朝倉 国 語教育 講 座
6 国 語 教育 研 究
倉澤 栄 吉 監修 野 地潤 家
朝倉書店
監修者 倉 澤 栄 吉 日本国語教育学会会長 野 地 潤 家 広島大学名誉教授/鳴 門教育大学名誉教授
編 集 者()...
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朝倉 国 語教育 講 座
6 国 語 教育 研 究
倉澤 栄 吉 監修 野 地潤 家
朝倉書店
監修者 倉 澤 栄 吉 日本国語教育学会会長 野 地 潤 家 広島大学名誉教授/鳴 門教育大学名誉教授
編 集 者()は
編集担 当巻
白 石 寿 文 佐 賀 大学 名誉 教授(第1巻,第3巻)
小 田 迫 夫 大阪教育大学名誉教授(第2巻) 浜 本 純 逸 神戸大学名誉教授/早 稲 田大学教授(第2巻) 松 山 雅 子 大阪教育大学教授(第2巻) 山 元 悦 子 福岡教育大学教授(第3巻) 菅 原
稔
岡 山大学教 授(第4巻)
中 西 一 弘 大 阪 教育 大学 名誉 教授(第4巻)
森 田 信 義 広島大学教授(第4巻) 世 羅 博 昭 鳴門教育大学名誉教授/四 国大学教授(第5巻) 三 浦 和 尚 愛媛大学教授(第5巻) 大 槻 和 夫 広島大学名誉教授/安 田女子大学教授(第6巻) 吉 田 裕 久 広島大学教授(第6巻) 植 山 俊 宏 京都教育大学教授(第6巻)
刊行 の言 葉
昭 和 二 四 (一九 四九 ) 年 四月 に学 生 を 迎 え 入 れ て 発 足 し た 新 制 大 学 も 、 既 に 半 世 紀 を 超 え る歳 月 を 閲 し た 。 そ
の間 、 教 育 ・研 究 両 面 に実 績 を 挙 げ て き た が 、 新 し い世 紀 に 入 って 、 組 織 ・運 営 面 に抜 本 的 改 革 が な さ れ る こと に な った 。 新 制 大 学 と 歩 みを 共 にし て来 た 者 と し て 深 い感 慨 を 覚 え る 。
新 制 大 学 教 育 系 学 部 には 、 国 語 科 教 育 法 担 当 者 が 配 置 さ れ 、 教 職 科 目 単 位 取 得 希 望 者 に ﹁国 語 科 教 育 ﹂ 関 係 の
( 東 京 教 育 大 学 教 授 ) の ご 先 導 ・ご 高 配 に よ って、
授 業 を 担 当 し た が 、 昭 和 二 八 (一九 五 三 ) 年 四月 、 大 学 院 ( 当 初 、 修 士 課 程 、 続 いて 博 士 課 程 ) が 設 置 さ れ て か ら は 、 国 語 科 教 育 専 攻 の院 生 の指 導 も 担 当 す る こ と にな った 。 新制 大学 で国語科 教育を 担当す る教官方 は、 石井庄 司博士
昭 和 二 五 (一九 五 〇) 年 九 月 、 全 国 大 学 国 語 教 育 学 会 を 創 設 し 、 全 国 を 九 ブ ロ ック ( ① 北 海 道 ・② 東 北 ・③ 関
東 ・④ 東 海 ・⑤ 北 陸 ・⑥ 近 畿 ・⑦ 中 国 ・⑧ 四国 ・⑨ 九 州 ) に 分 け 、毎 年 二 回 ( う ち 、 一回 は東 京 で) 学 会 を 開 催 す る こ と に な った 。 既 に百 回 を 超 え る 学 会 が 重 ね ら れ て き た 。
国 語 科 教 育 実 践 界 では 、 日 本 国 語 教 育 学 会 を 初 め 、 校 種 ( 小 ・中 ・高 ) 別 に、 さ ら に は 研 究 組 織 ご と に研 究 会
が設立 され、そ れぞれ活発 に活動 が続けら れた。また 、国立国語 研究所 ( 初 代 所 長 、 西 尾 実 博 士 )、 文 化 庁 国 語
課 、 国 立 教 育 政 策 研 究 所 な ど で 行 な わ れ た 研 究 ・調 査 等 も 、 国 語 科 教 育 の実 践 ・研 究 に 大 き く 寄 与 す る も の で
あ った 。 20 世 紀 後 半 に お いて 、 わ が 国 の国 語 科 教 育 研 究 の組 織 化 は よ く 整 備 さ れ 、 そ れ ぞ れ 実 績 を 挙 げ て い った
と 思 わ れ る。
朝 倉 書 店 は 、 先 般 来 、 ︿朝 倉 国 語 教 育 講 座 ﹀ ( 全 六 巻 ) 刊 行 の企 画 を 立 て ら れ た 。 企 画 に当 た っては 、 こ う し た
企 画 経 験 の豊 富 な 中 西 一弘 教 授 に世 話 人 を お願 いし 、 各 巻 ご と に 編 集 担 当 者 を 依 頼 し 、 各 巻 の構 成 、 執 筆 者 へ の
連 絡 等 を 分 担 し て も ら う こ と にな った 。 こ のよ う な 経 緯 か ら 、 日 本 国 語 教 育 学 会 西 日 本 集 会 の開 催 ・推 進 に協 力 を いた だ いた 方 々に 編 集 ・執 筆 を お 願 いし た 。
全 六 巻 か ら 成 る 、 本 講 座 の目 指 す と こ ろ は 、 内 容 を 清 新 な も のと し 、 記 述 に当 た っては 、 正 当 か つ平 易 な も の
た ら し め る こ と 、 ま た 、 そ れ ぞ れ 解 説 ・説 明 に 重 点 を 置 い て いく よう に す る こ と で あ る 。 企 画 側 と し て は 、 学
生 ・院 生 の皆 さ ん を 初 め 、 国 語 科 教 育 の実 践 ・研 究 に 取 り 組 ん で いる 人 た ち 、 関 連 分 野 の研 究 者 に も 、 一般 の
人 々 に も 、 手 に 取 って読 ん で いた だ け れ ば と 願 って いる 。 広 く 開 か れ た ﹁ 講 座 ﹂ で あ り た いと いう 思 いを こ め て いる 。
20 世 紀 に あ って は 、 国 語 教 育 講 座 が数 社 か ら 既 に 刊 行 さ れ た 。 こ れ ら の講 座 が 国 語 科 教 育 実 践 者 ・研 究 者 に そ
れ ぞ れ 役 に立 つこ と も 多 か った と 思 わ れ る 。 講 座 は 刊 行 さ れ た 、 そ の時 期 そ の時 期 か ら の羅 針 盤 にも な り 、 相 談 窓 口 に も な った か と 思 わ れ る 。
単 行 本 の中 か ら 自 分 にと って の﹁一 冊 の本 ﹂ を 見 つけ 、 そ こ か ら 摂 取 しう る も のを 見 い出 し 、 自 己 の実 践 ・研
究 に 十 分 に生 か し て いく こ と が 望 ま れ る 。 同 時 に 、 ﹁講 座 ﹂ に接 し て 、 そ の質 量 に押 さ れ る こ と な く 、 活 用 し て
いく 方 途 を 自 ら 発 見 し て いく こと も 望 ま れ る 。 ﹁講 座 ﹂ と の出 会 い に よ って 、 国 語 科 教 育 へ の視 野 が 開 け 、 何 を
ど う 耕 し 、 深 め て 、 成 果 を ど う 導 き 出 し て いく のか に多 く の示 唆 が 得 ら れ る こ と も 夢 では な い。
国語 科 教 育 界 で は 、 戦 前 ・戦 後 、 著 作 集 ・個 人 全 集 (垣 内 松 三 ・西 尾 実 ・大 村 は ま ・倉 澤 栄 吉 ) も 刊 行 さ れ 、
近 現 代 国 語 科 教 育 の み のり の豊 か さ が 見 ら れ る 。 ︿朝 倉 国 語 教 育 講 座 ﹀ 刊 行 には 、 国 語 科 教 育 実 践 ・研 究 の み の
り で あ る と 共 に 、 さ ら に 未 来 に向 け て、 新 し い成 果 を 生 み出 す 母 胎 と も な り 、 指 針 と も な る 、 役 割 を 期 待 す る こ と が でき る。
監 修 者 倉
地
澤
潤
栄
家
吉
本 講 座 が そ の使 命 ・役 割 を 十 分 に 果 た す よう 願 って 、 監 修 者 か ら の言 葉 と し た い。
野
ま え が き
こ れ ま で に 出 版 さ れ た 国 語 教 育 実 践 ・研 究 文 献 は 、 ま さ に汗 牛 充 棟 と い っても 過 言 で は あ るま い。 そ れ ら の多
数 の文 献 の中 か ら 、 自 分 にと って 有 用 ・有 益 な 本 を 選 び 出 す こ と は 容 易 では な い。 単 な る 文 献 目 録 で は な く 、 あ
る程 度 精 選 し て、 そ れ が ど の よう な 本 な のか を 解 説 し た 文 献 が あ れ ば 、 これ か ら 国 語 教 育 の勉 強 を 始 め よう と す
る 人 にと っ ては も ち ろ ん 、 す で に 国 語 教育 の実 践 ・研 究 を 進 め て いる 人 にと つても 有 益 な ガ イ ド に な る ので は な いか 。 そ う 考 え て 、 本 巻 は 生 ま れ た 。
本 巻 で は 、 お よ そ 次 の基 準 に よ り 約 百 点 の文 献 を 取 り 上 げ 、 そ れ ぞ れ の文 献 に つ いて 、 そ の内 容 、 特 色 、 意 義 などを解 説した。
○ 出 版 さ れ た 時 期 を 戦 後 に 限 定 し 、 か つ現 在 に 近 いと こ ろ を 厚 く す る こと を 基 本 方 針 と し つ つも 、 歴 史 的 に 意 義 のあ る 文 献 は拾 い上 げ る よ う 配 慮 す る こと 。
○ 国 語 教 育 の実 践 に す ぐ 役 立 た な く て も 研 究 と し て価 値 の高 いも の ( 学 位 論 文 な ど ) は 、 な る べく 入 れ る こと 。
○ な る べ く 多 く の著 者 を 取 り 上 げ る こ と と し 、 著 書 の 数 の多 い著 者 に つ い ては 歴 史 的 に意 義 が あ ると 考 え ら れ る 著 書 を 取 り 上 げ る こと 。
○ 辞 典 ・事 典 、 講 座 類 、 全 集 ・著 作 集 に つ い ては 、 解 説 ・解 題 は 省 略 し 、 リ ス ト のみ を 掲 載 す る こ と 。
文 献 選 定 の作 業 は な か な か 困 難 で、 取 り 上 げ る べく し て取 り 上 げ 得 な か った 文 献 も 少 な く な い。 選 定 に つ い て
は 、 当 然 異 議 ・異 論 が あ る であ ろう 。 編 者 自 身 、 不 安 な し と し な い。 読 者 の皆 様 に は 、 こ れ を ﹁一つ の﹂ 手 が か り と し て ご 活 用 いた だ け れ ば 幸 い であ る 。
ど に も ふ れ て いた だ く よ う に お 願 い し た 。 し か し 、 一冊 の本 を 限 ら れ た 分 量 で 紹 介 し 、 意 義 ま で解 説 す る と いう
解 説 ・解 題 に当 た って は 、一定 の様 式 を 定 め て 、 そ の文 献 の内 容 だ け で は な く 、 そ の論 の 特色 や 意 義 ・価 値 な
こ と は 、 意 外 に難 し い仕 事 で あ り 、 何 を ど の よう に 書 く か と いう こ と に つ いて は 執 筆 者 にお 任 せ せ ざ る を 得 な か
った 。 多 少 不 統 一の感 は ぬぐ え な いが 、 反 面 、 そ こ に 執 筆 者 ひ と り ひ と り の ﹁読 み ﹂ が 表 れ て いて 、 興 味 深 く 読 ん で いた だ け る も の に な った か と 思 って いる 。
終 わ り に 、 本 巻 の作 成 に当 た って、 ご多 忙 の中 ご執 筆 く だ さ った 方 々、 格 別 お 世 話 に な った 朝 倉 書 店 編 集 部 の
久 夫
宏
裕 和
山 俊
田 槻
方 々に 、 編 者 と し て厚 く お 礼 申 し 上 げ る 。
二 〇〇 六年 八月
第六巻編者 植
吉 大
目
次
6
4
1
① ﹃ 国 語教育学 の構想﹄
第 一章 国 語教育総論
② ﹃ 改 稿 国語教 育 の方法﹄
8
﹄
③ ﹃ 国語教育 の理論﹄ ④ ﹃ 国語教育 の基 礎理論﹄ ⑤ ﹃ 国語教育 の理論と構造 ﹄ ⑥ ﹃国 語 教 育 の再 生 と 創 造 ﹄ ⑦ ﹃﹁国 語 ﹂ と いう 思 想︱ 近 代 日本 の言 語 認 識︱ ⑧ ﹃﹁逸 脱 ﹂ の国 語 教 育 ﹄ ⑨ ﹃﹁生 き る 力 ﹂ を 発 揮 さ せ る 国 語 教 育︱ 内 言 を 主 体 と し た 理 論 と 実 践 ﹄
第 二章 国語科教育 課程お よび方法 の研究 ⑩ ﹃ 学習指導 要領﹄ ⑪ ﹃ 言語論理 教育 への道︱ 国語科 におけ る思考︱﹄
10
12
14
16
18
20
22
26
28
︵﹃ 1 こ2 と︶ば の学 び 手 を 育 て る国 語 単 元 学 習 の新 展 開﹄ ︵﹃ 1 こ3 と︶ば と 心 を 育 て る︱ 総 合 単 元 学 習︱ ﹄ ︵﹃ 1 ホ4ー ︶ル ・ラ ン ゲ ー ジ ﹄
︵﹃ 1語 言 5活 ︶動 主義 ・言語生活主義 の探究︱ 西尾実 国語教育論 の展開と発 展﹄ ︵﹃ 1語 国 6科 ︶指 導と 評価 の研究﹄
第 三章 話 す こ と ・聞 く こ と の指 導 研 究
︵﹃ 1語 国 7科 ︶ 対話 の指 導﹄ ︵﹃ 1 話8 し︶こ と ば 教 育 の復 興 ﹄ ︵﹃ 1 群9 読︶の授 業 子 ど も た ち と 教 室 を 活 性 化 さ せ る ﹄
︵﹃ 2声 音 0︶ 言語教育実 践史研究﹄ ︵﹃ 2 育1つ︶こ と ば 育 て る こと ば ﹄ ︵﹃ 2 教2 育︶話 法 入 門 ﹄ ︵﹃ 2 聞3 く︶こ と と 話 す こ と の教 育 学 ﹄ ︵﹃ 2 声4 に︶出 し て読 も う !︱ 朗 読 を 科 学 す る︱ ﹄
︵﹃ 2生 共 5︶ 時代 の対 話能力を育 てる国語 教育 ﹄ ︵﹃ 2 ﹁話 6す ︶ ・聞 く ﹂ の実 践 学 ﹄
0 3
32
34
36
38
40
44
46
48
50
52
54
56
58
60
62
第 四章 書 く こと の指導研究 ︵2﹃新 7︶ し い綴 方 教 室 ﹄
︵﹃ 3 第1 三︶の書 く ﹄
︵﹃ 3作 短 0文 ︶指 導 の方法︱ 作文 の基礎力 の完 成︱﹄
︵2﹃子 9︶ ど も を は げ ま す 赤 ペ ン ︽評 語 ︾ の書 き 方 ﹄
︵4﹃1 一︶ 読 総 合 法 入 門﹄
︵4 ﹃ 国 0語 ︶科 の基本的指導 過程 入門﹄
︵3﹃問 9︶ 題 を も ち な が ら 読 む ﹄
︵3﹃読 8︶ 解 指 導 ﹄
第五章 読む こと の指導研究
︵3﹃子 7︶ ど も が 蘇 る 詩 と 作 文 ﹄
︵3﹃子 6︶ ど も と と も に 学 ぶ作 文 指 導 の課 題 と 方 法 ﹄
︵﹃ 3 説5 明︶的 表 現 の授 業︱ 考 え て書 く 力 を 育 て る︱ ﹄
︵﹃ 3文 作 4︶ 教育 における創構 指導 の研究﹄
︵﹃ 3 ご3っ ︶こ か ら フ ァ ン タジ ー へ:子 ど も の創 造 世 界 ﹄
︵﹃ 3語 国 2科 ︶ 表現指導 の研究﹄
72
︵2﹃文 8︶ 章 構 成 法 ﹄
64
68
74
70
76
78
80
82
84
86
88
90
94
96
100 98
︵4 ﹃ 状 2況 ︶認識 の文学教育﹄ ︵4﹃教 3︶ 師 のた め の文 芸 学 入 門 ﹄
︵4 ﹃ 言 4語 ︶行動主 体 の形成︱ 国語教育 への視座﹄ ︵4 ﹃ 文 5学 ︶作品 の読み方指導 ﹄ ︵4﹃小 6︶ 学 校 読 み の指 導 に お け る 日本 語 ﹄ ︵4﹃ 新 7︶ し い詩 教 育 の理 論 ﹄ ︵﹃ 4 漢8 文︶教 育 論 ﹄ ︵﹃ 4 関9 係︶把 握 に よ る 読 み方 指 導 ﹄ ︵﹃ 5 文0 学︶教 育 にお け る ︿ 解釈 ﹀と ︿ 分 析 ﹀﹄ ︵﹃ 5 論1 争︶・詩 の解 釈 と 授 業 ﹄ ︵﹃ 5 小2 説︶の力︱ 新 し い作 品 論 のた め に︱ ﹄
︵﹃ 5 教3 師︶のた め の読 者 反 応 理論 入 門︱ 読 む こと の学 習 を 活 性 化 す る た め に︱ ﹄ ︵5﹃﹁ 4他︶者 ﹂ を 発 見 す る国 語 の授 業 ﹄ ︵5﹃﹁ 5読︶む ﹂ こと の再 構 築 ﹄
︵5 ﹃ 説 6明 ︶的文章 の指導 過程 論﹄ ︵5 ﹃ 説 7明 ︶的文章 の読 み方指 導﹄ ︵5﹃説 8︶ 明 文 の指 導 ﹄
︵﹃ 59 説 明︶ 文教材 の授業改革 論﹄
2 0 1
106 104
136 134 132 130 128 126 124 122 120 118 116 114 112 110 108
︵﹃ 6者 筆 0︶ の工夫を 評価す る説 明的文章 の指導﹄
第 六章 読書 指導 の研 究 ︵﹃ 6 現1 代︶の読 書 指 導 ﹄
︵﹃ 6書 読 2︶ 生活指導 の実際﹄
︵﹃ 6 読3 書︶の発 達 過 程: 読 書 に 関 わ る認 知 的 要 因 ・社 会 的 要 因 の心 理 学 的 検 討 ﹄
(小 学 校 編 )・( 中 学 校 編 )﹄
︵﹃ 6 語4 彙︶力 と 読 書︱ マ ッピ ング が 生 き る 読 み の世 界︱ ﹄ ︵﹃ 6 読5 書︶を 教 室 に︱ [ 読 み ] の授 業 を 変 え よ う︱ ︵︶6﹃ 読 6書 教 育 実 践 史 研 究 ﹄ ︵﹃ 6 読7 書︶への ア ニ マシ オ ン 75 の作 戦 ﹄
第七 章 言語事 項指導 の研究 ︵﹃ 6 文8 法︶教 育 ﹄ ︵﹃ 6 語9 彙︶教 育︱ そ の内 容 と 方 法 ﹄ ︵﹃ 7 か0 な︶文 字 の教 え 方 ﹄
︵﹃ 7語 国 1︶ 教育 のため の文章論 概説﹄ ︵﹃ 7 レ2 ト︶リ ック認 識︱ こと ば は 新 し い世 界 を つく る ﹄
︵7 ﹃ 教 3育 ︶基本語彙 の基本的研 究﹄
138
156 154 152 150 148 146 144 140
2 7 1
170 168 166 164 162 158
︵7﹃授 4︶ 業 に役 立 つ 文 章 論 ・文 体 論﹄ ︵7﹃語 5︶ 彙 力 の発 達 と そ の育 成 ﹄
︵7 ﹃ 語 6彙 ︶指導 の革新と 実践的課題﹄
第 八 章 メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー 教 育 の 研 究 ︵7﹃7 メ︶ デ ィ ア 文 化 と ︿物 語 享 受 ﹀︱仕 掛 け ら れ た テ レビ ・ア ニメ ー シ ョ ン﹄ ︵7﹃ 8 メ︶デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー︱ マ ス メ デ ィ ア を 読 み 解 く︱ ﹄ ︵7﹃ 9 メ︶デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー︱ 世 界 の 現 場 か ら︱ ﹄
︵8﹃国 0︶ 語 科 メ デ ィ ア教 育 への挑 戦 ﹄ ︵8﹃実 1︶ 践 ・国 語 科 か ら 展 開 す る メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー 教 育 ﹄
第九章 国語教育 史 の研究 ︵8 ﹃ 国 2語 ︶教育 方法論史 ﹄ ︵8 ﹃日 3本 ︶作 文綴方教育 史﹄ ︵8 ﹃ 戦 4後 ︶文 学教育方法 論史﹄ ︵8﹃戦 5︶ 後 作 文 ・生 活 綴 り 方 教 育 論 争 ﹄ ︵8﹃話 6︶ し こ と ば 教 育 史 研 究 ﹄
︵8 ﹃ 戦 7後 ︶国語授業研究 論史﹄
178 176 174
192 190 188 186 184 180
214 212 210 208 206 204 194
第十 章 比較国 語教育研 究
理念 と実際﹄
︵﹃ 8 ア8 メ︶リ カ の 国語 教 育 ﹄ ︵﹃ 8 中9 国︶の国 語 教育 ﹄
︵9 ﹃ 英 0国 ︶の国語 教育︱
︵9 ﹃ 近 1代 ︶初等国 語科教育 成立 の条件 ロシア の場合﹄ ︵9﹃2 フ︶ ラ ン ス の国 語 教 育 I 19 6 0 年 代 の 初 等 国 語 科 教 育 素 描 ﹄
第十 一章 国語 教育 研究 と隣接諸科 学 ︵9﹃教 3︶ 育 評 価 法 ハン ド ブ ック﹄ ︵9﹃行 4︶ 為 と し て の読 書 ﹄
︵﹃ 9科 教 5︶ 理解 の認知 心理学﹄ ︵﹃ 9 関6 連︶ 性 理 論 ﹄ ︵﹃ 9 認7 知︶心 理 学 か ら 見 た 読 み の世 界 ﹄
引
第 十 二章 辞 典 ・事 典 ・講 座 ・全 集 ・著 作 集
索
226 224 222 220 218 216
240 238 236 234 232 228
242
257
第 一章 国 語 教 育 総 論
日常 の授 業 の多 く は 、 教 科 書 と指 導 書 に従 い つ つ、 そ れ を 学 習 者 の 実 態 に合 う よ う に変 形 ・加 工 し な が ら 営 ま
れ て い る こと が 多 い。 し か し 、 時 と し て 、 そ の授 業 が 確 かな 地 盤 に立 脚 し て いな い の で は な いか と 不 安 に襲 わ れ
る こ と があ る 。 そ も そ も 国 語 科 教 育 の ﹁国 語 ﹂ と は 何 な の だ ろう か 、 ﹁日 本 語 ﹂ と は 言 わ な い で ﹁国 語 ﹂ と 言 っ
て いる のは な ぜ な のだ ろう か 。 学 習 指 導 要 領 に 示 さ れ 教 科 書 に 具 体 化 さ れ て いる ﹁目 標 ﹂ や ﹁内 容 ﹂ は 、 ど のよ
そ う いう 疑 問 や 不安 が ふと 頭 を も た げ て く る の で あ る。
う な 学 問 的 根 拠 に 基 づ い て決 め ら れ て いる のだ ろう か 、 授 業 の展 開 や方 法 も 自 分 な り に 工 夫 し て は い る が 、 な か な か確 信 が 持 て な い︱
本 章 では 、 そ う いう 不 安 や疑 問 に 対 す る自 分 な り の解 答 を 得 た いと 願 う 方 々 の参 考 に な る であ ろ う 文 献 を 挙 げ てみた。
( 読 む ・書 く )、
そ も そ も 国 語 科 教 育 と は 何 か 。 こ の大 問 題 に 答 え る た め に は 、 ま ず 言 語 観 を 検 討 し て み な く て は な ら な い。 西
( 聞 く ・話 す )、 発 展
( 創 作 ・鑑 賞 ) と と ら え 、 そ れ に基 づ く 言 語 生 活 主 義 の 国 語 教 育 を 提 唱 し た 。 こ の理 論 は 単 元 学 習 論 と も 結
尾 実 は 、 現 実 の 実態 と し て存 在 す る のは ﹁言 語 生 活 ﹂ だ と し 、 そ れ を 地 盤 完成
び つき 、 そ の 実 践 理 論 を 探 究 し続 け てき た のが 倉 澤 栄 吉 であ る 。 大 村 は ま の実 践 も 、 西 尾 理 論 の 実 践 化 と し て み る こ と が で き る と こ ろ が あ る。
一方 、 時 枝 誠 記 は 、 言 語 は 人 間 に 内 在 す る 認 識 ・感 情 ・意 思 を 表 出 す る 過 程 と し て認 識 さ れ なく ては な ら な い
とし ( 言 語 過 程 説 )、 国 語 教 育 は ﹁表 現 過 程 の 教 育 、 理 解 過 程 の教 育 、 換 言 す れ ば 、 言 語 行 為 を 成 立 さ せ る方 法 、
技 術 の 教育 ﹂ で あ る と し た 。
輿 水 実 も ま た 、 言 語 哲 学 を 基 礎 と し な が ら 、 国 語 教 育 の近 代 化 を 進 め る 立 場 か ら 、 機 能 的 国 語 教 育 、 基 本 的
指 導 過 程 の提 唱 、 スキ ル学 習 の開 発 な ど 、 ﹁輿 水 理 論 ﹂ と し て 、 特 に小 学 校 の教 育 現 場 で広 く 支 持 さ れ た 。
ア メ リ カ の意 味 論 、 ソビ エト ( 現 ロシ ア) の心 理 学 な ど に 学 び つ つ、 認 識= 言 語 直 結 説 に立 って国 語 教 育 論 を
展 開 し た 大 久 保 忠 利 (お よ び 児 童 言 語 研 究 会 )、 生 活 綴 り 方 か ら 出 発 し て国 語 教 育 の 全 体 像 ・未 来 像 を 描 き 出 し
た 国 分 一太 郎 (お よ び 奥 田 靖 雄 ら の教 科 研 国 語 部 会 )、 文 芸 学 か ら 出 発 し て文 芸 教 育 論 ・国 語 教 育 論 を 展 開 し た
西 郷竹 彦 ( 文 芸 研 ) ら も 、 そ れ ぞ れ 言 語 や文 芸 の基 礎 理 論 に立 脚 し た 国 語 教 育 論 であ る 。
最 近 では 、新 し い言 語 科 学 な ど の成 果 を 基 礎 にし た 国 語 教 育 論 も 発 展 し て き て いる 。 記 号 論 、 語 用論 、 認 知 言
語 学 、 あ る いは 語 り 論 、 言 説 (デ ィ ス コー ス、 デ イ スク ー ル) 研 究 、 文 学 批 評 理 論 な ど が そ れ であ る 。 記 号 論 は
行 き 詰 ま って いる と いう 意 見 も あ る が 、 メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー論 な ど は 、 記 号 論 も 基 礎 に な ってお り 、 国 語 教 育 の新 た な 展 開 が 期 待 で き る 。
国 語 科 教 育 も ま た 歴 史 的 営 み で あ る。 そ の意 味 で 、 国 語 教 育 論 の確 か な 構 築 の た め に は 国 語 教 育 の歴 史 的 研 究
が 欠 か せな い。 さ ら に 、 日 本 の 国 語 科 教 育 を 諸 外 国 の国 語 科 教 育 と 比 較 し 、 共 通 性 を 探 り な が ら そ れ ぞ れ の独 自 性 を 明 ら か に し て いく 研 究 も 必 要 であ る 。
本 章 で取 り 上 げ た 文 献 は ご く 一部 に限 ら れ て いる が 、 こ れ か ら の国 語 教 育 研 究 のた め の 基 本 文 献 で あ る。 取 り
上 げ る べ く し て 取 り 上 げ る こ と の で き な か った 文 献 も 少 な く な い。﹁一冊 が 読 み抜 け れ ば 次 に 読 む べ き 文 献 は 必
ず 出 てく る ﹂ と いう 。 本 章 で 取 り 上 げ え て いな い文 献 は 、 読 者 諸 賢 ご自 身 で発 見 し て いた だ き た い。
[ 大槻 和夫]
1
﹃ 国 語 教育 学 の構 想 ﹄ ( 筑 摩 書 房 / 一九 五 一年 ) 西 尾 実
本 書 は 、 第 一篇 ﹁国 語 教 育 の 問 題 史 的 展 望 ﹂ ( 三 章 )、 第 二 篇 ﹁国 語 教 育 学 の構 想 ﹂ ( 九 章 )、 第 三 篇 ﹁国 語 教 育
学 構 想 の胚 胎 ﹂ (四 章 ) と 、 全 三 篇 十 六 章 か ら 構 成 さ れ て いる 。 本 書 の性 格 に つ いて 、 西 尾 実 は ﹁ま え が き ﹂ の 中 で 、 つぎ の よ う に説 い て い る 。
これ ま で の国 語 教 育 に 関 す る 考 察 のう ち か ら 、 せ め て、 国 語 教 育 学 樹 立 の方 向 を 示 唆 す るよ う な 諸 篇 を と
り ま と め て み よ う と し た の が 、 こ の書 で あ る 。 中 でも 第 二 篇 ﹁国 語 教 育 学 の構 想 ﹂ の各 篇 は 、 国語 教 育 が 国
語 教 育 独 自 の基 礎 事 実 か ら 出 発 し な く て は な ら ぬ と いう 、 そ の基 礎 事 実 の発 見− わ たく し と し て は− か ら 国
語 教 育 の領 域 や 方 法 を 展 開 し て いる 点 に お い て、 そ れ は、 国 語 教 育 学 の見 通 し であ る 。 そ の点 に お い て 、 国 語 教 育 樹 立 に 対 す る 、 一国 語 教 育 実 践 者 の、 問 題 提 起 に は な り 得 る で あ ろう 。
本 書 の評 価 に は 、 二 つ の立 場 が あ る 。 一つは 国 語 教 育 全 体 の中 で。 今 一つは 西 尾 実 国 語 教 育 論 の中 で 。 以 下 、 そ れ ぞ れ に つ い て先 行 研 究 の達 成 を 記 述 し て いく 。
最 初 に 、 国 語 教 育 全 体 の中 で の 本 書 の 評 価 を 取 り 上 げ る 。 ﹁本 書 (西 尾 実 ﹃国 語 教 育 学 の 構 想 ﹄−引 用 者 注 )
﹃ 国 語 教 育 学 史 ﹄ 共 文 堂 / 昭 和 四九 年 九 月 、 六 九 頁 ) に 、 学 史 研 究 の達 成 が あ る 。
は 、 戦 前 ・戦 後 を 結 ぶ 国 語 教 育 研 究 の上 に 、 国 語 教 育 学 の構 想 を 提 示 し 、 戦 後 の国 語 教 育 学 研 究 の出 発 点 の 一つ を なした のである﹂ ( 野地潤家
本 書 評 価 の批 判 のう ち 、主 な も のを 以 下 に掲 げ る 。
○ 現 場 は 国 語 教育 の方 法 と か 技 術 と か いう も のを 要 請 し て い る ので あ って 、 学 を 要 請 し て いる の では な いと 思
う の です ( 時 枝 誠 記 ﹁国 語 教 育 科 学 の要 請 (座 談 会 )﹂ ﹃ 国語教育 科学講座 一 国語 教育科学論 ﹄明治 図書/ 昭 和 三 三 年 五 月 、 三 三 頁 )。
○ ﹁国 語 教 育 学 ﹂ で な く て ﹁国 語 科 教 育 学 ﹂ でな け れ ば な ら な い。 (略 ) そ の第 一は ﹁国 語 教 育 ﹂ と ﹁国 語 科 教
育 ﹂ と は ち がう と いう こ と 、 わ れ わ れ の 興 味 ・関 心 は 、 こ の 国 語 科 と し て 実 施 さ れ て い る教 育 の充 実 と 改 善
で あ る と いう こ と であ る ( 輿 水 実 ﹁国 語 科 教 育 学 の建 設 ﹂ ﹃国 語 科 教 育 学 研 究 第 一集 ﹄ 明 治 図 書 / 昭 和 五 〇年一一 月 、 二 一頁 )。
○ 西 尾 実 の史 的 区 分 は 研 究 の内 容 と 方 法 の上 に 問 題 が あ る (例 ・秋 保 光 吉 ﹁西 尾 実 氏 の 国 語 教 育 史 に お け る 時 期 区 分 に つ い て﹂ ﹃山 形 大 学 紀 要 (教 育 科 学 )﹄ 昭 和 二 八 年 )。 つぎ に 、 西 尾 実 国 語 教 育 論 に お け る評 価 を 取 り 上 げ る 。
本 書 の成 立 論 は、 石 井 庄 司 ﹁﹃ 国 語 教 育 学 の構 想 ﹄ 解 説 ﹂ (﹃ 西 尾実国 語教育全 集 第 四巻﹄ 教育出 版/ 昭和五
〇 年 )、安 良 岡 康 作 ﹃西 尾 実 の生 涯 と 学 問 ﹄ ( 三 元社 / 二 〇 〇 二年 ) が詳 し い。 西 尾 実 国 語 教 育 論 に お け る 本 書
の位 置 と 意 義 に つ いて は 、 ﹁本 書 に よ つ て初 め て提 起 さ れ て い ると こ ろ が 少 い のは 残 念 であ る が 、 し か し 、 著 者
のた ゆ まざ る実 践 を 通 し て の所 論 と いう 立 場 か ら 見 る と き に は 、 個 々に 発 表 さ れ て いた 論 文 が 、 全 体 と し て の位
[ 杉
哲]
置 づ け を さ れ て い て、 改 め て問 題 を 発 見 で き る 利 点 が あ る﹂ (鳥 山 榛 名 ﹁書 評 西 尾 実 氏 著 国 語 教 育 学 の 構 想 ﹂ ﹃国 語 と 国 文 学 ﹄ 昭 和 二 六 年 一二月 号 、 五 七 頁 ) と 集 約 でき る 。
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﹃ 改 稿 国 語 教 育 の方 法 ﹄ ( 有 精 堂 / 一九 六 二年 ) 時 枝 誠 記
時 枝 誠 記 (一九 〇 〇 ∼ 一九 六 二) は 、 昭 和 戦 後 期 (昭 和 四 〇年 頃 ま で) の国 語 教 育 界 に そ の本 質 ・あ り 方 を 求
め て、 警 鐘 を 鳴 ら し 続 け た 。 西 尾 実 と の間 で行 わ れ た 西 尾 ・時 枝 論 争 (﹁言 語 教 育 か文 学 教 育 か ﹂ な ど ) は 、 そ の代 表 的 な も の で あ る。
本 書 は 、 言 語 学 者 ・国 語 学 者 であ る 時 枝 誠 記 が 、 基 本 的 に は 、 氏 の言 語 観 であ る 言 語 過 程 説 を 国 語 教 育 に援 用
し よう と し た も の であ り 、 同 時 に氏 の国 語 教 育 に対 す る 思 想 が凝 縮 し て 示 さ れ たも の でも あ る 。 な お 、 書 名 に あ
る ﹁ 改 稿 ﹂ と いう のは 、 先 に ﹃国 語 教 育 の方 法 ﹄ ( 習 文 社 / 一九 五 四年 ) が あ り 、 そ の ﹁全 面 改 稿 ﹂ と し て の 改
訂 版 で あ る こと を 指 し て いる 。 時 枝 には 、 本 書 以 降 に 、 国 語 教 育 の著 書 は な い。 そ の意 味 で も 、 本 書 は 、 時 枝 の 国 語 教 育 の体 系 ・全 容 を 知 る 上 で 、 そ の エキ スを 知 る こ と が で き るも ので あ る 。 本 書 の目 次 は 、 以 下 のよ う に な って いる 。
第 一章 戦後 の国語教 育界 に対 する私 の立場 第 二章 国語学と国語 教育と の関係
(一 言 語 観 、 二 言 語 過 程 説 、 三 国 語 に対 す る 児 童 生 徒 の立 場 )
第 三 章 国語 教 育 の機 構 (一 教 師 、 二 児 童 生 徒 、 三 国 語 教 育 の内 容︱ 国 語︱ 、 四 教 室︱ 近 代 学 校 組 織 の特 色︱ ) 第 四 章 国 語 教 育 の内 容 と し て の国 語
第五章 国語 教育 の目標と教 科 の特質 (一 言語 経験 と言 語教育 、 二 言 語 の機 能 と国語 教育 の任務 、 三
国語教育 は訓練学科 であ る、四 国語 教育は言 語技術 の教育 であ る、五 国語教育 の目標は国 語 の伝統 の 保持 にある)
第六章 教育内 容 の分析と教 育 の方 法 (一 言語 形態 の分類︱ ﹁ 話 す﹂ ﹁ 聞く ﹂ ﹁ 書く ﹂﹁ 読 む﹂︱、 二 言 語
生活 の実態 、三 標準語 教育と 方言生活 、 四 経験 主義 の教育と基 礎学力 の問 題、 五 話 し方と聞 き方、 六 読 み方、七 作文 ( 綴 り方)、八 文 法) 第七章 国語教育 におけ る教科書 の意 義 第 八章 国語 教育 と人間形 成 第九章 国語 教育と国語 政策と の関係 第十 章 国語 教育 における古典教育 の意義
時 枝 の 国 語 教 育 を 理 解 す るた め に は 、 氏 の言 語 観 で あ る 言 語 過 程 説 を 理 解 し な け れ ば な ら な い。 と いう の も 、
氏 の国 語 教 育 観 は 、 そ のす べ て が 言 語 過 程 説 に 胚 胎 し て いる か ら で あ る 。 時 枝 は 、 言 語 を 過 程 であ る と と ら え 、
﹁伝 達 ﹂ を 最 大 の言 語 の課 題 と と ら え た 。 そ し て 、 そ の ﹁伝 達 ﹂ の成 立 を 国 語 教 育 に 求 め た の で あ る。 国 語 教 育
を 訓 練 学 科 ・技 術 学 科 ・方 法 学 科 と し て性 格 づ け 、 具 体 的 に は ﹁た ど り 読 み ﹂ な ど を 主 張 し た 。 人 間 形 成 に つ い
[ 吉 田裕 久 ]
て も 、 国語 科 の場 合 、 言 語 の表 現 ・理 解 行 為 そ のも のに 表 れ る と いう 考 え 方 を 採 った 。 本 書 は 、 戦 後 国 語 教 育 思 想 を 知 る上 で も 貴 重 な 文 献 と 言 え よ う 。
『国 語 教 育 の 理 論
,(麥
書
房/
一九 六 四年
)奥 田 靖 雄
国 分一 ・
太 郎 編
(二) 言 語 活 動 の教 育 (1) よ み方 指 導 (教 育 )/ (2) 文 学 教 育 / (3) つづ り 方 指 導
現 読 み の段 階 ﹂ と いう 、 文 学 作 品 の内 容 と 構 成 に 関 す る 論 を ま と め 、 ﹁情 緒 的 な 知 覚 の段 階 が 論 理 的 な 分 析 の段
の批 判 的 摂 取 か ら 、 ﹁Ⅰ 文 章 の知 覚 の段 階 ⋮ ⋮ 一次 よ み ( 範 読 ) と 二 次 よ み /Ⅱ 文 章 の理 解 の段 階 /Ⅲ 表
第 一部 は 、 ﹁文 学 作 品 の読 み 方 指 導 ﹂ で あ る 。 宮 崎 典 男 が 、 ﹁一読 主 義 ﹂ に 対 す る 疑 問 と ﹁通 読 ・精 読 ・味 読 ﹂
こ の序 章 は本 書 の基 本 的 な 立 場 を 明 確 に示 し てお り 、 本 論 は 三 部 構 成 で ま と め ら れ て い る。
( 教 育 )/ (4) は な し こと ば の教 育
(1) 文 字 ( 正 書 法 ) の指 導 / (2) 発 音 ・音 声 の指 導 / (3) 文 法 の指 導 / (4) 語 い論 の指 導
(一) 言 語 教 育= 系 統 的 に教 え る 日 本 語 教 育
構 造 に つ いて 、 次 の よう に 示 し て い る。
の こと で あ り 、 ﹁人 類 と 民族 の文 化 の宝 庫 と し て の 日本 語 ﹂ で あ ると 説 明 し て い る 。 さ ら に 、 国 語 教 育 の内 容 と
本 的 な 目 標 で あ る ﹂ と 、 教 育 科 学 研 究 会 の立 場 を 鮮 明 に 述 べ て い る 。 そ し て 、 す ぐ れ た 日 本 語 と は 、 ﹁標 準 語 ﹂
序 章 に お いて 国 分 一太 郎 は 、 ﹁子 ど も た ち を す ぐ れ た 日 本 語 の に な い手 に そ だ て あ げ る こと が 、 国 語 教 育 の 基
本書 は、教育科学 研究会 ( 教 科 研 ) 国 語 部 会 内 の指 導 的 論 文 を 集 め た も の であ る 。
3
階 に先 行 す る の は 、 理 論 的 な 分 析 が 情 緒 的 な 知 覚 を 土 台 にし て 進 行 す る か ら であ る ﹂ と 、 述 べ て い る 。 さ ら に 、
奥 田靖 雄 の ﹁文 学 作 品 の内 容 に つ いて ﹂ と ﹁文 学 作 品 の構 造 に つ い て﹂ が 収 め ら れ て いる 。
第 二 部 は 、 ﹁読 み方 指 導 に お け る 単 語 指 導 ﹂ であ る 。 若 月 又 次 郎 ・宮 島 達 夫 ・奥 田 靖 雄 ら が 、 ﹁日 本 語 の法 則 と
き ま り と を 体 系 的 に 子 ど も に 教 え る こと が 、 子 ど も の 言 語 発 達 に き わ め て 重 要 な 意 味 を も って いる ﹂ と し て、 機
能 主 義 的 な 扱 いに 反 対 し て 、 体 系 的 に 教 え る 立 場 で の 単 語 指 導 を 主 張 し て いる 。 こ こ では 、第 一部 で 示 さ れ た 読 み のそ れ ぞ れ の過 程 に単 語 指 導 が 具 体 的 に位 置 づ け ら れ て い る。
第 三 部 は 、 ﹁日 本 語 の諸 問 題 ﹂ で あ る 。 標 準 語 教 育 の た め の音 声 言 語 教 育 の内 容 に 関 す る ﹁音 声 教 育 の 問 題 点 ﹂
( 上 村 幸 雄 )、 語 形 法 を 否 定 し て 音 声 法 の指 導 原 則 を 示 し た ﹁小 学 校 一年 生 に お け る文 字 指 導 に つ い て﹂ ( 奥 田靖
雄 )、 ﹁文 法 教 育 の今 日 の段 階 ﹂ ( 鈴 木 重 幸 )、 ﹁語 い論 と そ の教 育 ﹂ ( 宮 島 達 夫 ) な ど の論 文 か ら な る 。
本 書 の前 年 に は 、 ﹃ 読 み方教育 の理論﹄ ( 国 土 社 ) が 出 版 さ れ て おり 、 こ の 二 冊 の刊 行 後 、 教 育 科 学 研 究 会 国 語
部 会 の活 動 は盛 ん にな った 。 一九 六 五 年 一二 月 に は ﹃ 続 国 語 教 育 の理 論 ﹄ ( 変 書 房 ) が 刊 行 さ れ た 。 国 分 一太 郎
[ 小 川雅子]
が 、 こ れ ら 三 冊 で ﹁わ た く し た ち の ﹃日 本 語 指 導 ﹄ に つ いて の観 点 は 、 お お か た 出 つく し た ﹂ と 述 べ て いる よ う
に 、 当 時 の学 習 指 導 要 領 の考 え 方 に対 し て、 教 育 科 学 研 究 会 独 自 の国 語 科 教 育 論 を 鮮 明 に し た 。
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﹃ 国 語 教 育 の基 礎 理論 ﹄ (一光 社 / 一九 七 五年 ) 児童 言 語 研究 会
児 童 言 語 研 究 会 が 、 創 立 二十 五 年 を 経 て そ れ ま で の成 果 を 集 約 した 文 献 であ る 。 具 体 的 に は 、 一九 六 七 年 以 降
の夏季 アカデミー ( 研 究 合 宿 ) に お い て 発 表 さ れ た 理 論 研 究 の成 果 を ま と め た も の であ る 。 十 七 編 の論 文 か ら な る 。 そ れ を 五 部 仕 立 て に 構 成 し て い る。 総 ペー ジ 数 三 〇 一頁 。
( 小 松 善 之 助 一九 六 七 年 )/ ○ 文
( 林 進治
( 教 育 ) 国 語 教 育 でど ん な 人 間 を 育 て るか (大 久 保 忠 利 一九 七 四 年 )/ ○ 国
以下、目次 と執筆者 、発表年 を示す。
第 一部 国 語 教 育 の 目標︱○
言 語 観 ・コト バ の は た ら き
語 教 育 の 一大 変 革 を ど う 遂 げ る か ( 大 久 保 忠 利 一九 七 二年 )/○ 全 面 発 達 を め ざ す 国 語 教 育 一九 七 三年 ) 第 二 部 言 語 観 ・文 章 観 ・読 み の理 論︱○
総 合 読 み にお け る ﹁文 学 の読 み﹂ ( 益 子 広 則 一九 六 八年 )/ ○ 文 学
章 観 ・読 み の 理 論 は ど のよ う に変 わ って き た か ( 林 進 治 一九 七 四 年 )/ ○ 読 み の学 習 過 程 を ど う み るか ( 林 進 治 一九 六 七 年 ) 第 三 部 文 学 的 作 品 の読 み の指 導︱○
( 菱 沼 太 郎 一九 六 九 年 )
( 大 久 保 忠 利 一九 七 〇 年 )/ ○ 教 材 研 究 を ど う 進 め る か (菱 沼 太 郎
的 作 品 の読 みを め ぐ って (菱 沼 太 郎 一九 七 三 年 )/ ○ 主 題 を ど う 考 え る か ( 菱 沼 太 郎 一九 七 〇年 )/ ○ 表 現 読 み の国 語 教 育 学 的 意 義
一九 六 七 年 )/ ○ 文 学 教 育 の た め の読 み方
第四部 説明的文章 の読 みの指導︱
○論理的 思考力と科 学的認識 の発達を めざ す説明 的文章 の読み ( 岩田
道雄 一九六 八年 ) / ○説明文 の読み における こと ば の論理 と認識 ( 小 松善之助 一九 六九年)/○説明 文
○新 し い文法 教育 ( 松山 市造 一九 六八年)/ ○文法教 育 の実 践プ ラ ン
教材 の分析視点 とそ のめ やす ( 小松善 之助 一九七〇年 ※原題− 説明文教材 の分析視点 ) 第五 部 文法 教育 の理論と指 導︱ ( 松山市造 一九 六九 年)
こ の構 成 か ら 、 同 研 究 会 の国 語 教 育 観 を と らえ る こと が でき る 。 第 二部 ﹁言 語 観 ・文 章 観 ・読 み の理 論 ﹂ が 立
てら れ てお り 、言 語 ( 同 研 究 会 で は ﹁コト バ﹂と 表 記 す る こ と が 多 い)と 社 会 と の関 係 、言 語 と 思考 ・認 識 と の関 係
( 同 研 究 会 の表 記 で は ﹁語 イ ﹂) や文 法 に 関 す る 教 育 観
な ど 、 主 に ソビ エト の理 論 を 基 盤 と し た 論 究 を 試 み て いる 。 こ れ は 、 言 語 発 達 観 ま で 及 ん で お り 、 同 研 究 会 が 主 導 す る 一読 総 合 法 の 理論 的基 礎 を 形 成 し て いる 。 ま た 語 彙
も 明 快 であ り 、 同 研 究 会 の長 期 的 な 取 り 組 み を 反 映 し て いる 。 基 本 と な って い るも のは 、 第 二 信 号 系 理 論 や ﹁コ
ト バ の網 ﹂ 理論 な ど の 認 識 理 論 で あ り 、 国語 教 育 を 通 し て認 識力 を 高 め る こ と を 最 大 の目 標 と 考 え て いる 。 こ れ
ら は 、 いわ ゆ る 三 読 法 と の対 立 関係 にお いて 、 十 分 な 理 論 的 な 立 論 を 行 って き た 軌 跡 を 示 す も のと 考 え て よ い。
別 の 視 点 か ら 、 こ の構 成 を 見 る と 、 言 語 表 現 に 関 す る 論 及 が な い こと が 認 め ら れ る 。 論 述 に お い て ﹁表 現 読
み ﹂ に 触 れ て いる と こ ろ は あ る が 、 文 章 表 現 に 関 す る 項 目 が 少 な いな ど 、 総 じ て ﹁表 現 ﹂ の比 重 は 小 さ い。
全 体 的 に ﹁基 礎 理 論 ﹂ と し て妥 当 な 論 述 と 、 主 張 に 重 き を 置 いた 論 述 と が 混 交 し てお り 、 書 名 ど お り の役 割 を
[ 植山俊 宏]
果 た し て いる と は い いか ね る が 、 一つの 教 育 運 動 の基 礎 理 論 書 と し て 一定 の機 能 お よ び 価 値 を 有 し て い ると 考 え られる。
﹃ 国 語 教 育 の 理論 と構 造 ﹄ ( 学 習 研 究 社 / 一九 七 九年 )倉 澤 栄 吉 ・田 近 洵 一・湊 吉 正編
(1) 近 代 国 語 教 育 に お け る 明 治 ( 古 田東 朔 )
第Ⅴ 章 は ﹁国 語 教 育 の遺 産 ﹂ と し て、 次 の七 つの 題 目 に つ い てほ り 下 げ ら れ て いる 。 執 筆 者 名 と と も に示 す 。
に求 め ら れ る 国 語 教 育 研 究 ・実 践 上 の課 題 に つ い て論 及 し た も の であ る 。
いる 。 学 力 問 題 、 単 元 学 習 、 言 語 環 境 、 国 語 科 の 評価 、 国 語 問 題 に つ い て言 及 し て い る。 こ の時 点 に お い て 切 実
第Ⅳ 章 は ﹁国 語 教 育 の課 題 ﹂ と 題 し て 、 大 槻 和 夫 ・渋 谷 孝 ・桑 原 隆 ・田近 洵 一 ・森 島 久 雄 の 五 氏 が 執 筆 し て
て も 、 第Ⅱ 章 と 相 補 う も の にな って いる 。
育 に お け る 生 涯 教 育 論 、 国 語 国 文 学 と 国 語 教 育 に つ い て の見 解 を 披瀝 し て い る 。執 筆 陣 か ら 見 ても 、 題 目 か ら 見
西廸 夫 と いう 国 語 教 育 現 場 で活 躍 し てき た 五 氏 が 、 国 語 学 習 者 論 、 国 語 教 師 論 、 国 語 教 室 ・国 語 授 業 論 、 国 語 教
そ れ に 対 し て 、 第Ⅲ 章 ﹁国 語 教 育 の実 践 理 論 そ の 二 ﹂ は 、 中 島 国 太 郎 ・桜 本 喜 徳 ・野 田 弘 ・近 藤 国 一 ・安
いう 領 域 ご と の各 論 を 展 開 し て いる 。 お お む ね 国 語 教 育 研 究 者 と し て中 正 を 失 し な い立 論 が 繰 り 広 げ ら れ る。
の六 氏 が 担 当 し 、 話 し こ と ば 教 育 論 、 読 解 ・読 書 指 導 論 、 作 文 教 育 論 、 文 学 教 育 論 、 古 典 教 育 論 、 言 語 指 導 論 と
第Ⅱ 章 ﹁国 語 教 育 の 実 践 理 論 そ の 一﹂ は 、 近 藤 頼 道 ・森 本 正 一 ・中 西 一弘 ・田 近 洵 一 ・浮 橋 康 彦 ・湊 吉 正
想 ・構 造 ・方 法 ・教 材 に つ いて 基 底 と な る考 察 が 試 み ら れ て いる 。
第Ⅰ 章 ﹁国 語 教 育 の 構 想 ﹂ に は、 倉 澤 栄 吉 ・湊 吉 正 ・田 近 洵 一 ・浜 本 純 逸 の 四 氏 が か か わ り 、 国 語 教 育 の 思
一九 七 〇年 代 にお け る 国 語 教 育 研 究 の結 実 を 示 す 好 著 であ る 。
5
( 石井庄 司)
( 2 ) 国 語 教 育 と 大 正 デ モ ク ラ シ ー (井 上 敏 夫 ) (3) 垣 内 学 説 の展 開 と 影 響 ( 4 ) 解 釈 学 の受 容 と 展 開− 石 山 学 説 を 中 心 に− (5) 西 尾 理 論 の成 立 と 発 展 ( 野地 潤家)
( 長谷 川孝士)
(6) 言 語 過 程 説 に 基 づ く 言 語 教 育 観 の展 開 (増 淵 恒 吉 )
( 1 )・( 2 ) に は 、 近 代 国 語 教 育 研 究 の素 地 を な し た 明 治 ・大 正 時 代 の国 語 科 教 育 の進 展 が 明 ら か に さ れ
(7) 生 活 綴 方 理 論 の成 立 と 発 展 (滑 川 道 夫 ) 上記
て いる 。 ( 3 ) に は 、 最 初 に し て 最 大 の国 語 教 育 学 者 と し てそ び え 立 つ垣 内 学 説 の大 正 期 以 降 の展 開 が 掲 げ ら れ
る。 ( 4 ) に は 、 昭 和 一〇 年 前 後 に垣 内 学 説 を 解 釈 学 の立 場 か ら 通 読 ・精 読 ・味 読 の 三 読 法 の形 で普 及 さ せ た 石
山 学 説 が 取 り 上 げ ら れ て いる 。 (5 ) の 西 尾 実 氏 は 、 昭 和 四 年 の ﹃国 語 国 文 の 教 育 ﹄ に お い て作 品 研 究 の体 系
(素 読− 解 釈 ︿主 題 ・構 想 ・叙 述 ﹀−批 評 ) を 示 し 、 垣内 学 説 を ど のよ う に受 け と め れ ば よ いか と いう 範 を 示 し た
ば か り か 、 国 文 学 研 究 の基 盤 に言 語 生 活 があ る こと を 発 見 し 、 戦 後 国 語 教 育 実 践 と 研 究 の大 道 を 切 り 拓 いた 。 こ
れ ら の数 十 年 に 及 ぶ深 化 の過 程 が 明 ら か に さ れ て いる 。 ( 6 ) に は 、 戦 後 西 尾 実 氏 と 異 な り 、 言 語 と 文 学 を 一元
的 に と らえ た 時 枝 理 論 が 取 り 上 げ ら れ る 。 ( 7 ) に は 、 作 文 教 育 の面 か ら 、 昭 和 期 に な って 興 隆 し 、 戦 後 も 復 活
し た 生 活 綴 り 方 理 論 が 、 対 象 に据 え ら れ て いる 。 戦 後 国 語 教 育 史 研 究 の成 果 が 集 成 さ れ て いる 。
第Ⅵ 章 は ﹁国 語 教 育 の未 来 を 展 望 す る﹂ と 題 す る編 者 三 人 の鼎 談 で 、第Ⅰ ∼ 第Ⅳ 章 の国 語 教 育 の基 礎 理 論 ・実
践 理 論 と 第Ⅴ 章 の国 語 教 育 史 と を つな いで 、 国 語 教 育 研 究 と 実 践 の将 来 を 探 る も のと な って いる 。 [ 前田真 証]
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﹃ 国語 教 育 の再 生 と 創 造 ﹄ ( 教育 出版 / 一九 九 六年 ) 田 近 洵 一編
本 書 は 、 ﹁21 世 紀 へ発 信 す る 17 の提 言 ﹂ と 副 題 が 添 え ら れ て い る よ う に 、 二 十 一世 紀 の 国 語 教 育 は いか に あ る べき か を 問 い直 す べく 、 課 題 別 ・テ ー マ別 に 編 ま れ た 論 集 であ る 。 構 成 は 、 次 に 示 す と おり であ る。
Ⅰ 章 国語教 育理論 の確 立 のた めに
国語学力論 の地平を ひらく︱ ︿ 自立と 共生﹀ の国語教育 の確立 のた めに︱ / ﹁ 国語﹂ 教育か、 ﹁日本 語﹂教
育 か/認知 科学 の二 つの流れと 国語科教育 研究 /異 文化理解 と国語 の教育/現代 文化と 国語教育︱ 芥川 の 童 話と マンガ の価値を めぐ って− Ⅱ 章 国語教育 領域論
音 声言語教 育研究︱音 読 ・朗読 教育 の現在 ・過去 ・未来︱ /文章表現 教育 の向 かう道 /文 学教育論 の再検
討 のため に︱正解到達 主義 とそ の批判を めぐ っての覚 書︱ /読 者論 による ﹁ 読む こと﹂ の教育 の枠 組み/
﹁ 話者 論﹂ のひら く詩 の教室 /言 語 の論 理教育︱ 説明 的文章 学習 によ る論 理的 認識力育成 の実 質︱ /国語 科 学習基本 語彙と語彙指導 Ⅲ 章 国語学 習指導論
国 語単元学 習論︱言語 生活から の構想︱ /国語教科書 論/国 語科 の授業 研究をどう 進 めるか︱新 し い授業
研究 の方法− /国語 教材論− ジ ェンダーと国語教材− /学習観 と学習者 研究− 国語学習者論−
こ こ に は 、 従 来 、 自 明 の こと と さ れ 意 識 化 さ れ な い で いた ︿ 課 題 ・テ ー マ﹀、 あ る いは 現 代 社 会 の変 化 に伴 っ て 生 じ た ︿課 題 ・テ ー マ﹀ が 取 り 上 げ ら れ て い る 。
Ⅰ 章 で は 、 自 立 と 共 生 、 ﹁日本 語 ﹂ 教 育 、 認 知 科 学 、 異 文 化 理 解 、 ジ ェ ンダ ー 、 学 習 観 な ど の最 近 の文 化 論 や
国 語 教 育 関 連 諸 科 学 の成 果 を 視 座 と し て 、 ど の よ う に 国 語 教 育 に組 み 入 れ る か に つ いて 、 問 題 の所 在 を 明 ら か に
し つ つ、 見 通 し を 得 よ う と し て いる 。Ⅱ 章 では 、 国 語 科 教 育 の 領 域 別 指 導 群 に か か わ る 、音 声 言 語 、 文 章 表 現 、
文 学 教 育 、 説 明 的 文 章 学 習 、 読 者 論 、 話 者 論 、 学 習 基 本 語 彙 等 の ︿課 題 ・テ ー マ﹀ が 、 そ れ ま で の研 究 の 成 果 に
も と づ い て考 察 が 加 え ら れ て いる 。Ⅲ章 で は 、 日 々 の 国 語 科 授 業 に か か わ って の ︿課 題 ・テ ー マ﹀ であ る 、 ﹁授
業 構 想 ﹂、 ﹁教 科 書 ﹂、 ﹁授 業 研 究 ﹂ 等 が 取 り 上 げ ら れ 、 そ れ ぞ れ 要 領 を 得 た 方 向 づ け が な さ れ て い る。
各 論 考 に は 資 料 や 付 記 、 ︻注 ︼、 ︻引 用 文 献 ︼、 ︻参 考 文 献 ︼ 等 が お し ま い に添 え ら れ て いる こと に 表 れ て い る よ
う に 、 先 行 研 究 を ふま え 、 歴 史 的 展 望 のも と に 、 現 在 の国 語 教 育 の直 面 す る ︿ 課 題 ・テ ー マ﹀ 群 への見 通 し を 得 よう と し て いる 。
本 書 にあ る ︿キ ー ワ ー ド ﹀ 群 と 読 者 の 問 題 意 識 と し て の ︿キ ー ワ ー ド ﹀ 群 を ど のよ う に 結 び つけ 、 み ず か ら の
国 語 教 育 研 究 のキ ー コ ンセ プ ト と し て いく か 、 そ の よう な ︿志向 的 読 み ﹀ を 読 者 は 試 み る こ と も で き よ う 。 十 七
[ 堀 泰 樹 ]
の各 提 言 が 、 ど の よう な 探 究 ・成 果 のも と に な さ れ て い る の か 、 そ の内 実 に つ い て迫 る た め に、 本 書 は そ のよ き ガイ ダ ン ス の役 を 果 た す であ ろう 。
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﹃ ﹁国 語 ﹂ と いう思 想︱
近 代 日本 の言 語 認 識︱
﹄( 岩 波 書 店 / 一九 九 六年 ) イ ・ヨン スク
本 書 は、 社 会 言 語 学 の立 場 か ら 近 代 日本 に お け る ﹁国 語 ﹂ 概 念 の成 立 過 程 を 辿 り 、 ﹁﹃ 国 語﹄ と いう 思 想 ﹂ を 解
き 明 か し た 書 であ る 。 ﹁国 語 政 策 ﹂ と 密 接 に 関 わ って き た 国 語 教 育 研 究 に 関 わ る根 幹 の思 想 を 問う 書 と し ても 位 置 づけら れる。
﹃国 語 ﹄ 以 前 の日 本 語
つぎ の よう な 構 成 か ら な る。
序章 第 一部 明 治 初 期 の ﹃国 語 問 題﹄
第 一章 国 字 問 題 のゆ く え /第 二章 言 文 一致 と ﹃国 語 ﹄/ 第 三章 ﹃国 語 ﹄ の創 成 第 二 部 上 田 万 年 の言 語 思 想
第 四 章 初 期 の上 田 万 年 / 第 五 章 ﹃国 語 と 国 家 と ﹄/ 第 六章 ﹃国 語 学 ﹄ か ら ﹃ 国語 政策﹄ へ 第 三 部 国 語 学 と 言 語 学
第 七 章 忘 れ ら れ た 国 語 学 者 保 科 孝 一/ 第 八 章 国 語 学 史 を め ぐ って /第 九 章 国 語 の伝 統 と 革 新 第 四 部 保 科 孝 一と 言 語 政 策
第 一〇 章 標 準 語 の思 想 / 第 一 一章 朝 鮮 と ド イ ツ領 ポ ー ラ ンド / 第 一二章 ﹃同 化 ﹄と は な に か /第 一三 章 満 州 国 と ﹃国 家 語 ﹄/第 一四 章 ﹃ 共 栄 圏 語 ﹄ と 日 本 語 の ﹃国 際 化 ﹄
第 一部 の第 一章 お よ び 第 二 章 で は 、 後 に ﹁国 語 ﹂ の内 実 が 問 わ れ る と き 最 大 の課 題 と な る ﹁文 字 表 記 と 文 体 ﹂
を め ぐ る 諸 議 論 が 論 じ ら れ て いる 。 第 三 章 で は 、 日清 戦 争 を 頂 点 と す る 明 治 二 〇 年 代 の精 神 状 況 を 土 壌 に ﹁国
語 ﹂ 概 念 が 創 成 さ れ る 過 程 が 辿 ら れ る 。 第 二部 で は 、 近 代 日 本 に お け る ﹁国 語 ﹂ 理 念 の形 成 に お い て決 定 的 な 役
割 を 果 た し た 言 語 学 者 と し て 上 田 万 年 の思 想 が 論 じ ら れ て いる 。 上 田 に お いて は じ め て 古 典 と し て の ﹁国 文 ﹂
( 文 ) と ︿現在 性 ﹀ と し て の ﹁国 語 ﹂ ( 言 ) の境 界 が 明 確 に 意 識 さ れ 、 そ の ︿現 在 性 ﹀ と は 、 植 民 地 を 領 有 し た 明
治 国 家 の動 向 と 不 可 分 であ った と す る 。 さ ら に 上 田 の ﹁国 語 ﹂ 理 念 の完 成 と パ ラ レ ル に 、 ﹁教 育 さ れ る ﹃国 語 ﹄﹂
が く っき り と そ のす が た を 現 し て い った と 説 か れ て いる 。 第 三部 と 第 四 部 で は 、 上 田 の ﹁国 語 ﹂ の理 念 を 忠 実 に
継 承 発 展 さ せ つ つ、 ほ ぼ 五 十 年 に わ た って 日本 の ﹁国 語 政 策 ﹂ を 主 導 し た保 科 孝 一が と り あ げ ら れ て いる 。 保 科
は ﹁国 語 教 育 ﹂ のみ な らず 、 植 民 地 統 治 に お け る ﹁国語 政 策 ﹂ に も 深 く 関与 し て い った 。 そ の政 策 提 言 を 分 析 す
る過 程 で 、 伝 統 主 義 に立 つ山 田 孝 雄 の ﹁国 語 ﹂ の思 想 と 、 植 民 地 で の ﹁国 語 ﹂ 教 育 を 見 通 し て ﹁国 語 ﹂ の合 理 化
民 主 化 を 推 し 進 め よ う と し た 上 田 ・保 科 の ﹁国 語 ﹂ の思 想 の対 偶 関 係 が 鮮 や か に描 き 出 さ れ て いる 。
近 代 日 本 の言 語 意 識 が 一貫 し て 被 植 民 地 の側 の視 点 か ら 解 き 明 か さ れ 、 ﹁国 語 ﹂ 概 念 の成 立 に つ い て 、 文 か ら
言 へ の転 換 は じ め ﹁言 語 ﹂ の内 実 に 立 ち 入 った 分 析 と 、 政 治 的 社 会 的 文 脈 に 基 づ く 分 析 と が 有 機 的 統 一的 に行 わ
れ て いる 。 イ の 分 析 は ﹁国 語 科 ﹂ の 歴 史 的 成 立 事 情 の 検 討 に基 づ く も の で は な いと の指 摘 が あ る ( 小 笠原 拓
﹃近 代 日 本 に お け る ﹁国 語 科 ﹂ の成 立 過 程 ﹄ 学 文 社 / 二〇 〇 四 年 )。 今 後 の研 究 で 、 上 田 や 保 科 の ﹁国 語 ﹂ 理 念 が
国 語 教 育 に与 え た 影 響 に つ い て さ ら に 具 体 化 さ れ る必 要 が あ ろう 。 ﹁国 語 ﹂ の 思 想 が 、 ﹁﹃国 家 語 ﹄ と ﹃ 共 栄圏語﹄
[ 村 上呂 里 ]
の 思 想 ﹂ へと 変 豹 し た 意 味 を 問 う 上 で、 本 書 は 国 語 教 育 研 究 に 携 わ る者 が向 き 合 う べき 必 須 の書 であ る 。
﹃ ﹁逸 脱 ﹂ の 国 語教 育 ﹄ ( 東 洋 館 出 版 社 / 一九 九 五年 ) 牛 山 恵
虚 構 の視 点 ﹁仮 面 に よ り 変 身 す る﹂
Ⅳ 逸 脱 への ス ト ラ テジ ー︱ 虚 構 の視 点 か ら 現 実 を と ら え な お す︱
自 分 宣 言 ﹁自 分 の た め に自 分 を う た う ﹂
裏 文 化 への解 放 ﹁こ と ば の タ ブ ーを 破 る ﹂
Ⅲ 逸 脱 への エネ ルギ ー︱ 表 現 す る こ と で自 己 を 解 放 す る︱
現 実 か ら 虚 構 へ ﹁記 録 ﹃ト ラオ 物 語 ﹄﹂
Ⅱ 逸 脱 への原 点︱ 人 間 と し て の ﹁ 今 ﹂ を 生 き る︱
構 成 の 一部 ( 実 践 記 録 の部 分 ) を あ げ る 。
矛 盾 に悩 み な が ら ﹁子 ど も が生 き る﹂ こ と ば の 教育 実 践 を 模 索 す る 教 師 達 を 真 摯 に励 ま す 道 標 と な ろう 。
す る 教 育 ﹂ を 模 索 す る と こ ろ に 必 然 と し て ﹁逸 脱 ﹂ が 生 ま れ 、 新 た な 実 践 の地 平 が ひ ら か れ る 。 本 書 は 、 同 様 の
を 余 儀 な く さ せ た が 、 そ こ に生 ま れ る 矛 盾 の意 識 は 、 自 ら の実 践 を 見 つめ直 す ば ね と な った ﹂。 ﹁子 ど も を 主 体 と
も を 解 放 す る学 校 ﹄ で あ り 、 ﹃子 ど も が 生 き る 教 育 ﹄ であ った 。 そ の テ ー マは 、 私 自 身 に諸 々 の規 範 か ら の逸 脱
た 思 い は つぎ のよ う に 語 ら れ る 。 ﹁ 制 度 と し て の学 校 の教 壇 に立 った 私 の、 一人 の教 師 と し て の テ ー マは 、 ﹃ 子ど
本 書 は、 ﹁逸 脱 ﹂ を テ ー マと し て掲 げ 、 主 に 小 ・中 学 校 にお け る 著 者 自 身 の実 践 記 録 か ら な る 。 ﹁逸 脱 ﹂ に こ め
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ロ マン の回 復 ﹁夢 を 語 る ﹂ Ⅴ 逸 脱 か ら の自 己 確 立︱ 自 立 と 共 生 を 求 め て 問 題 を 追 求 す る︱ 人 間 と の出 会 い ﹁単 元 ﹃ 鬼 の 話﹄﹂ ( 小学 校三年生 ) ﹁単 元 ﹃ 現 代 の英 雄 ﹄﹂ (小 学 校 六 年 生 ) 歴 史 認 識 ﹁太 平 洋 戦 争 を 調 べ る 子 ど も た ち ﹂
( 子 ど も の 現 実 か ら )、︿ⅱ 指﹀ 導 計 画 、︿ⅲ 授﹀業 の実 際
異 文 化 理 解 ﹁民 族 差 別 の現 実 を 克 服 す る 試 み ﹂
いず れ の章 も 、︿ⅰ 単﹀元 構 想 の 原点
( 子 ど も の作 品 が多 く 紹
介 さ れ て いる )、︿ⅳ 授﹀業 の ふり か え り 、 が 具 体 的 に書 き 込 ま れ て いる 。 現 代 の 子 ど も が 抱 え 込 ん だ 闇 の エネ ルギ
こ の構 成 か ら 、 ﹁制 度 か ら の逸 脱=
ー を ﹁こと ば 遊 び ﹂、 ﹁う た ﹂、 ﹁仮 面 に よ る 変 身 ﹂ 等 の場 で解 放 さ せ な が ら 、 ﹁英 雄 ﹂、 ﹁歴 史 の 真 実 ﹂、 ﹁身 近 な 異 文 化 ﹂ 等 、 他 者 と 出 会 う 場 を つく り ﹁自 立 と 共 生 を 求 め る ﹂ 姿 勢 を 育 む︱
解 放 ﹂← ﹁ 自 立 と 共 生 へ向 け た自 己 確 立 ﹂ と いう 学 習 の道 筋 を 読 み と る こと が で き よ う 。 解 放 さ れ る こと の な い闇
は さ ら に 沈 潜 し 、 暴 発 す る し か な い。自 ら 作 成 し た ﹁仮 面 ﹂ に ﹁ま た 東 大 に 落 ち た の で自 殺 し ま し た ﹂ と 語 ら せ
る 子 ど も の闇 と 、 非 識 字 者 と し て生 き る 在 日 一世 の祖 母 に つ いて 綴 る 在 日韓 国 人 生 徒 のこ と ば の重 さ と が 、 出 会
[村 上 呂 里]
う こ と な く 切 り 裂 か れ て い る 状 況 を 、 何 と か し て切 り 結 び 、 ﹁共 生 ﹂ の世 界 を 求 め ん と し た 記 録 と し て意 義 深 い。
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﹃﹁ 生 き る 力 ﹂ を 発 揮 さ せ る 国語 教 育− 内 言 を 主 体 と し た 理 論 と 実践− ﹄ ( 牧 野 出 版 / 二〇 〇 一年 )小 川 雅 子
本 書 は 、 学 習 者 の言 語 生 活 の実 態 を 例 にと り な が ら 、 国 語 学 習 に お け る問 題 点 を ﹁ 内 言 ﹂ の 深 化 と いう 観 点 か ら解決 しようとす る試みを示 したも のである。
し て いく 自 己 教 育 を 成 立 さ せ る 国 語 教 育 ﹂ を 具 体 化 し た も の であ ると す る 。 確 か に、 本 書 で提 示 さ れ て いる 数 々
小 川 氏 は 本 書 を 、 西 尾 実 の考 え に 基 づ き な が ら 、 ﹁問 題 と 感 じ て い る こと を 言 語 生 活 創 造 の 要 因 と 考 え て 止 揚
の試 み は 、 学 習 者 の生 活 現 実 の問 題 点 か ら 出 発 し 、 自 ら に 問 いか け 、 教 師 と 対 話 し な が ら 、 そ の認 識 や思 考 の深
化 に 至 る ﹁学 び ﹂ のプ ロ セ スと な って いる 。 大 学 を も 含 め た 教 育 現 場 に お いて 、 日 常 的 に 遭 遇 す る 学 習 者 の つま
ず き や苦 悩 に 対 し て 、 いか に教 師 が 寄 り 添 い、 国 語 の学 び の中 に お い てそ の つま ず き や苦 悩 を 解 消 し う る のか と いう こと が 如 実 に記 さ れ て いる 。
本 書 の題 名 に も 示 さ れ て いる 、 ﹁生 き る 力 ﹂ と は 何 か と いう 問 題 は 、 氏 も 指 摘 す る よう に、 学 校 で の学 習 活 動
と 日 常 生 活 と の乖 離 が 問 題 視 さ れ て いる こ と であ る 。 両 者 を 効 果 的 に つな ぐ 学 習 方 法 や学 習 内 容 が そ れ ぞ れ の教
科 で追 求 さ れ て いる 中 で、 国 語 科 と し て そ の つな ぎ 目 を ど こ に 見 る の か と いう 問 題 は 、 非 常 に 重 要 な 問 題 で あ
る 。 こ の問 題 に 対 し て 、 氏 は 、 ﹁国 語 科 の学 習 が 個 人 の内 言 を 無 視 し て、 言 語 生 活 と 乖 離 し た 結 果 、 社 会 的 に 無
責 任 な 言 語 活 動 の能 力 を 強 化 し て き た ﹂ (四 三頁 ) と 指 摘 し 、 ﹁ 内 言 領 域﹂ の育 成 の重 要 性 を 提 唱 し て い る。
具 体 的 に は 、 第 二章 で は 、 ﹁内 言 領 域 に お け る 認 識 の機 能 ﹂ に 着 目 し 、 言 語 生 活 を 基 盤 に し た 目 標 意 識 を 持 つ
こ と で 、 学 習 目 標 と し て 学 習 者 の内 言 領 域 を 位 置 づ け る こ と の必 要 性 を 挙 げ て い る 。 ま た 、 第 三 章 で は 、 西 尾
実 の研 究 の歩 み に添 いな が ら 、 学 習 者 に古 典 作 品 の 不 易 性 に向 き 合 わ せ る こ と で 、自 己 の内 在 的 価 値 観 の変 革 に 迫 る 試 み を 提 示 し て いる 。
ま た 、 第 四 章 で は 、 学 習 者 の内 言 領 域 で の 言 語 活 動 を 捉 え る た め 、 ﹁教 師− 学 習 者 ﹂ の 関 係 に着 目 し 、 学 習 者
の 反 応 と 認 識 の レ ベ ル を 軸 に し た 洞 察 の視 点 を 提 示 し て い る。 教 師 が 、 学 習 者 の内 的 言 語 活 動 を ど う 捉 え る の か と いう 問 題 の解 決 策 が 提 示 さ れ て いる 。
こ れ に 対 し て 、 第 五 ・第 六 章 で は表 現 領 域 の指 導 に 関 す る提 案 が 、 第 七章 では 理解 領 域 の指 導 に関 す る 提 案 が
そ れ ぞ れ な さ れ て い る が 、 ど れ も 、 学 習 者 自 身 が 自 ら の言 語 生 活 を 基 盤 と し 、 主 体 的 に 学 ぶ こ と を 通 し て 自 ら の
内 な る ﹁内 言 領 域 ﹂ を よ り よ いも のに し て いく た め の方 策 が 掲 げ ら れ て いる と いえ る 。
国 語 の教 室 を 営 ん で いる と 、 ふ と ﹁表 面 的 な こ と ば の使 い手 と し て 学 習 者 を 育 て て いる の で は な いか ﹂、 と 疑
問 を 覚 え る こと が あ る。 氏 も 述 べ て いる よ う に 、 話 形 の指 導 に代 表 さ れ る ﹁型 ﹂ や技 術 の指 導 に 重 点 を 置 く 授 業
を 重 ね て いる と 、 ﹁巧 み な こ と ば の使 い手 ﹂ は 育 つか も し れ な いが 、 そ こ に全 く 心 が な か った と し た ら 、 我 々 は
[ 松 友 一雄 ]
何 の た め に こと ば を 使 う のか と いう こ と す ら 見 え な く な った 学 習 者 を 育 て て いる の か も し れ な い。 こう し た こと を 考 え る と き 、 じ っく り と 読 ん で み た い著 作 で あ る 。
第 二章 国 語科 教 育 課程 お よび方 法 の研究
こ と ば と 国 語 科 (位 置 と 構 造 )
こ と ば は 、 森 羅 万象 、 わ れ わ れ 人 間 を 取 り ま く す べ て のも の に大 き く か か わ って いる 。未 知 のも の でも 、 そ れ
が 何 で あ る か を 知 ろう と し 、 認 め よ う と す る と き に 、 ま ず は こと ば で知 り 、 認 め る こと にな る (認 知 ・認 識 )。
自 分 の 思 いを 相 手 に 伝 え 、 ま た 相 手 の気 持 ち を わ か ろう と す る と き に も 、 こ と ば で伝 え 、 こと ば で わ か ろう と す
る ( 伝 達 )。 ま た 、 何 か を 考 え 深 め よ う と す る と 、 こ と ば な く し て考 え 深 め る こと は 不 可 能 で あ る ( 思 考 )。 さ ら
に、 何 か 新 し いも の を 創 り 出 そ う と す る と 、 そ こ に は こ と ば が 必 要 に な って く る ( 創 造 )。 こ の よう に、 人 間 と
し て の諸 活 動 は 、 多 く の場 合 、 こと ば を 媒 介 に し て成 り 立 って いる 。 国 語 科 は 、 そ の人 間 存 在 、 人 間 の諸 活 動 そ のも のに 深 く か か わ って いる こと ば を 専 門 的 に 扱 う 唯 一の教 科 であ る 。
言 語 活 動︱
言 語事 項︱
文 学 ・評 論 ・哲 学 な ど の享 受 ・鑑 賞 ・批 評
聞 く ・話 す ・読 む ・書 く 行 為 (活 動 )
音 声 ・音 韻 、 文 字 、 語 句 ・語 彙 、 文 法 、 言 語 生 活 に 関 す る知 識
そ の国 語 科 の基 本 構 造 は 、 お よ そ次 の三 領 域 で と ら え ら れ てき た 。
言 語 文 化︱
︹ 言 語 事 項 ︺ は 、 こ と ば の学 習 の基 礎 を な す も の であ り 、 こ と ば に 関 す る知 識 の 習 得 が そ の中 心 的 な 内 容 と な
る 。 話 し こ と ば の基 礎 と し て の音 声 ・音 韻 、 文 字 こ と ば の基 礎 と し て の仮 名 (ひ ら が な ・カ タ カ ナ)・漢 字 ・ロ
ー マ字 、 理解 ・表 現 の基 礎 と な る 語 句 ・語 彙 、 論 理的 思 考 の基 礎 と し て の文 法 、 そ し て言 語 生 活 の基 礎 と し て の
方 言 ・共 通 語 ・待 遇 表 現 な ど であ る 。
︹言 語 活 動 ︺ は 、 こ と ば の学 習 の 基 本 と な るも の であ り 、 こ と ば の行 為 、 活 動 ・経 験 ・実 践 を 通 し て こ と ば の
( 物
技 能 を 習 得 す る こと が そ の中 心 的 な 内 容 と な る 。 話 し こ と ば と し て の聞 く ・話 す 、文 字 こと ば と し て の読 む ・書
く 活 動 が あ る 。 そ し て いず れ も そ の基 盤 に は 、 こと ば で考 え る と いう こ と が あ る。
︹言 語 文 化 ︺ は 、 こ と ば の学 習 の発 展 を 成 す も の で あ り 、 こ と ば に よ って 創 造 さ れ た 文 化 と し て の文 学
語 ・小 説 ・詩 な ど )・評 論 ・哲 学 な ど を 享 受 ・鑑 賞 ・批 評 す る こと に よ って 、 人 間形 成 に 培 お う と す るも の で あ る。
こ う し た こ と ば の学 習 を 体 系 的 ・系 統 的 に、 し か も 目 的 的 ・意 図 的 ・計 画 的 に 責 任 を 持 って実 施 し 、 そ の実 を
あ げ る の が 国 語 科 固 有 の責 務 であ る 。 と と も に、 そ の こ と が ほ か な ら ぬ 国 語 科 存 立 の基 盤 で あ り 、 根 拠 でも あ る。
国語科 の教育課 程
( 試 案 )﹄ が 出 さ れ て以 来 、 こ れ ま で 小 学 校 の 場 合 、 ほ ぼ 十 年 お き に 、 一九 五 一年
(試 案 )、
国 語 科 の教 育 課 程 と し て は 、 こ れま で国 語 科 学 習 指 導 要 領 が 、 そ れ を 示 し て き た 。 一九 四 七 年 に 最 初 の ﹃学 習 指導 要領 国語 科編
一九 五 八 年 (告 示 、 以 下 同 じ )、 一九 六 八年 、 一九 七 七 年 、 一九 入 九 年 、 一九 九 八 年 と 六 度 改 訂 さ れ て、 今 日 に
及 ん で いる 。 そ の内 容 と し て は 、 お よ そ 右 に示 し た 言 語 事 項 を 基 礎 と し 、 言 語 活 動 を 基 本 と し、 そ こ に言 語 文 化
も 含 み 込 む 構 造 を 呈 し てき た 。 そ し て 、 二 〇 〇 六 年 度 中 に も 、 最 新 の学 習 指 導 要 領 が 提 示 さ れ る 方 向 で検 討 が 進
ん で いる 。 中 ・高 等 学 校 の場 合 も 、 ほ ぼ こ れ に 準 じ て いる 。 た だ 、 高 等 学 校 の場 合 、 内 容 は 小 ・中 学 校 と 異 な っ
て科 目 で 示 さ れ 、 現 代 国 語 ・古 典 、 国 語Ⅰ ・国 語Ⅱ ・現代 語 ・国 語 表 現 ・現 代 文 ・古 典 講 読 、 国 語 総 合 な ど で編
成 さ れ た 。 が 、 そ の構 造 と し ては お よ そ 言 語 事 項 を 基 礎 と し 、 言 語 活 動 を 基 本 と し 、 言 語 文 化 を そ こ に含 み 込 む 三 層 構 造 を 呈 し て き た と 言 ってよ い。
む ろ ん こ の間 、 コ ア カ リ キ ュラ ム 、 ク ロ ス カ リ キ ュラ ム な ど 、 教 育 レ ベ ル で の大 き な 動 き が あ った り 、 国 語 科
内 部 でも 教 育 課 程 の自 主 編 成 運 動 や 国 語 科 を 算 数 科 と 統 合 し て記 号 科 を 立 ち あ げ よ う と す る思 い切 った案 な ど も
示 さ れ た り し てき た 。 さ ら に は 、 国 語 科 を 言 語 と 文 学 と に 分 け て、 そ れ ぞ れ 教 科 書 ( 言 語 編 ・文 学 編 ) が 発 行 さ
れ た り し た こと も あ る が 、 国 語 科 は、 戦 後 、 一貫 し て 一つ の教 科 と し て継 続 し てき て いる 。 最 近 では 、 シ ラ バ ス
の作 成 が 大 き な 話 題 と な って 、 年 間 指 導 計 画 作 成 の観 点 か ら 学 校 に 固 有 の教 育 課 程 が求 め ら れ る よ う に な ってき
て い る。 ま た 、 規 制 緩 和 の 一環 と し て 、 教 育 特 区 の出 現 、 小 中 連 携 な ど 、 多 様 な 教 育 状 況 が 出 現 し てき て 、 教 育 課 程 の編 成 も 多 様 に な り つ つあ る 。
国語科 の教育方法
国 語 科 の教 育 方 法 と し て は 、 聞 く ・話 す ・読 む ・書 く 、 そ れ ぞ れ の 領 域 で 精 力 的 に 、 多 様 に 開 拓 さ れ て き た 。
そ れ ら の個 々 に つ いて は 、 第 三章 以 下 の章 でそ れ ぞ れ 項 目 を 立 て て詳 し く 見 る こ と にす る 。 本 章 で は 、 そう し た
個 別 の領 域 と し て で は な く 、 聞 く ・話 す ・読 む ・書 く 活 動 を 全 体 的 に 、 総 合 的 に 、 必 然 的 に 、 いわ ゆ る ﹁実 の
場 ﹂ で展 開 す る中 で 、 こと ば の力 を 有 機 的 ・効 果 的 に 高 め 、定 着 さ せ る 方 法 と し て開 拓 ・実 施 さ れ てき た 単 元 学
習 を 特 に取 り あ げ て み た 。 単 元 学 習 は 、 戦 後 生 み 出 さ れ た 、 国 語 科 に お け る 一つ の有 意 な 教 育 方 法 で あ る 。 一貫
し てそ の方 法 を 貫 い た のは 、 研 究 者 と し て の倉 澤 栄 吉 で あ り 、 実 践 家 と し て の大 村 は ま で あ った 。 単 元 学 習 は 、
学 力 低 下論 と 表 裏 を 成 す よ う に 浮 き 沈 み を 繰 り 返 し 、 一九 五 〇 年 代 の 興 隆 期 、 一九 六 〇年 代 ∼ 一九 七 〇 年 代 の沈
﹃こ と ば の学 び 手 を 育 て る 国 語 単 元 学 習 の新 展 開 ﹄
静 期 、 一九 八 ○代 か ら の復 興期 な ど に 大 き く 時 期 区 分 でき る 。 そ の復 興 期 の中 で登 場 し た のが 、 桑 原 隆 ﹃ホ ー ル .ラ ンゲ ー ジ ﹄ (一九 九 二年 ) であ り 、 日 本 国 語 教 育 学 会
全 七 巻 (一九 九 二年 ) で あ った 。 一九 五 〇年 代 の そ れ と 区 別 し て、 ﹁新 単 元 学 習 ﹂ と 呼 ば れ た 。 な お 、 こ の波 は 、
[ 吉 田裕 久 ]
一時 期 、高 等 学 校 にま で 及 び 、 ﹁国 語Ⅰ ﹂ の出 現 (一九 八 二年 ) と 時 期 を ほ ぼ 同 じ く し て 主 題 単 元 学 習 が 提 唱 さ れたりした 。
﹃ 学習指導要領﹄ ( 昭 和二二 年 ∼ 平成 一〇年 ) 文 部 省
(一九 五 一) 改 訂 版 中 学 校 高
(一九 五 一) 改 訂 版 小 学 校 学 習 指 導 要 領 国
年 か ら は 文 部 省 に よ る ﹁告 示 ﹂ と な った 。 これ に よ り 一定 の拘 束 力 を も つも のと し て受 け と め ら れ る よ う に な っ
そ の後 、 昭 和 三 〇年 一二月 二 六 日 に高 等 学 校 の み の改 訂 が お こ な わ れ て ﹁試 案 ﹂ の文 字 が 削 除 さ れ 、 昭 和 三 三
った 。
さ れ 、 単 元 的 な 指 導 展 開 例 が 示 さ れ た こと は 、 教 育 課 程 の自 主 開 発 と 単 元 学 習 実 践 に 寄 与 し よ う と す る も の で あ
語科 編 ( 試 案 )﹄ が 、 そ れ ぞ れ 発 行 さ れ た 。 前 者 で は ﹁主 要 な 言 語 経 験 の 一覧 表 ﹂、 後 者 で は ﹁国 語 能 力 表 ﹂ が 示
等 学 校 学 習 指 導 要 領 国 語 科 編 (試 案 )﹄ が 、 一二 月 に ﹃昭 和 二 十 六 年
中 心 と す る言 語 活 動 の組 織 ﹂ を 示 し た 。 続 い て昭 和 二 六 年 一〇 月 に ﹃昭 和 二十 六 年
し 、 小 学 校 と 中 学 校 の指 導 上 の留 意 点 や発 達 段 階 の 一般 的 な 特 徴 が 述 べ ら れ た ほ か 、 ﹁ 参 考 一﹂ と し て、 ﹁単 元 を
る た め に、 そ の示 唆 を 与 え よ う と す る も の﹂ と 述 べ ら れ た 。 経 験 主 義 的 な 立 場 を と る こと を ﹁目 標 ﹂ で明 確 に 示
あ る 。 ﹃昭 和 二十 二年 度 ( 試 案 ) 学 習 指 導 要 領 国語 科 編 ﹄ の ﹁ま え が き ﹂ で は 、 ﹁実 際 の指 導 を でき る だ け 改 善 す
究 の基 本 的 な 資 料 と し て発 行 さ れ た 。 国 語 科 の ﹃ 学 習指 導 要 領 ﹄ が 最 初 に 発 行 さ れ た の は 、 昭 和 二 二年 一二月 で
﹃ 学 習 指 導 要 領 一般 編 ( 試 案 )﹄ ( 昭 和 二 二 年 ) は 、 地 域 や学 校 、 教 師 の主 体 的 な 教 育 課 程 開 発 や 学 習 指 導 法 研
示 す も の、 と いう 性 格 を も って いる 。
別 に 公 示 す る 小 学 校 学 習 指 導 要 領 に よ る も のと す る﹂ と あ る よ う に 、 ﹃学 習 指 導 要 領 ﹄ は ﹁教 育 課 程 の 基 準 ﹂ を
﹁学 校 教 育 法 施 行 規 則 ﹂ 第 二 十 五 条 に ﹁小 学 校 の教 育 課 程 に つ いて は ﹂ ﹁教 育 課 程 の基 準 と し て文 部 科 学 大 臣 が
10
た。
以 降 、 小 学 校 は 、 昭 和 三 三年 、 昭和 四 三年 、 昭 和 五 二年 、 平 成 元 年 、 平 成 一〇 年 に、 中 学 校 は 、 昭 和 三 三年 、
昭 和 四 四年 、 昭 和 五 二 年 、 平 成 元 年 、 平 成 一〇 年 に 、 改 訂 、 告 示 さ れ た 。 昭 和 三 三年 版 の ﹁言 語 生 活 の向 上 ﹂ か
ら 、 平 成 一〇 年 版 の ﹁伝 え 合 う 力 ﹂ ま で の ﹁目 標 ﹂ に 関 わ る キ ー ワー ド や 、 昭 和 三 三 年 版 の ﹁A 聞 く こ と 、 話
す こと 、 読 む こ と 、 書 く こ と ﹂ と B の いわ ゆ る ﹁こと ば に 関 す る 事 項 ﹂、 昭 和 五 二 年 版 の ︹言 語 事 項 ︺ ﹁A 表
現 ﹂・﹁B 理 解 ﹂、 平 成 一○ 年 版 の ﹁A 話 す こと ・聞 く こ と ﹂・﹁B 書 く こ と ﹂・﹁C 読 む こと ﹂ ︹言 語 事 項 ︺
な ど の よう な 領 域 区 分 、 学 年 別 漢 字 配 当 表 に 示 さ れ た ﹁教 育 漢 字 ﹂ の取 り 扱 いや 、 学 校 教 育 法 施 行 規 則 に示 さ れ
る 時 数 配 当 な ど が 、 特 色 や 変 遷 を 理 解 す る観 点 と な る 。 高 等 学 校 に お いて は 、 昭 和 三 五年 、 昭 和 四 五 年 、 昭 和 五
三 年 、 平 成 元 年 、 平 成 一 一年 に 、改 訂 、 告 示 さ れ た 。 昭 和 三 五 年 版 に お け る ﹁現 代 国 語 ﹂ の新 設 や 、 昭 和 五 三 年
( 平 成 一〇 年 ) な ど 、 科 目 の新 設 改 廃
版 に お け る ﹁国 語 Ⅰ﹂ の新 設 に よ る ﹁総 合 化 ﹂ な ど 、 科 目構 成 が 理 解 のた め の観 点 の ひ と つと な る 。 教 育 課 程 全 体 で は 、 ﹁道 徳 ﹂ の 特 設 (昭 和 三 三 年 ) や ﹁総 合 的 な 学 習 の 時 間 ﹂ の新 設 と 国 語 科 と の関 係 に つ い て の議 論 が 参 考 に な る 。
近 年 、 ﹁ゆと り 教 育 ﹂ と の 関 係 で 議 論 さ れ る こと の多 く な った ﹁学 力 低 下 ﹂ に関 わ って ﹃ 学 習指 導要 領﹄ は、
[ 河野智 文]
し ば し ば 注 目 さ れ る よ う に な り 、 そ の範 囲 を 越 え た ﹁発 展 的 な 学 習 ﹂ が 容 認 さ れ る に 至 るな ど 、 性 格 や 機 能 に は 大きな転換 が見ら れる。
﹃ 言 語 論 理 教育 への道− 国 語 科 にお け る 思 考− ﹄ ( 文化 開 発社 / 一九 七 七年 ) 井 上 尚 美
( 1 ) /Ⅵ 主 張 と 理 由 づ け の構 造 (2 ) /Ⅶ 発 問 の構
本 書 で論 じ ら れ て いる テ ー マは 、 刊 行 後 三 十 年 近 く が 経 過 し た 現 在 に お い ても 、 最 先 端 の 分 野 と 連 動 す る と こ
言 語 論 理 教 育 のプ ロ グ ラ ム / 終 章 国 語 教 育 に お け る ﹁観 ﹂ の問 題
造 /Ⅷ 国 語 教 育 にお け る ﹁思 考 ﹂ の位 置 づ け /Ⅸ 新 ・言 語 教 科 書 待 望 論 / X 日 本 語 と 文 法 ・論 理 /ⅩⅠ
味 論 ﹂ と 国 語 教 育 / V 主 張 と 理 由 づ け の構 造
Ⅰ 経 験 ・言 語 ・知 識 /Ⅱ 論 理 的 思 考 と 批 判 的 思 考 /Ⅲ ﹁批 判 的 思 考 力 テ スト ﹂ に つ い て /Ⅳ ﹁一般 意
本 書 の構 成 は次 のと お り で あ る 。
が 切 り 拓 いた 新 境 地 は そ の後 の研 究 に影 響 を 与 え た 。
ら れ る 。 そ れ ま で の国 語 科 教 育 学 で は 、 フ ィ ー ルド を 言 語 活 動 領 域 ご と に 限 定 し た 研究 が 多 か った だ け に 、 本 書
文 教 育 な ど を 包 含 し た 問 題 領 域 に おけ る 、 論 理 的 思 考 育 成 を 目 標 と し た オ ル タ ナ テ ィ ブ な 提 案 と し て意 義 が 認 め
い て 咀嚼 さ れ 、 ﹁言 語 論 理 教 育 ﹂ と いう 新 た な 体 系 のも と で 再 構 築 さ れ た 。 説 明 的 文 章 教 育 、 音 声 言 語 教 育 、 作
し た 解 明 が 行 わ れ た こ と に求 め ら れ よう 。 国 内 外 の言 語 関 連 諸 科 学 の成 果 が 広 く 渉 猟 さ れ 、 教 育 実 践 レ ベ ル にお
が 少 な く な か った 。 本 書 の貢 献 は 、 国 語科 教 育 に お け る ﹁思 考 ﹂ に つ い て、 具 体 的 な 授 業 実 践 と の関 連 を 前 提 と
﹁思 考 ﹂ は 、 国 語 科 教 育 学 に と って の中 核 的 分 野 で あ り な が ら 、 本 質 的 解 明 への着 手 に つ い て は未 だ し の 部 分
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ろ が 少 な く な い。 こ と に 、 ﹁批 判 的 思 考 ﹂ や ﹁主 張 と 理 由 づ け の構 造 ﹂ を 関 連 諸 科 学 か ら 導 入 し 、 国 語 科 教 育 学
の問 題 領 域 のな か に 正 当 な 位 置 づ け を 与 え た 慧 眼 は 、 そ の後 のわ が 国 に お け る デ ィ ベ ー ト や メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ
ー と い った 新 た な 学 習 活 動 導 入 の布 石 の役 割 を 果 た し た事 実 か ら も 裏 づ け ら れ よう 。 さ ら に 、 ﹁批 判 的 思 考 ﹂ に
つ いて は 、 今 後 の説 明 的 文 章 教 育 に と って の さ ら な る課 題 と し て理 論 的 ・実 践 的 な 進 展 が 期 待 さ れ る 。
一九 七 七 年 度 石 井 賞 ( 全 国 大 学 国語 教 育 学 会 ) 受 賞 の栄 誉 にも 輝 いた 本 書 だ が 、 版 元 解 散 に よ って長 ら く 入 手
困 難 の状 態 が 続 いた 。 修 訂 を 経 て再 刊 さ れ た の が 、 ﹃ 言 語 論 理 教 育 入 門− 国 語 科 に お け る 思 考− ﹄ (明 治 図 書 /
一九 八 九 年 ) であ る 。 修 訂 に際 し て は 、Ⅰ ・Ⅲ ・Ⅶ ・Ⅷ ・終 章 が 削 ら れ 、 残 り の部 分 に つ いて 修 正 が 施 さ れ た 。
た だ し 、Ⅶ 章 に つ い て は ﹃国 語 の授 業 方 法 論 ﹄ (一光 社 / 一九 八 三 年 ) で拡 充 が は か ら れ た ( ち なみ に、同書 も
修 訂 のう え 、 ﹃ 国 語 教 師 の力 量 を 高 め る− 発 問 ・評 価 ・教 材 分 析 の 基 礎− ﹄ ( 明 治 図 書 / 二 〇 〇 五 年 ) と し て再 刊
さ れ た )。 ま た 、Ⅰ ・Ⅲ ・Ⅷ ・終 章 に つ い て は ﹃思 考 力 育 成 への方 略− メ タ認 知 ・自 己 学 習 ・言 語 論 理− ﹄ ( 明治
図 書 / 一九 九 八 年 ) に お い て、 そ の後 の言 語 関 連 諸 科 学 の進 展 を 踏 ま え た 学 的 拡 充 が は か ら れ て いる 。
さ ら に 、 井 上 を は じ め と し た 十 五名 の論 者 に よ って刊 行 さ れ た ﹃ 言 語 論 理 教 育 の探 究 ﹄ ( 東京 書籍 / 二〇〇〇
年 ) では 、 各 論 者 そ れ ぞ れ の 切 り 口か ら 言 語 論 理教 育 の進 展 が 図 ら れ て お り 、 さ ら な る 問 題 領 域 へ の先 鋭 な アプ
ロー チ が 行 わ れ て いる 。 言 語 論 理 教 育 の真 価 に つ いて は 、 本 書 刊 行 当 時 にも ま し て、 む し ろ 二十 一世 紀 を 迎え た
現在 の ほう が 、 読 者 に と って よ り 深 く 実 感 でき る内 容 と し て受 け と め ら れ る の で は な いだ ろ う か 。 [ 中村敦 雄]
﹃こと ば の学 び 手 を 育 て る国 語 単 元 学 習 の 新 展 開﹄ 全 七巻 ( 東 洋 館 出 版 社 / 一九 九 二年 )
日本国語教育学会編
国語単 元学 習 の理論
第 三 章 国 語 単 元学 習 の生 成 、 発 展 、 展 望
教育 /五 情報化 社会論と 国語教育
一 教育 学 における国語教 育論/ 二 言語研究 と国語教 育/三 文 学研究と 国語教育 /四 心 理学と国語
第 二章 国語単 元学 習 のため の関連諸科 学
カ)/ 八 外 国 にお け る 単 元 学 習 の動 向 2 (イ ギ リ ス)
構成 / 五 単 元学習と 教材 /六 学習者 と国 語単 元学習 /七 外国 にお ける単 元学習 の動向 1 (アメリ
一 国語単元学 習 の思想 /二 国語単 元学習 の歴史的 展開/三 国語 の学力 と単 元学 習/ 四 単 元学習 の
第 一章
第Ⅰ 巻 の理 論 編 は次 のよ う に 構 成 さ れ て いる 。
稚 園 ・保 育 所 編 と な って い る 。
編 、 第Ⅲ 巻 小 学 校 中 学 年 編 、 第Ⅳ 巻 小 学 校 高 学 年 編 、 第Ⅴ 巻 中 学 校 編 、 第Ⅵ 巻 高 等 学 校 編 、 第Ⅶ 巻 幼
践 編 よ り 構 成 さ れ 、 第Ⅰ 巻 が 理 論 編 で あ る 。 第Ⅱ ∼ 第Ⅶ 巻 は 、 学 校 段 階 別 の 実 践 編 で 、 第Ⅱ 巻 小 学 校 低 学 年
本 講 座 は 、 日 本 国語 教 育 学 会 が 企 画 ・編 集 し たも の で、 全 七 巻 よ り 成 って いる 。 大 き く 分 け ると 、 理 論 編 と 実
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実 践 編 の第Ⅱ ∼第Ⅶ 巻 で は 、 巻 頭 に倉 澤 栄 吉 日 本 国 語 教 育 学 会 会 長 が ﹁序 に か え て﹂ を 書 き 下 ろ し て いる 。 そ
れ ぞ れ の表 題 は 、 第Ⅱ 巻 ﹁小 学 校 低 学年 に単 元 学 習 は 可 能 か ﹂、 第Ⅲ 巻 ﹁単 元 学 習 の入 門 期 と し て の 中 学 年 ﹂、 第
Ⅳ巻 ﹁単 元 教 師 は単 元 と と も に 伸 び る﹂、 第Ⅴ 巻 ﹁中 学 生 ら し い単 元 ﹂、 第Ⅵ 巻 ﹁高 等 学 校 国 語 科 単 元 学 習 の昔 と 今 ﹂、 第Ⅶ 巻 ﹁幼 児 に 語 る ・幼 児 と 語 る﹂ であ る。
﹁雨 あ め ふ れ ふ れ ﹂/ 3 ﹁わ た し の 木 ﹂/4
﹁お も し ろ か った お は な し ﹂ / 5 ﹁絵
各 巻 に は 、 豊 富 な 実 践 例 が 収 録 さ れ て お り 、 本 講 座 の特 色 と な って い る 。 第Ⅱ 巻 の小 学 校 低 学 年 編 で は 、1 ﹁昔 話 を 楽 し も う ﹂/2
﹁ぼ く ・わ た し の ザ リ ガ ニ絵 本 を 作 ろ う ﹂/9
﹁漢 字 に し た し も う ﹂/ 10 ﹁な ぞ な ぞ 名 人 に な
巻 物 を 見 て物 語 を 書 こ う ﹂ /6 ﹁﹃ た ん ぽ ぽ のち え ﹄ の絵 本 を 作 ろ う ﹂/ 7 ﹁と り の か ら だ に は ど ん な ひ み つが あ る のか な ﹂/8
ろ う ﹂/ 11 ﹁こと ば の病 院 ﹂ と い った 実 践 例 が収 め ら れ て いる 。 第Ⅴ 巻 の中 学 校 編 で は 、 一 授 業 開 き 、 二 こ
と ば 、 三 自 然 と 人 間 、 四 文 化 と 伝 統 、 五 現 代 と 社 会 、 の五 つ のジ ャ ン ル に分 け 、 実 践 が収 録 さ れ て いる 。
収 録 さ れ て いる 単 元 例 の 一部 を 紹 介 す ると 、 ﹁樹 と 仲 よ し に な る た め の ガ イ ド ﹂、 ﹁地 球 の未 来 は シ ョ ッキ ン グ ﹂、
﹁こ れ で い い のか わ た し た ち の食 生 活 ﹂、 ﹁古 典 に 遊 ぶ− 万 葉 集 ・古 今 ・新 古 今 ﹂、 ﹁﹃国 際 社 会 ﹄ 二十 一世 紀 にむ
け て考 え る− 豊 か さ と は︱ ﹂、 ﹁﹃新 聞 に親 し む ﹄ を 中 心 と し て ﹂、 ﹁地 域 に いき る 人 々﹂ 等 で あ る 。 他 の巻 も 同 様 、 多 様 な 実 践 例 が 紹介 さ れ て いる 。
国 語 単 元 学 習 に つ い て 、 戦 後 の歴 史 的 経 緯 や 理 論 的 基 盤 が 説 か れ て い ると と も に 、各 学 校 段 階 別 に多 様 で豊 か
[桑 原 隆 ]
な 実 践 例 が 収 録 さ れ て いる 。 国 語 単 元 学 習 の 理 解 を 深 め た り 、 単 元 例 に示 唆 を 得 な が ら 新 た な 単 元 学 習 の実 践 を 開 発 し て いく 上 で の好 著 で あ る 。
﹃こと ば と 心 を育 て る− 総 合 単 元 学 習− ﹄ ( 渓 水社 / 一九 九 二年 ) 遠 藤 瑛 子
( 筑 摩 書 房 / 一九 八 二 年 ) は 、 一九 四 〇年 代 後 半 か ら 一九 七 〇 年 代 に か け て の
一九 八 四 ∼ 九 〇年 度 の実 践
践 は 、 次 の三 冊 に ま と め ら れ て い る。 ① 本 書︱
② ﹃生 き る力 と 情 報 力 を育 て る﹄ ( 明 治 図 書 / 一九 九 七 年 )︱
一九 九 六 ∼ 二〇 〇 一年 度 の実 践
本 書 は 、 遠 藤 の国 語 科 総 合 単 元 学 習 初 期 の実 践 であ る 。 語 彙 指 導 を 基 盤 に し な が ら 、 映 像 表 現 を 読 ん だ り 、 遠
③ ﹃人 を 育 て る こ と ば の力− 国 語 科 総 合 単 元学 習− ﹄( 渓 水 社 / 二 〇 〇 三 年 )︱
一九 九 一∼九 五 年 度 の実 践
通 し て ど ん な 力 を 育 て る のか も 、 三年 間 を 通 し て 見 通 さ れ 、 カ リ キ ュ ラ ム が構 成 さ れ て いる 。 こ う い った遠 藤 実
総合 された単元学 習 ( 国 語 科 総 合 単 元 学 習 ) が 、 周 到 な ﹁学 習 の手 引 き ﹂ に従 って展 開 さ れ る 。 こ れ ら 学 習 材 を
の学 習 材 が 選 ば れ (あ る いは 生 徒 た ち が集 め て き て)、 一単 元 の 中 に ﹁話 す ・聞 く ・読 む ・書 く ・言 語 事 項 ﹂ が
ー、 写 真 や テ レ ビ ・ビ デ オ 、 映 画 ま で も が 学 習材 と な る 。 そ の時 々 の生 徒 の実 態 や時 代 状 況 に合 わ せ て 、 こ れ ら
に掲 載 さ れ た 古 典 ・現 代 文 は 言 う ま で も な く 、 新 聞 や 雑 誌 の記 事 、 漫 画 、 普 段 の友 達 と の会 話 、 街 角 の ポ ス タ
そ の実 践 の特 質 を 一言 で いえ ば 、 ﹁こと ば を 通 し て心 を 育 て生 き る こ と を 考 え る﹂ と いう こと で あ る 。 教 科 書
育 学 部 (のち 発 達 科 学 部 ) 附 属 住 吉 中 学 校 で 、 国 語 科 総 合 単 元 学 習 を 展 開 し た 。
開を 遂 げ て いる 実 践 家 の 一人 と し て 、 遠 藤 瑛 子 が いる 。 遠 藤 は 、 一九 八 ○ 年 代 か ら 二〇 〇 二 年 ま で、 神 戸 大 学 教
中 学 校 で の実 践 事 例 に基 づ いた 、 日 本 の単 元 学 習 を 代 表 す る書 物 であ ろう 。 大 村 は ま 実 践 に 学 び な が ら 今 日 的 展
﹃ 大 村は ま国語教室 ﹄全 十六巻
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く 北 海 道 の中 学 生 と 交 流 し た り しな が ら 、 自 己 学 習 力 を 育 て よう と し て いる 。
﹁自 己 学 習 力 ﹂ を 育 て る指 導 )
次 のよ う に 十 二単 元 が 、 六 章 に 分 け て構 成 さ れ て いる 。
一 私 のまわり で ( 1 私 の住 ん で い る町︱
二 自 然 と こ と ば ( 1 風− 自 然 と と も に 生 き る 、 2 春 を 待 つ− 俳 句 の 心 を 、 3 写 真 絵 本 ﹃な つ の か わ ﹄ と の出 会 い−短 歌 に挑 戦 )
三 こと ば を 考 え る ( 1 こ と ば を 楽 し む 、 2 写 真 か ら こ と ば へ− 見 る ・感 じ る ・考 え る、 3 私 た ち の
( 1 今 昔 物 語 の世 界 へ︱ 群 読 ﹁保 昌 と 袴 垂 ﹂、 2 旅 に 生 き る− 松 尾 芭 蕉 と 宇 野 重 吉 )
話 し こ と ば は 乱 れ て い るか ) 四 古典 に親しむ
五 世 界 へ目 を (1 世 界 の中 の日 本 人 へ︱ 目 を 世 界 へ、 2 遠 い国 ・近 い国 ) 六 平和 を考え る ( 1 平 和 への願 い)
( 芭 蕉 ) と 演 劇 人 (重 吉 ) と を 比 較 し
遠 藤 単 元 の 学 習 材 は 、 ﹁旬 の味 ﹂ と でも 言 う べき 同 時 代 性 を 含 ん で 、 生 徒 の心 に迫 る 。 例 え ば 、 第 四 章 2 の ﹁旅 に 生 き る− 松 尾 芭 蕉 と 宇 野 重 吉 ﹂ は 、 共 に 旅 に生 き 旅 に 死 んだ 、 俳 人
な が ら 、 ﹁生 き る こと ﹂ を 考 え る 単 元 であ った 。 重 吉 が 、 ガ ン の進 行 と 戦 いな が ら 公 演 し て 回 る 新 聞 記 事 を 生 徒
[ 松崎 正治]
が 次 々 と持 ってき て く れ た 。 単 元 終 了直 後 に重 吉 は 亡 く な り 、 生 徒 は 、 自 他 の生 き 方 を さ ら に深 く 考 え る こ と と
な った 。 そ の こと に よ って 、 ﹁お く の ほそ 道 ﹂ の理 解 も 、 さ ら に 奥 行 き の深 いも のと な った 。
﹃ホ ー ル ・ラ ン ゲ ージ ﹄ (国 土 社 / 一九 九 二年 ) 桑 原 隆
( イ ェ ッタ ・M ・グ ッド マ ン著 / 桑 原 隆 訳 )
巻末 に寄せ て ( 倉澤栄吉 )
ラ ンゲ ー ジ 運 動 の源 流
1 ホ ー ル ・ラ ン ゲ ー ジ の 研 究− 基 盤 と 発 展 (ケ ネ ス ・S ・グ ッド マ ン著 / 桑 原 隆 訳 )/2 ホ ー ル ・
︽第Ⅱ 部 ︾ ホ ー ル ・ラ ン ゲ ー ジ の 理 論 と 源 流
/ 4 ホ ー ル ・ラ ンゲ ー ジ のカ リ キ ュ ラ ムと 単 元
1 ホ ー ル ・ラ ンゲ ー ジ の動 向 / 2 ホ ー ル ・ラ ン ゲ ー ジ の 特 徴 と 構 造 / 3 ホ ー ル ・ラ ンゲ ージ の教 室
︽第Ⅰ 部 ︾ ホ ー ル ・ラ ン ゲ ー ジ の 興 隆
以下、構成を 示す。
スを わ か り やす く 紹 介 ・解 説 し た も の であ る 。
て 、著 者 自 身 の在 外 研 究 に お け る体 験 や 研 究 を ふま え て 、 研 究 者 ・実 践 家 に 向 け て 、 そ の 理論 と 実 践 の エ ッセ ン
本 書 は 、 ア メリ カ 合 衆 国 お よ び カ ナ ダ に お い て広 範 な 言 語 教 育 運 動 と な った ﹁ホ ー ル ・ラ ンゲ ー ジ ﹂ に つ い
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(Goodma) n, のもKと.で ホ ー ル ・ラ ン ゲ ー ジ (whole
lan )gのu潮a流 gに e つ い て研 究 に あ た った 。 そ の研 究 生
活 の紹 介 も 交 え な が ら 、 エ ッセ イ 風 に ホ ー ル ・ラ ンゲ ー ジ の紹 介 ・解 説 を 行 って いる 。 そ の説 明 は 、 肩 の こ ら な
い読 み物 と い った 体 裁 な が ら 、 ホ ー ル ・ラ ンゲ ー ジ の全 体 像 が く っき り と わ か る と いう 仕 掛 け に な って いて 、 魅
力 的 で あ る 。 こ こ で 紹 介 さ れ て い る ホ ー ル ・ラ ンゲ ー ジ のテ ー マ単 元 は 、 倉 澤 栄 吉 氏 に よ る ﹁巻 末 に 寄 せ て﹂ に
も 解 説 さ れ て いる と お り 、 生 活 科 や総 合 学 習 に 通 じ るも ので 、 興 隆 期 の ホ ー ル ・ラ ン ゲ ー ジ に学 ぶ こ と は 、 日 本
の国 語 科 に お け る 単 元 学 習 、 そ し て そ れ と 発 想 を 共 有 す る 総 合 学 習 な ど を 考 え る こと に な る 。 ﹁言 語 に つ い て 、
言 語 を 、 言 語 を 通 し て﹂ と いう 三 者 の統 合 を めざ す 学 習 の考 え 方 や 、 ﹁多 資 料 ア プ ロー チ の経 験 を 積 む ﹂ と いう
学 習 目 標 に は 、 現 在 の学 力 向 上 を 課 題 と す る教 育 を 考 え る 上 でも 、 基 本 的 な 考 え 方 と し て学 ぶ べ き も の が あ る 。
第Ⅱ 部 は 、 ホ ー ル ・ラ ンゲ ー ジ 運 動 の 理 論 的 支 柱 で あ る グ ッド マ ン夫 妻 の代 表 的 な 論 文 を 邦 訳 し た も の であ
り 、 ホ ー ル ・ラ ンゲ ー ジ の歴 史 的 背 景 か ら 運動 と し て の展 開 過 程 を も 知 る こ と が でき る 。 こ の第Ⅱ 部 に 原 著 者 の
参 照文 献 一覧 が あ り 、 第Ⅰ 部 の そ こ か し こ に ち り ば め ら れ て いる 著 作 の紹 介 や キ ー ワー ド の整 理 と 相 ま って、 豊
か な読 書 案 内 を な し て おり 、 本 著 が そ れ 自 体 ホ ー ル ・ラ ンゲ ー ジ の精 神 を 体 現 し て いる こと が わ か る 。
﹁巻 末 に寄 せ て﹂ は 、 著 者 の恩 師 であ る倉 澤 栄 吉 氏 に よ る も の で、 日 本 の 国 語 単 元 学 習 と ホ ー ル ・ラ ン ゲ ー ジ
と の 関 係 、 国 際 読 書 学 会 の活 動 を 通 じ て の グ ッド マ ン夫 妻 と の交 流 な ど が 語 ら れ て い る。 そ れ は そ の ま ま 比 較 国
[ 松 本 修 ]
語 教育 史 であ り つ つ、 現在 の、 そ し て こ れ か ら の国 語 教 育 の動 向 の予 見 と な って いる と と も に 、 教 え 子 であ る著 者 へ の滋 味 あ ふ れ る激 励 と も な って い る。
﹃ 言語 活 動 主 義・ 言語 生 活 主義 の 探究− 西尾 実 国 語 教 育 論 の 展 開 と 発 展﹄ ( 東 洋 館 出 版 社 / 一九 九 八 年 ) 桑 原 隆
第 一章 西尾実 の論理展 開と歴史的 時期区分
本 書 は 序 章 、 ま と め を 除 き 、 次 の 九 章 か ら 成 って いる 。
あ る。 そ し て こ れ ら 三 つの水 準 の往 還 に 基 づ く 研 究 が 展 開 さ れ て いる の が本 書 な の で あ る 。
難 にな る 。 第 三次 研 究 は、 現 在 の国 語 教 育 の状 況 に関 す る 理 解 と と も に 、第 一次 ・第 二次 研究 の蓄 積 が 不 可 欠 で
こ の三 つの水 準 の研 究 は 、 相 互 に 関 連 し 合 う 。 た と え ば 、 第 一次 研 究 を 前 提 と し な いと 第 二 次 研 究 の成 立 は 困
と を 目 的 と す る 研 究 であ る 。
鍵 概 念 に 価 値 があ る と 考 え た 場 合 、 そ れ を 現在 の状 況 に お いて と ら え 直 し 、 説 得 的 な 鍵 概 念 と し て再 創 造 す る こ
す る 。 教 育 課 程 を 構 成 す る 諸 教 科 や そ れ ぞ れ の時 間 数 や 教 材 、 ま た 社 会 的 ・文 化 的状 況 の差 異 を こえ てな お そ の
れ な か った 面 も あ わ せ て明 ら か にす る こと を 目 的 と す る 研 究 であ る 。 第 三次 研 究 は 、 国 語 教育 理 論 研 究 を 課 題 と
き た 理 由 を 歴 史 的 な 文 脈 か ら 明 ら か に す ると と も に、 そ の鍵 概 念 と 諸 活 動 が 同 時 代 以 降 に持 った 意 味 を 、 理 解 さ
育 史 研 究 を 課 題と す る 。 研 究 対 象 と し て の人 物 が そ の よ う な 鍵 概 念 を 産 み出 し 諸 活 動 を 展 開 し た 、 ま た は 展 開 で
特 徴 を 当 人 の 用 いる 鍵 概 念 と 他 の諸 活 動 と の 関 連 か ら 明 ら か に し よ う と す る 研 究 で あ る 。 第 二 次 研 究 は 、 国 語 教
み る 。 第 一次 研 究 は 、 人 物 研 究 を 中 心 的 な 課 題 と す る 。 そ の人 物 の教 育 実 践 ま た は講 演 ・著 述 等 を 精 査 し 、 そ の
国 語 教 育 研 究 に お い て 、 あ る 傑 出 し た 研 究 者 ・実 践者 を 取 り 上 げ よ う と す る研 究 に 、 仮 に 三 つの水 準 を 考 え て
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第 二章 言語活動 主義 の胚 胎
第 三章 言語活動 主義 の展 開と成立 ( 1)− 創 造的言語観 の追究と 国語教育 の対象領域 第 四章 言語活動 主義 の展 開と成立 ( 2)− 長 野県 下における実践指導
第 五章 言語活動 主義 の展 開と成立 ( 3 )− ﹃ 中学校国 語漢文科用 国語﹄ の分析と考察
第六章 戦後 の﹁言語生活主義 ﹂国語 教育論 の展開−西尾実 ﹁ 国語 教育学﹂ の究明と 問題 第七章 ﹁ 主 体的真実﹂ 論と ﹁ 言 語生活﹂ の性格 第 八章 言語能力 主義 と言 語生活主義 第九章 ﹁言語生活﹂ を基盤と した国語学 習指 導論 の構 想
こ のう ち 第 二章 か ら 第 六 章 ま で が 第 一水 準 と 第 二水 準 と の往 還 に基 づ く 研 究 、第 七 章 か ら 第 九 章 ま で が 第 二水
準 と 第 三水 準 と の往 還 に 基 づ く 研 究 と いう こと が いえ る だ ろう 。 そ し て 、 た と え ば 西 尾 自 身 の指 導 を 直 接 受 け た
長 野 県 の教 員 か ら の 聞 き 取 り 調 査 に 裏 付 け ら れ た 、 第 四 章 に お け る ﹁主 題 ・構 想 ・叙 述 ﹂ 論 の変 容 に 関 す る指
摘 、 第 八 ・第 九 章 に お け る現 実 の国 語 教 育 実 践 の諸 問 題 を 前 提 と し たう え で の 、 西 尾 の言 語 文 化 へ の志 向 の確 認
と ケ ネ ス ・グ ッド マ ン の言 語 学 習 理 論 と に よ って導 き 出 さ れ た ﹁言 語 ・言 語 活 動 ・言 語 生 活 ﹂、 ﹁読 解 ・読 書 活
動 ・読 書 生 活 ﹂ の関 係 的 構 造 の提 唱 等 に、 本 書 の具 体 的 な 研 究 方 法 と そ の成 果 を 見 出 す こと が でき る の であ る。
[甲 斐 雄 一郎 ]
﹃ 国 語 科 指 導 と 評 価 の 探 究﹄ ( 渓水 社 / 二〇 〇 二年 ) 益 地 憲一
(一四
(一 国 語 科 に お け る 評 価 の意 義 と 目 的 / 二 国 語 教 育 に お け る 評 価 方 法 と 評
国 語 科 授 業 の在 り 方 / 一五
絶 対 評 価 が学 び を 支 え る た め に / 一二 新
[ 講 演 記 録 ])、Ⅳ 国 語 科 指 導 の探
﹁分 化 と 統 合 の授 業 ﹂ の構 築− 授 業 ﹁う さ ぎ で考 え る ﹂ を
多 い。 た と え ば 、 評 価 活 動 の土 台 と な る 国 語 学 力 観 への 追 究 (﹁六
評 価 の基 底 と し て の国 語 学 力 試 案− 情 意 能
科 教 育 に お け る ﹁実 のあ る評 価 ﹂ を 実 現 す る た め に 必 要 な 課 題 への追 究 が 的 確 に な さ れ て お り 、 学 ぶ べき も のが
本 書 の特 長 は 、 何 と い って も 実 践 経 験 に 裏 打 ち さ れ た 手 堅 い評 価 研 究 の書 で あ る 点 に あ る 。 そ れ だ け に、 国 語
の論 考 で構 成 さ れ 、 ﹁評 価 と 指 導 の 一体 化 の道 筋 が 見 通 せ る よ う に﹂ (﹁ま え が き ﹂) 組 み 立 てら れ て いる 。
授 業 ﹁﹃新 宮 澤 賢 治 語 彙 辞 典﹄ ﹁猫 ﹂ を 読 む ﹂ (一九 九 九 年 一二月 一〇 日 ・奈 良 附 属 中 学 校 一年 四 組 )) と いう 一九
践 の記 録 (一八 授 業 ﹁う さ ぎ で考 え る﹂ (一九 九 八年 一二月一一 日 ・奈 良 教 育 大 学 附 属 中 学 校 一年 一組 )/ 一九
も と に し て考 え る− / 一六 自 己 形 成 と 他 者 理 解 の相 関 / 一七 話 す ・聞 く の 一体 化 し た 指 導 を )、 V 授 業 実
究 ・授 業 の改 善
学 力 観 に 立 つ評 価 と 授 業 改 善 / 一三 詩 歌 の指 導 と 評 価− 感 性 を 中 心 に−
国 語 科 指 導 と 評 価 の 一体 化 (一〇 学 習 指 導 と 評 価 の 一体 化 /一一
−﹃学 習 過 程 に お け る 態 度 の 評 価 ﹄ を 中 心 に− / 八 自 己 評 価 の活 性 化 を / 九 改 め て学 習 者 の把 握 を )、Ⅲ
題 (六 評 価 の基 底 と し て の国 語 学 力 試 案− 情 意 能 力 を 中 心 に− / 七 昭 和 三 十 年 代 末 に お け る 態 度 評 価 の研 究
価 内 容 / 三 実 のあ る評 価 の実 践 と 蓄 積 / 四 ﹁交 信 ﹂ と 評 価 / 五 説 明 文 の 評 価 )、Ⅱ 国 語 科 評 価 の 基 底 と 課
ち 、Ⅰ 国 語 科 評 価 の意 義 と 内 実
本 書 は 、 平 成 四 (一九 九 二) 年 か ら 平 成 一四 年 ま で に執 筆 ・発 表 さ れ た 論 考 に よ って構 成 さ れ て いる 。 す な わ
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力 を 中 心 に− ﹂) は 、 評 価 論 ・学 力 論 に 関 す る先 行 研 究 を 確 実 に 踏 ま え つ つ、 特 に 情 意 能 力 を 明 確 に 位 置 づ け た
﹁二領 域 三 層 二重 の国 語 学 力 構 造 ﹂ と し て結 実 し て い る。 ま た 、 ﹁評 価 と 指 導 の 一体 化 ﹂ を 実 現 す る た め に は 、 学
習 者 の実 態 と し て の評 価 情 報 を 的 確 に把 握 す る 力 量 と そ れを 適 切 な 発 問 や板 書 と し て 還 元 でき る力 量 が 不 可 欠 で
あ る が 、 こ の点 を 力 説 し た ﹁三 実 のあ る評 価 の 実 践 と 蓄 積 ﹂ も 含 蓄 のあ る論 考 と な って いる 。 さ ら に 、 ﹁八 自
己 評 価 の活 性 化 を ﹂ に は 、 こ れ か ら の学 習 者 に育 成 す べき メ タ 認 知 力 ・モ ニタ リ ン グ力 に 培 う ﹁自 己 評 価 ﹂ の意 義 や 実 践 上 の配 慮 、 ﹁相 互 評 価 ﹂ の役 割 な ど が 記 さ れ て お り 、 示 唆 深 い。
(一九 七 三 ) 年 以 来 評 価 の 実 践 的 研 究 に取 り 組 ん で こ ら れ た 筆 者 な ら で は
﹁常 に 国 語 教 育 の実 践 に 学 び 、 実 践 に寄 与 す る 指 導 と 評 価 と を 心 が け て き た ﹂ (﹁あ と がき ﹂) と いう 言 葉 に象 徴 され るよう に、 本書 には 、昭和 四八
(いわ ゆ る絶 対 評 価 )﹂ は 、 観 点 別 に 学 習 者 の学 び の実 態 把 握 を
の、 実 践 に 役 立 つ評 価 のあ り 方 への 目 配 り が 鋭 く 的 確 に盛 り 込 ま れ て い る。 平 成 一〇 年 版 ﹁学 習 指 導 要領 ﹂ の実 施 に並 行 し て導 入 さ れ た ﹁目 標 に 準 拠 し た 評 価
行 いな が ら 、 そ の結 果 を 指 導 改 善 に結 び つけ 、 最 低 基 準 と し て の ﹁学 習 指 導 要 領 ﹂ の目 標 を ﹁お おむ ね 満 足 で き
る 状 況 ﹂ と し て学 習 者 に実 現 さ せ る こ と を 目指 し て いる 。 こ の こ と を 考 え る と き 、 本 書 に明 ら か に さ れ た ﹁評 価
[ 千 々岩 弘 一]
と 指 導 の 一体 化 ﹂ を 実 現す る た め の諸 課 題 へ の追 究 内 容 は 、 大 いに 参 考 に す べき も のと な って い る。 本 書 は 、 今 日 の国 語 教 育 関 係 者 に と って 、 必 読 の 一書 と い って よ い。
( 試 案 ) 学 習 指 導 要 領 国 語 科 編 ﹄ に ﹁話 す こ と (聞 く こと を
第 三 章 話 す こ と ・聞 く こ と の指 導 研 究
話 す こ と ・聞 く こ と の 指 導 は 、 ﹃昭 和 二 十 二年 度
ふく む )﹂ と いう 指 導 領 域 が 立 て ら れ て 以 来 、 そ の指 導 史 の経 緯 を 大 ま か に 捉 え る な ら ば 、 導 入 時 の活 性 期 と そ の後 の沈 滞 と いう 推 移 を 経 て平 成 時 代 を 迎 え て い る。
実 ﹃国 語 教 育 学 の構 想 ﹄ の言 語 生 活 論 であ る 。 そ の理 論 は 、 戦 後 の国 語 教 育 界 に お い て、 中 学 教 師 ・大 村 は ま の
戦 後 の国 語 教育 界 にお い て話 す こ と ・聞 く こ と の指 導 に 関 し て 理 論 的 な 基 盤 を 提 供 し た 代 表 的 な 著 作 は 、 西 尾
手 で実 践 と し て 具 体 化 さ れ て い った 。
戦 後 の話 す こと ・聞 く こと の指 導 は 、 昭 和 二 二 年 に ﹁は な し こ と ば の会 ﹂ の設 立 を 見 るな ど 、 言 語 生 活 に お け
る話 し こ と ば へ の注 目 と も 相 ま って 、 一時 期 活 性 状 況 を 呈 し て い った 。 例 え ば 昭 和 二 〇 年 代 に お い て、 東 京 を 皮
切 り に実 施 さ れ た IF E L に よ って、 そ の開 催 地 を 中 心 と し て 話 し 合 い活 動 が積 極 的 に盛 り 込 ま れ た 国 語 単 元 学
習 実 践 が 提 案 さ れ た り 、 ワ ー ク シ ョ ップ を 通 じ て 指 導 のあ り 方 が 伝 達 さ れ る な ど の普 及 活 動 が 行 わ れ た 。 し か
し 、 一般 的 な 学 校 で は そ の よう な 実 践 は定 着 を 見 な か った のが 実 情 で あ った 。 昭 和 三 〇年 代 以 降 、 話 し こ と ば 教
育 の実 が 容 易 に は 上 が ら な い状 況 が 続 き 、 さ ら に 昭 和 四 三年 版 学 習 指 導 要 領 改 定 期 に そ れ に 追 い打 ち を か け る よ
う に 、 国 語 教 育 で は 読 み 書 き を 軸 にし て 、 話 し か た は 学 校 生 活 全 体 で 習 得 さ せ る べき だ と いう 主 張 が な さ れ た た
め 、 話 す こ と .聞 く こ と の指 導 は 冬 の時 代 を 迎 え た と い って よ い。 そ の時 代 に あ って注 目 さ れ る のは 、 大 久 保 忠
利 ﹃話 し コト バ 指 導 の技 術 ﹄ (昭 和 三六 年 )、 倉 澤 栄 吉 ・東 京 都 青 年 国 語 研 究 会 編 ﹃ 国 語 科 対 話 の指 導 ﹄ (昭 和
四 五年 ) であ る 。 こ れ ら の 著 書 は 、 そ れ ぞ れ 、 ﹁日本 話 し コト バ 研 究 会 ﹂、 ﹁東 京 都 青 年 国 語 研 究 会 ﹂ と いう 実 践
家 の研 究 会 に お け る 実 践 研 究 を 母 胎 と し て編 ま れ て いる点 で 、 当 時 の話 す こ と ・聞 く こ と の指 導 の実 態 を う か が う こと が でき る。
平 成 の時 代 に入 って から の話 す こ と ・聞 く こ と の指 導 研 究 は 、 飛 躍 的 な 展 開 と 視 野 の広 が り を 見 せ た 。 こ の領
域 の指 導 が 着 目 さ れ 始 め た のは 、 平 成 元年 版 学 習 指 導 要 領 に お い て 、 ﹁伝 え 合 う 力 ﹂ が 強 調 さ れ た こ と に も よ る
が 、 よ り 大 き な 流 れ と し て 、 学 び 概 念 の変 化 、 学 力 観 の変 容 があ る 。 自 ら問 題 を 見 出 し て追 究 し て いく 問 題 解 決
的 思 考 や 、 他 者 と 協 同 で知 を 構 築 す る こと が学 び の本 質 であ ると いう 教 育 観 の変 化 が 、 学 習 者 同 士 の対 話 や 話 し
合 いを 尊 重 す る気 運 を も た ら し た 。 他 者 と の共 同 思 考 の主 要 な 方 法 は デ ィ スカ ッシ ョ ン であ り 、 そ の力 を 養 う こ と が重 要 な 役 割 と し て国 語 教 育 の世 界 でも 認 識 さ れ る に 至 った の で あ る 。
平 成 に 至 って 、 高 橋 俊 三 ﹃対 話 能 力 を 磨 く− 話 し 言 葉 の授 業 改 革− ﹄ ( 平 成 五 年 )、 福 岡 教 育 大 学 国 語 科 ・三 附
属共 同研究 ﹃ 共 生 時 代 の対 話 能 力 を 育 てる 国 語 教 育 ﹄ ( 平 成 九 年 )、 村 松 賢 一 ﹃ 今 求 め ら れ る コミ ュ ニケ ー シ ョ ン
能 力 ﹄ (平 成 一○ 年 )・同 ﹃対 話 能 力 を 育 む 話 す こと 聞 く こ と の学 習− 理 論 と 実 践− ﹄ ( 平 成 一三年 ) 等 が 出 版 さ
れ 、 対 話 ・話 し合 いと いう 言 語 行 為 を 解 明 し よ う と す る 理 論 と 、 そ れ に の っと った数 多 く の実 践 が 提 案 さ れ る よ
う に な った 。 各 地 の学 校 の主 題 研 究 に 伝 え 合 う 力 ( 話 す ・聞 く こ と の指 導 ) を 育 て る こと が掲 げ ら れ 、 実 践 レ ベ ル で の裾 野 の広 が り が 見 ら れ る よう に な った の であ る 。
近 年 の研 究 の傾 向 と し て 、 話 す こ と ・聞 く こ と の指 導 を 考 え る 上 で の 理論 的 基 盤 が 話 す こ と ・聞 く こ と の認 知
作 用 に 求 め ら れ 、 談 話 分 析 ・認 知 心 理 学 が 話 す こと ・聞 く こ と の指 導 を 考 え る上 で の基 礎 理論 と し て注 目 さ れ る
よ う に な った 。 ま た 、 学 級 と いう 文 化 社 会 の中 で の コミ ュ ニケ ー シ ョン の解 明 と いう 観 点 か ら エス ノ グ ラ フィ ー
(あ る文 化 の社 会 行 動 や 相 互 作 用 を 記 述 研 究 す る手 法 ) を 用 いた 研 究 書
( 佐 藤 公 治 ﹃認 知 心 理 学 か ら 見 た 読 み の
世 界 ﹄ 平 成 八 年 等 ) も 現 れ た 。 子 ど も の側 に 立 って 、 そ の認 知 発 達 や社 会 的 相 互 作 用 を 念 頭 に 置 いた 話 す こと ・ 聞 く こ と の教 育 内 容 の追 究 が 始 ま って いる 。
一方 、 話 す こと ・聞 く こ と の指 導 は 、 音 読 ・群 読 の指 導 の面 か ら も 追 究 さ れ てき た 。 高 橋 俊 三 を 中 心 と し た 群
読 実 践 の推 進 は 、 ど の よう に 音 読 す る か を 話 し 合 い、 練 り 上 げ て いく 過 程 で 育 つ学 習 者 の協 同 性 や話 し 言 葉 の力
を 認 識 さ せ てく れ た ( 高 橋 俊 三 ﹃群 読 の授 業 ﹄ 平 成 二 年 )。 高 橋 を 中 心 と す る ﹁声 と こ と ば の会 ﹂ (平 成 二 年 発
( 平 成 六 年 度 調 査 )﹄ を 実 施 し 、 実 践 集 ﹃聴 く 力 を 鍛 え る授 業 ﹄ (平 成 一〇年 ) を 刊 行 す るな ど 、 こ の領
足 ) は 、 ﹃小 中 高 校 生 の聞 き 取 り 能 力 に 関 す る調 査 報 告 書− 主 体 的 ・批 判 的 に 聞 き 取 る 能 力 の発 達 調 査 に 重 点 を お いて−
域 の実 践 を 発 展 さ せ る た め の価 値 あ る 研 究 を 進 め て いる 。
ま た、森 久保 安美 を指導 者と し て編ま れた実 践 ﹃ 話 し こ と ば 教 育 の実 際− 国 語 教 育 に 魅 力 を− ﹄ ( 平 成九 年)
や ﹃ 話 し こと ば 教 育 の復 興 ( 1 )∼ ( 3 )﹄ ( 平 成 元年 ) は 、 話 す こ と ・聞 く こ と の指 導 を 、 人 間 関 係 を 築 く 力 を つ
け る こ と に重 点 を 置 い て提 案 さ れ て お り 、 現代 社 会 に お け る 子 ど も た ち の コ ミ ュ ニケ ー シ ョ ン力 の衰 退 に 手 当 て を 施 そ う と す る注 目 す べき 成 果 であ る 。
話 す こ と ・聞 く こと の指 導 を 行 う 上 で、 教 師 の話 し 言 葉 は 重 要 な 意 味 を 持 つ。 こ の こと に つ い て の指 摘 は 多 く
﹃ 中 学校国語 科学 習指導 の
の 識者 のな す と こ ろ であ る が 、 ま と ま った 研 究 物 と し ては 、 野 地 潤 家 ﹃ 話 し こと ば 学 習 論 ﹄ ( 昭 和 四 九 年 ) ・同
﹃教 育 話 法 入 門﹄ (平 成 八年 )、 双 書 ﹃教 師 の話 し 方 ① ∼③ ﹄ ( 昭 和 五 五 年 )、 三 浦 和 尚
﹃ 話 しことば教育史 研究﹄ ( 昭 和 五 五 年 )、 増 田 信 一 ﹃ 音
展 開− 表 現 活 動 を 中 心 と し て− ﹄ ( 平成 五年) などが挙げ られる。 話 す こ と ・聞 く こと の指 導 の歴 史 研 究 に は 、 野 地 潤 家
声 言 語 実 践 史 研 究 ﹄ (平 成 六 年 ) が あ る。 ま た 、 高 橋 俊 三 編 ﹃ 音 声言語指導 事典﹄ ( 平 成 一 一年 ) の刊 行 は 、 こ の
領 域 の研 究 を 体 系 的 に 整 理 し て お り 、 今 後 の研 究 の足 場 を 提 供 し て く れ る 。 こ の ほ か 、 ︿朝 倉 国 語 教 育 講 座 ﹀ 第
三 巻 ﹃話 し こ と ば の教 育 ﹄ (平 成 一六 年 ) は 、 話 し こと ば 教 育 実 践 理 論 を 話 し こ と ば 学 習 の機 会 と 場 ・内 容 ・方
法 ・評 価 に わ た って体 系 的 に 論 じ て いる 。 こ れ ら の 研 究 物 は 、 こ の領 域 の研 究 に つ いて の体 系 的 視 野 を 提 供 し 、 さ ら に 研 究 を 進 め て いく 手 が か り を 与 え る貴 重 な も ので あ る。
以 上 見 てき た よ う に 、 話 す こ と ・聞 く こ と の指 導 研 究 は 、 理 論 的 にも 、 ま た 実 践 的 にも 近 年 め ざ ま し い進 展 を
遂 げ て い る。 今 後 は話 す こと ・聞 く こと の指 導 と 、 読 む こと や 書 く こと の指 導 と の構 造 的 な 関 連 づ け や 、 教 育 課
程 全 般 と 連 携 を は か った 指 導 の追 究 、 話 す ・聞 く 力 を 学 力 と し てど う 描 き 捉 え る か 、 ま た そ れ に対 応 す る評 価 の
あ り 方 な ど が 、 さ ら に 研 究 を 進 め る 方 向 と し て残 さ れ て いる 。 人 間 の言 語 能 力 のう ち でも 最 も 基 盤 に 位 置 す る も
[ 山 元悦子]
のと 考 え ら れ る話 す ・聞 く 能 力 の指 導 の実 践 研 究 は 、 一時 期 の隆 盛 に終 わ る こ と な く 、今 後 も 厚 み のあ る 展 開 を 続 け て いく こと が望 ま れ よう 。
﹃ 国 語科 対 話 の指 導 ﹄ ( 新 光 閣 書 店 / 一九 七 〇 年 )倉 澤栄 吉 ・東 京 都 青 年 国 語 研 究 会
(一九 六 六 ∼ 一九 六 八 年 ) の成 果 を ま と め た も の に な って いる 。 当
大事 な の で は な いか と いう よう な 反 省 が な さ れ 、 対 話 指 導 が 取 り 上 げ ら れ た の であ る (七 八 ・七 四 頁 )。
な い。 む し ろ 一対 一、 人 間 対 人 間 の話 し 合 いと いう も の が 行 わ な け れ ば な ら な い、 そ のた め に は 対 話 が 一番
な 授 業 が多 か った 時 も あ った 。 そ ん な こ と か ら 、 話 し 合 いと いう も のは 、 た だ 単 に 技 能 的 な 面 だ け で は いけ
能 的 な 面 が 強 く 表 に 押 し 出 さ れ る気 配 が あ った 。 話 し 合 い の指 導 も そ う いう 技 能 的 な 面 を 強 く 押 し 出 す よ う
に 、 話 し 合 いな ど と いう こ と を 強 く 取 り 上 げ て 数 ヶ月 研 究 が 行 わ れ た こと も あ った が 授 業 と な ると どう も 技
○ 我 々 の青 年 国 語 研 究 会 で 、 聞 く 、 話 す の問 題 を 取 り 上 げ て 研 究 し た 時 代 に 、 暗 中 模 索 の 時 が あ った 。 特
向 が あ る 。 そ れ が 回 り 回 って森 岡 健 二氏 が 話 し こと ば 教 育 の欠 陥 を 指 摘 さ れ た よう な 結 果 に な った と 思 う 。
こと よ り は 、 大 勢 の中 で いか に自 己 を アピ ー ルす る か と いう 、 そ う いう 方 向 に何 か ひ ど く 進 ん で し ま った 傾
○ 新 教 育 と いう 名 前 で始 ま った 戦 後 の教 育 は 、 ど ち ら か と いう と 一対 一でじ っく り 考 え 合 い語 り 合 う と いう
た 。 そ の逆 風 の中 であ え て 対 話 の指 導 研 究 に 取 り 組 ん だ 理 由 を 、 本 書 は 次 の よう に 述 べ て いる 。
時 、 昭 和 四 〇年 度 学 習 指 導 要 領 改 訂 に あ た って、 森 岡 健 二 に よ って聞 く こと ・話 す こと の教 育 批 判 が な さ れ て い
京 都 青 年 国 語 研 究 会 が 取 り 組 んだ 実 践 的 研 究
年 ) であ る 。 本 書 が 書 か れ た のは 、 ﹃ 国 語 教 育 学 の構 想 ﹄ 発 表 の十 七 年 後 に あ た り 、 西 尾 の論 に 学 び な が ら 、 東
戦 後 の国 語 教 育 界 に お い て対 話 指 導 の価 値 を いち 早 く 論 じ て いる の は 、 西 尾 実 ﹃ 国 語 教 育 学 の構 想 ﹄(一九 五 三
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こ の述 懐 か ら は 、 聞 く こと ・話 す こと の指 導 の根 本 に 着 手 す る た め に は 、 対 話 に 注 目 す べ き だ と いう 考 え に た
ど り 着 いた 経 緯 が 窺 え る 。 話 す こ と ・聞 く こと ・話 し 合 いと いう 領 域 を 設 け て個 別 に 指 導 す る の で は な く 、 双 方
向 的 な 対 話 活 動 に より 、 ﹁態 度 性 ﹂ の育 成 を 根 幹 と し た ト ー タ ルな 指 導 が 展 開 し う ると いう 見 解 が 示 さ れ て いる 。
本 書 の 理 論 編 を 執 筆 し て いる 倉 澤 は 、 西 尾 の言 語 生 活 論 を 踏 ま え つ つ対 話 の 機 能 を さ ら に 深 く 省 察 し て いる 。
例え ば 、﹁ 自 己 内 対 話 ﹂概 念 が 論 じ ら れ て いた り 、 教 育 の営 み の根 幹 に は 対 話 性 が あ る こと 、 対 話 は単 な る 伝 達 で
は な く 表 現者 主 体 か ら に じ み出 る 情 的 な も のを 伝 え る 機 能 を も つ喚 情 的 言 語 の や り と り であ る こと な ど で あ る 。
本 書 の後 半 には 、対 話 指 導 の実 践 が 収 め ら れ 、 そ の内 容 は 以 下 の よう な も の で あ る 。
﹁聞 く 、 話 す に お け る 対 話 の指 導 ﹂ ( 応 答 の し か た ・依 頼 のし か た ・問 答 の し か た ・注 意 深 く 聞 く ・感 想 を
述 べ合 う た め に ・実 践 上 の 問 題 点 )、 ﹁読 む 、 書 く に お け る 対 話 の指 導 ﹂ ( 読 み を 深 め る た め に ・感 想 を 深 め
る た め に ・み ん な で作 り 出 す た め に ・書 き た いこ と を は っき り さ せ る た め に ・書 き な お し た いこ と を は っき
り さ せ る た め に ・実 践 上 の 問 題 点 )、 ﹁他 教 科 ・領 域 の 中 で の対 話 の 指 導 ﹂ ( 特活 ( 校 内 放 送 ) に お け る対 話 指 導 ・社 会 科 に お け る 対 話 指 導 ・実 践 上 の問 題点 )。
各 実 践 に つい て 、 授 業 前 の研 究 ・学 習 指 導 案 ・授 業 の発 話 記 録 ・研 究 協 議 会 の発 言 記 録 が 収 め ら れ て いる 。 そ
[ 山 元悦子]
のた め授 業 の実 際 と そ れ に基 づ い て協 議 会 で出 さ れ た 問 題 点 が 理 解 し や す い。 実 践 を 通 し て見 え てき た 対 話 指 導 のあ り 方 に つ いて の考 察 や指 導 上 の 工夫 は 、 貴 重 な 成 果 と し て注 目 さ れ る。
﹃ 話 し こと ば 教 育 の 復 興﹄ ( 明治 図 書 / 一九 八 九 年 ) 森 久 保 安 美
Ⅲ 環境条件
(Ⅰ︲ 二章 ・Ⅲ︲一章 )/3 放 送 等 に よ る 話 し こ と ば の学 習 (Ⅰ︲ 二章 )
章 )/3 学 級 にお け る 対 話 ・話 し 合 い (Ⅰ︲ 三 章 ・Ⅱ︲一章 )
1 教 師 の独 話 (o読 rみ 聞 か せ ) コー ス (Ⅰ︲ 三 章 )/2 子 ど も の独 話 ・朗 読 コー ス (Ⅱ︲ 二 章 ・Ⅲ︲二
Ⅱ 学 級 経 営 プ ラ ス国 語 科
み ・作 文 等 の中 の話 し こ と ば の学 習
◎ 話 し こと ば 学 習 の指 導 計 画 (Ⅰ︲一 章 )/1 話 し こ と ば 学 習 中 心 の単 元 (Ⅰ︲ 二章 ・Ⅲ︲一章 )/ 2 読
Ⅰ 国 語 科
話 し こと ば 教 育 の具 体 的 展 開 を 次 のよ う に 描 い て み た 。
著 者 に よ って、 次 のよ う に 説 明 さ れ て いる 。
﹃話 し こと ば 教 育 の プ ログ ラ ム﹄、 ﹃ 話 し こ と ば が育 つ学 級 ﹄、 ﹃ 話 し こ と ば を 磨 く 実 践 ﹄ の三 冊 か ら な る内 容 は 、
て提 案 さ れ た も の であ る。
性 を 本 質 的 に 問 い直 し 、 ﹁他 者 と 向 か い合 い、 自 己 表 現 し つ つ人 間 関 係 を 築 く 力 ﹂ (Ⅰ︲一 七四頁) を中核 と考え
国 語 研 究 会 で活 躍 し て いる 七 人 の教 師 と と も に ま と め た も の であ る 。 多 様 な 実 践 事 例 は 、 話 し こ と ば 教 育 の必 要
本 書 は 、 豊 富 な 現 場 経 験 を 持 ち 、 NH K の国 語 番 組 ﹁こと ば の教 室 ﹂ にも 長 年 か か わ ってき た 著 者 が 、 川 崎 市
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1 言語 環 境 の整 備
(Ⅱ︲ 三 章 ・Ⅲ︲三章 )/2 好 ま し い人 間 関 係 の育 成
自 身 の話 し こと ば の 習 練 (Ⅱ︲ 三章 ・Ⅲ︲三 章 )
(Ⅰ︲ 三 章 ・Ⅱ︲三章 )/ 3 教 師
﹁話 し こと ば 教 育 のプ ラ ン ﹂ (Ⅰ︲一章 ) で は 、 小 学 校 を 低 ・中 ・高 学 年 に わ け 、 そ れ ぞ れ に 、 具 体 的 な 学 習 活
動 が 構 想 さ れ 、 話 し 手 と し て の成 長 、 聞 き 手 と し て の成 長 の見 通 し が 示 さ れ て い る。 ﹁こ と ば が 生 き て 働 く 場 を
大 切 に ﹂、 ﹁子 ど も の 学 習 力 を 支 え る 基 礎 基 本 と し て の聞 く ・話 す 力 を 、 学 習 の 中 に 意 識 的 に 位 置 づ け た い﹂ と い
う 考 え に基 づ く プ ラ ン であ る 。 三 冊 に ち り ば め ら れ た 実 践 事 例 は 、 こ こ で 示 さ れ た プ ラ ン に 位 置 づ け ら れ て い る。
﹁教 材 づ く り ﹃NH K こ と ば の教 室 ﹄﹂ (Ⅰ︲ 二 章 ) で は 、 実 際 に 放 送 さ れ た 内 容 六 例 が そ れ ぞ れ 二 頁 前 後 の簡 潔
な 形 で紹 介 さ れ て いる 。 そ の放 送 を 通 し て、 考 え る こと ば ・感 じ る こ と ば ・人 間 関 係 に 培 う こ と ば を 育 て よ う と す る姿 が 具 体 的 に提 示 さ れ て いる 。
﹁音 読 ・朗 読 の 指 導 ﹂ (Ⅲ︲ 二章 ) で は 、 音 読 と 黙 読 の機 能 の違 いを 踏 ま え た 指 導 の あ り 方 が 示 さ れ て いる 。 話
し こと ば 教 育 が テ ー マ の本 書 で は 、 音 読 ・朗 読 を 中 心 に し て いる が 、 黙 読 と の機 能 の違 いを 踏 ま え た も の であ る と ころに意義が ある。
本 書 の特 色 は 、 話 し こと ば 教 育 の 具 体 的 な 姿 を 、 体 系 的 に 位 置 づ け て示 し 、 な お か つ、 授 業 を 作 り 出 す 過 程 が
伝 わ る よ う に配 慮 さ れ て いる こと で あ る 。 思 い つき の活 動 で構 想 さ れ た も の では な く 、 話 し こ と ば 教 育 史 研 究 の
[ 田中智生]
成 果 を 踏 ま え て 、 未 来 を 構 想 す る姿 勢 で貫 か れ て い る。 具 体 事 例 か ら ア イ デ アを 吸 収 す る こ と も も ち ろ ん でき る
が 、 読 者 が 新 た な 教 材 ・授 業 を 構 想 す る た め に 資 す る内 容 に 、 よ り 大 き な 価 値 が あ る 。
1 ﹃ 群 9読 の授 業 子 ど も た ち と 教 室 を 活性 化 さ せ る﹄ ( 明 治 図 書 / 一九 九 〇 年 ) 高橋 俊 三
一九 七 〇 年 代 か ら 一九 八 ○ 年 代 に か け て徐 々 に戦 後 の音 読 ・朗 読 指 導 の意 義 の見 直 し が 始 ま り 、 一九 八 ○ 年 代
末 に は 、 ﹁音 読 ・朗 読 ブ ー ム ﹂ と 呼 ば れ る ほ ど に活 況 を 呈 す る よ う に な る 。 群 読 は 、 戦 後 、 木 下順 二氏 と ﹁山 本
﹃ 群読 の
安 英 の会 ﹂ に よ って 日本 古 典 の朗 読 の方 法 と し て取 り 上 げ ら れ 上 演 さ れ た が 、 音 読 ・朗 読 指 導 の発 展 と と も に注
目 さ れ 、 授 業 実 践 に広 く 導 入 さ れ て 成 果 を 上 げ る に至 って い る。 そ の契 機 と な った 著 作 の代 表 が 、 本 書 授 業 ﹄ であ った 。
群 読 は 、 ﹁複 数 の読 み 手 に よ る 朗 読 ﹂ と さ れ 、 さ ら に ﹁言 語 の総 合 的 な 活 動 ﹂ と し て、 次 の よう に 述 べ ら れ て い る。
群 読 は 、 国 語 の総 合 学 習 な の で あ る 。 文 字 言 語 と 音 声 言 語 を 結 び 、 理 解 学 習 と 表 現 学 習 を 関 連 さ せ 、 言 語
論 理 と 言 語 感 覚 を 共 に 働 か せ 、 音 声 を 発 す る こ と と 受 け る こ と を 同 時 的 に両 立 さ せ 、 時 に 身 体 言 語 (Body Langu) aを ge も 採 り 入 れ た 、 言 語 の立 体 的 な 学 習 であ る (﹁は じ め に ﹂ 二頁 )。
高 橋 俊 三 氏 は 、 群 読 の意 義 を 、 朗 読 の効 用 に 加 え て 、 ① 分 読 法 を 話 し 合 う こ と に よ る 読 み の 深 ま り− 学 び 合
聞 き 合 い、 の三 点 に認 め て い る。 本 書 は 、 群 読 の実 際 と 理 論 を と お し て 、 群 読 の国 語 教 育 に お け る意 義 と
い、 ② 読 み 合 い、 せ め ぎ 合 う こ と に よ る 読 み の高 ま り− 響 き 合 い、 ③ 他 者 の読 み に触 れ 合 う こと に よ る読 み の広 ま−
可 能 性 を 明 ら か に す る も のと いえ る 。
本 書 の構 成 は 、Ⅰ 群 読 の 展 開 、Ⅱ 群 読 の指 導 技 術 、Ⅲ 群 読 の基 本 と し て の 朗 読 、Ⅳ 群 読 指 導 の理 論 、
と な って いる 。Ⅰ では 、 多 様 な 群 読 の試 み が 実 践 に 基 づ い て 述 べ ら れ て いる 。 多 様 な 試 み は 、 一 群 読 へ の導
入 、 二 動 作 化 と 読 み 、 三 対 の読 み、 四 群 の読 み 、 五 物 語 る読 み 、 六 祈 り と 主 張 の群 読 、 七 台 本 の作
成 と群 読 、 八 古 典 の群 読 、 九 群 読 授 業 の実 際 、 と いう 小 節 の見 出 し によ って も 推 察 で き る 。 こ れ ら の試 み に
( ポ ーズ )、 チ ェ ンジ ・オ ブ ・ペー ス 、 せ め ぎ 合 い、 プ ラ ン の作 成 、 演 出 者 と 出 演 者 、 伴
関 わ る 指 導 技 術 は 、Ⅱ で 言 及 さ れ て い る 。 こ こ で は 、 立 つ姿 勢 と 位 置 、 声 を 当 て る発 声 法 、 ア ク セ ン トと イ ン ト ネ ー シ ョ ン、 調 子 、 間
奏 者 、 聞 く 耳 の育 成 な ど の指 導 技 術 が 具 体 的 に 説 明 さ れ て いる 。Ⅲ ・Ⅳでは 、朗 読 と 群 読 の歴 史 的 展 開 と 理 論 が
述 べ ら れ 、Ⅱ の技 術 と と も に群 読 の実 践 を 支 え るも のと な って い る。 こ のう ち 、Ⅳ で は 、 群 読 に適 し た 教 材 を 見
極 め る こ と が 大 切 であ る と し 、 教 材 化 の観 点 と し て 、 ① 音 声 化 に 適 し た リ ズ ム やう ね り 、② 複 数 の人 物 の登 場 、
③ 語 り 手 の視 点 が 移 り 動 く も の 、④ 内 容 が 叙 情 的 、 さ ら に は 叙 事 的 で あ る も の、 ⑤ 説 明 的 であ る よ り 描 写 的 であ るも の、 と いう 五 点 を 挙 げ 、 ﹁群 読 に 適 し た 教 材 一覧 ﹂ も 掲 げ ら れ て い る 。
本 書 は 、 取 り 上 げ ら れ た 実 践 例 、 指 導 技 術 、 理 論 の いず れ に も 実 践 の機 微 が 反 映 し て い る。 実 践 を と お し て得
[ 渡 辺春 美 ]
ら れ た 知 見 が 詰 ま って いる 。 教 材 例 と そ の群 読 実 践 例 も 豊 富 で あ り 、 ﹁言 語 の総 合 的 な 活 動 ﹂ と し て の群 読 の実 践 に資 す る優 れ た 一書 で あ ると いえ る。
﹃ 音 声 言語 教 育 実 践 史 研 究 ﹄ ( 学 芸 図書 / 一九 九 四年 ) 増 田 信 一
( 明 治 時 代 )︱
以 下 、 そ の主 だ った も のを 挙 げ て おく 。
音 声 言 語 教 育 の芽 ば え の時 代
﹁大 正 六年 に 於 け る 国 語 教 授 の傾 向 ﹂ ( 橋 本 留 喜 )、 ﹃話
心 国語新教授法﹄ ( 峰 地 光 重 )、 山 路 兵 一の ﹁ 自 由 学 習 ﹂ と ﹁相 互 学 習 ﹂ の両 立 、 ﹃ 聴 方 教 育 の原 理 と 実 際 ﹄
方 教授﹄ ( 飯 田 恒 作 )、 ﹁話 方 教 授 の 研 究 ﹂ (田 中 末 広 )、 ﹃ 話 方 教 授 の新 主 張 と 実 際 ﹄ (田中 確 治 )、 ﹃ 文 化中
音 声 言 語 教 育 の静 か な る 前 進 の 時 代 (大 正 時 代 )︱
理論 及実際﹄ ( 与 良 熊 太 郎 )、 ﹃国 語 教 授 撮 要 ﹄・﹃国 語 教 授 法 集 成 ﹄ ( 佐 々木 吉 三郎 )。
﹃話 方 教 授 之 枝 折 ﹄ (横 山 健 三郎 )、 ﹃ 小 学 校 に於 け る 話 し方 の
団 体 の動 向 、 学 校 の刊 行 物 ・書 籍 の梗 概 が 述 べ ら れ て い る。
った 。 本 書 で は 音 声 言 語 教 育 史 を 次 の よ う な 枠 組 み で捉 え 、 そ れ ぞ れ の時 代 で注 目 さ れ る 論 文 ・雑 誌 特 集 ・研 究
が 出 さ れ た こ と は 、当 時 の音 声 言 語 教 育 実 践 を 進 め よ う と し て い る諸 氏 にと って は よ き 手 が か り と な るも ので あ
育 を 進 め る に あ た って 、 こ れま で の国 語 教 育 界 の音 声 言 語 に 関 す る 理 論 書 や優 れ た 実 践 に つ いて俯瞰 し て いる 書
六 年 、 音 声 言 語 教 育 が 再 び 注 目 さ れ 始 め た 時 期 に本 書 を 出 さ れ た の で あ る 。 隆 盛 の兆 しを 見 せ 始 め た 音 声 言 語 教
職 の歩 み の 基 盤 に抱 い て いた こ の信 念 を も と に 、 昭 和 三 〇年 代 前 半 か ら 長 い時 間 を か け て 文 献 収 集 を 行 い、 平 成
り し て いく 基 礎 と な る のだ ﹂ (は し が き ) と いう 思 いを 出 発 点 に し て 教 職 人 生 を 始 め ら れ た 。 増 田 氏 は 自 ら の 教
本 書 の著 者 であ る 増 田 信 一氏 は 、 ﹁音 声 言 語 の 教 育 こ そ が 人 間 性 に 目 覚 め さ せ 、 言 葉 に よ って 感 じ た り 考 え た
20
( 奥 野 庄 太 郎 )。 音 声言語教育 が多角化 した時代
( 昭 和 前 期︶︱
﹃言 語 教 育 の理 論 及 び 実 際 ﹄ ( 遠 藤 熊 吉 )、 ﹃表 現 に生 き る話
方 教 育 の実 際 ﹄ ( 雨 宮 精 蔵 )、 ﹃ 国 語 生 活 人 へ の話 聴 教 育 新 機 構 ﹄ ( 平 野 武 夫 )、 ﹁話 方 指 導 の組 織 と そ の実 践
工作﹂ ( 谷 口徹 美 )、 ﹃ 聴方 話方教授 細目と教授 資料﹄ ( 峰 地 光 重 )、 国 民 学 校 令 に お け る ﹁話 し方 ﹂ の重 視 、
﹁は な し こ と ば の会 ﹂ の創 立 、 ﹃話 言 葉 と そ の教 育 ﹄ ( 山口
﹁話 方 教 育 の本 質 の明 確 化 ﹂ ( 輿 水 実 )、 ﹃国 民 学 校 話 方 教 育 の実 践 形 態 ﹄ ( 飛 田多 喜 雄 )。 経 験 主 義 の 音 声 言 語 教 育 の時 代 (昭 和 中 期 )︱
喜 一郎 )、 ﹃国 語 カ リ キ ュラ ム の基 本 問 題﹄ ( 増 田 三 良 )、 ﹃ 話 し こ と ば の学 習 指 導 ﹄ ( 近 藤 国 一)、 ﹃ 共 通語 の
﹁戦 後 の話 し こと ば主 義 の 批 判 と 接 近 ﹂ ( 輿 水 実 )、 ﹁話 し
学 習 指 導 法 ﹄ (上 甲 幹 一)、 国 立 教 育 研究 所 の学 力 水 準 調 査 、 国 立 国 語 研 究 所 の ﹁話 す 力 の発 達 ﹂ 調 査 。 音 声言語 教育が軽 視さ れた時 代 ( 昭 和 後 期 )︱
こ と ば の教 育 を ど う す る か ﹂ ( 森 岡 健 二 )、 ﹁話 し コト バ 教 育 ﹂ (大 久 保 忠 利 )、 ﹃ 国 語 科 対 話 の指 導 ﹄ ( 倉澤
栄 吉 )、 日 本 国 語 教 育 学 会 誌 特 集 ﹁こ れ か ら の話 し こと ば 教 育 ﹂、 ﹁聞 く こと ﹂ ﹁ 話 す こと ﹂ の指 導 計 画 ( 大
﹃群 読 の 授 業 ﹄ (高 橋 俊 三)、 私 の 考 え る 音 声 言 語 学 習 の あ り
村 は ま )、 朗 読 指 導 を 推 進 し よ う と す る 動 き 。 音 声 言 語 教 育 の 新 展 開 を め ざ す 平 成 時 代︱
方 、 ﹃わ か り や す く 話 す た め の指 導 の工 夫 ﹄ ( 奈 良 県 国 語 教 育 研 究 会 )。
本 書 を 読 め ば 、 音 声 言 語 指 導 のあ り 方 に つ い て国 語 教 育 史 上 で 展 開 さ れ て き た さ ま ざ ま な見 方 ・考 え 方 のあ ら
[ 山 元 悦 子]
ま しを 知 る こと が でき る 。 ま た 、 巻 末 に は音 声 言 語 教 育 実 践 史 文 献 リ ス ト が 掲 載 さ れ て い る 。 これ か ら 音 声 言 語 教 育 実 践 に取 り 組 も う と す る 人 にと って格 好 の水 先 案 内 と な る書 で あ る。
﹃ 育 つ ことば 育 て る こと ば ﹄ ( 東 洋 館 出 版社 / 一九 九 六年 ) 白 石 壽 文
と 修 練 の レ ベ ルを 確 認 す る こと が でき る 。 ﹁話 し こ と ば 教 育 体 系 ﹂ の表 は 、 五 つ の レ ベ ル を 横 軸 と し 、 体 と 技 と
は 、 教 師 と 学 習 者 が 共 に 目 指 す べ き 目 標 を 指 し 示 し 、体 系 化 さ れ て い る 。 こ の図 を 見 つめ る だ け で、 自 分 の学 び
達 の筋 道 でも あ る 。 意 識 か ら 知 識 へ、 さ ら に は 常 識 ・良 識 を 経 て見 識 に 至 る自 律 的 言 語 文 化 生 活 者 の各 レ ベ ル
(一二 八 頁 ) は 、 歴 史 的 な 展 開 を 教 師 と いう 個 体 の成 長 に 置 き 換 え た 見 取 り 図 であ り 、 同 時 に 、 児 童 ・生 徒 の 発
課 題 で も あ った 。 二箇 所 に 挿 入 さ れ た ﹁自 律 的 言 語 文 化 生 活 者 ﹂ の図 (八 頁 ) と ﹁話 し こ と ば 教 育 体 系 ﹂ の表
国 語 科 教 育 が 、 こと ば の教 育 で な け れ ば な ら な いこ と が 、 ひ と 目 で わ か る 。 そ れ は ま た 、 国 語 科 教 育 の歴 史 的
結章 育 つこ と ば 育 て る こと ば
第 三 章 言 語 の教 育− そ の 二 話 し こと ば ・生 活 こ と ば
第 二章 言 語 の教 育− そ の 一 書 き こと ば
第 一章 言 語 の教 育 と し て の基 本 的 課 題
序章 言語文 化を指標 とす る
目 次 と 図 と 表 を 見 つめ 、内 容 を 思 い出 し な が ら 、 みず か ら の こ れ ま でと こ れ か ら を 捉 え 直 し て み る のも よ い。
ろ な本 であ る。本 書 は、座 右 の書 では な い。臨 床 的 で 実 践 的 な 取 り 組 み に見 通 し を 与 え てく れ る 、行 動 の書 であ る。
試 み に 、本 書 を 常 に 携 え て 、折 り あ る ご と に ペ ージ を 開 き 、読 ん で み る 。B5 判 、二 一八 頁 。持 ち 歩 く に も 手 ご
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心 の話 聴 手 段 を 縦 軸 と し た 、 六 年 間 (あ る いは 九 年 間 ) に わ た る 目 標 到 達 ス ケ ジ ュー ルと 言 って も よ い。 計 十 六 十五 つの学 習 に よ って 、 自 律 的 言 語 文 化 生 活 者 へ の階 梯 を 見 通 す こと が でき る 。
ラ ンダ ム に ペー ジ を 開 き 、 不 謹 慎 な が ら拾 い読 み を し ても 、 ど の ペ ー ジ にも 学 習 者 の生 活 こと ば ( 方 言 +共 通
語 ) の実 態 が イ ン ト ネ ー シ ョ ン に至 る ま で克 明 に記 録 さ れ 、 自 律 的 言 語 文 化 生 活 者 を 育 て る た め の指 導 者 (著
者 )の仕 事 が具 体 的 な こ と ば ( 教 育 話 法 )と し て閲 覧 で き る 。 体 と 技 と 心 が 、文 字 こと ば と し て肉 声 化 さ れ て いる。
も ち ろ ん、 本書 は 、 時 間 を 確 保 し 、 腰 を 据 え て精 読 ・熟 読 す べき 内 容 を 有 す る 。 初 め か ら 終 わ り ま で、 こ と ば
の教 育 に 関 す る著 者 の情 熱 と 論 理 と 見 識 に貫 か れ て いる 。 サ イ ド ライ ン を 引 き 、 付 箋 紙 を 貼 り 、 自 分 用 の索 引 を 作 り 、手 帳 に書 き 抜 い て 、 日 々 の課 題 と す る 。 ・︹確 か さ と 豊 か さ︺ 児 童 ・生 徒 の耳 を 音 声 言 語 文 化 で豊 か に育 て た い。
・︹信 念 ︺ 方 言 で 、 日 常 の生 活 こ と ば そ のま ま で 、 堂 々と 言 う べき こ と が 言 え る 人 間 を 育 て、 そ の こ と ば に 耳 を 傾 け る人 間 を 育 て る 。
・︹正 対 ︺ 授 業 で は 、 "わ か ら な い" と いう こ と を 、 わ か ら な い のは 何 か を 、 は っき り さ せ る べき だ 。
・︹更 新 ︺ 日 常 生 活 で 、 我 々 が ご く 自 然 に 使 って いる こと ば 、 即 ち 生 活 こと ば を 、 話 し こ と ば 教 育 の内 容 及 び 方 法 と し て活 用 す る 。
・暖 か く 、 か つ強 靭 な 話 し こ と ば の力 を 発 揮 でき る 児 童 ・生 徒 の育 成 に心 を 砕 き た い。
[ 楢 原義顕]
著 者 か ら 教 え 子 に手 渡 さ れ た 一冊 の ﹃ 育 つ こと ば 育 て る こ と ば ﹄ に は 、 そ の見 開 き に 、 ﹁子 ど も と と も に 大 き く 育 つ教 師 に な って 下 さ い。 白 石 壽 文 ﹂ と し た た め ら れ て いる 。
﹃ 教 育 話 法 入門 ﹄ ( 明 治 図書 / 一九 九 六 年 ) 野 地 潤家
に、 教 育 話 法 の基 盤 と し て の日 常 話 法 ・生 活 話 法 の問 題 に触 れ ら れ て いる 。 教 育 者 の資 質 と し て の教 育 話 法 の重
法 へ の期 待 ・必 要 性 ・問 題 点 が 、 高 校 生 、 教 育 実 習 生 、 現 場 教 員 の こ と ば を も と に 明 ら か に さ れ て いる 。 さ ら
Ⅰ は 、 いわ ば 教 育 話 法 と そ の研 究 の 原 論 と いう べき 内 容 であ る。 教 育 話 法 の研 究 課 題 が 提 示 さ れ 、 ま た 教 育 話
Ⅲ 教 育話法 の熟 達過程
教 育話法 の習 得過程
教 育話法 の基 本課題
本 書 は 、 次 の よう な 三 つの章 か ら な って い る。
達 のた め の手 が かり 、 よ り ど こ ろ と し て 、 本 書 を 位 置 づ け る こ と が で き る 。
こと を 念 じ な が ら 、 本 ﹃教 育 話 法 入 門 ﹄ を 送 り た い﹂ と あ り 、 教 育 話 法 の重 要 性 を 前 提 に 、 そ の 習 得 ・習 熟 ・熟
を 少 し お ろ す こと が で き ると いう 思 いが あ る 。 教 育 話 法 の 習得 、 習 熟 、 熟 達 を 目 指 し て いる 方 々 に 、 お 役 に 立 つ
﹁ま え が き ﹂ に は 、 ﹁本 書 が 専 門 話 法 と し て の教 育 話 法 へ の案 内 役 を 果 た す こ と が でき れ ば 、 著 者 と し て肩 の荷
子 ど も た ち の学 校 生 活 そ のも のに 機 能 す る と いう 点 で 、 き わ め て重 要 な 意 味 を 持 つ。
﹁教 育 話 法 ﹂ と は 、 本 書 の著 者 に よ れ ば 、 公 的 生 活 に 立 つ教 育 者 と し て の専 門 話 法 ・職 業 話 法 であ る 。 そ れ は 、
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Ⅱ Ⅰ
要性が確 認され る。
Ⅱ は 、 教 育 話 法 の習 得 に つ い て、 教育 実 習 を 中 心 に、 実 習 生 自 身 の意 識 、 実 習 で受 け た 指 導 、 観 察 によ って 得
た 知 見 な ど か ら 考 察 し て いる 。 ﹁現 場 か ら の助 言 ﹂ と し て 、 現 職 の教 員 の教 育 話 法 に つ い て の 一般 的 助 言 も 列 挙
さ れ 、 結 果 と し て 、 教 育 話 法 のあ り 方 が 、 教 え る 側 か ら の意 識 に基 づ い てま と め ら れ て いる と いえ る 。 教 育 実 習
を 中 心 と し た 習 得 過 程 を 一人 の学 生 の 記 録 か ら 明 ら か にす る 個 体 史 的 手 法 も 、 手 堅 いも の であ る。
Ⅲ は 、 一九 八 四年 以 降 の比 較 的 新 し い論 考 を 新 た にま と め た 章 であ る 。 ﹁対 話 の でき る 子 を 育 て る に は ﹂、 ﹁人
間 関 係 を ひ ら く 話 し こ と ば の指 導 ﹂、 ﹁﹁こと ば の し つけ ﹂ と 教 師 の 話 し こ と ば ﹂、 ﹁教 師 と し て の話 し 方 の修 練 ﹂
な ど 、 教 師 の話 し 方 と 子 ど も の話 し こ と ば の学 習 と が 密 接 に 関 係 し て い る こと が う か がえ る 論 述 ・構 成 であ る 。
全 体 を 通 し て 、 教 育 話 法 が 子 ど も の育 ち に 欠 く こと が で き な い視 点 であ る こと 、 ま た そ れ は 単 な る ﹁説 明 技
術 ﹂ や ﹁教 授 技 術 ﹂ で は な い こと 、 さ ら に そ の向 上 に は 生 活 話 法 の自 覚 が 必 要 であ る こ と が 、 著 者 の意 識 の基 底 にあ る と 考 え ら れ る 。
著 者 に は先 行 し て ﹃ 教育 話法 の研究﹄ ( 柳 原 書 店 / 一九 五 三 年 ) が あ り 、 本 書Ⅰ ・Ⅱは 前 著 を そ の ま ま ふ ま え
て い る 。 前 著 で はⅠ ・Ⅱ以 降 、Ⅲ 教 育 話 法 の 実 践 方 法 、Ⅳ 教 育 話 法 の深 化 過 程 、 と 続 い て お り 、Ⅳ で は 、
﹁教 育 話 法 の典 型 ﹂、 ﹁教 育 話 法 の 理 想 ﹂ な ど の項 目 の延 長 に 、 教 育 話 法 のあ り 方 が ﹁ 救 い の話 法 ﹂ と いう こ と ば
で示 さ れ て いる 。 こ の改 編 に よ って 、 ﹁入 門 ﹂ と いう 本 書 の性 格 が 明 確 に な って いる と 考 え ら れ る。
教 育 者 にと って の教 育 話 法 の重 要 性 は 、 こ れ ま でも 常 に 認 識 さ れ てき た 。 し か し 、 研 究 的 に 広 く 開 拓 さ れ てき
[三 浦 和 尚 ]
た 領 域 で は な か った 。 ﹃教 育 話 法 の研 究 ﹄ か ら 約 四 十 年 の時 を 経 て、 ﹁入 門﹂ と 改 め て 世 に問 う た 著 者 の意 図 を 重 く 受 け 止 め た い。
( 音 声 言 語 教 育 ) に 関 す る鋭 覚 的 な 問 題 提 起 の書 で あ る。 そ れ は 、 以 下 の壮 大 な 部 立 てを 見 て
﹃ 聞 く こと と 話 す こと の教 育 学 ﹄ ( 東 洋 館 出 版 社 / 一九 九 六年 ) 安 直 哉
と 言 え よう 。 ① 中等 教育 で は、言 語生 活場 面 が学校 か ら社会
② 初 等 教 育 に お いて は 、 ﹁音 声 国 語 自 体 の育 成 ﹂ を 主 目 標 に し な い読 む こ と の 教 育 ・書 記 表 現 の教 育 、 国 語 以
一九 六 三年 か ら 一九 八 八 年 ま で を 三 期 に 分 け て裏 づ け よ う と し て いる 。
( 勤 労 の場 、 余 暇 の 場 ) へと 拡 大 す る 過 程 であ る と 仮 設 し 、
に 拠 った り し て探 る 。 下 記 の よう に、 いず れ も 、 現 代 イ ギ リ ス の国 語 教 育 の動 向 を 浮 き 彫 り にし よう と し たも の
続 く 第 二 部 で は 、 イ ギ リ ス の音 声 国 語 教 育 の動 向 を 、 歴 史 的 に光 を 当 てた り 、 帰 納 的 に 整 理 し た り 、 全 国 調 査
への見 直 し を 示 そ う と し て いる 。
来 と 展 開 、 明 治 二 八 年 の ﹁高 等 女 学 校 規 程 ﹂ に ﹁話 方 ﹂ が 掲 げ ら れ た 意 義 の 二点 に 絞 って 、 日本 音 声 国 語 教 育 史
第 一部 に お い ては 、 西 尾 実 博 士 の音 声 国 語 の形 態 分 類 (対 話 ・問 答 ← 会 話 ・討 議 ← 公 話 ・討 論 と いう ) の由
第 三部 聞 く こ と の教 育 と イ ン タビ ュー の学 習材 化
第 二部 イギ リス音 声国語 教育 の動向
第 一部 日本音声 国語教育史
も 明 ら か で あ る。
話 し こ と ば 教 育
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外 の教 育 実 践 の な か で、 ﹁音 声 国 語 教 育 に 対 す る認 識 と 自 覚 ﹂ が ど う 貫 か れ て い るか を 究 明 し て いる 。
③ さ ら に 、 一九 八 二年 に 試 み ら れ た イ ギ リ ス 初 の初 等 教 育 修 了 時 の オ ー ラ シ ー 調査 に関 し て、 設 計 方 法 ・調 査
方 法 ・課 題 ( 絵 を 言 い表 す こ と 、 絵 に 基 づ いた 物 語 の構 成 、 あ る 虚 構 の物 語 に つ い て思 い出 し 解 釈 す る こと 、 指
示 の遂 行 、 個 人 の体 験 談 を 語 る こと な ど 九 種 ) を 検 討 し 、 出 題 す る 側 の オ ー ラ シ ー 観 を 解 明 す る。
第 三部 に お いて は 、 最 新 のイ ギ リ ス の ﹃ 全 国 共 通 国 語 科 教 育 課 程 ﹄ に お い て ﹁話 す こと と 聴 く こ と ﹂ が な ぜ 一
領 域 に統 合 さ れ た か を 探 る 。 聞 く こ と の定 義 を ﹁あ る瞬 間 に話 を し て いな い側 の 人 (=聞 き 手 ) が 行 う 表 現 に よ
って明 示 さ れ る 、 聞 き 手 の活 動 ﹂ と す る 。 そ こ で浮 か び 上 が る イ ンタ ビ ュー の学 習 材 化 に つ い て、 五 社 の中 等 国
語 教 科 書 を 検 討 し て 、 イ ン タ ビ ュー の練 習 、 教 室 内 の演 習 、 教 室 内 外 で の実 習 と いう 三 つ の活 動 群 を 見 いだ し て い る。 そ の上 で 、 ど う いう 展 望 を も って進 め る か に 言 及 す る 。
日 英 の国 語 教 育 を 照 ら し 合 わ せ て 、 話 し こ と ば 教 育 実 践 の今 日 的 課 題 を 見 いだ し 、 改 善 に 寄 与 し た いと いう 熱
( 音声 国語教育) に
意 で貫 か れ て い る 。 一 一の論 述 の展 開 や 著 者 の 引 き 出 し た 結 論 に 疑 念 の湧 く 人 も 、話 し こと ば 教 育 研 究 に は、 ま
だ 解 明 さ れ て いな い幾 多 の 課 題 が あ る と 気 づ か さ れ る に違 いな い。 そ し て 、 話 し こ と ば 教 育 対 す る 思 いを 奮 い立 た せ ら れ る は ず で あ る 。
﹃一般 教
戦 後 の話 し こ と ば 教 育 実 践 の基 底 を な し た (1) 西 尾 実 博 士 の ﹁対 話 ﹂ ・﹁会 話 ﹂・﹁公 話 ﹂ と いう 談 話 生 活 の
分 類 が 、 ﹁音 声 国 語 教 育 上 の目 標 論 のう ち に 設 定 さ れ た も の ﹂ と いう 論 断 も 、 ( 2 ) 淵 源 が リ ンド ネ ル著
授 学 ﹄ の中 の ﹁教 式 の分 類 に 至 る ﹂ と いう 帰 結 も 、 ( 3 ) そ れ を ﹁音 声 国 語 に お け る 目 標 と 方 法 の混 同 の歴 史 ﹂
[ 前田真 証]
と 見 な す こ と も 、 衝 撃 的 で あ る 。 改 め て 西 尾 実 博 士 の 一言 一句 を 読 み直 し た く な り 、 話 し こ と ば 教 育 史 研 究 を 考 え 直 す 契 機 を 与 え て く れ る書 物 と 言 え よ う 。
﹃ 声 に出 し て読 も う !︱ 朗 読 を 科 学 す る︱ ﹄ ( 明 治書 院/ 一九 九 六年 ) 杉 藤 美 代 子
筆 者 が 朗 読 音 声 に つ いて 一つ 一つ実 験 を し た 結 果 を つか って、 実 際 はど のよ う に表 現 さ れ て い る か 、 何 が 問
こ のた め に は 、 た だ ﹁朗 読 ﹂ の テ ク ニ ック の話 だ け では 、 役 に た ち そ う も あ り ま せ ん。 そ こ で 、 こ こ では
で 、 し か も 、 な る べく わ か り やす く 、 説 得 力 のあ る話 し 方 を す る よ う に し た いも の です 。
ば 、 聞 き 手 は そ こ に か か れ て い る こ と の内 容 の大 部 分 が わ か って し ま う く ら い で す 。 私 た ち は 内 容 が 豊 か
し て本 を よ み ま し ょう 。 話 し こと ば の 土 台 と し て 読 み ふ か め ま し ょう 。 も し 学 校 の先 生 が 的 確 に 朗 読 す れ
子 供 た ち に 読 み の楽 し さ を 、 心 の豊 か さ を つた え た い。 そ のた め にも 、 大 人 た ち が 、 お 母 さ ん が 、 声 にだ
杉 藤 は 、 本 書 で 次 の よう に 提 案 し て い る。
も の で あ る。 同 時 に、 パ ソ コン に よ って正 確 に 計 測 さ れ る 発 話 時 間 や間 (ポ ー ズ ) の時 間 も 研 究 の中 核 で あ る 。
に よ って、 視 覚 的 に捉 え ら れ る曲 線 等 と し て 表 示 し 、音 声 言 語 研 究 を 客 観 的 科 学 研究 と し て進 歩 さ せ る と い った
杉 藤 の研 究 スタ イ ルを 約 言 す れ ば 、 従 来 経 験 的 に捉 え ら れ て き た イ ン ト ネ ー シ ョ ン等 を パ ソ コ ンを 用 いた 処 理
も 看 過 し て は な ら な い重 要 な 著 作 で あ る 。
の で は な く 、 長 年 の音 声 言 語 研 究 に 裏 打 ち さ れ た も ので あ った 。 現 在 の音 読 や読 み 聞 か せ のブ ー ムを 考 え る上 で
と の本 格 的 な 提 案 と し て 、 本 書 の先 見 性 がう か が わ れ る 。 し かも そ の提 案 は 、 時 流 に の った 思 い つき のよ う な も
齋藤 孝 の ﹃ 声 に出 し て読 み た い日 本 語 ﹄ が 出 版 さ れ た のは 、 二〇 〇 一年 の九 月 であ る 。 ﹁ 声 に出 し て 読 む ﹂ こ
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題 点 か 、 ど う か え れ ば よ いか 、 そ れ ら を 、 な る べ く わ か り やす く 説 明 す る こ と に し ま す 。 こ の点 が 、今 ま で
の本 と は ま った く ち が う 点 です 。 ま た 、 今 ま で は 、 科 学 的 に と り あ げ ら れ る こ と が稀 であ った ポ ー ズ (間 )
と 話 の速 さ の問 題 を 多 く あ つか って いる と こ ろ に も こ の本 の特 色 が あ り ま す ( 序 )。
本 書 に は 、 ま さ に研 究 に 裏 打 ち さ れ た 音 声 言 語 に 関 す るす ぐ れ た 知 見 が 、 随 所 に ち り ば め ら れ て いる 。 そ れ は そ のまま音声言 語指導 に示唆を与え るも のである。
朗 読 で は 、 ま ず こ れ ら の母 音 を 明 瞭 に し た いも の です (九 頁 )。
朗 読 で は 読 み 手 が 無 意 味 な 強 調 を いれ 、 ま た は 極 端 に力 を いれ る と 聞 き 手 は お ち つ い てき い て い ら れ ま せ ん ︵二 七頁 ︶。
私 た ち は 息 継 ぎ を 文 法 的 な く ぎ り と だ いた いあ わ せ る 傾 向 が あ り ま す ︵六 三 頁 ︶。
ポ ーズ は 話 し 手 に と って は 主 と し て息 継 ぎ のた め の 生 理 的 時 間 です 。 こ のポ ーズ の時 間 は 聴 き 手 に と って
も 話 を 理 解 す る た め の重 要 な 時 間 で す 。 こ れ は 、 聴 き 手 が 短 期 記 憶 を す ば や く 復 習 し て話 を 理 解 す る た め
︵ 和 泉 書 院 ︶ は 、 音 声 言 語 研 究 を 志 す 者 にと って 、 必 読 ・必
の、 リ ハー サ ル の時 間 と な って いま す ︵一七 〇 頁 ︶。
ま た 、 杉 藤 美 代 子 の ﹃日 本 語 音 声 の研 究 ﹄ 全 七 巻
[ 余 郷裕次]
携 の書 で あ る 。 国 語 教 育 の研 究 ・実 践 に 携 わ る 者 も 、 音 声 言 語 教 育 に 言 及 し た 第 七 巻 ﹃教 育 への提 言﹄ ︵一九 九 九 年 ︶ は 、 ぜ ひ 一読 願 いた い。
﹃ 共 生 時 代 の 対 話 能力 を育 て る国 語 教 育 ﹄ ( 明 治 図 書/ 一九 九 七年 )
福 岡 教 育 大学 国 語科 ・福 岡 教 育 大 学 附 属 中学 校− 福 岡 ・久 留 米 ・小 倉−
( 執 筆 者 は 山 元 悦 子 ) に お け る 対 話 能 力 の モ デ ル化 の仕 方 に あ る 。 認 知 心 理 学 や関 連 性 理 論 の
考 え 方 を 取 り 入 れ な が ら 、 対 話 の心 理 過 程 を モ デ ル 化 し た 上 で 、 ( 1 ) 対 話 コ ミ ュ ニケ ー シ ョン への意 欲 、 ( 2)
第 三 は 、 第 一部
の確 か さ に結 実 し て いる 。
力 モ デ ル に基 づ い て い る点 な ど に 両者 の関 係 性 の強 さ がう か が わ れ 、 そ の こ と が 両 方 向 か ら の分 析 に 耐 え る 本 書
対 話 事 例 の分 析 や 指 導 の段 階 性 ・系 統 性 の 理 論 化 が 実 践 に基 づ い て いる点 、 実 践 の目 標 設 定 等 が 次 に 述 べ る学
第 二部 対話能力 育成 への実践事例
第 一部 対話能力 の育成を 目指 して−基本的 な考え方を 求め て−
本書 は、次 のように理論と 実践 の二部から構 成され る。
第 二 は 、 理 論 的 実 証 的 な 研 究 と 実 践 的 な 研 究 と を 、 継 続 的 に 、 し か も 密 接 に 結 び つけ て行 って いる 点 に あ る 。
に軸 を 据 え る こと を 貫 い て い て、 多 く の成 果 を 生 ん で いる 。
用 語 は、 いく つか の異 な る側 面 を 表 す 概 念 と し て 用 いら れ る が 、 本 書 は 、 一対 一の即 時 的 な やり と り と いう 側 面
第 一は 、 話 す こ と ・聞 く こ と の領 域 の中 でも 、 全 体 を 通 じ て ﹁対 話 ﹂ に焦 点 化 し て いる 点 に あ る 。 対 話 と いう
本 書 の特 徴 と 意 義 を 次 の 四点 に 見 出 す こ と が で き る 。
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聴 解 力 、 (3 ) 展 開 力 、 ( 4 ) 話 表 力 、 (5 ) 対 話 に 関 す る 認 識 や 方 略 的 知 識 と いう 対 話 の学 力 モ デ ル が 設 定 さ れ
て いる 。 こ れ ら は 、 ﹁対 話 の価 値 を 知 る ﹂、 ﹁相 互 融 和 的 な 対 話 が で き る﹂、 ﹁相 互 啓 発 的 な 対 話 が でき る ﹂ と い っ
た 学 習 や 指 導 の段 階 性 を 示 す 指 標 と も 組 み 合 わ さ れ 、 非 常 に 現 実 的 な 学 習 モ デ ルと し て 再 提 示 さ れ る 。 ま た 、 対
﹃ 教 育 科 学 国 語 教 育 ﹄ 第 五 六 〇 号 、 一九 九 八 年 六 月 号 、 九 七 頁 )。
話 が 成 立 す る た め の核 に な る 部 分 を ﹁展 開 力 ﹂ と し て設 定 し た と こ ろ に、 学 力 モ デ ルと し て の発 展 を 見 出 す こと が でき る ( 浜 本 純 逸 によ る本 書 の書 評
第 四 は 、 第 二部 に お け る実 践 事 例 が 指 導 の段 階 性 や豊 か さ を 備 え て い る点 に あ る。 そ の こと は 、 次 の よ う な 第 二部 の構 成 を 見 る と よ く わ か る 。
第 一章 対話能 力 の根底を 耕す学 習指導 の実 際
第 一節 日常 的継続的 な指導事例 /第 二節 対話 の価 値 に気づ かせ る指導事 例 第 二章 対話能 力そ のも のを育 てる学習指導
第 一節 社会 的通じ合 いのた め の対話 の学 習指導 /第 二節 文 化的通 じ合 いのため の対話 の学習指導 第 三章 対話能 力を活 用す る学 習指 導 の実際
研 究 者 によ る考 察 と と も に 第 二部 を 通 し て 八 つ の実 践報 告 が 収 め ら れ て いる が 、 例 え ば 、 中 学 一年 段 階 で の対
話 の価 値 に気 づ か せ る学 習 の単 元 名 ﹁夢 を 語 ろ う ﹂ と 、 中 学 三年 段 階 で の 文 化 的 通 じ 合 いの た め の学 習 の単 元 名
[ 間瀬茂夫]
﹁イ ン タ ビ ュー︱ 若 者 言 葉 に つ い て ど う 思 いま す か ? ﹂ を 比 べ て み ても 、 実 践 の段 階 性 が 端 的 にう か が え る 。 実
践 報 告 に 収 載 さ れ て いる台 本 教 材 や対 話 事 例 も 、 臨 場 感 に あ ふ れ て い て大 変 参 考 に な る 。
﹃ ﹁話 す ・聞く ﹂ の実 践 学 ﹄ ( 三省 堂 / 二〇 〇 二年 ) 三浦 和尚
( 1 話 し 手 も 聞 き 手 も と も に育 つ場 / 2 聞 く 姿 勢 ・態 度 の育 成 / み 聞 か せ﹂ を 用 いた 学 習 指 導 の実 際 )
Ⅴ 章 音声言語 学習指導 の基底
Ⅳ 章 活動型 の学習 の評価
3 ﹁ 読
Ⅲ 章 聞 く こと の学 習 指 導 のあ り 方
Ⅱ 章 話 し 合 い学 習 と コミ ュ ニケ ー シ ョ ン
Ⅰ 章 音声言語 教材と教材 研究
本 書 の全 体 構 成 は 次 のと お り であ る (Ⅲ章 以 外 の下 位 見 出 し を 省 略 )。
章 の3 で 四十 六 頁 を 充 て て具 体 的 に 提 示 ・考 察 し て いる 。
の実 践 者 と し て の 歩 み に、 研 究 者 と し て の今 日 的 考 察 を 重 ね る 。 例 え ば 、 小 学 五 年 生 へ の実 験 的 授 業 を 試 み 、Ⅲ
る と し て も 、 研 究 者 と 実 践 者 に 二分 さ れ る 一種 の分 担 主 義 発 想 の超 克 は 、 つと に 指 摘 さ れ て いる 。 著 者 は 、自 ら
践 が さ ら に理 論 を 深 いも の に 誘 う 、 両 者 の相 補 的 一体 化 を 志 向 す る。 ﹁実 践 学 ﹂ と 呼 称 す る こ と の是 非 が 問 わ れ
が 述 べら れ て いる 。 教 科 教 育 の研 究 に勤 し む 者 は等 し く 、 教 育 科 学 と し て教 科 理 論 が 、授 業 実 践 を 導 き 、 そ の実
﹁現 場 実 践 と交 流 す る 研 究 と し て 、 実 践 理論 研 究 と し て の ﹃ 実 践 学 ﹄ を 位 置 づ け た い﹂ と 、 ﹁は じ め に﹂ で意 図
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﹁読 み聞 か せ ﹂ のあ り 方
( 理 念 ) と ﹁読 み聞 か せ ﹂ 授 業 ( 事 実 ) と が 、 児 童 の ﹁話 す ・聞 く ﹂ 力 の いか な る 面
( 1 ) 指 導 のね ら
( A 児 童 の
を 育 て 、話 し こと ば 教 育 の ﹁実 践 学 ﹂ た る所 以 が 論 証 さ れ 、 一般 化 さ れ て いる のか 、 項 目︱ い/ ( 2) 指導 の実際
から抽 出す
( A 学 習 指 導 案 、 B 学 習 指 導 記 録 、 C 板 書 事 項 )/ ( 3)学 習者 の反応
記 述 と 感 想 、 B 観 察 者 と し て の担 任 教 諭 の考 察 )/ ( 4)考 察 ( A 授 業 者 の意 図 、 B 成 果 )︱ る。
( 1 ) に ﹁聞 く 力 に つ い て の学 習 者 の意 識 の高 揚 、 そ の た め の学 習 指 導 の方 法 の 開拓 が 今 日 的 な 課 題 ﹂、 ﹁音 声
( 通 読 ・精
言 語 そ のも のを 教 材 化 し 、 聞 く 活 動 を 導 入 す る こと が 必 要 ﹂ の前 提 確 認 後 、 ﹁教 師 の読 み 聞 か せ に よ る音 声 を 教
材 と し 、 物 語 を 味 わ い楽 し む こ と を ね ら い﹂、 基 本 的 な 学 習 過 程 と し ては 、 ﹁読 む こ と に お け る 三 読 法
読 ・味 読 ) を 聞 く こ と に 応 用 し 、 物 語 に 描 か れ て る 世 界 のイ メ ー ジ 形 成 を 促 し ﹂、 ﹁作 品 を 文 学 と し てと ら え 味 わ
いな が ら 、 そ の過 程 で 聞 く こ と に つ いて の意 識 化 が でき る よ う な 学 習 を 組 織 し た い﹂ と いう 研 究 者 の実 践 姿 勢 が
述 べら れ て い る。 キ ー ワ ー ド ﹁聞 く 力 ・読 み 聞 か せ ・読 み分 け ・メ モ ・表 題 読 み ﹂ も 提 示 さ れ て いる 。
( 2 ) B が 時 間 経 過 に即 し てT C (ナ ン バ ー 付 き ) で文 字 化 さ れ 、 作 品 も 教 師 の読 み 聞 か せ 部 分 が 明 示 さ れ て
い る 。 (3) A に ワ ー ク シ ー ト の 書 き 込 み と 後 日 の感 想 を 四 十 人 全 員 分 と 、 B に担 任 の コ メ ン ト が 紹 介 さ れ て い
る。 ( 4 ) B に ﹁聞 く 力 に つ い て 、 子 ど も た ち が 自 覚 的 に と ら え 得 た こと ﹂、 ﹁内 容 的 な 価 値 を 伴 う 充 実 し た 言 語
活 動 に よ って こ そ 、 態 度 や 技 能 は身 に つく こ と ﹂、 ﹁子 ど も た ち は 聞 く こと が 好 き であ り 、 音 声 表 現 を 教 材 と す る
こと が 可 能 であ る こと ﹂ と し てま と め ら れ て いる 。 担 任 に よ る 日 常 的 実 践 授 業 と の検 討 が 待 た れ る 。
[ 白 石寿 文 ]
﹁実 践 学 ﹂ た る に は 、 こ のよ う な 大 胆 で積 極 的 な ﹁臨 時 的 な 実 験 授 業 研 究 ﹂ と と も に 、 ﹁継 続 的 な 実 践 授 業 研 究 ﹂ の積 み重 ね お よ び 考 察 か ら のさ ら な る提 言 が 不 可欠 であ ろう 。
第 四章 書く こと の指 導 研 究
﹁作 文 ﹂・﹁綴 り 方 ﹂・「書 く こ と ﹂ の変 遷
わ が 国 で ﹁作 文 ﹂ と いう 言 葉 が 教 育 用 語 と し て初 め て 用 いら れ た のは ﹁改 正 教 育 令 ﹂ ( 明 治 一二年 ) に基 づ く
﹁小 学 校 教 則 綱 領 ﹂ 第一一 条 の ﹁読 書 ヲ分 テ読 方 作 文 ト ス﹂ であ る 。 後 、 ﹁改 正 小 学 校 令 ﹂ (明 治 三 三年 ) に 基 づ
く ﹁小 学 校 令 施 行 規 則 ﹂ で ﹁読 ミ 方 、 書 キ 方 、 綴 リ 方 ハ各 々 ⋮ ⋮ ﹂ と さ れ 、 国 語 科 の内 容 が ﹁読 ミ 方 ﹂ ・﹁書 キ
方 ﹂・﹁綴 リ 方 ﹂ の 三 分 野 に統 一さ れ た 。 こ のと き か ら 、 敗 戦 を 経 た ﹁学 習 指 導 要 領 国 語 科 編 ﹂ ( 昭 和 二 二年 ) に
お い て 再 び ﹁作 文 ﹂ と いう 言 葉 が 用 い ら れ る ま で 、 ﹁綴 り 方 ( 綴 方 )﹂ と いう 用 語 が 用 いら れ 広 く 受 け 入 れ ら れ
( 試 案 )﹂ (昭 和 二 六 年 ) で は 、 ﹁聞 く こと ﹂ ・﹁話 す
た 。 ﹁学 習 指 導 要 領 国 語 科 編 ﹂ (昭 和 二 二年 ) では 、 国 語 科 の領 域 が ﹁話 し 方 ﹂・﹁作 文 ﹂・﹁読 み 方 ﹂・﹁ 書 き方﹂ の 四領 域 と さ れ た が 、 そ の 後 の ﹁小 学 校 学 習 指 導 要 領 国 語 科 編
こと ﹂・﹁読 む こと ﹂・﹁書 く こと ﹂ が 国 語 科 の 四 領 域 と さ れ る と と も に 、 ﹁書 く こと ﹂ の中 に ﹁作 文 ﹂ と ﹁ 書 き方 (書 写 )﹂ が 含 め ら れ 、 こ の考 え 方 は 、 現 在 ま で続 いて いる 。
以 上 が 、 用 語 面 か ら の 歴 史 的 変 遷 であ る 。 そ れ は 、 大 き く 、 ﹁作 文 ← 綴 り 方 ← 作 文 ← 書 く こ と ﹂ と いう 流 れ と し てと ら え る こと が でき る。
﹁作 文 ﹂・﹁綴 り方 ﹂・﹁書 く こ と ﹂ と いう 用 語 は 、 一方 で 、 こ の よ う な 歴 史 的 な 変 遷 の そ れ ぞ れ の時 期 に用 いら
れ た 用 語 で あ る と と も に 、 ま た 一方 で 、 現 在 の教 育 の場 で行 わ れ て いる 多 様 な 文 章 表 現 教 育 のう ち の、 いく つか の考 え 方 を 表 す 用 語 と も 言 う こと が でき る 。
そ れ ぞ れ の 時 期 に 理 論 的 ・実 践 的 に成 立 し 展 開 し た 優 れ た 成 果 が 現 在 も 発 展 的 に 継 承 さ れ 、 ﹁作 文 ﹂・﹁綴 り
方 ﹂・﹁書 く こと ﹂ と いう 用 語 と と も に 、 最 新 の教 育 理 論 ・実 践 と し て取 り 上 げ ら れ て いる の であ る 。
﹁作 文 ﹂・﹁綴 り 方 ﹂・﹁書 く こ と ﹂ の 概 念
﹁作 文 ﹂・﹁綴 り 方 ﹂・﹁書 く こと ﹂ と いう 三 つの 言 葉 は、 全 く 異 質 の事 柄 を 指 す の で は な い。 学 習 者 に 文 章 表 現
の指 導 を す ると いう 意 味 で は 、 三者 と も に共 通 す る 。 し か し 、 そ の目 的 や意 義 、 方 法 な ど に、 言 い換 え れ ば 、 何
のた め に 、 何 を 、 な ぜ 、 ど のよ う に し て書 か せ る の か、 指 導 のあ り 方 や指 導 の際 の重 点 の置 き 方 等 に、 多 少 の違
い が見 ら れ る。 そ の多 く は 、 基 本 的 な 立 場 や 歴 史 的 な 経 過 、 あ る いは 、 支 え た 人 た ち の考 え 方 等 に よ る違 い であ
る が 、 いず れ に せ よ 、 そ れ ら は 、 対 立 的 にと ら え ら れ る べ き も の で は な い。 逆 に 、 そ の違 いが 、 わ が 国 の 文 章 表
現 指 導 を 多 様 で 豊 か な も の に し 、 優 れ た 成 果 を あ げ る大 き な 契 機 に な った の で あ る。 し た が っ て、 いた ず ら に そ
の違 い のみ を 強 調 し た り 、 特 定 の立 場 に 固 執 し た り す る こ と は 避 け た いも の で あ る。 指 導 の必 要 に 応 じ て 、 ま た
学 習 者 のあ り よ う に 応 じ て 行 う 適 切 な 指 導 が 、 結 果 と し て、 ﹁作 文 ﹂・﹁綴 り 方 ﹂・﹁書 く こと ﹂ の いず れ か の指 導
にな る と 考 え た い。 そ れ ぞ れ の、 ど のと ら え 方 が 優 れ て いる か 等 と 考 え る こ と は でき な いし 、 ま た 、 そ の 必 要 も
( composi io tn) の 訳 語 と 考 え ら れ て い る 。 そ れ は 、 一ま と ま り
な い。 いず れも が 、 そ れ ぞ れ の立 場 や 考 え 方 に 基 づ いて 、 豊 か で 個 性 的 な 理 論 や 実 践 を 作 り 上 げ 、 結 果 と し て優 れ た 成 果 を あ げ て いる か ら で あ る。
﹁作 文 ﹂・﹁綴 り 方 ﹂・﹁書 く こ と ﹂ の内 容 ﹁ 作 文 ﹂ と いう 用 語 は 、 普 通 に コ ン ポ ジ シ ョ ン
の 文 章 を ﹁取 材 ← 構 想 (構 成 ) ← 記 述 ← 推 敲 ← 評 価 ﹂ と いう 文 章 表 現 過 程 に 即 し て作 り 上 げ て いく 、 文 字 通 り
﹁文 を 作 る﹂ こと の指 導 であ る 。 学 習 者 は 、 こ の よ う な ﹁作 文 ﹂ の 指 導 に よ っ て、 ﹁何 を ﹂、 ﹁ど う いう 順 序 で ﹂、
﹁ど う いう 言 葉 遣 いや 表 現 に よ って﹂ 書 き 上 げ 、 そ れ を ﹁ど う 読 み 直 し﹂、 ﹁ど う 価 値 付 け る か ﹂ を 段 階 的 に 学 ぶ
こ と が でき る 。 こ こ に見 ら れ る 考 え 方 は 森 岡 健 二 の ﹃文 章 構 成 法 ﹄ (一九 六 三 ) に 代 表 さ れ る 。 こ のよ う な 指 導
のう ち 、 と く に近 年 、 ﹁長 く 書 か な く ても 良 い﹂ ま た は ﹁短 く 書 か な け れ ば な ら な い﹂ と す る こと によ って、 学
( 構 成 )﹂ 段 階 を 重 点 的 に 取 り 上 げ る イ ン ベ ン シ ョ ン (inven )tのi指o導 n
習 者 に 気 軽 に書 か せ る と と も に文 や 文 章 に 凝 縮 性 を 持 た せ る こ と を 目 指 す 短 作 文 の指 導 、 文 章 表 現 の指 導 にお い て 最 も 大 切 に さ れ る べき ﹁取 材 ← 構 想
で あ る創 構 指 導 等 が 注 目 さ れ て い る。 そ の 理論 ・実 践 は 、 大 西 道 雄 に よ る ﹃ 短 作 文 指 導 の方 法 ﹄ (一九 九 五 ) や ﹃創 構 指 導 の研 究 ﹄ (一九 九 〇) に 見 る こ と が でき る 。
﹁綴 り 方 ﹂ と いう 用 語 は 、 戦 前 に は ﹁作 文 ﹂ と 同 義 の 言 葉 と し て 用 いら れ て き た 。 ﹁文 を 綴 る ﹂ こ と は ﹁文 を 作
る ﹂ こと で も あ る か ら であ る。 し か し 、 文章 表 現 活 動 は ﹁書 く ﹂ と いう 言 語 活 動 であ ると と も に、 生 活 の基 礎 的
な 能 力 で あ る 思 考 力 や 認 識 力 を 広 げ 深 め る活 動 でも あ る。 そ れ は 、 ﹁書 く ﹂ こ と に よ って 、 学 習 者 は 、 考 え 、 振
り 返 り 、 と ら え 直 し 、 整 理 す る こと が でき る か ら で あ る。 こ の よ う な 機 能 に着 目 す る と き 、 ﹁書 く ﹂ こ と の指 導
は 、 文 章 表 現 能 力 を 育 て るだ け で は な く 、 思 考 力 や 認 識 力 、 す な わ ち 生 活 の基 礎 能 力 を 培 う も のと も な る 。 ﹁作
文 ﹂ が 、 ﹁生 活 ﹂ と 切 り 離 す こと の で き な い、 表 裏 一体 の関 係 にあ る も のと と ら え ら れ 、 ﹁生 活 指 導 ﹂ や ﹁生 活 改
善 ﹂ のた め の 一つ の方 法 と も な る か ら で あ る 。 文 章 表 現 能 力 を 育 む も のと し て 出 発 し た ﹁作 文 ﹂ が 、 ﹁綴 り 方
( 綴 方 )﹂ と 呼 ば れ る に つれ て 、 こ の よう な 、 よ り 広 い意 義 や 機 能 を も 併 せ 持 つも のと 位 置 づ け ら れ る よ う に な っ
た 。 そ の よ う な ﹁綴 り 方 ﹂ の中 か ら 、 よ り ﹁生 活 ﹂ に重 き を 置 く ﹁生 活 指 導 のた め の綴 り 方 ﹂ や ﹁生 活 問 題解 決
の た め の綴 り 方 ﹂ が 生 ま れ た 。 いわ ゆ る ﹁生 活 綴 り 方 ﹂ の誕 生 で あ る 。 こ の ﹁生 活 綴 り 方 ﹂ は 、 昭 和 初 年 代 に 興
隆 し 、 第 二次 世 界 大 戦 中 の弾 圧 ( 生 活 綴 り 方 事 件 ) に よ って 一時 消 滅 し たも の の、 戦 後 、 国 分 一太 郎 の ﹃新 し い
綴 方 教 室 ﹄ (一九 五 一) の刊 行 を 一つ の契 機 と し て復 興 ・興 隆 し た 。 こ の生 活 綴 り 方 の考 え 方 に立 つ優 れ た 著 作
の 一つと し て 、亀 村 五郎 ﹃子 ど も を は げ ま す 赤 ペ ン ︽評 語 ︾ の書 き 方 ﹄ (一九 七 九 ) が あ げ ら れ る 。
﹁書 く こと ﹂ と いう 用 語 は 、 ﹁ 作 文 ﹂・﹁綴 り 方 ﹂ の 二 つの 考 え 方 だ け で は な く 、 よ り 広 く 、 ﹁出 来 事 や事 件 を 描
( 作 品 ) を 書 か せ る た め だ け で はな く 、 書 く 活 動 そ の も のを も 目 的 と す る 考
写 す る ﹂、 ﹁感 想 や 意 見 を 記 録 す る﹂、 ﹁メ モ を 書 き と め る ﹂、 ﹁登 場 人 物 や 主 人 公 に手 紙 を 書 く ﹂ 等 の活 動 の全 て を 含 む も の であ る 。 一ま と ま り の文 章
﹃ 作 文 指 導 の課 題 と 方 法 ﹄ (一九 九 六 ) 等 が あ る が 、 いず れ も 多 彩 な 指 導
え 方 と も と ら え ら れ る 。 こ の考 え 方 に よ る著 作 に は 、青 木 幹 勇 ﹃第 三 の書 く ﹄ (一九 八 五 )、 中 洌 正 発 ﹃国 語 科 表 現 指 導 の 研 究 ﹄ (一九 八 六)、 中 西 一弘
の 場 と 方 法 が 提 言 さ れ て い る。 情 報 教 育 や 総 合 的 な 学 習 と の 関 連 等 、 こ れ か ら の 発 展 の期 待 さ れ る領 域 であ る 。
[ 菅原 稔]
る。
﹃ 新 し い綴方 教 室 ﹄ ( 日本 評 論 社 / 一九 五 一年 ) 国 分 一太 郎
( 復 刻 版 ﹁教 師 の友 ﹂ 別 巻 、 桐 書 房 所 収 ) に十 二回 に わ た って連 載 さ れ た 論 稿
生 活綴方 的教育 方法﹂ が増
の ま ま の こ と を か いた 文 筆 的 表 現 、 作 った の で は な く 生 ま れ た も の 、 そ れ を こ そ 、 わ た く し た ち は 心 か ら 愛
生 活 と 文 章 と い った い のも の 、 た く ま ず し てう ま れ る自 由 な 文 章 、 子 ど も た ち が 、 ほ ん き に な って、 あ り
必 要 は な か った の だ ﹂ と いう ふう に 対 立 さ せ る こ と に よ って 、 つぎ の よ う に ﹁綴 方 の精 神 ﹂ に つ い て 述 べ て い
った の で は、 ぶ ち こ わ し に な って し ま う 。 綴 方 で よ い のだ 。 よ か った のだ 。 な に も 、 わざ わ ざ 作 文 と い いか え る
ん と いう 殺 風 景 な な ま え であ ろう !﹂、 ﹁﹃生 活 を 綴 る﹄ と い った と き のう れ し い気 持 は ﹃生 活 を 作 文 す る﹄ と い
力 で あ った 。 国 分 一太 郎 は 、 そ のな か で、 ﹁つく り ご と を す る と いう 気 分 が こめ ら れ て いる ﹂ ﹁作 文 ﹂ と は 、 ﹁な
﹃ 新 し い綴 方 教 室 ﹄ の巻 頭 にか か げ ら れ た 第 一話 ﹁綴 方 、 こ の よ いも の ﹂ は 、 戦 後 の生 活 綴 方 運 動 興 隆 の原 動
補 さ れ て、 新 評 論 か ら 再 版 さ れ る こと と な った ( 奥 付 は 四月 一日 )。
年 二月 に刊行 され ( 奥 付 は 二 月 二 八 日 )、 翌 年 に は 、 第 二十 一話 ﹁ま と め と 展 望︱
﹁綴 方 の復 興 と 前 進 のた め に ﹂ を 母 胎 と し 、 大 幅 な 増 補 加 筆 を 経 た のち 、 初 版 五 千 部 が 日 本 評 論 社 よ り 昭 和 二六
﹁教 育 新 報 ﹂ 誌 お よ び 後 続 の雑 誌
育 実 践 の総 括 であ る と と も に 、 戦 後 の ﹁新 教 育 ﹂ に 対 す る批 判 の 書 でも あ った 。 本 書 は 、 昭 和 二 四 年 八 月 か ら
﹃ 新 し い綴 方 教 室 ﹄ は 、 昭 和 五年 度 (一九 三 〇 ) か ら 八年 間 に お よ ぶ国 分 一太 郎 自 身 の小 学 校 現 場 に お け る 教
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し て き た のだ 。 そ れ を よ む 若 いよ ろ こ び に 、 胸 を と き め か し て き た のだ った 。 だ か ら 、 わ た く し た ち は 、
(一四 頁 )。
﹁作 文 ﹂ と い う こ と ば が 、 つ か わ れ て い よ う が い ま い が 、 こ の 綴 方 の 精 神 だ け は 、 い つ ま で も 、 ま も り つ づ け て いき た い と お も う
国 分 一太 郎 は 、 ﹁あ り の ま ま の こと ﹂ を ﹁あ り のま ま に ﹂ ﹁く わ し く ﹂ 書 いた 文 章 、 す な わ ち ﹁現 実 の世 界 か
ら 、 題 材 を つか ん で、 そ れ を 具 体 的 に か く ﹂ ﹁リ ア リズ ム の態 度 ﹂ を 、 ﹁書 く こ と ・綴 る こと ﹂ に求 め 、 ﹁生 活 の
現実 を 題 材 と し て、 真 実 な も のを 発 見 さ せ 、 認 識 さ せ て いく 意 識 的 な 人 間 形 成 の過 程 ﹂ す な わ ち ﹁歴 史 の進 歩 の
方 向 に 目 を む け た 正 し い物 の考 え 方 、 行 動 の し 方 を す る よう な 、 社 会 的 人 格 に 発 展 さ せ て いく こと ﹂、 つま り は
﹁子 ど も の世 界 観 の基 礎 を つく って いく ﹂ こと に 綴 方 教 育 の 目 標 を お き 、 よ り 広 い意 味 で の コト バ の教 育 を めざ
し た 。 いわ ゆ る ﹁概 念 く だ き ﹂ も そ の 一環 で あ り 、 国 分 一太 郎 は 、 ﹁コ ト バ だ け で 、 よ う り ょう よ く ま と め て し
ま う 文 章 ﹂ や ﹁口 先 だ け ﹂ の ﹁心 にも な い モ ンキ リ ガ タ の カ ザ リ 言 葉 ﹂ で は な く 、 ﹁生 活 の事 実 を つ め た コト
バ﹂、 ﹁真 に生 き 生 き と し た 、 真 実 味 のあ ふ れ た コト バ ﹂ を つか わ せ る こ と に、 そ の最 も 重 要 な 意 義 を 見 出 し て い た。
[ 田中俊弥 ]
であ り 、 国 語 教 育 よ り も 戦 後 の社 会 科 や 生 活 教 育 のあ り 方 を 念 頭 に お いて書 か れ た 点 に、 本 書 の評 価 に か か わ る
﹃新 し い綴 方 教 室 ﹄ は 、 当 初 、 コ ア ・カ リ キ ュ ラ ム批 判 を 目 的 と し た ﹁教 科 研 究 ﹂ の立 場 か ら 構 想 さ れ た も の
争 点 が あ る 。
﹃ 文章構成法﹄ ( 至 文堂 / 一九 六 三年 ) 森 岡 健 二
文 字 ・表 記
用語
文法
効 果 的 な 文 ︱ 文 の構 造 ︱
正 し い文 ︱ 文 の構 造 ︱
段落
ア ウ ト ライ ン
主 題 の展 開︱ 材 料 の配 列︱
主 題 の展 開
主題
文章 を書く手 順
﹁学 習 事 項 の 明 確 化 ・体 系 化 ﹂ に 関 し て、 今 な お 学 ぶ と こ ろ の多 い研 究 書 の 一つ であ る。 第 一部 の構 成 を 示 す 。
り 正 し く 効 果 的 に 文 章 が 作 成 でき る こ と を め ざ し た 著 書 で あ る。同 時 に 、国 語 教 育 にと って ﹁書 く こ と ﹂に お け る
本 書 は 、西 洋 で長 い伝 統 を も つ ﹁コ ン ポ ジ シ ョン 理 論 ﹂を 日本 語 の文 章 上 で実 現 し て み せ る こと で 、だ れ も が よ
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調 査 報 告= リ ポ ー ト の作 成
こ れ を み ると 、 最 初 に ﹁文 章 を 書 く 手 順 ﹂ と し て コン ポ ジ シ ョ ン理 論 に よ る 文 章 作 成 の概 説 が な さ れ 、 最 後 に
( 語 句 ・語 彙 )﹂← ﹁文 字 ・表 記 ﹂ と 、 文 章 作 成 に お け る 一つひ と つ
﹁調 査 報 告= リ ポ ー ト の作 成 ﹂ と し て文 章 作 成 の実 際 が 述 べ ら れ て い る 。 そ し て、 こ れ ら を は さ む よ う に 、 ﹁主 題 ﹂← ﹁ア ウ ト ライ ン﹂← ﹁段 落 ﹂← ﹁文 ﹂← ﹁用 語
の学 習事 項 が そ の具 体 的 過 程 に 沿 っ て丁 寧 に 取 り あ げ ら れ て いる 。 そ し て 、 そ れ ぞ れ の学 習 事 項 は そ れ ぞ れ の段 階 で さ ら に 下位 項 目 に細 分 化 さ れ 、 ど う 学 べ ば よ いか が 丁 寧 に詳 述 さ れ て いる 。
と こ ろ で、 こ う し た コ ンポ ジ シ ョ ン理 論 に つ い て、 森 岡 氏 は 次 のよ う に 述 べ て いる 。
コ ン ポ ジ シ ョ ンは 、 そ の名 の 示 す 通 り 、 ﹁構 成 ﹂ と いう 点 か ら 組 織 さ れ た 文 章 表 現 の体 系 で、 思 考 も 言 語
も 文 字 も 符 号 も 、 表 現 過 程 に 働 く す べ て の要 素 が 、 そ の体 系 にと り い れ ら れ て い る。 ( 中略 )す なわち 、 コ
ンポ ジ シ ョ ンで は ﹁構 成 ﹂ と いう 観 点 か ら 表 現 過 程 が 著 し く 体 系 化 さ れ て い る こと 、 こと ば つ か いだ け は な
し て い て 、 対 象 が 文 学 的 文 章 より 遙 か に広 が って いる こと 、 た ん な る文 章 談 義 で な く 、 教 育 ・指 導 ・学 習 な
く 思 考 法 の 問 題 が 大 き な 比 重 を 占 め る こと 、 効 果 的 な コミ ュ ニケ ー シ ョ ン のた め と いう 目的 意 識 が は っき り
ど の実 際 的 な 目 的 と 直 結 し て いる こと な ど で あ る (三 七 五 ・三 八 六 頁 )。
国 語 教 育 に 大 き な 示 唆 を 与 え た 本 書 (コ ンポ ジ シ ョ ン 理 論 )だ が 、こ こ にも 述 べ ら れ て いる よ う に ﹁表 現 過 程 を
著 し く 体 系 化 ﹂し た せ いで 、文 章 表 現 に お け る 一つ の技 術 論 ・ 方 法 論 と し て の面 が 際 立 ち す ぎ た 面 が あ った 。 し か
し 、こ こ に 同 時 に 述 べら れ て い る よう な ﹁思 考 法 ﹂ の問 題 、﹁コ ミ ュ ニケ ー シ ョ ン﹂の問 題 、広 が り を も った ﹁文 章
ジ ャ ン ル﹂ の 問 題 な ど は 、 今 日的 な 目 か ら見 て も 丁 寧 に 学 び 直 す べき 要 素 を多 く 内 在 さ せ て いる 。 [ 児玉 忠]
﹃ 子ど も を はげ ます 赤 ペ ン ︽評 語︾ の書 き方 ﹄ ( 百合 出 版 / 一九 七 九 年 ) 亀 村 五 郎
関 わ る か に つ い て述 べ た も の であ る 。 そ の構 成 は 次 の通 り で あ る 。
第 一章 な ぜ赤 ペ ンを に ぎ る の か / 第 二章
赤 ペ ン で何 が 伸 び る の か / 第 八 章 子 ど も と 教 師 の心 の動 き と 赤 ペ
赤 ペ ン は い つ書 く か / 第 十 章 赤 ペ ンと 父 母
だ ろ う 。 な か でも と く に注 目 さ れ る の は 、 第 六 章 の ﹁だ れ に で も 書 け る赤 ペ ン十 一か 条 ﹂ で あ る 。 そ のす べ て を
目 配 り を 広 く 本 格 的 か つ体 系 的 に 構 成 し て い る。 日 記 指 導 で の筆 者 の豊 か な 経 験 を 踏 ま え て こそ の構 成 と いえ る
る 作 文 へ の評 語 ﹂ と いう 、 一見 た んな る 技 術 論 ・方 法 論 にも み え る内 容 を 、 著 書 に ま と め る にあ た って、 筆 者 は
に 関 わ る 指 導 者 の負 担 と 工夫 の問 題 、 第 十 章 は 指 導 に よ る 保 護 者 と の 関 わ り 、 が 述 べ ら れ て い る 。 ﹁赤 ペ ン に よ
導 の内 容 論 と 方 法 論 、 第 七 章 では 学 力 論 、 第 八章 では 評 語 を つけ ら れ る 側 と つけ る側 か ら の意 義 、 第 九 章 は指 導
第 一章 で指 導 の 原 論 が 述 べ ら れ 、 第 二章 で は指 導 の観 点 、 第 三 ・第 四 章 で は 指 導 の 対象 、 第 五 ・第 六 章 で は 指
ン /第 九 章
で も 書 け る 赤 ペ ン 十 一か 条 / 第 七 章
記 や自 由 作 文 な ど に書 く 赤 ペ ン /第 四 章 絵 日 記 の赤 ペ ン/ 第 五 章 計 画 的 指 導 の赤 ペ ン /第 六 章 だ れ に
赤 ペ ン で 、 何 を ほ め た り 、 は げ ま し た り す る のか / 第 三章 日
本 書 は 、 筆 者 の長 年 の ﹁日 記 指 導 ﹂ の実 績 を も と に 、 指 導 者 が 子 ど も の文 章 に対 し て ﹁評 語 ﹂ と いう 形 でど う
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示 す と 、 次 の と お り であ る 。
1 ね ら いを も って、 ま と を し ぼ る/ 2 子 ど も の顔 を 目 の前 に/ 3 子 ど も の名 前 を 入 れ て/ 4 は ず か
し が ら ず 、 気 ど ら ず / 5 い つも の こ と ば 、 話 し か け の書 き 方 で/ 6 よ いと こ ろを み つけ て ほ め る / 7
楽 し く 、 わ か り や す く / 8 "く わ し く 書 け " は 、 く わ しく な い/ 9 赤 ペ ン は 、 欄 外 に も 書 く /10 子 ど も のま ね と 赤 ペ ン/ 11 書 か な い子 ど も の赤 ペ ン
冒 頭 の ﹁1 ね ら いを も って 、 ま と を し ぼ る﹂ で は、 子 ど も の 文 章 を み て 一度 に そ の欠 点 を あ れ こ れ 指 摘 し て
も 指 導 効 果 が 上 が ら な いこ と が 述 べ ら れ て いる 。 子 ど も の文 章 と 長 く 関 わ ってき た力 量 あ る指 導 者 な ら では の指
摘 であ る 。 そ し て 、 こ れ が 冒 頭 に置 か れ て いる こと の意 味 も 重 く 受 け と め て み た いと こ ろ であ る 。
二番 目 以 降 も 、 ﹁子 ど も の顔 ﹂、 ﹁子 ど も の名 前 ﹂ に 着 目す べ き こと が 指 摘 さ れ 、 ﹁は ず か し が ら ず 、気 ど ら ず ﹂、
﹁い つも の こ と ば 、 話 し か け の書 き 方 ﹂、 ﹁ほ め る ﹂、 ﹁楽 し く わ か り や す く ﹂ と い った 心 構 え や 方 法 な ど 、 対 話 性 あ る ﹁評 語 ﹂ の実 際 へと 続 い て いく 。
こ こ か ら わ か る のは 、 赤 ペ ン で書 か れ る ﹁評 語 ﹂ が 、 た ん に文 章 に対 し て だ け で は な く 、文 章 の背 後 に 息 づ く
﹁子 ど も の育 ち ざ ま ﹂ に 向 け ら れ て い る こ と であ る 。 こう し た ﹁評 語 ﹂ を 書 く 力 は 一朝 一夕 に つく も の で は な い
[ 児 玉 忠 ]
だ け に 、 私 た ち は こ の著 書 か ら そ の エ ッセ ン スを 学 ぶ こ と が でき る 。 同時 に 、 こと ば によ る 人 と 人 と の関 わ り こ
そ が 子 ど も た ち の こと ば を 育 て て いく と い った 、 筆 者 の指 導 哲 学 も あ わ せ て 学 ぶ こと が でき る 。
﹃ 短 作 文 指導 の方 法︱ 作 文 の基 礎 力 の 完 成︱ ﹄ ( 明治 図書 / ︱九 八○ 年 ) 大 西 道 雄
( パ ラ グ ラ フ) 程 度 の部 分 情 報 を 組 織 し て、 全 体 情 報 と す る も の で あ
の指 導 原 理 と し て 、 単 純 化 、 凝 縮 化 (全 体 性 )、 省 力 化 の 三点 を 指 摘 し 、 そ の内 容 と 方 法 を 創 出 す るた め の基 礎
第 一章 で は 、 短 作 文 指 導 の意 義 や そ の 研究 の現 状 を 踏 ま え な が ら 、 そ の基 礎 理 論 を 探 究 し て い る 。短 作 文 指 導
第 四章 短作 文指導 の実 際
第 三章 短作 文指導 の方 法と評価
第二 章 短 作 文 指 導 のカ リ キ ュラ ム
第 一章 短作 文指導 の理論的基礎
本 書 の構 成 は 、 以 下 の通 り であ る 。
る と 考 え る な ら ば 、 文 章 情 報 構 成 の基 礎 力 は 、 短 作 文 力 で あ る と 言 う こ と が で き る (一一頁 )。
いも の で は な い。 長 いも の で も 、 段 落
現 代 人 が 、 日 常 的 な 生 活 行 動 の中 で 産 み 出 す こ と を 求 め ら れ て いる 文 章 情 報 は 、 分 量 的 に は 、 そ ん な に 長
に は 、 次 のよ う な 、 日 常 の言 語 生 活 に即 し た 考 え 方 が あ る。
は、 ﹁ 作 文 基 礎 力 の養 成 と 、 目 的 と 場 に 応 じ た 、 短 い文 章 を 書 く 力 の育 成 ﹂ (一一四 頁 ) に あ る 。 そ の目 的 の背 景
本 書 は 、 短 作 文 指 導 のあ り 方 が 、 理 論 と 実 践 の両 面 か ら 体 系 的 ・系 統 的 に考 究 さ れ て いる 。 短 作 文 指 導 の目 的
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理 論 と し て、 文 章 論 ・基 本 文 型 論 、 コ ン ポ ジ シ ョン 理論 、 一般 意 味 論 、 レ ト リ ック の四 理 論 を 検 討 し て いる 。 第
二章 で は 、 短 作 文 指 導 カ リ キ ュラ ム のあ り 方 を 考 究 し て い る。 短 作 文 の短 く 書 く と いう 特 質 か ら 、 そ の指 導 の ユ
ニ ット は こ ま 切 れ にな らざ るを え な い。 ゆえ に 組 織 化 さ れ た 指 導 カ リ キ ュ ラ ムが 求 め ら れ る 。 ま ず 、 カ リ キ ュ ラ
ム 編 成 の原 則 を 、 言 語 能 力 の発 達 、 語 ・文 ・文 章 の系 統 、 学 習 ・指 導 の 場 の系 統 の三 点 と し 、 次 に 、指 導 展 開 の
類 型 を 、 独 立 的 展 開 、 従 属 的 展 開 、 独 立 ・従 属 併 合 的 展 開 の 三 つと し て いる 。 さ ら に 、 短 作 文 で培 う べ き 基 本 的
指導事 項を 、 ︿ 言 語 要 素 ﹀・︿コ ンポ ジ シ ョ ン﹀・︿レト リ ック ・ 一般 意 味 論 ﹀・︿﹁場 ﹂ に 応 じ て 書 く こ と の技 能 ﹀ の
四 系 と 、 ︿語 ﹀・︿文 ﹀・︿文 、 文 章 (段 落 )﹀ の 三 レ ベ ル に 分 け 、 そ の内 容 を 発 達 段 階 に 即 し て 具 体 的 に 述 べ て い
る 。 第 三章 で は 、 短 作 文 指 導 理 論 の 具 現 化 を 図 って い る。 短 作 文 指 導 の方 法 を 、 ﹁学 習 ・指 導 の場 の設 定 に よ る
方 法 類 型 ﹂ と ﹁書 く こ と 条 件 設 定 に よ る方 法 類 型 ﹂ の 二点 か ら 、 具 体 的 か つ網 羅 的 に 示 し て い る。 さ ら に、 評 価
の方 法 と し て 、 具 体 的 指 摘 法 、 添 削 法 、 採 点 法 、 分 析 的 評 価 法 、 評 語 法 、 客 観 テ スト 法 を 取 り 上 げ つ つ各 々 の特
質 を ま と め て いる 。 第 四 章 で は 、 小 ・中 ・高 等 学 校 に お け る 短 作 文 指 導 の実 際 を 示 し て い る 。 こ の事 例 を 通 し て 、 短 作 文 指 導 の実 際 に つ いて 理 解 を 深 め る こと が でき る よう に な って いる 。
本 書 の ね ら いは 、 日 常 の言 語 生 活 に根 ざ し た 作 文 の基 礎 力 の完 成 に あ る 。 そ れ は 今 日的 課 題 でも あ る 。 短 作 文
指 導 に は 、 気 軽 に書 く 習 慣 を つけ る こと が でき る 、 評 価 と 処 理 が 手 早 く でき る と い った長 所 が あ る 。 魅 力 的 か つ
実 践 的 な作 文 指 導 のあ り 方 を 追 究 し よう と す る教 師 に と って 必 読 の書 で あ る。 な お 、 著 者 は 、 本 書 を 展 開 さ せ た
[ 中 西 淳]
﹃ 短 作 文 の授 業 ﹄ ( 国 土 社 / 一九 九 一年 )、 ﹃作 文 の基 礎 力 を 完 成 さ せ る短 作 文 指 導 ﹄ (明 治 図 書 / 一九 九 一年 )、 ﹃ 短 作 文 の評 価 と 処 理 ﹄ ( 明 治 図 書 / 一九 九 四年 ) を す で に 出 版 し て いる 。
﹃ 第 三の 書 く﹄ ( 国 土 社/ 一九 八六 年 ) 青 木 幹 勇
見 出 そ う と し て いる (一五 頁 )。
見 直 す と と も に 、 次 の よう な ﹁﹃第 三 の書 く ﹄ と そ の体 系 化 ﹂ に よ って 、 そ の 活 用 の 場 を 、 よ り 広 く 多 様 な 中 に
こ こ で は 、 国 語 科 の学 習 指 導 の中 で 、 日 常 、 何 気 な く 行 わ れ て いる ﹁書 く こと ﹂ に 着 目 し 、 そ の意 義 や 機 能 を
の意 義 や 機 能 、活 用 の場 や 機 会 な ど に 光 を あ て よ う と す る 。
の ﹁書 く こ と ﹂ を ﹁第 三 の書 く ﹂ と し て位 置 づ け 、 ﹁読 む た め に 書 く 書 く た め に読 む ﹂ た め のも のと し て、 そ
わ れ て い る﹂ と と ら え る 。 本 書 ﹃第 三 の書 く﹄ で は 、 こ の よう な 、 す で に 行 わ れ て い る ﹁書 写 ﹂ や ﹁ 作 文﹂以外
く ﹂ と し 、 芦 田恵 之 助 を は じ め と す る ﹁心 あ る 教 師 た ち の 授 業 の 中 ﹂ に は 、 こ れ ら と は 違 う ﹁﹃ 書 く こと﹄ が行
った 。 青 木 幹 勇 は 、 こ のよ う な 従 来 の ﹁書 く こと ﹂ に 含 ま れ る ﹁視 写 ﹂ を ﹁第 一の書 く ﹂、 ﹁作 文 ﹂ を ﹁第 二 の書
これ ま で の 国 語 科 に お いて 、 ﹁書 く こ と ﹂ の指 導 と し て取 り 上 げ ら れ る の は 、 一般 に ﹁書 写 ﹂ と ﹁作 文 ﹂ で あ
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﹁基 礎 ﹂ と し て の ﹁視 写 ﹂ と 、 ﹁展 開 ﹂ と し て の ﹁メ モ を と る ﹂・﹁聴 写 す る ﹂ 等 を 含 む ﹁読 む た め に書 く ﹂ か
ら 、 ﹁書 替 え ﹂ を 中 心 と し た ﹁総 合 ﹂ と し て の ﹁書 く た め に 読 む ﹂ ま で 、 国 語 科 の全 て の 領 域 に か か わ る も の と
し て ﹁書 く こと ﹂ が 取 り 上 げ ら れ て いる 。 そ れ は 、 いわ ば ﹁書 く こ と ﹂ を ﹁書 く こ と ﹂ と 意 識 し な い で行 う 指 導
であ り 、 ま た 本 当 の意 味 で の、 豊 か で 個 性 的 な ﹁読 む こ と ﹂ を 成 り 立 た せ る た め の指 導 でも あ った 。
[ 菅原 稔]
今 求 め ら れ る 国 語 科 授 業 のあ り 方 を 示 す も のと し て 、 ま た あ る べき 国 語 科 授 業 の 典 型 を 示 す も のと し て、 本 書 を 高 く 評 価 す る こ と が でき る 。
﹃ 国 語 科 表 現 指導 の 研究 ﹄ ( 渓 水 社 / 一九 八 六 年 )中 洌 正堯
を 表 現 にう つし て いく 試 み で あ る 。
特 に 、Ⅱ 章 に、 ﹁叙 述 ﹂ の考 察 で は 野 地 潤 家 博 士 の ﹃ 源 平 鏡 ﹄ を 、 ﹁推 考
言 の山 野 ﹄ を 取 り 上 げ て いる 。 こ の部 分 を と お し て 、 ﹁す ぐ れ た 文 章 表 現 ﹂ の読 み 方 ま で も 学 ぶ こ と が でき る 。
( 敲 )﹂ の考 察 で は藤 原与 一博 士 の ﹃ 方
た 文 章 表 現 の 具 体 に そ く し て 把 握 し よ う と す る も の で あ る 。/ 第 三 節 は 、 第 一節 第 二 節 の考 察 で得 た も の
(Ⅱ) 文 章 表 現 そ のも の の 原 理 ・基 本 を 、 ﹁叙 述 ﹂ ( 第 一節 ) と ﹁推 考 ( 敲 )﹂ ( 第 二節 ) の角 度 か ら 、 す ぐ れ
も ) と の気 も ち が 強 い。
指導﹂ ( 話 し こと ば に よ る 表 現 の指 導 ) と に 分 節 し て考 え る が 、 私 の中 で は 、 つね に 、 ( 話 し て も 、 書 いて
(Ⅰ) 本 章 で は 、 ﹁表 現 指 導 の 基 本 問 題 ﹂ を 明 ら か に し た い。/表 現 指 導 を 、 ﹁文 章 表 現 指 導 ﹂ と ﹁話 し こと ば
以 下 に 、 そ の部 分 を 引 用 し つ つ本 書 の 特 色 を 挙 げ てみ る。
見 返 し に 、 内 容 の組 み 立 て が 二 五 〇 字 程 度 で簡 潔 に 記 さ れ て いる 。
の理 論 と 実 践 、Ⅵ 地 域 の表 現 指 導︱ ﹁沖 縄 の国 語 教 育 の 調査 ﹂ か ら ︱ 、 の六 章 で 構 成 さ れ て いる 。 各 章 の扉 の
体 は 、Ⅰ 表 現 指 導 の基 本 問 題 、Ⅱ 文 章 表 現 の基 底 、Ⅲ 表 現 指 導 の出 発 、Ⅳ 表 現 指 導 の展 開 、 V ﹁文 集 ﹂
本 書 は 、 ﹁文 章 表 現 指 導 ﹂、 ﹁話 し こ と ば 指 導 ﹂ の 両 面 に わ た る著 者 の論 考 二 十 数 編 を 集 成 し た も の で あ る 。 全
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(Ⅲ) 本 章 で は 、 表 現 指 導 の原 理 ・基 本 を 求 め よ う と す る も の で あ る 。/ 第 一節 で は 、 基 本 問 題 と し て の ﹁伝
統 と 創 造 ﹂ を 、 文 章 表 現 指 導 の 理 論 と 実 践 に そ く し て 考 察 す る 。 こ れ は 、 ﹁問 題 史 的 研 究 ﹂ に か か わ るも
の で あ る 。 理 論 と し て は 、 国 分 一太 郎 氏 の そ れ と 西 郷 武 彦 氏 のそ れ と を 、 考 察 の対 象 と す る。/ 第 二節 で
は 、表 現 指 導 の基 本 目 標 を お さえ 、 第 三 節 で は 、 目 標 を 表 現 力 と いう か た ち で捉 え な お し て み る 。/ 第 四
節 、第 五 節 で は 、 児 童 の文 章 表 現 の 実 態 把 握 のし ご と を と お し て 、 文 章 表 現 のあ り よう を 考 究 す る 。
(Ⅳ) 本 章 は 、 表 現 指 導 の具 体 的 な 展 開 に つ い て論 究 し よう と す る も の であ る ( 引用者 注︱ こ こには、書く
こと と 話 す こ と の両 面 に わ た る表 現 指 導 の 理論 と 実 践 に つ いて 、 ダ イ ナ ミ ック で、 し か も 精 密 な 考 察 に も と づく 論 考 が 収 め ら れ て い て、 多 く の示 唆 を 受 け る こと が でき る )。 (Ⅴ) 本 章 で は 、 ﹁文 集 ﹂ の理 論 と 実 践 を 特 立 し て考 察 す る 。
(Ⅵ) こ こ にと り あ げ る の は 、 本 土 復 帰 前 の ﹁沖 縄 の国 語 教 育 の調 査 ﹂ に も と づ く も の であ る 。/ ﹁国 語 教 育
に お け る 地 域 性 の問 題 ﹂ (地 域 の 国 語 教 育 の問 題 ) は 、 こ の 調 査 以 来 の私 の 研 究 テ ー マで あ る が 、 本 書 の
む す び の章 に こ の調 査 を お く の は 、 私 の国 語 教 育 研 究 の、 いわ ゆ る ﹁原 点 に 帰 る﹂ こ と を 意 味 す る。
著 者 は 、 一貫 し て﹁一 般 社 会 人 と し て の言 語 表 現 生 活 の確 立 と いう 射 程 ﹂ で表 現 指 導 論 を 展 開 し て いて 、 そ の 端 緒 に ﹁沖 縄 の 国 語 教 育 の 調 査 ﹂ 研 究 を お いて いる 点 に特 色 が あ る 。
[ 櫻 本明美]
表 現 指導 の原 点 に ﹁地 域 性 ﹂ を 据 え た 独 自 の表 現 指 導 論 は 、 こ れ か ら の国 語 教 育 研 究 ・実 践 の貴 重 な 指 標 と な る も の で あ る 。
﹃ ご っこか ら フ ァン タジ ー へ: 子ど も の想 像 世 界﹄ ( 新 曜 社/ 一九 八 六年 ) 内 田伸 子
ル が 示 さ れ る のが 、 本 書 の タイ ト ルを 背 負 って いる3 章 ﹁ご っこ 遊 び の創 造 ﹂ か ら 4章 ﹁物 語 の創 造 ﹂ へと つな
的 に 説 明 す る こ と と 言 って よ い。 こ の理 論 的 フ レ ー ム を受 け て、 以 下 、 子 ど も の空 想 物 語 生 成 の ﹁発 達 ﹂ の モ デ
く る ) に至 る 一連 の知 的 振 る舞 いを 、 知 識 構 造 の形 成 と 運 用 と いう こ の時 期 の認 知 科 学 の中 心 理 論 に よ って 一元
構 造 化 し て いく 。 そ の 中 で見 え てく る内 田 の理 論 的 戦 略 は 、 幼 児 期 の子 ど も た ち の理 解 (わ か る ) か ら 表 現 (つ
代 ま で の文 章 理 解 や文 章 生 成 に 関 わ る認 知 心 理 学 の知 見 を 的 確 に 紹 介 し つ つ、 そ れ を 土 台 に 、 子 ど も の想 像 力 を
て いる 。 2 章 ﹁わ か る ・つた え る ・つく る: 認 知 心 理 学 が 見 いだ し た こと ﹂ で は 、 そ の名 のと お り 、 一九 八 ○年
1章 ﹁想 像 世 界 の創 造 ﹂ では 、言 語 機 能 の根 源 であ り 、 物 語 の揺 藍 で あ る ﹁象 徴 機 能 ﹂ の獲 得 と 発 達 を 整 理 し
ま な 理 論 的 手 が か り を手 際 よ く 教 え てく れ る テキ ス ト の 一面 を も 有 し て いる 。
る と 言 って よ い。 そ れ ゆ え 本 書 の内 容 は 、 子 ど も の言 葉 の発 達 に 教 育 的 に 関 わ ろ う と す る も の にと って の さ まざ
関 心 を 持 つ、 文 章 理 解 や 文 章 生 成 の 領 域 へと 、 わ か り や す く 適 用 し 、 ﹁使 え る ﹂ 理 論 と し て供 給 し た と こ ろ に あ
緻 密 に試 み る 。 し か し 、 本 書 の こと 国 語 教 育 に お け る 意 義 の存 す ると こ ろ は、 認 知 科 学 の諸 概 念 を 、 国 語 教 育 が
迫 る た め に 、 内 田 は (こ の本 が 上 梓 さ れ た ) 一九 八 ○ 年 代 ま で の認 知 心 理 学 の知 見 を 用 い、 か つ心 理 学 的 実 証 を
の示 唆 に答 え よ う と す る 。 子 ど も の想 像 世 界 、 そ れ が ど の よ う に生 成 さ れ 、 表 現 さ れ る のか 、 そ の メカ ニズ ム に
師 であ る藤 永 保 か ら 示 唆 さ れ た (あ と が き )、 若 き 日 の内 田 は 、 十 五 年 後 ﹁認 知 ﹂ と いう 概 念 装 置 を 駆 使 し て そ
﹁人 間 の認 識 の 問 題 を 明 ら か に し た いな ら 、 人 が 日 常 、 読 ん だ り 書 いた り す る こ と ﹂ に チ ャ レ ン ジ し な さ いと
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が る 一連 の考 察 であ る 。 こ の章 立 て か ら わ か る よ う に 、 こ こ に 明 示 さ れ て いる ﹁発 達 ﹂ の モ デ ル は ﹁ご っこ 遊
び ﹂ と いう 体 験 の再 生 を 中 心 と し た 前 駆 的 活 動 が 、 幼 児 期 前 期 に ま ず あ って、 そ の後 五歳 頃 にそ う し た 体 験 を 複
合 し た ﹁空 想 物 語 ﹂ (フ ァン タ ジ ー ) の生 成 が 行 わ れ る と いう も の で あ る 。 そ の 上 で、 5 章 ﹁物 語 る し く み ・そ
の 一﹂ / 6 章 ﹁同 ・そ の 二﹂ で 、 子 ど も た ち が 体 験 を も と に 空 想 の世 界 を ﹁物 語 ﹂ と し て体 制 化 す る の に機 能 す
る ﹁物 語 技 法 ﹂ の 働 き と 発 達 に つ い て 明 ら か に し て いく 。 最 終 章 の7 章 ﹁想 像 力 を はぐ く む ﹂ は 、 ﹁想 像 力 ﹂ の 育 成 、 す な わ ち 教 育 の問 題 へ の心 理 学 者 と し て アプ ロー チ が 素 描 さ れ る 。
さ て 、 こ の よう に 本 書 は 、 国 語 教 育 への多 く の示 唆 を も た ら し て く れ る のだ が 、今 日 の 研 究 状 況 に 照 ら し て い
く つか の 課 題 を は ら ん でも いる 。 た と え ば 、 ﹁ご っこ か ら 物 語 へ﹂ と いう 発 達 モデ ル の妥 当 性 。 ﹁ご っこ﹂ は幼 児
期 的 な 文 学 的 体 験 そ のも の で あ って 、 や が て現 れ る 物 語 の前 駆 と は 言 え な い。 幼 児 期 の ﹁ご っこ﹂ の 形 で現 れ る
﹁物 語 ﹂ の機 構 を 解 明 し な け れ ば 、 幼 児 期 的 物 語 体 験 の本 質 へは 接 近 で き な い の では な いだ ろう か 。 も う ひ と つ、
子 ど も た ち の知 識 構 造 が 何 に よ って ど のよ う に 形 作 ら れ た のか と いう 問 題 が 、 こ の論 考 で は欠 落 し て いる 。 そ の
[ 住田
勝]
欠 落 に対 し て 、 発 達 心 理 学 は そ の後 、 発 達 現 象 への社 会 文 化 的 ア プ ロー チ に よ って応 え よ う と す る の だ が 、 国 語
教 育 にと って も 、 そ の領 野 は ま さ に追 求 し な け れ ば な ら な い深 甚 た る 謎 の ひ と つであ る 。
﹁ 作文 教育 に お ける 創 構 指 導 の 研 究﹄ (溪 水 社 / 一九 九 七年 ) 大 西 道 雄
結章 研究 の総括と視点
第 四章 意 見文 ・論説文 の創構指 導 の臨床的 実践的 研究
第 三章 創構 の系統的指 導 の構想
第 二章 創構 指導 の理論 的基礎
第 一章 受容 史的観点 から見 た創 構指導 研究 の到達点 と課題
序章 研究 の目的と方法
本 書 の構 成 は 、 次 の よう にな っ て い る。
て位 置 づ け ら れ よ う 。
究 と いう 四 つ の側 面 か ら 、 綿 密 な 資 料 を 踏 ま え た 論 が 展 開 さ れ てお り 、 現 代 の作 文 指 導 研 究 に お け る 必 読 書 と し
的 な 問 題 に本 格 的 に取 り 組 ん で いこ う と す る も の で あ る 。 歴 史 的 研 究 、 基 礎 理 論 的 研 究 、 系 統 化 研 究 、 実 践 的 研
﹁何 を 書 いた ら よ いか わ か ら な い﹂ と いう つま ず き に 十 分 に応 え るも のと な って いな か った 。 本 書 は 、 こ の本 質
の創 出 と 組 織 化 ﹂ を 指 す 言 葉 で あ る 。 戦 後 の作 文 教 育 に お いて は 、 文 章 構 成 法 の 指導 が 優 先 さ れ 、 児 童 ・生 徒 の
﹁創 構 ﹂ と は 、 修 辞 学 に お け る イ ン ベ ンシ ョン (inven )t のi 訳o語nであ り 、 文 章 表 現 過 程 に お け る ﹁アイ デ ア
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第 一章 で は 、 明 治 期 か ら 昭 和 戦 後 期 に 至 るま で 、 修 辞 学 に お け る創 構 概 念 が ど のよ う に 受 容 さ れ 、 発 展 し てき た か と いう こ と に つ い て、 先 行 研 究 を 丹 念 に調 べ 上 げ て いる 。
( 能 力 目 標 )、
の形 成 、 (3 ) 場 の 条 件 の 発 見 に よ る視 点 の分 割 ・転 換 、 ( 4 ) 文 章 想 の組 織 化 を 促 す キ ー ワー ド の発 見 と 活 用 、
第 二章 で は 、 創 構 の基 礎 理 論 にも と つ い て、 ( 1 ) 状 況 的 場 の設 定 、 ( 2 ) 問 題 意 識 (目 的 意 識 ) の喚 起 と 主 体
と いう 指 導 原 理 が 提 案 さ れ て いる 。
第 三 章 で は 、 小 学 校 四 年 か ら 高 等 学 校 三年 ま で 、 各 学 年 別 に 、 (1 ) 場 の条 件 、 ( 2) 中心 目標
( 3 ) 下位 目 標 (思考 パ タ ー ン の習 得 目標 )、 の三 点 に つ いて 、 学 習 目 標 が 系 統 的 に 設 定 さ れ て い る 。
第 四 章 は 、 小 学 校 六 年 ・中 学 校 二年 ・高 等 学 校 一年 を 対 象 に行 わ れ た 臨 床 的 実 践 的 授 業 研 究 の 記 録 と 分 析 であ
( 問 題)﹂ を 内 包 す る 課 題 素 材 を 提 示 す る こ と に よ って意 見 の形 成 を 促 し た 上 で 、
る 。 小 学 校 で は ﹁ゆず り あ い の席 ﹂、 中 学 校 で は ﹁ほ ん と う の優 し さ ﹂、 高 等 学 校 では ﹁環 境 と 人 間 ﹂ と いう テ ー マを 取 り 上 げ 、 そ れ ぞ れ ﹁対 立
﹁内 容 キ ー ワー ド ﹂ と ﹁論 理 キ ー ワ ー ド ﹂ を 提 示 し て 意 見 の 拡 充 と 組 織 化 を 図 って い る 。 意 見 の形 成 と 組 織 化 を 軸 と す る ﹁生 成 的 な作 文 指 導 ﹂ の具 体 的 な モ デ ルを 実 践 的 に 示 し た ので あ る 。
大 西 氏 の創 構 指 導 研 究 に は 、 本 書 の ほ か に 、 研 究 の出 発 点 と な った ﹃意 見 文 指 導 の研 究 ﹄ (漢 水 社 / 一九 九 〇
年 ) と 、 創 構 過 程 に続 く 文 章 化 過 程 ( 構 想 過 程 ) に お け る指 導 のあ り 方 を 論 じ た ﹃ 作文 教育 における文章 化過程
指 導 の研究﹄ ( 漢 水 社 / 二 〇 〇 四 年 ) と が あ る 。 学 習 者 の内 部 に あ る ﹁漠 想 ﹂ が ﹁分 化 想 ﹂ を 経 て ﹁統 合 想 ﹂ に
[田中 宏 幸 ]
至 り 、 さ ら に ﹁文 章 化 ﹂ に進 ん で いく 段 階 で、 教 師 は いか な る 支 援 を な し う る のか 。 生 徒 主 体 の作 文 指 導 を 展 開
し て いく た め に は 、 こ の問 題 の 解 明 が欠 か せ な い。 こ の 二著 も あ わ せ て 読 み た い。
﹃ 説 明 的 表 現 の 授 業︱ 考 え て書 く 力 を 育 て る︱ ﹄ ( 明 治 図 書 / 一九 九 五年 )櫻 本 明 美
ま ず 、 説 明 的 表 現 に お い て働 く 論 理 的 思 考 力 の要 素 やそ れ ら の 関 係 性 を 考 察 し な が ら 、 ︿論 理 的 思 考 力 の構 造
価 を 工 夫 す る こ と 、 の 五 項 目 を 指 摘 し て いる 。 これ ら を 軸 と し て 、 授 業 の実 践 化 に向 け た 論 が 展 開 さ れ て い る 。
す 題 材 を 選 ぶ こと 、 学 習 の連 続 性 に 着 目 し た 授 業 構 成 を 工 夫 す る こと 、 考 え 方 や 述 べ方 の個 性 を 生 か す 指 導 と 評
的 思 考 力 の活 性 化 を 図 る こと 、 ﹁子 ど も に いま 必 要 な 思 考 力 ﹂ の中 身 を 見 定 め る こ と 、 学 習 意 欲 を 高 め 思 考 を 促
第 二章 で は 、 説 明 的 表 現 の指 導 原 理 を 追 求 し て いる 。 説 明 的 表 現 の力 を 育 て る た め の授 業 の条 件 と し て 、論 理
いて 述 べ て いる 。
第 一章 で は 、 児 童 文 集 に見 ら れ る 文 種 の傾 向 等 を も と に し て 、 説 明 的 表 現 の 学 習 指 導 の必 要 性 や そ の意 義 に つ
第 四章 授 業 づ く り (Ⅱ)︱重 点 化 を 図 って
第 三章 授 業 づ く り (Ⅰ)︱﹁推 理 ﹂ に 着 目 し た 場 合 の指 導 段 階 を ふ ま え て
第 二章 説明的表 現 の力 が育 つ授業 の方 法
第 一章 表 現 学 習 の これ か ら
そ の構 成 は 次 の 通 り であ る 。
本 書 は 、 説 明 的 表 現 の学 習 指 導 のあ り 方 を 、 理 論 と 実 践 の両 面 か ら 考 究 し た も の で あ る 。
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( 試 案 )﹀ を 作 成 し て いる 。 そ れ に よ って 、 ﹁関 係 づ け る力 ﹂ の六 項 目 (﹁比 較 ﹂、 ﹁順 序 ﹂、 ﹁類 別 ﹂、 ﹁理 由 づ け
( 因
果 関 係 )﹂、 ﹁定 義 づ け ﹂、 ﹁推 理 ﹂) を う ま く 働 か せ る こと が 、 子 ど も の思 考 を 活 性 化 す る た め の鍵 だ と 指 摘 す る 。
次 に 、 そ の六 項 目 が ど の学 年 で ど の よう に 表 れ る か 、 児 童 の作 文 や教 科 書 ( 説 明 的 文 章 教 材 ) 等 の分 析 を 通 し
て詳 細 に捉 え て い る 。 そ れ を ふ ま え て、 説 明 的 文 章 に 培 う 思 考 の具 体 を 項 目 別 ・発 達 別 に示 し た ︿ 各 項 目 の指 導
段 階 ﹀ と 、 ど の学 年 で ど の項 目 を 重 点 的 に指 導 す べき か を 示 し た ︿指 導 の重 点 化 (試 案 )﹀ を 提 案 し て い る 。
さ ら に、 題 材 の選 択 の 条 件 と し て、 学 習 意 欲 を 高 め る 題 材 であ る こと 、 ﹁関 係 づ け る 力 ﹂ を 育 む 題 材 で あ る こ
と 、 の 二項 目 を あ げ て いる 。 ま た 、 ﹁関 係 づ け る力 ﹂ を 活 性 化 す る た め の授 業 構 成 と し て 四 通 り の 型 を 示 し て い
る。 最 後 に 、 児 童 文 集 の 評 語 を 分 析 し な が ら 、 ﹁関 係 づ け る 力 ﹂ の六 項 目 に着 目 し た 評 価 の あ り 方 を 具 体 的 に検 討 し て いる 。
六 項 目 のう ち ﹁推 理 ﹂ に着 目 し た 場 合 のも のを 示 し て いる 。
第 三 章 は 、 第 二章 の ︿ 各 項 目 の指 導 段 階 ﹀ に基 づ いた 授 業 づ く り の実 際 例 を 示 し て い る 。 ﹁関 係 づ け る力 ﹂ の
第 四 章 は 、 第 二 章 の ︿指 導 の重 点 化 (試 案 )﹀ に 基 づ いた 授 業 づ く り の実 際 例 を 示 し て い る 。 低 学 年 は ﹁比
較 ﹂、 中 学 年 は ﹁類 別 ﹂・﹁定 義 づ け ﹂、 高 学 年 は ﹁理 由 づ け ( 因 果 関 係 )﹂ ・﹁推 理﹂ の報 告 で あ る。
本 書 の特 質 は 、 論 理 的 思 考 力 の系 統 性 を ふ ま え た 説 明 的 表 現 の授 業 づ く り 、 さ ら に 、 作 文 や 授 業 記 録 の分 析
等 、 子 ど も の思 考 を 拠 り 所 と し た 論 究 の仕 方 にあ る 。 そ れ ゆえ 、 導 き 出 さ れ た 試 案 や 授 業 づ く り の実 際 は 、 詳 細
[ 中西 淳]
か つ実 用 的 で あ る 。 確 か な 論 理的 思 考 力 の育 成 を めざ す 者 にと って多 く の 示 唆 を 得 る こ と が で き る。
﹃ 子 ど も と と も に 学 ぶ 作 文指 導 の課 題 と 方 法 ﹄ ( 明 治 図 書 / 一九 九 六年 )中 西 ー弘
を つ いた 具 体 的 な 指 摘 の か ず か ず を 示 し て いる ( 紙 面 の 制 約 上 、 残 念 な が ら 3 ∼ 5章 の細 部 項 目 は 省 略 し た )。
前 半 1 ∼ 5章 の目 次 を 見 て み る と 、 ど れ も 文 字 通 り 、 作 文 を 指 導 す る 者 の 足 元 を 思 わ ず 見 つめ直 さ せ る 、 盲 点
いを 幾 度 と な く 体 験 し た 。 ﹁教 え る ﹂ な ん てお こ が ま し く 、 ﹁と も に 学 ぶ﹂ と し た わ け であ る 。
思議 にも、 ( 中 略 ) 書 き 手 の ほ う が 、 工 夫 のあ り か を 教 え てく れ る、 と い って も よ い。 そ ん な 意 志 の通 じ 合
の 工夫 が 見 出 せ る 、 と いう 具 合 で あ った 。 (中 略 ) 子 ど も の文 章 の長 所 を 見 つけ よう と 努 力 し て いる と 、 不
声 であ った 。 そ の 文 章 の書 き 手 が 自 ら 私 に指 し 示 し てく れ 、 そ の指 示 の おも む く と こ ろ に 目 を や る と 、 表 現
﹁私 は こ ん な ふう に 工夫 し た ん だ よ 。﹂、 ﹁こう す れ ば 、 よ く わ か る 文 章 にな る ん じ ゃな いか な 。﹂ と 指 し 示 す
児 童 の作 文 を 読 み 、 写 し 、 分 析 し て い る作 業 の最 中 に 、 し ば し ば 次 のよ う な 声 を 聞 く 思 いが し た 。 そ れ は 、
著 者 は ま え が き で、 ﹁子 ど も と と も に 学 ぶ﹂ 実 際 を 、 謙 虚 な 筆 致 で 次 の よう に 述 べ て い る。
行 き 詰 ま り 、 も が き 苦 し ん で いた 私 の目 を 大 き く 開 か せ てく れ た の であ る 。
方 法 で あ る ﹂ こ と を 気 づ か せ てく れ た 。 タ イ ト ル の右 肩 に 添 え ら れ た ﹁子 ど も と と も に学 ぶ ﹂ の 一言 が 、 実 践 に
い が ち で あ る 。 こ れ は 私 自 身 の苦 い経 験 を 省 み て の 思 いで あ る 。 本 書 は 、 ﹁学 習 者 が あ って こ そ の課 題 であ り 、
実 践 に 熱 心 に 取 り 組 む 教 師 は 、 い つ の間 に か自 分 の指 導 方 法 や 当 面 の課 題 に 気 を 取 ら れ 、 肝 心 の学 習 者 を 見 失
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1 ゼ ロか ら の出 発 (1作 文 コ ンプ レ ック スは 大 切!? /2
﹁よく 思 い出 せ ﹂ な い こ と /3 一度 で い いか ら 、
満 点 を )/ 2 ほ め る こと か ら 始 め る (1欠 点 を 指 摘 す る 赤 ペ ン は 、 一つに 限 って/2 三 行 も 書 いて く れ れ
ば /3 書 く ヒ ント に な る ほ め か た を )/ 3 ・4 書 く ヒ ン ト を 与 え る ほ め か た の実 例 (そ の 一)・( そ の 二 )/ 5 心 と 言 葉 の 双方 か け て
後 半 6 ∼ 12章 で は、 す ぐ れ た 文 章 の読 み を 生 か し て書 く 、 読 み 書 き の 関連 指 導 の実 際 が 、 作 文 指 導 の観 点︱ 発 想 ・取 材 ・構 成 ・記 述︱ に 即 し て 具 体 的 に述 べ ら れ て いる 。
6 理解 教材 から表現 の視点を学 ぶ︱題名 から取材 の視点 を︱ /7 説 明文教材 から取材 と構成 の方法を学
ぶ︱第 一段落 から全体 の構成 を展望 しながら︱ /8 説明 文教材 から発想 の観 点を学 ぶ/9 説明 文教材 か
ら構 成法を 学ぶ︱段落 をどう 組み合わ せるか︱ /10 説明文 教材 から 一段落 の構成法 を学 ぶ/11 視写を拠
点 にし て︱記述力育成 の基礎練 習を︱/12 国語 ( 説 明文) の学習活動を書 く︱学 習記録を 残そう︱
ま た 、 巻 末 に は 3 年 生 一ク ラ ス分 の児 童 文 集 が 添 付 さ れ、 前 半 3 ・4 章 の 細 部 項 目 に 沿 って 、 子 ど も の作 文 を
[ 金子泰 子]
ど の よ う に賞 揚 す る か 、 著 者 に よ る指 摘 の実 際 が 示 さ れ て いる 。 児 童 作 品 を ど う 読 み 取 り 、 ど う 指 導 す る のか 、 読 者 も 共 に楽 し め る 仕 掛 け であ る。
﹃ 子 ど も が蘇 る 詩 と作 文 ﹄ ( 国土 社 / 一九 九 六 年 )青 木 幹 勇
取 り 上 げ る 教 材 のジ ャ ン ル は 、 詩 、物 語 、 短 歌 、 俳 句 、 説 明 的 文 章 、 漫 画 な ど と 多 岐 に わ た る 。 具 体 的 に は 既
す る こ と の 二点 を あ げ て いる 。
表 現 意 欲 を も って い て、 そ れ を 証 明 す る 数 多 く の作 品 が 生 み 出 さ れ る こと 、 ② 理 解 と 表 現 の 一体 化 に大 き く 機 能
た も ので あ る。 虚 構 作 文 を 実 践 す る よ う にな った 積 極 的 な 動 機 と し て、 ① 子 ど も たち が 意 外 な ほ ど 新 鮮 で 強 烈 な
年 )、 ﹃ 第 三 の書 く ﹄ (一九 八 六 年 ) で整 理 し 報 告 し て いる が 、 本 書 の虚 構 作 文 は 、 そ れ ら を さ ら に 広 げ 発 展 さ せ
筆 者 は 、 国 語 科 の指 導 に ﹁書 く こと ﹂を 導 入 す る 実 践 的 研 究 を 重 ね 、 そ の成 果 を 、 ﹃ 書 き な が ら 読 む ﹄ (一九 六 八
付 作文教育 小史
句 を作 る/Ⅷ 季語 の作文を書 く/Ⅸ 物語 や伝 記 の登場 人物と の対 話/ X 説明的な 文章と虚構 の作文 /
で物語を書 く/Ⅴ 漫画をネ タに フィクシ ョンを書 く /Ⅵ 短歌を読 ん で物語 を書く /。Ⅶ 物語を 読ん で俳
Ⅰ 自由 な想像、自 由な虚構 、自由な表 現/Ⅱ 虚構 の作 文 の魅力 /Ⅲ 虚構 の詩を書 く/Ⅳ 物 語を読 ん
本 書 の内 容 構 成 を 目 次 の大 項 目 で示 す と 、 次 の通 り であ る 。
的 な 実 践 の分 析 を 通 し て明 ら か に し 、 こ れ か ら の作 文 指 導 の あ り 方 に つ い て提 言 し よ う と し た も の で あ る 。
本 書 は 、作 文 指 導 の主 流 であ る 生 活 作 文 に対 し 、 自 由 な想 像 によ る虚 構 作 文 を 対 置 さ せ て そ の有 効 性 を 、 具 体
37
成 の教 材 を 手 が か り にす る こと が有 効 だ と し て、 本 書 では 、 ﹁す ず め ﹂ ( 秋 原 秀 夫 ) や ﹁か さ じ ぞ う ﹂、 ﹁ご んぎ つ
ね ﹂ な ど を 取 り 上 げ 、 読 み 取 った こ と を も と に し て 、 書 き 加 え た り 書 き 広 げ た り 、 俳 句 や短 歌 にし たり な ど 、多
様 な 方 法 で の実 践 を 報 告 し 、 こ れ ら の実 践 か ら 、 虚 構 作 文 の魅 力 に つ いて 、 次 の よう に ま と め て い る。
○ 子 ど も た ち の〓溂 と し た 想 像 力 を 身 近 に感 じ る こ と が でき る 。
○ そ の想 像 は 、 一部 の 子 ど も に 限 ら れ る の で は な く 、 ほ と ん ど全 員 に期 待 でき る 。
○ 子 ど も た ち の想 像 が ユ ニー ク で 、 意 表 を つく 作 文 が 数 多 く 生 ま れ 、 指 導 者 を 励 ま し てく れ る 。
○ 虚 構 作 文 と い っても 現実 と 切 り 離 さ れ た も の では な く て、 現 実 を 見 る 、 聞 く 、 そ の記 憶 、 な ど の経 験 が 想 像 を 支 え て いる 。
○ 虚 構 作 文 の表 現 過 程 に導 入 し た ﹁鳥 にな る﹂ ﹁虫 に な る﹂ ﹁物 語 の中 の 登 場 人 物 に 変 身 す る ﹂ な ど と いう 手 法 は 、 非 常 に効 果 的 であ る 。
○虚 構 の作 文 は 、 例 え ば 、 ﹁物 語 を 読 ん で詩 を 書 く ﹂ と いう よう に、 他 の領 域 、 あ る いは 他 教 科 の学 習 と も 関 係 を も た せ る な ど 、 多 彩 な 指 導 の 開 拓 を 期 待 す る こ と が でき る 。
﹁理 解 ﹂ に 触 発 さ れ 、 広 が って いく 想 像 、 そ のイ メー ジ を 自 由 に 描 く 作 文 学 習 は 、 確 か で豊 か な 個 性 的 な 読 み
の力 を 育 て る と と も に 、 生 活 経 験 を あ り の ま ま に 書 く いわ ゆ る 生 活 作 文 中 心 の こ れ ま で の 作 文 学 習 の 領 域 を 広
[ 中 谷雅彦]
げ 、 子 ど も た ち に楽 し い作 文 学 習 を も た ら す も のと な る 。 そ の こと を 実 証 的 に 説 述 し た 本 著 は 、 こ れ か ら の作 文 指 導 のあ り方 に 多 く の示 唆 を 与 え る好 著 と いえ よう 。
第 五章 読 む こと の指導 研 究
読 む こと の学 習 指 導 に 関 す る 領 域 は 、 明 治 期 の近 代 国 語 教 育 の発 祥 以 降 、 着 実 に営 み が 続 け ら れ 、 成 果 も 積 み
上 げ ら れ て き た 。 芦 田 教 式 に代 表 さ れ る よう に 、 指 導 過 程 論 も 数 多 く 生 み 出 さ れ た 。 だ が 、 こ れ ら は 、 戦 時 中 の
教 育 統 制 、 戦 後 初 期 の 経 験 主 義 学 習 と いう 流 れ の中 で 、 一時 の勢 いを 失 ってし ま う 。
昭和 三〇年代 から、 読解指導 ブ ームが起 きる。倉 澤栄吉 の ﹃ 読 解指導 ﹄ ( 昭 和 三 一年 ) を 契 機 に 、 読 む こと の
学 習 指 導 の方 法 論 が 探 究 さ れ て いく こと に な った 。 昭 和 三十 三 年 度 学 習 指 導 要 領 に お いて 、 文 学 的 文 章 と 並 ん で
説 明 的 文 章 も 重 視 さ れ た こと も あ り 、 読 む こ と の教 材 の ﹁ジ ャ ン ル ( 文 種 )﹂ を 明 確 に意 識 し た 著 作 が 現 れ て く
( 永野 賢 ﹃ 学 校 文 法 文 章 論 ﹄ 昭 和 三 四年 ) が 唱 え ら れ て、 広 く 受 け 入
る よ う に な った 。 昭 和 三 〇 年 代 後 半 か ら 、 昭 和 二 〇 年 代 の文 法 ブ ー ム が 読 む こ と に 取 り 込 ま れ た 。 ﹁学 校 文 法 ﹂ の 枠 組 みを 前 提 と し た 文 章 論 的 読 解 指 導
( 奥 田 靖 雄 ・国 分 一太 郎 ﹃読
れ ら れ て いく 。 昭 和 四 〇 年 前 後 か ら は 一読 総 合 法 ( 児童 言語 研究会 ﹃ 読 解指導過程﹄ 昭和 三八年) に代表 される
﹁一 読 法 ﹂ 的 な 指 導 過 程 論 が 提 唱 さ れ る よ う にな り 、 対 す る 三 読 法 側 の指 導 過 程 論
み方 指 導 ﹄ 昭 和 三 八 年 、 沖 山 光 ﹃読 解 の基 本 的 学 習 構 造 ﹄ 昭 和 三 九 年 な ど ) も 数 々刊 行 さ れ る こ と と な る 。 特
に 文 学 的 文 章 の領 域 に お い て は 、 着 実 に 理 論 的 な 考 究 が 進 め ら れ る と と も に、 昭 和 四 〇 年 以 降 、 実 験 的 な 実 践 、 組 織 的 な 実 証 な ど を ふま え た 実 践 理 論 が 提 案 さ れ て いく 。
﹃ 批 判 読 み﹄ (昭 和 三 八
代 表 的 な 著 作 と し て、 準 体 験 理 論 を 提 唱 し た 熊 谷 孝 ﹃文 学 教 育 ﹄ (昭 和 三 一年 )、 読 者 論 の嚆 矢 と な った 外 山
滋 比 古 ﹃修 辞 的 残 像 ﹄ ( 昭 和 三 六 年 )、 批 判 読 み を 唱 え た 東 京 都 教 組 荒 川 教 研 国 語 部 会
年 )、 関 係 認 識 ・変 革 を 主 唱 し た 西 郷 竹 彦
﹃ 文 学 教 育 入 門 ﹄ (昭 和 四 〇 年 )、 構 造 分 析 に よ る読 解 を 提 案 し た 三 枝
康 高 ﹃文 学 教 材 の構 造 を つか む 読 解 ﹄ ( 昭 和 四 一年 )、 授 業 に お いて 読 み の多 様 性 を 生 か す 展 開 を 求 め た太 田 正 夫
﹁十 人 十 色 を 生 か す 文 学 教 育 ﹂ ( 昭 和 四 二年 )、 状 況 認 識 を 主 軸 と し た 大 河 原 忠 蔵 ﹃ 状 況 認 識 の文 学 教 育 ﹄ ( 昭和 四三
年 ︶、筆 者 想 定 と いう 独 自 の発 想 に 基 づ く 香 川 県 国 語 教 育 研 究 会 ﹃表 現 過 程 追 跡 に よ る読 む こと の学 習 指 導 ﹄ (昭
﹃ 文 学 の機 能 と 指 導
和 四 四年 )、 生 活 読 みを 理 論 化 し た 井 上 敏 夫 ﹃生 活 読 み﹄ (昭 和 四 五 年 )、 読 書 指 導 的 な 展 開 を 志 向 し た 望 月 久 貴
﹃ 国 語 科 読 書 指 導 の理 論 ﹄ (昭 和 四 六 年 )、 芸 術 的 機 能 を 生 か す 指 導 過 程 を 提 示 し た 井 上 正 敏
過 程 ﹄ (昭 和 四 七 年 )、 分 析 批 評 を 導 入 し た 読 み の指 導 論 を 展 開 し た 井 関 義 久 ﹃批 評 の文 法 ﹄ (昭 和 四 七 年 ) を 挙
﹃ 入 門 ・科
げ る こ と が でき る 。 ま た 、 昭 和 五 〇 年 代 以 降 で は 、 翻 訳 書 の刊 行 が 欧 米 読 者 論 導 入 の大 き な 契 機 と な った ヴ ォ ル
フ ガ ン グ ・イ ー ザ ー ﹃ 行為 とし ての読書﹄ ( 昭 和 五 七 年 )、 三読 法 を ﹁科 学 的 ﹂ に 再 構 築 し た 大 西 忠 治
学 的 ﹁読 み﹂ の授 業 ﹄ ( 平 成 二年 ) な ど が挙 げ ら れ る 。 そ の後 も 、 読 者 論 を 発 展 さ せ た 読 者 反 応 理 論 研 究 (上 谷
順 三郎 ﹃読 者 論 で 国 語 の授 業 を 見 直 す﹄ 平 成 九 年 、 山 元 隆 春 ﹃ 文 学 教 育 基 礎 論 の構 築 ﹄ 平 成 一七 年 な ど )、 ﹁他 者 ﹂
概 念 を 導 入 し た 高 木 ま さ き ﹃﹁他 者 ﹂ を 発 見 す る 国 語 の授 業 ﹄ ( 平 成一三 年 ) な ど が 公 刊 さ れ て いる 。 総 括 す る
と 、 感 動 や 追 体 験 か ら の 脱 却 を 目 指 し て 文 学 的 認 識 の解 明 が 試 み ら れ 、 次 い で読 書 指 導 論 が 現 れ 、 さ ら に読 者 論 ・読 者 反 応 理論 に依 拠 し た 研 究 が 進 め ら れ て き た と 言 う こと が でき る 。
( 小学
一方 、 説 明 的 文 章 の領 域 で は 、 領 域 自 体 が いわ ば 制 度 的 に 与 え ら れ た も の であ った た め 、 指 導 過 程 論 の追 究 は
進 め ら れ た が 、 肝 心 の 原 論 、 基 礎 論 の 分 野 に 関 す る考 察 は や や 遅 れ た 。 昭 和 四 十 三 年 度 学 習 指 導 要 領
校 )・昭 和 四 十 四 年 度 学 習 指 導 要 領 ( 中 学 校 ) に お いて は 、 思 考 力 育 成 が さ ら に 重 点 化 さ れ 、 こ の前 後 か ら 説 明
的 文 章 指 導 は 強 化 さ れ 、 著 作 が 公 に さ れ て いく 。 そ の中 で児 童 言 語 研 究 会 の 一読 総 合 法 関 係 の著 作 と し て 、 小 松
善之助
﹃ 説 明 文 読 解 指 導 の構 想 ﹄ (昭 和 四 一年 )、 林 進 治
﹃一読 総 合 法 に よ る 説 明 文 の読 解 指 導 ﹄ (昭 和 四 四 年 )
が 出 版 さ れ て いる 。 そ の後 、 倉 澤 栄 吉 の発 想 ・指 導 に よ る 筆 者 想 定 法 に 関 す る 著 作 と し て、 香 川 県 国 語 教 育 研 究
会 ﹃筆 者 想 定 法 に よ る 説 明 的 文 章 の指 導 ﹄ (昭 和 四 五年 )、 東 京 都 青 年 国 語 研 究 会 ﹃筆 者 想 定 法 の 理 論 と 実 践 ﹄
(昭 和 四 七 年 ) が 出 さ れ た ほ か 、徳 島 県 中 学 校 国 語 教育 研 究 会 ﹃説 明 的 文 章 の 五段 階 学 習 方 式 ﹄ ( 昭 和 四 入年 ) な
ど が 続 く が 、 本 格 的 な 研 究 書 が 世 に 問 わ れ た の は 、 昭 和 四 〇年 代 も 後 半 に 入 って か ら で あ った 。 渋 谷 孝 ﹃説 明
﹃ 認 識 主 体 を 育 て る 説 明 的 文 章 の指 導 ﹄ (昭 和 五九 年 )、 小 田迫 夫 ﹃説 明 文 の授 業
的 文 章 の指 導 過 程 論 ﹄ (昭 和 四 八年 )、 大 西 忠 治 ﹃説 明 的 文 章 の読 み方 指 導 ﹄ ( 昭 和 五 六 年 )、 西 郷 竹 彦 ﹃説 明 文 の 指 導﹄ ( 昭 和 五 六 年 )、 森 田信 義
改 革 論 ﹄ (昭 和 六 一年 )、 樺 島 忠 夫 編 ﹃ 表 現 学 大 系 26 説 明 ・記 録 の表 現 ﹄ ( 昭 和 六 一年 ) な ど であ る 。 集 約 す る
と 、 説 明 的 文 章 指 導 論 の始 動 期 に は 一読 総 合 法 を 中 心 と し た 指 導 過 程 論 が 主 流 で あ り 、 次 い で論 理 的 認 識 力 育 成
が 唱 え ら れ る よ う に な り 、 さ ら に 説 明 的 表 現 への着 目 が 行 わ れ る よう に な った と いう こと が でき る 。 こ れ ら の中
で 、 西 郷 竹 彦 と 小 田迫 夫 は 、 そ れ ぞ れ ﹁説得 の論 法 ﹂、 ﹁レ ト リ ック読 み ﹂ を 唱 え 、 説 明 的 表 現 の機 能 を と ら え た 理 論 を 構 築 し て い る。
さ ら に 、 ジ ャ ン ル別 指 導 を 志 向 し な い立 場 と し て 、 青 木 幹 勇 の 一連 の著 作 ﹃問 題 を も ち な が ら 読 む ﹄ ( 昭和 三九
年 )、 ﹃書 き な が ら 読 む ﹄ (昭和 四 三 年 )、 ﹃考 え な が ら 読 む ﹄ (昭和 五 一年 ) が あ る。 ま た 、 読 解 指 導 過 程 自 体 に 関
す る研 究 書 と し て、 そ れ ま で の読 解 指 導 過 程 を 総 括 し た 相 馬 信 男 ・吉 川 数 ﹃ 読 解 指 導 過 程 の比 較 と 実 践 ﹄ (昭和 四 五年 ) が あ る 。
そ の ほ か 、 詩 教 育 の領 域 で は 、 小 海 永 二 ﹃ 文 学 の教 育 ・詩 の教 育 ﹄ (昭 和 五 二年 )、 足 立 悦 男 ﹃中 学 校 ・高 等 学
校 現 代 詩 の授 業 ﹄ (昭 和 五 三年 )、 西 郷 竹 彦 ﹃詩 の授 業 ・理 論 と 方 法 ﹄ ( 昭 和 五 六 年 ) が 代 表 的 な 著 作 と し て挙
げられ る。
加 え て古 典 教 育 の領 域 で は 、 規 工 川祐 輔 ﹃ 中 学 校 の古 典 教 育 ﹄ (昭和 五 三 年 )、 増 淵 恒 吉 ﹃増 淵 恒 吉 国 語 教 育 論
集 上巻 古典教育論 ﹄ ( 昭 和 五 六年 )、 伊 東 武 雄 ﹃高 校 古 典 教 育 の探 究 ﹄ (昭和 五 八 年 )、 世 羅 博 昭 ﹃﹁源 氏 物 語 ﹂
学 習 指 導 の研 究 ﹄ ( 平 成 元 年 )、 小 野 牧 夫 ﹃ 国 語 ・文 学 教 育 の研 究 ﹄ (昭 和 六 〇年 )、渡 辺 春 美 ﹃国 語 科 授 業 活 性 化
﹃ 漢文教育 序説﹄ ( 昭 和 五 四年 )、 佐 野 泰 臣 ﹃漢 文 の教 え 方 ﹄ ( 昭 和 五 九 年 )、 森 野繁 夫 ﹃ 漢 文 の教 材 研
の探 究Ⅱ ﹄ な ど の書 名 が 挙 が ってく る 。 漢 文 教 育 の領 域 で は 、 鎌 田 正 ﹃漢 文 教 育 の理 論 と 実 践 ﹄ ( 昭 和 四 七 年 )、 長谷川滋成
究 1 故 事 成 語 篇 ﹄ ( 昭 和 六 二年 ) な ど が 刊 行 さ れ て いる 。
概 括 す る と 、 主 に 戦 後 の読 む こと の 指 導 論 は 、 教 材 研 究 を 中 心 と す るも の、 指 導 過 程 の整 備 を 目 指 す も の、 学
[ 植 山 俊 宏 ・ 山 元 隆 春 ]
習 者 の実 態 に 即 そ う と す るも の、 ジ ャ ン ル に よ る 表 現 の 特 徴 ・機 能 に従 った 指 導 論 を 提 唱 す る も のな ど が ほ ぼ 十 年 を 単 位 に 現 れ 、 積 み 上 げ ら れ てき て いる と 見 る こ と が で き る。
﹃ 読 解 指導 ﹄ ( 朝 倉 書 店 / 一九 五 六 年 ) 倉 澤栄 吉
( 3 ) 読 む 材 料 が あ っ て、 そ れ が 特 定 の 生
る﹂、 ﹁要 点 を 摘 出 す る﹂、 ﹁細 部 を 読 み と る﹂、 ﹁内 容 や表 現 を 読 み く ら べ る﹂、 ﹁忠 実 に 意 味 を 汲 む ﹂、 ﹁速 く 読 みと
﹁こ れ に ﹃二 、 読 み の内 的 な 機 能 を 加 え る ﹄﹂ と し て 、 ﹁大 意 を ま と め る ﹂、 ﹁大 意 を 要 約 す る ﹂、 ﹁大 意 を 概 括 す
想 を 抱 く た め に 読 む 力 ﹂、 ﹁読 ん だ こ と を 他 人 に 伝 え た り 、 書 き 止 め た り す る た め に 読 む 力 ﹂ の 六 項 目 を 挙 げ 、
告 ・説 明 等 を 理解 し 、 納 得 す る た め に 読 む 力 ﹂、 ﹁意 見 ・論 文 、 事 件 の報 告 等 に対 し て 、 自 分 の意 見 を 確 立 し 、 感
件 ・情 報 な ど 、 知 識 を 獲 得 す る た め に 読 む 力 ﹂、 ﹁文 学 作 品 そ の他 た のし み を 求 め る た め に 読 む 力 ﹂、 ﹁記 録 ・報
﹁読 解 力 ﹂ に つ い て は 、 ﹁目 的 の 上 か ら ﹂、 ﹁通 信 ・書 式 な ど の生 活 上 必 要 な も のを 読 む 力 ﹂、 ﹁通 信 ・指 示 ・事
プ ロセ ス に は 生 活 の前 後 の流 れ と 結 び つ いたす じ が は い って いる と 考 え る べ き こと ﹂ ( 九 一頁 ) を 主 張 し て いる 。
持 つか に つ い て考 慮 す る こ と 。 五 、 読 みを 読 む こと と考 え る 。 読 む こと と は ひと 続 き のプ ロセ ス であ って、 そ の
読 み 手 や 教 材 の異 質 的 な 特 性 に し た が って考 え る こと 。 四、 そ れ ら の読 み が 生 活 の流 れ の 中 でど んな 位 置 づ け を
の 読 む こ と﹄ を 学 習 の単 位 と し て設 定 す る こ と 。 三 、 読 み の指 導 に お け る 一本 調 子 の 即 文 主 義 か ら 開 放 さ れ て、
み の単 位 を 文 に お か な い で子 ど も に お く こ と 。 す な わ ち 学 習 の単 位 と し て の文 と か節 を 考 え ず に 、 ま ず ﹃子 ど も
考 え 方 が 、 じ ゅう ぶ ん徹 底 し て いな か った ﹂ (八 一頁 ) と し て、 ﹁一、 生 活 読 み の考 え を 導 き 入 れ る こ と 。 二、 読
活 の流 れ の中 に位 置 づ け ら れ 、 関 連 を も った 行 為 と し て存 在 し て いる の で あ る 。 (中 略 ︱ 引 用 者 ) いま ま で こ の
﹁読 み ﹂ に つ い て、 ﹁読 み に は 、 ( 1)具 体的な 生活 の場 ( 2 ) 読 み手
﹁読 み の指 導 に は 、 す こ し 思 いき った 改 革 が 必 要 で あ り ま す ﹂ (三 頁 ) と 書 き 出 さ れ る本 書 で 、 倉 澤 栄 吉 は 、
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る ﹂、 ﹁一心 に 身 を 傾 け る ﹂、 ﹁批 判 的 に 読 む ﹂ の十 項 目 を 、 ﹁さ ら に、 ﹃三 、 素 材 の 上 か ら は ﹄﹂ ﹁手 紙 文 ・電 信 ・
届 ・広 告 ・標 語 そ の他 の書 類 ﹂、 ﹁生 活 文 ・説 明 文 ﹂、 ﹁物 語 ・童 話 ・詩 ・脚 本 等 ﹂、 ﹁報 告 ・日 記 ・記 録 そ の他 ﹂、
﹁機 関 雑 誌 ・巻 頭 論 文 ・社 説 そ の他 の論 説 欄 ﹂、 ﹁文 学 作 品 ・詩 歌 ﹂ の六 項 目 を 挙 げ て いる ( 七 三 ∼ 七 五 頁 )。 ﹁戦
前の ﹃ 読 み 方 指 導 ﹄ の正 統 を 受 け る と と も に 、 そ れ と は は っき り と 一線 を 画 し た 点 が あ る﹂ (二頁 ) と ﹁ま え が き ﹂ に述 べ ら れ た こ と が 、 こ のよ う な 把 握 にも み て と れ よう 。
本 書 の キ ー ワ ー ド ﹁読 解 ﹂は 、﹁読 解 力 の学 習 ﹂、﹁基 礎 的 学 習﹂ の重 視 を 提 言 し た 教 育 課 程 審 議 会 答 申 (一九 五 八
年 ) と 重 な る が 、 形 式 的 な 操 作 に と ど ま ら な い ﹁読 解 指 導 ﹂ の把 握 に は 、 ﹃国 語 単 元 学 習 と 評 価 法 ﹄ ( 世 界社 /
一九 四 九年 ) な ど で 昭 和 二 〇 年 代 の 国 語 単 元 学 習 を 理 論 的 に リ ー ド し た 倉 澤 の基 本 理 念 の継 承 を 見 る こ と が でき る。
﹁読 解 指 導 の改 善 ﹂、 ﹁読 解 指 導 の問 題 ﹂、 ﹁読 解 力 の本 質 ﹂、 ﹁読 解 指 導 の過 程 ﹂、 ﹁読 解 指 導 の 具体 策 ﹂ の五 編 で
構 成 さ れ る 本 書 の 発 行 当 時 、 初 版 の奥 付 に よ れ ば 、 倉 澤 は 東 京 都 教 育 庁 指 導 部 第 一課 長 であ った 。 ﹁読 解 指 導 の
具体策 ﹂ では、教材 の ﹁ 文 種 ﹂ に 即 し た 具体 的 な 提 案 が な さ れ 、 本 書 の 随 所 に実 践 を 意 識 し た 具 体 的 な 提 言 が 見
[ 河 野智文]
ら れ る 。 ﹁ふ つう の国 語 教 師 のた め に 、 一つの参 考 と し て こ の本 は書 か れ た ﹂ (二 頁 ) と 述 べた 倉 澤 の姿 勢 がう か が え る 。
﹃ 問 題 を も ち な が ら 読 む﹄ ( 明治 図書 / 一九 六 四年 ) 青 木 幹 勇
5 問題 が作れ るま で)
三 問題 の教材 化 ( 1 問 題は整 理す る/2 問題と教材 研究 /3 初期 の問題/4 問 題 の質を高 め る/
出す /5 問題 は書 く)
二 子ども の作 る問題 ( 1 読解 と子ども の問題 /2 問題 の段 階/3 問 題 のひろがり/4 問題を ひき
そ の 構 成 は、 以 下 の通 り であ る。
って お り 、 そ の こ と に関 す る 理 論 的 な 考 察 が 第 二∼ 第 四章 で論 じ ら れ て いる 。
こ の学 習 指 導 法 の過 程 は 、 児 童 が 文 章 を 読 ん で問 題 を 持 ち 、 そ れ を 整 理 し 、 そ し て 解 い て いく と いう 骨 格 を 持
む ﹂ と いう 学 習 指 導 法 を 提 案 し て いる 。
読 む と いう 過 程 に 、 読 む 活 動 が あ り 、 読 む 学 習 が あ る ﹂ (二 一頁 ) と いう 信 念 に 基 づ き 、 ﹁問 題 を も ち な が ら 読
頁 ) に な る こと を 課 題 と し て 、 ﹁子 ど も た ち が 、 文 章 に 立 ち 向 か い、 そ こ で 問 題 を も ち 、 そ の 問 題 を 解 き な が ら
章 を 読 み こ な す ﹂ (一一頁 ) よう な 国 語 教 室 、 そ し て ﹁﹃教 え る 教 師 ﹄ か ら ﹃学 ぶ 子 ど も を 育 て る教 師 ﹄﹂ (二 〇
﹁子 ど も 自 身 が 、 教 材 に は た ら き か け 、 ほ ん と う に子 ど も た ち 自 身 で 、 文 章 に た ち む か い、 子 ど も たち 自 身 で 文
す る 著 作 物 で あ る 。 青 木 は 、 教 師 が 常 に 主 導 し 学 習 者 で あ る児 童 が 受 け 身 であ る よ う な 読 解 指 導 を 問 題 視 し 、
本 書 は 、 長 ら く 東 京 教 育 大 学 附 属 小 学 校 にあ って国 語 教 育 実 践 研究 を 積 ん で き た 青 木 幹 勇 に よ る 読 解 指 導 に 関
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四 問 題 を 解 く ( 1 厚 い壁 / 2 読 み な が ら 解 く )
第 三 章 の ﹁問 題 の教 材 化 ﹂ と いう 見 出 し か ら も わ か る よ う に 、 単 に教 材 文 の文 章 研 究 で終 わ る の では な く 、 児
童 か ら 出 さ れ た 問 題 を ﹁教 材 化 ﹂ す る こと に よ って 学 習 指 導 を 展 開 し よ う と す る 点 で、 読 者 主 体 の確 立 が 求 め ら
れ る 現 在 の読 む こ と の 学 習 指 導 に お い ても 今 な お 十 分 に 価 値 を 持 つ提 案 であ ると 考 え ら れ る 。 特 に 、 児 童 が 作 り
出 す 問 題 の種 類 や 質 、 そ れ を ど の よ う に整 理 し て授 業 に か け る か な ど の議 論 は実 践 的 で 、 こ の よう な 学 習 を 展 開 し た と き に生 じ る 問 題 へ の対 処 案 が 明 確 に 示 さ れ て お り 、 学 ぶ と こ ろ が多 い。
第 五章 で は 、 一九 六 二 ( 昭 和 三 七 ) 年 に全 国 大 学 国 語 教 育 学 会 の委 嘱 を 受 け て 青 木 が 行 った 実 践 な ら び に そ の
実 践 を め ぐ る 協 議 の記 録 が 示 さ れ て いる 。 教 材 は 、 ﹁十 和 田 の ひ め ま す ﹂ (四年 下 ) と いう 伝 記 を 使 い、 ﹁十 和 田
湖 で ひ め ま す の養 魚 に成 功 し た 和 井内 貞 行 の業 績 を 正 し く 読 み と ら せ る ﹂ と いう 目 標 が 設 定 さ れ 、 三 次 十 一時 間
の指 導 計 画 で実 践 さ れ て いる 。 問 題 を 持 ち 調 べ学 習 や表 現 活 動 へと 展 開 す る よう な 学 習 が普 通 に展 開 さ れ る 現 代
の視 点 か ら 見 れ ば 、 従 来 の読 解 指 導 と いう 枠 組 み の 中 で の学 習 と いう 印 象 は 否 め な いが 、 児 童 の読 み の中 に は 批
( 明 治 図 書 ) の第 一巻 に 再 録 さ れ た 。
判 的 に読 ん で いる 発 言 が当 た り 前 のよ う に 認 め ら れ 、 批 判 的 な 読 み の学 習 が 次 第 に 注 目 さ れ つ つあ る 現 在 に お い ても 新 鮮 であ る 。 本 書 は 、 そ の後 一九 七 六 (昭和 五 一) 年 に ﹃青 木 幹 勇 授 業 集 成 ﹄ 全 五巻
[ 寺 井 正憲 ]
こ の巻 に は 、 こ れ に 加 え て 読 書 指 導 を め ぐ る論 稿 九 編 や 、 野 地 潤 家 によ る ﹁国 語 科 授 業 構 築 への不 易 の道 標 ﹂ と 題 す る行 き 届 いた 解 説 が 掲 載 さ れ て いる 。
﹃ 国 語 科 の基 本 的指 導 過 程 入門 ( 明 治 図 書 新 書 62) ﹄( 明治 図書 / 一九 七 〇年 ) 輿 水 実
︿ 講 座 国 語 科 の 基 本 的 指 導 過 程 ﹀ 全 五 巻 が 刊 行 さ れ る に 及 ん で 、 ﹁読
( ﹁国 語 教 育 の 近 代 化 ﹂ 一九 八 四年 一月 号 初 出 ・﹃昭 和 国 語 教 育 個 体 史 ﹄ 再 録 分 か ら の引 用 )
れ ば な ら な い。 そ こ で 、 戦 後 の 教 育 理 念 も 取 り 入 れ 、 外 国 の指 導 過 程 研 究 や 日 本 の実 態 調 査 を 参 考 に し て 、
戦 前 の指 導 過 程 を 紹 介 し た いと 思 った が 、 単 な る 紹 介 で な く 、 こ う いう 科 学 化 三原 則 に 合 った も の に し な け
化 す る 、 学 校 指 導 に も 、 そ う いう 科 学 的 方 法 を 求 め る こ と を 、 自 分 の仕 事 と 決 め て いた 。 / そ れ で、 ( 中略 )
が あ る 、 そ し て み ん な が 少 な く と も そ れ だ け は や ら な け れ ば な ら な い国 語 科 教 育 で あ る 。 国 語 科 教 育 を 科 学
( 引 用 者 注︱ 一九 六 〇 年 頃 か ら ) 科 学 的 国 語 科 教 育 と は 、 み ん な の 人 が や れ る、 だ れ が や って も そ の効 果
に よ る と 、 基 本 的 指導 過 程 は 、 以 下 の よ う な 発 想 に 基 づ く と いう 。
輿 水 実 自 身 の述 懐
解 ﹂、 ﹁作 文 ﹂、 ﹁聞 き 方 ﹂、 ﹁話 し 方 ﹂、 ﹁書 写 ﹂ の各 領 域 に 関 し て も 広 く 唱 え ら れ る こ と にな った 。
全 国 的 に 普 及 す る と と も に 、 一九 六 五年
の練 習 、 目 標 に よ る 評 価 と いう 三 つの段 階 が 加 え ら れ た も のと な って い る。 こ の ﹁基 本 的 指 導 過 程 ﹂ は、 提 唱 後
段 階 の内 容 を 示 す と 、 戦 前 の解 釈 学 的 指 導 過 程 ﹁通 読 ・精 読 ・味 読 ﹂ に 、 目 標 の設 定 、 技 能 ・文 型 ・語 句 ・文 字
でき る﹂ こ と や ﹁だ れ が や っても あ る成 果 が 得 ら れ る﹂ こ と に主 眼 を 置 いた も の であ った 。 読 解 学 習 を 例 に 、 六
容 的 に 六 段 階 を 明 示 す る形 で ﹁過 程 ﹂ を 明 確 に提 案 し て いる こと が特 徴 であ る と と も に 、 そ の段 階 は ﹁だ れ でも
輿 水 実 は 、 昭 和 三 八 (一九 六 三 ) 年 四 月 号 ﹁初 等 教 育 資 料 ﹂ 誌 に ﹁基 本 的 指 導 過 程 ﹂ の構 想 を 発 表 し た 。 内
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六 段 階 の基 本 的 指 導 過 程 と いう も のを 、 読 解 、 作 文 、 書 写 、 話 し方 、 聞 き 方 に 作 って み た 。
本 書 は 、 前 出 の講 座 の刊 行 五年 後 に 、 入 門 書 と し て 再 提 案 さ れ た も の で あ る 。 全 二 〇 五 ペ ー ジ の文 献 であ る が 、 目 次 を 見 ると 、 九 つも の章 で構 成 さ れ て いる 。
Ⅰ 基 本的指導 過程と は何 か/Ⅱ 国語科 の基 本的指導 過程 はなぜ六段階 にな るか/Ⅲ 国 語教室 の読 解は
なぜ 三読法 でな ければな らな いのか/Ⅳ 研究 の出発点 とし ての基本的指導 過程/Ⅴ 国語 科教育 の課 題解
決 の場とし ての基本的指導 過程/Ⅵ 読解指導 の歴史 から見た 基本的指導 過程/Ⅶ 読む こと の三本立 て学
(ⅢとⅤ のみ 二節 構 成 ) さ れ てお り 、 各 節 も 平 均 四 項 ( 全 九 十 四項 ) で構 成 さ れ て い
習と基 本的指導 過程/Ⅷ 作文 の三本立 て学 習と基本 的指導過 程/Ⅸ 各 地各学校 におけ る基本的指導 過程 の実 践
各 章 は 、 ほ ぼ 三 節 で構 成
て 、 項 目 的 に 平 均 二 ペ ー ジ と いう こと に な り 、 細 分 化 さ れ た構 成 と な って いる こ と が わ か る。 内 容 的 に 見 て も 、
読 解 を 中 心 と し た 基 本 的 指 導 過 程 の 原 論 や そ の理 論 的 背 景 を 述 べ た 後 、 歴 史 的 な 背 景 や 、 作 文 への言 及 、 実 践 例
の紹 介 な ど を 加 え てお り 、 一貫 し た 構 成 意 識 が 明 確 と は 言 い が た い反 面 、指 導 過 程 に 関 す る初 学 者 的 関 心 を 持 つ
実 践 者 へは 理 解 を 導 き やす く 書 か れ て いる と いえ る 。 ま さ に 入 門書 と いう べ き 文 献 で あ る 。
[ 植山俊宏]
輿 水 実 は 、 こ の 一年 後 に ︿ 講 座 国 語 科 の基 本 的 指 導 過 程 ﹀ 全 五 巻 の後 継 書 (講 座 )、 ︿基 本 的 指 導 過 程 の進 展 ﹀ 全 三巻 を 刊 行 し 、 基 本 的 指 導 過 程 の 充 実 、 普 及 に さ ら に 努 め て いる 。
一 読 総 合 法 入 門﹄ ( 明治 図書 / 一九 六六 年 ) 児 童 言 語 研 究会 『
フ= ナ ン セ ン﹂ の 実 践 例 ﹀/ 中 学 校 の実 践 ︿文 学 ﹁走 れ メ ロ ス﹂ の実 践 例 ﹀
低 学 年 の実 践 ︿入 門 期 の扱 い﹀/ 中 学 年 の実 践 ︿ 文 学 ﹁八 郎 ﹂ の実 践 例 ﹀/高 学 年 の実 践 ︿伝 記 ﹁ブ リ チ ョ
Ⅲ ﹁一読 総 合 読 み ﹂ 実 践 の手 引
﹁ひ と り ご と 法 ﹂ を す す め る / ﹁ア タ マ の字 引 ﹂ を 使 わ せ る こ と を す す め る
Ⅱ ど ん な こと か ら は じ め る べ き か
習 ・復 習 を さ せ な い のか /物 語 ・論 説 ・詩 ・劇 な ど に よ って、 ど のよ う な 取 り 扱 い のち が いがあ る の か
の場 所 は ど の よう に し てき め る の か 、 ま た ﹁立 ち ど ま り ﹂ は 不自 然 な 読 み では な いか / 一読 総 合 読 み は 予
一読 総 合 読 み は ど のよ う な 読 み を さ せ る の か / 全 文 を お さ え ず に部 分 の 読 み が で き る か / ﹁立 ち ど ま り ﹂
Ⅰ ﹁一読 総 合 読 み﹂ の疑 問 に答 え る
まえがき
以 下 に 、 こ の著 作 の目 次 を 示 す 。
いた と こ ろ の ﹃ 通 読 ﹄ を 行 な わ な いこ と に あ り ま す ﹂ ( 七 頁 ) と いう 宣 言 的 な 一文 か ら 始 ま る 。
であ る。 そ の本 論 は 、 ﹁﹃一読 総 合 読 み﹄ が 従 来 の読 み と 根 本 的 に異 な る と こ ろ は 、 読 み の最 初 の段 階 に行 な って
本 書 は 、 ﹁ひ と り でも 多 く の教 師 に 一読 総 合 法 を 知 ってほ し い﹂ (二頁 ) と いう 願 い のも と に刊 行 さ れ た 入 門 書
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﹁一読 総 合 読 み ﹂ の基 礎 作 業
立 ち ど ま り / 関 係 づ け / 書 き こ み ・書 き だ し /話 し あ い /く わ し い話 し か え / 感 想 ・意 見 ・批 判 / 段 落 ・
一読 総 合 法 が生 ま れ るま で
文 段まと め/最後 のまとめ ︻ 付︼
Ⅰ ∼Ⅳ の各 章 では 、 一読 総 合 法 の方 法 論 や 実 際 の授 業 、 さ ら に は そ れ ら の背 景 に あ る 理 念 な ど が 平 易 な 文 体 で
語 ら れ て い る。 そ の 一例 と し て、Ⅰ の﹁一 読 総 合 読 み は ど の よう な 読 みを さ せ る の か﹂ の冒 頭 を 引 用 す る 。
いま ま で広 く 現 場 で お こ な わ れ てき た 読 解 の指 導 過 程 と いえ ば 、 通 読 ・精 読 ・味 読 と よ ぶ 三 つ の段 階 を へ
て 、 次 第 に深 い層 に読 み せ ま ら せ る と い った方 法 で し た 。 こ の方 法 は い つも 全 体 を ふ ま え て 部 分 にく だ る と
いう 立 場 を と って いま す 。 い って み れ ば 、 ラ ッキ ョウ の皮 を だ ん だ んは いで い って 、 次 第 に 中 心 にせ ま る と いう いき か た で す 。 こう し た 方 法 を わ た く し た ち は 三読 法 と よ ん で いま す 。
そ れ に 対 し て 、 一読 総 合 読 み は文 章 の表 現 に つ いて 、 そ の展 開 を 追 い、部 分 か ら は じ め て全 文 章 を 読 み と ろう と す る方 法 で す 。 ( 以 下 、﹁一読 法 ﹂ と 略 称 し ま す ) (八 頁 )
︻付 ︼ に は 、 一読 総 合 法 の提 唱 に至 る ま で の経 緯 が 記 さ れ て いる 。 読 者 は 、 本 書 の出 版 さ れ た 一九 六 六 年 に 遡
って、 一読 総 合 法 と そ れ を 提 唱 し た 当 時 の児 童 言 語 研 究 会 の 熱 意 に接 す る こと が で き るだ ろ う 。
な お 、 同 研究 会 は 、 こ の十 年 後 に ﹃新 ・ 一読 総 合 法 入 門﹄ (一光 社 / 一九 七 六 年 )を 上 梓 し て いる。 [ 守 田庸 一]
﹃ 状 況 認識 の文 学 教 育﹄ ( 有 精 堂 / 一九 六 八年 ) 大 河 原 忠 蔵
問 題 を 感 じ 、 生 徒 の認 識 の変 革 を 目 指 し た 文 学 教 育 を 提 唱 し て いる 。 こ れ は 、 荒 木 繁 氏 の 問 題 意 識 喚 起 の文 学
大 河 原 氏 は 、 昭 和 三 〇年 代 にお いて 、 戦 後 占 領 下 の退 廃 と いう 状 況 が 高 校 生 に も 影 響 を お よ ぼ し て いる こと に
と た た かう 文 学 教育 ﹂ が 収 め ら れ て いる 。
る 。 な お 、 昭 和 五 七 年 に は 本 書 の増 補 版 が 発 行 さ れ てお り 、 第 二 部 の最 後 に 昭 和 三 〇年 に 発 表 さ れ た 論 文 ﹁頽 廃
本 書 の第 一部 に は 理 論 的 な こ と を 述 べ た も の 、 第 二 部 に は 具 体 的 な 教 材 な ど に も と づ いた も のを ま と め て い
判/生徒 の状況と 教師 の状 況/状況を とらえ る生活記録 /状況理論 によ る教材 研究︱太 宰 治 ﹃ 富岳 百景﹄ ︱)
第 二部 状況認 識 の立場 から ( 文学教 育理論 に ついて/現代国語と 古典 の関連/中学校 教科書 の文学教材 批
学教育 の限界と状 況認識 /状 況認識を 目標 にお いた文学教育 )
認識と 映像 ( 状況を えぐり だす映 像/状 況 の映 像的把 握)/状況 を認識 させ る文 学教 育 ( 主 体を たかめ る文
ら型思想 と こぶし型思想/状 況と主題 ) /状 況認識 の方 法 ( のりう つる文 体/ いつでもど こでも書く)/状 況
第 一部 状況 認識 の発見 ( 文 学的 認識が とらえ る状況 /状況 のなか に いる人間)/状 況認識 と思想 (てのひ
目 次 は 次 のよ う な も ので あ る。
本 書 には 、大 河 原 忠 蔵 氏 が 、 昭 和 三 四年 か ら 四 二年 ま で の 間 に 発 表 し た 論 文 が収 録 さ れ て いる 。
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教 育 の流 れ を 受 け つ いだも の であ った が 、 荒 木 氏 が 作 品 の持 つ問 題 意 識 を ふ ま え て 民 族 教 育 に 到 達 し よう と し た
の に 対 し 、 大 河 原 氏 は作 品 の持 つ問 題 意 識 を 、 生 徒 一人 一人 の意 識 の変 革 に 向 け よう と し て いた 点 で 異 な って い た と いえ よ う 。
大 河 原 氏 は 、 文 学 作 品 を 使 って 文 学 的 認 識 を 育 て る こ と を 文 学 教 育 の本 来 的 な あ り 方 と と ら え て いる 。 そ の文
学 的 認 識 と は 、 文 学 作 品 に 対 す る 認 識 で は な く 、 生 徒 が 文 学 作 品 を 離 れ て か ら も 自 分 の内 部 ・外 部 を と り ま く 状
況 を 言 葉 で と らえ て いく 認 識 のこ と だ と し て いる 。 具 体 的 に は 、 あ る 文 学 を 書 いた 作 家 の認 識 の仕 方 に学 ん で、
自 分 を め ぐ る 状 況 への 認 識 を 新 た にす る と いう 方 法 を 用 い て い る 。 そ れ は ﹁の り う つる 文 体 ﹂ と 呼 ば れ て お り 、
文 学 の作 家 の文 体 か ら も の の と ら え 方 を 学 び 、 実 際 に 生 徒 自 身 が あ る 状 況 に つ い て 、自 分 で書 き 、 話 す う ち に、
そ の作 家 の 認 識 方 法 に よ って自 分 のま わ り の状 況 を つか む と いう も の で あ った 。 大 河 原 氏 は 生 徒 に多 く の文 章 を
書 か せ て お り 、 本 書 の中 でも そ れ ら の実 例 を 用 いて 状 況 認 識 に つい て解 説 を し て いる 。 こ れ ら の例 に よ り 、 実 際 に 状 況 認 識 と は ど の よ う な も のか が 具 体 的 に わ か る よ う にな って い る。
ま た 、 大 河 原 氏 は 、 状 況 認 識 を 深 め る た め に 、状 況 を 映 像 的 に つか む こと も 模 索 し て お り 、 ス ラ イ ド や映 像 を
用 い る こ と に も 力 を 入 れ て いる 。 これ は 、 文 字 に は 抵 抗 感 を 感 じ るも の の、 映 像 には 慣 れ て いる と いう 生 徒 の実 態 を ふま え た も の でも あ った 。
こ の大 河 原 氏 の状 況 認 識 の文 学 教 育 は 、 生 徒 の実 態 に問 題 意 識 を 発 し 、 文 学 に 描 か れ た 状 況 と 生 徒 の状 況 と を
[ 棚田真由 美]
重 ね 合 わ せ て、 生 徒 の現 実 に 対 す る認 識 を 変 革 し よ う と いう 点 で、 文 学 を 認 識 変 革 の手 段 と し て 用 いよ う と し た も のだ った と いえ る 。
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﹃ 教師 の た め の文 芸 学 入 門 ﹄ ( 明 治 図 書/ 一九 六 八年 ) 西郷 竹 彦
本 書 は 、 西 郷 文 芸 学 (西 郷 竹 彦 の文 芸 学 ) の入 門 書 と し て、 ベ スト セ ラ ー と な った 著 作 であ る 。 著 者 は 本 書 の ﹁ま え が き ﹂ で以 下 のよ う に 述 べ て いる 。
文 芸 学 は ﹁こ と ば の芸 術 ﹂ と し て の文 学 を 研 究 す る 学 問 であ る こと 。 そ し て、 国 語 教 育 、 文 学 教 育 、 作 文
教 育 に お い て 、 文 芸 学 の果 た す 役 割 は き わ め て大 き いこ と 。 にも か か わ ら ず 、 日本 の教 育 界 に は 、 教 師 のた
め の文 芸 学 を 体 系 的 に 述 べ た 本 が な いこ と 。 そ し て 初 心 の方 に も 理 解 し て いた だ け る よ う な ﹁文 芸 学 入 門 ﹂ の執 筆 を 思 い立 った 。
本 書 は こ のよ う な 性 格 を も った 本 であ った 。 本 書 の 目 次 は 、 次 のと お り で あ る。
絵画 の世界
文 学 の世 界 ︱ 新 美 南 吉 ﹁ご ん ぎ つね ﹂︱ (一 ︿と お し よ み ﹀ 共 体 験 の段 階 / 二︿ へま と め よ み ﹀ 思 想 化 ・典 型 化 の段 階 ) Ⅲ 参 考 資 科
Ⅱ Ⅰ
小 学 校 六 年 生 の学 級 で 、 ﹁ご ん ぎ つね ﹂ を テ キ スト と し て 、 ﹁文 学 理 論 ﹂ ( 文 芸 学 ) の 授 業 を 試 み 、 そ の記 録 を
も と に執 筆 さ れ て いる 。 授 業 記 録 の引 用 は 、 西 郷 文 芸 学 の わ か り やす い解 説 に な って いる が 、 実 際 の国 語 の授 業 で ど の よう に 活 用 さ れ る の か、 具 体 的 に 理 解 でき る よ う にも な って いる 。
( 概 念 ) を 使 用 す る こと で 、 確 か で豊 か な
西郷文芸 学 には、独自 のター ム ( 用 語 ) が あ る 。 よ く 知 ら れ て いる も の で は 、 視 点 、 形 象 、 典 型 、 共 体 験 、 な ど が あ る 。 文 芸 学 は 文 芸 の科 学 であ る か ら 、 科 学 的 に 定 義 さ れ た 用 語
﹁文 学 の世 界 ﹂ で は 、 ﹁ご ん ぎ
﹁絵 画 の世 界 ﹂ に お いて は 、 形 象 と 表 象 、視 角 と 視 点 、 外 の 目 と 内 の 目 、 視 点 人 物 と 対 象 人 物 な ど の 概 念 に
文 芸 の世 界 を 理 解 す る こと が で き る 。 Ⅰ
つ いて 、 カ モ と キ ツネ の絵 を テ キ スト に し て、 わ か り や す く 解 説 さ れ て い る 。Ⅱ
つね ﹂ を テ キ スト に し て、 自 然 形 象 と 人 物 形 象 、 同 化 と 異 化 の 共 体 験 、 文 芸 の構 造 、 主 題 ・思 想 、 象 徴 、 典 型 、
虚 構 な ど の 概 念 が 、 授 業 場 面 を 引 用 し な が ら 具 体 的 に 説 明 さ れ て い る 。 こ の 章 は 、 ︿と お し よ み ﹀ ( 共 体 験 の段
階 ) と ︿ま と め よ み ﹀ ( 思 想 化 ・典 型 化 の段 階 ) と いう 文 芸 研 の授 業 方 式 を 使 って解 説 さ れ て い る 。 文 芸 研 の授
業 方 法 のよ く わ か る 章 であ る 。Ⅲ ﹁参 考 資 料 ﹂ に は 、 こ の授 業 を 受 け た 六 年 生 の感 想 文 が 紹 介 さ れ て いて 、 こ の
﹁文 学 の科 学 ﹂ の授 業 は 、 子 ど も た ち にと って、 と て も 新 鮮 な 学 習 であ った こと が わ か る 。
[足 立 悦 男 ]
( 恒 文 社 / 一九 九 九 年 ) に ま と め ら れ て いる 。 別 巻 2 ﹃西
西 郷 竹 彦 の文 芸 学 ・文 芸 教育 論 は 、 戦 後 の 国 語 教 育 に科 学 的 な 理 論 を 導 入 し 、 大 き な 影 響 を 与 え てき た 。 そ の 体 系 は 、 ﹃西 郷竹 彦 文 芸 ・教 育 全 集 ﹄ 34 巻 ・別 巻 2 巻
郷 文 芸 学 の研 究 ﹄ ( 足 立 悦 男 著 / 一九 九 九 年 ) は 、 そ の理 論 体 系 を 明 ら か に し た 研 究 書 で あ る 。
﹃ 言 語 行 動 主 体 の 形 成︱ 国 語教 育 への視 座 ﹄ ( 新 光 閣 書 店 / 一九 七 五年 ) 田近 洵 一
いを は せ る。 こ れ が 、 言 語 行 動 主 体 と し て筆 者 ・作 者 と 対 峙 す る 者 の基 本 的 態 度 であ る と 、 田 近 は 言 う 。
立 石寺 で体 験 し た 静謐 な 世 界 を 、 発 句 と いう 言 語 形 式 に よ って示 し た ( 示 さ ず に いら れ な か った ) 芭 蕉 の心 に想
す べ き か 、 厳 し く 問 う こ と を 求 め る 。 例 え ば 、 ﹃お く の細 道 ﹄ で ﹁閑 か さ や 岩 に し み 入 蝉 の 声 ﹂ を 読 ん だ と き 、
れ な か った ﹁行 動 ﹂ に心 を は せ る こ と が 、 重 要 な 視 点 と な る 。 そ れ は 同 時 に 、 読 者 自 身 が表 現 主 体 と いか に対 峙
語 作 品 を 絶 対 的 価 値 物 と み る の で は な く 、 表 現 主 体 の思 想 や感 情 を 、 こ のよ う な ジ ャ ン ル や 文 体 に託 さ ず に は お
第 三 は 、 す ぐ れ た 言 語 作 品 を 作 り 出 し た 表 現 主 体 、 す な わ ち筆 者 ・作 者 への視 座 であ る 。 こ のば あ い、 当 の 言
か 。 これ が本 書 の実 際 的 な 問 題 意 識 であ り 、 具 体 的 な 言 語 作 品 や 実 践 を 数多 く 例 示 し て、 詳 し く 説 か れ て いる 。
の教 材 ) の教 育 内 容 を 確 実 にと ら え 、 学 習 者 に質 の高 い読 み の場 を 設 け る た め に は 、 な に を いか に す れ ば よ い の
第 二は 、言 葉 の教 育 に た ず さ わ る 主 体 、す な わ ち 国 語 教 師 への視 座 であ る 。教 師 であ る 私 た ち が 教 材 ( 特 に読み
究 す べき 国 語 人 の使 命 と し て宣 言 さ れ て いる 。
語 人 格 の形 成 を う な が す 国 語 教 育 は 、 いか にあ ら ね ば な ら な いか 。 こ れ が 本 書 の本 質 的 な 課 題 で あ り 、 不 断 に 探
そ の第 一は 、 読 者 と し て の 学 習 主 体 、 す な わ ち児 童 ・生 徒 への視 座 であ る 。 か れ ら に 、 ゆ た か で た く ま し い言
れ ば ﹁視 座 ﹂ を 示 し て い る 。
す る 人 格 の こ と を さ す 。 こ の主 体 に つい て 田 近 は 、 ﹁読 む こ と ﹂ の教 育 実 践 を 中 心 に 、 三 つ のす が た 、 言 い換 え
書 名 に あ る ﹁言 語 行 動 主 体 ﹂ と は、 言 葉 に よ る 他 者 と のか か わ り の中 で、 つね に何 も のか を 生 成 し 、 自 ら 変 革
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( 1 言 語 と 人 間 /2 言 語 と 文 化 / 3 国 語 教 育 の目 標 / 4 国 語 科 の基 礎 学 力 )
本 書 の構 成 は 以 下 のと お り で あ る ( う ち 、 既 出 論 文 再 録 十 九 編 ・新 稿 四 編 )。
国 語 教 育 の 本質
序 章 ﹁主 体 ﹂ を 問 う 一
二 国 語 教 育 の今 日 的 課 題 ( 1 読 書 の害 / 2 国 語 教 育 に お け る 創 造 性 / 3 国 語 教 育 の 未 来 像 / 4 主
再 録 論 文 が 多 い著 書 に は 、そ れ ら を 寄 せ 集 め た だ け のも のも 散 見 さ れ る が 、本 書 は 書 名 と し て冠 さ れ た ﹁言 語 行
動 主 体 ﹂が 太 い概 念 的 支 柱 を な し て、全 体 を 貫 いて いる 。こ の支 柱 は 、や が てW ・イ ー ザ ー ら の読 者 論 と邂逅 し 、
読 書 行 為 論 と 呼 ば れ る 田近 教 育 学 の 通 し 柱 と な って いる ( 田近 ﹃ 創造の ︿ 読 み ﹀﹄ 東 洋 館 出 版 社 / 一九 九 六年 )。
[ 藤 森裕治]
本 書 に 学 ぶ読 者 は 、 刊 行 後 三 十 年 を 経 過 す る 田 近 の 思 想 が 、 そ の精 彩 を ま った く 失 って いな いど こ ろ か 、 ま す ま す 光 度 を 増 し て い る事 実 に 驚 く で あ ろう 。
﹃ 文 学 作 品 の読 み方 指 導 ﹄ ( むぎ 書 房/ 一九 八 ○年 ) 宮 崎 典 男
一 導 ス の段階 / 二 知 覚 の段 階 /三 理 解 の段 階 / 四 総 合 読 み の段 階 / 五 終 末 の段 階
第 四章 授業過程 の展開
一 いく つか の心理現象と 教育 の可能性 /二 文学作品 の内容と 指導過程
第 三章 文学作 品と読 み の原則
一 授業過程 と いう用 語 の意味 /二 授業過 程を規定す るも の
第 二章 授業過程 を規定す るも の
一 国語教育 と読 み方指導 / 二 文学教育 と読 み方指導
第 一章 文学作 品 の読 み方 指導 の位 置
本 書 の構 成 は 、 以 下 の 通 り であ る 。
心 と し た ﹁総 合 読 み ﹂ の段 階 を 通 じ て読 解 を 行 う 。
造 的 な 想 像 を 目 指 す ﹁知 覚 ﹂ の段 階 、 形 象 の本 質 的 意 味 を 抽 出 す る 思 考 を 目 指 す ﹁理 解 ﹂ の段 階 、 表 現 読 みを 中
て 、著 者 を 中 心 と し て 、多 く の努 力 を 重 ね て 究 明 さ れ た 指 導 過 程 の方 式 化 の達 成 水 準 を 示 し て い る。 形 象 の再 創
本 書 は 、 文 学 作 品 の読 み 方 の方 法 の原 則 を 詳 ら か に 説 き 明 か し た 著 述 で あ る。 教 育 科 学 研究 会 国 語 部 会 にお い
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本 書 の授 業 過 程 が 何 層 も の読 解 を 重 ね て いく か た ち と な って いる のは 、 文 学 作 品 が 構 造 的 で あ り 、 文 学 作 品 の
読 みも 構 造 的 なも の であ る と いう 考 え 方 に立 脚 し て いる た め であ る 。 と り わ け ﹁知 覚 ﹂ の段 階 を さ ら に﹁一 次 読
み﹂ と ﹁二 次 読 み ﹂ に弁 別 し 、 前 者 で は 主 と し て 言 葉 の文 法 論 的 意 味 ( 統辞 ) および語彙 論的意 味 ( 範 列 )、 後
者 で は 主 と し て言 葉 の運 用 に 関 わ る 意 味 ( 語 用 ) を 探 究 す る 点 は 特 徴 的 であ る 。 が、 こ の よう な 読 む と いう 行 為
を 明 確 に 分 離 す る こ と に対 し て は、 観 念 的 にす ぎ る の で は な いか と いう 批 判 が あ る。
と は いえ 、 著 者 の授 業 過 程 が 、 読 者 を す ぐ れ た 日 本 語 のに な い手 と す る た め に 、 一貫 し て言 葉 に 焦 点 を あ て て
い る点 は 重 要 であ る 。 類 似 す る 言 葉 を と り あ げ 、 差 異 に よ って意 味 を 明 確 に し て いく 活 動 は 、 教 科 研 の授 業 過 程
の中 で 大 き な 役 割 を 担 って いる 。 ﹁知 覚 ﹂ の原 則 を 、 ﹁こ と ば を 読 み て のも の に す る﹂、 ﹁想 像 活 動 の積 極 性 ﹂ と 定
め な が ら 、 同 時 に 前 者 が基 本 と な り 後 者 を 支 え て い ると す る 著 者 の主 張 が 授 業 過 程 に生 か さ れ て いる 。
著 者 の主 張 を さ ら に 理 解 す る た め に 本 書 の理 論 的 支 柱 と な った 奥 田 靖 雄 の次 の論 文 を 読 む と よ い。
[ 寺 田 守 ]
﹁読 み 方 教 育 に お け る 主 観 主 義 ﹂ (﹃ 読 み 方 教 育 の 理 論 ﹄ 国 土 社 / 一九 六 三 年 )、 ﹁文 学 作 品 の 内 容 に つ い て﹂・ ﹁文 学 作 品 の 構 造 に つ い て﹂ (﹃ 国 語 教 育 の 理 論 ﹄ 麦 書 房 / 一九 六 四 年 )。
﹃ 小 学 校 読 み の 指導 に お け る 日本 語 ﹄ ( 教 育 出 版 / 一九 八 二年 )小 松 善 之 助
具 体 的 な 説 明 の例 と し て、 た と え ばⅢ ︱7 で は、 次 のよ う に 述 べ て いる 。
喩 (︱の よ う に)
の認 識 ・思 考 /5 文 末 の 働 き / 6 説 明 文 に お け る連 体 修 飾 語 / 7 文 脈 指 示 の ﹁こ そ あ ど ﹂ / 8 比
1 説 明 展 開 にお け る 動 機 づ け / 2 説 明 の展 開 と 問 い の文 / 3 定 義 的 説 明 / 4 説 明 の結 び と 読 み手
Ⅳ 中 学 年 説 明 文 教 材 に お け る読 み の指 導
態 語 / 11 物 語 分 にお け る 省 略 符 号 / 12 な ぞ らえ 表 現 ︱ 比 喩
具 体 名 詞 / 8 人 物 の心 理 ・心 情 を 表 す 慣 用 的 語句 / 9 方 言 のお も し ろさ / 10 状 態 描 写 の擬 声 語 ・擬
描 写 ︱ 間 接 話 法 / 5 会 話 の描 写 構 造 /6 複 雑 な 動 作 を 表 す 複 合 動 詞 / 7 表 現 の リ ア リ テ ィ を 支 え る
1 視 覚 的 描 写 の文 ・文 章 /2 心 理 ・心 情 の描 写︱ 会 話 文 / 3 行 動 の象 徴 的 意 味 / 4 会 話 の間 接 的
Ⅲ 中 学 年 文 学 教 材 に お け る 読 み の指 導
以 下 、 構 成 の 一部 を 示 す 。
に分 け 、 低 ・中 ・高 学 年 の各 学 年 段 階 に 特 徴 的 な 表 現 を 取 り 上 げ 、 解 説 を 加 え る 。
本 書 は 、 小 学 校 教 材 を 資 料 にし た 国 語 科 指 導 のた め の 表 現 分 析 を 集 積 し た も の であ る 。 文 学 教 材 と 説 明 文 教 材
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作 品 の人 物 は 必 ず そ の社 会 的 、 自 然 的 な 状 況 の中 で描 か れ ま す 。 状 況 と の関 連 で描 か れ る と 言 っても い い
で し ょう 。 自 然 や 社 会 に存 在 す る事 物 は 、 状 況 を 描 く 場 合 の現 実 的 な 素 材 と な り ま す 。 (中 略 )
( イ ) 雨 があ が る と 、 ご ん は 、 ほ っと し てあ な か ら は い出 ま し た 。 空 は か ら っと 晴 れ て い て、 も ず の声 が き ん き ん ひび い て いま し た 。
(ウ) お 昼 が す ぎ る と 、 ご ん は 、 村 の墓 地 へ行 って六 地 蔵 さ ん の か げ に か く れ て いま し た 。 い いお 天 気 で 、
遠 く 向 こ う に は 、 お し ろ の屋 根 が わ ら が 光 って いま す 。 墓 地 に は ひ が ん花 が 、 赤 いき れ の よう に さ き 続 い て いま し た 。
( イ ) の ﹁も ず の声 ﹂ も 、 秋 の 天 気 の特 徴 を 表 す す ば ら し い素 材 で す 。 ま ぶ し い秋 の 日ざ し を 目 に伝 え る
と と も に 、 も ず の声 を 耳 に ひ び か せ る 文 章 で す 。 ( ウ ) の ﹁六 地 蔵 さ ん ﹂ ﹁お し ろ の屋 根 がわ ら ﹂ ﹁ひ が ん花 ﹂
な ど 三 つ の具 体 的 な 素 材 は 、 兵 十 の村 の墓 地 のリ ア リ テ ィを 支 え て い る と と も に、 そ れ を の ぞ い て いる ご ん
の美 的 な 感 覚 を も 表 し て いま す 。 そ う し た 人 物 を 操 作 し て作 品 を 作 り 出 し て い る作 者 の南 吉 の美 意 識 を も 表
し て いる こと は いう ま で も な いで し ょう 。 右 に 見 た よう に ﹁ご ん ぎ つね ﹂ の作 品 で 目 に つく のは 、 植 物 の具
体 名 詞 が た い へん 多 く 、 巧 み に使 わ れ て いる こ と です 。 十 四種 も 登 場 し ま す (一〇 〇 ∼ 一〇 一頁 )。
従 来 の読 み の指 導 に お い ては 、 ほ と ん ど の 場 合 、 内 容 が 学 習 の 対象 と さ れ て いた 。 説 明 文 指 導 で は、 一九 七 〇
年 代 後 半 か ら 西 郷竹 彦 、 小 田 迫 夫 ら に よ り 、 説 明 的 表 現 の重 要 性 が 唱 え ら れ る よ う に な る 。 本 書 は 、 表 現 の特 徴
を 小 松 自 身 の指 導 の中 か ら 抽 出 し た と こ ろ に特 色 が あ る 。 し か も 、 特 徴 的 な 部 分 に絞 り 込 み、 そ の機 能 を 具 体 的
[植 山 俊 宏 ]
に 述 べ て い る。 読 み の指 導 の本 質 と し て表 現 の機 能 を 重 点 化 し 、 学 習 事 項 を 明 確 にし た好 著 と いえ る。
﹃ 新 し い詩 教 育 の理 論 ﹄ ( 明 治 図 書 / 一九 八 三年 ) 足立 悦 男
的 に述 べら れ て いる 。
を 提 唱 し た 理 由 は 、 本 書 の刊 行 に先 立 つ 一九 八 三 年 六 月 の ﹁教 育 科 学 国 語 教育 ﹂ 第 三 一八 号 に 、 以 下 の よう に 端
る ﹂ の 三 つ の観 点 が 、 鑑 賞 指 導 の 現 状 に 対 す る 批 判 と と も に提 示 さ れ て いる 。 と こ ろ で 、 氏 が ﹁見 方 の 詩 教 育 ﹂
序 説 に お いて 、 足 立 氏 自 身 が ﹁本 書 の テ ー マ﹂ と し て 掲 げ る ﹁見 方 の詩 教育 ﹂、 ﹁日 常 性 の詩 教 育 ﹂、 ﹁詩 で教 え
Ⅳ 詩 の 原 理 論 のた め に ( 詩 と モ チ ー フ の 原 理 / 詩 と イ メ ージ の原 理 / 詩 と リ ズ ム の原 理 )
Ⅲ 詩 の指 導 論 のた め に ( 詩 が教 え る 位 相 / 詩 を 教 え る 位 相 / 詩 で教 え る 位 相 / 比 喩︱ 像 的 認 識 の機 能 )
Ⅱ 詩 の教 材 論 のた め に ( 詩 ・短 歌 型 教 材 の条 件 /詩 教 材 研 究 の視 座 と 方 法 / 作 品 論 と 教 材 論 の接 点 )
Ⅰ 日 常 性 の詩 教 育 を めざ し て ( 日 常 が 詩 に変 わ る と き / 裏 側 か ら 詩 を の ぞく 試 み / 言 葉 の亀 裂 と の出会 い)
序 説 詩 を 教 え る こと か ら 、 詩 で 教 え る こ と へ︱鑑 賞 指 導 へ の批 判 ︱
以 下 に目 次 を 示 す 。
起 こした。
を ﹁感 じ 方 の 詩 教 育 ﹂ と し て批 判 し 、 詩 教 材 に ひそ む 認 識 の力 に 焦 点 を あ てた 足 立 氏 の提 唱 は 、 賛 否 両 論 を 巻 き
本 書 は 、 近 年 の詩 歌 教育 論 に お い て話 題 を 呼 んだ ﹁見 方 の詩 教 育 ﹂ 論 を 提 唱 し た も の で あ る 。 従 来 の鑑 賞 指 導
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詩 人 の ﹁も の の見 方 ﹂ に 注 目 す る の は 、 第 一に 、 詩 に 内 在 す る 機 能 のう ち 、 確 か な も のと し て取 り 出 せ る
こ と 。 第 二 に 、 子 ど も た ち の現 実 認 識 を ゆ さ ぶり 、 変 え て いく 働 き を も って いる こと 。 第 三 に、 詩 教 材 で教 え て いく こ と の内 容 が は っき り し て く ると 思 わ れ る か ら であ る 。
さ ら に 本 書 の序 説 に は 、 ﹁見 方 の詩 教 育 を 主 張 す る 所 以 ﹂ と し て次 の 一節 が あ る 。
詩 文 学 そ のも のは 、 も と よ り 論 理 では あ り え な い。 し か し 詩 教 育 と いう 営 為 は 、 論 理 的 な 構 造 を 持 つ必 要
が あ る 。 詩 教 育 も ま た 、 他 の教 科 と 同 じ よう に 教 科 教 育 の 一領 域 だ か ら で あ る 。
﹁教 科 教 育 の 一領 域 ﹂ と いう 言 葉 に 説 得 力 が あ る 。 こ れ に 続 く 各 章 で 、 そ の具 体 的 な 取 り 組 み 方 が 紹 介 さ れ る
構 成 にな って いる 。 足 立 氏 自 身 の授 業 実 践 の経 験 が 随 所 に 生 か さ れ 、 ﹁感 じ 方 ﹂ の方 法 は教 え ら れな いが 、 ﹁も の
の見 方 ﹂ や ﹁認 識 の仕 方 ﹂ は 教 え る こ と が でき る と いう主 張 が な さ れ 、 そ のた め の教 材 開 発 や授 業 構 築 の必 要 性
を 説 いて いる の であ る 。 中 でも 注 目 す べ き は 第Ⅲ 章 で、 詩 教 育 の方 法 を ﹁詩 が 教 え る﹂・﹁詩 を 教 え る ﹂・﹁詩 で教
え る ﹂ の 三 つ の位 相 に ま と め 、 こ れ ま で の鑑 賞 指 導 も 含 め た 位 置 づ け を 行 って い る点 で あ る 。 従 来 の理 論 や 実 践
で は 取 り 上 げ ら れ る こ と が 少 な か った ﹁詩 で教 え る ﹂ 枠 組 み の提 示 こ そ が 本 書 の眼 目 で あ り 、 さ ら に こ れ ら 三 つ
の位 相 は 、詩 教 育 と いう 枠 を 越 え て、 広 く 国 語 教 育 一般 に応 用 でき る価 値 を 内 在 し て いる 。
先 述 し た よ う に 、 ﹁見 方 の詩 教 育 ﹂ に は さ ま ざ ま な 批 判 が 寄 せ ら れ た 。 代 表 的 な も の と し て は 自 ら も 詩 人 で あ
[ 青 木 雅一]
る 小 海 永 二 氏 の ﹃現 代 詩 の指 導 理 論 と 実 践﹄ (明 治 図 書 / 一九 八 六 年 ) が あ る 。 本 書 と 比 較 す る こと で、 詩 教 育 の 抱 え る多 く の問 題 点 が俯瞰 さ れ よ う 。
﹃ 漢文教育論﹄ ( 青 葉 図 書 /一 九 八 四年 )長 谷 川 滋 成
(一 は じ め に / 二 音 読 / 三 語 彙 ・語 法 ・句 法 / 四 現 代 語 訳 / 五 文 章 構 成 / 六
﹁わ か る授 業 ﹂ を め ざ し て︱
か む / 五 原 状 に か え る / 六 お わ り に) 漢 文 教 育 の現 状 ︱
﹁新 し さ ﹂ を 求 め て / 四 教 材 研 究︱
位 一体 ﹂ を 求 め
﹁ほ んも の﹂ を 求 め て/ 五 お わ り に )
導 に 関 す る指 針 を 具 体 的 に 述 べ て いる 。 ﹁漢 文 教 育 の現 状 ﹂ の 四 に は 、 そ の実 践 の根 幹 にあ る と 思 わ れ る主 張 が
著 者 は いく つか の章 で か な り の ス ペ ー スを さ い て、 著 者 自 身 の 実 践 例 を 取 り あ げ 、 漢 文 教 材 研 究 や漢 文 学 習 指
て / 三 指 導 研 究︱
(一 は じ め に/ 二 わ か る授 業︱﹁三
漢 文 学 習 指 導 法 の改 善 (一 は じ め に / 二 教 材 を つく る / 三 き り こ み に 工 夫 す る / 四 部 分 と 全 体 を つ
賞 ・批 評 /一一 関 連 資 料 / 一二 お わ り に)
表 現 / 七 主 題 ・要 旨 、 大 意 ・あ ら す じ / 八 出 典 ・原 典 / 九 作 者 ・制 作 時 期 ・時 代 背 景 / 一〇 鑑
漢 文 教 材 研 究 の観 点
以 下 に構 成 の 一部 を 示 す 。
あ り 、 本 書 は そ れ ら の後 を 受 け て い る。
種 々 の面 か ら検 討 し た も の であ る 。 著 者 に は こ れ 以 前 に も す で に ﹃ 漢 文 教 育 序 説 ﹄、 ﹃漢 文 の指 導 法 ﹄ 等 の著 書 が
本 書 は 、 高 等 学 校 の国 語 科 に お け る 漢 文 教 育 を そ の 目 的 ・意 義 ・教 材 ・指 導 内 容 ・指 導 法 ・評 価 ・将 来 等 、
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次 のよ う に 見 え る 。
﹁わ か る授 業 ﹂ ﹁わ か ら せ る 授 業 ﹂ と は 、 漢 文 のほ んも のを 学 習 し指 導 す る と いう こ と で あ る 。
こ こ に 漢 文 の ほ ん も のと いう の は 、 漢 文 教 材 自 体 が 内 に も って いる も の、 漢 字 に よ って表 現 し よ う と し て
い るす べ て のも のと いう ほ ど の意 で あ る 。 そ れ を 指 導 者 が 読 み と り 、 学 習 さ せ た いと 思 う の であ る 。 漢 文 教
材 は そ の選 定 を 誤 ら な け れ ば 、 そ れ に 応 え る内 容 を ま ち が いな く も って い る 。 漢 文 教 材 のほ んも のを 読 み と
る に は 、 そ こ に 用 いら れ た漢 字 一つ 一つを 丹 念 に 分 析 し た り 、 そ れ を ふま え て 想 像 し た り す る こ と が ま ず 求
め ら れ る 。 漢 文 教 育 の存 在 、 学 習 者 と 指 導 者 の対 決 は そ れ を 抜 き に し ては 考 え ら れ な い。 ( 中 略)
教 室 で 、 漢 文 教 材 のほ んも のを 学 習 し 指 導 す る こと は 、 漢 文 の醍 醐 味 を 味 わ う こと で あ り 、 知 的 好 奇 心 を
喚 び 起 こす こと であ る 。 学 習 者 の実 態 いか ん に よ って は、 こ のよ う な 授 業 は 、 学 期 にあ る いは 年 間 に、 一教
材 か 二教 材 か も し れ な い。 量 を 読 む こと も た いせ つ であ る が 、 質 を 読 む こと に も 意 を 尽 く す よ う に し た い。
漢 文 教 材 のほ んも のを 学 習 し 指 導 しな い こと が 、 漢 文 に 興 味 を 示 さ な く さ せ 、 不 満 を も た せ 、 軽 視 さ せ る
結 果 を 招 い て い る の では な いか と いう 反 省 が あ って い い よう に 思 う (二 〇 三 ∼ 二 〇 五 頁 )。
漢 文 教 育 分 野 の実 践 報 告 や研 究 は 多 いが 、 本 書 の よ う に体 系 だ った 形 でそ の成 果 を 世 に 問う て いる も の は実 は
稀 であ る 。 著 者 は 中 国 六 朝 文 学 の 研 究 者 と し ても 知 ら れ る が 、 単 に 専 門 の側 か ら 漢 文 教 育 を 擁 護 す る の では な
[ 谷 口 匡 ]
く 、 これ に続 く 著 書 ﹃漢 文 教 育 史 研 究 ﹄ と 同 様 、 従 前 の国 語 教 育 の理 論 や 学 習 指 導 要 領 な ど を 踏 ま え 、 そ れ ら と の 融 合 を 図 っ て い る点 に も 特 色 が あ る 。
﹃ 関 係 把 握 によ る読 み 方 指導 ﹄ ( 明 治 図書 / 一九 八 四年 ) 藤 原 宏
( 記号)
そ し て 、 児 童 生 徒 の国 語 学 力 を 捉 え ると は 、 こ のよ う な A 、 B 、 C 、 D のそ れ ぞ れ に属 す る諸 要 素 を 児 童 生 徒
D 言 語 受 容 者 のも の ( 理 解 者 側 の、 経 験 、 考 え 方 、 感 じ方 、 思 想 、 論 理 な ど )
C 言 語 表 出 者 のも の ( 言 語 表 現 側 の、 考 え 方 、 感 じ 方 、 思 想 、 論 理 な ど )
表す も の
① 語 が 表 す も の/ ② 語 句 が 表 す も の/ ③ 文 が 表 す も の/ ④ 文 の集 合 が表 す も の /⑤ 完 成 さ れ た 文 章 全 体 が
B ( A 言 語 の表 す ) 事 物 ・事 象 ・現象 な ど
1 語 / 2 語 句 /3 文 / 4 文 の集 合 / 5 完 成 さ れ た 文 章 全 体
A 言 語
さ ら に 藤 原 は 、 関 係 把 握 力 にお いて 関 係 さ せ る べき 対 象 と な る要 素 を 次 のよ う に整 理 し 、 提 示 し て いる 。
唱す る。
創 造 す る 能 力 ﹄ で あ り 、 こ れ に伴 う 態 度 であ る ﹂ と し 、 こ の能 力 の中 核 を な す も の が ﹁関 係 把 握 力 ﹂ で あ る と 提
と の 指 導 に 関 し て の国 語 学 力 に つ い て考 究 し 、 ま と め た も の であ る 。 藤 原 は 国 語 学 力 の核 心 を ﹁﹃国 語 で 思 考 し
本 書 は 、 昭 和 四 〇 年 か ら 昭 和 五 五 年 ま で、 文 部 省 に お いて 学 習 指 導 要 領 の作 成 に携 わ った 藤 原 宏 が 、 読 む こ
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が ど のよ う に 結 び 付 け て い る か を 明 ら か にす る こ と であ り 、 こ のA 、 B 、 C 、 D そ れ ぞ れ の内 容 と な って い る諸
要 素 を 正 し く 適 切 に 結 び 付 け る こと が でき る よ う に指 導 す る の が 国 語 科 の授 業 であ る と 述 べ て いる 。
藤 原 は 、 過 去 の文 部 省 に よ る 全 国 学 力 調 査 問 題 の事 例 を 分 析 し 、 学 力 調 査 が ど の 要 素 と 要 素 と の結 び 付 き を 対
象 と し て出 題 さ れ て い た か を 考 察 し て いる 。 そ の結 果 、 ほと ん ど の調 査 内 容 が 、A に 属 す る 要 素 と B に 属 す る要
素 と の 結 び 付 き を 対 象 と し てそ の結 び 付 け 方 の正 確 さ と 適 切 度 を 計 るも の であ り 、 C に属 す る 要 素 と D に 属 す る
要 素 と を 結 び 付 き の対 象 と し て取 り 上 げ た 調 査 内 容 は ほ と ん ど な か った と 言 う 。 こ のA と B に属 す る諸 要素 相 互
の関 係 把 握 にお け る 客 観 性 が 国 語 学 力 に お け る確 か さ を 保 障 す る こ と にな る の であ る が 、 豊 か な表 現 力 と 理 解 力
を 生 み出 す 根 元 は 、 C に 属 す る 諸 要 素 と D に 属 す る諸 要 素 な ど が 関 与 す る 関 係 把 握 であ る と し 、 国 語 学 力 の評 価
を 考 え て いく と き に こ のA 、 B 、 C 、 D の各 区 分 に属 す る 諸 要 素 の関 係 把 握 力 が偏 り な く 評 価 さ れ る よ う 図 ら な け れ ば な ら な いと 述 べる 。
さ ら に藤 原 は 、 例 え ば 国 語 科 の学 習 指 導 で文 学 的 文 章 を 扱 う 際 に、 関 係 把 握 の仕 方 を 指導 せ ず 、 子 ど も や 教 師
の直 感 力 を 頼 り に、 登 場 人 物 の心 情 や気 持 ち を 取 り 上 げ て 話 し 合 いを さ せ な が ら 終 わ る よ う な 授 業 が 案 外 と 多 い
[ 佐藤 明宏]
と いう こと に 対 し て 、 藤 原 自 身 が 関 係 把 握 の仕 方 を 示 し 、 学力 を 保 障 し た 学 習 指 導 の道 筋 を 示 し て いる 。 曖 昧 で
あ った 国 語 学力 論 を 明快 に提 示 し 、 授 業 改 善 の方 向 性 も 示 唆 し て い る好 著 であ ると 言 え よう 。
﹃ 文 学 教育 に お け る ︿ 解釈﹀と ︿ 分 析 ﹀﹄ ( 明 治 図書 / 一九 八 八年 ) 鶴 田 清 司
﹁ご ん ぎ つね ﹂ ( 新 美 南 吉 ) を め ぐ って︱
︿ 解 釈 ﹀ と ︿分析 ﹀ を 区 別 す る こ と の意 義 は 何 か︱
鶴 田氏 は 、 ま ず 文 学 教 育 関 係 の概 念 ・用 語 の曖 昧 さ を 指 摘 す る。 そ の 上 で、︿解釈 ﹀ と︿ 分 析﹀ と いう 用語 を
終 章 文 学 教 育 研 究 発 展 のた め に︱
Ⅴ ︿ 解 釈 ﹀ と ︿分 析 ﹀ の 統 合 を 目 指 す 教 材 研究︱
Ⅳ ︿ 分 析 ﹀ 的 立 場 の位 相︱ 西 郷 竹 彦 氏 の文 芸 教 育 理 論 と 実 践︱
法 則 化 サ ー ク ル の実 践︱ ︿分 析 ﹀ 的 立 場︱ )
Ⅲ 文 学 の授 業 に 見 る︿ 解 釈 ﹀ と︿ 分 析﹀ (一 武 田常 夫 氏 の実 践 ︱︿ 解 釈 ﹀ 的 立 場 ︱ / 二 向 山 洋 一氏 ・
文 学 の授 業 に 見 る ︿解 釈 ﹀ と ︿分 析 ﹀ の解 明
Ⅰ ︿ 新 し い﹀解釈 学理論 の導 入
序章 文学教育 ﹁ 研究﹂ を問う
全 体 の構 成 は 、 次 のよ う に な って いる 。
授 業 記 録 の中 の発 問 な ど を 通 し て立 証 し よ う と し た のが 本 書 であ る。
け て い る 。 こ の発 言 か ら も わ か る よ う に 、 実 際 の授 業 に対 す る 理 論 的 な 枠 組 み の有 効 性 を 、 具 体 的 な 教 材 研 究 や
著 者 の鶴 田氏 は 、 本 書 を ﹁︿ 新 し い﹀ 解 釈 学 理 論 と 文 学 教 育 実 践 と の間 に 創 造 的 な 架 橋 を す る 試 み﹂ と 位 置 づ
50
Ⅱ
取 り 立 て る こと の重 要 性 を 確 認 し 、 ︿新 し い﹀ 解 釈 学 の立 場 に た って論 を 進 め て いく 。 ︿ 新 し い﹀ 解 釈 学 と は 、 ハ
イ デガ ー や ガ ダ マー の解 釈 学 を 指 し 、 日 本 の伝 統 的 な 国 語 教 育 が 依 拠 し てき た デ ィ ル タ イ ら のも の と は 異 な る こ
と も 明 言 さ れ て いる 。 鶴 田氏 は 、 出 来 事 と し て の ︿解 釈 ﹀ と 、 客 観 的 対 象 化 作 用 と し て の ︿分 析 ﹀ を 、 対 概 念 と し て捉 え る こと で 、 日 本 の文 学 教 育 実 践 を 犀 利 に 解 明 し た の であ る。
取 り 上 げ た の は 、 戦 後 の 代 表 的 な 文 学 教 育 実 践 の中 か ら 、 武 田常 夫 氏 の実 践 と 、 向 山洋 一氏 のグ ルー プ の実 践
であ る 。 こ れ を ︿解 釈 ﹀ と ︿ 分 析 ﹀ と いう 観 点 か ら 比 較 検 討 し て 、 対 照 的 な 点 と 、 共 通 す る 点 と を 明 ら か に し
た 。 ま た 、 文 芸 研 を ひ き いる 西 郷 竹 彦 氏 の視 点 論 を 取 り 上 げ 、 国 語 教 育 に お け る ︿教 育 内 容 ﹀ を 明 確 にす る こ と
に貢 献 し た こ と を 高 く 評 価 し て いる 。 さ ら に、 ﹁ご ん ぎ つね ﹂ の教 材 研 究 を ︿ 解 釈 ﹀ と ︿分 析 ﹀ を 統 合 す る と い う 観 点 か ら 進 め 、 具 体 的 な 発 問 を 含 む指 導 展 開計 画 を 提 出 し て いる 。
結 論 と し て、 文 学 の授 業 で ﹁追 試 ﹂ し た り ﹁討 論 ﹂ し た り でき る のは 、 教 材 で教 え る こと の で き る部 分 、 つま
り ︿ 分 析 ﹀ の部 分 であ る こ と 、 し か し そ れ は ︿解 釈 ﹀ を 教 室 か ら 排 除 す る こ と で はな く 、 両 者 を 調 和 ・統 合 す る こと こ そ が 重 要 だ と 、 結 ん で い る。
これ以降 、鶴 田氏は、 ︿ 解 釈 ﹀ と ︿分 析 ﹀ と いう 観 点 か ら 教 材 を 検 討 し た ﹁国 語 教 材 研 究 の革 新 シ リ ーズ ﹂ と
[ 府 川 源一 郎 ]
題 す る 本 を 続 け て 三 冊 上 梓 し た 。 そ こ で は、 国 語 科 の代 表 的 教 材 で あ る ﹁ご ん ぎ つね ﹂、 ﹁スイ ミ ー ﹂、 ﹁大 造 じ い さ ん と ガ ン﹂ が 正 面 か ら 取 り 上 げ ら れ て いる 。
﹃ 論 争 ・詩 の解 釈 と 授 業﹄ ( 明 治 図書 / 一九九 二年 ) 望 月 善 次
詩 の解 釈 の具 体 例︱
詩 の解 釈 のあ り 方
以下に目次を 示す。
い る。
翰 ﹂ の 部 分 で、 望 月 氏 と 宇 佐 美 氏 の 両 方 の文 が収 録 さ れ て い るた め 、 両 氏 の論 理 と そ の食 い違 いが 明 確 に 現 れ て
る 望 月 氏 の批 判 の論 考 と 、 公 開 往 復 書 翰 お よ び そ の整 理 な ど が収 め ら れ て い る 。 特 に 注 目 す る べ き は ﹁往 復 書
こ で は 言 わ ば ﹁前 置 き ﹂ で あ り 、 続 くⅢ 章 が 、 本 書 の中 心 であ る 。 こ こ に は 、 宇 佐 美 氏 の ﹃ 夕 焼け﹄解釈 に対す
Ⅰ 章 は 解 釈 そ のも の に対 し て の望 月 氏 の基 本 的 見 解 で あ り 、Ⅱ 章 は 書 誌 の 紹介 と 著 者 の解 釈 の呈 示 であ る 。 こ
Ⅴ ﹃ 夕 焼 け ﹄ 研 究 ・実 践 文 献 目 録
Ⅳ 詩 の授 業
Ⅲ 詩 の解 釈 の揺 れ ︱ ﹃夕 焼 け ﹄ 論 争 に学 び な が ら
﹁夕 焼 け ﹂ の書 誌 と ﹁た わ む れ 読 み﹂
美 氏 の批 判 に望 月 氏 が 答 え る と いう 姿 勢 で 一貫 し て いる点 が 大 き な 特 徴 であ る 。
本 書 は 、 吉 野 弘 の詩 ﹃ 夕 焼 け ﹄ を 素 材 と し た 、 望 月 善 次 氏 と 宇 佐 美 寛 氏 と の論 争 を 収 め た も の であ る 。 宇 佐
51
Ⅰ Ⅱ
先 生 と の遣 り 取 り の中 で、 明 ら か に し て お いた 方 が よ いと 思 わ れ た 第 一の点 は 、 ﹁文 学 ﹂ 自 体 を 論 じ よ う
と す るか 、 ﹁道 徳 ﹂ の素 材 と し て ﹁文 学 ﹂ を 論 じ よう と す る の か と いう 点 です 。 ( 私 は 、 一貫 し て ﹁文 学 ﹂ そ のも のを 論 じ よ う と し て い る積 も り で お り ま す 。) ( 望 月 ・九 四 頁 )
文 学 か 道 徳 か と いう 二元 論 は ﹁カ テ ゴ リ ー ま ち が い﹂ で す 。 こ の作 品 自 体 が 浅 薄 に 道 徳 を 語 る こと に よ っ て 文 学 作 品 に な って いる の です 。 ( 宇 佐 美 ・九 九 頁 )
こ う し た 問 い の背 後 に は 、在 る 作 品 を ﹁文 学 ﹂と し て考 察 す る か、﹁道 徳 ﹂研 究 の素 材 と し て 考 察 す る か に よ
って 、そ の評 価 が 異 な る のだ と いう 筆 者 の考 え が あ る こ と も 付 け 加 え て お き た いと 思 う 。( 望 月 ・ 一 一二 頁 )
望 月 氏 は ﹁文 学 ﹂ と し て ﹃ 夕 焼 け ﹄ を 評 価 し 、 ﹁道 徳 ﹂ 研 究 素 材 と し て ﹃夕 焼 け ﹄ を 批 判 し て いる の が宇 佐 美
氏 だ と いう 、 望 月 氏 自 身 の位 置 づ け が う か がえ る 。 望 月 氏 は 続 く ﹁﹃夕 焼 け ﹄ 論 争 整 理 の為 に﹂ と 題 す る 節 で 、
右 に 掲 げ た も の を 含 む 宇 佐 美 氏 と の基 本 的 相 違 点 を 三 点 指 摘 ・考 察 す る こ と で論 争 の枠 組 み を 再 考 し て いる 。
の に は 意 義 が あ る と いえ よう 。 そ れ は 、 具 体 的 な 詩 作 品 ﹃ 夕 焼 け ﹄ を 通 し て、 ﹁解 釈 ﹂ の多 様 性 や ﹁文 学 の方 法 ﹂
先 述 のよ う に 、 望 月 氏 の主 張 と 宇 佐 美 氏 の論 と は残 念 な が ら 噛 み合 って いる と は 言 い難 いが 、 こ の論 争 そ のも
が と こ と ん 語 り 尽 く さ れ 、 吟 味 さ れ て い る か ら であ る 。 そ こ に は ﹁文 学 教 育 の 可 能 性 ﹂ と いう 課 題 が 内 在 さ れ て
い る の で あ る 。 さ ら に 付 け 加 え る な ら ば 、 ﹁道 徳 ﹂ 研 究 と いう 異 ジ ャ ン ル か ら の考 察 ・批 判 を ﹁か け が え のな
[ 青 木 雅一]
い﹂、 ﹁あ り 難 い﹂ も のと 評 価 す る 望 月 氏 の真 摯 な 姿 勢 こそ が 、 こ の ﹁ 論 争 ﹂ を 価 値 あ る も の に為 し え て いる の で あ る。
﹃ 小 説 の力︱ 新 し い作 品 論 の た め に︱ ﹄ ( 大 修 館 書 店 / 一九 九 六 年 ) 田 中 実
こ の客 観 的 対 象 と し て の ︿本 文 ﹀ は 読 者 のな か で は 確 か に 消 去 さ れ て いる の で あ る 。 だ が 、 読 者 が 主 観 的
物 、 活 字 で し か な く 、 読 者 の な か に は主 観 的 な ︿本 文 ﹀ し か 存 在 し な い。 読 む と は 自 己 を 読 む の で あ って 、
な ︿本 文 ﹀ に よ って 読 ん で いく こと であ る 。 な ら ば 、 読 ま れ た 後 の客 観 的 対 象 と し て の ︿ 本 文﹀ は単 なる
上 が る 。 読 む こ と と は、 客 観 的 対 象 と し て の ︿本 文 ﹀ を 読 者 の 体 験 や感 性 に 応 じ て 自 己 の造 り だ し た 主 観 的
文 学 作 品 の ︿こ と ば の 仕 組 み ﹀、 そ の構 造 は 時 代 や文 化 の変 遷 に応 じ て変 容 し 、 読 者 のな か に の み 浮 か び
いう こ と に 関 心 を 抱 く 議 論 を 田 中 は 展 開 し て いる 。 ﹃小 説 の力 ﹄ の冒 頭 に は 、 次 のよ う に 述 べら れ て い る。
ち で厚 み を そ な え る こと が でき る の か 、 そ の こ と が テ ク スト と の対 話 の な か でど のよ う に実 現 さ れ て いく のか と
︿異 な る ﹀ と いう こと に 異 を 唱 え るも の で は な く 、 む し ろ 、 一人 ひ と り の読 者 の示 す ﹁読 み ﹂ が ど のよ う な か た
か と いう と 、 実 は そう で は な い。 小 説 の 読 者 の 一人 ひ と り が 自 分 の 読 み を 築 い て いく そ の 一つひ と つ の 過 程 が
り 、 ︿エセ 読 み の ア ナー キ ー ﹀ 批 判 で あ った 。 し か し 、 田 中 の 理 論 が ﹁読 む こ と ﹂ の ︿多 様 性 ﹀ に 不 寛 容 であ る
みと 解 釈 の ︿ 多 様 性 ﹀ を 重 ん じ る立 論 が 少 な く な か った わ け だ が 、 そ の動 向 に強 く 警 鐘 を 鳴 ら し た の が 田 中 で あ
いて は多 く の賛 意 を 持 って 迎 え ら れ た 。 いわ ゆ る^ 読 者 論 ﹀ に立 つ読 む こ と の学 習指 導 論 を 構 想 す る な か で、 読
六 年 に 出 版 さ れ た こ の書 の な か で 田 中 の示 し た ︿エセ読 み の ア ナー キ ー﹀ 批 判 は 、少 な く と も 文 学 教 育 研 究 に お
田中 実 の ﹃小 説 の 力﹄ は、 ﹁小 説 ﹂ を ﹁読 む こと ﹂ の新 し い可 能 性 を 願 いな が ら作 ら れ た 一書 であ る 。 一九 九
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︿本 文> を 造 り 出 し て いる だ け で な く 、 そ の主 観 的 で あ る は ず の ︿本 文 ﹀ の ︿こ と ば の 仕 組 み﹀ は そ れ ま で
の読 者 を 新 た な 読 者 へと 造 り 変 え て も い る の で は な いか 。 主 観 的 ︿本 文 ﹀ が 読 み 手 を 揺 さ ぶ り 、 倒 壊 さ せ 、 造 り 変 え る力 を 持 ち 、 そ の主 観 的 な 領 域 を 踏 み 破 る 運 動 を 起 こ し て いる 。
田 中 は 、 ﹁客 観 的 対 象 と し て の ︿本 文 ﹀ を 読 者 の体 験 や 感 性 に 応 じ て自 己 の造 り だ し た 主 観 的 な ︿本 文 ﹀ に よ
って 読 ん で いく こ と ﹂ が ﹁読 む こ と ﹂ であ る と す る 。 そ のよ う な 二重 性 こ そ が ﹁ 読 む こと ﹂ の本 領 で あ る と いう
こ の田 中 の見 解 は 、 お そ ら く 多 く の テ ク ス ト の読 み に適 用 可 能 な も の で は な いか 。 そ し て こ の見 解 は、 読 み進 め
る自 己 への問 いを な いが し ろ に し て は ﹁読 む こ と ﹂ が成 り 立 た な いと いう 考 え を 核 と し て いる 。
︿ 文 学 終 焉 ﹀ の今 、 批 評 主 体 の基 盤 こ そ 懐 疑 の対 象 で あ る 。 そ う であ れ ば 、 読 む こと と は 発 見 し た 自 己 が
倒壊 し 、 さ ら に そ の自 己 が い か に 超 え ら れ て いく か が 目 指 さ れ る べき も のと し て見 え てく る は ず であ る 。
田 中 の理 論 は 、 ﹁批 評 主 体 の基 盤 ﹂ を 問 う と こ ろ に 核 心 が あ る 。 た と え ば 、 中 島 敦 の ﹁山 月 記 ﹂ と いう テ ク ス
ト が 問 題 な の で は な く て 、 む し ろ ﹁山 月 記 ﹂ を そ の よう に読 む ﹁批 評 主 体 ﹂ が 問 題 な の であ り 、 な ぜ そ のよ う に
読 む の か と いう こ と の解 明 こ そ 当 の ﹁批 評 主 体 ﹂ が お こ な わ な け れ ば な ら な い仕 事 な のだ 。 ﹁自 己 ﹂ の ﹁倒 壊 ﹂
と は そ のよ う な 事 態 を 指 す 。 だ か ら こ そ 、 一つ の テ ク ス ト を 、 あ あ も 読 め る こ う も 読 め る と 言 って 済 ま す こ と
を 、 田 中 の 理論 は ゆ る さ な い。 む し ろ多 様 な 解 釈 を 認 め る ﹁批 評 主 体 の基 盤 ﹂ が そ こ で問 わ れ る 。 [ 山元隆春]
﹁ 教 師 のた め の 読 者 反応 理論 入 門︱ 読 む こと の学 習 を 活性 化 す る た め に︱ ﹄ (溪 水 社 / 一九 九 九年 ) リ チ ャ ード ・ビ ーチ 著 / 山 元 隆春 訳
増 大 が 、 立 場 の違 いを 越 え た 読 者 反 応 理 論 と 呼 ば れ る 研 究 上 の流 れ を 産 み 出 し た こ と を 、 心 に と め てお く 必 要 が
ス ト か ら 結 果 と し て 引 き 出 さ れ た意 味 に焦 点 を 当 て て き た 。 読 者 と テ ク スト と の 間 の交 流 の過 程 に 対 す る 関 心 の
る 。 批 評 家 は お し な べ て 意 味 の 形成 に関 心 を 抱 く が 、 従 来 意 味 を 形 成 す る 過 程 を 明 ら か に す る こと よ り も 、 テ ク
る 。 し か し 、 読 者 反 応 理 論 が 、 け っし て確 固 た る 同 一の立 場 を 共 有 す る も の で は な いと いう 点 に注 意 が 必 要 で あ
ー ・ク リ テ ィ シズ ム的 傾 向 の 限 界 と 読 者 反 応 理 論 的 立 場 と を 対 置 し よ う と す る 場 合 に 、 そ の よ う に 考 え た く な
本 書 の題 名 と な って い る読 者 反 応 理 論 は 、 比 較 的 統 一さ れ た 批 評 上 の立 場 と み な さ れ て き た 。 と く に 、 ニ ュ
と いう 行 為 が 、 ど の よ う な 営 み であ る の か を 説 き 明 か し て いる 点 に、 本 書 の特 徴 が あ る。
を 用 い る こ と に よ って 、 実 践 の 基 本 的 な 目 標 を 吟 味 す る こと が でき る と いう 点 に あ る。 文 学 の授 業 にお け る 読 む
す る こと も あ る 。 本 書 を 通 底 す る 問 題 意 識 は 、 教 師 自 ら の文 学 の授 業 の前 提 を 疑 う た め に 他 の パ ー ス ペ ク テ ィヴ
いる 。 あ る パ ー ス ペ ク テ ィ ヴ が 前 提 と し て い るも のは 、 そ れ 以 外 の パ ー ス ペ ク テ ィヴ が前 提 と し て い るも のに 反
理 学 的 反 応 理 論 ﹂、 ﹁社 会 的 反 応 理 論 ﹂、 ﹁文 化 研 究 的 反 応 理論 ﹂ と いう 五 つの パ ー ス ペ ク テ ィ ヴ の中 に位 置 づ け て
き る 。 著 者 は 、 膨 大 な 読 者 反 応 理 論 に 関 す る 研 究 を 、 ﹁テ ク スト 志 向 の反 応 理 論 ﹂、 ﹁経 験 志 向 の反 応 理 論 ﹂、 ﹁心
読 者 反 応 理 論 に よ って明 ら か に な った 知 見 は 、 文 学 の授 業 を 支 え て い る前 提 を 内 省 す る た め に 用 い る こ と が で
あ る 。 七 百 点 に及 ぶ 文 献 を 教 育 学 の視 点 か ら 論 評 し た 、 読 者 反 応 理論 の入 門書 で あ る。
原 著 は 、 一九 九 二 年 刊 。 邦 訳 は 、 一九 九 八 年 発 行 と 奥 付 に 記 載 さ れ て いる が 、 正 し く は 一九 九 九 年 四月 発 行 で
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あ る。
と は いえ 、 同 書 が 文 学 の授 業 を 支 え る 前 提 を 、 き め 細 や か に 取 り 上 げ た 見 取 り 図 であ る と いう 点 は 間 違 いな
い。 著 者 の参 照 し て いる 文 献 を 手 に取 る こと で、 自 ら の文 学 の授 業 を 再 検 討 す る た め の手 引 き と な る 書 で あ る。
同 書 に は 、 訳 者 ・山 元 隆 春 に よ る 二十 五 ペ ー ジ にわ た る 詳 細 な解 説 が 付 せ ら れ て お り 、 そ の中 で山 元 は 、 そ れ ぞ
れ のパ ー ス ペ ク テ ィ ヴ が 他 の パ ー ス ペ ク テ ィヴ の限 界 を 浮 か び 上 が ら せ る 関 係 に あ る 点 に 同書 の価 値 を 認 め て い る。
and
Beach, Richard
︵2001︶:Response
to
[ 寺田 守 ]
literature
本書 以 降 の 読 者 反 応 理 論 の展 開 に つ いて は 、 二 〇 〇 一年 に 発表 さ れ た 同 じ 著 者 の次 の論 文 を 参 照 す る と よ い。 Galda, Lee 36,PP.64-73.
as
a
﹃ ﹁ 他 者 ﹂ を 発 見 す る 国 語 の 授業 ﹄ ( 大修 館 書 店 / 二〇 〇一 年 )高 木 ま さ き
﹁ 論 理 的 ﹂ か ら ﹁ロジ カ ル﹂ へ︱
第 四章 今 江 祥 智 ﹁野 の馬 ﹂ 論︱ 幻 想 世 界 の可 能 性︱
第 三章 論 理 を 育 てる ﹁他 者 ﹂ と いう 視 点︱
第 二章 読 む こと と 実 験 ・観 察 す る こ と︱ 情 報 化 社 会 の中 の説 明 文 学 習︱
第 一章 子 ど も の読 み と 大 人 の読 み︱ 段 落 指 導 か ら 考 え る︱
Ⅱ ﹁他 者 ﹂ が 国 語 の授 業 を 変 え る
第 三章 国 語 教 育 に お け る ﹁ 他 者 ﹂ と ﹁主 体 性 ﹂
第 二章 いじ め と 言 葉 の教 育
第 一章 他 者 と の 関 わ り を 希 薄 化 さ せ る 子 ど も たち︱ いま ま で語 ら れ て き た こと︱
子 ど も の日 常 と 国 語 の授 業 を つな ぐ
構 成 は 、 以 下 のよ う に な って いる 。
ぐ る状 況 と を 切 り 結 んだ 論 述 であ り 、 読 者 の問 題 意 識 を 触 発 す る 著 作 であ る 。
編 の論 文 か ら構 成 さ れ て いる 。 文 学 作 品 の指 導 、 説 明 的 文 章 指 導 、 作 文 指 導 の領 域 の各 論 と 、 現 代 の 子 ど も を め
景 が見 え てく る か と いう 点 に あ る。 教 育 学 、 社 会 学 、 文 学 にわ た る 豊 富 な 文 献 を 丁寧 に 論 述 し な が ら 編 ま れ た 九
本 書 の問 題 意 識 は 、 ﹁他 者 ﹂ を キ ー ワ ー ド と し て 国 語 教 育 と いう 営 み を 読 み 直 す こ と で、 そ こ に ど の よう な 風
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Ⅰ
第 五章 吉 野 弘 ﹁夕 焼 け ﹂ 論︱ 行 為 す る 者 と 見 つめ る者︱ 第 六章 主 題 指 導 と は 何 だ った の か︱ 方 法 と し て の主 題 へ︱
﹁他 者 ﹂ と いう 観 点 は 、 文 学 作 品 の 解 釈 に お い て 、 し ば し ば 用 いら れ て き た 。 国 語 教 育 に お い て は 、 田 近 洵 一
が 一九 七 〇 年 に ﹁ト ロ ッ コ﹂ の教 材 価 値 を 指 摘 す る 中 で 、 最 も 早 く﹁ 他 者 ﹂ の意 義 を 明 確 に打 ち 出 し て い る ( 増
淵 恒 吉 ほ か 編 ﹃文 学 教 育 実 践 講 座 中 学 校 篇 ﹄ 有 信 堂︶。 も ち ろ ん 授 業 と いう 場 面 に お いて 、 学 習 者 にと って の
﹁他 者 ﹂ と は 何 者 か と いう 問 い に は 議 論 の余 地 が あ ろう 。 本 書 に お け る ﹁他 者 ﹂ は 、 ﹁教 師 の 読 み ﹂ にと って の
﹁子 ど も の 読 み ﹂ (Ⅱ︲ 第 一章 )、 ﹁言 語 ﹂ に と って の ﹁存 在 ﹂ (Ⅱ︲ 第 二章 )、 子 ど も に と って の ﹁作 品 そ れ 自 体 ﹂
(Ⅱ︲ 第 六 章 ) と な って いる 。 こ のよ う な 関 係 性 を 、 教 室 の 学 習 者 間 の関 係 性 と と も に 、 ﹁他 者 ﹂ と いう 語 で論 じ て いく 難 し さ に本 書 は 挑 ん で い る。
本 書 が 説 き 明 か し た 重 要 な 問 題 は 、 ﹁対 話 ﹂ の 意 義 で あ る 。 国 語 の 授 業 で 学 習 者 が ﹁他 者 ﹂ と 出 会 う と いう こ
と は、ただ ﹁ 他 者 ﹂ を 理 解 す る こ と を 超 え て 、 新 た な 意 味 や価 値 を 創 造 す る と いう こと で あ る 。 そ し てそ のよ う
な 出 会 いを 支 え る のが ﹁対 話 ﹂ の力 で あ る (Ⅰ︲ 第 三 章 )。 作 文 指 導 や説 明 的 文 章 指 導 に お いて 扱 わ れ る ﹁論 理 ﹂
で あ って も 、 狭 義 の 演 繹 的 論 理 に 剰 る 説 得 力 を 支 え る 力 が ﹁対 話 的 ﹂ で あ る と いう 点 に 求 め ら れ る (Ⅱ︲ 第三
章 )。 言 葉 の力 が 産 み 出 さ れ る 原 理 に読 者 の目 を 向 け さ せ る と こ ろ に 、 筆 者 の立 論 の特 徴 が あ る 。 [ 寺 田 守 ]
﹃ ﹁ 読 む ﹂ こと の再 構 築﹄ (三省 堂 / 二〇 〇 二年 ) 三浦 和 尚
第 三 章 で は 、 読 む こと の方 法 に つ い て、 青 木 幹 勇 の ﹁第 三 の書 く ﹂ 導 入 の意 義 、 お よ び そ の 中 の ﹁視 写 ﹂ の有
深 ま って いく と いう 流 れ で 組 み立 て ら れ な け れ ば 、 よ い発 問 と は 言 え な いし 、 よ い授 業 に も な ら な いと 述 べる 。
て いる 。 発 問 計 画 の実 際 に つ いて は 、 子 ど も の思 考 過程 に合 わ せ 、 発 問 相 互 の関 連 性 が 確 実 に 意 識 さ れ 、 思 考 が
を 話 型 と し て示 す と と も に 、 一時 間 に お け る 発 問 の 組 み 立 て を 詩 教 材 ﹁名 づ け ら れ た 葉 ﹂ ( 新川和 江) で例示 し
第 二章 で は 、 教 材 研 究 のた め の文 章 分 析 の方 法 と 発 問 と が 取 り 上 げ ら れ て いる 。 文 学 教 材 の発 問 の 具 体 的 な 姿
と し て生 き て 働 く も の に な ると し て い る (一七 ∼ 一八 頁 参 照 )。
り が 実 感 さ れ る 学 習 指 導 を 求 め る 。 そ う い った 指 導 過 程 に、 技 能 的 な 目標 を 折 り 込 む こと に よ って 、 技 能 が 技 能
な 設 定 、 ② 自 身 の考 え に 照 ら し て読 む た め の学 習 の手 引 き の 工夫 、 ③ 他 者 と の交 流 を 通 し て 、 自 身 の考 え の深 ま
て いく こと が 挙 げ ら れ て い る。 著 者 は 、 達 成 の方 法 と し て、 ① 教 材 を 読 む 意 味 や値 打 ち ( 価 値 的 な 目 標 ) の明 確
み 取 る 力 、 批 評 的 にと ら え る力 、 内 容 を 自 身 の中 に 意 味 づ け る 力 を 身 に つけ ると と も に、 自 分 自 身 の考 え を 深 め
第 一章 で は 、 読 む こ と の教 育 の課 題 と 克 服 す る た め の具 体 的 な 方 法 が 述 べら れ て い る。 目 標 と し て 、 文 章 を 読
経 験 と 学 力 、 と な って い る。
習 、 第 二章 文 章 分 析 と 発 問 、 第 三 章 ﹁読 む ﹂ こ と の学 習 指 導 の方 法 、 第 四章 ﹁読 む ﹂ こ と の 評 価 、 第 五 章
む こ と の方 法 と 、 評 価 のあ り 方 を 求 め た 一書 であ る 。 本 書 の本 論 部 は 、 第 一章 これ か ら の ﹁読 む ﹂ こ と の 学
本 書 は 、 読 む こ と の教 育 の課 題 を 明 ら か にし 、 そ の目 指 す べき 方 向 を 提 示 す る と と も に 、 実 践知 を 生 か し た 読
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効 性 が検 討 さ れ 、 合 わ せ て 、 詩 と 説 明 的 文 章 の 学 習 指 導 方 法 が 探 ら れ て い る 。 詩 の学 習 で は 、 生 涯 を 貫 く 力 と な
る ﹁楽 し み 方 ﹂ の 指導 を 図 る べき こと と し た 。 説 明 的 文 章 の学 習 で は 、 事 例 か ら 、 読 み を 生 徒 に有 用 な 活 動 と し
て展 開 し 、 学 習 そ の も のを 充 足 さ せ 、 児 童 に生 活 と のか か わ り の自 覚 に ま で踏 み 込 ま せ る 学 習 の有 効 性 を 見 出 し て い る。
つ い で第 四 章 は 、 評 価 のあ り 方 を 問 い直 す 章 で あ る 。 ラ ンク 付 け に つな が る評 価 を し な い こと が大 切 であ る と
し 、 相 互 評 価 や 、 作 品 や ノ ー ト の評 価 、 ま た 、 一人 一人 の 子 ど も の伸 び 率 を 称 揚 す る よ う な 評 価 が 、 日 常 的 に 工
夫 さ れ な け れ ば な ら な いと 説 いて いる 。 さ ら に 、 評 価 は 、 常 に 教 師 自 身 の授 業 改 善 を 迫 るも の であ る こと を 肝 に 銘 じ た いと し て い る。
最 後 の第 五 章 で は 、 ﹁切 実 な 言 語 経 験 ﹂ と 学 習 ・学 力 の関 係 が 問 わ れ て いる 。 そ の関 係 は 、 ﹁生 き て い る場 で、
子 ど も た ち が 相 互 に か か わ り 合 い触 発 し 合 う こ と で 、 生 き た 言 語 経 験 を 経 、 こと ば が 生 き て働 く も の と な る ﹂
(一四 一頁 ) と と ら え ら れ て いる 。 そ の よ う な 学 習 指 導 で得 ら れ る学 習 実 感 は 、 次 の学 習 への期 待 感 に つな が り 、 学 習 のバ ネ に な る と し て いる 。
著 者 は 、 相 対 的 に話 す こ と ・聞 く こ と に 国 語 教 育 の 比 重 が 移 って いく 中 、 読 む こと も 国 語 教 育 の重 要 な 課 題 で
[ 渡 辺春美]
あ ると す る立 場 に 立 ち 、先 行 の理 論 と 実 践 を 検 討 し 、 学 習 指 導 に生 き る読 む こ と の教 育 の理 論 と 方 法 を 構 築 し よ う と す る 。 本 書 の特 色 は こ こ に見 出 せ よ う 。
﹃ 説 明 的 文 章 の 指導 過程 論 ﹄ ( 明 治 図書 / 一九 七 三年 ) 渋 谷 孝
第 三章 説 明的文章 の指導 過程 上 の問 題 ( 上) (一 段落 の問 題/ 二 指導事 項 の精 選 の問 題/ 三 語句指
第 二章 説明的文章 にお ける ﹁ 事実﹂ の理解 (一 事実 と描写/ 二 理解 の段 階)
第 一章 説明的文章 とは何 か (一 文章 の種類 と説明的文 章/ 二 説明的文章 のジ ャンル)
概 要 は 、 次 の通 り であ る 。
つ、 以 後 の説 明 的 文 章 の研 究 と 実 践 に多 大 な 影 響 力 を 及 ぼす こ と に な る 指 導 過 程 論 を 展 開 す る 。
を 上 梓 し 、 説 明 的 文 章 の体 系 的 な 理 論 を 確 立 し た 。 渋 谷 は 本 書 で、 先 行 の研 究 や 実 践 等 の問 題 を 指 摘 ・整 理 し つ
書 を 端 緒 と し て、 そ の後 、 ﹃説 明 的 文 章 の教 材 研 究 論 ﹄ (一九 八 ○ 年 )、 ﹃説 明 的 文 章 の教 材 本 質 論 ﹄ (一九 八 四年 )
昭 和 三 三年 度 版 学 習 指 導 要 領 を 契 機 と し て 、 本 格 的 な 説 明 的 文 章 の 学 習 指 導 論 が 展 開 し 始 め る 。 渋 谷 孝 は 本
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各 章 で の重 要 と 思 わ れ る 提 言 を 取 り 上 げ て み る 。
・指 導 過 程 の規 定 に文 章 のジ ャ ン ル が 全 然 関 わ り が な いと み なす のは 行 き す ぎ であ り 、 ジ ャ ン ル の相 違 は 一
面 に お い て規 定 す ると み ら れ 、 他 の 一面 に お い て個 々 の教 材 の質 と 児 童 ・生 徒 の状 況 に よ って規 定 さ れ る
の で あ る 。 指 導 過 程 の 問 題 は こ の 二側 面 を 考 慮 し て考 察 す べき で あ る ( 第 一章 四 二 頁 )。
・視 聴 覚 的 補 助 手 段 や映 像 が 有 効 に か か わ る のは 、 比 喩 的 に言 え ば 、 文 章 の 一側 面 に お いて で あ る 。他 の 一
側 面 に関 し て は視 聴 覚 的 教 材 も 映 像 も 及 ば な い。 文 章 全 体 に つ い て の 読 み 手 の過 去 経 験 の 質 と 類 推 能 力 、
そ れ を 含 めた 読 み 手 の主 体 性 の問 題 性 が 関 わ ってく る の であ る ( 第 二章 九 八 頁 )。
・実 際 の学 習 指 導 に お いて 、 た と え ば主 要 な 指 導 事 項 が ﹁段 落 を お さ え て読 み と る 。﹂ と いう 場 合 、 大 事 な
こと は 読 み と る こ と にあ る の で 段 落 そ れ 自 体 に は な い。 ﹁段 落 意 識 ﹂ ﹁要 旨 把 握 ﹂ ﹁語 句 の意 味 を 文 脈 で把
握 す る 。﹂ な ど 、 こ れ ら の指 導 事 項 は 、 そ れ 自 体 で独 自 性 を 持 つも の で は な く す べ て指 導 内 容 に か か わ っ てく る ( 第 三章 一四 五 ∼ 一四 六 頁 )。
・第 二 次 段 階 の読 解 指 導 は 、 冒 頭 か ら 各 小 段 落 ご と に 精 読 を 重 ね て いく こ と であ る 。 と こ ろ が 、 現 在 広 く 行
な わ れ て いる 方 法 は 、 た だ ち に 文 章 を いく つか の大 段 落 に 分 け さ せ る作 業 を 行 な って 、 そ し て 、 そ の後 、
第 三 次 段 階 で各 大 段 落 ご と の精 読 に 入 って いる 。 し か し こ れ は 順 序 が 逆 な の であ る ( 第 四章 一八 二 頁 )。
[ 長 崎伸仁]
こ れ ら 一つ 一つ の問 題 提 起 は 、 渋 谷 が 一貫 し て こだ わ り 続 け た 国 語 科 教 育 の学 問 的 位 置 づ け の延 長 線 上 にあ る と考え られよう 。
﹃ 説明 的 文 章 の読 み 方 指 導﹄ ( 明治 図書 / 一九 八 一年 ) 大 西忠 治
① 記 録 す る タ イ プ の文 章 ( 記 録 文 )
② 説明す るタイプ の文章 ( 説 明 文 )
② ﹁仮 説 ﹂ が 入 って いな い説 明 文
③ 論 述 す る タ イ プ の文 章 ( 論 説文)
明 的 文 章 も 三 つの 部 分 に 分 け て 把 握 さ せ る と いう ﹁構 造 読 み ﹂ を 行 わ せ る。
れ の特 質 を 明 ら か に す る と と も に 、 そ れ ぞ れ の特 質 に 応 じ た 指 導 方 法 に つ いて 述 べ て いく 。 大 西 は 、 ま ず ど の説
と 、 ③ の 論 述 す る タ イ プ の説 明 文 と に 分 か れ る 。 大 西 は説 明 的 文 章 を こ の① ∼③ の 三 つ の タ イ プ に 分 け 、 そ れ ぞ
的 順 序 以 外 で統 一さ れ て いる 文 章 で あ る 。 さ ら に 下 側 に 移 る と 説 明 文 は 、② の ﹁仮 説 ﹂ が 入 っ て いな い説 明 文
こ の 図 の右 側 か ら 見 て いく と 、 ① の 記 録 文 は 、 時 間 的 順 序 で統 一さ れ て いる 文 章 で あ り 、 ② の説 明 文 は 、 時 間
説 明的 文章
論 説 文 の三 つの文 章 に分 け て 考 え る 。 こ の 三 つ の文 章 の関 係 は 次 のよ う に な る 。
理 ﹀ お よ び ﹁書 き 手 ﹂ と ﹁読 み 手 ﹂、 と お さ え る 。 こ れ ら のあ り よ う に よ っ て説 明 的 文 章 を 、 記 録 文 、 説 明 文 、
大 西 は 、 説 明 的 文 章 の基 本 的 要 素 を 、 ① 書 か れ て いる こと が ら ︿ 事 実 ﹀、 ② こと が ら と こ と が ら と の 関 係 ︿ 論
本 書 は 、 ﹁読 み研 ﹂ 方 式 を 作 り 上 げ た 大 西 忠 治 が 、 説 明 的 文 章 の読 み 方 指 導 に つ い て ま と め た も の であ る 。
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そ の 上 で、 ① の記 録 文 に お い て は 、 ︿い つ﹀ を 基 本 に し て ︿な に が ﹀、 ︿ど こ で﹀、 ︿ ど う し た ﹀ を 、 一つず つに
し て し ま う ま で 他 の こ と ば を け ず り 落 と し てし ま う と いう ﹁要 約 読 み﹂ を さ せ 、 ﹁事 実 ﹂ の幹 の部 分 を 読 み 取 ら
せ る 。 そ し て ﹁事 実 ﹂ が 正 確 に 書 か れ て いる かど う か と いう こ と を 検 討 さ せ る の であ る。
② の ﹁仮 説 ﹂ が 入 って いな い説 明 文 の指 導 で重 視 し て いる のは 、 論 理 の読 み 取 り であ る 。 そ のた め に 内 容 を 要
約 さ せ る わ け であ る が 、 そ の要 約 のた め に 大 西 は ﹁柱 の文 ﹂ を 明 確 に さ せ る。 こ の﹁ 柱 の文 ﹂ と は他 の文 を 包 括
す る よ う な 文 のこ と で あ る 。 こ の﹁ 柱 の文 ﹂ と 他 の文 と の 関 係 を 把 握 さ せ 、 ﹁論 理 を た ど る ち か ら ﹂ を 養 う の で あ るσ
③ の論 説 文 は 、 ① ・② に 比 べ て か な り 複 雑 であ り 、 そ の複 雑 な 論 理 を た ど ら せ る だ け でな く 、 仮 説 を 読 み 取 ら
せ て いか な け れ ば な ら な い。 こ の仮 説 は ﹁現 状 ・定 説 への挑 戦 ﹂ と し て 現 れ る こと が 多 く 、 そ こを 読 み 取 ら せ る こ と が 、 論 証を 読 み 取 る 前 提 条 件 に な る 。
大 西 は 以 上 の三 つ の説 明 的 文 章 のタ イ プ と そ れ に 応 じ た 指 導 法 に つ いて 、 具 体 的 な 事 例 を 通 し て論 述 し て い
る。 そ の論 述 は 、 大 西 自 身 の実 践 の確 か さと 豊 か さ に根 ざ し て お り 、 非 常 に 納 得 さ せ ら れ るも ので あ る 。
[ 佐藤 明宏]
﹃ 説 明 文 の 指 導﹄ ( 部落 問 題 研究 会 / 一九 八 一年 ) 西 郷 竹 彦
( 連 鎖 )、 相 関 、 類 推
対 比 / 2 順 序 、 展 開 、 過 程 、 変 化 、 発 展 / 3 理 由 ・原 因 ・根 拠 / 4 類 別 / 5 条 件 ・仮
定 / 6 構 造 、 関 係 、 機 能 、 還 元 / 7 選 択 (効 果 、 工夫 )・変 換 / 8 仮 説 ・模 式 /9 関連
(反 復 )、 相 違 性︱
0 観 点︱ 目 的 意 識 、 問 題 意 識 、 価 値 意 識 / 1 比 較︱ 分 析 ・総 合 、 分 け る︱ ま と め る 、 類 似 性 、 同 一性︱ 類 比
的 認 識 論 入 門︱ ﹄ 明治 図 書 / 一九 九 一年 )。
な お 西 郷 氏 は 、 そ の後 、 ﹁認 識 の方 法 ﹂ を 次 のよ う に 整 理 し 、 系 統 化 し て い った (﹃ も の の見 方 .考 え 方︱ 教 育
く 結 論 と そ の裏 づ け )、 ﹁生 物 の大 発 生 ﹂ ( 相 関 関 係 を と ら え る)。
見 つけ る手 が かり ﹂ ( 推 論 の方 法 )、 ﹁人 間 と こと ば ﹂ ( 類 推 の方 法 )、 ﹁人 間 が さ ば く を 作 った ﹂ ( 読者 の意表を つ
( 関 連 づ け て 見 る 方 法 )、 ﹁魚 の身 の守 り 方 ﹂ ( 認 識 の確 実 性 と 文 末 )、 ﹁日 本 の仕 事 唄 ﹂ ( 羅 列 の中 の順 序 )、 ﹁花 を
ん のし た ﹂ (反 復 で あ る と 同 時 に対 比 )、 ﹁し っぽ のは た ら き ﹂ (反復 に よ って主 題 を 強 調 す る )、 ﹁む し の は な し ﹂
開 )、 ﹁に て いる と こ ろ﹂ ( 批 判 的 に教 材 を 見 る)、 ﹁た ん ぽ ぽ のち え ﹂ ( 事 実 と 理 由 の反 復 )、 ﹁じ め ん のう え と じ め
﹁ど う ぶ つ の赤 ち ゃん ﹂ ( 順 序 、 対 比 と 反 復 、 予 想 す る )、 ﹁手 の は た ら き ﹂ ( 認 識 の方 法 と か か わ って の 文 章 展
こ こ で取 り 上 げ ら れ て いる 教 材 と ﹁認 識 ・表 現 の方 法 ﹂ は 、 次 の通 り で あ る 。
通 し て ﹁認 識 ・表 現 の方 法 ﹂ を 学 ば せ る こと が でき る の か と いう 教材 分 析 の 具 体 例 を 提 示 し て いる 。
本 書 は 、 国 語 科 の授 業 で ﹁認 識 ・表 現 の力 ﹂ を 育 て る と いう 観 点 か ら 、 ど のよ う に す れ ば 説 明 的 文 章 の 学 習 を
58
で は 、 授 業 に お い て ﹁認 識 ・表 現 の方 法 ﹂ を ど の よう に 指 導 す る のだ ろ う か 。 ﹁ど う ぶ つ の赤 ち ゃん ﹂ で は 、 ﹁対 比 ﹂ に つ い て次 の よ う に説 明 さ れ て いる 。
さ て、 次 に ラ イ オ ン の赤 ち ゃん と し ま う ま の赤 ち ゃ ん のよ う す を く ら べ合 わ せ る 。 ﹁く ら べ よ み﹂ と い い
ま す 。 く ら べ合 わ せ ると いう の は 、 ち が いを 見 て いく こ と です 。 ち が いを 見 て いき ま す と 、 ま ず 大 き さ が 、
ラ イ オ ン の方 は ︿子 ね こ ぐ ら い﹀ で、 しま う ま の方 は くやぎ ぐ ら い>。 こ こ で 、 ︿子 ね こ﹀ や ︿や ぎ ﹀ を ひき
あ いに し て いる のは 、 君 た ち に よ く わ か る よ う にす る た め だ よ 、 と お さ え て ほ し い。 君 た ち が よ く 知 って い
る ︿子 ね こ﹀ を ひき あ い にす る と よ く わ か る だ ろう 。 読 み手 が よ く 知 って いる も のを た と え に し て い る のだ
よ 。 こう いう ふ う に よ く 知 って いる も の を ひ き あ いに し てく れ ると わ た し た ち 読 み 手 に よ く わ か る ね 。 人 に
説 明 を す ると き には 相 手 が よ く 知 って いる も のを ひ き あ いに す ると い いん だ ね 、 と お さ え ま す 。 こ こが 大 事 な と こ ろ な ので す (四 七 頁 )。
従 来 の説 明 的 文 章 の授 業 は 、 要点 や要 旨 を 読 み取 る と いう 方 向 で の 読 解 が 主 た る 学 習 内 容 であ った 。 こ れ に 対
し て 、 西 郷 竹 彦 氏 は 、 ﹁認 識 ・表 現 の力 ﹂ を 育 て る こ と こ そ を 目 標 に す べ き だ と し て、 説 明 的 文 章 の 学 習 指 導 を
通 し て ﹁認 識 ・表 現 の方 法 ﹂ を 獲 得 さ せ る こと を 提 案 し た の であ る。 そ れ が 教 材 に即 し て 具 体 的 に 提 出 さ れ て い
[ 河 野順子]
る こ と が 本 書 の意 義 と 言 え る。 筆 者 の関 心 か ら 言 え ば 、 子 ど も た ち が そ れ を 切 実 な 課 題 と し て どう 学 ん で いく か と いう 学 習 者 論 的 な 検 討 も 必 要 に な ってく る だ ろう 。
﹃ 説 明 文 教材 の授 業 改 革 論 ﹄ ( 明 治 図 書 / 一九 八 六年 )小 田迪 夫
著 者 は 、 レ ト リ ック に着 眼 し て説 明 文 教 材 指 導 論 を 構 築 し て いる 。 ﹁ま え が き ﹂ に は 次 の よう にあ る 。
の科学的説 明文
一 大 正期 の説明 文教材 指導 / 二 昭和初期 の説 明文 教材指 導︱ 生命主 義と 生活 主義︱ / 三 ﹃ 赤 い鳥﹄
Ⅲ 説明文教材 指導 の史 的考察
一 レト リ ック活動 の中 での ロジ ックの教 育/ 二 論理的思考 活動 の基 盤とな るも の
Ⅱ 論理的 思考 力育成 のため に
力 を育 てる︱
解指導 /八 認識 を導 く思考指 導/九 書き手 の視点と読 み手 の素 地/十 表 現指導 への展開︱ 説明叙述
の意識と そ の形成指導 / 五 文章構成 読み指導 の転換/ 六 要点 ・要約指導 の問題/ 七 抽象的 叙述 の理
一 説 明文教材指導 の拠点 / 二 説明 文体と説 明文教材指導 / 三 文 体 に読 み手 を つなぐ指導 /四 読 み
Ⅰ 説明文 教材指導 の課題と方法
以 下 に 、 そ の構 成 を 示 す (﹁序 ﹂、 ﹁ま え が き ﹂、 ﹁あ と が き ﹂ お よ び 各 節 内 の項 目 名 は 省 略 )。
本 書 は 、説 明 文 教 材 指 導 の実 践 改 革 の視 点 を 示 し 、 そ の根 拠 の理 論 化 を 図 った 著 作 であ る 。
59
説 明 文 教 材 の読 み の学 習 活 動 が 不 活 発 に な る 要 因 は 、 "説 明 " と いう 表 現 法 す な わ ち 文 体
( 描 写体 、 物 語
体 に 対 す る 説 明 体 ) の抽 象 的 伝 達 性 に あ り 、 し か も 、 そ の理 解 に正 確 性 、 論 理 性 を 求 め る 読 ま せ 方 の形 式 化 、 画 一化 に あ る と 考 え る 。
本 書 に お いて 、 わ た く し は 、 そ の読 み の活 性 化 の手 だ て の支 柱 を レト リ ック ( 修 辞 学 ) の 原 理 に求 め よ う
と し た 。 説 明 文 体 を ロジ ック ( 論 理 ) の展 開 と し て見 る だ け で な く 、 そ の ロジ ック を 相 手 に伝 え る レ ト リ ッ
ク の 面 か ら と らえ 、 そ の レ ト リ ック の射 程 内 に 読 み手 を 導 き 入 れ る 指 導 の方 法 を 工夫 す る こ と 、 そ れ に よ っ
て、 教 材 の内 容 と 論 理 と が 学 習 者 に 生 き 生 き と 伝 わ り 、 学 習 者 が そ れ に意 欲 的 に 反 応 す る学 習 活 動 を 実 現 す る こ と が でき る と 考 え た の であ る 。 (三 頁 )
一九 八 ○ 年 代 は 、 説 明 文 教 材 に関 す る 研 究 の進 展 が 見 ら れ た 時 期 であ る 。 一九 八 六年 刊 行 の 本 書 に収 め ら れ て
い る著 者 の提 案 は 、 レ ト リ ック に焦 点 を 当 て る こ と に よ って、 こ の領 域 の 研 究 に大 き な 示 唆 を 与 え た 。 先 に 示 し
た 構 成 のⅢ で は 、 説 明 文 と そ の指 導 に つ いて の歴 史 研 究 が 記 さ れ て い る。 読 者 は 、 説 明 文 教 材 指 導 が 抱 え る 問 題
を 通 時 的 に 認 識 す る と と も に 、 I ・Ⅱに お け る考 察 お よ び 提 案 の重 み を 実 感 す る こと で あ ろう 。
本 書 では 、 具 体 的 な 教 材 や 実 践 事 例 が 提 示 さ れ 、 そ れ ら に 対 す る 鋭 い解 釈 が 述 べ ら れ て いる 。 ま た 、 明 治 期 以
降 の文 献 が 豊 富 に 取 り 上 げ ら れ る 一方 で、 認 知 心 理 学 な ど の関 連 諸 領 域 の も た ら し た 研 究 成 果 に つ いて の言 及 も
あ る 。 研 究 に お け る 目 配 り の広 さと 深 さ がう か が え る 本 書 に お い ては 、 確 か な 基 礎 論 に 基 づ い て、 説 明 文 教 材 の
[ 守 田 庸 一]
授 業 改 革 が 主 張 さ れ て いる 。 著 者 の 論 究 の成 果 が 集 約 さ れ た 本 書 は 、 説 明 文 教 材 の指 導 を 研 究 、 実 践 す る 上 で の 必 読 文 献 であ る と いえ よう 。
﹁ 筆 者 の 工夫 を 評 価 す る 説 明 的 文章 の指 導 ﹄ ( 明 治 図 書 / 一九 八 九 年 ) 森 田信 義
本 書 の概 要 は 、 次 の通 り であ る 。
Ⅰ 説 明 的 文 章 の特 質 と 指 導 の意 義
Ⅱ 説 明 的 文 章 の教 材 研 究 (一 教 材 研 究 と いう ﹁読 み ﹂ / 二 教 材 研 究 の方 法 )
Ⅲ 指 導 過 程 、 指 導 方 法 の工 夫 (一 読 み の指 導 の諸 相 / 二 ﹁批 判 的 読 み (C RITICAL
ぶ / 三 教 材 研 究 者 の 読 み と 子 ど も の読 み / 四 学 習 指 導 過 程 、 指 導 方 法 の 工夫 )
本 書 の特 長 を 、 森 田 の論 述 を も と に ク ロ ーズ ア ップ し てみ る。 ま ず 、 書 名 に も な って い る ﹁筆 者 の 工 夫 を 評 価
Ⅵ ・Ⅶ 教 科 書 の研 究 (一)・︵二 ︶
Ⅴ 実 践 事 例 の検 討
Ⅳ 教 材 研 究 と 授 業 の実 際 (一 教 材 の 特 色 と 問 題 点 の考 察 / 二 授 業 の構 想 / 三 授 業 の実 際 と そ の考 察 )
REA )﹂ Dに I学 NG
(一 従 来 の定 義 と そ の問 題 / 二 情 報 の生 産 ・加 工 に つ い て)
年 ) に も 、 三部 作 を 完 成 さ せ た ﹃説 明 的 文 章 教 育 の 目標 と 内 容 ﹄ (一九 九 八年 ) にも 貫 か れ て いる 。
い﹂と 述 べ る。森 田 の説 明 的 文 章 指 導 の こ の精 神 は 、第 一著 書 ﹃認 識 主 体 を 育 て る 説 明 的 文 章 の指 導 ﹄ (一九 八 四
を 、 認 識 の主 体 と し て の自 己 を 見 失 う こと な く 生 き ぬく 力 を 身 に つけ る こ と を 目 的 と す るも の でな く て は な ら な
本 書 の ﹁ま え が き ﹂ で森 田信 義 は 、 ﹁国 語 科 に お け る 説 明 的 文 章 の指 導 は 、 複 雑 、 多 様 な 情 報 が 混 在 す る 現 代
60
す る ﹂ に つ い て であ る が 、 森 田 は 、 こ れ ま では ﹁確 認 ﹂ 読 み に 留 ま って いた と し て、 ﹁評 価 ﹂ 読 み を 提 唱 す る。
従 来 説 明 的 文 章 の読 み は 、何 が 、ど のよ う に 書 い て あ るか を 、叙 述 に 即 し て ﹁確 認 ﹂す る こ と が 中 心 であ っ
た と 言 って よ い。も っと も 、書 い てあ る こ と 、書 き 表 し 方 を あ り のま ま に 理 解 し よう と す る行 為 そ のも の は 決
し て非 難 さ れ る べ き こと で はな い。そ れ に 留 ま る こと に 問 題 が あ った ので あ る 。/ で はあ り のま ま の理 解 を 超
え る 読 み と は ど の よう な 読 み を 指 す の で あ ろう か 。そ れ は 、筆 者 の工 夫 の 評 価 を す る こ と で あ る ( 四 一頁 )。
そ の ﹁確 認 読 み ﹂ の 読 み の対 象 を ﹁こと が ら ・内 容 の読 み ﹂ ( 第 一層 ) と 、 ﹁論 理 展 開 の読 み ﹂・﹁表 現 の読 み﹂
( 第 二 層 ) と し、 ﹁評 価 読 み ﹂ の 読 み の対 象 を ﹁筆 者 の読 み﹂ ( 第 三 層 ) と す る (四 二 頁 )。 そ し て、 実 際 の学 習 活
動 の中 で、 そ れ ら の読 み の対 象 を 具 体 的 に 引 き 出 す 発 問 の 工夫 を 森 田 は 、 次 の よう に 意 義 付 け る。
教 材 が ﹁分 か り や す いか 、 分 か り に く いか ﹂ を 直 接 に問 う こと が 、 説 明 的 文 章 指 導 の発 問 の核 に な って も
よ い であ ろう 。 こ の 発 問 は 、 子 ど も の手 の届 か ぬ高 み に祭 り 上 げ ら れ て いた 筆 者 を 、 生 身 の人 間 の立 場 に 引 き 下 ろす 機 能 を 持 つ ( 七 四頁 )。
﹁確 認 読 み ﹂と ﹁評 価 読 み ﹂の指 導 過 程 に つ い ては 、﹁教 材 、指 導 目 標 、子 ど も の実 態 等 に 応 じ る た め に は 、指 導
過 程 にも 柔 軟 性 が 必 要 で あ る 。特 定 の指 導 過 程 に と ら わ れ る こと は避 け る べ き ﹂ ( 七 九 頁 )と 慎 重 な が ら も 、基 本
的 に は 、﹁評 価 の構 え づ く り ﹂← ﹁確 認 の 読 み ﹂← ﹁評 価 の読 み ﹂(八 一頁 )と の見 通 し を 提 示 し て いる 。 [ 長崎 伸仁]
( 昭 和 二 〇 年 代 以 降 ) の読 書 指 導 の研 究 は 、﹁一 つ の文 章 を 詳 し く 読 ま せ る﹂ こ と で育 て て き た ﹁読 む 力 ﹂
第 六章 読書 指 導 の研究
戦後
と いう 歴 史 的 遺 産 を 、 経 済 的 発 展 に つれ て﹁一 冊 以 上 の本 を どう 読 む か﹂ が 可 能 に な って いく 中 で、 ど のよ う に 展 開 し て いく か の苦 闘 の歴 史 であ った 。
﹃ 国 語 教 育 基 本 論 文 集 成 18 国 語 科 読 書 指 導 論 ﹄ ( 村 石 昭 三 編 ) で は 、 次 のよ う な 時 期 区 分 が な さ れ て いる 。
昭和 二〇年代 新生読 書生活 の定 位 昭和 三〇年代 映像化 時代 の読書 昭和 四〇年代 読解と 読書 の指導 昭和 五〇年代 言語 の教育 とし て の国語教育 昭和 六〇年代 情報化 ・国際化時 代 の読書
こ のう ち 最 も ﹁読 書 指 導 ﹂ への関 心 が 集 ま り 実 践 が 盛 ん であ った のが 、 昭 和 四 〇年 代 であ る 。 し か し こ の最 盛
( 指 導 )﹂ は ﹁読 解 ﹂ の発 展 も し く は 応 用 と 位 置 づ け ら れ が
期 に ﹁読 解 ﹂ と ﹁読 書 ﹂ と いう 用語 が し ば し ば 対 立 的 な 意 味 で用 いら れ 、 前 の時 期 昭 和 三 〇年 代 に 築 か れ た 国 語 科 指 導 の べ︱ ス を ﹁読 解 ﹂ に お く 考 え 方 か ら 、 ﹁読 書
ち であ った 。 そ のた め 、 次 の昭 和 五 〇年 代 に ﹁基 礎 ・基 本 の力 ﹂ が 強 調 さ れ る と 、 急 速 に ﹁読 書 指 導 ﹂ に 対 す る
現 場 の熱 意 が 冷 め て し ま った と 言 わ れ て いる 。 も ち ろ ん 、 こ の 昭 和 四 〇 年 代 に は 、 大 村 は ま の ﹁読 書 生 活 指 導 ﹂
が 豊 か に 結 実 し 、 ま た 倉 澤 栄 吉 が主 導 し た ﹁新 単 元 学 習 ﹂ に よ って 、 ﹁読 書 指 導 ﹂ が学 習 指 導 の中 心 に す わ る 実
践 が成 立 し た こと は 大 き な 成 果 であ った 。
年 代 の ﹁経 験 単 元 ﹂ 学 習 が基 礎 学 力 を 伸 ば し て いな いと いう 批 判 を 浴 び た のを 受 け 、 国 語 教 育 界 は 、 科 学 的 ・論
さ か の ぼ る 昭 和 三 〇 年 代 は 、 敗 戦 の 傷 手 か ら よう やく 立 ち 直 って高 度 経 済 成 長 が 始 ま る 時 代 で あ る 。 前 期 二 〇
理 的 な ﹁説 明 的 文 章 ﹂ を 焦 点 に し て ﹁読 解 指 導 ﹂ に 力 を 注 いだ の であ る 。 昭 和 三 三 年 版 学 習 指 導 要 領 が 、 ﹁要 点 を 押 さえ て読 む ﹂ ( 小 三) ﹁段 落 ご と にま と め て読 む ﹂ (小 四 ) ﹁意 図 や 主 題 を と ら え る﹂ ( 小 五) ﹁組 み 立 て や叙 述 に 即 し て 正 確 に読 む ﹂ ( 小六) ﹁要 点 を 抜 き 出 し 、 全 体 を 要 約 す る﹂ (小 六 )
な ど を 示 し た た め に、 こ れ ら を 忠 実 に践 ん で いく 授 業 過 程 が さ か ん に研 究 さ れ た 。 こ れ ら は 本 来 、 書 き 手 の意 図
を 読 み 手 が 的 確 に つか む た め に 使 わ れ る 読 み の技 術 で あ る 。 し か し 井 上 敏 夫 氏 は 、 ﹁は た し て そ れ ら の作 業 の あ
と 、著 者 の意 図 し て いる文 章 の主 意 は 読 み手 の心 に じ ゅう ぶ ん通 じ た であ ろ う か 、 と 疑 問 の持 た れ る よ う な 文 章
分 析 の、 微 視 的 な 学 習 指 導 が 、 一般 の風 を な す に いた った ﹂ と 述 べ 、 こ のよ う な 指 導 へ の ア ンチ テ ー ゼ と し て
﹁読 み 手 の生 活 に 根 ざ し ﹂、 ﹁読 み 手 の精 神 が 書 き 手 の精 神 と 直 結 す る よう な 読 み ﹂ と し て の ﹁読 書 指 導 ﹂ が 、 待
望 さ れ る よ う に な った と す る 。 授 業 レ ベ ル で は 、 や は り ﹁読 書 指 導 ﹂ は ﹁応 用 ・発 展 ﹂ に す ぎ な か った 。
昭 和 三 〇 年 代 か ら 四 〇 年 代 に か け て は 、 以 上 のよ う な 技 術 的 ﹁分 析 読 み﹂ と 、 書 き 手 の心 と 直 接 向 き 合 う 生 活
的 な ﹁対 話 読 み ﹂ と を 、 ﹁読 書 法 の体 系 ﹂ 全 体 のな か に 構 造 化 す る こ と が 最 も 期 待 さ れ た 時 期 であ った 。 そ れ が
あ と 一歩 の と こ ろ で実 現 さ れ な か った こ と が 、 平 成 の今 日 ま でも ﹁読 書 指 導 ﹂ 実 践 論 に 大 き な 陰 を 落 と し て い
る 。
以 下 に、 今 日 に残 さ れ て いる ﹁読 書 指 導 ﹂ 実 践 研 究 の課 題 を ま と め て み よ う 。
( 昭 和 四 〇 年 代 ) は 珍 し く な い。 こ れ
一つめ は 、 ﹁読 書 活 動 ﹂ そ の も の が 発 達 段 階 に 十 分 即 し き れ て いな い こと であ る 。 三 年 生 の 子 ど も に ﹁通 読 ﹂ で は な い ﹁ざ っと 読 み ﹂ (点 検 読 み の 一種 ) を 無 理 強 いし て失 敗 し た 事 例
は 読 書 活 動 の 発 達 段 階 の問 題 で あ る と と も に 、 す ぐ れ て ﹁読 書 法 体 系 ﹂ の 問 題 で も あ る 。 ﹁テ ー マ ( 課 題) 読
み ﹂、 ﹁分 析 (対 話 ) 読 み﹂、 ﹁点 検 読 み ﹂、 情 報 処 理技 術 と し て の ﹁調 べ読 み ﹂ な ど 、 大 人 が 使 い こ な す べき 読 書
技 術 を 、 子 ど も は そ れ ぞ れ の発 達 段 階 に お いて指 導 者 のも と にど う 準 備 ・練 習 し て いく のか 。 依 然 と し て こ れ が 問 わ れ て いる 。
二 つめ の大 き な 課 題 は 、 阪 本 一郎 が ﹁読 書 の 心 理 学 ﹂ の視 点 か ら 総 括 的 読 書 力 と し て 言 及 し た ﹁読 み の 基 礎 技
( 修辞法 )を獲
能 ﹂ を 、 あ ら た め て 、 ﹁読 書 の前 提 ﹂ と し て で な く ﹁読 書 が 育 て る 能 力 ﹂ と し て 再 発 見 す る こ と で あ る 。 ヘ レ
ン ・ケ ラー の事 例 を み るま で も な く 、 子 ど も は読 書 活 動 の中 で こ そ 、 新 し い語 彙 と 文 法 、 表 現 法
得 し て いく 。 そ の 過 程 で教 師 の果 た す べ き 役 割 は 何 か 、 十 分 詰 め き れ ては いな い。
三 つめ の 課 題 と し て、 こ れ も 阪 本 一郎 の提 起 し た ﹁読 書 療 法 ﹂ と 関 わ り の深 い、 ﹁読 書 が心 を 癒 す 力 ﹂ や ﹁読
書 興 味 の発 達 ﹂ を 、 文 学 ・児 童 文 化 (マ ン ガ や ア ニメ を 含 む )・実 用 書 ・ 一般 書 (教 養 書 ) に 範 囲 を 広 げ て再 定 位 す る こと であ る 。
[ 村 井 万里 子]
( 楽 し み) 読 み ﹂ (子 ど も か ら 大 人 ま で) と が ど う 結 び つ い て いく か に
以 上 の よ う な 三 つ の課 題 は 、 いず れ も 、 学 校 ・授 業 で意 図 的 ・計 画 的 に 組 織 さ れ る ﹁学 習 読 み ﹂ ( 初 級読 書) と 、 個 人 の心 の自 由 と 成 長 に培 う ﹁自 由
関 係 し て いる 。 こ の関 係 解 明 の成 否 が 、 読 書 指 導 の未 来 を 占 う 指 標 と な る で あ ろう 。
﹃ 現代 の読 書 指 導 ﹄ ( 明 治 図 書 / 一九 七 六年 ) 滑川 道 夫
問 題 の指 摘 を 集 約 的 に 行 って い る。 以 下 に 概 要 を 記 す 。
最 終 第 六 章 ﹁読 書 指 導 の視 野﹂ で著 者 は 、 ﹁児 童 文 化 ﹂ の 育 成 を 願 い、 読 書 指 導 への 提 言 、 読 書 の現 状 認 識 、
導観 /第四章 読書力と はな にか/第五章 読書環境 づくり /第 六章 読書 指導 の視野
序章 読書生活 の創造 /第 一章 読書 の現代 的性格と 読書指導 /第 二章 読書指導 の構造 /第三章 読書指
本 書 は 、 下 記 の六 つの章 か ら 構 成 さ れ て いる 。
ている。
を 生 活 に 生 か し新 た な 意 味 を 創 造 す る も の に移 転 さ せ る ﹂ こと を 志 向 し 、 こ れ ら 全 体 に ﹁生 活 読 み﹂ の名 を 与 え
著 者 は 、 ﹁内 容 が わ か る ﹂ ( だ け の) 読 書 か ら 発 展 し て 、 ﹁ 読 み 手 の生 活 を 創 り 出 す ﹂ 読 書 、 ﹁読 書 し て 得 た こ と
築 し よ う と いう 願 いが 生 ま れ て い る 。
権 利 を 守 る﹂ こと に 培 う 読 書 、 ﹁生 涯 教 育 ﹂ と し て の読 書 、 地 球 的 な 視 野 を も つ ﹁平 和 を 守 る た め の読 書 ﹂ を 構
心 を 寄 せ て いる 。 こ の視 座 か ら は 、 教 室 や 図書 館 に 限定 さ れ ず 、 時 間 ・空 間 と も に 長 い ス パ ン で ﹁人 間 と し て の
書 は 、 教 科 と し て の国 語 科 の枠 を 越 え て、 児 童 の生 活 の中 の ﹁読 書 ﹂ や ﹁映 像 メ デ ィ ア﹂ の意 味 ・働 き に 強 い関
著 者 ・滑 川 道 夫 の関 心 は 、 戦 前 の ﹁教 育 科 学 研 究 会 ﹂ に参 加 し た 時 代 か ら 、 ﹁児 童 文 化 ﹂ の向 上 にあ った 。 本
61
︿1﹀ ﹁読 書 指 導 への提 言 ﹂ で は 、 ﹁読 み の 一回 性 ﹂ を 重 視 し ﹁予想 ・期 待 を も ち な が ら 読 む ﹂ 生 活 読 み の自 然
な姿 を 大 切 に す る よう 提 言 す る 。 問 題 を 解 決 し 尽 く す の で な く ﹁わ か ら な いこ と を 残 す ﹂ 読 みが 自 然 な 読 み で あ
る こ と 、 絵 と 文 両 方 を 読 み 、 ま た 音 声 化 を 励 行 し て ﹁耳 で読 む ﹂ こと の効 果 を 強 調 し 、 読 書 を ﹁た のし み﹂ に と ど ま ら ず 深 い手 応 え を 得 る ﹁よ ろ こび ﹂ へと 展 開 さ せ る こと を 願 って いる 。
( 読 み 書 き ) 環 境 を 考 察 し て いる 。 日本 が ﹁か な 文 字 ﹂ に よ って恵 ま れ た 入 門 期 を も つこ
︿ 2 ﹀ ﹁読 書 に お け る新 し い視 野﹂ に は、 一九 七 四年 ウ ィ ー ン で の ﹁世 界 読 書 会 議 ﹂ 参 加 に 刺 激 を 受 け て世 界 的 視 野 か ら 子 ど も の読 書
と 、 表 紙 や挿 し 絵 、 写 真 、 図 を 含 め 本 を 総 体 と し て と ら え て ﹁感 想 を も つ﹂ 大 切 さ 、 自 分 の生 活 経 験 と 読 書 内 容
を 、 ま た 前 に 読 ん だ 本 と 今 読 ん で い る本 と の関 係 づ け な ど を と お し て創 造 的 な 読 み が 成 立 す る こと な ど を 、 力 を 込 め て具 体 的 に 説 い て いる 。
︿3﹀∼ ︿ 5 ﹀ は 、 ﹁映 像 時 代 の読 書 ﹂ と いう 観 点 か ら映 像 の意 義 を も 積 極 的 に認 め て児 童 文 化 を 豊 か に し よう と
す る 論 が 展 開 さ れ て いる 。 ﹁怪 獣 ﹂ か ら ﹁変 身 ﹂ も の へと テ レビ 番 組 の変 化 を と ら え 、 ﹁変 身 ﹂ が な ぜ 子 ど も た ち
の心 を と ら え る か を 分 析 し そ の意 外 な ﹁健 康 性 ﹂ を 説 い て いる 。 む し ろ危 機 は 別 の 分 野 に ひ そ む ﹁退 廃 性 ﹂ に あ
ると 指 摘 す る 。 ︿ 5 ﹀ の戦 争 番 組 ・物 語 に は 、 ﹁忘 れ ら れ な い﹂ こ と よ り ﹁ 忘 れ て は な ら な いも の﹂ を こ そ 語 り 継
ぐ べ き 対 象 であ る と 説 く 。 ︿6 ﹀ は 、童 話 が多 く ﹁絵 本 ﹂ と し て 提 供 さ れ て いる こと を 取 り あ げ 、絵 と 文 章 と を
一体 のも のと し て ﹁本 を ま る ご と ﹂ 読 む こ と の大 切 さ を 再 び 強 調 し て いる 。 ︿7﹀ ﹁ノ ー ト づ く り ﹂ は 読 書 と 学 習
法 と を つな ぐ 技 法 を 意 味 づ け よう と し た 節 で あ り 、 最 後 に ︿8 ﹀ ﹁指 導 者 像 ﹂ を 取 り あ げ て 、 子 ど も の人 生 に か
[ 村 井 万 里 子]
か わ り 、 ﹁子 ど も と 共 に 学 び ﹂、 ﹁生 き が いを 子 ど も に感 じ さ せ る 体 験 ﹂ に 導 く 指 導 者 の役 割 に 、 心 を 込 め て応 援 と 励 ま し を 送 り 、 全 編 を 締 め く く って い る。
﹃ 読書 生 活指 導 の実 際 ﹄ ( 共 文 社 / 一九 七 七年 ) 大村 は ま
(一九 六 六 ) か ら 五 年 間 か け て 、 こ れ ま で の読 書 案 内 ・図 書 紹 介 ・読 書 感 想 文 の
と 本 を 結 ぶ、 問 題 発 見 のた め に読 む 、 読 書 会 の進 め方 、 読 書 に つ い て考 え る な ど が 、 指 導 事 項 と し て 位 置 づ け ら
を 探 す 、 感 想 文 の指 導 、 百 科 事 典 を 含 め 各 種 の本 の活 用 、 批 判 的 に 読 む 、 読 書 に つ い て の考 え を 豊 か に す る、 本
導 計 画 案 を 提 案 し て いる 。 そ こ に は 、 読 書 生 活 の記 録 、 ノ ー ト のと り 方 、 あ る こ と が ら を 調 べ る た め に適 当 な 本
に対 す る 基 本 的 な 考 え 方 を 述 べた 上 で 、 中 学 校 三 年 間 ( 年 間 二 十 二 ∼ 三 十 三 時 間 ) の帯 単 元 に よ る読 書 生 活 の指
Ⅳ 実 践 報 告 ﹁ 単元 ﹃ 各 国 に 生 き る 現 代 の 子 ど も た ち の姿 ﹄ の学 習 指 導 ﹂ と な って いる 。 I で は 、 読 書 生 活 指 導
本 書 の構 成 は 、 I 読 書 生 活 の指 導 、Ⅱ 読 書 指 導 の実 際 、Ⅲ 実 践 報 告 ﹁読 書 人 の基 礎 能 力 を 養 う た め に﹂、
指 導 に は な い、 新 し い読 書 指 導 のあ り 方 を 提 案 し て い る 。
ぶ、 ④ 読 み 方 を 選 ぶ 、 ⑤ さ ら に、 ほ し い本 、 望 み の本 が 生 ま れ てく る よ う に す る な ど を 掲 げ て 、 これ ま で の読 書
本 に よ って ⋮ ⋮ 」 と 本 を 使 う こと に 気 づ く 、 ② ど ん な 本 が あ る か を 知 る (ま だ 出 て いな い本 ま で も )、 ③ 本 を 選
た 人 、 す な わ ち 、 す ぐ れ た読 書 人 を 育 成 す る こと を 目 指 し た 。 指 導 内 容 と し て は 、 ① 目 的 に よ り ﹁こ のこ と は 、
いく た め に の 一つの技 術 ﹂ と し て位 置 づ け 、 ﹁本 を 生 き て いく た め の必 需 品 と し て使 い こな し て いく 力 ﹂ を 持 っ
いう 生 活 な し に は 、 情 報 化 社 会 を じ ゅう ぶ ん に生 き 抜 く こ と は でき な いと 考 え て 、 大 村 は ま は 、 読書 を ﹁生 き て
指 導 に終 始 す る受 容 的 、 教 養 主 義 的 な 読 書 指 導 を のり こえ る 、 新 し い読 書 指 導 の開 拓 に 取 り 組 ん で い る。 読 書 と
頃 、 大 村 は ま は 、 昭 和 四 一年 度
昭 和 四 〇年 代 に入 り 、 情 報 化 社 会 を 生 き 抜 く た め に は ど の よ う な 読 む こと の指 導 が 必 要 か が 問 題と な り 始 め た
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( ← 目 録 を 読 む ・図 表 を 読 む ・必 要 な 段 落 を 読 む )﹂ な ど の実 践 を ふま
れ て い る 。 これ ら の読 書 生 活 に 必 要 な 基 礎 能 力 の育 成 を 目 指 し て 、Ⅱ で は 、 ﹁本 を 選 ぶ こと を 教 え る ﹂、 ﹁批 判 力 を 育 て る読 書 指 導 ﹂、 ﹁読 書 指 導 のく ふう
え た 提 案 が 、Ⅲ では 、 新 し い読 書 指 導 の必 要 性 を 述 べ た 上 で、 昭 和 五 〇年 度 に 公 開 さ れ た ﹁本 を 知 る窓 ﹂、 ﹁読 む
人 を 読 む ﹂、 ﹁文 献 の探 索 ﹂ の授 業 の記 録 が 、 そ れ ぞ れ 載 せ ら れ て い る。Ⅳ で は 、 昭 和 五 一年 に 実 践 さ れ た 単 元
﹁各 国 に 生 き る 現 代 の子 ど も た ち の姿 ﹂ の 学 習 指 導 の実 際 の全 容 が 詳 細 に掲 げ ら れ て い る。 これ は 、 単 元 的 展 開
に よ る 国 語 科 学 習 指 導 の 中 で、 読 書 生 活 に 必 要 な 基 礎 的 な 能 力 を 有 機 的 、 総 合 的 に 習 得 さ せ る よ う に 工 夫 し た 画 期 的 な 実 践 提 案 であ る。
昭 和 四 三 年 度 の学 習 指 導 要 領 の改 訂 に よ り 、 国 語 科 教 育 に お い ても 読 書 指 導 が 重 視 さ れ る よ う に は な った が 、
現 在 に お い て も 、 大 村 は ま が 提 案 し た よう な 、 情 報 化 社 会 を 生 き 抜 く こ と に 役 立 つ、 体 系 的 ・系 統 的 な 読 書 生 活
[ 世羅博 昭]
指 導 は 実 践 さ れ て いな い。 本 書 は 、 本 格 的 な 読 書 生 活 指導 を 目 指 す 人 の 必 読 書 であ る と と も に 、 大 村 は ま 国 語 科 単 元 学 習 の深 化 期 の生 成 過 程 に つ い て研 究 す る 人 の必 読 書 でも あ る 。
﹃ 読 書 の発 達 過 程: 読書 に関 わ る認 知 的 要 因 ・社 会 的 要 因 の心 理学 的 検 討 ﹄ ( 風 間 書 房 / 一九 九 七 年 )秋 田喜 代 美
( 3 章 )、 ( 2 ) 読 書 行 為 の動 機 づ け る ﹁お も し ろさ ﹂ の要 因 ( 4 章 )、 ( 3) 読書
た と え ば 3 章 で は 、 幼 児 期 の子 ど も の文 字 の 習 得 と 読 書 活 動 の 関 係 や 、 絵 本 の読 み に お け る 挿 絵 の読 ま れ 方 に
行 為 の意 義 の自 覚 の要 因 ( 5 章 )。
( 1 ) 読 書 行 為 の認 知 的 要 素
さ て 、 読 書 の 認知 的 要 因 の発 達 の力 学 を 、 秋 田 は 次 のよ う に構 造 化 し て いる 。
と も 可能 だ 。
だ 。 だ か ら 本 書 の中 心 に は 3 章 以 降 の認 知 的 要 因 が あ り 、 そ の 立 論 を 支 え る 補 強 材 と し て の2章 が あ る と 見 る こ
判 し な が ら 台 頭 し て いく 時 代 の 風 を 、 彼 女 は 真 正 面 か ら 受 け と め な が ら こ の論 文 を ま と め て い った は ず だ か ら
年 代 後 半 か ら 現 在 に 至 る 、 認 知 の社 会 文 化 的 構 成 を 問 題 に す る取 り 組 みが 、 そ れ ま で の情 報 処 理 認 知 モ デ ルを 批
に本 書 の序 論 で概 観 さ れ た 、 認 知 科 学 的 発 達 論 の研 究 史 か ら 導 か れ た 必 然 的 な 構 成 で あ る。 す な わ ち 、 一九 八 ○
明 ( 2 章 ) と 、 読 書 行 為 を 具 体 的 に支 え る ﹁認 知 的 要 因﹂ の解 明 ( 3 章 以 降 ) の 二 つ の アプ ロー チ 。 そ れ は ま さ
そ の骨 組 みは 大 き く 二 つに 分 け る こ と が でき る 。 読 書 の発 達 を 規 定 す る要 因 と し て の ﹁社 会 文 化 的 要 因 ﹂ の解
な 彼 女 の学 位 論 文 を も と に刊 行 さ れ た のが 本 書 で あ る。
は 当 時 の私 た ち 国語 教 育 学 研 究 の初 学 者 た ち に常 に新 し い風 を 送 り 込 ん でく れ る道 し る べ の 一人 であ った 。 そ ん
研 究 者 で あ る。 折 し も 当 時 、 国 語 教 育 学 研 究 に お いて 調査 研 究 的 学 習 者 論 の取 り 組 み が 緒 に つ いた ば か り 。 秋 田
秋 田喜 代 美 は 、 一九 八 ○年 代 中 盤 以 降 、 読 書 を 中 心 と し て言 語 発 達 を 認 知 心 理 学 の視 点 か ら 追 求 し 続 け てき た
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つ い て の発 達 特 性 が 見 事 に と ら え ら れ て いる 。 いず れも 、 心 理学 的 な 厳 密 な 条 件 統 制 と 理 論 的 分 析 枠 に よ って丹
念 に 分 析 考 察 さ れ た 知 見 で あ り 、 国 語 教 育 研 究 に 多 く の 実 り を も た ら す 研 究 で あ る。
そ の こと を 十 分 評 価 し た 上 で、 国 語 教 育 学 の目 で こ れ ら の実 験 を 眺 め て み る と 、 一つ の問 題 を 指 摘 せざ る を 得
な い。 秋 田 の 、 と いう よ り そ れ は 多 分 に心 理 学 研 究 の視 野 に 、 作 品 研 究 が ま る で 欠 落 し て い ると いう こと で あ
る 。 た と え ば 、 研 究 5 では 二 つ の絵 本 が 使 わ れ る が 、 そ れ は ﹁繰 り 返 し 構 造 ﹂ と ﹁起 承 転 結 の構 造 ﹂ と いう 単 純 な 意 味 へと 回 収 さ れ る 。
さ ら に 、 4 章 の研 究 9 に お いて 用 い ら れ た ﹁泣 いた 赤 鬼 ﹂ (浜 田 広 介 ) は 、 秋 田 が 言 う よ う に ﹁筋 が 簡 単 で 被
験 者 にと って理 解 し 易 い﹂ 作 品 な ど で は な く 、 も や も や と い つま でも 読 者 を 揺 さ ぶ り 続 け る 問 題 作 で あ る。 そ の
作 品 が ど の よ う な 構 造 で、 読 者 に な にを も た ら す の か と いう こ と への 理解 が 、 著 し く 不 足 し て いる と 言 わ ざ る を
得 な い。 さ ら に 言 う と 、 こ の研 究 が 今 日 の発 達 研 究 の潮 流 に 照 ら し て決 定 的 に問 題 を 抱 え て いる の は 、 彼 女 が 立
論 す る た め の前 提 と し た 2章 、 読 書 の発 達 の社 会 的 要 因 の領 野 で あ る 。 読 書 の社 会 的 要 因 と 渡 り 合 う な ら ば 、 そ
の家 庭 な り 子 ど も な り が 属 し て いる 社 会 階 層 を 構 造 的 に と ら え 、 変 数 化 す る 調 査 の デ ザ イ ンを し な け れ ば な らな
いし 、 そ う で な け れ ば 社 会 文 化 的 活 動 と し て の ﹁読 書 ﹂ の姿 な ど 見 え て こ な いだ ろう 。
2 章 は ﹁社 会 的 要 因 ﹂ と いう に は ま る で食 い足 ら ず 、 そ れ ゆえ 、 3 章 以 降 に は き れ いさ っぱ り社 会 が 捨 象 さ れ
[ 住 田 勝]
る 。 こ の研 究 は 、 ど こま で も 一九 八 ○年 代 前 半 ま で の認 知 研 究 の良 質 な 成 果 で あ り 、 同 時 に限 界 で あ り 、 そ れ ゆ
え そ れ に導 か れ て突 き 進 んだ 認 知 論 的 国 語 教 育 学 の限 界 点 と 課 題 を 見 事 に 指 し 示 し て いる 。
﹃ 語 彙 力 と 読 書︱ マ ッピ ング が 生 き る 読 み の 世 界︱ ﹄ ( 東 洋館 出 版 社 / 一一 〇 〇 一年 ) 塚 田泰 彦
指導 における既有 知識 の査定 法/第6節 読み の学 習におけ る意 味 マップ の活用法
意味 マップ法 の原 理的検討 /第4節 読 み の事前指 導 における既有 知識 の位 置づけ /第5節 読 み の事前
第 1節 読 み の教育 のため の語 彙意味論 的 アプ ロー チ/第 2節 語彙意 味論 的方 法 の定 義と種類 /第3節
第 四章 読 み の教育と語 彙意味論 的方法 の関係︱課題 解決 の方法 的展望︱
置 づけ/第6節 語彙知識 をめぐ る研究内容と 研究方法 の関係
理 /第4節 読 み の過程 におけ る語 彙指導 の可能性 /第5節 認 知論的視座 から見 た語彙知 識 の新 し い位
第 1節 研究史 の概略/ 第2節 読 み の力 と 語彙知 識 の関係 /第 3節 語彙 知識 仮説 に基づ く論 点 の整
第三章 読みと語彙 知識 の関係︱課題 解決 の原理 的展望︱
構 成 の 一部 を 引 用 す る 。
づ く 知 識 論 の重 視 ) に よ り 、 読 み の学 習 の 原 理 的 転 換 を は か った 研 究 であ る 。
︿認 知 論 的 アプ ロー チ ﹀ (テ ク ス ト 分 析 の中 核 と な るも のと 読 者 の既 有 知 識 と の関 係 の明 確 化 、 読 者 論 的 発 想 に基
ッド の 再 考 、 言 語 事 実 へ の根 拠 の 明 確 化 、 新 し い視 界 を 開 く パ ラ デ ィ グ マ テ ィ ツク な 軸 で の ア プ ロー チ ) と 、
本 書 は 、 読 者 個 々 の主 体 的 な 読 み の行 為 が 教 育 の基 点 と な るよ う 、 ︿ 応 用 言 語 学 的 アプ ロー チ ﹀ (ワ ー ド .メ ソ
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第 五 章 の 調 査 で は 、 読 者 の既 有 知 識 を 語 彙 と し て取 り 出 さ せ た 意 味 マ ップ
( 賦 活 マ ップ )、 教 材 文 の読 み を 語
彙 と し て書 き 出 さ せ た 意 味 マ ップ (理解 マ ップ)、 そ れ ら の ﹁重 ね 合 わ せ ﹂ 等 か ら 、 ﹁意 味 マ ップ法 の有 効 性 ﹂ を 検 証 し て い る。 成 果 のま と め の 一部 を 引 用 す る 。
2. 語 彙 学 習 ( 概 念 学 習 ) の方 法 と し て の側 面 で は 、 キ ー ワ ー ド の選 択 状 況 の分 析 か ら 、 読 者 の ﹁語 ﹂ への 注 視 に支 え ら れ た ﹁読 み の過 程 で の語 彙 習 得 の実 態 ﹂ が 確 認 さ れ た 。
3. 読 み の方 法 と し て の 側 面 では 、 研 究 上 の焦 点 であ った ﹁重 ね 合 わ せ﹂ の有 効 性 が 複 数 の 視 点 か ら デ ー タ
解 釈 に よ って 実 証 さ れ た 。 ま た ﹁中 心 語 の シ フ ト 現 象 ﹂ と 呼 ぶ こと に し た 教 材 文 の理 解 過 程 で の マ ッピ ン
グ への か か わ り 方 が新 た な 事 実 と し て認 識 さ れ 、 意 味 マ ップ が 読 者 の側 か ら の意 図 的 な か か わ り を 許 容 す る 柔 軟 な 側 面 を 持 って い る こと が 明 ら か に な った 。
4. 知 識 の 評 価 方 法 と し て の側 面 で は (中 略 ) ﹁既 有 知 識 の査 定 ﹂ や ﹁教 材 文 理 解 の評 価 ﹂ が 一定 の 判 定 基 準 を 設 け て 数 値 的 に 示 せ るも の であ る こ と を 実 証 し た (二七 九 頁 )。
従 来 、 読 み の教 育 に 関 し て 、 読 者 論 的 立 場 を 主 張 す る 論 者 は 多 いが 、 そ れ を 実 証 的 に論 じ た 研 究 は あ ま り な
い。 ま た 、 語 彙 と いう 角 度 か ら 読 み の在 り 方 お よ び そ の 学 習 法 を 構 想 し た 研 究 も ほ と ん ど 見 ら れ な い。 本 研 究
[ 高 木 ま さ き]
は 、 そ れ ら の点 に お い て、 読 み の教 育 研 究 のパ ラ ダ イ ム に大 き な 転 換 を 迫 る 画 期 的 な 試 み で あ る と 言 う こ と が で き よう 。
﹃ 読 書 を 教 室 に︱ [ 読 み] の授 業 を 変 え よ う︱ ( 小 学 校 編 )・︵ 中学 校編 )﹄ 府 川 源 一郎 ・長 編 の会 編 ( 東 洋 館 出 版 社 / 一九 九 五 年 )
本 を 探 索 し 、 そ れ を 読 み進 め る よ う な 読 書 体 験 の充 実 を 図 ら な け れ ば な ら な い。 教 室 で ﹁長 編 ﹂ を 読 み合
必 要 があ る 。 そ のた め に は 、 上 か ら与 え ら れ た テキ ス トを た だ 読 解 処 理 す る だ け で は な く 、 自 分 か ら 進 ん で
国 語 の授 業 の 中 で も 、 主 体 的 に物 事 を 認 識 で き るよ う な こと ば の力 を 、 そ れ ぞ れ の子 ど も の内 側 に育 て る
いる。
現 在 の マル チ メ デ ィ ア社 会 の中 で は 、 情 報 を 主 体 的 に 判 断 し 、自 主 的 に 行 動 す る 人 間 の育 成 が 期 待 さ れ て
じ め に ﹂ には 、 次 のよ う に 記 さ れ て いる 。
た か た ち で読 書 力 の伸 長 を は か る プ ログ ラ ム が そ こ に は 示 さ れ た 、 課 題 が提 示 さ れ て い る。 編 者 府 川 に よ る ﹁は
本書 は 、 そ のよ う な 課 題 を 正 面 か ら 取 り 上 げ て いる 。 短 編 中 心 の ﹁読 解 ﹂ 型 の学 習 か ら ﹁長 編 ﹂ を 視 野 に入 れ
基 礎 と す る た め のよ い方 法 は な いか 。
と ﹂ の実 践 も 、 比 較 的 短 いテ ク ス トを 対 象 と す る こ と にな る 。 ﹁長 編 ﹂ を 読 み な が ら 、 そ れ を リ テ ラ シ ー 育 成 の
機 会 は 多 い のに 、 国 語 教 科 書 で は 長 編 を 扱 う こと が でき な いか ら であ る 。 いき お い、 国 語 教 育 に お け る ﹁読 む こ
ど の よう に 扱 っ て いく のか と いう こ と は 、 国 語 科 の教 員 が つね に 頭 を 悩 ま せ る 問 題 で あ る 。 ﹁長 編 ﹂ を 人 が 読 む
を イ ン プ ット す る こと が な け れ ば 情 報 の加 工 も ア ウ ト プ ット も 果 た さ れ な いか ら で あ る 。 と り わ け 、 ﹁長 編 ﹂ を
読 む 力 を ど のよ う に 育 て て いく か と いう こと は 、 国 語 教 育 の中 心 的 な 課 題 で あ り 続 け て き た 。 な ぜ な ら 、 情 報
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い、多 く の本 に親 し む 経 験 を 重 ね る こ と は 、 そ う し た能 動 的 な 読 み 手 を 創 り 出 す 大 き な 動 因 に な る はず であ る。
小 学 校 編 を 例 に と る と 、 第 1章 ﹁教 室 で の実 践 ﹂ で は各 学 年 で の実 践 記 録 が 、 第 2章 ﹁生 活 化 に 向 け て︱ 読 書
活 動 の ヒ ント 22︱ ﹂ に は ﹁長 編 ﹂ を 扱 う た め の さ ま ざ ま な 実 践 上 の工 夫 に つ い て の ヒ ント が 、 そ し て第 3章 ﹁作
品 か ら 実 践 へ︱ そ の た め の視 点︱ ﹂ に は 二十 一編 の長 編 作 品 を 扱 う ポ イ ン ト が 、 そ れ ぞ れ 詳 し く 示 さ れ て いる 。
本 書 の刊 行 は 一九 九 五 年 であ り 、 現 在 のよ う に ﹁メ デ ィ ア ・リ テ ラシ ー ﹂ の研 究 と 教育 が 強 調 さ れ る こ と に 先 立
つ、 いち 早 い試 み で あ ったと 言 え るだ ろ う 。 も ち ろ ん 、本 書 が ﹁メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー ﹂ の 研 究 と 教 育 に 先 鞭 を
付 け た と 言 う つも り は な い。 し か し、 府 川 ら が ﹁長 編 ﹂ の読 書 を 重 ん じ て こ のよ う な 仕 事 を 積 み 重 ね 、 そ れ を 公
に し た のも 、 こ の ﹁は じ め に ﹂ に書 か れ て い る よ う に 、 ﹁マ ル チ メ デ ィ ア社 会 ﹂ の中 に 生 き る 子 ど も を ﹁能 動 的 な 読 み手 ﹂ と し て育 て て いく こ と を 目 指 し て いた か ら であ る と 言 う こ と が でき る 。
読 書 教 育 の方 法 論 と し てわ が 国 に紹 介 さ れ て いる ﹁読 書 への ア ニ マシ オ ン﹂ にし ても ﹁ブ ック ト ー ク﹂ に し て
も ﹁ブ ック ク ラブ (リ テ ラ チ ャー ・サ ー ク ル)﹂ に し て も 、 ﹁長 編 ﹂ を 子 ど も た ち の手 に 渡 す た め の方 策 で あ ると
言 って よ い。 そ し て 、 こ れ ら 欧 米 起 源 の読 書 教 育 の アイ デ ア に重 な り な が らも 、 そ れ ら に 先 立 った 実 践 が ﹃読 書
を 教 室 に﹄ のな か に は 少 な か ら ず 示 さ れ て い る。 ま ず は 目 の前 の子 ど も た ち と と も に読 書 を 営 ん で いこう と す る
[ 山 元隆春]
願 いが あ って、 そ の 営 み を ま っと う す る た め に考 え ら れ た さ ま ざ ま な 工 夫 が 本 書 に はあ ふ れ て いる 。
﹃ 読 書 教育 実践 史 研究 ﹄ ( 学 芸 図 書 / 一九 九 七 年 ) 増 田信 一
択 肢 (1 読 書 の 習 慣 、 2 マ ン ガ ・雑 誌 の問 題 、 3 狭 い読 書 範 囲 の拡 大 、 4 調 べ 読 み ・情 報 処 理 の 読 書
そ の後 、 一九 八 四 年 に 日本 読 書 学 会 会 員 に ﹁読 書 指 導 を 推 進 し て いく 上 で 最 も 大 切 な こ と は 何 か ﹂ を 五 つ の選
値 であ った 。
﹁四 〇 パ ー セ ン ト ﹂ と は 、 日 本 読 書 学 会 が 一九 七 一年 度 の国 語 科 研 究 物 を リ スト ア ップ し た 下 記 の表 にあ る数
教 育 の学 問 的 な 意 味 や 役 割 が 明 確 にな ってく る は ず であ る 。
関 す る記 述 が 消 え た 途 端 、 読 書 指 導 の 研 究 が極 端 に 低 調 に な って し ま った 原 因 を 究 明 す ると こ ろ か ら 、 読 書
四 〇 パ ー セ ント 近 い実 績 が あ った の に 、 昭 和 五 二 (一九 七 七 ) 年 に 学 習 指 導 要 領 が改 訂 さ れ て 、 読 書 指 導 に
あ る ﹂ と 位 置 づ け ら れ た 昭 和 四 〇 年 代 で あ った 。 (中 略 ) 昭 和 四 〇 年 代 に、 読 書 指 導 の研 究 は 国 語 科 の 中 で
読 書 指 導 の実 践 が 最 も 活 発 であ った のは 、 文 部 省 の学 習 指 導 要 領 で ﹁読 書 指 導 と 読 解 指 導 と は 車 の 両輪 で
著 者 は、 ﹁読 書 指 導 の実 績 を 歴 史 的 に 位 置 づ け る 必 要 ﹂ を 次 の よ う に述 べ る 。
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法 、 5 考 え 読 み 。思 考 力 論 理 力 の育 成 ) で 尋 ね た ア ンケ ー ト で は 、 各 校 種 で 1 の突 出 が め だ ち 、 ま た 4 が 校 種
が 上 が る に つれ て低 下 気 味 で あ る こ と を 著 者 は 問 題 視 し て い る。 本 書 は こ のよ う な 問 題 意 識 のも と に 、 下 記 に 示
す 目 次 のよ う な 時 代 区 分 で 読 書 指 導 の歴 史 を た ど り 、 読 書 指 導 が 大 正 期 と 昭 和 四 〇 年 代 に 隆 盛 を 見 せ た にも か か わ ら ず 、 現 代 で も ﹁読 書 教 育 ﹂ と し て の体 系 が 完 成 し て いな いと 主 張 し て い る 。
読 書教育 の停 滞し た時 代 ( 昭和 前期)
Ⅰ ﹁ 読 書教 育実 践史 研究 ﹂ 建設 の視 点 /Ⅱ 読 書教育 芽 生え の時 代 ( 明 治時 代)/Ⅲ 読書 教育 の開花 期 ( 大正 時代)/Ⅵ Ⅴ 読書教育 が急成長 した時代 ( 昭和中期 )
1 学校図書館 運動 の高 まり/2 読書 教育 理論 の構築 /3 読書指導 の活発 な展 開 Ⅵ 楽し み読 み中心 の国語科読書 指導 の時代 ( 昭和後期)
1 読 書指 導 の先導 的な 研究 /2 昭和 四三年 版 学習指 導要 領 の読書 指導 重視 /3 読書指 導 の新 風/
4 国語科 読書指導 の再構築 /5 情報処 理教育 への傾斜/6 読書生活 の充実 のために /7 ( 総括) Ⅶ 新 し い読書学 習をめざす 時代 ( 平 成時代)
V3 では 、毎 日 新 聞社 と 全 国 学 校 図 書 館 協 議 会 共 催 の読 書 感 想 文 コ ン ク ー ル の 四十 年 の歩 み が 簡 潔 に ま と め ら
れ 、Ⅵ 4 で は こ の コン ク ー ル の 地 区 審 査 員 を 長 く 務 め 子 ど も にも 読 書 感 想 文 を 書 か せ てき た経 験 を ふ ま え て考 案
し た ﹁読 書 感 想 文 の評 価 基 準 ﹂ が 示 さ れ て いて 、 いず れ も 基 礎 情 報 ・基 礎 デ ー タと し て重 要 で あ る。
[ 村井 万里子]
本 書 は 、 各 章 の 読 書 指 導 実 践 例 に よ って そ の時 代 の遺 産 を 具 体 的 に知 り 得 、 こ れ か ら の読 書 教 育 再 構 築 の た め の基 礎 ・基 盤 研 究 と し て意 義 深 い。
﹃読 書 への ア 一一マ シ オ ン 75 の 作 戦 ﹄ ( 柏 書 房 / 二 〇 〇 一年 ) M ・M ・サ ル 卜 著 / 宇 野 和 美 訳
2 読 み終 わ った ら 、 いま 読 ん だ 物 語 に つ い て 子 ど も た ち と コ メ ン ト し 合 いま す 。 ( 以下略 )
語 を 読 ん でき か せ ま す 。
1 ま ず ア ニ マド ー ルが 子 ど も た ち の 理 解 力 に 合 わ せ て 、 テキ スト に み あ った 速 さ では っき り と 急 が ず に物
子 ど も た ち を ア ニ マド ー ル のま わ り に半 円 形 に集 め た ら 、 次 のよ う な 順 を 追 って 進 め ま す 。
具 体 的 な 実 践 方 法 と し て 、 た と え ば 27 ﹁こ れ 、 君 のだ よ ﹂ を 取 り 上 げ る 。
き / 69 言 葉 が飛 ん で い った / 74 考 え て い る こと を 言 いま す / 75 私 な ら 消 さ な い
1 読 み ち が え た 読 み 聞 か せ / 2 こ れ 、 だ れ のも の ? / 12 前 か な 、 後 ろ か な ? / 21 ア ン グ ル を 変 え て / 27 こ れ 、 君 の だ よ / 34 彼 を 弁 護 し ま す /4 0 私 は こう 考 え る / 57 俳 句 で遊 ぼ う / 67 こ の詩 が 好
タ イ ト ル の 一部 を 以 下 に 紹 介 し た い。 な お 、 指 導 者 は ア ニ マド ー ル と 呼 ば れ 、 重 要 な役 割 を 担 う 。
間 、 興 味 ・関 心 と 難 し さ 、 行 な った ア ニ マ シ オ ン の分 析 が記 さ れ 、 実 践 への的 確 な 手 引 き と な って い る 。
示 し て いる 。 そ れ ぞ れ の作 戦 に は 、 タ イ ト ル、 参 加 者 、 ね ら い、 責 任 者 、 必 要 な 素 材 と手 段 、 実 践 方 法 、 所 要 時
読 書 の楽 し さ を 実 感 さ せ る た め 、 読 む 力 を 引 き 出 す 方 法 と し て、 七 十 五 種 類 に 及 ぶ創 造 的 な 活 動 例 ( 作 戦)を提
﹁読 書 へ の ア ニ マシ オ ン﹂ は 、 ス ペ イ ン で 開 発 さ れ た 読 書 教 育 方 法 であ る。 著 者 の サ ル 卜 氏 は 、 児 童 ・生 徒 に
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3 登 場 人 物 が よ く わ か った ら 、 ア ニ マド ー ルは 、 服 や持 ち 物 を 用 意 し てお いた 主 要 登 場 人 物 の 役 を す る 子
右 の例 の よう に 、 読 書 を 楽 し み な が ら 、 コミ ュ ニケ ー シ ョ ン力 を 高 め る た め の さ ま ざ ま な 戦 略 が 紹介 さ れ て い
る。 子 ど も た ち の活 字 離 れ に つ いて 問 題 視 さ れ て久 し いが 、 そ れ を 解 決 す る た め の事 例 と 指 導 方 法 に つ い て、 本
書 か ら 大 き な 示 唆 が 得 ら れ る 。 な お 、 以 下 の文 献 は 本 書 の理 解 、 実 践 に 際 し 、 有 益 で あ る 。
第 七章 言 語事 項 指 導 の研 究
言 語 事 項 の指 導 が特 に問 題 に な る の は、 当 該 事 項 、 例 え ば 新 出 漢 字 な ど を 、 取 り 立 て指 導 で孤 立 し て 教 授 し 、
知 識 と し て の習 得 を 図 ろう と す る と こ ろ にあ る 。 物 語 を 初 読 後 、 そ れ ぞ れ に感 興 を 催 し て、 文 学 的 雰 囲 気 が 漂 っ
て いる の に 、 ﹁は い、 そ れ で は 新 し い漢 字 を 勉 強 し ま し ょう ね ﹂ と 興 ざ め な 学 習 に転 じ て し ま う 。 な ぜ 作 品 世 界
に 導 く 前 に 、 言 語 的 障 害 を 解 消 し て お か な いの か 。 重 要 語句 ・表 現 は 文 脈 に 乗 せ て し っく り と 解 釈 さ せ た い。 と
す れ ば 尚 の こ と 、 そ の単 元 、 そ の 作 品 に 入 る前 に 、 毎 朝 の教 師 の談 話 の中 でさ り げ な く 使 って 、 板 書 す るな ど 、 自 然 に 辞 書 的 意 味 理 解 を 済 ま せ てお く 。
例 え ば 、 教 材 研 究 の段 階 で、 作 品 と 学 習 者 と が 出 会 った 時 に、 言 語 要 素 的 な 抵 抗 を 、 大 村 は ま 先 生 は 、 ① は っ
き り と は 知 ら な いと 思 わ れ る こ と ば 、 ② ふ だ ん 使 っ て い な いと 思 わ れ る こ と ば 、 ③ 読 み に く いと 思 わ れ る こと
ば 、 ④ 読 み 方 が わ か れ ば 意 味 が わ か る こと ば 、⑤ 感 じを と ら な け れ ば 解 釈 が ぴ った り こな いこ と ば 、 な ど 柱 を 立
て て 分 析 し 、 扱 いを 検 討 さ れ て いる 。 い つ の時 点 で 、 ど こ でど こ ま で抵 抗 を 解 消 さ せ てお く のか を 見 通 す 。 む ろ
ん作 品 レ ベ ル で の予 備 的 読 書 ( 今 江 祥 智 ﹃一つ の花 ﹄ に 対 す る市 川 信 夫 ﹃た った 一つ のお か し ﹄ な ど ) も 望 ま し い準 備 であ る 。
学習指導要領 に準拠す る方向と は別に、言 語事項 は、表現 ( 話 す ・書 く ) 領 域 と 理 解 (聞く ・読 む ) 領 域 と を
つな ぐ も の、 こ と ば そ のも の の意 義 と 機 能 と し て、 授 業 に生 か さ れ る 工夫 が 必 要 であ る 。
例 え ば 、 理由 を 表 す 接 続 助 詞 ﹁の で﹂ と ﹁か ら ﹂ の働 き を 知 ら し め る に は 、 ど う す るか 。 そ れ だ け を 理 解 さ せ
るに も 、 次 の よ う な 授 業 が 想 定 でき る 。 ど ん な 時 に 使 った か 、 使 用 例 を 挙 げ さ せ る 。 教 科 書 の文 法 説 明 を 読 む 。
辞書 の説 明 に 当 た る 。 多 く の 人 や 本 か ら 使 用 例 を 集 め る。 使 った 人 に イ ン タビ ュー す る 。 作 文 し て み る。 さ ら に
日本 語 教 育 の参 考 書 も 参 照 す る 、 等 々 。 し か し 、 こ れ だ け の時 間 と 労 力 を か け る 余 裕 が な い のが 現 実 であ ろう 。
夏 目漱 石 ﹃ 坊 つち や ん﹄ の 冒 頭 を 教 材 と す る 。 ほ と ん ど の理 由 が ﹁か ら ﹂ で 表 現 さ れ て い る中 で、 一カ 所 ﹁幸
ナイ フが 小 さ い の と 、 親 指 の骨 が 堅 か つた の で 、 今 だ に 親 指 は 手 に付 い て 居 る ﹂ だ け が 、 ﹁の で﹂ で あ る 。 漱 石
は、 な ぜ こ こ だ け を ﹁の で ﹂ に し て いる のか 。 以 下 の 続 き の文 章 でも 、 ﹁か ら﹂ が 基 調 であ る 。 そ れ が 、 文 体 と
して 、 ど の よう な 効 果 を 挙 げ て いる のか を 考 え る こと で 、 作 品 ﹃ 坊 つち や ん ﹄ の主 人 公 ﹁お れ ・坊 ち ゃん ﹂ の性
格と の相 関 で の理 由 表 現 が 納 得 さ れ る 。 単 な る 使 い分 け の知 識 に 止 め ず 、 レ ト リ ック 能 力 、 表 現 力 と 理 解 力 と を 繋 ぐ 学 習 に培 う こと が で き よ う 。
文 章 理 解 に 文 法 を 生 か す 授 業 は す ぐ に でき る 。 安 岡 章 太 郎 ﹃サ ー カ ス の馬 ﹄ で は 、 動 詞 ﹁見 る﹂ と ﹁な が め
る﹂、 そ れ に受 け 身 の助 動 詞 ﹁れ る ・ら れ る ﹂ の使 わ れ 方 に注 目 す れ ば 、 主 人 公 の性 格 、 心 情 の 変 化 な ど が は っ
きり と 理 解 さ れ る 。 詩 の学 習 で は 、 一層 効 果 を 発 揮 す る。 坂 本 遼 ﹃春 ﹄ で は 、 助 詞 ﹁は ﹂、 ﹁が ﹂、 ﹁を ﹂ の働 き
と意 味 の違 いが 、 詩 人 の思 いを 反 映 し て 、 し み じ み と 理 解 さ れ る 。 授 業 者 の 工夫 次 第 であ る 。
言 語 事 項 の学 習 指 導 は 、 前 述 のよ う に 、 学 習 者 の言 語 表 現 と 理 解 に 生 か さ れ れ ば 、 学 ん でよ か った と 歓 迎 さ れ
る。 も っと 活 用 し た いと 意 欲 を 持 つ。 併 せ て、 言 語 事 項 の 学 習 指 導 は 、 語 感 、 言 語 感 覚 を 鋭 く か つ豊 か に す る も の でな け れ ば な ら な い。
例 え ば 、 ﹁日 本 ﹂ は 、 ﹁に ほ ん ﹂・﹁に っぽ ん﹂ いず れ に読 む か で 、 語 感 が異 な る 。 一九 七 〇 年 七 月 十 四 日 に 政 府
は、 ﹁ニ ッポ ン﹂ の呼 称 に 統 一し た 。 し か し 、 井 上 ひ さ し は 、 ﹁﹃こ の先 、 ニホ ンは ど う な る の で し ょう か﹄ と 小
声 で 憂 え る と き は 促 音 は いら な いか も し れ な いが 、 大 勢 の前 でそ れ を 強 調 す る と き は 、 ﹃こ の ニ ッポ ン は ど う な
る の で あ り ま し ょう か ﹄ と 自 然 に促 音 が 入 って く る﹂ (﹃ニホ ン 語 日 記 ﹄ 文 藝 春 秋 社 / 一九 九 三 年 五月 ) と 、 我 々
の言 語 感 覚 を 明確 にし て いる 。 英 語 を 常 用 す る 人 は 苦 手 な 促 音 を 独 立 の拍 に し な い傾 向 が あ り 、 逆 に わ た し の友 人 の フ ラ ン ス 人 は 、 ﹁ひ さ ふ み﹂ を ﹁イ サ フ ミ﹂ と 発 音 す る 。
検定 国語教科書 は、語形 法 ( 語 を ま と ま り と し て知 覚 さ せ る提 示 の方 法 、 低 学 年 の分 か ち 書 き は 、 そ の例 ) が
基 本 で あ る 。 フ ラ ッシ ュカ ー ド や 文 字 板 な ど を 使 って 、 語 の全 体 を ま と ま り と し て 、 滑 ら か な 音 読 を 期 待 す る 。
ロー マ字 学 習 にも 活 用 さ れ て いる 。 し か し 日本 語 の組 み 立 て であ る 綴 り の法 則 が 身 に つか な い不 安 が あ る 。 そ れ
﹁あ ひ る ﹂、 ﹁あ ⋮
」 で ﹁あ さ が お ﹂ の よ う に 、 3 音 節 、 2 音 節 、 4 音 節 、 1 音
に 対 し て 、 非 検 定 教 科 書 (例 明 星 学 園 国 語 部 ﹃に っぽ ん ご ﹄ シ リ ー ズ 、 麦 書 房 / 一九 六 四 年 四 月 ) は、 音 声 法 (﹁あ ﹂ を 示 し 、 ﹁あ . .﹂ で
節 と 、 絵 を 補 助 と し て単 語 を 音 節 数 と つな い で学 習 す る 。 綴 り 字 法 と も いう 。 母 音 の次 は 、 か 行 、 以 下 五 十 音 順
に 展 開 し 、 助 詞 な ど は 、 ﹁く っ つき ﹂ と し て学 習 ) で 、 語 形 法 の 限 界 を シ ラブ ル を 追 い、 日本 語 の特 性 を 前 面 に
出 す こと で破 る 。 現在 の検 定 教 科 書 は 、 語 形 法 を 基 本 に、 五 十 音 図 と も 併 せ て音 声 法 を も 導 入 し た 編 集 と な って いる 。
﹁終 戦 後 、 C I E が 日 本 の文 部 省 と 協 力 し て 日 本 人 の読 み 書 き 能 力 調 査 を や って み た と こ ろ、 完 全 な 文 盲 が ほ
と ん ど な いこ と が わ か って驚 いた 。 これ は 日 本 語 の拍 が 単 純 で 、一一 二種 類 の文 字 さ え お ぼ え れ ば 、 あ と はど ん
な こ と ば でも 書 け る こ と に よ る に ち が いな い。 これ は 、 英 語 な ど で、 ド ッグ は ど う つづ る 、 キ ャ ット は ど う つづ
る と 、 一つず つ別 に覚 え て いか な け れ ば な ら な いの と は 大 き く ち が う 点 で あ る。 こ れ は 日本 語 の最 大 の長 所 で あ
る 。 そ れ に も か か わ ら ず 、 終 戦 後 、 小 学 校 な ど で ﹃ひと 目 読 み﹄ と 称 し 、 ﹃いぬ ﹄ な ら ﹃いぬ ﹄ と いう 単 語 を
﹃い﹄ と ﹃ぬ ﹄ に 分 け ず 、 ﹃いぬ﹄ 全 体 を 生 徒 に与 え 、 これ 全 体 で ﹃いぬ ﹄ と 読 む ん だ と いう 教 授 法 を 行 って いる
が 、 ち ょ っと も った いな い話 で あ る 。 ﹃ひ と 目 読 み ﹄ に 疑 いを は さ ん だ と いう 台 東 区 黒 門 小 学 訓 導 、 綿 引 ま さ 氏
の意 見 は こ の意 味 で正 し い﹂ ( 金 田 一春 彦 ﹃日本 語 ﹄、 岩 波 新 書 / 一九 七 七 年 一月 ) と いう 指 摘 も あ る 。
話 す こと ・聞 く こと の学 習 指 導 と 、 書 く こ と ・読 む こと の学 習 指 導 と を 、 国 語 教 育 と し て 有 機 的 、 か つ効 果 的 に 展 開 す べき か が 問 わ れ て い る。 言 語 事 項 指 導 が 、 そ れ に 対 応 で き る。
( 混 ぜ 書 き )、 宿 題 にし た り 罰 と し て書 か せ た り と いう 扱 い への疑 問 な ど 、 問 題 は 多 い。 短 文 づ
さ ら に漢 字 指 導 一つと っても 、 現 在 の読 み 書 き 分 離 学 習 の是 非 、 パ ソ コ ン表 記 で 点 画 のあ いま い さ 、 ﹁せ つ明 ﹂ な ど の交 ぜ 書 き
く り な ど で は定 着 す る は ず も な い の に、 な ぜ 改 善 さ れ な い の か 。 語 句 指 導 が 、 語 彙 指 導 に な ら な い の は 、 な ぜ か。
話 し こ と ば 教 育 に お い ても 、 教 師 の発 音 発 声 の明 確 性 、 こと ば 選 び の 的 確 性 、 こ と ば 遣 い の正 確 性 (三 確 視
点 ) に よ る自 ら の省 察 、 教 師 の話 で 、 学 習 者 の耳 を 鋭 く 、 豊 か に 育 て る姿 勢 、 新 鮮 な 話 題 で 心 驚 か せ 、 視 野 を 広
げ 、 人 間 ・社 会 ・歴 史 な ど に 関 心 を向 け さ せ 、 感 動 に 浸 る 感 性 を涵 養 す る 、 と い った 指 導 者 と し て の自 己 研 修 の あ り 方 も 、 教 え る 前 にま ず 問 い直 さ れ な く て は な ら な い。
言 語事 項 指 導 の研 究 は 、 こ の よう に 我 々教 師 の言 語 観 、 言 語 生 活 、 言 語 文 化 環 境 な ど 、 こ と ば と いか に 関 わ っ
[ 白石寿文]
て いる か が 、 何 よ り 問 題 であ る 。 そ の 上 で学 習 者 が いか な る 言 語 状 況 に置 か れ て い る か 、 学 習 者 が 声 無 き 声 で 、 何 を 求 め て いる か 、 最 も 国 語 学 習 ら し い授 業 で そ れ に応 え な け れ ば な ら な い。
﹃ 文 法 教 育﹄ ( むぎ 書 房/ 一九 六 三年 ) 教 科 研東 京 国 語部 会 ・言 語 教 育 研 究 サ ー ク ル
(意 思 )﹂ ・﹁読 ま な い ( 否 定 )﹂ ・﹁読 ん だ (過
八 年 ) に 詳 し い。 巻 末 の ﹁文 法 教 育 論 ﹂ には 、 こ の研 究 グ ルー プ の文 法 や文 法 教 育 に対 す る 基 本 的 な 考 え 方 が ま
に つ いて は 、 ﹃ 語 彙 教 育︱ そ の内 容 と 方 法 ﹄ ( 本 書 次 項 参 照 )、 ﹃単 語 指 導 ノ ー ト ﹄ ( 宮 島 達 夫 、 む ぎ 書 房 / 一九 六
ー を 形 成 し つ つ互 いに 張 り 合 う 姿 を 体 系 的 に 把 握 で き ると いう 考 え 方 で あ る。 な お 、 語 の語 彙 的 な 側 面 と 指 導 法
去 )﹂ ・﹁読 み ま す (て いね い体 )﹂ の よ う に 、 ﹁き も ち ﹂ ・﹁み と め か た ﹂・﹁と き ﹂・﹁て いね い さ﹂ と いう カ テ ゴ リ
れ ば 、 断 定 ・肯 定 ・現 在 ・普 通 体 と し て の ﹁読 む ﹂ が 、 ﹁読 も う
る 。 動 詞 を 例 に と れ ば 、 学 校 文 法 で扱 いう る のは 活 用 ・接 続 な ど 主 と し て 形 式 面 に 限 ら れ る が 、 本 書 の立 場 に よ
語 のも つ文 法 的 な 側 面 を 明 ら か にす るも の で 、 付 属 語 は 語 の 一部 、 す な わ ち 文 法 的 な 形 を 作 る 要 素 と み な さ れ
彙 の教 育 と 絡 め つ つ、 形 態 論 と 構 文 論 と の連 関 にも 配 慮 し た 総 合 的 な 内 容 と な って いる 。 第 二 部 ﹁形 態 論 ﹂ は 、
体 系 性 に お いて 優 れ て いる 。 第 一部 ﹁序 論 ﹂ では 、 入 門 期 を 想 定 し 、 文 と 語 と を め ぐ って音 声 、 文 字 ・表 記 、 語
本 書 のと る文 法 論 は 、 そ れ ぞ れ の文 法 形 式 が 担 う 意 味 を 文 法 形 式 の側 か ら 把 握 し よう と す る も の で 、系 統 性 ・
さ る こ と な が ら 、 文 節 の 関 係 構 成 のみ で文 の重 層 的 な 意 味 関 係 を 把 握 し き れ な いと の 問 題 点 が存 す る 。
分 解 し て 最 初 に得 ら れ 、 内 容 を 伴 い つ つ文 を 直 接 構 成 す る 最 小 単 位 と 説 明 す る が 、 文 節 に分 か つ こと の 困 難 さ も
で、 文 節 の関 係 構 成 によ って 文 を 把 握 し よ う と す る 形 態 重 視 の文 法 論 であ る 。 橋 本 進 吉 は 、 文 節 に つ いて 、 文 を
新 た な 文 法 記 述 の試 み でも あ る 。 橋 本 文 法 を 背 景 と す る 学 校 文 法 は 、 文 か ら 文 節 を 求 め 、 語 の 分 類 に 及 ぶ 一方
本 書 は 、 系 統 的 な 取 り 立 て 指 導 に よ って 、 文 法 教 育 の 新 た な あ り 方 を 提 起 す る 教 科 書 の 試 案 で あ る と と も に 、
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と め ら れ て いる 。 ﹃読 み 方 教 育 の 理 論 ﹄ (奥 田 靖 雄 ・国 分 一太 郎 編 、 国 土 社 / 一九 六 三 年 )、 ﹃国 語 教 育 の 理 論 ﹄
(同 、 む ぎ 書 房 / 一九 六 四 年 )、 ﹃ 続 国 語 教 育 の 理 論 ﹄ (同 、 む ぎ 書 房 / 一九 六 六 年 ) の 諸 論 も 併 せ て参 照 さ れ た
い。 ま た 、 本 書 を 練 り 上 げ て テキ スト 化 し た も のに ﹃に っぽ ん ご 4 の 上 文 法 ﹄ (明 星 学 園 国 語 部 、 む ぎ 書 房 /
一九 六 八 年 ) が あ る 。 ﹃日 本 語 文 法 ・形 態 論 ﹄ ( 鈴 木 重 幸 、 む ぎ 書 房 / 一九 七 二 年 ) は 、 そ の詳 し い解 説 であ り 、
同 氏 の ﹃文 法 と 文 法 指 導 ﹄ ( む ぎ 書 房 / 一九 七 二 年 )、 ﹃ 形 態 論 ・序 説 ﹄ ( む ぎ 書 房 / 一九 九 六 年 ) な ど と と も に 、 本書を よりよく理解 する便と なる。
文 法 は 言 語 活 動 を 基 底 で支 え る抽 象 的 存 在 で あ り 、 そ の体 系 性 や系 統 性 の獲 得 を 日常 の言 語 生 活 や 個 別 指導 の
集 積 に よ って実 現 し て いく のは 困 難 で あ る 。 ま し て や こ れ ま で の文 法 教 育 は 、 文 法 を ﹁き ま り ﹂ と と ら え 、多 く
の場 合 、 例 文 を 分 解 し て いく 手 法 を と り な が ら 、 知 識 の 理 解 や習 得 を 目 標 と し てき た だ け に、 無 味 乾 燥 で あ る ば
か り で な く 、 生 産 的 ・発 展 的 な 学 習 に は つな が り に く か った 。 これ か ら の文 法 教 育 は 、 現 代 語 の実 相 を 踏 ま え 、
他 の言 語事 項 と の有 機 的 関 連 に も 配 慮 し な が ら 、自 ら 内 省 し た り 観 察 し た り 、 ま た 話 し 合 った り し な が ら 、 文 法
[ 遠 藤 仁]
的 に見 た り 考 え た り す る力 の涵 養 を は か り 、 文 法 的 な シ ス テ ム を 見 出 し て いく も の であ り た い。 そ の意 味 で は 、
本 書 や 関 連 書 は、 こ と ば の 教 育 に つ い て根 本 か ら 問 い直 す 契 機 を 与 え てく れ る は ず であ る 。
﹃ 語 彙 教 育︱ そ の内 容 と 方 法 ﹄ ( む ぎ 書 房 / 一九 六 四年 ) 教 科 研 東京 国 語部 会 ・言 語 教 育 研 究 サ ー ク ル
表 l ﹃ 語 彙 教育 ﹄ を めぐ る略 年 表
(﹁単 語 指 導
の方 法 ﹂) と と も に 、 ﹁語 い
の集 団 的 研 究
の カ ー ド を 用 いた 単 語 指 導
夫 の指 導 のも と で指 導 記 録
た新潟 国語部会 は、宮島 達
い った 。 研 究 に 先 鞭 を つけ
指 導 の必 要 が再 認 識 さ れ て
過 程 で 、 語 彙 論 の取 り 立 て
語 指 導 の研 究 が 進 め ら れ る
にあ る 指 導 方 法 に 基 づ く 単
﹁よ み 方 教 育 の内 容 と 方 法 ﹂
は、語 彙 論 の指導 によ る 。
基 づ き 、 さ ま ざ ま な 指 導 方 法 を 駆 使 し て な さ れ る 。 体 系 に つ い て の知 識 と 語 の体 系 の 中 で の位 置 を 指 摘 す る 力
指 導 と 体 系 的 な 語 彙 論 の取 り 立 て 指 導 と か ら な る 。 単 語 指 導 は 、 各 語 が 持 つ小 言 語 体 系 (語 彙 的 性 質 によ る ) に
本 書 は 、 教 科 研 の教 師 と 言 語 学 者 と の共 同 研 究 の賜 物 であ る 。 教 科 研 の ﹁語 い教 育 ﹂ は 、 読 み方 教 育 で の単 語
69
表 2 三 種 類 の ﹁語 い論 教 科書 ﹂ の章 立 て
係 、 個 々 の特 質 を 明 ら か に す る こ と が 、 ﹃ 単 語 指 導 ノ ー ト﹄ でな さ れ た 。
論 教 科 書 ﹂に よ る 実 践 ( 十二
時 間)も試 み、語彙 論指導
の有 効 性 を 実 証 し た 。 さ ら
に 、 宮 島 他 の言 語 学 者 と 教
科 研 東 京 国 語 部 会 ・言 語 教
育 研究 サ ーク ル の教師 は 、
﹁語 い論 教 科 書 ﹂ の 補 訂 と
(表 1 )。
実 践 的 検 証 と に 努 め、 本 書
の 刊 行 に 至 った
単 語 指 導 に関 し ては 、 指導
方 法 の体 系 づ け と 相 互 の関
本 書 は 、 教 科 書 本 文 、 練 習 、 ノ ー ト 、 文 献 の部 分 に 分 か れ 、 語 彙 論 教 科 書 と 語 彙 論 の概 説 書 と を 合 わ せ た 内 容
と な って い る。 教 科 書 部 分 の対 象 は 中 学 であ る 。 語 彙 論 と 語 彙 論 教 科 書 の 一つ の試 み と し た 。 教 科 研 ・群 馬 国 語
部 会 の ﹃に っぽ ん ご 6 語 い﹄ は 、 本 書 の教 科 書 本 文 と 練 習 問 題 の改 訂 版 で あ る。 対 象 は 、 小 学 校 の高 学 年 。 改
[山 本 建 雄 ]
定 の は じ め に取 り 組 ま れ た ﹁辞 典 ﹂ の部 分 の 大 幅 な 書 き 換 え を 除 く と 、 本 書 の著 者 の期 待 に 答 え る 結 果 と は な っ て いな い ( 表 2 )。
﹃かな 文 字 の教 え 方﹄ ( むぎ 書 房/ 一九 六 七 年 ) 須 田 清
第 一部 では 、 当 時 の 一年 上 国 語 教 科 書 に お け る 文 字 提 示 順 の検 討 か ら 、 系 統 性 の欠 如 を 指 摘 す る と と も に 、 当
第 三部 幼稚 園児 のた め の文 字指導
第 二部 かな文字 指導 の方法
第 一部 かな文字 指導 の原則
付 け る 形 で 著 し た も の であ り 、 全 体 は、 以 下 の 三 部 構 成 と な って いる 。
本 書 は 、 明 星 学 園 の 教 員 と な った 筆 者 が 、 ﹃に っぽ ん ご 1 も じ の ほ ん ﹄ に 基 づ き 実 践 し た 記 録 を 、 理 論 を 裏
の 教 科 書 、 ﹃に っぽ ん ご 1 も じ の ほ ん﹄ ( 変 書 房 ) と し て、 一九 六 四 年 に 刊 行 さ れ た 。
実 態 に 異 を 唱え 独 自 の か な 指 導 法 を 創 出 し た のが 明 星 学 園 の教 師 た ち で あ り 、 そ の研 究 と 実 践 の成 果 は 文 字 指 導
と って 習 得 上 の負 担 と な る 長 音 や 濁 音 、 促 音 な ど が教 科 書 の は じ め の方 で 提 示 さ れ る 実 態 があ った 。 こ のよ う な
戦 後 し ば らく の教 科 書 は 、 文 こ そ 緩 や か に 提 示 さ れ た が 、 文 字 自 体 の提 示 順 に は 問 題 を は ら ん で おり 、 児 童 に
の文 字 習 得 が 遅 れ る と いう 実 態 が 報 告 さ れ て き た 。
ら 論 議 の対 象 と な って いた 。 言 語 生 活 実 態 を 重 視 す る考 え 方 は 、 早 い時 期 か ら の文 提 示 を 促 し 、 そ の結 果 、 児 童
明 治 期 以 来 、 入 門 期 の文 字 の提 示 順 は 、 指 導 に お け る系 統 性 と 、 就 学 以 前 の子 ど も の言 語 生 活 実 態 の 両観 点 か
70
時 の教 科 書 お よ び 教 室 実 践 が ﹁語 形 法 ﹂ ( 文 字 の連 続 と し て の ひ と か た ま り の 単 語 と 、 そ の単 語 全 体 の発 音 と を
結 び つけ る 方 法 ) に 則 った も の であ る こ と を 批 判 し 、 こ れ ら の問 題 点 を 過 激 と も 言 え る 筆 致 で詳 細 に論 及 し て い
る 。 そ し て、 文 字 は 音 声 ( 音 節 ) と 対 応 す るも の であ る と いう 考 え に 拠 った ﹁音 声 法 ﹂ を 活 用 し た 指 導 の必 要 性
と 、 易 か ら 難 へと わ た る音 声 の系 統 に 沿 って文 字 を 提 示 す る べき だ と いう 考 え 方 を 述 べ てお り 、 そ れ らを ﹁か な 文 字 指 導 の原 則 ﹂ と し て位 置 づ け て いる 。
第 二 部 では 、 第 一部 で述 べた 原 則 に 基 づ く 実 践 を 、 文 字 提 示 の系 統 に し た が い詳 し く 丁 寧 に 紹 介 し て いる 。 そ
の内 容 は ﹁か な 文 字 指 導 を 準 備 す る段 階 ﹂ か ら は じ ま り 、 直 音 、撥 音 、 濁音 、 促 音 、 長 音 、 拗 音 と いう 指 導 の段
階 を 踏 ん でお り 、 そ の間 に 書 写 学 習 、 助 詞 の学 習 な ど も 織 り 込 ん で あ る 。 特 筆 す べ き は 工夫 さ れ た 教 具 の多 様 さ であ り 、 今 日 でも 実 践 現 場 で の応 用 範 囲 が 広 いと 考 え ら れ る 。
ま た 第 三 部 で は 、 音 声 法 にし た が った 、 幼 児 に対 す る 文 字 指 導 の考 え 方 と 実 践 と が 述 べ ら れ て いる 。 実 践 は 実
際 に東 京 都 の井 の頭 保 育 園 年 長 組 で 行 わ れ て お り 、 第 二 部 に 引 き 続 き 授 業 記 録 の 形 で述 べ ら れ て いる こと で、 臨 場 感 の強 いも のと な って いる 。
さ て、 前 述 し た よう な 本 書 に よ る 批 判 が あ った 影 響 か 、 次 の改 訂 で は 本 書 で 指 弾 さ れ た K 社 の み な ら ず 多 く の
教 科 書 会 社 が 文 字 提 示 順 に 一定 の配 慮 を 加 え た 。 時 代 が 下 が り 、 現 行 の教 科 書 では 冒 頭 一語 目 か ら ﹁お は よ う ﹂
と いう 長 音 が 登 場 す る も のも あ る 。 む ろ ん 、 社 会 の 状 況 が変 わ り 、 就 学 以 前 の子 ど も の文 字 知 識 は 本 書 発 刊 当 時
と は 様 相 を 異 に し て いる 。 し か し 、 そ の実 態 把 握 は 多 分 に経 験 的 な も の であ り 、 本 書 で 主 張 さ れ て いる よ う な
[ 棚橋 尚子]
﹁科 学 的 ﹂ な も のと 成 り 得 て い る か は 、 今 一度 考 え て み る必 要 が あ ろ う 。 幼 児 の 読 み 書 き 能 力 が 過 信 さ れ た こ の よ う な 時 代 で あ れ ば こ そ 、 本 書 は 読 む 価 値 の高 い文 献 だ と 言 え る 。
﹃ 国 語 教 育 の た め の文 章 論 概 説 ﹄ ( 教 育 出 版 / 一九 七 八年 ) 市 川 孝
文 章 論 と 文 章 指 導 、 第 二章
ら わ れ て いる 。
文 章 と 文 章 の分 類 、 第 三 章
文 脈 展 開 の形 態 、 第 四章
文 から文 へ
( 文 連 接 論 ︶ は 、 文 法 論 に含 め る こと が でき ると 考 え ら れ る ﹂ (一八 頁 ) と し な が ら 、 ﹁段 落 関
こ のよ う に 対 象 を 厳 密 に峻 別 す る 市 川氏 の姿 勢 は 、 第 二章 ﹁文 章 と 文 章 の分 類 ﹂ で、 文 章 の性 質 の 規 定 にも あ
の趣 旨 を 明確 に示 し て い る。
﹁文 章 論 は 、 言 語 研 究 に お い て、 一つ の体 系 を も つも のと し て位 置 づ け ら れ る べき で あ ろう ﹂ (二 〇 頁 ) と 、本 書
い て、 こ れ ら の事 項 を 文 法 的 な 事 項 の 中 に 含 め て扱 う の は 、 実 際 的 見 地 か ら 、 も ち ろ ん 認 め てよ いこ と であ る ﹂、
係 論 や文 章 構 成 論 な ど は、 文 法 論 的 に 考 察 す る のに 適 さ な い こと に な る 。 た だ し 、 実 用 を 重 ん じ る 学 校 文 法 に お
文 と の関 係 の考 察
た だ し 、市 川 氏 は 、 文 章 論 の対 象 で あ る 文 や段 落 、 文 章 を 文 法 論 と し て 同 列 に扱 って いる の で は な い。 ﹁文 と
的 な 構 成 にな って い る 。
おり 、 他 の研 究 者 の見 解 や 研 究 の動 向 に関 す る 情 報 が加 え ら れ て いる 。 ま さ に ﹁概 説 ﹂ と 呼 ぶ に ふさ わ し い重 層
る 。 さ ら に 、 自 説 を 支 え る も のと し て 実 際 の 文 章 例 が 多 様 に 用 いら れ 、 各 章 の終 末 に は 、 ﹁補 説 ﹂ が 添 え ら れ て
範 囲 が 、 文 章 を 基 軸 と し な が ら 、 文 ・段 落 ・文 章 構 成 ・文 体 と 、 長 さ と ま と ま り の 緊 密 さ に応 じ て 広 が って い
︱ 文 の連 接 と 配 列︱ 、 第 五 章 段 落 と 段 落 と の関 係 、 第 六 章 文章 の構 成 、 第 七 章 文 章 表 現 の様 相 ﹂ と 、 扱 う
も 、 ﹁第 一章
本 書 は 、主 に国 語 学 的 な 立 場 か ら 文 章 論 に 関 す る 研 究 成 果 を 幅 広 く と ら え て いる 点 に特 色 が あ る。 目 次 を 見 て
71
わ た し は 、 文 章 の 一般 的 性 質 を 規 定 す る も のと し て、 次 の 二 つの 条 件 を 挙 げ る こと に し て いる 。
a 通 常 、 二 文 以 上 か ら 成 り 、 そ れ ら が 文 脈 を も つこ と に よ って統 合 さ れ て い る 。 ( 文 章 にお け る 統 合 性 )
b そ の前 後 に 文 脈 を も た ず 、 そ れ 自 身 全 体 を な し て いる 。 ( 文 章 に お け る全 体 性 )
こ こ に いう ﹁文 脈 ﹂ と は、 ﹁言 語 表 現 の意 図 のも と に 生 ず る内 容 上 の脈 絡 ﹂ の意 で あ る 。文 脈 に は 、 ﹁ 文の
文脈﹂ ( 語 も し く は 文 節 の結 合 に よ って 成 立 し 、 主 語 ・述 語 ・修 飾 語 な ど の いわ ゆ る ﹁文 の 成 分 ﹂ の相 互 関
係 に よ って構 成 さ れ る ) と ﹁文 章 の文 脈 ﹂ ( 多 く は 、 文 の 連 接 に よ って 成 立 し 、 順 接 ・逆 接 ・添 加 な ど の連
接 関 係 に よ って 構 成 さ れ る) と が区 別 さ れ る 。 文 章 論 で 普 通 に 文 脈 と いう のは 、 ﹁文 章 の文 脈 ﹂ で あ る (二 二 頁 )。
以 下 、 文 、 段 落 な ど に つ いて は 、 そ の 連 接 、 配列 に 関 し て さ ま ざ ま な 類 型 が 挙 げ ら れ 、 文 章 を 文 脈 と いう 観 点 か ら 分 析 す る た め の体 系 を 提 示 す る 。
一方 、 厳 密 な 文 法 論 と は 距 離 を 置 く と 位 置 づ け た 段 落 に つ い て は、 市 川 氏 は改 行 段 落 と は 別 に ﹁文 段 ﹂ と いう
概 念 を 用 い、 こ れ を ﹁内 容 上 のま と ま り︱ 文 連 接 の内 容 上 の 連 合 と いう 観 点 か ら 規 定 ﹂ (一四 五 頁 ) し て い る 。
段 落 を 、 内 容 の問 題 と 関 連 づ け た こ と は 、 教 材 研 究 の面 な ど に お いて は 、 文 章 構 造 に つ い て柔 軟 な と ら え 方 が で
き る と いう 利点 が あ り 、 段 落 分 け な ど 説 明 的 文 章 指 導 や 作 文 指導 に お け る 幅 広 い活 動 に つな が って いる 。
[ 長崎 秀昭]
﹃ レ ト リ ック 認 識︱ ことば は 新 し い世 界 を つく る﹄ ( 講 談 社 /一 九 八 一年 ) 佐藤 信夫
転 喩 あ る い は 側 写 / 第 4 章 対 比 / 第 5 章 対 義 結 合 と 逆 接 / 第 6 章 諷 喩 / 第 7 章 反 語 / 第 8
は は い つて 来 な い のか も し れ ぬ 。 (川 端 康 成 ﹃舞 姫 ﹄)
と 、波 子 は お と な し く 答 へた 。 心 の戸 を 、 半 ば あ け て 、 た め ら つて ゐ る感 じ だ つた 。 あ け き つ ても 、 竹 原
﹁だ いじ に し て い た だ い て ゐ る の は 、 よ く わ か り ま す わ 。﹂
か ら 要 点 を 示 す (一七 〇 ∼ 一八 二頁 。 な お 、 引 用 文 には 有 沢 が 加 除 し た 部 分 が あ る)。
説 明 は 、 ① 伝 統 的 な 定 義 、 ② 新 し い見 解 、 ③ 発 見 的 認 識 と の関 連 、 の順 で行 わ れ て いる 。 次 に 第 6 章 ﹁諷喩 ﹂
章 暗 示 引 用 / レ ト リ ック 用 語 解 説 / 引 用 文 献 / あ と が き
第3章
は じ め に (認 識 の か た ち と し て の レ ト リ ック の ︽あ や ︾)/ 第 1 章 黙 説 あ る い は 中 断 / 第 2 章 た め ら い/
次 に 、 本 書 の構 成 を 示 す 。
形 ﹂ と は 、 そ う いう ﹁広 い認 識 の動 態 ﹂、 つま り 主 体 の内 部 で ﹁ま さ に 生 き て動 い て いる か た ち ﹂ であ る 。
レ ト リ ック の ︽あ や ︾ に よ る ﹁認 識 ﹂ は 、 ﹁認 知 ﹂ と は 違 って 、 感 覚 、 思 考 、 想 像 、 情 緒 等 を 含 ん で お り 、 ﹁造
﹁伝 統 レ ト リ ック に は ︽発 見 的 認 識 の造 形 ︾ と いう 機 能 が ひ そ ん で い る﹂ と いう 考 え 方 が 本 書 を 貫 い て いる 。
72
① ︽諷喩 ︾ は 、 ︽隠 喩 ︾ を 連 続 さ せ た も の と み な し て よ い。 いず れ も 、 あ る こ と が ら を 、 そ れ に 類 似 し 、 そ の か わ り に な るも の に よ って表 象 す る か ら であ る 。 (ビ ュー ・ブ レ ア)
② 一連 の こ と が ら の系 列 を 、 別 の こと が ら の系 列 に よ って あ ら わ す と 、 ︽諷喩 ︾ と は け っき ょ く 、 ふ た つ のも の が た り の平 行 にほ か な ら な い。 ( 平 行 す る構 造 と し て の諷 喩 )
③ 心 に 、 お そ ら く﹁ 戸﹂ は な い。 に も か か わ ら ず 戸 の隠 喩 で 語 る ほ か は な い心 の事 態 を 語 り は じ め 、 そ の
( 実態) を構造化 し てみる、そ れにめり はりを与え てみる、と
名 状 し が た い事 態 を いく ら か でも ︽構 造 的 ︾ に と ら え よ う と す れ ば な り ゆ き で、諷 喩 に よ る 認 識 と いう こと にな る だ ろう 。 ( 中 略) 何 ご と か を 認 識 し 表 現 す る と は 、 そ の対 象
いう こ と であ ろ う 。 そ れ が 混 然 と し て いる ば あ い、 私 た ち は ︽た と え ば な し ︾ の構 造 性 を 、 構 造 不 明 の対 象
( 実 態 ) の ほ う へ反 映 さ せ て、 は じ め て そ の実 態 を 把 握 す る の であ った 。 そ の と き 、諷 喩 は 混 沌 の 現 実 を 解
( 実 態 ) を 解 説 す る いと な み が 発 見 的諷 喩 であ る 。
読 す る 認 識 行 為 に ほ か な ら な い。 名 ま え のな いも のを 理 解 す る いと な み が 発 見 的 隠 喩 で あ る と す れ ば 、 構 造 不 明 の対 象
﹁舞 姫 ﹂ に お け る ︿波 子 の心 の実 態 ﹀ は 、 ま さ にそ れ自 体 が 構 造 不 明 で混 沌 と し て い る。 読 者 は 、 ﹁戸 ﹂ に 関 す
る 語 (﹁半 ば あ け て ﹂、 ﹁あ け き っても ﹂) を 連 続 さ せ た諷 喩 か ら 様 々 な ︽は な し ︾ 作 成 の機 会 に恵 ま れ る。 ︽戸 を
初 め は 少 しず つそ っと あ け て半 ば にな り 、 そ こ で し ば ら く た め ら って か ら 、 意 を 決 し て 残 り の半 分 を あ け る ︾ と
[ 有 沢俊太郎]
いう よ う な 。 そ れ は ︿波 子 の 心 の実 態 ﹀ を ﹁いく ら か で も 時 系 列 と いう 構 造 と し てと ら え よ う ﹂ と し たも の であ る 。 し か も ﹁発 見 的 解 説 を 加 え てと らえ よ う ﹂ と し た も の であ る。
﹁ 教育 基 本 語 彙 の基 本 的 研 究 ﹄ ( 明 治 図書 / 二〇 〇 一年 ) 国 立 国 語 研 究 所
児 童 言 語 研 究 会 ﹃言 語 要 素 指 導 ﹄ (一九 六 二年 )
池 原 楢 雄 ﹃ 国 語 教 育 のた め の基 本 語体 系 ﹄ (一九 五 七 年 )
田中 久 直 ﹃ 学 習 基 本 語 彙 ﹄ (一九 五 六年 )
阪 本 一郎 ﹃ 新 教 育 基 本 語 彙 ﹄ (一九 八 四 年 )
阪 本 一郎 ﹃ 教 育 基 本 語 彙 ﹄ (一九 五 八年 )
四三二二語
一九 五 五 語
三 〇 〇 〇語
三四六九語
一九 二 七 一語
二二五〇〇語
﹁いづ れ も そ の国 語 に 於 け る 歴 史 的 事 情 に 因 るも の で あ って直 ち に わ れ わ れ の現 下 の国 語 の整 理 に 適 用 せ ら れ る
作 集 ﹄ 第 九 巻 / 一九 七 八 年 所 収 ) が あ る 。 ソー ンダ イ ク の 統 計 法 や オ グ デ ン の 基 礎 英 語 の方 法 に 学 び つ つも 、
的 意 図 を も って そ の選 定 に先 駆 的 業 績 を あ げ た も のに 、 垣 内 松 三 ﹃基 本 語 彙 学 上﹄ (一九 三 八 年 ) (﹃垣 内 松 三 著
﹁教 育 基 本 語 彙 と は 、 学 習 者 に 教 育 す る 基 本 的 な 語 彙 の こ と であ る ﹂ ( 同 書 、 五 頁 )。 日 本 で は 、 こう し た 教 育
な お 、 本 書 に は 、 付 属 のC D ︱ R OM が あ り 、 国 立 国 語 研 究 所 で作 成 し た 六 種 の語 彙 表 が 収 録 さ れ て いる 。
国 立 国 語 研 究 所 ﹃日 本 語 教 育 のた め の基 本 語 彙 調 査 ﹄ (一九 八 四 年 ) 六 〇六〇語
中 央 教 育 研 究 所 ﹃学 習 基 本 語 彙 ﹄ (一九 八 四 年 )
ち で 一覧 表 に ま と め た も の であ る 。
に端 的 に 示 さ れ てお り 、 本 書 は こ れ ま で国 内 で 行 わ れ て き た 次 の七 種 の ﹁教 育 基 本 語 彙 ﹂ を 比 較 対 照 で き る か た
本 書 に は 、 ﹁︱教 育 基 本 語 彙 デ ー タ ベ ー ス の作 成︱ ﹂ と いう 副 題 が 付 い て いる 。 本 書 編 纂 の目 的 は 、 こ の副 題
73
方 法 と み る こと は で き な い﹂ ( 同 著 作 集 、 二 六 三 頁 ) と し て、 丹 念 に 国 内 で の調 査 ・採 集 を は じ め た 成 果 であ る 。
﹁教 育 基 本 語 彙 の選 定 ﹂ は 、 そ の 目 的 や対 象 に応 じ て、 様 々な アプ ロー チ が 可 能 で 、 ま た そ れ だ け に選 定 の基
準 と 結 果 に多 様 性 が 生 ま れ て く る 。 例 え ば 、 義 務 教 育 段 階 で の 理解 語 彙 の選 定 を 行 う 場 合 、 明 治 以 来 こ れ ま で に
刊 行 さ れ た す べ て の教 科 書 を 調 べ て、 そ の語 彙 の出 現 す る 学 年 と 頻 度 を 選 定 の基 準 と し て重 視 す ると い った こと も行わ れる。
本 書 に収 録 さ れ た 七 種 の 研究 は 、 そ の手 法 に よ って大 別 す る と 、 次 の よう に 分 類 で き る 。
(一九 六 二 )、 中 央 教 育 研 究 所 (一九 八 四)
(一九 五 八 ・ 一九 八 四 )、 国 立 国 語 研 究 所 (一九 八 四 )
田 中 (一九 五 六 )、 池 原 (一九 五 七 ) 阪本
児童言 語研究会
語 彙 頻 度 調 査 を 実 施 し て 選定 し た も の︱ 専 門 家 の評 定 に よ って選 定 し た も の︱ 編 者 の 判 断 に よ って選 定 し た も の︱
こ う し た 多 様 な 研 究 結 果 を 改 め て 一覧 で き る か た ち で デ ー タ ベ ー ス 化 し た 基 本 文 献 が 、 本 書 であ る 。 な お 、
[ 塚 田泰彦]
﹁教 育 基 本 語 彙 の選 定 ﹂ の学 習 指 導 上 の意 義 や 見 通 し に つ いて は 、 井 上 一郎 ﹃ 語 彙 力 の発 達 と そ の育 成 ﹄ ( 明治 図 書 / 二 〇 〇 一年 ) が参 考 に な る 。
﹃ 授 業 に役 立 つ 文 章 論 ・文 体 論﹄ ( 教 育 出版 / 一九 八 五年 ) 井 上 尚 美 ・大 熊 徹
﹁作 文 教 育 と 文 章 論 ﹂ とⅢ
﹁教 材 研 究 に お け る 文 章 論 ﹂ は 、 大 熊 徹 氏 が 執 筆 し て いる 。 氏 は 、 国
﹁作 文 教 育 と 文 章 論 ﹂ では 、
﹁く わ し く す る 言 葉 ﹂ を 入 れ る こ と に よ って、 よ り 生 き 生 き と し た 表 現 にす る と いう 方 法 を 示 し て い る。 こ れ は 、
階 で は 、 文 法 論 的 文 章 論 の ﹁主 要 語 句 の 連 鎖 の観 点 ﹂ を 用 い て、 作 文 の 内 容 に ﹁系 列 ﹂ を 立 て、 そ れ に 従 っ て
児 童 の作 文 の分 析 方 法 お よ び 作 文 制 作 の過 程 への具 体 的 な 方 法 を 提 示 し て い る。 特 に 、 作 文 の構 想 段 階 や推 敲 段
語 学 者 永 野 賢 氏 の文 法 論 的 文 章 論 を 応 用 発 展 さ せ 、 実 践 的 な 提 言 を 行 って いる 。Ⅱ
後 半 部 分Ⅱ
点 を 改 革 す る契 機 の 一つに も な って い る。
与 え た 。 さ ら に 、 説 明 的 文 章 指 導 が 形 式 的 活 動 に偏 り 、 児 童 ・生 徒 の意 欲 関 心 を 喚 起 し に く いと いう 授 業 の 問 題
た 一般 意 味 論 の視 点 は 、 そ の後 の 説 明 的 文 章 の教 材 研 究 法 や 国 語 科 の情 報 化 への 指向 な ど の方 向 に大 き な 影 響 を
般 意 味 論 の意 義 に つ いて わ か り やす い事 例 を 用 いて解 説 し て いる 。 特 に 、 形 式 論 理 を 超 え 内 容 ま でも 視 野 に 入 れ
題 、 さ ら に は助 詞 ﹁が ﹂・﹁は ﹂ の 用 法 を 中 心 と し た ﹁実 践 的 文 体 論 ﹂ に よ る 文 章 分 析 か ら 、 国 語 教 育 に お け る 一
論 と り わ け 米 国 で 取 り 上 げ ら れ て き た ニ ュー レ ト リ ック の考 え 方 を も と に 、 日本 語 の論 理 性 と 格 助 詞 の用 法 の問
本 書 は 共 著 で あ り 、 前 半 部 分 I ﹁日 本 語 の論 理 と 実 践 的 文 体 論 ﹂ は、 井 上 尚 美 氏 が 執 筆 し て い る 。 氏 は 、 文 体
体 的 に 理 論 と 実 践 を 結 び つけ て いる 点 に特 徴 が あ る。
た め のも のと いう 印 象 が 強 い。 本 書 は 、 そ う い った 理 論 的 な 部 分 だ け で は な く 、 日 々 の授 業 に 生 かす た め に 、 具
文 章 論 、 文 体 論 と いえ ば そ の範 囲 は 広 いが 、 元 来 、 文 章 研 究 の分 野 に あ り 、 文 章 を 分 析 し た り 評 価 し た り す る
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記 述 時 に単 に ﹁詳 し く 書 き な さ い﹂ と いう 助 言 にと ど ま ら ず 、 ど の よう な 言 葉 を ど こ に入 れ た ら よ いか と いう 視
﹁教 材 研 究 に お け る 文 章 論 ﹂ で は 、 文 学 的 文 章 教 材 ﹁は ま ひ る が お の ﹃ 小 さ な 海 ﹄﹂、 ﹁て ぶ く ろ を 買
点 を 児 童 に明 確 に 与 え る と いう 点 で 優 れ た方 法 であ る 。 ま た 、Ⅲ
ひ に ﹂、 ﹁畑 の先 生 ﹂、 さ ら に 言 語 教 材 に つ いて 、 教 材 研 究 の 視 点 か ら 分 析 が な さ れ て いる 。 特 に 、 文 学 的 文 章 教
材 に お い て は 、 作 品 分 析 の視 点 と し て、 一 ﹁時 間 的 分 析 の視 点 ﹂、 二 ﹁空 間 的 分 析 の視 点 ﹂、 三 ﹁人 間 的 分 析 の視
点 ﹂ を 設 定 し 、 そ の観 点 か ら語 句 の系 列 と 同 様 に連 鎖 を 追 求 す る こ と で 、 作 品 の特 性 を 明 ら か に し て いる 。 さ ま
ざ ま な 事 例 が 挙 げ ら れ て い る が 、 例 え ば 第 三 学 年 教 材 ﹁畑 の先 生 ﹂ に お いて は 、 主 人 公 の呼 称 の変 化 か ら 作 品 の
主 題 を 導 き 出 す と いう 手 法 を 紹 介 し て いる 。 こ れ も 、 語 句 の ﹁系 列 ﹂ と いう 観 点 か ら そ の反 復 ・変 化 に着 目 し た も の であ る 。
文 章 論 、 文 体 論 は 、 と も す れ ば 形 式 的 な も の と し て 、 教 材 研 究 の範 囲 に と ど ま り 実 際 の授 業 に は 向 か な いと い
[ 長 崎 秀 昭]
う 固 定 観 念 を 持 た れ る こと も あ る が 、 本 書 が、 作 品 に則 し 柔 軟 な 応 用 の仕 方 を 工 夫 す る こと に よ って 、 十 分 授 業 に 役 立 つも の であ る こと を 実 証 し た 功 績 は 大 き い。
い る。
﹃ 語彙 力 の 発達 と そ の育 成 ﹄ ( 明 治 図 書 / 二〇 〇 一年 )井 上 一郎
様 々 に 試 み た 地 道 な 研 究 で も あ る 。 本 書 に は 、 ﹁︱国 語 科 学 習 基 本 語 彙 選 定 の視 座 か ら︱ ﹂ と いう 副 題 が 付 い て
て 、 こ れ ら を 牽 引 力 に し な が ら 、 具 体 的 ・実 質 的 に 語 彙 力 の 育 成 を は か る た め に 、 ﹁学 習 基 本 語 彙 の選 定 ﹂ を
本 書 は 、 研 究 の 目標 の 一方 に ﹁語 彙 指 導 の方 法 の体 系 化 ﹂ を 、 他 方 に ﹁語 彙 力 の発 達 の 構 造 の解 明 ﹂ を 置 い
って スタ ン ダ ー ド な 語 彙 は何 か を 選 定 し な け れ ば な ら な い﹂、 す な わ ち 、 基 本 語 彙 の選 定 が 必 要 であ る こ と 。
と 。 第 三 は 、 第 一と 第 二 の研 究 を 推 進 す る た め に 、 ﹁日本 語 の膨 大 な 語 彙 量 の 中 か ら成 長 過 程 にあ る 子 ど も に と
こと 。 第 二 は 、 目 的 や必 要 に 応 じ て 新 た な 語 彙 を 習 得 す る 能 力 そ れ 自 体 の 発 達 構 造 を 解 明 し な け れ ば な ら な い こ
第 一は 、 語 彙 知 識 を 質 的 にも 量 的 に も 豊 か に す る た め に 、 語 彙 指 導 の方 法 を 体 系 化 し な け れ ば な ら な いと いう
語 彙 力 の発 達 研 究 に は 、 次 の よう な 留 意 点 が 必 要 だ と 述 べら れ て い る。
郎 で あ り 、 本 書 は 同 氏 の長 年 の研 究 ・実 践 の成 果 を 集 成 し た 大 著 であ る。
た そ の伝 統 も 希 薄 であ る 。 こう し た 研 究 ・実 践 の空 白 地 帯 と でも 言 え そう な 領 域 に 果 敢 に挑 ん でき た のが 井 上 一
し か し 、 研 究 や 実 践 に お いて 、 こ の領 域 が 重 視 さ れ てき た と は 言 え な い。 語 彙 指 導 に熱 心 な 教 師 は少 な く 、 ま
と し て、 ま す ま す 重 い位 置 を 与 え ら れ る よう に な って い る。
全 症 候 群 も し ば し ば 語 彙 力 の 不 足 が 原 因 であ る と 論 じ ら れ た り し て い る 。 ﹁語 彙 力 の発 達 ﹂ は 国 語 教 育 の鍵 概 念
近 年 、 漢 字 力 の低 下 を 中 心 に 、 日 本 人 の語 彙 力 の 不 足 が 問 題 に な って き て いる 。 若 者 の コ ミ ュ ニケ ー シ ョン 不
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例 え ば 、 選 定 のた め に 行 わ れ た次 のよ う な 調 査 研 究 が 本 書 に は 収 録 さ れ て いる 。
第1章 児童 ・生徒 の語彙 発達調査
1 児童作文 の表 現語 彙 の実態 調査と 考察 /2 語彙力 の基底と 習得過程 /3 定義 法と内省法 による語 彙力調査 第2章 教科書 の語彙系統
1 物語文教 材 の語彙系 統/2 説 明文教材 の語彙系統 /3 国語科 学習用語 の語彙系統
本 書 の特 長 は 、 国 語 科 学 習 指 導 の主 要 な 文 脈 に 即 し て、 学 習 者 の語 彙 発 達 の実 が あ が る よ う な 実 用 的 機 能 的 な
語 彙 調 査 を 、 明 確 な 展 望 の 下 に 実 施 し て いる 点 であ る 。 こ れ ま で の ﹁教 育 基 本 語 彙 の 選定 ﹂ は か な り 一般 的 な 目
標 、 な い し は ご く 特 定 の目 標 を 設 定 し た も のが ほと ん ど で 、 む し ろ 、 国 語 学 習 の実 際 に ど の よう な 意 義 や 活 用 方
[ 塚 田泰彦]
(﹃ 教 育 基 本 語 彙 の基 本 的 研 究︱ 教 育 基 本 語 彙 デ ー タ ベ ー ス の 作 成︱ ﹄ 国 立 国 語 研 究 所 / 二〇 〇 一年
法 が あ る の か 、 必 ず し も 明 確 で は な か った 。 こう し た 研 究 史 を 踏 ま え る 時 、 本 書 の成 果 は 、 画 期 的 な 業 績 であ る と 言 え よう 参 照 )。
﹃ 語彙 指 導 の革 新 と 実 践 的 課 題﹄ ( 明 治 図書 / 一九九 八年 ) 塚 田 泰 彦 ・池 上幸 治
を 提 案 し 、 さ ら に 現 在 ま で の実 践 例 を 図 の 中 心 に示 さ れ た 第 1 象 限 ∼ 第 4 象 限 に よ って分 類 整 理 し て いる 。
解 、 表 現 に お け る 指 導 ﹂ と いう 枠 組 み を 見 直 し 、 ﹁体 系 的︱ 機 能 的 / 選 定 語 彙︱ 作 品 語 彙 ﹂ と いう 新 し い枠 組 み
二 部 か ら な り 、 第 一部 ﹁語 彙 指 導 の方 法 的 展 開 ﹂ で は 、 左 図 (一九 頁 ) を 用 い て、 従 来 の ﹁取 り 立 て指 導 / 読
は 、 認 知 論 的 アプ ロー チ に よ る語 彙 指 導 が 実 践 研 究 を リ ー ド し て いく こ と に な ると 説 いた も ので あ る 。
本 書 は 、 こ れ ま で の 語 彙 指 導 の方 法 に関 す る 成 果 を 批 判 検 討 し 、 そ の全 体 像 を 明 ら か に し た う え で 、 こ れ か ら
76
第 二部 ﹁語 彙 指 導 の歴 史 的 展 開 ﹂ の第 1 章 ﹁語 彙 指 導 の歴 史 的 展 開 と 現 在 ﹂ で は 、 語 彙 指 導 の多 様 な アプ ロー
チを 再 検 討 し た う え で 、 ﹁認 知 論 的 アプ ロー チ に よ る語 彙 指 導 では 、 学 習 者 側 に 視 点 を 移 し て学 習 者 の既 有 の知
識 構 造 (一人 一人 が も って い る語 彙 を 中 心 と し た 意 味 のネ ット ワー ク) を 大 切 に す る。 ま た 、 語 彙 体 系 が認 知 シ
ス テ ムと し て 作 用 す る点 に 注 目す る こと で 、 語 彙 学 習 を 単 な る 言 語 知 識 の習 得 と し て で は な く 学 習 者 個 人 の認 識
活 動 と し て 意 義 づ け る こ と が で き る﹂ (一 一八 頁 ) と し 、 認 知 論 的 アプ ロー チ の重 要 性 を 提 案 し て いる 。 第 3 章
﹁語 彙 指 導 の新 し い実 践 的 枠 組 み ﹂ で は 、 ﹁語 彙 指 導 と は 、 学 習 者 自 身 の既 有 の こ と ば の体 系 を 活 用 し て、 そ の学
習 者 固 有 の意 味 のネ ット ワー ク に 新 た な 変 容 を も た ら す こと で あ る ﹂ (一三 三 頁 ) と 定 義 し 、 ﹁意 味 マ ップ 法 ﹂ を
学 習 活 動 の中 心 に す え た 単 元 学 習 を 提 案 し 、 第 4 章 ﹁語 彙 指 導 の新 し い実 践 ﹂ へと 展 開 し て いる 。
﹁あ と が き ﹂ に記 さ れ て いる よう に、 本 書 は 、 池 上 幸 治 の 修 士 論 文 ﹁語 彙 指 導 研 究︱ 論 理 語 彙 の選 定 と 指 導 を
中 心 に︱ ﹂ と 塚 田 泰 彦 の ﹁語 彙 指 導 研 究 に お け る第 三 の波︱ 認 知 科 学 的 研 究 (上 ・下 ) ︱ 」 (﹁人 文 科 学 研 究 ﹂ 第
二 二 ・二 三号 )、 ﹁学 習者 の側 に立 つ特 設 単 元 で の語 彙 指 導 ﹂ (﹁授 業 創 造 ﹂ 第 一八 号 ) を も と に し て いる ( 第 二部
[ 松川 利広]
第 4 章 は 池 上 に よ る 書 き 下 ろ し で あ る)。 本 書 は 、 こ れ ま で の 語 彙 指 導 に 関 す る 理 論 と 実 践 を 歴 史 的 ・構 造 的 に
理 解 し 、 こ れ か ら の語 彙 指 導 の 研 究 方 法 を 開 発 す るう え で有 用 か つ必 読 の文 献 で あ ると いえ る。
第 八章 メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー 教 育 の 研 究
一九 九 〇 年 代 以 降 の国 語 科 に お け る メ デ ィ ア 教 育 研 究 に か か わ る 動 向 を 概 観 し た い。 こ こ で 注 意 す べ き は 、
﹁メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー 教 育 ﹂ の ﹁メ デ ィ ア﹂ と いう 用 語 の内 実 が 必 ず し も 一様 で は な く 、 そ れ ゆ え ﹁リ テ ラ シ
ー﹂ の意 味 も 必 然 的 に異 な る と いう こ と であ る 。 わ が 国 の読 書 教 育 、 情 報 教 育 、 視 聴 覚 教 育 な ど 、 先 達 の研 究 成
果 と 不 可 分 に か か わ り な が ら 、 メ デ ィ ア= マ ス メ デ ィ アと いう 焦 点 化 さ れ た 意 味 合 い で扱 う も のか ら 、 言 語 環 境
の マル チ ・モ ダ リ テ ィ ー化 を 踏 ま え 、 社 会 文 化 的 意 味 の解 釈 、 創 造 、 交 換 に か か わ る デ ィ ス コー ス のな か に位 置
づ け よう と す る 広義 の意 味 合 いま で 、 今 日、 用 語 の解 釈 は 多 岐 に わ た る。 他 の分 野 以 上 に、 常 に そ の内 実 を 問 い な が ら 、 個 々 の 研 究 に向 か わ ね ば な ら な いゆえ ん であ る 。
で は 、 こ の定 義 の ゆれ は マイ ナ スだ ろ う か 。 新 メ デ ィ ア登 場 の た び に 、 教 育 へ の導 入 ・活 用 を 試 み る 一方 で、
一メ デ ィ ア の放 送 言 語 が 多 大 な 社 会 的 影 響 力 を も つに 至 った り 、活 字 文 化 と 相 対 す る 批 判 す べ き 対 象 と 有 害 視 さ
れ た り 、 と き に 極 端 に過 ぎ る 一元 的 反 応 は 、 活 字 メ デ ィ アそ のも のを も 見 え に く く し てき た 経 緯 が あ る 。 二十 一
世 紀 を 迎 え 、 よう や く 、 国 語 科 に お け る メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ーを 問 う 視 座 の多 様 化 、 そ れ ゆえ の必 然 的 な 混 沌 が
生 ま れ始 め てき た こ と を 、積 極 的 な価 値 と し て 認 め た い。 と き に交 錯 ・錯 綜 し 、 確 固 た る理 念 や 理 論 構 築 への道
筋 が 見 え にく い、 こ の混 沌 の ︿な ぜ﹀ を 問 う と こ ろ に 、 ︿わ が 国 の﹀ 国 語 科 に お け る メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー 教 育
の必 然 を 再 認 識 し 、 可 能 性 を 開 く 突 破 口 が あ る よ う に 思う 。 こう し た 多 元 的 な 価 値 観 の共 存 を 是 と し た 立 場 に立 って 、 四 つ の観 点 か ら 概 観 を 試 み た 。
( 1 ) 国 語 教 育 に お け る 電 子 メ デ ィ ア (コンピ ュー タ ) の活 用
いわ ゆ る 、 コ ンピ ュー タ に よ って成 り 立 つ国 語 教 育 の実 践 論 的 研 究 で あ る 。 一九 九 〇 年 代 初 頭 か ら 、 パ ソ コ ン
に よ る 教 材 開 発 の試 み 、 学 習 者 の実 態 調 査 のた め の パ ソ コン分 析 、 情 報 検 索 、 ア メ リ カ の ラ イ テ ィ ン グ を モ デ ル
と し た 表 現 教 育 への具 体 的 提 案 、 テ レビ 会 議 の活 用 な ど 、 学 習 形 態 に コ ンピ ュー タ を 取 り 入 れ る こと で 可 能 な こ
と ば の教 育 の試 み は 、 日 々進 歩 を 遂 げ て いる 。 ハー ド お よ び プ ログ ラ ム の開 発 状 況 に 応 じ て 教 育 内 容 が 刷 新 さ れ
る が 、 技 術 革 新 の速 度 の ほ う が 教 育 実 践 の拡 充 よ り も 先 行 す る の が 、 一般 的 で あ る 。 教 授 理 論 的 、 方 法 論 的 開
発 、 現 職 研 修 の拡 充 、 学 校 の ハー ド 面 の 整 備 と い った 、 諸 条 件 が 揃 わ な いと 真 の効 果 を 発 揮 し に く い難 点 が あ る。
( 2 ) 国 語 教 材 と し て の メ デ ィ ア ・テ ク ス ト分 析 法 の模 索 と 教 材 開 発
( 3 ) こ と ば の力 と し て のメ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー 教 授 理 論 の構 築 と 教 授 法 の 開 発
両者 は 、 わ が 国 では 総 合 的 に論 じ ら れ る こ と が 多 いが 、 多 く は 方 法 論 に 比 重 が 置 か れ が ち で 、 基 礎 研 究 に当 た
る教 材 分 析 の方 法 論 的 構 築 を 取 り 立 てる 試 み は 少 な い。 広 告 の言 語 表 現 に着 目 し た ﹃総 合 学 習 に 生 き る 広 告 の読
み 方 ・生 か し 方 ﹄ ( 金 子 守 、 東 洋 館 出 版 社 / 一九 九 九 年 )、 静 止 画 お よび 動 画 テ ク スト と し て の広 告 特 性 に 根 ざ
( 松 山 雅 子 ・羽 田 潤 、 ﹁大 阪 教 育 大 学 紀 要 ﹂ 第 五 一巻 第 一号 /
し た 教 材 分 析 方 法 論 を 探 った 大 阪 教 育 大 学 国 語 科 メ デ ィ ア ・エ デ ュケ ー シ ョ ン研 究 会 の試 み (一九 九 八 年 ∼ ︶、 英 国 映 画 研 究 所 の動 画 リ テ ラ シ ー 教 授 法 の研 究
二 〇 〇 二年 ) ほ か が 散 見 で き る が 、 理 論 的 構 築 に は 、 今 後 さ ら な る 研 究 が 待 た れ る。
一方 、 教 授 方 法 論 な ら び に カ リキ ュ ラ ム開 発 に は 、 一定 の成 果 が報 告 さ れ始 め て いる 。 ま ず 、 学 校 教 育 全 般 に
大 き な 影 響 を 与 え た 一冊 、 ﹃メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー ﹄ ( カ ナ ダ ・オ ン タ リ オ 州 教 育 省 編 、 リ ベ ル タ出 版 / 一九 九 二
年 ) の翻 訳 紹 介 が あ る 。 テ レ ビ 、 映 画 、 ラ ジ オ 、 新 聞 、 ポ ップ 音 楽 な ど 、 日常 的 な マ ス メ デ ィ ア ・テ ク ス ト を 、
学 習 の場 に お い て批 判 の対 象 と す べき 教 材 と し て再 発 見 さ せ た 意 義 は大 き い。 具 体 的 な 教 授 モ デ ル が 詳 述 さ れ た
デ ィ ア ・テ ク ス ト の教 材 分 析 方 法 の確 立 な し に、 こ と ば の力 を 育 む 国 語 教 育 に適 用 す る 難 し さ も 併 せ 持 つ。 ま
実 践 的 指 南 書 と し て の価 値 も 高 いだ け に 、 カ ナ ダ に お け る文 化 的 必 然 性 の理 解 や 、 多 様 な 表 現 形 態 を と る マ ス メ
た 、 同 じ く 広 く 読 ま れ た も の に、 ﹃メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー﹄ (菅 谷 明 子 、 岩 波 新 書 / 二 〇 〇 〇 年 ) が あ る 。 英 ・
米 ・カ ナ ダ の視 察 に基 づ いて 、 個 々 の社 会 文 化 的 背 景 に根 ざ し た メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー の実 態 を 報 告 し た 。 各 国
の授 業 の 実 際 も 肌 で感 じ ら れ 、 わ が 国 に お いても 、 固 有 の ニー ズ と 不 可 分 な 授 業 開 発 の 必 要 性 と 可能 性 を 思 わ せ て、 貴 重 で あ る。
菅 谷 氏 の メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー の定 義 、 ﹁メ デ ィ アが 形 作 る ﹃現 実 ﹄ を 批 判 的 に (ク リ テ ィ カ ル) に 読 み 取 る
と と も に 、 メ デ ィ アを 使 って 表 現 し て いく 能 力 ﹂ に 基 づ いて 、 小 学 校 編 、 中 学 ・高 校 編全 四 巻 か ら な る実 践 研 究
書 ﹃国 語 科 メ デ ィ ア 教 育 へ の挑 戦 ﹄ ( 井 上 尚 美 編 集 代 表 、 明 治 図 書 / 二 〇 〇 三年 ) が 編 ま れ て い る。 授 業 の具 体
を 実 践 家 自 ら メ タ 的 に 語 り 出 す と こ ろ に迫 力 が あ り 、 研 究 編 な ら び に 巻 末 の ﹁国 語 科 メ デ ィ ア教 育 のた め の目 標
分 析 表 ・評 価 表 ﹂ と あ いま って 、 実 践 的 な 示 唆 に 富 む 。 キ ー ワ ー ド と す る ﹁批 判 的 (ク リ テ ィ カ ル )﹂ な 力 は 、
西 オ ー スト ラ リ ア 国 語 科 カ リ キ ュ ラ ム の検 討 等 を 通 し て 継 続 研 究 さ れ て い る 。 同 様 に 、 ﹃実 践 ・国 語 科 か ら 展 開
す る メ デ ィ ア ・リ テ ラ シー 教 育 ﹄ ( 佐 藤 洋 一、 明 治 図 書 / 二 〇 〇 二年 ) も ま た 、 具 体 的 な 授 業 実 践 と そ の 分 析 ・
検 討 を 踏 ま え た 、 理 論 と 実 践 を 繋 ぐ 意 欲 的 な 提 案 の書 で あ る 。 従 来 の国 語 科 の ﹁学 び 方= リ テ ラ シー ﹂ に 対 す る
再 考 と ﹁学 習 ・評 価 シ ス テ ム の変 更 を 求 め るも の﹂ と し て 、 メ デ ィ ア ・リ テ ラシ ー教 育 の可 能 性 を 問 う て いる 。
( 4) 国 語 教 育 へ のカ ル チ ュ ラ ル ・ス タ デ ィ ーズ の導 入 と メ デ ィ ア と し て の 学 習 者 自 身 の認 識
子 ど も の日 常 的 リ テ ラ シ ー と こ と ば の教 育 を 繋 ぐ メ デ ィ ア教 育 を 求 め て 、 具 体 的 な テ レ ビ ・ア ニ メ番 組 の 分
析 ・検 討 を 通 し て 、 今 日 の メ デ ィ ア 文 化 にあ って意 識 的 、 無 意 識 的 に 営 ま れ る 物 語 享 受 を 仕 掛 け る メ デ ィ ア ・ミ
ック ス型 テ ク スト のあ り よ う を 探 る と こ ろ か ら 始 ま った 一連 の研 究 が あ る 。 ﹃メ デ ィ ア文 化 と ︿ 物 語 享 受 ﹀﹄ ( 畠
山 兆 子 ・松 山 雅 子 、 楡 出 版 / 一九 九 三 年 ) は 、 ﹃ 物 語放送形 態論﹄ ( 同上 /世界思想社 / 二〇〇〇年) に発展、 継
承 され、 ﹃ 自 己 認 識 と し て の メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー﹄ ( 松 山 雅 子 編 著 、 教 育 出 版 / 二 〇 〇 五年 ) にお いて 、 映 像 テ
ク スト の 教 材 分 析 法 に 基 づ く ﹁文 化 的 ア プ ロ ー チ に よ る 国 語 科 メ デ ィ ア 学 習 プ ロ グ ラ ム ﹂ の 実 践 的 提 案 へと 至
る。 ア ニ メと いう 物 語 テ ク スト の分 析 か ら始 ま った 研究 は 、 批 判 的 思 考 を 伴 わ な い文 学 的 言 語 の読 み は な いと す る イ ギ リ ス の 国 語 科 メ デ ィ ア教 育 と 、 根 本 的 な 構 え を 共 有 し て いる 。
一九 九 〇 年 代 以 降 を 概 観 す る と 、 N I E ( 教 育 に 新 聞 を ) の新 聞 に と ど ま ら ず 、 マ ンガ 、 ア ニメ 、 映 画 、 テ レ
ビ 番 組 、 C M 、 ゲ ー ム 、 音 楽 な ど 、 多 様 な 大 衆 メ デ ィ ア が 国 語 の授 業 に 用 いら れ る よ う に な った こ と に あ ら た め
て驚 か さ れ る 。 では 、 わ れ わ れ は 、 先 の カ ナ ダ と は 異 な る、 ど の よう な 学 び の必 然 を 国 語 科 と し て 見 出 し え た の
だ ろう 。 サ ブ ・カ ル チ ャー も ま た 、 小 説 と 同 様 、 固 有 の テ ク スト 特 性 を も ち 、 そ れ に よ って受 容 者 に 仕 掛 け て い
[ 松山 雅子]
く 装 置 と し て 確 か にと ら え 直 さ れ た のだ ろう か 。 先 に 述 べた 混 沌 の ︿な ぜ ﹀ を 問 う 鍵 の 一つは 、 テ ク スト と し て の 教 材 の読 み の学 習 構 想 のな か に 、 確 実 に 見 出 し う る も のと 思 わ れ る 。
﹃メ デ ィ ア 文 化 と
︿物 語 享 受 ﹀︱ 仕 掛 け ら れ た テ レ ビ ・ア ニ メ ー シ ヨ ン ﹄
( 楡 出 版 / 一九 九 三 年 ) 畠 山 兆 子 ・松 山 雅 子
テ レビ ・ア ニメ ー シ ヨ ン の ︿語 り ﹀ (l) 映 像 が 語 り だ し た ︿ 名 作 ﹀︱ス ト ー リ ー ・ア ニ メ ー シ ヨ ン の あ る
のば あ い︱ / ︵5)原 作 ﹁メ ッセ ー ジ 大 砲 ﹂と テ レ ビ ・ア ニメ ー シ ヨ ン作 品 / ︵6 )﹁ド ラえ も ん﹂の 記 号 / 3
﹁ド ラえ も ん﹂ の登 場 / ︵3 ) ﹁ド ラえ も ん﹂ の ア ニメ ー シ ヨン化 / ︵4) 放 送 形態︱ 一九 八 五 年 五 月 一七 日
1 枠 組 みと し て の 放 送 形 態 / 2 パ タ ー ン化 で獲 得 さ れ た 個 性 (1 ) な ぜ ﹁ド ラえ も ん ﹂ か / (2 )
Ⅲ テ ク スト と し て の テ レビ ・ア ニメ ー シ ヨ ン
夜 明 け / 3 一九 七 〇 年 代︱ 多 様 化 のと き / 4 一九 八 ○年 代︱ マ ルチ メ デ ィ ア時 代 の模 索
1 国産 テ レビ ・ア ニメ ー シ ヨン放 映 以 前 の番 組 史 / 2 一九 六 〇 年 代︱ 国 産 テ レビ ・ア ニメ ー シ ヨン の
Ⅱ 仕 掛 け ら れ た テ レビ ・ア ニ メ ー シ ヨ ン史
I メ デ ィ ア文 化 に お け る テ レ ビ ・ア ニ メー シ ヨ ン
以 下 に構 成 を 示 す (﹁は じ め に﹂ は 省 略 )。
活 用 す る 際 の分 析 法 と し て 踏 ま え て お き た いも の であ る 。
す る ﹁愛 の若 草 物 語 ﹂ を 対 象 と し た第 三 章 で示 さ れ る具 体 的 な 分 析 内 容 は 、 学 習 材 と し て ア ニメ ー シ ヨン番 組 を
け ﹂ を あ き ら か に す る 物 語 研 究 書 であ る 。 特 に 、 長 寿 ア ニ メー シ ヨ ン番 組 ﹁ド ラえ も ん ﹂ と 、 世 界 名 作 を 原 作 と
本 書 は 、 テ レ ビ ・ア ニメ ー シ ョ ン の文 化 的 背 景 、 歴 史 的 背 景 、 商 業 的 背 景 を 踏 ま え 、 そ の表 現 内 容 の ﹁仕 掛
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到 達 点︱ / ︵2 ︶ 原 作 ﹃ 若 草 物 語 ﹄ と ア ニメ ー シ ヨ ン ﹁愛 の若 草 物 語 ﹂ / ︵3 ︶ テ レビ ・ア ニメ ー シ ヨ ン の
︿ 語 る ﹀ 物 語︱ 第 一話 の分 析 を 中 心 に︱ / ︵4︶︿テ レビ で見 て 、 本 で確 か め る美 し い物 語 ﹀ Ⅳ テ レビ ・ア ニメ ー シ ヨン の ︿解 釈 ﹀
1 ﹁ド ラえ も ん ﹂ と ﹁ 愛 の若 草 物 語 ﹂ か ら 見 え た も の/ 2 出 来 な か った こと お よ び 、 や り 残 し た こ と
本 書 が 示 す 分 析 法 の特 徴 と し て 、 ア ニメ ー シ ヨン作 品 を 手 書 き の絵 コ ン テ の 形 で 再 構 成 し て いる点 が あ げ ら れ
る 。 例 え ば ﹁ド ラえ も ん ﹂ の場 合 、 二 八 分 三 〇 秒 の 作 品 を 二 五 三 の シ ヨ ット に書 き 起 こ し て い る こ と が 本 書 の記
述 か ら わ か る 。 作 品 を 一度 自 ら の手 でな ぞ る こと で 、 製 作 者 の立 場 を シ ミ ユレ ー ト し 、 よ り 作 品 の 成 り 立 ち を 理
解 す る と いう 方 法 であ る 。 画 面 の レ イ ア ウ ト 、 色 彩 、 カ メ ラ の位 置 ・距 離 ・動 き 、 大 道 具 ・小 道 具 、 衣 装 ・髪
型 、 表 情 ・動 作 、 台 詞 、 音 楽 、 効 果 音 と い った 、 創 り 上 げ ら れ て い った 全 て の 要 素 は 、 そ れ ぞ れ に 意 味 を も ち 、
関 わ り 合 う こ と で相 乗 効 果 を 生 み 、 視 聴 者 の印 象 に 関 わ る。 そ れ ら 部 分 へと 分 け 入 り 、 細 か な 描 写 、 演 出 を 読 み
解 く 。 絵 コ ン テと いう プ リ ント メ デ ィ ア は 、 作 品 全 体 を俯瞰 し 、 部 分 の描 写 が ど のよ う に 全 体 と 関 わ る の か を 考 え るう え でも 効 果 的 で あ る 。
こ れ ま で 、 そ れ ほ ど意 識 せ ず に 視 聴 し 、楽 し ん で き た ア ニメ ー シ ヨ ンが 、 実 は 、 大 変 巧 妙 な 仕 掛 け を 伴 う 産 業
製 品 で あ る こ と を 本 書 は 解 き 明 か し てく れ る 。 し か し 、 決 し て作 品 を 否 定 す る わ け で は な い。 物 語 の ﹁楽 し み
方 ﹂ を 多 く 獲 得 す る こ と で、 こ れ ま でと は 違 った 、多 種 多 様 な楽 し み方 が 可 能 に な る と いう 提 案 で あ る 。 残 念 な
[ 羽田
潤]
が ら 本 書 は絶 版 と な って い る。 テレ ビ ・ア ニ メ ー シ ヨ ン の歴 史 や 、 ジ ャ ン ル論 争 、 テ レビ ・ア ニメ ー シ ヨ ン の概 論 書 と し ても 読 み応 え のあ る 一冊 と な って いる 。 是 非 、 再 版 を 望 む 。
(市 民 の テ レ ビ の 会 ) 訳
Literacy:Resource
﹃メデ ィ ア ・リ テ ラ シ ー︱ マ ス メ デ ィ ア を 読 み 解 く︱ ﹄ (リ ベ ル タ 出 版 / 一九 九 二 年 ) カ ナ ダ ・オ ン タ リ オ 州 教 育 省 編 / F C T
( 概 観 / イ メ ー ジ に対 応 す る / 写 真 を 使 って / 写 真 を 撮 って み よ う )
ア イ デ ン テ ィ テ ィ と メ デ ィ ア所 有 / ニ ユー ス報 道 )
9 ク ロ スメ デ ィ ア 研 究 ( 概 観 / 広 告 / メ デ ィ ア のな か の セ ク シ ユ アリ テ ィ / 暴 力 と メ デ ィ ア/ カ ナ ダ 人 の
8 プ リ ント メ デ イ ア ( 概 観 /新 聞 / 雑 誌 / ペ ー パ ー バ ック)
7 写 真
性 /音 楽 産 業 の経 済 学 / 音 楽 の歴 史: 音 楽 の風 景 / い っし ょに や って み よう / こ んな こ とも や って み よう )
6 ポ ップ ミ ユー ジ ックと ビ デオ ク リ ップ (概 観 /手 始 め に / リ ア リ テ ィ の構 成 / 解 読: 内 容 、価 値 観 、芸 術
5 ラ ジ オ ( 概 観 / ラジ オ を 知 ろう / ラジ オ の黄 金 時 代 / い っし ょに や ってみ よう / ラジ オ と 他 の メ デ ィ ア)
文 学 / い っし ょ に や ってみ よう / 実 験 映 画 / ビ デ オ )
4 映 画 ( 概 観 / 映 画 に つ い て話 し 合 って み よ う / 映 画 と 社 会 / 映 画 批 評 / 映 画 の歴 史 と ジ ャ ン ル / 映 画 と
3 テ レ ビ(概 勧 / テ レビ のリ ア リ テ ィ構 成 / テ レビ 解 読 /番 組 の種 類 / テ レ ビ の商 業 的 背 景 )
以 下 に構 成 の 一部 を 示 す ( 各 章 の数 字 は便 宜 上 筆 者 が 付 し たも の)。
師 に も 活 用 しう る 内 容 と な って いる 。
︵198 9︶ の邦 訳 版 で あ る 。 学 習 展 開 と 発 問 例 が 具 体 的 に 提 示 さ れ 、 は じ め て メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー 教 育 を 行 う 教
本 書 は 、カ ナ ダ に お け る メ デ ィ ア ・リ テ ラ シー 教 育 の 教 師 用 学 習 指 導 書"Media
78
Gu
テ レビ か ら ク ロス メ デ ィ アま で、 文 化 と し て広 く 認 知 さ れ て い る メ デ ィ アを 章 に立 て 、 個 々 の メ デ ィ ア の概 要
理 解 、 読 み 解 き 方 、 よ り 理 解 す る た め の表 現 活 動 の三 段 階 の学 習 活 動 が 用 意 さ れ て いる 。 教 科 や 学 年 は 設 定 さ れ
てお ら ず 、 ど の よう な 学 習 状 況 にお いて も 対 応 し う るよ う 、 多 様 な 学 習 展 開 、 発 問 例 が提 示 さ れ て い る。 採 り 上
げ ら れ て い る メ デ ィ ア やそ の順 序 か らも わ か る よ う に、 若 者 文 化 が 強 く 意 識 さ れ た 構 成 で あ る 。 カ ナダ の メ デ ィ
ア文 化 は ア メ リ カ の影 響 を 強 く 受 け て お り 、 カ ナ ダ 独 自 の文 化 に対 す る揺 ら ぎ が 問 題 に な って いる と いう 。 そ れ
ゆえ 、 自 身 の価 値 観 が 何 に よ っても た ら さ れ た も のな の か を 客 観 的 に み つめ る 活 動 が多 く 設 定 さ れ て いる 。 例 え ば 、 テ レビ で の家 族 の描 か れ 方 を 扱 う 学 習 活 動 に 、 次 の よ う な 発 問 が あ る 。
テ レ ビ の人 気 番 組 を 1 つ、 も し く は いく つか 選 ん で、 異 星 か ら の来 訪 者 の つも り に な って そ の視 点 (の つも
り ) でそ の番 組 を 見 て 、 地 球 人 の文 化 の印 象 を 紙 に書 いた り 列 挙 し た り し て み よう 。 典 型 的 な 男 性 ・女 性 の
イ メ ー ジ 、 子 ど も や青 年 のイ メー ジ 、 ( 中 略 ) 異 星 人 の持 った 印 象 は 私 た ち の文 化 を 正 確 に捉 え て いる か 。 そ
う いう 番 組 を 見 た後 で 、 異 星 人 は 地 球 に移 住 し た いと 思 う か、 そ れ とも 自 分 の星 に 戻 ろ う と 思 う か ︵三 四頁 )。
ほ か にも 、 ド ラ マの 人物 を 演 じ さ せ た り 、 番 組 作 り の シ ミ ユレ ー シ ヨ ン活 動 を 行 わ せ た り な ど 、 学 習 者 の視 点
を 変 え さ せ る活 動 が 多 く 設 定 さ れ て い る。 自 身 の社 会 的 立 場 を 認 識 さ せ 、 アイ デ ン テ ィ テ ィ 、 特 に カ ナ ダ 人 と し
て の アイ デ ン テ ィ テ ィ の確 立 を 目指 す の が 、 本 書 の 示 す メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー 教 育 の特 徴 で あ る 。 文 化 状 況 が 異
[ 羽田 潤]
な る の で、 我 が 国 でそ のま ま 活 用 す る こと は 難 し いが 、 学 習 活 動 の組 み立 て 方 や発 問 手 法 は大 い に参 考 に な る 。
﹃メデ ィア ・リ テ ラシ ー︱ 世 界 の 現 場 か ら︱ ﹄ ( 岩 波 書 店 / 二〇 〇 〇 年 ) 菅 谷 明 子
( 1 な ぜ メ デ ィ アを 学 ぶ の か / 2 イ ギ リ ス の教 室 か ら / 3 メ デ ィ
化 / 2 デ ジ タ ル メ デ ィ ア のた め のリ テ ラ シー / 3 マル チ メ デ ィ ア制 作 で リ テ ラ シ ー を 育 成 )
第 4章 デジ タ ル時 代 の ﹁マル チ ﹂ メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー ( 1 デ ジ タ ル教 材 が メ デ ィ ア ・リ テ ラシ ーを 強
ォ ッチ ド ッグ ( 番 犬 ) / 3 市 民 が 作 るも う ひと つ の メ デ ィ ア)
第 3 章 ア メ リ カ の草 の根 メ デ ィ ア活 動 ( 1 活 躍 す る子 ど も ジ ャー ナ リ スト / 2 メ デ ィ アを 監 視 す る ウ
3 ブ リ テ ィ ッシ ユ ・コ ロ ンビ ア州 の 教 室 か ら / 4 メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー を 支 援 す る 世 界 初 の テ レビ 局 )
第 2 章 カ ナ ダ に広 が る ユ ニー ク な 実 践 ( 1 教 師 た ち の地 道 な 活 動 が 結 実 / 2 オ ン タ リ オ 州 の 教 室 か ら /
ア教 育 を 支 え る 英 国 映 画 協 会 / 4 テ レビ 制 作 者 が 見 た メ デ ィ ア 教 育 / 5 学 校 改 革 を 考 え るき っか け に )
第 1 章 イ ギ リ ス に根 づ く メ デ ィ ア教 育
ィ ア ・リ テ ラ シー / 3 国 際 的 にも 活 発 な 取 り 組 み )
序 章 世 界 に 広 ま る メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー ( 1 ア メ リ カ の教 室 か ら / 2 メ デ ィ ア王 国 で も 始 ま った メ デ
であ る 。 以 下 に 構 成 の 一部 を 示 す 。
ラ シ ー を 考 え る う え で 、 世 界 の状 況 を 知 り 、 比 較 す る こ と は 重 要 であ る 。 そ の意 味 で、 入 門 書 と し て 最 適 の 一冊
場 を 取 材 し 、 学 校 教 育 や市 民 団 体 に よ る取 り 組 み に つ い て報 告 す るも の で あ る。 我 が 国 に 必 要 な メ デ ィ ア ・リ テ
本書 は 、 ジ ャー ナ リ スト であ る筆 者 が 、 イ ギ リ ス 、 カ ナ ダ 、 ア メ リ カ に お け る メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー 教 育 の 現
79
シ ェイ ク スピ ア 作 品 の映 画 批 評 等 、 古 く か ら メ デ ィ ア ・エデ ユケ ー シ ヨ ンが 取 り いれ ら れ て いた ﹁イ ギ リ ス﹂、
若 者 の 現 状 に 危 機 感 を 募 ら せ 、 メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー 教 育 を 定 着 さ せ てき た ﹁カ ナ ダ ﹂、 そ し て メ デ ィ ア 大 国
﹁ア メリ カ﹂。 三 つ の国 に お け る メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー教 育 の現 場 に 飛 び 、 授 業 見 学 、 教 師 や 子 ど も へ のイ ン タビ
ユーと 取 材 を 重 ね 、 ド キ ュ メ ン タ リ ー 的 手 法 で 記 述 す る こと で、 メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー の最 前 線 の声 を 伝 え よ う
と す る の が 本 書 の 基 本 方 針 で あ る。 各 国 に お け る メ デ ィ ア ・リ テ ラ シー 教 育 は 、 そ れ ぞ れ の国 が 持 つ歴 史 や 文 化
背 景 と 深 く 関 わ って い る こ と が こ こ で は 報 告 さ れ て いる 。 意 味 を 読 み と る必 要 が あ り 、 そ こ に 訓 練 が 必 要 であ れ
ば 、 そ れ は 国 語 科 が扱 う べ き 問 題 で あ る と 、 国 語 の力 と し て メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ーを 位 置 づ け る ﹁イ ギ リ ス﹂、
ア メ リ カ 文 化 に対 す る 客 観 的 な 視 点 を も た せ る た め に、 国 語 の カ リ キ ュラ ム に ﹁見 る こ と ﹂ を た て、 メ デ ィ アを
﹁見 る ﹂ た め の学 習 が系 統 的 に行 わ れ て いる ﹁カ ナ ダ ﹂、 巨 大 マ ス コ ミ産 業 の中 で理 性 的 な 目 を 育 も う と す る ﹁ア
メ リ カ﹂。 理 由 が 違 え ば 、 方 法 も 変 化 し 、 育 む べき 力 も 違 って く る こと が よ く わ か る 。
最 後 に 、 筆 者 は メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー を ど の よう に定 義 し て いる のか 、 以 下 に 引 用 す る (﹁は じ め に ﹂Ⅴ 頁 )。
メ デ ィ アが 形 作 る ﹁現 実 ﹂を 批 判 的 (ク リ テ ィ カ ル )に 読 み取 る と と も に 、 メ デ ィ アを 使 って 表 現 し て いく
能 力 ﹂の こと で あ る 。( 中 略 )メ デ ィ ア の特 性 や社 会 的 な 意 味 を 理解 し 、 メ デ ィ アが 送 り 出 す 情 報 を ﹁ 構成 され
た も の﹂と し て建 設 的 に ﹁批 判 ﹂す ると と も に 、 自 ら の考 え な ど を メ デ ィ アを 使 って表 現 し 、 社 会 に 向 け て
効 果 的 に コ ミ ユ ニケ ー シ ヨ ンを は か る こ と で メ デ ィ ア社 会 と 積 極 的 に 付 き 合 う た め の総 合 的 な能 力 を 指 す 。
[羽 田 潤 ]
﹃ 国 語科 メデ ィ ア教 育 への 挑 戦 ﹄ 全 四 巻 ( 明 治 図書 / 二〇 〇 三年 ) 井 上 尚 美他 編
何 を表 現 す る か が わ か って 、 自 分 な り の考 え を 明 確 に し て、 受 け 手 の 反 応 を 考 慮 し て表 現 す る と い った 深 化 が 図
い ては 、 メ デ ィ ア を 知 る ( 他 と 区 別 す る )、 理 解 す る 、 吟 味 ・批 判 す る と い った 深 化 が 、 表 現 能 力 に つ いて は 、
段階 ( 中 学 二年 ∼ 高 校 ︶ と い った 学 年 段 階 に よ る系 統 性 も 考 え ら れ て いる 。 各 段 階 に し た が って、 理 解 能 力 に つ
化 し た も の で あ る 。 ま た 、 分 類 に お い て は 、 第 一段 階 ( 小 学 一∼ 三 年 )、 第 二 段 階 (小 学 四 年 ∼ 中 学 一年 )、 第 三
は 、 国 語 科 教育 に お け る 特 に映 像 を 中 心 と し た メ デ ィ ア教 育 の目 標 を 、 ブ ル ー ム 的 な 行 動 目 標 と し て 分 類 、 体 系
こ の バ ラ ン スは 、 井 上 尚 美 が 提 案 す る ﹁国 語 科 メ デ ィ ア教 育 の指 導 目 標 分 析 表 ﹂ にも と づ い て い る 。 こ の 表
ア の表 現 ・理解 の能 力 を バ ラ ン スよ く 育 て よ う と す る ね ら いが あ る 。
は 、 ﹁分 析 型 ﹂ に よ る マス メ デ ィ ア の 陰 の部 分 へ の批 判 に 傾 倒 す る こ と な く 、 ﹁表 現 / 理 解 型 ﹂ を 重 視 し て メ デ ィ
テ ィ カ ル に 理解 でき る 学 習 者 を 育 てよ う と す る ﹁表 現 / 理 解 型 ﹂ の メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー であ る。 そ し て本 書 に
語 ・映 像 ・音 響 な ど を 複 合 し た 多 様 な メ デ ィ ア の方 法 を 効 果 的 に 使 用 し て 表 現 で き る と と も に 、 メ デ ィ アを ク リ
判 断 力 を 育 て る た め に 、 メ デ ィ アを 読 み解 い て いく ﹁分 析 型 ﹂ の メ デ ィ ア ・リ テ ラシ ー で あ る 。 も う 一つは 、 言
年 ) でめ ざ さ れ て いる よう な 、 マ ス メ デ ィ アか ら の イ デオ ロギ ー 的 、 商 業 主 義 的 な 影 響 に 対 す る ク リ テ ィ カ ル な
リ テ ラ シ ーを 二 つ の タ イ プ に区 別 す る 。 一つは 、カ ナダ ・オ ン タ リ オ 州 教 育 省 ﹃メ デ ィ ア ・リ テ ラ シー ﹄(一九 九 二
き て い る各 種 メ デ ィ ア活 用 ま で を 学 習 に 含 め た 教 育 で あ る ﹂。 著 者 の 一人 で あ る中 村 敦 雄 は 、 従 来 の メ デ ィ ア ・
本 書 に お け る ﹁国 語 科 メ デ ィ ア教 育 ﹂ と は 、 ﹁従 来 の国 語 を 拡 張 し て、 日 常 的 コミ ユ ニケ ー シ ヨ ン に 浸 透 し て
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ら れ て いる 。 ま た 、 第 一巻 小 学 校 編
( 低 学 年 ∼ 中 学 年 ) に は 八 、 第 二巻 小 学 校 編
( 中 学 年 ∼高 学 年 ) に は 九 、 第 三 巻
中 学 校 編 には 十 一、 第 四巻 中 学 ・高 校 編 に は 十 一と 、 そ れ ぞ れ の学 年 段 階 に 応 じ た メ デ ィ ア教 育 の実 践 記 録 が
掲 載 さ れ て いる 。各 実 践 に つ い て は 、各 巻 の編 集 担 当 者 に よ る 解 説 が 施 さ れ て い る。 特 に 、 実 践 のね ら いが 目 標
分 析 表 のど の項 目 に 該 当 す る のか が説 明 さ れ て お り 、 実 践 の意 義 を 把 握 す る助 け と な る 。
さ ら に 、 ﹁メ デ ィ ア受 容 能 力 を 育 て る授 業 設 計 ﹂ ( 岩 永 正 史 )、 ﹁戦 後 国 語 科 教 育 に お け る メ デ ィ ア ・リ テ ラシ ー
の位 置 の変 遷 ﹂ ( 中 村 純 子 )、 ﹁国 語 科 メ デ ィ ア表 現能 力 を 育 て る 授 業 設 計 ﹂ (大 内 善 一)、 ﹁メ デ ィ ア教 育 先 進 国 の
現 状 と苦 闘 ﹂・﹁国 語 メ デ ィ ア教 育 の教 材 開 発 ﹂ ( 芳 野 菊 子 ) の論 考 が 、 本 書 に お け る実 践 を 理 論 的 に 支 え て いる 。
な か で も 岩 永 は 、 国 語 の 教 科 書 教 材 か ら メ デ ィ ア の特 質 や 方 法 を 読 み解 く こ と が で き る こと 、 さ ら に は 言 語 を 読
み解 く 方 法 が メ デ ィ アを 読 み 解 く こ と に も 生 か せ る こ と を 示 し た 上 で 、 次 の よう に 述 べ る 。 ﹁こ れ ら を 見 ると 、
メ デ ィ ア教 育 が 国 語 科 か ら ﹁切 れ た ﹂ も の な の では な く 、 む し ろ 、 こ れ ま で 国 語 科 で 培 った 言 葉 の力 を 基 礎 と し
つ つ、 言 葉 の力 を 再 認 識 さ せ る も の で あ る こ と に 気 づ いた の では な いか と 思 う ﹂。 こ れ は 国 語 科 教 育 に お い て メ デ ィ アを 取 り 上 げ る現 時点 で の根 拠 を 端 的 に 言 い表 し た も のだ と 言 って よ い。
本 書 は 、 国 語 科 教 育 に お け る メ デ ィ ア教 育 のあ り よう を 、 小 学 校 か ら 高 校 ま で を射 程 に広 く 見 渡 し た 実 践 書 で
[ 上 田 祐 二]
あ る 。 授 業 の発 想 を 得 る た め の、 ま た 自 己 の実 践 の位 置 を 確 か め る た め の ハンド ブ ック と し て活 用 し た い。
﹃ 実 践 ・国 語科 か ら 展開 す る メデ ィ ア ・リ テ ラ シー 教 育 ﹄ ( 明 治 図 書 / 二〇 〇 二年 ) 佐 藤 洋 一
て 、 現 代 社 会 の い ろ いろ な 種 類 の メ デ ィ ア の特 質 ( 情 報 構 成 ・発 信 の媒 体 ) を 知 り 、 自 分 の考 え や生 き 方 と 関 わ
は ﹁"メ デ ィ ア 情 報 " の仕 組 み や メ ッセ ー ジ ・背 景 等 に疑 問 や課 題 を 持 った り 、 批 判 的 に解 釈 でき る こと を 通 し
身 の 関 係 や 課 題 に つ い て 、 ﹁論 理 的 に ﹂ 考 え る 思 考 力 や判 断 力 を 身 に つけ さ せ る こと ﹂、 ﹁発 展 的 学 習 ﹂ の 段 階 で
報 " の仕 組 み や方 法 ・影 響 力 等 に つ い て知 る こ と を 通 し て、 現代 社 会 や コミ ユ ニケ ー シ ヨン ・メ デ ィ アと 自 分 自
メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー の学 習 も こ の展 開 に 対 応 す る 。 ﹁基 礎 ・基 本 学 習 ﹂ の段 階 で は 、 ﹁メ デ ィ ア に よ る "情
の段 階 へと 展 開 す る過 程 で あ る。
(1)∼ ︵2) の ﹁基 礎 ・基 本 学 習 ﹂ の段 階 、 (3)∼ ︵5) の ﹁発 展 的 学 習﹂ の段 階 を 経 て 、 総 合 的 な ﹁発 展 学 習 ﹂
(5 ) 評 価 ・﹁学 び ﹂ の 一般 化 、 と い った 五 段 階 で 展 開 す る 学 習 過 程 が 軸 に な って い る 。 こ れ ら は 巨 視 的 に は
そ の構 造 は ま ず 、 (1) 基 礎 学 習 ・導 入 、 (2) 基 本 学 習 、 (3 ) 応 用 ・個 性 化 学 習 、 (4) 発 信 ・交 流 学 習 、
て 示 そ う と いう ね ら いが あ る。
﹁総 合 的 な 学 習 の時 間 ﹂ や ﹁発 展 学 習 ﹂ と が 乖 離 す る こ と な く 、 基 礎 ・基 本 か ら 段 階 的 に 発 展 す る 学 習構 造 と し
佐 藤 の モ デ ル に は 、 基 礎 ・基 本 の定 着 を 図 る 教 科 学 習 と 、 自 ら 学 び 自 ら 考 え る 主 体 的 な 学 び を 育 も う と す る
モ デ ル の構 築 を 試 み て いる 。
語 科 で学 習す る リ テ ラ シ ー が メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー の基 礎 ・基 本 にな る と し て 、 両 者 を 関 連 づ け た実 践 的 な学 習
本 書 は 、 子 ど も の情 報 環 境 の変 容 と いう 現 実 を 踏 ま え て メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー 教 育 の必 要 性 を 認 め た 上 で 、 国
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ら せ て考 え る こと が でき る こ と ﹂、 ﹁発 展 学 習 ﹂ の段 階 で は ﹁メ デ ィ ア制 作 と 発 表 等 も 含 め 、 目的 や 場 面 ・主 張 に
応 じ て自 分 ら し く 個 性 的 に 説 得 力 を も った も のと し て 、 "情 報 " を 収 集 ・選 択 判 断 ・構 成 ・発 信 す る こと が でき るよ う に な る こと ﹂ と い った 目 標 が置 か れ て いる 。
( 理 解 ・発 信 ) の 一モ デ
ま た 、 メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー の 学 習 は 、 ﹁話 す ・聞 く ﹂・﹁読 む ﹂・﹁書 く ﹂ の基 礎 学 力 や 、 論 理 的 で 個 性 的 な コ
ミ ユ ニケ ー シ ヨン ( プ レ ゼ ン テー シ ョ ン) 能 力 を 身 に つけ 、 説 明 文 や 文 学 教 材 を ﹁情 報
ル﹂ と し て 学 ぶ ﹁基 本 学 習 ﹂ の 上 に成 立 す る 、 そ れ 自 体 が 国 語 科 に お け る 学 習 の発 展 と し て位 置 づ く 学 習 で あ る。
﹁ジ ェン ダ ー ﹂ を 扱 った 五 つの 実 践 事 例 が 示 さ れ て いる 。 そ の いず れ も が 現 場 に 導 入 可 能 な 六 ∼ 八時 間 の ス ケ ー
こう し た 学 習 モ デ ル に も と づ いて 本 書 で は 、 ﹁広 告 ﹂、 ﹁ド ラ マ ・映 画 ﹂、 ﹁テ レ ビ コ マー シ ャ ル ﹂、 ﹁ニ ユー ス﹂、
ル で 五段 階 の学 習 と し て展 開 さ れ て いる 。 ま た 各 段 階 の学 習 は 、 学 習 の方 法 や 評 価 の観 点 な ど を ま と め た 学 習 シ
ー ト に沿 って進 め ら れ る 。 特 に 、 メ デ ィ ア ・リ テ ラシ ー の内 実 は 、 メ デ ィ ア 分析 の観 点 と そ の手 順 と い った 実 践
的 な 形 で 示 さ れ て お り 、 参 考 に な る。 こ のよ う に 、 メ デ ィ ア の学 び 方 を 理 解 し 応 用 し そ れ を 評 価 す る 学 習 を 通 し
て、 ﹁学 び 方 ・評 価= リ テ ラ シ ー﹂ の定 着 を 図 ろ う と す る のが 、 本 書 にお け る メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー学 習 で あ る。
本 書 の意 義 は 、 メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー の内 実 を 、 国 語 の基 礎 ・基 本 の能 力 か ら 発 展 す る 情 報 リ テ ラ シ ー や コミ
ユ ニケ ー シ ヨ ン の能 力 と し て位 置 づ け る こ と に よ って、 メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー と 国 語 能 力 と の関 連 性 を 明 ら か に
し た 点 で あ る 。 さ ら に そ の学 習 のあ り 方 を 、 シ ス テ マ テ ィ ック な 実 践 モ デ ルと し て 構 築 し て い る点 で あ る。 国 語
[ 上 田祐 二]
科 か ら メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー に 取 り 組 も う と す ると き 、 そ の授 業 開 発 に お け る 一つ のも のさ し と な り 得 る文 献 で あ る。
第 九章 国 語 教育 史 の研究
日 本 の 国 語 教 育 は ど の よう に 形 成 さ れ た の であ ろ う か 。 そ れ は ど のよ う な 問 題 を は ら ん で いる か 。 これ か ら の
国 語 教 育 は ど う あ る べき か。 国 語 教 育 史 の研 究 は 、 私 た ち の今 いる位 置 を 見 定 め て明 日 の国 語 科 教 育 の見 通 し を 得 よ う と し てな さ れ る 。
国語教 育史料集 の編纂
月 ) は 、 明 治 維 新 の学 制 発 布 を 上 限 、 第 二 次 大 戦 終 結 を 下限 と し て、 単 行 本 と し て刊 行 さ れ た 著 作 が 選 ば
井 上 敏 夫 ・倉 澤 栄 吉 ・野地 潤家 ・飛 田 多 喜 雄 ・望 月 久 貴 編 ﹃ 近 代 国 語 教 育 論 大 系 ﹄全 十 五巻 ( 光 村 図 書 / 一九 七 五 年 二 れ て いる 。
井 上 敏 夫 ・倉 澤 栄 吉 ・野 地 潤 家 ・滑 川 道 夫 ・増 淵 恒 吉 編 集 ﹃国 語 教 育 史 資 料 ﹄全 六 巻 ( 東 京 法 令 出 版 / 一九 八 一
年 四月 ) は 、 第 一巻 理 論 ・思 潮 ・実 践 史 、 第 二 巻 教 科 書 史 、 第 三 巻 運 動 ・論 争 史 、 第 四巻 評 価 史 、 第 五 巻 教 育 課 程 史 、 第 六 巻 年 表 、 で構 成 さ れ て いる 。
西 郷竹 彦 ・浜 本 純 逸 ・足 立 悦 男 編 ﹃文 学 教育 基 本 論 文 集 ﹄ 1 ∼4 (明 治 図 書 / 一九 八 八年 三 月 ) は 、 文 学 教 育
﹃ 国 語 教 育 基 本 論 文 集 ﹄ 全 三 十 一巻 (明 治 図 書 / 一九 九 四年 ) は、 戦 後 の国 語 教 育
の領 域 に 限 った 資 料 集 であ る 。 飛 田多 喜 雄 ・野 地 潤 家 監 修
研 究 の基 本 的 な論 文 を 収 載 し て いる。
いず れ も 、 必 要 な 史 料 を 網 羅 し てお り 、 そ の後 の 国 語 教 育 史 研 究 の 土 台 と な って い る。
通史 および領 域通史 ( 1) 国語教育 通史
野 地 潤 家 は 、 ﹃国 語 教 育 通史 ﹄ ( 共 文 社 / 一九 七 四年 九 月 ) を 、 つぎ のよ う な 枠 組 み で記 述 し た 。Ⅰ 国 語 科 教
育 の史 的 展 開 (一 初 等 国 語 科 教 育 史 、 二 中 等 国 語 科 教 育 の 史 的 展 開 )、Ⅱ 国 語 科 各 領 域 の史 的 展 開 、Ⅲ
国 語 教 育 個 体 史 の問 題 、Ⅳ 国 語 教 育 略 年 表 。 中 等 国 語 科 教 育 史 ・国 語 教 育 個 体 史 を 取 り 上 げ て いる こと に 特 色 があ る。
飛田多喜 雄 ﹃ 国 語教育方 法論 史﹄ ( 明 治 図 書 / 一九 七 四 年 一〇 月 ) は 、 記 述 の意 図 を ﹁先 人 の足 跡 を 再 検 討 し て、 継 承 す る価 値 のあ るも のは 現在 に 生 か し た い﹂ と 述 べ て いる 。
高 森 邦 明 ﹃近 代 国 語 教 育 史 ﹄ ( 鳩 の森 書 房 / 一九 七 九 年 一〇 月 ) は 、 作 文 教 育 史 の記 述 に や や 比 重 を か け 、 記 述 範 囲 を 一九 六 〇 年 代 ま で に 広 げ た 。
古 田 東 朔 ﹃日 本 言 語 文 化 論 ﹄ ( 放 送 大 学 教 育 振 興 会 / 一九 八 五 年 三 月 ) は 、 近 代 日 本 の言 語 文 化 を 成 り 立 た せ
て いる 言 語 と そ の文 化 の形 成 過 程 に つ い て考 察 し て いる 。 国 語 教 育 お よ び 国 語 教 科 書 が果 た し た 役 割 に つ いて も 端 的 に 記 述 し て お り 、 国 語 教 育 の歴 史 を俯瞰 す る た め に は 必 読 の書 であ る 。 ( 2) 国語教育領 域通史
弥 吉 菅 一 ﹃日 本 児 童 詩 教 育 の歴 史 的 研 究 ﹄ 全 三 巻 ( 渓 水 社 / 一九 八 九 年 二月 ) は 、 明 治 初 期 か ら 昭 和 の敗 戦 に
至 る期 間 の児 童 詩 創 作 指 導 の展 開 を 、 子 ど も の作 品 ・そ れ ら を 使 った 教 師 た ち の指 導 ・社 会 の受 け 止 め 方 な ど 、
﹃日本 作 文 綴 方 教 育 史 ﹄ 1 ∼ 3 (国 土 社 / 一九 七 七 年 八月 ∼ 一九 八 三 年 二月 ) は 、 明 治 初 期 か ら 昭 和
原 資 料 に基 づ いて記 述 し て いる 。 滑川道夫
初 期 ま で の作 文 綴 り 方 教 育 を 対 象 に し 、 ﹁そ れ ぞ れ の時 代 に お け る 主 要 文 献 を 中 心 に し て、 そ の周 辺 に及 ぼ す 叙 述 を と って み た ﹂ と 述 べ て いる 。
明治期 国語教育史 の研究
﹁学 制 ﹂ (一九 七 二/ 明 治 五 年 ) には 、 ﹁国 語 ﹂ と いう 名 称 は な か った 。 教 科 と し て の ﹁国 語 科 ﹂ は 一九 〇 〇
( 明 治 三 三 ) 年 の ﹁小 学 校 令 施 行 規 則 ﹂ にお い て成 立 し た 。 そ の条 文 が 一九 四 五 年 の 敗 戦 ま で 、 見 方 に よ れ ば 二
十 一世 紀 の現 代 ま で 、 日本 の国 語 科 教 育 の基 本 方 向 を 定 め た と 考 え ら れ る。 な ぜ こ の 時 期 に成 立 し 、 ど のよ う な
社 会 的 背 景 に 支 え ら れ て いた か 、 ど のよ う な 言 語 観 ・教 育 観 に 立 脚 し て いた か 、 そ の内 容 と し て の ﹁普 通 ノ 言
語 ﹂ ・ ﹁智 ﹂ ・ ﹁徳 ﹂ に は ど の よう な 意 味 が込 め ら れ て いた か 、 な ど の解 明 に 、 研 究 者 た ち は 努 力 し て き た 。
古 田東 朔 ﹃ 教 科 書 か ら 見 た 明 治 初 期 の言 語 ・文 字 の教 育 ﹄ ( 文 部 省 / 一九 五七 年 九 月 ) は 、 ﹁学 制 ﹂ が発 布 さ れ
てか ら 改 正 教 育 令 が 出 さ れ る (一八 八 ○ 年 ) ま で の言 語 ・文 字 の 教育 に つ い て、 日本 独自 の ﹁色 と 香 ﹂ を 明 ら か に す る考 察 を し て いる 。
望 月 久 貴 ﹃国 語 科 教 育 史 の基 本 問 題 ﹄ ( 学 芸 図 書 / 一九 九 二年 六 月 ) は 、 綴 字 ・会 話 は 洋 学 系 統 の科 目 であ っ
た た め 定 着 し な か った と し 、 ﹁習 字 や 書牘 は 、 寺 子 屋 の実 績 が あ り 、 単 語 は 本 邦 往 来 物 が 単 語 集 の 観 を 呈 し 、 文
法 は 遅 れ ば せ な が ら も 本 居 学 派 ・富 士 谷 学 派 が 、 そ れ ぞ れ 独 自 の 文 法 研 究 を も って いた ﹂ と 維 新 前 と の継 続 説 を 打 ち 出 し て い る。
山 根 安 太 郎 ﹃国 語 教 育 史 研 究 ﹄ ( 溝 本 積 善 館 / 一九 六 六 年 三 月 ) は 、 ﹁学 制 ﹂ に お け る 国 語 科 関 連 教 科 の背 景 を 近 代 西洋 学 校 の教 育 思 想 の移 入 と と ら え て いる 。
有沢俊 太郎 ﹃ 明 治 前 中 期 に お け る 日 本 的 レ ト リ ック展 開 過 程 に 関 す る 研 究 ﹄ ( 風 間 書 房 / 一九 九 八年 一月 ) は 、
明 治 二 〇 年 代 に 移 入 さ れ た 英 国 の レ ト リ ック が 、 ﹁話 す と 言 え ば 伏 し 目 が ち に相 手 の視 線 を 避 け て 口 籠 も り 、 書
く と いえ ば 、 手 紙 を 書 く く ら いし か な か った 表 現 生 活 を 、自 己 の意 見 を 立 て る と いう 方 向 へと 導 い て い った 。 つ
ま り 泣 訴 ・強 訴 か ら 公 開 演 説 を 、 手 紙 文 ( 消 息 文 ) か ら 議 論 文 と いう 新 し いジ ャ ン ルを 切 り 開 いた ﹂ と 述 べ て い る。
京 極 興 一 ﹃﹁国 語 ﹂ と は 何 か ﹄ ( 東 宛 社 / 一九 九 三 年 二月 ) は 、 明 治 前 期 は言 語 教 育 の時 代 であ った と し 、 明 治 三 〇 年 代 に 国 民 教 育 と いう 精 神 教 育 の考 え 方 が 加 わ った と す る 。
( 当 時 の文 部 省 普 通 学 務 局
小 笠 原 拓 ﹃近 代 日 本 に お け る ﹁国 語 科 ﹂ の成 立 過 程︱ ﹁国 語 科 ﹂ と いう 枠 組 み の発 見 と そ の意 義︱ ﹄ ( 学文
社 / 二 〇 〇 四年 二 月 ) は 、 言 葉 の 教 育 は 道 徳 教 育 で も あ る と 考 え て い た 沢 柳 政 太 郎
長 ) が ﹁小 学 校 令 施 行 規 則 ﹂ の条 文 を 作 成 し た と いう 事 実 を 突 き 止 め た 。 これ ま で ﹁国 語 科 の成 立 ﹂ は 、 ナ シ ヨ
ナ リズ ム形 成 の視 点 か ら 上 田 万 年 と の関 わ り で受 け 止 め ら れ て き た が 、 そ の 一般 的 通 念 を 覆 す 指 摘 で あ る 。
大 正期 国 語 教 育 の 研 究
大 正 デ モ ク ラ シ ー と 言 わ れ る よ う に、 大 正 期 は 近 代 的 な も のが 根 付 き 、 芽 吹 いた 時 期 で あ る 。 ﹃ 赤 い鳥 ﹄ が 発
﹃ 国語
(一九 一八 年 )、 垣 内 松 三 によ って ﹃ 国語
刊 (一九 一八 年 ) さ れ 、 大 正 新 教 育 の八 大 教 育 主 張 が 展 開 (一九 二 一年 ) さ れ た 。 国 語 教 育 界 で は 、 雑 誌 教育﹄ ( 保 科 孝 一) が発 刊 (一九 一六 年 ) さ れ 、 随 意 選 題 論 争 が 起 こり
の力 ﹄ (一九 二 二年 ) が 著 さ れ た 。
野 地 潤 家 ﹃中 等 作 文 教 育 史 研 究 ﹄Ⅰ ・Ⅱ ( 明 治 図書 / 一九 九 八 年 三 月 ) は 、 中 等 作 文 教 育 に つ いて 、 教 材・ 文 集 ・作 品 ・教 科 書 な ど を 博 捜 し て 全 容 を 把 握 し よ う と 試 み て いる 。
秋 田喜 三 郎 ﹃初 等 教育 国 語 教 科 書 発 達 史 ﹄ (文 化 評 論 社 / 一九 七 七 年 一〇 月 ) は 、 明 治 ・大 正 ・昭 和 の初 等 学 校 国 語 教 科 書 の研 究 で あ る。
( 坪 内逍 遥 ・徳 富蘆 花 ・島 崎 藤 村 ・夏 目 漱 石 ・森〓 外 ・芥 川 龍 之 介 ・寺 田 寅 彦 ) の作 品 の採 録 状 況 を 徹
橋 本 暢 夫 ﹃中 等 国 語 教 材 史 研 究 ﹄ ( 渓 水 社 / 二〇 〇 二年 七 月 ) は 、 中 等 学 校 国 語 教 科 書 に掲 載 さ れ た 、 七 人 の 文学者
﹃ 国語 教育学史﹄ ( 共 文 社 / 一九 七 四 年 九 月 ) は 、 ﹁わ が 国 の近 代 国 語 教 育 史 に お いて 、 学 的 体 系 化 の
底 的 に 調査 し 、 そ れ ぞ れ の史 的 意 義 を 述 べ て いる 。 野 地 潤家
意 図 が 見 ら れ る よう に な る のは 、 お よ そ 一九 三 〇 年 代 か ら で あ る ﹂ と し て 、 そ れ か ら 一九 五 〇年 ま で の ﹃学 史 ﹄
を 、Ⅰ 戦 前 に お け る 国 語 教 育 学 の展 開 、Ⅱ 戦 後 に お け る 国 語 教 育 学 の 展 開 、Ⅲ 国 語 教 育 学 の系 譜 と 創 建 、
垣内 松 三先 生 のば あ い︱
﹄( 教
Ⅳ 国 語 教 育 略 年 表 、 の 四 つの 項 目 に わ け て考 察 し て い る 。 そ の後 の学 説 史 研 究 は 、 ﹃野 地 潤 家 著 作 集 第 10 巻 芦 田恵 之 助 研 究 ﹄ (明 治 図 書 / 一九 八 三年 三 月 ) と ﹃綴 方 教 授 の理 論 的 基 礎︱ 育 出 版 セ ン タ ー / 一九 八 三年 八 月 ) と に ま と め ら れ た 。
昭和 前期国語 教育 の研 究
昭 和 前 期 は 、 大 正 期 に 播 か れ た種 子 が 開 花 し た が 、 そ の後 の 日 本 の 軍国 主 義 化 に と も な って 急 速 に し ぼ ん で い った 時 期 であ る 。
桑 原 隆 ﹃言 語 活 動 主 義 ・言 語 生 活 主 義 の探 求︱
西 尾 実 国 語 教 育 論 の展 開 と 発 展 ﹄ ( 東 洋 館 出 版 社 / 一九 九 八
年 七 月 ) は 、 西 尾 実 の 国 語 教 育 論 の展 開 を 跡 づ け 、 桑 原 自 身 の国 語 学 習 指 導 論 を 構 想 し て いる 。
中 内 敏 夫 は 、 ﹃生 活 綴 方 成 立 史 研 究 ﹄ ( 明 治 図 書 / 一九 七 〇 年 二 月 ) を 著 し た 。 大 正 か ら 昭 和 にか け て の芦 田
東 京 高 師 付 属 小 学 校 教 師 の実 践 と 理 論︱
﹄
恵 之 助 の ﹁随 意 選 題 論 ﹂ 形 成 の 過 程 を つぶ さ に検 討 し 、 昭 和 期 の生 活 綴 り 方 運 動 の ﹁綴 り 方 観 ﹂ お よ び ﹁教 育 観 ﹂ と の 共 通 点 と 分 岐 点 と を 明 ら か に し て いる 。 高 森 邦 明 は 、 ﹃大 正 昭 和 初 期 に お け る生 活 表 現 の 綴 り 方 の研 究︱
( 高 文 堂 / 二 〇 〇 二 年 二 月 ) に お いて 、 ① 芦 田 恵 之 助 の ﹁随 意 選 題 論 ﹂ は指 導 の系 統 性 を 持 た ぬ 点 に お い て児
童 の発 達 を 無 視 し てお り 、 実 践 の場 に定 着 しな か った 、 ② 飯 田恒 作 ・丸 山 林 平 ・田中 豊 太 郎 ・千 葉 春 雄 ら は 、 大
正 一二年 五 月 に ﹃小 学 綴 方 教 授 細 目 ﹄ ( 培 風 館 ) を 刊 行 し 系 統 的 な ﹁指 導 課 程 案 ﹂ を 示 し た 、 と 述 べ て いる 。
昭和後 期国語教育 史 の研 究
敗 戦 直 後 の数 年 間 は 、 な に も な い焦 土 か ら新 し い国 語 教 育 を 生 み 出 そ う と す る希 望 に満 ち た 時 代 で あ った 。 戦 後 国 語 教 育 史 は 可 能 性 の探 求 史 でも あ った 。
(昭 和 二 二 年 度 )← 検 定 教 科 書 (昭 和 二 四 年 度 )
吉 田裕久 ﹃ 戦後 初期国語 教科書史 研究﹄ ( 風 間 書 房 / 二 〇 〇 一年 三月 ) は 、 敗 戦 直 後 の ﹁墨 ぬり 教 科 書 ﹂ ( 昭和 二 〇年 後 期 )← 暫 定 教 科 書 (昭 和 二 一年 度 )← 第 六 次 国 定 教 科 書
と めま ぐ る し く 変 化 し た 時 期 の教 科 書 の成 立 過 程 ・使 用 の実 態 を 明 ら か に し 、 こ の短 期 間 の教 科 書 が そ の後 の 五
十 年 間 、 さ ら に は 二十 一世 紀 の教 科 書 に ま で引 き 継 が れ る 国 語 教 科 書 の骨 格 を 作 り 上 げ て いた こ と を 明 ら か に し た。
飛 田 隆 ﹃戦 後 国 語 教 育 史 ﹄ 上 ・下 (教 育 出 版 セ ンタ ー / 一九 八 三 年 八月 ) は 、 自 己 の生 き た 同 時 代 の中 等 国
語 教 育 史 を 、 第 一部 経 験 主 義 国 語 教 育 (上 巻 )、 第 二 部 能 力 主 義 国 語 教 育 (下 巻 ) の 二部 に わ け て 、 資 料 に 語 ら せ る方 法 で記 述 し て いる 。
浜 本 純 逸 ﹃戦 後 文 学 教 育 方 法 論 史 ﹄ (明 治 図 書 / 一九 七 八年 九 月 ) ・田 近 洵 一 ﹃ 戦後 国語教育 問題 史﹄ ( 大修 館
書 店 一九 九 一年 一二 月 ) は 、 一九 八 ○年 頃 ま で の文 学 教 育 史 の記 述 を 試 み て いる 。
大 内 善 一 ﹃戦 後 作 文 教 育 史 研 究 ﹄ ( 教 育 出 版 セ ン タ ー / 一九 八 四年 六 月 ) は 、 敗 戦 直 後 か ら 一九 六 〇年 ま で の
作 文 教 育 を 記 述 し て いる 。 さ ら に 、 大 内 は 、 ﹃国 語 科 教 育 学 への道 ﹄ ( 渓 水 社 / 二 〇 〇 四 年 三 月 ) に お い て、 田 中 豊 太 郎 な ど を 扱 った ﹁表 現 教 育 史 ﹂ に 関す る 諸 論 考 を ま と め て いる 。
菅 原 稔 ﹃ 戦 後 作 文 ・綴 り 方 の研 究 ﹄ ( 渓 水 社 / 二 〇 〇 四 年 三 月 ) は 、 東 井 義 雄 ・戸 田 唯 巳 ・小 西 健 二郎 ・黒 藪 次 男 ・黒 藪 豊 子 の実 践 を 精 細 に調 査 し 記 録 し て い る 。
渡 辺 春 美 ﹃戦 後 古 典 教 育 論 の研 究︱ 時 枝 誠 記 ・荒 木 繁 ・益 田 勝 実 三 氏 を 中 心 に︱ ﹄ (渓 水 社 / 二 〇 〇 四 年 三 月 ) は 、 三氏 の古 典 教 育 論 の成 立 過 程 と そ の特 質 を 明 ら か にし て い る。
国 際 化 の中 の 国 語 教 育 史 研 究
近 代 日 本 の言 語 認 識︱
﹄( 岩 波 書 店 / 一九 九 六 年 一二 月 ) は、 上 田 万
の授 業 ﹂ ( ド ー デ ー作 ) が突 然 教 材 か ら お ろ さ れ て し ま った 原 因 を 追 究 し て いる 。 一教 材 を 社 会 言 語 学 的 に 考 察
府 川 源 一郎 ﹃消 え た ﹁最 後 の授 業 ﹂﹄ ( 大 修 館 書 店 / 一九 九 二年 一二月 ) は 、 長 期 間 の定 番 教 材 であ った ﹁最 後
し た 研 究 であ る 。 イ ・ヨ ン ス ク ﹃﹁国 語 ﹂ と いう 思 想︱
年 と 保 科 孝 一の言 説 を 追 跡 し 、 ﹁国 語 ﹂ と いう 用 語 が 書 き 言 葉 と 話 し 言 葉 と を 和 解 さ せ て ﹁言 文 一致 ﹂ に よ って
国 民 の言 語 表 出 を カ バ ー で き る よ う に し た こと と 、 そ の統 一性 が ﹁国 家 ﹂ 意 識 に よ って支 え ら れ て い る と いう こ と と を 検 証 し て いる 。
川村 湊 は、 ﹃ 海 を 渡 った 日 本 語 ﹄ (青 土 社 / 一九 九 四年 一二月 ) に お い て、 戦 時 中 の ア ジ ア で の ﹁国 語 ﹂ 教 育
に つ いて考 察 し 、 ﹃ 作 文 のな か の 大 日 本 帝 国﹄ (岩 波 書 店 / 二 〇 〇 〇 年 二月 ) に お いて 、 戦 前 ・戦 後 の生 活 綴 り 方
が ﹁書 か せ る ﹂ こ と に よ って子 ど も た ち の内 面 を 支 配 す る ﹁巧 妙 な イ デ オ ロギ ー 装 置 と し て働 いた ﹂ と 結 論 づ け ている。
安 田 敏 明 ﹃帝 国 日 本 の言 語 編 成 ﹄ (世 織 書 房 / 一九 九 七 年 一二 月 ) は 、 上 田 万 年 が ﹁国 語 ﹂ を 国 家 内 を 循 環 す
る ﹁血 液 ﹂ と 比 喩 し た こと か ら ﹁純 血 性 ﹂ を 当 然 と す る 議 論 が生 じ 、 標 準 語 を 方 言 の上 に置 き 、 植 民 地 への 日本 語 教 育 の必 要 性 を 説 く 議 論 が 生 じ た と 指 摘 す る 。
語 学 教 育 的 教 授 法 期 (明
国 際 化 時 代 の 国 語 教 育 のあ り 方 を 考 え る に当 た って 、 戦 前 の国 語 教 育 の光 と 影 は熟 慮 す べ き 観 点 を 提 出 し て い る。
今後 の課題 (1) 時 代 区 分 のこ と
西尾 実 は、 ﹃ 国 語 教 育 学 の構 想 ﹄ ( 筑 摩 書 房 / 一九 五 一年 一月 ) に お い て 、 第 一期
治 初 年 ∼ 末 年 )、 第 二 期 文 学 教 育 的 教 材 研 究 期 (大 正 初 年 ∼ 昭 和 一〇 年 ご ろ)、 第 三 期 言 語 教 育 的 学 習 指 導 期
(昭 和 一 一年 ご ろ ∼ 二 六 年 ) と いう 時 代 区 分 を 示 し た 。 ① 大 正 期 の豊 か な 国 語 教 育 理 論 と 実 践 の 開 花 、 ② 戦 中 と
戦 後 の国 語 教 育 思 想 の 断 絶 、 な ど を ど う 評 価 す る か に よ って 、 別 の時 代 区 分 が 考 え ら れ よ う 。 ( 2) 国 語 科 教 育 の構 想
国 語 科 の内 容 と 構 造 は ど う あ る べき か 。 国 語 科 教 育 の歴 史 は 国 語 科 構 造 探 索 の歩 み であ った 、 と と ら え る こ と
も で き る 。 歴 史 研 究 を 通 し て、 こ れ か ら の 国 語 科 教 育 の内 容 と構 造 を 明 ら か にし て いき た い。 ( 3) 地 方 国 語 教 育 史 の研 究
国 語 教 育 の 実 際 は各 地 域 の実 践 に あ る。 各 地 域 の 理 論 と 実 践 を 掘 り 起 こ し 、 国 語 教 育 史 に 汲 み 上 げ 組 み 入 れ て いく こと に よ って、 こ れ か ら の 国 語 教 育 の豊 か な 展 望 が 可 能 に な る であ ろう 。 ( 4 ) 歴 史 か ら 見 え てく る 国 語 教 育 思 想
[ 浜本純逸]
歴 史 研 究 は 資 料 の羅 列 では な い。 国 語 教 育 は ど う あ る べ き か と いう 国 語 教 育 思 想 を 確 か にす る こと に よ って 、 歴 史 研 究 は未 来 を 見 通 す 高 み に立 つこ と が で き る 。
﹃ 国 語教 育 方 法 論 史 ﹄ ( 明 治 図 書 / 一九 六 五年 ) 飛 田多 喜 雄
明 治 三 十 三年 の ﹁小 学 校 令 ﹂ 改 正 か ら 明 治 四 十 五年 ま で︱
大 正 元 年 (一九一三 年 )か ら 昭 和 十年 (一九 三 五 年 )ご ろま で︱
(一九 二 二 年 ) ご ろ ま で︱
︱大 正 十 一年 ご ろ か ら 昭和 十 年 (一九 三 五 年 ) ご ろま で︱
[ 後 期 ] 指 導 原 理 形 成 期︱ ﹁指 導 原 理 の探 究 と 指 導 法 の樹 立 ﹂
︱大 正 元 年 か ら 大 正 十 一年
[ 前 期 ] 教 材 研 究 期︱ ﹁教 材 研 究 を 主 位 と す る指 導 法 の開 拓 ﹂
第 二期 文 学 教 育 期︱ ﹁教 材 研 究 時 代 ﹂︱
︱
[ 後 期 ] 国 語 科 成 立 期︱ ﹁国 語 科 成 立 と 教 授 法 の模 索 ﹂
︱明 治 元 年 か ら 明 治 三 十 三 年 (一九 〇 〇年 ) の ﹁小 学 校 令 ﹂ 改 正 ま で︱
[前 期 ] 法 令 制 定 期︱ ﹁各 科 教 授 法 の適 用 と 考 案 ﹂
第 一期 語 学 教 育 期︱ ﹁訓詁 注 釈 時 代 ﹂︱ 明 治 元 年 (一八 六 八 年 )か ら 明 治 四 十 五年 (一九 一二 年 )ま で︱
歴 史 考 察 を 行 う に あ た り 、 西 尾 説 等 を 踏 ま え な が ら 、 次 のよ う な 時 期 区 分 が な さ れ て いる 。
方 法 の推 移 に つ い て﹂、 膨 大 な資 料 に基 づ き な が ら考 究 さ れ た も の であ る 。
現 実 を 認 識 し よ う と す る 意 図 ﹂ で、 ﹁明 治 ・大 正 ・昭 和 と いう 三代 の お よ そ 一世 紀 にわ た る国 語 教 育 の歩 み と 、
本 書 は 、 ﹁国 語 教 育 方 法 の 科 学 化 のた め に 、 ま ず 、 歴 史 的 事 実 を 理 解 し 、 先 達 の足 跡 に触 れ 、 学 ぶ 心 に 立 って
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第 三期 言語 教育期︱ ﹁ 言語 生活時代﹂︱ 昭和十年 ごろから 現在 ま で︱
昭 和十年ご ろから終戦 (一九 四五年 )ま で︱
[ 前期 ]言語活 動期︱ ﹁ 新領域 の開拓と 錬成教育 の強調﹂ ︱
︱
終 戦から現在 ま で︱
[ 後期 ]言語生 活学習期︱ ﹁ 国 語教育方法 の開拓 と科学化﹂
③ 教材 の性 格究 明と教材観 の
ま た 、 本 格 的 な 指 導 法 の研 究 に 必 要 な 観 点 と し て 、 次 の よう な 条 件 が 挙 げ ら れ て い る。
A 基 礎的条件︱ ①指導 原理 の研究と指導 観 の確 立 ②言語 の本質と 言語観
確立 ④発達 心理と児 童 ・生徒観 の確立 ⑤授業 認識と方 法観 の確 立 ( 授業 研究 には︵印 イ象 ︶ 中心 の経 験的
観察 法︵要 ロ素 ︶ 中心 の構 造的 ・分析 的研究法︵ハ 目︶ 的性 を重視す る機能的研 究法など がある。)
B 実践的条件︱ そ れぞれ の研究 の主た る観点を 、① 指導 目標 におく 場合 ② 指導内 容におく 場合 ③ 指導
計 画 におく場 合 ④指導 形態 におく場合 ⑤ 指導過 程におく場 合 ⑥指導 技術 におく場合
本 書 が 著 さ れ た 時 代 以 上 に 国 語 教 育 の科 学 化 が 求 め ら れ る 現代 に お い て 、 史 的 考 察 の結 果 、 ﹁指 導 法 を 決 定 づ
け る も の は確 た る指 導 原 理 と 実 践 反 応 で あ り 、 そ の背 景 に は 教 育 理 想 、 心 理 学 的 保 証 、 言 語 観 のさ さ え が 必 要 に
な ってく る ﹂ と いう 指 摘 は 、 重 要 であ る 。 未 来 へ の必 然 的 視 点 を 見 出 す た め の必 読 文 献 であ る。 [ 位藤 紀美子]
﹃ 日本 作 文 綴 方 教 育 史 l 明 治篇 ﹄( 国 土 社 / 一九 七 五年 )・﹃2 大 正 篇 ﹄( 同/ 一九 七 八年 )・ ﹃3 昭 和 篇Ⅰ ﹄ ( 同/ ︱九 七 八年 ) 滑 川 道 夫
章 明治期作 文教育 の総括
第 一章 ﹁ 作 文﹂と ﹁ 綴方 ﹂を めぐ って/第 二章 形 式主義 作文期 /第 三章 自 由発表主 義作 文期 /第四
﹃明 治 篇 ﹄
いま 、 全 三巻 の目 次 構 成 のう ち 、 序 章 と 終 章 を 除 く 各 巻 の章 だ てを 取 り 出 す と 、次 のよ う に な って いる 。
四 巻 ﹃昭 和 篇Ⅱ ﹄ の未 刊 は 、 惜 し ま れ る。
実 践 に 取 り 組 み 、 ま た ﹁北 方 教 育 ﹂ 誌 等 を 中 心 に 理 論 的 な 指 導 者 と し て 活 躍 し た 期 間 でも あ った 。 そ れ だ け に 第
で あ った 昭和 一〇 年 か ら 第 二次 世 界 大 戦 終 結 ま で の 時 期 は 、 滑 川 道 夫 博 士 自 身 が 当 事 者 と し て作 文 ・綴 り 方 教 育
第 三 巻 の ﹃昭 和 編Ⅰ ﹄ で、 そ の刊 行 が 中 断 さ れ たま ま にな って い る。 第 四 巻 ﹃昭 和 編Ⅱ ﹄ に 取 り 上 げ ら れ る 予 定
の終 結 ま で を 含 む こ と が 企 図 さ れ て いた 。 そ れ が 、 著 者 ・滑 川 道 夫 博 士 の夭 折 (一九 九 二 / 平 成 四年 ) に よ って
到 な 著 作 で あ る。 た だ 、 本 書 は 当 初 ﹃昭 和 篇Ⅱ ﹄ を 加 え た全 四 巻 と し て企 画 さ れ 、 明 治 初 年 か ら 第 二次 世 界 大 戦
主 要 文 献 の ﹁解 題 ﹂ と ﹁意 義 ﹂ を 中 心 に ま と め ら れ た 、 三 巻 で 一七 五 四 ペ ー ジ に も 及 ぶ 、 現 時 点 で 最 も 詳 細 で周
実 践 を 対 象 と し た も の であ り 、 通 史 と し て の体 系 的 な 取 り 組 み に よ る も の は 少 な い。 そ の よ う な 中 で、 本 書 は 、
現 在 ま で に 、 膨 大 な 業 績 が 集 積 さ れ て いる 。 し か し 、 そ の大 部 分 は 、 特 定 の 地 域 や時 代 、 あ る いは 個 人 の 理 論 や
わ が 国 の 国 語 教 育 学 研 究 の中 で 、 そ の 歴 史 的 研 究 、 わ け ても 作 文 ・綴 り 方 教 育 史 に つ い て の 取 り 組 み は 多 く 、
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﹃ 大正篇﹄
第 一章 修辞 的作文教育 から の離脱/第 二章 生命 主義 綴り方 教育 の出 現/第 三章 児童芸 術運動 と綴り
方 教育/第 四章 随意 選題論争 と綴り方 教育 の発展 /第 五章 生命主義 綴り方教授 の展開 /第六章 第三
期 ﹁ 赤 い鳥 綴方﹂ の発 展/第 七章 童謡 ・児童自由 詩教育 の発展/第 八章 生活 表現 の綴 り方教育 /第九
章 大 正期 の児童 綴り 方作 品 の特 色 /第十章 形 象 理論と 綴り方 教育 /第 十 一章 私学派 の綴 り方 教育
論 /第十 二章 綴り方 教育 におけ る自由 性と系統性 /第十 三章 生活 と綴り方教 育 の結合 /第十 四章 綴 り方教育専 門誌 の誕生 /第十 五章 大正 期綴り方教 育 の総括 ﹃ 昭和 篇Ⅰ﹄
第 一章 三重吉 ・白 秋 の業績 /第 二章 後期赤 い鳥綴方 の展開/第 三章 高 師附小系 の綴方教育論 /第 四
章 都市 的綴方 から地方的 綴方 への傾斜 /第 五章 綴り方 にあら われた社会 的視点/第 六章 興隆す る諸
系流 の論考/第 七章 前期 生活綴方 教育 の誕生 /第 八章 昭和戦前 期 の児童 文 ・詩集 の状況 /第 九章 生 活綴り 方 の発展過 程/第十章 昭和初 期綴方教育 の証言
右 の 目次 ・構 成 か ら 明 ら かな よ う に、 明 治 期 に お け る ﹁作 文 ﹂ か ら ﹁綴 り 方 ﹂ への発 展 、 生 命 主 義 や 随 意 選 題
論 を 契 機 と し た 生 活 綴 り 方 の生 成 と 展 開 、 三 重 吉 や 白 秋 ら の ﹁赤 い鳥 ﹂ か ら 出 発 し た 童 謡 ・児 童 自 由 詩 の成 立
等 、 作 文 ・綴 り 方 教 育 の歴 史 的 な 姿 が 、 細 部 にわ た って、 膨 大 な 第 一次 資 料 に よ って跡 づ け ら れ て いる 。
[ 菅原
稔]
本 書 に は 、 随 所 に 著 者 ・滑 川 道 夫 博 士 の作 文 ・綴 り 方 教 育 論 を う か が う こと が でき 、 歴 史 書 と し てだ け で は な く 、 優 れ た 実 践 書 ・理 論 書 と し ても 第 一級 のも のと 評 価 でき る 。
﹃ 戦 後 文 学 教 育方 法 論 史 ﹄ ( 明 治 図 書 / 一九 七 八年 ) 浜本 純逸
文学 教育 への志向 /第Ⅲ章
経験主義 国語教育 の批判 と文学教育 /第Ⅳ章
問題意 識喚 起 の文 学教育 /
考 え ら れ た か ﹂、 ﹁三 文 学 の指 導 過 程 は ど の よう に 定 式 化 さ れ てき た か ﹂、 ﹁四 教 師 の社 会 認 識 は 文 学 教 育 を ど
る 四 つ の観 点 と し て 、﹁一 文 学 の機 能 は ど のよ う に と ら え ら れ て き た か ﹂、 ﹁二 文 学 教 育 の 内 容 は ど の よ う に
創 造 し て いく こ と であ る︱ し て いく 見 と お し を 得 よ う と す る ﹂ こ と を あ げ て いる 。 そ し て、 文 学 教 育 史 を と ら え
し て 、 ﹁これ か ら の社 会 の文 学 教 育 のよ り よ き 理 論 と 実 践 を 創 造︱ そ れ は 、 具 体 的 に は 、 よ り よ き 文 学 の授 業 を
浜 本 氏 は 、 文 学 教 育 を 、 ﹁子 ど も た ち の 人 間 的 な 成 長 と 発 達 を 保 障 ﹂ す るも のと し 、 文 学 教 育 史 研 究 の 課 題 と
ら 一九 七 〇 年 ま でと し て 、 年 代 を 追 って問 題 を と ら え て いる 。
本 書 では 、 国 語 教 育 の中 でも 特 に 文 学 教 育 の方 法 論 に つい て取 り 上 げ 、 戦 後 の概 念 を 一九 四 五 年 八月 一五 日 か
( 二)/第ⅩⅠ章 戦後 の文学教育実 践 の到達 点/むす び 戦後文 学教育 の達成
育 /第Ⅷ 章 文 学教 育 運 動 の展 開 (一)/ 第Ⅸ 章 読 書指 導 と文 学教 育 /第Ⅹ 章 文 学 教育 運 動 の展 開
第Ⅴ章 文 学的認 識力 の育成 /第Ⅵ 章 読者 の定位 への試 み/第Ⅶ章 読解指導 と読 み方指 導 の中 の文学教
章
はじ めに 文学教育 史研究 の課題/序章 戦後文 学教育史 研究 の概観 /第Ⅰ章 敗戦直後 の文学 教育/第Ⅱ
本 書 の 目 次 は 、 次 のよ う にな って いる 。
84
のよ う に方 向 づ け た か ﹂ を あ げ て、 考 察 を す す め て い る。
具 体 的 な 記 述 の中 で は 、 社 会 の情 勢 、 教 育 界 、 文 学 界 の動 向 な ど を 幅 広 く ふ ま え た 上 で文 学 教 育 を と ら え て 、 位 置 付 け て い る。
さ ら に 、 論 争 な ど の概 要 を 整 理 す る際 に は 、 そ の文 学 教 育 論 の成 立 過 程 に さ か の ぼり 、 さ ら に論 自 体 の そ の後
や 、 そ の 論 に 影 響 を受 け てう ま れ た 他 の論 に つ いて も 述 べ て い る。 こ れ は 、 数 多 く の文 学 教 育 論 を 分 析 、 整 理 し
て全 体 的 に 見 渡 し た 上 で、 そ の論 が 文 学 教 育 論 の流 れ のう ち で、 ど こ に 位 置 付 き 、 ど のよ う な 意 味 を 持 った も の であ る か を ま と め た も のだ と いえ る。
そ れ ぞ れ の論 の根 拠 と な る 実 践 に対 し ても 、 浜 本 氏 な り の分 析 と 評 価 が 加 え ら れ て お り 、 そ れ ぞ れ の文 学 教 育 論 を 今 日 的 に 意 義 付 け て いる と いえ よう 。
第ⅩⅠ 章 で は 、 戦 後 の文 学 教 育 実 践 の 到 達 点 ・文 学 教 育 の典 型 と し て 、 小 学 校 で は ﹁よ り 深 い解 釈 ﹂ を 目 指 し て
イ メ ー ジ を 育 て る読 み を 目 指 し た 点 を 評 価 し て武 田 常 夫 氏 の実 践 、 中 学 校 で は ﹁文 学 と の出 会 い﹂ を 工夫 す る た
め の単 元 学 習 を 創 造 し た 点 を 評 価 し て大 村 は ま 氏 の実 践 、高 等 学 校 で は ﹁十 人 十 色 を 生 か す 文 学 教 育 ﹂ と し て生
( 児 童 文 学 )、 教 育 ・
徒 そ れ ぞ れ の読 み か ら 作 品 の本 質 へ迫 ろ う と し た点 を 評 価 し て太 田正 夫 氏 の実 践 を あ げ て いる 。
巻 末 に は 、 戦 後 文 学 教 育 史 年 表 も 付 さ れ て いる 。 こ の表 は 、 社 会 ・教 育 行 政 、 文 学 教 育
国 語 教 育 の欄 に分 け ら れ て お り 、 各 分 野 で の動 き と 文 学 教 育 の関 係 が よ く わ か る も のと な って いる 。
[ 棚 田真 由 美 ]
こ の よう に 、 本 書 は 、 文 学 教 育 だ け で は な く 、 国 語 教 育 全 体 の 歴 史 を と ら え る 上 でも 基 本 的 な 文 献 であ る と い え る。
﹃ 戦 後 作 文 ・生 活 綴 り方 教 育 論 争 ﹄ ( 明 治 図 書 / 一九 九 四年 ) 大内 善 一
作 文 ・生 活 綴 り 方 教 育 論 争 への底 流
( 試 案 )﹂ の出 現 に つ いて も 言 及 し 、 当 時 の作 文 教 育 界 の状 況 を 昭 和 二 一 二年 九 月 一四 日 に 正 式 に 発 足 し た
つづ く Ⅱ 部 では 、 戦 後 の新 教 育 への批 判 ・対 決 か ら 出 発 し た ﹁生 活 綴 り 方 ﹂ 復 興 の経 緯 に つ いて 通 覧 し 、復 興
き つ つ論 述 を お こ な って い る。
﹁作 文 の会 ﹂ (機 関 誌 は 昭 和 二 三 年 四 月 創 刊 の ﹁作 文 ﹂、 編 集 は 八 木 橋 雄 次 郎 、 小 山 玄夫 な ど ) の動 向 に 力 点 を お
語科編
ど も の作 文 や 綴 り 方 を 興 隆 さ せ よ う と し た 点 に注 目 し な が ら 、 昭 和 二 二 年 版 と 昭 和 二 六年 版 の ﹁学 習 指 導 要 領 国
Ⅰ 部 で は 、 通 史 的 に 敗 戦 後 の状 況 か ら 記 述 を お こ し 、 特 に ﹁赤 と ん ぼ ﹂ や ﹁子 供 の広 場 ﹂ な ど の児 童 雑 誌 が 子
Ⅳ 作 文 ・生活 綴り方教育論 争 の問題史的意義
Ⅲ 作 文 ・生 活 綴 り 方 教 育 論 争 の展 開
Ⅱ 作 文 ・生 活 綴 り 方 教 育 論 争 への導 火 線
I
全 体 は 、 以 下 の よ う な 四 部 仕 立 て に な って いる 。
手 困 難 な こ と も あ り 、 同 書 の前 半 部 を ベ ー ス に 、論 争 の箇 所 に焦 点 を あ て て 、 加 筆 補 訂 さ れ た も の であ る 。
本 書 は 、 一九 八 四年 六 月 発 行 の ﹃戦 後 作 文 教 育 史 研 究︱ 昭 和 35 年 ま で ﹄ ( 教 育 出 版 セ ン タ ー 、 五 一四 頁 ) が 入
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の原 動 力 と な った 、 さ が わ みち お 編 著 ﹃ 大 関 松 三郎 詩 集 山 芋 ﹄ (一九 五 一年 二月 発 行 )、 国 分 一太 郎 著 ﹃ 新しい
綴 方教室 ﹄ ( 初 版 は 一九 五 一年 二 月 、 増 補 版 は 一九 五 二 年 四 月 )、 無 着 成 恭 編 ﹃山 び こ学 校 ﹄ (一九 五 一年 三 月 )
の三 冊 を と り あ げ 、 そ の成 立 、 そ の意 義 や 問 題 点 に つ い て考 察 し 、 国 語 科 の枠 外 へと 広 が って いく 、 ﹁書 く こと ﹂
に よ る 教 育= 生 活 綴 り 方 的 教 育 方 法 が ジ ャー ナ リズ ム にも の って全 国 的 に 注 目 を 浴 び た こ と に よ って 、 国 語 科 作
文 の内 実 であ る ﹁書 く こと ﹂ そ のも の の教 育 す な わ ち 文 章 表 現 技 術 の指 導 が 批 判 的 に 退 け ら れ 、 そ の存 在 が見 え
に く く な った こと に 、 のち に展 開 さ れ る ﹁つづ り 方 か 作 文 か ﹂、 ﹁生 活 指 導 か 作 文 教 育 か﹂ の論 争 へ の契 機 があ っ た と し て いる 。
学 校 作 文 への反 省 ﹂ (一九 五 二年 三
( 生 活 文 か 、 作 文 か )﹂ (一九 五 二年 四 月
Ⅲ 部 で は 、 論 争 の発 端 と な った 朝 日 新 聞 の記 事 ﹁﹃つづ り 方 ﹄ か 作 文 か︱ 月 一日 ) や そ の対 立 点 を 問 題 に し た 読 売 新 聞 の記 事 ﹁混 乱 す る 綴 方 教 育
二 五 日) お よ び 両 陣 営 の主 張 を 整 理 し た 金 子 書 房 編 ﹃生 活 綴 方 と 作 文 教 育 ﹄ (一九 五 二年 六 月 ) を と り あ げ な が
ら 論 争 の 展 開 を お さえ 、 と り わ け ﹁つづ り 方 ﹂ 派 の国 分 一太 郎 と ﹁作 文 ﹂ 派 の倉 澤 栄 吉 の立 論 を 整 理 す る こ と で
両 者 の対 立 点 を 明 確 に し て いる 。 ま た 、 当 時 の生 活 綴 り 方 運 動 隆 盛 の な か で、 ﹁日 本 作 文 の会 ﹂ に向 け ら れ た 国
語 科 作 文 派 か ら の批 判 ・反 批 判 を 契 機 に 、 ﹁作 文 の会 ﹂、 ﹁日 本 作 文 の会 ﹂、 双 方 に お いて 、 国 語 科 文 章 表 現 指 導 の
問 題 が 理 論 的 ・実 践 的 に 追 求 さ れ る よ う に な った 点 に 本 論 争 の 史 的 な 展 開 を 見 定 め よ う と し て い る。
Ⅳ 部 で は 、 数 々 の先 行 研 究 に よ って 、 こ の論 争 の意 義 を 確 認 す ると と も に、 こ の論 争 に 内 在 し て いた 作 文 教 育
[ 田中俊 弥]
の本 質 に か か わ る ﹁ 生 活 ﹂ 概 念 と ﹁表 現﹂ 概 念 の問 題 を 析 出 し 、 国 語 科 作 文 教 育 の目 的 ・内 容 ・方 法 に つ いて の 基 礎 が た め を お し す す め て いる 。
﹃ 話 し こと ば 教 育 史 研 究﹄ ( 明治 図書 / 一九 八〇 年 ) 野 地 潤 家
本 書 は 、 学 位 論 文 ﹁近 代 国 語 教 育 史 研 究 ﹂ ( 広 島 大 学 / 一九 六 六 年 ) の第 二編 を 基 に 、 増 補 し て ま と め ら れ た 、
一 一九 七 ペー ジ に 及 ぶ 大 著 で あ る 。 ﹁は じ め に ﹂ に は 、 ﹁話 し こと ば の教 育 史 ﹂ の ﹁ま と ま った体 系 的 研究 が 在 来
見 ら れ な い﹂ こと を 前 提 に 、 ﹁﹁話 す こ と ﹂ の形 態 ・領 域 の教 育 が 、 近 代 国語 教 育 史 の中 で、 ど こ を 源 流 と し 、 拠
点 と し 、 ど の よう に 構 築 さ れ てき た のか を 身 究 め よ う と 志 し た ﹂ と あ る 。 二 十 五 の論 考 ( 章 ) が 、 次 のよ う な 五
編 で構 成 さ れ 、 近 代 の話 し こ と ば 教 育 の全 体 像 が 、 ほ ぼ年 代 を 追 ってと らえ ら れ る よ う に な って い る。 明 治 前 期 の話 し こと ば の教 育 明 治 後 期 の話 し こと ば の教 育 大 正 期 の話 し こと ば の教 育 Ⅳ 昭 和 期 ( 戦 前 ) の話 し こと ば の教 育 旧 制 中 学 校 の話 し こ と ば の教 育
二十 五 の論 考 の内 容 を 、 主 に各 章 の タ イ ト ル か ら キ ー ワ ー ド の形 で 提 示 し て み る。
( 芦 田 、 増 戸 、 下 平 他 )/ 独 話 / 話 し こと ば 教 科
Ⅰ 堀 秀 成 / 福 沢諭 吉 / 演 説 / 会 議 / 馬 場 辰 猪 の ﹁雄 弁 法 ﹂/婦 人 談 話 会 旨 趣 書 Ⅱ 横 山 健 三郎 ﹁話 方 教 授 之 枝 折 ﹂/與 良 熊 太 郎 / 明 治 三 四年
書 /伊沢修 二
Ⅲ Ⅴ
Ⅱ Ⅰ
86
本厚吉 )
Ⅲ ﹁国 語 教 育 ﹂ 話 方 号 / 雑 誌 ﹁国 語 教 育 ﹂ 以 降 / 芦 田 恵 之 助 / 静 岡 女 子 師 範 附 小 / 台 湾 / ﹁話 方 の経 済 ﹂ ( 森
Ⅳ ﹁国 語 教 育 ﹂第 二 話 方 号 / 昭 和 初 期 の実 践 的 研 究 / 山 崎 正 董 ( 演 説 、 式 辞 )/峰 地 光 重 ︵ 話 聴 教 育 )/ 国 民 学 校 Ⅴ ﹁桐 蔭 間 語 ﹂ ( 森 本 角 蔵 )/弁 論 活 動
著 者 は 、 ﹁は じ め に﹂ で 、 こ れ ら の内 容 の ﹁調 査 ・研 究 ﹂ の方 法 と し て 、① 個 体 史 的 方 法 、 ② 文 献 中 心 の方 法 、
③ 形 態 中 心 の方 法 と いう 三 点 を 挙 げ た 上 で 、 ﹁三 つの方 法 を 、 考 察 の対 象 と し た 各 時 期 の性 格 ・特 性 に 応 じ て 採
り 用 い、 そ れ ぞ れ の 話 し こと ば の教 育 の 側 面 ・実 態 ・実 質 を 明 ら か に し つ つ、 全 体 と し て 明 治 ・大 正 ・昭 和 (戦
前 ) 三 代 の 話 し こと ば の教 育 の史 的 展 開 を 把 握 し よう と 試 み た ﹂ と 述 べ てお り 、 そ の意 図 は 十 分 に 果 た さ れ て い
る 。 教 育 に 関 す る歴 史 研 究 の方 法 を 明 示 し た と いう 点 でも 、 特 筆 に値 す る も の であ ろう 。
﹁お わ り に﹂ に は 、 ﹁近 代 国 語 教 育 史 研 究 に お いて 、 不 振 ・未 開 の分 野 と 目 さ れ て いた 話 す こ と ・聞 く こと の領
域 に も 、 歴 史 的 にた ど って み る な ら 、 思 い のほ か に充 実 し た 歩 み も な さ れ て いた ﹂ と 記 さ れ て い る。 歴 史 的 資 料 を 丁 寧 に渉 猟 し た 結 果 な ら で は の 言 葉 と いう べき であ ろう 。
そ のよ う に近 代 の話 し こ と ば 教 育 を 見 た と き 、 近 年 の話 し こ と ば 教 育 に 見 いだ さ れ て い る 課 題 の多 く は 、 既 に
究 明 さ れ て いる こ と であ った り 、 あ る いは 既 に指 摘 さ れ て いた こ と であ った り す る こ と が 理 解 さ れ る。
著 者 に は 別 に ﹃話 し こ と ば の教 育 ﹄ (私 刊 / 一九 五 二 年 )、 ﹃話 し こ と ば 学 習 論 ﹄ ( 共 文 社 / 一九 七 四年 ) 等 が あ
る。 ま た 、 ﹁対 話 教 育 の復 興 を ﹂ (﹁教 育 科 学 国 語 教 育 ﹂ 一九 八 六 年 一月 号 、 ﹃教 育 話 法 入 門 ﹄ 明治 図 書 / 一九 九 六
年 に再 掲 )は、昭 和期 戦 後 の話 し こ と ば の教 育 、と り わ け 対 話 教 育 に つ い て、歴 史 的 に概 観 ・考 察 し た も の であ る 。
[三浦 和 尚 ]
﹃ 戦 後 国語 授 業 研 究 論 史 ﹄ ( 明治 図書 / 一九 九 七年 ) 須 田 実
一 単元学 習 の授業研究 / 二 主体 的学 習 の授業研究 /三 範 例学習 の授 業研究 /四 発見 学習 の授業 研
Ⅲ 戦後国語 学習理論 の授業 研究
波多 野誼余夫 ﹁ 自己学 習能力を育 てる授業 研究﹂
上田 薫 ﹁ ひとり ひとり の子どもを生 かす授業 研究﹂/六 吉本 均 ﹁ 授業 のド ラ マを つくる授業 研究﹂/七
究 ﹂/三 砂 沢喜 代次 ﹁ 子ども の思考 分析 による授業研究 ﹂/四 広 岡亮蔵 ﹁ 授業改 造 への授 業研究﹂/五
一 重 松鷹 泰 ﹁ 授 業分析 によ る授業 研究 ﹂/ 二 木 原 健太 郎 ﹁コミ ユニケー シ ヨン課程 とし ての授業 研
Ⅱ 戦後 の代表 的授業研 究論︱そ の課題と提 言︱
一 戦後国 語授業研究 論史 の変 遷/ 二 戦後 の年代 区分 によ る授 業研究 の特色
Ⅰ 序論
取 り 上 げ ら れ て いる 内 容 は 、 次 の も の であ る 。
いる。 授 業 研 究 も ま た 、 そ のよ う な 社 会 状 況 の中 に こ れま で存 在 し てき た し 、 そ の状 況 は今 日も 変 わ って いな い。
み で な く 、 世 界 的 な 社 会 状 況 の変 化 の中 で取 り 上 げ ら れ てき た 教 育 学 、 心 理 学 、 社 会 学 な ど と も 大 き く 関 わ って
を 、 歴 史 的 ・実 証 的 に検 討 し た も の であ る。 戦 後 の授 業 の変 遷 は 、 そ の時 代 に お け る 国 の文 教 政 策 や国 語 教 育 の
本 書 は 、 戦 後 か ら 平 成 に 入 る ま で の約 五 十 年 間 の 国 語 教 育 の史 的 変 遷 の中 で 、 各 時 代 に 注 目 さ れ た 授 業 研 究
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究/五 課 題解決学 習 の授業 研究/六 機能 的学 習 の授業 研究 /七 集 団学習 の授 業研究 /八 プ ログ ラ
ム学習 の授業 研究/ 九 スキ ル学習 の授業 研究 /十 ﹁一読 総合法 ﹂学 習 の授業 研究 /十 一 学び方学 習
の授業研究 /十 二 探求学習 /十三 体 験的学習 /十 四 完全 習得学 習 の授業 研究/十 五 自己教育 力を 育 てる学 習 の授業研 究
Ⅱ に お け る授 業 研 究 の諸 論 考 は 、 国 語 教 育 の中 か ら のも の の み でな く 、 そ れ ぞ れ の時 代 に お け る 教 育 思 潮 や課
題 か ら で た 問 題 意 識 に よ って行 わ れ て き た も のを 取 り 上 げ て い る 。 さ ら に 、 日本 の教 育 課 題 のみ にと ど ま ら ず 、 諸 外 国 の学 説 に 影 響 さ れ て い る こ と や 、 多 様 な 授 業 研 究 の視 点 も 提 示 し て いる 。
Ⅲ では 、 様 々な 学 習論 を 取 り 上 げ 、 授 業 の諸 要 因 に 対 す る違 いを 明 ら か にし て いる 。 な お 、 こ こ で 取 り 上 げ ら
れ て いな い学 習 論 は 、 須 田 実 ﹃ 戦 後 国 語 教 育 リ ー ダ ー の功 罪 ﹄ ( 明 治 図書 / 一九 九 五 年 ) で ま と め ら れ て いる 。 須 田 は 、 本 書 の中 で 、 次 の よう に 述 べ て いる 。
現 状 の 教 育 課 題 を 克 服 し 、 授 業 を よ り よ いも のに 創 出 し合 い、 新 し い時 代 を導 く 歴 史 を 築 いて いく た め に は 、 歴 史 の再 検 討 が あ って こ そ 実 現 し 得 る も のと 考 え る (﹁ま え が き ﹂ 四 頁 )。
教 育 に は 、 そ れ ぞ れ の時 代 が 求 め る人 材 を 育 成 す る こと が 求 め ら れ て い る。 時 代 の進 歩 に よ って 、 求 め ら れ る
[ 高木 展郎]
教 育 内 容 も 変 化 し て いる 。 だ か ら こ そ、 そ れ ま で の時 代 で 培 わ れ てき た 教 育 内 容 を 踏 ま え る こと な し に 、 未 来 の
授 業 を 創 出 す る こと が でき な いこ と を 筆 者 は 主 張 し て お り 、 そ こ に こ の著 の意 味 と 価 値 が あ る 。
第 十章 比 較 国語 教 育 研究
近 代 国 語 教 育 は 、 明 治 維 新 を そ の出 発 点 と し 、 先 進 欧 米 の 国 語 教 育 に 学 び 、 多 く を 摂 取 す る こ と か ら 始 ま っ
た 。 し た が って、 影 響 関 係 のあ る 二国 間 を 研 究 す る 比 較 国 語 教 育 の研 究 は 、 日本 の歴 史 的 な 展 望 を え る う え で 欠
か す こと の で き な い領 域 であ る 。 世 界 的 に も 教 育 の改 革 が 普 及 し た 二 〇 世 紀 の一 九 二 〇年 代 (日本 の大 正 期 ) に
も 、 意 欲 的 な 摂 取 が お こ な わ れ た 。 戦 後 の ア メ リ カ か ら の 圧 倒 的 な 影 響 は いう ま でも な い。 そ れ 以 後 の改 革 も 、 多 か れ 少 な か れ 、 外 国 か ら の影 響 は 無 視 す る こ と が で き な い。
こ の よう な 影 響 関 係 に 着 目 し た 研 究 と し て 、 明 治 期 に つ い て は 、 西 本 喜 久 子 ﹃ア メ リ カ の 話 し 言 葉 教 育 ﹄ (渓
水 社 ) や、 有 沢 俊 太 郎 ﹃明 治 期 前 中 期 に お け る 日本 的 レト リ ック の展 開 過 程 に関 す る 研 究 ﹄ ( 風 間書房) があり、
近 刊 が 予想 さ れ る 望 月 久 貴 の諸 研 究 が あ る 。 大 正 期 に つ い ては 、 ﹃ 大 槻 和 夫 著 作 集 ﹄ の第 八 巻 を あ げ る こ と が で
き る 。 戦 後 の ア メ リ カ に つ い て は 、 占 領 下 の、 ア メ リ カ 側 の資 料 探 索 と そ の分 析 が 始 ま った と こ ろ で 、 こ れ か ら の解 明 が 期 待 で き る 。
比 較 研 究 と し て は 、 も う 一つ、 影 響 関 係 の 有 無 を こえ て、 こ れ か ら の教 育 改 革 に有 効 な 諸 情 報 の解 明 と いう 方
向 があ る 。 そ のた め に は 、 一カ 国 だ け で はな く 、 同 じ 課 題 に つ い て の多 国 間 の比 較 検 討 が 求 め ら れ る。 多 数 の 研
究 者 を 要 す る も のだ け に 、 共 同 作 業 な し に は 不 可 能 で あ る 。 そ の早 い試 み と し て野 地 潤 家 編 の ﹃世 界 の作 文 教 育﹄ ( 渓 水 社 ) が あ る 。 これ に 続 く も の が 、 世 に出 る こと が 望 ま れ る。
比 較 の意 味 を 全 う す るた め に は 、 対 象 と す る 国 の独 自 性 の解 明 が 欠 か せ な い。 優 れ た と こ ろ を 摂 取 す る と いう
行 き 方 で は 、 そ の核 心 に あ るも の、 そ れ が も た ら さ れ た 必 然 性 を 見 逃 し や す い。 摂 取 す る に し て も 、 中 途 で 終 わ
る こと が 多 い。 こ れ ら の反 省 か ら 、 個 別 の、 最 先 端 だ け で な く 、 歴 史 的 な 展 開 と 、 そ れ が 抱 え て いる 問 題 点 、 そ の解 決 法 と い った 複 眼 的 な 研 究 が 求 め ら れ る よ う に な った 。
﹃ア メ リ カ の表 現 教 育 と コ ンピ ユー タ︱ 小 ・中 ・高 ・大 学 の教 育 事
こ の よ う な 観 点 か ら 、 五点 を 取 り 上 げ た が 、 ほ か に、 桑 原 隆 ﹃ホ ー ル ・ラ ンゲ ー ジ︱ 言葉 と 子 ど も と 学 習 米 国 の 言 語 教 育 運 動 ﹄ (国 土 社 )、 入 部 明 子
[ 中 西 一弘 ]
情﹄ (教 育 出 版 セ ン タ ー )、 安 直 哉 ﹃イ ギ リ ス中 等 教 育 音 声 国 語 教 育 史 研 究 ﹄ (東 洋 館 出 版 社 ) な ど 、 意 欲 的 な 研 究 が あ る 。 比 較 国 語 教 育 の研 究 は 、 緒 に ついた ば か り であ る 。
﹃ア メリ カ の国 語 教育 ﹄ ( 渓水 社 / 一九九 二年 ) 森 田 信 義 編 著
第 2 章 ﹁物 語 ・小 説 の教 育 ﹂ ( 堀 泰 樹 著 )︱
文 学 教 育 の目 標 は 学 習 者 の人 間 的 成 長 に置 か れ て いる 。 テ キ ス
で は あ る が 、 新 し い試 み や成 果 を 生 み出 す 可 能 性 も も つ。
め 、 教 育 課 程 の構 成 要 素 (﹁文 学 ﹂、 ﹁作 文 ﹂、 ﹁文 法 ﹂ な ど の区 分 ) が地 域 で異 な る 。 こ う し た 多 様 性 は 悩 み
第 1章 ﹁国 語 の教 育 課 程 ﹂ ( 森 田 信 義 著 )︱ 全 国 テ スト も 行 う が教 育 課 程 は 各 州 ・学 区 で作 成 さ れ て い る た
こ れ ら の事 象 は 全 国 に 影 響 を 及 ぼ す 契 機 と な った 。
い る。 ア メ リ カ で は 日 本 の ﹃ 学 習 指 導 要 領 ﹄ の よ う に 全 国 規 模 で 一斉 に方 向 が 決 定 さ れ る こ と は 少 な い が 、
キ ユラ ム﹄、 ﹃ 新 国 語 ﹄、 ﹃ダ ー ト マス ・セ ミ ナ ー﹄、 ﹁基 本 に か え れ ﹂ 運 動 を 中 心 に 五 十 年 間 の変 化 を 概 観 し て
序 章 ﹁ア メ リ カ の国 語 教 育 の展 開﹂ ( 森 田 信 義 著 )︱ ア メ リ カ の国 語 教 育 史 上 重 要 な 事 象 、 ﹃国 語 の経 験 カ リ
す る (一斉 指 導 と 一人 学 習 と 能 力 別 グ ル ー プ 指 導 と を 組 み合 わ せ る こ と で可 能 )。
る 。 ま た 、 全 国 的 に 小 学 校 は 四 十 五 分 授 業 で はな い。 午 前 中 は 休 み時 間 な し で ず っと 算 数 と 国 語 を 並 行 さ せ た り
る 。 例 え ば 、 5︲3︲4 制 の 州 が あ る 。 小 学 校 で は ﹁国 語 ﹂ の ほ か に ﹁図 書 館 ﹂ や ﹁演 劇 ﹂ の授 業 を 置 く 州 が あ
本 書 は 次 の事 情 を 念 頭 に 置 いて 読 む と 理 解 し や す い。 ア メ リ カ で は 州 や 学 区 ご と に 個 別 の教 育 課 程 が 存 在 す
課 程 、 指 導 理 論 、 教 材 、 指 導 方 法 な ど が 紹 介 ・分 析 さ れ て いる 。
現 在 ) を 詳 細 に報 告 し て いる 。 序 章 と 第 1 章 が 総 論 で あ る 。 第 2 ∼第 5章 が 領 域 ご と の各 論 で、 指 導 目 標 、 教 育
本 書 は 、 一九 三 〇 ∼ 一九 八 ○ 年 代 の約 五 十 年 に わ た る アメ リ カ 国 語 教 育 全 般 を 概 観 し つ つ、 現 状 (一九 九 二年
88
ト を 一様 に解 釈 す る こと を 目 標 に せず 個 々 の読 み 手 の 反 応 を 重 視 す る 。 教 材 は 多 彩 で学 習 者 と 同 年 齢 の人 物
が登 場 す る作 品 が 多 い。 内 容 本 位 の指 導 か ら 要 素 や構 造 を 読 み取 ら せ る指 導 ま であ る。 デ ィ ス カ ッシ ヨ ン や
国 民 全 体 の 読 み の基 礎 能 力 の低 さ が 悩 み であ る た め 、 目 標 は
レ ポ ー ト な ど が 文 字 の指 導 に 取 り 入 れ ら れ て い る場 合 が多 い。 第 3 章 ﹁読 む こ と の教 育 ﹂ ( 森 田信 義 著 )︱
﹁自 立 し た 読 み 手 を 社 会 に 送 り 出 す こと ﹂ であ る 。 理論 で は 、 ト ップ ・ダ ウ ン 、 ボ ト ム ・ア ップ 、 相 互 作 用
モ デ ルが 研 究 さ れ て き た 。 理 論 の有 効 性 は 数 値 化 さ れ た デ ー タ で検 証 さ れ て お り 、 科 学 的 研 究 の蓄 積 が 実 践
に 生 か さ れ て いる 。 評 価 に 関 す る 研 究 も 盛 ん であ る 。 ﹁字 義 ど お り の理 解 ﹂ や ﹁解 釈 的 理 解 ﹂ を 超 え 、 ﹁批 判
一九 八 ○ 年 代 、 従 来 の ﹁分 断 的 ﹂ 指 導 か ら ﹁統 合 的 ﹂ 指 導 を 重
的 理 解 ﹂ ま で指 導 す る こと が 意 識 さ れ て い る。 第 4章 ﹁書 く こ と の教 育 ﹂ ( 堀 江 祐 爾 著 )︱
ア メ リ カ では 、修 辞 学 と 雄 弁 術 の教 育 に は 歴 史 が あ る。 二〇
視 す る方 向 への変 化 が あ った 。 そ れ に伴 い 二 つ の特 徴 的 な 指 導 法 ﹁プ ロ セ ス ・アプ ロー チ ﹂ と ﹁ホ ー ル ・ラ ンゲ ー ジ﹂ が 生 ま れ 全 国 に広 が った 。 第 5章 ﹁話 し こ と ば の教 育 ﹂( 西 本 喜 久 子 著 )︱
世 紀 初 頭 で は スピ ー チ 教 育 が 指 導 者 養 成 の 一環 で あ り 、経 験 主 義 のも と で は 実 用 的 な 意 思 疎 通 が 重 視 さ れ た 。
一九 五 〇 ∼ 一九 六 〇 年 代 に は 文 学 的 修 辞 の学 習 が 強 調 さ れ 、 一九 七 〇 年 代 以 降 は社 会 的 存 在 と し て の 子 ど も が主体 とされた 。
五 十 州 が 個 別 の教 育 課 程 を 持 つ国 の全 体 像 を つか む こと は 困 難 であ る が 、 本 書 は マク ロ/ ミ ク ロ の視 点 を 往 復
[ 佐渡島 紗織]
し てそ れ を 成 し 遂 げ て い る。 日 本 と の比 較 に よ る 考 察 も 随 所 に加 味 さ れ 、 今 後 の 日本 の国 語 教 育 を 考 え る 上 でも
大 変 有 用 で あ る。 ま た 、 指 導 の実 例 部 分 は 、 指 導 法 を 学 ぶ 上 で の貴 重 な 参 考 資 料 であ る 。
﹃ 中 国 の国 語 教育 ﹄ ( 渓 水社 / 一九九 五年 ) 南 本 義 一
を 中 心 に、 一部 未 発 表 のも の を 含 ん で いる 。 ( ) 内 は 節 の内 容 )。
(そ の歴 史︱
﹃中 学 語 文 教 学 法 ﹄ を 中 心 に︱ )
中 学 のば あ いを 中 心 に
﹁緒 論 ﹂ を 中 心 に︱
一 八十 年 代 の国 語 科 教 育 研 究︱ 語 科 教 育 学 の構 想︱ 二 国 語 教 科 書 に つ いて︱
﹃ 初 級 中 学 課 本 語 文 ﹄ 第 三 冊 の ば あ い︱
概 観︱ )
/ 詩 の指 導 )
/ 現 行 国 語 教 科 書 の概 況 /
﹁故 郷 ﹂ ( 魯 迅)
を底 に持し て)
(つね に 国 家 発 展 へ の国 語 力 を 問 う / 着 実 で 真 実 な 読 みを め ざ す︱
編 成 に つ い て/ 事 例︱ 三 読 む こ と の教 育 )
﹁故 郷 ﹂ ( 魯 迅 ) のば あ い︱
六 補 説 ( 朱 紹禹 著 ﹃中 学 語 文 教 育 概 説 ﹄ ﹁緒 言 ﹂ / ﹁全 日制 中 学 語 文 教 学 大 綱 ﹂)
五 指 導 の実 際 ( 小 説 の指 導︱
四 書 く こ と の教 育 (明 快 な 原 理 ・原 則 ・基 本 を 求 め る /何 のた め に書 く の か︱
の事 例︱
(﹃ 中 学 語 文 教 学 法 ﹄ の成 立 と 特 質 / 国
次 の よう な 章 で構 成 さ れ て いる ( 収 め ら れ て いる 論 考 は 、 一九八 五 年 か ら 一九 九 四年 に か け て発 表 さ れ た も の
学 校 を 中 心 に 明 ら か に し よう と し た も の であ る 。
書 な ど を 資 料 と し て 、 文 化 大 革 命 (一九 六 六 ∼ 一九 七 六年 ) 終 結 後 の中 華 人 民 共 和 国 の国 語 教 育 の有 り 様 を 、 中
本 書 は 、 漢 文 学 に も 素 養 の深 い著 者 が 、 教 学 大 綱 ( 学 習 指 導 要 領 に 相 当 )、 国 語 教 科 書 ・指 導 書 、 お よ び 研 究
89
一で は 、 ﹁国 語 教 育 実 践 ・研 究 者 た ち の、 国 語 教 育 理 論 の学 的 構 築 への意 気 と そ の構 想 の概 要 を う か が お う と
し た ﹂ と 述 べ ら れ て いる と お り 、 語 文 教 学 法 と いう 研 究 領 域 の建 設 途 上 の成 果 と し て 、 め ざ す 枠 組 み を 捉 え よう
と し て い る。 そ の こと は 、 著 者 自 身 の国 語 教 育 学 の構 想 を 探 究 す る姿 勢 と 対 応 し て い る。 六 の補 説 に紹 介 さ れ た
朱 紹禹 著 ﹃ 中 学 語 文 教 育 概 説 ﹄ に 、 中 等 学 校 国 語 教 育 学 の性 格 ・研 究 対 象 ・任 務 ・基 礎 ・研 究 方 法 に 言 及 さ れ た ﹁緒 言 ﹂ を 取 り 上 げ て い る こ と も そ の 現 れ と 言 え る 。
二 で は 、 中 華 人 民 共 和 国 建 国 (一九 四九 年 ) 以 来 の概 観 を 試 み 、 一九 八 一年 発 行 の ﹃ 初級 中学課本 語文﹄第
三冊 ( 中 学 二年 前 期 用 ) を 例 に構 成 や特 徴 に つ いて 取 り 上 げ て い る。 表 現 形 式 と 思 想 内 容 の教 育 が 一致 す る と い
う 原 則 や、 講 読 教 材 と 閲 読 教 材 の両 立 と 配 分 、 総 合 教 科 書 に お け る古 典 教 材 の あ り 方 な ど 、 わ が 国 の教 科 書 と の
比 較 の視 点 も 提 示 さ れ て い る。 な お 、 劉 国 正 氏 と の対 談 に基 づ く 情 報 は 、 そ の詳 細 の発 表 が 待 た れ る 。
( 試 行 草 案 )﹂ に準 拠 し て作 成 さ れ た 重 点 中 学 用 教 科 書 を 比 較 し 、
三 で は 、 文 革 後 一九 七 八 年 版 の ﹁中 学 語 文 教 学 大 綱 ( 試 行 草 案 )﹂ に基 づ い て編 纂 さ れ た 全 国 通 用 国 定 教 科 書 と 、 一九 八 一年 版 ﹁六 年 制 重 点 中 学 教 学 計 画 読 む こ と の教 育 の変 化 の方 向 を 探 って いる 。
四 で は 、 書 く こ と と 読 む こと と が 密 接 な 関 係 と し て捉 え ら れ て お り 、 ﹁作 文 教 育 は 、 国 語 能 力 の総 合 的 な 訓 練
の 場 ⋮ ⋮ 」 と いう 考 え 方 が 紹 介 さ れ て いる 。 授 業 で は 、 読 解 指 導 が お お き な 割 合 を 占 め て いる も の の、 そ れ に 付 随 す る 形 で書 く 機 会 が設 け ら れ 、 結 果 と し て 作 文 を 書 く 回 数 が多 いと し て い る。
中 国 では 、 一九 九 九 年 以 降 、 基 礎 教 育 課程 改 革 が進 め ら れ て お り 、 本 書 で取 り 上 げ ら れ た 状 況 か ら さ ま ざ ま な
[ 田中 智生]
変 化 が 見 ら れ る 。 し か し 、 文 革 後 立 て直 さ れ 、 教 科 内 容 の体 系 化 か ら 導 き 出 さ れ た 当 時 の 国 語 教 育 を 踏 ま え る こ
と は 、 現 在 の学 習 者 の主 体 性 に 配慮 し た 国 語 教 育 を 位 置 づ け る 上 でも 欠 か せ な いこ と であ る 。
﹃ 英 国 の国 語教 育︱
理 念 と 実 際﹄ ( リ ー ベ ル 出版 / 一九 九 九 年 ) 山 本 麻 子
(=英 語 ) 教 育 の状 況 が 解 説 さ れ て いる 。
第 二 の柱 は 、 各 領 域 に お け る 学 習 活 動 の具 体 例 の紹 介 であ る 。 本 書 の副 題 は ﹁理 念 と 実 際 ﹂ と な って いる 。 第
ら れ て いる)。
ス テー ジ ご と に ﹁扱 う 範 囲 ﹂ と ﹁期 待 さ れ る 技 能 ﹂ が 示 さ れ て い る (キ ー ス テ ー ジ 三 と 四 は 一つに括 ら れ て 述 べ
シ ヨナ ル カ リ キ ユラ ム が 紹 介 さ れ て い る。 義 務 教 育 を 四 段 階 (キ ー ス テ ー ジ 一∼ 四 ) に分 け て、 そ れ ぞ れ の キ ー
ラ ム が 発 表 さ れ た 。 そ の後 、 約 五 年 お き に改 訂 が な さ れ て いる 。 本 書 で は 、 一九 九 五 年 版 の国 語 (=英 語 ) 科 ナ
う 学 習 指 導 要 領 に近 い性 格 を 有 し て いる 。 一九 八九 ∼ 一九 九 〇 年 に最 初 の国 語 (=英 語 ) 科 ナ シ ヨナ ル カ リ キ ユ
第 一の柱 は 、 ナ シ ヨナ ル カ リ キ ユラ ム の翻 訳 紹 介 な ら び に解 説 であ る 。 ナ シ ヨナ ル カ リ キ ユラ ム は 、 日本 で い
て 、 次 の 二 つ の柱 を 中 心 に論 じ ら れ て いる 。
本 書 では 、 ﹁﹃話 す こ と ・聞 く こ と ﹄ の教 育 ﹂、 ﹁﹃ 読 む こ と ﹄ の教 育 ﹂、 ﹁﹃書 く こ と ﹄ の 教育 ﹂ のそ れ ぞ れ に つ い
ま ら れ る こと が わ か って く る。
単 に ﹁話 す こ と ・聞 く こ と ﹂ の指 導 の改 良 に と ど ま って いた ので は 限 界 が あ り 、 国 語 教 育 全 体 の構 造 改 革 ま で せ
み取 れ る 。 日本 では 近 年 、 ﹁ 話 す こと ・聞 く こと ﹂ の指 導 の重 視 がう った え ら れ て いる 。 し か し 、 そ の実 現 に は 、
発 達 し て いる様 子 を 報 告 し て いる 。 イ ギ リ ス の国 語 教 育 が ﹁話 す こと ﹂ を 中 心 に 展 開 し て いる さ ま が 本 書 か ら 読
イ ギ リ ス の国 語 教 育 の特 徴 と し て 、 著 者 は ﹁自 己表 現 力 の重 視 ﹂ を あ げ て い る 。 そ し て ﹁話 す こ と﹂ の教 育 が
本 書 では 、 イ ギ リ ス (特 に イ ング ラ ン ド) の国 語
90
an )﹂ d、 ﹁ t トeーlク l (ta )﹂ l、k﹁全
一の柱 が いわ ば ﹁理念 ﹂ であ り 、 そ れ に 対 し て こ の第 二 の柱 が ﹁実 際 ﹂ と いう 関 係 を 形 成 し て い る と 言 え る。 ﹁話 す こと ・聞 く こ と ﹂ の具 体 例 と し て は 、 ﹁シ ヨウ ・ア ン ド ・テ ル (show
体 集 会 (aSSembl) yで の話 ﹂、 ﹁劇 ・ミ ユー ジ カ ル (drama,m) u﹂s 、i ﹁討 c論 al(deb) a ﹂tがe紹 介 さ れ て いる 。
m )﹂ a、 rathon
t ﹂、 e﹁ l読lみ in(gr)ead ︶iのn時g間 ﹂、 ﹁脚 本 (scr) iの pt 鑑s 賞 ﹂、 ﹁GC S E 受 験 の準 備 ﹂
﹁ 読 む こと ﹂ の具 体 例 と し ては 、 ﹁副 読 本 ( ﹁reading )﹂、b﹁ o リo ーkデsィ ング ・マ ラ ソ ン (reading ﹁本 の読 み聞 か せ (story
(book
m︶ a﹂ k 、i﹁詩 ng の書 写 と 詩 集
(poetry
a) nt 作h りo﹂l 、ogy
が 紹 介 さ れ て いる 。 G CS E と は 、 義 務 教 育 修 了 前 に受 験 す る公 的 資 格 試 験 であ る 。 そ の資 格 が 就 職 や 進 学 に 効 力 を 持 つ。
w ﹂、 ri ﹁エ tッ iセ ng イ︶(ess )a 書y き ﹂、 ﹁そ の他 の ライ テ ィ ン グ (wri︶ t﹂iが n紹 g介 さ れ て いる 。
(autobio) g作 rり ap ﹂、 h﹁ y新 聞 記 事 、 テ レ ビ の報 道 文 書 き ﹂、 ﹁劇 の 脚 本 (play ) s書 cr きi ﹂、 pt ﹁スト ー
﹁書 く こ と ﹂ の 具 体 例 と し ては 、 ﹁小 冊 子 作 り ﹁ 自 叙伝 リ ー書 き (story
こう し た 具 体 例 は 、 著 者 自 ら の息 子 三 人 を イ ギ リ ス の学 校 に通 わ せ た 体 験 か ら 知 り 得 た も の で あ る 。 実 体 験 を
本書 は イ ギ リ ス の国 語
国語教育 で何が できるか﹄ ( 岩 波 書 店 / 二 〇 〇 三 年 ) も 併 せ て読 ま れ た い。
(=英 語 ) 教 育 の全 体 像 を 概 観 でき る数 少 な い和 書 であ る 。 同 じ 著 者 に よ る ﹃こ と ば を
報 告 し て いると こ ろ に説 得 力 が あ る 。
鍛 え る イ ギ リ ス の学 校︱
[ 安 直哉]
﹃ 近代 初等 国 語 科 教 育 成 立 の条 件 ロシ ア の 場合 ﹄ ( 三重 大 学 出 版 会 / 一九 九 九年 )藤 原和 好
( ナ ロー ド ) と も 呼 ば れ、 無 権 利 な 状 態 に お か れ て いた 。 初 等 教
分 の言 葉 で ま と め さ せ る 。 文 章 表 現 指 導 は 、 縮 約 と 敷衍 を さ せ る ﹁叙 述 ﹂ に よ って な さ れ る 。 ︿表 現 読 み﹀ は 、
︿説 明 読 み ﹀、 ︿ 文 法 ﹀、 ︿正 字 法 ﹀、 ︿表 現 読 み﹀ の六 分 野 であ る。 ︿説 明 読 み ﹀ は 、 テキ ス ト の内 容 を 読 み と り 、 自
一九 一〇年 代 に ニ コ ラ ー イ ・ソ コ ロー フら の 努 力 に よ って 確 立 さ れ た (第Ⅳ 章 )。 内 容 は ︿初 歩 的 読 み書 き ﹀、
芽生え ( 第Ⅱ 章 )、 一八 六 〇∼ 八 ○ 年 代 に ト ル ス ト イ 、 ウ シ ン ス キ ー ら によ って開 発 さ れ ( 第Ⅲ 章 )、 一八 八 ○ ∼
的 試 行 であ った 。 言 語 能 力 育 成 理 念 は 、 一八 四 〇 ∼ 六 〇 年 代 に ブ ス ラ ー エ フ、 ベ リ ン スキ ー ら の言 語 教 育 思 想 に
エ ー チ ) の理 念 と内 容 お よ び指 導 方 法 の探 求 が な さ れ た 。 生 活 の た め の ﹁国 語 科 教 育 ﹂ を 創 造 し よ う と す る 実 践
み 方 、 教 会 用 唱 歌 な ど であ った 。 教 区 学 校 に お け る 教 育 を 克 服 し よう と し て 、 言 語 能 力 育 成 (ラズ ビ ー チ エ ・リ
育 は主 と し て教 区 学 校 で行 わ れ 、 授 業 の大 部 分 は 、 宗 教 的 な 講 話 、 生 活 の た め の言 葉 では な い教 会 ス ラ ブ 語 の読
帝 政 期 (一七 六 二∼ 一九 一七 ) の民 衆 は農 奴
( 1) 帝 政 ロ シ ア期 にお け る ﹁初 等 国 語 科 ﹂ の成 立 過 程 の記 述
語 科 ﹂ の成 立 要 因 、 (3) 日 本 と ロシ ア の 国語 科 教 育 の比 較 、 と いう 三 つ の問 題 を 考 察 し て いる 。
いて 、 ( 1 ) 一八 四 〇年 代 か ら 一九 一〇年 代 ま で の ﹁言 語 能 力 育 成 ﹂ 概 念 の成 立 過 程 、 ( 2 ) 世 界 の近 代 的 な ﹁国
リ エー チ (言 語 能 力 育 成 )﹂ の概 念 形 成 お よ び そ の実 践 と カ リ キ ユラ ム 化 の過 程 で あ った 。 藤 原 氏 は 、 本 書 に お
ほ ど の豊 か な 意 味 内 容 が包 摂 さ れ て いる 。 ロシ ア に お け る ﹁近 代 初 等 国 語 科 の成 立 過 程 ﹂ は 、 ﹁ラズ ビ ー チ エ ・
ロシ ア語 の ﹁リ エー チ﹂ には 、 強 い て 訳 せ ば ﹁こ と ば ・生 き て は た らく 言 葉 ・生 活 語 ・日常 の言 葉 ﹂ と し た い
91
文 学 作 品 を 美 的 に音 声 表 現 す る 活 動 であ り 、 理 解 と 表 現 を 一体 と し て深 め 、 美 的 感 情 と 倫 理 的 感 情 と を 育 て る 。 ( 2) 世 界 の近 代 的 な ﹁国 語 科 ﹂ の成 立 要 因 の解 明
氏 は、 序 章 で 、 前 近 代 の無 意 図 的 な ﹁こ と ば の 教 育 ﹂ が 近 代 的 初 等 国 語 科 教 育 に発 展 す る た め の 条 件 と し て、
① 母 国 語 教 育 必 要 性 の自 覚 、 ② 母 国 語 ( 話 し 言 葉 ・文 字 ・正 書 法 ) の確 立 と 科 学 的 研 究 、 ③ 近 代 的 人 間 観 ・子 ど
も 観 、 ④ 母 国 語 の文 学 の整 理 、 ⑤ 教 育 理 論 ・発 達 理 論 、 ⑥ 国 語 科 教 育 の統 合 原 理 の確 立 、 を 挙 げ て いる 。 氏 の 研
究 の念 頭 に は 、 こ の観 点 が あ った 。 本 書 の書 名 を ﹃近 代 初 等 国 語 科 教 育 成 立 の 条 件 ﹄ と し た のは 、 ﹁ラズ ビ ー チ
エ ・リ エー チ を 成 立 さ せ る 諸 条 件 は 、 ロシ ア共 和 国 に 特 有 の も の で はな く 、 あ る 程 度 の普 遍 性 を 持 って い る の で
( 寺 田光 雄 ﹃ 民 衆 啓 蒙 の世 界 像 ︱ ド イ ツ民 衆 学 校 読 本 の
は な いか と 思 い いた った か ら で あ る ﹂ と 述 べ て いる 。 こ の観 点 を ふ ま え て読 む と 、 世 界 の 国 々に お け る 近 代 化 過
﹄ ミ ネ ルヴ ァ書 房 一九 九 六 年 )。
程 と 国 語 科 教 育 成 立 の相 関 関 係 が 見 え てく る であ ろう 展 開︱
( 3) 日 本 と ロシ ア の比 較 国 語 科 教 育 的 考 察
ロシ ア の前 近 代 にお い ては 、 学 ぶ べき 教 養 語 は ラ テ ン語 や フラ ン ス語 で あ る と さ れ て い た 。 民 衆 は 、 一九 〇 ○
年 前 後 に 生 活 語 を 学 ぶ ﹁国 語 (ロシ ア語 ) 科 ﹂ を 獲 得 し て い った の であ る 。 江 戸 末 期 か ら 明 治 維 新 を 経 て 近 代 国
家 体 制 が 整 え ら れ て い った 日 本 でも 、 一九 〇 〇 年 に ﹁国 語 科 ﹂ と いう 科 目 が 成 立 し た 。
氏 は 、 終 章 で 、 ① ロシ ア の ︿説 明 読 み ﹀は 実 物 と 言 葉 の教 育 を 切 り 離 さ な い直 感 教 授 を 重 視 し て い る が 、 日 本 の
説 明 文 の読 み は ︿ 言 語 主 義 ﹀的 に な って い る こ と 、 ② ロシ ア の作 文 教 育 は ︿叙 述 ﹀に傾 い て い る が 日 本 で は自 由 作 文
が 主 流 に な って いる こと を 指 摘 し て いる 。 そ の原 因 を 両 国 の国 語 教 育 史 を 探 求 す る こ と に よ って 明 ら か に し て お
[ 浜 本純逸]
り 、 説 得 力 が あ る 。 ロ シ ア の初 等 国 語 科 教 育 の統 合 原 理 を ﹁言 語 能 力 の 育 成 ﹂に 見 出 し 、 ロ シ ア 語 の第 一次 文 献 を
博 捜 し て 丹 念 に た ど り 、 そ の理 念 と 内 容 の形 成 過 程 を 歴 史 と し て 記 述 し た 、 本 書 の価 値 は 高 い。
﹃フラ ン ス の 国語 教 育Ⅰ l 9 60年 代 の初 等 国 語 科 教 育素 描﹄ ( 渓 水社 / 一九 九 七年 ) 中 西 一弘
( 理 解 )← 分 析 的 学 習 ← 総 合 的 活 用 (表 現 ) の 三段 階 か ら な る諸 学 習
( 表 現 ) へ至 る構 造 的 連 関 性 が 、 教 科 指 導 過 程 の基 軸 を 形 成 し て いる 点 が明 快 に 考 究 さ れ て
読 み 方: ︽読 み︱ 解 く ︾、 ︽読 み︱ 考 え る ︾、 ︽読 み︱ 表 現 す る ︾ の構 造 が 見 い出 せ る 。 こ れ は 表 現 と 理 解 の
が 、 そ れ ぞ れ に お い て、 著 者 の洗 練 さ れ た 考 察 力 が 際 立 っ て い る。 以 下 に、 そ の いく つか を 引 用 し て み る 。
い る 。 そ し て 、 こ の よ う な 教 科 構 造 理 解 お よ び 指 導 過 程 理解 に基 づ い て、 後 続 の章 の領 域 論 が 展 開 さ れ て い る
を 経 て話 し 方 ・作 文
に よ って成 就 さ れ て いく の で あ る ﹂ ( 七 頁 ) と 述 べ ら れ 、 読 み 方 (理 解 ) か ら 語 彙 ・文 法 ・活 用 (分 析 的 学 習 )
略 ) 理解 か ら 表 現 へ の原 理 は 、 全 体 の直 観
を 示 し た 上 で、 ﹁理 解 か ら 表 現 へ、 と いう の が 、 フ ラ ン ス 国 語 教 育 の構 造 を な り た た せ て い る 原 理 で あ る 。 ( 中
( 1 ) 読 み方 ・暗 唱 、 (2 ) 語 彙 ・文 法 ・活 用 ・綴 字 法 ・書 取 、 ( 3 ) 話 し 方 ・文 の構 成 (作 文 ) と いう 三 大 領 域
本 書 は ま ず 、 フ ラ ン ス初 等 国 語 教 育 の教 科 構 造 に 関 す る論 究 か ら 始 ま り 、 そ こ で は 、 学 習 指 導 要 領 に お け る
し た 、 比 較 国 語 教 育 研 究 の お手 本 と も いう べき 内 容 と 構 成 に な って いる 。
指 導 過 程 、 さ ら に は授 業 参 観 を 通 し た 国 語 教 室 の実 際 と 、 一つ の国 の国 語 教 育 を 網 羅 的 、 体 系 的 か つ綿 密 に究 明
﹁素 描 ﹂ と いう 控 え め な 表 現 に止 ま ら な い、 教 科 構 造 、 学 習 指 導 要 領 ・訓 令 、 各 学 習 領 域 ご と の教 材 や 指 導 法 /
に 位 置 す るも の であ り 、 初 等 国 語 科 ( 準 備 級 、 初 級 、 中 級 ) を 中 心 テ ー マに設 定 し て いる 。 タイ ト ル に み ら れ る
本 書 は 、 現 代 の フラ ン ス共 和 国 にお け る 国 語 教 育 を 対 象 と し た 、 著 者 によ る 一連 の比 較 国 語 教 育 学 研 究 の起 点
92
統 合 に よ る 漸 層 的 構 成 的 な 指 導 過 程 で あ り 、 ︽読 み ︾ の本 質 に 連 な る 、 二 重 の翻 訳 活 動 現 内 容 の意 味 把 握 ) を 見 事 に組 織 化 し た も のと 認 め る こと が で き る ( 九 二 頁 )。
( 文 字 の音 声 化 と 表
文 法: 文 法 教 育 は 、 二 つの視 点 に よ って 統 一さ れ て い る ので あ る 。 一つは フ ラ ン ス語 の実 際 的 方 面 の 習得
であ り 、 他 は 、 科 学 的 知 識 と 教 養 のた め の反 省 的 学 習 であ る 。 一方 が 、 言 語 の 無 意 識 的 反 応 であ れ ば 、 他 方 は、 言 語 の反 省 的 把 握 で あ る (一五 六 頁 )。
作 文: ﹁イ デ ー か ら 表 現 へ﹂・﹁全 体 か ら 部 分 へ﹂ の指 導 法 ・教 材 化 が と ら れ 、 そ れ ら の学 習 過 程 に お い て、
必 要 な ﹁諸 要 素 ﹂ を 習 得 さ せ 、 生 徒 の自 発 性 を う な が す ﹁作 文 ﹂ の作 成 と 学 習 活 動 が構 成 さ れ て いる 。 学 習
者 と 学 習 内 容 、 イ デ ーと 表 現 、 全 体 と 部 分 、 と い った 二 元 的 な と ら え 方 が 、 ( 中 略)作 文 の学習指導 に お い
て典 型 的 な 形 で 現 れ て いる と こ ろ に 、 フ ラ ン ス の作 文 教 育 の特 性 が あ る (一九 七 ∼ 一九 八 頁 )。
以 上 のよ う な 各 領 域 に お け る 学 習 の本 質 的 部 分 を 解 明 し た 上 で 、 本 書 は 、 著 者 に よ る授 業 参 観 に 基 づ く ﹁国 語
(フ ラ ン ス語 ) 教 室 の 実 際 ﹂ で 締 め括 ら れ て い る 。 そ こ で は 、 時 間 割 や 具 体 的 な 教 材 、 児 童 作 文 お よ び そ れ に 対
す る教 師 の評 語 と い った 資 料 が 具 体 的 に呈 示 さ れ 、 そ れ を 通 し て 、 フ ラ ン ス国 語 教 育 の実 像 が 検 証 的 に 浮 き 彫 り
に さ れ る と と も に 、 わ が 国 の国 語 教 育 に 共 通 す る 、 コト バ の教 育 の本 質 的 課 題 にも 論 究 が な さ れ て いる 。
フラ ン ス の 国 語 教 育 を 対 象 と す る 比 較 国 語 教 育 研 究 と いう 点 で 比 類 の な い労 作 であ る こと は 言 う ま でも な く 、
対 象 国 の国 語 教 育 の理 論 的 枠 組 みを 微 細 にと ら え 、 そ の枠 組 み を も って授 業 の実 際 を 考 察 す る と いう 、 比 較 国 語
[ 土山和 久]
教 育 研 究 の定 石 を 示 し て いる 点 でも 、 比 較 国 語 教 育 研 究 に 取 り 組 む 者 にと って、 貴 重 な 道 標 と な る著 作 であ る 。
第 十 一章 国語 教 育 研究 と 隣 接 諸科 学
国 語 教 育 の 実 践 者 が 国 語 教 育 の ﹁研 究 ﹂ を 始 めた と き よく は ま る陥 穽 ( 落 と し 穴 ) があ る 。 そ れ は 、 隣 接 諸 科
学 の成 果 を そ のま ま 国 語 教 育 の 研 究 に生 か そ う と す る 態 度 で あ る 。 こ こ で いう 隣 接 諸 科 学 は 、 言 語 学 (日本 語 学
を 含 む ) で あ り 、 (教 育 ・認 知 ) 心 理 学 な ど を 指 し て いる 。 こ れ ら の隣 接 諸 科 学 が 、 普 遍 性 を 目 指 す も の で あ る
な ら 、 そ の成 果 は 当 然 国 語 教 育 の研 究 にも 生 か せ る は ず であ る 。 だ が 、 こ こ に は 大 き な 陥 穽 が あ る 。
隣 接 諸 科 学 は 、 普 遍 を 目 指 し て い る。 現 象 を 記 述 し 、 そ こ に 法 則 性 を 発 見 し 、 他 の 現象 にも 適 用 す ると いう 態
度 であ る 。 こ こ に は 、 ﹁具体 か ら 普 遍 ﹂ を た ど る た め に ﹁原 因 と 結 果 ﹂ と いう 因 果 論 を 使 って 説 明 す る と いう 手
順 を 踏 ん で い る 。 つま り 、 没 価 値 的 な 研 究 態 度 な の で あ る 。 こ こ に は 、 ﹁ど う な る の が よ い か ﹂ と いう 価 値 的 ( 目 的 論 的 ) な 発 想 は 入 る は ず は な い。
一方 で、 国 語 教 育 研 究 は 、 国 語 ( 母 語 ) を 学 ぶ こ と で、 ま た 学 ぶと き に学 習者 が ﹁どう な る の が よ いの か ﹂ を
問 い続 け る 。 国 語 科 教 育 の研 究 は 、 き わ め て価 値 的 な 部 分 を 持 って いる の であ る 。
確 か に 、 国 語 教 育 研 究 に お い て、 ﹁授 業 は ど う あ る べ き か﹂、 ﹁学 習 者 は ど の よう に発 達 す べ き か ﹂ と いう 問 い
ば か り が 先 走 り 、 ﹁授 業 は ど う な って い る か ﹂、 ﹁学 習 者 は ど の よ う に 発 達 す る か ﹂ と いう 研 究 が 、 乏 し か った 。
そ の意 味 で 、 国 語 教 育 研 究 に お い て隣 接 諸 科 学 の研 究 を 生 か し た 、 没 価 値 的 な 研 究 が も っと 行 わ れ る べき だ と 考 え る。
し か し 、 目 的 論 的 研 究 が 不 必 要 な の で は な い。 む し ろそ の た め に は 、 言 語 学 や 心 理 学 のよ う な ﹁価 値 ﹂ を 問 わ
な い学 問 で は な く 、 倫 理 学 や 教 育 学 の よう な ﹁価 値 ﹂ に つ い て真 正 面 か ら 考 え て い る分 野 の研 究 を 踏 ま え な け れ ば な ら な い。
こ こま で 見 てき た よ う に、 国 語 教 育 の研 究 アプ ロー チ に は 、 没 価 値 的 な 因 果 論 に 基 づ く いわ ゆ る実 証 的 な アプ
ロ ー チ と 、 価 値 的 な 目 的 論 に 基 づ く 実 践 的 な ア プ ロ ー チ が あ る 。 そ し て 、 言 語 学 や 心 理 学 の よ う な 分 野 の研 究
は 、 前 者 の 研 究 アプ ロー チ に 、 教 育 学 や倫 理 学 の よう な 分 野 の研 究 は後 者 の研 究 アプ ロー チ に 、 そ れ ぞ れ 有 効 な
の で あ る 。 こ の こ と を 忘 れ て 、 言 語 学 や 心 理 学 の よ う な 分 野 の研 究 を 、 安 易 に 後 者 の研 究 に応 用 し て は いけ な
い。 そ れ ら の研 究 に は 、 ﹁ 価 値 への ま な ざ し ﹂ は 閉 ざ さ れ て い る はず だ か ら で あ る 。
ド2 の違 いと 対 応 し て いる 。 ギ ボ ンズ ら に よ れ ば 、 モ ー ド1 は 、 従 来 の ﹁科 学 ﹂ の 概念 と 変 わ ら な い、 あ る 領 域
こ の 二 つ の研 究 ア プ ロー チ の違 いは 、 ギ ボ ンズ ら の いう モー ド 論 に お け る、 知 識 生 産 に お け る モ ー ド 1 と モ ー
の学 問 分 野 の方 法 と 目 的 に合 致 し そ の分 野 の 訓 練 を 受 け た 、 いわ ゆ る ﹁科 学 者 ﹂ が 行 う 知 識 生 産 の様 式 であ る 。
そ れ に対 し 、 モ ー ド 2 は 、 ﹁よ り 広 い コ ン テ ク ス ト 、 ト ラ ン ス デ ィ シプ リ ナ リ な ︵ 引 用 者 注︱ 特 定 の学 問 領 域 を
越 え た ) 社 会 的 、 経 済 的 コ ン テ ク ス ト のな か で 生 み出 さ れ ﹂ る (二 〇 頁 )。 そ の担 い手 は ﹁実 践 家 ﹂ であ り 、 実
際 の 実 践 の最 中 に 問 題 発 見 と 問 題 解 決 が 行 わ れ る 。 さ まざ ま な 分 野 の人 々 が コ ミ ユ ニケ ー シ ヨ ンを 取 り な が ら 行 い、 そ こ で は ﹁流 動 的 な 問 題 解 決 能 力 ﹂ (二八 頁 ) が 必 要 で あ る 。
国 語 教 育 研 究 は 、 こ の モー ド1 と モー ド 2 が 出 会 う 場 と し て 捉 え る 必 要 が あ る 。 も ち ろ ん 、 従 来 の研 究 で も そ
れ ぞ れ の モ ー ド の研 究 が 行 わ れ て いた わ け だ が 、 モ ー ド の区 別 に意 識 的 で は な か った 。 国 語 教 育 研 究 を 志 す 人 間
[ 難 波博孝]
は 、 自 分 の研 究 が ど の ア プ ロー チ のも のか を 意 識 化 し 、 そ の アプ ロー チ に ふ さ わ し い隣 接 諸 科 学 の研 究 を 生 か さ な け れ ば な ら な い。
M ・ギボ ンズ 編/ 小林 信 一監訳 ﹃現代社 会と 知 の創造︱ モー ド論 とは何 か︱ ﹄丸 善 一九九 七年 (原著 一九九 四年 )
参考文献
﹃ 教 育 評 価 法 ハン ド ブ ッ ク ﹄ (第 一法 規 出 版 / 一九 七 三 年 ) B ・S ・ブ ル ー ム ほ か 著 / 梶 田 叡 一ほ か 訳
幼 児 教 育 に お け る 学 習 の評 価︱ 初 期 の言 語 発 達 の経 過︱ ( C ・B ・カ ッ ツ デ ン著 / 高 木 和 子 訳 ) (W ・J ・ム ー ア 、L
・A ・ジ ヨ ン ソ ン 共 訳 )
・D ・ケ ネ デ ィ 著 / 井 上 尚 美 訳 )
Ⅱ 言 語 教 育 に お け る 学 習 の 評 価
(A ・C ・パ ー ブ ス 著 / 窪 田 愛 子 、J
共 著 と し て 成 立 し た ﹁ハン ド ブ ッ ク﹂ で あ る が 、 一般 的 に は 、 シ カ ゴ 大 学 の教 授 であ る ブ ルー ム の理 論 と し て
Ⅳ 作 文 教 育 にお け る 学 習 の評 価 (J・J ・フ ォリ ー 著 / 石 原 敏 道 訳 )
Ⅲ 文 学 教 育 に お け る 学 習 の 評 価
Ⅰ
て い る。 特 に国 語 科 教 育 に関 係 が 深 いの は 、 ﹃学 習 評 価 ハンド ブ ック ﹄ 上 巻 の以 下 の各 章 であ る 。
シ ス テ ム ﹂ で構 成 さ れ 、 第 二 部 の性 格 は 、 教 科 領 域 ( 国語 、外国語 、社会科、 数学、 理科) における評価を 扱 っ
I ﹁教 育 と 計 画 ﹂、 Ⅱ ﹁教 授 過 程 に お け る 評 価 の利 用 ﹂、 Ⅲ ﹁認 知 的 、 情 意 的 目 標 に 関 す る 評 価 技 法 ﹂、 Ⅳ ﹁評 価
ッ ク﹄ (一九 七 三 年 ) で あ り 、 第 二 部 が ﹃学 習 評 価 ハン ド ブ ック ﹄ 上 ・下 巻 (一九 七 四年 ) で あ る。 第 一部 は 、
一ら に よ って、 第 一部 、 第 二 部 を 独 立 さ せ た 形 で 翻 訳 、 刊 行 さ れ て いる 。 第 一部 の翻 訳 が ﹃ 教 育 評 価 法 ハ ンド ブ
す る ハ ンド ブ ック ) であ り 、 一九 七 一年 にMcGraw︲Hよiり l出 l版 さ れ た 。 こ の本 は 、 わ が 国 に お いて 、 梶 田 叡
原 著 は 、 ブ ル ー ム ︵B.S.Bl︶ o、oへ mス テ ィ ン グ ス ︵J.T. Ha︶ s、tマ iド ng ゥs ス ︵G.F. Ma︶ d著 a、 us 書名 " Handbook on Formative and Summative Ev ( 生 a徒 lu o形 n成 的 of d価 en のa 学t びiの 、 総S 括t的u評 にt 関 Learnin
93
知 ら れ て いる 。
(taxonタ oキ my ソ ノ ミー )、 ③ 完 全 習 得 学 習
(e l mar sn ti en ry
﹃ 教 育 評 価 法 ハン ド ブ ック ﹄ の内 容 は 、 次 の 三 つの主 要 概 念 の そ れ ぞ れ と そ れ ら の 関 係 に つ い て記 述 さ れ て い る と 言 う こ と が でき よう 。 ① 評 価 理 論 、 ② 目 標 分 類 学 gマス タ リ ー ・ラ ー ニン グ )。
訳 者 は 、 ブ ル ー ム理 論 を 、 ﹁⋮ ⋮ タ キ ソ ノ ミー の基 盤 の上 に 立 った 形 成 的 評 価 を 強 調 す る 評 価 理 論 、 そ の 形 成
的 評 価 を 活 用 し て児 童 ・生 徒 の学 習 到 達 度 の飛 躍 的 向 上 を 図 ろ う と す る 完 全 習得 方 式 の 学 習 (マ スタ リー ・ラー
ニ ング ) に 関 す る 理 論 、 さ ら に 、 これ らを 踏 ま え て カ リキ ユ ラ ム の 評価 と 改 訂 、 開 発 を お こな お う と す る ユ ニー
ク な カ リ キ ユ ラ ム理 論 の領 域 にま でお よ ぶ と いう 総 合 的 な 教 育 理 論 ﹂ と と ら え て い る (訳者 序 文 よ り )。
わ が 国 にあ って は、 学 力 構 造 と 達 成 す べ き 学 習 指 導 目 標 の明 確 化 を 実 現 す る た め の目 標 分 類 学 と 、 学 習 指導 の
過 程 に お け る 評 価 で あ る 形 成 的 評 価 が 注 目 さ れ 、 学 力 の分 析 と そ の構 造 化 、 そ れ に 基 づ く 到 達 目 標 設 定 の精 緻
化 、 行 動 目 標 の設 定 、 目 標 相 互 の構 造 的 、 段 階 的 把 握 や 、 学 習 指 導 の プ ロ セ ス に お け る 評 価 等 の取 り 組 み を 促
し、 成 果 を 挙 げ る こと に つな が った 。 わ が 国 の評 価 研 究 と 教 育 実 践 に与 え た 影 響 は 大 き い。
し か し 、 評 価 対 象 が 認 知 領 域 中 心 で情 意 的 領 域 が 手 薄 であ る こと や 、 タキ ソノ ミー に お け る国 語 科 の 固有 の学
[ 森 田信義]
力 の 把 握 の妥 当 性 、 あ る いは 集 団 を 前 提 と す る 教 育 への完 全 習 得 学 習 の導 入 の 可 能 性 な ど に は 解 決 す べき 課 題 が 残 さ れ て いた 。
参考文献 梶 田叡 一 ﹃ 教育 に おけ る評価 の理論Ⅱ ﹄ 金子 書 房 一九九 四年
﹃ 行 為 と し て の 読書 ﹄ ( 岩 波 書 店 / 一九 八 二年 、 特 装 版一 九 九 八年 ) W ・イ ー ザ ー 著 / 轡 田 収 訳
﹃ 読 者 論 で国 語 の 授 業 を 見 直 す﹄ 明 治 図書 /
と 題 さ れ た 文 章 の 一部 を 引 用 す る 。
次 に 、 本 書 か ら ﹁テ ク ス ト と 読 者 の 相 互 作 用 ﹂
一九 九 七 年 、 五 七 頁 )。
三郎
為 論 モ デ ル﹂ と し てま と め た も の で あ る (上 谷 順
下 の図 は 、 本 書 の キ ー ワー ドを も と に ﹁読 書 行
と 、国語教育 研究全般 に影響を与 えた。
考 察 と し て 、 ﹁読 む こ と ﹂ の 教 育 は も ち ろ ん の こ
表 的 な 著 作 であ る 本 書 は 、 ﹁読 む こ と ﹂ の原 理 的
化 さ れ る と いう 考 え 方 を 示 し た 。 ﹁読 者 論 ﹂ の代
ク ス ト ﹂ は 読 書 と いう 行 為 に よ って ﹁文 学 作 品 ﹂
用 ﹂ す な わ ち 読 書 過 程 と し てと ら え な お し 、 ﹁テ
本 書 は 、 ﹁読 書 ﹂ を ﹁読 者 と テ ク ス ト の相 互 作
94
テク スト モデ ル は伝 達 過 程 の 一方 の極 し か と ら え て いな い。 レ パ ー ト リ ィと ス ト ラ テジ ー は た し か に テ ク
ス ト の骨 子 で は あ る が 、 そ れ だ け では ま だ 可 能 性 の 状 態 にす ぎ ず 、 そ れ が 顕 在 化 さ れ る に は 読 者 を ま た な け
れ ば な ら な い。 従 って 、 テ ク スト 構 造 と 理 解 と いう 行 為 構 造 と は 伝 達 状 況 で 相 互 補 完 を 行 な う 両 極 を な す 。
tran ﹀sすfる eこ rと は 、 多 く の場 合 、 テ ク スト だ け の作 用 と 考 え ら れ て いる 。 確
こ の伝 達 の成 否 は 、 読 者 の意 識 が テ ク ス ト の相 関 体 を ど の程 度 作 り 出 す か に か か って いる 。 テ ク ス ト が こ の よう に読 者 の意 識 に ︿転 移
かに テクストがあ るために ︿ 転 移 ﹀ が 生 じ る 。 だ が 、 転 移 は 、 テ ク ス ト が 読 者 の意 識 活 動 、 つま り 理 解 し 加
工 す る 活 動 を 呼 び 起 こ さ な い限 り は 成 り 立 た な い。 そ のた め 、 テ ク ス ト に は読 者 の社 会 行 動 規 範 な いし 価 値
も 組 み 込 ま れ て いる が 、 そ れ は こう し た 読 者 の能 動 的 行 為 を 呼 び 起 こ し 、 理 解 行 為 の糸 口 を 与 え る た め であ
る 。 テ ク スト は 、 読 者 が 遂 行 す る 意 味 構 成 を 経 て 初 め て完 成 す る わ け で、 そ のた め に テ ク スト は 、 ま ず 生 み
出 さ れ る に 値 す るも の の手 引 き の機 能 を も つが、 テ ク ス ト自 体 は 、 こ のよ う に 生 み 出 さ れ る も のそ のも の で は あ り え な い (一八四 ∼ 一八五 頁 )。
以 上 、 本 書 のキ ー ワー ド と 文 章 の 一部 を 紹 介 し た 。 本 書 の具 体 的 な 内 容 と そ の影 響 を 知 る には 、次 の著 作 を 参 照 し て いた だ き た い。 ・関 口安 義 ﹃国 語 教育 と 読 者 論 ﹄ (明 治 図 書 / 一九 八 六年 )
・田 近 洵 一 ﹃読 み手 を 育 て る︱ 読 者 論 か ら 読 書 行 為 論 へ︱﹄ ( 明 治 図 書 / 一九 九 三 年 )
・井 上 一郎 ﹃読 者 と し て の子 ど も と 読 み の形 成︱ 個 を 生 か す 多 様 な 読 み の授 業︱ ﹄ (明 治 図 書 / 一九 九 三年 )
[ 上谷 順三郎]
﹃ 教 科 理 解 の 認知 心 理 学 ﹄ ( 新 曜 社 / 一九 八 九年 )鈴 木 宏 昭 ・鈴 木 高 士 ・村 山 功 ・杉 本 卓
に関 わ る 認 知 心 理 学 の研 究 成 果 を て いね いに紹 介 す る役 割 を 果 た し た 。
本 書 の構 成 は 次 の通 り 。 こ のう ち 、 国 語 科 教 育 研 究 と 深 く 関 わ る 部 分 は節 の見 出 しも 示 す 。
1 章 文章 を書く過程
1 節 文 章 産 出 過 程 の包 括 的 モ デ ル/ 2 節 書 き 手 の知 識 と 文 章 産 出 / 3節 書 く 過 程︱ 者 / 4節 課 題 状 況 / 5 節 書 く こと と コミ ユ ニケ ー シ ヨン 2 章 算 数 ・数 学 の 理 解 3 章 自 然 科 学 の理 解 4章 既 有 知 識 と 文 章 理 解
4 節 ス キ ー マ理 論 の貢 献 の ま と め と 今 後 の課 題 / 5節 スキ ー マ理 論 の最 近 の成 果
︱ シ ャン ク の理 論
1 節 文 章 理 解 と 知 識 / 2 節 スキ ー マ理 論 の 一般 的 枠 組 / 3 節 スキ ー マと 文 章 理 解 の実 証 的 研 究 /
初心者と 熟達
く み や は た ら き の解 明 を め ざ し て いる 以 上 、 当 然 の こ と であ ろう 。 そ の よう な 中 で 、 と り わ け 本 書 は 、 学 校 教 育
た動 き は 、 認 知 心 理 学 (ま た は認 知 科 学 ) が 人 の知 的 活 動 ( 人 が 学 習 し 、 記 憶 し、 思 考 し 、 判 断 す る こ と ) の し
の分 野 でも 、 認 知 心 理学 に 基 礎 を お く 学 習 者 研 究 や指 導 法 研 究 、 教 材 開 発 な ど が行 わ れ る よう に な った 。 こう し
一九 八 ○年 代 、 認 知 心 理 学 の 研 究 成 果 が 教 育 の研 究 や 実 践 に 携 わ る者 に も 知 ら れ る よ う に な る と 、 国 語 科 教 育
95
﹁刊 行 に寄 せ て﹂ を 読 む と 、 本 書 が 認 知 心 理 学 の研 究 初 心 者 た ち に 必 要 な 予 備 知 識 を 与 え る た め に 書 か れ た も
ので あ る こと が わ か る 。 し た が って、 入 門 書 、 教 科 書 の 一種 で あ る が、 だ か ら と い って そ の種 のも のに あ り がち
な 平 板 な 記 述 は 見 ら れ な い。 著 者 た ち は 、 執 筆 にあ た って心 が け た こと を 次 の よう に 述 べ て いる 。
⋮ ⋮ 研 究 の時 間 軸 に 沿 った事 実 の羅 列 で は な く 、 さ ま ざま な 研 究 の基 底 にあ る ﹁問 い﹂ を 明 確 に す る こと
( 中 略 ) つま り 、 認 知 心 理 学 、 認 知 科 学 の発 展 の基 底 にあ る ﹁問 い の流 れ ﹂ と いう も のに 焦 点 を あ て 、 そ う
し た ﹁問 い﹂ に さ ま ざ ま な 研 究 者 が ど のよ う に答 え て い った のか 、 ま た 、 当 初 の ﹁問 い﹂ が 研 究 の進 展 の過
程 でど の よ う に変 わ って い った のか と いう こと を 押 さ え て 、 今 後 の 研 究 の展 望 に つ いて 語 る 、 と いう よ う に 書 か れ て いる 。
(L.
そ のた め 、 本 書 は 、 多 く の 入 門 書 で は 省 略 さ れ が ち な 研 究 の過 程 に つ い ても 比 較 的 詳 細 に 紹 介 し て い る。 た と
え ば 、 1 章 1 節 ﹁文 章 産 出 過 程 の包 括 的 モ デ ル﹂ では 、作 文 教 育 の研 究 に よ く 引 用 さ れ る フ ラ ワー と へイズ
Flower&J.R. ) Hの a文 y章 es 産 出 過 程 の モデ ルが 、4 章 3 節 ﹁ス キ ー マと 文 章 理 解 の実 証 的 研 究 ﹂ で は 、 物 語 ス
キ ー マ理 論 に よ る文 章 理 解 研 究 と し て有 名 な 、 ソー ンダ イ ク (P.W.Thor) nd のy﹁ k物e語 文 法 規 則 ﹂、 実 験 に 用
[ 岩永 正史]
いら れ た 物 語 ﹁サ ー ク ル ・アイ ラ ン ド ﹂ の全 文 (日 本 語 訳 )、 同 物 語 を 物 語 文 法 規 則 に よ って 分 析 し た ﹁物 語 の 階 層 構 造 図 ﹂ が 掲 載 さ れ て いる 。
﹁ 関 連 性 理 論﹄ ( 研究 社 出 版 / 一九 八六 年 ・訳 一九 九 三年 ) D ・ス ペ ル ベ ル 、 D ・ウ ィ ル ソ ン 著 / 内 田 聖 二ほ か 訳
(1) ( ピ ー タ ー ) 君 は ベ ン ツに は 乗 ら な い の ?
例 え ば 、 次 の例 文 で考 え て み よ う (二三 六 ∼ 二 三 九 頁 )。
左 右 さ れ る の であ り 、 結 局 聞 き 手 は最 適 な 関 連 性 を 得 る た め に 、 そ れ に 合 う コ ン テ ク ス ト を 構 築 す る の であ る 。
う 文 脈 は コ ン テ ク ス ト の こ と であ り 、 発 話 の状 況 や既 有 知 識 も 含 ん で い る)。 推 論 解 釈 は コ ン テ ク スト に よ って
こと を 指 し て いる 。 そ し て、 聞 き 手 は ﹁関 連 性 を 最 大 に す る 文 脈 を 選 ぼう と す る ﹂(一七 二頁 )( な お、 ここ で い
解 釈 に よ って得 ら れ る情 報 が 、 いま ま で の情 報 の組 み合 わ せ か ら は 得 ら れ な いよ う な 、 新 し い情 報 を も って いる
連 性 を も つ (つま り 、 最 も 小 さ な 労 力 で 最 大 の 利 益 が 得 ら れ る )解 釈 を 見 付 け る の であ る 。 こ こ で いう 利 益 と は 、
知 的 利 益 と 、 そ れ に か か わ る 心 的 労 力 (コス ト)と の相 関 概 念 であ る 。 聞 き 手 は 、発 話 の解 釈 に際 し て 、 最 適 な 関
こ こ で いう 関 連 性 と は 、 ﹁コ スト と 利益 の関 係 に つ いて の概 念 であ り ﹂、 聞 き 手 が伝 達 行 為 に よ って得 ら れ る 認
連 性 の期 待 を 生 み 出 す ﹂ と 述 べ、 推 論 解 釈 に お け る 関連 性 の重 要性 を 指 摘 す る 。
確 に し て いる 。 さ ら に 、 ﹁私 達 は 自 分 に と って関 連 性 が あ る と 思 わ れ る 情 報 に注 意 を 払 う ﹂ の で 、 ﹁伝 達 行 為 は 関
と 評 価 の 過 程 を 経 て推 論 さ れ る の であ る ﹂ (ⅷ頁 ) と 述 べ、 語 用 論 的 な 解 釈 は 推 論 を 含 ん だ 解 釈 で あ る こ と を 明
ま ず 、 彼 ら は 、 ﹁意 図 さ れ た 解 釈 と は 、 コ ー ド 解 読 さ れ る の で は な く 、 本 書 が 記 述 し よ う と し て い る仮 説 形 成
に 関 連 性 の公 理 を 取 り 上 げ 、 そ れ を 発 展 さ せ た 関 連 性 の原 則 だ け で、 語 用 論 的 な 解 釈 を 説 明 し よ う と し た 。
ス ペ ル ベ ル と ウ ィ ル ソ ンは 、 一九 八 六年 に 関 連 性 理 論 を 発 表 し た 。 彼 ら は 、 グ ラ イ ス の協 調 の原 則 の中 の、 特
96
( 2 ) (メ ア リー ) 私 は 、 ど ん な高 級 車 にも 乗 ら な いわ よ 。
( 2 ) を 聞 いた 聞 き 手 は 、 ( 1 ) に 最 も 関 連 性 が あ り 、 し か も 、 作 る のに 最 も 労 力 が 少 な く て済 む よ う な 解 釈 を
考 え る。 そ の時 に は 、 ベ ン ツに つい て の記 憶 の ス キ ー マを た ど り 、 次 のよ う な 前 提 を 得 る こ と にな る 。 ( 3 ) ベ ン ツは 高 級 車 であ る 。
こ の前 提 を 、 自 分 の持 つ コ ン テ ク ス ト の知 識 に付 け 加 え 、 次 の解 釈 を 得 る こ と に な る。 ( 4 ) 私 は 、 ベ ン ツ に は乗 ら な いわ よ 。
これ が、 最適 な 関 連 性 を 持 つ解 釈 と な る。 で は 、 な ぜ メ アリー は 直 接 ( 4 )のよ う に言 わ な い のか 。 そ れ は 、 話
し 手 が ﹁必 要 な 余 分 な 労 力 を 相 殺 す る 何 ら か の付 加 的 な 文 脈 効 果 を 期 待 し て いた に 違 い な い﹂ (二 三 九 頁 ) か ら
と 関 連 性 理 論 は 考 え る 。 そ れ は 、 次 のよ う な 付 加 的 解 釈 が 聞 き 手 の頭 の中 に起 こ る のを 期 待 し て いる の であ る 。 ( 5 ) 私 は 、 ロー ル ス ロイ スを 運 転 し な い。 ( 6 ) 私 は 、 お 金 が あ る こと を 見 せ び ら か し た く な い。 ( 7 ) 私 は 、豪 華 客 船 の旅 は し な い。
こ れ ら の解 釈 、 あ る いは ま だ 可 能 性 のあ る他 の解 釈 の す べ て か 、 あ る いは そ の 一部 を 推 論 さ せ る よ う 、 話 し 手
(メ アリー ) は 聞 き 手 に 仕 向 け て いる ので あ る 。 も ち ろ ん 、 (4) か ら ( 7 ) へと な る に し た が って、 聞 き 手 の責
任 が大 き く な る 。 し か し 、 ﹁ 完 全 に確 定 的 で 、 は っき り と 意 図 さ れ た 推 論 と 、 不 確 定 で全 く 意 図 さ れ て いな い推
論 の 間 に は 明 瞭 な 差 異 があ る と いう 虚 構 を 支 持 す る こと は でき な い﹂ (二四 二頁 ) と 関 連 性 理 論 は考 え て いる 。
こう し て 、関 連 性 理 論 は 、あ る発 話 が複 数 の解 釈 を 持 ち 、そ れ ら の解釈 が 、話 し手 が 聞 き 手 に 対 し て復 元 を 明 確 に
期 待 す るも のか ら 、全 く 聞 き 手 の責 任 で行 わ れ る も のま で連 続 し て あ る こと を 、明 示 し た の であ る。 [難 波 博 孝 ]
﹃ 認 知 心 理 学 か ら 見 た読 み の世 界 ﹄ ( 北 大 路 書 房 / 一九 九 六年 )佐 藤 公治
る 。 1 章 で は 、 新 し い学 力 観 (一九 九 〇年 代 に 提 出 さ れ た 概 念 ) を 推 し 進 め て いく た め に ﹁協 同 的 な 学 び の 世
ま ず 序 章 で は 、 教 育 心 理 学 の 問 題 性 、 特 に ﹁授 業 に 向 か う さ い の教 育 心 理 学 のま な ざ し の不 毛 性 ﹂ が 述 べ ら れ
7章 子 ど も た ち の対 話 と そ の対 話 を 方 向 付 け て いるも の
6章 教室 におけ る子 どもたち の対話と協 同的学習
5章 子 ど も た ち は文 学 教 材 を ど のよ う に読 み 進 め て い るか︱ 文 学 教 材 ﹁ご んぎ つね ﹂ の読 解 過 程︱
4章 対話と協 同的学 習︱社会的構 成主義 のアプ ローチ︱
3章 読者 の主体的な 読みと対話
2章 認知心 理学と教 科学習
1 章 いま 、 子 と も た ち の﹁ 学 び の力 ﹂ と し て求 め ら れ るも のは
序章 心 理学 から の授業研 究:そ の課 題
本 書 の目 次 は 、 以 下 の よう に な って いる 。
ら 発 展 し た ﹁社 会 的 構 成 主 義 ﹂ の ア プ ロー チ を ふ ま え て、 考 察 を 行 った も の で あ る 。
本 書 は 、 ﹁読 む こと ﹂ と ﹁対 話 ﹂ を つな ぐ た め に 、 従 来 の認 知 心 理 学 の成 果 に 加 え て 、 ヴ ィ ゴ ツ キ ー の思 索 か
97
界 ﹂ の必 要 性 が 論 じ ら れ て い る 。 2 章 で は 、 章 の題 名 と 少 し 異 な り 、 認 知 心 理 学 だ け で な く 教 育 学 も 合 わ せ た 、 理 論 の 変 遷 が 語 ら れ 、 学 習 者 研 究 と 教材 研 究 の重 な り が重 要 であ る と し て いる 。
3 章 で は 、読 み そ のも の の研 究 の 変 遷 を 、 心 理 学 ・文 学 研 究 ・︵ 国 語 )教 育 学 か ら 考 察 し て いる 。 4 章 は 、本 書
中 最 も 重 要 な 理 論 的 な 部 分 で 、社 会 的 構 成 主 義 の 理論 の概 観 が 述 べ ら れ 、理 論 と し て の優 位 性 が 指 摘 さ れ て いる 。
5 章 で は 、 子 ど も た ち の ﹁ご ん ぎ つね ﹂ の ( 授 業 にお け る ) 読 解 過 程 を 記 述 し モ デ ル の提 案 と 、 そ の モ デ ルだ
け で は 説 明 で き な い現 象 を 、 実 際 の読 解 過 程 の フ ィ ー ルド ワ ー クか ら 記 述 し て いる 。 最 後 に 、 ﹁ご ん ぎ つね ﹂ の 教 材 分 析 小 史 を 載 せ て いる 。
6 章 では 、 話 し 合 い の過 程 の中 で、 ﹁ご ん ぎ つね ﹂ の読 み が ど の よ う に 変 わ る の か に つ い て 考 察 を し て い る 。
7章 では 、 最 初 は 説 明 文 ﹁生 き て い る土 ﹂ の授 業 の考 察 に よ る 階 層 性 の考 察 、 後 半 で は 、 教 師 と 教 室 文 化 に つ い て論 じ ら れ て いる 。
本 書 の意 義 は 、 社 会 的 構 成 主 義 が 心 理 学 でど のよ う に受 容 さ れ ど のよ う に文 学 の授 業 に 応 用 さ れ て いる か と い
う 視 野 が得 ら れ る こ と であ ろう 。 個 に 閉 ざ し て き た 心 理 学 者 が 、 活 動 理 論 や文 学 理 論 な ど に出 合 い、 発 達 や 学 習
の問 題 を 、 個 と 共 同 性 と の 関連 で考 え て いく よう に な った軌 跡 の書 と し て捉 え て いき た い。 国 語 教 育 研 究 に対 し ては 、 本 書 は 、 次 のよ う な 意 義 が あ る と 考 え ら れ る 。 ( 1 ) 読 者 論 に対 し 、 認 知 心 理 学 の観 点 か ら 理論 的 な サ ポー ト が得 ら れ た こ と 。
( 2 ) 文 学 教 材 の授 業 に お け る ﹁読 み ﹂ が 、 個 と 協 同 の両 者 の 関連 で 変 容 し て いく こ と を 、 図式 化 し た こ と 。
た だ し 本 書 で は ﹁文 学 教 材 の授 業 で は何 を 学 ぶ べ き か ﹂、﹁文 学 を 読 む と いう こ と は 人 間 にと って いか な る 意 味 が
あ る か ﹂と いう ﹁価 値 ﹂に つ い て の議 論 は ほ と ん ど な い。こ れ ら は 国 語 教 育 研 究 の仕 事 な の であ る 。 [ 難波 博孝]
第 十 二 章 辞 典 ・事 典 ・講 座 ・全 集 ・著 作 集
国 語 教 育 に 関 す る 文 献 は 、 戦 後 に 限 って み て も お び た だ し い数 に の ぼ る 。 こ こ で は 、 一 ﹁辞 典 ・事 典 ﹂、 二
[ 植 山 俊 宏 ・大 槻 和 夫 ]
﹁学 会 企 画 の 講 座 ﹂、 三 ﹁諸 講 座 ﹂、 四 ﹁ 全 集 ・著 作 集 ﹂ の 四 つ の分 類 を 設 け て リ スト を 作 成 し て み た 。 な お 、 遺 漏 も あ ろう か と 思 う が 、 か な り の程 度 網 羅 し た つも り であ る 。 一 辞 典 ・事 典
・﹃ 国 語教育 辞典 ﹄白 石 大 二 ・新 間進 一・広 田栄太 郎 ・松村 明 編 一九五 〇 東 京 堂出 版 ・﹃ 国 語教育 事 典﹄ 増 田三良 著 一九 五 一 須 磨書 房 ・﹃ 小 学校 国語科 教育 事典 ﹄ 教育 技術 研究 所編 一九 五 二 小学 館 ・﹃ 中 学校 国語科 教育 事典 ﹄ 教育 技術 研究 所編 一九 五 二 小学 館
・﹃ 国語 教育 ハンド ブ ック﹄ 平井 昌夫 編 一九 五 〇 牧 書店 ・﹃ 国 語教育 辞 典﹄ 西尾 実 ・倉 澤栄 吉 ・滑 川道夫 ・飛 田多 喜雄 ・増 淵恒 吉 編 一九 五七 朝倉 書 店 ・﹃ 生 活綴方 事 典﹄ 日本作 文 の会 編 一九 五 八 明治図 書 ・﹃ 国 語教育 用 語辞典 ﹄輿 水 実 著 一九 六 〇 明 治図 書 ・﹃ 読書 指導 事典︱ 指 導編 ﹄ 阪本 一郎 ・滑 川道夫 ・深 川恒喜 編 一九 六 一 平凡社 ・﹃ 国 語指導 法事 典﹄ 輿水 実編 一九六 二 明治 図書 ・﹃ 国 語教育 辞典 ﹄藤 井信 男 他編 一九六 三 学燈 社 ・﹃ 生活 綴方 文 例事典 ﹄ 日本 作文 の会 編 一九 六 五 明 治図 書
・﹃現代 読書指 導事 典﹄ 坂 本 一郎他 編 一九 六 七 第 一法 規出 版 ・﹃子ど も の本 の事 典 ﹄坪 田譲 治他 編 一九 六九 第 一法 規出 版 ・﹃国語 科基 本用 語辞 典﹄ 輿水 実 編 一九 七 〇 明 治 図書 ・﹃小学 校国 語科 指導 事典 ﹄倉 澤栄 吉 ・野地 潤家 ・藤 原 宏編 一九 七 一 第 一法 規出 版 ・﹃作文 指導事 典﹄ 井 上敏 夫他 編 一九七 一 第 一法 規出 版 ・﹃読解 ・読書 指導 辞 典﹄ 倉澤 栄吉 ・藤 原 宏編 一九 七三 第 一法 規出 版 ・﹃表記 ・文 法指導 事 典﹄ 岩淵 悦太 郎 ・藤 原 宏 編 一九 七 七 第 一法 規 出版 ・﹃読書 指導 相談事 典 ﹄ 野地潤 家編 一九 七八 共文 社 ・﹃児童 詩教 育事 典﹄ 日本 作文 の会 編 一九 七 八 百合出 版 ・﹃新国 語科 指導 法事 典﹄ 輿水 実 編 一九七 九 明治 図書 ・﹃作文 指導 辞典﹄ 樺 島忠 夫他 編 一九八 ○ 東 京堂 出 版 ・﹃国語 科重 要用 語 三〇 〇 の基 礎知 識﹄ 野 地潤家 編 一九 八 一 明治 図書 ・﹃新国 語科 教育 基本 用語 辞典 ﹄輿 水 実著 一九 八 一 明治 図 書 ・﹃新読 書指導 事 典﹄ 阪本 一郎 他編 ]九 八 一 第一 法 規出版 ・﹃小学 校作 文指導 実 践事 典﹄ 藤原 宏 他編 一九 八 二 教育 出 版 ・﹃新作 文指導 事 典﹄ 井 上敏夫 他 一九八 二 第 一法 規 出版 ・﹃作品 別文 学教 育実 践史 事典 ﹄浜 本純 逸他 編 一九 八三 明治 図書 ・﹃子ど も の本と 読書 の事 典﹄ 日本 子 ども の本 研究会 編 一九 八三 岩崎 書店 ・﹃国語 教育 指導 用語 辞典 ﹄ 田近洵 一 ・井 上尚美 編 一九 八四 教育 出版 ・﹃小学 校説 明文 教材 指導 実践 事典 ﹄藤 原 宏他 編 一九 八四 教育 出版 ・﹃小学 校文 学教 材指 導実 践事 典﹄ 藤 原 宏他 編 一九 八 四 教 育出 版 ・﹃小学 校文 学教 材指 導 用語辞 典﹄ ( 全 二巻 )藤 原 宏他 編 一九 八四 教育 出版
・﹃作品 別文 学教 育実 践史 事典 中 学校 ・高 等 学校編 ﹄ 浜本純 逸 他編 一九 八七 明治 図書
・﹃ 国語 教材 研究 大事 典﹄ 国 語教育 研 究所 編 一九 八 八 明 治 図書 ・﹃ 国語 教育 研 究大辞 典﹄ 国 語教育 研 究所 編 一九 八 八 明治 図書 ・﹃ 中学 校 国語 教材 研究 大事 典﹄ 国語 教育 研究 所編 一九九 三 明治 図書 ・﹃ 高等 学 校国 語教育 情 報事 典﹄ 大平 浩哉 ・鳴 島 甫編 一九九 三 大修 館書 店 ・﹃ 作文 技 術指導 大事 典﹄ 国 語教 育研 究所 編 一九 九 六 明治 図書 ・﹃ 音声 言 語指導 大事 典﹄ 高 橋俊 三編 一九九 九 明治 図書 ・﹃ 国語 科 重要 用語 300 の基 礎 知識﹄ 大 槻和 夫編 二〇 〇 一 明治 図書 ・﹃ 国語 教 育辞 典﹄ 日本 国語 教育 学会 編 二〇〇 一 朝 倉書 店 二 学 会 企 画 の 講 座 (l ) 全 国 大 学 国 語 教 育 学 会 ① ﹃ 国 語科 学習 指導 研究 双書 ﹄ ( 全 四巻) 一九 五 四 法政 大学 出版 局 ・﹃ 国 語基 礎学 力﹄ 一九 五 四 ・﹃ 言 語生 活 の指導﹄ 一九 五五 ・﹃ 文 学 の学習 指導﹄ 一九 五四 ・﹃ 文法 の学習 指導 ﹄ 一九 五四 ② ﹃国語教 育科 学 講座﹄ ( 全 五巻 ) 一九 五 八 明治 図 書 ・﹃ 国 語教 育科 学論 ﹄ 一九 五八 ・﹃ 国 語科 教育 機構 論﹄ 一九 五 八 ・﹃ 国 語学 力論 ﹄ 一九 五八 ・﹃ 国 語学 習論 ﹄ 一九 五八 ・﹃ 国 語教 材研 究論 ﹄ 一九 五八
﹃講 座 国 語 教 育 の改 造 ﹄ ( 全 三 巻 ) 一九 六 八 明 治 図 書
・﹃I 本 質 と 課 題 の検 討 ﹄ 一九 六 八
③
・﹃Ⅱ 教 材 の 精 選 と 探 究 ﹄ 一九 六 八
﹃国 語 科 指 導 法 の 改 造 ﹄ ( 全 三 巻 ) 一九 七 二 明 治 図 書
・﹃Ⅲ 指 導 の 開 発 の徹 底 ﹄ 一九 六 八 ④ ・﹃ 小 学 校 1 ・2 ・3 年 編 ﹄ 一九 七 二 ・﹃ 小 学 校 4 ・5 ・6 年 編 ﹄ 一九 七 二
﹃ 講 座 国 語 科 教 育 の 探 究 ﹄ ( 全 三 巻 ) 一九 八 一 明 治 図 書
・﹃ 中 学 校 編 ﹄ 一九 七 二
・﹃第 1 巻 総 論 ・言 語 指 導 の 整 理 と 展 望 ﹄ 一九 八 一
⑤ ・﹃第 2 巻 表 現 指 導 の整 理 と 展 望 ﹄ 一九 八 一
﹃ 国語 科 教育 研究﹄ ( 全 五 巻 ) 一九 八 三 ∼ 一九 八 七 明 治 図 書
・﹃第 3 巻 理 解 指 導 の 整 理 と 展 望 ﹄ 一九 八 一 ⑥
・﹃1 国 語 学 力 論 と 実 践 の課 題 ﹄ 一九 八 三 ・﹃2 国 語 科 評 価 論 と 実 践 の 課 題 ﹄ 一九 八 四 ・﹃3 読 む こ と の 教 育 と 実 践 の 課 題 ﹄ 一九 八 五 ・﹃4 表 現 教 育 と 実 践 の課 題 ﹄ 一九 八六
﹃国 語 科 教 育 学 の成 果 と 展 望 ﹄ 二 〇 〇 五 明 治 図 書
・﹃5 ﹁言 語 ﹂ 教 育 の理 論 と 実 践 の 課 題 ﹄ 一九 八 七 ⑦
①
﹃こ と ば の学 び 手 を 育 て る 国 語 単 元 学 習 の新 展 開 ﹄ ( 全 七 巻 ) 一九 九 二 ∼ 一九 九 三 東 洋 館 出 版 社
﹃学 年 別 ・小 学 校 国 語 の 指 導 ﹄ ( 全 六 巻 ) 一九 六 〇 明 治 図 書
(2 ) 日本国語教 育学会
②
・﹃Ⅰ 理論編 ﹄ ・﹃Ⅱ 小学校 低 学年 編﹄ ・﹃Ⅲ 小学 校中 学年 編﹄ ・﹃Ⅳ 小学 校高 学年 編﹄ ・﹃V 中学 校編﹄
講
座
・﹃Ⅵ 高等 学校 編﹄ ・﹃Ⅶ 生活 のことば か ら の保 育 ∼幼稚 園 ・保育 所 編﹄ 三 諸
・﹃国語教 育 講座﹄ ( 全 六巻 ) 西尾 実他 編 一九五 一 刀江書 院 ・﹃ 国 語教 育実 践講 座﹄ ( 全 十 二巻) 石黒 修 他 一九 五 三∼ 一九 五四 牧書 店 ・﹃ 小 学校 現場 の国 語教 育﹄ ( 全 三巻 )阪 本 一郎 ・大久 保忠 利他 編 一九 五 四 春 秋社 ・﹃ 作 文教 育講 座﹄ ( 全 六巻 )波 多 野完治 ・倉 澤 栄吉他 編 一九 五四∼ 一九 五 五 河 出書 房 ・﹃ 読 書指 導講 座﹄ ( 全 十巻 )亀 井勝 一郎 他編 一九 五五 牧書 店
・﹃ 講 座 日本語﹄ ( 全 七巻 )金 田一京 助 他監 修 一九五 五∼ 一九 五六 大 月書 店 ・﹃明治 図書 講座 国 語教 育﹄ ( 全 八巻 )全 日本 国語 教育 協議会 編 一九 五五 ∼ 一九 五六 明治 図書 ・﹃ 東 京創 元 社版 ことば の講 座﹄ ( 全 五巻 )石 黒 修他 編 一九 五 六 東 京創 元社 ・﹃ 講座 ・小 学校 の国 語教 育﹄ ( 全 五巻 )阪 本 一郎 ・大久 保忠 利他 編 一九 五 六 春 秋社 ・﹃ 明治 図書 講座 国 語指 導法 体系 ﹄ ( 全 六巻) 輿水 実 編 一九五 七 明治 図書 ・﹃ 文学 教育 基礎 講座 ﹄ ( 全 三巻) 国 分 一太 郎 ・関 英雄 他編 一九 五七 明 治図書 ・﹃ 読解 指導 の研究﹄ ( 全 四巻 )倉 澤 栄吉他 編 一九 五七∼ 一九 五八 東 洋館 出版 社 ・﹃ 文法 教育 の実践﹄ ( 全 三巻 )阪 本 一郎 ・大久 保忠 利 ・松 山市 造編 一九 五八 春秋 社
・﹃ 国 語教 材研 究講 座﹄ ( 全 六巻) 倉 澤栄 吉他 編 一九 五九 ∼ 一九六 〇 朝倉 書店 ・﹃ 実 践講 座 国語 教育﹄ ( 全 十巻 ) 西尾 実 ・時 枝誠 記監 修 一九 六 〇∼ 一九 六 一 牧書 店 ・﹃ 講 座 生活 綴方 ﹄ ( 全 五巻 ) 日本 作文 の会 編 一九 六 一 百 合出 版 ・﹃ 作 文 の指導 過程 ﹄ ( 全 三巻)倉 澤 栄吉 編 一九 六 四∼ 一九 六五 新光 閣書 店 ・﹃ 国 語科 の基 本的 指導 過程 ﹄ ( 全 五巻) 輿水 実 編著 一九 六五 明治 図書 ・﹃ 国 語科 の基 本的 教材﹄ ( 全 四巻) 輿水 実 編著 一九 六七 明治 図書 ・﹃ 講 座 国語 科基 本 的技能 の指 導﹄ ( 全 六巻 )輿 水 実編 著 一九 六 八 明治 図書 ・﹃一読総 合法 読 み の指 導﹄ ( 全 三巻 )大 久保 忠利 他 編 一九六 九 大 明堂 ・﹃ 小 学校 国語 科 の体系 と 実践﹄ ( 全 三巻 )佐 々木 定 夫他 編 一九 六九 新光 閣 書店 ・﹃国語授 業 の発 見﹄ ( 全 六巻) 石 田佐久 馬編 著 一九六 九 東 洋館 出 版社 ・﹃ 小 学校 国語 科 の評価﹄ ( 全 六巻 )倉 澤栄 吉編 一九 七〇 国 土社 ・﹃国語科 主体 的 学習 指導 細案﹄ ( 全 三巻 )大 原輝 夫 編 一九 七〇 明 治図書 ・﹃講座 国 語科 基本 的指導 過 程 の進展﹄ ( 全 三巻 ) 輿水 実 編 一九 七 一 明 治図 書 ・﹃ 文種 別国 語授 業 の展開 技術﹄ ( 全五 巻) 石 田佐久 馬他 編 一九 七 一 東 洋館 出版 社 ・﹃ 国語 科教材 研 究 の標準 化﹄ ( 全 三巻 )瀬 川栄 志編 一九七 一 明治 図書 ・﹃ 国語 科研 究授 業細 案﹄ ( 全 三巻 )藤 原 宏 ・瀬 川栄志 編 一九 七 二 明治 図書 ・﹃ 中学 校国 語科 教育 講座 ﹄ ( 全六 巻)倉 澤 栄吉 他編 一九七 二 有精 堂 ・﹃ 新 ・文法 教育 の実 践﹄ ( 全 三巻 )松 山市 造 ・小松 善之 助編 一九 七三 春秋 社 ・﹃ 講座 説 明的 文章 の教 材研 究﹄ ( 全 五巻 )倉 澤栄 吉 ・井上 敏夫 編 一九 七 三 明治 図書 ・﹃ 講座 国 語科 の読 書指 導﹄ ( 全 四巻 )井 上敏 夫編 一九七 四 明 治図書 ・﹃ 高等 学校 国語 科教 育研 究講 座﹄ ( 全 十 二巻) 増淵 恒吉 ・小 海永 二編 一九 七四 有精 堂 ・﹃ 中学 校 国語指 導細 案﹄ ( 全 五巻 )飛 田多 喜雄 編 一九 七 四 明 治 図書 ・﹃ 独立 講座 国語 科教 育学 大系 ﹄ ( 全十 二巻 )輿 水 実著 一九七 五 明 治図書
・﹃国語 授業 の探 究﹄ ( 全 五巻 )石 田佐 久馬 編著 一九七 五 東洋 館出 版社 .﹃近代 国語 教育 論大系 ﹄ ( 全 二十 巻) 井上敏 夫 他編 一九七 五 光村 図書 .﹃ 新 国 語科 教育講 座﹄ ( 全 六巻 ︶ 飛田多 喜 雄編 一九七 九 明治 図書 .﹃ 新 し い文章 表 現力 の指導 ﹄ ( 全六 巻 ︶井 上敏夫 編 一九 七 九 明治 図書 .﹃言語事 項 の指導 事例 集﹄ ( 全 三巻 ) 石田佐 久馬 編 一九 七 九 明治 図書 .﹃ 国 語科 関連 的指 導法 ﹄ ( 全 三巻) 愛媛 国語 研究 会編 一九 八○ 明 治図書 .﹃ 小 学校 国語 科指 導細 案﹄ ( 全 六巻 )飛 田多 喜雄 編 一九 八 O 明治 図書 .﹃ 国 語教 育史 資料﹄ ( 全六巻 ) 井上敏 夫 他編 一九 八 一 東京 法令 出版 .﹃ 到達 水 準を 明確 にし た国 語科 授業 ﹄ ( 全 六 巻) 輿水 実 編 一九 八 一 明 治図 書 .﹃ わ かり やす い国 語 の授業﹄ ( 全 六巻 )藤 原 宏 他編 一九 八 一 東洋 館出 版社 .﹃ 文学 重 要教材 の授業 展開﹄ ( 全 三巻 )全 国 国語 教育 実践 研究会 編 一九 八 一 明治 図書 .﹃ 中学 校 国語科 指導 細案 ﹄ ( 全 三巻) 瀬 戸 仁他 編 一九 八 一 明治 図 書 .﹃授業 のため の新 国語教 科書 研究 ﹄ ( 全六 巻 )児童 言語 研究 会編 一九 八 一 一光社 .﹃国語 科基 礎学 力 の評価 と指 導﹄ ( 全 六巻 )輿 水 実編 著 一九 八 二 明治 図書 .﹃学習 作文 指導 細案 ﹄ ( 全 四巻) 輿水 実 編 一九 八 二 明 治図 書 .﹃新国 語科表 現力 指 導法﹄ ( 全三 巻) 飛 田多 喜 雄編 一九 八 二 明治 図書 .﹃ 文 学 重要 教材 の授 業展 開 中学 校﹄ ( 全 三巻 )全 国国 語教 育実 践研 究会 一九 八 二
.﹃ 詩 の授 業﹄ ( 全 三巻 )文 芸 教育協 議会 編 一九 八二 明治 図書 .﹃一読総 合法 読 み による 言語事 項 の系統 的指 導 細案﹄ ( 全 四巻 ) 林 進 治著 一九 八 二 明 治図 書 .﹃ 国 語科 わ かる板 書 の授業 展 開﹄ ( 全 三巻) 須 田 実 編 一九八 二 明治 図書 .﹃ 国 語科 学習 状況 の診 断指導 事 例﹄ ( 全 六巻 )渡 辺富 美雄 他編 一九 八 二 明治 図 書
.﹃ 国 語科 学習 状況 の評 価を 生 かした 指導 事例 中学﹄ ( 全 三巻 )小 林 一仁他 編 一九八 二 明治 図書 .﹃ 東 書文 庫所 蔵教 科用 図書 目録 ﹄ ( 全 二巻) 東書 文庫 編 一九 八 二 東 京書 籍
・﹃ 最新 中学 校国 語科 指導 法講 座﹄ ( 全 十 二巻) 飛 田多喜 雄他 編 一九八 二 明治 図書 ・﹃ 学級 を生 かす 国語 科 の授業 ﹄ ( 全 六巻) 藤 原 宏 他編 一九 八三 教育 出 版 ・﹃ 新国 語科 理解 力指 導法 ﹄ ( 全 三巻) 飛 田多喜 雄編 一九 八三 明治 図書 ・﹃ 書く 機会 を広 げ る短作 文 の指導 ﹄ ( 全 五巻) 実 践作文 の会編 一九八 三 教育 出版 ・﹃ 読 み方授 業 のた め の教 材 分析﹄ ( 全 七巻 )渋 谷 孝他 編 一九八 三 明治 図書 ・﹃ 国語 科基 礎 ・基本 の体 系的 指導 ﹄ ( 全 六巻) 飛 田多喜 雄 他編 一九八 三 明治 図書 ・﹃ 国語 科教 育方 法論 大系 ﹄ ( 全十 巻) 飛 田多喜 雄著 一九 八 四 明 治図書 ・﹃ 国語 科 の基本 的指 導 過程 入門﹄ ( 全 六巻 )須 藤久 幸他 編 一九 八四 明治 図書
・﹃ 講座 現代 の文学 教育 ﹄ ( 全 六巻) 日本 文学 協会 国語 教 育部 会編 一九 八四 新光 閣書 店 ・﹃ 国語 科 の授業 入 門﹄ ( 全 五巻) 国語 教育 実 践研究 会編 一九 八 五 明 治 図書
・﹃ 説明 文重 要教 材 の授業 展 開﹄ ( 全 三巻) 全 国国語 教育 実 践研 究会 編 一九 八 五 明 治 図書 ・﹃ 文学 教材 の授 業選 集﹄ ( 全 六巻 )須 田 実編 一九 八六 明 治図 書 ・﹃ 読 みを 深め る授業 分析 ﹄ ( 全 六巻) 渋谷 孝 他編 一九 八七 明 治図 書 ・﹃ 表 現学大 系﹄ ( 全 三十 三巻 )表 現 学会 編 一九 九 一 教 育出 版 セ ンター ・﹃ 文学 教育 基本 論文 集﹄ ( 全 四巻 ) 西郷竹 彦他 編 一九 八八 明治 図書
・﹃ 読者 論 に立 つ読 み の指 導﹄ ( 全 四巻 ) 田近洵 一他 編 一九九 四 東洋 館出 版社 ・﹃ 国語 教育 基本 論文 集成 ﹄ ( 全 三十 一巻 )飛 田多喜 雄 ・野 地潤 家監 修 一九 九 四 明 治図 書
・﹃ 戦 後国 語 教育 実践 記 録集 成 [ 東 北編 ]﹄ ( 全 十 六巻 ) 戦後 国 語教 育実 践 記録 集成 ・東 北編 編集 委 員会 編 一九九 五 明 治 図書
・﹃ 国語 科 の新視 点﹄ ( 全 六巻 ) 田近洵 一編 一九 九六 国 土社 ・﹃︿新 し い作 品論 ﹀ へ、 ︿ 新 し い教材 論 ﹀ へ ̄文 学研 究 と国 語 教育 研 究 の交 差 へ︱﹄ ( 全 六 巻 ︶ 田中 実 他 編 一九 九九 右 文書 院 ・﹃ 文学 の力 ×教 材 の力﹄ ( 全 十巻 ) 田中 実他 編 二〇 〇 一 教育 出版
四 全 集 ・著 作 集 ・﹃ 村 山俊 太 郎著作 集﹄ ( 全 三巻 ) 日本作 文 の会 編 一九 六七 百 合出 版 ・﹃ 東 井義 雄著 作集 ﹄ ( 全 六巻) 一九 七 二 明治 図書 ・﹃野地潤 家 国語 教育 研究叢 書﹄ ( 全 十巻 ) 一九 七 三∼ 一九 八五 共文 社 ・﹃西尾実 国 語教育 全集 ﹄ ( 全 十 二巻 )岩 淵悦 太 郎他 編 一九 七 四∼ 一九 七八 教育 出版 ・﹃ 波 多 野完 治国 語教育 著作 集﹄ ( 全 二巻 ) 一九 七 五 明 治図 書 ・﹃西郷竹 彦 文芸 教育 著作集 ﹄ ( 全 二十巻 ) 一九 七 五 明 治図 書 ・﹃ 青 木幹 勇 授業 技術 集成﹄ ( 全 五巻 ) 一九 七六 明 治図 書 ・﹃垣内松 三 著作集 ﹄ ( 全 九巻) 久松 潜 一他編 一九 七七 光 村 図書 ・﹃石森延 男 国語 教育 選集﹄ ( 全 五巻 )沖 山 光 他編 一九七 八 光村 図書 ・﹃ 増 淵恒 吉 国語 教育 論集﹄ ( 全 三巻 ) 一九 八 一 有 精堂 ・﹃ 峰 地光 重 著作集 ﹄ ( 全十 八巻 )峰 地光 重著 作 集刊 行会 編 一九 八 一 けやき 書房 ・﹃ 佐 々木 昴 著作集 ﹄ 佐藤 広和 他編 一九 八 二 無明 舎出 版 ・﹃井上敏 夫 国語 教育著 作 集﹄ ( 全 五巻) 一九 八二 明治 図書 ・﹃ 大 村 はま 国語 教室﹄ ( 全 二十 一巻 ) 一九 八 三 筑 摩書 房 ・﹃ 斉 藤喜 博 全集﹄ ( 全 十 七巻) 一九 八三∼ 一九 八 四 国 土社 ・﹃国語科 論 集﹄ ( 全 六巻 )望 月久貴 著 一九 八四 学芸 図書 ・﹃ 輿 水実 国 語科 の基 礎 ・基本 著作集 ﹄ 輿水 実 著 一九八 四 明治 図書 ・﹃時枝誠 記 国語 教育 論集﹄ ( 全 二巻 ) 石井 庄司 編 一九 八 四 明治 図書 ・﹃国分 一太 郎文 集﹄ ( 全 十巻 )太 田 堯 他 編 一九 八 三∼ 一九 八六 新 評論 ・﹃ 芦 田恵 之 助国 語教 育全 集﹄ ( 全 二十 五巻 )古 田 拡他 編 一九八 七 明治 図書
・﹃ 倉 澤栄 吉 国語教 育全 集﹄ ( 全 十 二巻) 湊 吉 正他 編 一九 八九 角 川書 店 ・﹃ 大 西忠 治 教育技 術著 作集 ﹄ ( 全十 七巻 ) 一九 九 一 明 治図 書 ・﹃ 大 久保 忠 利著作 選集 ﹄ ( 全 六巻) 同 編集委 員 会編 一九九 一 三省 堂 ・﹃ 市 毛勝 雄 著作 集﹄ ( 全 五巻 ) 一九九 七 明治 図書 ・﹃野地潤 家 著作 選集﹄ ( 全 十 二巻 ) 一九九 八 明治 図書 ・﹃西郷竹 彦 文芸 ・教 育全 集﹄ ( 全 三十 六巻 ) 一九九 九 恒文 社 ・﹃ 大 森修 国 語教 育著 作集﹄ ( 全十 二巻 ) 二〇 〇五 明治 図書 ・﹃大槻 和夫 著作 集﹄ ( 全 九巻 ) 二〇 〇五 渓水 社
要 点 135
224
論理的思考力 84
要 約 読 み 133 吉 川 数92
理解語 彙 173
吉 田裕 久199
リテ ラ チ ャー ・サ ー ク ル → ブ ック ク ラ ブ
読 み 90,105,106,138, 139,146,160,224 ―の多 様 性
領 域 別 指 導群 15
91 歴 史研 究 213
読 む こ と 106
レ トリ ッ ク 136,137,170,
レ トリ ッ ク読 み 92
朗 読 58,59 ・リ エ ー チ
渡 辺 春 美 93,200
欧 文
197
ラ 行 ラズ ビー チ エ
わ か る 授 業 115
綿 引 ま さ 161
読 み書 き の 関 連 指 導 87 読 む人 を読 む 147
ワ 行
ロ シ ア 224,225
IFEL
40
はな し こ と ば の 会 51
フ ラ ワー,L.
『話 し こ とば の 教 育 』 43,
フ ラ ンス 226
213
237
プ リ ン トメ デ ィ ア 185
『話 し こ とば を磨 く実践 』
古 田東 朔 195,196
ブ ル ーム,B.S.
46
話 す こ と ・聞 くこ と 60, 213
場 の 設 定 83
232
プ ロ セス ・ア プ ロ ーチ
向 山 洋 一 119 村 松 賢 一 41 『明 治前 中期 に お け る 日本
―の 可 能 性 121
浜 本 純 逸 194,200 林 進 治 92
文 学 教 育 期 204
『春 』 159
『文 学 教 育 基 本 論 文 集 』
225
見 方 の 詩 教 育 112
219
文 学 教 育 208
比 較 国 語(科)教 育 216,
マ ル チ メ デ ィ ア 152
的 レ トリ ッ ク展 開過 程 に 関 す る研 究 』 197 メ デ ィア ・エ デ ュ ケ ー シ ョ ン 189
194
『文 学 教 育 入 門 』 91
メ デ ィア ・リテ ラ シ ー
文 学 的 認 識 103
29,180,186-188,190, 192,193
比 較 国 語 教 育 学 研 究 226
文 化 的 通 じ合 い 61
飛 田 隆 200
文芸研 2
飛 田 多 喜 雄 195
文 章 表 現 指 導 78
筆 者 想 定 91
文 章 分 析 128
筆 者 想 定 法 92
文 章 論 168,174
『一 つ の 花』 158
文 章 論 的 読 解 指 導 90
ひ と 目読 み 160
文 体 論 174
文 字 習 得 166
批 判 的 思 考 29
文 段 169
望 月 久 貴 196,216
批 判 的 読 み 138,146
文 法 教 育 162
物 語 ス キ ー マ 237
批 判 的 理 解 219
メ デ ィア ・リテ ラ シ ー教 育
―を 生 か す 授 業 159
『批 判 読 み』90
180
目標 分 析 191 目標 分 類 学 233
物 語 文 法 237 森 岡 健 二 66
『批 評 の 文法 』 91
ヘ イ ズ,J.R
237
評価 研 究 38
ベ リ ン ス キ ー 224
森 田信 義 92 問 題 意 識 喚 起 102
評 価 の 実 践 的 研 究 39
ヤ 行
評 価 読 み 139
保 科 孝 一 16
評 価 理 論 233
ポ ー ズ59
表 現 語 彙 177
『坊 つ ち や ん 』 159
安 田 敏 明 201
表 現 の 機 能 111
ホ ー ル ・ ラ ン ゲ ー ジ 34,
安 直 哉 217
219
表 現 分析 110 表 現 読 み 224
山根 安 太 郎 197 山 元悦 子 60
本 文 122
評 語 72
山 元 隆 春 91
マ
描 写 130
行
標 準語 16
山 本 安 英 の 会 48 弥吉 菅 一 195
増 田 信 一 50 府 川源 一 郎 200 藤 原和 好 224
マ ス タ リー ・ラー ニ ン グ
233
雄弁 術 219 ゆ と り教 育 27
ブ ス ラ ー エ フ 224
増 淵 恒 吉 93,194
ブ ッ ク ク ラブ
交 ぜ 書 き 161
要旨 135
ま とめ よみ 105
幼児 期的物語体験 81
153
ブ ッ ク トー ク 153
東 京 都 青 年 国 語研 究 会 92
日記 指 導 72
高橋 俊 三 41
とお しよ み 105
高 森 邦 明 195,199
時枝誠記 6
『に っ ぽ ん ご 』 160,164, 165
葉 の 授 業 改 革― 』 41
タキ ソ ノ ミー 233
ドキ ュ メ ン タ リー 189
『日本 言語 文化 論 』 195
武 田常 夫 119,209
読 者 反応 理 論 124
多 国 間 の 比 較 検 討 216
読 者 反応 理 論 研 究 91
他 者 126
読 者 論 107,122,234
日本 国 語 教 育 学 会 25,30
『た っ た 一つ の お か し』
読 書 145
『ニ ホ ン語 日記 』 160
158
た とえ ば な し 171 218
日本 語 学 228
―の 習慣 154
日本 作 文 の 会 211
―の心 理 学 142
『日本 児童 詩教 育 の 歴 史 的
―へ の ア ニ マ シオ ン
『ダ ー トマ ス ・セ ミナ ー』
『日本 語』 161
153
研 究 』 195 日本 読 書 学 会 154
た ど り読 み 7
読 書 教 育 153
入 門期 166
田 中 実 122
読 書 行 為 論 107,234
認 識 170
単 元 学 習 30,35,95,140
読 書 人 の基 礎 能 力 146
認 識 主 体 138
単語指導
読 書 生 活指 導 140,147
認 識 ・表 現 の方 法 134
短 作 文 74
読 書 法体 系 142
認 知 科 学 80,236
段 落 169
読 書 療 法 142 読 解 152
認 知 心 理 学 80,148,236, 240
地 域性 79
読 解 指 導 90
認 知 論 的 ア プ ロ ー チ 150,
知 識構 造 80
読 解 力 94
9
『中学 語 文教 学 法 』 220
ドラ マ 187
179認 知 論 的 国語 教 育 学 149
中 華 人 民 共 和 国 220,221
取 り出 し指 導
178
中 心 語 の シ フ ト現 象 151
取 り立 て指 導
178
『中等 国語 教 材 史研 究 』
トル ス トイ 224
の りうつ る文 体 103
198
ナ 行
『中等 作 文 教 育 史研 究 』
野 地 潤 家 194,195,198, 216
198
ハ 行
聴 写 77
内言 20
長 編 152
中 内敏 夫 199
橋 本 暢 夫 198
中洌 正堯 67
長 谷 川 滋 成 93
伝 え 合 う力 27
中西 一 弘 67
『綴 方 教 授 の理 論 的 基礎
永 野 賢 90,174
―垣 内 松 三 先 生 の ば あ い―
』 198
発 問 128 『話 し こ とば 学 習 論 』 42, 213
ナ シ ョナ ル カ リキ ュ ラ ム
222
『話 し こ とば が 育 つ 学 級 』 46
綴 り字 法 160
滑 川 道 夫 194,196
『帝 国 日本 の 言 語編 成 』
西 尾 ・時枝 論 争 6
話 しこ と ば教 育 体 系 52
201
西 尾 実 5,37,201
『話 し こ とば 教 育 の プ ロ グ
デ ィベ ー ト 29
西 本 喜 久子 216
テ ク ス ト 234
「21世紀 へ 発 信 す る17の 提
話 しこ と ば教 育 56,212
テ レ ビ 187
言 」 14 日常 話 法 54
ラ ム 」 46 話 しこ と ば指 導 78 『話 し コ トバ 指 導 の 技 術 』
40
201
―主 体 的 ・批 判 的 に 聞
『戦 後 国 語 教 育 史 』 200
佐 野 泰 臣 93
き取 る 能 力 の 発 達 調 査
『戦 後 古 典 教 育 論 の 研 究
三 確 視 点 161
に 重 点 を お い て―(平
―時 枝 誠 記 ・荒 木
「山 月 記 」 123
成 六 年 度 調 査)』 42
繁 ・益 田勝 実 三 氏 を 中
三 読 法 63
情 報 化 社 会 146
心 に―
』 200
情 報 処 理 認 知 モ デ ル 148
『戦 後 作 文 教 育 史 研 究 』
シ ェ ィ ク ス ピ ァ 189
職 業 話 法 54
詩 教 育 112
『初 等 教 育 国語 教 科 書 発 達
『戦 後 作 文 ・綴 り方 の研 究 』 200
時系 列 171
史 』 198
200
思 考 28
初 等 国 語 教 育 226
『戦 後 初 期 国 語 教 科 書 史研
思考 過程 128
調 べ 読 み 154
自 己 学 習力 33
自 立 的 言 語 文 化 生 活 者 52
選 定 語 彙 178
自 己研 修 161
新 教 育 68
専 門話 法 54
自 己 内対 話 45
『新 国語 』 218
事 実 130
新 単 元 学 習 140
造 形 170
視 写 76
心 理 学 228
創 構 82
実験 授 業研 究 63
心 理 学 研 究 149
総 合 学 習 35
実践 86
究 』199
総 合 的 な 学 習 の 時 間 192
実践 知 128
随 意 選 題 論 207
相 互 啓 発 的 な 対 話 61
実 践 的 授業 62
推 論 238
相 互 融 和 的 な 対 話 61
指 導 過 程 108,131,227
菅 原 稔 200
相 馬 信 男 92
児 童 言 語研 究 会 2,10,90,
ス キ ー マ 理 論 236
ソ ー ン タ ィ ク,P .W.
100,101
237
ス キ ル 学 習 2
指 導 事 項 131
鈴 木 三 重 吉 207
児 童 文 集 87
ス ペ イ ン 156
渋 谷 孝 92
タ 行 『 大正昭和初期 におけ る生 活表現の綴 り方 の研 究
社 会 的 構 成 主 義 240
生 活 こ と ば 53
社 会 的 通 じ合 い 61
生 活 作 文 88
社 会 的 要 因 149
生 活 綴 り方 事 件 67
社 会 文 化 的 ア プ ロ ーチ 81
『生 活 綴方 成 立 史研 究 』 199
社 会 文 化 的 要 因 148
生 活 綴 方 的 教 育 方 法 68
大段 落 130
修 辞 学 83,219
生 活 読 み 91,144
「十 人 十 色 を 生 か す 文 学 教
生 活 話 法 54,55
第二信 号系理論 11 「 頽廃 とたたか う文学教育」 102
育 」 91 授 業 研 究 63,214 ―の 視 点 215
世 界 読 書 会 議 145 説 得 の 論 法 92 説 明 的 表 現 84,111
―東京高師付属小 学 校 教師の実践 と理 論― 』 199
対 話 60,61 ―の価値 61
縮 約 224
説 明 的 文 章 134,141
主 題 単 元 学 習 25
説 明 文 教 材 136,137
対話教 育 213 「 対話教 育の復 興 を」 213
主 張 と理 由 づ け の 構 造 29
『説 明 文 読 解 指 導 の構 想 』
対話指導 44
準 体 験 理 論 90
92
小 段 落 130
説 明 読 み 224
『小 中高 校 生 の 聞 き取 り能
世 羅 博 昭 93
力 に 関 す る調 査 報 告 書
戦 後 国語 教 育 学 研 究 4
『 対話 能力 を育む話す こと 聞 くことの学習― 理論 と実践―』 41 『 対話 能力 を磨 く―話 し言
教 育 課 程 26
言 語 学 228
『国 語教 育 基 本 論 文集 』
教 育 基 本 語 彙 172
言 語 活 動 22
教 育 心 理 学 240
言語過程説 1
『国語 教 育 史研 究 』 197
教 育 話 法 54
言 語 感 覚 159
『国語 教 育 史 資料 』 194
『教 育 話 法 入 門 』 213
言 語 教 育 期 205
『国語 教 育 通 史』 195
『教 育 話 法 の 研 究 』 55
言 語 経 験 129
国 語 教 育 方 法 204
共 栄 圏 語 16
言 語 行 動 主体 106
国語 とい う思想 16,200
教 科研 → 教 育 科 学 研 究 会
言 語事 項 22
『「国 語」 とは何 か 』 197
教 科 書 220
言語 生 活 20,74
国語 能力 表
『教 科 書 か ら見 た 明 治 初 期
言 語 生 活主 義 1
『国 語 の 経 験 カ リ キ ュ ラ ム』
の 言 語 ・文 字 の 教 育 』
言 語 能力 育 成 224
196
言 語 の 反省 的把 握 227
国 分 一 太 郎 67,211
教 科 理 論 62
言 語 文 化 22
語 形 法 160
京 極 興 一 197
言 語 要 素 的 な抵 抗 158
輿 水 実 98
『共 生 時 代 の 対 話 能 力 を 育
言 語 論 理 教 育 28
国 家 語 16
て る 国 語 教 育 』 41
194
26
218
ご っ こ遊 び 81
虚 構 の 視 点 18
語 彙 172,173,178
コー ド 238
キ ー ワ ー ド 83,151
語 彙 系 統 177
こ とば 遊 び 19
『近 代 国 語 教 育 史」 195
語 彙 指 導 32,176
『近代 国 語 教 育 論 体 系 』
―の 方 法 178
194
語 彙 知 識 176
子 ど も と と もに 学 ぶ
語 彙 発 達 177
子 ど もの 文 章
語 彙 頻 度 調 査 173
小松 善 之 助 11,91
語 彙 力 150,176
コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン 60
語 科 」 と い う枠 組 み の
『行 為 と して の 読書 』 91
コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン力
発 見 とそ の 意義― 』
構 成 71
197
構 造 分析 に よる 読 解 91
語用 論 238
構 造 読 み 132
「ごん ぎつ ね 」 105,241
小 海永 二 92
コ ンポ ジ シ ョ ン 65
声 58
コ ン ポ ジ シ ョ ン理 論 70
金 田一 春 彦 161 『近 代 日本 に お け る 「国語 科 」 の成 立 過程―
グ ッ ドマ ン,ィ
「国
ェ ッ タ ・M.
34
グ ッ ドマ ン,ケ
コ トバ の 網 11 こ とば の 仕 組 み 122
ネス
・S.
34,37
倉 澤 栄 吉 24,31,90,94, 194
157
語 学 教 育期 204
サ 行
語 感 159 国語 科 225 『国 語科 教 育 学 へ の 道 』
西 郷 竹 彦 91,92,109,111,
ク リ テ ィ カ ル 190
桑 原
『国 語科 教 育 史 の 基 本 問 題 』
西 郷 文 芸 学 104
『サ ー カス の 馬』 159
隆 25,199,217
群 読 48 ―に 適 し た 教 材 49
86
86
200
196
119,194
国 語 学 力 論 117
作 品 語 彙 178
国 語 科 授 業 15
作 文 68
経験単元 141
国 語 科 総 合 単 元 学 習 32
作 文 指 導 82
形成的評価 233
『国語 教 育 学 史 』 198
―
系統化 134
国 語 教 育 学 の樹 立 4
作 文 の 会 210,211
系 統性 60
国 語 教 育 関 連 諸 科 学 15
『作 文 の なか の大 日本 帝 国 』
の 観 点 87
索
引
ウ シ ン ス キ ー 224
学 習 の手 引 き 32
『海 を渡 っ た 日本 語 』 201
学 習 の 有 効 性 128
ア イ デ ンテ ィテ ィ 187
映 像 化 時 代 140
青 木 幹 勇 67,92
映 像 時 代 の読 書 145
学 習 モ デ ル 192
「赤 い 鳥 」207
絵 コ ン テ 185 エセ読み のアナーキー
確 認 読 み 139
秋 田喜 三郎 198 芦 田恵 之 助 76
学 力 モ デ ル 60
ア
行
『学 習 評価 ハ ン ドブ ッ ク』
122
『芦 田 恵 之 助 研 究 』 198
232
学 力 低 下 27 重 ね 合 わ せ 151
足 立 悦 男 92,194
応用言語学的 アプローチ
価 値 228,241
アニ マ ドー ル 156
学 校 図 書 館 運 動 155
アニ メ ー シ ョン 184
大 内 善 一 200
ア メ リ カ 187‐189,218,
大 河 原 忠 蔵 91
カ ナ ダ 186‐189
大 久 保 忠 利 10
樺 島 忠 夫 92
荒 木 繁 102
太 田 正 夫 209
鎌 田 正 93
有 沢 俊 太 郎 197,216
大 槻 和 夫 216
亀村 五 郎 67
大 西 忠 治 92
川村 湊201
大 西 道 雄 66
関係 把 握 力 116
219
イギ リス 188,189,222, 223
150
学 校 文 法 162
大 村 は ま 24,32,146,147, 209
意 見 文 83
感 じ方 の 詩 教 育 112 完 全 習 得 学 習 233
イ ー ザ ー , ヴ ォル フ ガ ン グ
小 笠 原 拓197
漢 文 学 習 指 導 法 114
沖 縄 の 国 語 教 育 の 調 査 79
漢 文教 育 114
井 関 義 久 91 一 読 総 合 法 90 ,100,101
小 田迪 夫 92,111,136
漢 文教 材 研 究 114
音 声 言 語 教 育 56
漢 文 教 材 の ほ ん もの 115
伊 東 武 雄 93
音 声 法 160
漢 文 の醍 醐 味 115
井 上敏 夫 91,194
音 読 ・朗 読 ブ ー ム 48
91
井 上 ひ さ し 159
『消 えた 「最 後 の 授 業 」』
『今 求 め られ る コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン能 力 』 41
力
意 味 の ネ ッ トワー ク 179
解 釈 学 119
北 原 白秋 207
意 味 マ ップ 法 150,179
改 正 教 育令 64
機 能 的 国語 教 育 2
意 味 論 2
改 正 小 学 校 令 64
木 下 順 二 48
イ ・ヨ ンス ク 200
香 川 県 国語 教 育研 究 会
基 本 的 指 導 過 程 2,98
入 部 明 子 217
「基 本 に か えれ 」 運 動 218
行
200
規 工 川 祐 輔 93
91,92
学 習 基 本 語 彙 172 上 田万 年 16
学 習 指 導 要 領 23,64
教 育 科 学 研 究 会 2,8,144, 164
高 木 まさ き
横浜国立大学教育人間科学部教授
宮 本 克 之
甲子園短期大学文化情報学科助教授
遠 藤 仁
宮城教育大学教育学部教授
山 本 建 雄
長崎大学教育学部教授
棚 橋 尚 子 奈良教育大学教育学部教授 長﨑 秀 昭 弘前大学教育学部助教授 有沢俊太郎
上越教育大学学校教育学部教授
塚 田 泰 彦 筑波大学大学院人間総合科学研究科教授 松 川 利 広 奈良教育大学教育学部教授 松 山 雅 子 大阪教育大学教育学部教授 羽 田 潤 大阪教育大学非常勤講師 上 田 祐 二 北海道教育大学教育学部旭川校助教授 浜 本 純 逸 早稲 田大学大学院教育学研究科教授 位 藤紀 美 子
京都教育大学教育学部教授
高 木 展 郎 横浜国立大学教育人間科学部附属教育実践総合セ ンター 教授 中 西 一 弘 大阪教育大学名誉教授 佐 渡 島紗 織
早稲田大学国際教養学部講師
安 直 哉
岐阜大学教育学部助教授
土 山 和 久 大阪教育大学教育学部助教授 難 波 博 孝
広島大学大学院教育学研究科教授
森 田 信 義 広島大学名誉教授 上 谷 順 三 郎
鹿児島大学教育学部助教授
岩 永 正 史 山梨大学教育人間科学部教授 (*編者)
白 石 寿 文 佐賀大学名誉教授 菅 原 稔 岡山大学教育学部教授 田 中 俊 弥 大阪教育大学教育学部助教授 児 玉 忠 弘前大学教育学部助教授 中 西 淳 愛媛大学教育学部助教授 櫻 本 明 美 神戸親和女子大学発達教育学部教授 住 田 勝 大阪教育大学教育学部助教授 田 中 宏 幸 ノー トルダム清心女子大学文学部教授 金 子 泰 子 信州大学国際交流センター非常勤講師/ 長野大学非常勤講師 中 谷 雅 彦 九州女子大学人間科学部教授 山 元 隆 春 広島大学大学院教育学研究科教授 寺 井 正 憲 千葉大学教育学部教授 守 田 庸 一 静岡大学教育学部助教授 棚 田真 由美
兵庫教育大学学校教育学部助手
足 立 悦 男 島根大学教育学部教授 藤 森 裕 治 信州大学教育学部助教授 寺 田 守 大分大学教育福祉科学部講師 青 木 雅 一 兵庫県立川西北陵高校教諭 谷 口 匡 京都教育大学教育学部助教授 佐 藤 明 宏 香川大学教育学部教授 府 川 源 一郎
横浜国立大学教育人間科学部教授
長 崎 伸 仁 創価大学教育学部教授 河 野 順 子 熊本大学教育学部助教授 村 井 万 里子
鳴門教育大学学校教育学部教授
世 羅 博 昭 四国大学生活科学部教授
*大 槻 和 夫
安田女子大学文学部教授
杉 哲 熊本大学教育学部教授 *吉 田 裕 久 広島大学大学院教育学研究科教授 小 川 雅 子 山形大学地域教育文化学部教授 *植 山 俊 宏 京都教育大学教育学部教授 前 田 真 証 福 岡教育大学教育学部教授 堀 泰 樹 大分大学教育福祉科学部教授 村 上 呂 里 琉球大学教育学部教授 松 友 一 雄 福井大学教育地域科学部助教授 河 野 智 文 福岡教育大学教育学部助教授 中 村 敦 雄
群馬大学教育学部助教授
桑 原 隆 筑波大学大学院人間総合科学研究科教授 松 崎 正 治
同志社女子大学現代社会学部教授
松 本 修 上越教育大学学校教育学部助教授 甲斐 雄 一 郎
筑波大学大学院入間総合科学研究科助教授
千 々岩 弘 一
鹿児島国際大学社会福祉学部教授
山 元 悦 子 福 岡教育大学教育学部教授 田 中 智 生 岡山大学教育学部助教授 渡 辺 春 美 沖縄国際大学総合文化学部教授 楢 原 義 顕 宮崎大学教育文化学部助教授 三 浦 和 尚
愛媛大学教育学部教授
余 郷 裕 次 鳴門教育大学学校教育学部助教授 間 瀬 茂 夫 島根大学教育学部助教授
朝倉国語教育講座 6 国語 教 育 研 究 2006年
定価 はカバ ーに表示
9 月15日 初 版 第 1刷
監修者 倉
澤
栄
吉
野
地
潤
家
発行者 朝
倉
邦
造
倉 書
店
発行所 株式 会社 朝
東 京 都 新 宿 区 新 小 川 町 6-29 郵
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FAX
〈検 印省 略〉 〓 2006〈 ISBN
C3381Printed
号 162-8707
03(3260)0180
http://www.
無 断 複 写 ・転 載 を禁 ず 〉 4-254-51546-4
番
asakura.co.jp シ ナ ノ ・渡 辺 製 本 in Japan
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《朝倉 国語 教 育 講座 》 全 6巻 倉 澤 栄 吉 ・野 地 潤 家 監修
第 1巻 国語教 育入門 白 石 寿 文 編集 232頁 本 体3500円 国語教室へ ようこそ/話 したが りや ・聞 きたが りやの 国語教 室/書 く喜 びを分かち合 う国語教室/ 文学 に遊ぶ国語教室/説明 ・論説 に挑 む国語教室/ ことば ・文 字の魅力 に満 ちた国語 教室/授業 を愉 しめる 国語教師 に
第 2巻 読む こ との教育 小 田迪 夫 ・浜 本 純 逸 ・松 山 雅 子 編集200頁
本 体3500円
読む ことの機能 と教育/ 読むこ との指導体系/読 むこ との指導の内容 と方法/ これか らの読 むこ との学 習指導
第 3巻 話 し言葉 の教育 白 石 寿 文 ・山 元 悦 子 編集 216頁 本 体3200円 話 し言葉学習の特質/話 し言葉教育 の戦後60年 史/話 し言葉学習 の機会 と場/話 し言葉学 習の内容 ・方 法 ・評価/ 話 し言 葉教 育を支え る教師の話 し言葉
第 4 巻
書 くことの教 育
中 西 一 弘 ・森 田 信 義 ・菅 原 稔 編集 228頁 本 体3500円 書 くとい うこ と/書 くことの歴 史的展望/ 書 くことの能力 とその発達/書 くこ との学 習指導 とその体 系/書 くことの生活化 と習慣化/書 くこ との学習指導 とその方法/書 くことの学習指 導におけ る評価/ 書 くこ との学習指導 とその発展
第 5巻 授業 と学力評価 世 羅 博 昭 ・三 浦 和 尚 編集 224頁 本 体3200円 国語科 授業構築 ・研究の基本課題/ 国語科 授業研究の成果 と試行/ 国語科授業構 築の原理 と方法/ 国語 科授 業の構築 と展望/国語科授業 の構築 ・研 究の集積 と深化/評価研究 の意義 と方法/学習者把握 をめ ざす 評価 の開発/望 ましい評価方法 の開発 と試行/学力 ・指導力 の評価 と授業力 の向上
第 6巻 国語教 育研 究 大 槻 和 夫 ・吉 田 裕 久 ・植 山俊 宏 編集 276頁 国語 教育 総論/ 国語教育 課程 および方法 の研究/ 話す こと ・聞 くことの指導研究/ 書 くこ との指 導研 究/ 読む ことの指導研究/読書指 導の研 究/言語事項指導 の研究/ メデ ィア ・リテ ラシー教育 の研 究/ 国語教 育史の研究/比較国語教育研 究/国語教育研究 と隣接 諸科学/ 辞典 ・事典 ・講座 ・全集 ・著作集 上 記 価 格(税
別)は2006年
8月 現 在