohn:Spot
Pricing
of
Networks
for
Electric
Power
Transmission,Journal
of
Economics,4,pp.21-242,1992.
田,浅
力 技 術
R. D.Tabors Publishers,1988.
野,松
川:Nodal
Pricingに
よ る 送 電 料 金 設 定 方 法 の 基 礎 的 検 討,電
気 学 会 電
・電 力 系 統 技 術 合 同 研 究 会,No.PE-96-52,pp.41-50,1996.
野,岡
田:地
域 別 送 電 線 使 用 料 金 の 算 定 手 法,電
5)J.Carpentier:Contribution
to
Elct.,8,pp.431-437,August 6)H.W.Dommel
the
Economic
気 学 会 論 文 誌
Dispatch
B,119,pp.2-5,1999.
Problem,Bull.Soc.France
1962. and
W.F.Tinney:Optimal
Power
Flow
Solutions,IEEE
Trans.on
PAS,87,10,pp.1866-1876,October,1968. 7)J.Carpentier:Defferential Optimal
Load
Flows,
Injection Proc.
PICA
Method,a
Conference,p.255,1973.
general
method
for
Secure
and
8)R.C.Burchett,H.H.Happ IEEE
and
Trans.on
Power
K.A.Wirgau:Large
Apparatus
9)R.C.Burchett,H.H.Happ Optimal
and
Power
-3276
Flow,IEEE
Scale
Optimal
Power
Flow,
Syst.,PAS-101,pp.3722-3732,1982. D.R.Vierath:A
Trans.on
Power
Quadratically
Apparatus
and
Convergent
Syst.,PAS-103,pp.3267
,1984.
10)H.H.Happ
and
Conference
on
D.R.Vierath:The
Power
OPF,a
Systems
11)J.S.Hobson,D.L.Fletcher ming
Techniques
and
Analysis,IEEE
Their
Trans.on
and
W.O.Stadlin:Network
Power
13)B.Stott
and
Flow,IEEE
Trans.on
Program
and
Contingency
Syst.,PAS-103,pp.1684-1691,1984. Development
in
LP-Based
Systems,PWRS-3,pp.697-711,1990.
system
security
Trans.on
Power
I&II,IEEE
Linear
Scheduling
Stott:Further Power
19861FAC
Flow Fuel
and
B.
Tool,Proc.of
Control,pp.76-81,1986.
to
Apparatus
E.Hobson:Power
programming,part
Plant
Applications
and
Power
On-line
Power
12)O.Alsac,J.Bright,M.Prais Optimal
New
and
control
calculations
Apparatus
and
using
linear
Systems,PAS-97,
5,pp.1713-1731,1978. 14)D.1.Sun,B.Ashley,B.Brewer,A.Hughes by
Newton
and
Approach,IEEE
Trans.on
Power
W.F.Tinney:Optimal Apparatus
Power
Flow
Syst.,PAS-103,10,pp.2864
-2880,0ctober,1984. 15)G.A.Maria
and
Hydro
J.A.Findlay:ANewton
EMS,IEEE
Trans.on
16)A.S.El-Bakry, Theory of
Systems,
R.A.Tapia,T.Tsuchiya
of
the
Newton
Opt.Theory
17)Hua
optimal
Power
and
Interior-Point
and
Method
Programming
IEEE
for
Trans.on
18)Hua
Power
Power
IEEE
Flow
Trans.on
Power
and
21)M.Huneault IEEE
for Ontario
Formulation
with
a Novel
Point
Data
Non
Structure,
Based
R.Yokoyama:Large on
Interior
Scale
Point
Hydrothermal
Nonlinear
Programming,
Systems,PWRS-15,1,pp.396-403,February,2000. to
Interior-Point
Methods,IEEE
Clara,CA. a PICA and
Trans.on
Secure
Conference
and
Proceedings,
F.D.Galiana:ASurvey
Power
Optimal
Automatic
Montreal, of the
Optimal
Operation
of
Power
Canada,pp.2-37,1987. Power
Flow
Literature,
Systems,PWRS-6,2,pp.762-770,May,1991.
22)J.A.Momoh,R.J.Koessler,M.S.Bond,B.Stott,D.Sun,A.Papalexopoulos
and
Programming,Journal
Interior
Problems
G.L.Torres:Introduction
20)J.Carpentier:Towards IEEE
the
Nonlinear
R.Yokoyama:An
Flow
and
Problems
PICA'99,Santa
Systems,
program
Systems,PWRS-13,3,pp.870-877,August,1998.
Power
19)V.H.Quintana PES
Y.Zhang:On for
and Optimal
Wei,H.Sasaki,J.Kubokawa
Optimal
flow
Applications,89,3,pp.507-541,June,1996.
Wei,H.Sasaki,J・Kubokawa
linear
power
PWRS-2,3,pp.576-584,Aug.,1987.
P.Ristanovic:Challenges
to
Optimal
Power
and Flow,IEEE
Trans.on
Power
Systems,
PWRS-12,1,pp.444-455,February,1997. 23)久
保 川,井
上,佐
々 木:実
電 気 学 会 全 国 大 会,No.1434,1999.
行 不 可 能 な 運 用 条 件 に 対 す る 内 点 法OPFの
提 案,平
成11年
24)T.Van
Cutsem
Kluwer
and
Academic
C.Vournas:Voltage
25)G.D.Irisarri,X.Wang,J.Tong Systems
using
Power
Stability
of
Electric
Power
Systems,
Press,1998. and
Interior
Point
S.Mokhtari:Maximum
Non-Linear
Loadability
Optimization
Method,
of
IEEE
Power
Trans.on
Systems,PWRS-12,pp.162-172,1997.
26)J.Kubokawa,R.Inoue Voltage
and
Stability
H.Sasaki:ASolution
Constraints,PowerCon
27)B.Stott:Power
System
of
2000,Perth
Dynamic
Response
Optimal
Power
Flow
with
Australia,December,2000.
Calculations,Proceedings
of
the IEEE,
67,2,pp.219-241,February,1979. 28)H.D.Chiang,C.C.Chu Systems ings
and
Using of
the
Energy
G.Cauley:Direct
Stability
Functions;Theory,Applications
Analysis and
of Electric
Power
Perspective,Proceed
IEEE,83,11,pp.1497-1529,November,1995.
29)D.Gan,R.J.Thomas
and
Flow,Symposium
R.D.Zimmerman:Stability-Constrained
Proceedings
of
Bulk
Power
System
Optimal Dynamics
and
Power
Control
IV
Restructuring,Santorini,Greece,pp.83-89,1998. 30)Y.Yuan,J.Kubokawa,H.Sasaki Flows
with
Transient
and Stability
Constraints,平
T.Sakai:ASolution 成12年
of
術 研 究 会,2000. 31)P.Kundur:Power
System
Stability
and
Optimal
電 気 学 会 電 力 技 術
Control,McGraw-Hill,Inc.,1994.
Power
・電 力 系 統 技
第 5章 系 統 維 持 運 用 ・制 御 とア ン シ ラ リー サ ー ビス
5.1
電力市場におけるアンシラ リーサー ビスの必要性
世 界 的 な 潮 流 と し て 進 行 し て い る電 気 事 業 の 規 制 緩 和 の 基 本 的 な理 念 は,「 従 来,地 域 独 占 の 形 態 で 行 わ れ て き た 電 力 供 給 事 業 に競 争 を 導 入 し,事 業 の 効 率 化 を達 成 し, 国 家 と国 民 の 利 益 に供 す る 」 こ と と謳 わ れ て い る.第 イ ギ リス で 実 施 さ れ た 電 気 事 業 の 民 営 化 ・再 編,ア
1章 で述 べ た よ う に,1990年
に
メ リカでの送 電 系統 の完 全 なオー
プ ン ・ア ク セ ス の 実 現 や 各 州 で の 小 売 の 自 由化 な ど,各 国 で 競 争 的 電 力 市 場 の 導 入 が 検 討 ・実 施 さ れ て い る. 電 力 市 場 の 自 由 化 が 進 展 し た と して も,電 力 系 統 の 運 用 上 の 基 準 を 満 足 す る こ と に よ っ て,電
力 供 給 の 安 定 性 と信 頼 性 が 確 保 さ れ な け れ ば,電
実 現 で き ず,市 と な る.競
場 が 適 切 に 機 能 せ ず,電
力市 場 で の公平 な競 争 は
力 自 由 化 の 本 来 の 目 的 を 達 成 す る こ とが 困 難
争 的 電 力 市 場 に お い て 電 力 系 統 の安 定 性 お よび 信 頼 性 を ど の よ う に維 持 し
て い くか とい う問 題 は,送
電 線 の オ ー プ ン ・ア ク セ ス と同 様 に,電
大 き な 課 題 の 一 つ で あ る.ア メ リカ で は,1996年 域 で発 生 した 大 規 模 停 電 が,電
7月 と 8月,二
力 自由化 が抱 える
度 にわ た って西部 地
力 市 場 の 自 由化 が 進 む 中 で の 系 統 の信 頼 性 確 保 の あ り
方 を喚 起 す る 形 とな っ た.そ の 後,1996年12月 にDOE(Department of Energy)に “電 力 系 統 信 頼 性 に 関 す る タ ス ク フ ォー ス ”が組 織 され ,競 争 環 境 下 で 電 力 系 統 の信 頼 度 確 保 に 関 す る体 制 論 や 技 術 的 な 課 題 な ど に つ い て 検 討 が 行 わ れ た.こ ー スか ら ,1998年10月
の タス ク フォ
に 政 府 に対 し検 討 結 果 が 勧 告 さ れ た.そ の 中 で は,こ れ ま で 技
術 的 な 問 題 へ の 対 応 に取 り組 ん で き た 北 ア メ リ カ電 力 信 頼 度 協 議 会(NERC:North American
*1
Electric
Reliability Council)の
再 編 な どが 議 論 さ れ て い る*1.一
方,イ
ギ
こ の勧 告 は,信 頼 度 維 持 に関 し,関 与 す る組 織 の 役割 分 担 につ い て も提 言 して い る.NERCに,
主 に技 術 的 な 問 題 へ の対 応 を期 待 す る と同 時 に,新 organization信
た な 機 能(SRRO:self
頼 度 自 主 規 制 機 能)を もっ た 組 織(NAERO:North
America
regulating
reliability
Electricity Reliability
リス で は,自
由化 直 後 に,電
tion)か らNGC(National
気 事 業 規 制 局(OFFER:Office
Grid Company)に
し に 関 して の 要 請 が あ っ た*2.NGCは 1998年
4月,検
討 結 果 をOFFERに
of Electricity
Regula
対 し て “送 電 セ キ ュ リ テ ィ基 準 ” の 見 直
定 量 的 解 析 を 含 む 大 規 模 な 検 討 作 業 を行 い, 提 出 した.こ
のNGCの
報 告 を受 け て,OFFER
は,今 後 の セ キ ュ リテ ィ基 準 の あ り方 に つ い て 審 議 を開 始 し,1996年
3月,従 来 の セ
キ ュ リ テ ィ基 準 を 維 持 して い く とい う最 終 的 な判 断 が な さ れ た. 近 年,ア
メ リ カ で は,電 力 取 引 ニ ー ズ が 急 増 す る一 方 で,送 電 設 備 の 増 強 が 進 まず,
送 電 線 容 量 不 足 が 顕 在 化 し て き て い る.近 regional
transmission
organization)と
組 織 の 創 設 が 検 討 さ れ て い る.こ 全 分 離 が 促 進 され,市
年,ア
メ リ カ で は,地
域 送 電 機 構(RTO:
呼 ば れ る 送 電 線 を 所 有 し運 用 ・制 御 す る独 立
の 独 立 組 織 の 導 入 に よ り,発 電 部 門 と送 電 部 門 の 完
場 構 造 の 欠 陥 や 市 場 支 配 力 行 使 の 抑 制 と と も に,市 場 活 性 化 の
た め の 送 電 系 統 拡 充 計 画 が 実 行 さ れ る こ とが 期 待 され て い る. こ の よ う に,競
争 的 市 場 で の 適 切 な 信 頼 度 レベ ル の 維 持 の た め に 信 頼 度 管 理 の あ り
方 に つ い て 制 度 的 お よ び技 術 的 ・経 済 的 な 側 面 か らの 見 直 しが 行 わ れ て い る.電
力自
由 市 場 下 で の 信 頼 度 評 価 に 関 わ る重 要 な検 討 課 題 と し て は,競 争 環 境 下 で の 適 正 信 頼 度 レベ ル の 具 体 的 評 価 手 法,社 方 策,信
会 厚 生 最 大 化 の 観 点 か らの 信 頼 度 別 供 給 の 評 価 と実 現
頼 度 確 保 に関 す る 短 期 ・長 期 両 視 点 の 融 合,新
し い 系 統 対 策 と信 頼 度 維 持 の
た め の メ カ ニ ズ ム の 確 立 な どが あ げ られ る. 電 力 自 由化 を 実 施 す る諸 国 で は,電 力 系 統 の 安 定 性 ・信 頼 性 確 保 の た め の 系 統 運 用 を,明
示 的 な サ ー ビ ス と し て と ら え,一
vices)*3 と呼 ん で い る.ア 入 され て い る.図5.1に
般 に ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス(ancillary
ser
ン シ ラ リー サ ー ビス は,電 力 取 引 市 場 の 創 設 と同 時 に,導
示 す よ う に,小 売 供 給 間 の電 力 取 引(小 売 託 送 ま た は ダ イ レ ク
トア ク セ ス)の 需 給 ア ン バ ラ ン ス や 卸 電 力 市 場 の想 定 需 要 と需 要 実 績 間 の 差 分 な ど を 解 消 し,系 dent power
統 内 の 安 定 性 や 信 頼 性 を 維 持 す る た め に,電 producer)な
力 会 社 お よ びIPP(indepen
ど の 発 電 事 業 者 か ら,有 効 電 力 や 無 効 電 力 供 給 な ど の 形 で 各
Organization)に 移行 す るこ とを求めてい る.2001年 1月現在,NERC後 ない. *2 OFFERは,補
継組織 は まだ設立 され てい
修作 業や事故時(2回線故障が生 じる可能性 は小 さい)に生 じる制 約 コス ト(=送
電線の制約 によって電源 の運 用が制約 され ることによるコス ト)の高騰 に関心 を示 し,NGCに
対 し送
電セキ ュ リテ ィ基準(Transmission Security Standard)の 見直 しの要請 を行 った.こ こでの送電 セキ ュリテ ィ基準 は,計 画基準,運 用基 準の両方 をさしてい るものである.な お,OFFERは,従 来 のガス 供給事業局(Office of Gas Supply:Ofgas)と 統合 され,1996年 6月か らOFGEM(Office ElectricityMarket)と 呼 ばれ る規制組織 に編成 された.
of Gas and
*3 ancillary servicesを 補助 サー ビス と訳 す場 合 もあるが,本 章 では,本 サー ビスが電力系統 の安 定性 ・信頼性確保 に不可欠 であ るとし,ア ンシラ リーサ ービス と表現 す る.
PPS(power producer and supplier):小 売 託 送 が 可 能 な発 電 事 業 者 IPP(independent power producer):卸 発電事業者 (注)と り こ(虜)需 要 家 は,従 来 ど お り電 力会 社 か ら電 力 供 給 を受 け る 図5.1
種 サ ー ビ ス が 提 供 さ れ る.な 系 統 状 態 に 応 じて,系
ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス の イ メ ー ジ
お,各
種 ア ン シ ラ リ ー サ ー ビ ス の 必 要 量 は,そ
統 運 用 者(ISO(independent
system
operator)や
の ときの
電 力 会 社 な ど)
が 算 定 す る.
5.2 従 来,電
電力系統 における系統維持運用 ・制御の現状 力 系 統 の 信 頼 度 を 維 持 し,品 質 の 高 い 電 力 を で き る だ け 経 済 的 に 供 給 す る
た め の 電 力 系 統 の 運 用 ・制 御 は,電 力 会 社 が 一 括 して 行 っ て きた.本 体 的 な 内 容 に つ い て 概 説 す る.電
力 系 統 の 運 用 ・制 御 は,さ
節 で は,そ
の具
ま ざ ま な局 面 か ら の 分 類
が 可 能 で あ る が,こ こ で は ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス との 関 わ りを 念 頭 に,周 波 数 の 維 持, 電 圧 の 維 持 の 観 点 か ら整 理 す る.
5.2.1
系 統 維 持 運 用 ・制 御 の 種 類
電 力 系 統 全 体 に 良 質 な 電 気 を供 給 す る た め に 必 要 な 運 用 ・制 御 は,周 効 電 力 制 御),電
*4
圧 制 御(無 効 電 力 制 御)と そ の他 に,大
波 数 制 御(有
き く三 つ に 分 け られ る*4.
一般 に,周 波数 は有効 電力に よ り制御 されるため,こ こで は周波数制御 は有効電 力制御 にて行
われてい るものとして述 べる.
(1)周
波 数 制 御(有 効 電 力 制 御)
周 波 数 制 御 に は,需
要 と供 給 の バ ラ ン ス を 図 る た め の 需 給 調 整,日
て 周 波 数 を 一 定 に 維 持 す る た め の 周 波 数 維 持,お
よ び,電
常 の運転 にお い
源 や 電 源 線 な どの 事 故 に よ
り不 足 し た供 給 力 を補 う供 給 予 備 力 が あ る. ①
需 給 調 整
電 力 は 消 費 と生 産 が 同 時 に 行 わ れ る と い う特 性 を も っ て い る の
で,つ
ね に需 要 に対 応 で き る供 給 力 を保 有 し て い な けれ ば な らな い.し
そ の 種 類 に よ り,変 動 特 性 が 異 な り,か つ,時 応 す る供 給 力 も発 電 の種 別,形
か も,需 要 は
々 刻 々 絶 え ず 変 動 し て い る.こ
態 に よ っ て 異 な る 機 能 を有 し て い る の で,需
れ に対
要 の変動
に対 応 して,い
か に 経 済 的 で 安 定 した 供 給 力 を組 み 合 わ せ るか が 重 要 とな る .負 荷 の
変 動 の うち,一
般 に 十 数 分 以 上 の 変 動 周 期 を も つ よ うな 成 分 に つ い て は,最
な 発 電 機 の 出 力 分 担 が 可 能 な よ う に 経 済 負 荷 配 分 制 御(EDC:economic control)が
な さ れ て い る(図5.2参
こ のEDCは,電 は 含 ま れ な い.た
も経 済 的
dispatching
照).
力 供 給 の 本 質 で あ り,電 力 市 場 に お け る ア ン シ ラ リ ー サ ー ビ ス に だ し,状 況 に よ っ て は運 用 上 の 制 約 に よ り経 済 負 荷 配 分 ど お りの 発
電 分 担 が 可 能 で な い場 合 も あ り,経 済 性 に 関 わ ら ず 特 定 の 電 源 の 運 転 が 必 要 とな る こ と も あ る. ②
周 波 数維 持
じ,こ
の 差 は 周 波 数 変 化 と し て 現 れ る.現
電 力 需 要 が 時 々 刻 々 と変 動 す る た め 需 要 と供 給 の 間 に 差 が 生
観 点 か ら,電 気 事 業 法 第26条
在,わ
が 国 で は,電
お よ び 電 気 事 業 法 施 行 規 則 第44条
業 者 は そ の 供 給 す る電 気 の 周 波 数 を 基 準 周 波 数(50Hzま
図5.2 周波数変動 と制御分 担
気 の使 用 者 利 益 保 護 の に よ り,一 般 電 気 事
た は60Hz)に
維持 す る よ う
努 め る こ とが 義 務 づ け られ て い る.し か し,時 々 刻 々 変 動 す る電 力 需 要 に 対 応 して 供 給 力 を 完 全 に 追 従 さ せ る こ と は,技 術 的 に も不 可 能 で あ る の で,つ 偏 差 値 が あ る 幅 以 内(変 動 管 理 目標 と も い い,±0.1∼ ±0.3Hz以 め,確
ね に標 準 値 か ら の 内)に あ る よ う に 努
率 的 に 変 動 量 が 標 準 値 を 維 持 す る よ う に 努 力 して い るの が 実 態 で あ る*5.瞬 時
瞬 時 の 系 統 周 波 数 が 基 準 周 波 数 に 一 致 す る よ う に,各 電 力 会 社 は,発 電 機 の 出 力 を増 減 さ せ る.こ
の よ う な 周 波 数 変 動 を 許 容 範 囲 内 に収 め る た め の 制 御 を周 波 数 制 御 とい
う. 需 要 の 変 動 で あ る 負 荷 変 動 に つ い て は,そ れ る.周
期 数 分 ま で の 微 小 変 動 分,数
の 周 期 に よ り,主
分 か ら十 数 分 程 度 まで の 短 周 期 変 動 分,お
十 数 分 以 上 の 長 周 期 の 変 動 分 で あ る.こ
て 調 整 で き な い 残 りの 負 荷 変 動 分 の 調 整 に相 当 す る.こ
除 く)は,発 い て は,負
よび
れ らの う ち 主 に経 済 負 荷 配 分 が 問 題 と な る長
周 期 の 変 動 を除 く,前 二 者 が 周 波 数 制 御 の 領 域 に な る.つ
の 負 荷 変 動(系 統 自体 の 自 己 制 御 性,つ
に三 つ の 成 分 に 分 け ら
ま り,経 済 負 荷 配 分 に よ っ
れ ら の う ち,周
期 が 数 分 まで
ま り系 統 の 負 荷 特 性 に よ り吸 収 で き る もの を
電 機 の ガ バ ナ フ リー 運 転*6 に よ り,数 分 か ら十 数 分 まで の 負 荷 変 動 に つ 荷 周 波 数 制 御(LFC:load
frequency
control)*7 に よ り対 応 す る こ と と な
る. LFCは,周
波 数 制 御 用 発 電 所 の 発 電 機 出 力 に よ り調 整 量 が 確 保 さ れ る.周 波 数 調 整
用 発 電 所 と し て は, ・負 荷 変 動 に 即 応 した 出 力 制 御 が 可 能 で あ る こ と. ・出 力 制 御 幅 が 大 き く調 整 電 力 量 も十 分 に あ る こ と. ・出 力 変 動 に よ る機 械 系 お よ び 水 理 系 振 動 幅 や 運 用 上 の影 響 が 少 な い こ と. ・送 電 系 統 上 の 支 障 が 少 な い こ と. ・自 動 制 御 を行 う場 合 の 制 御 系 の構 成 が 容 易 で あ る こ と. な どの 特 性 を 備 え て い る こ と が 望 ま し い.実 *5
際 に は,電
力 会社 の 中央給 電指令 所 の 自
周波 数お よび電圧 については,事 故な どに より電力系統 に擾乱が発生 した場 合 に一時 的 に変動
す るこ とは技術 的 にや むを得 ないこ とか ら,一 定値 維持 を義務 つけるのではな く,努 力規定 と してい る.多 くの電力会社 で周波数誤差 の積算値 が一 定にな るように制御 してい る.変 動管理 目標 に幅 があ るの は,電 力会社の系統規模 に応 じて周波 数変動の程度が異 なるためであ る.一 般 に,系 統容量 が大 きいほ ど,大 きな変動 が発生 しに くい. *6 火力発電所や水 力発電所 では,調 速機が ター ビン加減 弁 また はガ イ ドベ ー ンを作動 させ て蒸気 流量 または水量 を調節 し,発 電 出力制御 を行 う.通 常,こ の調速機 の一部 に負荷制御装置 が設 けてあ り,任 意 の感度以上 に加減弁 が開かないよ う制限す るこ とがで きる.こ の制限 を解除 する運転 をガバ ナ フ リー運転 という. *7
連 系系統 におけ る負荷周波数制御方式 には,定 周 波数制御(FFC:flat
frequency control),定
連系線電 力制御(FTC:flat tie linecontrol),周 波数偏倚連系線 電力制御(TBC:tie trol),選 択周 波数制御(SFC:selective frequency control)の 4種類 があ る.
line bias con
動 化 シ ステム によ り周 波 数偏 差 を検 出 し,制 御 信号 を上 記 の要件 を満 たす 制御 用発 電 所(火 力発 電所 や水 力 発電所 な ど)に伝 送 し,発 電所 側制 御装 置 に よ り発電 出力 を自動 制御 す る.LFCの
発 電機 調整容 量 の総和 は,一 般 に系統 容量 の 5%程 度 とす る こ とが
望 ましい とい われ て い る. ③
供 給 予備 力
電力 系統 にお いて は,需 要想 定 の誤差 や発電 設備 な どの事 故 な
どに よ る供給 力不足 に対 して も停 電 が生 じな い よ うに,あ るい は停 電 の影響 をで き る だ け緩和 で き るよ うに想 定需 要 よ りも大 きな供 給力 をあ らか じめ保 有 して い る.需 給 調整 な らび に周 波 数調整 は常 時必 要 とされ る調 整(制 御)で あ るのに対 して,予 備 力 が 実際 に必 要 と され るの は事故 等 の発生 した場 合 の みで あ る.予 備力 は,不 測 の事 態 を 想 定 して常 時 にお いて保 有 す る一種 の保 険 で あ る. 予 備 力 は電 源 の計 画段 階 で は,一 般 に需 要 の8∼10%以
上確 保 す る ことが 目標 とさ
れ てお り,供 給 予備 力 といわ れ る.日 常 運用 にお いて,こ の計 画段 階で 確保 された供 給 予 備力 は一 般 に次 の よ うに分 類 され る.起 動 して発電 す る まで数 時間 以上 を要 し, 起 動 後 は長時 間継 続 して発電 可能 な供給 予備 力 につ いて は待機 予備 力,数 分 間 で供 給 力 増加 が 可能 な供 給 予備 力 につい て は運転 予 備力,ま た運 転予 備力 の うち,電 源脱 落 時 の 周波 数低 下 に対 して即 座 に出力 増加 が図 れ る供給 余力 は瞬 動予 備力 と呼 ばれ る. なお,大 容量 電源 脱落 時 には,図5.3に
示す よう に,各 種 予備 力が 発動 す る.
瞬動 予 備力 は,ガ バ ナ フ リー運転 中の発 電機 のガバ ナ フ リー余力 分 に相 当 し,一 般 に,そ の量 は総 需要 の 3%以 上 であ る.運 転 予備 力 は,上 記 ガバ ナ フ リー余力 に加 え, 部 分 負荷 運転 中(並 列 中)の 火力 発電機 余力 お よび停 止待 機 中 の水 力発 電機 が分 担 し, その量 は,一 般 に需 要 の3∼5%と
され る.待 機予 備 力 は,主 として停 止待 機 中の火 力
発 電所 が 分担 す る.供 給 予備 力 の必要 量 が,前 述 の とお り,計 画上8∼10%と
図5.3 大容量電源脱落時 の予備 力発動状況
され る
た め,待 機 予 備 力 は 5%程 度 とな る. 上 記 の 説 明 か ら も明 らか な よ う に,周
波 数 維 持 の た め の調 整 容 量 と,瞬 動 予 備 力,
運 転 予 備 力 と は 明 確 に 区 分 で き な い と こ ろが あ る.現 実 に は か な りの 部 分 が 共 通 と も 考 え られ る. (2)電
圧 制 御(無 効 電 力 制 御)
電 圧 制 御 は,常
時 に お い て 電 圧 を運 用 目標 値 以 内 に 収 め る こ と が 主 要 な 目 的 で あ
る.わ が 国 で は,低 電 圧 に お け る許 容 電 圧 範 囲 は,電 気 事 業 法 第26条 法 施 行 規 則 第44条
に よ り,101±6Vあ
るい は202±20Vと
以 上 に 関 し て は 特 に 規 定 さ れ て い な が,前 維 持 に努 め て い る.し
お よび電気 事業
定 め られ て い る.高 電 圧
記 規 則 に準 じ て 電 圧 変 動 目標 を定 め て そ の
か し,系 統 に よ っ て は,事 故 な ど に よ る電 圧 異 常 が 停 電 に 結 び
つ く こ と の な い よ う に す る特 別 な 制 御 が な され る場 合 も あ る*8. ①
系 統 電 圧 の 適 正 維 持
一 般 に,需
要 家 の 電 気 機 器 は 定 格 電 圧 で 使 用 さ れ る場
合 に 最 も よ い 性 能 を 発 揮 す る よ う設 計 さ れ て お り,電 圧 が 定 格 か ら 著 し く は ず れ る と,効 率,寿
命 な ど に 悪 影 響 が 現 れ る.こ の た め,電
値 を定 め,系
統 電 圧 を 運 用 基 準 以 内 に 収 め る た め の 制 御 を行 っ て い る.こ
に直 接 電 気 を供 給 す る 点 に お け る問 題 で あ る が,電
力 各 社 は,系 統 電 圧 の 運 用 目標 れ ら は負 荷
気 を供給 す る さ まざ まな電圧 階級
の 主 要 な通 過 点(変 電 所 な ど)に お い て も規 定 の 範 囲 に維 持 さ れ て い る必 要 が あ る.電 圧 を 規 定 の 範 囲 に 維 持 す る た め の 制 御 は 一 般 に 電 圧 ・無 効 電 力 制 御 と 呼 ば れ る.電 圧 ・無 効 電 力 制 御 は送 電 損 失 の 低 減 の 観 点 か ら な され る こ と もあ る. 電 圧 維 持 に 必 要 な無 効 電 力 の 供 給 量 に つ い て は,一 般 化 し て 定 量 化 す る こ とは 困 難 で あ る.必 要 な 容 量 は 基 本 的 に は,電 圧 の 運 用 目標 値 を設 定 し,系 統 解 析 を す る こ と に よ っ て 初 め て 明 らか に な る.系 る もの の,た
と え ば,500kV系
統 電 圧 の 運 用 目標 値 は,電 力 会 社 間 で 異 な っ て は い
統 に お い て は,500kVを
中 心 と し て+10∼-3%の
囲 と な っ て い る.系 統 電 圧 は,発 電 機 側 の 自 動 電 圧 調 整 器(AVR:automatic regulator),変
圧 器 の タ ップ 切 替 え 器(LRA:load
load tap changer),ま
ratio
adjusterま
範 voltage
た はLTC:on
た は調 相 設 備 の 投 入 ・開 放 な ど に よ り調 整 が 行 わ れ る.系 統 の
電 圧 調 整 効 果 は 交 流 系 統 の特 性 か ら,一 般 に調 整 箇 所 の 近 辺 に 限 定 さ れ る. ② 電圧 安定 性 の確保
需 要 の急 激 な 増 加,あ
る い は 電 源 の 脱 落 や 送 電 線 の 開放
に よ っ て 電 圧 が 著 し く低 下 し,場 合 に よ っ て は 系 統 の 安 定 性 が 維 持 で き な くな る よ う な 事 態 が 生 じ る こ とが あ る.こ 統 構 成,重
う した 現 象 は一 般 に は電 圧 不 安 定 性 現 象 と呼 ばれ,系
負 荷 の 度 合 い,負 荷 特 性 な ど さ ま ざ ま な 要 因 が 関 与 し て い る.こ
う した 条
*8 系統 の電 圧 と無効電力 との間には密接な関係が あるため,こ こで は,電 圧制 御 は無 効電力制御 にて行われ てい るもの とす る.
件 が 生 じ や す い 系 統 に お い て は,電
圧 安 定 性 を確 保 す るた め に,通
常 の電 圧 制 御 機 器
よ り も応 答 特 性 の早 い制 御 装 置 を設 置 す る な ど し て い る 場 合 もあ る.た 制 御 可 能 な 静 止 型 無 効 電 力 補 償 装 置(SVC:static (RC:rotary
condenser)な
var
と え ば,高
compensator)や
速
同期 調 相 機
ど が そ れ に該 当 す る.し か し電 圧 安 定 性 が 問 題 に な る か ど
う か は 系 統 構 成 や 電 源 の 配 置 状 態,負
荷 状 態 な ど系 統 の 状 況 に よ っ て 変 化 す るた め,
一 般 論 と して 電 圧 安 定 性 確 保 の た め の 必 要 容 量 を示 す こ とは 困 難 で あ る .こ
の場合 に
も,詳 細 な 系 統 解 析 に 基 づ い た 必 要 量 の 計 算 が 不 可 欠 と な る. (3)そ
の 他 系 統 維 持 運 用 ・制 御
電 力 系 統 の 安 定 性 を維 持 す る た め,上 記 の 周 波 数 制 御,電
圧 制 御 の ほ か に,主
とし
て事 故 発 生 時 の 緊 急 時 を対 象 と した い くつ か の 制 御 シ ス テ ム が 導 入 さ れ て い る.雷 事 故 な どに よ っ て,電
力 系 統 に 擾 乱 が 加 わ る と発 電 機 に と っ て 一 時 的 な エ ネ ル ギ ー 入 出
力 バ ラ ン ス が 崩 れ,状
況 に よ っ て は 系 統 全 体 で の 発 電 機 の 同 期 運 転 が 困 難 とな る こ と
が あ る.こ
う した 現 象 は 数 秒 で 問 題 とな る こ と も あ り,い わ ゆ る安 定 度 問 題 と呼 ば れ
て い る.こ
の た め,電 力 系 統 に は安 定 度 を 維 持 す る た め の い くつ か の 制 御 シ ス テ ム が
設 置 さ れ て い る.ま
た,系
統 全 体 が 停 電 した 場 合 に は系 統 を復 旧 す るた め に全 停 復 旧
用 電 源 が 確 保 さ れ て い る. ①
安 定 度維 持
安 定 度 は 発 電 機 の 同 期 運 転 に 関 わ る現 象 で あ り,一 般 に,定
態
安 定 度 と過 渡 安 定 度 に分 け られ る.定 態 安 定 度 は,送 電 系 統 と制 御 系 も含 む 発 電 機 群 と の 相 互 作 用 に よ る 準 静 的 な 安 定 性 に 関 わ る問 題 で あ り,過 渡 安 定 度 は発 電 機 に と っ て の 突 発 的 な エ ネ ル ギ ー の ア ンバ ラ ンス に よ っ て 発 電 機 の 回転 子 が 加 減 速 す る 問 題 で あ る.た
だ し,発 電 機 か らの エ ネ ル ギ ー の 送 り出 し は,他
況 に よ っ て 影 響 を受 け る た め,発
の 電 源 も含 む送 電 系 統 の状
電 機 単独 で は な く系 統 全 体 の 問 題 で あ る.
これ らの 問 題 は,基 本 的 に 系 統 の 負 荷 が 重 い状 態 に お い て,何
らかの擾 乱が 生 じた
場 合 に よ り発 生 し や す くな る.こ の た め 一 般 に は,系 統 に あ る程 度 の 外 乱(通 常,送 電 線 の 単 一 事 故(3 相 地 絡)を 想 定)が 生 じて も これ ら の 安 定 度 問 題 が 発 生 し な い よ う に 余 裕 を も っ て 設 備 が 計 画 さ れ,運
用 もな さ れ て い る.
送 電 距 離 が 長 く な る と,安 定 度 問 題 に よ る制 約 は相 対 的 に き び し くな り,熱 容 量 か ら決 ま る 送 電 線 の 固 有 の 送 電 容 量 が 十 分 活 用 で きな い こ と に な る.安 に関 し て は,以
定 度 確 保 ・維 持
下 の よ う な対 策 が な さ れ る.
・送 電 線 の 輸 送 力 を 向 上 さ せ る た め の 安 定 度 向 上 対 策(設 備 対 策)の 実 施:設 して は,直 列 コ ン デ ン サ,制 動 抵 抗,SVCな 装 置(PSS:power
system
どの ほ か,発
備対 策 と
電機 励磁 系 に系統 安定 化
stabilizer)が 設 置 さ れ る.特 にPSSは,制
御 系 のみ に よ
る対 策 で 便 益/コ ス ト効 果 が 高 く,系 統 の 特 性 に 応 じ て 出 力 偏 差 の ほ か に 角 速 度 偏
差 な どの複 数 の入力信 号 を用 い る こ とで性 能 向上 を図 った装置 も導 入 され て いる. ・安 定度 問題 が生 じな い範 囲 への送 電 電 力 の調 整:安 定度 に限 定 した 問題 で は ない が,運 用範 囲 に収 めるた め に予防 的 な潮流調 整 な どの系統操 作 が行 われ て い る. ・万 一問 題が 生 じた場合 に も影響 が 波及 しない よ うな防衛的 な シス テム の構 築:緊 急 時 対応 と して,電 源制 限 や負荷 制 限 を行 うシス テム が設置 され てい る. この ほか,重 要 な負荷 地域 な どについ て は,事 故 系統 か ら切 り離 し,単 独 で運 転 が 可能 とな るよ うなシス テム も部分 的 に は導 入 され てい る. これ らの対策 が どの程度 必 要 とな るか は,系 統 の特 性 な どに影響 す るた め一概 に論 じる こ とはで きな い.コ ス ト面や 系 統へ の影 響 面 な どか らの総 合 的判 断 が 必 要 とな る. ② 全 停 復旧
系統 内 の部 分 的 な停電 時の復 旧 は,健 全箇所 よ り電力 を送れ ば よ
いの であ るが,系 統 の全停 時 に は電 源 が まった くな い状態 とな るた め,補 機 電源 を必 要 とす る一 般の発 電機 は起 動が で きな い状態 とな る.そ の ような万一 の事 態 を想定 し て,単 独 で起 動 可能 な発電 機(ブ ラ ックス ター ト電 源)が 系統 内 に準備 されて い る.系 統 の全停 時 に はその復 旧 のた めの発 電設備 として,起 動 までの時 間が 早 い水 力発電機 が用 い られ るが,そ の水 力 発電機 は電 力 を使 用せ ず に起 動 す る必 要が あ る.こ れ をブ ラ ックス ター トとい うが,ブ ラ ックス ター トが可能 とな るため の設備 が別途 必 要 とな る.ま た,発 生 した電 力 は,他 の発 電機 を起動 す るた めの動力 として用 い られ るた め, 系統 に もよるが,あ る程 度 の出力 が必 要 とな る.
5.2.2 個 別 発 電 事 業 者/需
要 家 を 対 象 と した 系 統 運 用 ・制 御
現在 の わが 国での 系統維 持運 用 業務 につい て は,こ れ まで述 べ て きた よ うな系 統全 体 の運 用 に係 わ る共通 的 な もの と,特 定 の発電事 業者 および需 要家 を対 象 とした個別 的な もの とが あ る.以 下,2000年
3月 か ら開始 され た部分 自由化 での扱 い も含 めて,
電 力会 社 が実施 して い る主 な対 応 につ いて述 べ る. (1) 電力 品質の 適正維 持 電力 品質 を損 な う特 定 の需要(電 圧 フ リッカや 高調 波の発 生)に よる電 力系 統や 一般 需 要家 への影 響 を軽減 す る には,そ の原 因 を有 す る需 要家側 で対 策 を行 うのが基本 で ある.電 力 品質 を維持 す るた め には,電 圧 フ リッカや 高調 波 な どの発 生源 近傍 に対 策 設備 を設 置 す る必 要が あ る.た とえば,電 圧 フ リッカの発生 源 として は大 型 アー ク炉 や溶 接機 な どが あ り,照 明 の ち らつ き,テ レ ビの色調変 化 や画面 の動 揺 な どに影響 を 及 ぼす.電 圧 フ リッカ防止対 策 に は,供 給 側 で は短 絡容 量 の大 きい上位 系統 か らの供 給,需 要 家側 で は直 列 リア ク トルや静 止型 無効 電力 補償 装置 の設 置 な どがあ る.高 調
波 増 加 に よ る障 害 防 止 対 策 と し て は,系 統 構 成 の 変 更 に よ る 共 振 条 件 の 回避 や 高 調 波 フ ィ ル タ な ど に よ る 吸 収 が あ げ ら れ る.ま た,上
記 の よ う な 負 荷 を もつ 需 要 家 を,系
統 に 影 響 を与 え に くい 方 法 で 接 続 す る な ど も状 況 に よ っ て は 実 施 され る こ と が あ る. (2)部
分 自由 化 に伴 う個別 サ ー ビス
部 分 自 由化 に伴 い,新
規 の 参 入 者(発 電 事 業 者,PPS:power
plier)に 対 す る個 別 的 な サ ー ビ ス が 準 備 さ れ た,個
producer
and
別 サ ー ビ ス は 基 本 的 に は,以
示 す 同 時 同 量 を は ず れ た場 合 の 対 応 か ら な る.な お,2000年
sup 下 に
3月 か らの 部 分 自 由 化 の
も と で は,送 電 サ ー ビ ス に,系 統 全 体 の維 持 運 用 の観 点 か ら,発 電 機 に よ る周 波 数 調 整 分 の み が ア ン シ ラ リ ー サ ー ビ ス と し て組 み 込 まれ る こ と に な っ た.以
下 それ ぞれ に
つ い て 述 べ る. ① 同時 同量 を はず れた場 合 のサ ー ビス
今 回 の 部 分 自 由 化 に 伴 い,新
業 者 が 特 定 の 需 要 家 に 電 力 を 供 給 す る こ とが 認 め られ た が,PPS側 特 定 の 需 要 家 が 受 電 す る 電 力 は30分
規 発 電事
が供 給 す る電力 と
で 同 量 と し な けれ ば な らな い こ とが 決 め ら れ た.
しか し,需 要 の 変 動 な ど状 況 に よ っ て は これ が 満 足 で き な い場 合 も あ る た め,同
時同
量 を は ず れ た 場 合 の サ ー ビ ス が 準 備 され た. 同 時 同 量 の は ず れ 方 に応 じた サ ー ビス の 種 類 は電 力 会 社 に よ っ て 若 干 異 な る が,図 5.4は そ の一 例 を 描 い た も の で あ る. 1)負
荷 変 動 対 応 電 力(図 中 の ①,②,③):発
需 要 に 合 わ せ て 発 電 す る必 要 が あ る が,瞬
電 事 業 者 は,そ
の 顧 客 の瞬 時 瞬 時 の
時 瞬 時 の 需 要 に 合 わ せ て 電 力 を供 給 す る こ
とは 困 難 で あ る.負 荷 変 動 対 応 電 力 と は,発 電 事 業 者 か らの 託 送 電 力 と そ の 供 給 電 力 に 生 じ た 差 分 の 電 力 を 補 うサ ー ビ ス で あ る.現 状 に お い て は,30分
① 負荷変動対応電 力(基準 内) ②負荷変動対応電 力(超過) ③ 負荷 変動対応電 力(連続超過) ④ 事故時補給電 力 ⑤ 定検時補給電 力 ⑥ 余剰電 力引取 り (⑦無償引取 り) 図5.4
同時 同 量 をは ず れ た 場 合 の取 り扱 い の一 例
ご と の託 送 電 力 量
が,そ の30分 の供 給電 力量 を下 回 る場 合 に生 じた不 足 電力 の うち,変 動範 囲以 内(送 電 サ ー ビス契約 電 力 の 3%相 当)の もの に対 して は,そ の不 足 電力 の補 給 を行 う こ と として い る(3%相 当 を超 えた分(②)は 超過 分 として扱 う).た だ し,2時間 を超 え る連 続超 過 の場 合 は別途 のサー ビス メニ ュー とな る(事故 時扱 い). 2)補 給 電 力(図 中 の④,⑤):発
電 事業 者 の供 給 設備 事故 や定期 検査 時 に も,そ の
顧客 へ の電 力供 給 が継続 で きる ように,不 足電 力 を補 給 す るサー ビスが設定 されて い る.こ の不 足電 力 分 の電力 の供給 を必 要 とす る顧 客 は,事 前 に電 力会社 との契約 が必 要 とな る.電 力会 社 は,そ の必要 量 として,不 足す る電 力 と同量 の電 力 を発 電機 の 出 力増 加 な どに よって確保 してお く必要 が あ る.補 給電 力 には,事 故 時補 給電 力 と定 期 検 査時 補給 電 力が あ る.事 故 時補 給電 力 は,発 電事 業者 の発 電設備 の事 故,受 電 に必 要 な供 給設 備 の事 故 な どに よ り生 じた不 足電 力 を補給 す る電 力で あ る.一 方,定 期 検 査 時補 給電 力 は,発 電事 業者 の発 電設備 の定 期検 査 また は定 期補修 に よ り生 じた不足 電力 を補 給 す る電 力で あ る. ② 送電 サ ー ビス と しての 周波 数調整 分
現時 点 での送 電サ ー ビスの料 金 の一部
には,電 源 設備 によ る周 波数 調整分 が含 まれ てい る.こ の部分 は,い わ ゆる系統 全体 の安 定 維持 のた めの ア ンシラ リーサー ビスに相 当 す る分 で あ る.個 別電 力取 引(託 送) で は,参 入 者 の発電 機 は瞬時 的 な負荷変 動 に よ る周波 数 調整 まで は行 って いな い.こ の周 波 数調 整分 は,系 統 内 の周波 数調整 発電 機 が肩代 わ りして い る.
5.3
アメリカにおけるアンシラリーサー ビスの考え方と問題点
こ こで は,送
電 系 統 の オ ー プ ン ・ア ク セ ス や 送 電 料 金 設 定 へ の 限 界 費 用 原 理 の 導 入
な ど,画 期 的 な 自 由 化 方 策 を 行 っ て い る ア メ リカ に お け る ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス の 基 本 的 な 考 え 方 に つ い て 紹 介 した い. ア メ リカ に お け る電 気 事 業 へ の 規 制 は,州 る.各
権 限 を 有 し て い る.一 Regulatory
方,連
邦 エ ネ ル ギ ー 規 制 委 員 会(FERC:Federal
Commission)は,主
本 節 で は,連 North
と連 邦 の 二 つ の レ ベ ル で 実 施 さ れ て い
州 の 公 益 事 業 委 員 会 は,電 源 立 地 や 投 資 か ら小 売 料 金 に 至 る ま で 広 範 囲 な規 制
American
Energy
に州 際 卸 電 力 取 引 に 関 す る 規 制 権 限 を 有 し て い る.
邦 エ ネ ル ギ ー 規 制 委 員 会 と 北 ア メ リ カ 電 力 信 頼 度 協 議 会(NERC: Electric Reliability Council)に
に つ い て 紹 介 した い.さ
ら に,ア
お け る ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス の 定 義
ン シ ラ リー サ ー ビ ス の 実 際 の 導 入 例 と し て カ リ フ ォ
ル ニ ア 州 に お け る ア ン シラ リー サ ー ビ ス の 内 容 と そ の 価 格 高 騰 に つ い て 述 べ る.
5.3.1
ア メ リカ に お け る ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス の 考 え 方
(1) FERCの
考 え方
1996年 にFERCが
発布 した送 電 線 の 開放 に関す る最 終 規則 「送 電線 開 放 と回収不
能投 資 の 回収 に関 す る規 則 」(Order No.888)で は, ①
州 際取 引 に利 用 され る送電 設備 を所 有 ・運用 ・制御 す るすべ ての電気 事業 者 が 第 三者 に対 し 自己 の電 力売買 活動 と非 差別 的 に送電 サ ー ビス を提供 す るこ と.
②
卸 契 約 需 要 家 が 契約 供 給 者 を 変 更 す る こ と に よ り発 生 す る 回 収 不 能 投 資 (stranded investment)の 完全 回収 を許可.
③
州 際取 引 ・配 電 系統 での送 電 に対 す る連 邦/州 の規 制権 限 を明確 化. 表5.1
FERCに
よる ア ン シ ラ リーサ ー ビス の 定義 と分 類 6)
サービズの分類
サー ビズの特 徴
送電サ ービス提供 者がすべての送電利用者 に提供 しなけれ ばな らないサー ビス (送電線 提供者 による調達 のみ) ス ケ ジ ュ ー リン グ ・系 統制 御 お よび 給電
(scheduling,system
control and
dispatch)
ISOが 制御 する系統全体の信頼性 を考慮 した 経 済性 の評価 とその運 用 のた め の計算 ・通 信 ・監視
発電ユニ ッ トか らの無効電 力補償 お 電圧 を地域別(地点別)に適正水準 に維持す る よび電圧制御 た めに必 要な発電 ユニ ッ トか らの無効電力供 (reactive supply and voltage con給 ならびに電圧制御 trol from generation source) 送電サー ビス提供者以 外か ら調 達可能なサ ービス (送電線提供 者,ま た は第三者か らの調 達 と自主供給 を選択 する ことが可能) 系 統 周 波 数,制 御 地 域 エ リア 内 の 需 給 バ ラ ン
負荷追従 および周波 数制御
ス を維 持 す る た め の,ガ
(regulation and trol)
運 転 発 電 機 やAGC(automatic
frequency con-
バ ナ(調 速 機)フ リー generation
control)機 能 を 有 す る発 電 機 を用 い た 出 力 調 整 に よ る短 周 期 負荷 変 動 の 吸 収
電力量偏差調整 (energy imbalance)
瞬 動予備力 (operation reserve-spinning)
運転 予備力 (operation reserve-supplemental)
託 送 電 力 取 引 で の,受
電 側 と送 電 側 の い ず れ
か で 計 画 ど お りの送 電 も し く は受 電 で き なか った 場 合 に生 じる 需 給 ア ンバ ラ ン スの 補 償 供 給 側 の予 測 不 能 な 事 象(た とえ ば事 故)に よ り生 じた 需 給 ギ ャ ップ の 解 消 の た めの,10分 以 内 に対 応 可 能 な発 電 ユ ニ ッ トの 出力 調 整
負荷追従 や瞬動予備 力サー ビスよりも長期的 変動周期 を有 する需要変動の想定値か らの逸 脱 に対応 するための供給予備力の確保
表5.2
NERCが
定 義 す る ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス サ ー ビス の 性 質
サ ー ビス 名
系統運 用者 が 市場か 提供 で ら調達 きるサ 可能 ービス
サ ー ビス の 特 徴
【時 間 ス ケ ー ル 】
他の地 域か ら 調達可 能
需給バ ランスや系統信頼度 の確保 お よび 緊急時の処置 に必要 な機能全般.電 力給
系統 制御 (system
電計画の作成,系 統運用計 画の作成,リ アル ・タイムの発電機制御,送 電 系統の
control)
【数 秒 か ら数時 間 】
○
×
○
×
△
×
×
○
×
○
△
×
○
△
×
○
△
×
○
△
監視 ・制御,料 金決済,申 請書 の作 成 発 電 ユ ニ ッ トか ら の 無 効 電 力 供 給 お よ び電 圧 制 御 (reactive voltage
power
and
control
from
generation
source)
発電設備か らの系統電圧 を許容範 囲内 に 収め るため に必 要な無効電 力 の供給(吸 収)
【数 秒 】
周波数制御
負荷変動 に対 し,系 統周波数 の調整,制
(regulation)
御地域間の連系線潮流 を一定 に保持
【 ∼ 1分 程 度 】
周 波 数 制 御 で はカ バ ー され な い時 間 ご と
負荷追従
お よび 日間 の 負 荷 変 動 に追 従 で き る 系 統
(load flowing)
並 列 中 の 発 電 ユ ニ ッ トに よ っ て提 供 さ れ
【数 時 間 】
る サ ー ビス 発 電 ユ ニ ッ トや 送 電 線 の 事 故 に よ り系 統
瞬 動 予 備 力 (operating
reserve
spinning)
周 波 数 が 低 下 した 場 合 な ど に周 波 数 を 回 復 す るた め に,10分
以 内 に最 大 出 力 に 到
達 可能 な 系 統 並 列 中 の 発 電 ユ ニ ッ トに よ 【 数 秒 か ら10分
以 下 】
っ て提 供 され るサ ー ビ ス 発 電 ユ ニ ッ トや 送 電 線 事 故 に よ る系 統 周 波 数 が低 下 した 場 合 な ど,周 波 数 を 回復
運 転 予 備 力 (operating
reserve
す る た め に,10分
以 内 に最 大 出 力 に 到 達
可 能 な 発 電 ユ ニ ッ ト,ま た は10分
supplement) 【10分 以 下 】
以内
に 遮 断 可 能 な 負 荷 に よ って 提 供 され る サ ー ビス(運 転 予 備 力 は 瞬 時 の 応 答 は 要 求 さ れ な い)
バ ッ クア ッ プ供 給 (backup 【30∼60分
supply) 程 度 】
相 対 取 引 を 選 択 した 需 要 家 が,契 発 電 ユ ニ ッ トの 事 故,利
約先 の
用 して い る送 電
線 の事 故 に よ り,他 の 事 業 者 か ら供 給 を 受 け る サ ー ビス
電力量 偏差調整
ある一定期間 に発生す る発電事 業 者(需
(energy
要家)の発電電 力量(需要 量)の計画値 と
imbalance)
×
○
△
×
○
△
×
○
△
×
△
×
実績値 との偏差分 を清算 するサー ビス
【時 間 単 位 】 電 力 損 失 補償 (real sion
power
transmis
送 電 損 失 を補 償 す る た め に発 電 ユ ニ ッ ト か ら提 供 され る サ ー ビ ス
loss)
【時 間 単 位 】
発 電 電 力 量 や 需 要 電 力 の デ ー タ を他 の 制
動 的 ス ケ ジ ュー リン グ (dynamic
scheduling)
【数 秒 】
御 地 域 に転 送 す る こ とに よ り,他 の 制 御
△
地 域 か ら発 電(負 荷)制 御 を可 能 とす るサ ー ビス
(一 部)
ブ ラ ッ ク ス タ ー ト (system
広 範 囲 停 電 時 の 系 統 復 旧 の た め に,系
blackstart
統
か らの 電 力 供 給 を受 けず に起 動 で き る 発
capability)
電 ユ ニ ッ トが 提 供 す るサ ー ビ ス
【事 故 発 生 時 】
△ (一部)
系 統 安 定 度 (network vices
stability from
系統 安定度 を維持す るた めの系統安定化
ser
装 置(PSS)や 制動抵 抗な どを装備 した発 電 ユニ ッ トが提供す るサー ビス
generation
source)
×
【サ イ ク ル ご と 】
注)○:こ
の分 類 に 適 合 す る サ ー ビス,△:こ
の 分 類 に あ ま り適 合 しな い サ ー ビ ス,×:こ
の分類
に 適 合 し な い サ ー ビス
が 織 り込 ま れ た.特
に,上 記 の項 目① で は,非
差 別 的 な オ ー プ ン ・ア ク セ ス料 金 表 の
提 出 と送 電 線 同 時 情 報 公 開 シ ス テ ム(OASIS:open system)の
access
same-time
開 発 ・運 用 を基 本 と し て,発 送 電 の 機 能 分 離 に 加 え て,自
information 身 の 卸 電 力 ・受
電 電 力 に 対 す る 非 差 別 的 な オ ー プ ン ・ア ク セ ス 料 金 表 に 沿 っ た 送 電 サ ー ビ ス(ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス 含 む)の 実 施 を求 め る 内 容 が 記 載 さ れ た.つ 会 社 な ど)に 対 して,日
ま り,送 電 線 提 供 者(電 力
々 の 系 統 運 用 で 安 定 供 給 お よ び信 頼 度 の 維 持 に 必 要 な 個 々 の
機 能 を送 電 サ ー ビス と分 離 した 上 で,各
ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス に 関 わ る料 金 を オ ー プ
ン ・ア ク セ ス 送 電 料 金 表 に掲 載 す る こ と を 求 め た. FERCの
最 終 規 則 に お け る ア ン シ ラ リ ー サ ー ビ ス は,「 連 系 送 電 系 統 の 信 頼 度 を確
保 す る た め に,発
電 事 業 者 か ら需 要 家 まで の 電 力 の 輸 送 を 支 援 す るサ ー ビ ス で,制
御
地 域 内 の 送 電 事 業 者 が 提 供 の 義 務 を 負 う」 と定 義 さ れ,2 種 類 に大 別 さ れ て い る. ①
送 電 サ ー ビス提 供 者 が すべ て の送 電利 用者 に提 供 しな けれ ば な らない サ ー ビ ス:送
②
電 線 提 供 者 が 唯 一 の サ ー ビ ス 提 供 者 で,送
電線 利用 者 は送電 線提 供者 か ら
そ の サ ー ビ ス を調 達 し な けれ ば な らな い. 送 電 サ ー ビ ス 提 供 者 以 外 か ら調 達 可 能 な サ ー ビ ス:送
電 線 提 供 者 が,そ
の制御
地 域 内 の 需 要 家 に電 力 を 供 給 す る送 電 線 利 用 者 に提 供 す る義 務 は あ る が,送 用 者 は送 電 線 提 供 者 か ら の 調 達,第
電利
三者 か らの調達 お よび 自主供 給 を選択 す る こ
とが で き る. さ ら に,送
電 サ ー ビ ス と分 離 し て 送 電 料 金 に掲 載 す べ き サ ー ビス と し て,表5.1に
示 す よ う に,上 記 の サ ー ビス 分 類 に 対 し,合 計 6種 類 の ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス を あ げ て い る. (2)NERCの
考え方
NERCは,FERCが
定 義 し た 6種 類 の ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス で は,電 力 系 統 の信 頼
性 維 持,市 場 内 の公 平 性 確 保 に は不 十 分 と し,表5.2に を提 案 した.な
お,NERCで
は,各
operation
services)と 称 して い る.
提 唱 す る ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス は,"系
市 場 か ら調 達 可 能 か","他 が で き る.ISOな
類 のサ ー ビス
サ ー ビス の 性 質 か ら,こ れ らの サ ー ビ ス を系 統 連
系 運 用 サ ー ビ ス(IOS:interconnected NERCが
示 す よ うな12種
統 運 用 者 が 提 供 で き る か","競
の 制 御 地 域 か ら調 達 可 能 か"な
争
どの項 目で特 徴 づ け るこ と
ど の 系 統 運 用 者 が サ ー ビス を 調 達 す る ケ ー ス が 多 い が,系
統 内の特
定 の 地 点 で 提 供 す る 発 電 ユ ニ ッ トか らの 無 効 電 力 供 給 お よび 電 圧 制 御 や,ブ
ラ ックス
タ ー ト,系 統 安 定 度 な ど の サ ー ビ ス は,サ 定 す る こ とが む ず か し い た め,競 さ ら に,各
図5.5
Operations
争 市 場 や他 の 制 御 地 域 か ら の 調 達 は 困 難 で あ る.
サ ー ビ ス は,図5.5に
(出 典:Interconnected
NERCが
Operations Services
Under
示 す よ う に,共
同 サ ー ビ ス と個 別 サ ー ビ ス に分 類
定 義 した ア ン シ ラ リー サー ビ ス の分 類
Services Open
ー ビ ス を 受 け る需 要 家(送 電 線 利 用 者)を 特
Working Access-Final
Group(ISO Report",March
WG),"Defining 7,1997.)
Interconnected
図5.6 (出 典:Interconnected Operations
Operations Services
す る こ とが で き る.こ
Under
Open
Working Access-Final
Group(IOS
WG),"Defining
Interconnected
Report",March7,1997.)
こで 共 同 サ ー ビ ス(community
ら,運 用 権 限 者(た と え ばISOな ら な い もの で,す
各 サ ー ビス 選 択 基 準 と の関 係
Services
services)と は,信 頼 性 の観 点 か
どの 系 統 運 用 者)に よ っ て 運 用 ・制 御 さ れ な け れ ば な
べ て の 送 電 線 利 用 者 の 利 益 と な る よ う に 調 達 ・調 整 さ れ る サ ー ビス
の こ と で あ る.一 方,共
同 サ ー ビ ス に あ て は ま ら な い サ ー ビ ス は,個 別 サ ー ビ ス(indi
vidual services)に 分 類 さ れ,個 別 の 電 力 取 引 へ の サ ポ ー ト とな る.さ の 特 徴 か ら,"需 給 バ ラ ン ス","送
電 系 統 セ キ ュ リテ ィ","エ
らに 各 サ ー ビス
ネ ル ギ ー 準 備"の
よ うに
サ ー ビ ス を分 類 す る こ と もで き る. NERCの
定 義 に よ る ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス は,送 電 サ ー ビ ス か ら分 離 す る こ とが 合
理 的 で あ るか ど う か に加 え て,① 系 統 信 頼 度 の 維 持(provide
reliability),② オ ー プ ン
ア ク セ ス お よ び 競 争 市 場 形 成 の 促 進(facilitate access&enable コ ス ト配 分(provide る.選
ば れ た12の
market),③
サ ー ビ ス は,図5.6に
示 す よ う に,各 選 択 基 準 に位 置 づ け ら れ る.
主 に,系 統 信 頼 度 維 持 と公 平 性 に 関 わ る サ ー ビ ス が 多 い が,各 に あ る こ とか ら,す べ て の 選 択 基 準 に 関 わ る サ ー ビス が,全 (3)イ
公平な
equity)の 三 つ の 観 点 が サ ー ビス の 選 択 基 準 と して 考 慮 さ れ て い
選 択基 準 が密 接 な関係
体 の 約 半 数 に 占 め る.
ギ リ ス で の ア ン シ ラ リ ー サ ー ビ ス との 比 較
電 気 事 業 の 規 制 緩 和 を 推 進 し て い る イ ギ リス も,表5.3に サ ー ビス を 導 入 し た.イ
示 す よ う な ア ン シ ラ リー
ギ リス で の ア ン シ ラ リー サ ー ビス は,強
制 サ ー ビ ス(manda-
表5.3
イ ギ リス(イ ン グ ラ ン ドと ウ ェ ー ル ズ)に お け る ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス の 種 類 と特 徴 サ ー ビス カ テ ゴ リ
特
サ ー ビ ス の種 類
徴
強制
必 要 商用
系 統 内 の 電 圧 バ ラ ン ス 維持 の た めの 無 効 電 力 の 供 給(消 費).年 "Reactive Power
無 効 電 力 (reactive
power)
2回 の 入 札 が 行 わ れ る Market"が1998年 4月創
○
○
○
○
設 され た. 系 統 周 波 数 の 維 持(49.5Hzか
ら50.5Hz)の
た
め,自 動 的 に発 電 機 出 力 を 調 整 す るサ ー ビス・ 周 波 数 制 御
周 波 数 変 動 の 大 き さ に よ り,発 電 プ ラ ン トが 主
(frequency
に 提 供 す るcontinuous
services(常
時サー ビ
ス)と 発 電 プ ラ ン ト と需 要 家 か ら提 供 さ れ る
control)
occasional
services(随 時 サ ー ビス)に 分 け られ
る.
ブ ラ ッ ク ス ター ト (black
start)
広範囲 な停電時(全系停電 も含む)の系統復 旧の ために,系 統 か らの電力供給 を受 けずに起 動で
○
きる補助電源 を装備 した発電ユ ニッ トが行 うサ ー ビス.200MW以 上 の発電 設備容量. 発 電 設 備 の事 故 や 需 要 想 定 の 誤 差 な どか ら生 じ る 需 給 ア ンバ ラ ン ス を解 消 す る た め の サ ー ビ ス.発 電 事 業 者 と同 様 に,大 口産 業 需 要 家(需 要
予 備 力 (reserve)
量 の 削減)か ら も供 給 さ れ るサ ー ビ ス. 待 機 予 備 力 は,年
○
1回 の 入 札 に よ,NGCが
確 保 す る.こ の サ ー ビ ス は,20分
以内に供給可
能 で 少 な く と も 2時 間 は継 続 して供 給 可 能 で あ る 発電 ユ ニ ッ トが 提 供 す る. 系統制約調整 (constraints) 強 制:強
系統内の特定 の送電線 に発生 す る送電制約違反
制 サ ー ビ ス(mandatory
services)電 力 系 統 の 安 定 運 用 に お い て基 本 的 な も の で,
す べ て の 発 電 機 に対 し その 提 供 が 強 い られ る サ ー ビ ス.必
要:必
要 サ ー ビ ス(necessary
services)要 求 され る機 能 を有 す る発 電 機 が 提 供 す るサ ー ビ ス.商 用:商 mercial
○
(過負荷潮流)を解消す るた めに行 われ るサー ビ ス.
用 サ ー ビ ス(Com
services)発 電 事 業 者 や 需 要 家 か ら も提 供 で き る サ ー ビス
tory services),必
要 サ ー ビ ス(necessary
services)と 商 用 サ ー ビ ス(commercial
ser
vices)に 区 分 さ れ て い る.強 制 サ ー ビ ス は,周 波 数 調 整 や 無 効 電 力 供 給 な ど電 力 系 統 の 安 定 運 用 の 基 本 的 な サ ー ビ ス で,す い られ る.こ
べ て の発 電 事 業 者 に 対 して サ ー ビ ス の 提 供 が 強
の サ ー ビ ス の 供 給 義 務 は,系
セ ン ス に 含 まれ る規 制 義 務 と,NGCと
統 運 用 基 準(Grid
Code)の
もとで発 電 ライ
発 電 事 業 者 の 間 で 結 ば れ る基 本 接 続 と系 統 使
用 契 約(MCUSA:master な る.必
connection
and use of system
agreement)の
契 約義 務 か ら
要 サ ー ビ ス は,系 統 の セ キ ュ リテ ィ 維 持 に 欠 く こ と の で き な い サ ー ビ ス で,
ブ ラ ッ ク ス タ ー トな ど特 定 の 条 件 や 要 求 機 能 を有 す る 発 電 ユ ニ ッ トに よ っ て 行 う サ ー ビ ス で あ る.商
用 サ ー ビ ス は 発 電 事 業 者 も し くは大 規 模 需 要 家 か ら も提 供 で き る サ ー
ビ ス で あ る. イ ギ リス で は,複
雑 な 価 格 形 成 プ ロ セ ス に よ る参 入 障 壁 な ど,こ れ まで の プ ー ル 制
度 の 問 題 点 を解 決 す る た め に,OFFER(現OFGEM)が,1998年 度(NETA:New
Electricity Trading
Arrangement)最
7月 に新 電 力 取 引 制 終 報 告 書 を政 府 に 提 出 し,プ
ー ル制 度 に代 わ る新 しい電力 供給 体 制 に向 けた 全面 改 革案 を公 表 した 27日 よ り運 用 を 開 始 し た 新 しい 電 力 取 引 制 度 は,先 物 市 場,短
・2001年
期 契 約 市 場,需
3月
給 調整
市 場 の 3市 場 か ら成 り立 つ.こ の 新 電 力 取 引 シ ス テ ム で は,ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス は, NGCが
運 営 す る"需 給 調 整 市 場"に 組 み 込 ま れ て い る.こ
の 市 場 で の ア ン シ ラ リー サ
ー ビス は ,2 種 類 の シ ス テ ム ・ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス(周 波 数 応 答 や 無 効 電 力 な どの パ ー ト1 ,ブ
ラ ッ ク ス タ ー トな どの パ ー ト 2)とコ マ ー シ ャ ル ・ア ン シ ラ リー サ ー ビス に
分 け ら れ て い る.表 ー ビス 分 類(強 制
現 の 違 い は あ る も の の,そ
,必 要,商
の 内容 は,こ
れ ま で の ア ン シ ラ リー サ
用 サ ー ビ ス)の サ ー ビス 区 分 に 対 応 し た も の で あ る.
電 力 自 由市 場 を導 入 し て い る 国 で は,ア
ン シ ラ リー サ ー ビ ス は,電 力 系 統 の 安 定 性
お よ び 信 頼 性 維 持 の た め に 欠 く こ との で き な い サ ー ビ ス で あ る と い う立 場 に違 い は な い.前
述 のFERCが
お よ び 給 電"サ
あ げ た ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス は,"ス
ー ビ ス を 除 き,イ
ケ ジ ュー リン グ ・系 統 制 御
ギ リ ス で の ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス と名 称 の違 い は あ
る もの の,そ の 内容 は 酷 似 し て い る.し か し,イ ギ リス の場 合 は,発 電 事 業 者(大 口 需 要 家 含 む)か ら提 供 さ れ る サ ー ビ ス に つ い て の み ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス と して い る の に 対 し,ア メ リカ で はFERCの やNERCの
定 義 で の"ス ケ ジ ュ ー リン グ ・系 統 制 御 お よ び 給 電"
定 義 に お け る"系 統 制 御"の
よ う に,送 電 サ ー ビ ス 提 供 者(送 電 線 を有 す
る 電 力 会 社)の サ ー ビ ス も ア ン シ ラ リー サ ー ビス に 含 め て い る.ま た,イ ギ リ ス に比 べ て,FERCやNERCに
よ る ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス の 分 類 は,よ
り市 場 調 達 を意 識 し
て 定 義 さ れ て い る と考 え られ る. (4)ア
ン シ ラ リー サ ー ビ ス の コ ス ト配 分 方 式
現 在,利
用 され て い るア ン シ ラ リ ー サ ー ビ ス の価 格 設 定 方 式 は,規
制 料 金 方 式 と市
場 価 格 設 定 方 式 に分 類 され る.市 場 か ら の 調 達 が 困 難 な サ ー ビ ス に つ い て は,規 制 料 金 方 式 が 適 用 さ れ,総 ビ ス に つ い て は,競 に,ア
括 原 価 方 式 が そ の 主 流 で あ る.一
争 市 場 に価 格 決 定 を委 ね て い る.た
方,市
場 か ら調 達 可 能 な サ ー
だ し,価 格 高 騰 を避 け る た め
ン シ ラ リー サ ー ビス の 市 場 価 格 に 上 限 価 格 を 設 け る こ と もあ る.こ
の ほ か に,
表5.4
ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス の コ ス ト配 分 手 法 と その 特 徴
コス ト配分方式
特
徴
共通 サー ビス
個別 サー ビス
△
○
○
△
新 規 参 入 者 が す べ て の共 通 費 を 負 担 す るた め,負 担 が 過 大
総括費用 方式*
に な る傾 向が あ る.イ
ン セ ンテ ィブ を与 え に くい,ま
た効
率 性 を確 保 し に くい.
増分費用 方式
新規参入者 は共通費 の負担が免除され ることや,参 入順 位 によ り費用 負担 が異なるな ど公平性 が保障 され ない.
単独費用 方式
新規参入者が すべての共 通費 を負担す るた め,負 担 が過大 になる傾 向がある.
限界費 用方式
限界費用 による価格設定 は経済学的 には効率的 な資 源配分 を もた らすが,固 定費(共通費)が回収 され る保証 はない.
規制 料 金 方 式
参 加 者 ご とに す べ て の参 入順 位 を 考 慮 した 平 均 増 分 費 用 を シ ャ ー プ レイ 値
求 め て費 用 負担 とす る.参
方式
増 大 し,計 算 が煩 雑 とな る こ とや,取
入 者 が 増 加 す れ ば組 み合 わ せ が 引 量 に対 し 中 立 で な
く,同 質 の参 入 者 間 に お い て も不 公 平 が 生 じ る. オ ー マ ン シ ャー
理 論 的 に は,費
プ レ イ値 方 式
な く,公 平 で収 支 均衡 条 件 を満 た す 料 金 が 実 現 可 能.
市場価格 設 定方式
費用最 小化*
効用最 大化
*印 は,実
ISOの
用 負担 ゲ ー ム の 解 と して,内
サ ー ビス 購 入費 用(=契
部相互補 助が
約 量 ×入札 価 格)が 最 小 とな
る よ う落 札 す る. 発 電 事業 者 の効 用(=収
入-発
電 コ ス ト)が最 大 とな る よ う
決 定 す る.
際 に電 力 市 場 で 利 用 され て い る方 法.○:こ
の配 分 方 式 の 適 用 が 容 易 な サ ー ビス,△:
適さないサー ビス
費 用の 回収性 お よび参加 者 の公平性 を重 視 した共 通費 と して の配分 手 法,効 率性 を重 視 した増 分費 用 配分 方式 や 限界費 用配分 方 式,理 論面 か らの シ ャー プレ イ値 配分 方式 な どが提 案 され て い る(表5.4参 照).
5.3.2
カ リ フ ォル ニ ア 州 にお け る ア ン シ ラ リー サ ー ビス の 実 例
ア メ リ カ の 中 で も急 速 な 自 由化 方 策 を採 用 し て い た カ リ フ ォル ニ ア 州 で は,電 力 会 社 の 倒 産 や 大 規 模 な 停 電 な ど,電 力 危 機 が 現 実 の も の と な っ て し ま っ た.カ
リフォル
ニ ア 州 で の 電 力 危 機 の原 因 に 関 して は さ ま ざ ま な 角 度 か ら検 討 が 進 め られ て い るが, 同 州 で の ア ン シ ラ リ ー サ ー ビ ス は 電 力 市 場 下 で の 系 統 維 持 運 用 を理 解 す る 典 型 例 と し て はふ さ わ し い も の で あ る.こ
の た め,以
下,カ
リ フ ォ ル ニ ア 州 を対 象 に ア ン シ ラ リ
ー サ ー ビ ス の 実 例 を述 べ る . (1)カ
リ フ ォ ル ニ アISOに
カ リ フ ォル ニ ア 州 は,1998年
お ける ア ンシラ リーサ ー ビス市 場の 特徴 3月31日
に,電 力 取 引 所(PX:power
exchange)と
独 立 系 統 運 用 機 関(ISO:independent
system
operator)の
運 営 を開 始 し た.PXは,
ス ポ ッ ト市 場(卸 電 力 用 プ ー ル 市 場)で あ り,需 給 両 サ イ ドか ら入 札 を 受 け 付 け,売 が 成 立 す る 市 場 決 済 価 格(MCP:market ス ポ ッ ト市 場 に は,取
clearing price)を 決 定 す る.PXが
market)と,取
引 前 日 の ス ポ ッ ト市 場 で 確 定 した 最
終 給 電 計 画 か ら の 変 更 を調 整 す る取 引 1時 間 前 市 場(hour-ahead 方,ISOの
役 割 は,給 電,送
ン シ ラ リー サ ー ビ ス の 売 買,取 整,電
運 営す る
引 の 前 日 ま で に 給 電 計 画 や ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス供 給 計 画 を 策
定 す る 取 引 前 日市 場(day-ahead
先 物 市 場 が あ る.一
買
market)の
2種 類 の
電 系 統(グ リ ッ ド)の 信 頼 度 管 理,ア
引 前 日市 場 と 1時 間 前 市 場 で 決 定 さ れ た 給 電 計 画 の 調
力 量 偏 差 調 整 市 場(real-time
imbalance
market)に
よ る リアル タイム での需給
調 整,送 電 線 の 混 雑 管 理 な どで あ る.発 電 事 業 者 は,直 接 ア ク セ ス(相 対 取 引),PX市 場(卸 電 力 用 プ ー ル 市 場),ISO市
場(ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス市 場,リ
へ の 参 加 を 選 択 す る こ と が で き る.ま た,需 た はPX市
要 家 は,直
場 を 通 じ て 電 力 を購 入 す る こ とが で き る.ま
デ ィ ネ ー タ(SC:scheduling
coordinators)は,直
た,ス
ケ ジ ュ ー リ ン グ ・コ ー
接 ア ク セ ス を 選 択 した 多 数 の 市 場
参 加 者(需 要 家 と供 給 事 業 者)の 代 理 者 と して,需 に提 出 す る 責 務 を 有 して い る.SCは,図5.7に
ア ル タ イ ム 市 場)
接 ア ク セ ス(direct access)ま
給 をバ ラ ン ス さ せ た 給 電 計 画 をISO 示 す よ う に,給 電 計 画 と と も に,ア
シ ラ リ ー サ ー ビ ス の 入 札 お よ び 自 主 供 給 分 の ア ン シ ラ リ ー サ ー ビ ス の 計 画 もISOに
図5.7 (出 典:F.L. CIGRE
Alvarado(Convenor)ほ SC
38,Advisory
カ リフ ォル ニ ア電 力 市 場 の 概 要 か:Methods
Group
5,Task
and Force
Tools
for
Costing
38-05-07,CIGRE,August,2000.)
Ancillary
Services,
ン
提 出 す る.こ
の よ う に,カ
た め に,PXに
リ フ ォ ル ニ ア で は,ISO運
営 の独 立 性 と公 平 性 を 確 保 す る
よ る卸 電 力 用 プ ー ル 市 場 の 運 営 と,ISOに
よる送電 設 備 の運 用 制御 を
分 離 さ せ て い る. カ リ フ ォ ル ニ ア で は,表5.5に
示 す よ う にISOに
よ り 6種 類 の ア ン シ ラ リー サ ー ビ
ス が 行 わ れ て い る.FERCの
定 義 と異 な る点 は,予 備 力 サ ー ビス の 名 称 の 違 い,"電 力
量 偏 差 調 整 サ ー ビス"と"ス
ケ ジ ュ ー リ ン グ,系
統 制 御 お よび 給 電 サ ー ビ ス"の
除外
と"ブ ラ ッ ク ス タ ー トサ ー ビ ス"の 追 加 の 3点 で あ る.こ の う ち,"電 圧 制 御 サ ー ビス"
表5.5
カ リ フ ォ ル ニ アISOで
の ア ン シ ラ リー サ ー ビ スの 種 類 と特 徴サービスの種類
費用算 定
特 徴
サー 達方 ビ法 ス調と調達 者
方式
リア ル タ イ ム の 需 給 バ ラ ン ス を確 保 し,系 統 周 波 数 を規 定 値 内 に 維 持 す る.ISOが 周波数制御 (regulation)
運用 ・
制 御 す る 系 統 に 同 期 接 続 し,AGC(auto matic generation control)機 能 を 有 す る 発 電 ユ ニ ッ トが 提 供 す る(発 電 機 出 力 変 化).必 要 な周 波 数 調 整 容 量[MW]は,総 需 要 の1 ∼5%の 範 囲 内 でISOの 判 断 で設 定 さ れ る
運転 中で,10分 以内 にある特定水準 の電 力が 瞬 動 予 備 力 (spinning
reserve)
運 転 中 で な くて も,10分
以 内 に あ る特 定 水 準
の 電 力 が 供 給 可 能 で,少
な くと も 2時 間 の運
(non-spinning
転 が 可 能 な電 源 か ら供 給 され るサ ー ビ ス.水
reserve)
力 発 電 機,小
容 量 ガ ス ター ビ ン発 電 機 な どが
サ ー ビ ス提 供 者.
(replacement
(SCに
60分 以 内 に起 動 し同 期 を と り,あ る特 定 水 準 の 電 力 が 供 給 可 能 で,少
な く と も20時
間の
運 転 が 可 能 な 電 源 か ら供 給 され るサ ー ビス
(voltage
サ ー ビ ス提 供 者 は,信 頼 度 マ ス トラ ン電 源 support)
ISOに
ISOに
注)電
頼 度 マ ス トラ ン電 源
start)
(SCに
よる 自主
市場価格
供 給) ISOに
よる
競争 入札 (SCに
市場価格
よる 自主 モ
供 給) よる 信 頼 度
総括 原価
マ ス トラ ン電 源 と
(+機 会 費用)
よる 信 頼 度
マ ス トラ ン電 源 と
総括費 用
の契 約
圧 制御 とブ ラ ッ ク ス ター ・サ ー ビス の 特 徴 は,表5.1のFERCに 表5.2のNERCに
市場価格
よる
競 争 入札
ISOに
ブ ラ ック ス タ ー ト (black
よる
の 契約
サ ー ビ ス提 供 者 は,信
市場価格
供 給)
ISOに 電 圧 制 御
よる 自主
供 給)
非 瞬 動 予 備 力
reserve)
よる
競 争 入札
供給可能 で,少 な くとも 2時間 は運転 が可能 競 争 入札 な電 源(AGC機 能あ り)から供給 され るサ ー (SCに よ る 自 主 ビス.部 分 負荷運転中の火力発電機 や揚水 発 電機が サー ビス提供者
待 機 予 備 力
ISOに
よ る サ ー ビ ス の定 義 を 参 照.
よ るサ ー ビ ス の 定 義 お よ び
と “ブ ラ ッ ク ス タ ー トサ ー ビ ス ” は 信 頼 度 マ ス トラ ン 電 源 との 年 間 ベ ー ス の 長 期 契 約*9 に よ り,残 SCの
りの 4種 類 の ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス は,競 争 市 場(競 争 入 札)ま た は
自 主 供 給 に よ り調 達 さ れ る.
4種 類 の ア ン シ ラ リ ー サ ー ビ ス(周 波 数 制 御,瞬 動 予 備 力,非 瞬 動 予 備 力,待 力)は,表5.6に
機 予備
示 す よ うな 手 順 で,取 引 前 日市 場 と取 引 1時 間 前 市 場 か ら サ ー ビス 必
要 量 を 調 達 す る.ま
ず,ISOは,取
引 2 日前 の 午 後 6時 に,予 想 需 要,送
電 線 混 雑,
送 電 線 の 空 き容 量 や ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス 必 要 量 な どの 電 力 取 引 日 の 系 統 状 態 を 公 開 す る.取
引 前 日市 場 で,電
に 加 え,ア
力 取 引 の 希 望 給 電 計 画 と調 整 入 札(ゾ ー ン間 の 混 雑 管 理 用)
ン シ ラ リー サ ー ビ ス の 競 争 入 札 へ の 参 加 を 希 望 す るPXとSCか
電 ユ ニ ッ ト(負荷)ご と に,ア
〔$/MW〕 や 出 力 調 整 価 格 〔$/MWh〕*10か SCは,ア
ら,各 発
ン シ ラ リ ー サ ー ビ ス の 供 給 容 量 〔MW〕,供 ら な る入 札 をISOに
給 希 望 価格
提 出 す る.こ の と き に,
ン シ ラ リー サ ー ビ ス の 自 主 供 給 計 画 も同 時 に提 出 す る.ISOは,ゾ
混 雑 管 理 と ア ン シ ラ リー サ ー ビス の 競 争 入 札 を実 施 し,ア
ー ン間 の
ン シ ラ リー サ ー ビ ス の 種 類
毎 に 調 達 費 用(=供
給 容 量 〔MW〕 ×供 給 希 望 価 格 〔$/MW〕)が
を決 定 す る.PXや
各SCに
最 小 にな る よ うに落札
は,同 時 に複 数 種 類 の ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス(4種 類 の み)
へ の 入 札 が 認 め られ て い るが,ISOは,周
波 数 制 御,瞬
機 予 備 力 の順 で 落 札 評 価 を行 う。 ま た,ISOは,ゾ
動 予 備 力,非
瞬 動 予 備 力,待
ー ン間 の 混 雑 管 理 とア ン シ ラ リー
サ ー ビ ス の競 争 入 札 を 実 施 し,最 終 需 給 計 画(final day-ahead
schedule)と
ア ンシ ラ リ
ー サ ー ビ ス の 供 給 計 画 を 作 成 し,送 電 線 混 雑 料 金 とア ン シ ラ リー サ ー ビ ス 価 格 を 算 定 し,PXとSCに
*9
告 知 す る.落 札 さ れ たPXやSCに
支 払 うア ン シ ラ リー サ ー ビ ス価 格
電 圧 制 御 サー ビ ス とブ ラ ッ ク ス タ ー トサ ー ビス は,ISOと
ス トラ ン電 源(reliability must-run
generation)か
の 間 で 長 期 契 約 を締 結 した 信 頼 度 マ
ら調 達 され る.カ リ フ ォル ニ ア電 力 市 場 で は,電 力
自 由 取 引 対 象 外 と し て,規 制 マ ス トテ イ ク電 源(regulated
must-take
generation,原
施 設)や そ の他 既 存 買 電 契 約 に基 づ く電 源),規 制 マ ス トラ ン電 源(regulatory
子 力,QF(認
must-run
自 流 式 水 力 な ど連 邦 法 や 州 法 な どの 規 制 機 関 の 要 件 に基 づ く運 用 義 務 が 課 され た 電 源),信 トラ ン電 源(reliability must-run
generation,系
頼度 マ ス
統信 頼 度 の 確 保 の た め 完 全 競 争 市 場 下 に 属 さず 独 自
の 運 用 が 必 要 で あ る と判 断 した 電 源)の 3種 類 が あ る.信 頼 度 マ ス トラ ン 電 源 とISOと は,以 下 の よ うな 特 徴 を もつ契 約 A,契 約 B と契 約 C の 3種 類 が あ る.契 約 A:す トラ ン電 源 が結 ぶ 契 約 で,PXが
定
generation,
の間 の契約 に
べての信頼度マ ス
運 営 す る卸 電 力 プ ール 市 場 に参 加 す る こ とが で き る.運 転 実 績 に契
約 価 格 を掛 けた 額 が支 払 わ れ る.ま た,契 約 B や C へ の 変 更 が 可 能.契 約 B:PXが 運 営 す る卸 電 力 プ ー ル 市 場 に参 加 す る こ とが で き,ISOと の 契 約 価 格 と市 場 取 引 価 格 の 組 み合 わ せ で 報 酬 を得 る こ と が で き る.こ
こで の 契 約 価 格 は,availability
価 格 で あ る.ま た,市
payment(AP)と
呼 ば れ,運 転 の有 無 に 関 係 の な い 固定
場 決 済 価 格 に運 転 実績 を乗 じた 額 の10%を
C:運 転 の有 無 に関 係 な くISOと 加 す る こ とが で きな い. *10 リアル タ イ ム 市場 で,需
の 固 定 契 約 価 格 が 支 払 わ れ,PXが
報 酬 と して 得 る こ とが で き る.契 約 運 営 す る卸 電 力 プ ー ル 市 場 に 参
給 調 整 の た め に 発 電 出 力(負 荷)を 増 減 す る場 合 の価 格.
表5.6 取 引前 日市場 お よび取引 1時間前市場 での給電計画策定の流れ カ リフ ォルニアISO ISO:電
別 予 想 需 要,送
取 引
カ リフ ォ ル ニ アPX
力 取 引 日 の 系 統 状 態(ゾ ー ン
容 量,ア
電 線 混 雑,送
電線空 き
ン シ ラ リー サ ー ビ ス 必 要 量
取 引 2日前 午後 6時
等)の 公 開
前 日 SC→ISO:各SCは 市場
ダ イ レ ク ト ・ア
ク セ ス 分 の 予 想 需 要 の告 知.
ISO→UDC:直
接 ア クセス分 予想需
要 の告知
取 引前 日 午前 6時∼ 6時30分
午前 7時
PX参 加 者→PX:各
PX→PX参 午 前 7時15分
加 者:入 札評価 を実施.
各 時間帯の市場決済価格 と取引量決定 量 を告知 PX参
午前 9時10分
時 間の供 給 ・需
要別 の入札 を提出
加 者 →PX:希
望 給 電 計 画(各
発 電 ユ ニ ッ トお よ び 需 要 ご と),調
整
入 札(ゾ ー ン問 混 雑 管 理 用)の 提 出
午前 9時30分 PX+SC→ISO:希
望 給 電 計 画 と調
整 入 札 お よ び ア ン シラ リー サ ー ビス 入
PX参
加 者 →PX:ア
PX→ISO:希
午前10時
札 の提出
ンシラ リーサー
ビ ス入 札 の提 出 望 給 電 計 画 と調 整 入 札
お よ び ア ン シ ラ リー サ ー ビス 入 札 の 提 出
ISO:ゾ ー ン間 混 雑 管 理 とア ン シ ラ リ ー サ ー ビス の 競 争 入 札 実 施 ISO→PX+SC:希
望 給 電計 画 の修
∼ 午 前11時
正案 の通知 ◆ 混 雑 が な けれ ば最 終 給 電 計 画 とし て 採用 PX+SC→ISO:修
正 給 電 計 画 ・調
整 入 札 とア ン シ ラ リー サ ー ビ ス入 札 の
昼12時
提出
PX→ISO:修
正 給 電 計 画 ・調 整 入 札
とア ン シ ラ リー サ ー ビス 入 札 の提 出
ISO:ゾ ー ン間 混 雑 管 理 と ア ン シ ラ リ ー サ ー ビス の競 争 入 札 の 実 施 ISO→PX+SC:最
終 給 電 計 画,ア
シ ラ リー サ ー ビス 供 給 計 画,送
ン
午後 1時
電線混
雑 料 金 の通 知 PX→
午後1時15分
参 加 者:最
終 給 電 計 画,ア
ラ リー サ ー ビス供 給 計 画,送 料 金 の通 知
ンシ
電線混雑
ISO:ア
ン シ ラ リー サ ー ビ ス市 場 の 不
足 分 が あ る場 合 に は,信 頼 度 マ ス トラ ン電 源 か らの調 達 を ア ンシ ラ リー サ ー
午 後 1時30分 頃
ビス 給 電 計 画 に組 み 込 む ISO→PX+SC=ア
ン シ ラ リー サ ー
ビス の 不 足 分 や 信 頼 度 マ ス トラ ン電 源
午後 5時頃
の 調 達 を含 む最 終 給 電 計 画 の 変 更 の 通 知
PX参
取引当 日 3時間前 2時 間50分
前
取 引
ISO:混
PX:入
給 ・発 電 別 の 入
2時間前
札評価 を実施 し,市 場 決 済価
格の算定.希 望給電計 画を作 成 PX参
1 PX+SC→ISO:希 望 給 電 計 画,調 整 時 入 札,ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス入 札 の 提 園 前 出 市 場
加 者 →PX:供
札 の提 出
加 者 →PX:調
整 入札 とア ンシ
ラ リー サ ー ビ ス入 札 の提 出 PX→ISO:希 札,ア
望 給 電 計 画,調
整 入
ン シ ラ リー サ ー ビス入 札 の 提 出
雑 管 理 とア ン シ ラ リー サ ー ビ
ス の 競 争 入 札 の 実 施. ISO→PX+SC:最
終 給 電 計 画,ア
1時間前
ン
PX→PX参 加 者:,ア ー ビス 供 給 計 画 の通 知
ンシ ラ リー サ
シ ラ リー サ ー ビ ス供 給 計 画,送 電 線 混 雑料 金の通知
は,ゾ
ー ン別 市 場 決 済 価 格(zonal
market
clearing
price:ZMCP〔$/MW〕)*11と
し
て 決 定 さ れ る. ISOは,さ
ら に取 引1時
間 前 市 場 で,取
引 前 日市 場 で確 定 した 最 終 需 給 計 画 か ら の
変 更 点 を 調 整 し,最 終 需 給 計 画 とア ン シ ラ リ ー サ ー ビ ス の 供 給 計 画 を作 成 し,送 電 線 混 雑 料 金 とア ン シ ラ リー サ ー ビ ス 価 格 を 算 定 し,PXとSCに
告 知 す る.信 頼 度 確 保
の た め に信 頼 度 マ ス トラ ン電 源 の運 転 が 必 要 な場 合 に は,ISOが
策 定 す るア ンシ ラ リ
ー サ ー ビ ス の 供 給 計 画 に 信 頼 度 マ ス トラ ン 電 源 の 供 給 計 画 が 組 み 込 ま れ る. リ ア ル タ イ ム 市 場 で は,10分 に,自 動 発 電 制 御(AGC)機
ご と に 予 想 さ れ る 需 給 ア ン バ ラ ンス を解 消 す る た め
能 を有 す る発 電 ユ ニ ッ トに よ っ て 出 力 調 整 が行 わ れ る.こ
の リ ア ル タ イ ム 市 場 で は,発 電 出力 を増 加(需 要 を抑 制)し た 場 合 に は最 も高 い 入 札 価
*11
ゾ ー ン別 市 場 決 済 価 格 は,そ の ゾー ンで 落 札 され た 入 札 の 中 で 最 も高 い 供 給 希 望 価 格 と な る.
カ リフ ォ ル ニ ア電 力 市 場 で の ゾ ー ン は,送 費 用 が比 較 的 安 価 なISOグ
電 線 混 雑 の 発 生 頻 度 が 少 な く,混 雑 を解 消 す る の に要 す る
リ ッ ト(カ リフ ォ ル ニ ア 州 全 域 で は な い)の 一 部 と して 定 義 さ れ る.つ
り,混 雑 の 発 生 頻 度 の高 い送 電 経 路(ISOグ ド内外 を ゾー ン に分 割 し て い る.ISOグ る代 表 地 点 を設 定 し,ISOグ
リ ッ ト外 との 連 系 送 電 線 を含 む)を 境 界 と し てISOグ
リ ッ ト外 の ゾ ー ン に は,ス
ケ ジ ュー リ ング ポ イ ン トと呼 ば れ
リ ッ ト外 の 市 場 参 加 者 が 電 力 を取 引 す る地 点 と な る.ISOグ
北 部 ゾ ー ン と南 部 ゾー ン に分 割 され て い る.
ま
リッ
リ ッ ト内 は,
格,発
電 出 力 を 抑 制(需 要 を 増 加)さ せ た 場 合 に は 最 も安 い 入 札 価 格 が,市
と な る.FERCの
場決 済価格
ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス の 定 義 に含 ま れ て い る “負 荷 追 従 サ ー ビ ス”
は,こ の リア ル タ イ ム 市 場 に よ っ て 行 わ れ て い るの で,カ
リ フ ォ ル ニ ア 電 力 市 場 で は,
ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス と して は設 定 され て い な い. (2)カ
リ フ ォ ル ニ アISOに
お ける アン シラ リーサ ー ビス価 格 の高 騰
カ リ フ ォ ル ニ ア 電 力 市 場 で は,ISOに
よ り,周 波 数 制 御 や 予 備 力 な ど の 信 頼 度 の 維
持 に 必 要 な 4種 類 の ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス を競 争 入 札 に よ る 市 場 を介 し て 調 達 し て い る.カ
リ フ ォ ル ニ ア で は,PXとISOの
運 用 開 始 と同 時 に,ISOに
よ る ア ン シ ラ リー
サ ー ビ ス 市 場 の 運 営 が 開 始 され て い る.開 始 後 か ら 6月 上 句 まで は,サ ー ビ ス価 格 は, 5∼10$/MWを
推 移 して い た が,6 月 中 旬 以 降 は250$/MWに
北 ゾ ー ン と比 べ て 高 需 要 で あ る 南 ゾ ー ン は,潜
近 い 値 ま で 上 昇 した.
在 的 に ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス の 供 給 量
が 不 足 し て い る こ と か ら,ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス 価 格 は 高 い.多
くの 発 電 ユ ニ ッ トは,
電 力 供 給(卸 電 力)と ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス(特 に 待 機 予 備 力)の 両 方 を供 給 す る こ とが で き る た め,卸
電 力 市 場 へ の 入 札 量 が 増 加 す れ ば,必 然 的 に ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス へ
の 入 札 量 は 減 少 す る.両 市 場 間 で トレー ドオ フ 関 係 が 存 在 す る.そ
の 結 果,電
力需 要
の 増 加 に よ り,卸 電 力 価 格 と と も に ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス,特
に待 機予備 力 の価格 が
急 騰 し た.熱
示 す よ う に,1998年
波 の 襲 来 に よ る電 力 需 要 の 急 増 に よ り,図5.8に
月 9日 の15時
か ら17時
さ ら に,1998年 9999$/MWと
の14時
通 常 の 約1000倍
ISOは,非
常 処 置 と して,1998年
500$/MWの
か ら18時
の 時 間 帯 で は短 期 予 備 力 価 格 が 最 高 値 で
以 上 ま で 高 騰 した.こ 7月14日
そ れ を受 け入 れ て い る.こ
引 き下 げ られ た が,図5.8で
7
ゾー ン の 待 機 予 備 力 価 格 が5000$/MWに,
の よ う な 価 格 急 騰 を 受 け て,
に す べ て の ア ン シ ラ リ ー サ ー ビ ス に対 し
上 限 価 格 規 制(プ ラ イ ス キ ャ ッ プ 規 制)の 適 用 に つ い てFERCに
求 め,FERCも $/MWに
7月13日
の 時 間 帯 で,南
承認 を
の プ ラ イ ス キ ャ ッ プ は,7 月25日
に は250
もわ か る よ う に,卸 電 力 価 格 と比 較 して,ア
ン
シ ラ リー サ ー ビ ス 価 格 は つ ね に 高 く,ま た プ ラ イ ス キ ャ ップ 規 制 の 適 用 以 降 も頻 繁 に 上 限 価 格 に達 し て い る. FERCは
プ ラ イ ス キ ャ ッ プ 規 制 の 適 用 を認 め る と と も に,ISOとPXの
それ ぞれの
市 場 監 視 委 員 会 に 対 し,市 場 動 向 に 関 す る調 査 報 告 書 の 提 出 を 要 求 した.PX市 視 委 員 会 は,取 引 前 日の 卸 電 力 市 場 が 機 能 し て い る もの の,高
場監
需要 時 に は卸電力価 格
が 異 常 に 高 値 と な っ た こ とか ら,少 数 事 業 者 に よ る 市 場 価 格 操 作 に 市 場 支 配 力 の行 使 が 存 在 す る こ と の 懸 念 を指 摘 した37,38).一方,ISO市 と市 場 支 配 力 の 行 使 に よ り,ア た 要 因 と し て,ア
場 監 視 委 員 会 は,競 争 入 札 者 不 足
ン シ ラ リー サ ー ビ ス 市 場 で 競 争 が 適 切 に 機 能 し な か っ
ン シ ラ リー サ ー ビ ス市 場 の 構 造 的 な 欠 陥 を指 摘 し た38).同 調 査 報 告
図5.8 (出 典:The
Market Market
注)
卸 電 力 価 格 と ア ン シ ラ リー サ ー ビス価 格 の 推 移(1998年)
Issues
Monitoring in the
こ こ で の 卸 電 力 価 格 は,取 あ る.ま
書 で は,ア
た,ア
Committee California
of the California Power
Exchange
Power Energy
Exchange Markets,
Second March
Report
on
9,1999.)
引 前 日 の卸 電 力 市 場 に お け る 送 電 線 混 雑 を 考 慮 しな い 市 場 決 済価 格 で
ン シ ラ リ ー サ ー ビ ス 価 格 は,周
波 数 制 御 を 除 く ゾ ー ン 別 市 場 決 済 価 格 で あ る.
ン シ ラ リー サ ー ビ ス調 達 の 合 理 性 ・透 明 性 の 確 保 な どア ン シ ラ リー サ ー ビ
ス 市 場 の 改 善 策 を提 案 し て い る. そ の 後,1998年
の 待 機 予 備 力 価 格 の 高 騰 の 経 験 か ら,カ
波 数 制 御 以 外 の ア ン シ ラ リー サ ー ビ ス に つ い てISOグ 札 を 認 め る な どの 対 策 を講 じ て い る.し
か し,2000年
リフ ォ ル ニ アISOで
は,周
リ ッ ド以 外 の 事 業 者 の 競 争 入 の 夏 も,PXの
卸 電力市 場価 格
が1099$/MWhに
達 し,待 機 予 備 力 価 格 も上 限 価 格 に 達 した39∼41).
カ リフ ォル ニ ア州 で は,こ
こ 数 年,電
力 市 場 へ の新 規 発 電 事 業 者 の 参 入 が 停 滞 し,
経 済 発 展 と熱 波 な ど に よ る 需 要 増 加 に 供 給 力 が 追 い つ い て い な い 状 況 に あ っ た.さ に,1998年
ら
か ら継 続 的 に 発 生 し た 卸 電 力 お よ び ア ン シ ラ リー サ ー ビス 価 格 の 高 騰 は,
カ リ フ ォ ル ニ ア 電 力 市 場 の 構 造 的 な 欠 陥 の 可 能 性 を も示 唆 し て い た.需 高 騰 を 回避 し,需 要 家 保 護 と市 場 安 定 化 を 図 るた め に,カ
給 逼 迫 と価 格
リ フ ォ ル ニ アISOは,市
場
改 革 を実 施 す る こ と を発 表 した42).し か し,慢 性 的 な供 給 不 足 は解 消 さ れ ず,2001年 に は 広 域 な 停 電 や 電 力 会 社 の 倒 産 な ど,危 機 的 な 状 況 に 陥 る に 至 っ た.こ ル ニ ア 州 の 電 力 危 機 問 題 は,電
の カ リフォ
力 の 市 場 取 引 の む ず か し さ を 端 的 に 示 した 事 例 で あ
る.伝 統 的 な規 制 体 制 下 に お か れ て い た 電 気 事 業 に競 争 原 理 を 導 入 す る場 合 に は,適 切 な施 策 が 講 じ ら れ な け れ ば,重
大 な 事 態 を招 く可 能 性 が あ る こ とが 示 さ れ た.
電 力 供 給 の安 定 性 は電 力 価 格 と並 ぶ 重 要 な 要 素 で あ る.ア 力 の 安 定 供 給 に 直 接 関 係 す る と と も に,そ
ン シ ラ リー サ ー ビ ス は電
の 費 用 負 担 の あ り方 か ら,供 給 の 安 定 性 と
価 格 の 両 面 を もつ 技 術 ・経 済 の 新 た な 境 界 課 題 と い っ て も よ い.さ 者 に よ る分 散 意 思 決 定 形 態 の も とで,経
まざ まな市場 参加
済 効 率 と安 定 供 給 を両 立 さ せ る取 り組 み は ま
だ 始 ま っ た ば か りで あ る.
参考文献 1)OECD編(山
本,山
2)Electric
田 監 訳):世
Electric
Reliability Reliability
Oversight
3)NGC:AReview 4)U.S.
of Federal
Regional
界 の 規 制 改 革(上),日
Panel:RELIABLE
Transmission
System,
Transmission
Energy
本 経 済 評 論 社,2000.
POWER;Renewing
the
North
American
December,1997. Security
Regulatory
Standards,
August
1994.
Commission(FERC):Order
Organization(RTO),Docket
2000 No.
Final
RM99-2-000,20
Rule,
December
1999.
5)岡
田,栗
原,渡
究,No.43, 6)栗
原,岡
邉:競
争 的 電 力 市 場 に お け る 供 給 信 頼 度 評 価 の 基 礎 的 検 討,電
力経 済 研
pp.33-42,2000-03. 田,渡
邉:競
争 的 電 力 市 場 の も と で の 供 給 信 頼 度 評 価 に 関 す る 一 考 察,平
成12
年 電 気 学 会 全 国 大 会,No.6-096,2000-03. 7)田
村 編:電
8)電
気 事 業 講 座 編 集 委 員 会 編:電
9)保
護 リ レ ー シ ス テ ム 基 本 技 術 調 査 専 門 委 員 会:電
力 シ ス テ ム の 計 画 と運 用,オ
ー ム 社,1991.
気 事 業 講 座(第7巻)電
力 系 統,電
気学 会 技術 報 告
力 新 報 社,1997. 第641号,保
護 リレ
ー シ ス テ ム 基 本 技 術 体 系,1997-07.
10)電
力 の 電 圧 ・無 効 電 力 制 御 委 員 会:電
告 第743号,1999-09.
力 系 統 の 電 圧 ・無 効 電 力 制 御,電
気学会技術報
11) 野 田編:電 力 系統 の制 御,電 気 書 院,1976. 12) 電 気学 会:電 気 工 学 ハ ン ドブ ック(第 6版),2001. 13) 日本電 力 調査 委 員 会:日 本電 力 調 査 報 告書 に お け る電 力 需 要 想 定 お よび 電 力 供 給 計 画 算:定方式 の 解説,1997. 14) 九 州電 力(株),関
西 電 力(株),ほ
か:接 続 供給 約 款(平 成12年),2000.
15) 電 力新 報 社編:電 力 構 造 改革 供 給 シス テム 編,電 力新 報 社,1999. 16) 矢 島 編:世 界 の 電 力 ビ ッ クバ ン(21世 紀 の 電力 産 業 を展 望 す る),東 洋 経 済新 報 社, 1999. 17)
FERC:Order
18)
Interconnected
nected 19)
No.888,
Operations
E.Hirst
LARY
April,1996.
Operations
Services
Services
and
B.
Working
Under
open
Kibby:CREATING
SERVICES,
OKA
Group(IOS
Access
Final
WG):Defining Report,
COMPETITIVE
RIDGE
NATIONAL
March
Intercon 7,1997.
MARKETS
FOR
LABORATORY,
ANCL
ORNL/CON-448,
October,1997. 20)
E.Hirst
and
SERVICES
B.
Kibby:UNBUNDLING
FOR
CILLARY
GENERATION
COMPETITIVE
SERVICES,
AND
ELECTRICITY
OKA
RIDGE
TRANSMISSION
MARKETS:EXAMINING
NATIONAL
AN
LABORATORY,
NRRI
98-05,
January,1998. 21)
http/www.nationalgrid.com/uk/activites/参
Services関 22)
照(NGCホ
ー
ム ペ
ー
ジ のAncillary
1.A.
連) Erinmer,
WITH
D.
O.
Bickers,
FREQUENCY
FREQENCY
G.
CONTROL
RESPONSE
F.
Wood,
ON
BY
W.
W.
Hung:NGC
ENGLANDANS
GENERATORS,
EXPERIENCE
WELESPROVISION IEEE/PES
1999
ON
Summer
Meeting,
1999. 23)
OFFER:Review
24)
B.Turgoose:Recent
of
Electricity
Trading
development
Arrangements:Proposals,
worldwide
in
power
July,1998. exchanges,
Power
Eco
nomics,2,6,1998. 25)
OFGEN:The
Issues 26)
New
An
Ofgem
OFGEM:NGC
and
Electricity
Policy Incentive
Reactive
Power
27)
OFFER:Review
28)
B.Turgoose:Recent
Trading
Statement,
Uplift of
Arrangements
and
Related
Transmission
July,2000.
Scheme
from
Schemes.
A
Electricity
April Decision
Trading
development
2000
Transmission
Services
Uplift
Document,2000-02.
Arrangements;Proposals,
worldwide
in
power
July,1998. exchanges,
Power
Eco
Ancillary
Ser
nomics,2,6,1998. 29)
OFGEN:The
30)
F.L.
vices,
New
Electricity
Alvarado(Convenor)et CIGRE
SC
38,
Services
Advisory
31)
Ancillary
32)
California
ISO:Scheduling
33)
California
ISO:Dispatch
Trading
Arrangements,
al.:Methods
and
Group
Requirements
5, Task Protocol,
Protocol, Protocol,
Force California
June,1998. June,1998.
July,1999.
Tools
for
38-05-07, ISO,
Costing CIGRE, June
August,2000. 1,1998.
34)
California
ISO:Settlement
35)
California
ISO:Annual
36)
The
Market 37)
The
On
the
System 38)
The
Report
Market
and
Monitoring
Issues
California
of
the
on
Performance,
Energy
the
Services
Power
Markets,
California
Markets
June,1999.
Exchange:Report
on
August
17,1998.
ISO:Preliminary
of
the
California
Report Independent
19,1998.
Monitoring
Market
of
and
California
Exchange
Committee
Operator(ISO),August Market
Issues
of the
Ancillary
June,1998.
Market
Power
Surveillance
Operation
Protocol,
on
Committee
in the
Market
Bill
Report
Committee
Issues
in the
of
the
California
California
Power
Power
Exchange
Exchange:Second
Energy
Markets,
March
9,1999. 39)
The
Issues 40)
The
Market and
Surveillance Performance,
Market
Redesign
Unit
Monitoring
of
of
the
California
ISO:Annual
Report
on
Market
June,1999.
California
Committee Realtime
Energy
of the
California
and
Ancillary
Power Services
Exchange:Report Market,
on October
18,
1999. 41)
The
Market 42)
Department Issues
News
posal 20,2000.
Release Call
for
of and
Market
Analysis
Performance California
Forum
for
California
ISO:Report
May-June,2000(Special ISO:California
Reaching
Consensus
ISO on
on
California
Report),August Offers Market
Market Power
Energy 10,2000.
Stabilization Mitigation,
Pro October
第 6章 安定度評価 と固有値解析
6.1
電力系統安定度解析手法と電力自由化におけるその役割
6.1.1
電力系統 の安定度
本 項 で は電 力 系統 の安定 度の概 念 につい て述 べ る.電 気 は基本 的 に貯蔵 す る こ とが で きな い とい う性 質 を もってお り,発 電所 でつ くられ る電 力 と負荷 で消費 され る電 力 は,つ ね に等 し くバ ラ ンスが とれた状 態 で な けれ ば な らない.こ のバ ランス が とれた 状 態 を平 衡 点 と呼ぶ.電 力 系統 に地落 事故,負 荷 遮断,電 源脱落 な どが起 こる と これ らのバ ラ ンス状 態が くずれ る. 電 力系 統 の安定 度 とは,バ ラ ンスが くず れた状 態か ら新 しい平衡点 へ収 束 す る力の こ とを示 す.電 力系統 が安 定で あ る とは,事 故 な どの要因 によ りバ ラ ンスが くず れ古 い平 衡点 か ら運転 点 がずれ た場 合,新 しい平衡 点 に収 束 し落 ち着 くこ とをい う. 一 方,不 安 定 で ある とは,新 しい平衡 点 をみ つ ける こ とがで きず,安 定 な運 転 がで きな い こ とをい う.電 力系 統が 不安 定 な場 合 は大 規模 な停 電事 故 な どが起 こる可能 性 もあ り,電 力 系統 の運 用者 に とって電力 系統 の安 定度 はきわ めて重 要 な課 題 とな る. 電力 系統 の安 定度 は,大 き く分 けて次 の位 相 角安 定度 と電 圧安 定度 の二 つ に分 類 す る こ とが で きる. (1) 位 相角 安定 度 発 電機 は同期速 度 で運転 しな けれ ばな らず,電 力系 統 に外乱 が発生 した場 合,各 発 電機 の速 度 のバ ランスが崩 れ る.す る とこれ を もとの速度 へ もどそ う とす る力,同 期 化力 が働 く.こ こで 同期化 力が 不足 す る と,各 発 電機 が 同期速 度 を維 持 す る こ とが困 難 に な り,発 電機 間 の位相 角が 開 いて い き不 安定 現象 が起 こる.こ れ を脱 調 といい, あ る特定 の発 電機 対残 りの発電 機群,あ るい は発 電機 群対 発電 機群 で起 こる.も う一 つ の位相 角安 定度 を保 て ない原 因 として,制 動力 いわ ゆる ダン ピング不足 に よ り系が
振 動 発散 してい く場 合が あ る.放 射 状 の 日本 の系 統 で は 2秒 ∼3秒 の弱制 動 の長 周期 動 揺 が発 生 し,そ の対 策 が重 要な 問題 にな って いる.そ の一つ の対策 として,従 来 の 有 効 電力 を入 力 とした系統 安定 化装 置(PSS)か ら,長 周期 動揺 の抑 制 に効果 の あ る, 発 電機 の速度偏 差 も入力 に加 えたいわ ゆる並列型 のPSSが
現在 で は主流 にな ってい る.
(2) 電圧 安 定度 電 圧安 定度 は外 乱 発生後,電 圧 を許容 範囲 内 に維 持 で き るか どうか を論 じる もので あ り,一 般的 に無 効電力-電 圧 感度 によって定 義 され る.す なわ ち無効電力-電 圧感 度 が 正 で あれ ば安 定,逆 に負で あれ ば不安定 とな る.こ れ はQ-V曲
線 の上半 平面 が
電 圧 安定 領域,下 半 平面 が不安 定領 域で あ る ことを示 してい る.電 圧 不安 定現 象 は, 一 般 的 に必要 な無 効 電力 の供給 が不 足 し,そ れ に伴 い電 圧 を一 定 に維持 で きな くな る 局 所 的 な現象 で あ るが(無効 電 力が局 所 的な性 質 を もつた め),こ れ が全体 に波 及 し電 圧 崩 壊現 象 を引 き起 こす こ ともある.1987年
7月 に東京 系 統で 起 こった電 圧崩 壊現 象
は,昼 の負荷 の急 増 に無効 電力 の供 給が 追従 で きなか った た め に引 き起 こされた もの で あ る. これ を契機 に して,電 圧 安定 性 に関 す る関心 が高 ま り,数 多 くの研 究 が な され無効 電 力 対策 が見 直 され た.
6.1.2
近 年 の 安 定 度 と規 制 綴 和
近 年 の電力 系統 の特徴 として,大 容量 電源 の偏在 化 に よ る長 距離 送電,需 要 の大都 市集 中化,空 調 な どの定 電力 負荷 の増加 な どが あげ られ る.こ れ らはいずれ も安定度 を悪 化 させ る要 因 とな り,そ の維持 は一 層 きび しい もの とな って きて い る.さ らに, 世 界 的 に電力 事業 の供給 体制 が見直 され て い る中で,わ が 国 で も電 力 の小売部 分 自由 化 に伴 う独立 発電 事 業者 の電 力市場 参入 は,電 力 系統 の様 相 を一変 させ,利 益 追従 を 優 先 す る こ とよ り,安 定 度 を悪化 させ る方向 に作 用す る もの と考 え られ て い る. この よ うに,ま す ます複雑化 す る電力 系統 の状況 の も とで,高 品質 な電力 を供給 維 持 す る社 会 的要請 が 高 まり,と りわ け安 定度 問題 は きわ めて重 要 な課題 とな る.さ ら に,電 力 自由化 に おい て は,あ る時 点 にお いて,託 送 を行 う上 で,熱 容 量,安 定度 な どの制約 を考 慮 した上 で,上 乗 せ す る ことが で き る電 力量,す なわ ち利 用可 能送電 能 力(ATC:available
transfer capacity)を 求 め る必 要が あ る.ATCは,電
力 の安定 供
給,信 頼 度 の確保 のみ な らず,送 電料 金 を決定 す る上 で も重 要 な役割 を果 たす.ATC の制 約 で も安 定度 制 約 は最 も重要 な制約 の一 つ であ り,近 年 で は安 定度 制約 も考慮 し た最 適潮 流計 算 が望 まれ るよ うにな って きてい る.
6.1.3
安 定 度 解 析 にお け る 固 有 値 法 の位 置 づ け
い ま まで 述 べ て き た よ う に,電
力 系 統 の 安 定 度 の 維 持 は きわ め て 重 要 な 課 題 で あ り
電 力 系 統 の 安 定 度 を 把 握 す る た め に,シ し て い る.電
力 系 統 安 定 度 の 解 析 技 術 は,近
も に 年 々 進 歩 し て お り,よ
た が,PC(personal
年 の コ ン ピ ュ ー タ の め ざ ま し い発 展 と と
り詳 細 で 精 度 の 高 い もの が 望 ま れ て きて い る.コ
タ が 高 価 で,低 速 で あ っ た1970代
は,安
ミュ レ ー シ ョ ン解 析 技 術 が 重 要 な 役 割 を 果 た
computer)が
従 来 の 汎 用 コ ン ピ ュ ー タ な み の 能 力 を有 す る現 在 で
定 度 計 算 も一 段 と身 近 な も の に な っ て きた.今
模 の 拡 大,オ
ン ピ ュー
で は,安 定 度 計 算 は膨 大 な 時 間 を要 す る もの で あ っ
後 は,モ
デ ル の 詳 細 化,解
析規
ン ラ イ ン 化 な ど が 課 題 と な ろ う.
安 定 度 計 算 は 一 般 に 実 効 値 を ベ ー ス と し た計 算 で 行 わ れ,そ
のモ デル もほぼ確立 さ
れ て い る.詳 細 な三 相 ベ ー ス の 計 算 と実 効 値 の 計 算 は,計 算 の 目 的 や ニ ー ズ に よ っ て 使 い分 け られ て い る の が 現 状 で あ る が,近 られ る.現 在,安 デ ル は,一 る が,し
い将 来 これ らが 統 合 さ れ て い く こ と も考 え
定 度 計 算 に用 い られ て い る モ デ ル を表6.1に
般 に 微 分 方 程 式 や 非 線 形 方 程 式 で 表 され,実
ま と め る.こ
れ らのモ
現 象 を よ く近 似 す る もの で あ
か し負 荷 特 性 な ど安 定 度 に大 き な 影 響 を与 え る が,そ
の モ デ リン グ として大
きな 課 題 が 残 っ て い る も の も あ る. 安 定 度 解 析 で は安 定 度 に 大 き な 影 響 を与 え る 要 素,最 ど を忠 実 に模 擬 す る こ と は,近
新 の制 御機 器 や安 定化装 置 な
年 の 系 統 安 定 度 が こ れ ら の 機 器 の 性 能 に 大 き く依 存 す
る こ と よ り,必 要 不 可 欠 で あ る.安 定 度 計 算 は 表6.1に
表 され る 要 素 を模 擬 す る大 規
模 な 微 分 方 程 式 系 を 数 値 的 に 解 く こ とに 帰 着 さ れ る. 次 に,安 定 度 を解 析 す る手 法 で あ る が,一 時 間 領 域 手 法 で あ り,も
の手 法 の ほ か に,Lyapunov関 は,エ
般 的 に二 つ の 手 法 に分 類 で き る.一
う一 つ は微 小 変 動 解 析 とい わ れ る 手 法 で あ る.こ 数 法,BCU法
な どが 提 案 さ れ て い る が,こ
つは
れ らの二 つ れ らの手法
ネ ル ギ ー 関 数 の 構 成 法 や 解 析 精 度 に 問 題 が 残 さ れ て お り,本 格 的 な 安 定 度 解 析 表6.1大
解 析規模
発 電 機300,ノ
規模 電力系統安定度解析モ デル
ー ド2500,ブ
発電機 モデル
パ ー ク の 詳細 モ デ ル,変
発電機制御 系
AVR,PSS,ガ
負荷特性
電 圧 の べ き乗 モ デ ル,定 モ ー タ,動
ネ ット ワ ーク
その他のモ デル
ラ ン チ3000程
度
圧器効果無視
バ ナ
電 力,定
電 流,定
イ ン ピ ー ダ ンス な ど,イ
的モデル
線 路の動特性 を無視 した非線形代数方程式 パ ワー エ レ ク トロニ クス 機 器,SVC,SVG,TCSC,UPFC,HVDC
ンダクシ ョン
への適 用 に は,ま だ時 間 を要 す る もの といわ ね ばな らない. 時 間領域 手 法 は,直 接 法 とも呼 ばれ,電 力系 統動特 性 方程式 を数値 積 分手 法 を用 い, 時 間軸 に沿 って積 分す るもので あ る.一 方,微 小変 動解 析 は一つ の平衡 点 の まわ りで 非 線形 微分 方 程式 を線 形化 す る こ とに よって得 られた モデル を使 用 し,そ の固有 値 や 周波 数応 答 を調べ 系 の基本 的 な性 質 を把握 す るもので あ る.時 間領 域手 法 の一 つの利 点 として,数 値積 分 を通 して得 られ た出 力波 形 を調 べ るこ とによ り,非 線形 性 を も含 め た詳細 な解 析 がで き る ことが あ げ られ る.し か し,こ の手 法 は個 々 の発電 機 のふ る まい を計 算 す るた めに各 ステ ップ ご とに積 分 計算 を必 要 と し,多 くの計 算 時間 がか か る.こ れ に対 し,微 小 変動解 析 は非線 形 性 を考慮 して い ないの で,詳 細 な解 析 はで き ないが,安 定 度 に影響 を与 える主要 因 をみ つ けるの に適 して いる.さ らに,そ の計 算 表6.2 時間領域手法 と固有値法 の特徴
時間領域事法.
固有値 法
計 算時間
低速
高速
モデル
非線形 モデル
線 形モデル
不安定要因 の同定
困難
容易
数値解析手法
修 正 オ イ ラー 法
QR法
ホ イ ン法
Lanczos法
ル ンゲ ク ッタ 法
Arnoldi法
陰的台形法
べ き乗 法
BDFな
逆反復法
ど
同時反復法 など
特徴
非線形モ デル を数値積分手 法を用い時 固 有 値 と固 有 値 ベ ク トル よ り,不 安 定 間領域で積分す るこ とによ り,各 諸量 要 因 な ど,系 統 の基 本 的 な性 質 を知 る こ とが で き る を詳細 に求め るこ とが可能
図6.1
時間領域解析
時 間 は 時 間 領 域 手 法 よ り も数 段 短 い.こ
の よ う に 両 者 は そ れ ぞ れ 利 害 得 失 が あ り,そ
れ ゆ え そ れ ら を相 補 的 に使 用 す る こ とが 理 想 的 な使 用 法 とい え る. 微 小 変 動 解 析 の 中 で 固 有 値 法 は そ の 高 速 性,精
度 の 高 さ よ り,電 力 系 統 の 安 定 度 問
題 を 解 析 す るた め の 最 も有 効 な 手 法 の 一 つ と考 え られ て い る.本 書 で は固 有 値 法 に 焦 点 を あ て て説 明 す る. 表6.2に
時 間 領 域 手 法 と固 有 値 法 に つ い て ま と め た も の を 示 す.ま
た,図6.1,図
6.2に そ れ らの 計 算 に つ い て 示 す.
図6.2
固 有 値 の分 布 図
6.2
線形微分方程式の安定性と固有値解析
6.2.1
線形 微分方程式の解 の固有値 による表現
本項 で は,線 形微 分方程 式 の解 法 としての固有 値解 析 の適用 につい て述 べ る.ま た その線 形微 分方 程式 の安 定 判別 への 応用 につ いて 説 明す る.式(6.1)で 表 され る非 線 形微 分 方程 式系 を考 えて み よ う. (6.1) こ こ で,X
は n次 元 の ベ ク トル,f
と は,式(6.2)を
満 た す 点Xoの
f(Xo)=0
は 非 線 形 関 数 とす る.微 分 方 程 式(6.1)の 平 衡 点
こ と を い う.
(6.2)
平 衡 点 は,微 分方程 式 の状態 変数 が動 か ない状 態 にあ る点の ことを示す.非 線形 微 分方 程式 の平 衡 点 は,一 般 的 に は複 数個 存在 す る.固 有値解 析 は この平衡 点 の まわ り で,微 少 変化 が起 きた場合 の系 のふ るまい を解析 す る もの で ある.し たが っ て,大 き
な外 乱 や非線 形 領域 の もの を解析 す る こ とはで きないが,微 分方程 式 系の 基本 的な性 質,た とえ ば系の 振動 周期 や安 定性 な どを知 る こ とがで きる. 式(6.2)を 平 衡 点X0の
まわ りで線 形化 す る と以 下 の線形 微分 方程 式 を得 る. (6.3)
こ こで
(6.4) で あ る.⊿
は微 少 変 動 分 を 示 し A は,f の ヤ コ ビ ア ン で あ る.
一 般 的 に A の 要 素 は対 角 成 分 の み で な く,非 対 角 成 分 い わ ゆ る相 互 成 分 を含 み,こ れ ら が,式(6.3)の
解 析 を 困 難 に させ る と考 え られ る.固 有 値 解 析 は これ らの 相 互 成 分
を 消 去 し て 対 角 成 分 の み か ら な る対 角 行 列 に変 換 し,解 析 を 容 易 に す る もの で あ る. こ こで 固 有 値 と固 有 ベ ク トル を定 義 す る. ス カ ラ ー λ とゼ ロ で な い ベ ク トル x に 対 して 式(6.5)が 有 値,x
成 立 す る と き,λ を A の 固
を固 有 ベ ク トル と い う.
(6.5)
Ax=λx こ こで,式(6.5)が
非 自明 な 解 を もつ た め に は,次
式 を 満 た さ な け れ ば な ら な い.
(6.6)
det(Ax-λI)=0
行 列 A の 次 数 が nで あ れ ば 式(6.6)は
λ に 関 す る n 次 多 項 式 に な り,重 根 の 重 複 度
を 含 め る と A の 固 有 値 は n個 存 在 す る.固 有 値 を 求 め る こ と は n次 の代 数 方 程 式 を 解 く こ と と等 価 に な るが,実
際 に は 数 値 解 析 手 法 を用 い て 解 く こ と に な る.固 有 値 の
代 表 的 な 数 値 解 析 手 法 に つ い て は次 節 で 説 明 す る の で そ れ ら を 参 照 され た い. 次 に 固 有 値 解 析 を 微 分 方 程 式 の 計 算 に 適 用 す る.わ し 問 題 を 簡 単 な形 に す る こ とで あ る.い
ま式(6.7)で 与 え ら れ る変 換 を 定 義 す る.
(6.7)
x=Py こ こ で,P:Piを を 式(6.3)に
れ わ れ の 目 的 は相 互 性 分 を消 去
並 べ た 行 列, P=(p1,p2,…,pn),Pi:Aの 代 入 す る と,式(6.8)を
得 る(こ
固 有 ベ ク ト ル.式(6.7)
こで 表 記 を簡 潔 に す るた め 以 降 ⊿ は省 略
す る).
(6.8) P-1を
式(6.8)の
両 辺 にか け る と
(6.9) こ こで
(6.10)
λ1,λ2,…,λn=Aの
固有 値
この よ う に,A
の 固 有 値 と固 有 ベ ク トル を 利 用 す る こ と に よ り,相 互 性 分 を もつ も
と の微 分 方 程 式 系 が,対 角 成 分 の み の微 分 方 程 式 に 変 換 さ れ る こが わ か る.式(6.9)の 解 は,容
易 に次 の よ う に 表 す こ とが で き る.
(6.11) こ こ で,
(6.12)
(6.13)
また,yi(0)は 式(6.11)よ
状 態 変 数Yiの
初 期 値 を表 す.
り も との 微 分 方 程 式 の 基 本 的 性 質 を 知 る こ とが で き る.次
方 程 式 系 に も ど り,式(6.11)を
に も と の微 分
式(6.7)に 代 入 す る と,
(6.14) を 得 る.P
を式(6.14)の
両辺 にか ける と
(6.15)
こ こ で,
(6.16)
(6.17)
式(6.15)よ
り,線 形 微 分 方 程 式 の 解 は,固
で 表 現 で き る こ とが わ か る.こ る.す
な わ ち,固
有 値 と固 有 ベ ク トル を用 い た 重 ね 合 わ せ
れ が 固 有 値 解 析 の き わ め て 重 要 な 性 質 で あ る とい え
有 値 解 析 で は複 雑 な現 象 を 固 有 値 と固 有 ベ ク トル とい う基 本 的 な 要
素 に分 解 で き る こ とで あ り,こ れ ら が 計 算 で き れ ば 系 の基 本 的 な性 質 が わ か る こ と に な る. A の 固 有 値 λは n次 代 数 方 程 式 か ら得 られ るの で,式(6.19)で
表 さ れ る よ う に,一
般 に 複 素 数 に な る.
(6.18) (6.19) 式(6.15)か る.す
ら わ か る よ う に,線
な わ ち,も
形微 分 方程 式 の 安 定性 は固 有 値 の 実部 で 決定 され
し一 つ で も正 の 実 部 を も つ 固 有 値 が あ れ ば 系 は 不 安 定 で あ り,系 が
安 定 で あ るた め に は す べ て の 固 有 値 の 実 部 が 負 で あ る こ と が 必 要 で あ る. 一 方,固
有 値 の 虚 部 は周 波 数 を表 す.こ
れ は 特 定 の 周 波 数,電
力 系 統 で は電 力 動 揺
モ ー ドや 系 統 間 モ ー ド を 同 定 す る の に適 し て い る.
6.2.2 (1)混
デ ジ タ ル 制 御 系 に対 応 す る 固 有 値 解 析 合形 の解 の固 有値 に よる表 現
近年 の電力 系統 に は,デ ジタル励 磁制 御 系 な どの デ ジタル制御 機器 が積 極 的 に導入 され て きてい る.デ ジタル制 御 系 は サ ンプル 時間 T での 零次 ホー ル ド要 素や 零次 ホ ール ドデ ィレイ要素 を含 み,こ れ らの要素 はサ ンプ リング時間 で一 定値 を とる.連 続 系 が微 分方程 式 で表 され るの に対 し これ らの要素 は離 散 系で表 す ことがで き,一 般 に 差 分 方程式 で表 され る. し た が っ て,デ
ジ タル 制 御 系 は 連 続 系 と離 散 系 を もつ 混 合 系 とな る.デ
系 を解 析 す る場 合,こ で,固
ジタル制御
れ ら の サ ン プ ル 時 間 が 系 の 安 定 性 に 影 響 を与 え る 場 合 が あ る の
有 値 解 析 を行 う に は これ ら を正 確 に 模 擬 す る必 要 が あ る.
デ ジ タ ル 制 御 系 は,一
般 に 以 下 の よ う に 表 現 す る こ とが で き る.
(6.20) (6.21) (6.22) こ こ で,
f,g,h:そ
れ ぞ れ微 分 方 程 式,差
分 方 程 式,代
数式 の特性 を表 す非線 形 関数
x:微 分 方程 式 で記述 され る連 続系状 態変 数 b:差 分 方程 式 で記述 され る離 散系状 態変 数 u:代 数 変 数 T:サ
ンプ リング間 隔
図6.3
連続 系
図6.4
離散 系
n:サ ン プ リング 回数(離 散時 間変 数) t:時
間,t0:初
期 時 刻,t=t0+nT
[]:連
続 系 の関 数
():離
散 系 の 関 数,y(n)=y[to+nT]
次 に こ れ ら の 混 合 系 を,離 散 時 聞 系 の み の 方 程 式 に変 換 す る.式(6.20),(6.22)を 線 形 化 す る と,
(6.23) (6.24) 式(6.24)よ
り
(6.25) 式(6.25)を(6.26)を
代 入 す る こ と に よ り,
(6.26) 式(6.26)の
解 は
(6.27) で 与 え られ る.こ
こで,
(6.28) と定 義 す る. あ る サ ンプ リ ン グ 時 刻t0と,次
の サ ン プ リ ン グ 時 刻t0+Tの
と き の ⊿xの 値 を 求
め る と,
(6.29)
(6.30) ⊿y[τ]は,サ
ン プ リ ン グ 時 間 T で 一 定 値 ⊿y[t0]と な る の で
(6.31) と な る.こ
こで
(6.32) (6.33) (6.34) と定 義 す る と,
(6.35) と な る.こ れ よ り,連 続 時 間 系 は 離 散 時 間 系 に お い て差 分 方 程 式 とな る こ と が わ か る. 次 に デ ジ タ ル 制 御 系 は,式(6.21)を
線 形 化 す る と,
(6.36) 式(6.35)に(6.25)を
代 入 し て ⊿uを
消 去 す る と,
(6.37) こ こで
(6.38) (6.39) 式(6.35),(6.37)を
行 列 の形 に ま とめ る と混 合 系 の 方 程 式 は,
(6.40) と な る.
(2) 離散 時 間系で の固 有値 前項 で は,連 続時 間 系の微 分 方程 式 を離散化 して,差 分 方程式 で表 現す る こ とがで きる こ とを示 したが,本 項 で は離散 時間 系 での固 有値 の減衰 率 と周波 数 の関係 につ い て述 べ る. まず,次 の離散 系 の差分 方程 式 を考 え る. (6.41) t0=0と
す る と式(6.41)の
解 は 次 式 で 与 え られ る.
(6.42) こ こで,J
を モ ー ド分 解 す る と
(6.43) こ こで,Г
は J の 固 有 値 を対 角 項 に 並 べ た 対 角 行 列 で あ り,Q
は 固有 ベ ク トル を 並 べ
た 行 列 で あ る.し た が っ て
(6.44) とな り,こ れ を 式(6.42)に
代 入 し整 理 す る と,
(6.45) とお く と
(6.46) と な る.Г
の 固 有 値 を γ1,γ2…,γnと
し そ れ ら 極 座 標 表 示 す る と,
(6.47) と書 け る.し
た が っ て,式(6,46)の
要 素 は 次 式 の よ う に な る.
(6.48) 1秒 あ た りの減 衰 率 を求 め るた め に,nT=1を
代 入 す る と,
(6.49) を得 る.こ れ よ り,減 弊
は 〓,周
波数 は 〓
で表 され る
が わ か る.ま た,
連続 系 の微分 方程 式 (6.50)
⊿z=A⊿z を離 散 化 す る と,
(6.51) とな る.式(6.50)の
固 有 値 は A の 固 有 値 を ゐ とお く と
(6.52) よ っ て,
と な り,こ
れ よ り
とな り連 続系 の
減 衰 率,周 波 数 は離 散 系 の そ れ ら とサ ン プ リ ン グ 間 隔 に お い て一 致 す る こ とが わ か る.
6.3
電力系統解析における固有値解析の定式化
6.3.1
電 力系統動特性 方程式
本 項 で は電力 系統 動特 性方 程式 を線形 化 す る ことに よ り,固 有値 解析 の定 式化 を行 う.発 電 機,発 電機 制御 系,パ ワーエ レク トロニ クス機器,直 流送 電 系統 な どを含 む 電力 系統 の動特 性 方程式 は,基 本 的 に以 下 の二 つの式 で表 す こ とが で き る. (6.53) YV=I(X,Y) こ こで,X:発
(6.54)
電 機,制 御 系 な ど の状 態 変 数,V:母
ア ド ミタ ン ス 行 列,f:微 式(6.53)は,電
線 注 入 電 流,Y:
分 方 程 式 の特 性 を 表 す 非 線 形 関 数
力 系 統 の ふ る ま い を表 す 微 分 方 程 式 で あ り,一 方,式(6.54)は
と電 圧 の 関 係 を 表 す 系 統 方 程 式 で あ る.式(6.53)に 早 い の で 通 常 代 数 方 程 式 で 表 現 す る が,詳 こ とが あ る.こ
線 電 圧,I:母
比 べ 系 統 方 程 式 は,減
電流
衰が 非常 に
細 な 解 析 で は こ れ も微 分 方 程 式 で 表 現 す る
れ ら の 二 つ の 方 程 式 を平 衡 点 の ま わ りで 線 形 化 す る と,
(6.55) (6.56) こ こ で,
X0,V0:平
衡 点
で あ り ⊿ は 微 少 変 動 分 を 表 す.こ れ,
れ ら の行 列 は ブ ロ ッ ク対 角 形 を し て お り,そ れ ぞ
IRI:ノ ー ド注入電流 固定 子座標系 VRI:ノ ー ド電圧 固定子座標形 PM:機 械 出力 EF:界 磁電 圧 VG:発 電機 ノー ド電圧
Idq:ノ ー ド注 入 電 流 回転 子 座 標 系 Vdq:ノ ー ド電 圧 回 転 子 座 標 形 ω:速 度 偏 差
図6.5 電力系統動特性 モデル概 念図
と い う形 を し て い る.こ nd2:2×nd,Ni:各Aiの
と な る.ま
こで,n:発 次 元,nx:,と
電 機 な ど の 動 的 要 素 の 個 数,nd:ノ
ー ド数,
す る と各 ブ ロ ッ ク対 角 行 列 の 次 元 は
た これ らの 行 列 の 成 分 の 次 元 は そ れ ぞ れ,
と な る.
式(6.55)と(6.56)を
行 列 の 形 に ま とめ る と,以 下 の よ う に な る.
(6.57) こ こ で,
DDは2×2行 つ.し
列 を 要 素 に も ち 非 線 形 負 荷 に 対 応 し た ノ ー ド に対 し非 ゼ ロ 要 素 を も
た が っ て,YDの
構 造 は ア ド ミ タ ンス 行 列 Y と同 一 で対 角 成 分 の み 異 な っ た も
の とな る. 式(6.57)か
ら,⊿V
は
(6.58) と な る.式(6.55)に(6.58)を
代 入 し て ⊿ y を 消 去 す る と,
(6.59) こ こ で,
(6.60) この よ う に し て A の 固 有 値 を求 め る こ とに よ り,前 節 で 検 討 し た よ う に 系 の 特 性 を 把 握 す る こ とが で き る.
6.3.2
固有値 の数値解析 手法
こ こ で,電
力 系 統 解 析 で 用 い られ て い る 固 有 値 の 数 値 解 析 手 法 に つ い て 述 べ る.固
有 値 解 析 手 法 は,大
き く分 け て ① 逐 次 反 復 法,②
部 分 空 間 法 の 二 つ に分 け る こ とが で
き る. 逐 次 反 復 法 は一 つ の 固 有 値 を求 め る もの で あ り,べ 反 復 法 な どが あ る.こ
れ らの 手 法 は,系
き乗 法,逆
統 の安 定 判 別,固
反 復 法,レ
イ リー 商
有 値 の精度 改 善や 臨界 固有
値 の 計 算 に用 い られ る. 一 方,部
分 空 間 法 は 同 時 に複 数 個 の 固 有 値 を計 算 す る 手 法 で あ り,後 述 す る よ う に
固 有 値 の 部 分 空 間 を作 成 し,そ の 部 分 空 間 の 固 有 値 をQR法
な どの 精 度 の 高 い プ ロ グ
ラ ム で 求 め る もの で あ る. 部 分 空 間 法 の 代 表 的 な もの に 同 時 反 復 法,RBI法(refactored zos法,Arnoldi法
(1)べ
が あ る.本
書 で は,べ
き乗 法 とArnoldi法
bi iteration),Lanc に つ い て 説 明 す る.
き乗 法
A の 固 有 値 を式(6・61)の よ う に す べ て 異 な る と仮 定 す る と,そ れ ら に対 応 す る固 有 ベ ク トル は独 立 と な る.
(6.61) そ こ で,式(6.62)で
与 え ら れ る反 復 計 算 を 考 え る と,x(k+1)は
A の 最 大 固 有 値 λ1に収
束 す る.
(6.62) こ こで,x(1)は
初 期 値 で あ り,ゼ ロ で な い任 意 の ベ ク トル で あ る.ま た,最 大 固 有 値 λ1
は以 下 の よ う に与 え られ る.
(6.63) こ こで(,)は ベ ク トル の 内積,〓
〓は ノ ル ム を表 す.
(6.64)
(6.65) べ き乗 法 の 収 束 性 を加 速 させ る た め に,式(6.62)の
代 わ りに 次 の よ う な 反 復 を行 う こ
とが あ る.
(6.66) こ こで,h は 定 数 で あ り I は単 位 行 列 で あ る.A の 固 有 値 を λ とす る と(A-hI)-1の 固 有 値 は1/(λ-h)と
な る の で,h が λ に近 け れ ば 近 い ほ ど そ の 絶 対 値 を拡 大 す る.
(A-hI)-1は
ス ペ ク トル 変 換 と も呼 ば れ,求 め た い 固 有 値 が 前 も っ て わ か っ て い る よ
う な 場 合,特
定 の 固 有 値 を求 め る の に適 し て い る.式(6.66)の
法 とい わ れ,こ また,反
ア ル ゴ リズ ム は逆 反 復
れ は べ き 乗 法 の 変 形 版 とみ な す こ とが で き る.
復 の 過 程 で h の 値 を 変 更 し収 束 を加 速 さ せ る と い う手 法 もあ る が,こ
算 で は 式(6.66)の
左 辺 を 毎 回,計
の計
算 し直 す 必 要 が あ る.
べ き乗 法 は 重 根 や 近 接 固 有 値 が 存 在 す る場 合,著 な い 場 合 が あ る.そ こ で,同 時 反 復 法 やRBI法
し く収 束 が 遅 くな っ た り,収 束 し
は ベ ク トル を複 数 個 束 ね て 反 復 さ せ 重
根 が あ っ て も対 処 で き,数 値 的 に 安 定 に計 算 さ れ る よ う に工 夫 さ れ て い る.し か し, これ らの 手 法 も基 本 的 に は,固 で,収
有値 の絶 対値 の 大 き さの比 が収 束 速 度 を決 定 す るの
束 回 数 が 多 くか か る場 合 が 多 い.
(2) 部 分空 間 法 大 規模 電 力系 統 の よ うに次 元 の大 きい行列 の 固有値 を求 め る場合 は,全 部 の 固有値 を求 め るの で はな くそ の一部 を計 算 す る場合 が多 い.固 有値 の部 分 空 間問題 は次 式 の よ うに定義 され る. AV=VH
(6.67)
こ こ で,
A:n×n次 mは 一方
の 行 列,H:m×m次
の 行 列,V:n×m次
の 行 列(n>m)
n に比 べ て 十 分 に小 さ い と仮 定 す る. ,全 体 の 固 有 値 問 題 は 以 下 の よ う に 書 く こ とが で き る.
aP=PΛ
(6.68)
こ こ で, P:Aの Λ:A
固 有 ベ ク ト ルPiを
並 べ た 行 列P=(p1,p2.…,Pn)
の 固 有 値 を 並 べ たn×n対
角行 列
(6.69)
も し,式(6.67)が
構 築 で き れ ば,A
の 固有 値 の一 部 は H の固 有値 を求 め る こ とに よ
り得 る こ とが で き る.い い 換 え る な ら H の 固 有 値 は A の 固 有 値 の 一 部 と な る.こ
の
事 実 は 以 下 の よ う に し て 確 か め る こ とが で き る. ΛHを
H の 固 有 値(λH1,…,λHm)か
ら な る対 角 行 列 と し,PHを
固 有 ベ ク トル を並 べ
た 行 列 とす る と次 の 関 係 式 を 満 足 す る.
(6.70) こ こ で,PH:Hの
固 有 ベ ク ト ルPiを
並 べ た 行 列PH=(PH1,pH2,…,PHm)
(6.71)
式(6.70)よ
り,次
式 を 得 る.
(6.72) 式(6.72)を(6.67)に
代 入 す る こ と に よ り,
(6.73) と な る.し
た が っ て,
(6.74) 式(6.75)は,VPHが
A の 固 有 値 ベ ク トル で あ り ΛHは A の 固 有 値 の 一 部 で あ る こ
と を 示 して い る.H
の 固 有 値 は m が 小 さ い もの で あ る と仮 定 す る と精 度 の 高 いQR
法 な ど に よ っ て そ の 固 有 値 を 求 め る こ とが で き る. Lanczos法,Arnoldi法,同
時 反 復 法,RBI法
な ど の 手 法 は す べ てH,Vを
構築 す
る も の と考 え られ る.
(3)Arnoldi法 Arnoldi法
は,現 在 の 大 規 模 電 力 系 統 の 固 有 値 解 析 に適 用 して 最 もす ぐれ た 成 果 を
あ げ て い る も の の 一 つ で あ る.Arnoldi法 Lanczos法
が 適 用 さ れ て い た が,こ
以前 に は行 列 の スパ ー ス性 が利 用 で きる
の 手 法 は 数 値 的 安 定 性 に 問題 が あ り,丸 め の誤 差
の 拡 大 の 影 響 に よ り,場 合 に よ っ て は 固 有 値 が 一 つ も求 ま ら な い とい う こ と が あ っ た.Arnoldi法
の 特 徴 は数 値 的 な 安 定 性 が す ぐれ て い る こ とが あ げ られ る.こ
手 法 はKryrov列 をn×n行
列,v1を
れ らの
を に基 づ い た 部 分 空 間 を作 成 し そ の 固 有 値 を 求 め る も の で あ る.A ゼ ロ で な い n次 ベ ク トル と す る と,Kryrov列
は,Km=(v1,Av1,
A2v1,…,Am-1v1)で
与 え ら れ る.こ
れ ら の ベ ク トル は 1次 独 立 に な る の で m 次 元 空
間 の 基 底 を 構 成 す る. こ こ で,Arnoldi法
の ア ル ゴ リ ズ ム は 以 下 の よ う に な る.i=1,…,m
に対 し て
(6.75) こ こで,H
は 共 役 転 置 を表 す.
75)よ
,と
な る よ う に し,さ
とな る よ う に 決 定 す る.す な わ ち
hi+I,iは
らに
と す る と 式(6.
り
(6.76) を 得 る.こ
こ で,
(6.77) よ っ て,
(6.78) と な る.こ
こ で,
(6.79)
Hmは
式(6.79)で
与 え ら れ る よ う な 上Hessenberg行
して m が ふ え る に つ き式(6.78)の た が っ て,A
列 に な る.こ
の手法 の特 徴 と
第 2項 が 急 激 に 減 少 し,無 視 で き る程 度 に な る.し
の 部 分 空 間 を よ く近 似 で き る こ と に な り,Hmの
固有値 を求 め る こ とに
よ り A の 部 分 固 有 値 を 求 め る こ とが で き る.
6.4
大規模電力系統 における固有値解析手法
6・4.1 大 規 模 電 力 系 統 の 固 有 値 法 の 特 徴 大 規 模 電 力 系 統(ノ ー ド数1000,発 次 数 は1000∼3000程
電 機100台
以 上)に お い て は,そ の状 態 方 程 式 の
度 に も な る.し か も,そ の状 態 行 列 は 密 行 列 に な る の で こ の 行 列
を 直 接 扱 うの は 計 算 時 間,記
憶 容 量 の 面 で 不 利 に な る.そ
こ で,大 規 模 系 統 の 固 有 値
解 析 で は,以 下 の 条 件 を満 た す こ とが 必 要 で あ る. ①
行 列 の ス パ ー ス 性 を 利 用 した 高 速 な手 法 で あ る こ と.
②
特 定 の 固 有 値(ダ ン ピ ン グ の 最 も悪 い 臨 界 固 有 値,電 力 動 揺 モ ー ド,長 周 期 モ ー
ドな ど)を 検 出 で き る こ と. ③
数 値 的 な 安 定 性 が あ る こ と.
こ の 中 で,ま
(1)ス
ず,特
定 の モ ー ドを求 め る た め 固 有 値 の 変 換 に つ い て述 べ る.
ペ ク トル 変換
一 般 的 に 固 有 値 の 数 値 解 析 で は,そ あ る.し
た が っ て,求
ま ず,求
の 絶 対 値 の 大 き い も の か ら求 ま る とい う性 質 が
め る べ く固 有 値 の 絶 対 値 を大 き くす る 必 要 が あ る.
め た い 固 有 値 の 絶 対 値 を拡 大 す る変 換 の 代 表 的 な も の と して,ス
ペ ク トル
変 換 が あ る.ス ペ ク トル 変 換 は以 下 の よ う に与 え られ る.
(6.80) 前 項,逆
反 復 法 の と こ ろ で 説 明 し た と お りSpの
統 解 析 で は,あ
固 有 値 は1/(λ-h)と
な る.電 力 系
る 特 定 の 動 揺 モ ー ドを 求 め た い 場 合 な ど,h を そ の 動 揺 モ ー ドの 近 辺
に 設 定 す れ ば,そ
の 動 揺 モ ー ドの 固 有 値 の 絶 対 値 を 拡 大 し,こ れ らの モ ー ドが 求 め や
す くな る. 電 力 系 統 で は,発 電 機 の 固 有 の モ ー ド と し て1Hz近 近 年 の,長 距 離 串 形 系 統 な ど で は,2∼3秒
辺 の 周 波 数 が 存 在 す る.ま
た
の 周 期 を も つ 弱 制 動 の モ ー ドが 存 在 す る.
これ ら の モ ー ドを 求 め た い 場 合 は,h を 求 め た い 周 波 数 に 合 わ せ た 複 素 数(虚 部 が 周 波 数 に 相 当)を 設 定 して や れ ば よ い. (2) Cayley変
換
も う一 つ の 重 要 な 変 換 と してCayley変
換 が あ る.Cayley変
換 は 以 下 の よ う に与 え
ら れ る.
(6.81) こ こ で,I を 単 位 行 列,h
を 正 の 数 と す る と,Cayley変
図6.6
Cayley変
換
換 は 左 半 平 面(安 定 領 域)を
単 位 円 の 内 部 に,右 半 平 面 を(不 安 定 領 域)を 単 位 円 の 外 に 写 像 す る(図6.6).し っ て,不
たが
安 定 固 有 値 の 絶 対 値 は 安 定 固 有 値 の 絶 対 値 よ り も必 ず 大 き くな り,不 安 定 固
有 値 か ら 先 に 求 ま る こ とに な る.Cayley変
換 は,系 統 の 安 定 判 別 を 行 う場 合 や 臨 界 固
有 値 を 求 め る の に 適 して い る.
6.4.2 次 に,ス
行 列 の スパ ー ス 性 を 考慮 した 固 有 値 計 算 法 パ ー ス 性 を 考 慮 し た 固 有 値 解 析 に つ い て 説 明 す る.
式(6.80),(6.81)か
ら 明 ら か な よ う に ス ペ ク トル 変 換 とCayley変
形 を し て お り計 算 量 も ほ ぼ 同 じに な る.こ れ 以 降,本 模 電 力 系 統 の 固 有 値 計 算 手 法 を 説 明 す る が,こ
書 で は,ス
れ がCayley変
換 は,ほ
ぼ同じ
ペ ク トル 変 換 で 大 規
換 で あ っ た と し て も,
本 質 的 に変 わ る と こ ろ は な い. 固 有 値 の 数 値 解 析 手 法 は,前 が,こ
節 ま で に述 べ た よ う に数 多 くの手 法 が 提 案 さ れ て い る
れ らの 手 法 に お い て 計 算 の 中 核 とな る の は,次 式 で 表 さ れ る よ う な 行 列 とベ ク
トル の 掛 け算 と な る.
(6.82) こ の 事 実 は,多
くの 部 分 空 間 法 がKryrov列
を 構 成 す る こ と に よ り計 算 さ れ る こ と に
よ る. こ の よ うな 掛 け 算 を続 け て い く と,Xn+1は
A の 絶 対 値 最 大 の 固 有 値 ベ ク トル に 収
束 し,固 有 値 も固 有 ベ ク トル か ら計 算 す る こ とが で き る.こ る が,式(6.82)の
計 算 は 同 時 反 復 法 やArnoldi法,Lanczos法
中 核 と な る 部 分 で あ る.ま
ず,対
れ は べ き乗 法 の 原 理 で あ な どの計算 におい て も
象 とな る 固 有 値 を 求 め や す くす る た め に 式(6.83)を
考 え る.
(6.83) こ こで,式(6.83)の
行 列 A は(6.60)で 与 え られ る もの で あ る.こ れ は 次 式 と 同 値 で あ
る.
(6.84) こ こで,A
は 密 行 列 で あ り,前 述 の と お り記 憶 容 量,計
算 に は適 さ な い.そ
こ で 式(6.84)を
算時 間 の面 で大規模 系 統 の計
縮 約 前 の 形 の 行 列 で 表 す と,
(6.85) の よ う に な る.式(6.85)は,拡 な わ ち,通
張 され た 系(augmented
常 の 状 態 方 程 式 で は代 数 式 を 消 去 す るが,こ
去 せ ず に 残 し て お く.こ
こ で 式(6.85)の
system)な
ど と も呼 ば れ る.す
こ で は計 算 の 都 合 上 こ れ を 消
反 復 計 算 を効 率 的 に行 う こ とが で きれ ば,固
有 値 計 算 の 計 算 速 度 は飛 躍 的 に改 善 す る. さ て こ こで,発 想 を か え て み る.い ま ま で は系 統 方 程 式(代 数 式)の 変 数 V を 消 去 し 状 態 変 数 X の み か らな る状 態 方 程 式 を 作 成 し た.こ に 焦 点 を あ て る.ま
ずCDを
こで は 式(6.85)を
解 く こ との み
消 去 す る と,
(6.86) と な る.こ
こで
(6.87) で あ る.こ の 行 列 は2×2要
素 を も つ ブ ロ ッ ク対 角 行 列 で あ り,発 電 機 接 続 ノ ー ドに対
応 す る部 分 の み が 非 ゼ ロ要 素 とな る.こ
の 事 実 を考 慮 す れ ば,式(6.85)の
計 算 は次 の
二 つ に 分 け て 計 算 す る こ とが で き る.
(6.88) (6.89) 式(6.88)の
右 辺 の 行 列 は ア ド ミタ ン ス 行 列 Y と 同 じ 非 ゼ ロ 構 造 を も ち対 角 成 分 の
値 の み が 異 な る.ア
ド ミタ ン ス 行 列 は非 常 に ス パ ー ス 性 が 強 い行 列 で あ る の で,そ
利 用 に よ り高 速 な 計 算 が 可 能 で あ る.式(6.88)は な す こ とが で き る.一 方,式(6.89)の
計 算 は 母 線 電 圧 V が 求 ま っ た あ と,行 列 の ブ ロ
ッ ク 対 角 性 を 利 用 し た 効 率 的 な 計 算 が で き る.こ 析 が 高 速 に計 算 で き る の は,ア
の
通 常 の 系 統 方 程 式 の 計 算 と同 一 とみ
の よ う に大 規 模 電 力 系 統 の 固 有 値 解
ド ミ タ ンス 行 列 の ス パ ー ス性 と状 態 方 程 式 の ブ ロ ッ ク
対 角 性 に よ る も の で あ る. 現 在 の 大 規 模 な 固 有 値 解 析 手 法 は,す べ て こ の よ う な 手 法 に 基 づ く も の と な っ て い る.こ
こで,従
来 の縮 約 し た 状 態 方 程 式 を 用 い る 手 法 と大 規 模 固 有 値 用 の縮 約 し な い
手 法 を 図6.7∼6.9を 図6.7は
式(6.55)の
用 い て概 念 的 に説 明 す る. 微 分 方 程 式 と式(6.56)の
系統方程 式 の結 合状 態 をグラ フを用 い
て 表 し た もの で あ る.四 つ の 発 電 機 が 系 統 に 結 合 し て お り X は 発 電 機 の 状 態 変 数,V は 母 線 電 圧 を示 し て い る.通 常 の 電 力 系 統 に お い て は 発 電 機 は 端 点(ブ ラ ン チ の 接 続 数 が 1)であ る こ と が 多 く,ま た こ こ で は,発 電 機 以 外 の ノ ー ド を 一 つ の ノ ー ド に ま と め て 表 現 し た が,こ
の よ う な 表 現 で も一 般 性 を 失 う こ とは な い.
図6.7
拡 張 され た 状 態 方 程 式
図6.9
図6.8
状 態 変 数 を消 去 した グ ラ フ
母 線 電 圧 を消 去 した状 態 方程 式 の グ ラ フ
ま ず,従 来 の 縮 約 行 列 を用 い る手 法 で は母 線 電 圧 V を消 去 す る.グ ラ フ に お い て あ る ノ ー ドを 消 去 す る と い う こ と は,そ
の ノ ー ドを 隣 接 ノ ー ドの 結 合 で 表 す とい う こ と
で あ り,こ れ は隣 接 間 ノ ー ドで す べ て 結 合 を もつ こ と を意 味 す る.グ を つ か え ば 隣 接 間 ノ ー ドで 完 全 グ ラ フ に な る.図6.9は る た め,状
母 線 電 圧 V が 消 去 され て い
態 変 数 X 間 の 完 全 グ ラ フ に な る の が わ か る.し
以 上 に も な る大 規 模 系 統 に お い て は,こ
ラ フ理 論 の 表 現
た が っ て 状 態 変 数 が1000
の よ う な縮 約 行 列 を 用 い る こ と は計 算 上 好 ま
し くな い こ と が 理 解 で き る. 一 方,図6.8に
お い て は,状 態 変 数 X を 消 去 して も残 りの グ ラ フ,す な わ ち 系 統 方
程 式 の構 造 は保 存 され る こ と を 示 して い る.こ れ は,前 の構 造 は変 化 せ ず,発
電 機 接 続 ノ ー ドの対 角 成 分,す
化 す る こ と を意 味 す る.こ
述 の とお りア ド ミタ ン ス行 列
なわ ち駆動 点 ア ドミタ ンスが変
れ は ブ ラ ン チ の 接 続 数 が 一 つ の ノ ー ド を消 去 す る と,そ
の
接 続 ノ ー ドの 駆 動 点 ア ド ミタ ン ス に組 み込 ま れ る こ と と同 一 で あ る と解 釈 で き る.し た が っ て,こ
の 中 継 点 の 行 列 を 用 い る こ と に よ り,ア
ド ミ タ ン ス行 列 の ス パ ー ス性 を
利 用 し た 計 算 が 可 能 で あ る と い う こ とが 明 ら か と な る.
この よ うに,状 態 方程 式 と系統 方程式 を関連 づ けるグ ラ フを用 い る とこれ らの関係 が 明確 にな り,解 析 手法 の特徴 を把 握 す るの に有 効 であ る.
6.4.3
固有値 計算の効率化
(1) 線形 連立 方程式 の 計算手 法 大 規 模 系 統 に お け る固 有 値 解 析 は,状 態 方 程 式 の ブ ロ ッ ク対 角 性 と ア ド ミタ ン ス 行 列 の ス パ ー ス 性 を利 用 して 高 速 な計 算 が で き る こ と を述 べ た.本
項 で は さ らに 効 率 の
よ い計 算 を行 う工 夫 につ い て述 べ る. 前 述 の よ う に 固 有 値 計 算 の 中 核 部 は 式(6.88)と(6.89)の
反 復 計 算 に な る.式(6.89)
の ブ ロ ッ ク対 角 成 分 の計 算 に つ い て は あ らか じ め これ ら の ブ ロ ッ ク 対 角 行 列 の 要 素 ご と の 対 角 化 を行 い,掛 け 算 の 演 算 量 を 減 らす よ う な 手 法 が 提 案 さ れ て い る.こ こ で は, 系 統 方 程 式 の効 率 的 な計 算 手 法 に つ い て 説 明 す る. 多 くの 電 力 系 統 解 析 で は,系 統 方 程 式 を効 率 的 に 解 く こ と が そ の 解 析 プ ロ グ ラ ム の 鍵 な る とい っ て も過 言 で は な い.系 程 式 と な る の で,ア
統 方 程 式 は ア ド ミタ ン ス行 列 を 係 数 と す る連 立 方
ド ミ タ ンス 行 列 の スパ ー ス 性 の 利 用 が 計 算 の高 速 化 の た め 必 要 不
可 欠 で あ る.連 立 方 程 式 の 計 算 手 法 は,消 去 法 と反 復 法 に分 け る こ とが で き る.表6.3 に代 表 的 な連 立 方 程 式 の 解 析 手 法 を 示 す. 一 般 的 に電 力 系 統 解 析 で は,信 で は,並
頼 性 の あ る 消 去 法 が 好 ん で 用 い られ る.し
列 計 算 な ど の 高 速 計 算 で 前 処 理 つ き のCG法,CR法
が 確 か め ら れ,こ
か し近 年
な どが 適 し て い る こ と
れ らの 手 法 に も注 目が 集 ま っ て い る. 表6.3 線 形連立方程式 の数値解析手 法 反復法
消去法 代 表的な手法 Gaussの
消去法
Gauss-Seidel法
Crout法
SOR法
W スキーム
CG法(conjugate
gradient)
縁 ど りブ ロ ック対 角 行 列 法
CR法(conjugate
resiual)
スパ ー スベ ク トル 法
ブ ロ ッ クニ ュー トン法 不 完 全LU分
特徴
*MD:minimum MF:minimum
解 法
有 限 回 の演 算 で 解 が 求 ま る.
収 束 計 算 の 必 要 が あ る.
消 去 の 過程 で フ ィル イ ンが 発 生 す る た め
悪 条 件 の 場 合 収 束 しな い こ とが あ る.
ノ ー ド の オ ー ダ リ ン グ が 必 要(MD,
行 列 の フ ィル イ ンの 考 慮 の必 要 な し.
MF,MD-ML,ML-MD*)
並 列 計 算 に適 して い る.
degree
T2(Tinney's
fill-in T3(Tinney's
MD-ML:minimum
degree
minimum
ML-MD:minimum
length
minimum
second third
scheme)と scheme)と
length degree
もい う も い う.
.
消 去 法 で は,行 列 の 消 去 の 過 程 で,ゼ 要 素 が 発 生 す る.こ
ロ 要 素 で あ っ た 部 分 が 破 壊 され 新 た な 非 ゼ ロ
の 新 た に発 生 し た 要 素 は フ ィル イ ン要 素 と呼 ば れ,消
去 法 の計算
速 度 は,こ
の フ ィル イ ン 要 素 を含 め た 非 ゼ ロ要 素 の 数 に比 例 す る と考 え ら れ る.し
が っ て,フ
ィ ル イ ン 要 素 の 発 生 を 最 小 限 に 押 さ え る こ とが 計 算 の 高 速 化 に つ な が る.
こ の 操 作 は ノ ー ドの順 序 づ け,オ
ー ダ リ ン グ に よ り行 う.1960年
提 案 さ れ たT2(Tinney's
scheme)はMD(minimum
れ,電
second
力 潮 流 計 算 に適 用 され 成 功 を お さ め た.こ
ン グ 手 法 と し て,現
代 にTinneyに
degree
scheme)と
た
より も呼 ば
の 手 法 は 準 最 適 な ノ ー ドの オ ー ダ リ
在 の 系 統 解 析 で 最 も広 く用 い られ て い る 手 法 の一 つ で あ る.T2
の 考 え 方 は き わ め て簡 単 で あ り,ノ ー ドの 消 去 過 程 を模 擬 す る 縮 約 グ ラ フ を 用 い,ブ ラ ン チ の 接 続 数 が 最 も少 な い ノ ー ドか ら番 号 を つ け る(消 去 を行 う)と い う も の で あ る.
(2)ベ
ク トルの スパ ー ス性 の利 用
固 有 値 解 析 の 系 統 方 程 式 の 右 辺 は,発 電 機 接 続 ノ ー ドに 対 応 す る 部 分 の み が 非 ゼ ロ で あ り,ま た 計 算 に 必 要 な 諸 量 も発 電 機 接 続 ノ ー ドの 母 線 電 圧 の み で あ る.こ な 計 算 を効 率 的 に す る に は二 つ の ア プ ロー チ が あ る.一 り,も
のよう
つ は ス パ ー ス ベ ク トル 法 で あ
う一 つ は ノ ー ド縮 約 法 で あ る.
ス パ ー ス ベ ク トル 法 は1980年
代 にTinneyら
に よ っ て 提 案 さ れ た 手 法 で あ り,行
列 の ス パ ー ス性 の み で な くベ ク トル の ス パ ー ス 性 も考 慮 す れ ば よ り効 率 的 な 計 算 が で き る と い う もの で あ る.ス パ ー ス ベ ク トル 法 は 並 列 計 算 や W 行 列 法 に そ の 概 念 を 適 用 さ れ て お り,現 在,最
も注 目 さ れ て い るス パ ー ス 行 列 計 算 手 法 の 一 つ で あ る.ま
た
ス パ ー ス ベ ク トル 法 に適 した オ ー ダ リ ン グ 手 法 も種 々 の も の が 提 案 さ れ て い る. 本 書 で は,も
う一 つ の 手 法,ノ
ノ ー ド縮 約 法:前
ー ド縮 約 法 に つ い て 説 明 す る.
述 した よ う に 固 有 値 計 算 で は発 電 機 接 続 ノー ドの み の 母 線 電 圧 が
必 要 で あ る.ま た,発
電 機 母 線 以 外 は 浮 遊 ノ ー ド と し て 扱 う の で,発
か らな る 発 電 機 間 縮 約 行 列 を 考 え る こ とが で き る.し に な り大 規 模 な 計 算 に は 適 さ な い.こ 数NDが1000,ブ る.ま ず,ノ LU分
ラ ン チ 数NBが1200,発
か し,こ
の行 列 は 完 全 な 密 行 列
れ を例 を あ げ て 説 明 し よ う.た 電 機 台 数NGが150の
ー ド縮 約 を 行 わ な い ス パ ー ス 性 を用 い た 手 法 で は,ア
解 後 の フ ィ ル イ ン 要 素 数NFLを,ノ
と え ば,ノ
ー ド
系統 につ い て考 え ドミタ ンス行列 の
ー ド数 と 同 数 と仮 定 す る と そ の 非 ゼ ロ 要
素数は NZ1=ND+2×NB+NFL=4400 と な る.一 方 発 電 機 間 縮 約 ア ド ミ タ ン ス 行 列 の 非 ゼ ロ要 素 数 は NZ2=NG×NG=22500
電 機 ノ ー ドの み
図6.10
テ ス トモ デ ル
とな る.こ れ は縮 約 しな い 行 列 の 非 ゼ ロ要 素 数 に比 べ て 約 5倍 に も な り発 電 機 間 縮 約 ア ド ミタ ン ス行 列 の 使 用 は 適 切 で な い の が わ か る. こ こで は,ス
パ ー ス 性 を 保 存 した 縮 約 行 列 の 作 成 法 に つ い て 説 明 す る.
例 と し て 図6.10に L,M,N,O,Vは
示 す22母
線,22ブ
ラ ン チ の テ ス ト系 統 を 考 え る.こ こで ノ ー ド
発 電 機 接 続 ノ ー ドで あ り,こ れ ら の ノ ー ドを 含 む 最 適 な 縮 約 に つ
い て 考 え る.図6.12は,従
来 の 発 電 機 間 縮 約 ア ド ミタ ン ス 行 列 で あ り,発 電 機 間 で 完
全 グ ラ フ に な っ て い るの が わ か る.一 方,図6.11に 去 さ れ ず に 残 さ れ て い る.こ つ こ とが 可 能 と な る.ま
の ノ ー ド を残 す こ と に よ り,縮 約 行 列 の ス パ ー ス性 を保
た こ の例 で は,縮
発 生 しな い の が わ か る.こ
示 す 縮 約 行 列 で は,ノ ー ド D が 消
約 行 列 をLU分
解 し て も フ ィル イ ン 要 素 は
の よ う に ス パ ー ス 性 を保 存 す る縮 約 行 列 を 作 成 す る た め に
は,縮 約 対 象 ノ ー ド以 外 の ノ ー ド を含 め る こ とが 必 要 で あ る.し ド を残 し た ら よ い か とい う こ とが 問 題 に な るが,こ
た が っ て,ど
の ノー
れ は ノ ー ドの オ ー ダ リ ン グ に よ り
容 易 に 決 定 す る こ とが で き る. ス パ ー ス 性 を 保 存 す る縮 約 行 列 作 成 の た め の オ ー ダ リ ン グ ア ル ゴ リズ ム は,以 下 の
図6.11
ス パ ー ス 性 を保 存 す る 縮約行列
図6.12
発 電 機 間 縮 約 ア ド ミタ ンス 行 列
よ う に な る. Step1:Ω
よ り A を は ず す.よ
Step2:対
っ て残 りの ノ ー ドが オ ー ダ リ ン グ の対 象 とな る.
象 とな る ノ ー ドの 集 合 で,ブ
ラ ン チ の接 続 数 が 一 番 少 な い ノー ドを 消
去 す る. Step3:そ
の と き 縮 約 行 列 の 要 素 数 が ふ え て い た ら,Step4へ,そ ば,Step2へ
Step4:A
うで な け れ
も ど る.
を オ ー ダ リ ン グ す る ノ ー ドの 対 象 に 加 え残 り の ノ ー ドの オ ー ダ リ ン グ を 行 う.
こ こ で,Ω:ノ
ー ド全 体 の 集 合,A:発
ー ドの オ ー ダ リン グ は い.こ
,フ
電 機 接 続 ノ ー ドの 集 合,で あ る.Step4で
のノ
ィ ル イ ン の 発 生 を 少 な くす る も の で あ れ ば 何 を 用 い て も よ
の よ う な縮 約 行 列 を利 用 す る こ とに よ り,固 有 値 解 析 の 計 算 速 度 を 改 善 す る こ
とが 可 能 と な る.
6.4.4大
規 模 固有 値 解 析 の 今 後 の 課 題
大 規 模 電 力 系 統 の 固 有 値 の 解 析 手 法 は,今 の モ ー ド を求 め る た め の 手 法 と し て は,ほ
まで 述 べ て き た よ う に,安 定 判 別 や 特 定
ぼ確 立 され て い る と考 え られ る.現
力 系 統 で は系 統 の 安 定 化 を 図 る た め,各 種 制 御 系 や,FACTS機
在 の電
器 の導入 が積 極 的 に
な さ れ て お り,こ れ らの 機 器 の 効 果 を定 量 的 に 測 るた め に も固 有 値 解 析 は 重 要 な 役 割 を 果 して い る.6.2節
で 述 べ た デ ジ タ ル 制 御 系 は,今 後 ま す ま す 電 力 系 統 に取 り入 れ
られ て く る と予 想 さ れ る が,デ 法 は,ま
ジ タ ル 制 御 系 を含 ん だ 大 規 模 電 力 系 統 の 固 有 値 解 析 手
だ 確 立 さ れ て お らず,今
さ ら な る 高 速 化 や,固
後 の 課 題 とな ろ う.ま た,並
列計 算機 の利用 によ る
有 値 の オ ン ラ イ ン監 視 シ ス テ ム な どが 期 待 さ れ る.
参考文 献 1)N.Uchida for
Large
and
2)A.Semlyen the
Study
T.Nagao:A
Power
New
Systems;S and
Zone
in
Eigen
Matrix
L.Wang:Sequential Small
Analysis
Computing
Signal
Method
Method,IEEE
Stability
Analysis
of Steady
State
Stability
Trans.PAS,3,2,1988. of of
Complete Large
Eigen Power
System
for
Systems,IEEE
Trans.,PWRS,3,2,1988. 3)P.Kunder,et Stability
al.:A Analysis
4)W.F.Tinney Optimally 5)W.F.Tinney,et
and Ordered
Comprehensive
of
Large
Computer
Power
Program
Package
for
Small
Signal
J.W.Walker:Direct
Systems,IEEE,Trans.,PWRS,5,1990. Solution
Triangular
Factorization,IEEE
al.:Sparse
Vector
Methods,IEEE
of
Sparse
Network
Proc.55,1967. Trans.PAS,104,2,1985.
Equation
by
6)S.M.Chan
and
V.Brandwajn:Partial
Matrix
Refactorization,IEEE
PWRS,11,1,1986. 7)P.Kundur:Power 8)高
橋:電
System 力 シ ス テ ム 工 学,コ
Stability
and
ロ ナ 社,1977.
Control,McGraw-Hill,Inc.,1993.
Trans.
第 7章 供給信頼度評価 と電力設備形成
信 頼 性 指 標(reliability)と 生 産 コ ス ト(production 力 供 給 計 画 の 策 定 に お い て 重 要 な 指 標 で あ り,特
cost)は 電 力 設 備 計 画 あ る い は電
に自由化 が進 ん だ電力 市場 におい て
は,そ れ ら の 指 標 の策 定 と評 価 は供 給 電 力 の 市 場 価 値 と 品 質 の 判 断 基 準 に も関 係 し て い る た め に,一
層 重 視 さ れ る よ う に な っ て き て い る.供 給 信 頼 度 は 特 定 の期 間 に お い
て 需 要 家 に電 力 を 供 給 す る系 統 の 能 力 で あ り,確 定 指 標 と確 率 指 標 の 二 つ に 分 け られ る.確 定 信 頼 性 指 標 は 一 般 的 に系 統 の 余 裕 度 合 い,た
と え ば,発 電 と送 電 容 量 に よ り
供 給 予 備 率 と負 荷 へ の 着 水 率 な ど20)で表 現 さ れ る が,確 率 信 頼 性 指 標 は系 統 の供 給 支 障 あ る い は停 電 の 可 能 性 と そ の 規 模,た に よ り停 電 の 頻 度,大
と え ば電 力 設 備 の 故 障 率 あ る い はN-1事
き さ と持 続 時 間 な どで 評 価 さ れ る.ま
た,供
故
給 者 の側 と需 要 者
の 側 の 両 面 か ら そ れ ぞ れ の 尺 度 に よ り信 頼 度 も定 義 さ れ て い る. 本 章 で は特 に確 率 指 標 とそ の評 価 法 に つ い て紹 介 し,さ
ら に そ れ らの 指 標 に よ る 電
力 設 備 計 画 法 を述 べ る.7 章 は五 つ の 節 か ら構 成 さ れ,7.1節 頼 性 の 定 義 に つ い て 説 明 し,そ を紹 介 す る.7.2節
れ らの 指 標 に お け る代 表 的 な 4種 類 の 解 析 的 な 計 算 法
で は 規 制 緩 和 さ れ た 電 力 系 統 に お い て 需 要 家 か らみ た 信 頼 性 と そ
の評 価 に 影 響 す る諸 要 因 を述 べ て,モ 法 を説 明 す る.7.4節 る.7.5節
で は供 給 側 の視 点 か ら信
ン テ カ ル ロ(Monte
Cario)法
に よ る高 速 な評 価
は 送 電 能 力 を 考 慮 した 多 地 域 電 力 設 備 計 画 に お け る計 算 法 で あ
は電 力 設 備 の 故 障 率 以 外 に各 種 の 不 確 実 性,た
と え ば 負 荷 予 測,燃 料 費,出
水 と市 場 競 合 な ど を考 慮 した 電 源 拡 張 計 画 法 の 一 例 を紹 介 す る.
7.1供
給信頼性 と生産 コス トの評価法
供 給 側 の 視 点 か ら 従 来 で は,供 給 不 足 エ ネ ル ギ ー(EUE:expected frequency-duration
curve)な
給 不 足 確 率(LOLP:loss unserved
energy)と
of
load
頻 度-持
probability),供 続 時 間 曲 線(FDC:
ど は 確 率 信 頼 性 指 標 と し て よ く使 わ れ て い る1,3,19,21,24).
そ の 計 算 法 に つ い て,解 析 的 な 計 算 法 とモ ンテ カ ル ロ 法 の 二 別 が あ る.ネ 故 障 を 無 視 す る場 合 に つ い て は,高
ッ トワ ー ク
速 な 解 析 的 な 計 算 法 が 一 般 的 に使 わ れ て い る が,
ネ ッ トワ ー ク を考 慮 す る場 合 に お い て は,ほ
と ん ど詳 細 な シ ミ ュ レ ー シ ョ ン が で き る
モ ン テ カ ル ロ法 が 適 用 され る. 本 節 で は供 給 側 の 視 点 か ら,電 力 設 備 計 画 に よ く使 わ れ て い る信 頼 性 指 標 に つ い て 概 要 説 明 と サ ー ベ イ を行 い,論 文25)の 結 果 を 用 い そ れ ら の指 標 に お け る代 表 的 な 4種 類 の 解 析 的 な 計 算 法 に つ い て 説 明 す る.モ
ン テ カ ル ロ 法 に つ い て は,7.2節
で詳 細 に
紹 介 す る. ネ ッ トワ ー ク の影 響 を 考 慮 し な い場 合 にお い て,数 学 的 にLOLPとEUEは
すべ て
の 発 電 機 故 障 量 の確 率 密 度 分 布 と負 荷 の 確 率 密 度 分 布 の た た み 込 み 積 分 に 基 づ い た 等 価 負 荷 持 続 曲 線(ELD:equivalent
load duration
curve)に
生 産 コ ス ト もそ の 等 価 負 荷 持 続 曲 線 か ら計 算 で き る.し
よ り表 現 で き,各 発 電 機 の
か し,た
たみ込 み積 分 が各確
率 密 度 分 布 の組 合 せ の 計 算 を 要 す る た め,発 電 機 の 数 の増 加 に 伴 い,計 増 え る こ と に な る.こ 法,た
の 問 題 を解 決 す るた め,1960年
と え ば,直 接 た た み 込 み 法,フ
代 か ら す で に い くつ か の 計 算
ー リエ 級 数 近 似 法,グ
と高 速 フ ー リエ 変 換 法 な どが 提 案 さ れ,実
算量 は急激 に
ラ ム シ ャ リエ 級 数 近 似 法
際 の 電 力 系 統 の 信 頼 性 評 価 に も使 わ れ て い
る25). 直 接 た た み 込 み 法(RCT:recursive
convolution
technique)3)は
名 前 の とお り,た
た み 込 み の 数 値 積 分 に よ り等 価 負 荷 持 続 曲線 を計 算 す る厳 密 計 算 法 で あ る.こ はLOLPの
概 念 と と もに1960年
代 に 確 立 さ れ,特
計 画 の 策 定 に用 い ら れ た 2).RCTは
に1966年Garverに
厳 密 な 計 算 法 で あ る が,か
る た め に ほ と ん どの 電 力 設 備 計 画,特
の手法
よ り電 源 補 修
な りの 計 算 時 間 を 要 す
に 長 期 電 源 開 発 計 画 に は使 わ れ て い な い.
等 価 負 荷 持 続 曲 線 に お け る他 の 代 表 的 な厳 密 計 算 法 は,1981年
にAllanら
開 発 さ れ た 高 速 フ ー リエ 変 換 法(FFT:fast
あ る 4).高速 フ ー リ
エ 変 換 法 で は,ま 換 す る.そ
Fourier
transform)で
ず 容 量 〔MW〕 領 域 の た た み 込 み計 算 を周 波 数 領 域 で 乗 算 の 計 算 に 変
し て,周 波 数 領 域 か ら容 量 領 域 に再 度 逆 変 換 す る こ と に よ り等 価 負 荷 持 続
曲 線 を得 よ う とす る もの で あ る.RCTに
比 較 してFFT法
の 計 算 量 は か な り軽 減 さ れ
る7).さ ら に も し容 量 の 離 散 幅 が 発 電 機 容 量 と負 荷 の 公 約 数 で あ れ ば,誤 LOLPあ
るい はEUEを
計 算 で き る と い う メ リ ッ トも あ る25).FFT法
統 電 源 開 発 計 画 パ ッ ケ ー ジESPRITに 一 方,離
によ り
導 入 さ れ,計
散 計 算 を 行 う厳 密 法 に 対 して,ほ
差 な しで
はす で に 連 系 系
画 案 の 最 終 評 価 に使 わ れ て い る.
と ん どの 近 似 計 算 法 はた た み 込 み を解 析
的 に 表 現 し,連 続 量 と して 計 算 を行 う.高 速 な 近 似 法 の 一 つ で あ る フ ー リエ 級 数 近 似 法(FEA:Fourier
expansions
approximation)は,1977年
にJenkinsら
に よっ て提
案 さ れ た 8).こ の 手 法 ば
フ ー リエ 級 数 の 四 分 の 一 基 本 周 波 の 周 期 を ま ず 負 荷 持 続 曲
線(あ る い は 逆 負 荷 持 続 曲線)に 合 せ る.そ
し て,解 析 的 な た た み 込 み と逆 た た み 込 み
表 現 に よ り等 価 負 荷 持 続 曲 線 を近 似 す る.た 合 は,100のcos項
の 係 数,100のsin項
とえ ば,100次
の フ ー リエ 級 数 を 使 う場
の係 数 と一 つ の 定 数 項 を毎 回 の た た み 込 み あ
る い は 逆 た た み込 み計 算 で 求 め る こ とに よ り,等 価 負 荷 持 続 曲 線 が 得 られ る.FEAの 特 徴 は,計 算 量 が 系 統 の 規 模 に あ ま り依 存 せ ず,ほ ぼ 一 定 な こ とで あ る9).現在,FEA は す で にIAEAの
電 源 開 発 計 画 パ ッケ ー ジWASP-Ⅱ,WASP-Ⅲ15)とESPRIT24)に
用 い られ て い る. 現 在 ま で の 最 も高 速 な 近 似 法 は1979年 エ 級 数 法(GCE:Gram-Charlier method)10,11)で
あ る.こ
expansions)あ
が提案 した グラム シ ャ リ
る い は キ ュ ミ ュ ラ ン ト法(cumulant
の 手 法 で は,負 荷 と発 電 機 の 故 障 量 分 布 の モ ー メ ン トの 組 合
せ で あ る キ ュ ミ ュ ラ ン トで,等 き な利 点 を もつ.一
にStremel,Rauら
価 負 荷 持 続 曲 線 を解 析 的 に表 現 す る も の で,二
つ は 発 電 機 の 部 分 故 障 も簡 単 に 考 慮 で き,故
が な い とい う こ とで,他
つ の大
障量 の離散 化 の必 要
の 一 つ は た た み 込 み 計 算 と逆 た た み 込 み は 単 に そ の 分 布 の キ
ュ ミ ュ ラ ン トの 足 し算 と 引 算 と な り,非 常 に 高 速 で あ る と い う 点 で あ る25).他 方, GCEは
任 意 の 確 率 分 布 に 近 似 で き る(無 限 展 開 の 場 合)が,収
い う 欠 点 を もっ て い る.す
束的 な級 数 で はな い と
な わ ち,8 次 展 開 と 7次 展 開 の 精 度 を比 較 で き な い と い う
問 題 で あ る.し た が っ て,対 象 の 確 率 分 布 に よ りか な り大 き な 誤 差 もあ り得 る12∼14). し か し な が ら,そ の 高 速 性 を生 か して,GCEは
多 数 の 実 用 電 源 計 画 パ ッ ケ ー ジ,た
え ば,ESPRIT24),EPRIのEGEAS16)とWestinghouse社
のWIGPLANに
と
導入 され
て い る.
7.1.1等
価負荷持 続曲線 と信頼性指標
確 率 信頼1生指標LOLP,EUEと
各発 電機 の 生産 コス トはすべ て等 価 負荷 持 続 曲線
(ELD)に 基 づ いて計算 で きるた め,電 力供給 計 画 の策 定 と評価 におい て等価 負荷 持続 曲線 は重要 な役割 を果 して いる.発 電機 の故 障 を負荷 の 発生 とみ な した 等価 負荷 の確 率 分布Pn(x)は 次 の よ うなたた み込 み計 算 に よって表 現で きる. Pn(x)=PD(x)〓PG1(x)〓
た だ し,x は 負 荷 〔MW〕 で,Pn(x)は 度 で あ る.PD(x)は
… 〓PGn(x)
(7.1)
n番 目発 電 機 の 投 入 に対 す る 等 価 負 荷 の確 率 密
負 荷 の確 率 密 度 で,PGnは
n番 目発 電 機 の 故 障 量 確 率 密 度 で あ る.
〓 は た た み 込 み 計 算 を表 す. そ こ で,n 番 目 発 電 機 に 対 す る等 価 負 荷 持 続 曲 線ELDn(x)は とな る.
次 の よ うな累積 関 数
(7.2) こ こ で,DUは
最 大 負 荷 〔MW〕 で,Ciは
よ っ て,LOLPとEUEは
i番 目発 電 機 の容 量:〔MW〕 で あ る.
次 の よ う に表 現 さ れ る.
(7.3) (7.4) こ こ で,T
は 考 察 期 間(hour
信 頼 性 指 標LOLP,EUEと
or day)で
等 価 負 荷 持 続 曲 線ELDの
同 様 に 各 発 電 機 の 生 産 コ ス トもELDで
図7.1
あ る. 関 係 は 図7.1に
表 現 で き る10).
信 頼 性 指 標LOLP,EUEと
等 価 負 荷 持 続 曲 線ELD
示 し て い る.
7.1.2直
接 た た み 込 み 法(RCT)に
明 ら か にLOLPとEUEの
よる評価
計 算 量 と精 度 は ほ と ん ど式(7.1)の
た たみ 込 み積分 をい
か に効 率 的 に 計 算 す るか に 依 存 す る. 直 接 た た み 込 み 法(RCT)2,3)は
す べ て の発 電 機 と負荷 を離 散 幅 の 整 数 点 に平 準 化
(sharing process)4)し,式(7.1)に
対 し て 離 散 積 分 の 計 算 を 直 接 行 う手 法 で あ る.計 算
精 度 は 離 散 幅 に よ る た め,離 散 幅 が 小 さ け れ ば,平 準 化 の 誤 差 も小 さ い が,式(7.1)の 計 算 量 が 増 え る こ と に な る.た だ し,平 準 化 後 の た た み込 み 計 算 が誤 差 な し の 厳 密 計 算 で あ る.い
う ま で も な く,発 電 機 数 の増 加 と と も に 計 算 量 が 急 激 に増 え る と い う欠
点 が あ る.こ
の 問 題 に対 し て,次
の い くつ か の 厳 密 法 と近 似 法 が 開 発 さ れ た.
7.1.3高
速 ラ ー リエ 変 換 法(FFT)に
式(7.1)の
た た み 込 み を 直 接 計 算 せ ず に,FFTに
し,さ
ら に容 量 領 域 の 逆FFT変
で あ る4,7).FFTを
よる評 価
換 に よ りELDを
使 うた め,RCTと
よ り周 波 数 領 域 の 掛 け 算 に 変 換 求 め る手 法 が 高 速 フ ー リエ 変 換 法
同 様 に離 散 幅 を決 め る 必 要 が あ る.各 発 電 機 と
負 荷 の 公 約 数 を 離 散 幅 と し た 理 想 的 な場 合 は,誤 差 な し の 厳 密 手 法 と な る4,7).離 散 幅 が あ ま り小 さ く な る と,計 算 量 が か な り増 え る た め に 一 般 的 にRCTと
同様 に離 散幅
を適 切 な 大 き さ に設 定 し,発 電 機 故 障 量 確 率 密 度 と負 荷 確 率 密 度 の 平 準 化 を行 う4). FFTの
分 割 数 は 2の べ き乗 で な け れ ば な ら ず,そ
の 値 は 次 式 か ら得 られ る.
(7.5) こ こ で,⊿ x は 等 価 負 荷 x の離 散 幅 で,2NはFFTの フ ー リエ 変 換 に よ り,式(7.1)の
分 割 数 で あ る.
た た み込 み 計 算 は式(7.6)に
示す周 波数領 域 の掛 け
算 と な る.
(7.6)
F(Pn(x))=F(PD(x))F(PG1(x))…F(PGn(x)) こ こ で,F
は フ ー リ エ 変 換 で あ り,PD(x),PG1(x)…PGn(x)は
間 隔 の 離 散 確 率(た (i⊿x)=1を
式(7.6)の
と え ばPD(x)に 満 た す)で
の等
対 し て,PD(0)PD(⊿x),…,PD((2N-1)⊿x))は
あ る.
離 散 的 な 表 現 は式(7.7)で F(k)=F0(k)F1(k)…Fn(k)
こ こ で,F0(k)は
平 準 化 さ れ た2N点
あ る. (k=0,…,2N-1)
負 荷 分 布 の k番 目 の フー リエ 係 数 で あ り,Fn(k)は
障 量 の k番 目 フ ー リエ 係 数 で あ る.
(7.7) n番 目 発 電 機 故
式(7.7)の 等 価 負 荷 の フ ー リエ 係 数F(k);(k=0,…,2N-1)を ら に も う 1回逆FFT変
換 す れ ば,式(7.1)の2N点
わ ち,Pn(0),Pn(⊿x),…,Pn((2N-1)⊿x)が 2Nlog2Nに
比 例 す る た め,計
計 算 し た あ と に,さ
の 等 価 負 荷 確 率 密 度Pn(x),す
得 ら れ る.一
般 的 にFFTの
な
計 算量 は
算 量 と精 度 の両 方 か ら み て も,離 散 幅 の 選 定 が 重 要 で あ
る こ とが わ か る.
7.1.4
フー リエ 級 数 近 似 法(FEA)に
RCTとFFTと
違 っ て,FEAは
荷 持 続 曲 線(LD:load
duration
た た み 込 み計 算 の 近 似 法 で あ る.FEAで curve)を 近 似 し,そ
合 計 m 点 の 離 散 負 荷 持 続 曲 線LD(x)(す DUとDLは
よる 評 価
し てELDの
はまず負
近 似 を行 う8∼10,15).
な わ ち0〓x=D1,…,Dm〓DU;こ
こ で,
最 大 と最 小 負 荷 で あ る)は フ ー リ エ 級 数 に よ り次 の よ う に 近 似 す る こ と
が で き る.
(7.8) た だ し,
(7.9) (7.10) こ こ で,M
は フ ー リエ 級 数 の 近 似 次 数 で あ り,E
〔MWh〕 で あ る.ω=2π/(2(DU+DL))で,基 もち ろ ん,負
荷Diの
確 率PD(Di)は
は考 察 期 間 の 負 荷 エ ネ ル ギ ー
本 周 波 の 周 期 は2(DU+DL)で
あ る.
を 満 た す 必 要 が あ る.
明 らか に最 初 の発電 機 に対 す る等価 負荷 持 続 曲線ELD0は
負 荷 持 続 曲線 そ の もの
であ る. ELD0(x)=LD(x)
(7.11)
そ れ 以 降 の n番 目 発 電 機 に対 す る 等 価 負 荷 持 続 曲 線 は 式(7.12)の 表 現 で き,各 次 の フ ー リエ 係 数 を式(7.13)∼(7.15)に
よ う に解析 的 に
従 っ て 逐 次 計 算 す る.
(7.12) た だ し,
(7.13) (7.14) (7.15)
こ こ で,Cn,qGnは
そ れ ぞ れ n番 目発 電 機 の 容 量 と故 障 率 で, と す る.
し た が っ て,式(7.3),(7.4)に
よ り,LOLPとEUEが
エ 級 数 近 似 次 数 M が 小 さ い 場 合,ELDの 影 響 す る.そ LOLPを
こで,式(7.3)を
計 算 で き る.し か し,フ ー リ
先 端 部 分 の誤 差 が 生 じ,特 にLOLPの
使 わ ず に,〓Ciの
値に
近傍 の第 M 調 波 にお け る平均 値 で
評 価 す る15).
(7.16) こ こ で,
で あ り,
は第 M 調 波 の周期 で ある.
7.1.5
グ ラ ム シ ャ リ エ 級 数 近 似 法(GCE)に
現 在 ま で 最 も高 速 な 近 似 法 で あ るGCE10∼13)は,等
よる評価 価 負 荷 持 続 曲 線 を一 般 的 に 式(7.
17)の よ う に グ ラ ム シ ャ リエ 級 数(8 次)に 近 似 す る た め,式(7.3),(7.4)に とEUEが
よ りLOLP
解 析 的 に求 め ら れ る.
(7.17) KEi
こ こ で,
は i次 等 価 負 荷 の キ ュ ミ ュ ラ ン トで あ り,そ の 具 体 的 な 計 算 式 に つ い て は文 献25)の 付 録 を参 照 さ れ た い. GCEは
あ ら ゆ る確 率 分 布 を近 似 で き る 一 方,収 束 級 数 で は な い た め,系 統 に よ りか
な りの 誤 差 も あ りえ る.ま た,収 束 を よ くす る た め に 展 開 を0,3,4,5,… に(0,3),(4,6),(5,7,9)の
順 に た ば ね て 加 え たEdgeworth級
の 順 に加 え ず
数 も よ く電 力 系 統 の信
頼 性 評 価 に 使 わ れ て い る14).な お,GCEはELDの
先 端 部 分 の近 似 が よ く な い た め,
LOLPの
よ う な 平 均 値 を使 う16).
計 算 はFEAと
同 様 に一 般 的 に式(7.16)の
7.1.6
比
較
4種 類 の 解 析 的 な計 算 法 は 主 に電 力 設 備 計 画 の 信 頼 性 と経 済 性 の 評 価 に 使 わ れ て, そ れ ぞ れ 長 所 と短 所 が あ る.文 献25)で は発 電 機 故 障 率,負 次 数 とFFTの
荷 の 点 数,フ
離 散 幅(あ る い は 分 割 数)を パ ラ メ ー タ と し て,テ
ー リエ級数 の
ス ト用 系 統 と 実 規 模
系 統 に よ り,各 手 法 の 計 算 量 と精 度 を 定 性 的 と定 量 的 に 評 価 を行 っ た.各 る信 頼 性 指 標 の 計 算 量 は 図7.2に ①
示 さ れ て い る.
小 中 規 模 系 統 の 信 頼 性 計 算 に対 して,FFTは 性 指 標 を 計 算 で き る ほ か,FEAも
を使 用 した 方 が よ い.た だ し,GCEは 較 的 に大 規 模 で,故
て,波
合 理 的 な計算 量 で高 精 度 の信 頼
十 分 な精 度 の 信 頼 度 指 標 を 計 算 で き る.中 大 規
模 系 統 に 対 し て は,計 算 時 間 の 問 題 か らFFTの
②FEAは
適 用 が 困難 に な り,FEAとGCE
非 常 に 高 速 で あ るが,精 度 の 問 題 か ら は 比
障 率 の大 き い 系 統 に 適 して い る25).
高 速 で,高 い 精 度 の 計 算 が で き る が,LOLPが0.001以 状 の 振 動 を生 じ る た め,そ
が あ る.そ き,FEAは
手法 にお け
こで,ELD先
の ま まで はLOLPとEUEに
下 の 系 統 に対 し 誤 差 を生 ず る場 合
端 部 分 の 近 似 に 工 夫 す る こ と に よ り,こ の 欠 点 を解 消 で
柔 軟 性 の 高 い 手 法 とな る.
図7.2 各解析な手法 による信頼 性指標の計算量比較(文献25)の図 7)
③ GCEは
非 常 に 高 速 で あ るが,大
い う 欠 点 が あ る.GCEに
お け る この 欠 点 に 対 し て,す で に い くつ か の 改 善 策,た
と え ば,大 偏 差 法(large 展 開(laguerre
deviation),展
polynomials)な
統 に対 し て もGCEの
規模 で 故障 率 の大 きい系統 に しか使 えな い と
開 中心 法(expansion
どが 提 案 さ れ,計
centering)13)と
算 量 は 多 少 増 え る が,小
直交
規模 系
精 度 が か な り改 善 さ れ た こ とが 報 告 さ れ て い る25).こ の 分
野 の 研 究 は 今 後 さ らに 進 む 必 要 が あ る と考 え られ る. ④ FFTは で,精
精 度 が 高 い が,大
規 模 系 統 の 評 価 に 対 し て か な り時 間 が か か る.そ
こ
度 を 損 わ ず に 高 速 に 計 算 を 行 う た め に い か に最 適 な離 散 幅 を選 択 す る か が
重 要 で あ る. ⑤ 対 象 問 題 に よ り適 切 な評 価 手 法 を選 ぶ こ と も重 要 で あ る.た
と え ば,信
標 を 多 数 回 計 算 す る最 適 電 源 計 画 に つ い て は,最 適 計 算 にFEAあ を 使 用 し,最 終 結 果 をFFTで
頼性 指
る い はGCE
精 密 評 価 す る と い う使 い 分 け を とれ ば,よ
り効 果
的 に計 算 で き る.
7.2
電力 市場 にお け る需 要家 向け信頼 度 指標 とその 評価 法
7.2.1
需 要 家 向 け信 頼 度 指 標
電 力市 場 の 自由化 とと もに,信 頼性 評 価 と電力 設備計 画 は従来 の供給 側 寄 りか ら需 要家 寄 りの 要望 と情報 が よ り重視 され る傾 向 に急速 に変 化 しつ つあ る.各 需要 家 は そ れ ぞれ 信頼 性 に対 す る要求 水準 が 異 な り,供 給電 力 の 品質 を異 な る経済 的尺 度 で 測 る.需 要家 の視点 か ら一 般 的 に供 給電 力 の信頼 性 が悪化 す る可能性 として,技 術 的 な 要因 と経 済 的な要 因の二 つ はあ る33).技術 的 な要因 とは発電 機 また は系統 の事 故 に よ り需 要家 が必 要 とす る電 力 が供給 で きない こ とで あ り,経 済 的 な要因 とは技 術 的 に可 能 であ って も,た とえば電 力 を供 給 す る コス トが供 給 しな い こ とに関 す るペ ナル テ ィ を上 回 った場 合 な ど,契 約 に よ り電力 を送 らな い ことであ る.従 来 で は,供 給 電力 の 評 価 をほ とん ど技術 的 な要 因 に よ り行 ったが,電 力 市場 の環境 にお いて は混 雑 解消 と 供 給 コス ト削 減 な どの理 由 で経済 的 な要 因 も考 慮 しな けれ ばな らな い. また,個 々 の需 要家 か らみ た信頼 性 は従 来 の 系統 構成 要 素(た とえば系 統 の構 成 と 容 量,発 電 機 と送電線 の故 障率 な ど)以外 に,系 統運 用(た とえば運 用点 設定,運 用 手 順 な ど)か ら も影響 され る.信 頼 性 に影 響 を及 ぼす運 用要素 として,運 用点 の 決定,運 用 形態(ル ー プあ るい は放 射状 系 統),運 用の 自動化,運 用 スタ ッフの能 力,安 定 度 余 裕,最 大負 荷容 量,保 護 方式 と設 定,補 修 計画,モ デル の精度 と復 旧手 順 な どが考 え
られ る.各 要 因 を 反 映 す る 需 要 家 向 け 信 頼 性 指 標 は す で に 多 数 提 案 さ れ,ほ
とん ど の
指 標 の 評 価 は ネ ッ ト ワー ク を考 慮 した 運 用 の 詳 細 な シ ミ ュ レー シ ョン が 必 要 とな る. 従 来 のLOLPとEUE以 ①
外 に,次
は そ の 他 の 主 な信 頼 性 指 標 を紹 介 す る33).
系 統 の 平 均 供 給 不 能 頻 度(SAIFI:system
average
interruption
frequency
index)
SAIFI= ②
需 要 家 の 平 均 供 給 不 能 頻 度(CAIFI:customer quency
average
interruption
fre
index)
CAIFI= ③
年間 にお け る全 系統 の供給 不能 発 生 回数/ 全需 要家数
年 間 にお ける全系統 の供 給 不能 発生 回数/ 供 給不 能 があ った需 要家 数
系 統 の 平 均 供 給 不 能 持 続 時 間(SAIDI:system
average
interruption
duration
index)
SAIDI= ④
全需要家数
需 要 家 の 全 平 均 供 給 不 能 持 続 時 間(CTAIDI:customer ruption
duration
CTAIDI= ⑤
年 間 にお ける全需 要家 の供 給不 能時 間 の合計/
年間 にお け る全 需要 家 の供 給 不能 時 間の合計/ 供給 不能 が あ った需 要家 数
平 均 供 給 不 能 持 続 時 間(CIT:average
⑦
需 要 家 の 最 大 供 給 不 能 頻 度(.ⅠCIF:maximum
interruption
time)=CTAIDⅠ individual
customer
interrup
需 要 家 で 年 間 の 発 生 回 数 が 最 も 多 い 需 要 家 の供 給 不 能 発 生 回 数
需 要 家 の 最 大 供 給 不 能 時 間(MICID:maximum
individual
customer
interrup
duration) MICID=全
需 要 家 で 年 間 の 供 給 不 能 時 間 が 最 も多 い 需 要 家 の供 給 不 能 時 間
平 均 供 給 不 能 エ ネ ル ギ ー(AENS:average
AENS= ⑩
interruption
frequency) MICIF=全
⑨
average
年間 に お ける全 需要 家 の供給 不能 時 間の合 計/ 年 間 にお ける全系 統 の供給 不能 発生 回数
⑥
tion
inter
index)
CAIDI=
tion
average
index)
需 要 家 の 平 均 供 給 不 能 持 続 時 間(CAIDI:customer duration
⑧
total
各 需 要 家 の 供 給 不 足 確 率(LOLPIC:10ss customer)
energy
not
supplied)
年 間 にお ける全系統 のEUE/ 全 需要 家数 of
load
probability
for
individual
LOLPIC=特 ⑪
定 な 需 要 家 に お け る年 間 のLOLP
各 需 要 家 の 供 給 不 足 エ ネ ル ギ ー(EUEIC:expected vidual
unserved
energy
for
indi
customer)
EUEIC=特
定 な需 要 家 に お け る 年 間 のEUE
場 合 に よ っ て,上 述 し た 指 標 以 外 に電 力 品 質 に 関 わ っ て い る 周 波 数 変 動,電 と過 電 圧 の 頻 度,相 要 家 のLOLPとEUEと,さ
ら に上 述 の 指 標 の 評 価 は 各 種 不 確 定 要 因 に対 し て,ほ
ん ど ネ ッ トワ ー ク を考 慮 した 運 用 計 算 が 必 要 と な る た め,解 い の で,一
圧低 下
不 平 衡 の 期 待 値 な ど も信 頼 性 指 標 と して 使 わ れ て い る.個 々 の 需
般 的 に モ ン テ カ ル ロ 法 は 使 わ れ て い る.モ
と
析 的 な手 法 は 対 応 で き な
ン テ カル ロ法 は最 適 潮 流 計
算22,23,32)ある い は運 用 手 順 を組 み 込 む こ とに よ り運 用 の詳 細 な シ ミ ュ レ ー シ ョ ンが で き る が,計
算 時 間 が か な り膨 大 な た め,実
際 の 評 価 に お い て は,系 統 の 特 徴 に よ りモ
デ ル の 簡 略 化 と モ ン テ カ ル ロ 法 の 高 速 化18,28)な どの 各 種 の 工 夫 が 行 わ れ て い る.た え ば,送
配 電 系 統 に つ い てACモ
デ ル の 代 わ り にDCモ
と
デ ル あ る い は線 形 モ デ ル で ネ
ッ トワ ー ク を近 似 し,大 規 模 系 統 に つ い て 母 線 あ る い は 送 配 電 系 統 を 縮 約 す る こ とな ど に よ り,運 用 シ ミ ュ レー シ ョン を行 う.
7.2.2
モ ン テ カ ル ロ法 に よ る 評 価
モ ン テ カ ル ロ 法 は 各 種 不 確 定 要 因 に対 して,乱 確 率 的 に 多 数 発 生 さ せ,各
数 を用 い て電 源 と送 電 設 備 の 事 故 を
事 故 に お い て 最 適 潮 流 計 算 な ど の運 用 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン手
法29,32)を用 い た 運 用 計 算 を 行 い,そ の 結 果 を統 計 処 理 す る こ と に よ り各 信 頼 性 指 標 を 求 め る こ とが で き る.次
に ま ず 従 来 の モ ン テ カ ル ロ 法 を説 明 す る.そ
して,系
統 の特
徴 を利 用 し た 高 速 モ ン テ カ ル ロ 法18)を 紹 介 す る. 電 力 系 統 の 各 不 確 定 要 因(た と え ば 発 電 機 と送 電 線 の 故 障 率 な ど)に 対 し て,各 信 頼 性 指 標 は ほ と ん ど期 待 値 で 表 現 さ れ る.x
確率
を 系 統 の 状 態 変 数 ベ ク トル(た と え ば
発 電 機 と送 電 線 の 構 成 な ど)と し,P(x)を
系 統 状 態 x の 発 生 確 率 とす る.X
の状 態 x の 集 合 で あ り,R(x)は
と き に信 頼 性 指 標 の 評 価 値(た と え ば,供 給
状 態xの
不 能 エ ネ ル ギ ー,供 給 不 能 時 間 な ど)で あ る.そ こで,R
はす べて
の 期 待 値 E と分 散 V は 次 の
よ う に 表 現 で き る.
(7.18) (7.19) モ ン テ カ ル ロ法 で は,状 態 x の サ ン プ リ ン グ に よ り期 待 値 と分 散 を 推 定 す る.す な わ ち,
(7.20) た だ し,E(R)は
N 回 の サ ン プ リ ン グ に よ る 期 待 値 の 推 定 値 で,N
回 数 で,xiは よ っ て,推
は全 サ ンプ リ ン グ
i番 目 の サ ン プ リ ン グ 状 態 で あ る. 定 値 の 不 確 信 度 β は次 の よ う に 定 義 さ れ る.
(7.21) (7.22) た だ し,E(R)も
確 率 変 数 の た め,E(E(R))=E(R),さ
らにV(E(R))=V(R)/N
と な る. 推 定 値 の 不 確 信 度 と は解 が 不 確 か な 確 率 あ る い は精 度 で あ り,不 確 信 度 が 小 さい ほ ど解 は よ り信 頼 で き る 値 とい え る.そ
こ で,与
え られ た 不 確 信 度 に対 し て,モ
ンテカ
ル ロ 法 に お け る必 要 な サ ン プ リ ン グ 回 数 は次 の よ う に決 定 で き る.
(7.23) 明 ら か に計 算 回 数 N は 分 散 と比 例 す る.次
に こ の 特 徴 を利 用 し た 高 速 モ ン テ カ ル
ロ法 を述 べ る.
7.2.3
高速モ ンテカル ロ法による評価
電 力 系 統 に お い て,不
確 定 要 因(た と え ば発 電 機 と送 電 線 の 故 障 率,負
荷 予 測,出
水,市 場 競 合 な ど)が 数 多 くあ る た め,モ デ ル の 簡 略 と近 似 を して もモ ン テ カ ル ロ 法 を そ の ま ま適 用 す る と,要 求 精 度 を 満 た す た め に まだ 膨 大 な 計 算 を す る必 要 が あ る.一 方,式(7.23)に
よ る と,計 算 回 数 N は 分 散,不 確 信 度 と期 待 値 に依 存 す る.期 待 値 と
不 確 信 度 が そ れ ぞ れ 信 頼 性 指 標 の 値 と決 め られ た 精 度 で あ る た め に 変 更 で き な い が, 計 算 回 数 に 比 例 す る分 散 が 減 らせ ば 高 速 な モ ン テ カ ル ロ 法 を 実 現 で き る. R と相 関 の あ る確 率 変 数 を Z とす る.R
と Z を 用 い て,新
し い 確 率 変 数 Y を次 の
よ う に 定 義 す る.
(7.24) 明 らか に Y と R の 期 待 値 は 同 じで あ る.す
一方
,Y
なわ ち
の 分 散 は 一 般 的 に R と違 っ て次 式 とな る.
(7.25) こ こで,C(R,Z)は
R と Z の 共 分 散 を 示 す.
R と Z の 相 関 が 強 けれ ば,2C(R,Z)は も し2C(R,Z)はV(Z)よ
よ り大 き い値 とな る.式(7.25)に
り大 き けれ ば,V(Y)はV(R)よ
で,直 接 に R の 期 待 値 を推 定 す る代 わ りに,Y
の 期 待 値 を推 定 す れ ば,よ
数 M で 同 じ精 度 β の 信 頼 性 指 標E(Y)=E(R)が
よ る と,
り小 さ い値 とな る.そ
得 られ る.す
こ
り少 な い 回
な わ ち,
(7.26) た だ し,
(7.27) 実 際 の 発 電 機 と送 電 線 の 故 障 を考 慮 す る電 力 系 統 の 信 頼 性 評 価 に お い て,た 発 電 機 と 送 電 線 の 故 障 を 同 時 に 考 慮 し た 場 合 の 信 頼 度 を R と し,発 考 慮 した 場 合 の 信 頼 度 を Z とす れ ば,式(7.26)に
とえ ば
電機 故 障 のみ を
よ りか な り高 速 な モ ン テ カ ル ロ シ
ミ ュ レ ー シ ョ ン が で き る こ とが 確 認 され た28). モ ン テ カ ル ロ 法 に よ る信 頼 度 計 算 は評 価 の 指 標 と精 度 に よ っ て各 種 最 適 運 用 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン手 法 と ヒ ュ ー リス テ ィ ッ ク ス が 適 用 され た .特 法,た
と え ば,供
潮 流 計 算 法,瞬
に最 適 潮 流 計 算 に関 す る手
給 不 足 量 と時 間 に対 し て線 形 ネ ッ トワ ー ク モ デ ル あ る い は直 流 最 適
時 電 圧 低 下 の 頻 度,電
力 託 送 価 値 とノ ー ダ ル プ ラ イ ス の 変 動 に対 し て
交 流 最 適 潮 流 計 算 法22,23,29,35),電力 品 質 と過 渡 安 定 度 に 対 し て 過 渡 安 定 度 を考 慮 し た 最 適 潮 流 計 算 法32,34)は よ く使 わ れ て い る.
7.3
多地域電源拡張計画法
電 力 設 備 計 画 は 一 般 的 に 電 源 計 画 と流 通 設 備 計 画 に分 け られ,各 に 系 統 の 信 頼 性,経 に お い て,市
場 競 食30,31)の た め,よ
文 献24)の 結 果 を 用 い て,Benders分 Tabuサ
種 不確 定 要因 以外
済 性 と環 境 性 を 同 時 に考 慮 し な け れ ば な ら な い.電
力市場 の環境
り競 争 力 が あ る 設 備 計 画 は 要 求 さ れ る.本 節 で は 解 に よ る 多 地 域 長 期 電 源 計 画 法 を 紹 介 す る.
ー チ に よ る 流 通 設 備 計 画 法 に つ い て 文 献28)を 参 照 され た い .
電 源 開 発 計 画 の 策 定 に あ た っ て は,各 電 気 事 業 者 に とっ て 最 適 と さ れ る 信 頼 度 を確 保 し つ つ,開
発 さ れ る電 源 設 備 の 建 設 費 と,そ の 運 転 維 持 費 お よ び 燃 料 費 の 合 計 額 が
最 小 と な る よ う な 手 法 を 用 い 検 討 さ れ て い る.こ WASP8),EGEAS16),WIGPLANな
の 種 の 代 表 的 な 手 法 と し て は,
どが あ る.し か し,こ れ ら の 既 存 手 法 は各 系 統 の
負 荷 相 関 性 を 無 視 し,す べ て 電 源 と負 荷 が 送 電 容 量 の 制 限 な し に,理
想 的 に結 ば れ て
い る モ デ ル(シ ン グ ル バ ス モ デ ル)を 前 提 条 件 と して お り,こ の 方 法 で は連 系 系 統 と島
間連 系 な ど複 数 なネ ッ トワー ク を もつ電 力系統 の電 源開 発計 画 には十 分適 用す るこ と が で きな い.も し電源 開発計 画 に ネ ッ トワー ク制約 と負荷 の不等 時性 を考 慮す れ ば, この問題 はさ らに複雑 に な る.ま た,自 由化 の進 んだ電 力市場 にお いて,送 電 混雑 な どに よ り送電 系統 を安 定限界 まで運 用 す る場 合 もあ るた め,ネ ッ トワー クの制 約 は電 源計 画 の 策定 に従来 以上 に考慮 され な けれ ば な らな い.本 節で はESPRIT24)に
導入
され,連 系系 統 を処理 で き る電 源 開発 計 画 問題 の最 適化 手 法 を紹介 す る.本 手 法 は Benders分 解 法 に よ り連 系系 統 の電 源 開 発計 画 を処 理 しや すい 2レベ ル 問題 に分 割 し,各 系統 の負荷 相 関性 と送電 容量 制約 を ともに考慮 した実用 的 な最 適電 源 開発計 画 手 法 であ る24). Benders分 解 法 とは対 象問題 を切 除平 面 に よ り,上 位 問題 と下位 問題 に分解 し,上 位 問題 と下 位 問題 の最適計 算 に よ り最適 解 を求 め る手 法 であ る.上 位 問題 が 原問題 の 外 側線 形化 問題 で,下 位 問題 は原 問題 よ り簡 単 な部分 問題 か ら構 成 され る.ESPRIT で はBenders分
解法 を用 い て,従 来手 法 で処 理 で きな いネ ッ トワー ク制 約 と負荷 の不
等 時性 を考慮 した連 系系 統電 源開 発計 画法 で あ る.図7.3に 示 した よ うにBenders分 解 法 は連 系系統 の電 源開 発計 画 を 2レベ ル問題 に分割 す る.下 位 レベル が各 系統 の単 独 電 源開 発計 画(非線 形)か ら構成 され,上 位 レベル が各 系統 間 の融 通計 画 か ら構 成 さ
図7.3
Benders分
解 法 に よ る連 系 系 統 の電 源 計 画(文 献24,の 図 1)
れ る. そ して,開 発計 画 と融 通計 画 との反復 計 算 に よ り最適 な連 系系統 電源 開発 計 画 を求 め る ことがで きる.こ の手法 の特 徴 として は,各 系 統間 の負荷 相関 性 を考慮 す るため 時 系列 負荷 曲線 を用 いた 系統 間 の融通 計画 と等 価負 荷持続 曲線 を用 いた各 系統 の単 地 域 電源 開発計 画 とを対 応 づ けて,各 地 域 の時系 列負 荷の再 配分 によ り負 荷相 関 性 を処 理 し(あ るい は時 系列 負荷 を電 力 融通 に よ り平 坦 し)最適計 算 を行 うこ とで あ る.
7.3.1
多 地 域 電源 計 画 の 定 式 化
全考 察期 間 の総 コス トTCostを 最小 にす るた め,一 般 的 に連 系系 統 の電 源 開発 計 画 は以下 の よ うに非 線形 混 合整 数計 画 問題 として定式 化で きる.
(7.28) (7.29) (7.30) (7.31) (7.32)
(7.33)
各地 域,各 期間 の供 給予 備力制 約
(7.34)
各地 域,各 期間 の運 転予 備力 制約
(7.35)
各地 域,各 期間 の開 発可 能 ユニ ッ ト数 制約
(7.36)
各 地 域,各
期 間 の 確 定 した 開 発 ・廃 止 あ る い は運 用 す る ユ ニ ッ ト制 約
(7.37) 各 地 域,各
期 間 の 発 電 機 エ ネ ル ギ ー 制 約(た と え ば,水
力)
各地 域,各 期 間 の補修 計 画制 約
(7.38) (7.39)
た だ し, Tcost:全 考 察 期 間 の 総 コ ス ト i:地 域 の 番 号;N:地
域 の数
h:期 間 の 番 号;H:考 年 の場 合,H=30×12期 Fi.h:固 定 費 で,設 合 計 〔$〕
察 期 間 の 数(た と え ば,1 年 を12期
間 と し,計
画 年 が30
間)
備 投 資 コ ス ト とO&M費(運
転 と補 修)の 固 定 部 分 の 現 在 価 値
Vi.h:可
変 費 で,燃
Gi.h:発
電 機 容 量 〔MW〕
で,ベ
ク トル
Pi.k:発
電 機 出 力 〔MW〕
で,ベ
ク トル
Ti.h:i地
料 費 とO&M費
の 可 変 部 分 の 現 在 価 値 合 計 〔$〕
域 と他 の 地 域 間 の 融 通 電 力 〔MW〕
Ui.h:(=πi.h・UEi.h)供
ク トル
給 不能 エ ネル ギー コス ト
πi.h:ペ
ナ ル テ ィ コ ス ト の 現 在 価 値 〔$/MWh〕
EUEi.h:供
給 不 能 エ ネ ル ギ ー(EUE)〔MWh〕
EEUEi.h:供
で,ベ
給 不 能 エ ネ ル ギ ー 許 容 上 限 値 〔MWh〕
ELOLPi.h:LOLPの
許 容 上 限 値 〔Day/Year〕
Gi.hmin,Gi.hmax,Ti.hmln,Ti.hmax:建
設 可 能 な 発 電 機 容 量
と送 電 容 量 の 下 上 限
(MW)
こ こで,各
地 域 間 の 負 荷 相 関 を 考 慮 す る た め,可
変 費(燃 料 費 とO&M費
可 変部 の
現 在 価 値 合 計 で,以 後 で は 単 に燃 料 費 と呼 ぶ)と 融 通 電 力 を 計 算 す る と き に,時 間 単 位 〔 h〕で 計 算 を行 っ て い る.信 頼 度 指標 と し てLOLP(供 ability)とEUE(供
給 不 能 エ ネ ル ギ ー:expected
給 不 能 時 間:loss
unserved
energy)の
of load prob
両 方 を使 っ て い
る. し た が っ て,連
系 系 統 の 最 適 電 源 開 発 計 画 と は,式(7.29)∼(7.30)の
条 件 を 満 足 し,総
コ ス トが 最 小 と な る よ う に,電 源 の 開 発 計 画 案,運
す べ て の制 約 用 計 画 案 と系 統
間 の 融 通 案 を 決 定 す る 大 規 模 非 線 形 問題 で あ る.
7.3.2
下位 問題 と解法
Benders分
解 法 は複 雑 な大 規 模 問 題 を切 除 平 面 に よ り処 理 し や す い 2レ ベ ル 問 題 に
変 更 し,反 復 計 算 を 行 い 最 適 解 に収 束 させ る手 法 で あ る.す な わ ち,1 回 の 反 復 計 算 で 一 つ の切 除 平 面 が 生 成 され
,生 成 され た 切 除 平 面 が 非 線 形 問 題 の 目標 関 数 と制 約 式 の
近 似 とな り,反 復 計 算 に よ り多 数 の 切 除 平 面 が 生 成 さ れ る.こ
の多数 の切 除平 面が 原
非 線 形 問 題 に お い て 十 分 な近 似 値 とな る と き に 最 適 解 が 得 られ て,計 次 に,Benders分
解 法 を 用 い て,大
算 が 終 了 す る.
規 模 で複 雑 な 連 系 系 統 の 電 源 開 発 計 画 問 題 を規 模
が 小 さ な 各 系 統 の 電 源 開 発 計 画(下 位 問 題)と 簡 単 な 融 通 問 題(上 位 問 題)に 分 解 し,実 用 的 な 手 法 を説 明 す る. 連 系 系 統 の 電 源 開 発 計 画 に おい て,下
位 問 題 は 式(7.40)∼(7.41)に
示 す よ う に系 統
間 の 融 通 を 固 定 し た と きの 各 系 統 で の 単 独 の 電 源 開 発 計 画 問 題 とな り非 線 形 混 合 整 数 計 画 の 部 分 問 題 と して 構 成 さ れ る. [下 位 問 題] (部分 問 題i;i=1,…,N;Ti.h:固
定)
図7.4
下 位 問 題 の等 価 変 換(文 献24)の 図 2)
(7.40) s.t.
式(7.30)∼
(7.41)
式(7.39)
こ こ で, Tki.hは k 回 目 の 上 位 問 題 の 計 算 に よ り得 られ,下
位 問 題 で 固 定 す る融 通 電 力
〔MWh〕 で あ る. 明 ら か に 下 位 問 題 は 規 模 が 小 さ く,各 系 統 の 電 源 開 発 計 画(Gi.h)と 運 用 計 画 案 (Pi.h)を 決 定 す る シ ン グ ル バ ス モ デ ル と な り,既 存 の 手 法 が 適 用 で き る.た と え ば,図 7.3に 示 す 下 位 問 題 の 部 分 問 題 2に対 して,系
統 間 の 融 通 が 固 定 され る た め,第
目,h 期 間 で 計 算 さ れ た 融 通 電 力(T〓,T〓)と
仮 想 負 荷EDk2をk+1回
(EDk2+1)に 合 成 す る こ とに よ り,図7.4に
k回
目の仮 想 負荷
示 し た よ う に系 統 2の シ ン グ ル バ ス 電 源 開
発 計 画 と な る. こ こ で,仮
想 負 荷 と は そ の地 域 の 実 負 荷 と融 通 の 合 成 に よ っ て つ く られ た 等 価 的 な
負 荷 で あ る.そ
こで,下
位 問 題 で は 地 域 間 の 負 荷 相 関 と融 通 を考 慮 す る 必 要 が な く,
等 価 負 荷 持 続 曲 線 を使 っ た 従 来 手 法 が 使 え る.Espritで
は 動 的 計 画 法(DP)を
用 い て,
下 位 問 題 を解 い て い る.
7.3.3 一 方,上
上 位 問題 と 解 法 位 問 題 は 式(7.42)∼(7.44)の
よ う に 系 統 の 電 源 開 発 計 画,運
し た と き の連 系 系 統 の 融 通 計 画 で あ る.す
な わ ち,Benders分
用計 画 を固定
解 法 に よ る原 問 題 の 外
側 線 形 化 問 題(切 除 平 面)で あ る. [上 位 問 題]
Min
(Gi.h,Pi.h,πi.h:固
z
定)
(7.42)
(7.43) (7.44) た だ し, K:K回
目 の 反 復 計 算;k:反
G〓.h,P〓.h,π 〓.h:K回
復回数
目 の 下 位 問 題 で 計 算 した 結 果(上 位 問 題 で は この 結 果 を 固 定
す る) z:補 助 変 数,上
位 問題 の 総 コ ス ト
こ こで,式(7.43)は
図7.5
Benders分
k個 の 不 等 式 か ら構 成 さ れ て い る .す な わ ち,式(7.43)は
解 に よ る連 系 系統 の最 適 電 源増 設計 画 ア ル ゴ リズ ム(文 献24)の 図 4)
原問
題 の 目 標 関 数(総 コ ス ト)の 外 側 線 形 化 で,1 回 の 反 復 計 算 で 1個 の 不 等 式 が 追 加 さ れ る. し た が っ て,式(7.42)∼(7.44)に
よ り,連 系 系 統 の 融 通 電 力(Ti,h)を 計 算 す る こ と
が で き る.負 荷 相 関 性 の 考 慮,式(7.43)の は 文 献24)を 参 照 さ れ た い.連
線 形 化 と上 位 問 題 の 基 本 的 な 解 法 に つ い て
系 系 統 の 電 源 開 発 の ア ル ゴ リ ズ ム を 図7.5に
示 して い
る. こ の よ う な計 算 に よ り,電 力 融 通 に よ り連 系 系 統 の 信 頼 性 と経 済 性 を 向上 させ る こ とが で き る.す
な わ ち,融
通 電 力 に よ り負 荷 が平 坦 化 さ れ,燃
料 コ ス ト と開 発 設 備 が
節 約 さ れ る.信 頼 性 の 面 で も互 い の 信 頼 性 融 通 に よ り,供 給 予 備 力 とLOLPな
どの 信
頼 性 指 標 が 改 善 さ れ る.
7.3.4
評
価
小 規 模 と大 規 模 系 統 に対 して 5年 間 と30年 ders分 解 法 の 有 効 性 が 確 認 さ れ た24).Benders分
間 の 電 源 開 発 計 画 の 試 算 に よ り,Ben 解 に よ る 電 源 計 画 法 は 上 位 と下 位 問
題 との 反 復 計 算 に よ り,大 規 模 問 題 を 処 理 し て い る た め,か な る が,下
位 問 題 の 並 列 性 を 考 え る と,今 後 並 列 処 理 の 導 入 に よ り計 算 時 間 の 大 幅 な
短 縮 効 果 が 期 待 で き る.主 ①
な りの 計 算 時 間 が 必 要 と
な 特 徴 が 次 の よ う に な る.
複 雑 な 大 規 模 連 系 系 統 の 電 源 増 設 計 画 を 2 レベ ル 問 題 に 分 割 し扱 う こ と に よ り 処 理 が 単 純 化 さ れ て い るた め,計
②
算 が 大 幅 に簡 略 化 さ れ た.
各 系 統 に お け る負 荷 の 相 関 性 と送 電 線 容 量 制 約,さ
ら に送 電 線 の 故 障 率 を考 慮
す る こ とが で き る. ③
下 位 問 題 の 解 決 方 法 と し て既 存 の 電 源 開 発 計 画 手 法 な ど を そ の ま ま活 用 で き る.
④
各 部 分 問 題 の計 算 は並 列 計 算 処 理 に適 合 し て い る.
系 統 運 用 に 対 し て,線 合 で はAC(交
形 モ デ ル が 使 わ れ て い る が,安
流)モ デ ル を 導 入 し,最
る22∼24,32).特に,ACモ
定 性 と品 質 な ど を考 慮 す る場
適 潮 流 計 算 な ど の 計 算 法 を使 う必 要 が あ
デ ル を採 用 す る と,系 統 に あ る 各 設 備 あ る い は 制 約 の 価 値 を
詳 細 に 評 価 す る こ と が で き る29,35〕.
7.4
不確 実性を考慮 した電源拡張計画法
従来 で は不 確定 要 因 は主 に発 電機 と送 電設備 の故 障率,負 荷予 測,燃 料 費 と出水 な どで あ るが,電 力 市場 の環 境 にお いて さ らに入札,託 送 と電 気料 金 な どの市場 競合 と
市 場 形 態30,31)に関 す る 要 因 は不 確 実 とな る.こ れ らの 要 因 が 電 源 計 画 の 経 済 性 と信 頼 性 に 多 大 な 影 響 を与 え て い る.発
電 機 の 故 障 率 の 影 響 に対 し て,等
価 負荷持 続 曲線 と
い う 手 法 に よ り そ の 評 価 が す で に あ る程 度 確 立 され て い る24,25).た と え ば,既 な 電 源 開 発 計 画 パ ッ ケ ー ジ,IAEAのWASP-Ⅱ Westinghouse社
存 の主
とWASP-Ⅲ,EPRIのEGEAS,
のWIGPLANS,とESPRITな
ど は,す べ て 等 価 負 荷 持 続 曲 線 を用
い て 発 電 機 の 故 障 率 に よ る生 産 コ ス トと信 頼 性 の 不 確 実 さの 評 価 が 行 わ れ て い る . 一 方,発
電 機 と送 電 線 の 故 障 率 以 外 の 不 確 定 要 因 の 評 価 に お け る理 論 の 検 討 は あ ま
り進 ん で い な い の は現 状 で あ る.Dapkusら 的 計 画 法 が適 用 した.ま
た,線
形 化 の電 源 計 画 モ デ ル に対 し て統 計 線 形 計 画 法 もい く
つ か 提 案 さ れ て い る26).し か し,こ は い え な い.実
は電 源 計 画 の 簡 略 モ デ ル に対 して 統 計 動
れ ら の 手 法 は一 般 性 が な く,ま だ 実 用 的 な 手 法 と
際 で は ほ とん どの 電 源 開 発 計 画 パ ッ ケ ー ジ は ま だ 予 測 負 荷,燃
料 費,
出 水 と市 場 競 合30,31)な どの 不 確 定 要 因 を考 慮 して い な い.本 節 で は 文 献26)を 主 に参 照 し な が ら,ま ず 設 備 計 画 と運 用 計 画 の 階 層 構 造 を も つ 特 徴 を利 用 し,統 計 電 源 開 発 計 画 を 2-ステ ッ ジ非 線 形 統 計 計 画 問 題 に表 現 す る一 般 的 な 定 式 化 を 説 明 す る.そ し て, 不 確 定 環 境 に対 し て 柔 軟 で か つ ロバ ス トな 電 源 計 画 を作 成 す る た め,各
種 の不確 定 要
因 を 考 慮 し た 統 計 電 源 計 画 手 法 を述 べ る26).
7.4.1
2-ス テ ッ ジ 統 計 計 画 問 題 の 定 式 化
電 源 計 画 とは,い
つ ど こ に,ど
入 す るか を決 め る問 題 で あ る.す
の よ う な 電 源 を,ど な わ ち,こ
の ぐ らい の 容 量 の 電 源 設 備 を 導
の 問 題 の 決 定 変 数 は各 時 期 の 導 入 設 備 の
量 で あ り,発 電 機 の 運 用 は そ の 付 属 変 数 とな る.こ
の 特 徴 か ら一 般 的 に,不
を 考 慮 し た 電 源 計 画 は次 の よ う な 2ス テ ッ ジ依 存 型 統 計 計 画 問題(two-stage tic program
with recourse)に
確定 要 因 stochas
定 式 化 で き る.
(7.45) (7.46) (7.47) (7.48) (7.49) た だ し.
f:全 考 察 期 間 の 総 期 待 コ ス トの 最 小 値 t:期 間 の 番 号;T:考 年 の 場 合,T=30×12期
察 期 間 の 数(た と え ば,1 年 を12期 間)
間 と し,計
画 年 が30
F:固 定 費 で,設
備 投 資 コ ス トとO&M費(運
転 と補 修)の 固 定 部 分 の 現 在 価 値 合
計 〔$〕 Vt:期
間-t の 可 変 費 で,燃
料 費 とO&M費
の 可 変 部 分 の 現 在 価 値 合 計 〔$〕
C:余 剰 寿 命 を 考 慮 し た 固 定 費 の 単 価 〔$/MW〕 で,ベ G:導 入 され た 発 電 機 容 量 〔MW〕 で,ベ Pt:期
間-tの
発 電 機 出 力 〔MW〕 で,ベ
w:燃 料 費,負
h(G,w):導
ク トル ク トル
荷 な ど の ラ ン ダ ム 変 数,ベ
E(h(G,w)):ラ
ク トル
ク トル
ン ダ ム 変 数 に お け る 可 変 費 の期 待 値 入 さ れ た 発 電 機 容 量 と ラ ン ダ ム 変 数 の事 象 に 対 す る最 小 可 変 費
euet:t期
間 の 供 給 不 能 エ ネ ル ギ ー 〔MWh〕
εt:供 給 不 能 エ ネ ル ギ ー の 許 容 上 限 値 〔MWh〕 Gnin,Gmax:建
設 可 能 な発 電 機 容 量 の上 下 限 値 〔MW〕
δt:選 択 操 作 子,ベ
ク トル
w は あ る特 定 の 燃 料 費,負 荷 あ る い は 出 水 に お け る確 率 で あ る.C 寿 命 を 考 慮 した 固 定 費 の 単 価 で あ る.た お い て,そ
の 固 定 費 の 単 価,寿
固定 費 の単価 は
と え ば,期
間-t に 導 入 さ れ る あ る 発 電 機 に
命 が そ れ ぞ れCG,TGと
依 存 す る た め,上
stage stochastic
す る と,余 剰 寿 命 を 考 慮 した
と な る.
電 源 計 画 の 決 定 変 数 は 導 入 設 備 の 量 G で あ る が,可 力Ptに
は発 電 機 の 余 剰
program
は各 発 電 機 の 出 力Ptに
変費 の期待 値 は発電 機 運 用 出
述 の 問 題 は 典 型 的 な 2-ステ ッ ジ 依 存 型 統 計 計 画 問 題(two with recourse)と
な る.明
らか に 下 位 問 題(7.47)∼(7.49)
対 し て 可 変 費 の 合 計 を 最 小 に す る 運 用 問 題 で あ り,も
ダ ム 変 数 の 事 象 が 与 え れ ば こ の 運 用 問 題 は 確 定 問 題 と な る.一
方,上
し ラン
位 問 題(7.45)
∼(7 .47)は 各 発 電 機 の 増 設 容 量 G に 対 し て 総 期 待 コ ス ト を最 小 に す る 設 備 計 画 問 題 で あ る が,可
変 費 の 期 待 値 を計 算 す る必 要 が あ る た め に こ の 設 備 計 画 問 題 は 統 計 最 適
化 問 題 と な る.
7.4.2
統計電源計画 問題の解 法
本 項 で 定 式 化 した 統 計 電 源 計 画 問 題 は 運 用 問 題 と設 備 計 画 問 題 とい う 階 層 構 造 を も っ て い る.次
に,ま ず 運 用 問 題 と設 備 計 画 問 題 を それ ぞ れ 単 独 の 問 題 と し て そ の 解 法
を述 べ る.そ
し て,そ
の 全 体 の 問 題 とす る解 法 と アル ゴ リズ ム は 説 明 す る.
(1) 運 用 問 題 の 解 法 と 目 標 関 数 の 勾 配 運 用 問 題 と は各 発 電 機 の 増 設 案 G が 固 定 さ れ た 場 合,あ は可 変 費 の 合 計 を 最 小 に す る よ う に 各 発 電 機 の 出 力Ptを
る確定 の 事 象 ω に対 して 決 め る 確 定 問 題 で あ る.こ
れ は 従 来 の 生 産 コ ス トシ ミ ュ レー シ ュ ン(production
cost simulation)と
同 じの た め,
モ ン テ カ ル ロ法 とか 等 価 負 荷 持 続 曲 線 法 な ど が 使 え る25).本 項 で はBloomら さ れ た 高 速 な 等 価 負荷 持 続 曲線 に よ る 解 法5,6)を適 用 す る.Bloom法
が開 発
はグ ラム シ ャ リ
ェ級 数 に 基 づ い た 手 法25)で あ り,生 産 コ ス トと信 頼 性 を評 価 で き る だ け で な く,ラ グ ラ ン ジ ュ 乗 数(あ る い は 限 界 コ ス ト:marginal 的 に表 現 で き る と い う利 点 も あ る.こ
cost)を 等 価 負 荷 持 続 曲 線 に よ り解 析
の 特 徴 を利 用 す れ ば,完 全 な 生 産 コス トシ ミ ュ
レー シ ョ ン を し な くて も,最 適 化 に必 要 な 勾 配 が 得 られ る.そ
こで,高
速 な計 算が期
待 で き る. 運 用 問 題(7.47)∼(7.49)を
つ ね に 実 行 可 能 に す るた め,k 番 目 の 事 象 に お け る 運 用
問 題 は 次 の よ う に 変 換 され る.
(7.50) (7.51) (7.52) こ こ で,potは
期 間-t の 信 頼 性 条 件 の 緩 和 変 数 で あ り,r は ペ ナ ル テ ィ(>0)で あ る.
r を 大 き くす れ ば,potが
よ り小 さ くな る.そ こで, pot〓0と
必 要 が あ る.明
らか にGk,ωkが
で あ る た め,運
用 問 題(7.50)∼(7.52)は
な る よ う に r を設 定 す る
固 定 さ れ た 場 合,Pt;(t=1,…,T)は
それ ぞれ独 立
T 個 の 子 問題 に 分 割 で き る.
(7.53) (7.54) (7.55) そ れ ら の 子 問 題(7.53)∼(7.55)に
対 す る 双 対 問 題(Skt)は
次 の よ う に な る.
(7.56) た だ し,λktと πktはそ れ ぞ れ 制 約 条 件(7.53)と(7.55)に
対 応 す るラグ ラ ンジ ュ乗数 で
あ る. も し,h がPt,potに
対 し て 凸 で あ れ ば,h=〓Htと
ャ ップ が 存 在 す る た め,h>〓Htで
あ る.も
とす る よ う に 発 電 機 を運 用 す れ ば,式(7.56)の る.
な る.し か し,一 般 的 に双 対 ギ
し,運 用 問 題 にお い て つ ね に
双 対 問 題(Skt)は 次 の よ う に簡 略 化 で き
(7.57) し た が っ て,G
を関 数 と した 可 変 費 h の 下 限 は次 の よ うに 表 現 で き る.
(7.58) そ こ で,式(7.54)と(7.58)に
よ り,目 標 関 数 に お い て G に 対 す る準 勾 配 ξk(ベ ク ト
ル)は 次 の よ う に近 似 的 に計 算 で き る.
(7.59) も し,h がPt,potに
対 して 凸 で あ れ ば,式(7.59)が
厳 密 に 成 り立 つ.
発 電 機 の 運 用 の 優 先 順 位 は燃 料 費 の 順 番 とす る.Gk,ωkが 法5,6)を使 え ば,運 用 問 題(7.53)∼(7.55)を
解 く こ とが で き る.Bloom法
等 価 負 荷 持 続 曲 線 に よ り解 析 的 に 表 現 で き る た め,双 が 得 ら れ,目 標 関 数 の 勾 配 は式(7.59)に
固 定 さ れ た 場 合,Bloom に か ら λtは
対 変 数(ラ グ ラ ン ジ ュ 乗 数)λ 〓
よ り求 め られ る.こ こ で,双 対 変 数 λ〓の 解 析
式 が 文 献5,6)を 参 照 さ れ た い. (2) 設 備 計 画 問 題 の 解 法 と 統 計 準 勾 配 の 計 算 確 率(統 計)最 適 計 画 の解 法 に お い て,一 形 計 画 法,統
般 的 に 確 率 計 画 を確 定 計 画 に 変 形 した 非 線
計 動 的 計 画 法 及 び 統 計 計 画 法 の 3種 類 に 分 け る こ とが で き る.非 線 形 計
画 法 と統 計 動 的 計 画 法 は次 元 の の ろ い とい う問 題 が あ り,不 確 定 要 因 とそ の 事 象 の 数 が 増 加 す る と と も に,問 題 の規 模 と計 算 量 が 爆 発 的 に 増 え る た め,小 適 用 で き な い.一
規 模 問 題 に しか
方,統
計 計 画(特 に 統 計 準 勾 配 法)は 不 確 定 要 因 の事 象 を 対 象 問 題 の
環 境 と し て 扱 う た め,不
確 定 要 因 とそ の事 象 の 数 が 増 加 して も,問 題 の規 模 が ほ とん
ど増 え な い とい う利 点 が あ る(た だ し,反 復 計 算 の 数 が 増 え る).つ 法(SQG:stochastic
quasi-gradient
methods)は
が ら,統 計 準 勾 配 を構 成 し,最 適 探 索 を行 う.し 適 化 と も 考 え ら れ,大
ま り,統 計 準 勾 配
不 確 定 要 因 の事 象(環 境)を 学 習 しな た が っ て,統
規 模 問 題 に も適 用 で き る.本
計 計 画 は一 種 の 適 応 最
節 で は,統 計 計 画 の 一 種,統
計準
勾 配 法 を利 用 し,統 計 電 源 開 発 計 画 問 題 を 処 理 す る.最 適 探 索 に 必 要 な統 計 勾 配 は 次 の 2種 類 の 統 計 に よ り近 似 的 に作 成 す る. ・統 計 準 勾 配 の 計 算
①
統計 準勾 配 1:
②
統計 準勾 配 2:
こ こで,m<kで
あ る.実 際 の計 算で は,二 つ の勾配 の 中で一 つ だ けを使 う.理 論的 に
m が無 限大 にな る とき,統 計準 勾配 1は厳密 な統計 準勾 配 となるが,実 際の計 算 にお いて,m が適 切 な大 きい値 を とれば,十 分精度 な統 計準 勾配 が得 られ る.ま た,統 計 準勾 配 2に対 して も,十 分小 さい β>0を とれ ば,数 値 計 算 にお い て統 計準 勾 配の精 度 が満足 で きる. 統 計準 勾配 法 で は,不 確定 要因 の確率 分布 を直接 に処 理 す る代 わ りに,各 反復計 算 におい て確率 分布 に従 って ラ ンダム に事 象 を生成 し,探 索 を行 う.す なわ ち,計 算 中 に,各 不 確定 要 因の確 率分 布 を学習 しなが ら,厳 密 な統 計準 勾配 に近 づ くこ とによ り, 最終 的 に最適 解 が得 られ る. 7.4.3
ア ル ゴ リズ ム
次 に,統 計 電源 開発 計 画 に対 す る統計 準勾 配法 の アル ゴ リズム と適応 統計 準勾配 法 の アル ゴ リズ ム を述 べ る. (1)統
計準 勾配 法 のアル ゴリズム
電源計 画 の統計 準勾 配 法 のアル ゴ リズム は次 の ように な る. ① STEP-0:初
期 条 件 設 定:G0,ξ0=0,Q0=0,ρ0(>0),m,εQ,nk,0<
② STEP-1:運
用 問 題(Pt,λ
・STEP1-1:各
β〓1
〓,potの 計 算)
不 確 定 要 因 の確 率 分 布 に従 っ て ラ ン ダ ム で 確 率 変 数 ω を 発 生 す
る.
・STEP1-2:Gk-1を 解 く.Pt,λ
固 定 し,式(7.53)-(7.55)の
運 用 問 題S〓;(t=1,…,t)を
〓,potが 得 ら れ る.
・STEP1-3:準
勾 配 の計算
準勾 配: ③ STEP-2:収 ・STEP2-1:統
束判 定 計準勾 配 の ノルム 平均
・STEP2-2:ⅠFQk< ④ STEP-3:設 ・STEP3-1:統
εQork>nk,THEN 備 計 画 問 題(Gkの 計準勾 配 の計 算
統計 準勾 配 1: 統計 準勾 配 2:
更 新)
stop.
こ こで,m<kで
あ る.実
際 の 計 算 で は,二
つ の 勾 配 の 中 で 一 つ だ け を使 う.
・STEP3-2: ・STEP3-3: ・STEP3-4:k=k+1:GOTO
こ こ で,nkは
STEP-1
最 大 反 復 計 算 回 数 で あ り,εQ>0は
収 束 判 断 基 準 で あ る.統 計 準 勾 配
1あ る い は 2の 計 算 と 同 様 に 目標 関 数 f の 統 計 値(期 待 値 の 近 似)も 計 算 で き る. (2)適
応統 計準 勾 配法 の アル ゴ リズム
統 計 準 勾 配 法 の ア ル ゴ リズ ム に お い て,理 論 上 で はk→ ∞ の と き にGk→G*(最
適
解)に 確 率 1収 束 す る こ と が 保 証 され る.た だ し,収 束 を保 証 す る た め,Σkρk→
∞ と
な る と き に Σk(ρk)2を 満 足 しな け れ ば な ら な い.そ こ で,そ
の収 束 特 性 は ‖Gk-G*‖
∼ α/√kな る.す な わ ち,そ の 精 度 が 反 復 回 数 の ル ー トの 逆 数 に比 例 す るた め,収 束 が か な り遅 い.こ の 問 題 を解 消 す る た め,次 に適 応 統 計 準 勾 配 法 を 採 用 す る.そ の 場 合, 収 束 条 件 が 緩 和 され る た め,計
算 の 高速 化 が 期 待 で き る.
適 用 統 計 準 勾 配 法(ASQG:adaptive リズ ム は,STEP-3以
外 で は,す
stochastic
quasi gradient
べ て 統 計 準 勾 配 法(SQG)の
methods)の
アル ゴ
ア ル ゴ リズ ム と同 じで あ
る. ①STEP-3':設
備 計 画 問題(Gkの
・STEP3-1:統
更 新):z0=0;R(>1)を
指定
計 準勾 配 の計 算
統 計準 勾配 1: 統 計準 勾配 2: こ こで,m<kで
あ る.実 際 の 計 算 で は,二
・STEP3-2:
つ の勾 配 の 中 で 一 つ だ け を使 う.
内積
・STEP3-3:Tkの
絶 対 値 平 均:
・STEP3-4: ・STEP3-5:
・STEP3-6: ・STEP3-7:k=k+1:GOTO
STEP3-4は
STEP-1
一 種 の 適 用 線 形 探 索 で あ り,STEP3-5は
の大 きい 変 化 を 抑 え る.経 験 的 に1/6〓 β〓1/4;1<R〓3と ア ル ゴ リズ ム が よ く動 作 す る.
探 索 の 振 動 を 防 ぐた め に ρk な る よ う に設 定 す る と,
7.4.4
小規模 系統の計算 と比較
既 存 発 電 所 が 五 つ で,開
発 候 補 が 二 つ と い う 小 規 模 系 統 の10年
に つ い て 試 算 を 行 っ た.表7.1と
表7.2と
と そ の制 約 の デ ー タ を示 し て い る.初 伸 び 率 が6%と
す る.eueの
表7.3に
間 の電 源 開発 計 画
は そ れ ぞ れ 既 設 デ ー タ,候
年 度 の ピー ク負 荷 が1000MWで
ペ ナ ル テ ィ rは 最 も高 い 燃 料 費(発 電 所 1)の100倍
現 在 価 値 を 計 算 す るた め に 割 引 率 を10%と
補電 源
あ り,負 荷 の と し,
設 定 す る.ま た,総 コ ス トの 期 待 値 に は ペ
ナ ル テ ィ コ ス トを入 れ て 評 価 す る. (1)予
測 燃料 費の不 確実 性 によ る検 討
不 確 定 要 因 は 発 電 機 の 故 障 率 以 外 に,各 は 平 均1.0分
散0.15の
年 間 の 予 測 燃 料 費 の 変 動 率 と し,そ の 分 布
正 規 分 布(年 間 約 ±20%の
表7.1
表7.2
燃 料 費 変 動 に 相 当 す る)に し た が う
小 規 模 系 統 の既 設 電 源 デ ー タ
小 規 模 系 統 の 増 設 候 補 の電 源 デ ー タ
表7.3 小規模系統の増設候 補電源の制約 デー タ
こ と と仮 定 す る(勿 論,他
の 分 布 で も よ い).
ア ル ゴ リズ ム に 従 っ て1000回
の 反 復 計 算 に よ り増 設 計 画 が 得 られ た.表7.4に
本
手 法 と従 来 手 法 の比 較 を 示 して い る. ①
本 手 法 に よ り計 算
す な わ ち,本
手 法 に よ り電 源 の増 設 案 を決 め,そ
案 に 対 し て 不 確 定 環 境(燃 料 費 コ ス トに お い て 平 均1.0分
散0.15の
の増設
乱 数)で テ ス トを行
った 結果 ②
予 測 燃 料 費 に 固 定 す る こ と に よ り計 算
け る計 算 法)に よ り電 源 の増 設 案 を 決 め,そ
す な わ ち,従
表7.4 小規模 系統 の結果 と比較
F:燃 料 費;I:資
木 費;P:ペ
ナル テ ィ コ ス ト
来 手 法(確 定 環 境 に お
の 増 設 案 に 対 し て 不 確 定 環 境(燃 料 費 コ ス
トに お い て 平 均1.0分
散0.15の
乱 数)で テ ス トを行 っ た 結 果
従 来 手 法 に よ る ケ ー ス② の 場 合 に は最 終 年 ま で の 増 設 設 備 容 量 の 合 計 が370MW と な り,LNGと
石 炭 の 内 訳 は200MW,170MWで
あ る.こ れ に対 し て 本 手 法 の ケ ー
ス① の 場 合 に は 最 終 年 ま で の 増 設 設 備 容 量 の 合 計 が370MWで MW減
り,石 炭 が40MW増
燃 料 費 が 安 い 電 源 で あ る.そ
え た.表7.2に
よ り,LNGは
あ る が,LNGが40
燃 料 費 が 高 く,石 炭 は 逆 に
こ で,本 手 法 で は “燃 料 費 の 高 いLNGは
の 影 響 を 大 き く受 け る た め に 設 備 容 量 が 減 少 し,逆
燃料 費 の変 動
に燃 料 費 の 安 い 石 炭 は 燃 料 費 の 変
動 の 影 響 を あ ま り受 け な い た め に増 加 す る” メ カ ニ ズ ム 働 き に よ り,不 確 実 な 燃 料 費 の 変 動 を 回 避 す る結 果 が 得 られ た.
予測負荷の不確実性による検討
(2)
不 確 定 要 因 を,各 散0.01の
年 の 予 測 負 荷 の 伸 び 率 と し,そ
正 規 分 布(年 間 約 ±1%の
の 正 規 分 布(年 間 約 ±1.5%の
の 分 布 は 簡 単 の た め に 平 均1.0分
負 荷 伸 び 率 変 動 に相 当 す る)と 平 均1.0分
散0.02
負 荷 伸 び率 変 動 に相 当 す る)に 従 う こ と と仮 定 す る.
ア ル ゴ リズ ム に 従 っ て 平 均1.0分
散0.01の
の 反 復 計 算 に よ り増 設 計 画 が 得 られ た.本
正 規 分 布 の 負 荷 伸 び 率 を用 い て1000回
手 法 と従 来 手 法 の 比 較 は 表7.4に
ま とめ て
い る. ①
本 手 法 に よ り計 算(平 均1.0分
散0.01の
正 規 分 布)す
な わ ち,本
手法により
電 源 の 増 設 案 を 決 め,そ の 増 設 案 に 対 して 不 確 定 環 境(負 荷 伸 び 率 に お い て 平 均1.0分 散0.01の ②
乱 数)で テ ス トを 行 っ た 計 算
予 測 負 荷 の 伸 び 率 に 固 定 す る こ と に よ り計 算(平 均1.0分
す な わ ち,従
散0.01の
正 規 分 布)
来 手 法(確 定 環 境 に お け る 計 算 法)に よ り電 源 の 増 設 案 を決 め,そ
案 に対 し て 不 確 定 環 境(負 荷 伸 び率 に お い て平 均1.0分
散0.01の
の増 設
乱 数)で テ ス トを行 っ
た計 算 ③
本 手 法 に よ り計 算(平 均1.0分
散0.02の
正 規 分 布)す
な わ ち,本
手法により
電 源 の 増 設 案 を 決 め,そ の 増 設 案 に 対 して 不 確 定 環 境(負 荷 伸 び 率 に お い て 平 均1.0分 散0.02の ④
乱 数)で テ ス トを 行 っ た 計 算
予 測 負 荷 の 伸 び 率 に 固 定 す る こ と に よ り計 算(平 均1.0分
す な わ ち,従
散0.02の
正 規 分 布)
来 手 法(確 定 環 境 に お け る計 算 法)に よ り電 源 の 増 設 案 を決 め,そ
案 に 対 して 不 確 定 環 境(負 荷 伸 び率 に お い て 平 均1.0分
散0.02の
の増 設
乱 数)で テ ス トを 行 っ
た計 算 表7.4は,①,②
に よ る 増 設 案 に対 し て,各 年 間 の予 測 負 荷 の 変 動(平 均1.0分
01の 正 規 分 布)が あ っ た 場 合 と各 年 間 の 予 測 負 荷 の 変 動(平 均1.0分
散0.02の
散0.
正規 分
布)が あ っ た 場 合 に そ れ ぞ れ の パ フ ォ ー マ ン ス を 示 し て い る. ケ ー ス② の 場 合 に は 最 終 年 ま で の 増 設 設 備 容 量 の 合 計 が350MWと 石 炭 の 内 訳 は150MW,200MWで
あ る.こ れ に 対 して 本 手 法 の ケ ー ス ① の 場 合 に は
最 終 年 ま で の 増 設 設 備 容 量 の 合 計 が365MWで MW増
な り,LNGと
あ る が,LNGが5MW,石
炭 が10
え た.こ れ は,負 荷 の 不 確 実 性 が あ る 場 合 に信 頼 性 を確 保 す る た め に 増 加 し た
もの で あ る. 表7.4に
よ る と,ケ
行 っ た が,供
ー ス ① で は 信 頼 性 を確 保 す る た め,ケ
ー ス② よ り多 め に 投 資 を
給 不 能 エ ネ ル ギ ー が 少 な い こ とか らペ ナ ル テ ィ が 小 さ くて 総 コ ス トの 期
待 値 も ケ ー ス ② よ り0.34%減 さ ら に ケ ー ス③,④
少 した.
に お い て 平 均1.0分 散0.02の
行 っ た が,こ れ は 年 間 約 ±1.5%の
正 規 分 布 乱 数 を用 い て,テ
ス トを
負 荷 伸 び 率 変 動 に相 当 す る 不 確 実 性 で あ る.表7.4
に よ り この よ う な 不 確 実 環 境 に お い て も本 手 法 の ケ ー ス ③ の 総 コ ス ト期 待 値 が ケ ー ス ④ よ り1.6%を
減 少 し,LOLPも28.3時
間 改 善 さ れ た.
小 規 模 系 統 の テ ス トに よ り,各 年 間 の 予 測 燃 料 費 と予 測 負 荷 の 変 動 が あ っ た 場 合 に つ い て 本 手 法 に よ る増 設 案 は 不 確 定 要 因 を考 慮 しな が ら最 適 化 し た た め に総 コ ス トの 期 待 値 が 小 さ く,ロ バ ス ト性 を も っ て い る こ とが わ か る.
7.4.5
大規模系 統の計算 と比較
既 存 発 電 所 が50で,開 つ い て 試 算 を 行 っ た.初 とす る.そ て1000回 (1)
い う 実 規 模 系 統 の10年
間 の電 源 開発 計 画 に
あ り,負 荷 の 伸 び 率 が 3%
の 他 の 設 定 は 前 節 の 小 規 模 系 統 の 計 算 と同 じ で あ る.ア ル ゴ リズ ム に 従 っ の 反 復 計 算 に よ り増 設 計 画 が 得 られ た.
予測燃料費の不確実性による検討
表7.5は,本 均1.0分
発 候 補 が17と
年 度 の ピ ー ク 負 荷 が15000MWで
手 法 と従 来 手 法 に よ る増 設 案 に対 し て,各 年 間 の 予 測 燃 料 費 の変 動(平
散0.15の
正 規 分 布)が あ っ た 場 合 に そ れ ぞ れ の パ フ ォ ー マ ン ス を 示 し て い る.
ケ ー ス ② の 場 合 に は 最 終 年 まで の 増 設 設 備 容 量 の 合 計 が15000MWと の ケ ー ス ① の 場 合 に は 最 終 年 ま で の 増 設 設 備 容 量 の 合 計 が15150MWで
な る.本
手法
あ り,小 規
模 系 統 の 場 合 と 同 様 に 燃 料 費 が 高 い 電 源 の設 備 容 量 が 減 り,燃 料 費 の安 い 電 源 の 設 備 容 量 が 増 え る 結 果 とな っ て い る. ①,② に よ る増 設 案 に対 し て,各 年 間 の 予 測 燃 料 費 の 変 動(平 均1.0分
散0.15の
分 布)が あ っ た 場 合 に つ い て,① の 案 は② よ り総 コ ス トが0.1%(約50億
円/10年)減
こ とが わ か る.ま た,①,②
正規 る
案 が 大 体 同 じ ぐ ら い規 模 の 発 電 設 備 を 増 設 し て い るた め,
信 頼 性 は ほ と ん ど同 じ レ ベ ル に な っ て い る.
予測負荷の不確実性による検討
(2)
表7.5は,本
手 法 と従 来 手 法 に よ る 増 設 案 に対 して,各 年 間 の 予 測 負 荷 の 変 動(平 均
1.0分 散0.01の
正 規 分 布)が あ っ た 場 合 と各 年 間 の 予 測 負 荷 の 変 動(平 均1.0分
の 正 規 分 布)が あ っ た 場 合 に,そ れ ぞ れ の パ フ ォー マ ン ス を示 して い る.表7.5に と,本 手 法 の ケ ー ス ① は 負 荷 伸 び 率 の 不 確 実 性 を 考 慮 して い る た め,ケ 1850MWの 円,燃
発 電 設 備 を 多 く増 設 した.そ
料 費 が14050億
ル テ ィが2659億
よる
ー ス② よ り
の 結 果 と し て ケ ー ス ① の 資 本 費 が13059億
円 で あ り,か な り多 くな っ て い る が,信 頼 性 が 高 い た め に ペ ナ
円 で あ り,小 さ くな っ た.一 表7.5
F:燃 料 費:I:資
散0.02
木 費:P:ペ
方,ケ ー ス② で は,確 定 環 境 に よ っ て決
大 規 模 系 統 の 結 果 と比 較
ナル テ ィ コ ス ト
定 さ れ た 増 設 案 の た め,予
測 負 荷 の 不 確 実 性 に対 応 で き な く信 頼 性 がLOLP=115.6
時 間 と な り,か な り悪 くな っ て い る(ペ ナ ル テ ィ も4588億 そ こで,①
の 総 コ ス トの 期 待 値 は② よ り2.65%(約800億
42.76時 間/年
減 っ た.そ
ら に ケ ー ス ③,④
ス トを行 っ た.表7.5に
円/10年)減
少 し,LOLPも
こで,本 手 法 に よ る増 設 案 は,予 測 負 荷 の 変 動 を 考 慮 し なが
ら最 適 化 し た た め に総 コ ス トの 期 待 値 が 小 さ く,最 わ か る.さ
円 と な り,か な り増 え た).
に お い て 平 均1.0分
も ロバ ス ト性 を も っ て い る こ とが
散0,02の
正 規 分 布 乱 数 を用 い て,テ
よ り こ の よ うな 不 確 実 環 境 に お い て も本 手 法 の ケ ー ス ③ の総
コ ス ト期 待 値 が ケ ー ス ④ よ り11.9%(約4000億
円/10年)を
減 少 し,LOLPも108時
間 改 善 さ れ た. ま た,本 CPU時
手 法 に よ る 大 規 模 系 統 の 計 算 はFACOM
M-770/30を
使 用 し,60分
の
間 を か か っ た.大 規 模 系 統 の 計 算 に よ り,各 年 間 の 予 測 燃 料 費 と予 測 負 荷 の変
動 が あ っ た 場 合 に つ い て 本 手 法 の 有 効 性 が 検 証 され,そ
の ロバ ス ト性 と計 算 時 間 か ら
実 用 的 な 手 法 で あ る こ とが わ か る.
評
7.4.6
価
統 計 電源計 画手 法 は多種 の要 因の考 慮が 可能 とな るた め,電 力市場 にお ける数 多 く の不確 実 要 因 に対 して,よ り柔軟 で ロバ ス トな電 源計 画 を作 成 す る こ とが 期 待 で き る.小 規模 と大規 模 系統 の試 算 に よ り本手 法 の有効性 が確 認 され た.以 下 は主 な特 徴 であ る, ①
各種 の不 確定 要因 を考 慮 で き る.
②
確率 計画 で あ りなが ら,問 題 の規模 が ほ とん ど増 え ない.
③
不確 定要 因の 環境 を学 習 しなが ら,最 適 探索 を行 う.
④
運用 問題 とその双 対変 数 が従来 手法 によ り高速 に計 算 で きる.
参考文献 1) 陳,豊
田:増
分 供 給 信 頼 度 を 用 い る新 し い 電 源 補 修 計 画 法 の 提 案,電
学 論B,108,5,pp.
205-212,1988. 2)
L.L.Garver:Effective
Transactions 3)
Load Power
R.R.Booth:Power
IEEE 4)
on
Apparatus System
Carrying and
Capacity
of
Generating
Units,IEEE
Systems,85,8,pp.910-919,1966.
Simulation
Model
Based
on
Probability
Analysis,
Trans.PAS,91,1,pp.62-69,1972.
R.N.Allan,A.M.Leite
Convolution
in Power
da System
Silva,A.A.Au-Nasser Reliability,
IEEE
and Trans.
on
R.C.Burchett:Discrete. Reliability,30,5,pp.452-
456,1981. 5) J.A.
Bloom:Long-Range
Probabilistic 6) J.A. and
Generation
Simulation,
Bloom
and
Storage
IEEE
Planning
Trans.
on
L. Charny:Long-Range
Plants-Part
Using
PAS,101,4, Generation
Ⅰ:Production
Costing,
Decomposition
and
pp.797-802,1982. Planning IEEE
with
Trans.
Limited
on
Enegy
PAS,102,9,
pp.
2861-2870,1983. 7) A.M.
Leite
da
Silva:Discrete
Evaluation-LOLE
Convolution
Calculations
Systems,3,4,
and
in
Uncertainty
Generating
Capacity
Aspacts,
IEEE
Reliability
Trans.
on
Power
pp.1616-1624,1988.
8) R.T.
Jenkins
Probabilistic
and
T.
C.
Simulation,
Vorce:Use
of
Proceedings
of
Fourier
Second
Series
WASP
in
the
Conference,
Power
System
Ohio,
pp.35-44,
1977. 9) S.Nakamura
and
Expansions,
J. Brown:Accuracy
Proceeding
of
of
Second
WASP
Probabilistic
Simulation
Conference,
Using
Columbus,
Ohio,
Fourier pp.45-55,
1977. 10)
J.P.
Stremel,
Using
Cumulant
on
PAS,99,5,
Trans. 11)
N.S.
Method 12)
J.P.
Jenkins,
R.
P.
of
Moments,
Method
Rau,
System
and
K.
F.
IEEE
Babb
and
W.
Representing
D.
the
Bayless:Production
Equivalent
Schenk:Expected
Trans.
on
Study
Reliability,
IEEE
Improving
Calculating
A.
of
Costing
Load
Curve,
IEEE
pp.1947-1956,1980.
Toy
H.Duran:On
of
T.
Stremel:Sensitivity
tion 13)
R.
the
Reliability
of
Cumulant
on
PAS,100,
Convergence
and
Method
Costs
by
the
of Calculationg
Genera
pp.711-778,1981.
and
Production
Production
pp.1908-1915,1980.
the
Trans. the
Energy
PAS,99,5,
cost,
Accuracy IEEE
of
Trans.
the on
Cumulant
Power
Method Systems,1,3,
pp.121-126,1986. 14)
Donald
tions 15)
J.
in
R.J.
Stone&Webster Report
W.D.
D.
System
G.Oliveira,
M. Monte
Power
Systems,4,4,
L.Chen Structure
1510-1516,1990.
Approximation
Trans.
on
Automatic Report
for
LOLP
Calcula
PAS,101,4,986-996,1982. System
ORNL-4945,
Planning
Package(WASP),
July,1974.
Generation
Expansion
Analysis
System,
Sutanto,
Y.
B.
Lee
using
and
H.
Laguerre
R.
Outhred:Cumulant
Based
Polynomials,
IEEE
Trans.
Probabilis on
Energy
pp.567-574,1989.
in
cal
Joy:Wien
Laboratory,
Simulation
Effort
19)
Edgeworth
Corporation:Electric
Conversion,4,4, 18)
the IEEE
EL-2561,1988.
Tian,
tic Power
of Systems,
D.S.
National
EPRI 17)
Power
Jenkins,
Oakridge 16)
Levy:Accuracy
Small
Pereira Carlo
and
and Based
S.
Technique Reliability
for
Reducing
Evaluation,
Computational IEEE
Trans.
on
pp.1309-1315,1989.
J.Toyoda:Maintenance to
Cunha:A
Composite
Equalize
Incremental
Scheduling Risk,
IEEE
Based Trans.
on on
Two Power
Level
Hierarchi
Systems,5,4,
pp.
20)
L.Chen,
H.
including Trans. 21)
Suwa
and
Network on
Power
L.Chen
Toyoda:Power
J.
on
with
Linear
Evaluation
of
Programming
Bulk
System
Approach,
IEEE
pp.37-42,1991.
Toyoda:Optimal
System
Arrival
Based
Systems,6,2,
and
Multi-area
J.
Constraints
Generating
Network
Constraints,
Unit IEEE
Maintenance Trans.
Scheduling
on
Power
for
Systems,6,3,
pp.1168-1174,1991. 22)
L.Chen,
et
al.:Mean
systems,12,4, 23) on
field
L.Chen,
et al.:Surrogate
Power
for
optimal
constraint
Systems,13,3,
24) 陳,池
theory
power
flow,
IEEE
Trans.
on
Power
pp.1481-1486,1997.
田,東,石
源 開 発 計 画,電 25) 鈴 木,荻
村,鈴
for
optimal
power
flow,
IEEE
Trans.
木,荻
本:Benders分
解 法 に よ る連 系 系 統 の 最 適 電
pp.643-652,1993.
村,陳,東,石
電 学 論B,116,3, 26) 荻 本,岡
関,境,中 学 論B,113,6,
本,中
method
pp.1084-1089,1998.
関:電
力 供 給 計 画 に お け る信 頼 性 指 標 の 計 算 手 法 と評 価,
PP.285-292,1996.
部,陳,東,最
勝 寺:統
計 電 源 計 画 手 法 と そ の 評 価,電
力 ・エ ネ ル ギ ー 部 門 大
会,No.21,1997. 27) 上 原,荻 画(1),電
本,鈴
木,東,最
勝 寺,福
留,陳:Modern
Heuristicsに
よる流 通 設備 拡 張 計
Heuristicsに
よる流 通 設備 拡 張 計
気 学 会 電 力 技 術 研 究 会,PE-98-73,1998.
28) 上 原,荻 画(2),電
本,鈴
木,東,最
勝 寺,福
留,陳:Modern
気 学 会 電 力 技 術 研 究 会,PE-98-74,1998.
29) 陳,鈴
木,和
論B,120,5,
池,新
村:電
力 系 統 に お け る ノ ー ダ ル プ ラ イ ス の 構 成 要 素 の 色 分 け,電
学
pp.686-693,2000.
30) 格 爾 麗,陳,木 B,120,2,
下,横
山:電
力 市 場 に お け る 電 気 料 金 と負 荷 配 分 の 交 渉 モ デ ル,電
学論
pp.219-226,2000.
31) 格 爾 麗,横 山,陳:小
売託 送 部 分 自 由化 の下 で の電 気料 金 及 び負荷 配 分 算定 モデ ル,電
学 論B,120,11,2000. 32) 陳,小
野,多
田,岡
本,田
辺:過
渡 安 定 度 制 約 を 考 慮 し た 電 力 系 統 の 最 適 運 用 の 決 定 法,
電 学 論B,120,12,2000. 33)
CIGRE
WG-37:Quality
of Supply-Customers
Requirement,
GIGRE
37-116
Report,
1999. 34) of
L.Chen,
Y.
Power
Systems
System-1,48,3, 35)
L.Chen,
Electric
Tada,
H. with
Okamoto, Transient
R.
Tanabe,
Stability
A.
Ono:Optimal
Constraints,
IEEE
Operation Trans.
on
Solutions Circuits
and
pp.327-339,2001. H.
Power
Suzuki, Systems,
T.
Wachi IEEE
and Trans.
Y.
Shimura:Components on
Power
Systems,2001.(To
of
Nodal appear)
Prices
for
第 8章 電 力 系 統 の 運 用 ・解 析 支 援 シ ミ ュ レー シ ョン技 術
分 散 電 源 の 連 系 あ る い は,そ れ に 伴 う新 し い 電 子 制 御 機 器 の 導 入 な どが 進 ん だ と き に は,系
統 に 発 生 す る 諸 現 象 も さ ら に複 雑 に な る と と も に,新
る未 経 験 な 現 象 の 発 生 が 懸 念 され,現
た な 環 境 条 件 下 で起 き
実 の 機 器 特 性 を反 映 した 系 統 解 析 と シ ミ ュ レー
シ ョ ン技 術 の 開 発 ・適 用 検 証 が 強 く要 請 され る. ま た,電
気 事 業 の 規 制 緩 和 に 伴 い,発 電 部 門 の 自 由 化,卸
小 売 託 送 の 自 由 化 が 進 ん だ場 合 に は,単 らず,給
に,電
託 送 の 導 入,さ
ら に は,
力 系 統 分 野 に お け る諸 現 象 解 析 の み な
電 指 令 の 公 平 性 の 技 術 的 検 証 が 可 能 とな る 各 種 解 析 ソ フ ト ウ ェ ア お よび シ ミ
ュ レ ー タ の 開 発 ・導 入 が 盛 ん とな る. 本 章 で は,ま
ず,電
力 系 統 の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン技 術 を概 説 し,次
お け る シ ミ ュ レー シ ョ ン の 主 要 課 題 をあ げ,さ
ら に,シ
に,電
力 自由化 に
ミュ レ ー シ ョ ン プ ロ グ ラム の
紹 介 お よ び 電 力 自 由 化 に 対 す る シ ミ ュ レ ー シ ョ ン技 術 の 開 発 動 向 に つ い て 述 べ る.
8.1
電力系統のシミュ レーション技術
系 統 解 析 ソ フ トウ ェ ア お よ び シ ミュ レ ー タ は,主
と し て 諸 現 象 の 解 析(事 後 検 証)と
予 見(事 前 検 討)を 目 的 と し た も の で あ り,そ の 諸 現 象 は,雷
や 開 閉 サ ー ジ の よ うな マ
イ ク ロ秒 の オ ー ダ の きわ め て 早 い 自然 ・電 気 現 象 か ら,電 圧 安 定 性 や 潮 流 変 動 とい っ た 数 時 間 に わ た る社 会 現 象 を 伴 う長 周 期 動 的 現 象 と幅 広 く分 布 して お り,電 気 事 業 を 営 む 者 が 所 有 す る さ ま ざ ま な 電 力 機 器 が 相 互 に影 響 しあ う こ と に な る. 電 力 系 統 の 運 用 ・支 援 に お け る シ ミュ レ ー シ ョ ンが 対 象 と す る各 種 現 象 を,発 の 規 模 と発 生 す る 時 間 領 域 で 表 現 す る と,図8.11)の
電機
よ う に な る.
雷 や 遮 断 器 開 閉 に よ る サ ー ジ現 象 は,非 常 に早 い 現 象 で,そ
の 現 象 自 体 が 対 象 とす
る系 統 規 模 は,発
か し な が ら,早
で あ れ ば,そ
電 機 台 数 の 観 点 か ら は 小 さ い 規 模 とな る.し
い現象
の 時 間 領 域 に 応 じた 厳 密 な モ デ ル 回 路 を 採 用 し,そ れ ぞ れ の 時 間 領 域 に
図8.1
系 統 現 象 と解 析 規 模(電 気 協 同研 究 第51巻
応 じ た モ デ ル が 必 要 と な る.一 方,電 す る発 電 機 台 数 は,大
力 潮 流 な ど は,ゆ
第 4号)
っ く り し た 現 象 で あ り,関 連
規 模 な も の と な る.
こ れ らの 各 種 現 象 に対 し,系 統 の 運 用 ・解 析 支 援 シ ミュ レ ー シ ョ ン と し て,系 析 ソ フ ト ウ ェ ア な ら び に シ ミ ュ レ ー タ が あ げ ら れ る.こ ウ ェ ア と シ ミ ュ レー タ に つ い て,そ
8.1.1
こで は,こ
統解
の 系統解 析 ソフ ト
の 特 徴 と種 類 を概 説 す る.
系統解析 ソ フ トウ ェア
電 力 系 統 に お け る 系 統 解 析 ソ フ トウ ェ ア は,発
電 ・送 配 電 網 を介 して 発 生 す る事 象
を 対 象 とす る も の で あ り, ・時 間 領 域 に お け る電 気 ・機 械 的 特 性 の 動 的 シ ミュ レ ー シ ョ ン ・電 力 設 備 の 計 画 ・需 給 運 用 な どの 評 価 ・最 適 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン が 主 な もの で あ る.い の 電 気 現 象 や,電
ず れ に対 し て も,回 路 計 算 や 潮 流 計 算 を 基 本 と し,そ れ に 系 統
力 需 給 な どの 社 会 現 象 な どの 事 象 が 展 開 さ れ る.
時 間 領 域 の 動 的 シ ミ ュ レー シ ョ ン に お け る 手 法 上 の 特 徴 は,電 気 的 な 物 理 現 象 を 中 心 と した 系 統 現 象 の 再 現 性,モ
デ ル 化 が 主 要 な もの で あ り,そ れ に 付 加 さ れ た 形 で 分
析 お よ び評 価 が な さ れ る.時
間 領 域 に対 す る モ デ ル は,回
路 計 算 や 潮 流 計 算 に よ り得
られ た 初 期 状 態 を 前 提 に,微
分方程 式 な どで表現 され数式 モ デル を演 算処理 す るこ と
に な る… こ の 数 値 演 算 処 理 時 間 は,実 時 間 との 関 連 は な く,長 時 間 の 現 象 を短 時 間 で 解 法 す る こ と も 可 能 で あ る. ま た,電
気 現 象 を 瞬 時 値 ま た は 実 効 値 と して 取 り扱 い,現
象 ご と に 分 割 した 演 算 プ
ロ グ ラ ム を選 択 す る 必 要 が あ る.電 力 系 統 で は,短 時 間 の 現 象 と,そ れ が 影 響 し な い 長 期 的 な 現 象 と を 分 割 して お り,そ の 分 割 さ れ た プ ロ グ ラ ム の 選 択 を誤 らな け れ ば,
表8.1
非 常 に 取 り扱 い が 簡 便 で,送
系 統 解析 ソ フ トウ ェア の 例
電 網 を含 む電 力 機 器 お よ び 系 統 の 保 護 ・制 御 に対 し,そ
の 設 計 や 運 用 な ど の 多 くの 領 域 で 活 用 さ れ て い る. 一 方,時
間 領 域 の シ ミ ュ レー シ ョ ン を 受 け て,そ
ン す る 必 要 が あ る.特
に,電
実 に シ ミュ レ ー シ ョ ンす る よ りは,む こ と に あ る.こ
の た め,モ
の 評 価 や 最 適 化 を シ ミ ュ レー シ ョ
力 設 備 の 計 画 ・需 給 運 用 で は,系 統 現 象 の 動 的 現 象 を 忠 し ろ,い
か に 計 画 ・需 給 運 用 を 最 適 に立 案 す る
デ ル も,電 力 需 給 な ど の 社 会 的 な事 象 を扱 う こ とに な る.
汎 用 系 統 解 析 ソ フ ト ウ ェ ア の 実 例 を 表8.1に
示 す.最
初 の 二 つ の ソ フ トウ ェア
(EMTP,NETOMAC)は,瞬
時 値 の 動 的 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を主 に 扱 い,次 の 二 つ の ソ
フ トウ ェ ア(PSS/E,Y法)は
実 効 値 の 動 的 シ ミュ レ ー シ ョ ンで あ り,近 年,数
手 法 の 改 良 に よ り長 時 間 動 特 性 を 扱 う ソ フ ト(EUROSTAG)が に,最
後 の 二 つ の ソ フ トウ ェ ア は,電
8.1.2
制 作 さ れ て い る,さ
ら
力 設 備 の 計 画 な どの シ ミュ レ ー シ ョ ン ソ ウ トウ
ェ ア で あ る.最 近 の ソ フ トウ ェ ア で は,単 再 現 に 加 え,さ
値積 分
に動 的 シ ミュ レー シ ョ ン に よ る系 統 現 象 の
ま ざ ま最 適 化 や 固 有 値 解 法 な ど に よ る分 析 が 可 能 とな っ て い る.
シ ミ ュ レー タ
こ こで,シ
ミ ュ レ ー タ と は,時
間 領 域 で 系 統 現 象 を シ ミュ レ ー シ ョ ン し,各 種 入 出
力 イ ン タ ー フ ェ ー ス を通 し て 外 部 機 器 との 相 互 作 用 や 表 示 を 実 現 す る 装 置 とす る.元 来,系
統 現 象 は,電
気 的 あ る い は 機 械 的 な 物 理 現 象 の 発 生 に よ る も の で あ り,そ の 系
統 現 象 の 発 生 方 法 に よ り,ア ナ ロ グ シ ミ ュ レ ー タ とデ ジ タル シ ミ ュ レ ー タ に 分 類 され る.ア
ナ ロ グ シ ミ ュ レ ー タ で は,実
系 統 現 象 と相 似 な 電 圧,電
流 を基 本 に,電
気的な
物 理 現象 を実 際 に発 生 させ る. 一方
,デ
ジ タ ル シ ミ ュ レー タ は,前 述 の 解 析 ソ フ トを使 用 し,シ
ミュ レ ー シ ョ ン す
る現 象 を す べ て デ ジ タ ル 演 算 し,数 値 デ ー タ と し て扱 か っ て お り,外 部 機 器 へ の イ ン タ ー フ ェ ー ス を 除 い て,電
圧 や 電 流 を 用 い た 電 気 現 象 そ の も の の 発 生 が な い 点 に,ア
ナ ロ グ シ ミュ レ ー タ と の 大 き な 相 違 が あ る. 次 に そ れ ぞ れ の ア ナ ロ グ シ ミュ レ ー タ とデ ジ タル シ ミ ュ レ ー タ に 分 類 して,そ
の特
徴 を示 す.
(1)ア
ナ ログ シミ ュ レータ の特 徴
多 くの ア ナ ロ グ シ ミ ュ レ ー タ で は,流 通 設 備 で あ る送 電 線 上 で の 電 気 的 な物 理 現 象 が 注 目 さ れ る た め,あ
る い は 送 電 線 上 の 現 象 の 伝 搬 が 非 常 に 早 い た め,こ
れ ら の送 電
線 を リ ア ク トル な どの 受 動 素 子 に よ っ て組 ま れ る場 合 が 多 い. 一 方,電 力 機 器 の モ デ ル と し て は,2 種 類 の タ イ プ が あ り,従 来 の 模 擬 送 電 線 設 備 に 代 表 さ れ る よ う に,小 型 回転 機 な どの 縮 小 モ デ ル を用 い る タ イ プ と,電 子 回路 や デ ジ タ ル 演 算 処 理 を 用 い て演 算 に よ りそ の 特 性 を リア ル タ イ ム で 実 現 し,送 電 線 な どの イ ン タ ー フ ェイ ス にパ ワ ー ア ン プ を用 い て 電 気 的 な物 理 現 象 を 発 生 さ せ る タ イ プ とが あ る.表8.2に
(2)デ
ア ナ ロ グ シ ミ ュ レー タ の例 を あ げ る.
ジタル シ ミ ュ レー タの 特徴
上 記 の ア ナ ロ グ シ ミ ュ レー タ に対 し,す べ て を デ ジ タ ル 演 算 に よ り構 築 さ れ た リア ル タ イ ム ・フ ル ・デ ジ タ ル シ ミ ュ レ ー タ が あ げ られ る.こ
れ は,ア
ナ ロ グシ ミュレー
タ と異 な り,す べ て を 数 値 演 算 で 処 理 し,電 力 機 器 は も と よ り,送 電 線 な ど も微 分 方 程 式 や 代 数 方 程 式 で 定 式 化 し,そ
れ ら を数 値 積 分 や 収 束 計 算 な ど の 決 め られ た ア ル ゴ
リズ ム で 解 法 し て い く もの で あ る.近 そ れ ら の 演 算 処 理 が,実
年 で は,マ
イ ク ロ プ ロ セ ッ サ の 高 速 化 に よ り,
現 象 の 時 間 領 域 で 同 一 に な る よ う に計 算 処 理 を 行 え る た め,
表8.2
ア ナ ログ シ ミ ュ レー タの 例
表8.3デ
ジ タル シ ミュ レ ー タ の 例
リ ア ル タ イ ム 化 が 可 能 と な っ て きて い る.こ 機 器 モ デ ル と し て,部 表8.3に
8.2 8.2.1
の た め,上
記 の アナ ログ シ ミュレー タの
分 的 に 組 み 込 まれ る 場 合 も あ る.
デ ジ タ ル シ ミ ュ レー タ の 例 を あ げ る.
電力自由化におけるシミュレーシ ョンの課題例 配 電 系 統 にお ける 分 散 型 電 源 の シ ミ ュ レ ー シ ョ ンの 必要 性
将 来,配 電系統 に多数 の分散 電源 が連 系 され た場 合 に,配 電 系統 や他 の分 散型電 源 に与 え る影響 を検 討 す る必 要 があ る.従 来 か ら も,配 電 系統 に は自家用 発電機 として 需 要 家構 内 に接続 され ていたが,配 電系 統へ の逆 潮 流が許 可 され,需 要 家構 内 の自家 用 発 電設 備 の余剰 電力 な どを,電 力 会社 に売 買す る とい う用途 が多 くな るこ とが予想 され,配 電 の運用 か らの立場 や需 要 家か らの立場 か らも,シ ミュレー シ ョンに よ り, それ らの諸課 題 を検討 す る必 要 が ある. 現在,扱 わ れ て いる シ ミュレー シ ョン を用 いた検 討課 題例 として,下 記 の よ うな も のが あ げ られ る. (1) 分散 型電 源 の単独 運転 検出機 能 の有 効性確 認 系統 の 電源 が消 失 して も,分 散型 電 源 か ら系 統 の負荷 に電 力供 給が持 続 してい る状 態 を単 独運 転 と呼 び, ・電 流遮 断能 力 の ない系統 の 自動 開 閉器 の開 閉 に よる機器 損傷 ・保安 上 の課 題:作 業 員 の感 電 な どの 弊害 が生 じる可能性 が あ り,単 独 運転 を速 や か に検 出 し,分 散型 電 源 を系統か ら解 列 す る必要 が あ る. この た め,単 独運 転検 出 には,周 波数 低下 リレー や,逆 電 力継電 器 な どの系統 の擾 乱 を受動 的 に検 出す る方 法や,発 電 装置 あ るい は配電 線路 に何 らかの変 動 を能動 的 に 起 こさせ て検 出 す る方法 が開発 され て い る.
し か しな が ら,こ
れ ら の検 出 の た め の リ レー 整 定 や 他 の 検 出 機 能 へ の影 響 な ど,下
記 の よ う な シ ミュ レ ー シ ョ ン に よ る検 討 が 必 要 とな る.
・能 動 方式 によ る系 統へ の影響 ・単 独 運 転 検 出 の リ レー 感 度
・異 方 式 に よる単 独 運転検 出機 能 の混在 に よる影響 ・新 方式 の 単独運 転検 出機 能 の効率 的 な評価 (2)分
散 型電 源 による 配電 系統 の保 護 リ レー への 影響 検討
分 散 型 電 源 系 統 連 系 技 術 指 針 2)にも 示 さ れ て い る よ う に,図8.2の
ような 配電 系 統
へ の 保 護 リ レ ー へ の 影 響 が あ り,連 系 時 に 保 護 リ レ ー 協 調 に 対 す る協 議 が 必 要 とな る.ま
た,需
要 家 保 護 リ レ ー と して も,他 の 配 電 系 統 か ら の も ら い事 故 を 防 ぎ,適 切
な保 護 リ レ ー の 整 定 が 必 要 とな る.
(3)需
要 家構 内の供 給 安定性
従 来 よ り,系 統 事 故 時 に系 統 か ら解 列 さ れ た 需 要 家 構 内 で の 供 給 安 定 性 の 解 析 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン は 実 施 さ れ て い る.す
な わ ち,系 統 あ る い は 需 要 家 構 内 で の 事 故 発 生 に
よ り,系 統 か ら単 独 と な っ た あ と,事 故 に よ る過 渡 的 な影 響 を ひ きず りな が ら,需 要 家 の 負 荷 量 と発 電 量 をバ ラ ン ス さ せ る よ う に,補 遮 断 を 実 施 す る必 要 が あ っ た.こ 面 で 小 さ い が,負
機 な どの 状 況 を加 味 しな が ら,選 択
の よ う な解 析 は,電
力 会 社 と比 較 し,容 量 ・規 模 の
荷 機 器 の 挙 動 が 直 接 影 響 す る点 が 大 き く異 な る.ま
(a)他 配電線短絡 における連系 配電線お よび分散型電 源OCRの
不要動作
(b)配 電線末端短絡 事故 時の分散型電源の影響 によ る変電所OCR不 図8.2
分 散 電 源 の 配 電 系 統 の保 護 リレ ー へ の 影 響
た,負
動作
荷 は熱需
要 も含 む 場 合 が あ る.
しか しなが ら,需 要 家構 内 の自家用 発電 設備 の余剰 電 力 な どを,電 力会 社 に売買 す る とい う場 合,需 要家 の発 電設備 は,電 力 系統 で の事 故 が発 生 して も,需 要家 構内 の 負荷 設備 に対 し,継 続 して電力 を供給 で き る ことに加 え,需 要家構 内の発 電機 の電力 動 揺が,電 力 系統側 に影響 を及 ぼ さな い こ とが要求 され る ことに なる. さ ら に,系 統 側 の 事 故 や 構 内 の 事 故 が,ど
の よ うに 波 及 した か を記 録 分 析 し,公 平
な 運 用 が 可 能 と な る よ う に 努 め る必 要 が あ る.
一方,電 力 会社 側 での解 析 に も,系 統 の擾乱 が,需 要 家構 内 の発電 機 に不 要 な解列 を防止 す る ことが,系 統 お よび需要家 へ の供給 両面 か らも求 め られ るた め,従 来 の解 析 精度 に加 え,負 荷設 備 の挙動 を詳細 に模擬 ・分析 す る こ とが望 まれ る. (4)そ
の
従 来 は,負
他
荷 の み の 配 電 系 統 に分 散 型 電 源 が 接 続 さ れ る た め,短
り,運 用 電 圧 が 逸 脱 した りす る.ま
た,負
荷 用 の 線 路 が,電
絡 容 量 が 増 加 した
源 線 と し て も利 用 さ れ る
こ とに な る.こ の た め,遮 断 容 量 や 配 電 線 容 量 な ど の 設 備 検 討 が 必 要 とな り,さ らに, そ の設 備 費 用 の 公 平 な 分 担 を検 討 す る必 要 が あ る.基 本 的 に は,単 純 な計 算 で よ い が, 過 渡 的 な 現 象 ま で の検 討 を要 す る場 合 に は,そ れ ら を 支 援 す る シ ミ ュ レ ー シ ョン が 必 要 とな る.
8.2.2送
電 線 の 利 用 に対 す る シ ミ ュ レ ー シ ョ ン
他 の章 に も述 べ られ て い る よ うに,送 電 線 が複 数 の組 織 で使 用 され る こ とに な る と,そ の送電 線利 用 に対 す る評 価 や,送 電線 の過 負荷 な どに対 して,公 平 な運用 管理 が必 要 とな る.ま た,計 画段 階で も,電 力設 備費 用 に対 す る公 平 な分担 や立 案 のた め に も,適 切 な系統 状 態 の検 討 が必 要 とな る. 詳 細 は,他
の 章 に ゆ ず る もの と し て,こ
こで は,そ
の 概 要 を 記 載 し,次 項 に 関 連 の
海 外 汎 用 ソ フ トの 紹 介 を 行 う.
(1)送
電能 力 の シミ ュ レー シ ョン解析
送 電能 力 の シ ミュ レー シ ョンにお いて,潮 流 断面 にお け る送電線 熱 容量 に対 す る送 電 能力 の みな らず,負 荷 あ るい は発電 出力 変動 や系統 事 故時 に も安 定 して送電 が継続 で きる能 力 をシ ミュ レー シ ョン解 析す る必 要が あ る.こ れ に よ り,そ の送 電線 の送電 能 力が算 定 され,さ
らに利 用可能 な送 電容 量が決 定 され る.こ れ は,計 画時 お よび運
用 時 に検 討 され る内容 で あ り,具 体 的 には,潮 流計算,系 統 安定 度解 析 や電圧 安定 度 解 析が 実施 され る.
(2)系
統 事故 時の 事 後処理 解析
事 故 時 に は,系 統 の 回 線 を遮 断 し た り,負 荷 を 遮 断 す る こ と に な る.こ 数 の組 織 に ま た が り影 響 が 波 及 し,そ の た め,電 る公 平 性 を,シ ス や,保
ミュ レ ー シ ョ ン に よ り検 証 す る必 要 が 発 生 す る.使 用 す る デ ー タ ベ ー
護 リ レ ー 動 作 を 含 め た シ ミュ レ ー シ ョン や,そ
は評 価 手 法 な ど が,公
(3)系
の とき,複
力 の 販 売 機 会 を損 失 した こ とに 対 す
れ に 用 い られ る解 法,さ
らに
に 認 知 さ れ た もの が 要 求 さ れ る.
統現 象 か ら経済 現象 まで のシ ミュ レーシ ョン
一 般 に は,系 統 現 象 に 限 られ た シ ミ ュ レ ー シ ョ ンが 望 まれ る が,そ
の需給 バ ラ ンス
な どは,従 来 以 上 に,電 力 の 売 買 に係 わ る 経 済 現 象 が 大 き く関 与 して く る.こ の た め, シ ミ ュ レー シ ョ ン の範 囲 も,系 統 現 象 か ら経 済 現 象 ま で も含 め た シ ミュ レー シ ョ ンが 必 要 と な る.さ
ら に,電
力 の 運 用 に イ ン タ ー ネ ッ トの活 用 が 増 加 し,情 報 の伝 送 が 現
象 に大 き く影 響 す る場 合 も検 討 す る こ と と な る.
8.3シ
ミ ュ レー シ ョ ン の 実 例
本 節 で は,電
8.3.1供 (1)シ
力 自 由 化 を対 象 と した 海 外 の 汎 用 ソ フ トウ ェ ア を 紹 介 す る.
給 信 頼 度 評 価 解 析 支 援 ソ フ トウ ェ ア:PROMOD ステム の概 要
PROMOD
IVは
ア メ リ カ ・ジ ョ ー ジ ア 州 ア トラ ン タ に拠 点 を お くNew
Associate(NEA)社
に よ り開 発 ・販 売 さ れ て い るMicrosoft
需 給 計 画 ソ フ トウ ェ ア で あ る.NEA社 ment
IV3)
Associates社
の 前 身 は1975年
で あ り,そ の 後EDS社
Windows上
に創 立 したEnergy
に 吸 収 合 併 さ れ た あ と,1997年
野(電 力 ・エ ネ ル ギ ー 分 野)に 特 化 した 活 動 を行 っ て い く こ と,ま た,市 迅 速 な対 応 を行 っ て い く こ と を 目的 に そ のEDS社
Energy で稼 動す る Manageに得 意 分
場 の変 化へ の
か ら独 立 す る形 で,NEA社
が設 立
さ れ た. PROMODは,元
来,発
電 コ ス ト(プ ロ ダ ク シ ョ ン コ ス ト)と 供 給 信 頼 度 を 評 価 す る
目 的 で 開 発 さ れ た ソ フ トウ ェ ア で あ るが,電 り,現 在 のPROMOD
IVで
気 事 業 環 境 に合 わ せ た そ の 後 の 改 良 に よ
は,
・ ロ ケ ー シ ョ ナ ル プ ラ イ ス(locational
marginal
prices)の
算定
・市場 価格 の予測 ・プ ー ル 市 場(PX:power
・発 電 ユ ニ ッ トの 便 益 評 価
exchange)に
対 す る入 札 戦 略 の 評 価
・送 電 線 混 雑 料 金 ・固 定 送 電 権 利 料(FTR:fixed
transmission
rights)の
算 定
・需 給 に関 す る ポ ー トフ ォ リオ 作 成 ・ リス ク マ ネ ジ メ ン ト分 析 な ど に も用 い ら れ お り,自
由化 さ れ た 電 力 市 場 を構 成 す る プ レ ー ヤ が そ れ ぞ れ の ニ ー
ズ に 合 わ せ て 有 効 に活 用 す る こ とが で き る よ う に な っ て い る.
(2)シ
ステ ムの構 成 と機 能
PROMOD
IVの
プ ロ グ ラ ム は,確 率 的 手 法 に よ り発 電 コ ス トや 供 給 信 頼 度 な ど の
評 価 を 行 う機 能 を も つ “基 本 プ ロ グ ラ ム(basic systems)” る “標 準 モ ジ ュ ー ル(standard modules)” ① ical
の 他 の 機 能 を補 完 す
お よ び “オ プ シ ョ ン モ ジ ュー ル(optional
で構 成 さ れ る.以 下 に そ れ ぞ れ の機 能 概 略 を示 す.
基本 プ ログ ラム Probabilistic
Hourly
modules)”
と,そ
Monte
基 本 プ ロ グ ラ ム に は,確
Dispatch)プ Carlo
率 的 デ ィ ス パ ッ チ(APD:Analyt-
ロ グ ラ ム と 時 間 別 モ ン テ カ ル ロ デ ィ ス パ ッ チ(HMC:
Dispatch)プ
確 率 的 デ ィ ス パ ッチ(APD)プ
ロ グ ラ ム の 二 つ で 構 成 さ れ て い る.
ロ グ ラ ム は,発
電 ユ ニ ッ トの 事 故 率(forced
rate)デ ー タ を 用 い て ア ベ イ ラ ビ リ テ ィ を 確 率 的 に 表 現 し た 上 で,起 の 発 電 ユ ニ ッ ト事 故 の 組 合 せ を一 度 に 考 慮 し て,ユ
outage
こ り得 る す べ て
ニ ッ トコ ミ ッ トメ ン ト(起動 停 止,
出 力)お よび 供 給 信 頼 度 ・緊 急 時 の 電 力 購 入 量 ・限 界 電 力 コ ス トを 出 力 す る プ ロ グ ラ ム で あ る.供 給 信 頼 度 は,供 給 支 障 時 間(LOLH:loss-of-lost (L0LE:loss-of-lost
energy)で
hour)と 供 給 支 障 電 力 量
表 さ れ る.
これ に対 し,時 間 別 モ ン テ カ ル ロ デ ィ ス パ ッ チ(HMC)プ
ロ グ ラ ム は,発
電ユニッ
ト事 故 を モ ンテ カ ル ロ 的 に 取 り扱 う こ とに よ り,発 電 ス ケ ジ ュ ー リン グ を 時 系 列 的 に 捉 え,APDプ
ロ グ ラ ム と同 様 の 出 力 を 行 う プ ロ グ ラ ム で あ る.こ
のHMCプ
ログ ラ
ム で は,発 電 ユ ニ ッ トに つ き,最 小 運 転/停 止 時 間 や 出 力 変 化 率,運 転 予 備 力 と い った 運 用 制 約 と,起 動 や バ ラ ン ス停 止,出 さ れ る.ま
た,発
力 停 止 に 係 る コ ス トが わ か りや す くモ デ リ ン グ
電 ユ ニ ッ トの ア ベ イ ラ ビ リテ ィ(事 故 発 生 頻 度 と復 旧 時 間)は,各
電 ユ ニ ッ トの 平 均 健 全 運 転 継 続 時 間(MTTF:mean-time-to-failure)や 時 間(MTTR:mean-time-to-repair)の ②
標 準 モ ジ ュ ー ルPROMOD
統 計 デ ー タ を 用 い て 算 定 さ れ る. IVの
(a)マ
ル チ エ リ ア モ デ リ ン グ(multi-area
(b)エ
ネ ル ギ ー 貯 蔵(energy
(c)時
間 別 限 界 コ ス ト(hourly
(d)環
境 制 約 付 き 負 荷 配 分(environmental
(e)制
約 付 き 燃 料 供 給(limited
(f)経
済 融 通(economy
energy
storage)モ marginal
fuel)モ
標 準 モ ジ ュ ー ル に は, interface
modeling)モ
ジュー ル cost)モ
ジ ュール
dispatch)モ ジュール
interchange)モ
ジ ュール
ジ ュール
発
平 均事 故 継続
ジ ュール
の 六 つ が あ る.以 下 に 上 記 各 モ ジ ュ ー ル の 機 能 概 略 を示 す. (a)マ
ル チ エ リ ア モ デ リ ン グ モ ジ ュ ー ル:相
互 連 系 さ れ た 複 数 の(需 要 中 心 を も
つ)エ リア に つ い て,発 電 コ ス トシ ミ ュ レ ー シ ョ ン を 行 う も の で あ り,送 電 制 約 ほ か運 用 上 の 制 約 を満 た し な が ら,複 数 エ リ ア の 運 用 コ ス ト最 小 化 を 目 的 関 数 と し て,ユ
ニ
ッ トコ ミ ッ トメ ン トお よ び 負 荷 配 分 を行 う. (b)エ
ネ ル ギ ー 貯 蔵 モ ジ ュ ー ル:揚
貯 蔵 設 備 を 模 擬 す る こ とが で き,こ
水 発 電,燃
料 電池 な どさ まざ まなエ ネル ギ ー
れ に よ り,エ ネ ル ギ ー 貯 蔵 設 備 が 供 給 信 頼 度 に与
え る影 響 と それ ら の 経 済 的 便 益 の 評 価 が 可 能 とな る. (c)時
間 別 限 界 コス トモ ジ ュ ー ル:増
ス トを 算 定 す る モ ジ ュ ー ル で,限
分 単 位 電 力 量 〔MWh〕
あ た りの 限 界 発 電 コ
界 発 電 コ ス トは 毎 月 の 代 表 週168時
間 の 毎 時 間 に対
して 算 出 さ れ る.ま た,毎 時 間 の 負 荷 レ ベ ル が 供 給 信 頼 度(loss-of-load)に
及 ぼす影響
に つ い て も評 価 が 行 え る. (d)環
境 制 約 つ き負 荷 配 分 モ ジ ュ ー ル:排
出 量 規 制 が,発
電 プ ラ ン トの 経 済 運 用
お よ び 発 電 コ ス トに 及 ぼ す 影 響 を評 価 す るた め の モ ジ ュ ー ル で あ り,排 出 量 低 減 技 術,燃
料 転 換,排
出 量 取 引,出
力 振 替 な どの 対 策 が 考 慮 で き る.
(e)制 約 つ き燃 料 供 給 モ ジ ュ ー ル:燃 モ ジ ュ ー ル で あ り,制 約 は,最 の形 で モ デ ル 化 され る.こ
料 供 給 に 関 す る複 数 の 制 約 を 考 慮 す るた め の
小/最 大 供 給 量(minimum
burn)や,take-or-pay条
れ に よ り,使 用 燃 料 の 利 用 可 能 性,輸
送 可 能 性,契
件 約 条件
な ど に伴 う燃 料 供 給 に つ い て の 制 約 を反 映 す る こ とが で き る.ま た,本 モ ジ ュ ー ル は, こ れ ら の 制 約 下 で,燃
料 供 給 量 の 最 適 配 分 を 行 う機 能 も有 して い る.
(f)経 済 融 通 モ ジ ュ ー ル:1 時 間 ご と の 発 電 容 量 と電 力 価 格 断 面 に 基 づ い て 隣 接 す る 外 部 市 場 と の経 済 融 通 を モ デ ル 化 す る た め の モ ジ ュ ー ル で あ り,電 力 ス ポ ッ ト価 格 や 給 電 可 能 な 電 力 取 引,隣
接 エ リア 電 力 会 社 の 限 界 発 電 コ ス トな どの 評 価 に 用 い る
こ とが で き る.
③
オ プ シ ョ ン モ ジ ュ ー ルPROMOD
IVの
optimization)モ
オ プ シ ョ ンモ ジ ュ ー ル に は,
(a)水
力 発 電 最 適 化(hydro
(b)ガ
ス コ ン バ イ ン ドサ イ ク ル 発 電(gasification
combined
(c)送
電 系 統 影 響 評 価(transmission
analysis)モ
ジュール
(d)プ
ー ル 市 場(power
ジ ュー ル
exchange)モ
ジ ュール cycle)モ
ジュー ル
の 四 つ が あ る.以 下 に上 記 各 モ ジ ュ ー ル の 機 能 概 略 を示 す. (a)水
力 発 電 最 適 化 モ ジ ュ ー ル:水
力 発電 運用 を最適 化 す るた め の モ ジ ュール で
あ り,揚 水 発 電 を含 め た す べ て の 水 力 発 電 に つ き,毎 時 間 の 放 流 ス ケ ジ ュ ー ル と季 節 ご と の貯 水 方 針 が 決 定 さ れ る.
(b)ガ
ス コ ンバ イ ン ドサ イ ク ル 発 電 モ ジ ュ ー ル:多
種 存在 す るガ ス コンバ イ ン ド
サ イ クル 発 電 プ ラ ン トの 設 計 を模 擬 す る た め の モ ジ ュ ー ル で あ る.ユ ー ザ は,ガ シ ス テ ム,ガ
ス タ ー ビ ン,排 熱 回 収 ボ イ ラ,蒸
ス化
気 タ ー ビ ン に分 け て モ デ ル 作 成 を行 え
る. (c)送
電 系 統 影 響 評 価 モ ジ ュ ー ル:時
ロ グ ラ ム の 結 果 を 受 け て,平
間 別 モ ン テ カ ル ロ デ ィ ス パ ッ チ(HMC)プ
常 時 お よ び 緊 急 時 に お け る毎 時 間 の 系 統 潮 流 を 求 め る プ
ロ グ ラ ム で あ る.ブ
ラ ン チ,系 統 事 故,移
デ ル 作 成 が 行 え,こ
れ に よ りユ ー ザ は ロ ケ ー シ ョナ ル プ ラ イ ス と送 電 料 金 を 算 出 で き
る.潮
流 計 算 は,DC法
(d)プ
相 変 圧 器 操 作,直
流 送電 線の 定格 な どのモ
で 行 わ れ る.
ー ル 市 場 モ ジ ュー ル:ユ
ー ザ の シ ス テ ム が プ ー ル 市 場 に お い て どの よ う に
運 用 され る か を模 擬 す るた め の モ ジ ュ ー ル で あ り,プ ー ル 市 場 の 入 札 ル ー ル は あ らか じ め複 数 の もの が 用 意 され て お り,ま た,ユ さ ら に,ユ
ー ザ に よ る カ ス タ マ イ ズ も可 能 で あ る.
ー ザ は本 モ ジ ュ ー ル を 用 い て 発 電 ユ ニ ッ トの 入 札 シ ナ リオ 検 討,そ
の入
札 シ ナ リオ 下 で の 発 電 ユ ニ ッ トの 便 益 評 価 を 行 え る.
④
その他:GUI機
(a)デ
能
ー タ 入 力 機 能:PROMOD
IVへ
の 入 力 デ ー タ は,す べ て ス プ レ ッ ドシ ー ト
形 式 で 取 り扱 わ れ る た め,デ ー タ の ソー ト,コ ピ ー/ペ ー ス ト,削 除,更
新 な どが 容 易
に 行 え る. (b)取
引 デ ー タ 設 定 機 能:電
の 情 報 は,ス
力 取 引 契 約 に つ い て の 名 称,契
約 種 別,取
引量など
プ レ ッ ド シ ー ト形 式 の “transaction builder” で 管 理 さ れ,そ れ を編 集 す
る こ と に よ り,取 引 契 約 内 容 の変 更 や 契 約 の 追 加 な ど も容 易 に 行 え る. (c)発
電 ユ ニ ッ トデ ー タ 設 定 機 能:発
使 用 燃 料,発
電 コ ス トな どの 情 報 は,や
で 管 理 さ れ,新
電 プ ラ ン トの 名 称 や ユ ニ ッ ト数,発
電 種 別,
は りス プ レ ッ ドシ ー ト形 式 の “unit builder”
規 ユ ニ ッ トの 追 加 や 既 存 ユ ニ ッ トの デ ー タ 変 更 な ど も そ れ を編 集 す る
こ と で 容 易 に 行 え る. (d)燃
料 デ ー タ 管 理 機 能:使
用 燃 料 の コ ス ト関 連 デ ー タ は,ス
プ レ ッ ドシ ー ト形
式 の “fuel cost calculator” で管 理 され,新 規 燃 料 の 追 加 や 既 存 燃 料 の デ ー タ更 新 も “fuel cost calculator” ウ イ ン ドウ上 で の 編 集 に よ り行 え る . (e)レ
ポ ー ト出 力 機 能:PROMOD
Microsoft
Accessに
また,ス
IVに
よ る シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 結 果 の は,
よ りデ ー タ ベ ー ス 化 さ れ,カ ス タ ム レ ポ ー ト と し て 出 力 で き る.
プ レ ッ ドシ ー トア プ リケ ー シ ョ ンへ の デ ー タ 出 力 も 可 能 で あ る.計
レ ポ ー ト出 力 対 象(発 電 ユ ニ ッ ト,燃 料,電 用 の ウ イ ン ドウ上 で 選 択 で き る.
算結 果 の
力 取 引 な ど)や レ ポ ー ト形 式 に つ い て も専
(f)マ
ッ ピ ン グ 機 能:ユ
ー ザ は,“Bus
Mapping
Editor” 上 で 発 電 ユ ニ ッ トお よ び
負 荷 の 母 線,送 電 線 へ の 接 続 情 報(マ ッ ピ ン グ デ ー タ)を 設 定 す る こ とが で き,“Power System
Viewer”
を用 い て 送 電 系 統 の 詳 細 情 報 を グ ラ フ ィ ッ ク 表 示 させ る こ とが で き
る.
8.3.2送 (1)シ
電 可 能 容 量 評 価 支 援 ソ フ トウ ェア:PSS/E4) ステム の概 要
PSS/E(Power
System
Simulator
ogies,Inc.(PTI)社
が 開 発 した,ア
for Engineer)は
メ リカ を は じ め,世
ア メ リ カ のPower 界4O箇
数 を もつ 電 力 系 統 解 析 用 パ ッケ ー ジ で あ り,潮 流 計 算,安
国 の400以
定 度 解 析,最
Technol上 のユ ーザ
適 潮流 計算 な
ど の 実 効 値 ベ ー ス の 系 統 解 析 計 算(日 本 で は Y 法 に相 当 す る)の ス タ ン ダ ー ド ソ フ ト とな っ て い る.そ の た め,現 存 の ほ とん どの 電 力 系 統 解 析 用 パ ッケ ー ジ に はPTI社
の
デ ー タ フ ァ イ ル を 変 換 す る プ ロ グ ラ ム を 用 意 し て い る の が 現 状 で あ る.PSS/Eは UNIXか
らPCま
で の ほ と ん どの プ ラ ッ トフ ォー ム で 稼 働 す る こ とが で き,グ
ッ ク ユ ー ザ イ ン タ ー フ ェ イ ス(GUI)も 図8.3に
示 す よ うに,PSS/Eで
ラフ ィ
完 備 さ れ て い る.
は,潮 流 計 算 を 中 核 と し た 多 数 の 機 能 が あ り,ユ ー
ザ は 自分 の 目的 と あ っ た機 能 オ プ シ ョ ン を 自 由 に 組 合 せ て 使 用 す る こ とが で き る. PSS/Eの ①
特 徴 と して は,
対 話型
デ ー タ 入 力,計
算 と結 果 出 力 は す べ て マ ウ ス で ウ イ ン ドウ 上 に 行 う
こ とが で き,単 線 図 で の デ ー タ 修 正,計 果 の プ ロ ッ ト(図8.5)も
算 結 果 の 表 示(図8 .4)や シ ミュ レ ー シ ョ ン結
マ ウ ス一 つ で 行 う こ と が で き る.
図8.3 潮流計算 を中核 とした多機 能統合型電力系統解析 用パ ッケー ジ
図8.4
図8.5
② バ ッチ処 理 型
単 線 図 で の計 算 結 果 の 表 示
シ ミュ レ ー シ ョン結 果 の プ ロ ッ ト
プ ロ グ ラ ム 実 行 用 の バ ッ チ フ ァ イ ル が 容 易 に 生 成 で き,シ
ミ
ュ レー シ ョ ン の 効 率 を 向 上 させ る こ とが で き る. ③ カス タマ型
ユ ー ザ が 自分 流 の コマ ン ド実 行 方 式 や 図 形,レ
ポ ー トの 様 式 を
カ ス タ マ イ ズ す る こ とが で き る. 処 理 能 力 と し て,現 在 で は,PSS/Eに
お い て検 討 可 能 な最 大 系 統 規 模 は 5万 母 線 で
図8.6
(3年 以 内 に10万
Full
Newton-Raphson法
の制 御 オ プ シ ョン の設 定 ダ イ ア ログ
母 線(東 部 系 統 を全 部 モ デ ル 化 で き る こ と)に 拡 張 され る予 定),そ
に 系 統 を エ リア と ゾ ン に 分 け て,エ
れ
リア 間 の 融 通 量 の 制 御 な ど を検 討 す る こ とが 可 能
で あ る.
(2)シ ①
ステ ムの 主 な機能
潮流 計算PSS/Eの
(a)Full Raphson法
基本機 能 としての潮 流計 算 で は,
Newton-Raphson法 か ら,Fixed
Slope
の ほ か,Gauss-Seidel法,De-Coupled De-Coupled
る 再 配 分 を 考 慮 し たNewton-Raphson法 は,ダ
Newton-Raphson法,慣
Newton性
・ガ バ ナ に よ
ま で の さ ま ざ ま な 手 法 を 用 意 し,各
手法 で
イ ア ロ グ で 制 御 オ プ シ ョ ン の 設 定 が 可 能 で あ る(図8.6)
(b)ス
イ ッチ ドシ ャ ン トや 変 圧 器 の ロ ー カ ル ま た は 遠 隔,連
続 また は不連 続 の ス
テ ップ制 御 が可能
(c)二 端 子 と多端 子 のHVDC線 (d)マ (e)ゼ と し,エ
路 が対応 可能
ル チ セ ッ シ ョ ン線 路 が 対 応 可 能 ロ イ ン ピ ー ダ ン ス線 路 が 対 応 可 能 リア 間 の 融 通 制 御,想
定 事 故 解 析,送
電 限 界 計 算,慣
分 計 算,発
電 機 の 無 効 容 量 曲 線 な ど の 解 析 を行 う.
ま た,単
線 図 を用 い る こ と に よ り,デ ー タ の 修 正,装
性 ・ガ バ ナ に よ る再 配
置 の 切 替 え,母 線 の 分 離 と結
合 な ど の 作 業 が 簡 単 に 行 い,再 計 算 す る こ とが で き,作 業 効 率 を 向 上 させ る こ とが で
き る.
②
最 適潮 流計 算
最 適 潮 流 計 算(OPF)は,潮
流 計 算 の 入 力 デ ー タ を そ の ま ま用
い,コ ス トデ ー タ と計 画 オ プ シ ョ ン デ ー タ を 加 え て,ロ
ス,発 電 機 コ ス ト,VAR需
要
な ど の 目的 関 数 を 同 時 に 最 小 化 し,シ ス テ ム 限 界 な どの 制 約 条 件 を 考 慮 しな が ら電 圧 量,発
電 量,VAR補
償 量,タ
ッ プ 位 置 な ど の 最 適 組 合 せ を 見 出 す.目
的関 数 として
は, (a)MWやMVARロ
ス
(b)燃
料 コス ト
(c)シ
ャ ン トや 直 列MVAR
(d)負
荷遮 断
(e)制
御 切 り替 え
が 指 定 で き,ユ ー ザ 指 定 の 目 的 関 数 を組 込 む こ と も で き る.制 御 パ ラ メ ー タ と して は, (a)MWとMVAR発
電量
(b)不
連 続 な シ ャ ン トMVARと
(c)直
列補 償 量
タ ップ
(d)位 相変圧 器 (e)電
圧調 整
な どが 指 定 で き る.制
約 条 件 と し て は,
(a)線
路 潮 流(MW,MVAR,MVA)限
(b)エ
リア融通電 力 限界
(c)電
圧 限界
(d)制
御量 限界
な どが 指 定 で き る.ま
た,最
界,電
流 限界
近 の 電 力 シ ス テ ム の 実 際 問 題 に 対 処 す る た め に,以
下の
よ う な ア プ リケ ー シ ョ ン も適 用 で き る. (a)VAR計
画
(b)電 圧崩壊 解析 (c)融 通電 力 の最 大化 (d)電 ③
力 託 送 と コ ジ ェ ネ の コ ス ト評 価
動 的 シ ミ ュ レー シ ョ ン
動 的 シ ミュ レ ー シ ョ ン は,事
タ ー ス タ ー ト,励 磁 損 失 な ど の あ ら ゆ る擾 乱 が 考 慮 で き,シ 断,再
開 す る こ とが で き る.標
・多 様 な発 電 機 ,励 磁 系,ガ ・負 荷 ,SVC,多
端 子HVDCの
故,発
準 モ デ ル と して は, バ ナ,安
定化 装置 のモデ ル ライブ ラ リ
詳細 モ デル
電 機 脱 落,モ
ー
ミュレー シ ョンを随時 中
・方式 多様 な リレー モ デル ライ ブ ラ リ が あ り,ユ ー ザ も独 自の モ デル をFORTRANで
記述 しPSS/Eに
簡 単 に組 み込 む こ
とが で き る.ま た,モ デ ル と系統パ ラメー タの周 波数特 性 も考慮 で きる. ④ 長時 間 シ ミ ュレー シ ョ ン 原動 機応 答 に よる周波 数偏移 や保 護 装置 によ る電 圧 変化 な どの長 周期 現 象 を,可 変刻 み 幅 を採 用 し,動 的 シ ミュ レー シ ョン と同様 に シ ミュ レー シ ョンす る. ⑤ 平衡 お よび不 平 衡故 障計 算
全 系統 また は縮 約 され た系統 に対 し,多 地 点 や
多母線 とい った複 雑 な平衡 また は不 平衡 故 障計算 を行 う.三 相 事故 と一 相地 絡事 故 の 結果 は系統単 線図 に表 示 す る こ とがで きる. ⑥ 線 形 システ ム計 算
動的 シ ミュレー シ ョンの詳細 モ デル に基 づ く固有値 解 析
と周 波数 応答 解析 を行 う. ⑦ オープ ンア クセ ス とプ ライ シ ング 規定 に準 拠 した,MW-マ
テキ サ ス公益 事 業規 制 委 員会PUCTの
イル型 の託 送料 金計 算 を行 う.
⑧ その他 ・線路 定数 計算 ・系統 縮約
8.3.3 (1)シ
長 周 期 系 統 現 象 評 価 解 析 支 援 シ ミ ュ レ ー タ:EUROSTAG5) ステ ムの 概要
EUROSTAGは,フ
ラ ン ス 語"EURO
電 力 庁(Electricite
de France,略
STAbilite
称EdF)と
Generalisee"の
ベ ル ギ ーTRACTEBEL社
略 語 で,フ
ラ ンス
で共 同開発 さ
れ た 電 力 系 統 動 特 性 シ ミ ュ レー シ ョ ン ソ フ トウ ェ ア で あ り,以 下 の 特 徴 を有 す る. ① 広 範 囲 な時 間 領 域 に 適 用 可 能
EUROSTAGは
過 渡,中
期,長 期 の 系 統 安 定
度 領 域 を カバ ー す る.す な わ ち,電 磁 機 械 的 振 動 現 象 か ら 日 負 荷 変 動 まで 対 応 で き る. EUROSTAGは
臨 界 故 障 除 去 時 間,電
力 動 揺,発 電 ユ ニ ッ ト制 御 装 置 の 調 整,負
荷
遮 断 方 式 な ど の従 来 か らの 問 題 を解 くの に 適 して い る だ け で な く,さ ら に,電 圧 崩 壊, 停 電 シ ナ リ オ,保 FACTSやHVDCと
護 方 式 の 策 定,復
旧 手 順,送
電 容 量,電
い っ た パ ワ ー エ レ ク トロニ ク ス な ど の 先 端 トピ ッ ク も取 扱 え る.
② 現 代 的 で ロバ ス トな数 値 積 分 ア ル ゴ リズ ム を 使 用 る 積 分 刻 み 幅 を使 用 し た 数 値 積 分 ア ル ゴ リズ ム に よ り,あ ら長 期 動 特 性 まで)を 一 つ の プ ロ グ ラ ム で 行 え,ま 連 続 的 に表 示 で き る.こ で 行 う の で,デ
圧 ・周 波 数 の 集 中 制 御,
の 一 つ の プ ロ グ ラ ム が,さ
ー タ 管 理 が 容 易 に な る.
連 続 か つ 自 動 的 に変 化 す ら ゆ る範 囲 の 応 用(過 渡 か
た 速 い 現 象 と遅 い 現 象 を 同 時 か つ ま ざ ま な 処 理 を 統 一 され た モ デ ル
EUROSTAGは
自 動 的 に積 分 刻 み 幅 を変 更 す る 方 法 に 基 づ い て い るの で,ユ
が 要 求 す る精 度 を 保 証 す る.速
い現 象(同 期 喪 失)が 起 こ れ ば,刻
い 現 象 だ け が 起 こ っ て い れ ば,刻
み 幅 は 長 い ま まで,シ
ーザ
み 幅 は短 くな る.遅
ミ ュ レー シ ョ ン を長 時 間 走 ら
せ る(数 時 間 ま で)こ とが 可 能 で あ る. ③ 融 通 性 が 広 く,ど ん な系 統 で も対 応 可 能EUROSTAGに ブ ラ リが 添 付 さ れ て い る が,も い な い場 合 は,ど
し,あ
る プ ロ セ ス,制
は 豊 富 な標 準 ラ イ
御 装 置 が ラ イ ブ ラ リ に含 ま れ て
ん な 種 類 の プ ロ セ ス ・装 置 で も個 々 の 電 力 系 統 の 特 徴 に あ わ せ た 特
別 な 方 法 で 表 現 で き る. ④ ユ ー ザ フ レ ン ド リな 解 析 環 境
プ ロ セ ス と制 御 装 置 の モ デ ル 化 に 使 用 さ れ る
グ ラ フ ィ ッ ク の マ ク ロ言 語 と,結 果 の 解 析 の た め の モ ジ ュ ー ル に よ り,研 究 の 信 頼 性 と効 率 を 向 上 で き る.さ 力,更
ら に,す べ て の デ ー タ はMOTIFイ
ン ター フ ェ イ ス に よ り入
新 で き る.
⑤ オ ー プ ン な 解 析 環 境EUROSTAGを
導 入 して も,過 去 の 投 資 と経 験 の 結 果
で あ る 今 ま で の モ デ ル や デ ー タ セ ッ トを す べ て 捨 て る 必 要 は な い.EUROSTAGで は,潮
流 デ ー タ の 国 際 フ ォー マ ッ トの 使 用 と,発 電 所 や 負 荷 モ デ リ ン グ の グ ラ フ ィ ッ
ク マ ク ロ 言 語 の 能 力 に よ り異 な る コ ン ピ ュ ー タ環 境 間 で の 移 行 が 容 易 に な っ て い る. そ の た め,ほ
とん ど の 既 存 デ ー タ とモ デ ル は再 使 用 可 能 で,エ
ル で 得 た 多 大 な経 験 ・知 識 を保 存 で き る.ま
た,線
ンジニ アは以前 の ツー
形 方 程 式 の 後 処 理 用 の た め に標 準
ソ フ トウ ェ ア に線 形 化 シ ス テ ム を 出 力 で き る. ⑥ 世 界 中 の ユ ー ザ と経 験 を 共 有EUROSTAGは,ア ギ ー,日
本,イ
デ ン,デ
ン マ ー ク,ブ
ブ ル ガ リ ア,ア
ギ リス,南
ア メ リ カ,ス
ラ ジ ル,中
ル バ ニ ア ほ か,世
国,ギ
イ ス,イ
メ リカ,フ タ リア,オ
リシ ャ,ポ
界 中 の 電 力 会 社,大
ー ス トラ リア,ス
ル トガ ル,ロ 学,メ
ラ ン ス,ベ ル
シ ア,ル
ウェー
ー マ ニ ア,
ー カ で 使 用 され て い る.
そ して ユ ー ザ ー ス ク ラ ブ や ニ ュ ー ズ レ タ ー を 通 じて 経 験 を 共 有 で き る.
(2)シ
ステ ムの 機能
① 物 理 モデ ル とデー タ (a)回 れ る.母
路 と負 荷:電
気 回 路 は 正 相 回 路 表 現 か,完
線 の 電 圧 は代 数 方 程 式I=YUで
た 関 数 の 非 線 形 方 程 式 か,マ
全不 平衡 回路表 現 で モ デル化 さ
決 定 す る.負 荷 は電 圧 ・周 波 数 を 変 数 と し
ク ロ ・ブ ロ ッ ク を使 っ た 動 的 モ デ ル で 表 現 で き る.低 電
圧 レベ ル の タ ッ プ 切 換 器 もモ デ ル に 含 ま れ る.ま 母 線 に モ デ ル 化 で き る.無 効 電 力 補 償 機 器(SVC)は
た,特
性 の異 な る複数 の負荷 を同一
単 一 要 素 と して,ま
し て 表 現 さ れ る. (b)誘
導 機:誘
導 機 は以 下 の 2種 類 の 異 な る方 法 で モ デ ル 化 で き る.
た はバ ン ク と
同 一 プ ロ グ ラ ム,同
一 の デー タ セ ッ トで よ り広 範 囲 の 応 用 例
① 過渡安定度 例:臨 界故障除去時 間計算 ② 電圧 崩壊シ ミュ レーシ ョン 例:電 圧崩壊現象 における 変圧器電圧計算 ③ 保護計画 脱調,周 波数崩壊,電 圧崩 壊 の波及に対す る自動的 な 応動
⑥ 電圧制御方策 例:電 圧 とタップ値の応動 計算 ⑦ 中央制 御 例:中 央電圧制御 による24 時間模擬 ⑧ 動 的負荷 例:2 台の誘導機負荷の変動 ⑨HVDC装 置
④ 制御装置の特性改善 PSS,設 計のチューニ ング
⑩FACTS SVC,UPFC,IPC,直 ンサ …
⑤ 復 旧手順 例:水 力電源か ら原子力電 源 への負荷運転 の移行 図8.7
同 一 の プ ロ グ ラ ム,同
列 コ ンデ
一 の デ ー タ セ ッ トで よ り広 範 囲 の 応 用 例
・二 重 か ご型 を想 定 した 回転子 の磁 束 の動特 性 が計算 で きる “完全 ” モデル ・回 転 子 の 過 渡 特 性 を無 視 し た “簡 略 化 ” モ デ ル 機 械 抵 抗 トル ク は マ ク ロ 言 語 の 使 用 に よ り,詳 細 に モ デ ル 化 で き る. (c)変
圧 器:タ
ッ プ 位 置 は 明 示 的 に表 現 さ れ る.漏
れ リア ク タ ン ス と変 圧 比 は タ
ッ プ 切 換 位 置 に 依 存 し て 決 ま る.磁 気 飽 和 も モ デ ル 化 可 能 で あ る. (d)注
入 電 流 源:複
素 電 力(P,Q),可
変 ア ド ミタ ン ス(G,B),お
た は 極 座 標 系)を 各 ノ ー ドで 注 入 電 流 源 と して 定 義 で き る.そ
れ らの 電 源 の 数 学 的 モ
デ ル は マ ク ロ 言 語 で 定 義 で き る.こ の 方 法 に よ り動 的 負 荷,SVCな が 可 能 で あ る.さ ら に,FACTSやHVDC線
転 機:同
期 機 はParkの
ど を表 現 す る こ と
路 の よ う な 特 殊 な直 列 負 荷 を 二 つ の 電 源
要 素 を 結 合 し て モ デ ル 化 す る こ とが で き る.ま た,無 (e)回
よ び電 流(直 交 ま
限 大 母 線 も利 用 で き る.
古 典 理 論 に よ りモ デ ル 化 が 行 わ れ る.回 転 子 は 四
つ の 等 価 巻 線 に よ り表 現 さ れ る.界 磁 巻 線,そ
れ と磁 気 結 合 の あ る直 軸 ダ ンパ 巻 線,
二 つ の 横 軸 ダ ンパ 巻 線 の 四 つ で あ る.同 期 機 の 内 部 磁 束 は系 統 周 波 数 に依 存 す る よ う に な っ て い る.磁
気 回 路 の飽 和 もShackshaftの
モ デ ル で 表 現 で き る.同 期 機 モ デ ル
に は 始 動 変 圧 器 も 含 め ら れ る.同 期 機 の 機 械 的 動 作 に関 し て は,回 転 子 の 運 動 は回 転 体 方 程 式 で 表 され る.こ
れ は機 械 トル ク と電 気 トル ク を 回 転 速 度 の 変 化 に む す び つ け
る もの で あ る. ユ ー ザ は 同 期 機 を “外 部 ” パ ラ メ ー タ(リ ア ク タ ン ス と時 定 数)に よ っ て定 義 す る こ と も,ま
た は “内 部 ” パ ラ メ ー タ(相 互 ・自 己 イ ンダ ク タ ン ス,抵
抗)に よ り定 義 す る
こ と も で き る. (f)オ
ー トマ トン:オ
せ る こ とが で き る.オ
ー トマ ト ン に よ り,状 態 変 数 値 に 応 じ て イ ベ ン トを発 生 さ
ー トマ トン を 表 現 す る 方 程 式 は,状
態 変 数 か ら得 られ る値 に 基
づ い て 各 積 分 ス テ ッ プ ご と に評 価 さ れ る. 次 の よ う な オ ー トマ ト ンが 利 用 可 能 で あ る. ・過 電 流 保 護 リ レ ー ・同期 喪 失 時 に 同 期 機 を ト リ ッ プ させ る脱 調 リ レ ー ・自動 タ ッ プ 切 換 変 圧 器:オ
ー トマ ト ンが
,指 定 され た 電 圧 設 定 値 を不 感 帯 内 に保
つ よ う に タ ッ プ を切 換 え る.電 圧 崩 壊 の 状 況 を取 扱 うた め に,タ
ッ プ切 換 ロ ッ ク
の 機 構 も備 わ っ て い る. ・平 衡 回 路 に お け る距 離 リ レ ー保 護:送
電 線 の 両 端 を監 視 し ,反
ス イ ン グ と状 態 加
速 特 性 を 含 め て い る. ・不 平 衡 距 離 保 護 シ ス テ ム:ユ ス イ ン グ,加
速 特 性,単
ー ザ の 与 え るFortesqueイ
ン ピ ー ダ ン ス の比 率
,反
相 開 路 に基 づ い て い る .
・周 波 数負荷 遮 断保 護:送 電 電力 計測値 に基 づ いた線 路 トリップ ・任 意 の母線 で計 測 され る不 足 ・過電圧 の場 合 の機器 トリップ ・速 度 低 下 ・過 速 時 の 回 転 機(同 期 機 また は誘 導 機)ト リ ップ ・任 意 の ブ ロ ッ ク の 出 力 が あ る し きい 値 を超 えた 場 合 の 機 器 ト リ ッ プ .こ
の方法 で
界 磁 電 流 の 保 護 が モ デ ル 化 で き る.
・位相 角 と速 度 の条件 に基づ いた シス テム不安 定性 の検 出 (g)制
御 装 置 と プ ロ セ ス の モ デ ル:ユ
ラ リ を利 用 で き る.ま た,グ 分 だ け の モ デ ル,い ービン ,ボ
ーザ は プ ロセ スや 制御 の標準 モデ ル ライ ブ
ラ フ ィ ック ツ ー ル(プ リプ ロ セ ッサ)を 用 い て対 話 的 に 自
わ ゆ る “マ ク ロ ・ブ ロ ッ ク” を 作 成 す る こ と もで き る.新
イ ラ,制 御 装 置,SVC,負
書 く必 要 は 一 切 な い.多
荷 な ど を つ く る た め にFORTRANで
しい タ
コ ー ドを
く の基 本 ブ ロ ッ ク を 用 い て ワ ー ク ス テ ー シ ョ ン ま た はPCの
画 面 上 で ブ ロ ッ ク 図 を描 く こ とに よ りマ ク ロ ・ブ ロ ッ ク を設 計 で き る.種 々 の 電 力 系 統 要 素,た
と え ば 同 一 水 頭 の 水 力 発 電 機,コ
相 互 間 の 反 応 を 表 現 す る た め に,さ
ン バ イ ン ドサ イ ク ル,HVDC線
路 ほか,
ま ざ まな 発 電 ユ ニ ッ トや 電 流 注 入 源 に 応 じた マ ク
ロ ・ブ ロ ッ ク を 結 合 す る こ とが で き る.こ れ はMATLABのSIMULINKの
機能 に
似 て い る. ②
マ ク ロ ・ブ ロ ッ ク の ラ イ ブ ラ リ
マ ク ロ ・ブ ロ ッ ク の ラ イ ブ ラ リ の 内 容 は 以
下 の と お り. ・IEEE水
力 シス テ ム
・IEEE励
磁 シス テ ム
・IEEE蒸
気 シス テ ム
・ボ イ ラ ・SVC
・HVDCシ
ス テム
・HVDCシ
ス テム の制御 モ ー ド
8.4電
力系統のシミュレーシ ョン技術の開発動向
8.4・1モ 最 近,欧
デ ル の ラ イ ブ ラ リ ー 化 と シ ミ ュ レ ー シ ョン 結 果 の 可 視 化 技 術 米 で は,電
力 系 統 の 計 画 ・運 用 支 援 ソ フ ト ウ ェ ア に は,特 別 仕 様 で は な く
一 般 に 流 通 し て い る 汎 用 ソ フ トウ ェ ア が 使 用 され る傾 向 に あ る .パ
ワ ー エ レ ク トロ ニ
ク ス な ど の 新 技 術 に よ る機 器 の 導 入 や,規 制 緩 和 に よ るIPP(independent ducer)の
power
pro-
参 入 が 系 統 に与 え る影 響 を考 慮 す る シ ミ ュ レ ー シ ョ ン モ デ ル の 作 成 は,ユ
ー
ザ の 要 望 ・依 頼 に 基 づ き,開 発 元 が シ ス テ ム 内 に組 み 込 み の 機 能(ラ イ ブ ラ リ)と し て 追 加 さ れ る方 式 が と られ て い る. プ ロ グ ラ ム の コ ア 部 分 に関 して は 極 力 変 更 を加 え な い で よ い よ う に して お り,ユ ー ザ が ラ イ ブ ラ リ を 利 用 ・作 成 ・追 加 す る こ とで シ ミ ュ レ ー シ ョ ン支 援 シ ス テ ム の 管 理 を行 っ て い る.シ
ミュ レ ー シ ョ ン モ デ ル や 支 援 機 能 の 中 で,ユ
の を順 次 コ ア 部 分 に 取 り込 み,新 る.し
た が っ て,各
ー ザ か ら依 頼 の 多 い も
バ ー ジ ョ ン と し て リ リー ス す る形 式 が と ら れ て い
ユ ー ザ が 独 自 の シ ミ ュ レ ー シ ョ ンモ デ ル を 組 み 込 み た く と も,す
ぐに 反 映 され る と は 限 らな い とい っ た 不 便 さ も指 摘 さ れ て い る. わ が 国 の 電 力 産 業 に お け る ソ フ トウ ェ ア管 理 方 式 は,試
験 的 な検 討 で もプ ロ グ ラ ム
の コ ア 部 分 に手 を 入 れ る ソ フ トウ ェ ア構 造 に な っ て お り,シ
ミ ュ レ ー シ ョ ンモ デ ル を
一 部 変 更 す る の に も コ ア 部 分 の 手 直 し が 必 要 と な る こ とが 多 い .そ ラ リ機 能 を実 現 で き れ ば,常 い の で,効
こで,こ
の ライブ
時 必 要 と な る主 要 モ デ ル の み コ ア 部 分 に 残 し て お け ば よ
率 的 シ ミュ レ ー シ ョ ン が 可 能 とな る.今 後 の 電 力 系 統 シ ミ ュ レー シ ョ ンの
新 規 開 発 で は ぜ ひ と も こ の よ うな プ ロ グ ラ ム構 造 で 製 作 し て い くべ きで あ ろ う. マ ン マ シ ン イ ン タ ー フ ェ イ ス の 視 覚 化 に つ い て は,デ あ るGUI(graphical
user
interface)を 駆 使 し て 簡 易 な 操 作 で 系 統 解 析 用 デ ー タ を作
成 す る ツ ー ル が 開 発 さ れ て お り,PSCADの る もの も あ る.し て は,グ
よ うな 世 界 的 な ユ ー ザ グ ル ー プ が 存 在 す
か し,計 算 結 果 の 出 力 に関 し て は,エ
キ ス パ ー トエ ン ジ ニ ア に と っ
ラ フ が 描 か れ る程 度 で 十 分 と い う意 見 もあ る.
しか し,CAE(computer 化 は,教
ー タ 入 力 に関 し て 普 及 し つ つ
aided education)と
同様 に,シ
ミ ュ レー シ ョ ン結 果 の 可 視
育 シ ス テ ム の 一 環 あ る い は 規 制 緩 和 に帰 因 す る 系 統 上 の 問 題 点 の 一 般 へ の 広
報(啓 蒙 活 動)と い う意 味 で 重 要 で あ る と考 え る. ま た,汎 り,数
用 的 な イ ン タ ー フ ェ イ ス に は 操 作 マ ニ ュ ア ル が 不 要 と な る メ リ ッ トが あ
値 デ ー タ 入 出 力 に 対 し,マ
ら れ て い る 例 が あ る.[実
イ ク ロ ソ フ ト社 の 表 計 算 ツ ー ル で あ るExcelが
例:PTI(Power
Technologies,
運 用 支 援 シ ス テ ムTOPS(transmission
現 在,わ
oriented
Inc.)で
production
用 い
開発 して いる送電網
simulatiOn)]
が 国 の 電 力 会 社 が 開 発 中 の 電 力 系 統 解 析 支 援 用 統 合 環 境 シ ス テ ム も,こ の
よ う に機 能 が 向 上 し た 汎 用 的 な ソ フ トウ ェ ア を利 用 す る こ とで イ ン タ ー フ ェ イ ス を作 成 して お り,同 じ 方 向性 が み られ る.
8.4.2リ
ア ル タ イ ム シ ミ ュ レ ー シ ョ ン技 術
実 際 の 保 護 や 制 御 機 器 を接 続 し て それ らの 機 能 を 検 証 す る た め の リア ル タ イ ム シ ミ ュ レー シ ョ ン の ニ ー ズ は 高 く,開 発 も実 現 段 階 ま で 進 ん で き て い る. DSP(digital
signal processor)を
ロ セ ッ サ を増 設 す る こ とで,任 る.こ
使 用 した ハ ー ドウ ェ ア シ ミュ レ ー タ で は,並 列 プ
意 の 規 模 の シ ミ ュ レー シ ョン を行 え る よ う に な っ て い
れ に は プ ロ セ ッ サ 間 の 通 信 を 高 速 に行 うた め,通
て い る.[実 また,並
例:マ
ニ トバHVDCリ
信 専 用 の ハ ー ドウ ェ ア を使 っ
サ ー チ セ ン タRTDS]
列 コ ン ピ ュ ー タ 向 きの 系 統 分 割 手 法 に工 夫 を 凝 ら し て 汎 用 プ ロ セ ッサ で も
リ ア ル タ イ ム を実 現 し よ う と して お り,30母
線 程 度 の 系 統 に は対 応 で き る.[実
例:
ブ リ テ ィ ッ シ ュ ・コ ロ ン ビ ア 大 学 で 開 発 中 の ソ フ ト ウ ェ ア シ ミ ュ レ ー タ(RTNS: real time
network
simulator)]
この よ う に,大 規 模 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を リア ル タ イ ム で 行 う た め に は.よ 計 算 が 要 求 さ れ る た め,専
用 ハ ー ド ウ ェ ア の性 能 向 上 の ほ か に,こ
り高 速 な
の よ うな並列化 の
技術 が不可 欠で あ ろ う. 8.4.3統
合 型 シ ミ ュ レー シ ョン 技 術
計 算 時 問 領 域 の 異 な る解 析 プ ロ グ ラム 間 で デ ー タ 通 信 に よ り連 系 を 行 い,解 時 問 領 域 を 拡 張 し て い く とい う 方 法 が 模 索 さ れ て い る.こ イ ク ロ秒 オ ー ダ のEMTPと
析対 象
れ は た と え ば,計 算 刻 み マ
ミ リ秒 オ ー ダ の 安 定 度 計 算 プ ロ グ ラ ム が 並 列 に 走 る もの
で,交 直 変 換 器 やFACTS(flexible
AC
transmission
system)機
器 の 部 分 をEMTPで
モ デ リ ン グ し,交 流 系 統 を安 定 度 計 算 プ ロ グ ラ ム で 解 析 す る と い っ た 用 途 が 考 え られ る.さ
ら に は,分
オ ー ダ の 電 圧 崩 壊 に至 る電 圧 安 定 性 ま で も含 め た,統
合 型 シ ミュ レ
ー シ ョ ンへ の 拡 張 が 考 え られ ,こ の 分 野 に つ い て は,今 後 と も動 向 を 見 て い く必 要 が あ ろ う.[実
例:マ
ニ トバHVDCリ
サ ー チ セ ン タ で]
事故後 数 サ イクル ∼数 秒 にお ける系統 の安定 性 を扱 う従 来 の安 定度 解析 と,長 時間 動 特性(LTD)解
析 とを統 合 して解 析 可能 な システ ム も開 発 され てい る.従 来 の安定 度
解 析 プ ロ グラ ムの解 析 時 間領 域 を拡張 して使 用 す る試 み も行 わ れ た が,こ の方 法 で は,電 圧 の効 果 や線 路潮 流 な どが考慮 され るが,発 電機 の位相 角 動揺 な どで表 現 され た微 分 方程 式 を解 くこ と とな り,長 時間解 析 を実施 す る場 合 の計 算量 は膨 大 な もの と な る.そ こで,最 新 の統 合型 シ ミュ レー シ ョンソフ トウ ェアにお い て は,潮 流 計 算 と な らんで数値 積 分 に対 す る解 法 に工夫 を凝 ら して い る. 最 近 のIPP導
入 が 遠 因 と も い わ れ て い る 長 時 間 動 特 性(LTD)に
の 解 析 で は,30∼120分
も の 長 い シ ミ ュ レー シ ョ ン を行 う た め,火
関 連 した 系 統 事 故 力 発電 所 にお け る
ボ イ ラ ー 系 ・燃 料 系 ・補 機 系 な どの 長 時 間 特 性 を積 極 的 に 取 り入 れ る 点 に 大 き な 特 徴 が あ る.さ
ら に,AFC・ELD・VQCな
ど の 中 央 給 電 シ ス テ ム か ら の 制 御 効 果 や,周
波 数 リ レ ー ・過 負 荷 リレ ー な どの 保 護 シ ス テ ム お よ び 電 源 制 限 ・系 統 分 離 な ど を 実 施 す る 緊 急 制 御 シ ス テ ム の 長 時 間 応 動 特 性 を 組 み 込 む 点 も顕 著 な 相 異 点 で あ る.長 動 特 性 解 析 で は,火
力 ボ イ ラ 系 ・燃 料 系 ・補 機 系 な ど の 長 時 間 モ デ ル の 作 成 が 重 要 で
あ る と思 わ れ る の で,こ ま た,長
時間
の 点 に つ い て 積 極 的 に 取 り込 ん で い る.
時 間 解 析 に不 可 欠 な 要 素 に,オ
ペ レー タ の 動 作 が あ る.す
な わ ち,10∼20
分 の 間 に人 間 が 何 らか の ア ク シ ョ ン を取 り得 る 余 裕 が 十 分 に あ る か らで あ る.可
変計
算 ス テ ッ プ に よ り計 算 精 度 を 保 証 し,オ ペ レ ー タ の あ らゆ る動 作 を任 意 の 時 間 の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に お い て 実 行 で き 得 る とい う機 能 を備 え て い る.こ 法,イ
ン タ ー フ ェ イ ス,モ
す る必 要 が あ る.[実
れ に は,積 分 計 算 手
デ ル ラ イ ブ ラ リ,大 規 模 シ ス テ ム の 取 り扱 い に お い て検 討
例:EUROSTAG]
8.4.4独
立 系(IPP)の
導 入評価 および運用 支援技術
ア メ リカ で は,新 規 電 源 に 対 す るIPPの の 約10%,発
占 め る 割 合 は,発 電 電 力 量 で ア メ リ カ全 体
電 設 備 の 約 7%と い う よ う に 着 実 に 増 加 し て お り,こ れ に伴 い 電 力 会 社
に よ る 発 送 配 電 か ら小 売 り まで の 一 括 運 営 とい う “垂 直 統 合 型 の 独 占 市 場 ” か ら,発 電 ・送 電 ・配 電 ・小 売 り の “分 離 型 の 自 由 市 場 ” へ と確 実 に 変 化 し て い る.
この よ うな状 況 の 中,送 電 線 を所有 す る電力 会社 で は,電 源 開発 の長期 的 な見通 し が 立 たな いた め,送 電線 に対 す る長期 的視 野 に基 づ いた投資 を控 え,既 存 の送 電線 の 能 力 を限界 まで使 用す る傾 向 にあ る.現 状 で は,電 力会 社 の側 でIPPに 対 して無効 電 力 の供給 や系統 電圧 の維 持 につ いて の技術 的 要求基 準 を定 め,発 電計 画 を提 出 させ, 一定 の基準 を満た さないIPPと は接続 しな い とい った対 策 が と られ てい る.特 に,ア メ リカで は,こ の ような電気 事業 の規 制緩和 に伴 う諸 問題 と現 象 を解 明 す るた めの さ ま ざまな研 究 開発 がみ られ る. 送 電 線 の 負 荷 状 況 を デ ュ レ イ シ ョ ン ・カ ー ブ で 表 現 す る こ と に よ り,ピ ー ク 時 だ け で な く全 需 要 断 面 で の 送 電 線 の 余 裕 を計 算 し,効 率 的 な 送 電 線 の運 用 が で き る よ う な 支 援 ソ フ トウ ェ ア が 開 発 され て い る.[実 今 後 は,さ
ら に規 制 緩 和 が 進 み,送
例:PTI社,TOPS]
電線 に対 して発電 事業者 や需要家 が 自 由に接続
で き る オ ー プ ンア ク セ ス が 実 現 す る と考 え られ,な か で も カ リ フ ォ ル ニ ア 州 で は2002 年 まで に 完 全 な小 売 り託 送(需 要 家 が 供 給 元 を 自 由 に 選 択 で き る)を 実 現 す る 予 定 で あ る.そ の 際 に,IPPと
電 力 会 社 間,ま
者(ISO:independent
system
う に な る.こ
のISOは,最
た は 各IPP間
operator)が,電
の 公 平 を保 つ た め,独 立 系 統 運 用
力 会 社 か ら独 立 し て 系 統 を運 用 す る よ
終 的 に は ア メ リカ 全 体 で20∼30程
度 に な る と考 え られ て
い る. この と き,同
じ系 統 に接 続 す る複 数 の 電 力 会 社 やIPPに
対 して,系 統 に 関 す る 情 報
を 公 平 に 収 集 ・発 信 す る た め の シ ス テ ム が 必 要 と な る.連 邦 エ ネ ル ギ ー 規 制 委 員 会 で は,こ
の よ う な 目 的 の シ ス テ ム と して,送
電 線 同 時 情 報 公 開 シ ス テ ム(OASIS:open
access
same-time
提 唱 して お り,実 際 に は 系 統 を構 成 す る電
information
system)を
力 会 社 が 共 同 で 開 発 して い る. この よ う な オ ー プ ンア ク セ ス が 実 現 した 系 統 を 運 用 す るた め に は,新 ェ ア が 必 要 で あ る.た
と え ば,EPR,(Electric
Power
Research
し い ソ フ トウ
Institute)で は,安 定
度 ・電 圧 安 定 性 の 両 面 で セ キ ュ リ テ ィ ・ア セ ス メ ン トの た め の プ ロ グ ラ ム を 開 発 中 で あ り,こ れ は,2OOO母
線3000ブ
ラ ンチ の 大 規 模 系 統 に つ い て 系 統 の 運 用 限 界 を20分
間 隔 で 計 算 す る こ とを 目標 に して い る.ワ
シ ン トン大 学 で は,IPPが
接 続 され た系統
の 周 波 数 制 御 の 手 法 と し て,接
続 点 の 潮 流 を 連 系 線 潮 流 の よ う に 制 御 す る 手 法 を提 唱
し て い る. 日本 の 状 況 を 考 え る と,今 回 応 募 したIPPの れ ば ま だ 小 さ い の で,当 れ て い な い.し
規 模 は100万kWと
系 統 全 体 か らみ
面 は系 統 情 報 の収 集 ・発 信 シ ス テ ム の必 要 性 は特 に 問 題 と さ
か し,今 後 規 制 緩 和 が 進 む こ とが 予 想 され,IPPが
い 将 来 に ア メ リカ と同 様 に 電 力 会 社 とIPP間
増 え て くれ ば,近
で の情 報交 換 の た めの シス テム が 必 要
に な っ て く る と思 わ れ る.た だ し,日 本 の 規 制 緩 和 は ア メ リ カ と同 じ ス テ ッ プ で 行 わ れ る わ け で は な い.こ IPP間
れ に備 え て,日
本 の 電 力 事 情 の 変 化 を 先 読 み し,電
で 交 換 す る系 統 情 報 の 形 式 の標 準 化 を働 き か け る と と も に,そ
力 会社 と
の 標 準 に基 づ く
デ ー タベ ー ス の 構 築 を 進 め る こ とが 必 要 で あ る と思 わ れ る.
8.4.5
緊急時給電指 令の公平性の 検証技術
産 業 社 会 の情 報 化 の 進 展 に 伴 い,高
品 質 な電 気 供 給 に 対 す る社 会 的 要 請 は 年 々 高 ま
り,停 電 の み な らず 電 圧 ・周 波 数 の 変 動 が 社 会 に与 え る 影 響 は従 来 に も ま して 大 き く な っ て い る.こ 計 算,電
の た め,電 力 設 備 の 計 画 や 日 々 の 運 用 に 対 して は,潮 流 計 算,安
定度
圧 解 析 な どの シ ミュ レ 事 シ ョ ン ソ フ トウ ェ ア を使 用 して 多 面 的 な 現 象 解 析 を
行 っ て い る.一 方,将
来 の 新 技 術 の 導 入,系
統 構 成 の 変 化,想
定 事 故 に対 し て も,シ
ミ ュ レー シ ョ ン技 術 を駆 使 し,保 護 ・制 御 装 置 の 高 度 化 や 運 転 技 術 向 上 の た め の 事 前 解 析 が 不 可 欠 で あ る. ま た,分
散 型 電 源 の 電 力 系 統 連 系 へ の 早 期 実 現 の た め に,各
の 課 題 の 抽 出 と そ れ ら の解 決 策 の 検 討 が 進 め ら れ て い る.そ 分 散 電 源 の 技 術 水 準 の 内外 調 査,分
所 で,連
系 にあた って
こで の 主 な課 題 と し て,
散 電 源 系 統 連 携 技 術 要 件 の 設 定,系
統 連 系 シ ミュ
レ ー シ ョ ンお よ び 連 系 シ ス テ ム 案 の 策 定 等 が 重 要 事 項 と して あ げ られ る.特
に,分
散
型 電 源 の 連 系 あ る い は新 し い電 子 制 御 機 器 の 導 入 な どが 進 ん だ と き に は,系 統 に発 生 す る 諸 現 象 も さ ら に複 雑 に な る と と も に,新 発 生 も懸 念 され,現
た な 環 境 条 件 下 で起 き る 未 経 験 な 現 象 の
実 の 機 器 特 性 を反 映 し た 系 統 解 析 と シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 技 術 の 開
発 ・適 用 検 証 が 強 く要 請 さ れ て い る. また,電
力 系 統 に現 れ る 代 表 的 な 系 統 現 象 は,図8.1で
示 した よ う に マ イ ク ロ秒 の
オ ー ダ の き わ め て 早 い 現 象 か ら,数 時 間 に わ た る よ う な長 周 期 動 的(LTD:long dynamics)現
象 と幅 広 く分 布 して い るた め,こ
term
れ ら を統 合 的 に 解 析 で き る シ ミュ レ ー
シ ョ ン技 術 の 開 発 が 望 まれ て い る. さ ら に,電 気 事 業 の規 制 緩 和 に 伴 い,発 電 部 門 の 自 由 化,卸 託 送 の 導 入,さ 小 売 託 送 の 部 分 自 由化 等 が 進 め られ,電
ら に は,
力 系 統 シ ミ ュ レー シ ョ ン技 術 に も新 た な 要 求
が 顕 在 化 し て き た.す
な わ ち,給 電 指 令 の 公 平 性 の 技 術 検 証 の 問 題 で あ る.電 力 系 統
に 接 続 し,電 気 事 業 を営 む もの(IPPあ
る い はPPS)は,電
力 系 統 運 用 者 の 事 故 時 ・混
雑 時 お よ び エ ネ ル ギ ー セ キ ュ リ テ ィ確 保 の た め の給 電 指 令 に従 う こ と が 定 め ら れ た. しか し,そ
の よ う な 給 電 指 令 は,電 力 会 社 と そ の 他 参 入 者 の 発 電 設 備 お よ び 需 要 家 に
対 して 公 平 に な さ れ な け れ ば な らな い.そ
こで,公
平 性 に 関 す る紛 争 に あ た っ て は,
技 術 的 検 証 が 必 要 と な る. この よ う な 背 景 の も と に,内 外 に お い て 電 力 系 統 分 野 の 諸 現 象 解 析 の み な らず,新 た に 給 電 指 令 の 公 平 性 の 検 証 た め の 各 種 シ ミュ レー タ お よ び シ ミ ュ レ ー シ ョ ン ソ フ ト ウ ェ ア の 開 発 ・導 入 が 盛 ん に な っ て い る.こ ョ ン ソ フ トウ ェ ア は,主 た も の で,特
れ ら の シ ミ ュ レ ー タ お よ び シ ミュ レー シ
と し て諸 現 象 の 解 析(事 後 検 証)と 予 見(事 前 予 測)を 目 的 と し
に 正 常 状 態 の み な らず 安 全,設
備 防 衛 面 な ど か ら,事 故 な どの 実 際 に は
起 こせ な い 異 常 状 態 を も再 現 で き る機 能 お よ び 送 電 可 能 容 量 の 算 定,供 価 の 機 能 も有 す る こ とが 求 め られ て い る.
参考 文献 1) 電 気 協 同 研 究 第51巻
第
4号
2) 分 散 型 電 源 系 統 連 系 技 術 指 針,日
本 電 気 協 会,1993.
3) http://www.newenergyassoc.com/html/promo_div.html 4) http://www.pti-us.com/pti/software/psse/psse.htm 5) http://www.tsi.co.jp/package/eurostag/eurostag.htm
給 信 頼 度 の評
第 9章 分散電源連系と電圧管理技術
従 来,電 力 系統 は,電 力会 社 が各社 の管 轄 内の系 統 に対 して,信 頼 性 の高 い高品 質 な電 力 の供給 を 目的 と した計 画 ・運用 を行 っ て きた.ま た,こ のた め,大 規模 な設備 投 資 を行 って きて お り,結 果 として設備 余裕 が十 分 とられ た状 況 となっ てい る.し か し,自 由化 の進 展 に伴 い他社 か らの融通 電力,電 力託 送 の増 大,お よび配電 系統 にお け る分散 電源 の 導入 によ り,計 画 ・運用 に柔 軟性 が要 求 され,従 来 の検 討範 囲 を超 え た計 画 ・運 用 を考 慮 す る必要性 が で て きて い る.ま た,自 由化 に対 応 し電力価 格 を下 げ るた めに,現 状 の設 備利 用率 をあ げ,設 備投 資 をで きるだ け抑制 す る こ とが必 須 と なっ て きてい る.つ ま り,従 来 と比較 す ると,よ り柔軟 な計画 ・運 用が 望 まれ て,か つ設 備 の利 用率 をあ げて いか な けれ ば な らない とい う相 反 す る二つ の 目的 を同時 に達 成 す る こ とが必 要 となっ て きてい る. この ような背 景 にお い て,電 圧 品質 を保 持す るこ とは,電 力 エネ ル ギーの社 会性 か ら も電力 会社 の大 き な使 命 にな って い る.こ の た めに は,第 1に,送 電系 統 にお いて は,電 圧 品質 面 での 設備 余裕 を定量 的 に求 め る ことが重 要 とな る.設 備 利 用率 を あげ た柔軟 な運 用 ・計 画 で特 に問題 にな る と考 え られ る電 圧安 定性 解析 お よび さまざ まな 事故 を仮定 した場 合 の想定 事故 解析 によ る設備 余裕 の定量 化が 重 要な技術 とな る.第 2に,配 電 系統 にお いて は,こ れ まで,簡 略的 な計 算だ けが行 わ れ て きた系統 状態 の把 握 に対 し,複 雑 な機 器 ・負 荷特 性 を考慮 で きる潮 流計 算技術 を適 用 す る こ とが必 要で あ る.ま た,分 散電 源 の導 入 を考慮 した制 御機 器 の調整 方法 お よび風 力 な どの出力 変 動 へ の対 応 を可 能 とす る,新 しい電圧 制御機 器 で あ るパ ワーエ レク トロニ クス機器 の 従 来 の制 御機 器 との協調 制御 が重 要 な技術 とな る.
9.1
送電系統の電圧安定性解析による管理
近 年,1980年
代 の 多 くの 電 圧 不 安 定 性 現 象 を き っ か け に,電 力 系 統 に お け る電 圧 安
定 度 監 視 業 務 の 重 要 性 が 高 まっ て い る.電 圧 安 定 度 の 判 定 は,余 物 理 量 で 得 られ る と い う メ リ ッ トか ら,一 般 にP-Vカ
裕 がMW値
とい う
ー ブ を作成 す る こ とに よっ
て 行 わ れ て い る.本 節 で は,送 電 系 統 の 電 圧 安 定 性 解 析 の 基 本 技術 で あ るP-Vカ を作 成 す る た め の連 続 型 潮 流 計 算(CPFLOW:continuation
power
ーブ
flow)に つ い て述
べ る.
9.1.1
連続型潮 流計算
(1) Continuation P-Vカ
Methodの
概要
ー ブ を数 学 的 に 考 え て み る と,方 程 式f(x)=0に
入 す る こ と に よ っ てf(x,λ)=0の
対 し,パ ラ メ ー タ λ を導
解(平 衡 点)の 軌 跡(移 動)を トレ ー ス す る こ と に相
当 し て い る.こ の よ う な平 衡 点 の 移 動 の トレ ー ス に対 し,1930年 す る こ と に よ っ て,前 を求 め るembedding これ は,カ
の 平 衡 点 の状 態 変 数 量 を初 期 値 にす る こ と に よ っ て 次 の 平 衡 点 algorithmsが
研 究 さ れ た.
ー ブ上 の 点 を 離 散 的 に 求 め て い る こ と に相 当 して お り,カ ー ブ 自体 を求
め て い る わ け で は な い.現 状,主
に利 用 さ れ て い る 潮 流 計 算 に よ るP-Vカ
荷 な ど の増 加 を λ と したembedding
algorithmの
点 の カ ー ブ 自体 を ト レー ス す る 方 式(continuation は じ め,旧
代 に λ を徐 々 に変 更
ソ連 のDavidenkoが
一 種 とい え る1).こ れ に対 し,平 衡 method)が1950年
年P-Vカ
代 か ら研 究 され
提 案 し た 微 分 方 程 式 に よ り トレ ー ス す る 方 法 を 中 心
に,多 くの 工 学 分 野 に 導 入 さ れ は じめ て い る.電 力 分 野 で も1980年 さ れ て い る が,近
ー ブ は負
代 か ら導 入 が 研 究
ー ブ作成 分 野 に もアメ リカを 中心 に導 入 研究 が行 われ
て い る2).わ が 国 に お い て も実 用 的 な シ ス テ ム が 開 発 さ れ つ つ あ る3,4). (2)
Continuous
Methodを
用 い たP-Vカ
ー プ 作 成 手 法(連 続 型 潮 流 計
算)の 概 要 潮 流 方 程 式 は 以 下 の 式 で 表 現 で き る.
(9.1) こ こで,λ ∈R1:変 式(9,1)は
1パ ラ メ ー タ の 非 線 形 シ ス テ ム と い え る.電 力 系 統 で は,1 パ ラ メ ー タ の
シ ス テ ム は,た す る.こ
化 に対 す る制 御 パ ラ メ ー タ
とえ ば 一 つ の 負 荷 母 線 に お け る有 効 ま た は無 効 電 力 負 荷 の 変 化 に 相 当
の よ う な 負 荷 や 発 電 量 の 変 化 に よ る安 定 平 衡 点 の位 置 の 変 更 を ト レー ス し て
い く に は,以
下 に示 す 方 法 が 用 い られ る.λ に 関 し式(9.1)を 微 分 す る と,
(9.2) こ こ で,
(9.3)
式(9.2)をdx/dλ
に つ い て 解 い て,
(9.4) 式(9.4)を 積 分 す る こ と に よ っ て 区 間[λ0,λ1]にお け る解 カ ー ブx(λ)を で き る.fx(x,λ)が
逆 行 列 を も つ 限 り は,(x0,λ0)を
理 に よ っ て 保 証 さ れ て い る.式(9.4)にpredictor-corrector(CP)法 よ り,P-Vカ
ー ブ が 求 め られ る.し
か し,実 際 に は,ノ
件 に起 因 す る数 値 的 な 困 難 さ を 解 決 す る た め に,以
得 る こ とが
と お る唯 一 の 解 の 存 在 が 陰 関 数 定 を適用 す る こ とに
ー ズ ポ イ ン ト付 近 で の 悪 条
下 の よ うな 拡 張 が 必 要 で あ る.
(3) 悪 条 件 性 の 消 去 初 め に λ を他 の 状 態 変 数 と し て扱 う.
xn+1=λ(9.5) 第 2 に,新
し い パ ラ メ ー タ と し て 解 カ ー ブ 上 にarclengthsを
導 入 す る.
x=x(s),λ=λ(s)=xn+1(9.6)
arclengthsに
沿 っ た ス テ ッ プ サ イ ズ に よ り次 の制 約 が 生 じ る.
(9.7) 第 3に,次
のn+1個
の 未 知 数x,λ
に対 す るn+1次
元 の 方 程 式 を 解 く.
(9.8) (9.9) 上 記 の拡 張 した 潮 流 方 程 式 は ノ ー ズ ポ イ ン トに お い て も 良 条 件 で あ る.こ
の拡 張 され
た潮 流 方 程 式 を 解 く こ と に よ り,ノ ー ズ ポ イ ン トに お け る数 値 計 算 上 の 問 題 が な くP
図9.1
連 続 型 潮 流 計 算 の フ ロー チ ャ ー ト
図9.2
Predictor-Correctorを
用 い た 連 続 型 潮 流 計 算 概 念 図
表9.1 従 来法 と連続型潮流計算 の比 較 手法
潮流 計算 による方法
項目
連続型潮流計算 による方 法
(従来法)
カーブの生成方法
離散 的な負荷量 に対す る潮流計算 初 期 潮 流 解 か らカ ー ブ を トレー ス す る.
値 を結 ぶ. ノー ズ ポ イ ン トに
ノ ー ズ ポ イ ン トに お け る解 は得 ら
ノ ー ズ ポ イ ン トにお け る問 題 は ま
お け る収 束 困 難 さ
れ な い.潮
っ た くな い.
流 解 を複 素 数 化 す る こ
とに よ り解 を 得 る こ と は可 能.
制御機器の考慮
離散 負荷値の間で制御機器が動作 連 続 的 に カー ブ を トレー ス し て い した場 合,正 確 な カー ブを描 くこ る た め,制 御 機 器 動 作 を考 慮 し正 とが不可能.
-Vカ
確 に カ ー ブ を描 くこ とが で き る.
○
△
総合評価
ー ブ を トレ ー ス で き る.以 上 の シス テ ム フ ロ ー を 図9.1に
に よ るP-Vカ
ー ブ の 作 成 の 概 念 を 図9.2に
連 続 型 潮 流 計 算 に よ る方 法 の 比 較 を 表9.1に
9.1.2 (1)負
P-Vカ
来 の潮 流計 算 を用 い た 方法 と
あ げ る.
荷 のシ ナ リオ 定 ノ ー ドに対 し,PQ負
く シ ナ リオ が 用 い られ る.こ
の 場 合,一
負 荷 を 一 定 の 割 合 で増 加 さ せ る場 合,ま
荷 値 を一 定 の割合 で 増加 させ て い
つ の 負 荷 の み を増 加 さ せ る 場 合 や,す た,一
べて の
定 時 間 間 隔 で 負 荷 増 加 率 を変 化 さ せ る
ま ざ ま な シ ナ リオ が 考 え られ る.し た が っ て,負
さ れ るP-Vカ る.
た,CP法
ー ブ の シ ナ リオ 作 成
潮 流 計 算 に お け るPQ指
な ど,さ
示 す.従
示 す.ま
ー ブ に大 き な 影 響 を 与 え るた め,シ
荷 の シナ リオの決 定 が作成
ナ リオ の 設 定 が 重 要 な 問 題 と な
(2) 発 電 機 の シ ナ リオ 発 電 機 は,負
荷 の 増 加 に伴 い 需 給 バ ラ ン ス を と る よ うに,出
要 が あ る.現 実 の 運 用 に お い て は,経 る.し
か し,P-Vカ
た め,現
力 を 増 加 させ て い く必
済 負 荷 配 分 に 基 づ く需 給 バ ラ ン ス が 行 わ れ て い
ー ブ の作 成 に お い て は,負 荷 は均 一 に増 加 して い く こ と に な る
状 の 運 用 の 経 済 負 荷 配 分 の 制 御 と は合 わ な い.し
た が っ て,一
般 的 に は,ス
ラ ッ ク 発 電 機 も含 め初 期 の 出 力 配 分 と同 様 に 出 力 増 加 分 も配 分 し て い く方 法 な どが 利 用 さ れ て い る.ま た,発 電 機 のPmax,Qmaxに
つ い て も考 慮 す る必 要 が あ る.こ の 考 慮
方 法 に つ い て も検 討 が 必 要 で あ る が,一 般 的 な 方 法 と して は,Qmaxに 線 の 指 定 がPVか
らPQに
変 更 し,Q
をQmax値
Pmaxに 達 した 発 電 機 の P 増 加 を 固 定 さ せ,他
達 し た 場 合,母
に 固 定 す る.ま たPmaxに
つ い て は,
の 発 電 機 で 増 加 分 を初 期 出 力 か ら 再 配
分 す る 方 法 な どが 利 用 さ れ る. (3) OLTC,SC,SVCな
ど の シ ナ リオ
これ ら の機 器 は,電 圧 無 効 電 力 制 御 に 利 用 さ れ る.実 際 の 制 御 に お い て は,こ の 機 器 は,積
分 制 御 な ど が 用 い ら れ て い る が,P-Vカ
擬 に な る た め,一
9.1.3
れ ら
ー ブ の 作 成 は静 的 な 特 性 の 模
般 的 に は あ る 電 圧 に達 し た ら即 時 に 動 作 す る よ うな モ デ ル と す る.
筒 単 な シ ミ ュ レー シ ョン に よ る 比 較
こ こ で は,簡
単 な シ ミュ レ ー シ ョ ン を通 して 潮 流 計 算 を 用 い る従 来 法 と連 続 型 潮 流
計 算 に よ る 方 法 を比 較 す る. (1)シ
ミ ュ レー シ ョン 条 件
図9.3に
例 題 系 統 を示 す.ノ ー ド3,4の
て い く.な お,こ
負 荷 をpf=0.9で
こ で は簡 単 の た め 発 電 機 のPmax,Qmaxは
図9.3
一 定 の増 加 率 で 増 加 させ 考 慮 し な い.
例 題 系統
(2) シ ミ ュ レー シ ョ ン 結 果 図9.4,図9.5に
そ れ ぞ れ,従
カ ー ブ 作 成 結 果 を 示 す.図
来 法 お よ び 連 続 型 潮 流 計 算 に よ る ノ ー ド 3のP-V
を見 る と明 らか な よ う に,従 来 法 で は カ ー ブ が 得 られ な い
場 合 で も,連 続 型 潮 流 計 算 に よ れ ば 収 束 の 問 題 も な くカ ー ブ を 作 成 で き る. な お,連 続 型 潮 流 計 算 を 用 い て,600ノ
ー ドの 実 系 統 に対 し て,各 種 制 御 機 器 を 考 慮
図9.4
図9.5
し,EWSを
9.2
連 続 型 潮 流 計 算 に よ る結 果
ー ブ を約15秒
で 計 算 し た 例 が あ る4).
送電系統の想定事故解析による電圧管理
従 来,わ た.し
用 い て 全 系 統 のP-Vカ
従 来 法 に よ る結 果
が 国 の 電 力 系 統 に お い て は,十 分 な 設 備 投 資 に よ り高 信 頼 性 を 実 現 して き
か し,設 備 投 資 抑 制 な どに よ る 機 器 利 用 率 向 上 や 今 後 予 想 さ れ る電 力 自 由 化 の
進 展 な ど に よ り,電 力 系 統 の 信 頼 度 に対 す るオ ン ラ イ ン ・オ フ ラ イ ン で の 定 量 的 な評 価 が 重 要 とな る. 一 般 的 に,信 頼 度 評 価 は,静 圧 信 頼 度 評 価(VSA:voltage
的 信 頼 度 評 価(SSA:static
security assessment),動
security assessment),電 的 信 頼 度 評 価(DSA:dynamic
security
assessment)の
3種 か ら構 成 さ れ る.信 頼 度 評 価 は一 般 に,想 定 事 故 を そ の
過 酷 度 合 い に よ っ て ラ ン ク 付 け し,過 酷 事 故 の み を選 択 す る想 定 事 故 選 択(ス ク リー ニ ン グ と も 呼 ば れ る)と,選 っ て 行 わ れ る.こ
択 した 過 酷 事 故 に 対 す る詳 細 評 価 の 二 つ の ス テ ッ プ に よ
こ で は,連 続 型 潮 流 計 算 に 基 づ きP-Vカ
下,Look-Ahead法)を
ー ブ を近 似 す る 手 法(以
用 い た想 定 事 故 選 択 と,連 続 型 潮 流 計 算 を 用 い た 詳 細 評 価 に
よ る電 圧 信 頼 度 評 価 手 法 に つ い て述 べ る.
9.2.1
Look-Ahead法
Look-Ahead法
5)
は,現 在 の運 用 状 態 と,ス テ ップ 幅 の 大 き い 連 続 型 潮 流 計 算 に よ っ
て 求 め ら れ た 負 荷 増 加 し た 運 用 状 態 の,二 を 2次 関 数 に よ り近 似 す る方 法 で あ る.こ
つ の 運 用 状 態 の み を 用 い てP-Vカ
ーブ
れ に よ り,1 回 の 潮 流 計 算 の ほ ぼ 2倍 程 度
の 計 算 量 で 潮 流 限 界 点 の 近 似 値 を 得 る こ と が で き る.本 手 法 の概 念 を 図9.6に
示 す.
図9.6は
制 御 機 器 動 作 な ど を考 慮 し通 常 の ス テ ッ プ幅 で 求 め た連 続 型 潮 流 計 算 に よ る
P-Vカ
ー ブ と,Look‐Ahead法
に よ り求 め た 近 似P-Vカ
在 の 運 用 状 態 に お け る潮 流 解(X1)の く と っ た 場 合 のP-Vカ
発 電 ・負 荷 状 態 をP1と
ー ブ 上 の 次 の 計 算 時 点(X2時
連 続 型 潮 流 計 算 に よ り次 の 計 算 時 点 の 潮 流 解(X2)を 点 を比 較 し て,最 け るP-Vカ
ー ブ を 示 し て い る.現 す る.ス
テ ッ プ 幅 を大 き
点)の 発 電 ・負 荷 状 態 を 求 め,
求 め る.こ
こで,X1時
点 とX2時
も電 圧 降 下 の は げ し い 負 荷 ノ ー ド(i)を選 択 し,こ の 負 荷 ノ ー ドに お
ー ブ を利 用 して 負 荷 余 裕 を近 似 す る こ と とす る.近 似 式 は 次 の よ うな 2
次 関 数 で 記 述 で き る.
P=a+bVi+cVi2(9.10) こ こ で,(Vi1,P1)お こ と に よ り,以
よ び(Vi2,P2)と,X2時
点 のP2に
関 す るV2の
微 分V2を
下 の 式 が 得 ら れ る.
図9.6
Look-Ahead法
と連 続 型 潮 流 計 算 に よ るP-Vカ
ーブの比較
用 い る
(9.11)
こ こ で,式(9.10)を
変 形 す る と 以 下 の よ う に な る.
(9.12) ノ ー ズ ポ イ ン ト(Vi=-b/2c)に
お い て は,負 荷 余 裕 は 以 下 の よ う に な る.
(9.13)
図9.7
Look-Ahead法
に よ る電 圧 信 頼 度 評 価 の フ ロ ー チ ャー ト
表9.2
した が っ て,式(9.11)に き,式(9.13)に
IEEE300母
線 系統 に対 す るラ ンキ ン グ結 果
お い て,Vi1,Vi2,Vi2が
よ り,負 荷 余 裕(Pvmax)が
わ か っ て い る た め,a,b,cが
計 算 で き る.た
V の 絶 対 値 を 用 い た 定 式 化 と な っ て い る.も
だ し,こ の 方 法 は 正 確 に は
し も,ノ ー ド iに お い て,角
変 化 が あ る な ら ば,上 記 の 手 続 き を角 度 に も行 う こ と に よ り,P-θ を求 め る こ とが で き る.こ
計算で
度 も大 きな
カ ー ブ上 のPθmax
の 場 合 は,負 荷 余 裕 は 以 下 の よ うな 式 に よ り求 め る こ とが
で き る.
(9.14) 以 上 の よ う に して 求 め られ た 負 荷 余 裕 値 は 近 似 値 で あ る が,こ 故 を 選 択 し(想 定 事 故 選 択),選
の近 似 値 か ら過 酷 事
択 さ れ た 過 酷 事 故 ご と に連 続 型 潮 流 計 算 に よ る詳 細 計
算 を 実 行 す る(想 定 事 故 評 価)こ と に よ っ て 高 速 か つ 精 度 よ く電 圧 信 頼 度 評 価 を行 う こ と が で き る.図9.7にLook-Ahead法
を 用 い た 電 圧 信 頼 度 評 価 の フ ロ ー チ ャ ー トを
示 す.例
と し て,表9.2にIEEE300母
線 系 統 に対 す る 電 圧 想 定 事 故 解 析 結 果 を示 す.
9.3
配電系統の電圧管理のための高速潮流計算
電 力 系統 に お ける潮流計 算 は,系 統解 析 の基礎 ツール として系統 運用 ・制 御 お よび 計 画業務 に広 く利用 され てお り,今 後本 格 化す る配電 自動 化 に おいて も,必 須 ツ ール とな る と考 え られ てい る.潮 流 計算 に関す る従 来 まで の研 究 は,電 力 系統 の 自動化 が
高圧 系統 の運用 ・制 御 を中心 に行 われ て きた こ とか ら,高 圧 ルー プ系統 を主 な対 象系 統 とし,ス パ ー ステ クニ ックに よ る連立 方程 式 の直接 法 を用 いた 高速化 を中心 に研 究 が行 わ れて きた6). これ に対 し,放 射状 系統 とな る配 電系 統 にお いて は,以 下 の理 由か ら放 射状 系統 に 特 化 した手法 の 開発 が必 要 とな ってい る. ①
放 射 状 系 統 は,fast decoupled
load flowや
ニ ュ ー ト ン ・ラ プ ソ ン法(以 後,NR
法)な ど の 高 圧 系 統 を 中 心 に 適 用 さ れ て き た 既 存 手 法 に と っ て はill-conditioned と な り,収 束 性 が 悪 く な る. ②
配 電 系 統 に お い て は,さ
ま ざ ま な 線 路 抵 抗 と イ ン ダ ク タ ン ス 比(以 後,r/x比)
か ら収 束 性 が 悪 くな っ て し ま う. ③
放 射 状 系 統 に お い て は,ル ー プ を含 ま な い 放 射 状 で あ る系 統 特 性 を考 慮 す る こ と に よ っ て,状
態 変 数 を減 らす こ とが 可 能 で あ る.
上 記 特 性 を 反 映 し,こ れ まで さ ま ざ ま な放 射 状 系 統 に 特 化 した 潮 流 計 算 手 法 が提 案 さ れ て き て い る.こ
れ らの 手 法 は,あ
る初 期 値 を 与 え た あ と に,系 統 の 最 上 流 ノ ー ド
か ら末 端 方 向 へ 各 ノ ー ドの 物 理 量 を計 算 す る 前 進 計 算(forward 上 流 ノ ー ド方 向 へ 状 態 変 数 の 修 正 量 を計 算 す る後 退 計 算(backward 収 束 計 算 に基 づ い て お り,backward-forward て い る.こ
sweep
method(以
末 端 か ら最
sweep)か 下,BF法)と
らな る 呼 ばれ
の よ う な 放 射 状 に 特 化 した 高 速 潮 流 計 算 を 用 い る こ と に よ り,配 電 系 統 の
状 態 を把 握 す る こ とが で き る.配 電 系 統 の 潮 流 計 算 は,キ 統 構 成,燃
sweep)と
料 電 池 の 最 適 配 置 問 題,負
が 検 討 さ れ て い る.こ
荷 融 通 問 題,電
ャパ シ タ 配 置 問 題,最
適系
圧 ・無 効 電 力 制 御 な ど へ の 適 用
こで は,文 献 7)の放 射 状 系 統 に特 化 した 潮 流 計 算 に対 し,ブ ラ
ン チ モ デ ル を 一 般 的 な π型 モ デ ル へ 変 更 し,さ ら に 一 般 的 な 放 射 状 系 統 へ 適 用 で き る 様 に拡 張 す る 方 法 に つ い て 説 明 す る 8).
9.3.1 (1)
放射 状系統 潮流計算 系統モデル
本 潮 流 計 算 で は,図9.8に
示 す 系 統 モ デ ル を 用 い る.以 下 に モ デ ル を詳 細 に説 明 す
る.
図9.8
配 電 系 統 の ネ ッ トワ ー ク モ デ ル
①
送 電線
送 電 線 は,一 般 的 な π 型 モ デ ル を 用 い る.送 電 線 に お け るイ ン ピ ー
ダ ン ス は 直 列 イ ン ピー ダ ン スZkで
表 現 し,対 地 容 量 は 線 路 の 両 端 に1/2ず
つ に分 け
て ア ド ミ タ ン ス 表 現 す る. ②
変 圧器
変 圧 器 も,送 電 線 モ デ ル と 同様 に π 型 等 価 モ デ ル を用 い る.
(9.15)
Zk=nZL
(9.16) (9.17)
Yk2=nY1 こ こ で,ZL:変 ③
負荷
圧 器 漏 れ イ ン ダ ク タ ン ス,n:変
成比
負 荷 と し て は,以 下 の 3種 類 を扱 う こ と とす る.ま
デ ル に お い て,負
た,お
のお ののモ
荷 電 力 は以 下 の よ う に計 算 で き る.
1)定 電力 負荷 (9.18) こ こ で,PLk,QLk:負
荷 電 力 の 有 効 ・無 効 分 固 定 値
2)定 電流 負荷 (9.19) こ こで,aLk,bLk:負 3)定
荷 電 流 の有 効 ・無 効 分 固 定 値
イ ン ピー ダ ン ス 負 荷
(9.20) こ こ で,rLk,jxLk:負 ④
荷 イ ン ピ ー ダ ン ス の 有 効 ・無 効 分 固 定 値
コジ ェネ レー タ
今 後,導
コ ジ ェ ネ レー タ は 定 電 力 を発 生 す る 機 器 と して 定 義 す る.
入 が 予 想 さ れ る燃 料 電 池 に つ い て も,定 格 容 量 で の 運 転 を 仮 定 す る こ とに よ
り扱 う こ とが 可 能 で あ る.
(9.21) こ こ で,PGk,QGk:コ
(2)潮 ①
ジ ェ ネ レー タ 容 量 の 有 効
・無 効 分 固 定 値
流方 程 式
1本 の ラ イ ン に 対 す る潮 流 方 程 式
送 電 線 お よ び 変 圧 器 を π型 モ デ ル と し,
上 記 負 荷 モ デ ル を利 用 す る こ と に よ り,図9.9の ノ ー ドkの 物 理 量 を 用 い て 下 流 側 の ノ ー ドk+1の で き る.
1ラ イ ン の 系 統 に お い て,上
流側 の
物 理 量 は 以 下 の よ う に 表 す こ とが
図9.9
1ラ イ ンの 簡単 な 系 統 例
(9.22)
(9.23)
(9.24) した が っ て,
(9.25) こ れ に よ り,放 射 状 系 統 に お い て は 上 流 側 ノ ー ドの 物 理 量 が 判 明 す れ ぼ,下 逐 次 的 に各 ノ ー ド物 理 量 を計 算 で き る こ とが わ か る.つ
流 方向 に
ま り,最 上 流 ノ ー ドで 該 当 ラ
イ ン に 流 れ 込 む 物 理 量 を状 態 変 数 とす る と,下 流 まで の 各 ノ ー ド物 理 量 は この 状 態 変 数 に よ り計 算 す る こ とが 可 能 で あ る. ②
一般 的 な放射 状系 統
文 献 7)では 主 要 ラ イ ン と そ の 分 岐 線 の み し か 扱 っ て い
な い た め,こ
態変数 次計算 となる場所
〓:末
端電力
図9.10
一 般 的 な放 射 状 系 統 とBF法
母 線 番 号=(レ ライ ン番 号,母
ベ ル, 線 番 号)
の 収 束 計 算 の概 念
れ を 一 般 的 な 放 射 状 系 統 へ 対 応 で き る よ う に 拡 張 す る.一
系 統 は図9.10の 仮 定 す る.上
→:状 →:逐
般的 な放 射状
よ う に表 す こ とが で き る.こ こ で,最 上 流 ノー ド電 圧 は 一 定 で あ る と
記 の 上 流 ノ ー ド と下 流 ノ ー ドの 関 係 を考 慮 す る と,各
ライ ンお よびそ の
分 岐 線 に 流 入 す る 電 力 量 の み を状 態 変 数 とす る こ と に よ り,他 の 物 理 量 は電 源 側 ノ ー ドか ら逐 次 計 算 に よ り求 め ら れ る こ とが わ か る.一 般 の 潮 流 計 算 に お い て は,す
べて
の ノ ー ド物 理 量 ま た は ブ ラ ン チ 物 理 量 を 状 態 変 数 とす る こ とか ら通 常 の送 電 用 潮 流 計 算 と比 較 す る と,こ た,ラ
の よ う な 方 法 が 状 態 変 数 を飛 躍 的 に 減 少 で き る こ とが わ か る.ま
イ ン末 端 か ら さ ら に 流 出 す る電 力 は な い と考 え られ るた め,こ
れが境界 条 件 と
な る. 以 上 よ り,一 般 的 な 放 射 状 系 統 に 拡 張 し た本 潮 流 計 算 に お け る等 式 制 約 は以 下 の よ う に記 述 で き る.こ こ で,最 上 流 電 源 母 線 に直 接 接 続 して い る ラ イ ン を レベ ル 0,レ ベ ル 0の ラ イ ン か らの 分 岐 線 を レベ ル 1の ラ イ ン,レ ベ ル 1の ラ イ ン か ら の 分 岐 線 を レ ベ ル 2の ラ イ ン とい う よ う に,レ ベ ル kか らの 分 岐 線 をk+1と
す る 各 ラ イ ン の レベ
ル を定 義 す る.
(9.26) こ こ で,i:レ kij:各
ベ ル 番 号,l:レ
ノ ー ド番 号, nij:レ
つ ま り,式(9.26)は,レ は レ ベ ル0∼1の
ベ ル 数,j:分
岐 線 番 号,lm:レ
ベ ル lの 分 岐 線 数,
ベ ル i,分 岐 線 j の ノ ー ド数
ベ ル iの ラ イ ン jの 末 端 か ら流 れ 出 す 電 力 す べ て の ラ イ ン に流 れ 込 む電 力
と最 上 流 ノ ー ド電 圧 の み の 関 数 で 表 現 で き る とい う こ と を 意 味 し て い る.ま
た,
この末 端 電力 は末 端 か ら流 れ 出す 電力 は ない た め,境 界 条 件 と して すべ て 0とな る
(図9.10参
照).上
記 式(9.26)は
以 下 の 式 に ま とめ ら れ る.
(9.27) (3)
潮流方程式の解法
こ こ で は,潮 流 方 程 式 の 収 束 計 算 方 法 に つ い て 述 べ る.収 束 計 算 手 法 は,文 あ るvery
fast decoupled
algorithmを
使 用 す る.こ
献 7)に
の 手 法 は,式(9.27)をNR法
で
解 く際 の ヤ コ ビ ア ン行 列 の 要 素 に 注 目 した 高 速 化 を行 っ て い る.式(9.27)をNR法
に
よ り解 く際 の 収 束 計 算 に お け る ⊿X の 計 算 式 は 以 下 の 式 で 与 え ら れ る.
(9.28) こ こ で,
実 系 統 に お け る 線 路 定 数 お よ び 定 格 電 圧 近 辺 で の 運 用 を考 慮 す る と,ヤ
コ ビア ン行
列 が 単 位 行 列 と各 ラ イ ンの 末 端 か ら流 れ 出 す 電 力 の 当 該 ラ イ ン の 分 岐 線 か ら 流 れ 出 る 電 力 へ の 感 度 の み の 項 に よ り近 似 で き る と い う解 析 結 果 か ら,以 下 の 式(9.29)が で き る.つ
ま り,式(9.28)は
導出
以 下 に よ り近 似 で き る7).
(9.29) こ こで,I:単 式(9.29)は
位行 列 各 ラ イ ンへ 流 れ 込 む 電 力 の 修 正 量 は,そ
の ライ ン末端 にお ける ミスマ ッ
チ 分 と,そ の ラ イ ン末 端 か ら流 れ 出 す 電 力 の 当 該 ラ イ ン の 分 岐 線 か ら流 れ 出 る電 力 に 対 す る感 度 か ら計 算 で き る こ と を示 し て い る.こ 計 算 に よ り,す で に計 算 さ れ て い る.ま
た,X
こ で,γ
に つ い て は末 端 か らの 後 退
の 修 正 式 は 以 下 と な る.
(9.30) 上 記 修 正 式 は,末 端 か ら最 上 流 ノ ー ド方 向 へ の 状 態 変 数 の 逐 次 修 正(後 退 計 算)に よ り実 現 で き る.ま た,各
ノ ー ドの 物 理 量 計 算 に つ い て は,最 上 流 ノ ー ドか ら末 端 方 向
へ の 逐 次 計 算(前 進 計 算)に よ り実 現 可 能 で あ る. つ ま り,前 進 計 算 と後 退 計 算 に よ る収 束 計 算 に よ り式(9.27)を とが 可 能 で あ る(図9.10参
照).こ
満 たす 解 を求 め るこ
こで,状 態 量 の 初 期 値 に つ い て は 電 圧 の フ ラ ッ トス
タ ー トを仮 定 し て 各 ノ ー ドの 負 荷 量 を求 め,こ
れ を末 端 か ら各 ラ イ ン ご と に 加 算 し た
値 を各 ラ イ ン に 流 れ 込 む 電 力 量(状 態 変 数)の 初 期 値 とす る.図9.11にNR法 法 の 計 算 時 間 の比 較 例 を あ げ る.な を行 い,さ
お,文
献 8)では,さ
ら にBF法
とBF
に特 化 した並 列化
ら な る高 速 化 を 達 成 し て い る.配 電 系 統 の 各 機 器 の モ デ ル 化 に つ い て は,
図9.11NR法
とBF法
の計算時間の比較
文 献 9)など を 参 照 され た い.
9.4
電圧制御機器の最適整定
配 電 系 統 の 電 圧 制 御 は,従 来,変 る線 路 電 圧 降 下 補 償 器(line
drop
の 途 中 に 設 置 す る 電 圧 調 整 器(step れ て き た.一
方,近
電 所 の 送 り出 し電 圧 を 負 荷 の 状 態 に応 じ て 調 整 す compensator:LDC)つ voltage
き の 変 圧 器 や,高
regulator:SVR)を
圧 配電 線
利 用 した調 整 が行 わ
年 の 配 電 系 統 に お い て は 規 制 緩 和 の 進 展 に伴 い分 散 電 源 の 導 入 が
進 め られ て お り,分 散 電 源 か らの 逆 潮 流 に よ る新 た な 影 響 に よ り,電 圧 管 理 へ の さ ま ざ ま な 問 題 が 考 え られ る.そ
こで,分
散 電源 連系 の有 無 お よび負荷 の状態 に関わ らず
系 統 電 圧 が つ ね に 規 定 値 範 囲 に 収 ま る よ う に,各
電 圧 制 御 機 器 の 整 定 値 を 設 定 す る必
要 が あ る.こ の 電 圧 制 御 機 器 の 各 整 定 値 の 設 定 は,従
来,配
電 変 電 所 か ら負 荷 末 端 方
向 に 電 流 が 流 れ る こ と を前 提 と し て 確 立 さ れ た 計 算 式 に よ り整 定 さ れ て きた が,分 電 源 の 連 系 に よ る 配 電 系 統 内 に 発 生 す る 電 圧 変 動 を考 慮 す るた め に は,新
散
た な整 定方
式 を 確 立 す る 必 要 が あ る. 本 節 で は,分 散 電 源 連 系 に よ る電 圧 変 動 を 考 慮 した 新 た な 整 定 方 式 と して,配 統 に 設 置 さ れ た 各 電 圧 制 御 機 器(LDCお 状 態 変 数 と して 扱 い,離
search(以
各 整 定 値 の整 定 可 能 な 値 を離 散
散 型 変 数 を 用 い た 組 み 合 わ せ 最 適 化 問 題 と し て 定 式 化 し,モ
ダ ン ヒ ュ ー リ ス テ ィ ッ ク 手 法(modern tabu
よ びSVR)の
電系
下,RTS)10)お
heuristic以 下,MH)の
一 つ で あ るreactive
よ び 2段 階 列 挙 法 を組 み合 わ せ た 最 適 整 定 方 式 に つ い
て 述 べ る11).本 方 式 の 特 徴 を 以 下 に あ げ る. ①
分 散 電 源 が 連 系 され た 系 統 に 設 置 され た 電 圧 制 御 機 器 に対 し て 準 最 適 な 整 定 が 可 能 で あ る.
②
各 電 圧 制 御 機 器 の 制 御 対 象 範 囲 を 考 慮 し整 定 範 囲 を 限 定 す る た め,最
適 整定 候
補 と して考 え る整 定値 の組 み合 わせ数 の 削減が 可能 で あ る. ③
整定 値 刻 み を調 整 し,列 挙 法 に よる最適 整定 値 の探索 過程 を 2段 階 に分 け る こ とで,探 索効 率 を高 めて い る.
本手 法 は,実 配 電 系統 を模擬 した モデ ル系統 におい て,最 適整 定値 を求 め る こ とが 可 能 で あ る ことを確認 した.
9.4.1
最 適整定 問題の定式化
(1)前
提 条件
こ こで は,一 般 的 な 配 電 系 統 を 想 定 し て 以 下 の デ ー タ が 入 手 可 能 で あ る と仮 定 す る. ①
各 制 御 機 器 の整 定 値 お よ び 範 囲
②
変 電 所 の 送 り出 し電 流 ・電 圧
③
各 区間 の大 口需要家 の契約 容量
④
各 区 間 の 線 種 と距 離(イ ン ピー ダ ン ス)
な お,配
電 系 統 に接 続 さ れ た各 負 荷 は送 り出 し電 流 と契 約 容 量 を用 い た按 分 を 利 用
し計 算 で 求 め る.こ
の 方 法 で は,ま
ず,当
該 フ ィ ー ダ 全 体 の 契 約 容 量 と各 負 荷 点 の 契
約 容 量 に よ り,当 該 フ ィ ー ダ を全 負 荷 量 を 1 と し た と きの 各 負 荷 点 の割 合 を計 算 し て お く.そ
し て,計
測 され た 送 り出 し電 流 を 計 算 し て お い た 各 負 荷 点 の割 合 で 比 率 配 分
して 負 荷 量 を 求 め る.こ
の 方 法 は,各
仮 定 して い る こ と に な るが,現
在,配
事 は 困 難 に な っ て い る.ま た,最
契 約 容 量 に応 じ て 負 荷 が 使 用 さ れ て い る こ とを 電 系 統 で は計 測 点 が 少 な く,各 負 荷 量 を 求 め る
適 整 定 問題 は 配 電 系 統 の 計 画 問 題 の 一 つ で あ り,実
務 で 利 用 さ れ て い る 方 法 に 合 わ せ る とい う 意 味 で,こ を 求 め る こ と と した.ま
こで は こ の よ うな 方 法 で 負 荷 量
た,配 電 線 に 設 置 さ れ た 柱 上 変 圧 器 は 固 定 タ ッ プ と し,柱 上
変 圧 器 の タ ップ 調 整 は 行 わ な い こ と とす る. (2)状
態 変 数
以 下 の状 態 変 数(整 定 値 〉を用 い る.ま お,《
た,例
と して 一 般 的 な整 定 範 囲 も あ げ る.な
》 内 は 整 定 刻 み を表 す.
① LDC ・電 圧 基 準 値(100.0∼120.5V《0.5V》) ・不 感 帯(±1.0∼
±4.0%《0.2%》)
②SVR ・電 圧 基 準 値(粗 整 定95.0∼115.0V《5.0V》,微 ・不 感 帯(±1.0∼
整 定0.0∼4.5V《0.5V》)
±4.0%《0.5%》)
・イ ン ピ ー ダ ン ス(粗 整 定0.0∼20.0%《5.0%》,微
整 定0.0∼4.0%《1.0%》)
目 的関数
(3)
最 適 性 の評 価 に お い て,最 る.ま
た,負
も 重 要 な こ と は 系 統 電 圧 が 規 定 値 範 囲 に入 る こ とで あ
荷 の ば らつ きや 運 用 コ ス トの 最 小 化 を 考 え る と,系 統 電 圧 の 規 定 値 か ら
の 偏 差 の 最 小 化 お よ び ロ ス ミニ マ ム も考 慮 す る必 要 が あ る.以 上 を総 合 的 に評 価 す る 目 的 関 数 を 式(9.31)に
示 す.
(9.31) こ こで,l:考 ス,n:ノ
慮 す る負 荷 状 態 数,m:ブ
ー ド数,Vj:ノ
み 係 数,g(V,I):電 (4)
ラ ン チ 数,LOSSi:ブ
ー ド jの 電 圧,Vref:電
ラ ン チ iの 有 効 電 力 ロ
圧 規 定 値,wk:目
的 関数 の各項 の重
圧 ・電 流 制 約 逸 脱 量 の 絶 対 値 和
制 約条 件
系統 運 用上,以 下 の制 約条件 を満 た す必 要が あ る. ①
電 圧上 下 限制 約
各 ノ ー ドの電 圧 は規定 値範 囲 を超 え ない こ と.
②
線 路電 流上 限制 約
各 線路 電流 は線種 に よる最大 許容 電流 を超 えない こと.
以上 よ り,最 適 整定 問題 は上 記 の制約 条件 を満 た す範囲 で式(9.31)を 最小化 す る電 圧制 御 機器 の各整 定値 を求め る組 み合わ せ最適 化 問題 として定 式化 で きた.な お,対 象 系統 の電 圧 ・電 流値 の計 算 に は,9.3節 で述 べ たBF法
を用 い る.以 上 に よ り,最 適
整定 問題 は,離 散 型変 数 で表現 され た各電 圧制 御機 器 の整 定値(状 態変数)を 用 い た組 み合 わ せ最 適化 問題 として定式 化で きた.
9.4.2
Reactive
RTSは,Tabu
Tabu Search(以
Search(RTS)の 下,TS)12)の
概 要10)
機 能 を も と に,さ
ら に 探 索 領 域 を広 げ,探
索 上 の ル ー プ を な く し効 率 的 な 探 索 を 行 うた め にReactiveとEscapeと 追 加 し た もの で あ る.以 (1) Reaction TSで
は,タ
下 に,こ
の 二 つ の機 能 に つ い て 説 明 す る.
Mechanism
ブ ー リス トの 長 さが 探 索 効 率 に 影 響 を 与 え る こ とが 知 られ て お り,対
象 問 題 に 合 っ た 長 さ を決 定 す る必 要 が あ る.こ れ に対 し,RTSで に よ り,タ
い う機 能 を
は以 下の ような方法
ブ ー リ ス トの 長 さ を 自動 調 整 す る機 能 を有 し て い る.
・探 索 済 み の 解 は す べ て 保 存 し て お く. ・探 索 点 が 移 動 し た と き に,新 リス ト長 を長 くす る.も 場 合 は,リ
しい 探 索 点 が 以 前 に 探 索 され た 解 で あ っ た 場 合 は,
し,十 分 長 い 間,以
ス ト長 を短 くす る.
図9.12にReactionの
概 念 を 示 す.
前 に 探 索 され た 解 が 出 現 しな か った
図9.12
図9.13
(2)
Escape
従 来 のTSで
RTSのReactionの
RTSの
概 念
ア ル ゴ リズ ム
Mechanism は,探
索 上 の ル ー プ を避 け る の に 十 分 で は な い.こ
の ような状 況 に対
応 す る た め,Escape
Mechanismが
さ れ る状 態 の 数 が,事 し行 わ れ,探
導 入 され た.Escape
く り返 し探 索
ン ダ ム 探 索 が く り返
索 領 域 を 完 全 に変 更 す る機 能 を達 成 して い る.
RTSの
ア ル ゴ リ ズ ム を 図9.13に
9.4.3
最適 整定方式
(1)最
Mechanismは
前 に 設 定 し た し きい 値 を超 え た 場 合 に,ラ
示 す.
適 整定 問題 の特 徴
対 象 問 題 は,図9.14に 系 統 構 成,イ
示 す よ う に,系 統 条 件(電 源 電 圧,負
荷 値,分
散 電 源 出 力,
ン ピ ー ダ ン ス な ど)と 状 態 変 数 で あ る電 圧 制 御 機 器 の 整 定 値 か ら評 価 の
基 準 と な る電 圧 プ ロ フ ィー ル が 求 め る こ とが で き る順 問 題 と は逆 に,最
良の評 価 を得
る電 圧 プ ロ フ ィ ー ル か ら整 定 値 を 求 め る逆 問 題 と して 定 義 で き る.し か し,実 際 に は, 系 統 条 件 と整 定 値 か ら電 圧 制 御 機 器 の 制 御 の 結 果 と して 得 られ る タ ッ プ に よ っ て 電 圧 プ ロ フ ィー ル が 決 ま る こ とか ら,整 定 値 と電 圧 プ ロ フ ィ ー ル は タ ッ プ と い う 中 間 的 な
図9.14
図9.15
対 象 問 題 の概 念
最 適 整 定 問 題 の解 法 の概 念
値 を 介 し て 関 係 して い る こ と に な り,電 圧 プ ロ フ ィ ー ル か ら整 定 値 を 直 接 求 め る こ と は不 可 能 で あ る.こ
こで,整
定 値,タ
ッ プ位 置 お よ び電 圧 プ ロ フ ィ ー ル の 関 係 を 図9.
15に 示 す と,タ ッ プ位 置 に よ っ て 電 圧 プ ロ フ ィ ー ル が 決 ま る こ とか ら,電 圧 プ ロ フ ィ ー ル とタ ッ プ 位 置 は 1対 1対 応 の 関 係 に あ る と い え ,ま た,SVRが 通 し とな る場 合 や 電 圧 が 不 感 帯 内 に 含 ま れ る 場 合 な どで は,異 せ で あ っ て も,同
じ タ ッ プ位 置 と な り,同
逆 潮流 発生 時 に素
な る整 定 値 の 組 み 合 わ
じ評 価 値 を得 る整 定 値 の 組 み 合 わ せ が 多 数
存 在 す る こ とか ら,整 定 値 と タ ッ プ 位 置 は多 対 1対 応 の 関 係 に あ る とい え る.し っ て,整
たが
定 値 と電 圧 プ ロ フ ィ ー ル も多 対 1対 応 の 関 係 と な る こ とか ら,電 圧 プ ロ フ ィ
ー ル か ら整 定 値 の 組 み 合 わ せ を 求 め る こ と は 困 難 で あ る. この よ う に,最
適 整 定 問 題 は,通
常 の 組 み 合 わ せ 最 適 化 問 題 と異 な り,状 態 変 数 で
あ る 整 定 値 と評 価 値 が 1対 1対 応 とな らな い 特 殊 な 最 適 化 問 題 とな る.ま
た,同
じ評
価 値 を得 る状 態 変 数 の組 み合 わ せ が 多 数 存 在 す る と い う こ と は,最 適 解 の 探 索 過 程 に お い て 最 良 評 価 を 得 る 解 を 選 択 し探 索 点 を 更 新 し て い く各 種MH手 す る こ とが で き な い こ と を意 味 し,し た が っ て,最
法 を単純 に適 用
適 整 定 問 題 で は,整 定 対 象 とな る
電 圧 制 御 機 器 の 各 整 定 値 の す べ て の組 み 合 わ せ に対 し,評 価 値 を計 算 し最 良 評 価 を 得 る整 定 値 の 組 み 合 わ せ を列 挙 法 な ど に よ り求 め な けれ ば な らな い. しか し,各 整 定 値 の組 み合 わ せ 数 は,配 電 系 統 に 設 置 さ れ た 電 圧 制 御 機 器 の 台 数 に 比 例 し て 指 数 関 数 的 に増 大 す る た め,そ
の す べ て の 組 み 合 わ せ に対 し評 価 値 を 計 算 す
る に は莫 大 な 時 間 が 必 要 とな り,複 数 の 電 圧 制 御 機 器 の 最 適 整 定 値 を 求 め る こ とは 非 常 に 困 難 で あ る.電 圧 制 御 機 器 1台 の 整 定 値 の 組 み 合 わ せ 数 は,上 記 例 で 示 した 整 定 範 囲 で は,LDCで672と
お り,SVRで
は218750と
お り あ り,複 数 を 考 慮 す る 場 合 に
は,各 電 圧 制 御 機 器 の 組 み 合 わ せ 数 を乗 算 した 数(た と え ば,後 述 の例 題 で 示 すSVR2 台 の 場 合 で は,(218750)2=約4.8×1010と
お り)と な る.
以 上 の よ う な問 題 に対 し,こ
こで は,各 整 定 値 の 組 み 合 わ せ 数 を削 減 し最 適 整 定 値
の 探 索 効 率 を よ くす る た め,以
下 の 方 法 を用 い る.
(2) 整 定 範 囲 の 限 定 方 法 電 圧 制 御 機 器 の整 定 値 で あ る 電 圧 基 準 値 お よ び イ ン ピー ダ ン ス(r,x)は,各
電 圧制
御 機 器 の 制 御 対 象 範 囲 か ら以 下 の よ う に整 定 範 囲 を限 定 す る こ とが で き る. ①
イ ン ピ ー ダ ンス 整 定 範 囲 の 限 定
配 電 系 統 に設 置 さ れ た 電 圧 制 御 機 器 は,そ
の 設 置 地 点 よ り も下 位 系 統 側 に 設 置 され た 他 の 電 圧 制 御 機 器 ま で,ま
た は系統 の末 端
ま で を電 圧 基 準 点 と し て 考 慮 し て い る.こ れ よ り,こ の 区 間 の 線 路 イ ン ピ ー ダ ン ス を イ ン ピ ー ダ ン ス 整 定 範 囲 と し,整 定 範 囲 を限 定 す る. ②
電 圧基 準値範 囲 の限定 方法
上 述 の よ う に,最
適 整 定 問題 で は,各
電 圧制 御
図9.16 電 圧基準値整定範 囲の限定 の例 機 器 の タ ッ プ位 置 に お け る電 圧 プ ロ フ ィ ー ル と潮 流 解 に よ っ て 評 価 値 が 得 ら れ る.つ ま り,最 良 評 価 を得 る各 電 圧 制 御 機 器 の 最 適 タ ップ 位 置 を求 め れ ば,そ
の最適 タ ップ
位 置 に お け る 系 統 の 電 圧 プ ロ フ ィー ル が 判 明 し,電 圧 制 御 機 器 の 電 圧 基 準 値 の 整 定 範 囲 を求 め る こ とが で き る.具 体 的 に は,図9.16に
示 す よ う に,対
象 とす る負荷 状 態
(例 と し て,最 大 ・最 小 負 荷 状 態 の み を考 え る ケ ー ス を示 す.)に 対 し,最 適 な タ ッ プ 位 置 に お け る電 圧 プ ロ フ ィー ル を 求 め,電 圧 制 御 機 器 の 制 御 対 象 範 囲 に お け る 系 統 電 圧 の 上 下 限 値 を電 圧 基 準 値 整 定 範 囲 と し,整 定 範 囲 を 限 定 す る. 以 下 に,最 適 タ ッ プ位 置 の 探 索 に お い て 状 態 変 数 とな る各 電 圧 制 御 機 器 の タ ップ 位 置(タ ッ プ 比)例 を示 す.な 1)LDCタ
お,《
》 内 は,1 タ ッ プ の 刻 み 幅 を示 す.
ッ プ位 置(タ ッ プ比)
・1(92.5%)∼4(100.0%)∼7(107.5%) 2)SVRタ
《2.5%》
ップ 位 置(タ ップ 比)
・1(95.0%)∼5(100.0%)∼9(105.0%)
《1.25%》
こ の よ う に状 態 変 数 で あ る電 圧 制 御 機 器 の タ ップ 位 置 は離 散 変 数 で あ るた め,離 型 最 適 化 問 題 と して 定 式 化 し,MH手
法 の 一 つ で あ るRTSを
を求 め る こ とが 可 能 で あ る.こ れ は,図9.15に
用 い て最適 タ ップ位置
示 す よ う に タ ッ プ 位 置 の 空 間 と電 圧 プ
ロ フ ィ ー ル お よ び潮 流 の 空 間 は 1対 1対 応 で あ る た め,こ せ 最 適 化 問 題 をRTSで
散
の 関 係 を用 い て,組
解 く こ とが 可 能 で あ る こ とを 意 味 す る.以 下 に,電
み合 わ
圧 基 準値
整 定 範 囲 を 限 定 す る手 順 を 示 す. ■Step.1最
適 タ ップ 位 置 の 探 索
・式(9 .31)の 目 的 関 数 を最 小 化 す る よ う な 最 適 タ ッ プ 位 置 を,RTSを
用 い て求
め る. ■Step.2電
圧 基準 値整 定範 囲 の限 定
・対 象 と す る 負 荷 状 態 に 対 し,Step プ ロ フ ィ ー ル を 求 め,電
.1で 求 め た 最 適 な タ ッ プ位 置 に お け る 電 圧
圧制 御機 器 の制御 対 象範 囲 にお ける系統 電圧 の上 下 限
値 を電 圧基 準値 整 定範 囲 とす る. (3) 列 挙法 に よる 2 段階最 適整 定手 法 上記(1)で述 べ た よ うに,最 適 整定 問題 は,状 態 変数 であ る整定 値 と評 価値 が 多対 1 対 応 とな るた め,こ こで は列 挙 法 に よ り最 適整 定 を行 うこ と とした.し か し,上 記(2) の方法 を用 いて整 定値 範 囲 を限定 して も,複 数 の電圧 制御 機器 の最 適整 定 で は,整 定 値 の組 み 合わ せが 莫大 な数 とな り,最 適整 定値 を求 め る ことは非常 に困難 で ある.そ の た め,大 域 最適 性 は そ こな われ るが,整 定値 刻 み を調整 す る こ とで,最 適整 定値 が 含 まれ る範 囲 を狭 め,効 率 よ く最適整 定値 を求 め るこ とがで きる 2段階 の準 最適整 定 手法 を用 い る こ とと した.以 下 に列挙 法 に よ る 2段 階 最適整 定 手法 の手順 を示 す. ■Step.1 最適 整定 値 を含 む整 定 範囲 の絞 り込 み 限定 した整 定 範囲 に対 し,刻 み を粗 く調整 した整定 値 を用 い,列 挙 法 を実行 し最 適整 定 値 の含 まれ る整定 範 囲 をあ る程 度絞 り込 む. ■Step.2 最適 整定値 集 合 の探 索 Step.1に よ って絞 り込 んだ各整 定範 囲 に対 し,最 小 の刻 み を用 いて,再 度,列 挙 法 を実 行 し,式(9.31)を 最小 化 す る(最良評 価)整 定 値 の集 合(最 適整定 値集 合)を 求 め る. ここで,最 適 整 定値 が集 合 とな るの は,整 定 値 と評価 値 が多 対 1対応 の 関係 に あ り, 最良 評価 を得 る整定 値 の組 み合わ せが 多数存 在 す るた めで あ る.こ の最適 整定値 集合 か ら最終 的 な最 適整 定値 を選 択す る方 法 を以 下 に説 明す る. (4) 最 終 的な 最適 整定値 の 選択方 法 最 終的 な最適整 定 値 として は,(3)で 求 めた 最適 整 定値 集 合 の 中心 に近 い値 を選択 す る こ ととす る.例 と して,図9.17に
2次 元 にお け る最適整 定値 選択 の概 念 を示 す.
最 適整 定値 は,最 良評 価 を得 る各 整定 範囲 の 最大値 お よび最小値 との偏差 の二乗和 が最 小 とな る整定 値 とす る. (9.32)
図9.17
最 適 整 定 値 選 択 の概 念
こ こで,n:状 Ximax:最
態 変 数(整 定 値)の 数,Xi:最
適 整 定 値 候 補(最 良 評 価 を得 る整 定 値),
良 評 価 を得 る整 定 値 の 最 大 値, Ximin:最
(5)最
良 評 価 を得 る整 定 値 の 最 小 値
適 整 定 ア ル ゴ リズ ム
以 上 の 電 圧 制 御 機 器 に お け る 最 適 整 定 を実 現 す る ア ル ゴ リズ ム を以 下 に 示 す. ■Step.1
整 定 範 囲 の 限 定(上 記(2))
・各 電 圧 制 御 機 器 の 制 御 対 象 範 囲 を考 慮 し,イ
ン ピー ダ ンス整 定範 囲 を限 定 す
る. ・対 象 と な る負 荷 状 態 に対 し て 式(9.31)を
最 小 化 す る最 適 タ ップ 位 置 をRTSに
よ り求 め,最 適 タ ッ プ位 置 に お け る電 圧 プ ロ フ ィ ー ル お よ び 各 電 圧 制 御 機 器 の 制 御 対 象 範 囲 か ら電 圧 基 準 値 整 定 範 囲 を限 定 す る. ■Step.2
最 適 整 定 値 を含 む 整 定 範 囲 の絞 り込 み(上 記(3))
Step.1に
よ っ て 限 定 され た 各 整 定 範 囲 に 対 し,刻
み を粗 く調 整 した 整 定 値 を 用
い て 列 挙 法 を実 行 し,最 適 整 定 値 を 含 む 整 定 範 囲 を あ る程 度 絞 り込 む. ■Step.3
最 適 整 定 値 集 合 の 探 索(上 記(3))
Step.2に て,再
よ っ て 絞 り込 ん だ 各 整 定 値 範 囲 に 対 し,最
度,列
■Step.4
も細 か い 整 定 値 刻 み を 用 い
挙 法 を実 行 し,最 適 整 定 値 集 合 を 求 め る.
最 終 的 な 最 適 整 定 値 の 選 択(上 記(4))
Step.3で
求 め た 最 適 整 定 値 集 合 か ら式(9.32)を
最 小 とす る整 定 値 を 最 終 的 な 最
適 整 定 値 と し て 選 択 す る.
9.4.4
シ ミ ュ レー シ ョン によ る 検 証
(1) シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 条 件 ①
対象 系統
図9.18に
示 すSVRが
2台 設 置 さ れ て い る 実 配 電 系 統 を 模 擬 し
た モ デ ル 系 統 を用 い る. ②
系統 条 件
対 象 系 統 の 系 統 条 件 を 以 下 に あ げ る.な
お,式(9.31)の
目的関 数
に お い て 考 慮 す る 負 荷 状 態 は,電 圧 下 降 方 向 で 最 も き び し くな る最 大 負 荷 時 で 分 散 電 源 出 力 が 0 とな る 状 態 と,電 圧 上 昇 方 向 で 最 も き び し くな る最 小 負 荷 時 で 分 散 電 源 出 力 が 最 大 と な る状 熊 を 対 象 と す る.
図9.18
配電 系 統 モ デル
1) 配 電 線 亘 長 お よ び 線 種 終 区 間 の み 細 線(5φ 線)で,他 2)分
散 電源
は80㎜2硬
容 量 は2000kVAと
態 を対 象 とす るた め,受 3)対
配 電 線 亘 長 は10.5㎞
象負荷 状 態
と す る.配
電 線 の 線 種 は,最
銅 線 とす る. す る.な
お,電
圧 上 昇 方 向 で 最 も き び しい状
電 点 力 率 は1.0と す る.
対 象 とす る 負 荷 状 態 を 表9.3に
③ 目的 関 数 の 重 み 係 数
式(9.31)の
示 す.
目 的 関 数 の 重 み 係 数 は,電
圧 ・電 流 制 約 逸
脱 を し な い こ と を大 前 提 と し,電 圧 基 準 値 偏 差 の 最 小 化 に重 点 を お い た 評 価 とす る た め,W1=W2=1.0,W3=100.0に
設 定 した.な お,電 圧 基 準 値 偏 差 の 変 化 幅 に比 べ 系 統
ロ ス の変 化 幅 が 微 少 の た め,W1=W2と
して い る.
④ 検 証 条 件
以 下 の 二 つ の 項 目 に つ い て 検 証 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を行 う.
[ケ ー ス 1]提
案 法 用い た最適 整定 シ ミュレー シ ョン
対 し,最 適 整 定 値 を 求 め,従 [ケ ー ス 2]最
表9.3の
対 象負 荷状 態 に
来 法 に よ る整 定 値 と比 較 す る.
適 整定値 の最適 性 の検証 シ ミュレー シ ョン
各 負 荷 お よび分 散電
源 容 量 を ラ ン ダ ム に 変 化 させ た 系 統 状 態 に 対 し,従 来 の 整 定 値 お よ び 検 証 1で 求 め た 最 適 整 定 値 を用 い て,最
適 整 定 値 の 最 適 性 の 検 証 を行 う. 表9.3
対 象 とす る 負荷 状 態
(2)ケ
ー ス 1の シ ミュ レー シ ョン結果
表9.4に
現 在,電
力 会 社 で 利 用 さ れ て い る方 法 で 求 め た オ リ ジ ナ ル の 整 定 値,オ
ジ ナ ル の 整 定 範 囲,提 を示 す.な
お,不
案 法 に よ っ て 限 定 さ れ た 整 定 範 囲,お
感 帯 に つ い て は 整 定 範 囲 の 限 定 を行 っ て い な い の で,従
囲(±1.0∼ ±4.0%)の
来 の整定範
ま まで あ る.な お,2 段 階 列 挙 法 の 探 索 過 程 に お け る 最 適 整 定 値
を含 む整 定 範 囲 の 絞 り込 み の 際 に 用 い た 整 定 値 刻 み は,従 程 度 と した.ま た,式(9.31)の
来 の 整 定 値 刻 み の2∼3倍
目 的 関 数 を最 小 化 す る最 良 評 価 値 は0.36931で
の 最 良評 価 を 得 る整 定 値 の 組 み 合 わ せ 数(最 適 整 定 値 集 合 数)は 約4.3×105と あ っ た.対
リ
よ び最 終 的 な 最 適 整 定 値
あ り,こ お りで
象 と した 負 荷 状 態 に対 し,提 案 法 に よ り求 め られ た 最 適 整 定 値 と従 来 法 に
よ る 整 定 値 を 用 い た 場 合 の 重 負 荷 に 対 す る電 圧 プ ロ フ ィ ー ル 例 を 図9.19に に示 す よ う に,対
示 す.図
象 とす る負 荷 状 態 に対 し,従 来 の 整 定 値 を用 い た 場 合 に 比 べ,最
適
表9.4
オ リジ ナル 整 定 と提 案 法 に よ る 整 定 値
図9.19
最 大 負荷 時 の電 圧 プ ロ フ ィー ル
整 定 値 を 用 い た 場 合 の 方 が 系 統 電 圧 の規 定 値 か ら の 偏 差 を 改 善 で き,提
案法 の有効 性
が 確 認 で きた. (3)ケ
ー ス 2 の シ ミュ レー シ ョン結果
こ こで は,ケ
ー ス 1で 求 め た 最 適 整 定 値 の 最 適 性 を検 証 す る た め,ケ
と し た 負 荷 状 態(表9.3参
ー ス 1で 対 象
照)以 外 の さ ま ざ まな 負荷 状 態 に 対 し,従 来 の 整 定 値 と最 適
整 定 値 を 用 い た 場 合 の 評 価 値(式(9.31)の
考 慮 す る負 荷 状 態 数(l)を 1 と し て 求 め た 評
価)を 比 較 し た.対 象 とす る負 荷 状 態 は,分 散 電 源 が 連 系 さ れ た 対 象 系 統 に 対 し,総 負 荷 量 を 最 小 負 荷 か ら最 大 負 荷(330kW∼1000kW)ま か ら最 大 出 力(2000kVA)ま
で,お
で ラ ン ダ ム に変 化 させ た100ケ
よび分 散電 源 出力 をゼ ロ ー ス を 対 象 と し た.こ
の
総 負 荷 量 お よ び分 散 電 源 出 力 を ラ ン ダ ム に変 化 さ せ た さ ま ざ ま な 負 荷 状 態 に 対 し,従 来 の 整 定 値 と最 適 整 定 値 を用 い た 場 合 の 評 価 値 の 比 較 結 果 を表9.5に
示 す.
表9.5か
らわ か る よ う に,従 来 の 整 定 値 お よ び 最 適 整 定 値 に お い て 最 小 値 は 同 じ と
な る が,最
大 値 お よ び 平 均 値 で は,最
適 整 定 値 の 方 が 良 い 評 価 が 得 られ て お り,統 計
的 に みて提 案法 によ る最適 整 定値 の最 適性 が確 認 で きた.
表9.5 さ まざ まな負荷状態 に対 する評価値 の比較
9.5
配電系統の電圧制御機器の協調制御
現状 の配 電 系統 で は,線 路 電圧 を規 定 値範 囲 に維持 す るた め,負 荷 の変 動 に応 じて 変 電所 送 出電圧 を調 整 す るLDCつ
きの変 圧器 や,高 圧配 電線 の途 中 に設 置 す るSVR
な ど を利 用 した制御 が行 わ れて い る. 一 方,近 年,増 加傾 向に あ る風 力発 電 が配電 系統 に連 系 され る と発 電機 の 急激 な出 力 変動 な どの影 響 に よ り,過 渡的 な電 圧 変動 が発生 す る場合 が考 えられ る.し か し, SVRは
タ ップ の切 換 え頻 度 を抑 制 す るた めに不 感 帯 お よび数 十秒 ∼数 分 の 動作 時 限
を もって お り,従 来 の制御 方 法 の ままで は,過 渡的 な電 圧変 動 に対 して線路 電 圧 を規 定値 範 囲 に維持 す る こ とは非 常 に困難 で あ る. この ような過渡 的 な電圧 変動 へ の対策 には,高 速 に無効 電力 を調 整 し設置 地 点電圧 を一 定 に保 つ事 が可能 な静 電型 無効 電 力補償 装置(SVC)な か し,SVCの
どの設置 が有 効 で あ る.し
みで制 御 を行 うには大容 量 が必 要 とな り,コ ス ト面等 で問 題 が あ るこ と
か ら,各 制御 機器 を有効 に機 能 させ るた め,各 制 御機 器 の特性 を考 慮 した制 御 方式 を 開発 す る必要 が あ る13).本節 では,配 電 系統 に連 系 され た分散 電源 な どの 急激 な出力 変動 に伴 う過 渡的 な電圧 変動 に対 し,線 路電 圧 を規定 値範 囲 に維持 す る こ とが 可能 な 制 御 方 式 と して,既 存 の電 圧 制御 機 器(SVR)と
新 規 に設 置 す る電 圧 制 御 機 器(SVC)
の協 調制 御方 式 につい て述 べ る14).本方 式の 特徴 を以下 に述べ る. ①
各 制御機 器 間で制 御信 号 を送 受信 す るた めの通信 線 な どの設備 追加 を要 しな い ロー カル制 御 に よる方式 とした .
②SVCの ③
電 圧指 令値 を補 正 す る こ とで,SVRと
の協 調制 御 を可能 と した.
電 圧上 昇 時 お よび電 圧 下降 時 そ れ ぞれ に対 し,SVCの 電 圧 指令 値 を設 定 す る こ とで,必 要最 小限 の容 量 で管理値 逸脱 の解消 を可 能 とした.
本手 法 は,実 系統 を模擬 した モデ ル系統 におい て,急 峻 な電圧 変動 に対 し,線 路 電 圧 を規 定値 範 囲に維持 す る制御 の 基本機 能 を潮 流計 算 をベー ス とした シ ミュ レー シ ョ ンに よ り確認 した.
9.5.1
協調制御方式 の基礎検 討
(1) 電圧 制御 機器 の補 償分 担 配 電系 統 に設置 され た既存 のSVRは,タ
ップ の切換 え に数 十秒 ∼数 分 の 動作 時 限
を要 す るた め,過 渡 的 な電圧 変 動 に対応 で きな い.こ れ に対 し,新 規 に設 置す るSVC はSVRに
比 べ応 答性 が 高 い た め,協 調 を考慮 し ない と従来 はSVRが
緩 やか な電圧 変動 まで補 償 し続 けて し まい,SVRが
補償 して い た
動作 せ ず,過 渡 的な電 圧変 動 に常
時対 応 す るため に は大 容量 化 が必 要 とな って しま う. 以 上 の よ うな電 圧制御 機 器 の特性 の違 い に よる問題 点 を考 慮 し以下 の補 償分 担 とす る.
SVRの SVCの
(2)制
補償 分担 … …緩 やか な電 圧変 動 に対 す る電圧 補償 補 償 分担 …… 急峻 な電圧 変動 に対 す る電圧 補償 御方式
上 述 の各電 圧制 御機 器 の補償 分 担 を考慮 した制 御 を実現 す るた めに は,緩 やか な電 圧変 動 に対 す るSVCに が あ る.こ のSVCの
よ る電 圧補 償(無 効電 力 出力)を 抑制 し,SVRに 無 効 電力 出力 の抑 制手 段 には,SVCの
法 を用 い る.ま た,SVCの
移 行 す る必 要
電圧 指 令値 を補 正す る方
電圧 指 令値 の補 正範 囲 は,線 路 電圧 がつ ね に規 定値 範 囲 を
維 持 で きる こ とを前提 とし,定 常状 態 お よび過渡 状 態 にお けるSVCに
よ る電 圧補 償
量 を考 慮 し設定 す る.
9.5.2
協調制御 システム の概要
現状 のSVRの
各 整定 値 は,配 電 変電所 か ら負荷 末端 方 向 に電 流 が流 れ る こ とを前
提 と して確 立 され た計 算式 に よ り整定 され て お り,分 散電 源 の連系 に よ る配 電 系統 内 に発生 す る新た な電圧 変動 に対 応 で きな い場合 が考 え られ る.こ のた め,SVRの
各整
定 値 に は,分 散 電源 の影響 に よる管理 値逸脱 量 の改善 が 可能 な分散 電源 の連 系 を考 慮 した前 節 で説明 した最適整 定 方式 によ り整 定 した値 を用 い る. また,現 状 のSVCは,SVC設
置地 点 の電圧 を指令 値 に保 つ電圧 一定 制御 が 多 い こ
とか ら,緩 や かな電圧 変 動 に対す る補 償 を抑制 す るた めに は,電 圧 指令 値 を補正 す る 装 置 を付加 す る必要 が あ る.本 方式 の最 大 の特徴 は,SVRで 電 圧変 動 に対 す るSVCの
補償(SVCの
は補償 で きない過渡 的 な
容 量)を 最小 とす るた め,電 圧上 昇 時 お よび電
圧 下 降時 それ ぞれ に対 し電圧 指令 値 を設定 してい る こ とで あ る.本 方式 にお け る電 圧 指 令値 の設 定法 を以 下 に示 す. ①
分散 電源 の 出力変 動 に伴 う電圧 変動 が 最 もはげ しい場 合 に も,管 理値 逸脱 を解
消 で き る電 圧 指 令 値 を電 圧 上 昇 時 お よ び 電 圧 下 降 時 そ れ ぞ れ に対 し算 出 す る. ②
電 圧 指 令 値 を 補 正 す る た め,①
で 算 出 し た 各 電 圧 指 令 値 に補 正 余 裕 を も た せ
る. つ ま り,上 記 の 方 法 に よ り算 出 した 2点 の 電 圧 指 令 値 を電 圧 変 動 状 態 に応 じ て 選 択 し切 り換 え る こ とで,従
来 の 1点 の 電 圧 指 令 値 を 用 い る 場 合 よ り,少 な い容 量 で 管 理
値 逸 脱 を解 消 で き,ま た,SVRと よ びSVCを
の 協 調 が 可 能 と な る.以 上 の 機 能 を有 したSVRお
用 い た 場 合 の 協 調 ア ル ゴ リズ ム を以 下 に 述 べ る.
■Step.1
SVCに
よ る瞬 時 的 な 電 圧 補 償
分 散 電 源 の 急 激 な 出 力 変 動 ま た はSVRの をSVCに ■Step.2
SVC電
SVCの
タ ッ プ動 作 に 伴 う過 渡 的 な電 圧 変 動 分
よ り高 速 に 補 償 す る. 圧指 令値 の補 正
電 圧 指 令 値 を 徐 々 に 補 正 し,緩
や か な 電 圧 変 動 に対 す るSVCの
補 償量 を
徐 々 に減 衰 させ る. ■Step.3
SVRに
SVCの
よ る定 常 的 な 電 圧 補 償
補 償 量 の 減 衰 に 伴 い,SVRの
監 視 電 圧 が 不 感 帯 を は ず れ る.不 感 帯 を は
ず れ た 時 間 が 動 作 時 限 に達 し た ら,タ ■Step.4
SVC待
ッ プ を切 換 え電 圧 を補 償 す る.
機状 態
緩 や か な電 圧 変 動 に 対 す る 補 償 がSVRに
分 担 さ れ る こ と に よ りSVCの
が 定 常 値 に も ど り,過 渡 的 な 電 圧 変 動 に対 し,最
補償 量
大 限 対 応 可 能 な 状 態(待 機 状 態)
と な る.
9.5.3
シ ミ ュ レー シ ョン に よ る検 証
(1) シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 条 件 図9.20に い た.配
示 すSVRが
3台 設 置 さ れ て い る 実 配 電 系 統 を模 擬 した モ デ ル 系 統 を 用
電 線 亘 長 は約15.38㎞
で あ り,分 散 電 源 の 連 系 地 点 お よ びSVCの
は 系 統 の 末 端 と した.対 象 系 統 に お い て,分 散 電 源 の 出 力 が 最 大(1000kVA)の 定 常 状 態 と し,時
設 置位 置 とき を
刻 5sで 分 散 電 源 出 力 が 0 と な る ス テ ッ プ 状 の電 圧 変 動 に対 す る各
電 圧 制 御 機 器 の 協 調 制 御 シ ミ ュ レー シ ョ ン を行 う.な
図9.20
配電系統 モデル
お,各SVRの
タ ップの動 作 時
限 は変 電 所 側 か ら60,90,120sと
した.
(2) シ ミ ュ レー シ ョ ン結 果 図9.21に
3台 のSVRの
推 移 を 示 す.こ
み を 用 い て 電 圧 制 御 を行 う従 来 の 制 御 方 式 に お け る電 圧
こで は 例 と し て,過
範 囲 を 超 え て し ま うSVR2,3の 様 にSVRとSVCの は,過
9.6
渡 的 な電 圧 変 動 が 発 生 し た 際 に 線 路 電 圧 が 規 定 値
2次 側 電 圧 お よ び 系 統 の 末 端 の電 圧 を 示 す.ま た,同
協 調 制 御 に お け る 電 圧 推 移 を 図9.22示
す.図
の よ う に,提 案 法
渡 的 な 電 圧 変 動 に対 し線 路 電 圧 を 規 定 値 範 囲 に 維 持 し た 制 御 が 可 能 で あ る.
ま
と
図9.21
従来制御 時の電圧推移
図9.22
協 調 制 御 時 の電 圧 推 移
め
本 章 で は,電 力 自由化 に対応 した電圧 管 理技術 として,以 下 の技術 に つい て説明 し た. ① 送 電系 統 の電圧 安 定性解 析技術 お よび電圧 信頼 度評 価 技術 ② 配 電系 統 の潮 流計 算技術,分 散電 源 の導入 を考 慮 した従 来型 の電圧制 御機 器 の 調 整 方法,お よび新 しい電 圧制御 機 器 で あ るパ ワー エ レク トロニ クス機 器 と従来
型 の 電 圧 制 御 機 器 との 協 調 制 御 技 術 こ れ ら の 技 術 が 実 用 化 さ れ る こ と に よ り,電
力 自 由化 に対 応 した 電 圧 管 理 が 実 現 さ
れ る と 考 え ら れ る.
参
考
文
献
1) R.Seydel:From
Equilibrium
to Chaos,
Practical
Bifurcation
and
Stability
Analy
sis,Elsevier,1988. 2)H.D.Chiang,et
al.:CPFLOW,A
Steady-State
Stationary
Trans.on
Power
Practical
Behaviour
Due
Systems,10,2,May
3) 福 山 ら:Continuation
Power
Tool
to Load
and
for
Tracing
Generation
Power
System
Variations,IEEE
1995. Flow実
用 化 シ ス テ ム の 開 発,電
気 学 会 全 国 大 会,No.
1387,1997-03. 4) 福 山 ら:Continuation
Power
Flowの
実 規 模 系 統 解 析 へ の 適 用,電
気 学 会 全 国 大 会,
No.1313,1998-03. 5) H.D.Chiang,et Functions
al.:Look-ahead
for Large-scale
173-180,February
Voltage
Power
and
Systems,IEEE
Load
Margin
Trans.on
Contingency Power
Selection
Systems,12,1,pp.
1997.
6) B.Stott:Review
of Load
Flow
Calculation
Methods,Proc.of
IEEE,62,pp.916-
929,1974. 7) H.D.Chiang:A
Decoupled
Algorithms,Analysis,and 13,3,June
Load
Flow
Convergence
Method
for Distribution
Study,Electrical
Power
Networks;
Power&Energy
Systems,
1991.
8) 福 山 ら:並
列 処 理 を 用 い た 放 射 状 系 統 高 速 潮 流 計 算,電
気 学 会 論 文 誌B,116,1996-
01. 9) 福 山 ら:分
散 電 源 の 連 系 を 考 慮 し た 配 電 系 統 潮 流 計 算 用 機 器 モ デ ル の 開 発,電
気学会
電 力 技 術 研 究 会,PE-99-111,1999-10. 10) R.Battiti:The -140
Reactive
Tabu
Search,ORSA
Journal
of Computing,6,2,pp.126
,1994.
11) 福 山 ら:分
散 電 源 の 連 系 を 考 慮 し た 電 圧 制 御 機 器 の 最 適 整 定 の 検 討,電
気学会論文誌
B,120,12,2000-12. 12) C.R.Reeves:Modern well
Scientific
13) 安 孫 子,今
Heuristic
Techniques
for Combinatorial
Problems,Black
Publications,1993.
野 ほ か:配
電 系 統 用 自励 式SVC制
御 方 式 の 検 討,電
気 学 会東 京 支 部茨 城 支
所 研 究 発 表 会,1997-11. 14) 福 山 ら:分 会,電
散 電 源 の 連 系 を 考 慮 し た 電 圧 制 御 機 器 の 協 調 制 御 方 式 の 基 礎 検 討,電
力 エ ネ ル ギ ー 部 門 大 会 論 文 Ⅱ,281,2000-08.
気学
第10章 分散型電源系統連系と単独運転検出技術
10.1 分散型電源系統連系と電力品質 近 年,環
境 問 題 や 余 剰 電 力 の 有 効 活 用 な どへ の意 識 の 高 ま りに よ り,コ
ジ ェネ レー
シ ョン 設 備 や 水 力 発 電 設 備 な ど に代 表 さ れ る分 散 型 電 源 が 急 速 に 普 及 し て お り,さ
ら
に 将 来 の 電 力 系 統 に お け る重 要 な 要 素 の 一 つ と し て 期 待 さ れ て い る1∼3).こ れ ら の 分 散 型 電 源 は,従 来 か ら電 力 会 社 が 主 に適 用 し て き た 大 型 の 火 力 ・原 子 力 発 電 機 と は 異 な り,比 較 的 小 型 で あ る こ と,ま た風 力 や 水 力 な ど 自然 エ ネ ル ギ ー を 利 用 し た 電 源 が 多 い な ど の 特 徴 を も つ.ま た,こ れ らの 分 散 型 電 源 が 系 統 と連 系 し て運 転 され る場 合, 特 に分 散 型 電 源 か ら系 統 へ 潮 流 を流 す 場 合(こ れ を “逆 潮 流 ” と い う)に は,従 源 と は 異 な る電 力 品 質 の 問 題4∼8)が顕 在 化 し て きた.以
10.1.1
来 の電
下 に そ の 概 要 を示 す.
周波数 変動
電 力 系 統 の 基 本 波 の 周 波 数 が 何 ら か の 原 因 で 公 称 周 波 数(50Hzま ず れ る場 合 が あ る.こ
た は60Hz)か
ら
れ を 周 波 数 変 動 と い う.電 力 系 統 の 周 波 数 は 発 電 機 の 回転 速 度
と直 接 に 関 連 して お り,発 電 と負 荷 の バ ラ ン ス が くず れ た と き,た
とえ ば 負 荷 の 大 き
さ が 急 変 した よ う な 場 合 に 系 統 周 波 数 にわ ず か な 変 動 が 生 じ る.こ
の 周波 数変動 の大
き さ と持 続 時 間 は 負 荷 特 性 と,負 荷 変 動 に対 す る 発 電 機 の 応 答 特 性 に 依 存 す る(図 10.1参
照).負
た と え ば,風
荷 変 動 と同 様 に発 電 機 出 力 の 変 動 も系 統 周 波 数 変 動 の 原 因 と な る. 力 発 電 の よ う に,そ
の 出 力 が 完 全 に一 定 で は な く時 間 と と も に変 動 す
る場 合 に は,系 統 周 波 数 が 変 動 す る.通 常,こ う な 値 で は な い が,系
の周波 数変 動 の大 き さは問題 にな るよ
統 の 容 量 に対 す る風 力 発 電 の 導 入 量 が 数 パ ー セ ン ト以 上 に 大 き
くな った 場 合 に は 何 ら か の 対 策 を 必 要 とす る 場 合 が あ る9).大 系 統 と連 系 し な い 独 立 系 統 の 場 合 に は,周
波 数 変 動 の 問題 は よ り深 刻 で あ る.
図10.1
10.1.2電
発 電 機 と負荷 の 電 力 ・周 波 数 特 性
圧 変 動
電 圧 変 動 に は種 々 の カ テ ゴ リー が あ る.表10.1に
そ れ ら を ま と め て 示 す.こ れ らの
う ち 瞬 時 的 な 電 圧 変 動 は従 来 は さ ほ ど 問 題 に な らな か っ た が,近
年 コ ン ピュー タや可
変 速 ドラ イ ブ な ど電 圧 に対 して 敏 感 な 負 荷 が 増 加 し た こ と に よ り電 圧 低 下 度20%程 度,持
続 時 間 数10ms程
度 で も 問 題 に な る ケ ー ス が 出 て きた 7).
表10.1
電 圧 変 動 の カ テ ゴ リー
た と え ば,誘 合,突
導 発 電 機 を使 用 した 風 力 発 電 設 備 が 風 速 の 増 加 に よ り 自 動 起 動 す る場
入 電 流 に よ り瞬 時 的 に 電 圧 低 下 が 生 じ る.こ
い た め に ソ フ トス タ ー ト回 路 を採 用 す る,あ
の た め,急 激 に 突 入 電 流 を流 さ な
る い は突 入 電 流 の流 れ な い 同 期 発 電 機 を
使 用 す る な どの 対 策 を と る こ とが 一 般 的 に な っ て き て い る.定 常 時 の 電 圧 変 動 に つ い て は 他 章 を参 照 して い た だ き た い.
10.1.3高
調
波
一 般 に高 調 波(harmonics)と
は 基 本 周 波 数(50Hzあ
る い は60Hz)の
整 数 次倍 の周
波 数 を もつ 正 弦 波 電 圧 あ る い は 電 流 を い う.電 力 系 統 に 現 れ る電 流 や 電 圧 の ひ ず み 波 形 は,図10.2に き る.ひ
示 す よ う に 基 本 波 と複 数 の 高 調 波 の 合 成 さ れ た もの と み る こ とが で
ず み の 原 因 は基 本 的 に電 力 機 器 の 非 線 形 特 性(磁 束 の飽 和 特 性 な ど)に よ る も
の で あ る.分 散 型 電 源 の 中 に は直 流/交 流 変 換 器 を使 用 した もの も 多 い が,こ の 変 換 器 は 高 調 波 の 発 生 源 とな る 可 能 性 が あ る. 基 本 周 波 数 の整 数 次 倍 に な ら な い周 波 数 成 分 を もつ 電 圧 あ る い は 電 流 を非 整 数 次 高
図10.2
基 本 波 と高調 波 の 合成 6)
調 波(interharmonics)と バ ー タ,誘
導 機,ア
い う.非 整 数 次 高 調 波 の 原 因 は 周 波 数 変 換 器,サ
ー ク炉 な ど で あ る.電
イ ク ロコ ン
力 系 統 に 与 え る非 整 数 次 高 調 波 の 影 響 に つ
い て は ま だ 十 分 に 解 明 され て い る と は い え な い.
10.1.4信
頼
度
分 散 型 電 源 が 系 統 連 系 さ れ た 場 合 の信 頼 度 の 問 題 は,従 来 か ら あ っ た 基 幹 系 統 で の 問 題 が 配 電 系 統 な ど の下 位 系 統 に も現 れ て き た も の と み る こ と が で き る.た 分 散 型 電 源 が 定 常 状 態 ・事 故 時 の 安 定 度 に 与 え る影 響,電
と え ば,
圧 安 定 度 に与 え る影 響,あ
る い は 局 地 的 な 問 題 と して 送 ・配 電 線 過 負 荷 時 の 潮 流 制 御 の 問 題 な どが あ げ ら れ る. 特 に ウ イ ン ド フ ァー ム や マ イ ク ロ タ ー ビ ン群 な ど大 容 量 の 分 散 型 電 源 が 大 量 に 解 列 し た 場 合 に そ れ が 系 統 安 定 度 に 与 え る影 響 な ど は慎 重 に検 討 す べ き事 項 で あ ろ う. 配 電 系 統 に お け る保 護 装 置 は通 常 は 高 圧 電 力 系 統 か ら低 圧 系 統 へ 向 か う 潮 流 を仮 定 し て い る.こ
の 仮 定 の も と で 系 統 の 電 圧 制 御 が 行 わ れ,供
給 電 圧 の 品 質 を維 持 す る こ
と が で き て い る.保 護 装 置 は 過 電 流 リ レ ー を基 本 と し て お り,上 流 の リ レ ー か ら下 流 の リレ ー へ と協 調 を と っ た 設 定 値 が 使 わ れ る.す
な わ ち,下
流 の フィーダ での事 故 は
そ の フ ィ ー ダ の 電 源 側 に 設 置 され た リ レー に よ っ て 除 去 され,も 不 動 作 す る な ど して 事 故 の ク リア に 失 敗 した 場 合 に は,そ
し もそ の リ レ ー が 誤
の リレ ー の上 流 直 近 の リ レ
ー が 動 作 し事 故 を ク リア す る . 配 電 系 統 に発 電 機 が 連 系 さ れ る と,連 系 され た 発 電 機,他 に よ っ て リ レ ー が み る事 故 電 流 が 変 化 す る.リ
の 発 電 機 そ れ ぞ れ の位 置
レ ー 間 の 協 調 を と るた め に は,系 統 か
ら事 故 点 へ の 供 給 電 流 に 加 え て 連 系 さ れ た す べ て の 発 電 機 か ら の供 給 電 流 を 考 慮 す る 必 要 が あ る(図10.3参
照).こ
の よ う に過 電 流 リ レー ひ と つ を と っ て もみ て も配 電 線
図10.3 分散型電源連 系系統の事故電 流
保 護 方式 に対 す る分散 型電 源 の影響 は大 きい.さ らに大 きな保 護上 の問題 として “単 独 運転 ” が あ る.次 節 以下 で,主 に回転 機 系の分 散型 電源 につ いて単独 運転検 出の必 要 性,各 種単 独運 転検 出方式 の概 要,お よび今後 の課 題 な どにつ いて述 べ る.
10.2
単 独運 転検 出の 必要 性
10.2.1
単独運転 とは
配 電 系統 の事故 は通 常,事 故 点 に最 も近 い保護 リレー に よっ て除去 され る.そ の結 果,電 力系 統 か ら分 離 さ れた配 電 系統 の一部 に分散 型 電 源 が 電 力 を供 給 し よ う とす る.ほ とん どの場 合,こ の分散 型電 源 は過 負荷状 態 とな り電圧 や周 波数 が低 下 して停 止 に至 る.し か し,ま れ にで はあ るが,こ の単独 系統 に接 続 された 発電機(ま た は発電 機 群)が 単独 系統 の 負荷 すべ て に電 力 を供給 で き る能 力 が あ る場合 が あ る.こ の よ う に電 力会 社 か らの電力 が停 止 して も分散 型電 源 だ けで負荷 に供 給 し続 け る状 態 を “単 独 運転 ” と呼ぶ(図10.4参 照).
図10.4
単独運転
10.2.2
単 独 運 転 の弊 害
単独 運転 状 態が 継続 す る と,点 検 ・復 旧作業 員 や公衆 が充 電部 にふれ る ことに より 人 身事 故 に いた るお それ が ある.本 来停 電 してい るべ き系統 が充 電 され て い るこ とに よ り,従 来 に比 べ 作業 者が 感電 す る可能性 が増 大 す るわ けで あ る.ま た,分 散型電 源 か ら電 力 が供給 され る場合 に,そ の品質 が電力 会社 か ら供給 され る場 合 に比較 して低 下 す る場合 が あ り,そ れが 負荷 に悪 影響 を与 える こと も考 え られ る.さ らに,電 力 会 社 で は停電 状 態 を速 やか に復 旧す るた め一定 時間後 に自動 的 に変 電所 な どの遮 断器 ・ 開 閉器 を投 入 す る よ うに して い る(自動再 閉路 や 自動 逆送)が,単 独 運転 が継続 してい る と非 同期 投 入 とな り過電 流 や電圧変 動 が生 じる ことに よ り事故 が 拡大 してか えって 事 故復 旧が 遅 れ る こ とが あ る.以 上 の こ とか ら分散 型電 源 とその系統 との接続 点 に適 用 され る保 護装 置 は,系 統 か らの供給 が な くな った場合 に これ を検 出 し,接 続 点 の遮 断器 を トリップで きな けれ ばな らない.こ の機 能 は “単 独運転 検 出”と呼 ばれ る10∼12). 10.2.3
従来 の単独運転 検出技術
単独運 転 を検 出 す るた めの一 つ の方策 として,単 独運 転移 行時 の電 圧,周 波数 の変 化 を検 出 して接 続 点 の遮 断 器 を トリ ップ す る電圧 ・周波 数 異 常 継 電 器 が 知 られて い る.こ れ らは系統 の周 波数 あ るい は電 圧 の変化 をモニ タす る こ とに よ り単 独運 転 を検 出 す る もので あ る.系 統分 離時 に発電 機 の負荷 に変 化が あ る と,発 電 機 の周 波数 と電 圧 が変動 し,新 しいエ ネル ギ ーバ ラ ンス が生 じる.多 くの小 容量 発電 機 の場合,こ の 方式 に よ り単独 運転 の検 出 が可能 で あ る.し か し,系 統 分離 時 の負荷 の変 化 が発電機 制御 系 に よ って補償 で きる範 囲 を超 えな けれ ば検 出はで きない.上 述 の ように単独 系 統 内の発 電 出力 と負荷 が平衡 して いる場合 には単 独 運転状 態 にな って も電 圧 ・周波 数 の変 化 が少 な い こ とか ら,こ れ らの継 電器 で は単 独 運転 を防 止す る ことがで きな い. “逆 潮流 な し”の 連系 の場 合 に は ,従 来 か ら用い られ て いる “逆電 力 リレー”に よる単 独運 転 の防 止が 可能 で あ る.こ れ は分 散型 電源 か ら配 電 系統側 に潮 流が 流れ た こ とに よって単 独運 転 を検 出す る もので ある. “逆潮 流 あ り"の 分 散 型電 源 に適 用 で きる方式 として転送 遮 断 方式 が あ る.こ れ は図 10.5に 示 す よ うに,配 電 用変 電所 の送 り出 し遮 断器解 放 信号 を分 散型 電源 側遮 断器 に 情 報 伝送 して,こ れ を遮 断す るもので あ る.こ の方 式 に は,伝 送路 を必 要 とす るた め, 全体 の装 置価 格 が 高 くな る とい うデ メ リッ トが あ る.ま た,上 位 系統 事故 に よる単独 運転 を検 出 で きな い,配 電線 区間 単位 の停電 には対応 で きない とい った デ メ リッ トも あ る.
図10.5
図10.6
上 位 系 統 事 故 時 の 単 独 運 転 検 出 方 法13)
上 位 系 統 事 故 に つ い て は 図10.6に る開 閉 器 はA,Bで
転 送 しゃ 断 方 式3)
例 を示 す13).こ の 場 合,バ
ン ク 事 故 に よ り解 放 す
あ る が,転 送 遮 断 装 置 は C が 解 放 し た とい う信 号 を 分 散 型 電 源 側
に 伝 送 して 遮 断 す る 装 置 で あ る た め,こ
の ケ ー ス で は 機 能 し な い.上 位 系 統 事 故 時 に
も対 応 で き る方 式 と し て シ ス テ ム 監 視 方 式27)が あ る.こ れ は,単 独 運 転 状 態 を 引 き起
こす 可能性 の あ るすべ て の遮断器 の開閉状 態 を監視 す る もので ある.上 記 の例 にあて は めれ ば,開 閉器 A を含 めて 開閉状 態 を監視 す るた め,単 独運 転 時 に転 送 信号 によ り 連 系遮 断器 が遮 断 され る.こ の 方式 の欠 点 は補 助 接 点 監視 を行 うSCADA(supervi sory control and data acquisition)シス テムが 必要 とな る ことで あ る.現 状 で は,ほ とん どの配 電 系統 に適切 なSCADAシ
ス テム は設備 され てい ない.そ のた め単 独運転
状 態 を引 き起 こす可 能性 の あ るすべ ての遮 断器 を監視 す る ことは困難 と思 われ る. 10.2.4
受 動 的 方 式 と能 動 的 方 式
単 独運転 検 出機能 を有 す る装置 を分 散型 電源 側 に設置 し分散 型電 源側 で確 実 に単独 運転 を検 出す るこ とが で きれ ば,転 送遮 断装 置やSCADAを
省 略 して経 済 的 な分散型
電源 システム を構築 す る こ とが で き る.こ の よ うな 自端検 出式 の単 独運 転検 出方式 は 受動 的方 式 と能 動的 方式 の 2種類 に大 別 で きる.受 動的 方式 とは分 散型 電源 の連 系点 にお ける電 圧 ・周波 数 の変 動,高 調波 ひ ず みの変動,電 圧 の位 相変 動,な どの測定 可 能 な量 を常時監 視 し,単 独運 転状 態 に なった ときに は これ らの値 が通 常 の系統 連系 時 か ら大 き く変動 す る こ とを利 用 して単 独運 転検 出 を行 う もので ある.前 述 した 電圧 ・ 周波 数異 常 を検 出す る リレー も受動 的方式 の一 部 と考 え られ るが,こ れ らは単 独運転 の可 能性 を狭 め る目的 を有 す る こ とか ら “局 限化継 電器 ” と呼 ばれ単独 運転 検 出 の受 動的 方式 か らは除外 され る13). 受 動的 方式 は高感 度 で高速 の検 出 が可能 で あ る とい う特 徴 が あるが,急 激 な負荷変 動が ある と誤動 作 す る可 能性 が あ る.ま た系統 分離 時 の負荷 の変化 が発 電機 制御 系に よって補償 で きる範 囲 を超 え な けれ ば検 出 はで きない.単 独運 転検 出装 置 が誤 動作 す る と連系 点遮 断器 の解放 を行 うので復 帰 まで に多大 な時 間 を要 す る.こ の た め動作 設 定 に は十 分な考 慮が 必要 で あ る.な お,太 陽光 発電 な ど逆変換 器 を利 用 した分 散型電 源で は,受 動 的方式 によ り単 独運 転 を検 出 した場合 には,逆 変 換装 置 を停 止 し誤動作 で あ った場 合 に は自動復 帰 す る とい った運 転が 可能 で あ る. 能 動的 方式 は,受 動的 方式 で検 出 で きな いほぼ完 全 な平衡状 態 にお い て も単 独運転 状 態 を検 出す るた め に,分 散 型電 源側 か ら系統 に常 時外 乱 を与 えて,単 独 運転 状 態に な った ときに確 実 に電圧 や周 波数 を変 動 させ る方式 で あ る.能 動 的方 式 の場 合 には外 乱 を与 え る時間 お よび外 乱 に よ る周波 数 の変動 な どを検 出す る時 間 を要す るた め検 出 時間 は長 くな る傾 向 にあ るが,原 理 的 には不感 帯が な い とい う特徴 が あ る.以 上 の こ とか ら受動 的 方式 と能動 的 方式 を組 み合 わせ る こ とで確 実 な単 独運 転 防止 を行 う こと が推 奨 されて い る10∼12).受 動 的方 式 と能動 的方 式 の特 徴 を ま とめ ると表10.2の よ うに な る13).
表10.2
原理
受 動 的 方 式 と能 動 的 方 式 の 特 徴13)
受動的方 式
能動 的方 式
電 圧 ・周 波 数 ・高 調 波 な ど
分散型電源 による外 乱の重量
の変化の監視
10.3
検出時間
短 い(1秒 以 下)
長い
不感帯
あり
なし
誤動作
可能性あ り
可能性低 い
配電系統 への影響
なし
電圧変化 な どを生 じさせ る可 能性が ある
単独運転検出技術(受 動的方式)
この 節 で は受 動 的 方 式 の う ち 代 表 的 な も の に つ い て 紹 介 す る.
10.3.1
周 波 数 変 化 率 検 出 方 式(ROCOF)2,27,28)
周 波 数 の 変 化 率(rate
of change
of frequency)を
で 単 独 運 転 を検 出 す る 方 式 で あ る.こ 荷 が あ る範 囲 内(た と え ば5MW以 場 合,こ
の5MWの
監視 しそれが 設定 値 を こえた こ と
の方式 が成立 す るた めの仮 定 として配電 線 の負
下)に あ る こ とが 必 要 で あ る.単
負 荷 の う ち い く らか が 分 散 型 電 源 に よ っ て 供 給 さ れ る の で,そ の
結 果 生 じ る発 電 量 の 不 足 は 周 波 数 の 変 化 を 引 き起 こす.周 0.1∼1.0Hz/s,動
独運 転 に な った
作 時 間 と して は0.2∼0.5sが
波 数変 化 の整定 値 として は
用 い られ る2).こ の 方 式 は電 力 系 統 に お
け る大 容 量 発 電 機 の 脱 落 に よ る周 波 数 変 動 や,ロ
ー カ ル 系 統 に お け る事 故 や 開 閉 操 作
に よ る位 相 シ フ トに よ っ て 不 要 動 作 を す る可 能 性 が あ る.後 者 は 周 波 数 変 化 率 の計 算 が 正 し く行 わ れ な い こ とに よ る.特 こ りや す い.ROCOFリ
に測 定 の ウ イ ン ドウ が 狭 い 場 合 に は不 要 動 作 が 起
レー に よ り多 量 の分 散 型 電 源 が ト リ ッ プ さ れ る と,前 節 で 述
べ た よ う に系 統 全 体 が 不 安 定 と な る お そ れ が あ る. 電 力 会 社 全 体 の 系 統 に お い て 大 き な 周 波 数 変 動 は まれ に しか 起 き な い.誤
動作 の多
く は,分 散 型 電 源 の 近 くの 配 電 系 統 に お け る事 故 に よ り,電 圧 低 下 や 位 相 シ フ トが 起 こ る こ と に よ る.送
10.3.2
電 系 で は さ ら に誤 動 作 の 可 能 性 が増 え る.
電 圧 位 相 シ フ ト検 出 方 式2,27)
通 常 の 運 転 状 態 で は,分 が 遅 れ て い る(図10.7参
散 型 電 源 の 端 子 電 圧(Vt)は
照).こ
発 電 機 内 部 電 圧(Ef)よ
り位 相
の位 相 差(φ)を 内 部 相 差 角 と呼 ぶ.系 統 か ら の供 給 が
図10.7
図10.8
系 統 連 系 時 の 内 部 相 差 角 2)
単 独 運 転 移 行 時 の 内 部 相 差 角2)
切 断 さ れ る と発 電 機 の 負 荷 は増 加 し,図10.8に フ トす る.端
子 電 圧 は 図10.9に
示 す よ う に 内 部 相 差 角 が ⊿φ だ け シ
示 す よ う に新 し い ベ ク トル(Vt')へ
とジ ャ ン プ し,リ
レ ー は各 周 期 の 継 続 時 間 を監 視 し そ の 継 続 時 間 が そ れ まで の 周 期 と比 較 して 大 き くず
図10.9
電 圧 ベ ク トル の シ フ ト2)
れ た 場 合 に瞬 時 に トリ ッ プ 指 令 を 出 す.位 相 シ フ トの 整 定 値 は6°程 度 に され る こ とが 多 い.弱
い 系 統(電 源 イ ン ピー ダ ン ス が 大 き く電 圧 位 相 の変 動 が 起 こ りや す い 系 統)で
は12° 程 度 に さ れ る こ と も あ る.
10.4
単独運転検出技術(能動的方式)
この節 で は能 動的 方式 の うち代表 的 な もの につ いて紹介 す る.
10.4.1
無 効 電 力 変 動 方 式14∼17)
無 効 電 力 変 動 方 式 は,同 期 発 電 機 を対 象 と した 能 動 的 方 式 の 一 つ で あ る.図10.10 に示 す よ うに,同
期 発 電 機 の 自 動 電 圧 調 整 器(AVR:automatic
の 電 圧 設 定 値 に 対 して 常 時 一 定 周 期 の 微 少 変 動 信 号(AVR電 て お き,こ
voltage
regulator)
圧 設 定 値 変 動 量)を 与 え
れ に よ っ て 単 独 運 転 移 行 後 に 顕 著 に な る 周 波 数 変 動 を検 出 す る こ と に よ り
単 独 運 転 と判 定 す る も の で あ る.電 力 系 統 と分 散 型 電 源 が 並 列 運 転 し て い る と き は, こ の 電 圧 設 定 値 の 周 期 的 変 動 は 発 電 機 に 影 響 を 与 え な い.配
電 線 負 荷 と発 電 機 出 力 が
平 衡 状 態(解 列 点 の潮 流 が ゼ ロ)で 単 独 運 転 に 移 行 した 場 合 に は,発 圧 は変 動 しな い の で,受
動 的 方 式 に よ っ て 単 独 運 転 を検 出 す る こ と は不 可 能 で あ る.
こ の よ う な 場 合 で も無 効 電 力 変 動 方 式 に お い て は 図10.11に に与 え て い る一 定 周 期 で 微 少 変 動 す るAVR電 圧 が 変 動 し,さ
電機 の周 波数 や電
示 す よ う に,AVR回
路
圧設 定値 変動量 に よって発 電機 端 子電
ら に こ れ に よ っ て 発 電 機 の 電 気 的 出 力 と機 械 的 入 力 とが 不 平 衡 に な
り,発 電 機 周 波 数 が 変 動 す る た め単 独 運 転 を検 出 で き る わ け で あ る. AVR電
圧 設 定 値 変 動 量 の 設 定 値(大 き さ)と し て,単 独 運 転 を 目標 時 間 内(た と え ば
3秒 以 内)に 検 出 で き る た め に は で き る だ け 大 き な値 が 望 ま れ るが,反 面,発
電機 容 量
図10.10
図10.11無
無 効 電 力 変 動 方 式 の 原 理14)
効 電 力 変 動 方 式 に よ る諸 電 気 量 の変 化14)
が 大 きい場 合 な どには これが 引 き起 こす電圧 変動 が配 電 系統 の電力 品質 に悪 影響 を及 ぼす こ とが懸 念 され る.こ のた め,単 独運転 検 出性能 を損 な う こ とな く,し か もAVR 電 圧 設 定値 変 動 に よる電 圧変 動 を低 減 す る機能(10.5節 に示 す電 圧変 動 低 減 対 策)が 考 案 され 実用 化 され て い る14,17). 無効 電 力変 動 方式 の設 定値 は,発 電機 定数 ・配 電 系統 条件 ・単独 運転 検 出機能 な ど を もとに して装 置性 能 を シ ミュレー シ ョンか ら求 めた 結 果 か ら決定 され る.AVR電 圧 設 定値 変動 量 に対 して はその周 波数 と大 きさを設 定す る.こ の周波 数 の設定値 が 発 電 機 の機 械 的固 有振 動 周波数 に等 しい と,単 独運 転 時 の周波 数変 動 が最大 に な るので 通 常 は この値 を周波 数 の設定 値 とす る.こ の周 波 数設 定 値 に おい て,AVR電
圧設定
値 変 動量 の大 きさ と単独 運転 検 出時 間 との関係 を求 める.ま た,同 様 に系統連 系時 の 電圧 変動 量 との関係 を求 め る.設 定値 を種 々変 更 した シ ミュ レー シ ョンの結果 か ら単 独運 転検 出時 間お よび系統連 系 時 の電 圧変 動量 に対 して ともに目標値 を満 足 す る設 定 値 を決 定 す る.系 統連 系 時の電圧 変 動量 が許容 で きない場合 は,電 圧 変動 低減 対策 を 使 用 した条 件 で シ ミュ レー シ ョンを行 う.
10.4.2
QCモ
ー ド 周 波 数 シ フ ト 方 式18,19)
QCモ ー ド周 波数 シフ ト方式 の構成 を図10.12に 示 す.こ の 方式 は,発 電機 が連 系 運 転 して い る系統 の周 波数 か ら周 波 数変 化 率(df/dt)を 検 出 し,こ の極性 と大 き さに 従 って電 圧 揺 動指 令(⊿V*)を 決定 し発電 機 のAVRに
能 動 作 用 と して与 え発 電機 電
圧 を変 化 させ る もので あ る.無 効電 力変 動方 式がAVR回 時 一定 周 期 の微少 変動 信 号 を与 え るの に対 して,QCモ
路 の電圧 設定 値 に対 して常 ー ド周 波数 シフ ト方式 は系統
の周波 数 変動 に同期 して微少 変動信 号 を与 え る ことに よ り,単 独運 転 時 に顕 著 に現 れ る周 波数 の変 化 を周 波数 変化 率で検 出 す る もの で あ る.
図10.12QCモ
ー ド周 波 数 シ フ ト方 式 の 構 成18)
次 に図10.13に よ りQCモ
ー ド周 波数 シフ ト方式 の基 本 原理 を説 明す る.系 統 連 系
中の発 電機 の電圧 を変化 させ た場 合,電 圧 は系 統電圧 に よ り支 配 され て い るた めほ と ん ど変化 せ ず主 に無効 電 力 の変化 として現 れ て くるが,単 独運 転状 態 で は系統 電圧 の 影響 を受 けない た め発電機 の電圧 が変 化 し周 波 数 も変 化 す る.こ こまで は無効 電力変 動 方式 と同 じ原理 で あ る.QCモ
ー ド周波 数 シ フ ト方 式 で は,系 統 の周 波 数 が上 昇方
向 す なわ ち周 波数 変 化 率(df/dt)の 極 性 が正 の場 合 に は発電 機 電圧 を低 下 させ る電 圧 揺動 指令(-⊿V*)を
与 える.発 電機 電圧 が低 下 す る とそ の結果有 効 電力 が減 少 し原動
機 にかか る負荷 トル ク も減 少 す る.こ の結果,発 電機 の回転 速度(周 波数)が さ らに上
図10.13
QCモ
ー ド周 波 数 シ フ ト方 式 の 基 本 原 理19)
昇 す る こ と に な る.こ (ASR:automatic
の 動 作 の く り返 しで 発 電 機 の 周 波 数 を 上 昇 させ るが 速 度 制 御 系
speed
regulatorお
よ び 調 速 機)が 遅 れ て作 用 し周 波 数 上 昇 が 抑 制
さ れ る る た め に 周 波 数 は 下 降 方 向 に転 ず る.こ の 結 果,前 周 波 数 は下 降 す る.こ の よ う にQCモ 状 態 が 継 続 す る こ と は な い.常
述 した現象 とは逆 の作用 で
ー ド周 波 数 シ フ ト方 式 で は 常 時 か らdf/dt=0の
時 はdf/dtを
微 少 変 動 させ て お き,単 独 運 転 状 態 で は
この 変 動 を拡 大 させ る こ とに よ り単 独 運 転 を検 出 す る.こ
れ がQCモ
ー ド周 波 数 シ フ
ト方 式 の 基 本 原 理 で あ る.
10.4.3
負 荷 変 動 方 式13)
負 荷 変 動 方 式 は 常 時 ダ ミー 負 荷 を入 り切 りさ せ て お き,単 独 運 転 時 に 現 れ る 系 統 の イ ン ピ ー ダ ン ス 変 化 に よ り単 独 運 転 を検 出 す る 方 式 で あ る.図10.14に 散 型 電 源 と配 電 線 と の 間 に抵 抗 を 短 時 間(1ms程
度)挿 入 す る と,こ の 抵 抗 に 流 れ る
電 流 は 系 統 側 と分 散 型 電 源 側 の イ ン ピー ダ ン ス比 で 分 担 さ れ る.連 で は,こ る.こ
示 す よ うに分
系 中 と単 独 運 転 中
の イ ン ピ ー ダ ン ス 比 が 異 な る こ とか ら単 独 運 転 検 出 が 可 能 と な る わ け で あ
の 方 式 は原 理 的 に は発 電 機 の 種 類 に よ らず イ ンバ ー タ系 で も回 転 機 系 で も適 用
で き る.
図10.14
10.4.4
負 荷 変 動 方 式 の 原 理13)
周 波 数 シ フ ト 方 式13)
太 陽 光 発 電 の よ う な 逆 変 換 装 置(イ ン バ ー タ)を 用 い た 分 散 型 電 源 で は 系 統 と の 位 相 同 期 回 路(PLL:phase
locked
loop)の 自 走 周 波 数 に 系 統 周 波 数 か ら わ ず か に ず れ る よ
う な バ イ ア ス を与 え て お く こ とで 単 独 運 転 に な っ た と き に周 波 数 を 自立 的 に 変 動 させ て 単 独 運 転 を検 出 す る こ とが で き る.た
だ し,周 波 数 の バ イ ア ス を大 き くす る と,変
換器 出力 電圧 の位 相 がず れて大 きな無 効電 力 を発 生 し系統 電圧 の変動 を引 き起 こす可 能性 が あ る.そ のた め常時 の周 波数 バ イア ス値 は小 さ くして お き,単 独運 転 時 には周 波数 変化 分 の フ ィー ドバ ックに よ り周波 数変 動 を増加 させ る方 式が提 案 され てい る.
10.4.5
次 数 間 高 調 波 注 入 方 式20)
次 数 間 高 調 波 と は10.1節
で 述 べ た 非 整 数 次 高 調 波 の こ とで あ る.す な わ ち,整 数 次
高 調 波 の 間 に 存 在 す る電 圧 ・電 流 で あ り,定 常 的 に は ほ と ん ど存 在 し な い も の で あ る.し
た が って,次
数 間 高 調 波 電 流 を連 系 点 か ら系 統 に微 少 量 注 入 し,注 入 した 次 数
に対 す る 連 系 点 の 電 圧 ・電 流 を計 測 す れ ば 容 易 に 系 統 イ ン ピ ー ダ ン ス を計 測 す る こ と が で き る. この 原 理 を応 用 し て 連 系 点 か ら み た 系 統 イ ン ピー ダ ン ス を常 時 監 視 し て お く.常 時 は 系 統 イ ン ピー ダ ン ス の 値 が 小 さ く単 独 運 転 時 に は 系 統 イ ン ピ ー ダ ン ス が 大 き くな る.こ
の イ ン ピ ー ダ ン ス の 大 き さ の 変 化 を検 出 す る こ と に よ り単 独 運 転 状 態 を判 定 す
る.こ
の 方 式 は 同 期 発 電 機 に も誘 導 発 電 機 に も適 用 で き る こ とか ら,風 力 発 電 な どで
多 く見 られ る誘 導 発 電 機 を 使 用 し た 分 散 型 電 源 へ の 適 用 が 期 待 され るが,注 数 間 高 調 波 の 周 波 数 に よ っ て は,配 れ る の で,そ
10.4.6
入す る次
電 系 統 に お い て 共 振 条 件 が成 立 す る こ とが 懸 念 さ
の 点 の 解 明 が 必 要 で あ ろ う.
その他の 能動的方式
無 効 電 力 エ ラ ー 検 出 方 式(REED:reactive
export
error detector)27,28)に お い て は,
分 散 型 電 源 の 発 電 機 制 御 系 に よ り リ レ ー 設 置 点 に 所 定 の レベ ル の 無 効 電 力 潮 流 を発 生 させ る.こ
の 電 力 潮 流 は 系 統 が 接 続 さ れ て い る と き だ け維 持 さ れ る の で,無 効 電 力 が
あ る 設 定 値 に維 持 さ れ て い な い こ とで 単 独 運 転 を 検 出 で き る.誤 動 作 を 防 ぐた め に 時 限 が 設 け られ る が,こ
の時 限 は 供 給 電 力 の 変 動 周 期 の 最 大 値 よ り長 くな る よ う に 設 定
さ れ る.そ の た め,こ の 方 式 は 動 作 時 間 が 長 く,通 常2∼5秒
で あ る.そ の 他 い くつ か
の 問 題 が あ る こ とか ら,こ の 方 式 は 動 作 時 間 の 短 い他 の 方 式 の バ ッ ク ア ッ プ と して 用 い られ る こ とが 多 い よ う で あ る27). 無 効 電 力 補 償 方 式 は,誘 導 発 電 機 を対 象 と し た 能 動 的 方 式 の 一 つ で あ る.こ は発 電 機 端 に静 止 形 無 効 電 力 補 償 装 置(SVC:static
var compensator)を
の方式
設 置 しSVC
の 無 効 電 力 設 定 値 に 外 乱 信 号 を 加 え 外 乱 に よ る 受 電 点 の周 波 数 変 動 に よ り単 独 運 転 を 検 出 す る方 式 で あ る21).こ の 方 式 の フ ィー ル ドテ ス トは 実 施 さ れ 性 能 的 に は 良 好 な 結 果 を残 し て い る が,現
状 で はSVC設
実 用 化 は ま だ な され て い な い.
置 コ ス トが 比 較 的 大 で あ る こ と か ら こ の 方 式 の
ラ ジ オ 信 号 に よ る イ ン ピー ダ ン ス 測 定 方 式 で は,分
散 型 電 源 の端 子 近 くか ら ラ ジ オ
周 波 数 信 号 を 注 入 す る.信 号 は 受 信 器 に よ っ て モ ニ タ さ れ,商
用 周 波 数 の 波 形 か ら重
畳 さ れ た 信 号 が 分 離 され る.通 常 の 状 態 で は 電 力 系 統 の 低 イ ン ピ ー ダ ン ス に よ り注 入 さ れ た 信 号 が 圧 倒 す る.し か し なが ら,単 独 運 転 状 態 で は 注 入 す る 端 子 か ら見 た イ ン ピ ー ダ ン ス が 増 加 す る.電 力 系 統 の イ ン ピ ー ダ ン ス は 単 独 系 統 の イ ン ピ ー ダ ン ス よ り か な り小 さ い の で,単
独 運 転 が 起 こ る と注 入 さ れ た 信 号 は 変 化 す る.連
リ ッ プ す る と ラ ジ オ 周 波 数 信 号 は単 独 系 統 か ら除 去 さ れ る.こ
系遮 断器 が ト
の方 式 は電力 系統 の周
波 数 が 変 動 し た 場 合 に も,短 絡 事 故 が 発 生 した 場 合 に も安 定 で あ る とい う 特 長 を も つ.し
か し,電 力 系 統 は ラ ジ オ 周 波 数 を 吸 収 した り反 射 した りす る た め,そ
れにより
誤 不 動 作 や 誤 動 作 が 起 こ る可 能 性 が あ る.力 率 調 整 用 に 用 い られ る シ ャ ン トキ ャ パ シ タ は ラ ジ オ 周 波 数 に対 し て 低 イ ン ピ ー ダ ン ス と な る の で,単
独 運転 状態 になっ て もシ
ャ ン トキ ャパ シ タ が 単 独 系 統 全 体 の イ ン ピー ダ ン ス を 下 げ検 出 が 困 難 に な る こ と も考 え られ る.
10.5
単 独 運 転 検 出 リ レ ー シ ー ケ ン ス14)
能 動 的 方 式(無 効 電 力 変 動 方 式)と 受 動 的 方 式(周 波 数 変 動 量 検 出)を 用 い て構 成 した 単 独 運 転 検 出 リ レ ー シ ー ケ ン ス の 例 を 図10.15に
示 す.こ
の 図 に は前 節 で 述 べ た 電 圧
変 動 低 減 対 策 シ ー ケ ン ス もあ わ せ て 示 し て い る.
10.5.1
周波数 変動量の検 出
能 動 的 的 方 式 に対 し て95D1,95D2,受
動 的 方 式 に対 し て95Dで
数 リ レ ー を 設 け て い る(そ の 理 由 に つ い て は 後 述).こ
れ ら の リレ ー で は,系 統 に瞬 時
的 に 発 生 す る 系 統 周 波 数 変 動 の 影 響 を 受 け に く くす る た め,平 数 に対 して そ の 変 動 量 を 演 算 し,こ よ う に して い る.周
示 す 3種 類 の 周 波
均 化処 理 を行 った周 波
の 大 き さが 設 定 値 を超 え る と動 作 信 号 を 出 力 す る
波 数 変 動 量 検 出 シ ー ケ ン ス を図10.16に
示 す.周
波 数 は,ア
ナロ
グ フ ィル タ に よ っ て 高 調 波 が 除 去 され た あ との 電 圧 波 形 に 対 し て そ の 零 点 間 隔 を計 測 す る こ と に よ り求 め られ る.次 に,常 均 値 を基 準 周 波 数foと
時,基 準 周 波 数 算 出 時 間toに 対 す る 周 波 数 の平
し て記 憶 す る.さ ら に,現 時 点 か ら現 在 周 波 数 算 出 時 間 t前 ま
で の 周 波 数 の 平 均 値 を現 在 周 波 数 f と して 求 め る.周 波 数 f と変 動 量 基 準 時 間 ⊿t前 の 基 準 周 波 数foの
波 数 変 動 量 ⊿fは,こ
の現 在周
記 憶 値 と の 差 と し て 求 め られ る.
(注)リ レ ー トリ ップ さ れ る しゃ断 器 は 一 例 を示 す
こ こ に,95D:受 動 的 方 式 周 波 数 リ レー,95D1:無 効 電 力 変 動 方 式 第 1段 周 波 数 リ レー, 95D2:無 効 電 力 変 動 方 式 第 2段 周 波 数 リレ ー,27:不 足 電 圧 リレ ー,D/O:デ ジ タル ・ア ウ トプ ッ ト,D/A:デ ジ タル ・ア ナ ログ 変 換 図10.15
図10.16
10.5.2
単 独 運 転 検 出 シー ケ ン ス14)
周 波 数 変 動 量 検 出 シ ー ケ ン ス14)
無効電 力変動方式 の単独運転検 出シーケ ンス
系統 電源 に よ る周 波数 変動 に よって単独 運転 を誤検 出 す る ことを極 力避 け ると とも に,AVR電
圧設 定値 変動 量 に よ る系 統連 系時 の電圧 変動 の影響 を小 さ くす るた めに,
図10.17
AVR電
無 効 電 力 変 動 方 式 の二 段 階 検 出 方式14)
圧 設 定 値 変 動 量 と周 波 数 リ レ ー を 図10.17に
示 す 二 段 階 方 式 と す る .変 動 量
設 定 値 は 常 時 は 第 一 段 の も の を 使 用 す る(図10.15のAVR電 ッチ はS1側).単
圧設 定 値変 動 量 の ス イ
独 運 転 移 行 後 に第 一 段 の 周 波 数 リ レ ー(95D1)が
動 作 し,さ
らに そ の
後 段 の タ イ マ(T1)が 動 作 し た 場 合 は,そ の変 動 量 を第 一 段 の 値 よ り大 き な第 二 段 の 値 に切 り替 え る(ス イ ッチ はS2側).そ
し て,第
大)の 第 二 段 周 波 数 リ レ ー(95D2)が
一 段 周 波 数 リ レー よ り低 感 度(設 定 値 が
動 作 し た と き は じめ て 単 独 運 転 とみ な す.周
リ レー の 後 段 に タ イ マT1, T2を 設 け て あ る の は,配 協 調 を 図 るた め で あ る.ま
た,系
波数
電 用 変 電 所 の 保 護 リ レ ー と時 限
統 事 故 時 に は不 足 電 圧 リ レー(27)に
よ って各周 波 数
リ レ ー の 出 力 を ロ ッ ク す る よ う に して い る.
10.5.3 図10.18に
無 効 電 力 変 動 方 式 に対 す る 電 圧 変 動 低 減 対 策 電 圧 変 動 低 減 対 策 の シ ー ケ ン ス を示 す.発
電 点 電 圧 ・電 流 に よ り無 効 電 力(Qr)を 量 に よ る無 効 電 力 の 変 動 量(⊿Qr)を
電機 が設 置 され た需 要家 の受
演 算 し,フ ィル タ に よ りAVR電
検 出 す る.そ
圧 設 定値 変動
して 無 効 電 力 変 動 量 の 位 相 がAVR
電 圧 設 定 値 変 動 量 の 位 相 と逆 位 相 に な る よ う に 位 相 補 償 す る.補 償 さ れ た 無 効 電 力 変
図10.18
動 量(⊿Qt')を 正 の 符 号 でAVR電
電 圧 変 動 低 減 対 策 シ ー ケ ン ス14)
圧 設 定 値 変 動 量(⊿VAVR)に
り,単 独 運 転 検 出 装 置 か ら出 力 され るAVR電
対 して 加 え る こ とに よ
圧 設 定 値 変 動 量(⊿VA VR+⊿Qr')が
くな る の で 連 系 時 の電 圧 変 動 量 も小 さ く な る.図10.19に
小 さ
本 方 式 に よ る性 能 検 証 試 験
結 果 を示 す.
10.6
今後の課題と将来展望
単独運 転検 出技術 は完 成 された技 術 で はな くい くつ かの課題 を残 して いる.そ れ ら の 課 題 を克 服 す るた め,現 在 も種 々の 新 し い検 出方 式30∼37)や シ ミュ レー シ ョ ン手 法38∼41)の 検 討 が続 け られて い る.本 節 で は単独 運転 検 出技術 にお ける今 後 の課 題の 中 か ら主 な もの 2点 と将来 展望 につ い て述 べ る.
10.6.1
分 散 型 電 源 複 数 台 連 系 時 の 単 独 運 転 検 出22,23)
単独 運転 検 出技術 の今 後 の課題 として,ま ず同一 配電 線 に分散 型電 源 が複数 台連 系 した場 合 の評 価が あげ られ る.こ れ まで の検討 例 に よれ ば,2台 までは問題 ないが,た とえば10台 ∼20台 が連 系 した場 合 に それぞ れ の分 散型 電 源 にお け る単 独運 転 検 出機 能 が相 互 に干 渉 す る ことに よる影 響 の評価 につ いて さ らに検 討 す る必 要 が あ る とされ て い る.ま た,異 なる方式 に よ る単独 運 転検 出機 能が 混在 した場 合 の評価 に
いて も
今 後 の課題 とい え る.さ らに,バ ン ク単 位 で逆潮 流が 発生 した場 合 の問題 点 につい て も検 討 して お く必 要 が あろ う.
10.6.2
誘 導 発 電 機 を 用 い た 風 力 発 電 機 の 単 独 運 転 検 出24,25)
誘 導発 電機 を用 いた風力 発電 機 の単独 運転 検 出 につ いて は,従 来 か ら受動 形 の方 式
図10.19
無 効 電 力 変 動 方 式 の性 能検 証 試 験 結 果14)
た とえば周波 数や電 圧 の変化 を もとに判定 す る方式 が とられ て きた.こ れ は,誘 導発 電 機 自体 が系統 か ら励磁電 流 を供 給 され ない と発電 で きな い こ とか ら単 独運 転状 態 が 継 続 す る可能性 が低 い こ と,ま た動力 源が 風力 で あ るため風速 変動 に応 じた出力 変動 が 生 じ単独 運転 状態 で周 波数 ・電 圧が 変動 す るの で周 波数 リレー や電圧 リレー で検 出 しや すい ことに よる.し か し,実 際 の適用 におい ては,風 速 変動 に よる周波 数変 動 の
実 態や発 電 設備 の 出力安 定化 制御 の効 果 をシ ミュレー シ ョンな どに よ り事 前 に詳 細 に 評価 す る必 要 が あ るだ ろ う.ま た,複 数 の風 力 発電 設備 が連 系 した場 合 にそれ らの相 関 関係 が 出力安 定 化 に与 え る影響 の評価,系 統 内 に力率 改善 用 コ ンデ ンサ が あ る場合 の評 価,同 期発 電機 や太陽光 発電 設備 が混在 したハ イ ブ リ ッ ド発電 方 式 にお け る評価 な どにつ いて,シ
10.6.3
ミュ レー シ ョンな どに よる評価 が 必要 で あ る と思 われ る.
パ ワ ー エ レ ク ト ロニ ク ス 技 術 や 通 信 網 を 活 用 し た
新 しい自律分散型電源 の実現可能性 分散 型電 源 の単 独運転 状 態 は避 けるべ き もので あ る との観 点 か ら,こ れ まで種 々 の 方 式 につ いて述 べ て きたが,近 年の技術 進 歩 に応 じて逆 に積 極 的 に自律分 散型 運転 を 行 う電 力 系統 を指 向 す る動 き も出て きて い る26,27).国 内外 で,た とえば,パ ワー エ レク トロニ クス技術 を活用 した潮 流制 御 ・安 定 化制御,ル ープ型 配電 系統,貯 蔵装 置 との 併 用,統 合 型 の保 護 ・制御,需 要家 と電源 との双 方 向通 信 な どの新技 術 の適用 が考 え られ てい る.こ の よ うな系 統 にお いて は分 散型 電源 の連 系装 置 もまた高機 能化 され, 他 の手 段 と相 まって電 源 の出力 安定性 や制 御性 をさ らに向上 させ,電 力 品質や 信頼性 の よ りす ぐれ た電 力 系統 の実現 に貢献 す る こ とが期 待 され る.
参考文献 1)H.L.Willis
and
tion,Marcel
W.G.Scott:Distributed
Power
Generation
Planning
and
Evalua
Dekker,2000.
2)N.Jenkins,R.Allan,P.Crossley,D.Kirschen
and
G.Strbsac:Embedded
Genera
tion,IEE,2000. 3)和
久 ほ か:分
散 型 電 源 の 基 礎 と 適 用 の 実 際,日
4)G.T.Heydt:Electric
Power
本 電 気 技 術 者 協 会,1997.
Quality,Second
Edition,Stars
in
a Circle
Publica
Power
Systems
tions,1991. 5)R.C.Dugan,M.F.McGranaghan
and
H.W.Beaty:Electrical
Quality,McGraw-Hill,1996. 6)M.H.J.Bollen:Understanding
Power
Quality
Problems,IEEE
7)電
気 協 同 研 究 会:瞬
時 電 圧 低 下 対 策,電
8)電
気 協 同 研 究 会:電
力 品 質 に 関 す る 動 向 と 将 来 展 望,電
9)七
原:解
説
Press,2000.
気 協 同 研 究,46,3,1991.
海 外 に お け る風 力 発 電 の 導 入 状 況
気 協 同 研 究,55,3,2000.
と 電 力 シ ス テ ム へ の 影 響,電
気 学 会 論 文
誌B,120,3,pp.321-324,2000. 10)資
源 エ ネ ル ギ ー 庁 公 益 事 業 部 技 術 課 監 修:分
散 型 電 源 系 統 連 系 技 術 指 針,JEAG9701-
1993,1993. 11)資
源 エ ネ ル ギ ー 庁:解
説
・電 力 系 統 連 系 技 術 要 件 ガ イ ド ラ イ ン'98,電
力 新 報 社,1998.
12)通
商 産 業 省 エ ネ ル ギ ー 庁 公 益 事 業 部 電 力 技 術 課:系
統 連 系 技 術 要 件 ガ イ ドラ イ ン改 訂
の ポ イ ン ト,OHM,pp.46-56,1998-04. 13)石
川,今
井:解
説
分 散 型 電 源 の 単 独 運 転 検 出 技 術 の 開 発 動 向,電
学 論B,116,5,PP
-521-524,1996. 14)本
橋,一
ノ瀬,石
川,甲
斐,金
田,石
出 装 置(無 効 電 力 変 動 方 式),電 15)本
橋,青
柳,石
川,甲
塚:配
電 線 に連 系 さ れ る 同 期 発 電 機 の 単 独 運 転 検
学 論B,119,1,1999.
斐,金
田,石
塚:リ
ア ル タ イ ム ・デ ィ ジ タ ル シ ミ ュ レ ー タ に よ る
単 独 運 転 検 出 装 置 の 性 能 試 験 結 果(電 圧 変 動 低 減 対 策 付 き),平
成10年
電気学会全国大
会,No.1550,1998. 16)本
橋,青
柳,石
川,甲
斐,金
田,石
塚:単
独 運 転 検 出 装 置 の 開 発 と実 用 化,コ
ー ジ ェネ
田,石
塚:電
圧 変 動 低 減 対 策 を 考 慮 した 同 期 発 電 機 用 単 独
レ ー シ ョ ン,13,1,pp.13-20,1998. 17)本
橋,近
藤,石
川,甲
斐,金
運 転 検 出 方 式 の 検 討,平 18)加
藤,岡
土,伊
藤,苔
成 9年 電 力 技 術 研 究 会,PE-97-36,1997. 縄,野
宮:同
期 発 電 機 用 単 独 運 転 検 出 装 置 の 開 発,電
学 論B,120,
8/9,pp.1182-1193,2000, 19)上
月,苔
縄,八
瀬:単
独 運 転 検 出 装 置 の 開 発 と 実 用 化(QCモ
コ ー ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン,13,1,pp.21-28,1998 20)西
嶋,岡
平 成12年 21)本
本,西
村,箕
輪,志
方,吉
ー ド周 波 数 シ フ ト方 式),
.
川:次
数 間 高 調 波 注 入 方 武 単 独 運 転 検 出 装 置 の 開 発,
電 気 学 会 全 国 大 会,6-309,2000.
橋,近
藤,石
川,中
沢,深
井,千
原:誘
導 発 電 機 用 単 独 運 転 検 出 装 置 の 開 発,コ
ージ
ェ ネ レ ー シ ョ ン,13,1,pp.29-35,1998. 22)本
橋,一
ノ瀬,石
川,甲
斐,金
田,石
す る 適 用 性 能(無 効 電 力 変 動 方 式),平
塚:同
期 発 電機 用 単 独 運転 検 出装 置 の多 機 系 に対
成10年
電 力 技 術 ・電 力 系 統 技 術 合 同 研 究 会,PE-
98-117,1998. 23)甲
斐,金
討,平 24)佐
田:MATLABに
成11年 々 木,原
よる複 数 台 同 期発 電 機 に対 す る単 独 運 転 検 出 装 置 の性 能 検
電 気 学 会 電 力 技 術 ・電 力 系 統 技 術 合 同 研 究 会,PE-99-140,1999. 田,松
野,甲
斐,佐
藤:風
力 発 電 シ ス テ ム の 単 独 運 転 現 象 の 検 討,平
成10年
電 気 学 会 電 力 技 術 ・電 力 系 統 技 術 合 同 研 究 会,PE-98-107,1998. 25)中
沢,中
西:分
散 型 電 源 用 誘 導 発 電 機 の 単 独 運 転 検 出 機 能 省 略 条 件 に 関 す る解 析,電
気
学 会 論 文 誌B,120,5,pp.678-685,2000. 26)奥
山 ほ か:自
律 分 散 電 源 間 の 情 報 交 換 に よ る需 要 地 系 統 独 立 時 の 安 定 度 向 上 効 果,電
気 学 会 電 力 技 術 ・電 力 系 統 技 術 合 同 研 究 会,PE-00-47,2000. 27)奥
山,加
藤,鈴
置,舟
橋,Wu
kai,横
水,岡
本:需
間 の 情 報 交 換 に よ る 動 揺 収 束 時 間 の 短 縮 効 果,電
要地 系 統 独 立時 にお け る分 散 電 源
気 関 係 学 会 東 海 支 部 連 合 大 会,#94,
2000. 28)M.G.Bartlett
and
Embedded neering
against
Conference),September
29)J.W.Warin:Loss Industrial
M.A.Redfern:AReview
Generation
and
of Techniques
for the Protection
of Load,UPEC2000(Universities
Power
of Engi
6-8,Belfast,UK,2000.
of Mains Commercial
Loss
Protection,ERA
Installations,
Conference
London,1990.
on Circuit
Protection
for
30)M.A.Redfern,O.Usta Protect in
and
Embedded
Power
J.I.Barrett:ANew
System
tional
Link
and
Between
Conference
32)M.A.
on
an
Industrial
Developments
Redfern,J.I.Barrett
Protection
for
Delivery,10,3,
the
Defection
pp.1249-1254,
of
Islanding
Power
System
for
Loss
of
Grid
on
Developments
and
July the
Type Utility,
of
Faults
to
on
the
DPSP'93(lnterna
Protection),pp.136-140,1993. Microprocessor
Storage
of
the and
O.Usta:ANew
Dispersed
33)S.K.Salman:Investigation on
Identifying
Cogeneration
in and
Algorithm
Power
Relay
Conference
Protection),pp.127-130,1993.
31)S.K.Salman:Detecting,Locating Interfacing
Digital
generation,DPSP'93(lnternational
Generation
Based
Islanding
Units,IEEE
Trans.on
1995.
Effect
Condition,
of
Load
Magnitude
and
UPEC'97(Universities
Characteristics
Power
Engineering
Conference),pp.423-426,1997. 34)S.K.Salman
and
Mains ing
on
the
D.J.King:Investigation
Interfacing
Embedded
Link
Rotating
into
Between
a Utility
Generation,
Methods
and
of
Detecting
a Distribution
UPEC'97(Universities
Loss
System
Power
of
Contain
Engineering
Con
ference),pp.1122-1125,1997. 35)S.K.Salman:Detection Eliptical in 36)
of
Trajectory
Power
System
H.
Ishii,T.Okayasu
Multiple
Dispersed
Rotating
national
Conference
on
Electrical
sities
Power
Change
Conference
on
to
New
Using
Developments
Condition Engineering
of Islanding Technique,
of
ICEE'98(lnter
and
of
Changes
in Power
Loss
of
Factor,
Mains
Based
on
UPEC2000(Univer
Detection
Distribution Tecnology),Perth,
Thosa
Society,
Due
Changes to
of
Dispersed
Generation
POWERCON2000(lnternational Australia,pp.643-648,2000.
D.J.King:Monitoring and
Method
System,
Disturbances
Transmission
and
in at
System
the
Variables
Due
Utilities'Network,
to
IEEE
Distribution(T&D)Conference'99,
Orleans,1999.
40)S.K.
Salman,D.J.King
and
UPEC'99(Universities
Power
G.Heggie:Modeling Engineering
Digital
Simulation Generators,IEEE
-February
4
,1999.
and
Field Power
a ROCOF
Fukai Test
Results
Engineering
Relay
Using
EMTP,
Conference),Leicester,pp.454-457,1999.
41)J.Motohashi,T.Ishikawa,C.Nakazawa,H.
nous
on
Conference),Belfast,2000.
System
and
Correlation
G.Weller:Detection
Voltage
Power
Power
39)S.K.Salman
Power
Condition
K.Yamaguchi:Detection
Using
J-S.Hwang:Islanding
Connected
Islanding
of
Engineering and
Units
Islanding Conference
Engineering),pp.508-511,1998.
and of
38)J・E.Kim
and
Generators
37)S.K.Salman,D.J.King Rate
Generator
DPSP'97(lnternational
Protection),pp.103-106,1997.
O.Tsukamoto,
Using
Embedded
Technique,
of
Islanding
Society,Winter
and
I.Chihara:Comparison
Detection Meeting
System
of for
Synchro
1999,January
31
第11章 新 エネルギー導入 と可変速 回転機器技術
こ こで は可 変速 回転 機器 技術 につ いて,新 エ ネルギ ー電源 の一 つ として注 目 されて い る風 力 発電 にお け る可 変速 システム の例 と,夜 間の 系統周 波数 制御 へ の寄与 を主眼 と して系 統導 入 され た大容 量揚 水発 電 シス テムへ の適 用例 につ い て述 べ る.ま た,可 変速 回転機 器 の 系統適 用 拡大 の最近 の研 究例 と して,大 系統 間 の系統 連 系装 置 として 適用 した場 合,お よび将 来 の大 規模 風 力発電 の導 入 を想 定 して ウ イ ン ドフ ァーム と系 統 とを連 系 す る連 系装 置 として適 用す る場合 について紹 介 す る.
11.1
新エネルギー導入と可変速技術の応用
11.1.1
新 エネル ギー電源 の系統導入
原 子力,化 石燃 料 火力,水 力 な どの既存電 源 に対 して,最 近 で は再 生 可能 な ク リー ンなエ ネル ギー活 用 の代 表 として,風 力発電 や太 陽光 発電 が注 目され,分 散 電源 とし て系 統へ の 導入 実績 も伸 び てい る. 風 力発 電 や太 陽光 発電 は次 の特徴 を有 してい る. ①
モ ジュ ラー性 が あ るため発 電容 量 は電力需 要 の増 加 に対 して適宜 拡張 で きる.
②
既 存 の電 源 に比 較 して建 設期 間 が短 い.
③
燃 料費 は実質 ゼ ロで あ り,大 気 汚染物 質 の排 出が ない.
以 下,本 節 で は新 エ ネル ギー電 源 として風 力発 電 を例 に取 り上 げ,可 変速 技術 の応 用 につ いて紹 介 す る.
11.1.2
風 力発電 の概要 と課題
風 力 発 電 の 設 備 容 量 は ヨ ー ロ ッパ や ア メ リ カ を 中 心 に著 し く伸 び て い る.ヨ パ で は特 に ド イ ツ,デ
ン マ ー ク の 設 備 容 量 が 大 き く,1998年
ーロッ
末 現 在 で そ れ ぞ れ287.5
図11.1中
万kW,146万kWに
国 新 彊 ウ イ グ ル 自治 区 にあ る達 坂 城 ウ イ ン ドフ ァ ー ム
達 し て お り将 来 も積 極 的 に 風 力 発 電 の 導 入 を進 め る 予 定 で あ
る.た
と え ば ドイ ツ は2005年
kWを
含 め て2030年
時 点 で 約1000万kW,デ
ま で に約550万kWの
ン マ ー ク は 海 上 風 力400万
設 備 導 入 を 目 標 と し て い る.ア
カ リ フ ォ ル ニ ア 州 を 中 心 に し て1998年
末 に は205.5万kW(う
メ リカ は
ち,167.7万kWが
カ
リ フ ォ ル ニ ア 州)に 達 して い る. 風 力 発 電 の 単 機 容 量 は 数 百kWの
も の が 多 い が,こ れ ら を 同 一 地 域 に 多 数 設 置 し て
ウ イ ン ド フ ァ ー ム(ウ イ ン ドパ ー ク と も呼 ば れ る)を 構 成 し,総 発 電 量 を 拡 大 す る傾 向 が1980年
以 降 現 れ て き た.図11.1は
中 国 ・新 彊 ウ イ グ ル 自 治 区 の ウ ル ム チ 市 郊 外 に
あ る 達 坂 城(タ ー バ ン ジ ャ ン,Dabancheng)風
力 発 電 所 の ウ イ ン ド フ ァー ム で あ る.
この 地 区 は 天 山 山 脈 の 山 峡 に位 置 し て風 況 に 恵 まれ,西 豊 富 な 風 力 エ ネ ル ギ ー を活 用 し て 約 7万kWを フ ァ ー ム で あ る.ま た 最 近,イ
か ら の 年 平 均 風 速6.4m/sの
発 電 してい るア ジ ア最 大 の ウ イ ン ド
タ リ ア南 部 ナ ポ リ近 郊 の 丘 陵 地 帯 に は単 一 風 力 発 電 所
と し て は世 界 最 大 規 模 の 風 力 発 電 所 が 建 設 さ れ た との 報 告 が あ る.定 格600kWの 力 発 電 機282機
か らな る総 発 電 量17万kWの
風
ウ イ ン ドフ ァー ム で あ る.
風 力 発 電 に は 再 生 可 能 な ク リー ン な エ ネ ル ギ ー と して メ リ ッ トが あ る一 方,電
力系
統 へ の 導 入 容 量 が 増 大 す る と い くつ か の 問 題 点 が 生 ず る.風 力 発 電 に は通 常,誘
導発
電 機 が 適 用 され るが この 利 点 と し て,次
の こ と が あ げ ら れ る.
・か ご型誘 導 発電機 は構 造が 簡単 ,堅 牢 で あ るた め,保 守が容 易 ・低 価 格
・系統 並列 時 に位相 調整 が不 要
しか しなが ら下記 の問題 点 が あ り,商 用 系統 へ の大容量 風力 発電 の導 入 を阻 む要 因 と な って い る. (1)系
統連 系時(始 動 時)に お ける 誘導 発電機 の突 入 電流 に起 因 する 電圧 変動
風 力発 電 シス テム は立地 点 として配電 系統 末端 の弱 小系統 に接 続 され る場 合 が 多い た め,電 圧変 動 の影響 が大 きい.ま た,風 況 に応 じた誘 導発 電機 の起 動 ・停 止の 回数 が圧 倒 的 に多い. こ の対 策 と し て は,限 流 リア ク トル の 適 用,逆
並 列 サ イ リ ス タ を用 い た ソ フ トス タ
ー ト方 式 の 採 用 な ど が 考 え ら れ て い る .次 に 述 べ る周 波 数 問 題 と異 な り,電 圧 変 動 問 題 は ロ ー カ ル な対 策 で 対 応 可 能 で あ る.
(2)風
力発 電 の出 力変動 問題
自然 エ ネル ギー を利 用 す る こ とか ら,風 力エ ネル ギー の変動 に伴 い発 電 出力 の変動 を余儀 な くされ る.風 力発 電容 量 が 大 き くな る と商 用系 統 の 周波 数 変 動 の 要 因 とな る.風 力発 電 の系統 導入容 量 の 限界 につ いて は,こ れ まで いろい ろな研 究調 査 で述 べ られ て い るが,ヨ ー ロ ッパ の よ うに広 域連 系 され てい るか,単 独系統 であ るか な ど系 統 側 の周 波数制 御能 力 に よって も差 が あ り,一 概 にい えな い.年 間最大 電力 の 4%か ら10%程
度 にな る と風 力発電 の影 響 が系 統運 用 に出始 め る という調 査結 果 が あ る.
この周 波数 変動対 策 と して は,商 用 電 力 系統 側 に調整 電 源 の設 置(ガ ス ター ビン発 電所,揚 水 発電 所,電 力貯蔵 用 電池 な ど),風 速 に よらず安定 した電力供 給 が可 能 な風 力発 電 シス テム の採 用(可 変 速風 力発 電 シス テ ム)な どが考 えられて い る.電 圧 変動 問 題 と異 な り風 力発電 の出力 変動 に起 因 す る系統 周 波数 制御 の問題 は系 統全体 の問題 と して解決 す る必 要が あ る. (3)電
力系 続の事 故 時 にお ける風 力発 電シ ステム の系 統安 定度維 持 問題
誘 導 発 電 機 は十 分 な 無 効 電 力 の 供 給 が な い と電 源 電 圧 の 維 持 が 困 難 とな り同 期 外 れ を起 こ しや す い.こ
の た め に風 力 発 電 近 傍 に 無 効 電 力 源 と して の 並 列 コ ン デ ンサ を設
置 し た り,電 圧 制 御 用 の 静 止 型 無 効 電 力 制 御 装 置(SVC:Static
Var
Compensator)
の 導 入 が 図 ら れ る.
11.1.3風
力発電 システムへ の可変速 技術の応用
風 力 に よ り駆 動 さ れ る風 力 タ ー ビ ン の 制 御 目標 は,次
の 運 転 を実 現 す る こ とで あ
る.
①
定格 風速 以下 の領 域 にお いて,風 力 エ ネル ギー の利 用効 率 を最大 とす る運転
②
定格 風速 以上 の領 域 にお いて,発 電 機 の定格 出力 を一 定 とす る運 転
風 力発 電機 の可変 速運 転(以 下,可 変速風 力 発電 システム と記 す)に よ り,上 記制 御
目標 の うち① が可 能 とな り,ま た ター ビン翼 の ピ ッチ制 御 と組 み合 わせ る こ とに よ り ② も可能 とな る. 誘 導 発電 機 が直 接系統 に連 系 され る一般 の風力 発 電 シス テムで は,発 電機 の 回転 速 度 が ほぼ一 定 で あ るか ら風況 変化 に伴 う風力 エ ネル ギー の脈 動が そ の まま系 統へ の電 力脈 動 とな って現 れ る.こ れ に対 して可 変速 風力 発電 シス テムで は風力 発電 機 と系統 との間 に静 止型 変換 器 を設 けて周 波数変 換 を行 うの で,風 力発 電機 のター ビン回転 速 度 が系統 周 波数 と関係 な く一 定範 囲で可 変 にで きる.こ の よ うにす る と風況 変化 に伴 う風 力 エネ ル ギー の脈動 分 は,タ ー ビ ン発電 機 の機械 的 回転 エネ ルギ ー と して一次 的 に蓄 えた り,逆 に放 出 した りす る ことが 可能 とな るので,こ れ を利 用 して系統 へ供給 す る電力 の変 動 を抑 制制 御す るこ とが で きる. 可 変速 風 力 発 電 シ ステ ム にお け る風 力発 電 機 と順 変 換 器 の組 み合 わ せ には主 と し て, ①
同 期発 電機 とダ イオー ド変換 器
②
誘 導発 電機 と自励式 変換 器(GTO,IGBT素
子適 用)
の組 み合 わせ が あ るが,前 者が 損失 お よび コス トの面 で有利 といわ れ る.な お,逆 変 換 器 につ い て は発 電機 と順 変換器 の組 み合 わせ とは独立 して選択 で きる. 図11.2は 損 失 が少 な くコス ト面 で有利 な可変 速風 力 発電 システム の構成 例 であ る. 可 変速 風 力発 電 シ ステム のメ リッ トをあ げ る と次 の よ うで あ る. ①
発電 出 力 の平準 化 に よ り,周 波数変動 に よる系統 へ の影響 が低 減 で きる.
②
ター ビ ン翼 の周速 比 を風力 エ ネル ギー活 用 の効 率 最大 点 に追従制 御 す る ことに よ り風 力 エ ネル ギー の最 大限 の利 用が 図れ る.
③
トル ク変 動 やパ ワー変 動 に起 因 す る ドライ ブ機 構(ギ ア に よる増 速駆 動系)へ の 応 力負 担 が低減 され る.
図11.2
可変速風力発電 システムの構成例
図11.3 可変速回転機 を適用 す る可変速風力発電 システム
④ 機 械 的共 振 を発生 させ る回転 速度 を回避 で き る. ⑤ 風 速 の小 さい場合 に運転 速度 を下 げ るこ とに よ り騒 音 が低減 で きる. 可 変速 風 力発 電 シ ステ ム に は,図11.2の
構成 以 外 に も発 電機 と静止 型 変換 器 の種
類 と組 み合 わせ によ って種 々の ものが 考 え られ て い る.ま た主 回路 に静 止型 変換 器 を 適用 す る代 わ りに,可 変 速 回転機 を採 用す る方 式 もあ る. 可 変速 回転 機 を採 用 す る方式 は,静 止型 変換器 に よる直流 リンクで はな く,風 力発 電機 に可 変 速発 電機 を適 用 す る.可 変速 発電 機 は構造 的 に は回転 子 回路 に交流励 磁巻 線 を設 けた誘 導 発電 機 とほぼ同 じで ある.励 磁 装置 として の周波 数変換 器 か ら,固 定 子側 の 系統 周波 数 と回転 子速 度周 波数 の差 のす べ り周波 数 を有 す る励磁 電 流 を供 給 し て,同 期 を維持 しつつ 回転子 速度 を一 定範 囲で 可変速 とす る方式 で あ る.こ の 方式 で は一 般 に変 換器 容量 が少 な くて すむた め変換 器 コス トが低 減 され る一 方,特 別 な巻線 型誘 導機 が 必要 とな るので従 来 の誘 導 発電機 に比 べ て高価 であ る.ま た保守 に も手 間 が かか るな どの欠点 が あ る. 風 力発 電 へ の可変 速 技術 の応 用例 と して は従 来 図11.2に 見 られ る よ うに,静 止 型 変換 器 に よ る直 流 リンク を採 用 した可 変速 風 力発 電 シ ス テム が 主流 で あ った.し か し,こ の方 式 は静止 型変 換器 を各 発電 機 ご とに設置 す るの で誘 導発電 機単体 に よる風 力発 電 シ ステ ム に比較 して コス トア ップ は避 け られ な い.あ との節 で紹 介 す る よ う に,ウ イ ン ドフ ァーム と系統 との間 に可変 速機 を適 用 した 回転 型 連系 装置 を適 用 す る 研究 事例 もあ る.風 力発 電 の 出力 変動 を考 慮 した,大 容 量風 力発 電 と系統 との連 系課 題 は大容 量 ウイ ン ドフ ァーム の建 設 を背景 と して,今 後 ます ます実用 的 な研究 が期 待 され る分野 で あ る.
11.2 可変速揚水発電システムの構造と特徴 電 力 系 統 へ の 可 変 速 回 転 機 器 の 適 用 と し て は,大 容 量 の可 変 速 揚 水 発 電 シ ス テ ム が 代 表 的 な も の で あ る.こ
こで は,こ
の 可 変 速 揚 水 発 電 シ ス テ ム に つ い て概 要 を紹 介 す
る. 可 変 速 揚 水 発 電 シ ス テ ム の 構 成 を 図11.4に 違 い は 励 磁 装 置 と 回転 子 の 構 造 に あ る.本 バ ー タ やGTO変
換 器 を 適 用 し,ま
示 す.本
シ ス テ ム と現 行 の 同 期 機 との
シス テムで は励磁 装置 としてサ イ クロ コン
た 回 転 子 は 三 相 巻 線 構 造 を 有 し三 相 交 流 の 励 磁 電
流 が 流 れ る.巻 線 型 誘 導 電 動 機 に近 い 回 転 機 の 構 造 で あ る. ま た 励 磁 制 御 系 は,現 行 の 同 期 機 が 端 子 電 圧 制 御 用 のAVR(Automatic Regulator)の
Voltage
み で あ る の に 対 し て,可 変 速 揚 水 発 電 シ ス テ ム で は 三 相 励 磁 電 流 の大 き
さ と位 相 が 制 御 で き る励 磁 装 置 に よ り,有 効 電 力 と無 効 電 力 の二 つ が 同 時 に 調 整 可 能 で あ る.こ れ は 回 転 機 の 内 部 誘 起 電 圧 を 形 成 す る 回 転 子 回路 磁 束 が 励 磁 電 流 の 調 整 に よ りベ ク トル 量 と し て 大 き さ と位 相 の 両 方 が 自 由 に 制 御 で き る か らで あ る.な 御 対 象 を有 効 電 力 の 代 わ り に 回 転 速 度,ま も で き る.図11.5に
お,制
た 無 効 電 力 の 代 わ りに 端 子 電 圧 とす る こ と
可 変 速 揚 水 発 電 シ ス テ ム の 励 磁 制 御 系 の 一 例 を 示 す.
可 変 速 揚 水 発 電 シ ス テ ム の 特 徴 と系 統 適 用 上 の利 点 に つ い て述 べ る.
図11・4 可 変 速 揚 水 発 電 シ ス テ ム の構 成
図11.5
11.2.1
励 磁 制 御 系 の一 例
夜 間 揚 水 運 転 時 にお ける 揚 水 電 力 調 整 が 可 能
可 変 速 揚 水 発 電 シ ス テ ム は 回転 速 度 を一 定 範 囲 内 で 可 変 とす る こ とが で き る か ら, 図11.6に
示 す よ う に 回 転 速 度 の ほ ぼ 3乗 に 比 例 して 揚 水 電 力(ポ ン プ 入 力)を 調 整 す
る こ と が で き る.こ
11.2.2
の 機 能 に よ り夜 間 の 系 統 周 波 数 制 御 に貢 献 し う る.
系統安定 度の 向上
可 変速 揚水 発 電 シス テム で は回転子 の挙 動 と直接 関係 な く内部 誘起 電圧 が交 流励磁 制御 によ りベ ク トル と して制 御 で き るの で,現 行 の 同期機 にみ られ る よ うな回転 子動
図11.6
揚 水 電 力(ポ ン プ入 力)の 調 整
揺 に起 因す る安定 度 問題 は原理 的 に生 じない. また,さ らに有 効電 力 と無効 電 力の 高速制 御 が可能 で あ るか ら,電 力 系統 におい て 可 変速 揚水 発電 システム の近傍 で運 転 して い る同期発 電機 に対 して安 定 化 を図 る こと が 可能 とな る.す なわ ち,可 変 速機 の無 効電 力 の高速 制御 によ り系統 事 故後 の電圧 回 復 に貢献 す る とともに,有 効電 力 の高速 制御 に よ り当該 同期機 と可 変速 機間 に電 力授 受 を行 い,同 期機 の 同期外 れ の防 止 と過 渡動 揺 の抑制 に貢献 で きる. 11.2.3
発 電 運 転 時 に お け る運 転 効 率 の 向 上
発電 運転 におい て も落差 変 動範 囲が 大 きい場合 や部 分 負荷運転 の場 合,可 変速 発電 シス テム で は水 車 を効 率最 大 の回転 数 に調整 す るこ とによ り運転 効 率 の向上 が期 待 で き る.
11.3
可変速揚水発電システムの制御方式
本節 で は電力 系統 の解析 にお いて考慮 す べ き可変速 揚 水発電 システ ムの制 御 方式 に つい て基本 的 な事項 を述 べ る.
11.3.1
過渡安定 度などの短 時間領域 での解析
数 秒 間 の 比 較 的 短 時 間 の 解 析 で 考 慮 す べ き可 変 速 揚 水 発 電 シ ス テ ム の 制 御 系 モ デ ル に つ い て 紹 介 す る.可 変 速 機 の 制 御 系 の 一 例 を 図11.5に 時 間 領 域 で は電 力 設 定P1*の
示 したが過 渡 安 定度 解 析 の
動 作 まで 考 慮 す る 必 要 は な い.し
た が っ て,ガ
イ ドベ ー
ン,速 度 最 適 制 御 系 の 応 動 は 無 視 し,速 度 設 定 ωr*は 一 定 とみ な し て よ い. 可 変 速 発 電 シ ス テ ム の励 磁 制 御 にお い て は,端 子 電 圧 を常 時 検 出 し この 端 子 電 圧 ベ ク トル と 同 位 相 に q軸,ま
た そ れ よ り90° 位 相 遅 れ の 位 置 に d 軸 座 標 を 設 定 し,回 転
子 励 磁 電 流 の d 軸 と q軸 成 分 を求 め る.こ
の 二 つ の 座 標 成 分 に 基 づ い て 電 圧(ま た は
無 効 電 力)制 御 と回 転 子 速 度(ま た は有 効 電 力)制 御 を 実 施 す る.図11.7にd,q軸
座
標 系 で の ベ ク トル 表 現 を 示 す. 同 図 は 発 電 運 転 時 の 場 合 で,内
部 誘 起 電 圧 ベ ク トル E'が 端 子 電 圧 ベ ク トルEsよ
り も位 相 δ'だ け進 ん で い る.こ
の と き 回 転 子 回路 磁 束 ベ ク トル ΨR'は 内 部 誘 起 電 圧
ベ ク トル E'よ り90° 位 相 遅 れ の 位 置 に あ る.こ ク トルIRに
の 磁 束 ベ ク トル は 回 転 子 励 磁 電 流 ベ
よ り調 整 す る こ と が で き る.位 相 δ'が比 較 的 小 さ い と仮 定 す れ ば 回 転 子
励 磁 電 流 ベ ク トル の d 軸 成 分 電 流idrを 増 減 させ る こ と で 回 転 子 励 磁 電 流 ベ ク トル の 大 き さが 調 整 で き る.ま
た,回
転 子 励 磁 電 流 ベ ク トル の q軸 成 分 電 流iqrを
増減 させ
図11.7
d,q軸
座 標 系 で の ベ ク トル 表 現
るこ とで回転子 励磁 電 流ベ ク トル の位 相 が調整 で きる. この こ とか ら,可 変速 機 の電圧 制御(ま た は無効電 力制 御)は d軸 成分 電 流idrの 増 減 に よ り達成 で きる こ とが理 解 され る.ま た 同様 に,回 転 子速 度制御(ま た は有効 電 力 制 御)は q軸 成分 電 流iqrの 増 減 に よ り達成 で きる こ とが 理解 され る.こ れ が 可 変速 機 励磁 制御 の原 理 で あ る. 可 変速機 の励 磁制 御 系の構 成例 を図11.8に 示す.同 図 に示 され る よ うに,安 定 度 解 析 用 の制御 系 モ デルで は回転 子 回路電 流 のマ イナ ー制 御 ルー プ(励磁 電 流制 御系)と そ の上 位 制御 の電圧 制御 系(d 軸 電 流 が制 御対 象)と 回転子 速 度制 御 系(q軸 電 流が 制御 対 象)か ら構成 され る.な お,各 制 御 系 は一般 に比例 ・積 分(PI)要 素 か らな る. 以上 の説明 か らわか るよ うに可変速 機 は回転 子 回路 の交流励 磁 電流 のd,q軸
成分
の制 御 に よ り内部 電圧 の 大 きさ と位 相 が許 容 範 囲 内 で 自 由 に制 御 され る.し た が っ て,回 転 子機械 系 の挙動 で 同期運 転 の安定 性 が支配 され る現行 の 同期機 とは異 な り,
図11.8 可変速 機の励磁制御系の構成例
可変 速機 は励 磁 電源 容 量で きまる制御 可能範 囲 で運転 され る限 り,同 期 はずれ は原理 的 に起 こ り得 な い. 11.3.2
周波数 応答解析 などの長時間領域 での解析
系 統周 波 数制 御へ の効 果 の解析 な ど,比 較 的長 時 間 の系統 解析 で考慮 す べ き制 御 モ デル につ いて紹 介 す る. この時 間領 域 で は前項 で述 べ た励 磁制 御以 外 に原動 機制 御 や最 適速度 制御 な どが含 まれ る.一 方,可 変 速 回転機 の電 気的過 渡現 象 な ど短 時 間特性 は無視 で きる.励 磁制 御 お よび原動 機制 御 を含 め た全体制 御 に関 して は,大 容量 可 変速揚 水発 電 シ ステム向 け として二 つの制 御 方 式 が提 案 され 実用 化 され て い る.表11.1に
そ れ らの制 御 方式
の分類 を示 す. 表11.1に お いて,無 効 電力 制御 は両制 御 方 式 とも励 磁 制御 で実 現 す るの は共通 で あ るが有効 電 力 お よび速 度制御 の分 担が 異 な る.ま た,発 電運 転 モー ドと揚 水運 転モ ー ドとで は両 制御 方 式 とも若干 構成 が変 わ る. 電圧 制御 を除 き,有 効電 力制 御 と速度制 御 に関 係 す る全 体 ブ ック図 を図11.9(制 御 方式 A)お よび図11.10(制 御 方式 B)に示 す.同 図 中,電 力 制御 器 お よび速度 制御 器 は 比 例 ・積 分要 素 か ら構 成 され て いる.最 適 速 度関 数 は,た とえ ば非線 形 関数 と時 間遅 れ要素 な どか ら構 成 す る.両 制 御 方式 の速 度 制御 は発 電運 転 モー ドにおい て は最 高効 率 運転 を実現 す る速度 を,ま た揚水運 転 モー ドにお いて は要求 され る入 力 を実現 す る 速 度 を維持 す る ように制御 され る.有 効電 力制 御 と速 度制 御 は互 い に密 接 な関係 が あ り相互 干渉 もあ りう るの で,た とえば,大 容 量火 力発 電 プ ラン トにお け るボイ ラ ・タ ー ビ ン協調 制御 に類似 した協調 制御 が考慮 され る. こ こで長 時 間動 特性 モ デル の周波 数応答 解析 へ の適 用例 を紹 介 す る.解 析 ツール と して はMATLAB/Simulinkを
使 用 した.
最初 に電 力設 定 部 に ステ ップ信号 を印加 した場合 のプ ラ ン ト出力 の応 答例 を示 す. 次 に系 統 モ デル に可変 速機 モ デル を組 み込 ん で周 波数制 御効 果 を解析 した例 を示 す. 発 電運 転時 の水 路 とター ビン特性 は,理 想 的 な無損 失 ター ビンモ デル に基づ いた 古典 的 な水 車 の伝達 関 数 を適用 した.揚 水 運転 時 の水路 とポ ンプ特性 としては,こ こで は 簡 単化 の た めに水 頭 は一定 と仮 定 した.ま た,揚 水 運転 の可 変速 範 囲(同 期速度 周 りの 約10%)に
お いて,機 械 的 トル ク は近似 的 に 回転速 度 の二乗 と弁 開度 の積 に比例 す る
と仮 定 した.
表11.1
実 用 的 な二 つ の 制 御 方 式
有効電力制御
無 効電力制御
回転子速度制御
制御方式 A q軸励 磁制御 に よる
d軸励磁制御 に 原動機制御 による よる
制御方式 B 原動機制御 によ
d軸励磁制御 に q軸励磁 制御 による よる
る
(a)発 電 運 転 モ ー ド
(b)揚 水 運 転 モ ー ド 図11.9
制御 方式 A
(a)発 電 運 転 モ ー ド
(b)揚 水 運 転 モ ー ド 図11.10
制御 方式 B
(1) 出力 のス テ ップ応 答特性 制御 方式 B を採用 した可 変速機 の 出力 の ステ ップ応 答特 性 を図11.11に 示 す.図 の 結 果 か ら,発 電,揚 水運 転 時 とも安定 で 妥当 な応 答結 果 で あ るこ とが わ かか る.
(a)発 電 運 転 モ ー ド
(b)揚 水 運 転 モ ー ド 図11.11
(2)周
制 御 方 式 B を 適 用 した 場 合 の ス テ ッ プ応 答 解 析例
波 数 制御 特性
揚 水運 転時 にお いて可 変速 機導 入 の周波数 制御 へ の効 果 につ いて解析 した.表11.2 は適 用 した系 統 モデ ル の概要 を示 す. 擾 乱 は系統 負荷 が ス テ ップ状 に10%低
減 した場 合 を想 定 した.図11.12は
系統 周
波数 と可 変速 機 の速 度変 化 を示 す.ま た図11.13は 火 力機 出力 と可 変速 機 入力 の変化
表11.2
系 統 解 析 条 件(夜 間 の発 電 お よ び 負荷)
図11.12
図11.13
周 波 数 と可 変 速 機 の速 度 変 化
火 力 機 出力 と可 変 速機 入 力 の 変 化
を示 す.こ
れ ら の 結 果 か ら,次
の こ とが わ か る.
① 揚 水 運 転 に お い て 可 変 速 機 は 機 械 的 速 度 を 変 化 させ る こ と に よ り入 力 量 が 調 整 で き る の で 系 統 周 波 数 制 御 に貢 献 で き る. ② 実 用 化 さ れ て い る二 つ の 制 御 方 式 に は,入 み られ る も の の,い
11.4
力 と速 度 変 化 に 若 干 の特 性 の 相 違 が
ず れ も有 効 に 動 作 して い る.
可変速揚水発電システムと系統安定度
可 変速 揚水 発電 システ ム は揚 水運 転 時の 系統周 波数 制御 への寄 与 の ほか に,系 統過 渡安 定度 や動 態安 定度 の 向上 に も寄 与 で き る.本 節 で は可 変速機 を含 む 2機 対無 限大 母線 系統 を対 象 に,動 態安 定度 解析 例 を紹介 す る10).
11.4.1
可変速機 による系統安 定度向上効 果の解析 モデル
可 変速 機 が適用 され た系 統 にお け る安 定度 向上 効果 解析 のた め の最 も基 本 的 な系統 モ デル は,安 定化対 象 の 同期機 と制 御対 象 の可変 速機 が大 系統 に対 して並 列 運転 して い る 2機 対無 限大母 線 系統 モ デル で ある.こ の モデ ルで は,同 一 揚水 発電 所 内 での 同 期機 と可 変速 機 との並 列運 転 や,長 距 離大容 量送 電系 統 の中間 変電所 に設 置 され た可 変速 調相 機 な どの代 表 的 なケ ー スが解析 で きる. 可 変速 機 に よる系統 安定 化効 果 に は,系 統 事故 時 に可変 速機 の有効 電力 出力 を急減 させ て制 動抵 抗 と同様 に同期機 の加 速 エネ ルギ ー を吸 収 す る過渡 安定 度 向上 効果 と, 可変 速機 の有 効電 力 を何 らか の安定 化 信号 に基 づい て変動 させ,同 期 機 の電 力動 揺 を 抑制 させ る動 態安 定度 効果 が あ る.前 者 につ いて は,パ ター ン的 な制 御 で対 応 で き る た め制御 方 法の立 案 は比較 的容 易 で あ る.し か し,後 者 は同期機 の動 揺 に合 わせ て適 切 な電力 制御 が 要求 され るの で,そ の 制御 系設計 は単 純 で はない.こ こで は,同 期機 の動 態安 定度 を向上 させ るた め の可 変速 機 の制御 につい て紹介 す る. 図11.14に 対 象 と した 2機対 無 限大母 線 系統 モデ ル を示 す.
11.4.2
可変速機の安 定化装置 の設計例
同期機 と可 変速機 か らな る例 題 の図11.14の 系統 モ デル におい て,長 距 離 送電 系統 の 中間母 線 に同期機 容 量 の38%の
可変 速機 が接続 され てい る場 合 を考 え る.ま た,使
用 した 同期機 お よび可 変速 機 の定数 を表11.3に 示す.な お,同 期 機 の励磁 制 御 は標準 的 な交流 励磁 方式(PSSな
し)であ る.
周 辺 の同期 機 に対 す る積 極 的 な安 定化 制御 を実施 す るため に,同 期 機 の動 揺信 号 を
図11.14
表11.3
2機 対 無 限 大母 線 系 統 モ デ ル10)
同 期 機 お よ び可 変 速 機 の 定 数10)
検 出 し,適 切 なゲ イ ン ・位相補 償 を行 った あ と,こ の信 号(安 定化信 号)を 可 変速 機 の 速 度制 御 目標 値 に重 畳 して可変 速機 の電 力制 御 を行 う.同 期機 の動 揺 は,た とえば回 転 速度 変 化,同 期 機 の有効 電力 変化,ま た は同期機 と可変速 機 の 出力合 計潮 流(系統 送 電 電力)変 化 で検 出 で きる.こ こで は まず,図11.15に
示 す よ うに同期機 の 回転速度 変
化 を検 出 す る場合 を考 える.ま た,安 定化 装 置 を付 加 した可変 速機 の励磁 制御 系 の構 成 を図11.16に 示 す. 図11.14の モ デル系 統 をべ ース として 同期機 と可変速 機 とが 無負荷 運転 して いる場
図11.15 安 定化装置付加 による可変速機 に よる周辺期機 の安 定化
安定化装置 を付加 した可変速 機の励磁制御系
図11.16
合 を想 定 して,可 変速 機 の速 度 設 定値 変 化 分 ⊿ωr*か ら同期 機 の電 気 的 トル ク変 化 ⊿Tegま で の伝 達関 数 を近 似 的 に導 い てみ る.同 期機 の電 気 的 トル ク変化 は次 式 で 近 似 で きる. (11.1) た だ し,Kcoeffは
可 変 速 機 の 出 力 変 化 に 対 す る 同 期 機 の 出 力 変 化 の 比 率 で あ り,系 統
リ ア ク タ ン ス か ら,例 題 系 統 で は次 の よ う に 近 似 的 に 計 算 で き る.
(11.2) こ こで,(X1+Xe1),(X2+Xe2)は
それ ぞ れ 同 期 機,可
変速 機端 子 か らみた系統 側 の等
価 リア ク タ ン ス に 対 応 す る. 可 変 速 機 の 速 度 設 定 値 変 化 分 ⊿ωr*か ら磁 束 変 化 ⊿ Ψqr'ま で の 伝 達 関 数 は,速 度 制 御 系 の 伝 達 関 数Gω(S)が
ゲ イ ンKω の み で あ る か ら,
(11.3)
と な り,式(11.1),(11.2),お
よ び(11.3)よ
り概 略 次 式 を 得 る.
(11.4) た だ し,Xeq=X'+X2+Xe2と
お い た.
これ よ り,励 磁電 流制 御 系 ゲイ ンKcと 可 変速 機 の慣 性 定 数Mdの
積 に主 に依 存 す
る積分項 が分母 にあ る こ とがわ か る.周 波 数 の低 い領 域 で は この項 の影響 が支 配的 と な り, (11.5) と近 似 で き る. 同 期 機 の 制 動 効 果 を 増 加 さ せ る に は,同 期 機 の 角 速 度 変 化 に 対 して 同 期 機 の 電 気 的 トル ク変 化 が 同 位 相 と な る よ う に制 御 す る こ と が肝 要 で あ る.式(11.4)か 制 御 系 の 伝 達 関 数 と して は,電 力 動 揺 周 波 数 領 域(2∼20rad/s)に が 必 要 で あ る こ とが 理 解 され る.な お,例
お い て位 相 遅 れ 補 償
題 系 統 で の 同 期 機 の 電 力 動 揺 モ ー ドの角 速
度 周 波 数 は あ と の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン結 果 か らわ か る よ う に,約4.2rad/s(周 s)で あ る.そ
ら,安 定 化
こ で 安 定 化 制 御 系 の位 相 補 償 関 数 と し て,次
期 約1.5
式 の 簡 単 な 1次 遅 れ 関 数 が
考 え られ る.
(11.6) こ こ で,時 定 数TSω
は1/TSω
〓 電 力 動 揺 周 波 数 領 域 〔rad/s〕と な る よ う に選 択 して そ
の 領 域 の 位 相 遅 れ を はか る.式(11.6)の
補 償 関 数 に加 え て 同 期 機 の 角 速 度 変 化 の 検 出
回 路 や シ グ ナ ル リセ ッ ト回 路 の 伝 達 関 数 を考 慮 して,同 定 化 制 御 系 と し て,最
期 機 の角速 度変 化検 出型 の安
終 的 に は 次 式 の 伝 達 関 数 を 設 定 す る.
(11.7) ま た,電
力 検 出型 の安 定 化 制 御 系 の 設 計 に つ い て は,同 期 機 の 運 動 方 程 式 か ら機 械
的 トル ク が 一 定 の場 合,⊿Tegと
⊿ωgと の 関 係 が 近 似 的 に,
(11.8) で あ る こ と を 考 慮 し て,式(11.7)か 7s,ま
たDg=2puと
ら 次 式 の よ う に 関 数 形 が 決 ま る .た
だ し,Mg=
み な し た.
(11.9) こ こ で,KSTg=Ksω/2の
11.4.3
関 係 が ある.
設計 した安定 化装置適用 の効果
この よ うに して設 計 した安定 化制御 系 を適用 した場合 につい て,周 波 数応 答法 によ り周辺 の 同期機 に対 す る動 態安 定度 向上効 果 を解析 した.図11.17に
安定 化 信号 有無
の両 ケー ス につい て,同 期機 に関す る制動 トル ク係 数 と同期 化 トル ク係数 の 周波 数特
(a)
安定化制御 な しの場合
(b) ⊿ωg検出 型 の 安 定 化 制 御 適 用 の場 合(Ksω=3.0) 図11.17
同 期 機 の制 動 ・同期 化 トル ク係 数 の 周 波 数 特 性10)
性 を 計 算 した 結 果 を 示 す. 図11.17の
結 果 か ら,安 定 化 制 御 有 りの 場 合 に は な い場 合 に比 較 し て,電
力動 揺周
波 数 領 域 で の 制 動 トル ク係 数 が ピ ー ク値 で 3倍 以 上 増 加 す る こ とが わ か り,動 態 安 定 度 向 上 効 果 が 確 認 で き た.な
お,制
動 トル ク係 数 は ピ ー ク値 の 増 加 の み な らず,制
御
な しで は 制 動 効 果 の 期 待 で き な か っ た 周 波 数 の 低 い 領 域 に対 し て も,裾 野 が 拡 大 され て い る こ とが 確 認 さ れ る. ま た,設
計 した 安 定 化 制 御 の 効 果 を大 擾 乱 時 の 動 的 シ ミ ュ レ ー シ ョ ンで 検 証 した.
図11.14の
モ デ ル 系 統 に お い て,中
間 母 線 に お け る 三 相 地 絡 故 障(70ms後
に 自然 消
弧)を 発 生 させ て,可 変 速 機 へ の 安 定 化 制 御 系 の 適 用 効 果 を 検 証 し た.図11.18に ュ レ ー シ ョ ン結 果 の 一 例 を示 す.同
シミ
図 に は安 定 化 対 象 の 同 期 機 と可 変 速 機 の 電 力 動 揺
(a)
(b)
(c)
⊿ωg検 出 型 の 安 定 化 制 御 適 用 の場 合(Ksω=3.0pu)
⊿Teg検 出型 の 安 定 化 制 御 適 用 の 場 合(KSTg=1.0pu)
図11.18
波 形 を,安
定 化 制 御 あ り,な
数 は式(11.7),お
安定化制御 な し
大擾乱 に対 する安定化制 御の適用効果10)
し の 場 合 に つ い て 示 した.な
よ び 式(11.9)を
お,安
定 化制 御 系 の伝達 関
用 い た.
これ よ り安 定 化 制 御 系 を適 用 し 可 変 速 機 の 電 力 制 御 を 実 施 す る こ と で,同 動 力 が 向 上 し た こ とが わ か る.こ
期 機 の制
れ よ り,前 節 に て 設 計 した 可 変 速 機 に よ る 安 定 化 制
御 の 効 果 が 動 的 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に よ っ て 検 証 さ れ た.
11.5
可変速回転機器の系統連系装置としての適用研究事例
大 容 量の 系統連 系装 置(周 波 数変 換装 置 な ど)と して は,最 近 で はサ イ リス タ変 換装 置 を適 用す るの が一般 的 で あ る.一 方,回 転 形 系統連 系装 置 としては,同 期 機 また は 誘 導機 を軸直 結 した小 容 量 タイ プの ものが 昔か ら実 用化 され てい た.こ こで は,可 変 速機 の回転機 として の利 点 とパ ワー エ レク トロニ クス応用 として の制 御 の速 応性 の利 点 に着 目 した可 変速応 用 の 回転 形 系統 連系 装置 に つい ての研 究例 を紹介 す る11).
11.5.1
回転形系 統連系装 置の構成 と特性,モ デ リング
可変 速技 術応 用 の回転 形 系統連 系装 置 を図11.19に 示 す. 回転 形 系統連 系装 置 の単機 構成 としては,適 用 す る回転 機 の種 別 に よ り次 の組 み合 わせ が考 えられ る.少 な くと もどち らか一 方 に可変 速機 を適 用 す る. (a)
可変 速機/可 変 速機
(b)
可変 速機/同 期 機
(c)
可変速 機/誘 導機
なお,融 通 電力容 量 が大 きい場合 には,こ れ らの軸 直結 ユニ ッ トを複数 台 並列 運転 す る こ とも考 え られ,組 み合 わせ を考 えれ ばい くつ かのパ ター ンが あ り得 る.こ こで は(a)と(b)の 構成 の場 合 につ い て検 討 した 結果 を紹介 す る. 図11.20に 可変 速機/同 期機 の連 系装 置 モ デルの構成 を示 す.電 力 系統 A 側 に可 変 速機 が,ま た電力 系統 B 側 に は同期機 が接 続 され てい る,両 回転機 の 回転子 は直 結 さ れ て い るため機械 的 な回転 数 変化 と位 相角 変化 は両機 と も同 じで あ る.可 変 速機 の固 有 な制 御 は電圧制 御 と電 力 ・回転 子速 度制 御 で あ り,上 位 にあ る変 換装 置 出力 制御 装 置 か らの指 令 に よ り電力 制御 設定 値 を調整 す る こ とで,連 系装 置 としての 融通 電力 制
図11.19
可変速技術応用 の回転型 系統連 系装置
図11.20
可変速機/同期機の連系装置 モデルの構成11)
御 が 達 成 で き る.
一 方,同 期機 の制御 は通 常の 発電 機 と同様,電 圧 制 御(AVR)の
み で あ る.可 変速
機/同 期機 の連 系装 置 として の解析 モデ ル は,制 御 系 を除 け ば従来 の同期 機 モ デル と 可 変速 機 モ デル の組 み合わ せ であ り,機 械 系 モ デルの みが共 通 で ある にす ぎない. また,図11.21に
可変 速機/可 変速機 の連 系装 置 モ デルの構 成 を示 す.両 回転機 が可
変 速機 で あ り,基 本的 に は両 電力 系統 に対 して対称 な融 通電 力 の制御 特性 が期 待で き る.電 力 の制御 方 法 として は片 方,ま た は両 方の可 変速 機 を制御 す る こ とに よ り,図 11.20の 可変 速機/同 期機 の場合 に比 較 して 図11.22に 示 す よ うな さ まざ ま な形 式が 考 え られ る.た だ し,表 には記述 してい ないが電 圧 制御 は系 統電 圧 を維持 す る役 割 と して いずれ の場 合 とも必 要 であ る. 可 変速 機/可 変速機 の連 系装 置 は,制 御 系 を除 けば従 来 の 2台 の可変 速 機 の組 み合 わせ で あ り,機 械 系が共 通で あ る ことは可変 速機/同 期機 タイプ と同様 で あ る.
図11.21
図11.22
11.5.2
可 変 速 機/可 変 速 機 の 連 系 装 置 モ デ ル の構 成11)
可変速/可変速機の連 系装置 の電力制御 (注)電圧制御 は どの場合で も共通
簡単なモ デル系統での 系統連系装 置の動特 性シミ ュレー シ ョン
検 討 した 可変速 機/可 変 速機 の構成 の回転 型 系統 連 系 装置 を対 象 に,簡 単 な系統 モ デ ル に 同装 置 を適 用 した 場 合 の 運転 特 性 を シ ミュ レー シ ョン に よ り検 討 した.図
図11.23
モ デ ル 系統(自 動 周 波 数 制 御 機 能(AFC)あ
(a)
り,1000MVAベ
発電機,連 系装置 の出力変化
(b) 発電機,連 系装置 の速度変化 図11.24
モ デ ル 系 統 で の 動 的 シ ミュ レー シ ョ ン結 果11)
ー ス)11)
11.23に モデル 系統 を示 す. 300MVA定
格 の 可変 速機 1対 か ら構 成 され る系統 連 系装置 が 定格1200MVAの
等
価 発 電G1と
変 動 負荷 か らな る系統 A と,無 限大 母線 と固定 負荷 か らな る系統 B を
連 系 して い る. 系 統 A で の変動 負荷 は初期値1000MWで 300MWだ
けス テ ップ状 に増加 し,1300MW一
あ るが,こ れが 連系装 置 の定格 に等 しい 定で 推移 す る場合 の挙 動 を解析 した.
な お,連 系 装 置 の制 御 は系統 A の周 波数 変化 を検 出 し融 通電 力 を制御 す る自動 周波 数 制御 機 能(AFC)を
もつ もの と仮定 した.ま た,連 系装 置 の制御 としては,電 力 制御
と回転 子 速度 制御 を両可 変速 機 で分担 す る方式 を想定 した. 解 析 波 形 を図11.24示 す.可 変速 機#1 のAFC機
能 に よ り約 1秒 で 定 格300MW
に達 す る速度 で 系統 A に対 して電力供 給 を行 って い る.可 変速 機#1 の電 力供 給 に伴 い,回 転 子速 度 が低 下 す るが可変速 機#2 の回転子 速 度制 御 の効 果 に よ り系統 B か ら 電 力 を受 電 して回転 数 の回復 が な され る.系 統 A 側 の周 波数,連 系装置 の速 度 とも負 荷 変化 後 約 1秒 よ り回復 してい く傾 向 がみ られ る. シ ミュ レー シ ョン結 果 か ら,AFC機
能 に よ り系統 A の周 波数 低 下 に対 して連 系装
置 は効 果 的 に働 くこ とがわ か り,可 変速 機/可 変 速機 の構 成 の連 系 装置 の 有効 性 が示 され た. 可変 速 技術 応用 の 回転 型系統 連 系装置 の イメー ジ を図示 す る と図11.25の
図11.25
可 変 速 技 術 応 用 の 周 波 数 変 換 装 置11)
ように な
る.同 図 に示 す ように,回 転機 本体 は縦 型 に配 置 して変電所 構 内の地 下 に設 置 す る. 定 格容 量 と して300MW程
度 の もの は,現 在 の 可変 速発 電機 製 造技 術 か ら考 えれ ば
十 分可 能 であ る.変 電所構 内での縦 型構 造 につ いて は,す で に200MVAの
同期 調相
機 の実績 があ り,特 に問題 はな い と考 える.回 転 機本 体 は地下 に設 置 し密 閉す るの で 外 部 への騒 音 の心配 もない.
11.5.3
ウ イ ン ドフ ァー ム と 系 統 と の連 系 装 置 へ の 適 用 研 究 事 例16)
風 力 発 電 は再 生 エ ネ ル ギ ー 利 用 で ク リ ー ン な 発 電 シ ス テ ム と し て 注 目 さ れ て い る が,系
統 導 入 量 が 増 え る と不 規 則 的 な 発 電 に よ り系 統 周 波 数 変 動 や 電 圧 フ リ ッ カ を 発
生 す る な ど の 理 由 に よ り,一 定 容 量 以 上 の 導 入 は 困 難 とみ な され て い る.い
わ ゆる系
統 へ の イ ンパ ク トが 大 き く,こ れ が 大 容 量 の 風 力 発 電 の 系 統 へ の 参 入 を拒 む 要 因 とな っ て い る. そ こ で,こ
れ らの 対 策 の 一 案 と して,風
力 発 電 設 備 群(ウ イ ン ドフ ァ ー ム)と 商 用 電
力 系 統 との 間 に 回 転 機 を応 用 した 緩 衝 装 置 を 設 け て,風 変 動 や 電 圧 変 動 が,直
接,商
力発 電 に よ るラ ンダム な出力
用 系 統 へ 影 響 を 与 え な い連 系 方 式 を 提 案 す る と と も に,
そ の 有 効 性 を 検 討 し た.図11.26に
提 案 す る 連 系 方 式 の 構 成 を 示 す.
基 本 的 な 考 え 方 は次 の とお りで あ る. ①
従 来 の 個 々 の発 電 機 ご と に設 置 され る可 変 速 風 力 発 電 シ ス テ ム で は な く,ウ イ
図11.26
回 転 型 系 統 連 系 装 置 を導 入 した ウ イ ン ドフ ァ ー ム16)
ン ドフ ァーム全 体 と して の設備 と して設 置す る. ②
半 導体 応 用 の静止 型 の系 統連 系装 置で はな く,コ ス ト上 も安 く慣性 エ ネル ギ ー が 活 用で きる回転型 の系統連 系 装置 とす る.
③
連 系装 置 は 同期機 と可 変速 機 を軸 直 結 させ た構 造 の 回転 型連 系装 置 を適 用 す る.
この回転型 連系 装 置 は,図11.26に
示 す よ うに可 変速機 と同期機 を軸 直 結 させ た構
造 とし,ウ イ ン ドフ ァーム側 を同期機,商 用系 統側 を可変 速機 で連 系 す る.回 転速 度 はウイ ン ドフ ァーム側 系 統 の周波 数 と同期 させ る.ウ イ ン ドフ ァーム側 系統 の周波 数 と商 用 系統 周 波 数 との すべ り周 波 数 は連 系装 置 の 可変 速 機 の 可 変速 範 囲(定 格 の10 ∼20%程
度)で 吸収 す る.す なわ ち,連 系装 置 の機械 的回転 速 度 はウ イ ン ドフ ァー ム
側 系 統 の周波 数 とと もに変 化 す るが,可 変速 機 の内部磁 束 は商 用系統 側 とつね に同期 を維 持す るよ うに交 流励 磁 変換 器 に よ り制御 され る. 図11.26の 回転型 系統 連 系装 置 の動作 をわ か りやす く説 明す るた め に,電 力 と周波 数(回 転数)の 関係 を示 す図11.27の 流体 モ デル を考 えた.可 変速機 に よ る電 力制御 機 能 は商 用 系統 側 に対 す る給水 ポ ンプの役割 に対 応 し,こ の給 水 ポ ンプ は連 系装 置 の 回 転 数 とウイ ン ドファー ム合計 の発 電量 の変 化 に応 じて制御 され る. この連 系 方式 の利 点 は次 の とお りで あ る. ①
連 系装 置 の慣性 体 が緩 衝作 用 として働 くた め,風 力 発電 に よる短周期 の ラ ンダ ムな出力 変動 が直 接,商 用 系統側 へ影 響 を与 えない.し たが って,風 力発 電 の系 統 導入容 量 を増 やす こ とが見 込 め る.
②
ウイ ン ドフ ァーム と商 用系統 はエ ネルギ ー的 に接続 され て い るが,電 気 的 に分
図11.27
流体 モ デル に よ る 回転 型 系 統 連 系 装 置 の 動 作 説 明16i)
離 さ れ て い る の で風 力 発 電 装 置 の起 動 ・停 止 に 伴 う電 圧 変 動 が 商 用 系 統 側 に 発 生 し な い. ③
可 変 速 機 構 を風 力 発 電 装 置 に 応 用 す る 例 は これ ま で もあ っ た が(可 変 速 風 力 発 電 シ ス テ ム),こ
の 場 合 は発 電 機 1台 ご と に高 価 な 直 流 変 換 装 置 を 設 備 す る た め,
コ ス トア ッ プ に な る.本 方 式 に よれ ば ウ イ ン ド フ ァ ー ム(発 電
n台)一 括 と し た
こ とで 1台 ご との ラ ン ダ ム な 出 力 変 動 幅 は 総 合 す れ ば 確 率 的 に縮 小 さ れ る(理 想 的 に は1/√nに
比 例)こ とが 期 待 で き る の で,ト
ー タル 的 にみ て連 系装 置 の 容量
や 高 価 な サ イ リス タ変 換 装 置 の 容 量 を減 らす こ とが で き,コ ス トダ ウ ン に な る. ④
商 用 系 統 と は可 変 速 機 と連 系 して い る の で,連 る場 合 に 擾 乱 が 生 じ な い.こ
れ は,可
系 装 置 を商 用 系 統 へ 同 期 併 入 す
変 速 機 で は 内 部 電 圧 の 大 き さ と位 相 を制 御
す る こ とが 可 能 で あ り,商 用 系 統 側 が 動 揺 し て い て も位 相 差 ゼロ で 高 速 に 併 入 す る こ とが 可 能 で あ る こ と に よ る.し
た が っ て,ウ
イ ン ドフ ァー ム と商 用 系 統 との
連 系 運 用 を考 え る場 合 に か な りの フ レ キ シ ビ リ テ ィが あ る. 提 案 した 回 転 型 系 統 連 系 装 置 を 導 入 し た 場 合 の 電 力 ・周 波 数 応 動 シ ミュ レ ー シ ョ ン モ デ ル を 開 発 し,回 転 型 系 統 連 系 装 置 の 適 用 効 果 を検 討 した 例 を 紹 介 す る.シ ー シ ョ ン に はMATLAB/Simulinkを
適 用 した .シ
ミュ レ
ミ ュ レ ー シ ョ ン 条 件 は 表11.4の
と お りで あ る. な お,系
統 連 系 装 置 の 制 御 と し て は,風
力 発 電 合 計 出 力 を時 定 数300秒
関 数 で 平 均 化 し た 値 を融 通 電 力 の 制 御 目標 とす る.ま
た 同 時 に,可 変 速 範 囲 を維 持 す
る 緊 急 制 御 を 併 用 す る.擾 乱 と して 風 力 タ ー ビ ン トル ク を60秒 ∼ 定 格 ま で 変 動 さ せ た .シ
ミ ュ レ ー シ ョ ン計 算 時 間 は600秒
表11.4
の 1次 遅 れ
を 1サ イ ク ル と し て 0 で あ る.図11.28(a),
周 波 数 変 動 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン条 件
(a)定 格 事 項
商 用 系 統 の 電 源 容 量:1000MVA, 風 力 発 電 定 格:100MW(商
用 系統 容 量 の10%)
回転 型 系統 連 系 装 置 の 定 格(最 大 融 通 電 力):100MW (b)商 用 系 統 モ デ ル(1000MVAベ
ー ス)
慣 性 定 数:M=8s,制
動 係 数:D=3pu,発
電;P=
0.5pu ガバ ナ 系:火 (c)風 力 発 電 モ デ ル(100MVAベ
ー ス)
力 標 準 ガバ ナ を考 慮
慣 性 定 数:M=2s, 発 電(誘 導 発 電 機):P=0∼1.0puの
(d)回 転 型 系 統 連 系 装 置 モ デル(100MVAベ
慣 性 定 数:M=12s,融 ー ス)
MWの 構 成:風
範 囲 で変 動
通 電 力:P)=-100∼+100
範 囲, 力 発 電 側 が 同期 機,商
可 変 速 範 囲:±20%を
想定
用系統側が可変速機
(a)電 力変 動
(b)周 波 数,回
転速度変動
(c)商 用系統周波数 変動の比較 図11.28
シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 結 果 の 一 例16)
(b),(c)に
シ ミ ュ レ ー シ ョ ン結 果 の一 例 を 示 す.図11.28(c)よ
り,連 系 装 置 の 適 用 に
よ り風 力 発 電 の 出 力 変 動 の 影 響 が 大 幅 に低 減 さ れ る こ とが わ か る.
参考 文 献 1) 松 宮:こ
こ ま で き た 風 力 発 電(改 訂 版),(株)工
2) 七 原:海
外 に お け る 風 力 発 電 の 導 入 状 況 と電 力 シ ス テ ム へ の 影 響,電
業 調 査 会,1994. 学 論B,120,3,
pp.321-324,2000. 3) Siegfried
Heier:Grid
Integration
of
Wind
Energy
Conversion
Systems,
John
Wiley&Sons,1998. 4) Mukund
R.
Patel:Wind
5) A.Miller, Control,
E. IEEE
6) W.B. for
J. R.
and
K.
Power
Power
Generation
Commercial
Power
T.
Milan:An
of
Phoenix, T.
of
the
Experience
Generator-motor
Paris,
June
for
A
Wind
Traps.,
pp.2171,
Doubly-fed
Synchronous May
Adjustable at
Turbine
the
Speed
ASME
October
Machine
1981. Machines
Joint
2-6,1994.
First
Pumped
on
International
Yanagisawa:Development World's
Power
1997. Speed
Arizona,
and
Press,1999.
Adjustable
presented
Hioki
CRC Speed
Conversion,12,2, B.
Mukai:Application
Fujiki,
Variable-speed
Systems,
Zinger:AVariable
Applications,IEEE
Operation
and
Commissioned
Storage
Power
Achieved
Converter-fed Plant,
No.11-104,
France,1992.
9) T.Kuwabara,
Unit for
Energy
Conference,
S.
Dynamic
S.
Systems,94-JPGC-PWR-6
8) S.Furuya,
CIGRE,
Solar
D.
and
Power
Utility
A. Response
Shibuya,
H.
Furuta,
Characteristics
Ohkawachi
Power
of
Station,
E.
400
IEEE
Kita
MW Trans.
and
K.
Adjustable on
Enevgy
Mitsuhashi:Design Speed
and
Pumped
Storage
Conversion,11,2,
pp.376
, June,1996.
10) 小 柳 薫,横 析 手 法,電 11)
on
Shurz
Hydroelectric
-384
and
Trans.
Gish,
7) K.Kudo
and
Muljadi
山 隆 一,小
向 敏 彦:可
学 論B,119,1,
小 柳,胡,横
変 速 機 の 系統 導 入 に よ る系 統 動態 安 定 度 向上 効 果 の解
山:可
pp.73-82,1999. 変 速 技 術 を 応 用 し た 回 転 型 系 統 連 系 装 置 の 系 統 解 析,電
学 論B,
119,7,pp.798-806,1999. 12)
K.Koyanagi,
Doubly-fed at
IEEE
K. Rotary
Power
13) 佐 々 木,原 に つ い て,電 14) 小 玉,松
Hu
and
R.
Frequency Tech'99
田,甲
斐,佐
Yokoyama:Analytical
Converter
Conference,
藤:風
in Budapest,
Power
Studies Systems,
on
BPT99-044-60
Application
of
presented
Hungary,1999.
力 発 電 シス テム の 系統 並 列 時 の瞬 時 電 圧低 下 とその対 策
学 論B,120,2,pp.180-186,2000. 阪,山
田:NEDO
500kW風
力 発 電 機 の モ デ リ ン グ と特 性 解 析,電 学 論B,120,
2,pp.210-218,2000. 15)
佐 々 木,松 ョ ン,電
阪,土
屋:風
力 駆 動誘 導 発電 機 の系統 並列 時 にお け る電 圧 変 動 シ ミュ レー シ
学 論B,110,1,pp.33-39,1990.
16) 小 松,小 用 検 討,平 2000.
柳,舟 成12年
橋,奈
良,藤
田,柿
木:ウ
イ ン ドフ ァーム 向 け回転 型 系 統連 系装 置 の適
電 気 学 会 電 力 技 術 ・電 力 系 統 技 術 合 同 研 究 会,PE-00-38
PSE-00-43,
第12章 電 力 品 質 維 持 とパ ワ ー エ レク トロニ ク ス
12.1
電力託送と既存送電線の送電能力向上
電 力 の 自由 化 が 進 展 し て電 力 託 送 が 増 大 す る と,電 力 を通 過 させ る 送 電 系 統 お よ び 配 電 系 統 に こ れ ま で に な い種 々 の 要 求 が 新 た に 出 て くる.託 送 が 個 々 の 発 電 業 者 と需 要 家 間 で,あ
るい は 電 力 プ ロバ イ ダ ー に よ り自 由 に 契 約 され る と,そ れ に よ る 新 た な
潮 流 が 系 統 に の る こ と に な る.ま
た,こ
れ ま で の電 力 会 社 が 計 画 し て き た 送 電 運 用 と
必 ず し も歩 調 が 合 わ な い 部 分 も現 れ,系
統 内 の 一 部 の 送 電 線 や 変 圧 器 の 通 過 電 力 が増
え て 設 備 容 量 を越 え る 可 能 性 が 出 た り,電 圧 の 大 幅 な低 下 現 象 が 現 れ た りす る可 能 性 が あ る. また 電 力 系 統 に お い て は,送
電 線 の建 設 や 設 備 の 拡 充 が 投 資 に 対 す る 回 収 の 見 通 し
の む ず か し さ な どか ら,先 送 りに な る傾 向 に あ る.そ
の 結 果,通
過潮 流 の設備 容量 超
過 や 電 圧 低 下 な どの 問 題 が こ れ ま で 以 上 に ク ロ ー ズ ア ッ プ して く る.こ を 解 決 す る た め に,既
の よ う な課 題
存 の 送 電 線 あ る い は配 電 線 を通 電 容 量 限 度 ま で 有 効 に 活 用 す る
こ とが 求 め られ る. 送 電 線 を有 効 に 活 用 す る た め に,従 ロ ニ ク ス 技 術 を 用 い たFACTS(flexible
来 型 機 器 に は な い 特 徴 を 有 す るパ ワ ー エ レ ク ト AC
transmission
system)機
器1∼4)の適 用 が
今 後 増 加 す る. FACTSは
パ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス 技 術 に よ り,電 圧 の 振 幅,位
相,あ
るい は系統
の イ ン ピ ー ダ ンス を 調 整 し,送 電 シ ス テ ム の 能 力 を 有 効 に 引 き 出 す と同 時 に 系 統 の安 定 化 を は か る こ とが で き る特 徴 を もっ て い る.送 電 線 を 流 れ る電 流 は送 電 線 固 有 の 熱 定 格 で 決 る限 界 と,安 定 度 面 か ら決 る限 界 が あ る.現 在 の ほ と ん ど の 送 電 線 で は安 定 度 に よ る 限 界 に支 配 さ れ て お り,送 電 線 の 熱 定 格 で き ま る最 大 送 電 電 流 まで は 流 して い な い.し
か し,FACTSを
が で き る よ う に な る.た
適 用 す る と,そ の 送 電 線 に さ ら に多 くの 電 流 を 流 す こ と と え ば,送
電 電 力 を 多 くす る と電 圧 降 下 が 大 き くな り,所 望
の電 力 を送 電 で き な くな る.そ
こでFACTSを
適 用 して 電 圧 降 下 を補 償 す る こ と に よ
り よ り多 くの 電 力 を安 定 に送 る こ とが で き る よ う に な る. 今 後,部 あ る.そ
分 的 な 系 統 が 他 と連 系 せ ず に独 立 に 運 転 す る よ う な 形 態 も現 れ る 可 能 性 も して そ の 部 分 系 統 内 で は,こ
れ まで 以 上 に 高 品質 な,周 波 数 変 動 の 少 な い,
あ る い は電 圧 変 動 や 電 圧 ひ ず み の 少 な い 電 力 を 要 求 さ れ る こ と も あ る.そ 求 に もFACTSが
適 用 で き る.以
下 で は代 表 的 なFACTS機
の よ うな要
器 に つ い て 説 明 す る.
送 電電力
12.1.1
送 電 線 あ る い は変 圧 器 な どが 有 す る イ ン ピ ー ダ ン ス を 介 して 流 れ る電 力 に つ い て 示 す.こ
こで は 図12.1に
示 す よ う に,電 圧 がV1∠
δ1,V2∠ δ2の端 子 1と端 子 2の 間 に
リ ア ク タ ン ス X が 接 続 さ れ る 回 路 を 考 え る.簡
単 の ため抵 抗 分 や対 地容 量 分 は無 視
す る.電 流 を I と す る と,電 力 は 次 の よ う に現 す こ とが で き る.
図12.1
2点 間 の 送 電 電 力
(12.1) (12.2) これ よ り下 式 が 得 られ る.
(12.3) (12.4) (12.5) 簡 略 化 し て 表 現 す れ ば,式(12.3)よ -δ2)/Xと
り,通 常V1≒V2≒1puで
な り ,有 効 電 力 は位 相 差 に 比 例 し,イ
ン ピー ダ ン ス に 反 比 例 す る.式(12.
4)よ り通 常 母 線 間 の 位 相 差 は 小 さ い の でcos(δ1-δ2)≒1と -V2)/Xと
なり ,無 効 電 力 は 電 圧 振 幅 差 に比 例 し,イ
え る.FACTSな
あ る の で, P1(∝sin(δ1
な る の で,Q1∝V1(V1
ン ピ ー ダ ンス に 反 比 例 す る と い
ど を 用 い て 系 統 の 電 圧 や イ ン ピー ダ ン ス を制 御 す る こ と で,上
式 で
示 さ れ る関 係 で 送 配 電 系 統 に お け る有 効 電 力 や 無 効 電 力 を 調 整 す る こ と が で き る.
12.1.2
FACTS機
器
(1)SVC SVC(静
止 型 無 効 電 力 補 償 装 置:static
サ を 流 れ る電 流 を制 御 し て,電 12.2(a)に
示 す よ う にTCR(サ
var compensator)は
力 系 統 へ 無 効 電 力 を 供 給 す る装 置 で あ る.SVCは イ リ ス タ 制 御 リア ル トル:thyristor
(a) SVC単
(b) TCR回
リ ア ク トル と コ ン デ ン
線結線 図
路
(d) SVC電 図12.2
(c) TSC回
圧 と電 流 SVC主
回 路 と電 流
路
controlled
図 reac
tor),TSC(サ
イ リス タ 開 閉 キ ャパ シ タ:thyristor
switched
capacitor),さ
ら にTCR
が 発 生 す る高 調 波 電 流 を吸 収 す る フ ィル タ で 構 成 す る. TCR回
路 は 図12.2(b)の
よ う に 逆 並 列 接 続 し た サ イ リス タ に コ ン デ ン サ と抵 抗 で
構 成 す る ス ナ バ ー 回 路 を接 続 し て,リ ア ク トル と と もに 三 相 で Δ 結 線 し て い る.ス ナ バ ー 回 路 は 電 流 遮 断 時 の サ イ リス タ か か る 電 圧 ス トレ ス を緩 和 す る 目 的 で 設 け られ る 小 容 量 回 路 で あ る.リ ア ク トル を流 れ る遅 れ 電 流Irの
大 き さ は,図12.2(d)に
う に サ イ リス タ の 点 弧 パ ル ス に よ り制 御 で き る.TSC回
路 は 図12.2(c)の
デ ン サ に サ イ リス タ を接 続 して,さ 接 続 し て い る.TSCで
状 態 に 限 られ,連 SVCと
らに 電 流 の 突 流 抑 制 の た め の小 さ な リア ク トル を
は キ ャ パ シ タ に か か る電 圧Vcの
パ ル ス を 与 え て 図12.2(d)の
よ う に 進 み 電 流Icを
ピ ー ク に て サ イ リス タ の 点 弧
流 す.TSCは
オ ン とオ フ の 二 つ の
続 調 整 は で き な い.
し て の 最 大 進 相 無 効 電 力 は,TCR電
流 を 最 小 に してTSCと
供 給 さ れ る進 み 電 流 を 流 す こ と に よ り,ま たSVCと TSCを
オ フ し てTCR電
フ ィル タか ら
し て の 最 大 遅 相 無 効 電 力 は,
流 を 最 大 に 流 す こ と に よ り運 転 で き る.
こ の よ う に して 各 ブ ラ ン チ の 容 量 を適 切 に 選 べ ば,TCRとTSCの SVCと
示す よ
よう にコ ン
制 御 に よ り,
し て は系 統 へ 進 み 電 流 か ら遅 れ 電 流 ま で 連 続 し て 流 す こ と が で き る.SVCと
し て は 小 容 量 の もの か ら,大 容 量 の も の で は400MVAク
ラ スの ものが 使 わ れ て い
る. SVCの
制 御 は,電 圧 目標 値 に対 して 系 統 電 圧 検 出 値 を つ き合 わ せ て,そ の 誤 差 信 号
でSVCを
制 御 す る構 成 と な っ て お り,SVCに
得 られ る.SVCは 抑 制,風
よ り系 統 電 圧 を一 定 に維 持 す る効 果 が
溶 解 炉 負 荷 の よ う な 無 効 電 力 変 動 が 大 き い 負 荷 に よ る電 圧 変 動 の
力 発 電 の 誘 導 発 電 機 の 消 費 す る 無 効 電 力 変 動 の 抑 制,系
統 電圧 の変 動抑 制 な
ど の 問 題 解 決 に 広 く適 用 され て い る. (2) STATCOM 自励 式 変 換 器 を用 い たSTATCOM(static
synchronous
compensator)は
直流 電圧
を も と に して 交 流 電 圧 を 発 生 し,そ の 発 生 交 流 電 圧 の 振 幅 を制 御 し て 系 統 に 無 効 電 力 を 供 給 す る.STATCOMの
構 成 を 図12.3(a)に
示 す.STATCOMは
連 系用 変圧 器 と
自励 式 変 換 器 と直 流 コ ン デ ン サ で 構 成 す る.自 励 式 変 換 器 は 自励 式 イ ンバ ー タ と も 呼 ば れ,パ
ル ス 制 御 に はPWM制
御 を 通 常 用 い て い る.三 相 自励 式 変 換 器 は 図12.3(b)
に 示 す よ う に 6ア ー ム で ブ リ ッ ジ 接 続 し,そ IGBT(insulated る.素
gate
bipolar
の ア ー ム に は 自己 消 弧 形 素 子 で あ る
transistor)やGTO(gate
子 の 電 流 定 格 よ り,中 小 容 量 に はIGBTが,大
turn-off thyristor)が 使 わ れ 容 量 に はGTOが
使 われ て い
る5).素 子 に は 並 列 に ス ナ バ ー 回 路 を 接 続 して タ ー ン オ フ 時 の 電 圧 ス トレ ス を 吸 収 す
(a)STATCOM単
線結線図
(b)三 相 自励式変換 器 図12.3
る が,ス
STATCOM回
ナ バ ー 回 路 に よ る損 失 が 発 生 す る.そ
路
の た め オ ン オ フ の ス イ ッチ ン グ 回 数 が
少 な い運 転 方 式 が 取 られ る場 合 が 多 い. STATCOMの
動 作 を 図12.1の
子 1を系 統 側,端
子 2を 自 励 式 変 換 器 側,X
2端 子 を参 考 に して 説 明 す る,図12.1の
自励 式 変 換 器 は直 流 電 圧 か ら交 流 電 圧V2を が で き る.STATCOMと
発 生 し,V2の
位 相 と振 幅 を制 御 す る こ と
して は無 効 電 力 を供 給 す る た め に,制 御 に よ り発 生 電 圧V2
の 位 相 を系 統 側V1の
位 相 と同 じ に して 有 効 電 力 を 流 さ ず,同
供 給 す る よ う にV2の
振 幅 を 制 御 し て い る.
STATCOMを
回路 の端
を連 系 用 変 圧 器 の リ ア ク タ ン ス とす る.
時 に所望 の無 効電 力 を
運 転 す る に は直 流 側 の コ ン デ ン サ が 充 電 さ れ 直 流 電 圧 が 確 保 さ れ て
い な け れ ば な ら な い.そ
の 直 流 電 圧 は 系 統 側 か ら有 効 電 力 を注 入 す る こ と で 確 立 す る
こ とが で き る.そ の 有 効 電 力 量 は わ ず か で あ り運 転 に よ る損 失 に 相 当 す る量 で あ る . し た が っ て,制
御 に は 直 流 電 圧 一 定 制 御 を 組 み 込 み,そ
を制 御 す る よ う構 成 す る.な 必 要 が あ り,そ 図12.4(a)に GTOを
の 出 力 で 発 生 電 圧V2の
位相
お 運 転 前 に は あ らか じめ 直 流 コ ン デ ン サ を 充 電 し て お く
の た め の プ リチ ャ ー ジ 回路 を設 け る必 要 が あ る. 容 量50MVA相
当 のSTATCOMの
使 用 し た 自励 式 イ ン バ ー タ を 4段 用 い,直
主 回 路 例3)を 示 す.素
子 としては
流 側 で は 並 列 に 接 続 し,交 流 側 で
は 変 圧 器 を 介 し て 直 列 に 接 続 し て い る .イ ン バ ー タ を 4段 で 構 成 して い る の は,GTO
(a)STATCOM主
回路
(b)STATCOM制
御 回路
(c)交 流 電 圧 制御 基 準 の ス テ ップ 変 化 時 の シ ミュ レー シ ョ ン例 図12.4
大容 量STATCOMの
例
素 子 の 定 格 電 流 を考 慮 して 分 割 して い る の で あ るが,こ
れ を 利 用 してGTOの
オ ンオ
フ 時 の 損 失 を軽 減 す る た め パ ル ス 数 を 少 な く し,代 わ り に多 段 に し て発 生 高 調 波 の位 相 を ず らせ る こ と に よ り一 部 の 高 調 波 成 分 を キ ャ ン セ ル し て,全 体 と し て の 発 生 高 調 波 を低 減 して い る.こ
こで は 3パ ル ス のPWM方
制 御 ブ ロ ッ ク を 図12.4(b)に
示 す.こ
式 を用 い て い る.
こ で は直 流 電 圧 一 定 制 御 と交 流 電 圧 一 定 制 御
を 用 い て い る.交 流 電 流 検 出 回 路 は,発 生 電 圧V2位
相 信 号 お よ び 発 生 電 圧V2振
幅信
号 演 算 ブ ロ ッ ク に 内 在 す る電 流 制 御 に 必 要 な 電 流 フ ィ ー ドバ ッ ク量 を検 出 す る た め に 設 け て い る. 動 作 の例 と して,こ
こで は 外 部 系 統 を0.1puの
リア ク トル で 無 限 大 母 線 に 接 続 した
場 合 を 想 定 し,電 圧 制 御 の 指 令 値 を1pu→1.02pu→1.0puと た 際 の 応 答 計 算 結 果 を 図12.4(c)に program)6)に
て 行 っ た.電
示 す.計
ス テ ッ プ 的 に変 化 さ せ
算 はEMTP(electromagnetic
transients
圧 指 令 値 の 変 化 に対 し て 早 い応 答 結 果 が 得 られ て い る.
サ イ リス タ を 用 い たSVCは
系 統 電 圧 が な い と運 転 で き な い.一 方,STATCOMは
直 流 コ ン デ ン サ 電 圧 が 確 保 で き て い れ ば 自 ら電 圧 を 発 生 す る こ と が で き る 違 い が あ る.し た が っ て,系 統 電 圧 が 低 下 す る よ うな 場 合,SVCの の 二 乗 に比 例 す る の で 少 な く な るが,STATCOMは は 電 圧 に比 例 し,SVCよ
供 給 で き る無 効 電 力 は電 圧
定 電 流特性 に近 い ので 無効 電 力
り多 くの 無 効 電 力 を供 給 で き る特 徴 が あ る.STATCOMは
単 独 で 無 効 電 力 制 御 装 置 と し て 用 い られ る だ け で な く,以 下 で 示 すSSSCやUPFC あ る い は 自励 式 直 流 送 電 の 一 部 と し て と し て 用 い る こ と に よ り,従 来 機 器 で は 得 られ な い効 果 を発 揮 す る こ とが で き る.
12.1.3
SSSC
SSSC(自
励 式 直 列 コ ン デ ン サ:static
synchronous
series compensator)は
図12.5
に 示 す よ う に,電 力 系 統 に直 列 変 圧 器 を 介 して 自励 式 変 換 器 を接 続 した 構 成 で あ り, STATCOMを
系 統 に 直 列 に 挿 入 した 形 で あ る.動 作 原 理 と制 御 方 法 はSTATCOM
と 同様 で あ る.SSSCの で,送
特 徴 は 流 れ る 電 流 に 直 交 した 電 圧VSを
系 統 に挿入 で き るの
電 線 の リ ア ク タ ンス に よ る電 圧 降 下 を補 償 す る こ とが で き る.い
価 的 に送 電 線 の リア ク タ ン ス 分 を変 化 さ せ,制
い 換 え れ ば等
御 で き る こ と を意 味 して い る.送
の リア ク タ ン ス 分 が 変 え ら れ る こ とは,式(12.1)に
電線
示 す よ う に有 効 電 力 の 制 御 が 可 能
と な る こ と を 示 して い る. た と え ば,図12.6に
示 す よ う な送 電 線1,2,3か
らな る 系 統 が あ り,送 電 線 2の イ
ン ピ ー ダ ン ス が 大 き く,送 電 線 1 と 3を 流 れ る潮 流 が 送 電 線 2を 流 れ る 潮 流 よ り多 い と す る.そ の 潮 流 を平 均 化 す る よ う な場 合 に,SSSCを
送 電 線 2に 挿 入 し て,送 電 線 2
図12.5
SSSC単
線結続図
図12.6 送電回路例 の リア ク タ ン ス を等 価 的 に 小 さ くす る.こ
の よ うに す る と,送 電 線 2に 多 くの 潮 流 が
乗 る よ う に な り,潮 流 の 平 均 化 が 達 成 で き る.
12.1.4
UPFC
UPFC(unified SSSCを
power
flow
controller)は 図12.7に
組 み合 わ せ た 構 成 で あ る.直
示 す よ う に,STATCOMと
流 コ ンデ ン サ は 共 用 し て直 流 を 介 し て 有 効 電 力
の 融 通 も可 能 に して い る. STATCOM形
の 自励 式 変 換 器 1で は系 統 に 無 効 電 力 を供 給 し,そ
制 御 で き る の で,系 系 統 にVSな す るVSの
統 電 圧 を制 御 す る こ とが で き る.SSSC形
る 電 圧 を注 入 し,そ
の無 効 電 力量 を
の 自励 式 変 換 器 2で は
の大 き さ と位 相 を 自 由 に 変 え る こ とが で き る.注
入
位 相 に よ り直 流 コ ン デ ン サ を 介 して 自 励 式 変 換 器 1 と 2 と の 間 で 有 効 電 力
の や り と りが 生 ず る.し
た が っ て,自 励 式 変 換 器 1 と 2の 協 調 し た 制 御 が 必 要 で,基
本 的 に は 変 換 器 1で は系 統 電 圧 制 御 と 直 流 電 圧 制 御 を,変 換 器 2で は 挿 入 す る 電 圧 VSの 大 き さ と位 相 の 制 御 が 行 わ れ る. UPFCの
特 徴 は挿 入 す る電 圧VSに
着 目 す る と,(a)線 路 電 圧 と同 相 分 を 挿 入 す る
こ と に よ る変 圧 器 の タ ッ プ チ ェ ン ジ ャ相 当 の 特 性 が だ せ る.し
か も,通 常 の 機 械 式 タ
ッ プ の ス テ ッ プ 幅 を 持 た ず 連 続 可 変 で あ る.(b)線 路 電 流 に 直 交 し た 電 圧 を挿 入 す る と,送 電 線 の リ ア ク タ ン ス を み か け 上 変 化 さ せ る こ とが で き る.ま
た,(c)V2の
位相
(a)UPFC単
(b)電 圧 同 相 分 挿 入 に よ る タ ップ チ ェ ン ジ ャ機 能
線結線 図
(c)送 電 線 イ ン ピ ー ダ ンス 補 償機 能 図12.7
UPFC回
路
を 変 え る 位 相 器 の 特 性 を もた せ る こ とが で き る,と に,制
(d)位 相器機能
三 つ の 基 本 的 な特 性 が あ る.さ
ら
御 に よ り これ らの 組 み 合 わ せ た 特 性 を 出 す こ とが で き,系 統 の 潮 流 や 電 圧 の 制
御 に 広 く利 用 で き る.UPFCは
多 くの 自 由度 と制 御 能 力 を有 し て お り,最 適 な 適 用 に
向 け た 開 発 が 進 め ら れ て い る.
12.1.5 TCSC(サ 図12.8に
TCSC イ リス タ制 御 直 列 コ ン デ ンサ:thyristor 示 す よ う に,従
controlled
series capacitor)は
来 の 直 列 コ ン デ ン サ と並 列 に サ イ リス タ と リア ク トル の 直
列 回 路 を 接 続 した 構 成 で,サ
イ リス タ の 導 通 期 間 を調 整 して リ ア ク トル 電 流 を制 御 す
る こ とに よ り直 列 コ ン デ ンサ 全 体 と し て の イ ン ピー ダ ン ス を制 御 し,送 電 線 に対 す る 直 列 コ ン デ ン サ と し て の補 償 度 を 可 変 に す る こ とが で き る. TCSCは
常 時 は 送 電 線 の イ ン ダ ク タ ン ス を補 償 し,系 統 事 故 後 の 動 揺 時 に 通 過 電 流
あ る い は 電 力 の 振 動 を 抑 制 す る よ う にTCSCの
イ ン ピー ダ ンス を制御 す る こ とによ
り,従 来 の 直 列 コ ン デ ン サ よ り系 統 安 定 化 に 効 果 が あ る.し
た が っ て,TCSCを
用い
図12.8
TCSC結
線図
る と安 定 度 面 の 理 由 で 制 限 され て い る潮 流 を越 え て,多
くの 潮 流 を送 電 線 に流 す こ と
が で き る よ う に な る.
12.1.6
TCBR
TCBR(サ 12.9に
イ リ ス タ 制 御 制 動 抵 抗 器:thyristor
controlled
braking
resistor)は 図
示 す よ う に,従 来 の 制 動 抵 抗 を 機 械 的 開 閉 器 で な くサ イ リス タ で 導 通 制 御 す る
よ う に し た 構 成 で あ る.制 動 抵 抗 は 発 電 機 が 加 速 脱 調 す る よ う な場 合 に 抵 抗 器 を接 続 し て,発
電 機 の 加 速 エ ネ ル ギ ー を 吸 収 し て,発
を も つ.従 が,TCBRに で,脱
電 機 の 系 統 か ら の脱 調 を防 止 す る役 割
来 は 機 械 式 開 閉 器 で 入 り切 り して い た の で 多 数 回 の 操 作 が で き な か っ た す る と連 続 的 に か つ 高 速 に制 動 抵 抗 器 を流 れ る 電 流 を直 接 制 御 で き る の
調 抑 制 効 果 が 大 き くな る.
発 電 機 に対 応 させ る だ けで な く,あ う な 場 合 は,そ
る部 分 系 統 が そ の他 の 系 統 に 対 して 脱 調 す る よ
の 部 分 系 統 に対 し て 適 用 し て も効 果 が あ る.
図12.9
12.1.7
TCBR結
線図
TCPST
TCPST(サ
イ リス タ 制 御 位 相 器:thyristor
controlled
phase shifting transformer)
は 従 来 の 位 相 器 の機 械 式 タ ップ 切 替 器 を サ イ リ ス タ で お き換 え た も の で あ る.し っ て,動
作 時 間 の 短 縮 化 が は か られ,接
せ る効 果 が 得 られ る.
たが
点 の磨 耗 な どに よ る接 点 の 保 守 ・交 換 を な く
12.2
部分系統の運用 と制御
電 力 の 自 由化 が 進 む と,あ
る地 域 あ る い は部 分 系 統 を一 つ の 電 力 管 理 区 域 と し て運
転 ・管 理 す る必 要 性 が 出 て く る.現 在 で も一 つ の 工 場 や プ ラ ン ト内 で 自家 発 電 機 を使 い,自
所 内 を運 転.管
系 に つ い て,常
理 して い る例 は 多 くあ る.そ
時 連 系 す る だ け で な く,あ
の 部 分 系 統 と既 存 電 力 系 統 と の連
る と き は分 離 し て 運 転 し,ま
たあ る ときは
連 系 して 運 転 す る フ レ キ シ ブ ル な 運 用 が 望 まれ る. 電 力 系 統 に事 故 が 発 生 し て 電 圧 が 低 下 す る よ う な場 合 に,連
系 を遮 断 し部 分 系 統 独
自 で 運 転 し,事 故 が 回復 した あ と に再 度 連 系 す る よ う な運 転 が 望 まれ る.特
に停 電 に
よ り大 き な 損 失 が と もな う よ う な プ ラ ン トの 場 合 な ど,高 信 頼 度 の 電 力 供 給 を提 供 し よ う とす る と,そ
の よ う な運 用 が 必 要 と な る.
また は じめ よ り独 立 した 系 統,た
と え ば 離 島 の よ う な 系 統 で は,今
後,電
高 く,同 時 に建 設 コ ス ト と運 転 コス トが 安 くな る施 策 が 求 め られ る.そ
力 品質が
の ような要求
を満 た す こ と の で き る パ ワ ー エ レ ク トロニ ク ス機 器 を 以 下 で 説 明 す る.
12.2.1
自励 式 直 流 送 電
自励 式 直 流 送 電 は,自 励 式 変 換 器 を 用 い た 直 流 送 電 シ ス テ ム(HVDC:high age
DC
transmission)7)で,そ
は,直 流 電 圧Edを
の 基 本 構 成 を 図12.10(a)に
示 す.自
volt
励 式直 流 送 電 で
一 定 と し,直 流 電 流 の 大 き さ を変 え て 送 電 電 力 量 の 制 御 を行 い,送
電 方 向 を変 え る に は直 流 電 流 の 向 き を 変 え て 行 う.自 励 式 変 換 器 は交 流 系 統 か ら み る と基 本 波 に つ い て 電 圧 源 で あ る と同 時 に,高 調 波 に つ い て も電 圧 発 生 源 とな る.発 生 高 調 波 電 圧 を変 換 器 の 多 相 化 に よ り低 減 す るが,系
統 の 条 件 に よ っ て は高 調 波 吸 収 用
の フ ィ ル タ の 必 要 性 が 出 る.フ ィル タ を設 け る場 合 の フ ィル タ 容 量 は 変 換 器 容 量 の10 %か
ら20%程
度 で あ る.
自励 式 変 換 器 は直 流 電 圧 を元 に し て 交 流 電 圧 を発 生 し,そ の 電 圧 の 大 き さ と位 相 を 制 御 す る こ と が で き る の で,交 る.図12.10(a)で 無 効 電 力Q1とQ2は
流 側 で の 有 効 電 力 と無 効 電 力 を 制 御 す る こ とが で き
は 有 効 電 力P1,P2は
途 中 の 損 失 を無 視 す る と両 端 で 同 じ と な る.
各 端 子 独 立 に 制 御 で き,し か も 力 率 1の運 転 を行 わ せ た り,交 流
系 統 電 圧 を 制 御 す る運 転 を行 わ せ る こ とが で き る.従 来 の 他 励 式 直 流 送 電 で は 無 効 電 力 は 独 立 に は制 御 で き な か っ た が,そ
れ に比 べ て 自 由 度 が 大 き い 特 徴 が あ る.
有 効 電 力 と無 効 電 力 の 円線 図 を 図12.10(b)に
示 す.こ
こで は 回 路 の 損 失 を 無 視 し,
また 変 換 器 1 と 2は 同 じ定 格 容 量 と す る.図 の 円 は変 換 器 定 格 で,そ
の 内部 が運転可
能 領 域 で あ る.通 常 は 太 線 で 示 す よ う に,無 効 電 力 Q の み が 大 き くな る低 力 率 運 転 領
(a)自 励 式HVDC単
線結線図
(a)自 励 式HVDC運
転領域
図12.10
自動 式HVDC
域 は効 率 確保 のた め制 限 してい る.有 効 電力 は変 換器 1側 も 2側 も同 じで あ り,運 転 点 をP1=P2点
とす る と,無 効 電力 は それぞ れの変 換器 で 図 の(Q1,Q2の 範 囲で独 立 に
運転 で き る. 自励 式 直流 送電 は この ように有効 電力 だ けで な く,無 効 電力 の 出力範 囲が 広 い特 徴 が あ るの で,接 続 す る交 流系統 が小 さい,い い換 え れば弱 い系 統で も安 定 に運 転 で き る.た とえ ば,一 部地 域 の負荷 が増加 しそ こ まで の送電 線 が細 く電圧 変動 が大 き くな る ような場 合 に,そ の送電線 を使 って直流 で送 電 す る こ とがで きる. 離 島送 電 に 用 いた場 合 は,有 効 電 力P2を 調 整 して離 島 の周 波 数 を一定 に制御 す る こ とが で き,か つ無 効 電 力Q2を 調 整 して 接続 母 線 の交 流 電圧 をTSATCOMと
同様
に制 御 す る こ とが で き る.ま た,風 力発 電 な ど分離 電源 によ る発 電地 域 か ら自励 式 直 流送 電 に よ り在 来系 統 に接続 す る こ とも可能 で,分 離電 源 の周波 数変 動や 電圧 変動 を 直 流 送電 によ り吸収 す る こ とが で きるな ど,自 励 式直 流送 電 は種 々 の活用 が期 待で き る. また,容 量 が小 さい場 合 は,自 励 式変 換器 と連 系用 変圧 器 そ の他 必 要 な機 器 を コ ン
テ ナ や ト レー ラ な ど に載 せ た 移 動 形 も可 能 で あ る.
12.2.2
他励式 直流送電
従 来 か らあ る サ イ リス タ を 用 い た 他 励 式 直 流 送 電 は,異
周 波 数 系 統 間 連 系 あ るい は
海 底 ケ ー ブ ル 送 電 に 用 い ら れ て き た7).他 励 式 は サ イ リス タ 素 子 の 大 容 量 化,光
サイ
リス タ に よ る部 品 点 数 の 削 減 に よ る信 頼 性 の 向 上 な ど に よ り,自 励 式 に 比 べ て 低 廉 で あ り,大 容 量 送 電 が 可 能 で あ る. 他 励 式 直 流 送 電 の 構 成 を図12.11(a)に
示 す.サ
イ リス タ に よ る 6パ ル ス 整 流 ブ リ
(a)他 励式HVDC単
線結線図
(b)他 励 式HVDC運
転領域
図12.11
他励 式HVDC
ッ ジ構 成 の 変 換 器,直
流 リア ク トル,交 流 フ ィ ル タ,調 相 用 コ ン デ ン サ 設 備 か ら な る.
大 容 量 送 電 で は通 常,6 パ ル ス 整 流 ブ リ ッ ジ を 図12.11(a)の パ ル ス 構 成 と し,直
流 側 の 高 電 圧 化 を可 能 に し,か
つ交 流 側 発 生 高 調 波 を低 減 す る.
他 励 式 は 交 流 電 圧 で 転 流 し て 交 直 変 換 を す る の で,交 転 が で き ず,交
よ う に 2直 列 に し て12
流 電 圧 が 供 給 され な い場 合 は 運
流 側 か ら み る と変 換 器 は 電 流 源 の特 性 を もつ.高
調 波 に つ い て も変 換
器 は電 流 源 で あ り,自 励 式 に比 べ て 1サ イ ク ル 間 の ス イ ッ チ ン グ 回 数 が 少 な い の で 電 流 が 短 形 波 状 に な り発 生 高 調 波 電 流 が 多 く,通 常,交
流 フ ィル タ を設 け る.直 流 リ ア
ク トル は直 流 電 流 の リ ッ プ ル を 抑 制 す る 役 割 を も つ.他 励 式 直 流 送 電 の 場 合 は,直
流
電 流 の 方 向 は常 に 一 定 で あ り,直 流 電 流 の 大 き さ を 変 え て 送 電 電 力 量 を制 御 す る.送 電 電 力 の 反 転 は 直 流 電 圧 を反 転 させ る こ と に よ り行 う. 他 励 式 直 流 送 電 の 運 転 範 囲 をPQ平
面 で示 す と図12.11(b)の
(b)の 破 線 で 示 す の が 他 励 式 変 換 器 のPQ特
よ う に な る.図12.11
性 で あ り,有 効 電 力 の 向 き に か か わ らず
つ ね に 遅 れ の 無 効 電 力 を消 費 し7),P に対 し て Q が 従 属 的 に き ま る.P=100%の 合 に約60%の
場
遅 れ の 無 効 電 力 を 消 費 す る.通 常 は 変 換 器 の 交 流 側 で は 力 率 を 1近 く
で 運 転 させ る た め に,容 量 約60%の
調 相 設 備 を設 け るが,そ の 調 相 設 備 を 分 割 し て お
き,運 転 電 力 に つ れ て調 相 設 備 を入 り切 りす る.調 相 設 備 の 入 り切 り は機 械 式 開 閉 器 を 用 い る の で,操 体 のPQ特
作 回数 を 少 な くす る運 用 が と られ て い る.そ
の よ うに した 場 合 の 全
性 が 実 線 で あ り,力 率 1近 くで 運 転 す る方 法 が 採 用 され て い る.
他 励 式 直 流 送 電 は 大 容 量 系 統 間 の大 容 量 一 定 送 電 に適 し て お り,今 後 も基 幹 系 統 と して 使 わ れ る場 合 が 多 い.ま た,わ が 国 で は50Hz/60Hzの
東 西 連 系 に も用 い られ て
い る.
12.2.3
サ イ リ ス タ ス イ ッチ
サ イ リ ス タ ス イ ッチ は 機 械 式 遮 断 器 の 代 わ り にサ イ リス タ を 用 い た も の で,系
統事
故 時 の事 故 電 流 が 流 れ た 際 に サ イ リス タ を オ フ し て遮 断 し て事 故 を 切 り離 す 装 置 で あ り,サ イ リス タ ク リ ッパ と も呼 ば れ て い る 8).回路 構 成 は 図12.12(a)に 逆 並 列 接 続 した サ イ リ ス タ を 回 路 に直 列 に 接 続 す る.サ
示 す よ う に,
イ リス タは常 時導 通状 態 とし
て お き,事 故 電 流 が 流 れ た 場 合 に サ イ リ ス タ を オ フ して 導 通 を 遮 断 し,事 故 を切 り離 す.サ
イ リス タ は 点 弧 パ ル ス が 与 え られ な い と電 流 が 逆 方 向 に 流 れ よ う とす る ゼ ロ 点
で オ フ と な る.し
た が っ て 事 故 電 流 を検 出 し て,点 弧 パ ル ス を 与 え な く し た 直 後 の,
半 サ イ ク ル 以 内 に 電 流 が 遮 断 で き る. 図12.12(b)に 路 側V2で
所 内 電 源 回 路 と受 電 回 路 と をサ イ リ ス タ ス イ ッ チ で つ な ぎ,受
三 相 地 絡 事 故 が 発 生 し た 場 合 の シ ミュ レー シ ョ ン結 果 を 示 す.電
電回
流I1の
波
(a)サ
イ リス タ ス イ ッチ 回 路 に よ る連 系 回路
(b)事 故 しゃ断 例 図12.12
サ イ リス タ イ ス イ ッチ に よ る連 系
形 よ り,事 故 電 流 が 流 れ 初 め て 半 サ イ ク ル後 に 遮 断 し て い る こ と が わ か る.所
内側 の
電 圧V1は
のよう
事 故 遮 断 後 に発 電 機 で 維 持 され る電 圧 ま で 直 ち に 回 復 し て い る.こ
に サ イ リス タ ス イ ッチ を 適 用 す る と,電 圧 低 下 時 間 が 大 幅 に短 縮 で き る の で,停
電が
回 避 で き る よ う に な り,所 内 の 重 要 負 荷 へ の 電 力 供 給 の 信 頼 度 を上 げ る こ とが で き る. サ イ リス タ リ ミ ッ タ は サ イ リス タ ス イ ッチ に 交 流 リア ク トル を直 列 に 接 続 し た 構 成 で,事
故 電 流 を リア ク トル で 抑 制 し,か
つ サ イ リス タ で 遮 断 す る装 置 で あ る.リ
トル に よ り事 故 電 流 が 小 さ くな る の で サ イ リス タ の 遮 断 責 務 が 軽 減 で き る.た 時 リア ク トル が 挿 入 さ れ る の で,適
だ し常
用 にあ ったて は所 内で の短絡容 量 が大 きい場合 の
限 流 リ ア ク トル を 設 け る場 合 な ど に兼 ね 合 わ せ て 設 置 す る と有 利 で あ る.サ ス イ ッ チ や サ イ リス タ リ ミ ッ タ は,停 わ れ 始 め て い る.
アク
イ リスタ
電 に よ る損 失 が 大 き い プ ラ ン トな どで 次 第 に使
12.2.4限
流
器
限 流器 は事 故電 流 を抑制 して,事 故 時 に発 生 す る健 全側 系統 の電圧 降下 を抑制 し, 事 故 の波 及 を抑制 す る 目的で設 置 され る. 限 流器 には大 き く分 けて 2種 の 方式 が あ る.そ の一 つ は超 伝 導 を用 いた限 流器 で あ り,常 時 は超伝 導状 態 で抵 抗値 をゼ ロに して運転 し,事 故 電流 が流 れ る場 合 に超 伝 導 の ク エ ンチ現 象 を起 こさせ て 抵抗 値 を大 き くして電 流 を限流 す る方 式 で あ る.た だ し,超 伝 導状 態へ の もど しに数 秒 オー ダー の時間 が かか るので,再 投 入 に は時間 が か か る.
(a)限 流 器 回 路
(b)限 流器電流波形 図12.13
限流器
も う一 つ は 直 流 リア ク トル を 用 い た 整 流 器 形 の 限 流 器 で あ る9).こ こで は 整 流 器 形 の 限 流 器 を紹 介 す る. 整 流 器 形 限 流 器 の 回 路 は 図12.13(a)に (D1,D2,D3,D4)で
示 す よ う に 直 流 リ ア ク トル とダ イ オ ー ド
構 成 す る.通 常 は リア ク トル と ダ イ オ ー ド に直 流 分 が 循 環 電 流 と
して 流 れ て お り,両 端 の交 流 端 子 か ら み る と両 方 向 の ダ イ オ ー ドが 接 続 され て い る状 態 で あ る.通
過 電 流 が 増 大 し よ う とす る と リア ク トル が 入 る状 態 とな り,電 流 の 増 加
を 抑 制 す る よ う に 働 く. そ の 動 作 の 計 算 例 を 図12.13(b)に
示 す.こ
こ で は 図12.12と
同 じ系 統 を用 い て,サ
イ リ ス タ ス イ ッ チ の 代 わ り に 限 流 器 を挿 入 し て い る.図12.13(b)で 統 側V2で
地 絡 事 故 が 発 生 した 場 合 を想 定 し て い る.t1以
は 時 間t1に
前 は 負 荷 電 流I1の
て系
ピ ー ク値
と同 じ循 環 電 流 が 流 れ て い る.時 間t1以 後 は直 流 リ ア ク トル が 回 路 に 挿 入 し た応 答 に な っ て お り,事 故 電 流 が 図12.12(b)に た だ し本 装 置 は,通
比 べ て ゆ るや か に増 加 し て い る こ と が わ か る.
常 の 負 荷 電 流 で も増 加 速 度 が 早 い と リア ク トル に よ り増 加 速 度 が
抑 制 さ れ る 特 徴 が あ る. 限 流 器 は 機 器 の 開 発 と適 用 形 態 の 開 発 が 行 わ れ て い る 段 階 で あ るが,事
故 電 流 を抑
制 す る こ とが で き る大 き な利 点 が あ り,将 来 の フ レ キ シ ブ ル な 系 統 運 用 を 可 能 に す る 手 段 で あ る と期 待 さ れ て い る.
12.3
高調波とアクテ ィブフィルタ
近 年 の 配 電 系 統 で は電 圧 ひ ず み が 大 き くな っ て き て い る.こ れ は負 荷 が イ ンバ ー タ に代 表 さ れ るパ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス 機 器 に お き代 わ っ て き て い るた め,そ 生 す る高 調 波 が 系 統 に流 出 し て,系
統 の 電 圧 を ひ ず ませ て い る.特
れ らが 発
に 5次 の ひ ず み が
顕 著 で あ る10).今 後 そ の 傾 向 は ます ま す 顕 著 に な る と考 え られ る.過 去 に は,配 末 端 に接 続 した 力 率 改 善 用 コ ン デ ンサ に 高 調 波 電 流 が 流 れ 込 み,コ
電線
ンデ ンサが焼 損す
る事 故 な ど が お き て い る.今 後 は高 調 波 ひ ず み に よ る 重 要 負 荷 へ の 悪 影 響 な ど も現 れ て く る と考 え ら れ る. 対 策 と し て は,発 生 源 を 取 り除 く方 法 も考 え られ る が 現 実 的 で な く,系 統 に て フ ィ ル タ を 入 れ て 改 善 す る 方 法 が と られ る と考 え る.フ LCRで
構 成 す る パ ッ シ ブ フ ィ ル タ と,パ
ブ フ ィル タ が あ る.
ィ ル タ と し て,従
来か らある
ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス 機 器 に よ る ア ク テ ィ
12.3.1LCRパ
ッ シ ブ フ ィル タ
パ ッ シ ブ フ ィル タ は 図12.2(a)に 7次 調 波 な ど に 同 調 させ て,高
直 並 列 に接 続 し,3 次,5 次,
調 波 電 流 を 吸 収 させ る装 置 で 低 コ ス トで あ る.パ
ブ フ ィル タ を 入 れ る こ と に よ り,フ 路 が 形 成 さ れ,そ
示 す よ う に,LCRを
ィル タ と系 統 の イ ン ピ ー ダ ン ス で,新
ッシ
た な共振 回
の 周 波 数 が 別 の 高 調 波 周 波 数 に 一 致 す る よ うな 場 合 に は,そ
の 高調
波 ひ ず み が 大 き く な る こ と も あ り注 意 す る必 要 が あ る.
12.3.2ア
ク テ ィ ブ フ ィル タ
ア ク テ ィ ブ フ ィル タ の 原 理 は 図12.14に 出 し,そ
示 す よ う に,系
統 を流 れ る高 調 波 電 流 を検
の 電 流 と位 相 を180° 度 ち が え た 高 調 波 電 流 を 自励 式 変 換 器 か ら流 し込 ん で
打 ち 消 す 方 式 で あ る.し た が っ て,高 調 波 の 次 数 を 限 定 す る こ とな く効 果 が 得 られ る. こ こ に 用 い る 自励 式 変 換 器 はIBGT素 PWMの
子 な ど を 用 い て,PWM制
御 で 運 転 さ れ る.
キ ャ リア 周 波 数 で 素 子 の ス イ ッチ ン グ 周 波 数 が 決 ま る の で,フ
ィ ル タ効 果 と
し て の 吸 収 で き る 高 調 波 次 数 の 上 限 は そ の キ ャ リア 周 波 数 で 決 ま る.
図12.14
12.3.3組
ア ク テ ィ ブ フ ィル タの 原 理 図
み合 わせ型
ア ク テ ィブ フ ィル タ の 容 量 を小 さ くす る こ と を 目 的 と し た,組 ブ フ ィ ル タ が あ る11,12).そ の 構 成 を 図12.15に 変 圧 器 を つ な ぎ,そ る.ア
示 す.LCの
み合 わ せ 型 ア ク テ ィ
パ ッ シブ フィル タに結 合
の 結 合 変 圧 器 の 2次 側 に ア ク テ ィ ブ フ ィル タ を接 続 した 構 成 で あ
ク テ ィ ブ フ ィ ル タ の 出 力 電 圧 を 配 電 線 の 高 調 波 電 圧 と逆 位 相 で ゲ イ ン K 倍 で
運 転 す る と,全 体 の イ ン ピ ー ダ ンス がLCフ
ィ ル タ の1/(1+K)倍
と な り,高 調 波 吸
図12.15
収 効 果 が 高 く な り,少 な いLCフ
高周波抑制装 置
ィ ル タ容 量 で 効 果 的 な フ ィル タ を構 成 で き る.ス ペ
ー ス も小 さ くで き ,柱 上 変 圧 器 相 当 の 装 置 と し て つ く る こ と もで き る. 配 電 系 統 に お け る 高 調 波 ひ ず み の 対 策 で は こ こ で 示 した フ ィ ル タ類 を 用 い るが,配 電 系 それ ぞ れ に高 調 波 イ ン ピ ー ダ ンス 特 性 が 異 な る の で,ど
の 方式 が適 してい るか は
特 性 と経 済 面 と を あ わ せ て 検 討 す る 必 要 が あ る.
12.4
電力品質における今後の多様化 と課題
電力 自由化 が進展 し,各 種 の規 制緩 和 も進 む と,電 力 系統 に各種 の新 しい発 電機器 が連 系 され る ように な る.配 電 系統 で はいわ ゆ る分散 電源 が 多 く接続 され るよ うにな り,そ の分 散電 源 として は,風 力 発電,マ イ ク ロガ ス ター ビ ン発 電,太 陽光 発 電,燃 料電 池,さ らに は蓄 電 池 な どを用 い た電力貯 蔵装 置 な どが ある. これ ら分 散電 源 は交 流系統 との接続 点 に誘 導機,同 期機 あるい は 自励 式変 換器 のイ ンバ ー タが 用 い られ る.た とえば誘 導機 形風 力発 電機 の場 合 に は,風 の変化 につれ て 誘導 機 の消費 す る無効 電 力量 が変 化す る.接 続 して い る交 流配 電系 統 が容量 が大 き く 強 い場 合 には問題 が な いが,配 電 系統 が弱 い場合 に は電 圧 変動 が大 き くな る な どの問 題 が 現れ る. 分散 電源 は通常 の配 電 系統 に接続 して運 転 す る場 合 に は,機 器 個 々 として は安 定 な 運 転 がで きる.し か し,種 々 の機器 の組 み合 わせ が増 えか つ分散 電源 の発電 量が 多 く な った場合,あ るい は配電 系統 が弱 い場合 には,そ れ ぞれ が安定 な運 転 をす るこ とが で きるか どうかの 課題 が残 され て い る. イ ンバ ー タで は基 本 的 な制御 として,系 統側連 系点 の電圧 の振 幅 と位相 を検 出 し,
そ れ を 基 準 に イ ンバ ー タ 自体 が 出 力 す る有 効 電 力 と無 効 電 力 の 制 御 を 行 う.し た が っ て 分 散 電 源 の 量 が 多 くな る と,系 統 の 電 圧 の 変 動 も分 散 電 源 の 制 御 特 性 に よ り変 わ り,全 体 と し て の 安 定 性 が 確 保 で き るか 否 か,と い う問 題 が 具 体 的 な課 題 と して あ る. 分 散 電 源 の 機 器 に 対 し て は,系
統 連 系 技 術 要 件 ガ イ ド ラ イ ン(平 成10年
3月 策
定)12)に よ り,発 電 設 備 の 出 力,事 故 時 の保 護,単 独 運 転 の 防 止,電 圧 変 動 な ど に つ き 具 備 す べ き技 術 的 要 件 が 定 め られ て い る. し か し,こ れ ら要 件 だ けで 安 定 性 や,電
圧 ひ ず み な どの 電 力 品 質 に関 す る課 題 が 解
決 す る もの で は な い13).今 後 の検 討 課 題 を 具 体 的 に 示 す と,
①
周 波数 変動 の抑制
②
常 時電 圧変 動 の抑 制
③
高 調波 ひず みの低 減
④
事 故波 及 の防 止
⑤
潮 流分 布 の制 御
な どで あ る. これ ら電 力 品 質 に 関 す る課 題 の 解 決 に は,機 器 そ れ ぞ れ で 可 能 な 対 策 と系 統 側 で の 対 策 が あ る.系
統 側 で の 対 策 と して は 本 章 の パ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス機 器 を用 い る こ
と が で き,そ れ ら の概 要 を表12.1に 蔵 装 置 に 関 し て は含 め ず,電 表12.1
こ で は発 電 機 器 や 電 力 貯
力 流 通 設 備 を 主 体 に 示 し て い る. 電 力 品 質 課 題 とパ ワー エ レ ク トロ ニ ク ス 機 器
課題 周波数制御
ま と め て 示 す.な お,こ
パ ワ ー エ レ ク トロ ニ クス 機 器
制御対 象 有効電 力
自励 式HVDC,他
励 式HVDC
周波数変換 過渡安定 度
送 電 線 イ ン ピー ダ ンス,電 無 効 電 力,有
圧 位 相,
動態安 定度
送 電 線 イ ン ピー ダ ンス,電
系統動 揺抑制
無 効 電 力,有
UPFC,SSSC,TCSC,SVC, STATCOM,TCBR
効電力 圧 位 相,
効電力
UPFC,SSSC,TCSC,SVC, STATCOM,自
励 式HVDC,
他 励 式HVDC UPFC,SVC,STATCOM,自
電圧安 定度 電圧変 動抑制
無効 電力
潮流分 布制御
送 電 線 イ ン ピー ダ ン ス,電 圧 位 相,
UPFC,SSSC,TCSC,自
有効 電 力
励 式HVDC
励 式
HVDC 励 式HVDC,他
瞬停 時間短縮
高速 遮 断,リ
サ イ リ ス タ ス イ ッチ,限
流器
事故 波及防止
高速 遮 断,リ ア ク トル挿 入, 一定電力送電
サ イ リ ス タ ス イ ッチ,限
流 器,
イ ン ピー ダ ン ス,高 調 波 注入
パ ッ シ ブ フ ィ ル タ,ア
高調 波ひずみ抑制
ア ク トル挿 入
自 励 式HVDC,他
励 式HVDC クテ ィ ブ フ ィ ル タ
図12.16
電 力 改 質 セ ン タ ー概 念
最 近 で は 配 電 に お け る 品 質 の 異 な る 電 力 の 供 給 も検 討 さ れ て い る.そ
の 一 つ に,高
柔 軟 ・高 信 頼 ・省 エ ネ ル ギ ー 形 電 気 エ ネ ル ギ ー 流 通 シ ス テ ム(FRIENDS:flexible, reliable and intelligent electrical energy 16に 示 す よ う に,た
delivery
system)14)が
あ る.こ
れ は 図12.
と え ば 電 力 改 質 セ ン タ ー と して 分 散 電 源 な ど を 内 部 に設 け,通 常
低 圧 配 電 と高 信 頼 低 圧 配 電 を供 給 す る形 態 で あ る.高
信 頼 低 圧 は上 位 系 統 の 事 故 な ど
の 際 に も,系 統 側 を切 り離 し分 散 電 源 か ら電 力 を 供 給 し,瞬 時 停 電 もす る こ と な く供 給 す る 配 電 で あ る.当
然 そ こ に は 高 速 で 入 り切 りす る 開 閉 器 や 無 停 電 電 源 と同 じ よ う
な 構 成 の 切 り替 え装 置 が 必 要 で あ り,それ ら はパ ワ ー エ レ ク ト ロ ニ ク ス 機 器 に て 構 成 さ れ る. こ の よ う な 新 しい シ ス テ ム を 実 現 し て い くた め に は,こ の 開 発,各 開 発,経
機 器 の 協 調 運 転 方 式 の 開 発,上
れ ら送 配 電 系 の 制 御 と保 護
位 系 統 と負 荷 側 と を つ な ぐ情 報 シ ス テ ム の
済 運 用 方 式 お よ び 保 守 ・サ ー ビス の 開 発 な どが 必 要 で あ る.
参考 文献 1)N.G.Hingoraniほ 2)Y.H.Songほ 3)横
田 ほ か:今
-19
か:Understanding か:Flexible 後 の 電 力 系 統
FACTS,IEEE transmission
Press,2000)
systems(FATCS),IEE,1999.
と パ ワ ー エ レ ク ト ロ ニ ク ス 技 術,東
芝 レ ビ ュ ー,55,8,pp.2
,2000.
4)J.Douglas:Custom June 5)
ac
Power
optimizing
distribution
service,EPRI
Journal,May/
1996,pp.7-15,1996.
電 気 学 会
半 導 体 電 力 変 換 方 式 調 査 専 門 委 員 会 編:半
導 体 電 力 変 換 回 路,電
気 学 会,
1987-03. 6)雨
谷 ほ か:電
7)町
田 ほ か:直
8)堺
ほ か:電
力 シ ス テ ム の パ ソ コ ン シ ミ ュ レ ー シ ョ ン,OHM9月 流 送 電 工 学,東
田:自
京 電 機 大 学 出 版 局,1999-01.
源 の 高 信 頼 化 ・高 品 質 化 及 び 省 エ ネ ル ギ ー に 適 用 さ れ る パ ワ ー エ レ ク トロ
ニ ク ス 装 置 の 動 向,紙 9)徳
号 別 冊,1998.
パ 技 協 誌,54,4,pp.34,2000.
家 発 の 系 統 連 系 を 支 援 す る整 流 器 を用 い た 瞬 停 対 策 用 高 速 限 流 遮 断 シ ス テ ム,
OHM,pp.40-46,1998, 10)雪
平:配
11)藤
田 ほ か:新
電 系 統 の 高 調 波 発 生 源 を 探 る,OHM,pp.27-31,1999-05. し い 原 理 に 基 づ く高 調 波 抑 制 装 置(LCフ
接 続 シ ス テ ム),平 12)小
坂 ほ か:高
ィ ル タ とPWM変
換 器 の直 列
成 元 年 電 気 学 会 産 業 応 用 部 門 大 会,76,1989.
調 波 吸 収 装 置 の 検 証 試 験,平
成 9年,電
気 学 会 電 力 ・エ ネ ル ギ ー 部 門 大
会,307,pp.411-412,1997. 13)通
商 産 業 省:系
14)茂
田 ほ か:分
散 電 源 の 導 入 と 系 統 連 系 問 題,電
15)奈
良 ほ か:新
し い 柔 軟 な 電 気 エ ネ ル ギ ー 流 通 シ ス テ ム,電
47-53,1997.
統 連 系 技 術 要 件 ガ イ ド ラ イ ン,平
成10年
3月10日,1998.
気 学 会 誌,107,9,pp.909-912,1987. 気 学 会 論 文 誌B,117,1,pp.
第13章 新エネルギー利用 と分散電源
13.1
概
要
経 済 発 展 に 伴 う エ ネ ル ギ ー 消 費 の 増 大 が 現 在 の 状 況 の ま ま加 速 度 的 に 進 行 した 場 合,21世
紀 半 ば に は 深 刻 な エ ネ ル ギ ー 枯 渇 問 題 に 直 面 す る こ とに な る.現 在 の 推 移 で
は石 油 は2040年,天 1997年
然 ウ ラ ン は2050年,石
炭 は2220年
に な くな る と い わ れ て い る .
の 地 球 温 暖 化 防 止 京 都 会 議 な ど に み られ る よ う に,エ ネ ル ギ ー の 有 効 利 用 や 自
然 環 境 改 善 へ の 取 り組 み は 今 や 世 界 的 な 課 題 で あ る.石 油 代 替 エ ネ ル ギ ー の 開 発 は こ こ20年
で 急 激 な進 歩 を た ど っ て お り,近 年 で は風 力 発 電 や コ ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン に代
表 さ れ る さ ま ざ まな 新 エ ネ ル ギ ー 源 が 注 目 さ れ る よ う に な っ た. ま た,先
進 国 を 中 心 と し て 電 力 事 業 の 自 由 化 や 規 制 緩 和 な ど,分 散 エ ネ ル ギ ー 導 入
の 機 運 が 高 ま っ て き て い る.わ が 国 で も1995年
の電 気 事業 法 の大 改正 に代表 され る
競 争 原 理 の 導 入 と規 制 緩 和 な ど の 法 規 整 備 に よ り,条 件 が 整 い つ つ あ る. そ こで,本
章 で は 電 力 自 由 化 の 一 つ の キ ー ワ ー ド と な る新 エ ネ ル ギ ー に つ い て 解 説
す る.新
エ ネ ル ギ ー と い っ て も電 気 自動 車 な ど,電 力 事 業 と直 接 関 係 な い 分 野 も含 ま
れ る.そ
こで こ こ で は,太 陽 光 発 電 ・風 力 発 電 ・コ ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン シ ス テ ム ・燃 料
電 池 の 4種 類 を “分 散 電 源 ” と し て 位 置 づ け,こ
れ ら に 的 を絞 っ て 解 説 す る.
本 来 の “分 散 電 源 ” の 意 味 は も う 少 し 広 く,100MWク 電 源 ”だ とす れ ば,そ
ラ ス の 大 型 発 電 所 が “集 中
れ 以 外 の 水 力 発 電 な ど も “分 散 電 源 ” に分 け られ よ う.し
か し,
わ が 国 で は戦 後 長 ら く電 気 事 業 が 独 占 さ れ て き て お り,そ の 中 で は大 規 模 電 源 を設 置 す る こ とに よ りス ケ ー ル メ リ ッ トが 図 れ る と い う基 本 的 な コ ン セ プ トが 定 着 して い た. 既 存 の 電 気 事 業 者 が 有 す る 発 電 施 設 は大 小 さ ま ざ ま で あ る が,こ 電 源 ” と し て み な せ ば,太 ム,熱
れ を一 つ の “集 中
陽 光 発 電 ・風 力 発 電 な ど の 自 然 エ ネ ル ギ ー利 用 発 電 シ ス テ
供 給 との ハ イ ブ リ ッ ド形 で あ る コ ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン シ ス テ ム,ガ
ス か ら生 成 さ
れ る水 素 の 化 学 反 応 に基 づ く燃 料 電 池 な ど を,"分 散 電 源"と
し て位 置 づ け る こ とが 可
能 と な る. 本 章 で は,ま
ず これ らの 各 種 分 散 電 源 に 共 通 す る,背
の 整 備 な ど に つ い て 整 理 を行 う.次 構 成,基
本 技 術,開
本 章 の"分
景,研
究 技 術 支 援 体 制,法
に 各 方 式 に お け る開 発 の 背 景,標
規
準 的 な シス テム
発 導 入 な ど に つ い て 述 べ る.
散 電 源"に
共 通 す る 特 徴 は,将 来 的 な 評 価 が ま だ 定 ま っ て い な い こ と,
ま た 近 年 開 発 が 急 速 に 進 み,法
規 も整 備 が か な り進 め られ て い る こ とか ら,普
待 さ れ る こ とで あ る.ま
及 が 促 進 され れ ば,エ
た,普
さ れ 電 力 事 業 の構 造 が 図13.1の
ネ ル ギ ー 生 産 ・消 費 構 造 が 刷 新
よ う に大 き く変 わ る可 能 性 が あ り,今 後 の 動 向 が 大
い に注 目 さ れ る と こ ろ で あ る.
図 13.1
及が 期
分散電源導入 によ る電力事 業構造の変化
13.2
背 景
13.2.1
新 エネル ギーへの転換政策
今 後,世
界 の経 済 発 展 に よ るエ ネ ル ギ ー 消 費 量 は ま す ます 増 加 す る傾 向 で あ り,一
方 で は 排 出 ガ ス を は じ め と した 環 境 問 題,ま 始 め て い る.し
た が っ て近 年 で は,エ
政 策 の 基 本 原 則 と な っ て い る.こ
た 石 油 エ ネ ル ギ ー の 枯 渇 問 題 が 議 論 され
ネ ル ギ ー 安 定 供 給 と地 球 環 境 保 全 が エ ネ ル ギ ー
れ に 応 じ て,欧 米 を 中 心 に対 応 策 の 整 備 が 進 み,た
と え ば,ア メ リカ で は 公 益 事 業 規 制 政 策 法(PURPA法)が1978年
に 定 め られ,エ ネ ル
ギ ー効 率 を 向 上 す る施 設 の 設 置 が 奨 励 さ れ て い る. これ に 加 え て 資 源 の 少 な い わ が 国 に お い て は,国 る.1994年
産 エ ネ ル ギ ー の 確 立 も重 要 で あ
に 閣 議 決 定 さ れ た 「新 エ ネ ル ギ ー 導 入 大 綱 」 に お い て,新
点 導 入 が 位 置 づ け られ た.1997年
に は新 エ ネ 法(新 エ ネ ル ギ ー の 利 用 等 に 関 す る特 別
措 置 法)の 制 定 と,そ の 基 本 方 針 が 策 定 さ れ,政 府,エ 給 事 業 者,メ
ー カ,地
ネ ル ギ ー使 用 者,エ
ネル ギー供
方 公 共 団 体 の 果 た す べ き責 務 に つ い て の 整 理 が 行 わ れ,目
成 へ の 各 論 が 進 展 し た.こ に よ る債 務 保 証,中
エ ネル ギー の重
れ に よ り,NEDO(新
小 企 業 へ の 金 融 支 援,新
標達
エ ネ ル ギ ー ・産 業 技 術 総 合 開 発 機 構) エ ネル ギー利 用認 定事 業者 への補 助制 度
が 位 置 づ け られ た. 一 方,1997年12月
の 国 連 気 候 変 動 枠 組 条 約 第 3回 締 結 国 会 議(COP3,通
際 会 議)の 合 意 事 項 を 踏 ま え,1998年9月 の 供 給 目 標"が 改 定 され た.こ 減 目標 は1990年
に"長 期 需 要 見 直 し""石
れ に よれ ば,2010年
水 準 で 6%削 減 に 設 定 され,き
称 京都 国
油代替 エ ネル ギー
に お け る 日本 の 温 室 効 果 ガ ス の 削 び し い 条 件 を 課 せ られ る こ と と な っ
た.
13.2.2
研 究 ・普 及支援体制
わ が 国 で は 経 済 産 業 省 お よ びNEDOが 開 発 の 支 援 を 行 っ て き て い る.1970年
この 課 題 に 取 り組 み,強
ー の 開 発 が 国 家 的 な重 要 課 題 と し て 認 識 され て お り ,こ 推 進 母 体 と し て のNEDOが
力 な新 エ ネル ギー
代 の 石 油 シ ョ ッ ク に起 因 し て 石 油 代 替 エ ネ ル ギ の た め1980年10月
に 中核 的
発 足 し,石 油 代 替 エ ネ ル ギ ー の 総 合 開 発 を 主 業 務 と す る
こ と と な っ た.
1988年 に は産 業分 野 にお け る技術 開発 を推 進 す る業 務 を追加 し"新 エネ ルギ ー ・産 業 技術 総 合 開発機 構"へ 改組 ・拡充 した.以 来わ が 国の技 術 開発 の中核 とな る政 府系 機 関 と して活 動 を続 け,現 在 で は,新 エネル ギー お よび省 エ ネル ギー の開発 と導入促
進,産 業 技術 の研 究 開発,石 炭 鉱業 の構 造調 整,ア ル コール 製造事 業,石 炭 鉱害 賠償 な ど五 つ を事 業 の柱 と して実施 して い る.
電 力業界の グ リー ン制 導入
13.2.3
グ リー ン制 とは,コ
ス トが か か る 自然 エ ネ ル ギ ー を利 用 し た 発 電 電 力 に対 し,電 力
購 入 者 が 上 乗 せ 額 を 払 う シ ス テ ム で あ る.た 参 加 し,1kWhあ
た り0.4∼5.5円
わ が国 で も2000年7月
と え ば ア メ リ カ で は1∼2%の
需 要家 が
を 支 払 っ て い る.
に,当 時 の 通産 大 臣 の諮 問機 関 で あ る総 合 エネ ル ギー調 査
会 の新 エ ネル ギ ー部会 にて,希 望者 か ら月額500円 程 度 の寄付 を集 め て 自然 エ ネル ギ ー発 電 へ の助成 に回 す"グ リー ン電 力制 度"の 導入 を電力 業界 が発 表 した.仲 介 とな る新 規 の 受託 会社 を電 力会社 が 設立 し,需 要 家 か らの拠 出金 を風力 発電事 業 者へ まわ す と ともに,そ の 自然 エ ネル ギー貢献 度 を示 す発 電証 書 を需要 家 に発行 す る.試 算 に よれ ば,寄 付制 度 の加 入世 帯が 年 に0.1%ず に100MW増
13.2.4
つ増加 す れ ば,助 成 対 象 の設備 規 模 が年
加 す る.
余剰 電力の購 入
余 剰 と な る電 力 を連 系 す る電 気 事 業 者 が 購 入 す る か ど うか が 分 散 電 源 普 及 の 一 つ の ポ イ ン ト とな る.余 剰 電 力 受 給 契 約 は 各 電 力 会 社 が1992年
よ り実 施 し て お り,ま た,
電 力 会 社 各 社 が"商 業 目的 で 実 施 す る 風 力 発 電"に 対 し て の 電 力 買 取 り制 度 を1998年 に 新 設 し た こ とで,よ
うや く 日本 で も本 格 的 な ウ イ ン ドフ ァー ム の 可 能 性 が 見 え て き
た.
しか し,前 述 の グ リー ン制 の 導入 に よ り,こ れ まで全 量 購入 が原則 だ った太 陽光 発 電や 風力 発電 の引 き取 りを競 争入札 に移行 させ る方針 が とられ,結 果 として自然 エ ネ ル ギー発 電量 が 伸 び悩 む こ とへ の懸念 が生 じて い る.風 力 発電 の集 中す る北海 道電 力 はす で に風力 発 電電 力 の買取 りを全量 買取 制 か ら入 札制 に して お り,東 北 電力 もグ リ ー ン制度 導入 を機 に全量 買取 りを廃止 す る予定 で あ る. 13.2.5
ESCOの
ESCO(Energy で,顧
成立
Service
Company)は,省
エ ネ ル ギ ー コ ンサ ル テ ィ ン グ を 行 う こ と
客 の 利 益 保 護 も保 証 す る事 業 で あ る.す
な わ ち,エ
ネ ル ギ ー 利 用 業 務 で は,省
エ ネ ル ギ ー の 具 体 策 や 投 資 方 法 が わ か る とい う メ リ ッ トが あ る. ア メ リ カ で は 石 油 シ ョ ッ ク を契 機 と し て1970年 が 国 で は1996年
以 来 経 済 産 業 省 やNEDOに
代 よ りESCOが
登 場 し て い る.わ
よ り検 討 が 進 ん で い る.メ
ー カやガ ス会
社 で は セ ク シ ョ ン業 務 と し て 成 立 が 始 ま っ て い る.
13.3 13.3.1
連系方法 分散電 源導入へ の法規整備
分 散 電 源 普 及 の キ ー と な る の は,関
連 す る法 規 の 整 備 で あ る.こ れ に つ い て概 略 を
紹 介 した い. 1986年
に"系 統 連 系 技 術 ガ イ ドラ イ ン"が ま ず 制 定 さ れ,コ
の 自家 用 発 電 設 備 を系 統 連 系 す る際 の 指 針 が 定 ま っ た.1990年
ジ ェネ レー シ ョンな ど に 燃 料 電 池 を初 め とす
る直 流 発 電 設 備 を 高 圧 以 上 の 系 統 に連 系 す る場 合 の 要 件 が 盛 り込 ま れ た.1991年 陽 電 池 等 小 規 模 分 散 電 源 の 逆 潮 流 な し低 圧 系 統 へ の 連 系,1993年
に太
に は 逆 潮 流 あ り低
圧 ・高 圧 系 統 へ の 連 系 に つ い て 追 加 され た. そ し て,1995年
の 電 気 事 業 法 改 正 に よ り,こ れ まで 自 家 用 電 気 工 作 物 と し て 分 類 さ
れ て い た 小 規 模 発 電 設 備 が,一 す な わ ち,600V以
般 用 電 気 工 作 物 と して 分 類 変 更 さ れ る こ と とな っ た.
下 の20kW未
満 の風 力 ・太 陽 光 ・内 燃 力 発 電 設 備,お
未 満 の 水 力 発 電 設 備 は 一 般 用 電 気 工 作 物 と み な さ れ,電 くな っ た.こ れ に よ り,特 に 出 力20kW未
よ び10kW
気主 任技 術 者設 置 の義務 が な
満 の 太 陽 電 池 発 電 設 備 は,600V以
下 で受
電 し,同 一 構 内 で そ の 受 電 電 力 を使 用 す れ ば,一 般 用 電 気 工 作 物 と し て 認 め ら れ るた め,個 別 住 宅 用 と し て の 条 件 が 整 った.ま
た 系 統 連 系 の 保 護 装 置 や 考 慮 す べ き点 も明
確 に 整 理 さ れ て い る. 系 統 連 系 要 件 ガ イ ド ラ イ ン は1998年 へ の 連 系 要 件 が 整 理 さ れ た.こ
に 再 び 改 定 さ れ,交
流 発 電 設 備 の低 圧 系 統 側
れ に よ り,す べ て の 種 類 の発 電 設 備 が あ ら ゆ る電 圧 階
級 に 連 系 で き る こ と と な っ た. また,1999年 ネ 法)で は,年
に改 正 さ れ た 「エ ネ ル ギ ー の 使 用 の 合 理 化 に 関 す る法 律 」(通 称,省 間1500kl以
上 の 石 油,ま
た は6000MWh以
上 の 電 気 を使 用 す る 工 場
等 は エ ネ ル ギ ー 管 理 指 定 工 場 とな る.こ れ に よ りエ ネ ル ギ ー 管 理 士 を 選 任 し,エ ギ ー 使 用 の 合 理 化 に 関 す る 設 備 の 維 持,定
エ
ネル
期 講 習 や エ ネ ル ギ ー 使 用 状 況 の 記 録 な どを
行 う こ とが 義 務 づ け ら れ て い る.
今後 の動 き として,経 済 産業省 は小 型発 電機 の普及 を促 進 す るた め,電 気事 業法 関 連 の省 令 を改正 す る方 針で ある.ボ イ ラー ・ター ビン主 任技 術者 の常 駐 義務 の廃 止, 小 型機 の定 期点 検 の廃 止 な どが検 討 され て いる.
連系の 要件
13.3.2
前 述 の よ う に最 新 の1998年
版 「系 統 連 系 技 術 要 件 ガ イ ドラ イ ン」 が 系 統 連 系 の ガ イ
ドラ イ ン と な る.こ れ に よ れ ば,①
連 系 す る場 合,原
方 式 と 同 一 で あ る こ と.② 力 率 は85%以
則 と し て,連 系 す る 系 統 の 電 気
上 か つ進 み 力 率 とな らな い こ と.③ 必 要 と な
る保 護 装 置 を 備 え る こ と.具 体 的 に は 過 電 圧 継 電 器(OVR),周 (OFR),転
波数 上昇継 電器
送 遮 断 保 護 装 置 ま た は単 独 運 転 検 出 装 置 な ど を使 用 す る,な
どが 必 要 で あ
る.
単独 運転 検 出装 置 は,商 用 系統側 で事 故が発 生 し,単 独 運転 とな った場 合,分 散 電 源 側 で運転 を続 け る と充 電 に よる危 険が 発生 す るた め,そ の運転 を検 出 して停 止 す る ため に使 用 され る.詳 細 は10章 に述 べ る.
13.4 13.4.1
風 力発電 開発の 背景
風 力 は 次 節 の 太 陽 光 と並 び,太 る.し
陽 が あ る 限 り永 久 に 得 られ る 自 然 エ ネ ル ギ ー で あ
か し,間 欠 エ ネ ル ギ ー で あ り,単 体 で は継 続 的 な発 電 が む ず か し い こ と,騒 音
を発 生 す る こ と,設 置 場 所 が 限 定 さ れ,風 や 渡 り鳥 へ の 影 響 な ど,ク
リ ア す べ き課 題 も多 い.
風 力 発 電 の 原 理 は 昔 か らあ っ た が,1980年 が 登 場 した こ とで,電
量 一 定 の 広 い 場 所 が 必 要 で あ る こ と,景 観
代 に カ リ フ ォル ニ ア に ウ イ ン ドフ ァー ム
力 事 業 と して 成 立 す る こ とが 認 識 さ れ た.以
あ る デ ン マ ー ク や ド イ ツ を 中 心 と し た ヨー ロ ッパ を 始 め と して,世 2000MW,2000年
に は10000MWを
わ が 国 で は1978年
13.4.2
境 先進 国 で
界 で は1990年
に
超 え る風 力 発 電 設 備 が 導 入 さ れ て い る .
に 通 産 省(当 時,以
力 発 電 の 開 発 が 開 始 され た.以 来,40MWが も満 た ず,導
来,環
下 同 じ)の ニ ュ ー サ ン シ ャ イ ン 計 画 に よ り風 導 入 さ れ て い る が,全 設 備 容 量 の 1%に
入 促 進 が 叫 ば れ て い る.
標準 システ ム
図13・2に 標 準 的 な 風 力 発 電 シ ス テ ム を 示 す.ブ
レ ー ドに よ っ て 風 力 を 回 転 力 に 変
換 し,直 接 な い し増 速 さ れ て 発 電 機 に伝 達 さ れ る.出 力 交 流 は周 波 数 変 換 を必 要 とす る場 合 は,変
換 器 に よ っ て 商 用 周 波 数 へ 変 え られ る.通
所 で は消 費 され ず,商
用 系 統 へ 連 系 され 供 給 さ れ る.
常,発
電 された電 力 は その場
図 13.2
風力発電 の標準 システム
基本技 術
13.4.3 (1)本
体
ブ レー ド部 分 は風 力 エ ネ ル ギ ー を 回 転 エ ネ ル ギ ー に変 換 す る.プ 垂 直 軸 形 の ダ リ ウ ス 形 も あ る.風 り,少
ロ ペ ラ 形 の ほ か,
速 と同 期 し て 回 転 す る と変 換 エ ネ ル ギ ー は ゼ ロ と な
し遅 れ て 回 転 す る と最 大 変 換 と な る.し た が っ て 風 車 は た だ 回 転 す る だ け で は
な く,羽 根 の ピ ッ チ を調 節 して 風 速 に 応 じた 回 転 数 を得 る よ う に な っ て い る.ロ ー タ, 増 速 機,発
電 機 は ナ セ ル と呼 ば れ る箱 に 収 め られ て い る.
な お,設
置 工 事 に つ い て は 十 分 な検 討 が 必 要 で あ り,十 分 な風 速 が 得 られ る こ と,
近 く に系 統 連 系 用 の 商 用 系 統 が 存 在 す る こ と,大 型 機 に つ い て は 搬 入 道 路 が 確 保 で き る こ と,騒 音 や 電 波 障 害 を 生 じな い 広 い 場 所 で あ る こ と な ど,ク ま な 課 題 が あ り,こ れ ら に よ り コ ス トが 増 す こ と も あ る.ま
リア す るべ き さ ま ざ
た,風
力発 電 の調達 規模
が 小 さ く,量 産 効 果 が 少 な い とい う問 題 も残 っ て い る. (2)
発電機方式
発 電機 は誘 導発 電機 と同期発 電機 の いず れか が考 え られ,ま た直 接接 続 か イ ンバ ー タ を介 す るか に よって構 成 が大 き く異 な って くる. 現 在 主 流 で あ る誘 導 発 電 機 方 式 は 構 造 と保 守 が 簡 単 で あ り,コ ス トが 安 い とい う特 徴 が あ る.原 理 的 に は 同 期 速 度 よ り上,す 発 電 さ れ る.こ
な わ ち す べ りS<0の
範 囲 で 回転 させれ ば
の 場 合 増 速 ギ ア を 用 い る と機 械 損 を 生 じ騒 音 の 点 で も好 ま し くな い.
ま た 誘 導 機 の 特 性 上,効
率 の よ い 運 転 を行 う た め に は,す
べ りの 範 囲 を狭 くす る必 要
も出 て くる ・ 一 方,同
期 発 電 機 方 式 は,そ
際 に は 整 流 を行 い,再
の ま ま で は 同 期 速 度 で 回 転 さ せ る 必 要 が あ る た め,実
度 イ ン バ ー タ で 商 用 周 波 数 に 変 換 す る 必 要 が あ る.そ
の た め,
増 速 ギ ア や 回 転 数 制 御 の 必 要 が な くな る. (3)
イ ンバー タ
イ ンバ ー タ を 使 用 す る と,増 速 ギ ア が 不 要 と な り,騒 音 も減 らせ る が,設
計や 製造
が 複 雑 とな り コ ス トが 増 す こ と,出 力 交 流 側 に高 調 波 が 発 生 す る こ と な ど の デ メ リ ッ ト もあ る.た
だ し 高 調 波 に つ い て はPWMイ
ンバ ー タ を導 入 す れ ば解 決 で き る.
短時間電力供給予測
(4)
風 量 は,ま
さ に"風
ま か せ"で
あ り予 測 が む ず か し い が,供
な け れ ば 今 後 の 普 及 は む ず か し い.こ WLSAMの
場 合,気
れ に 対 し,た
象 情 報 を も と に し て30分
給 可能 電力 が 予測 で き
と え ば デ ン マ ー ク西 部 電 力 会 社
間 隔 で39時
間先 まで の風 力発 電 量 予
測 が 行 わ れ て い る.
出力変動対策
(5)
風 力 発 電 は 比 較 的 容 量 が 大 き く,ま た 商 用 系 統 へ の 逆 潮 流 を前 提 と し て い る た め, 系 統 側 へ の影 響 が 問 題 と な る.単
機 容 量500kW以
を 調 査 し て電 圧 変 動 を検 討 す る必 要 が あ る.そ が,周
波 数 に 与 え る 影 響 が 出 て く る た め,エ
イ ブ リ ッ ド化 が 必 要 に な る.こ
下 程 度 で は,線 路 イ ン ピ ー ダ ン ス れ 以 上 で は,商
用 系統 の規模 に もよ る
ネル ギー蓄積 素子 や他 の分 散 電源 とのハ
の よ う な 研 究 は まだ 広 ま っ て い な い が,風
力発 電 の普
及 に あ わ せ て 必 要 性 が 生 じ て くる と考 え られ る.
13.4.4
導 入事例
わが 国 で は1982年 に九 州電 力 沖 永 良部風 力 発電 所 に商 用300kW機 の が始 まりで あ る.1999年
に は三菱 重 工業 が1MW機
が 納入 され た
を開発 し室蘭 市 祝津 風 力 発電
所 に納入 す るな ど,大 容量 化 が進 んで い る. こ こ で は最 近 の 動 き と して,北
海 道 苫 前 町 と山 形 県立 川 町 の 導 入 例,ま
た海外 か ら
参 入 し て い る エ ネ ル ギ ー 事 業 者 で あ る トー メ ン に つ い て 紹 介 す る.
(1)苫
前 町の 風 力発 電事業
北 海道苫 前 町 には,現 在 3箇 所 に風 力 発電 設備 が あ り,そ の事 業規 模 か ら全 国 よ り 注 目され る存在 にな って い る. ま ず,ト
ー メ ン は 苫 前 町 上 平 地 区 の 町 営 牧 場 内 に わ が 国 最 大 の 苫 前 グ リ ー ン ヒル ウ
イ ン ドパ ー ク 発 電 所 を建 設,国 内 最 大 出 力 と な る1MW機 設 備 容 量 とな っ た.こ
設 置 し,20MWの
れ に よ り,こ れ ま で の 国 内 の 風 力 発 電 総 設 備 容 量30MWが
き く更 新 さ れ た.1999年11月 連 系 さ れ,全
を20基
運 転 開 始,発
生 電 力 は,北 海 道 電 力 の66kV苫
大 前線 へ
量 北 海 道 電 力 へ 売 電 さ れ る.
ま た,1999年
に 苫 前 町,オ
設 立 さ れ た(株)ド
リ ッ ク ス,カ
ナ モ ト,電 源 開 発 の 4者 の 共 同 出 資 に よ り
リー ム ア ッ プ 苫 前 は,苫
前 ウ ィ ン ビ ラ発 電 所 を建 設 し,風 力 に よ る
町 の 振 興 と,環 境 に や さ し い風 力 発 電 事 業 へ の 参 画 を め ざ し て い る.設 備 容 量 は1650 kW機14基,1500kW機
5基 の 計19基30.6MWで
あ り,全 容 量 が 北 海 道 電 力 の66
kV苫
前 線 へ 連 系 さ れ る.2000年10月
運 転 開 始 予 定 で,国 内 最 大 とな り,牧 場 経 営 と
の 両 立 に よ る 地 域 振 興 の 柱 と して 注 目 さ れ る. こ の ほ か 夕 陽 ヶ丘 地 区 に も小 規 模 な が ら ウ イ ン ドフ ァ ー ム が あ り,"風 来 望"と 称 さ れ る.こ
こ は 年 間 平 均 風 速 が7.5m/sあ
ー トキ ャ ン プ 場,ホ 電 電 力 は,風
り風 車 設 置 に適 し た場 所 で あ る.周
辺 にはオ
ワ イ トビ ー チ な どが あ り観 光 ス ポ ッ トと して 期 待 さ れ て い る.発
車 の ラ イ トア ッ プ や 電 気 室 な どの 電 力 に 使 い,余
剰 分 は北 海 道 電 力 に 売
却 さ れ る.
山形県 立川 町の 町お こし
(2)
日本 に は 3大 悪 風 と呼 ば れ る強 風 が あ る.岡 山 県 那 岐 山 麓 で 吹 く"広 戸 風",四 地 を 越 えて 吹 き 下 ろ す 愛 媛 県 伊 予 三 島 市 付 近 の"や ま じ風",そ 形 県 立 川(た ち か わ)町 の 強 風"清
川 ダ シ"で
あ る.
立 川 町 で は この 悪 風 を 町 お こ し の 呼 び 物 に し よ う と取 り組 み,1980年 車 に よ る農 業(温 室 ハ ウ ス 利 用 な ど)や,科 事 業 の 受 け 入 れ な ど を行 っ て きた.そ 風 車 村 構 想"が ま ず,ア
国山
し て こ こで 紹 介 す る 山
以 降,小
型風
学 技 術 庁 が 実 施 した 風 力 発 電 実 用 化 の 実 験
し て,ふ
る さ と創 生 事 業 を 契 機 と し て"立
川町
生 まれ た.
メ リ カ 製100kW機
3台 を導 入 して 風 車 村 の 周 辺 施 設 で利 用 す る ほ か,余
剰 分 は 東 北 電 力 に 売 却 す る こ と と した. ま た"ウ 業"が
イ ン ドム立 川"を
開 始 さ れ,風
設 け てPRを
行 う こ と と し た.1994年
よ り"風
とぴ あ事
を テ ー マ に した サ ミ ッ トや イ ベ ン トを 開 催 し て い る.
こ れ とは 別 に も,1996年
に デ ン マ ー ク製400kW機
2台 を(株)山 形 風 力 発 電 研 究 所
が 設 置 し稼 動 中 で あ る.
町 で は,経 済産 業省 の支 援 を受 けて,最 上 川周 辺 に ウイ ン ドフ ァーム を設置 す る計 画 で あ り,ま もな く町 の電 力 消費量 をカバ ーで きる程 度 の発電 が始 まる.ま た町 が全 国 に呼 びか けて風 力 発電推 進 市町村 全 国協議 会 も発足 した. (3)
海 外 か らの電 気事業 者 卜ー メン につ いて
トー メ ン は 電 力 会 社 以 外 で,わ
が 国 で 電 力 を事 業 化 し た 最 初 の 企 業 で あ る.1987年
に ア メ リ カ ・カ リフ ォル ニ ア 州 モ ハ ベ 砂 漠 で250kW機20台,計5MWの 力 発 電 事 業 に成 功 した の を皮 切 りに,風 ネ ル ギ ー を利 用 し た 発 電 事 業 を,ア ア13件
と合 計43箇
に上 回 っ て い る.特 う ち,ト
力,天
然 ガ ス,重
メ リ カ14件,ヨ
油,石
試 験 的風 炭 な どさ まざ まなエ
ー ロ ッパ16件,日
本 を含 む ア ジ
所 で 展 開 し て お り,案 件 数 ・規 模 の 両 面 に お い て他 商 社 を は る か に風 力 発 電 の 分 野 で は 世 界 の 風 力 発 電 設 備 総 容 量 約8000MWの
ー メ ン は 開 発 中 の 案 件 ま で 含 め る と約1000MWと
地 位 を 確 立 し て い る.
な り,世 界 一 の 事 業 者 の
国 内 で は(株)ト ー メ ン パ ワ ー ジ ャパ ンが 設 立 さ れ,苫 い て,第
2弾 の大 型 プ ロ ジ ェ ク ト と し て,青
前 町 で の ウ イ ン ドパ ー ク に 続
森 県 の 下 北 半 島 で も苫 前 町 の 3倍 規 模 と
な る風 力 発 電 事 業 も計 画 し て い る.場 所 は尻 屋 崎 南 西 部 に 位 置 す る 東 通 村 岩 屋 地 区 で,60MWク
ラ ス が 計 画 さ れ て お り,2000年
13.5
太陽光発電
13.5.1
開発の背景
エ ネ ル ギ ー の 消 費 はCO2の は,太
末 まで の 完 成 を め ざ し て い る.
排 出 と切 り離 し て 考 え る こ と は で き な い.そ
の意 味 で
陽 光 発 電 は 風 力 発 電 とな ら ぶ ク リー ンエ ネ ル ギ ー の 有 力 候 補 で あ り,そ
して 最
も実 用 化 が 進 ん で い る. わ が 国 で は 通 産 省 の ニ ュ ー サ ン シ ャ イ ン計 画 が1974年
に ス タ ー トし,太
ギ ー か ら熱 冷 暖 房 な ど を行 う こ と か ら研 究 が 開 始 され た が,1980年 降 は,太
陽エネル
のNEDO設
立以
陽 光 発 電 に シ フ トし た.
1994年"エ
ネ ル ギ ー 対 策 閣 僚 会 議"に
よ っ て 「新 エ ネ ル ギ ー 導 入 大 綱 」が 決 定 され,
太 陽 光 発 電 の 導 入 目標 は2000年
に400MW,2010年
1992年
共 施 設 等 用 太 陽 光 発 電 フ ィー ル ドテ ス ト"が 実 施 さ
れ,自
度 よ り1997年
度 まで"公
治 体 を 中 心 に186箇
所,合 計4.9MWが
に500MWと
設 置 さ れ た.ま
等 用 太 陽 光 発 電 フ ィ ー ル ドテ ス ト"が 実 施 中 で あ る.こ 開 発 も進 み,三
た1998年
の 間,
度 か ら"産 業
の よ うな ス テ ッ プ を経 て研 究
洋 電 機 や シ ャ ー プ な ど大 手 メ ー カ の 商 品 と し て 普 及 す る に 至 っ た.
太 陽 光 発 電 の特 徴 は,太 る こ とで あ る.し そ の た め,当
な っ た.そ
か し,エ
陽 光 さ え あ れ ば発 電 可 能 で き わ め て 簡 単 か つ ク リー ンで あ ネ ル ギ ー 密 度 が きわ め て 低 く,最 適 傾 斜 角 が 必 要 と な る.
初 は比 較 的 小 規 模 で 設 置 面 積 に 制 約 の 少 な い と こ ろか ら普 及 が 進 ん だ.
わが 国 では 当初 は住宅 用 として普 及 した のが特 徴 で あ る.太 陽光 発電 は,そ の不安 定 さか ら実 用性 が問題 点 で あった が,商 用 系統 との連 系 を行 い,不 足 分 を補 うこ とで, 家庭 用 として の普及 が進 んだ. そ の 後,さ れ る,ガ
ま ざ ま な 応 用 が 見 出 され た.そ
の 一 つ は ラ イ トス ル ー モ ジ ュ ー ル と呼 ば
ラ ス 窓 の 一 部 に 太 陽 電 池 を貼 り付 け,カ ー テ ン の 代 わ り と した も の で あ る.
ほ か に も,下 水 施 設 の 悪 臭 防 止 覆 蓋,浄
水 場 の 藻 類 発 生 防 止 用 の 遮 光 板,駐
車場 の屋
根 な ど,大 規 模 な 遮 光 板 を必 要 と し て い る と ころ に適 用 が 試 み られ て い る.ま
た,電
源 設 備 と し て も,オ フ ィ ス ビ ル の バ ッ ク ア ッ プ電 源,他 の 分 散 電 源 シ ス テ ム との 協 調, 非 常 時 避 難 施 設 の 電 源 な ど,他 の 電 源 の 補 完 と し て も活 用 の 途 が 広 が っ て い る.
13.5.2
標準 システ ム
図13.3に
標 準 的 な太 陽 光 発 電 装 置 の 構 成 を 示 す.太
生 した 直 流 電 圧 は,パ
陽 光 に よ りモ ジ ュ ー ル か ら発
ワ ー コ ン デ ィ シ ョ ナ を通 して 交 流 に変 換 さ れ,負
る.余 剰 分 は蓄 電 池 に蓄 え られ,不
図 13.3
荷 に 供 給 され
足 分 は商 用 系 統 か ら補 わ れ る.
太陽光発電 の標準構成
基 本技 術
13.5.3
(1)太
陽光 セル
太 陽 光 セ ル は,p 形 半 導 体 と n形 半 導 体 の境 界 面 に 太 陽 光 が あ た る と起 電 力 が 発 生 す る と い う原 理 に 基 づ い て い る.通 は 単 結 晶 系 で12∼15%,多
常 は結 晶 系 シ リ コ ン半 導 体 が 使 用 さ れ,変
結 晶 系 で10∼14%で
あ る.ま た,基 材 の 上 に シ リ コ ン を薄
膜 状 に 成 長 さ せ て つ く る ア モ ル フ ァ ス 太 陽 電 池 は,非 ∼8%と
換効率
結 晶 構 造 で あ り,変 換 効 率 は6
少 な い もの の,量 産 性 が あ り低 価 格 化 が 期 待 さ れ て い る .今 後 は,結 晶 シ リコ
ン セ ル の 製 造 コ ス ト低 減,新
型 の 薄 型 多 結 晶 シ リ コ ン太 陽 電 池 の 開 発 な どが 必 要 で あ
る. (2)
太陽 電 池モ ジ ュール
上 記 の 構 造 を有 す る 太 陽電 池 の 起 電 力 は 単 体 で は わ ず か で あ り,こ れ を パ ワ ー コ ン デ ィ シ ョ ナ へ 供 給 す る た め に はDC200∼300Vが 圧 を高 め て い る.こ
の セ ル の セ ッ トが モ ジ ュー ル と呼 ば れ る.さ
並 列 接 続 した パ ネ ル は,太 (3)
必 要 と な る た め,セ ル を 直 列 し て電 ら に モ ジ ュ ー ル を直
陽 電 池 ア レイ と呼 ば れ る.
建材 一体 化 技術
施 工 に おい て は架 台 の上 に アレイ を配 列 す る架 台設 置 形 のほ か,建 築物 用 としては 屋根 ・壁 建材 として一体 型 に なって い る建 材一体 形 もあ り,施 工 の省 力化 が図 られ て
い る.な
お,架
台 設 置 形 の 場 合 は,建 築 基 準 法 の 工 作 物 申 請 手 続 きの 範 囲 外 で あ る 4
m 以 下 の 高 さ に 設 計 さ れ る. (4) パ ワ ー コ ン デ ィ シ ョナ パ ワ ー コ ンデ ィ シ ョ ナ は イ ンバ ー タ と系 統 連 系 保 護 装 置 か ら構 成 さ れ る.太 陽 電 池 か ら得 ら れ る直 流 を交 流 に変 換 す る イ ン バ ー タ に は,商 能,最
大 電 力 点 追 従 機 能 が 含 まれ て い る.な
さ れ る場 合,蓄
電 池 も必 要 に な る.イ
お,太
用 連 系 交 流 系 統 との 同 期 機
陽光 発電 が非 常用電 源 な どに使 用
ンバ ー タ の 出 力 精 度 向 上 に よ る蓄 電 池 の 長 寿 命
化 も 重 要 で あ る.
13.5.4導
入 事 例
(1) 日 本 工 業 大 学 で の 導 入 日 本 工 業 大 学(埼 玉 県 南 埼 玉 郡 宮 代 町)で はNEDOの"産 テ ス ト事 業"に 基 づ き,国
内 最 大 とな る300kWの
3月 よ り発 電 を 開 始 し た.こ 住 宅300件
業 等用 太 陽光 フ ィール ド
太 陽 光 発 電 設 備 を設 置 し,2000年
の 容 量 は標 準 的 な3kW住
分 に 相 当 し,大 学 の 総 需 要 の 約10%を
宅用 発 電 システ ム を設置 した
カ バ ー で き る.ま た,切 妻 型 モ ジ ュ
ー ルの 採用 によ り ,架 台 の 設 置 角 度 が 抑 え ら れ,ま
た 防 水 機 能 も有 し,景 観 や 風 の 影
響 が 考 慮 さ れ て い る の が 特 徴 で あ る.壁 面 に は 採 光 型 モ ジ ュ ー ル も採 用 さ れ て い る. (2) 移 動 通 信 分 野 で の 利 用 PHSに
代 表 さ れ る 移 動 通 信 の 普 及 は,無 電 源 地 帯 へ の 基 地 局 設 置 が 必 要 で あ る.そ
こ で,こ
の 電 源 と し て 自 立 型 の 太 陽 光 発 電 シ ス テ ム が 最 近 登 場 し て い る.NTT
DoCoMo北
海 道 の例 で は,太 陽 光 発 電7.7kWと
ー タ ブ ル 燃 料 電 池1kWを
風 力 発 電1kW,蓄
電 池1500Ah,ポ
組 み 合 わ せ た ハ イ ブ リ ッ ド型 の 自 立 発 電 シ ス テ ム が 生 花 簡
易 無 線 基 地 局 で 使 用 さ れ て い る.太
陽 電 池 モ ジ ュ ー ル は 鉄 塔 の 周 囲 に 設 置 さ れ,設
置
面 積 の 低 下 が 図 られ て い る.
13.6コ
13.6.1開
ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン シ ス テ ム
発 の背景
コ ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン(cogeneration)と こ と で あ る.一 般 的 に は,ガ もに,そ
は,電
気,熱,ガ
ス な ど を 同 時 に発 生 さ せ る
ス タ ー ビ ン や デ ィー ゼ ル エ ン ジ ン な どで 発 電 を 行 う と と
の 廃 熱 を 利 用 し て 給 湯,空
効 率 利 用 シ ス テ ム を さ し て い る.電
調 な ど の 熱 需 要 を ま か な う よ うな,エ 源 需 要 地 に 発 電 設 備 を 設 置 し た 場 合,そ
ネル ギー の の効 率 は
図13.4
30%程
度 で あ る が,廃
コ ジ ェネ レー シ ョ ン の標 準 シ ス テ ム
熱 回 収 を 行 う こ と に よ り総 合 エ ネ ル ギ ー 利 用 効 率 を60∼80%
まで に 高 め る こ と が で き る.こ の イ メ ー ジ 図 を 図13.4に 油 が あ る が,都
示 す.燃 料 と し て は重 油 や 軽
市 ガ ス を 燃 料 と した コ ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン は,二
酸化 炭 素 や大気 汚染物
質 の 排 出 量 が 特 に 少 な く,環 境 問 題 の 観 点 か ら大 き な 注 目 を集 め,大
規模 施設 を中心
に 普 及 が 進 ん で い る. 近 年,市
民 レ ベ ル で の 環 境 意 識 の 高 ま り を背 景 と し て,マ
イ ク ロ ガ ス タ ー ビ ンや 家
庭 用 燃 料 電 池 な ど,小 型 コ ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン機 器 の 高 性 能 化 へ 向 け て の 技 術 開 発 競 争 が 世 界 的 に繰 り広 げ られ て お り,近 い 将 来 こ れ ら を 中 心 と し た 小 型 分 散 電 源 の 時 代 が 訪 れ る 可 能 性 が あ る.電
力 会 社 に と っ て は,ピ
ー ク 負 荷 軽 減 策,新
設 備 設 置 の投 資 抑 制,消
費 者 に と っ て は電 力 市 場 の オ ー プ ン化,発
規 電 源 設 備 ・送 電 電 の 低 コ ス ト化,
そ し て 両 者 に とっ て は環 境 改 善 な ど 多 くの メ リ ッ トが 考 え ら れ る.こ 国 で は,電 力 不 足 の 解 消 や,未
の ほか発 展途 上
開 発 国 ・過 疎 地 域 の 電 化 に も有 効 で あ る.
わ が 国 で は 工 場 を 中 心 に1970年 技 術 ガ イ ドラ イ ン"が 制 定 さ れ,ま
頃 よ り徐 々 に 導 入 さ れ た が,1986年 た 翌 年"特
定 供 給"が
に"系
認 め られ た こ と に よ り,産
業 用 ば か りで な く,民 生 用 の コ ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン 導 入 が 急 速 に進 ん だ.ま か ら通 産 省 の ニ ュ ー サ ン シ ャ イ ン計 画 に よ り,300kW級 ミ ッ ク ガ ス タ ー ビ ン プ ロ ジ ェ ク トが 開 始 さ れ て い る.1997年
統連系
た,1988年
コ ジェ ネ レー シ ョン用 セ ラ か ら 「新 エ ネ ル ギ ー 利 用
等 の 促 進 に関 す る 特 別 法 」 に よ り天 然 ガ ス利 用 の コ ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン 促 進 が 図 られ て い る こ と も あ り,2000年
時 点 で は 約5000MWに
達 し,一
段 と身近 に な っ て きて い
る. コ ジ ェ ネ レ ー シ ョ ンが 他 の 分 散 電 源 と して 異 な る の は,電 気 と熱 を 同 時 に供 給 す る こ と で あ る.し
た が っ て,電
給 す る必 要 が あ る.ま
た,こ
力 需 要 と熱 需 要 が 一 致 しな い 場 合,不
足 分 は ほ か か ら供
れ らの 需 要 は 変 動 す る た め,日 負 荷 曲 線,季
節別 負荷 曲
線 の 変 動 状 況 に応 じ た 設 備 容 量 の 決 定 が 必 要 で あ る.た し て 比 較 的 一 定 で あ る ホ テ ル 施 設 な ど が,コ え る.ま
た,熱
とえ ば電 力 と熱 需 要 が 1 日通
ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン 導 入 に適 し て い る と い
電 可 変 技 術 と呼 ば れ る,両 者 の 比 率 を需 要 に 応 じ て 変 え る技 術 も進 ん
で い る. 駆 動 機 関 も デ ィ ー ゼ ル エ ン ジ ン,ガ 及 して きて い る.ガ た め,騒
ー ビ ン を 回転 さ せ る
音 が 大 き く,ま た 高 速 回 転 で あ る た め電 力 変 換 器 を必 要 とす る な どの 欠 点 が
あ る.ま た 発 電 効 率 も20∼30%程 可 能 で,冷
却 水 も不 要,そ
度 で あ る.し か し,構 造 が 簡 単 で 小 型 化,軽 量 化 が
し て既 設 の ガ ス 網 を利 用 で き れ ば燃 料 供 給 も簡 単 に な る な
どの 多 くの特 長 も有 し て い る.特 さ れ,家
ス エ ン ジ ン に加 え,近 年 で は ガ ス タ ー ビ ン が 普
ス タ ー ビ ン で は ガ ス の爆 発 力 を利 用 して,タ
に,小 型 ク ラ ス の 機 種 は マ イ ク ロ ガ ス タ ー ビ ン と称
庭 用 ク ラ ス の 需 要 も カバ ー で き る こ とか ら注 目 され て い る.
マ イ ク ロ ガ ス タ ー ビ ン の名 称 は,こ
こ数 年 で 広 ま っ た が 正 確 な定 義 は な く,一 般 に
は 都 市 ガ ス や 灯 油 な ど を燃 料 と す る,発 電 出 力 が100∼300kW以 装 置 を さ して い る.時
と してMGTの
略 称 も使 用 さ れ るが,ま
下 の 小 型 自家 発 電 だ 一 般 的 で は な い.
従 来 の デ ィ ー ゼ ル エ ン ジ ン な ど の 装 置 と比 較 す る と, ①
小 型 ・軽 量 ・低 価 格(10∼20万
②
小 口 需 要 家 に と っ て は設 置 費 用 が 軽 減 され る ほ か,構
円/kW)で
小 容 量 の電 力 需 要 に 対 応 で き る. 造 が 簡 単 で 操 作 も容 易 な
た め メ ン テ ナ ン ス コ ス ト も抑 え ら れ る. ③
排 ガ ス 中 のNOx(窒
素 酸 化 物)含 有 量 が 少 な く,環 境 へ の 影 響 が 小 さ い こ と.
④
都 市 ガ ス,軽 油,灯
油,プ
ロパ ン な ど多 種 の 燃 料 が 対 応 可 能 で あ る こ と.
な どの 特 長 が あ る.単 体 の 発 電 効 率 は15∼30%程 よ り,総 合 効 率 は70%程
度 ま で 上 昇 す る.送 電 電 力 料 金 と比 べ て も,業 務 用 の 昼 間 料
金 対 比 発 電 コ ス トは50∼60%程 配 慮 か ら,自
度 で あ る が,排 熱 利 用 を行 う こ と に
度 との 試 算 も あ る.従 来 は 規 模 や コ ス ト,環 境 面 へ の
家 発 電 装 置 の 設 置 が む ず か しか っ た ス ー パ ー や コ ン ビ ニ エ ンス ス トア,
病 院 な ど で の 使 用 が 期 待 さ れ て い る. 本 節 で は,コ
ジ ェ ネ シ ス テ ム の 中 で も特 に最 近 の動 向 が は げ し い マ イ ク ロ ガ ス タ ー
ビ ン に 焦 点 を絞 り,以 下 に紹 介 す る.現 在,メ
ー カ や 電 力 会 社 を 中 心 に,新
規 の事 業
と し て 研 究 開 発 が 進 ん で お り,分 散 型 電 源 の 中 で も これ か ら本 格 的 に 展 開 が 期 待 さ れ,そ
し て こ れ か らの 電 力 事 業 の ス タ イ ル を大 き く変 え る可 能 性 が で て きて い る こ と
が 理 解 で き よ う. マ イ ク ロ ガ ス タ ー ビ ン は 国 内 外 含 め て約10社
が 世 界 的 な 開 発 競 争 を し て お り,各
社 と も従 来 に 比 べ て 導 入 費 用 ・メ ンテ ナ ン ス 費 用 を 大 幅 に低 減 す る計 画 を発 表 し て い る.部 品 交 換 が ユ ニ ッ ト単 位 で 可 能 で あ る な ど の特 徴 に よ り低 価 格 化 が はか られ,現
時 点 で は20万 り30%程
円/kW程
度 で あ り,同 一 ク ラ ス の ガ ス エ ン ジ ン(30万 円/kW程
わ が 国 で も商 社 や 重 電 メ ー カ が販 売 を 開 始 す る一 方,総 を 模 索 し て い る電 力 ・ガ ス 各 社 を 中 心 と して,技 に つ い て は13.6.4項
13.6.2標 図13.5に
度)よ
度 割 安 とな る. 合 エ ネ ル ギ ー会 社 へ の 転 換
術 検 証 が 行 わ れ て い る.各 社 の 動 向
で 詳 述 す る.
準 システム マ イ ク ロ ガ ス タ ー ビ ン か ら構 成 さ れ る標 準 的 な 電 源 シ ス テ ム を示 す.マ
イ ク ロ ガ ス タ ー ビ ン の 本 体 構 造 は,ガ
ス タ ー ビ ン と発 電 機 を一 体 化 した 1軸 型 に な っ
て お り,発 電 機 の 片 端 に圧 縮 機 と ガ ス タ ー ビ ン の イ ンペ ラ を備 え,排 ガ ス に よ っ て 吸 引 空 気 を 加 熱 す る再 生 器 付 シ ス テ ム に よ り発 電 効 率 の 向 上 が 図 ら れ て い る.す ち,タ
なわ
ー ボ チ ャ ー ジ ャの 技 術 が 応 用 さ れ て い る.
図13.5
発 電 機 は,最
高10万rpm程
マ イ ク ロ ガ ス タ ー ピ ン の標 準 シス テ ム
度 の 高 速 回 転 が 行 え,空 気 軸 受 け の 採 用 に よ り,メ ン
テ ナ ン ス な し で 最 長 数 万 時 間 程 度 の 長 時 間 運 転 が 可 能 で あ る.燃 料 は,天 然 ガ ス,プ ロ パ ンガ ス,灯
油,重
ガ ス タ ー ビ ン は,同
油 な どマ ル チ フ ユ ー エ ル 対 応 に な っ て い る場 合 が 多 い . じ設 備 容 量 発 電 能 力 の エ ン ジ ン と比 較 す る と,小 型 軽 量 で,原
動 機 の 冷 却 水 設 備 も不 要 で あ るた め,シ
ス テ ム の コ ンパ ク ト化 が 可 能 で あ る.ま
た,
構 造 が シ ンプ ル で 部 品 点 数 も少 な い た め,メ ン テ ナ ン スが 容 易 に な る.製 品 と して は, た と え ば 運 転 時 間8000時 フ リ ー 化 が 図 られ,扱 用 した 場 合,排
間 ま で 冷 却 水 交 換 や オ イ ル 補 充 不 要 とい っ た メ ン テ ナ ン ス
い や す く な っ て い る.さ
熱 回 収 は,温 水,蒸
ら に コ ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン シ ス テ ム に使
気 ど ち らで も選 択 可 能 と い っ た 特 長 が あ る.
13.6.3基 (1)マ
本 技 術 イ ク ロガス ター ビ ン本体
自動 車 用 エ ン ジ ン ・軍 需 用 エ ン ジ ン(ミ サ イ ル ・戦 車 ・航 空 機)を ベ ー ス に した もの が 多 い.ア メ リカ で は10社
ほ どあ り,大 部 分 が エ ン ジ ン メ ー カ と電 気 メ ー カ が 共 同 開
発 し て い る. タ ー ビ ン は,空 気 軸 受 け を 用 い て50000∼100000rpmも そ し て 熱 効 率 向 上 の た め,ガ
の 回 転 速 度 で 運 転 さ れ る.
ス タ ー ビ ン の 排 気 で 吸 い込 み 空 気 を 予 熱 す る,永
久磁 石
式 同 期 発 電 機 か ら の 電 力 は周 波 数 が きわ め て 高 く,イ ン バ ー タ を通 して 商 用 周 波 数 に 変 換 され る. (2)コ
ン バ イ ン ドサ イ ク ル 技 術
以 下,マ
イ ク ロ ガ ス タ ー ビ ン に 限 らず,一
さ れ て い る技 術 を 3点 紹 介 す る.ま
般 の コ ジ ェ ネ レー シ ョ ン シ ス テ ム で 採 用
ず コ ンバ イ ン ドサ イ ク ル 技 術 は,従 来 火 力 発 電 所
で 使 用 さ れ て い た コ ンバ イ ン ドサ イ クル と同 様 に,蒸 気 タ ー ビ ン と ガ ス タ ー ビ ン を 並 列 に す る こ とに よ り,発 電 効 率 を高 め る 技 術 で あ る.電 力 需 要 が 熱 需 要 に 対 し て 少 な い 場 合 に 利 用 で き る. (3)リ
パ ワ リング 技術
リパ ワ リ ン グ 技 術 は,新 設 の ガ ス タ ー ビ ン の 排 気 を既 設 の ボ イ ラ ・タ ー ビ ン シ ス テ ム に 導 き,総
合 効 率 の 向 上 を 図 る.す
に 有 効 で あ る.コ (4)氷
で に発 電 設 備 が 設 置 さ れ て い る工 場 の設 備 増 強
ンバ イ ン ドサ イ ク ル 技 術 の 変 形 版 で あ る.
蓄 積技 術 との組 み 合わ せ
夜 間 電 力 を 活 用 し て氷 を つ く り,昼 に 冷 房 お よ び ガ ス タ ー ビ ン本 体 の 吸 気 冷 却 用 に 活 用 す る 氷 蓄 積 技 術 は,負 荷 平 準 化 に貢 献 す る コ ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン シス テ ム で あ る. (5)今
後の課 題
マ イ ク ロ ガ ス タ ー ビ ン は ま だ 登 場 よ り 日 も浅 く,基 本 的 な 課 題 が い くつ か残 され て い る. ①
マ イ ク ロ ガ ス タ ー ビ ン は 以 上 述 べ た よ う に 技 術 検 証 の 段 階 で あ り,長 期 に わ た る使 用 実 績 が な い こ とか ら,信 頼 性 を 確 立 す る た め に は時 間 を 要 す る と 見 ら れ る.
②10kW以
上 の機 種 は 自家 用 電 気 工 作 物 とみ な さ れ る こ とか ら,電 気 主 任 技 術 者
の 配 置 が 必 要 と な り,追 加 コ ス トが 発 生 す る. ③
マ イ ク ロ ガ ス タ ー ビ ン の 一 番 の メ リ ッ トは 電 力 コ ス トの 抑 制 で あ る が,規 和 に よ り商 用 電 力 料 金 が 下 が る とそ の メ リ ッ トが 薄 ら ぐ可 能 性 が あ る.
制緩
な どが あ げ られ る.
13.6.4開
発 ・導 入 状 況
マ イ ク ロ ガ ス タ ー ビ ンの 普 及 は,国 る.現 在 判 明 す る範 囲 で,マ
内 外 の メ ー カ や 商 社 が 模 索 を始 め た と こ ろ で あ
イ ク ロガ ス タ ー ビ ン を 中 心 と した コ ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン シ
ス テ ム の 販 売 網 の 形 成 と,各 社 の 開 発 ・導 入 状 況 な ど に つ い て ま と め た . (1)販
売網 の形 成
キ ャ プ ス トン社(ア メ リ カ ・カ リ フ ォ ル ニ ア 州)は,海 外 のマ イク ロガス ター ビンメ ーカ ,そ し て 従 業 員200名 弱 の ベ ンチ ャ ー 企 業 と し て 最 も知 られ て い る.タ ワー 型 パ ソ コ ン に 似 た デ ザ イ ン の28kW機
が 有 名 で あ る.国
内 で も複 数 の 会 社 か ら代 理 販 売
や コ ジ ェ ネ パ ッ ケ ー ジ 販 売 の 中 心 と し て 注 目 され て い る.ま れ る カ ナ モ トは 他 社 と と も に(株)ア ク テ ィ プ パ ワ ー を1999年 行 う予 定 で あ る.ま
た,産
業 用 機 械 や 廃 棄 物,水
ず,建
機 レ ンタルで知 ら
に 設 立 し,販 売 展 開 を
処 理 プ ラ ン ト等 の 環 境 設 備 等 を扱 う
タ ク マ が 国 内 販 売 を手 が け,明 電 舎 と住 友 商 事 も後 述 の よ う に共 同 で 単 体 お よ び コ ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン シ ス テ ム の 販 売 展 開 を 行 っ て い る. ボ ー マ ン ・パ ワ ー ・シス テ ム ズ 社(イ ギ リス)は ク ボ タ ・三 井 物 産 ・NTTフ テ ィ ー ズ と と と も に,総 合 発 電 シ ス テ ム と し て 国 内 販 売 を め ざ し,2001年 機 と80kW機
を販 売 開 始 す る.NTTフ
ァシ リ に50kW
ァ シ リテ ィー ズ は遠 隔 運 転 管 理 な どで 技 術 を
生 か す. エ リオ ッ ト社(ア メ リカ ・ペ ン シ ル バ ニ ア 州)は も と も と大 型 コ ン プ レ ッ サ,蒸 ー ビ ン な ど を手 が け て い るが ,マ イ ク ロ ガ ス タ ー ビ ンで も知 られ て い る.1999年
気タ に荏
原 製 作 所 の 子 会 社 とな り,国 内 販 売 を め ざ す. 同 じ くハ ネ ウ ェ ル パ ワ ー シ ス テ ム ズ 社(ア メ リ カ ・ニ ュ ー メ キ シ コ 州,旧 ド ・シ グ ナ ル 社)は 東 京 貿 易 が 日本 総 代 理 店 と な っ て い る.75kW機"パ は,日
アライ
ラ ロ ン75"
立 製 作 所 と石 川 島 播 磨 重 工 業 に よ り,ト ー タ ル コ ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン シ ス テ ム と
して の 開 発 販 売 が 行 わ れ る. こ の ほ か,三 (2)東
菱 重 工 業 と川 崎 重 工 業 も 自 社 製 品 の 開 発 な ど で 参 入 の 予 定 で あ る.
北 電 力 におけ る実証 試験
新 仙 台 火 力 発 電 所(仙 台 市 宮 城 野 区港)に お い て,ハ ネ ウ ェ ル 製75kW機 ッ ト製45kW機 性,経
済 性,コ
(3)東
を 設 置 し,2000年
と,エ リオ
7月 よ り実 証 試 験 を 開 始 して い る.2 年 間 で 信 頼
ジ ェネ レー シ ョン効 果 な どが 調 査 さ れ る.
京 電力 にお ける 実証 試験
キ ャ プ ス トン 社28kW(都
市 ガ ス ・灯 油)お よ び ハ ネ ウ ェ ル 社75kW(都
市 ガ ス)の
マ イ ク ロ ガ ス タ ー ビ ン機 を購 入 し,技 術 開 発 セ ン タ ー(横 浜 市 鶴 見 区 江 ヶ崎 町)に て 実 証 試 験 を開 始 して い る,研 究 棟 の 実 際 の 電 力 系 統 に 連 系 し て 発 電 を続 け な が ら,商 業 用 店 舗 や 小 規 模 オ フ ィ ス ビ ル に設 置 した 場 合 を想 定 し て 運 転 性 能 の 確 認 や 信 頼 性 評 価 な ど を行 っ て い る.基 本 評 価 は す で に終 え,単 独 運 転 機 能 評 価(ス タ ン ドア ロ ー ン型), 燃 料 多 様 化 対 応 評 価(灯 油 焚),他
機 種 特 性 評 価(ハ ネ ウ ェ ル 社75kW機),長
評 価(長 時 間 耐 久 性,起 動 停 止 サ イ ク ル 耐 久 性),ス ン社65kW)な (4)北
期 耐久性
ケ ー ル ア ッ プ対 応 評 価(キ ャ プ ス ト
ど を実 施 す る. 陸 電力 にお ける実 証試 験
キ ャ プ ス トン 製28kW機
1台 を 購 入 し,同 社 技 術 研 究 所 に お い て 所 内 系 統 に 連 系
し た 運 転 実 証 試 験 を 通 し,基 本 性 能 や 環 境 性 能 の 評 価,系
統 影 響 評 価 な どを 行 っ て い
る.燃 料 は プ ロ パ ン ガ ス で あ る. 基 本 性 能,環
境 性 能(排 ガ ス,騒
音,振
動),系
統 影 響 評 価(高 調 波,電
済 性 評 価(イ ニ シ ャ ル コ ス ト,ラ ン ニ ング コ ス ト),コ て の 総 合 効 率,事 (5)中 2000年
業 化 な どが 検 討 され る.
国 電力 にお ける実 証試 験 4月 よ り,キ ャ プ ス トン 製28kW機
を柳 井 発 電 所 に 設 置 し,基 本 性 能 を 中
心 と し た 技 術 評 価 を行 うた め の 運 転 実 証 試 験 を 開 始 した.2001年 基 本 性 能(出 力,効
率 な ど),運
(排気 ガ ス 特 性,騒
音,振 動 な ど),コ
ど),経
圧 変 動),経
ジ ェ ネ レー シ ョ ン シ ス テ ム と し
用 性(起 動 停 止 操 作 性,運
1月 まで の 予 定 で,
転 監 視 機 能 な ど),環
境 特性
ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン特 性(熱 出 力,排 熱 回 収 効 率 な
済 性 な どが 調 査 さ れ る.燃 料 は 天 然 ガ ス で あ る.
(6)四
国電 力 にお ける実 証試験
中 国 電 力 と同 じ く,2000年
4月 よ り,キ
ャ プ ス トン 製28kW機
を(株)四 国 総 合 研
究 所(高 松 市 屋 島 西 町)に 設 置 し,基 本 性 能 を 中 心 と した 技 術 評 価 を 行 うた め の 運 転 実 証 試 験 に 着 手 し た.燃 (7)北
料 は 灯 油 で あ る.
海 道 ガス にお ける 実証試 験
や は りキ ャ プ ス トン 製28kW機
を購 入 し て,技 術 開 発 研 究 所 内 に 設 置 し,実 証 試 験
を 開 始 す る.燃 料 は天 然 ガ ス と し,基 本 性 能 や 耐 久 性 の 確 認 を 行 う と と も に,実 導 入 へ 向 け て エ ン ジ ニ ア リ ン グ体 制 の 早 期 構 築 を 図 る.ま 池 に つ い て も メ ー カ の 開 発 動 向 を調 査 しつ つ,早
た,他
際の
メー カお よび燃 料電
期 に 導 入 ・実 証 試 験 を行 っ て,1∼2
年 後 に は 一 部 フ ィ ー ル ド試 験 も実 施 す る 計 画 で あ る. ま た2000年
よ り,厚 別 区 に大 和 ハ ウ ス 工 業 が 建 設 中 の マ ン シ ョ ン に,わ が 国 の マ ン
シ ョ ン と し て 初 の コ ジ ェ ネ レー シ ョ ン導 入 も行 う.223戸 よ り,40%程
度 の 電 力 需 要 を カバ ー す る 予 定 で あ る.
に対 し て90kW機
の導 入 に
北 海 道 は冬 場 の 暖 房 期 間 が 長 く,ま た 夏 場 の 店 舗 や オ フ ィ ス の 冷 房 も ご く一 般 的 に な っ て き て お り,1 年 を通 し て 発 電 排 熱 が 有 効 に利 用 で き る こ とか ら,コ
ジ ェネ レー
シ ョ ン導 入 に よ る 省 エ ネ ル ギ ー 効 果 が 非 常 に大 き く得 られ る地 域 で あ る と い え る. 北 海 道 ガ ス は,1996年 図 る と と も に,ガ
に 札 幌 市 内 の 天 然 ガ ス 化 に 着 手 し,石 油 系 ガ ス か らの 脱 却 を
ス コ ジ ェ ネ レー シ ョ ンの 普 及 促 進 に努 め て い る.最 近 で は,マ
イカ
ル 小 樽 地 区(小 樽 築 港 駅 付 近 の 貨 物 線 撤 収 に伴 う再 開 発 事 業)に お け る大 規 模 コ ジ ェネ レ ー シ ョ ン を核 と した エ ネ ル ギ ー 供 給 事 業 を 開 始 し た.ま
た2003年
に は札 幌 駅 南 口
再 開 発 地 区 に お い て も コ ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン利 用 の 地 域 冷 暖 房 を 新 規 に 開 始 す る た め, 札 幌 市 と共 同 で事 業 を推 進 して い る.こ の よ う な経 緯 を生 か し,家 庭 用 分 野 に も省 エ ネ ル ギ ー 型 シ ス テ ム を提 案 す べ く新 た な 事 業 展 開 を め ざ して い る. (8)東
京 ガス にお ける 実証試 験
出 力100kW以
下 の マ イ ク ロ ガ ス タ ー ビ ン を 用 い た 小 規 模 な コ ジ ェネ レー シ ョ ン設
備 の 性 能 評 価 を近 々 開 始 す る 予 定 で あ る.ホ テ ル や ス ー パ ー マ ー ケ ッ トや 病 院,集 住 宅 向 け に適 した 自 家 発 電 ・コ ジ ェ ネ レ ー シ ョン 装 置 と して,性 す る計 画 を 進 め て い る.従 来 品 に 比 べ て,発
合
能 や コ ス ト面 を 調 査
電 コ ス トな どが 大 幅 に 下 げ られ る こ と を
実 証 す る の が 主 な 狙 い で あ る. 現 在,ハ で,自
ネ ウ ェ ル 社 が 開 発 し た75kW機
とキ ャ プ ス トン 社 の28kW機
を購 入 ず み
社 研 究 所 の テ ク ノ ス テ ー シ ョン(東 京 都 荒 川 区 南 千 住)で 評 価 試 験 を行 う.こ の
ほ か,ボ
ー マ ン社 の45kW機
と, NRECが
予 定 で あ る.NRECの70kW機
開 発 中 の70kW機
に つ い て も同 様 に 扱 う
の み歯 車 減 速 の 2軸 式 で,ほ か は イ ンバ ー タ あ りの 1
軸 式 で あ る. (9)ガ
ス 会社 に よる オ リジナル 機の 開発販 売
東 京 ガ ス ・東 邦 ガ ス.大 で,国
阪 ガ ス 3社 は(株)ト ヨ タ タ ー ビ ン ア ン ド シ ス テ ム と共 同
産 最 小 容 量 の 都 市 ガ ス 仕 様290kWマ
レ ー シ ョ ン シ ス テ ム の 共 同 開 発 を行 っ た.こ 重 量 比 で40%減
と な る.1999年
イ ク ロガス ター ビンを使用 した コジ ェネ れ は従 来 の300kWエ
ン ジ ン と比 較 して
8月 か ら,東 邦 ガ ス 総 合 技 術 研 究 所(愛 知 県 東 海 市 新
宝 町)に 試 作 機 を設 置 し,耐 久 性 確 認 を主 体 と し た運 転 試 験 を行 い,基 本 性 能 の 確 認, 改 良 お よ び 評 価 耐 久 運 転 試 験 等 を実 施 し,2000年
6月 に 商 品 化 し た.
タ ー ビ ン本 体 は,単 純 開 放 サ イ クル の 2軸 式 ガ ス タ ー ビ ン で,発 電 効 率 は20%,総 合 効 率 は70%,タ
ー ビ ン内 へ の 蒸 気 吹 き込 み に よ り,排 出NOx濃
換 算)を 目 標 と し て い る.さ
ら に,パ
ッ ケ ー ジ 内 部 に,ガ
度35ppm(O216%
ス タ ー ビ ン,吸 気 フ ィ ル タ,
発 電 機 盤 等 の 必 要 な機 器 を 一 体 に収 め た オ ー ル イ ン ワ ン構 造 と し て,設 設 置 費 用 の 削 減 が 可 能 で あ る.
置 スペ ースや
商 品 性 を さ ら に 向 上 させ る た め に,商
品 化 後 もパ ッ ケ ー ジ の 一 層 の 小 型 化 や 制 御 ソ
フ トの 改 良 な ど に取 り組 む 予 定 で あ る.同
シ ス テ ム に よ り,こ れ まで の 蒸 気 を熱 源 と
す る産 業 用 中 心 の ガ ス ター ビ ン の 販 路 を,民 生 用 の ホ テ ル や 病 院 等 に ま で 拡 大 す る こ とが 期 待 で き る.ま
た,同
じ マ イ ク ロ ガ ス タ ー ビ ン を用 い た ター ボ 冷 凍 機 に よ る冷 熱
シス テ ム の 開 発 も 予 定 し て い る. (10)マ
イエ ナ ジー社 の設 立
東 京 電 力 と 日石 三 菱 な ど に よ り(株)マ イ エ ナ ジ ー 社 が2000年 顧 客 に 代 わ っ て マ イ ク ロ ガ ス タ ー ビ ン の設 置 と保 守 を行 い,分 す る.東 京 ガ ス も共 同 出 資 す る こ とで,既
3月 に 設 立 さ れ た. 散 形 電 源 の普 及 を促 進
存 の ガ ス管 網 を 用 い て 燃 料 と な る ガ ス を 供
給 す る.ま た,将 来 的 に は燃 料 電 池 の 開 発 も視 野 に入 れ て い る.LNG供
給 や,電 気 ・
ガ ス 検 針 な ど,既 存 の 事 業 枠 を超 え た 展 開 とし て も注 目 さ れ る. (11)明
電 舎 ・住 友 商 事 に よ る キ ャ プ ス ト ン社 製 品 の 販 売
最 後 に,マ
イ ク ロ ガ ス タ ー ビ ン販 売 網 の成 立 と い う点 で,明
紹 介 す る.2 社 は,キ
電 舎 と住 友 商 事 の 例 を
ャ プ ス トン 社 が 開 発 した マ イ ク ロ ガ ス タ ー ビ ン発 電 装 置 の 日本
国 内 に お け る販 売 代 理 権 を共 同 で 取 得 し て い る.30kW級
お よ び60kW級
が あ り,単 独 運 転 タ イ プ と 系 統 連 系 タ イ プ の 2種 類 が あ る.今
の 2機 種
後 は 自家 用 発 電 設 備 市
場 お よ び 分 散 型 電 源 装 置 市 場 を タ ー ゲ ッ トに,積 極 的 に 販 売 を行 っ て い く こ と に な る.販 UPS機
売 品 目 は マ イ ク ロ ガ ス タ ー ビ ン の 単 体 製 品 と,コ ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン シ ス テ ム, 能 つ き マ イ ク ロ発 電 シ ス テ ム,ハ
イ ブ リ ッ ド発 電 シ ス テ ム な どの シ ス テ ム 製
品 の 2種 類 が あ る. 明 電 舎 は民 生 ・産 業 用 コ ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン シ ス テ ム を す で に 手 が け て お り,そ の 経 験 を 生 か し,マ
イ ク ロ タ ー ビ ン の 日本 市 場 向 け の 適 応 化 を 図 る.す
熱 回 収 装 置,系
統 連 系 装 置,防
ち わ ち,同 社 の 排
音 パ ッケ ー ジ を使 用 した コ ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン な ど を含
む 幅 広 い 各 種 ア プ リケ ー シ ョ ン の 開 発 お よ び シ ス テ ム 化,メ ン テ ナ ンス を行 う.一 方, 住 友 商 事 は,マ
イ ク ロ ガ ス タ ー ビ ン発 電 装 置 の 輸 入 業 務 を行 い,内 販 子 会 社 に よ る メ
ン テ ナ ンス 網 の 構 築 を 図 る.
13.7燃
13.7.1開
料 電 池
発 の背景
燃料 電 池 は,ガ スか ら水 素 を取 り出 し,水 素 と酸 素 の化学 反応 を利 用 して起 電 力 を 発 生 す る.化 学反応 の 結果 生 じるの は水 で あ るた め,大 変基 本的 な が ら も使 用 しや す
い エ ネ ル ギ ー 源 で あ る.こ
れ は発 電 で あ る が,化
学 反 応 を利 用 した 他 の 2次 電 池 と変
わ ら な い た め,燃 料 電 池(fuel cell)と 呼 ば れ て い る. 実 際 に は,水
素 を貯 蔵 す るの は 危 険 で あ る た め,各 種 ガ ス を,触 媒 を利 用 し た 改 質
器 に通 し て 水 素 を 取 り出 す.ガ 油 ・石 炭 ガ ス,バ
ス は都 市 ガ ス,LPガ
ス,天
然 ガ ス,メ
タ ノ ー ル,石
イ オ マ ス ガ ス な ど,触 媒 に よ り水 素 が 取 り出 せ さ え す れ ば さ ま ざ ま
な燃 料 源 が 考 え られ る. 原 理 は1839年
に イ ギ リス の グ ロ ー ブ 氏 が 考 案 し た とい わ れ て い る が,実 用 化 は100
年 以 上 も後 の こ とで あ り,1960年
代 に宇 宙船 の電 源 として使 用 され た のが 最初 で あ
る. そ の 後,1970年
代 に入 る と代 替 エ ネ ル ギ ー 源 の 有 力 候 補 と し て,さ
家 プ ロ ジ ェ ク ト と し て研 究 開 発 が 進 み,現
まざ まな国の国
在 で は 主 と して 電 気 自動 車 用 の 可 動 式 電 源
と,分 散 電 源 用 の 固 定 式 電 源 が 実 用 化 され て い る.前 者 はPEFC,後
者 はPAFCが
有
力 と な っ て い る. 燃 料 電 池の特 長 は ①SOxやNOxが
非 常 に 少 な い.
②
エ ン ジ ン に比 較 して 発 電 効 率 が 非 常 に高 い.
③
分 散 電 源 に 用 い れ ば送 電 ロ ス や コ ス トを な くせ る.
④
排 熱 を利 用 す れ ば 総 合 効 率80%程
⑤
小 型 化 に よ る効 率 の 悪 化 もな い.
⑥
大 量 の冷 却 水 を必 要 とせ ず 設 置 場 所 の 制 約 が 少 な い.
な ど が あ る.た
度 ま で 上 げ ら れ る.
だ し,発 電 効 率 や 改 質 器 を 含 め た 効 率 の 評 価 は 別 途 必 要 で あ る.
わ が 国 で は通 産 省 工 業 技 術 院 の ム ー ン ラ イ ト計 画(の ち に ニ ュ ー サ ン シ ャ イ ン 計 画 とな る)と し て1981年 て い る.PAFCが
にPAFCの
研 究 が 開 始 され た.MCFC,SOFCも
後 か ら加 わ っ
現 在 フ ィ ー ル ド試 験 の 段 階 に あ る.
定 置 形 分 散 電 源 と し て は,わ が 国 で は後 述 の よ う な ガ ス 会 社 が メ ー カ と共 同 で コ ジ ェ ネ レー シ ョ ン シ ス テ ム と して の 積 極 的 な 開 発 展 開 を行 っ て い る ほ か,石 料 は石 油 ・メ タ ノ ー ル な ど で あ る が,や
油 会 社 も燃
は りコ ジ ェ ネ レー シ ョ ン シ ス テ ム 用 と し て取
り組 ん で い る.電 力 会 社 も火 力 発 電 所 代 替 また は新 規 分 散 発 電 所 用 と して 研 究 を進 め て い る.た だ し,最 近 で は コ ンバ イ ン ドサ イ ク ル 式 の 火 力 発 電 所 が 登 場 し て 効 率50% 程 度 に 達 し て い る た め,火 力 代 替 の 意 義 は 薄 くな っ て い る.
13.7.2標 図13.6に
準 システム 燃 料 電 池 を 用 い た 標 準 的 な 発 電 シ ス テ ム を 示 す.ま ず,燃 料 ガ ス が 改 質 器
図13.6
燃 料 電 源 の標 準 シ ス テ ム
に入 る と,脱 硫 器で硫 黄分 が取 り除 か れ,高 温 の状態 で燃 料 に水蒸 気 を加 え る ことに よって水 素 を抽 出す る,水 素 は電極 間 で酸 素 と結 合 して,電 気 と熱 を発生 す る.電 気 は直 流電 力 で あ るた めイ ンバ ー タを通 して交 流 に変換 され る.熱 は熱 交換 器 を通 して 給 湯 や冷 暖房 に供 され る.
13.7.3基 (1)構
本 技 術 造
燃 料 電 池 の 単 体 は セ ル と呼 ば れ,1 次 電 池 と同 様 に電 極 間 に 電 解 質 が 挟 ま れ た 構 造 と な っ て い る.電 極 に は細 い 溝 が あ り,燃 料 源 とな る空 気 と水 素 が 注 入 さ れ る.水
素
は 電 子 が 遊 離 し て水 素 イ オ ン と な り,空 気 と反 応 す る と水 が 発 生 す る.そ
子
が 起 電 力 と な る.一 つ の セ ル の 起 電 力 は0.65Vで す る.こ
し て,電
あ る た め,セ ル を並 べ て 直 列 構 造 に
れ は セ ル ス タ ッ ク と呼 ば れ る.
セ ル 内 の 反 応 は電 気 抵 抗 の た め,熱 却 水 を 用 い るが,こ
をわ ず か に発 生 す る.こ れ を冷 却 す る た め,冷
れ を外 部 に 取 り出 し,熱 供 給 源 と して 利 用 す る こ とが で き る.こ
れ に よ り,総 合 効 率80%程
度 の コ ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン シ ス テ ム へ の 活 用 も可 能 と な っ
て い る. 火 力 発 電 と比 べ る と,燃 料 を燃 焼 さ せ て い な い た め,効 も数kW∼
数 百MWク
ス ビ ル,病
院 な ど で の 数 百kW級
動 力 用 電 源,数kWの
率 を 高 くで き る,ま
た 容量
ラ ス ま で 変 え る こ とが で き る.し た が っ て,集 合 住 宅,オ
フィ
コ ジ ェ ネ レー シ ョ ン,乗 用 車 や バ ス な ど交 通 機 関 の
家 庭 用 や 数 十 W の 電 子 機 器 用 電 源 な ど,幅 広 い 範 囲 で の 出 力
規 模 と 多 岐 に わ た る利 用 が 期 待 され る.分 散 型 電 源 と し て利 用 す れ ば,送 送 電 ロ ス を な くす こ とが で き る の で,大
変 メ リ ッ トが あ る.
電 コ ス トや
(2)原
理 によ る分類
現 在 電 解 質 に よ り数 種 類 の燃 料 電 池 が あ り,リ 塩 型 燃 料 電 池(MCFC),固 (PEFC),ア
運 転 温 度 が 約200℃
され て い る.PEFCは か ら,国 内 外10社 MCFCは
体 酸 化 型 燃 料 電 池(SOFC),固
ル カ リ型 燃 料 電 池(AFC)な
PEFCは
融炭 酸
体 高 分 子型 燃料 電 池
どが あ る.
と扱 い や す く,後 述 の よ う に分 散 電 源 と し て 最 も注 目
運 転 温 度 が 常 温 ∼100℃
で あ り,ま た 小 型 化 が 可 能 で あ る こ と
前 後 で 電 気 自 動 車 用 電 源 と し て 開 発 が 進 め られ て い る.SOFCや
高 効 率 と い う利 点 が あ るが,ま
を直 接 用 い る た め,民
13.7.4導
ン酸 型 燃 料 電 池(PAFC),溶
だ 研 究 段 階 に あ る.AFCは
原 料 と して水素
生 用 で は な く,宇 宙 船 の 電 源 と して 使 用 さ れ る.
入 事 例
(1)都
市 ガ ス会社 の 取 り組み
わ が 国 で は,石
油 シ ョ ッ ク を契 機 と し て,燃 料 電 池 の 研 究 開 発 が 通 産 省 の ム ー ン ラ
イ ト計 画 に 取 り上 げ られ た.そ 組 ん で い る.一 計 画 で は,1973年
方,オ
の た め 都 市 ガ ス 会 社 が 燃 料 電 池 の 開 発 に早 くか ら取 り
ン サ イ ト型 発 電 プ ラ ン トの 開 発 を め ざ した ア メ リカTARGET
に 都 市 ガ ス を原 料 とす る12.5kW機
の 開 発 に 際 し,東 京 ガ ス ・大 阪
ガ ス の 2社 が 参 加 し て い る.1984年
の ア メ リ カGRI計
ネ レ ー シ ョ ン 機 が 開 発 さ れ,1989年
に は ム ー ン ラ イ ト計 画 に基 づ き,わ が 国 で 始 め て
画 で は パ ッ ケ ー ジ形 の コ ジ ェ
の 業 務 用 燃 料 電 池 の運 転 研 究 が 大 阪 の ホ テ ル で 開 始 さ れ た.1990年
代 に 入 る と,東 京
ガ ス ・大 阪 ガ ス ・東 邦 ガ ス は富 士 電 機 と共 同 で 燃 料 電 池 の 商 品 化 開 発 に 成 功 し て い る.1996年
に は ア メ リ カONSI社/東
こ こ10年
芝 製200kW機
の 導 入 を 開 始 し た.こ の よ う に,
で 実 用 化 され,こ れ か らは 普 及 促 進 の 時 期 に 入 っ て き て い る.現 在 の 主 要 機
種 は50kW,100kW,200kW,500kW,1000kWが 電 機,東
芝,ア
原 料 はPAFCが
メ リ カONSI/東
あ り,メ ー カ は 富 士 電 機,三 菱
芝 が あ る.
現 在 主 流 で あ る.電 気 出 力 が50∼200kWク
ラス の小 型 の もの は
ビ ル な ど に設 置 さ れ 都 市 ガ ス の 配 管 を つ な ぐだ け で 運 転 で き る タ イ プ で あ る.す で に 国 内 で50箇
所 以 上 の 建 物 で 実 際 に 設 置 ・運 転 さ れ て い る.初
投 入 さ れ た 機 種 ま で 含 め る と,の べ10MWが
期 に試 験運 転 用 として
投 入 さ れ て い る.
現 在 は耐 久 性 や 信 頼 性 が 十 分 に 検 証 され た が,価
格 が ま だ 高 く,半 分 程 度 に 下 げ る
こ とが 求 め ら れ て い る.
(2)ガ
ス 会社 によるPEFCを
利 用 したUPSの
東京 ガ ス ・東 邦 ガ ス ・大 阪 ガス ・東 芝 は1999年10月
実証 試験 よ り共 同 で リン酸型 燃料電 池
の直 流高効 率利 用 技術 を活 用 した高効 率 ・高 品質 で経 済的 な無停 電 電源 システ ムの開
発 を進 め て い る.2000年
6月 よ り試 作 シ ス テ ム を 用 い た 実 証 試 験 を 東 邦 ガ ス 本 社(名
古 屋 市 熱 田 区)に て 行 っ て い る. 商 用 電 源 停 電 対 策 用 と し て は,す power
supply)が
れ る が,交
あ り,さ
で に 無 停 電 電 源 シ ス テ ム(UPS:uninterruptable
ま ざ ま な 業 種 で 使 用 さ れ て い る.UPSに
流 直 流 変 換 と直 流 交 流 変 換 を 伴 う た め,約10%の
は蓄 電 池 が 備 え ら
ロ スが あ っ た.
こ れ を 解 決 す る直 流 高 効 率 利 用 技 術 と は,電 池 本 体 で 発 電 した 直 流 電 力 を直 流 の ま ま利 用 す る 技 術 で あ る.こ
の 検 証 試 験 で はONSI/東
芝 製200kWのPAFCをUPS
の 直 流 電 源 と し て そ の ま ま利 用 す る こ と に よ り,電 力 の 変 換 損 失 を 5%に 半 減 で き る.図13.7に
シ ス テ ム の構 成 を 示 す.停 電 バ ッ ク ア ッ プ 用 と して 設 け る蓄 電 池 の 容 量
削 減 な ど に よ っ て,経
済 性,環
境 性 に す ぐれ た シ ス テ ム に す る こ とが で き る.さ
らに
重 要 負 荷 と一 般 負 荷 の 両 方 に電 力 供 給 す る こ とよ り,燃 料 電 池 は高 効 率 定 格 運 転 が で き る よ う に な っ て い る.
図13.7
13.8ま
13.8.1そ
と
PAFCを
利 用 したUPS
め
の ほかの開発動 向
バ イ オ マ ス 燃 焼 発 電 は,動 植 物 資 源 と それ に よ る廃 棄 物 の 総 称 で あ る バ イ オ マ ス を 用 い て,発
生 し た ガ ス に よ っ て 発 電 を す る方 法 で あ る.発
力 発 電 と同 じ で あ る が,都 る.そ
電 方 式 そ の もの は従 来 の 火
市 ゴ ミや 農 業 廃 棄 物 な ど さ ま ざ ま な 燃 料 源 が 使 用 可 能 と な
の 開 発 の ポ イ ン トはエ タ ノ ー ル 発 酵 な ど の 化 学 技 術 で あ る.海 外 で は小 規 模 な
が ら推 進 の 傾 向 に あ り,わ が 国 で も 日本 エ ネ ル ギ ー 学 会 バ イ オ マ ス 部 会 が 普 及 活 動 を 行 っ て い る が,実
用 化 に は時 間 を 要 す る と考 え られ る.な
お,国
内 で す で に行 わ れ て
い る廃 棄 物 発 電 は,燃 料 源 を直 接 燃 焼 さ せ て い る た め,バ イ オ マ ス の 概 念 とは 異 な る.
分 散 電 源 と は少 し 異 な る が,NAS電 あ る い はSMESな
池 や レ ド ッ ク ス フ ロ ー 電 池 な ど の 2次 電 池,
ど の 電 力 貯 蔵 装 置 も現 在 研 究 開 発 段 階 に あ り,一 部 は 実 用 化 さ れ
て い る.こ れ らが 本 章 で 紹 介 した 分 散 電 源 と組 み 合 わ せ る こ とで,よ
り信 頼 性 の 高 い
電 力 源 の 構 築 に 寄 与 す る こ と も期 待 され る. この ほ か,現 在 国 内 に約500MWあ
る 地 熱 発 電,約700MWあ
波 力 発 電 な ど,説
れ ら も これ か ら の 新 発 電 方 式 と し て 期 待 が もた
明 を省 略 し た が,こ
る廃 棄 物 発 電,ま た
れ て い る.
13.8.2分
散型 電源の 限界
多 くの分散 型 電源 は商 用 系統 に連 系す る.低 圧系統 にお いて は,需 給 変 動 に よ り周 辺 系統 の電圧 品 質 を悪化 させ る場 合 があ り注意 が必 要で あ る.ま た,接 続 容量 が増加 した場 合,周 波 数 に も影 響 が及 ぶ. た とえば,発 電 電 力 の変動 を伴 う風 力発電 は,そ の発生 電力 の大 部分 が 商用 系統 へ 流 れ込 む こ とか ら,系 統 全 体 に対 して設 置 で き る比 率 の限 界 は10%程
度であろうと
いわれ て いる.こ れ はペ ネ トレー シ ョンレシオ(貫 通 率)と 呼 ばれ,こ れ を超 え る と周 波 数や電 圧 に影響 を生 じる.わ が 国 では この よ うな問題 は まだ顕在 化 して い ないが, 北海 道 で は風 力発 電 が 増加 す る こ とに よ り信頼 性 低下 を懸 念 す る意 見 も出 始 め て い る.こ の よう に分 散型 電 源普 及 は,既 存 系統 との協調 が ポイ ン トとな って お り,分 散 型電 源導 入 を考慮 した電圧 ・周 波 数制御 方式 の 開発 も今 後 重要 視 され るで あ ろ う.
13.8.3今
後 の動 向
以 上 述 べ た よ う に,新 進 さ れ,エ
エ ネ ル ギ ー を利 用 し た 分 散 電 源 は これ か ら ます ま す普 及 が 促
ネ ル ギ ー 問題 の 解 決 へ 前 向 き に進 ん で い く こ とが 予 想 さ れ る.あ
率 の 改 善 や,太 え られ る.し
わせ て効
陽 電 池 に 見 ら れ る よ う な商 品 と し て の 付 加 価 値 の 開 発 販 売 も進 む と考
か し,関 連 法 規 緩 和 に よ り,分 散 電 源 の 参 入 が 促 進 さ れ る ば か りで は な
く,既 設 電 気 事 業 社 も コ ス トを 重 視 した 競 争 時 代 に 入 り,エ ネ ル ギ ー 事 業 形 態 は複 雑 化 ・多様 化 し て い くこ とで あ ろ う.
参考文献 1)資
源 エ ネ ル ギ ー 庁:解
2)進
士 誉 夫:系
説
電 力 系 統 連 系 技 術 要 件 ガ イ ド ラ イ ン'98,電
統 連 系 技 術 要 件 ガ イ ド ラ イ ン の 経 緯 と そ の 内 容,電
1998-5. 3)梅
内 功:コ
ー ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン シ ス テ ム の 概 要 と現 状,同
上.
力 新 報 社,1998.
気 設 備 学 会 誌,18,5,
4)J.P.Bennuer,L.Kazmerski:Photovoltics
Gaining
Greater
Visibility,.IEEE
Distribution
Systems,IEEE
Spectrum,36,9,1999-11. 5)R.Ramakumar,et Power
al.:Renewable
Engineering
Technologies
and
Review,19,11,1999-11.
6)中
上 英 俊:ESCO事
7)井
上 宇 市 ・水 野 宏 道 監 修,高
業 の 現 状 と将 来 動 向,オ 田 秋 一 編 集:ガ
ー ム,2000-1. ス コ ー ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン シ ス テ ム,日
本ガ
ス 協 会,2000. 8)吉
岡 伸 樹:太
陽 光 発 電 シ ス テ ム の 技 術 動 向 と設 計 事 例,電
気 設 備 学 会 誌,20,2,2000
-2 . 田 幸 雄:住
宅 用 太 陽 光 発 電 シ ス テ ム,同
10)山
9)篠
田 俊 郎,猪
俣 登:風
11)渡
邉 政 人:燃
料 電 池 発 電 シ ス テ ム の 技 術 動 向 と計 画 事 例,同
12)山
中 敬 史,倉
NTTフ
上.
力 発 電 シ ス テ ム の 技 術 動 向 と 設 計 事 例,同
本 政 義,種
崎 智:太
上.
上.
陽 光 発 電 技 術 を 用 い た 自 立 電 源 シ ス テ ム の 構 築,
ァ シ リテ ィ ー ズ ジ ャ ー ナ ル,37,220,2000-3.
13)松
宮煇:風
力 発 電 を巡 る 内 外 動 向,電
14)小
倉 悟:日
本 に お け る風 力 発 電 の 現 状 と技 術 開 発,同
15)柴
田 昌 明:大
16)大
名 直 樹:苫
17)牛
山 泉:風
18)矢
野 昌 雄:分
集(シ
気 学 会 誌,120,8/9,2000-8/9.
容 量 風 力 発 電 設 備 の 開 発,同 前 風 力 発 電 所 の 概 要,同
上.
上.
上.
力 発 電 の 発 電 特 性 と 系 統 連 系,同 散 電 源 シ ス テ ム 技 術 概 観,平
上.
成12年
電 気 学 会産 業 応 用 部 門大 会 講 演 論文
ン ポ ジ ウ ム),2000-8.
19)大
地 昭 生:マ
20)新
エ ネ ル ギ ー 調 査 専 門 委 員 会:新
イ ク ロ ガ ス タ ー ビ ン 開 発 の 現 状 と将 来,オ
ー ム,1999-4.
エ ネ ル ギ ー 利 用 ガ イ ド ブ ッ ク(そ の 1),電
設 技 術,
エ ネ ル ギ ー 利 用 ガ イ ド ブ ッ ク(そ の 2),電
設 技 術,
46,9,2000-9. 21)新
エ ネ ル ギ ー 調 査 専 門 委 員 会:新
46,10,2000-10. こ の ほ か 各 社 ・ 自治 体 な ど の 最 新 動 向 に つ い て は ホ ー ム ペ ー ジ を 補 足 資 料 と し て 用 い た.
第14章 分散電源の 系統 計画への影響 評価
14.1背
景:分 散電源の影響評価
電 力 産 業 の 規 制 緩 和,と
りわ け送 電 系 統 へ の 接 続 の 自 由化 に よ り,多
くの 分 散 電 源
が 電 力 市 場 に 参 入 し,既 存 の 電 力 系 統 の 構 成 設 備 を利 用 し な が ら,電 力 を 自 主 的 に 流 通 す る こ とが 可 能 に な った1).分 散 電 源 に共 通 す る特 徴 は,比 較 的 小 規 模 で あ る こ と, 地 域 的 に 分 散 し て い る こ と,そ
し て,既
存 電 源 と は独 立 に運 用 さ れ る 発 電 設 備 で あ る
こ とな どで あ る,分 散 電 源 の 大 半 は,独 ducers:以
下IPP)に
立 系 発 電 事 業 者(independent
よ っ て保 有 ・運 用 さ れ,従
power
pro
来 の電 力会 社 の中央給 電 制 御 に よっ
て で は な く,市 場 の 需 要 に よ っ て 出 力 を 決 定 す る.電
力 系 統 へ の 分 散 電 源 の 導 入 は,
分 散 電 源 そ の も の が 経 済 的 な 利 益 を生 む ば か りで な く,既 存 系 統 に と っ て も,発 電 コ ス トの 低 減,信
頼 度 の 向 上,環
境 汚 染 の 解 消 な ど,多
く の メ リ ッ トを も た ら す 可 能 性
が あ る. 規 制 緩 和 と それ に伴 う電 力 供 給 と送 電 線 開 放 の競 争 は,主
に価 格 削 減 を め ざ し て い
る.し
か し な が ら,規 制 緩 和 に よ りた とえ ば送 電 線 の 信 頼 性 が 損 な わ れ る か も し れ な
い.ほ
か に も,電 力 系 統 の 全 体 的 な効 率 に 影 響 を与 え る要 素 は さ ま ざ ま で あ る.系 統
運 用 者 ・需 要 家 ・規 制 当 局 は 電 力 供 給 の 自 由競 争 の 多 様 な影 響 を評 価 し な け れ ば な ら な い.こ
の 章 の 目標 は分 散 電 源 を既 存 の 電 力 系 統 に 導 入 す る 際 の 影 響 を非 経 済 的 指 標
を用 い て,多
面 的 に 評 価 す る こ とで あ る.
電 気 事 業 の 規 制 緩 和 に つ い て は,多
くの 研 究 が あ る.過 去 の 研 究 の 大 半 は,送 電 線
オ ー プ ン ア ク セ ス下 で の 公 平 な競 争 に 関 す る価 格 決 定 に 集 中 し て い る 2).近 年 の 調 査 で は送 電 線 容 量 3),電圧 維 持 4)などの 技 術 的 な研 究 もみ られ る.し か し,送 電 付 帯(an cillary)サ ー ビス の価 格 イ ン セ ン テ ィ ブ の 効 果 は,ま だ 一 般 的 に解 決 さ れ て い な い.公 衆 の利 益 を最 大 に す る た め に 規 制 緩 和 の影 響 を 総 合 的 に 観 察 ・評 価 す る必 要 が あ る. こ の 章 の 目 的 は,分 散 電 源 を既 存 系 統 に 導 入 す る こ と に よ る各 種 の 影 響 を解 析 ・評
価 す る こ と に あ る.分 境 へ の 影 響,電
散 電 源 の 特 性 を 多 角 的 に評 価 す る た め に,総
力 品 質,信
頼 度,お
合 発 電 コ ス ト,環
よ び 系 統 混 雑 度 な ど の 多 属 性 に よ る 比 較 検 討 を行
う.電 力 系 統 の 電 圧 や 潮 流 な ど基 本 的 な デ ー タ は 異 な る分 散 電 源 導 入 シ ナ リオ に お い て 最 適 潮 流 計 算(optimal
power
flow,以
下OPF)5)を
解 く こ とで 得 る こ とが で き る.
し か し,電 圧 や 環 境 へ の 影 響 な どの 特 性 は 異 な る 物 理 量 で 測 られ る の で,横 評 価 が む ず か し い.こ
こ で 紹 介 す る手 法 で は,異
な らびの
な る 特 性 を もつ 分 散 電 源 を フ ァ ジ ィ
評 価 指 標 を導 入 す る こ とで 総 合 評 価 す る.同 様 な 手 法 は分 散 電 源 が 既 存 の 電 力 系 統 に 卸 売 電 す る場 合 の み な らず,第
三 者 に い わ ゆ る託 送 契 約 に よ っ て 電 力 を 供 給 す る場 合
に も有 効 で あ る。 各 種 評 価 指 標 を 並 列 比 較 す る こ とに よ り,系 統 運 用 者 ま た は 需 要 家 に と っ て 最 適 な 分 散 電 源 の 導 入 計 画 を 決 定 で き る.提 案 す る多 属 性 評 価 手 法 は,意 決 定 者(系 統 計 画 者,送 電 線 やIPPの に利 用 で き る.ま
た,こ
劣 を 明 示 す る の で,送
思
運 用 者)に よ る分 散 電 源 の 既 存 系 統 へ の 影 響 評 価
う した 影 響 評 価 は,電
力 市 場 に お け る 競 争 相 手 に対 して の化 憂
電 系 統 の 運 用 者 の み な らず 分 散 電 源 供 給 者 や 需 要 家 に とっ て も
有 益 で あ る.
14.2影
響評価の指標
14.2.1最
適潮流計算 の概要
従 来 の 電 力 系 統 運 用 で は,経
済 性 の 向 上 を 主 目的 と し た 最 適 な発 電 機 の 出 力 が オ ン
ラ イ ン で 制 御 さ れ て い る(経 済 負 荷 配 分).本 で あ る と し て,最
適 潮 流 計 算 を解 き,そ
手 法 で は,既
存 系 統 の パ ラ メ ー タ は既 知
こか ら得 られ た 電 圧,有
効 ・無 効 電 力 な どの
値 を も と に,各 種 影 響 評 価 を 行 う.た だ し,分 散 電 源 の 出 力 お よ び コ ス トは市 場 原 理 に よ り決 ま る も の と し,経 済 負 荷 配 分 に よ る 出 力 調 整 の対 象 外 と して い る.な 来 の 規 制 緩 和 に 関 す る 研 究 で は,系
お,従
統 状 態 を 簡 略 化 し た 直 流 法 潮 流 計 算(以 下,DC
法)に 基 づ く最 適 潮 流 計 算 が 主 に用 い ら れ て き た が,こ
こで は電 圧 分 布 な ど も総 合 評
価 の 対 象 とす る た め,交
基 づ く手 法 を 用 い る.
(1)目
流 法 潮 流 計 算(以 下,AC法)に
的 関 数
既存 系統 の発電 機 は,総 合 燃料 費 を最小 化 す るため に,以 下 の関数 が最 小 とな るよ うに運 用 す る. (14.1) こ こ で,PGkは
k番 目 の 発 電 機 の 有 効 電 力 出 力,afk,bfk,cfkは
燃 料 費 関数 の それ ぞ
れ,2 次,1 次 の 係 数,お
よ び 定 数 で あ る.全 体 でNG台
数 の 発 電 機 が オ ン ラ イ ン制 御
の 対 象 に な っ て い る と想 定 し て い る.
(2)制
約条件
交 流法 潮流 計算 を解 くため に,系 統 内 の各母 線 に おい て以下 の条件 を考 える. ①
有 効電 力バ ランス (14.2)
②
無 効電 力バ ラ ンス (14.3)
こ こ で,Viは お よ びGijは
i番 目 の 母 線 の電 圧 大 き さ,θijは 母 線i-jの
間 の 電 圧 位 相 角 の 差,Gij
母 線 ア ド ミ タ ン ス(Y)行 列 の 該 当 す る コ ン ダ ク タ ン ス お よび サ セ プ タ ン
ス 成 分 で あ る.ま PSiお よ びQNiは
た,N
は す べ て の母 線 の 集 合,NLは
負 荷 母 線 の 集 合 で あ る.
有 効 お よ び無 効 電 力 の 母 線 指 定 値 で,以
下 で 計 算 され る.
(14.4) た だ し,PGiお
よ びPDiは
i番 目 の 母 線 に お け る有 効 発 電 電 力 お よ び 同 負 荷 で あ り,
無 効 電 力 に つ い て も同 様 の 式 が 導 け る. ③
母 線上 下 限制 約
あ り,ま た,無
発 電 機 母 線 で は,有 効 ・無 効 電 力 の 発 電 機 出 力 に上 下 限 が
効 電 力 補 償 の あ る母 線 で は,無 効 電 力 の 注 入 量 に制 約 が あ る.
(14.5) (14.6) ま た,基
準(ス ラ ッ ク)母 線 を の ぞ く,す べ て の 母 線 に お い て 電 圧 の 大 き さ に 上 下 限
が あ る.
(14.7) ④
有 効電 力需給 バ ラ ンス
経済 負荷 配分 によ り発 電機 出力 を調 整す る場 合,以
下 の よう に系統 全体 の有 効 電力バ ランス を考 え る. (14.8) こ こ で,PDは ⑤
系 統 全 体 の電 力 需 要,PLは
セ キ ュ リテ ィ制 約OPFに
系 統 全 体 の 送 電 損 失 で あ る.
お い て セ キ ュ リ テ ィ 制 約 を 考 え る 場 合,次
のよ
う な 有 効 電 力 の 上 限 を送 電 経 路(主 と して 送 電 線)ご と に 考 え る.
(14.9) た だ し,Pijは き る.
母 線 iと jを 結 ぶ 送 電 経 路 を流 れ る有 効 電 力 で,以 下 の 式 に よ り計 算 で
(14.10) 本 手法 で は,多 様 な分散 電源 の既 存系 統 への影 響 を評価 す るた めに,分 散電 源接 続 可能 地点 を変 えなが ら最適 潮流 計算 を く り返 し解 き,分 散 電源 その ものの特性 とあわ せ て,系 統 へ の影 響 を多 方面 か ら評 価 す る.
14.2.2評
価 指 標
本 手法 で は,主 として最適潮 流計 算 に よっ て得 られた各 種系 統 デー タに基 づ き,分 散 電 源 の既存 系統 に与 え る影響 を以 下 の指標 に よ り評 価 す る. (1)経
済性 指標
最 適潮 流計 算 の結 果,オ ンラ イン運用 の対 象 とな るす べて の発電機 の有 効電 力配 分 が決 まる.そ の ときの燃料 費 は式(14.1)よ り直接 求 まる.送 電 損失 につ い ては,有 効 電力 の損 失 の み考 え るこ とにす る と,有 効発 電 出力 の総和 と総 需要 の差 が,有 効送 電 損失 を示 して い る.分 散 電源 を系統 の異 なる地点 に接 続 す る ことに よる,総 燃 料費 と 送電 損 失 の値 に よ り,そ れぞ れの分 散電 源 の経済 性 を評価 す る こ とがで きる.な お, 分散 電源 発電 機 自体 の出 力お よび燃 料費 は市 場 の需 要 に よ り変 動す るので,経 済 性評 価 の対 象外 と して い る. (2)環
境影 響指 標
系 統 に接続 された 発電機 の うち火 力機 につ いて は,硫 黄酸 化物(SOx)お よび窒 素酸 化物(NOx)の
排 出量 は発 電機 有効 電力 出力 の 関数 に よって計 算 で きるので,こ れ らの
値 か ら系統全 体 の環 境へ の影響 が評 価 で きる. 火 力機 か らの硫 黄 酸化物 の排 出量 は,以 下の 式で計 算 で き る. (14.11) こ こで,PGkは
k番 目 の 発 電 機 の有 効 電 力 出 力,ask,bsk,cskは
硫 黄酸化 物排 出量関
数 の そ れ ぞ れ,2 次,1 次 の 係 数 お よ び 定 数 で あ る. この 式 は燃 料 費 の 計 算 式(14.1)と い る.ま
た,窒
同 じ形 で あ るが,当
然 な が ら係 数 の値 は 異 な っ て
素 酸 化 物 の 排 出 量 は 以 下 の 式 で 計 算 で き る.
(14.12) こ こで,Hk(PGk)は
k番 目の 発 電 機 の 熱 効 率 関 数,bNk,cNkは
窒素 酸化物 排 気量 関数
の そ れ ぞ れ,1 次 の 係 数 お よ び 定 数 で あ る. な お,熱
効 率 関 数 は以 下 の 式 で 与 え られ,
(14.13) この 式 を使 う と,た
と え ば,式(14.1)は
以 下 の よ う に書 き換 え る こ とが で き る.
(14.14) (3)系
統 混雑 度 指標
分散 電源 の導入 によ り系 統 内の電 力潮 流 の経 路 が変化 す る.潮 流 が特 定 の送電経 路 で 増加 す る と,こ れ らの送 電経 路 の潮 流 余裕 は減少 す る.反 対 に,分 散 電源 が負荷 側 に接続 された場 合 は,送 電 経路 の潮 流 は減少 す る可 能性 が あ る. そ こで,こ こで は系 統混 雑度 指標 を有効 電力 の送 電容 量 に よ り,送 電 経路 ごとに定 義 す る.母 線 iと jを結ぶ送 電経 路 の負荷 率Rijを 以下 の よ うに定義 す る. (14.15) 負 荷 率 が1.0で り,た
あ る と,こ の 送 電 経 路 は容 量 い っ ぱ い に 潮 流 が 流 れ て い る こ と に な
と え ば託 送 な ど に よ る新 た な潮 流 を 上 乗 せ す る こ と は で き な い.し
率 が1.0以
(4)信
下 で あ る と,あ る 程 度,送
か し,負 荷
電 容 量 の余 裕 が あ る こ と に な る.
頼 度指 標
一 般 に 電 力 系 統 は 一 つ の 送 電 経 路 が 予 期 せ ず 停 止 した 場 合 に も,た だ ち に系 統 に過 負 荷 が 生 じ な い よ う に運 用 さ れ て い る.し
た が っ て,あ
る系 統 の 信 頼 度 は,送
が 1回 線 事 故 に よ っ て 遮 断 さ れ た と き(い わ ゆ るn-1セ す る こ と に よ り測 る こ とが で き る.も 統 に 過 負 荷 が 発 生 し な い か,発 ば,そ
し,あ
る送 電 経 路 の 1回 線 事 故 に よ っ て も,系
生 し て も潮 流 の 緊 急 制 御 に よ り解 消 で き る 範 囲 な ら
の 系 統 は信 頼 度 が 高 い と い え る.
(5)電 AC法
圧分 布指 標
潮 流 計 算 も し くは 最 適 潮 流 計 算 か ら直 接,母
を 求 め る こ とが で き る.得
線 電 圧 の 分 布 と無 効 電 力 の 潮 流
られ た 電 圧 を各 母 線 の上 下 限 値 と較 べ る こ と で,電 圧 の 制
御 余 裕 ⊿ V を求 め る こ とが で き る の で,こ は,母
電経路
キ ュ リ テ ィ)の 負 荷 率 を 計 算
の値 を電 圧 分 布 指 標 と して 用 い る.こ
こで
線 iの ⊿ V を 以 下 の よ う に 定 義 す る.
(14.16) 系 統 の あ る 地 点 に 分 散 電 源 を導 入 し た こ と に よ り,電 圧 制 御 余 裕 が 減 少 す る な ら ば,分
散 電 源 を そ の 地 点 に 導 入 す る こ と は望 ま し くな い こ と に な り,反 対 に,系
重 負 荷 に な っ た 場 合 も,分 散 電 源 が あ る こ とで,そ な ら ば,分
14.3フ
統が
の母 線 の電 圧 が よい値 に保 たれ る
散 電 源 の 導 入 は 価 値 の あ る こ と と判 断 で き る.
ァジ ィ指標による総合評価
物 理量 の異 な る各 種 指標 を横 な らび に評 価 す るため に,区 分線 形 メンバ ー シップ関
数 に よ り定 義 さ れ る フ ァ ジ ィ集 合 を 導 入 す る.こ
の フ ァ ジ ィ 集 合 はOPF計
算 に よっ
て 得 られ る典 型 的 な デ ー タ に 基 づ い て,分 散 電 源 の 満 足 度 を 表 現 す る.こ こ で い う "満 足 度"と は ,各 種 物 理 量 の 指 標 が 目標 を 満 た す 度 合 い を示 す.た と え ば,あ る指 標 が 意 思 決 定 者 に と っ て 完 全 に 満 足 で き る値 で あ れ ば 満 足 度 は 1,逆 に許 容 で き な い 値 で あ れ ば 満 足 度 は 0 とな る.指 標 が そ の 中 間 に あ る と き は,0 か ら 1の 間 の 連 続 な 値 で 満 足 度 が 表 さ れ る.以 下 の 定 義 で は,あ る 指 標 が フ ァ ジ ィ集 合 に 属 す る度 合 い(メ ン バ ー シ ッ プ値)は,そ
の 属 性 評 価 に お け る満 足 度 と解 釈 で き る.フ ァ ジ ィ集 合 を す べ て
の 評 価 指 標 に つ い て 定 義 す る こ と に よ り,電 圧 な どの 物 理 値 を も と に横 な ら び評 価 を 行 う こ と が で き る.
14.3.1送
電 損 失
分散 電源 導入 後 の系 統全体 の効 率 を評価 す るた めの フ ァジ ィ集 合 として,以 下 の よ うな メ ンバ ー シ ップ関 数 を定義 す る. (14.17) L は対 象 電 力 系 統 の 総 有 効 電 力 損 失 を 示 す.LminとLmaxは し い)損 失 値 と最 大(最 も許 容 し に くい)損 失 値 を示 す.実 場 合 は 最 も望 ま し く,最
も満 足 な 指 標(μL=1)が
そ れ ぞ れ 最 小(最 も望 ま 際 の 損 失 がLminよ
り小 さ い
得 ら れ る.効 率 評 価 指 標(効 率 の 望 ま
し い集 合 の 一 部 で あ る メ ンバ ー シ ップ の 度 合 い)は 全 体 の 損 失 が 増 加 す る に つ れ て 減 少 す る.L
がLmaxに
等 し く も し くは そ れ 以 上 に な っ た 場 合,そ
られ ず,評 価 は 不 満 足 な 指 標(μL=0)が Lmaxで
得 られ る.図14.1に
定 義 さ れ た フ ァ ジ ィ集 合 を示 す.
図14.1効
率 評 価 の フ ァジ ィ集 合
の よ う な 損 失 は認 め
効 率 評 価 の た め にLminと
14.3.2環
境 影 響
硫 黄 酸 化 物(SOx)お し て,次
よ び 窒 素 酸 化 物(NOx排
出 物 を評 価 す る た め の フ ァ ジ ィ 集 合 と
の よ うな メ ンバ ー シ ップ 関 数 を 定 義 す る.
(14.18) 上 式 で S は対 象 電 力 系 統 の 総SOx(NOx)排
出 量 を示 す.SminとSmaxは
それ ぞれ 最
小(最 も望 ま し い)排 出 量 と最 大(最 も 許 容 し に くい)排 出 量 を 示 す.実
際 の排 出量 が
Sminよ る.環
り小 さ い 場 合 は 最 も望 ま し く,最
も満 足 な 指 標(す な わ ち μS(N)=1)が 得 ら れ
境 評 価 指 標(環 境 汚 染 物 質 排 出 量 の 望 ま し い 集 合 の 一 部 で あ る メ ンバ ー シ ップ
の 度 合 い)は 全 体 の排 出 量 が 増 加 す る に つ れ て減 少 す る.S
がSmaxに
等 し くもし くは
そ れ 以 上 に な っ た 場 合,そ の よ うな 損 失 は 認 め ら れ ず,評 価 は 不 満 足 な 指 標(す なわ ち μs(N)=0)が 得 られ る.排 出 量 評 価 の た め の フ ァ ジ ィ集 合 は図14.1と
14.3.3
同 様 の 形 に な る.
系統混雑 度
以 下の ように負荷 率Rkで 定 義 され るフ ァジ ィ集合 を用 いて送 電 経 路混 雑 度 を評価 す る. (14.19)
式(14.19)に 以 下 の 場 合,負
はMkminとRkmaxの
二 つ の し きい 値 が 存 在 す る.も
荷 率 の 増 加 は 問 題 と は な らず,少
囲 で あ る.負 荷 率Rkが
し,負 荷 率 がRkmin
な く と も系 統 運 用 者 が 同 意 で き る範
増 加 す る に つ れ て,混 雑 度 指 標 μRkは 減 少 す る.そ
し てRkmax
に 達 す る と こ の値 を超 え た 過 負 荷 は も は や 受 け 入 れ られ な い(μRk=0),も 経 路 が 完 全 に 混 雑 し て い る こ とに な る.RkminとRkmaxの
し くは 送 電
値 は送 電 系 統運 用 者 の決定
に 依 存 し て い る.
14.3,4
系統信頼度
信 頼 度 の フ ァ ジ ィ 集 合 に つ い て は,混 か し,送 電 線 のn-1事
雑 度 と ま っ た く同 様 の 関 数 が 定 義 で き る.し
故 時 の 負 荷 率 を考 慮 す る と い う点 だ け が 異 な る.当
な が ら望 ま し い また は許 容 で き る 負 荷 率 は混 雑 度 評 価 のRkminやRkmaxと とな る.
然のこと
は 異 な る値
14.3.5電
圧 分 布
分散電 源 の電圧 分 布 へ の貢献 と して,通 常電圧 の範囲 を表 現す るフ ァジ ィ集 合 を用 いて電圧 指標 を以下 の ように定 義す る. (14.20)
母 線 iで の 電 圧Viが
不 感 帯 の な か に あ れ ば,μVi=1と
な る.μviの 値 はViが
上下
限 に 近 づ くに つ れ て 減 少 し,最 終 的 に 限 界 値 を超 え る と許 容 で き な くな る(μvi=0). 図14.2に
電 圧 分 布 評 価 の フ ァ ジ ィ集 合 を 示 す.
図14・2効
14.3.6総
率 評 価 の フ ァ ジ ィ集 合
合 評 価
属 性 に よ り異 な る分 散 電 源 を総 合 的 に評 価 す る た め に,信 頼 度 や 電 圧 分 布 な ど の特 定 の 属 性 に つ い て 定 義 さ れ た 評 価 指 標 を集 約 し な け れ ば な ら な い.一 以 下 の 式 の よ う なBellman-Zadehの
つ の 方 法 と して
最 大 化 決 定 法 が 考 え られ る6).
(14.21) こ こで,μAは
総 合 評 価 指 標 を 表 し,A
最 大 化 決 定 法 の ポ イ ン トは,メ 値 を 考 慮 し て,そ
は評 価 指 標 の 全 体 集 合 を表 す.
ンバ ー シ ッ プ関 数 に よ っ て 表 さ れ る評 価 指 標 の 最 小
の 最 小 値 を 最 大 化 す る よ う な オ プ シ ョ ン を最 適 と し て 選 択 す る こ と
に あ る.そ の 他 の 統 合 化 手 法 と して は,全 指 標 の 平 均 値 あ る い は 積 を と る とい う方 法 が あ る.こ の よ う に無 次 元 化 した 指 標 に よ り,経 済 指 標 だ け に頼 る こ と な く,規 制 緩 和 下 で の 最 適 な 分 散 電 源 を 選 択 す る こ とが で き る.
14.4適
14.4.1
用 事 例
モ デ ル 系 統 と設 定
モ デ ル 系 統 と し て は,図14.3に
示 すIEEE標
準30母
線 系 統 を 用 い,若
干 の実 用 的
変 更 を加 え て い る.母 線 5に あ る 同 期 調 相 機 は 発 電 機 に変 更 して い る.ま
た,分
源 の 電 圧 無 効 電 力 の 影 響 を調 べ る た め に,変
固定 され て
い る.系 統 の 総 需 要 は283MWで れ て い る.ま
た,分
圧 器 タ ッ プ 比 は す べ て1.0に
あ る.分 散 電 源 の 出 力 は既 知 と し20MWに
散 電 源 発 電 機 力 率 は,0.95(遅
図14・3
IEEE標
固定 さ
れ)で 固 定 して い る.
準30母
14.4・2 評 価 シ ミ ュ レー シ ョン(1):託
散電
線系統
送 な しの 場 合
(1)送
電損 失
表14.1に
異 な る分 散 電 源 に よ る送 電 損 失 の 比 較 を 示 す.当 然 の こ と な が ら,分 散 電
源 が 負 荷 中 心 へ 近 づ くに つ れ て 送 電 損 失 は減 少 す る.損 失 の 最 小 値 と最 大 値 を比 較 し て,Lmin=5MW,Lmax=7MWと の 表 中,G1∼G3は (2)環
設 定 し,以 下 の 表 の μE列 の 値 を 得 た.な
既 存 系 統 の発 電 機;分
散 電 源 は簡 単 の た めIPPで
お,以 下
表 した.
境 影 響
本 章 で 考 慮 さ れ て い る分 散 電 源 は,表14.2に
示 す よ う に 異 な る燃 料 を設 定 し て い
表14.1
送 電 損 失 と効 率 指 標
表14.2
表14.3
SOxとNOx排
設定発電機
出 に も とづ く環 境 影 響 指 標
る.火 力 発 電 機 に つ い て は 電 気 出 力 を も とに 環 境 汚 染 物 質 の 排 出 量 を計 算 して い る. 計 算 結 果 を表14.3に
示 す.環
境 排 出 量 の 最 大 値 と最 小 値 を 比 較 し て,SOx排
に つ い て はSmin=24000㎏/h,smax=2900㎏/h,と に つ い て はNmin=3200㎏/h,Nmax=3900㎏/hと
設 定 した.同 様 にNOx排 設 定 し た.当
力 発 電 機 は環 境 排 出 ガ ス が な く,天 然 ガ ス に つ い て はSOx排
出 指標 出指標
然 の こ と な が ら,水
出 は ほ ぼ無 視 で き る.し
か し な が ら,こ れ らの 発 電 機 は 系 統 の 送 電 損 失 を 通 じて 他 の 発 電 機 の 環 境 指 標 に 影 響 す る. (3)系
統 混雑 度
系 統 混 雑 度 は 送 電 線 負 荷 率 に よ っ て 評 価 さ れ る.負 荷 率 は 送 電 線 容 量 と そ の 潮 流 か
表14.4
送 電 線 潮 流(MW)
表14.5
ら計 算 さ れ る.表14.4に 置 に よ り,52.5%か
主 要 送 電 線(132kV)の
ら95%の
Rkmin=0.75,Rkmax=1.0と
混雑度指標
潮 流 を 示 す.負
範 囲 で 変 化 す る.そ
設 定 し た.表14.5に
荷 率 は分散 電 源 の位
こで 混 雑 度 指 標 の 評 価 指 標 と して,
混 雑 度 指 標 を示 す.高 い 数 値 が よ りよ
い 評 価 を 表 し て い る(す な わ ち よ り大 き な 送 電 線 容 量 が 利 用 可 能). (4) 系 統 信 頼 度 信 頼 度 解 析 の た め に,モ デ ル 系 統 に お い て 上 位 送 電 線(132kV)の す る.送
電 線 を 開 放 し,交 流 法 潮 流 計 算 を用 い て,残
事 故 を 1箇 所 設 定
りの 主 要 送 電 線 の 潮 流 を計 算 す
る.送 電 線 系 統 の 信 頼 度 は,負 荷 率 を 用 い て 評 価 さ れ る.し か し な が ら,(n-1)事
故
時 に お い て は,送 電 線 の 過 負 荷 が 問 題 な の で,信 頼 度 指 標 と し てRkmin=1.1,Rkmax= 1.4と 設 定 した.表14.6に (5)電
異 な る 分 散 電 源 の 接 続 位 置 に お け る信 頼 度 指 標 を示 す.
圧 分 布
電 圧 指 標 に つ い て は,Vm=1.0pu,Vd=0.05pu,Vb=0.1puと 定 常 条 件 下 で の 母 線 電 圧 評 価 の 比 較 を示 す.(n-1)事 て 制 約 値 内 だ っ た.
設 定 し た.図14.4に 故 想 定 時 に お い て も電 圧 はす べ
表14.6
信頼 度指標
(a) 分散電源 なし
(b) 母 線 8に 接 続
(c) 母 線15に
接続
(d) 母 線21に
接続
(e)母 線24に
接続
(f)母 線30に
接続
図14.4
(6)総
電 源 評 価 指標 の 比 較
合 評価
電 力 系 統 の 異 な る位 置 へ の 分 散 電 源 接 続 を 総 合 評 価 す る た め,最 て 評 価 指 標 を 集 約 す る.た
大化 決定 法 を用い
と え ば,信 頼 度 評 価 の 場 合 は 複 数 の ケ ー ス が 考 え ら れ る.
最 大 化 決 定 法 を適 用 す れ ば,は
じめ に各 ケ ー ス に お い て 最 小 の評 価 指 標 を と る,た
と
え ば 信 頼 度 指 標 の 場 合S={0.053,0.713,0.522,0.713,0.720,0.707}と
な る.こ
こで S
は 信 頼 性 指 標 の 集 合 を表 す.次 に そ の 中 か ら最 大 値 を 選 び,母 線24に
位 置 す る分 散 電
源 が 最 大 の 信 頼 度 指 標(0.720)を
もつ と判 断 す る.す べ て の評 価 指 標 に つ い て 同様 の 手
順 を行 う こ と に よ り,表14.7に
示 す よ う な 総 合 評 価 指 標 が 得 ら れ る.今
回 の設 定 で
表14.7
図14.5
は,母 線24に
総合評価指標の比較
位 置 す る分 散 電 源 が 総 合 指 標 最 大 とな り,総 合 的 に最 も望 ま しい とい う
こ とが わ か る.図14.5に
(7)検
総合評価指標
総 合 評 価 の 比 較 を示 す .
討
フ ァ ジ ィ 集 合 を 用 い る こ と に よ り 自 由度 を も っ た 意 思 決 定,こ 序 づ け を行 う こ と が で きた.こ
定 に さ ま ざ ま な 条 件 を反 映 さ せ る こ とが で き る.と 義 さ れ て お らず,ま
こ で は分 散 電 源 の 順
う し た 分 散 電 源 評 価 方 法 に よ り,電 力 系 統 運 用 計 画 決 き に は,こ
れ ら の 条 件 は明 確 に定
た 評 価 基 準 も当 事 者 に よ り異 な る こ とが あ る.多
属性 評価 のた め
の フ ァ ジ ィ集 合 の 定 義 に よ り,こ れ ら指 向 の 相 違 を供 給 者 ・需 要 家 ・系 統 運 用 者 に と っ て 明 示 的 で 望 ま し い 系 統 運 用 へ と導 く こ とが で き る. と こ ろ で フ ァ ジ ィ集 合 の 定 義 を変 え る と,評 価 指 標 は 変 化 す る.た の評 価 と電 圧 分 布 の 評 価 に お い て,よ
と え ば,混
雑度
り寛 容 な 指 向 を と っ て,混 雑 度 に お い てRmin=
0.80(よ り重 負 荷 の 送 電 線 を 許 容 す る),電
圧 分 布 に お い てVd=0
変 化 を許 容 す る)と 設 定 す る こ とが で き る.表14.8に
.08(よ り広 い 範 囲 の
新 し い 設 定 値 に よ る評 価 結 果 を
示 す. 総 合 順 位 に 変 化 は な い が,混 雑 度 の 評 価 値 が 上 が っ た た め,母 線 8の 分 散 電 源(IPP
表14.8 混雑度 と電圧 分布について異な る基準 を用いた総合評 価指標
-1)に
関 す る総 合 評 価 が 母 線24の
電 源(IPP-4)に
接 近 して い る .一 方,母
置 す る(最 も既 存 電 源 か ら離 れ て い る)電 源 の 評 価 は あ ま りよ くな い.こ 運 転 に よ る も の で,母
線30に
位
れ は力 率 一 定
線 に無 効 電 力 を供 給 し す ぎ て い る た め,母 線 電 圧 を 過 剰 に上 昇
させ る結 果 に な っ て い る.
14.4.3
評 価 シ ミ ュ レー シ ョ ン(2):託
送がある場合
電 力 系 統 で の 託 送 取 引 の性 能 を評 価 す る方 法 と し て は,供 (託 送 負 荷)の 位 置(接 続 母 線)を そ れ ぞれ 変 更 し な が ら,い し,最 適 潮 流 計 算(OPF)シ
給 者(分 散 電 源)と 需 要 家 くつ か の 組 み 合 わ せ を作 成
ミュ レ ー シ ョ ン を 対 象 の 電 力 系 統 に 反 復 して 適 用 す る.
託 送 契 約 は 各 シ ミュ レ ー シ ョ ン ご と に 一 つ だ け 想 定 す る.電 圧 な ど,各 種 系 統 条 件 を 得 る た め に 交 流 法 最 適 潮 流 計 算 を適 用 す る.最
適 化 の プ ロ セ ス で は,全
(負 荷 配 分 可 能)火 力 プ ラ ン トの 燃 料 コ ス ト を最 小 化 す る 5).た だ し,分 出 力 は 経 済 的 目標 に よ り独 立 に 決 定 さ れ る と仮 定 し て い るの で,既 て 出 力 調 整 を行 う こ と は で き な い も の と す る.し た が っ て,分 荷 配 分 に含 ま れ ず,一 い,負
定 と仮 定 す る.ま
た,シ
散 電 源 の発 電
存電 力会 社 に よっ
散電 源 の出 力 は経済 負
ミ ュ レー シ ョ ン は あ る時 間 断 面 にて 行
荷 の 時 間 変 化 は考 慮 して い な い.有 効 電 力 バ ラ ン ス,母
圧 の上 下 限 がOPFの
体 の既 存
線 有 効 ・無 効 電 力 と電
制 約 条 件 と し て 考 慮 され て い る.
託 送 契 約 を確 立 す る た め に は,送 電 付 帯 サ ー ビ ス 1)が必 要 に な る 可 能 性 が あ る.そ の 場 合 の コ ス トは需 要 家 に よ っ て 支 払 わ れ る もの とす る と,需 要 家 は 系 統 運 用 者 か ら の そ の よ う な サ ポ ー ト費 用 を 最 小 化 す る よ う に 発 電 機 運 用 を計 画 す る だ ろ う.送 電 付 帯 サ ー ビス に は送 電 損 失 を補 償 す る た め の 有 効 電 力,電
圧 を維持 す るた めの 無効電 力
が 含 ま れ る.託 送 契 約 は 通 常 運 用 に お け る系 統 混 雑 に影 響 を 及 ぼ す.そ で は 送 電 損 失,電
圧 分 布,混
モ デ ル 系 統 と して は,前
の た め,以
下
雑 度 を 評 価 す る. 節 と同 じIEEE標
準30母
線 系 統 を 用 い る.託 送 契 約 は(分
散 電 源 の 出 力 と需 要 家 の 負 荷 の 組 合 せ)は 既 知 と し30MWに
固 定 し て い る.そ
の他
の 条 件 は前 節 と同 じ に した. 五 つ の 分 散 電 源(供 給 者)と 三 つ の 需 要 家(需 要 家)に つ い て,さ 点(全15ケ る.一
ー ス)を 選 ん だ.分
方,需
散 電 源 の 位 置 は 主 に 系 統 の 2次 側(33kV)に
要 家 の 位 置 は 2次 側 の み で あ る.異
と に最 適 潮 流 計 算(OPF)を
まざ まな接続 可能地
な る分 散 電 源 と負 荷 の 組 み 合 わ せ ご
反 復 し て 適 用 す る.こ れ らの 結 果 を も とに,す
電 圧 と送 電 線 潮 流 が 得 られ る.各
選んでい
需 要 家 に と っ て,五
べ ての母線
つ の 託 送 契 約 を次 項 以 降 の 指 標
に よ り比 較 す る.
(1)送 表14.9に
電損失 異 な る分 散 電 源 供 給 者 に よ る 託 送 契 約 の 比 較 を 示 す.損
小 値 よ り,Lmin=7MW,Lmax=16MW設
失 の 最 大 値 と最
定 し,下 の よ う な フ ァジ ィ指 標 を得 た.図
14.6に 効 率 指 標 の 比 較 を 示 す. 表14.9
送 電 損 失 と効 率 指 標
図14.6
(2)系
効 率 指標
統 混雑 度
混 雑 度 の 指 標 を計 算 す る た め に,す べ て の k に つ い てRkmm=0.75,私max=1.0と 意 に 設 定 した.そ
れ ぞ れ の 分 散 電 源 と需 要 の 組 み合 わ せ で,最
送 電 線 を選 択 した.表14.10に
任
小 指 標(最 大 負 荷 率)の
計 算 さ れ た 混 雑 度 指 標 を 示 す.た
だ し大 き な値 が よ り
表14.10
最 大 負 荷 率 と混 雑 度 指標
図14.7
混雑度指標
よ い 結 果(多 くの 送 電 容 量 が 利 用 可 能)を 示 し て い る.図14.7に
混 雑度 指標 の比 較 を
示 す.
(3)電
圧分 布
① 母線全体 表14.11に
②
設 定 し た.
計 算 さ れ た電 圧 指 標 を 示 す.図14.8に
分散 電源 接続 母線 の電 圧 と設 定 し た.表14.12に
電 圧 指 標 の 比 較 を示 す.
前 節 と同様 に, 計 算 さ れ た 電 圧 指 標 を示 す.図14.9に
較 を 示 す. 表14.11
電 圧 指 標(母 線 全 体)
電 圧 指 標 の比
図14.8
表14.12
電 圧 指標(母 線 全 体)
電 圧 指標(分 散 電 源 接 続 母 線)
図14.9 電圧 指標(分散電源接続母 線)
(4)総
合評価
各 指 標 に つ い て フ ァ ジ ィ ・メ ンバ ー シ ッ プ 関 数 に よ り表 現 さ れ た 値 を,以 下 の よ う な 3種 類 の 方 法 に よ り集 約 し て,総 ・全 指 標 の 最 小 値(min) ・全 指 標 の 平 均 値(average)
合 評 価 を 行 う.
図14.10
分 散 電 源(供 給 者)の 比 較(min)
図14.11
分 散電 源(供 給 者)の 比 較(average)
図14.12
分 散 電 源(供 給 者)の 比 較(product)
・全 指 標 の 積(product) た だ し,電 圧 分 布 に つ い て は 分 散 電 源 母 線 の み に つ い て で な く,母 線 全 体 で の 評 価 を 指 標 と し て 用 い て い る.以
下 の 図14.10∼14.12に
3種 類 の 方 法 に よ る 負 荷(需 要
家)の 見 地 か らの分 散 電源(供 給 者)の 比 較 を示す.燃 料 価格 以 外 に潜 在的 分 散電 源 の 優劣 を比 較 して い る. 上 記 三 つ の グ ラ フ は(フ ァ ジ ィ 集 合 に よ り)無 次 元 化 し た 指 標 を も と に し て い る の で,大
き な値 ほ ど望 ま し い分 散 電 源 とい う形 で 表 現 さ れ て い る.し た が っ て ど の 手 法
に お い て も,需 要 が 母 線16に 合 は 母 線15の
あ る場 合 は母 線 8 の 分 散 電 源,需
分 散 電 源,需 要 が 母 線29に
最 も好 ま しい と い う結 果 を 得 て い る.よ
あ る場 合 は 母 線30の
要 が 母 線19に
あ る場
分 散 電 源 が,そ れ ぞ れ
っ て 最 適 な 分 散 電 源 を唯 一 決 定 す る場 合 は,
3手 法 に あ ま り差 異 は な い.た だ し,次 点 の 分 散 電 源 の 選 択 は 手 法 に よ り異 な る の で, 複 数 の 最 適 分 散 電 源 を決 定 す る場 合 は,手 法 の 適 用 に 注 意 が 必 要 で あ る.
14.5考
察
既 存 電 力 系 統 に接 続 す る分 散 電 源 に つ い て,フ 介 し た.こ
の 手 法 で は送 電 線 潮 流,母
ァ ジ ィ 集 合 論 に 基 づ く評 価 手 法 を紹
線 電 圧 等 の 最 適 潮 流 計 算 の 出 力 デ ー タ は メ ンバ
ー シ ッ プ 関 数 に よ り 0か ら 1の 無 次 元 の 値 に 変 換 さ れ る .物 理 量 の 異 な る各 種 の 評 価 指 標 を満 足 度 指 標(メ ンバ ー シ ッ プ値)に 変 換 し た あ と,Bellman-Zadehの
最 大化 決定
法 に よ り評 価 指 標 を総 合 集 約 し,経 済 性 以 外 の 視 点 で 多 面 的 に 最 適 分 散 電 源 を評 価 す る こ とが で き る.
本章 で 紹介 した多属 性指 標 に よる方法 は,意 思 決定 者(既 存 系統 の系統 計 画運用 者) が分散 電 源 の総 合的 な影 響 を評 価 す る場合 に利 用 で きる.ま た,こ の 方法 は フ ァジ ィ 集 合 に よ り評 価 指標 を定義 してい るの で,意 思決 定者 の多 様 な指 向 を明 示的 に反 映で きる融 通 性 があ る. また,本 章 で は,分 散 電源 に よる託 送取 引 の影 響 を評価 す るた め に,送 電 線潮 流や 母線 電 圧 な どの最 適潮 流計 算結 果 を比 較 のた め に使用 した.こ れ らの値 を使 っ て,経 済 指標 以 外 の多属 性指 標 に よ り需要 家 に とって最 も望 ま しい分 散電 源 を選択 す る こ と が で き る.送 電 線 損 失補 償 や電 圧維 持 な どの 送電 付 帯 サ ー ビス に費 用 が 伴 う場 合 に は,需 要家 に とって総 費用 を最 小化 す る とい う目標 は系統 運用 者 の費用 最小 化 目標 と 同一 に な る.こ こで紹 介 した多 属性 ア プロー チ は,託 送契 約 の総合 的影 響 を評価 す る 際 に おい て意 思決 定者(系 統 運 用者 や託送 契約 者)を 支 援 す る ことが で き る.
参考文献 1)S.Hunt:Unlocking
the
Grid,IEEE
Spectrum,33,7,pp.20-25,July1996.
2)A.F.Vojdani,C.F.Imparato,N.K.Saini,B.F.Wollenberg,and Transmission
Access
3)S.Ayasun
and
Issues,IEEE R.Fischl:On
Capability,Proceedings October
1997
Syst.,11,1,Feb
Region-Wise
North
Analysis
American
Power
,1996.
of
Available
Symposium
Transfer ,pp.464-470,
and
M.Ilic:On
the
Role
and
Value
of
Voltage
Support
in a Deregulated
,Operation,and
Control,2nd
Industry,ibid.,pp.471-478.
5)A.J.Wood ed.,John 6)M.Sakawa:Fuzzy 1993.
the
Power
1997.
4)S.Banales Power
of
H .H.Happ
Trans.on
and
B.F.Wollenberg:Power
generation
Wiley,1996. sets
and
Interactive
multiobjective
optimization
,Plenum
Press,
第15章 電力 自由化の今 後の展望
15.1わ
15.1.1部
が国にお ける電力自由化の動向
分 自由化の 採用
電 気 事 業 審 議 会 基 本 政 策 部 会 か ら,1997年
7月 に,日 本 型 電 力 小 売 自 由 化 と い うべ
き"部 分 自 由 化"が 打 ち 出 され た.こ れ は,電 圧 2万 V お よ び2000kW以
上 の大 口需
要 家 の み を対 象 と した 小 売 市 場 の 自 由 化 で あ り,こ の よ う な 大 口 需 要 で あ れ ば 電 力 会 社 に と っ て は給 電 指 令 や 監 視 が 及 ぶ 範 囲 で あ り,一 方,需 可 能 な こ とが 理 由 で あ る.1995年12月 て,大
口需 要 家 は,従
要 家 に と って は 価 格 交 渉 が
に 施 行 され た 卸 電 気 事 業 の 自 由 化 と あ い ま っ
来 の 区 域 内 電 気 事 業 者 の み な ら ず,区
お よ び 電 気 事 業 者 か らの 電 力 購 入 が 可 能 と な り,ま た,電
図15.1
新規参 入事業者の電源調達
域 内外 の新規 発 電事 業者
力 供 給 に 参 入 し よ う とす る
図15.2
部 分 自由 化 の 需 要 家 範 囲
図15.3 特 高需要家の電力購入先 の選択
事 業 者 に と っ て は 自 社 保 有 の 発 電 設 備 か らの み な らず 他 発 電 事 業 者 や 区 域 内 外 の 電 気 事 業 者 か らの 電 源 調 達 も可 能 と な っ た(図15.1,15.2,15.3参
照).
15.1.2電
力 自由化の効 果の検証
今 回 選 択 され た 電 力 供 給 形 態 以 外 に も 欧 米 で 実 施 され て い る"全 面 自 由化"や"電 力 プ ー ル"の
オ プ シ ョ ン もあ っ た.し
か し,全 面 小 売 自 由 化 を い ち 早 く打 ち 出 し た ア
メ リカ ・カ リ フ ォル ニ ア 州 の 例 を み る と,施 行 2年 を経 過 した 現 在,需 %(電
力 量 で30%)も
要 家 数 で 約20
の 大 口 需 要 家 が 既 存 の 電 力 会 社 か ら 多 の小 売 電 気 事 業 者 へ 契 約
を 変 更 し て い る の に対 し,家 庭 な ど小 口需 要 家 の 契 約 変 更 は ほ ん の 数 パ ー セ ン トに と ど ま っ て い る.大
口 需 要 家 は 高 電 圧 送 電 系 に接 続 さ れ て い る た め,託
送料 金が 相対 的
に 安 くか つ取 引 量 が 大 き い こ とか ら,新 規 参 入 供 給 事 業 者 に と っ て 顧 客 獲 得 に 魅 力 が あ る こ との 表 れ で あ ろ う. こ の 分 野 が 最 も既 存 電 気 事 業 者 と新 規 参 入 者 と の 競 争 が 活 発 化 し,ひ 下 を もた らす の で あ れ ば,今
いて は価格 低
回 の わ が 国 の 選 択 は正 し い と い え よ う.ま た,イ
が 実 施 し て き た"電 力 プ ー ル"に 関 して は,わ
ギ リス
が 国 で は 時 期 尚 早 との 決 断 が 下 され た.
これ に 関 しイ ギ リ ス の 現 状,す な わ ち,電 気 事 業 規 制 当局 が,1997年11月
か ら現 行 の
プ ー ル 制 度 の 見 直 し に着 手 し,プ ー ル 制 度 に代 わ る 新 しい 電 力 供 給 体 制 の 全 面 改 革 案 を 発 表 し た こ とに 注 目 す る必 要 が あ ろ う. 導 入 か ら 9年 間 運 用 さ れ て き た イ ギ リス の 電 力 プ ー ル 制 度 は,旧 国 有 電 気 事 業 者 が 抱 え て い た 非 効 率 性 が 排 除 さ れ る な ど一 定 の 評 価 を 得 て い る も の の,複 プ ロ セ ス に よ る 参 入 障 壁,長 乖 離,発
電 事 業 者 と大 口 需 要 家 の 特 定 契 約,プ
数 々 の 問 題 点 が 指 摘 さ れ,新 わ が 国 で は,今
ー ル プ ラ イ ス と発 電 コ ス トの
ー ル 市 場 と ガ ス 市 場 との 相 互 干 渉 な ど
た な 制 度 見 直 し に 至 っ て い る.
回 の 部 分 自 由化 効 果 の 検 証 を 進 め,新
る こ と とな っ て い る が,先 は,今
期 供 給 設 備 形 成 の 不 備,プ
雑 な価 格形 成
た な規 制 緩 和 の 方 向 を 見 極 め
行 事 例 で あ る 欧 米 の 電 力 市 場 の 自 由 化 動 向 と そ こ で の課 題
後 の よ き 指 針 を与 え る もの とな ろ う.
わ が 国 の電 力 自 由 化 は,端 緒 に 着 い た の み で き わ め て 流 動 的 で あ る た め,こ こ で は, 先 駆 的 な 諸 外 国 の 電 力 自 由 化 の 将 来 動 向 を 中 心 に 述 べ,わ
が 国 に 関 し て は2000年
3
月 に 開 始 さ れ た 電 力 自 由 化 の 要 点 の み を 示 す に 留 め る.
15.1.3わ
が国の 小売部分 自由化 における制度整 備
電 気 事 業 制 度 改 革 に お い て 導 入 さ れ た"部
分 自 由 化"に
お け る競 争 は,一
般 電気 事
業 者 が 維 持 し運 用 す る送 電 ネ ッ トワ ー ク を,一 般 電 気 事 業 者 と新 規 参 入 者 が 共 に使 用 して 行 わ れ る(図15.4参
照).し
た が っ て,公 正 な 競 争 環 境 を確 保 す るた め に は,両 者
が 同 一 の 条 件 に よ りネ ッ トワ ー ク を利 用 で き る こ と を担 保 す る こ とが 必 要 不 可 欠 で あ
図15.4
部 分 自由 化 に お け る送 電 線 ネ ッ トワー ク
る.こ
の よ う な観 点 を踏 ま え,託 送 料 金 算 定 に お け る ル ー ル,託
保,さ
ら に給 電 指 令 な ど に 伴 う 金 銭 決 済 な どの 制 度 が 整 備 され た.
(1)託
送 料 金 の 公 平 性 の確
送料 金算 定ル ール 設定
託送 料 金費 用算 定 の方法 として は,電 気 通信 の ような,最 も効 率 的な技術 と設備 で ネ ッ トワー ク を再 構築 した と仮定 した場合 に要す る費用 をモデ ル と して特定 す る方式 (モ デル特 定型)お よび将 来 にお け る特 定 の期 間 を設 定 し,そ の期 間 にお いて発生 す る で あ ろ う費 用 を推定 す る方式(推 定 期 間特定 型)の 二 つ の方式 が考 えられ る.電 気 事業 の場 合 は,技 術 革新 に よる効 果 よ りも,む しろ経 営 の効 率化 が コス ト低 減 の主要 な要 因 とな って いる こ とか ら,モ デル特 定型 では な く,特 定期 間 内 にお ける経営 効率化 に よ る効 果 を託送 料金 に反 映す るこ とが可 能 な推定 期 間特定 型 の方 式が採 用 され た. (2)託
送 料金 の公平 性の 確保
託 送料 金 の公 平性 とは,あ る自由化対 象 の需要 家 に対 して 区域 の電力 会社 が供給 す る場 合 に,仮 に 自 らの発 電部 門が 自 らの送電 部門 に託 送 を依頼 した と して送電 部 門 に 支 払 うべ き コス トと,区 域 の電 力会社 以 外 の供給 者(す なわ ち,区 域 内 の新規 参入 者, 区域 外 の電力 会社 お よび新 規 参入 者)が 供 給 す る場 合 に 区域 の電 力会 社 に対 して実 際 に支払 う託送 料金 は,基 本 的 に同 じ とな るべ き とい う こ とで あ る.そ こで,託 送料 金 メニ ュー と しては,二 部料 金制 に よる基本 的 な料金 を設 定 した 上で,ネ ッ トワー ク利 用 状況 を踏 まえた選択 的 な料 金 が設定 され る と ともに,各 電 力 会社 の区域 内 にお け る 潮 流改 善 とな る場 合 に は,一 定額 を割 引 くエ リア制 料金 が適 用 され た.さ らに,複 数 の 区域 を経 由す る際 には,こ れ に加 え,託 送料 金 の調整 を行 うゾー ン制料 金が 適用 さ
れ る こ と に な っ た.し
た が っ て,複
数 の ゾ ー ン を経 由 す る場 合 の 託 送 料 金 は,ゾ
間 の 潮 流 状 況 の 改 善 に資 す る場 合 に は,一
ー ン
定 の メ リ ッ トが 付 与 さ れ る とい う 特 徴 が あ
る. (3) 給 電 指 令 な ど に 伴 う 金 銭 決 済 と 公 平 性 給 電 指 令 な ど に伴 う金 銭 決 済 に つ い て は,改 正 電 気 事 業 法 に お い て 定 め ら れ て い る 事 故 時 と しわ と りの た め の バ ッ ク ア ップ の 規 制 が 踏 襲 さ れ た."事 料 金"に
つ い て は,取
故 時バ ッ クア ップ
引 に 継 続 性 が あ り供 給 形 態 と して は 小 売 供 給 に 類 似 し た も の と
な る こ とか ら,小 売 に お け る標 準 メ ニ ュ ー と整 合 的 な 価 格 が 設 定 さ れ る場 合 に は,公 正 か つ 有 効 な 競 争 の 観 点 か ら望 ま し く,電 気 事 業 法 上 の 変 更 命 令 が 発 動 さ れ る 可 能 性 は 低 い. 一 方,小
売 に お け る 標 準 メ ニ ュー に 比 べ て不 当 に 高 い 価 格 を設 定 す る こ と は,新 規
参 入 を阻 害 す る お そ れ が 強 い こ とか ら,変 更 命 令 が 発 動 され る."し わ と りバ ッ ク ア ッ プ 料 金"に
つ い て は,供
給 形 態 に 応 じ て,合 理 的 な コ ス トに 基 づ い て設 定 さ れ る場 合
に は,公 正 か つ 有 効 な競 争 の 観 点 か ら望 ま し く,変 更 命 令 が 発 動 さ れ る 可 能 性 は 低 い . 一方
,適 切 な コ ス トに 基 づ か ず,不
当 に高 い 価 格 を 設 定 す る こ と は,新 規 参 入 を 阻 害
す る お そ れ が 強 い こ とか ら,変 更 命 令 が 発 動 さ れ る.
15.2 15.2.1
主要諸国における電力自由化の動向 電力市場 統合へ向 けての諸国の動 向
電 力 市 場 へ 競 争 導 入 を進 め て い る 国 々 で は,競
争 導 入 の 程 度 に違 い が あ る も の の 何
ら か の 形 で 発 電 市 場 が 自 由 化 さ れ て い る.た だ し,小 売 市 場 に お け る競 争 導 入 に程 度 は,国
に よ っ て大 き く異 な る(表15.1参
北 欧 諸 国,中
南 米 諸 国,オ
セ ッ ツ州 の よ う に,小
照).最
近 実 施 さ れ た 電 力 市 場 の 自 由 化 で は,
ー ス トラ リ ア や ア メ リカ ・カ リ フ ォ ル ニ ア 州,マ
サ チ ュー
売 市 場 の す べ て の 需 要 家 と対 象 と し て 競 争(全 面 自 由 化)を 導 入
す る傾 向 に む か い つ つ あ る. ま た,国
別 に適 用 さ れ て い る市 場 自 由 化 モ デ ル を表15.2の
で き る.競 争 を新 規 電 源 に 限 定 す る形 で,1984年 札(generation
bidding)が
わ が 国 で も1996年 入 さ れ た.送 ーダ
よ う に分 類 す る こ と も
以 降 に ア メ リカ の 多 くの州 で 競 争 入
採 用 さ れ た.
よ り競 争 入 札 が 非 強 制 的(参 入 希 望 者 の 自 由 意 志 で 入 札 可)に 導
電 系 統 を所 有 しな い 市 場 参 加 者,す
な わ ち,発
,ブ ロ ー カ は送 電 系 統 に 接 続 ・利 用(託 送:wheeling,use
電 業 者,配
電 業 者,ト
of system)す
レ
る こ とに
表15.1
各 国 に お け る競 争 導 入 程 度 の進 行
競争導入の程度
国 名 (アメリカの場 合は州名)
小売供給
発 電
ノ ル ウ ェ ー(1991∼) ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド(1994∼) ス ウ ェ ー デ ン(1996∼) フ ィ ン ラ ン ド(1997∼) イ ン グ ラ ン ド ・ ウ ェ ー ル ズ(1998∼) ス コ ッ トラ ン ド(1998∼) 北 ア イ ル ラ ン ド(1998∼)
導
入
すべての需要家
ア メ リ カ ・カ リ フ ォ ル ニ ア(1998∼) ア メ リ カ ・ ロ ー ド ア イ ラ ン ド(1998∼) ア メ リ カ ・マ サ チ ュ ー セ ッ ツ(1998∼) ド イ ツ(1998∼) オ ー ス ト ラ リ ア(2000∼) デ ン マ ー ク(2003∼) オ ラ ン ダ(2007∼) ス ペ イ ン(2007∼) ベ ル ギ ー(2007∼) EU委
員 会 提 案(1997発
効)
チ リ(1982∼) ア ル ゼ ン チ ン(1992∼)
導
入
大口需要家
ポ ル トガ ル(1995∼) フ ラ ン ス(1999∼) イ タ リ ア(1999∼) オ ー ス ト リ ア(1999∼) 日 本(2000∼)
(出 典:矢
島 正 之 「世界 の 電 力 ビ ッ グバ ン」 東 洋 経 済 新 報 社(1999
年))
よ り電 力 の 取 引 を行 う が,そ
の 際 送 電 線 所 有 者 に 託 送 量 を 支 払 う こ と に な る.こ の 系
統 ア ク セ ス料 に 規 制 を課 す 方 式 を 規 制 ベ ー スTPA(Regulated と呼 び,1997年
に発 効 した 電 力 市 場 統 合 化 に 関 す るEU指
め る交 渉 に よ るTPA(Negotiated 各 国 は 国 情 に 合 わ せ,い
Third
Party
Access)を
ず れ か の 方 式 を選 択 した.し
規 電 源 の 競 争 的 な調 達 の た め に,一
Third
Party
Access)
令 で は託 送 条 件 を交 渉 で 決 認 め て い る.
か し,フ
ラ ン ス の よ う に,新
つ の 組 織 が 発 電 事 業 者 か ら卸 電 力 を一 括 購 入 し そ
れ を最 終 需 要 家 や 小 売 り事 業 差 に再 販 す る 方 式 で あ る単 一 購 入 者 制 度(SBS:Single Buyer
System)の
導 入 をEU委
員 会 に提 案 し た が,最
終 的 に は 強 制 ベ ー スTPAを
採
用 す る こ と と な っ た 例 も見 受 け られ る. さ らに 竸 争 的 な 自 由 化 モ デ ル と し て,プ
ー ル シ ス テ ム(pool system)が
あ げ られ る.
表15.2
各 国 に お け る市 場 自 由 化 モ デ ル の適 用 状 況
自由化 モデル TPA
規制ベー ス
適
用
備
国 名
考
デ ンマ ー ク
・1999年 にNord
poolに
アイルラ ンド
・EU指
参加
フ ラ ンス
る. ・提 案 して い たSBSを
ベ ルギー
・EU指
ギ リシ ャ
参加 ・EU指
ル ク セ ン ブル グ
る. ・ア ム ス テ ル ダ ム 電 力 取 引 所 に参 加
令 1年 実 施 遅 れ が 認 め られ て い 廃棄
令 で 1年 の 実施 遅 れ が 認 め ら れ
て い る.ア
ムステルダム電力取引所 に
令 2年 実 施 遅 れ が 認 め られ て い
オ ー ス トラ リア
日 本 交渉ベ ース
・自治 体 に はSBSが
ドイ ツ
認 め られ る
・政 権 交 代 で,規 制 ベ ー ス へ 移 行 か? SBS+ TPA
イ タ リア
・2001年
ポ ル トガ ル
・独 立 系 統 に プ ー ル導 入 予定
強 制 プー ル と規
イ ング ラ ン ド ・ウ ェー ル ズ
・強 制 プ ー ル か ら任 意 プ ー ル へ移 行 予 定
制 ベ ー スTPA
オ ー ス トラ リア
SBSと 規 制 ベ ー スTPAの 組
1月 強 制 プー ル の導 入
合せ プ ー ル+ TPA
の組合せ 任 意 プ ー ル と規
フ ィ ンラ ン ド
制 ベ ー スTPA
スウェーデン
の組合せ
オ ラ ンダ
・1999年 に ア ム ス テ ル ダ ム 電 力 取 引 所 を 開設
スペ イ ン アルゼンチン ア メ リカ ・カ ル フ ォ ル ニ ア 任 意 プ ー ル と交
・3大電 力は完全競争 へ移行,経 営危機
ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド
渉 ベ ー スTPA の組合せ
発電事業 者の協 チ リ 調的 プール と交 渉 ベ ー スTPA の組合せ (出典:矢
島 正 之 「世 界 の 電 力 ビ ッ グバ ン」 東 洋 経 済 新 報 社(1999年))
卸 電力 市場 にお いて徹 底 的な競 争 を導入 しよ うとす る場 合,電 力 の売 り手 と買 い手 が と もに参加 す る短期 の卸電 力市場 が必 要 とな る と認 識 され て い る.こ れ が プール市 場 で,卸 電力 取 引の すべ て がプ ール を通 じて行 われ るこ とが義 務 づ け られ る強制 プール
(mandatory
pool)と,市
場 参 加 者 が プ ー ル を通 じ て の 取 引 の み な らず 相 対 取 引 も可
能 と した 任 意 プ ー ル(voluntary
pool)と に 区 分 さ れ る.従 来 の イ ン グ ラ ン ド ・ウ ェ ー
ル ズ や オ ー ス トラ リ ア(ビ ク トリア 州)市 場 で 採 用 され て い た 強 制 プ ー ル の も とで は, 発 電 事 業 者 と配 電 事 業 者(ま た は 需 要 家)と の 間 で,取 に,契
引 価 格 変 動 リス ク 回 避 の た め
約 価 格 と プ ー ル 価 格 と の 差 を 事 後 的 に 清 算 す る 長 期 契 約(差 額 契 約,CFD:
Contract
For
Difference)が
的 な相 対 契 約(bilateral ま た,チ
交 わ さ れ る.一
contract)とCFDと
方,非
強 制 プ ー ル で の 長 期 契 約 は,物
理
が あ る.
リや オ ラ ン ダ で は 発 電 コ ス トが 最 小 と な る給 電 運 用 を 可 能 と す る た め に 発
電 事 業 者 の協 調 的 な プ ー ル(cooperative ン ダ で は長 期 計 画,チ
generations'pool)が
採 用 さ れ て い る.オ
ラ
リで は完 全 な発 電 市 場 の 自 由 化 な ど,各 国 間 で 新 規 電 源 の 調 達
方 法 は 異 な る. 多 くの 国 で は,さ
ら な る 自 由化 を進 展 す る た め に は,独
離 が 必 要 で あ る と考 え られ て い る.表15.3は,各 状 況 を ま とめ た も の で あ る.こ
こで,送
占分 野 で あ る送 配 電 網 の 分
国 の 送 電 部 門 と配 電 部 門 で の 分 離 の
電 部 門 の 分 離 と は,発 送 配 電 の 一 貫 した 垂 直
統 合 形 態 か ら,送 電 部 門 を分 離 す る こ と を 意 味 し,配 電 部 門 の 分 離 と は,狭
義 の配 電
表15.3 各国 にお ける送電部門 と配 電部門での分離状況 ネ ッ トワ ー クの 分 離
発送な 配電からの送電 の分離 分
離
国 配電 と小売 り供給の分離 分
離
名
ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド(1998∼) イ ン グ ラ ン ド ・ ウ ェ ー ル ズ(2000∼) ス ペ イ ン(1998∼
有 資 格 需 要 家 へ 供 給)
オ ラ ン ダ(1999∼) デ ン マ ー ク(2000∼)
分
ア ンバ ン ド リン グ
離
ノル ウ ェー ス ウ ェー デ ン フ ィ ンラ ン ド オ ー ス トラ リ ア
分
離
統
合
チリ ア ル ゼ ンチ ン ポ ル トガ ル
ア ンバ ン ドリ ング
統
合
ア メ リカ(配 電 は 州 に よ り異 な る), EU(EU指
令),
フ ラ ンス,ド
イ ツ,
ル クセ ンブ ル グ,ギ オ ー ス トリア,イ (出 典:矢
島 正 之 「世 界 の 電 力 ビ ッ グバ ン」 東 洋 経 済新 報 社(1999年))
リシ ャ,
タ リア,日
本
(配 電 サ ー ビ ス)と 小 売 供 給 との 分 離 を 意 味 し て い る.さ
ら に,分 離 に は,資
分 離(separation)と
が 考 え ら れ る.従 来 の イ ン グ
部 門 と会 計 上 の 分 離(unbundling)と
本関 係 の
ラ ン ド ・ウ ェー ル ズ や ノ ル ウ ェ ー の よ う に プ ー ル を導 入 した 場 合 に は,送 電 機 能 を資 本 関 係 で 分 離 し,送 電 ネ ッ トワ ー ク を 全 国 大 の独 立 した 機 関 と し て 分 離 す る こ とが 多 い.卸 売 りや 小 売 りの 供 給 分 野 に 競 争 が 導 入 さ れ る場 合 に は,送 電 機 能 は何 らか の 形 で 分 離 され て い る. 第 1章 に 述 べ た イ ギ リ ス の 電 力 規 制 緩 和 の 動 き は,各
国が電 力小 売市 場 の 自由化 に
ま で 移 行 す る大 き な き っ か け と な った こ とは よ く知 られ て い る.こ 合(EU)全
体 に まで 電 気 事 業 の 再 編 と規 制 緩 和 の 動 き が 及 ん だ.EU委
れ に よ り,欧 州 連 員 会 は,1991年
に公 益 事 業 で あ る電 気 とガ ス の 市 場 に つ い て 次 の よ う な 提 案 を行 っ た. ①
発 電 お よ び 送 配 電 線,ガ
ス ・パ イ プ ラ イ ン建 設 の 排 他 的 な 権 利 に 終 止 符 を 打 つ
こ と. ②
垂 直 統 合 型 事 業 者 に つ い て,電
気 事 業 で あ れ ば,発
・送 ・配 電 部 門 の 管 理 と会
計 を分 け る と い っ た 分 離(ア ンバ ン ド リ ン グ)を 行 う. ③ 大 口産 業 用 需 要 家 と配 電 ・配 給 事 業 者 が 送 配 電 線 あ る い は ガ ス ・パ イ プ ラ イ ン に ア ク セ ス す る権 利 を認 め,安 三 者 ア ク セ ス(TPA)を
価 な エ ネ ル ギ ー の購 入 を可 能 に す る.い
認 め る.
こ の 提 案 に 対 し,加 盟 国 の 一 部 か ら強 硬 な 反 対 が で た.そ ス は,自
由 化 を発 電 部 門 に 限 定 した"単 一 購 入 者 制 度(SBS)"を
セ ス(TPA)"と
同 等 の 選 択 肢 と し て認 め る よ う に 求 め た.そ
の 自 主 性 が 尊 重 さ れ,第 め る の か,"修
わ ゆ る第
の急先 鋒 であ った フ ラン 提 案 し,"第
三者 ア ク
して 最 終 的 に は,加
盟国
三 者 ア ク セ ス に つ い て は"交 渉 に よ る第 三 者 ア ク セ ス"を
正 さ れ た 単 一 購 入 者 制 度"を 選 択 す るの か,と
ご と に決 め る こ とで ま と ま り,1997年 指 令 が 発 効 さ れ た.こ のEU指
2月 にEU域
認
い う二 つ の 方 法 を加 盟 国
内 の 電 力 市 場 自 由 化 を 目 指 すEU
令 で は,第 三 者 ア ク セ ス の 有 資 格 者(大 口 需 要 化 や 配 電
会 社)に つ い て の統 一 基 準 は な く,各 国 が そ の基 準 を 公 表 す る こ と に な っ た.ま た,事 業 の分 離 に つ い て は,送 電 シ ス テ ム の オ ペ レ ー タ管 理 は 他 の 部 門 か ら独 立 し,透 明 性 を担 保 す る こ と,垂 直 統 合 型 の 電 気 事 業 者 は 発 ・送 ・配 電 事 業 ご との 会 計 の 分 離 を行 わ な け れ ば な ら な い こ とが 盛 り込 まれ た. こ の よ う にEU指
令 で は,イ
ギ リス が 採 用 した 事 業 の 完 全 分 割 と小 売 市 場 で の 完 全
自 由化 に まで は 至 っ て い な い が,垂
直 統 合 型 電 気 事 業 者 の 発 ・送 ・配 電 活 動 に お け る
会 計 と管 理 の 分 離 を求 め て い る. EU加
盟 国 は,1996年
末 成 立,1997年
施 行 のEU電
力 自 由 化 指 令 を,1999年
日 ま で に 内 法 化 す る こ とが 義 務 づ け ら れ て い た が,EU委
2月19
員 会 で は その 進捗 状 況 を ま
図15.5
とめ て い る(1999年1月
ヨ ー ロ ッパ の 電 力 系 統 の連 系 状 況
時 点).
15の 加 盟 国 の う ち,ベ ル ギ ー と ア イ ル ラ ン ドはEU指 シ ャ は 2年 の 猶 予 期 間 が 与 え られ て い る.ベ
令 の 国 内 法 化 に 1年 の,ギ
ル ギ ー で は,自
リ
由化 電 力 市 場 か ら電 気 事
業 者 が 早 く利 益 を 得 た い との 要 望 も あ っ て,政 府 も猶 予 期 間 よ り前 倒 し に 国 内 法 を成 立 さ せ る こ と を 表 明 し た.1999年 kWh以
3月 の 最 終 法 案 で は,当 初 は 年 間 電 力 消 費 量 1億
上 の 最 終 需 要 家 を対 象 と し,市 場 開 放 率 は33%で
は産 業 需 要 家 の範 囲 を 拡 大 し,開 放 率 を40%に 存 卸 供 給 契 約 が 終 了 す る2007年
あ り,20006年12月
まで に
引 き上 げ る.そ の 後,配 電 事 業 者 も既
1月 か ら,卸 事 業 者 を 自 由 に 選 択 で き る完 全 自 由 化
へ移 行 す る. そ の他12箇 ェ ー デ ン,フ
国 は,EU指
令 の 実 行 に 向 か っ て,法 政 化 を 進 め て お り,ド イ ツ,ス
ィ ン ラ ン ド,イ ギ リ ス,デ
トガ ル お よ び ア ー ス トリ ア は,す オ ラ ン ダ は,EU指 引 所(APX)を,1999年
ン マ ー ク,ス
ペ イ ン,ル
ウ
ク セ ン ブ ル ク,ポ ル
で に国 内 法 化 を 完 了 し て い る.
令 に合 わ せ,新
しい電 力取 引組 織で ある アム ス テル ダ ム電力 取
5月 に 開 設 し た.現 行 のAPXは,ス
カ ンジナ ビア諸 国 やスペ
イ ン と同 様 の ス ポ ッ ト市 場 で あ る が,先 物 市 場 の 導 入 も視 野 に 入 れ て い る.約50社 参 加 者 との 契 約 を準 備 中 で,そ
の 半 数 は,ド
イ ツ,ベ
の
ル ギ ー を 中 心 と した 外 国 電 力 会
社 と トレ ー ダ で あ り,そ れ ら は 電 力 取 引 契 約 と 系 統 ア ク セ ス 契 約(外 国 か ら の 参 加 者 の 当 該 国 送 電 会 社 との 契 約)を 証 明 し な け れ ば な らな い. 従 来 か ら垂 直 統 合 型 国 有 電 力 会 社 を 有 して い た フ ラ ン ス とイ タ リ ア もEU指 内 法 案 化 に 向 か っ て 動 き始 め た.フ
ラ ン ス で は,1999年
自 由 化 法 案 が 採 択 さ れ,ま
た イ タ リア で は,EU指
1998年11月
力 自 由化 準 備 期 限1999年
に 公 表 さ れ,電
令 の国
3月 の 国 民 議 会 に お い て 電 力
令 を国 内 法化 す る暫 定 措 置例 が 2月19日
の 閣議 で 電 力再 編 案
が 了 承 さ れ た. EU委
員 会 は,EU諸
国 の 電 力 自 由 化 は,指 令 で 求 め られ た 市 場 開 放 率(1999年
19日 に26.48%,2000年
に28%,2003年
に33%)を
て い る.加 盟 国 の 国 内 法 に 基 づ きEU平 %,2007年
に は74%に
2月
上 回 っ て 実 施 さ れ て い る と評 価 し
均 の 市 場 開 放 率 を 算 定 す る と,1999年
達 す る.ま た,イ ギ リス,ド イ ツ,ス
ドは す で に 全 面 自 由 化 を達 成 して お り,ス ペ イ ン,オ
ウ ェ ー デ ン,フ
ラ ン ダ,ベ
で63
ィンラ ン
ル ギ ー も将 来 的 に 全
面 自 由 化 を決 め て い る. EU指
令 で は,許
可 制 か 入 札 制 の い ず れ か を選 択 す る よ う に 定 め ら れ て い た 新 規 電
源 建 設 に 関 して は,ポ
ル トガ ル を の ぞ きす べ て の 加 盟 国 が 許 可 制 を採 用 した.こ
所 定 の 基 準 を 満 た せ ば,誰
れは
も が い つ で も建 設 許 可 を得 る こ とが で き,電 源 建 設 は市 場
に委 ね られ る こ と を意 味 す る. 一 方,第
三 者 ア ク セ ス(TPA)あ
る い は単 一 購 入 者 制(SBS)の
電 系 統 ア ク セ ス に 関 し て は,12か 表 す る 方 式)を 選 択 し て い る.交
国 が 規 制 ベ ー スTPA(政 渉 ベ ー スTPA(契
選択 が求 め られた 送
府 が 送 電 料 金 を 設 定 ・公
約 当 事 者 間 の 交 渉 に よ り送 電 料 金
を設 定 す る 方 式)を 採 用 した の は,ド
イ ツ とギ リ シ ャ,一 方SBSに
ガ ル とイ タ リ アが 規 制 ベ ー スTPAと
併 用 的 に 採 用 した に と ど ま っ て い る.当 初SBS
を提 案 て い た フ ラ ン ス が 規 制 ベ ー スTPAを 多 くの 加 盟 国 が 規 制 ベ ー スTPAを
関 し て は,ポ
ル ト
採 用 した こ と注 目 に値 す る.
選 択 し た が,と
りわ け系 統 を 利 用 使 用 とす る発
電 事 業 者 や 需 要 家 は公 表 料 金 表 に よ り送 電 条 件 を 正 確 に 知 る こ とが で き る料 金 規 制 ベ ー スTPA(R-TPA)を ブ ル ク,ス
採 用 して い る .ベ ル ギ ー,フ
ウ ェ ー デ ン,イ
ギ リ ス,オ
ラ ン ダ,ス
イ ル ラ ン ドお よ び オ ー ス ト リア が こ のN-TPAを ー ク(今 後R-TPAに
変 更 予 定)
,ギ
が 決 定 され る交 渉TPA(N-TAP)を わ か り に くい 点 が 指 摘 さ れ て い る.
ィ ン ラ ン ド,フ ラ ン ス,ル ク セ ン
ペ イ ン,ポ ル トガ ル,イ 採 用 し て い る.こ
タ リア,ア
れ に対 し デ ン マ
リ シ ャ お よ び ドイ ツ は,交 渉 に よ っ て 送 電 料 金 採 用 した が,市
場 参 加 者 に と っ て 送 電 コ ス トが
EU指
令 で は,発 電,送
が 求 め ら れ て い る.多 で は,垂
電 お よ び配 電 の 会 計 分 離 と送 電 系 統 運 用 者 の 運 営 上 の 分 離
くの加 盟 国 で は,送
電 系 統 運 営 会 社 の 分 社 化 が と られ,そ
用 さ れ た.こ
の 分 離 は,内 部 相 互 補 助 と送 電 事 業 の 過 剰 請 求 を防 止 す る こ と を 目 的 と
し た もの で あ る が,送
電 系 統 運 用 者(TSO)の
ラ ン ド,西 部 デ ン マ ー ク,ス ド ・ウ エ ー ル ズ),オ
分 離 の 仕 方 が 2方 式 に 分 か れ た .フ ィ ン
ウ ェ ー デ ン,東
ラ ンダ,ス
と し て お り,一 方,デ
部 オ ー ス ト リ ア,イ
ギ リス(イ ン グ ラ ン
ペ イ ン お よ び ポ ル トガ ル で は,TSOを
ン マ ー ク 東 部,ド
イ ツ,フ
ス(ス コ ッ トラ ン ド,北 ア イ ル ラ ン ド)で は,垂 TSOを
の他
直 統 合 型 事 業 会 社 の 1部 門 に 留 め る もの の 運 営 の 独 立 性 を確 保 す る方 式 が 採
法 的 に別 組 織
ラ ン ス,西 部 オ ー ス トリ ア,イ
ギ リ
直 統 合 型 電 気 事 業 形 態 と維 持 し つ つ
独 立 的 に運 用 す る方 式 を選 択 し た.
こ の よ う にEU諸
国 の 電 力 自 由 化 の あ り方 は,加
盟 国 の 旧 来 体 制 や 状 況 を勘 案 し,
当 該 国 の選 択 に任 さ れ 上 述 の よ う に多 様 な 形 態 とな っ て い るが,今
後 の さ ら な るEU
市 場 の 統 合 を 目指 し た 動 向 に は注 目す る必 要 か あ る. これ 以 降 で は,電
力 自 由化 の 進 捗 に 特 徴 の あ っ た フ ラ ン ス,北
タ リ ア,ス
ペ イ ン の 動 向 に つ い て 述 べ る.
15.2.2
フ ラ ン ス の 電 力 自 由化 動 向
フ ラ ン ス で は,公
営 な ど小 規 模 の発 電 事 業 者 が 存 在 す る が,発
を一 貫 運 営 す る 国 営 の フ ラ ン ス 電 力 公 社(EdF:Electricite 力 量 の 約95%を
供 給 し て い た.た
欧 諸 国,ド
イ ツ,イ
電 ・送 電 ・配 電 事 業
de France)が,総
発電 電
だ し,検 針 や 集 金 な どの 業 務 は,EdF・GDFサ
ビ ス と呼 ば れ る ガ ス公 社 と共 通 の 組 織 が 担 当 し て い る .こ のEdF・GDFサ 90年 の 組 織 再 編 成 に よ り,配 電 局 か ら名 称 変 更 さ れ た もの で,EdF発
ー
ー ビ ス は, 送 電 局 か ら供 給
さ れ た 電 力 を ベ ー ス に 需 要 家 に電 力 を 供 給 し て い る. フ ラ ン ス は,他
の ヨ ー ロ ッパ 諸 国 に比 べ 国 有 電 力 の 民 営 化 は遅 れ 気 味 で あ る.1999
年 3月 に電 力 自 由化 法 案 が 国 民 議 会(下 院)を 通 過 し,同 年 末 ま で にEU指 化 が 実 現 で き る よ う,上 院 に 送 られ た.発 社(EdF)が
・送 ・配 電 は,従
独 占 し て お り,政 府 も垂 直 統 合 型 の 一 貫 シ ス テ ム を 守 る立 場 を 示 し て い
る.法 案 通 過 に よ り,フ ラ ン ス も,EU指 年 まで に32%の
令 に従 い2000年
ま で に需 要 家 の28%,2003
シ ェ ア に 対 し て 第 三 者 ア ク セ ス を 認 め る こ と と な り,実 質 的 に小 売
自 由 化 が 導 入 さ れ る こ とに な っ た.EdFは,今
後 も原 子 力(現 在 発 電 量 ベ ー ス で78%)
を 電 源 の 主 軸 と して 位 置 づ け,有 資 格 重 要 家 もEU指 り,フ ラ ン ス で の 市 場 開 放 率 は,1999年26.48%(年 年30%(年
令 の国内 法
来 どお り フ ラ ン ス電 力 公
間40GWh以
上,約800件),2003年33%(年
令 の 範 囲 に留 め る こ とに し て お 間40GWh以 間9GWh以
上,約400件),2000 上,約2500件)
図15.6
フ ラ ンス電 力 市 場 の 自 由化
と な る見 通 し で あ る. 有 資 格 者(EU指
令 に よ る 年 間 消 費 電 力 量1kWh以
190件)やIPPか
上 の 需 要 家,フ
らの 系 統 ア ク セ ス 要 請 に対 応 す る た め に,系
を行 う系 統 運 用 管 理 者 と し て,大
ラ ンス で は約
統 運 用 とTPAの
口 需 要 担 当 部 門 局 長 を任 命 し た.EdFの
管理
系統運 用部
門 の 独 立 性 確 保 の た め に"系 統 ア ク セ ス 部"を 暫 定 設 置 し,他 部 門 と明 確 に 分 離 し た. こ れ に伴 い こ れ ま で 系 統 運 用 部 門 と一 体 運 用 さ れ て い た 発 電 最 適 運 転 セ ン タ ー と全 国 給 電 指 令 所 の 分 離 も実 施 さ れ た(図15.6参 現 行 制 令 で は,再 電 源(8MW以
照).
生 可 能 エ ネ ル ギ ー や コ ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン ・シ ス テ ム な ど の 小 規 模
下)に 対 して は,EdFに
へ と 引 き上 げ られ た.新
購 入 義 務 が 化 せ ら れ て い るが,こ
計 画 上 の 不 都 合 が 生 じれ ば,規 制 委 員 会(電 力 規 制 委 員 会:政 か ら各 1名,経
期
府 よ り 3名,上 院 と下 院
済 社 会 審 議 会 か ら 1名 の 6名 か ら な り,系 統 ア ク セ ス に関 す る 紛 争 制
定 お よび 電 気 料 金,新 行 い,落
れ が12MW
規 電 源 の 建 設 は,許 可 制 が 用 い ら れ る こ と に な っ た が,長
規 電 源 の 許 可 を政 府 に 提 案 ・答 申 を任 務 と す る)の も と入 札 を
札 電 源 をEdFが
契 約 ・購 入 す る こ と な っ た.
託 送 料 金 は,フ
ラ ン ス 国 内 で は混 雑(congestion)は
少 な い こ とか ら,郵 便 切 手 方 式
が 採 用 さ れ た.公
共 サ ー ビス 義 務 と料 金 制 度 の 諮 問 機 関 と し て 一 つ の 中央 監 視 機 関 と
22の 地 方 監 視 機 関 が 設 置 さ れ る こ と と な った.有 資 格(大 口)需 要 家 の 供 給 事 業 者 との 契 約 期 間 は 最 低 3年 と規 定 さ れ,需 が,一
要 家 が 次 々 と購 入 先 を 変 更 す る こ と を規 制 し て い
方 で は フ ラ ン ス の ス ッ ポ ト市 場 形 成 の 障 害 に な る との 反 対 も出 て い る.
今 後,送
電 の 独 占 が 競 争 阻 害 要 因 とな ら な い よ う に さ ら な る 会 計 分 離(区 分 経 理)を
行 う と し て お り,ま た,政
府 は,系
統 へ の ア クセ ス,紛
争 調停 機関 の設 置 な どにつ い
て の 国 内 制 度 の 整 備 に 取 り組 ん で い る. 現 在,フ %に
ラ ン ス で は,す で に 償 却 の 進 ん だ 原 子 力 発 電 の シ ェ ア が 発 電 電 力 の70∼80
達 し ヨ ー ロ ッパ 内 で も安 価 な 電 力 料 金 を実 現 し て い る こ と,国 内 外 の 電 力 需 要 の
伸 び 悩 み な ど に よ り,大 幅 な電 源 の 新 規 立 地 が 必 要 な い 状 況 に あ る.そ こ で,EdFは, 国 内 でIPP参
入 に よ り失 っ た 顧 客 に 見 合 う だ け の 顧 客 を 国 外 で 獲 得 す る を 目標 に し
て お り,原 子 力 に よ る発 電 電 力 が さ ら に 国 外 に輸 出 さ れ る 図 式 が 続 く も の と 思 わ れ る.
15.2.3
北 欧諸国の動 向
北 欧 で は,1991年
の ノ ル ウ ェ ー を 皮 切 に,1995年
ェ ー デ ン で 新 電 気 事 業 法 が 施 行 さ れ た.各 な い も の の,送
電 部 門 を分 離 さ せ,送
売 部 門 に 競 争 導 入 を 図 っ た.ま
ず,ノ
に フ ィ ン ラ ン ド,1996年
電 系 統 へ の ア ク セ ス を 認 め る こ とで,発
の動 きを受 け
ウ ェー デ ン と フ ィ ン ラ ン ド も,電 気 事 業 法 の 改 正 と規 制 緩 和 を 実 施 した.ノ
ウ ェ ー が 規 制 緩 和 に 踏 み 切 っ た 理 由 の 一 つ は,国 で あ った.ノ
ル ウ ェ ー で は,産
ル
内 の 配 電 事 業 者 の 間 に あ る料 金 格 差
業 用 を除 き,料 金 は 配 電 事 業 者 を 所 有 す る各 自治 体 が
決 定 す る(配 電 部 門 は す べ て 公 営 で あ る).こ
の た め,発
電 コ ス トの 違 い や 各 自治 体 の
政 策 的 な 考 え 方 の 違 い か ら,料 金 格 差 は 最 低 と最 高 と の 間 に20∼30%の た.ス
電 ・小
ル ウ ェ ー が イ ギ リ ス に 追 従 す る形 で 電 力 市 場 の
自 由 化 に 踏 み切 り,家 庭 用 に まで 及 ぶ 小 売 市 場 の 自 由 化 を実 施 した.こ て,ス
にはス ウ
国 と も垂 直 統 合 型 国 有 電 力 会 社 を 民 営 化 し
違 いが あ っ
ウ ェー デ ン の 規 制 緩 和 の 内 容 も ノ ル ウ ェ ー と ほ ぼ 同 様 で あ り,す べ て の 需 要 家
が 系 統 に ア ク セ ス す る こ とが 可 能 で,従 も で き る よ う に な っ た.フ
来 の供 給 事 業 者 以 外 か ら電 気 を購 入 す る こ と
ィ ン ラ ン ドの 規 制 緩 和 の 内 容 も他 の 2国 とほ ぼ 同 じ で あ
り,当 初,系 統 ア ク セ ス が 認 め ら れ た 需 要 家 は500kW以
上 の 規 模 に 限 られ て い た が,
1997年 以 降 は,こ の 制 限 が な くな り,す べ て の 需 要 家 が 自 由 に ア ク セ ス す る こ とが 可 能 な 完 全 自由 化 が 実 施 さ れ た.な の 中 に あ っ て は,北 さ ら に,1996年 Pool,図15.7参
か な か 足 並 み の揃 わ な いEU諸
国 の電力 市場 自由化
欧 諸 国 で は 電 力 市 場 の 完 全 自 由 化 が す で に進 ん で い る. 1月 か ら ノ ル ウ ェ ー と ス ウ ェ ー デ ンの 間 で 北 欧 電 力 統 合 市 場(Nord
照)が 設 立 さ れ,現
在,フ
ィ ン ラ ン ド とデ ン マ ー ク も加 盟 して い る.
(1) ノル ウ ェ ー 1991年
1月 に"エ
ネ ル ギ ー 法"が 施 行 され,送
電 お よ び 配 電 部 門 の 自然 独 占 を 維 持
しつ つ も コモ ン キ ャ リア と して 開 放 す る一 方 で,発
電 お よ び供 給 部 門 に競 争 が 導 入 さ
れ,供
給 事 業 者 と需 要 家 は 自 由 に 送 配 電 系 統 に ア ク セ ス し電 力 取 引 が 行 え る よ うな っ
た.こ
の 新 体 制 で は,電
力 取 引 は プ ー ル 市 場 を 通 じ て,あ
る い は 相 対 契 約(bilateral
(a)北 欧 電 力 市 場(Nord
Pool)の 構 成
(b)北 欧電 力系統 の連系状況 図15.7
北 欧電 力 系 統 と市場 構 成
contract)に
基 づ き行 わ れ る.1995年
(配電 会 社 な ど),大
に は74社
の 発 電 会 社 と約230社
の電 力供給 会社
口 需 要 家 が プ ー ル 市 場 を通 じ て 電 力 取 引 を行 っ て い る(図15.8参
照). 発 電 部 門 の 約99%が
水 力 発 電 で,約140社
電 力)は 総 発 電 電 力 量 の 約28%の 15.9に
の 発 電 会 社 が あ る.Statkraft社(国
有
シ ェ ア を 有 して い る.ノ ル ウ ェ ー の 電 力 系 統 は,図
示 す よ う に,電 圧 階 級 に よ り分 類 さ れ て い る.国 営 の送 電 会 社 で あ るStatnett
社(ノ ル ウ ェ ー 送 電 系 統 会 社)が 基 幹 送 電 設 備 の 約80%を
所 有 し て い る.Statnett社
は,他
社 が 保 有 す る 基 幹 送 電 設 備 を 借 り て 運 用 す る 法 的 権 限 を 有 して お り,実 質 的 に
は,す
べ て の 基 幹 送 電 設 備 を独 占 的 に 運 営 し て い る.送 電 設 備 は コ モ ンキ ャ リ ア と し
て 開 放 され,第
三 者 の 送 電 線 へ の ア ク セ ス を認 め て い る.最 終 需 要 家 へ 電 力 を販 売 す
る電 力 供 給 会 社 は約230社
あ り,そ の ほ とん ど が 配 電 設 備 を所 有 す る地 方 公 営 配 電 会
社 で あ る.
図15.8
ノ ル ウ ェー 電 力 市 場 の 自 由 化 動 向
図15.9
ノル ウ ェ ー送 配 電 系 統 の 階 層 構 造
(2)ス 1996年
ウ ェー デ ン
に,ノ
1月 に 施 行 さ れ た “新 電 気 法 ” に よ り国 内 の電 力 市 場 が 自 由 化 さ れ た.同
ル ウ ェ ー と電 力 市 場 を 統 合 し,Nord
Poolを
っ て い る.水 力 と 原 子 力 と で 発 電 の 約90%を Vattenfall,ド
イ ツ(Preussen
Elektra),フ
占 め る ス ウ ェ ー デ ン で は,国 ラ ン ス(EdF),そ
地 方 自 治 体 が 株 式 を 所 有 す る 共 同 企 業 体 のSydkraft,ス holm
Energiの
3社 が 総 発 電 電 力 量 の約80%を
ェ ー デ ン系 統 運 用 局(Svenaka 国 際 連 系 線 を 所 有 し,運
時
通 じて 国 境 を超 え た 電 力 取 引 も行 有企業 の
の他 外 国 企 業 と国 内 南 部 トッ ク ホ ル ム 市 営 のStock
占 め て い る.送 電 は,国 家 機 関 の ス ウ
Kraftnat:Swedish
National
Grid)が 基 幹 送 電 系 統 と
営 し て い る.送 電 設 備 は コ モ ン キ ャ リア と して 開 放 さ れ,第
3者 の送 電 線 ア ク セ ス を認 め て い る.最 終 需 要 家 へ 電 力 を 販 売 す る電 力 供 給 会 社 は, 約270社
あ り,そ の ほ とん どが 地 方 公 営 の配 電 会 社 で あ る(図15.10参
ス ウ ェ ー デ ン通 商 産 業 省 は,1991年
に 国 内 の エ ネ ル ギ ー 関 連 産 業 の 規 制 機 関 と して
ス ウ ェ ー デ ン 産 業 技 術 開 発 局(NUTEK)を NUTEKは,電
た,電
気 料 金,送
電 料 金,買
許 部 か ら分 離 し た 電 気 料 金 規 制 局(Electric
が 監 督 して い る.さ
ら に,競
デ ン競 争 監 督 局(Swedish
Power
取料金 につ いて は
Price Control
争 に よ る経 済 的 ・効 率 的 事 業 運 営 に 関 して は,ス
Competition
図15.10
15.2.4
設 立 し た.“ 新 電 気 法 ” の 施 行 以 降,
力 ネ ッ トワ ー ク の 規 制 機 関 と して 送 電 サ ー ビ ス に関 わ る す べ て の 項 目
に つ い て の 監 督 を 行 っ て い る.ま NUTEK特
照).
Authority)が
Board) ウェー
監 督 機 関 で あ る.
ス ウ ェー デ ン電 力 市 場 の 自 由化 動 向
ドイ ツ の 動 向
ドイ ツ は,電
力 会 社 が 所 有 す る 送 配 電 網 へ の第 三 者 ア クセ ス を認 め,す
家 を対 象 に 小 売 自 由化 を 認 め て い る.IPPと 託 送 料 金 は 政 府 が 決 め,ま な け れ ば な ら な い.さ
べ ての需 要
電 力 会 社 との 間 の 託 送 は交 渉 と な る が,
た 電 力 会 社 が 託 送 を拒 否 し た 場 合 に は そ の理 由 を明 確 に し
ら に,訴 訟 に至 っ た 場 合 に は,電
力会 社が託 送 で きな い こ とを
図15.11
ドイ ツ 電 力 市 場 の 自 由 化動 向(2001年
現 在)
証 明 し な け れ ば な ら な い とい う き び し い 条 件 が つ け られ る こ と に な る もの とみ られ る (図15.11参
照).
高 い 人 件 費,き
び しい 環 境 基 準,割
高 な 国 内 炭 の 使 用 と新 エ ネ ル ギ ー(太 陽,風
力,
地 熱 な ど)に よ る発 電 電 力 の購 入 義 務 の た め に,ド イ ツ の 電 気 料 金 は,ヨ ー ロ ッパ 内 で も有 数 の 高 さ で あ る.ド イ ツ(西 ドイ ツ)で は,1000社
近 くの 事 業 社 が 存 在 し,旧 西 ド
イ ツ の 発 電 電 力 量 の 約80%を
占 め る 垂 直 統 合 型 の 大 手 電 力 会 社 が 8社,地
社(主 と し て 配 電 会 社)が 約600社,自 し か し な が ら,2001年 社,自
治 体 営 事 業 者(配 電 会 社)が 約900社
で あ っ た.
時 点 で は 電 力 自 由 化 に よ り統 合 廃 止 が 進 み 大 手 電 力 会 社 は 6
治 体 営 事 業 者 は700社,広
域 配 電 会 社 も80社
か ら40社
れ ら の 電 気 事 業 者 は,資 本 の所 有 形 態 に よ り,公 営,公
へ と減 少 し て い る.こ
私 混 合 営,私
分 さ れ て お り,公 営 お よ び 公 私 混 合 営 会 社 の 比 率 が 高 い.大
所 有 して い る.地 域 電 力 会 社(広 域 電 力 供 給 企 業)は,8
購 入 した 電 力 や 自 ら発 電 した 電 力 を,配
営 の 3種 類 に 区
手 電 力 会 社 8社 は,ド
ツ送 電 連 系 組 合 を結 成 し,全 国 の 電 力 需 給 調 整 を行 っ て お り,110kV以 線 の 約80%を
域 電 力会
イ
上 の高圧 送電 大 電力 会社 か ら
電 会 社 また は 需 要 家 に 販 売 し て い る.一
方,
旧 東 ドイ ツ で は,旧 西 ドイ ツ の 8大 電 力 会 社 の 出 資 に よ り,国 営 電 力 会 社 を民 営 化 し, 発 送 電 事 業 を 行 う 電 力 共 同 会 社(Vega)を (Vega社),地
創 設 し た.現
域 エ ネ ル ギ ー 会 社 が15社,多
在 で は,発
送 電 会 社 が 1社
数 の 市 町 村 営 事 業 体 か ら構 成 さ れ て い
る. ドイ ツ の 産 業 会 は,小
売 分 野 の 地 域 独 占 の 撤 廃,EU域
内 の 他 国 か らの 安 価 な 電 力
購 入 に よ る 国 境 を超 え た小 売 自 由 化 に 期 待 し て い る.ま
た,安
い北 欧 か ら の ガ ス に よ
り褐 炭 ・石 炭 利 用 の 経 済 性 の見 直 し,暖 房 需 要 に お け る ガ ス と の競 合 な ど 自 由化 に前 向 き に 対 応 し,電 気 事 業 者 団 体 も,EU指 し て い る.さ
令 の 合 意 後 は,連 邦 政 府 の 自 由 化 政 策 を 支 持
ら に,旧 東 欧 な ど他 の 市 場 へ の 積 極 的 な 進 出,通
供 給 な ど へ の 多 角 的 な 事 業 展 開 を 実 施 しつ つ,IPPの
信 ・ リサ イ ク ル ・ガ ス
事 業 参 入 も始 ま っ て お り,産 業
用 電 力 料 金 の 低 減 が 期 待 され て い る. し か し,EU指
令 を受 け,TPA方
式 に よ る小 売 自 由 化 を政 府 が 決 定 した もの の,連
邦 上 院 で 連 邦 政 府 が 提 案 し た 小 売 の 自 由 化 等 を織 り込 ん だ エ ネ ル ギ ー 法 案 が 否 決 さ れ,さ
ら に,配
電 会 社 を 経 営 す る 自治 体 が 財 政 収 入 の 減 収 な ど の 理 由 か ら 自 由化 に 難
色 を示 す な ど,自 治 体 や 公 営 事 業 者 か ら の 反 発 が 強 く,議 会 で の エ ネ ル ギ ー 法 の 改 正 案 の 成 立 の 見 通 し は 不 透 明 で あ る.
15.2.5
イ タ リア の 電 力 自 由 化 動 向
現 在,財
政 赤 字 の 補 填 や 企 業 の 国 際 競 争 力 の 強 化 の た め,国
進 め られ て い る.公
営 な ど の小 規 模 の 発 電 事 業 者 や 自家 発 電 事 業 者 が 存 在 す る が,発
送 配 電 を 一 貫 経 営 し,総 発 電 電 力 量 の 約80%を Ente
National
営 企業 の民営 化政 策 が
perl'Enrgia
Elettrica)の 民 営 化,発
て,電 力 市 場 の 自 由 化 が 検 討 さ れ て い る.1997年 す る委 員 会 が,国 有 企 業 で あ るENELを
占 め る イ タ リ ア 電 力 公 社(ENEL: 送 配 電 の 分 離 等 の組 織 変 更 も含 め に,商 工 会 の 電 力 市 場 自 由 化 を検 討
発 送 配 電 の 3部 門 に 分 割 し,被 分 割 会 社 の株
図15.12
式 をENELが
イ タ リ ア電 力 市 場 の 自 由 化 動 向
保 有 す る株 式 会 社 方 式 を と り,段 階 的 に 完 全 分 離 を行 う 案 を発 表 し た.
こ の 自 由 化 案 で は,発 電 部 門 は,ENELが
保 有 す る発 電 所 を数 社(4∼5社)の
分 割 保 有 さ せ,安 全 や 環 境 基 準 を ク リア し たIPPの
発 電会社
参 入 を促 進 し,最 終 的 に は完 全 自
由 化 す る.送 電 部 門 は,分 離 独 立 させ 送 電 会 社 を 1社 創 設,配 電 部 門 の14地 を 子 会 社 化 す る.し ENELの
か し,ENEL,労
働 組 合 の 反 対 や,政
民 営 化 ス ケ ジ ュ ー ル も 未 定 の ま ま,行
域配 電局
府 の 慎 重 な 対 応 に よ り,
き先 は 依 然,不
透 明 で あ る(図15 .12
参 照).
15.2.6
ス ペ イ ン の 電 力 自由 化 動 向
スペ イ ンで は,大 小 合 わ せ て150社 気 事 業 連 合 会(UNESA)に に,国
加 盟 す る大 手14社
営 発 電 事 業 者(Endesa)の
frola)で,発
電 量 の 約70%以
る.送 電 網 は,1985年 て い る(図15.13参 ス ペ イ ン は,国
以 上 が 発 電 に 従 事 して い る もの の,ス が,国
内 総 発 電 の 約90%を
ペ イ ン電 占 め る.特
市 場 占 有 率 は 高 く,上 位 2グ ル ー プ(Endesa,Iber 上 を 占 め,発
電 ・配 電 分 野 に お い て 支 配 的 な 立 場 に あ
に 設 立 さ れ た ス ペ イ ン電 力 系 統 社(REDESA)が
所 有 し,運 営 し
照). 営 企 業 の市 場 支 配 と割 高 な 国 内 炭 の 利 用 な ど に よ り,ヨ ー ロ ッパ 内
で も電 気 料 金 が 高 い 国 で あ る.そ
こ で,1995年
供 給 自 由 化(ま た は小 売 託 送)を 試 み た もの の,送
に は,IPPに
よ る大 口 需 要 家 へ の 小 売
電 線 使 用 料 金 の未 決 定,過
発 電 設 備 に よ り,新 規 発 電 事 業 者 の 参 入 の イ ン セ ン テ ィ ブ が 働 か ず,実 果 は あ ま り み られ な か っ た.し 書 」 が 取 り交 わ さ れ,今
か し,1996年(12月)に
度 の 自 由化 方 針 が 決 定 して.市
剰 な既存
質 的 な競 争 効
政 府 と電 気 事 業 者 間 で 「議 定 場 開 放 ス ケ ジ ュ ー ル と して,
図15.13
1998年 以 降,イ
スペ イ ン電 力 市 場 の 自由 化 動 向
ギ リ ス に な ら い,“ 電 力 プ ー ル ”の 導 入 に よ り卸 電 力 を 自 由 化 し,段 階
的 に大 口 需 要 家 を 対 象 とす る小 売 供 給 の 自 由 化 に 着 手 す る 予 定 で あ る(2002年 間 消 費 電 力 量 が500万kWh以 事 業 の 区 分,1999年
上 の 需 要 家 を対 象).さ
まで に 国 営 企 業(Endesa)を
に,年
ら に,EU司
令 に従 い 発 送 配 電
民 営 化 し,2001年
まで に発電 部 門 と
配 電 部 門 の 分 離 を す る 予 定 で あ る.
15.2.7 EU域
EU区
域 電 力 市 場 統 合 の た め の 新 た 取 り組 み
内 電 力 市 場(IEM)の
送 電 事 業 者(TSO)は,当
該 指 令 の 実 施 に係 わ る 未 規 定 の
問 題 に つ い て 新 た な取 り組 み を始 め,7 月 1日 に ドイ ツ の フ ラ ン ク フ ル トに 「欧 州 送 電 事 業 者IEM協
会(ETSO)」
発 送 電 協 調 連 合(UCPTE)の (UCTE),NORDEL(ス の 機 関),イ
を設 立 し た.(図15.14).こ 後 継 機 関 と し て1999年
カ ン ジ ナ ビ ア諸 国 のTSO事
のETSOは,1951年
業 者 間 の 協 調 を狙 い と した 同 様
ギ リス 送 電 系 統 運 営 事 業 者 協 会(UKTSOA),お
事 業 者 協 会(ATSOI)が
よび ア イル ラ ン ドの 送 電
参 加 して 設 立 さ れ た もの で あ る.ETSOは,他
機 構 や 機 関 に 対 す るTSO業
創立の
7月 1日 に 設 立 の 送 電 協 調 連 合
界 の 唯 一 の 窓 口 で あ り,EUの
の ヨー ロ ッパ の
代 表 で あ る こ とを参加 メ
ンバ ー で 合 意 し た. ETSOの ①
機 能 は,
設 立 参 加 の 各 協 会 と そ の 代 表 メ ン バ ー に よ る代 表 権 と コ ミ ュ ー ニ ケ ー シ ョ ン係 わ る 活 動 の調 整
②
共 通 原 則 の 開 発 と,全 欧 域 内 電 力 市 場 拡 大 の た め の,系
統 運 用 の 推 進 と送 電 シ
図15.14
ETSOの
組 織(1999年
7月現 在)
ス テ ム セ キ ュ リ テ ィ推 進 の た め の ミニ マ ム な ル ー ル の 設 定 と協 調 ③EUの
各 機 関 に対 し,欧 州 レベ ル お よ び 国 際 レベ ル で の,IEM構
成 各 国 のTSO
事 業 者 を代 表 し た 活 動 ④TSO業
界 に対 す る欧 州 共 通 の利 益 に か か わ る 問 題 な どの 調 査
国 際 間 の 送 電 ア ク セ ス と価 格 設 定(プ ラ イ シ ン グ)に つ い て の 一 般 原 則 に関 し て は, 構 成 メ ンバ ー 国 で の 実 施 に 係 わ る 法 的 フ レ ー ム を 規 定 し て い る だ け で あ り,送 電 ア ク セ ス とプ ラ イ シ ン グ に つ い て の 具 体 的 メ カ ニ ズ ム に は ふ れ て い な い.こ く,ヨ ー ロ ッパ のTSO事
業 者 は,1998年11月
れ に対 処す べ
に国 際交換 につい て のス テア リング ・
グ ル ー プ(SG)を 設 立 した.こ のSGで は主 と し て,“ 国 際 間 送 電 の 技 術 的 ル ー ル ” と “国 際 間 送 電 の 経 済 ル ー ル ”の 二 つ の グ ル ー プ を 調 整 し て い る .こ の グ ル ー プ で の 作 業 はEUの
全TSO事
ELECTRIC(EU電
業 者,つ
ま り,UCTE,ORDEL,UKTOSA,ATSOIお
よ びEUR
力 業 界 の 協 会)か ら の エ キ ス パ ー トの 積 極 的 参 加 と 協 調 をベ ー ス
と し て い る. こ の 活 動 成 果 は 「電 力 の 国 際 交 換:欧
州 の 送 電 事 業 者 の 一 般 原 則 」最 終 報 告 書(1999
年 4月26日)に
て 公 表 さ れ て い る.こ
に 含 まれ る の は,コ
明性 へ の 十 分 な 配 慮,当 の 実 施 で あ る.こ ま り,EU域
の 一 般 原 則 の 中 で 記 載 さ れ て い る ク ラ イ テ リア
ス ト反 映 性(リ フ レ ク テ ィ ビ テ ィ),電
力 設 備 状 況,非
差 別 性,透
該 指 令 が 規 定 した フ レー ム ワ ー ク に お け る適 用 性 と各 国 個 別
の 最 終 報 告 書 に記 載 さ れ た 原 則 は,IEMの
外 のNORDELやUCTE)さ
れ て い る非EU諸
電 力 系 統 で 強 く結 合(つ 国 に も適 用 さ れ る.系 統 運
用 の 安 全 性 確 保 の た め 必 要 と さ れ る情 報 交 換 に よ っ て 公 平 な 料 金 設 定 が な さ れ る こ と,安 定 運 用 を維 持 す る よ う に 送 電 料 金 が 設 定 さ れ る こ と を 一 般 原 則 と して い る.
15.3
電力市場自由化に伴う諸課題
わ が 国 電 気 事 業 の 競 争 導 入 へ の 対 応 策 と し て,経 向上,顧
営 ・管 理 の 刷 新,費
用 削 減 と効 率
客 サ ー ビ ス の 向 上,組 織 の再 編,事 業 領 域 の 見 直 し な ど が あ げ られ る.特 に,
費 用 削 減 対 策 と し て,設
備 投 資 戦 略 が よ り複 雑 に な る もの と予 想 さ れ る.た
と え ば,
計 画 どお り に電 力 を 販 売 で き な い 場 合 や 実 際 の 需 要 が 需 要 想 定 よ り も下 回 っ た場 合, 費 用 回 収 の た め に電 気 料 金 を上 げ な け れ ば な らな い.こ
の 料 金 上 昇 に よ り,需 要 家 が
他 の 電 気 事 業 者(発 電 事 業 者)に 奪 わ れ る こ と に な る.し
た が っ て,将
る ほ ど,巨 は,事
業 リス ク が 拡 大 す る こ とに な る.
さ ら に,需 な る.た 想,月
来が 不確 実 にな
大 な 設 備 投 資 に よ る 巨 額 な 固 定 費(資 本 費)を 抱 え て い る電 気 事 業 に と っ て
要 家 の 離 脱 防 止 や 新 規 需 要 家 の 獲 得 の た め,サ
と え ば,イ
ギ リ ス の 配 電 会 社 で は,翌
間 の 消 費 価 格 の デ ー タ 提 供,エ
日の プ ー ル 価 格,週
信 ・エ ネ ル ギ ー 監 視 シ ス テ ム(た と え ば,PG&Eが
報 も提 供 し,電 一 方,電
間 の プ ー ル価 格 予
ネル ギー利 用診 断や 電 気供給 事業 者選 択 の ア ド
バ イ ス とか さ ま ざ ま な サ ー ビス を 提 供 し て い る.ア
System:EIS)に
ー ビス の改善 が不 可欠 と
メ リカ で は,需
要 家 との 双 方 向通
採 用 して い るEnergy
Information
よ り,実 時 間 料 金 制 を 提 供 し,機 器 の 電 力 消 費 や コ ス トに 関 す る情 力 に情 報 通 信 技 術 を用 い た 付 加 価 値 を つ け て 販 売 して い る.
気 事 業 は,大
規 模 な 人 員 削 減,設
備 投 資 の繰 り延 べ,長
期 的 な研 究 開 発 の
縮 小 に よ る よ り一 層 の 費 用 削 減 が 強 い られ る.
15.3.1
電 力 系 統 の 計 画 ・運 用 に お け る 諸 課 題
規 制 緩 和 に よ る 競 争 導 入 さ れ た 状 況 に お い て は,電 各 自 に 必 要 な 需 給 バ ラ ン ス の確 保 に 対 して,各 くな る.特
に,競
力 会 社 を 含 め た 市 場 参 加 者 が,
自 で 判 断 し 責 任 を もた な け れ ば な ら な
争 の 激 化 に よ り,コ ス ト的 に 競 争 力 の 弱 い 電 源 が 電 力 市 場 か ら離 脱
して し ま う こ と,建 設 期 間 が 長 く建 設 コス トが 高 い 原 子 力 や 水 力 発 電 設 備 な ど新 設 さ
れ に くい状 況 で ある こ と,市 場 主 導型 で電 源開 発が行 わ れ るこ とに よ り将来 の供 給力 不 足 や系統 の弱 体化 を懸 念 す る意見 もあ る. さ らに,送 電 系統 の建 設 にお いて も,電 源計 画 で発生 す る問 題 よ り も,深 刻 で複雑 な問題 が発 生 す るので はな いか と懸念 されて い る.た とえば,送 電線 の非差 別 的 なオ ー プ ンア クセ ス によ る発 電市場 の 自由化 に よ り,長 期 的 な送電 系統 計画 が,電 源 計画 との整 合性 を十 分 に とる こ とが 困難 にな る こ とが指 摘 され てい る. さ らに,電 気 事業 構造 の変 化 に伴 い,信 頼性 維持 の ため の新 た な対策 が必 要 に なっ て い る.ア メ リカで は,96年 に発生 した西部 大 停電後 に,エ ネル ギー省 が大 統領 に提 出 した事 故の原 因,対 応 策 な どにつ いて の報告 書 で,将 来 につ いて,現 在電 気事 業 が 直面 してい る新 たな競争 的 な環境 に,現 在 の信 頼性 維持 に関 す る制 度 や シス テムが適 応 で きるか どうかが重要 課題 で あ る と指摘 し,検 討 が行 われ て いる. 15.3.2
送 電 線 開 放 に伴 う 諸 課 題
競 争 的 な電 力市場 にお いて,電 力 系統 の信頼 性 と安 定性 を確 保 し,最 適 な需 給運 用 状態 を阻 害 しな いた めに,電 力 市場参 加者 へ の公平 な送電料 金 の設定 方法 が重 要 にな る.今 後,わ が 国 におい て も,将 来,発 電 市場 へ のIPP参 入 の増 大や 自己 託送 の拡 大 が予 想 され るな か,新 設 送 電設 備の 費用 負担 や,送 電 系統 の運用 状態 を反 映 した送 電 料金 の設 定方 法 の検討 が重 要 となる.な お,ア メ リカや イギ リスの送 電料 金,こ れ ま で に提案 されて い る送電 料 金や 託送 料金 の概 要 につ いて は,第 3章 を参照 され たい. しか し,よ り重 要 な問題 は,競 争 導入 に よる送 電制 約 の質 的変 化 で あ る.た とえ ば, イ ギ リス のNGCで
は,民 営化 直後(90年)は,過
負荷 潮流 な ど熱容量 に起 因 す る送電
制 約(送 電容 量制 約)が 支配 的 で あった が,95年 に は,電 圧 安定性 や過 渡安 定度 に起 因 す る制約 が 全体 の約80%を ①
占め てい る.こ ら らの送電 制約 の質 的変 化 の要 因 には,
民営化 以 降,自 由 に立地 され発電 所 の運転 が市 場参 加者 の意 の ま まに行 われ て い る こと.
②
送電制 約 を利 用 して,制 約 に よ り発 生す るコス トを増大 して利 益 を上 げ よう と す る発 電事 業者 が存在 す るこ と.
③
発電 部門 の競 争 に負 けて,系 統運 用 上,貴 重 な無効 電力 源 とな る発電 設備 が 閉 鎖 した こ と.
④NGC自
身 も新規 の送 電線 増強 を先 の ば し して い る こ と.
な どが あげ られ る. その結 果,電 圧安 定性 ・過 渡安 定度 の解 析 は,膨 大 なパ ラメ ータ を必 要 とす る複 雑 で非 常 に時間 のか か る作 業 とな る.一 方,電 圧 安定 性や 過渡安 定度 が起 因 とな る系 統
事 故 は,そ の現 象 の ス ピー ドが速 く,事 故 直後 の人為 的 な対応 が 困難 で,事 故後 の現 象が 予測 しに く く,系 統 運 用面 で も系統安 定化 装置 の設置 な どの対処 が必要 とな る. 90年 代初 頭 に欧米 で始 まっ た電気事 業 の規制 緩和 や競争 原理 導入 の 流れ は,世 界的 に広 まってい く傾 向 にあ る.た だ し,電 力産 業 にお け る規制 緩和 の考 え方や その程 度, 電 力供 給体 制再 編 は,国 情 よって異 な る.し か し,従 来 の電 力会 社 と卸 電気事 業者 を 含 め た発電 部門 全体 の費 用最小 化 と電 力産 業活性 化へ の貢献 とい う点 か ら,発 電部 門 へ の参 入規制 緩和 は評 価 され な けれ ばな らない. 次 に,必 然的 に “託 送 の 自由化 ”(い わ ゆ るオ ー プンア クセ ス)の議 論 が生 まれ て く る.た だ し,託 送 自由化 問題 は,電 力会 社 の供給 義務,供 給 信頼 性,経 営 安定性 な ど の電 力供 給体 制 のあ り方 と深 い係 わ りを もつので,十 分 な検 討が 必要 で あ る.
15.3.3
電 気事業の競 争への対応
わ が 国電気事 業 の競 争導 入へ の対応 策 として,経 営 ・管理 の刷新,費 用 削減 と効 率 向上,顧 客 サ ー ビスの 向上,組 織 の再 編,事 業領 域 の見直 しな どが あ げ られ る.特 に, 費 用 削減対 策 として,設 備投 資戦 略 が よ り複雑 にな る もの と予 想 され る.た とえ ば, 計 画 とお りに電 力 を販 売 で きな い場合 や実 際 の需要 が需 要想定 よ りも下 回 った場 合, 費 用 回収 のた め に電 気料 金 を上 げ なけれ ばな らな い.こ の料 金上 昇 に よ り,需 要 家 が 他 の電 気事 業者(発 電 事業 者)に 奪 われ るこ とにな る.し たが って,将 来 が不確 実 にな るほ ど,巨 大 な設 備投 資 に よ る巨額 な固定費(資 本費)を 抱 え てい る電 気事 業 に とって は,事 業 リス クが拡大 す る ことにな る. さ らに,需 要家 の離 脱 防止 や新規 需 要家 の獲得 のた め,サ ー ビス の改善 が不 可 欠 と なる.た とえば,イ ギ リスの配 電会 社 で は,翌 日の プール価格,週 間 の プー ル価格 予 想,月 間の消 費価格 のデ ータ提 供,エ ネル ギー利 用診 断や電 気供給 事 業者選 択 の ア ド バ イス とか さ まざ まなサ ー ビス を提供 して い る.ア メ リカで は,需 要家 との双 方 向通 信 ・エ ネル ギー監視 シス テム(た とえ ば,PG&Eが
採 用 して いるEISに
よ り,実 時 間
料 金制 を提 供 し,機 器 の電力 消費 や コス トに関す る情報 も提供 し,電 力 に情 報 通信 技 術 を用 いた付加 価値 をつ けて販売 して いる. 欧米 各 国の これ まで の経験 や各 自由化 モデ ルの社 会経済 的 な評価 か ら,ど の よ うな 自 由化 モ デル が電 気事 業 におい て最 もふ さわ しいが判 断 す る ことは容 易 で はな い.電 力 市場 自由化 は世 界 的 な流れ で あ る もの の,そ の試 み は初期 段 階で あ り,最 終 的 な評 価 を行 うの は むずか しい.し か し,規 制 緩和 を実 施 ・検 討 してい る各 国 にお い て も, 電気 事 業 にお ける競争 導 入の根 本 的 な発 想 は,安 価 な電気料 金 を通 じて経 済活 動 の活 性化 を図 る ことであ る.し か し,電 力産 業 はエ ネル ギー の重 要 な中枢 を占 め る とと も
に,固 有 の技 術的 な特 性 を有 して いるた め,経 済学 的 な発 想 のみ で はな く,た とえば, 資源 の有 限性,社 会 的動 向 の反 映,環 境 面 の配慮 が重 要課題 として指摘 で き よう.電 力産 業 の固有 の特 徴 を考 慮 した競争 下で の対 応策 と して, ①
電 力産 業 の設 備投 資 の抑 制 に よる経済 的合 理性 の追 求
②
送 電線 の第三 者 に よる公 平 で 自由な利 用 の保 証
③
環 境 へ のイ ンパ ク トな どの外 部不 経済 の最 小化
④
社 会 的 にみ て説明 可能 な手法 に則 った 系統計 画 の立 案 の必要性
⑤
トー タル 的 にみた社 会 コス トの最 小化
な どが あ げ られ る. わが 国の電 気事 業 にお け る規制 緩和,競 争促 進 は,緒 につ いた ばか りで ある.今 後, 欧 米 諸 国の ように,電 力市 場完 全 自由化,小 売供給 の導入,発 電 ・送 電 ・配電 部門 の 分 割化 な ど,今 後 の規 制緩 和 の行 く先 は,予 測不能 な ものあ る.し か し,競 争 下で あ っ て も,き わ めて複雑 な応 答 を示す動 的 シス テム で あ る電 力系統 の最 適 な計画 ・運 用 を実 現 す るた めに,よ り総 合的 な関連 か ら,社 会経 済 的,技 術 的 な課題 を検 討 してい く必 要が あ る.
15.4
送 電可 能 容量 の算 定 と公 開
15.4.1
競 争的電 力取引と送電可能 容量算定
競争 的 な卸 電力 取 引市場 の機能 を十 分発 揮 させ る ため には,送 電線 開放 に関 す る情 報 を,送 電線利 用 者 に公 開す る必 要 があ る.こ の た め,ア メ リカで は,送 電線 同時情 報 公 開 シス テム(OASIS)が
設 立 され,送 電線 利 用者 はイ ンター ネ ッ トを通 じて送電線
提 供者 が 所有 す る送電線 に関す る情報 を非差 別 的 に アクセ スす る こ とがで きる.こ の OASISに
は,送 電 線 の 合 計 送 電 能 力 を示 す 尺 度 と して合 計 可 能 送 電 能 力(TTC:
total transfer
capability)と送 電線 の空 き容 量 を示 す尺度 として利 用可 能送 電能力
(ATC:available
transfer capability)が掲載 され,送 電線利 用者 は送電 線 の利 用 申
請 を検 討 す る際 に は,こ のOASIS情 ATCを
報 を参 考 にす る こ とが で き る.TTCお
よび
掲載 す る義務 の あ る送 電線 は,① 二 つ の制御 地 域 を連 系 す る送電 線,② 過去
12か 月以 内 に24時 間以 上,送 電 サー ビスの利 用 申請 の拒否 や 送電 サ ー ビスに基 づ く 電 力取 引 の制 限が 実施 され た送電 線,③ 送電 線 利用 者 か ら情 報 の掲載希 望 の あ った送 電 線 で ある. 個々 の 発電 出力 や需 要 の変 化 に伴 い送 電 系統 の潮 流状 態 も変化 す るた め,個 々 の送
電 線 のTTCとATCも
変 化 す る.し
映 し てTTCとATCを
算 定 し,OASISに
そ こ で,TTCとATCは,時
15.4.2 ATCは
か し な が ら,時 々 刻 々 と変 動 す る 系 統 状 況 を 反
間 帯 別,日
掲 載 す る こ と は現 実 的 に は不 可 能 で あ る. 別,月
別 に 算 定 す る 方 法 が 採 用 さ れ て い る.
送 電可能容量の 定義 各 送 電 線 の 物 理 的 な 送 電 可 能 容 量 を示 す 指 標 と して 用 い られ,NERCの
告 書 で は,次
式 の よ うに 定 義 さ れ て い る.
AT==TTC-TRM-既 TTC(total
報
transfer
存 の 送 電 分(CBMを
capability)は,想
含 む)
定 事 故 を考 慮 して 信 頼 度 を確 保 し た 状 態 で
の 連 系 系 統 の 物 理 的 送 電 能 力,TRM(transmission
reliability margin)は
不 確 実性 に
benefit margin)は
連 系 系統 で
対 応 し て 確 保 す べ き マ ー ジ ン(経 験 値),CBM(capacity 供 給 予 備 力 を 確 保 す る た め に必 要 な送 電 容 量 で あ る.さ
らに,送
電停 止で きる送電 取
引 を 含 め たATCで,リ
コ ー ル す る こ とで 可 能 送 電 容 量 を 増 や す こ とが で き る リ コ ー
ル 可ATC(recallable
ATC:RATC),送
ATCの
電 停 止 で き な い 送 電 取 引 に よ るATCで
上 限 と な る リ コ ー ル 不 可ATC(NATC:non-recallable
要 素 とATCの
関 係 は,図15.15の
出 典:Available Transfer determining for commercially
available viable
す る と,各
よ う に 示 さ れ る.
Capacity transfer
ATC)と
Definitions
capabilities
electricity
market,
and
Domination,
of the
interconnected
North
American
ATCと
transmission
Electric
June,1996.
図15.15
A framework
各 要 素 と の関 係
Reliability
for networks Council,
15.4.3
送 電 可 能 容 量 の算 定
NATCは,次
式 の よ う に定 義 さ れ,送 電 系 統 の 最 も優 先 さ れ る 送 電 線 利 用 が 割 り当
て られ る. リ コ ー ル 不 可 な 送 電 サ ー ビス の 最 大 値 は,NERCが
定 め る適 切 な 想 定 事 故 状 態 と平
常 時 運 用 状 態 下 で 系 統 が 確 実 に運 用 で き るた め に,確 保 しな け れ ば な らな い 送 電 余 力 と解 釈 す る こ と が で き る. NATC=TTC-TRM− 一 方,リ
リ コ ー ル 不 可 な 送 電 サ ー ビ ス(CBM含
コ ー ル 可ATCは,計
れ て い る.RTACに
画 段 階 と運 用 段 階 で,そ
む)
れ ぞ れ 以 下 の よ う に定 義 さ
は優 先 順 位 の低 い送 電 サ ー ビ ス が 割 り当 て ら れ る.
●計 画段 階 RATC=TTC-a(TRM)-リ
コ ー ル 可 能 な予 約 さ れ た 送 電 サ ー ビ ス
-リ コ ー ル 不 可 な 予 約 され た 送 電 サ ー ビス(CBM含 0≦a≦1:系
む)
統 信 頼 度 を考 慮 して 各 送 電 線 提 供 者 が 決 定 す る値
● 運用 段階 RATC=TTC-b(TRM)-リ
コ ー ル 可 能 な 計 画 さ れ た 送 電 サ ー ビス
-リ コ ー ル 不 可 な 計 画 さ れ た 送 電 サ ー ビ ス(CBM含 0≦b≦1:系
む)
統 信 頼 度 を 考 慮 し て各 送 電 線 提 供 者 が 決 定 す る値
特 に,技 術 的 に 問 題 とな る の はTTCの
計 算 で で あ る.TTC検
討 の 際 に 用 い る想 定
運 用 条 件 下 の 送 電 系 統 の 潮 流 は,当 然 な が ら実 運 用 上 の 潮 流 と は 異 な る.さ
ら に,実
運 用 に お い て は 発 電 出力 や 需 要 の 変 動 に よ り送 電 線 潮 流 は時 々 刻 々 変 化 して い る.こ う した 系 統 状 況 の 変 化 が 発 生 して も安 定 的 な 送 電 を継 続 で き る よ う に,TTCの を 送 電 マ ー ジ ン と し て確 保 す る こ とが 必 要 とな る.し 系 統 状 態 を反 映 し て,熱 の で,時
容 量,電
間 帯 のTTCは,次
定 の原 則 と して,基
き る こ と(N-1基 ①
圧 や 安 定 度 な どの 物 理 的,電
一部
々 刻 々 と変 化 す る
気 的 な特 性 が 変 化 す る
式 の よ う に,各 上 限 の最 小 値 が 選 ば れ る .
TTC=Minimum(熱 TTC算
た が っ て,時
容 量 上 限,電
圧 上 限,安
定 度 上 限)
本 的 には単 一設 備 事故 時 に も系統 の安 定運 用 が維 持 で
準)が 条 件 と な っ て い る(図15.16参
照).
平 常 時(事 故 前)の 系 統 構 成 ・運 用 状 態 で は,系 統 内 に お け る す べ て の 設 備 の 潮 流 は 平 常 時 運 用 目標 値 以 内 で,か
つ系 統内 にお けるす べて の地点 の電 圧 は平常 時
許 容 範 囲 内 に あ る こ と. ②
電 力 系 統 は,送 電 線,変
圧 器 お よ び 発 電 ユ ニ ッ トな どの 単 一 設 備 事 故 時 に発 生
す る 電 力 動 揺 を 吸 収 し,安 定 運 用 が 維 持 で き る こ と.
出 典:Available determining
Transfer available
for commercially
viable
Capacity transfer
Definitionsand
capabilities
electricity
Domination,A
of the interconnected
market,North
American
framework transmission
Electric
Reliability
for networks Council,
June,1996.
図15.16
③
TTCの
上 限 の変 化
単 一 設備事 故 後 の電力 動揺 が収 ま り,自 動 系 統制御 シス テム の動作 完了後 で, 系統 運 用者 によ る系 統制御 が 実施 され る前 の状 態 にお いて,系 統 内 にお け るす べ て の設備 の潮流 は緊 急時運 用 目標値 以 内で,か つ系 統 内 にお けるすべ ての地 点 の 電圧 は緊急 時許 容範 囲 内に あ るこ と.
④
送 電 能力 が設 定 され てい る送 電設 備 にお いて,そ の能 力 に よ り定 ま る潮 流 を流 す前 に,系 統 内の他 設備 の潮流 が平 常 時運 用 目標 値 に達 した場合 には,送 電 能力 は当該設 備 が平 常時 運用 目標値 に達 した ときの 送電 能力値 に修正 され る.
⑤
送 電線 が 共架 してい る場 合 や同一 用 地 を通 過 してい る場合 な どで,多 重設 備事 故 の可 能性 が高 い ときに は,こ う した きび しい 事故 を考 慮 して送 電能 力が決 定 さ れ る.
なおTTCやATCが
意 味 す る送 電能 力 〔MW〕 は,送 電線 の熱容 量 や定 格容 量 を示
す もの で はな く,負 荷(お よび発電 出力)変 動 時 や系統 事 故時 に も安定 して送 電 が継続 で き る能 力(系 統 安定 度 や電圧 安定 性が 考慮 され る)を示 してい る こ とで あ る.ま た, 送 電能 力 は方向性 を有 して お り,同 一送 電線 で も潮 流方 向 に よ り送電 能力 は異 な る.
また,CBMを
送 電 マー ジ ン として確保 す る妥当性 とその算 定 基準 につ い ての議 論
が 多い.特 に,送 電線 利 用者 の問 で は,CBMは
送電 線所 有者 が 自己 の抱 える需要家 に
電 力 を供 給 す るた めの送 電容 量確保 で あ り送 電線 の差別 的利 用 に あた る とす る もの と し,CBM確
保 の必 要性 を否定 す る意見 が多 い.こ れ まで,電 力 会社(垂 直統 合型)は,
他社 との連系 送電 線 を系 統信頼 度 の確保(系 統 事故 時や 需給 遇迫 時 に緊 急融通 受電 用) と経 済効 率性 の 向上(総 合 的 な発電 設備建 設 コス トの 削減)が 目的で 電力 融通 用 として 利 用 して きた.し か し,送 電線 開放 後 は,こ の融通 受電 とい う概 念が,CBMと
い う送
電 マー ジ ンの確保 に反 映 され たが,算 定 基準 が不 明確 で あ るた め,必 要 性 の是非 も含 め た大 きな議 論 となっ てい る. FERCも,CBM算 現在,NERC内
15.5
定基 準 の標 準化 と算 定根 拠 の情 報 公開 の必 要性 は認 識 して お り, に ワー キ ンググル ー プ を設置 して検 討 を進 め てい る.
地 域 送 電 機 構(RTO)に (Order
関 す る 最 終 規 則
2000)
15.5.1
地 域 送 電 機 構(RTO)の
FERCの
最 終 規 則(Order
提案
No.888,No.889)が1996年
に 発 令 さ れ て 以 来,小 売 自 由
化 の進 展*1,発 電 設 備 売 却 の増 加*2,電 力 会 社 の 合 併 ・買 収 の 増 加*3,パ やIPP等
の 新 規 参 入 者 の増 加*4,ISO(独
電 気 事 業 の 再 編 は 急 速 に進 ん だ.そ *1
1999年10月
ラ ン ド州(1998年
現 在 で,電 1月 開 始),マ
立 系 系 統 運 用 者)の 設 立*5な
の 結 果,競
(1999年10月,州
気 事 業 再 編 法 案 が 成 立 し た21州 サ チ ュ ー セ ッツ 州(1998年
月,商
ン シル ベ ニ ア州(1999年
内 の 需 要 家 の20%を
業 用 ・産 業 用 需 要 家 の33%を
対 象),デ
5966.7万kW(原 *3
子 力 を除 く)で,私
7月,lMW以
リ フ ォ ル ニ ア 州(1998年
売 自由 化 の 予 定 が13州.残 4月 時 点 で,売
対 象),ア
画 の 発 表 件 数 は,1990年
Power
Association)の
の 2件 か ら,1998年
リゾ ナ州
リ ノ イ州(1999年10 りの30州
は電 気 事
却 され た 総 発 電 設 備 容 量 は,
営 電 気 事 業 者 が所 有 す る総 発電 設 備 容 量 の 約10%に Public
3月
上 の 大 口需 要 家 対 象,2000年
1月,州 内 の 需 要 家 の2/3を
対 象)と 5州,小
全 米 公 営 電 気 事 業 協 会(American
者 に よ るM&A計
の う ち,小 売 全 面 自由 化 は ロ ー ドア イ
3月 開 始),カ
ラ ウ ェ ア 州(1999年10月),イ
再 編 の 方 針 が決 定(3 州)も し くは検 討 中(27州). *2 エ ジ ソ ン電 気 協 会(EEI)の 調 査 に よれ ば,1999年
メ リカの
争 環 境 下 で 複 雑 化 す る電 力 市 場 に お け
開 始)の 3州.小 売 部 分 自 由 化 済 は,モ ン タ ナ州(1998年 4月 に全 面 自 由 化 の 予 定),ペ
ワー マ ー ケ タ
ど,ア
相 当.
調 査 に よれ ば,私 営 電 気 事 業
の13件,1999年(8
月16日
現 在)の
25件 に 増 加. *4
パ ワ ー マ ー ケ タ の 総 卸 電 力 販 売 量 は,1996年
期 の8661億kWhに 社 に急 増.1998年 kWh.こ
急 増.そ
の 数(FERC認
第 1四 半 期 の275億kWhか
定)は,1992年
の総 卸 電 力 取 引 量 は約 4兆kWh,最
の 8社 か ら1999年(8
ら1998年
第 3四 半
月 2 日現 在)で651
終 需 要 家 へ の 総 販 売 電 力 量 は約 3兆2000億
の う ちパ ワ ー マ ー ケ タ に卸 電 力 取 引量 は 2兆2825億kWh(約57%).
る系 統 信 頼 度 の 確 保 と非 差 別 的 な 送 電 線 利 用 に よ る競 争 的 な 卸 電 力 市 場 の 構 築 の た め の 中 立 的 な 系 統 運 用 機 関 と し て 考 案 され た 組 織 で あ る.ISOに し て,送
電 会 社(Trans
い な か っ た.近
年,卸
Coな
代 わ る系統運 用機 関 と
ど)の 設 立 も検 討 さ れ て い る が,具
体 的 な提 示 はされ て
電 力 取 引 量 が 増 加 し,従 来 の 電 力 会 社 が 個 別 に 系 統 運 用 を行 う
方 式 で は,系 統 信 頼 度 を確 保 す る こ とが 困 難 とな っ て き て い る. 発 送 電 の 機 能 分 離 だ け で は,電 力 会 社 が 自社 の 送 電 線 利 用 を優 先 す る な ど の 差 別 的 慣 行 の 防 止 が 不 十 分 で あ る な どの 指 摘 か ら,各 地 に 委 ね ら れ て い たISOの 軟 な 組 織 形 態 を許 容 した 上 で,送 電 線 を所 有,運
営 制 御 す るす べ て の 電 気 事 業 者 は 自
主 的 に 大 き な 地 域 的 な 規 模 を 有 す る 地 域 送 電 機 構(RTO:regional operator)に FRECか
設 立 を,柔
参 加 す る こ と を 求 め る 最 終 規 則(Order
transmission
2000)が,1999年12月15日
ら発 表 さ れ た.す べ て の 市 場 参 加 者 か ら独 立 し たRTOは,地
に
域 的規模 の確保
し,送 電 設 備 の 運 用 制 御 の 権 限 や 電 力 取 引 の 需 給 計 画 や 計 画 停 電 の 承 認 な どの 短 期 的 な 系 統 信 頼 を 確 保 す る た め に 必 要 な 権 限 を有 し て い な け れ ば な らな い(表15.4参 表15.4
地 域 送 電 機 構(RTO)の
照).
特徴
内容 ・す べ て の市 場 参 加 者(電 力 取 引 を行 う事 業 者,補 立 ・市 場 参 加 者 に よ るRTOの
①独 立性の確保
② 地域的規模 の確 保
所 有 権 は 1%に 制 限
・系統信頼 度を確保 し,効 率的で非差別的 な電 力市場 を構築す るの に十分 な地 域 的な規模 の確保 ・管轄 下にあ るすべての送電設備の運用制御 の責任 を有す る
③ 運用制御 の権 限 ④ 短期的 な系 統信頼 度の確保
15.5.2
助 サ ー ビ ス の提 供 者)か ら独
・電 力 取 引 ス ケ ジ ュー リ ング ,発 電 ユ ニ ッ トの 給 電,計
地 域 送 電 機 構(RTO)の
さ らに,RTOに
画 停 電 の承 認 な ど送 電
系統 の 短 期 的 な 信 頼 度 を確 保 す るた め に必 要 を権 限 を有 す る
特 徴 と機 能
は,① 送 電料金 表 の管理 と送 電料 金 の設定,② 市 場 メカ ニズ ムを利
用 した 送 電 線 混 雑 管 理,③ ル ー プ フロ ー 問題 の解 決,④ 補 助 サ ー ビス の 提 供,⑤ OASISの
管理,⑥ 市場 構 造 の欠陥 や市場 支配 力 の行 使 な どの市 場監 視,⑦ 送 電系 統拡
充計 画 の責任,⑧ 他 地域 との協調 な どとい った機能 を有 してい なけれ ば な らな い.競 争環 境下 で は,正 確 な長 期需 給見 通 しを立 て る ことが困難 で あ り,長 期需給 バ ラ ンス
*5
1999年11月
California
現 在 で 5箇 所 のISOが
ISO(1998年
(1999年11月18日),ERCOT
3 月31日
運 用 中.ISO
運 用 開 始),PJM Texas
ISO(1996年
New ISO(1998年 9 月11日
England(1997年
7月 1 日 運 用 開 始),
1月 1 日 運 用 開 始),New 運 用 開 始).
York
ISO
表15.5
地 域 送 電 機 構RTOの
機能
内容 ①送電料金表 の管理 と送電料金の設定
・送 電 料 金 表 の管 理 . ・二 重 取 り(pan-caking)の
防止 ,競 争 的 卸 電 力 市 場 の機 能 維 持 また 送 電 設 備 建
設投資の促進 を図るための送電料金の設定
② 市場 メカニズム を ・送 電 線 利 用 者 に正 確 な価 格 シグ ナ ル を与 え るた め に ,送 電 線 混 雑 を管 理 す る 利用 した送電線混 た め の 市 場 メ カ ニ ズ ム の 導 入(運 用 か ら 1年 以 内)
雑管理 ③ ル ー プ フ ロー 問 題 の解決
・ル ー プ フ ロー(契 約 上 の 送 電 ル ー ト以 外 を流 れ る電 力潮 流)の 解 決 対 策 プ ロセ ス の策 定(運 用 か ら 3年 以 内)
④補助 的サー ビスの 提供
・補 助 的 サ ー ビ スの 必 要 量 の判 断 ,す べ て の 補 助 的 サ ー ビ スの 提 供 ・最 終 供 給 責 任 者(ラ ス トリ ゾー ト)と して の 役 割 を 担 う ・OASISの
⑤OASISの
管理
管理
・ATCとTTCの
算定責任
・市場構造 の欠陥や市場支配力 の行使 の監視 と,必 要な改善措置 の提 案
⑥市場監視 ⑦送電系統拡 張計 画 の責任
・系統信頼度確保 と効率的 な送電 サー ビス提供 に必要 な送電系統拡張計 画の策 定. ・送電線所有者 への指示 ・系統の安定運用維 持のための他地域 との協調
⑧他地域 との協調
の 確 保 は基 本 的 に 市 場 に 委 ね られ て い る.こ
の た め,発
電設備 建設 へ の投 資 イ ンセ ン
テ ィ ブ や 価 格 シ グ ナ ル を市 場 参 加 者 に与 え な け れ ば な ら な い.ま 市 場 を機 能 させ,送 と な る(表15.5参 mance
based
た,競
争 的 な卸電 力
電 設 備 建 設 へ の 投 資 を促 進 す る た め に も,送 電 料 金 の 設 定 が 重 要 照).FERCは,ま
ratemaking)や
た,パ
フ ォ ー マ ン ス 料 金 規 制(PBR:perfor
混 雑 料 金 を 含 む さ ま ざ まな イ ン セ ン テ ィ ブ料 金 設 定 方 式
に 関 わ る ガ イ ドラ イ ン を提 示 して い る. 以 上 の 四 つ の 特 徴 と八 つ の 機 能 を 満 足 して い れ ば,RTOの 関 で あ るISOや
営 利 機 関 で あ る送 電 会 社(Trans
Co.な
組 織 形 態 は,非
ど),そ
営利 機
の 他 の 組 織 形 態 も認
め る と い う,柔 軟 な 組 織 形 態 を容 認 し て い る*6.
15.5.3
地 域 送 電 機 構(RTO)の
FRECは,送 15日
電 線 を所 有,運
まで にRTOへ
形成 動向 用 制 御 す る す べ て の 電 気 事 業 者 に対 し,2000年10月
の参 加 を 申 請 す る こ と,2001年12月15日
開 始 す る こ と して い る.FERCは,RTO設 *6
1999年12月15日,FERCは
組 織 形 態 は,送
まで にRTOの
運用 を
立 を 支 援 す る た め に 開 催 を計 画 し て い る
ア イ ラ ンズ(Alliance)RTOの
設 立 案 を承 認(条 件 つ き).RTOの
電 設 備 の 所 有 と運 用 制 御 の 両 者 の 機 能 を担 う営 利 送 電 会 社(TransCo)で
あ る.
(注)ISA(independent scheduling administrator) *ISAは 将 来 的 に 複 数 の州 を ま た ぐISOま た は 送電 会 社 を設 立 す る まで の 移 行 的 な機 関 で, OASISの
運 営,電
力 取 引 の 調整 ・監視 の 役 割 を担 う.た だ し,送 電 料 金 表 の 管 理 や 送 電
設 備 の 運 用制 御 は 行 わ な い. 図15.17
ISOお
よびRTOの
ワー ク シ ョ ッ プ へ の 参 加 を 勧 め て い る.あ され れ ば,効
設 立 動 向(1999年10月
る程 度 の 地 域 的 規 模 を 有 す るRTOが
形成
率 的 な 卸 電 力 市 場 の 形 成 と送 電 線 の 非 差 別 的 な利 用 に資 す る と い う意 見
が 多 い が,こ れ ま で にISOと
して の 運 用 を 開 始 す る ま で に か な りの 年 月 を 費 や し て い
る こ とか ら,地 域 的 な 広 が りを 有 したRTOの い う意 見 も あ る(図15.17参
形 成 ま で に は,相
当 の年 月 を要 す る と
照).
わ が 国 の 電 気 事 業 体 制 の あ り方 に 関 して は,今 て 検 証 し,さ
現 在)
回 の 部 分 自 由 化 の 効 果 を 3年 に渡 っ
ら な る 自 由 化 を進 め る か 否 か を 決 定 す る こ と と な っ て い る.第
述 べ た よ う に イ ギ リ ス は,現 行 の 強 制 電 力 プ ー ル を放 棄 し,先 物,短
1章 に も
期 相 対 契 約,需
給 調 整 の三 つ の 市 場 か ら な る相 対 契 約 を 主 体 と し た 電 力 取 引 体 制 の 構 築 を 志 向 し て い る.北 欧 を は じ め とす るEU諸 な わ ち,PJMな
国 は,相 対 契 約 と取 引 市 場 を も つ ハ イ ブ リ ッ ド型,す
どの ア メ リ カ 形 の 市 場 統 一 を め ざ して お り,世 界 的 に は,規 制 型 第 3
者 ア ク セ ス 制 と取 引 市 場 の 併 設 が 主 流 に 成 りつ つ あ る.
参考文献 1)鶴
田:規
制 緩 和,ち
2)植
草:講
座 ・公 的 規 制 と産 業 ① 電 力,NTT出
く ま新 書,1997. 版,1994.
3)電
気 事 業 講 座 編 集 委 員 会:電
気 事 業 講 座 第15巻
“海 外 の 電 気 事 業 ”,電
力 新 報 社,
1996. 4)矢
島:電
力 市 場 自 由 化 の 動 向 と評 価,平
成 9年 度 電 力 研 究 所 経 営 部 門 別 研 究 発 表 会 予
稿 集,1998. 5)総
務 庁:98年
6)電
気 事 業 講 座 編 集 委 員 会 編 集:電
度 版 規 制 緩 和 白 書,1998. 気 事 業 講 座 第 1巻
電 気 事 業 の 経 営,電
力 新 報 社,
1996. 7)浅
野:電
力 自 由 市 場 下 で の 需 給 マ ネ ー ジ メ ン トの モ デ ル 化,電
学 論B,115,pp.101-
104,1995,
8)丸
山:送
電 網 へ の エ ッセ ン シ ャル ・フ ァ シ リ テ ィ の 法 理 の 適 用,電
力 中 央 研 究 所 報 告,
Y96008,1998. 9)Sally
Hunt
and
TRICITY,John 10)塚
本:米
Shuttleworth:COMPETITION
AND
CHOICE
IN
ELEC
国 を 中 心 と し た 最 近 の 電 気 事 業 の 動 向-送 電 線 ア ク セ ス を巡 る 動 き と託 送 料 金
算 定 方 法,(財)日 11)塚
Graham
Wiley&Sons,Inc.,1996.
本,佐
本 エ ネ ル ギ ー 経 済 研 究 所,第313回
川:送
定 例 研 究 会 報 告 資 料,1995.
電 線 ア ク セ ス 料 金 算 定 の 理 論 的 ア プ ロ ー チ,第12回
エ ネ ル ギ ー シ ステ
ム ・経 済 コ ン フ ァ レ ン ス 講 演 論 文 集,No.3-1,pp.55-60,1996. 12)塚
本:送
電 ア ク セ ス が 電 力 計 画/運
し て),(財)日 13)海
用 に 与 え る影 響 と 課 題(米 国 規 制 緩 和 事 例 を 参 考 と
本 エ ネ ル ギ ー 経 済 研 究 所,第329回
外 電 力 調 査 会:98年
定 例 研 究 会 報 告 資 料,1997.
以 降 の 英 米 の 電 力 供 給 シ ス テ ム,海
外 電 力 調 査 報 告 書,No.
186,1997. 14)田
山:競
pp.13-20,6 15)浅
野,岡
争 下 で の 送 電 料 金 設 定 方 式(日 欧 米 の 送 電 料 金 設 定 方 式 を 比 較),海
外 電 力,
月 号,1996. 田:送
電 コ ス トの 推 定 手 法 と負 荷 ・距 離 法 の 評 価,第12回
エ ネ ル ギー シス テ
ム ・経 済 コ ン フ ァ レ ン ス,pp.67-72,1996. 16)J.W.Marangon
Lima:Allocation
interpretation,IEEE/KTH
of transmission
Stockholm
Power
Tech.
fixed
charges;an
economic
Conference,Stockholm,
Sweden,
1995-6. 17)R.R.Kavacs
and
A.L.Leverett:A
embedded,incremental Power
and
load
marginal
flow
based
cost of transmission
method
for
capacity,IEEE
calculating Trans.on
System,9,1,pp.272-278,1994-2.
18)H.Rudinick,R.Plama Allocation
and
in Transmission
J.E.Frnandez:Marginal Open
Access,
IEEE
pricing Trans.on
and
Power
Supplement
Cost
Systems,10,2,pp.
1125-1142,1995-5. 19)J.W.Marangon IEEE 20)浅
Lima:Allocation
Trans.on 野,岡
Power
of transmission
fixed
charges;an
overview,
Systems,11,3,pp.1409-1478,1996-8.
田:地
域 別 送 電 線 使 用 料 金 の 算 定 手 法,電
田:混
雑 し た 送 電 網 に お け るnodal
気 学 会 論 文 誌B,117-B,1,pp.61
-67 ,1997, 21)松
川,岡
pricingの
適 用 と問 題 点,第12回
ギ ー シ ス テ ム ・経 済 コ ン フ ァ レ ン ス 講 演 論 文 集,3-2,pp.61-66,1996.
エ ネル
22)Fred
C.Schweppe,Michael
: SPOT
PRICING
OF
C.Caraminis,Richared
ELECTRICITY,Kluwer
D.Tabors
Academic
and Roger E.Bohn
Publisher,1987.
23)W.Hogan,:Contract Network for Electric Power Transmission,Journal of RegulatoryEconomics,4,pp.211-242,1992. 24)H.Chao and S.Peck:Market Mechanisms for Electric Power Transmission, Journal of Regulatory Economics,10,pp.25-59,1996. 25)Michael
Hsu:An
introduction
to the pricing of electric power
transmission,
UtilitiesPolicy,6,3,pp.257-270,1997. 26)R.D.Tabors:Transmission
System
and International Comparisons,IEEE
Management Trans.on
and Pricing,New Power
Paradigms
Systems,9,1,pp.206-215,
1994. 27)岡
田,浅
野:ノ
ー ダ ル プ ラ イ ス 評 価 プ ロ グ ラ ム マ ニ ュ ア ル,電
力 中央 研 究 所 研 究調 査 資
料,No.Y98902,1998.
28)A.J.Wood
and B.F.Wollenberg:POWER
CONTROL(SECOND 29)田
山:英
国NGC社
30)F.WU:電 31)特
集
GENERATION,OPERATION,AND
EDITION),John
Wiley&Sons,Inc.,1996.
の 送 電 料 金 に つ い て,海
力 市 場 化 の 世 界 的 動 向,電 “欧 米 電 気 事 業 に 関 す るQ&A”,海
32)OFFER:Review
外 電 力,40,1,pp.4-34,1998.
of Electricity Trading
33)B.Turgoose:Recent
development
外 電 力,pp.12-23,1996-2.
学 誌,118,3,pp.169-172,1998.
Arrangements,Proposals,July,1998.
worldwide
in power
exchanges,POWER
ECO
NOMICS,2,6,1998. 34)玉
置:競
35)岡
田,浅
争 導 入 と需 要 家 重 視 の 新 電 力 供 給 シ ス テ ム(上),電 野:ノ
気 評 論,No.10,1997.
ー ダ ル プ ラ イ ス の 基 づ く送 電 料 金 の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 分 析,電
力 中央 研
究 所 報 告,Y97019,1998.
36)Associations
Agreement
on Criteria To Determine
Transmission
Trariff,May22,
1998, 37)C.Wilcok
and M.Krun:Wheeling
ment,Power 38)伊
in Germany-the
Industry Associations' Agree
Economics,2,pp.22-23,June1998.
藤:VDEW,VIK,BDIの
3者 間 託 送 料 金 協 定 の 内 容 と料 金 算 定 事 例,海
外 電 力,
pp.16-22,1998-10,
39)California
power
exchange
corporation:Introduction
to the market,seminar
guide,November1997. 40)鈴
木:加
州 に お け るISOとPXの
運 営 ∼ 電 力 取 引 市 場 で の 需 給 計 画 作 成,海
外 電 力,
pp.2-16,1998-9. 41)鈴
木:PJMに
お け る 送 電 サ ー ビ ス と送 電 料 金 表(米 国)(送 電 線 空 き容 量 の 考 え 方),海
外 電 力,pp,27-37,1999-2. 42)た
と え ば,森
本:ミ
43)PJM:Locational 44)鈴
木:ニ
ク ロ 経 済 学,有
Marginal
斐 閣 ブ ッ ク ス,1992.
Pricing Implementation
Course,March1998.
ュ ー ヨ ー ク パ ワ ー プ ー ル に お け る ロ ケ ー シ ョ ナ ル プ ラ イ シ ン グ の 適 用(米 国),
海 外 電 力,pp.2-13,1998.
45)福
島:自 由 化 され た 卸 電 力 市 場 に お け る信 頼 度 維 持 対 策NERCの
(TLR)手 46)Ian
Dobbs:Managerial
47)FERC:Order
Economics,OXFORD
No.2000Regional
48)NERC:Transmission and
送電 線潮流 軽減
順 に つ い て,海 外 電 力,pp.27-36,1996.
Reporting
University Press,2000.
Transmission
Transfer
Organization
December20,1999.
Capability A Reference Document
the Electric Power
Transfer
Capability
for Calculating
of Interconnected
Electric
System,May1995.
49)NERC:Available Transfer CapabilityDefinitionand Determination,A framework for determining available transfer capabilitiesof the interconnected transmission networks for a commercially viable electricitymarket,Jun1996(http://www .nerc. com), 50)PJM:PJM
Manual
for Fixed Transmission
51)PJM:PJM
Manual
for Open
Rights,Revision02,October
Access Transmission
,1999. Tariff Accounting ,Revision08,
September,1999. 52)New
York
Independent
System
Operator(NYISO):Ancillary
Service manual,
1999. 53)Interconnected
Operation Service Working
ed Operations 54)OKARIGE
National
Competitive 55)鈴
Services under Open
木:米
56)(社)海
Group(NERC):DefiningInterconnect
Access,March,1997.
Lab:Unbundling
Generation
Electricity Markets;Examing 国 に お け る地 域 送 電 機 関(RTO)設
外 電 力調 査 会:98年
and Transmission
Service for
Ancillary Services,January1998. 立 の 動 向,海
外 電 力,pp.45-57,2000-1
.
以 降 の 英 米 の 電 力 供 給 シ ス テ ム,海 外 電 力調 査 報 告No .
186,1997. 57)塚
本:送 電 ア クセ ス が電 力 計画/運 用 に与 え る影 響 と課題(米 国規 制 緩 和 事例 を参 考 と
して),エ 58)塚
ネル ギー 経済,23,5,pp.2-25,1997.
本:米 国 にお ける送 電 ア クセ ス を巡 る動 き と託 送 料 金 算定 方 式例,エ ネ ル ギー 経 済,
21,9,1995, 59)岡
田,浅
討,電
野,松
川:Nodal
Pricingに
よ る送電 料 金 に よる送 電 料 金設 定 方 法 の基 礎 的検
気 学 会 電 力 技 術 研 究 会 資 料No.PE-96-53,1996.
60)矢
島正 之:電 力 改革,東 洋 経 済新 報 社,1998.
61)矢
島正 之:世 界 の電 力 ビ ッグバ ン,東 洋 経済 新 報 社,1999.
62)石
原正 康:電 力 自 由化,日 刊 工業 新 聞 社,1999.
63)電
力 政 策 研 究会:図 説 電 力 の小 売 り自由化,電 力新 報 社,2000 .
64)鶴
田 俊 正:規
65)川
本
66)鶴 67)橋
明:規
制 緩 和,ち 制 改 革,中
く ま 新 書,1997. 公 新 書,1998.
光 太 郎:日 本 的 市場 経 済 シス テム,講 談 社 現 代新 書,1998. 本 寿 郎,中 川 淳 司:規 制 緩和 の政 治経 済 学,有 斐 閣,2000.
索
引 CTAIDI(需
英 数字
間)
2-ス テ ッ ジ 依 存 型 統 計 計 画 問 題 AC(平
204
均 費 用)
AC法(交
47
流 法 潮 流 計 算)
AENS(平
要家 の 全平 均 供給 不 能 持 続 時
均 供 給 不 能 エ ネ ル ギ ー)
CTC(競
194 争 移 行 料 金)
DC法(直
377
De-Coupled
194
DSA(動
47
DSM(デ
Newton-Raphson法
均 固 定 費 用)
APD(確
率 的 デ ィ ス パ ッ チ)プ ロ グ ラ ム 226
DSP
APX(ア
ム ス テ ル ダ ム 電 力 取 引 所)
EDC(経
済 負 荷 配 分 制 御)
EdF(フ
ラ ン ス 電 力 公 社)
ASQG(適
406
162,174,177 用 統 計 準 勾 配 法)
ATC(利
用 可 能 送 電 能 力)
ATSOI(ア
209 28,123,160,422
AVC(平
均 可 変 費 用)
AVR(自
動 電 圧 調 整 器)
47 136,283
EdF・GDFサ
ELD(経
済 負 荷 配 分)
ELD(等
価 負 荷 持 続 曲 線)
ENEL(イ
タ リ ア電 力 公 社)
383
EPAct(エ
ネ ル ギ ー 政 策 法)
EPRL
CAIFI(需
要 家 の 平 均 供 給 不 能 頻 度)
194
ERCOT(テ
Cayley変
換
176
域)
営 中 央 発 電 局)
CFD(差
額 契 約)
CG法
ESCO
12
ETSO(欧
州 送 電 事 業 者IEM協
EUE(供
給 不 足 エ ネ ル ギ ー)
EUROSTAG(長
194 125
COP3 CPFLOW(連
続 型 潮 流 計 算)
CPUC CRP CR法 CS(消
EU委
352
FACTS機
費 者 余 剰)
FC(固
220,233
員 会
405
器
183,239,328
定 費 用) 度-持
89
FEA(フ
ー リ エ 級 数 近 似 法)
57
185
周 期 系 統 現 象評 価 解 析 支 援
FDC(頻
FERC(連
417
需 要 家 の 供 給 不 足 エ ネ ル ギ ー) 195
27
180
会)
シ ミ ュ レ ー タ)
244
244
261 353
EUEIC(各
均 供 給 不 能 持 続 時 間)
Method
Mechanism
180
性 中 心)
Continuation
24
14
COI(慣
22
キサス電力信頼 度協議 会管轄 地
Escape
CIT(平
6,415
240
423
20,404
55 186 220,239
要 家 の 平 均 供 給 不 能 持 続 時 間) 194
CEGB(国
426 419,421
EMTP
CE
408
EIS
161
CBM
133
ー ビ ス
252
CAIDI(需
46
6,408
ジ ソ ン 電 気 協 会)
BCU法 最 大 化 決 定 法
248
238
backward-forward(BF)法
Bellman-Zadehの
231
マ ン ド・サ イ ド・マ ネ ジ メ ン ト)
EEI(エ
イ ル ラ ン ド の 送 電 事 業 者 協 会) 417
78,377
的 信 頼 度 評 価)
AFC(平
Arnoldi法
27
流 法 潮 流 計 算)
47
続 時 間 曲 線)
185 186,190
邦 エ ネ ル ギ ー 規 制 委 員 会) 4,22,96,140
FFT(高
速 フ ー リ エ 変 換 法)
Fixed
Slope
De-Coupled
186,189
Newton-Raphson
法 Full
Newton-Raphson法
Gauss・Seidel法 GCE(グ
ラ ム シ ャ リ エ 級 数 法)
要 家 の 最 大 供 給 不 能 時 間)
231
MICIF(需
要 家 の 最 大 供 給 不 能 頻 度)
231
ML-MD
231
MTTF(平
均 健 全 運 転 継 続 時 間)
226
MTTR(平
均 事 故 継 続 時 間)
226
331
HMC(時
間 別 モ ン テ カ ル ロ デ ィ ス パ ッ チ)プ
ロ グ ラ ム
226
ICRP
75,91
1GBT
331
IOS(系
統 連 系 運 用 サ ー ビ ス)
IPP(独
立 系 発 電 事 業 者)
立 系 統 運 用 機 関)
5,24,68,149
Kryrov列 Kuhu-Tucker条 LAC(長
件
期 平 均 費 用 曲 線)
Lanczos法 点 別 限 界 価 格)
LC(長
期 総 費 用 曲 線)
LD(負
荷 持 続 曲 線)
LFC(負
荷 周 波 数 制 御)
LMC(長
期 限 界 費 用 曲 線)
LOLE(供
給 支 障 電 力 量)
LOLH(供
給 支 障 時 間)
LOLP(供
給 不 足 確 率)
LOLPIC(各
需 要 家 の 供 給 不 足 確 率)
352
NERC(北
ア メ リカ 電 力 信 頼 度 協 議 会)
NETA(新
電 力 取 引 制 度)
83,130,140
220
Newton-Raphson法
231
シ ョ ナ ル ・グ リ ッ ド)
413
NORDEL
417
NP(ナ
シ ョナ ル ・パ ワ ー)
85
N-TPA(交
51
OASIS(送
23,27,143,240,422 OFFER(電 OPF(最
気 事 業 規 制 局) 適 潮 流 計 算)
Order
No.888
4,23,96
226
Order
No.889
4,23,97
14,185
PAFC
370
PEFC
136
PG(パ
LTD(長
周 期 動 的)現 象
241
PPP(プ
182
PPS
162
predictor-corrector(CP)法
MC(限 MCP(市
界 費 用) 場 決 済 価 格)
MD MD-ML
5,131 78,110,377
226
249
数 法
407
電 線 同 時 情 報 公 開 シ ス テ ム)
190
ッ プ 切 換 え器)
部 大 西 洋 地 域 協 議 会)
12
渉TPA)
LRA(タ
MAAC(中
13,75,131
Pool
Look-Ahead法
Lyapunov関
147
NETOMAC
PBR(パ
解
12
NEDO
Nord
51
423
ュ ー ク リ ア ・エ レ ク ト リ ッ ク)
194
LU分
380
コ ー ル 不 可ATC)
NE(ニ
NGC(ナ
134
194
キ ュ リ テ ィ
NATC(リ
110
162,177
LBMP(地
n-1セ
177
51
194
181
144
5,131,237,242,376 ISO(独
180
MICID(需
187,191
GTO
MF
フ ォ ー マ ン ス 料 金 規 制)
370 ワ ー ・ジ ェ ン) ー ル 支 払 価 格)
PRI(消
47
PROMODIV(供
149
費 者 物 価 上 昇 率)
16
245 14
給 信頼度評価解析 支援 ソフ
トウ ェ ア) PS(生
12
242
24
180,181
428
産 者 余 剰)
180
PSP(プ
ー ル 購 入 価 格)
MEGA-NOPR
22
PSS(系
統 安 定 化 装 置)
MEGA-utility
27
PSS/E
225 57 16 137,160 220,229
PURPA(公
益 事 業 規 制 政 策 法)
P-Vカ
4,22,352
ー ブ
244
PWM
334,345
PX(電 QCモ
力 取 引 所)
5,148
ー ド周 波 数 シ フ ト方 式
QF(認
285
定 設 備)
4,22
QR法
162,172
RATC(リ
コ ー ル 可ATC)
423
RBI法 RC(同
期 調 相 器)
RCT(直
接 た た み 込 み 法)
Reactive
Tabu
259
効 電 力 エ ラ ー 検 出 方 式)
ROCOF(周
波 数 変 化 率 検 出 方 式)
RTNS
83 28,68 423
TSC(サ
イ リス タ開 閉 キ ャパ シタ)
331
TTC(合
計 可 能 送電 能 力)
422
UCTE(送
電 協 調 連 合)
UKTSOA(イ
UPS(無
417
ギ リス 送 電 系 統 運 営 事 業 者 協
会)
417
UPFC
259
REED(無
TRM
137 186,189
ペ イ ン 電 力 系 統 社)
三 者 ア クセ ス)
UNESA(ス
Mechanism
REDESA(ス
電 線混 雑 解 消)手 順
TPA(第
172
Reaction
Search(RTS)
TLR(送
ペ イ ン電 気 事業 連 合 会)
416 335
停 電 電 源 シス テム)
373
U-schedule(無 制 約 供 給 契約)
14
VC(可 変 費 用)
47
416
VOLL
288
VSA(電
281
Y法
14 圧 信 頼 度評 価)
248 220
238
RTO(地
域 送 電 機 構)
R-TPA(料
あ
131,426 407
ア イル ラ ン ドの送 電 事 業者 協 会(ATSOI) 417
SAIDI(系
統 の 平 均 供 給 不 能 持 続 時 間)
194
ア ク テ ィ ブ フ ィル タ
SAIFI(系
統 の 平 均 供 給 不 能 頻 度)
194
ア ップ リフ ト
SBS(単 SC(ス
金 規 制 ベ ー スTPA)
行
一 購 入 者 制 度)
28,402
ケ ジ ュ ー リ ン グ ・コ ー デ ィ ネ ー タ)
ア ナ ロ グ シ ミュ レー タ ア ム ステ ル ダ ム電 力 取 引所(APX)
25,149
ア ン シ ラ リーサ ー ビス
344 16 220 406 70,131
SCADAシ
ス テ ム
280
安 定 化 制御
311
SQG(統
計 準 勾 配 法)
207
安 定 度
159
期 限 界 費 用)
107
安 定 領域
176
的 信 頼 度 評 価)
248 334
硫 黄 酸化 物
379
331
イ ギ リス送 電 系 統運 営 事 業 者協 会
SRMC(短 SSA(静 SSSC(自
励 式 直 列 コ ン デ ン サ)
STATCOM Statkraft社 SVC(静
412
電 型 無 効 電 力 補 償 装 置) 137,268,299,330
T2 TCBR(サ TCCs(送 TCPST(サ TCR(サ TCSC(サ Tinney
イ リ ス タ 制 御 制 動 抵 抗 器)
イ リ ス タ 制 御 位 相 器) イ リ ス タ 制 御 リ ア ク トル)
417 159
位 相補 償 関 数 180
電 線 混 雑 契 約)
(UKTSOA) 位 相 角安 定 度
337 89
イ タ リア電 力公 社(ENEL) 一 般均 衡 分 析 一般 電 気 事 業者
314 6,415 55 36
337
移 動 通 信
361
330
イ ンバ ー タ
356
イ ンピー ダ ンス測 定 方 式
289
イ リス タ 制 御 直 列 コ ン デ ン サ) 336 181
ウ イ ン ド フ ァ ー ム
過 負荷 潮 流
420
14
可 変速 風 力 発電 シ ステ ム
299
135
可 変速 揚 水 発電 シ ステ ム
302
297,355
運 転 用 給 電 計 画 運 転 予 備 力
可 変費 用(VC) エ ジ ソ ン 電 気 協 会(EEI)
426
エ ネ ル ギ ー 間 競 合
3,42
47
環 境制 約 付 き負荷 配 分 モ ジ ュー ル
226
慣性 中心(COI)
125
エ ネ ル ギ ー 関 数
161
完 全競 争
53
エ ネ ル ギ ー 枯 渇 問 題
350
完 全競 争 型 の供 給 形 態
10
完 全競 争 市 場
54
エ ネ ル ギ ー 政 策 法(EPAct)
22
エ ネ ル ギ ー貯 蔵 モ ジ ュ ー ル
226
エ ネ ル ギ ー の 使 用 の 合 理 化 に 関 す る 法 律 354
規 制緩 和
エ リ オ ッ ト社
規 制 さ れたTPA
31
規 制ベ ー スTPA
402
366
1,350
417
規 制 マ ス トテ イ ク電 源
151
大 口 需 要 家
397
規 制 マ ス トラ ン電 源
151
オ ー ダ リ ン グ
182
北 アメ リカ電 力信 頼 度 協 議会(NERC)
欧 州 送 電 事 業 者IEM協
会(ETSO)
オ ー プ ン ア ク セ ス
83,130,140
34,421
オ プ シ ョ ン 市 場
17
オ プ シ ョ ン モ ジ ュ ー ル
226
機 能分 離
6
規 模 の経 済 性
41
基 本 プ ロ グ ラム
226
卸 託 送 型 供 給 形 態
10
逆 潮 流
222
卸 電 気 事 業 者
36
逆 潮 流 あ り
278
逆 潮 流 な し
278
卸 託 送
10,68
か
行
逆 電 力 リ レー
カ ー タ ー 政 権 時 代
2
会 計 上 の 分 離
405
回 収 不 能 投 資
23
回 収 不 能 費 用
62
海 底 ケ ー ブ ル 送 電
340
逆 反 復 法
278 162,172
逆 問題
261
キ ャ プス トン社
366
キ ュ ミュラ ン ト法
187
供給形態
回 転 形 系 統 連 系 装 置
317
卸 託 送型――
10
各 需 要 家 の 供 給 不 足 エ ネ ル ギ ー(EUEIC)
195
完 全 競争 型 の――
10
各 需 要 家 の 供 給 不 足 確 率(LOLPIC)
194
独 占的 な――
確 約 サ ー ビ ス
67
確 率 信 頼 性 指 標
185
確 率 的 デ ィ ス パ ッ チ(APD)プ
ロ グ ラ ム 226
ガ ス コ ン バ イ ン ドサ イ ク ル 発 電 モ ジ ュ ー ル 227 寡 占 活 動 基 準 帰 属(ABC)手 過 渡 安 定 度
54,61 法
101 123,137,311,420
発 電 市場 自 由化 型 の――
8 9
供給 支 障 時 間(LOLH)
226
供給 支 障 電力 量(LOLE)
226
供給 信 頼 度評 価 解 析 支 援 ソフ トウ ェア (PROMODIV) 供給 独 占
225 54
供給 不 足 エ ネ ル ギー(EUE)
185
供 給不 足 確 率(LOLP)
185
供 給 予備 力
135
原 動 機 制 御
306
強 制 サ ー ビ ス
145
限 流 器
343
強 制 プ ー ル
403
競 争移 行 料 金(CTC)
27
競 争 原理
2
公 益 事 業
1
公 益 事 業 規 制 政 策 法(PURPA)
競 争 入札
401
合 計 可 能 送 電 能 力(TTC)
協 調 的 な プー ル
404
交 渉TPA(N-TPA)
共 同 サ ー ビ ス
145
交 渉 に よ るTPA
局 限化 継 電 器
280
高 速 フ ー リエ 変 換 法(FFT)
近 接 固有 値
173
高 速 モ ン テ カ ル ロ 法
422 407 31,402
237
グ ラ ム シ ャ リエ 級 数 法(GCE)
187,191
グ リー ン制
353
経 済負 荷 配 分 制 御(EDC)
133
経 済 負 荷 配 分(ELD)
55
経 済融 通 モ ジ ュー ル 形 式 上(Pro-format)の
226 送 電 料 金表
形 式 的 送 電 料 金 規制
186,189 196
高 調 波
組 み込 み の機 能
4,22,352
138,275,344
小 売 託 送
10,68
交 流 法 潮 流 計 算(AC法)
377
氷 蓄 積 技 術
365
国 営 中 央 発 電 局(CEGB)
12
コ ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン
361
固 定 費 用(FC)
47
個 別 サ ー ビス
145
97
固 有 値
164
23
固 有 ベ ク トル
164
系統 ア ク セス 契 約
407
混 合 系
166
系統 ア ク セス 部
409
混 雑
409
系統 安 定 化 装 置(PSS)
137,160
混 雑 料 金
82
系統 解 析 ソ フ トウェ ア
219
コ ンバ イ ン ドサ イ ク ル 技 術
365
系統 混 雑 度
380
コ ンバ イ ン ドサ イ ク ル 式 の 火 力 発 電 所
370
系統 事 故 時 の事 後 処 理 解 析
225
系 統 周 波 数制 御
303
さ
行
系統 の 平 均供 給 不 能 持 続 時 間(SAIDI)
194
系 統 の 平 均供 給 不 能 頻 度(SAIFI)
194
ア ン シ ラ リ ー ― ―
系 統 連 系 運用 サ ー ビ ス(IOS)
144
確 約――
67
系 統 連 系 技術 ガ イ ドラ イ ン
354
強 制――
145
系 統連 系 装置
317
共 同 ――
144
軽 負荷 時 間帯
14
系 統 連 系 運 用――(10S)
144
契 約経 路 方式
70
個 別――
145
206
商 用 ― ―
146
限 界費 用(MC)
47
送 電 ― ―
限 界費 用 方式
70
送 電 付 帯――
49
地 点 間 ― ―
限 界 コス ト
限 界利 潤
サービス 70,131
67 376 23,67
建 材一 体 化 技 術
360
ネ ッ トワ ー ク――
67
減 衰率
169
ネ ッ トワ ー ク 送 電 ― ―
23
非 確 約 ― ―
67
市場 支 配 力
63
必 要 ― ―
146
市場 需 要 曲線
最 適 速 度 制 御
306
次 数 間高 調 波注 入 方 式
最 適 潮 流 計 算(OPF)
44 288
シス テム
78,110,377
サ イ リ ス タ
331
SCADA―
サ イ リ ス タ 開 閉 キ ャ パ シ タ(TSC)
331
可 変 速風 力 発 電 ― ―
―
280 299
サ イ リ ス タ ス イ ッ チ
341
可 変 速揚 水 発 電――
302
無 停 電 電源――(UPS)
373
サ イ リ ス タ 制 御 位 相 器(TCPST)
337
サ イ リ ス タ 制 御 制 動 抵 抗 器(TCBR)
337
自然 エ ネル ギ ー
サ イ リ ス タ 制 御 直 列 コ ン デ ン サ(TCSC)
336
自然独 占
サ イ リ ス タ 制 御 リ ア ク トル(TCR)
330
自然独 占性
3,41
自端 検 出 式
280
サ イ リ ス タ リ ミ ッ タ
342
差 額 契 約(CFD)
実行 可 能 性 の 回復 問題
20,404
差 額 調 整
20
先 物 市 場
16,21,25,147
サ ッ チ ャ ー 政 権 時 代
2
サ ン プ ル 時 間
166
時 間 別 限 界 コ ス トモ ジ ュ ー ル
226
事 故 時 バ ッ ク ア ッ プ 料 金 事 故 時 補 給 電 力
1
119 136,283
資 本 関係 の 分離
404
シ ミュ レー シ ョン技術
218
シ ミュ レー タ
220
シ ャー プ レイ値 配 分 方式
147
社 会 厚生
58
社 会 的欠 損
時 間 別 モ ン テ カ ル ロ デ ィ ス パ ッ チ(HMC)プ ロ グ ラ ム
自動電 圧 調 整器(AVR)
299
61
226
周 波 数
169
401
周 波 数維 持
133
140
周 波 数 シ フ ト方式
287
周 波 数制 御
133
17
周 波 数変 化 率検 出方 式(ROCOF)
281
54
周 波 数変 換 装 置
317
市場 オ プ シ ョ ン―― 完 全 競 争――
周 波 数変 動
273
需 給 調 整――
21,147
周 波 数変 動 量検 出 シー ケ ンス
289
ス ポ ッ ト――
17,149
重 負荷 時 間 帯
短 期 契 約――
21,147
需 給 調整
先 物――
16,21,25,147
14 133
60
需 給 調整 市 場
21,147
取 引 1時 間 前――
151
主 双 対 内点 法
111
取 引 前 日――
151
受 動 的方 式
280
需 要 家 の最 大供 給 不 能 時 間(MICID)
194 194
独 占――
発 電――
自 由 化 型 の 供 給 形 態
9
プ ー ル―― モ ジ ュ ー ル
227
需 要 家 の最 大 供給 不 能頻 度(MICIF)
北 欧 電 力 統 合――
410
需 要 家 の全 平 均供 給 不 能持 続 時 間(CTAIDI)
リア ル タ イ ム――
153
194
406
需 要 家 の平 均 供給 不 能 持続 時間(CAIDI) 194
市 場 開 放 率 市 場 経 済 市 場 決 済 価 格(MCP)
43 149
需 要 家 の平 均 供給 不 能頻 度(CAIFI) 需 要 曲線
194 44
需 要 の 価 格 弾 力 性
45
瞬 動 予 備 力
静 電 型無 効 電 力補 償 装 置(SVC) 137,268,299,300
135
上 限 価 格
4
制 動 トル ク係 数
314
消 費 者 物 価 上 昇 率(PRI)
14
制 約 付 き燃 料 供給 モ ジ ュー ル
226
消 費 者 余 剰(CS)
57
整 流 器形 限流 器
344
商 用 サ ー ビ ス
146
セ キ ュ リテ ィ制 約
378
商 用 電 源 停 電 対 策
373
セル
371
線 形 化
164
初 期 の 決 済
20
自 励 式 イ ン バ ー タ
331
線 形 微分 方 程 式
163
自 励 式 切 換 器
300
全 米 公営 電 気 事業 協 会
426
自 励 式 直 流 送 電
338
全 面 自由化
399
自 励 式 直 列 コ ン デ ン サ(SSSC)
334
総 括 原価 方 式
148
総 括 費 用方 式
70
自励 式 変 換 器 し わ と りバ ッ ク ア ッ プ 料 金
331 102,401
新 エ ネ 法
352
操 業 停止 点
新 電 力 取 引 制 度(NETA)
147
送 電 協調 連 合(UCTE)
417
185
送 電 系統 影 響 評価 モ ジ ュー ル
227
信 頼 性 指 数 信 頼 度
送 電 サ ー ビ ス
276,376
信 頼 度 マ ス ト ラ ン 電 源
49
151
67
送 電 制約
420
送 電 線 開放 型 垂 直 統 合 型 供 給 体 制
7
推 定 期 間 特 定 型
400
水 平 分 割 型 供 給 体 制
7
10
送 電 線混 雑 解 消(TLR)手
順
83
送 電 線混 雑 費 用
89
送 電 線 同時 情 報公 開 シ ステ ム(OASIS) 23,27,143,240,422
水 力 発 電 最 適 化 モ ジ ュ ー ル
227
ス ウ ェ ー デ ン 競 争 監 督 局
413
送 電 能力 の シ ミュ レー シ ョ ン解 析
224
ス ウ ェ ー デ ン 系 統 運 用 局
413
送 電 付帯 サ ー ビス
376
送 電 容量 制 約
420
ス ケ ジ ュ ー リ ン グ ・コ ー デ ィ ネ ー タ(SC) 25,149 ス ナ バ ー 回 路 ス パ ー ス 性
331 177,181
送 電 利用 権
88
総 費 用 曲線
47
双 方 向通 信 ・エ ネ ル ギー 監 視 シ ス テム
ス パ ー ス ベ ク トル 法
181
ス ペ イ ン 電 気 事 業 連 合 会(UNESA)
416
双 方 独 占
ス ペ イ ン 電 力 系 統 社(REDESA)
416
総 余 剰
ス ペ ク トル 変 換 ス ポ ッ ト市 場
173,176 17,149
419,421 54 58
ゾー ン制 料 金
400
組 織 分離
6
損 益 分岐 点 生 産 コ ス ト
185
生 産 コ ス ト シ ミ ュ レー シ ョ ン
206
生 産 者 余 剰(PS) 静 的 信 頼 度 評 価(SSA)
57 248
49 た
行
ダ イオ ー ド変 換器
300
対 角 行列
163
待 機 予備 力 第 三 者 ア ク セス(TPA) 太 平 洋北 西 部 地域(Indego)
135 28,68
象
241
長 周期 動 揺
160
長 周期 モ ー ド
175
193
調相 設 備
341
太 陽光 セル
360
超 伝 導
343
太 陽 光発 電
297,359
潮 流 限界 点
121
大 偏 差法
24
長 周期 動 的(LTD)現
太 陽光 発 電 フ ィール ドテ ス ト
359
潮 流 分 布 係 数
太 陽 電池 モ ジュ ール
360
直 接 たた み込 み法(RCT)
託 送 託 送 契 約 託 送 の 自由 化 多地 域 電 源拡 張 計 画 法 脱 調
67,401 377 34,421
79 186,189
直 流 法 潮 流計 算(DC法)
78,377
直 流 リンク
301
直 交 展 開
193
197 159,337
定 期 検 査時 補 給 電力
140
タ ップ切換 え器(LRA)
136
定 態 安 定度
137
他 励 式 直 流送 電
340
停 電 コス ト
単 一 購 入者 制 度(SBS)
28,402
単 一 設備 事 故
424
短 期 供給 曲線
50
短 期 契約 市 場
21,147
短 期 限界 費 用(SRMC) 短 期 限界 費 用 方 式 短 時 間電 力 供 給 予測 単 独 運転
107 72 357 222,277
(ERGOT)
209
デ ジタ ル シ ミュレ ー タ
220
デ ジタ ル制 御 系
166
デ マ ン ド・ サ イ ド・ マ ネ ジ メ ン ト(DSM)
46
電圧 ・ 周 波 数 異常 継 電器
278
電圧 ・ 周 波 数制 御 方 式
374
278
電圧 ・ 無 効 電 力制 御
単 独 運転 検 出 リ レー シー ケ ンス
289
電圧 安 定 性
131,427
24
適 用 統計 準 勾 配法(ASQG)
単 独 運転 検 出
地域 送 電 機 構(RTO)
59
テ キサ ス電 力 信頼 度 協 議会 管 轄 地域
136 120,136,420
電圧 安 定 度
159
電圧 位 相 シ フ ト検 出 方式
281
逐 次 反復 法
172
電圧 信 頼 度評 価(VSA)
249
窒 素酸 化 物
379
電圧 制 御
136
電圧 プ リ ッカ
138
電圧 変 動
274
電 圧 変 動低 減 対 策
291
地 点 間サ ー ビス 地 点 別 限 界価 格(LBMP) 中央 給 電 制御
23,67 85 376
中部 大 西 洋地 域 協 議 会(MAAC)
24
展 開 中 心 法
長 期 供 給 曲線
51
電 気 事 業規 制 局(OFFER)
長 期 限 界費 用 曲線(LMC)
51
長 期 限 界費 用 方 式
72
電 気 事 業者 一 般― ―
長 期 総 費 用 曲線(LC)
51
卸 ― ―
36
長 期 平 均費 用 曲線(LAC)
51
特 定――
36
長周 期系統現象評価解析 支援 シ ミュレー タ (EUROSTAG)
233
193 5,131 36
特 定規 模 ― ―
36
電 気 自動車 用 電 源
372
電 気 料 金規 制 局
413
転 送 遮 断方 式
278
電 力 改 質 セ ン ター
348
電 力 買 取 り制 度
353
電 力 規 制委 員 会
409
電 力 事 業 の 自 由化
取 引 前 日
25,151 な
行
ナ シ ョ ナ ル ・グ リ ッ ト(NGC)
13,75,131
ナ シ ョナ ル ・パ ワ ー(NP)
12
350 二部 料 金制
400
電 力 取 引所(PX)
5,148
日本 工 業 大 学
361
電 力 プ ール
399
ニ ュ ー ク リ ア ・エ レ ク ト リ ッ ク(NE)
電力 揺 動 モ ー ド
175
電 力 取 引 契約
407
12
任意 プー ル
404
認 定 設 備(QF)
等価 負荷 持続 曲線(ELD) 同期 化 トル ク係 数
314
同期 調 相 器(RC)
137
同期 外 れ
304
同期 発電 機
300
同 期 発電 機 方 式
356
同 期併 入
4
186 ネ ッ トワ ー ク サ ー ビ ス
67
ネ ッ トワ ー ク送 電 サ ー ビ ス 熱容 量
23
160
燃料 電 池
370
燃料 費
377
能 動 的 方式
280
324
統 計 準 勾配 法(SQG)
207
同時同量
101,139
同 時 反 復法
311
動 的 シ ミュ レー シ ョン
220
動 的 信 頼度 評 価(DSA)
248
トー メ ン
358
独占
54,59
供給――
54
自然 ――
1
双方―― 独 占市 場 独 占 的競 争 特 定 規 模 電 気事 業 者
行
ハ ー フ ィ ン ダ ル ・フ ィ ッ シ ャ ー マ ン 指 標 バ イオ マ ス燃 焼 発電
63 373
ハ イ ブ リ ッ ド型 供 給 シ ス テ ム パ ッ シ ブ フ ィル タ 発送 配 電一 貫 型 発 電 運 転 モ ー ド
54,61
発電 可 能容 量 分
36
181 は
60 9
77,107,426
ノ ー ド縮 約 法
54
独 占 的 な供給 形 態
120
ノー ダ ル プ ライ ス
162,173,177
動 態 安 定度
ノー ズ カー ブ
発 電 機 間 縮 約 ア ド ミタ ン ス 行 列
5 344 4 306 17 182
発電 市 場 自由化 型 の供 給 形 態
9
特定供給
362
発電 出力 の 平準 化
300
特定契約
399
ハ ネ ウ ェ ル パ ワー シ ス テ ム ズ 社
366
パ フ ォ ー マ ン ス 料 金 規 制(PBR)
428
特 定電 気 事 業 者
36
独 立 系統 運 用 機関(ISO)
5,24,68,149
パ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス 技 術
独 立 系発 電 事 業者(IPP) 5,131,237,242,376 取 引 1時 間 前
パ ワ ー ・ジ ェ ン(PG)
25,151
パ ワー コ ン デ ィシ ョナ
12 294,328 360
非 確約 サ ー ビス
67
非整 数 次 高 調 波
275
部 分空 間 法
172
必 要 サ ー ビス
146
部 分 自 由化
397,399
費用
部 分均 衡 分 析
55
浮遊 ノ ー ド
181
可変― ―(VC)
47
プ ライ ス キ ャ ップ規 制
限 界 ――(MC)
47
ブ ラ ック スタ ー ト
限 界 ― ― 方式
70
フラ ン ス電 力公 社(EdF)
固 定 ――(FC)
47
ブ ロ ッ ク対 角行 列
178
総 ―― 曲線
47
ブ ロ ッ ク対 角性
178
総 括 ―― 方 式
70
プ ロ フ ァイ リン グ
送 電 線 混 雑 ― ―
89
分 散 型 電 源
短 期 限界 ―― 方式
72
分 散 型電 源 系 統 連 系技 術 指 針
短 期 限界 ― ―(SRMC)
107
14,154 138 6,408
19 2 223
分 散 型電 源 複 数 台連 系
292
長 期 限 界 ― ― 曲線(LMC)
51
長 期 限 界 ―― 方式
72
長 期 総 ―― 曲線(LC)
51
平均 可 変 費 用(AVC)
長 期 平 均 ―― 曲線(LAC)
51
平均 供 給 不 能 エ ネル ギ ー(AENS)
平 均 ― ―(AC)
47
平均 供 給 不 能持 続 時 間(CIT)
194
平 均 可 変――(AVC)
47
平 均 健 全 運 転継 続 時 間(MTTF)
226
47
平 均 固 定 費 用(AFC)
平 均 固 定― ―(AFC:) 標 準 モ ジ ュール 費 用 の 劣加 法性
226 41
頻 度-持 続 時 間 曲 線(FDC)
185
不安 定領 域
177
フー リエ 級 数 近 似 法(FEA) 風 力 エ ネル ギー 風力発電 プ ー ル購 入 価格(PSP)
186,190
分 散 電源
297,346,350 47 194
47
平 均 事 故継 続 時 間(MTTR)
226
平 均 費 用(AC)
47
平衡点
159,163
べ き乗 法
162,172
ペ ネ トレー シ ョ ン レシオ
374
変 更 命令
401
299 297,355 16
ボーマン・ パ ワー ・シ ステ ム ズ社
366
補給電力
140
プ ール 市 場 モ ジ ュ ール
227
北 欧 電 力 統 合 市場
410
プ ール シス テ ム
402
母 線 ア ド ミタ ン ス行 列
378
プー ル 支 払価 格(PPP)
16
母 線 電 圧
178
負荷 ・ 距 離法
71
北海道苫前町
357
ポ ン プ入 力
303
負 荷 持続 曲線(LD)
190
負 荷 周波 数 制 御(LFC)
134
負荷 変動 対 応 電 力
139
負荷 変動 方 式
287
マ ー ケ ッ ト ・オ ペ レー タ
負荷 余 裕
121
マ イ クロ ガ ス ター ビン
363
マ ク ロ・ブ ロ ッ ク
236
マ ル チ エ リアモ デ リング モ ジ ュー ル
226
不完全競争 複 占
54 54,61
ま
行 21
マ ル チ フユ ーエ ル
364
誘 導 発電 機
292,298
誘 導 発電 機 方 式 無 効 電 力 エ ラー 検 出方 式(REED)
288
無 効 電 力補 償 装 置(SVC)
268
無 効 電 力補 償 方 式
288
無 制 約 供給 計 画(U-schedule) 無 停 電 電 源 シ ス テム(UPS) メ リッ トオ ー ダ方 式
14
70,409
揚 水 運転 モー ド
306
余剰
373 9
356
郵 便 切手 方 式
57 ら
行
ラ イ ブラ リ
237
落 札 価格 モ ジ ュー ル
4
ラ グ ラ ンジ ュ乗 数
エ ネル ギ ー貯 蔵 ――
226
オ プ シ ョ ン― ―
226
ガ ス コ ンバ イ ン ドサ イ クル発 電 ― ― 227
206
リアル タ イ ム市 場
153
リコー ル 可ATC(RATC)
423 423
環 境 制 約付 き負荷 配 分 ――
226
リコ ール 不可ATC(NATC)
経済融通――
226
離散 系
166
時 間 別 限 界 コ ス ト――
226
リパ ワ リング技 術
365
水 力 発 電 最適 化 ― ―
227
利 用可 能 送電 能 力(ATC)
制 約 付 き燃 料 供 給 ――
226
料 金規 制 ベ ー スTPA(R-TPA)
送 電 系 統 影響 評 価 ――
227
料 金上 限 規制
太 陽電 池 ――
360
臨界 固有 値
175
プ ー ル市 場 ――
227 226
零 次 ホ ール ドデ ィ レイ
166
400
零 次 ホ ール ド
166
レイ リー商 反復 法
172
列 挙 法
262
マ ル チエ リア モ デ リ ング―― モ デル特 定 型 モ ンテ カ ル ロ法
186,195 や
行
28,123,160,422 407 14
連 続 型潮 流 計 算(CPFLOW)
山形 県 立 川町
358
融 通 電 力制 御
317
244
連続系
166
連 邦 エ ネル ギー規 制 委 員会(FERC) 4,22,96,140
電 力 自 由化 と技 術 開 発 21世 紀 にお ける電気事業の経営効率 と供給信頼性の向上を目指 して 2001年
9 月20日
第 1版 1刷 発 行
監
修
著
者 浅野浩志 荒井純一 岡田健司 久保川淳司 栗原郁夫 小柳薫 陳洛南 中西要祐 新村 隆英 福 山良和 藤 田吾郎 舟橋俊久 的場誠一
横 山隆 一
発行者
学校法人 東 京 電 機 大 学 代 表者 丸 山 孝 一 郎
発行所 東京電機大 学出版局 〒101-8457
東 京 都 千 代 田 区 神 田 錦 町2-2
振 替 口 座 00160-5-71715 電話
印刷 (株)精興 社 製本 渡辺 製本(株) 装 丁 右澤 康 之
C
Yokoyama Arai
(03)5280-3433(営
業)
(03)5280-3422(編
集)
Ryuuichi,Asano
Hiroshi,
Junichi,Okada
Kubokawa
Junji,Kurihara
Koyanagi
Kaoru,Chen
Nakanishi
Ikuo, Luonan,
Yosuke,Niimura
Fukuyama
Yoshikazu,Fujita
Funabashi Printed
Kenji,
Toshihisa,Matoba in
Japan
*無 断 で転 載 す る こ と を禁 じ ま す. *落 丁 ・乱 丁 本 は お 取 替 え い た し ます. ISBN
4-501-11000-7
C3054
Takahide, Goro, Seiichi
2001
電気工学図書 直流送電工学
超電導工学 現 象 と工学 への 応 用
町 田 武彦
編著
A5判280頁
松葉博則 編著 A5判264頁
直 流 送 電 全 般,お よ び パ ワー エ レク トロ ニ クス 技 術 の 動 向 と原 理 を入 門 者 向 け に解 説 。
本 書 は,超 電 導 現 象 を 工 学 に 応 用 す る ため の基 礎 的 な 事 項 を述 べ た も の で あ る 。(CD-ROM付)
電気設備技術基準
電気法規と電気施設管理
審 査 基 準 ・解 釈 東京 電 機 大 学 編 B6判458頁 電気設備技術基準およびその解釈を読みやす く編集。 関連す る電気事業法 ・電気 工事士法 ・電気工事業 法 を併載 し,現 場技術者 および電気 を学ぶ学 生にわか りやす いと評判。
竹 野正 二 著 A5判320頁
基 礎テ キス ト
基 礎テ キ ス ト
電 気 理 論
回路理論
間 邊 幸三 郎 著 B5判224頁 電気の基 礎で ある電磁 気 につ いて,電 界 ・電位 ・静 電容量 ・磁気 ・電 流か ら電磁 誘導 までを,例 題や練 習問題を多 く取 り入れや さしく解 説。
間邊 幸三 郎 著 B5判274頁 直流回路 ・交 流回路の基礎か ら三相 回路 ・過渡現象 まで を平 易に解説。難解な数式 の展 開をさけ,内 容 の理解 に重点 を置いた。
基礎 テキ ス ト
基礎 テ キス ト
電 気
発 送 配 電
・電 子 計 測
三好 正 二 著 B5判256頁
電気関係の法令 に重点 をおき,大 学生か ら高校生 ま で理解でき るようにや さ しくに解 説。電気施設管理 は,高 専や短大の学生及 び電験 第二種受験者が習得 しておかな ければな らない基本的な事項 をまとめた。
・材 料
初級技術 者や高専 ・大学 ・電験受験者のテキ ス トと して,基 礎理論か ら実務 に役立つ応用計測技術 まで を解説。
前 田隆 文/吉 野利 広/田 中政 直 共著 B5判296頁 発電 ・変電 ・送電 ・配電等 の電力部門および電気材 料部門を,基 礎 に重点 をおきなが ら,最 新の内容 を 取 り入れて まとめた。
基 礎テ キス ト
理 工学 講座
電気応用 と情報技術
基 礎
前田隆文 著 B5判192頁 照 明,電 熱,電 動 力 応 用,電 気 加 工,電 気 化 学,自 動 制 御,メ カ トロ ニ ク ス,情 報 処 理,情 報 伝 送 に つ い て,広 範 囲 にわ た り基 礎 理 論 を 詳 し く解 説 。
*定 価,図
電 気
・電 子 工 学
第 2版
宮 入 庄太/磯 部 直 吉/前 田明志 監 修 A5判306頁 2色刷 電気 ・電子 技術 全般 を理解 で きるよ うに編集 した。 大学理工学部 の基礎課程のテキス トに最 適。2色刷
書 目録 のお 問 い 合 わ せ ・ご要 望 は 出 版 局 ま でお 願 い 致 し ます .A-83
理工学講座 理 工 学 講座 基 礎
電 気
・電 子 工 学
第 2版
宮 入 庄太/磯 部 直 吉/前 田明 志 監 修 A5判306頁 2色刷 電 気 ・電 子技術全 般を理 解で きるよ うに編集 した。 大 学理工学部 の基礎課程の テキス トに最適。2色刷
理工学講座 電 磁気学 東 京 電 機大 学 編 A5判266頁 理 工系大学 の基 礎課程 のための教科 書 として編 集。 講義 と・学 生の演習の便宜 を考えて,豊 富 に例題 や演 習問題 を用意 した。
理 工 学講 座
理 工学 講座
改 訂
高 周 波 電 磁 気 学
交 流 回 路
宇 野 辛一/磯 部 直 吉 共著 A5判318頁 交流現象の理論的な解説 と計算法を詳述 した名著 「 交 流 回路」を,時 代 の要求に沿 って いて親 しみやす く, か つ理解 しやす いよ うに全面 的に見直 した改訂版。 理 工 学講 座
エ レ ク トロニ ク ス の た め の
三輪 進 著 A5判228頁 電磁気学 を基礎に,ア ンテナ,電 波伝搬,高 周 波回 路等 を理解す るのに必要な理論を簡潔 に解説。 理工 学講 座 パ ワ ー エ レ ク ト ロ ニ ク ス の 基 礎
過 渡 現 象 理 論 と演 習
新 しいパ ワー デ バ イス とその 応 用
窪 田忠 弘 著 A5判258頁 現 象を単 に数学的 叙述に終わ らせる ことな く,物 理 的 な意味 をで きるだけ加えて解 説。大 学のテキス ト 向 き。
岸 敬二 著 A5判290頁 最近のパ ワーエ レク トロニクス技術,特 にデバ イス の応用分野 に力点をおいて解説。
理 工 学講 座
理工 学講 座
電 気 電 子 材 料 導 電 性 制 御 とエ ネ ル ギ ー 変 換の 実 際
照 明 工 学 講 義
松葉博則 著 A5判218頁
関 重広 著 A5判210頁
導電性 制御および,他 のエ ネル ギーへ の変換 の原理 を述 べ,そ の実際 の応 用につ いても解 説。
長年読 者か ら愛用 され信頼 を得 ている前著 を最新 ・ 最良の資料 をと り入れて全面的に見直 した。
理 工 学講 座
理工 学講 座
電 子 計 測 基 礎 か ら制 御 シス テ ム ま で
電 気 通 信 概 論
新 訂 版
第 3版
通 信 シ ス テ ム ・ネ ッ トワ ー ク ・マ ル チ メ デ ィ ア 通信
小 滝 國 雄 ・島 田和 信 共 著 A5判160頁
A5判226頁
今 日の産 業社会に深 く関わって いる電子 計測 につい て,基 礎か ら最近の計測 まで を解 説。
全 面 的 に見 直 し,特 にイ ン タ ー ネ ッ ト ・ISDN等 ル チ メ デ ィ ア通 信 に つ い て 大 き く書 き改 め た 。
*定 価,図
荒谷 孝 夫
著 2色 刷
書 目録 の お 問 い合 わ せ ・ご要 望 は 出 版 局 まで お 願 い 致 しま す.
A-84
マ
計 測 ・制 御 理工 学 講座 改 訂
理工 学講 座
制 御 工 学
深 海 登 世 司/藤 巻 A5判246頁
上
制 御 工 学
忠雄 監修
制御 工学初 学者 を対 象 に,ラ プ ラス変換 に 基づ く フィー ドバ ック制御理 論を 十分理解 できるよ うで き るだけ平易 にわか りや す く解説。 章末に演習問題 を つけ,よ り実践的に理解を深め られるよ う工夫 した。 MATLABに
下
よる
深 海 登 世 司/藤 巻 忠 雄 A5判156頁
著
制御 工学 を学んだ方 を対 象にシステムの入出力の特 性 のみな らず,内 部状態に着目す るいわゆる現代制御 理 論を理解す る入門教科書と して最 適の一冊である。 MATLABに
よる
制御理論の基礎
制御系設計
野 波 健蔵 編 著 A5判232頁 自動制御や制御工学 のテキス トを新 しい観点か らと らえて解説。特 にロバ ス ト制御 の基 礎概念 とな るモ デル誤差や設計仕様 につ いて述べ,MATLABを 活 用 した例題や練習問題 を豊富 に掲載。
野波 健 蔵 著 A5判330頁 「MATLABに よ る 制御 理 論 の基 礎 」の 応用 編 と して,
MATLABに
MATLABに
よる
制 御 のための シス テム 同定
主要 な 制 御 系 設計 法 の特 徴 と手 順 を解 説 し,実 用 的な 視 点 か ら まと め た 。 制 御 理 論 と 設 計 法 をMATLAB の プ ロ グ ラム を 実 行 し なが ら理 解 で き る 。
よる
制御工学
足 立修 一 著 A5判208頁 実 際 にシステム 同定 を利用す る初心者の立 場に立 っ て,制 御系設計のため のシステム 同定 理論の基礎 を 解 説。理解 の助けのためにMATLABのToolboxを 用 いた。
足立修一 著 A5判256頁 電気系学部学生のための制御工学テキス ト。MATLAB が な くて も教科書 に採用で きるよ うに構成 した。
基礎 テキ ス ト
ISO規
電 気
計 測 の 基 礎 SI単 位 の 不 確 か さ
・電 子 計 測
三好 正 二 著 B5判256頁 初 級 技 術 者 や 高 専 ・大 学 ・電 験 受 験 者 の テ キ ス トと して,基 礎 理 論 か ら実 務 に 役 立 つ 応 用 計 測 技 術 まで を解説。
格 等 に基 づ く
関和 雄 著 A5判154頁 ISO規 格等 に基づ いて,計 測の基本的な考 え方 を明 確 に し,さ らに計測 の不確 かさについて,そ の計測 方 法を解説。
高周波計測
初 め て学ぶ
マ イ ク ロ波通 信 か らデバ イ ス まで
基 礎
森 屋淑 良 昌 ・関 和 雄 共 著 A5判162頁 高周波計測の基礎理論か ら最新の計測器までを解説。 テクニ ックや注意点 も併 記。
森 政 弘/小 川 鑛 一 共 著 A5判288頁 初 めて制御工学 を学ぶ 人のために,多 岐 にわた る制 御技 術の うち,制 御 の基本 と基礎事項 を厳選 し,わ か りやす く解説 した ものである。
*定 価,図
制 御 工 学
第 2版
書 目録 の お 問 い 合 わ せ ・ご 要 望 は 出 版 局 まで お 願 い致 しま す.
A-85