新現場楽ノート

理工図書

之を知る者は之を好む者に如かず。 之を好む者は之を楽しむ者に如かず。 （「論語」孔子）

で⋮ も学 、生 何 人は かポ はカ ン 顔と をし 輝て か聞 せい てて いい るる の。 を 僕 は 見 逃 さ な い ⋮

良そなそ いしんう もてでだ の宇も！ を宙作 作をっ っ超て て 良 みえい んてん な更だ にによ 喜大！ んき でな もみ らん うな のの だ心 ！ま で 作 っ て し ま え ！

いそおオそさ やれはマうぁ 、がしエだ、 何 ラ あ で建か！日と も築らな本は 良な宇んだど いん宙で！ん んだまも世ど だ！で作界ん ！ なれだ大 も ん！！き う でど宇く 建 もん宙な ど 築 つ く だれ な れん！ ん ！作 れ て ！ 超 え る の だ ！

都町家家そ廊 市がががー下 が集集決だが 集ままま！決 っる部ま まっ ってて。屋れ て都町 がば 鉄市が 決、 道が出 まあ や出来 ると 道来る なは 路る。 。何 だ が。 ！ ？ つ な ぐ 。

そそおそそ うれ盆れの なでをら他 の廊台で、 だ下所お汁 3 ので盆椀 尺広作のが グさるデあ リがよザる ッ決なイな ドま！ン。 はるそが魚 こ。れ決を こ ま載 か をるせ ら 両のる 来 手だ皿 て で！が い 抱 あ る え る と て な 僕 廊 。 は 下 漬 思 を け う 通 物 の る の だ よ 小 ！ な 鉢 ！ が あ る な ⋮

深オ 1 こそおお いマパのー盆は んエイ茶だにし だラで碗、はは ぞお食も茶他、 ∼茶べす碗にお 碗るごが 盆 考ごいあ何に が え飯んるあ載 たをだなるっ こ載ぞ！ て い とせ！ かる ？ アる 。 ッ大 カき ？さ も 凄 い し 、 形 だ っ て 凄 い ！

お は し を 作 っ て も 良 い ん だ よ ！ こ れ も 建 築 な ん だ ！

自里手ま 分芋にず でをな寸 デちじ法 ザゃんを イんだ考 ンと長え しはさて てさだ 素めろも 晴る！見 ら機 よ ！ し能 いが おあ はっ して をな 作お っか てつ ご美 らし んい ！

凄お いは んし だは ぞな ！⋮

お は し だ っ て 作 っ て 良 い ん だ ！

あ⋮ ので ねも 、勘 君 た違 ちい し はて 何る でヤ もツ 作が っい てる 良よ いう ん だだ よね ！⋮

も君そ君僕 のたれたは をちはち、 作はスはも る、ゴ、の もつ 神神い このく 様様とをり なな な作大 のの ん 学 だだだる の ！ よん だ学 ！ 生 に こ う 話 す 。

∼おはしから宇宙そして心まで （ものつくり大学1年生「職人学」授業ノートから）

◎この本の使い方

本というと書棚に大事にしまってしまいませんか？ しかし、本なんてそんなにアガメたてまつるもんじゃないと思うんです。 この本は「現場本」 ！どんどん現場に持って行ってボロボロになるまで使っていただきたい！ 目的は現場を学び尽くすこと！ そして1日も早く現場のプロ！ものづくりのプロになって下さい！

「おはしから宇宙そして心まで」で書いたように、 現場学は、施工だけじゃない！あくまで設計施工！自分で考え自分で作るのが基本だ！ この「現場本」を使いこなしてすばらしい知恵と知識と実践を自分のものにして欲しい！ 使い込んでボロボロになった「現場本」ほどかっこいいものはないのだ！

◎では実際にどのように使うのか？ 1 重要な内容やキーワードに赤ペンで下線を引く。あるいはマーカーで塗る。 これは結構やっていることだと思う。 でもこれは、残念だけどまだ本の使い方の初級者だね。

2 本の中に自分の意見を書き込む。不足している情報を書き込む。参考文献を書き込む。 これは中級者。 サブノートなど使わない。本の内容をそのまま転記するなんて時間の無駄なのだ！ 本をノートにしてしまえばよいのだ！

3 メモ用紙や名刺、カード、写真を貼り込む。 ここまでくれば中の上。 本が本当に自分のものになる。使える「現場本」になる。 だが、まだ足りないよ！

4 上級者は、本をカッターで切って分冊するのだ！ 現場でかさばるものはじゃまっけだ。本は薄い方が良い。 この本は分冊が可能なように各章ごと表紙と裏表紙を付けている。 ここまでやって本を使おう！ さぁこれで君が作り君を作る「現場本」の完成だ！

更にスゴイ人はページまでバラバラにして再編集する。 自分だけの本を作るのだ！

この本をそこまでしてもらったら作者としては本望だ！ さぁ「現場本」で痛快に現場を学んで欲しい！

現 場 学

筆記具なんて言うけど、要す

これも何でも良いけど、経験

写真は、簡単で凄く良い道具。

るに鉛筆でいい。鉛筆がい

者としては、細長くて製本が

高性能のデジカメが安くなっ

やならシャープペン。僕は、 メ

しっかりしている「レベルブッ

た。防塵や防水機能のつい

モなら0.7ミリの太さを愛用し

ク」がいいと思う。まずレベ

た工事用のデジカメも良い

ている。なんでもかんでもガ

ルブックに要点を書いて、そ

のがそろっているし、編集も

ンガン書くには折れにくい太

の日の内に、 大学ノートに書く。

プリントアウトも楽。大いに活

さが良い。もちろん、ボール

でも文章だけでは現場はつ

用しよう。

ペンも結構！マジックだって

かまえられない。やはり絵か

…といいながら、できれば、手

いいし、筆ペンだって良い！要

写真が欲しい。僕の場合は、

でスケッチして欲しいのだ。

するに自分にあったものを選

もっぱらスケッチをした。スケ

写真を元にしてスケッチして

ぶこと。

ッチというとなんだか偉そう

欲しい。というのは、写真に

欲を言えば、 どんな状況でも

だからマンガで良い。でも、

撮っちゃうとそれで安心して

書ける道具が良い。ボール

絵が下手だと思いこんでい

実は何にも見ていないと言う

ペンは、宇宙用の内圧式ボ

る（ホントは絵が下手な人は

ことがあるのだ。早稲田の4

ールペンならいいけど、一般

いないんだよ！）人には、写真

年生対象の京都旅行では、

的には、上向きに書くとイン

がおすすめ。デジカメをプリ

基本的に写真は御法度！スケ

クが出なくて文字がかすれる。

ントアウトして大学ノートに貼

ッチを主体とする。目で見て

水性インクだと雨に濡れてに

れば一丁上がりだ。

手で描く。そうすると形の秘

じんだり、文字が流れて消え

実は、ノートの取り方の必殺

密が分かるのだ。また、 写真は、

たりする。経験者の僕として

ノウハウもある。ここではス

どうしても光が陰になって見

はやはり鉛筆がおすすめ。

ペースの関係で書けない。

えない部分が出てくる。その

なにせ、南方熊楠のノートの

点、 イラストは、詳細に描ける。

話から始まるのだから…。

仮設足場が林立する現場空

でもいつか話したいなあ。

間で撮った写真は、どうして も仮設が邪魔をして肝心なと ころが見えなかったりする。そ れをイラストで補うのだ。だか らデジカメに頼りすぎぬこと。 あくまで補助ツールだ。

これまた、 メモの補助ツール！

これまた、ノートの代用品+補

これは、 清書の道具じゃないよ！

実はですね。7つ道具の内4

あくまで補助ツールであるこ

助ツール。

分析用および整理用。人に

つが一つにまとまっちゃたの

とを忘れないように。

デジカメもI Cレコーダーも

見せるため清書するのは、見

が携帯というスグレモノなのだ！

僕もテープレコーダーを使っ

VTRも便利だけど、電気がな

せる目的がはっきりしてからで

デジカメ＋ I Cレコーダー＋

たことがあるけど、駄目だった。

いと見ることが出来ない。 ト

いい。まず基本は手書きノート。

VTR＋パソコン＝携帯！

まず録音しているからと安心

イレでも、布団で寝っ転がっ

でも、例えば、諸君が、4年生

写 真を撮って、更に録 音も

してあまり真剣に聞いていな

ても見られない。実は、どこ

で現場のことを卒論に書きた

出来、動画も撮れて、メール

い。メモがずさんになる。それ

でも見られて書けて一番便

いのであれば、 ノートの情報を

も書いて添付して送れちゃう

にあとでテープ起こしするな

利なのは、紙＝ノートなのだ！

パソコンに打ち込んでデジタ

のだ。

んて思っても実際には時間

折りたためるし携帯性が高い

ル情報にして、 あとで編集（カ

本格的にレポートするには自

がないのだ。テープ起こしは、

し、気づいたらすぐに書き込

ットアンドペースト）するのが

分のPCメールアドレスに送

録音した時間の3倍から4倍

めるし…。やはり紙はスゴイ

楽だ。事実、研究室では、 イン

ればいいのだ

かかる。とても出来たモンじ

道具なのだ。

ターンシップの日報はノートじ

しかも携帯性があって、電話

ゃない。だから一期一会の精

ゃなくてメールで毎日送っても

も出来る。まぁなんというか

神でメモを書くこと。録音は

らっている。それをインターン

これが決定版だね！

あくまで補助だ！

シップのレポートや卒論をま

（でもやっぱし基本はノートだ！

とめるときに編集すればいい

携帯も電池切れや故障があ

のだ。

るからね…）

人間は忘れる。だからその日

どこかのメーカーで長時間

の内に日報を書く。でもノート

充 電 不 要で耐 水 性や 防 塵

だとあとあとレポートなどには

性に優れた現場用の携帯を

使いにくいしデジタル化する

出してくれないかな？

手間暇がかかる。むしろ、 メー ルであらすじを書き、 その補足 をノートに書く。これが今、一 番良いように思う。

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立川文志（たてかわ ぶんし） ・本名／佐藤敦之（さとうあつゆき） ・昭和15年5月15日生まれ ・沼津市立第五小学校、第五中学校に学ぶ ・静岡県立沼津商業高校卒業後、上京 ・グラフィックデザイナーとして就職 ・落語立川流色物真打 ・趣味／酒味 ・日本職人名工会 相談役

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064 題字 立川文志師匠

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建築家 矢田

洋（やだ ひろし）

 ちょっと余談になるが……（のっけからなんだ！ まぁマァマ……） 「建築馬鹿」は私こと矢田洋が1960年代に書 いた名著というより迷著、いや快著というより怪著である。その本、建築の現場からの直言というかキレる寸前の 遺言集で、建築主の迷妄から建設業者の悪根性、現場監督の無能から現場員の無知をこきおろし、設計事務所 から来ている工事監理の先生の無見識、いや白痴ぶりをすっぱ抜いて建築界にドッとウケた。当時若かりし建築 学徒にはこれを授業中膝上に開いて隠し読んだ「建築馬鹿」育ちが多く、今も意外な現場で出くわしたりする。

現場がほんまの建築学校  私は某・早稲田大学の建築学科に通ううちか らハヤク設計がやりたくて設計事務所に這入り込 み卒業したときにはもう自分の設計した「お作品」 の工事監理の小先生として現場に赴く。で、 現場 に出て驚いた。なあんにも知らない、 てんでわから ん。でも、 工事現場では設計監理の先生！なんだ から、 こりゃあ困ったね、 ヨワったなァ、 たしか某・建 築大学を出た筈なんだが……そんなとこのでえ がくなんかに行っとたから現場じゃ馬鹿同然なん じゃ……ぐっ！と詰まって、 ぐうの音も出ない。  これまでの勉強は机上の建築、 図上の建築で、 はじめて本当の、 実物の建築が建っていくのにつ きあうのだ。現場が実体としての建築を学ぶ学校 なのだ。イチから勉強のやり直しだ。そう覚悟を決 めた。そして現場に立ち働くみんな先生として、 教 えてもらうことに。  現場監督は施工学の教授、 現場員は助教授、 職人は各職の特任講師。職人の中には本当の 技師、技師じゃなくて技士、 それも曲芸的技師も 居り、本当の博識の士＝博士級の御仁も立ち働 いている。  たとえばペンキ屋。ただのペンキ塗りだと思って いたが、刷毛を引いたときの泡のたたん秘訣は、 なんかあるんかい、 ぐらいのことを聞いた。休みん ときにおせえてヤル、 とつけんどんだったのが休み に入るとやってきて、 出るわ出るわペンキの品質、 調合、 塗り方、 道具、 正しい塗り方、 手抜きの方法 あの手この手……私は博士号を贈った。  またたとえば左官屋。上階の壁を塗っているの が左官技師の特任講師級だとは判ったが地上 でセメンを槽に入れて練っているのはただの肉体 労働者と見下していた。これが大きな間違いだっ た。練りあがったモルタルの塊りを下からヒョーッと 投げ上げる。それが上がっていって一瞬停止し たかと見る間に落ちてくる……その一瞬停止した ところへスッと鏝板が出て、 それに載る。止まって いるものを板に取るんだから何のこともないじゃろ、 という顔で空中のモルタルを鏝板に取って塗って いる。投げ上げる方も一寸やそっとでは達成でき ない技の持ち主なのだ。この静かなドラマの背後 に、 学びきれないほどのノウハウがひそんでいる。 大学なんて行ってたら学ばれんぞ、 ばろ。 あ、 「ばろ」ですか。馬鹿野郎の現場での云い方。 馬鹿野郎→馬あ野郎→馬あ郎→ばあろ→ばろ。 ぼろのモトは馬鹿野郎にちがいないが、 現場では べつだん深い意味はなくて、 何にでもつける接尾 語といってよい。そうやるんじゃねえ、 ばろ。こうや るんじゃばろ。そこんかねじゃくよこせ、 ばろ。たば こ買ってこい、 ばろ。なにもたついてやんでばろ。 酒のみにいこうってんだばろ。

建築現場大学言語学科  現場に出て、一番困ったのは現場で飛び交う コトバである。建築現場の最初の最初、 きょうはな、

みずもりやりかただい、 みずぐいをな、 いすかにき ってな、 たてじがくるとったらあかん、 かならずれべ るでみろよ、 おおがねつくっとけ、 そこのやまはじゃ まやけんねこでとってけ。フランスにでも行ったみ たいにちんぷんかんぷん。聞くは一時の恥、 きか ぬは一生の恥、 というのは間違いではない。で、 い ちいち恥をかいてみたが際限がない。先生という 立場上、 恥もかけない場合があって窮すること毎日、 ほうほうの態で務所（設計事務所のこと。略して 計務所≒刑務所≒務所） に帰ると建築用語辞典 や施工用語辞典を引いても、 現場でほんとに飛び 交っている現場用語は三つに一つも出ていない。  この駆け出し現場員や工事監理の小先生の 困窮をなんとか救う手はないか。 コトバがわからな くて現場で立場を失うのはつらい。知らない、 わか らない現場コトバに急に出逢うから窮するんで、 現場＝戦場に出るまえに現場コトバにあらかじめ 出逢っておける仕掛けはないか。建築用語辞典？ ありゃぁ知らないコトバを引くに引けない。大辞典 をはじから読んだらどうか。枕になるような厚いの を全頁読んでも、 三分の一も出とらんつうただろう、 ばあろ。  そこで矢田某は一計を案じた。建築現場用語 をふんだんに使ってエッセーを書くことにした。こ のエッセー集を楽しみながら読んでいけば、 建築 現場用語に出会える。その意味も書いてあるから、 現場で出会ったって……原理的には大丈夫である。  建築用語に出会うためのエッセイは、 インテリア 情報誌「室内」に、 「建築用語漫歩」と題して連 載をはじめた。いつ始めたんや？そう、 「建築馬鹿」 五集目を書き終えたときから、 だから三〇年程前 からである。連載は今もつづいている。二〇〇五 年十二月号で連載三六〇回目を迎えた。  ひとつの外国語、 例えば英語やフランス語は大 体八百語の単語を駆使すれば用が足りるという。 小むずかしい本でも五〇〇〇語の蓄えがあれば 大体読める、 という。矢田某の連載三六〇回のう ちに登場した建築用語は約五〇〇〇語であり、 ま だまだエッセイのタネ （建築用語） は尽きてない。  建築の現場という空間は、一国の文化に足ほ ど豊かに現場用語の飛びかう、濃密なる文化空 間なのである。建築現場用語をマスターすれば 貴方は第一級の建築現場文化人。建築の現場 空間をそういうふうに楽しんでいただきたい。

現場博士の七つ道具  現場で年上の諸職現場員へぼ監督の上に立 つには、 知力深く感度鋭く万事を見抜く実力がい る。そして、 その実力が総身に溢れていると一目 でわかる見てくれがいる。人は見かけによるのだ。 そのために私が現場監理駆け出しの時代に、 一 身に装着した七つ兵器を紹介する。 ①2000m/mズーム双眼写真鏡……大双眼鏡 の片目に200m/mズームカメラを並べたものを背負 っていた。現場事務所（ゲンバでは箱番と呼ぶ） の

窓からこれで、 上階の壁の欠点、 壁の傷までパチリ。  職人たちの遠くに居ても、 これがジッと向けられ ていると気づいたら、 どんな大胆な武者もムシャ震 い。実用でもあり見せかけにも絶大な効果がある。 ②120m/mランプ付き天眼鏡……懐中電灯兼 用で、壁を斜めに照らせば左官は肝が縮む。材 の突きつけ合わせや仕口、 材料の肌理など、 手で 擦った方が判るのだが、 これ見よがしに天眼鏡を 振りまわすと、 大工は身をひき締める。 ③打手小槌……ただの小槌であり、 大判小判が 出てくるわけではないが、 タイルや左官壁の浮き、 胴縁や根太の入り具合を打診する。指の背でコ ツコツという手もあるが、 それじゃ生ぬるい。小槌 で叩けばピシリと判る。綺麗な杢の桑の、飛切り 上等の小槌一丁見せびらかせば、 がぜん一目お かれる。 ④ 6 0 0 m / m 折 尺 枝 付 巻 尺 乃 規 司 …… 幅 30m/mの厚い鋼材製巻尺……1米以上伸ばし てもピンとまっすぐに、 カーソル （通り枠） を通し、 巻 尺の端とカーソルに巻尺と直角に折尺を枝尺とし て固定したもの。なんじゃコレ。おぬしレントゲン写 真撮ったことあるら （甲州方言）。そんとき枝尺の 長∼いノギスみたいなもんで胸厚測られたべえ、 あれの直線状の本尺を巻尺に替えたもんさ。 どこ で売っちょる？てめえで作れ、 ばろ。 ⑤振出渓流釣竿……振出せば3600m/m二間 竿になり、 仕舞えば尺におさまる十六本継ぎ竪調 子の釣竿。目盛りを振ってあり、 一人で爪掛かりの ない内々寸法をはかるのに用いる。僻地の箱番 だったら早朝か夕まづめに釣りに出かける。寸法 とりなら今は光線でピッピッと測る電子距離計があ るら……ばあろ、 それで魚、 釣ってみろっし。 ⑥警察手帳……只のポケット手帳だが、表紙に 警察マークを銀紙でつくったマークを貼ってある。 監督や現場員との打ち合わせから職人との応答 まで、 これをとり出す。何でも手帳に控えておくと、 しょっちゅう起きる云った云わないの争いに必ず 勝つ。ペラペラめくって、 なんも書いていないのに 空読みしても勝てる。見せろ、 とは云わないもんだ。 ⑦ヘビーデューティーヘルメット……ヘルメットは 風 が 通るように内 輪で浮かしてか ぶるので、 20m/mくらいの空間がある。半球形の全面だか らかなりの容積がある。昔のことだから計算尺、 磁石などの小物を格納していたが今ならケータイ、 デジカメ、 電子辞書、 GPS。これは仕込み杖ならぬ 仕込み笠。  現場は戦場である。これで完全武装して、 いざ 現場へ！ 筆者プロフィール 1937年大阪府生まれ。早稲田大学建築学科卒「建築馬鹿」第1集 ∼5集（鳳山社） 「建築用語漫歩」など著書多数。同居の隣人に建 築家丹羽小丸（「どうも住みません」鳳山社著書）、 考現学・道具学 の山口昌伴（「台所空間学」筑摩書房など多数の著者） などがおり、 夜な夜な歓談す。 （「建築ことば漫歩」＜道具編＞著者紹介より抜粋）

第 1 ● 章 構 造 職 人 学 ノ ー ト

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現場をいかに つかまえるか？

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「当日の巻」に続く→

■新現場人感性

 「現場」のベテランも新人も常に「現場」から無限の宝

 初めて「現場」に出た時、 あらゆるものが新鮮に見える。

を発揮していけるタフガイであり続けてほしい。

残念ながら現在の大学教育では「現場」は充分に理解す

「新現場人」は、現場からおもしろさを沢山発見をしてそれ

ることが出来ない。実践を重んじるものつくり大学でも事情

を楽しむことができる「感性」を持っている。

は同じ。学生はインターンシップで初めて驚異の「現場」に

現場新人、 そして学生諸君は、 まず、 その「感性」を持って

出会う。我々は「現場」に放り出されるまでブ厚い仕様書の

欲しい！

細かい規定が具体的にどんな事なのか？ まのあたりに見る 事が出来ない。これは「建築」を学ぶ宿命的な問題であろう。

■第一教程＝職人学

 学生や学校を出たての新人が何も分からないのは当然

 私は初めて担当した現場「仙台市博物館新築工事」で

の事。むしろ現場で起きる全ての事が実に新鮮で不思議

学んだ事をまとめ、昭和61年に「仙台市博物館建設図誌」

でさえある事は喜ぶべき事なのだ。決してその無知を恥ず

（那須建設施工研究会・著） という本を作った。これはその

べきではない。多くの先輩もその無知をむしろ喜びに変え

本から主要な所を再編し現代化し、更に「現場本」にした

て多くを学んで来た。この素朴な喜びが実は「現場」を発

ものである。

見し「現場」を活きる大きな原動力となっているのだ。

 初めて現場に出て良く分かった事は「建物は職人が作 003

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っている」という至極当り前の事だった。現場管理は職人

同じ名前で同じ機能でも大きさが違うのは何故か？道具の

のマネジメントの比重が大きい。だが私は職人が使ってい

ニックネームというべき通り符蝶（ふちょう）の由来は何か？

る道具の名前すら知らず、職人がどんな風にコンクリートの

これだけでも調べることは沢山ある。現場がダンダン愉快

建物を作るのかも理解していなかった。マネジメントすべき

になってくる！

対象を知らないという事は致命的である。カメラとスケッチ

 次は服装だ！不思議な事に外見がかっこいい職人は腕

ブック片手にそれが仕事だと言わんばかりに職人を学びに

がいい。まるで技能を着こなしているかのように動きと作業

現場に飛び出した。

が連動する。型枠大工の釘袋は何故左後方にあるのか？

 型枠大工・鉄筋エ・鳶工は、 「躯体3役」と言われる。コ

現場でよく見て答えを出してほしい。彼等の服装は現場の

ンクリート構造躯体を作る主要な職人であり、彼等が建築

危険な仮設ジャングルでその作業を助けているのだ。

の良否をおおもとで決定する。躯体が悪いと強度は勿論、

 次に作業手順をスケッチする。1チームで誰がどの様に

仕上げまでも響く、彼らを知る事が第一の目標である。

動いているか？道具と材料の接点は？段取りと作業の流れは？

 まず使用する道具の名前を調べて機能別にまとめてみる。

そしてどんな所に苦心し工夫をこらしているか？ヒルメシ以

職人と道具は不即不離の関係である。道具を知ることで彼

外の2回の休憩時間を利用して疑問点をぶつけてみる。一

等がどんな作業の広がりを持っているかが分かって来る。

見不合理な動きの中にさえ現場で鍛えられた知恵が潜ん

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でいる事を発見する。発見に次ぐ発見、 これが実に面白い！

 鳶工も歴史が深い。だが落語の親方のイナセな語りロ

 これらの実に楽しい作業をまとめたものが「第1章・構造

をイメージしていたら見事に裏切られた。仮設や現場の雑

職人楽」と「第2章・仕上職人楽」である。

務を引き受けるナンデモ屋の鳶工は本当は我々よりも現場

 「現場」は言葉ではまとめきれない。職人の姿があって

の物知りなはずだが、東北の特性のためか彼等の多くは農

初めて伝わるものがある。そこに潜む宝が膨大なのだ。そし

家のオヤジさんであった。むしろ落語の親方のイメージは鉄

て彼等の気質・人間としての特性についても学ぶべき点が

骨建て方専門の鳶工だった。

非常に多い。

 彼等3役をまとめる上でそのイメージを含ませる為に型枠

 型枠大工は、木工のいわゆる家大工に対して伝統的に

大工は伝統的大工と対比させ、鉄筋工は近代的なフォー

つながっている。意識の上ではその末裔（まつえい＝子孫）

マットに配置し、鳶工は花札イメージとしてみた。

としての誇りがある。だが同時にヒノキでなくベニアを相手 にするという負い目も感じている。  鉄筋工はRC技術導入後の職業で歴史が新しい。概し

●前書きが長くなった。退屈している学生諸君もいるだろう！

てクールで近代的な人が多いようだ。ジャズファンやバイク

詳しい内容は各章で！

狂も鉄筋工に多かった。

さぁ痛快に現場を生きようではないか！ 005

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2005年2月21日

大青工業 ヒヤリング 那須＋大沼

今、型枠大工は？ 仙台市博物館が竣工した1986年から今日まで約20年の月日が流れた。 この20年間で型枠大工はどう変わったのか？ 博物館の型枠大工を担当した大青工業の現在の千坂修部長と伊藤職長にここ20年の変化をうかがった。

■道具や工法の変化 ①フォームタイ 基本的には形は変わらない。だが、 14∼5年前からO社がネジ 山の大きいフォームタイを開発して、 締めるのが楽になった。ネ ジ山が大きいから回す回数が減った訳だ。またフォームタイは、 コンクリート打設の時、 バイブレータをかけてゆるまないように ワッシャーがついているが、 前はすぐに取れてしまう欠点があっ た。だが、 これも改良され取れにくくなった。 ②合板 合板は、 いかに転用回数を増やすかが鍵だ。一般の普通合板の 場合は、 3∼4回。無理して5回だ。だが、 塗装ベニアなどが改良 され現在は10回に増えた。 「ステルナ」などという合板まである。 ③工法その他 型枠と桟木の収まりも半がけが減って簡略化した。これは生産 性向上と言うよりも技能低下と見た方が良いかもしれない。 ドリルは充電式の良いものが普及した。丸ノコも安全対策で暗 いところで明かりがつくものや、 安全カバーの性能も向上した。 レベルもオートレベルが普及して、 1人でレベル出しが出来る ようになった。 ■社会変化 ①焼却 昔は、 合板は、 下小屋や工場で焼却処分していたが、 現在はダイ オキシンの発生が問題になって、 焼けなくなった。焼却業者に 依頼するとコストアップになってしまう。そこで、 当社は、 3年前 に700万円かけて焼却施設を作り自社で処理している。県と市 が年1回、 ダイオキシンや煤塵の検査にくるが、 立派に合格して いる。 ②安全 安全面は非常に厳しくなった。安全帯は肩がけ式が絶対だし金 具も大きくなった。地下足袋はつま先に金具がついて安全なも のが開発された。ヘルメット＋安全帯＋安全靴の着用は絶対で、 もし着用していないとゼネコンなどが朝礼でチェックして現場 に入れてもらえなくなった。 ■単価・経済状況 ①20年前と同じ単価 現在の単価は約2500円/㎡で、 20年前とほぼ同じである。水 準が同じという訳ではない。物価は上がっているから実質的に 単価は下がったと見るべきだ。バブルの時は4300円/㎡まで 上がったが、不況になってドンドン落ちてきた。5年前頃は、 3000円/㎡だったが、 マンションなどでは2400円/㎡になっ ている。北3県（山形・岩手・青森）から安い単価で受ける型枠業 者が出稼ぎにくる。そこに対応しなければならない。 バブルの頃は、 年収が平均600万円から800万円だった。でも 028

最近は300万円くらいだ。これでは、 とても将来に希望が持て ない。 ②後継者問題 募集しても型枠大工を希望する若い人はほとんど来ない。20 年前は当社の型枠大工の平均年齢は、 46∼7歳くらいだったが、 現在は54歳だ。ゼネコンは「65歳以上の型枠大工は使うな」 と言うが、 実質的には定年なしでがんばるしか無い。 ■考察 バブルの頃、 職人不足が叫ばれた。那須建設もある工事で型枠 大工が確保できず、 工期が遅れ大赤字になったことがある。社 長とともに仕事をやってくれる型枠大工を探して回り、 方々に 頭を下げた苦しくも生々しい記憶がある。バブル最盛期、 型枠 大工などは日当5万円以上の時代があったのだ。 そのためゼネコン大手は、 職人を育てる方向とロボット化を推 進する方向に分かれた。目立ったのが、 研究所で開発された建 設ロボットだった。私がイラストを描いた施工雑誌のロボット特 集号が今でも手元にある。 （「建設ロボット大図鑑」建築の技術 施工別冊1992年9月彰国社） これはどうなったのか？本来なら20年かけて生産性は飛躍的 に向上するはずだった。だが、 インタビューをしてみて技術的に 細かな改良はあるにしても、 何ら改善されていない状況が確認 できた。不況になって、 ロボット化を推進するよりも、 職人を使 った方がコスト的に安いことがはっきりしてきたのだ。だが、 果 たしてこれでいいのだろうか？ 単価問題や労務問題は深刻である。これは仙台だけの状況で はないだろう。全体の仕事量が減っているのだ。長引く不況の 影響で、 役所の税収が減り、 民間だけではなく頼みの公共事業 が減少した。公共工事は戦後復興に一定の役割を果たしたが、 もはや戦後復興は終わり、 どうしても必要な公共建築物がなく なってしまった。官庁の新築物件はドンドン減るだろう。むしろ 住宅分野のようにこれからはまさしくリフォームの時代なのだ。 RC分野のリフォーム物件は増えるだろうが、 外壁改修や耐震補 強などあまり工事規模は大きくない。 公共事業は、 景気刺激策として効果があった時代があったが、 最近は、 3次産業人口が増えてきたせいか、 あまり大きな効果 は期待できなくなってきた。政策としての有効性を失いつつあ る。また、 公共事業は、 本当に必要なのか？も厳しく問われるよ うになってきた。ダムなどのように自然環境を破壊する建設に 批判が向けられ、 環境を守る市民感情も高まってきた。リサイク ル問題、 酸性雨によるコンクリートの劣化問題も噴出し、 さらな る研究開発が必要になってきた。 耐火建築物で近代の象徴だったRC（鉄筋コンクリート造）は、 今大きな曲がり角に来ている。 新しい型枠大工とは？これを真剣に考えていかねばならない。

型枠大工 ノート ∼書き込みノート∼

こういう話しは、ほとんど新聞や雑誌には載らない。載っていても見逃す人も多い。 業界紙なら特集などでやるかも知れないが、一般の人はほとんど目に触れない。テレビでもめったにやら ない。また単行本や専門書でもほとんど触れられていない。だからみんな知らない。 だが、 これこそが一番重要な情報なのだ！一番重要で新しい生きた情報は、実は、現場の人が持っている。 現場はその発信基地なのだ！ このノートは、左のページを参考としながら現在諸君が現場や実習でふれあえる 現役の型枠大工さんにインタビューして書き込んで欲しい。生きた情報をつかまえる実習課題なのだ。

■インタビュー（時間・場所・人）

■安全について

■道具の変化

■単価問題

■工法の変化

■後継者問題

■廃棄物処理の方法（リサイクル法）

■その他（気づいたこと・感想など）

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SD295,SD345

SR235 SD295 SRR235 SD345 SD235 SDD235 SD390

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21∼27（N/mm2）

SD295 SD345

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梁配筋

梁鉄筋の加工組立図 これをもとに、加工（切断曲げ） を行い、配筋する。この図には ここに示したルールをもとに全ての寸法がでている

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セッケイキジュンキョウド Fo21∼27（N/mm2） フックアリ

L2 SD295 SD345

25d

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フ ッ  ク  ナ  シ SD295 SD345

（N/mm2） 21 27

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35d

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SD295 SD345

（N/mm2） 21 27

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今鉄筋工は？ ∼A鉄筋がなくなった！？ ■消息不明 仙台市博物館新築工事鉄筋工事を担当したA鉄筋が無くな った。 型枠大工＋鉄筋工＋鳶・土工はコンクリート躯体3役と言わ れ緊密な連係プレーを行う。 だから互いに企業情報を持っている。良い型枠業者は、良い 鉄筋工を知っているし、鳶・土工もそうだ。 大青工業（前掲） ・千坂部長さんにお話を伺った時にA鉄筋 の連絡先を確かめようとしたら「消息不明」と言われた。一 瞬耳を疑ったが、千坂部長さんはこう言う。 「倒産したか？あるいは廃業したか、または移転したか？は たまた規模縮小か？分からないが、現在完全に消息がつか めない状態だ」 ■企業興亡 ややショックを受けた。20年の歳月は企業を確実に変えてい る。倒産・廃業・規模縮小・移転・消息不明…全てあり得る。電 話帳を調べようとして思いとどまった。果たして探し出しても 話しをしてくれるだろうか？昔の栄光を思い出させてかえっ て苦しい思いをさせるのではないか？ この20年間で、大青工業の青澤金治郎社長も飯塚職長もす でに他界された。青葉鉄筋の遠藤職長もあのとき既に60歳 は超えていらっしゃったからあるいは…？ 思えば、 ここ20年で世代は変わって当然なのである。また専 門工事業者の興亡もあり得て何の不思議はない。 ■平均営業年数 ここで考えてみたいのは、A鉄筋の消息不明に隠された本 当の意味だ。 専門工事業者の起業→倒産サイクル、 つまり平均営業年数は、 「20年程度です。また企業規模の小さい方は更に短く、15 年くらいになります。ここで示されたのは算術平均値で、個 別企業による分布の幅は出ていませんが、 この中にはおそ らく、5歳、10歳という企業が相当数含まれていることも想 像に難くありません。」 （「建設業の世界」古川修著・大成出 版社・2001年初版・古川修先生遺稿集編集委員会編集） 少し古いデータだが、第4回建設業構造基本調査(1984年) によれば、建築個人で16.3年、法人でも資本金200万円未 満で16.0年、500万円未満で15.1年、10億円以上で 25.4年、法人個人合計平均で18.5年である。 ここで課題1：現在の最新のデータを調べて欲しい ■どうみるか？ A鉄筋が消息不明なのは、業界の「常識」であった。むしろ大 青工業の方が例外なのだ。 問題はこれをどう見るかである？ 我が心の恩師・古川先生は「いずれにせよ、数十年も続いて いる中小建設業は事実上、比較的少ないのです。この事実が 042

を中小建設業の不安定さとみることもできますし、また新 旧交替がたえず行われて、 この業界の活性が維持されてい ると見ることもできなくはありません。」 （前掲書）と指摘さ れている。 そういえば、那須建設時代の私が学会の委員会で上京して 古川先生とお会いするたびに「那須君！良く来たな！」と喜ん でくださったのはこういう事情があってのことだったのかも 知れない。 果たして不安定とマイナスに見るべきなのか？新旧交替が 活力を生み出すとプラスに見るべきなのか？ ここで課題2だ。その答えを自分で考えて欲しい。 ■ヒント 以下古川先生の言葉をヒントとして書いておきたい。 「個人企業の特徴は、その経営者が業種個人に依存してい ることです。端的に言えば、立派な自営業主がいれば企業は うまくいくし、そうでなければダメだと言うことです。また、 どんなに良い経営者でも、例えば突然、病気になったり、何 かで間違うと、それはたちまち経営に影響します。業主が年 老いて、良い後継者がいなければ、企業は一代限りで、必ず しも継続しません。われわれの周りには、そうして消えてい った企業の例がいくらでもあります。」 （前掲書） 「「建設業がひとつつぶれたら、新しい業者が三つできる」 と言います。そうした創業は建設業では可能だし、建設業は それ自体の内部にこれらの予備軍を内蔵していると言えま す。この世界には勤労者が経営者になる道があり、経営者と しての勉強、修行をつむ場所ですらあります。きびしい労働 条件に耐えるのも、その見通しがあり得るからで、そうして 新しい中小ゼネコンは生まれます。」 （前掲書） ■参考資料 ①古川修文庫 http://www.ejcs.co.jp/library/hurukawa/cil_hurukawa.html 古川修文庫は、 故古川修先生の５０年に及ぶ建築生産・建設業 研究に関する 諸資料から構成されている。古川先生は、 ご自 身の研究に関する図書・報告書・雑誌を収集され 新聞のスク ラップ・論文・メモ等の大半を保存されていた。 建設産業図書館内では和洋書籍 のうち建築生産・建設業に関 する一般書籍および報告書を自由に閲覧することができる。 ②建設産業図書館 http://www.ejcs.co.jp/library/cil.html 当館は建設産業に関する質の高い情報を提供する専門図書館。 主な収集分野は、建設産業史、社史・団体史、建設統計、経営 管理、 法規、 災害記録など。 〒104−8438 中央区築地5丁目5番12号浜離宮建設プラザ １階 03−3545−5129

鉄筋工 ノート ∼書き込みノート∼

型枠大工でやったように、左のページを参考としながら 現在諸君が現場や実習でふれあえる現役の鉄筋工さんに インタビューして書き込んで欲しい。 生きた情報をつかまえる実習課題である。

■インタビュー者（時・所）

■安全

■道具

■単価

■工法

■後継者

■廃棄物処理

■その他

【課題】 1）建設業の現在の平均営業年数は何年か？建設業構造基本調査など現在の最新のデータを調べよう。 2）建設業の平均営業年数が少ないのはなぜか？その意味を考えよう！ （古川文庫を訪ねよう） 043

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2005年3月8日

佐々木組

この20年間で鳶・土工はどう変わったのか？ やはり博物館の鳶土工事を担当した会社もなくなっていた。 そこで仙台屈指の鳶・土工、佐々木組の常務取締役・統括工事部長・佐々木健一郎氏に 会社の特徴などを中心にお話を伺った。

■品質管理＋人材育成 ①ISO9000 当社は早くからTQMなど品質管理に力を入れている。平成 12年（2000年）2月に日本の専門工事業者・鳶土工工事 で初めてISO9000を取得した。これは画期的なことだと 思っている。 創立当初から勉強熱心な会社でそれが良き伝統となってい る。毎月勉強会を開催し事例研究を行い利益に反映している。 ②人材育成 とかく文書中心主義としてISOは批判されるが、当社は実質 的に効果が上がるよう人材育成にも力を入れている。企業 は人である。 社員の平均年齢は38歳。社員構成は大きく管理職と技能 職に分かれる。技能職として当社は19ラインを持っている。 社員は470人。鳶・土工・鉄骨鳶が全て出来る多能工を育て る目標がある。新入社員は、毎年15人くらい入ってくる。大 卒は1∼2人だが、学歴は基本として認めない。あくまで実 力だ。 育成モデルコースを設定して工事長までステップアップする。 10年くらいで職長クラスまで育てる。26∼7歳で職長クラ スを目指す。ベテランで40歳。工事長は40∼50歳である。 そのために教育に力を入れ年2回クラブ研修を行っている。 ■20年前との違い ①道具 レベルとバカ棒でやっていたレベル出しがレーザーレベル に変わった。クランプ回しや「かけや」も使わなくなった。 木の杭を打たなくなったからだ。 ②服装 服装は、7分ズボンがロングになって長くなっている。土工 さんも鳶さんも同じスタイルだ。安全帯は徹底使用で90％ 以上が使用している。フックが大きくなり2丁がけになった。 地下足袋は鉄入りの安全足袋になった。 ③仮設 仮設資材は自社持ちではなくなった。ほとんどがリース資材 の時代だ。一報、足場も合理化が進んでいる。例えば高所作 作業車が普及してローリング足場が減った。仮設メーカー の開発が進み土木を中心として特殊足場が簡単に作れるよ うになった。足場を作る技能は、素人化しても良い状況にな ってきた。 ④経済 バブル時は日当が2万円から3万円にもなった。人が不足し て大変だった。この不況で現在は、人が余り、労務費は安く なってその半分以下である。たっぷり人が使えるので工業 化はストップしてむしろ在来工法へ戻っている。 062

粗利は2％と低く経営は苦しいが、当社は基本的に月給制を とっている。そうじゃないと人は育たない時代だ。今踏ん張 らないと将来はない。 ■鳶・土工が目指すもの 鳶・土工は、機械化や仮設資材の簡便化によって技能的に簡 単なってきた。活かすべきは、人の知恵である。肉体的技 能も大事だが、それに増して現場のノウハウや知恵が大 事になってきた。いかに職人や工事をマネジメントするか？ 鳶土工は、もともと現場の世話役であり、いかに現場をス ムーズに進行させるかがその仕事の鍵になっている。現 場のノウハウは鳶土工が握っている。言ってみれば、一種 の現場のマネジメントなどの情報産業化が求められる。 これが鳶土工の未来形ではないか？現場監督の代行まで 可能な鳶土工が生まれる可能性は大きい。従来のゼネコ ンは、現場離れしていくだろう。マネジメントを強化した 多能工化を推し進め、躯体工や鉄骨工が可能となり、生 産性を向上させ、現場からさらなる利益を上げていきたい。 ■考察 私は、現場にあらゆる「 宝 」が埋まっていると信じる。実 際そうであるし、いつの時代になってもこれは変わらない。 現場は利益や新しい技術・技能革新の発信基地なのであ る。一部を除いてゼネコンはその基本を忘れようとして いる。大手の現場監督が現場を知らず質が落ちているこ とはつとに指摘されている。 現場でいかに良いものを作るか？いかに資材や施工を合 理化し安全で安くて良いものを提供するかが常に問われ ているが、ゼネコンの現場監督は現場そのものを研究し ようとしなくなってきた。 既に20年前 の 博物館工事でもそ の 傾向はあって、S工 業の現場監督は、なかなか現場に出ようとしない。那須 建設は現場に積極的に出て行った。そこで職人と一体に なって現場を学び問題を解決しようとした。ある時なぜ 現場に出ないのか？S工業の若手の現場監督に聞いたこ とがあった。 「 会社の方針でTQCのデータをとって分析しなさい、そ の仕事を主として行い、変に現場には出るなと言われて いる。」 今でもこの方針の意味が分からない。S工業は現在会社 更生法の元、倒産から立ち上がろうとしているが、やはり 大事なことを忘れてしまったようだ。常に現場で考える 姿勢を忘れた会社は明日がない。 そして建設業は、人である。佐々木組はその基本を貫き、 明日の人材を育てている。

鳶・土工 ノート ∼書き込みノート∼

左のページを参考としながら 現在諸君が現場や実習でふれあえる 現役の鳶・土工さんにインタビューして書き込んで欲しい。 生きた情報をつかまえよう！ 特に最近起きた「構造計算偽造問題」について考えてみよう。 一流ゼネコンの現場監督が、鉄筋量の不足を見抜けなかった 真の原因を考えてみよう！

■インタビュー者（時・所）

■安全

■道具

■単価

■工法

■後継者

■廃棄物処理

■その他

【課題】 1）品質管理はどのようなことを行っていますか？ 2）人材育成はどのようなことを行っていますか？ 3）将来ヴィジョンは具体的にどんなことでしょうか？ 063

映画監督と現場監督

1956年東京都杉並区西荻窪生まれ。 1981年早稲田大学理工学部建築 学科建築史研究室修了。1990年大 塚聡アトリエ一級建築士事務所設立。 住宅の設計を中心に活動中。中央 線を愛す。2005年から武蔵野大学 非常勤講師。 事務所設立の頃から、設計の傍ら 劇団・新宿梁山泊（金守珍主宰） と 協同。テント劇場の設計や舞台美術 を担当。2002年映画「夜を賭けて」 （金 守珍監督）の美術を担当し、 第57回 毎日映画コンクール美術賞受賞。

「全てはゼロから」 大塚 聡（おおつかさとし）

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新宿梁山泊という劇団が有る。この劇団、 テントの劇場で

まう事になっている。もちろん、韓国に借りている土地に建

芝居をする。その劇場作りからセット作りまで、全て役者が

てたものである、 そのまま置いておく訳にはいかないが、半

やる。男も女もない。そんな劇団と15年ほどつきあっている。

年以上そのセットの中で毎日を過ごすと、 まるで自分の街

2001年にその劇団の座長が「夜を賭けて」という映画を

のように思えてきて、 その街が無くなることは頭では分かっ

撮る事になった。そのために、韓国に100軒のバラック集

ても、現実味がなかった。 しかし、必ず終わりは来る。炎上

落のセットを作る事になった。なにが当たり前なのか分か

シーンの撮影のため、撮影最終日にこのセットは燃やされ、

らないが、 この集落も当たり前のように役者が主体になっ

イメージスケッチに描いたのと全く同じ焼け跡が残った。

て作る事になった。設計する者も、作る者も映画のセットな

地震や津波という自然の怪力と一緒に暮らしている、 と考

んか初めて。 しかも韓国で100軒。

えていた江戸時代の人々は、災害に見舞われても、再生

しかし、 やれば出来るものである。1ヶ月半をかけて見事な

のチャンスと考えていたともいわれる。工事現場にも「完成」

集落が出現してしまった。その間、書いたらきりがないが、

という形でいつか終わりが来る。そして現場監督はまた何

いろんな事があった。映画の撮影は順調（でもないか ）に

もないところから新しい仕事を始める。出来上がったもの

進み、最後のシーンの撮影を、雪の降る11月末の韓国で

は使う人、暮らす人、見る人にゆだねれば良い。作る側は

迎える。シナリオでは、 この集落は全て燃えて無くなってし

いつもゼロから始まる。

第 2 ● 章 仕 上 職 人 学 ノ ー ト

︻ 01 ◆ 左 官 工 ︼ 土 の 粒 ︵ ツ ブ テ ︶ に 愛 を 込 め て

官は、コテを使って壁を塗り仕上げる職人。左官の歴

左 史は大変古い。日本書紀によると７世紀の始め奈良時

代に古代朝鮮・百済から伝わったとされ、法隆寺の土塀は百 済の人々が主導して築いたらしい。左官という言葉は、昔、宮 中などに出入りするために仮に木工寮の属（さかん）の官位 を与えたことに由来している。 左官の壁はコンクリートではなくあくまで土壁だった。 しかし、高度 成長が本格化した昭和40年代頃から、住宅から「土壁」が見る見 る姿を消していった。ボードや建材を打ちつけ、壁紙を張れば、 た ちまち出来上がる新工法は左官の仕事を奪った。建築デザインと 構造の変化も左官に打撃を与えた。木造から鉄筋コンクリート建 築、 あるいは鉄とコンクリートとガラスの組み合わせの近代建築 デザイン。壁の性格そのものが変化した。昔の技は不要になった。 左官職の激変ぶり、 職人の激減ぶりは大工の比ではなかったのだ。 現在、 その左官が大きく見直されている。健康と美と環境の複合 的観点からだ。だいたい、土や泥に愛を込めてなで回し、唯一無 二の造形をするという、 こんな仕事が他にあるだろうか。量産 性に懐疑の念がもたれている現代こそ、左官の復興がまたれ ている。新現場人も協力すべし！

丸形天井プラスター塗り

左官工事

床モルタル金ゴテ仕上

壁モルタル金ゴテ仕上

Q 1 モルタル金ゴテ仕上げの施工上の注意点を3つ挙げてその対策を書こう。

Q 2 以下のキーワードを使って左官の現代的意義を書こう。 ◎シックハウス ◎珪藻土 ◎保温性 ◎断熱性 ◎遮音性 ◎調湿性

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！「左官工」はどこに？ P081 第三章からの図面に書き込んでください。

︻ 02 ◆ 防 水 工 ︼ 水 と 闘 う ／ 水 と 馴 染 む

水とは、長期間に渡り、水の浸入を防ぐことだ。ただ

かけがいのない文化財を保存するため、屋上防水や外壁 防水は特に重要視された。しかし、防水は外だけに限らない。 ここでは、内部防水としてWCの防水の様子も描いてみた。 防水材料の種類は多い。その中でもアスファルトの歴史 は古い。紀元前3800∼2500年、バビロン人が、天然アス ファルトを塗料、装飾品、接着剤（レンガ、石材等）として 使用していた。 日本のアスファルト防水は、1899（明治32） 藤原商店が アメリカよりアスファルトルーフィングを輸入して始まった。 1913（大正2）に日本建築紙工業（株）が国産アスファル トルーフィングの製造を開始した。 日本の防水は、近代から始まったと見て良いだろう。しかし、 防水技術そのものがなかったわけではない。屋根のおが みの形そのものが防水対策であるし、茅葺き、板葺き、檜 皮葺、瓦葺きなどむしろ豊富な防水材料があったし、葺き

方のノウハウも充実していた。いわば、屋根職人が防水 工だったし、高温多湿な日本の風土では、雨は防水でし っかり防ぐものというよりも、切り妻屋根の形と葺き方で 水をうまく地面へ逃がすものであった。ここに、人工の力 で水を防ぐのではなく自然になじませる東洋的な知が見 られる。 近代になって、本来は日本の風土に不自然なフラットル ーフ（平屋根）が普及した。防水技術はそれに伴って輸 入された。平屋根だから無理しても雨水を止めざるを得 ないのだ。だが、材料は劣化するし、技能的にも不十分だ。 人工はしょせん自然には勝てない。その結果、無理な収 まりが多くなり、建築家の建物は雨漏りするという評判 が絶えなかった。 当初は平屋根など近代的なデザインが歓迎されたが、こ れは、果たして美しいであろうか？切り妻にすれば雨水はう まく下に落ちるし、 その山のような形は懐かしさと美しさを 実現している。辛口ながら防水を考える視点を提示したい。

屋上アスファルト防水外断熱工法

WC床アスファルト防水

防 単に水を止めることは止水という。博物館工事では、

防水工事

Q 1 防水工法は、 防水層形成手段で大きく3つに分けられる。 1.定型材料工法：シート （定形材料） を重ねながら貼り付ける工法。 2.不定型材料工法：液状の塗り物（不定形材料） を屋根に塗ることにより防水層を形成する工法。 3.複合工法：定型材料と不定形材料を複合させた工法

それぞれのメリットとデメリットを述べよ。

Q 2 屋上緑化の最新情報を調べてこれからの防水技術を考えよ。

！「防水工」はどこに？ P081 第三章からの図面に書き込んでください。

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︻ 03 ◆ 石   工 ︼ 始 原 の 建 設 職 人

工とは、石材を採掘したり、それをつかった建築物、

石 石臼(いしうす)、石塔などを作る職人のこと。石工の

仕事は古代から行われており、 しかも世界中で見ることが 出来る。いわば、文明の始まりの建設職人と言えるだろう。 石造建築で有名なのはやはりエジプトのピラミッドであろう。 何トンもある石を四角にきりだし、接着剤を使わずただすえ つける、いわゆる組石造だ。高さは、50階建てのビルに匹 敵する。しかし、現在でも、どういう工法でピラミッドが建設 されたのか、本当のことは分かっていない。これまでの有 力な説は、傾斜路を作って下から石を運び上げる工法とヘ ロドトスが「歴史」 （BC455年頃の著作）で書いているクレ ーンを使って上から作っていく工法だ。上からどうやって作 るのか？と不思議に思う諸君のためにヘロドトスの一節を 抜き書きしてみよう。 「…最初に一連の段のある階段構造が作られた。ある段の 建設が終了するやいなや、石が小さなビーム（短い梁）を持 つマシンで持ち上げられた。このマシンは、石を地上から第 一段へ、ここで待っていた他のマシンに積み替え、2番目の

レベルまで上げ、 さらに3番目のレベルへと言う具合に。階 段構造と同数のマシンがあった。それは単一のマシンでも あったかもしれない。…ピラミッドの最上の部分が最初に 仕上げられ、次に下の段、最後に最も低い部分が仕上げら れた。」 世界的に見れば、石工は、日本で言う大工、あるいは建設 職人全体を指すと言って良いかも知れない。特に石造建 築が発達した西欧などでは、 しばしば拡大して煉瓦やタイ ルを扱う職人も意味した。しかし、地震国・日本では、自重 が重く地震に弱い組石造は発達しなかった。だが、全く石 造がないとは言えない。代表は城の石垣で日本的な石造 技術の結晶を見ることが出来る。世界的に見ても生産力 が高い森林資源に恵まれた日本は、木造建築が中心となり、 あくまで大工が中心的職人となったのだ。従って石は、構 造物ではなく壁や床の装飾や断熱や防火材に使われる事 が多く、博物館工事でも外壁に使われ青葉城の石垣のイ メージを伝えている。

∼ 堅 固 な 意 志 を 貫 け ∼

石工事

外壁石取付

内部階段石張り

Q 1 熊本県八代郡東陽村（旧種山村）出身の石工の職人集団、

種山石工（別名・肥後の石工）について調べよう。

Q 2 地元で産出する石を調査しよう。 （例えば、宮城県の伊達冠石（だてかんむりいし）など）

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！「石工」はどこに？ P081 第三章からの図面に書き込んでください。

︻ 04 ◆ タ イ ル 工 ︼

人類が火を使い土を焼くことを知ったのはおよそ70万

料となったのは、紀元前8000年ごろで、古代オリエントで日干 し煉瓦が生まれている。 「日本書紀」によると、飛鳥時代の538年、仏教とともに百済 から僧、寺工、画工、瓦博士が送られたとある。その際に一緒 にもたらされたのが「甎」 （せん）で、これが、日本のタイルの ご先祖だ。 その瓦博士が我が国初の 仏寺「法興寺」の瓦を 焼いたという。甎も瓦も製造法は共通で兄弟みたいなものな のだ。甎は、中国の煉瓦で、 あの有名な万里の長城の構造材 である。ところが、 日本は名だたる地震国、石工の所でも書い たが、結局煉瓦などの組石造は普及しなかった。そうなると、 用途はもっぱら装飾用に限られてくる。事実、仏寺では、床や 基壇に敷く床タイルとして「敷甎」 （しきせん）が多く用いられた。 だが、 これも住まいまでは普及しなかった。高温多湿の気候風 土では、床を上げて床下に風を通し、湿気を防ぐ工法が指示 されたのだ。では、壁タイルはどうかと言えば、 これもダメ。 「夏 を旨とすべき」住まいでは、開口部を多くとって壁はなるべく

ない方がいい。壁タイルを貼りたくとも貼る壁がなかった。な どなど日本のタイルの歴史は悲惨であった。 だが、やっと幕末になって土蔵の防火のために「なまこ壁」が 開発され普及する。これは、防火の意味だけではなくデザイン 的にも大変美しい。本格的にタイルが普及を始めたのは明 治時代。西洋化とともに洋館が数多く建てられ、床や暖炉ま わりにもタイルが使われた。現在の湿式タイルの原点である れんがの国産化は明治初期。 タイルを大量に使った建造物 の代表は、東 京駅（大正2年竣工）、 また大正10年に完成し た帝国ホテルも話題を呼び、外装タイルがドンドン普及した のである。 その後は、製陶技術は発達したが、建築材料としての焼き物 は少なく、屋根瓦や敷瓦として寺院建築の床に、 また腰瓦と して壁などに用いられたぐらいだった。 それにしても、壁や床を「分割」しそれを「合成」しなおす技 にはセンスが要る。モザイクタイルの職人は点描のセザンヌ みたいなもの。光の反射やゆらめきを操る繊細な感覚は、今 後素材とともにどう変幻していくのか、興味ある問題である。

講堂壁炳柘器質タイル張り

WC床モザイクタイル張り

ガ 年前と言われている。 壷や食器 の焼き物が建築の材

現左 代官 衛と 生防 部水 材の へ落 と し 子 か ら

タイル工事

Q 1 「なまこ壁」について調べよう。 またその美しさをいかにして現代化するか考えてみよう。

Q 2 トイレなどの衛生思想の発展によって、 内装タイルが普及する。

その流れを調べてみよう。

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069

︻ 05 ◆ 木   工 ︼ 人 の 傍 ら に は 、 不 滅 の 伝 統 技 術 が

木工事

工とは、一口に言えば大工である。ここでは、主として内

木 部仕上げを担当する大工を木工と呼ぶ。

そもそも大工にも2系統ある。伝統的な大工でも、建方が得 意な大工と内部造作が得意な大工がいる。もっと言ってしま えば、若い大工は、体力もありキビシイ作業に耐えられるので どうしても建方が活躍の場になる。内部造作は、床の間の意 匠一つとっても実に様々な種類があって、美意識や経験、 また、 細かい技能が必要となるため、ベテラン向きの仕事である。 大工でも、細かい作業が好きな人は、例えば、建具職人や家 具職人になったりした。これは今でも変わらない。技能の依っ て立つところは木の加工であり、 これはもともと伝統的な大工 の技である。 だから、博物館工事では、伝統的な大工を頼んだかというとそ うではなかった。博物館工事では、例えば、収蔵庫の床下地 やフローリング貼り、けんどん式の壁などは、家大工技能を持 つ型枠大工を選別して担当してもらった。木工事の箇所が収 蔵庫が主で仕事が少なかったため、他社に発注する仕事のま とまりにならなかったためである。 また、 家具は一定量以上あったので専門の家具職人が担当した。

木壁小巾板はめ込み（ケンドン式）

話がそれるが、 ものつくり大学建設技能工芸学科の大工を希 望する学生の悩みで結構多いのが、 自分は大工になるべきか？ それとも家具などの木工がいいか？という悩みである。私の本 音は、 そんな近代の細かい分類にこだわらずに、 どちらも基本 は木の加工なのだから両方できる大工になってもらいたい。 だが、若い学生にとっては自分の資質がよく分からない段階 で大きな悩みになっている。そこで一番良いアドヴァイスは、 たぶん学ぶ順番であろう。大工は、若いうちから経験しないと 体力的に仕事についていくのが難しい。木工は前述の通り、 経験を積んで技能を鍛えながら年をとっても出来る。だから大 工か木工か悩んだら、 とりあえず大工修行から始めてみた方 がよい。若いうちから木工になってしまうと、中年になってオレ は大工が良いかもしれないと悩んだときにもう間に合わない のだ。これは、たとえ木工芸作家になるかどうか悩んでいる人 にも当てはまると思っている。 いずれにしても結局、人間に近い部分では合理化した建材で は構成できない。居心地がよいはずがない。伝統技術は不滅 なのである。

木床組（フローリング張り）

Q 1 好きな家具作家もしくは木工芸作家を一人選び、 その作品のどこが好きか書いてみよう。

Q 2 伝統の和室の床（とこ）や違い棚、 出書院のデザインを研究してみよう。

070

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︻ 06 ◆ 金 属 工 ︼ カ ネ ヘ ン の 魔 術 師

属工事は、文字通り金属部材を取り付ける工事であ

金 り現代の建築には不可欠な分野だ。ここでは金属工

という言葉を使っているが、これは余り一般的ではない。古 くは、板金工が金属工事を担当したが、現在では、金属部 材を扱う職種全部になる。 その工事範囲は広く、屋根、雨樋、バルコニー、階段、手摺、 内外装パネルからエクステリア分野にまで及ぶ。 広義には以下の3つに分類できるだろう。 ◎建築及 び土木関係金属工事＝一般ビル・工場関係の 屋根・とい・金属工事で狭義の金属工事とほぼ同じ ◎建設用途別特殊金属工事＝一般個人住宅、システムビ ル関係で工場既製品を使用する金属工事 ◎環境関連金属工事＝道路、港湾関係でエクステリア、ス トリートファニチャー等イン フラ整備関係の金属工事など である。 とにかく分野が広く多種多様だ。例えば、取付用受材だけ でも相当なものだ。先付材はインサート関連パーツで、設 備工も型枠大工もあらかじめ床の型枠に打ち込んで使用 する。後付材はコンクリート用アンカーなどで、鳶土工も鉄

筋工も使用する。その他思いつくままに上げてみれば、ALC・ ボード類用アンカー 、 ドリル、 ボルト・ナッ ト、ネジ類、キャ ップナット・小判型ボルト・両ネジ・片ネジ、フックボルト・チ ャンネルボルト・パイプボルト、ファスナー、サイディング用・ ルーフィング用…きりがない。さらに、かつての鍛冶職人を はじめとした造作系の金属工を忘れる訳にはいかない。こ の奥深く幅広い世界は、そのまま建築の多様性にもつな がっているのだ。

WCステンレス手摺取付

天井キャットウォーク取付

金属工事

軽量鉄骨間仕切

軽量鉄骨天井下地

Q 1 板金の歴史を調べてみよう。

Q 2 建築部位のなかで、 金属が使われている部分（例えば釘やビスやボルト） を挙げ、

その部位の現状、過去を比較しつつ、 これからの展開について考えてみよう （例えば建 設廃棄物と分別の問題など）。

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071

︻ 07 ◆ 建 具 工 ︼ 住 環 境 の ミ ッ ド フ ィ ル ダ ー

具工は、建具を作る職人であり、大工から別れたと考

建 えられる。建具の制作のみならずデザインも行う一

種の木工である。しかし、近代になって、鋼製建具やアルミ サッシなどメーカー製品が市場の大半を構成するようにな った。現在、建具工は、ビルものを中心としてアルミサッシ や鋼製サッシを取り付けるだけの職人になってしまった感 がある。これらの職人は、大工の出自と言うよりもガラス屋 など他の職種出身であることが多い。 建具は、全体が静的機能で構成されている建築の中で、 動的機能を持つ部分である。 窓や戸は開け閉め可能でなければ意味がない。そして、重 要なのは最も活動的なデザインを発揮できる部位であると 言うことだ。 生活の中で我々は、よく建具に触っている。建築の様々な 部位の中で一番身近なものだと言えるだろう。だからこそ、 そのデザインは重要だ。手で触った素材感、開け閉めの快 適さ、そして建具自体の美しさが我々の生活に彩りを与え てくれる。優れた建具は、建築をひき立てる。

建具の基本的建具の機能としては第1に軽快性だ。とくに 最近バリアフリーということで軽く動く建具が求められてい る。簡単に施錠できることも重要である。そして敷居やレー ル、丁番、取っ手、引手、 などが人の動線の邪魔にならぬこと。 第2に遮蔽性。閉めたときに、プライバシーを守り、害虫、 風や雨はもちろんのこと、光、熱、音も遮る性能が求められる。 第3に装飾性。これが実に多種多様。ここでは紹介するゆ とりはない。 これらの基本的なものを、すべて満たさなければならない。 しかし、現在、建築全体のプランニングについては、十分 検討しているが、建具については、十分な検討もせず規格 メーカーのカタログから、ただ選ぶだけということが多くな ったようだ。これは、つくることの自由を放棄しているような ものであり、是非考えねばならないことである。

建具工事

鋼製建具取付

Q 1 日本の伝統的な建具の種類とデザインを調べよう。 （現在いかに建具のデザインが貧困になったかを感じて欲しい）

Q 2 建具の素材の種類を4つ上げてその長所と短所を比較しよう。

072

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扉引手取付

︻ 08 ◆ ガ ラ ス 工 ︼ 現近 代代 建建 築築 のの 主名 役傍 へ役 、か そ しら て 今 後 は ？

ラスは、宝石だった。その歴史は古い。ガラス工はその

ガ 歴史とともにある。以下駆け足でガラス工芸の世界史

を振り返ってみよう。 ガラス製作の起源は、プリニウスによる「博物誌」にある。要 約すると『東地中海海域にあるイスラエルの海岸でフェニキア の商人が炊事をするのに炉を築こうとして、船荷の炭酸ソーダ の塊を用いたところ、炉の熱によってソーダの塊と海岸の白砂 が混ざり合って溶解し、 ガラスが出来た』という話しである。 BC3000年から2000年代前半にエジプトやエーゲ海域などで、 球や塊、ガラス棒のようなアルカリ石灰ガラスの小さな装飾 品が製作されるようになった。BC2000年代後半になるとガラ ス容器が西アジアとエジプトで見られるようになる。その後、 BC1500年頃になるとメソポタミアで最古のガラス器製作技 法の一つであるコア・ガラス容器が作られるようになった。また、 メソポタミアやエジプト、 シリアなどで、粘土で型をつくり、溶か したガラスを押しつけて成型する「型押し法」などの製造技 術が確立した。 これでガラスは普及したが、一個一個、型をつくって成型する ため、大量生産はできない。とても高価な装飾品だったのだ。 次にローマ・ガラスが誕生する。ローマ・ガラスは、ローマ帝国 時代に、ローマ帝国内で製造・流通したガラス製品の総称で ある。また、 この時代にガラス工芸史上もっとも画期的な技術 革命である「 吹きガラス技法」が発明された。 「吹きガラス技 法」は、鉄パイプの先に溶かしたガラスを水飴のように巻き取 り、息を吹き込んで風船のようにふくらませて成型する方法で、 現在もなお世界中で受け継がれている基本的なガラス製造 技法。これで球形や円筒状までさまざまなかたちや大きさのも のがつくれるようになった。この頃にガラスの窓も誕生した。 吹きガラスの普及で１世紀末には不透明なガラスより透明ガ ラスが好まれるようになった。ガラスの持つ透過性が、美と実 用性で定着したのである。そして中世にステンドグラスの技術 が確立し、 ヴェネツア・グラスが生まれ、近世でヨーロッパを席 巻する。その後ますますガラスは透明性を増し、建築にガラス が多用されるようになると、ガラス工芸と板ガラスははっきりと 分化し、 それぞれ独自の道を歩み出す。より大きく平らな板ガ ラスの製造へ向け、 さまざまな方法が試みられたのが、近世の 歴史だ。 近代は、アール・ヌーヴォのガラス工芸を経てアールデコへ、

そして現代へとガラスの歴史は続く。１９６０年頃のアメリカの スタジオ・グラス運動により大きなガラス工場に依存すること なく、個人が小型の溶解炉を設置して創作活動をするように なり、個性的な作品が数多く造られるようになった。このスタ ジオ・グラス運動は、世界各地にも多大な影響を与えた。19 世紀は、巨匠エミール・ガレのような天才の個性が輝いた時 代だったが、20世紀のガラス工芸は、多くの異なる個性と多 様化の時代だといえよう。

カーテンウォールガラス取付

防炎タレ壁ガラス取付

窓ガラス取付

ガラス工事

Q 1 アール・ヌーヴォのガラス工芸について調べよう。

Q 2 板ガラスの歴史を調べてみよう。

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073

︻ 09 ◆ 内 装 工 ︼ フ ィ ニ ッ シ ュ テ ク ニ シ ャ ン ︱ そ の 1 ●

装工は、便宜的な分類名称で、外装工や躯体工などに

であり、既に触れてきた左官、石工、 タイル工、木工、金属工、 建具工、ガラス工なども内装工に入る。大きく捕らえれば、部 屋の天井、壁、床、 建具、 その他（カーテンやカーテンレール など）を仕上げる職人である。天井は、例えば、軽量鉄骨下地

の曲面のトップライトなどが、PB（プラスターボード）ジョイント 工法で施工され、更にシリカ系の塗装吹きつけで仕上げられる。 壁であれば、RC下地にGLボンド工法でPBを貼り、更に塗装 仕上げとなる。床であれば、Pタイル張りやビニルシート張りで ある。それぞれ図で確認して欲しい。これまた多種多様で、新 製品とともに新たな内装工が生まれていると言って良いだろう。

壁プラスターボード張込み

トップライトR天井ボード張り

壁クロス張り

床Pタイル張り

内 対応する言い方である。いわば、内装工事を行う職人

内装工事

Q 1 インテリアを構成する上で何を重視するか？天井・壁・床について考察しよう。

Q 2 シックハウスについて調べ、 これからの内装材の条件を考察しよう。

074

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︻ 10 ◆ 塗 装 工 ︼ フ ィ ニ ッ シ ュ テ ク ニ シ ャ ン ︱ そ の 2 ●

装とは塗料を薄い膜にして素材の表面をおおうこと。

塗 薄い塗膜は素材の表面を外気から遮断し、汚れや湿気

などから防ぎ、素材を保護する。そして、外観を美しく、人の心 を満たす働きをする。 塗料とは流動性をもち、塗り広げるとフィルム状になって素材 の表面に密着して固加し、製品表面を保護して美しく化粧す るものだ。しかし、 さびの発生した鉄材や水分の多い木材に 塗られた塗膜は非常に早くいたんでしまう。いかに優秀な塗 料を使用し、どんなに入念な塗装をしても、素材表面が汚れ ていたりさびていると、期待された塗装の効果は発揮できない のだ。したがって「素地ごしらえ」、又は、 「塗装の前処理」が 必要になる。これは、塗料を塗る前に、素材に応じ、良好な素 材の表面を作ることだ。 塗装は下塗り+中塗り+上塗りの3回塗りが標準。最初は、下 塗りで、素材との密着や素地の平滑化のために行うもので、 金属のときは防錆も含んでいる。次は中塗りで、平滑性の向上、 必要とされる塗膜の厚さ(肉厚）、均一な色彩などをととのえる 塗りだ。 最後の上塗りは、 目的にあう色彩や性能の塗料を塗る。 そして養生。塗装表面のまわりを十分に掃除し、周囲が塗料 で汚れる場合は紙やテープ、カンバスなどで保護し、乾燥中 や乾燥後の塗膜が損傷するおそれがある場合には十分な予 防処置をする。 したがって、広い意味の塗装とは素地ごしらえをし、塗料を調 合し、塗付け、乾燥する事および養生などを含んだ一連のす

べての作業の事である。 したがって塗装工は、 その全ての工程をカバーする職人であり、 塗料に対する知識はもとより、溶剤、素地ごしらえ、下塗りから 上塗りのプロセス、養生に至るまでを良 く理解している。また、有機溶剤などは、火事の危険性や健康 障害もあるので、取り扱いには十分気をつけねばならない。 ここでは、代表としてEP（エマルションペイント）仕上げの工 程を図で追っている。 ちなみに、漆器は「ジャパン・japan」と呼ばれる、 日本の代表 的工芸品。日本独自の美しい蒔絵（漆で描いた文様に金粉を 蒔き付ける技法） を施した漆器は、世界中に広く知られている。 漆工は縄文時代にはすでに始まっていた。奈良時代には、末 金鏤（まっきんる：蒔絵の もととなる技法）が生まれ、平安遷 都を契機に京都で漆工が発展を遂げていった。

木製ドアPOP塗装

トップライトウオールコットブリック吹付

塗装工事

天井PB下地研磨紙ズリ

壁モルタルEP（A）上塗り

Q 1 自然塗料とは何か？調べよう。

Q 2 塗料の種類を調べよう。現在主流になっているのは、

どんな種類の塗料か？その理由を考えよう。

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075

︻ 11 ◆ 機 械 工 ︼  ケ ／ン 循チ 環ク 器ド 科ク ・タ 泌ー 尿 器 科

械設備には空調設備と給排水衛生設備がある。機械

機 工はこれらの設備工の総称である。まず始めに空調設

備の歴史を振り返ってみよう。 ●ローマ帝国の時代。イタリアは、冬寒く夏暑いといった季節 がはっきりと分かれてい る。かのシーザーは、冬は温泉があっ ていいが、夏は困る！夏を快適に過ごす方法を考 えろ！と命令 をくだした。皆必死になって考えたが、結局、富豪や、王族達 のお金を持っている者達が奴隷に高山から氷を持ってこさせ、 天井に穴を空けて扇で扇がせた程度のものしか考えつかな かったらしい。 ●西暦1500年頃。レオナルド・ダ・ヴィンチは、 ある人から部屋 の換気装置を頼まれた。いろいろ試行錯誤の結果、彼は、水 力を利用し、水車で動く換気扇を考案したという。 その他、例えば、鳩時計式換気扇、手足の動作を利用した換 気服、換気の出来るロッキングチェアなどが考案されたらしい。 ●むかしバッグダットにマーディという名の国王がいた。この 王様はひどい暑がりで、冷房完備の宮殿を造ろうとした。しか し、結局、 その宮殿というのは塀を二重にして、その中に奴隷 たちに運んでこさせた雪を塀と塀の隙間に詰め込んだだけの ものだったそうだ。奴隷は暑かっただろうな。 ●そして近代。 「空気調和の父」 ・Ｗ． Ｈ． キャリア博士が登場 する。彼は、1876年アメリカ・ニューヨーク州生まれ。バファロ ーフォージ社である印刷出版会社の工場の湿度調節の研究 をした。その結果、除湿は空気を冷却することで、水蒸気を凝 縮させれば除去できる事に気づいた。更に研究を重ね、冷凍 機で冷却したパイプコイルの中に空気を送り冷却する機械を 発案、世界最初の空気の減湿装置を設計した。それからとい うもの1915年には、キャリア・エンジニアリング・コーポレーシ ョンを設立。遠心冷凍機、超高層ビルの空調システム、設計

マニュアル、エネルギー分析のソフトウエアなどの分野でも世 界的規模の貢献を残した。 ●日本の空調はこのキャリア博士に始まる。彼が、万国工業 会議に出席する為、昭和４ 年に日本に行った際、 「高温多湿の日本には、私が発明したエアーコンディショニン グが必要だ。これなくして工業の発展はあり得ない」と言った。 翌年には日本にも空調の会社ができた。 給水の歴史を振り返る。 ●水道の歴史は非常に古く、現在判明している世界最古の 水道は、古代ローマのアッピ ア(またはアピア、APIA）水道で、 紀元前300∼400年前に建設されたと言われている。 ローマ帝国時代には特に多くつくられたらしく、 かの有名なベ スビオ火山の爆発（紀元79年）によって埋没したポンペイや、 アフリカ北岸の古代都市にも立派な水道があった。壮大な水 道橋などの遺跡も残されている。 また、南アメリカのペルーを中心とした中世期のインカ帝国に も水道があり、謎の空中都市（山頂都市） として知られるアン デス山中のマチュピチュにも、水道が発見されている。 しかし、古代から中世までの水道は、高低差による導水、配水 が主で、単に飲料に適した水を引くという水道にすぎなかった。 ●日本最古の水道は、神田川から江戸城下に引いた「小石 川水道」である。 （天正18年（1590））江戸時代に神田上水・ 玉川上水ができ、17世紀中頃に地下式上水道としては、延長 150kmという世界最大の上水道になった。我が国の河川は、 世界的に見ても清く美しい川だ。急峻な山岳から発する川は、 ほとんど急流で、平野部でも早い速度で流れる。そのため川 水が美味しく清潔なのだ。外国人が日本の川を見て「滝だ！」 というのは良く聞く話しである。これは世界的にみると珍しい ことで日本は水に恵まれた国である。

衛 生

屋外排水設備

Q 1 最新の空調設備について調べてみよう。

Q 2 ポンペイの水道について調べてみよう。

076

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給排水ガス配管

空調機取付

︻ 12 ◆ 電 気 工 ︼  ケ ／ン 胃チ 腸ク 科ド ・ク 神タ 経ー 科

元前600年頃、古代ギリシャのタレス(Thalse BC624-

紀 547)は琥珀(こはく)が天然磁石であることを知っていた と伝えられている。これをイギリス人は「ヘラクレスの石」と呼 んだ。紀元前4世紀頃、古代ギリシャのプラトンの書物「テイ マイオス」には、琥珀が軽いものをひきつけることが書かれて いる。電気の歴史はこのへんから始まると言われている。 1878年、 日本で最初のアーク灯が、3月25日に日本全国電信 業務開始祝賀パーティー会場で点灯された。1882年、アメリ カのエジソンが、日本の竹をフィラメントに使用した電球を発 明した。電球の発明に日本の竹が使われたことが興味深い。 電気工事と一口に言っても弱電と強電がある。弱電とは、電 子回路や電子技術のことで、昔の電子制御回路ではDC5V 前後の電圧しか使えなかったことから、電子技術が弱電と呼 ばれ、 それ以外の電気技術を強電と呼んだ。強電とは、主とし て電力（電気エネルギー）のことと受け取って良い。 電気設備工事の範囲は非常時広い。そしてまた日々革新であ る。ある官庁の電気設備工事仕様書から工事項目を拾ってみ よう。 ●強電： 1.電灯・コンセント設備・配線器具・照明器具 2.分電盤・制御盤・キャビネット・警報盤 3.動力設備・電動機の接続・水中ポンプ・電極棒等への配線・

振動する機器への接続 4.受変電設備・高圧受配電盤・変圧器・高圧負荷開閉器・零 相変流器の接地 5.架空線路・柱の標示・支線・打込みアンカー参考図・コンク リートブロック参考図・引込線 6.地中線路・埋設深度・配管方法・ケーブル保護用合成樹脂 被覆鋼管・埋設標識シート・埋設標・ハンドホール・ハンドホー ルへの配管接続 ●弱電： （通信・情報設備工事） 1.端子盤 2.拡声設備・試験調整 3.テレビ共同聴視設備・共同聴視用ポール参考施工図・共同 聴視用ポール標準基礎 4.自動火災報知設備・警戒区域標示板・煙感知器・スポット 感知器・複合防災盤 5.電話設備 などである。 情報化時代になってますます情報関連設備が発達普及して いる。インターネットを中心として弱電が重要な設備になって きた。一方、強電も地球環境保護の観点からいかに省エネル ギーで効率よく電気エネルギーを利用するかが問われており、 この分野の革新も見逃せない。

強 電

弱 電

動力設備

電灯設備

放送スピーカーボックス

Q 1 先カンブリア時代（約46億年前∼） に地球ができてから

現在までのエネルギーの歴史を調べてみよう！

Q 2 情報関連設備の最新情報を調べてみよう。

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077

︻ 13 ◆ 雑   工 ︼

君は、ここにある職人さんの業種名を全て言えるだ

諸 ろうか？釘のさび止め処理を行っている職人は鳶だ。 丸柱の小叩き仕上げはハツリ屋、縦樋取り付けは金属工、 ガラスシーリングはガラス工、石メジコーキングは、防水工、 耐火被覆工事は、ロックウール職人、ブロック工事はブロ ック職人、エレベーターはエレベータ工などなど、実に多種 多様な職人がいる。これらを総称して雑工と呼ばせてもら った。 この裾野の広さが建設業の大きな特色である。これはあら ゆる階層の人々が稼げる職場である。 ある左官屋さんの専務がこう言ったことがある。 「おれらの仕事は、運搬や段取り、材料の仕込みなど多種 多様だ。だから、いくらでも雑多な仕事がある。小運搬やモ ルタル練りなどは、知恵遅れの職人を積極的に使っている。 彼らはいくらつまらない仕事でも忍耐強くしっかりこなす能 力がある。下手な一般人よりも実際役に立つし、真面目だ。 ウチは、そういう子供達のために寮を用意して、賃金も怖

い世間にだまされないようにちゃんと貯金して管理してや っている。彼らも立派な仕事をして人生を堂々と生きる権 利がある。ご両親が元気な内は、経済的に特に不自由は ないだろうが、人間は必ず歳を取る。将来のことを考えて、 経済力を付けることが必要で、お上のあやふやな福祉事 業にばかりは頼っていられない。」 私は、この話を聞いて誇りに思う。建設業はその裾野の広 さでたくさんの人々に仕事を提供できる社会的に意義のあ る仕事なのだ。 そして逆にいえば、建設職人のうち、何が主役で何が雑工 的存在なのか、その相対的な関係だって今後どうなるか分 からない。本書の木工事がその例だ。多様な人々がつくり あげる建設世界は、日々刻々変化している。しかし職人技 術の習得にはエラい時間がかかる。このアンバランスのな かで良いものをつくることが、我々の大きなテーマである。 そしてそこには無限の可能性があるのだ。

建 設 業 界 の 裾 野 と 無 限 の 可 能 性

雑工事

耐火被覆工事

耐火被覆吹付（鉄骨）

コンクリートブロック積み

釘サビ止め処理

竪樋取付

組積工事

エレベーター

078

移動式書架取付

移動式パネル取付

講堂メモ付連結固定イス取付

丸柱コンクリート小叩き仕上

エレベーターカゴ取付

エレベーターガードレール取付

Q 1 現在、 1次産業、2次産業、3次産業の人口比はいくらか？調べてみよう。

その中で、建設業はどのくらいの位置を占めるのか？GDPにおいてはどうなのか？ 考察を深め、 その社会的意義を考えてみよう

Q 2 公共工事は、 景気刺激策として有効性を失ったという議論がある。

情報化社会、及び地球環境問題をふまえ、ハードからソフト分野に、 新築から改修へ比重が移行しつつある高度資本主義時代における 建設産業の役割を考えよう。

！「雑工」はどこに？ P081 第三章からの図面に書き込んでください。

079

現場情報工学入門

1975年生まれ。1997年東京大学工 学部社会基盤工学科卒業。1999年 同大学院修士課程修了。同年前田 建設工業（株）入社 情報システム 部に在籍し新しいデータベースモデ ル開発研究に従事。2001年法政大 学大学院ITPC修了。趣味は水泳・ 芸術鑑賞・読書・他 東大の卒論・修論作成時に、建設 技能者についての研究で那須先生 にご指導を受ける。現在情報工学 の分野で、 博士研究に取り組んでい るが、学生時代に那須先生に思考 訓練をして頂いたことが現在の大き な力となっていることを実感。

∼たくさんの職人さんをマネジメントする

児玉 敏男（こだまとしお）  建設現場の情報管理は難しい。なぜなら情報管理の視 点から見たとき建設現場には以下の特徴があるからである。

に異なる） 既存の情報システムにおいては、 システム設計時に、 上記の特徴を考慮できず大きな制限を設けた情報管理を行 っているのが現状である。

◎建設現場はいつどこで発生するか予測がつかない

 ところで、 情報工学の権威である國井利泰氏により’99年

◎特定の現場内で予測できないオブジェクト

に数学的抽象階層に基づいたセルモデル （図１）が提唱され

 （いわゆる予定外の現場対応、不慮のアクシデント等）が

た。これは、現実世界、WEB空間ともに正確に表現可能な

 しばしば発生する ◎各現場によって管理するオブジェクト （人、資機材、重機等）  の属性情報が一般的に異なる

高度な数理モデルである。現在， 私は國井氏に指導を受け、 このセルモデルに基づいた情報管理システム （仮称セルDB） の開発研究に従事し、 現在プロトタイプシステムの開発が完

◎属性情報のないオブジェクトも発生する ◎各現場によって， 本来は同一であるオブジェクトも

了し、 実務適用の検証を行っている． このセルDBを使用すれ

 その表現が異なる

ば上記のような、 従来のシステムでは困難な、 建設現場の正 確な情報化に貢献しうるアプリケーションシステムを開発可

 これは、 WEB上の情報空間に類似していると言える。 （た

能である。

だ建設現場は工事完了という一義的価値に収束するのに

 ここで、 セルDBによる簡単なデータ入力例を既存のシステ

対して、 WEB空間は無目的に価値が増幅する点が決定的

ムと比較しながら挙げる。

イベント例

作業Xを職人Aさんのグループのみが担当する予定（当初） だったが、 １グループではとても無理と言うことが分かり職人Bさんのグループも加わった（変更） 既存のシステムにおける当初の入力は、以下である。 作業NO

作業種

担当の職人グループ

1

X

A 図1.数学的抽象階層に基づいたセルモデル

変更後、当初の設計ではデータ入力が不可なので、 属性“職人グループ２”を新たに追加する。 作業NO

作業種

職人グループ １

職人グループ ２

1

X

A

B

抽象度 低い

ビューレベル 表現レベル

このシステム設計変更には、入出力プログラムの変更等、多くのメンテナンスコストが必要となる。

セル空間レベル

これに対して、 セルDBでは当初のデータ入力は以下になる。

作業NO{作業種， 担当}（1{X， A}）

接着空間レベル

このとき、変更に対するデータ入力は

トポロジー空間レベル

作業NO{作業種,担当}（1{X,(A,B)}） となり、 メンテナンスコストが一切必要ない。

集合論レベル

実際に、現在、 このような建設現場の労務管理、資機材管理を行うシステムを 商用アプリケーションの開発を検討している。

セルモデル

高い

ホモトピーレベル

（この論文はイヤーブック「早稲田建築2000」に掲載されたものを加筆修正しました）

080

第 3 ● 章 現 場 監 督 学 ノ ー ト

082

083

耐圧盤 コンクリート打設 基礎 ベース筋配筋

トレンチ 部分

タワークレーン 基礎コンクリート

084

基礎梁配筋

地下部・ 総堀状況

自立親抗 Ｈ−300×300×10×15 L＝8m（91本） （バイブロハンマー）

085

①−１ 工区

バットレス

Ｂ工区

086

地下基礎十 耐圧盤躯体

タワークレーン 建方

087

バットレス トレンチ部分

088

地下中2階部分 梁柱躯体

089

鉄骨建方状況

鉄骨建方通路

090

ペントハウスの鉄骨

鉄骨柱

アンカー

091

No1 階段 型枠

パイプで つなぎ 足場板をしく

C工区

（10/26コンクリート打設）

鉄骨状況

092

B工区

（9/27コンクリート打設）

093

E工区

（12/20コンクリート打設）

C工区

（11/30コンクリート打設）

シース管＋ PC鋼線 サポート

SPCボックス梁 支保工足場 094

B工区

（11/9コンクリート打設）

095

スラブ・梁配筋

トップライト屋根 （12/30コンクリート打設）

No1階段 吹抜塔屋 （12/28コンクリート打設）

PH （2） （12/28コンクリート打設）

096

PH （1） （12/25コンクリート打設） ∼外部足場

梁配筋 型枠

一吹抜上部 3角キャットウォーク

∼タワークレーン ダメ穴

097

098

⑬

099

⑤

⑩

100

⑦

⑥

101

⑨

6

石取付金物用 アンカー 102

トップライト

5

103

104

西側通路

105

106

107

だが、 これこそ現場新人が全く分か

工事規模にも依るし、現場監督の資

らない点で、従来の施工の教科書に

質や能 力、職 人の質にも依るが 、 な

01何もない空間から12竣工空間まで、

は施 工の方 法や仕 様などばかりで

かなか出来ないことなのだ。

定点観測のように視点を変えずに建

先の 仕 事にどうつながるか が 一 切

築が生まれていくプロセスを「 現 場

書いていないようだ。

だが、新現場人たる諸君には、現場

空間図」 として絵本風に並べてみた。

この鳥瞰図は、不十分ながらその先

全体の視点を持ち、ベテランの現場

ここで何を学ぶべきか？それは、現場

の仕事も見えるように工夫したつもり

イメージを持ちながら、 さきさきと仕事

監督の視点である。

である。

を読みつつ、後工程はお客様でやっ

現場空間図

てもらいたい。そんな願いを込めてこ 一般に、現場監督は、現場全体を把

これも現場の知恵だが、 「後工程は

握し、あまたの職人や資材をマネジ

お客様」という言葉がある。後工程

メントして、工事を進行させる。だが、

の方が 実は重 要なのだ 。例えば躯

必ずしも工事全体を把握できている

体が悪いと、 最終の仕上げも悪くなる。

各現場空間図から 学ぶべきこと

とは言えない。特に現場新人には無

それではクレームが出る。コンクリー

以下各図のポイントをコメントする。

理な話だ。博物館工事も、 例えば僕は、

ト躯体の精度が良くないと、 はつりが

写 真 係 + 型 枠 係 + 鉄 筋 係 +コンクリ

生じる。はつりは、 はつり工を一時的

ート係 + 外 壁 石 工 事 係 + 外 壁 浸 透

に雇わねばならないし、施工も滞る。

広がる。まず重要なのは、基準線を引く作

防水係など、工事全体ではなく部分

はつり代がかかるし、工期も遅れる。

業だ。一番基本となる基準線を間違えたら、

工事を担当した。幸い写真係であっ

利益が食われるし、 ゴミ処理の問題

01.何もない空間 以前の建物を解体し、何もない現場空間が

建物は全てダメになる。大工の墨差しのく びれたところは「聖徳太子の腰掛け」という。

たため、全ての工 事に立ち会うこと

まで生じる。何も良いことがない。そ

が出来たが 、普 通は、いくら現 場に

の予防は色々あるが、例えば、型枠

太子だ。聖徳太子が墨差しに腰掛けて、 ま

出ても、部分工事の担当で精一杯、

の段階で検査を入念に行い躯体の

ちがいのない墨（基準線）が引けるように守

とてもとても全体など見ていられない。

寸法精度をきちんと守り、 コンクリート 打 設の時 、バイブレータのかけすぎ

大工の神様はあの法隆寺を建立した聖徳

ってもらう意味があるのだ。我々の聖徳太 子はトランシットとレベルとスチールテープだ。 それらを注意深く使いながら何度も見直し

現場空間図は、その現場新人の視

等で精度が狂った場合、サポートで

て基準線を引く。基準線を引きながら完成

点を打 破して工 事 全 体を見る鳥 瞰

押したりチェーンで引いたりしてすぐ

イメージを浮かべることも重要な仕事だ。

図の視点を作ってみたのだ。

に矯正しておけばいいのだ。コンクリ

経 験 豊 富なベテランの現 場 所 長は

ートは固まるまで時間がかかるから、

建物は大地が支えている。建物が安定して

こういう現場空間全体を見ているは

固まる前に治せばいいだけの話しで

建ち続けるために自然の大地にしっかりと

ずである。

ある。だが、 これがなかなか出来ない。

根付かせる工事だ。土と水との格闘空間。

型枠のパンクなどの事故が発生する

108

の「現場空間図」を作った。

02.土工事空間

実は、土はまだ科学的に解明されていない。 土は掘ってみなければ分からないのだ。そこ

また、大事なのは、時間軸で、 「段取

と、それに気をとられて後 工 程がお

でボーリングデータや現場の実見を駆使し

り8分」という言葉通り、次の仕事が

留守になる。こぼれたコンクリートな

ながら、同時に地鎮祭のような気持ちで大

見えていなければならない。現在の

どは、その場ですぐに拭き取ってお

仕事ばかりに目が行って次の仕事が

けば、 あとではつる必要が無くなるの

あり、作ることの根源だ。大の大人が土と

見えていないと思わぬ失敗をする。

だが 、 これも全て完 璧に出来ない。

格闘し汗を流す爽快さと力強さ。諸君はこ

地を鎮める工事を進める。偉大なる廃墟の 様な土工事空間は、 まさしく土木の原点で

QP CS

E

Q ●品質管理 P ●工程管理 C ●予算管理 S ●安全管理 E ●環境管理

Quality control Process control Cost control Safety control Environmental control

の仕事に入って良かったと必ず思うだろう。

て鉄骨鳶の笑顔を見るとほっとする。現場

イル工事、左官工事、設備工事など、 あらゆ

だが、感動してばかりはいられない。

の生き甲斐を感じるときだ。地下躯体が上

る仕上職人が乗り込んでくる。施工図作成、

現在は機械力の時代だが、 その根本はやは

がったら土工事が終わる。埋め戻しだ。これ

承認、 コストの打ち合わせ、工程管理、労務

り人間。オペレーターの技能もさることなが

も息が抜けない。

管理、安全管理、品質管理、資材の手配、 仮設の準備、他の業種との取り合い…現

ら山留め横矢板の技能、床付けの技能など

場は爆発している！

土工さんの技能を最大限駆使してもらわね

06.1階躯体空間

ばならない。そのために第一に考えるべきこ

躯体3役最盛期だ。フル稼働！仮設の盛り

とは安全なのだ。土工事で事故が起きると

換えが頻繁に行われ、安全確保に苦労する。

命にかかわる。

仮設を作業に応じて盛り換えたまま、安全

外装は石である。乾式工法の石張り工事！

性がおろそかになるのだ。作業効率と安全

なかなかお目にかかれない仕事である。そし

10.外装工時空間

03.基礎工事空間

性は不即不離の関係だが、 よく相反する。

て外断熱工法の屋上防水。博物館と言う

基礎は完成してからは絶対見えない。だか

高所作業の安全帯の使用をうるさく指示す

ことで雨漏りは文化財の損傷につながる。

ら徹底した品質と強度管理が必要である。

るが、 20年前はなかなか守ってもらえなかった。

だから失敗は絶対許されない。まだまだ緊

ここからコンクリート躯体の打設が始まる。

重大災害事故が発生すると、現場がストッ

張は続く。

いよいよ躯体3役の登場である。総堀の地

プする。これは一種の犯罪だ。責任者は逮 11.外構工事空間

下部分と壺堀の地上部分の2ブロックごとに、

捕されるのだ。事故の犠牲者が出て、工期

職人の作業性と安全性を確保するために

が遅れ、 コストに跳ね返り、職人は仕事を奪

例えば、自転車置き場の施工。これは小さ

仮設が始まる。まさしく現場監督の腕の見

われ日当をもらえなくなる。ゼネコンは指名

い工事である。だが、小さい工事と侮っては

せ所だ。鉄筋足場は、5つ以上の用途を兼

停止をくらい、営業や経営面で大きな打撃

いけない。小さい工事は職人がドンドン入れ

ねる。周到に綿密に計画されねばならない。

を受ける。安全管理はまさしく死活問題な

替わる。いわば、 リフォーム工事のように次々

資材もたくさん入ってくる。運搬計画を立て

のだ。

と仕事をこなしていかねばならない。ベテラ ンでもスピードについて行けず職人から文

てタワークレーンをセットする。 07.2階躯体空間

句を言われる難しい工事なのだ。いよいよ

04.地下躯体空間

1階の繰り返しなどと侮ってはいけない。最

最終段階！

地下の躯体を打ち上げる。躯体3役ががっ

大54.5メートルに及ぶSPCボックス梁を作

ちりとかみ合う。それぞれの仕事がうまく進

らねばならない。デザインの見せ場であり構

12.竣工空間

むように毎日が戦いだ。綿密な職人との打

造の鍵だ。そして、7.5メートルの階高！この

できた！やった！ダメ直しをチェックしながら博

ち合わせ、資材発注、仮設の盛り換え、設

意味は分かるだろうか？このくらいでへこた

物館をゆっくりと回る。もう何も言うことはない。

備工との絡み、仕上げを見越した躯体精度

れては立派な現場監督になれない！全力を

全ての現場空間が浮かんでくる。苦労も喜

の確保、 施工図作成、 検査、 写真、 書類作成、

出し切って事に当たる。

ほどの仕事が襲ってくる。だが、 まだまだも のつくりの序の口なのだ。

びも全てが宝だ！疲れ果てている自分がいる。 だが、 これがものつくりの醍醐味だ！

設計事務所との打ち合わせ…書ききれぬ 08.PF.PH躯体空間 屋上とペントハウスだ。ここでのテーマはト ップライトとV字のキャットウォーク！これらは、

●那須建設は唯一の地元施工業者

05.鉄骨建方空間

直接内部空間の見せ場になる。仕上げと

一部鉄筋鉄骨コンクリート（SRC）なので

直にかかわる。コンクリート打ち放し小たた

として、市民の期待に応えられたと信 じたい。全力を尽くした。博物館がオ

鉄骨を建てる。ここでの勝負はやはり墨出

き仕上げなのでコンクリートの品質を確保

しだ。ピアノ線を使う神経の細かい仕事だ。

するためあらゆる努力を傾注する。そして外

鉄骨は逃げ（クリアランス）が少ない。鉄骨

壁仕上げのための外部足場。躯体工事の

をセットするアンカーボルトをいかに正確に

最盛期から仕上げにかかる過渡期である。

て見学できるようがんばったつもりであ

打ち込むか？アンカーセットは非常な高精度

タワークレーンの解体準備も進めなかれば

る。同時に反省も出てくる。せっかう手

を要求される。型枠工と次工程＝お客さん

ならない。そして冬期の困難な工事！温度

塩にかけて育てた愛娘を嫁にやる心

である鉄骨建方がうまくいくように必死にな

管理、雪対策…。

ってアンカーセットを行う。そして一番危険

ープンして胸を張って市民の一人とし

境…寂しさはあるが、 この満足感は何

が大きい高所作業が鉄骨建方だ。安全対

09-1∼2.内装工事空間（1階＋2階）

物にも代え難い。さぁ明日からの現場

策＝仮設に力が入る。建方が無事終わっ

第2章仕上職人学で見たように、木工事、 タ

の打ち合わせだ！ 109

現場のすばらしさ

1978年（昭和53年）早稲田大学理 工学部建築学科卒後、 大成建設 （株） 入社。1978∼1984年大阪支店作業 所勤務。1984年から東京支店作業 所勤務。品川東口の三菱重工本社 ビル新築工事作業所長等を歴任し、 現在、 東京支店プロジェクト部長とし て複数の都内大型プロジェクトを統 括している。 著者の那須くんとは、 早稲田大学時 代、軽音楽部で出会い、頻繁にセッ ションを行っていた。現在も、仕事の 傍ら、 音楽活動を続け、 都内各所で の定期的にライブ活動や自主制作Ｃ Ｄの制作など行っている。

矢口 則彦（やぐちのりひこ） ■人材の集まらない業界に未来は無い  昭和53年に大成建設（株） に入社以来、 20数年以 上ずっと施工の業務に携わってきた。この間、 内勤業 務は、 プロジェクトの計画等ほんの僅かで、大半を現 場にて過ごした。大規模、 比較的長期のプロジェクト が多かったものの、 携わった現場は20数件を超える。  今まさに、建設業最大の危機が訪れ、 なかなか変 わり得なかったこの業界が、 まさに待ったなしの変革を 迫られている。多くの関係者がその行方に不安･危 機感を募らせている。  この影響も受けてか、近年、施工を目指す学生が 減少していると聞く。私自身、 施工部門の採用担当者 としても、 まさに実感している。  優秀な人材、 志の高い人間が多数集まらない業界 に、 まさに未来は無い。この事こそが、 今叫ばれている 危機の中で最も危惧すべき事なのかもしれない。  その意味でも、21世紀のビジョンを明確に提示し、 一般の人々に分かりにくいその業務を理解してもらい、 更にそのすばらしさを伝える事が急務と思う。

■経験プロジェクトと時代  この20数年間、私が携わった主なプロジェクトとそ の業界の状況を振り返ってみたい。  入社後、即、大阪支店勤務となり、 当時はほとんど 住む人も居なかった神戸ポートアイランドの冷蔵庫の 工事を皮切りに、中小現場を多数担当した。当時は 公共投資抑制により 「建設業冬の時代」であった。  5年目に東京支店に転勤後は、 大プロジェクトに多く 携わった。  昭和58∼59年には、 赤坂･六本木再開発事業、 い わゆるアークヒルズの全日空ホテル。初めての単独の 大規模現場にて、 担当だった低層工事をただがむし ゃらに行っていた。  昭和61∼62年には、 浦安ディズニーランドのそばの シェラトンホテル。初めて大現場の基本計画から担当 ∼実施し、 かつてない充実感を味わった。 Ｓ造だったが、 大梁を全て現場溶接に変更。250mもの長大な構造 にて、 その溶接縮みの影響を低減する工法を構造者 と共に特許とするなど、 技術を深耕する時期でもあった。  いわゆるバブルが始まり、 後半には労務不足･材料･ 労務費の高騰に苦しんだ。  昭和63∼平成元年には、 マルチメディアタワーであ る、 田無タワーを担当した。初めて副所長の立場にて 予算始め全体を管理した。新宿の超高層ビル群と同 じ200mの規模ながら床･外壁のない特殊な建造物に て、 今迄の常識･経験では解決出来ない問題が多く、 工法等技術的検討を重ねた。当時開発した「Ｌ型ユ ニットステージ工法」は、 仮設ステージ床に加え、 鉄骨 建方に先行して、 外部養生を設置し、 安全性･作業性 を向上させるものだった。 近年はよく行われている、 超高層ビル建方において外 部養生施設を先行させる工法の先駆けと自負してい る。  平成2∼3年、 そごうデパートがキーテナントの川口 駅東口再開発に配置された。バブル崩壊直前の、 繁 忙度、 労務不足･高騰のピークだった気がする。その 時期と相いまって、 当初より超短工期にて、 工期の大半、 完全24時間作業を余儀なくされた。突貫ゆえの様々 な問題処理等、 精神的にも体力的にも限界を経験し たと思う。当時は苦しかったが、 タフさを身につけ、 強く なれた気がする。

 平成4∼7年、 新宿南ＲＣビル。高層副所長として、 高層建方開始迄の十分な時間に、 超高層建方関係 の様々な工法･システム開発を行えた。技術的には最 も貢献出来た時期かもしれない。  平成8年、 所長となった。皮切りに日本アムウェイ八 王子流通センター。80m×100m、実質６階建ての工 事を10カ月間で完成させるのは、 所長として最初の試 練だった。その後、 計画室に在籍後、 現在迄、 国際フ ァッションセンター新築工事を担当した。近隣問題に 始まり様々な問題も解決し竣工した。  一つ一つの現場に、 それぞれ忘れ得ない思い出が ある。建設プロジェクトの特徴の一つである、単品生 産∼時期、場所、社会情勢等様々な条件が違い、同 じものは存在しない。 まさにプロジェクトである。この「唯 一」の感覚が思い入れを深くしていると思う。そしてま さに、 今でも自分の携わった仕事が、 現前と残っている。

■この四半世紀の変化  経験の中から、 約25年間の変化を考えてみた。  施工法含めたハード面においては、 ほとんど大きな 変化はない。 ドーム等新しい構造に伴う多少の変化 はあるが。超高層ビルの建方工法始め大きな変化は ない。一時期、各スーパーゼネコンが開発･実施した 全自動化･全天候型工法も、 今の所、 費用対効果によ り、 厳しいコスト競争の中、 すっかり影を潜めてしまって いるようだ。場所をとらないラフタークレーン、 各種移動 足場機械、 測定機器の進歩ぐらいだろうか。これだけ ハード面の変化が遅い業界というのも奇異と思われる だろう。受注による単品生産であり、 各々条件が違い 機械化がしにくい事が主因である。一時期の労務不 足･高騰が一段落していることもある。  ソフト面においては、 さすがに著しい変化がある。 但し、 この20年を通してではなく、 やはり近年のパソコ ンの飛躍的な普及、 インターネットの一般化によるもの である。今や現場での業務もパソコンなしでは考えら れない。社内でのネットワークによる情報伝達は勿論、 社外の施主･設計･協力業者とのやり取りにも欠かせ ない。特に建設業の様に多岐に複雑に関係者が絡み、 情報量の多い業務にて、加速度的に利用度が増大 すると思われる。  現場における人の変化はどうだろう。技術力の低 下が危惧されて久しい。作業員も長年の経験を要す る専門職にては急速に高齢化が進んでいる。若い職 人も、減った感はないが、定着していない。魅力有る 職業にして行くのは当然であるが、 現実をふまえ、 より シンプルな工法等採用せざるを得ない。  現場技術者、 社員も技術力低下がゼネコン各社とも 問題とされている様だ。 しかし、 一概に価値感の変化、 使命感の欠如等の意見は的外れと思う。特にバブル 期に育った社員は、 繁忙度が増大し、 職種のコーディ ネート、 いわゆる追い廻しを主な業務と育った。施工図 作成、 技術的計算を専門部署･専門業者に移行され、 本来の「技術者」としての育てられ方をさせなかった 事が要因と思われる。将来に向けた本業の深耕の為 にも、 技術者としての社員教育が重要となっている。

■ゼネコンの現況と展望  誰もが認識しているごとく、建設業は、 かつて経験 したことのない厳しい状況にある。建設業は建設投 資がＧＤＰの15％を占める基幹産業であり、 各業種･ 雇用に大きな影響力を持つ。この業界が、 遂に待った

なしの変革を迫られている。財政難と社会の成熟によ り、 公共投資は激減していく。優勝劣敗が加速され、 淘汰が必定と言われている。  環境も加速度的に変化している。  インターネットの普及は、 ＣＡＬＳ等資材調達をより効 率的にし、建築基準法の「性能基定の導入」と相い まって海外製品含め飛躍的に調達の幅が増大する。 同時にコスト情報開示が進み不透明感もある程度薄 れる。そして何よりも、 企業間の「しがらみ」･「系列」･ 「共存共栄」等が急速に消失して行くと思われる。  99年以後、大プロジェクトの入札状況を見ても、既 に顧客側は、 以前の様な、 しがらみ･系列の感覚を一 早く変えている様に思われる。  まさに自由競争･優勝劣敗である。  この状況の中、 どの様なゼネコンが勝ち残るのだろ うか。プロジェクトの規模･内容ごとに、 厳しい競争の中、 更に特化が進むと思われる。  特に大手ゼネコンは、 ＥＣ化を更に進め、 企画、 ファ イナンス、 開発、 設計、 施工、 オペレーション、 メンテ、 解体、 リサイクルとライフサイクルを提案していく。自己の持 つ開発、 ＦＭ、 エンジニアリング、 法務、 不動産、 技研他、 内部保有の部署をネットワークにて充実させ、 顧客満 足を目指すと思われる。 更に従来は無料としていたサービス自体を商売とす る事も、 今以上に重要な位置づけとしていくと思われる。  私が提言するまでも無く、 各社共、 既に上記を強力 に推進している。但し、 今現在の最悪の状況をまず乗 切る為のリストラの中で、 即効性の希薄なシステム充 実に苦慮しているとは思われるが。 しかし、 これからは 誰にも、 そして、 ある規模以上のゼネコンしかできない ものである事は確実である。

■人材育成と現場のすばらしさ  そして、 もう一つの重要な事は、 このシスムを機能さ せる 「人材」である。各システムのスペシャリストは勿論、 企業内のみならずプロジェクトに関連する人々をコー ディネートしプロデュース出来る人材が不可欠である。  現場で、毎日の様に多くの業種、職人の調整にて 悩んでいる若い部下によく話をする。 「今、 行っている業務は決して無駄ではない。技術者 として成長するのは勿論、 あらゆる人と接し、 調整する 事により、 コーディネート能力、 プロデュース能力を養っ ている」  事実、 立場が変り、 顧客･設計他との折衝、 そしても っと大きなマネジメント能力も知らず内に身につけている。 他の業種が追従出来ない技術力を身につけながら、 強力なマネジメント能力を養えるのが現場の魅力であ ると思う。  当然の事ながら現場での最大の魅力はモノ造りで ある。幼い子供に積木を与えれば、積み上げて形を つくり、 砂浜に行けば、 ダムを造る。本能的な喜びであ る。 ２１世紀になろうと変る事のない本能である。そして、 自分の携わった建物が、 現前と残る現場での施工の 喜びは、 何にも変えがたい。  会社採用が決定した頃、 ある大先輩に言われた。 「君 達はすばらしい選択をした。」業務の内容さえ知らず、 全く意味がわからなかったが、 入社5年・10年と実感し てきた。相変わらず、一般の人のみならず建築科の 学生でさえ、 業務内容がわかりにくい仕事だが、少し でも、 そのすばらしさを伝えて行きたい。 「人材」の集まらない業界･企業に未来は無いのだ。

（この論文はイヤーブック「早稲田建築2000」に掲載されたものを加筆修正しました）

110

第 4 ● 章 も の 学 入 門 ノ ー ト

連続鋳造と造塊分塊、連続鋳造法は従来の造塊、分塊の 流となってきた。従来は転炉からの鋼を鋳型に注ぎ込み 延機で上下左右から押しのばし鋼片にして次の圧延工程 よって鋼片をつくる割合は70%に及んでいる

112

分 解 圧 延 機 工程を省き、生産性を向上させた方法で現在主 鋼塊とし、これを灼熱炉で再び加熱し、分塊圧 へ連続する方法であった。現在、連続鋳造法に

需要…オイルショック前のS48年559万tの 生産量であったがS52年に267万tに おちこみS53年以降漸増、S56年は 480万tと500万t目前となってきた。 輸出はS53年以降漸増傾向であるが 政策上の問題で見通しがきびしい 113

圧延完了した熱間圧延鋼材を 機械的に動く台床の上で整然 と冷却しながら排出方向に集 められていく（クーリングペット）

114

高度経済成長期のS48年までは、年率10数 %の高い水準を示したが石油ショック以降 需要は大巾に減少した。S54年に再び 1,100万tを超したが以降は減少傾向に転じ ている、一方供給側は設備投資の活発化で 生産能力は拡大し供給過剰となっている 115

セメントサイロ 袋詰機で袋につ その他は袋につ 生コンのプラン

116

からセメントをとり出し、 め、左官などの資材となる。 めずバラで陸路、海路を トへ移送する

生コンプランは昭和30年代前半での年間20工場以下であ ったが40年に728工場、50年には3,849工場、58年に 5,225工場、年間8億3,824万m3まで拡大した。高度成長に より昭和48年までに1億4,946万m3まで需要はのびたがオ イルショックにより減退。昭和59年で1億4,330万m3と操 業率19%程度の落込み、過剰設備が年々深刻化しつつある。 117

118

コーナーの出隅石等役物に ついては、納りに注意し繰 型機により型付けを行ない 小口の加工仕上をする

国内の産出量の減少とともに、輸 入依存へ変化している。石油ショ ックの波をかぶり、需要は減少し たがS59年ころから需要がのび外 内装材としての使用がふえている

119

・アルミニウム地金は、品位や成分により普 ラブ（圧延用）ワイヤーパー（線材用）に区分 し加工し、ビル用アルミサッシュなどを作る。 押し出し加工は、ビル用サッシュを作る加工

120

通地金高純度地金、合金地金に分類できる。又、形や用途によりインゴット（一般用）ビレット（押し出し用）ス できる。インゴットは、鋳物や鍛造品など一般加工品を作るもの。ビレットは押し出し材にかけ高温で押し出 スラブは板をつくるもので、屋根やタバコの包装など、ワイヤーパーは送電線などを作るために利用される。 法で可塑性のよいアルミニウムの性質をうまく利用した加工法で、寸法精度の高い製品の生産が可能である

石油ショック以降の不況の中で需要もそのあおりを受け たが総量的には極端な落ち込みのないまま推移している。 S48年には15万8千t、S50年には35万6千tと落ち込んだ がS58年には再び42万6千tともち直している。ビル用サ ッシュは落込みが少ないが木造サッシュが落込みその生 産能力をビル用にふり変えた結果過当競争を招いている

サッシュ製造業者は、S60年で約160社ありその うち20社が大手、その他は中小企業である。大手 が生産量のほとんどをしめ、中小は組立加工とス チール製品の製造を行なっている。不況下での過 当競争のため、赤字に苦しみ、今後、価格、市場の 適正な運営、業界再編成の対応が望まれている。 121

溶解炉の端に溝を刻んだ一対のナールロールをセ ットし垂直に引き上げ、幅広の金属製のペンティ ングロールで直角に曲げ約60mの徐冷窯をとお して徐冷。出口で一定の大きさに切断、製品化する

122

普通板ガラス、変わり板ガラスはS48年の2,988万 7,000箱をピークに、その後連続して減少し、S59年は 711万5,000箱（48年比76%マイナス）、フロート磨板ガラ スはS48年の846万3,000箱から順調にのびて2,636万 箱（S48年比311%）となった、需要が高度化して、普通板 ガラスからフロート板ガラス主体へ変化しつつある 123

原木丸太を製材し、単板切削を容易にして品質を高めるため蒸煮又は煮沸され、単板切削 へ移る。切削はロータリーレースで木を回転させながら薄くむいていく方法（一般合板用） スライナという平面カンナ機でむいていく方法（化粧合板、つき板用）がある。次に乾燥さ せ、はぎ合わせ補修し、各板の品質で選別、接着剤で冷圧、熱圧し、サンダーで仕上げする

124

原木はソ連森林公団が伐採・集荷しエクスポートレ スにより買付けられ輸出されるのが一般的。商社が 輸出し点線内の全国北洋材協同組合により製材さ れ小売りへ流れる。全北連は商社に対して年間取引 き価格・条件をきめ実績に基づき全国各地の荷数量 を決定するなど商社の系列化・圧力を緩和させる 125

126

127

128

129

130

131

「もの学入門」ノート解説

●問題提起

院 本書は「もの学入門」の講義から大学 。 コースに入る ここでは書き込みノートのスペースは作ら ここに貼って欲 ない。自分でノートを書き、 しい。 では、問題提起から。 、 「もの学入門ノート」で考えて欲しいのは ポル 例えば、仙台市博物館新築工事で、 われ トガルと南アフリカ共 和国の石が使 ていることである。 これをどう見るのか？ る 世界中から素晴らしい素材を集めて作 ？ のは素晴らしい！と考えるか なぜ地元の石を使わないのかと それとも、 考えるか？ い。 諸君はどっちだろうか？ちょっと考えて欲し

●私の考え

私は、最初、現場 監督の立 場でどう考え たか？…まずそれを話そう！ 正直、最初は疑問だった。 歴史的に見れば仙台城の石垣はあくまで み 地元で取れた石を使っていた。考えて 達して れば当然のことで、運送手段が発 べ いない時代にそんなに遠くから石が運 存す 示保 るわけがない。仙台の歴史を展 る仙台市博物館の外装の石がなぜ地元 じる で取れた石ではないのか？歴史を重ん の石 外国 もない 博物館がなぜ縁もゆかり を使うのか？私には分からなかった。 しかし、工事を進行させていく過程でそん 中 な疑問はすっかり忘れてしまった。工事 しまい んで れ込 に惚 美しさ は、花崗 岩の 施工の質を守るために必死だった。 もの学入 門のデータを 工事が終わって、 入推進派だったの しろ輸 む きは、 作ったと 思う。 いかと ではな だ！ これからは国 際化だ！グローバル経済 あ 、 世界中の良いものをドンドン輸入して を の大 英帝 国のように優れた社会 資本

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築き上げるのだ！と変に可 能性を追 求す る気持ちが強くなっていたように思う。 う。 これも今、考えてみれば、一理あるとも思 ビヤ またシ して、 員と の一 建設 那須 、 更に ーなコストが絡む経 営者の立 場になって 住 みると、流通を研究して合理化し、産直 を ト コス 宅のように良い品質を守りながら 夢中 発に 下げられないか？などと流 通開

だから国際的な流通でものと交換に金を やれる！これはいいことなのだ！貧乏な国 金 の国民を豊かにするのだ、国際的な資 う。 援助なのだ！」と言う人もいるだろ

になった時期もあった。 である。最初の疑問は、依然 …しかし…、 （※このシツコサが研究者 として残った。 であろう） 必須の能力（？）

●現在の視座

その後様々なことがあった。バブル 経済 起 が破 綻し構 造不 況になり価 格破 壊が 自分 。 は省く 詳細 ！ う やめよ や、 こり…い 「そうだっ （参考文献： で勉強して欲しい。 ・集英社 著 ・ 彰 池上 史」 現代 日本 ！ たのか ！ 2001年11月30日初版+「そうだったのか 年11 現代史」池上彰・著・集英社・2000 月29日初版） き 流通を考える上で、一番インパクトが大 かったのは、何だろうか？ 「地球環境問題」である。 私の場合、 はるか遠くの いくら石の原産地とはいえ、 ことは、 を運ぶ 国々から、海運→陸運で石 を消 ルギー なエネ 石油燃料を使い、膨大 では 壊」 境破 「環 の 一種 費する。これは、 ないか？ また、石の原産地で石を掘り出すことは、 これまた現地の山を崩し、自然の生態系 で のメカニズムを乱す「環 境破 壊」なの ？ か はない そこまでして石を持ってくる意味は一体ど こにあるのだろうか？ 地 またあとあとのメンテナンスを考えたら、 いろと 元で産出する石を使った方がいろ 便利なのではないか？ 「いや、違う！石の原産国は、貧乏な国だ。

そうだろうか？津波や地震などの災害で国 それは果 際救援物資が多数送られるが、 届いて 々に った人 たしてちゃんと一 番困 に、 働者 しい労 掘る貧 いるだろうか？石を いてい んと届 はちゃ お金 日本で支 払った 外 るのか？いや、石の発掘 業者自体が、 自国 彼らが 潤は の利 一番 資系の資 本で か？ に持って行ってしまっているのではない い。 りがな き ら げた 問を上 等々疑 そのよう 第一、苛烈な国 際競 争の中で、 るのか？ ていけ っ 想でや 善の発 や慈 な福祉 残念ながら人を助ける発想を主体にして

経済は成り立っていない。むしろ経 済優 れ、 先になって人の優しさや良心が無視さ ！ いか 豊かな自然は悲鳴を上げているではな 疑問はますます大きくなってきた。 流 やはり「もの学」の基本は地元優先の ？ か 通形態ではないだろう

●新たな「もの学」へ

これでも言い 前置きが長くなった。だが、 ていない。し 書い 1しか 5分の たいことの くまで私の あ る。 でとす ここま あえて かし、 のない議 結論 これは い。 要しな は強 意見 グロー で、 の中 格闘 との 現実 。 のだ 論な バリズムで成功する分野もありうる。本書 考 は「現場本」である。後は自分で調べ、 えて欲しい。 そのヒントは、以下始まる「茅葺き ただし、 復活対談」に書いたつもりだ。 が、 程度が高すぎると思う諸君もいるだろう を 現場 し、 ただ よく読んで考えて欲しい。 ！ 忘れないでいただきたい が 常に現場を主 軸として考え続けること 肝心なのだ！

茅 葺 き     対 談

茅葺き

対談

既存の茅葺き民家の改修は可能ですが、

茅葺きの法的問題 （経緯説明）

新築は完全に無理になります。熊谷産 業は、全国唯一の茅葺き専門工事業

熊谷氏◎「どうも、 熊谷です。今年 （2005

者として三重県の神服織機神殿神社

年）起こった「平成の大合併」は茅葺

八尋殿（伊勢神宮）屋根葺替工事や、

きの世界に思わぬマイナスを与えてし

熊本の重要文化財・生善院観音堂保

まいました。」

存修理工事（熊本県）や最近では、 石

熊谷常務は、 顔をやや紅潮させながら

川県の重要文化財時国家住宅保存修

こう話した。

理工事など全国を飛び回っていますが、

「法22条区域は、 茅葺き屋根の新築が

その地元である宮城県で全く新築が建

禁じられています。全国的に見ても宮

てられなくなるというのは…」

城県は、 人家の距離が1キロ以上離れ、

熊谷常務の口調が次第に熱を帯びて

延焼のおそれがほとんど無い山間部で

きた。

あっても、 法22条指定区域に指定され ている市町村が多かったのですが、 中 には、 あくまで実情を反映して法22条区

茅葺きの可能性

域指定を拒否してきた良識のある町が あるのです。それが、 旧東和町、 桃生町

那須◎「那須です。茅葺きの可能性

などです。 しかし、 これらは今般の市町

についてお話しいたします。時間がも

村合併によっては、 法22条区域に指定

ったいないので列挙します。!最近 の

されることになってしまうのです。 この場合、

研究で茅葺きの原料であるヨシが、 川

1）五十嵐敬喜氏 法政大学教授・弁護士・ 1944年山形県生まれ・著書「いきづく町をつ くる 美の条例 真鶴町・一万人の選択」 「美 しい町をつくる」 （以上学芸出版） 「都市計画  利権の構図を超えて」 「議会 官僚支配を 超えて」 「公共事業をどうするか」 「市民版  行政改革」 （以上共著、岩波書店） 「図解公 共事業のしくみ」 （共著、東洋経済新報社） 「破 綻と再生」 （立法学ゼミとの共著、 日本評論社） ほか多数。 2）熊谷秋雄氏 日本唯一の茅葺き専門校 事業者・熊谷産業常務取締役・1964生宮城 県生まれ・熊谷家はもともと稲作農家であり茅 葺きは兼業であった。バブルを過ぎて周辺の 茅葺き民家が一挙に減少し、職人も高齢化し 引退・死亡が相次ぎ、廃業を考えていた。 しかし、 平成3年（1991）、青年海外協力隊員であっ た秋雄氏がフィリピンから帰国し、廃業に反対 し、逆に組織化を推し進めた。フィリピンの茅 葺きを見て茅葺きの良さを再認識した秋雄氏は、 農的なシステム再生へ向かう時代の流れを確 実に捕らえていた。 3）那須武秀（略） 司会

133

茅葺き

対談

るに、上下から挟み込むようにゲリラ

かってきました。環境にやさしい素材な

的に動けばいいのです。まず上から

のです。①リサイクルの面から言いま

ですが、県議会で議題に取り上げて

「それにしてもなぜ建築家というヒトタ

すとカヤは燃えて環境を汚しません。1

もらえばいい！具体的には議員の●

チは、 あんな下品な建物を造るのでし

年で生えます。完全にリサイクル可能

×さんに電話して話せばいいでしょう。

ょうか？彼らは現場を知らない。ただ設

な素材です。②ですから、 オランダでは

それと県の中で行政としての受け皿

計図を引いているだけですね。だから

年間3000棟くらいの住宅が建設され

を作らなければなりませんね。これは、

ものを作っていない。駄目ですね。例え

ています。これは一種のステータスに

具体的には法政大の出身者がいま

ば…」

なっていて茅葺き住宅は環境に優し

すから■△さんに電話してください。

いお金持ちの住宅のシンボルになって

はい。なんなら僕が今電話してあげ

これ以降、 30分くらい特定の建築家と

います。またルイヴィトンなどのブランド

ましょうか？」

作品批評が続く。特に那須は全く同

ショップも茅葺きを積極的に使っていま す。③造形的な面から言いますとまず

感で、 大先輩である五十嵐教授と肩を 一同あまりの明快なお答えにポカン！

美しい有機的曲線を描きます。これは

組んで新宿方面を走りたくなる。ああ、 ここにも分かるお方がいたのだった！

文句なく美しい。日本の近代建築はそ

「じゃ下からですね。これは、有志の

の可能性を未だに検証していません。

方々で北 上 川の環 境を守る目的で

さて 、諸君！何が分かったかな？

④新住協の鎌田先生 （室蘭工大教授）

市民運動を起こし22条指定反対の

「もの学入門」はできただろうか？

のお話では、北欧の茅葺きの高断熱

署名活動を始めたらいいのです。マ

高気密住宅で、暖かい空気が茅葺き

スコミに取り上げてもらい、世論の形

で遮られなかなか上に抜けず、 さらに、

成をはかります。じっくりゆっくりやっ

※法第２２条区域とは：防火および準

負圧をかけると新鮮空気が上から入り

たらいい。その内行政も無視できな

防火地域以外の市街地において指

込んでゆっくりとその暖かい空気に温

くなりますし、第一茅葺きの良さのプ

定する区域内にある建築物に対し、火

められて非常にエネルギー効率の良

ロパガンダになる。那須さんの話しを

災による類焼の防止を図る目的から、

い住宅が実現しているそうです。早速、

聞いても茅葺き屋根が建つので困ると

特定行政庁は都市計画審議会の意

新住協の研究会員にしていただき、 鎌

いう人はいない。 ということは、議員が

見を聞いて区域の指定を行うことがで

田先生と茅葺きの共同研究プロジェク

動く可能性が高いということです。」

きる。 ※指定区域内の建築物に対する制限：

トを開始することになりました。その他様々 な魅力がありますが、 一言で言えば茅

一同あまりの説得力に感動！

法第２２条指定区域内の建築物につ いては、通常の火災を想定した火の粉

葺きは未来素材なのです！」 「でもですね、 これを忘れてはいけない

による火災の発生を防止するため屋

のですが、要するに素晴らしく美しい

根を不燃材等で葺かなければならない。

茅葺きの住宅や建築をちゃんと建てる

また、木造建築物等については、延焼

ことですね。 「美」はだれが見ても良い

のおそれのある部分の外壁を準防火

五十嵐教授◎「今、那須さんが指摘

ことです。その良いことをなぜ邪魔す

構造（土塗り壁等） とする必要がある。

したことは既に我々にとっては共 通

るのだという論理が一番強いでしょうね。

の理解ですね。基準法が悪法であ

「美」は全ての基準です。 「美の正当性」

るということも既に多 数の方々が 指

を堂々と主張すればいい。僕の「美の

摘してこられた。では一体どうやって

条例 いきづく町をつくる 真鶴町・一万

法22条区域の指定解除をすべきか？

人の選択」や「美しい都市をつくる権利」

難しく考えることはありません。要す

を読んでみてください！」

法的限界を突破する

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一同全身でうなづく ！

の水質を浄化する働きがあることが分

第 5 ● 章 わ ざ 学 入 門 ノ ー ト

過去の建設技術や、職人の様子を知るには、絵巻物が大変参考になります。これらをながめると職人の姿が生き生きとえ がかれていて、現代に通じ合うものを感じます。コンクリートと鉄とガラスなどの材料、機械力など建設技術の進歩はあ りますが、基本となるべき事は、変わっていないのではないでしょうか。むしろ、合理化、近代化と締めつけられ、システム のオリの中に入らざるを得ない現代人よりある面でめぐまれていたかもしれません

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大工は昔、 「だいこう」あるいは「おおいたくみ」と呼ばれ、建設関係の各職種ごとの最高の技術指導者をさすことばでした。 それが後世、今日いうところの大工「だいく」つまり、木工を主とする工人に意味が変化してきました。江戸に入って、町方 大工が成立してくると、現在の大工さんのイメージに近づいてきます。技術がすぐれる事が封建社会の中で自由と誇りを 手に入れるための1つの手段だったと思います。技術が人間的なスケールで無理なく融和したところにあったのでしょう

137

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生産や流通の真正の近代化は何でしょう？ロボット化する生産ラインで製品の品質・精度はより正確無比となりました が、人間の手の痕跡はほとんど見られません。人間の力を拡大し向上させた機械は、ますます人間を不要のものとしてい く。それが近代化であり未来像なのでしょうか？本来技術は、人間の解放に向けて使われるべきものであったはずです。 しかし、もはや等身大の技術ではなく使い方1つで人を滅ぼすものさえあります。この矛盾した関係に未来をおくと2極

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に分化した2つの未来がみえてきます。1つは技術至上の未来、合理化の徹底的な追及（技術未来）、もう1つは人間性が技 術の質を決定する人間至上の技術未来（人間未来）です。本当のところ私にはどちらが良いのか分りません。あるいは第3 の道もあるのかもしれません。そこでそのまま2つの未来の姿をえがいてみることにしました。あなたはどちらの未来を 選ぶのでしょうか。少なくとも現在、私たちは、技術未来へ向けて走り出しているような気がしますが・・・・・・

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人間未来とは、技術と人間の幸福な結婚ともいえるでしょう。長年連れ添った古女房のように空気のような関係で技術を使う ことです。残念ながら私達は、まだそのようなつき合い方を知りませんので、ここで示す4つの人間未来では、実に幼稚なもの になってしまいました。01は、多能工。現場施工を一手にひきうける職人のイメージです。彼にとってはパワーゾスーツもツー ルハンドも体の1部です。江戸の大工がノミの手を延長のように使いこなしたように、彼は、自由自在に建物をつくるでしょう。

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彼にとって現場は、自分自身と同じものに感じられるかもしれません。02は、セルフビルドの延長上。いわば趣味の建築です。 プラモデルのマニアと同じ感覚で、一般の人々も自在に建築ができる時代がくるかもしれません。03は、町に住み込んだ設 計・施工の建築師のイメージ。彼は、技術によって、現在の大手ゼネコンがもっている機能を、タウンパイロットセンター1つ に持っています。04は渡り職人のイメージ。特殊な技術者集団は、世界をビルドカーでかけぬけていくかもしれません

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職 人 曼 荼 羅

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早稲田大学理工学部教授 早稲田大学総合研究機構・ユネスコ世界 文化遺産研究所所長 早稲田大学理工学部助手、 専任講師、 助 教授を経て、 1984年より現職。専門はアジ ア、 日本を中心とした建築史。1994年より日 本国政府アンコール遺跡救済チーム （JSA） 団長、 1995年よりフエ・ユネスコ会議国際 専門委員を務め、 現地復興の国際的リー ダーとして活動。2001年、早稲田大学総 合研究機構・ユネスコ世界文化遺産研究 所を設立し、 所長を務める。1998年、 JSA 団長としての活動に対して、 カンボジア王 国より 「サハメトレイ王国勲章」受章。主な 著書に『世界宗教建築事典』 『アンコール の神々BYON』 『数寄屋の森』 『建築様 式の歴史と表現：いま、 日本建築を劇的に』 『日本の家』ほか

「現場に学ぶ ― アジア建築学の可能性」 中川 武（なかがわ たけし）  人類は、気付いた時には、言葉を話し、集団として生き、

拠って立つ現実を忘れることができたのである。だが、人々

建築をつくっていた。気付いたことにより、言葉、集団、建

の憧れを、最も遠い世界のかたちとして実現した人類の

築は驚くほど発展したが、同時に自己という意識が生まれ、

最初の高度な文明であるアジア的古代（ 古代の四大文

他人や集団そして自然からさえも区別し、建築に世界を

明をさす）からの営々とした歴史は、憧れの対象を遠い世

写し取ることを始めた。つまり悩ましいことに自ら首をつっ

界ではなく、 誰もが現実の主人公となることに向けられた時、

こみだしたのである。では意識しなければよかったのか。

憧れと職人技術という、両極への反力によって支えられて

そうはいかない。言葉、集団、建築を意識することそのこと

いた双方が視えにくくなり、 自らの存在意識を確かめる技

が、 人間という存在の始まりだからである。話しを縮めれば、

術も憧れも失ってしまった。これが近代という時代の始まり

こうして人々の憧れと職人の技術がピラミッドやアンコール

であった。世界中がこのように均質化していくのでは、 とも

ワットを生み出した。それは、 いま、 ここからできるだけ遠く

考えられたが、世界は一様ではなく、 まだらのようにも視え

へ離れようとすることと、 いま、 ここへできるだけ密着し、同

てくる。特にアジア的古代文明を生み出したアジア地域は、

化しようとする人間の心と体のいとなみである。正反対の

人々の憧れと職人技術の関係を、最も色濃く、長く存続さ

方向性をもつ両者のいとなみではあるが、人々の憧れが

せている地域でもある。アジアでは、遺跡だけではなく、都

かたちを持ち、職人の手でつくられ、 それが確かめられた

市や生活においても、近代とアジア的古代文明が、 それこ

あいだは、憧れも悩みも眼に視えるものであった。その限り

そまだら状に息付いている。現在ここに、建築学の最先

において、人々は自ら憧れの主人公として加担し、 自らが

端の、最も面白い現場がある。

中川 武 2005.08.16 ヴィエトナム・フエにて

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応用編

本

君もオリジナルの 現場ノートをつくろう！

書は、読者諸君がまず現場に飛び込み、よ く観察すること、 そしてモノやワザについて

も考察を深めることを期待して、持ち運び自由・書 き込み式の「使う本」という形式をとっている。しか しこの本が書き込みで真っ黒になってきた頃には、 おそらく諸君は現場の全体像をつかみ始めている だろう。そしてそうなったら、次はいよいよ「オリジナ ルの現場ノート」をつくる段階だ。自分なりのこと ばとスケッチで、一期一会の現場ノートを綴ってみ てほしい。それらはきっと、後々「プロの現場人」と なるための布石となるはずだ。下は、そのようなオ リジナル現場ノートの一例である。現場では構造 職人と仕上職人は同時に存在するし、モノやワザ も混在している。それが現場である。現場の記録 は複雑だが、同時に印象的な場面の連続でもある。 その場面を、自分が再び想起できる ようになっていれば、現場ノートとしての機能は果 たしているといえる。さあ、 さっそく今日の現場につ いて、書き記してみよう。

トから ー ノ 学 場 現 わ たしの

大沼 正寛 （おおぬま まさひろ） 元 那須建設（株）社員 現 東北文化学園大学講師

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■現場へ

今考えれば、 あの時自分に「赤紙招集」を

 私は、大学卒業後、地元中堅建設会社

かけてくれたことに深く感謝している。

への就職を選んだ。理由の第一は、 体いっ ぱいで建築を学び取り、 将来は施工に強い

■現場の日常＝「段取り八分」

建築家になりたかったため。 もう一つは、 巷

 そうはいっても、 毎日は楽ではない。特に

にあふれるファッショナブルな、 軽薄な建築

新入社員は勝手が分からないから、 現場に

界に飽き飽きしていたこと。そして何よりも

協力しようと思えば、 できることは掃除、 そし

本書著者との出会い。不思議な縁であるが、

て写真記録。 しかしこれらはやりすぎると監

督業の権威が落ちる。

わたしの 現場学ノートから

 一番の仕事は「段取り」だ。実作業は職 人が担当するから、 人やモノを瞬時にあつ らえていく手腕が要る。 さらに「報告・編集」 も、 次の作業や現場への段取りとも解釈で きる。 「先読みと調達が仕事の八割を占める」 というこの仕事の鉄則は、 異業種に就いて からも応用性が高く、 業務をこなしながら常 に次のことを考える癖がついて助かっている。

■現場の非日常＝「毎日がお祭りだ！」  左右のスケッチは、現場でつけていたノ ートを解読可能な状態に直したもの。多様 な職人がいて、 しかも異業種同士の力関 係が微妙に異なる雰囲気は、実際に現場 に出てみないと把握しづらい。それゆえ多 くの職人が共同作業をする日、 例えば「コン クリート打設」などは現場の「花」であり、 そ れらを統括する我々の士気もまた最高潮に 達する。その力みで発注数量を間違い大 目玉をくらったが、 怒鳴られた瞬間、 すっきり と次の段取り話をするあたり、 オトコの仕事 場ならではの心意気を感じたものである。  そう、現場では「日常」と「非日常」は同 化していて、毎日がお祭りなのだ。施工内 容自体、 毎日が特別で、 同じ日は二度とない。 今日しかこない職人もいるが、 彼らはこの現 場を通るたび「ここは俺やったんだぜ」 とい う。数十人から多ければ数千人の人々が 関わり合う現場。個々にとって確かな現実 体験である現場。その結集パワーを垣間 みた時、 現場は「つらい３Kの仕事」から「や り甲斐」に昇華するのである。

■現場のプロを目指して  そのようなかすかなヨロコビに気づき始 めた時、 私には転職の機会が訪れていた。 幸か不幸か、 一番重要な現場の「金勘定」 は横目で観察するだけだったが、 「大きな 祭りの経営」が、 リスクだらけであることは 強く感じたものである。個々人、 チーム、 そし て地域が、 それぞれ濃密な現場を構築でき る社会こそがクリエイティブな社会であると 思うが、 それに寄与するためにもまた、 個々 が現場のプロを目指す必要がある。子供 の頃大工を夢見たが、成れなかった、成ら なかった自分だが、 やはり目指すところは同 じ「現場のプロ」なのである。 147

あとがき

「新現場人誕生を期して」

 私は、 約20年前、 初めての現場「仙台市博物館新築工事ＪＶ （ジ

分自身のための「現場学」…現場の教科書を作ろう ！そう思ったら

ョイントベンチャー）」に派遣された。

現場がますます輝きはじめた。それが嬉しくて元気いっぱい無我

父が、 那須建設（株） を経営していたため、 子供の時から現場に

夢中で現場を駆け回った。

行き、 少しは現場を知っていたが、 現場監督は全く初めて、 現場に 出るまで不安だった。なんとか不安を克服したいと、 現場の教科

 現場監督になって痛感したのは、 「現場は職人が作っている」

書を探したが、 施工の仕様とか、 一般的な工程が書いてあるだけ

ということだ。その職人さんたちが安全で存分に腕をふるってもら

…現場で具体的に何をどうしたらいいのか？全く分からない。

えるような環境を作ることが現場監督の重要な仕事だ。職人さん がいなかったら現場は成り立たない。

 覚悟を決めて現場に出てみると、 何も知らないことばかり、 あら

だが、 現場管理の本には職人さんのことはほとんど書いてない。

ゆることが新鮮に見えた。だんだん慣れるに従って、 現場を知らな

…これはおかしいのではないか？

いことがむしろ「武器なのだ！」 と気づきはじめた。

有名な職人さんの本はあるが、一般的な職人さんを紹介する本

現場新人であるから、何も知らないのは当然だ。だから何でも聞

は見つからない。…これもおかしいのではないか？

いて早く学んでしまおう。そう思ったら気が楽になった。

一般人にとって住まいや公共施設は、 完成してから利用するので あって、 その建物を作っている職人さんの姿はめったに見る機会

 人間は忘れる。だから現場ノートを作り、 その日に覚えたことをメ

がない。… これは大いにおかしいのではないだろうか？

モに定着した。また、 写真係を命じられ、 現場の具体的な写真を どんどん撮った。その写真を整理して、 現場を具体的に記録する

 そんな疑問が大きくなって来たとき、 那須建設の30周年記念と

ことも覚えた。

して「仙台市博物館新築工事」の本を自費出版することが決定

そのうち、 自分で自分のために「現場の教科書」 を作ればいいのだ！

した。仙台市の地元の施工業者として仙台市の歴史や文化を保

と気づき始めた。

存し展示する博物館の建設記録をまとめ、 後世に残すことは、 大

これは大きな発見だった。現場ノートや写真やスケッチを使って自

いに意義があることだ。

醍醐 正幸です。 ものつくり学専攻 修士１年 那須研究室所属。

ボクらは ものつくり大学2年生！ インターンシップで 「かや葺き （熊谷産）」を 体験してきました！

松野将嗣（まさつぐ） 昭和６０年５月２６日です。 生まれは茨城県取手市。

脇田勇輔です！ ！ 1985年9月28日 埼玉県生まれです！

 それから本作りがスタートした。現場から帰って、 夜8時から12

那須建設施工研究会 （本社分室として1階は施工研会議室・2階は設計企画室として使っていました）1986年

いただいた。これも筆者にとっては実に幸いなことで本書はすっ

時までほとんど毎日、 現場ノートや写真、 スケッチを総動員して、 職

かり生まれ変わった。理工図書の志賀さんには最大級の感謝を

人さんの道具はどんなものがあるのか？どう使うのか？作業服は？

申し上げたい。志賀さんのお陰で眠っていた20年前の本を世に

作業の進め方はどうなのか？等々、 分かりやすく絵を描き、 文章を

出すことが出来た。その他、 ものつくり大学の学生、 母校・早稲田

まとめた。2年後、 やっと出来たのが、 「仙台市博物館建設図誌」

大学の中川先生を始め研究室の修士、 建築仲間、 長くお付き合

だった。お陰様で、 大勢の方々から過分な評価をいただき、 第7回

いいただいている尊敬する諸先輩方など、 実にたくさんの方々の

東北建築学会賞の努力賞まで受賞するというオマケがついた。

ご理解とご協力を得た。心の底から感謝申し上げる。

 本書は、 この「仙台市博物館建設図誌」を元にして出来た。こ

 建設業は、人々の暮らしの舞台を作る重要な仕事だ。絶対に

の20年間の間、 バブル景気や不況を経て、 建設業は変わり、 現場

無くならない仕事だ。この不況にも負けず、 いや不況だからこそ、

も変わってきた。最新の現場情報を加え、様々な箇所を改訂・修

本物の真価が問われている。本物の現場人として痛快に現場を

正した。

生き、 立派に自立していく 「新現場人」の誕生が求められている。

 大沼正寛先生（東北文化学園大学専任講師・元那須建設（株）

そんな新現場人のために、 この本がお役に立てればと考える。

社員）の全面的な協力を得て、 徹底的に見直しを行った。その結 果、 実践に学ぶ「現場本」のコンセプトが生まれ、 現場を中心軸に

 今、 こうして完成してみると、 あちこち反省すべき点がある。現

据えた新たな建築学の提案もささやかながら具体的な形で行うこ

場は生き物なのだ。本書は常に「現場本」として読者の力によっ

とが出来た。また、 コンクリート建築生産社会の小さな現代史とも

て完成していくものなのであろう。

なり得たのではないかと考えている。大沼先生がいなければ、 こ の本はできなかった。改めて感謝申し上げたい。  また、 偶然再会できた仙台のグラフィックデザイナー保坂昌秀さ んをはじめ編集スタッフの皆さんにブックデザインに力をふるって

さぁ、 「新現場学」へ！

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著 者 略 歴

那須 武秀（なす たけひで） 昭和30年12月8日 仙台市生まれ 早稲田大学大学院理工学研究科建設工学博士課程（建築史 中川研究室）修了、 那須建設株式会社建築部入社・同社社長室長・専務、 ㈱オプコード研究所仙台ラボ主席研究員を経て 平成13年4月∼ものつくり大学建設技能工芸学科専任講師 道具会会員

◎主要著作・連載 1 「仙台市博物館建設図誌」1986年3月1日 初版（那須建設30周年記念自費出版） 本書にて1987年 日本建築学会第7回東北建築学会賞 業績賞（努力賞）受賞

2 「仙台住まい探偵帖」無明舎出版 1996年9月 初版 河北新報日曜版家庭欄 1995年8月より1996年7月まで連載したものに加筆出版

3 「仙台職人図誌」1991年10月∼2002年2月 雑誌「仙台経済界」連載 4 「現場メディア実践講座」1991年9月∼1993年8月 雑誌「施工」彰国社連載 （手作りコピー現場メディア） 5 雑誌「群居」6号より群居支局長便りに「現場新聞」 その他、群居仙台支局長として「群居町作りネットワーク激闘レポート」 「地域の目」等 6 「特集・現代職人図誌」 雑誌「建築界」理工図書（株）1987年3月号 7 「特集・現代職人図誌」 雑誌「建築界」理工図書（株）1987年4月号 8 「平成建築生産事典」雑誌「施工 別冊」彰国社 1994年1月「地方ゼネコンの技術的問題」 9 「明日の住まいの不安を解く」1991年グッドリビングショー 「明日の住まいは誰が作るのか？」 （同セミナーブック 講演録） （連載中） 10 早稲田大学建築史研究室機関誌「史標」「artisan論」

◎ホームページ h t t p : / / iic i.k o u s a k u s h a .c o m /~ n a s u /

新現場楽ノート 2006年 ７ 月 20 日 初 版 発 行

検印省略

発行所

理工図書株式会社

C 2006 Printed in Japan

著  者

那 須 武 秀

発行者

柴 山 斐呂子

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藤原印刷株式会社

ISBN 4 8446 0711 1

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