4 応用化学 シリーズ
化学工学の基礎 柘植秀樹 上ノ山周 佐藤正之 国眼孝雄 佐藤智司 …
…[著]
朝倉書店
応用 化 学 シ リーズ代 表 佐 々 木 義 典 千葉大学名誉教授
第4巻 執 筆者
柘 植
秀
樹...
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4 応用化学 シリーズ
化学工学の基礎 柘植秀樹 上ノ山周 佐藤正之 国眼孝雄 佐藤智司 …
…[著]
朝倉書店
応用 化 学 シ リーズ代 表 佐 々 木 義 典 千葉大学名誉教授
第4巻 執 筆者
柘 植
秀
樹 慶應 義塾大学名誉教授
上 ノ 山
国立大学大学 院工学研究院機能の 周 横浜 創生部 門教授
佐 藤
馬大学大学院工学研究科環境 プロセ 之 群 ス工学 専攻教授
正
国
眼 孝 雄 東京農工 大学工学部応用化学科教授
佐
藤
智
千葉大学 大学院工学研究科共生応用化
司 学専攻教授
『応 用 化 学 シ リ ー ズ 』 発 刊 に あ た って
こ の 応 用 化 学 シ リー ズ は,大
学 理 工 系 学 部2年
・3年 次 学 生 を対 象 に,
専 門 課 程 の 教 科 書 ・参 考 書 と し て 企 画 さ れ た. 教 育 改 革 の 大 綱 化 を受 け,大 学 の 学 科 再 編 成 が 全 国 規 模 で 行 わ れ て い る. 大 学 独 自の 方 針 に よ っ て,応 れ ば,応
用 化 学 科 と,た
用 化 学 科 を そ の ま ま 存 続 させ て い る大 学 もあ
とえ ば 応 用 物 理 系 学 科 を合 併 し,新
し く物 質 工 学
科 と し て 発 足 させ た 大 学 もあ る.応 用 化 学 と応 用 物 理 を 融 合 させ 境 界 領 域 を究 明 す る効 果 を ね ら っ た もの で,こ
れ か らの理工 系の 流れ を象徴 す る も
の の よ うで もあ る.し か し,応 用 化 学 と い う分 野 は,学 科 の 名 称 が ど の よ うに 変 わ ろ う と も,そ の 重 要 性 は 変 わ ら な い の で あ る.そ れ ど こ ろ か,新 しい 特 性 を も っ た化 合 物 や 材 料 が 創 製 さ れ,ま
す ま す 期 待 さ れ る分 野 に な
りつ つ あ る. 学 生 諸 君 は,そ
れ ぞれ の 専 攻 す る分 野 を 究 め る た め に,そ
の土 台で あ る
学 問 の 本 質 と,こ れ を 基 盤 に 開 発 さ れ た 技 術 な ら び に そ の 背 景 を理 解 す る こ とが 肝 要 で あ る.目
ま ぐる し く変 遷 す る 時 代 で は あ る が,ど
の よ う な場
合 で も最 善 を つ く し,可 能 な 限 り専 門 を確 か な も の と し,そ の 上 に理 工 学 的 セ ン ス を 身 に つ け る こ とが 大 切 で あ る. 本 シ リー ズ は,こ
の よ う な 理 念 に 立 脚 して 編 纂,ま
執 筆 者 は教 育 経 験 が 豊 富 で,か
とめ られ た.各
巻の
つ 研 究 者 と し て 第 一 線 で活 躍 して お られ る
専 門 家 で あ る.高 度 な 内 容 を わ か りや す く解 説 し,系 統 的 に把 握 で き る よ う に 幾 度 と な く討 論 を重 ね,こ
こ に 刊 行 す る に 至 っ た.
本 シ リー ズが 専 門 課 程 修 得 の 役 割 を 果 た し,学 生 一 人 ひ と りが 志 を高 く も っ て 進 まれ る こ と を希 望 す る もの で あ る. 本 シ リー ズ刊 行 に 際 し,朝 倉 書 店 編 集 部 の ご 尽 力 に 謝 意 を表 す る 次 第 で あ る. 2000年9月 シ リー ズ代 表 佐 々 木 義 典
は じ め に
わ れ わ れ が文 明社 会 の 中 で持 続 的 に快 適 な生 活 を して い くた め に は,こ れ まで 築 き上 げ て き た生 活 や 産 業 に関 係 す る技術 を,環 境 や 資 源 の 厳 し い条 件 の下 で さ らに 向 上 させ,世
界 に 貢 献 す る必 要 が あ る.
化 学 工 学(ケ ミカ ル エ ン ジニ ア リン グ)は 化 学 系 企 業 や 化 学 製 品 を素 材 と して 扱 う企 業 の エ ン ジ ニ ア と して の プ ロ に な るた め に は,必 ず 習得 して お か な け れ ば な らな い必 須 科 目で あ る.米 英 に お い て は 化 学 系 の 学 生 は工 学 部 の ケ ミカ ル エ ン ジ ニ ア か 理 学 部 の ケ ミス トか の2領 域 に大 別 され て い る.日 本 で は 化 学 系 学 科 が 設 立 され た時 の 歴 史 的 経 緯 か ら応 用 化 学 系 の 教 育 が ウエ イ トを 占め て い るが,こ れ か らは 応 用 化 学 系 の 学 生 も き ち ん と化 学工 学 を履 修 し,そ の 基礎 を習 得 して い る こ とが 要 求 され る. 本 書 は 応 用 化 学 シ リー ズ全8巻 学 系 の 大 学2,3年
中 の1冊 で,応 用 化 学 系,工 業 化 学 系,物 質 化
生 を対 象 に 化 学 工 学 の 基 礎 を 身 につ け て ほ しい と思 い編 纂 さ
れ て い る.化 学 工 学 は そ の カバ ー す る領 域 が 近 年 急 速 に 拡 大 して い るが,化 学 工 学 の 基 本 とな る,化 学 工 学 量 論,流 動,伝 を加 え て,な
熱,分 離 操 作,反
応 工 学 に つ い て例 題
るべ くわ か りや す くを モ ッ トー に 編 集 され て い る.ま た,演 習 問 題
を解 くこ とに よ って,確 実 に 実 力 が 身 につ くよ うに考 え られ て い る.第1章 植,第2章
は 上 ノ 山,第3章
は 佐 藤(正),第4章
は 国 眼,第5章
は柘
は 佐 藤(智)が
担 当 した.各 章 を 通 して 基 本 的 な統 一 を 図 る よ う 多少 の調 整 を した が,む
しろ担
当 執 筆 者 の個 性 を消 さ な い よ うに し た. 本 書 を執 筆 す るに あ た っ て は 千 葉 大 学 名 誉 教 授 の 野 崎 文 男 先 生,朝 倉 書 店 編 集 部 の 方 々 に 大 変 お世 話 に な っ た.こ
こ に,感 謝 の 意 を表 す る次 第 で あ る.
2000年9月 執筆 者 を代 表 して 柘 植 秀 樹
目
次
1. 化 学 工 学 の 基 礎
1
1.1 化 学 工 学 の 魅 力
1
1.2 化 学 工 学 計 算 の 基 礎 1.2.1
単
位
1.2.2
次 元 と次 元 解 析
3
4
1.3 物 質 収 支 お よ び エ ネ ル ギ ー 収 支 存
3
6
1.3.1
保
則
6
1.3.2
物 質 収 支
7
1.3.3
エ ネ ル ギー 収 支
1.4 気 体 の 状 態 方 程 式 1.4.1
理想気体 法則
1.4.2
実在気体 の状態式
15 22 22
22
1.5 相 平 衡 と単 位 操 作
25
1.5.1
純物質 の蒸気圧
26
1.5.2
理想 溶液の法則
26
1.5.3
平 衡 関 係 と物 質 収 支
30
2. 流 体
と 流 動
2.1 流 れ の 基 礎 項 目
35 35
2.1.1
さ ま ざ ま な 流体 と粘 度
2.12
レ イ ノ ル ズ数 と流 動 状 態
2.1.3
流 線 と流 管
40
2.1.4
基礎 方程 式
41
2.1.5
エ ネ ル ギ ー の保 存 則
2.2 円 管 内 の 流 れ 2.2.1
管 内 層 流
35 37
42 46 46
2.2.2
管 内 乱 流
47
2.2.3
管 摩 擦 係 数 と流 体 輸 送
50
2.2.4
粗 面 管 の 場 合 の 流 速 分 布 と管摩 擦 係 数
52
2.2.5
直管部 以外 での圧力損失
53
2.3 物 体 ま わ りの 流 れ 2.3.1
境界層 内の流 れ
2.3.2
流 体 中 の 物体 に 作 用 す る力
2.3.3
円柱背後 の流 れ
2.4 流 動 状 態 の 計 測
56 56
59
61
62
2.4.1
流
速
計
62
2.4.2
流
量
計
66
2.5 流 れ の 可 視 化
69
2.5.1 実 験 的 可 視 化 手 法
69
2.5.2
71
数 値 シ ミュ レー シ ョン
3. 熱 移 動(伝
熱)
77
3.1 は じ め に 3.1.1
77
伝 熱 機 構 の 概 要 と事 例
3.2 伝 導 伝 熱
77 79
3.2.1
伝導伝熱 の基本 式
3.2.2
無限平板 の定常伝 熱
3.2.3
中空 円筒 半 径 方 向 の 定 常 伝 熱
83
3.2.4
中 空 球 半 径 方 向 の定 常 伝 熱
84
3.2.5
非定常熱移動 の考 え方
84
3.3 対 流 伝 熱
79
80
86
3.3.1
ニ ュ ー トン の 冷 却 の 法 則
3.3.2
強制 対 流 伝 熱
86
3.3.3
自然 対 流 伝 熱
90
3.3.4
水 平 平 板
91
3.3.5
対 流 と伝 熱 の 組 合 せ
3.4 放 射 伝 熱
86
92 93
3.4.1
完 全 黒 体 と灰 色 体
3.4.2
電 磁 波 の 波 長 と放 射
3.4.3
放
3.4.4
固 体 表 面 の 形 状 と形 態 係 数
射
93 94
率
95
3.5 そ の 他 の 伝 熱
96
100
3.5.1 沸 騰 伝 熱
100
3.5.2 凝 縮 伝 熱
101
3.6 熱 交 換 器
101
3.6.1
総 括 熱 伝 達 係 数 の定 義
3.6.2
熱交換器 の種類
102
3.6.3
対数平均 温度差
102
3.7 温 度 測 定 方 法
4. 物
質
分
102
104
離
112
4.1 分 離 技 術 序 論
112
4.1.1
分 離 の 原 理 と分 離 技 術
4.1.2
分 離 装 置 と分 離 係 数
113
4.1.3
分 離 に 要 す るエ ネ ル ギー
115
4.2 平 衡 法 に よ る 分 離 技 術 4.2.1
蒸
留
4.2.2
ガ ス 吸 収
112
116 116 127
4.3 速 度 差 分 離 技 術 ― 膜 分 離 法
138
4.3.1
膜分離技術
4.3.2
濃 度 分 極 と物 質 移 動 係 数
4.3.3
阻
4.3.4
限 界 流 束 と溶 質 排 除
4.3.5
浸
4.3.6
膜 分 離 の透 過 モ デ ル
146
4.3.7
膜 の 構 造,素
147
4.3.8
膜 に よ る ガ ス混 合 物 の 分 離
止
透
139
率
140 143
圧
144 145
材 とモ ジ ュー ル
148
5. 反
応
工
学
154
5.1 均 一 系 反 応 に お け る 反 応 速 度 論
154
5.1.1
反 応 速 度
5.1.2
反応速度 式
5.1.3
反応速度定数 の温度依存性
5.1.4
反 応 器 の種 類 と反 応 流 体 の 流 れ 形 式
157
5.1.5
微 分 法 に よ る反 応 速 度 解 析
158
5.1.6
積 分 法 に よ る反 応 速 度 解 析
162
5.1.7
複 合 反 応 の反 応速 度解 析
5.1.8
連 続 流 通 式 反 応 器 に 関 連 す る諸 量
5.2 不 均 一 系 反 応 に お け る 反 応 速 度 論
154
155
156
168 170 171
5.2.1
不均一 系反応
171
5.2.2
気相接 触反応
5.2.3
ガ ス境 膜 内物 質 移 動 抵 抗
5.2.4
吸 着 平 衡
175
5.2.5
吸 着 速 度
177
5.2.6
ラ ン グ ミュ ア-ヒ ン シ ェ ル ウ ッ ド型 触 媒 反 応 速 度 式
178
5.2.7
反応速度 式の積分形
172 174
180
5.2.8
固 体 細 孔 内 拡 散 と触 媒 有 効 係 数
181
5.2.9
気 固系 反 応
183
5.3 反 応 装 置 ・反 応 操 作 設 計 の 基 本 事 項
187
参 考 文 献
192
演 習 問題 解 答
194
付
表
199
索
引
203
1 化学工学の基礎
本 章 で は化 学 工 学 の 基 礎 とな る物 質 収 支 お よび エ ネ ル ギー 収 支 な どの化 学 工 学 量 論 な ら び に相 平 衡 論 につ い て勉 強 して み よ う.
1.1 化 学 工 学 の 魅 力
化 学 工 学(ケ ミカ ル エ ン ジ ニ ア リン グchemical
図1.1
engineering)っ
石 油 精 製 プ ロセ ス(「高純 度 化 技 術 大 系 」(第3巻),p.859,フ
て 何!「 高 校
ジ テ ク ノ シス テ ム,1997).
で 習 わ なか っ た よ な」 と思 う方 が 多 い だ ろ う.し か し,高 校 の 教 科 書 に は 出 て こ な い が,化 学 工 学 は石 油 化 学 を は じめ と して,あ
ら ゆ る化 学 工 業 の発 展 の 基 礎 と
な った 工 学 だ.実 験 室 で の ビー カー を使 っ た実 験 か ら工 業 規模 の化 学 装 置 を設 計 す る場合 に は化 学 工 学 を 身 に つ け て い な い と,化 学 技 術 者 と して,世
界的に認め
て も らえ な い. 図1.1は
石 油 か ら生 産 され る化 学 物 質 の 流 れ 図 とプ ロセ ス を示 し た もの で,ナ
フサ の うち,特
に 沸 点 が30∼100℃
の軽 質ナ フサ の大部 分 は石 油化 学 プ ロセス
を経 て,身 の ま わ りの 家 電 製 品,自 動 車,プ
ラ ス チ ッ ク容 器 な どの 原 料 とな っ て
い る.図1.2に
は こ の石 油 精 製 プ ロ セ ス の 心 臓 部 で あ る常 圧 蒸 留 塔 の 概 略 図 を示
した.図1.3に
は その 写 真 を示 した が,精 製 プ ロセ ス の な か で もひ と きわ 大 き い
こ とが わ か る. さ らに,機 能 性 材 料,バ
イ オ テ ク ノ ロ ジー,メ
デ ィ カ ル テ ク ノ ロ ジ ー な どの 先
端 技 術 な ら び に地 球 環 境 問題 も,物 質 とエ ネ ル ギ ー の 有 効 利 用 を 目指 した 化 学工 学 的 な見 方 か らの解 決 が 待 ち望 まれ て い る.皆 さ ん が こ う した化 学 工 学 に興 味 を 持 ち,本 書 をマ ス タ ー し,さ らに上 級 コー スへ の 道 を進 まれ る こ と を期 待 して い る.
図1.2
常圧 蒸留塔の概略図
(提供:日
石 三 菱 株 式 会 社)
図1.3 常 圧 蒸 留 塔(右)と (提 供:日
減 圧 蒸 留 塔(左)
石 三 菱 株 式 会 社)
技術者資格試験 ア メ リ カ で はProfessional
Engineerと
い う技 術 者 資 格 の 制 度 が あ る.通 常 の 場
合 は 認 定 を受 け た 大 学 の コー ス を修 了 し た ら,ま
ずFundamental
の 試 験 を 受 け る.合 格 し た ら企 業 な どの 技 術 者 と し て4年 fessional Engineer
(PE)試
Engineer
(FE)
以 上 の 経 験 を積 み,Pro
験 を受 け,合 格 す れ ば 州 政 府 に 登 録 し,正 式 のPEと
な
り,名 刺 に も肩 書 き と し て 書 く こ とが で き る.社 会 的 に も責 任 あ る 技 術 者 で あ る こ とが 認 め ら れ,尊 さ て,こ 午 後4時
敬 さ れ る.
のFE試
験(1996年)の
内容 を 見 て み よ う.午
前 中4時
間 の 共 通 問 題,
間 の 専 門 問 題 が 試 験 さ れ る.化 学 に 関 係 し た 部 分 を 見 て み よ う.
◆ 共 通 問 題(120題) 120題 の 内 訳 は 以 下 の 通 り. 化 学 …9%,計 算 機 …5%,力 学 …8%,電 …4% ,流 体 力 学 …7%,材 料 科 学 …7%,数 …10% ,熱 力 学 …9% 計100%
気 回 路 …10%,経 学 …20%,材
済 …4%,倫
料 力 学 …7%,静
理 力学
化 学 に 関 連 し た部 分 の 内 容 は 以 下 の よ うに な る. 化 学:酸
塩 基,平
酸 化 ・還 元,周 材 料 科 学:原
気 化 学,無
期 律 表,物
子 構 造,結
熱 力 学:第1法 理 想 気 体,混
衡,式,電
質 の状 態,溶 液,量
晶,腐
則,第2法 合 気 体,相
◆ 専 門 問 題(60題)(ジ
食,拡
則,有 変 化,エ
ャ ン ル:化
物 質 ・エ ネ ル ギー 収 支 …15%,輸 化 学 熱 力 学 …10%,反
機 化 学,動
散,材
力 学,金
相 図,物 イ ク ル,エ
ン タ ル ピー,エ
質 移 動(10%),反
内容 を き っ ち り勉 強 し て,将
熱 …10%,物
ロ セ ス 制 御 …5%,プ
水 の4℃
単
由エ ネル ギー
質 移 動 …10%, ロ セ ス 設 計 ・経 済 評
ロ セ ス の 安 全 性 …5%,計
応 工 学(10%)と
算 機 ・数 値 解 析
送 現 象(10%),伝
熱
な り,午 後 の 化 学 の 専 門 問 題 の
う し た 資 格 制 度 の 導 入 が 検 討 さ れ て い る.本 書 の
来 に備 え よ う.
1.2
1.2.1
造 法 と試験
ネ ル ギー ・熱 ・仕 事,
ン トロ ピー,自
送 現 象 …10%,伝
応 工 学 …10%,プ
度 と な る.日 本 で も,こ
性,製
学)
本 書 と 関 連 し た 部 分 は 物 質 ・エ ネ ル ギ ー 収 支(15%),輸
50%程
機 化 学,
論 関係
料,二
効 度-可 逆 性,サ
価 …10%,プ ロ セ ス 装 置 設 計 …5%,プ …5% ,汚 染 防 止 …5% 計100%
(10%),物
属 ・ 非 金 属,有
化 学 工 学 計 算 の基 礎
位 で の 密 度 は1.00g
の 積 で 表 さ れ る.単
位 をkg
cm−3で
あ る が,密
度 の よ う な物 理 量 は数 値 と単位
m−3に 変 え る と 数 値 も1000と
変 わ る.し
た が っ て,
単 位 を統 一 し て計 算 す る必 要 が あ る.現 在 世 界 的 に普 及 して い る の は 国 際 単 位 系 (SI unit)で,表
の よ うな 基 本 単 位 と組 立 単 位 か らで きて い る.本 書 で はSI単
位
系 を主 と して 用 い て い る.
こ の ほ か に 長 さ,質
量,時
間,温
の 代 わ り に 力(重 量)を 用 い た4つ
度 の4つ
の 基 本 量 か ら な る絶 対 単 位 系,質
の 基 本 量 か ら な る 重 力 単 位 系,さ
量
らに質量 も
力 も 基 本 量 と し た 工 学 単 位 系 も 用 い ら れ て い る. 【例 題1.1】 5000mの
有 用 な鉱 物 資 源 を豊 富 に 含 む マ ン ガ ン 団塊 が あ る と い わ れ る海 底
絶 対 圧Pt[kPa]を
求 め よ.た
だ し,海
水 の 密 度 ρ は1.01×103kg
m−3
と す る. 解. 圧 力Pは 9.81m kg
単 位 面 積 に 働 く力 で,液
柱 の 高 さ(液 高)h,重
s−2)と す る とP=hρg=(5000m)(1.01×103kg
m−1 s−2=4.95×107N
m−3)(9.81m
力 加 速 度g(= s−2)=4.95×107
m−2=4.95×107Pa=49.5MPa
大 気 圧P0=1atm=0.1013MPa. し た が っ て,海
底 の 絶 対 圧(全
圧)Pt=P+P0=49.5+0.1013=49.6MPa
こ う し た 計 算 を す る 際 に は 桁 数 に も 注 意 が 必 要 で あ る.例 に 使 用 さ れ る塩 ビ 管 の 直 径 を100cm(=1m)と
え ば,水
す る の と1cmと
道水 の 供 給
す るの で は パ イ
プ の 値 段 や パ イ プ を 地 下 に 埋 め る 工 事 費 を考 え る と大 き な 違 い が で て く る.
1.2.2
次 元 と次 元 解 析
長 さ(length),質
量(mass),時
間(time)の
基 本 量 の 次 元(dimension)をL,
M,Tで な.チ
表 す と,密
度 の 次 元 はML−3,圧
力 の 次 元 はML−1T−2と
な る(本 当 か
ェ ッ ク し て み よ う).
複 雑 な 現 象 を 理 論 式 で 解 く こ と が で き な い と き に は,次 analysis)を
元 解 析(dimensional
用 い 次 元 的 に 統 一 さ れ た 実 験 式 で 整 理 す る こ と が 多 い.例
式 の 左 辺 が 速 度 の 次 元(=LT−1)の
と き は 右 辺 も速 度 の 次 元 の 項 で な け れ ば な ら
な い.こ
の 式 の 両 辺 を 速 度 の 次 元 で 割 る と 次 元 の な い 無 次 元 数(項)と
れ を1つ
の 変 数 と し て 扱 え る.代
を 示 す レ イ ノ ル ズ 数(Reynolds L),uは
あ る.Reが
【 例 題1.2
な り,こ
表 的 な無 次 元数 と して管 内 を流 れ る 流体 の 状 態 number)
流 体 の 速 度(=LT−1),ρ
ML−1T−1)で
えば実 験
Re=Duρ/μ
が あ る.Dは
は 流 体 の 密 度(=ML−3),μ
管 の 直 径(=
は 流 体 の 粘 度(=
無 次 元 数 で あ る こ と を 確 認 し よ う.
次 元 解 析 】 液 体 の 表 面 張 力 を測 定 す る 方 法 に 次 の 液 滴 法 が あ る.
① 静 止 空 気 中 に,ノ の 体 積Vは,ノ
ズ ル か ら ゆ っ く り と 液 滴 を 生 成 させ た と き に で き る 液 滴
ズ ル の 直 径d,液
数 で あ る と し て,次
の 密 度 ρ,表 面 張 力 σ,重 力 加 速 度gの
関
元 解 析 を行 え.
② い ろ い ろ な 系 で 実 験 を 行 い,次
の 相 関 式 を 得 た. (A)
い ま,d=5.0mmの 0.0280cm3で
ノ ズ ル を 用 い,液 あ っ た.液
滴 の 体 積 を 測 定 し た と こ ろ,1滴
体 の 密 度 が800kg
m−3で
あ る と き,そ
が
の 表 面 張 力 σ
[N m−1]を 求 め よ. 解. 次 元 解 析 の 原 理 は 「m個 は,n−m個 am)の ①
の 基 本 単 位 を 用 い て 表 せ るn個
の 物 理 量 の 関係
の 無 次 元 数 の 関 数 と し て 表 せ る 」 と い う バ ッ キ ン ガ ム(Buckingh
Π(パ イ)定 理 で 示 さ れ る. V=daρbσcge
液 滴 体 積Vが
(a)
物 理 量 の べ き 乗 の 積 で 表 せ る と す る.式(a)を
次 元M,L,Tを
用 い 書 き 直 す. (b) 両 辺 の 次 元 が 等 し く な る 必 要 が あ る か ら,次
の 関 係 がM,L,Tに
つ い て満 足 さ
れ て い な け れ ば な ら な い. M:0=b+c
(c-1)
L:3=a−3b+e
(c-2)
T:0=−2c−2e
(c-3)
基 本 単 位 数 が3で
物 理 量 が5個
だ か ら 無 次 元 数 は5−3=2個
と な る .a,b,cを
eで 表 す と, a=3+2e
(d-1)
b=e
(d-2)
c=−e
(d-3)
と な る.こ
れ を 式(a)に
代 入 し,整
理 す る と
(e)
し たが っ て2つ
の 無 次 元 数 で整 理 で き る こ とが わ か る.一 般 的 に は 両 者 が 関数 関
係 に あ る と し て次 の よ うに 書 く. (f)
実 験 式 と して は (g) と し て,実
験 的 にd,ρ,σ,gを
変 え,液
滴 体 積Vを
測 定 し て ,係
数aと
指 数b
を 決 定 す る こ と に な る. ② こ こ で は 実 験 相 関 式 と し てa=16.4,b=−1.02と (A)にSI単
位 系 に 統 一 し た 数 値 を 代 入 す る.す
0.028×10−6m3,ρ=800kg こ れ よ り σ=0.225N
m−3で あ る . m−1と 求 ま る.
1.3
1.3.1
保
存
得 ら れ て い る の で,式 な わ ち,d=5.0×10−3m,V=
物 質 収 支 お よび エ ネ ル ギ ー 収 支
則
質 量 保 存 則 お よ び エ ネ ル ギ ー 保 存 則(=熱
力 学 第1法
則)を
あ る閉 じ た系 につ
い て考 え る と
系 内の蓄積量=
系 へ の 入 量−
系 か らの 出 量 +
−系内 での消 費量
系 内での生成量
(1.1)
系 内 で の 生 成 や 消 費 が な け れ ば,式(1.1)は
系 内の蓄積 量=
系 へ の 入 量−
簡 単 に 式(1.2)と
な る.
(1.2)
系 か らの 出 量
装 置 内 の 挙 動 が 時 間 的 に変 化 しな い 状 態 を定 常 状 態(steady の 場 合 は 系 内 の蓄 積 量 は0な 系 へ の 入 量=
state)と い う.こ
の で,式(1.2)は
(1.3)
系 か らの 出量
と な る.
1.3.2
物
質
収
支
物 質 収 支 は 質 量 保 存 則 の こ と で,英 Balanceと
い わ れ る.化
語 で はMaterial
Balanceあ
る い はMass
学 反 応 を 伴 わ な い 物 理 プ ロ セ ス と 化 学 反 応 を 伴 う化 学
プ ロ セ ス に つ い て 例 を あ げ て 説 明 し よ う. a. 物 理 プ ロ セ ス n個
の 成 分 が プ ロ セ ス に 関 係 す る 場 合 は,各
成 分 に つ い て のn個
式 と1個
の 物 質 全 量 に つ い て の 収 支 式 が か け る が,数
あ る.以
下 の 例 題 で そ の 応 用 方 法 を 見 て み よ う.
【 例 題1.3
蒸 発 操 作 】 10wt%の
連 続 的 に 蒸 発 さ せ,40wt%の h−1]を 得 た.フ 解. W[kg
濃 縮 シ ョ糖 水 溶 液L[kg 示 す.お
こ の プ ロ セ ス は 水 と シ ョ糖 の2成 h−1],シ
[wt%]と
ョ 糖 の 組 成 をa[wt%],ま
h−1]と 水 蒸 気V[kg
の お の の 流 量LとVを
分 系 で あ る.原
と シ ョ糖)に
求 め よ.
料 シ ョ糖 水 溶 液 流 量 を
た 濃 縮 シ ョ糖 水 溶 液 の 組 成 をb
つ い て の物 質 収 支 よ り
W=L+V
(a)
ョ糖)に つ い て の 物 質 収 支 よ り (b)
図1.4
で
h−1を 減 圧 蒸 発 缶 で
す る.
全 量(水
溶 質(シ
学 的 に 独 立 な 式 はn個
シ ョ糖 水 溶 液1000kg
ロ ー シ ー ト を 図1.4に
の物 質収 支
蒸発プ ロセス
これ よ り
V=W−L=1000−250=750kg
【 例 題1.4 にa[wt%]の
h−1
混合操 作】 あ る水 路 中 を 流 れ る 水 の 流 量W[kg 食 塩(ト
レ ー サ ー)水
溶 液 を 流 量T[kg
流 の 地 点 で 水 中 の 食 塩 濃 度 を 測 定 し た らb[wt%]で
図1.5
① 水 の 流 量Wを
h−1]を 知 る た め
h−1]で 注 入 し,十
分 に下
あ っ た(図1.5).
混合 プロセス
求 め る 式 を 導 け.
② a=10wt%,b=0.1wt%,T=50kg
h−1の と き,水
の 流 量W[kg
h−1]
を 求 め よ. 解. 下 流 で の ト レ ー サ ー を含 む 水 の 流 量 をM[kg
h−1]と す る.
全 量 につ い て の 物 質 収 支 よ り W+T=M
(a)
トレー サ ー に つ い て の物 質 収 支 よ り (b) これ よ り
(c)
② を解 くた め に 与 え られ た 数 値 を式(c)に 代 入 す る.
【 例 題1.5
蒸 留 操 作 】 ベ ン ゼ ン(標 準 沸 点80.1℃)-ト
2成 分 系 混 合 溶 液 を 蒸 留 操 作 で 分 離 す る.混 モ ル 分 率xで F[mol
表 す.図1.6に
示 す よ う に,低
h−1]で 蒸 留 塔 に 送 り,蒸
h−1]で,ま
た 塔 底 よ り組 成xWな
ル エ ン(標 準 沸 点110.6℃)
合 液 の 組 成 は低 沸 点 成 分 ベ ンゼ ンの 沸 点 成 分 の 組 成xFな
留 塔 の 塔 頂 よ り組 成xDな る 缶 出 液 をW[mol
る 原料 を流 量
る 留 出 液 をD[mol
h−1]で 得 た.
図1.6
① DとWを
蒸 留 プ ロセ ス
求 め る 式 を 導 け.
② xF=0.60,xD=0.95,xW=0.05,F=100mol
h−1で あ る と きDとWを
求 め よ. 解. ① 全 量 に つ い て の 物 質 収 支 よ り F=D+W
(a)
低 沸 点 成 分 につ い て の 物 質 収 支 よ り FxF=DxD+WxW
(b)
これ よ り (c)
(d)
② 与 え られ た数 値 を 式(c)と(a)に
代 入 す る.
W=F−D=100−61.1=38.9mol
【 例 題1.6 液 を 第1精
2本 の 連 続 精 留 塔 を 用 い た 蒸 留 操 作 】 50mol%の
留 塔 に100kmol
液 を40kmol
h−1で 供 給 し,塔
h−1で 留 出 さ せ た.塔
れ て く る30mol%メ さ れ る.第2塔
h−1
頂 よ り80mol%の
底 缶 出 液 は,別
メ タ ノー ル 水 溶
系 統 か ら30kmol
タ ノ ー ル 水 溶 液 と 混 合 さ れ,第2精 で は 塔 頂 よ り60mol%の
メ タ ノー ル 水 溶
留 塔 へ 原 料 と し て供 給
メ タ ノー ル 水 溶 液 を30kmol
出 さ せ る.以
下 の 量 を 求 め よ.
① 第1精
留 塔 の 缶 出 液 の 流 量[kmol
② 第2精
留 塔 に 供 給 さ れ る 混 合 原 料 の 流 量[kmol
h−1で 送 ら
h−1で 留
h−1]と メ タ ノ ー ル 組 成[mol%] h−1]と メ タ ノ ー ル 組 成
図1.7
2本 の連 続 精 留塔 に よ る蒸 留 プ ロ セ ス
[mol%] ③ 第2精
留 塔 の 缶 出 液 の 流 量[kmol
解. 図1.7の 成 分 系 溶 液 で,メ 分 率]を
よ う に 記 号 を 決 め る.メ
に 添 字1と2を
で の 全 物 質 収 支 よ り,第1塔 W1=F1−D1=100−40=60kmol
第1塔
の 塔 底 缶 出 液 量W1は h−1 底 缶 出 液 組 成xW1は
の 原 料 流 量F2は F2=W1+F2′=60+30=90kmol
ま た,xW1,xF2′ ③ 第2塔
メ タ ノー ル 組 成[mol
つ け る.
で の メ タ ノ ー ル の 物 質 収 支 よ り,第1塔
② 第2塔
と も に30mol%な
で の 全 物 質 収 支 よ り,第2塔 W2=F2−D2=90−30=60kmol
第2塔
タ ノ ー ル 水 溶 液 は メ タ ノ ー ル と水 の2
タ ノー ル が 低 沸 点 成 分 で あ る の で,xは
表 し,第1塔,第2塔
第1塔
h−1]と メ タ ノー ル 組 成[mol%]
h−1 の で,原
料 組 成 はxF2=0.30.
の 塔 底 缶 出 液 量W2は h−1
で の メ タ ノー ル の 物 質 収 支 よ り,第2塔
底 缶 出 液 組 成xW2は
b. 化 学 プ ロセ ス 化 学 反 応 を伴 うプ ロ セ ス で は,物 質 全 量 に つ い て の 物 質 収 支 が1個,化 に 関 与 し な い 元 素 か ら な る成 分 の物 質 収 支 がm個,化
学反応
学 反応に関与 す る元素か
ら な る 成 分 の 物 質 収 支 がn個 で あ る.以
書 け る が,こ
の う ち 独 立 な 物 質 収 支 式 はm+n個
下 の 例 題 で そ の 応 用 方 法 を 見 て み よ う.
【 例 題1.7
燃 焼 反 応 】 エ タ ン(C2H6)100kmol
焼 器 に よ り燃 焼 さ せ た と こ ろ,エ が 反 応(A)でCO2を,ま
h−1を50%の
タ ン の 全 量 が 燃 焼 し,燃
た20%が
反 応(B)でCOを
焼 し た エ タ ン の80%
生 成 し た.こ
り基 準 で 燃 焼 器 出 口 ガ ス 中 の 各 成 分 の 組 成[mol%]を
の と き,湿
求 め よ.
C2H6+7O2/2→2CO2+3H2O
(A)
C2H6+5O2/2→2CO+3H2O
(B)
た だ し,過
剰 空 気 率 の 定 義 は 式(C)で
過 剰 空 気 率(%)=[供 解. 式(C)の
与 え ら れ る.
給 空 気 量 −理 論 空 気 量]×
理 論 空 気 量 と は,供
100/
(C)
理論 空気量
給 さ れ た す べ て のC,Hを
C+O2→CO2
(a)
H2+O2/2→H2O
(b)
の 反 応 に よ りCO2,H2Oに
す る の に 必 要 な 空 気 量 を 示 す.
計 算 基 準 を 問 題 に 示 さ れ て い る エ タ ン100kmol 反 応(A)に
よ り,エ
×(7/2)=350kmol
タ ン100kmol
h−1の 理 論O2が
h−1と す る.
h−1を 空 気 中 のO2で
完 全 燃 焼 す る に は100
必 要 と な る.
燃 焼 反 応 で は 空 気 はN2:79mol%とO2:21mol%の 理 論 空 気 量 は350×(100/21)=1667kmol 過 剰 空 気 率 が50%で kmol
過剰 空気率 で燃
混 合 物 と 考 え る か ら,
h−1と な る.
あ る か ら 式(C)よ
り供 給 空 気 量 は1667×(1+0.50)=2500
h−1と な る.
し た が っ て,供
給O2量
×(79/100)=1975kmol
は2500×(21/100)=525kmol
h−1,供
給N2量
は2500
h−1と な る.
次 の 物 質 収 支 の 表 で 成 分,入 (− は 反 応 で 消 失,+は
量(燃 焼 器 入 口 で の 流 量),燃
反 応 で 生 成),出
焼 器 内で の生成 量
量(燃 焼 器 出 口 で の 流 量)と
出 口組 成 を
示 す. 反 応(A)に
よ り80kmol
h−1のC2H6と280kmol
kmol
h−1のCO2と240kmol
h−1のH2Oが
kmol
h−1のC2H6と50kmol
h−1のO2が
kmol
h−1のH2Oが
生 成 さ れ る.入
h−1のO2が
生 成 さ れ る.ま 消 費 さ れ,40kmol
た,反
消 費 さ れ,160 応(B)か h−1のCOと60
量 と 生 成 量 よ り出 量 が 計 算 さ れ る.
ら20
湿 り基 準(wet 量 合 計2670kmol
basis)で あ る か ら,反 応(A)と(B)で
生 じ たH2Oを
h−1を 基 準 と して 各 成 分 の 組 成 を 計 算 す る.乾
basis)の 場 合 に は 反 応(A)と(B)で
生 じたH2Oを
含んだ出 き 基 準(dry
含 ま な い 出 量 合 計2370kmol
h−1を 基 準 と して 各 成 分 の 組 成 を計 算 す れ ば よ い. 化 学 プ ロセ ス の構 成 は 次 の よ うに 大 き く分 類 で き る. ① 直 列 型 プ ロ セ ス(図1.8) 精 製 した 原 料 を 反 応 器 に仕 込 み,反 応 後 生 成 物 を分 離 装 置 で製 品 と副 生 成 物 に 分 離 す る. ② リサ イ クルパ ー ジ型 プ ロ セ ス(図1.9) 反 応 器 に 原 料 を仕 込 み,反
応生 成 物 を分 離 装 置 で 製 品 と未 反 応 原 料,不
純物 な
どに 分 離 す る.未 反 応 原 料 を循 環 原 料 と して反 応器 に リサ イ クル す る.反 応 で 製 品 に な っ た 原 料 の 補 給 の た め に補 給 原 料(fresh
feed)を 新 た に 反 応 器 に 供 給 す
る.ま た,不 純 物 が プ ロ セ ス 内 に 蓄 積 す る と触 媒 活 性 が低 下 す る な どの理 由 で 一 部 を系 外 にパ ー ジ(purge・ 放 出)す る.
図1.8
図1.9
直 列 型 プ ロセ ス
リサ イ クル パ ー ジ型 プ ロセ ス
物 質 収 支 を 考 え る 際 の 手 順 は 次 の よ う に な る. ① プ ロ セ ス の フ ロ ー シ ー ト を書 く. ② 物 質 収 支 に 関 与 す る デ ー タ(例 え ば 組 成,流 ③ 計 算 の 基 準 を 明 確 に す る.例
え ば,原
料100kmol
④ 基 準 に 基 づ い て 物 質 収 支 式 を た て て,解 変 化 し な い 手 が か り物 質(例 【 例 題1.8
え ばN2)に
量,圧
く.こ
力,温
度)を
整 理 す る.
h−1を 基 準 と す る. の 際 プ ロセ ス の前 後 で 量 の
着 目 す る.
エ タ ノー ル 製 造 プ ロ セ ス 】 エ チ レ ン を水 和 し て エ タ ノ ー ル を 製 造
す る プ ロ セ ス を 考 え る. C2H4+H2O=C2H5OH
(A)
こ の 反 応 は 触 媒 反 応 器 を1回
通 過 す る だ け で は 完 結 せ ず,水
ノ ー ル を 凝 縮 分 離 し た 後,未
反 応 エ チ レ ン を循 環 し て い る.反
ン に 対 す る 水 の モ ル 比 は0.6に 率(単 通 転 化 率)は4.2%で
保 た れ て お り,エ
あ る.次
お よ び 生 成 した エ タ
チ レ ン の1回
応器 入 口の エ チ レ 通 過 当 た りの 転 化
の 問 に 答 え よ.
① 本 プ ロ セ ス の フ ロ ー シ ー トを 書 け. ② エ チ レ ン の 循 環 比(=循
環 原 料 中 の エ チ レ ン の モ ル 数/補 給 原 料 中 の エ チ
レ ン の モ ル 数)を 求 め よ. ③ 補 給 原 料 組 成[mol%]を
求 め よ.
④ エ チ レ ン の 総 括 転 化 率(=反
応 し た エ チ レ ン の モ ル 数/補 給 原 料 中 の エ チ
レ ン の モ ル 数)を 求 め よ. 解. ① プ ロ セ ス フ ロ ー シ ー ト を 図1.10に で,補
環 原 料 が エ チ レ ン(C2H4)
給 原 料 が エ チ レ ン と水 で あ る.
② 反 応 器 入 口 で のC2H4:100mol 100mol
h−1×0.6=60mol
C2H4の
単 通 転 化 率 が4.2%で
な わ ち,C2H4の
h−1を 基 準 と す る と,入
h−1と な る.反
消 費 さ れ る こ と に な る.し る.す
示 す.循
量 は
応 器 で の 物 質 収 支 表 を 作 成 す る.
あ る の で 入 量100mol
た が っ て,100−4.2=95.8mol
循 環 比=95.8/4.2=22.8.
図1.10
口 で のH2O流
エ タ ノー ル製 造 プ ロセ ス
h−1に 対 し4.2mol
h−1が
h−1が リサ イ ク ル さ れ
③ 補 給 原 料 組 成 は次 表 で 示 さ れ る.
④ 反 応 し た エ チ レ ン の モ ル 数 と補 給 原 料 中 の エ チ レ ン の モ ル 数 は と も に1時 当 た り4.2molだ
か ら総 括 転 化 率 は(4.2/4.2)×100=100%と
な る.
【 例 題1.9
メ タ ン と塩 素 の 反 応 】 メ タ ン と 塩 素 か ら,次
チ ルCH3Clと
二 塩 化 メ チ レ ンCH2Cl2が
図1.11は
る.反
の 反 応 に よ り塩 化 メ
生 成 す る.
CH4+Cl2→CH3Cl+HCl
(A)
CH3Cl+Cl2→CH2Cl2+HCl
(B)
プ ロ セ ス の 概 略 を 示 し た も の で あ る.b点
応 器 へ の 供 給 モ ル 比 は5:1で,塩
素 の1回
応 器 出 口 で の,CH3ClとCH2Cl2の
に お け る メ タ ン と塩 素 の 反
通 過 当 た り の 転 化 率 は100%で モ ル 比 は4:1で
生 成 物 は 冷 却 器 に 送 ら れ,CH3ClとCH2Cl2は
凝 縮 し,さ
あ っ た.反
た,冷
却 器 を 出 た ガ ス は ガ ス 吸 収 塔 に 送 ら れ,HClは100%吸
CH4は
ガ ス と し て 再 び 反 応 器 に リサ イ ク ル さ れ る.CH3Clを1000kg の 量 を 求 め よ.
① 補 給 原 料 の 流 量[kmol ② CH4の
h−1]
リサ イ ク ル 流 量[kmol
図1.11
h−1]
メ タ ン と塩 素 の 反 応 プ ロ セ ス
あ
応器 よ り
ら に 蒸 留 塔 に 送 られ
る.ま
す る と し て,次
間
収 さ れ る. h−1製 造
解. 1molのCl2の
う ち 反 応(A)で
α[mol],反
応(B)で(1−
α)[mol]が
消 費
さ れ る とす る. CH4+Cl2→CH3Cl+HCl α
α
(A) α
α
CH3Cl+Cl2→CH2Cl2+HCl 1− α
b点
で のCH4
1− α
100mol
1−
(B) α
1− α
h−1を 基 準 に と る と,メ
る こ とか ら,Cl2は20mol
タ ン と 塩 素 の 供 給 比 が5:1で
あ
h−1と な る.
反 応 器 で の 物 質 収 支 は 次 表 の よ う に な る.
反 応 器 出 口 で のCH3ClとCH2Cl2の =20(2α
−1)/20(1−
CH3Clの kmol
α)=4/1よ
モ ル 比 が4:1で
分 子 量 は50.5,し
た が っ て,CH3Cl:1000kg
h−1を 製 造 す る こ と に な る の だ が,本
基 準 と し て 解 い て き た た め に,生 h−1で あ る.そ と,ス
あ る か らCH3Cl/CH2Cl2
り α=5/6
解 法 で はb点
成 す るCH3Clは
こ で 比 例 計 算 を行 う た め の 比 率(ス
ケ ー ル 因 子 は19.8kmol
h−1/13.3mol
① 補 給 原 料 はCH4:100−83.3=16.7mol
h−1=1000/50.5=19.8 で のCH4
100mol
表 か ら わ か る よ う に13.3mol ケ ー ル 因 子 と 呼 ぶ)を
h−1=1.49×103[―]と h−1,Cl2:20mol
h−1だ か ら合 計16.7
h−1ス ケ ー ル 因 子 を 考 慮 し て(36.7)(1.49×103)=54.6×103mol
h−1=54.6kmol
h−1 表 よ り83.3mol
83.3×(1.49×103)=124×103mol
1.3.3
h−1だ か ら ス ケ ー ル 因 子 を 考 え る と
h−1=124kmol
h−1
エネルギー収支
熱 力 学 第1法 balance)を
求 め る
な る.
+20=36.7mol
② リ サ イ ク ル す るCH4は
h−1を
則 に よ りエ ネ ル ギ ー は 保 存 さ れ る の で,エ
書 く と 次 式 と な る.
ネ ルギー 収 支(energy
系 内 に蓄 積 され るエ ネ ル ギー 量=系
へ の 流 入 物 質 の有 す るエ ネ ル ギー 量
− 系 か らの 流 出物 質 の 有 す るエ ネ ル ギー 量 ± 系 内 で発 生 ま た は 吸収 され るエ ネ ル ギー 量 ± 系 外 か ら流 入 ま た は 系外 へ 流 出す るエ ネ ル ギー 量
(1 .4)
a. エ ネ ル ギ ー 形 態 化 学 工 学 で は1kgの
物 質 を基 準 に エ ネ ル ギ ー を考 え る.
① 運 動 エ ネ ル ギ ー:流
速 をuと
す る とu2/2[J
kg−1]
② 位 置 エ ネ ル ギ ー:Zを
基 準 面 か ら の 高 さ とす る とZg[J
③ 内 部 エ ネ ル ギ ー:E[J
kg−1]
④ エ ン タ ル ピ ー:H[J
kg−1]はPを
圧 力[Pa],vを
kg−1]
比 容[m3
kg−1]と
す る
とH=E+Pv ⑤ 熱:Q[J
kg−1](熱
が 系 内 に 流 入 す る と き:+,熱
が 系 外 に流 出す る と
き:−) ⑥ 仕 事:W[J
kg−1](系 が 外 部 よ り 仕 事 を し て も ら う と き:+,系
が外部 に
仕 事 を す る と き:−) ⑦ 全 エ ネ ル ギ ー:U[J
kg−1]は
内 部 エ ネ ル ギ ー,位
置 エ ネ ル ギ ー,運
動 エ
ネ ル ギ ー の 和 で 表 さ れ る.
(1.5)
b. 非 流 通 系 の エ ネル ギ ー 収 支 系 の 容 積 が 一 定 の場 合(定 容 系):ΔE=Q
(1.6)
内部 エ ネ ル ギ ー 変 化 は 系 内外 の 熱 変 化 と等 し い. 系 の 圧 力 が 一 定 の場 合(定 圧 系):ΔH=Q
(1.7)
系 の エ ン タ ル ピー 変 化 と系 内外 の 熱 変 化 と等 しい. c. 定 常,流 通 系 の エ ネ ル ギ ー 収 支 定 常 状 態 に あ る流 体1kgに
つ い て 図1.12の
よ うに 断 面1と
断 面2の
間 でエ
ネ ル ギー 収 支 を と る と,系 内 の蓄 積 エ ネ ル ギ ー 量 は0だ か ら, 断 面1よ
り系 内 へ 流 入 す る物 質 の 有 す るエ ネ ル ギー 量 ± 断面1と2の
系 外 か ら系 内へ 流 入 ま た は 流 出 す るエ ネ ル ギー 量(熱,仕 =断
面2よ
り系 外 へ 流 出 す る物 質 の 有 す るエ ネ ル ギ ー 量
間で
事) (1 .8)
図1.12
流 通 系 の エ ネ ル ギ ー収 支
す な わ ち,エ ネ ル ギー 収 支 式 は 次 式 で 表 され る. (1.9)
【 例 題1.10 kg
パ イ プ 内 の 流 動 】 サ イ ホ ン の 原 理 を 利 用 し て,水(密
m−3)を 十 分 に 大 き い 貯 水 槽Aか
イ プ で くみ 出 し て い る.1.0m3の だ し,パ
ら5.1m下
の 水 槽Bへ
管 断 面 積5.0cm2の
水 を く み 出 す の に 要 す る 時 間[s]を
イ プ 内 の 摩 擦 損 失 は 無 視 で き る と す る.ま
た,貯
度 ρ=1000
水 槽Aと
パ
求 め よ.た 水 槽Bは
と
も に 大 気 圧 下 で 操 作 さ れ る と す る(図1.13). 解. 全 エ ネ ル ギ ー 収 支 は,系 損 失 が 無 視 で き る こ とか ら,次
内 に ポ ン プ,熱
交 換 器 が な く,パ
イプ内 の摩擦
式 で か け る. (a)
貯 水 槽Aと
水 槽Bは
と もに大 気 圧 下 で操 作 され て い るか ら,
PA=PB=0.1013MPa エ ネ ル ギー 収 支 を貯 水 槽Aの る と,貯 水 槽Aは
水 面 ① と水 槽Bに
十 分 に 大 き い の でuA=0と
入 るパ イ プ 出 口近 傍 ② で と
して よ いか ら,
uB2/2=(ZA−ZB)g 重 力 加 速 度g=9.81m
(b) s−2で
あ る か ら,
uB=[2(ZA−ZB)g]0.5=[2×5.1×9.81]0.5=10m す な わ ち,パ
イ プ 内 の 水 流 量Qは,パ
Q=uBS=10×(5×10−4)=5×10−3m3 し た が っ て,1m3の 1m3/5×10−3m3
s−1 イ プ の 断 面 積 をSと s−1
水 を く み 出 す の に 必 要 な 時 間 は, s−1=200s
す る と
図1.13
パ イプ 内 の 流 動
d. 物 理 プ ロセ ス の エ ン タル ピ ー変 化 物 理 プ ロ セ ス の エ ン タ ル ピー 変 化ΔHは 化 と相 変 化 に よ る潜 熱 変 化Lの
次 式 の よ う に 温 度 変 化 に よ る顕 熱 変
和 で 表 され る. (1.10)
こ こ で,1molの 熱,分
物 質 の 温 度 を1Kだ
子 熱,分
熱 で あ る.気
子 熱 容 量[J
け 上 昇 さ せ る の に 必 要 な 熱 量 を,モ
mol−1 K−1]と
体 の 定 圧 モ ル 比 熱 は,温
い い,式(1.10)中
度T[K]の
のCpは
定圧 モル比
関 数 と し て 表 さ れ る.
Cp=a+bT+cT2+dT3
た だ し,a,b,c,dは 1kgの
(1.11)
物 質 に 固 有 の 定 数 で,化
物 質 を 基 準 に 考 え る 時 は 熱 容 量[J
【 例 題1.11
学 工 学 便 覧 を 参 照 さ れ た い.な
kg−1 K−1]と
水 蒸 気 の 加 熱 】 0.1013MPa,273.2Kの
蒸 気 に 加 熱 し た い.必
要 な 熱 量[kJ
kg−1 K−1
水 の 蒸 発 潜 熱(373.2K):L=2257kJ 水1kg当
水
mol−1]を 求 め よ.
水 蒸 気 の 定 圧 熱 容 量:CpV=1.97kJ
必 要 な 熱 量Qは
お,
い う. 水1molを500Kの
〔デ ー タ 〕:水 の 定 圧 熱 容 量:CpL=4.187kJ
解.
ル比
kg−1 K−1 kg−1
た り で 考 え る と,式(1.10)よ
り
Q=ΔH=CpL(373.2−273.2)+L+CpV(500−373.2) =(4 水1molは18×10−3kgだ
.187)(100)+2257+(1.97)(126.8)=2.925×103kJ
kg−1
か ら
Q=(2.925×103)×(18×10−3)=52.65kJ
mol−1
e. 化 学 プ ロ セ ス の エ ン タ ル ピ ー 変 化 エ ン タ ル ピ ー 変 化 を 求 め る 際,ヘ
ス(Hess)の
法 則 が 用 い ら れ る .す
な わ ち,
反 応 熱 は そ の 反 応 の 初 め の 状 態 と 終 わ りの 状 態 だ け で 決 ま り,途 な い.し
た が っ て,反
中 の経 路 に よ ら
応 器 内 の 反 応 メ カニ ズ ム が 不 明 で も反 応 器 入 口 と出 口の エ
ン タ ル ピ ー の 差 か ら エ ン タ ル ピ ー 収 支 を 計 算 で き る.エ 学 に お い て は,1atm,25℃
ン タル ピー 計 算 な ど熱化
を 標 準 状 態 と し て い る.ま
ず,エ
ン タ ル ピー 変 化
の 計 算 に 必 要 な 基 本 デ ー タ を あ げ て み よ う. ① 標 準 生 成 熱(standard molが 25℃
of formation):ΔHf,標
準 状 態 で,物
そ の 元 素 か ら 生 成 さ れ る と き の エ ン タ ル ピ ー 変 化 を 示 す.な で 安 定 な 集 合 状 態 の 元 素 の エ ン タ ル ピ ー の 値 は0と
② 標 準 燃 焼 熱(standard molが
heat
heat
質1
お,1atm,
す る.
of combustion):ΔHc,標
準 状 態 で,物
質1
完 全 燃 焼 す る と き に 発 生 す る 熱 量 で あ る.
③ 標 準 反 応 熱(standard
heat
of reaction):ΔHR,反
応 生 成 物 と反 応 物 質 の
生 成 熱 の 差 と し て 得 ら れ る. (1.12)
こ こ で,ΔHf,Pは (reactant)の ΔHRが
反 応 生 成 物(product)の
標 準 生 成 熱,ΔHf,Rは
反 応 物 質
標 準 生 成 熱.
負 で あ れ ば 発 熱 反 応(exothermic
反 応(endothermic
reaction)で
し た が っ て,任
正 であ れば 吸熱
あ る.
意 の 温 度T[K]に
標 準 生 成 熱 と,25℃
reaction),ΔHRが
お け る あ る 物 質aの
エ ン タ ル ピーΔHaは,
か ら あ る状 態 ま で の エ ン タ ル ピ ー の 増 加 分 の 和 と し て 与 え
ら れ る. Δ Ha=ΔHf+ΔH298−T
(1.13)
化 学 プ ロ セ ス の エ ン タル ピー 変 化 を求 め る こ とは,物 質 収 支 と熱 収 支 の 組 み合 せ 問題 を解 くこ とに ほ か な ら な い.手 順 と して は ま ず,物 質 収 支 を計 算 し,そ れ に基 づ い て熱 収 支 を計 算 す る こ とに な る. 【例 題1.12
メ タ ン の水 蒸 気 分 解 反 応】 メ タ ン を水 蒸 気 で接 触 分 解 し,
CH4(g)+H2O(g)→CO(g)+3H2(g) な る 反 応(A)でH2を
(A)
製 造 す る 際 に は,副
反 応 と し て 次 の 水 性 ガ ス 反 応(B)が
時 に 起 こ る. CO(g)+H2O(g)→CO2(g)+H2(g) CH4
1kmol
h−1に 対 し,H2Oを2.5kmol
で 反 応 器 を 去 る.こ
の と き,CH4は
(B) h−1の 比 率 で300℃ 完 全 に 分 解 す る.ま
た,出
で 供 給 し,1000℃ 口 ガ ス 中 に はCO
同
が15mol%(湿
り基 準)含
ま れ て い た.
① 反 応 器 出 口 ガ ス 中 の 湿 り基 準 の 組 成[mol%]を ② 本 反 応 で は 反 応 器 か ら熱 を 除 去 す る の か,あ ③ CH4
100 N m3 h−1当 た り の 熱 量[kJ
態(0℃,1atm)で
の 体 積[m3]を
求 め よ. る い は 加 え る の か.
h−1]を 求 め よ.な
お,N
m3は
標 準状
示 す.
〔デ ー タ 〕
な お,各
成 分 の(g)は
解. 基 準:CH4
1mol
気 体 で あ る こ と を 示 し て い る.
h−1を 基 準 に と る.CH4は
完 全 に 分 解 す るか ら,
CH4(g)+H2O(g)→CO(g)+3H2(g) 1mol
生 成 し たCO
h−1
1mol
1mol
h−1
1mol
h−1の う ちx[mol
(A) h−1
3mol
h−1
h−1]が 反 応(B)に
進 む と す る.
CO(g)+H2O(g)→CO2(g)+H2(g) x[mol
h−1]x[mol
h−1]
x[mol
(B) h−1]x[mol
h−1]
物 質 収 支 の 表 を作 成 す る.
題 意 よ り(1−x)/5.5=0.15し
た が っ てx=0.175.こ
算 し た 結 果 を 出 量 ② に 示 す.反
のxの
値 を 出 量 ① に入 れ 計
応 器 出 口 ガ ス の 湿 り基 準 の 組 成 は 表 に 示 す よ う
に な る. ② 反 応 器 入 口 の エ ン タ ル ピ ー:ΔH1 CH4:(1)[−74.87+(0.044)(300−25)]=−62.77kJ
h−1
H2O:(2.5)[−241.89+(0.035)(300−25)]=−580.66kJ 合 計:ΔH1=−643.43kJ
h−1
h−1
反 応 器 出 口 の エ ン タ ル ピ ー:ΔH2 H2O:(1.325)[−241.89+(0.039)(1000−25)]=−270.12kJ CO:(0.825)[−110.53+(0.032)(1000−25)]=−65.45kJ
h−1
CO2:(0.175)[−393.64+(0.050)(1000−25)]=−60.36kJ
h−1
H2:(3.175)[0+(0.030)(1000−25)]=92.87kJ 合 計:ΔH2=−303.06kJ ΔH=ΔH2− ΔHが ③100 ②
h−1
ΔH1=−(303.06−643.43)kJ
正 だ か ら 吸 熱 反 応 で あ る.し N
m3
1mol
た り だ か ら100
N
h−1)=1.52×106kJ
h−1 m3
ル を 脱 水 素 し て ア セ トア ル デ ヒ ドを 製 造 し て い る.エ タ ノ ー ル の 転 化 率 は40%で
成 物 の 温 度[℃]を
h−1に
つ い て は
h−1
断 熱 型 反 応 器 】 断 熱 型 反 応 器 を 用 い,反
で 供 給 さ れ,エ
h−1
を 反 応 器 に 加 え る.
h−1=4.46×103mol
h−1当
ΔH=(4.46×103)(340.4kJ
h−1=340.4kJ
た が っ て,熱
h−1=100/22.4=4.46kmol
で 求 め た ΔHはCH4
【 例 題1.13
h−1
応(A)に
よ りエ タ ノー
タ ノ ー ル は 反 応 器 に325℃
あ る と し た と き,反
応器 出 口での生
求 め よ.
C2H5OH→CH3CHO+H2 な お,各
成 分 の25℃
(A)
で の 標 準 生 成熱
ΔHf[kJ
mol−1]と 平 均 定 圧 モ ル 比熱Cp
[kJ mol−1 K−1]は 次 の よ う に 与 え ら れ る.
解. 物 質 収 支 を と る 基 準 と し て 反 応 器 入 口 で の エ タ ノ ー ル100mol る.エ
タ ノ ー ル の 転 化 率 が40%で
あ る か ら,反
h−1を と
応器 での物質収支 の表 が次 の よ
う に 書 け る. 物 質 収 支 の 表 と与 え ら れ た 熱 力 学 デ ー タ の 表 よ り以 下 の 計 算 を行 う.反 ガ ス の エ ン タ ル ピー を ΔH1と
す る と,
ΔH1=ΔHf+CpΔT =(100)[−240+(0
.1)(325−25)]
応器入 口
=−21000kJ
h−1
反 応 器 出 口 ガ ス の エ ン タ ル ピ ー をΔH2,出
口 温 度 をt[℃]と
す る と,
断 熱 反 応 器 だ か ら反 応 器 入 口 と出 口で の ガ ス の エ ン タ ル ピー は 等 し くな け れ ば な ら な い.し
た が っ て,ΔH1=ΔH2
す な わ ち,
−21000=−21200+10.4×(t−25)
こ れ を解 い て しか し,こ
t=44.2℃
れ で は 温 度 が 下 が り す ぎ る こ と に な っ て し ま う の で,断
熱 反 応 器 を用
い る の が 妥 当 か 否 か を 再 検 討 す る 必 要 が あ る こ と が わ か る.
1.4 気 体 の状 態 方 程 式
1.4.1
理 想 気 体 法 則(ideal
gas
law)
基 本 的 な 理 想 気 体 の 状 態 方 程 式 と し て よ く知 ら れ て い る. pV=nRT
(1.14)
pv=RT
(1.15)
こ こ で,pは
気 体 の 圧 力,Vは
りの 体 積,Tは
絶 対 温 度,nは
J mol−1 K−1=82.06cm3
1.4.2
体 積,vは
atm
分 子 容 あ る い は モ ル 体 積 で1mol当
モ ル 数,Rは
気 体 定 数(gas
mol−1 K−1=1.987cal
た
constant)で,8.314
mol−1 K−1で あ る.
実在気体 の状態式
a. 状 態 方 程 式 を 用 い る 方 法 理 想 気 体 法 則 で は 気 体 分 子 自 身 の 体 積bと 無 視 し て い る.そ ワ ー ル ス(van
こ で,1molの
der Waals)の
気 体 分 子 相 互 間 に 働 く 引 力a/v2を
気 体 に つ い て 補 正 し た 式(1.16)を 式,a,bを
フ ァンデル
フ ァ ン デ ル ワ ー ル ス 定 数 と 呼 ぶ.
(1.16)
b. 圧 縮 因 子 を 用 い る 方 法 実 在 気 体 の 理 想 気 体 か ら の ず れ を 圧 縮 係 数(compressibility
factor) zで 表 す
と pV=znRT
(1.17)
pv=zRT
(1.18)
こ こ で,zは
対 臨 界 圧(reduced
temperature)
Tr(=T/Tc)の
臨 界 点(critical ば,物
point)を
質 に よ ら ずzの
state)が
[m3 mol−1]を
関 数 で,pcとTcは
pr(=p/pc),対
臨 界 温 度(reduced
気 体 と液 体 の 区 別 が な くな る
示 す 臨 界 圧 力 と 臨 界 温 度 で あ る.対
値 は 同 じ と い う対 応 状 態 原 理(principle
成 立 し,図1.14の
【 例 題1.14
pressure)
臨界値 が同一 なら of corresponding
圧 縮 係 数 線 図 が か け る.
エ チ レ ン の 分 子 容 】 エ チ レ ン の250℃,1000atmで ① 理 想 気 体 法 則,②
圧 縮 係 数 線 図 を 用 い て 求 め よ.た
レ ン の 臨 界 定 数 はTc=283.1K,pc=50.5atmで 解. ① 理 想 気 体 法 則(1.15)よ
の 分 子 容v だ し,エ
あ る.
り
② 対 臨界温度
対 臨界圧力
図1.14の
圧 縮 係 数 線 図(b)の
た が っ て 式(1.18)よ
高 圧 範 囲 よ り圧 縮 係 数z=1.73と
り
理 想 気 体 の 場 合 の1.73倍
と な る.
読 み 取 れ る.し
チ
図1.14
(a) 低 圧 範 囲 圧 縮 係 数 線 図(江 口
彌:化
学 工 学 量 論,化
学 同 人,1973よ
り)
(b) 中 高 圧 範 囲
超 臨界流 体 液 体 と気 体 の 区 別 が な く な る 臨 界 点 を超 え た 温 度,圧 流 体 と呼 ば れ,特 て い る の がCO2(臨 近 傍 で 温 度,圧
力 に 置 か れ た 流 体 は超 臨 界
徴 あ る性 質 で 注 目 さ れ て い る.な か で も,工 業 的 に よ く用 い ら れ 界 温 度31.1℃,臨
界 圧 力72.8atm)で,図
に示 す よ うに臨 界点
力 を若 干 変 化 させ る と密 度 が 大 き く変 化 す る.密
対 応 す る か ら,温
度,圧
力 を 操 作 す る こ とに よ り超 臨 界CO2を
度 は分 子間 距離 に 溶 媒 と して 用 い る
と,固 体 や 液 体 の 溶 解 度 や 拡 散 係 数 を コ ン トロ ー ル す る こ とが で き る.最 に 行 わ れ て い る の が 超 臨 界CO2を ロ セ ス で,現 在 年 間5万
も大 規 模
用 い た コー ヒー や 紅 茶 か ら の カ フ ェ イ ン 抽 出 プ
トン の プ ラ ン トが 稼 動 中 で あ る.
超 臨 界CO2の
密 度 の 圧 力 ・温 度 依 存 性
(化 学 工 学 便 覧(改 訂6版),丸
善,1999)
1.5 相 平 衡 と単 位 操 作
気 液 系,液 液 系 な ど異相 間 の 物 質 移 動 の 速 度 は他 の 条 件 が 同 じな らば,平 衡 状 態 か らの ず れ に よ り決 ま る.回 分 操 作 の 場 合 は所 要 時 間,連 続 操 作 の 場 合 は装 置 の 大 き さ を決 定 す る際 に,こ の 物 質 移 動 速 度 が 重 要 とな る.相 平 衡 と密 接 に 関 連 し た単 位 操 作 の 関 係 は次 表 の よ うに な る.単 位 操 作 とは化 学 プ ロセ ス で物 質 に 組
成,状
態,エ
1.5.1
純物 質の蒸気圧
温 度Tと ①
ネ ル ギー な どの 変 化 を与 え る ため の操 作 法 を ま とめ た もの で あ る.
純 物 質 の 蒸 気 圧Pの
関 係 は 次 の 式 で 与 え ら れ る.
ク ラ ペ ー ロ ン(Clapeyron)の
式 (1.19)
こ こ で,λ 子 容[m3
はT[K]に
お け る モ ル 蒸 発 潜 熱[J
mol−1]で,vG≫vL,vG=RT/P(理
mol−1],vG,vLは
想 気 体 法 則),λ
次 の ク ラ ウ ジ ウ ス-ク ラ ペ ー ロ ン(Clausius-Clapeyron)の
気 体,液
体 の分
が 一 定 と仮 定 す る と
式 と呼 ば れ る. (1.20)
② ア ン トワ ン(Antoine)の
式 (1.21)
こ こ で,Tは
温 度[K],A,B,Cは
液 体 に 固 有 の 定 数 で,化
学 工 学 便 覧 に デー
タ が 収 録 さ れ て い る.
1.5.2 理 想 溶 液 の 法 則 a. 理
想
溶
液
理 想 溶 液(ideal solution)は 混 合 して も容 積 の 増 減 が な く,発 熱 や 吸 熱 も起 こ さ な い 溶 液 の こ とで あ る.理 想 溶液 の 例 と し て は ① 希 薄 溶 液,②
化学 的性質 が
非 常 に類 似 して い る同 族 列 炭 化 水 素(例 え ば ベ ン ゼ ン-ト ル エ ン),同 族 ア ル コー ル(例 え ば メ タ ノー ル-エ タ ノー ル)が あ げ られ る. b. ヘ ン リ ーの 法 則 気 体 の 液 体 中へ の 溶 解 度Cは
温 度 が 低 い ほ ど,気 体 分 圧pが
大 き い ほ ど大 き
い.一
定 温 度 でCが
(Henry)の
小 さ い 範 囲 で はpとCは
法 則 と い い,式(1.22-1∼3)で
液 中 の 溶 質 の 濃 度[kmol
表 さ れ る.こ
m−3],pは
ン リー 定 数 はH[m3
れ を ヘ ン リー
こ で,Cは
平 衡 に あ る溶
平 衡 に あ る 気 相 中 の 溶 質 の 分 圧[Pa],xは
平 衡 に あ る 溶 液 中 の 溶 質 の モ ル 分 率[―],yは 率[―],ヘ
比 例 す る.こ
Pa
平 衡 に あ る気 相 中 の 溶 質 の モ ル 分
mol−1],K[Pa],m[―]で
表 さ れ る.ヘ
ン
リー 定 数 が 小 さ い ほ ど ガ ス の 溶 解 度 は 大 き い. p=HC
(1.22-1)
p=Kx
(1.22-2)
y=mx
(1.22-3)
【 例 題1.15】
1atm,20℃
で 空 気 中 の ア ン モ ニ ア 分 圧 が19.2mm
ア ン モ ニ ア の 水 へ の 溶 解 度 は3.3g
NH3/100g
H2Oで
① ヘ ン リ ー の 法 則 が 成 立 す る と し て,ヘ [Pa],m[―]を ② 1atm,20℃ kgの
求 め よ.た でNH3
水 と 接 触 さ せ,温
NH3の
だ し,溶 10mol%,空
度,圧
液 相 中 の 濃 度[kmol
積[m3]を
求 め よ.た
だ し,溶
液 の 密 度 は1.00g
m3 mol−1],K
cm−3と す る. 混 合 気 体1.00m3を50
力 一 定 の ま ま 平 衡 に 達 し た と す る.こ m−3]と 気 相 中 の 濃 度[mol%]お 液 の 密 度 は1.00g
cm−3,空
よ び,気
解. ① ア ン モ ニ ア の 分 子 量 は17だ か ら,溶 液 中 の 溶質 濃 度Cは
水 銀 柱760mmだ
し た が っ て,
水 の 分 子 量 は18だ
し た が っ て,
から
か ら
の と きの 相 の 容
気 は 水 に 不 溶 と し,
水 の 蒸 発 は な い も の と す る.
1atmは
とき
あ る.
ン リー 定 数H[Pa
気90mol%の
Hgの
②NH3と
空 気 の 混 合 気 体 の モ ル 数 は理 想 気 体 法 則 か ら
混 合 気 体 中 のNH3の
モ ル 数 は41.56×0.10=4.16mol,NH3のa[mol]が
け る とす る とy=mxよ
水 に溶
り
こ れ を 解 く とa=4.12mol 気相 中の濃度 は
液相 中の濃 度 は
気相 の容積 は
c. ラ ウ ー ル の 法 則 理 想 溶 液 の 気 液 平 衡 関 係 は ラ ウ ー ル(Raoult)の
法 則 で 表 せ る.
pi=Pixi
(1.23)
す な わ ちpi(気 相 中 の 成 分iの 分 圧)は,Pi(平 とxi(液 相 中 の 成 分iの
衡 温 度 に お け る成 分iの 蒸 気 圧)
モ ル 分 率)の 積 で 表 さ れ る.A-B2成
分 系 につ い て ラ
ウ ー ル の 法 則 を適 用 して み よ う.全 圧 を Π とす る. pA=PAxA
(1.24-1)
pB=PBxB=PB(1−xA)
(1.24-2)
Π=pA+pB=PAxA+PB(1−xA)
Aを
低 沸 点 成 分 と し,x,yを Π=PAx+PB(1−x)
(1.25)
低 沸 点 成 分 の 液 相,気
相 の モ ル 分 率 と す る と, (1.26)
(1.27)
し た が っ て, (1.28)
αAB=PA/PBで,相
対 揮 発 度 あ る い は 比 揮 発 度(relative
volatility)と
い う. (1.29)
例 え ば ベ ン ゼ ン-ト ル エ ン 系 で は 80.1℃(ベ
ン ゼ ン の 標 準 沸 点)で は,αAB=2.60=α0
110.6℃(ト
ル エ ン の 標 準 沸 点)で
は,αAB=2.36=α1
平 均 相 対 揮 発 度 αavは 両 沸 点 で の α の 相 乗 平 均 を 用 い,式(1.28),(1.29)の
αAB
と し て αavを 使 用 す る.
d. 非 理 想 溶 液 の 気 液 平 衡 ラ ウ ー ル の 法 則 に 従 わ な い 系 で は,液 γA,γBを 用 い,理
activity
coefficient)
想 溶 液 か ら の ず れ を 示 す.
pA=γAPAxA=ΠyA
(1.30-1)
pB=γBPBxB=ΠyB
(1.30-2)
理 想 溶 液 で は γA=1,γB=1と
な る.
γAxA=aA,γBxB=aBをA,B成 γA,γBを Laar)の
活 量 係 数(liquid
分 の 活 量(activity)と
求 め る た め に マ ー ギ ュ レ ス(Margules)の 式,ウ
て い る.詳
イ ル ソ ン(Wilson)の
式,NRTL式
し く は 化 学 工 学 便 覧 を参 照 さ れ た い.
図1.15
単蒸留装置
い う.こ 式,フ
やUNIQUAC式
の 液 活 量係 数
ァ ン ・ラ ー ル(van が 用 い られ
1.5.3 平 衡 関係 と物 質 収 支 a. 単
蒸
留
図1.15の
よ うな2成
分 系 の 単 蒸 留 を考 え る.単 蒸 留(simple
distillation)は
操 作 が 簡 単 で,実 験 室 で は よ く利 用 され る.工 業 的 に は ウ イ ス キー の 蒸 留 器 と し て用 い られ て い る. い ま,あ る時 刻 の 蒸 留 器 内 の液 量 をF[mol],液 をx[―],発
相 中 の低 沸 点 成 分 の モ ル 分 率
生 蒸 気 中 の低 沸 点 成 分 の モ ル分 率 をy[―]と
さ らにdF[mol]だ
す る.こ の 状 態 か ら,
け 蒸 気 が 蒸 留 器 よ り発 生 した と きの 液 相 と気 相 の 低 沸 点 成 分
の物質収 支 よ り d(Fx)=ydF
(1.31-1)
Fdx+xdF=ydF
(1.31-2)
(1.31-3)
こ の 関 係 を 最 初 の 状 態(F0,x0)か レ イ リ ー(Rayleigh)の
ら 任 意 の 時 刻 の 状 態(F1,x1)ま
で 積 分 す る と,
式 が 得 ら れ る. (1.32)
仕 込 ん だ 原料 の モ ル 数 と蒸 留 器 か ら留 出 し た モ ル数 の 比 を留 出 率 β とい う. (1.33)
一 般 的 に は 気 液 平 衡 関 係 か らyとxの る い は 図 積 分 す る こ とに な る.し 与 え ら れ る とす る と 式(1.32)は
関 係 を 式(1.32)に
か し な が ら,気 式(1.34)と
代 入 し,数
値積 分 あ
液 平 衡 関係 が ラ ウー ル の 法 則 で
な る. (1.34)
し た が っ て,式(1.34)よ
りx0,β
が 与 え ら れ れ ばx1が
求 ま る.
留 出 液 の 平 均 組 成xDは
物 質 収 支 よ り次 式 で 得 ら れ る. (1.35)
【 例 題1.16】 40mol%の
ベ ン ゼ ン-ト ル エ ン2成 分 系 混 合 溶 液300gを
蒸留
器 に入 れ,大 気 圧 下 で 単 蒸 留 し た.蒸 留 器 内 の 残 液 組 成 が ベ ンゼ ン20mol%の と き の 留 出 液 量[g]と
留 出液 平 均 組 成[mol%]を
求 め よ.た だ し,平 均 相 対 揮
発 度 は αav=2.48と
解. 式(1.34)を
す る.
用 い る と
し た が っ て,
ベ ン ゼ ン(C6H6)と
トル エ ン(C7H8)の
分 子 量 は78と92で
あ る か ら,
し た が っ て,
残 留 液 の 平 均 分 子 量 は0.2×78+0.8×92=89.2で
あ る か ら,
F1=1.342×89.2=119.8g
留 出液量 は F0−F1=300−119.8=180.2g
留 出 液 の 平 均 組 成 は 式(1.35)よ
り求 ま る.
b. 平 衡 フ ラ ッ シ ュ 蒸 留
平 衡 フ ラ ッ シュ 蒸 留(equilibrium 供 給,加
flash vaporization, EFV)は
原 料 を連 続 的 に
熱 し,減 圧 弁 か ら低 圧 室 に 噴 射(フ ラ ッ シ ュ)さ せ,蒸
気 と液 に 分 離 す
る操 作 で あ る.こ の と き,得
ら れ る蒸 気 と液 の組 成 は平 衡 で あ る.図1.16の
よ
う に原 料 を連 続 的 に加 熱 し,減 圧 弁 か ら フ ラ ッ シュ 蒸 留 器 に 噴射 す る と,蒸 気 と 液 に分 離 す る.こ の と き,気 液 の組 成 は 平 衡 状 態 に あ る.こ の 方 法 は最 初 は 原 油 の 粗 い分 離 に 用 い られ た. 2成 分 系 の 平衡 フ ラ ッ シ ュ蒸 留 の全 物 質 収 支 は F=V+L
(1.36)
低沸 点成分の物質収支 FxF=Vy+Lx
以上 の式 よ り
(1.37)
図1.16
フ ラ ッ シ ュ蒸 留 器
(1.38) 平 衡 関 係y=f(x)と 【 例 題1.17】 (C8H18,標
式(1.38)の
交 点 よ り(x,y)が
n-ヘ プ タ ン(C7H16,標
準 沸 点125.6℃)60mol%か
求 ま る.
準 沸 点98.4℃)40mol%とn-オ ら な る2成
ク タ ン
分 系 混 合 液100kmol
h−1を 大
気 圧 下 で 平 衡 フ ラ ッ シ ュ 蒸 留 し,平
衡 状 態 に あ る蒸 気 と液 に 分 離 す る.得
蒸 気 流 量 と 液 流 量 が 等 し い と き,液
相 留 分 と気 相 留 分 と の 組 成[mol
求 め よ.な
お,本2成
分 系 の 平 均 相 対 揮 発 度 αavは2.20で,ラ
られ る
fraction]を
ウー ル の 法 則 が
適 用 で き る と す る. 解.
xF=0.40,L=Vだ
か ら,式(1.38)よ
り
(A) 一方
,ラ
ウー ル の 法 則 よ り
(B) 式(A)と(B)を
解 き,xを
求 め る と,x=0.307,y=0.494.
液 相 留 分 と 気 相 留 分 の 組 成[mol
fraction]は
表 の よ う に な る.
【 演 習 問題 】 1.1 濃 度 の 換 算: cm3つ
モ ル 分 率 が0.50の
くる に は,95wt%エ
1.2 次 元 解 析:
エ タ ノー ル 水 溶 液(密 度0.860g
タ ノー ル 水 溶 液 と水 を何gず
液 体 中 を 気 泡 が 上 昇 す る 時 の 速 度uを
μ,液 体 の 密 度 ρ,表 面 張 力 σ,重 力 加 速 度gの
cm−3)を1000
つ 混 ぜ れ ば よ い か.
気 泡 の 直 径d,液
体の粘度
関 数 で あ る と し て 次 元 解 析 を行
え. 1.3 燃 焼 反 応: 給 し,プ
プ ロパ ン100kmol
h−1を4500kmol
ロ パ ン を燃 焼 させ る.プ
h−1の 空 気 と一 緒 に 燃 焼 炉 に 供
ロ パ ン は100%反
応 せ ず,CO2,COとH2Oが
生 成 す る.こ れ ら の デ ー タか ら過 剰 空 気 率 を 計 算 し た い が で き るか.計 場 合 に は 過 剰 空 気 率 を求 め よ.ま
た,で
き な い とす れ ば,他
算できる
に どの よ うなデー タ
が 必 要 か 述 べ よ. 1.4 反 応 系 の 物 質 収 支:
反 応(A),(B)に
よ りブ タ ン,ブ
テ ン か らブ タ ジ エ ン が 製
造 さ れ て い る. C4H10→C4H8+H2
(A),
補 給 原 料 は 純 粋 な ブ タ ン で,リ 反 応 器 に 送 られ る.反 反 応(B)に
C4H8→C4H6+H2
応 器 中 で は 反 応(A)に
よ る ブ テ ン の 単 通 転 化 率 は70%で
離 装 置 で ブ タ ジ エ ン,ブ ル さ れ る.補
(B)
サ イ ク ル さ れ た ブ テ ン と混 合 さ れ,加
あ っ た.反
テ ン と水 素 に 完 全 に 分 離 さ れ,ブ
給 原 料 ブ タ ン100kmol
熱 炉 を経 て,
よ る ブ タ ン の 単 通 転 化 率 は100%, 応 器 を 出 た ガ ス は,分 テ ン は す べ て リサ イ ク
h−1を 基 準 に と り,次 の 問 に 答 え よ.
① 本 プ ロ セ ス の フ ロー シ ー トを書 け. ② 反 応 器 で の 入 量,生 ブ テ ン 流 量[kmol
成 量,出
量 の 物 質 収 支 の 表 を 書 き,リ サ イ ク ル さ れ る
h−1]を求 め よ.
③ 反 応 器 出 口 ガ ス の 組 成[mol%]を 1.5 エ ン タ ル ピー 計 算:
を 生 産 し て い る.水1kmol当 熱 器 に1.00×104kJ
の 水 か ら160℃
た り必 要 な エ ン タ ル ピー[kJ]を
で の 平 均 分 子 熱 はCp=75.6×10−3kJ
で の 潜 熱 はL=40.7kJ
×10−6T+1.12×10−9T2[kJ 1.6 エ ン タ ル ピー 収 支:
の スチー ム
求 め よ.ま
h−1の 熱 を加 え た と き の ス チ ー ム 発 生 流 量[kg
〔 デ ー タ 〕 水 の25∼100℃
の100℃
求 め よ.
大 気 圧 下 で 加 熱 器 に よ り25℃
た,加
h−1]を 求 め よ. mol−1 K−1,水
mol−1,水 蒸 気 の 分 子 熱 はCp=30.2×10−3+9.93 mol−1 K−1]
エ タ ノー ル は エ チ レ ン の 水 和 反 応 で 製 造 さ れ て い る.
C2H4(g)+H2O(g)=C2H5OH(g)
(A)
エ タ ノー ル の 一 部 は 副 反 応 に よ り ジエ チ ル エ ー テ ル に な る. 2C2C5OH(g)=(C2H5)2O(g)+H2O(g)
(B)
反 応 器 に 供 給 さ れ る 原 料 は54mol%のC2H4,37mol%のH2Oと 物 質(記 号 はIを で操 作 さ れ,出 率 は5%で,エ
用 い る)か ら な り,310℃ 口 温 度 も310℃
で 供 給 され る.反 応 器 は310℃
で あ る.エ チ レ ン の 反 応 器1回
タ ノー ル の 収 率(=生
残 りは 不 活 性 の等温
通 過 当 た りの転化
成 し た エ タ ノー ル の モ ル 数/消 費 さ れ た エ チ
レ ン の モ ル 数)は0.9で て,以
あ っ た.反 応 器 に 供 給 さ れ る 原 料100mol
h−1を 基 準 と し
下 の 問 に 答 え よ.
① 反 応 器 入 口 と 出 口で の 物 質 収 支 の 表 を書 け. ② 反 応 器 出 口 で の 生 成 物 の エ ン タ ル ピ ー ΔH2と 反 応 器 入 口で の 原 料 の エ ン タ ル ピー ΔH1と
の差 ΔH[kJ
h−1]を 求 め よ.
③ この プ ロ セ ス で は 反 応 器 を加 熱 して い るの か,冷 ④ なぜ エ チ レ ン の 転 化 率 を5%に
却 して い る の か を示 せ.
抑 え て い るの か.考
え られ る理 由 を述 べ よ.
⑤ 反 応 器 の 後 に どの よ う な プ ロ セ ス が 必 要 に な る か を,フ
ロ ー シー トを 書 い
て 説 明 せ よ.
1.7 z因 子:
125m3(0℃,1atmの
力 は40atmで して,次
あ っ た.O2の
条 件 下)のO2が
装 置内の圧
界 温 度 は154.4Kで
あると
の 問 に 答 え よ.
(a) 装 置 内 の 温 度[K]を
(b) こ の 温 度 を保 っ た ま まO2を
1.8 理 想 溶 液:
求 め よ.
ヘ キ サ ン50mol%と
を1atm,85℃
液 化 す る に は,ど
う し た ら よ い か を述 べ よ.
ヘ プ タ ン50mol%か
ら な る 混 合 蒸 気100mol
の 容 器 に 入 れ た と こ ろ 気 液 に 分 離 し た.ヘ
合 溶 液 は 理 想 溶 液 と み な せ る と し て,平 お よ び 気 相 と液 相 の 各 組 成[mol%]を
入 っ て い る1m3の
臨 界 圧 力 は49.7atm,臨
〔デ ー タ 〕 85℃
キ サ ン-ヘ プ タ ン の 混
衡 状 態 に お け る 液 相 と 気 相 の 量[mol],
求 め よ.
で の ヘ キ サ ン の 蒸 気 圧 は1233mmHg,85℃
で のヘ プ タ ン の
蒸 気 圧 は503mmHg. 1.9 単 蒸 留:
A成 分40mol%か
蒸 留 し た.留 fraction]で よ.た
あ っ た.こ
だ し,必
ら な るA-B2成
出 率 β=0.4の
分 系 混 合 液900gを
と き 留 出 液 中 のA成
大 気 圧 下 で単
分 の 平 均 組 成 はxD=0.7[mol
の 系 は 理 想 溶 液 とみ なせ る と し て,平 均 比 揮 発 度 α を求 め
要 が あ れ ば,Aお
よ びB成
分 の 分 子 量 は 各 々30お
よ び40と
す
る. 1.10 フ ラ ッ シ ュ 蒸 留: 2成 分 系 混 合液100kmol
A成
分(低 沸 点 成 分)40mol%とB成 h−1を 操 作 圧 力0.125MPaで
分60mol%か
らな る
平 衡 フ ラ ッ シ ュ 蒸 留 し,蒸
気 と液 に分 離 す る.こ の と き得 られ る蒸 気 と液 の 組 成 は 平 衡 状 態 に あ る.蒸 気 中 の 成 分Aの
組 成 が60mol%で
求 め よ.な
お,A-B2成
で き る とす る.
あ る と き,得
られ る液 と蒸 気 の 流 量[kmol
分 系 の 平 均 相 対 揮 発 度 は2.5で,ラ
h−1]を
ウー ル の法 則が 適用
2 流 体 と 流 動
流 れ は 風 の そ よ ぎや 川 のせ せ ら ぎか ら台風 や 竜巻 に見 られ る大 規 模 な もの に至 る まで,私 達 の ご く身 近 に 見 られ る 自然 現 象 の1つ
で あ り,普 段,私 達 は何 気 な
く これ に 接 して い る.し か しな が ら化 学 工 業 の 生産 ラ イ ン 上 に 並 ぶ 様 々 な装 置 内 に お い て は,こ の 流 動 が決 定 的 な役 割 を果 た して い る もの が 少 な くな い. 本 章 で は流 体 と流 動 の 基 本 的 な性 質 を学 ぶ こ とか ら始 め て,こ
れ を定 量 的 に 表
現 あ るい は計 算 す る方 法 に つ いて 述 べ る.
2.1 流 れ の 基 礎 項 目
2.1.1
さ ま ざ ま な流 体 と粘 度
孔 子 の 「川 上 の 嘆 」や,方 "流 れ"は
丈 記 の 冒 頭 の 一 節 を 引 き 合 い に 出 す ま で も な く,
古 来 か ら 多 くの 人 々 の 関 心 を 引 きつ け て き た
最 大 の 天 才Leonardo
da
Vinciも
そ の 一 人 で あ り,彼
.ル
ネ ッサ ン ス が 生 ん だ
は 川の流 れに立 てた物体
ま わ り の 流 れ の 様 子 を 精 緻 な ス ケ ッ チ に し て 残 し て い る. 流 体(fluid)と く さ,す
は 気 体 と 液 体 の 総 称 で あ る が,そ
の 流 れ や す さ あ るい は 流 れ に
な わ ち 流 体 の 内 部 摩 擦 に 基 づ く粘 性(viscosity)に
的 な 記 述 を し た の は,Newtonで
あ っ た.彼
つ い て,初
め て定 量
は 万 有 引 力 を世 に 知 ら しめ た 大 著
『Principia』 の 中 で 次 の よ う な 仮 説 を 述 べ て い る. 「流 体 の 諸 部 分 の 間 に 滑 りや す さ が 欠 け て い る こ と に よ っ て 生 じ る 抵 抗 は,そ の 他 の 条 件 が 等 し け れ ば,流
体 の 諸 部 分 が 互 い に 引 き離 さ れ て い く速 度 に 比 例 す
る.」 こ れ は 今 日 ニ ュ ー トン の 粘 性 法 則(Newton's れ て い る も の で,式
に 表 せ ば 式(2.1)の
law
よ う に な る.
of viscosity)と
して 知 ら
(2.1) こ こ で,τ
は 剪 断 応 力(shear
stress) [Pa]と
呼 ば れ,上
さ が 欠 け て い る こ と に よ っ て 生 じ る 抵 抗"に (shear
相 当 す る.ま
たdu/dyは
りや す
剪断速 度
rate) [s−1]ま た は ず り 速 度 と呼 ば れ る 量 を 最 も単 純 な 場 合 に つ い て 表 記 し
た も の で あ り,"流
体 の 諸 部 分 が 互 い に 引 き 離 さ れ て い く速 度"に
な わ ち 剪 断 速 度 と は,あ 垂 直 な 方 向(こ
る 方 向(こ
こ で はy方
勾 配 を 表 し て お り,γ
般 に 式(2.1)が
向)の 流 速u[m
で 表 示 さ れ る こ と も 多 い.式(2.1)は
成 り 立 ち,μ
流 体(Newtonian
こ で はx方
fluid)と
相 当 す る.す
s−1]が,そ
れ と
向)に 沿 っ て ど の よ う に 変 化 す る か と い う 速 度 の 空 間
関 係 に あ る こ と を 示 し て お り,そ
は,ニ
記 し た 仮 説 の"滑
の 比 例 定 数 μ が 粘 度[Pa
こ の τと γ が 比 例 s]と 定 義 さ れ る.一
が 剪 断 速 度 に よ ら ず 一 定 と な る 流 体 は,ニ 呼 ば れ る.水,油,空
ュ ー トン 流 体 と考 え て よ い.ち
ュー トン
気 な どで高分 子 で は な い流体
な み に 常 温 で の 水 の 粘 度 は 約10−3Pa
sで
あ る. 一 方,液
体 の 一 部 や 混 相 流 の 中 で,μ
が 一 定 と な ら ず,γ
す る 流 体 は 非 ニ ュ ー トン 流 体(non-Newtonian
fluid)と
を 体 系 的 に 取 り扱 う 学 問 は レ オ ロ ジ ー(rheology)と
や 時 間t[s]に
呼 ば れ る.同
流体 の 特 性
呼 ば れ,Binghamに
よって
20世
紀 前 半 に 創 始 さ れ た.図2.1に
Aの
よ う に 原 点 を 通 る 直 線 で 表 さ れ る の が ニ ュ ー ト ン 流 体 で あ り,直
が 粘 度 と な る.一 線 上 の あ る1点
方,B,Cは
は τ と γ と の 関 係 を 模 式 的 に 示 し て い る.
原 点 は 通 る が 曲 線 と な る 流 体 で あ り,原
に 引 い た 直 線 の 勾 配 は,見
は 非 ニ ュ ー トン 粘 度 η[Pa s]と
図2.1
依存
か け 粘 度(apparent
呼 ば れ る.こ
線 の 勾配 点 か ら曲
viscosity)あ
るい
の ηが γ の 増 大 と と も に 減 少 す る
純 粘 性 非 ニ ュ ー トン流 体 の 流 動 特 性 曲線
流体Bは,擬
塑 性 流 体 と呼 ば れ,高 分 子 水 溶液 や コ ロ イ ド溶 液 に 多 く見 られ る.
これ とは 逆 に,η が γ の 増 大 と と もに 増 大 す る 流体Cは ば れ,微 か らCま
ダ イ ラ タ ン ト流 体 と呼
小 な 固 体 粒 子 を 多 量 に含 む 塗 料 な ど の 懸 濁 液 に 多 く見 られ る.流 体A で の レオ ロ ジー 流 動 特 性 は 式(2.2)で
ま とめ て表 現 す る こ とが で き る.
η=kγn−1 式(2.2)は 1の
(2.2)
パ ラ メ ー タ ーnの
値 に よ り,0
と き ニ ュ ー ト ン 流 体(A)を,n>1の
表 現 す る こ とが で き る.こ つ 流 体 は,塑
点 を 通 ら ず 剪 断 速 度 が0で
呼 ば れ て お り,非
土 な ど が こ れ に 当 た る.降 ン ガ ム 流 体(E)と
と き ダ イ ラ タ ン ト流 体(C)を
れ に 対 し て,原
性 流 体(D)と
伏 値 を も ち,か
呼 ば れ,降
の レ オ ロ ジ ー は 式(2.3)の
と き 擬 塑 性 流 体(B)を,n=
沈 降 性 の ス ラ リー,ペ
それ ぞれ 降伏値 をも イ ン ト,粘
つ 線 形 形 状 と な る 流 体 は,狭
伏 応 力 τ0[Pa]と
塑 性 粘 度 μ0を[Pa
s]用
義 には ビ い て,そ
よ う に 表 現 さ れ る.
τ=μ0γ+τ0
(2.3)
以 上 に 述 べ た 流体 は,非 ニ ュー トン 流 体 の 中 で も,時 間 的 に は 変 化 が な い もの で,純 粘 性 流 体(purely
viscous
fluid)と 総 称 さ れ る.こ れ に 対 して,流 体 に 剪
断 を与 えれ ば 与 え るほ ど,見 か け 粘 度 が 変 化 す る流 体 は時 間 依 存 性 流 体 と呼 ば れ る.そ の うち,η が 剪 断 を掛 け る時 間 と と もに 減 少 す る流体 は チ ク ソ トロ ピ ッ ク 流体,逆
に増 大 す る流 体 は レオ ペ ク チ ッ ク流 体 と呼 ば れ る.さ ち に,粘 性 と弾 性
の 両 性 質 を あ わせ もつ も の に 粘 弾 性 流 体(viscoelastic
fluid)が あ るが,や
はり
時 間 に関 係 した 因子 で表 現 され る.こ れ らの 流 体 に は 通 常 の ニ ュー トン 流 体 に は 見 られ な い種 々 の 特 異 な現 象 の 観 察 さ れ る こ とが 知 られ て い る. こ の よ うに 非 ニ ュー トン流 体 の レ オ ロ ジー 特 性 は極 め て 多 岐 に わ た っ て お り, そ の 特 性 の発 現 に は,液 体 中 に 存 在 す る微 小 固体 粒 子 の 流 れ に対 す る配 向 や,固 体 粒 子 同 士 の 摩 擦,壊 砕,凝 -ゲ ル 間 の 相 変 化 な ど,多
集 あ る い は 液 中 へ の 分 散,さ
ら に は 液 自体 の ゾ ル
くの要 因が 介 在 して い る もの と考 え られ て い る.
2.1.2 レイ ノル ズ 数 と流 動 状 態 筒 状 の 長 い 管 す な わ ち 円 管 内 に水 を流 す と き,そ の 流 速 が 非 常 に遅 い と きに は,水 は きれ い な層 を成 して 流 れ るが,流 速 が 速 くな る と,流 れ は 乱 れ,や
がて
大 小 の 渦 が 入 り乱 れ た様 相 を呈 す る よ うに な る.こ の 様 子 を最 初 に 目に見 え る形 に 可 視 化(visualization)し
た の は,英
国 のO. Reynoldsで
あ っ た.彼
は流 れ の
中 心 に,染 管 径(管 ρ[kg
料 を 含 む 液 を 注 入 す る こ と に よ り,こ
直 径)D[m],平
均 流 速u[m
m−3]は 流 体 の 密 度)を
さ れ る 数 値Reが
s−1],液
の こ と を 実 証 し た だ け で な く,
の 動 粘 度 ν[m2 s−1](=μ/ρ た だ し
い ろ い ろ 変 え て 実 験 を 行 っ た 結 果,式(2.4)で
同 じ で あ れ ば,流
定 義
れ の 状 態 は 同 じ で あ る こ と を見 出 し た .
(2.4) Re[―]は
彼 の名 前 に 因 ん だ,レ イ ノル ズ 数(Reynolds
元 数 で あ り,2.1.4項
で 述 べ るN-S方
number)と
呼 ば れ る無 次
程 式 を無 次 元 化 す る 際 に 現 れ る.こ の レ
イ ノ ル ズ数 は,慣 性 力 の 粘 性 力 に 対 す る比 と して 定 義 さ れ る値 で あ る.系 の 流動 状 態 が レ イ ノ ル ズ数 で 規 定 さ れ る とい う意 義 は大 き く,系 の ス ケ ー ル ア ップ を考 え る際 の 基 幹 を な す数 値 で あ る と と もに,発 見 者 の 名 前 を冠 した 数 多 い無 次 元 数 の な か で も最 も重 要 な もの とい え よ う. 前 述 し た よ う に,レ 配 的 で あ る た め,流 態 と 呼 ば れ る.こ
イ ノ ル ズ 数 が 小 さ い と き に は 粘 性 の 影 響 が 流 れ に 対 して 支 れ は 秩 序 だ っ た 層 状 の 流 れ と な り,層
流(laminar
れ に 対 し て レ イ ノ ル ズ 数 が 大 き く な る と 粘 性 の 影 響 よ り も,慣
性 の 効 果 が 卓 越 し て く る よ う に な り,流
れ は 乱 れ た 乱 流(turbulent
な る.1つ
の 目安 と し て,Reが2100以
下 で は 層 流,4000以
て よ く,そ
の 中 間 領 域 は,層
る.層
流 と 乱 流 の 境 界 を1つ
臨 界 レ イ ノ ル ズ 数(critical
流 か ら 乱 流 へ の 遷 移 域(transition の 値(例 Reynolds
え ば,2100)で number)
呼ばれ
示 す こ と も あ り,そ
の値 は
Rec[―]と
合,も
の よ う に 低 粘 度 の 液 体 で は,管
態 と
region)と
数 十 万 に な る こ と も珍 し く な い.層
液 体 の 場 合 で あ る.水
flow)状
上 で は 乱 流 と考 え
呼 ば れ る.わ
身 の ま わ りで 経 験 す る 流 れ は 乱 流 状 態 で あ る 場 合 が 圧 倒 的 に 多 く,流 あ る 場 合 に はReが
flow)状
れわれが
体 が気 体 で
流 とな るの は ま ず 高 粘 度 径 が 毛 細 管 の よ う に細 い場
し くは 流 速 が 極 め て 遅 い 場 合 に 層 流 に な る と考 え て よ い.
【例 題2.1
レ イ ノ ル ズ 数 】 内 径15mmの
輸 送 さ れ て い る.こ
円 管 内 を20℃
の 水 が5m3
の と き の 管 内 の 流 れ は 層 流 か 乱 流 か 判 定 せ よ.
解. D=15×10−3m,
ρ=1000kg
こ れ ら の 値 を 式(2.4)に
代 入 し,レ
m−3, μ=1×10−3Pa
イ ノ ル ズ 数Reを
s,
求め ると
h−1で
し た が っ て 管 内 の 流 れ は,乱 流 で あ る.
管 路 が 円 管 で な い 場 合 に は,流 diameter)
Deを
れ の 断 面 の 代 表 径 で あ る 相 当 直 径(equivalent
次 式 で 計 算 す る こ と に よ り,Reの
値 は 式(2.4)を
その まま用い
て 計 算 す る こ とが で き る.
た だ し,rh[m]は πD2/4)を,管
動 水 半 径 と呼 ば れ る もの で,管
路 の 断 面 積S(円
管 の 場 合,
路 壁 面 に お い て 流 体 が 接 す る周 の 長 さ(ぬ れ 辺 長)lp(円 管 の 場 合,
πD)で 除 した値 と して 定 義 さ れ る. こ の 定 義 に 従 え ば 図2.2に て い な い),(c)濡 (a)
示 す(a)環 状 路,(b)開
れ 壁 のDeは
溝(流 体 の 上 面 は 壁 に 接 し
それ ぞれ,
De=Do−Di
(b) (c)
De=2(D1−D2)
と な る. 式(2.4)は 場 合 に は,撹
最 も典 型 的 な レ イ ノ ル ズ 数 の 定 義 で あ る が,例 拌 翼 径 基 準 の 撹 拌 レ イ ノ ル ズ 数(impeller
が 使 わ れ,n[s−1],d[m]を るnd[m
そ れ ぞ れ 翼 回 転 数,翼
s−1]を 代 表 線 速 度 に と り,次
えば撹拌槽 の よ うな
Reynolds
径 と し,翼
number)
Red
先端 速度に相 当す
式 に よ り計 算 さ れ る.
(2.5)
(a)環 状 路
(b)開 図2.2
溝
円管以外の さまざまな流路断面
(c)濡 れ壁
通 常Redが100以
下 で は 槽 内 は 層 流 状 態 と考 え て よ い.他
子 沈 降 を 問 題 と す る と き に は,粒 び に 流 体 の 粘 度 か ら 式(2.6)に Reynolds
number)
Repが
子 の 沈 降 速 度v[m
に も粘 性 流 体 中 の 粒
s−1]と 粒 子 径dp[m]な
ら
よ り 計 算 さ れ る 粒 子 レ イ ノ ル ズ 数(particle
使 わ れ る.
(2.6) こ の よ う に系 の 特 徴 に 応 じて,そ れ を 的確 に 表 現 す る代 表 長 さ と代 表 平 均 流 速 を 選 ぶ こ とが 重 要 とな る.ま た 流体 が 前 項 で 述べ た 非 ニ ュー トン流体 で あ る場 合 に は,系
を代 表 す る見 か け 粘 度 を どの よ う に 見積 も るか が 問 題 とな るが,こ
い て は化 学 工 学 便 覧(化 学 工 学 会 編,1999)等
2.1.3
流
線
と 流
を参 照 され た い.
管
圧 力 ・流 速 ・流 量 ・密 度 な ど,流
れ に 関 係 す る状 態 を 示 す 変 数 が,い
間 的 に 変 化 しな い 流 れ 場 を 定 常 流(steady ち の1つ
flow)と
呼 ぶ.一
で も 時 間 的 に 変 化 す る 場 は 非 定 常 流(unsteady
ば れ る.液
呼 ば れ,そ
う で な い も の は,圧
方,そ
flow)と
密 度 が 時 間 的 な ら び に 空 間 的 に 変 化 し な い 流 体 は,非 ible fluid)と
れにつ
ず れ も時
れ ら変 数 の う 呼 ば れ る.ま
た
圧 縮 性 流 体(incompress
縮 性 流 体(compressible
fluid)と
呼
体 全 般 と気 体 の 大 半 は 非 圧 縮 性 と し て 取 り扱 っ て 差 し支 え な い が,例
え ば エ ン ジ ン 室 内 の 気 流 や 超 音 速 で 飛 行 す る 機 体 ま わ りの 流 れ な ど は,圧
縮性 を
考 慮 し な け れ ば な ら な い. 図2.3に (stream
示 す よ う に,あ line)と 呼 ぶ.逆
る 時 刻 に お け る 流 れ 場 の 速 度 ベ ク トル の 包 絡 線 を流 線 に い え ば,流
線 上 の あ る 点 に お け る 接 線 方 向 は,そ
点 に お け る 流 速 ベ ク ト ル の 方 向 に 一 致 し て い る.流 び,流
面 が 閉 じ ら れ て 一 つ の 管 を 形 成 す る と き,こ
ぶ.非
圧 縮 性 流 体 を 問 題 とす る と き に は,流
[m3 s−1]は 一 定 で あ る.流 想 的 な 粒 子 を考 え,そ 痕 線 と 呼 ぶ.こ て い る.こ
2.1.2項
れ を流 管(stream
脈 線(streak
tube)と
呼
管 の 任 意 の 断 面 を 通 過 す る 流 量Q
れ場 に お い て 密 度 が 流 体 と同 じで大 き さ が 無 限小 の仮 line)あ
る い は条
子 は 流 れ場 を可 視 化 す る一 種 の トレー サ ー と し て働 い
の ト レ ー サ ー を1個
の 軌 跡 は,流
線 群 か らな る 面 を流 面 と呼
の 軌 跡 を 追 い か け た も の を 流 跡 線(path
の 場 合,粒
の
の 粒 子 で は な く,流
れ場 に 連 続 的 に 注 入 した場 合
line)と 呼 ば れ る.
で 紹 介 し たReynoldsの
実 験 は,流
脈 線 を 観 察 し て い た こ と に な る.
図2.3 流 線 と流 管
流 線,流
跡 線,流 脈 線 の3者
は,流 れ 場 が 定 常 状 態 で あ る と き に は 一 致 す る が,
非 定 常 の 場 合 に は,一 般 に 相 違 す る.流 線 が 観 測 場 を固 定 した オ イ ラー(Euler) 的 観 測 と呼 ば れ る の に 対 して,流
跡 線 は観 測 対 象 自身 が,流
ラ ン ジ ュ(Lagrange)的
観 測 と呼 ば れ る.
2.1.4
式
基
礎
方
程
流 れ 場 を 記 述 す る 基 礎 方 程 式 は 連 続 の 式(equation (equation
of motion)の2つ
で あ り,前
of
動 し て お り,ラ グ
continuity)と
運 動の式
者 は 流 れ 場 に お け る質 量 の 保 存 則 を,後
者 は 運 動 量 の 保 存 則 を 表 現 し て い る. 連 続 の 式 は よ り一 般 的 に は,す に は,式(2.7)で
な わ ち 流 体 の 密 度 変 化 を伴 う圧 縮 性 流 体 の 場 合
表 さ れ る.
(2.7) た だ し,u,v,w[m
s−1]は そ れ ぞ れx,y,z方
場 合 に は ρが 時 間 的,空
で あ る こ とか ら,そ
間 的 に 変 化 し な い,す
の 連 続 の 式 は,式(2.8)の
向 の 流 速 を 表 す.非
圧縮性 流体 の
なわ ち
よ う に 簡 単 と な る.
(2.8) た だ し,ν=(u,ν,w),∇=(∂/∂x,∂/∂y,∂/∂z)で ル,∇ 一 方
は 微 分 ベ ク トル 演 算 子,ナ ,流
れ の 運 動 方 程 式 は,非
あ り,ν
は3次
元 速 度ベ ク ト
ブ ラ と 呼 ば れ る. 圧 縮 性 の ニ ュ ー ト ン 流 体 す な わ ち ρ,μ と も に
一定 の場合 について
,記
述 す る と 式(2.9)の
よ う に な る.
(2.9) 左 辺 第1,2項 項,粘
が そ れ ぞ れ 時 間 変 化 項,対
性 項,重
紀 の 初 頭,Navierに
トー ク ス の 式(Navier-Stokes れ ら の2式
が それ ぞ れ圧 力
よ っ て 導 か れ た も の で,ナ
equation)あ
を 連 立 し て 解 く,す
る い はN-S式
か し,後
の 対 流 項 が 非 線 形 性 を示 す た め,円
の 流 れ の よ う に 対 称 性 が 高 く,境
ヴ ィ エ ース
と呼 ば れ る.流
動状 態
な わ ち 連 続 の 式 を 拘 束 条 件 と し て,運
式 を 解 く こ と に よ っ て 完 全 に 記 述 さ れ る.し る よ う に,そ
辺 第1,2,3項
力 項 を 表 し て い る.
式(2.9)は,19世
は,こ
流 項 を,右
者 は,式(2.9)か
ら も わか
管 内 あ る い は 同心 二 重 円 筒 槽 内
界 条 件 が ご く単 純 な 系 で しか,こ
れ を解 析 的 に
解 く こ と は で き な い.こ
の た めN-S式
か ず の 状 態 に あ っ た.こ
の 状 況 を 一 変 さ せ た の は 近 年 の コ ン ピ ュ ー ター 利 用 技 術
の ハ ー ド,ソ り,化
は,1世
動 の
紀 以 上 に わ た っ て ほ とん ど手 つ
フ ト両 面 か ら の 長 足 の 進 歩 で あ り,同
学 装 置 内 の 流 動 状 態 が か な りの 部 分,解
に つ い て は2.5.2項
式 を 数 値 的 に解 く こ とに よ
析 で き る よ うに な っ て き た.こ
れ
で 触 れ る.
2.1.5 エ ネ ル ギ ー の 保 存 則 図2.3に
示 し た流 管 に お い て,任
意 の2つ
の 断 面A,Bを
考 え る.こ の 流 管 内
を 非圧 縮 性 流体 が 定 常 状 態 で 流 れ て い る と き,粘 性 に よ る影 響 が な い とす れ ば, 各 断 面 で の 単 位 体 積 当 た りの 力 学 的 エ ネ ル ギー は(ρu2/2+ρgZ)で し,u,Zは
そ れ ぞ れ 断 面 で の 流 速,高
さ 方 向 の 位 置 座 標 とす る.微 小 時 間 後,
断 面 が Δlだ け移 動 した とす る と き,断 面 積 をSと る 力 学 的 エ ネ ル ギ ー は,(ρu2/2+ρgZ)SΔlで い る た め,断 圧 力Pに
面BとAと
あ る.た だ
す れ ば,こ
あ る.い
の微 小 体 積 に お け
ま粘 性 の影 響 は 無 視 して
で,同 エ ネ ル ギ ー に差 が あ るな らば,そ の 差 は 流 体 が
よ っ て な さ れ た仕 事PSΔlに
等 し い は ず で あ る.す な わ ち式(2.10)が
成 り立 つ.
(2.10) A面,B面
に お け る変 数 で あ る こ とを単 に下 付 の 添 え字A ,Bで示 す と,
と な る.こ
こ で 流 体 は 非 圧 縮 性,す
SAΔlA=SBΔlBで
な わ ち 縮 ま な い も の と 仮 定 し て い る の で,
あ る こ とか ら結 局,次
式 が 成 立 す る.
(2.11) 式(2.11)は,ベ
ル ヌ ー イ 式(Bernoulli
基 礎 と な る も の で あ る.同 全 流 体(perfect 際 に は,補
fluid)で
式 は,非
equation)と
呼 ば れ,流
圧 縮 性 だ け で な く,粘
体 力学上 の最 も
性 の 影響 を無 視 した 完
あ る こ と を 前 提 と し て い る た め,実
正 を 行 う な ど の 注 意 が 必 要 と な る.式(2.11)の
際の流体に適用 す る 両 辺 を ρ で 除 す と,
各 項 は 流 体 が も つ 単 位 質 量 当 た り の エ ネ ル ギ ー の 単 位 と な り,頭 (head)
[J kg−1]と
またはヘ ッ ド
呼 ば れ る.
(2.12) す な わ ち順 に,速 度 頭,位
置 頭,圧
力 頭 と呼 ば れ る.
【 例 題2.2 ベ ル ヌー イ の 定 理 】 飛 行 機 の 主 翼 の 断 面 は,図2.4に に,上
面 側 が 下 面 側 に 比 べ,長
流 は,翼
くな って い る.あ
示す よう
る時 刻 に 主 翼 の 前 縁 に達 した 気
の 上 下 面 に 分 か れ それ ぞ れ翼 面 に 沿 って 流 れ た 後,翼 の 後 縁 か らそ れ ぞ
れ 流 出す るが,翼 上 面 に 沿 っ て 流 れ る大 気 の 方 が,翼 下 面 に 沿 って 流 れ る大 気 よ り も,そ の 流 速 は速 い こ とが 実 験 的 に 確 認 さ れ て い る.こ れ に よ り翼 が 飛 行 中, 揚 力 を受 け る こ と をベ ル ヌー イ の 定理 を用 い て 簡 単 に説 明せ よ.
図2.4
解. 翼 上 面,下 す る と,
主翼 断 面 図
面 側 を そ れ ぞ れ 下 付 添 え 字1,2で
表 し,流
速 をν,圧
力 をPと
題 意 よ りν1−ν2>0 今,上
下 面 の 位 置 高 さ は 同 じ で あ る と し て,ベ
用 い て,翼
ル ヌ ー イ の 定 理,式(2.11)を
上 下 面 の 圧 力 の 大 小 を比 較 す る と,
で あ る.下 面 側 の 圧 力 の 方 が,上 面 側 の そ れ よ り も大 き くな るの で,翼
は下 か ら
上 向 きに 揚 力 を受 け る こ と に な る.
式(2.11),(2.12)は,機
械 的 エ ネ ル ギ ー の バ ラ ン ス の み を 考 慮 し,粘
づ く摩 擦 な ど に よ る エ ネ ル ギ ー を 考 慮 し て い な い.こ え て,失
わ れ る こ と に な る.実
き に は,ポ
れ は 熱 エ ネ ル ギ ー に 形 を変
際 に 流 体 を あ る 点Aか
ら 他 の 点Bに
ン プ や ブ ロ ワ ー な ど の 輸 送 機 を 用 い て 動 力W[J
の 損 失 分F[J
kg−1]を
エ ネ ル ギ ー で,損
カ バ ー す る こ とが 必 要 と な る.こ
失 頭 と 呼 ば れ る.W,Fを
性 に基
輸送 す る と
kg−1]を 供 給 し,こ こ で,Fは
頭 換 算 した
組 み 入 れ た バ ラ ン ス 式 は 式(2.13)
の よ う に な る.
(2.13) 式(2.13)は,流
体 の 温 度 変 化 が 無 視 で き,式(1.9)に
お い て,熱
エ ネ ル ギー
で の 損 失 は 別 と し て 系 外 と の 積 極 的 な 熱 交 換 を 行 わ な い 場 合 に 相 当 す る. 【 例 題2.3
エ ネ ル ギ ー 保 存 則 】 密 度 ρ=1025kg
圧 しQ=0.14m3
s−1の 流 量 で 輸 送 し て い る.ポ
口 の 管 内 径 は0.13mで
あ る.出
メー タ ー の 読 み は −190mm 失 頭 は68.6J 率 η=80%と
kg−1で
す る と き,ポ
た だ し1mm 解.
式(2.13)よ
Hg=133.3Paで り,
口 は 入 口 よ り1.8m上
Hg,出
あ っ た.入
m−3の
口,出
口 の そ れ は420mm
方 に あ り,入 Hgで
ン プ で昇
口の マ ノ
あ っ た.ま
口 の 温 度 は 同 一 で あ る と し,ポ
ン プ の 所 要 動 力Wp[kW]は あ る.
海 水 を,ポ
ン プ 入 口 の 管 内 径 は0.20m,出
い く らか.
た損
ン プ の効
単位 系 あれ これ 本 書 で は 単 位 と し て,第1章 本 量 と し た 国 際 単 位 系(Le
に 述 べ た とお り,長 さ,質
Systeme
International
こ れ ら の 基 本 量 を組 み 合 わせ た 組 立 単 位,例 (=[kg
m s−2]),圧 力 に は パ ス カ ル(pascal)
こ れ に 対 して,力(重
量,時
d'Unites;
間,温
え ば 力 に は ニ ュー ト ン(newton) [Pa](=[N
(LMFT)が
あ り,力
力 換 算 係 数(gravitational
は[Kg]あ
る い は[kgf]な
ど と表 記 さ れ る.こ
conversion
[N]
m−2])な ど を 用 い て い る.
力)を 基 本 量 の 一 つ とす る重 力 単 位 系(LFT)や
合 に は,重
度 な どを基
SI)を 使 用 して お り,
factor) gc[kg
い て 計 算 を行 わ ね ば な ら な い とい う 煩 わ し さが あ る が,1Kg
工 学単 位 系
れ ら を 用 い る場 m Kg−1 s−2]を 用
cm−2が 約1気
圧に等
し い こ とか ら,現 在 も慣 用 的 に これ らの 単 位 系 が 使 わ れ て い る. こ の ほ か に 英 国 式 の[ft]や[lb]な
ど を用 い る ヤ ー ド ・ポ ン ド法(1yd=3ft)が,
ひ と頃 は 化 学 工 学 で も 多 用 さ れ て い た.こ れ て い る.ア で あ る.こ
れ は,人 体 の 各 部 に 因 ん だ単 位 系 と い わ
メ リカ ン フ ッ トボ ー ルや ゴ ル フ な ど は,こ
の ヤ ー ドを基 準 と した 競 技
の ほ か に も飛 行 距 離 を示 す さ い の マ イ ル や,ガ
の ガ ロ ン な ど もヤ ー ド ・ポ ン ド法 の 単 位 の1つ
で あ り,現 在 も広 く使 わ れ て い る.
日本 に も わ が 国 固 有 の 尺 貫 法 な る 単 位 系 が あ っ た.和 作 られ た1尺2寸5分
ソ リン の 販 売 単 位 と して
裁 の 分 野 で は,鯨
の 長 さ の 鯨 尺 な る もの が 使 わ れ て い た.ヤ
尺 貫 法 も過 去 の も の と な りつ つ あ る が,そ
の ひげで
ー ド ・ポ ン ド法 も
れ ぞ れ の 国 の 文 化 を色 濃 く反 映 し た もの
と い え よ う.
よ って ポ ンプ を用 い て 海 水 に加 え るべ き単 位 時 間 当 た りの仕 事Wp[kW]は,
2.2
2.2.1 管
内
層
円 管 内 の 流 れ
流
断 面 が一 様 な 円管 内 に,流 体 が完 全 に満 ち た状 態 で 流 れ る場 合 の 流 速 分 布 や 圧 力 損 失 につ い て 考 え よ う.ま ず 層 流 の場 合 につ い て 見 る こ とに し よ う. 図2.5に
示 す よ うに,半 径Rの
とす る.い
管 が 水 平 に 置 か れ て お り,そ の 中心 線 をz軸
ま管 内 に 半 径r[m],長
さL[m]の
仮 想 的 な 円 管 を考 え,同 円 管 ま
わ りの 力 のバ ラ ン ス を考 え る.上 流 側 の端 面Aに 端 面Bに
作 用 す る圧 力pよ
作 用 す る流 体 圧 は,下 流 側 の
り も Δpだ け 高 い とす る.ま
た,円 管 側 面 に 働 く剪
断 応 力 の 大 き さ を τ と し,各 面 に 働 く力 の 方 向 を考 慮 す る と,次 の よ うに な る. 端 面Aに
働 く力:πr2(p+Δp)
端 面Bに 働 く力:−
πr2p
側 面 に働 く剪 断 力:−2πrLτ こ れ らの 総 和 が全 体 と し て0に πr2(p+Δp)−
πr2p−2πrLτ=0,
(rの た だ し,τw=τ│r=R=(管 る 流 動 の 式(2.15)を
な る こ とか ら,式(2.14)が
導 か れ る.
∴rΔp=2Lτ
位 置 に 依 ら ず)一 定
壁 に お け る 剪 断 応 力)で
(2.14)
あ る.こ
れ に 式(2.1)に
相 当す
考 え る.
(2.15) 式(2.15)の
負 号 は 軸 方 向 の 速 度uが
に よ る.同 式 に 式(2.14)を
管 中心 か ら管 壁 に 向 か っ て,減 少 す る こ と
代 入 す れ ば,次
の 常 微 分 方程 式 を得 る.
(2.16)
図2.5
円 管 内層 流 定 常 流 れ
境 界 条 件 と して 管 壁 に お け る速 度 を0と
し,上 式 を積 分 す る と,管 の 半 径 方 向 に
沿 っ た流 速 分 布
(2.17) を得 る.こ れ よ り,層 流 定 常 状 態 の管 内 流 速 分 布 は,管 中 心 を最 大 流 速 と し,壁 面 で流 速 が0と な る放 物 線状 で あ る こ とが わ か る.同 最 大 流 速 をumax[m
s−1]と
す る と,
管 内 の 平 均 流 速 をuav[m
s−1]と し,管
断 面 の 流 量 をQ[m3
s−1]と す る と,
(2.19) と な り,こ
こ で,2R=Dよ
り,式(2.20)が
得 ら れ る.
(2.20) す な わ ち,流 体 の 圧 力 損 失Δpは 管 長Lに 式(2.20)は
ドイ ツ の 学 者Hagenと
比例 し,管 径Dの2乗
フ ラ ン ス の 医 師Poisuilleに
に 反 比 例 す る. よ っ て 同 じ頃,
別 々 に 実 験 的 に 確 か め ら れ た も の で ハ ーゲ ン-ポ ア ズ イ ユ の 法 則(Hagen -Poiseuille's law)と 呼 ば れ る.同 式 は 流 量 測 定 あ るい は 毛 細 管 を用 い た粘 度 測 定 に適 用 され る.
2.2.2 管
内
乱
流
円 管 内 の よ うに単 純 な剪 断場 の 場 合 で あ っ て も,乱 流 を解 析 的 に 取 り扱 う こ と は きわ め て 困難 な もの とな る.円 管 内 に お け る非圧 縮 性 流 体 の乱 流 状 態 に 対 応 す る運 動 方程 式 は,通 常,式(2.9)のN-S式 軸 方 向,半 径 方 向 の 流 速 と して,系
の 時 間 平 均 を と り,u,ν
をそれ ぞれ
の対 称 性 を考 慮 す れ ば 式(2.21)の
ように な
る.
(2.21) 式(2.21)中 呼 ば れ る.こ
の 項 − ρu′ν′ が 実 は 難 物 で,レ
イ ノ ル ズ 応 力(Reynolds
stresses)と
れ は 軸 方 向 と 半 径 方 向 の 時 間 平 均 的 な 流 速 か ら の ず れu′
とν′ と の
積 の 時 間平 均u′ν′を含 ん で お り,同 量 はu′ とν′の そ れ ぞれ の時 間 平 均 の積u′ ・ν′ とは 本 質 的 に 異 な る もの で あ る.し た が っ て,こ の ま ま で は この 方 程 式 の解 は得 られ ず,何
らか の 形 で 方 策 を講 じ る こ とが 必要 に な る.通 常,次
に述べ る二
つ の ア プ ロー チ 法 が 取 られ て い る. ① 理 論 式 を用 い ず,実 験 的 考 察 か ら流速 分 布 を 経 験 的 に 与 え る方 法 ② 理 論 的考 察 に基 づ き レイ ノル ズ応 力 を半 経 験 的 に 算 定 す る 方法 以 下 に 述 べ る よ うに ① に は 指 数 法 則(power
law),②
に は 対 数 法 則(log
law)
と呼 ば れ る手 法 が あ る. a. 指
数
法
則
これ は 軸 方 向 の 流 速uを
経 験 的 に 式(2.22)に
示 す べ き指 数 法 則 で 表 す もの で
あ る.
(2.22) こ こ で,y[m]は,壁 通 常6∼10の
か ら管 中 心 に 向 か っ て の 距 離 を 表 す .nは
値 と さ れ て お り,n=7と
u+=u/u*,y+=yu*/ν
す る 場 合 に は7分
と す る と,7分
の1乗
の1乗
パ ラ メー ター で 則 と呼 ば れ る.
則 は 次 式 の よ うに も書 き改 め ら
れ る こ とが 知 ら れ て い る. u+=8.74(y+)1/7 こ こ で,u*[m
(2.23)
s−1]は,
(2.24) と 定 義 さ れ,摩
擦 速 度(friction
応 力 で あ る.ま
た,ν
あ り,y+=yu*/ν 式(2.22)を
velocity)と
は μ/ρ[m2 s−1],す
呼 ば れ る.τw[Pa]は
な わ ち 動 粘 度(kinematic
管 壁 で の剪 断 viscosity)で
は レ イ ノ ル ズ 数 と 同 等 な 無 次 元 数 で あ る. 用 い た 場 合 の 管 断 面 平 均 流 速uav[m
s−1]は,nを
用 い て,次
式の
よ う に な る.
(2.25) n=6の (2.19)に
と きuav=0.79umax,n=10の
と きuav=0.87umaxで
示 し た 層 流 の 場 合(uav=0.5umax)と
比 較 し て,乱
付 近 に お い て 著 し く平 坦 な 速 度 分 布 と な る こ とが わ か る.こ
あ る .す
な わ ち 式
流 の 場 合 は,管
中心
れは軸方向の運動 量
が,乱
流 内 で 発 生 す る渦 に よ り,半 径 方 向 に運 ば れ,管
内 の他 の部 分 と混 ざ り合
う ため と解 釈 す る こ とが で き る. b. 対
数
法
則
乱 流 の 場 合 の剪 断 応 力 τは式(2.21)右
辺 の 括 弧 内,
(2.26) に 相 当 し,第1項
は 粘 性 応 力 で あ り,第2項
円 管 内 流 れ の 実 験 結 果 に よれ ば,管
は レ イ ノル ズ 応 力 で あ る.
中心 で は 乱 流 が発 達 して お り,レ イ ノル ズ
応 力 は粘 性 応 力 に 比 較 し て 卓 越 し た 大 き さ と な って い る(内 層(inner 一 方 ,管 壁 近 傍 で は,レ
イ ノル ズ応 力 の影 響 は 小 さ く,ほ とん ど粘 性 応 力 支 配 と
考 え られ る(粘 性 底 層(viscous
sublayer)).ま
て い る遷 移 域 と考 え られ る(中 間 層(buffer の3つ
layer)).
た,そ の 中 間領 域 は両 者 が 拮 抗 し
layer)).そ
こ で 円 管 内 を径 方 向 に こ
の 領 域 に 分 け て 考 え,各 領 域 で 流 れ の 特 徴 を よ く表 現 す る よ う,式
(2.26)を 単 純 化 して取 り扱 うの が対 数 法 則 モデ ル で あ る. 考 えて い る点 が どの領 域 に 入 るか はy+の
値 で判 断 さ れ る.同 値 を用 い て 領 域
を判 別 し,各 領 域 で の 流 速 は 次 の よ うに 計 算 さ れ る. ① y+<5と え る.ま
な る粘 性 底 層 で は,レ
イ ノル ズ応 力 は 無 視 し,粘 性 応 力 だ け を考
た,速 度 の 線 形 勾 配 を仮 定 して,
(2.27) ② 5
な る 中 間層 で は,粘 性 応 力 と レ イ ノル ズ応 力 の 両 者 を考 慮 し
て,
(2.28) ③ 70
な る 内 層 で は,レ
イ ノ ル ズ 応 力 の み が 考 慮 さ れ,
u+=5.75logy++5.5 で 計 算 さ れ る.た 合 長(Prandtl's 【例 題2.4
(2.29)
だ し,logは mixing
常 用 対 数 で あ る.式(2.29)は,プ
length)理
ラ ン トル の 混
論 に 基 づ き導 出 さ れ た も の で あ る.
管 内 乱 流 速 度 分 布(指 数 法 則)】 滑 ら か な 壁 面 を も つ 内 径0.45m
の 円 管 内 に お け る オ イ ル の 流 速 を 管 壁 か ら の 距 離y=0.225m(管
中 心),0.01m,
0.001mに
則)を
え.
お い て そ れ ぞ れ 求 め よ.計
算 は 指 数 法 則(7分
の1乗
用 い て行
た だ し,オ
イ ル の 比 重 を0.85,動
力 τwを1.646Paと
粘 性 係 数 を9mm2
s−1,管 壁 に お け る剪 断 応
す る.
解. 摩 擦 速 度u*は,式(2.24)よ
各 位 置 に お け るy+の
①
り,
値 を 求 め,式(2.23)を
用 い る と,
で は,
②
で は,
③
で は,
2.2.3 管 摩 擦 係 数 と流 体 輸 送 流 体 が 管 内壁 の よ うな 固体 面 との 接 触 に よ り受 け る摩 擦 力Fk[N]は,流
体の
単 位 体 積 当 た りの 平 均 運 動 エ ネ ル ギー ρu2/2と 次 の 関係 が あ る.
(2.30) こ こ で,S[m2]は たf[―]は
代 表 面 積 で あ り,円
管 摩 擦 係 数(friction
管 を 考 え る と き に は,2πRLと
factor)と
流 体 が 管 壁 に 及 ぼ す剪 断 応 力 τwは,単
な る.ま
呼 ば れ る 無 次 元 の 係 数 で あ る. 位 面 積 当 た りの 摩 擦 力 と等 し くな るか
ら,
と な る.一
方,τwは
層 流,乱
流 の 別 な く,式(2.14)よ
り τw=ΔpR/2Lで
あ るか
ら,
(2.31)
と な る.式(2.31)は
管 内 の 圧 力 損 失(pressure
フ ァ ニ ン グ の 式(Fanning's
equation)と
ン プ な ど で 流 体 に 掛 け て や る か,あ と,管
節,式(2.13)で
tion loss) Ff[J さ て,管
算出す るための基本式で 見合 うだけの圧 力 をポ
るい は 上 流側 の 位 置 頭 が この 分 以 上 高 くな い
内 の 流 体 は 流 れ な い こ と に な る.な
kg−1]は,前
drop)を
呼 ば れ る.Δpに
お こ のΔpを
述 べ た 損 失 頭Fの
ρで 除 し た 値,Δp/ρ[J
う ち の 摩 擦 損 失 頭(head
of fric
kg−1]を 表 し て い る.
摩 擦 係 数fは
流 れ の 場 に よ り決 ま る 定 数 で あ り,管
内の 流速分 布 と
対 応 関 係 が あ る. 層 流 の 場 合 に は,ハ
ー ゲ ン-ポ ア ズ イ ユ 則 を 表 す 式(2.20)を
次 の よ うに変形
し,
こ れ と 式(2.31)と
を 比 較 し て,層
流 域 で は 次 式 の 成 り 立 つ こ とが わ か る.
(2.32) 乱 流 の 場 合 に は,流 23)に り,こ
速 分 布 を ど の よ う に 表 現 す る か で,fは
示 し た 指 数 法 則 の7分
の1乗
れ は ブ ラ ジ ウ ス の 式(Blasius' f=0.0791Re−0.25,
異 な る が,式(2.
則 を 用 い る 場 合 に は,式(2.33)の equation)と
よ うに な
呼 ば れ る.
2×103
(2.33)
た だ し,そ
の 適 用 範 囲 に 留 意 す る 必 要 が あ る.
ま た,対
数 法 則 の 式(2.29)を
適 用 す る 場 合 に は,fは
次 式 の よ う に 表 さ れ る.
(2.34) 式(2.34)は,Prandtlに
よ っ て 導 か れ た も の で あ る.
こ れ と は 別 に 板 谷 は 実 験 的 に 式(2.35)を 囲 も 広 く,計
導 出 し て い る.こ
ち らの 方 が 適 用 範
算 に も便 利 で あ る.
(2.35)
2.2.4 粗 面 管 の 場合 の 流 速 分 布 と管摩 擦 係 数 前 項 ま で の 記述 で は,管 面 が平 滑 で あ る こ とを前 提 と した が,管 面 が粗 面 で あ る場 合 に は,取 扱 い が 異 な る. Nikuradseは
円 管 内 に 平 均 粒 径ks[m]の
を 明 ら か に し た.ksu*/ν
砂 粒 を張 り付 け た実 験 か ら次 の こ と
をksを 代 表 長 さ とす る粗 さ レイ ノ ル ズ 数Rer[―]と
す る と き, ① Rer<5で
は,f=f(Re)
す な わ ち表 面 の ざ らつ き,い め,流
い か え れ ば 突 起 の 高 さ は,粘 性 底 層 内 に あ る た
速 分 布 は 平 滑 面 の場 合 と同 じに な る.
②
で は,
こ の 場 合 に は 突 起 高 さ は 粘 性 底 層 の 厚 さ と 同 程 度 に な る た め,fは の 影 響 を 受 け る.こ
こ で,ks/R[―]は
相 対 粗 度(relative
表 面 の粗 度
roughness)と
呼 ばれ
る.
③
で は,
こ の場 合 に はfはReの
値 とは 無 関 係 に な り,式(2.36)に
示 す よ うに相対粗
度 に よ っ て の み 決 ま る定 数 と な る.
(2.36)
図2.6
管 摩 擦 係 数 と レ イ ノル ズ数 との 相 関
ま た こ の 場 合 の 内 層 に お け る 流 速 分 布 は,平 29)と
比 較 し て,同
式 右 辺 第2項
滑 管 の 場 合 と 同 形 と な る が,式(2.
の 定 数 が 次 式 に 示 す よ う に粗 さ レ イ ノ ル ズ 数 の
関 数 と な る. u+=5.75logy++Ck Ck=8.5−5.75logRer 以 上 に 述 べ た 管 摩 擦 係 数fを
(2.37) 層 流 域 か ら乱 流 域 に 至 る ま で レ イ ノ ル ズ数 に 対 し
て 両 対 数 軸 に て 示 す と,図2.6の
よ う に な る.
す な わ ち 層 流 域 で −1の 勾 配 か ら,遷 配 が0と
な る.こ
移 域 で は 勾 配 が 緩 く な り,乱
流域 で は勾
れ は レ イ ノ ル ズ数 に 対 す る相 関 式 の 典 型 的 な形 態 を 表 して い
る. 【 例 題2.5
管 内 流(圧 力 損 失)】 20℃
用 い て 平 均 流 速1.5m
の ベ ン ゼ ン を 内 径52.0mmの
s−1で 輸 送 す る と き,管
長100m当
ガ ス管 を
た り の 圧 力 損 失[Pa]
は い く ら か. ベ ン ゼ ン(20℃):粘 ヒ ン ト:ガ 解.
度 μ=6.5×10−4Pa
度 ρ=879kg
m−3
図2.6か
ら 求 め よ.
ス 管 は 粗 面 管 と し て 管 摩 擦 係 数fは
レ イ ノ ル ズ 数Reは
ガ ス 管 のfは
図2.6の
粗 面 管 に 対 す る 曲 線 ③ か ら,こ
す る 値 を 求 め る と,f=5.2×10−3と (2.31)よ
s,密
り,圧
力 損 失Δpは,次
読 み 取 れ る.し
の レ イ ノル ズ数 に 相 当
た が っ て,フ
ァニ ン グの 式
の よ う に 求 ま る.
2.2.5 直 管 部 以 外 で の 圧 力 損 失 前 項 まで に 述 べ た圧 力 損 失 に 関 す る計 算 は,径 が 一 定 の 直 管 に つ い て の もの で あ っ た が,実 際 の配 管 は,曲 が り部 が あ っ た り,拡 大 や 縮 小 部 が 存 在 し,流 動 状 態 が 変 化 す る ため,こ 1) 急 拡 大 の 場 合
れ に伴 う機 械 的 エ ネ ル ギー の損 失 を考 慮 す る必 要 が あ る. 上 流 側 の 平 均 流 速 をu1[m
s−1],下 流 側 の そ れ をu2[m
s−1]と す る と,管
の 急 激 な 拡 大 に 伴 う損 失 頭Fe[J
kg−1]は,式(2.38)の
よ うに
な る.
(2.38) た だ し,A1,A2は
そ れ ぞ れ 上 流 側,下
流 側 の 管 断 面 積[m2]で
急 拡 大 で は な く,緩
や か に 拡 大 す る 場 合 に は,ζeは
2) 急 縮 小 の 場 合
管 の 急 激 な 縮 小 に 伴 う 損 失 頭Fc[J
あ る.
広 が り角 θ の 関 数 と な る. kg−1]は,式(2.39)
の よ う に な る.
(2.39) こ こ に,Ccは
収 縮 係 数 と 呼 ば れ る も の で,0.6∼0.8の
値 を と る.式(2.39)に
示 す よ う に 急 縮 小 の 場 合 の 損 失 頭 は 出 口 側 の 平 均 流 速 で 計 算 さ れ る が,拡 小 の い ず れ に し て も,よ 3) 曲 が り部 な ど
大,縮
り 流 速 が 大 と な る 側 で 損 失 頭 は 規 定 さ れ る.
曲 が り部,継
手,弁
な どの 配 管 内 の付 属 部 に伴 う損 失 頭
Fs[J
kg−1]は 配 管 の 摩 擦 損 失 に 換 算 し た 直 管 相 当 長 さLe[m]を
40)の
よ う に 表 さ れ る.
用 い て,式(2
.
(2.40) こ こ で,Leは,付
属 部 ご と に 定 め ら れ た 値n[―]を
用 い て,
Le=nD
(2.41)
で 計 算 さ れ る.nの
値 を 表2.1に
以 上 の こ と か ら2.1.5項 に,本
示 す.
で 述 べ た 損 失 頭F[J
kg−1]は,摩
擦 損 失 頭Ffの
項 で 述 べ た 損 失 頭 を す べ て 合 算 す る こ と に よ り,式(2.42)で F=Ff+Fe+Fc+Fs
(2.42) 表2.1
管 内付 属部 のnの
【 例 題2.6 管 内 流(損 失 頭)】 直径16cmの Re=8.0×104の
ほか
計 算 さ れ る.
値(n=Le/D)
平 滑 な円 管 を用 い て,常
状 態 で 輸 送 して い る.管 の全 長 は75mで,そ
温の水 を
の途 中には直角肘
カ オ ス ・フ ラ ク タ ル と乱 流 乱 流 は 極 め て 複 雑 な 現 象 で あ り,N-S方 さ れ て い るが,未
程 式 を真 っ 向 か ら解 く試 み も果 敢 に な
だ そ の 解 明 は 十 分 な もの とは い え な い の が 現 状 で あ る.
こ の よ う な い わ ゆ る非 線 形 現 象 の 難 問 に 対 し て最 近,新 られ る よ うに な っ て き た.そ
の1つ
が カ オ ス(chaos)理
し い ア プ ロ ー チ法 が 試 み
論 で あ り,複 雑 な 現 象 もそ
の 根 本 と な っ て い る原 理 原 則 は 意 外 と シ ンプ ル で あ る こ と,た
だ し初 期 条 件 が 少 し
違 う と,そ の 結 果 は 似 て も似 つ か な い もの とな る こ と な どが 次 第 に 明 らか と な っ て きた. も う1つ
は フ ラ ク タ ル(fractal)で
あ り,こ れ は 一 見 複 雑 で 手 に 負 え な い と思 わ
れ る 現 象 も 実 は 自 己 相 似 的 な 構 造 を も っ て い る と い う 見 方 で あ る.い
わば
曼 陀 羅 絵 図 の 世 界 で あ り,こ の 相 似 性 は フ ラ ク タ ル 次 元 と い う指 標 で 表 さ れ る.例 え ば 雲 の 形 は,大 元 は どれ も1.35で
気 の 乱 流 状 態 を 反 映 して い る と考 え られ る が,そ あ る こ とが 知 られ て い る.ま
墨 汁 を垂 ら し て で き る墨 絵 が 描 く模 様 は1.3の (高安(1987)).こ
の 一 致 性 は,乱
のフ ラ クタル次
た 洗 面 器 に 水 を 張 り,そ の 表 面 に フラ クタル次 元 を もって いる とい う
流 現 象 の 背 後 に あ る普 遍 的 な 性 質 を 浮 き彫 りに し
て い る よ うで 興 味 深 い.
墨 絵 が描 くフ ラ クタ ル
管(n=40)が
設 置 さ れ て い る.さ
大 し て い る.こ
の と き,全
解. 式(2.42)よ て 表 さ れ る. F=Ff+Fs+Fe 摩擦 損失頭
り,こ
ら に,管
損 失 頭[J
末 端 の 流 出 部 は,直
kg−1]は
径40cmに
急拡
い く ら か.
の 場 合 の 全 損 失 頭Fは,次
の3つ
の損 失 頭 の和 と し
こ こ で,Re=(1.0×103×u×0.16)/1.0×10−3=8.0×104,こ ば,u=0.5m
s−1,fは
れ をuに
ブ ラ ジ ウ ス の 式,式(2.33)を
つ い て 解 け
適 用 す れ ばf=0.0791×
(8.0×104)−0.25=4.7×10−3 こ れ よ り
曲 が り部
急拡大
2.3 物 体 ま わ りの 流 れ
2.3.1 境 界 層 内 の 流 れ 一 様 な流 速Uの
流 れ に 沿 って,物 体 と して 薄 い平 板 が 置 か れ て い る場 合 を考
え る.こ の 一 様 な流 れ は 主 流(main
flow)あ る い は バ ル ク流 れ(bulk
ば れ る.こ の とき平 板 表 面 で は,流 体 の 粘 性 の た め に 速 度 は0と
flow)と 呼
な る.一 方,平
板 近 傍 の 流 れ の 速 度 は,平 板 か ら垂 直 方 向 に離 れ るに つ れ て 急 激 に増 大 し,あ 位 置 で 主 流 の 大 き さUと 則(τ=μ(du/dy))よ あ る剪 断 速 度du/dyが
な る.2.1.1項
る
で 述 べ た よ う に,ニ ュ ー トン の 粘 性 法
り,流 速 が 急 激 に 変 化 す る場 所 す な わ ち 速 度 の 空 間 勾 配 で 大 きい と こ ろ で は,気
流 の よ うに そ の粘 性 μ が 低 い 場 合
で あ っ て も,流 れ に 作 用 す る剪 断 応 力 は 無 視 小 とは な らな い.こ の こ とか ら,物 体 ま わ りの 流 れ を考 え る と き に は,流 体 の 粘 性 に伴 う影 響 を考 慮 しな け れ ば な ら な い. 総 じて この 剪 断 速 度 が 大 と な る領 域 は 薄 い もの と考 えて よ く,そ の領 域 の外 測
図2.7
平 板 上 の境 界層 の遷 移
で は 粘 性 を も た な い 一 様 な 流 れ 場 と み な す こ と が で き る.す 流 れ を 考 え る 場 合,そ る.こ
の 薄 層 は,境
よ る も の で あ る.こ
な わ ち物 体 ま わ りの
の 表 面 近 傍 の ご く薄 い 層 だ け に 着 目す れ ば よ い こ と に な
界 層(boundary
layer)と
呼 ば れ る 概 念 で,Prandtlの
こ で 述 べ た 境 界 層 は 速 度 境 界 層 に つ い て で あ る が,伝
お け る物 体 ま わ りの 温 度 分 布 に お い て も 同 様 な 概 念 が 成 立 す る.こ 層 と呼 ば れ て お り,両
れは温度境 界
ず 境 界層 の 区分 け に つ い て考
示 す よ う に 平 板 の 上 流 端 近 傍 で は 流 れ は 層 流 で あ る が,下
く に し た が っ て 乱 流 と な る.こ layer),後
熱場 に
者 に は 相 互 に 関 係 の あ る こ と が 知 ら れ て い る.
次 に 境 界 層 内 の 速 度 分 布 に つ い て 見 て み よ う.ま え る.図2.7に
発 想に
れ よ り,前
者 は 乱 流 境 界 層(turbulent
boundary
乱 流 の 中 間 に は 遷 移 域 が 存 在 す る.両 定 義 さ れ る 局 所 レ イ ノ ル ズ 数(local
者 は 層 流 境 界 層(laminar layer)と
流 にい
boundary
呼 ば れ る.ま
た層 流 と
者 の 境 界 層 を 区 分 す る に は,式(2.43)で
Reynolds
number)
Rexが
用 い ら れ る.
(2.43) こ れ は 平 板 の 上 流 端 す な わ ち 前 縁 か ら の 距 離x[m]を ノ ル ズ 数 で あ る.こ 動 粘 度 で あ る.Rexが
こ で,U[m
代 表 長 さに用 いた レ イ
s−1]は 主 流 の 流 速,ν(=μ/ρ)[m2
臨 界 レ イ ノ ル ズRexc(約3×105)の
界 層 は 層 流 か ら 乱 流 状 態 に 遷 移 す る.た
s−1]は 流 体 の
値 を 超 え た と き,境
だ し乱 流 境 界 層 内 に お い て も平 板 面 近 傍
に は 層 流 部 分 が 存 在 す る.こ
れ は 層 流 底 層(laminar
sublayer)と
呼 ば れ,2.2.2
項 で 述 べ た 粘 性 底 層 と 同 じ概 念 で あ る. 境 界 層 内 の 速 度 分 布u[m りuが
主 流 の 流 速Uと
s−1]を 求 め る に は ま ず,境
な る 位 置 を 知 る 必 要 が あ る.し
る こ と は 実 際 に は 困 難 で あ り,実 算 定 さ れ て い る.δ
はRexの
界 層 の 厚 さ δ[m],つ か し,こ
験 的 に はu=0.99Uと
ま
れ を厳 密 に 求 め
な る と こ ろ な ど と して
値 に よ り 判 定 さ れ た 層 流,乱
流 の 別 に 応 じて 次 式
の よ う に 計 算 さ れ る. 層 流 境 界 層 厚 さ:
(2.44)
乱 流 境 界 層 厚 さ:
(2.45)
層 流 境 界 層 と乱 流 境 界 層 内 に お け る 速 度 分 布uは,上 の 境 界 層 厚 さ δ を用 い て,式(2.46),(2.47)の
式 で 計 算 した そ れ ぞ れ
よ うに近 似 的 に計 算 さ れ る.
層 流 境 界 層:
(2.46)
乱 流 境 界 層:
(2.47)
式(2.47)は の1乗
円 管 内 の 乱 流 速 度 分 布 を 経 験 的 に 表 示 し た 式(2.23),す
則 と 同 じ 形 を し て お り,興
味 深 い.
境 界 層 の 性 質 を 調 べ る に は,式(2.43)∼(2.47)を 定 す れ ば よ い が,必
な わ ち7分
用 い て 速 度 分 布 を完 全 に 算
要 な 特 性 値 だ け を 得 る た め に は,境
界 層 の 速 度 分 布 か ら求 め
ら れ る 排 除 厚 さ と 運 動 量 厚 さ が よ く用 い ら れ る. 排 除 厚 さ(displacement
thickness)
δ*[―]は,式(2.48)で
定 義 さ れ る.
(2.48) これ は 境 界 層 内 に お け る 流 速 の 欠 損 部 分 を面 積 平 均 し た も の で あ り,y≦ で は 流 速 が0,そ
δ*
の 外 側 で は 主 流 速 度 に 等 し い と し て,単 純 化 す る もの で あ る.
あ た か も平 板 は δ*の 厚 さだ け そ の 表 面 が 厚 くな っ た と し,そ の 外 側 は 平 板 の影 響 を ま っ た く受 け な い もの と して 流 れ を 取 り扱 うこ と を意 味 して い る.す な わ ち δ*は 物 体 ま わ りの 主 流 を考 え る際,重 要 な指 標 と な る. 同様 に運 動 量 厚 さ(momentum る こ とが で き るが,こ
thickness) θ[―]を 式(2.49)の
よ う に定 義 す
れ は 次 項 に 述 べ る流 体 の 粘 性 抵 抗 に よ り生 じ る摩 擦 抗 力 を
求 め る際 に 重 要 とな る特 性 値 で あ る.
(2.49) 【 例 題2.7
境 界 層 厚 さ 】 層 流 境 界 層 に お け る 排 除 厚 さ δ*の,同
境 界 層厚 さ
δ に 対 す る 比 の 値 を 求 め よ. 解. 式(2.48)よ
り,
これ に層 流 境 界 層 内 の 速 度 分 布 の 式(2.46)を
こ こ で,t=y/δ
代入 して
と 変 数 変 換 す る とdy=δdt
y=0に
お い てt=0,y=δ
に お い てt=1
2.3.2 流 体 中 の 物 体 に 作 用 す る 力 流 れ の 中 の 物 体 に 作 用 す る抵 抗D[N]は,物
体 表 面 の 流 れ 方 向 に 沿 った 剪 断
応 力 の 積 分 値 で あ る摩 擦 抵 抗(friction drag)と 同 方 向 に 沿 っ た 圧 力 の 積 分 値 で あ る圧 力抵 抗(pressure
drag)に 分 け る こ とが で き る.摩 擦 抵 抗 は 表 皮 抵 抗 と も
呼 ば れ るの に 対 し,圧 力 抵 抗 は物 体 の 形 に よ っ て左 右 され るの で 形 状 抵 抗(form drag)と
も呼 ば れ る.一 般 に レ イ ノル ズ数Reの
い が,Reが
小 さ い範 囲 で は摩 擦 抵 抗 が 大 き
大 き くな る と形 状 抵 抗 の方 が 卓 越 して くる.
密 度 ρ[kg m−3],粘 度 μ[Pa s]の 流 体 中 を物 体,こ 径dp[m]の
球 が,流
速v[m
こ で は 簡 単 の た め に,直
s−1]で運 動 し て い る 場 合 を考 え よ う.こ の と き,
物 体 が 流 体 の 粘 性 に よ っ て 流 れ の 方 向 に 受 け る抵 抗Dは,一
般 に 式(2.50)に
よ って 与 え られ る.
(2.50) 流 体 自体 に 流 れ,u[m
s−1]があ る場 合 に は,物 体 の 流 れ 方 向 の 速 度 成 分uを
と
り,ν
を 相 対 速 度(u-ν)に
置 き換 え る こ とに よ っ て,同
様 にDの
値 が計算 され
る. 式(2.50)中
のCD[―]は
抵 抗 係 数(drag
coefficient)と
明 し た 粒 子 径 基 準 の レ イ ノ ル ズ 数Rep(=ρνdp/μ)の 球 以 外 の 形 状 の 物 体 を 考 え る 場 合 に は,式(2.50)の に,そ
呼 ば れ,式(2.6)で
説
関 数 で あ る. 右 辺 の(πdp2/4)の
の 物 体 の 流 れ に 垂 直 な 面 に 対 す る 投 影 面 積S[m2]を
代 わ り
用 いて計算 すれ ばよ
い .
(2.51) Sは 一 般 に 一 様 流 中 の 方 向 に 垂 直 な平 面 へ の 投 影 面 積 を用 い る が,板 や 翼 で は,そ の 表 面 積 を用 い る こ と もあ る.ま た,流 れ の 中 に あ る物 体 は,流 に 抵 抗 を受 け る ほ か に,流 このLも
ま た式(2.51)と
さて 定 常 状 態 の 場 合,す る場 合 に は,CD=f(Rep)の
れ に垂 直 な 方 向 に 揚 力L[N]を
れの方向
受 け る こ とが あ る.
同 様 の形 で 計 算 され る. な わ ち一 定 速 度 の 流 体 中 を固体 球 が 一 定 速 度 で移 動 す 関 数 関 係 は 図2.8の
よ う に な る こ とが,多
くの実 験
に よ っ て確 認 され て い る. 同 図 か らわ か る よ うに レ イ ノル ズ 数Repが
小 さ い範 囲,Rep≦2で
は
(2.52) に な っ て い る.式(2.52)を D=3π
式(2.50)に
代 入 して変 形 す れ ば
μdpν
(2.53)
を得 る.こ の 式 はStokesが,粘
性 流体 の運 動 方 程 式 の 慣 性 項 を省 略 し て理 論 的
図2.8 抵 抗 係 数 と粒 子 レ イ ノ ル ズ数 と の関 係
に 導 い た も の と 一 致 し,ス 式 で あ る.ち
トー ク ス の 抵 抗 法 則(Stokes'
呼 ば れ る重 要 な
な み に ス トー ク ス の 抵 抗 法 則 の 範 囲 で は 式(2.53)で
の う ち,そ
の2/3が
図2.8に
も 示 す と お り,Repが
摩 擦 抵 抗 で,1/3が
は 緩 や か と な り,Rep≧500で (2.50)を
law)と
形 状 抵 抗 と な る こ と が 知 ら れ て い る.
こ の 範 囲 を 超 え る とCDのRepに はCDは
あ わ せ て 考 え る と,抵
す る が,Repが500を
計 算 さ れ るD
一 定 値,約0.44を
抗Dは,Repの
と る.以
対 す る勾配 上 の こ と と式
小 さ い 範 囲 で は,流
超 え る よ う に な る と 流 速 の2乗
速 υに 比 例
に 比 例 す る よ うに な る こ と
が わ か る. ま た,両
者 の 間 の 領 域2≦Re≦500は,遷
な い し は −1/2乗 CDの
移 域 で あ り,CDはReの
に 比 例 す る と さ れ て い る.
レ イ ノ ル ズ 数 に 対 す る こ の よ う な 関 数 関 係 は,前
く同 様 な 形 と な っ て い る の は 興 味 深 い.実 ρn3d5)[―]を る と,ま
−3/5乗
式(2.5)で
述 し た 図2.6と
まった
は こ の ほ か に も撹 拌 動 力 数Np(=P/
定 義 さ れ る 撹 拌 レ イ ノ ル ズ 数Redに
対 し て プ ロ ッ トす
っ た く同 様 な 形 状 の 相 関 曲 線 が 得 ら れ る こ とが 知 ら れ て い る.
2.3.3
円柱 背 後 の 流 れ
図2.9に
示 す よ う に,一
様 な 流 れ の 中 に 置 か れ た 円 柱 の 表 面 で は,θ=0の
点
か ら次 第 に 主 流 よ り も流 速 が 小 とな る境 界 層 が 発 達 して そ の 厚 さ を増 し て い く (同 図A).あ
る θ の 位 置 で 〓 離 点 に 達 す る が,そ
境 界 層 の 〓 離 が 起 こ る(同 図B).流 れ て 流 れ 去 り,円 た,流
れ以 後境 界層 内に逆 流が生 じ
速 が 大 き く な る と 円 柱 の 背 面 か ら 大 き く離
柱 の 背 面 に は 回 転 方 向 が 逆 の2つ
の 渦 を 生 ず る よ う に な る.ま
線 は 円 柱 と こ れ に つ い て い る 渦 を 包 み 込 む よ う に 形 成 さ れ る(同 図C).
円 柱 の 背 面 に で き る 渦 は,同 の が,流
図(B),(C)に
速 が さ ら に 大 と な りReが
れ 去 る よ う に な り,円 Karmanは
柱 の 後 面 に2列
こ の 渦 列 の 研 究 を 行 い,理
で あ る こ と を 発 見 し た.こ い,Reが い ま,静
約60以
約50000に
上 に な る と上 下 で 交 互 に 円 柱 か ら 離
の 渦 の 列 を 生 ず る よ う に な る(同 図D). 論 的 にb/a=0.2806の
れ を カ ル マ ン の 渦 列(Karman's
と き,渦 vortex
列 が安 定
street)と
い
達 す る ま で 見 ら れ る 現 象 で あ る.
止 流 体 中 を 直 径D[m]の
る 場 合 を 考 え よ う.渦
見 られ た よ うに上 下 対 称 で あ っ た も
円 柱 が,一
も 同 じ 方 向 に 速 度uυ
秒 発 生 す る 渦 の 数 をNe[s−1]と
定 速 度u0[m
s−1]で 運 動 し て い
で 運 動 し,uυ/u0≒0.14で
す れ ば,St=NeD/u0で
あ る.毎
定 義 され る無 次 元 数 の ス
(A)
(B)
(C)
(D)
図2.9
カル マ ン渦 列 の 形成
ト ロ ー ハ ル 数(Strouhal ρu0D/μ)の
図2.10
number)は
関 数 と な る.Re≧1000で
ら れ て お り,こ こ と が で き る.こ
の 関 係 は,流
ほ ぼ 一 定 値0.21を
柱 の移 動 速 度 を計 算 す る
速,流
った
節 で 述 べ る カ ル マ ン 渦 流 速 計 の 基 本 原 理 と な る も の で あ る.
速
流 動 状 態 の 計 測
計
化 学 装 置 内 あ る い は 管 内 の 流 れ の 状 態 を 把 握 す る う え で,重 力,流
と る こ とが 知
れ 場 に お い て 円 柱 を 静 止 させ た 場 合 に も,ま
2.4
流
は,Stは
示 す よ う に レ イ ノ ル ズ 数Re(=
の 範 囲 で 渦 の 発 生 個 数 を計 測 す れ ば,円
く 同 様 に 成 立 し,次
2.4.1
図2.10に
レ イ ノ ル ズ数 とス トロ ー ハ ル 数 の 関 係
量 の3者
で あ り,こ
要 な状 態 量 は 圧
れ ら は 相 互 に 関 係 を も っ て い る.本
を 計 測 す る 代 表 的 な 計 器 の 原 理 に つ い て 説 明 す る が,必
項 では流速
要 に 応 じて こ れ ら の 状 態
量 の 関 係 に つ い て も 触 れ る こ と と す る. 本 項 で 紹 介 す る 流 速 計(velocimeter)は,ピ 速 計(hot-wire pler velocimeter; つ で あ る が,そ て い こ う.
hot-film LDV),カ
anemometer),レ
トー 管(Pitot
tube),熱
線 ・熱 膜 流
ー ザ ー ドッ プ ラ ー 流 速 計(lazer
ル マ ン 渦 流 速 計(Karman
の 計 測 原 理 は す べ て 異 な っ て い る.以
vortex
Dop
velocimeter)の4
下 に こ れ ら を順 を追 って 見
a. ピ
ト
ー
管
こ れ は フ ラ ン ス のHenri 示 す よ う に,密
de
度 ρ,流 速uの
方 向 に 向 け て 挿 入 す る と,先 速 は0と
な る.こ
Pitotに
よ っ て18世
流 れ 場 に,ピ
トー 管 のL字
の 点 は よ ど み 点(stagnation
point)と
で 述 べ た ベ ル ヌ ー イ の 定 理 を 適 用 し,両
す る と,次
式 が 成 り立 つ.
辺 の 第1項,第2項
pressure)と
な り,静
掛 か る こ とか ら,静 さ てP1とP2の
方,L字
の 和 は 全 圧(total
pressure)と
圧 が 全 圧 そ の も の と な っ て い る.点
pressure),静
圧
呼 ば れ る.よ
どみ
② の孔 は静圧 が
圧 孔 と呼 ば れ る.
圧 力 差 は ピ トー 管 のU字
密 度 ρ′の 液 柱 の 高 さ の 差hと
管 部 に 伝 え ら れ,同
な っ て 現 れ る.ち
な み に こ のU字
部 に封 入 され た 管 部 は,圧
を 液 柱 の 高 さ の 差 に 変 換 し て 表 示 す る 液 柱 形 圧 力 計 の 一 つ で あ り,U字 メ ー タ ー(manometer)と
も呼 ば れ る.同
と な り,こ
れ ら2式
′gh からP1,P2を
消 去 し て 整 理 す る と,
図2.11
力差 管マ ノ
図に示す 基準線 での左右 の液柱 に掛 か
る 圧 力 は 等 し い か ら, P1+ρgh=P2+ρ
管
の2点
点 の高 さの 差 が 無 視 で き る と
は そ れ ぞ れ 動 圧(dynamic
呼 ば れ,そ
点 で は 動 圧 が0と
呼 ば れ る.一
部 ① では流
れ 場 の 流 速 の ま ま で あ る.こ
に2.1.5項
(static
管 部 の 先 端 を流 れ の
端 部 は 流 れ に 対 す る 障 害 物 と な り,同
の 側 面 部 に 開 孔 さ れ た 点 ② で の 流 速 は,流
こ こ で,右
紀 に 考 案 さ れ た.図2.11に
ピ トー 管 の 計 測 原理
(2.54) を得 る.す
な わ ち 封 入 液 の左 右 の 柱 高 さの 差 を 計 測 す る こ と で,流 れ場 の 流 速 を
計 測 す る こ とが で き る.封 入 液 が 水 で 計 測 す る対 象 が 空気 で あ る よ うな 場 合 に は,ρ ′ ≫ ρ とな り,同 式 は 近 似 的 に
(2.55) と な る が,封
入 液 が 水 銀 で,計
す る 必 要 が あ る.ベ
ル ヌ ー イ の 式 は2.1.5項
響 を 考 慮 し て い な い.こ [―]を
測 対 象 が 水 の よ う な 場 合 に は,式(2.54)で に も 述 べ た と お り,流
れ を 補 正 す る た め に,式(2.54)の
掛 け る こ と が あ る.こ
計算
体 の粘性の影
右 辺 に 補 正 係 数C
れ は ピ トー 管 速 度 係 数 と 呼 ば れ,通
常1に
近 い値
で あ る. 【 例 題2.8
ピ トー 管 】 図2.11に
ノ メ ー タ ー 部 の 読 み は,0.1mで 封 入 さ れ て お り,川 た だ し,ピ
示 す ピ トー 管 を 川 に 差 し 入 れ た と こ ろ,マ あ っ た.同
部 に は 密 度13600kg
の 水 は 常 温 とす る と き,川
トー 管 速 度 係 数Cは1.0,重
解. 式(2.54)に,補
正 係 数Cを
m−3の
水銀 が
の 平 均 流 速 の 値 は い く らか.
力 加 速 度g=9.8m
s−2と す る.
考 慮 し
航 空機 の 主 翼 か ら突 き出 た 細 い管 は,航 空 機 の 速 度 を計 測 す る ため の ピ トー 管 で あ り,こ れ は 図2.11で
い え ば,静 止 流 体 中 を速 度uで
ピ トー 管 を移 動 させ る
イ メー ジ に 相 当 す る.こ の 場 合 も ま っ た く同 様 に,式(2.54),(2.55)が
成立す
る. b. 熱 線 ・熱 膜 流 速 計 同 計 測 器 は,図2.12に
示 す よ うに,抵 抗 体 に 通 電 し て 発 熱 した セ ン サ ー 部 を
流 れ 場 に挿 入 す る と,流 速 の 大 小 に 応 じて 冷 却 さ れ,セ
ン サ ー 部 の 電 気 抵 抗R
が 変 化 す る こ と を そ の 測 定 原理 と して い る.同 付 図(a)に 示 す よ う に抵 抗 体 は絶 縁 被 覆 さ れ た2本 の 支 柱 に 直 径5∼10μmの
タン グステ ンや 白金 あ るい は 白金
-ロ ジ ウ ム な ど の 金 属 細 線 を 張 っ た熱 線 型 プ ロー ブ と同 付 図(b)に 示 す よ う に 円 錐 状 の プ ロー ブ に 薄 膜 状 に 白金 や ニ ッケ ル な どの 金 属 を コー テ ィ ン グ した熱 膜 型
ホ ィ ー トス ト ン ブ リ ッ ジ
(a)熱線 プ ロ ー ブ
図2.12
の も の が あ る.前
(b)熱膜 プ ロ ー ブ
付図
回路 熱 線 ・熱 膜 流 速 計
者 は 気 体 の 計 測 に,後
者 は よ り強 度 の 要 求 され る液体 の 流 速 計
こ れ ら の 抵 抗 体 か ら の 発 熱 量I2R[W]は
流 体 の 対 流 伝 熱 に よ っ て運 び 去 ら れ
測 に 用 い ら れ る.
る 放 熱 量q[W]に 式(King's
等 し く,流
equation)に
れ 場 の 流 速u[m
s−1]と 式(2.56)で
示 す キ ン グの
よ り関 係 づ け ら れ る.
q=I2R=(A+Bu0.5)(T−Ta) 同 式 中 のA,Bは,流
速値 が既 知 の場 で校正 を して決定 す る必要 の あ るパ ラ
メ ー タ ー で あ り,T[K]は の 際,電
流I[A]を
抵 抗 体 の 温 度T[K]が
(2.56)
抵 抗 体 の 温 度,Ta[K]は
周 囲 流 体 の 温 度 で あ る.こ
一 定 に 保 っ て 計 測 す る 定 電 流 方 式 と,抵 一 定 に 保 た れ る よ う,図2.12に
抗R[Ω]す
示 す ホ イー トス トン ブ
リ ッ ジ 回 路 の 可 変 抵 抗 値 を 制 御 し な が ら 計 測 す る 定 温 度 方 式 が あ る.後 が,抵
抗 体 へ の 負 荷 が コ ン ト ロ ー ル で き,温
な る こ と か ら よ く用 い ら れ,乱
なわ ち
者 の方
度 変 化 に 伴 う応 答 の 時 間 遅 れ も な く
流 流 動 場 の 流 速 測 定 に も 適 用 さ れ て い る.
c. レ ー ザ ー ドッ プ ラ ー 流 速 計 こ れ は 光 の ド ッ プ ラ ー 効 果 を 利 用 し て 流 速 を 計 測 す る もの で あ り,laser pler
velocimeterの
す よ う に2本
頭 文 字 を 取 っ てLDVと
呼 ば れ る こ と も 多 い.図2.13に
の レー ザ ー ビ ー ム が 交 差 角 θ で つ く る 干 渉 縞 に,流
微 小 な トレ ー サ ー 粒 子 が 干 渉 縞 を横 切 る よ う に 入 る と,レ 粒 子 の 移 動 速 度uに を Δx[m],レ
応 じ た ド ッ プ ラ ー 周 波 数fD[s−1]を
ー ザ ー 光 の 波 長 を λ[m]と
す る と
Dop 示
れ場 に乗 った
ー ザ ー 光 は 散 乱 さ れ, 発 す る.干
渉 縞 の 間隔
図2.13
で あ り,ド
LDVの
測定空間
ップ ラ ー 周 波 数 は
で 与 え ら れ る こ と か ら,
(2.57) に よ り流 れ 場 の 流 速 が 計 算 され る. レー ザ ー 光 とは 波 長,位
相,偏
干 渉 性 に優 れ て い る.LDVは
りが す べ て揃 っ た 単 色光 の こ とで,指
向性 や 可
こ れ らの 特 徴 を活 か した測 定 機 器 で あ り,流 れ 場
に プ ロー ブ を挿 入 す る必 要 が な い非 接 触 型 の測 定 法 で あ る.ト レー サ ー 粒 子 も数 μmと 微 小 で あ る こ とか ら,測 定 場 を乱 す お そ れ が な い.ま
た,前 述 の 熱 線 ・熱
膜流 速 計 で述 べ た よ うな校 正 が 必 要 な い な ど の利 点 が あ り,流 速 計 と して 主 力 に な りつ つ あ る.し か し,光 学 系 を用 い る計 測 法 で あ るた め,気 泡 や 液 滴 あ る い は 固 体 粒 子 な どの他 の 相 が 高 濃 度 で懸 濁 した よ うな場 へ の適 用 は 困難 で あ る. d. カル マ ン渦 流 速 計 こ れ は2.3.3項
で 述 べ た 円柱 背 後 に 発 生 す る カ ル マ ン 渦 列 の 発 生 周 波 数Ne
[s−1]を計 測 し,流 れ 場 の 流 速u[m ス トロー ハ ル数 をSt[―]と
s−1]を求 め る もの で,円 柱 の 径 をD[m],
して,
(2.58) か ら 計 算 さ れ る.こ
こ で,Stが
ち,103
測 定 は 可 能 と な る.
2.4.2 流 量Q[m3
一 定(約0.21)と
な る レ イ ノル ズ数 の 範 囲 す な わ
流 量 計(flowmeter) s−1]は 対 象 とす る 断 面 で の 流 速 分 布 が わ か れ ば,そ
の積 分 値 とし
図2.14
オ リフ ィ ス流 量 計
て 算 定 す る こ とが で き,円 管 内 を幾 つ か の 円 環 に分 割 し,各 円 環 で の 流 速 を例 え ば ピ トー 管 に よ り計 測 して,流 量 を算 定 す る方 法 もあ る.こ
こで は通 常,流
量測
定 に 用 い ら れ るオ リフ ィ ス 流 量 計 とそ の 改 良 型 で あ るベ ンチ ュ リー 管 に つ い て紹 介 す る. a. オ リフ ィス流 量 計(orifice flowmeter) オ リフ ィ ス は 図2.14に
示 す よ う に,中 央 に 直 径D0[m]の
で あ り,こ れ を管 に取 り付 け,そ
の 前 後 の 圧 力 差,す
開 口 部 を もつ 円 盤
な わ ち圧 力 損 失 を測 定 す る
こ とに よ り流 量 が 計 測 され る.同 図 に 示 す よ うに 管 内 の 流 れ は オ リフ ィ ス に よ り 絞 られ,開
口部 を過 ぎた位 置 で,流 れ の 断 面 積 が最 小 とな る.こ の位 置 は縮 流 部
(vena contracta)と 杯 に 広 が る.オ
呼 ば れ る.縮 流部 を過 ぎる と流 れ は 徐 々 に広 が り元 通 り管一
リフ ィ スの 上 流部 を1と
し,縮 流 部 を2と
し,管 は 水 平 で あ る と
して ベ ル ヌー イ の定 理 を適 用 す る と,次 式 が 成 り立 つ.
こ こ で,位
置1,2の
断 面 積 をA1[m2],A2[m2]と
す る と,各
断面 での 流量 は等
し い こ とか ら, u1A1=u2A2 こ れ ら2式
か らu1を
消 去 し,u2に
つ い て 解 く と,次
式 と な る.
こ こ で,縮
流 部 の 断 面 積A2を
の 開 口 断 面 積A0と
実 際 に 求 め る こ と は 困 難 で あ る た め,オ
の 比 で あ る 収 縮 係 数(coefficient
of contraction)
リフ ィス Cc[―]を
用 い てA2は, A2=CcA0 で 表 さ れ る.ま
た,こ
こ で 求 め たu2は
粘 性 の 影 響 を 考 慮 し て い な い.こ
に 基 づ くエ ネ ル ギ ー 損 失 に よ る 流 速 の 減 衰 を 考 慮 す る た め に,速 ity coefficient)
Cυ[―]を
乗 じて,縮
の粘性
度 係 数(veloc
流 部 の 実 際 の 流 速uaは,
(2.59) と な る.こ
れ よ り同 部 で の 実 際 の 流 量Qa[m3
s−1]は,
(2.60) と な る.た
だ し,
で あ り,C[―],α[―]は こ こ で,α
と も に 流 量 係 数(discharge
は 一 般 にmとReの
の み の 関 数 と な り,JIS規
coefficient)と
関 数 で あ る が,105
イ タ リ ア のVenturiの
(2.61) tube)
理 論 に 基 づ き 設 計 さ れ た 流 量 計 で あ り,基
リ フ ィ ス 管 と 同 じ で あ る が,図2.15に に 絞 ら れ た 流 れ が,広
範 囲 で は,m
式 か ら計 算 され る.
α=0.597−0.011m+0.432m2 b. ベ ン チ ュ リ ー 管(Venturi
呼 ば れ る.
本 原理 は オ
示 す よ うに 楕 円 形 状 に 近 い ノ ズル で徐 々
が り管 で 徐 々 に 圧 力 を 回 復 す る よ う 設 計 さ れ て お り,渦
発 生 や 縮 流 現 象 が 生 じ な い.こ
の た め 上 述 の 収 縮 係 数 はCc=1で
図2.15
ベ ン チ ュ リー 管
あ り,ま
の
た流
量 係 数 α も1前 後 の値 を と る.流 量 は 入 口部 と絞 り部 との 圧 力 差 か ら式(2.60) を用 い て 算 定 さ れ る.
2.5 流 れ の 可 視 化
2.5.1 実験 的 可 視 化 手 法 配 管 や 装 置 内 の 流 れ に 基 づ く トラ ブ ル の 原 因 を解 明 した り,流 動 を伴 う装 置 を 大 型 化 す る ため の 設 計 を行 う際,そ
の 流 動 状 態 が 可 視 化 さ れ て い た な ら ば,何 に
も ま して 有 用 な情 報 を与 え る こ とに る.本 項 で は,流
れ の 可視 化 法 の うち,実 験
的 な 手 法 につ い て そ の 代 表 的 な もの を い くつ か 述 べ る と と もに,自 然 現 象 や 私 達 の 身 の ま わ りで,流 れ の 状 態 が 可 視 化 さ れ て い る事 例 につ い て も触 れ る こ と とす る. a. 壁 面 トレー ス 法 こ れ は 対 象 とす る装 置 内の 面 に,例
え ば 油 膜 を塗 布 して お き,流 れが 残 す 痕 跡
か ら,物 体 表 面 で の 流 れ の 強 さや 方 向 を知 る方 法 で あ る.ポ ンプ や ター ビン の 翼 面 上 や 装 置 内 に お け る壁 面 の流 れ状 態 が 同 法 に よ り観 察 され て い る.例 え ば コ ン ク リー トの 面 状 に 油 を落 と した と き,油 膜 の 形 成 す る色 模 様 か ら,表 面 近 傍 の 気 流 の状 態 を知 る こ とが で きる が,こ れ は 一種 の 壁 面 トレー ス法 に よ る可 視 化 とい え よ う. 油 膜 で は な く感 温 塗 料 を塗 布 して お け ば,物 体 表 面 上 の 温 度 分 布 を知 る こ とも で き る. b. 注 入 トレー サ ー 法 最 も よ く用 い られ る可 視 化 法 の 一 つ で あ り,流 れ場 に 目印 とな る トレー サ ー を 注 入 して,そ
の 動 き を観 察 す る こ と に よ り,流 動 状 態 を可 視 化 す る 手 法 で あ る.
トレー サ ー に は 液 体 や 微 小 固体 粒 子 が 多 く用 い ら れ るが,2.1.5項 うに,こ る.例
れ を 連 続 的 に 注入 す る とき に は,流 脈 法(streak
で も述 べ た よ
line method)と
呼ばれ
え ば,た ば こ の 煙 は 流脈 法 に よ り周 囲 の 空気 の 流 れ が 可 視 化 され て い る と
い え る.ま た,2.1.2項
で 述 べ た レ イ ノ ル ズ の 実 験 も同 法 に よ る可 視 化 例 で あ
る. これ に対 して トレー サ を間歇 的 に入 れ る場 合 は,流 跡 法(path 呼 ば れ る.例
えば,タ
line method)と
ン ポポ の 種 が 風 に 吹 か れ て 浮 遊 して い る の は,流 跡 法 に よ
図2.16
粒 子 追 跡 法 に よ る撹 拌 槽 内 に お け る 流動 状 態 の 可 視 化 写 真 例(上 和 野満 雄:化
(a)槽 全 域 観 測,(b)∼(d)槽
学工 学,61(11),901,1997).
壁 近 傍 拡 大 観 測(矢 印 は 流 れ の 方 向).
る可 視 化 例 とい っ て よ い.装 置 内 に あ らか じめ 比較 的 大 量 の トレー サ ー 粒 子 を入 れ てお き,こ れ を観 察 す る方 法 もあ り,こ れ は懸 濁 法(suspension
method)と
呼
ば れ る.撹 拌 槽 内 に微 小 な ポ リス チ レ ン粒 子 を入 れ て お き,槽 側 面 か らレー ザ ー に よ る シー ト光 を 当 て る と,翼 図2.16に
まわ りの 吐 出 ・ 循 環 流 の様 子 が 明 瞭 に観 察 され る.
は こ の よ うに して 観 察 され た 撹 拌 槽 内 の 流 動 状 態 の 可 視 化 写 真 を一 例
と して 示 して い る.こ の よ う な フ ロ ー パ ター ン だけ で は な く,あ る時 間 間 隔 で形 成 され る流 跡 線 の 長 さか ら,断 面 に お け る 各 位 置 で の 流 速 を算 定 す る こ と もで き,こ れ か ら時 間 平 均 的 な 流 速 の ベ ク トル 分布 を描 く こ と も で き る. この ほ か,ト
レー サ ー に化 学 反 応 を 利 用 す る手 法 も よ く用 い られ,例
素 の 脱 色 剤(チ オ硫 酸 ナ ト リウ ム)に よ る脱 色 反 応 は,撹
えば ヨウ
拌 槽 内 に お け る水 〓 溶
液 の 混 合 時 間 を 槽 内 が 脱 色 さ れ る ま で の 時 間 と し て 測 定 し,撹
拌翼 の性能評価 を
す る の に よ く使 用 さ れ て い る. c. タ フ ト法(tuft
method)
タ フ ト と は 短 い 糸 の こ と で あ り,古 る.同
くか ら流体 実 験 に 用 い られ て き た手 法 で あ
法 は タ フ トの 配 置 の 仕 方 に よ り い くつ か に 分 類 さ れ る.例
多 数 の タ フ ト を 張 り付 け て お く方 法 は,表 呼 ば れ る.一 (tuft grid
方,格
呼 ば れ,物
の 他,細
ス テ ィ ッ ク 法(tuft
tuft method)と
子 状 に 張 ら れ た タ フ ト を 用 い る の は,タ
method)と
とが で き る.そ
面 タ フ ト法(surface
stick
えば車体表面 に
フ ト グ リ ッ ド法
体 背 後 の 渦 流 れ な ど を同 法 を用 い て 観 察 す る こ
い 棒 の 先 に タ フ ト を つ け,こ method)と
呼 ば れ る.例
れ を 観 察 す る の は,タ
フ ト
えば高速 道路 に設置 されて い
る 吹 き 流 し な ど は こ の 手 法 に 相 当 す る.
2.5.2
数 値 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン(numerical
昨 今 の 計 算 機 技 術 の ハ ー ド,ソ ら ず,計
フ ト両 面 に お け る 長 足 の 進 歩 に よ り,実
項 で は そ の 基 本 的 な 考 え 方 だ け を 述 べ る こ と に す る.
(2.8)の
連 続 の 式 と式(2.9)の
程 式 と呼 ば れ る.こ
れ ら2つ
タ ー で 計 算 す る た め に は,ま 域 を,最
運 動 の 式 で あ り,ニ
で す で に 述 べ た よ う に,式 ュ ー ト ン 流 体 の 場 合 はN-S方
の 式 を 連 立 し て 解 を 求 め る の で あ る が,コ ず 計 算 点 を 決 め る必 要 が あ る.こ
も簡 単 に は 格 子 状 に 分 割 す る こ と で あ り,メ
メ ッ シ ュ は3次
元 の 場 合,1つ
の 直 方 体 で あ る が,通
ル 量 で あ る 流 速 の 各 成 分(u,υ,w)が
計 算 さ れ る.一
同 直 方 体 の 中 心 で 計 算 さ れ る.ち
m−3]を 解 析 す る 際 も,同
の 離 散 化 手 法 に は,主
れ は解 析 の 対 象 領
ッ シ ュ 分 割 と も 呼 ば れ る. 常,各 方,ス
面 の 中心 でベ ク ト カ ラ ー 量 で あ る圧 力
な み に 温 度T[K]や
間 的 に 離 散 化(discretization)す
に 有 限 要 素 法(finite
限 体 積 法(finite
volume
method;
ど が あ り,そ
FDM)な
ン ピュ ー
濃 度C[mol
様 に 体 積 中 心 で 計 算 さ れ る.
こ れ と あ わ せ て 基 礎 方 程 式 も,空 る.こ
な り
れ の 数 値 解 析 法 の 詳 細 は他 の 成 書 を参 考 に され た
流 動 を 解 析 す る た め の 基 本 と な る 式 は,2.1.4項
p[Pa]は
験に よ
算 に よ り化 学 装 置 内 や 物 体 ま わ り の 流 動 状 態 を 解 析 す る こ と が,か
の 部 分 で 可 能 と な っ て き た.流 い.本
simulation)
method;
FVM),有
element
method;
限 差 分 法(finite
れ ぞ れ 取 扱 い が 異 な っ て い る が,最
を ミ ッ ク ス し た 手 法 も 多 く提 案 さ れ て お り,そ
る必 要 が あ FEM),有 difference 近 は これ ら
の 境 界 が 曖 昧 に な りつ つ あ る.
さ て 運 動 の 式(2.9)を w))を
時 間 発 展 的 に 解 い て,次
計 算 す る の で あ る が,こ
刻 の 圧 力 の 空 間 勾 配,す る.と
り あ え ず,現
ろ が,こ uが
のuで
式(2.8)を,十
す.こ
の 際 問 題 と な る の は,こ
な わ ち 式(2.9)の
時 刻 の ∇pの
は,当
時 刻 の 速 度 ベ ク トルu(=(u,υ,
然,連
の計 算 で 必 要 とな る次 時
右 辺 の 第1項
値 を 用 い てuの
続 の 式(2.8)を
∇pが
推 定 値uが
未 知 な こ とであ 計 算 さ れ る.と
満 足 す る こ と が で き な い.そ
分 に 満 足 す る よ う に な る ま で,pとuの
の 補 正 計 算 の や り方 に は い くつ か あ る が,例
え ばSOLA法
で は,
(2.62)
で 圧 力 の 補 正 量 Δpが 表 現 さ れ る.こ
=0が
こ で,
補 正 計 算 を繰 り返
D=divu
Δz[m]は
こ
そ れ ぞ れx,y,z方
こ で,Δt[s]は
時 間 刻 み で あ り,Δx,Δy,
向 の メ ッ シ ュ 刻 み 幅 で あ る.速
式(2 .8)そ の も の で あ り,Dが
度 ベ ク トル の 発 散D
全 メ ッシ ュ に お い て 十 分 小 さ くな る ま で収
束 計 算 を 繰 り返 す 必 要 が あ る. 実 際 に 計 算 す る 際 に は,Δtは
メ ッ シ ュ の 刻 み 幅 か ら 制 限 を受 け た り,刻
を 変 え る と計 算 結 果 が 変 わ っ て く る こ と も あ り,注 図2.17に
み幅
意 を 要 す る.
は 撹 拌 槽 内 に お け る高 粘 度 擬 塑 性 流 体 の 流 動 状 態 を 数 値 解 析 した 結
果 の 一 例 を 示 す.2.1.1項
で 述 べ た よ う に,翼
(a) 速 度ベ ク トル分 布(Red=50) 図2.17
ま わ り の 剪 断 作 用 が 強 く働 く領 域
(b) 粘 度 分 布
撹 拌 槽 に お け る高 粘 度 擬 塑性 流体 の数 値 解 析 例(上 ノ 山 工 学 便 覧,改
訂 第 六 版,化
学工 学 会 編,p.328,丸
周:化
善,1999)
学
栓 流 と完全 混合 化 学 装 置 内 の 反 応 状 況 を解 析 す る う え で,流 で あ るに もか か わ ら ず,こ
動 状 態 に 関 す る情 報 は,極
れ を 定 量 的 に知 る こ とは 従 来,極
の 難 問 に 対 して 一 つ の 解 決 策 を与 え て きた の が,流 で あ る.そ の1つ
は 栓 流(plug
め て重要
め て 困 難 で あ っ た.こ
れ を モ デ ル化 し た う え で の検 討
flow)モ デ ル(ピ ス トン流(piston
flow)モ
デ ルあ る
い は 押 出 し流 れ モ デ ル と も呼 ば れ る)で あ り,こ れ は 流 速 分 布 が ま っ た く生 じ な い とす るい わ ば,と 全 混 合(perfect
こ ろ て ん 式 の 押 出 し 流 れ を 仮 定 す る もの で あ る.も
mixing)モ
とす る理 想 的 な状 態,い
う1つ
は,完
デ ル で あ り,例 え ば 反 応 器 内 の 濃 度 分 布 が ま っ た くな い わ ば 究 極 の 乱 流状 態 を仮 定 す る もの で あ る.栓 流 モ デ ル と
完 全 混 合 モ デ ル とは 両 極 端 に 位 置 す る と考 え て よ い.実
際 の 現 象 は そ の 間 の ど こか
に位 置 す る と い う訳 で あ る.し か しな が ら,そ れ が 何 処 な の か は,如 何 せ ん 不 明 で あ っ た. 今 日の 流 れ の 可 視 化 手 法 は,実
験 的 手 法 で あ れ,数
値 流 動 解 析 で あ れ,こ
の 暗部
に対 しダ イ レ ク トに 光 を 当 て る も の と して 期 待 さ れ て お り,ま た 着 実 に そ の 実 績 を 上 げ て い る と い え よ う.
で,粘
度 の 低 下 す る 様 子 が 解 析 さ れ て い る.
以 上 に 述 べ た の は 主 に 層 流 状 態 を 対 象 とす る場 合 で あ る が,系 る と き に は,こ
が乱流状 態に あ
れ に 加 え て 特 別 な 工 夫 あ る い は モ デ ル 式 が 必 要 と な る.興
る 人 は 参 考 書(保 原 ら(1992))を
味の あ
参 照 さ れ た い.
【演 習 問 題 】 2.1 非 ニ ュ ー トン 流 体:
身 の ま わ りで 非 ニ ュー ト ン 流 体 と考 え られ る も の を あ げ,
そ の レ オ ロ ジー 特 性 を簡 単 に 述 べ る と と も に,そ
れ が 属 す る と考 え ら れ る流 体 の
名 称 を記 せ. 2.2 相 当 直 径: 直 径Deが,本
図2.2に
2.3 レ イ ノル ズ数: 2m3
示 し た 円 管 以 外 の(a)環
文 中,2.1.2項 幅,高
h−1,高 さ0.4mの
乱 流 か.た 10−3Pa s,密 2.4 管 内 流:
だ し20℃
状 路,(b)開
溝,(c)濡
れ 壁 の相 当
に 記 し た 式 で そ れ ぞ れ 表 され る こ と を示 せ.
さ0.5mの
正 方 形 の 断 面 を もつ 送 水 管 内 を,20℃
の水が
状 態 で 流 れ て い る.こ の と き の 送 水 管 内 の 流 れ は,層 に お け る水 の 物 性 値 は 次 の と お り とす る.粘
度:998.2kg 内 径Dが35mmの
流か
度:1.002×
m−3. 円 管 内 を 動 粘 度 νが9.8×10−6m2
ル 油 を層 流 状 態 で輸 送 し た い.流
量Q[m3
s−1の ス ピ ン ド
h−1]の 上 限 値 を求 め よ.た だ し,臨
界
レ イ ノル ズ 数Recは2100と
す る.
2.5 エ ネ ル ギ ー 保 存 則(ベ ル ヌー イ の 式): 面 積A2=2.0cm2の 速 度[m
横 断 面 積A1=1m2の
穴 か ら水 が 流 出 し て い る.水
s−1]は い く ら か.ま
要 す る時 間Tは
た,水
が1.5mの
水槽の底に開けた
面 の 高 さHが1.5mの
とき流 出
高 さ か ら ち ょう ど空 に な る ま でに
い く らか.
ヒ ン ト:ベ ル ヌー イ の 式 か ら平 均 流 出 速 度uを
求 め,こ
れ をA2udt=−A1dhに
入 れ て 積 分 せ よ. 2.6 エ ネ ル ギー 保 存 則(ベ ル ヌ ー イ の 式): 方 向 に 曲 が り,変 化 球 とな る.こ
野 球 な ど で 使 う ボ ー ル は,回 転 を 掛 け た
れ をベ ル ヌー イ の 定 理 を 用 い て,簡
単 に 説 明せ
よ. ヒ ン ト:ボ ー ル の 速 さ をV,回
転 速 度 を υ0とす る と き,ボ ー ル か ら見 て,そ
の
ま わ りの 気 流 速 度 が 左 右 で どの よ うに な るか を考 え よ. 2.7 エ ネ ル ギ ー 保 存 則(ベ ル ヌー イ の 式): s−1の 流 量 で 輸 送 し て い る.ポ mで
あ る.出
高 い.い
口 は 入 口 よ り0.8m上
ま,損
失 頭 は55.0J
る とす る と き,こ
常 温 の 水 を ポ ンプ で 昇 圧 し,Q=0.10m3
ン プ の 入 口 管 内 径 は0.22mで,出 方 に あ り,出
口管 内 径 は0.15
口 の 圧 力 は 入 口 よ り も80kPa
kg−1で あ り,ポ ン プ の 所 要 動 力Wpは23.9kWで
あ
の ポ ン プ の 効 率 ηは 何%か.
2.8 管 内 層 流(ハ ー ゲ ン-ポ ア ズ イ ユ の 法 則): 細 管 を 用 い,Hagen-Poiseuilleの
10℃
の 水 の 粘 度 を測 定 す る た め に毛
実 験 を行 っ た.次
の数値 を用 いて この温度 にお
け る水 の 粘 度 μ な ら び に 本 実 験 条 件 にお け るRe数
を 算 出 せ よ.
毛 細 管 長 さ:10.05cm,
管 平 均 内 径:0.01400cm
流 出 水 容 積:13.34cm3,
流 出 時 間:3506s
毛 管 前 後 の 圧 損:5.145×104Pa,
10℃
2.9 管 内 乱 流 速 度 分 布(対 数 法 則):
の 水 の 密 度:0.9997g
る オ イ ル の 流 速 を 管 壁 か ら の 距 離y=0.225m(管 て そ れ ぞ れ 求 め よ.計
cm−3
滑 ら か な壁 面 を も つ 内径0.45mの
円管 内 にお け
中 心),0.01m,0.001mに
算 は 対 数 法 則 を 用 い て 行 い,そ
おい
の 結 果 を例 題2.4の
指 数法
則 を 用 い た場 合 と比 較 せ よ. た だ し,オ
イ ル の 比 重 を0.85,動
力 τwを1.646Paと
せ よ.た
s−1,管 壁 に お け る 剪 断 応
す る.
2.10 管 内 流(圧 力 損 失): い .管 長10mに
粘 性 係 数 を9mm2
内 径 が30mmの
平 滑 円 管 内 を10℃
お け る 圧 力 損 失 Δpは い く ら か.板
だ し,10℃
谷 の 式(2.35)を
の 水 の 物 性 値 は 次 の と お り と す る.動
10−6m2 s−1,密 度:ρ=999kg 2.11 境 界 層 内 速 度 分 布:
の 水 を毎 分8l流
した
用 い て計算
粘 度:ν=1.307×
m−3.
平 板 に 平 行 に10m
s−1の 風 が 吹 い て い る.こ
の 位 置 ① お よ び ② に お け る局 所 レ イ ノ ル ズ数,境 に お け る 風 速 を そ れ ぞ れ 求 め よ.た
だ し,空
界 層 厚 さ,な
の と き以下
らびに境 界層内
気 の 動 粘 性 係 数 を1.54×10−5m2
s−1,境 界 層 が 層 流 か ら乱 流 に 遷 移 す る 臨 界 レ イ ノ ル ズ 数 をRexc=3×105と
す
る. ① 平 板 前 縁 か ら の 距 離x=0.1m,平
板 か ら の 高 さy=1mm
② 平 板 前 縁 か ら の 距 離x=1m,平 2.12 境 界 層 厚 さ: 値 を 求 め,そ
の 結 果 を例 題2.7で
2.13 球 の 受 け る 流 体 抵 抗(ス mmの た.ス
板 か らの 高 さy=1cm
乱 流境 界 層 に お け る排 除 厚 さ δ*の 同 境 界 層 厚 さ δに 対 す る 比 の 示 さ れ て い る 層 流 境 界 層 の 場 合 と比較 せ よ.
トー ク ス 則):
鋼 球 を 沈 降 させ た.そ
温 度 が 一 定 の ヒマ シ油 の 中 を直 径dp3.0
の 終 末 速 度 υ を 測 定 し た と こ ろ3.4cm
トー クス の 法 則 が 成 立 す る と し て,ヒ
た 粘 度 を用 い て 粒 子 レ イ ノ ル ズ数Repを る こ と を確 か め よ.こ
s−1で あ っ
マ シ 油 の粘 度 を計 算 せ よ.ま た 求 め
計 算 し,同 法 則 が 適 用 で き る 範 囲 で あ
こ で ヒマ シ 油 と鋼 球 の 密 度 ρl,ρpは そ れ ぞ れ0.968お
よび
7.86g cm−3で あ る. 2.14 車 の 受 け る 空 気 抵 抗:
高 さ1.5m,幅2mの
ポ ー ツ タ イプ の 車 が あ る.車 箱 型 の 車 が 時 速60kmで
の 抵 抗 係 数CDは
そ れ ぞ れ0.85と0.32で
走 る と き に 受 け る 抵 抗Dは
が こ れ と 同 じ抗 力 を受 け る の は,時 ρは1.2kg
箱 型 の 車 と断 面 積S=2.6m2の
速 何kmで
い く らか.ま
走 る と きか.た
ス
あ る.今, た ス ポ ー ツ車
だ し,空 気 の 密 度
m−3と す る.
2.15 カ ル マ ン の 渦 列: を 立 て て 速 度u0=0.4m
動 粘 度 ν=1×10−6m2
s−1の 静 止 水 中 に 直 径D=5cmの
円柱
の と き 円 柱 の 背 後 に は,毎
秒何 個 の
s−1で 動 か し た.こ
渦 が 発 生 す る か. ヒ ン ト:Re≧103で
はSt=0.21で
2.16 プ ラ ン トル 型 ピ トー 管: き,3つ
のU字
あ る.
図 に 示 す プ ラ ン トル 型 ピ トー 管 を 水 流 中 に 入 れ た と
管 部 に 封 入 さ れ て い る 水 銀 は そ れ ぞ れ ど の よ う に 変 化 す る か.
変 化 後 の 水 銀 柱 の 高 さ の 差 を そ れ ぞ れh1,h2,h3と 圧,静
圧 の どの 圧 に お の お の 対 応 す る か.ま
を 示 せ.た
だ し,管 末 端 部,(a),(b)は
す る と き,こ
たh1,h2,h3の
れ ら は 全 圧,動
間 に 成 立す る関係 式
閉 じ ら れ て お り,そ の 内部 は真 空 と す る.
プ ラ ン トル型 ピ トー 管
2.17 オ リ フ ィ ス 流 量 計: リ フ ィ ス を用 い,オ Paで
あ っ た.こ
管 径16cmの
円 管 に 常 温 の 水 を 流 し,開
の と き の体 積 流 量Q[m3
ヒ ン ト:流 量 係 数 α は 開 口率mの 2.18 流 れ の 可 視 化:
口径10cmの
オ
リ フ ィス 前 後 の 圧 力 損 失 Δpを 計 測 し た と こ ろ,Δp=3670 s−1]と レ イ ノ ル ズ 数Re[―]を
み の 関 数 で あ る と仮 定 せ よ.
身 の ま わ りな ら び に 自 然 現 象 に お い て,流
い る と考 え られ る事 象 を1つ
求 め よ.
ず つ あ げ,そ
れが 可 視 化 されて
れ が ど の 可 視 化 手 法 に 相 当 して い る と
考 え られ る か 記 せ. 2.19 流 れ の 数 値 シ ミュ レー シ ョ ン: 数 値 シ ミュ レー シ ョ ン は,非
接触法 であるこ
とや 対 象 とす る 系 の 寸 法 変 更 が容 易 で あ る な どの 実 験 的 な 手 法 に は 見 られ な い 長 所 を もつ 一 方,手
法 の 信 頼 性 を確 立 す る た め に は,検
証 実 験 が 欠 かせ な い な ど の
弱 点 もあ る. こ の ほ か に,同
手 法 の 長 所,短
所 と考 え ら れ る こ と を簡 潔 に 述 べ よ.
3 熱移 動(伝 熱)
3.1
熱 は主 と して伝 導,対
は
じ
め
に
流,放 射 に よ って 伝 わ る.冬 は 空 気 層 が 厚 くな る よ うな
服 を 着 用 す る の も,「 伝 導 伝 熱 」を少 な くす る た め で あ る.夏
の 暑 い と き に は,
薄 着 を して 風 に 当 た る と涼 し い が,「 対 流 伝 熱 」に よ る熱 移 動 を増 や す た め の 生 活 の 知 恵 で あ る.ま
た,寒
い と きに は放 射 型 ス トー ブ の 前 に い く と暖 か い の も,
「放 射 伝 熱 」 を 多 く受 け る た め で あ る.本 章 で は,数 式 が た く さ ん 出 て きて 難 し い 印 象 を受 け る熱 移 動 現 象 をす ぐに役 に 立 つ よ うにや さ し くま とめ て い る.そ の た め,い
くつ か の 項 目が 取 り上 げ られ て い な いの で,必 要 に 応 じて巻 末 の参 考 図
書 を勉 強 して い た だ きた い.
3.1.1 伝 熱 機 構 の 概 要 と事例 太陽熱温水器 の工夫 太 陽熱 温 水 器 に は,た だ パ イ プ を並 べ た ものか ら,熱 媒体 を循 環 させ る タイ プ ま で い ろ い ろ あ るが,こ
こ で は 図3.1に
示 す 自然 対 流 型 を例 に して 説 明 す る.
① 太 陽 か らの 放 射 熱 を よ り多 く取 り込 む た め に:透 明 度 の 高 い 窓(ガ ラ ス あ る い は プ ラ ス チ ッ ク)と,放
射 熱 吸 収 率 の 高 いパ イ プ 表 面(黒 色 に 塗 装)を 使
う. ② 取 り込 ん だ 熱 を逃 が さ な い た め に:保
温 材 で 金 属 パ イ プ を保 温 す る こ と
と,パ イ プ か ら大 気 中へ の放 射 伝 熱 を防 ぐた め に,特 殊 皮 膜 を塗 布 した 窓 を使 う.特 殊 被 膜 の 特 徴 と し て は,太 が,温
陽 か らの 光 線 の よ う な波 長 の 短 い 光 は 通 す
度 の低 いパ イプ 表 面 か ら出 る遠 赤 外 線 は カ ッ トす る働 き を もつ.
図3.1
図3.2
太陽熱温水器の概略 図
太陽熱温水器の伝熱機構
③ 熱 工 学 的 に 説 明 す る と図3.2の
よ うに な る.す な わ ち,昼 間 は太 陽 熱 を受
け てパ イプ 表 面 を放 射 伝 熱 で 暖 め,パ
イ プ を伝 導 伝 熱 で伝 わ っ た熱 は,水
流 伝 熱 で 加 熱 す る.夜 間 は,同 様 に して熱 は 逆 向 きに伝 わ る.た 取 り込 み,逃
を対
くさ ん の 熱 を
が さ な い よ うにす るた め 工 夫 が な され て お り,例 えば パ イ プ 周 囲
の 空 気 の 流 れ を少 な く して対 流 に よ る熱 損 失 をな くす,冷
え た水 が 逆 流 しな い
よ うに一 方 向弁 を も うけ る,温 度 差 に よ っ て 熱 媒 体 循 環 ポ ンプ を制 御 す る,な どが あ る.
計算違 いを な くす コツ 複 雑 な計 算 式 を解 こ う とす る と き,必 ず 単 位 を一 緒 に 計 算 す る.例
え ば,ご
く簡
単 な 例 で レ イ ノル ズ 数 を 計 算 して み よ う. 問:内
径5cmの
パ イ プ の 中 を水 が 平 均 流 速10cm
s−1で 流 れ て い る と き の レ イ ノ
ル ズ数 を求 め よ. 解1:
(無 次 元) 解2:
こ れ よ り明 らか な よ う に,解2は
大 学 生 レベ ル に 達 しな い 間 違 い を お か して い る
こ とが わ か る. 有 効数 字 に注意 電 卓 を使 う と8桁 れ な い こ と が 肝 心.有
∼12桁
効 数 字 が2桁
答 は で な い こ と に 注 意.例 ×103kmと
な り,さ
く人 は,地
も の 答 が で る が,必
の デ ー タ を使 っ て ど う計 算 して もそ れ を超 え る
え ば,地 球 の 半 径 は6400kmで
ら に は6.4×1012μmと
あ る が,書
き直 す と6.4
な る.平 気 で 有 効 数 字 が12桁
の 答 を書
球 を μm単 位 で 測 定 して い る こ とに な る.
3.2 伝
3.2.1
ず 有 効 数 字 を 念 頭 に お くこ と を忘
導
伝
熱
伝導伝 熱の基本式
温 度 が 高 い と こ ろ か ら低 い と こ ろ に 熱 が 伝 わ る と き,以 熱(conduction
heat
transfer)が
下 の 式 に よ っ て伝 導 伝
表 さ れ る(フ ー リ エ の 法 則(Fourier's
law)).
(3.1) 熱 流 束qを
用 い て 書 き直 す と
(3.2) こ こ で,Qは
単 位 時 間 当 た りの 熱 移 動 量[W],dT/dxは
熱 の 流 れ る方 向 の 温 度
勾 配[K [W
m−1],kを
物 質 の 熱 伝 導 率(ま
m−1 K−1]と 呼 ぶ.負
た は 熱 伝 導 度;thermal
conductivity)
号 は 熱 の 流 れ が 低 温 に 向 か う こ と を 示 す.こ
こ と に よ っ て す べ て の 熱 伝 導 問 題 が 解 決 す る わ け だ が,い
の 式 を解 く
くつ か の よ く使 わ れ る
例 を 以 下 に 解 説 す る.
3.2.2 無 限 平 板 の 定 常伝 熱 平 板 を厚 さ方 向 に伝 わ る熱 を考 え る.こ こ で,平 板 の 大 き さ は 無 限 と考 え る こ とに よ っ て,厚
さ方 向 の1次 元 熱 移 動 と して 扱 うこ とが で き る.
(3.3) こ こ で,Δxは
平 板 の 厚 さ[m],T1,T2は
も し 壁 面 材 料 が3種
類 か ら な っ て い る 場 合 に は,図3.3の
か ら壁 面 温 度 をT1,T2,…,T4と kB,kC,ま
両 側 の 壁 面 温 度 で あ る.
た ΔxA,ΔxB,ΔxCと
図3.3
し,3種
よ う に 温度 の 高 い 側
類 の 壁 の 熱 伝 導 率 と 厚 さ を そ れ ぞ れkA,
すれば
無 限 の 大 き さ を も っ た3層 平 板 の伝 導 伝 熱
温 度 変 化 が 直 線 で あ る こ と,kの
値 に よ っ て傾 きが 異 な る こ と,壁
接 す る 流 体 に 温 度 境 界層(3.3節
で 述 べ る)が 存 在 す る こ とに 注 意.
図3.4
フ ー リエ の 方程 式 とオ ー ム の 法 則 の 相 似 性
に
(3.4) これ よ り
(3.5) 温 度 は熱 の 流 れ の ポ テ ン シ ャ ル で あ るか ら電 圧 に 置 き換 え る こ とが で き,オ ー ム の 法 則(i=V/R)と
相 似 性 が あ る こ とが わか る.
伝 熱 量=
温度差/ 熱抵抗
し た が っ て 図3.3を こ こ で,熱
(3.6)
電 気 回 路 と して 書 き直 せ ば 図3.4の
抵 抗(thermal
resistance)
よ う に な る.
Rthは 次 の よ う に 書 け る
(3.7) 3つ の 壁 の 抵 抗 の 和 は
で あ るか ら
(3.8) 【 例 題3.1】
ベ ニ ヤ 板 で 囲 ま れ た い わ ゆ る 「プ レ ハ ブ 」 と い わ れ る 作 業 小 屋 は
冬 寒 く て 夏 暑 い.一
方,わ
れ わ れ の 住 ん で い る 「家 屋 」 は 断 熱 す る こ と に よ っ て
住 み や す く で き て い る. 高 さ が3m,幅4mの
壁 で 四 面 を 囲 ま れ た 部 屋 を 考 え る.天
れ て い る と し て,「 プ レ ハ ブ 」 と 「家 屋 」 そ れ ぞ れ の 場 合 の,室
井 と床 は 断 熱 さ 内 か ら室 外 へ の 放
熱 量 を 求 め よ. た だ し,伝 に よ っ て20℃
熱 は す べ て 伝 導 に よ る も の と し,冬 に 保 た れ,外
厚 の ベ ニ ヤ 板(k=0.2W cm厚
気 温 は5℃
m−1 K−1)1枚
の グ ラ ス ウ ー ル 断 熱 材(k=0.04W
季 を 想 定 し て,室
と す る.ま で あ り,家
た,プ
屋 の 壁 は2枚
よ う な 形 を し て お り,壁
は,(3m×4m)×4で48m2と
な る.こ
に,こ
よ う な 温 度 変 化 と な り,式(3.3)が
こ で,ベ
の 全 面 積(全 伝 熱 面 積)
ニ ヤ 板1枚
適 用 さ れ る.た
か ら な る 場 合 は,図 だ し,問
こ で は す べ て の 伝 熱 は 伝 導 伝 熱 に よ っ て い る た め,板
る 温 度 境 界 層(3.3.2a参
の ベ ニ ヤ 板 で5
m−1 K−1)を 挟 ん だ 物 と す る.
解. 例 題 の 部 屋 は 図(a)の
(b)の
内 はエ ア コ ン
レ ハ ブ の 壁 は5mm
題 に あ るよ う
の 内 側 と外 側 に 生 ず
照)は 無 視 し て い る こ と に 注 意.
(3.3)
この 式 に上 の 条 件 を あ て は め る と
壁 が グ ラ ス ウ ー ル で 断 熱 さ れ て い る場 合 に は,温 式(3.5)が
適 用 さ れ る.す
度 変 化 は 図(c)の
よ う に な り,
なわ ち
(3.5) この式に条件 をあてはめ る と
結 果 よ り,グ ラ ス ウー ル で 断 熱 す る こ とに よ り,ベ ニ ヤ 板1枚 放 熱 量 が2桁
の場 合 に 比 べ て
も少 な くな り,い か に 大 き な省 エ ネ ル ギー 効 果 が 得 られ るか が わ か
る.こ こ で,グ
ラ ス ウー ル に 比 べ て,ベ ニ ヤ 板 の熱 伝 導率 が 大 き く,板 厚 が 薄 い
た め,計 算 結 果 に は ほ とん ど影 響 して い な い こ とが わ か る(p.104の
(a)
(b)
(c)
コ ラム参 照).
3.2.3
中空円筒半径方 向の定常伝熱
図3.5の
よ う に 長 さ が 無 限 の 円 筒 の 一 部 を考 え る と,半
は1次
元 と し て 取 り扱 う こ と が で き る.内
ΔTと
し,長
2πrLだ
さLの
か ら,フ
半 径 をri,外
中 空 円 筒 を 考 え れ ば,半
ー リエ の 法 則(3.1)を
径 方 向 に 流 れ る 熱移 動
径rで
半 径 をro,温
度 差 を
の 円 筒 表 面 積ArはAr=
書 き 直 し て,式(3.9)が
得 ら れ る.
(3.9) 境 界 条 件 をr=riでT=Ti,でr=roでT=Toと
して解 く と
(3.10) こ こ で,熱
抵 抗 はRth={ln(ro/ri)}/2πLkで
同 様 に し て 図3.6に
示 す3層
と し て 書 く と 図3.7の
あ る.
中 空 円 筒 に 対 す る 解 は 次 式 の よ う に な り,電
気 回路
よ う に な る.
(3.11)
図3.5
円筒 形 状 の1次
元熱移動
図3.6
多重 円 筒 の1次
元熱移動
温 度 変 化 が 曲 線 に な る こ と,ま た,図3.3と 様 にkの 図3.7
電気 回路 との相 似 性
値 に よ っ て傾 き が異 な るこ と,壁
同 に接
す る 流体 に 温度 境 界層 が 存 在 す るこ とに 注 意.
3.2.4 中 空球 半 径 方 向 の 定 常 伝 熱 温度 が 半 径 の み の 関 数 で あ る と き,内 半 径 がri,外 対 して 熱 移 動 量Qは
半 径 がroの
中空 球 状 体 に
次 式 の よ うに 書 け る.
(3.12)
3.2.5 非 定 常 熱 移 動 の 考 え 方 物 体 が 急 に 温度 の違 う場 に お か れ た と き,そ の物 体 の 温 度 は 時 間 と と もに 変 化 す る.ス イ カ を冷 水 に浸 して,食 べ 頃 の 時 間 を熱 工 学 的 に 推 定 す るの はや さ し く な い.こ
の よ うに,時
間 と と もに 温 度 が 変 化 す る と きの 熱 伝 導 を,非 定 常 熱 伝 導
とい う. 物 体 が 周 囲 の 流 体 に よ っ て 加 熱 あ る い は冷 却 さ れ る場合,図3.8に
示 す よ うに
(a) 物 体 の 表 面 が 熱 せ られ る と き,表 面 温 度 が まず 上 が り,徐 々 に 内 部 まで 熱 が伝 わ る (b) 単 純 化 した 理 想 的 な 場 合 と して,物 体 内 部 に 温 度 勾 配 が 生 じ な い 状 態 で 温度 が 上 昇 す る の2つ
の 場 合 が考 え られ る.こ れ ら を分 け る条 件 と して 次 式 が 用 い られ る.
(3.13) 左 辺 が0.1よ
り大 きい と きに はか な り複 雑 な計 算 を要 す る が,0.1よ
き は物 体 内 部 の 温 度 分 布 は 無視 す る こ とが で き る.左 辺<0.1を
(a)
(b) 図3.8
非 定 常 熱 移 動 の概 念 図
り小 さ い と
満 たす条件 では
次 式 に よ り温 度 変 化 を計 算 す る こ とが で き る.
(3.14) こ こ で,hA/ρcpVの 時 間 を 表 し,時
逆 数 は,元
の 温 度 差 の1/e(36.8%)の
値 に な る ま で の経 過
定 数 τ と呼 ば れ る.
(3.15) 【例 題3.2】
28℃
に 温 ま っ た メ ロ ン(直 径20cm)を0℃
べ 頃 を 見 計 ら っ て い る.15℃ し,メ
ロ ン の 内 部 は 水 で(流 動 し な い),メ
係 数 を1W
の 冷 蔵 庫 に 入 れ,食
ま で 冷 や す に は 何 時 間 か か る か を 計 算 せ よ.た
だ
ロ ン の 外 側 の 自然 対 流 に よ る熱 伝 達
m−2 K−1と 仮 定 す る.
解. 問 題 を 図 示 す る と 図(a)の
よ う に か け る.ま
ず,式(3.13)に
問題 の条件
を あ て はめ る と
(3.13) こ こ で,h=1W
m−2
K−1,k=0.60W
m−1 K−1で
あ り,球
の 体 積Vと
表 面 積A
は そ れ ぞ れ V=(4/3)πr3=0.00419m3 A=4πr2=0.126m2
で あ るか ら
と な り,式(3.14)を
用 い て 温 度 変 化 を 計 算 で き る こ と が わ か る.
(3.14)
(直 径20cm、
流 動 しな い 水 か らな る) (a)
与 え られ た 数値 を代 入 して,ま
こ れ を 式(3.14)に
ず指 数 部 分 を 計 算 す る と
代 入す る と
こ れ よ り,t=8.66×104秒,す
な わ ち24.0時
3.3 対
流
間 と な る.
伝
熱
銅 製 パ イプ の 中 を温 水 が ゆ っ く り と流 れ る構 造 とな って い る 温 水 循 環 式 ヒー ター を用 い て,な ろ うか.3.6節
るべ く早 く室 内 を暖 め るた め に どの よ うな 工 夫 が考 え ら れ る だ
末 コ ラム の 説 明 の よ うに,ど
の部 分 が 伝 熱 を妨 げ て い る か を見 き
わ め る こ とが 解 決 の 第 一 歩 とな る.こ こ で は,最 イ プ 表 面 の 空 気 層 で あ る.そ こ で,フ
も熱 伝 達 係 数 の 小 さい 部 分 はパ
ァ ン を使 って 強 制 的 に 風 を 当 て る,伝 熱 面
積 を増 や す た め にパ イプ 外 側 に フ ィ ン をつ け る,な どが 考 え られ る.
3.3.1
ニ ュ ー トン の 冷 却 の 法 則 Q=hA(Tw−T∞)
上 式 の 比 例 定 数hを m−2K−1で
あ る.こ
熱 伝 達 係 数(heat
(3.16) transfer
coefficient)と
れ を 単 位 面 積 当 た りに 書 き換 え れ ば,熱
い い,単
位 はW
流 束 は 次 式 で表 され
る. q=h(Tw−T∞)
(3.17)
3.3.2 強 制 対 流 伝 熱 a. 平板 壁 を通 して の 伝 熱 壁 の 厚 さ方 向一 次 元 伝 導 伝 熱 を 考 え れ ば,式(3.3)に
加 え て,図3.9に
の 両 面 に 流 体 の境 界 層 が 存 在 す る と き,伝 熱 量 は 次 の よ うに 表 せ る. QA=h1A(T1−T2)
示す壁
図3.9
境 界 層(A,C)を
有 す る平 板 伝 熱
Qc=h2A(T3−T4) こ こ で,平
板 が 無 限 に 大 き け れ ばQA=QB=QCで
あ るか ら
(3.18) ここで
(3.19) と お く と,式(3.18)は
次 の よ う に か け る.
Q=UA(T1−T4)
Uは
(3.20)
総 括 熱 伝 達 係 数(overall
総 和 で あ る.す
と な り,全
な わ ち,そ
熱 抵 抗Rは
heat
transfer
coefficient)と
れ ぞ れ の 熱 抵 抗 をRA,RB,RCと
い い,局
所 熱抵抗 の
す れば
次 式 の よ う に な る.
b. 円 管 内 層 流 熱 伝 達 図3.10に
示 す よ うに,助
走 区 間 をす ぎ て 層 流 とな った 流 体 に 対 して 次 式 が 与
え られ て い る.
(3.21) 上 式 に よ り求 ま るhを とが で き る.
式(3.16)に
あ て は め る こ とに よ っ て伝 熱 量 を計 算 す る こ
図3.10
円管 に 流 入 す る流 体 の 流 れ の様 子 と速 度分 布
c. 円 管 内 乱 流 熱 伝 達 粘 度 が 大 き くな いふ つ うの 液 体 ・気 体 に 対 して 次 式 が 用 い られ る.
(3.22) こ こ で,添
字bは
流 体 平 均 温 度 に 対 す る 物 性 定 数,添
す る物 性 定 数,dは
字wは
管 内表面 温度 に対
管 内 径.
上 式 の 適 用 範 囲 はReb>104∼105,Prb=0.7∼120,L/d>60で 管 長Lが
管 内 径dの60倍
よ り 小 さ い と き は,求
あ る.こ
こ で,
め た 熱 伝 達 係 数hに1+(d/
L)0.7を 掛 け る こ と に よ っ て 補 正 す る こ と が で き る. 管 内 を 質 量 流 量mで る 場 合 に は,層
流,乱
流 れ る 流 体 の 入 口 と 出 口 で の 温 度TiとToが 流 と も に 次 式 で 熱 流 量 が 計 算 で き る.
Q=mcp(Ti−To)
d. 相
当
直
(3.23)
径
円管 内 強 制 対 流伝 熱 は,流 に,与
わか ってい
れ の 状 態 を調 べ る こ とか ら ス ター トす る.ま ず 最 初
え られ た 条件 に よ っ て 次 式 で 表 さ れ る レ イ ノル ズ数 を求 め る.Reに
よっ
て 層 流 か,乱 流 か が わ か る.
こ こ で,dは
円 管 の 内 径 で あ る が,図3.11の
す 相 当 直 径(hydraulic
diameter)を
よ う な 円 管 以 外 の 場 合 に は 次 に示
用 い て 近 似 で き る.
(3.24) こ こ で,Aは
管 路 の 断 面 積,Pは
管 路 の 周 囲 長 さ で あ る.
図3.11
円 管 以外 の 場合 の 相 当 直 径
e. そ の 他 の 円柱 外 表 面,球 表 面 の伝 熱 1) 円 柱 外 表 面 の 伝 熱
一様 な液 体 の 流 れ に 置か れ た 単 一 円 柱 外 の 伝 熱 に 対
して 次 式 が 用 い られ る.103>Re>10−1の
とき
(3.25) 5×104>Re>103の
とき
(3.26) こ こで,dは
円 管 外径,添
字fは
境 膜 温 度(管 表 面 と流体 本 体 温 度 との 算 術 平 均
値)に 対 す る物 性 値 を用 い る とい う意 味 で あ る. た だ し,円 柱 以外 の 形 状 の場 合 に は 式(3.24)の
相 当 直 径deに
よって円柱 に近
似 で き る. 2) 球 表 面 か らの 伝 熱
7×104>Re>1,400>Pr>0.6の
範 囲 で次 式 が 用 い
られ る. Nu=2.0+0.60Ref1/2Prf1/3
(3.27)
【 例 題3.3】 前 述 の 例 題3.1で,壁 hを10Wm−2K−1と
し た と き,そ
解. 例 題3.1と こ と で あ る.グ が で き,放
の 室 内 ・室 外 側 に 接 す る 空 気 の 熱 伝 達 係 数 れ ぞ れ の 放 熱 量 は ど う な る か.
違 う と こ ろ は,伝
導 伝 熱 と対 流 伝 熱 が 同 時 に 存 在 す る と い う
ラ ス ウ ー ル 断 熱 材 を用 い た 場 合 を例 に と る と 図 の よ うに 書 く こ と
熱 量 は 以 下 の よ う に 計 算 で き る.
(1) ベ ニ ヤ 板1枚 ま ず,式(3.19)に
だ け の と き は,式(3.19)と(3.20)が よ っ て 総 括 熱 伝 達 係 数 を求 め る と
そ の ま ま 適 用 で き る.
し た が っ てU=4.44W
m−2 K−1
部 屋 全 体 の 放 熱 量 は 式(3.20)に
よ り
Q=UA(ΔT) =(4
.44W
m−2
K−1)(48m2)(20℃
−5℃)
以 上 よ り 放 熱 量 は3.20×103W(3.20kW)と (2) 次 に,グ
な る.
ラ ス ウ ー ル で 断 熱 さ れ た 壁 の 場 合 も,式(3.19)の
多 少 複 雑 に な る だ け で,基
本 的 に 同 様 な 計 算 方 法 と な る.す
右 辺 第2項
が
な わ ち,式(3.19)
よ り
例 題3.1の
解 答 と 同 様 で あ る た め 途 中 を 省 略 し てU=0.667W
こ れ よ りQ=(0.667W
m−2 K−1)(48m2)(20℃
−5℃)と
な り,放
m−2 K−1と
な る.
熱 量 は480Wと
な る.
3.3.3 自 然 対 流 伝 熱 a. 垂 直 平 板 熱 伝 達 垂 直 平 板 ① 境 界 層 が 層 流 の 範 囲(109>(GrPr)f>104)
(3.28) ② 境 界 層 が 乱 流 の 範 囲(1012>(GrPr)f>109) Nuf=0.10(Gr・Pr)f1/3
(3.29)
こ こ で,Lは
平 板 の 高 さ を 用 い る.
b. 垂 直 円 管 外 面 ① あ ま り 細 く な い 場 合 に は 垂 直 平 板 の 式 を 適 用(Lは
パ イ プ の 長 さ)で き る.
② 細 い 針 金 の 場 合(10−2>GrPr>10−7) Nu=(Gr・Pr)0.1
(3.30)
c. 水 平 円 管 外 面 代 表 長 さLと
し て 円 管 の 直 径 を と る と(109>GrPr>104)
Nu=0.53(Gr・Pr)1/4
3.3.4
水 平 平 板(1辺
図3.12に
(3.31)
がLの
正 方 形)
示 し た 場 合 を 考 え る.矩
の 場 合 は0.9dと ① A面(低
す る.ど
形 の 場 合 は2辺
ち ら で も な い と き はL=A/Pと
(2×107>GrPr>105の
Nu=0.14(Gr・Pr)1/3
(3×1010>GrPr>2×107の
(3×1010>GrPr>3×105の
人 が 裸 の ま ま で20℃
円 柱 で,皮
お く こ と が で き る.
と き)
(3.32)
と き)
(3.33)
と き)
(3.34)
に 保 た れ た 無 風 の 室 内 に 立 っ て い る.人
か ら 自 然 対 流 で 失 わ れ る 熱 量 を 求 め よ.た cmの
形
温 平 板 の 上 側 ・高 温 平 板 の 下 側)
Nu=0.27(Gr・Pr)1/4 【 例 題3.4】
し,円
温 平 板 の 下 側 ・高 温 平 板 の 上 側)
Nu=0.54(Gr・Pr)1/4
② B面(低
の 算 術 平 均 をLと
膚 表 面 温 度 は30℃
だ し,人
体 は 高 さ170cm,直
体
径30
一 定 と 仮 定 す る.
解. 計 算 を 簡 単 に す る た め に,人 る.こ
体 の 凹 凸 は 無 視 し て,問
の 状 態 で の 自 然 対 流 伝 熱 を 計 算 す る た め に,以
図3.12
水 平 面 の 自然 対 流
い の よ うに 円 柱 と仮 定 す 下 の 手 順 に 従 っ て 進 め る.
(1) 表 面 を 流 れ る 空 気 の 状 態 が 層 流 で あ る か 乱 流 で あ る か を 調 べ る た め に, ま ず(Gr・Pr)を
求 め る.Tf=(293+303)/2=298Kで
あ るか ら
こ れ は 境 界 層 が 乱 流 で あ る こ と を あ ら わ し て お り,式(3.29)を
用 い る こ とが で
き る.
こ の 式 に 求 め ら れ て い る(Gr・Pr)の 2.45Wm−2K−1と
求 ま る.円
値 を 代 入 す る とNu=159と
筒 側 面 の 表 面 積 は1.60m2で
な り,h=
あ る か ら,式(3.16)
よ り Q=(2.45W
m−2K−1)(1.60m2)(30℃ =39
−20℃)
.2W
3.3.5 対 流 と伝 導 との 組 合 せ 一 般 に,伝
熱 面 積 を増 や し て効 果 的 な熱 交 換 を行 って い る ケー ス が 多 く見 られ
る.パ ソ コン に 使 わ れ て い るCPUや
パ ワー トラ ン ジ ス ター に は,多
数の フ ィン
の つ い た放 熱板 が 取 り付 け られ て い る.ま た,エ ア コ ン 内部 の熱 交 換 器,空 冷 式 バ イ クの エ ン ジ ン な ど,わ れ わ れ の 身 の ま わ りに もそ の 例 は少 な くな い. 高 温 伝 熱 面 に 取 り付 け られ た フ ィ ンは,そ
の 断 面積 に 比 例 した 熱 量 が 伝 導 伝 熱
に よ って 伝 え られ,表 面 積 に 比 例 した 熱 量 が 対 流 に よ って 放 熱 さ れ る.高 温側 か ら入 る熱 量 と低 温 側 に 出 る熱 量 との エ ネ ル ギー バ ラ ン ス を とれ ば 問 題 は解 決 す る が,そ
の 計 算 は簡 単 で は な い ため に,フ
ィ ン効 率(fin efficiency)が 定 義 さ れ て
い る. フ ィ ン 効 率 Ω=
図3.13に,円
(フ ィ ン に よ り実 際 に伝 達 され る全 熱 量)/ フ ィ ン の全 表 面 が そ の根 本 の 温 度 に 等 し い と仮 定 した と きの伝 達 され る熱 量 )
(
(3.35)
管 外 部 に 軸 に 直 角 に 取 り付 け られ た厚 さ一 定 の フ ィ ンに つ い て
計 算 され た フ ィ ン効 率 の 結 果 を示 す.熱 伝 達 率 が フ ィ ン の長 さ 方 向 に わ た っ て一
図3.13
フ ィ ン効率
(化 学 工 学 便 覧(改 訂6版),丸
善,pp.362,1999)
定 で あ る こ と(温 度 に よ っ て 変 わ ら な い こ と),お よ び放 射 に よ る伝 熱 を無 視 で き る と仮 定 した上 で,フ 算 され た放 熱 量 に,図
ィ ン全 面 積 に わ た っ て フ ィ ン根 本 の温 度 で あ る と して 計
よ り求 め た フ ィ ン効 率 を乗 じた 値 を,実 際 の 放 熱 量 と見 積
も る こ とが で き る.
3.4 放
射
伝
熱
放 射 伝 熱 とは,高 温 物 体 か ら低 温 物 体 へ 直 接 空 間 を通 した熱 エ ネ ル ギー の移 動 をい う.こ の放 射 エ ネ ル ギ ー を伝 播 す るの は電 磁 波 で あ り,太 陽光 が 宇 宙 の真 空 中 を通 っ て地 球 表 面 に到 達 す る現 象 か ら も想 像 で き る.到 達 した 電磁 波 は,物 体 の 表 面 に あ た って 吸 収 さ れ,結 果 と して 物 体 の 温 度 を上 げ る. 【 例 題3.5】 赤 外 線 ガ ス ス トー ブ に も っ と も暖 か くあ た るに は ど う した ら よ い か. 解. 正 面 に 座 る,ス
トー ブ に 近 づ く,ス
放 射 を受 けや す い服 装 の 色 を選 ぶ,な
トー ブ と の 間 に 障 害 物 を 入 れ な い,
どが考 え ら れ る.こ れ ら はす べ て3.4.4項
で 説 明 す る形 態係 数 の 値 を い か に 大 き くす るか の 工 夫 で あ る.
3.4.1 完 全 黒 体 と灰 色 体 わ れ わ れ の周 囲 に あ る黒 く見 え る物 体 も,理 想 的 な 黒 で は な い.こ
こ で い う完
図3.14
完全黒体の模式図
図3.15
実 在 個 体 の射 出能
全 黒体 とい うの は,放 射 伝 熱 の 基 本 とな る理 想 的 な 黒 色 体 で あ っ て,い か な る波 長 の 放 射 も,ど の 方 向 か ら入 射 す る放 射 も,す べ て 吸収 す る とい う完全 な 吸 収 体 で あ る.図3.14の
よ う な 内 部 を 黒 色 に 塗 っ た 箱 に 小 さ い 孔 が あ い て い る と き,
孔 か ら入 射 した 放 射 は 内部 で 反 射,減 衰 を繰 り返 す う ち,吸 収 さ れ て 二 度 と外 へ 出 て こ な い.こ れ は,人 工 的 に つ くら れ た 完 全 黒 体 に近 い もの と して,放 射 温度 計 の検 定 に も用 い ら れ る. 灰 色 体 も,理 想 的 な もの で あ り,放 射 率 や 反 射 率 が 波 長 に寄 らな い もの と仮 定 さ れ る.こ れ に 対 して,実 在 固体 表 面 は,そ よ っ て そ れ ぞ れ 違 う大 き さの 射 出 能 を もつ.こ
の 色 に よ って も異 な るが,波
長に
れ ら を ま とめ る と図3.15の
よう
に な る.
3.4.2 電 磁 波 の 波長 と放 射 黒 体 か ら の放 射 は 波 長 に よ り異 な る射 出 能 を持 ち,プ s distribution law)と
ラ ン クの 分 布 則(Plank'
して知 られ る.
(3.36) こ れ は,黒 る,波 温 度,λ
体 が あ る 温度Tに
あ る と き,そ
の 単 位 表 面 積 か ら単 位 時 間 に発 散 す
長 λ と λ+dλ の 間 の 熱 放 射 エ ネ ル ギ ー 量Eλdλ
を 表 し,Tは
は 波 長,C1は3.7415×10−16Wm2,C2は0.014388mKで
式(3.36)の
計 算 結 果 を 図 示 す る と 図3.16の
よ う に な る.太
黒体 の絶 対 あ る.
陽 光 で は,可
視光
図3.16
式(3.36)の
図 よ り,可 視 域 は わ ずか0.4∼0.7μmの
狭 い 範 囲 で あ る こ と,人
の 体 温 か ら発 す る波 長 は お よ そ9μmに (化学 工 学 便 覧(改 訂6版),丸
付 近 に あ っ た 射 出 能 の ピ ー ク が,温
間
ピー クが あ るこ とが わ か る.
善,pp.380,1999よ
り改 変)
度 が低 くな る に つ れ て 破 線 で示 され る よ うに
ピー ク が 長 波 長 側 に 移 行 す る こ と,射 に い え ば,温
計算 結果
出 能 が 桁 違 い に 低 下 す る こ と が わ か る.逆
度 が 上 が る と 色 合 が 赤 色 か ら,黄
色,白
色 へ と変 化 し,輝
き も強 く
な る. こ こ で,こ
の 破 線 で 示 し た 射 出 能 の 最 大 値 を と る 波 長 は 次 式 で 与 え ら れ,
ウ ィ ー ン の 変 位 則(Wien's
displacement
λmax T=2897.6μm 温 度Tの
呼 ば れ る.
K
(3.37)
黒 体 表 面 の 単 位 面 積 か ら発 散 す る 熱 放 射 エ ネ ル ギ ー の 全 量 は,図3.16
の 横 軸 と 曲 線 の 囲 む 面 積 に 相 当 し,ス mann)の
law)と
テ フ ァ ン-ボ ル ツ マ ン(Stefan-Boltz
式 と呼 ば れ る. E=σT4
こ こ で,σ
3.4.3
(3.38)
は ス テ フ ァ ン-ボ ル ツ マ ン 定 数 で5.669×10−8W
放
式(3.38)は
射
m−2K−4で
あ る.
率
理 想 的 な 黒 体 表 面 に 対 す る 式 で あ る が,実
在 固体 表面 におい て は
3.4.2項 で述 べ た よ うに灰 色 体 近 似 に よ り射 出 能 を補 正 す る必 要 が あ る.あ る物 質 の射 出 能 を,同 一 温 度 の 完 全 黒 体 の 射 出能 で 割 っ た 値 を放 射 率 ε と呼 び,次 式 の よ うに表 され る.
(3.39) 表3.1は
放 射 率 の例 を示 して お り,研 磨 され た ア ル ミニ ウ ム の よ うな光 沢 面 を も
つ 物 質 は εが 小 さ く,土 な どは値 が 大 き い こ とが わか る. 表3.1 種 々物 質 の放 射 率
3.4.4
固 体 表 面 の 形 状 と形 態 係 数
前 に 述 べ た よ う に,赤 置 す る こ と,体 た が,こ
外 線 ス トー ブ に 暖 か く あ た る に は,ス
を 正 面 に 向 け る こ と,な
トー ブ の 正 面 に 位
る べ く近 づ く こ と な ど の 工 夫 が あ げ ら れ
れ らは す べ て 形 態 係 数 の値 を大 き く しよ う とす る生 活 の 知 恵 に ほか な ら
な い. 図3.17に と,高
お い て,dAiとdAjは
温 側 平 面iか
ら 平 面jに
黒 体 の 平 面AiとAjに
あ る微 小 面 積 とす る
至 る 正 味 の エ ネ ル ギ ー は 次 式 で 与 え ら れ る.
Q=5.669×10−8(T4i−T4j)FijAi
(3.40)
図3.17
2つ の 平 面 間 の 放 射伝 熱
(化学 工 学 便 覧(改 訂6版),丸
善,pp.385,1999)
実 在 固体 の 放 射 伝 熱 量 を計 算 す る た め の 実 用 的 な式 と して 次 式 が提 案 され て い る.
(3.41) ここで
(3.42) 式(3.41)中 面 積,相
のFijは
形 態 係 数(shape
factor)と
互 の 位 置 関 係 に よ り決 定 さ れ,平
る エ ネ ル ギ ー の 割 合 を 示 す.平 よ く,相
面jか
面iか
ら 平 面iへ
呼 ば れ,2つ
到達 す
の 形 態 係 数 は そ の 逆 を考 え れ ば
反 則 と呼 ば れ る 次 の 関 係 が あ る. FijAi=FjiAj
n個
の 平 面 間 の 距 離,
ら の 放 射 の う ち 平 面jに
(3.43)
の 面 が 空 間 を 包 囲 し て い る 場 合 は,形
n)の 数 はn2だ
け 存 在 す る.い
ま 面1に
態 係 数 と し てFij(i,j=1,2,3,…,
着 目 す れ ば,面1か
ら発 散 し た 熱 放 射 線
は全 部 他 の 面 に到 達 す る か ら F11+F12+F13+…+F1n=1
(3.44)
一 般 形 で 書 く と総 和 則 と呼 ば れ る次 の式 とな る.
(3.45) この 式 の 積 分 は 多少 面倒 で あ る ため,工
学 的 に は通 常 用 い られ るい くつ か の位
置 関 係 に つ い て 計 算 され た 結 果 が チ ャー トと して 示 さ れ て い る(図3.18).こ チ ャー トの使 い 方 につ い て は 例 題3.6で
詳 し く述 べ る.
の
等 しく平行な2平 面の形態係数
直角な2平 面の形態係数 図3.18
【 例 題3.6】
形 態 係 数 を求 め るた め の チ ャー ト
赤 外 線 放 射 面 の 大 き さ が20×20cmの
れ て ス トー ブ と あ い 向 か う よ うに 人 が 両 手(20×20cm)を 熱 量 を 計 算 せ よ.た
だ し,ス
ス トー ブ が あ る.50cm離 か ざ した と きの放 射 伝
トー ブ の 放 射 面 と 手 の ひ ら の 温 度 が そ れ ぞ れ1000
K,300Kで,両
方 と も黒 体 で あ る も の と 仮 定 す る.
解. 20×20cmの
熱 源 か ら50cm離
の 「等 し く平 行 な2平 Nは
面 の 形 態 係 数 」に 相 当 し て い る.こ
題 意 よ り0.5m,一
のFを
曲 線2(正
(3.41)に
れ て20×20cmの
辺 の 長 さlは0.2mで
方 形 の 場 合)か
受 熱 面 が あ り,図3.18 こ で,2平
あ り,l/Nが0.4(横
ら 読 み 取 る と0.04と
な る.し
面 間 の距離 軸)の
と き
た が っ て,式
これ らの 関係 を代 入 す る と
す な わ ち,ス
トー ブ か ら 手 の ひ ら が 受 け 取 る 熱 量 は90Wと
の 形 状 に つ い て も 図3.18を
用 い る こ と に よ り,同
い う こ と に な る.他
様 に して 伝 熱 量 を計 算 す る こ
と が で き る.
地球 温 暖化 への二 酸化炭 素 の寄与
太 陽 熱 温 水 器 の 表 面 を 覆 う ガ ラ ス に は 特 殊 な コー テ ィ ン グが さ れ て い て,太 は 吸 収 しや す く,内 部 か ら放 射 さ れ る 遠 赤 外 線 は 反 射 す る.そ
陽熱
れ と 同 じ こ とが 二 酸
化 炭 素 の 性 質 に も あ る.図 の 左 の 曲 線 は 太 陽 か らの 放 射 で あ り,波 長 が 短 い た め に 遮 られ る こ とが 少 な い が,地 合 致 し て い る た め,結 め,green
house
球 か ら放 射 さ れ る右 の 曲 線 は 二 酸 化 炭 素 の 吸 収 波 長 と
果 と して ガ ラ ス で 覆 わ れ た 温 室 の よ う な効 果 と な る.そ
effectと 呼 ば れ る.
のた
3.5
3.5.1 沸
騰
伝
そ の 他 の 伝 熱
熱
日本 に お け る伝 熱 工 学 の 先 駆 者 で あ る抜 山 四 郎 が1934年 界 的 に有 名 で あ る.図3.19に の 細 線 を浸 す.そ
に発 表 した論 文 が 世
示 す 簡 単 な実 験 装 置 で,容 器 に水 を満 た し,白 金
の 細 線 に電 流 を流 して 発 熱 させ ,図3.20の
よ うな 沸 騰 曲 線 を
得 た.白 金 線 に 電 流 を 流 す と ジュ ー ル熱 で 白金 線 の 温 度 が 上 が り,白 金 線 表 面 が 伝 熱 面 と して の役 割 を な す ば か りで な く,そ の 抵 抗 を計 る こ とに よ っ て,白 金 線 の 温 度 が 同 時 に わ か る. 図3.20に
お い て,A-Bは
電 流 が小 さ く沸 騰 を伴 わ な い 自 然 対 流 に よ って 伝 熱
が 行 わ れ る(自 然 対 流 領 域).そ 発 生 し始 め,B-D間 (核 沸 騰 領 域).さ
れ よ り電 流 を大 き く して 熱 流 束 を増 す と気 泡 が
で は 白 金 線 表 面 上 に 点 在 す る核 か らの 気 泡 発 生 が 行 わ れ る ら に 電 流 を増 す と,気 泡 が 互 い に くっつ き蒸 気 膜 と な っ て 白金
線 表 面 を覆 う よ う に な る(D-F,遷
移 沸 騰 領 域).蒸
す る た め,白 金 線 の 温 度 が 急 に 上 昇 す る.Fよ 域 とな る.G点
図3.19
気 膜 に よ って 伝 熱 能 力 が低 下
り さ らに 熱 流 束 を増 す と膜 沸 騰 領
は 熱 負 荷 の 限 界 値 で あ り,加 熱 温 度 が そ の 物 質(こ こ で は 白金)
抜 山の実験装置
図3.20 実 線:熱
抜 山 に よ る 沸騰 曲 線
流 束,破
線:熱
(化学 工 学 便 覧(改 訂6版),丸
伝達係数
善,pp.366,1999)
の 融 点 以 上 に な る と焼 き切 れ る(バ ー ン ア ウ ト).熱 交 換 器 に お い てG値
に達 す
る と大 事 故 に な る ため 注 意 を要 す る.
3.5.2 凝
縮
伝
熱
自動 車 の フ ロ ン トガ ラス が,外 気 温 が 低 い と き に 曇 って 前 が 見 え な くな る こ と が あ る.こ れ は 室 内 の水 蒸 気 が 冷 た い ガ ラス 内 面 に凝 縮 す る た め で あ る.ガ ラ ス 表 面 に小 さ い水 滴 が 付 着 して,す
りガ ラ ス の よ うに不 透 明 に な る こ と を防 止 す る
ため,「 曇 り止 め 」な る もの が 販 売 され て い る. 曇 り止 め は種 を あ かせ ば 界 面 活 性 剤 で あ って,ガ
ラ ス に あ らか じめ 塗 布 して お
く と,親 水 基 を外 側 に 向 け た 状 態 とな っ て,凝 縮 す る水 蒸 気 を膜状 に 広 げ る役 割 をす る.決
して 曇 りが な くな る わ け で な く,水 の 層 が均 一 に で き るた め に 視 界が
保 た れ る こ とに よ る.同 様 な現 象 が 熱 交換 器 の 表 面 で も生 じて い る. 冷 却 さ れ た 伝 熱 面 上 に,蒸 気 が 凝 縮 した 液 体 が 無 数 の 液 滴 に な って 付 着,成 長,流
下 す る状 態 を滴 状 凝 縮 とい い,高 い 熱伝 達 係 数 を もつ.そ
れ よ りさ ち に温
度 差 を増 す と,液 滴 が 互 い に合 体 して膜 状 とな る.こ の 状 態 を膜 状 凝 縮 とい い, 伝 熱 面 が 液 体 膜 で 覆 わ れ る よ うに な る と熱伝 達 係 数 は 下 が り,滴 状 凝 縮 熱 伝 達 係 数 の お よ そ1/10と
な る.
滴 状 凝 縮 は 熱 伝 達 係 数 を大 き く とれ るた め 有 利 で あ るが,伝
熱面の性質 によっ
て左 右 され る.伝 熱 面 が 油 脂 や 表 面 活性 物 質 な どに よ って 被 覆 され て い て,液 体 が 濡 れ に くい と き に滴 状 凝 縮 が 生 ず るが,こ の 状 態 を長 時 間保 つ の は難 しい.そ の た め,伝 熱 面 に 撥 水 性 の 膜 を コー テ ィ ン グ した り,添 加 物 を加 え る な どの工 夫 が な され て い る.
3.6 熱
100℃ の 汚 れ た 水1lと10℃
交
換
の きれ い な 水1lが
器
あ る.こ れ らか ら100℃
のき
れ い な 水 を得 る に は ど うす れ ば よい だ ろ うか. 両 者 を 混 ぜ る と55℃ の 汚 れ た水 とな る.と こ ろが,理 こ と を仮 定 す る と,図3.21の り実 現 す る.
想的 な熱交 換器が あ る
よ うに 熱 交 換 装 置 に 向 流 で 両 液 体 を 流 す こ とに よ
図3.21
3.6.1 総 括 熱 伝 達 係 数Uの 前 述3.3.2a項
定義
の よ うに,隔 壁 を通 して熱 が移 動 す る と き,壁 の 伝 導 伝 熱 は も
ち ろ ん で あ るが,そ る.す
理想 的な熱交換装置
れ に接 す る部 分 の 流 体 に よ る対 流 伝 熱 も考 慮 す る必 要 が あ
な わ ち次 式 のUを
決 め る こ とが で きれ ば 熱 移 動 量 が 求 ま る.
q=U⊿T Uの 逆 数Rは れ,壁
(3.20)
熱 抵 抗 で あ り,高 温 流 体 と低 温 流 体 の 境 界 層,壁
表面 につ いた汚
の 材 料 に よ る熱 抵 抗 をす べ て合 わせ た もの とな る.
3.6.2 熱 交換 器 の 種 類 熱 交換 器 は大 き く換 熱 型 と蓄 熱 型 と に分 け られ る.換 熱 型 は両 流体 を 固体 壁 に よ り隔 て て 熱 交 換 を行 う もの で,蓄 熱 型 は蓄 熱 固体 に 蓄 え られ た熱 を,流 体 の 流 れ を 交互 に 切 り替 え る こ とに よ っ て 熱 交 換 を させ る. 図3.22に
換 熱 型 熱 交 換 器 の 例 を示 して い る.蓄 熱 型 とは 違 い,両 流 体 が 混 合
す るお そ れ が な い と い う利 点 を 有 して お り,工 業 的 に 広 く用 い ら れ て い る.図 中,上 段 に流 体 の 流 れ を,下 段 に 温 度 変 化 を 図 示 して お り,Tc,Thは 低 温 側,高
温 側 流 体 の温 度,添
字iとoは
それ ぞれ
入 口 と出 口 を表 す.
3.6.3 対 数 平 均 温度 差 図3.22か
らわ か る よ うに,流 体 の 温 度 変 化 は 直 線 的 で は な い た め,入
口 と出
口の 平 均 温 度 差 は 単 純 な 算 術 平 均 値 を用 い る と大 き な誤 差 を生 ず る場 合 が あ る. そ こ で,通
常 は 対 数 平 均 温 度 差(logarithmic
⊿T1mが 用 い られ る.
mean
temperature
difference)
(a)並 流
(c)十 字 流 れ
(b)向 流 図3.22
換熱型熱交換器
(3.46) 【 例 題3.7】 自動 車 の ラ ジ エー タは もっ と も身 近 で最 適 化 さ れ た熱 交 換 器 と考 え られ る.ラ ジ エ ー タ の構 造 と働 き を熱 工 学 的 に 考 察 しな さい. 解. 自動 車 の ラ ジ エ ー タ は,冷 却 水 が 上 か ら下 へ,冷 に 当 た る た め,図3.22中
の 「十 字 流 れ 」に相 当 す る.エ
熱 に よ り暖 め られ た 冷 却 水 が,ラ
ジエ ー タ内 を通 過 す る間 に,空 気 の流 れ に よ り
冷 却 され る.熱 交 換 器 の材 料 と し て は,安 価,軽 ミニ ウム(約200W
却用 空気が それ に直角 ン ジ ンか ら発 生 す る燃 焼
量 で比 較 的 熱伝 導 率 の 高 い ア ル
m−1K−1)が 広 く使 わ れ て い る.
(1) 冷 却 水 の働 き a. 伝 熱 媒 体 と して,エ
チ レ ン グ リ コー ル 水 溶 液 に,防 錆 剤 等 の 添 加 剤 を加 え
て い る.こ れ に よ り凍 結 温 度 を下 げ,長 期 間 の 使 用 を可 能 に す る. b. 伝 熱 媒 体 の循 環 は ポ ンプ に よ っ て い るが,エ
ン ジ ン を必 要 以 上 に 冷 却 し過
ぎな い よ うに,サ ー モ ス タ ッ トに よ っ て ラ ジエ ー タへ 流 入 す る伝 熱 媒 体 の 流 量 を 制 御 して い る. (2) 冷 却 用 空 気 の 働 き a. 強 制 的 に冷 却 用 空 気 を供 給 す る た め に,フ
ァ ン が 取 り付 け られ,エ
ン ジン
回転 に よ りベ ル トで 駆 動 され て 回 る.最 近 で は,動 力 エ ネ ル ギ ー の 損 失 を少 な く す るた め に,電 動 フ ァ ンに よ り冷 却 が 必 要 な と きだ け 回転 す る場 合 も あ る.
b. 冷 却 用 フ ィ ン が 高 密 度 に 配 置 さ れ て お り,小 容 量 で大 量 の 熱 交 換 が 可 能 と な っ て い る. エ ン ジ ニ ア リ ン グ セ ン ス を発 揮 し よ う
図 の よ う な 熱 交 換 器 が あ る.左 側 の 空 気(自 然 対 流)と 右 側 の 水(強 制 対 流)が 厚 さ5mmの
銅 板 に よ っ て仕 切 られ て い る と き を考 え る.放 射 に よ る伝 熱 と壁 表 面 の
汚 れ を 無 視 す れ ば,式(3.19)よ
こ こ で,章 のh2は Kで
り
末 の 表3.A.3よ
り空 気 のh1は
強 制 対 流 と す る と100∼15000W
あ る.こ
れ ら を 式(3.19)に
で き る か ら,第1項
自 然 対 流 の 場 合5∼25W
m−2 K−1で,銅
代 入 し た とす る と,右 辺 の 第2項
だ け を考 え れ ば よ い こ と に な る.す
m−2 K−1,水
板 のk/Lは37200W
m−2
と 第3項
な わ ち,空
は無視
気側 の みの熱 抵
抗 を 評 価 す れ ば 十 分 な 精 度 で 熱 移 動 量 を計 算 で き る こ とが わ か る.
3.7 温 度 測 定 方 法
こ こ で は,代
表 的 な温 度 測 定 方 法 に つ い て 説 明 す る.た だ し,●,○,△,×
は そ れ ぞ れ 優,良,可,不
可 を定 性 的 に示 す.
① 熱 電 対[精 度 ○,応
答 速 度 ●,測
を除 き安 価),使
定 範 囲(高 温 ○,低
温 ○),価 格(白 金
い易 さ ●,デ ー タ 出 力 ●]
2種 の 金 属 を接 触 させ,温
度 差 を 与 え る とゼ ー ベ ッ ク(Zeebeck)効
果 に よ って
熱 起 電 力 を生 ず る.熱 起 電 力 は2つ の 金 属 の組 合 せ に よ って 異 な り,通 常 よ く使 わ れ る組 合 せ と して は,ク ロ メ ル-ア ル メル(CA),鉄-コ 金-白 金 ロ ジ ウ ム(PR)な で き るが,応
ン ス タ ン タ ン(IC),白
どが あ る.金 属 線 の 直 径 が 太 い と高 温 に 耐 え る こ とが
答 速 度 が遅 くな る.直 径 が1mm程
度 の 場 合,使
用 最 高 温 度 はCA
図3.23
で は800℃,ICで
熱 電 対 の 使 用 方 法(CA線
は500℃,PRで
は1500℃
の例)
程 度 と され て い る.PRな
どの 高 価
な 金 属 を用 い る と きは,長 距 離 に わ た っ て 高価 な 金 属 線 を使 って 計 器 まで つ な げ る代 わ りに,使 用 す る熱 電 対 と同様 な熱 起 電 力 を もつ 補 償 導 線 とい う安 価 な 金 属 線 を用 い る.熱 電 対 は そ の 原理 か ら もわ か る よ うに,2ヶ の に 適 して お り,電 圧 出 力 が 得 られ る ため,自 て,氷
所 の 温 度 差 を測 定 す る
動 記 録 に も適 す る.基 準 接 点 と し
を用 い る こ と もあ るが,工 業 的 に は そ れ に 相 当す る電圧 を印 加 す る こ と に
よ って 冷 接 点 と して い る場 合 が 多 い.通 常,図3.23の
よ う な接 続 方 法 を と る.
な お,各 種 金 属 の組 合 せ に よ る熱 起 電 力 につ い て は 文 献 を参 照 の こ と. ② 抵 抗 温 度 計[精 度 ● ・△,応 格(白 金 を 除 き安 価),使
答 速 度 △,測
定 範 囲(高 温 △,低
温 ○),価
い易 さ ●,デ ー タ出 力 ●]
電 気 抵 抗 が 温 度 に よ って 変 化 す る性 質 を利 用 す る.精 度 の 高 い 測 定 に は 白金 線 を,ま
た,温
度 に よ る 抵 抗 変 化 の 大 き な サ ー ミス タ も広 く使 わ れ る.基 本 的 に
は,抵 抗 体 に微 弱 電 流 を流 して,そ
の 電 流 変 化 か ら温 度 を知 る.サ ー ミス タは小
さ くで き るた め,応 答 速 度 も良 いが,抵
抗 測 定 電 流 に よ る 自己発 熱 に 注 意 す る必
要 が あ る. ③ 放 射 式 温 度 計[精 度 ○,応 答 速 度 ●,測 定 範 囲(高 温 ●,低 (高 価),使
い易 さ ●,デ
温 ○),価 格
ー タ 出力 ●]
基 本 的 に大 き く2つ に分 け られ る.1つ
は2色 式 放 射 温 度 計 で,も
外 線 放 射 温 度 計 で あ る.前 者 は,赤 外 部 の2つ
う1つ は赤
の波 長 に お け る放 射 強 度 を 同時 に
測 定 し,そ れ らの 比 に よっ て 温 度 を決 定 す る.ガ ス に よ る放 射 な どに 注 意 して波 長 を選 べ ば,物 体 の 放 射 率 に か か わ らず,正 確 な値 が 得 られ る. 赤 外 線 放 射 温 度 計 は,図3.16で る現 象 に よ り温 度 を知 る方 法 で,広
示 し た よ う に,温 度 に よ って 放 射 強 度 が 変 わ い温 度 範 囲 で 測 定 が 可 能 で あ る.反 射 型 天 体
望 遠 鏡 に 似 た構 造 の光 学 系 で 赤 外 線 を集 光 し,焦 点 に 置 い た受 光 器 で検 出 す る. そ の た め,遠
くの位 置 か ら小 さい 範 囲 の表 面 温 度 の 測 定 が 可 能 で あ る.い ち ば ん
の 問 題 点 は,測 定 対 象 物 体 の放 射 率 を事 前 に知 らな くて は な らな い 点 に あ る. ④ そ の他,光
フ ァ イバ ー 温 度 計,示 温 塗 料 な ど
a 光 フ ァ イ バ ー 温 度 計[精 度 ○,応 ○),価 格(高 価),使
い易 さ ○,デ
答 速 度 ●,測
定 範 囲(高 温 ○,低
温
ー タ出 力 ●]
光 フ ァ イ バ ー 先 端 に 取 り付 け た半 導体 結 晶 の,温 度 に よ る光 の 吸 収 率 の変 化 を 利 用 して い る.ま だ 高 価 で あ り,セ ンサ ー 部 分 の寿 命 も短 い が,金 属 導 線 を用 い な い ため に,高 速 電 子 の 飛 び交 うプ ラズ マ 中や,電
子 レ ン ジ な ど,電 気 的 に影 響
を受 け や す い 場 で の 温 度 測 定 に適 して い る. b 液 体 封 入 ガ ラ ス 温 度 計[精 度 ○,応 答 速 度 ○,測 ○),価 格(安 価),使
い易 さ ●,デ
定 範 囲(高 温 △,低 温
ー タ出 力 ×]
一 般 に水 銀 や ア ル コー ル を ガ ラ ス 管 内 に 封 入 した もの が 使 わ れ,最
も一 般 的 で
あ り,精 度 も悪 くな い が,電 気 的 な 出 力 は 得 られ な い こ と,衝 撃 に 弱 い こ とな ど の 欠 点 が あ る. c バ イ メ タ ル 温 度 計[精 度 ○,応 価 格(安 価),使
い 易 さ ●,デ
答 速 度 △,測 定 範 囲(高 温 △,低
ー タ 出力 ×]
2枚 の 熱 膨 張 率 の 違 う金 属 板 を張 り合 わせ,1端 に 伴 う動 きに よ っ て ギ ア を 回転 させ,指 て 温 度 計 や,電
温 ○),
を 固定 し た もの で,温 度 変 化
針 を 回 して 温 度 を指 示 す る.家 庭 用 と し
気 ご た つ な ど に使 わ れ て い る.
d 示 温 塗 料[精 度 ×,応 答 速 度 ○,測
定 範 囲(高 温 △,低
温 △),価 格(安
価),使 い 易 さ ●,デ ー タ出 力 ×] ク レ ヨン状,あ
る い は ペ イ ン ト状 の 塗 料 で,温 度 の変 化 に 応 じて 色 が 変 わ る.
色 の 変 化 は不 可 逆 的 と可 逆 的 とあ り,前 者 は い っ た ん 変 わ っ た 色 は 消 え な い ため 温 度 の 上 昇 の と き に用 い られ,後
者 で は 温 度 が 変 わ れ ば 発 色 も変 わ る.塗 料 の成
分 に よ っ て変 色 温 度 が 異 な る た め,目 的 に 応 じて使 い 分 け る.精 度 の 点 で は期 待 で き な いが,簡
3 章
補
便 ・安 価 な ため,機 械 装 置 の 加 熱 監 視 な ど に適 して い る.
遺
(a) 記 号 と単位 本 章 で使 用 す る記 号 お よ び無 次 元数 を ま とめ る と次 の よ うに な る.
表3.A.1
*1) d
e=4A/P(Pは
1.163W
m−1
British
thermal
摂 氏 温 度,Kは
管 路 の 周 囲 長 さ,3.3.2d項
K−1.*4) unit).*6)
q=Q/A.*5)
記 号 と単 位
参 照).*2)
Q=qA,1
E=ε
σT4.*3)
kcal=4.182kJ,1
Btu=1055
F=9/5C+32,C=5/9(F−32),K=C+273
絶 対 温 度).*7)
1/U=1/h1+L/k+1/h2.*8)
水1.47×10−7,銅1×10−4.*9) υ=μ/ρ.*10)
5.669×10−8W
.15 α=k/cpρ,例 m−2 K−4.
1 kcal
m−1 h−1℃ −1=
J=252 (Fは え ば,空
cal(Btu:
華 氏 温 度,Cは 気2.19×10−5,
表3.A.2
(b) kとhの
無次元数一覧
数値例
参 考 の た め に 種 々物 質 の 熱 伝 導 率 の 値 を図3.A.1と
図3.A.2に,よ
れ る物 質 の 物 理 的 性 質 お よび 熱 伝 達 係 数 を表3.A.3示
す.こ
く用 い ら
れ ら は伝 熱 計 算 の
際 に,計 算 の 経 過 お よび そ の 結 果 が常 識 範 囲 に あ るか ど うか を確 か め る ため の 目 安 で あ る.
表3.A.3
物 質 の性 質 と熱伝 達 係 数 の 概 略 値
図3.A.1
図3.A.2
種 々保温材の熱伝導率
種 々 物 質 の 熱 伝 導 率(化 学 工 学 便 覧(改 訂6版),丸
善,1999よ
り改 変)
【演 習 問 題 】 3.1 50cm角
で 高 さ が1mの
氷 柱 が40℃
の 室 内 に お い て あ る.扇
に 自然 対 流 伝 熱 の み の と き,次 の 問 に 答 え よ.た
風機 な どは用 いず
だ し,氷 柱 の 大 き さ は 不 変 で あ
り,氷 の 密 度 は 水 と 同 じ で,氷 柱 の 上 面 と下 面 は 断 熱 され て い る と仮 定 す る.
① 問 題 を温 度 変 化 の 線 図 と と もに 図 示 せ よ.
② 氷 柱 表 面 で の 熱 伝 達 係 数 を求 め よ.
③ 1時 間 当 た りに 融 け る氷 の 重 量 を求 め よ.
3.2 空 気23kg cmに
h−1が20℃(T1)で
内 径2.5cmの
わ た っ て 蒸 気 ジ ャ ケ ッ ト を設 け,99℃
後 の 空 気 の 平 均 温 度(T2)は な お,管
管 内 を 流 れ て い る.も
し,管
長100
に 保 た れ る と き,加 熱 部 分 を通 っ た
い く ら に な る か.下
記 の 手 順 に した が っ て解 答 せ よ.
内壁 と空 気 との 平 均 温 度 差 と し て 算 術 平 均 値 を 用 い て 良 い.
① レ イ ノル ズ 数 と ヌ ッセ ル ト数 を求 め よ.
② 管 内 ガ ス側 熱 伝 達 係 数 を求 め よ.
③ 加 熱 部 分 出 口 に お け る空 気 の 平 均 温 度 を 求 め よ.
④ 空 気 の か わ りに水 を 同 一 流 量 で 流 し 出 口 温 度 を 求 め る と き,空 気 の 場 合 と 大 き く異 な る点 に つ い て 記 述 せ よ.
3.3 幅1m,高
さ50cm,厚
さ5cmの
ラ ジ エ ー タ表 面 が93.0℃
温 水 循 環 式 ラ ジエ ー タ で 室 内 を 暖 房 し て い る.
に 保 た れ,室
位 時 間 に 放 出 さ れ る 熱 量 を 求 め よ.た
内 空 気 が16.0℃
の と き,ラ
ジ エ ー タか ら単
だ し放 射 の 効 果 は 無 視 し,ラ
ジエー タ端 面
は 断 熱 さ れ て い る もの とす る. 3.4 断 面 内 側 の 寸 法 が3cm×2cmの れ て い る.パ
四 角 い パ イ プ 内 を10℃
イ プ 内 壁 の 温 度 が50℃
の 水 が2000kg
h−1で 流
の と きの 熱 伝 達 係 数 を 次 の 手 順 に し た が っ
て 求 め よ.
① 水 の 平 均 流 速 を求 め よ.
② パ イ プ の 相 当 直 径 を求 め よ.
③ レ イ ノ ル ズ数 を求 め,流
④ プ ラ ン トル 数 と ヌ ッセ ル ト数 を求 め よ.
⑤ 熱 伝 達 係 数 を 求 め よ.
3.5 内 径200mm,肉
厚10mmの
温 度 が10℃,管 る と き,長
れ の 状 態 を規 定 せ よ.
鋳 鉄 管 内 を450℃
内 面 の 熱 伝 達 係 数 が47W
さ1m当
m−1 K−1と し,パ
の 燃 焼 ガ ス が 流 れ て い る .外 界 の
m−2 K−1,管
た り の 伝 熱 量 を 求 め よ.た
外 面 で5W
だ し,鋳
m−2 K−1と す
鉄 の 熱 伝 導 度 を60W
イプ の 肉厚 が 直 径 に 比 べ て 薄 い た め に平 面 と仮 定 し て よ い(対 数
平 均 を使 わ な くて よ い). 3.6 内 径2.5cmの
管 内 を 空 気 が20kg
数 を 求 め よ.ま
た,空
h−1で 流 れ て い る と きの 管 内 ガ ス 側 の 熱 伝 達 係
気 の代 わ りに 水 を 同 じ速 さ[m
達 係 数 は 何 倍 に な るか.下
① 空 気 の 流 速 を求 め よ.
② 空 気 のReを
求 め よ.
③ 空 気 のNuを
求 め よ.
④ 空 気 側 の 熱 伝 達 係 数 を 求 め よ.
⑤ 水 のReを
求 め よ.
s−1]で 流 し た 場 合 に,熱
記 の 手 順 に従 っ て 解 答 せ よ.
伝
⑥ 水 のNuを
求 め よ.
⑦ 水 の 場 合 の 熱 伝 達 係 数 を求 め よ.
⑧ 両 者 の 比 を 求 め よ.
3.7 次 の 温 度 を は か る 際 に 適 し た 方 法 を 下 の 例 よ り選 ん で
に 書 き入 れ,そ
の
理 由 を 記 せ.
〈 熱 電 対 温 度 計,抵
抗 温 度 計,放
射 温 度 計,ガ
ラ ス 管 温 度 計,示
ス フ ァ イバ ー 温 度 計 〉
① 体 温 の 変 化 を記 録 計 に 記 録 した い と き:
② 人 体 の 皮 膚 表 面 温度 を知 りた い と き:
③ 24時 間 に わ た っ て 室 内 と室 外 の 温 度 差 を 記 録 し た い と き:
理 由:
理 由:
理 由:
④ 電 子 レ ン ジ の 内 部 温 度 を知 り た い と き: 理 由:
⑤ 燃 焼 炉 の 火 炎 温 度 を知 りた い と き: 理 由:
温 塗 料,ガ
ラ
4 物
質
分
離
物 質 の分 離 ・濃 縮 ・精 製行 程 は化 学 産 業 に 限 らず,食 品,医 薬 品,電 子 産 業 な ど 多 くの分 野 で 用 い られ,分 離 ・濃 縮 ・ 精 製行 程 の な い製 造 プ ロセ ス は な い とい っ て も過 言 で な い.ま
た分 離 ・精 製 技 術 は 環 境 保 全 や 新 材 料 開 発 な どで も重 要 な役
割 を担 っ て い る.プ ロ セ ス に 最 適 な分 離精 製 法 を導 入 す るに は 種 々 の分 離 精 製 法 を知 らね ば な ら な い が,本
章 で は代 表 的 な 分 離 法 で あ る,「 蒸 留 」,「ガ ス 吸 収 」
お よ び 「膜 分 離 」につ い て 説 明 し,分 離 装 置 の 原理 や 基 本 的 な設 計 法 な ど を 学 ぶ.
4.1 分 離 技 術 序 論
4.1.1 分 離 の 原 理 と分 離 技 術 分 離 は 原 理 的 に は 物 質 の性 質(物 性)の 「差 」を利 用 す る もの で あ る.そ れ に は 異 な る相 の 平 衡 状 態 に 存 在 す る分 子 の差 を利 用 す る平 衡 分 離 と,各 分 子 が もつ 運 動 や 移 動 の 速 度 の差 を利 用 す る速 度 差 分 離 が あ る.例 えば 平 衡 分 離 法 で あ る 「蒸 留 」は 溶液 の 各 成 分 の蒸 気 圧 の差 を利 用 して,揮 発 性 成 分 を気 相 で濃 縮 分 離 す る こ とが で き る.ま た速 度 差 分 離 法 の 一 例 と して,気 体 分 子 の平 均 速 度 は分 子 量 の 平 方 根 に 反 比 例 す るの で,微 細 孔 膜 を使 う こ とで 分 子 量 に差 の あ る分 子 か ら な る 混 合 物 を分 離 す る こ とが 可 能 で あ る.平 衡 分 離 法 に よ る代 表 的 な分 離 技 術 を4.2 節 に,ま た 速 度 差 に よ る代 表 的 な 分 離 技 術 を そ の 推 進 力 と と もに 表4.1に
示 す.
平 衡 分 離 法 で は混 合 物 の 相 と分 離 され る相 が 異 な るの に対 し,速 度 差 分 離 法 で は 基 本 的 に は それ ら が 同 じ相 で分 離 され,潜
熱 変 化 を伴 わ な い.そ の 代 表 的 分 離 法
で あ る膜分 離 技 術 が省 エ ネ ル ギ ー 分 離 プ ロ セ ス と い われ る ゆ え ん で あ る. 混 合 は 自発 過 程 で あ るの で 時 間 さ え気 に しな け れ ば,放
っておけば均一 に なる
が,分 離 す る ため に は エ ネ ル ギー も し くは分 離 剤 が 必 要 で あ る.例
え ば気 液 平衡
表4.1 代 表 的 な 速 度 差 分 離 技 術
RO;逆
浸 透(reverse
tion),
PV;パ
osmosis),
ーベ
mass-separating
ー パ
UF;限
外
ろ 過(ultra-filtration),MF;精
レ ー シ ョ ン(pervaporation),
ESA;
密
ろ 過(micro-filtra
energy-separating
agent,
MSA;
agent.
分 離 の 「蒸 留 」は 溶 液 を蒸 気 に し,ま た液 に 戻 す た め の潜 熱 が 必 要 で あ るが,同 じ気 液 平 衡 分 離 の 「吸 収 」は 分 離 剤 で あ る 吸 収 剤 の 水 を使 う こ とで 分 離 が で き, 分 離 だ け を見 る とエ ネ ル ギー を必 要 と し な い.た ギ ー を 要 す る.エ agent),ま
ネ ル ギ ー を 必 要 と す る 分 離 をESA
た 分 離 剤 を必 要 とす る分 離 をMSA
こ とが あ る(表4.1参
だ し分 離 剤 の 再 生 に は エ ネ ル (energy-separating
(mass-separating
agent)と い う
照).
4.1.2 分 離 装 置 と分 離 係 数 連 続 分 離 装 置(単 位 分 離 器)の 物 質 の 流 れ を 図4.1に に は最 小 限1つ
の 入 力 流 れFと2つ
の 出 力 流 れEとSが
力 流 れ は 装 置 内 で互 い に接 触 し なが ら,1つ れSと
示 す.定
は 濃縮 流 れEと
常連 続分 離装 置
必 要 で あ る.2つ
の出
な り,他 方 は 回 収 流
な っ て 装 置 か ら 出 る.そ の 接 触 の 仕 方 に は,充 て ん 層 の よ う に塔 内 を連
続 的 に 接 触 す る微 分 接 触 法(図4.11参 型 接 触 法(図4.6参 (co-current)接
照)と,棚
段 の よ う な 間 欠 的 に 接 触 す る段
照)が あ る.濃 縮 流 れ と回収 流 れ が 同 じ方 向 で 接 触 す る並 流
触 と 向 か い合 っ て 接 触 す る 向 流(counter-current)接
分 離 の よ うな十 字 流 れ(cross-flow)が
触お よび膜
あ る.
分 離 装 置 は質 的 評 価 で あ る分 離 係 数 と量 的 評 価 で あ る処 理 速 度 で 評 価 され る.
図4.1
単 位 分 離 器 と分 離 係 数
混 合 物 の 各 成 分 は 分 離 器 の相 や 膜 な どの 分 離 媒 体 に よ り α相 と β相 に 分 配 され, 成 分Aは
α相 と β相 に そ れ ぞれ 濃 度xA(モ
も 同様 にxBとyBに
ル 分 率)とyA(モ
分 配 され た とす れ ば,A,B各
ル 分 率)に,成
成 分 の 分 配 係 数Kは
分B 次式で
定 義 さ れ る.
(4.1) またBに
対 す るAの
分 離 係数 αABは 次 式 で定 義 され る.
(4.2) 分 離 係 数 は種 々 の 分 離 操 作 に お い て それ ぞ れ 異 な る呼 称 で 呼 ば れ るが,分 離 の し や す さ を 表 す.例
え ば蒸 留 の 場 合,αABを 相 対 揮 発 度 あ る い は 比 揮 発 度 と い い,
蒸 留 に よ る分 離 の しや す さ を表 す. 考 察1:向
流 接 触,並
【 例 題1】A,B2成 れ,濃 縮 流 れEか
流 接 触 お よ び 十 字 流 れ を 図 示 せ よ. 分 か ら な る 混合 物 が 図4.1に
らA,B成
量 で ま た 回収 流 れSか
示 す よ う な 分 離 器 に供 給 さ
分 が そ れ ぞ れEA=8mols−1,EB=2mols−1の
ら そ れ ぞ れSA=7mols−1,SB=13mols−1の
出 さ れ る分 離 器 が あ る.こ の 分 離 器 に供 給 され る 原 料 の 流 量Fと
流 流 量 で取 り
そ のAの
濃度
zA,濃
縮 流 れ お よ び 回 収 流 れ のAの
離 器 の分 離 係 数 解.
αABは
濃 度(yお
よ びx)は
い く ら か.ま
た この 分
い く ら か.
F=(8+2)+(7+13)=30mols−1,
8/(8+2)=80A−mol%,
zF=(8+7)/(30)=50A−mol%,
x=7/(7+13)=35A−mol%,
y=
αAB={(0.8)/(0.35)}/
{(0.2)/(0.65)}=7.43[―].
4.1.3
分 離 に要 す るエ ネ ル ギ ー
「分 離 」 と 「混 合 」は 逆 の 現 象 で あ る の で,分
離 に要 す る最 小 エ ネ ル ギー を見 積
も る に は 混 合 の 可 逆 過 程 を 考 え れ ば よ い.等 混 合 を 考 え る.A,B2種
後 の,ギ
全 モ ル 数 をn(=nA+nB)と
大 仕 事We,maxと
な る.混
分 は それぞ
合 前 と完 全 に 混 合 し た い い,そ
の ⊿Gmixは
(≦0)
そ れ ぞ れ 混 合 物 の 成 分A,Bの ⊿Gmixは
の容 器
式 で 与 え ら れ る.
⊿Gmix=nRT(xAlnxA+xBlnxB)
過 程 で あ る 混 合(拡 散)の
ル 入 っ た2個
数 の 差 は 混 合 ギ ブ ス 関 数 ⊿Gmixと す れ ば,次
の 純 成 分A,Bの
の コ ッ ク を 開 く と,A,B2成
分 時 間 が 経 つ と均 一 な 混 合 物Mに
ブ ス(Gibbs)関
こ こ でxA,xBは
圧p系
類 の 完 全 気 体 が そ れ ぞ れnA,nBモ
が コ ッ ク を 介 し て 接 続 さ れ て い る.こ れ 拡 散 し,十
温T,等
(4.3)
モ ル 分 率 で あ る.上
負 で あ る が こ と が わ か る.ま
ギ ブ ス 関 数 の 変 化 量 ⊿Gと
の 関 係 はT,p一
式 か ら 自発
た膨張 以外 の最
定 の と き,次
式で与
え ら れ る. We,max=− し た が っ て,混
⊿G
合 物Mか
(4.4) ら純 成 分A,Bに
は 混 合 に よ っ て 減 っ た ⊿Gmixだ
分 離 す る に 必 要 な 最 小 理 論 仕 事Wmin
け の エ ネ ル ギ ー が 必 要 に な る.す
なわち
Wmin=−nRT(xAlnxA+xBlnxB)>0
(4.5)
実 際 の 分 離 操 作 で 消 費 さ れ る エ ネ ル ギ ー は 理 論 仕 事 よ り か な り大 き い の で,工 的 生 産 プ ロ セ ス に お い て 分 離 の 効 率 化 を は か る に は,所 離 度 の 大 き い 分 離 操 作 を 選 択 す る 必 要 が あ る.し る 仕 事 は 一 般 的 に はlnxの い ほ ど,分
品 の コ ス トに 影 響 し,そ 4.2に
的成分 の原料 濃 度が低
離 に要 す るエ ネ ル ギー は 直接 製
の コ ス トが 総 製 品 コ ス ト を 支 配 す る ケ ー ス も あ る.図
製 品 コ ス ト と 原 料 濃 度 の 関 係 を 示 す.原
指 数 的 に 増 加 す る.
要 エ ネ ル ギー 当 た りの分
か し純 粋 製 品 を 得 る た め に 要 す
マ イ ナ ス に 比 例 す る か ら,目
離 に 必 要 な 最 小 仕 事 は 大 き く な る.分
業
料 濃 度 が 薄 く な れ ば,製
品価格 は
図4.2
考 察2:⊿Gmixが 考 察3:膨
製 品 コ ス ト と原料 濃 度 の 関係(文 献5を
式(4.3)で
表 さ れ る こ と を 示 せ.
張 以 外 の 最 大 仕 事We,maxが
4.2
改 変)
式(4.4)で
表 さ れ る こ と を 示 せ.
平 衡 法 に よ る分 離 技 術
本 節 で は 平 衡 を利 用 し た分 離 技 術 の な か で も最 も基 本 的 な気 液 系 の 「蒸 留 」と 「ガ ス 吸 収 」に つ い て 述 べ る.蒸 留 と ガ ス 吸 収 は 同 じ気 液 平 衡 を 利 用 した 分 離 技 術 で あ るが,前
者 は 混合 液 の 蒸 気 圧 の 差 を利 用 し,後 者 は混 合 ガ ス の溶 解 度 の差
を利 用 し て お り,注 目物 質 の 移 動 方 向 が 逆 で あ る.ま た 分 離 手 段 と して 前 者 が エ ネ ル ギー(ESA)を
用 い る の に対 して,後 者 は 分 離 媒 体(MSA)の
る.ま た前 者 は ラ ウー ル(Raoult)の
吸 収 剤 を用 い
式 に代 表 され る気 液 平 衡 関 係 を 広 範 囲 に使
うの に 対 し,後 者 はヘ ン リー(Henry)の
式 で 代 表 さ れ る 気 液 平 衡 関 係 を希 薄 域
で用 い る.本 節 で 平 衡 分 離 法 の 原 理 と基 本 的 な操 作 ・設 計 法 を,蒸 留 塔 か ら段 型 接 触 装 置 の そ れ を,ま た ガ ス 吸 収 塔 か ら微 分 型 接 触 装 置 の それ を学 ぶ.
4.2.1 蒸
留
混 合 液 か ら揮 発 性 成 分(低 沸 成 分)を 分 離 ・濃 縮 す る に は 混 合 物 を構 成 す る各 成
分 の蒸 気 圧 の差 を利 用 す る.そ の た め に 溶 液 を加 熱 し,蒸 気 相 をつ く り,低 沸 成 分 の 多 い蒸 気 を再 び 冷 却 し て 濃 縮 液 を得 る.こ の 操 作 を蒸 留(distillation)と い う.蒸 留 は有 効 成 分 の 回収 や 濃 縮 ・精 製 な ど で,実 験 室 や 化 学 工 場 な ど で古 くか ら利 用 され,今
なお 広 く用 い られ て い る代 表 的 な分 離 方 法 で あ る.フ ラ ッ シュ蒸
留 と単 蒸 留 に つ い て は1章
で 説 明 し た の で,本 節 で は 段 型 連 続 蒸 留(精 留)塔 に
よ る蒸 留 塔 の 基 本 的 な 設 計 概 念 を説 明 す る. a. 蒸 留 の 気 液 平 衡 A-B2成
分 系 の理 想 溶 液 を考 え る.蒸 留 で は一 般 に 揮 発 性 成 分(低 沸 成 分)を
注 目成 分Aと
して 扱 い,液 相 の モ ル 分 率 をx,気
想 溶 液 の場 合,気 相 中の 成 分Aの
分 圧pAは
例 す る(ラ ウ ー ル の 法 則,1.5.2.c参
相 の モ ル 分 率 をyで
液 相 中 の 成 分Aの
照).成 分Bの
表 す.理
モ ル 分率xAに
気 相 中 分 圧pBに
比
つ い て も同
様 で あ る. pA=PAxA,
pB=PBxB
(4.6)
ただ し xA+xB=1 こ こ でPA,PBは
そ れ ぞ れ 純 物 質A,Bの
蒸 気 圧 で あ る.ベ
ン ゼ ン-ト ル エ ン 系 な
ど の 同 族 列 炭 化 水 素 系 溶 液 で は ラ ウ ー ル の 法 則 が 成 り 立 つ. 全 圧 П は ダ ル ト ン(Dalton)の
法 則 か ら次 式 で 与 え ら れ る.
П=pA+pB=PAxA+PBxB=PB{1+(α*−1)x}
(4.7)
こ こで
(4.8) 状 態 量 がxB=1−xAを xAをxで
代 入 し て 得 ら れ るxAだ
表 す.yに
つ い て も 同 様 で あ る.α*を
蒸 留 に よ る 分 離 ・精 製 の しや す さ を 表 す.相 数 αABに 等 し く,実
一方
,気
液 相 線 と い う.理 相 のA成
表 せ る.液 想 溶 液 の 場 合,液
分 の モ ル 分 率yAは
の
理 想 溶 液 の 相 対 揮 発 度 と 称 し,
対 揮 発 度 は蒸 留操 作 に お け る分 離 係
在 溶 液 の 相 対 揮 発 度 α は 活 量 係 数rを
(ya/xA)/(yB/xB)=(rA/rB)α*で (4.7)を
け の 変 数 で 表 さ れ る2き,そ
相 の 組 成xと 相 線 はPAとPBを
用 い て,α=αAB= 全 圧 П と の 関 係 式 結 ぶ 直 線 に な る.
ダ ル トン の 法 則 か ら 次 式 で 与 え ち れ る.
(4.9)
図4.3
組成 と蒸 気圧 の 関 係(温 度 一 定)
上 式 は理 想 溶 液 の 気 液 平 衡 関係 を表 す.ま 気 相 線 と い い,気 相 線 は 式(4.7)と
た 気 相 の 組 成yと
式(4.9)か
全 圧 π との 関 係 を
ら次 式 で表 さ れ る.
(4.10) T=一
定 の と き のPA=250mmHg,PB=100mmHg,し
合 の 液 相 線 と気 相 線 を 図4.3に
示 す.系
気 相 線 よ り低 い と き に は 蒸 気 に な り,そ
た が っ て α*=2.5の
場
の 圧 力 が 液 相 線 よ り 高 い と き は 液 体 で, の 間 は 蒸 気 と 液 が 混 在 す る.
蒸 留 は一 般 に 大 気 圧 下 で行 わ れ るか ら,圧力 一 定 の 操 作 で あ る.し た が っ て蒸 留 塔 内 の各 点 の 沸 点 は組 成 の 変 化 に伴 って 変 化 し,α も変 化 す る.蒸 留 塔 の 上 部 で は 低 沸 成 分 が 濃 縮 され る の で,上 部 は下 部 よ り低 い 温度 で運 転 され る. 考 察4:理
想 溶 液 の 相 対 揮 発 度 が 分 離 係 数 と な る こ とを示 せ.
b. 蒸 留 塔 に よ る低 沸成 分 の濃 縮 の 原 理 蒸 留塔 に よ る低 沸 成 分 の 濃 縮 の 原 理 を説 明 す る ため,圧力 沸 点 の 関 係 を 図4.4に
示 す.組
成x1の
ま で加 熱 す る と,沸 騰 し始 め,点C(温 (温 度TS)ま
原 液(点F)を 度TC)で
組 成 一 定 で 点B(温
度T1)
完 全 に 蒸 気 に な りさ ら に 点S
で加 熱 す る と過 熱 蒸 気 に な る.逆 に 点Sか
凝 縮 し始 め,点Bで
一 定 の 場 合 の組 成 と
ち冷 却 し て点Cに
な ると
完 全 に 溶 液 に な る.各 組 成 で 沸 騰 し始 め る 温 度 の 軌 跡 を沸
図4.4
蒸 留 塔 に よ る低 沸 成 分 の 濃縮 の 原理 図
騰 線 とい い,凝 縮 し始 め る温 度 の 軌 跡 を凝 縮 線 とい う. 原 液 を 温 度T1ま
で 加 熱 し,蒸 発 させ る と,x1に
平 衡 な組 成y1の 蒸 気(点P)
が得 られ る.こ の 蒸 気 を組 成 一 定 で冷 却 す る と,蒸 気 は 凝 縮 し始 め,沸 Q,温
度T2)で
溶 液x2に
組 成x2の
溶 液 に な る(y1=x2).こ
平 衡 な組 成y2の 蒸 気(点T)が
騰 線(点
こ で 溶 液 を再 び 蒸 発 させ れ ば,
得 ら れ る.こ の よ うに 蒸 発 と凝 縮 を繰
り返 す こ とで 低 沸 成 分 が 次 第 に富 ん で くる.混 合 蒸 気 の 一 部 分 が 凝 縮 す る こ と を 分 縮(partial
condensation)と
留(rectification)と い うが,ふ
い う.こ の分 縮 効 果 を利 用 して 濃 縮 す る操 作 を精 つ う蒸 留 を行 え ば分 縮 が起 こ るの で,精 留 の こ と
を蒸 留 とい う場 合 が 多 い.気 液 が 十 分 接 触 す れ ば平 衡 に 近 づ く.蒸 発 の 際,蒸 発 潜 熱 を奪 い,逆
に凝 縮 の 際,凝 縮 熱 を 出す.蒸
留塔 で は 気 液 の接 触 と相 変 化 に伴
う熱 の 出 入 りを効 率 よ く行 わ せ る こ とが 重 要 で,そ の 接 触 方 法 に段 型 と微 分 型 が あ る.微 分 接 触 に つ い て は次 項 の 「ガ ス 吸 収 」で 述 べ,本 項 で は段 型 連 続 蒸 留 塔 に つ い て 説 明 す る. c. 蒸 留 塔 の 設 計 ― マ ッ ケ ブ-シ ー ル(McCabe-Thiele)法 一 般 的 な 段 型 連 続 蒸 留 塔 の 概 念 図 を 図4 .5に 示 す.段
型 回分 蒸 留塔 の 場 合 に は
原 料 を 蒸 留 缶(ス
チ ル)に1回
仕 込 み,ス
チ ル よ り 上 を 濃 縮 部 と 考 え,濃
縮部 だ
け か ら な る蒸 留 塔 を 考 え れ ば 対 応 で き る の で 以 下 連 続 塔 で 話 し を 進 め る.段 続 蒸 留 塔 は 濃 度 の 適 当 な 段 か ら 原 料 を 供 給 し(供 給 流 量F[mol ル 分 率]),塔
出 液 流 量W[mol
一 方 塔 頂 で は 濃 縮 さ れ た 全 蒸 気 を 凝 縮 器(コ の 一 部 は 分 縮 の た め,塔
内 へ 還 さ れ,残
D[mol
ル 分 率]).こ
量L[mol
s−1],濃 度zF[モ
底 の ス チ ル あ る い は リ ボ イ ラ ー で 加 熱 蒸 発 さ せ,蒸
の 液 は 缶 出 液 と し て 取 り 出 す(缶
s−1],濃 度xD[モ s−1])と い う.還
s−1],濃
型連
気 に し て,残
度xw[モ
り
ル 分 率]).
ン デ ン サ ー)で 液 に 戻 し(全 縮)
,そ
り を 留 出 液 と し て 取 り 出 す(留 出 液 流 量
の 凝 縮 液 を 塔 に 戻 す こ と を 還 流(還
流 の 大 き さ は 還 流 比(reflux
ratio)R[―]で
流液 流
表 す.
(4.11) 還 流 比 が 大 きい ほ ど,蒸 気 と溶 液 との 接 触 が 十 分 に 行 わ れ,分 縮 効 果 が 大 き くな る.特 に 蒸 留 の ス ター ト時 や 蒸 留塔 の 性 能 を調 べ る際 に,凝 縮 液 を全 部 塔 内へ 還 す 全 還 流(total reflux)操 作 を行 う.こ の と きRは は 得 ら れ な い.キ
図4.5
無 限大 とな り,留 出 液(製 品)
ャ ップ(泡 鐘)型 蒸 留 塔 の 断 面 図 を図4.6に
段 型 連 続 蒸 留塔 の概 念 図
図4.6
示 す.塔
内では蒸
キ ャ ップ(泡 鐘)型 蒸留 塔 の 断面 図
気 が 上 昇 流 とな り,凝 縮 液 が下 降 流 とな っ て,気 液 は各 段 で キ ャ ップ や 皿 を介 し て 接 触 し,液 は ダ ウ ン カ マー な ど を通 して 下 の段 へ 流 れ る.こ の ほか に も気 液 が 十 分 接 触 し,圧 力 損 失 の小 さ い段 型蒸 留 装 置 が考 案 さ れ て い る. 考 察5:モ
ル 分 率xと
考 察6:こ
の ほ か に 段 型 接 触 装 置 に は どん な もの が あ る か調 べ,図
1925年,W.L. に お い て,①
質 量 分 率 ω との 関 係 を示 せ.
McCabeとE.W.
Thieleは2成
蒸 発 潜 熱 は組 成 に よ らず 一 定,②
ピー は組 成 に よ らず 一 定,③ 完 全 混 合,⑤
分 系 混合 溶 液 の 蒸 留 塔 の 設 計 各 段 に 出 入 りす る液 の エ ン タル
塔 は 断 熱 で操 作 され て い る,④
各 段 で気 相 液 相 は
各 段 で 気 液 平 衡 が 成 立,の 仮 定 を設 け て,塔 内 の 蒸 気 の 上 昇 流 と
液 の 下 降 流 の 流 量 は そ れ ぞ れ 各 段 で 等 しい と して,塔 た.こ
示 せ よ.
こ で は マ ッケ ブ-シ ー ル(McCabe-Thiele)法
法 に つ い て 述 べ る.な お,ポ
の段 数 の推算 法 を提案 し
に よ る蒸 留 塔 の 段 数 の 推 算
ン シ ョ ン-サ バ リー(Ponchon-Savarit)法
は上 記の
① お よ び ② の 仮 定 を含 ま な い2成 分 系 の 連 続 蒸 留 塔 の理 論 段 数 を 図解 法 に よ り 求 め る方 法 で あ る が,こ
こ で は触 れ な い.
低 沸 成 分 は 原 料 供 給 位 置 よ り上 方 で 濃 縮 され,下 濃縮 部,下
方 を 回収 部 と呼 ぶ.図4.5の
意 の 段 をn段,回
収 部 の そ れ をm段
れ ぞれV,V′[mol/s−1],下 の 溶 液 お よ び 蒸 気 のA成
方 で 回収 され るの で,上 方 を
よ うに段 数 は塔 頂 か ら数 え,濃 縮 部 の任 と し,濃 縮 部 お よ び 回 収 部 の 上 昇 流 量 をそ
降 流 量 を そ れ ぞ れL,L′[mol
s−1]とす る.ま た 塔 内
分 の 組 成(モ ル分 率)を それ ぞ れx,yと
字 で 表 す.塔 全 体 の物 質 収 支 を包 囲 線lTで
とれ ば,次
し,段 数 を添 え
の物 質 収 支 が 成 り立 つ.
F=D+W
(4.12)
FzF=DxD+WxW
(4.13)
濃 縮 部 に お い て は 図4.5に の 物 質 収 支 を と れ ば,次
示 す よ う に,n段(包
囲 線lE)で
溶 液 全 体 と低 沸 成 分
式 を 得 る.
V=L+D
(4.14)
Vyn=Lxn−1+DxD
(4.15)
ま た還 流 比Rを
用 い て 表 す と,n段
目の蒸 気 組 成yは
次 式 で 与 え られ る.
(4.16) 式(4.15)はn段 (oprerating
目 のyとn−1段 line)と い う.濃
目 のxと
の 関 係 を 表 し,濃
縮 部 の 操 作 線 を 図4.7に
示 す.濃
縮 部 の 操 作 線
縮 部 の 操 作 線 はx
=xDと
対 角 線 との 交 点Pを
通 る傾 きR/(R+1)(<1)の
直 線 で あ る.各 段 で は気
液 平 衡 が 成 立 す る と仮 定 して い る か ら,理 論 段 数 は 階段 作 図 か ら求 め る こ とが で き る. 次 に各 段 の 気 相 ・液 相 の 濃 度 の求 め 方(図4.7参
照)を 示 す.
以 下 同 様 で あ る. 回 収 部 に お い て も 図4.5の
包 囲 線lsで
同 様 に 収 支 を と る と,次
の 操 作 線 を得
る. L′=V′+W
(4.17)
L′xm−1=V′ym+Wxw
(4.18)
(4.19) 上 式 はx=xWと 関係 を図4.8に
対 角 線 との 交 点Qを 示 す.こ
通 る傾 きL′/V′(>1)の
直 線 で あ る.こ の
れ を 回収 部 の操 作 線 とい う.
ま た原 料 は液 体 の 割 合 がq,蒸
気 の 割 合 が1−qで
供 給 部 で 下 降 流 お よ び 上 昇 流 に つ い て,図4.5で
図4.7 濃 縮 部 の各 段 の 濃 度(平 衡 線 と操 作 線)
供 給 さ れ る もの と し,原 料
そ れ ぞ れ 包 囲 線lFLお よ びlFV
図4.8
平衡 線,操
作 線 お よ びq線
で 収 支 を取 る と,次 式 が 成 り立 つ. 下 降 流:L+qF=L′
上 昇 流:V=(1−q)F+V′
(4.20)
(4.21)
この 関 係 式 を使 う と,濃 縮 部 の 操 作 線 と回 収 部 の 操 作 線 の 交 点Rは
次式 で表 わ
せ る. (1−q)y=−qx+zF これ をq線(q-line)と
(4.22)
い い,x=zFと
対 角 線 の 交 点Sを
通 る傾 き−q/(1−q)の
直 線 で あ る.し た が っ て塔 全 体 の段 数 を求 め る に は 留 出 液 濃 度 と缶 出 液 濃 度 の 間 で,濃 縮 部 と 回収 部 の 操 作 線 と平 衡 線 の 間 の 階 段 作 図 か ら,容 易 に 平 衡(理 論) 段 数 を求 め る こ とが で き る.作 図 か ら求 め た段 数 は塔 底 の ス チ ル あ る い は リボ イ ラ ー の1段
も含 ま れ,こ
N=S−1で
れ を ス テ ップ 数Sと
い う.し た が っ て 必 要 な 理 論 段 数
あ る.こ の よ う な作 図 法 で蒸 留 塔 の 段 を求 め る方 法 をマ ッ ケ ブ-シ ー
ル法 と い う.実 際 の 蒸 留 塔 で は 各 段 で気 液 が 必 ず し も 平 衡 で な い た め,平 衡 へ の 到 達 の程 度 を表 す 段 効 率(=理
論 段 数/実 際 の 段 数)を 用 い て 理 論 段 数 を補 正 す
る. 考 察7:濃
縮 部 お よ び 回 収 部 の操 作 線 が 図4.8に
る こ と,ま たq線
が 式(4.22)で
お い て,点P及
び 点Qを
表 せ る こ と,お よ び 点Sを
通
通 ること
を示 せ. d. 全 還 流 と最 小 理 論 段 数 蒸 留 塔 を全 還 流 で運 転 す る と還 流 比Rは
無 限 大 とな り,操 作 線 は 対 角 線(y=
x)と 一 致 し,塔 段 数 は 最 も少 な くな る.こ の 段 数 を最 小 理 論 段 数Nmと 蒸 留 塔 の段 数 を推 算 す る基 本 に な る.Nmは るが,気
い い,
図 解 法 か ら簡 便 に求 め る こ とが で き
液 平 衡 が ラ ウー ル の 式 で 表 せ れ ば 解 析 的 に も容 易 に 求 め る こ とが で き
る.ラ ウ ー ル の 式 は次 式 の よ うに 変 形 で き る.
(4.23) 全 還 流 で操 作 す る と き,各 段 で操 作 線 と平 衡 線 は 次 式 に な る. 段(n)
操 作 線(対 角 線)
平 衡 線(ラ ウー ル の 式)
1
xD=y1
y1/(1−y1)=ax1/(1−x1)
2
x1=y2
y2/(1−y2)=ax2/(1−x2)
n
… … ………ス チ ル(Nm+1段)
xn−1=yn
yn/(1−yn)=αxn/(1−xn)
xw−1=yw
yw/(1−yw)=αxw/(1−xw)
相 対 揮 発 度 α を一 定 と して,上 の 式 を辺 々 を掛 け 合 わせ ば,次 式 を得 る.
(4.24) (4.25) 上 式 を フ ェ ン ス キ(Fenske)の め ら れ る.実
式 と い い,NmがxD,xwお
よ び αか ら解 析 的 に 求
際 の 操 作 で は α は 組 成 と 温 度 に 依 存 す る の で,塔
頂 と塔 底 の 相 対
揮 発 度 αtと αbの 幾 何 平 均 αavが 用 い ら れ る.
(4.26) 考 察8:ラ
ウ ー ル の 式 が 式(4.23)に
考 察9:圧
力 一 定 の と き の エ タ ノ ー ル-水 系 の 組 成 と 沸 点 の 関 係 を便 覧 で 調 べ, プ ロ ッ トせ よ.ま
e. 最
た 各 温 度 に お け る 純 エ タ ノ ー ル と水 の 蒸 気 圧p*E,
p*wを
求 め,α*=p*E/p*Wを
小
流
還
変 形 で き る こ と を 示 せ.
プ ロ ッ トせ よ.
比
留 出 液 を で き る だ け 多 く得 る に は 還 流 を で き る だ け 少 な くす る 必 要 が あ る.図 4.8に
示 す よ う に,還
流 比Rを
き が 少 し ず つ 小 さ く な っ て,傾
小 さ く す る と 濃 縮 部 の 操 作 線 はP点 き はq線
こ の 点 を ピ ン チ ポ イ ン ト と い い,そ
が 平 衡 線 と交 わ る 点Tま
を 軸 に,傾
で 可 能 で あ る.
の 還 流 比 を 最 小 還 流 比 と い いRmで
実 際 の 蒸 留 塔 の 還 流 比 は 最 小 還 流 比 の1.5∼3倍
表 す.
程 度 が 経 済 的 と い わ れ,Rmは
実 操 作 の 目安 に 使 用 さ れ る. 原 料 の 組 成 お よ び そ の 状 態qと 段 数Nm,最 Nは
小 還 流 比Rmが
留 出 液,缶
求 ま り,さ
出 液 の 組 成 が わ か れ ば,最
ら に 還 流 比Rが
小理 論
与 え られ る と理 論 段 数
求 ま る.
考 察10:還
流 比Rと
理 論 段 数Nと
の 関 係 を 図 示 せ よ.
f. 共 沸 混 合 物 と共 沸 蒸 留 エ タ ノ ー ル-水 系 の 気 液 平 衡 関 係 を 図4.9に xに
な り,こ
れ 以 上 蒸 留 し て も,溶
混 合 物(azeotrope)と
い い,そ
示 す.図
か らx=0.9の
近 傍 でy=
液 は 濃 縮 さ れ な い.こ
の よ うな混 合 物 を共 沸
の 沸 点 を 共 沸 点 と い う.共
沸 混 合 物 を共 沸 組 成 以
上 に 濃 縮 す る に は共 沸 蒸 留,抽
出 蒸 留,反
応 蒸 留 な ど,特 殊 な 蒸 留 方 法 を 用 い
る. エ タ ノー ル-水 系 の 場 合,エ
タ ノー ル の モ ル 分 率 が0.904(質 量 分 率 で0.96)の
と き共 沸 し,そ の と きの 沸 点 は78.2℃ 点(78.3℃)よ
で,水
の 沸 点 よ り も また エ タ ノー ル の 沸
り も さ ら に低 くな る.こ の よ うに 混 合 物 の 沸 点 が 混 合 物 を形 成 す
る純 成 分 の 沸 点 よ り も低 くな る混 合 物 を 最 低 共 沸 混 合 物 とい う.逆 に ア セ トン -ク ロ ロ ホ ル ム 系 の よ うに 混 合 物 の 沸 点 が 高 くな る もの もあ る.こ の よ うな 混 合 物 を最 高共 沸 混 合 物 とい う.最 低 共 沸 混 合 物 は 異種 分 子 が 入 る こ とで分 子 間 力 が 同種 分 子 間 力 よ り弱 くな る.以 下 最 低 共 沸 混 合 物 を共 沸 組 成 以 上 に 濃縮 す る1つ の 方 法 で あ る共 沸 蒸 留 に つ い て エ タ ノー ル-水 系 で 説 明 す る. 共 沸 蒸 留 は2成 分 系 共 沸 混 合 物 に 新 た に共 沸 剤 を加 え,3成 組 成 をつ くる方 法 で あ る.こ の 場 合,原
分 系 の共沸混合 物
料 は2成 分 の共 沸組 成 に 近 い わ ず か に 水
が 混 入 して い る溶 液 で あ る.共 沸 剤 と して シ ク ロヘ キサ ンや ベ ンゼ ン あ るい は ペ ン タ ン が 用 い られ るが,こ
こ で はベ ンゼ ン を共 沸 剤 に用 い て 純 エ タ ノー ル を製 造
す るプ ロ セ ス を説 明 す る.そ の プ ロセ ス の フ ロー シー トを図4.10に 原 料 の エ タ ノー ル-水 系2成
分 系 共 沸 混 合 物 は 第1蒸
示 す.
留 塔 に供 給 され,こ
の共
沸 混合 物 にベ ンゼ ン を加 え蒸 留 す る と,塔 頂 か ら3成 分 系 最 低 共 沸 混 合 物 が 留 出 す る.そ の 組 成 は モ ル 分 率 で エ タ ノー ル:水:ベ 0.2331で 沸 点 は64.86℃
図4.9 (xは
で あ る(ベ ン ゼ ン の 沸 点:80.13℃).原
料 中 の 水 は3成
エ タ ノ ー ル-水 系 の 気 液 平 衡 関 係(P=760mmHg)
溶 液 中 の エ タ ノ ー ル モ ル 分 率,yは
("Chemistry
ン ゼ ン の 比 が0.2281:0.5388:
Data
Series",
DECHEMA
蒸 気 中 の エ タ ノー ル モ ル 分 率) (1981))
図4.10
共 沸 蒸 留 の分 離 シ ス テ ム
分 系 共 沸 混 合 物 と して 塔 頂 か ら抜 き取 られ,沸 点 の 高 い エ タ ノー ル は塔 底 よ り純 エ タ ノー ル と して得 られ る.共 沸蒸 留 で 重 要 な こ とは3成 分 系 共 沸 組 成 が2相 形 成 す る こ とで あ る.す な わ ち,3成
を
分 系 共 沸 組 成 の 蒸 気 を冷 却 液 化 させ る とベ
ンゼ ン相 と水 相 に相 分 離 し,原 料 の 中 の 水 と共 沸 剤 が 分 離 で き る こ とで あ る.こ れ が 共 沸 蒸 留 の1つ
の 条 件 で あ る.第1蒸
留 塔 の 凝 縮 器 か ら出 るベ ンゼ ン相 は 第
1塔 に 戻 さ れ,共 沸 剤 と して 用 い られ,水 相 は 第2蒸
留 塔 に 送 られ,第2蒸
留塔
の塔 頂 で は 水 相 に わ ず か に 溶 け て い るベ ンゼ ン とエ タ ノー ル が また3成 分 系 共 沸 混合 物 を形 成 し,そ の 蒸 気 は 第1蒸 留塔 の 凝 縮 器 へ 送 られ る.第2蒸
留 塔 でベ ン
ゼ ンが 完 全 に 取 り除 か れ,水 が 大 部 分 の エ タ ノー ル水 溶 液 の缶 出 液 は 回収 塔 へ 送 られ,回 収 塔 で 塔 頂 か らエ タ ノー ル水 系2成 分 系 共 沸 混合 物 が 留 出 液 と して得 ら れ る.こ れ は 第1蒸
留塔 の 原 料 と して リサ イ クル さ れ る.一 方 の 回収 塔 の 蒸 留 缶
か ら共 沸 混 合 物 形 成 に 必要 なエ タ ノー ル が 取 り除 か れ た 純 水 が 得 られ る.こ の よ うに してベ ン ゼ ン を リサ イ クル しな が ら,第1蒸 が,ま
留 塔 の 塔 底 か ら純 エ タ ノー ル
た 回収 塔 の 塔 底 か ら純 水 が 得 られ る.
考 察11:共
沸 混 合 物 をつ く る系 の 沸 点 と組 成 の 関 係 を 図 示 し,単 純 蒸 留 で は
蒸 留 し た組 成 が 共 沸 点 に収 束す る こ と を説 明せ よ.
4.2.2 ガ
ス
吸
収
ガ ス 吸 収 は 適 当 な 溶 媒(吸 収 剤)を 用 い て 混 合 ガ ス か ら特 定 成 分 を 分 離,除 去 ・精 製 す る操 作 と して 古 くか ら利 用 さ れ て い る.最 近 で は 環 境 保 全 対 策 技 術 の 一 つ と して,例
え ば 火 力発 電 所 や 製 鉄 所 な どか ら発 生 す る燃 焼 ガ ス か ら二 酸 化 炭
素 を回 収 ・利 用 す る有 力 プ ロセ ス と して 吸収 プ ロセ ス が 注 目 され,活 発 に研 究 開 発 が行 わ れ て い る.ガ ス 吸 収 は単 な る物 理 的 な 溶 解 度 の 差 を利 用 す る物 理 吸 収 と 化 学 反 応 を伴 って 吸 収 す る反 応 吸 収 が あ る.表4.2に を示 す.本
そ れ ぞれ の代 表 的 な 実 用 例
節 の 「ガ ス 吸収 」で は 微 分 接 触 法 に つ い て 説 明 す る.微 分 接 触 装 置 は
充 て ん 塔 の ほ か,濡 充 て ん 物 を 図4.11に
壁塔 や 気 泡 塔 な どが あ る.代 表 的 な微 分 接 触 装 置 と代 表 的 な 示 す.比
表 面 積 が 大 き く,圧 力 損 失 の 少 な い 充 て ん物 が 選
ば れ る. 吸 収 の メ カ ニ ズ ム に は,①
最 も一 般 的 に用 い られ る二 重 境 膜 説,②
現 象 解 析 に 用 い られ る ヒ グ ビー(Higbie)の に 用 い られ る ダ ン ク ワ ー ツ(Danckwerts)の れ る境 界 層 理 論,な
浸 透 説,③
非定 常の
同 じ く非 定 常 の 現 象 解 析
表 面 更 新 説,④
界 面近 傍 で展 開 さ
どが 提 案 され て い る.本 項 で は物 理 吸 収 に よ る充 て ん 層 型 ガ
ス 吸 収 塔 を用 い て,二 重 境 膜 説 に よ る ガ ス 吸 収 の 一 般 的 な概 念 を学 ぶ と と もに, 微 分 接 触 法 に よ る分 離 装 置 の 基 本 的 な 設 計 法 に つ い て 学 ぶ.
表4.2
ガ ス吸 収 の 実 用 例
(a) 充 て ん塔
(b) 濡 壁 塔
(c) 気 泡 塔
(d) スプ レー 塔(気 液)
(1) 代表 的な微分接触 型分 離装 置
(a) ラ シ ヒ リン グ
(b) ポー ル リン グ
(c) テ ラ レ ッ トR
(2) 代 表 的 な 充 て ん 物 図4.11
考 察12:反
微 分接 触 型 分 離 装 置 と充 て ん 物
応 吸 収 の一 つ に ア ミン 類 に よ る二 酸 化 炭 素 の 吸 収 が あ る(表4.2参
照).そ
の 反 応 式 を示 せ.
a. 二 重 境 膜 説 に よ る物 質 移 動 図4.12の
よ う な,例 え ば,二
酸 化 炭 素 を含 ん だ 空 気 の 流 れ が 壁 を伝 っ て 流 下
す る水 と平 行 に 向 流 的 に 接 触 して い る 濡 壁 塔 を考 え る(図4.11の(1)の(b)参 照).空
気 中 の 二 酸 化 炭 素 は 絶 え ず フ レ ッ シュ な 水 に 接 触 し,定 常 的 に 吸 収 され
る.空 気 流 本 体(バ ル ク)は 十 分 乱 れ,二 酸 化 炭 素 の分 圧 は 界 面 近 傍 の 厚 み δGま でバ ル クの 分 圧pAで
あ る が,δGの
間 で 急 激 に 減 少 し,気 液 界 面 で 界 面 分 圧pAi
に な る.こ の仮 想 的 な 境 界 の厚 み を境 膜 とい い,分 圧 や 濃度 の 境 膜 を濃 度 境 膜 と い う.こ の境 膜 と い う概 念 は1904年
にNernstに
よ り提 唱 さ れ た とい わ れ,熱
の 移 動 現 象 で も用 い られ る重 要 な概 念 で あ る. 液 相 本 体(バ ル ク)も 気 相 と同様 に 十 分 乱 れ なが ら流 下 す るの で,液 側 界 面 で も厚 み δLの 濃 度 境 膜 が 存 在 す る.す な わ ち 二 酸 化 炭 素 の 濃 度 は 液 界 面 でCAiで あ り,液 境 膜 厚 み δLを隔 て て 液 の バ ル ク濃 度CAに theory)は
な る.二 重 境 膜 説(two
film
こ の よ う に界 面 を介 して 両 相 に 濃 度 境 膜 が あ り,そ の仮 想 的 な 境 膜 の
図4.12
二 重 境 膜 説(濡 壁 塔)
中 で 濃 度 の 降 下 が 生 じ る と い う 考 え 方 で あ る.こ Lewis-Whitmanに こ とか ら,吸
よ っ て 提 唱 さ れ た モ デ ル で あ る が,仮
推 進 力 に な る.単
定 と結 果 が 簡 潔 明 瞭 な
質 移 動 の 場 合 に は分 圧 や 濃 度 の差 が
位 面 積 当 た り の 流 量 を 流 束(flux)と
m−2 s−1]は 成 分Aの
分 率],気
相 の 濃 度yA[モ
分 圧pA[Pa],濃
度cA[mol
ル 分 率]を 用 い て,次
い う.物 m−3],液
質Aの
も の と仮 定 す る.ガ
(4.27) (4.28)
境 膜 物 質 移 動 係 数 と い う.気
液 界面 で は平衡 が成 立す る
ス 吸 収 で 溶 解 し た 成 分 の 溶 液 濃度 は 一 般 に 薄 い.希
気 液 平 衡 関 係 は 次 の ヘ ン リ ー(Henry)の
法 則(1.5.2.b参
薄 溶液 の
照)で 表 さ れ る.
pA=HcA
(4.29)
pA=KxA
(4.30)
yA=mxA こ こ で,比
例 定 数Hお
(4.31) よ びmを
ル
式 で 表 す こ と が で き る.
=ky(yA−yAi)=kx(xAi−xA) 例 定 数kを
流 束NA
相 の 濃 度xA[モ
NA=kG(pA−pAi)=kL(cAi−cA)
こ こ で,比
に
収 モ デ ル と し て 一 般 的 に 使 わ れ て い る.
移 動 す る た め に は 推 進 力 が 必 要 で あ り,物
[mol
の 二 重 境 膜 説 は1914年
一 般 に ヘ ン リー(Henry)定
数 と い い,HとK
お よびmの
関係 は次 式 で 与 え られ る.
(4.32) cMは 溶 液 の 全 濃 度[mol 度cBと
m−3]で あ る が,溶 液 が希 薄 で あ る か ら,溶 媒 の モ ル 濃
み な して よ い.ま た Π は全 圧 で あ る.主 な気 体 の 主 な溶 媒 に対 す るヘ ン
リー 定 数Kを
表4.3に
示 す.Kが
大 きい と き,モ ル 溶解 度 は小 さ い.二 酸 化 炭
素 が 溶 解 性 の 高 い気 体 で あ る こ とが分 か る. 気 液 の 平 衡 関 係 は 式(4.31)で x*,xに
平 衡 な気 相 濃 度 をy*と
進 力 の 添 え字Aは
表 せ る も の と仮 定 す る.yに す る と,式(4.28)は
平 衡 な液 相 濃 度 を
気 相 基 準 で 次 式 に な る(推
割 愛 す る).
(4.33) 上 式 の 分 子 分 母 を そ れ ぞ れ加 え る こ と で次 式 を得 る.
(4.34) ここで
(4.35) こ のKyを
気 相 基 準 総 括 物 質 移 動 係 数 とい う.Kyに
対 してkyを 局 所 物 質 移 動 係
数 と い う. 同様 に 物 質 移 動 を液 相 基 準 で 表 す と次 式 に な る.
(4.36) ここで
表4.3
1) cBは 溶 媒 の モ ル 濃度.
主 な 気体 の ヘ ン リー 定 数K[MPa]
(4.37) kxお よ びKxを
そ れ ぞ れ 液 相 基 準 局 所 物 質 移 動 係 数 お よ び 総 括 物 質 移 動 係 数 とい
う. 考 察13:総
括 物 質 移 動 係 数 と局 所 物 質 移 動 係 数 の 関 係 式(4.35)と(4.37)を
導
出せ よ. b. 拡 散 現 象 と物 質 移 動 との 関 係 拡 散 流 束 をJi[mol
m−2 s−1]とす れ ば,フ
こ とが で き る.こ
こ でx軸
xの 代 わ りにrを
用 い た.以 下 同 じ.
ィ ッ ク(Fick)の
の座 標 を示 すxは
拡散式 は次式で表 す
モ ル 分 率 のxAと
紛 らわ し い の で,
(4.38) こ こ で,ciは
成 分iの
濃 度[mol
m−3]で あ り,cMは
モ ル 平 均 濃 度[mol
m−3]で,
次 式 で 定 義 さ れ る.
(4.39) υiは 成 分iの
絶 対 移 動 速 度[m
対 移 動 流 束Ni[mol
s−1]で,υ*は
モ ル 平 均 速 度[m
s−1]と 称 し,絶
m−2 s−1]を 用 い て 次 式 で 定 義 さ れ る.
(4.40) ここで
(4.41)
Ni=ciυi
した が っ てA,B2成
分 か ら な る系 の拡 散 現 象 は 次 式 で 与 え られ る.
(4.42) 蒸 発,昇
華,ガ
等 し い2成
ス 吸 収 や 液 液 抽 出 の 場 合 はNB=0と
分 系 混 合 溶 液 の 蒸 留 の 場 合 はNB=−NAと
ま た2A→A2な
る2量
お く ケ ー ス も あ る.こ
子 蒸発 熱 の
み な し う る ケ ー ス が あ る.
化 反 応 の 触 媒 表 面 上 の 物 質 移 動 はNB=NA2=−NA/2と こ で はNB=−NAとNB=0の2つ
移 動 係 数 と 拡 散 係 数 と の 関 係 を 検 討 す る.前 counter-diffusion:
考 え て よ い.分
EMD),後
のケース につ いて物 質 者 を 等 モ ル 相 互 拡 散(equi-molar
者 を 一 方 拡 散(uni-directional
と い う. 等 モ ル 相 互 拡 散 で はNB=−NAと
お け ば 式(4.42)は
diffusion:
UDD)
(4.43) と な り,r=0の
と き,x=xAi,r=δLの
と き,x=xAの
境 界 条 件 で 積 分 す る と,
次 式 を 得 る.
(4.44) した が っ て等 モ ル 相 互 拡 散 の 物 質 移 動 係 数(kx)eqは 次 式 に な る.
(4.45) 一 方 拡 散 に お い て はNB=0と
お け ば 式(4
.42)は
次 式 に な る.
(4.46) 上 式 を,r=0の
と き,x=xAi,r=δLの
と き,x=xAの
境 界 条件 を使 って積分
す る と次 式 を 得 る.
(4.47) し た が っ て,一
方 拡 散 の 物 質 移 動 係 数(kx)uniは
次 式 に な る.
(4.48) こ こ で,
(4.49) で 表 さ れ,成 分Bの
界 面 とバ ル クの 濃 度 の 対 数 平 均 で あ る.一 方 拡 散 物 質 移 動
係 数 は 常 に等 モ ル 相 互 拡 散 の そ れ よ り大 き い.す な わ ち
(4.50) 考 察14:一 方 拡 散 の 物 質 移 動 係 数 が 式(4.48)で 与 え られ る こ とを示 せ.ま た 一 方 拡 散 の 物 質 移 動 係 数 は常 に 等 モル 相 互 拡 散 の そ れ よ り大 きい こ と を示 せ. c. 吸 収 塔 の 設 計 と操 作 線 1) 操 作 線 解性 成 分Aを
充 て ん 層 型 ガ ス 吸 収 塔 の概 念 図 を 図4 .13に 示 す.塔
含 む 混 合 ガ ス(モ ル 分 率yb)を
から モ ル分 率xtの
吸 収 液 を流 量LM[mol
流 量GM[mol
底 か ら溶
s−1]で供 給 し,塔 頂
s−1]で供 給 す る.気 液 は塔 内 で 充 て ん
物を介 し て 向 流 接 触 し,混 合 ガ ス は塔 頂 で 濃 度ytま
で 吸 収 され る.一 方,吸 収
図4.13
液 は塔 底 でxbま
充 て ん 層 型 ガ ス 吸 収装 置 の概 念 図
で 増 加 す る.ガ ス 吸 収 に よ り混 合 ガ ス全 体 の モ ル 流 量 は 減 り,
溶 液 の モ ル 流 量 は増 え る の で,物 質 収 支 を と る際 に は 吸 収 塔 全 域 で 変 化 しな い 溶 解 成 分 を除 い た キ ャ リア ガ ス 流 量GI[mol
s−1]と溶媒 流 量LI[mol
とる と便 利 で あ る.す
ら任 意 の 高 さzの 間 で 気 相 と液 相 に つ
い て成 分Aの
な わ ち塔 底z=0か
s−1]を基 準 に
物 質 収 支 を とれ ば 次 式 に な る.
(4.51) 上 式 をガ ス 吸 収 の 操 作 線 とい う.以 下 成 分Aが
希 薄 な2成 分 系 混 合 ガ ス の 吸 収
を考 え る.濃 度 が 希 薄 の 場 合 に は 次 式 が 成 り立 つ.
(4.52) した が っ てGMお 度 が 希 薄 な 場合,次
よ びLMは
稀 薄 な場 合,一 定 とみ な し て よ い.操 作 線 は溶 質 濃
式 に な る.
(4.53)
GM(y−yb)=LM(x−xb)
図4.14に
示 す よ う に,横 軸 に 液 相 濃 度x,縦
線 は ガ ス 吸 収 の 場 合,蒸
軸 に気 相 濃 度yを
とれ ば,操 作
留 の場 合 とは逆 に,気 液 平衡 線 よ り上 に な る.溶 解 成 分
図4.14
操 作 線 と平 衡 線(図 中 のk,Kの
範 囲 は 当該 係 数 に 関係 す る
ドラ イ ビ ン グ フ ォー ス の大 き さ を示 す)
が 希 薄 な場 合 の ガ ス 吸 収 の 操 作 線 は塔 底 点B(xb,yb)と 傾 きLM/GMの る.y=ybと
塔 頂 点T(xt,yt)を
通る
直 線 に な る.操 作 線 の 傾 き は 液 流 量 を少 な くす る と,小 さ くな 平 衡 線 の 交 点 をPと
す れ ば,そ
の 傾 きは 直 線TPま
こ とが 可 能 で あ る.そ の と き塔 底 の 吸 収 液 の 濃 度 はybに
で 小 さ くす る
平 衡 なxb*に
な り,こ
れ 以 上 吸収 で きな くな る.こ の 点 を ピ ンチ ポ イ ン トとい い,実 際 に 操 作 す る液 流 量 は こ の 最 小 流 量 の1.5∼3.0倍
で運 転 さ れ る.ま た 液 流 量 に対 して ガ ス 流 量 が
多 くな る と,圧 力 損 失 が 大 き くな り,や が て 液 が 流 下 しな くな り,フ ラ ッデ ィ ン グ(flooding:〓
流)が 起 こ る.実 際 の ガ ス 吸 収 で は フ ラ ッデ ィ ン グ が 起 こ る流
量 よ り少 し小 さ い ロ ー デ ィ ン グ速 度 で運 転 す る の が よい とされ て い る.ロ ー デ ィ ン グ速 度 は 吸 収 塔 の 直 径 を決 め る上 で 重要 な条 件 で あ る. 2) 吸 収 塔 の 高 さの 推 算 [m2]の 吸 収 塔 の 高 さZ[m]を
図4.13の
吸 収 塔 の 概 念 図 を 使 っ て,断
求 め る た め に,任
気 相 を 中 心 に物 質 収 支 を とる.す
意 の 高 さzとz+Δzの
な わ ち,気 相 で減 少 した 成 分Aの
面 積S
間 で まず 流 量は液 相
に 移 動 し た流 量 で あ る. −GMΔy=NAaSΔz
(4.54)
こ こ で,aは
比 表 面 積[m2
m−3]と い い,吸 収 塔 単 位 体 積 当 た り に気 液 が 接 触 す
る面 積 で,充
て ん物 の 種 類 や,流
量 な ど の操 作 条 件 に依 存 す る微 分 接 触 型分 離装
置 に とっ て 重 要 な特 性 で あ る.式(4.28)あ
る い は 式(4.34)を
式(4.54)に
代入
し,塔
のz=0か
らz=Zま
で 積 分 し て 次 式 を得 る.
(4.55) (4.56) 物 質 移 動 係k,Kと い,微
比 表 面 積aと
の 積 を 物 質 移 動 容 量 係 数[mol
分 接 触 装 置 の 重 要 な 装 置 特 性 で あ る .kaお
移 動 容 量 係 数,総 数(NTU;
よ びKaを
括 物 質 移 動 容 量 係 数 と い う.ま
number
of transfer
units) Nと
移 動 単 位 高 さ(HTU;
height
per a transfer
HTUお
次 式 で 表 さ れ る.
よ びNTUは
m−3 s−1]と い
それ ぞれ境膜 物 質
た 上 式 の積 分 の部 分 を移 動 単 位
い い,移
動 単 位 数 が1の
unit) Hと
い う.す
と きの 高 さ を
な わ ち,塔
高Z,
(4.57)
Z=HGNG=HOGNOG ここで
(4.58) (4.59) 同様 に 液 相 基 準 で物 質 収 支 を とる こ とで 次 式 を得 る.
(4.60) (4.61) した が っ て液 側 基 準 のZ,HTUお
よ びNTUは
次 式 で表 され る.
Z=HLNL=HOLNOL
(4.62)
(4.63) (4.64) NGお
よ びNLは
気 液 界 面 濃 度 が わ か れ ば,ま
たNOGお
が わ か れ ば 図 積 分 か ら 求 め る こ と が で き る.界 (4.58)お
よ び 式(4.63)か
よ びNOLは
気液平衡 関係
面 濃 度 を 求 め る に は 式(4.28),
ら 得 ら れ る 次 式 を 使 う.
(4.65) す な わ ち 図4.14に
お い て 操 作 線 の 任 意 の 点R(x,y)を
通 る 傾 きnの
直 線 と平 衡
線 の 交 点Sが
界 面 濃 度(xi,yi)に
が 適 用 で き る と き,解
な る.ま
析 的 に 解 け,次
たNG,NL,NOG,NOLは
ヘ ン リー の 法 則
式 で 与 え ら れ る.
(4.66)
こ こ で,例
え ば(y−y*)lmは
塔 底 と塔 頂 の(y−y*)の
対 数 平 均 で,次
式 で定 義 さ
れ る.
(4.67) 総 括 物 質 移 動 係 数 が 式(4.35),(4.37)で
表 せ る か ら,総
括HTUに
つ い て も次
の 関 係 が 成 立 す る. HOG=HG+λHL
(4.68)
(4.69) ここで
(4.70) で あ り,気
液 の 容 量 比 と い わ れ る.
考 察15:式(4.66),(4.68)お d. HETP(理
よ び 式(4.69)を
導 出 せ よ.
論 段 相 当 高 さ)
充 て ん 層 型 ガ ス 吸 収 塔 に お い て も気 液 が 各 段 で 平 衡 に な っ て い る も の と し て, 蒸 留 の マ ッ ケ ブ-シ ー ル 法 と 同 じ方 法 で 操 作 線 と 平 衡 線 の 間 を 階 段 作 図 す る こ と で 理 論 段 数Nを
推 算 す る こ とが で き る.同
て ん 塔 高 さ の 関 係 はHETP 当 高 さ)と 呼 ば れ る.HETPは
(height
じ分 離 を行 うた め に 必 要 な段 数 と充
equivalent
to a theoretical
次 式 で 定 義 さ れ,ガ
plate;理
論段相
ス 吸 収 操 作 ば か り で な く,ク
ロ マ ト分 離 な ど に 対 し て も求 め ら れ る. HETP=(充 し た が っ て,HETPが
て ん 塔 の 充 て ん 高 さ)/(理 論 段 数)
(4.71)
小 さ い 充 て ん 塔 の 方 が 吸 収 性 能 が 高 い こ と に な る.
冷蔵 庫の 氷 と超LSI
ウ イ ス キー の オ ンザ ロ ッ ク に使 う氷 は 透 き通 っ て い て,美 庫 で 作 っ た 氷 は 白 く濁 っ て い て,い
味 し い の に,家
ま一 つ 美 味 し さ に 欠 け る.作
状 の 氷 を よ く見 る と,外 側 は 透 明 で あ るが,中
の冷蔵
った キュー ビック
心 部 に 曇 りが 集 中 して い る.ど
うし
て だ ろ う? ふ つ う,水 は 空 気 や 炭 酸 ガ ス な ど の 難 凝 固 性 ガ ス が 溶 け 込 ん で い る混 合 物 で あ る.立
方 体 の 容 器 に そ ん な水 を入 れ,冷
凍 庫 に 置 く と,容 器 は外 側 か ら順 次 冷 や さ
れ,凝
固 しや す い水 は凍 り始 め,凝
る.こ
の よ う に 水 中 の 空 気 は 四 方 八 方 か ら 中心 部 に 移 動 し,行
中 心 部 に 取 り残 さ れ,結
固 しに くい 空 気 は液 体 状 の 水 の 方 に追 い や られ き場 を失 っ た 空 気 は
果 と し て 小 さ な 泡 が 氷 の 中 心 部 に 霧 の よ うに な っ た ま ま
凍 っ て し ま うの で あ る.逆
に,外
い な 超 純 「氷 」が 精 製 さ れ る.し
側 の 氷 は 不 純 物 の 空 気 を含 ま な い透 き通 っ た きれ た が っ て,美
味 し い 氷 を 作 る一 つ 方 法 と して 水 を
端 か ら順 次 冷 や し,空 気 な どの 不 純 物 が 逃 げ る場 所 を確 保 して や れ ば よ い.そ 最 後 に そ の 部 分 を 切 り捨 て る.な
ん と こ の 分 離 精 製 法 が 超LSIの
して
製 造 に 用 い られ
て い る の だ. LSIな
ど の 高 機 能 電 子 デ バ イ ス は超 純 度 の シ リ コ ン に,鉄
制 御 し,ド ー ピ ン グ し て 製 造 さ れ て い る.シ
な どの不純 物 を精密 に
リ コ ン を 超 純 度 化 し,ま
た不 純 物 の
ドー パ ン トを均 一 化 す る 精 製 技 術 に 冷 蔵 庫 の 氷 の 精 製 法 す な わ ち 「ゾー ン メ ル テ ィ ン グ 」(帯域 精 製)法 が 用 い ら れ て い る. ゾ ー ン メル テ ィ ン グ で は 円 筒 状 の 試 料 を 円盤 状 の ゾー ン で 加 熱 溶 融 し,試 料 の 端 か ら端 ま で 掃 引 す る.進
行 す る溶 融 ゾー ン に凝 固 しに くい 不 純 物 が た ま る.こ
加 熱 と冷 却 の ゾ ー ン を 多 数 並 べ,掃
引 を繰 り返 す.試
れを
料 の 端 は 不 純 物 貯 め で,最
に そ れ を切 断 廃 棄 す れ ば 超 純 度 化 シ リ コ ンが で き上 が る.ま
後
た不 純 物 の 均 一 化 に は
試 料 の 先 端 に10−9の 重 さ の 割 合 で 不 純 物 をつ け て ゾ ー ン 溶 融 し,試 料 全 体 を 毎 回 向 き を変 え て 繰 り返 し掃 引 す る と,そ の 不 純 物 が 一 様 に 分 布 す る よ うに な る.す とそ の 不 純 物 の 純 度 が1ppbで で,そ
の 中 に1粒
あ る.す
な わ ち5tの
の塩 が 混 じ って い る純 度 で あ る.君
る
トラ ッ クに 純 砂 糖 を一 杯 積 ん の パ ソ コ ン に も そ ん な 石 「超
LSI」 が 入 っ て い る の だ. さ て 美 味 しい オ ン ザ ロ ッ ク の 氷 を 作 る2つ を追 い 出 した 水 を使 う こ と で あ る.そ
目の 方 法 は 水 を煮 沸 し,空
日の 夜 の ウ イ ス キ ー は 美 味 しい 氷 を作 っ て 召 し上 が れ.作 ぶ か,そ
れ は ご 自由 に.
気 やCO2
して そ れ を素 早 く凍 らせ る こ とで あ る.日 曜 り方?ど
ち ら の方 法 を選
湿 度計 と 「物質 と熱 」の 同時 移動 梅 雨 の あ る 日曜 日,寝 ぼ け 眼 で 時 計 の 横 に 掛 け て あ る湿 度 計 を 見 る.す と乾 球 の 温 度 が 同 じ21℃ い か ら?」.ど 夏,庭 際,ま
を 指 し て い る.「 狂 っ た の か な こ の 湿 度 計?」,「 蒸 し暑
う し て だ ろ う,冷
た い は ず の 水 の 温 度 が 空 気 の 温 度 と 同 じ とは .
に水 を 打 つ と涼 し くな る.水
わ りか ら蒸 発 潜 熱 を奪 い,蒸
温 度 が 下 が る.だ 冷 た い.家
る と湿 球
は 付 近 の 熱 で 加 熱 さ れ,蒸 発 す る.水
気 とな っ て 大 気 に移 動 し,水
か ら ふ つ う,水 の 温 度(水 温)は,空
はそ の
を撒 い た ま わ りの
気 の 温 度(気 温)よ
り低 く,
に あ る 湿 度 計 は ガ ー ゼ で 包 ま れ た 湿 っ た 湿 球 と裸 の 乾 い た 乾 球 か ら な
り,そ れ ぞ れ,水
の 温 度twと
空 気 の 温 度tを
測 っ て,そ
の 差 か ら湿 度 を 出 し て い
る. 蒸 発 し た蒸 気 が 湿 球 の ま わ りか ら部 屋 の 方 へ 移 動 す る速 さNw[mol 水 温(湿 球)に お け る水 の 蒸 気 圧p*と Nw=k(p*−p)と
書 け る.こ
空 気 中 の 蒸 気 圧pの
こ で 比 例 定数kは
物 質 移 動 係 数 で あ る.蒸
モ ル 流 束 で 湿球 か ら部 屋 へ 移 動 す る こ とに な る.水1モ
m−2 s−1]は,
差 に 比 例 す る.す
なわち
気 はNwの
ル を 同 じ温 度 の 蒸 気 に す る
熱 量 す な わ ち蒸 発 潜 熱 を λw[J mol−1]と す れ ば,こ
の 物 質 移 動 に よ り熱 量Nwλw[J
m−2 s−1]が部 屋 か ら湿 球 に移 動 し た こ とに な る.こ
の 熱 は 部 屋 か ら湿 球 に 補 わ れ る
こ とに な る. 湿 球 に 移 動 す る 熱 の 流 束q[J な わ ちq=h(t−tw)で
m−2 s−1]は室 温 と湿球 の 温 度 の 差 に 比 例 す る.す
表 さ れ る.こ
こ で 比 例 定 数hは
伝 熱 係 数 で あ る.湿
度計は
物 質 の 移 動 量 と熱 の 移 動 量 を 釣 り合 わ せ る テ ク ニ シ ャ ン な の だ.す な わ ちk(p* −p)λw=h(t−tw) ,こ れ を 変 形 し てCH=h/kλw=(p*−p)/(t−tw)な る 関 係 を 得 る. 1929年,LewisはCHが が っ て 室 温tと るか ら,pが
水-空 気 系 で は 一 定(=0.26)で
湿 球 の 温 度twが
算 出 され,湿
も し湿度 が 高 くて,室
度 φ=p/pwが
た
理科 年表 か らわか ってい
わ か る こ と に な る.
内 の 水 気 圧 が 湿 球 の 飽 和 蒸 気 圧 と同 じに な っ て湿 球 か ら 出
る蒸 気 が 部 屋 へ 拡 散 し な くな れ ば(Nw=0)ど twと な る.す
あ る こ と を 見 出 した.し
わ か れ ば 飽 和 蒸 気 圧p*は
うな る だ ろ う.そ の と きp=p*,t=
な わ ち湿 球 の 温 度 と乾 球 の 温度 が 同 じな る.道
理 で今 日は蒸 し暑 い
わ け だ.
4.3 速 度 差 分 離 技 術 ― 膜 分 離 法
成 分iの 気 体 の 平 均 速 度viは 式 で与 え られ る.
マ ッ ク ス ウ ェ ル(Maxwell)分
布 を仮 定 す れ ば 次
(4.72) す な わ ち,気 体 分 子 の 平 均 速 度 は 分 子 量Miの の 平 均 速 度 は窒 素 の平 均 速 度 の
平 方 根 に 反 比 例 す る.例
えば水素
倍 で あ る.こ の分 子 の 速 度 差 を う ま
く利 用 す れ ば,水 素 と窒 素 を分 離 す る こ とが で き る.速 度 差 分 離 技 術 とは この よ うな分 子 や イ オ ン の移 動 や 拡 散 な どの 速 度 差 を利 用 した分 離 法 で あ る.速 度 差 分 離 技 術 は 速 度 差 を呈 す る場 や 方 法 を選 び,そ れ を取 り出せ る よ うに 工 夫 した 技 術 で あ る.そ の よ うな場 と して膜,電
場 や 遠 心 力場 が あ る.こ こ で は 膜 を使 っ た 分
離 法 につ い て 述 べ る.
4.3.1 膜 分 離 技 術 ふ るい(シ ー ブ,フ 阻 止 さ れ,小
ィル ター)を 考 え る.ふ
る い の 穴 よ り大 き い 物 質 は透 過 を
さ い物 質 は透 過 さ れ,分 離 さ れ る.膜 分 離 の 原 理 の1つ
はふ るい効
果 を 利 用 す る もの で あ る.ガ ス ク ロ マ トグ ラ フ ィの 充 て ん 剤 の モ レ キ ュー ラー シー ブ(分 子 ふ る い)の 分 離 原理 は これ で あ る.も
う1つ の 原 理 は 高 分 子 膜 の よ
う な速 度 差 の 出 る相 を利 用 す る こ とで あ る.例 え ば シ リコ ン膜 の 中 で は ア ル コー ル 分 子 の方 が 水 分 子 よ り移 動 速 度 が 大 き い.分 離 膜 に は 大 き く分 け て,穴 が あ る 場 合(多 孔 質 膜)と 穴 の な い 非 多孔 質 膜 に 分 類 され る.多 孔 質 膜 の 場 合 に は 原 理
図4.15 RO:
reverse
osmosis(逆
(限 外 ろ 過),MF:
micro
(電 気 透 析),IEM:
ion
膜 分 離 法 と分 離 対 象
浸 透),NF:
nano
filtration(精
密 ろ 過),PV:
exchange
membrane(イ
filtration(ナ
ノ フ ィ ル ト レ ー シ ョ ン),UF:
pervaporation(浸 オ ン 交 換 膜).
透 気 化),ED:
ultra electric
filtration dialysis
的 に はふ る い効 果(細 孔 モ デ ル)を 利 用 し,非 多 孔 質 膜 の 場 合 に は 混 合 物 の 各 分 子 は ポ リマ ー 中 を溶 解 拡 散 し(溶 解 拡 散 モ デ ル),そ は一 般 に 多孔 質 膜 の 方 が 大 きい の で,大
の 差 を利 用 す る.透 過 速 度
きな粒 子 や 分 子 は 多孔 質 膜 で ろ過 す る.
次 に 分 離 対 象 物 質 の 大 き さ と そ の 膜 分 離 法 を図4.15に
示 す.1μm以
上 の粒
子 は 一 般 ろ 過(filtration)で 分 離 し,分 離 媒 体 と して ろ 紙,ろ 布 や ろ過 助 剤 を用 い る.0.1μm前
後 の 粒 子 は 精 密 ろ 過(micro-filtration;
MF)で
分 離 し,い わ ゆ
る メ ン ブ レ ン フ ィル ター を用 い る.イ ン フ ル エ ンザ ウ イル ス を は じめ 細菌 類 な ど はMFで
分 離 が 可 能 で あ る.限 外 ろ過(ultra-filtration; UF)は
高 分 子 を阻 止 し,低 分 子 を透 過 す る膜 分 離 法 で,食
品 の 濃縮 や 人工 腎臓 な どの 医
用 機 器 や メ ン ブ レ ン リア ク ター と して も利 用 さ れ,応 (reverse osmosis;
RO)法
各 種 ビー ル ス や
用 範 囲 が 広 い.逆 浸 透
は 原 理 的 に は 溶 質 や イ オ ン な ど を阻 止 し,溶 媒 の み を
透 過 す る.膜 に は 半 透 膜 が 用 い られ,海 水 の 淡 水 化 や 超 純 水 な ど の製 造 に,従 来 の 蒸 留 な ど に代 わ っ て,相 変 化 を伴 わ な い こ とか ら省 エ ネ ル ギー 分 離 法 と して 注 目 さ れ て い る.ま た 最 近 膜 材 質 の 開 発 に 伴 っ て,限 外 ろ過 と逆 浸 透 の両 領 域 をカ バ ー す るナ ノ ろ過(nano-filtration;
NF)膜
が 用 い られ て い る.膜 分 離 で は 溶 質
を分 離 す る 「割 合 」を表 す の に 阻 止 率(式(4.81)お UFやRO膜 95%以
よび(4.82)参
照)を 用 い るが,
の 目 の 細 か さ(緻 密 性)を 分 画 分 子 量 で 表 す.分
画分 子量 とは膜 が
上 阻 止 す る溶 質 分 子 の 分 子 量 の こ とで あ る.ROとUFは
分 画分 子量 が
500程 度 を 目途 に 区 別 して い る.ま たNF膜
の分 画 分 子 量 の 範 囲 は お お む ね100
∼1000程 度 で あ る.
4.3.2 濃 度 分 極 と物 質 移 動 係 数 膜 分 離 法 は 従 来 の ろ過 と は分 離 対 象物 が 異 な る ば か りで な く,流 れ パ ター ン も 異 な る.膜 分 離 法 は 透 過 液 が 供 給 液 液 に 対 して ク ロ ス し(cross れ),1つ
の 供 給 口 に 対 し,2つ(以
flow;十
字流
上)の 取 出 口 の あ る分 離 法 で,定 常 か つ 連 続
操 作 が 可 能 で あ る.一 方,従 来 の ろ過 は1つ の 供 給 口に 対 し1つ の 取 出 口 の分 離 法(全 量 ろ過;dead
end filtration)で,原
理 的 に は 非 定 常 で 回 分操 作 で あ る.膜
分 離 法 が 画 期 的 な新 しい 分 離 装 置 と して位 置 付 け られ た 背 景 に は,省 エ ネ ル ギー 分 離 法 の ほ か に,プ
ロセ ス の 連 続 性 や 集 中 制 御 性 も大 き な 要 因 で あ る.図4.16
に ク ロス フ ロ ー ろ過 と全 量 ろ過 の フ ロー パ ター ン を示 す. コ ロ イ ドや タ ンパ ク質 あ る い は高 分 子 溶 液 な ど を 膜 で 分 離 す る と,高 圧 側 の膜
(a) 膜 分 離 法(ク ロー ス フ ロー ろ過) 図4.16
膜 分 離 法(a)と
図4.17
(b) 従 来 の ろ過(デ ッ ドエ ン ドろ過;全 従 来 の ろ過(b)の
濃 度 分 極 モデ ル(UFは
ろ 過)
流体の流れ
変 化)
表 面 近 傍 に は 阻 止 され た物 質 の 濃 縮 が 起 こ り,濃 度 は極 端 に高 ま り,場 合 に よ っ て は そ の 溶 液 が 飽 和 濃 度 に な り,ゲ ル 化 を起 こ し,膜 表 面 に ゲ ル 層 を形 成 す る. この よ う な現 象 を濃 度 分 極(concentration 形 成 す る場 合 をゲ ル 分 極(gel
polarization)と
polarization)と
い い,特
にゲル層 を
い う.こ の 濃 度 分 極 は 透 過 流 束 や
阻 止 率 な ど に 直 接 影 響 を与 え,実 際 の 膜 分 離 プ ロ セ ス で は 膜 本 来 の性 能 と同 様 に 重 要 な 問 題 に な る.ゲ ル 濃度 は 溶 質 や 膜 の種 類 ま た 原 料 濃 度,供 給 速 度 や 圧 力 や
温 度 な ど の 操 作 条 件 な ど に 影 響 を 受 け る.濃
度 分 極 が 形 成 され た後 は 定 常 操作 が
可 能 に な る. い ま,操
作 圧pH[Pa],供
給 濃 度cF[mol
m−3]で 供 給 速 度uF[m
変 化 さ せ た と き の 濃 度 分 極 の 模 式 図 を 図4.17に と き,溶
質 の 透 過 流 束Js[mol
示 す.濃
s−1]だ け を
度 分 極 が 形 成 して い る
m−2 s−1]は 体 積 透 過 流 束Jυ[m3
m−2 s−1]と 濃 度 分
極 に よ る 拡 散 の 和 と し て 次 式 で 表 さ れ る.
(4.73)
濃 度 境 膜 内; 膜 透 過 後;
(4.74)
こ こ で,cは
=cp・Jυ
境 膜 内 の 溶 液 濃 度,cPは
透 過 液 濃 度 で あ り,xは
透 過 方 向座標 軸
で あ る.Jυ は 濃 度 分 極 に よ る 濃 度 境 膜 内 の 次 の 境 界 条 件 を 用 い て 解 くこ とが で き る. x=0;
c=cF
(4.75)
x=δ;
c=cM
(4.76)
こ こ で,δ は 濃 度 境 膜 厚 み,cMは
膜 表 面 に お け る溶 液 濃 度 で あ る.Jυ は 高 圧 側
か ら低 圧 側 に わ た っ て 一 定 とみ な し て よ く,境 膜 内 で積 分 して 次 式 を得 る.
(4.77) ここで k=D/δ
kは
物 質 移 動 係 数[m
る.ゲ
(4.78)
s−1]で あ り,Dは
ル 分 極 の 場 合 に は,式(4.76)の
図4.18
境 膜 内 の 溶 質 の 拡 散 係 数[m2 代 わ り に 式(4.79)を
卵 白ア ル ブ ミン水 溶 液 の透 過 流 束JVと
供 給 濃 度CFと
s−1]で あ
用 い,式(4.77)の
の 関係2)
代
わ り に 式(4.80)を x=δ;
得 る. c=cG
(4.79)
(4.80) 卵 白 ア ル ブ ミ ン(分 子 量45000)水
溶 液 の 濃 度 を10∼10000ppmの
た と き透 過 流 束Jυ
の 関 係 を,供
て 図4.18に
と供 給 濃 度cFと
示 す3).一
給 速 度uFを
範 囲 で変 え パ ラ メー ター に し
定 に な っ た と き の 傾 き が 物 質 移 動 係 数kで
束 し
た 接 片 濃 度 が(cG−cP)に
相 当 す る.す
算 す る こ と が で き る.ゲ
ル 分 極 モ デ ル が 成 立 す る 領 域 で は 透 過 流 束Jυ は 操 作 圧
に 直 接 影 響 を 受 け な い(4.3.4項 に は 物 質 移 動 係 数kを
な わ ち,こ
あ り,収
の 方 法 か ら ゲ ル 層 濃 度cGを
の 限 界 流 束 と溶 質 排 除 を 参 照).Jυ
大 き くす る 必 要 が あ る.kを
推
を大 き くす る
大 き くす る た め に はuFを
大
き く し て δ を小 さ くす る. 考 察16:図4.18に
お け る そ れ ぞ れ の 供 給 速 度 に 対 す る 物 質 移 動 係 数kを
求め
よ.
4.3.3
阻
UFやMFの が あ る.す
止
率
ろ 過 性 能 で 透 過 流 束 と 同 様 に 重 要 な 特 性 に 阻 止 率(rejection) な わ ち,膜
が 溶 質 を ど の 程 度 阻 止 す る か と い う 分 離 の 度 合 で,そ
義 は 濃 度 分 極 に よ り次 の2通
り の 方 法,す
を 基 準 と し た 真 の 阻 止 率(intrinsic か け 阻 止 率(observed
rejection)
rejection) Robsが
な わ ち 膜 表 面 濃 度cM(あ Rintと 原 料 濃 度cFを
あ り,そ
R の定
る い はcG) 基 準 と した見
れ ぞ れ 次 式 で 定 義 さ れ る(図4.
17参 照).
(4.81)
あ る い は
(4.82) し た が っ て 透 過 濃 度cPが0(純 度cFに
等 し く,分
の 間 に あ る.ま
溶 媒)の
完 全 分 離 の と きR=1,ま
離 が 全 く行 わ れ な い と きRobs=0と
たRint−Robs=cP{(cN−cF)/(cN・cF)}≧0と
な り,Rは な り,常
たcPが
供給 濃
一 般 に0と1 にRint≧Robs
で あ る. RintとRobsの
関 係 は 物 質 移 動 係kに
よ り,次
式 で 関 係 づ け る こ とが で き る.
(4.83) ま たkが 供 給 速 度uFと
次 式の関係
(4.84) に あ れ ば,式(4.83)は
次 の よ う に 変 形 で き る.こ
こ でa,bは
定 数 で あ る.
(4.85) 式(4.85)か
らln{(1−Robs)/Robs}とJv/uFbの
の 切 片 か らln{(1−Rins)/Rins}が 考 察17:見
求 め ら れ,真
関 係 は ほ ぼ 直 線 関 係 に あ り,そ の 阻 止 率 が 得 ら れ る.
か け の 阻 止 率 と 供 給 速 度 と の 関 係 式(4.85)か
ら,真
の 阻 止 率 を求
め る 図 を 示 せ.
4.3.4
限 界 流 束 と溶 質 排 除
水 の 透 過 流 束Jvは
操 作 圧 Δpに 比 例 す る(ダ ル シ ー(Darcy)の
法 則).
(4.86) こ こ で,kDは
透 過 係 数[m2]で
あ る.し か し酵 母 や タ ンパ ク質 や 高 分 子 な ど の水
溶 液 で は 少 し様 子 が 異 な る.図4.19に
ウ シ 血 清 ア ル ブ ミン(分 子 量65000)水
溶
液 の 透 過 流 束Jvと 操 作 圧 Δpと の 関 係 を 回 転 数 と 濃 度 を パ ラ メー ター に し て示 す.水
溶 液 の 場 合 は Δpが 小 さ い と きに はJvと
Δpは ほ ぼ 直 線 関 係 に あ る が,
Δpが 大 き くな る と,濃 度 が 濃 い ほ ど,ま た 回転 数 が 低 い ほ ど,jvは 小 さ く,よ り小 さ い Δpで 一 定 値 に 近 づ く.こ れ は 操 作 圧 Δpを 大 き くす る と,膜 に よ り阻
図4.19
透 過 流 束 と操 作 圧 との 関係(ウ シ血 清 ア ル ブ ミン-水 系)
止 さ れ る溶 質 の 速 度 も大 き くな り,濃 度 分 極 が 加 速 され,膜 表 面 に ゲ ル 層 が 形 成 し始 め る.圧 力 を さ ら に上 げ る とJυ は増 え る が,次 第 にΔpを 大 き く して もJυ は ほ とん ど変 わ らな くな る.こ の と きの 圧 力 を限 界圧 力,透 過 流 束 を限 界 流 束 と い う.限 界 圧 力 以 上 の圧 力 で操 作 して も,圧 力 に 見合 っ た厚 み の ゲ ル 層 が 形 成 さ れ,ゲ
ル 層 に よ る透 過 抵 抗 が 増 加 す る結 果,ゲ
ル-膜 間 界面 で の 圧 力 は変 わ らず,
Jυ は ほ ぼ 一 定 に な る.一 方 ゲ ル 層 を形 成 し な い場 合 で も濃 度 分 極 に よ る 浸 透 圧 の 効 果 に よ り限 界 流 束 が 存 在 す る との 報 告 が あ る.
4.3.5 浸
透
圧
膜 で 分 離 す る 物 質 が 分 子 オー ダ ま で 小 さ くな れ ば,そ
の溶液 に は浸透 圧 が生
じ,抵 抗 と して作 用 す る.海 水 と真 水 を半 透 膜 で仕 切 る と,濃 度 が 均 一 に な ろ う と して,溶
質 分 子 は 半 透 膜 を透 過 で き な い か ら,真 水 側 の 水 が 海 水 側 に 浸 透 し
て,海 水 の 濃 度 を薄 め よ う と作 用 す る.こ の 浸 透 流 に平 衡 な 力 が 浸 透 圧 で,浸 透 圧 π は希 薄 溶 液 に対 して 次 の フ ァ ン トホ ッフ(van't Hoff)の 式 で与 え られ る. π=cA・RT こ こで,cAは
(4.87)
溶 質Aの
モ ル 濃度 で,Rは
気 体 定 数,Tは
温 度 で あ る.浸 透 圧 は
溶 質 お よ び溶 媒 の種 類 に よ らず,濃 度 と温 度 だ け の 関数 で あ り,希 薄 理 想 溶 液 の 場 合(0.2mol l−1以 下)に 成 立 す る.電 解 質 で は フ ァ ン トホ ッ フ のi係 数 を用 い て,次 式 で 与 え られ る. π=i・cA・RT 例 え ば,希
薄NaCl水
溶 液 の 場 合,完
(4.88) 全 電 離 と考 え て,i=2と
お く.浸 透 圧 は
モ ル 濃 度 に 比例 す る の で,浸 透 圧 は 同 じ質 量 濃 度 の 溶 液 で は分 子 量 の小 さ い分 子 の 方 が 大 きい.実 在 溶液 で は 浸 透 係 数 φ を用 い て次 の よ うに 補 正 す る. π=φ ・i・cA・RT
(4.89)
タ ンパ ク質 や 高 分 子 の な か に は濃 度 が 高 くな れ ば,φ が 急 激 に 大 き くな る も の も あ る.ま
た透 過 流 束 を上 げ る た め,使
NF膜(反
用 目的 に 応 じ溶 質 分 子 も適 度 に 透 過 す る
射 係 数 σ<1)を 使 用 す る こ とが あ る.反 射 係 数 に つ い て は 次 項 を参 照
され た い. 浸 透 流 に 逆 ら っ て 溶 液 側 か ら溶 媒(水)を 取 り出 す 膜 分 離 法 を逆 浸 透(RO)法 とい う.RO法
は こ の浸 透 圧 が 透 過 の 抵 抗 に な り,操 作 圧 に は そ れ 以 上 の 圧 力 が
必 要 に な る.RO法
の操 作 圧 は 一 般 に 浸 透 圧 の2倍 程 度 に と る.
4.3.6
膜分離 の透過 モデル
透 過 モ デ ル に は 大 き く分 け て2つ
あ る.分 離 対 象 物 が 比 較 的 大 きいMFや
ゲ
ル が 形 成 しや す い 系 に 用 い る 抵 抗 モ デ ル と,分 離 対 象 物 が 比 較 的 小 さ いUFや ROに
用 い る現 象 論 モ デ ル で あ る.
a. 透 過 抵 抗 と透 過 抵 抗 モ デ ル 精 密 ろ 過(MF)は
分 離 対 象 物 が0.1μm以
上 と大 き く,透 過 流 束 は ゲ ル 抵 抗 が
支 配 的 で 抵 抗 モ デ ル で考 え られ る.限 外 ろ過(UF)は
分 離 対 象 物 が0.1μm以
下
と小 さ く,次 第 に 浸 透 圧 の 影 響 も現 れ て く る.膜 分 離 に お け る透 過 抵 抗 に は ① 膜 本 来 の 抵 抗RM,②
膜 細 孔 内 の 吸 着 と 目詰 ま り抵 抗RP,③
ル 層 に よ る抵 抗RG,④
浸透 圧 に よ る抵 抗 Δπ,⑤ 濃 度 分 極 に よ る境 膜 抵 抗RB,
⑥ 膜 の 圧 密 化 に よ る抵 抗,⑦
膜 の 劣 化 に よ る抵 抗 が あ る.MFの
分 子 水 溶 液 の ゲ ル を 形 成 しや す い 水 溶 液 で は ① の ほ か ②,③ が,UFやROで
膜 表 面 の 吸 着 とゲ
は ① の ほ か,④
透 過抵 抗 は高 が支 配的 で あ る
と ⑤ が 支 配 的 に な る.ま た ⑥,⑦
な要 素 が 強 く,不 可 逆 的 な もの で あ る.透 過 抵 抗RTを
は経 時 的
次 式 で定 義 す る.
(4.90) ここで RT=RM+RB+RG+RP
膜 抵 抗RMは
純 水 の 透 過 実 験 か ら求 め る こ とが で き る.RBは
こ とに よ り,RGは RPは
(4.91)
溶 液 を純 水 に す る
膜 表 面 を ス ポ ン ジ な どで 静 か に 洗 浄 す る こ と に よ り,ま た
薬 品 洗 浄 に よ り取 り除 くこ とが で き る か ら,そ れ ぞ れ の 透 過 抵 抗 を分 離 す
る こ とが で き る.こ の よ う な考 え方 を透 過 抵 抗 モ デル とい う. b. 現 象 論 的 モ デ ル 分 離 対 象 物 が 分 子 レ ベ ル ま で 小 さ く な る と,溶 の よ う な 系 は 現 象 論 的 モ デ ル で 解 析 さ れ る.溶 お よ び 溶 質 の 透 過 流 束Js[mol に はStavermanに
質 の 浸 透 圧 が 影 響 し て く る.こ
液 の 体 積 透 過 流 束Jv[m3
m−2 s−1]
m−2 s−1]は 非 平 衡 の 熱 力 学 か ら 導 出 さ れ,最
よ っ て 定 義 さ れ た 反 射 係 数 σ を 用 い て,次
終 的
式 で表 す こ とが で
き る. Jv=Lp(ΔP− Js=ω
Δ π+(1−
σΔπ) σ)Jvcs
こ こ で,σ は 溶 質 を 完 全 に 阻 止 す る理 想 的 半 透 膜 の場 合1,選
(4.92) (4.93)
択 性 が ま っ た くな
い と き0で,一
般 に0∼1の
係 数 で あ る.Csは
間 に あ る.ま
た,Lpは
純 水 透 過 係 数,ω
は 溶質 透 過
供 給 液 濃 度 と透 過 液 濃 度 と の 平 均 濃 度 で あ る.ROやUFの
膜 透 過 特 性 は こ の3つ
の ろ 過 係Lp,ω
お よ び σ で 一 義 的 に 決 ま る.詳
細 につ
い て は 成 書5)を 参 照 し て 頂 き た い.
4.3.7
膜 の 構 造,素
材 とモ ジ ュー ル
a. 膜構 造 と膜 素 材 UFやMFお
よ びROに
用 い られ る膜 の構 造 に は ① 均 質 膜,②
非 対 称 膜,お
よ び ③ 複 合 膜 が あ る.分 離 度 は 膜 厚 に ほ とん ど影 響 を受 け な い か ら,現 在 で は 透 過 流 束 を大 き くす るた め に ② ま たは ③ が 用 い られ,活 性 層 の薄 膜 化 が 積 極 的 に進 め られ て い る. 膜 素 材 は大 き く分 け て 酢 酸 セ ル ロ ー ス 系 と非 酢 酸 セ ル ロー ス系 とに 分 け る こ と が で き る.ま た 最 近UFやMFの
分 野 で も セ ラ ミッ ク 膜 や ガ ラ ス 膜 な ど の 無 機
分 離 膜 の 研 究 開 発 が 活 発 に 行 わ れ て い る.バ イ オ分 野 お け る メ ン ブ レ ン リア ク ター に も無 機 分 離 膜 の 応 用 が 期 待 され て い る. b. 膜 モ ジ ュ ー ル 膜 を分 離 装 置 と して 用 い る に は 膜 の モ ジ ュー ル化 が 必 要 で あ り,単 位 体 積 当 た りの 透 過 面 積 を 大 き くす る こ とや,メ ① 平 膜 型,②
ン テ ナ ン ス の 利 便 さな どの 観 点 か ら現 在
チ ュー ブ ラー(管 状)型,③
ホ ロー フ ァ イ バ ー(中 空 糸)型,④
パ イ ラ ル 型 の モ ジ ュー ル が 考 案 され て い る.図4.20に
図4.20
ス パ イ ラ ル 型 モ ジ ュ ー ル3)
ス
ス パ イ ラル 型 モ ジ ュー ル
を 示 す.
考 察18:膜
素 材 に は どの よ う な もの が あ るか,ま
た種 々 の 膜 分 離 技 術 と膜 素
材 との 関 係 を考 察 せ よ.
4.3.8
膜 に よ るガ ス 混 合 物 の分 離
空 気 か ら濃縮 酸素 を得 る酸 素 富 化 膜,天 然 ガ スか ら不 純 物 の 炭 酸 ガ ス を除 去 す る合 成 膜,反 応 プ ロセ スか ら生 成 物 の 水 素 を選 択 的 に 取 り除 く無機/金 属 膜 な ど, 最 近 で は ガ ス混 合 物 に つ い て も膜 の 特 徴 を生 か した 膜 分 離 法 が 用 い られ,種 分 野 で 応 用 研 究 が展 開 され て い る.具 体 的 な 応用 例 あ る い は研 究 例 を表4.4に
々の
す.こ
示
こ で は ガ ス 混合 物 の 膜 に よ る分 離 の代 表 的 な2つ の 分 離 メ カ ニ ズ ム につ い
て 説 明 す る.1つ
は微 細 孔 膜 に適 応 す る ク ヌ ッセ ン(Knudsen)拡
散 に 代 表 され る
細 孔 モ デ ル と,も う一 方 は 高 分 子 な どの 非 多孔 質 膜 に 適 用 す る溶 解 拡 散 モ デル で あ る. 表4.4
ガ ス分 離 膜 の 応 用例
a. 多 孔 質 膜 に お け る ク ヌ ッセ ン拡 散 成 分iの 気 体 の 平均 速 度 は 式(4.72)で る.ク
表 され,分
子 量Miの
平 方根 に反比例 す
ヌ ッセ ン拡 散 法 は こ の現 象 を細 孔 膜 で利 用 して 分 離 す る もの で あ る.分 子
の平 均 自由 行 程 λ よ り小 さ い 直 径dpの
細 孔 を もつ 膜 の 細 孔 内 の 分 子 運 動 は分 子
ど う しが衝 突 す る よ り壁 に 衝 突 す る割 合 が 多 い の で,こ の 効 果 を発 現 で き る.す な わ ち,ク
ヌ ッ セ ン数KnをKn=λ/dpで
定 義 し,Kn≫1の
と き,多 孔 質 膜 内
の 成 分iの 透 過 流 束 は 次 式 で 与 え られ る.
(4.94) (4.95) こ こ で,kpは
多 孔 質 膜 の 透 過 係 数[mol
細 孔 直径[m],τ
は迷 路 係 数[―],Rは
m−1 s−1Pa−1],ε は 空 間 率[―],dpは 気 体 定 数[J mol−1 K−1],Miは 膜 間 の 圧 力 差[Pa],δ
気体 の分
子 量[g mol−1],Tは
絶 対 温 度[K],Δpは
は 膜 厚[m]で
あ る.透 過 係kpは
分 子 量 の 平 方 根 に 反 比 例 す るか ら分 子 量 の 小 さ い気 体 ほ ど
よ く透 過 す る.実 際 に は,多 孔 質 膜 は 細 孔 径 分 布 を も ち,ま た細 孔 内 で は 物 理 ・ 化 学 吸 着 が起 き るか ら ク ヌ ッ セ ン拡 散 の ほ か に表 面 拡 散 や 毛 管 凝 縮 が 起 こ る.し か し,温 度 が 高 い 場 合,水 的 と考 え て よい.ク
素 や 窒 素 な どの 非 凝 縮 性 ガ ス は ク ヌ ッセ ン拡 散 が 支 配
ヌ ッセ ン拡 散 に 従 え ば,例
合 ガ ス を 多 孔 質(Vycor)ガ の透 過 係 数 の 比 は
ラ ス 膜(dp=4nm)に
え ば 水 素 と窒 素 の50mol%の
混
透 過 す れ ば,窒 素 に 対 す る水 素
に な る の で,透 過 側 に は 約79%の
水 素 が 得 られ る.
b. 非 多 孔 質 膜 に対 す る膜 透 過 シ リ コン膜 の よ うな非 多 孔 質 膜 の 高 分 子 膜 の 場 合,気 体 分 子 は膜 に 溶 け,膜
内
を拡 散 す る.混 合 ガ ス は 各 成 分 の 溶解 拡 散 の 速 度 差 で分 離 され る.す な わ ち,膜 内 で フ ィ ッ ク(Fick)の
拡 散 を考 え る と次 式 が 成 立 す る.
(4.96) ここで ci*=Sici
(4.97)
(4.98) ci*,ciは
成 分iの
分 配 係 数,δ あ る.A,B2成
そ れ ぞ れ 膜 内 濃 度,溶
は 膜 厚 み で あ る.ま
たPi[mol
分 系 で 透 過(2次)側
の 透 過 係 数 の 比 で 与 え ら れ る.す の モ ル 分 率 を そ れ ぞ れxお
液 濃 度 で あ り,Si[―]は
よ びyと
溶 解度 または
m−2 s−1 Pa−1]は 成 分iの
圧 力 が 真 空 に 近 い 場 合,分 な わ ち,A成
分 の 高 圧(1次)側
透 過係 数 で
離 度 αは 各 成 分 お よ び2次
側
す る と,
(4.99) (4.100)
(4.101) (4.102) こ こ で,pⅠ お よ びpⅡ は そ れ ぞ れ1次 側 お よ び2次 側 の 全 圧 で あ る. 窒 素 や 酸 素 な ど の無 機 成 分 に 対 し,ベ ン ゼ ンや トル エ ン な どの 有 機 成 分 の透 過 係 数 の 比 が大 き い含 フ ッ素 ポ リイ ミ ド膜 はVOC
(volatile organic compound)を
高 度 に 分 離 す る こ とが で き るの で,こ の よ うな 膜 を使 っ た分 離 法 が 環 境 保 全 対 策 技 術 と して 注 目 され て い る.ま た水 素 を特 異 的 に 透 過 す るパ ラ ジ ウム 膜 も溶解 拡 散 モ デ ル と考 え られ,水 素 透 過 流 束JHは
次 式 で表 され る.
(4.103) こ こ で,kHは
パ ラ ジ ウ ム 膜 の透 過 係 数,δ は パ ラ ジ ウ ム 膜 厚 み で,pHⅠ
は そ れ ぞ れ 水 素 の1次 側 と2次 側 の 分 圧 で あ る.パ
とpHⅡ
ラ ジ ウム 膜 は水 素 を特 異 的 に
透 過 す る こ とか ら,超 純 水 素 を生 成 す る製 造 プ ロ セ ス と して 実 用 化 され て い る. 禍 を転 じて福 と為 す 膜 を 扱 う上 でや っか い な 問 題 の 一 つ は 膜 の 目詰 りで あ る.こ れ は 阻 止 す る 溶質 が 膜 の 表 面 で ゲ ル層 を形 成 し,膜 の 目 を 詰 ま らせ,透
過 流 量の減 少や透 過濃 度 の変動
を 引 き起 こ す も の で あ る.こ の た め 目詰 り を な くす る い ろ い ろ な 工 夫 や,そ を解 明 す る た め の い ろ い ろ モ デ ル が 提 案 さ れ て い る.し
か し,こ
の現 象
の 現 象 を逆 さ に
と っ て 積 極 的 に 活 用 す る試 み が あ る. ゲ ル 層 は 溶 液 の透 過 流 量 に 対 して は 「抵 抗 」 と し て 作 用 す る が,溶 あ た か も別 の膜 の よ う に 作 用 す る効 果 が あ る.こ い う.溶 質 排 除 に は2通
りの ケ ー ス が あ る.1つ
が 同 じ溶質 を排 除 す る 自己 排 除 型 の 場 合 と,も 質,例
は ゲル分 極 に よ ってで き たゲル 層 う1つ は 濃 縮 し た い 溶 質 と は 別 の 物
え ば 金 属 コ ロ イ ドな ど を溶 液 の 中 入 れ,コ
に 形 成 させ,本 米 国Oak
質 を 排 除 し,
の こ と を ゲ ル 層 に よ る溶 質 排 除 と
ロ イ ドの ゲ ル 層 を膜 表 面 に積 極 的
来 の 溶 液 を濃 縮 す る もの で あ り,こ れ を ダ イ ナ ミ ッ ク膜 と称 す る.
Ridge国
立 原 子 力 研 究 所 で 開 発 さ れ た ダ イ ナ ミ ッ ク膜 は,Zr塩
イ オ ン コ ン プ レ ッ ク ス 等 を 用 い た 新 しい 膜?で,膜 透 過 流 束 の 制 御 法 と して 注 目 さ れ て い る.禍
やポ リ
の 有 効 細 孔 径 の 調 整 法 あ るい は
を転 じて 福 と為 せ る か.
膜 と人 工臓器 膜 分 離 技 術 が 化 学 産 業 や 食 品,環 化 さ れ て い る.そ
れ に伴 っ て,膜
境 産 業 な ど 多 くの 分 野 で 開 発 さ れ,そ
の 使 用 量 も年 々 増 え て い る.例
え ば,膜
して実用 に よる海
水 の 淡 水 化 は,従
来 か ら の蒸 留 法 に代 わ る 勢 い で 増 えて い る.ま
る新 し い 食 品 な どが 開 発 さ れ,新 計 に よれ ば 膜 の 売 上 高 の75%が 1912年Abelら
た,膜
の利用 に よ
し い 分 野 で の 需 要 も増 え て い る.し か し膜 利 用 統 医 療 分 野 で,そ
に よ っ て 透 析 膜 を 使 っ たin
の 大 部 分 が 透 析 膜 と い う. vitroで の 人 工 透 析 に 成 功 して 以 来,
人 工 臓 器 と そ の 治 療 法 の 開 発 と発 展 は 目覚 し い も の が あ る.血 液 透 析 の 原 理 を 図 に 示 す.血
液 と透 析 液(還 流 液)を 透 析 膜 で仕 切 る と,両 液 間 で 濃 度 の 高 い 成 分 が 低
い 側 に 拡 散 移 動 す る.す
な わ ち老 廃 物 の 尿 素,ク
レ ア チ ニ ンや 中分 子 量 毒 性物 質 は
血 液 側 か ら透 析 液 側 に拡 散 し,除 去 さ れ る.透 析 膜 は 数 十Aの
細 孔 径 の微 細 孔 を有
し,溶 液 や 水 分 を透 過 させ るが,こ
の微 小 孔 を透 過 で き な い大 き な 分 子 の タ ン パ ク
質 や 赤 血 球 な ど は 血 液 中 に残 る.し
た が っ て,透
析 膜 の 特 性 や 透 析 液 の成 分 を 調 整
す る こ とに よ り生 体 に 必 要 な 成 分 を補 給 し,血 液 中 の 有 害 成 分 を 除 去 す る こ とが で き る.最
近 よ く使 わ れ る 透 析 膜 の モ ジ ュ ー ル は ホ ロー フ ァ イ バ ー(中 空 糸)モ
ジ ュー ル で,再
生 セ ル ロ ー ス で つ く られ た 直 径 約225μmの
に し て ハ ウ ジ ン グ さ れ た 透 析 器(ダ イ ア ラ イ ザ ー)で あ る.そ ∼20μm程
糸 状 膜1万 の1本
度 で あ り血 液 は ふ つ う ,手 首 の 動 脈 か ら採 り出 し,ダ
本程 度 が束
の 膜 の 厚 は10 イア ライザ ー で
再 生 処 理 し,静 脈 に 戻 す. 日本 の 透 析 患 者 は 平 成10年
の 時 点 で18万
人 を 越 し,毎 年8∼9千
え て お り,ダ イ ア ラ イ ザ ー は 延 命 に 大 き く貢 献 し て い る.い
人 の割合 で増
まや膜 は人工 腎臓や 人
工 血 管 な ど医 療 分 野 に お い て な くて は な ら な い装 置 ・素 材 に な っ て い る.日 本 は こ の 膜 製 造 技 術 に お い て 世 界 の トッ プ ク ラ ス に あ る.こ の 技 術 を 支 え て い る の は 日本 が 過 去 に 培 っ た 製 糸 や 紡 糸 技 術 で あ る.膜
製 造 メー カ の 多 くが 繊 維 系 の 会 社 で あ る
こ とか ら も裏 づ け られ る.
血液透析 の原理
【 演 習問題 】 4.1 p,Tが
一 定 の と き,混 合 物 の ギ ブ ス 関 数Gが
で 表 せ る こ と,ま
分iの 気 体 の 化 学 ポ テ ン シ ャ ル μiが μi=μi*+RTlnpi/p0で こ こ で 添 え字[*]は
純 物 質,ま
4.2 純 物 質 が 入 っ て い る2つ
た[0]は
標 準 状 態 を示 す.
の 容 器 が コ ッ ク の つ い た 細 い 短 い 管 で 結 ば れ て い る.一
方 の 容 器 に は 酸 素 が1.0atm,25℃
で2モ
素 が4.0atm,25℃
で6モ
ギ ブ ス 関 数⊿Gmixは
い く ら に な る か.ま
4.3 相 対 揮 発 度 α が3の2成
ル 入 っ て お り,も
ル 入 っ て い る.コ
は 最 低 どれ ほ ど の エ ネ ル ギ ーWminが
出 液,お
た成
表 せ る こ と を 示 せ.
う一 方 の 容 器 に は 窒
ッ ク を 開 き,均 一 に な る と,混 合 の
た この混合 物 を元 の純 物質 に分離 す るに
必 要 か.
分 系理 想 溶 液 が あ る.こ の 溶 液 を 全 還 流 で 操 作 し て,留
よ び 缶 出 液 の 低 沸 組 成 の 濃 度 が そ れ ぞ れ0.9お
よ び0.1モ
ル 分 率 で 得 た.
この と き 蒸 留 塔 の 最 小 理 論 段 数 は い く らに な るか 4.4 相 対 揮 発 度 αが2.5の2成 R=2で
分 系 理 想 溶 液 を 段 型 連 続 蒸 留 塔 で1atmの
精 留 し て い る.モ
ル 分 率0.45の
原 料 をq=0.5の
量 で供 給 し て い る.塔 頂 よ り留 出 す る液 の モ ル 分 率 は0.95,缶 0.05で あ る.マ
①a
ッケ ブ-シ ー ル 法 を用 い て,次
留 出 流 量Dお
よ び 缶 出 流 量Wは
b 塔 内 下 降 液 の 流 量L(濃
c 塔 内 上 昇 蒸 気 の 流 量V(濃
②a
縮 部)お よ びV′(回 収 部)は い く らか.
気 液 平 衡 線 の 式 を 書 き,作
図せ よ. 図せ よ.
c q線 の 式 を 求 め,作
図 せ よ.
d 回 収 部 の 操 作 線 を 求 め,作 ③ 上 か ら3段
④ 最 小 理 論 段数Nminは
⑤ 最 小 還 流 比Rminは
4.5 20mol%の
図せ よ.
目 の液 相 お よ び 気 相 の 組 成 を求 め よ. い く らか い くら か
メ タ ノ ー ル水 溶 液 を 蒸 留 して,98mol%の
で 得 た い.原
メ タ ノー ル を 回 収 率95%
料 は 沸 点 液 で 供 給 す る も の と して,次
の 問 に 答 え よ.た
ノー ル-水 系 の 気 液 平 衡 関 係 は 次 の とお りで あ る(x,yは 相,気
出液 の モ ル分率 は
の 問 い に 答 え よ.
い く らか.
b 濃 縮 部 の 操 作 線 を 求 め,作
h−1の 流
縮 部)お よびL′(回 収 部)は い く らか.
下 に還 流 比
状 態 で400mol
だ しメタ
そ れ ぞ れ メ タ ノー ル の 液
相 に お け るmol%).
x:5.00
y:26.90
10.00
① 缶 出 液 の メ タ ノー ル の 濃 度 は い く らか.
② 最 小 理 論 段 数 は い く らか.
③ 最 小 還 流 比 は い く らか.
④ 還 流 比 を最 小 還 流 比 の2倍
41.77
操 作 線 の 式,ま
20.00 57.94
たcそ
30.00 66.55
40.20 73.00
54.45
69.75
80.00
に す る と き,a濃
の 理 論 段 数 を求 め よ.
87.00
81.00 92.00
90.35
95.20
6.00
98.00
縮 部 の 操 作 線 の 式,b回
収部 の
4.6 1.5%のNH3を
含 む20℃,1atmの
空 気(流 量1300mol
h−1の フ レ ッ シ ュ な 水 で 向 流 接 触 させ,NH3の96%を 面 積 を0.5m2と 0.75xで
し,次 の 問 い に 答 え よ.た
h−1)を,流
量3300mol
吸 収 し た い.吸
だ し,NH3-H2O系
収塔 の 断
の 気 液 平 衡 はy=
表 せ る もの とす る.
① 吸 収 塔 の 出 口液 濃 度xBと
② 総 括 物 質 移 動 単 位 数NOGを
③ HOG=0.7mと
4.7 SO2を10%含
出 口 ア ン モ ニ ア 濃 度yTを
求 め よ.
求 め よ.
し て,所 要 理 論 塔 高 さZを む 工 業 排 ガ ス25m3
求 め よ.
h−1を 水 で 洗 浄 し てSO2の90%を
し,塔 底 よ り排 出 す る吸 収 液 の 濃 度 を0.002%に
吸収除去
す る吸 収 塔 を 設 計 し た い.吸
液 の 流 量 と 吸 収 塔 の 高 さ を次 の 手 順 で 求 め る.た だ し 吸 収 塔 の 直 径 は1m,操 は30℃,大
気 圧 で 行 う も の と し,SO2-水
の とす る.ま
たHG=0.7m,HL=0.5mと
① 出 口ガ ス 濃 度yTを
② 液 流 量Lは
③ 操 作 線 の 式 を求 め よ.
④ ガ ス 側 基 準 移 動 単 位 数NGを
⑤ 塔 の 高 さZは
4.8 20℃
求 め よ.
い く ら か.
図 積 分 と解 析 法 か ら 求 め よ.
い く らか.
程 λは い く らか 調 べ よ.ま 素70%か
た 水 素 の1atm,20℃
ら な る200℃
ク ヌ ッセ ン 拡 散 と考 え て よ い.ま 4.10 海 水 を3.wt%のNaCl水 圧 を 計 算 せ よ.ま
の 混 合 ガ ス を細 孔 径4nmの
溶 液 とみ な し,φ=0.92と
過 メカニ ズ ムは
し て,20℃
の 海水 の 浸透
た 同 じ濃 度 の シ ョ糖 の 浸 透 圧 を計 算 せ よ.
m−3の ウ シ 血 清 ア ル ブ ミ ン 水 溶 液 を 有 効 膜 面 積10m2のUFモ
ン パ ク 質 水 溶 液 のUF膜
数 ω は0.323×10−9mol/sNで 量Q[m3
の 場 合,透
多孔 質 ガ ラ ス を
た 透 過 側 は 十 分 減 圧 さ れ て い る もの とす る.
ジュ ー ル を 用 い て 濃 縮 し た い.UF膜 Pa−1,タ
に お け る 平 均 自 由行
た 減 圧 され る と λは ど う な るか.
使 っ て 分 離 す る と,透 過 側 の ガ ス 組 成 は い く らか.こ
4.11 濃 度100mol
作
与 え られ る も
す る.
の 水 素 の 平 均 速 度 を求 め よ.ま
4.9 水 素30%窒
系 の 溶 解 度 はy=40xで
収
s−1]と阻 止 率R[―]を
浸 透 圧 は 無 視 して よ い.
の 純 水 透 過 係 数LPは3.0×10−5m
に 対 す る 反 射 係 数 σは0.85お
あ る.0.2MPaの 求 め よ.た
s−1
よ び溶質透 過 係
操 作 圧 で 運 転 す る と き,透 過 流 だ し水 溶 液 は25℃
で 十 分 攪 拌 され,
5 反
応
工
学
5.1 均 一 系 反 応 に お け る反 応 速 度 論
反 応 速 度(reaction
rate)は,「
単 位 時 間,単
学 反 応 が 進 行 し た か 」で 表 さ れ,化 は,気
相,液
学 結 合 の 組 み 換 え の 速 さ を 意 味 す る.本
節 で
相 の い ず れ か の 単 一 相 で 等 温 条 件 下 で 行 わ れ る化 学 反 応 に つ い て反
応 速 度 論(reaction
kinetics)を
展 開 す る.単
を 一 括 し て 均 一 系 反 応(homogeneous
5.1.1
位 容 積 当 た りに ど れ だ け の 量 の 化
反
応
速
一 相 内 で 起 こ る 気 相 反 応,液
reaction)と
相 反応
呼 ぶ.
度
す べ て の 化 学 反 応 は 熱 力 学 的 に は 可 逆 的 で あ る が,反 反 応 と 不 可 逆 反 応 と に 区 別 さ れ る.可
応 速 度 を 扱 う上 で は 可 逆
逆 反 応(reversible
reaction)と
は,正
反応
と逆 反 応 の 反 応 速 度 の 差 で 反 応 全 体 の 速 度 を 表 せ る 平 衡 反 応 の こ と で あ り,不 逆 反 応(irreversible
reaction)と
は,化
可
学 平 衡 が 著 し く生 成 系 に 片 寄 っ て い る た
め に 逆 反 応 の 反 応 速 度 を 無 視 で き る 反 応 の こ と で あ る.反
応 速 度 論 で は,反
応原
系 と 生 成 系 と が 平 衡 状 態 に 達 す る 前 の 非 平 衡 状 態 に お け る 反 応 速 度 を扱 う. 均 一 系 反 応 の 反 応 速 度 を 定 量 化 す る に は,特
定 の 成 分 の 単 位 容 積 当 た りの 生 成
速 度 ま た は 消 失 速 度 を 用 い る.注
目 し た 成 分iの
に 成 分iの
関 す る微 分 で 表 さ れ る.反
濃 度Ciの
反 応 時 間tに
[(mol)/(volume)(time)]で
あ り,単
位 は[mol
反 応 速 度riは,式(5.1)の 応 速 度riの
よ う 次元 は
dm−3 h−1]な ど で あ る.
(5.1) 均 一 系 の 可 逆 反 応
に つ い て 考 え る と き,一 般 に 反 応 物A
図5.1
と生 成 物Cの
濃 度CA,CCの
反 応 物 お よび 生 成 物 の 濃 度 の時 間変 化
経 時 変 化 は 図5.1の
よ うに な り,曲 線 の 勾 配 で表 さ
れ る 反 応 速 度 は 時 間 と と も に変 化 す る(CA0はAの
初 濃 度).
化 学 反 応 の 量 論 的 関係 を考 慮 す る と,こ の反 応 の 反 応 速 度rは に 表 さ れ る.rA,rBは
式(5.2)の
よう
消 失 速 度 で あ るの で負 の値 で あ る.
(5.2)
5.1.2 2段
反 応
速
度
式
階 以 上 の 複 雑 な 反 応 機 構 を 経 て 進 行 す る 化 学 反 応 を 複 合 反 応(complex
reaction)と
い い,こ
の 各 段 階 を 素 反 応(elementary
反 応 だ け で 表 さ れ る 化 学 反 応 を 単 一 反 応(single 化 学 反 応A→Bが Aの
濃 度CAに
tion
rate
た,こ
の 反 応 をCAに
い い,kの 対 して1次
aA+bB→cC+dDで
表 さ れ る.比
例 定 数kを
値 は 反 応 系 と 反 応 温 度Tだ で あ る1次
反 応(first
order
い う.ま
い う. 応 速 度rは
反 応物
反 応 速 度 定 数(reac け に 依 存 す る.ま reaction)と
い う.
表 さ れ る単 一 反 応 ま た は 複 合 反 応 を 構 成 す る1つ 反 応(右
向 き)の 反 応 速 度 式 を 式(5.3)の
た,素
の素 反
よ うに一 般 化 で き る.
r=k(CA)a(CB)b
(5 .3)
logr=logk+alogCA+blogCB
(5.4)
こ の と き,こ (a+b)次
reaction)と
単 一 反 応 で 不 可 逆 的 に 進 行 す る 場 合,反
比 例 し,r=kCAと
constant)と
応 に つ い て,正
reaction)と
の 反 応 は 成 分Aに
関 し てa次,成
の 反 応 で あ る と い う.式(5.3)の
分Bに
関 し てb次,全
体 と して
よ うに 反 応 速 度 を 反 応 原 系 の 濃 度 の
ベ キ数 の 連 乗 積 で 表 す こ と をベ キ数 表 現 とい い,そ
の 速 度 式 をベ キ数 表 現 式 とい
う. 複 合 反 応 で は,反 応 全 体 の 反 応 速 度 式 は 各 素 反 応 の 反 応 速 度 式 を考 慮 して組 み 立 て な け れ ば な ら な い.複 合 反 応 を構 成 す る一 連 の素 反 応 群 の な か で 反 応 速 度 が 著 し く小 さ い素 反 応 が あ る と き,化 学 反 応 全 体 の 反 応 速 度 は そ の素 反 応 の 反 応速 度 に依 存 し,他 の 素 反 応 は い ず れ も平 衡 状 態 に あ る と仮 定 で き る.こ の よ うに化 学 反 応 全 体 の 反 応 速 度 を支 配 す る素 反 応 を化 学 反 応 の 律 速 段 階(rate-determin ing step)と い う.以 下,平
衡 状 態 を記 号〓
で,律 速 段 階 を記 号〓 で 表 す.
【例 題5.1】 均 一 系 可逆 反 応
が,次
の よ う な素 反 応 ①,② か ら
な り,素 反 応 ① を律 速 段 階 と仮 定 で き る場 合 に つ い て,反 を 各 成 分 濃 度,平
衡 定 数,速
応 全 体 の 反 応 速 度r
度 定 数 を 用 い て 表 せ.
素 反応 ①
(平 衡 定数K1,正,逆
反 応 の 速 度 定数k1,k1′)
素 反応 ②
(平 衡 定数K2,正,逆
反 応 の 速 度 定 数k2,k2′)
解. 素 反 応 ①,② の正 反 応(右 向 き)の 速 度 は,そ れ ぞ れ 反 応 糸 の 濃 皮 の べ キ 数 表 現 式 でr1=k1CB, る の で,反
と表 せ る.ま た,素
応 全 体 の 反 応 速 度rは
反応 ① が律 速段 階 であ
① の 正 反 応 と逆 反 応 の 速 度 差 に 等 し く,
(5.5) と表 せ る.中 間体B′ の 濃 度CB′ は 測 定 で き な い の で,他 して 消 去 す る.素
と な る.こ ば,反
反 応 ② は 平 衡 状 態 と仮 定 で き る の で,質 量 作 用 の 法 則 か ら,
れ を 式(5.5)に
代 入 し て,
の 関 係 を 使 って 式 を 変 形 す れ
応 速 度 式 は 次 式 で 表 さ れ る.
5.1.3
反 応 速 度 定 数 の 温度 依 存 性
反 応 速 度 は 反 応 温 度 に 大 き く依 存 す る.反 係 は,ア
の 成 分 の 濃 度 項 で表 現
レ ニ ウ ス(Arrhenius)の
応 速 度 定kと
式 と 呼 ば れ る 式(5.6),(5.7)で
反 応 温 度Tと
の関
表 さ れ る.
(5.6)
図5.2
ア レ ニ ウ ス プ ロ ッ ト
(5.7) こ こ で,Aは (apparent
頻 度 因 子(frequency activation
energy)で
な い の で,式(5.7)のln 5.2の
factor),
Aは
よ う にlnk−1/Tプ
あ る.頻
度 因 子Aは
反 応 温 度 に は 大 き く依 存 し
ロ ッ ト を 作 成 し,直
見 か け の 活 性 化 エ ネ ル ギ ーEの
ギ ーEの
見 か けの活 性 化 エネ ル ギー
定 数 と み な す こ と が で き る.こ
ル ギ ー の 値 を 求 め る こ と が で き る.気
反 応 速 度 定数kが
Eは
線 の 傾 きか ら見 か け の 活 性 化 エ ネ
体 定 数Rに8.314J
単 位 は[J
mol−1]で
値 は,多
ジ カ ル 反 応 な ど で は10kJ
え ば,E≒50kJmol−1の
反 応 の 場 合,300K付
が る とkは
5.1.4
約2倍
かけ の活性 化 エネ ル
mol−1程
mol−1の
度 の こ と も あ る.例
近 の 反 応 温 度 で,反
応 温 度 が10
に な る.
反 応 器 の 種 類 と反 応 流 体 の流 れ 形 式
反 応 器 の 種 類 を 反 応 流 体 の 流 れ 形 式 に よ っ て,次 る.代
と れ ば,
求 ま る.
くの 化 学 反 応 で40∼250kJ
範 囲 に あ る と い わ れ,ラ
K上
mol−1 K−1を
ど の 程 度 の 温 度 依 存 性 を 示 す か は,見
大 小 に よ り決 ま る.Eの
の こ と か ら,図
表 的 な 反 応 装 置 の 概 略 図 を 図5.3に
① 回 分 式(batch
の よ うに 分 類 す る こ とが で き
示 す.
system)
② 半 回 分 式(semi-batch
system)
③ 連 続 流 通 式(continuous-flow a
タ ン ク 型 反 応 器(tank-type
b
管 型 反 応 器(tubular-type
system) reactor)(槽
型 と も 呼 ば れ る)
reactor)
こ れ ら の 反 応 器 内 に お け る 反 応 流 体 の 流 れ 形 式 に は,完
全 混 合 流 れ(complete
(2)半回分式
(1)回 分 式
(3a)連続流 通式
図5.3
mixing
flow)と
ピス トン流 れ(piston
で は完 全 混 合 流 れ とな り,(3b)の
(3b)連続 流通 式
反 応装 置 の概 念 図
flow)と が あ る.(1),(2),(3a)の
反応器
反 応 器 で は ピス トン流 れ とな る.
こ れ らの さ ま ざ まな 形 式 の 反 応器 が,目 的 や 規 模 な ど に よ り選 択 され る.一 般 に 高価 な 製 品(医 薬 品,染 料 な ど)の 小 量 規 模 の 生 産 に は 回分 式 反 応 器 が 使 わ れ る.回 分 式 装 置 は,建 設 費 が 安 く,使 用 の 融 通 性 が 高 い こ とが 利 点 で あ る.半 回 分 式 装 置 は,反 応 に 関 与 す る1成 分 の 供 給 速 度 を制 御 す る こ とに よ り反 応 温 度 の 制 御 が 可 能 で あ る.一 方,安 価 な 製 品 を大 規 模 に工 業 生 産 す る場 合 に は,連 続 流 通 式 の装 置 が 使 用 さ れ る.
5.1.5
微 分 法 に よ る反 応 速 度 解 析
微 分 法 と は,実
験 に よ り注 目 す る 成 分 に つ い て 濃 度-時 間(あ
間)曲 線 を 作 成 し,こ
る い は 転 化 率-時
の 曲 線 上 の 任 意 の 時 間 に お け る 勾 配 か ら,反
と し て 求 め る 方 法 で あ る.微
分 法 で は,曲
応 速 度 を数 値
線 の勾 配 を図 上 微 分 で 求 め る際 に実 験
者 に よ り個 人 差 が 生 じや す い. a. 回 分 式 反 応 装 置 の 場 合 回 分 式 撹 拌 タ ン ク 型 反 応 装 置(図5.3(1))でA+B→C+Dの り扱 う と き,反
応 速 度(rAま
し て 求 め ら れ る.式(5.8)の ni,圧
力Piを
た はrC)は,図5.1の
変 数 と し て も 表 せ る の で,こ
定 義 さ れ る.
転 化 率xi,モ
ル数
れ ら の 変 数 の 時 間 変 化 の プ ロ ッ トか
化 率(conversion)と
応 物 質 の 反 応 し た 割 合 を 示 し,例
(CA0−CA)/CA0=1−CA/CA0と
濃 度-時 間 曲 線 を 図 上 で 微 分
よ う に 反 応 速 度 は 注 目 成 分iの
ら も 反 応 速 度 を 求 め る こ と が で き る.転 ば れ,反
よ う な 反 応 を取
え ば,成
分Aの
は,反
応 率 と も呼
転 化 率xAは,xA=
(5.8)
CA0はAの
初 濃 度,nA0はAの
反 応 開 始 時 の モ ル 数,Vrは
微 分 法 で 求 め た 速 度 デ ー タ か ら 反 応 次 数 を 決 定 し,反 で き る.Bの
初 濃 度CB0を
反 応 を 行 な い,各 (5.4)に
実 験 のt=0に
た は 過 剰)に
値 は,整
応 機 構 を 推 測 す る こ とが
してCA0を
い くつ か 変 化 させ て
お け る 初 期 反 応 速 度rA0を
し た が っ てlogrA0-logCA0プ
る(初 速 度 法).同 a,bの
一 定(ま
反 応 器 容 積 で あ る.
微 分 法 で 求 め る.式
ロ ッ トを 作 成 す れ ば 傾 き が 反 応 次aと
様 に し て 反 応 次bも
数 と は 限 らず 小 数,負
求 め ら れ る.実 の 数,0の
験 的 に求 ま る 反 応 次 数
こ と も あ る.ま
た,反
範 囲 が 広 い と き に は べ キ 数 値 を一 定 に で き な い こ と も あ り,こ 応 条 件 範 囲 を 区 切 っ て 取 り扱 う.ベ
な
応条件 の
の よ うな場 合 は 反
キ 数 値 が 整 数 に な ら な い と き,こ
の 反 応 は複
合 反 応 で あ る 可 能 性 が 高 い. 【 例 題5.2】
塩 化 ベ ン ゼ ン ジ ア ゾ ニ ウ ム の 分 解 反 応(C6H5N2Cl→C6H5Cl
+N2)をC6H5N2Clの た と こ ろ,発
初 濃 度C0=100mmol
生 し たN2量
よ う に な っ た.こ
dm−3と
か ら 反 応 時 間tに
し て 反 応 温 度50℃
お け るC6H5N2Clの
の 結 果 を 微 分 法 に よ り解 析 し て,反
で行 っ
転 化 率xは
応 次数n,反
次 の
応 速 度 定 数k
を 求 め よ.
解. C=C0(1−x)よ 任 意 のtに
り,図5.1と
同 様 のC6H5N2Cl濃
お け る 傾 き か ら 反 応 速 度r(=dC/dt)を
こ れ よ りC,rの
対 数 を 計 算 し た 後,logr-logCグ
logr=logk+nlogC(式(5.4))を と 傾 き よ り,n=0.98,k=0.072min−1が
利 用 し て,グ 求 ま る.
度C-t曲
線 を 描 き,
次 の よ う に 求 め る.
ラ フ を作 成 す る(図5.4).
ラ フ のy切
片(logk=−1.14)
図5.4
logr-logCプ
図5.5
ロ ッ ト
連 続 流 通 式 タ ン ク型 反 応 器 の モデ ル 図
b. 連 続 流 通 式 タ ン ク型 反応 器 の 場 合 図5.5の
連 続 流 通 式 撹 拌 タ ン ク型 反 応 器 で は,反
応器 に一 定 速 度 で 反 応 物 の 供
給 と生 成 物 を含 む 反 応 溶 液 の 排 出 が 行 わ れ る.反 応 器 内 の 流 れ 型式 は 完全 混合 流 れ と して よい 場 合 が 多 く,反 応 を始 め て しば ら くす る と,反 応 速 度 と反 応 器 内 お よび 排 出 され る溶 液 中 の各 成 分 濃 度 は一 定 に な る.こ の 状 態 を定 常 状 態 とい う. 定 常 状 態 で は 反 応 速 度 は 一 定 で あ る の で,微 分 を と る操 作 を しな くて も反 応 速 度 を数 値 と して 簡 単 に求 め られ る. 単 純 な 反 応A→Bに
つ い て,原 料 流 体 中 の 成 分Aの
応 器 か ら流 出 す る溶 液 中 のAの 流体 の 容 積 流 量F′[m3
濃 度CA[mol
h−1],反 応 速 度rA[mol
濃 度CA0[mol
m−3],反
m−3],反 応 器 容 積Vr[m3],反 m−3 h−1]の と き,成 分Aに
応 つい
て 反 応 器 全 体 で 物 質 収 支 を と る と, F′CA0=F′CA+rAVr
と な り,反
応 速 度rAは
式(5.9)で
表 さ れ る.
(5.9) こ こ で,Vr/F′[単
位:h]は
平 均 反 応 時 間 を意 味 し,Vrお
よ びF′ を変 え る こ と
で 反 応 速 度 が変 化 す る. c. 連 続 流 通 式 管 型 反応 器 の 場 合 連 続 流 通 式 管 型 反 応 器 で は,注
目成 分 の 濃 度 は,反
応 時 間 で は な く反 応器 内 の
長 さ 方 向 の 位 置 に対 し て変 化 す る の で,回 分 式 反 応 器 の 場 合 の よ うに 濃 度-時 間 曲線(図5.1)を
描 くこ とは で きな い.図5.6の
管 型 反 応 器 内 の任 意 の 位 置 で微 少容 積dVrを
モ デ ル 図 に示 した容 積Vr[m3]の 考 え る.
反 応 器 の 入 口に お け る供 給 原 料 の モ ル 流 量 をF0[mol
h−1],原 料 中 の 注 目成 分
図5.6
の モ ル 分 率 をy0,反
連 続 流 通 式 管 型 反 応 器 の モ デル 図
応 器 内 の 任 意 断 面 に お け る 流 量 をF[mol
モ ル 分 率 をy,転
化 率 をxと
し,微
つ い て の 微 少 変 化 量 をdF,dy,dxと で あ る.定 れ ば,単
常 状 態 に お い て,微
す る.モ 少 容 積dVr内
位 時 間 当 た り のdVrへ
の 反 応 量 に な る.し
少 容 積dVr内
h−1],注
に お け るF,y,xそ
目成 分 の れ ぞれ に
ル 数 変 化 の な い 反 応 で は,dF=0 に お け る注 目成 分 の 物 質 収 支 を と
の 流 入 量 と流 出 量 と の 差 がdVr内
で の 注 目成 分
た が っ て,
Fy−(F+dF)(y+dy)=rdVr
(rは
反 応 速 度[mol
m−3 h−1])
∴ −d(Fy)=rdVr と な る.ま
た,反
応 器 へ の 注 目 成 分 の み の 供 給 流 量 をF0y0と
定 義 か らx=(F0y0−Fy)/F0y0=1−Fy/F0y0で F0y0dx=−d(Fy)と (基 礎 方 程 式)
な り,次
あ る か ら,こ
し て,転
化 率xの
の 微 分 を と る と,
の 基 礎 方 程 式 が 導 か れ る.
F0y0dx=rdVr
(5.10)
(5.11) Vrあ
る い はF0,F0y0を
変 化 させ て 注 目成 分 の 反 応 器 出 口 に お け る 転 化 率xを
定 し た デ ー タ か らx−(Vr/F0)ま 微 分 す れ ば,反
応 速 度rが
[(volume)(time)/(mol)]の の で,time
factorと
た はx−(Vr/F0y0)グ 求 ま る.流
ラ フ を 作 成 し,曲
分 式 反 応 器 の 反 応 時 間tに
の 流 通 式 反 応 器 で あ る.容 下)な
れ る.こ
積 の 小 さ い 反 応 器 を 用 い て,転
る よ う に 保 ち な が ら,time
転 化 率 の 変 化 ⊿xを
実 測 す る.反
factorの
相 当す る
度 解 析 をす る た め
化 率 を で き る 限 り小 さ
変 化 ⊿(Vr/F0)に
応 速 度rはr=y0⊿x/⊿(Vr/F0)と
の 方 法 で 反 応 速 度 を 求 め る た め に は,x−(Vr/F0)関
け れ ば な ら な い.
は,
呼 ば れ る.
流 通 式 管 型 反 応 器 の 特 殊 な 型 で あ る 流 通 式 微 分 反 応 器 は,速
く(10%以
線 を 図上
通 式 管 型 反 応 器 に お け る(Vr/F0)項
次 元 を も ち,回
測
対 す る
して 計 算 さ 係 に比例 関係 が な
5.1.6 積 分 法 に よ る反 応 速 度 解 析 微 分 法 で は反 応 速 度 の数 値 が 直 接 求 ま るが,積 分 法 は,微 分 法 で求 め た 反 応速 度 の数 値 が ど の よ う な反 応 速 度 式 に 適合 す るか を検 討 す る方 法 で あ る. a. 回 分 式 反応 器 の 場 合 あ る反 応A→Bを 時 間t経
考 え る.反 応 初 期(t=0)の
過 後 の モ ル 数 をnA,Aの
Vr)dxA/dtを
成 分Aの
転 化 率 をxAと
モル 数 をnA0,任
意の
す る.式(5.8)のrA=(nA0/
変 数 分 離 して,反 応 開 始 か ら時 間tの 範 囲 で積 分 す る と
(5.12) と な る.rA=f(xA)が A→Bが1次 nA0(1−xA)で
簡 単 な 関 数 で 表 さ れ る 場 合 に は,解 不 可 逆 反 応 の 場 合,時
間t経
析 解 が求 ま る.
過 後 の 成 分Aの
あ る か ら,rA=kCA=knA0(1−xA)/Vrと
モ ル 数nAはnA=
な り,式(5
.12)は
次 の よ
うに な る.
(5.13) ln[1/(1−xA)]-tプ 応 速 度 定 数kは
ロ ッ トの 直 線 の 勾 配 か らkの 初 濃 度CA0(ま
た はnA0)と
次 反 応 に 特 徴 的 な も の で あ り,1次 す る.例
え ば,2次
値 が 求 ま る .1次
は 無 関 係 で あ る .こ
反 応 以 外 の 場 合 に はkは
不 可 逆 反 応2A→B(rA=kCA2)の
反 応 で は,反
の よ う な 挙 動 は1
初 濃 度CA0に
も依 存
場 合 に は 次 の よ うに な る.
(5.14) 反 応 速 度 式 の代 表 的 な解 析 解 をCAお うに な る.CA,xAの
よ びxAに
つ い て 整 理 す る と,表5
.1の よ
経 時 変 化 は 反 応 次 数 に よ っ て 異 な る変 化 をす るの で,こ れ
らの変 化 か ら反 応 次 数 を確 認 す る こ とが で き る. 表5.1
反 応 次 数 の 違 い に よ る 反応 速 度 式 の解 析 解(回 分 式 反 応 器)
【 例 題5.3】 モ ル 数 変 化 の な い1次 た と こ ろ,40mol%反 ま た,90mol%反
不 可 逆 反 応A→Bを
応 す る の に60minを
要 し た .反
応 さ せ る の に 要 す る 反 応 時 間t90%を
回 分 式 反 応 器 で行 っ 応 速 度 定 数kを 求 め よ.
求 め よ.
解. 式(5.13)よ
り60=(1/k)ln(1−0.4)−1,∴k=8.52×10−3min−1.
ま た,t90%=(1/k)ln(1−0.9)−1=270min. b. 連 続 流 通 式 タ ン ク 型 反 応 器 の 場 合 原 料 流 体 中 の 成 分Aの 反 応 器 容 積Vr,反
濃 度CA0,反
応 器 か ら 流 出 す る 流 体 中 のAの
応 流 体 の 容 積 流 量F′[m3
定 で あ る.式(5.9)を
変 形 し て,次
h−1],反
応 速 度rAは
濃 度CA,
定 常 状 態 で一
式 が 得 ら れ る.
(5.15) 1次 不 可 逆 反 応A→B(rA=kCA)の
場 合,CAお
よ び 転 化 率xAは
次 の よ うに
表 せ る.
(5.16) (5.17) 流 通 式 撹 拌 タ ン ク 型 反 応 器 で は,CAあ
る い はxAとVr/F′
との 関 係 式 を求 め
る の に 積 分 の 手 続 き は 不 要 で あ る. 2次 不 可 逆 反 応2A→B
の 場 合 に は 式(5.15)よ
り次 の よ うに 表 せ
る.
(5.18) ま た,式(5.15)よ
り,Vr/F′=xA/kCA0(1−xA)2をxA(0≦xA≦1)に
つ い て 解
く
と,
(5.19) 1次 反 応 の 式(5.17)と な って もxAの
比 べ て,2次
増加 割 合 が 小 さ い.こ
反 応 の 式(5.19)で
は,Vr/F′
の値 が大 き く
の よ うに 流 通 式 タ ン ク型 反 応 器 は,取
り扱
う化 学 反 応 の 反 応 速 度 が 原料 濃 度 に対 して 高 次 で あ るほ ど転 化 率 を高 め られ な い とい う欠 点 が あ るの で,反 応 熱 の 除去 な どの 利 点 が 生 かせ る場 合 を除 い て は高 次 の 反 応 次 数 の化 学 反 応 を行 うの に は適 さな い. 数 個 の 反 応 器 を直 列 に並 べ た 多段 連 続 流 通 式 タ ン ク 型 反 応 器 の モ デ ル 図 を 図 5.7に 示 す.こ
の 反 応 器 は,反 応 次 数 の 高 い化 学 反 応 の転 化 率 を高 め た り,各 タ
ン ク ご とに 反 応 温 度 を変 え られ る な どの 利 点 が あ る.容 積Vrの
タ ン クがn個
直
図5.7
多段 連 続 流 通 式 タ ン ク型 反 応 器 の モ デ ル 図
列 に 配 置 さ れ た 多段 連 続 流 通 式 タ ン ク型 反 応 器 を考 え,ど の タ ン ク も同 じ温 度 で 操 作 さ れ る とす る.任 意 のi番
目の タ ン クに 供 給 され る流 体 の 成 分Aの
CAi−1,i番 目 の タ ン クか ら流 出 す る流 体 のAの
濃 度 をCAi,転
濃度 を
化 率 をxi,流
体
の 容 積 流 量 をF′ とす る.液 相 反 応 で は 反 応 に よ る容 積 変 化 は小 さ く無 視 で き る の で,F′ は 常 に 一 定 とみ な さ れ る.1次
不 可 逆 反 応 に 対 して は,式(5.16)お
よ
び(5.17)を 順 次 適 用 す る と, 第1タ
ン ク:CA1=CA0/[1+k(Vr/F′)];
第2タ
ン ク:CA2=CA1/[1+k(Vr/F′)];
x1=1−1/[1+k(Vr/F′)]
=CA0/[1+k(Vr/F′)]2; 第iタ
x2=1−1/[1+k(Vr/F′)]2
ン ク:CAi=CA0/[1+k(Vr/F′)]i;
xi=1−1/[1+k(Vr/F′)]i
}
(5.20)
と な り,i番
目 タ ン ク 出 口 で の 転 化 率xiが
求 め ら れ る.
ま た,n段
連 続 流 通 式 タ ン ク 型 反 応 器 の 全 体 の 反 応 器 容 積 をVr′(=nVr)と
す
る と,
と 表 さ れ る.nが
無 限 大 の と き,近
似 式,1/[1+(X/n)]n≒exp(−X)の
関係 を
使 っ て 上 式 を 変 形 す る と,
(5.21) と な る.式(5.21)は,次
項 の 式(5.24)と
同 形 で あ り,無 限小 容 積 の タ ン ク型 反
応 器 を無 限個 直 列 に並 べ た 多段 連 続 流 通 式 タ ン ク型 反 応 器 が 連 続 流通 式 管 型 反 応 器 に 相 当 す る こ とを意 味 す る.し た が って,反
応器 容 積 が 同 じVr′ の と き,最 大
の 転 化 率 を与 え る反 応 器 は 流 通 式 管 型 反 応 器 で あ る.多 段 連 続 流 通 式 タ ン ク型 反 応 器 で は,式(5.20)か
らわ か る よ うに 段 数nが
ン ク 出 口 で の 転 化 率xnが
低 下 す る.
小 さ くな るに つ れ てn番
目のタ
図5.8
連 続 直列 タ ン ク型 反 応 器 に 対 す る図 解 法
1次 不 可 逆 反 応 以 外 の 反 応 お よ び 容 積 の 異 な る タ ン ク が 連 続 直 列 に 並 べ ら れ た 反 応 器
の 場 合 で は,注
目 成 分 の 濃 度Cと
の 関 係 を グ ラ フ 化 し て(反 応 速 度 線 図),図 例 え ば,容
積 の 異 な る3つ
タ ン ク に お い て 式(5.15)が 5.8の
反 応 速 度r(=kf(C))と
上 で 解 を 求 め る こ と が で き る.
の タ ン ク 型 反 応 器 が 直 列 に 連 結 さ れ て い る 場 合,各 成 り 立 つ の で,V1/F′=(CA0−CA1)/r1と
反 応 速 度 線 図 の 傾 き か らV1/F′
が 求 ま る.ま
た,第3タ
な り,図
ン ク出 口 に お け る
転 化 率x3は,x3=1−1/{[1+k(V1/F′)][1+k(V2/F′)][1+k(V3/F′)]}で
あ る.
c. 連 続 流 通 式 管 型 反 応 器 の 場 合 式(5.10)式
で 与 え ら れ た 基 礎 方 程 式(F0y0
dx=rdVr)を
積 分 して 次 式 が 得 ら
れ る.
(5.22) 反 応 速 度 の 一 般 式rA=kf(xA)を で の 注 目 成 分Aの
式(5.22)に
転 化 率xAとtime
モ ル 数 に 変 動 の な い 気 相1次 器 で 行 う こ と を 考 え る.原
factor(Vr/F0)と
料 中 の 成 分Aの
[atm],温
度T,気
濃 度CAはCA=y0(1−xA)P/RTと
位:h−1]で
=k′Py0(1−xA)と
あ る が,こ
モ ル 分 率y0,転
流通 式 管型 反応 化 率XA,全
理 想 気 体 の 状 態 方 程 式 を 使 う と,気
こ でk′=k/RT[mol
応器 出 口
の 関 係 式 が 得 ら れ る.
不 可 逆 反 応A→B(rA=kCA)を
成 分Aの 数[単
体 定 数Rと
代 入 し て 計 算 す れ ば,反
変 形 で き る.kは1次
圧P
相 にお け る 反 応速 度 定
dm−3 atm−1 h−1]と お く と,rA
な る.
(5.23)
モ ル 流 量F0[mol
h−1]を 容 積 流 量F′[dm3
h−1]に 変 換 す る と,F0=F′P/RTで
あ る か ら,
(5.24) と な る.Vr/F′ を 表 し,回 (space
は 次 元[time]のtime
factorで
あ り,反
分 系 に お け る 反 応 時 間 に 相 当 す る.time
time)と
い い,そ
の 逆 数F′/Vrを
と き,反
factor
空 間 速 度(space
モ ル 数 変 動 を 伴 う 反 応 系 を 取 り扱 う 場 合 は,積 れ ば な ら な い.連
応 器 内の平均 滞留 時 間 Vr/F′
velocity)SVと
分 式(5.22)に
い う.
補 正 を加 え な け
続 流 通 式 管 型 反 応 器 で 任 意 の 反 応aA+bB→cC+dDを
行 う
応 流 体 の モ ル 数 増 加 率(気 相 反 応 の 場 合 は 容 積 増 加 率 に 同 じ)ε を ε=
[(c+d)−(a+b)]/(a+b)と
す る と,成
分Aの
転 化 率 がxAで
あ る任 意 の 反 応 器 断
面 に お け る モ ル 流 量Fは,F=F0(1+εxA)で
あ る.ま
た,成
数 変 化 の な い 場 合 の1/(1+εxA)倍
え ば,上
記 の 反 応 がAに
次,Bに
を空 間 時 間
対 し て0次
の1次
に な る.例
分Aの
分圧 は モル
不 可 逆 反 応 の 場 合 の 反 応 速 度 式 を 転 化 率xAの
対 し て1 関数 で
表 す と,
と な る.こ
の 関 係 式 を 式(5.22)に
代 入 し て 積 分 す る と,
(5.25) が 得 ら れ る.モ
ル 流 量F0を
容 積 流 量F′ に 変 換 し て,
(5.26) と な る.ε=0の
場 合,式(5.25),(5.26)は,そ
れ ぞ れ 式(5
.23),(5.24)に
等 し
く な る.
d. リサ イ ク ル操 作 を伴 う連 続 流 通 式 管 型 反 応 器 の 場 合 連 続 流 通 式 管 型 反 応 器 の 応用 と して,図5.9の
よ うに 反 応 器 出 口 の生 成 物 を含
む 流 れ の一 部 を反 応 器 入 口 に リサ イ クル す る操 作 を伴 っ た 管 型 反 応 器 が あ る.リ サ イ ク ル操 作 は反 応 器 を等 温 に維 持 した り,反 応全 体 の 選 択 率 を向 上 させ た い場 合 に行 わ れ,バ
イ オ ケ ミカル 反 応 や 石 油 化 学 合 成 プ ロセ ス に 利 用 され る こ とが 多
い .
モ ル数 変 化 の な い液 相 反 応 を考 え る.定 常 状 態 で は,新
し く反 応 系 に 流 入 す る
図5.9
リサ イ クル操 作 式 流 通 管 型 反 応 器 の モ デ ル 図
原 料 流体 の 容 積 流 量F0′[m3 h−1]と反 応 系 か ら排 出 され る容 積 流 量 は等 しい.反 応 器 出 口か ら入 口へ 戻 され る流 体 の 容 積 流 量 を リサ イ ク ル 流 量FR′ と して,リ サ イ クル 比(循 環 比)RをR=FR′/F0′
と定 義 す る と,反 応 器 内 を流 れ る 反 応 流
体 の 全 容 積 流 量F1′[m3 h−1]は,
で あ り,リ サ イ クル
流 れ のAの CA0,反
濃 度 は 反 応 系 の 出 口のAの
応 器 入 口 のAの
濃 度 をCA1と
Aに 関 す る物 質 収 支 か ら,式(5.27)が
濃 度 と等 しい.原 料 流体 中 のAの して,反
濃度 を
応 器 入 口 の合 流 点 に お け る 成 分
導 か れ る.
(5.27) 反 応 系 の 出 口 で の 転 化 率xAは,転 −CA/CA0と
な る
.ま
た,反
化 率 の 定 義 か らxA=(CA0−CA)/CA0=1
応 器 入 口 で の 転 化 率 相 当 値xA1は,合
流 点 の 流体 の
組 成 に 注 目 し て 次 式 で 表 さ れ る.
(5.28) 連 続 流 通 式 管 型 反 応 器 に お け る物 質 収 支 に基 づ く基 礎 方 程 式(5.10)の 同様 に して,仮 想 微 小 領 域 で の物 質 収 支 か らCA0F1′dxA=rAdVrと
導出と
な る.こ れ を
反 応 器 の 入 口か ら出 口 まで 積 分 す る と,次 式 とな る.
(5.29) 1次 不 可 逆 反 応A→Bの な る.
場 合,rA=kCA=kCA0(1−xA)を
代 入 して 次 の よ うに
(5.30) リサ イ ク ル を し な い 場 合(R=0),式(5.30)は,Vr/F0′=(1/k)ln[1/(1−xA)]と な っ て 通 常 の 流 通 式 管 型 反 応 器 に お け る 式(5.23)と ク ル 比Rが
同 じ に な る.ま
大 き く な る と,[1+R(1−xA)]/[(1+R)(1−xA)]は1に
式lnX=(X−1)/Xの と な り,連
サ イ
近 づ き,近
似
関 係 を 使 っ て 式 を 変 形 す る とVr/F0′=(1/k)xA/(1−xA)
続 流 通 式 タ ン ク 型 反 応 器 の 場 合 の 式(5.17)と
の リサ イ ク ル 運 転 で は,転 的 な 値 を 示 す.反
た,リ
化 率xAは
同 じ 意 味 に な る.通
常
ピ ス トン 流 れ と 完 全 混 合 流 れ の 場 合 の 中 間
応 器 の タ イ プ 別 に 反 応 速 度 式 と解 析 解 の 式 番 号 を 表5.2に
整理
し た. 表5.2
* リサ イ ク ル 操 作 型
反応 器 タ イ プ 別 の 反 応 速 度 式 の 整 理
,** t=Vr/F′
に 変 換.
5.1.7 複 合 反 応 の 反 応 速 度 解 析 複 合 反 応 の 速 度 解 析 に お い て は,一 般 に複 雑 な 多 元 連 立 方 程 式 を解 か な け れ ば な ら な い.こ
こ で は,簡 単 な解 析 解 の 得 られ る例 と して1次 不 可 逆 反 応 の 組 合せ
か ら な る複 合 反 応 を 回分 系 反 応 器 で行 っ た場 合 につ い て 考 え る. a. 並 発 反 応(competitive
(k1,k2は
成 分Aか
ら成 分Bお
reaction)の 場 合
各 過 程 の1次
よびCが
並 発 的 に 生 成 す る と き,お の お の の ス テ ップ が
と もに1次 不 可 逆 とす れ ば,成 分Aの 各 成 分 の 濃 度 をCiと
反 応 速 度 定 数)
消 失 速 度,成 分Bお
よ びCの
生成 速度 は
して 次 式 で 表 され る.
−dCA/dt=(k1+k2)CA
(a)
dCB/dt=k1CA
(b)
dCc/dt=k2CA
(c)
初 期 条 件 をt=0,CA=CA0,CB=Cc=0と
し て 微 分 方 程 式(a),(b),(c)を
連 立
し て 解 け ば, CA=CA0exp[−(k1+k2)t]
(5.31)
(5.32) (5.33) とな る.並 発 反 応 過 程 で は,生 成 物BとCと
の生 成 速 度 比 は速 度 定 数 の 比k1/k2
に 等 し く,反 応 時 間 に よ らず 一 定 とな る.ま た,濃 度 比 も一 定 に 保 たれ る.
b.
逐 次 反 応(stepwise
reaction)の
場 合
(k1,k2:各
成 分Aお
よびBの
消 失 速 度,成
過 程 の1次
分Cの
反 応 速 度 定 数)
生 成 速 度 は 各 成 分 の 濃 度 をCiと
して
次 式 で 表 され る.
(d) (e) (f) 初 期 条 件 をt=0,CA=CA0,CB=Cc=0と
す る と,式(d)よ
CA=CA0exp(−k1t) と な る.こ
の 式 を 式(e)に
り (5.34)
代 入 し て 整 理 す れ ば,
(5.35) と な る.ま
た,物
質 収 支 よ り,
Cc=CA0−CA−CB と 表 せ る.式(5.34),(5.35),(5.36)で は,k1とk2の
(5.36) 示 され る各 成 分 の 濃 度 の 時 間 変 化 の様 子
数 値 の 相 対 比 に よ り変 わ る.k1≫k2の
場 合,CAは
反応時 間経過 と
複合 反応 にお け る生成物 の選 択性 複 合 反 応 系 で は,望
ま し い 生 成 物(目 的 生 成 物)を 与 え る 反 応 過 程 の ほ か に も望
ま し くな い 生 成 物(副 生 成 物)を 与 え る副 反 応 過 程 が 同 時 に起 こ る.こ
の と き,目
的 生 成 物 へ の 転 化 割 合 を 目 的 生 成 物 の 選 択 率(反 応 の 選 択 性)と い う.触 媒 を用 い る反 応 の 場 合,そ
れ を 触 媒 の 選 択 性 とい う.
化 学 反 応 を促 進 させ る手 段 と して,加 当 て た り(光 化 学 反 応,放 反 応)し た りす る.こ の は,触
熱 し た り(熱 化 学 反 応),光
または放射 線 を
射 線 化 学 反 応)あ る い は 電 気 エ ネ ル ギー を利 用(電 気 化 学
れ ら 多 くの 手 段 の な か で 反 応 の 選 択 性 を 際 立 っ て 改 善 で き る
媒 成 分 を 共 存 させ る触 媒 反 応 で あ る.光 化 学 反 応 で も波 長 の 選 択 に よ っ て
高 い 選 択 性 を与 え る こ と もあ るが,そ
の 選 択 性 の 高 さ と効 率 の よ さ か ら触 媒 反 応 か
工 業 的 規 模 の 化 学 反 応 の 促 進 手 段 と して 多 く利 用 さ れ て い る.
と も に 急 激 に減 少 し,CBは
急 増 して 長 時 間 高 濃 度 に保 た れ,CCは
速 度 で 増 加 す る.逆 にk1≪k2の な り,CCは 度CBの
場 合,CAは
徐 々 に 減 少 し,CBは
徐 々 に遅 い 常 に低 濃 度 に
反 応 初 期 か ら増 加 し始 め る.逐 次 反 応 過 程 で は,中 間 生 成 物Bの
時 間変 化 にお い て極 大値(dCB/dt=0)が
濃
現 れ る.
連 続 流 通 式 反 応 器 を用 い て 並 発 反 応 や 逐 次 反 応 を行 う場 合 に は,回 分 系 に お け る 反 応 時 間tをtime
factor (Vr/F0)に
置 き換 え て 同様 の解 析 を行 えば よ い.
5.1.8 連 続 流 通 式 反 応 器 に 関連 す る諸 量 連 続 流 通 式 反 応 器 の性 能 を表 現 す るた め の パ ラ メー ター と して,空 間 速 度,空 時 収 量,滞
留 時 間 な どの 諸 量 が 用 い ら れ る.タ
ン ク型 あ る い は 管 型 の い ず れ で
あ って も連 続 流 通 式 反 応 器 に お い て は,こ れ ら の 諸 量 は 同 じ意 味 を もつ. 5.1.6c項
で も述べ た 空 間 速 度SVは,反
応 器 の 原 料 処 理 能 力 を示 す パ ラ メー
タ ー で あ っ て,単 位 時 間 に 反 応 器 容 積 の何 倍 の 原料 流 体 を反 応器 に供 給 す るか を 意 味 す る.
(5.37) こ こ で,F0は mol−1),Vrは
モ ル 流 量[mol
h−1],vmは
反 応 器 容 積[m3]で
あ る.
標 準 状 態 に お け るSVをSV0と ま た,液
相 反 応 に お け るSVを
モ ル 比 容 積(標
表 し て,反
準 状 態 で0.0224m3
応 条 件 下 の 値SVPTと
液 空 間 速 度(liquid
hourly
space
区 別 す る. velocity,
LHSV),気 GHSV)と
相 反 応 に お け るSVを 呼 ん で,区
空 時 収 量(space 表 し,反
気 空 間 速 度(gas
hourly
space
velocity,
別 す る こ と も あ る. time
yield) STYは
単 位 時 間 当 た りの 目的 生 成 物 の 生 産 量 を
応 速 度 と 同 じ 次 元[(mol)/(volume)(time)]を
も つ.た
が 目 的 生 成 物 濃 度 の 時 間 微 分 で あ る の に 対 し て,STYは 目 的 生 成 物 の 生 産 速 度 の 平 均 値 で あ る.連 の 目 的 生 成 物 の モ ル 分 率 をyoutと
だ し,反
応速 度
反応器 全体 につ いての
続 流 通 式 反 応 器 の 出 口 にお け る 流体 中
す れ ば,STYは
次 の よ う に 表 さ れ る.
(5.38) 滞 留 時 間(residence
time)ま た は 接 触 時 間(contact
time)は,回
分式反応器 に
お け る反 応 時 間 に相 当 す る もの で,連 続 流 通 式 反 応 器 に お け る原料 物 質 の 反 応器 内平 均 滞 留 時 間 を示 す.等 留 時 間 は1/SVPTあ
温,等 圧 条 件 下 で の モ ル 数 変 化 の な い 反 応 の 場 合,滞
る い はVr/F′
モ ル数 変 化 の あ る反 応,ま
の値 と 等 し く な るが,非
等 温 条 件 下 の 反 応,
た 触 媒 な どの 充 て ん物 が あ る場 合 は,正 確 な滞 留 時 間
を 算 出 す る こ と は 困 難 で あ る.こ の よ う な場 合 は 空 塔 基 準 の1/SVPTあ time factor (Vr/F0)を
るい は
滞 留 時 間 の代 わ りに用 い て デ ー タ を整 理 す る.
5.2 不 均 一 系 反 応 に お け る反 応 速 度 論
化 学 反 応 が進 行 す る環 境 の 中 に 複 数 の相 が 存 在 す る場 合,こ 反 応(heterogeneous
の 反 応 を不 均 一 系
reaction)と 呼 ぶ.不 均 一 系 反 応 に は さ ま ざ ま な タ イプ が あ
り,そ の 速 度 論 的 特 徴 を一 括 して 表 現 す るの は 困難 で あ る.不 均 一 系 反 応 に お い て は,本
質 的 な化 学 結 合 の 組 換 え 速 度 に加 え て,異 相 間 の物 質 移 動 速 度 や 特 定 の
相 内 で の拡 散 移 動 速 度 が 反 応 速 度 に 影 響 を 与 え る場 合 が 少 な くな い.こ の こ とが 均 一 系 反 応 の速 度 論 との 基 本 的 な違 い で あ る.
5.2.1 不 均 一 系 反 応 不 均 一 系 反 応 に は,気
・液 ・固 の3相
の組 合 せ に よ り種 々 の 反 応 系 が あ り,代
表 的 な もの を以 下 に 示 す. ① 気 液 系 反応
液体 反 応 物 中 に 気 体 反 応物 を溶 解 させ た り,溶 媒 中 に気 体
反 応 物 を溶 解 させ て 反 応 させ る.PdCl2-CuCl2-HCl系
触 媒 を含 む 水 溶 液 に オ レ
フ ィ ン と酸 素 を 溶解 させ,ア セ ス(hoechst
wacker
② 気 固系反応
ル デ ヒ ドな ど含 酸 素 化 合 物 を合 成 す る液 相 酸 化 プ ロ
process)が 一例 と して あ げ られ る. 固体 反 応物 と気 体 反 応 物 との 接 触 に よ り反 応 を行 う.石 炭
の 水 素 に よ る ガ ス 化,金 属 硫 化 物 の 空 気 酸 化 に よ るSO2生
成 反 応 な ど の例 が あ
る. 以 下 の3つ
は い ず れ も 固体 触 媒 を用 い る触 媒 反 応 で,上 記 の 反 応 と区別 す る こ
とが あ る. ③ 気-固 体 触 媒 系 反 応(気 相 接 触 反 応)
固体 触 媒 を用 い た 気 相 反 応 で,原
料 流 体 を気 化 させ 高 温 で 固体 触 媒 に 接 触 させ て反 応 を行 う.メ タ ノー ル合 成,石 油 ナ フサ の 改 質 に よ る芳 香 族 炭 化 水 素 製 造 な ど,石 油 化 学 を は じめ 多 くの分 野 で 工 業 的 規 模 で 実 施 され て い る. ④ 液-固 体 触 媒 系 反 応(液 相 接 触 反応)
固体 触 媒 を 用 い た 液 相 反 応 で,触
媒 充 て ん 層 に 反 応 液 を流 通 させ た り,反 応 液 中 に 固体 触 媒 を懸 濁 させ て反 応 を行 う.塩 化 ア ル ミニ ウ ム 触 媒 に よ る芳 香 族 炭 化 水 素 の ア ル キ ル化 反 応 な ど有 機 合 成 プ ロセ ス で 多 く用 い られ る. ⑤ 気-液-固 体 触 媒 系 反 応
微 細 な 固体 触 媒 を懸 濁 させ た 反 応 液 に気 泡 を吹
き込 ん で気 液 相 に接 触 す る触 媒 表 面 で 反 応 を進 行 させ る ス ラ リー 型 反 応 器 が,油 脂 の 水 素 化 に よ る硬 化 油 製 造 な どに 用 い られ る,ま た,固 体 触 媒 を充 て ん した管 型 反 応 器 に 気 液 混 合 流体 を流 通 させ る ト リクル ベ ッ ド型 反 応 器 が,重 質 油 の 水 素 化 脱 硫 プ ロ セ ス な どに 利 用 され る. 本 節 で は,気 相 接 触 反 応 お よ び気 固 系 反 応 に つ い て,そ の 速 度 論 を考 え る.
5.2.2 気 相 接 触 反 応 気 相 接 触 反 応(vapor-phase
catalytic reaction)に 限 らず 液 相 接 触 反 応 で も固
体 触 媒 上 に お け る化 学 反 応 は,図5.10に
示 した よ うな 物 理 的 過 程 と化 学 的 過 程
の連 続 プ ロ セ ス で あ る. 過 程 ①,⑤ は 物 理 的過 程,過
程 ②,③,④
は化 学 的 過 程 で あ る.過 程 ③ が 律 速
段 階 で あ る場 合 は表 面 反 応 律 速 で あ る とい い,触 媒 の 本 質 的 な 改 良 を しな い と, 全 過 程 の 反 応 速 度(総 括 反 応 速 度)を 上 げ る こ とは で き な い.過 程 ②,④ が 律 速 段 階 で あ る場 合 は,そ
れ ぞ れ 吸 着 律 速,脱
離 律 速 で あ る と い い,反 応 温度 な どの
条 件 を変 化 させ るか,触 媒 を改 良 す れ ば,こ れ らの 過 程 の 速 度 を上 げ る こ とが で
図5.10
触 媒 表 面 での 化 学 反 応 の概 念
① 拡散 過程:界 面境 膜中 におけ る反応物Rの 拡散 移動,② 吸 着過程:Rの 触媒 表面へ の活性化 吸着,③ 表面反応過程:触 媒 表 面上 での吸着種 間の化 学反応,④ 脱 離過程:反 応 生成 物Pの 触 媒表面か らの脱 離,⑤ 拡散過程:Pの
き る.ま た,②,③,④
拡散移 動.
の 化 学 的 過 程 の う ち い ず れ か が 律 速 段 階 で あ る場 合 に 単
に 反 応 律 速 で あ る と い う こ と もあ る.一 方,過
程 ①,⑤ の 境 膜 内 拡 散(物 質 移
動)速 度 が 全 反 応 の 律 速 段 階 で あ る場 合 は,拡 散 律 速 で あ る と い う.気 相 接 触 反 応 で は,化
学 的 過 程 の 速 度 が 非 常 に速 い ラ ジ カ ル 反 応 な どで拡 散 律 速 に な る こ と
もあ るが,通
常 の 反 応 条 件 下 で は,物 質移 動 速 度 は化 学 的 過 程 の 速 度 よ り速 い の
が 一 般 的 で あ る. 反 応A(g)→B(g)((g)は の 化 学 的 過 程 を1つ 速 度 をrDと
気 相 状 態 を示 す)に つ い て 考 え る.上 記 の ②,③,④
に ま とめ て 考 え て,そ
の 速 度 をrS,過
程 ①,⑤ の 物 質 移 動
す る と,
rS=kSamPAi
(5.39)
rD=kGam(PA−PAi)
(5.40)
と表 せ る.こ
こ で,kSは
媒 の 外 表 面 積,PA,PAiは
表 面 反 応 速 度 定 数,kGは そ れ ぞ れ 成 分Aの
境 膜 内 物 質 移 動 係 数,amは
境 膜 外 お よ び 触 媒 表 面 に お け る分 圧
で あ る.定 常 状 態 で は,両 過 程 の 速 度 は 総 括 反 応 速 度rに rS=rDと
触
等 し くな る の で,r=
な る.こ の 関 係 式 を使 っ て 測 定 が 不 可 能 なPAiを
消 去 す る と,総 括 反
応 速 度rは,
(5.41) と な る.1/k′ る の で,次
は 総 括 抵 抗,1/kGは
物 質 移 動 抵 抗,1/kSは
化学 反応 抵抗 を意味す
の よ う に 表 せ る. (総 括 抵 抗)=(物
質 移 動 抵 抗)+(化
学 反 応 抵 抗)
(5.41′)
5.2.3 ガ ス境 膜 内物 質 移 動 抵 抗 固体 粒 子 の 充 て ん 層 に反 応気 体 を流 通 させ る と き,充 て ん した粒 子 の 表 面 ガ ス 境 膜 内 に お け る物 質 移 動 係 数kGの 値 は 種 々 の実 験 式 か ら計 算 され る.実 験 式 の 一 例 と して ,白 井 の 式 を あ げ て お く.
(5.42) こ こ で,dPは
粒 子 径,Rは
は 流 体 の 流 速,μ (u=0),kG値
気 体 定 数,Tは
は 流 体 の 粘 度,ρ
は 最 小 と な り,kG値
式(5.42)は,シ ReP(=dPuρ/μ),シ
温 度,Dは
注 目 成 分 の 拡 散 係 数,u
は 流 体 の 密 度 で あ る.流 は 流 体 の 流 速uの
体 が静 止状 態の とき
増 加 と と も に 増 加 す る.
ャ ー ウ ッ ド数Sh(=kGdPRT/D),粒
子 径 基 準 の レ イ ノル ズ数
ュ ミ ッ ト数Sc(=μ/ρD)の3つ
の無 次 元項 を用 いて 次 の よ
う に 書 き 換 え られ る. (5.42′)
境 膜 内 物 質 移 動 過 程 が 総 括 反 応 速 度 に 影 響 す る か 否 か を判 定 す る 方 法 と し て は,タ
ン ク型 反 応 器 で は 撹 拌 器 の 回転 数 を変 化 させ た と き,管 型 反 応 器 で は 反応
流 体 の 流 速 を変 化 させ た と き の総 括 反 応 速 度 へ の影 響 を調 べ る とよ い.流 体 の 流 速 を速 くす れ ば 総 括 反 応 速 度 が 一 定 の 飽 和 値 を示 す 領 域 が 現 れ る.こ の よ うな領 域 で は,総 括 反 応 速 度 は化 学 的 過 程 の 速 度 だ け に依 存 す る もの と して 観 測 され る の で,化 学 的 過 程 の 速 度 が 全体 の 反 応 速 度 を支 配 す る反 応 律 速 で あ る と判 断 さ れ る.こ の よ うにkG(式(5.42))が
十 分 大 き くな る と,式(5.41)の
(1/kG)は 無 視 で き るほ ど小 さ くな り,式(5.40)中 反 応 物 の 圧 力 差(PA-PAi)は0に
物質 移 動抵 抗
の 境 膜 外 と触 媒 表 面 に お け る
近 くな る.こ れ に 対 して,kGが
小 さい領 域 で
は,化 学 的過 程 の 速 度 よ り も境 膜 内物 質 移 動 速 度 が 遅 く,触 媒 表 面 に お け る反 応
図5.11
流体 と触 媒 表 面 間 の 物 質 移 動
物 の分 圧PAiは0に
近 くな る(図5.11).
また,見 か け の 活性 化 エ ネ ル ギー の 値 も境膜 内 物 質 移 動 抵 抗 の 評 価 判 定 に 役 立 つ.kGの
温 度 依 存 性 は 反 応 速 度 定 数 の 温 度 依 存 性 よ り もは る か に 小 さ い の で,
見 か け の 活 性 化 エ ネ ル ギ ー が 十 数kJ
mol−1以 下 の 小 さ な 値 の と き に も物 質 移 動
抵 抗 が 大 き い と判 断 して よ い場 合 が 多 い.境 膜 内 物 質 移 動 抵 抗 の 影 響 を除 去 す る に は,一 般 に低 い 反 応 温 度 領 域 を選 び,反 応 流体 の 流 速 を上 げ る対 策 を とる.
5.2.4 吸
着
平
衡
気 相 接 触 反 応 の 反 応 速 度 を定 式 化 す るた め に は,触 媒 表 面 へ の 反 応 物 の 吸 着 現 象 を定 量 的 に 表 現 す る必 要 が あ る.固 体 表 面 上 で起 こ る化 学 反 応 に 関 す る吸 着 は 活 性 化 吸 着(化 学 吸 着)に 限 ら れ るの で,こ
こでは吸着 を単分 子層 吸着 の領 域 に
限 定 して考 え,多 層 吸 着 を伴 う物 理 吸 着 に つ い て は扱 わ な い こ とに す る.単 分 子 層 吸 着 の範 囲 に お い て,吸 着 が 平 衡 に達 した と きの 吸 着 量 と吸 着 質 の 分 圧 また は 濃 度 との 関係 を表 す 吸 着 平 衡 式(ま た は 吸 着 等 温 式)と して,ラ gmuir)式,テ
ム キ ン(Temkin)式,フ
ン グ ミュ ア(Lan
ロ イ ン ト リッ ヒ(Freundlich)式
の3つ
が
よ く知 られ て い る. a. ラ ン グ ミ ュア 型 吸 着 平 衡 式 気 体 成 分 が 固 体 に吸 着 す る気 相 吸 着 に お い て,す べ て の 吸 着 点 の 強 さが 等 しい 均 一 な表 面 を仮 定 し,吸 着 した化 学種 間 に は相 互 作 用 が な い理 想 的 な吸 着 現 象 を 考 え る. 1) 単 独 ・非 解 離 吸 着 の 場 合 と結 合 して 吸 着 状 態AMに
成 分Aが
単 独 で触 媒 固体 表 面 に あ る吸 着 点M
な る とす る と,吸 着 点 を一 つ の 反 応 物 と して,吸 着
現 象 を化 学 反 応 と同 様 に考 え る こ とが で き る. 衡 に お い て,吸 着 平 衡 定 数KA[atm−1]は
で 表 さ れ る吸 着 平
質 量 作 用 の 法 則 に従 って 次 の よ う に 表
さ れ る. (吸 着 平衡 定 数)=
(AMの 濃 度)/ (Aの 吸 着 平 衡 圧)(空 の 吸 着 点Mの
濃 度)
(5.43) こ こで,Lは ち でAが
単位 触 媒 質 量 当 た りの 吸 着 点 の モ ル 数[mol
吸 着 し た割 合 を 表 す 被 覆 率[―],θ0は
g−1],θAは 吸 着 点 の う
空 の 吸 着 点 の割 合 を表 す 露 出率
[―](単
独 吸 着 で は θ0=1− θA),PAはAの
吸 着 平 衡 圧[atm]で
あ る.式(5.43)
を θAに つ い て 解 く と,
(5.44) と な る.式(5.43),(5.44)は 着 平 衡 式 で あ る.こ 衡 吸 着 量 を υ[cm3 θA=υ/υmで
い ず れ も単 独 ・非 解 離 吸 着 に 対 す る ラ ン グ ミュ ア 吸
の 平 衡 は 単 位 分 子 層 吸 着 に 限 定 さ れ る の で,PAの g−1],PA→
あ る.こ
∞ の と き の 吸 着 量(飽 和 吸 着 量)を
れ を 式(5.43)に
ときの平
υmと す る と,
代 入 し て 変 形 す る と,
(5.45) と な る.実 ば,そ
験 デ ー タ か ら1/υ −1/PAプ
ロ ッ ト を 作 成 し て,直
の 吸 着 は ラ ン グ ミュ ア 式 で 整 理 さ れ た と い い,切
線 関 係 が 得 られ れ
片 と 勾 配 か ら υm,KAが
求 め ら れ る. 液 相 吸 着 に つ い て 濃 度CA[mol 43)∼(5.45)中
のPAの
書 き 換 え れ ば よ い.例 KA′CAは
dm−3]を
代 わ りにCAを
変 数 と し て 表 現 す る と き は,式(5.
変 数 と し て 用 い,KAをKA′[dm3
え ば 式(5.44)は
θA=KA′CA/(1+KA′CA)と
ど ち ら も 無 次 元 項 で あ っ て,成
分Aの
主 と し て 気 相 吸 着 の 場 合 を 取 り扱 う の でKAとPAを
な る.KAPA,
吸 着 項 と 呼 ば れ る.以
下 で は,
用 い る.
2) 単 独 ・解 離 吸 着 の 場 合
2原 子 分 子Aが
Mに
な る よ う な 吸 着 で は,吸
吸 着 し て 吸 着 状 態A′Mに
mol−1]に
原 子A′
に 解 離 し2つ
の 吸着 点
着 平 衡
か ら 次 の 式 が 成 り立 つ.
(5.46) (5.47) 3) 混 合 吸 着 の 場 合
多 成 分 が 同時 に1つ
の表 面 に 吸 着 す る こ とを混 合 吸 着
(ま た は競 争 吸 着)と い う.混 合 吸 着 が平 衡 に 達 した と き,任 意 の 成 分iに つ い て 単 独 吸着 の 場 合 と同 様 に考 え る と,次 の ラ ン グ ミュ ア 型 の 吸 着 平 衡 式 が 書 け る.
(5.48) こ こ で,
は任 意 のi成 分 を含 む 全 成 分 に つ い て の 吸 着 項 の 総 和 を表 す.
ま た,被 覆 率 につ い て は
の 関 係 が 成 り立 つ.単 独 吸 着 の 場 合 の 逆 数
プ ロ ッ ト(5.45)に
対 応 し て 混 合 吸 着 で は,次
式 と な る.
(5.49) こ こ で,
は 注 目 した 成 分iを 除 く他 の 任 意 の 吸 着 成 分 の 吸 着 項 の 総 和 を
表 す.混 合 吸 着 に お い て,成 分iだ け が 他 の 成 分jよ
り強 く吸 着 す る場 合 に は,
強 吸 着 種iが 支 配 的 に 吸 着 す る の で,他 の 成 分 の 吸 着 項 ま た,i以
外 の 成 分jの 中 で 成 分Aだ
は 省 略 で き る.
け が 強 く吸 着 す る 場 合 に は,
とな る.ま た,吸 着 成 分 の 中 に解 離 吸 着 す る成 分 が あ る と きは,そ の 成 分 の 吸 着 項 に つ い て は 式(5.47)の
よ うに平 方根 を と る.
b. ラ ン グ ミュ ア型 以 外 の 吸 着 平 衡 式 実 在 の 吸 着 表 面 で は 吸 着 強度 の 異 な る吸 着 点 が 連 続 的 に 存在 し,し か も吸 着種 間 に は 相 互 作 用 が 生 じ て い る.吸 着 強 度 は,実 験 的 に は 吸 着 熱 と して 観 測 さ れ る.実 在 の 吸 着 平 衡 に お け る実 験 式 に 種 々 の 型 式 が 提 案 され て い て,次 の2つ が よ く知 られ て い る. テ ム キ ン吸 着 平 衡 式 フ ロ イ ン ト リ ッ ヒ 吸 着 平 衡 式 こ こ で,α,β,nは
θA=(KAPA)l/n
正 の 定 数 で 吸 着 系 に 依 存 す る.PAを
量 υ お よ び 飽 和 吸 着 量 υm(θA=υ/υm)か ト し て デ ー タ を 整 理 す れ ば,こ
ら θA−lnPAお
変 化 させ て 測 定 した 吸 着 よ びlnθA−lnPAを
プ ロ ッ
れ ら の 吸 着 平 衡 式 に 従 う か ど う か を 調 べ る こ とが
で き る.
5.2.5
吸
着
速
吸 着 速 度(adsorption
度 rate)の
表 現 に は 種 々 あ る が,ラ
ン グ ミュ ア 型 吸 着 平 衡
式 を 基 礎 と し た 表 現 方 法 を 述 べ る. a. 単 独 ・非 解 離 吸 着 の 場 合 単 独 ・非 解 離 吸 着 露 出 率 θ0=1の の 時 間tに
に つ い て,吸
状 態 か ら 平 衡 時(t=∞)の
お け る 仮 想 的 な 状 態 θA′,θ0′ を 想 定 す る.こ
過 後 に 観 測 さ れ る 吸 着 速 度radは
被 覆 率 θA=0,
θA,θ0の 状 態 に 至 る ま で の 間 の 任 意
る が,θA′ と 吸 着 平 衡 状 態 に あ る と仮 定 し たAの 時 間t経
着 初 期(t=0)で
の状 態 は非 平 衡 状 態 で あ
分 圧 を 仮 想 平 衡 圧PA′
正 方 向 の 吸 着 速 度raと
と す る.
逆 方 向の脱 離
速 度rdの
速 度 差 と して 次 式 で 表 され る.
(5.50) Lは
単 位 質 量 当 た り の 吸 着 点 の モ ル 数[mol
速 度 定 数(=ka/KA),PAはAの 進 力 項 で あ っ て,平
g−1],kaは
吸 着 速 度 定 数,kdは
脱 離
吸 着 平 衡 圧 で あ る.式(5.50)の(PA−PA′)は
衡 時 に は0に
推
な る.
b. 混 合 ・非 解 離 吸 着 の 場 合 複 数 の 吸 着 種,例
え ばA,B,Cな
ど が 同 時 に 存 在 す る 場 合,A以
は 吸 着 平 衡 に あ る と す る と,式(5.48)の
考 え 方 を 用 い てAの
外 の他 の成 分
吸 着 速 度radは
次
式 で 表 さ れ る.
(5.51) は 注 目 したA成
分 を除 く他 の 任 意 の吸 着 成 分 の 吸 着 項 の 総 和 を 表 す.
c. 混合 ・解 離 吸 着 の 場 合 成 分Aが
吸 着 に 際 して解 離 を伴 い,A以
Aの 吸 着 速 度radは
外 の他 の成 分 は 吸 着 平 衡 に あ る と き,
次 式 で表 さ れ る.
(5.52) 式(5.50)∼(5.52)で
表 し た吸 着 速 度 式 中の 仮 想 平 衡 圧PA′ の数 値 は 測 定 不 可 能
で あ るの で,次 項cで 扱 う よ うに 他 の 平 衡 条 件 を用 い て消 去 す る.た だ し,吸 着 初 期(t=0)で
はPA′=0,ま
た,平 衡 状 態(t=∞)で
はPA′=PAで
あ る.
5.2.6 ラ ン グ ミュ ア-ヒ ンシ ェル ウ ッ ド型 触 媒 反 応 速 度 式 固体 表 面 上 に吸 着 した 化 学 種 また は 吸 着 化 学 種 ど う しが 結 合 を組 み 換 え て化 学 反 応 が 進 行 す る 反 応 機 構 を ラ ン グ ミュ ア-ヒ ン シ ェル ウ ッ ド(Langmuir-Hin shelwood)機
構 とい う.均 一 表 面 を仮 定 して い る ラ ン グ ミュ ア 型 吸 着 平 衡 式 は必
ず し も一 般 の 吸 着 現 象 を満 足 に表 現 し う る もの で は な い が,固 体 触 媒 上 で起 こ る 気 相 接 触 反 応 の 速 度 は,ラ
ン グ ミュ ア 式 を基 礎 と した ラ ン グ ミュ ア-ヒ ン シ ェ ル
ウ ッ ド式 で整 理 で きる こ とが 多 い.こ れ は,触 媒 反 応 に 関 与 す る化 学 種 が,中 程 度 の 強 さ の吸 着 点 に吸 着 して 活 性 化 され た もの だけ だか らで あ る.実 際 強 す ぎる
吸 着 点 に 強 く吸 着 した 化 学 種 は 吸 着 点 を被 覆 す る だ け で 反 応 に は 関 与せ ず,弱
い
吸 着 点 に 吸 着 した も の は 活 性 化 さ れ る程 度 が 低 くこ れ も反 応 に 関 与 しな い.以 下,律
速段 階 を限 定 して 反 応 速 度 式 を組 み 立 て る こ と を考 え る.
a. 表 面 反 応 律 速 の 場 合 気 相 接 触 反 応A(g)+B(g)→C(g)+D(g)が る場 合 を考 え る.こ
こ で,(g)は
次 の よ うな 素 反 応 の 連 続 か らな
気 相,(a)は
吸 着 状 態 を示 す.
① ② ③ 表 面 反 応 過 程 ② が 律 速段 階 で あ る と き,反 応 物 の吸 着 過 程 ① お よ び生 成 物 の 脱 離 過 程 ③ は速 い の で 平 衡 状 態 を想 定 して 扱 うこ とが で き る.総 括 反 応 速 度r は律 速段 階 の 正 方 向 と逆 方 向 の 速 度 の 差 と して,ラ
ン グ ミュ ア 型 吸 着 式 を用 い て
次 式 で 示 され る. (kS,kS′ は ② の 正 お よ び 逆 反 応 の 速 度 定 数)
(5.53) k=kSKAKBL2,K=kSKAKB/kS′KCKD,iは で あ り,Lは
反 応 に 関 与 す る 任 意 成 分(A,B,C,D)
単 位 質 量 当 た りの 吸 着 点 の モ ル数[mol 被 覆 率,kは
g−1],Kiは
衡 定 数,Piはiの
吸 着 平 衡 圧,θiはiの
ま た,式(5.53)の
右 辺 の 分 子 は推 進 力 項 で 平 衡 時 に は0に
成 分iの 吸 着 平
総 括 反 応 速 度 定 数 で あ る. な り,右 辺 の 分 母 の
逆 数 は活 性 点 の 空 の割 合 で あ る の で,次 の よ うに 一 般 化 で き る. 反 応 速 度=(総 括 反 応 速 度 定 数)(推 進 力 項)/(吸 着 項 の和)n =(総 括 反 応 速 度 定 数)(推 進 力 項)(触 媒 活性 点 の 空 の割 合) nは 律 速 段 階 の素 反 応 に 関 与 す る吸 着 点(吸 着 種)の 数 で あ り,触 媒 活 性 点 の 空 の 割 合 は触 媒 の 活 量 に 相 当す る. b. 解 離 吸着 種 を含 む 表 面 反 応 律 速 の 場合 例 え ば,有 機 物AのBへ
の水 素 化 反 応A+H2→Bを
① ②
(速 度 定 数 はkS)
考 え る.
③ 原 子 状 に解 離 吸 着 し た水 素 を含 む 表 面 反 応 過 程 ② が 律 速 段 階 で不 可 逆 的 に 進 行 す る と,②
の 正 反 応 の 速 度 だ け を考 え れ ば よ い の で 反 応 速 度 は次 式 と な る.
(5.54) c. 吸 着 律 速 の 場 合 A(g)+B(g)→C(g)+D(g)が ①
次 の よ うな素 反 応群 か らな る場 合, (速 度 定 数 はka)
② ③ ④ 成 分Aの
吸 着 過 程 ① が 律 速 段 階 で あ っ て,他 の 素 反 応 は 平 衡 状 態 と仮 定 で き る
の で,総 括 反 応 速 度 は 素 反 応 ① の 速 度 に 等 し く,こ れ を表 式 化 す れ ば よ い.式 (5.50)を 誘 導 した 手順 と同 様 に,
(5.55) と な る.ま
た,圧
と 表 せ る.PA′
平 衡 定 数KPを
を 速 度 式(5.55)に
用 い てPA′ は,
代 入 し て,次
式 が 得 ら れ る.
(5.56)
5.2.7 反 応 速 度 式 の積 分 形 目的 とす る反 応 の 希 望 の 転 化 率 を得 る の に 必 要 な 反 応 器 サ イ ズ を求 め る に は, 5.1節 の 均 一 系 反 応 で 扱 っ た積 分 法 の 手 続 きに 従 っ て 反 応 速 度 式 を積 分 す れ ば よ い.反 応 速 度 式 の積 分 形 は反 応 流体 の 流 れ 形 式 に よ っ て 異 な るが,こ 流 通 式 管 型 反 応器 の 場 合 を例 に して 説 明 す る.図5.6の モ デ ル 図 に お い て,反 積dVrに
応 器 容 積Vrの
代 え て 微 小 触 媒 量dWを
連 続流通式管型 反応器の
代 わ りに 触 媒 質 量W[g]を,ま とれ ば,式(5.22)と
こでは連続
た微 小 容
同 じ形 の 次 式 が 得 られ
る.
(5.57)
F0は 供 給 原 料 の モ ル 流 量[mol
h−1],rは
反 応 速 度[mol
h−1gcat−1](gcatは触 媒1
gあ た り),y0は 供 給 原 料 中 の 注 目成 分 の モ ル 分 率[―],xは [―]で あ る.式(5.57)に
お い てrが
注 目成 分 の 転 化 率
単 純 な 関 数 の 場 合 に は,右 辺 の 積 分 が 容 易
に で き る.し か し,気 相 接 触 反 応 の 速 度 式 は,例
え ば ラ ン グ ミュ ア-ヒ ン シ ェ ル
ウ ッ ド式 の よ うに複 雑 で,積 分 が 容 易 に で きな い の が ふ つ うで あ る.解 析 的 な積 分 が 困 難 な場 合 に は 図積 分 ま た は数 値 積 分 を して積 分 値 を求 め る こ とに な る. 簡 単 に解 析 的 積 分 が で き る例 を考 え る.あ る 気 相 接 触 反 応(A→B)が
表面反
応 律 速 で 進 行 し,逆 反 応 も考 慮 して 次 の 反 応速 度 式 で 表 さ れ た とす る.
k′は 総 括 反 応 速 度 定 数(k′=kSKAL),kS,kS′ 数,KA,KBは [mol
成 分A,Bの
58)の
あ る.こ
料 流 体 は 成 分Aの
の 転 化 率 をxAと =xAPと
吸 着 平 衡 定 数,Lは
g−1],K=kSKA/kS′KBで
と き,原
よ う に な る.注
の 反 応 を 連 続 流 通 式 管 型 反 応 器 で行 っ た 圧 をP,反
分 圧PA,PBは
factor
W/F0と
応 器 出 口 で のA
そ れ ぞ れ,PA=(1−xA)P,PB
転 化 率xAと
の 関 係 式 を 求 め る と,式(5.
目 す る 反 応 系 に つ い てk′,KA,KBの
て 既 知 で あ る な ら ば,希
反応 の速 度定
単 位 質 量 当 た りの 吸 着 点 モ ル数
み か ら な り(y0=1),全
す る と,A,Bの
お け る .time
は 表 面 反 応 の 正,逆
望 の 転 化 率 を 与 え るW/F0の
数値 が温度 の関数 と し 値 が 求 ま る.
(5.58) 【 例 題5.4】 time 80%を
factor
常 圧(1atm)下 W/F0と
で あ る 気 相 接 触 反 応A→Bが
転 化 率xAと
実 現 さ せ る た め のW/F0を
KA=1atm−1,KB=0,K=∞ 解. 式(5.58)よ
の 関 係 が 式(5.58)で 求 め よ.た
表 面 反 応 で 進 行 し, 与 え ら れ る と き,転
化率
だ し,k′=5molh−1atm−1gcat−1,
とす る. り,W/F0=(1/5)(ln5+0.8)=0.48gcathmol−1
5.2.8 固体 細 孔 内拡 散 と触 媒 有 効 係 数 触 媒 反 応 で は,式(5.39)の
よ うに触 媒 の 表 面 積amが
rを 大 き くで き る の で,図5.12の
大 きい方 が総 括 反 応 速 度
モ デ ル の よ うに 無 数 の 細 孔 を もつ 表 面 積 の 大
図5.12
きな 多 孔 質(porous)粒
球 状 触 媒 粒 子 内 に お け る物 質移 動 モ デ ル
子 を用 い る こ とが 多 い.し か し,多 孔 質 粒 子 に は,粒 子
の外 表 面 に あ る境 膜 内物 質 移 動 抵 抗 の ほか に,細 孔 内 に も物 質 移 動 抵 抗 が 存在 す る.本 項 で は,多 孔 質 触 媒 粒 子 に つ いて 反 応 ガ ス の 細 孔 内拡 散 過 程 も考 慮 した 反 応 速 度 の 取 り扱 い 方 を考 え る. 多孔 質 触 媒 を用 い る接 触 反 応 に お い て,触 媒 質 量 基 準 の 総 括 反 応 速 度 は触 媒 粒 子 径 に よ って 異 な る.多 孔 質 触 媒 の 有効 表 面 は大 部 分 が 粒 子 内部 の 細 孔 表 面 で あ るが,単
位 表 面 積 当 た りの 活 性 が 高 く反 応 物 の 供 給 速 度(細 孔 内拡 散)が 相 対 的
に 遅 い と き,反 応 物 の 濃 度Cが,境 度Cg,粒
子 外 表 面 の 濃 度Cs,粒
膜 か ら粒 子 の 中 心 に 向 か っ て,境 膜 外 の 濃 子 中心 の 濃 度Ccと
減 少 す るの で(図5.12),触
媒 細 孔 内 の 表 面 の 利 用 率 が 低 くな る.こ の よ う な反 応 速 度 に 対 す る細 孔 内 拡 散 の 影 響 を整 理 す る の に 触 媒 有 効 係 数(catalyst
effectiveness
factor) Efが
用いら
れ,次
の よ うに 定 義 さ れ る.
Ef=
(実 測 さ れ た 反 応 速 度)/( 粒 子 内 部 も外 表 面 と同 じ反 応物 濃 度 と仮 定 した と きの仮 想 的 な反 応 速 度)
反 応 速 度 式 が 簡 単 な式 で表 され る場 合 に は,注 解 く こ と か ら 多孔 質 触 媒 粒 子 のEfの 応 が 半 径Rの
目成 分 につ い て の 物 質 収 支 式 を
計 算 式 が 導 か れ る.例
球 状 触 媒 粒 子 の 細 孔 内 で 進 行 す る場 合,Efは
る.こ こ で,m(=(R/3)(kwρ/De)1/2)は
チ イ ル(Thiele)数
え ば,1次 式(5.59)で
不可逆 反 表 され
と呼 ば れ る無 次 元 項 で
あ り,触 媒 質 量 基 準 の1次 反 応 速 度 定数kw,触
媒 粒 子 の か さ密 度 ρ(細 孔容 積 を
考 慮 した見 か け 密 度,真
目成 分 の 細 孔 内 有 効 拡 散 係 数De
密 度 よ り も小 さい),注
を変 数 とす る関 数 で あ る.
図5.13
触 媒 有 効 係 数 とチ イ ル数 との 関 係
(5.59) 図5.13にEfとmと m>5で
はEf≒1/mと
有 効 拡 散 係 数Deは
の 関係 を示 し た.m<0.3で
はEf≒1で
な り細 孔 内 拡 散 律 速 で あ る.mを
計算す るための細孔 内
不 明 の 場 合 が 多 く,こ の よ う な場 合,Efを
ら直 接 計 算 す る こ とは 困難 で あ る.Efを
反 応 律 速 で あ る.
式(5.59)な
どか
簡 単 に求 め る方 法 と して粉 砕 法 が あ る.
粉 砕 法 で は,粉 砕 して 粒 子 径 を小 さ く した触 媒 を反 応 に用 い て,反 応 速 度 が粒 子 径 に影 響 さ れ な くな っ た と き の 反 応 速 度 をEfの
定 義 式 の分母 の値 として用 い
る. 工 業 規 模 の 装 置 で は,反 応 流 体 の 流 通 抵 抗 を低 減 させ る必 要 か ら,あ る程 度 大 きな 粒 子 径 の 触 媒 が 選 ば れ,Efが
極 端 に小 さ くな ら な い よ うに 触 媒 の 形 状 や 調
製 法 お よ び 成 形 法 が 工 夫 さ れ る.
5.2.9 気 固 系 反 応 気 固不 均 一 系 反 応 に もさ ま ざ まな タ イプ が あ り,一 例 と して,硫 化 亜 鉛 の 空 気 中 で の 高 温 酸 化 分 解 に よ る亜 硫 酸 ガ ス生 成 反 応 な どが あ げ られ る. ZnS(s)+(3/2)O2(g)→ZnO(s)+SO2(g) 本 項 で は,気
固 系 反 応 に 関 す る速 度 論 的 解 析 の例 と して,次
の 一 般 式 の よ うに,
反 応 原 系 と生 成 系 の 両 方 に 気体 と固 体 が 共 存 す る場 合 を取 り上 げ る. aA(g)+bB(s)→rR(g)+sS(s) こ こ で,(g)は
気 相,(s)は
固相 を示 す.
a. 非 多 孔 質 固体 粒 子 が 反応 に関 与 す る場 合(未 反 応 芯 モ デ ル) 固体 反 応 物Bが
細 孔 を もた な い 緻 密 な 構 造 の と きは,化 学 反 応 が 起 こ る位 置
は 反 応 時 間 と と も に 固体 表 面 か ら内部 に 向か っ て移 動 す る.こ の種 の 気 固不 均 一 系 反 応 の 速 度 論 的 な取 扱 い に つ い て は,図5.14に 果 に 適 合 す る こ とが 多 い.Bの
示 す未 反応芯 モデ ルが実験 結
固体 粒 子 は 半 径r0の 理 想 的 な球 形 で あ り,反 応
が 進 行 して も粒 子 の大 き さは 変 わ ら な い とす る.こ の と き気 固 系 反 応 は,次 の3 つ の過 程 を経 て 進 行 す る. 気 相 の 成 分Aが
固体Bの
ら生 成 し た 固相Sの り(③),こ
ま わ りの 静 止 ガ ス 境 膜 内 を拡 散 し(①),粒
内部 を移 動 す る(②).AとBの
の 反 応 球 面 は 反 応 時 間tと
動 す る.未 反 応 芯Bの
半 径rの
反 応 は半 径rの
子表 面か
球 面 で起 こ
と も に粒 子 の 表 面 か ら 中心 に 向 か っ て 移
時 間 的 変 化(−dr/dt)は
次 式 で与 え られ る.
(5.60) α は1モ
ル のAと
速 度)で
あ る.未
い ず れ か1つ
反 応 す る 固 体Bの
容 積,υAiはAの
反 応 芯 モ デ ル に 従 う 気 固 系 反 応 で は,過
の 過 程 だ け が 他 の2つ
h−1]は,一
の うち で
静 止 ガ ス 境 膜 内 の 成 分Aの
般 に,
υAi=4πr02kgA(CAg−CAs)
図5.14
程 ①,②,③
たは反応
に 比 べ て 遅 い 場 合 が 多 い.
1) 静 止 ガ ス 境 膜 内 拡 散 ① が 律 速 の 場 合 速 度 υAi[mol
拡 散 移 動 速 度(ま
未反応芯モデル図
拡 散
と 表 さ れ る.Aの が,①
濃 度CAは
が 律 速 段 階 の と き,過
こ の 式 を 式(5.60)に
半 径rの
関 数 で 表 さ れ,図5.14の
程 ②,③
が 速 い の でCAS=0と
代 入 し て 積 分 す れ ば,次
ように変化 す る お け る.
に よ う に な る.
(5.61) 任 意 の 時 間tに お け る 固体 成 分Bの
反 応 が 完 結(r=0)す あ る.し
転 化 率xBは
次 式 で 表 され る.
る の に 要 す る 時 間tbは,式(5.61)か
らtb=r0/3αCAgkgAで
た が っ て,
(5.62) の 関 係 が 得 られ る.tとxBの
実 測 デー タ を プ ロ ッ ト した と き,原 点 を通 る 直 線
関 係(比 例 関 係)が 得 られ る場 合 に は ガ ス境 膜 内拡 散 過 程 が 律 速 と判 断 され る. 2) 生 成 物 固 相 内 の 反 応 ガ ス の 拡 散 過 程 ② が 律 速 の 場 合 内 に お け るAの
生 成 した 固 相S
拡 散 速 度 υAiは,一 般 に次 式 で 表 され る.
(5.63) 定 常 状 態 で は υAiは 一 定 で あ る の で,式(5.63)を r=r0でCA=CAS)の
下 に 積 分 す る と,次
拡 散 過 程 ① が 速 い の で,CAS=CAg,反
境 界 条 件(r=rでCA=CAi,
式 と な る.
応過 程 ③
も 速 い の で,CAi=0と
お く
と,
こ れ を 式(5.60)に
代 入 し て 積 分 す れ ば,式(5.64)が
得 ら れ る.
(5.64) tb=r02/6αCAgDAiで
あ る の で,
(5.65) と な り,[1−3(1−xB)2/3+2(1−xB)]−tプ
ロ ッ ト が 比 例 関 係 を 与 え る.
3) 化 学 反 応 過 程 ③ が 律 速 の 場 合 (半径 位 置r)で て1次
未 反 応 芯Bと
生 成 物 固 相Sと
の 気 固 系 反 応 速 度 υAiをそ の 位 置 に お け るAの
の界面
濃 度CAiに
関し
で あ る とす る と, υAi=4πr2kcACAi
で あ る が,拡
(5.66)
散 過 程 ①,②
あ る.(1),(2)と
が 速 い の でCAi=CAgと
お け,υAi=4πr2kcACAgで
同 様 の 手 続 き で,−4πr2(dr/dt)=α4πr2kcACAgを
と な る.tb=r0/αkcACAgで
積 分 して
あ る の で,
(5.67) (5.68) と な り,(1−xB)1/3−tプ
ロ ッ ト が 直 線 関 係 を 与 え る.
【 例 題5.5】 球 形 粒 子 が 関 与 す る未 反 応 芯 モ デ ル に従 う気 固不 均 一 系 反 応 に お い て,同 一 反 応 条 件 下 で粒 子 径 だ け が 異 な る4種 の 球 形 試 料 に つ い て 固体 粒 子径 dpと 反 応 完 結 時 間tbと の 間 に次 の 関 係 が 得 られ た.固 体 粒 子 外 部 の 境 膜 内物 質 移 動 は 十 分 速 い こ とが わか っ て い る.生 成 物 固相 内 の 反 応 ガ ス拡 散 過 程 と未 反 応 芯 界 面 で の 化 学 反 応 過 程 の い ず れ が 律 速 段 階 で あ るか を検 討 せ よ.
解. 化 学 反 応 律 速 で は,tb=r0/αkcACAg=dp/2αkcACAg∝dp固 散 律 速 で は, をtb−dp2プ
ロ ッ トす る と 比 例 関 係 に あ る の で,こ
で あ る.与
相 内の ガ ス拡 え られ た デ ー タ
の 反応 の律 速 は固相 内の 反応
ガ ス 拡 散 過 程 で あ る.
b. 多 孔 質 固 体 粒 子 が 反 応 に 関 与 す る場 合(粒 子 内 均 一 反 応 モ デ ル) コー ク ス 燃 焼 反 応 な どの よ うに,固 体 反 応 物Bが
多 孔 質 で あ れ ば 反 応 ガ スA
が 固体 内 部 ま で 容 易 に浸 透 で き るの で,固 体 粒 子 内全 領 域 で ほぼ 均 一 に 反 応 が 起 こ り う る.こ の よ うな場 合 を粒 子 内 均 一 反 応 モ デ ル とい い,そ
の速 度 論 的 な取 扱
い は 回 分 式 タ ン ク型 反 応 器 の 場合 と類 似 して 簡 単 に な る.粒 子 内均 一 反 応 モ デ ル で は 粒 子 の 形 状 に は 無 関 係 に 式(5.12),(5.13)と 成 分Bの
と な る.こ
転 化 率xBと
こ で,CASは
反 応 時 間tと
同 様 な 手 続 き に よ っ て,固 体
の 関係 は,
一 定 で あ る か ら 積 分 し て 次 式 が 求 ま る.
(5.69)
5.3 反 応 装 置 ・反 応 操 作 設 計 の 基 本 事 項
多 くの優 れ た化 学 反 応 プ ロ セ スが 開 発 され て い るが,個
々 の プ ロセ スの 各 論 的
説 明 は他 の 成 書 に譲 り,プ ロ セ ス設 計 に 共 通 した事 柄 につ い て概 説 す る. 化 学 反 応 プ ロ セ ス は,化 学 反 応,反
応装 置,反
応 操 作 の3要 素 か らな り,注 目
す る化 学 反 応 プ ロ セ ス を効 率 よ く行 うた め に,こ
れ ら3要 素 を矛 盾 な く組 み 合 わ
せ な け れ ば な ら な い.前 節 まで は 等 温 条 件 下 の 化 学 反 応 を取 り扱 った が,実 際 の プ ロセ ス で は 熱 収 支 を考 慮 した 非 等 温 操 作 に な るた め,熱 あ る.化 学 反 応 プ ロ セ ス に 関 連 し た事 項 は,表5.3の
力学 的 情 報 が 不 可 欠 で
よ うに化 学 反 応 因 子 と反 応
装 置(お よ び 反 応 操 作)因 子 に大 別 で き る. 表5.3
化 学 反 応 プ ロ セ ス に 関連 した 因 子
一 般 の化 学 反 応 で は,反 応 温 度 が 高 す ぎ る と副 反 応 が 起 こ りや す くな り,反 応 温 度 が 低 け れ ば 反 応 速 度 が 低 下 す るの で,副
反 応 の 併 発 を避 け られ る温 度 領 域 内
で で き る だ け 高 い 反 応 温 度 を選 択 す れ ば,空 時 収 量STYを き る.
大 き くす る こ とが で
図5.15
反 応 器 設 計 の た め の 基 本 的 な作 業 手 順
反 応 温 度 制 御(加 熱,除 熱 あ る い は断 熱)は,反
応 熱 の 正 ・負 とそ の 大 小 に よ っ
て 異 な る.気 相 接 触 反 応 に お い て,発 熱 反 応 で 発 熱 量 が 大 き い と きは,外 部 熱 交 換 式 装 置 や 多管 あ る い は 多段 反 応 装 置 に よ る除 熱 方 式 が 採 用 さ れ る.ま た,吸 熱 反 応 で反 応 熱 の 絶 対 値 が大 き い場 合,多 段 反 応 塔 で 中 間加 熱 す る こ とに よ り反 応 流体 の 温 度 を適 温 域 に保 つ 方 法 が と られ る.一 方,液 相 反 応 で は,流 体 の 熱 容 量 が 気 相 反 応 に 比べ て 桁 違 い に大 き く,反 応 熱 は 流 体 の わ ず か な温 度 変 化 や 蒸 発 に 吸 収 され る の で,特 別 な 配 慮 を しな い場 合 が 多 い. 反 応 器 設 計 の た め の 基 本 的 な作 業 を図5.15に
系 統 図 と して 示 し た.扱
う化 学
反 応 に よ っ て,そ の 反 応 に 適 した 反 応 流体 の 流 れ 形 式 と熱 移 動 方 式 を選 択 す る. 装 置 設 計 の た め に,反
応 速 度 に 関す る情 報 と流 体 の 流 れ 形 式 か ら物 質 収 支 の 基礎
方 程 式 を,反 応 速 度 に 関 す る情 報 と熱 移 動 方 式 とか ら熱 収 支 の 基 礎 方 程 式 を た て,こ れ ら を連 立 して解 くこ とに よ って,反 応 器 の サ イ ズ とそ の 制 御 方 法 を決 定 す る.
【 演 習問題 】 5.1 ア ン モ ニ ア 合 成 反 応
に お い て,あ
速 度rN2は,rN2=−0.50×102mol NH3の
生 成 速 度rNH3の
m−3 s−1で
る 反 応 条 件 下 でN2の
あ っ た.H2の
消 失 速 度rH2お
消失 よ び
数 値 を 求 め よ.
5.2 あ る 均 一 系 可 逆 反 応
が 次 の 素 反 応 ① ∼ ③ か ら な り,素 反 応 ②
(正 方 向 の 速 度 定 数 はk2)が 律 速 段 階 で あ る と仮 定 で き る とす る.反 応 速 度 式 を 導 け.こ
こ で,Eお
よ びAEは
反 応 の 中 間 種 で あ る.
素 反応 ①
(平衡 定 数 はK1)
素 反応 ②
(平衡 定 数 はK2)
素 反応 ③
(平衡 定 数 はK3)
5.3 反 応 速 度 定 数 の 温 度 依 存 性 が ア レ ニ ウ ス 式 で 整 理 さ れ,頻 を受 け ず 一 定 で あ る と して,見
か け の 活 性 化 エ ネ ル ギ ーE=40kJmol−1の 上 昇 す る とkの
何kJ
ら310Kに
CHBr)を
得 た.こ
を 求 め よ.初
を 示 す の は,見
つ い て,下
率xAと
記 の 結 果(反
応 時 間tに
じ温
お け るHBr濃
応 次 数n,反
期 条 件t=0で,CH2=CBr2=20.08mmoldm−3と
度
応 速 度 定 数k
す る.
を回分 式反応 器 で行 った.正 反 応 と逆 反 応 の反 応速 度定 数
を そ れ ぞ れk,k′,t→
∞ で の 転 化 率(平 衡 転 化 率)xAeと
し て,反
応 時 間tと
転化
の 関 係 を表 し た 次 式 を導 け.
5.6 モ ル 数 変 化 の な い1次 mol%反
不 可 逆 反 応A→Bを
応 す る の に60minを
90mol%反
要 し た.反
回 分 式 反 応 器 で 行 っ た と こ ろ,40 応 速 度 定 数k[min−1]を
応 さ せ る の に 要 す る反 応 時 間t90%[min]を
5.7 800Kで
求 め よ.ま
6000h−1の
と き,転 化 率 を90%に
5.8 モ ル 数 変 化 の な い1次
ン ク 型 反 応 器 を 用 い て 等 温 で 行 っ た.タ dm3,第2タ min−1,原
ン ク2dm3,第3タ 料 成 分Aの
お け る成 分Aの
不 可 逆 反 応 を行 っ た.反
応 速 度 定 数k= ど れ ほ ど必 要 か.
容 積 の 異 な る3段
連 続 流通 式 タ
ン ク の 容 積 は そ れ ぞ れ,第1タ
ン クV[dm3]と
す る.反
供 給 速 度F′=0.5dm3min−1で
転 化 率 を80%に
ン ク の容 積 を加 え た3つ
供 給速 度 で原
す る に は 反 応 器 容 積[dm3]は
不 可 逆 液 相 反 応A→Bを
した い.Vの
た,
求 め よ.
運 転 中 の 連 続 流 通 式 管 型 反 応 器 に300KでF′=3m3h−1の
料 ガ ス を送 入 し て モ ル 数 変 化 の な い1次
ン ク1
応 速 度 定 数k=0.2
あ っ た.第3タ
値 を 求 め よ.ま
た,計
ン ク出 口 に 算 で求 め た
の タ ン ク の 容 積 と同 じ容 積 の 連 続 流 通 式 管 型 反 応
器(ピ ス トン 流 れ)で 同 じ反 応 を 同 じ温 度,同 率xは
場 合, た,同
か け の 活 性 化 エ ネ ル ギ ーEが
の 結 果 を 微 分 法 に よ り 解 析 し て,反
5.5 1次 可 逆 反 応
第3タ
値 は 何 倍 に な る か.ま
mol−1の と きか.
反 応H2+Br2→2HBrに
じ原 料 供 給 速 度 で 行 っ た と き,転 化
い く ら に な る か 求 め よ.
5.9 次 式 で表 さ れ る逐 次 反 応 を 回 分 式 タ ン ク 型 反 応 器 で 行 っ た.各 1次 不 可 逆 反 応 で,k1=1.0h−1,k2=0.5h−1,初 (CB0=CC0=0)で
あ る とす る.中
間 生 成 物Bの
応 を何 時 間 で 中 止 す れ ば よ い か.ま
5.10
温度 の影 響
反 応 温 度 が300Kか
度 範 囲 の 温 度 上 昇 で 速 度 定 数 が2倍
5.4
度 因 子Aが
た,そ
期 条 件 はCA0=1000molm−3, 濃 度CBを
最 大 に し た い と き,反
の 時 の 各 成 分 の 濃 度 は い くら か.
リサ イ ク ル 操 作 を伴 う 流 通 式 管 型 反 応 器 で 液 相1次 ク ル 比R=1の
ス テ ップ は と もに
不 可 逆 反 応 を 行 う.リ
と き反 応 器 か ら 流 出 す る 流体 中 の 注 目 成 分 の 転 化 率xが70%で
サイ
あ っ た.①
同 じ反 応 条 件 で,R=5に
し て 操 作 し た と き のxを
② リサ イ ク ル 操 作 を停 止 した と き(R=0)のxを 5.11
求 め よ.ま
た,
求 め よ.
多 孔 質 固 体 触 媒 を 用 い る 気 相 接 触 反 応 を 行 う と き,低 温 よ り も 高 温 に お い て, 全 反 応 速 度 が 物 質 移 動 抵 抗 に よ っ て 支 配 さ れ や す い か の は な ぜ か 説 明 せ よ.た だ し,熱 移 動 の 抵 抗 は 無 視 で き る もの とす る.
5.12 Ni触
媒1g上
で の 水 素 の 平 衡 吸 着 圧Pと0℃,1atm(STP)に
量 υ との 間 に 次 の 関 係 が 得 ら れ た.式(5.45)で デ ー タ整 理 を して,飽
お け る平衡 吸 着
示 され る ラ ン グ ミュ ア 式 に よ る
和 吸 着 量 υmを 求 め よ.
5.13 気 相 接 触 反 応(A+B→C)に
お い て,A,Bの
く平 衡 状 態 に あ る と仮 定 で き,Cの
吸着 過程 お よび表 面反 応過 程 は速
脱 離 過 程 が 律 速 段 階 で あ る場 合,反
応 速度 式
が 次 式 で 表 さ れ る こ と を導 け.
5.14 気 相 接 触 反 応A→Bが
不 可 逆 で 進 行 し,表 面 反 応 過 程 が律 速 で,成
が 弱 い と仮 定 して,反
応 速 度rが
分Bの
吸着
次 式 で 表 され た とす る.
(kは 反 応 速 度 定 数,KAはAの
吸 着 平 衡 定 数,PAはAの
吸着
平 衡 圧) こ の 反 応 を 連 続 流 通 式 管 型 反 応 器 で 成 分Aの 行 っ た と き,W/F0が
(Pは 全 圧,xは ま た,rの し て,常
単 位
み(y0=1)の
原 料 流 体 を供 給 し て
次 式 で 表 され る こ と を示 せ.
をmol
成 分Aの
転 化 率)
h−1 gcat−1,k=10molh−1atm−1gcat−1,KA=0.1atm−1と
圧 下,F0=1000molh−1の
る の に 必 要 な 触 媒 質 量W[g]を
反 応 条 件 下 で 転 化 率70%(x=0.7)を
達 成 す
求 め よ.
5.15 定 圧 で あ る 気 相 接 触 反 応 を固 定 層 反 応 器 で 行 っ た と き,触 媒 質 量 当 た りの 反 応 速 度 が 反 応 温 度 お よ び 流 速 と と も に 図5.16の 曲 線 の よ う な変 化 を 示 す 反 応 は,表 と判 断 さ れ る か,理 す る.
由 も示 せ.た
よ う に 変 化 し た とす る.(a)∼(d)
面 反 応 律 速 と境 膜 内拡 散 律 速 の い ず れ で あ る
だ し,細 孔 内 の 触 媒 表 面 は す べ て有 効 で あ る と
図5.16 総括反応速度 の反応流体 の流速お よび反応温度への依存性 5.16 非 多 孔 質 の 球 状 固体 粒 子 が 関 与 す る 気 固 系 不 均 一 反 応 に お い て,固 化 率xと
反 応 時 間tの
芯 モ デ ル に従 い,粒 段 階 を 推 定 せ よ.
間 に 下 の 表 の よ う な 関 係 が 得 ら れ た.反
体 粒 子 の転
応 進行 が 未 反応
子 サ イ ズ は 反 応 の 進 行 に よ っ て 変 化 し な い も の と して,律
速
参 考 文 献
第1章 1) Felder,R.M.and Ed.,John
Rousseau,R.W.:Elementary
Wiley
&
2) 橋 本 健 治 編:ケ
Principles
ミ カ ル エ ン ジ ニ ア リ ン グ,培
3) 化 学 工 学 会 編:化
of Chemical
Processes,2nd
Sons,1986.
学 工 学 便 覧(改 訂6版),丸
風 館,1995. 善,1999.
第2章 1) 化 学 工 学 会 編:「 技 術 者 の た め の 化 学 工 学 の 基 礎 と 実 践 」,第2章
流 体 工 学 の 基 礎,ア
グ
ネ 承 風 社(1998). 2) 化 学 工 学 会 編:化 3) 加 藤
宏 編:ポ
4) 小 林 清 志,飯
イ ン ト を学 ぶ 流 れ の 力 学,丸 田 嘉 宏:新
5) 亀 井 三 郎 編:化 6) 高 安 秀 樹:フ 7) 竹 内
8) 保 原
版 移 動 論,朝
善,1999.
善(1989).
倉 書 店,1989.
学 機 械 の 理 論 と計 算:(第2版),第2章 ラ ク タ ル,p.56,朝
雍,川
送 装 置,培
学 工 学 便 覧(改 訂6版),p.164,丸
井 利 長,越
流 動,産
業 図 書,1975.
倉 書 店,1987.
智 健 二,佐
藤 忠 正:解
説 化 学 工 学,第3章
流 体 の 流 れ と流 体 輸
風 館,1992.
充,大
宮 司 久 明 編:数
値 流 体 力 学,第10∼12章,東
京 大 学 出 版 会,1992.
第3章 1) Giedt,W.H.著(横
堀
2) Holman,J.P.:Heat
進,久
我
修 共 訳):基
Transfer,(Metric
礎 伝 熱 工 学,丸
善,1984.
Editions,Mechanical
Engineering
McGraw-Hill,1992. 3) Holman,J.P.著(平
田
賢 監 訳):伝
熱 工 学(上,下),ブ
4) 一 色 尚 次,北
山 直 方:伝
熱 工 学,最
5) 田 坂 英 紀:伝
熱 工 学,機
械 工 学 入 門 講 座4,森
6) 甲 藤 好 郎:伝
熱 概 論,養
賢 堂,1996.
7) 槌 田
崎 慎 一 郎,前
昭,山
沢 三 郎:伝
8) 国 井 大 蔵:熱
的 単 位 操 作(上),丸
9) 北 村 健 三,大
竹 一 友:基
レ イ ン 図 書,1993.
新 機 械 工 学 シ リー ズ7,森
熱 工 学 演 習,学
献 堂,1994.
善,1976.
礎 伝 熱 工 学,共
立 出 版,1991.
第4章 1) 古 崎 新 太 郎:分 2) 国 眼 孝 雄,近
離 精 製 工 学 入 門,学 藤
3) 日東 電 工 資 料,1998.
忍,清
水
賢:化
北 出 版,1998.
北 出 版,1996.
会 出 版 セ ン ター,1992. 学 工 学 論 文 集,12,360,1986.
Series),
4) 例 え ば,酒 5) 相 良
絋,渋
井 清 孝 監 修:膜 谷 博 光 著:分
分 離 プ ロ セ ス の 理 論 と 設 計,ア 離,培
イ ピー シ ー,1993.
風 館,1995.
第5章 1) Smith,J.M.:Chemical 2) 川 合
智,尾
上
Engineering 薫,今
村 易 弘:物
Kinetics,McGraw-Hill,1981. 理 化 学 に よ る化 学 工 学 基 礎,槙
書 店,1996.
演 習 問題解 答
【第1章 1.1
】 95wt%エ
タ ノ ー ル 水 溶 液650.7gと
水209.3g.
1.2 1.3 計 算 で き る.過 剰 空 気 率89%. 1.4 ①
② 補 給 原 料C4H10 量 をR[kmol
100kmol
h−1を 基 準 と し た と きの リサ イ クル され る ブ テ ン 流
h−1]と す る と,反 応 器 ま わ りの物 質 収 支 の 表 は 次 の よ うに な る.
ブ テ ン の 出 量 が リサ イ ク ル さ れ 入 量 と な るか ら
R=0.3(100+R).し
た が っ て,R=42.86kmol
h−1
③ 反 応 器 出 口 ガ ス 組 成 を 表 の右 欄 に 示 す. 1.5 ス チ ー ム 発 生 流 量 は3.73kg
h−1.
1.6 ① 反 応 器 に 供 給 さ れ る 原 料100
molを
基 準 とす る.反 応 器 ま わ りの 物 質 収 支 の
表 を書 く.
反 応(B)に
よ り 消 費 さ れ た エ タ ノ ー ル をx[mol
h−1]と す る と,
し た が っ て,x=0.27molh−1. ② ΔH=ΔH2−
ΔH1=−107.71kJh−1
③ 反 応 は 発 熱 反 応 だ か ら反 応 器 を冷 却 して 等 温 に 保 って い る. ④ エ タ ノー ル の 反 応 率 が 上 が る と,発 熱 量 が 増 大 す る.ま
た,副
生 成物 エー テ
ル の 生 成 量 も増 大 す る ため. ⑤ 不 活 性 物 質 の 蓄 積 を 防 ぐた め に パ ー ジ が 必 要 に な る可 能 性 が あ る.
1.7
①
T=151.3K.
② 液 化 す る に はTr=0.98の あ る.し
1.8
た が っ て,圧
曲 線 が 飽 和 蒸 気 線 と 交 わ るpr>0.87と 力 を43.2atm以
ヘ キ サ ン の 液 相 組 成35.2%,ヘ
な る必要 が
上 に す れ ば よ い.
キ サ ン の 気 相 組 成57.1%,液
相 量32.4mol,気
相
量67.6mol. 1.9 1.10
【第2章 2.1
α=5.4. 液 流 量88.9kmol
h−1,蒸
気 流 量11.1kmol
h−1
】 擬 塑 性 流 体:高
分 子 水 溶 液,塑
イ ッ プ ク リー ム,卵 2.2
省 略.
2.3
相 当 直 径De=0.615m,平
白,チ
性 流 体:絵
の 具,ケ
ク ソ ト ロ ピ ッ ク 流 体:マ
チ ャ ッ プ,粘 ー ガ リ ン,ケ
弾 性 流 体:ホ チ ャ ッ プ.
均 流 速u=2.78×10−3ms−1,Re=1703<2100.層
態. 2.4
限 界 流 速uc=Recν/D=0.588ms−1,
∴Q=ucπD2/4=5.65×10−4m3s−1=2.04
m3h−1. 2.5
u=(2gh)0.5=5.42ms−1,
2.6
省 略(例
2.7
(例 題2.3参
2.8
μ=1.27×10−3Pas,
2.9
摩 擦 速 度u*=0.044ms−1.
題2.2参 照)
∴T=(A1/A2)(2H/g)0.5=2766s=46.1min.
照). W=155.4Jkg−1, Re=27.3.
η=(WρQ/WP)×100=65%.
流 状
対 数 法 則
指数 法 則
①
y=0.225m
1.01ms−1
1.05ms−1
②
y=0.01m
0.641ms−1
0.670ms−1
③ y=0.001m
0.215ms−1
0.482ms−1
2.10
u=0.189ms−1,
Re=4330.
板 谷 の 式 よ りf=9.91×10−3,フ
2.11
① Rex=6.49×104
流 境 界 層,δ=1.82×10−3m,
ァ ニ ン グ の 式 よ り ΔP=236Pa.
②
流 境 界 層,δ=2.54×10−2m,
Rex=6.49×105>Rexc乱
2.12
δ*/δ=1/8.乱
流 境 界 層 の 方 が,層
2.13
μ=(dp2/18υ)(ρp−
2.14
D=CD(ρ
2.15
Re=Du0/ν=2.0×104>103,
2.16
す べ て 右 側 の 液 柱 面 の 方 が 高 く な る.h1,は
u=8.75ms−1.
内 速 度 分 布 は よ りシ ャ ー プ な もの とな る.
ρ1)g=0.993Pas,
υ2/2)S=425N,
u=7.41ms−1.
Rep=ρ1dpυ/μ=0.10<2.
υ=(2D)/ρCDS)0.5=29.1ms−1=105kmh−1. ∴St=0.21,
Ne=u0St/D=1.68s−1. 全 圧,h2は
動 圧,h3は
h1=h2+h3 2.17
Q=αA0(2Δp/ρ)1/2=0.014m3s−1, (∵m=0.39),
Re=1.11×105, ∴105
2.18
タ フ ト法:吹
2.19
(長 所)デ
き 流 し,髪
ト レ ー サ ー 法:(流
(短 所)モ
3.1
脈 法)た
ば こ の 煙.
る い は 非 現 実 的 な 仮 想 実 験 も 可 能.
度,誤
差,安
】 ① 略.
②
底 の 海 藻.
デ ル と し て 組 み 込 ま れ た 現 象 以 外 の も の は 予 測 さ れ な い.
信 頼 性(精
【第3章
の 毛,海
ジ タ ル 量 と し て 結 果 が 得 ら れ る の で 処 理 しや す い.
理 想 的,あ
α=0.597−0.011m+0.432m2=0.658
h=3.1Wm−2K−1.
③ 2.7kg
hr−1.
3.2
① Re=1.57×104,
②
h=56Wm−2K−1.
③
T2=60℃.
④ 略.
3.3
Q=400W.
3.4
①
u=0.927ms−1.
②
de=0.024m.
③ Re=2.91×104.
Nu=46.4.
定 性)の
検 証 に 多 大 な 労 力 を 要 す る.
静圧 .
④
Pr=5.12,
⑤
h=3.83×103Wm−2K−1.
Nu=148.
3.5
Q=1.25×103W.
3.6
①
u=9.59ms−1.
②
Re=1.43×104.
③ Nu=43.3.
④ h=45.3Wm−2K−1.
⑤ Re=2.78×105.
⑥ Nu=9.39×102.
⑦ h=2.31×104Wm−2K−1.
⑧ 500倍.
3.7
①
② 放 射 温 度 計(あ
③ 熱 電 対 温 度 計(あ
④
⑤ 熱 電 対 温 度 計,放
【第4章
抵 抗 温 度 計(あ
る い は 熱 電 対 温 度 計). る い は 示 温 塗 料). る い は 抵 抗 温 度 計).
ガ ラ ス フ ァ イ バ ー 温 度 計. 射 温 度 計.
】
4.1
略.
4.2
Wmin=−
4.3
4段.
4.4
① a
②
ΔGmix=−(Gf−Gi)=−{2ln4/7+6(ln12/7−ln4)}RT=15.37kJ.
D=178molh−1, b
L=356molh−1,L′=556molh−1,
c
molh−1,V′=334molh−1. a
y=2.5x/(1+1.5x),
d
y=1.66x−0.033.
③
x=0.69,y=0.85.
④
Nmin=5.4→6.
⑤
Rmin=1.74.
4.5
①
xw=0.0124.
②
Nmin=5.8.
③
Rmin=1.056.
④
a
4.6
①
xB=5.64×10−3,
②
N0G=4.09.
③
Z=2.86m.
y=0.6787x+0.3149,
b
y=0.67x+0.32,
b
y=2.336x−0.01658,
yT=6.04×10−4.
c
y=−x+0.9,
c
N=8.2.
V=534
4.7
①
yT=0.011.
②
L=12.54molm−2s−1.
③
④
y=49.9x+0.011. NG=6.0.
⑤
4.8
Vmean=1241ms−1,λ=96.8nm,
4.9
Z=4.20m.
水 素/窒
λ は 圧 力 に 反 比 例 す る.
素=45.3%/54.7%.
4.10
海 水 の 浸 透 圧:π=23.5atm,シ
4.11
Q=60μm3s−1,
【第5章
ョ 糖 水 の 浸 透 圧:π=2.2atm.
R=0.919.
】
5.1
rH2=−1.5×102molm−3s−1,
rNH2=1.0×102molm−3s−1.
5.2
r=k2K11/2[CA(CB)1/2−CcCD/K1K2K3(CB)1/2].
5.3
k310K/k300K=1.68,2倍
を 示 すE=53.6kJmol−1.
5.4
n=1.8∼2.0,n=2の
5.5
略.
と きk=1×10−5dm3mmol−1min−1.
5.6
k=8.52×10−3min−1,
5.7
3.07dm3.
t90%=270min.
5.8
V=2.45dm3,5.45dm3の
5.9
t=1.4h,CA=246,CB=500,Cc=254molm−3.
5.10
①
0.636,
5.11
ヒ ン
5.12
6.25cm3. ヒ ン
5.14
127g.
5.15
(a),(c):表 ヒ ン
②
ト:図5.11を
5.13
5.16
管 型 反 応 器 で 転 化 率x=88.7%
0.788. 考 慮 せ
ト:式(5.55)の
よ.
誘 導 手 順
を 参 照.
面 反 応 律 速,(b),(d):拡
ト:式(5.62),(5.65),(5.68)を
散 律 速. 比 較 検 討.
付
表
SI単 位 系 で 用 い られ る接 頭 語
基礎的 な単位換算表 質量[M]
圧 力[ML−1T−2]
長 さ[L]
表 面 張 力[MT−2]
体 積[L3]
粘 度[ML−1T−1]
密 度[ML−3] 動 粘 度,拡
力[MLT−2]
散 係 数,熱
拡 散 係 数[L2T−1]
仕 事,熱
エ ネ ル ギー[ML2T−2]
熱 伝 達 係 数,伝
熱 係 数[MT−3θ
温 度 摂 氏 温 度t[℃]と
仕 事 率(動 力)[ML2T−3]
華 氏 温度t[°F]と
重要数値
熱伝 導 率(熱 伝 導度)[MLT−3θ
−1]
水 の密度,粘 度お よび表面張力(標 準大気圧)
(化 学 便 覧 よ り)
−1]
*接 触 気 相:空
気
空気の密度お よび粘度(標準大気圧)
化 学 工 学 便 覧改 訂3版 よ り引 用. (空気 の密度 は0℃ の値 を もとに理 想気体 の状態方程式 で計算)
の関係
ギ リシ ア文 字
ギ リ シ ア 語 の ア ル フ ァ ベ ッ ト(αλφαβητο)は24文
字.
索
ア
行
引
カ
行
q線 123 吸 着 速 度 177
圧 縮 係 数 23
回 分式 157,158,162
吸 着 点 175
圧 縮 性 流 体 40
吸 着 平 衡 175
圧 力 損 失 51
解離 吸 着 176,178,179 カ オ ス 55
圧 力 抵 抗 59
化学工学 1
吸 着 平 衡 定 数 175
粗 さ レ イ ノ ル ズ数 52 ア ン トワ ンの 式 26
化学 的過 程 172
吸 着 律 速 172,180
化学 反応 抵 抗 173
吸 熱 反 応 19
化学 プ ロ セ ス 10
境 界 層 57
可 逆 反応 154 拡 散 律 速 173,183
境 界 層 理 論 127
EMD
131
位 置 エ ネル ギ ー 16 1次 反応 155 一 般 ろ 過 140
撹 拌 レイ ノ ル ズ 数 39
吸 着 平 衡 圧 176
凝 縮 線 119 凝 縮 伝 熱 101
過 剰 空 気 率 11 ガ ス吸 収 の 操 作 線 133
強 制 対 流 伝 熱 86
一方 拡 散 131 移 動 単位 数 135
活 性 化 エ ネ ル ギ ー 157
共 沸 蒸 留 125
移 動 単 位 高 さ 135
活 量 29 カ ルマ ン渦 流 速 計 62
境 膜 128
ウ シ血上清 ア ル ブ ミン 144
カ ルマ ンの 渦 列 61
境 膜 物 質 移 動 係 数 129
運 動 エ ネル ギ ー 16
乾 き基 準 12
境 膜 物 質 移 動 容 量 係 数 135
運 動 の 式 41
管 型 反 応 器 157
局 所 物 質 移 動 係 数 130
運 動 量 厚 さ 58
缶 出液 8 完 全 黒 体 93
局 所 レ イ ノ ル ズ数 57 均 一 系 反 応 154
完 全 混 合 73,157
キ ン グの 式 65
HETP HTU
136 135
共 沸 混 合 物 124
境 膜 内 拡 散 173
完 全 燃 焼 11
液 活 量 係 数 29
完 全 流 体 43
空 間 時 間 166
液 空 間速 度 170
換 熱 型 熱 交 換 器 102
空 間 速 度 166
液 相 線 117
管 摩 擦 係 数 50
空 時 収 量 171
液 相 反 応 154 NTU 135 エ ネ ル ギ ー収 支 15
還 流 120 還 流 比 120
ク ヌ ッセ ン拡 散 法 148 ク ラ ウ ジ ウ ス-ク ラ ペ ー ロ ンの
エ ネルギー保存則 6
気 液 平 衡 関 係 28
式 26 ク ラペ ー ロ ンの 式 26
FEM
71
FDM
71
気 空 間 速 度 171 技 術者 資 格 試 験 3
ク ロ ス フ ロー ろ 過 140
気 相 接 触 反 応 172
形 状 抵抗 59
気 相 線 118
形 態 係 数 97
気 相 反 応 154
ゲ ル 分 極 141
オ イ ラ ー 的 観測 41
擬 塑 性 流 体 37
限 界 流 束 145
押 出 し流 れ 73 オ リ フ ィス流 量 計 67
気 体 定 数 22
限 外 ろ 過 140
気 体 の 平 均 速 度 138
顕 熱 変 化 18
LHSV 171 エ ン タ ル ピ ー 16
逆 浸 透 140
工 学 単位 系 4
ス トロ ー ハ ル 数 61
多 孔 質 182,186 脱 離 律 速 172
国 際 単位 系 4,45
静 圧 63
タ フ ト法 71
混 合 ギ ブ ス 関 数 115 混 合操 作 8
精 密 ろ 過 140
ダル シ ーの 法 則 144
精 留 119
単位 3
精 留 塔 9
単 位 操 作 25
積分 法 162
単 一 反 応 155
最 高 共 沸 混 合 物 125
石油 精 製 プ ロセ ス 2
細 孔 内 拡 散 182
接 触 時 間 171
段 型 接 触 法 113 タ ン ク型 反 応 器 157
細 孔 モ デ ル 140,148
絶 対 単 位 系 4 全圧 63
ダ ン ク ワ ー ツ の 表 面 更 新 説
最 小 還 流 比 124 最 小 理 論 仕 事 115
遷 移域 38
段 効 率 123
最 小 理 論段 数 123
全 エ ネル ギ ー 16
単 蒸 留 30
最 低 共 沸 混 合 物 125
全還 流 120
断 熱 型 反 応 器 21
向流 接 触 113
サ
行
127
全縮 120 剪 断 応 力 36
逐 次 反 応 169
示 温 塗 料 106
GHSV
171
剪 断 速 度 36
中 間 層 49
時 間 依 存性 流 体 37
潜熱 変 化 18
次 元 4
栓 流 73
注 入 トレ ーサ ー 法 69 超 臨 界 流 体 25
次 元解析 5
全 量 ろ 過 140
直 列 型 プ ロ セ ス 12
指 数 法 則 48 自 然 対 流 伝 熱 90
総 括 抵 抗 173
抵 抗 温 度 計 105
総括 転 化 率 13
抵 抗 係 数 60
質量保存則 6 湿 り基 準 12
総括 反 応 速 度 172
定常状態 7
総括 物 質 移 動 係 数 130
定 常 流 40
十 字 流 れ 113
総括 物 質 移 動 容 量 係 数 135
手 が か り物 質 13
収 縮 係 数 68
操 作 線 121
転 化 率 13,158,164
重 力 換 算 係 数 45
相 対揮 発 度 29,117
伝 導 伝 熱 79
重力単位系 4
相対 粗 度 52
縮 流 部 67
相 当 直 径 39,88
頭 43
主 流 56
相 平 衡 25
循 環 原 料 12
層 流 38 層 流 境 界 層 57
動 圧 63 透 過 抵 抗 モ デ ル 146
仕 事 16
循 環 比 13 純 粘 性 流 体 37 常 圧蒸留塔 2 蒸 気 圧 26
透 析 器 151
速 度 差 分 離 法 112
等 モ ル相 互 拡 散 131
蒸 発 潜 熱 18
阻止 率 143
蒸発操作 7
塑 性 流体 37
蒸留 117
素 反 応 155
蒸留操作 8 触 媒 有 効 係 数 182
動 水半 径 39
層 流 底 層 58 速 度 係 数 68
タ
動 粘 度 48
ナ
行
内 層 49 行
内 部 エ ネ ル ギ ー 16 ナ ヴ ィエ ース トー ク ス の式 42
対 応 状 態 原 理 23
流 れ図 2
対 数 法 則 48 ダ イナ ミッ ク膜 150
ナ ノ ろ過 140
太 陽 熱 温 水 器 77 ダ イラ タ ン ト流 体 37
二 重 境 膜 説 127,128 ニ ュ ー ト ンの 粘 性 法 則 35
ス テ フ ァ ン-ボ ル ツ マ ンの 式
滞留 時 間 166,171
ニ ュ ー トン流 体 36
95 ス トー クス の 抵 抗 法 則 61
対 臨 界 圧 23
推 進 力 129 数 値 シ ミュ レー シ ョ ン 71 ス ケ ー ル 因 子 15 ス テ ップ 数 123
対 臨 界 温 度 23
熱 16
熱 収 支 19,187
標 準 反 応 熱 19
ヘ ン リー の 法 則 26 ,129
熱 線 ・熱 膜 流 速 計 62 熱 抵 抗 81
表 面反 応 律 速 172,179 ビ ン ガ ム流 体 37
放 射 式 温 度 計 105
熱 電 対 104
ピ ンチ ポ イ ン ト 124,134
放射 伝 熱 93 飽 和 吸 着 量 177
熱 容 量 18 フ ァ ニ ン グ の式 51
補 給 原 料 13
燃 焼 反 応 11
フ ァ ンデ ル ワ ー ル ス の式 22
ポ ン シ ョ ン-サ バ リー 法 121
粘 性 35 粘 性 底 層 49
フ ァ ン トホ ッフ の式 145
熱 力 学 第1法
則 6
粘 弾 性 流 体 37 濃 度 分 極 141 ハ
行
マ
行
VOC 150 フ ィ ック の拡 散 式 131
摩擦 速 度 48
フ ィン効 率 92
摩擦 損 失 頭 51
フ ェ ン ス キ の式 124 不 可 逆 反 応 154
摩擦 抵 抗 59 マ ッケ ブ-シ ー ル 法 121
不 均 一 系 反 応 171
マ ノ メー ター 63
排 除 厚 さ 58
複 合反 応 155
灰 色 体 94 ハ ー ゲ ン-ポ ア ズ イユ の法 則
物 質移 動 係 数 142
見 か け 粘 度 36
物 質移 動 抵抗 173 物 質移 動 容 量 係 数 135
未 反 応 芯 モ デ ル 184
47 パ-ジ 12
物 質 収 支 7,160,161,167
モ ル比 熱 18
バ ッ キ ン ガ ム の Ⅱ定 理 5
沸 騰 線 118
モ ル平 均 速 度 131
発 熱 反 応 19 パ ラ ジ ウ ム膜 150
沸 騰 伝 熱 100
モ ル平 均 濃 度 131
物 理 的 過 程 172
モ ル流 量 160,166
半 回 分 式 157 反 射 係 数 146
物 理 プ ロ セ ス 7 フ ラ ク タ ル 55
反 応 器 容 積 163
ブ ラ ジ ウ スの 式 51
有 限差 分 法 71
反 応 時 間 155,160
プ ラ ン ク の分 布 則 94
反 応 生 成 物 19 反 応 速 度 154
プ ラ ン トル の混 合 長 49
有 限 要 素 法 71 UMD 131
反 応 速 度 線 図 165
フ ー リエ の法 則 79 フ ロ ー シ ー ト 13
溶 解 拡 散 モ デ ル 140,148
反 応 速 度 定 数 155
プ ロセ ス 2
容 積 流量 163
反 応 物 質 19
分 画 分 子 量 140
よ どみ 点 63
反 応 律 速 183
分 子 熱 18
ヤ
ラ
分 子 熱 容 量 18
行
行
非 圧 縮 性 流 体 40
分 縮 119
ラ ウ ー ル の 法 則 28,117
非 解 離 吸 着 175,177
分 配 係 数 114
ラ グラ ン ジュ 的 観 測 41
光 フ ァ イバ ー 温 度 計 106
分 離 係 数 114
ラ ン グ ミュ ア型 吸 着 平 衡式
比 揮 発 度 29 ヒ グ ビー の 浸 透 説 127
分 離 度 149
卵 白 ア ル ブ ミ ン 143 乱 流 38
175
ピス トン流 73,158
平 均 相 対 揮 発 度 29
非 定 常 熱 伝 導 84 非 定 常 流 40 ピ トー 管 62
平 衡 フ ラ ッシ ュ蒸 留 31 平 衡 分 離 法 112
非 ニ ュー トン流 体 36
並 流 接 触 113
比 表 面 積 134 被 覆 率 175
壁 面 トレ ー ス法 69 ヘ スの 法 則 18
微 分 接 触 法 113,127
ヘ ッ ド 43
離 散 化 71
微 分 法 158
ベ ル ヌー イ式 43
標 準 生 成 熱 19
ベ ンチ ュ リ ー管 67
理 想 気 体 法 則 22 理 想 溶 液 26
標 準 燃 焼 熱 19
ヘ ン リー 定 数 27
律 速 段 階 156
並 発 反 応 168
乱 流 境 界 層 57 リサ イ クル 12 リサ イ クル パ ー ジ型 プ ロ セ ス 12 リサ イ クル 比 167
流 管 40
流 量 係 数 68
レ イ リー の 式 30
留 出 液 8 粒 子 レイ ノル ズ 数 40
理 論 空 気 量 11
レオ ロ ジー 36
理 論 段 相 当 高 さ 136
レー ザ ー ドップ ラー 流 速 計 62
流 跡 線 40
臨 界 点 23
連続 の 式 41
流 線 40
臨 界 レ イ ノ ル ズ数 38
連 続 流 通式 157
流 体 35
レ イ ノル ズ応 力 47
流 脈 線 41
レ イ ノル ズ 数 5,38
露 出率 175 ロ ー デ ィン グ速 度 134
流 束 129
著者 略歴 柘 植 秀 樹
上 ノ山
1942年 東京都 に生 まれ る 1970年 慶應義 塾大学 大学 院 工学研 究科博 士課程 単位取 得退学 現 在 慶應義 塾大学 名誉教 授 工学博 士
1955年 京都 府 に生 まれ る 1989年 横浜 国立 大学大 学院 工学 研究 科博士 課程 修了 現 在 横 浜国立 大学大学 院 工学 研究 院機能 の創 生 部門教 授 工 学博士
国
佐 藤
眼 孝
雄
1944年 大 阪府に生 まれ る 1969年 静 岡大学大 学院工 学 研究科 修士 課程修 了 現 在 東 京農工大 学工学 部 応用 化学科教 授 工学博 士
周
智
佐 藤 正
之
1943年 群 馬県に生 まれ る 1965年 群 馬大 学工 学部 化学工 学科卒 業 現 在 群 馬大学大 学院工 学 研 究科環境 プ ロセス 工 学専攻教 授 工 学博士
司
1961年 愛 知県 に生 まれ る 1985年 名古屋 大学大学 院 工 学研 究科博 士課程 前期課程 修 了 現 在 千葉 大学大学 院工 学 研究 科共生 応用化 学 専攻 教授 工学 博士
応用化学 シ リー ズ 4 化 学 工 学 の基 礎
定価 はカバー に表示
2000年10月25日
初 版 第1刷
2008年3月20日
第8刷
著
者 柘 上
植 ノ
秀
樹
山
周
佐
藤
正
之
国
眼
孝
雄
佐
藤
智
司
発 行 者 朝
倉
邦
造
発 行 所 会 株 社 式 朝
倉
書
店
東京都新 宿 区新 小川 町 6-29 郵 便 番 号 162-8707 電 話 03(3260)0141 FAX 03(3260)0180 http://www.asakura.co.jp
〈 検 印省 略〉 C2000 ISBN
〈無 断 複 写 ・転 載 を禁 ず 〉 978-4-254-25584-3
C3358
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in Japan